募った雪と腐ったタバコ (枯れ葉枯れ枝)
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1話

赤ワインとジンジャーエールでキティっていうお酒になるらしい。
けっこう飲みやすいのでおすすめっすよ?


肺に目一杯取り込んだ紫煙を軽い酩酊を覚えながらも、ゆっくりと吐き出す。

 

吐き出した煙が狭い喫煙室の天井をゆらゆらと不規則に動き、やがて消えていくのをみていると時間を忘れてしまいそうになる。

 

 

「ついでに仕事のことも忘れられればいいんだけどな………」

 

はぁー、と独り言とともに俺の口から出たのは紫煙ではなくため息だった。

 

そんな仕事に対して俺が恨み言を呟いていると喫煙室に新たな喫煙者が入って来た。

 

「あぁ〜もう最悪……あのハゲいつか殺す」

 

「なんだ港屋、また課長にセクハラでもされたか?いつも以上に目が腐ってるぞ」

 

「ノルマ減らしてくれんならいくらでもケツぐらい触らせてやるっつの、それと目が腐ってんのはあんたには言われたくないわよ」

 

そう言うと淀んだ目をした、俺と同じ24歳の女は慣れた手付きで自分のタバコに火を付けた。

 

「ん?お前またタバコ変えたのか?」

 

「んー、まぁね前のは飽きちゃった」

 

そう言ってタバコの箱を俺に見せるように港屋は軽く振る。

 

今のタバコはクールのメンソールらしい。

 

俺はまだ半分程の長さのタバコを口に含むとゆっくりと肺に入れていく。

 

「……高校の時の俺が今の俺を見たらなんて言うだろうな」

 

「は?いきなりどしたの?ついに現実逃避しだした?」

 

「うるせぇよ、現実逃避ならいつもしてるむしろタバコ吸ってる時が俺の現実まである」

 

「じゃあなによ、あんたらしくもない」

 

「いや、独り言だ気にすんな」

 

港屋は俺の言葉に納得したのか、興味を失ったのかそれ以上聞いては来なかった。

 

………そんな姿になるなら絶対に俺は専業主夫になる!とか言いそうだな。

 

だって俺だもん。

 

まぁ、んなこと言ったらあいつらにまたなんか言われるだろうな………

 

「谷、比企谷!!火!」

 

「!?っとと、すまん…」

 

港屋の声にハッとすると、タバコの火がフィルターの部分まで来ていることにようやく気付き慌てて灰皿に擦る。

 

「まったく、なにやってんのよ。そろそろ行くよ納期まで近いんだしね」

 

「あぁ、そうだな」

 

港屋はすでにタバコを吸い終わっていた様でそのまま喫煙室から出て行った。

 

そして俺もまた、仕事の波に溺れにオフィスに戻るのだった。

 

_______________________________

 

俺は仕事が終わった後、帰り道のスタバのテラス席でタバコを吸いつつガムシロとミルクを大量投入したコーヒーを飲んでいた。

 

ぼっちがスタバ?正気か?と思うかもしれない。俺もそう思っていた。

しかし喫煙者となった今外で喫煙をするとなると場所が限られる。

 

その際にボッチ喫煙をする場所としてはスタバが割と良物件だ。

 

なぜなら本来禁煙であるスタバだがテラス席に限っては喫煙可なのである。

 

しかもテラス席ということで知らない人間が自分のテリトリーに入って来ないという。

さらにコーヒーも飲める。

 

……完璧だ。

 

ニヤリと思わず口角が上がってしまった。慌てて手で口を隠す。一人でニヤニヤしていたら職質されてしまうからな。(1敗)

 

その時、後ろから肩を叩かれる。

一瞬で冷や汗が滲みながら、後ろを振り返った。

 

「違うんです!お巡りさん不審者じゃ無いですよ!」

 

「………ニヤニヤしている不審者がいると思ったらゾンビだったわ」

 

そう引き気味に言ったのは俺のよく知る人物だった。だがその姿は俺の知る姿とは少し変わっていて、より美しくなったその姿に俺は少し気後れしてしまった。

 

「ゆ、雪ノ下?」

 

「はぁ、なんで疑問形なのかは聞かないで置いてあげるわ。ただあなたのコミュニケーション能力は高校から成長はしていなさそうね」

 

ため息をつきながらも、その凛々しい佇まいは俺にあの部室での日々を思い出させる。

 

 

 

「久しぶりね、比企谷くん」

 

 

「お、おう。久しぶりだな雪ノ下」

 

 




読んで下さり有難う御座いました!
少しでも口角が上がっていただければ幸いです。


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