キン肉マンⅡ世~転生超人襲来編~ (やきたまご)
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新たなる脅威!!の巻

もう一つの戦いの物語!



 時間超人打倒のため、万太郎達はタイムマシン「ケビンマスク号」を完成させ過去の世界へと旅立った。

 タイムマシンを完成させるために壊した建物もあり、多くの人間に不信感を与えたため、正義超人達はその説明のため、全国を飛び回っている。

 東京の担当はもちろんガゼルマンである。

 

「ふぅ、これで東京の人達への説明は終わったな。しかし、いればうるさいやつらばかりだったがいないと寂しいもんだ。そのうちまたあいつらと一緒に合コンでも行きたいもんだ」

 

 街頭のモニターに臨時ニュースが流れた。

 

『臨時ニュースです! 大手企業ワタシのワタシ取締役が昨晩未明、何者かに襲われました。ワタシ社長は現在意識不明の重体のようです。警察はここ数日起きている大手企業の取締役を狙った傷害事件と関連しているとして、捜査している模様です』

 

「またか、物騒な世の中だ。主力超人を多く欠いている現状だが、日本駐屯超人としてこれは見逃しとくわけにはいかないな」

 

 パリーン!! ドーン!! !ガラガラ!!

 

「ギャーー!!! 」

 

 突如大きい物音と人の悲鳴が聞こえた!

 

「しゃ、社長がーーーっ!! 」

 

 ビルから人影が飛び出した。

 その人影は人間離れした跳躍力で、大都会のビルの上を移動していく。

 

「さては襲撃事件の犯人だな! あの身体能力を見る限り、超人とみていいだろう。しかし、俺様に見られたのが運のツキだな。俺の身体能力なら十分追いかけられる」

 

 ガゼルマンは高い身体能力を生かし、その人影の後を追うように追いかけていった。

 しばらく追いかけるとその人影は廃墟となっているビルの中に入っていた。

 

「どうも罠の予感がするな。しかし、このチャンスを逃してはならない! 危険だとわかっても行くぞ! 」

 

 ガゼルマンは廃墟のビルへと入っていった。

 中に入り探索すると明るい部屋を見つけた。

 その部屋に入ると、なんとリングが用意されていた!

 

「これはまたご丁寧な歓迎だな。その歓迎に全力で答えてやらないとな」

 

 突如、ガゼルマンの前に黒ずくめの男が現れた。

 

「ピキュピキュ、お前はガゼルマンだな」

 

「どこの馬の骨かは知らんが、俺の名前を知っているとは光栄だぜ」

 

「ピキュキュ、馬の骨だと、何をぬかすか。貴様はヘラクレスファクトリーを首席で卒業したようだが、その後のお前は今一つ活躍できないザコの小鹿ちゃんではないか」

 

「このやろ~、人様が気にしていることを遠慮なくずけずけとぬかしやがって! ザコかどうか分からせてやろうじゃねえか!」

 

「ピキュピキュ」

 

 黒ずくめの男は身にまとっている黒い衣装を脱ぎ正体をあらわした。

 見た目はUSBに手足の生えた超人に見える。

 

「私はミスターUSB。世界浄化者(ワールドクリーナー)として選ばれた戦士の一人だ」

 

世界浄化者(ワールドクリーナー)だと? いったい何を言っている」

 

「ピキュキュ、この世は不浄であり、その原因は悪なる人間が多すぎることだ。そのために多くの可能性がつぶされてきたのが私は許せない。だから私はこの世を汚す人間に成敗を与えているのだ。ガゼルマンよ、お前にもその気持ちが分かるだろ!」

 

「分かってたまるか! お前の言っていることは分かるが人間に危害を加える理由にはならない! だから俺がお前を浄化してやるぜ! 」

 

「ピキュキュ、では始めるとするか」

 

 両者リングに入り、試合が始まった。

 

「ではまずこの技を使うか」

 

 ミスターUSBの右手が赤く燃え上がる。

 

「あ、あれはまさかジェイドの!?」

 

「そうとも、貴様が一番屈辱的な負け方をしたあの技だ。この廃墟のビルに赤い雨を降らせてやろう!!」

 

 ミスターUSBの手刀をガゼルマンは後ろに下がってよける。

 しかしすぐにリングの後ろに追い詰められた。

 

「もう逃げ場はないぞ、ベルリンの赤い雨ーー!!」

 

 ミスターUSBの燃え上がる手刀がガゼルマンに襲い掛かった!

 

ガシッ!

 

 ガゼルマンはミスターUSBの右手首を左手で押さえ、ベルリンの赤い雨を防いでいた。

 ガゼルマンの表情は冷静そのものであった。

 

「いつか俺を負かした相手にリベンジしようと思っていてな、密かに特訓していたんだぜ」

 

「ぐぅ!」

 

「あまり俺をなめるんじゃないぜーー!!」

 

ガコンッ!

 

「ビキュー!!」

 

 ガゼルマンの膝蹴りがミスターUSBの顔面をとらえた!

 

 

 

 




小鹿ちゃんとは言わせないぜ!


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楽しい小鹿狩りの巻

ガゼルマン!生存(サバイバル)なるか!


 ガゼルマンとミスターUSBの戦いを観戦するものがいた。

 ねじり鉢巻きをしたハゲの農夫で、口に収まらない歯が二本出ている。

 その男は与作(よさく)さんと人々から呼ばれている。

 

「興味本位で後をつけてみたら、おっかねえ試合の真っ最中じゃねぇかーーっ!! おら見てはいけないものを見てしまっただーー!! ……いや、ここはYOU TUBER 与作として、この試合を生放送で全力で実況するぜよ!!」

 

 与作さんはどこからかビデオカメラとパソコンを取り出し、実況を開始した。

 

 

「おらー!!」

 

「キュピー!!」

 

 ガゼルマンの膝蹴りがミスターUSBの顔面をとらえた。

 ミスターUSBは悶絶している。

 

「さっき俺様を小鹿ちゃんとか言っていたな。お前にはキツ~いおしおきを与えないとな。」

 

 ガゼルマンがミスターUSBを首相撲の体制にとらえ、ボディに高速の膝蹴りを連打していく。

 

「悪い子だ! !悪い子だ! 悪い子だ!」

 

『ガゼルマン! ミスターUSBをチャランボ(ムエタイ式膝蹴り)でせめていくぜよーー!!!』

 

 与作さんは熱を入れてその様子を解説した。

 

「キュピピ、適所をついた高速な膝蹴りではあるが、その貧相な体じゃ、すぐに首相撲は外れるぞ!!」

 

『ミスターUSB! ガゼルマンを横方向に投げ飛ばし首相撲から強引に抜け出したぜよーー!! でもガゼルマンも投げ飛ばされたが、すぐに立ち上がったぜよーー!!』

 

「さっきベルリンの赤い雨を使ったな。いったいどういうことだ?」

 

「私はUSBであり、多くの超人を必殺技を記憶している。その昔ステカセキングという悪魔超人がいたようだが、やつは持っている超人のカセットしかコピーできず、さらにカセットを入れる時間が相手にスキを与えることになる。だが私は違う! 大容量記憶装置超人に相応しく、私の必殺技はすぐに発動でき、精度が高く、豊富なものだ−−−っ!!!」

 

「ならば、攻撃を出す暇を与えないだけだ!」

 

『ガゼルマン!高速のパンチとキックをおりまぜたコンビネーション!ミスターUSBは防戦一方だー!』

 

「キュピピ、ようやくそのスピードに慣れてきたぞ」

 

『ミスターUSB! ガゼルマンの体を掴み、上に放り投げるようにして巴投げしたぜよーー!!』

 

「では最高の必殺技でお前を(ハント)してやろう」 

 

『ミスターUSB! 落下してくるガゼルマンをブリッジで空中に跳ね返していったぜよーー!』

 

「こ、この技はまさか!?」

 

「小鹿であろうと全力で(ハント)する! マッスルスパーク!!」

 

『ミスターUSB! な、な、な、なんとーーーっ! キン肉族三大奥義の一つ、マッスルスパークを繰り出したーーーっ!』

 

 ガゼルマンは驚いた表情をしたが、すぐに自信のある笑みに変わった

 

「この技を出してくるとは正直驚いたが、俺には通用しないぜ」

 

『ガゼルマン! 技をかけられながらも体をどんどんくの字に柔らかく曲げていく! ミスターUSBのマッスルスパークの掛かりが段々と甘くなってきたーーっ!』

 

「なっ、力を入れれば入れるほど技のかかりが甘くなる!?」

 

「俺はヘラクレスファクトリーを首席で卒業したんだ。博学でもあるんだぜ。この技は一見脱出不可能な技に見えるが驚異的な柔軟性があれば、抜け出すのはたやすい技だ」

 

『ガゼルマン! ついにマッスルスパークから抜け出したぜよーー!! ガゼルマン!ミスターUSBをパイルドライバーにとらえ、リングにたたきつけたーーっ!』

 

 しかし、ミスターUSBは平気そうな顔をしていた。

 ミスターUSBはガゼルマンを吹っ飛ばしながら立ち上がった。

 ガゼルマンもすぐに体制をたちなおす

 

「ほほうキン肉族三大奥義を破るとは、大したもんだ。どうやら単なるコピー技ではお前を葬れんようだな」

 

「その言い方だと、オリジナルの技もあるのかい?」

 

「オリジナルというよりは、編集した技ならある!」

 

「編集って?」

 

「ああ!」

 

『ミスターUSB! ガゼルマンを抱え、空中に飛んだぜよーーーっ! 廃墟のビルの天井をどんどん突き破り屋上までいったーーーっ!』

 

 ドガコン!

 

 廃墟のビル付近にいた人々が、ガゼルマンを抱えたミスターUSBの姿を見た。

 

「な、なんだあれは?」

 

「超人よ! 超人の試合だわ!」

 

「あ、あれはガゼルマンじゃないか!」

 

「よーし! 営業の途中だが、抜け出して見に行くぜー!!」

 

 廃墟のビルに何人かの一般人が入っていった。

 

「いくぞ! ターンオーバーキン肉バスター!!」

 

『ミスターUSB! キン肉万太郎の必殺技を繰り出したーー!!』

 

「なにが出るかと思って期待してみたら、あのアホの技か。体の向きは逆でもキン肉バスター同様首のかかりが甘いぜーー!!」

 

『ガゼルマンが首を後方に動かす! 首のフックの甘さをついて、技から脱出するだーー!!』

 

「貴様がそうくる事は読んでいた」

 

 ミスターUSBは両腕に力を入れて、自分の体がガゼルマンの足よりも高く来るように体制を入れ替えた。

 

『ああっと、ミスターUSB! 一体なにをするつもりだーー?』

 

 ミスターUSBはガゼルマンの股間に自分の顔を入れ、両腕でガゼルマンの太ももをがっちりとホールドする。

 

「し、しまった!?」

 

「さあ伝説超人の一撃を食らうがいい!! 九龍城落地(ガウロンセンドロップ)!!」

 

ズガァン!!

 

「ぐはぁっ!」

 

『決まったーー!! ミスターUSB! キン肉万太郎の技からのラーメンマンの必殺技のコンボでガゼルマンをマットに沈めたーー!!』

 




小鹿獲ったどーーーーっ!


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小鹿からガゼルへの巻

やっぱりだめか!?


 「キュピピ、もう貴様は戦えない状態だが、私に歯向かった者がどうなるかを知らしめるために、死んでもらう!! 貴様はなかなか骨のあるやつだった、せめてもの敬意だ、楽に死なせてやろう」

 

 ミスターUSBはリングに頭から刺さった状態のガゼルマンを引き抜いた。

 かろうじて息はあるが、すでに瀕死に近い状態だ。

 ミスターUSBはガゼルマンの角をつかんで、ガゼルマンを無理やり持ち上げた。

 そして、ガゼルマンの両腕をもって、ひねりを加えていった。

 ガゼルマンは微かに反応を見せた。

 

「ピキュー!」

 

『ガゼルマンが回転しながら空中に放り投げられたぜよーーーっ! ガゼルマンさらばぜよ~』

 

 与作さんが泣きながら実況している。

 ガゼルマンを追うようにミスターUSBも空中にジャンプする。

 

「さあ、お前がエリート街道を外れるきっかけとなったこの技でお前の転落人生を終わらせてやろう!」

 

「こ……ここだ、ここで行かなきゃもう……俺に活躍のチャンスはねぇーーーっ!」

 

ボアァ

 

 ガゼルマンの体が発光した。

 

『ガゼルマン生き返ったーーーっ!しかしガゼルマン何を思ったのか、回転している体に自ら更に回転を加えるぜよーーっ!』

 

「キュピピ、頭を強打してエラーでも起こしたのか?」

 

「仲間達から託されたんだ! 現代は必ず守っていくってな! そして、俺の落ち切った名誉を挽回するためにも、勝つ! 勝ちてえ!」

 

『ガゼルマン! 回転しながらミスターUSBに突進する!』

 

「キュピ!?」

 

「くらえーーーっ! 狂走獣(クレイジービースト)!」

 

「ギュピャーーーーーっ!」

 

 ガゼルマンの右手に着けたアントラーフィストにより、ミスターUSBに無数の傷が出来た。

 

『決まったーーーっ!ガゼルマンの新必殺技クレイジービースト!既存技サバンナヒートを改良し、回転により相手のダメージは数倍に増えたぜよーーーーっ!』

 

 ミスターUSBの体からは火花が出ている。

 完全にKOされた状態だ。

 与作さんはどこからか鐘を取り出し、ゴングを鳴らした。

 

 カン!カン!カン!カン!

 

「ガゼルマーーン!お前の事見直したぜ!」

 

「私から今日からファンになるわ!」

 

「強いぞガゼルマン!」

 

 廃墟のビルに入ってきた一般人が口々にガゼルマンをたたえた。

 

「んっ!人がいたのか? しかしこうやって人から賞賛されるのは初めてな気がするぜ」

 

「キュ……ピ、なぜビッグベンエッジを……やぶれた」

 

 ミスターUSBが今にも息絶えそうな様子でガゼルマンに話しかけた。

 

「腐れ縁のやつが大事な試合にこの技で敗れてな、よっぽど悔しかったみたいで俺に特訓をお願いしてきたんだ。無理やり付き合わされた特訓だったが、おかげで俺も攻略法を身に着けたんだ。もしお前がこの技を出していなかったら俺が負けていた可能性が高かった。お前は本当に強敵だった」

 

「なるほどな……もしもお前がサバンナヒートを出していたらお前は私に負けていた……データとしてお前の技があるからな。それにしても……プライドの高いお前が……よくそこまで褒めてくれるもんだ。もう一つ聞きたい、瀕死のお前の体が発光して力が復活したように見えた。一体あれはなんだ?」

 

「さあな、俺にも分からない。ただ、過去に行った仲間のことを思った瞬間、自然と力が溢れたんだ。さて、質問に答えたからにはお前にも俺の質問に答えてもらいたい。お前は世界浄化者(ワールドクリーナー)と言っていたが、目的はなんなんだ? 仲間は、ボスは一体誰なんだ?」

 

「ふん……死ぬ身ではあるが……我が主に不利になるようなことは言えん。だが、勝者への贈り物として私の秘密を教えよう」

 

「秘密?」

 

「私は元人間だ」

 

「なんだと!? 」

 

「ああ、私は元々はIT企業に勤めていたエリート社員だった。自分で言うのもあれだが、かなりできる男で出世街道まっしぐらだった。しかし、年々私への負担も大きくなり、サービス残業、上司からのパワハラ、そして結果を出しても認めれない毎日が続き、ある時私は過労死した。死んだ後にその会社はブラック企業として評判の会社という事が分かったよ。その会社に私は奴隷のように使われたのだ。」

 

「そうか、だからここ最近会社の社長を狙った襲撃が多かったのか。お前は復讐のために」

 

「ちがうのだ! 私は……これ以上私のような者が生まれてほしくないと思いやったのだ! 私はもっと社会の役に立ちたかった、私が生きてきた証を残したかった……このUSBのようにな……だからこそ、可能性のある人間を潰す会社を許せなかったのだ……」

 

「俺は正義超人としてお前の意見に反対の立場をとるが、もし俺もお前の立場だったら同様のことをしたのかもしれないな。ったく、俺らの敵ならもっと悪人らしい考えをしやがれ。調子が狂うぜ」

 

「ひねくれた……やつだな……最後に、人生の先輩として言いたいことがある……お前はこの戦いでエリート街道に戻れただろうが、つまりはこの先の戦いの負担は大きくなる……今日のような命がけの戦いが増えるだろう……が……仲間を大事にしろ……潰れそうになったらきっとお前の助けになる……私が独りぼっちで生きてきたからこそいえるアドバイスだ……分かったか小鹿よ。いや、ガゼルマン……ギュパ!」

 

 ミスターUSBは息絶えた。

 しかし顔は満足そうな笑みを浮かべていた。

 

「ミスターUSB、俺はお前との今日の試合を永久に記憶にとどめておくぜ」

 

 ガゼルマン、戦いのダメージが時間差で効いてきて、唐突にその場に倒れた。

 

「ガゼルマン! 今KO病院に連絡したからすぐに救急車が来るぜよ!」

 

「感謝するぜ……ついでですまないが頼みごとがある……河川敷の俺のガゼルハウスにある分厚い本を持ってきてくれ……ちょいと調べたいことがあるんでな……」

 

「おうまかせてくれぜよ!」

 

「まだ分からないことは多い状況だが、……それよりも……勝てて良かった」

 

 ガゼルマン、笑みを浮かべながら意識を失った。




おめでとうガゼルマン!


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破壊神降臨!の巻

次なる敵は!?


「臭うぜ~、争いを好む人間の血なまぐさい臭いが~」

 

 怪しい黒装束の男が兵庫をうろついていた。

 ところかわり、人気のない工場にて、ヤクザ同士の取引が行われていた。

 

「これが約束の品です」

 

 複数人の男を連れた組の幹部が銃器を渡す。

 

「ふむ、良し、約束の金だ」

 

 スーツケースに詰めた金を渡す。

 

「では互いに早々に立ち去りましょうか」

 

「待ちな!!」

 

 唐突に大きい声が工場内に響く。

 声の主は黒い衣装を羽織っている。

 

「武器は争いの元だ、争いが起きる前に俺様がお前らを始末してやる」

 

「なんじゃわりゃーー!!どこぞの組のもんじゃーーー!!」

 

「名乗るほどのものでもねえが、俺様はこの世を浄化する者達の一人『ランバージャッカー』だ」

 

 唐突に一人の男がランバージャッカーに向かって銃を撃った。

 

バキューン!バキューン!バキューン!

 

 しかし、ランバージャッカーと名乗る男は銃弾を指先でつまむように受け止めた。

 

「うわぁーー!!こいつ超人だーーー!!みんな逃げろーーー!!」

 

「そうれ、お返しだ!」

 

 ランバージャッカーは銃弾をヤクザに被弾させるように勢いよく投げた。

 その銃弾は男たちの体の急所を貫通し、大きなダメージを与えた。

 

「あぎゃぁぁ!!」

 

「ひぃぃぃ!!!」

 

「逃げろーーー!!」

 

「がはははは!!逃がすかよーー!!」

 

 ランバージャッカーは鋭い蹴りで男たちの体を真っ二つにしていった。

 

「ばふぁーーーーーっ!!!」

 

「ぎょひゃあーーーーっ!!」

 

 断末魔の悲鳴を上げて男たちは皆死んでいった。

 あたりは血の海となり、一気に静かになった。

 

「これで全員始末したな」

 

 静寂の空間を壊すかのように、ズシンズシンと誰かが歩いてきた。 

 

「グロロロ、これは一体何事だ? 治安の悪いオレの祖国よりひどい有様だ」

 

 大きな巨体を揺らして現れたのはデストラクションだった。

 

「ほう、おめえは確か超人オリンピックファイナリストの一人、デストラクションだったな。イラクの超人がどうしてこんなところにいるんだ?」

 

「超人委員会からの命令でな、新世代超人が手薄になった日本が狙われる可能性が高いとのことで俺が変わりの日本駐屯超人を任されているのさ」

 

「なるほどな、ではたった今悪行を働いた俺様を倒すってわけかい?」

 

「もちろん、こいつら以上に血祭りにあげてやろうじゃないか!」

 

「ガハハハハ!!!」

 

 ランバージャッカーは笑いながら羽織っていた黒い衣装を脱ぎ捨てた。

 キックボクサー姿の男が現れた。

 背中には木こりの刺青がほってある。

 

「ん、お前どっかで見たことあるぞ。たしか人間じゃないか?」

 

「そう、俺様はかつて20世紀最強のキックボクサーと呼ばれた男だ。21世紀も最強でいてやろうと思ったが、21世紀になる前に死んだのさ」

 

「そういえば聞いたことがある、国内の戦争に巻きこまれ、銃弾を浴びて亡くなった若き天才格闘家がいたとか」

 

「そうさ、戦争が俺様の格闘家生命を終わらせたんだ。俺様はもっと戦いたかった……寿命を縮めても良い、廃人になっても良い、五体不満足になっても良い、俺様は強いやつに会いたかった……」

 

 哀愁感を漂わせる顔をしてランバージャッカーは語った。

 

「死んだ俺を超人として蘇らせたのは現在の俺の主さ」

 

「なにぃ、死んだ人間が超人として蘇っただと!?」

 

「そう、超人の分類としては『転生超人』に属する」

 

「転生超人、初めてきくぜその名前は」

 

「そういえばおめえ確かさっき、血祭りにあげるとか言ってたな。俺様をなめての発言なら許しちゃあおけねえぞ」

 

「なめちゃあいねえさ、ちょいと血の気の多い性格をしているのさ」

 

「ガハハハ!!」

 

 ランバージャッカーは突然笑いだし、楽しそうな表情をした。

 

「主の命令と俺様の信条で戦争の火種を作る人間を始末しているが、そんなことより、おめえみてえなやつと戦いたいっていうのが俺の本音だ!!だから面白い戦いをしてくれよ!!」

 

 ランバージャッカーがアンテナのついたリモコンを取り出し、ボタンを押すと、突如リングが現れた。

 周りにはカメラもついている。

 

「この戦いは全世界生放送で見られるようにした。本気出さねえと恥をかくぜ」

 

「グロロロ、いい舞台を用意してくれたな」

 

 この二人にはゴングは必要なかった。

 両者リングインし、戦闘態勢に入った。

 

「先手必勝だ!!グロロロ!!」

 

 デストラクションは突進し、右腕でラリアートをかます。

 しかしランバージャッカーは頭を下げてたやすくよけた。

 

「パワーはあるみてえだが、あてるセンスはねえな!おらぁ!」

 

 ランバージャッカーは頭を上げながら右アッパーをデストラクションの顎に食らわした。

 

「ごふぅ!」

 

 ランバージャッカーの一撃でデストラクションの体はよろめいた。

 

「そうら! 俺は腕っぷしも自信はあるが、一番得意なのはキックさ!」

 

 ランバージャッカーの速く重いローキックをデストラクションの内脚の膝付近をとらえた。

 

「ぬおっ!! 今までくらったことのないとてつもなく重い蹴りだ!!」

 

「そりゃそうよ、だてにランバージャックのあだ名は名乗っちゃいねえぜ。そうら! 次はお前さんの自慢の触角をへし折らせてもらうか!」

 

 ランバージャッカーのハイキックがデストラクションの触角をとらえた。

 

ガキーン!!

 

「なっ、なに!?」

 

 ランバージャッカーのハイキックは確かにデストラクションの触角をとらえたが、当のデストラクションは平然とした顔だ。

 

「グロロロ、かつて俺はこの触覚を折ってしまったがために、相手をあと一歩まで追い詰めながら勝つことが出来なかった。俺はそれ以降、この触覚を折られないように徹底的に鍛えなおし、硬度をダイヤモンド並みにしたのだ!」

 

 デストラクションはかつて自分を負かしたイリューヒンとの試合を思い出しながら語った。

 

「くっ! かえって足を痛めてしまった!」

 

 ハイキックで体勢が崩れたランバージャッカーをデストラクションが攻撃した。

 

「くらえーー!! ツイスターアンテナ!!」

 

「ぐぉわぁ!」

 

 デストラクションの触角がランバージャッカーの左肩をとらえた。

 ランバージャッカーは苦痛の表情を浮かべた。




誇りの象徴は二度と折れはしない!!


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破壊神撃沈!の巻

見よ!漢の触角(ほこり)を!


「グロロ~!!」

 

 デストラクションは頭をふって、触角で刺したランバージャッカーを投げ飛ばした。

 デストラクションは倒れたランバージャッカーの元へ走り、すぐにマウントポジションをとった。

 

「グロロー!! 打撃はいいみてえだが、レスリング技術はなっちゃあいねえみてえだな」

 

 デストラクションのマウントパンチの連打がランバージャッカーの顔面をとらえ、見る見るうちに流血顔になっていった。

 

「調子に乗るんじゃねえぞ! でくの坊!」

 

 ランバージャッカーはデストラクションの両腕をつかみ、頭突きを食らわした。

 

ガゴン!

 

「うぐぅ~」

 

 頭突きのダメージでデストラクションの体勢が崩れたため、ランバージャッカーにのしかかる体重の感触が軽くなった。

 すかさず、ランバージャッカーは胴体に力を入れて、上にのっていたデストラクションを跳ね飛ばした。

 ランバージャッカーは立ち上がりキックボクシングスタイルに戻った。

 

「こちとらキックボクサーとしても強いが、喧嘩屋としても強いんだぜ。てめえみてえな巨漢、用心棒やっていた時によく相手にしたもんだぜ!」

 

 ランバージャッカーはストレート、ボディーブロー、ローキックといった、直線的な攻撃に、対角的な攻撃も加えたコンビネーションでデストラクションにダメージを与えていく。

 

「タートルディフェンス!」

 

 顔面にランバージャッカーのパンチが飛ぶ瞬間、デストラクションは頭を体内に収めた。

 ランバージャッカーの拳は触角部分に当たり、自爆ダメージを与えることができた。

 

「ぐあっ! そんなのありかよ!」

 

ガシッ!

 

「こうやってしまえばお前ほど打撃センスのないおれでも攻撃をあてられるというわけだ」

 

 デストラクションは首相撲の体勢となり、ランバージャッカーのみぞおちや顔面に膝蹴りをあびせていった。

 

「首相撲はキックボクサーの専売特許だ!」

 

 ランバージャッカーは首相撲に慣れている感じで、デストラクションが膝蹴りを当てるも最小限のダメージとなる。

 体をより密着させたり、時には左右にデストラクションの体を揺らし、巧みに膝蹴りの威力を減らした。

 

「グロロ~、こうなったら必殺技(フェイバリット)だーーっ!」

 

 デストラクションは持ち前の怪力でランバージャッカーを真上に投げ飛ばした。

 デストラクションは触角を開き、アバランチャークラッシュの体勢に入った。

 

「その技をまともにくらうと俺様でも危ういな。さて、どうしたもんか。よし!」

 

 ランバージャッカーは空中で頭から落下する体勢になった。

 

「グロロ~、これで俺の勝ちだーー!っ!」

 

「エアーダッシュ!!」

 

 ランバージャッカーは空中で脚をクラウチングスタートの体勢のように丸めて伸ばした。

 持ち前の脚力のおかげで、ランバージャッカーはの落下する速度がすさまじく速くなった。

 

「グロ!?」

 

ゴン!!

 

 アバランチャークラッシュの発動直前で、ランバージャッカーが右拳一つでデストラクションの頭の上にのっかる体勢となった。

 デストラクションの頭部は凄まじいスピードで激突した拳により、激しく流血している。

 

「うぐぅ……」

 

「技は当てるタイミングが大事だ。当てるタイミングさえ合わなければ、お前の硬い触角も怖くない」

 

 デストラクションは血まみれになってダウンした。

 しかしすぐに立ち上がった。

 

「もう寝ていろ! ふぅん!!」

 

ドゴ!

 

 重く速いハイキックがデストラクションの首をとらえた。

 デストラクションの体はずしーんと音を立てて倒れた。

 しかしランバージャッカーは少し驚いた表情をしていた。

 

「ほう、俺様はハイキックの威力には結構自信があるんだぜ。まさか形を維持しているとはな。その首、大木のような頑丈さと柳のしなやかさをもってやがる」

 

 ランバージャッカーの話に対して、デストラクションは全く反応がない。

 

「レフリーがいればお前はもう試合を止められている状態だ。だが俺も鬼ではない、ギブアップして仲間になるっていうなら助けてやるぜ。お前は伸びしろがありそうだ。俺様が鍛えてやれば世界で二番目に強い男になれるぜ」

 

「……ふ、ふざけるな!」

 

 デストラクションは朦朧としながらも立ち上がった。

 

「今おれたちがやっているのは……戦争だ!戦争とは命を賭けて互いの正義をぶつけ合うもんだ……初めから命を賭けている俺に命を助ける情けは失礼ってもんだぜ!」

 

「そうか、イラクは争いの多い国だったな。俺は戦争自体は否定するが、お前のことは嫌いになれん。だから生かしてやろう」

 

「てめえ……人の話を聞いていたのか!」

 

「ああ聞いていたさ、でも俺様は悪い奴だからな」

 

 ランバージャッカーはどこからともなく石を取り出した。

 

「こいつは転生石、イギリスのストーンヘンジに使われている石で、原理はよく分らんがとにかくすごい石だ」

 

シュイシュイシュイシュイ

 

 デストラクションの体はみるみる姿を変えた。

 触角はなくなり、黒色肌の男の姿となったデストラクションはその場に倒れた。

 

「超人としてのお前は死んだ。じゃあな」

 

 ランバージャッカーはそのまま去っていった。

 

 ちょうどその頃、ヘラクレスファクトリーにてもこの試合が観戦されていた。

 

「なぜあやつがあれを!?」

 

 仮面から髭を生やした鎧の紳士ロビンマスクが驚愕の表情をした。




人間になっちゃった!?


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超人バーゲンセールの巻

緊急会議!


 ヘラクレスファクトリー内にて、地球に起こった異変について会議が行われていた。

 伝説超人(レジェンド)達がモニターで観戦しながら各々の考えや感じたことを述べていった。

 

「かつて私を人間に変えたあの石がなぜあやつが!?」

 

 ロビンマスクが驚いて発言した。  

 

「そうか、おめえ確か若気の至りで人間になったとか言ってたな」

 

 力士の姿をしたウルフマンがこう発言した。

 

「ふふ、黒歴史というか、あまり触れられたくない過去だがな。だがこの際恥じてる場合ではないな。あの石は見てのとおり、超人を人間にする力がある。ご先祖様がかつて作ったものと言われているが、詳しく調べる必要があるな。」

 

「更にこれまでの二つの戦いから、人間を超人にできる何者かがいるということだ」

 

 頭にカレーを乗せた超人カレクックがこう発言した。

 

「まさか悪魔(サタン)か!?」

 

 バッファローマンが発言した。

 

「まつズラ、敵に心当たりがある。かつて、おらを超人にした神、その名はミスターノアだ!」

 

 ジェロニモが発言した。

 

「ミスターノア? もしかしてノアの箱舟のノアですか? その神話を聞いたことがありますが、実在するのですか?」

 

 ジェシーメイビアが疑問そうに発言した。

 

「おらが本人から直接聞いたことがあるから間違いないズラ。断片的であるが、神話という形で彼の記録が残っていてそれが語り継がれていると。さらに、自分の見込んだ人間を何人か超人にしていると」

 

 ジェロニモが返答した。

 

「つ、つまりそいつは意図的に超人を量産できるってことか、やばいな。ほかに何か分からないのか」

 

 カナディアンマンが多少びびりながら発言した。

 

「もし彼が関与しているとしたら、何故そんなことをするのか、本心を聞きたい」

 

「よし! ここで議論しても問題が解決するわけではない! 経験と知恵を持った私達だからこそできる仕事をしよう! 何人か私についてきてほしい! もちろんヘラクレスファクトリーをあけるわけにもいかないから選抜はさせてもらうぞ!」

 

 ロビンマスクがリーダーシップをとって発言した。

 

「ならばわしもいたほうがいいじゃろ?」

 

 唐突にハラボテが現れた。

 

「委員長! あなたはもう引退した身、我々に任せてください!」

 

「イケメンやジャクリーンがいない今、誰がこの闘いを治めるんじゃ? わしでは不安とは思うが、その、年寄りの最後の我儘と思って仕事させてくれ」

 

「委員長……」

 

「ミートの力もできれば借りたいが、奴は今アレキサンドリア図書館におる。過去の世界のミートと脳を同化させるためにうかつに触れられない状態じゃ。その状態を解除した場合、ミートの脳に大きなダメージを与える恐れがある。それに過去にいっている超人達にいらぬ心配はかけたくない。我々の力だけでなんとかするんじゃ!」

 

「はい!!」

 

 伝説超人(レジェンド)一同は大きな声で返事をした。

 

 

 さて、場所は変わり女子高、私立白薔薇高校。

 一人の超人が学校の屋上にいる。

 その超人は液体状となり、床の隙間にしみこみ、学校の三階の廊下に液体となって落ちた。

 そして、元の人型へと戻った。

 

「うわぁー!! 水が人になったーーっ!?」

 

「こ、怖いーーーっ!」

 

 女子生徒達がその非日常的な様子を見て驚いた。

 

「ウルルル、僕はティアーマン、悲しみが僕の強さだ」

 

 ティアーマンと名乗る超人は透き通ったボディをし、目から涙を流しているような模様が顔についている。

 

「僕には分かる、悪い奴がここにいる」

 

 ティアーマンが一人の女子生徒へと視線を向けた。

 

濃縮涙(コンセントレイトティアー )!」

 

 ティアーマンは女子生徒へ向かって勢いよく液体を飛ばした。

 

バシャア!

 

「うわっ! いきなりなにすんのよ!」

 

「ウルルル、お前は虐めをしているな、その報いを受けてもらう」

 

「うっ、アガァーーーっ!!!」

 

 女子生徒は苦痛の悲鳴をあげた。

 体中から水分が飛び出し、段々体が干からびていく。

 干からびた女子生徒は息絶えた。

 

「いやぁーーーーっ!!!」

 

「キャァーーーーっ!!!」

 

 周りの女子生徒が悲鳴を上げた。

 

「僕には分かる、この中にまだ悪い子供がいる」

 

 ティアーマンは狙いをつけたかのように、更に濃縮涙(コンセントレイトティアーズ )を数発発射した。

 何人かの女子生徒が被弾し、先ほどの生徒同様干からびていった。

 あたりは阿鼻叫喚だった。

 

「な、なによこれ、ひどいわ!」

 

新世代超人(ニュージェネレーション)の主戦力がいない時に、最悪の事態だわ!」

 

 前川たまきと恵子が騒ぎを聞きつけて現れた。

 

「ウルルル、そこのガングロちゃん、君は過去にそのそばかすちゃんをいじめたようだね」

 

 前川たまきが過去に恵子にカツアゲをしていた記憶を思い出し戸惑う。

 

濃縮涙(コンセントレイトティアーズ )!」

 

「た、たまきーーっ!」

 

 恵子がたまきをかばうように正面に立った。

 

「よけろーーっ! 僕は君を殺したくない!」

 

 ティアーマンが慌てたように大きな声で叫んだ。

 突如、恵子の前に人影が現れた。

 

ブフォー!

 

 その人影は勢い良く吐き出した息で、濃縮涙(コンセントレイトティアー )を吹っ飛ばした。

 

「ムンタ、買い物帰りでこんな場面にでくわすとは」

 

 そこには、超人OKANの姿があった。

 




観戦無料の出血大サービス!


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お仕置きの時間の巻

母親には命を賭してでも守るものがある!


「ウルルル、君は僕の失敗をカバーしてくれたのかな? それとも、邪魔しに来たのかい?」

 

「子供がいるからね、この惨事は他人事には思えなかったのだ。子供を一人前に育てるまで守るのが母親の仕事ムンタ」

 

 ティアーマンに対し、OKANはきっぱりと自分の主張を述べた。

 

「つまり邪魔するってことだね、ところで一人前に育てるだって? 君は一見母親に見えるが、その子供が根っからの悪人だとしても放棄せずに一人前に育てるのかい?」

 

「例え根っからの悪人だとしても、子供は可愛いもんだ。しかし、人様に迷惑をかけんように自分を律せるように厳しく育てていくムンタ。たとえその子に殺意を抱かれるくらい恨まれてでもだ」

 

 ティアーマンはOKANの考えに感心した態度をとった。

 

「ほう、君のような母親が多ければ、僕がこんなことをする必要もなくなるだろうな。しかし、こんなことでも邪魔をするやつはつぶさないとね!」

 

 ティアーマンが指を鳴らすと、学校の校庭のど真ん中にリングが出現した。

 校庭にいた生徒たちは突然のことに驚いた。

 

「君も超人だろう! ならばリングの上で決着をつけようじゃないか!ウルーーーッ!!」

 

 ティアーマンは校舎の3階の窓からリングの上に飛び移った。

 

「ムンターーーーッ!!」

 

 OKANも続いてリングに飛び移った。

 

「最近話題となっている人間を襲った謎の襲撃事件、さっき速報で飛び込んできたガゼルマン、デストラクションの試合から察するにお前は『この世を浄化する者達』の一人か?」

 

「うん、そうだよ。僕もミスターUSBやランバージャッカーと同じさ。君は無名の超人のようだけど、大丈夫かい? 僕も強いよ」

 

「なめるなよ小僧、怪我のために超人オリンピックに出られなかったが、ロシアではイリューヒンに勝るとも劣らない実力をもっていると言われているムンタ」

 

「OK、OK、では試合を始めますか」

 

「では、実況兼解説はこのアデランスの中野さんが務めさせてもらいま~す♪」 

 

 どこからともなくアデランスの中野さんが現れた。

 中野さんが持っていたゴングを鳴らし、試合が始まった。

 

「先手必勝! 涙弾丸(ティアーショット)!」

 

「ティアーマン! 目から勢いよくピストルの形状をした液体を出したーーーッ!

 

 OKANはとっさに反応してよけようとはしたが、涙弾丸(ティアーショット)が左肩をかすめた。

 

「グウウ~~ッ」

 

「あぁ~っと、OKANの肩に技が命中してしまったーーーッ!」

 

「よくよけたね、並みの超人だと心臓を貫かれておわりなのにね」

 

「ムンタ~~ッ」

 

「OKAN! アイアンクローでティアーマンの顔を掴んだ!」

 

「どんな固い蓋をも開けてきた握力、とくと味わうがよい」

 

 OKANの握力で、ティアーマンの頭がメリメリと音を立てていく

 

「ウルルル、なかなかの握力だね。しかし、悲しみがあればこんな技を脱出するのはたやすいよ」

 

 ティアーマンの目から涙があふれた。

 

「私は子供が涙を見せても容赦はしない性質(タチ)でね。そんな泣きで手を休めると思……!?」

 

「気づいたみたいだね、この涙はアイアンクローから抜けるためのものさ」

 

「ティアーマン! 涙による滑りで、OKANのアイアンクローから脱出した!」

 

「ならば腹を責める!」

 

「OKAN! ミドルキックをティアーマンの脇腹にあてた!」

 

 ティアーマンは苦痛の顔をし、腕のガードが下がった。

 OKANはそこへすかさずハイキックを当てにいった。

 

「なんちゃって」

 

「ティアーマン! ハイキックの体勢のOKANの軸足を取り、タックルにいったーーッ! ティアーマン! マウントポジションをとった!」

 

「女性の顔を殴るのはあまり良い気はしないが、容赦はしないよ!」

 

「ティアーマン! OKANの顔面に容赦ないパンチの嵐を浴びせていく!」

 

「わたしは幼い頃に母親の鉄拳制裁をよくくらっていたから、慣れているよこんなもん」

 

「OKAN! ティアーマンの膝をつかんでティアーマンの体を倒すように押した! ティアーマンの体勢が崩れたところでブリッジでティアーマンを弾き飛ばした!」

 

「それって厳しいを通り越して虐待じゃないかな? そういうのは許せないね」

 

「確かに私が幼い頃はこのクソババアめ! とは思ったが、今になってみれば、自分が嫌われてでも一人前に育てていくという心を私の母親は持っていた。だから母には感謝している」

 

「そんな風に思える君の心の強さは羨ましい。そんな心を持っていたら、僕は自殺なんてしなかっただろう」

 

「自殺?」

 

「そう、かつて僕が人間だったころ、同級生のいじめを苦に自殺したのさ」

 

「……」

 

 OKANは何もしゃべらないが、真剣な顔をして、ティアーマンの話を集中して聞く。

 

「分かるかい、同級生も先生も親も誰一人味方してくれない四面楚歌の気持ち! 常軌を逸した暴言・暴力の苦しみ! おまけに自殺の遺書まで書かされたんだぜ! 僕のせいで家庭もボロボロ、母はうつ病になり、父は家のいざこざが嫌になって出ていった! 僕なりにあらがってはみたけど、僕は弱かった。だから人生から試合放棄するしかなかった。こんなことは虐められたやつにしか分からないだろうけどね。」

 

 ティアーマンは号泣しながら自分のことを語った。

 

「ティアーマン……」

 

 たまきは何か思うかのような顔をしている。

 恵子も同じような態度である。

 場の流れを変えるかのように怒りの表情に変えた

 

「だから僕はいじめをするやつは死ねばいいと思っている! 悪人は反省などしない! あの世からいじめっ子を見たが、反省したふりをしていただけだった! 心からの謝罪はできない! 悪人はいつまでも悪人さ!」

 

「そうか……」

 

 OKANはゆっくりティアーマンの元に歩み寄った。

 

「お前の人生の悲惨さを同情しても何も変わらないだろう、ならば」

 

バシン!

 

「あぁーっと! OKANの強烈なビンタがティアーマンの顔面をとらえた!」

 

「グウウ~~ッ」

 

「お前の荒み切った性根を叩き直す!」




全国のお母さんを代表してお仕置きだ!


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涙の感染の巻

悪い子だ!悪い子だ!悪い子だ!


「OKANの容赦ない強烈なビンタがティアーマンをとらえたーーっ! OKAN更に追撃でティアーマンの右わき腹にボディブロー! そして右アッパー! 攻撃が確実に効いているーーーっ! ティアーマンの涙の告白など気にしない猛攻だーーーっ!」

 

「ようし、この勢いで更に……」

 

「やめてーーーっ!」

 

 観客の一人の女子生徒が叫んだ。

 

「私その人の気持ちよく分かる! その人は辛い思いをしてきた! こんなこと言ってあれだけど、私を虐めていた子が死んで良かったと思っているの! これ以上その人を苦しめるのはやめてーーーっ!」

 

「そうよ! そうよ! 私だっていじめっ子に何度もカツアゲされたり、自慢だった長い髪も切られたのよ! だからこそ言える、ティアーマンは自分の傷を癒してほしいのよ! OKANのやり方は間違っている!」

 

 別のショートカットの女の子も自分の思いを叫んだ。

 

「ティアーマン頑張ってーーーっ!」

 

「ティアーマン! ティアーマン!」

 

 他の女子生徒も同調していった。

 

「やめろお前ら! 可愛い生徒を殺した超人を応援するなんておかしいぞ!」

 

 男性教諭が女子生徒を静止するように叫んだ。

 

「だまれーーっ! あんたもいじめを見て見ぬ振りしていたの分かっていたんだからね! あんたもティアーマンに殺されればよかったんだ!」

 

 女子生徒の一人が先生に向かい強気な態度で発言した。

 

「これは驚きです! 私も長年リングで試合を見てきましたが、応援される敵を見るのは非常に珍しい! いやぁ~私も幼い頃からヅラだったので苛められていたんですよ。ティアーマンの気持ち、女子生徒たちの気持ちはよ~く分かります」

 

「ウルルル、可愛い娘さん達よ、この試合が終わったらその先生も始末してやろう」

 

 男性教諭の表情に恐れの感情が現れた。

 

「ところでOKAN、今君はどんな気持ちかな~?」

 

 一方、OKANの表情は淡々としている。

 

「ふっ、私を応援するものがいなくてもかまわないムンタ。私のやり方を理解できる子供がいるとは思っていない。でもね、理解してもらえなくても私は私の主義を変えるつもりはない! 例えこの学校の皆を敵にしてでもだ!」

 

 OKANは堂々たる態度で発言した。

 

「OKAN! ここにあなたを理解できる人がいる!」

 

 恵子が突然に叫んだ。

 

「私もティアーマンみたいにたまきちゃんに苛められていた! みぞおちに喰らった膝蹴りの痛さは今も忘れていない! 未だに怖かった頃のたまきちゃんが夢に出てくる! でも凛子ちゃんが環境を変えてくれた! 凛子ちゃんは私のようないじめられっ子を救うためにわざと憎まれ役を買って出たの! いじめは少なくなったけど、おかげで凛子ちゃんは友達がいなくていつも一人で夜遊びすることが多かった! 凛子ちゃんは自分を犠牲にしてまで、たまきちゃんと仲良くなるきっかけを与えてくれたの! 最初はたまきちゃんが怖かったけど、次第にたまきちゃんの良さが分かってきた! そして一人ぼっちだった凛子ちゃんとも友達になろうと思った! 今ではたまきちゃんも凛子ちゃんも大好きな友達なの!」

 

 前川たまきが唐突に泣き出した。

 

「ごめんね、ごめんね……謝るタイミングを失っていたけど……ずっと謝ろうと思っていた。凛子に脅されて、最初は渋々と恵子と付き合っていたけど……仲良くなって分かったの。どうしてこんな良い子を苛めていたのか。私を許してなんていわない! でも罪の償いがしたい! どうすればいいの! 答えて、答えて恵子!」

 

 恵子が右手で平手打ちのそぶりを見せる。

 前川たまきは目をつぶるが、恵子は軽く手のひらで前川たまきの頬に触れる程度だった。

 

「これでおあいこだよ。許すことなんて何もないよ」

 

「ウワァーン!」

 

 前川たまきが一層涙の量を増やして、恵子に抱き着いた。

 

「ほう、反省したふりをするいじめっ子はよく見てきたが、この娘は心からの謝罪をしている。先ほどは狙ってすまなかった。」

 

 恵子と前川たまきに向かってティアーマンは頭を下げた。

 

「恵子ちゃんと言ったか、ありがとう。こんな見た目でも私の心はか弱い女性だ。今の言葉は私にとって心の支えとなるムンタ。凛子ちゃんか、見たことはないが、大した娘さんのようだ。きっとお母さんの教育がよかったのだろう。」

 

「ウルルル、二階堂凛子の事は僕も良く知っている。彼女が捨て子であること。彼女の母親とは血がつながっていないこと。そして、人間離れした身体能力を持ち合わせていること!」

 

「よく知っているのが気になるな、一般の女子生徒一人に対してその知り様。何か目的があるとみられる。」

 

「ウルル、ご察しのとおり、僕達は今彼女に関することを捜査中でね、色々と調べさせてもらったんだよ。例えば彼女のスポーツテストの結果、全国の男子高校生の平均を上回る数値をたたき出している。また、悪行超人THE・リガニーの一撃を食らっても、怪我一つなく気絶しただけだった。更に、超人オリンピックではジェイドとの二人三脚で驚異的な力を見せた。そして極めつけは、皆の記憶にも新しい新世代超人(ニュージェネレーション)達が乗ったタイムマシンに潜入し、無事に過去に行ったこと。あのタイムマシンに載れば人間には耐えられない衝撃を受ける。ゆえに、言える結論はただ一つ。」

 

「もしや……」

 

「そう、二階堂凛子は超人なのだーーーーっ!」

 

「ティアーマンの口からとんでもない事実が明かされたーーーっ!」




凛子超人説!?


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OKANとぼくと時々JKの巻

アンビリーバブル!


「でたらめ言うな泣き虫野郎! 確かに凛子はちょっと身体能力は高いし、超人レスリングは好きだけど超人なわけないだろ!」

 

 前川たまきがティアーマンに反論した。

 

「そうだよ! 凛子ちゃんは普通の女の子! いくらなんでもこじつけがすぎる!」

 

 恵子も同じくティアーマンに反論する。

 

「そういうと思ったよ、多少確信を得ているところはあるが、半信半疑なところもある。今現在も僕達の仲間の一人が捜査中さ。」

 

「仲間だと、ではその仲間についても教えてもらおうか」

 

「OKAN、いくら僕でもそこまでサービスは良くない。主婦の君ならわかると思うけど、スーパーの試食は気前の良いサービスのように見えるが、魚釣りの餌と同じさ。魚を得るのと同様、お客様に買ってもらうための餌だ。多少は僕にも利益がないとこれ以上のサービスは望めない」

 

「そうか、ではお前に勝ってからその情報を買ってやろう! ムンター!」

 

「OKAN! 真正面からティアーマンに突っ込んでいく!」

 

濃厚涙(コンセントレイトティアー)!」

 

「ティアーマン! 多くの女子生徒の命を奪った濃厚涙(コンセントレイトティアー)を放った!」

 

「シベリアの突風!」

 

「OKAN! 口からものすごい勢いの風を生み出した! 濃厚涙(コンセントレイトティアー)が吹っ飛ぶ! ティアーマンも突風に耐えきれずに後ろに吹っ飛んだーー!」

 

「ウルル~」

 

「さあこれでフィニッシュだ! OKANシーツ絞りリバース!」

 

「出ました! OKANの必殺技(フェイバリットホールド)! 通常ですと、この技は相手をアンクルホールドにとらえて、そのままブリッジして相手を絞り上げる技です。この技は両手で相手の首をとらえ、足で相手の足に関節技を決める、まさにオリジナル技のリバース版というわけですね~はい」

 

「ウルル~、忘れたか~! 僕の涙で君のアイアンクローを抜けたのを!」

 

「忘れてないさ、だからこそ、今日の買い物で手に入れたこいつを使っている」

 

「やや! OKANの手にいつの間にかゴム手袋がはめられているぞー!! これではティアーマンが涙を流しても抜けない! OKAN更にティアーマンを絞り上げる!」

 

「さあここらでごめんなさいをすれば許してやる! 私もそこまで鬼ではない!」

 

「ウルルル、流石にキツイねこの技は、でも脱出するよ! 濃縮涙(コンセントレイトティアー)!」

 

「無駄だ! うっ、滑る!?」

 

「涙はアルカリ性ということを知っていたかい? アルカリ性の液体はヌルヌルした感触のものが多い。ましてやそれを濃縮したものであれば、ローションのごとく滑る液体となる!」

 

「ティアーマン! OKANのシーツ絞りから脱出だーーーっ! ティアーマン、OKANの背中へ顔の照準を合わせた!」

 

「くらえ! 濃縮涙(コンセントレイトティアー)

 

「ぐわぁーーーっ!」

 

「ティアーマンの濃縮涙(コンセントレイトティアー)がOKANの背中に炸裂! OKANの背中から大量の水分が出てくる!OKANたまらずダウンだー!」

 

「浸透圧を知っているかい? 君は主婦だから漬物をよくやるだろう、それと原理は同じで塩を使えば水分を出すことが出来るんだ。涙はしょっぱい、濃縮すれば当然塩分の高い液体となり、水分を瞬時に大量に出すことが可能となる!」

 

「ぐぅぅ、背中が熱いムンタ……」

 

「OKAN、その熱さは僕やいじめられていた生徒の悲しみの苦痛でもある。君は悲しみを理解したふりをして実は理解していなかったんじゃないのかい? 自分の意見を押し通すために、理解したふりをしていたんじゃないのかい? 」

 

「ぐがが……」

 

「僕はこの世からいじめをなくしたい、誰も涙を流さない世界を作りたい、それはどんな超人の信念にも勝ると自負している! 」

 

「ティアーマン! 応援するよ! これからも頑張って!」

 

「ティアーマン! ティアーマン!」

 

「ありがとうティアーマン!」

 

「ティアーマン、そこの先公やっちゃってよ!」

 

 女子生徒から歓声や拍手が飛んできた。

 

「生まれてこの方、人から応援されることはなかった。非常に心地よい、救われた気分だ。ありがとう女子高生の諸君、そしてリクエスト通りそこの教師の命をとってやろう! 涙弾(ティアーショ)……な、涙が出ないだと!?」

 

「これはどうしたー! ティアーマンから涙が出ない!」

 

「……簡単な事ムンタ……当たり前のことだが、悲しいからこそ涙が出る……娘さんたちの優しい心がお前の悲しみを理解できた。それは、自然とおまえの悲しみを消す事につながったのだ……皮肉なものムンタ」

 

「そ、そんな! し、しかし僕の優勢には変わりない! 現に濃縮涙(コンセントレイションティアー)の効果は続いている」

 

「普通の者だったらここで終わりだ。だが、主婦なら逆転できる!」

 

「OKAN! エプロンから何か箱を取り出した! 箱の中身の白い粉を背中に振りかける!」

 

「重曹ウォッシュ!」

 

「OKAN! 重曹のついた背中をゴム手袋でゴシゴシと洗う! 濃縮涙(コンセントレイトティアー)もとれていくぞーー!! 重曹は掃除のお供としてよく使われております! まさにOKANの知恵袋!」

 

「くぅ、これでもくらえ!」

 

「ティアーマン右ストレートを繰り出す! OKAN、左腕で右ストレートを払い、左のストレートを逆に食らわした! ティアーマンダウン!」

 

「もうお前に対して容赦はしない!」

 

「OKAN! ティアーマンの両足をとり、ジャイアントスイングだ! そのまま、回転の勢いを増し、ティアーマンの体が垂直になっていく! その状態でティアーマンを空中に放り投げた! ティアーマンの体が空中を回転しながら上昇していく!」

 

「ムンターー!」

 

「OKAN! 空中で回転するティアーマンをベアハッグでとらえる! そのまま頭上からリングに落ちるように両者落下だ!」

 

「シベリアの雪雪崩ーー!!」

 

 ズドォーーーン!




雪崩警報発令!


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奇跡の雨の巻

雪崩警報解除!


 リングが大きな音を立てた。

 技が決まり、OKANはティアーマンから離れた。

 ティアーマンの体がゆっくりとリングに倒れていった。

 

 カン!カン!カン!

 

「OKANやりました! 34分27秒でティアーマンをKOしました!」

 

「OKANが勝ったから、もうこれ以上の被害者は出ないけど、悲しい勝利だね……」

 

「出来ればあいつには改心してもらいたかった」

 

 恵子や前川たまきが勝敗について思った事を述べた。

 

「うぅ、ティアーマン……」

 

「ティアーマンが死んじゃったよ……」

 

 先ほどまで、ティアーマンの気持ちを理解して応援していた女子生徒たちが泣き出した。

 一人、また一人とその涙が感染していった。

 それに追随して、空色が怪しくなってきた。

 

 

「昔、これに似た光景を見たことがある、覚えている」

 

 ヘラクレスファクトリーに残り、試合を観戦していたメンバーの一人、ラーメンマンがつぶやいた。

 

 

「むっ、この雨はこの学校にだけ局地的に降っているムンタ、そして、しょっぱい」

 

「ウ……ウルル……何故だか知らないが……死にかけの体に力を与えてくれる雨だ……」

 

「あぁーっと! ティアーマンが立ち上がったー!」

 

「まだ闘う気なのあいつ!OKAN! 早くとどめを!」

 

「待て、あいつの眼を見ればわかる。もう人を傷つけようという意思はないムンタ。それに、私はやつを殺す気で技を出した。可哀そうだが、やつはもう……」

 

 よろよろとしながらティアーマンは語り始めた。

 

盗賊(バンデット)マン……勝者への敬意として、それだけは教えるよ」

 

「仲間の名前か、了解した。もうお前はゆっくり休め」

 

「休む前に……少し話をを聞いてくれないか?」

 

「うむ」

 

「僕は……いじめのない世界を作りたかった……涙を流す人々を助けるヒーローとなりたかった……そう、キン肉マンのようなヒーローになりたかった……もう、なれないけど……」

 

「何を言う! 今のお前はまごうことなきヒーロー、正義超人だ! この雨で一度復活できたのが何よりの証だ! むしろ私の方こそ正義超人失格ムンタ! お前の魂は救えても命まで救えなかったのだからな……」

 

「最後に……僕の願いを君に託したいんだ……いいかな?」

 

「分かった、約束の指切りげんまんをしよう」

 

 そういって、OKANがティアーマンに小指を出した。

 ティアーマンもそれに応じて、ゆっくりと小指を差し出す

 

「や……約束だよ……指切りげんまん」

 

「嘘ついたら針千本のーます」

 

「ゆーび……きっ……」

 

 ティアーマンが最後の言葉を言い終える前に息絶えた。

 ティアーマンの顔からは悲しみを表す涙の模様は消えていた。

 雨もティアーマンの命の終わりを告げるようにやんでいた。

 OKANも、試合のダメージが相当あったため、突然倒れた。

 

「OKAN!」

 

 恵子やたまきがすぐに駆け寄った。

 

「多少傷つきすぎた……自力で動くのは少しキツイムンタ……救急車を頼むよ」

 

 

 

ところ変わり、大阪のコリアンタウン

 

「うわぁ~殺されるニダ~!!」

 

「サルリョヂョ(助けて)ーー!!」

 

「ピカー!!」

 

 一人の超人が次々と在日の韓国人を殺していく光景があった。

 

「待ちな! それ以上同胞を傷つけるな!」

 

 突如、一人の男がその超人に飛び蹴りを食らわした。

 その超人は右腕で飛び蹴りをガードした。

 飛び蹴りを食らわしたのは、チヂミマンであった。

 

「ピ~カカ、ユーは確かチヂミマンだな」

 

「いかにも、俺がチヂミマンだ! 大阪の警護をテリー・ザ・キッドのいない間任された! お前の名前を聞こう!」

 

「ミーはライトマン! このワールドに光を照らすためにやってきた!」

 

「光を照らすだと!? お前のやったことはただの虐殺ではないか!」

 

「シャーラップ! 日本に巣くう外国人どもはこの世のシャドーとなる存在だ! ユーも騒動の事を知っているんだろう? ならばミーの正体も自然とアンダースタンドできるはず!」

 

「さしずめ、元はガチガチの右翼の人間ってところか? まさに(ライト)マンだな」

 

「ピ~カカ、大体当たりだ。しかし、(ライト)こそ正義(ライト)なのだ! 自分の国を守る考えの何が悪い! そもそも日本はお人よし過ぎる、そこがいいところでもあるが短所でもある。だからよく他国にひどい目にあわされているのだ! 歴史がそれを語っている! 国際交流など言うが、そんなものは軽い(ライト)でいいのだ! それが友情までいけば、相手に利用される道具になってしまうのだ!」

 

「お前の話は分かった。さて、ここらでその手の話は辞めてもらえんかな?」

 

「そういえば、ユーの国では反日法なるものがあったな、ジャパンに都合の良いことは言えないというものだったか? コリアンでも言論のフリーダムが規定されているのに矛盾するとは思わないか? 」

 

「だからそれ以上辞めろって言ってんだ! こちとら嘘も真実も言いづらい立場なんだ!」

 

「ピ~カカ、察してやるぞ、ユーのフィーリングを。 ところでユーは本当にミーを止めるつもりか? ミーの記憶だと、ユーは超人オリンピックでコンディション最悪のケビンマスクに負けたんだろ? 正直言ってユーは雑魚だ」

 

「ちっ、ああそうだよ! 腹ただしいが俺は舐めプしていたケビンマスクに負けたんだ! 祖国では弱小超人だの、国辱マンだのさんざん言われたんだ!」

 

「ピ~カカ! 笑ってはいかんが笑ってしまうな! では、その怒りをリングにぶつけて見るのはいかがか! 確か超人オリンピックの際に、通天閣にリングがつくられたんだったな! そこへ向かうぞ!」

 

 チヂミマン、ライトマンは通天閣へと向かった。

 通天閣では早くもリングが準備されており、ハラボテの姿があった。

 

「突然ながら、この試合は超人委員会が管理させてもらう! 互いに不公平のないジャッジを下す事を約束する! 二人とも了承してくれるかな!」

 

「アンダースタンド!」

 

デェ(はい)!」

 

 両者、リングに入り臨戦態勢となった。

 ゴングが鳴り、チヂミマンが先手を仕掛けた。




捲土重来(けんどちょうらい)の時は来たりっ!!


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燃えろ鉄板焼!の巻

お前を料理してやるぜ!


「チョー! アチャー! 」

 

「チヂミマン! パンチや蹴りを連打していくが、そのすべてをライトマンに避けられる!」

 

「ピ~カカ! 遅い! お前の動きは遅すぎる! チュウ!」

 

「ライトマン! チヂミマンのパンチに合わせて、ライトマンはカウンターの掌底を放った-!!」

 

「ギャハ!」

 

「そうれ~、まだまだミーの光速の攻撃は終わらない!」

 

「ライトマンは目にもとまらぬ速さでパンチをチヂミマンの顔面に連打していく! 猛攻に耐え切れず、チヂミマンはダウン!!」

 

「ミーは光のごとく、試合もスピーディーに決着をつけるタイプなのだよ。さっさと決着をつけるためにこの技をユーズしよう。サンレーザー!」

 

 ダウンしていたチヂミマンがよろよろと立ち上がってきたところで、ライトマンの右の手のひらから、光の光線が飛び出す。

 その光線はチヂミマンの顔面をとらえた。

 

「ぐあああ!!! め、目があああ!!!」

 

 チヂミマンは悲鳴をあげて、両手で目をおさえた。

 

「あーっと! ライトマンの掌から放たれた光線により、チヂミマンの目がつぶされた!!」

 

「しばらく、お前の視力はない状態となる。これで止めは刺しやすくなるというわけだ! ピカー!」

 

「ライトマン! チヂミマンにむかって飛び蹴りを放ったーー!! しかし、チヂミマン! それを分かっているかのように状態を横にそらし、飛び蹴りをかわしたーー!! これはどうしたことかーー!!」

 

「ピカ! 苦し紛れのディフェンスか! 二度もラッキーはコンティニューしない!」

 

「ライトマン! 右のストレートを放った! それに合わせ、チヂミマンが左上段まわし蹴りを放った! まわし蹴りは顔面をとらえ、ライトマンたまらずダウン! 何と目の見えないはずのチヂミマンが技を当てているぞーー!?」

 

「ピカ!? 何故目の見えない状態で攻撃を正確に当てられる」

 

「俺はケビンマスクに負けて以来、日本で武者修行をしてきたんだ。テコンドーの起源である空手を学ぶためにな。日本では韓国人の俺を冷遇するやつが多い中、北海道で俺に対し優しく接してくれた男がいた。そいつは北海道のごとく器の大きいやつだった。空手に関してめっぽう強いやつでな、俺の武者修行の助けになってくれた。やつのおかげで俺は相手の気を読む力を手に入れた」

 

「気をリードするだと? そんなコミックみたいなファンタスティックな事あるのか?」

 

「そう、あるんだよ。これが俺とEZOマンとの友情により身に着けた俺の秘儀『心眼』だーーー!!!」

 

「チヂミマン! ライトマンの右わき腹を狙ってトリョチャギ(ミドルキック)! ライトマンすぐに右腕でガードする! しかし、チヂミマンの蹴りの軌道が大きく変わり、ライトマンの右側頭部をとらえた!」

 

「ピ、ピカカ~」

 

「あんまし俺を舐めんじゃねえぞ! この右翼野郎!」

 

「そうだな、ではお言葉に甘えて本気を出させてもらうか!」

 

「ライトマン! 光速の右ストレートをチヂミマンに放つ! チヂミマン! 顔を右にそらしたが、頬に切り傷が出来る! あぁーっと! ライトマンの右のハイキックがチヂミマンの頭をとらえた! 右ストレートはハイキックへの布石だったーー!! チヂミマンダウン!」

 

「これがミーの光速蹴撃(こうそくしゅうげき)だ!」

 

「これきし~!!」

 

「チヂミマン! 左のフェッチュ(後ろまわし蹴り)! ライトマン! しゃがんで蹴りをかわし、チヂミマンの右の軸足を狙ってアリキック! チヂミマンの体勢が崩れた!」

 

「テコンドーは見た目は派手で威力は高そうだ、しかしスキが大きく、とても実践向きではない! 道理でグロッキーなケビンマスクに通用したわけだ! こんなものがコリアンの国技とは笑わせてくれるわ! ピ~カカ~」

 

「黙りやがれ! 俺を悪く言うだけでなく、わが祖国の誇りであるテコンドーを馬鹿にしやがって!」

 

「コリアにプライドなんてものがあったのか? そもそも、コリアは何かと嘘をつく! 嘘の歴史を語り、挙句の果てに他国の誇りである文化までも韓国起源と称する始末! 自分の国を正直に見せられない、そんな国のどこに誇りがあるというんだーー!!」

 

「ならば、俺がこの試合に勝って韓国の誇りとなろう、最強の韓国戦士チヂミマンとして!」

 

「それこそがまさに嘘ではないかーー!! チュウ!」

 

「ライトマン! チヂミマンに右フック! 左のバックハンドブロー! 右ハイキック! なんと攻撃を連続で散髪も当てた! チヂミマンまたもダウン!」

 

「ピカカ、どうだミーの三回転連撃(スリースピンアタック)は? ユーの誇りであるテコンドーを徹底的に潰すために、ミーも打撃戦にとことん付き合ってやるぞ!」

 

「うぐぐ~、くそったれ~」

 

「チヂミマン、目が見えない状態で健闘しましたが、もはやこれまでかーー!!」

 

「だらしねぇぞ! 国辱野郎ーーー!!」

 

 どこからか、チヂミマンに対して罵声が飛んできた。

 

「あぁもう! くそぅ、一体誰だ!」

 

 チヂミマンが罵声の聞こえた方向を見た。

 視力は回復しておらず、ぼんやりとしたシルエットしか見えないが、チヂミマンには見覚えのある人物がいた。

 

「カ、カナディアンマン先生!?」

 

「これはどうしたことだー! あの元祖国辱こと、カナディアンマンがいるぞーー!」

 

「ちっ! なんで俺の時だけ実況は失礼になりやがるんだ! まぁいい、やいチヂミマン! かつてお前と同じように、超人オリンピックでロビンの血にあっさり負けたカナダの英雄がいた! そいつは、それ以来捲土重来を果たそうという気持ちはあったが、むしろ恥を重ねる始末だった! その原因はそいつの友に対する甘えであった! その友の名はスペシャルマン! いいやつではあったが、仲良く戯れるだけの存在で、互いに切磋琢磨し研鑽しあう気持ちが少なかった! もしも、お前が友人EZOマンと戯れるだけの仲ならこの戦い負けても仕方ねえさ! だがな、お前はEZOマンのおかげで心眼っていうすげえ武器をみにつけたじゃねえか! お前の武者修行に付き合ってくれた友の気持ちを無駄にするんじゃねぇーーー!!!」

 

 その言葉を聞いた、チヂミマンの体が発光し始めた。




(カナディアンマン)の熱き激励に闘志の炎蘇る!!


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誇りが選んだ答えの巻

韓国と北海道の絆が勝利へ導く!!


「ピ~カカ、フレンドか。フレンドのためなどと、余計にプレッシャーをかけるではないか。かえって今の奴には逆効果、やはり人との関係はライトなものであるべきなのだ。お前もそう思うだろ、チヂミマン」

 

「うるせぇ!」

 

「ピカ!?」

 

「あんがとよ、カナディアンマン先生。正直、ヘラクレスファクトリー時代はあんたをそんな先生らしく見てなかったが、初めて先生らしいと思ったぜ。目が覚めた、EZOマン、俺に力を貸してくれ!」

 

「チヂミマン! ライトマンの猛攻でグロッキーな状態になっていたが蘇ったーーー!!」

 

「ピカカカ、急に生き返りおったか。だが、そうこなっくちゃあ面白くない!」

 

「ライトマン! 左ジャブをチヂミマンに連打する! しかし、チヂミマン! それをすべてスウェーで避ける!」

 

「そうら! 次はこっちの番だ!」

 

「チヂミマン! 左のストレートをライトマンの顔面へ当てに行く! しかしライトマンそれを見切ってガード! いや、当たっている! 右のボディブローがライトマンの腹をとらえた!」

 

「山突き!」

 

「ビカッ! これは空手の技か!?」

 

「EZOマン! お前の力が役に立ったぜ! お次はこれだ! ダルマ落とし頭突き(パッチギ)

 

「ビカ~!!」

 

「チヂミマンの強烈な頭突きがヒット! ライトマンの体が後方にぐらつく! ライトマンに技が効いたところで、チヂミマン! すかさず、左フック! しかしライトマン、これを見切り右手で拳をつかんだ!」

 

「ピカカカ、やっとミーと互角に戦えるパワーを出してきたようだな!」

 

「ああ! 存分に俺の力を味わいな!」

 

「ピカー!」

 

「両者激しい打撃戦! かたや技を当てれば、おかえしで技を当て返す! 観客も大盛り上がりです!」

 

「いいぞニダー! そのままその殺戮者をやってしまうニダー!」

 

「今だけはお前を応援してやるニダーー!!」

 

「蹴術石鍋割り!」

 

「ぐぅ! それなら、三回転連撃(スリースピンアタック)

 

「のがぁ!」

 

「い、いかんあのパターンは?」

 

 カナディアンマンが不安げな顔をしている。

 

「どうしたカナディアンマンよ?」

 

 委員長のハラボテが問いかけた。

 

「あの消耗戦はいかん、俺が昔、パイレートマンと負けた時と同じパターンだ」

 

「ピカカ、どうした、動きが鈍ってきたようだな?」

 

「ぬかせ!」

 

「ピカカ、分らぬか、さっきまでユーの技をガードするのに必死だったが、今は楽に避けられる。二軍超人のボロがではじめたな!」

 

「ライトマン! チヂミマンに攻撃を連打! チヂミマン避けきれない!」

 

「これでおしまいだ、「五回転連撃(ファイブスピンアタック)」」

 

「ライトマン! 右フック、右肘打ち、バックハンドブローぎみに左肘打ち、左の拳、そして右ハイキックでフィニッシュ! チヂミマンダウン!」

 

「うがが……」

 

「ユーのマックスパワーはミーと同等のものだった。しかし、それを持続するのはノットイージーだったような。もうすぐにでもユーのライフをフィニッシュできる! しかし、ミーはジェントルマンだ、チャンスをやろう!」

 

「チャンス・・・・・・だと?」

 

「コリアヒューマンはよく謝罪と損害賠償というワードを口にするらしいな、ユーなりに誠意をこめて謝罪と損害賠償をすれば、人間として生かしてやるぞ」

 

 ライトマンはデストラクションを人間へと変えた転生石を取り出した。

 チヂミマンが這いつくばった状態で返答しようとする。

 

「……ほ、本当か」

 

「ああ、ライトマンに二言はない」

 

「……そ、そうか、では俺なりに誠意を込めた謝罪と損害賠償をするぜ」

 

 その様子をハラボテとカナディアンマンが緊張した面持ちで見る。

 

「チヂミマン、生きる選択肢をとることは逃げることじゃねぇ! 闘いを放棄しないって事だ! 俺はお前が命乞いをしても馬鹿にはしねぇ! 今日が屈辱という日になっても、次の機会に捲土重来を果たせばそれもチャラとなるんだ!」

 

 カナディアンマンが過去の敗戦を思い出しながら、自分の思いを叫んだ。

 

「カナディアンマン……」

 

 ハラボテはその気持ちを察して名前を言った。

 

「す、すまなかった、本当に……」

 

「ピカカカ」

 

「EZOマン」

 

「ピ!?」

 

 皆が驚愕の表情を見せた。

 

「日本人にすら冷遇された俺に……唯一優しくしてくれたお前に……お礼できなかったことを……お前の作った石狩鍋……うまかった……」

 

 チヂミマンはEZOマンが自分にしてくれた親切を思い出し、涙を流しながら謝罪を口にした。

 

「ば、ばかやろーー!!」

 

 カナディアンマンが泣きながら叫んだ。

 

「そして、賠償金はな……俺の命だ!」

 

 先ほどまで軽い調子でしゃべっていたライトマンも、チヂミマンの気持ちを察し、それに応じた態度をとった。 

 

「understand(理解した)」

 

 そう言葉を発すると、チヂミマンに向かって掌を向けた。

 

「EZOマンとやら、もしこのファイトを見ているのなら、ミーのフィニッシュ技はよ~くみておけよ」

 

 ライトマンが右の掌が虹色の光を放った。

 

「レインボーシャワー!」

 

「あ、あの技は!?」

 

 委員長ハラボテが驚愕の表情をする。

 

「ライトマンのレインボーシャワーを浴びたチヂミマンの肉が次第に蒸発していく! 残ったのは骨だけだーーー!?」

 

 この惨事には卒倒する観客が続出した。

 

 

 

 ところかわり、悪魔超人界にて

 

「ゲギョゲギョゲギョ~~」

 

 モニターに映し出された試合を悪魔(サタン)が観戦していた。

 

世界浄化者(ワールドクリーナー)か、気に食わない奴ら共だ。今の主力のいない新世代超人(ニュージェネレーション)達には荷が重すぎるようだな。早めに奴らの活動を認知し、人材を集めておいて正解だったわ」

 

「ムヒョヒョヒョ」

 

「ドヘドヘ」

 

「フィギュ~フィギュ~」

 

「クォックォクォ」

 

 四人の人影の顔・姿は確認しづらいが、超人であり、悪魔《サタン》の元に集っている。

 

世界浄化者(ワールドクリーナー)等とふざけた名前をしおって、この世は悪魔(サタン)の手によって醜く汚れた世界となるのだーーー!」




まさかの悪魔(サタン)様参戦!? 死の四人衆集結!!


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堕ちた交通標識の巻

黒焦げとなった鉄板焼き(チヂミマン)……


「ついに決着! 37分28秒でライトマンの勝利が決まったーー!!」

 

 ライトマンの勝利が決まり、在日韓国人が慌てふためいた。

 

「うわぁーー!! もうだめだーーー!! 殺されるーー!!」

 

「けっ、チヂミマンのやつ! どうせ死ぬならライトマンを道連れにしてから死ねばよかったのによ!」

 

 その言葉を聞いたカナディアンマンが怒りの表情をあらわにした。

 

「なんだとー!!その言葉取り消せー!!」

 

 カナディアンマンが拳を振り上げ、ヤジを飛ばした在日韓国人に向かっていった。

 ハラボテ委員長はカナディアンマンの腕をつかんで、それを制止する。

 カナディアンマンが腕を掴んだハラボテ委員長を振り返ると、ハラボテ委員長の平手打ちがカナディアンマンの頬をとらえた。

 

バシン!

 

「気持ちは分かる、昔のお前を見ているかのような腹ただしい発言があった。だがな、今は人間の命を守ることを優先せよ! 今ライトマンと対抗できるのはお前しかおらん!」

 

 ハラボテが厳しい表情をして、カナディアンマンを諭した。

 

「分かったぜ委員長。でもよ、正直あのピカピカ野郎は強い。この老体じゃあ頑張ってもせいぜいアイツの胸板に傷をつけるぐらいしかできんだろうな」

 

 冷や汗をかきながら、カナディアンマンは臨戦態勢をとった。

 

「何か早とちりをしていないか? 今のミーはそこの在日共を襲う意思はナッシングだ!」

 

 ライトマンの発言にどういうことだ? と言いたげな表情をカナディアンマンとハラボテ委員長が表した。

 

「チヂミマンとやらに免じて、今は在日共は襲わないことにした。しかし、EZOマンがもしミーとのファイトで負けるようなこと、もしくはファイトそのものを放棄した場合、在日の抹殺はリスタートする!」

 

「わ、分った! ライトマンよ、お前に一つだけ聞きたいことがある!」

 

「よし、アンサーしてやろう」

 

「お前さんが使ったレインボーシャワーは特殊なプリズムがなければ、出せないもの。普通の超人には使えない。どうやって使ったのかが気になるのじゃ」

 

「ピ~カカ、その程度のことならサービスでアンサーしてやろうぞ! それはな、50数億年前、神々の身勝手によって起きたあの事件が原因さ!」

 

「もしや、カピラリア七光線か?」

 

「ライトアンサーだ!」

 

 ライトマンの回想シーンとなる。

 

(あの当時、人間だったミーはカピラリア七光線を大量に浴びた。本来なら人間には無害なものだが、アンハッピー、ミーは例外的に死にかけたのだ。そんな時ある男が助けてくれた)

 

「すまなかった、私たち神々の身勝手により、お前の命を奪う事になった」

 

(死にかけのミーに優しい言葉をかけた男は、両手を合わせて祈りをささげた。祈りを始めてしばらくして、ミーのボディからパワーがみなぎる感覚があった。そう、これが人間から超人へ転生したということだ)

 

「どういうことだ? さっきまで死にかけていたミーにパワーがみなぎる!」

 

「すまんが、人間として蘇らせるとは出来なかった。代わりに、お前が大量に浴びたカピラリア七光線の力を利用し、超人ライトマンとして蘇らせた。お前の怒りをその拳で私にぶつけよ、私の気が収まらない」

 

「できないね。初対面だが、ユーからは大物を感じさせるオーラがある。そんなユーを殴るほど、ミーは器のビッグな人間、いや超人ではない。もし、怒りをぶつける時がくるとすれば、ユーを超えるパワーを身に着けた時だ!」

 

「バッバッバ、面白い男だお前は」

 

(それがミーの超人人生のスタートだったよ)

 

 ライトマンの回想シーンが終了した。

 

「もしや、その男、超人の神! お前たちこの世を浄化する者たちの首領か?」

 

「イエース、ミーたちを束ねる超人の神の名を持つ男、名はミスターノア!」

 

「なるほど、ここまでご親切に喋ってもらえるとは思わなかったぞ」

 

「ミーはライトマン、真実も明るみに出さないと気が済まないタイプなのだよ」

 

「ならば、ライトマン! 私はミスターノアと会って伝えたい! もうこのようなことは止めてほしいと! 」

 

「それは無理さ! 一度回り始めた水車は水が尽きるまで回りつづけねばならぬ。たとえミーが地獄に落ちようともだ! 引き続き、ミーは活動をコンティニューする! ピ~カカ~!」

 

 ライトマンはそう発言するとすぐに光となって消えた。

 

「ダメか、これ以上の被害者を出したくはないのだが……」

 

 ハラボテがライトマンのいなくなったリングを見ながらそう言った。

 

「これまでの戦いで分かったのはこの世を浄化する者たちは、人間から転生した超人で構成され、決して純粋なる悪人ではないとこ言う事じゃ。だが、我々正義超人とは共存できない正義を持つ。かつて、完璧超人達が攻めてきたあの時に似ておる。首領が神であったところまでだ」

 

「すぐにチヂミマンの遺体を片付けるのじゃ、丁重に韓国へ送ってやるのじゃぞ」

 

「ハラボテ委員長代理! ご報告が!」

 

 超人委員会の一人がハラボテに慌てた様子で耳元に話しかけた。

 

「うむ、分った、名古屋じゃな、いまそちらに向かうぞ!」

 

 ハラボテはどこからかジェットパックを取り出し、何人かを引き連れて空の彼方へと飛び立った。

 

「チヂミマン、まだお前を国辱という輩がいたら、俺がぶっ飛ばしてやるからな」

 

 カナディアンマンは骨となったチヂミマンに寄り添って話した。

 

 

 

 ところ変わり、名古屋では車の運転手を襲った事件が多発していた。

 とある一台の信号無視をした車を見ている超人がいた。

 

「黄色だろうが赤色だろうが信号は進めさーー!! やっほー!!」

 

 信号無視をした男のドライバーが調子に乗りながら独り言を語る。

 

 ドスン!

 

「な、なんだ、何か車の上に落ちてきたのか!?」

 

 一人の超人が車の上に乗っかり、右手を車の屋根に突き刺し、ドライバーの頭を鷲掴みする。

 

「うわぁあーー!!」

 

「交通ルールを守らない人間は、この世から排除する!」

 

 その超人はデッドシグナルであった。

 車はそのまま電柱に衝突し、大破した。

 

「グギガゴ~!!」




緊急事態! 名古屋に赤信号が灯る!!


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流氷の救世主の巻

見た目通りの所業をやってしまった!?


「これでまた一人、次の標的はと、ん?」

 

 デッドシグナルが周囲を見回すと、高速道路を逆走する車を目撃した。

 すぐにその場から勢いよくジャンプし、高速道路を逆走するその車に飛び移った。

 デッドシグナルがフロントウインドからドライバーが誰かを覗くと、老人の男性がドライバーであった。

 

「うひゃあーー!!」

 

「グギガギ~!! 高齢者ドライバーか! 貴様らのいい加減な運転のせいで、多くの尊い命が失われているんだ~~!! とっとと、免許を返上するか! あの世に逝きやがれ~~!!」

 

 ドライバーは車がコントロールできない状態となり、車はカーブへ真っすぐ突っ込む。

 そのままガードレールや柵を突き破り、高速道路下の一般道へと落ちた。

 車は大破し、ガソリンが引火したのか、大きい火が上がった。

 デッドシグナルが数秒ほど、燃え盛る車を見ていると、どこからか、火だるま状態の車に向かって大量の水が放水された。

 車の火が消えて、一人の超人が車の中へ入り、気絶していた老人の男性を救い出した。

 

「オレの邪魔をするやつはだれだ~!!」

 

「もう忘れたのか、わたしの顔を」

 

 老人を救い出したのはクリオネマンだった。

 

「お~久々じゃねえか、クリオネマン、入れ替え戦以来か?」

 

 デッドシグナルは殺伐とした態度をしていがたが、クリオネマンの顔を見て喜ばしい態度をとる。

 

「何をやっているんだおまえは!!」

 

 クリオネマンはそんなデッドシグナルを一喝した。

 

「見ての通りよ、オレはこの通りルールを守らない奴らを成敗しているのさ」

 

「デッドシグナル! 正義の心を忘れたのか!!」

 

「正義か、忘れちゃいないさ。でもな、オレの正義を実現するには正義超人を捨てるしかなかった。現に、先の入れ替え戦では、ルールを守ることを主張したオレよりも、ルールを破ることを正当化した万太郎先輩が人間たちに支持された。だからオレは今の主のもとで忠誠を尽くすことを誓った」

 

「主だと、お前、もしや……」

 

「そう、『この世を浄化する者達』の一員としてーー! オレはオレの正義を人間達に分からせるのだーー!!」

 

「お前! 自分が何をやっているのか分かっているのか! 今からでも遅くはない、罪を償って正義超人に戻るのだ!」

 

「うるせえ! オレはルールを守る善良な人間が、ルールを守らない危険なドライバーによって、命を落とすのが許せないんだ!! そのためならオレは悪魔にだってなってやんよ!!」

 

 クリオネマンはその言葉を聞いて、ひと呼吸おき、落ち着いた態度で会話を再開した。

 

「デッドシグナル……、分った、今のお前に私の声は届かない、話し合いは通じない、ならば方法は一つ」

 

「グギガガ~、分るぜ~、超人同士の決着のつけ方はあれしかない。ならば、お前との決着にとっておきの場所があるぜ~、ついてきな~」

 

 どこかへデッドシグナルは向かっていく、それをクリオネマンは追いかけていった。

 やがて両者はナゴヤドームに到着した。

 ナゴヤドーム内へデッドシグナルが入り、それをクリオネマンが追いかけた。

 ナゴヤドーム内には、巨大な岩の彫刻が真ん中にどんと居座っていた。

 その岩の彫刻は威厳のある掌の形をしていた。

 

「こ、これはヘラクレスの掌じゃないか!」

 

 クリオネマンが驚いた表情をした。

 

「レプリカだけどな。入れ替え戦の時は、ハラボテの万太郎への嫌がらせのとばっちりを受けて俺らはヘラクレス足の裏で闘うことになった。あの時の試合結果によってはもしかしたら俺らはこのリングで闘っていたかもしれない」

 

「そうだな、ただしジェイドとスカーフェイスのように両者が望めばだがな」

 

「オレはいつもお前が気に入らなかった。エリートぶって人を見下す態度、今すぐにでも殺してやりたい気持ちだぜ~」

 

「そうか、奇遇だな。私もお前が気に食わない。ルール、ルールとその体同様硬い考えを押し付けるところは好きではなかった」

 

「なら、この戦い了承ということだな!」

 

 デッドシグナルが勢いよくジャンプし、ヘラクレスの掌のリングに先にリングインした。

 それに、クリオネマンが続いた。

 

「デッドシグナル、お前の仲間の『この世を浄化する者たち』は元は人間だったやつら、お前がいることはその、やや不釣り合いに感じるんだが」

 

「オレ、いやオレ達というべきか、元々は壊れてしまった交通標識達の塊さ。何も言えない物ではあったが、社会の安全を守るという使命を帯びて生まれたという誇りがあった。だがな、ルールを守らないドライバーたちの危険運転によって多くの仲間の交通標識が破壊された。まだ、人間達のために頑張りたいんだという交通標識達の強い意志があの男、ミスターノアを呼び寄せた」

 

「ミスターノア!? ライトマンの話していた男か!!」

 

「そう、奴は俺達を一つの集合体、新たな命、超人としての人生を与えてくれた。そして、オレ達はデッドシグナルとして生まれ変わったのだ!」

 

「お、お前の出生にそんな秘密があったとは……」

 

「もっともその記憶は、万太郎に負けてスクラップになってから思い出したものだけどな。俺はあるべき場所へ帰ってきたのだ!」

 

「二人とも、会話を邪魔するようですまんが、ちょいと話をしたい」

 

 二人の間にハラボテが入ってきた。

 

「デッドシグナルよ、我々はお前さん方の情報が少しでも欲しい。そこでどうじゃろうか、お前が勝った場合一つ望みを聞こう。そのかわり、お前が負けた場合は情報を聞く、どうじゃ?」

 

「グギグギ~、じゃあ万太郎との再戦の舞台を用意してくれや~。奴を倒すことが、今の一番のオレの望みよ~」

 

「わかった」

 

 そういうと、ハラボテはリングを去っていった。

 観客席はいつの間にかお客さんで埋め尽くされている。

 試合のゴングが鳴った。

 

カーーーン!!!!

 

「あいさつ代わりにこれだ~」

 

「デッドシグナル、なにやら不可思議な動きをしているぞー!」

 

 ゴガシャーン!

 

「なんだー!? 唐突にナゴヤドームの天井が割れ、突風が現れたーー! 突風はリングに向かってくる!」

 

「これだけではない!」

 

「なんだこれはー!? 突風ともに雷まで落ちてきたーー! 突風が落ちた雷をまとい、クリオネマンへ一直線!」

 

「食らえ! |稲妻突風撃(いなずまとっぷうげき)!」

 

「キョカー!!!」

 

「これはすごい! クリオネマンに突風の打撃と稲妻の感電の二重ダメージだーー!!!」




本日のお天気、突風のち雷!!!


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危険運転第一!!の巻

一時停止禁止のバトル!!


「デッド・シグナルの一撃をまともにくらい、早くもクリオネマンダウン!」

 

「だらしねえな、お前昔よりも弱くなったんじゃねぇか?」

 

「キョ~キョキョキョ」

 

 クリオネマンはダウンした状態で嬉しそうに笑った。

 

「なにがおかしいってんだ、頭でも打ったのか?」

 

「私は嬉しいのだよ、この一撃は確かに効いた。だが、同時にお前の成長も確かめられた」

 

「なろ~、その減らず口! すぐにたたけないようにしてやる!」

 

「デッド・シグナル! ダウンしたクリオネマンからマウントポジションをとった!」

 

「くっ! このっ!」

 

 クリオネマンは力づくでマウントポジションをとったデッド・シグナルの体を引きはがそうとする。

 

「おまえ分かっているのか~? 700kg近いオレ様を70kg程度のお前が引きはがせると思うか? これで終わりだ! 標識丸鋸(サインまるのこぎり)!」

 

「デッド・シグナル! クリオネマンの首を目掛けて標識丸鋸(サインまるのこぎり)だーー!! 流氷の天使クリオネマン、早くもKO負けかーーー!」

 

「ゼリー・ボディーーー!」

 

「おぉーー!! クリオネマン! 自らの軟体ボディを生かし、マウントポジションを脱したーーーっ!」

 

「グガギゴ、そう簡単には決まらねえか」

 

「今度はこっちの番だ! アイス・ソード!」

 

「クリオネマン! 右腕を氷の剣に変えた! 狙うはデッド・シグナルの首だーー!!」

 

 カーン!

 

 ハラボテがデッドシグナルの首がふっとんだと思い、目をつぶった。

 しかし、首が吹っ飛んだにしては会場に悲鳴が起きないのを不思議に思った。

 ハラボテはどうなったかと思い目を開けた。

 

「ギガガガ~」

 

「なんと! まともにアイス・ソードを受けたデッド・シグナルの首は無事だー!!」

 

 クリオネマンのアイス・ソードにひびが入り、ひびから血がじんわりと出てきた。

 

「ぐうう~!」

 

「グガギゴ~、オレは交通標識だぜ。雨にも風にも雪にも耐えて皆の安全を守っているんだ、だから流氷の剣ごときじゃこの体は歪まねえ」

 

 試合を観戦している観客は微小ながらも、二人のファイトスタイルに恐怖の感情を抱いている。

 

「ねえ、二人共首を狙っていったわよ、完全に殺す気じゃない」

 

「デッド・シグナルは万太郎と戦った時も残虐ファイトだったけど、クリオネマンも負けちゃあいないぜ」

 

「これもしかしたらどっちか死ぬんじゃないのか?」

 

 観客の微小だった恐怖心が徐々に増大していく。

 

「では、懐かしの技をお見せしようか、デッドレイルロード!」

 

 デッド・シグナルが踏切のバーでできた脚をリングと平行に上げていく。

 クリオネマンはデッド・シグナルの技の幻影を見せられる。

 

「キョカ! リングの上に線路がいつの間に敷かれている! 信号機に、電車の音も聞こえてくる! しかし、これはまやかしの技! ならば気合で破る! キョカーーーーーーー!!!!」

 

 クリオネマンが気合で技を跳ね返そうと、大きな声をあげた。

 

「グガッ!? いきなり大声を出してビビるじゃねえか、しかし、それで敗れるかな?」

 

「ん、なに!?」

 

 クリオネマンがあたりを見ると、線路や信号機の幻は消えていたが、電車だけが消えていなかった。

 

「電車だーーー! 突如何もないところから現れた紛れもない電車がクリオネマンに突進する!」

 

「食らいやがれ! 現実電車突撃(リアルトレインアサルト)

 

「そうはいくか! 貝殻防御(シェルディフェンス)!」

 

「おぉーーー! クリオネマンのゼリーボディーが巻貝へと変化していく! デッド・シグナルの生み出した電車が突進! 巻貝となったクリオネマンが吹っ飛んでいく!」

 

「テイクオフシェル!」

 

「巻貝となったクリオネマンが元の状態へと戻る! 無傷です! デッドシグナルの一撃をまともに食らって無傷です! ここまで両者一進一退の互角の攻防が続いております!」

 

 どこからともなくタザハマさんが紅茶を飲みながら現れた。

 

「クリオネマンはハダカカメガイ科の一種で巻貝の仲間であります。成長と共にその貝殻を失うのですが、その貝殻を復活させて、デッド・シグナルの攻撃を防いだんですね」

 

「あなたどっから出てきたんですか?」

 

 実況がタザハマさんに突っ込みをいれた。

 一方リングでは、

 

「グガガガ、どうやらそう簡単に殺せないみてえだな」

 

「デッド・シグナル……お前、何か悲しい事でもあったのか?」

 

「はぁ、いきなり何を言い出すんだ?」

 

「何故だか知らんが、私は万太郎先輩との試合以降から、対戦相手の心情が察せるようになったのだ。お前の一撃は強力だが、何か深い悲しみがこめられているかのように思えるんだ」

 

「けっ、お前には関係ないこった! 雷よ来い!」

 

「またもデッド・シグナル、得意の気象攻撃です! 雷鳴音がドームに響きます!」

 

「ならば、コンベックスレンズ・ボディ!」

 

「クリオネマン! 胴体を巨大なレンズに変えた! これはかつてセイウチンや万太郎を苦しめたソーラーエナジーヒート!への布石か!!」

 

「グガギゴゴ~、その技はおてんとさんが見える場所じゃないと使えないんじゃねえか~? ミスをしたなクリオネマン! さあこの雷撃を食らってクリオネの丸焼きにしてやるぜ! まずそうだけどな!」

 

「デッド・シグナルの呼び出した雷がクリオネマン目掛けて一直線だーーっ!」

 

 クリオネマンは自分に落ちてくる雷を見ながらも、冷静な表情をしている。

 

「雷は光、そして私のレンズはガラスであり、電気を通さない、つまり」

 

「おぉーーっ! 雷がクリオネマンの胴体のレンズで反射したーーっ! そして反射した先に見えるのはデッド・シグナルだーー!」

 

「しまっ、ぐぎゃーー!!!」

 

「デッド・シグナルに雷が被弾! デッド・シグナルの体が燃えたーーっ!!」




バーニング・シグナル!!


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死の海鮮定食の巻

炎VS氷!!


 燃えるデッドシグナルに対し、先ほどまで胴体をレンズに変化させていたクリオネマンは元の姿に戻っていた。

 

「グガガガ~、こうなったら、てめえもろとも道連れにしてやる!」

 

「デッドシグナル! 燃えた状態でクリオネマンに向かっていくぞーーーーっ!!」

 

「シーエキス発射!」

 

ぶしゃー!

 

「クリオネマン! 口から勢いよく液体を吐き出した!」

 

ビチャア!

 

「グワハッ! ペッ! ペッ! しょっぺえ! なんだこの磯臭くて、ぬるぬるした液体は!」

 

「私の体に海のエキスが詰まっている。それを放出したわけだ」

 

「けっ、きたねえもの出しやがって! だがな、お前らしくないミスをしたな!」

 

「どういうことだ?」

 

「お前のかけた液体でオレを苦しめていた炎は消えた、このしょっぱい液体の通り、敵に塩を送るとはな! 来い、突風!」

 

「デッドシグナル! またも突風を呼び寄せた! なんと、突風にデッドシグナルが突っ込む!」

 

「な、なにをする気だ!」

 

「こうするのさ!」

 

シュポッ!

 

「なんとデッドシグナル! 体に突風をまとったーーーっ! 突風の回転とともに、デッドシグナルもまわるまわる!」

 

ビュルン!ビュルン!ビュルン!

 

「いくぜ! 竜巻標識(スクリューサイン)!!」

 

「デッドシグナル! 突風で自らの体を回転させながら、頭からクリオネマンに突っ込むぞーーっ!」

 

「ガガガ~、このままお前を串刺しにしてやるぜ~!」

 

 この状況に対して、クリオネマンは冷静さを保っている。

 

「どうやら、私の技の真意を読めなかったようだな」

 

ズブッ!

 

「グガッ!?」

 

「なんということだーーっ! デッドシグナルの体がクリオネマンに取り込まれていくぞーーっ!」

 

「そうか、さっきの液体はこのためのものか!」

 

「キョ~キョキョキョ、もうお前は脱出できない!」

 

「デッドシグナルの体が徐々に全て取り込まれていく!」

 

「ギガガガ、お前は先の入れ替え戦でこの技の弱点を露呈している! 俺はお前の体の内部から内臓を攻撃しやすい状況にあるぜ! オレの標識丸鋸(サインまるのこぎり)でぐしゃぐしゃにしてやるぜ!」

 

「デッドシグナル! 体内に取り込まれながらも、標識丸鋸(サインまるのこぎり)でクリオネマンの心臓を狙う!」

 

「キョキョキョ、私の体内にお前を閉じ込めるためにこの技を使ったわけではない! 今からお前を捕食するために使ったのだ!」

 

「ややっ!? クリオネマンの頭部から触手が出てきたぞーーっ!!」

 

「私は今から、流氷の悪魔として本気を出させてもらう! 口円錐(バッカルコーン)!」

 

ズブリズブブブ

 

「ガギッ! 触手を何本もオレに刺して何をしようとしやがる!」

 

「クリオネの捕食方法を知っているか? 頭部にある六本の触手で獲物をとらえ、養分を吸っていくのだ。そして、私が吸う養分というのは」

 

「グ、グガーーーーっ! か、体の力が抜けていく……」

 

「お前の超人強度だーーーーっ!」

 

「なんという恐ろしい技でしょう! まさにその姿は流氷の悪魔! デッドシグナルの超人強度の低下を示すように標識丸鋸(サインまるのこぎり)の回転が徐々に遅くなっていくーーーっ!!」

 

「これで心置きなく、おまえを取り込める」

 

「クリオネマン! デッドシグナルを完全に自分の体内に取り込んだーーっ!」

 

「これでとどめだーーーーっ!」

 

「クリオネマン! デッドシグナルの頭だけを体外に出した状態で空中へ高く飛んだ! そしてリングの鉄柱の真下に頭から落下する! この体勢はあの技への動きかーーーーっ!」

 

x・y・z(エグザイズ)クラッシュ!」

 

ガゴ

 

「グギッ!」

 

「決まったーーーっ! x・y・z(エグザイズ)クラッシュ! デッドシグナルの顔である止まれの交通標識が大きくゆがんだーーーっ! クリオネマン! そのまま体外へデッドシグナルを出したーーーっ! デッドシグナルにダウンカウントが入ります!」

 

ワ~ン ツ~ 

 

 デッドシグナルがダウンしながら過去のことを思い出した。

 デッドシグナルはパンツ一丁の筋骨隆々な男とレスリングの練習をしている。

 デッドシグナルはその男と組み合うも、ブレーンバスターで体を思いきりたたきつけられる。

 

「あぁん? だらしねぇな!」

 

「るせぇ! ビリーマン! もういっちょ来い!」

 

「俺を一度でもタップできなかったら、あんかけチャーハンをおごりな!」

 

 デッドシグナルはビリーマンと名乗る男にタックルを仕掛けた。

 しかし、そのタックルは見切られ、デッドシグナルにビリーマンが覆いかぶさる状態となる。

 その状態でビリーマンデッドがシグナルの尻にあたるガードレールをたたいた!、

 

 ゴン!

 

「グガ!」

 

「やっぱりだらしねぇな!」

 

「ちくしょう! まだまだ!」

 

 そして、デッドシグナルは現在の状況に意識を戻す。

 

セブ~ン エ~イト

 

「あいつのためにも俺は……俺は……」

 

「おわーーーっと! デッドシグナル! 満身創痍の状態になりながらも立ち上がってきたーーーっ!」

 

「なに!? デッドシグナル! そのまま寝ていろ!」

 

「るせぇ……俺はな、あいつのためにもな……負けられねぇんだーーーーーっ!!」

 

「瀕死のデッドシグナルの体に謎の発光現象が起きたーーーっ! これは先の戦いでガゼルマンやチヂミマンが見せたものと同じだーーーーっ!!」

 

「きっと夜間用の照明でもつけたんでしょう」

 

 タザハマさんがひょっこり出てきてとんちんかんな解説をした。

 

「もうあなたは黙ってください!!」

 

 実況が青筋を立ててタザハマさんに怒った。

 

「ば、ばかな!?」

 

 クリオネマンが驚いた表情をする。

 

「おれの底力を見せてやるぜ! カモン! 突風!」

 

「デッドシグナル! 最後の力を振り絞ってクリオネマンに立ち向かっていく!!」

 

「今度は食らってもらうぜ! 竜巻標識(スクリューサイン)!」

 

 デッドシグナルは体に突風をまといながら回転し、頭からクリオネマンに突っ込んでいく。

 

 

「バカめ! また私のゼリーボディで」

 

ドゴォ

 

「キョガ! 」

 

「あぁーーーっと! クリオネマン! ゼリーボディ発動せず! デッドシグナルの一撃をまともに食らったーーーっ!」

 

「無駄だ! お前は俺の超人強度とともに俺を構築する鋼の成分まで吸ったんだ! 今のお前はガチガチの体だ!」

 

「クリオネマン! 強烈な一撃を食らい、ぐらつく! そこ間髪入れずにデッドシグナルが仕掛ける!」

 

「お前に敬意を表してx・y・z(エグザイズ)でお返しするぜ! そうら! まずは(エックス)!」

 

 デッドシグナルがクリオネマンの背後に回り、クリオネマンの両足の間に自らの両足を絡め、さらにクリオネマンの両腕を自身の手でクリオネマンの後方にひっぱる。

 

「な、なんとーーーっ! デッドシグナルの(エックス)の技は! ウォーズマンの必殺技パロスペシャルだーーーっ!」




x・y・z(エグザイズ)合戦開始!!


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地獄でまたやろう!!の巻

たとえスクラップになろうとも!!


 クリオネマンはデッドシグナルのパロスペシャルによって関節をきめられ苦悶の表情を浮かべている。

 デッドシグナルが力を入れるたびに、クリオネマンの関節が音を鳴らしている。

 しかし、超人強度を増したクリオネマンも、技のかかりを浅くしようと必死に抵抗する。

 

「ギョ~!」

 

「これで終わりじゃねえぜ! デッドガードレール!」

 

「デッドシグナル! パロスペシャルの状態を保ちながら、胴体にあるガードレールを伸ばす! ガードレールはクリオネマンの背中をどんどん押していく! クリオネマンの体が弓状に沿っていくぞーーっ!」

 

バキバキ

 

「ギョガーーっ!」

 

「お次はこれだ!」

 

 ピシピシ

 

 デッドシグナルの体全体に少しずつ亀裂が入っていく。

 

「デッドシグナル、お前……」

 

「人の心配をするな! てめえの心配をしてろ! お次はこれだーーーっ!」

 

「デッドシグナル! クリオネマンの股間に顔を入れ、そのままバク転!」

 

「Yドロップ!」

 

「クリオネマン! 脚を開脚されながら、脳天から落下した! その形はYだーーーっ!」

 

「グガッ!」

 

「最後はZだ!」

 

「デッドシグナル! クリオネマンの両足をもって空高くジャンプ!」

 

 ピシピシ

 

 デッドシグナルの体にさらに亀裂が入る。

 

「この体勢は! クリオネマンの後頭部、背中、腰がリングにたたきつけられる形となり、デッドシグナルが空中でうつ伏せの状態をとりながら、クリオネマンの足をロックしつつ、Zを表現するようにクリオネマンの体を曲げていく!」

 

「キョキョキョ、ここまでよくx・y・z(エグザイズ)を表現したもんだ! だがな、最後の最後で甘かったな! この技は私の上半身のロックが甘い! 死にぞこないにしか通じん技だぞ」

 

「Zにはな、真ん中にスラッシュをつけた表記方法もあるんだぜ! デッドガードレール!」

 

「あーーっと! デッドシグナルのガードレールが延長され、クリオネマンの上半身をきめる! これは某ジャンプ漫画のタイトルのZだーーー!!」

 

「う、動けない!?」

 

「食らえ! Z落としーーーー!!」

 

ズドン

 

 リングに響く轟音がデッドシグナルの技が決まったことを知らせた。

 デッドシグナルが技を解くと、クリオネマンが大の字となった。

 委員長ハラボテが首を振り、試合続行不可能の判断を下した。

 

 カン カン カン カン

 

 デッドシグナルの勝利が決まり、会場にゴングの鐘が響き渡る。

 観客の歓声がそれにつられるかのように大きくなった。

 

「クリオネマン! クリオネマン! クリオネマン!」

 

「デッドシグナル! デッドシグナル! デッドシグナル!」

 

 両者を称える声が会場のあちこちから聞こえてくる。

 

「の、呑気なもんだぜ、グガッ!」

 

 ビシッ バキッ

 

 デッドシグナルの全身に大きく亀裂が入り、そのままリングに倒れた。

 

「死力を尽くしたからな……当然の結果だな……」

 

 デッドシグナルが弱った状態で言葉をはく。

 

「デッドシグナル……お前は誰かのために戦っていたように思えた……それが聞ければこの敗北も納得がいく……」

 

 まだ息絶えてなかったクリオネマンがデッドシグナルにしゃべりかけた。

 

「物好きな奴だ、聞かせてやるよ……俺の仲間にビリーマンってやつがいた……同性愛の差別を無くすために活動していたホモ野郎だったが、いい漢だったぜ……オレの特訓のために寝る間を惜しんで付き合ってくれたからな……だがよ、無理をしすぎて体が弱っていてな、ある日、ダンプトラックに轢かれて死んじまったんだ」

 

「そうか、いくら超人といえでも、弱った状態では車に轢かれた程度でも死んでしまう……」

 

「奴のために何かしてやりたいと思った……泣こうとは思ったが交通標識だから泣けなかった……だからよ、交通事故をこの世から無くしたいと思い人間を襲った……」

 

「お前も分かっているんだろ、こんなことをしても喜ぶ奴はいないって……」

 

「分かってはいてもよ、大事な奴を亡くした感情ってやつは理屈で納得できないんだ……もうオレは死ぬ……生まれ変わることがあればな、涙を流せる交通標識になりてえ……」

 

「キョキョキョ、無理だな、お前は地獄行きだ。閻魔様がそんなこと許すわけがない……」

 

「こ、このやろ……」

 

「安心しろ……私も地獄まで付き合ってやるさ……さっきの敗北には納得いってないからな」

 

「さっき納得いくとか抜かしてたのお前だろ……」

 

「先程お前が言った感情ってやつは理屈で納得できないってやつさ……私はお前が死なぬ程度に超人強度を吸収したから逆転された、それが悔しくてな……お前にリベンジしなきゃ納得いかないのだ……」

 

「負け惜しみか? いいぜ、また返り討ちにしてやんよ……それにしても、リ、リベンジのために流氷の天使が地獄に行くってのも傑作だな……」

 

「キョ~キョキョキョ!!」

 

「グガギゴゴゴゴ!!」

 

 両者の大きな笑い声が会場にしばらくの間響いた。

 その笑い声は次第に弱まり、やがて二人は笑いを発さなくなった。

 デッドシグナル、クリオネマンは息絶えた。

 委員長ハラボテがリングに入り、二人の顔を見て、つらい表情を浮かべる。

 

「両者素晴らしい試合をしてくれた。惜しむらくは、互いに命を削りつくし全力を出したことだ……」

 

 観客も彼らの死を追悼するように静かになっていた。

 

 

 

 場所は変わり、ドイツのとある場所にある古びた豪邸。

 豪邸内は散らかっており、一室で、先の戦いを酒を飲みながら観戦している隻腕の男がいた。

 ブロッケンJrである。

 

 ギィ……

 

 ドアを開く音がした。

 この豪邸はブロッケンJr以外住んでおらず、何者かが入ってきたことを意味する。

 

「ほう、懐かしい奴が来たな」

 

 ブロッケンJrのもとへやってきたのはジェロニモであった。

 

「ブロッケンJr、今度の戦い、おはんさんも重要なカギを握っているずら」

 

「さぁて、なんのこった? 今の俺はただの飲んだくれのダメな中年親父さ」

 

「現在行われている戦いは、転生超人達の勢力によるもの。そして、おらも元は人間から転生した超人、そして、ブロッケンJr、あんたもだ」

 

「止めてくれ! 俺はもう超人レスリングに関わらない!」

 

「ほう、二人共元気にしているようだな」

 

 ジェロニモ、ブロッケンJrは突然の声に驚いた。

 彼らはある程度近くにいる超人の気配を察することができる。

 そんな彼らに気づかれず近づいてきたものがいるということは、かなりの強者だということだ。

 

「一応紹介しておく、私は超人の神、名はミスターノア、この世を浄化する者たちの首領を務めている」




ラスボスお出まし!!
テガターズ復活か!?


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授かったキン骨魂!!の巻

老体なれど、魂は10代バリバリ!!


 ミスターノアの姿に冷や汗をたらしながらも、ジェロニモは言葉を発した

 

「お久しぶりです超人の神ミスターノア。あなたに超人にしてもらった御恩、いつなん時も忘れずにおります」

 

「うむ」

 

「着易く挨拶しているようだが、俺はあんたとは縁はないぜ」

 

 ブロッケンJrはミスターノアと距離を置くように接している。

 

「お前は聞かされていないのか? ブロッケン一族と私は大きく関係しておる」

 

「寝耳に水だ、亡くなった親父からも聞いたことがない」

 

「そうか、ならば」

 

 ミスターノアがそういうと、右手を手刀の形にして大きく振るう。

 

ぶおん

 

 その衝撃で、室内の壁に大きな切れ込みが入った。

 

「す、すごい手刀だ」

 

 ジェロニモが技の威力に対し率直な意見を言った。

 

「まず、私が直々に力を授けて超人となった人間は手刀が得意だ。ジェロニモ、お前の大木を切るトマホークチョップ。そして、ブロッケンJr、お前の切れ味抜群のベルリンの赤い雨だ」

 

「今、力を授けて超人となった人間といったな。確かに俺は親父から受け継いだ髑髏の徽章で人間から超人となった。だがお前から力を授かった記憶は一切ないぜ」

 

「確かに直接は授けてはいない。だがな、そもそも、その髑髏の徽章自体が、()()()()()()()()()()

 

「な、なんだと!?」

 

 ここまで冷静に対応していたブロッケンJrが驚いた。

 

「まあおいおいその辺は詳しく説明するとしよう、ここには用件があってきたのだ、どうだ? ()()()()()()()()()()() 悪いようにはせぬぞ」

 

 その言葉が一瞬の沈黙を作り上げた。

 その沈黙はまずジェロニモによって消された。

 

「お断りします。私にとってあなたは恩人ではあります。貴方のおかげで超人となれた、同時に私は死ぬまで正義超人一筋でいく気持ちも生まれた。それに、今のあなたのやり方には賛同できない。あなたなりの正義はあるとは思いますが、私達の正義とはまた反するもの。もしそれに従えというなら、()()()()()()()()

 

「やれやれ、俺はなんて言えばいいかな? 過去にお前のような胡散臭いと思った奴にはほれ込んだことはある。だがな、お前からは何の魅力を感じない。つまり仲間になる理由がない」

 

「そうか、ならば」

 

 そういうと同時にミスターノアは素早い動きを見せた。

 ジェロニモ、ブロッケンJrは戦闘態勢をとるが、年ゆえに対応が上手く出来なかった。

 ミスターノアが二人の後頭部に手刀を当てて、気絶させた。

 気絶したジェロニモ、ブロッケンJrを肩に担ぎあげて、そのまま屋敷を立ち去って行った。

 

 

 

 ところかわり、日本国内にある大規模な老人ホームにて、異変が八瀬していた。

 

「こいつですぐにあの世に逝けるぜ」

 

「こ、これでようやくわしも死ねる……」

 

 黒装束を羽織った一人の男が高齢の男性に石を向けた。

 その石がオーラを発すると、老人は更に加齢していき、衰弱死した。

 

「これでまた一人と」

 

「お前! 何をやっている!」

 

 黒装束を羽織った男は、声をかけた男を見て驚いた。

 

「ほう、こいつは驚いた、てっきり過去の世界に行ってるもんだと思ったがな、バリアフリーマンさんよ、いやニルスと呼んだ方がいいか?」

 

 そこには右腕がジージョマンとなっていないバリアフリーマン、つまりニルスがいた。

 

「私の名前を知っているとは光栄だ。だがな、お前のやった行為を正義超人として見過ごすわけにはいかない!」

 

「まあそうかっかしなさんな。俺はお前さんの負担を軽くしてやってんだぜ」

 

「ふざけるな! か弱いお年寄りを死なす行為が許されると思うか!」

 

「俺から見ればお前さんの方が許されない行為をしていると思うぜ。長生きさせることを徳と考えている奴らが多いが、問題は周りの奴に迷惑をかけちまうってこった」

 

「私は迷惑でも何でもない。これが私の生きがいだ」

 

「じゃあ聞こう、近年では日本の介護として働くやつが少ないと聞く。それはこの仕事が負担の大きいものだからじゃないか」

 

「そ、それは……」

 

「さらにだ、日本は高齢者を長生きさせた結果、年金をもらうやつが増えて、年金を払うやつが少ない逆転の現象が起きている。しまいには盗みでもやんねえと、国は年金を払えなくなるぜ」

 

「日本だけが特別なんだ! 他国もそうとは限らない!」

 

「仮にそうだとしてもよ、高齢者は次第にポンコツになっていき、やがては人様の負担にしかならん。だから安楽死を望むやつだって少なくはない。俺がやっているのはその安楽死の手伝いだ、悪い事と思っちゃいねえよ」

 

「ぐぅ……」

 

「きぇきぇきぇ、お前の正義が揺らいでいるのがようく分かるぜ」

 

「話は聞かせてもらいましたで!」

 

 唐突にふんどし姿のハゲて肥えたおっさんが現れた。

 

「あ、あなたは米男オーナー、危ないです! 離れてください」

 

「ニルスはん、見たところ相手は超人らしき人。ならば決着の方法はリングでつけまひょ」

 

「わ、わかりました」

 

「ところであんさん、名前は」

 

「おれはバンデットマン、世界浄化者(ワールドクリーナー)の一人だ」

 

「バ、バンデットマン!? 先の戦いでティアーマンが言っていた仲間の一人か! それならば、是非とも情報を聞き出さなければ!」

 

「勝てれば聞かせてやるぜ、もっともお前さんではハンデをたっぷりつけても勝てるかどうか疑問だがな」

 

「なに!」

 

「まあまあお二人さん、リングは施設内にあります。そこまで移動しまひょ」

 

 米男さんは二人の間に入ってなだめた。

 二人は米男さんに連れられ、リングへと案内された。

 観客には施設の高齢者達がいる。

 

「バリはーん! 頑張ってやーー!!」

 

 ET顔のおばあさんがニルスを応援している。

 ニルス、バンデットマンの両者がリングインした。

 

「気になっていたんだが、ジージョマンの方はどうしたんだ? ぽっくり逝っちまったのか?」

 

「ふざけたことをぬかすな。ジージョマンには私の体の一部を授けることで分離することができる。私は過去に切った右腕の残った部分をジージョマンに託した。私は現在を、ジージョマンは過去を守ると誓ってな」

 

「そうかい、そうかい。ってことは今のお前の右腕は義手ってことか? 見た感じ普通の腕だな。いい技術をもったやつに作ってもらったようだな」

 

 

 

 ニルスは万太郎達が過去にタイムスリップする前の記憶を思い出した。

 ニルスは老いたキン骨マンと話をしていた。

 

(ムヒョヒョ、わしは以前、正義超人の脚を奪ったことがあってな。それを今でも悔いておる。また誰かが手足を失った時のために、わしは義足、義手を作り上げる技術を鍛え上げてきた)

 

 キン骨マンは自作の義手をニルスに渡した。

 

(こ、これは素晴らしい。まるで本物の腕のようだ!)

 

(若人よ、正義を託したぞ)




骨身にしみる贈り物!!


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老人介護員の覚醒!!の巻

前代未聞!?
盗賊(バンデット)VS老人介護員(ヘルパー)!!


カーン

 

  高々にゴングが鳴らされ、二人は対面するようにリング中央に向かう。

 バンデットマンが黒装束を脱ぐと、盗賊を彷彿させる格好の男が現れた。

 見た目は中年の無精ひげの男、眼光はするどく、バンダナをつけている。

 服装は身軽そうなTシャツとズボンである。

 突然、黒装束をニルスにかぶせるように投げた。

 

「うっ!」

 

 唐突に黒装束で視界をふさがれたニルスは、咄嗟に両腕を顔面の前に上げて、ガードの体制をとった。

 

「仕事があるんだ! さっさとけりをつけるぜ!」

 

 バンデットマンはダッシュで勢いをつけながら、後ろ回し蹴りを放った。

 

グニュウ

 

「ガァ!」

 

 バンデットマンの後ろ回し蹴りがニルスの股間にヒットした。

 体重の乗った一撃にニルスは苦悶の表情を浮かべた。

 

「なんと! バンデットマン! 体重の載ったバックスピンキックをニルスの股間にヒットさせた! ルールで認められているとはいえ、これは苦しい一撃です!」

 

「そうらもういっちょ!」

 

 間髪入れずに、バンデットマンの左の拳がニルスの右頬をとらえた。

 

「バンデットマン! すかさず左フック! ニルス早くもダウンだ!」

 

 倒れたニルスはすぐ立ち上がろうとするが、ダメージの影響で四つん這い状態から起き上がることができない。

 

「おのれ! なんと卑劣な行為を! これまで戦ってきた貴様の仲間はこんな卑怯なことはしてなかったぞ!」

 

 身体のダメージとは裏腹に、ニルスはバンデットマンに激高し、戦う意思をが弱ってはいない事を示す。

 

「卑怯? 俺は目的のために手段を選ばんタイプでな、だから盗賊なんだよ!」

 

 バンデットマンは四つん這い状態のニルスの顔面にローキックを当てる。

 

「バンデットマン! 容赦無用の攻撃を加えています! ニルス! 早くもKO負けか!?」

 

「バリはん、いやニルスはん……」

 

 ET顔のお婆さんが心配そうに見ている。

 他の観客のお爺さん、お婆さんも同じ反応だ。

 

「いけない、これ以上ご老人方を心配させるわけには!」

 

 ニルスはバンデットマンのキックのタイミングに合わせ、両手で足を捕まえる。

 

「ニルス! 負けじと反撃のドラゴンスクリューだーーーーっ!」

 

 前に倒れこんだバンデットマンの左腕を、ニルスはすかさず両腕でとらえた。

 

「ニルス! 流れるようにバンデットマンを脇固めでとらえたーーーっ!」

 

「なんの!」

 

 バンデットマンは右手で少し体を浮かせてから前転し、脇固めを脱出した。

 ニルスは素早く反応し、前転後のバンデットマンの首を両腕で締め上げる。

 

「バンデットマン! 上手く技を脱出しましたが、すぐにニルスの技にとらえられたーーーっ! それにしてもニルスの動きには驚きました! まるでジージョマンが乗り移ったかのように寝技、関節技を繰り出していきます!」

 

「これは予想外だったぜ、未熟なお前さんがベテラン顔負けの動きを見せるじゃねえか」

 

 技を決められながらもバンデットマンは余裕の笑みを見せる。

 

「先の悪魔種子との戦いの後、ジージョマンと話したんだ。もしもまた二人が別れることになったらと想定し、私はジージョマンに技術を授かってきたんだ! 幸運なことに、今までジージョマンと同じ体を共有していたおかげで、ジージョマンの技術を短期間でマスターすることができたんだーーーっ!」

 

「なんと! ニルスはジージョマンから技術を伝授されたようです! これはまさかの番狂わせが起きるか!?」

 

「なぁるほど、ならば、ちいとばかし本気を出させてもらうか!」

 

 バンデットマンは技をかけているニルスごと持ち上げるように立ち上がった。

 

脱出(エスケープ)スクリュー!」

 

「バンデットマン! チョークスリーパーをかけられた状態で素早く回転する!」

 

 バンデットマンの回転による遠心力でニルスの体は浮き上がり、両腕にかかる遠心力に耐えられず、技を解いてしまった。

 

「あーーっと! すさまじい遠心力でニルスの体がリングロープまで吹っ飛んだ! バンデットマン! なんとも奇抜な方法で技から脱出!」

 

「盗賊ってのは逃げるのも仕事の内だ! これぐらいの技簡単に逃げられなくちゃ、盗賊の名が廃るってもんだ!」

 

「く、くそう!」

 

「では、盗賊七つ道具をご覧にいれてみせるぜ」

 

 バンデットマンは頭のバンダナから何かを取り出すような動作をする。

 

「食らえ! バンデットナイフ!」

 

 バンダナから取り出したナイフを、間髪入れずにニルスの心臓に向かって投げた。

 

「あーーっと! ニルスの心臓に向かってナイフが一直線! これはニルス避けられない!」

 

ピタ

 

「なに!?」

 

「すごい! ニルス! なんとナイフをいとも簡単に、人差し指と中指で挟んで受け止めた!」

 

「お前さん、鈍そうに見えて案外反射神経がいいじゃねえか。矢でも受け止める練習をしていたのか?」

 

「その通りだ、かつて試合中に矢を首に受けてしまったことがあってな、戦えなくなりジージョマンの足を引っ張ってしまった。もしまた同じような敵に遭遇しても大丈夫なように、矢を受ける特訓をしてきたのだ!」

 

「きぇきぇきぇ! 思ったよりも楽しませてくれるようだな! じゃあこれならどうだ!」

 

 バンデットマンは左ジャブをニルスに繰り出していく。

 ニルスは顔面のガードをするも、拳がガードの間を抜けて、ニルスの顎にヒットする。

 

「うっ!」

 

「そうらまだまだ!」

 

 バンデットマンはニルスのがら空きの脇腹を狙って右ボディブローを放った。

 

「ぼぉ!」

 

 股間へのダメージが抜けていない分、より激しい苦痛がニルスの腹部を襲う。

 

「バンデットマン! ニルスにジャブ、ボディーブローとパンチを的確にヒットさせていく!」

 

「やはりな! さすがに打撃センスまで鍛えられる時間はなかったみたいだな!」

 

 ニルスの両腕のガードが緩んだ。

 バンデットマンはそれを見逃さず、左ストレートをニルスの顔面に当てに行く。

 

「なにくそ!」

 

 バンデットマンの左ストレートにニルスは頭を当てにいった。

 

「ぐがぁ!」

 

「ニルス! 負けじと頭突きで、バンデットマンの左拳を破壊しに行った!」

 

 ニルスは頭突きの影響でややぐらつき、さらに額が流血している。

 

「良い子ちゃんのお前にしては珍しいラフファイトだな。そんなに俺に勝ちたいのか?」

 

「そうだ! 未熟な私がここまでお前とやり合えるのも、偉大なるご老人の力があってこそ。恩返しとして勝利をささげたい! だが、それ以上に私のプライドが理由でもある!」

 

「プライドだと?」

 

「誇れることではないが、私はこれまでジージョマンに頼りっぱなしで、自分の力で勝ったことが一度もない! せいぜい私にできたのはジージョマンの体力回復のための時間稼ぎだった。この試合を見ている誰しもが私を未熟な弱小超人と思っているだろう! そのイメージを払拭してやりたい! 私はこの試合で、正義超人ニルスとしての存在を世に示すのだーーーーーーっ!」




若人(ニルス)よ! 今こそ成長を見せよ!


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飛び出す盗賊七つ道具!!の巻

清らかなる魂! 屈せぬ魂! 介護の魂!
これぞニルスの3Kだ!!


 ニルスの熱い思いの叫びに観客も応えた。

 

「ニルスはーん!」

 

 ET顔のばあさんが応援の声をニルスに送った。

 周りもそれに呼応するように、応援の声を送っていく。

 

「そうか、そんなに勝ちたいか、なら」

 

「バンデットマン! ニルスに向かって突進! ニルス! それを迎え撃つ」

 

「真っ向勝負でいく盗賊なんざいねえよ、ばーか」

 

 バンデットマンは跳び箱を飛ぶように、ニルスの頭に手をついて飛んだ。

 バンデットマンは頭のバンダナからロープを二本取り出した。

 

「盗賊七つ道具の一つ! バンデットロープ!」

 

シュルシュルシュル

 

 ロープの一本が生き物のように動き、ニルスの脚に絡みついた。

 

「バンデットマン! ジャンプして背後にまわり、ロープをニルスの両脚に縛り付ける!」

 

「うわっ!」

 

 ニルスはロープで両足を固定され、引っ張られたことにより、仰向けになるように転倒した。

 

「そうれ! もう一本!」

 

 バンデットマンがもう一本のロープを口にくわえたまま、ロープの両端がニルスの腕へとのびる。

 ロープはニルスの腕に絡みついた。

 バンデットマンは倒れているニルスの背中と首の後ろを足で踏んだ。

 さらにニルスの両足を両腕で固定し、口にくわえたロープで腕をひっぱりながら、ニルスの体をエビぞりの形にするように、折り曲げていく。

 

「きぇきぇきぇ! 盗賊拷問(バンデットトーチャ)!」

 

グキグキ

 

「うぐわぁーーっ!!」

 

「ニルスの背骨がきしむ音が会場に響く!! このままではニルスの背骨が真っ二つになってしまうぞ!!」

 

「俺はお前みたいなやつのプライドをへし折ってやるのが好きなんだよ! さあ背骨とプライド、どっちを折られたいか、好きな方を選びな!」

 

「ぐぅ、私はまだ戦える! こんなあっさり負けてしまったら、ここまで戦ってきた正義超人達、そしてご老人方に申し分が立たない!」

 

ボワァ

 

 ニルスの体が金色に発光した。

 

「なに、この発光現象は!?」

 

「今こそ老人介護で培った力を見せる時が来た!!」

 

 ニルスは両の腕に力を込め、バンデットマンの体勢を崩すように引っ張った。

 

「ぐぅ! なんだこの力は!」

 

「ニルス! 強靭な腕力で盗賊拷問(バンデットトーチャ)の技から脱出! 驚きです! ニルスにここまでの腕力があったとは」

 

「ニルスはんは仕事で一日中わてらご老人を持ち上げる作業をやっているんや! それで腕力が自然と身についたんや!」

 

 ET婆さんがニルスの逆転に興奮した。

 バンデットマンの体が倒れたと同時に、ニルスはバンデットマンの足を関節に決めていく。

 

「ニルス! 逆転! アンクルホールドでバンデットマンの足を決めていく!」

 

「そんな普通の技じゃ俺はギブアップしないぜ!」

 

 バンデットマンが両腕に力を入れて、体を浮かせ、その状態でニルスの股下へと頭を突っ込む。

 

「お前がそう来るのは読んでいた!」

 

 ニルスはバンデットマンの首が股間下に来たタイミングで両脚力強く閉じた。

 

「なに!?」

 

「アンクル&ネックホールド!!」

 

「なんとニルス! アンクルホールドに首絞めの効果を加えた技を見せた! 」

 

「さあ、今度はお前が選択する番だ、プライドか、体、どちらを選ぶ!」

 

「もちろんどっちも嫌だに決まってるだろ! 盗賊七つ道具の一つ! バンデットスチング!」

 

ぶす ぶす

 

 バンデットマンがバンダナから針を取り出し、ニルスの両脚に針を刺した。

 

「そんな針ごときで、私がこの技を外すとでも、くっ!?」

 

「どうしたことだニルス! バンデットマンの首を挟んでいた両脚の力が弱くなっているぞ!」

 

 首のフックが緩くなったタイミングで、バンデットマンはニルスの足をとった。

 

「バンデットマン! 逆襲のドラゴンスクリュー! ニルス転倒する! バンデットマン、技から脱出したーーーーっ!」

 

 同時にニルスの発光現象も無くなった。

 

「しばらく両脚に力の入らなくなるツボを針で押してやった。これでしばらく立ち上がれないぜ」

 

「ぐっ!」

 

 ニルスは四つん這い状態で立ち上がろうと体に力を入れるが、脚が思うように動かない。

 

「そうれ! サッカーの始まりだ!」

 

「バンデットマン! 四つん這いのニルスにサッカーボールキックの雨嵐! ニルスがたちまち流血していく!」

 

「うぅ!」

 

「ニルス! 両腕でバンデットマンの両脚をがっしりととらえる! そのままバンデットマンにしがみつく体制となった!」

 

「往生際が悪いぜ! そのまま立ち上がろうって魂胆だろうが、そうはいかんぜ!」

 

「バンデットマン! ニルスの頭にエルボードロップを連打!」

 

「今こそ、研鑽した技を出す時だ!」

 

 ニルスの体がまたも発光した。

 

「ちっ、またか!」

 

 ニルスは自分の両腕を交差させるようにして、バンデットマンの両腕を掴んだ。

 その状態から、ニルスは両腕の力だけでバンデットマンの体を浮かせた。

 バンデットマンの腰がニルスの頭につき、さらにバンデットマンの両脚をニルスの脇下で挟んだ。

 

「な、なんだこの技は!?」

 

「いくぞ! ニルスバックブリーカー!」

 

「出ました! ニルス両脚の自由が利かない状態から逆転の必殺技だーーーーっ!!」

 

「あ、あれはバリはんの楢山(ならやま)バックブリーカー! いや、似ているが違う!」

 

 ET顔の婆さんがニルスの技に驚きのリアクションを見せた。

 そこへ、米男さんが入り解説をした。

 

「従来のニルスはんの技のかけ方やと、脚のフックが甘いという弱点があった。あの技は両腕を交差させることにより脇下の締めをより強力なものにしている! さらにニルスはんは介護で腕力だけでなく、胸筋・背筋も鍛えているから、技のかかりを深くし、威力のあるものにしている! 驚きましたでバリはん!」

 

 ニルスの逆転劇に観客のボルテージが上がった。

 

「ニールース!! ニールース!!」 

 

 

 

 さてその試合を密かに見る二人の人間がいた。

 

「ムヒョヒョ、お前、大丈夫か、わしじゃお前を援護できんぞ」

 

「心配するな親父、見つかってもそう簡単に捕まりはせんさ」

 

 そこには杖をついたキン骨マンと黒装束の漢がいた。

 黒装束の隙間からしわしわの口、横方向に大きな傷が見える。

 その男はボーンコールドであった。




最凶の殺し屋がやってきた!?


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サタンのプレゼント!?の巻

楢山にサクラサク!!


 ニルスバックブリーカーが決まり、バンデットマンが苦しい表情を浮かべる。

 

ぐきぃ ぐきぃ ぐきぃ

 

「ぐぅ! なるほどな、体のどこに力を入れても脱出ができない。こいつはモノホンの必殺技だ!」

 

「さあ、体を真っ二つにされたくなければギブアップしろ! 敵とはいえ、殺しはしたくないのだ!」

 

「その甘さが命取りになるぜ、そっさと殺らねえと、お前はチャンスを逃す事になる」

 

 バンデットマンのバンダナからカギが出てきた。

 そのカギはバンデットマンの右腕の方へと飛んで行き、バンデットマンの右手がとらえた。

 

「盗賊七つ道具の一つ! バンデットキー!」

 

ジャキーン ガチャリ

 

 バンデットマンがバンデットキーをニルスの右腕にさし、時計回りに回した。

 

「うっ!」

 

 ニルスは右腕の違和感に気づいた。

 右腕に力が入らなくなった。

 むしろ右腕が自分のものではない感覚がした。

 やがて、ニルスの右腕がとれて、リングに落ちた。

 

「あぁーっ! ニルスの右腕がとれたーーーっ!?」

 

「二、ニルスはんの義手が!?」

 

 実況や観客が驚きの反応を見せた。

 

「そらよ!」

 

 バンデットマンは自由になった右腕でエルボーをニルスの顔面に放った。

 

ドガ

 

「ぐあっ!」

 

 ニルスの技の体勢が崩れ、バンデットマンはニルスバックブリーカーからの脱出に成功した。

 

「いい技だったな。他の仲間だったらKOできていた可能性は高かったぜ。もしも義手じゃなければ、もしも俺が相手じゃなければ、勝てたかもな。さあて、両足の自由も効かない、腕は一本もげた。他の仲間だったら、ここらで情けをかけるだろうが、おれは情けはかけない。殺す!」

 

「た、頼む……ギブアップするから……殺さないでくれ……」 

 

「なに!?」

 

 バンデットマンが驚愕の表情を見せた。

 

「二、ニルスはん……」

 

 観客も開いた口がふさがらない状態だ。

 

カン カン カン カン

 

 試合終了を告げるゴングが高らかに鳴った。

 不完全燃焼の試合に観客は不満げな表情だ。

 

「こんの恥さらしめ!」

 

「他の超人達はカッコよく戦っていたんだぞ!」

 

「お前さんに面倒見てもらっていたのが恥ずかしいわい!」

 

 観客はニルスにブーイングの嵐を浴びせている。

 

「み、みんな、止めるんや! ニルスはんが生きていただけでもありがたく思わんと!」

 

「そうや! わいらのためにあそこまでみじめな姿になりながらも!最後まで戦った!」

 

 ET顔のお婆さん、米男さんが観客の皆を必死で落ち着けようとする。

 しかし、観客のブーイングは収まらない。

 

「殺す気が失せちまったよ。お前さん、もうちょい根性のあるやつとは見ていたが、俺の人を見る目も腐ったもんだ。もう貴様とのやり取りに興味はない! 人間として無様を晒して生きていくんだな!」

 

 バンデットマンは先のランバージャッカーが使っていた転生石を取り出した。

 

 シュイシュイシュイ

 

 ニルスのエネルギーが可視化され、そのエネルギーはニルスの体から出ていき、転生石に収まった。

 ニルスは金髪の青年へと変化した。

 

「盗賊は相手の大事なものを奪うのが仕事だ。お前の大事なものとして、超人として証のパワー、そして、この義手をいただく」

 

 バンデットマンは転がっていた義手を拾い上げた。

 

「すまないな……私のために力を尽くした人がいたというのに、正義のために誇り高く散った仲間もいたのに……こんな無様な負け方をしてしまって」

 

 ニルスはリングに倒れこんだ。

 そこへ一人の老人がニルスのもとへよってきた。

 

「ニルス! しっかりせい!」

 

「キ、キン骨マンさんか……すまなかった、あなたから頂いた腕を有効利用出来なかった……」

 

「いいんじゃ! そんなことは! お前さんが生きているだけでもいい!」

 

「骨の爺さんよしな、無様な敗者への慰めは余計無様にするってもんだ。そいつへの一番の気遣いは無視することだ」

 

「やれやれ、盗賊ってのは意外とおつむがないんだな」

 

 唐突にボーン・コールドがリングの上に現れた。

 リングを見つめる皆が驚きの表情を見せる。

 

「お、お前! 何をしているんじゃ! 堂々と人前に姿を見せられる立場ではないだろ!」

 

 キン骨マンがボーン・コールドを心配しながら言葉を強くかけた。

 

「この甘ちゃんはな、自分の命よりも、自分のプライドよりも、老人達のことを考えていた。自分がいなければ、誰が老人達の世話を見るんだという考えを持っていたんだ。こいつがギブアップしたのは、恐らく、どんなに無様な姿を晒してでも老人たちを守りたいからと思ったからだぜ」

 

「ボーン・コール……すまな……りがとう……」

 

 ニルスは弱った状態だったが、ボーン・コールドへの礼を言おうと、声を何とか出した。

 

「勘違いするな、俺はただこいつにムカついただけだ」

 

「目上に対しておつむがないだの、ムカつくだの、お前は俺に喧嘩を売っているのか?」

 

「喧嘩を売る? 売ってるつもりはないんだがな、そうだな、お前の命を盗んでやろうか?」

 

 シューティングアローをバンデットマンに向けて、ボーン・コールドは言葉を放った。

 

「キェキェキェ! 挑発の仕方が上手いじゃねぇか若いの! その喧嘩、買ってやるぜ!」

 

「おっと待ちな! 戦う舞台は既に用意してあるんだ!」

 

「なに?」

 

 施設内のモニターに電源が突然入った。

 その映像は全宇宙で配信されていて、ヘラクレスファクトリーやハラボテマッスル達の方でもみられている。

 

「ゲ~ギョゲギョゲギョ~」

 

 モニターには悪魔(サタン)の姿があった。

 

「なに!! 悪魔(サタン)じゃと!?」

 

 ハラボテマッスル、そしてヘラクレスファクトリーの伝説超人(レジェンド)達もが驚愕の表情を見せる。

 

世界浄化者(ワールドクリーナー)とかいうふざけた連中どもよ~、雑魚を倒した程度でいい気になるなよ~。貴様らに制裁を下すために、俺が特別な相手を用意してやった~!!」

 

 モニターが4分割され、4人の超人の姿が映し出された。

 一人はボーン・コールドである。

 

「ムヒョヒョヒョ~」

 

 そして、もう3人は……

 

「フィギュ~! 久々に大暴れしてやるぜ~!!」

 

「ドヘドヘ、対戦相手を血祭りにあげてよ~、そばみたいに血をすすってやりて~!!」

 

「ふふふ、過去から帰ってのんびりしようかと思っていたが、思わぬ試合のオファーを受けてしまったな」

 

 ヒカルド、ボルトマン、ネプチューンマンの姿があった。




抽選で好きな悪行超人のサインが貰えるぞ!!


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紅炎の手刀の復活!!の巻

悪魔がサインをやると思っていたのか?


「ど、どういうことじゃ、なぜ悪魔(サタン)が!? それにボーン・コールド、ネプチューンマン、ヒカルド、ボルトマンも何故いっしょに!?」

 

 ハラボテは目の前で起きていることにただ驚くだけであった。

 

「おいおい、ただでさえ劣勢の状況で、あいつらまで敵となると本当に正義超人全滅の危機だぜ!」

 

 カナディアンマンが汗をかきながら、びびっている。

 そこへテリーマンがやってきた。

 

「あいつらの後ろを見てみろ、何か見える」

 

 モニター越しで悪魔(サタン)達の後ろに大きな遺跡らしいものが見えている。

 

「あれはおそらくトルコのアララト山、ノアの箱舟が流れ着いたと言われている場所で、船の形をした遺跡が今もなお残っているんだ」

 

「ゲギョゲギョ、相変わらずの博識だなテリーマン。そうだとも、ここがノアの箱舟で有名なアララト山であり、神が犯した大罪の証が残る地でもあるのだ」

 

「勝手なことを言ってもらっては困るな」

 

 悪魔たちのもとに球状の光がすごい勢いで落ちてきた。

 

ドーン

 

 そこには、超人の神ミスターノア、ランバージャッカー、ライトマン、黒装束の超人が3人いた。

 

ゴムアゴムア

 

 ワープゾーンが唐突に現れ、中からボーン・コールドとバンデットマンが出てきた。

 

「ほうほう、大層なメンツがそろっているじゃねえか」

 

 アララト山に到着したバンデットマンがその場にいる超人達の顔を見て、関心の態度をとった。

 

「呑気にしている場合じゃねえぞバンデットマン、こちとらすでに3人も仲間がやられてんだ! それに本来なら糞鹿と糞ババアから始末してやりたいとこなんだぜ!」

 

 ランバージャッカーが亡くなったミスターUSB、ティアーマン、デッドシグナルの事を思い出しながら怒りの感情を表に出した。

 

「若造よ、鹿やババアよりやりごたえのある敵が今ここにいるぜ」

 

 その言葉を放ったのはネプチューンマンだった。

 

「ネプチューンマンか、おれは人間だったころにあるレスラーとやりあってみたいと思っていたんだ。あんたにそっくりの強豪レスラーだぜ」

 

「そうかそうか、なら、俺の相手はお前で決まりか」

 

「こら~~~!! わしら抜きで話を勝手に進めるでな~~い!!」

 

 その大きな声がした方向を皆が見ると、超人委員会のヘリコプターが飛んでいた。

 

悪魔(サタン)よ! この場所を選んだからには理由があるのじゃろ!」

 

「それについては私が説明しよう」

 

 そういったのは超人の神ミスターノアであった。

 

「人間の歴史では、はるか昔に私の家族と動物たちを船に乗せて、未曽有の洪水から難を逃れたとある。しかし、それは幾分か間違いであり、詳細な歴史ではない。事の始まりは、当時の地球は乱世であり、それを見かねた神々が、地球上の生命を滅ぼす計画を立てていた」

 

「まて、似たような話が昔あった。確か、かつて完璧超人襲来時にも……」

 

 ハラボテが何かに気づいたように発言をする。

 

「そうだ。神の座を降りた男、地球ではザ・マンと名乗り、完璧超人をまとめていた男と一緒に、私も神の座を降りたのだ」

 

 一同が驚いた。

 

「そういえば、ザ・マンが話していたな。私と同じように人間を救うために神の座を降りた神がもう一人いたとな。それがまさかあんただったとは……」

 

 ネプチューンマンがザ・マンがいた時の過去を思い出しながら話した。

 

「神々はカピラリア光線とともに、大洪水を引き起こす計画を立ててていた。私は善良なる人間、無垢なる動物達を救うために、箱舟を作り出したのだ。当時箱舟を仲間とともに建設していたが、妨害する輩も少なくなくてな」

 

「そこで、ミーがバッドな人間を始末してやったのだよ、ピカカカ~。今思えばそれがファーストの世界浄化(ワールドクリーン)だったな」

 

 ミスターノアの話に続いて、ライトマンが言葉を発した。

 

「そして船は完成し、大洪水から多くの可能性を救ったのだ。今なお残っているこの遺跡こそ、ノアの箱舟であり、私たちの本拠地でもあるのだ。あまりこの辺を荒らされるのは良い気はしない、悪魔にはご退場願おうか」

 

「ゲギョゲギョ、善人ぶっておるが要するに貴様は自分のエゴで不要な人間は救なわなかったのだろ? 不要な存在を消すという点に関しては我々と同じなんだよ」

 

「黙れ悪魔が! 我々の活動を邪魔する正義超人も目障りではあるが、お前たちの存在はより許せない存在だ! お前たちが歯向かう気なら、こちらとて容赦はしない!」

 

「ガハハハ! そうだ! おれはさっきから闘いてえんだよミスターノア! ネプチューンマンはこの俺がやるぜ!」

 

 ランバージャッカーがネプチューンマンを指さし、笑いながらそう言った。

 

「ピカカカ、次はエゾマンとやらとファイトをするかと思っていたが、フレキシブルにいこう! まずは目の前の悪魔を消すことがプライオリティーだ! そこのいかついレゲエ野郎あたりを始末してやろう」

 

「ドヘドヘ、レゲエ野郎か、そのエセ英語を黙らせてやるよ、永遠にな」

 

 ライトマンとボルトマンが火花を散らしながら向かい合う。

 

「ムヒョヒョ、言うまでもないよなバンデットマン」

 

「ああそうだな」

 

 バンデットマンとボーン・コールドが悪そうな顔で笑いながら見つめあう。

 

「フィギュ~、俺の相手は大将のあんたか? こっちはそれでも構わないぜ」

 

 ヒカルドは拳を構えながら、ミスターノアに話した。

 

「まあ待て、お前と闘いたいと思っている超人がそこにいる」

 

 ミスターノアは黒装束の超人の一人を見てそういった。

 

「そうだな、超人オリンピックでは我が弟子がお世話になったからな」

 

 そういって黒装束の男は身にまとった黒装束を脱ぎ捨てた。

 中から出てきた男は軍服姿の皆が良く知る超人であった。

 ブロッケンJrだ。

 その姿に皆は驚いた。

 かつて、タッグの試合で隻腕となった腕は蘇っており、年齢も全盛期の20代のころに戻っていた。

 

「お、お前本当にブロッケンJrか? 本当だとしたら、何故その腕は蘇り、年齢も若返り、いや、聞きたいのはそこじゃない! お前は敵として戦う気なのか!?」

 

 ハラボテが敵側にいるブロッケンJrの姿を見て、取り乱している。

 

「委員長、オラもブロッケンJrと同じずらよ」

 

 もう一人の男も黒装束を脱ぎ捨てた。

 現れたのはジェロニモであった。




どういうことだ!?
解説も求む!!


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死合開始!!の巻

アパッチではない!!
まごうことなきジェロニモ!!


 ハラボテはただ驚くだけだった。

 目の前に自分のよく知っている正義超人が若い姿で現れ、更に敵対関係にある相手と行動を共にしているからだ。

 ジェロニモはハラボテに目線を合わせた。

 

「今は深くは語れない。私が言えるのは、あなたは超人委員会として公平な審判をすることだけを考えて下さい」

 

「ハラボテ元委員長! 遅れてすまない!」

 

 突如声が聞こえたと思ったら、四人の超人が現れた。

 その四人は農村マン、EZOマン、ウオッシュアス、ジ・アダムスであった。

 

「お、お前達! よくぞ来てくれた!」

 

「ヒャイヒャイ、こんな見た目でも一応正義超人の誇りはありますからね。散っていた仲間の敵はうちますよ!」

 

 ウオッシュアスが確固たる自信を持って言葉を発した。

 

「フィギュギュ、やめとけ雑魚共。お前には荷が重すぎるぜ」

 

 ヒカルドは小馬鹿にした態度をとっている。

 

「なんだと!」

 

「おめえら正義超人の勢力はただでさえ戦力がダウンしているんだ。ここは俺達悪魔に任せたほうが賢明ってもんだぜ~」

 

 ウオッシュアスをたしなめるようにハラボテがウオッシュアスの腕をつかむ。

 

「やつの言うとおりじゃウオッシュアス。我々正義超人の今の勢力ではまともに戦える人材が非常に少ない状況じゃ。悪魔達が転生超人と戦うのであれば、むしろそれは好都合。奴らがもし我々の敵になるなら、今我々は静観すべきなのだ」

 

 委員長の説得にウオッシュアスがしぶしぶと納得した。

 EZOマンも少し残念そうな態度をとった。

 

「チヂミマンの敵をとりにここまできたのだが、しょうがない。せめて敵の試合をよく見ておこう」

 

「組み合わせは決まったようだな。では、ふぅん!」

 

 ミスターノアが自らの手刀を地面に刺した。

 遺跡が地響きをあげる。

 砂埃を巻き上げながら地面からなにかがゆっくりと飛び出してきた。

 砂埃が消えると、4つのリングが並んでいた。

 

「古来より、我々の仕事を妨害するものはこのリングで成敗してきた。悪魔共よ、このリングで成敗してやろう」

 

 試合の決まった超人が各々のリングに散らばった。

 

「ではハラボテよ、審判を頼むぞ」

 

 ハラボテは用意されていたゴングを鳴らした。

 

カーン

 

『さあ転生超人VS悪魔率いる悪行超人連合の試合が始まりました! 正義超人にとって、この試合の結果いかんによっては、今後の戦いの展開が大きく変わります! 見逃せない試合となるでしょう!』

 

 ランバージャッカーVSネプチューンマンのリングにおいて、ランバージャッカーが先制の攻撃をしかけた。

 

「そうら! そうら!」

 

 ランバージャッカーはキックボクシングスタイルで左ジャブをネプチューンマンに数発放ち、右ストレートを放った。

 しかし、右ストレートを放ったタイミングで、ネプチューンマンは顔面を左にそらし、ランバージャッカーの右拳がネプチューンマンの顔の横を通り抜ける。

 

「いいパンチしているじゃねえか若造。お礼がわりにこんなのはどうだ!」

 

 そう言うと、ネプチューンマンは左のラリアットをランバージャッカーにかました。

 ランバージャッカーの体がリングロープまで吹っ飛んだ。

 

「未来に帰ってきたときはボロボロの左腕だったが、悪魔のおかげで元通りの左腕に回復したぜ!」

 

『これはすごい! 超ベテランの年齢であるネプチューンマンが若き戦士に負けない動きを見せつける! 久々にその姿を見て、我々の度肝を抜きましたが、それだけではない! 全くその実力は衰えていないぞネプチューンマン!!』

 

「ガハハハ! いいラリアットじゃねえかおっさん! あんたみたいな強豪と戦うとワクワクしてきやがるぜ!」

 

 

 ライトマンVSボルトマンが行われているリングにおいて。

 

「ピ~カカカ! ミーのスピードについていけるかな!」

 

『ライトマンの拳や足が何発もボルトマンにヒットする! ボルトマン立っているのがやっとか!』

 

「ドへェ! ドヘェ!」

 

 ライトマンの光の速さの攻撃はまだまだ続く。

 しかし、左拳がボルトマンの顔面をとらえた瞬間、ボルトマンはライトマンの左腕を右手でつかんだ。

 

「ドヘドヘ、やっと捕まえたぜこねずみちゃんよ」

 

「おのれ~、汚いハンドでタッチしおって!」

 

「確かにおめえのスピードや連打はたいしたもんだ。だがよ、俺にはそれをひっくり返すパワーがある! ドヘラァ!」

 

「ビガ!」

 

『ボルトマン! ここまでサンドバッグ状態でしたが、今度は逆にライトマンをサンドバッグにしています! 右手でがっちりライトマンを捕まえながら、強烈な左パンチを連打していく! ライトマン! 逃げようにも力の差で逃げられない!』

 

「せっかく悪魔に蘇らせてもらったんだ! 礼がわりにお前の死体を献上しねえとな!」

 

 

 ボーン・コールドVSバンデットマンのリングにおいて。

 

「くらえ! バンデットナイフ!」

 

 バンデットマンはナイフをボーン・コールドの心臓に向かって投げた。

 

カキーン

 

 そのナイフは高い金属音を鳴らして弾き飛ばされた。

 ボーン・コールドが右手のシューティングアローでナイフを弾き飛ばしたのだ。

 

「まさかおれのナイフの投げに合わせるとはな、キェキェキェ! こいつは楽しめそうだな!」

 

「悪魔のおかげでせっかく脱獄できたんだ。檻の中にいておとなしくしていた分、思う存分暴れさせてもらうぜ!」

 

 

 ブロッケンJr VS ヒカルドのリングにおいて。

 

「お前と戦えるとはな、願ったり叶ったりだ!」

 

「フィ~ギュギュ、弟子も馬鹿で雑魚なら師匠もまた同じ。返り討ちにしてやるぜ! ピラニアンブレス!」

 

 ヒカルドが装備しているとげ付きの輪っかの鎖が伸びていく。

 鎖はブロッケンJrの右腕に絡みついた。

 

「フィギュギュ~、さあこっちへ来い。俺の関節技でお前の全身をへし折ってやるぜ~!」

 

『ヒカルド! ブロッケンJrの右腕にピラニアンブレスを巻き付けて、自分のもとへたどり寄せる!!』

 

 しかし、唐突に鎖を引いてもブロッケンJrがびくとも動かなくなった。

 ブロッケンJrは凄まじい腕力で鎖を掴んでいる。

 

「どうやら、新世代の悪魔は俺の握力の事をご存知ねえみてえだな!」

 

「フィギ!?」

 

『あぁーっ!? ブロッケンJr! その腕力で、ピラニアンブレスごとヒカルドを空高く釣り上げた!』

 

「ピラニア一本釣り!!」

 

 ヒカルドはリングの鉄柱に思いきり背中を叩きつける形となった。

 

「フィガー!!」

 

『あぁーっ!? これは残酷!! ヒカルドの背中が鉄柱に叩きつけられた!! ヒカルドの背骨は大丈夫か!!』

 

「相手が悪魔だっていうなら、こっちも悪魔になろう。久々に残虐超人として試合をさせてもらおうか」

 




アララトに血の雨が降り注ぐ!?


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目覚めた喧嘩魂!!の巻

汚名「老害男(ろうがいまん)」を返上せよ!!


 全リングで悪魔(サタン)率いる悪魔軍と転生超人達による激しい激闘が繰り広げられている。

 ネプチューンマンVSランバージャッカーのリングに注目がいく。

 

「流石ネプチューンマンだ、こんだけ重いラリアットを食らったのは初めてだぜ。ならよ、こういうのはどうだ!」

 

 ランバージャッカーは右のミドルキックをネプチューンマンに繰り出す。

 すかさず、ネプチューンマンが左肘でカットをする動きを見せた。

 ランバージャッカーは蹴りの軌道を下向きに変えてローキックネプチューンマンの左脚のふくらはぎに当てに行った。

 

 ドゴォ

 

 思わぬ下からの打撃にネプチューンマンの体勢が揺らいだ。

 

「ぬお! こりゃあ重い蹴りだぜ!」

 

『ランバージャッカー! 技をミドルキックからローキックに変え、ネプチューンマンにヒットさせた! あのネプチューンマンが揺らいでいます!!』

 

「俺をただキックだけの男と思うなよ。キックが重いだけじゃなく、足関節も柔いんだ。だからこういう芸当が出来る」

 

「ならば、こういうのはどうだ!」

 

 ガシィ

 

『ネプチューンマン! ランバージャッカーと組み合った!』

 

「あれは、審判のロックアップ!」

 

 過去、その技を受けたロビンマスクが反応を見せた。

 

「若造、おめえの力をネプチューンマン様が見定めてやるぜ」

 

「ガハハハ! キックボクサーだったから色んな男と組み合ったけどよ、プチプチと弾けるような筋肉の感触、巨大な岩を彷彿させる重さ、こんな感触初めてだ。おっさんとんでもねえやつだ」

 

 ランバージャッカーが嬉しそうに笑っている。

 

潜在能力(せんざいのうりょく)は高いようだな。こりゃあやりがいのある相手だぜ」

 

 ランバージャッカーにつられるようにネプチューンマンも笑い始めた。

 

「とこんで聞きたいんだがよ、あんた確か新世代超人(ニュージェネレーション)達と一緒に過去に行ったんだよな。そいつらがまだ帰ってきてないのに、なんでこんなとこにいんだよ?」

 

「簡単な話さ、俺も過去の世界に行ってな、新たに開かれたタッグトーナメントに出たが負けちまったんだよ。役に立たなくなった俺はこの世界に送り返されたってことさ。この世界に帰ってくると同時に、悪魔(サタン)が待ち構えていたんで、その時にボロボロになっていた左腕を治してもらうことを条件に、この戦いに参戦した!」

 

『ネプチューンマンから驚きの事実が判明したーーーー!! なんと、|新世代超人(ニュージェネレーション)とともに過去の世界へ旅立ち、新しいタッグトーナメントに参戦していたーーー!!』

 

「ゲ~ギョゲギョ、悪魔は手段を選ばぬ。貴様には過去の世界で手痛い目にあったが、そんなことはどうだっていい! こいつら世界浄化者(ワールドクリーナー)を抹殺することが俺の最優先事項! ならば、貴様の力を是非とも利用させてもらおうと思ったのだーー!!」

 

「それだけか! ネプチューンマン!」

 

 その声を発したのはロビンマスクであった。

 

「今、私の記憶が新しく塗り替えられたと実感しているところだ! そして聞きたいことがお前に一つある! 今のお前に正義の魂はあるのか?」

 

「急にどうしたんだロビンマスク?」

 

 ランバージャッカーと組み合いながら、ネプチューンマンが不思議そうな顔をする。

 

「私の質問に答えろ!」

 

 ネプチューンマンの態度にロビンマスクは怒鳴り返した。

 

「ふっ……そんなもんありゃあしねえよ。俺は正義とか悪とかそんなもののために戦っているわけじゃない、俺の満足のために戦っているのだ」

 

「満足だと?」

 

「そうさ、過去の世界で俺は散々醜態を晒しちまった。自分でも本当に何やってんだって思うくらい迷走していた。過去のタッグトーナメントの記憶があるやつらにとっちゃあ、お前みたいな老害はすっこんでろと言いたくなるだろうよ。でもな、やっぱり闘いてえんだよ。完璧超人ネプチューンマンの血がよ、目の前にいる未知の強豪と魂の喧嘩をやりたいってな――――――っ!!」

 

 ネプチューンマンのマスクから精悍なる眼差しが見えた。

 それを見てロビンマスクが安心した顔をした。

 

「昔のやつの目だ、やつこそ、憎たらしいくらいの強さと完璧なる誇りをもったネプチューンマン、いや喧嘩マンだ!」

 

 ネプチューンマンの発言に、ランバージャッカーがふてぶてしい態度をとる。

 

「おっさんには悪いけどよ、おれは負けず嫌いなんでな、この試合は俺が勝つぜ!」

 

 ランバージャッカーが組み合った状態から、左膝蹴りをネプチューンマンのみぞおちにヒットさせた。

 

「ぐほぉ!?」

 

「そうらそうら! いくぜいくぜ!」

 

『ランバージャッカー! 膝蹴りを的確に連打する!』

 

「長年鍛えてきたこの体、これくらい屁でもねえ!」

 

 ネプチューンマンは真上にランバージャッカーを放り投げた。

 

『ネプチューンマンすごい怪力だ! 組み合っていたランバージャッカーを空高く放り投げたーー!!』

 

 ネプチューンマンもそれに続いてジャンプしていくが、ランバージャッカーを追い越してしまう。

 

「おっさん何やってんだ? もうろくしてんのか?」

 

「貴様よりも俺の体は重い、だからこそお前よりも落下するスピードは速い、すなわち!」

 

 空中で、ネプチューンマンの体が徐々にランバージャッカーに追いついていく。

 ネプチューンマンは空中でランバージャッカーを首四の字でとらえた。

 その動きにロビンマスクが反応した。

 

「あ、あの体勢は!?」

 

『ネプチューンマン! まさかの掟破りのロビンスペシャル返しを繰り出した! このまま試合が決まってしまうか――――――っ!』

 

「俺よりも重いからと言って、あんたの方が速く落ちるっていうのは納得いかねえけどよ、脱出できないことはない、いや、倍返しでお返ししてやるよ」

 

 ランバージャッカーが膝を曲げて脚をコンパクトにしてから脚を伸ばした。

 驚異的な脚力によりぎゅんと加速がつく。

 

「エアーダッシュ!」

 

「ぐお!」

 

『ランバージャッカー! デストラクション戦で見せたエアーダッシュで空中で加速をつけた。その勢いで、掟破りのロビンスペシャル返しの首四の字のかかりが甘くなっていくぞ――――――っ!!』

 

「ミスターUSB、今こそお前の仇をとってやるぜ!!」

 

 ランバージャッカーが首四の字をこじ開け、両腕をネプチューンマンの脚に絡ませていく。

 

『この体勢はもしや!? 伝説超人(レジェンド)ラーメンマンの技かーー!!』

 

「くらえ! 九龍城落地(ガウロンセンドロップ)!!」




万有引力の法則など知るか!!


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英国の英雄と恥さらしの巻

ロビンスペシャル返し返し!?


『ランバージャッカー! 掟破りのロビンスペシャル返しを返しまさかの九龍城落地(ガウロンセンドロップ)!! このまま試合は決まってしまうのか――――――っ!!』

 

 この危ない状況に、ネプチューンマンは落ち着いている。

 

「おっさんよ! 諦めて開き直っちまったのか!」

 

「ランバージャッカー、キックボクサーながら、レスラーとしてのお前のセンスもなかなかだ。だがな」

 

 ダァン

 

 ネプチューンマンは九龍城落地(ガウロンセンドロップ)にかけられながらも、リングに激突寸前、両の掌で着地するようにして、衝撃を和らげた。

 ランバージャッカーの繰り出した九龍城落地(ガウロンセンドロップ)は完全に効いていない。

 

『ネプチューンマン! ランバージャッカーの九龍城落地(ガウロンセンドロップ)をいとも簡単に破ってしまった――――――っ!』

 

「なに!?」

 

「あの漢の技はそう簡単に真似できるものほど軽いものではない。あの漢はかつて私が限界まで力を出してやっとのこと倒せたからな」

 

 その様子をヘラクレスファクトリーの巨大モニターでラーメンマンが観戦していた。

 

「ネプチューンマン……」

 

 両者技の体勢を解き、スタンディングの体勢になった。

 

「おらっ!」

 

バキィ

 

 ネプチューンマンが右フックをランバージャックの顔面に当てた。

 

「どうりゃ!」

 

バキィ

 

 ランバージャッカーもお返しと言わんばかりに右のフックを当てた。

 その流れのまま、両者乱打戦となった。

 

バキィ ドゴォ ズボォ

 

『これはすごい!! 両者逃げずに殴って殴って殴り合う!! まるで子供の喧嘩だ――――――っ!!』

 

 徐々に互いの顔が流血していき、顔も腫れてきた。

 

「ガハハハ!! おっさん! 50過ぎとは思えねえパンチだな! すっごく痛えけどすっごく楽しいぜ!」

 

「はははは!! そのままそっくり返してやるぜ!!」

 

 この展開を見て、ハラボテが疑問を抱いた。

 

「すごい展開じゃ! だが、ネプチューンマンはなぜ打撃戦にこだわる? ランバージャッカーは打撃中心のファイター、寝技や関節技に持ち込めば、もっと優位に戦えるはずじゃ。それに、あいつにはサンダーサーベルや光ファイバーのパワーもある。なぜなんじゃ?」

 

 ロビンマスクがハラボテの疑問に答えた。

 

「ハラボテ元委員長、それがあいつの流儀ってやつですよ」

 

「流儀?」

 

「ネプチューンマンは頭の良いファイターです、寝技や関節技でいけば楽に勝てると分かっています。しかし、それで勝っても面白くない、相手の土俵に立って勝ってこそ、真の価値ある勝利だとネプチューンマンは思っているはずです。正々堂々と戦って勝つ正義超人の流儀とも、どんな手を使ってでも勝つ悪魔超人の流儀とも、また違う、完璧超人の流儀なんですよ」

 

「ワシが若い時でもやらなかった戦い方じゃな。まっ、ああいうのは嫌いではない」

 

「私も嫌いではないです。特にあの殴り合いは、私が若かった頃を思い出します」

 

 ロビンマスクはキン肉マンとの戦い、ネメシスとの戦いを心に浮かべながら語った。

 

 

 両者の殴り合いは続いているが、ランバージャッカーから焦りの顔が見える。

 

(殴り合いには慣れてはいるんだがな、このおっさんのパンチの重いこと重いこと。この展開のままいくと、俺が先にリングでおねんねしてるかもしんねえな)

 

「殴り合いも飽きてきたな、こんなのはどうだ!」

 

バシィ バシィ バシィ

 

 ランバージャッカーは右ミドルキックをネプチューンマンの左腕に連打していく。

 

「ぐぅ、貴様!」

 

「ガハハハ!! おっさんは左のラリアートが得意なんだろ! なら早めにその利き腕を潰さねえとな!!」

 

『殴り合いの流れから一転し、ランバージャッカーの右ミドルキックの連打がネプチューンマンの黄金の左腕をとらえていく!! このままではネプチューンマンの左腕が破壊されてしまうぞーーー!!』

 

「てめえが蹴り合いを望むなら、俺もその蹴り合いに付き合ってやろうじゃねえか!!」

 

ドゴォ

 

 ネプチューンマンの強烈な前蹴りがランバージャッカーのどてっぱらにさく裂した。

 

「ガハァ!」

 

『ネプチューンマンも負けていない! 強烈な前蹴りでランバージャッカーをリングの支柱まで吹っ飛ばした――――――っ!』

 

 間髪入れずに、ネプチューンマンはランバージャッカーを追いかけ、飛び膝蹴りをランバージャッカーにかました。

 

ガコォ

 

『ネプチューンマンの飛び膝蹴りがランバージャッカーにヒット! ランバージャッカーたまらずダウン!』

 

「ちぃ、見た目に似合わず身軽な動きも出来るんだなおっさん」

 

 鼻が曲がり、鼻血も大量に出ている状態ながらも、なおランバージャッカーは立ち上がろうとする。

 

「なかなかの戦闘狂だな、その状態でもまだ戦おうというのか?」

 

「その言葉! 斧をつけて返してやるぜ!」

 

 ランバージャッカーがネプチューンマンに向かっていき、右のハイキックを撃った。

 ネプチューンマンは左腕でガードをした。

 

ドゴォ

 

「ぐおぉ!?」

 

 ネプチューンマンが左腕に伝わった思わぬダメージに、苦痛の表情を浮かべた。

 

『ネプチューンマン! ランバージャッカーのハイキックをガードしましたが、左腕へのダメージは相当のもののようです!』

 

「俺のハイキックは大木すら倒す。いかにネプチューンマンの左腕といえど、まともにくらえばただではすまないぜ。その左腕では、従来のラリアットは打てないだろう」

 

「ぬかせ、同じ英国の超人が両足両腕が無くなろうとも、最後まで勝利を信じて強豪に勝ったことがあるんだ。左腕をちょいと痛めた程度で負けたら、そいつに合わせる顔がないってもんだぜ!」

 

 ネプチューンマンはかつて、王位争奪戦編でロビンマスクとマンモスマンが闘った時の記憶を思い出しながら言った。 

 その言葉にロビンマスクが反応した。

 

「そうだ! ただでさえ過去で恥を晒した老害のお前がここで負けたら、私はお前を一生英国の国辱と蔑んでやる!」

 

 ネプチューンマンがその言葉に、にやりと笑いを浮かべた。

 

「こんにゃろ~! それがてめえなりのゲキってわけか?」

 

「かつて私とその弟子を倒したやつが、こんなとこで負けるのはみたくないからな」

 

 ロビンマスクとネプチューンマンは、心のどこかで通じ合ったという様子を見せた。

 ネプチューンマンは冷や汗を流しながらもランバージャッカーに左腕でラリアットを放った。

 しかし、威力も半減しており、ランバージャッカーはリングに転がされる程度で済んだ。

 

「意地の一撃かい。もう立てないようにしてやるぜ」

 

『ランバージャッカー! またもネプチューンマンに右のハイキックを当てに行く!』

 

 ネプチューンマンは膝を曲げ、上半身全体を下げるように力を抜いてハイキックをかわそうとした。

 

「俺のキックは軌道が変わるんだぜ!」

 

 ランバージャッカーのハイキックの軌道が変わった。

 斜め上を狙った足が、カーブを描き、斜め下方向の軌道となった。

 足の到着点はネプチューンマンの側頭部であった。

 

ゴォン

 

 ネプチューンマンの意識が遠のき、その巨体は傾き、リングに沈む。

 

『決まってしまった――――――っ!! デストラクションをしとめたあのハイキックがネプチューンマンをとらえた――――――っ!』

 




大木折られるっ!!


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完狩!喧嘩男!!の巻

このまま汚名挽回になってしまうか!?


 ネプチューンマンがリングから起き上がらずカウントが数えられる。

 しかし、ランバージャッカーはそのネプチューンマンを無理やり起こす。

 

『どうしたことだランバージャッカー! ダウンしたネプチューンマンを立たせた――――――っ! このまま寝かせればKOの可能性もあったのになぜだ――――――っ!』

 

 ランバージャッカーは立たせたネプチューンマンをジャーマンスープレックスでリングに叩きつけた。

 

『ランバージャッカー! ネプチューンマンをジャーマンスープレックスで追撃! またもネプチューンマンダウン!』

 

 しかし、またランバージャッカーはネプチューンマンを無理矢理立たせた。

 

「おいおっさん! 俺はこんな勝ち方好きじゃねえんだよ! 俺に合わせて打撃戦でいく漢気は悪くはねえけどよ! それでおっさんが本来の実力を出さないっつうのが気に食わねえんだ! 俺はレスリング技は上手くねえけどよ! やってやるから、おっさんもどんどん技を出しやがれってんだ!」

 

『ランバージャッカー! 今度はネプチューンマンをブレーンバスターでリングに叩きつけた!』

 

 しかし、ネプチューンマンは立ち上がらない。

 それを見てロビンマスクが声をあげた。

 

「どうしたネプチューンマン! 本当にまいってしまったのか! お前に慈悲の心があるなら、あの力を使ってこんな状況たやすく逆転するはずだ! それとも改心しきれずに慈悲の心等ない状態なのか!!」

 

 ネプチューンマンがその言葉にピクリと反応し、よろよろと立ち上がってきた。

 しかし、ロビンマスクが期待していた変化がネプチューンマンに起こらずに、なぜなんだと怪訝そうに様子を見た。

 

「ロビンマスクよ、その通りさ。昔の俺ならあの力を使えたかもしれない。だがな、今の俺は悪に染まりすぎてしまった。俺が使いたくても使えないのさ。心の底から慈悲を思える相手がいねえんだ」

 

「ネプチューンマン……」

 

「だけどよロビン、俺は憎たらしい悪よりも、自分と異なる正義よりも受け入れたくないのが、俺様自身の敗北だ!! 勝って当たり前!! それが俺様ネプチューンマンだ――――――っ!!」

 

『ネプチューンマン! ランバージャッカーを持ち上げて空高くジャンプ! 空中からランバージャッカーをリングに放り投げた! このまま落ちればランバージャッカーは頭からリングに激突だ!』

 

「やっとその気になったか! でもおっさん、その左腕で高い威力の技を出せるのか?」

 

「左腕を負傷した俺でも十分に威力の高い技を出せる事を教えてやるぜ!」

 

 ネプチューンマンは頭から落ちているランバージャッカーの足に、自分の足を乗せて、全体重をかけた。

 

「なんだこりゃ! 体に凄いGがかかるぜ!!」

 

 テリーマンがその動きに反応を見せた。

 

「おお! あの技は!」

 

「ネプチューンキング! あなたの技を使わせていただく! メガトン・キング落とし!!」

 

 ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ズ――――――ン

 

『決まった――――――っ! かつて、マシンガンズを苦戦させたネプチューンキングの技がランバージャッカーにさく裂した――――――っ!』

 

「ぐぐぐ……」

 

 リングに頭から刺さったランバージャッカーをネプチューンマンは引っこ抜いた。

 

「すまなかったな、これが俺の本気だ。どんどん行くぜ!」

 

グサッ

 

『ネプチューンマン! 更に追撃をかける気だ! 自らのチョッキの突起部分にランバージャッカーの背中を突き刺した!』

 

ガシィ ガシィ グワッ

 

「ダブルレッグスープレックス!!」

 

ガ ガ ァ ン

 

「ガハァ!」

 

『ネプチューンマン! 自身の必殺技を惜しまずに繰り出しまくる! ランバージャッカー! KO寸前!!』

 

「最後はこれだ――――――っ!」

 

 ネプチューンマンがランバージャッカーの体を固めていく。

 

「喧嘩スペシャル!!」

 

グワッキィ メキ グキ ゴキ

 

「あがぁ――――――っ!」

 

『ランバージャッカー! 苦しみの声をあげる! ネプチューンマン! 更にランバージャッカーの体を締め上げる!!』

 

 

 ロビンマスクがネプチューンマンの技を見て解説を始めた。

 

「あの技で、ダイヤモンドの硬さを誇るケンダマンが葬られたことがある。ランバージャッカーのポテンシャルが高いとはいえ、ただではすまないだろう」

 

「くそう! どんだけ力を入れても抜け出せねえ――――――っ!」

 

「ランバージャッカー! これで終わりだ!!」

 

ボ キ ィ

 

「ガボハァ!」

 

 ランバージャッカーは血反吐を吐いて倒れた。

 カウントがすすめられたが、ハラボテがそれを止めて、両手をふった。

 

カ ン カ ン カ ン

 

『試合決着!! ネプチューンマン!! ランバージャッカーを喧嘩スペシャルで仕留めた――――――っ!』

 

 試合の結果に観客は盛り上がり、ネプチューンマンコールが会場に響いた。

 ランバージャッカーの体がほんのわずかに動き、意識を見せた。

 しかし、その体は喧嘩スペシャルによってダメージを受けて満足に動かせない。

 

「なぜだ……なぜ殺さなかった……」

 

「ふん、殺すとか殺さないとか悪魔が勝手に言ってることだ。お前の首は俺が預かった。それで十分殺したことになる」

 

「けっ……俺を生かしてどうしようってんだ?」

 

「お前を一人前のファイターに育て上げる」

 

「? 何を言ってんだおっさん?」

 

「あるお人よしのヒーローからな、未来と命を託されたんだよ。こんなどうしようもないおっさんに、後進の指導をするようにってお願いしやがってな。だから、お前が嫌でも首根っこ捕まえて鍛えてやるぜ。こんな末恐ろしい超人を見逃すわけにはいかねえよ」

 

 ネプチューンマンは過去の世界で、無様を晒して一度死んだ。

 そんなネプチューンマンを命を賭して救ったカオスがいた。

 悪魔と共に行動しながらも、カオスの言葉を忘れてはいなかった。

 

「あんがとよおっさん……いや、ネプチューンマンといった方がいいか。もしあんたと早く出会うようなことがあったら、俺はあんたについていっただろうぜ……でもな、今の主に反抗する行為はできねえぜ。それに、亡くなった仲間にも申し分が立たねえ……」

 

「ランバージャッカー……」

 

「俺は一足先に地獄に行く! また俺が生き返ったら相手してくれよ!」

 

「こう見えても俺は地獄の閻魔と顔見知りなんだぜ。なんなら口をきいてやってもいいさ」

 

「ガハハハハハ!! そんじゃま口を聞いて……くれよな」

 

 ランバージャッカーは自分の胸に右腕を刺して超人強度の塊の球を取り出し、それを超人の神ミスターノアに向かって投げた。

 ランバージャッカーは満足そうな笑顔をして息絶えた。

 

「もうちっと頑張らないとあの世にいったカオスに顔向けできんな、それに、ザ・マンにもだ。完璧超人たる俺が完璧の象徴をおおいに汚してしまったからな……」

 

 ランバージャッカーの遺志を受け取ったミスターノアが追悼の意をささげた。

 

「ランバージャッカー、お前の死に報いようぞ……そしてネプチューンマンよ、流石ネプチューンキングの名を継ぐだけの事はあるな」

 

 ネプチューンマンが思わぬ言葉に反応した。

 

「知っているのか! キングのことを!」

 

「ああよく知っているとも、かつてあの男と共に行動を共にしていたのだからな」

 

「なんだと!?」

 

 ネプチューンマンは驚いた。

 ネプチューンマン以外の超人達も同様に驚いていた。

 

「そう、ネプチューンキングもかつて、ザ・マン、私のように神の座を降りた神の一人なのだからな!!」




明かされたネプチューンキングの過去!!


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堕神ネプチューンの巻

だれだよネプチューンキングを小者とかいったやつ!!


 一同は超人の神ミスターノアの一言に驚いた。

 完璧超人の一人ネプチューンキングが神だったという事実を誠に信じられないからだ。

 中でもネプチューンマンが一番驚いている。

 

「ネプチューンキングが神だっただと!? そんなこと一度も聞いたことがないぜ!」

 

 周りの反応に対し、超人の神ミスターノアの反応は淡々としている。

 

「だろうな、あいつは神に戻りたいという本心を隠しながら、完璧超人として活動をしていたらしいからな」

 

「神に戻りたい? 活動だと? 話が読めないぜ!」

 

「では丁寧に説明してやろう。あいつはその昔、海と地震を司る神ネプチューンであった。かつて、超人だけでなく、人間の世界まで荒廃し、神々は世界を一度滅ぼそうと考えた。まず、雷の神ゼウスが超人たちに救いの手を差し伸べようとした。ネプチューンマン、おまえもよく知っている男だ」

 

「雷……もしや、ザ・マンか?」

 

「そうだ。お前がその昔使っていたサンダーサーベルは元々はザ・マンの技の一つであった。雷の神であったあやつなら、雷の技などたやすき事だ。そして人間を救うために立ち上がったのは、私とネプチューンであった。やつもその昔は人格者であり話のわかるやつであった。私とネプチューンは善良なる人間や動物を救い出し、ノアの箱舟へと乗せた。ノアの箱舟の仕事が完了した後、ネプチューンは自らの力で地上に大洪水をもたらした。その後、地上にまた人間や動物達が平和に暮らす世界が作り出されたかのように見えた。しかし、いつの世も悪い人間が現れてくる。ネプチューンは性善説で人間を見ていたが、やはり人間は性悪説と考えを改め、悪しき人間を滅ぼすために、大洪水や地震といった天災をその都度起こした。とうとう私とネプチューンは対立し、戦うことになった。私は辛くもあいつに勝つことができ、とどめをさそうとしたのだ。そこへゼウスがやってきた」

 

 

(グロロロ、待ってはくれぬかミスターノアよ)

 

(ゼウス……しかし、こいつの魂は腐りきってしまった。いくら慈悲深いお前でも救えない……)

 

(私がネプチューンの力を封印しよう。また暴走しても容易に止められるようにな。こいつには私が近々構成する予定の完璧・無量大数群の長を務めさせよう。一からのやり直しをさせ、やつを改心させる。それでどうだ?)

 

(……分かった。では、我が盟友をよろしく頼んだ)

 

(うむ)

 

 

「こうして、ネプチューンは完璧超人へと生まれ変わったのだ。ゼウスやネプチューンの存在が完璧超人が神に近い存在だと言われている所以でもある」

 

 ここまでの話をネプチューンマン、そして会場の皆も聞き入っていた。

 

「キングがかつてそこまで偉大なる方だったとは……」

 

「お前はネプチューンキングとはテームズ川の底で出会ったのだろう? 完璧超人といえども川の底でずっと生きていけるはずがない。やつが昔海を司る神であったからこそだ」

 

「い、言われてみればそうだ!」

 

「しかし、その頃には奴はとんでもない企みを持っていた。マグネットパワーを利用して神だった頃の力を取り戻そうとしたのだ!」

 

「マグネットパワーだと!?」

 

「マグネットパワーはお前も知っての通り、強力な力を持つ。強大な磁力を生み出し、時間すらも巻き戻し、かつて悪魔やオメガケンタウリの六槍客も狙っていたほどだ」

 

 悪魔がその話を聞いてゲギョゲギョと笑っている。

 

「ネプチューンはそれを狙い、マグネットパワーを管理していたサイコマンに近づいた。しかし、ゼウスが育てた弟子だけあって、ネプチューンの企みにすぐに気づき、完璧超人からほぼ脱退の扱いを受けた。それでもやつはチャンスを待ち続けていた。ネプチューンマン、お前と会う日をな。そして、人間社会の滅亡とやり直しを野望に抱き、タッグトーナメントに参戦するも、やつはキン肉マンとテリーマンとの試合によって命を落としてしまった」

 

「……ネプチューンキング、最後にはすっかり落ちぶれちまったが、俺に完璧超人という生き方を教えてくれた恩人でもある。あまり俺も人のことをいえる立場でもないし、あの人を悪く思えねえぜ……」

 

「話はそこで終わりでない。ネプチューンキングやサイコマンがマグネットパワーを乱用したせいでマグネットパワーが暴走を始めたのだ!」

 

「マグネットパワーの暴走?」

 

「マグネットパワー自身の力は強い。ゆえに制御は難しく、容易く扱えるものではない。その暴走は大地震、大津波、火山噴火といった形で地球に現れた」

 

 テリーマンがそのことばに反応した。

 

「つまり、テキサスで発生するツイスターや日本で最近起きた大震災も皆マグネットパワーのせいだというのか?」

 

「そのとおりだ。しかし、マグネットパワーは意思を持ち、このままではいけないとでも思ったのか、そんな自身を管理する存在をも生み出したのだ」

 

「管理する存在?」

 

「それを、今そこで戦っているバンデットマンに調べさせて、管理する存在が誰であるかを確信した」

 

 その言葉にバンデットマンが反応した。

 

「いいのかい主さんよ、秘密はもうちょいとっておいてもいいんじゃないのか?」

 

「大丈夫だ。その管理する存在とは、超人の娘である」

 

 ハラボテが勘付いたような反応を見せた。

 

「そうか、先の戦いでティアーマンが言った発言、もしや……」

 

「ハラボテ、お前の察しのとおり、過去の世界へと旅だった二階堂凛子、彼女こそがマグネットパワーを管理する超人だったのだ!!」

 

 この会場に存在する者全員、そして遠くからこの試合観戦している皆に衝撃が走った!

 

「にわかには信じられんな。当の本人に聞こうにも過去の世界にいるしな。もしそれが本当だとしたら、二階堂凛子は巨大な力を操る存在、世界の自然現象をも操る事が出来て、人間の存在の滅亡も自分の意志次第ってことじゃねえか!!」

 

「さすがご察しがいいなネプチューンマン。私は世界を浄化するためにも、彼女の存在がとても必要なのだよ。仮に彼女を渡さないという気があるやつがいれば、私はそいつを殺してでも彼女を手に入れるつもりだ!」

 

「もうとんでも歴史話は終わったのかい、ミスターノアさんよ!!」

 

 唐突に発された大声の主はブロッケンJr.であった。

 

「今は俺達が戦っているんだ! あんたが主役じゃねえんだよ!」

 

 現在リングで戦っている各選手、言葉に出さずともその通りだという態度をとっていた。

 

 

 さて、ボーン・コールドとバンデットマンが対するリングに注目が集まる。

 

「おめえさん、確か報酬で動く男だったな。どうだ? 俺を殺したら俺の宝を譲ってやってもいいぜ! 高価なものもじゃんじゃんあるぞ!」

 

「そいつはいいモチベーションアップにつながるぜ! でもな、俺がほしい報酬はな、お前が奪ったニルスの義手、そして、お前の命だ――――――っ!」




俺様の報酬は高いぜ!!


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殺し屋稼業再開の巻

俺の獲物に手を出すな!!


「俺の命が報酬か、なめられたもんだぜ。ならば見せてやるぜ! 盗賊の技術をな!」

 

 バンデットマンがボーン・コールドに向かったかと思うと空高く飛んだ。

 そのまま内膝でボーン・コールドの首をとらえ、両手でボーン・コールドの両足をとらえた。

 

「盗技! 3Dクラッシュ!」

 

『なんと――――――っ! バンデットマンがボーン・コールドの必殺技3Dクラッシュを繰り出した――――――っ!』

 

「ぐっ! こいつ!」

 

「俺は盗賊だし、器用だ。だから人様の技を奪うなんてお茶の子さいさいさ!」

 

ミシ ミシ ミシ

 

『ボーン・コールドの腹部が裂け、血が吹きだしてきた――――――っ! まさかの秒殺負けとなるかボーン・コールド!!』

 

「なめているのはどっちだ! 最強のヒットマンと言われた俺を俺の技で殺そうなんて、甘いんじゃねえのか――――――っ!」

 

 ボーン・コールドは体を後ろに体をそらすように力を入れ、バンデットマンごと体を回転させた。

 バンデットマンの技のかかりが甘くなり、バンデットマンの体が宙に吹っ飛ばされた。

 しかし、バンデットマンは宙で回転しながら、コーナーポストで直立を決めた。

 

「なるほど、自分の技の破り方もちゃんと分かっているってことか。しかし、それは逆におめえさんの首を絞めることになるんだぜ~!」

 

「ぐっ!」

 

 キン骨マンもいつの間にか会場に到着してその様子を眺めていた。

 

「あの男、なかなか手強い!! 3Dクラッシュの破り方を出すことまで計算してボーン・コールドの技を使ったのか!! 技の破り方まで盗むとはまさに盗賊じゃ!」

 

 バンデットマンの策略ぶりにキン骨マンが驚いていた。

 

「そろそろ話してもいいだろうよ。本来なら檻の中にいるおめえさんがしゃばに出ていることをよ。会場の奴らもそれについては気になっているとこだぜ」

 

「なぁに、簡単さ。悪魔のやつが唐突に俺の檻に来てな、殺して欲しいやつらがいると依頼が来たんだよ。金に関して聞いたら超人委員会にたんまりと払わせると聞いたからそれでOKした。一度は廃業したが、また殺しがやりたいって、うずうずしていたところだったんだ」

 

 ボーン・コールドの発言にハラボテが青筋を立てて怒った。

 

「なんじゃと!? 悪魔!! 貴様勝手な事を言うではない!! わしの、いや、超人委員会の金を殺し屋を雇うために使うんではない!!」

 

「ゲギョゲギョゲギョ~とっくの昔に金はご~っそりと、超人委員会の金庫からいただいているんだぜ~~! 貴様が得た悪銭を世界の治安のために使うんだからな~ありがたく思え~~」

 

「お、おのれ~~!! これほど悪魔が憎いと思った日はないわい!!」

 

 ハラボテが両の拳をテーブルにたたきつけて怒りを表した。

 

「ムヒョヒョヒョ、年をとっても金欲は衰えない。まさにキン欲マンだわさ」

 

 そんなハラボテをキン骨マンがからかった。

 

「そういうことだ。万太郎と闘ったから言って、ハンゾウのように改心したなんて思わねえでくれよ!」

 

『ボーン・コールド! 宙へ高く飛び、肩のシュールを両脚に巻き付けた! この体勢はもしや――――――っ!』

 

「ナスティ・ギムレット――――――ッ!」

 

ギュルルルル

 

「右回転か、それなら、盗賊七つ道具の一つ! バンデット扇子!」

 

『バンデットマン! 頭に巻き付けているバンダナから扇子を取り出した! いったい何をする気だ―――――っ!』

 

「そうれい! そうれい!」

 

 バンデットマンが扇子で渦を作るように左回転させた。

 バンデットマンの腕から渦が発生した。

 

「そんな渦で俺のナスティ・ギムレットを破れ!?」

 

『あ――――――っ! ボーン・コールドのナスティ・ギムレットの回転の速度が遅くなっていく! どういうことだこれは――――――っ!』

 

「ナスティ・ギムレットとやら、恐ろしい技だ。でもな、回転しなけりゃあどうってことはない。右回転の動きを止めるに逆向きの左回転の動きをぶつけてやればいい」

 

「ぐっ! こんな方法で破られるとは!」

 

 その様子を見てキン骨マンがあせりの表情を見せた。

 

「まずい、ボーン・コールドがすっかり相手のペースに乗ってしまっている。焦りからか、自身の得意技を早々に使いすぎておる!」

 

 バンデットマンがバンダナから何かを取り出す動作を見せた。

 

「ではこっちも反撃といくぜ! 盗賊七つ道具の一つ! バンデットロープ!」

 

『バンデットマンまたも盗賊七つ道具を使った――――――っ! バンデットロープがボーン・コールドにらせん状に絡みついていく!』

 

「人様の体にロープを結びつけるとはあんましいい性癖をしてねえみてえだな」

 

「その減らず口をたたけないようにしてやるぜ! バンデットコマ回し!」

 

ギュルルル ズドン

 

『あ――――――っ! ボーン・コールドの体が駒のように頭部から落下勢いよく落下した!』

 

「ぐはぁっ!」

 

『ボーン・コールドダウン! 誰がこんな展開を予想したか! ノーリスペクトの一人として恐れられた男が今リングに倒れている!』

 

「けっ……こんな技で負けたら、俺は殺し屋をまた廃業しなきゃいけねえぜ!

 

『ボーン・コールド立ち上がった! しかしまだダメージはある模様だ!』

 

「おれには、まだこれがある! シューティング・アロー!」 

 

 ボーン・コールドの左目についた赤いレンズが、照準をバンデットマンの心臓に合わせた

 

ピピピ ドォゴォォォ

 

『ボーン・コールド! 伝家の宝刀シューティング・アローをバンデットマンにめがけて発射! バンデットマン危うし!』

 

「盗賊七つ道具の一つ! バンデットグローブ!」

 

ガシィ 

 

「な、なに~!?」

 

『なんと! バンデットマン! 手でいとも簡単にシューティング・アローを受け止めた――――――っ!!』

 

「こいつはなんでも普通につかめるグローブだ。こんななまくらナイフ、こうしてやるぜ!」

 

パキィ

 

 バンデットマンはシューティング・アローのナイフをへし折った。

 

「お、おれのシューティング・アローが!?」

 

「どうだい今の気持ちは? 自分の必殺技をことごとく破られたお気持ちは? もはやおめえさんは手詰まりに近い状態、何をすればいいのか分からんだろう?」

 

「くっ、とんでもない依頼を引き受けちまったもんだぜ……」

 

 その様子を心配そうに見ているキン骨マンがいた。

 

「ボ、ボーン・コールド……」

 

「なにをやっているんだキン骨マン! お前にしかできぬ仕事があるであろう!」

 

 突如、大きなだみ声が聞こえてきた。

 そこにはよく皆が知る豚鼻のマスクマンの男が、一族伝統のスタイルで立っていた。

 

「お、お前は、キン肉マン!?」




待っていたぞ! 俺達のヒーロー
キ ン 肉 マ ン ! !


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骨肉の争いのギフトの巻

俺は炎のキン肉マン!!


 突如やって来たキン肉マンの姿を見て、会場の誰もが驚いた。

 顔つきは闘いの場にふさわしい勇ましいものである。

 

『お――――――っと! ただいま試合中ですが、試合よりも気になる男がやってきた! 超人オリンピックV2チャンプ! 悪魔将軍、スーパーフェニックスと幾多の強豪を倒した男、キン肉マンがここアララトに現れた――――――っ!!』

 

 キン肉マンは周りの反応を無視して、キン骨マンに向かって歩いてきた。

 

「久しぶりじゃのう、キン骨マン。お前とこうしてまともに話すのはアメリカのタッグ戦以来かな?」

 

 キン肉マンの顔つきは、すっかり間の抜けた顔になった。

 

「おお、キン肉マン。お前さん、すっかりよれよれのじいさんになったのう」

 

「なははは! それはお互い様じゃ、さて」

 

 キン肉マンがボーン・コールドの闘っているリングを見て、顔に緊張感を戻した。

 

「久々の再会を懐かしむのはここまでにしよう。キン骨マン、お前なら息子のボーン・コールドを助けることができるはずだ!」

 

 その意外な言葉にキン骨マンが驚いた。

 

「わ、わしがか!? わしのような無力な怪人に何ができるというんじゃ?」

 

「キン骨マン、確かにお前の身体能力は高いものではなかった。お前と一番闘った私がよく分かる。しかし、かつての私はお前を手強い敵だといつも思っていたのだ」

 

「わ、わしが手強い敵じゃっただと!?」

 

「そうだ。実際、お前との闘いは苦戦を強いられるものが多かった。だが、そのおかげで私は強くなれたのだ。ダメ超人だった私が、テリーマンやロビンマスクと肩を並べる強さの超人になれ、かけがえのない友情を築くきっかけをお前が作ってくれたのだ。今ではお前さんに感謝してもしきれないくらいなんだ」

 

「わ、わしが行ってきた悪行には何の意味も無かった……いや、妻を失い、ボーン・コールドを凶悪な超人にしてしまい、一生かかっても償いきれない罪悪を犯していたと思っていた……。まさかこんな形でフォローされるとは思わんかった……。キン肉マン、いつになっても、お前さんは心に愛のあるスーパーヒーローじゃ」

 

「な~に、思ったことをそのまま話しただけだわい」

 

 キン肉マンの顔が優しい笑顔になった。

 突如、歓声が会場に響いた。

 

『あ――――――っと! ボーン・コールドダウン! バンデットマンの猛攻についにダウンした! 出す攻撃が一切通じず、ペースを握れません!』

 

 リングの様子を見て、キン肉マンの顔がまたも緊張感のあるものとなった。

 

「キン骨マン、お前がどうして私にとって強敵であったか、それが分かればボーン・コールドの力になってやれるはずだ」

 

 キン骨マンははっと気づいたような反応をした。

 

「そうか! 恩に着るぞキン肉マン!」

 

 そう言うと、キン骨マンはバンデットマンの動きを観察した。足の動き、手の動き、顔の表情もじっくり見た。

 ボーン・コールドが起き上がると、バンデットマンが攻撃をしかけた。ボーン・コールドの動きをよく見ながら、キン骨マンは叫んだ。

 

「右腕を上げろ! ボーン・コールド!」

 

 その声を聞いて、ボーン・コールドは迷わず右腕を上げた。

 右腕にバンデットマンの左脚が当たった。

 ボーン・コールドがバンデットマンの左ハイキックをガードする結果となったのだ。

 

「その脚を持ったまま、右脚を思いっきし蹴ってやれ!」

 

 ボーン・コールドは、バンデットマンの右脚に左のローキックを打ち込んだ。

 

バシィィ

 

「ぐわぁ!」

 

 蹴りの軸足を蹴られたために、バンデットマンの体勢が崩れ、リングに倒れた。軸足に体重が集中していた分、ローキックが効いたのだ。

 

「そのままグラウンドに持ち込め!」

 

『ボーン・コールド! バンデットマンをチキンウイング・アームロックの体勢にとらえた!』

 

 ぐき ぐき

 

「ぐああ!! 何だ、あのじいさん! まるで俺の動きが分かっているかのようにボーン・コールドにアドバイスをしてやがる!?」

 

「ムヒョヒョヒョ~、バンデットマンとやら、どうじゃわしの観察眼は?」

 

「どうじゃじゃねえぜ、よく俺を観察しすぎだ! どうやってそんな力ついたんだよ!」

 

「キン肉マンとの闘いでじゃよ」

 

「キン肉マンとの闘いでだと!?」

 

 バンデットマンが驚いた表情をした。

 

「わし自身は弱かったが、キン肉マンに勝つためにやつの弱点や好みを研究し尽くした。その時の経験があって、わしは相手の動きを見て、瞬時に対策が得られるようになっていたのだよ。もっとも、この力は先ほどキン肉マンに指摘されるまで気づきもせんかったがのう」

 

「なぁに、私はただ昔話をしただけさ」

 

「おいクソ親父、まさかお前にこうやって助けられるなんて夢にも思わなかったぜ!」

 

 ボーン・コールドがうれしそうな顔で憎まれ口を叩いた。

 

「ムヒョヒョヒョ~、わしもかつての悪行経験が、まさか息子のために役立つとは思わんかったわい」

 

「なるほど、そうかいそうかい。対策が思いついたぜ!」

 

 バンデットマンは蹴りでボーン・コールドの頭を蹴った。ボーン・コールドのチキンウイング・アームロックのかかりが甘くなったのを見計らって脱出した。

 

「俺は外道なる男バンデットマン、どんな手を使っても勝つのが俺の主義だ! そういやあ、ボーン・コールド、万太郎との闘いで確かミートの父親であるミンチを殺すと脅して、セコンドのミートを使えなくしていたんだよな~」

 

 そう言いながら、バンデットマンは手持ちのバンデットナイフをキン骨マンに向けた。

 

「てめぇ、まさかクソ親父を! 汚え真似しやがって!」

 

「殺し屋に汚えと言われるなら、褒め言葉だぜ! なんたって俺は盗賊だからな!」

 

「バンデットマンよ! 一度息子に殺して貰おうと思った命だ! よほどの事じゃ脅しにはならんぞ!」

 

 キン骨マンはひるまず、むしろ堂々とした態度でバンデットマンに発言した。

 

「おいじじい、本気で俺は殺しに行くぜ!」

 

 バンデットマンの目が血走り、顔つきがより冷徹になった。

 

「おい! 俺だって、親父のアドバイス通りに闘って勝ってもうれしくねえんだ! この俺一人の力で十分お前は倒せる! だからそのナイフをしまいな!」

 

 ボーン・コールドは興奮気味に発言した。

 

「……交渉成立ってとこだな」

 

 バンデットマンは悪そうな笑みをした。

 

「バンデットマンよ、せめてもの慈悲で一つだけアドバイスを許可してくれないか!」

 

「よし、いいだろう」

 

「では、ボーン・コールドよ。お前の力を信じよ。キン肉マンを苦戦させたわしの血、そして、偉大なる母親の血も受け継いでおるのだからな」

 

「偉大なる母親の血? なんのこった?」

 

「アドバイスはここまでじゃ。慈悲に感謝するぞバンデットマン」

 

「な~に、感謝する必要はねえ。そのアドバイスは無駄になるだろうからな――――――っ!」

 

 バンデットマンはバンデットナイフをバンデットロープに結びつけた。

 

「おれの盗賊七つ道具はこういう使い方もあるんだぜ! バンデットナイフウィップ!」

 

『バンデットマン! ロープの先にナイフをつけて、まるで鞭のように使いこなす!』

 

 ボーン・コールドはバンデットマンの手の付近の動きをよく見ている。ボーン・コールドは自分に迫り来るナイフの乱舞を触れるかどうかというところでかわし続けている。

 

「当たらねえ! 何故だ!」

 

 ボーン・コールドは乱舞するナイフを右の手刀ではじき飛ばした。ナイフはバンデットマンの右肩に命中した。

 

グサァ

 

「ぐわぁっ!」

 

 バンデットマンが苦痛の表情を浮かべた。

 

「親父ができるなら、俺だってできねえとな」

 

 ボーン・コールドに試合開始あたりの余裕の表情が戻ってきた。




さあお遊びはここまでだ!!


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超人殺人事件!?の巻

死のカウントダウン開始!!


『ボーン・コールド! バンデットマンのナイフウィップをはじき返し、この試合初めてまともなダメージを負わせた――――――っ!!』

 

 バンデットマンの肩にはナイフが刺さり、冷や汗もかいているが、強がって笑っている。

 

「キェキェキェ! ナイフで刺されるくらい、今までの盗賊人生でも多くあったさ!」

 

ズポ

 

 バンデットマンは肩に刺さったナイフを抜いた。

 

「バンデットグローブは空気もつかめるんだぜ!」

 

 バンデットマンは空気をつかむ動作をし、野球の投手のごとく投げる動作を何回かした。ボーン・コールドはバンデットマンの手元をよく見ていた。

 

「エアーボール!」

 

『あ――――――っ! 複数の空気の弾丸がボーン・コールドを襲う!』

 

 ボーン・コールドは容易く空気の弾丸をよけていく。一つだけカーブのように曲がるのもあったが、それも読んでいたようで、冷静にかわしていた。

 

「エアーボールをすべてよけちまうとは、驚いたぜ! では、次の俺の動きを読めるなら読んでみな!」

 

 バンデットマンはボーン・コールドに向かってきた。ボーン・コールドはバンデットマンの動きを見て、タックルに来ると思った。ボーン・コールドの予想通りバンデットマンはタックルを仕掛け、対しボーン・コールドは顔面に右膝蹴りをお見舞いした。

 

ガゴォ

 

「キェハァッ!!」

 

『お――――――っ! ボーン・コールド! タックルを見抜いたかのように、バンデットマンの顔面に膝蹴りをかました!』

 

 バンデットマンは鼻血を出しながら、笑いを見せる。

 

「キェキェキェ、今のお前さんがその動きで来るのは読んでいたさ。タックルを切ることも考えられたが、さっきより優勢な分、強気に膝蹴りでいくと思ったぜ!」

 

「それがなんだってんだ? わざと俺の攻撃を食らったって言うのか?」

 

「その通りさ、バンデットスチング!」

 

ブス ブス

 

 バンデットマンは毒針でボーン・コールドの両脚を刺した。

 

「しまっ! あ、脚の力が抜けていく……」

 

『バンデットマン! 毒針によりボーン・コールドの動きを止めた!!』

 

「ただ刺しに行こうとしたんじゃ、お前さんならかわすだろうと思った。だからタックルで脚の付近まで近づいたってわけさ。まぁ海老で鯛を釣るってやつだな」

 

「けっ、俺はまんまとだまされたってわけか」

 

「そうとも! 俺は盗賊だから人をだますなんざ日常茶飯事さ! さぁ死刑宣告といこうか! 盗賊拷問(バンデットトーチャ)!」

 

 バンデットマンは思うように身動きのとれないボーン・コールドの体をニルス戦で出した関節技に決めた。

 

「一度破られた技が通じると思うな! こんなもん!」

 

 ボーン・コールドは腕力でバンデットマンの技の体勢を崩そうとした。

 

「そうはいかねえ! バンデットキー! 」

 

 バンデットマンはボーン・コールドの体に鍵を刺して回した。

 

ジャキーン カチリ

 

「俺の体に義手や義足の部分なんてないぜ。こんな鍵でおれの動きを止められるとでも思っ!?」

 

 ボーン・コールドは自身の体の異変に気づいた。

 

「こいつは鍵だ。鍵を解除することもできれば、ロックもできる。お前の体全体をバンデットキーでロックしたんだ!」

 

「体が接着剤で固められたみてえに動かねえ! くそう!」

 

『バンデットマン! バンデットキーを用いてボーン・コールドの身動きをとれなくしたようです! ボーン・コールド危うし!!』

 

 バンデットマンは更にボーン・コールドの体を曲げていった。

 

グキ グキ グキ

 

「ぐおおおああおお!!」

 

 ボーン・コールドは苦痛の悲鳴をあげた。

 

「キェキェキェ! その悲痛な叫びはなんともたまらないぜ! さっきの若造みたいに命乞いでもするかぁ?」

 

「俺の殺し屋のプライドとして、命乞いは絶対しねえ! 殺し屋がまともな死に方をしねえなんて分かっていたことだ! その気持ち悪い笑い方しながら一気に決めな!」

 

 試合を観戦しているキン骨マンが絶望に満ちた顔となっている。

 

「も、もうダメじゃあ! 自分の息子の死ぬところなんて見たくない!」

 

 しかし、そのとなりでキン肉マンが余裕そうな表情を浮かべている。

 

「大丈夫、お前の息子ならあの状況をなんとかできるはずだ」

 

「キン肉マン……」

 

「最凶の殺し屋の最期をとくとおがみな!」

 

ボキィ

 

 会場に枯れ木が折れたかのような音が響き渡り、ボーンコールドの背中は許容範囲異常に曲がっていた。

 

『会場に響き渡ったこの音は背骨が折れた音だ――――――っ!』

 

 ボーン・コールドの有様を見て、キン骨マンは泣いていた。

 その様子を見て、ロビンマスクが何かを思い出したかのような反応を見せた。

 

「もしや、キン肉マン……」

 

「あぁ、お前も気付いたか」

 

「キェキェキェ! まだまだ戦える! この調子で連戦してもいいぜ――――――っ!」

 

ザッ

 

 突然、バンデットマンの両耳の辺りをなにかが通り抜けた。その直後、バンデットマンの両耳に激痛が走った。

 

「ぐぁぁああ!!」

 

ポト ポト

 

 リングにはバンデットマンの両耳が落ちていた。

 観客の一人がそれに気付き、悲鳴をあげ、その悲鳴は徐々に他の観客にも感染していった。

 

「心臓が止まるまで、油断はしないほうがいいぜ盗賊さんよ」

 

 そこにはボーン・コールドがなんともない状態で立っていた。

 

「て、てめえ、背骨が折れたのになぜ!? それに毒針のしびれも残っているはず!!」

 

「俺の体が骨だからだよ。元々バラバラになりやすい体をしているんだ。お前は俺の背骨が折れたと思っていたが正しくは背骨が解体されただけだ。元に戻そうと思えば元に戻せるんだよ。それに職業柄毒を受けるなんて頻繁にあったからな、対策として俺は毒に対して体に免疫を持たせているんだよ。」

 

「あちち、盗賊である俺がだまし討ちを食らうとは、腕が落ちたもんだな……」

 

 観戦していたロビンマスクがキン肉マンに話しかけた。

 

「ボーン・コールドのやつ懐かしいものを見せてくれたな。いつぞやかお前にしてやられた手だ」

 

 キン肉マンはその言葉を聞いて笑った。

 

「私の場合は背骨の音が鳴りやすいからだったが、ボーン・コールドは本当に骨が解体されたからな。キン骨マン、お前の血がボーン・コールドを救ったのだ」

 

「まさか、わしの血がボーン・コールドの命を救うとは……」

 

「しかし、耳を削ぐとは、ボーン・コールドの試合は怖いのう。おしっこ漏らしそうじゃわい」

 

「それなら私の背中でも借りるか?」

 

 ロビンマスクが過去にキン肉マンをおんぶしたときに、背中で漏らされた記憶を思い出しながら皮肉を言った。キン肉マンはそれに苦笑いした。

 

「さぁ! こいつでフィニッシュだ!」

 

 ボーン・コールドはバンデットマンを3Dクラッシュの体勢にとらえた。

 

「お前さん、その技の破り方を俺に伝授しただろ!」

 

 バンデットマンは後ろに体をそらすように力を入れた。

 

「それが俺の狙いだ!」

 

 ボーン・コールドはバンデットマンの力を利用し、技をかけた状態で体全体を回転させた。

 

ギュゥゥゥン

 

『ボーン・コールド! バンデットマンの力を利用し、3Dクラッシュの体勢ですさまじい回転を起こす! 回転する二人の先にあるのはリングロープだ!』

 

「一体何をしようってんだ!」

 

「これが俺の新必殺技! 3Dクラッシュミレニアム!!」

 

ドゴォン

 

 バンデットマンの体には3本のリングロープが食い込んだ状態となり、更に3Dクラッシュも決まっていた状態であった。

 

「キェハァ!!」

 

 バンデットマンは血反吐を吐き、リングに倒れた。

 ハラボテが試合続行不可能のジェスチャーをし、試合終了のゴングが鳴った。観客の歓声が大きく鳴り響いた。




依頼達成!


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流れるオメガの血の巻

遺言は聞いてやるぜ


『決まった――――――っ!! ボーン・コールド劣勢ではやダメかと思われましたが、見事な逆転勝ちを収めました!!』

 

 キン肉マンがボーン・コールドの必殺技を目の当たりにして驚きの反応を見せた。

 

「あ、あの技は、3Dクラッシュに万太郎のマッスル・ミレニアムを組み合わせたものだ! 万太郎の技よりも難易度はより高く、威力も上がったものとなっておる! 次に万太郎が戦ったらどうなるか分からんな……」

 

 ロビンマスクがキン肉マンの言葉に反応を見せる。

 

「しかしお前の息子の技の影響なのか、完全に相手の命を奪う技とはなっていないようだな。殺意に満ちたボーン・コールドの技に慈悲の心が宿ったようだな」

 

 キン骨マンは喜びの顔を見せていた。

 

「よくぞ勝ってくれたボーン・コールド! 悪ぶってはいたが、なんだかんだ万太郎との試合で良い影響を受けていたようじゃ!」

 

 バンデットマンが重傷の状態ながらもなんとか体を動かそうとしていた。

 

「ちっ……負けちまったか……俺も泣き虫坊主や交通標識達と同じとこいきか……」

 

「そうだな、お前は俺に殺されるのだからな」

 

 ボーン・コールドはバンデットマンのバンデットナイフを奪い、シューティングアローにセットした。キン骨マンが驚愕の表情を見せる。

「なに!? そこまでやるなボーン・コールド!!」

 

「報酬を貰うからにはちゃんと仕事をしないとな」

 

 ボーン・コールドの顔が邪悪に満ちた笑い顔と化した。

 

「さ、最後の盗賊七つ道具……バンデットポイズン!」

 

 バンデットマンはカプセルを取り出し、それを飲んだ。

 

「この期に及んで、悪あがきか? もう勝負はついているんだぞ」

 

「キエハァ!!」

 

「!?」

 

 ボーン・コールドが突然血反吐を吐いた。冷や汗もかき、より苦しそうな表情となっている。

 

「こ……こいつは毒薬だ。盗賊が命を盗まれるなんてな・・・・・・俺の盗賊としての誇りが許さねえ! 俺の命を失ってでも、てめぇの殺し屋としての仕事を失敗させてやるさ!!」

 

「・・・・・・バンデットマン、俺は殺し屋という仕事柄、今まで死んでいく命に敬意なんざ表したことはない。今日が初めて敬意を表す時かもしれんな・・・・・・」

 

「・・・・・・嬉しいじゃねえかこの野郎・・・・・・」

 

「一つ聞きたかった事がある。お前は何故老人ホームの老人を狙ったのだ?」

 

「そんなことか・・・・・・昔話をしよう・・・・・・俺の親父は盗賊でもあり師匠でもあった・・・・・・。いつからかボケ老人になり、ある日・・・・・・俺の母親と兄弟を殺していた! だから俺はボケた親父を殺した! 父親とか師匠とか関係なしに・・・・・・老害になる前に殺すべきだった・・・・・・そう思っていた。しかし、この試合の勝敗を分けたのは、父親を殺したか殺さなかったかの差だったな・・・・・・」

 

「バ、バンデットマン・・・・・・」

 

「クソみてぇな人生、クソみてぇな最期だったが……お前さんと闘えたことだけは良かった……」

 

 バンデットマンは寂しそうな笑みを浮かべながら息絶えた。親父というワードにミンチを殺したときの記憶、キン骨マンに殺しを依頼されたときの記憶がよみがえった。ボーン・コールドはタバコを口に加えて、一服し始めた。ボーン・コールドがそのままリングを降りると、真っ先にキン骨マンが泣きながら抱きついてきた。

 

「うぉぉおおん!! よくぞ生きてリングを降りてきたもんじゃ!!」

 

「お、親父! 離せ!! 恥ずかしいじゃねえか!!」

 

 ボーン・コールドは顔を真っ赤にしてキン骨マンをふりほどこうとしていた。その様子を周りが微笑ましそうに見ていた。キン骨マンが落ち着いた頃、ボーン・コールドが気になっていたことを話した。

 

「親父、試合中に言っていた俺のお袋についてなんだが」

 

「そうじゃ、まだ言っておらんかったな。ボーン・コールド、お前の母さんの名前はオメガ・イクサンニ。つまりオメガマン兄弟の姉にあたる存在なのじゃ」

 

 驚きの反応を示したのはスグルであった。

 

「オメガマン!? かつて私達が戦ってきたあの兄弟か!!」

 

「そうじゃ、かつてオメガの民が地球に住んでいた頃に、オメガマンの父親にあたる男が地球の女と恋をして、子供が産まれたのじゃ。その子がオメガ・イクサンニ、わしの妻だった人なのじゃ」

 

 ここでテリーマンが博学を見せた。

 

「イクサンニ、ギリシャ語でいう部外者のことだな」

 

「そう、彼女の母は当時オメガの民とは対する勢力の者であった。父親がいる内は良かったが、父親が亡くなってからは彼女は忌み嫌われる存在となり、オメガの星を出ることとなった。そして、わしも何を隠そう、シャレコウベ星から来たと言っていたが、実はオメガの民として地球を侵略しに来たのじゃ!」

 

 ボーン・コールドが驚いた。

 

「なに!? 親父もなのか!?」

 

「地球侵略といっても、わしは弱く、戦力外通告をされていた。それが悔しくてわしは皆を見返してやろうと、地球を攻めたのじゃ。そして、同時期にお前の母さんも一族から追放されたのだ。互いに、オメガの民の一族から外れた存在であり、すぐに相思相愛になった。そして、産まれたのが」

 

「俺って訳か。ただのさえない骨男の親父の元に産まれたと思ったが、かなり血筋が良くて驚いたぜ」

 

「というより母さんの血が良かったようじゃ。わしの血じゃお前さんがそこまでポテンシャルの高い超人にならんかったじゃろう。オメガの民の印として、お前の左肩に載っている指がなによりの証拠じゃ」

 

 そう言われて、ボーンコールドは自分の左肩を見た。

 

「母さんは元気にしているかのう、当時すまないことをしたと思っている。できればあの時のことを謝りたい……」

 

「キン骨マンよ」

 

 突然の言葉、その主は超人の神ミスターノアだった。

 

「お前の妻の行方は分からんが、お前にとって義母にあたるものは今も元気でやっておる」

 

「なんじゃと!?」

 

 世界浄化者の中で、まだ正体を明かしていない超人が正体を現した。犬のような耳を生やし、若い女性に見える見た目をしていた。

 

「我が名はアヌビ・クレア。私も他のメンバーと同様に、邪悪なる人間を滅ぼす者である」




新たな波乱まき起こる!?

1ヶ月間休載とさせていただきます。
代わりの別小説を短期連載しますので、よろしくおねがいします。


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リングの迷い犬の巻

またも現れたすごそうな奴!!


 会場の皆が、ここまで正体を隠していた超人アヌビ・クレアに注目した。キン骨マンの義母にあたり、ボーン・コールドの祖母にあたる彼女がいかなる力を持つ超人かをほとんどの人が考えていた。

 

「一応言っておくけど、私は平和主義者よ。まず、戦うことはないものと思って貰って良いわ。でも、ミスターノアの命令次第では私も戦うかもしれないけどね……」

 

 彼女が不気味な笑みを浮かべた。キン骨マンが恐れながら、アヌビ・クレアに話しかけた。

 

「義母様、申し訳ありませんでした。あなた様の子供にあたる方に酷い仕打ちをしてしまい、なんとお詫び申し上げれば……」

 

「気にするな、それよりもまだ残っている二試合の方を気にした方がいいのではないのか? 特に、疑問点の多いお二人さんの試合なんかね」

 

 アヌビ・クレアの言葉で皆の注目がある試合へと集まった。ヒカルドVSブロッケンJrのリングである。ヒカルドはブロッケンJrの右腕に腕ひしぎ十字を決めていた。

 

「フィギュ~、まずはベルリンの赤い雨を封じさせて貰おうか~!」

 

メキメキ

 

 ブロッケンJrの腕から嫌な音が聞こえてくる。

 

『流石はヒカルド! 関節技アーティストと呼ばれるだけあります! あの伝説超人(レジェンド)のブロッケンJrをマットに寝かせています!」

 

 ブロッケンJrは腕ひしぎ十字の状態から、右手でヒカルドの手を握りつぶそうとする。

 

「フィギュ!?」

 

「どうだい俺の握力は?」

 

グギグギ

 

 ヒカルドの手が許容範囲以上の変形をはじめる。

 

「フィギャッ!!」

 

 手に伝わる圧力と苦痛で、ヒカルドの腕ひしぎ十字のかかりが甘くなり、ブロッケンJrは技からの脱出に成功した。両者スタンディングの体勢となった。

 

「そろそろ教えてくれよヒカルド、お前は何故悪魔(サタン)と一緒にいるんだ?」

 

「ふん、俺が悪魔(サタン)といる理由は特にはない。いや、むしろお前がこの場にいる理由を一番聞きたいもんだ。そう思っているのは俺だけではないはずだ」

 

「かわりに私が答えてやろう」

 

 その発言をしたのはミスターノアだった。

 

「ブロッケンJrも転生超人の一人であり、私が仲間にならないかと勧誘したのだ。丁重なお断りを食らったが、ちょうどこやつは弟子を巣立ちさせ、何をやればいいのか分からぬ状態となり、酒に飲んだくれていた。ならば、こやつに今後どうすれば良いのかという答えを出せるように、今回の闘いに参戦させることにした。流石に老体かつ隻腕のまま戦わせるのは不味いと思い、アヌビ・クレアの力でブロッケンJrを隻腕でなかった頃まで体を若返らせたのだ」

 

 会場の人たちの注目がアヌビ・クレアに集まった。ブロッケンJrはいらついた態度を見せる。

 

「ちっ、ぺちゃくちゃと喋らなくても良いことを喋りやがって! そうさ! 俺は弟子のジェイドがいなくなってから、何をすればいいのか分からなかった! 俺は自分が思っている以上にバカさ! バカな分、闘いにしか能がねえ! だからこそ闘う事で今後俺がどうすれば良いか答えを出せると思った! とはいえ、しばらくは正体を表さずに様子見しようと思っていたが、闘いたいと思っていた相手が目の前にいた! ヒカルド! 弟子を可愛がってくれた分、たっぷり礼をしてやるぜ」

 

 ブロッケンJrの発言を受けて、ヒカルドは不適な笑みを浮かべている。

 

「ゲギョゲギョ、なるほど奇遇だな。そこにいるヒカルドも似たような感じだ」

 

 ヒカルドが悪魔(サタン)の言葉に反応する。

 

「おい悪魔(サタン)! 話す必要はねえ!」

 

「どうせ、話さねばしつこく聞かれる事だ。いいだろう?」

 

「ちぃっ! 好きにしろ!」

 

「こいつは一人で山奥にこもって修行していたのだ。悪魔超人としてか正義超人として生きるか悩みながらな。そこで俺が、一度正義超人として戦ったなら、悪魔超人として戦ってみるのもありだろう?と。そう、誘いをかけたのだ」

 

「……そうだな、超人オリンピックで俺が負けた理由をあげるとすれば、正義にもなりきれず、悪魔にもなりきれず、不確定な俺自身がいたからだ。どうせ俺は悪行超人出身! ならば正義の心など捨てて、今度こそ悪魔超人として闘いきってやる!!」

 

「じゃあ俺も親父仕込みの残虐ファイトでお相手させて貰うか」

 

「ブロッケンJr、俺はお前も気にくわねえし、弟子のジェイドも同様に気にくわねえ。分かるか?」

 

「……ジェイドと闘った時のことか?」

 

「そうとも、俺が迷い苦しむきっかけを作ったのはおまえらだ! 正義超人として闘っていたが、悪行超人出身と聞いてお前は真っ先に偏見的な目で俺を見た。師匠が師匠なら弟子も弟子だ。親に花を手向けられないのがどうこういってたが、生みの親より育ての親だ! あいつが元々孤児とはいえ、あの発言は納得しかねる! 俺にとって親といえる存在はないが、近い存在がバシャンゴ師匠だった!! 最終的にはバシャンゴ師匠にも偏見的な目を向けられ、殺し合いをしてしまったが……、今でもバシャンゴ師匠の教えは守っているぜ!」

 

『ヒカルド! ブロッケンJrに向かっていく! 飛びついて三角絞めの体勢に、やや! さらに右腕にアームロックまでかけ、この技はもしやっ!!』

 

「アラーニャクラッチ!!」

 

メキメキクキクキクキ

 

『これは、ヒカルドがジェイドとの闘いで出した関節技です! 会場内にブロッケンJrの右腕の骨がきしむ音! 頸動脈が絞まる音! いや~な音が聞こえてくる!!』

 

 ブロッケンJrは苦しい表情を浮かべ、叫ぶ。

 

「ぐおおお!! これが、ジェイドが味わった苦しみか!!」

 

「てめえが俺に復讐の炎を燃やしているように! 俺もお前に復讐の炎を燃やしているんだぜ――――――っ!」

 

ザシュ

 

『ヒカルド! 技にかけられた状態で更にブロッケンJrの右腕に噛みついた!』

 

 より苦痛を増したはずのブロッケンJrが技をかけられながら、笑っている。

 

「これだぜ、これ。久々にリングで闘っている気がしてきたぜ。痛いし、苦しいんだが、それが妙に心地良い」

 

「何を変態じみたことをいってやがる! 俺にはその趣味はないぜ!」

 

ガシッ

 

『ブロッケンJr! ヒカルドの顔面をハンドクローでとらえた! そのまま力任せに上体を起こしていく!」

 

「フィギュ~!!」

 

「最初はてめえへの憎しみや復讐で闘っていたが、気持ちがよくねえや。やっぱ俺は、試合を楽しくやる方が良いぜ――――――っ!」

 

『ブロッケンJr! ヒカルドの顔面を掴んだ上体で、上空へ飛び上がった。そのままヒカルドの顔面を掴んだ上体で落下! ヒカルドの頭をリングに叩き付けるつもりか! いや、真下にはコーナーポストの鉄柱があるぞ!』

 

ガゴン

 

「ゾーリンゲンの鈍色刃!!」

 

「フィギャー!!」




二匹の迷い犬のたどり着く先は何処なるか!!


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悪魔に灯りし正義の光!!の巻

炸裂!!独軍人の悪魔狩の刃!!


 ゾーリンゲンの鈍色刃で脳天を鉄柱に叩き付けられたヒカルド。苦痛に顔をしかめる姿から、相当のダメージがうかがえる。ブロッケンJrが手を離すとヒカルドはダウンした。

 

『ヒカルドダウン! ブロッケンJr! 見事アラーニャクラッチから脱出し、反撃のゾーリンゲンの鈍色刃を決めた――――――っ!』

 

「フ、フィギュ~、まだまだ俺は元気だぜ~!」

 

『しかし! ヒカルドがよろめきながらも立った――――――っ!』

 

「速攻あるのみ!」

 

 ブロッケンJrは宙を飛び、ヒカルドの顔面に蹴りをかました。

 

「レッグラリアート!」

 

「フィギャ!」

 

『これは意外!! ブロッケンJrがラーメンマンを彷彿させるレッグラリアートを放った――――――っ!!』 

 

 これを見ていたキン肉マン達も驚きの表情を隠せない。

 

「あれは、全盛期のラーメンマンの技と遜色がない! ブロッケンJrはラーメンマンを師のように思っているところはあったが、いつの間にあれだけの蹴りを出来るように……」

 

 更にブロッケンJrが追撃をくわえていく。

 

「心突錐揉脚!!」

 

ズゴォォ

 

「フャギャ!」

 

 強烈な蹴りをくらったヒカルドがまたもダウンした。

 

『次々と華麗なる蹴り技が出ます! これはもはや若き頃のラーメンマンがブロッケンJrに乗り移ったといっても過言ではない!!」

 

 ヒカルドはダメージが残ってはいたが、それでも立ち上がってきた。

 

「てめえ、そんだけの蹴り技をいつの間に習得しやがった?」

 

「教えてやるよ。過去のタッグトーナメントで隻腕になっちまってから、戦力ダウンしちまった分、足技の鍛錬を長年行っていたんだ! ちょうど、そのときの闘いでラーメンマンも命を落とした。だから奴の技を誰かが受け継がねばならないと思った。ならばブロッケンJr、ラーメンマンの歴史を背負ってやろうと思った! あいつが死んでも闘将魂は不滅だ――――――っ!!」

 

 ブロッケンJrがヒカルドに蹴りを連打していく。

 

「そんなに蹴りを出すとな、寝かせやすい状態になるぜ!」

 

 ヒカルドがタックルにいくようにして、ブロッケンJrの蹴りを避けた。ブロッケンJrは脚をとられて、リングに倒れた。ヒカルドが素早い動きでブロッケンJrを関節技の形にとらえた。ブロッケンJrはうつぶせの状態で両手をヒカルドに踏まれている。ヒカルドはさらにブロッケンJrの体を曲げるように両脚をきめた。。

 

「フィギュ―――ッ!」

 

『これは、かつてヒカルドがキン肉万太郎との試合で出したズッファーラだ!!』

 

グキ グキ

 

 ブロッケンJrの体がきしむ音が聞こえてくる。

 

「冷静で的確な判断力を持ってすれば、こんな技なんてことはない」

 

『あ――――――っ! 何を思ったかブロッケンJr! 自分から体を曲げていくぞ――――――っ! これでは自殺行為だ――――――っ!』

 

ミシ ミシ ゴキ

 

「よし! 今だ!」

 

 ブロッケンJrは、ズッファーラの状態からヒップアタックをくらわした。その威力は意外にも高く、ヒカルドの体が吹っ飛んだ。

 

「そうか! ブロッケンJrは弓矢の原理を利用したんだな!」

 

 テリーマンはブロッケンJrの技の脱出法方の解説を始めた。それを近くにいたキン肉マンやロビンマスクが聞く。

 

「弓矢の弦は普通はまっすぐな状態だが、矢を放つときは力をかけられ弧の形となる。そのとき弦が元に戻ろうとする力が、矢を放つ威力となるんだが、ブロッケンJrは自分の体を弦に見たてて、ヒップアタックの矢をくらわしたんだ!」

 

「なるほど、流石テリーマンだな」

 

「うぅん、分かったような、分からないような~」

 

 説明に納得したロビンマスクと、説明を理解しきれていないキン肉マンの姿があった。

 

「しかし、ブロッケンJr強いのう。奴が今までのレスラー人生で培ってきた事が十二分に出ておる。だが、ブロッケンJrのやつ、優勢に試合を進めているはずなのに、何か不満そうな顔をしておる」

 

「お前もそう思うかキン肉マン」

 

「ミーもそんな風に見える。このまま勝っても、ブロッケンJrは自身がこの先どうすれば良いかという答えが分からないかもしれない」

 

 リング内ではヒカルドが肩で息をしている。一方、ブロッケンJrには余力がある状態だ。

 

「俺はこれまでのレスラー人生で多くの仲間から多くの事を教わってきた。正義、残虐、悪魔、完璧だの関係なしにだ。しかし今のお前には仲間が誰もいない。それがお前と俺の差だ」

 

「フィギュ~、俺には仲間なんて者がないがな、仲間がいるから仲間に甘えてしまう。それが自身の弱さを生み出す。その甘さは結局、お前の弟子の敗北につながった! だから、俺は自分一人の力で闘うさ! 真の強者を目指すなら仲間はいらねぇ!」

 

 ヒカルドは強がってみせるが、ダメージもあり、肩で息をしていて弱々しく見えた。

 

「ヒカルドさ――――――ん!!」

 

 突然聞こえた大きな声。ヒカルドがその声の主はだれかと見回すと、ヒカルドを慕っていた二人のブラジルの超人だった。一つ目の超人と、色黒の白目の超人が大声をあげている

 

「お、おめえら! なんでこんなとこに!?」

 

「ヒカルドさんが心配で来たんですよ!」

 

「そうとも! ヒカルドさんが万太郎との試合後にいなくなって心配したんだぜ!」

 

「お、おめえら……」

 

「あんたは一人じゃねえ! 俺達がいるさ!」

 

「俺達じゃあ力になれないかもしれねえ! でも、できる事はやる! だからあんたを応援するさ!」

 

「うるせぇ! 俺は無様に万太郎に負けた男だ! そんな男について行く必要も応援する必要もねえ! それに俺は、正義超人を名乗りながらも正義超人らしくねえ男で、それが結局は万太郎に負ける理由になり、迫害される理由になった。こんな男についていっても修羅の道しかねえぜ!」

 

「だからなんだってんですか! それでいいんですよ俺らは!」

 

「そうとも! どんな集団にもアウトローな奴がいる! 正義超人でも正義超人に馴染めない奴がいる! 悪魔超人にだって悪魔超人になりきれなかった奴もいる!」

 

「俺達だってこう見えても、正義超人! 粗暴なのは認めるが、正義の心は本物だ! だから自分らしく生きていこうと思っている!」

 

「だからヒカルドさんも自分のスタイルを恥じないでくれ! むしろそれを誇りにおもってくれよ!」

 

「俺のスタイルを誇りに思えだと?」

 

「そうとも! あんたの野性味と獰猛さが溢れた闘い方が好きなんだ! こんな風になりてえってなって思ってんだよ!」

 

「そうだぜ! だからあんたはあんたらしく闘えばいいんだ! 正義とか悪魔とか関係なしに思いっきりいきな!!」

 

 いつの間にか会場に来ていたバッファローマンがつぶやいた。

 

「ブロッケンJrが若返って敵方にいるから注目していたが、ヒカルド陣営の方もまた注目すべき存在であるな。それにしても悪魔になりきれない悪魔か、ちょっとひっかかる表現だぜ」

 

 バッファローマンは頭をかきながら苦笑いしていた。

 また、魔界においてもアシュラマンとサンシャインが試合を観戦していた。

 

「自分らしく生きろか、私もそういう生き方をしていれば、違う人生があったのかもしれんな……」

 

「グォフォフォ、わしもど底辺な人生を送ってきたが、その人生でお前さんに出会えた。それが人生で一番良かったと思える出来事じゃ」

 

「ふ、奇遇だな。私もだ」

 

 アシュラマン、サンシャインが互いに微笑んだ。

 さらに、キン肉星において、かつて超人血盟軍をまとめていたソルジャー、その横にいるニンジャの亡霊も試合を観戦していた。

 

「……」

 

「……」

 

 二人は無言でモニターを見ていた。

 取り巻き二人の激励を聞いたヒカルドに元気が出てきた。

 

「そうか……こんな俺を認めてくれる奴もいたんだな……」

 

ボワァ

 

「こ、これは!?」

 

 ブロッケンJrは驚いた表情をした。

 目の前に、金色に輝くヒカルドの姿があったからだ。




悪魔にだって友情はあるんだ!!


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地獄への誘いの巻

光と闇の関節技芸術者(サブミッションアーティスト)!!


『あ――――――っ! ヒカルドの体が金色に輝いた! これは新世代超人(ニュージェネレーション)の闘いでも見られた光景だ――――――っ!』

 

 ヒカルドの体が金色に輝き、先ほどまでの弱々しい姿はどこかへいったような状態だ。

 

「先ほどの発言を撤回させてもらうぜ。俺にも仲間と呼べる者達がいた」

 

 ブロッケンJrがにやりと笑みを浮かべた。

 

「とうとうその力を出したか。それじゃあこっちも撤回しなきゃいけねえ考えが出てくるな。超人オリンピックの時に、俺はお前を根っからの悪行超人と思っていた。今のお前は目つきこそ悪者そのものだが、正義の魂を分かった漢の眼をしている」

 

「ふん、意外だな。てめえからそんな言葉が出てくるとはな」

 

「ああ、間違った考えを間違ったままにしときたくねえからな」

 

「それじゃあ、正義超人としての俺の力を見せてやるぜ!!」

 

 ヒカルドはブロッケンJrへタックルをしかけた。

 

(さっきよりも動きが速い!?)

 

 ヒカルドの予想以上に速い動きに、ブロッケンJrはタックルをきれなかった。ヒカルドはブロッケンJrの脚を関節技に決めていく。

 

『ヒカルド! アキレス腱固めでブロッケンJrを攻める!』

 

「俺は正義超人だが甘い事は考えねえ! 容赦なくいく! てめえのアキレス腱をいかれさせる気でいくぜ! もっとも、お前が泣いてギブアップするならこの技を解くことを考えてもいいがな」

 

 ブロッケンJrは苦痛の表情を浮かべるが余裕の笑みを見せる。

 

「くくく、上手く決まっているじゃねえか。なるほど、自慢の弟子が敗れた理由が段々と分かってきたぜ。ジェイドには教えなかったが、この技も教えるべきだったな」

 

 ヒカルドはブロッケンJrの体に違和感を感じ、技を解いた方が良いと直感的に察した。

 

「遅かったようだな! くらえ! 順逆自在の術!」

 

 ヒカルド、ブロッケンJrの体が一瞬消え、すぐに現れた。しかし、その体勢はまるでちがうものとなっていた。

 

「なんと――――――っ! アキレス腱固めをかけていたはずのヒカルドが逆にブロッケンJrにアキレス腱固めをかけられている!

 

 実況者の脇からアデランスの中野さんが現れた。

 

「この技はザ・ニンジャが得意としていた技ですね~。過去にブロッケンJrもこの技を見よう見まねで真似した事もあります」

 

 突然技が入れ替えられ、ヒカルドは驚きの表情を隠せない。

 

「フィギュ!? 一体どうなっちまったってんだ?」

 

「俺がよく知っている悪魔超人の技さ。驚いたろ?」

 

「正義超人であるお前が悪魔超人の技とはな、意外や意外だぜ」

 

「お前も似たようなものだろ。元は悪行超人とはいえ、正義超人の技の良さを素直に受け入れお前は強くなった。対して、ジェイドは純粋すぎて頑固な男だ。だからお前みたいな邪道な男は気にくわず受け入れず、俺みたいに悪魔超人の技を良しとしない。それがジェイドが善戦超人止まりの理由でもあり、お前に負けた理由でもあった」

 

「かつては自分の弟子だったっていうのにぼろくそ言うじゃねーか」

 

「そうだな、未だに俺はやつを弟子と思っている。俺がジェイドを未熟なまま巣立たせてしまったからな」

 

「それじゃあこの闘いが終わったら、やつをまたしごき直すってことかい?」

 

「そういうことだ」

 

「ブロッケンJr、残念だがてめえをこのリングから五体満足で逃がすわけにはいかねえぜ!」

 

 ヒカルドはピラニアン・ブレスの鎖をブロッケンJrの首に巻き付けて引っ張った。ブロッケンJrの技のフックが甘くなり、ヒカルドはブロッケンJrの顔面に蹴りを入れて脱出した。すかさずヒカルドはブロッケンJrをジャイアントスイングの体勢にとらえた。

 

『お――――――っと! ヒカルド! ブロッケンJrをジャイアントスイングに回転させる――――――っ!』

 

ミスミスミスミスミス

 

 ヒカルドはブロッケンJrを回転させながらブリッジの体勢をとった。

『お―――――っ! ブリッジの体勢をしたヒカルドの上でブロッケンJrがコマのように大回転だ――――――っ!』

 

ゴゴゴゴゴゴ

 

『そのままブロッケンJrが回転しながら上昇していった!』

 

「これで終わりじゃねえ!」

 

グイ バウ

 

『ヒカルド! キャンバスをリバウンドさせて空中に舞い上がった――――――っ! その先にはブロッケンJrがいる!』 

 

「ボイリングエルボー!」

 

ガコォ

 

「ガハァ!」

 

『ヒカルドの鋭いエルボーがブロッケンJrの背中にヒット! ブロッケンJrそのままリングに落ちてたまらずダウン!』

 

「なかなか……いい技じゃねえか!」

 

『ブロッケンJr負けじと立ち上がってきた―――――っ!』

 

「今度はこっちの番だ! 森の木の葉の如くに体軽やかに」

 

 ブロッケンJrは鉄柱方向へ飛び、右肩から着地する。

 

ギュル ギュル ギュル

 

「隻腕軸としコマのごとくに体旋転すれば竜巻の如くに飛び出すこと縦横無尽!」

 

『ブロッケンJr! コーナーの鉄柱に右肩を乗っけて大回転! そまま左脚を大きく曲げて空中へ上昇した―――――っ!』

 

「なんだこのわけのわからねえ動きは!?」

 

「このとき左手右脚をもって左脚をしならせおうしんすれば左脚鋼鉄の鎌となる!」

 

シャキィ

 

『ブロッケンJrの左脚が炎をまとい巨大な鎌へと変化! そのままヒカルドへ回転しながら突っ込んでいく!』」

 

「ピラニアン・ブレス!」

 

『ヒカルド! ピラニアン・ブレスを鉄柱に引っかけて引っこ抜いた! そのまま自分の手元へ寄せていく!」

 

「敵の懐に深く入り肉斬り骨を断つ――――――っ!」

 

ザギャ スパァ

 

「フィギャ――――――ッ!!」

 

ブシャー

 

『決まった―――――っ! ヒカルドの持っていた鉄柱ごとヒカルドの体が一刀両断された―――――っ! 血の雨がリングに大量に降り注いでいく―――――っ!! ヒカルドダウン!』

 

「鉄柱でガードした分少し威力は半減したが、起き上がるのは難しいダメージを負っただろう……」

 

 ヒカルドは苦痛の表情を浮かべ、動けない。

 

(ぐぅぅ、苦痛で体が動かねえ……なんだ、誰かが俺の体を起こそうとしている)

 

 ヒカルドは自分の体を起こそうとする人物の姿を見て驚いた。かつて、自分が惨殺したバシャンゴの姿があったからだ。ヒカルドは目の前に突然現れた師匠の姿を見て、拒絶の態度をとった。

 

(バシャンゴ師匠!? そうか、俺を怨んで地獄へ送ろうと現れやがったな!! )

 

(待て息子よ、そう急くな)

 

 ヒカルドに別の声が聞こえてきた。その声の主は誰かとみると、ヒカルドの両親がいた。




地獄より産みの親と育ての親が御迎えに参る


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一人血盟軍!!の巻

亡き親の現れた理由とはいかに!?


(親父、お袋!? そうか、てめえらまで俺を地獄に誘いに来たのか!)

 

(待つのじゃ!)

 

 バシャンゴが強い言葉でヒカルドの暴走する心を制止した。

 

(お前は確かに地獄に落ちるべき邪悪な男じゃ。未だに私の全てを伝授したのをあの世で後悔しておるわい。だがなヒカルドよ、お前はわしが一番愛した弟子でもあり、わしを倒した唯一の弟子でもある! お前が無様に負けることはわしが許さん! 痛みで苦しかろうとまた起こしてやるわい!)

 

(バ、バシャンゴ師匠……)

 

(ふん、正義超人らしくなっちゃって! 恥ずべき息子を持ったもんだわ!)

 

(まあまあ母さん。そう言いつつ、こうやってヒカルドを心配してあの世から来ているじゃないか)

 

(お、親父……)

 

(ヒカルド、俺はお前が最強の超人になってくれればそれで良い。根っからの悪であるパパには得られなかった力が今のお前にはある。がんばれ息子よ)

 

 ヒカルドの父の顔に優しい笑みがあった。

 

(父君、母君よ、こやつが強い事はわしが証明する。実際に組み合ってきたわしが言うんだからな)

 

 バシャンゴもまた優しく笑っている。

 対しヒカルドの母がむくれていた。

 

(今回は悪行超人らしい手段を問わない闘い方とし特別に見逃すけど、次からはより悪行超人らしく闘いなさい! いいわね!)

 

(母者……)

 

(最後にリングに立っているのがお前であることを、私達含め五人が信じているぞ……)

 

 ヒカルドの父がそう言うと、三人の姿は消えた。ヒカルドの耳に、かすかに自分の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。

 

「……ルドさぁ……ヒカル……ヒカルドさぁん!」

 

 ヒカルドの意識は目覚めた。カウントダウンの途中であり、ヒカルドの取り巻きであった二人のブラジルの超人がヒカルドに激励のエールを送っていた。

 

「そうか……万太郎が俺との闘いでしつこく立ち上がってきた理由が……分かってきたぜ!!」

 

カアァ

 

『あ――――――っ! もはやKOされたと思われたヒカルドが立ち上がり、さらに体からより一層輝かしい光を放った――――――っ!』

 

 この状況にブロッケンJrも驚きを隠せなかった。

 

「まさか!? ブロッケンの帰還を食らって立ち上がるとは!!」

 

「分かった気がするぜ! なぜ伝説超人達が強敵相手に屈せぬかったかをな!」

 

 ヒカルドがブロッケンJrにパンチのラッシュをかけた。その攻撃は予想以上に速く、重く、ブロッケンJrに徐々にダメージがたまっていく。

 

「大した男だぜ。できればお前にこの試合勝たせてやりてえけどな、ここで俺が負けたら、俺が尊敬してきた男達に申し分が立たなくなっちまう!」

 

 ブロッケンJrの体も金色に発光をはじめた。ヒカルドの素早いパンチの連打を難なくかわしていく。

 

「フィギュ!? 突然パンチを見切られちまった!!」

 

「かつて六本の腕の男を相手にスパーリングをしてきた! それに比べれば、こんなの避けるのは容易いこった!」

 

 試合会場とは別の場所で試合を見ているアシュラマンの口元に笑みが浮かんだ。

 

「あいつめ……」

 

 ヒカルドはパンチのフェイントをいれ、ブロッケンJrにスキを作った。

 

「てめえの肉にこいつを深く刺してやるぜ!」

 

 ヒカルドはブロッケンJrに自身の牙で噛みつこうとした。しかし、ブロッケンJrは両手で牙をぴたりと止めた。

 

「ぐっ! 動かねえ!」

 

「かつて、1000万パワーの男のスパーリングで二本角の突進をうけてきた!」

 

ドゴォ

 

「ハンブルグの黒い霧!」

 

 ヒカルドは顔面に強烈な蹴りを食らい、よろついた。その様子をバッファローマンが嬉しそうに見ている。

 しかし、ヒカルドは即座にブロッケンJrの両の脚を掴んだ。

 

「不思議だぜ、こんだけやられてもまだまだ闘える気がする!」

 

『ヒカルド! ブロッケンJrの両の脚をとり、空中高く飛んだ! 空中でなにやら関節技らしき技にもっていくようです! あ――――――っ! これは!』

 

「俺の全力をもってこの技を放つ! トーチャスラッシュ―――――――ッ!!」

 

 トーチャスラッシュの体勢で両者勢いよくリングに落下していく。

 

「オリンピックの時よりも良い技になっているじゃないか。このままKOされてしまいそうなぐらいだ」

 

「フィギュフィギュ、今からでも遅くねえ。誰かにタオルを投げさせればこの技を解いてやるぜ!」

 

 ヒカルドとブロッケンJrはかつて、超人オリンピックでのタオル投入絡みのエピソードを思い出した。

 

「タオルなんざいらねえ! 俺はな、相手の技にギブアップせずに耐え忍ぶガッツも教えて貰ってんだよ!! できればそいつもジェイドに教えてやるべきだった!!」

 

 ブロッケンJrは、今は亡きザ・ニンジャを思い出しながら、全身に力を入れていく。

 

『あ――――――っ!! ブロッケンJr! 力尽くでトーチャスラッシュを外した! そして空中でなにやら別の技の体勢に固めていくぞ――――――っ!!』

 

「そして、俺の良いところも教えて貰った! みずからに課した仕事は絶対に遂行する事だ――――――っ!!」

 

「あ、あの技は!」

 

 試合を観戦しているキン肉アタル、ザ・ニンジャの亡霊が反応を示した。

 

「ブレーメンサンセット―――――ッ!」

 

ズガァン

 

 ブレーメンサンセットの威力により、リング中央部が大きくへこむように変形した。ブロッケンJrが技をほどくと、ヒカルドは大の字に倒れた。

 

カン カン カン カン

 

『因縁の対決ついに決着!! ブロッケンJrがヒカルドに勝利しました!! 師匠として弟子の敵をとる事に成功しました!!』

 

「フィ……フィギュ……」

 

 大の字に倒れているヒカルドが声を出した。

 

「お、俺はまだくたばちゃあいねえぜ……」

 

 ブロッケンJrは驚くこともなく、冷静な態度を保った。

 

「お前がアイアンネックという事を忘れてはいない。大ダメージは負ったと思うが、死ぬほどの事でもないだろ?」

 

「そういうこった……」

 

「さて、俺は勢力の関係上刃向かう奴には死か、超人としての力を奪うかを命令されている」

 

 ブロッケンJrが転生石を取り出し、ヒカルドに向けた。

 

「と言っても、お前が無様を晒して命乞いをするような男には見えねえけどな」

 

「その通りだ、遠慮なく殺れ……と言いたいが、俺は無様を晒してでも生きなきゃいけない理由を見つけた」

 

 ヒカルドがよろよろと立ち上がってきた。

 

「ほう、それはなんだ?」

 

「俺はこの試合を通して決意した……もう一つの正義超人の団体を立ち上げる! 俺みたいなアウトローな正義超人達を救うための集まりをな! まず立ち上げのメンバーとしてそこにいる二人は確定した!」

 

 ヒカルドは自分を応援してくれたブラジルの超人二人を指さした。

 

「ヒカルドさん!」

 

 二人は喜ばしそうな顔をしている。

 

「例え人間になってでも、俺と同じ思いをしているやつらがいっぱい世の中にいるとなりゃあ、恥をさらしてでも生きるぜ!」

 

 ブロッケンJrがその言葉を聞いてにやりと笑った。

 

「安心したぜ」

 

バキィ

 

 ブロッケンJrがそう言うと、持っていた転生石を持ち前の握力で破壊した。




頭がおかしくなったかレーラァ!?


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圧巻の電撃男!!の巻

昔はよく特訓で石を破壊したからな


『ブロッケンJr! 超人を人間に変える転生石を握力で粉砕した!』

 

 現在闘っているライトマン、ミスターノア、アヌビ・クレアは様子を変えずに冷静に見ていた。

 

「どういうつもりだ? お前の大将さんからもらった大事なもんじゃないのか?」

 

 ヒカルドがブロッケンJrに質問した。

 

「俺は若返らせてもらった借りを返すために闘っただけだ。この一戦が終わったら、さえない中年のおっさんに戻る予定だったのさ。それにお前はお前でやることがあるんだろ? それにサタンがよ、お前が正義超人になるなんて発言を見逃すとは思えないぜ」

 

 二人はサタンの方を見た。

 

「ゲギョゲギョ、はなっからヒカルドのことは信用してはいなかった。いや、それはネプチューンマンやボーン・コールドにも言えたことか」

 

 ネプチューンマンやボーン・コールドは特に動じる様子もなく、冷静さを保っている。

 

「そもそも寄せ集めの四人に俺が何を期待するというのか? まあ、今闘っているボルトマンに関しては貴様らよりはある意味信頼しているがな」

 

 ボルトマンは対戦相手のライトマン相手に優位に試合を進めている状態である。

 

「転生超人側の勢力を弱くすればお前らにこれ以上は望まない。あとはどこぞへ行ってもかまわん」

 

 ヒカルドがサタンを見ながら、にやりと笑った。

 

「サタンにしては尊大な処置だな。ならば遠慮なく好きにさせてもらうぜ。ところで、ブロッケンJrよ。お前はお前で敵対行動をとった。自分をの心配をしていた方がいいんじゃないか?」

 

 ヒカルドがそう言うと、アヌビ・クレアが飛んできた。

 

「残念ね。そういうつもりならいつまでも若くしておくわけにはいかないわ。あなたを惨めな隻腕のおじさんに戻すのは少々気が進まないけど、ミスターノアの命令は絶対だから」

 

「好きにしな、若作りのおばあちゃん」

 

 アヌビ・クレアが手をかざすとブロッケンJrがなにかを吸い取られていく様子が見えた。やがてブロッケンJrの顔は中年の顔となり、腕も隻腕となり、その場に倒れた。すぐにバッファローマンがリングに上がった。

 

「大丈夫かブロッケンJr!!」

 

「ちょっと元気がなくなっただけさ……少し寝てりゃあ治る……俺の試合はどうだったよバッファローマン」

 

「ああ! 強かったぜ! 全盛期以上に強かった!」

 

「そ、そうか……」

 

「教えてくれブロッケンJr。何故一時的とはいえ、なぜ転生超人側についた」

 

「そんなことか。あいつらは力尽くで俺を誘拐し、束縛していた。なぜあいつらが俺を誘拐したか、それはブロッケンの祖先が関係していた」

 

「ブロッケンの祖先?」

 

「ブロッケンの祖先は極悪なる超人の集団であり、昔俺達が闘った完璧超人始祖達の目に余る存在だった。完璧超人始祖がブロッケン一族を襲来し、滅亡の危機であった。しかし、そこへミスターノアがブロッケン一族の中の善良な超人にのみ救済をはかった。ブロッケン一族の一部の超人を人間に変えたのだ」

 

「ちょっと待て、それが事実ならば、お前が超人である理由が説明がつかない」

 

「この髑髏(どくろ)の紋章さ。人間である代わりに完璧始祖達に見逃して貰ったブロッケン一族の残りのやつらは、ミスターノアにこの髑髏の紋章を授かった。転生石の派生だろうな、こいつをつけると超人になれるんだ。これが先祖代々伝わり、今は俺とジェイドが持っているだけさ」

 

「そうだったのか、お前の祖先にそんな過去が……」

 

「正直そんなことはどうだっていいのさ。一時的とは言え、仲間に心配をかけてすまなかった。いや、むしろボコボコにしてもらわねえと気がすまねえ!」

 

「分かった。今はお前が元気になることだけを優先しろ」

 

「そうか、ありがてえぜ。じゃあちょいと寝させて貰うぜ……」

 

 ブロッケンJrは疲れた子供の様に眠りについた。超人委員会が用意した救急隊員によりブロッケンJrは病院に運ばれた。救急隊員はサタン側の超人にも声をかけた。

 

「ネプチューンマン、ボーン・コールド、ヒカルド! お前らも決して軽い傷ではない。病院へ行くんだ!」

 

「うるせー、俺を隻腕の老いぼれといっしょにすんじゃねえ。まだまだ闘える力はあるぜ」

 

「ムヒョヒョ、俺も同じくだ」

 

「右に同じだ」

 

 三人とも、治療を受けようとする気配はなかった。今後を見届ける意思があるのか、その場に残っていた。

 ここまで口を閉ざしていたジェロニモが口を開いた。

 

「ミスターノア。おらも正直に言わせて貰う。おらはあんたを止めるために若返りの道を選んだ」

 

 その言葉を聞いて、アヌビ・クレアが瞬時に飛んできた。

 

「正直すぎるのも良くないってもんよ。せめて直前まで自分の意思は隠さないとね」

 

「待て、アヌビ・クレア。聞かせろ、ジェロニモ」

 

「ボルトマンの試合が終わった後でいい。あんたと闘いたい」

 

「いいだろう。お前とは闘ってしかわかり合えぬと思っていた」

 

 その様子を呆れながらアヌビ・クレアは見ていた。

 

「お人好し過ぎるわね、うちの大将さんは。だからこそ私や亡くなった仲間がついていく気になったんだけどね」

 

 超人委員会もその様子をただ黙って見てはいなかった。ハラボテが役員をこき使っている。

 

「至急ジェロニモとミスターノアの試合を準備じゃ! 段取りを急げ!」

 

 

 一方、ボルトマンVSライトマンのリングにおいて、ライトマンが怒りの表情を見せていた。

 

世界浄化者(ワールドクリーナー)の戦士はミーしかいない状態となったか! ならばこの試合絶対ウィナーにならなければ!」

 

ドゴ バシィ ズバン メキィ

 

『ライトマン! 目にもとまらぬ連打をボルトマンに浴びせていく! 無数の打撃がボルトマンを襲う!』

 

「誰を相手にその台詞言ってんだ?」

 

ボゴォ

 

『ボルトマン! ライトマンの打撃をものともせずにラリアット一発でリング場外へふっとばした――――――っ!! かつて悪魔種子(デーモンシード)としてスカーフェイス、ケビンマスク、キン肉万太郎を大苦戦させたその力は今なお健在だ――――――っ!!』

 

「なんのこれしき――――――っ!!」

 

『ライトマン! 場外から勢いよくジャンプし、ボルトマンに向かって蹴りを放った!』

 

「ドヘドヘ、てめえみてえに自分が正義ぶっているやつらが俺は一番気にいらねえんだ!」

 

ガシィ

 

「ピカ!?」

 

『ボルトマン! ライトマンの勢いある跳び蹴りを片手で受け止めた――――――っ!!』

 

「正義は勝つ。ならば非道・邪道と言われようと、力のあるやつこそが正義なんだよ!!」

 

ドガァ

 

『ボルトマン! ライトマンの片足を持って、リングに勢い良く叩き付けた!』

 

「ビガハァ!!」

 

 ライトマンは頭を叩きつけられ悶絶した。

 

「ドヘドヘ、世界浄化者(ワールドクリーナー)とか大層な名前を語る割には大したことねえな。俺が殺したスカーフェイスの方がよっぽど手応えがあったぜ~~~」




死に方は選ばせてやるぜ!!


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感電死にご用心!!の巻

ビリ ビリ ビリ ビリ !!


 リングに叩き付けられたライトマンに、ボルトマンはエルボーを落としていく。しかし、ライトマンは瞬時に避け、ボルトマンは自爆した。

 

「ちぃ、ちょこまかと鼠見てえな野郎だ」

 

「流石ボルトマン! 万太郎、ケビンマスクを苦戦させたそのパワー、リスペクトに値する! サンレーザー!!」

 

 ライトマンの右手より光が放たれた。光はボルトマンの目に直撃した。

 

「ぐわぁ!」

 

(マウス)とか抜かしてくれたな! ならばマウスらしい姑息なファイトスタイルをとってやろうか!!」

 

『ライトマン! 視界不良のボルトマンに向かって右ストレートだ!!』

 

ガシ

 

「ピカッ!?」

 

 ボルトマンは左手でライトマンの右拳を掴んでいた。

 

「ドヘドヘ、なぁんちゃってなぁ!」

 

ドゴォ

 

「ビガァ!」

 

 ボルトマンは右手でライトマンの顔面を殴って、ふっとばした。

 

『あ――――――っ! ボルトマン! サンレーザーにより目潰しされたかと思いましたが、なんと平気な顔をしている!!』

 

「俺がどうやって電気を作っているか知っているか? 色々あるが、方法の一つとして、光を電気に変換する方法がある。俺の体を構成する要素の一つとしてシリコンがある。こいつは、電気を生み出す半導体、つまり太陽光発電に使われる素材ってわけさ!」

 

『ボルトマン! 更にパンチを連打していく! ライトマングロッキー状態だ!』

 

「つまりよ、お前にとって俺は相性最悪の相手ってわけだ!」

 

『ボルトマン! リングロープに向かって走って行くぞ!!』

 

「ヘル・ザ・キッチン・ポップ!」

 

ドガァ

 

『ボルトマン! グロッキー状態のライトマンに、ロープを使った旋回蹴りを決めた!! ライトマンたまらずダウン!!』

 

 しかし、ライトマンは懸命に立ち上がろうとする。

 

「ガッデム! ミーが世界浄化者(ワールドクリーナー)の最後のソルジャー! 使命のために亡くなった仲間のためにもビクトリーあるのみ!! チェンジ! ノンビジブルライト!」

 

ピシュン

 

『あ――――――っ! ライトマン突然姿を消した! これはどうしたことだ――――――っ!!』

 

「なに!? 姿が見えなくなった! あの野郎どこへ逃げやがった!」

 

「ミーはラン・アウェイなどせん!」

 

「そこか!」

 

『ボルトマン! ライトマンの声がした方向を狙って右ラリアット! しかし、目に見えないためヒットしない!』

 

「ユーは可視光線というのを知っているか? 人のアイではウオッチできないライトの事だ! ミーはライトの超人、ゆえにどんなライトにでもなれるのだよ!」

 

ドガ ガゴ バキ バコォ ガッ

 

「ドヘハァ!」

 

 ボルトマンの体のあちこち何発もに打撃が加わった。

 

「こんにゃろう! チートじみた事をしやがって!」

 

バキィ

 

 ライトマンの顔面に目に見えない打撃が飛んできた。

 

「今だ! テスラコイル!」

 

バリ バリ バリ バリ

 

「ビガ――――――ッ!!」

 

『これはライトマンの声か! 姿は見えねどボルトマンの放つ超高圧電流に苦しむ様子が目に見えるようです!』

 

ドスン

 

 何かが倒れる音と共にダウンしたライトマンの姿が出てきた。

 

『ライトマンの姿が現れた! 電撃を直接浴びて、ダメージは相当のものです!!』

 

「ドヘドヘ、なんだ? お前は電気を光に変換できねえのか? 不器用なやつだな~」

 

ドガ ドガ ドガ

 

『ボルトマン! ダウンしているライトマンにサッカーボールキックで追撃!』

 

「これがユーのボルトか……かなりパワフルだ……ならばスピードのリミットオーバーといこう!!」

 

ピシュン

 

「ドヘッ!?」

 

『ライトマンの姿が消えた! またも目に見えない光となったか!』

 

「ユー達のアイは節のホールか! ようくウォッチするのだ!」

 

「な、なに!?」

 

 ボルトマンの周りには複数人のライトマンがいた。

 

『なんと! ライトマンが分身した! これはどんなからくりなんだ――――――っ!!』

 

「いくぞ!」

 

バキィ バシィ ドガァ ボゴォ ガギン ドゴォ

 

『複数人のライトマンがボルトマンに目にとまらぬ打撃を加えていく! ボルトマン完全にサンドバック状態だ!!』

 

「ド、ドヘラァ~! こんなもん!」

 

『ボルトマン! 襲ってくるライトマンの一人めがけてラリアットを放った!』

 

 しかし、ボルトマンの腕がライトマンをすり抜けた。

 

「なにぃ!?」

 

「ピ~カカカ! 蜃気楼(ミラージュ)を知っているか? 光の屈折により、物体が見えるのに別の場所にある現象だ! ユーがアタックしたのはミーのミラージュというわけだ!」

 

バキィ バシィ ドガァ ボゴォ ガギン ドゴォ

 

『更に容赦なくライトマンの攻撃が続きます!!』

 

「ドヘラァ~~」

 

「かなりタフな奴だな。ならば、禁断のライトをユーズしよう。レインボーシャワー!!」

 

バババババババ

 

「ボルトマンに向けて複数のレインボーシャワーが襲ってきた!!」

 

「おっとあぶねえ!」

 

『ボルトマン! なんとかレインボーシャワーを懸命にかわす!』

 

クキン

 

 レインボシャワーの一つが直角に曲がり、ボルトマンの背中を直撃した。

 

「グワァ――――――ッ!!」

 

 動きの止まったボルトマンに次々とレインボーシャワーが当たっていく。

 

ドスン

 

『ボルトマンダウン! 流石のボルトマンもレインボーシャワーには耐えられなかった! 一時は圧勝かと思われましたが、逆転を許してしまった!!』

 

「ノーマルな超人なら一撃でデッドしているところだ。ユーが言っていたソーラーエナジー効果でちょっとは威力を弱めたようだが、もう闘えんだろう」

 

「ドヘェ……」

 

「ミーはコリアの超人チヂミマンの漢気に応える義務がある!! そこにいるEZOマンとの敵討ちファイトはマストなことだ!!」

 

 EZOマンがその言葉に反応した。

 

「あいつ、軽々しい口調を言ってはいるが、一本筋の通ったまっすぐなやつだ。まさにライトマン、その名にふさわしい漢だ」

 

「ドヘドヘドへ」

 

 ボルトマンがよろよろとしながらも立ち上がってきた。

 

「ほう、あれだけのアタックとライトを受けてスタンドしてきたか」

 

「敵討ち合戦に付き合うために勝ちたいってわけか。俺はそういうのを邪魔するのが一番大好きなんだよ!!」

 

「ならば、もう一度ミーのアタックをお見舞いしてやろう!」

 

 ライトマンはまたも分身を始めた。

 

「お前の技の攻略法が分かったぜ!」

 

ブチブチ クルクル ス~ プ~ プク~ カキィ ボゴォ

 

『ボルトマン! 自分のドレッドヘアーを数本抜いて、縄のように巻いていく。それを自らの息で吹き込み膨らませ、出来たのはなんと扇風機だ!! 自らの体にコンセントを作り、扇風機のプラグを差し込んだ!!』

 

「ピカカカ~、クレイジーにでもなったのか?」

 

ブオオオオオ

 

『ボルトマン! 扇風機を回し、辺りに強風をまき散らす!』

 

「そんな弱いウインドでミーを吹っ飛ばせると思ったらベリーミステイクだ!!」

 

『あ―――――っ! またもライトマンが複数人襲いに来た!』

 

シュン シュン シュン

 

「ピカァ!?」

 

『どうしたことだ! ライトマンの分身の姿が消えたぞ!!』

 

「蜃気楼ぐらい俺だって分かるんだよ。蜃気楼が起きるのは空気の密度の差で光が折れ曲がるからだ。だからレインボシャワーが直角に曲がった! つまり、リング周辺の空気を攪拌してやりゃあ、蜃気楼もなくはずだ!」

 

『お――――――っ! ボルトマン! 見た目に似合わぬ知性的なプレーも見せた!』

 

 複数人のライトマンの姿は消えて、一人だけとなった。

 

「そして本体はてめえか!」

 

ドゴォ

 

「ピガゴォ!」

 

『ボルトマン! ライトマンをレッグラリアートで攻撃! 攻撃は効いているぞ!!』




限りある電気を大切に!!


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電子レンジの悪夢再び!!の巻

誰かこの男を止めてくれ!!


『ボルトマン! 巨体に似合わない蹴り技を見せた!! ライトマン倒れまいとするも、体がぐらつく!!』

 

「ドヘドヘ、おねんねさせてやるよ」

 

『ボルトマン! ライトマンをリバースフルネルソンにとらえた!』

 

ゴゴゴゴゴ

 

『ライトマンの体がリバースフルネルソンで振り回される!!』

 

「そらそらそら~~~~~~っ」

 

「ピカァ~~~~~~ッ」

 

『ボルトマン! 両腕を離して自らの体をブリッジさせていく――――――っ!』

 

ズシ ギュルルルル

 

『勢いのついたライトマンの体がボルトマンのボディの上で踊っている――――――っ!』

 

「メガヘルツ・テンペスト!」

 

ギュルルルル

 

『ライトマンの体がそのまま上空へ勢いよく上がった! ボルトマンもジャンプしてライトマンを追いかける!!」

 

「ミステイクだぞボルトマン、ユーが今かけようとしている技は、ミーが抵抗もせずに落ちてこそ、かけられる。まだミーは動けるぞ!」

 

「じゃあ、動けないようにしてやりゃあいいんだな」

 

バリバリバリ

 

「ビガァ――――――ッ!」

 

『ライトマン! ボルトマンを返り討ちにしようとするも電撃による襲撃により失敗! そのまま落下していくところをボルトマンが捕まえに行く!』

 

グイ ガキ ガキ

 

『右手で後頭部をとらえ、左手で両脚をとらえた! ライトマンぴくりとも動かない!』

 

「死ねぇ!!」

 

ガガァン シュウウ

 

 ボルトマンが技を解くと、ライトマンがリングに倒れた。すぐさま、超人委員会がゴングを鳴らそうとした。

 

ガシッ

 

「困るなぁ~、メインのショーが終わらない内にくたばっちゃあ」

 

『ボルトマン! 意識のないライトマンを片手で宙に高く放り投げた!』

 

「ングググ~~~~~~ッ」

 

バリバリバリ ボァァ

 

『ボルトマンの胸に巨大な電気プラグの差し込み口が現れたぁ――――――っ!』

 

 ハラボテがその光景を見て、はっと気付いて顔をして慌てた。

 

「いかん! すぐにボルトマンを止めるんじゃ!」

 

 ハラボテの一声で超人委員会のメンバーが動き出す。

 

「ゲギョゲギョ、お前ら」

 

 サタンの一声で超人委員会のメンバーの前にネプチューンマン、ボーン・コールド、ヒカルドが立ちふさがった。

 

「お、お前達! すぐにどかんか!」

 

 それに、ネプチューンマンが応えた。

 

「だったら力尽くでどかしな。力なき正義は正義とならないぜ。一試合闘い終わった後だから、お前らでも俺達に勝てるかもしれないぜ」

 

「ムヒョヒョ」

 

「フィギュギュギュ」

 

 ボーン・コールド、ヒカルドも同じ意見であった。

 超人委員会のメンバーは誰一人何もできなかった。

 

魔の四角窓(ファータル・スクエア)~~~~~~ッ」

 

 ボルトマンが拳についているスイッチを押した。

 

ブォォン

 

 ライトマンの足が魔の四角窓に入り、ライトマンが苦悶表情をした。

「ビガァ――――――ッ!」

 

「どうだぁ! 超人電子レンジの湯加減は!」

 

「ど……どうやらミーもここまでか……ミスターノア!!」

 

「!?」

 

 ライトマンの一声にミスターノアが反応した。

 

「ベリーサンクス……そしてソーリー……」

 

「ライトマン!!」

 

ブォォォ シュウウウウ

 

 ボルトマンの超人電子レンジにより、ライトマンの下半身まで消滅した。

 

「EZOマン!」

 

「なんだ!」

 

「ユーの盟友チヂミマン……立派なマンであった……」

 

 EZOマンはその言葉に涙した。

 

「ああ! その伝言奴の墓まで伝えにいくぜ!」

 

 そしてライトマンの体の大半が消え、顔にも体内の水分の沸騰によるふくれがみえてきた。

 

「心底悔しい……ユーのようなやつに負ける事が……」

 

 ライトマンの体は完全に蒸発した。

 

カン カン カン カン

 

『試合終了! ボルトマン危うい場面もありましたが、終わってみればライトマンに圧倒的な実力差を見せつけた試合でした!』

 

 観戦していたキン肉マンが喋った。

 

「ライトマンは決して弱い超人ではなかった。かつて、私はブラックホールと闘い、ライトマン同様の分身殺法をくらった。あれを破るのにどれだけ苦労したか……」

 

 それにテリーマンが応える。

 

「ボルトマンが強すぎたとしか言い様がない。ライトマン自身、桁外れのスピードを持ち、光を活かしたトリッキーな殺法、そしてレインボーシャワーも扱えた。ここにいる伝説超人が全盛期に戻ったとしても、大苦戦は必須だろう」

 

 ロビンマスクもその話に頷いた。

 

 さて、リング上のボルトマンはまだまだ元気な様子を見せている。

 

「まだまだ暴れたりないぜ! また一戦やってもいいぐらいだぜ! なんなら、そこにいるボーン・コールドやヒカルドでもいいぜ!」

 

 ボーン・コールドとヒカルドが驚愕の表情をした。

 

「ドヘドヘ、俺は悪魔種子として闘ったときに、お前らも来るもんだと思っていたんだぜ~~~。でもなぜかオムツじじいとポンコツ飛行機が来やがったがな。情けない雑魚のライトマンより、お前ら二人を相手にした方がよっぽど面白いってもんだ!!」

 

 一人の男が走り出した。その男は瞬時にボルトマンの近くまで来て、右の拳をボルトマンの顔面に放った。

 

「ドヘラァ~~~ッ」

 

 ボルトマンはふっとばされ、そのまま意識を失った。ボルトマンを殴った男はミスターノアであった。すぐさま、アヌビ・クレアもそばによってきた。

 

「ただでさえ組織が壊滅的な状態になっているのに、ボスのあなたが短気起こして暴走してどうするのよ!」

 

 アヌビ・クレアが怒り気味にミスターノアに言った。

 

「こやつの言動が許せなかった。仲間を侮辱されて怒らぬ者はいないだろう」

 

「ふぅ、あなたの気持ちは分かるけどね」

 

 アヌビ・クレアは呆れた顔をしていた。

 

「そうはいかない、オラと闘う余力はちゃんと残して貰わなきゃな」

 

 ジェロニモもミスターノアの元に駆け寄ってきた。

 

「断っておくが私はお前が思っている以上に強いぞ。むしろ、私が消耗した方が良いのではないか?」

 

「オラはそこまで賢く動けない正義超人だ。だからあんたとハンデなしに正々堂々と闘いたい!」

 

「お前がその気ならいいだろう」

 

 ハラボテが会場にアナウンスをした。

 

「ミスターノア、ジェロニモよ。超人委員会がリングを用意してやった! そこでお前達の決着をつけるがよい!」

 

 いつのまにか、会場周辺に真新しいリングが用意されていた。ミスターノアとジェロニモがリングインした。ジェロニモは落ち着いた表情でミスターノアに話した。

 

「ミスターノア。出来ればおはんさんがこのまま引き下がってくれた方が、皆としてはありがたい」

 

「そのリクエストには応えられんな。私には使命が残されている。善良なる人間を救うために、この世の悪なる人間を排除せねばならない。それを邪魔する者も同じくだ!」

 

「そうか……これでふんぎりがついた!」

 

カーン

 

 ジェロニモとミスターノアの試合が始まった。

 

 

 一方、超人KO病院にてメディカルサスペンションカプセルが二つ動いている。その一つのロックが解除され、一人の超人が出てきた。

 

「ガゼルマン様! ただいま復活だぜ!!」




全国1000万のファンの皆! 待たせたな!


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命を賭すアパッチ!!の巻

命落とすアパッチ!?


 ミスターノアとジェロニモの試合が始まった。先にジェロニモが仕掛けていった。

 

「ウララ―――ッ! トマホークチョップ!」

 

『ジェロニモ! 右の手刀でミスターノアを攻撃だ!』

 

バシィン

 

 ミスターノアは手刀を左胸板付近で受け止めた。ミスターノアの表情は一切変わっていない。

 

「なるほど、お前の手刀の威力・スピード。申し分のないものだ。だがな」

 

バシィィィィン

 

『ミスターノアもジェロニモに手刀を返した!』

 

「ぐわぁっ!」

 

『すごい! ミスターノアの手刀により、ジェロニモの体がリングロープまで吹っ飛んだ!!』

 

「お前と私の手刀とでは比べものにならない」

 

 ジェロニモの胸板に、手刀の痕がついている。

 

「なんのこれしき! オラの気合いが足りなかったからだ!」

 

 ジェロニモの両手が真っ赤になり、熱気が上がる。

 

「ほう、手に気を集めているか。なかなか器用な真似をするな」

 

「歳をとったとはいえ、万が一のために鍛錬は重ねてきた。若返ってあなたと闘う事になるまでは予想できなかったですがね!!」

 

『ジェロニモ! またも手刀で攻撃をしかける!』

 

「ウッドハンドカッター!!」

 

 バシィィン バシィィン バシィィン バシィィン

 

『ジェロニモ! すさまじい手刀の連打です。先程まで涼しい表情をしていたミスターノアも流石に苦痛の表情を浮かべる!!』

 

「先程よりもいい手刀だ。このまま受け続けるのは危ういな」

 

『ミスターノアも手刀を繰り出し、ジェロニモの手刀と相打ちになるように合わせた!!』

 

ガキィィィィン

 

『両者の右手刀がぶつかり、すさまじい衝撃音が鳴った!! あ――――――っ! 両者の手刀が合わさった部分から大量の出血が見られるぞ!』

 

「うぐぅ~~~っ」

 

『出血主の正体はジェロニモだった! ジェロニモが左手で右手を抑えて、苦痛に顔をしかめる! ミスターノア! ジェロニモを左手でネックハンキングにとらえた!』

 

「ぐえぇ!」

 

「もうお前の実力は分かった。ここらでフィニッシュと行こう」

 

『ジェロニモ! 脱出しようと怪我をしていない左手でネックハンキングを解こうとしますが、びくともしない!』

 

「私を手刀で苦しめただけでも大した物だ。どうだ、改めて仲間になる気はないか? できれば私もお前を殺すような事はしたくない」

 

「へへ」

 

 ジェロニモが笑い、左の手刀で自らの頭の中心部を叩いた。

 

『どういうことだジェロニモ! ピンチの状態なのに、自ら更に危ない状態に持って行くぞ!』

 

「敵に許しを請うくらいなら、自害した方が良いと考えたのか?」

 

 やがて、ジェロニモの頭部が割れ、大量の血がミスターノアの顔面にかかった。

 

「うっ」

 

 ミスターノアのネックハンキングのかかりが甘くなり、ジェロニモは脱出に成功した。テリーマンがその脱出方法に反応した。

 

『ジェロニモ! 思わぬ奇策でネックハンキングから脱出した! しかしジェロニモのダメージも深そうです!』

 

「ジェロニモのやつ! かつて改良アシュラバスターを受けたときの古傷を自ら開いたか! なんてことをしたんだ!」

 

 キン肉マンも喋った。

 

「私も、ジェロニモと同じ状況だったら同様の方法をとっただろう」

 

 キン肉マンはアトランティスと闘った時、セントへレンズ大噴火を頭の傷を利用して脱出した事を思い出していた。

 ジェロニモの出血は激しいが、目はまだ死んでいない。

 

「オラの実力が誰よりも劣っているのは分かっている。戦績も良くなかったし、あなたにも申し訳ないと思っていた。でも、根性だけはアイドル超人トップだと思っているずら!」

 

「ジェロニモよ、お前の人並み外れた根性があったからこそ、人間でありながら悪魔騎士の一人サンシャインを倒せた。だがな、限界以上の事はせぬことだ」

 

「いいや! 限界なんてつくらねえ! 可能性が無限にある事を、この試合を見ているやつらどもに見せてやる! ようくみておけよ! これがジェロニモが見せる最初で最後の究極の技だ!」

 

 ボアァ

 

 ジェロニモの体が金色に光った。

 

「ほう、まだ闘う力があるか。ますますお前を倒す事を惜しく感じるぞ」

 

 ミスターノアがジェロニモに感心した。

 

「アパッチキャノン!」

 

ウラララララ

 

『なんと! ジェロニモの口から渦状の音波が発生した! 音波の向かう先はミスターノアだ!』

 

 アパッチキャノンはミスターノアを直撃し、強烈な衝撃を与えた。

 

「グボァ!」

 

『あ――――――っ! ミスターノアが血反吐を吐いた! ジェロニモがこの試合初めて有効打を与えた!!』

 

 キン肉マンが驚きの表情を見せた。

 

「すごいじゃないかジェロニモ! アパッチの雄叫びの何倍もの威力になっておる!」

 

 ロビンマスクが解説をはじめた。

 

「そうか、ジェロニモのやつ、集中的な音波を作りあげることによって、威力を増していたのか!」

 

 テリーマンがロビンマスクに疑問をぶつけた。

 

「それはどういうことだロビン?」

 

「そもそもアパッチの雄叫びとは、やつの声帯から出される桁外れのボイスにより、空気にすさまじい振動エネルギーが与えられ、それが敵にも伝わりダメージとなる。アパッチの雄叫びは広い範囲に攻撃できるが、その分威力は物足りないものとなっていた。やつはアパッチの雄叫びで振動させる空気の範囲を絞る事によって、エネルギーの密度を増し威力を倍増させる事に成功させたのだ」

 

「ロビ~ン、私にも分かるように簡単に説明しとくれ~」

 

「つまり、やつのアパッチキャノンはアパッチの雄叫びよりの何倍もの威力なんだ。しかし、心配な事もある」

 

「うぐぅ!」

 

ボキィ グキィ メキィ

 

 リング上のジェロニモが体から異音を出し、苦しみ始めた。

 

「お前のアパッチキャノン。すさまじい威力だ。私といえども何発も食らっては倒れてしまいそうなくらいだ。だが、お前にも負担がでかすぎるようだな。今すぐ試合放棄しなければ、死ぬぞ!」

 

「オ……オラはこの闘い、生きて勝つなんて最初から考えてない……。みそっかすのオラを超人にしてくれたあなたを……オラがあこがれたあなたを……取り戻したいから!!」

 

「私があの頃の私でないというのか? だったら大きな勘違いだ。私はあの時のままだ! 生きる気がないのなら、望み通り死なせてやろう!」

 

『ミスターノア! ぼろぼろの状態のジェロニモに襲いかかってきた!!』

 

 ジェロニモは何かを覚悟したかのような表情になった。

 

「ようくみておけよ、新世代超人(ニュージェネレーション)……これがやつの必殺技だ……」

 

「シュター!!」

 

バシィィン!

 

『ミスターノア! ジェロニモの首に強烈な右手刀!」

 

「グハァ!」

 

「見せてやろう、これが神であった男の究極の技!!」

 

『ミスターノア! ジェロニモの首に右手刀をひっかけたまま、空中へ上昇! 最高点まで達したところで、そのままジェロニモの首を狩るように、右手刀を落とし、リングへ勢いよく落下していくぞ!!』

 

裁きの刀(ジャスティスブレード)!!」

 

ズガァァァン

 

 ジェロニモが手刀によって、勢いよくリングに叩きつけられた。ジェロニモはぴくりとも動かずに、誰が見ても完全に事切れた様子であった。

 

カン カン カン カン

 

『強い! 強いぞ! ミスターノア! この男に勝てる超人がいるのか!』

 

「さぁて、次は誰が相手をするんだ? このまますぐに闘っても良い。それが神だった男のせめてものハンデだ」

 

「わすがいくだ!」

 

「待て農村マン! ここは私が行く!」

 

 農村マンを止めるようにウォッシュアスも行く。

 

「雑魚はひっこんでな。手負いの俺にすら勝てなさそうな奴らが行っても命を無駄にするだけだぜ」

 

 ネプチューンマンが新世代超人を制止した。

 

「おい、ミスターノアよ」

 

 その言葉を発したのはサタンであった。

 

「下らんは前座はこの辺にしとこうじゃないか」

 

「ほう、とっておきの相手を用意してくれるのか?」

 

「そうだ、今からこの俺様がお前の対戦相手になってやろうじゃないか!!」




サタン様 宣戦布告!!


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禁断のタッグ!!の巻

悪魔と神の究極対決!!


『なんと! サタン直々にミスターノアへ宣戦布告だ――――――っ!』

 

 会場の人達はサタンの動向に注目している。

 

「ほう、貴様がやるというのか。なかなか楽しめそうだと言いたいところだが、貴様の本体はどうするのだ。お前のとこの超人を使うのか?」

 

「いいや、こいつらは万が一を考えて、万全の状態に回復するまで闘わせないつもりだ」

 

「では、誰をお前の身体として使う気なのだ?」

 

 二人の緊張感漂う会話と別に、会場の一部の人間が空の異常に気付いた。

 

『ややっ! 突如空から物体が高速でこちらに向かってきました!』

 

ズドォン

 

『大きな物音を立てて、得体の知れない物体が落下してきました!!』

 

 砂埃が舞ってよくみえないが、落ちた物体は人のようなシルエットをしていた。

 

「いちち、OKANの野郎、もっと優しく投げろってんだ!」

 

 落ちてきた物体は、超人ガゼルマンであった。

 

「ガゼルマン! どうしてここに! 派手に落ちてきたが、怪我は大丈夫なのか!」

 

 ガゼルマンのもとに、ジ・アダムスがすくま駆け寄ってきた。

 

「心配すんな。メディカルサスペンションカプセルで体力はばっちり回復してきた。それに、ミートが過去の世界に持って行った超人大全の予備も念のため持っていたんだ。だから、ネプチューンマンがこの場にいることや、ブロッケンJrが隻腕になっていたことも既知の事だ」

 

「しかし、ガゼルマン。一体どうやってここまで来たんだ? まさか大砲でも使ったのか?」

 

「同じ病院にいたOKANが俺をここまでぶん投げ飛ばしてくれたんだ。ちょっと膝をすりむいたけどな」

 

「ガゼルマンよ」

 

 突然サタンがガゼルマンに向けて言葉を発した。

 

「俺と手を組むのだ」

 

 ガゼルマンは一瞬聞き間違いかと、自分の耳を疑った。疑ったのはガゼルマンだけでなく、周りの超人や観客達もだ。

 

「聞き間違いかと思ったか? ならば確認としてもう一度言おう。俺はそこにいるミスターノアを倒すため、闘う事を決意した。そのために俺の身体となる超人の存在が必要なのだ! だから、ガゼルマン、俺と手を組むのだ!」

 

『なんと! サタンがガゼルマンに思わぬ提案をしてきた! 史上初の悪魔と正義のタッグ結成か――――――っ!!』

 

 誰もがサタンの発言に驚いた。

 ネプチューンマンがサタンに疑問をぶつけた。

 

「サタンよ、なぜガゼルマンを選んだのだ?」

 

「簡単な事だ。こいつの身体を借りるのが、ミスターノアを倒す可能性が一番高いと思ったからだ。ただし、身体を借りるのはこの一戦のみ。誰が好き好んで正義超人の身体等借りるものか」

 

「おいサタン!」

 

 このタイミングでガゼルマンが口を開いた。

 

「こっちもその提案乗ってやっても良いぜ! もちろんお前同様悪魔に身体貸すなんざ好き好んでやらねえけどな!」

 

「ガ、ガゼルマン!?」

 

 そばにいたジ・アダムスが驚いた。会場の人間達も同様の反応である。

 

「ゲギョゲギョ、話が早くて助かるぜ!」

 

「ガゼルマン!!」

 

 突如、ハラボテが二人の話を割ってやってきた。

 

「委員長緊急代理として、言わせて貰う! お前が良くても、わしは許さんぞ! 正義超人が悪魔と手を組むなんて言語道断! お前がその気なら正義超人を脱退して貰う!」

 

「なんだ、その程度の事か。いいぜ」

 

 ガゼルマンは軽い感じで言った。

 

「……ガゼルマン、本気なんだな?」

 

「委員長、そもそも、俺はこの闘いで酷い死に方をする姿しか想像できんのさ」

 

「酷い死に方じゃと?」

 

「相手のミスターノアは強敵だ、サタンが味方とは言え、この闘いで命を落とす可能性だってある。仮に闘いに勝っても、サタンに肉体を支配されたまま悪魔となってしまう可能性だってある。そうなったら、同じ正義超人の仲間に殺して貰うしか方法はないだろう」

 

「お、お前!?」

 

「俺の気が変わらん内に、許可してくれよ委員長」

 

「最後に確認をする? 本気なんだなガゼルマン」

 

「ああ!」

 

 ガゼルマンは堂々たる態度であった。

 

「お前がそうまで言うならわしはもう何も言わん。そしてな、タダのひねくれじじいとして独り言を言わせて貰う」

 

 そう言って、ハラボテはガゼルマンの肩に手を乗せた。

 

「生きて帰ってこい」

 

「ハラボテ……」

 

「さっ! お前達の試合の段取りをせねばな!」

 

 ハラボテはスタスタと立ち去っていった。代わりに、ジ・アダムスがやってきた。

 

「ガゼルマン!」

 

「アダムスか、なんだ?」

 

「こんな事を言うのはあれだが、お前と話す最後の機会になりそうだと思ってな」

 

 ジ・アダムスは不安な顔をしていた。

 

「俺がサタンと手を組もうっていうのに、相変わらずいいやつだな。思えばお前はヘラクレスファクトリーにいた頃から良い奴だった。そういや、あの時の礼もまだだったな」

 

「あの時?」

 

「入れ替え戦の時さ。事の発端は俺を含む四人組の不真面目な生活態度でさ、自業自得だったのによ、同じ一期生で応援してくれたのはお前だけだった。今更だけどよ、ありがとうな」

 

「当たり前じゃないか! 俺達は同じヘラクレスファクトリーで共に苦しみ励まし合ってきた一期生の仲じゃないか!」

 

「そんなお前だからこそ、俺の本音が言えそうだ」

 

 ガゼルマンの雰囲気が重々しくなった。

 

「俺は今とても怖い」

 

 ガゼルマンは冷や汗を流しながら語る。

 ジ・アダムスは何も言わずに黙ってガゼルマンの話を聞いている。

 

「サタンと組むとは言え、ミスターノアは強敵だ。過去に万太郎が倒してきた敵達よりも強いだろう。いつも万太郎を弱虫と馬鹿にしながら発破をかけて応援していたが、あいつ、いつもこんな恐怖と向かい合いながら闘ってきたんだって実感したぜ」

 

「ガゼルマン……」

 

「でもよ、仮にこの勝負勝って、万が一俺がサタンに身体を支配されてもよ、俺を殺してくれる仲間がいる。万太郎やケビンマスク達が俺を殺してくれるんだって思うと、この闘いに安心して望めるんだ」

 

「しかし……過去の闘いがどうなっているかは」

 

「大丈夫だ。まだ極秘事項だが、既に超人史に万太郎とケビンマスクのコンビが時間超人を倒して優勝しているという事実が刻み込まれている」

 

「ほ、本当かそれは!!」

 

 ジ・アダムスが喜ばしそうな顔をした。

 

「そんな顔するな。正直な奴だな。すぐに気付かれちまうだろ」

 

「おおっと」

 

 ガゼルマンはサタンの方を見た。

 

「じゃあ、そろそろ行かないとな……」

 

「ガゼルマン! 生きてかえって来いよ!」

 

「ああ! その時はお前が俺を殺してくれよ!」

 

 ガゼルマンはジ・アダムスと別れの挨拶をし、サタンの元へ向かった。

 

「くくく、お別れの挨拶はすんだか?」

 

「ああ、とっととおっぱじめようぜ!」

 

「ゲギョゲギョ、それではしばらくおとなしくしてろよ」

 

 辺りの雲行きが怪しくなり雷が降り始めた。周りに邪気が満ち、獣の鳴き声や、逃げ惑う様子がうかがえる。

 

ドガラッシャン

 

 雷がガゼルマンのもとに落ちた。辺りに砂埃が舞ってよく見えない状態となった。

 

『突如辺りの天候が悪くなり、ガゼルマンの元に雷が落ちた! ガゼルマン大丈夫か!!』

 

 砂埃が消え、やがてガゼルマンと思われるシルエットが見えた。

 ガゼルマンの姿は変わっていた。

 目は白目となり、暖かみのある茶色い毛の肌も黒くなり、身体に禍々しい模様も増えた。

 

「くくく、なるほどな。すこぶる良い気分だ」

 

 ジ・アダムスが何かに気付いた。

 

「あれは、ガゼルマンではない!」

 

「そうとも、こいつの魂はこのサタン様が乗っ取った!」

 

 サタンに支配されたガゼルマンは、ミスターノアの待つリングに降りた。




デビルガゼルマン誕生!?


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悪魔VS神!!の巻

世界の命運は悪魔(サタン)と鹿《ガゼルマン》に託された!!


 ミスターノアとサタンに支配されたガゼルマンがリング内でにらみ合った。

 

「サタン、貴様の悪行には多くの超人が迷惑をしていた。私が今日、お前の歴史を終わらせてやろう!」

 

「それはこっちの台詞だ。今こそ元神だった男に、死を与えてやろう!!」

 

カーン

 

『遂にミスターノアとサタンの一騎打ちが始まりました! この試合サタンはガゼルマンの身体を借りて試合をしております! ガゼルマンの身体能力がサタンによってどれ程上がったかが鍵を握ることでしょう! あっ! 先に仕掛けたのはミスターノアだ!』

 

手刀乱舞(ハンドソードダンス)!!」

 

『ミスターノア! 手刀をガゼルマンに向かって連打していく! しかし、ガゼルマン! スウェーを駆使して紙一重でよけていく!』

 

「ゲギョゲギョ、俺様の思った通り、ガゼルマンの動体視力なかなかのもんだぜ。なかなか素早い手刀だが、楽々と避けられる。さてと、そろそろ反撃と行こうか!」

 

バシィィン

 

『ガゼルマン! 鋭い右ローキックをミスターノアの右脚の内膝に命中させた!』

 

「ぐっ!」

 

 ミスターノアは思わぬ苦痛に顔の表情を変えた。

 

「ガゼルマンとやら、ムエタイをベースにしているからか、なかなかのローキックを放てるようだ。もっとも俺の魂が入った事で肉体が強化されている部分もあるがな」

 

バシィィン

 

『ガゼルマン! 今度は左ミドルキックをミスターノアのボディ右側部に決めた!』

 

ガシィ

 

『ミスターノア! ガゼルマンの左足を右手で掴んだ!』

 

「私を手刀だけの漢だと思うなよ」

 

ドコォォ

 

『ミスターノア! ガゼルマンの軸足である右脚を狙って右のローキック!』

 

ダン

 

『ガゼルマンバランスを崩して転倒!』

 

 実況席から唐突にタザハマさんが出てきた。

 

「ガゼルマンの右脚に全体重が載っていた状態でしたからね、この状態でローキックをされたら普通よりも効きますよこりゃあ」

 

『なるほど!』

 

 転倒したガゼルマンがミスターノアを睨み付けながら立ち上がった。

「このやろ~、サタン様を無様に転倒させるとは。命知らずのようだな!!」

 

「ところでサタンよ、貴様が私に敵対する理由はなんなのだ?」

 

「理由だと? そんなものはない。あえて言うなら貴様が気にくわないから叩き潰したいと思っているだけだ!!」

 

「それは建前だろう。本音は別にあるんじゃないか?」

 

「さぁて、なんのことか?」

 

「では言おう。お前の目的はずばり二階堂凛子だ! 貴様は彼女の力を欲している!」

 

「ばれていたか、しかし、俺の考えがはっきりしたからにはお前にも考えを言って貰う義理があるってもんだぜ」

 

「良いだろう。世界浄化者(ワールドクリーナー)の目的は、二階堂凛子をメンバーの一員として引き入れ、改めてノアの箱舟計画を実行する事だ! 彼女のマグネットパワーの管理者としての力を使い、この地球に大災害を起こしてな!」

 

「!?」

 

 試合を観戦していた人達に驚きの反応が見える。

 

「大体ご察しはついていたぜ。まあ俺様は貴様のようなトチ狂った目的ではないがな。俺様が望むのは強大な力だ! マグネットパワーを応用すれば、俺様自身、そして俺様の部下をも強化できる! 単に力を欲しているだけの純粋な理由というわけさ!」

 

「悪魔の癖に何が純粋だ!」

 

「その言葉そっくり呪いをおまけして返してやろう! 神の癖に狂った計画を実行しようとしよって!」

 

『サタンやミスターノアからとんでもない爆弾発言が飛び出した!! これはもはや人類の運命のかかった試合と言っても過言ではありません!!』

 

 リング上で二人が言い合いをしている中、観客達は不安の表情を浮かべていた。もちろん超人達、超人委員会も同様の反応である。

 ハラボテがつぶやいた。

 

「わしは、とんでもない試合を許可してしまった・・・・・・。この試合の結果如何によって、世界が滅びるかもしれん!」

 

「ハラボテ委員長! 新世紀超人(ニュージェネレーション)が帰ってきたタイミングで我々が二階堂凛子を先に捕まえれば問題ないはずです!」

 

 超人委員会のメンバーの一人がハラボテにアドバイスを送った。

 

「おおそうじゃった! ならば、ケビンマスク号が旅立った東京の河川敷へ人を配置するのじゃ!」

 

「ハラボテよ、そうもいかんのだな」

 

 突然ネプチューンマンがやってきた。

 

「ネ、ネプチューンマン! それはどういう事だ?」

 

「あのタイムマシンは予定外の人数が乗り込みすぎてな。その予定外の奴らが、二階堂凛子、ウォーズマン、そして俺だ。そのせいでタイムマシンが重量オーバーとなり、行きのタイムマシーンの到着地点が狂っちまったみたいだ。帰りは俺を除いた二人がまた乗ってくるはずだから、到着地点を東京の河川敷に設定しても、そこにいくとは限らないぜ」

 

「ほうほうそういう事か、しからば、その問題の発端である貴様はどう責任をとってくれるのじゃ? 良い案でもあるのか?」

 

「ハラボテよ、こんな時こそ正義超人お得意の友情じゃねえのか?」

 

「友情だと? 唐突にどういう事じゃ?」

 

「ヒャイヒャイ! そいつは名案だネプチューンマン!」

 

 ウォッシュアスがやってきた。

 

「師匠直々のインカの叡知で分かったぜ! ハラボテ委員長! 世界中の正義超人に呼びかけましょう! 万太郎達のタイムマシンの到着を見張るようにってね!」

 

「そうか! その手があったか! 超人委員会のネットワークを利用して、世界中のエリアを監視するのじゃ! 早速段取りじゃ――――――!」

 

 ハラボテが慌ただしそうに動き出した。その様子を見届けたウォッシュアスがネプチューンマンを見て言った。

 

「いいのかネプチューンマン? お前は一応サタン側の人間なのだろう? 我々に有益な事をして大丈夫なのか?」

 

「勘違いするなよ。俺には俺の考えがある。後々おめえらにとって不都合な考えかもしれんぞ。だがよ、今はミスターノアの好きにはさせん。それだけは確かだぜ」

 

「ネプチューンマン……」

 

「さてと、俺は怪我人だしな、ゆっくりと観戦の続きをすっか」

 

 そう言ってネプチューンマンが巨体を揺らして観客席へ戻った。

 一方リングにおいて、

 

ジャキィン

 

『あ――――――っ! ガゼルマンがアントラーフィストを両手にはめた! そしてそのままジャンプし、コーナーポストに乗った!!』

 

「貴様、何をする気だ?」

 

「この俺様がかつてバッファローマンに取り憑いていた時に、対戦相手が出した面白い技をパクろうと思ってな!」

 

バーン

 

『ガゼルマン! 空高くジャンプした!』

 

 試合を観戦していたバッファローマンが反応した。

 

「サタンのやつ! まさかウォーズマンが俺の角をへし折った技を!?」

 

「ちょうどこいつの超人強度もウォーズマンと同じ100万パワーだったな。これで400万パワーか」

 

『ガゼルマン! 最高点までジャンプしたところで、身体を思い切り錐揉み回転!! そのまま、リングに向かうぞ!!』

 

「3倍の回転では物足りん! このとち狂った神を殺すためにもっと回転させるのだ!!」

 

ギュイイイイイン

 

『サタンが光の矢となった! ものすごい速さでリングに向かう! 狙うはもちろんミスターノアだ!!』

 

「では、こちらも真っ向から受け止めてやろうか」

 

『ミスターノア逃げない! そのまま攻撃を受け止める気だ!!』

 

「魂の一刀《ソウルブレード》!!」

 

『ミスターノア! 右手に(オーラ)をこめて、光の矢となったガゼルマンを手刀で迎え撃った!!』

 

カキィィィィィィィンン

 

 互いの強力な技の衝突によって、強烈な風が生まれ、観客に襲いかかった。

 

「うわぁ――――――っ!」

 

「風が強すぎてリングが見れない!!」

 

 風がやんだ頃には、辺りに砂埃が立ち、すぐにはリングが見えない状態であった。




早すぎる決着!?


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暴れ鹿を捕らえよ!!の巻

殺ったか!?


 しばらくして、砂埃が消え、リングに立つ二人の姿が見えた。サタンが乗り移ったガゼルマンのアントラーフィストは砕け、ミスターノアの右手からも大量の出血が見られる。

 

「ゲギョゲギョ、なかなかの手刀じゃないか~、アントラーフィストが両方ともダメになったぞ~」

 

「そちらも大したもんだな。私の右手刀もお前の技でイカれてしまったようだ」

 

『どうやら互いの技のぶつかり合いにより、サタンのアントラーフィスト、ミスターノアの右手刀がダメになったようです! 両者痛み分けの結果となりました!』

 

「さ~て、お次はこんなのはどうだ!」

 

ブスッ

 

 ガゼルマンは素早く右手を動かし、ミスターノアの両目に指を刺した。

 

「ぐおっ!」

 

『サタン! ミスターノアの両目にサミングだ! ルール無用の超人レスリングとは言え、これはダーティなファイトスタイルです!』

 

「そうら! 悪魔殺法はこれからだぜ!」

 

グブシィ

 

「ぐおああ!!」

 

『なんと惨い事か! サタン、今度は自身の角を活かして、ミスターノアの両目を潰した!!』

 

 ミスターノアは自身の両目を角により貫かれて、苦しんでいる。

 

「お次はこれはどうかな!」

 

 サタンが乗り移ったガゼルマンは両の掌をミスターノアの両耳にはたきつけた。

 

バン

 

「ぐぬがぁ~~!!」

 

 ミスターノアの両の耳から出血が見られた。

 

『あーもうやめてくれーーーーー! サタンがミスターノアの両耳の鼓膜を破った!! なんと凄惨な光景か!!』

 

 その光景を見て、気の弱い観客達が倒れ始めた。

 

「辞めろサタン! 俺達はそんなファイトみたかねえ!!」

 

「そうだ! 代わりにネプチューンマンあたりに闘って貰えば良いんだ!!」

 

「ひっこめこの性悪鹿!!」

 

 どこからかリングに向かってビール瓶が飛んできた。ビール瓶はサタンが乗り移ったガゼルマンの頭部に飛んできたが、いとも簡単に受け止めた。

 

「くくく、こりゃあいい武器が飛んできた、なぁ!」

 

パキィン

 

『あ――――――っ! もう辞めてくれ―――――っ! 今度はビール瓶でミスターノアの頭をたたき割った!! ミスターノアの頭部からも出血だ!!』

 

「俺様は人様のやった悪行を真似ているだけだぜ? つまりこれは人間が残虐だって証拠よ! ゲギョゲギョゲギョ!」

 

ガシィ

 

 ミスターノアがガゼルマンの顔を右手で掴んだ。

 

「調子に乗るなよ」

 

ブオン 

 

『ミスターノア! ガゼルマンの顔面を片手で掴みそのまま一本背負いのように投げていく!!』

 

「破壊投!」

 

ダァン

 

「ゲギョガァ!」

 

『サタン! 強い勢いでリングに叩きつけられたぁ!』

 

「貴様のファイトで右手刀・視力・聴力を失った。だがな、お前を倒す力はまだまだ健在だ!!」

 

「ほほう、やるじゃないか。まあ超人の神ならそこまでやってもらわんとな!」

 

『サタン! 立ち上がってきました! まだまだこの試合流血が見られそうです!!』

 

シュタァン

 

 サタンが乗り移ったガゼルマンは助走をつけずに鋭い左の飛び膝蹴りをかました。その膝蹴りはミスターノアの顔面に向かってのものだ。

 

「こんなもの、他愛もない」

 

 ミスターノアは左手で膝蹴りを受け止めた。

 

ガギィン

 

「ぬぅ!?」

 

『なんだこの音は! まるで鉱物が肉体にぶつかったかのような音だ!!』

 

 サタンが乗り移ったガゼルマンの膝元がきらきらと光っている。

 

「どうだ? 俺様のダイヤモンドボディの感触は? その左手さぞ痛いだろうな~?」

 

「体の硬度まで変えられるとは、さすがはサタンだな」

 

「かつて俺様がアシュラマンにダイヤモンドの脚を与えたように、こいつの体の一部をダイヤモンドにしたのだ。首だけとなった悪魔将軍にボディを提供した際に、ダイヤモンドボディにする方法も習得したんでな」

 

ビシィィン

 

『サタン! ミスターノアに膝をつかまれながらも、モンゴリアンチョップをかました!』

 

「このままやられっぱなしなのも良い気持ちはしない。そろそろ本気で反撃をさせてもらおうか」

 

 ミスターノアはサタンが乗り移ったガゼルマンの膝に強い握力をかけた。

 

バキィィン

 

「ぐおっ!?」

 

『これはすごい! ミスターノア! サタンが作り出したダイヤの膝を握力で破壊した――――――っ!!』

 

「バゴア!!」

 

『サタン! 今度は左膝を破壊されながらも右の蹴りを繰り出す!』

 

「では、バランス良くそちらの膝も破壊してやろう」

 

 ミスターノアはサタンが乗り移ったガゼルマンの右の膝を左手でとらえた。

 

ガシッ バキィィン

 

「バゴラァ!?」

 

『ミスターノア! 更にサタンの膝を破壊した!!』

 

「おのれぇ!」

 

 サタンが乗り移ったガゼルマンは、その状態からミスターノアに頭突きをかました。

 

ガゴン

 

「ぐあっ」

 

 ミスターノアは両膝を掴んでいた両手を離した。サタンが乗り移ったガゼルマンは一度距離をとった。両膝は痛々しそうな状態である。

 

「お前が母体としているガゼルマンとやらは、ムエタイも得意で、スピードも速いと聞く。しかし、その膝ではそういった動きはもうできんだろう」

 

『ミスターノア! サタンを休ませまいと、左手刀を繰り出した!』

 

「膝が使えないのなら、打撃以外の攻撃手段を使えば良い!」

 

『サタン! ミスターノアの左腕にしがみつくように飛び、腕十字に決めた!』

 

「ただの腕十字では、私には効かぬぞ」

 

「ではただではない高価な腕十字をしよう」

 

ギリ ギリ ギリ ギリ

 

『サタン! ミスターノアの左腕を腕十字に決めながら、時計回りにひねりをくわえていく!』

 

「ぐぬぅ!」

 

「バゴァバゴァ! このままお前の腕を引きちぎってやろう!」

 

『あ――――――っ! このままではミスターノアの腕がねじ切れてしまうぞ!』

 

ピタ

 

『どうしたことだ! 腕をねじりあげるサタンの動きが急に止まったぞ!』

 

「ぬぅ~!!」

 

「その程度の力で私の腕をもぎとれると思っていたか!」

 

ガゴォン

 

『ミスターノア! 腕十字に決められながらも、左腕にしがみついたサタンを自らの左膝に叩き付けた!』

 

「ギョガァ!」

 

 サタンが乗り移ったガゼルマンは腕十字を解いてしまった。

 

ガシィ

 

「これで終わりと思うな」

 

『ミスターノア! 左手でサタンの首をつかみ、ネックハンキングにとらえた!』

 

「この程度で俺が根をあげると思うか?」

 

「思わん、だからこそこうする!」

 

『ミスターノア! サタンの首をつかんだ状態で後方に体を倒す!』

 

「ネックハンキングスープレックス!」

 

ガゴン

 

「ゴバァ!」

 

『ミスターノア! ネックハンキングとスープレックスの複合技でサタンの頭をリングに叩き付けた! サタンダウン!』

 

「サタンと聞いて期待したが、こんなものか」

 

「ゲギョギョギョ、流石は神だな。この俺をリングに叩き付けるとはな!」

 

『あ――――――っ! サタンが立ち上がった!』

 

「お前の手刀でアントラーフィストは破壊されたが、俺にとってあんなガラスの爪程度失ってもなんてことはない!」

 

ジャキキーン

 

『なんと! サタンの両の拳に新たなアントラーフィストが創造されていく!』

 

「私の手刀でそんなガラスの爪は容易に破壊できるぞ!」

 

『ミスターノア! 左手刀でサタンのアントラーフィストを破壊しに行った!!』

 

「このアントラーフィストがガラスの爪と思うなよ。」

 

『サタン! 空高く飛び上がった!』

 

 サタンは最高点まで達したところで、体を勢いよく前転させた。

 

「サバンナヒート!」

 

『サタン! ガゼルマンの得意技を繰り出した! ミスターノアをアントラーフィストで斬殺するつもりだ――――――っ!!』

 

「我が左手刀よ! 悪魔の爪を粉砕したまえ!」

 

『アントラーフィストと手刀の激突だ――――――っ!!』

 

グワァキィィィン

 

『あ――――――っ! サタンのアントラーフィスト、ミスターノアの手刀、共に威力は互角だ! 互いに全く壊れていません!』

 

「なるほど、そのアントラーフィストもダイヤモンド製か」

 

「ご名答。最も、貴様の手刀を破壊するつもりで技を出したんだがな。破壊できなくて残念だぜ」

 

「なぁに、私は右手刀よりも左手刀の方が自信があるんでね。むしろ貴様のアントラーフィストを破壊されなかった事を光栄に思うが良い」

 

「ゲギョゲギョ、では神に敬意を表して、サタン様の第二段階をお見せしようか!」

 




サタン様が本気(マジ)になる!!


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怨念の磁石力!!の巻

まだまだ血が足りないぜ!!


「第二段階だと、悪魔らしく嘘八百という訳か?」

 

「ゲギョギョ、嘘をつく事は否定せんがな、こいつは本物だぜ」

 

 サタンが乗り移ったガゼルマンは両手を空にかざした。

 

「シュガレフゴンブラ~、ゴボラビサッパ~」

 

『サタン! なにやら不思議な呪文を唱えているぞ!』

 

「面白い、貴様の第二段階とやら見てみようか」

 

 ミスターノアはサタンの様子を見る事にした。

 

「ご理解いただけてありがたいぜ……ほう、面白い魂を見つけた。まずこいつからいくか」

 

『あ――――――っ! 空から黒い球状の物体が降ってきた!! 物体の着地点はサタンだ!!』

 

シュゴオ

 

『黒い物体はサタンの体内に取り込まれた!! これでサタンにどのような変化が現れるのか――――――!!』

 

「ふむ、さまよえる魂をとりこんだか。さて、その魂が私に通用するものかな?」

 

 ミスターノアは冷静にサタンを観察していた。

 

「グロロロ、私に勝てると思うか?」

 

 サタンの声質が変わった。その声は重く、威厳のあるものとなった。

 

「そ、その声は!! まさかゼウス!?」

 

 観客席にいた伝説超人(レジェンド)達もその声を聞いて、驚いていた。まずキン肉マンが発言した。

 

「あ、あれは間違いない、かつて悪魔将軍と闘ったザ・マンの声じゃ!!」

 

 ネプチューンマンは懐疑的な態度をとった。

 

「ザ・マンの生死は俺も正直把握していない。だが、サタンといえどザ・マンの魂をとりこめるのか? 魂を取り込んだ事は本物かも知れないが、何か別の魂をとりこんだのかもしれない」

 

 ミスターノアはサタンの声を聞いて驚いていたが、しばらくして冷静さを取り戻した。

 

「声色は真似ても、やつの恐ろしいプレッシャーまで真似できんようだったな。からくりを明かしたらどうだサタン?」

 

 サタンはミスターノアをあざ笑うかのように笑っている。

 

「今私が取り込んだ魂はテルテルボーイという悪行超人の魂だ。こやつは万太郎に倒され、挙げ句の果て仲間のMAXマンにとどめを刺されたがために、怨念体としてこの世に残っていたみたいだ。こやつの特技を利用して、貴様が苦手だと思う相手の声を真似しているところだ」

 

「お前のその行為、逆効果だったかもしれんな。私が敬意を表する超人を侮辱する行為は、私の怒りのボルテージをあげるだけだ!」

 

『ミスターノア! 左手刀でサタンの顔面を狙った!』

 

 サタンはボクサーのように頭を下げて、手刀かわした。手刀がのびきったタイミングでサタンは鋭いアッパーをミスターノアの顎にくらわした。

 

バゴン

 

「ゴガァ!」

 

『サタン! ミスターノアの手刀をかわし、アッパーでおかえしだ! ミスターノア思わずぐらついた!』

 

 ミスターノアは体勢を立て直した。

 

「先程よりも技のスピード、威力があがっているな。それもお前がとりこんだ魂の効果か?」

 

「グロロロ、私は負の感情を力とする生命体だ。テルテルボーイの怨念が強かった分、私の力の上昇にもつながったというわけだ!」

 

「先程からザ・マンの声で喋りおって、やめんか――――――っ!!」

 

バシィィン バシィィン バシィィン

 

『ミスターノア! サタンにローキックを連打!』

 

「この程度のローキック、容易にカットできる」

 

『しかし、サタンもそれを見抜きローキックをカットする!』

 

「私の真の狙いは、貴様の首だ!」

 

ドスゥ

 

「ゴハァ!」

 

 ミスターノアは手刀でサタンが乗り移ったガゼルマンの首をついた。

 

『ミスターノア! サタンの首に地獄突きだ!』

 

「ごほぉ……喋るのがちいと辛いぜ……」

 

 サタンはダメージの影響があり、元の声となった。

 

「では、次なる怨念体を呼び寄せるか」

 

『またも、サタンの元に黒い球体が寄せられ、体内に入り込んだ!!』

 

「ゲギョギョギョ、そうか、貴様はミスターノアに対して酷く恨みがあったな」

 

「何が来ようと、真っ正面からねじ伏せてやる!」

 

 サタンが乗り移ったガゼルマンは左腕を上げた。その左腕にはエネルギーが発生している様子が見える。

 

「マグネットパワー!!」

 

「なに!?」

 

『あーーーーーーっ! リングの鉄柱が一本外れ、ミスターノアの後方から鉄柱が襲いかかってきた!」

 

 ミスターノアは咄嗟に気付き、鉄柱を避けた。

 

「この力を使える超人はごくわずかなはず。一体何やつか!」

 

「言っただろう、俺は怨念のある魂を呼び寄せているとな!」

 

ガシッ

 

『両者リング中央で組み合った!』

 

「この組み力、もしや!」

 

「そう、お前もご察しの通り、かつてネプチューンと呼ばれた神、超人界ではネプチューンキングと呼ばれた男の魂を呼び寄せた! 流石は元神様だな。ミスターノアと真っ向から渡り合える!」

 

『サタン! 今度はネプチューンキングの魂を呼び寄せた!!』

 

 観客席のネプチューンマンが残念そうな表情をした。

 

「キングよ、あなたは魂だけになってもなお墜ちるところまで墜ちてしまったのか……」

 

 ミスターノアは組み合った状態で腹ただしい様子を見せている。

 

「おのれ! かつての同士の魂を使うとはな、私をそんなに怒らせたいか!」

 

「元はと言えばお前の責任だぞミスターノア! お前がネプチューンキングを倒したがために、やつは神から完璧超人の一員に格下げされ、屈辱の人生を歩んできた! 俺にはネプチューンキングの怨念がよ~く分かるぜ~!」

 

「ぐぬぅ!」

 

「気の迷いか、ミスターノア! 肉体は強固でも、精神は軟弱な神様だな!」

 

『サタン! 組み合いの状態から、力尽くでミスターノアをリングに寝かせ、マウントポジションにとった! そのままパンチの連打だ!』

 

ガゴン ガゴン ガゴン ガゴン

 

「どうだ! お前の同士のパンチは痛かろうか~! こいつがお前を酷く憎んでいる分俺の力になるぜ~!!」

 

「ふんはぁっ!」

 

『ミスターノア! ブリッジで体を起こし、乗っかっていたサタンを宙にとばした! そのままミスターノアもサタンを追いかけるようにジャンプ!』

 

「我が左手刀で貴様の体を串刺しにしてやろうぞ!」

 

 サタンが乗り移ったガゼルマンは余裕の表情を見せている。

 

「それはどうかな? マグネットパワー!!」

 

 マグネットパワーのエネルギーはリングの鉄柱へと向かった。

 

『あ――――――っ! リングの鉄柱がマグネットパワーにより全て抜かれ、四本の鉄柱が一本の太い杭となった!!』

 

「遅かったな、鉄柱を私に当てるより、私の手刀に貫かれる方が早いようだ」

 

ガシッ

 

「ならば、そのなまくら刀に貫かれなければ良い」

 

『あ――――――っ! サタンがミスターノアの手刀を掴んだ!』

 

「ネプチューンキングとやら感謝するぞ、貴様がミスターノアへの手刀対策をしていたおかげで俺も容易に受け止められた」

 

「お、おのれぇ!」

 

 サタンが乗り移ったガゼルマンはミスターノアに上乗りする形で、両手をつかみ、心臓部に膝を当て、そのまま落下した。

 

「とどめだ! 心臓圧迫死(ハートプレッシャーデス)

 

 落下する両者の下から一本の杭となった鉄柱が迫る。ちょうどミスターノアを背中から突く形となった。

 

グシャゴォン

 

「ごはぁ!」

 

『あ――――――っ! ミスターノアの心臓部を前後から鉄柱とサタンの膝に圧迫された! ミスターノア、力なくリングに落下し、ダウン!!』

 

 カウントが開始されるも、サタンが乗り移ったガゼルマンはまだ攻撃の手を緩める気はない。

 

「さぁ~て、とどめはこれで刺そうか」

 

『サタン! またも魂を引き寄せる! 今度は6つの魂がサタンに吸い寄せられていく!』

 

 ミスターノアがダウンしながらも、何かに気付いたような反応をした。

 

「とどめは世界を浄化する者達の魂を使わせてもらおうか! 人間達への負の感情を基に、超人になった分、すこぶる力がみなぎってくるぞ!」

 

「同士達の魂を……よくも……!!」

 

「さぁ! 遺言は聞いといてやるぜぇ! ふぐっ!」

 

 突如サタンが乗り移ったガゼルマンが苦しむ表情を見せた。

 

「ぐごがぁ! ば、馬鹿な!?」

 




またも力を取り込みすぎ自爆か……


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闘志のバトンリレー!!の巻

サタン様大ピンチ!?


『突然サタンが苦しみ始めた! 一体どうした事だ!』

 

 ミスターノアも、この状況が飲み込めずにいる。

 

(ミスターノアよ)

 

 ミスターノアの頭に聞き覚えのある声が聞こえた。

 

(その声、ミスターUSBか?)

 

 ミスターノアの前にミスターUSBの亡霊が姿を現した。

 

(そうとも、私以外の5人もいるぞ)

 

(ガハハハ、らしくねえじゃねえか主さんよ!)

 

 笑い声とともに、ランバージャッカーの亡霊も現れた。

 

(ランバージャッカー!)

 

 更にティアーマン、デッドシグナル、ビリーマン、ライトマン、バンデットマンの亡霊も現れた。

 

(ウルルル、僕たちはもう闘う事はできないが、君の力となりたい)

 

(ティアーマン!)

 

(グガギゴ~、サタンを倒すというのであれば、力を貸してやるぜ!)

 

(デッドシグナル)

 

(まだ闘いははじまったばかりさ! 歪みねぇ勝利を期待するぜ!)

 

(ビリーマン!)

 

(ピカカカ、未来への道を正義の光で照らさなければな!)

 

(ライトマン!)

 

(俺達にとっちゃ、お前さんの命が一番の宝だ、絶対盗ませねえよ!)

 

(バンデットマン!)

 

 皆の声が一つになり、ミスターノアの耳に届いた。

 

(例え魂だけになっても、絆は不滅さ!)

 

 転生超人達の亡霊は姿を消した。

 一方、サタンの方も回復してきたようだった。

 

「おのれ~、ちっぽけな魂の存在で、このサタン様に苦痛を与えるとはな! だが、既に他の怨念の魂で俺様の力はお前を十分圧倒できるものとなっている!」

 

『サタン! 宙高く飛び、ドロップキック! しかし、ミスターノア! それを難なく受け止めた!』

 

「お前! 先程までグロッキーな状態だったのに」

 

「私一人の力では立ち上がる事はできなかった。私を立ち上がらせたのは、絆の力だ!!」

 

ブオオン ブオオン ブオオン

 

『ミスターノア! ジャイアントスイングで、サタンをリングロープに吹っ飛ばした! ロープの反動でサタンがかえってきたところで、ラリアットだ!』

 

ドガァ

 

「バゴァ! なんだ! 突然力が蘇りやがった!?」

 

「これぞ、悪魔を倒す正義の刃だ!」

 

『ミスターノア! サタンの首に左手刀を引っかけ、宙高く上昇! これはジェロニモを一撃で葬った裁きの刀(ジャスティスブレード)だ!!」』

 

 サタンは必死で技を逃れようとするが、ミスターノアの力が強すぎて逃れる事が出来ない。

 

(くそう、このままでは、俺の負けとなる……やむを得ん!)

 

『さあ、ミスターノアがサタンに裁きの刀を振り落とすぞ!』

 

世界浄化者(ワールドクリーナー)達の魂をこの手刀に集らせた!! 絆の刀(ボンドブレード)!」

 

ズガァァァァァン

 

『あまりの衝撃の強さに砂埃が舞った! 全くリングが見えない状態です!』

 

 少しずつ砂埃が晴れ、やがて倒れているガゼルマンの姿があった。ガゼルマンの体はサタンが乗り移る前の状態となり、体も怪我なく比較的綺麗な状態である。それとは別にミスターノアの技も何者かに対して決まっている状態だった。

 

『なんと! サタンが技から脱出しているぞ! いや、ミスターノアも技をかけている相手がいる! これはどういうことだ――――――っ!!』

 

 ハラボテが真っ先にリングの中がどうなっているか気付いた。

 

「よく見ろ! リングに倒れているのはまごう事なきガゼルマンじゃ! そして、ミスターノアに技をかけられている奴こそ!」

 

 砂埃が完全に消え、ミスターノアに技をかけられた相手の正体が分かった。黒く、禍々しき容貌のサタンであった。その体には傷が多くついている。

 

『なんと、ガゼルマンの本体は無事だったが、サタンがミスターノアの技の餌食となった――――――っ!!』

 

 ガゼルマンが目を覚まし、リングの中の状態に驚いていた。

 

「こ、これはどういうことだ……あっ、サタン! お前……まさか俺を助けたというのか!?」

 

「か、勘違いするなよガゼルマン……この試合は、ガゼルマンVSミスターノアである……悪魔はどんな手段を使ってでも勝たねばならぬ……ならば、ガゼルマンが最後までリングに立っている事が勝利には欠かせないと言う事だ……」

 

「サタン……俺にこの試合を託すというのか……」

 

 ガゼルマンはサタンの似合わぬ自己犠牲行為にどういう態度をとればよいか分からなかった。

 

「ガゼルマンよ……この試合負けるような事があれば……貴様を末代まで祟る! ガゼル一族に未来はないものと思え……ゴバァ!」

 

 サタンはそれだけ言って、力尽きた。やがてサタンは霧のように消滅していった。

 ミスターノアもサタンの自己犠牲行為に反応を見せた。

 

「サタンめ、似合わぬ事をしおって。ガゼルマンのダメージを全て貰って退場したか」

 

 その言葉を聞いてガゼルマンが気付いた。

 

「そ、そういえば俺の体に傷がほとんどない!」

 

 ミスターノアの前に転生超人達の亡霊がまた現れた。

 

(ミスターノアよ、申し訳ないが私はガゼルマンに対して、敵対行動はできない。力を貸すのはここまでだ)

 

(僕も同じだ。OKANの考えに賛同できるものがあった。君の不利になるような事はしないが、正義超人の不利になるような事はできない)

 

(グガギゴ~! あんなんでも一応先輩だからな~)

 

(俺達はお前さんを見守っているから、大事なもん奪われないように後は頑張ってくれや)

 

(ああ、お前達のおかげでサタンは退治できた。後は私だけで大丈夫だ)

 

 ミスターノアがそう言うと、転生超人達の亡霊は消えた。

 一方、観客席の人間の客が騒がしい。

 

「ねえ、サタンが負けちゃったけど、ミスターノアが勝ったら私達殺されるんじゃないの」

 

「あいつ確かノアの箱舟のように人間を滅ぼすとか言ってたし、まじでやべえぞ!」

 

「で、でもまだ闘える超人はいるでしょ!」

 

「いるっちゃいるけど、正義超人の一軍メンバーは皆過去の世界に行っている。今の二軍メンバーじゃ無理がある」

 

「あのミスターノアはボルトマン、ジェロニモ、そしてサタンまでも倒し、酷くダメージがある。ケビンマスクや万太郎がいまきても、相討ちが良いところだろうな」

 

 一方、超人委員会の方では

 

「ハラボテ委員長代理、まだ新世代超人(ニュージェネレーション)達が乗ったタイムマシンは帰ってきておりません」

 

「そうか……」

 

「ハラボテ委員長代理、どうしますかこの試合。もう、試合の決着はついたも同然の状態かと……」

 

 ハラボテは態度を崩さなかった。

 

「どうするもこうするもない! ガゼルマンの目をよく見ろ!」

 

 皆がガゼルマンを見た。ガゼルマンの眼に闘志の炎が燃えている。ミスターノアもその様子に気付いた。

 

「まさかとは思うが、まだ闘う気か? 私は酷く傷ついているが、お前を確実に殺す力はあるぞ!」

 

「何言ってやがる! サタンも言ってたろうが! この試合まだ終わっちゃいねえよ!」

 

「サタンに義理を感じたのか? それとも、サタンの呪いが怖いのか? もしくは、正義超人として人間をま守りたいのか?」

 

「どれでもねえよ! ここで逃げちまったら、またいつものガゼルマンになっちまうからさ!」

 

「貴様のプライドのためか。しかし、この場面で逃げても恥じる事はない。私に劣るとはいえ、貴様は平均以上の能力を持っている。だからこそミスターUSBが倒された。お前はもう休んで、過去から帰ってくるであろう万太郎やケビンマスクにバトンタッチした方が利口ではないのか?」

 

「それが一番気にくわねえんだよ!!!」

 

 ガゼルマンは怒り、大きな声をあげた。その様子に観客たちも驚きを隠せなかった。

 

「てめえ同様、ここにいるやつら皆、万太郎やケビンマスクが何とかしてくれるだろうと思っていやがる! 俺に誰も期待なんざしちゃあいねぇ! それが最高に気にいらねえんだ!!!」

 




ガゼルマンの闘いはこれからだ!!


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No.1の理由!!の巻

一番男の意地を見せろ!!


 ガゼルマンの突然の変化に観客が驚いた。対し、ミスターノアは冷静であった。

 

「ほう、プライドだけは私にも負けぬようだな。しかし、お前がそうなったのは自身に原因があったからではないのか?」

 

 この発言でガゼルマンは不機嫌そうな顔になった。

 

「ちぃっ! しゃくだがその通りだよ! 俺はヘラクレスファクトリーNo.1の男だった! 他の正義超人の奴らなんて格下さ! なんて自惚れちまった結果が今の自分さ……トレーニングなんか必要ないと堕落しちまい、力は落ちていった……。いつの間にか、後輩にも追い抜かれちまって、今の正義超人TOPはケビンマスク、俺より遙かに格下だった万太郎でさえ今では正義超人の主力だ……今の俺は戦力外の扱い……無様過ぎて笑えてくるぜ……」

 

「なるほど、確かにお前は落ちぶれた鹿男だ。だが貴様は自身の挫折と向かい合い努力した。現にミスターUSBが貴様に倒されている事からそれがよく分かる。何度も言うが、自身を必要以上に恥じるな」

 

「あんたが言うほど俺は立派な超人でもねえ。なんせ俺は皆が過去に旅立つ時にへたれちまって、現代に残る選択肢をとっちまったんだ。家族がいるやつだって過去へいったのに……俺は……」

 

「貴様の闘う理由がなんとなく分かった。自身のプライド、そして仲間への贖罪といったところか」

 

「正解さ!」

 

 そう言ってガゼルマンは高速でミスターノアに向かった。

 

『ガゼルマン! ミスターノアとの距離を縮め、勢いのついた右ストレートを放った!! しかし、ミスターノアいとも簡単に左手で受け止めた! そのままガゼルマンの右手を掴み、一本背負いのように投げ飛ばした!!」

 

ズダァン

 

「ぐわぁ!」

 

「やめておけ。貴様はサタンがのりうつっていた時よりもスピードもパワーも落ちている」

 

「へっ! 俺はお前の仲間を倒した、いわば敵討ちの相手だろ! 遠慮なくぶっ殺しに行けよ!」

 

『ガゼルマン! ミスターノアに組み付き、首相撲に持って行った! そのまま膝蹴りを連打!』

 

「悪い子だ! 悪い子だ! 悪い子だ!」

 

『ガゼルマン! 得意の悪い子だ! 戦法だ! しかし高速の膝蹴りがミスターノアのボディに突き刺さる!!』

 

 しかし、ミスターノアの表情が変わらない。

 

「では少し、本気を出してやろうか」

 

 ミスターノアも負けじと、ガゼルマンに膝蹴りを一撃放った。

 

ドゴォン

 

「ゴハァ!」

 

 そのすさまじい威力にガゼルマンの体が宙へ吹っ飛んだ。そのままガゼルマンはダウンした。ミスターノアはガゼルマンを見ながら言い放つ。

 

「これが平均以上の超人と、神との差だ」

 

 観客達は二人の実力差を目の当たりにし、ガゼルマンの敗北を予想した。このまま闘う超人がいなくなってしまうのではという絶望の気持ちで、全く言葉が出なくなっていた

 

「てめえら!! お通夜じゃねえんだぞ!!」

 

 観客席に向かって大きな怒鳴り声が聞こえてきた。その声の主はネプチューンマンであった。

 

「観客なら観客らしくうるさくしねえか!! 試合が盛り上がらねえんだよ!! ブーイングの一つぐらいかましやがれってんだ!!」

 

 大半の人がネプチューンマンの突然の怒号に驚いたが、キン肉マンが何かを悟り、顔に笑みを浮かべていた。

 

「ガゼルマン! ガゼルマン!」

 

 キン肉マンがガゼルマンに応援の声を飛ばした。近くにいたテリーマンやロビンマスクも応援を送った。

 

「ガゼルマン! ガゼルマン! ガゼルマン! ガゼルマン!」

 

 やがて、観客席にもガゼルマンコールが感染していった。ネプチューンマンがその様子を見て、軽い笑みを浮かべた。

 

『ご覧下さい! 先程まで静かだった会場から、けたたましいガゼルマンコールです! あっ! ガゼルマンも応援の声を聞いたからか、立ち上がってきました!!』

 

「不思議だな、観客の応援を聞くと自然と力が湧くぜ!」

 

「お前の根性は認めよう。しかし、サタンとの闘いで貴様のムエタイベースの戦法は見切った。お前にできるのはせいぜい私の体力を削るくらいだ」

 

「体力を削るか、じゃあとことん削ってやるよ!」

 

『ガゼルマン! やけになったか!? 無策でミスターノアに突っ込んだ!』

 

 ガゼルマンは両手を前に出す動きを見せた。

 

「タックルか? そんなものきってやろう」

 

バシィン

 

「な!?」

 

 ガゼルマンは両手をミスターノアの前で力強く拍手するように合わせた。ミスターノアが一瞬のスキを見せたところでガゼルマンは掌底を当てた。

 

「おら! おら! おら! おらぁ!」

 

バシィィン バシィィン バシィィン

 

『なんとガゼルマン! 相撲の猫だましを繰り出し、虚をついて張り手の連打だ!!』

 

 その動きにヘラクレスファクトリーで観戦中のウルフマンが反応した。

 

「ありゃあ、俺のルービックキューブ張り手じゃねえか!! ヘラクレスファクトリーでは少しだけ皆に相撲は教えたが、あんにゃろう、見事に俺の技を盗みやがったぜ!」

 

 ウルフマンは嬉しそうな顔をしている。

 

「俺様の張り手よりは威力は落ちるが、その分、スピードと手数が俺よりも勝っている。あいつなりに俺の技を昇華したってわけか!」

 

 ガゼルマンの高速の張り手がミスターノアの顔面に何発も当たっていた。

 

「お次はこれだ!」

 

 ガゼルマンが両の手をミスターノアの首に合わせた。そのままミスターノアの体を回転させようとする。

 

『ガゼルマン! 今度は合掌捻りだ! 今のガゼルマンはウルフマンを彷彿させる相撲ファイトであります!』

 

 しかし、ミスターノアの体が少し回転したところで止まった。

 

「初戦は猿まねだな。貴様は力士ではない、ゆえにこの技は使いこなせぬ!!」

 

『あ――――――っ! ミスターノアがガゼルマンの合掌捻りを止め、そして自らも合掌捻りでおかえしだ!!』

 

ギュルルルルルル

 

 ミスターノアの合掌捻りの回転の勢いがすさまじかった。勢いがある程度つき、ガゼルマンを地面に叩き付ける直前のタイミングであった。

 

「そう来ると思ったぜ!」

 

 ガゼルマンはミスターノアが地面に叩き付けるタイミングで、両腕を両手でつかみ、両脚をミスターノアのボディに絡めて、自分の後方に投げ飛ばした

 

ガガン

 

「ぐぅっ!」

 

 ミスターノアはその勢いで、リングのコーナーポストに背中からたたきつけられた。

 

『お――――――っ! ガゼルマン! ミスターノアの合掌捻りであわやダメかと思われましたが、巴投げでお返しだ! 思っていたよりも強いぞガゼルマン!』

 

「うるせぇぞ! 実況!」

 

 ガゼルマンは実況の一言の多さにきれた。

 さて、ガゼルマンのこの動きでヘラクレスファクトリー観戦中のジェシーメイビアがリアクションを見せた。

 

「オー! あれは私の得意な返し技のムーブデース! ミスターノアの勢いのついた合掌捻りを元にしていますからベリーストロングな技になりマース! 皆には返し技のコツをちょっとだけレクチャーしましたが、あの合掌捻り破りはお見事なものデース!」

 

 観客席のロビンマスクが、ガゼルマンの健闘ぶりに感心した。

 

「流石、ヘラクレスファクトリーNo.1の男だ」

 

 横にいたテリーマンがロビンマスクに話しかけた。

 

「そういえばロビン、第一期生がヘラクレスファクトリーにいた時は、カリキュラムの成績だけで見れば、セイウチンとガゼルマンは互角で優越をつけられなかったみたいだな」

 

「そうだ。互いに互角の成績であったが、一点違うところがあった。ガゼルマンは伝説超人(レジェンド)を誰よりもリスペクトしていたのだ」

 

 キン肉マンも会話に加わった。

 

「え~? あのプライドの高い高慢ちきなガゼルマンが~?」

 

「いや、奴はそれを皆に隠すために、あえてそういう態度をとっていたのだ。誰よりも、古くを学び、新しくを知るを実践した男が奴だった。私がガゼルマンをNo.1にした理由はそういう事なのだ!!」

 

 リング上のガゼルマンは好調な感じであった。

 

「これがヘラクレスファクトリーNo.1の男の強さだ――――――っ!!」

 




第三の主人公誕生!!


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解放された野生!!の巻

炸裂!! ハワイアン返し技殺法!!



 コーナーポストに叩き付けられ、倒れたミスターノアが起き上がってきた。

 

「やられたな。お前の技は効かないが、私の力を利用した技であれば幾分かダメージがある。良い師の元で学んだようだな」

 

 ガゼルマンがにやりと笑った。

 

「お褒めいただき光栄だぜ、お次はこれだ!」

 

 ガゼルマンがリングロープに背中から勢いよく突っ込み、強い反動をつけてミスターノアに突進する。

 

ドォォン

 

「フットボールタックル!」

 

 カナディアンマンがその動きに反応を見せた。

 

「あ、あの動きはまさか!?」

 

 ガゼルマンは間髪いれずにミスターノアを持ち上げた。

 

「リビルトカナディアンバックブリーカー!!」

 

ミシィ ミシィ ミシィ

 

 ミスターノアの体から軋む音が聞こえてくる。

 

「どうだ! この技の使い手が俺と同じ超人強度100万パワー! 猿まねじゃねえ事を教えてやるぜ!」

 

 ガゼルマンはさらにミスターノアの体を曲げていく。

 

「流石俺様の技だ! 超人の神相手にもよく効いているぜ!!」

 

 カナディアンマンは調子に乗った態度をとっている。

 

「なかなか良い技だな。しかし、この技は実戦で決まらなかったんだったな」

 

ググググ

 

 ミスターノアは自身の体に力を入れて、ガゼルマンの技のクラッチから外れようとしている。ガゼルマンも懸命に力を入れるが耐えきれそうにない。

 

「ぐぅ! な、なんてパワーだ!?」

 

「貴様の超人強度は100万パワーだったな、非凡なる値ではある。だが」

 

バッ

 

『ミスターノア! リビルトカナディアンバックブリーカーから力尽くで脱出した!!』

 

「私の超人強度は1億パワーだ!」

 

「なんだと!?」

 

「そろそろお遊びはおしまいといこうか!」

 

 ミスターノアは鋭く体を反時計周りに回転させて、左手刀をガゼルマンの顔面に当てた。

 

ゴガァァァン

 

『ミスターノア! 左手刀のバックハンドブローを繰り出した! ガゼルマンたまらずダウン!」

 

 ガゼルマンの顔面には手刀の跡が残っている。ガゼルマンの意識はあり、起き上がろうとするが起き上がれない。

 

「私が本気を出せばこんなもんだ。さて、忠告にもかかわらず、貴様は自らこの闘いにあがってきた。ならば、私の仲間を倒した責任として、貴様が死ぬまでこの闘いを続けようぞ!」

 

 ミスターノアがガゼルマンに向かって左手刀を大きく掲げた。

 

「待った――――――っ!!」

 

 突如リングに乱入者が現れた。その乱入者はジ・アダムスであった。これにはミスターノアも攻撃を中断した。

 

「お前はガゼルマンの仲間だったな。助太刀すればこいつの反則負けになるぞ!」

 

「そうだ! 私はガゼルマンを助けに乱入した!」

 

「その男は闘いに対してプライドが非常に高い。貴様が仲間とはいえ、助ければ酷く怒るだろう」

 

「そんなことは分かっている! 例え嫌われてでも、仲間を守りたいんだ! さあミスターノア! 私が相手だ!」

 

「しからば、貴様の漢気を尊重する事にしよう。そのかわり、お前がガゼルマンの代わりに死ぬ事になる!」

 

『ミスターノア! ジ・アダムスに左手刀を突き刺しにいく!』

 

「そうはいくか!」

 

 ジ・アダムスはミスターノアの左腕に関節を決め、首を絞める体勢をとった。

 

『ジ・アダムス! ミスターノアに三角締めだ!』

 

「これで終わりじゃない!」

 

 ジ・アダムスはその状態から、脚の力を利用してミスターノアの体を投げ飛ばしに行く。

 

ドガァ

 

『おお! ジ・アダムス! 三角締めを決めつつフランケンシュタイナーでミスターノアの体をリングにたたきつけた! なかなかの高等技術を見せてくれます!』

 

「ほう、貴様が生み出した技か。なかなかの複合技だ。殺すには惜しいな」

 

 ミスターノアは勢いよく左腕を払い、強引にジ・アダムスの体を引きはがした。体勢の崩れたジ・アダムスに間髪いれずに、組合いにいった。

 

ガシィ

 

「組み合っても、安心せぬ事だな」

 

 ミスターノアは組み合った体勢で、軽い物を持つかのようにジ・アダムスを持ち上げ、リングに叩き付ける。

 

ガガァァァァン

 

「ぐほぁ!」

 

 ジ・アダムスが血反吐を吐いた。

 

『ミスターノア! 圧倒的なパワーでジ・アダムスにブレーンバスターを決めた!!』

 

「ただのブレーンバスターでも私にとっては必殺技になる。私が神だからだ」

 

 ジ・アダムスは立ち上がってきたが、ダメージは大きい。

 

「もう少しやろうとは思っていたが……ここまでか……」

 

「話は変わるが、ガゼルマンはミスターUSBと闘った時の力を出していない。慈悲の力と呼ばれるもの、つまり人のためを思ってこそ発揮される力のようだ。貴様を殺せば、ガゼルマンはその力を出すと思うか?」

 

 ジ・アダムスは数秒ためて応えた。

 

「彼が私をどう思っているかは分からない……だが、彼が私との間に友情を持っている事を強く信じている! 私を殺せば、彼がきっとお前を倒してくれるはずだ!」

 

 ジ・アダムスは自身の死を決意した。

 

「ならば」

 

 ミスターノアが瞬時にジ・アダムスとの距離を詰め、左手刀でジ・アダムスを突き刺しにいった。

 

グサァ

 

 ミスターノアの左手刀が、ジ・アダムスの心臓ごと、体を貫いた。

 

「ガハァ!」

 

 ジ・アダムスは大量の血反吐を吐いた。もはやだれがみても即死の状態であった。

 

『もはやミスターノアを止められるのはケビンマスク、万太郎だけか!! 早く来てほしいと心から願っております!!』

 

 ミスターノアは自身の後ろにいる超人の気配に気づいた。

 

「ほう、ようやく起き上がってきたか」

 

 ガゼルマンが足下がおぼつかないながらも立ち上がり、ジ・アダムスの元へ駆け寄った。

 

「アダムス、お前、なんてことを!」

 

「私はガゼルマンという素晴らしい超人を助けられたのだ……悔いはない……」

 

「アダムス……」

 

「頼んだぞ……本当は誰よりも一番……強いんだろ……」

 

 そう言って、ジ・アダムスは事切れた。ガゼルマンはジ・アダムスの死を追悼する。

 

「ジ・アダムスに感謝するんだなガゼルマン、お前が死ぬ予定だったが、代わりにその男が引き受けたのだ」

 

 ガゼルマンは何も言わない。

 

「闘う気がなくなったか腰抜けの鹿め。もう貴様への興味は失せた。この世界へかえって来るであろうケビンマスク、万太郎の二人を倒して、改めて私の計画を実行するか」

 

「なさけねえ……」

 

 ガゼルマンの口から小さな言葉が出てきた。彼は今、自分が闘ったミスターUSBの言葉を思い出していた。

 

「俺はあんたの仲間のミスターUSBに、「仲間を大事にしろ」って言われたんだ……それなのによ……」

 

 ミスターノアは真面目な面持ちでガゼルマンの言葉を聞いている。

 

「俺がふがいないばっかしに、良い奴が死んじまってよ……」

 

「むっ!」

 

 ミスターノアはガゼルマンの異変に気付いた。ガゼルマンの目が白目となり、血の涙が出てきている。さらに、ガゼルマンの体の筋肉が発達し、血管が体のあちこちに浮き出てきた。

 

「グオワアアアアアアア!!!!!」

 

 ガゼルマンの雄叫びが強い風となり、砂埃の混じった強風が観客にふりかかった。

 

『どうしたことだ!! ガゼルマン突然の変化だ!! これまでにない姿を露わにした!!』

 

 ガゼルマンが今までの倍以上のスピードでミスターノアに襲いかかった。勢いをつけた右のハイキックを繰り出した。

 

ドガァァァァン

 

 あまりの威力に、ミスターノアの体がリング際まで吹っ飛ばされた。ミスターノアも予想以上の威力に驚いている。

 

「慈悲の力とやらを引き出そうと思ったが、思わぬ力が顔を出したようだな。ガゼルマンとの試合、まだまだ楽しめそうだ」

 

 ミスターノアはガゼルマンの強さを期待し楽しそうな顔をした。

 

 

 

 ガゼルマンが闘っているアララトから少し離れた場所に、突然異変が起きた。空間に歪みが生じ、あたりに強い風や電撃が発生する。やがて、宇宙船のような大きな構造物が現れた。

 その宇宙船にはソースせんべい用のソースで書かれた「ケビンマスク号」の文字が記されていた。




ついに主人公帰還!!


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帰ってきた戦士達!!の巻

草食動物⇒肉食動物


「グルゴオオオオオ!!」

 

 ガゼルマンが獰猛な雄叫びをあげ、ミスターノアへ突撃した。

 

ドガァァ バキィィン ガゴォォ

 

 ガゼルマンの素早く重いパンチがミスターノアの顔面を何度もとらえた。

 

「ぐふぁ~!」

 

『これは凄い! 今まで私も多くの超人の試合を見てきましたが、ガゼルマンの動きが速すぎて見えません! かろうじて分かるのは、ガゼルマンの攻撃がミスターノアへ大きなダメージを与えている事です!!』

 

バタァン

 

 ガゼルマンの猛攻に、ミスターノアがダウンした。

 

『ガゼルマン! サタンの魂が離れてから初めてのダウンを奪った!!』

 

 ミスターノアは身体へのダメージを我慢し、ゆっくりと立ち上がってくる。

 

「大したものだ。貴様は私をも越える力を引き出した。しかし、それは自身の体の限界を考えずに極限まで引き出したもの。いわば、貴様の寿命を大幅に縮める荒技だ」

 

ゴキ クキ ブチィ

 

 ガゼルマンの全身から異音が鳴り響く。ガゼルマン自身の息切れも荒い。

 

「フォガアアアアア!!!」

 

 今のガゼルマンには理性などなく、ただ目の前の敵を倒す事のみを優先した獣と化していた。ガゼルマンはサタンが残したダイヤモンド製のアントラーフィストを装着した。

 

「奴め、何をする気だ」

 

 ガゼルマンは背中から勢いよくリングロープに突撃し、リングロープの反動を利用して、ミスターノアに高速で迫った。

 

「シャガアアアアア!!!」

 

ザシュ

 

 ガゼルマンのアントラーフィストがミスターノアの体を切り裂いた。

「ぐおっ!」

 

 ガゼルマンは再度リングロープに突撃し、反動を利用して、ミスターノアの身体を切り裂いていく。

 

ザシュ ザシュ ザシュ ザシュ ザシュ

 

『これは凄い! ガゼルマンがリングロープを利用して、アントラーフィストの連続切り攻撃だ!! ミスターノア! サンドバッグのごとく、やられっぱなしだ!!』

 

 攻勢のガゼルマンだったが、唐突に苦しみ始めた。

 

「グファッ!!」

 

バタン

 

 ガゼルマンは血反吐を吐き、リングに倒れた。傷だらけのミスターノアはかろうじてたっている状態だった。

 

「私が力尽きる前に、お前の体が壊れてしまったようだな。とはいえ、私にこれほどのダメージを与えたのは称賛に値するぞ」 

 

 超人委員会もこの様子を見て、ゴングを鳴らそうとする。ガゼルマンは明らかに戦闘不能な状態だからだ。

 

ザ ザ ザ ザ ザ

 

 ハラボテはどこか遠くから聞こえてくる音に気付いた。

 

「なにやら、この会場に向かってくる大勢の足音が聞こえてきたな」

 

 会場の人間や超人達もその足音に気付いた。辺りを見回すと、会場へやってくる集団がいた。段々とその集団の姿がはっきりとなり、会場の人たちの顔が明るくなる。

 

「おい、あいつらはもしや!」

 

「帰ってきたんだ!」

 

 その集団は皆がよく知っている顔であり、過去の世界へ旅立った新世紀超人(ニュージェネレーション)達であった。

 

『あ――――――っと、過去の世界へ旅立った新世紀超人(ニュージェネレーション)達が現代に帰ってきた――――――っ!!』

 

 しかし、新世紀超人(ニュージェネレーション)達の顔は喜ばしい顔ではない。

 

「ガゼルマン!!」

 

 テリー・ザ・キッドに背負われている万太郎が、リングのガゼルマンの状況を見て叫んだ。

 

「お前達! 帰ってきたのじゃな!」

 

 ハラボテが新世代超人達のもとに駆け寄ってきた。まず話しかけたのはイケメン・マッスルであった。

 

「お父様、新世紀超人(ニュージェネレーション)達の力により、が時間超人打倒が達成されました。できれば早く新世紀超人(ニュージェネレーション)達のために祝賀パーティを開いてあげたいところですが、それどころではないようですね」

 

「ああ、察しが良くてありがたい」

 

「私が見たところ、かなり重要度の高い試合、いや、世界の命運を握る勝負が今行われているのですね!!」

 

 ネプチューンマンも彼らの元へやってきた。

 

「そうだ、お前達のいない間に攻めてきた転生超人と言う名前の一団だ」

 

 新世代超人達が唐突に現れた男の姿に驚いた。

 

「ネ、ネプチューンマン!? お前もいたのか!!」

 

 新世代超人達が改めて周りを見回すと、ボーン・コールド、ヒカルド、ボルトマンの姿もあり、さらには亡くなった超人の姿も多くある。

「現代に帰ってきて早々、お前が闘ってきた歴代の悪人どもがいるわ、死亡した超人も出ているわ、今闘っているガゼルマンが死にかけているわで、何が何だか分からないお前らの気持ちは分かる」

 

 ケビンマスクがここで会話に入った。

 

「教えてくれネプチューンマン、一体今何が起きているんだ」

 

「長ったらしく説明する暇はねえから率直にいうぞ。今ガゼルマンと闘っているミスターノアと呼ばれる男を倒さねば、この世界は滅ぶ」

 

「なんだって!!」

 

 新世代超人一行に衝撃が走った。

 

「世界が滅ぶとは人聞きが悪いなネプチューンマンよ」

 

 ミスターノアも会話に入ってきた。

 

「この世界には腐敗した人間が多すぎる。そいつらだけを消すだけの事だ。そして、善なる魂を持つ人間によって、新たにこの世界のやり直しをさせるだけのことだ。もちろん、その世界を作るために私も協力するつもりだ」

 

「ちょっと待ってよ」

 

 万太郎が会話に入る。

 

「君がやろうとしていることは物騒だけど、根っからの悪人でない事は分かった。でも、どうやって悪い人間と良い人間を区別するのさ?」

 

「良い質問だな。過去に私がノアの箱船を作り、多くの善なる生命体を救った際、私の眼力で良い生命体だけを選別したつもりだったが、やはり根っからの悪もいてな、結局は腐敗した人間が多く存在する世界となってしまった。私がこの世界をダメにしてしまった、その責任を強く感じている」

 

 テリー・ザ・キッドが何かを思い出したようだ。

 

「そういえばパパに聞いた事がある。ノアの箱舟は神話ではなく、本当にあった話だと、そしてノアの正体はジェロニモを超人にした超人の神であると!」

 

「さすがテリーマンの息子だな。良く教育されている。いかにも私は超人の神である。さて、話を戻すか。結論から言えば、そこにいる二階堂凛子に用があるのだ!」

 

 新世代超人一行の中にいた二階堂凛子が驚いた。

 

「わ、私に用?」

 

「そうだ、マグネットパワーを管理する力を持ったお前にしか頼めない仕事がある」

 

「ちょっと待ってよ! 私はただの女の子よ!」

 

「ただの女の子でない事は貴様自身がうすうす感していたのではないのか?」

 

「うっ」

 

 二階堂凛子は、自身が他の女の子に比べて身体能力が高かった事を、少しおかしいかなと思っていたのだ。さらには出生が不明で、彼女自身が本当に人間から生まれたのかもはっきり言えなかったのだ。

 

「マグネットパワーを本当に使いこなせれば、悪しき心を反発し、善良なる心を引き寄せる事が出来る。それを応用し、再度ノアの箱船に善良なる人間だけを選別するのだ!」

 

 新世代超人一行だけでなく、観客の人間や超人達が驚いた。

 

「そして、マグネットパワーの力を利用し、天災を起こし、ノアの箱舟へと入らなかった生命体を抹殺する!」

 

 二度目の衝撃が走った。ただ、そこにいる者は驚いて話を聞くだけであった。

 

「もちろん、その後は責任を持って、滅びた世界の復興に私も尽力しよう」

 

「ふざけた話ぬかしてんじゃねえぞ!!」

 

 スカーフェイスに肩を貸して貰っていたケビンマスクが激高する。

 

「確かにお利口ちゃんだらけの世の中なら、暮らしやすい世界さ! でもな、腐ったやつらに出会ったからこそ、分かった事もあった。自身が恥ずべき存在になっていた事、いかに自身が狭い世界にいたかをな!」

 

 ケビンマスクは自身が悪行超人として活動していた事、そして彼が幼い頃、ロビンマスクの家庭で毒の無い世界しか知らなかった事を思い出した。

 

「そしてな! 腐った奴らに敵としてぶつかったからこそ、心からわかり合えた! それが自身の成長にもつながった! この世から悪人が消えちまったら、俺はまたつまらねえ男に逆戻りするだろうな!!」




仮面の鬼公子復活!!


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集いし絆!!の巻

ところでガゼルマンは?


 ケビンマスクは己の経験からくる考えを話した。やがて、ミスターノアが口を開いた。

 

「ケビンマスクよ、その考えは貴様にしか合わない考えだ」

 

「何だと!」

 

「貴様の言う分かり合うための闘い、それは否定しない。むしろ肯定しよう」

 

「肯定するのに、なぜダメなんだ!」

 

「その考えは貴様のような強者だからこそ成り立つ考えだ。しかし、皆が強いわけではない。闘えば潰されるやつらが大半であろう。現に私の同士達の多くが、自らよりも強い存在に潰されてしまい、一度命を無くした人間、か弱き戦士達だったのだ……」

 

「くっ!」

 

 ケビンマスクは反論ができなくなり、言葉につまった。

 

「それなら答えは簡単だよ」

 

 その言葉を発したのは万太郎であった。

 

「弱き者を助けるために僕達正義超人がいる。だからミスターノア! 僕達を信用してくれないか! 僕を含め、新世代超人はまだまだ発展途上国だ。でも、日々成長している! いつしか、世界の人間を丸ごと守れる男にきっとなる!」

 

 ミスターノアがため息をついた。

 

「それなんだよ」

 

 万太郎はミスターノアの言葉の意味がよく分からなかった。

 

「万太郎よ、貴様の言うとおり、私は長い歴史、正義超人達の成長を見込み、あえて傍観してきたのだよ。悪なる魂を持つ超人や人間がいても放置してきた。きっとお前達自身で解決できる力がつくとな。しかし、それはお前達正義超人に多大な負担をかける事になった」

 

「負担だなんて思ってはいないよ!」

 

 万太郎はミスターノアの意見を強く否定する。

 

「万太郎よ、貴様のその傷は時間超人との激闘によるものだろう。さらには、悪行超人との闘いの日々が多く、怪我をしている時の方が多いのではないのか? それを負担と言わずして何と言うか?」

 

「う……」

 

 万太郎も言葉に詰まってしまった。

 

「そして、そこにおるセイウチンとやら」

 

「お、おらだか?」

 

 唐突に名前を呼ばれてセイウチンは驚いた。

 

「貴様の超人としてのポテンシャルは高い。真面目にトレーニングすれば、強豪にもなり得る可能性があるのだ。しかし貴様は生来の優しさで、自身の強さよりも人間達の平穏を重視している。トレーニングの時間を割いてまで、人間の生活を監視し、貴様の可能性が潰されているのだ。これもいわば、人間を守るがための負担なのだ」

 

「そ、それは……」

 

 セイウチンも言葉に詰まった。

 

「このように放置していた事は私の罪である。人間同様、お前達超人も、私は愛しているのだ。だからこそ、お前達の負担を減らす計画として悪しき人間の排除を考えたのだ!! もうメンバーは私とアヌビ・クレアの二人しかいない! しかし、それでも我が計画は止まれないのだ!!」

 

「お前の言っている事はただのわがままじゃねえか!!」

 

 どこからか大声が聞こえてきた。大声の聞こえた方向を見ると、ガゼルマンの姿があった。ミスターノアが感心した態度をとった。

 

「ほう、かろうじて立ち上がってきたか。しかし、先程のわがままとはどういう事だ?」

 

「一つ勘違いしないでもらいたいが、俺は皆がわがままで結構と思っているさ! むしろわがままでいた方が良い! 自分の人生、自分にわがままに生きた方が気持ちが良いってもんさ! あんたはあんたなりの正義を貫けば良い! 俺だって人類の平和よりも、自分の名誉のために闘っているんだ! でもな、わがままってのはな、皆に納得する形で示さねえといけねえんだ!!」

 

「そうだな。ならば私のわがままを貫くために、貴様にとどめを刺すとするか!」

 

「その答えを待っていたぜ!!」

 

 ミスターノアが再びリングに戻り、ガゼルマンも臨戦態勢をとる。しかし、ガゼルマンの体は誰が見てもこれ以上闘えないと判断できる状態であった。。

 

「ガゼルマン! それ以上やったら死んじゃうよ!」

 

 万太郎がガゼルマンを心配してきた。それに対し、ガゼルマンは笑みをうかべた。

 

「万太郎よ、これ以上やったら死ぬ事は先刻ご承知さ。なんせ自分の体なんだから、自分がよく分かっている」

 

「じゃあ尚更すぐにリングをおりなきゃだめじゃないか!」

 

「至ってしまったんだよ! 闘って死ぬ事よりも、目の前の奴を倒せない事の方がよっぽど嫌だっていう境地にな!!」

 

「ガゼルマン……」

 

 テリー・ザ・キッドが駆け寄ってきた。

 

「万太郎、ガゼルマンのあんな姿を見るのは初めてじゃないか。応援してやろうぜ」

 

 セイウチンもそばに駆け寄った。

 

「よ~し、久々にチームAHOの絆をみせるだよ」

 

 万太郎とテリー・ザ・キッドが思わぬ言葉が出てきて、呆気にとられた。少しして、テリー・ザ・キッドが笑い始めた。

 

「はははは! そうだなセイウチン! 俺達はアホ! アホだからこそ、奴の無茶な頑張りを応援しようじゃねえか!!」

 

 万太郎も決意を決めた顔となった。

 

「決めたよ、僕もガゼルマンが勝つ事を信じて応援する!」

 

「ありがてえぜ」

 

 ガゼルマンがそう言うと、身体に黄金の光が灯った。

 

ボワァ

 

 そんなガゼルマンに、ミスターノアが興味のある態度をとった。

 

「ほう、これが慈悲の力とやらか。かつて悪魔将軍がゼウス(ザ・マン)を破った時に使われた力、是非とも正面から受けて見せよう!」

 

ドドドドド

 

 ミスターノアがガゼルマンにものすごい勢いで突進し、組み合った。

ガシィィ

 

 ミスターノアは全力をこめて組み合っているが、ガゼルマンの体がびくともしない。予想以上の力に驚き、冷や汗をかく。

 

「な、なんだこの力は!?」

 

 ミスターノアはガゼルマンの後ろにいる何者かの存在に気付いた。

 

(私も微力ながら協力するぞガゼルマン!)

 

シュボォ

 

 ミスターノアに倒されたジ・アダムスが亡霊としてガゼルマンの背中を支えるように加勢していた。

 

「サンキューな、ジ・アダムス!」

 

シュボォ

 

 さらにもう一人亡霊が現れた。かつて、レックスキングに惨殺された新世代超人(ニュージェネレーション)一期生の一人、バーバリアンであった。

 

(久々だな生意気野郎め、しばらく見ねえ内に大層出世したじゃねえか! 俺様も力を貸してやるぜ!)

 

「では、俺の出世ぶりを見せてやるよ、バーバリアン!」

 

シュボォ

 

 また一人亡霊が出てきた。かつてボーン・コールドに惨殺されたジャイロに姿であった。

 

(俺達だけじゃあ、寂しいからな、応援をさらに呼んできてやったぜ!)

 

「応援? どういうことだジャイロ?」

 

 観客席から、ガゼルマンの耳に聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「ガゼルマン! ガゼルマン! ガゼルマン!」

 

 ゴージャスマン、アポロンマンといった、他の一期生達が駆けつけ応援していたのだ。

 

「こんだけ舞台を整えてもらったなら、勝たなきゃあいけねえなぁ!!」

 

 ガゼルマンに気合いが入った。

 

「俺にはもう俺自身のオリジナル技がねえ、だからここから先は、仲間を信じて闘っていくぜ!! これが最初で最後のガゼルマンの絆の技だ――――――っ!!」

 

ガガゴォン

 

 ガゼルマンは組み合った状態から、ミスターノアに思い切り、右膝蹴りをかました。

 

「ぐおぉっ!」

 

「これで終わりじゃねえ!」

 

 ガゼルマンは更に、右膝をミスターノアの顎に引っかけ、両手でミスターノアの頭部を持ち、バックドロップのように宙返りし、そのままミスターノアの頭部をリングにたたきつけた。。

 

「ガゼル・ブランディング!!」

 

ガガァァン

 

 ガゼルマンの体重ののった膝がミスターノアの頭部に大きなダメージを与えた。

 

「ぐおはぁ!」

 

 その技はテリーマンの必殺技、カーフ・ブランディングと類似したものであった。

 

「悪いなキッド! お前の技を俺流に使わせてもらったぜ!」

 

 テリー・ザ・キッドは喜ばしそうな顔をする。

 

「ガゼルマン! テリー家に代々伝わる必殺技を、グレートに昇華させやがって! 嬉しいぜこの野郎!」

 




馬と鹿から天才的な技が生まれた!!


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永遠のガゼルマン!!の巻

勝利の方程式は成立した!!


 ガゼルマンがミスターノアから離れ、リングのコーナートップへとジャンプした。リングロープの反動を利用しながら、背面からガゼルマンが宙返りするように飛んだ。

 

『ガゼルマン! ラ・ケブラーダだ! しかし、勢いがつきすぎて、ミスターノアの頭上の上を飛んでいくぞ!』

 

「友の応援で気合いが入ったようだが、入りすぎたようだな」

 

「こいつが自爆技だと思ったら大間違いだぜ!」

 

ガシィ

 

 ガゼルマンは落下しながらも、両の足をミスターノアの首にひっかけながら、両の手でミスターノアの脚をつかみ、そのまま自分とミスターノアごと体を反転させた。

 

「ガゼルの鮭狩り!!」

 

ガァン

 

 ミスターノアの頭がリングに叩き付けられた。この技はセイウチンがかつてバス・ザ・シャワーを倒した必殺技サーモンスプラッシュそっくりであった。セイウチンが喜ばしい顔をしている。

 

「おお! オラの技だ! ガゼルマンが使ってくれて嬉しいだよ!!」

 

「ぐうう!!」

 

 ミスターノアは、先程ガゼル・ブランディングで頭を叩き付けられていた分、今の攻撃で、より頭部の怪我が酷くなり、頭部から大量の出血が見られる。

 

「そろそろ貴様の快進撃を終わらせてやろう! 魂の手刀!!」

 

バシィィィン

 

 ミスターノアの強烈な手刀がガゼルマンに直撃した。ガゼルマンは手刀が当たる寸前に、両腕をクロスしてガードはしたが、あまりの威力に体が吹っ飛んだ。

 

「ガゼルマン! ガードはしましたが、自身の体が勢いよく吹っ飛んだ! このままリング外へ一直線か!」

 

 しかし、ガゼルマンは吹っ飛ばされながらもにやりと笑っている。

 

「万太郎よ、お前の技を使わせて貰うぜ!!」

 

ガシィ

 

 ガゼルマンは自身の体がリング外に出る寸前で、両腕でリングロープを掴んだ。リングロープはどんどんのび、やがて弓矢の如く、勢いよく元の形に戻る。

 

ギュウウウン

 

 ガゼルマンはリングロープの反動を利用して、勢いよく自身の体を発射させた。目標はミスターノアである。

 

「なにぃ!?」

 

 ミスターノアはガゼルマンの体を受け止めようとする。

 

「食らいやがれ! 逆襲の肉弾!!」

 

 ドゴォォ

 

 ガゼルマンの頭部がミスターノアの腹にささった。

 

「ぐほぁ!」

 

 その状態で両者の体がリングロープまで飛んでいった。

 

ミシィィ

 

 ガゼルマンの強烈な人間ロケットにより、ミスターノアの後頭部、腰、ふくらはぎにリングロープがくいこんだ。多少の違いはあるが、それは万太郎の必殺技マッスルミレニアムに類似していた。それを見た万太郎は驚いた。

 

「凄いよガゼルマン! こんな形で僕の技を使うなんて!」

 

「当たり前さ! 俺はNo.1の男なんだからな!」

 

 ガゼルマンが技を解くと、ミスターノアがダウンした。

 

『ガゼルマン怒濤の必殺技のオンパレード! ついにミスターノアがダウン! これで、人類の未来のかかった試合も終わりの時が来たか―――――っ!!』

 

 しかし、ミスターノアは立ち上ってきた。

 

「流石に、身体のダメージも限界の域まで来たようだ……次で出す技に、私は全てをかける!!」

 

 ミスターノアは目に止まらぬ速さでガゼルマンとの間合いを潰し、左手刀をガゼルマンの首に直撃させた。

 

バシィィィ

 

「がはぁっ!」

 

「最後はこれでいかせてもらうぞ!!」

 

ギューン

 

 それはジェロニモを倒した裁きの刀(ジャスティスブレード)の動きであった。

 

『ミスターノア! ガゼルマンの首に左手刀をひっかけたまま、空中へ上昇! そのままガゼルマンの首を狩るように、左手刀を落とし、リングへ落下していくぞ!!』

 

ゴオオオオ

 

 ガゼルマンの体に凄まじいGがかかった。脱出しようにも体が動かせない。ガゼルマンの諦めの考えが出た。

 

(すまねえなアダムス、もう少しでお前のかたきとれそうだったが、無理みたいだ……)

 

カァァァン

 

 ガゼルマンの脳裏に閃きが生じた。このピンチを脱する方法を考えついた。

 

「さあ、お前も帽子男の元へ送ってやるぞ」

 

「アダムス……お前の死は決して無駄にはしないぜ!」

 

カアアアア

 

 ガゼルマンの体により強い金色の発色が現れた。ガゼルマンは最後の力を振り絞り、ミスターノアの左腕に三角締めをかけた。

 

「悪あがきか? 最後まで試合を諦めない姿勢は評価してやるぞ」

 

「ぬおおおおお!!!」

 

 ガゼルマンの気合いの声が響く。そして両者の体がリングに勢いよく落ちた。

 

ズドォォォォン

 

 砂埃がまたも舞い、両者の姿がよく見えなくなった。

 

『さぁ勝ったのはミスターノアか! はたまたガゼルマンが逆転の技を決めたか!!』

 

 砂埃が消え始め、リングにおける両者の姿がはっきり現れた。ガゼルマンがミスターノアに三角締めを決めながら、フランケンシュタイナーを決めていたのだ。

 

「まさか……こんな結末になろうとはな……しかし、亡くなった友の技で決めるとは……さすがNo.1の男だ……」

 

 そう言って、ミスターノアは意識を失った。

 

カン カン カン カン

 

「わあああああああ!!!!」

 

 会場に高らかにゴングが鳴り、観客からけたたましい歓喜の声が鳴り響いた。ガゼルマンが右手をあげて、顔にはクールな笑いが見えた。

『ガゼルマンついにやりました!! 誰もこんな展開を予想していませんでした!! これはもはや歴史的勝利といっても過言ではないでしょう!! これで人類の未来は救われたのです!!』

 

バタン

 

 ガゼルマンが突然リングに倒れた。

 

「ガゼルマン!!」

 

ドドドド

 

 過去の世界から帰ってきた万太郎達がリングのガゼルマンにすぐに駆け寄った。万太郎が一番先にガゼルマンの元へ駆け寄り、表情を見た。

 

「ガゼルマン……」

 

 ガゼルマンの目が朦朧としていた。それはすぐに死にゆく者の目だと直感的に判断できた。万太郎の目には自然と涙が浮かんでいた。他の仲間もガゼルマンの状態と、万太郎の涙から全てを察した。

 

「泣くんじゃねえよ皆……」

 

 ガゼルマンが今にも命絶えそうな弱々しい声で喋った。

 

「ガゼルマン! もう無理して喋らなくても良い! 楽にあの世に逝ってくれよ……」

 

「俺は散々笑い者にされてきた男さ……だからよ、俺の死を笑ってくれよ……」

 

「笑えるかよ!」

 

 テリー・ザ・キッドが涙しながら怒りの声をあげる。

 

「今日のお前は今まで一番格好良かった! そんなてめえを笑う奴がいたら、俺がぶん殴ってやるよ!!」

 

「ありがとうな……キッド」

 

「ガゼルマン先輩!」

 

 今度はジェイドが涙しながら、自身の思いを話す。

 

「初めて闘ったときは正直情けない先輩だと思った! でも、今のあなたは本当に素晴らしいと思う! だからこそもう一度闘ってみたいんだ! 頼むから死なねえでくれよ!」

 

「俺もお前にリベンジしたいと思っていたさ……でもすまんな、お前の願い……叶えられそうにねえや」

 

 その答えにジェイドの涙がより一層あふれた。

 

「ガゼルマン、君が笑われて死にたいというのであれば、仲間としてその願いを叶えてあげたい」

 

 万太郎が涙を流しながらも、笑いの表情を作ろうとした。

 

「ガゼルマンのガの字はナイスガイ~♪」

 

 万太郎がカルビ丼音頭のリズムに合わせて、ガゼルマン音頭を歌い始めた。周りの仲間、そして会場の観客も一緒に歌い始めた。

 

「ガゼルマンのゼの字は絶好調~♪」

 

 ガゼルマンの表情に安らかな笑みが浮かんできた。

 

「ガゼルマンのルの字はルックス良い~♪」

 

 途中嗚咽で歌えなくなる者も出てきた。

 

「でもね~♪ 弱い♪」

 

 歌が終わる頃には皆が泣きながらも笑顔を作っていた。

 

「これで……あの世へ逝けるぜ……」

 

 ガゼルマンがそう言うと、目を閉じ、全身に力のない状態となった。呼吸音も心臓の音も聞こえない。彼は息絶えたのだ。

 

「うああああ――――――っ!!!」

 

 万太郎は大量の涙を流しながら叫んだ。もちろん万太郎だけでない。新世紀超人達や会場内の多くの観客や超人がガゼルマンの死に涙した。




誇り高き鹿男散る……


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マグネットパワーの神髄!!の巻

蘇ってくれガゼルマン!!


 ガゼルマンの死に、皆が泣き悲しんでいたところ、弱々しい声が聞こえてきた。

 

「うう……」

 

 それはミスターノアの声だった。かなりのダメージを受けた状態ではあったが、かろうじて生きていたのだ。

 

「ミスターノア!」

 

 アヌビ・クレアがミスターノアの元へ駆け寄った。

 

「もうお前は自分の思うままに生きろ……私の事など気にするな……」

 

「嫌よ! あなたはいつものように無茶な命令しなさいよ! あなたを守れというなら、ここにいる皆を敵に回してでも私は闘うわ!」

 

「ちょっといいかのう」

 

 二人の元にハラボテがやってきた。

 

「まずは、ミスターノア殿、見事な試合でありました。人類の存続がかかった試合とは言え、超人レスリング歴代屈指の名勝負と言っても過言ではない内容でした」

 

「ありがたい……」

 

 ミスターノアは弱々しく返事をした。

 

「超人委員会として、今回の騒動の責任をとってもらいたいと思いますが、ミスターノア殿の死以外の方法でお願いしたい」

 

「……私を生かすというのか?」

 

「今回はあなた様は敗北したものの、実質休みなしの三連戦でありました。超人委員会として、ミスターノア殿ほどの高い実力を持った方をこのまま死なすにはとても惜しいと思っております」

 

「何を言うか……私は命を賭して闘った……私のために亡くなった者もいるのに、私だけおめおめと生きていられるか……」

 

「それは違うよ!」

 

 会話に万太郎が入ってきた。

 

「確かに僕達正義超人は敵対する者達と命懸けで闘っている! だからといって、負けたら死ぬなんて事は強制しない! 死んじゃったら分かり合う事なんてできないじゃないか!」

 

「万太郎の言う通りだぜ」

 

 ケビンマスクもまた会話に入ってきた。

 

「あんたが亡くなった仲間のためにけじめをつけたいという意思があるなら、俺達正義超人の考えを分かり実行していていただきたい。分かり合うってことをな。それで納得してもらえねえか?」

 

 ミスターノアの元に転生超人達の亡霊が現れた。皆がミスターノアにむかって笑顔でうなづいた。

 

「なるほどな……分かり合うために生かす……私は人間同士の分かり合いが不可能と考えた結果、悪なる人間の抹殺を実行した……今一度人間を信じ、世を見守っていこうと思う……」

 

 万太郎、ケビンマスク、ミスターノアの三人が笑顔で握手をかわした。

 

「では、そろそろ私達なりのけじめをとらせて貰います」

 

 アヌビ・クレアが真剣な面持ちになって話し始めた。

 

「今回の闘いで、多くの超人が亡くなられました。通常死人が蘇るなんて事はあり得ない事ですが、彼らを蘇らせる方法があるかもしれません」

 

「えっ!?」

 

 その話を聞いた者達は、皆が驚いた。しかし、一名だけ驚かない者がいた。

 

「なるほどな、マグネットパワーを使うのか」

 

 ネプチューンマンはアヌビ・クレアの言いたい事を察した。

 

「そういえばお前、かつて完璧超人の秘術によって蘇ったんじゃったな」

 

 キン肉マンも会話に入ってきた。

 

「そうだ。その秘術というのがマグネットパワーを超人強度に変換することなんだ。かつて、悪魔将軍が破壊した超人墓場も同様の原理だった。俺達超人は亡くなっても超人強度を与えればまた蘇る事ができる。そして、マグネットパワーを操れる奴は一人だけいる」

 

 アヌビ・クレアが二階堂凛子を見た。

 

「二階堂凛子、私達転生超人側の後始末のために協力願えますか?」

 

「うん、いいけど、私上手くできるか分からないよ」

 

「ご心配なく、オメガの民の力を使えば容易な事です。私には隠された力を引き出す能力もあります」

 

「待った!」

 

 突然、万太郎がストップをかけた。

 

「凛子ちゃんがもしもマグネットパワーを扱えるようになった場合、これまでと同じ生活をできなくなるんじゃないかな?」

 

 一同が万太郎の話を聞いて、納得の態度をとる。

 

「確かに、普通の女の子が突然特異なる能力を持ったら、周りの人間からは異様の目で見られ、マスコミからも注目され、もはや平穏な日々を過ごせなくなる可能性が高い」

 

 キッドが二階堂凛子がマグネットパワーを扱えるようになった場合どうなるかの解説をした。

 

「俺達正義超人の仲間を蘇らせたい意思はあるが、かといって凛子フロイラインの平穏な日々を壊すような事はしたくない」

 

 ジェイドが葛藤する思いを口にした。

 

「私いいよ」

 

 凛子がそう答え、周りが驚いた。

 

「私の人生はね、ママや皆が私のために頑張ってくれたから、いっぱい幸せな思いが出来たと思うの。だから今度は私が皆の幸せのために頑張らないと!」

 

 凛子は笑顔でそう言った。

 

「分かりました。あなたの決意を尊重します」

 

 アヌビ・クレアが凛子の頭に右手を当てた。

 

バババババババ

 

 凛子とアヌビ・クレアの体が白く発光した。

 

「ま、まぶしい!」

 

 一同あまりのまぶしさに目をつぶった。やがて、発光が徐々に弱くなり、皆が目を開けられる状態となった。

 

「これで終わりました」

 

 アヌビ・クレアがそう言い、凛子が自身の状態を確認した。

 

「あれ? 何も変わったような感じがないけど」

 

「私には力を引き出す能力もありますが、それを奪い取る能力もあります。私とてあなたの平穏な日常を壊したくない。だから、あなたのマグネットパワーを管理する力をいただきました」

 

「え――――――っ!?」

 

 一同、アヌビ・クレアの発言に驚いた。

 

「じゃあ、私は?」

 

「いつも通りの二階堂凛子です。あなたは普通の人間となったのです」

 

 凛子の目から大粒の涙がぽろぽろとこぼれた。

 

「良かった……本当の事言うと、皆とこれまでのように暮らしたいという気持ちの方が強かったの……」

 

 一同が二階堂凛子がこれまでと同じように普通の人間として生活できると知り、安心した。

 

「では、早速、亡くなった者達を蘇らせましょう」

 

 アヌビ・クレアが両手を天にかざした。

 

シュイーン

 

 アヌビ・クレアの両手から大きな白い光の球が生まれた。その光は、細かく分かれて、亡くなった超人や傷ついた超人の元へと向かった。その光は時間超人との闘いの傷が癒えていない万太郎やケビンマスクの元にも向かった。

 

「これはすごい、さっきより大分体の状態が良くなった!」

 

「大した力だぜ」

 

ズズズズ

 

 ガゼルマンの体に分かれた白い光が入り込み、ガゼルマンの体が闘う前の綺麗な状態に戻っていく。

 

「ん? 俺は確か死んだはずじゃ?」

 

 ガゼルマンが生き返った。

 

「ガゼルマン!」

 

 正義超人達が喜ばしそうにガゼルマンの元へ駆け寄った。

 

「おい、俺は確か死んだんじゃ?」

 

 ガゼルマンは状況が読み込めずにいる。

 

「とりあえず、胴上げだ! バンザーイ!!」

 

 正義超人達がガゼルマンを胴上げをし始めた。

 

 

 さて、正義超人とは別に他でも動きがあった。ヒカルドとそのサポーター2人の元にネプチューンマンがやってきた。

 

「おい、ヒカルドよ」

 

「なんだ、ネプチューンマン、何か用か?」

 

「お前の考える正義超人の考えに俺も賛同できるところがある」

 

「何が言いたいんだ?」

 

「お前達を俺が鍛えてやるよ。立派にアウトローな正義超人にな」

 

「そいつはありがたい話だ。まだ俺達の仲間は少ないからな。しかしいいのか? 俺達相手だと、年寄りの死に水になるかもしれねえぜ」

 

「心配いらん。お前達が束になっても、負けねえだろうよ」

 

「やろ~、伝説超人だからといって敬意は持たねえぞ」

 

「ああ、俺は敬意を持たれるような超人じゃねえからな。そうだ、一言挨拶せんとな」

 

 ネプチューンマンが巨体を揺らして向かったのは万太郎の元だった。

 

「喜んでいるところ悪いが報告がある」

 

「うわっ! ネプチューンマン!」

 

「驚くのは早いぜ。俺はヒカルドを育て上げる事にした。アウトローな正義超人としてな」

 

「なに!」

 

 万太郎の顔つきが変わった。

 

「お前達の前にまた現れるときは敵としてだろうな。特に万太郎!」

 

 ネプチューンマンが万太郎の胸に左拳を突き、

 

「てめえは練習をサボりがちなところがあるからな、腕がなまらねえようにしとけよ。こっちもカオスの遺言守って指導していくからよ」

 

「ネプチューンマン……」

 

 ネプチューンマンはヒカルド達をつれてどこかへ去って行った。

 

 

 落ち着いていたボーン・コールドの元にハラボテをはじめとした超人委員会がやってきた。

 

「ボーン・コールド! 直ちにお前を超人牢獄に再送還する!」

 

 ボーン・コールドは様子を乱さず、たばこを吸っている。

 

「更にサタンの協力があったとはいえ、脱獄や違法的な報酬金に関して超人委員会として見逃せない! 厳正な処罰に値する!」

 

「まっ、当然だろうな」

 

 ボーン・コールドは開き直った態度をとった。

 

「生意気な態度をとりおって。だがな、今回の転生超人との闘い、お前の活躍もあり、人類の平和は守られた。だから特別に寛大な処置を施そう。脱獄や報酬金に関してはおとがめなしじゃ!」

 

「ほ~う、ハラボテにしては寛大な処置だな」

 

「ただし、報酬金のほとんどは返して貰うぞ」

 

「ちぃっ、金にがめついジジイだな」

 

「そう言うな、更に監視つきの条件で、定期的に牢獄から外出できる許可をしよう」

 

「監視つきか? 俺は監視を殺っちまうかもしれないぞ?」

 

 ボーン・コールドが不気味な顔をした。

 

「な~に、信用できる奴に頼んださ」

 

 ハラボテ達の元にキン骨マンがやってきた。

 

「子供の監視を頼んだぞ、キン骨マン」

 

「ああ、分かった」

 

 キン骨マンが軽くうなづいた。

 

「なるほど、親父つきか。それよりも直ちに超人牢獄に再送還と言ったが、一つ用を足してからでも良いか?」

 

 ハラボテがボーン・コールドが何を言いたいかを察した。

 

「ニルスの義手の事じゃろ? お前さんの手で返しに行くが良い」

 

「分かっているじゃねえか」

 

 キン骨マンとボーン・コールドはニルスの入院する病院へと向かった。

 

 

 アヌビ・クレアの力により、ミスターノアをはじめとした転生超人の一団も蘇る事となった。

 

「今後お前達はどうしていくんだ?」

 

 その質問をしたのはガゼルマンであった。

 

「私はお前達を信頼することにし、この世界を見守っていく事にした。しかし、我々もトレーニングを積み、今度会うときはお前達を越える力を身につけるであろう。今度は超人オリンピックあたりで出会うかもしれんな」

 

「ああ! もちろん正義超人達も今後もっと強くなっていくぜ!」

 

 ガゼルマンとミスターノアは強い握手を交わした。

 

 

 ところかわって超人KO病院、入院中のブロッケンJrのもとに1人の見舞客がやってきた。

 

「レーラァ!」

 

 見舞客はジェイドであった。ブロッケンJrは思わぬ客に驚いた。

 

「ジェイドか、久しぶりだな、来てくれてありがたいぜ。また見ない内に一段と逞しくなったようだ」

 

「いえ……俺は自分が思うような活躍が出来なかった……」

 

「そうか……なぁジェイド、また俺の弟子にならないか?」

 

「えっ!?」

 

 思ってもいなかった提案にジェイドが驚いた。

 

「俺ももうろくしててな、お前に授け忘れた事があったんだ。それを教えようと思う。どうだ、やってみるか?」

 

「はい! もちろん喜んで!」

 

 後にこの2人の師弟関係は復活したそうだ。

 さて、病院内には他にも患者がいる。

 

「ニルスよ、久しぶりじゃな」

 

 入院中のニルスの部屋にジージョマンがやってきた。

 

「ジージョマンか、お見舞いに来てくれたか」

 

「お前さんの転生超人との闘いの話聞いたぞ。なんでも大善戦したそうじゃないか。勝利こそ得られなかったが、昔のお前だったら相手を追い詰める事すらできんかった。成長したな」

 

「ありがとう、ジージョマン」

 

「邪魔するぜ」

 

 室内にボーン・コールドとキン骨マンが入室した。

 

「お前の義手だ。取り返してやったぜ」

 

「ありがとう、ボーン・コールド」

 

「礼を言われるほどの事はしちゃあいねえ。それじゃあ俺は超人牢獄へ戻るとするか」

 

 ボーン・コールドはすぐに室外へ出て行った。

 

「あいつはあれでもこういうことにはシャイじゃからな」

 

「くそ親父! 余計な喋ってんじゃねえぞ!」

 

「むひょひょひょ」

 

 室内は一気に賑やかになった。

 

 

 ところかわり、カオスの墓前に万太郎と凛子がいた。万太郎がカオスの墓を新しく作り直していた。

 

「タッグトーナメント直前の時期、僕がワガママなために仲間から見放され途方に暮れていた。そんな時にカオスに出会えて、本当に幸運に思った。辛い闘いだったけど、一日一日が楽しかった。僕は決して君を忘れないよ」

 

 万太郎の手により、カオスの墓は壊される前の綺麗な状態となった。

「しかし、君には負けるな。僕の凛子ちゃんが未だにべた惚れだし、死んでしまったら一生かなわないじゃないか」

 

「何言っているのよ万太郎!」

 

 二階堂凛子が少し不機嫌気味に言った。

 

「確かにカオスが死んでから数日間はカオスの事しか考えられなかったわよ。でも、決勝の万太郎の試合見たら、なんかふんぎりがついちゃったみたい」

 

「え? それってどういう事だい?」

 

「教えな~い♪」

 

 凛子が舌をぺろっと出して、小悪魔的な態度をとった

 

「え~、教えてよ~」

 

 万太郎が凛子の真意に気付くには、もっと先の事であった。




次回は最終回!?


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あとがき

こちらは、作品を全部読んでくれた方向けに書いています。
ネタバレ要素がありますので、作品をまだ全部見ていない方はすぐに戻れしてください。


 キン肉マン二世の小説を連載するにあたってどんな想いで書いたかを記していきます。

 

〇きっかけ

 ちょうどキン肉マンで正義の五本槍が出始めた頃です。ちょうどオリジナル小説を書き始めた時で、気分転換に二次創作を書こうと思いました。

 キン肉マン二世でも今のキン肉マンみたいに、主力の正義超人がいない状態で物語を展開すれば、出番のなかった超人を活躍させやすいのでは?と思い、今作品を連載しようと思いました。

 

〇コンセプト

 キン肉マンでは超人同士の争いを描く事が多いですが、人間世界の闇を描く事は少ないなと感じ、二次創作でもオリジナリティを出しやすい題材になるかと思いました。

 また、原作の雰囲気を大事にしたかったので、究極の超人タッグ編と同時間軸での展開とし、原作の続きという感じで読めるようにしました。そのために一度売った二世のコミックを買い直して、各超人の技や口癖なども再確認しました。

 さらに、テンポの良さを気にする読者も多いので、さくさくと物語を進めるようにしましたが、もう少し丁寧にやれんかったのかなと思う荒々しい描写がいくつかあったかなと思います(汗)むしろ、誰かの手で自分の作品を再構成してほしいとすら思っています。

 

〇各超人について

 

・ガゼルマン

 汚名返上のチャンスだというのに、へたれてしまい、過去のタッグトーナメントに参加しなかった鹿さんです。ガゼルマンの活躍は見てみたい読者が多いと思い、出してみましたが、活躍させすぎたかなと思います(笑)現代に残った新世代の超人で、ザ・マンクラスの強敵を倒せる可能性をほんの少しでも持っているキャラがガゼルマンしか浮かびませんでした。一応、ヘラクレスファクトリーNo.1になった男なので、ポテンシャルは高いはずだと思いました。作中、ガゼルマンに感情移入しすぎて涙腺崩壊しました。

 

・デストラクション

 新世代超人でバッファローマンのようなパワー枠になれたかもしれないキャラだったので、もったいないと思い、作品に出しました。ただ、噛ませ犬として出したので、もう少し活躍させたかったなという思いもあります。あと、角を鍛えたは完全にティーパックマンネタです(笑)

 

・OKAN

 Vジャンプ版からのゲスト出演です。OKANならこういう技やゆで理論を繰り出すだろうと思いながら、楽しんで書けました! フィオナあたりも出そうかなと考えましたが、良い展開が思い付かずお蔵入りになりました。

 

・チヂミマン

 ラーメンマン枠になれたかもしれない超人なので、出しました。韓国の超人なので、韓国に関する問題も絡めながら書きました。マイルド?に書きましたが、結構危ないネタなので炎上するのでは?と思いました。ちょうど国辱超人楓マンも頑張っていた頃で、国辱ネタも絡めながら、最後は作中1、2を争うカッコイイ死に方をした男になりました。

 

・クリオネマン

 懐かしのキャラ枠として出しました。結構引き出しがあるのでは?と思い、クリオネの生態を調べながらバトルを書いていました。クリオネマンVSデッドシグナルは個人的に一番の名勝負かなと思いました。

 

・ニルス

 究極タッグ編でバリアフリーマンが過去に行ったのに、ニルスだけ全く活躍しなかったじゃねえか! と思った人が多いと思い、ならばフォローとして現代を守るために残っていたという設定にしようと思い書きました。流石にそのまま出すと最弱枠になりかねないので、ジージョマンから関節技・寝技を鍛えてもらって単体でもそこそこ闘える設定にしました。

 

・ネプチューンマン

 究極タッグ編不評の理由の一つ、老害マンです。完璧始祖編である程度フォローはされていましたが、でも未来は老害になるしなと思う方が多かったのでは? ならば老害マン返上のために、ネプチューンマンを格好良く出して書こうと思いました。キン肉マンではよく、前作の敵が仲間として闘う展開も多いのでありではないかと思いました。

 

・ボーン・コールド

 「先の悪魔種子との闘い! なぜこの俺を助っ人に呼ばなかった!」と思った読者さん多かったでしょうし、自分も見たかったので出しました。ビジュアル的にオメガマンと血の繋がりがあるのでは?と予想する方もいたので、私なりに解釈をくわえましたが、めっちゃ強引にこじつけたなと思いました(汗)

 

・ヒカルド

 「先の悪魔種子との闘い(ry」

 ヒカルドを救済したい気持ちがありましたので、作中に出そうと思いました。ヒカルドを理解する者達、ヒカルドが正義超人の証としてのクソ力等、作中で一番フォローされた超人かなと思います。あと、作者が関節技に関してあまり詳しくないので、戦闘シーンを書くのに苦労しました(汗)

 

・ボルトマン

 無印で例えるならマンモスマンのような、ラスボスではないけど最強クラスの敵であり、再度見てみたい読者も多かったのではと思い出しました。ただ、あまり深いストーリーを書きにくく、早々に退場させてしまいました(汗)

 

・サタン様

 運命の四王子の助っ人をヒントにサタン様を出しました。現代に残った正義超人だけだと、強敵を倒すにはキツいだろうと思い、サタン様が強力な悪行超人達を連れてくるという話にしました。また、ラスボスも設定的に強くしすぎたので、サタン様とガゼルマンを融合させてかなり強力なキャラにすれば、対抗できそうだなと思いました。今作品はサタン様に助けられた場面がかなり多いです。

 

・二階堂凛子

 二階堂凛子を超人として見てもおかしくない描写が原作にかなりあったので、かなりすごい設定を持ったキャラになってしまいました。また、凛子の友人の二人が、険悪な仲だったのにいつの間にか仲良くしていたので、フォローの説明も加えました。

 

・キン骨マン

 今作でかなりフォローされたキャラです。かつてテリーマンの脚を奪った事を後悔し、義足・義手を作り上げる技術を長年鍛えてきたという設定にしました。というか、この設定をいまのキン肉マンでも見てみたいです。

 

・ブロッケンJr(レーラァ)

 今作では再生アシュラマンのように老獪な技術を持った若い超人にしました。強いレーラァを見てみたいという読者も多かったのでは? あと、適当な設定をつけて、転生超人側で参戦させてしまい、でもはなっから協力する気はなかったといった感じで闘ったりと、ちょっと迷走させてしまいました(汗)

 

・ジェロニモ

 本作で一番可哀想な扱いをしてしまいました。ラスボスとは一番深い関わりがあるキャラだったのですが、設定を上手くいかせませんでした。フォローとしてミスターノアにダメージを負わせる描写を書きましたが、深い描写を書ける自信が無く、早々と退場させました。本当にすまないと思ったキャラです。

 

・超人の神 ミスターノア

 原作に出たキャラで、ザ・マン並みに強そうなキャラいないかなと思って探し出したのがこいつです(笑)ジェロニモを超人にしたキャラですが、ファンさえ覚えてないかも(笑)とにかく強そうな設定を盛り込んだ結果、こいつどうやって倒せばいいんだと作者も悩みました(汗)

 

・ミスターUSB

 キン肉マン大好きなよゐこの濱口優が考えたキャラです。キン肉マン好きならとっつきそうなキャラを敵として出そうと思いました。このキャラで、昨今のブラック企業問題を掲げました。

 

・ランバージャッカー

 元ネタは若き頃のピーターアーツです。ハイキックが得意だったり、キックボクサースタイルのファイトスタイルなのもそうです。作者がK-1好きだから闘いを書きやすかったのと、ゆでたまごも実在のレスラーを題材にする事が多いので、このキャラはいけると思いました。よく格闘家が紛争に巻き込まれて亡くなる事も多く、問題提起しました。

 

・ティアーマン

 涙を武器にする超人で、ゆで先生が採用しそうな特殊ギミック型の超人です。このキャラの闘いはまさにゆで理論満載で書けて、楽しかったです。いまだに多いいじめ問題をこのキャラでとりあげました。

 

・ライトマン

 光をコンセプトにした超人です。光を武器にし、光の如く素早い強キャラとして書きました。ただ、ボルトマンの強さを引き立たせるために犠牲になってしまいました。名前の通り、右寄りな考えをします。韓国出身のチヂミマンのためのキャラともいえますね。

 

・デッドシグナル

 煽り運転や高齢者の交通事故の問題をとりあげようと思ったらこいつしかいませんでした。俗に言う悪墜ちというやつです。敵キャラで唯一、慈悲の力に目覚めた超人でもあります。あと、万太郎との闘いで突風や雷を操りましたが、直接当てた方が、いいんじゃないか?と思いました。

 

・ビリーマン

 ちょうどビリーへリントンが交通事故で亡くなったので、彼への追悼の意思をこめて出したキャラです。彼のおかげでデッドシグナルが慈悲の力を引き出せました。もちろんレスリングが得意です。

 

・バンデットマン

 盗賊をモチーフにしたキャラなら、かなり強くなるんじゃないかと思い書きました。あまり深く描写しませんでしたが、世界浄化者内では、汚れ仕事を一番引き受けている男です。

 

・アヌビ・クレア

 Vジャンプ版の二世の読者投稿キャラです。結構大物的な感じで書こうと思ったのですが、良い具合にアイディアが浮かばず、筆者としては中途半端に出してしまった感じのあるキャラになりました(汗)




〇最後に
 キン肉マン二世が黒歴史とか言われてますが、私自身もそう思うところがあります。だからこそ、今のゆでたまご先生に汚名返上としてこんな二世を書いて貰いたいなという気持ちを持ちながら書いていきました。そして、いつの日か二世も初代と変わらず名作だったと言われる日々が来ればなと思います。
 プロットだけですが、二世の時代に完璧超人始祖、オメガケンタウリが来たらどうなるかを考えてます。気が向いたら書くかも?


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