ルーントルーパーズ・翠星のマリースア (エウロパ)
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翠星のマリースア【上】同盟の戦い、大いなる聖戦

 
皆様!新年、明けましておめでとうございます!

この作品は全3話で完結する短編作品です。
私が2013年、つまりガルガンティアの放送が終わった直後に書いた小説で当時読んでいたルーントルーパーズとのクロス作品でそれを少し修正して投稿しました。
私がはじめて書いた小説でもありますのでお見苦しい点があるとは思いますがご了承下さい。


 

 

 

 

 

朽ちかけた神殿の内部にある円形の洞窟広場にその入り口である扉を破ろうとする重音が響いていた。

 

そんな音の中、洞窟広場には傷つき疲れきった騎士達や排月神に仕える高位の神官や魔道士達がもうじき自分達の元にやってくる破滅の時をただただ待っていた。

皇都が敵の手に落ち敗残兵をまとめてこの神殿に立てこもってすでに6日にはなるが正門は今にも敵の手によって破壊されようとしている。

 

そうなればこの中に居る者は皆殺しだ。

 

五百年に渡って栄華を誇っていた神聖プロミア帝国も今や無残な最期を待つばかりなのだ。

 

「ここが堕ちるのも時間の問題か……」

 

「やはり計画を実行に移さねばなるまい」

 

ランプの僅かな光に照らされた広場では老若男女が狂気に支配された表情で話し合っている。

 

彼らは既に皆、死を覚悟していた。

 

だが、彼らはただ滅びるつもりは無かった。

 

一人の男が広場の祭壇へと顔を向ける。

 

「よいな?ヒュムナ」

 

「はい……」

 

祭壇には依巫が座っている。

その少女はまだ幼い年頃の少女だった。かすかに体のラインが透けて見える羽衣を身にまとい深く祈るように手を合わせている。

 

少女の背中には有翼の民の末裔の証である白い翼があり美しさを持っていた。

 

ここに集う者達が今から行おうとしているのはまさに外道の行いである。

だが、これから滅びる彼らにとってはそんな事はもうどうでも良かった。

 

何せ彼らは遅かれ早かれ確実に死ぬのだから。

 

黒いローブを着た魔術師達が少女の居る祭壇を囲むように並び全員が同じ言葉を唱えた。

 

「「虚空の狭間にたゆたう光よ」」

 

依巫を着た少女の体に刻まれた文様から血が滲む。

 

「「現世と冥界を繋ぐ番兵に問いかけん」」

 

少女は苦悶の表情を浮かべた。

 

「「有翼の民の血を対価としてここに願わん」」

 

少女の真下にある魔方陣は少女の体から溢れる血をすっていく。

 

「「この世界に異空の代償を示したまえ!」」

 

詠唱の完了。

 

だが、ちょうどその瞬間、広場の門が敵によって突破された。

門から流れるように突入してくる人外の軍団によって殆どの者が無抵抗のまま惨殺された。

 

だが、殺された者達の表情はとてもこれから死んでいく者のものではなかった。

彼らの歪んだ希望がにじみ出ていたのだ。

そんな彼らの死体が見つめる祭壇には少女の姿は跡形も無く消えていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年の頭の中に漆黒の宇宙空間の映像が流れている。

宇宙にきらめく無数の光点。

遥か遠くの恒星のきらめきが人にとっては永遠とも思える時を越え小さく無数に光り輝いている。

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

《永きに及んだ漂泊の時代は終わり我ら人類はあまねく銀河に繁栄の世界を手にいれた》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは夢。

教導レム睡眠とよばれる機械を使った人工夢だ。

本物の少年は今頃、一人分のコックピットで眠りについている。

少年は……同盟の兵士達はこの啓発映像によって自らの意識を高めるのだ。

 

そんな夢の宇宙空間にもう何度も何度も聞いてすっかり脳裏にすっかり焼きついてしまったアジテーターの男の声が流れていた。

 

アジテーターの声が流れるのと同時に漆黒の宇宙空間の映像が下に向かってゆっくりとスクロールしてゆき突如として宇宙空間に視界いっぱいに広がるほどの巨大な輝く建造物が映し出される。

 

 

 

《それがアヴァロン》

 

 

 

宇宙空間に浮かぶ一つの輝く巨大な宇宙ステーション。

皿を逆さまのような形をした電磁シールド下の超密度回転球が真空の宇宙空間から膨大なエネルギーを抽出し、そこから両極一直線にプラズマの光軸を放つ。

 

その光軸を囲うように直径15キロにも及ぶ一枚の花弁のような居住区画が円になるように12基ほどが連なりそれが2つでプラズマ光軸の回りをゆっくりと回転している。

 

《麗しき理想郷、科学の叡智と開拓の意思が築き上げた楽園の輝きをみよ》

 

アヴァロン……宇宙に進出した人類が造り出した理想郷。

その正体は遥か昔に寒冷化によって滅びた地球を脱出した人類がコツコツと造った巨大移民用コロニーだ。

安定した重力、豊かな自然、正常な空気、自然繁殖した動植物を加工して作り出された非合成食品、そしてそのコロニーを守る透明な防壁が恐ろしい宇宙線や放射線を防ぐ。

まさに同盟に暮らす人ならば誰もが憧れる理想郷だ。

 

《これこそが諸君の故郷、四億七千万の全市民が諸君の勇気ある献身を称え栄誉ある兵士の名をその胸に刻んでいる》

 

《称えよ人類銀河同盟に約束されたくおんの未来を、ここより人類の躍進は始まってゆくのだ》

 

《だが、諸君、忘れてはならない》

 

壊れ穴だらけに喰い尽くされた宇宙ステーションの残骸が現れる。

ステーションには無数の巨大な醜い生物が群がっていた。

 

《この非情なる宇宙の深淵には時に容赦ない悪意が潜むことを……》

 

そして醜い生物がアップで現れた。

昔、図鑑で見た巻き貝のような形の強靭な外骨格。

そして憎悪さえ覚える醜い触手。

 

《我ら人類の前途を脅かすヒディアーズの跳梁を断固として阻止すべし!》

 

ヒディアーズ、人類の敵だ。

奴等はその進化の果てに絶対零度の宇宙空間の真空にまで適応し、さらには強力なグレイザー(ガンマ線レーザー)の発射機関まで自らの肉体に手にした。

 

《かような下等生物に人類の躍進を阻まれてはならない!》

 

人類銀河同盟の誇る全長数キロはある航宙艦の艦隊が現れる。

艦隊はただちに加速重粒子砲を発射しいくつもの青い閃光がヒディアーズの群体に直撃する。

 

いくら進化しても奴等は所詮、欲望のままに動く下等生物。

知性と統制の取れた我ら人類の敵ではない。

 

ヒディアーズからも無数の薔薇色のグレイザーが次々と発射され人類銀河同盟の艦艇が次々と破壊されていく……。

 

だが、奴等は手強い。

人類銀河同盟は発足時から奴等との戦いを続けてきた。

奴等に対抗するために巨大な航宙艦を幾つも造り強力な兵器を開発しそれを使うために少年のような兵士が同盟の計画的な子作りで産み落とされ戦場に送られる……。

 

 

ヒディアーズさえ居なければ!!レドの中に怒りと憎しみが溢れてくる。

 

 

《英雄達よ大いなる試練の時に奮起せよ無念のうちに散った幾多の犠牲を!今なお危機に瀕している未来の同胞達を忘れるな!》

 

ここでレドに対する教導レム睡眠は終わった――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェインバー『総員教導レム睡眠を中断。機体ナンバーK‐6821搭乗員レド少尉は速やかに覚醒されたし』

 

レド「ん……」

 

チェインバー『脳波計測、基礎律動異常なし血中乳酸値、アドレナリン分泌量に変化なし覚醒プロセス終了』

 

レド「……っ!敵は!?」

 

レドはチェインバーのコックピット内で教導レム睡眠から目覚めた。

するとそれとほぼ同時にコックピットの全天球モニターに通信ウィンドウが開かれ自分の所属する部隊の隊長であるクーゲルから通信が入った。

 

クーゲル<クーゲル隊、各機に告ぐ。睡眠啓発の時間はおしまいだ。まだ寝ぼけてる奴はいないだろうな?>

 

レド「はぁ……まだか」

 

全天球モニターの映像が切り替わり作戦宙域と予定航路図の三次元マップが表示された。

 

クーゲル<これより300秒後に全艦隊はワームホール、エルゴ領域に突入。スイングアウトした先はヒディアーズの巣と目と鼻の先だ。本作戦は人類銀河同盟の総力を結集した奇襲作戦である。ここでしくじれば後は無いものと思え>

 

作戦の簡易的な説明が終わると同時に目の前の台座に設置されているコミュニケーターがレドの目の前にホログラムを投射し機体チェックの進行状況が次々と表示され同時にチェインバーの声が響いた。

 

チェインバー『告知、現時刻を持ってレド少尉の軍務機関は14万5千時間を経過した。本作戦終了後、貴官には限定市民権とアヴェロンへの4週間の渡航滞在を申請する資格が与えられる』

 

レド「へぇ、そうだったか」

 

チェインバー『アドレナリン分泌量に変化なし。貴官の反応は期待値を満たしていない』

 

レド「アヴァロンか……一度この目で見てみたいとは思っていたが……いざ行けるとなるとよく分からない。故郷ってなんなんだ」

 

チェインバー『市民の権利が保障される場所である。貴官には自由睡眠、自由飲食、並びに生殖の自由が与えられる』

 

レド「何だかな……どれも俺には難しすぎる」

 

チェインバー『貴官は生存し繁殖するに相応しい優秀な人類である事が証明された。栄誉であり歓喜すべき成果である』

 

レド「お前は嬉しいのか?チェインバー」

 

チェンバー『私はパイロット支援啓発インターフェイスシステム。貴官がより多くの成果を獲得する事で存在意義を獲得する』

 

対ヒディアーズ殲滅兵器マシンキャリバー、レドが乗っている機体はその中でも一般的な汎用型の量産機だ。

マシンキャリバーはパイロット支援啓発インターフェイスシステムと呼ばれる人工知能を搭載して対話と支援によって専属パイロットの支援、啓発を行うシステムだ。

先ほどから喋っているチェインバーはレドの愛機チェインバーの声だ。

 

レド「ああ、ご苦労さん。確かにお前は良く頑張ってる」

 

クーゲル<無駄話はそこまでだレド少尉。まずは目の前の任務だ>

 

レド「了解です中佐」

 

レドはクーゲルに諭されて気合を入れる。

 

クーゲル<総員、対ショック体勢!ティレモシースイング完了と同時に全機発進。健闘を祈る>

 

レド「……」

 

レドは静かに目を瞑る。

オープン通信ウィンドウからはワームホールへの突入、ティレモシースイングの開始準備を行う人類銀河同盟軍の艦隊の通信が幾つも入る。

 

 

<通過回廊接続維持>

<全部隊突入準備完了>

<艦隊各班、順次突入>

<ティレモシースイング開始、スイングイン!>

 

人類銀河同盟の大艦隊がワームホールへと突入して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<全艦、ワームホール通過確認>

<空母各班へ戦域突入支援艇、発進せよ!>

<戦域突入支援艇、展開予定座標へ進行>

 

宇宙空間にワームホール通過の損傷の有無を報告する通信が飛び交い、全長20キロメートルを超える人類銀河同盟が誇る6隻の巨大空母からはマシンキャリバー120機を搭載した戦域突入支援艇が無数に次々と発進する。

 

<量子次元反応弾クローザーパス設置部隊発艦せよ>

 

そして最後に空母から今回の作戦の要の一つである量子次元反応弾クローザーパスを運搬する部隊が次々と発艦した。

 

<先方の突撃艦隊はブロッサムセイルを確認しだい敵要塞特殊砲に対し艦砲射撃を開始>

 

艦隊旗艦からは司令の通信が先方の突撃艦隊に伝わる。

レドたちが抜けてきたワームホールはヒディアーズの巣のある惑星の隣にある惑星の裏側にあるため艦隊は今、全速力で惑星の影側を抜けてヒディアーズの巣へと向かう。

 

<こちら突撃艦隊、ブロッサムセイルを確認!>

 

チェインバーの全天球モニターには戦域突入支援艇の外部の映像が映し出されているがそこには恒星を背にグロテスクな花の様な外見をした全長40万キロの途方もない大きさを誇るブロサムセイルが映し出された。

それに挑むのは人類銀河同盟軍の全長数キロの大きさの航宙艦だ。

 

<ブロッサムセイル要塞特殊砲に急激なエネルギー増大を確認>

<艦砲射撃用意……撃てぇ!>

 

司令の命令でブロッサムセイルを確認した先方の突撃艦隊が一斉に加速重粒子砲を発射し無数の青白い閃光の針がブロッサムセイルのソーラーセイルの花弁に直撃し紅蓮の炎が次々と上がった。

 

<着弾を確認!目標の砲口部に命中!>

 

しかし、次の瞬間だった。

ブロッサムセイルの要塞特殊砲は一門がまだ撃てる状態であったようで次の瞬間にはその砲口から紫色の強力な閃光がはしりグレイザー(ビーム)が放たれ先方の突撃艦隊を容赦なく飲み込んだ。

宇宙空間に無数の爆発と衝撃波が発生する。

その一つ一つが先方の突撃艦隊の兵士達の叫びだった。

 

<先行艦列壊滅>

<残存艦艇も被害甚大>

<次弾撃てぇ!>

 

重苦しい報告にもかかわらず司令はすかさず指示を出し後続の艦隊から加速重粒子砲が一斉に放たれ仲間の仇だと言わんばかりにブロッサムセイルの要塞特殊砲の砲口を無力化した。

 

<後続の艦砲射撃……着弾!目標の砲口部を破壊!>

<敵要塞特殊砲全て沈黙>

<よし!ヘクサエレナ艦隊ディメンストリューム発射準備!>

 

ディメンストリューム、これは人類銀河同盟軍が開発した最新鋭兵器で女神級と呼ばれる6隻の特務艦が正6角形の陣形となり連携して空間の歪みの渦を発生させてそれを直接発射して敵にぶつけるという強力な兵器だ。

 

クーゲル<マシンキャリバー隊、出撃!>

 

クーゲル中佐の命令でレド達のマシンキャリバーが乗る戦域突入支援艇のハッチが開き格納されていたマシンキャリバー隊がビームファランクス砲とシールドを持ち続々と出撃し数百機ものマシンキャリバーが互いのシールドを接続、正方陣を幾重にも重ね幾何学模様を描いた陣形を展開する。

 

クーゲル<ヒディアーズの巣は、ホットジュピター型惑星の裏側直上に位置、恒星の高圧に支持された防衛プラットホーム、ブロッサムセイルに守られた難攻不落の要塞だ。恒星の強力な輻射熱により日向側からの接近はままららない惑星裏側より接近し巣を攻略する>

 

<ディメンストリューム発射!>

 

クーゲル中佐の説明が終わるのとほぼ同時にディメンストリュームが発射された。

ディメンストリュームは渦を巻きながらブロッサムセイルに直撃しディメンストリュームの次元断層がブロッサムセイルの忌まわしき花弁を引き千切り消滅させる。

そしてその背後にヒディアーズの巣が姿を現した。

 

クーゲル<裏側を堅固に守っているブロッサムセイルの要塞特殊砲を新兵器ディメンストリュームで無力化、巣を完全に露出させ攻略を可能とする。我々マシンキャリバー隊の任務は量子次元反応弾クローザーパスを巣に設置する部隊の護衛。阻害する全ての敵戦力を排除する事だ!>

 

クーゲル<第一砲列……撃て!>

 

陣形を組んだマシンキャリバー隊が一斉にビームファランクスを発射。

光の針が巣より侵入しようとするレドたちを迎撃しようと無数に現れたヒディアーズを次々と貫き蒸発させた。

 

だが、ヒディアーズもやられっぱなしではない。

マシンキャリバー隊の攻撃後、すぐにグレイザーを放ち反撃を開始し陣形を組んだマシンキャリバーを次々と破壊した。

 

ここはレドたちマシンキャリバー乗りがこれまで嫌というほど経験してきた戦い通りであり陣形はすぐさま接続を切り各機がちりじりになり攻撃を開始する。

 

ヒディアーズのグレイザーによる攻撃と喰らい着こうとする突進。

マシンキャリバーによるビームファランクスの攻撃。

 

両者のビームは一発でも命中すればそれでお終いとも言える威力だ。

 

互いの攻撃が無数の行きかう。

 

その光景を見ながらレドは考えた。

 

レド(最後に恐怖を感じたのはいつだろう?余計な事を捨て去る事で俺は兵士として完成した。成し遂げるべき勝利のありか。何もかもが明らかで迷う必要など一切ない。俺が求めるものの全てがここにある)

 

<クローザーパス設置部隊前進!ヒディアーズの巣に取り付け!>

<マルチコアキャノン部隊、攻撃態勢に接続>

 

後方のマルチコアキャノン部隊が二機のマシンキャリバーが一組となり大型のマルチコアキャノンを放ちクローザーパスの前に立ちふさがる母艦型ヒディアーズを粉砕する。

 

レドは直ぐ横の同じ隊の機体がヒディアーズのグレイザーによって破壊されても表情の一つも変えることなく集中し冷め切った表情でチェインバーを操縦。

距離をつめてきたヒディアーズをビームファランクス砲で攻撃、粉砕した。

 

だが、その時、レドの知っている戦場で異様な事が起きようとしていた。

そしてそれはその後のレドの同盟兵士としての運命を大きく変えるものだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???(そう……あなた達なのですね……)

 

レド「ん?」

 

突然、レドの耳に少女の声の様なものが聞こえた。

しかもそれは直ぐ耳元で聞こえるかのように、まるで頭の中に直接語りかけてきているように聞こえた。

レドは一瞬、空耳かと思ったが直ぐにそれは異常である事が分かった。

 

<今の声はなんだ?>

 

クーゲル隊のメンバーの誰かがそう呟いたのだ。

どうやらクーゲル隊のメンバーの機体の多くパイロットが先ほどの声を聞いたようだった。

 

<おい!あれはなんだ!?>

<人……なのか?>

<中佐!あれは一体……>

クーゲル<新種のヒディアーズ……なのか?>

 

クーゲル中佐もレドもその場にいたクーゲル隊の各機はその光景を見て驚愕した。

絶対零度の真空の宇宙空間に薄い白い衣を身にまとい長い銀髪の髪をなびかせ背中に大きな翼と思われる物をもつ少女が宇宙服も着ずに突然、クーゲル隊の進路の前に現れたのだ。

 

しかも少女の背後にはヒディアーズが迫ってきているのだが不思議な事にヒディアーズは少女を避けるように行動しグレイザーすら撃たないという奇怪な行動を見せた。

 

戦場が停止したのだ。

 

その異常な光景にこの場にいた兵士達は攻撃すら停止する。

 

???(あなた達に託すしかないのです)

 

また少女の声が頭に響いた。

 

レド「……託す?何を……」

 

レドはついそう呟いた。

すると少女はまるでレドが呟いた事に気がついたかの様に優しい目でレドのチェインバーを見つめた。

そして次の瞬間には少女はまるで瞬間移動でもしたかの様にチェインバーの目の前に現れその姿が全天球モニターに大きく映る。

 

レド「……っ!」

 

突然の事にレドは驚いたが少女の表情を見て困惑した。

少女は悲しげな目でチェインバーを……レドを見つめていたのだ。

 

???(ごめんなさい……)

 

少女がそう呟いた、その瞬間だった。

チェインバーのコックピットに警報が鳴り響いた。

 

チェンバー『警告。未知の空間歪曲現象を観測』

 

少女周辺の空間がまるで歪み、まるでワームホールが作り出されたかのように空間の歪みと漆黒の闇が少女を中心に広がりレドとチェインバーを飲み込んでいく。

 

レドは何が起きているのか分からなかった。

機体を動かそうとするが何故か操縦が効かない。

 

レド「うわあああああああああああああああああああ!?」

 

クーゲル<レド!?>

<回避だ!回避しろ!!>

<巻き込まれるぞ!!>

<全機緊急回避!空間の歪みに捕まるな!!クローザーパスを守れ!!>

 

レドの意識はそこで完全に途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は風を切って飛ぶのが好きだった。

ゴーグルの向こうの眼下には蒼い海原がどこまでもどこまでも広がっている。

彼女、ラロナは肩にかからない程度の長さの自身の紅い髪をかき上げた。

 

ラロナ「はっ!」

 

ラロナは15歳になったばかりにも関わらず慣れた手つきで手綱を操り彼女は晴れ渡った空を飛んでいる。

彼女が乗っているのは巨大な鳥だ。

 

アルゲンタビス、外見はハヤブサに似ていて知性もある程度備えている巨鳥だ。

竜と比べれば価格は安く世界中で軍や商業用に飼われている種だ。

一般では巨鳥と呼ばれ親しまれている。

人一人を乗せて長時間飛行していられるその体力はたいしたものだ。

 

ラロナはまーリースア南海連合王国の飛行軽甲戦士団の一人だ。

マリースア南海連合王国はデメテル大陸の一部と周囲に点在する島々を領土とする連合国家でラロナの母国だ。

ラロナは内陸部の出身だったが海が好きだったため、哨戒任務という地味な仕事も嫌ではなかった。

 

ラロナ「気持ちいな!テール!」

 

巨鳥の背中にまたがりながら相棒に話しかけキュエと甲高い鳴き声でテールと呼ばれた巨鳥が答える。

 

ラロナ「うんうん。そうだろー」

 

ラロナは笑いながら言った。

テールと入隊時から組んでいる為、鳴き声や表情からある程度この巨鳥が言っている事がラロナには分かるのだがこの能力のおかげで彼女は鳥騎手に選抜されていた。

 

マリースアは海洋国家だがデメテル大陸の国境には山脈が広がっていてそこの山岳民であるラロナは鳥と共に育った。

険しい山岳地帯では昔から重要な連絡手段として巨鳥は利用されていた。

しかもラロナにとって鳥は家族も同然の存在でありそれは10年前に紛争で家族を失った事が原因だった。

 

すると、ふと、ラロナの表情が険しくなった。

 

ラロナ「なんだろう……あれ?流れ星?」

 

ラロナが空を見上げるとはるか上空から流れ星の様なものがラロナの真上を通り過ぎるのが見えた。

様な物とはどこか普通の流れ星とは違って見えたからだ。

 

ラロナ「あの流れ星……王都にむかってない?」

 

流れ星は普通なら直ぐに消える。

だがその流れ星はいつまでたっても消えるそぶりを見せなかった。

そしてそれは真直ぐと王都の方向に落ちていった。

 

ラロナ「テール!王都が心配だ!直ぐに戻ろう!」

 

ラロナとテールは哨戒任務を中断して王都に引き返した。

 

マリースア南海連合王国の王都セイロード。

この街は城下町としても通う貿易都市としても活気に満ちた都市だ。

王都の沿岸部は大きな三日月形を描いており両側は岬となって2つの岬は高低差がありその一方の高い方に王城が作られていた。

王城は大陸横断経由でしか手に入らない白い大理石の城壁と5本の天を抜く斜塔、金や真珠などをふんだんと使った姿が印象的だった。

 

ラロナの駐屯地は対岸の王城を望める灯台の下にある。

ラロナは急いで戻ると駐屯地内は酷く混乱していた。

近くにいた同僚に聞くとついさっき王城に空から何かが落ちてきたとの話だった。

 

ラロナ「やっぱりあれが落ちたんだ……」

 

ラロナが王城の方角を見ると城の上空には王都守備隊のアルゲンタビスがほぼ全て飛び回りいつもよりも城の警戒が厳しくなっていた。

この時はまだ、ラロナも何が落ちてきたのか知る由も無かった。

そして、この一件がラロナの人生をも変えることだという事もこの時はまだ何も分からなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

めちゃくちゃに壊れ浅いクレーターと化した庭園の真ん中付近に金髪を二つに束ね褐色肌に薄い生地でできた南国風のドレスを纏い紅い瞳を持った少女が数人の大人たちを引き連れ空から落ちてきた〝それ〟を見つめていた。

 

少女はクレーターの中央に横たわるそれに近寄る。

少女の名はハミエーア。

このマリースアをすべる女王。

まだ彼女は13を超えていない年齢ではあったが彼女には女王の威厳があった。

 

ハミエーア「カルダよ……これは何じゃと思う?」

 

カルダ「一見すると人型のゴーレムの類のようにも見えますが……これはゴーレムではありません」

 

ハミエーアの質問に白い肌をした袖なしの通気性の良い軍服を着た草色の長髪を持つ妙齢の女性が答えた。

彼女、カルダは王都守備隊の戦士団長で王都守備隊は王都セイロードを守る為の軍団だ。

今回の事件でカルダはこの落下物の調査を命じられていた。

 

ハミエーア「ほう……それでは石像か何かか?」

 

カルダ「いえ……魔道士によるとこれは魔術によって作られたものではないようです。使われている材質も石ではありません。我々の知らない素材だそうです」

 

ハミエーア「要するに……これが何じゃかは分からぬという事じゃな?」

 

カルダ「……はい」

 

ハミエーア「そうか……ん?このゴーレムモドキ、良く見るとあちこちに見たことのない文字が書かれておるが……」

 

カルダ「そちらもまだ解読はできておりません……」

 

ハミエーア「全てが謎……というわけじゃの……」

 

カルダ「申し訳ございません」

 

ハミエーア「それにしても今日は不運続きじゃの……フィルブルグ帝国が宣戦布告したと思ったら……次は謎のゴーレムモドキか……」

 

カルダ「……申し訳ありません」

 

ハミエーア「よい。おぬしが悪いわけではない……それでこれは運び出させそうか?」

 

カルダ「まだ重さは分かりませんし大きさが大きさですので……すぐにとは……」

 

ハミエーアとカルダはクレーターと化した庭園に横たわるゴーレム?を見ながら「はぁ……」とため息をついたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェインバー『脳波計測、基礎律動異常なし』

 

レドのまだ意識がはっきりとしない頭にチェインバーの声が響いた。

 

レド「ん……」

 

チェインバー『レド少尉の覚醒を確認、蘇生成功。緊急プログラムに元づき貴官の生体機能を人工冬眠によって保管した。経過時間は26万6千815分、当機も全システムを凍結していたが外部刺激に伴い12分前に再起動した』

 

レド「半年も寝てたのか俺達!?」

 

どうやらあの空間の歪みに巻き込まれてからレドは半年間もの間、チェンバーの中で人工冬眠で眠っていた様だった。

 

チェインバー『事態はパイロットの状況判断を必要とするものである。よって貴官の覚醒プロセスを遂行した』

 

すると、チェインバーは幾つも開かれていたレドの脳波や心電図のウィンドウを閉じコックピットの全天球モニターを起動させ機外の映像を映し出した。

そしてその光景を見た瞬間、レドは目を見開き驚愕した。

 

レド「っ!?何だこれは!?」

 

機外の光景はレドの想像をはるかに超えるものだった。

そこに映っていたのは……何処までも広がる青い空、謎の人工物そしてチェンバーの周りに群がる妙な格好をした人間達だった。

 

レド「こ、こいつらは何者だ?何を喋っている?見たところは同じ人類の眷属の様だが……」

 

チェインバー『未知の言語である。当機を損壊しようとする意図が観察されるが実行手段がない模様』

 

外にいる者達はつるはし等の原始的な器具で同盟の技術の粋を結晶して作られたマシンキャリバーの装甲に挑んでいる。

 

チェンバー『極めて文明度の低い集団であると推測される』

 

レド「……放っておけ。この様子なら外装に傷一つつけられまい……それより……ここはどこなんだ?チェンバー」

 

チェンバー『貴官と当機は呼吸可能な大気を備えた惑星の地表に居るものと推測される』

 

レド「そんな……馬鹿な……」

 

宇宙で暮らしていたレドにとって空気や水は貴重な資源である。

同盟ではコロニー以外での空気も水も配給という形でまかなわれている。

そんな環境で暮らしていたレドは今、自分が置かれている状況を把握することはできなかった。

 

チェインバー『観測可能な天体を照合検索したが類似する惑星は確認できない』

 

レド「……つまり、ここは」

 

チェインバー『未知の惑星である』

 

レド「じゃ、じゃあなぜ未知の惑星に人類が住んでいるんだ……?」

 

チェインバー『不明』

 

レド「はぁ……座標はどうだ?」

 

レドはため息をつき気を落ち着けてからチェインバーに聞いた。

コミュニケーターから銀河系のホログラムが投影されチェインバーが説明した。

 

チェインバー『座標の特定は不可能。計測基準点を喪失している』

 

レド「何?」

 

レドはチェインバーの答えに眉を細めた。

 

チェインバー『推測、当機は先の戦闘中に未知の空間の歪みに飲み込まれた後、この惑星の衛星軌道上の通常空間に同期し26万6千803分間の惑星の周回後、この地点に落下したものと思われる』

 

レド「なんてこった……」

 

レドはチェインバーの報告を受けて頭を抱えたくなった。

チェインバーの言いたい事はこうだ。

つまりレドとチェンバーはこの広大な宇宙のでたらめな場所に放り出されたという事なのだ。

 

チェンバー『救難信号を発信しつつ貴官の人工冬眠を継続していたが事態は静観しがたい方向に推移しつつある。方針を検討されたし』

 

レド「そうは言ってもな……見た目は人類の眷属の様だが……連中の正体が分からない内は決めようがない。とにかく状況の確認が必要だ。外の様子を調べたい所だが……」

 

 




私を知っている人はお前『クーゲルのガルガンティア』書かかずに何やってんだよ!
と言いたい人も多いと思います……。
ですが、完全にいいわけですがスランプから未だに抜ける事が出来ていないのです……。
そこで、お待たせしている皆様にはお詫びの気持ちをこめてこの短編を贈らせていただきます。


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翠星のマリースア【中】アルゲンタビスの夜明け

  
みなさま、本日はいかがお過ごしですか?
お正月という事で初詣はもうすんだでしょうか?
本日は寒の入りという事で寒いですが風邪を引かないように今年一年も元気でいきましょう!
 
もしかしたら過去の私みたいに1月1日にノロウイルスにかかって苦痛を味わってしまった人もいるかもしれませんが……今年も元気に頑張っていきましょう!
 
それでは中篇をどうぞ!
 


     

レド「ようやく静かになったな……」

 

レドは若干疲れるように全天球モニターに目を向けながらそう言った。

全天球モニターには外の様子が映し出されているが恒星の光はすっかりと沈みきり夜になっていたがその夜も遅くなり周囲にはもう見張りの人間もかなり少なくなっていた。

 

レド「これぐらいの人数ならば何とかなるだろう……チョインバー行くぞ」

 

チェインバー『了解。少尉の身に危険が及ぶと判断した場合には当機は速やかに援護に入る』

 

レド「ああ……だが、よっぽどでない限りは呼ぶまで来るな」

 

プシューという空気が抜けるような音を立ててチェインバーの頭の部分に設置されているコックピットのハッチがゆっくりと開いた。

レドはコミュニケーターを台座から手に取りパイロットスーツの首元に装着しレドを乗せたシートがアームによって機外の方向に伸びレドを安全に外に出した。

接合部がはずれレドが石で作られた床に下り立つ。

 

レド「重力はきっかり1Gか……空気はどうだ?」

 

チェインバー『主成分は窒素、酸素、二酸化炭素、生存に理想的な比率。また、微細成分もあるが有害物質は検出されず』

 

レド「呼吸可能な空気なら吸っておこう。手持ちの空気は温存したいからな……」

 

レドはそう言うと頭のバイザーを上げると深呼吸をした。

 

レド「不思議な匂いだな……」

 

深呼吸をした簡単な感想を述べるとレドは周囲を見渡した。

 

レド「チェインバー……それにしても先ほどからずっと思っていたんだが、ここの文明は未発達過ぎないか?」

 

チェインバー『同意する。確認できる範囲だがこの惑星の文明は非常に原始的である。しかし、現地住民に見つからないように留意されたし』

 

レド「ああ、分かってる……さて、まずはどうするかだが…………っ!?」

 

レドがチェインバーに答えているとレドはふと城の方を見て咄嗟にチェインバーの影に隠れた。

警戒するレドの視線の先には何らかの施設の入り口らしき場所が見える。

そして、その入り口らしき場所から漏れている施設の灯りに二つの影が現れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜遅く、城の庭園に出てくる二人の少女の姿があった。

 

一人は背が高い草色の髪色をした女性でもう一人は褐色肌の少女。

ハミエーアとカルダだ。

二人はなにやら話している様子で、城から出てくると二人はそのまま壊れた庭園の真ん中に横たわるゴーレムモドキを見ながらゆっくりと近づいていた。

 

カルダ「陛下、明日でもよろしかったのではないですか?この様な夜分遅くに無理をされてはお体に触ります」

 

ハミエーア「昼間は忙しいからのう。それに夜ならば誰かに聞かれることもあるまい」

 

カルダ「わかりました……それで、私に何の用でしょうか?」

 

ハミエーア「他でもない。フィルブルグ継承帝国の事だ」

 

デメテル大陸にあるマリースアは海を挟んだ向こう側にあるルールイエ大陸に近いため敵の侵攻ルートになる重要な地域だ。

〝フィルブルグ継承帝国〟2ヶ月前に神聖プロミニア帝国と呼ばれる大国を滅ぼした国だ。

ルールイエ大陸を僅か五年で支配し次はこのデメテル大陸を狙っているマリースアの敵対国家である。

継承とつくのは自らがこの世界の継承者である事を強調する為のものだ。

そんな国がつい先日、到底受け入れられない条件を突きつけこの国に宣戦布告をしてきていた。

 

ハミエーア「フィルブルグ帝国の最後通牒にはこの国の収入の大半を帝国へ献上……妾や国の重鎮の家族を帝都アガルタに住まわせる事……そして戦時における兵力供与の義務まで要求されておる……」

 

カルダ「そ、そのようなふざけた要求を呑む必要はございません!」

 

カルダが荒い声を上げる。

 

ハミエーア「……妾もこの様な要求を呑むつもりはない……しかし、このままではこの国は滅ぶ……」

 

カルダ「……」

 

ハミエーア「何か策はないものかと思ってな……」

 

ハミエーアがため息をつく。

すると、その時だった。

 

カルダ「……っ」

 

カルダがゴーレムの方を睨みつけた。

 

ハミエーア「どうした?カルダよ」

 

カルダ「……誰かいます」

 

ハミエーア「何?」

 

カルダ「陛下、お下がり下さい」

 

ハミエーア「う、うむ」

 

カルダが目を吊り上げ腰の剣に手を伸ばす。

しかし、その時だった。

ハミエーアがカルダの警告で下がろうとしたその瞬間。

 

ハミエーア「うわっ!?」

 

突き飛ばされる衝撃の後、気がつくとハミエーアは自身が何者かに羽交い絞めにされていた。

ハミエーアが後ろを見ると自身を羽交い絞めしていたのは銀髪の紫色の瞳の少年だった

 

カルダ「陛下!?」

 

カルダが声を上げる。

ここまで僅か数秒間だ。

 

カルダ「貴様!陛下に何をする!?」

 

カルダはすかさず腰の剣を引き抜き襲い掛かろうとする。

だがカルダは動けなくなった。

目の前には身体をピッタリと包むような黒い奇妙な服を着た銀髪で異常に肌の白い15か16歳くらいの少年がその手に奇妙な形状をした謎の道具を持ちその道具をカルダに向けていたからだ。

 

???「エンフィネイエフェッファウ!(武器を捨てろ!)」

 

カルダは謎の少年が言った事を理解する事ができずに唖然とした。

聴いたことのない言語だった。

 

カルダ「な、何を言っている!?」

 

ハミエーア「貴様何者じゃ!?まさか……帝国の手の者か!?」

 

ハミエーアも抵抗をするが腕をガッチリと押さえつけられている為、身動きが取れない。

完全に人質だ。

 

カルダ「くっおのれ!陛下を人質に取るとは!」

 

???「エンイガウバチス!(おとなしくしろ!)」

 

カルダ「くっそおおおお!」

 

カルダはそう言うと剣を振り上げると少年からハミエーアを救い出す為に少年に向かっていく。

 

???「っ!」

 

少年はカルダの足元にめがけて手に持っていた謎の道具の引き金を引いた。

するとその道具の先端から青白い光線が放たれカルダの足元の地面をうねる様になぞり地面を溶かした。

カルダは突然の事に足を止めると攻撃を避けるために後方へとジャンプをし少年から距離をとった。

 

ハミエーア「うわあっ!?」

 

カルダが距離をとったその直後、謎の少年はハミエーアの体を空中に放り上げ肩に担ぐ。

そして、少年は人を担いでいるとは思えないような身軽な速度で走り出しハミエーアとカルダが出てきた城の出入り口の方に向かった。

 

カルダ「しまった!?待って!!」

 

カルダは走り出した少年を追いかける。

 

ハミエーア「目的は何じゃ!?妾か!?」

 

ハミエーアは少年に向かって声を張り上げる。

一方のカルダは城の中を少年を追いかけながら大きな声を出した。

 

カルダ「陛下がさらわれた!急いで陛下をお救いしろ!寝ている者はたたき起こせ!」

 

この声によって城の各所にいた衛兵達が動き始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やけに肌が褐色の少女を抱えたままレドは通路を走っていた。

レドにはこの建物が何の施設かは分からなかったが先ほどの草色の髪色の女が声を上げてから施設内が騒がしくなってきていた。

どうやら女が事態を知らせたようだ。

 

チェインバー『貴官の行動に論理性を見出せない』

 

レド「仕方ないだろ!あの様子では間違いなく俺の位置がバレていた!それに、人質を取ればとりあえずは攻撃はしてこない…………と良いんだがな」

 

ハミエーア「(放せ!放せ!)」

 

人質の少女は何かを騒いでいるがレドはそれを無視してチェインバーに命令をした。

 

レド「チェインバー、ここの構造を解析しろ。勢いで入ってしまったが……出口を探し出すんだ。それにまだろくに調べてもいないのに、ここでお前を稼動させるわけにはいかない」

 

チェインバー『了解、映像を記録し解析する。可能な限り広範囲に移動されたし』

 

レドは施設内を走り回る。

階段を上り廊下を走り刃物で武装した者達に挟まれた時には驚異的なバランス力でベランダの細い手すりの上を走り原住民達を翻弄する。

そのまま走っているとチェインバーからの通信が入る。

 

チェインバー『映像による解析の結果、現時点において当該施設はその構成素材の90%以上が岩石物質で構成されている』

 

レド「石の塊だって言うのか!?」

 

チェインバー『肯定する。全体的な岩石自体の強度は高いと推測されるが問題が多数あり極めて脆弱な施設である』

 

レド「確かに人の住む場所にしては到底信じられないな……こいつら……もしかして科学技術文明が未発達なのか?」

 

レドはここに来てから考えていた事をチェインバーに聞く。

 

チェインバー『現状の解析結果からはその可能性は高い』

 

レド「なんて星に来たんだ……」

 

レドはチェインバーの解析結果に先が思いやられた。

 

ハミエーア「(おのれ!放せ!)」

 

人質の少女はずっと訳の分からない謎の言葉で叫び暴れている。

 

レド「こいつ等の言葉、まだ分からないのか!?」

 

チェインバー『解析新直立は推定40%より多くの語尾のサンプルが必要』

 

レド「そういうわけだ、もっといろいろ喋ってくれ」

 

そういいつつレドは少女の尻をレイガンで軽く叩く。

 

ハミエーア「はっ!?」

 

息を呑んだ後、ハミエーアは顔を赤らめる。

 

ハミエーア「(貴様、それが目的かー!?)」

 

するとその直後、この施設の警備と思われる刃物を持った兵士達がレドの前方の行く手をさえぎった。

後ろを見るが後ろからは草色の女が率いる兵士達が迫ってきている。

前方の通路がふさがった事でレドはとっさに近くの横に入る事ができる通路に曲がり入った。

だが、レドはこの時知らなかったが実はレドはこの施設の兵士達に進路を誘導されておりレドの行く手にあるのはこの施設の上層部にあたるハミエーアの部屋だった。

つまりは王の間だ。

レドはその広い部屋を走るととっさに外の景色が見える広いテラスの方に出る。

テラスからは恒星の日の明かりが昇り始め周囲を照らしていた。

 

レドはテラスの中間あたりまで勢いで走るが、自分の目の前に広がる広大な景色を見た瞬間、唖然とし足を止めた。

 

レド「こ、これは……」

 

少女はレドの異変に気がついた。

逆さまのままだったが少女は少年の表情を少しだが見る事ができた。

 

レドは今まで見た事のない光景に声が出なかったのだ。

目の前には視界を埋め尽くす膨大な液体の水、そして塩の混じった独特の匂い。

普段レドが宇宙で見る暴力的な恒星とは違う暖かい恒星のきらめき。

そして、恒星の光をバックに人を乗せ優雅に空を飛ぶ大きな鳥。

レドは鳥の背中に赤毛の少女の姿を見た気がした……。

 

レド「これが……これが居住可能な惑星……なのか」

 

レドがその光景に目を奪われ一瞬力を抜く。

 

するとその隙を見たハミエーアは一か八か体に力を入れ一気にレドを突き飛ばして脱出を試みた。

レドはバランスを崩し少女を腕の中から放す。

そして少女は急ぎ足でレドから逃れた。

 

レド「っ!しまった……!」

 

レドがもう一度少女を捕まえようと後ろを振り向く。

だがすでに時は遅しだった。

レドが振り向くとそこには草色の髪の女や他の刃物を持った屈強な男達がテラスの入り口を完全にかためていた。

 

カルダ「(諦めろ!お前の負けだ!)」

 

草色の髪女が剣をレドの方に向ける。

 

完全に袋のネズミだった。

 

レド「仕方ない……チェインバー!」

 

レドがチェインバーの名前を声高く呼んだ。

その瞬間、庭園に横たわっていたチェインバーの目が翠色の光を光らせる。

そして、フローターを作動、周囲に起動音を響かせてフローターに自らを牽引させてチェインバーが飛び立ったのだ。

 

建造物よりも高く飛び上がったチェインバーはその後、空中で回転しながら姿勢を戻し落下速度よりも速い速度でレドのいるテラスの直ぐ後ろの空中に降着する。

その衝撃波によって周囲に突風が吹く。

原住民達はそのチェインバーの光景を驚愕の様子で見ていた。

 

 

 

カルダ「な……何だ……あれは……」

 

カルダが自身の目の前で起きている光景に理解できないという声を上げる。

恐らくそれは今この場にいる周囲の者達もそうだ。

 

カルダの隣では少年から自力で逃げてきたハミエーアが目を見開き普段は滅多に見せない驚愕の表情を浮かべている。

 

なんと、少年が何かを叫んだ瞬間。

周囲に聴いたこともないような異様な音が鳴り響き庭園の方から何か大きな物体が飛び上がったかと思うとハミエーアやカルダたちの目の前に、厳密には少年の直ぐ後ろに降りてきたのだ。

そしてそれはハミエーアやカルダたちを見下ろすようにテラスのすぐ向こう側に浮かんでいる。

 

一体何が飛んできたのか。

 

それはあの庭園に落ちてきた謎のゴーレムモドキだったのだ。

あの謎のゴーレムモドキが目を含めた体の各所を翠色や青い色の光を光らせ頭の上にまるで天使の輪の様な光のリングを光らせ空中を浮遊していたのだ。

 

あまりの出来事にあっけにとられていたカルダだったがすぐに周りの兵士に指示を出した。

 

突如、浮遊を開始したゴーレムモドキ……チェインバーの周りに弓矢やバリスタ等で武装した兵士達を招集する。

 

その様子を見ていたチェインバーは状況を危険と判断しレドを守るようにゆっくりと浮上しレドの前に着地した。

 

チェインバー『状況の危険度は167%増大、先制攻撃を提言する』

 

レド「待てチェインバー、翻訳可能な言葉で敵意がない事を伝えろ」

 

 

 

チェインバー『攻撃ヲ、ヤメロ』

 

兵士「しゃ、しゃべってぞ!?」

 

兵士「喋るゴーレムなんて聞いた事ねぇぞ!?」

 

チェインバーの声を聞いた兵士達から動揺が広がる。

レドは何を言っているのか分からなかったが文明度から考えて恐らく喋ったぞ!とか言っているのだろうと思った。

 

チェインバー『コチラ、敵意否定、武器ヲ、オサメルヲ、望ム』

 

その場にいる誰もが目の前の喋るゴーレムモドキに息を呑み兵士達に更なる動揺が広がる。

だが、そんな中ハミエーアはレドとチェインバーを見てある考えが思い浮かんだ。

 

ハミエーア「まさか……このゴーレムモドキはこやつの物なのか?」

 

すると、兵士達の中からカルダが一歩を踏み出してレドとチェインバーの前に対峙した。

そのカルダの頬には緊張からか変な汗が一滴流れる。

 

カルダ「私はマリースア南海連合王国軍、王都守備隊の戦士団長カルダだ!お前は何者だ!」

 

レド「奴は何を言っている?」

 

チェインバー『貴官の姓名、所属の提示を求めている』

 

レド「了解した」

 

レドはそう言うとチェインバーの影から出てカルダに向かって答えた。

 

レド「フェアウイング、スティニバー、インエ、ヒディアーズ、レファ、チェインバー、トアンティリウ、レド」

 

レドが同盟語で話すとチェインバーがそれを現状可能な限り翻訳する。

 

チェインバー『対ヒディアーズ殲滅兵器、チェインバー操縦者、レド少尉』

 

ハミエーア「レド……」

 

カルダは殲滅兵器という言葉に目を吊り上げる。

 

カルダ「殲滅兵器……ヒディアーズとは何だ!」

 

チェインバー『敵、人類の敵、共存不可能、貴君らは人類同胞、同盟に参集セヨ。対話を要求する指揮官は誰か』

 

すると、チェインバーの答えにハミエーアは大きな違和感を覚えた。

 

ハミエーア(こやつら……まさか妾の正体に気がついていない?……いや、そもそも妾の事を知らないのか?)

 

カルダ「武器を捨てろ!ゴーレムに隠れている者も降りろ!」

 

チェインバーがカルダの言った事を翻訳してレドにコミュニケーターのホログラムを利用して翻訳内容を同盟文字で表示し伝える。

 

レド「何を言っている?」

 

チェインバー『不明』

 

そしてチェインバーが現地語で彼らに伝えた。

 

チェインバー『当機に隠れている者はいない。当機は無人である』

 

カルダ「どういう事……」

 

カルダは困惑した表情を浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルダ「ハミエーア様、どう思われますか?」

 

ハミエーアはカルダや数名の側近を連れてあのチェインバーと自らを名乗ったゴーレムモドキとレドと名乗った少年の様子が見える別のテラスでレドの処遇について話し合っていた。

 

ハミエーア「うむ……」

 

側近「今すぐ倒すべきだ!ハミエーア女王陛下にまで手を出したのだぞ!?」

 

カルダ「恐れながら陛下、私もそう思います。陛下、あの少年は帝国の手の者の可能性もあります」

 

ハミエーア「……して、あの者とゴーレム……何の様があって現れたと判断するのじゃカルダよ?」

 

カルダ「恐れ多くも申し上げます陛下」

 

カルダは困った表情でハミエーアの質問に答えた。

 

カルダ「見た事も聞いた事もない空飛ぶゴーレムと魔法を使う以外、まったく見当もつかないというのが本音でございます……」

 

ハミエーアは顔を扇いでいた扇子をたたむ。

 

ハミエーア「ならば、やる事は決まっておる。まずはヤツの正体を暴く事じゃ……妾はヤツともう一度、会って話してみようと考えておる」

 

ハミエーアのその発言に周りがざわめき始めた。

 

側近「陛下自らあの正体不明の者とですか!?」

 

側近「それはなりません陛下!」

 

慌てる側近達にハミエーアは、済ました顔で答える。

 

ハミエーア「なぜじゃ?奴は自分から敵ではないと言っておるのじゃろ?敵ではない者と客人として話すことがおかしいとは妾には思えぬが?まぁ、多少物騒な客人ではあるがの」

 

側近「しかし……あやつはあの得体の知れないゴーレムを持っているのですぞ陛下!」

 

ハミエーア「そうか……つまり御主らはあの者達が敵ではないと語り妾の命を狙おうとした場合、妾を守る事はできぬと申すのじゃな?妾はそんな者達を側においたつもりはないのじゃがのう」

 

側近「…………」

 

側近「…………」

 

誰もハミエーアに言い返すことは出来なかった。

ハミエーアは真剣な表情で皆に語りかける。

 

ハミエーア「よいか?フィルブルグ帝国が敵にまわったのじゃ。プロミアも滅び今、この国には危機が迫ってきておる。正体不明でも良い……敵で無い事を確かめる事が重要なのじゃ。この国には今、少しでも味方が必要じゃ。フィルブルグ帝国には竜までもが戦力として存在しているのじゃ。残念じゃが今の戦力ではフィルブルグ帝国にはとてもかなわん。しかも隣国と足並みがそろわぬ今攻め込まれたら……」

 

ハミエーアはテラスに立てこもるチェインバーを見つめた。

 

ハミエーア「この国は滅ぶ……街は焼かれ民は奴隷にされるじゃろう……じゃが、お主らも見たものはおるじゃろう?あのゴーレムモドキが天高く舞い空を飛ぶ姿を……しかもあのゴーレムは空高く何処からか落ちてきても傷一つつかなかった程の強靭な体を持っている。その空飛ぶゴーレムを味方につけることができれば少しくらいの時間稼ぎくらいにはなるかもしれん」

 

側近「…………」

 

側近「…………」

 

カルダ「…………」

 

ハミエーア(たかがゴーレムごときに今の状況を打開できるとは思えぬが……もし味方につけられれば少しくらいは儲け物になるじゃろう……)

 

ハミエーアはそう心の中で思うとあのレドと名乗った自分を人質にした少年の表情を思い出した。

 

ハミエーア(それにあの顔……嘘をついている人間の顔とは思えんな……)

 

 



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翠星のマリースア【下】翠星のマリースア

 

ハミエーアたちが話し合っている頃、テラスの上のレドは刃物で武装した兵士達に囲まれながらもチェインバーの足にもたれかかる格好で時が過ぎるのにただ身をゆだねていた。

特に意味はないがヒディアーズの爪をレイガンの出力を絞って削っていく。

 

チェインバー『貴官の行動に論理性を見出せない。膠着状態を維持する理由を問う。当機は現状の打破に必要充分な兵装を有している』

 

レド「今はこれが最善だ」

 

チェインバー『有意提言、1武装勢力を圧倒し制圧する、2中枢を制圧し反抗を封じる』

 

レド「チェインバー、現状の最優先事項は友軍との連絡、現在位置の確認だ」

 

レド「お前が解析不能ならここの連中の歴史資料に期待するのも手だ」

 

チェインバー『条件付き同意する』

 

レドはテラスの向こう側に広がる海を眺める。

 

レド「……重要なのはこの星が惑星として生きている事だ。居住可能な惑星の確保は同盟のひがんだ。これだけの豊富な水と空気……ここは、アヴァロンに変わる新たな拠点になるかもしれない」

 

チェインバー『提言、貴官の職域を超えた判断だと推察する』

 

レド「フッ……そうだな」

 

レドは軽く笑って答えた。

 

レド「同盟との連絡はどうだ?」

 

チェインバー『救難発進を続けているが未だ応答はない。このまま単独での作戦行動を続ければ必要な兵站を得られず貴官の新陳代謝に支障をきたす。有意提言3この状況を脱し人工冬眠に戻る事も考慮すべきである』

 

レド「…………」

 

レドはチェインバーの質問には答えなかった。

 

レド「……ここは、生活物資が豊富で原住民の脅威度も低い。協力関係を探るのが得策だと思う」

 

チェインバー『条件付き同意する』

 

レド「そういえば……チェインバー、滑落した装備の探索の方はどうなっている?」

 

レドは思い出したように言った。

滑落した装備とはそのままの意味でチェインバーの再起動時には行方不明になった装備の事だ。

 

チェインバー『既に滑落した装備については落下地点の算出はある程度、完了している』

 

そう言うとチェインバーはコミュニケーターでホログラムを表示した。

ホログラムにはこの惑星の衛星軌道が映し出されチェインバーの軌跡を現した白いラインが惑星の衛星軌道を何回天か周回を行いそして、白いラインが衛星軌道から惑星へと落ちていく。

白いラインが落ちた地点を中心に半径十数キロの範囲が円で囲まれた。

そしてホログラムにチェインバーがブロッサムセイルとの戦闘時に装備が映し出された。

 

チェインバー『外部兵装であるビームファランクス及びシールドは当機の落下地点からおよそ半径18キロ圏内に落下しているものと推測される』

 

レド「そうか……まぁ、そっちの捜索は余裕ができた時だな」

 

レドは城の兵士達の方を見る。

 

レド(戦線……友軍……そんな単語はもしかしたらこの星に暮らす人々には関係ないのかもしれない……ヒディアーズとの死闘はこことは無縁なのか……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レドとチェインバーが朝からこのテラスに篭城を開始して数時間がたち恒星の光もすっかり上方に上り時刻はマリースアの時間でいう正午をまわっていた。

レドは相変わらずチェインバーのかかとの部分に背中をつけヒディアーズの爪を削っている。

すると、ついに状況に異変が起きた。

 

チェインバー『接近者あり』

 

レドはすぐにヒディアーズの爪をポケットにしまいレイガンをショックモードに切り替え機体の影から様子を伺った。

すると、チェインバーを包囲している兵士達の中から先ほど人質としてとった褐色肌の少女とカルダと名を名乗った人物が前に進み出てきた。

レドは警戒態勢を取る。

 

チェインバー『交渉を任とする特使の可能性もある』

 

レド「特使?子供だぞ?」

 

チェインバー『迎撃するか』

 

レド「いや、必要ない。だが、何かあったときはすぐに援護しろ」

 

チェインバー『了解』

 

そう言うとレドはチェインバーの影から出て少女らの前に立った。

レドと褐色肌の少女とカルダは若干チェインバーよりでテラスの中ほどで向かい合った。

 

レド「チェインバー、目的を問いただせ」

 

チェインバー『(来訪の目的は何か)』

 

チェインバーが現地語で問いかける。

 

カルダ「(陛下がお前達と話したいと言っておられる!)」

 

チェインバー『対話を要求している』

 

レド「よし……ん?ちょっと待てチェインバー、陛下とは誰なんだ?」

 

チェインバー『(陛下とは誰か)』

 

チェインバーの質問に褐色肌の少女、ハミエーアが一歩を踏み出して口を開いた。

 

ハミエーア「妾の事じゃ」

 

チェインバー『貴君は何者か』

 

ハミエーア「妾はハミエーア、この国、マリースア南海王国連合の王であるぞ」

 

レドは翻訳テキストを見て首を傾げる。

 

レド「チェインバー、やつは何を言っている?それにオウとは何だ?」

 

チェインバー『一種の独裁政治体制である。彼らのこれまでの言動から推測するに彼女はこの地域一帯の政治、軍事を統括している人物の可能性が高い』

 

レド「こんな子供がか!?」

 

レドはチェインバーの推測に驚愕する。

何故ならレドの目には明らかに今、ハミエーアと名乗った少女は自分よりも明らかに年下に見えていたからだ。

一方、そんなレドの様子を見ていたハミエーアは苦笑いを浮かべる。

 

ハミエーア「(なんだか失礼な事を言われている気がするが……まぁよい。お主らは何処から来たのじゃ?そのゴーレムはお主の持ち物なのか?)」

 

チェインバー『貴官がどこから来たのか尋ねている。また、当機が貴官の物かと聞いている』

 

レドはチェインバーの事はともかく何処から来たのかという質問にどう説明したものかと言葉に詰まった。

とりあえずレドは片腕を伸ばすと人差し指を立てて空を指差した。

ハミエーアはそれにあわせて空を見上げた。

 

ハミエーア「……空?」

 

ハミエーアはその時、何故か胸が高鳴るのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハミエーア「……では……お主らは、そのヒディアーズとか言う化物と戦う戦士という訳じゃな?」

 

チェインバー『そうだ』

 

3人が話し始めて3時間がたとうとしていた。

ハミエーアはレドに幾つも質問を繰り返しチェインバーの翻訳で会話を続けていた。

 

レドとチェインバーの話は聞けば聞くほどむちゃくちゃな話だった。

レドは人類銀河同盟とか言う国の戦士でチェインバーはその銀河同盟が長きに渡って戦っているヒディアーズとか言う化け物と戦う為の武器らしいのだ。

レドは仲間達と沢山のチェインバーの様なゴーレムと共に天の海を進む船に乗って戦っている途中に翼の生えた謎の少女が起こした謎の現象に巻き込まれてこの星に流れ着いたらしい。

 

正直言ってハミエーアはこの話をむちゃくちゅな話だと思った。

普通ならばとても信用できる話ではない。

だが、レドの話の筋は通っており何よりも……。

 

ハミエーアとカルダはレドの胸元から光るホログラムの映像を見ていた。

 

レドは同盟と比べて文明度の劣るハミエーアとカルダにも分かりやすく説明するようにホログラムを使って分かりやすく図や三次元マップを駆使して説明していたのだ。

ハミエーアとカルダはこの様な魔法は見たことも聞いた事もなかった。

 

ホログラムに映し出されているのはレドがここに来るまでの経緯を簡単に動画として動く図で紹介した物だった。

 

ハミエーアとカルダは口には出さないが圧倒されていた。

このレドという少年とチェインバーに。

 

そこでハミエーアは本題に入る事にした。

 

ハミエーア「天の海……そのウチュウ?とやらで戦うのならもちろん強いのじゃな?」

 

チェインバー『超、つよい』

 

ハミエーア「……一応もう一度確認させてくれ。お主らはフィルボルグ継承帝国とは一切関係ないのだな?」

 

チェインバー『肯定、レド少尉と当機の所属は人類銀河同盟でありフィルボルグ継承帝国なる組織とは一切関係ない』

 

ハミエーアはカルダの方を見る。

 

ハミエーア「カルダよ、やはりこの者達は帝国の者ではないようじゃな」

 

カルダ「はぁ……それはそうかも知れませんが……」

 

ハミエーア「そもそも、妾がこうして無防備で目の前におるというのに、ここで話し始めてからかなりの時がたったが何の敵意もこの者達は見せぬ。少なくとも今は我らが手を出さぬ限り敵ではないと思う」

 

チェインバー『貴君の認識に同意する』

 

カルダはまだ疑っているようだがハミエーアには彼らが言う事の全てがデタラメには思えなかった。

 

すると、ハミエーアは少し思う事がありチェインバーを見上げた。

 

ハミエーア「そう言えば……お主は言葉がどんどん上手くなるの。通訳も大変じゃろうが顔ぐらい見せたらどうじゃ?」

 

チェインバー『顔を見せろとは何か?』

 

ハミエーア「中に人が居るのじゃろ?」

 

チェインバー『中に人などいない』

 

ハミエーア「……?」

 

するとチェインバーがレドの指示でコックピットを開きハミエーア達を左手に乗せ自分の頭の側に持っていった。

そしてチェインバーのコックピットの中を覗いたハミエーアとカルダは仰天した。

 

ハミエーア「本当じゃ……誰もおらぬな……魔術か?」

 

カルダ「私もそうとしか……」

 

ハミエーアもカルダもてっきりゴーレムのどこかに人が隠れていてレドの通訳をしているのかと思っていたのだ。

 

チェインバー『私はパイロット支援啓発インターフェイスシステム』

 

ハミエーア「パイロットシエン……」

 

カルダ「システム……?新しい魔術か何かか?」

 

二人が理解していないと分かるとレドは助け舟の説明をする。

 

レド「チェインバー、チェリストカンエイド、プフカム、ネイエティズターベンレ、ジッターウン……」

 

チェインバー『チェインバーは戦闘、生命維持を支援する人工知能だ。簡略化し説明すると喋る機械である』

 

カルダ「機械!?風車や船と同じ物だというのか!?」

 

ハミエーア「ふっ……ますますおぬしらに興味が出てきたぞ」

 

二人がレドとこんな事を話していると後ろの方では兵士達が「陛下!こいつらきっと帝国軍の暗魔兵団だ!」「騙されちゃいけません!」と声を上げている。

 

するとそんな時だった。

 

チェインバー『海上より多数の飛行物体が接近中』

 

突然、レドに向かってチェインバーが報告してきた。

その報告にレドはレイガンをいつでも撃てる状態にして警戒した様子で海上の方を見た。

 

ハミエーア「(どうしたのじゃ?)」

 

レドの異変にハミエーアが気がつく。

 

レド「確かめろ!」

 

チェインバー『海上に多数の大型鳥類種の集団を確認。多くは当機の周辺を飛行している大型鳥類と類似している。また、搭乗者も確認』

 

レド「大型鳥類種?あれの事か……」

 

レドは頭の上を飛んでいるマリースア軍のアルゲンタビスを見た。

 

レド「生物に乗っているという事は……恐らくこいつ等の仲間だろう」

 

レドは人が生物に乗るという行為が理解できていなかった。

その為、原住民であるハミエーアの手の者と考えてた。

ハーミエアはレドの見た方向を眺めたが特に何も異常は見られない。

それもその筈、チェインバーは自身に搭載されているセンサーに反応があった事をレドに伝えたのであって人間の目で目視できる距離とは限らないのだ。

 

その後、レドは大型鳥類種の接近に関しては特に何も思わずハミエーアとカルダの質問に答えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異常事態はすぐにやってきた。

 

今までレドに対して好奇心からか質問をしていたハミエーアとカルダがふと海の方向を見てその方向に釘付けになる。

 

レドは二人の顔を見た。

 

すると、ハミエーアとカルダは海の方角を見て驚愕していた。

 

ハミエーア「馬鹿な!早すぎる!宣戦布告してきてからまだ2日だぞ!?」

 

カルダ「帝国軍!!」

 

ハミエーアとカルダは突然、驚愕し戦慄した声を上げる。

それに対してレドは二人の豹変振りに異常を察してチェインバーを通して質問させた。

 

チェインバー『テイコクグンとは何か』

 

チェインバーがハミエーアとカルダに問いかける。

 

ハミエーア「敵じゃ!フィルボルグ継承帝国の軍勢がこの国に攻めてきたのじゃ!!」

 

ハミエーアがそう言ったその時だった。

 

突如として襲来した帝国軍の第一陣が城下町と城の上空に到達した。

大型鳥類は一斉に急降下攻撃を仕掛けてくる。

そしてハミエーアが驚いた事にその一団にはアルゲンタビスだけでなく黒い鱗を纏った巨大な生物が複数含まれていた。

 

レド「チェインバー!何が起きている!?」

 

レドはあまりにも突然の事態にすぐにチェインバーに状況の確認を求めた。

そしてレドは攻撃を仕掛けてきている黒い鱗を纏った大型生物を見た。

その姿はレドがまだ小さい頃に幼年学校で読んだ地球時代の神話の登場する竜そっくりだった。

 

キヤシャアアアアアアアアアアアアア!!

 

襲来してきた竜は旋回をしながら城壁の上から弓矢で応戦するマリースアの兵士達を口から吐いた炎で簡単になぎ払う。

その焦げた匂いが照らすまで漂ってきた。

 

ハミエーア「こんな小国を相手に竜騎士団を投入したというのか!?」

 

カルダ「陛下!あれは黒竜です!急いで避難を」

 

カルダがハミエーアに避難を呼びかける。

だが避難を呼びかけたその時、2匹の黒竜と呼ばれた大型生物がハミエーア達のいるテラスに迫ってきた。

 

帝国兵「あそこだ!」

 

帝国兵「マリースアの女王がいるぞ!」

 

帝国軍の兵士達がチェインバーの左手の上にいるハミエーア達に気がつき突撃していく。

そして黒竜がその凶悪な口から炎を吐こうと口を開いた。

 

カルダ「陛下!!」

 

ハミエーア「くっ……ここまでか」

 

ハミエーアが自分の死を確信する。

だが、その瞬間、それは起こった。

 

チェインバーの肩についている羽のような構造体の先が青白い閃光を放ったのだ。

その閃光が光ったかと思うと羽のような構造体の先端から光の針が放たれた。

そして、二匹の黒竜はその光の針の直撃を受ける

 

帝国兵「なっ……」

 

帝国兵「うおっ……!?」

 

恐らく黒竜に乗っていた帝国兵は自分のみに何が起こったのか分からなかったのであろう。

なぜなら帝国兵は光の針の直撃を受けた国竜と共に塵も残さずに原子まで分解され消滅したのだ。

ハミエーアとカルダ、それにテラスに居た兵士達は困惑する。

 

ハミエーア「いったい何が……」

 

カルダ「こ、黒竜は……」

 

ハミエーアもカルダもテラスに居た兵士達も自分の目の前で何が起きたのか理解できなかった。

分かるのはチェインバーの羽から青白い二本の閃光が放たれ光の針が一直線に接近してきた黒竜を貫き次の瞬間には2匹の黒竜消滅していたという事だけだ。

チェインバーはこの間一切、微動だにしていない。

ハミエーアがレドの方を見る。

レドはいたって冷静だった。

 

ハミエーア「お主らが……やったのか?」

 

チェインバー『肯定する。少尉に危険が及ぶ可能性が高かった為、危険対象生物を排除した』

 

いたって普通の事を言うように語るチェインバー。

 

ハミエーア「どうやら……強いと言ったのは本当のようじゃのう……」

 

チェインバーがすぐに翻訳しレドに伝える。

するとレドは良い考えを思いついた。

膠着状態を脱する方法が。

 

レド「そうだ……この状況を利用すれば……チェインバー翻訳を頼むぞ」

 

チェインバー『当機には貴君らを支援する用意がある』

 

ハミエーア「何じゃと!?本当か!?」

 

チェインバー『取引がしたい』

 

ハミエーア「取引?なんじゃ?」

 

チェインバー『少尉と当機の無期限の駐留、及びレド少尉が必要とする兵站を要求する』

 

ハミエーア「よし……この状況を乗り切った暁には必ずお主らの要求をのもう。今は非常時じゃ、お主らの力を貸してくれ」

 

するとレドは声を発することなく頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レドはハミエーアとカルダをテラスへとおろすとチェインバーのコックピットに乗り込んだ。

レドが乗り込んだ瞬間、全天球モニターが起動する。

 

レド「フローター作動」

 

レドの指示でチェインバーが頭上に不可視の質量球体を発生させエネルギーリングが光り始める。

そしてチェインバーはテラスからゆっくりと浮かび上がった。

ハミエーアやカルダ、テラスの兵士達がその様子を固唾をのんで見守る。

 

レド「いいかチェインバー、今後の為にもこの地域一帯を攻撃している敵勢力を撃破する」

 

チェインバーは城の屋根の高さを超えた段階で空中で静止した。

レドはチェインバーを臨戦態勢に移行する。

 

レド「発進」

 

レドがそう言うとチェインバーは空高く飛び上がり帝国軍に向けて加速した。

 

 

 

帝国兵「何だあれは!?」

 

帝国兵「ゴーレムが飛んでるぞ!?」

 

帝国兵「うろたえるな!叩き落すのだ!」

 

帝国兵「りょ、了解!」

 

城下町を攻撃していた時にチェインバーに気がついた帝国兵達は黒竜を急旋回させ一気にチェインバーの方へと向かっていく。

そしてチェインバーはその黒竜や周囲の敵のアルゲンタビスの部隊と帝国軍に抵抗しているマリースア軍のアルゲンタビスを赤と青で識別した帝国軍が赤でマリースア軍が青だ。

 

チェインバー『目標の敵味方識別を完了。ディフレクタービーム、スタンバイ』

 

レド「殲滅」

 

レドは特に深くは考えずいつもやっている事を実行した。

 

瞬間、チェインバーの全身から無数の光の針が放たれた。

 

一方、城のテラスの上からその様子を目撃していたハミエーアとカルダたちは目の前で起きた事が未だに信じられずにいた。

チェインバーが宙に浮かび上がり少したつと全身から先程よりも遥かに多くの閃光が全身から全方位に向かって放たれその閃光の一発、一発が正確に黒竜を人間ごと撃ち抜き蒸発させたのだ。

その光景を見たハミエーアはある事を思い出した。

 

 

異世界から来た魔法戦士。

 

 

ハミエーアはこの異常な光景を、あのレドという少年も、あの人型のチェインバーも、レドの奇妙な服装も、あの全身から放たれている閃光もそれで納得できた。

そしてそれはハミエーアだけではなかった。

 

カルダ「ルーントルーパー……!」

 

カルダはこの時、なぜハミエーアがあの少年にこだわったのかを理解した。

 

ハミエーア「カルダよ……」

 

ハミエーアがカルダを呼ぶ。

するとハミエーアは不敵な笑みを浮かべた。

 

ハミエーア「この戦い……どうなるか分からんぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で城下町の上空。

相棒のアルゲンタビス、テールに乗り帝国軍の突然の襲来に対応していたラロナはレドの乗るチェインバーが一瞬で竜を消滅させていくその光景を他の兵士達のように呆然と見ていた。

 

ラロナ「なんなんだ……あれ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マリースア沖合い上空。

 

フィルボルグ帝国南伐混成軍のセイロード攻略は突如現れた謎の空を飛ぶゴーレムによって第一陣が全滅するという事態に陥っていた。

 

作戦は完璧なはずだった。

 

氷結竜を主力とする氷雪竜騎士団と火炎竜を主力とした黒竜騎士団の二個竜騎士団によるマリースアの首都、セイロード奇襲。

この戦力はマリースアのような弱諸国相手には過剰ともいえる戦力だった。

 

しかし、状況は混迷を深めていた。

 

帝国最強の黒竜騎士団がゴーレム一体にほぼ全滅。

この情報を聞いた第四階位将軍の姫将軍、リヒャルダ・フォン・アードラーは驚きのあまり頻発の髪を振り乱していた。

 

リヒャルダ「馬鹿な!?全滅だと!?」

 

リヒャルダの知っている戦争の常識ではゴーレムごときで竜を倒すなど不可能のはずだ。

いかなる魔法も剣撃も弾く鱗を貫くなど容易な事ではない。

過去に一騎倒された事があるがそれは敵軍三個騎士団と魔法兵団による待ち伏せ攻撃でだ。

正面からの戦闘ではない。

 

リヒャルダは何が起きているのか分からなかった。

 

リヒャルダ「見間違いではないのか……」

 

到底信じられなかったリヒャルダはもう一度部下に聞きなおす。

 

帝国兵「密偵からの交信では……ま、間違いありません……」

 

リヒャルダ「……それで?竜を失ったとして、その後の戦況は?」

 

帝国兵「城や城下の町に向かった第一陣はその謎の空飛ぶゴーレムによって壊滅し敵は態勢を立て直しています」

 

リヒャルダ「馬鹿な……ありえない……」

 

 

するとその時だった。

 

キイイイイイイイイイイイイン……。

 

今まで聞いた事のない奇妙な音がマリースナの首都、セイロードの方向から響いてきた。

奇妙な音はまるで近づいてくるかのように音が大きくなっていく。

 

リヒャルダ「な、何の音だ?」

 

リヒャルダは音のする方向を見つめた。

するとある事に気がつく。

何かがことらに向かって飛んできていた。

見たこののない何かだ。

 

その瞬間。

 

二本の青白い閃光が放たれた。

 

そして、その閃光が自分の周りを飛んでいた竜に命中し貫通したように見えたその瞬間、青白い閃光が命中した竜は消滅する。

 

リヒャルダは突然の事に驚愕した。

 

リヒャルダ「一体何が!?」

 

リヒャルダはもう一度前方のこちらに向かってきている物体を見た。

そしてそれが何なのかようやく理解する。

 

リヒャルダ「ゴーレム!!」

 

そのゴーレムは異常な速度でこちらに迫ってきていた。

最初は豆粒程度の大きさに見えていたのに今では既に人型のゴーレムの姿がくっきりと見えた。

 

リヒャルダ「まさか……まさかあいつが!?っ!?」

 

リヒャルダがそういった瞬間、そのゴーレムはリヒャルダの乗る竜よりも高い高度に高度を上げ再び青白い閃光を放った。

 

だが、今度は2本ではなくゴーレムの全身から無数に放たれていた。

 

帝国兵「な、なんだ!?」

 

帝国兵「ひっ!?」

 

帝国兵「うわああああ!?」

 

リヒャルダの周りの兵士達が次々とゴーレムの放つ光の閃光に竜ごと貫かれ消滅していく。

 

リヒャルダ「こんなもの……こんなもの認めんぞ!!こんなものは戦ではない!!戦ではな――――」

 

その先の言葉がリヒャルダの口から語られることはその後二度となかった。

何が起きているのかまったく分からない状況で最後にリヒャルダが目にしたその光景は空を飛ぶゴーレムが無数に放った青白い閃光の雨とそれに貫かれ消滅していく帝国軍の兵士達と竜達。

そして、自分の胸を貫いていた青白い閃光だった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィルボルグ継承帝国の突然の奇襲攻撃による戦いから三日後。

 

マリースア南海連合王国は謎の少年レドとチェインバーの活躍によって攻撃による損害は竜騎士が攻めて来たにしては非常に軽微ともいえる被害のみに留まった。

 

マリースア側の被害は兵士、一般人を含めて死者、負傷者の数は僅か200名未満で収まり破壊された家屋もあったが軍団規模の敵に対してこれだけの被害は異常ともいえた。

一方でフィルボルグ継承帝国軍の被害はというと……。

 

 

 

飛行軽甲戦士団・駐屯地

 

 

 

ラロナ「全滅!?帝国軍が!?」

 

同僚兵士「うん。そうらしいよ。あの変な空とぶゴーレムの攻撃で……それに街に降りてきた帝国兵もあのゴーレムにやられたんだって」

 

ラロナ「なんか……すごすぎるな……」

 

ラロナは駐屯地の鳥建屋で相棒のアルゲンタビスのテールの世話をしながら隣に居る同僚の兵士と話をしていた。

話の内容はもっぱら三日前の帝国軍侵攻の際に出てきた空飛ぶゴーレムの事だった。

 

同僚兵士「ラロナは空から見てたんでしょ?」

 

ラロナ「う、うん……見てたよ」

 

同僚兵士「どうだったの?」

 

ラロナ「なんか……何て言うんだろうな……上手くいえないけど、あの変なゴーレムが城の方から飛んできて、私らの周りに居た帝国軍を……光の槍?みたいなものでどんどん消していって……それからそのまま海の方に向かって、なんかピカッて光ってた。そしたら、ゴーレムが戻ってきて、それからはもう帝国軍の姿はまったく見えなかったな……」

 

同僚兵士「良くわかんないんだけど」

 

ラロナ「私も自分で何言ってんのか分からないよ」苦笑い

 

同僚兵士「でも……あれって、なんなんだろうね……」

 

ラロナ「さぁな……私らに下りて来てる情報は空から落ちてきたって事だけだし」

 

同僚兵士「知ってると思うけど噂じゃあ、あのゴーレムは異世界から召喚された魔法戦士って話もあるよね」

 

ラロナ「そんな話は嘘……とは言えないよなぁ……」

 

同僚兵士「あんな物を見せられたらねぇ……」

 

ラロナ「少なくとも王都にいた帝国軍があのゴーレムにやられたのは本当だろうけどな……」

 

ラロナは王都の上空で見たあの光景を思い出す。

するとその時だった。

 

戦隊長「非番の者は総員、広場に整列!!」

 

上官の声が聞こえてきた。

ラロナと同僚の兵士はその声にハッとして広場の方に走り出す。

駐屯地に居た非番の兵士達は続々と駐屯地内の広場へと集まっていった。

 

兵士達の数は見た目的に50数人程度の数だ。

三日前の帝国軍の侵攻以降、王都守備隊は帝国軍に警戒網の隙を狙われた事から厳戒態勢が組まれており殆どの者が駐屯地を出払っていた。

 

ラロナ達は全員、上官の前で綺麗に並び整列する。

 

戦隊長「よし……とりあえず揃ったな」

 

上官はそう呟くと兵士たちにそのまま待機するように言い渡しそのまま駐屯地の建物の方へと走っていった。

しばらくすると上官が戦士団長と一緒に建物から出てきた。

カルダだ。

 

カルダはラロナ達、整列した兵士達の前に立つ。

 

戦隊長「もうしわけありません。現在、非番の兵士はこれだけでして……」

 

上官がカルダに頭を下げる。

 

カルダ「問題ありません。むしろこの人数の方が混乱が起こらずに良いでしょう」

 

カルダは上官に対してそう言った。

そしてカルダは兵士達の方を見る。

 

カルダ「諸君、今集まってもらったのは諸君らに重要な伝達事項があるからだ」

 

カルダの声が広場に響く。

 

カルダ「今日、我が部隊に新たな兵士が配属される」

 

カルダのその言葉にその場の兵士達は口には出さないが皆、頭の中に疑問を浮かべた。

わざわざ戦士団長自らが言う内容には思えなかったからだ。

ラロナも同様の疑問を浮かべる。

 

カルダ「だが、その兵士について重要な注意事項がある。我が兵の中には居ないとは思うが間違えてもその兵士に対しておかしな言動を言ったり暴力を振るったりしてはならない。その兵士の事は我が王国の同盟を結んでいる国の将校だと考えろ」

 

ラロナや他の兵士はカルダのその言葉にさらに困惑した。

一体誰が来るというのだ?友好国から兵が派遣されたのかと疑問は次々と浮かぶ。

そんな兵士達の表情を見ながらカルダは何かを言おうとするが止めて一歩下がると王城の方を見始めた。

 

カルダ「……話では、もうそろそろ来るはずだが……」

 

カルダはそう呟いた。

広場に沈黙の時が流れる。

すると、その時だった。

 

 

 

キイイイイイイイイイイイイン……。

 

 

 

聞き覚えのある音がラロナやその場に居た全ての兵士達の耳に入った。

兵士達は一同に音のする方角を見る。

その方角は先にカルダが見ていた王城の方角だった。

 

ラロナ「この音って……まさか」

 

ラロナはつい呟いてしまう。

そしてラロナの感は当たる事になった。

 

兵士「あ、あれは!?」

 

誰かがそう声を上げる。

だが誰もその者を咎めようとする者はいない。

ラロナを含めてその場に居たカルダ以外の誰もが目を見開いて驚愕していたのだ。

 

ラロナ達の目に入った物。

それは、重厚な大きな人型の物体。

その体は黒、白、オレンジ色に塗られ所何処が鮮やかな水色に光りその顔にある目は翠色の光っている。

 

そう、それは見間違えるはずも無かった。

一度見ればもう忘れられない程の絶対的な力。

絶対的な暴力。

 

ラロナ「空とぶゴーレム……」

 

ラロナは瞬時に三日前の王都上空の戦いを思い出す。

王都守備隊の駐屯地に飛んできたのは見間違えるはずも無いあの、帝国軍を瞬時に殲滅した王城に空から落ちてきたあの空とぶゴーレムだったのだ。

 

空飛ぶゴーレムは速度を落としながら徐々に広場へと近づくとカルダの居る後ろのスペースへと方膝をまげて着地した。

 

突然のその光景に兵士達はどよめきを上げる。

 

カルダ「落ち着け!!敵ではない!!」

 

カルダは兵士達の方を見ると叱責した。

カルダの叱責によって兵士達は表面上は一旦、落ち着きを取り戻す。

だが内面ではラロナを含めて驚愕していた。

 

カルダはどよめく兵士達を叱責すると自らゴーレムの方へと歩いていく。

 

兵士「か、カルダ様!?」

 

兵士「戦士団長!危険です!」

 

兵士達の中から誰かがそんな声を上げる。

だがカルダはゴーレムへ向かう足を止めなかった。

そして、ゴーレムの近くへと寄るとゴーレムを見上げる。

 

カルダ「レド殿、問題ない。降りてきてくれ」

 

カルダはゴーレムへそう声をかけた。

すると……。

 

プシューという空気が抜けるような音が聞こえるとゴーレムの頭の部分が開き始めた。

 

ラロナ「……人だ」

 

ゴーレムの頭から奇妙な服を身にまとった人物が降りてきた。

その人物は体に張り付くような黒か紺色の服を着て頭に顔を覆う奇妙な兜の様なものを被っている。

その表情は兜によってラロナの居る所からはよく見えない。

その人物はゴーレムの右手の手のひらに乗るとゴーレムがその人物を地面へと降ろされた。

 

その人物にカルダは近づいていく。

 

するとカルダとゴーレムから降りてきた謎の人物は少し軽く会話をすると謎の人物はカルダの隣に立ちラロナ達、兵士達の前へと立った。

 

ラロナ達兵士達に緊張が走る。

そしてカルダが口を開き始めた。

 

カルダ「諸君らも知っているとは思うがこのゴーレムは三日前の帝国軍の侵攻軍を撃破した空とぶゴーレムだ。そしてこの者はそのゴーレムの操者であり、今日から我が部隊に配属される事になった。女王陛下との契約によりこの者の扱いは同盟軍の兵士という扱いになっている。くれぐれも無礼が無い様にしろ。ではレド殿、自己紹介を」

 

カルダにレドと呼ばれた謎の人物はカルダに対して頷く。

そして一歩前に出ると兜の様なものを外した。

 

ラロナは少し意外に思う。

兜を取って露になったその人物は見るからにラロナと同じような年齢に見える少年だったのだ。

少年の肌は隣に居るカルダよりも異常に白く、髪も白色、一方で目の色は紫色だった。

 

少年は動揺を隠せない兵士達の前に立つ。

 

レド「フェアウイング、スティニバー、インエ、ヒディアーズ――」

 

ラロナ「?」兵士達「?」

 

少年はラロナ達が聞いた事もない謎の言語で話し始めた。

だがその瞬間、別の声が少年の言葉を翻訳する。

 

???『人類銀河同盟軍、対ヒディアーズ殲滅兵器、マシンキャリバー‐K6821チェインバー操縦者のレド少尉。本日よりハミエーア女王陛下との契約によって暫定的に当部隊の指揮下に入る』

 

男性の声が広場に響き渡った。

その声はとても無機質なものでその場に居た兵士達はラロナも含めて誰の声だか分からずに声の正体を探ろうと正体を目で探した。

 

するとカルダが前に出てきて補足を始める。

 

カルダ「聞いての通り、レド少尉殿は我々の言葉を話せない。その為、彼の言葉の翻訳はそこに居るゴーレム……チェインバー殿が行う」

 

カルダがゴーレムを指してそう言うと流石に誰かが疑問の声を上げた。

 

兵士「カルダ戦士団長!その者が王都守備隊に入るのだとしても翻訳をゴーレムが行うとはどういう意味でありますか!」

 

兵士「そうです!どうか説明してください!」

 

戦隊長「き、貴様ら!戦士団長の前であるぞ!言葉を慎め!」

 

カルダ「戦隊長いいのです。兵達の疑問は仕方ない事です」

 

カルダは兵士達を叱責する戦隊長を止めた。

カルダは説明を始める。

 

カルダ「諸君、このゴーレムは……信じられないかもしれないがこのゴーレムは人と同じように言葉を交わし考える事が出来るゴーレムなのだ」

 

カルダが説明するがそれでも兵士達の疑問の声はやまない。

するとゴーレムが動き出した。

 

兵士「う、動いた!?」

 

再び兵士達がどよめく。

 

ゴーレムは二、三歩、ズシン、ズシンと地響きを鳴らせながら前へ進むと兵士達を見下げるように声を出す。

 

チェインバー『カルダ戦士団長、貴君の認識に誤りが認められる。私はマシンキャリバーK‐6821でありゴーレムなる物ではない。マシンキャリバー、もしくはチェインバーと呼称されたし』

 

兵士「しゃ、喋った……」

 

自分で名乗り喋ったゴーレムに対して兵士達はついに困惑からその後、誰一人喋らなくなった。

その様子を見ていたカルダは恐らくこうなる事を予測していたのだろう。

カルダはため息を一回つくと疲れた様子で口を開いた。

 

カルダ「えー……とにかく、これからレド少尉殿とゴーレ……チェインバー殿は我が王都守備隊の配属となる。配備する部隊は飛行軽甲戦士団だ。そうだな……」

 

カルダは兵士達を見回した。

その目はまるで品定めをするかのようにラロナは感じた。

するとそのカルダとラロナの目が合ってしまう。

 

カルダ「よし、ラロナ錬戦士!」

 

ラロナ「は、はい!」

 

突然、名前を呼ばれたラロナは少し慌てながらも返事をした。

 

カルダ「レド少尉殿の部隊での世話は貴様に任せる事にしよう」

 

ラロナ「わ、私がですか!?」

 

カルダ「そうだ。レド少尉殿がこの国に慣れるまで貴様にはレド少尉殿の側について……レド少尉殿に対して言い方が悪いが教育係となってもらう。不満か?」

 

ラロナ「い、いえ!そんな事は……」

 

カルダ「ならばよろしく頼む。それでは諸君、ラロナ錬戦士以外の者は解散!」

 

こうして、波乱に満ちた集会は終わった。

兵士達が続々と建物へと戻る中、ラロナは気が進まなかったが命令に逆らうわけにも行かずレドの居るところに向かった。

 

レドと名乗った少年はラロナを見た後にカルダから何かを説明されたようでその後、レドはラロナの元へと自ら歩いて寄ってきた。

 

ラロナ「え、えっと……」

 

ラロナは何か言葉をかけようとしたが上手く言葉に出来ない。

するとレドが最初に話しかけてきた。

 

レド「レ、レド、少尉ダ。ヨロシク、頼ム」

 

レドは慣れないと思われるマリースア語でラロナに挨拶をした。

その様子を見てラロナは急に今までの緊張が嘘みたいに切れるような感じがした。

 

ラロナ(こ、こわくない……?)

 

少しだけ安心しながらも極度に緊張しながらラロナはレドに対して作り笑いを向ける。

 

ラロナ「わ、私はラロナ。飛行軽甲戦士団錬戦士。こ、これからよろしくなレド」

 

レド「アア」

 

ラロナ「えっと、レドの階級って……」

 

ラロナがレドの階級を聞こうとするとレドとラロナの会話を見ていたカルダが近づいてきた。

 

カルダ「レド殿の階級は少尉つまりは下士官・兵を率いて最前線で直接戦闘を行う尉官。聞きなれないだろうがこの国で言うなら戦士、もしくは戦隊長くらいの階級だ。つまり貴様よりも上の階級だぞ」

 

ラロナ「え?……ええ!?」

 

ラロナはカルダからの助言を聞いて素直に驚いた。

自分と同じような年齢の少年が。

正直言って見た目、そこまで強そうでも無く筋肉もついてなさそうな自分と同じ年齢くらいの少年が自分よりも上の階級である事に驚いた。

そしてラロナは我に返るとレドに対して慌てて頭を下げる。

 

ラロナ「か、階級が私よりも上とは思わず大変ご無礼を……!」

 

するとレドは手でジェスチャーを出してラロナに頭を下げるのを止めるように言った。

 

レド「モンダイナイ」

 

ラロナ「で、ですが……」

 

レド「――――」

 

レドはラロナに対して銀河同盟語で語りかける。

そしてそれをチェインバーが翻訳して伝えた。

 

チェインバー『問題ない謝罪は不要だ。レド少尉はこの星に漂着してより、情報を収集中である。当惑星の文化習慣は銀河同盟とは大きく異なっており階級に関しては意味をなさない。よって会話に関しては現状のままでも問題は無い』

 

ラロナ「い、言ってる事はよく分からないけど……つまり?」

 

カルダ「レド少尉殿とチェインバー殿は貴様に階級に関係なく接するように言っているんだ」

 

カルダがチェインバーの言っている事を要訳する。

それを聞いて変わっているなと思いつつもラロナはなるほどと納得した。

 

ラロナ「そ、それじゃあ、分かりました。では遠慮なく……」

 

カルダ「それではラロナ錬戦士、後の事は頼んだぞ。チェインバー殿にはこの広場を使用してもらいなさい」

 

ラロナ「は、はい!」

 

カルダ「それではレド少尉殿、チェインバー殿、後ほど王城にて、またお会いしましょう」

 

カルダはレドにそう言うと建物の方へと歩いていった。

 

広場にはレドとチェインバーそれとラロナだけが残される。

 

レド「……」

 

チェインバー『……』

 

ラロナ「あーえっと、それじゃあ……レドと……チェインバーだっけ?とりあえず……」

 

レドが頷くとラロナはレドに笑みを再び向けた。

だが今度の笑みは作り笑いではない。

ラロナは両手を軽く広げる。

 

「ようこそ、マリースア南海連合王国へ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これがラロナにとってレドとチェインバーとの最初の出会いだった。

この奇妙な出会いが今後、この国に、この世界に何をもたらすのか。

レドもラロナも、まだ、誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハミエーアとの交渉によって飛行軽甲戦士団に配属されたレド。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レドとチェインバーの異世界冒険が今、始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王都セイロードの北部、人気の無い漁村の海岸。

その浜辺にずぶ濡れになった黒いローブを身にまとった一人の男が横たわっていた。

 

???「ゴホッ!ゴホッ!」

 

男は激しく咳き込み口から飲んでしまった海水を吐き出す。

 

???「まさかここまでとは……」

 

男は笑いながらそう呟く。

 

???「惨めな最期でしたな、リヒャルダ将軍」

 

男はよろめきながら立ち上がると心底嬉しそうな笑みを浮かべる。

 

???「異界の化物め、やりおるわ……ククク……だが、貴女の死は無駄にはしませんよ」

 

男は懐から古びた水晶玉を取り出す。

 

???「私が身を置いている教団はですな、将軍。プロミア陥落の際にあの国の馬鹿共がとんだ置き土産をしてくれたのを発見したのですよ。玉座を奪う事に固執して、宮廷魔術師達を丸々取り逃がした騎士団のおかげですな」

 

???「奴らは、自分達が世界の中心であると思っていましたからな。自らが滅びるならば世界が滅んでもかまわないと考えたのでしょう。古文書通りに有翼の民の魔法を使いあの怪物をこの世界へと呼び寄せた……」

 

男は水晶玉を眺める。

 

???「そう、あやつはこの世界の存在ではないのですよ将軍。私は貴女方、南伐混成軍が壊滅した場合、その後始末を命じられているのです」

 

???「我らは、この世界の均衡を保たねばなりませぬ。この世界に、あやつは在ってはならぬ存在。この世界を歪ませ、混沌を呼ぶ存在なのです。貴女では結局、奴を止める事はできなかった。だから私が決着をつけて差し上げましょう……ですが、今はその時ではない。残念ながら、流石の私も長い漂流で今の魔力ではこれを扱う事はできませぬ。ですから、魔力が回復しだい、この私が奴を葬って差し上げましょうぞ……この流星の目で……ククク……」

 

そう一通りまるでリヒャルダがこの場に居るかのように一人で語るとその男は水晶を懐に入れて狂気に満ちたその笑顔のまま浜辺の向こう側の森へと姿を消したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




えーっと……。
これで一応、今回のルーントルーパーズ・翠星のマリースナはお終いです。
なんかこんな所で終わりかよ感がいなめないですが……お許し下さい。

もしかしたら、気が向いた時に続きを投降するかもしれませんが今回はこれで終わりです。
なにせかなり前に書いた作品ですから……。

あと、もしこれを面白いと思って下った人が居て続きを書きたいという人が居たら教えてください!書いてくださってもかまいません!

ガルガンティアを絶やさない為にもガルガンティアのSSは今後も増えて欲しいです!!
 
とりあえずは今回の作品はこれにて一旦終わりという事ですが2月中にもう一作クロスオーバーの短編小説を投降する予定です!!

もしよかったらそちらも見てみてください。

それでは皆さん!またお会いしましょう!(* ̄ー ̄*)
それでは今年一年も皆様、お元気でお過ごしください!!
 


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