遊戯王GX 真精霊転生記 (ベーシス2号)
しおりを挟む

1 転生と出会い

約五年ぶりの復活


輪廻転生という単語をご存知だろうか?

ヒンドゥー教や仏教などの東洋の宗教に関係する単語で、死後あの世に還った霊魂が、この世に何度も生まれ変わってくることを言う。

小説や漫画の二次創作では異世界トリップなどと並んでメジャーなジャンルだが実際に信じている人は信心深い人を除いて日本では少ないだろう。

だがわたしはそンな人間でもないのに信じている。

と、言うよりも信じざるを得ないと言った方が正しい。

何故なら…わたしは今あの有名な童実野町にいるのだから。

 

 

今から四年前、わたしは死んだ。

別に子供をかばって車に轢かれた訳でも神様のミスで殺された訳でもない。

単に遊戯王のアニメの展開について考え事をしていて赤信号に気付かず渡ってしまいトラックに撥ね飛ばされたのだ。おそらく即死だったのだろう。痛みも感じず意識を失ったわたしが最後に考えていたのは「アニメ見れないなぁ」という阿保なことだった。

そして、全てが暗闇に包まれ、気がつけば知らない建物の中にいた。

周囲はざわざわと騒がしく、壁際にはショーケースが並んでいて、カードが飾られている。どうやら何処かのカードショップらしい。自分は死んだはずなのにどうしてこんな所にいるのかぼんやりと考えていると、小学生ぐらいの男の子達が数人わたしのいる方にドタバタと走ってきた。

通路の幅は一メートルもなく、男の子達は走る速度を落とそうともしない。

避けることもできずわたしは衝撃に備え、目を閉じ手で体を覆った。

しかし、何秒経っても衝撃が訪れない。不思議に思いそろそろと目を開けてみると確かにそこにいたはずの男の子達がいない。

周りを見渡すと男の子達は何事もなかったかのようにレジで店員さんと話している。

何が起きたのかわからなかったわたしはとりあえず男の子達に話しかけようとその中の一人の肩に手を置いた。

正確には手を置こうとした。

何故言い直したかというと手が肩をすり抜けてしまったからだ。

「え?あれ?何で!?」

混乱して一人で騒ぐわたし。

その声も聞こえないようで男の子達はこちらを見向きもしない。

「やっぱり死んで幽霊になっちゃったのか、確かに未練あるけどさ、その未練が彼氏いない歴=年齢とかじゃなくてアニメ見れなかった事とか阿呆すぎるよぅ」

と若干落ち込んでいるわたしだったが店の隅に置かれている鏡がふと目についた。

「どうせ映らないんだろうなぁ」

と思いながら覗きこんでみるが、予想に反してそこには一人の少女が映っていた。

しかし、それは見慣れたわたしの姿ではなく

「水霊使いエリア?」

霊使いと呼ばれるモンスターの内の一体の姿だった。

どうやら幽霊ではなく精霊になってしまったようです。

 

 

 

わたしが精霊になって早一ヶ月。カードショップにやってくるお客さんや店員の話やデュエルの様子、壁に貼ってあるチラシやポスター等からいくつかわかった事がある。

一つ目はわたしがいるのは遊戯王の世界だということである。まあわたしが水霊使いエリアの精霊になっている時点で薄々感じてはいたことではあるのだけれど。

二つ目はバトルシティ編から数年後でデュエルアカデミアがあるということ。

三つ目はこの世界にはまだシンクロやエクシーズ、そしてそれらに深く関係するカード。例えばチューナー等が存在しないということ。

四つ目はステータス重視で低級モンスターが軽視されていること。

五つ目は気合いを込めれば実体化できるということ。

 

話は変わるがどうやら精霊には自分が宿るカードがどの辺にあるのかなんとなくわかるらしい。

そして今わたしの目の前にあるのは一枚十円のストレージコーナー。

ここまで言えばわたしが言いたいことがわかるだろう。

そう、六つ目はわたしにとって最も重要なわたし自身が宿るカードがこのストレージコーナーに埋れているということなのである。

 

初めの一週間はそのうち誰かが買ってくれるだろう。と気楽に考えていたが時間が経つにつれてわたしの心はどんよりと沈んでいった。

というのも

「何で誰もストレージ漁らないのさぁ!?」

ステータス至上主義ここに極まれり。

しかもこの店の客は殆どが小学生の男の子ばかりで、使っているカードも

「暗黒のマッドドッグにデーモンの斧を装備してゴブリン突撃部隊に攻撃!これで僕の勝ちだ!」

「そうはいかない!トラップ発動!鎖付きブーメラン!暗黒のマッドドッグを守備表示にしてゴブリン突撃部隊に装備!」

「っ!?でも、次のターンでモンスターを召喚されたとしても僕のライフは2500もある!問題無い。ターンエンドだ!」

「いや、このターンがラストターンだ!オレはゴブリン突撃部隊を生け贄に偉大魔獣ガーゼットを生け贄召喚!そしてその効果で攻撃力は4600だ!」

「こ、攻撃力が4000を越えた!?でも暗黒のマッドドッグは守備表示。いくら攻撃力が高くてもダメージは受けない!(手札にはハンマーシュートとバードマンがある。次のターンで僕の勝ちだ!)」

「言った筈だぜこのターンで終わりだってな!オレは偉大魔獣ガーゼットにメテオストライクを装備!その効果で守備表示モンスターを攻撃した時攻撃力が守備力を越えていればその数値分のダメージを相手に与える!」

「な、なんだって!?」

「偉大魔獣ガーゼットで暗黒のマッドドッグを攻撃!」

「うわぁぁっ!?」

 

といった具合に攻撃力が高いモンスターばかりでステータスの低いカードが詰め込まれた十円ストレージには見向きもしない。

このままストレージの肥しになっちゃうのかなぁと悲嘆にくれるわたしであったが、ふと顔を上げてみるとわたしをジッと見つめる十五、六歳くらいの黒い長髪の少女がいて

「どうしたの?」

とわたしに話しかけてきた。

 

何かが動きだす音が聞こえた気がした。




あらすじにも書いてある通りの理由で新しいアカウントで復活しました。
そのまま前の作品を投稿するのも芸がないのでちょっとずつ変えて投稿していこうと思います。
復活詐欺にならないように頑張ります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2 入学試験

ちょこっと前アカウントのときと変わってるとこがあります。


「おい」

『そして、わたし達はデュエルアカデミアで何人もの強者を倒し、千尋にはエンプレスという二つ名が』

「その話はもういいから」

わたしと千尋が出会ってからの出来事をダイジェスト風に語っていると、携帯電話を耳に当てた少年に遮られた。

この少年の名前は津川荘太。

わたしが宿るカードを買った津川千尋の弟である。

『暇だから何か面白い話してくれって言ったのは荘太じゃんか』

遮られたことに文句を言うと、うんざりした声で

「確かに姉さん達の話は面白いんだけどさ、何度も同じ話を聞かされる身にもなれよ。この一ヶ月の間ほぼ毎日聞かされてるんだぞ」

と言ってくるので

『毎日じゃなくて二日に一回だよ』

訂正しておいた。

「…たいして変わらねえよ」

面白い話は何回してもいいと思うんだけどなぁ。

『それにしても電車遅いね』

「踏切が壊れたせいであと十分は待たなきゃいけないみたいだな」

あと十分かぁ…間に合うかな?確か実技試験は二時に受け付け開始でこの駅から降りる駅までが十分で駅から会場までが走って五分。今が一時半だから…そういえば会場の近くに川が流れてたよね…そうだ!

『ねえ』

「なんだ?」

『水属性モンスターを実体化させてそれに乗って川を移動すれば時間短縮できるよ!』

「バカか!そんなことしたら今日の夕刊の一面に載っちまうだろうが!」

『えー、いい案だと思ったのにー』

「だいたいモンスターを実体化させたらお前疲れるんだろ?」

『あれ、心配してくれるの?』

「誰が心配するか。後で何を要求されるかわからないからな」

人を悪女みたいに言うな。

 

 

 

そんなバカなやりとりを繰り広げている間に十分が過ぎていたらしく目的の電車がやって来た。

わたしと話すためのカモフラージュ用の携帯電話をしまった荘太に続いてわたしも電車に乗る。まあ乗ると言っても空中に浮いているのだけど。

発車の音と共にドアが閉まりかけた時

「その電車待ってくれ〜!」

そんな言葉と共に少年が一人飛び込んで来た。

膝に手を付いてゼーゼーと荒い息を吐く少年。あれ?何だか見覚えがあるような?

「駆け込み乗車は危ないぞ」

いつ見たのか思い出そうとするわたしを放って荘太が少年に注意する。少年は息を整えると

「わりーわりー、これに乗らないと試験に間に合わなくってさ」

と軽い調子で謝る。

………ん?試験?

「もしかして、デュエルアカデミアの入学試験か?」

わたしと同じことを考えたのか、荘太が少年に尋ねる。

「おう!実技試験のために遅くまでデッキを弄ってたら寝坊しちまってさ。……もしかしてお前も受験生か?」

「ああ。俺の名前は津川荘太。よろしく」

「俺の名前は遊城十代だ。こっちこそよろしくな」

ああなるほど、チートドローこと十代か。GXのアニメは見てないからヒーローを使うってこととドローがすごいってことしか知らないんだよね。

そんなことを考えるわたしを他所に意気投合した二人は親交を深めるのであった。

 

 

 

―――海馬ランド前、海馬ランド前~。網棚にお荷物などお忘れ物無いようお気を付け下さい―――

………毎回思うのだが、この駅名は何とかならなかったのだろうか?確かにわかりやすいけど。

わたしとは違いそんなことを気にする余裕が無い二人はドアが開いた途端に走り出した。

何故二人はこんなにも焦っているのかその理由は

「ちくしょう!何で一つ手前の駅で電車が止まるんだよ!?」

……これが答えである。現在二時二十五分。当然、受け付け開始時刻は過ぎている。

「荘太!受け付け終了時刻って何時だっけ!?」

「二時半っ!あと五分だ!」

「っ!?このままじゃ間に会わねえっ!」

「大丈夫ここから会場まで走って五分…っ!?いくら何でも藪を突っ切るな!!迷ったらどうすんだ!?って」

『行っちゃったね』

舌噛みそうだな〜と思いながら見ていたら突然十代が藪に突入して見えなくなった。

『どうするの?荘太も突入する?』

「何で目輝かしてんだよ。俺はやらないからな」

『えー、薄情者ー』

「何とでも言え。俺は自分の身が大事なんだ」

そんなやりとりをしていたがわたし達は十代も何だかんだで間に合うんだろうなと思っていた。

 

 

会話しながら走っていたのだが受け付け終了時刻の二分前に受け付けを済ませることができていた。

これは別に荘太の足が前より速くなったとかそういうのではなく

「お前俺に何か言うべきことがあるんじゃないか?」

『わたしのおかげで早めに行動できて良かったね!』

「ふざけんな」

わたしが荘太の携帯や腕時計の時間を早めていたのが原因だった。

『ごめんごめん。でも遅れるよりはいいじゃん』

「そうだけどさぁ…」

『そんなことより観客席で他の受験生のデュエルを観ようよ』

釈然としない顔の荘太と共に観客席に向かう。すると後ろから

「おーい!荘太ー!」

十代が駆けて来た。

「お前擦り傷だらけだぞ。というか、俺より後に来たってことは結局迷ったのか。あの状況で迷ったのに間に合うってどうなってんだ」

「いや、迷いはしなかったんだけどさ、ある人にぶつかっちゃってさ」

「お前その人にちゃんと謝ったのか?」

「当たり前だろっ。で、そしたらその人が俺にこのカードくれたんだよ。『ラッキーカードだ。こいつが君のところに行きたがっている』だってさ」

「へぇ、《ハネクリボー》か。良かったな」

話しながら観客席に向かうのだった。

 

 

 

 

 

「罠カード《破壊輪》発動!フィールド上の表側表示で存在するモンスター1体を破壊しお互いにその攻撃力分のダメージを受ける」

ブラッドヴォルスの首に装着された爆弾が爆発し、そのダメージで試験官のライフがゼロになる。

『……あの罠喰らいたくないなぁ』

アホ精霊が何か呟いているが無視する。

俺の前の席では十代と水色の髪の眼鏡君が話している。

「あの1番、見事なコンボだったな」

「そりゃそうさ。受験番号1番。つまり筆記試験第1位の三沢君だよ!?」

「ふーん、受験番号はそういう意味か」

「合格は筆記の成績とデュエルの内容で決められるんだ。デュエルには何とか勝ったけど受験番号119の僕じゃ受かるかどうか」

「心配すんな、運がよければ合格するさ。俺だって110番だ」

「俺は14番だけどな」

ボソッと呟くと

「ええっ!?荘太、お前頭よかったのか!?」

失礼な奴だな、おい。

「君達も受験生!?」

「ああ」

「でも10番代と100番代のデュエルはもう1組目と10組目でとっくに終わったよ!?」

「「え?」」

『あ~あ』

エリアの声にイラッとした。結局間に合ってないじゃんか。

 

 

 

その後十代と共に試験官に事情を説明して何とか試験を受けさせて貰えるようになった。のだが……

「……何だ、あの厚化粧の外人は」

『あー、クロノス先生だ。相変わらず白いねえ』

「ああなるほど。あれがブルー贔屓の」

『ブルー贔屓っていうか、レッドを見下してるんだよね。あれさえ無ければいい先生なんだけど』

「ふーん」

エリアとそんなやりとりをしていると十代が

「なあ荘太、あの先生が俺たちに相手するらしいんだけどさ、どっちが先にデュエルするのか決めろってさ」

ふむ。なら

「十代、先にやっていいぞ。」

「え、いいのか?」

「ああ、お前の顔に早くデュエルしたいって書いてあるからな」

「よっしゃぁっ!サンキュー荘太!行ってくるぜ!」

「頑張ってこいよ」

デュエル場に向かって駆けて行く十代に声援を送る。

そんな俺に向かってエリアが半目で一言

『程のいい偵察員にしたな……』

なんのことやら

 

 

 

 

荘太がせっかく譲ってくれたんだ勝たなきゃ男が廃るぜ!

って何だあの厚化粧!

「シニョール十代。私はクロノス・デ・メディチ。学園では実技担当最高責任者をやってマスーノ」

「光栄だなぁ、実技の責任者が対戦してくれるなんて。きっと俺それだけ期待されてるって事かなぁ、へへへ」

っと危ない危ない。厚化粧にきを取られて挨拶し損ねるとこだった。

「あきれてものもいえまシェーン」

「クロノス教諭が直々なんて!」

「あの十代って奴相当大物なのか!?」

おおっ!?俺観客にも注目されてる!?

「デュエルコート、オ~ンヌ」

何だあのコート!?

「すげ~かっこい~。先生、そのコートって俺も買えるの?」

「ノンノン、これはKC製のオーダーメイドナノーネ。あなたのような試験に遅れてくるようなドロップアウトボーイじゃ簡単には手に入れられマシェーン」

遅れてきたのは電車の遅延が原因だって説明したのになぁ…

「それデ~ワ、試験をハジメルーノ」

「「デュエル!!」」

「試験デュエルでは受験生に先攻後攻の選択権が与えラレル~ノ」

「じゃあ先攻は貰うぜ!ドロー!」

十代:ライフ4000、手札6。

この手札なら…まずは様子見だな。

「俺は《E・HEROフェザーマン》を守備表示で召喚。ターンエンド!」

場:フェザーマンDEF1000

手札5

クロノス「ヒーローデッキねぇ、さしずめどこカ~ノ、スモールタウン~ノ、ヒーローだったのデショウ~ネ。世界の広さを私が教えてアゲル~ノ」

「私のターン。ドロ~ニョ」

クロノス:ライフ4000、手札6。

「ワタ~シは魔法カード《押収》を発動ナノ~ネ」

げっ《押収》だって!?

「ライフを1000ポイント払い、相手の手札を確認してその中から一枚を墓地に捨てマス~ノ」

十代の手札:《死者蘇生》《E・HEROスパークマン》《はさみ撃ち》《戦士の生還》《増援》

「ふふん、ヤッパ~リ、ドロップアウトボーイのデッキデス~ノ」

くそっ俺のデッキにケチつけやがって。絶対見返してやる!

「《死者蘇生》を墓地に送ル~ノ。さらに《強引な番兵》を発動!その効果により今度はスパークマンをデッキに戻すノーネ」

くそっニ枚も手札が減らされちまった!

「そして場に2枚のカードを伏せ、魔法カード《大嵐》を手札から発動。その効果によりフィールド上の魔法・罠カードを全て破壊スル~ノ」

?自分のカードしか無いのに何でそんなカードを?……もしかしてプレイミスか?

「プレイミスではナイノ~ネ!」

うおっ!?あの先生エスパーか!?

「破壊された二枚の《黄金の邪神像》の効果発動ナノ~ネ。その効果により邪神トークンを二体守備表示で特殊召喚スル~ノ」

場:邪神トークン×2DEF1000

「あれは入試用のデッキじゃない! クロノス教諭自身の『暗黒の中世デッキ』」

暗黒の中世デッキ?

「あのデッキに勝てる受験生なんて」

「いないよな~」

そんなに強いのか。……おもしれえ!絶対勝ってやる!

「まだまだ続きマス~ノ。ワターシは二体の邪神トークンを生け贄に《古代の機械巨人》を攻撃表示で生け贄召喚!」

場:古代の機械巨人ATK3000

「こ、攻撃力3000だって!?」

「それだけではアリマセン~ノ。このモンスターが攻撃する時、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できないノ~ネ!さらに!このモンスターが守備モンスターを攻撃した場合攻撃力が守備力を上回っていればその数値分のダメージを相手ライフに与えマス~ノ」

「なんだって!?」

「《古代の機械巨人》で《E・HEROフェザーマン》を攻撃!『アルティメット・パウ~ンド!』」

「うわぁぁあぁあっ!?」

十代:ライフ4000→2000

手札3

「これでターンエンドデス~ノ」

クロノス:場《古代の機械巨人》

手札1

 

 

 

 

 

攻撃を喰らった十代は俯いたまま動かない。

「これはマズいな…」

『うん、でも十代君は大丈夫だよ』

「何でそんな根拠もないことを言えるんだ?」

『精霊としての勘!』

「勘かよ!?」

『それに、まだ十代君は諦めてない。強い絆で繋がったカードはデュエリストが諦めない限り力を貸してくれる!』

 

 

 

十代が動かないのを見たクロノス先生が嘲るように言う。

「早くも戦意喪失デス~ノ?これだからドロップアウトボーイは嫌いナノ~ネ」

その言葉に十代が顔を上げ、

「ふふふふ、へへへ、感動してるぜ。最高責任者の先生が本気でデュエルしてくれて!」

 

 

 

『ほらね』

「なんてお気楽な奴だ、どう考えても潰しに掛かってるだろあの先生」

 

 

 

 

 

ここから俺の本当の力が試される時だ。

「俺のターンドロー」

手札3→4

―――クリクリ~

ん? 誰だ?っと今はデュエルに集中だ。ドローしたのは…よしこれなら

「俺は《ハネクリボー》を守備表示で召喚!」

ハネクリボーDEF200

「更にカードを二枚伏せ、魔法カード《増援》を発動。デッキからレベル4以下の戦士族モンスター《E・HEROバブルマン》を手札に加える。バブルマンは手札がこのカード一枚だけの時手札から特殊召喚できる。守備表示で特殊召喚。ターンエンドだ!」

「ヴァラララララ、羽の生えた《クリボー》。珍しいカードを持ってマス~ネ。そして一ターンで二体のモンスターを出したことは褒めてアゲルーノ。しかしどちらも所詮は低級モンスターデショ。守備表示で出した所で《古代の機械巨人》の貫通効果を防ぐ事はできまセ~ンヌ。雑魚には雑魚モンスターがお似合いデス~ネ。私のターンデスネ。これで終わりデ~ス。《古代の機械巨人》《ハネクリボー》に『アルティメット・パ…」

「そうはいくか!メインフェイズ終了時に罠発動!《はさみ撃ち》!俺の場のバブルマンとハネクリボー、そして先生の場の古代の機械巨人を破壊する!」

バブルマンとハネクリボーが飛び上がり古代の機械巨人に突撃して行く。

「ノンノンまだまだ甘いノ~ネ!速攻魔法《禁じられた聖槍》発動ナノ~ネ!古代の機械巨人の攻撃力を600ポイント下げることにより、発動ターンこのカード以外の魔法・罠カードの効果を受けマセ~ンノ」

古代の機械巨人ATK3000→2400

そんな!?

「最後の悪あがき終わりデス~カ?それでは改めて、古代の機械巨人でダイレクトアタ~ック『アルティメット・パウ~ンド!』」

迫ってくる拳に思わず目を瞑る。

けど

「な、何でライフが減ってないノ~ネ!?」

まだ俺のライフは尽きちゃいないぜ!

「ハネクリボーのモンスター効果!このカードが破壊され墓地へ送られた時、それ以降の戦闘ダメージを全てゼロにする!」

サンキューハネクリボー。お前のおかげで助かったぜ。

「ヌグググ。小賢しい真似ヲ~……しかし、場は伏せカードが一枚手札もゼロ!ライフは初期ライフの半分の2000ポイント。サッサと諦めるのがよろしいデス~ノ。ターンエンド」

クロノス:ライフ3000場古代の機械巨人ATK2400→3000手札0

十代:ライフ2000場伏せ一枚手札ゼロ

「俺は俺のことを信じてくれるカード達のためにも、先にデュエルしたいっていう俺に譲ってくれたあいつのためにも俺は絶対に諦めない!!ドロー!!」

十代:手札ゼ0→1

………

「……へへへ、はははは」

「……絶望の余り笑うしかアリマセン~カ?」

「あははははははっ!!確かに笑うしかないぜ。でもな絶望のせいじゃない!」

「何を言っているノ~ネ。どう見ても私が有利、逆転は不可能ナノ~ネ」

「ピンチがあるからこそチャンスがあるんだ!!リバースカード《戦士の生還》!墓地の戦士族モンスターバブルマンを手札に加え、召喚!」

バブルマンDEF1200

「バブルマンが召喚された時場に他のカードが無ければデッキからカードを二枚ドローできる!」

十代:手札1→3

「さらに!《強欲な壺》発動!」

十代:手札2→4

来た!

「魔法カード《黙する死者》発動!墓地の通常モンスター、フェザーマンを守備表示で特殊召喚。魔法カード《Eエマージェンシーコール》発動!デッキからE・HEROと名のついたモンスター《E・HEROバーストレディ》を手札に加える」

「ふん、ペラペラのコミックス~のヒーローに何ができマ~ス? ノーマルモンスターに過ぎマ~セン」

「フェザーマンとバーストレディ。攻撃力の低いノーマルモンスターというのは仮の姿。その本当の姿を見て驚くな、先生。魔法カード《融合》発動。フェザーマンとバーストレディを融合。融合召喚、マイフェイバリットカード《E・HERO フレイム・ウィングマン》!!」

フレイム・ウイングマンATK2100

「特別講義してアゲ~ル。イイデスカ~、デュエルにくだらない御託はイラナ~イ。覚えておきなサ~イ。融合召喚した所デ~攻撃力は2100。私の《古代の機械巨人》には及びマセ~ンヌ」

「じゃあ、先生に教えてやるぜ。ヒーローにはヒーローに相応しい戦う舞台があるんだ。フィールド魔法《スカイスクレイパー》発動!」

フィールドが高層ビル街へと変わり、ビルの天辺にはフレイム・ウイングマンが立っていた。

「さぁ、舞台は整った。行け!フレイム・ウィングマン!古代の機械巨人に攻撃!」

「冗談デショ。フレイム・ウィングマンの攻撃力など古代の機械巨人の足元にも及ばなイ~ヌ」

すごい速さで古代の機械巨人に近づくフレイム・ウイングマン。

「ヒーローは必ず勝つ! スカイスクレイパーの効果は自分よりも攻撃力が高いモンスターとヒーローが戦う場合にその攻撃力を1000ポイントアップさせるフィールド魔法!」

フレイム・ウイングマンATK2100→3100

「オゥ、ヒーロー!」

「食らえ『スカイスクレイパー・シュート』!」

パワーアップしたフレイム・ウィングマンが、上空から古代の機械巨人に攻撃する。

その攻撃を受けた古代の機械巨人が爆発し、その残骸がクロノスの頭に当たる。

クロノス:ライフ3000→2900

「マンマミ~ヤ!我が古代の機械巨人が~!?」

「フレイム・ウィングマンの効果により破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを受けてもらうぜ、先生」

「ナニ~!?」

古代の機械巨人が崩れ、その下敷きとなるクロノス。

クロノス:ライフ2900→0

「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ、先生!」

 

 

 

 

 

クロノス先生に勝利した十代が観客に向けて手を振りながら戻って来る。

「ナイスファイト」

「おう!サンキュー。荘太も頑張れよ」

「ああ、任せとけ」

これはかっこ悪いとこは見せられないな。

 

 

 

「こうなったら次の受験生をコテンパンに伸して名誉返上シ~テ、汚名挽回スル~ノ」

……独り言聞こえてますよクロノス先生。しかも間違ってるし。まあ、別にいいけど。

「お願いします」

一応挨拶はちゃんとしないとな。

「それデ~ワ、試験をハジメルーノ」

「「デュエル!!」」

 

「先攻は俺が貰います。ドロー」

荘太:手札5→6

古代の機械に攻撃反応系の魔法罠は効かない…なら、これでいくか。

「俺はモンスターをセット。さらにカードを二枚セットしターンエンド」

荘太:場、モンスター一体(裏側守備表示)伏せカード二枚

「私のターンドロー。んっふっふっ全力で叩き潰してアゲル~ノ。手札からフィールド魔法《歯車街》発動ナノ~ネ」

舞台の床から歯車でできた街がせり上がって来る。

げ、これはマズいかも。

「さらに魔法カード《大嵐》!魔法・罠カードを全て破壊シマ~ス」

破壊される街と俺の伏せカード。

「あの先生また自分のカード破壊してるぜ!」

おい十代またプレイミスとでも思ってるのか?

「フフ~ン。伏せていたのは《奈落の落とし穴》と《収縮》デシタ~カ。結構危なかったケ~ド発動されなきゃノープロブレムナノ~ネ。そして破壊された《歯車街》の効果発動デス~ノ!このカードが破壊され墓地へ送られた時、デッキ、手札、墓地から《アンティーク・ギア》と名のついたモンスター一体を特殊召喚デキル~ノ!私はデッキから《古代の機械巨竜》を特殊召喚シマス~ノ!」

古代の機械巨竜ATK3000

出やがった…

「さらに二枚目の《歯車街》を発動スル~ノ」

っ!?

「そして永続魔法カード《古代の機械城》を発動。このカードが存在する限り《アンティーク・ギア》と名のついたモンスターの攻撃力は300ポイントアップスル~ノ。さらに歯車街の効果で《アンティーク・ギア》を召喚する時の生け贄は一体少なくナル~ノ。《古代の機械合成獣》を召喚シマス~ノ」

再び現れた歯車の街に機械の城と機械の獣が出現する。

古代の機械巨竜ATK3000→3300

古代の機械合成獣ATK2300→2600

ヤバイヤバイヤバイ!

「再び歯車街を破壊したいところデス~ガ無理ナノ~ネ」

た、助かった…

「先ずはそのコソコソ隠れてるモンスターを排除シマス~ノ。古代の機械合成獣でセットモンスターに攻撃『トライプレシャス・ファング』!」

セットされていたカードがひっくり返り緑色の宝石に彩られた亀が現れる。

ジェムタートルDEF2000

慌てて甲羅に引っ込む亀だが鋼鉄の牙でなす術もなく噛み砕かれる。

「ナカナカ高い守備力デス~ガ、古代の機械合成獣にとっては豆腐の様なモノデス~ノ」

だが、こいつの役目は果たされた!

「ジェムタートルのリバース効果発動!デッキから《ジェムナイト・フュージョン》を手札に加える」

荘太:手札3→4

「何をしようとムダナノ~ネ。古代の機械巨竜でダイレクトアタ~ック『ギアフォースブレス』!」

巨竜の口から放たれる閃光に思わず腕で顔を庇う。

荘太:ライフ4000→700

「ターンエンドデス~ノ」

クロノス:場、古代の機械巨竜ATK3300、古代の機械合成獣ATK2600、古代の機械城(カウンター1)、手札1

「俺のターンドロー」

手札4→5

まだ足りないか…

「魔法カード《手札抹殺》発動。お互いに手札を全て捨て、捨てた枚数分のカードをドローする」

よし、このターンで決着だ!

「ワザワザサーチしたカードを捨ててまで手札交換とはよほど手札が悪かったようデス~ネ」

「いや、最高の手札さ」

「ホワット?なら何で捨てたノ~ネ?」

「手札から墓地に送られて効果を発揮するカードもあるってことさ!手札から墓地に送られた《ジェムナイト・オブシディア》効果発動。このカードが墓地に送られた場合、墓地に存在するレベル4以下の通常モンスターを特殊召喚できる。《ジェムナイト・ルマリン》特殊召喚!」

黄色の鎧を纏った騎士が現れる。

ジェムナイト・ルマリンDEF1800

それを見た観客の一人が騒ぎだした。

「ジェムナイト!?何であんな奴が持ってるんだ!?」

え?そんなに珍しいのか?何となく隣でふよふよと浮いていたエリアを見てみる。

『あー。荘太は千尋に貰ったから知らないんだっけ、世界に数枚とかじゃないけどそこそこ珍しいカードだよ」

「何でそんなカード姉さんが持ってたんだ?」

『いくつか契約してるスポンサーの内に宝石店があってさ、そこの社員から貰ったんだって』

「それ、もしかして姉さんに使ってほしかったんじゃ…」

『千尋はそういうとこニブイよね』

まったくだ、見た目は良いのにニブイせいで俺が今までどれだけ苦労したことか。

「何をブツブツ言っているのデス~カ」

おっと今はこっちが大事だ。

「墓地に存在する《ジェムナイト・フュージョン》の効果発動!」

「墓地から魔法!?」

「墓地に存在する《ジェムナイト》と名のついたモンスター、オブシディアをゲームから除外することでこのカードを手札に加える。そしてそのまま発動。場のジェムナイト・ルマリンと手札のジェムナイト・サフィアを融合!雷帯びし秘石よ、堅牢なる蒼き意志よ一つとなりて新たな騎士へと生まれ変われ。融合召喚!希望の未来を掴み取れ!《ジェムナイト・パーズ》!」

ジェムナイト・パーズATK1800

ルマリンより濃い黄色の騎士が俺の場に降り立ち、両手の稲妻型のダガーを構える。

「ププププ~。何ナノ~ネその攻撃力は?貧弱にも程が有ル~ノ。融合した意味無いノ~ネ」

「ジェムナイトは攻撃力が低くても仲間との結束によって真の力を発揮する!《ジェムナイト・ガネット》を召喚!」

パーズの隣にオレンジ色の騎士が並び立つ。

ジェムナイト・ガネットATK1900

「ムダナノ~ネ。いくらモンスターを並べたところでどちらも古代の機械合成獣の攻撃力より低いノ~ネ!」

「言った筈だ!ジェムナイトは仲間との結束で力を発揮するって!魔法カード《受け継がれる力》発動。自分フィールド上のモンスター1体を墓地に送り、

選択したモンスター1体の攻撃力は、エンドフェイズまで墓地に送ったモンスターの攻撃力分アップする。ガネットを墓地に送り、パーズを選択する」

ガネットがオレンジ色の光へと変化し、パーズの体を包む。

ジェムナイト・パーズATK1800→3700

「いくら攻撃力を上げテ~モ、私のライフは無傷!削り切れないノ~ネ!」

「ジェムナイト・パーズで古代の機械合成獣に攻撃『ライトニング・ジェム・スラッシュ』!!」

パーズが機械の獣の懐に潜りダガーで切り裂く。

クロノス:ライフ4000→2900

そして、これからがパーズの本領発揮だ!

「ジェムナイト・パーズの効果発動。このカードが相手モンスターを戦闘で破壊し墓地へ送った時、相手ライフにそのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える。『トパーズ・ボルテックス』!」

パーズが地面に突き刺したダガーからクロノスに向かって電撃が奔る。

「アババババババババ!?」

クロノス:ライフ2900→600

「で、ですがこれで「まだ俺のバトルフェイズは終わっちゃいない!」!?」

「ジェムナイト・パーズは一度のバトルフェイズで二回攻撃できる!古代の機械巨竜に攻撃『ライトニング・ジェム・セカンドスラッシュ』!!」

『いっけぇ―――!!』

俺がパーズに指示を出すのと同時にエリアも叫ぶ。

はるか高く、天井近くまで飛び上がったパーズが落下の勢いそのままに巨竜の首を斬り落とす。

クロノス:ライフ600→200

「これで終わりだ!パーズの効果発動。『トパーズ・ボルテックス』!!」

「ペペロンチ~~ノ!?」

謎の奇声をあげて舞台から転げ落ちるクロノス先生。

クロノス:ライフ200→0

「しょ、勝者、受験番号14番!」

審判の宣言と共に会場内がたくさんの声や拍手に包まれた。

「おーい荘太ーー!すっげえかっこいいモンスターだったな!今度は俺とデュエルしようぜ!」

そんなことをのたまう十代に呆れていると、エリアが

『荘太、ナイスファイト。でもデッキが上手く回ったのはわたしの加護があったからだよね』

と、たいして無い胸を張る。

その態度に素直に感謝する気を失った俺は

「俺のデッキ構築力のおかげだろ」

と思っていることと正反対のことを言う。

だが俺は俺の言葉に頬を膨らませるエリアに心の中で少しだけ感謝するのだった。

 

 

 

 

新たな舞台で彼らの物語が始まる。

 

 




こっちに移すために修正してる途中重大なミス発見
十代の手札が途中で使っていないのに減ってる!どうしよう…
そうやクロノス先生《押収》使ってるしもう一枚ハンデスカード使わせたろ!
結果現禁止カード二連発という酷い事態に


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3 初日

エリアの台詞が「」の時は実体化中、『』の時は精霊状態です。



出発の前日に千尋に頼まれたから荘太について行こうとするわたしと、元々の持ち主は千尋なのだからついて来るなと言う荘太とで言い合いの末、デュエルで勝った方の言い分を通すという、この世界ならではの出来事があったが、わたしの勝ちで終わり、無事デュエルアカデミアに来ることができた。

 

そして入学式も終わり、各寮で行なわれる歓迎会まで時間があったので、案内も兼ねて荘太と一緒にアカデミア内を散歩していたのだが……

「ここはエリートである俺たちオベリスクブルーのみに使用が許されたデュエル場だ!お前達の様な雑魚が入って良い場所じゃない!」

オベリスクブルー生三人とオシリスレッド生二人がなにやら言い争っていた。ていうかあのレッド生十代じゃ…?あ、こっちに気付いた。

「おーい、荘太!」

荘太はため息を吐き、手を振る十代に近づくと

「で、お前は初日から何してんだ?」

「歓迎会まで時間があったから探検してたんだ」

探検て、子供か……

「で、ここに来たらこいつ等に文句つけられてさ」

……なるほど、中等部からのエリート組であるブルー生はプライドが高い上に他の寮を見下す人が多いからさっきみたいな台詞もポンポン吐くんだよね。十代がムカつくのも解るけど適当に流してすぐ離れたらいいのに。

そんなことを考えていると

「万丈目さん!こいつ等クロノス教諭を倒した110番と14番ですよ!」

万丈目?確か財界と政界に勢力を伸ばしてる家系だっけ。政治とかあんまり興味無いんだけど珍しい苗字だったから覚えてたんだよね。三兄弟だって話だからこいつは三男ってことか。

「ビークワイエット。諸君、はしゃぐな」

………口調とか髪型とか同学年の筈なのに偉そうな態度だとか、いろいろとツッコミ所が多すぎるけど人前で実体化するわけにもいかないので我慢する。

それにしてもあの髪毎日セットしているのだろうか…

万丈目三男の演説(彼自身と腰巾着二人の態度からそう言うしかない)は続く。

「彼等がクロノス教諭を倒したのはただの偶然。入学試験では目立っていたがすぐに他の有象無象に埋れていくだろう」

………うん、典型的なブルー生だ。ちょっと芝居がかってるけど。

「なんだと!偶然かどうか見せてやるぜ!」

「そうだな、デュエルすれば簡単に解る」

そう言ってデュエルディスクを構える二人。

十代はともかく荘太まで……眼鏡君はあわあわ言ってるだけで役に立ちそうにないしどうやって止めよう……

頭を抱えるわたしを他所に荘太達とブルー生の間で緊張感が高まっていく。

そしてそれが爆発する寸前

「あなた達、何してるの。もうすぐ寮で歓迎会が始まる時間よ」

通路から長身の女性が現れた。

途端に万丈目の態度が変わる。

「やあ天上院君。入学してまだ右も左もわからない彼等にデュエルの世界の厳しさを教えてあげていたのさ」

万丈目の態度からしてこの天上院という女性は荘太達と同じ一年生らしい……いろいろとデカ過ぎるだろ、ホントはいくつだ。

万丈目の台詞に対し天上院は険しい顔のまま言う。

「そんなことをしていたら歓迎会に間に合わなくなるわよ。ブルー一年生男子の首席が遅刻したらマズいんじゃない?」

「くっ、行くぞお前達!」

万丈目達は逃げるように去って行った。

その後、自己紹介をしてそれぞれの寮で行なわれる歓迎会に参加するために別れた。歓迎会では荘太がラーイエロー一年生首席の三沢大地と出会いデッキ構築理論について夢中になっていたが、わたしはテーブルの下でこっそり実体化して料理をパクついていたので詳しくは知らない。

 

 

「ふう、食った食った」

歓迎会も終わり、自身に与えられた部屋に入ると荘太はすぐにベッドに寝転んだ。

「食べてすぐ寝ると牛になるよ」

そんなことを言いつつ千尋に今日の出来事を報告するためにアカデミアから支給された生徒証も兼ねた荘太のPDA(情報端末の略)を借りてメールを送信し荘太に返す。

「変なこと送ってないよな?」

「そんなことしないって。荘太に友達が増えたこととか寮が綺麗だとかそんなことぐらいだよ」

それでも一応確かめる荘太。疑り深いなあ。

「確かに変なことは書いてないな」

そう言って閉じた途端にPDAがメールの着信を報せる。

「もう返事がきたのか?随分早いな」

だが送り主を見るとそこにあるのは知らないアドレス。

肝心の本文には、自身のベストカードを賭けたアンティデュエルを申し込むということと場所と時間が記されていた。おそらく万丈目達だろう。

答えは解っているが聞いてみる。

「行くの?」

「面倒臭いけど行かなかったら臆病者呼ばわりされそうだし、言われっぱなしは好きじゃないしな」

「じゃあ、わたしのデッキ使ってよ」

「昨日デュエルしただろう」

「そうだけどさ、やっぱりデュエルモンスターズの精霊としてはデュエルで使ってもらう方が嬉しいんだよね」

「わかった。貸し一つな」

「うん」

よし、交渉成立。約束の時間が楽しみだなぁ。

 

 

そして約束の時間。指定されたブルー生専用のデュエル場にいたのは万丈目達だけではなく、十代と彼の弟分だという丸藤翔もいた。

「荘太!お前も呼び出されたのか?」

「不本意ながらな…」

デュエルが楽しみでたまらないといった風な十代と違い荘太はお腹がいっぱいだからかとても眠そうである。うっかりミスしないといいけど。

万丈目の取り巻きが眠そうな荘太に対して挑発する。

「わざわざ負けに来るとは酔狂な奴らだな。今すぐ謝れば見逃してやるぞ」

それに対して荘太はと言うと

「え?悪い聞いてなかった。もう一度言ってくれないか?」

眠いからってそれは無いでしょ。

取り巻きは馬鹿にされたと思ったのか顔を真っ赤にして

「ふ、ふざけやがって!万丈目さん!この半端者は俺が相手をします!」

沸点低いなぁ。でもブルー生だしこんなもんかな。

「じゃあさっさとやろうぜ。俺は早く帰って寝たいんだ」

「すぐにその減らず口もたたけなくしてやる!」

それぞれデュエルディスクを構え

「「デュエル!」」

 

デュエルディスクの表示を確かめると先行は取り巻きらしい。

「俺のターン!ドロー!」

随分と力が入ってるなぁ。

取り巻き:手札5→6

「俺は魔法カード《古のルール》発動!その効果で手札のレベル5以上の通常モンスター《エレキテルドラゴン》を攻撃表示で特殊召喚!」

エレキテルドラゴンATK2500

なるほど、ブルー生だけあってそれなりの腕はあるのか。

「さらにカードを一枚伏せてターンエンド!」

取り巻き:場、エレキテルドラゴンATK2500、伏せ1、手札3

「俺のターン。ドロー」

荘太:手札5→6

「俺はモンスターをセット。カードを三枚伏せてターンエンド」

このデッキは準備が大事なんだよね。

荘太:場、モンスター(裏守備)1、伏せ3、手札2

「ははっ俺のドラゴンの前になす術も無いみたいだな!ドロー!」

取り巻き:手札3→4

「俺は《アレキサンドライドラゴン》を召喚!」

アレキサンドライドラゴンATK2000

また効果無しのドラゴン…[バニラドラゴン]?

「更に永続罠カード発動《竜の逆鱗》!その効果で俺のドラゴンは貫通効果を得る!エレキテルドラゴンでモンスターに攻撃!『エレキテル・ウィップ』!」

エレキテルドラゴンが電気を纏った尻尾を振るい攻撃してくる。しかし

「悪いがそれは通さない。罠カード《和睦の使者》発動。さらにチェーンして永続罠《DNA移植手術》発動。俺が宣言するのは水属性だ」

DNA移植手術の効果で取り巻きのドラゴン達が水属性を表す水色のオーラに包まれる。

「そして和睦の使者の効果によりこのターン俺が受ける全ての戦闘ダメージは無効となり俺のモンスターも戦闘では破壊されない」

「ちっ防がれたか」

ふふふ……そしてこれからがこのデッキの本領発揮だよ。

「さらにモンスターのリバース効果が発動する」

「何っ!?」

わたしの出番だーっ!!

「《水霊使いエリア》のモンスター効果発動!このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手フィールド上の水属性モンスター1体のコントロールを得る。俺はエレキテルドラゴンを選択。『アクア・テイム』!」

フィールドにソリッドヴィジョンとして現れたわたしはそのまま手にした杖をエレキテルドラゴンに向け、魔法を放つ。すると

「お、俺のドラゴンが!?」

わたしの隣にやって来た。

「くそっ俺は永続魔法《凡骨の意地》を発動してターンエンド!」

悪いけどそのカードの出番は無い!

「エンド前に速攻魔法《皆既日蝕の書》フィールド上の全てのモンスターは裏側守備表示になる」

危険は無いって解ってるけどいきなり真っ暗になるのはなんとかならないかな?

「そしてエンドフェイズ時に相手フィールド上の全ての裏側守備表示のモンスターは表側守備表示になり、そのモンスターの数だけお前はドローできる」

取り巻き:手札2→3

取り巻き:場、アレキサンドライドラゴンDEF100、竜の逆鱗、手札3

荘太:場、モンスター(裏守備)2、DNA移植手術、手札2

「俺のターン。ドロー」

荘太:手札2→3

「これで終わりだ。エレキテルドラゴンとエリアを反転召喚。そしてエリアの効果でアレキサンドライドラゴンのコントロールを得る。」

わたしは再びフィールドに現れ、今度はアレキサンドライドラゴンに向けて魔法を放ちこちら側に引き寄せる。

これで相手が手札誘発のカードを持ってなければわたし達の勝ちだね。

「アレキサンドライドラゴンを攻撃表示に変更し、三体のモンスターで直接攻撃。えっと『アクア・トライフォース』」

眠いからって攻撃名が適当過ぎるよ…まあ良いけど。

荘太の指示に従いわたしとその両隣のドラゴンが取り巻きに向かって攻撃する。

「うわぁああぁぁあああ!?」

取り巻き:ライフ4000→0

どうやらクリボーとかは持ってなかったようで、一気にライフが削り取られた取り巻きは敗けたのがショックだったのか呆然としていた。

それはさて置き十代の方はどうなったかなと思い振り向こうとすると

「警備員が来るわよ!アンティデュエルは校則で禁止されてるし最悪の場合退学になるかも!」

と明日香がまた通路から現れた。

「ちっ引き上げるぞ!」

「待て!まだ勝負はついてないぞ!」

逃げる万丈目達とそれを引き止めようとする十代。

「兄貴早く逃げないとマズいっス!」

「そうだぞ十代。レッドのお前は後がないんだぞ」

嫌がる十代を引っ張って急いでその場を離れるのであった。

 

 

校舎の外に出て上がった息を整える荘太達。

「こ、ここまで来れば大丈夫かしら」

「怖かったっス〜」

「あと、少し、ゼェ、遅ければ、ゲホッ、捕まってたな」

「まったく余計なことしやがって」

……十代君、他の皆は息を切らしてるのに何でそんなに元気なの?

「あのままだったら俺たち皆退学になってたかもしれないけどな」

「う……悪かったよ」

「だいたい、あのまま続けていても負けて大事なカードを取られていたんじゃない?」

「いや、俺の勝ちだったぜ」

そう言ってデッキトップのカードを捲って見せる十代。捲られたのは《死者蘇生》のカード。

「こいつでフレイム・ウイングマンを蘇生すれば俺の勝ちだったんだ」

その言葉に翔と明日香は感心したようだけれど……

E・HEROの融合体って確か……

同じことを思ったのか荘太が十代に言う。

「十代」

「何だ?荘太」

「フレイム・ウイングマンの効果の一番最初を良く見ろ」

「えっと、『このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない』あれ?」

「つまり、フレイム・ウイングマンを始めとするE・HEROの融合体は正規の召喚条件を満たしていても墓地から蘇生することはできないってことだ」

「じゃあ、俺の負けってことかぁ〜!?」

「あの時はクレイマン辺りを蘇生すれば暫く凌ぐこともできたかもしれないけど……キツかっただろうな」

「眠いくせに隣の十代のデュエルもちゃんと見てるなんて…あなた結構すごいのね」

「ただのクセだよ」

そうそう、昔から自分より周りの人を気にかけて、いろんなことに巻き込まれて。そういうとこが荘太の悪いとこでもあり、いいとこでもあるんだけど。

思い出にふけっていると

「くぅ~っ!あんな強い奴がいるなんて、やっぱデュエルアカデミアに来て良かったぜ!よしっ。早速デッキの調整だ!行くぞ翔!」

「待ってよ兄貴~!」

……ホント元気だねぇ。ていうか今から調整するの?倒れても知らないよ?

「じゃあ俺もそろそろ帰るよ。じゃあな明日香」

「おやすみなさい」

十代と翔を見送った後、明日香とも挨拶をして別れる。

帰ったら千尋に追加報告しなきゃ。

 

 

「……遊城十代。それに津川荘太。面白い人達ね……」

後ろから聞こえてきたそんな言葉が耳に残った。




感想・評価おまちしてます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

4 丸藤翔誘拐事件

細かいミスを修正して投稿


「やっぱり三沢もこのカードは抜いたほうがいいと思うか?」

 

「ああ、ジェムナイトは通常モンスターやデュアルモンスターが多く含まれているからな。それらのサポートカードを入れたほうがいいだろう」

 

現在、俺は自室で三沢とデュエルをしてはデッキ調整をするということを繰り返している。

初日の新入生歓迎会で意気投合した俺たちは夕食後毎日のようにデッキ調整をしていた。

因みにエリアは最初の頃は俺の後ろから自分の意見を言っていたが、飽きたのか最近は精霊術の修行をすると言って何処かに出かけている。

 

 

 

 

 

 

一時間ほどデッキ調整とデュエルを繰り返した頃、三沢が

 

「さて、俺はそろそろ自室に戻るよ」

 

と言うので机の上の時計を確認してみると、既に消灯時刻の三十分前だった。

 

「もうこんな時間か。明日の授業の予習もしなきゃいけないしちょうどいいか」

 

「ああ、此処がデュエルアカデミアとは言え基本五教科ぐらいはしっかり身につけておかないとな」

 

「じゃあまた明日」

 

「ああ、また明日」

 

さて、俺も明日の予習したら寝るか。

 

ドンドンドンッ

 

「大変だ荘太っ!!翔が拐われたっ!!」

 

………予習は諦めるか。

 

 

 

 

 

 

詳しい話を聞いた後、俺は十代と一緒にボートを漕いで女子寮前の船着き場まで来ていた。夜間の外出ということで教師や警備員に見つかると厄介なので警戒して隠れながら移動したせいでもう12時近い。

で、翔を誘拐した犯人はというと………

 

「明日香、お前にそんな趣味があったとは知らなかったよ」

 

そう、犯人は明日香とその取り巻きの二人枕田ジュンコと浜口ももえだった。

 

「そんな趣味ある訳ないわよ!こいつが女子寮の風呂場を覗いたから捕まえたの!!」

 

「これが学校側にバレれば退学ですわ!」

 

「だから覗いてないってば!僕は無実だーっ!」

 

………翔にそんな度胸ないと思うんだが無実の証明も難しいしな……どうやって助けるかな。

 

「ねぇ、あなた達、私達とデュエルしない?もし私達に勝てば、風呂場覗きの件は見逃してあげるわ」

 

「だから覗いてないって言ってるのに!」

 

「なんだか良くわからないけどまぁいいや、そのデュエル受けて立つぜ!」

 

あれ?打開策を考えてる間に話が進んでるし。ていうか『あなた達』ってことは俺もか?

そのことを指摘してみると、

 

「ええそうよ。私達とあなた達、それぞれ三人でちょうどいいし二本先取のチーム戦といきましょう」

 

デュエルで解決できるような問題じゃないと思うんだけど、まああっちがそれでいいなら俺が気にする必要はないか。

調整したデッキの回り具合を見るのにもちょうどいいしな。

 

 

 

 

 

 

デュエルの順番は早くデュエルがしたい十代が先鋒、次鋒が俺、翔が大将ということになった。

 

「じゃあ行ってくるぜ」

 

「頑張れよ、十代」

 

「兄貴、頑張るっス」

 

「「デュエル!」」

 

さて、十代と明日香がデュエルしてる間に翔には何で女子寮にいたのか聞いとかないとな。

 

 

 

 

 

 

「……ということなんだ」

 

「………………」

 

なんというか、想像以上にアホな理由だった。

 

「………翔」

 

「な、何っスか?」

 

「偽ラブレターに釣られたのは男だし仕方ないとしよう。でも何で宛名が十代だってことに気付かない!?」

 

「だ、だって僕ラブレター何て生まれて初めて貰ったから舞い上がっちゃったんスよーっ!?」

 

ヘッドロックをかける俺に弁明する翔。

 

「サンダー・ジャイアントでダイレクトアタック!『ヴェイパースパーク』!」

 

「きゃあああっ!」

 

そんなことをしてる間に十代対明日香のデュエルは十代の勝利で終わった。あちら側では明日香が敗れたことに驚いているみたいだけど、何度かデュエルして十代の此処ぞという時の引きの強さを知っている俺にとっては別に驚くことではない。

 

「ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ」

 

さて、次は俺の番だな。

 

「頑張れよ荘太」

 

「荘太君。一気に決めるっス。そして僕の無罪を証明して欲しいっス」

 

翔、お前の不注意がこの事態を引き起こしたことわかってるのか?

……よし、翔にも頑張ってもらうか。

 

「次はアタシが相手よ。かかって来なさい!」

 

「枕田だっけ?ちょっといいか?」

 

「何?いまさら怖じ気づいたの?」

 

「いや、そうじゃ無い」

 

「じゃあ何よ?」

 

「二人ずつ残ってるんだからどうせならタッグデュエルにしないか?」

 

俺の言葉に後ろの翔が驚愕の声をあげる。

 

「荘太君!?いきなり何言い出すんスか!?」

 

今は無視だ。

 

「………いったい何を企んでいるの?」

 

「別に何も。理由を挙げるならここで俺が勝って翔が何もせずに許されるのは良くないからだな」

 

「アンタ達友達じゃないの?」

 

「友達だからだよ。一度他人に頼ると頼りぐせがついてしだいに自分一人じゃ何もできなくなる可能性があるからな」

 

「荘太君……僕のことを考えて……」

 

「そういうことなら、いいわ、その申し出受けてあげる。ももえ、いいわね?」

 

「ええ、わたくしもよろしいですわ」

 

……まあ、理由の半分は遅くに呼び出された怨みなんだが言わないでおこう。

 

 

 

 

 

 

タッグデュエルをするには狭いので俺達は今はボートを降り、岸に立っている。既にデッキはデュエルディスクにセットされており、開始の合図を待っている。

 

「ライフポイントは共有で8000、フィールド・墓地も共有、パートナーの伏せたカードは自分も使用可能、最初のターンは全員攻撃不可。このルールに異存はあるか?」

 

俺の最終確認に首を振るやつはいなかった。

 

「「「「デュエル!!」」」」

 

俺のディスクが告げた数字は4。俺が行動できるのは全員が行動した後らしい。

 

「一番はわたくしですわね。ドロー」

 

ももえ:手札5→6

 

「わたくしは《デス・ウォンバット》を召喚」

 

デス・ウォンバットATK1600

 

相手のフィールドにずんぐりした獣が現れた。

確か自分への効果ダメージをゼロにする効果を持ってたな……バーンデッキか?

 

「《黒蛇病》を発動してさらにカードを一枚伏せてターンエンドですわ」

 

ジュンコ&ももえ:場、デス・ウォンバットATK1600、黒蛇病、伏せ1

ジュンコ:手札5

ももえ:手札3

 

黒蛇病か……早めに破壊しとかないと厄介なカードだな。

 

「僕のターン。ドロー」

 

翔:手札5→6

 

さて、翔のデッキは確か……

 

「《スチームロイド》を召喚!」

 

スチームロイドATK1800

 

機関車に顔の付いたモンスターが現れた。

………エリアならトー○スとか言いそうだな。

やっぱりロイドデッキか……って

 

「翔……俺、最初のターンは誰も攻撃できないって始める前に確認したよな?」

 

「あ」

 

おい。

 

「だ、大丈夫、罠で守るから。カードを一枚伏せてターンエンド」

 

荘太&翔:場、スチームロイドATK1800、伏せ1

荘太:手札5

翔:手札4

 

罠ってバラすなよ……。

大丈夫なのか?頭痛がしてきた……。

 

「アタシのターン。ドロー」

 

ジュンコ:手札5→6

 

「スタンバイフェイズに黒蛇病の効果でお互いに200ポイントのダメージを受ける。ただしアタシ達はデス・ウォンバットの効果でダメージを受けないけどね」

 

荘太&翔:LP8000→7800

 

俺と翔の足元に黒い蛇が出現し、足に噛み付く。

 

「続いて魔法カード《サイクロン》を発動。その伏せカードを破壊するわ」

 

「ああっミラーフォースがっ!?」

 

そりゃ破壊されるわな。

 

「そして《グリズリーマザー》を召喚してターンエンドよ」

 

グリズリーマザーATK1400

 

枕田のデッキは【水属性】か。

 

ジュンコ&ももえ:場、デス・ウォンバットATK1600、グリズリーマザーATK1400、黒蛇病

ジュンコ:手札4

ももえ:手札3

 

「やっと俺のターンか。ドロー」

 

荘太:手札5→6

 

まずは準備だな。

 

「俺は《ジェムレシス》を召喚」

 

ジェムレシスATK1700

 

現れたのは黄土色のモンスター。

アルマジロをモデルにしているくせに守備力の三倍近い攻撃力を持つ変わったモンスターだ。

 

「召喚に成功したジェムレシスの効果発動。デッキからジェムナイトと名の付いたモンスター一体を手札に加える。《ジェムナイト・オブシディア》を手札に加え、《凡骨の意地》を発動しカードを一枚伏せてターンエンド」

 

荘太&翔:LP7800、場、スチームロイドATK1800、ジェムレシスATK1700、凡骨の意地、伏せ1

荘太:手札4

翔:手札4

 

「わたくしのターン。ドロー」

 

ももえ:手札3→4

 

このターンから攻撃可能な訳だが、どう動く?

 

「スタンバイフェイズに黒蛇病の効果で400ポイントのダメージを与えますわ」

 

荘太&翔:LP7800→7400

 

始めのうちは小さなダメージでもほっとくと倍々に大きくなりやがる。これが黒蛇病の厄介なところだな。

 

「《コアラッコ》を召喚」

 

コアラッコDEF1600

 

顔がコアラで体がラッコのモンスターが現れた。………結局コアラなのか?ラッコなのか?

 

「コアラッコの効果を発動しますわ。一ターンに一度このカード以外の獣族モンスターが自分フィールド上に存在する場合、相手モンスター一体の攻撃力をエンドフェイズまで0にできますわ。スチームロイドの攻撃力を0にします」

 

スチームロイドにモフモフの体を押し付けるコアラッコ。すると、スチームロイドがふにゃふにゃになった。スチームロイドは何だか幸せそうな顔をしている。モフモフの体で相手を癒して力を抜くってことか?

 

スチームロイドATK1800→0

 

「デス・ウォンバットでスチームロイドを攻撃しますわ」

 

「うわあっ、助けて荘太君!」

 

黒蛇病がある以上ダメージを受けすぎるとヤバイし防いでおくか。

 

「罠発動!《マジカルシルクハット》自分のデッキからモンスター以外のカード二枚を攻守0のモンスター扱いとして自分フィールド上のモンスターと合わせてシャッフルし裏側守備表示でセットする。デッキから二枚の《ジェムナイト・フュージョン》をモンスター扱いとしてスチームロイドと合わせてシャッフルしセット」

 

シルクハットが三つ現れ、内一つにスチームロイドを、他二つにジェムナイト・フュージョンを隠す。

 

「ありがとう、荘太君」

 

軽く手を振って翔に応え、浜口に向き直る。

 

「モンスターが増えたことで戦闘の巻き戻しが発生する」

 

「でしたら攻撃対象をジェムレシスに変更しますわ」

 

確実にダメージを与えられる方を狙ってきたか。

 

「ダメージステップ開始時に罠発動!《幻獣の角》。発動後このカードは獣族または獣戦士族モンスターの装備カードとなりその攻撃力を800ポイントアップさせますわ」

 

デス・ウォンバットにヘラジカのような角が生える。角がデカくて重そうだな。

 

デス・ウォンバットATK1600→2400

 

その攻撃力はジェムレシスのそれを上回っている。最初は抵抗したジェムレシスだったが結局突き飛ばされ、攻撃力の差700ポイントが俺達のライフポイントから引かれた。

 

荘太&翔:LP7400→6700

 

「さらに装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、自分のデッキからカードを一枚ドローしますわ」

 

ももえ:手札3→4

 

「マジカルシルクハットでモンスター扱いとして出されたカードはバトルフェイズ終了時に破壊される」

 

フィールドからシルクハットが消え隠れていた裏側守備表示のモンスターが残る。

 

「さらに魔法カード《シールドクラッシュ》を発動。裏側守備表示のモンスターを破壊しますわ」

 

結局破壊されちまったか。

 

「これでターンエンドですわ」

 

ジュンコ&ももえ:LP8000、場、デス・ウォンバットATK2400(幻獣の角を装備)、コアラッコDEF1600、グリズリーマザーATK1400、黒蛇病

ジュンコ:手札4

ももえ:手札3

 

「僕のターン。ドロー」

 

翔:手札4→5

 

「《ジャイロイド》を守備表示で召喚。カードを二枚伏せてターンエンド」

 

ジャイロイドDEF1000

 

荘太&翔:LP6700、場、ジャイロイドDEF1000、凡骨の意地、伏せ2

荘太:手札4

翔:手札2

 

「アタシのターン。ドロー」

 

ジュンコ:手札4→5

 

「スタンバイフェイズに黒蛇病の効果発動。アンタ達に800ポイントのダメージを与えるわ」

 

荘太&翔:LP6700→5900

 

「アタシはフィールド魔法《海》を発動!その効果で魚族、海竜族、雷族、水族は攻守が200ポイントアップし、機械族、炎族は攻守が200ポイントダウンするわ」

 

ソリッドビジョンによって周囲が大海原へと変わる。

 

ジャイロイドDEF1000→800

 

「僕のジャイロイドが錆びちゃった!?何てことするんだ!」

 

………翔、デュエルなんだから我慢しろ。それはともかく、何故に海?

 

「何でアトランティスじゃないんだ?」

 

疑問に思ったので聞いてみる。

その答えは、

 

「持ってないんだからしょうがないでしょ」

 

………さいですか。まあ今回は翔のロイドや俺のジェムナイトの何体かが弱体化するから枕田からしたら結果オーライではあるか。

 

「何同情してんのよ!アタシはマーメイド・ナイトを召喚してコアラッコを攻撃表示に変更」

 

マーメイド・ナイトATK1500→1700

 

コアラッコDEF1600→ATK100

 

「これで終わりよ!まずはグリズリーマザーでジャイロイドを攻撃!」

 

「残念でした!ジャイロイドは一ターンに一度、戦闘では破壊されないよ!」

 

「っ!だったらマーメイド・ナイトでジャイロイドに攻撃!」

 

「罠発動!《スーパーチャージ》。このカードは自分フィールド上にロイドと名の付いた機械族モンスター以外にモンスターが存在しない場合、相手モンスターの攻撃宣言時に発動でき、デッキからカードを二枚ドローする」

 

翔:手札2→4

 

翔がドローした後、ジャイロイドがマーメイド・ナイトに斬り裂かれた。

 

「マーメイド・ナイトは海がフィールドに存在する時一度のバトルフェイズで二回攻撃ができる。マーメイド・ナイトでダイレクトアタック!」

 

マーメイド・ナイトが翔へと斬りかかる。助けてやりたいが今の俺にはどうしようもない。

 

「うわああぁぁっ!?」

 

荘太&翔:LP5900→4200

 

ソリッドビジョンて分かってても剣で斬られるのは怖いよな。

 

「罠発動!《ダメージ・コンデンサー》。手札を一枚捨てて受けたダメージ以下の攻撃力を持つモンスター一体をデッキから攻撃表示で特殊召喚する。《ユーフォロイド》を特殊召喚するよ」

 

ユーフォロイドATK1200→1000

 

ユーフォロイドか、この状況では後続を呼べるこいつがベストかな。

 

「デス・ウォンバットでユーフォロイドに攻撃!」

 

壮太&翔LP4200→2800

 

「幻獣の角の効果でドロー」

 

ジュンコ:手札3→4

 

「戦闘で破壊されたユーフォロイドの効果も発動するよ。デッキから攻撃力1500以下の機械族モンスター、《エクスプレスロイド》を守備表示で特殊召喚」

 

エクスプレスロイドDEF1600→1400

 

「エクスプレスロイドが特殊召喚に成功したことで効果発動!墓地に存在する、ロイドと名の付いたモンスター二体を手札に加える。スチームロイドとジャイロイドを手札に加える」

 

翔:手札3→5

 

「くっ、削り切れなかった…カードを一枚伏せてターンエンドよ」

 

ジュンコ&ももえ:LP8000、場、デス・ウォンバットATK2400(幻獣の角を装備)、コアラッコATK100、グリズリーマザーATK1400マーメイド・ナイトATK1700、海、黒蛇病、伏せ1

ジュンコ:手札3

ももえ:手札3

 

ジャイロイドとダメージコンデンサーがなかったらジャストキルかよ危ねえ……

 

「俺のターン。ドロー」

 

荘太:手札4→5

 

「俺がドローしたのは通常モンスター《ジェムナイト・サフィア》よって凡骨の意地で再びドロー。そしてこれも通常モンスター《ジェムナイト・ガネット》よって再びドロー」

 

荘太:手札5→7

 

「一気に手札を三枚も増やすなんて結構やるじゃない」

 

「この程度で驚くのは早いぜ。魔法カード《ライトニング・ボルテックス》発動!手札一枚をコストに相手フィールド上の表側表示のモンスターを全て破壊する!」

 

上空に発生した黒雲から雷が相手フィールド上に落ちて相手モンスターを全て破壊した。

 

「ライ○イーン!」

 

………今エリアの声が聞こえたような?

辺りを見回してみたが目的の人物は見つからず、何故か翔がひっくりかえっていた。

 

「………何やってんだ?」

 

「フィールドが海なのにあんなカード使われたからびっくりしたんだよ!」

 

たしかにソリッドビジョンのせいで凄い迫力だったけど泣く程怖かったのか。

まあ、気を取り直して、

 

「墓地に存在するジェムナイト・フュージョンの効果発動。墓地に存在するジェムナイト・サフィアを除外して手札に加え、発動。手札のジェムナイト・ガネットとジェムナイト・オブシディアを融合!堅き意思が宝石に万物を砕く拳を与えん。融合召喚!粉砕せよ!《ジェムナイト・ジルコニア》!」

 

ジェムナイト・ジルコニアATK2900

 

銀色の巨大な騎士が現れる。その最大の特徴は大きな腕と宝石の拳である。

 

「さらに手札から墓地に送られたオブシディアの効果発動。墓地に存在するレベル4以下の通常モンスター一体を特殊召喚する。蘇れジェムナイト・ガネット!」

 

ジェムナイト・ガネットATK1900→1700

 

「そして《ジェムナイト・アンバー》を召喚」

 

ジェムナイト・アンバーATK1600→1800

 

「まずはジルコニアでダイレクトアタック!」

 

全部通れば相手のライフを残り1400まで削れる!

 

「罠発動!」

 

っ!?しまった!攻撃反応型の罠か!?

 

「《リビングデッドの呼び声》。アタシの墓地に存在するモンスター一体を攻撃表示で特殊召喚する。アタシはグリズリーマザーを特殊召喚するわ」

 

グリズリーマザーATK1400

 

危なかった……《魔法の筒》だったら終わってた。

 

「なら、ジルコニアでグリズリーマザーを攻撃!『ジルコン・インパクト』!」

 

ジルコニアがその拳でグリズリーマザーを叩き潰し、その余波が枕田と浜口のライフを削る。

 

ジュンコ&ももえ:LP8000→6500

 

「グリズリーマザーの効果発動!デッキからグリズリーマザーを攻撃表示で特殊召喚」

 

グリズリーマザーATK1400

 

「ガネットでグリズリーマザーを攻撃!『ブレイズブロー』!」

 

ガネットの右拳が炎に包まれる。………フィールドが海なせいでちょっと弱火なのが物悲しい。

 

ジュンコ&ももえ:LP6500→6200

 

「グリズリーマザーの効果でグリズリーマザーを特殊召喚」

 

グリズリーマザーATK1400

 

またそいつかよ。

 

「アンバーでグリズリーマザーを攻撃!『エレクトリックナイフ』!」

 

電気をナイフにしてグリズリーマザーに投げつける。

 

ジュンコ&ももえLP6200→5800

 

これでグリズリーマザーは尽きた訳だが………何がくる?

 

「《ヒゲアンコウ》を特殊召喚」

 

ATK1500→1700

 

ダブルコストモンスターか。だったら今のうちに潰しとくか。

 

「速攻魔法《デュアルスパーク》!自分フィールド上のレベル4デュアルモンスター、ジェムナイト・アンバーを生贄にしてヒゲアンコウを破壊し、デッキからカードを一枚ドローする。さらに魔法カード《馬の骨の対価》を発動。自分フィールド上の効果モンスター以外のモンスター、ジェムナイト・ガネットを墓地へ送りデッキからカードを二枚ドローする」

 

………よし。

 

「墓地に存在するジェムナイト・フュージョンの効果でオブシディアを除外して手札に加え、カードを一枚伏せてターンエンド」

 

荘太&翔:LP2800、場、ジェムナイト・ジルコニアATK2900、エクスプレスロイドDEF1400、凡骨の意地、伏せ1

荘太:手札3

翔:手札5

 

「わたくしのターンッ。ドロー!」

 

ももえ:手札3→4

 

ライフはまだあるけど場は完全に俺達が有利だからか焦りが見えるな。

 

「黒蛇病の効果でお互いに800ポイントのダメージを受けますわ」

 

「これ以上くらってたまるか!罠発動!《サンダー・ブレイク》手札のジェムナイト・フュージョンをコストに黒蛇病を破壊する!」

 

「わたくしは《レスキューキャット》を守備表示で召喚し、カードを二枚セットしてターンエンドですわ」

 

ジュンコ&ももえLP5800、場、レスキューキャットDEF100、海、伏せ2

ジュンコ:手札3

ももえ:手札1

 

「僕のターン。ドロー!」

 

有利になったからか翔の雰囲気がさっきまでより明るくなっている。

 

翔:手札5→6

 

「僕がドローしたのは通常モンスター《サイクロイド》よって凡骨の意地の効果でドロー」

 

翔:手札6→7

 

「このカードは………」

 

?翔のやつ何を引いたんだ?

 

「翔、どうかしたのか?」

 

「っ!?な、何でもないよ!?僕は魔法カード《融合》を発動!手札のジャイロイドとスチームロイドで《スチームジャイロイド》を融合召喚!」

 

スチームジャイロイドATK2200→2000

 

「スチームジャイロイドでレスキューキャットを攻撃!『ハリケーン・スモーク』!」

 

スチームジャイロイドの煙突から噴き出した煙がレスキューキャットを覆い隠し、そこにスチームジャイロイドがプロペラを回転させて突っ込んで行った。

そして煙が消えるとレスキューキャットは………無傷、だと!?

 

「何でレスキューキャットが破壊されてないのさ!?スチームジャイロイドの攻撃は当たった筈なのに!」

 

「罠カード《和睦の使者》の効果ですわ。このターン相手モンスターから受ける全てのダメージを0にし、モンスターも戦闘では破壊されなくなりますわ」

 

「うぅ……僕はカードを二枚伏せてターンエンド」

 

荘太&翔:LP2800、場、ジェムナイト・ジルコニアATK2900、スチームジャイロイドATK2000、凡骨の意地、伏せ2

荘太:手札2

翔:手札2

 

「アタシのターン!ドロー!」

 

ジュンコ:手札3→4

 

「ももえ!あなたのカード使わしてもらうわよ!《リビングデッドの呼び声》発動。ヒゲアンコウを特殊召喚!」

 

ヒゲアンコウATK1500→1700

 

ちっ結局復活しやがったか。

 

「ヒゲアンコウを生贄に、《海竜

-ダイダロス》を召喚!」

 

海竜-ダイダロスATK2600→2800

 

ダイダロスだと!?

 

「最上級モンスターを生贄一体で召喚だって!?」

 

「翔、ヒゲアンコウは水属性モンスターの生贄召喚に使われるとき二体分の生贄に使えるんだ。ダブルコストモンスターはテストにも出ることがあるだろうから覚えといた方がいいぞ」

 

「何人の台詞取ってんのよ!アタシはダイダロスの効果発動!フィールド上に存在する海を墓地へ送り、このカード以外のフィールド上のカードを全て破壊する!」

 

ダイダロスの起こした大波がフィールド上のカードを押し流して行く。波が引いた時に残って居たのはダイダロスだけだった。

 

「僕達のモンスターが……」

 

くそっ、もし特殊召喚モンスターとか握ってたら終わっちまうぞ。

 

「ダイダロスでアンタ達にダイレクトアタック!」

 

ダイダロスが水のブレスを横薙ぎに吐いて攻撃してくる。つか、ソリッドビジョンって分かっててもこれは怖いわ。

 

荘太&翔:LP2800→200

 

「くそっ、二人纏めてとかソリッドビジョン空気読み過ぎだろ」

 

「もうダメだ~ライフもあと200しかないしフィールドも残ってないんじゃ勝ち目なんて無いよ~」

 

翔の弱気な発言に外野で観戦していた十代は言う。

 

「翔、ライフはまだ残ってる!一緒に戦ってるカード達と荘太を信じるんだ!」

 

「そうだぞ翔。諦めるのはまだ早い」

 

「アニキ、荘太君……わかった、僕最後まで諦めずにデッキと荘太君を信じるよ」

 

「話は終わったかしら?」

 

「悪いなお前のターンなのに待たせちまって」

 

「別にいいわよこれぐらい。別れの言葉になるかもしれないんだしね。アタシはこれでターンエンドよ」

 

ジュンコ&ももえLP5800、場、海竜-ダイダロスATK2600

ジュンコ:手札3

ももえ:手札1

 

手札にモンスターは一体だけしかいない。このドローで全てが決まる。

 

「でも、負ける訳にはいかないんだ!俺のターン。ドロー!」

 

荘太:手札2→3

 

ドローしたのは……よし!いける!

 

「魔法カード《死者蘇生》を発動!」

 

「くっ、この状況で死者蘇生ですって!?でもジェムナイト・ジルコニアを蘇生したとしてもダイダロスとの攻撃力の差はたったの300、次のターンでももえがバーンカードを引けばアタシ達の勝ちよ!」

 

「たしかにそうだな」

 

俺の負けを認めるかの様な言葉に枕田は勝ち誇った顔をする。

 

もっとも

 

「俺が蘇生するのがジルコニアだったらの話だけどな」

 

「え?」

 

「翔!お前のカードを借りるぞ!俺が蘇生するのは、ユーフォロイド!」

 

ユーフォロイドATK1200

 

「「「「ええええぇぇぇぇ!?」」」」

 

俺の行動に十代以外の全員が驚きの声をあげる。

 

「そ、荘太君!?何考えてるのさ!?バーンカードを使われたら負けちゃうんスよ!?」

 

おい翔、ついさっき信じるって言わなかったか?

 

「その通りですわ。その場しのぎにしてもジルコニアを出したほうがいいでしょうに」

 

「その場しのぎなんかじゃないぜ。こいつが逆転への第一歩だ。墓地のジェムナイト・フュージョンの効果発動。ジルコニアを除外して回収し、発動!手札のジェムナイト・ラズリーとフィールド上に存在する光属性のユーフォロイドを融合!」

 

巫女のような格好をした小さなモンスター、ジェムナイト・ラズリーとユーフォロイドが光に包まれる。

 

「聖なる力が宝石に新たな輝きを与える。融合召喚!輝け!《ジェムナイト・セラフィ》!」

 

光が収まるとそこにいたのはラズリーの面影を残しながらも大きく成長し、光輝く翼を持つ女性型のジェムナイトであった。

 

ジェムナイト・セラフィATK2300

 

「ユーフォロイドと融合した!?」

 

「きれい………」

 

「カードの効果で墓地へ送られたラズリーの効果発動。墓地に存在する通常モンスター一体を手札に加える。デュアルモンスターは墓地では通常モンスター。よって俺はジェムナイト・アンバーを手札に加え、召喚。さらに墓地のオブシディアを除外してジェムナイト・フュージョンを回収」

 

ジェムナイト・アンバーATK1600

 

セラフィの美しさに見惚れていた翔達だったが、俺の行動に我に返る。

 

「ふ、ふん、ユーフォロイドと融合したのは驚いたけどその攻撃力じゃダイダロスの足元にも及ばないわ」

 

「まあ、慌てるな。今から逆転してやるから」

 

「なんですって!?」

 

「ジェムナイト・セラフィの効果。このカードがフィールド上に表側表示で存在する場合通常召喚をもう一度行うことができる。ジェムナイト・アンバーを再度召喚!」

 

アンバーの身体に紫電が奔る。

 

「再度召喚することでアンバーは効果モンスターとして覚醒する。アンバーの効果発動。手札のジェムナイトと名の付いたカードを墓地に送ることでゲームから除外されたモンスター一体を手札に加える。ジェムナイト・オブシディアを手札に加える。そして墓地のジェムナイト・ガネットを除外してジェムナイト・フュージョンを回収し、発動。手札のジェムナイト・オブシディアとフィールドに存在する雷族のジェムナイト・アンバーを融合!雷纏う宝石が敵を撃ち抜く閃光となる。融合召喚!貫け!《ジェムナイト・プリズムオーラ》!」

 

銀色の甲冑から水晶が突き出た騎士が紫電と共に現れる。

 

ジェムナイト・プリズムオーラATK2450

 

「手札から墓地に送られたオブシディアの効果発動。墓地に存在するアンバーを特殊召喚」

 

ジェムナイト・アンバーATK1600

 

本日三度目の登場、お疲れ様です。

 

「いい加減にしなさい!そんなに並べても無駄よ!」

 

「それはどうかな。墓地のジェムナイト・オブシディアを除外しジェムナイト・フュージョンを回収。ジェムナイト・プリズムオーラの効果発動!手札のジェムナイトと名の付いたカード、ジェムナイト・フュージョンをコストに相手フィールド上の表側表示のカード一枚を破壊する!イレイズ・ジェム・フラッシュ!」

 

プリズムオーラの水晶から放たれた閃光がダイダロスに直撃する。始めは抗っていたダイダロスだったが、徐々に押されだし、遂には細かい粒子となって消え去った。

 

「そんな、ダイダロスが……」

 

さて、障害は何もない。

 

「三体のモンスターでダイレクトアタック!『トライアングル・ジェム・フラッシュ』!」

 

ジュンコ&ももえ:LP5800→0

 

 

 

 

 

 

「次にデュエルする時には今回みたいなマグレ二度と起きないんたからね!アンタ達!いい気になるんじゃないわよ!」

 

「ジュンコ、やめなさいって」

 

「でも明日香さん~」

 

「負けたのは事実よ、認めなきゃ」

 

「いや、枕田の言う通りかもしれないぜ?あんた達強いよ」

 

「そうそう、あの時サンダー・ジャイアントが出せてなければ俺の負けだったしな」

 

「俺たちの方も、浜口、デッキトップのカードは何だったんだ?」

 

俺の質問に浜口が答える。

 

「《火炎地獄》ですわ」

 

「………僕達も荘太君が死者蘇生を引いてなければ負けてたっスね」

 

「それか、翔がユーフォロイドを出してなくても負けてたな」

 

「と言う訳で枕田の言う通り今回は俺たちの運があんた達より強かったってだけだ。次やって勝てるかなんてわかんねえよ」

 

「ふふ、まあ何にせよ今回は私達の負けね。約束通り覗きの件は見逃してあげるわ」

 

「ああ!そういえばそれでデュエルしてたんだっけ」

 

「忘れてたんスか!?」

 

「このデュエルバカは……まあ、いいか。もう遅いし帰ろうぜ」

 

「ええ、暗いから気を付けてね」

 

さーて帰りますか。

 

 

 

 

 

 

「ところで十代、翔」

 

「ん?何だ?」

 

「明日の授業の宿題、やったか?」

 

「宿題?そんなのあったっけ?」

 

「装備魔法についての纏めをA4レポート用紙に二十行以上書けっていうのが三日ぐらい前に出てるんだが」

 

「げ、マジかよ~。荘太頼む写させてくれ!」

 

「はぁ、丸写しは無しな」

 

「サンキュー」

 

全く、授業中寝てばっかだから重要なことを聞き逃すんだ。

 

「あの、アニキ、荘太君」

 

「なんだよ翔?わかった、お前も宿題やってないんだろ」

 

「う、うん。それはもちろんそうなんスけど」

 

おい、もちろんって何だよ。

 

「けどなんだよ」

 

「む、向こうに何かいるんスけど」

 

翔が指差す方を見ると、そこにいたのは地面に横たわる真っ黒い人影と、白い人影。その白い人影がゆっくりとこちらに振り向き笑う。

 

「で、出たぁぁぁっ!?」

 

腰を抜かす翔。ビビり過ぎだろお前。

 

「で、何してんだエリア」

 

そう白い人影は修行に行った筈のエリアだった。しかも何故かブルー女子の制服を着ている。

俺の質問に対しエリアは

 

「デュエルしてる声が聞こえたから見に行ったらどざえもんを見つけちゃってさ、困ってたんだ」

 

「はぁっ!?どざえもん!?」

 

言われてみれば濡れている。

 

「どざえもんって何だ?新しい猫型ロボットか?」

 

「ちがうわ、バカ。どざえもんってのは溺死体のことだ」

 

「し、死体!?」

 

とりあえず本当に死んでいるのか確かめるため、仰向けにして脈をとる。

 

「って、クロノス先生!?」

 

「荘太、本当に死んじまってんのか!?」

 

「脈が………………ある」

 

「あるのかよ!」

 

全く、どざえもんとかゆうから無駄に焦っちまった。

 

「何でこんな格好で湖にいたんスかね?」

 

「たしかに、こんな真っ黒いウエットスーツ着てまるで不審者みたいだぜ」

 

まるでって言うか普通に不審者だろこれは。

 

「教師ってストレスが溜まる職業だからね。このかっこで泳いでストレス発散してたんじゃないのかな」

 

なるほど、それで十代の召喚したサンダー・ジャイアントの攻撃と俺の使ったライトニングボルテックスに巻き込まれたって訳か。水面に電流奔ってたもんな。

 

「で、これどうする?」

 

「これって言うな失礼だぞ。こんなでも一応教師だぞ」

 

「二人とも失礼っス」

 

「とりあえず医務室にでも運んだら?」

 

「そうだな。俺が足持つから十代は腕持ってくれ」

 

「わかった、任せとけ」

 

クロノス先生を担架みたいにして運ぶ。

 

「そういえば誰っスか?普通に馴染んでるけど」

 

「わたし?わたしはエリア。荘太の恋び「ただの幼馴染だ」ちょっとした冗談なのに………」

 

「まあこんな奴だ」

 

「俺は遊城十代。十代って呼んでくれ」

 

「僕は丸藤翔っス」

 

「よろしくねー」

 

俺達はそんな感じで駄弁りながら医務室までクロノス先生を運ぶのだった。

 

 

 

 

 

 

後日、デュエルアカデミアではクロノス先生には夜の湖で不審者ルックで泳ぐ趣味があるらしい。といった噂が流れた。情報源はおそらく奴だろう。




ミラーフォースは仕事しない(確信)
感想・評価お待ちしてます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

5 試験前

バブルマンは原作通り強欲なバブルマン


 

夢を見ている。

目の前には十代前半ぐらいの黒髪の男の子。

季節は冬。

この世界に来て最初の冬休み。

わたしは男の子の勉強を見てやっている。

教科は国語。小説を読み、後の問いに答えよ、というもの。小説の内容は戦争に行った父や兄を待つ家族の様子を綴ったもの。

 

「エリアは寂しくないの?」

 

今まで黙々と問題を解いていた男の子がポツリとこぼす。

 

「急にどうしたの?」

 

「だってこの話では最後はお父さんとお兄さんに会えるけど、エリアはもう家族に会えないんでしょ?寂しくないの?」

 

その幼い故に率直な問いにわたしは

 

 

 

 

 

「………ん」

 

そこで目が覚めた。

 

夢を見ていた。とても懐かしい、自分でも忘れかけていた夢。

 

「あの時何て答えたんだっけ………」

 

仰向けに寝転んで天井を見ながら、記憶の引き出しを探っていると、すぐそばからよく知る声が聞こえた。

 

「目が覚めたなら早く退いてくれないか」

 

寝転んだまま声の方向に頭を傾ける。目の前にあったのは夢の中の男の子の面影を残しながらも年相応に成長した少年の顔。彼我の距離は五センチにも満たない。予想外のことに思考停止。

 

「まだ寝ぼけてんのか?」

 

声をかけられ再起動。

 

「うわひゃあっ!?」

 

慌てて離れようとしてベッドから転げ落ち、床で頭を打つ。とても痛い。

 

「何でわたし実体化してるの!?」

 

「俺が知るか。気持ち良く寝てたのにいきなり人の上に降ってきやがって………昨日の晩飯がリバースしかけたぞ」

 

荘太の言葉につい自分の身体が汚れていないか確認する。

 

「そこは俺の心配をするところだろう!」

 

いやいや、女の子なら仕方ないでしょ。

 

 

 

 

 

実体化していたせいで付いた寝ぐせや服のシワを直していると、着替えを終えた荘太が

 

「今から朝飯食べに行ってくるけど、お前はどうする?」

 

「食べるけどまだ少し時間かかるからパンか何かとっといて」

 

むう、寝ぐせがなかなか取れない……ワックスでも付けるかな?でもベタベタするのは嫌だしなぁ………

そんな感じで寝ぐせと格闘すること数十分。

水とドライヤーを駆使してようやく寝ぐせをおとなしくすることに成功した頃に荘太が戻って来た。

 

「随分遅かったね。何かあったの?」

 

「寮の食堂が混んでたからな。校舎まで行ってドローパン買ってきた。」

 

言われてみれば右手に紙袋を抱えている。

………それにしても、ドローパンかぁ。

 

「荘太がそれ買うなんて珍しいね。いつもは普通にカレーパンとかなのに」

 

「まあ、たまにはこういうのもいいかと思ってな。十代達も買ってたし」

 

「十代君達もドローパンかぁ………何が当たってた?」

 

「十代は卵パン、翔は数の子パンだったな」

 

数の子パンって………何でパンに入れようと思ったんだろ………

 

「翔君は運が無かったね。十代君は今回で何回目だっけ?」

 

「たしか八連続だったかな。一日一つしか手に入らない筈なんだが、あいつの強運はとんでもないな」

 

十代の引きの強さはデュエルだけじゃないってわけか。

 

「そろそろ食べるか。この後用事もあるしな」

 

「あれ?今日は休日だから授業はないんじゃ?」

 

「さっき十代にレッド寮に遊びに来ないか誘われたんだよ。ほれ、お前の分」

 

荘太はベッドに腰を下ろすとそう言ってわたしに向かってパンの包みを投げる。

 

「ん、ありがと。さて中身は何かなっと」

 

結果は、

 

「………ハズレだ。何も入ってない」

 

「まあ、変な物が入ってるよりいいんじゃない?………わたしなんて漬物パンだし」

 

キムチやピクルスならともかく何故らっきょなのさ?しかも大量に入ってるし………

 

 

 

 

 

苦行一歩手前の朝食を終え、わたし達はレッド寮前に来ていた。実体化したまま来たのでイエロー寮を出る際に三沢に遭遇していろいろあったが気にしないことにする。

………荘太は頭を抱えてるけど。

 

「………三沢なら周りに言いふらしたりしないだろうからまだ良かったけど他の奴に見られてたらどうすんだよ。朝から女を連れ込むような奴ってレッテル貼られちまうじゃねえか」

 

「そのときはそのときってことで。それに堂々としてれば意外となんとかなるもんだよ。そんなことよりもわたしの姿を見て何か言うことあるんじゃない?」

 

腰に手を当て胸を張る。

 

「そういえばこの前もブルーの制服着てたな。どうしたんだそれ?」

 

「千尋のお古を仕立て直したの」

 

「仕立て直したってお前がか?難しかっただろうに」

 

「うん、本当に大変だったよ。………特に胸の辺りが」

 

うう、自分で言ってて悲しくなってきた。

 

「………何というか、まあ、あれだ、ご愁傷様です」

 

「慰めないでよ、余計悲しくなる………」

 

「この話はおしまい!何時迄も沈んでたら十代君達に心配されちゃうからね!」

 

沈んだ空気を振り払うべくわざと大きな声で言う。もっとも、沈んでいたのはわたしだけなのだけれど。

 

「じゃあさっきまでのやりとりは無かったってことで。おーい、十代!遊びに来たぞ!」

 

荘太の声にドアが開き、十代が顔を出し、わたし達を部屋に招き入れる。

 

「さっきぶりだな荘太。そういえばドローパンの具は何だった?」

 

「何も入ってないただのコッペパンだった」

 

「あちゃー、まあそういうこともたまにはあるよな。次はきっと良いのが当たるって。て、あれ?エリアも来てたのか」

 

「うん、来る途中で会ってね」

 

本当はイエロー寮からずっと一緒だったんだけどね。

十代に続いてドアをくぐる。………うん、二年前に来た時と変わらない狭さと古さだね。生徒の向上心を高めるためとはいえユニットバスぐらいつけてあげればいいのに。

部屋の奥(と、言っても一部屋しかないから直ぐだけど)では翔とコアラによく似た顔をした前田隼人君がちっこいテレビの前に座っていた。

 

「いらっしゃい。荘太君、エリアさん」

 

「いらっしゃいなんだなぁ」

 

「おはよう」

 

「翔はさっきぶり。隼人はおはよう」

 

わたし達の挨拶が終わると十代が二段ベッドの下から一昔前のゲーム機とコントローラーを引っ張り出してきて

 

「よし、ス○ブラしようぜ!」

 

いやいや、君デュエルアカデミアの生徒なんだからデュエルモンスターズに関係あることしなよ。まあ、ス○ブラ楽しいからわたしもやるけど。

 

 

 

 

 

「くそっ!何でこんなにプ○ンの耐久性が高いんだ!?」

 

「荘太君の○スのハメ技もヒドイけどこのプ○ンしつこ過ぎるっスよ!」

 

「飛ばしても飛ばしても帰って来るんだなぁ……」

 

「ふふふふふ。ピンクの悪魔と怖れられたわたしの力、思い知るがいいわ」

 

「いや、それ別のキャラだろ………つか、今更だけどこんなことしてて大丈夫なのか?」

 

「ん?大丈夫って何がだ?」

 

ゲーム開始から約一時間、荘太のつぶやきに十代が反応する。

 

「月一試験、明後日だぞ。お前ら勉強してるか?」

 

「………してないけどなんとかなるって!」

 

荘太の問いに笑いながら答える十代。

君は実技で何とかなるかもしれないけどね………

 

「………どうしよう、ぜんぜん勉強してないよぉぉ〜!!」

 

頭を抱える翔。

あれ?隼人は随分と落ち着いてるね?普段から勉強してるの?

 

「俺はもう諦めてるんだなぁ」

 

ダメじゃん。

 

「よし、お前らゲーム機しまえ。試験勉強するぞ」

 

荘太はそう言って壁に立て掛けてあった卓袱台を部屋の真ん中に持ってくる。

それに対し十代は、

 

「じゃあデュエルしようぜ!」

 

君、荘太の話聞いてた?

自分のことを白い目で見るわたし達に気付いたのか慌てて弁明する。

 

「い、いや勉強が嫌なんじゃないぞ!?筆記試験の勉強も大事かもしれないけどさ、ここじゃ実技の方が重要視されてるだろ。実際俺は入試の時に筆記では点数低かったけどクロノス先生に勝てたから入れたし」

 

だから実技の練習をしようと言う十代。

 

「確かに実技も重要だ。でも、筆記試験はデュエルモンスターズのこと以外にも基本五教科があるんだから勉強はしたほうがいい」

 

どちらも譲らず狭い部屋に沈黙が降りる。

ん?翔と隼人がこっち見てる?わたしがかわいいからってそんなに見つめられたら照れるんだけど。え?違う?あぁ、この空気どうにかしろって?ハイハイ、わかりましたよ。そんな訳で一つ提案してみる。

 

「十代君、そんなにデュエルがしたいならわたしが相手してあげるよ」

 

デッキを取り出し、立ち上がるわたし。

 

「そういえば、エリアとはまだデュエルしたこと無かったな。よし、受けてたつぜ!」

 

十代も立ち上がりデュエルディスクを構える。

 

「ただし終わったら勉強すること。荘太もこれなら文句ないでしょ?」

 

「ああ、わかった」

 

「まあ、それならいいか」

 

原作主人公相手に何処まで戦えるかいっちょ頑張ってみますか!

 

 

 

 

 

レッド寮前の開けた場所でわたしと十代は十分な距離を開けて向かい合う。

 

「めんどくさい前置きは置いといて始めようか」

 

わたしの言葉に十代も頷く。

 

「「デュエル!!」」

 

わたしのデュエルディスクに表示された『先攻』の二文字に従いデッキからカードを一枚引く。

 

エリア:手札5→6

 

「荘太君、エリアさんのデッキってどんなデッキなんスか?」

 

「詳しくは言えないけど伏せを多用するデッキだな」

 

「コラァ!何勝手に教えてんの!?」

 

「すまん、つい」

 

後でしばく。とりあえず二人を睨んでおいてデュエルを再開する。

 

「カードを二枚伏せ、《ガガギゴ》を攻撃表示で召喚!」

 

ガガギゴATK1850

 

わたしのフィールドに青い鱗で身体が覆われた二足歩行のトカゲのような姿をしたモンスターが現れ唸り声をあげる。

 

「攻撃力1850って何か微妙なモンスターっスね………」

 

その微妙なとこがいいんじゃない。

 

「わたしはこれでターンエンドだよ」

 

エリア:場、ガガギゴATK1850、伏せ二枚、手札3

 

「俺のターン。ドロー」

 

さてどう来るかな?

あれ?手札見てガッツポーズしてる。メチャクチャ嫌な予感がするんですけど………

 

「魔法カード《融合》!手札のスパークマンとクレイマンを融合!来い《E・HERO サンダー・ジャイアント》!」

 

サンダー・ジャイアントATK2400

 

黄色と紫色のボディを持つ大男が現れる。

………この部分だけ聞くとヒーロー(英雄)というよりヒール(悪役)のような気がするのはわたしだけかな?

 

「サンダー・ジャイアントの効果発動。一ターンに一度自分の手札を一枚捨てることでフィールド上に表側表示で存在する元々の攻撃力がこのカードの攻撃力よりも低いモンスター1体を選択して破壊する。ガガギゴを破壊しろ!『ヴェイパー・スパーク』!」

 

こうかはばつぐんだ!

あぁ、張り切ってたのにたったの一ターンで退場………合掌。

 

「まだまだいくぜ。魔法カード《闇の量産工場》を発動して墓地に存在するクレイマンとスパークマンを回収し、スパークマンを召喚!」

 

スパークマンATK1600

 

今度は青と金の装甲を持つ細身のヒーローが現れる。あれ?これワンキル?

 

「スパークマンでダイレクトアタック『スパークフラッシュ』!」

 

させるかぁ!

 

「罠カード《ゴブリンのやりくり上手》発動。それにチェーンして永続罠《強制終了》発動!」

 

「《強制終了》?初めて見るカードだな」

 

「ゴブリンのやりくり上手は墓地の同名カードの枚数+一枚ドローした後手札を一枚デッキの下に戻すカード。強制終了はこのカード以外の自分フィールド上のカードを墓地に送ることでバトルフェイズを終了させるカードだよ」

 

わたしの説明に成る程と頷くレッド生三人。

 

「さて、問題です。チェーン1ゴブリンのやりくり上手、チェーン2強制終了と組み、強制終了の効果発動の為にゴブリンのやりくり上手を墓地に送ったらどういった処理をするでしょうか?はい、さっきわたしのデッキ内容を聞き出そうとした翔君、制限時間は一分。はい、スタート!」

 

「ちょ、え?えええぇぇぇ!?」

 

残り50びょー。

 

「はい!」

 

はや!もうわかったの!?

 

「チェーンって何スか!?」

 

ファッ!?そこからかいっ!?

 

「チェーンって言うのは魔法や罠カードなどの応酬をスムーズに解決するためのシステムで、1枚のカードの発動に対応して別のカードを発動させる行為のことなんだなぁ」

 

おお、隼人君解説ありがとう。

 

「そんでもって最初に発動したカードをチェーン1とし、チェーン発動するごとにチェーン2、チェーン3…とチェーンブロックが積み上げられていって、チェーン発動が終了すると効果の処理に入り、最後に発動したチェーンから順に効果の処理を行っていくんだなぁ」

 

以上隼人君の用語講座でしたー。

 

「ああ!あれってチェーンって言うのか!」

 

うおい十代君もか!

 

「いやー普段知らなくても問題無かったからさ」

 

き、気を取り直して、

 

「今の隼人君の説明でチェーンについてはわかっただろうからもう一度聞くね?どういう処理をするでしょうか?」

 

「えっと、バトルフェイズを終了して一枚ドローした後手札から一枚デッキの下に戻す?」

 

うん、やっぱり引っかかったね。

 

「残念、ゴブリンのやりくり上手のドロー枚数は効果解決時の墓地の同名カードの枚数で決まるんだ。そしてこのカードが墓地にあればその枚数に数えられるから、二枚ドローした後手札から一枚デッキの下に戻す。が正解だよ」

 

ちょっと落ち込む翔。隣の荘太がフォローを入れる。

 

「今のは結構間違える奴がいるからそんなに気にするな。筆記試験に同じような問題が出た時に間違えなければいいさ」

 

「強制終了の他にも《非常食》とかで同じようなことができるよ。と、いうわけで、スパークマンの攻撃は通らないよ。そして、わたしはデッキから二枚ドローして一枚をデッキの下に戻す」

 

エリア:手札3→4

 

「ちぇっ、決まったと思ったのになぁ。俺はカードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

十代:場、サンダー・ジャイアントATK2400、スパークマンATK1600、伏せ一枚、手札1

 

「わたしのターン。ドロー」

 

エリア:手札4→5

 

まだ逆転は無理か………

 

「モンスターをセット。カードを二枚伏せてターンエンド」

 

エリア:場モンスター(裏守備)、強制終了、伏せ二枚、手札2

 

「俺のターン。ドロー」

 

十代:手札1→2

 

「魔法カード《強欲な壺》デッキからカードを二枚ドローするぜ」

 

十代:手札1→3

 

「速攻魔法《サイクロン》発動!強制終了を破壊!」

 

くっ、もう突破してきたか。

 

「墓地のネクロダークマンの効果!このカードが墓地に存在する限り1度だけ、

自分はレベル5以上の「E・HERO」と名のついた

モンスター1体をリリースなしで召喚する事ができる。俺はエッジマンを召喚!」

 

十代の場に半透明の赤と黒の悪魔みたいな姿のモンスターが現れたかと思うとすぐに消え、同じ場所に金ピカのロボットみたいなモンスターが現れる。

 

エッジマンATK2600

 

どちらかというと戦士というより機械だよね。ネクロダークマンといい、エッジマンといい、クレイマンといい、ヒーローには初見で戦士族とは思えないモンスターが結構いるなぁ。

 

「エッジマンで守備モンスターに攻げ「させるか!罠発動《陽動作戦》!このターン裏側表示のモンスターを攻撃対象に選ぶことはできない」………ターンエンドだ」

 

十代:場、サンダー・ジャイアントATK2400、スパークマンATK1600、エッジマンATK2600、伏せ一枚、手札1

 

「わたしのターン。ドロー」

 

エリア:手札2→3

 

「《死者転生》を発動。手札一枚

をコストに墓地のガガギゴを手札に加えるよ。そして、リバースカードオープン!《DNA移植手術》!わたしが宣言するのは水属性!」

 

十代のフィールドのモンスター達が青色のオーラに包まれ水属性に変わる。

 

「モンスターを反転召喚」

 

水霊使いエリアATK500

 

現れたのはわたしそっくりな女の子。まあ、わたしが宿ってるカードだからそっくりなのは当たり前なんだけど。

 

「リバースした《水霊使いエリア》の効果発動。このカードがフィールドに表側表示で存在する限り相手フィールドの水属性モンスター一体のコントロールを得る。エッジマンはもらうよ!『アクア・テイム』!」

 

最初は抵抗したエッジマンだったが、効果には逆らえずこちら側に歩いて来る。

 

「そして、ガガギゴを召喚し、バトル!ガガギゴでスパークマンに、エッジマンでサンダー・ジャイアントに攻撃!『ダブルスラッシュ』!」

 

ガガギゴがその鋭い爪で、エッジマンが腕の刃で、すれ違いざまにそれぞれの攻撃対象を切り裂く。

 

十代:LP4000→3550

 

削り取った数値はほんの僅か。でも、フィールドはセットカードが一枚のみ。さっきの攻撃時に使わなかったってことは攻撃反応系じゃない!

 

「水霊使いエリアでダイレクトアタック!「罠発動!」っ!?」

 

え、このタイミングで!?

 

「《ヒーロー見参》!相手に自分の手札をランダムに選択させ、そのカードが特殊召喚可能なモンスターなら自分フィールドに特殊召喚する。俺の手札は一枚、よってクレイマンを特殊召喚!」

 

粘土の身体を持つヒーローが現れる。

 

クレイマンDEF2000

 

「攻撃は中止、水霊使いエリアとエッジマンを墓地に送り《憑依装着ーエリア》をデッキから特殊召喚!」

 

憑依装着ーエリアATK1850

 

エッジマンが霊体になり、水霊使いエリアの後ろに控える。………って、ガガギゴさん?何羨ましそうに見てるんですか?

 

「くそっ水霊使いエリアを倒せばエッジマンを取り戻せたのに」

 

「そう簡単にはいかないよ。さらに魔法カード《マジック・プランター》発動。自分フィールド上の永続罠、DNA移植手術を墓地に送り二枚ドロー」

 

エリア:手札0→2

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

エリア:場、ガガギゴATK1850、憑依装着ーエリアATK1850、伏せ一枚、手札1

 

「俺のターン。ドロー!」

 

十代:手札0→1

 

「《馬の骨の対価》クレイマンを墓地に送り二枚ドロー」

 

十代:手札0→2

 

この状況でそれは博打すぎるような………

 

「《ホープ・オブ・フィフス》発動!墓地のサンダー・ジャイアント、エッジマン、スパークマン、ネクロダークマン、クレイマンをデッキに戻し二枚ドロー!」

 

十代:手札1→3

 

「さらにバブルマンを召喚!召喚成功時に自分フィールド上に他にカードが存在しないので二枚ドロー!」

 

バブルマンATK800

 

十代:手札2→4

 

いやいや、どんだけドローすんのよ。

 

「よっしゃ行くぜ!《融合》を発動!バブルマンと手札のスパークマン、フェザーマンを融合!来い《E・HERO テンペスター》!」

 

テンペスターATK2800

 

また随分と出しにくいのが出てきたなぁ。

 

「テンペスターでガガギゴに攻撃!『カオス・テンペスト』!」

 

腕に装着された銃による攻撃でガガギゴがあっけなく倒される。三体融合の割に攻撃方法が地味だね。

 

エリア:LP4000→3050

 

「俺はこれでターンエンド」

 

十代:場、テンペスターATK2800、手札1

 

「わたしのターン。ドロー」

 

エリア:手札1→2

 

よっしゃぁ!これで勝つる!

 

「速攻魔法《ディメンション・マジック》!自分フィールド上に魔法使い族モンスターが表側表示で存在する場合に発動する事ができ、

自分フィールド上に存在するモンスター1体を生け贄に捧げ、手札から魔法使い族モンスター1体を特殊召喚する。

その後、フィールド上に存在するモンスター1体を破壊する事ができる。わたしは憑依装着ーエリアを生け贄に捧げ、《氷の女王》を特殊召喚!」

 

憑依装着ーエリアが棺に収納され、数秒後氷の髪に白いドレス、氷の杖を持つ女性が棺から出てくる。

 

氷の女王ATK2900

 

「そしてディメンション・マジックの効果でテンペスターを破壊!」

 

背後に現れた棺にテンペスターが吸い込まれ、蓋が閉じたところを氷の女王が魔法で創り出した氷柱が貫く。

 

「くそっテンペスター!」

 

「氷の女王でダイレクトアタック!攻撃宣言時に罠発動!《マジシャンズ・サークル》!魔法使い族モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができ、お互いのプレイヤーは、それぞれ自分のデッキから

攻撃力2000以下の魔法使い族モンスター1体を表側攻撃表示で特殊召喚する。わたしは《デュアル・サモナー》を特殊召喚!」

 

仮面を付けた魔法使いが現れる。

 

デュアル・サモナーATK1500

 

「………俺のデッキには魔法使い族は入ってないんだよなぁ」

 

「じゃあこれで終わりだね。二体の魔法使いでダイレクトアタック!『コールドランス』!『サモン・マジック』!」

 

氷の女王が放った氷柱とデュアル・サモナーが呼び出した使い魔の攻撃で十代のライフポイントはゼロを刻んだ。

 

十代:LP3550→0

 

「ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!」

 

あ、負けてもそれ言うのね。

 

 

 

 

 

「いやーエリアも強いんだな!」

 

「まあ、荘太とも何回もデュエルしてるしね。強くなきゃ相手は務まらないよ」

 

「つか、十代はガガギゴじゃなくて憑依装着ーエリアを攻撃対象に選ぶべきだったんじゃないか?魔法使い族の方がサポートが多いから厄介だろ」

 

あ、それはわたしも気になってた。

 

「エリアにそっくりだから何か気が引けてさ、だから同じ攻撃力のガガギゴを攻撃したんだよ」

 

「あ、そういえばそっくりっスね」

 

「髪型も髪の色も同じなんだなぁ」

 

「あははは、よく言われるよ」

 

本人なんで。

 

「そんじゃあ勉強しますか」

 

「げ、忘れてた」

 

「アニキ、デュエルの前にエリアさんが言ってたじゃないっスか」

 

「十代は完全にデュエルに夢中だったんだなぁ」

 

レッド寮の部屋へ向かってぞろぞろと歩く彼らについて行きながら、わたしは今朝見ていた夢の続きを思い出していた。

 

 

 

 

 

「寂しくはない、かな。確かに、家族には会えないけど、でも、その代わりに千尋や荘太、みんなに会えたし、今の生活も結構楽しいしね」

 

「ほんとに?」

 

「うん。もちろん!ほら、そろそろご飯できる頃だよ。手伝いに行こ!」

 

わたしはそう言って荘太の手を引っ張るのだった。

 

 

 

 

 

あの時はまだ少し強がってたけど、今なら本心から言えるよ。

 

精霊になってこの世界に来たおかげで荘太やみんなに会えて良かったって。

 

 




エリアが精霊に転生する前の年齢は16、17くらいの設定

感想・評価お待ちしてます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

6 月一試験

今回で前アカウントで投稿してた分は終了


「答案用紙が手元に来てない人は挙手してくださいにゃ。……皆さんに届きましたにゃ。解答時間は三時間ですにゃ。それでは筆記試験を始めてくださいにゃ」

 

語尾が特徴的なレッド寮の寮長、大徳寺先生の開始の合図と同時に全員が一斉に答案用紙に問いの解答を書き込む音が響く。

月一試験、筆記試験開始である。

 

 

 

 

 

普通の学校では各教科ごとに試験時間を分けるのだが、ここはデュエルアカデミア。筆記試験よりも実技試験が重視されており、実技試験を行う会場は数に限りがある。

その為に実技試験は午後いっぱいを使って行われるのだがそのツケとして、英・国・数・理・社の基本五教科にデュエルモンスターズに関する講義を含めた六科目の筆記試験を三時間で行うという受験生もビックリなスケジュールが組まれている。

まあ、一科目あたり三十分になるように問題の難易度や数が調整されているのがせめてもの救いだが。

………サービスなのか英語や国語にまで《青眼の白龍》関連の問題が出たのはオーナーのブルーアイズ好きに呆れたが。

また、十代が試験開始から四十分程遅れて来て万丈目がそのことを非難したりといったことがあったが、無事に筆記試験は終了した。

今は購買へ昼食を買いに向かっているところである。

 

「ええぇぇぇ!?もう売り切れ!?」

 

ん?今のは翔の声だな。何かあったのか?ちょっと急ぐか。

購買について最初に目に止まったのは崩れ落ちた翔の姿だった。

 

「翔、こんなところで寝たら通行の邪魔だぞ」

 

「もうおしまいだぁぁぁ〜〜〜」

 

「……十代、何があったんだ?簡潔に頼む」

 

「今日入った新パックを大量に買ってった奴がいたらしくて残り一パックしかないんだってさ」

 

成る程、だからそのパックでデッキを強化するつもりだった翔はこんなになってるのか。

 

『適当に買ったパックじゃ強化できないと思うんだけど』

 

まあ、エリアの言うことも間違ってはいないけど可能性はゼロじゃないしな。

 

「一パックしかないんじゃしょうがない。翔、お前が買えよ」

 

「で、でもそれじゃアニキが」

 

「大丈夫だって!俺のヒーローは今のままでも十分強いからな」

 

「俺も今回はいいんだなぁ」

 

「俺はもともと昼飯買いに来ただけだしな。気にせず買えよ」

 

「隼人君、荘太君…ありがとう」

 

涙を拭いて立ち上がる翔。

 

『テレテテーン。丸藤翔からの好感度が一ポイント上がった』

 

ギャルゲーかよ。そうだとしたら攻略対象の性別が間違ってるぞ。

 

「よし、戻ってデッキ調整しようぜ!」

 

そう言って踵を返す十代。

 

「お待ち!」

 

しかし、購買を出ようとしたとき、奥から出てきた髪を三つ編みにしたおばさんに声をかけられ立ち止まる。

その顔を見た十代が驚きの声をあげる。

 

「今朝のおばちゃん!」

 

十代の話によると、今朝、トラックが坂でエンストしており、それを押すのを手伝ったらしい。

そのトラックの持ち主がこのおばさん(トメさんというのだそうだ)だったとのことだ。

そういう理由なら遅刻したのもしょうがないな。

その後、俺達はそれぞれトメさんがとっておいたというパックを一パックずつ渡された。

トメさんが言うには

 

「レッド生なんだから新しいカードの一つでも無いと実技試験で辛いだろう?」

 

とのこと。……俺、レッド生じゃないんだけど貰っていいのか?

まあ、くれるというのなら有難く頂くとしよう。

早速パックを開ける俺達。

 

「……このカードは相性がいいな」

 

パックに入っていたカード数枚をデッキの同じ枚数のカードと入れ替える。

十代達も自分のデッキと相性がいいカードが入っていたようでデッキを弄っていた。

このカードが役に立つといいんだがな。

 

 

 

 

 

実技試験は一部例外もあるが基本的には同じ寮の実力が近い者同士で組まされる。

そして、その実力は普段の実技の授業の成績で判断され、俺の成績はイエロー生の中でも上に位置する。

故に、同じく上位の実力を持つ三沢が対戦相手として俺の前に立つのは当然と言えた。

 

「こうして正式な場でデュエルするのは久しぶりだな三沢」

 

「ああ、授業外では何度もデュエルしてきたがこうして戦うのは最初の授業以来か………あの時はお前に勝ちを譲ったが、今回は俺が勝たせてもらうぞ」

 

「いいや、悪いが今回も勝ちは俺がもらうさ」

 

「「デュエル!!」」

 

俺のデュエルディスクが表示したのは後攻の二文字。その結果に俺は内心で舌打ちをする。

何故なら三沢のデッキは相手の弱点を突くことで自分が有利な状況を作ることを得意とした所謂メタデッキ。

ただでさえ先攻有利なデュエルモンスターズにおいてメタデッキに先攻を取られるというのはとてもマズイ。

此方の動きを阻害するカードが手札に来ていないと良いのだが、それは高望みというものだろう。

そんな風に俺が思考している間にドローを済ませ、手札を確認した三沢は己が取るべき戦術に従い行動を始める。

 

「俺はモンスターをセット。さらにカードを四枚セットしてターンエンドだ」

 

三沢:場、モンスター(裏守備)、伏せ四枚、手札1

 

「俺のターン。ドロー」

 

荘太:手札5→6

 

三沢の自身有り気な表情と場の状況、さらには相手のデッキがメタデッキだということを知っているせいか、まるで罠満載の城塞に攻め込むような気分になるな。その上手札には除去カードは無しと来た。だが、

 

「ここは臆さず攻める!俺は《ジェムレシス》を召喚!」

 

ジェムレシス ATK1700

 

「召喚に成功したジェムレシスの効果発動。デッキから《ジェムナイト・オブシディア》を手札に加える。そして、魔法カード《ジェムナイト・フュージョン》発動!「この時を待っていた!手札の魔法カード《死者転生》をコストにカウンター罠《封魔の呪印》発動!」っ!?」

 

くそっ!よりによってそのカードかよ!?

 

「ジェムナイト・フュージョンの発動と効果を無効にする。さらにお前はこのデュエル中、同名カードを発動することはできない。ジェムナイトはジェムナイト・フュージョンによる融合が主戦術。これでお前のデッキは百パーセントの力は発揮できない!」

 

大当たりだよこの野郎!

 

「だったら作戦変更、このままバトルだ!ジェムレシスでセットモンスターに攻撃『ジェム・ミサイル』!」

 

ジェムレシスが背中に装備したミサイルをセットモンスターに向かって撃ち出す。

ミサイルが爆発し炎に包まれる直前にカードから壺型のモンスターが飛び出した。

 

メタモルポットDEF600

 

「表になった《メタモルポット》の効果発動!お互いに手札を全て捨て、デッキからカードを五枚ドローする」

 

荘太:手札5

 

三沢:手札0→5

 

役目を終えたメタモルポットは炎に飲み込まれ爆発した。

 

「……手札から捨てられたオブシディアの効果発動。墓地から《ジェムナイト・サフィア》を守備表示で特殊召喚。カードを二枚伏せてターンエンド」

 

『え?』

 

俺の行動に後ろに浮いているエリアが疑問の声をあげる。

 

「どうした?」

 

『んーん、別に何でもナイヨ?』

 

何か言いたそうな表情が少し気になるが既にエンド宣言はしている。

エリアのことを意識から切り離し三沢に向き直る。

 

荘太:場、ジェムレシスATK1700、ジェムナイト・サフィアDEF2100、伏せ二枚、手札3

 

「俺のターン。ドロー」

 

三沢:手札5→6

 

「魔法カード《天使の施し》を発動。三枚ドローし、二枚捨てる。《ハイドロゲドン》を召喚!さらに装備魔法《早すぎた埋葬》発動!ライフを800ポイント払い墓地から《オキシゲドン》を特殊召喚!」

 

三沢:LP4000→3200

 

ハイドロゲドンATK1600

 

オキシゲドンATK1800

 

茶色く濁った水で構成された四足の恐竜と緑色の翼竜が現れる。

 

「ハイドロゲドンでジェムナイト・サフィアを攻撃!『ハイドロ・ブレス』!」

 

攻撃力1600で守備力2100に攻撃だと?

 

「攻撃宣言時に速攻魔法《エネミーコントローラー》を発動!ジェムナイト・サフィアを攻撃表示に変更する!」

 

っ!これを通すとマズイ!

 

「チェーンして罠発動《輝石融合》!俺の手札、及びフィールドのモンスターを墓地に送りジェムナイトと名の付いたモンスターを融合召喚する!」

 

よし!これで凌げる!

 

「甘い!俺も罠をチェーン発動!永続罠《融合禁止エリア》!このカードが存在する限り融合召喚をすることはできない!」

 

「なら俺も再びチェーンして罠発動《サンダーブレイク》!《ジェムナイト・アンバー》をコストにして融合禁止エリアを破壊するぜ!」

 

温存しといて良かった!

 

「それも予測済みだ!永続罠《宮廷のしきたり》発動!このカードが存在する限り、宮廷のしきたり以外の永続罠は破壊されない!さらにチェーンして《積み上げる幸福》を発動!このカードはチェーン4以降に発動可能なカード。デッキからカードを二枚ドローする」

 

くそっ!こっちのカードを全て防いだ上にチェーンを稼いでドローカードの発動条件まで満たしやがった。

歯噛みする俺に三沢は告げる。

 

「ジェムナイト・フュージョンを封じられれば他のカードで融合を狙ってくること。そして、その手段を守る為に天敵である融合禁止エリアを破壊しようとしてくること。さらに、お前のデッキにはフリーチェーンのカードは多いがカウンター罠の類が入っていない。よって、融合禁止エリアと宮廷のしきたりがあればお前のデッキは封じることができる!」

 

「お前は予知能力者か読心術者か!?」

 

「予知でも読心でもない。予測と計算だ!」

 

んなバカな、と思うが実際にこちらの策を防いだ以上は三沢の言う通りなのだろう。

 

「積み上げる幸福の効果で二枚ドロー」

 

三沢:手札3→5

 

「そして宮廷のしきたりと融合禁止エリアの効果でサンダーブレイクと輝石融合は不発となる。そしてエネミーコントローラーの効果でジェムナイト・サフィアが攻撃表示となり、バトル再開だ!」

 

攻撃力0のジェムナイト・サフィアがハイドロゲドンの攻撃に耐えられる筈も無く、破壊され、ライフポイントが大きく削られる。

 

荘太:LP4000→2400

 

「さらにハイドロゲドンの効果発動!このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し、墓地に送った時、デッキからハイドロゲドン一体を特殊召喚できる。攻撃表示で特殊召喚!」

 

ハイドロゲドン(二体目)ATK1600

 

「オキシゲドンでジェムレシスに攻撃!『オキシ・ストリーム』!」

 

僅か100ポイントとはいえ、その攻撃力の差は大きく、ジェムレシスもまたサフィアと運命を共にする。

 

荘太:LP2400→2300

 

そして、三沢のバトルフェイズはまだ終わっていない。

 

「二体目のハイドロゲドンでダイレクトアタック!『ハイドロ・ブレス』!」

 

荘太:LP2300→700

 

マズイ、これは非常にマズイ!

僅か一ターンでここまでライフを削られるとは思って無かった。しかも、三沢のフィールドにはハイドロゲドン二体とオキシゲドン一体がいる。あのモンスターが出てくる前に片付けないと。

 

「カードを一枚伏せ、ターンエンド」

 

三沢:LP3200

場、ハイドロゲドン(一体目)ATK1600、ハイドロゲドン(二体目)ATK1600、オキシゲドンATK1800、融合禁止エリア、宮廷のしきたり、伏せ一枚、手札4

 

「俺のターン!ドロー!」

 

荘太:手札2→3

 

「《ジェムナイト・アレキサンド》を召喚!」

 

現れたのは宝石の王様とも呼ばれる鮮紅や青緑に輝くアレキサンドライトが散りばめられた白銀の騎士。

 

ジェムナイト・アレキサンドATK1800

 

「アレキサンドを生け贄に捧げ効果発動!デッキからジェムナイトの通常モンスター一体を特殊召喚する!『カラーチェンジ』!」

 

アレキサンドが七色の輝きに包まれその姿を変える。

 

「来い!《ジェムナイト・クリスタ》!」

 

輝きが収まり、アレキサンドが居た場所に立っていたのは、仲間との絆を大切にし、クリスタルパワーで戦うジェムナイトの上級戦士。

 

ジェムナイト・クリスタATK2450

 

「クリスタでハイドロゲドンに攻撃!『クリスタル・シャイニング』!」

 

クリスタの全身のクリスタルが輝きを増し、三沢のフィールドのハイドロゲドンを包み込み、その光によって蒸発させる。

 

『攻撃方法が全然地属性じゃないんだけど』

 

エリア、そこは気にしたらダメだ。

 

三沢:LP3200→2350

 

「カードを二枚伏せてターンエンド」

 

荘太:LP700

場、ジェムナイト・クリスタATK2450、伏せ二枚、手札0

 

「ふ、融合ができないなら上級モンスターで戦おうというわけか。だが、それは甘い考えだ!ドロー!」

 

三沢:手札4→5

 

「永続罠《リビングデッドの呼び声》!墓地のハイドロゲドンを特殊召喚する!」

 

ハイドロゲドンATK1600

 

このタイミングで蘇生したということは……。

 

「行くぞ荘太!魔法カード《ボンディングーH2O》発動!俺の場のハイドロゲドン二体とオキシゲドン一体を生け贄に捧げ、デッキ、手札、墓地から《ウォーター・ドラゴン》一体を特殊召喚する!墓地から特殊召喚!」

 

ウォーター・ドラゴンATK2800

 

ついに出て来やがったか、こいつを単体で殴り倒せるモンスターは融合を封じられた俺のデッキには殆どいない。ライフが尽きる前に引ければいいんだが……。

 

「ウォーター・ドラゴンでジェムナイト・クリスタを攻撃!『アクア・パニッシャー』!」

 

『ハイドロ○ンプ!』

 

っ!?

 

ウォーター・ドラゴンの口から激しい水流が噴き出し、その水圧でクリスタが粉砕される。

 

荘太:LP700→350

 

俺のライフがついに500を切るが、それを無視して隣のバカを睨む。

 

「お前どっちの味方だ!?」

 

『もちろん荘太の味方だよ。でも水属性使いとしては今のは譲れないとこだったんだよ!』

 

「お前なぁ……」

 

頼むから黙っててくれ。

 

「これでターンエンドだ。余所見をしている余裕はないぞ!」

 

三沢:LP2350

場、ウォーター・ドラゴンATK2800、融合禁止エリア、宮廷のしきたり、リビングデッドの呼び声、手札4

 

「わかってるさ!ドロー!」

 

荘太:手札0→1

 

「《強欲な壺》を発動して二枚ドロー!」

 

荘太:手札0→2

 

よし!これならウォーター・ドラゴンを倒せる!

 

「永続罠発動!《正統なる血統》。墓地の通常モンスター、ジェムナイト・クリスタを特殊召喚!」

 

ジェムナイト・クリスタATK2450

 

「だがそのモンスターではウォーター・ドラゴンは「クリスタでウォーター・ドラゴンを攻撃!」何!?」

 

先程ハイドロゲドンを倒した時とは違いウォーター・ドラゴンに向かって殴りかかるクリスタ。

攻撃力が低い相手とはいえ、見逃す訳も無くクリスタに襲いかかるウォーター・ドラゴン。

二体の拳と牙がぶつかり合い、僅かな拮抗の後粉砕された。

 

―――ウォーター・ドラゴンが。

 

三沢:LP2350→1700

 

「!?何故だ!攻撃力はウォーター・ドラゴンの方が上だぞ!」

 

「ダメージステップ時に手札の《ジェム・マーチャント》の効果を発動していたのさ!」

 

「ジェム・マーチャントだと!?」

 

「ジェム・マーチャントは自分フィールド上の地属性の通常モンスターが戦闘を行うダメージステップ時、このカードを手札から墓地へ送って発動でき、そのモンスターの攻撃力・守備力はエンドフェイズ時まで1000ポイントアップさせる効果を持つ。この効果でクリスタの攻撃力を上げたのさ」

 

ジェムナイト・クリスタATK2450→3450

 

「そんなモンスターがいたとは……研究不足だったか。だがウォーター・ドラゴンはタダでは倒れん。ウォーター・ドラゴンが破壊された時、墓地のハイドロゲドン二体とオキシゲドン一体を特殊召喚することができる」

 

ハイドロゲドン(一体目)ATK1600、ハイドロゲドン(二体目)ATK1600、オキシゲドンATK1800

 

「これで次の俺のターンにもう一度ウォーター・ドラゴンを特殊召喚して攻撃すれば俺の勝ちだ!」

 

三沢の言葉にニヤリと笑う。

 

「俺のバトルフェイズはまだ終わってないぜ!罠発動《ジェム・エンハンス》!」

 

「そのカードは!」

 

「俺の場のジェムナイト一体を生け贄に捧げ、墓地のジェムナイト一体を特殊召喚する。クリスタを生け贄に捧げ、クリスタを特殊召喚!」

 

ジェムナイト・クリスタATK2450

 

本日三度目の登場。

 

「攻撃表示で蘇生したのは失敗だったな。クリスタでハイドロゲドンを攻撃!」

 

今度は掌に創り出したクリスタルの槍を投擲して攻撃するクリスタ。

バリエーション豊富だな。

 

三沢:LP1700→850

 

「カードを一枚伏せてターンエンド。ライフ差は500。追いついたぜ三沢!」

 

荘太:LP350

場、ジェムナイト・クリスタATK2450、伏せ一枚、手札0

 

「くっ!?ここまで追い込まれるとは想定外だ。だが勝つのは俺だ。ドロー!」

 

三沢:手札4→5

 

「ついに来たか。儀式魔法《リトマスの死儀式》を発動!レベルの合計が8以上になるように場か手札からモンスターを生け贄に捧げ《リトマスの死の剣士》を儀式召喚する。レベル4のオキシゲドンとハイドロゲドンを生け贄に捧げ、降臨せよ!《リトマスの死の剣士》!」

 

三沢のフィールドに紫色のマントを羽織った二刀流の剣士が降臨する。

 

リトマスの死の剣士ATK0

 

攻撃力0の儀式モンスターか……。

サクリファイスみたいに厄介な効果を持ってるんだろうな……。

 

「リトマスの死の剣士は戦闘では破壊されず、罠の効果も受けない。そして、罠カードがフィールド上に表側表示で存在する限り、このカードの攻守は3000になる!」

 

リトマスの死の剣士ATK0→3000

 

「リトマスの死の剣士で攻撃!」

 

「させるか!罠発動《マジカルシルクハット》!デッキから二枚のジェムナイト・フュージョンを攻守0のモンスター扱いとして、クリスタと合わせてシャッフルし、裏側守備表示でセットする」

 

俺のフィールドに現れた三つのシルクハットにクリスタと二枚のジェムナイトフュージョンが隠れる。

 

「くっ……なら右のシルクハットに攻撃だ!」

 

リトマスの死の剣士が三沢の選択したシルクハットを切り裂く。

 

中に入っていたのは……。

 

ジェムナイト・クリスタDEF1950

 

シルクハットの切れ端が消滅し、数秒遅れてクリスタも破壊される。

 

「……マジカルシルクハットの効果で特殊召喚した二枚のカードはバトルフェイズ終了時に破壊される」

 

「決められなかったか……。ターンエンドだ」

 

三沢:LP850

場、リトマスの死の剣士ATK3000、融合禁止エリア、宮廷のしきたり、リビングデッドの呼び声、手札3

 

なんとかこのターンは凌いだが、この状況はヤバイ。

手札もフィールドも空。

ライフは僅か350ポイント。

そして相手のフィールドには攻撃力3000のモンスター。

絶対絶命のピンチだ。

だが、まだ逆転のチャンスは残っている筈だ。

だから

 

「俺はデッキを信じる!ドロー!」

 

荘太:手札0→1

 

引いたカードは………。

 

 

《手札抹殺》

 

 

――――――終わった。

 

 

『諦めるな!まだチャンスは残ってるよ!』

 

エリアさんや手札0で手札抹殺を引いても相手のデッキを減らすぐらいしかできねえぞ?

 

『本当に手札0ならそうだっただろうね』

 

どういう意味だ?

 

『このデュエルで二人が使ったカードの効果をよーく思いだしてみたら?』

 

このデュエルで三沢に使われたカード………。

封魔の呪印、メタモルポット、融合禁止エリア、宮廷のしきたり………。

俺が使ったカード……。

ジェム・レシス、ジェムナイト・フュージョン、ジェムナイト・オブシディア……サンダー・ブレイク……ん?

 

待て、今何に引っかかった?サンダー・ブレイクか?そういえばあのカードを伏せた時にエリアが何か驚いてたような……コストが用意できてないならともかく、あの時は用意できていた。

何で驚いた?まだ何かできることがあったから?確かに普段なら墓地のジェムナイト・フュージョンを回収してコストにしてる。でもあの時は封魔の呪印でカードの発動が封じられ………カードの発動?

 

…………そういうことか!

 

『気付いたみたいだね。お姉さんが褒めてあげよう』

 

「ははは…ありがとな、お前のおかげで諦めずにすんだ」

 

『お礼は勝ってからね。あとお礼なら食堂のジャンボパフェ奢りで』

 

そんじゃあ先ずは勝たなきゃな。

 

「墓地のジェムナイト・フュージョンの効果発動!」

 

「何!?封魔の呪印の効果でそのカードの発動はできない筈だ!」

 

「ああ、確かにカードの発動は封じられている」

 

「なら何故……」

 

「でも、効果の発動は封じられてないんだよ!」

 

「そうか!ジェムナイト・フュージョンの墓地で発動する効果はカードの発動では無い……。だが、融合を封じられている今回収してどうするつもりだ!?」

 

「こうするのさ!先ずは墓地のサフィア、オブシディア、アンバーを除外して三枚のジェムナイト・フュージョンを回収!そして魔法カード《手札抹殺》発動!」

 

「そういうことか!手札交換の為に」

 

「最後は運試しってな。お互い手札を全て捨てその枚数分ドロー!」

 

一枚目、《凡骨の意地》、二枚目、《手札断殺》、三枚目。

 

「ドロー!このカードは……」

 

よし、こいつに賭ける!

 

「俺は《レスキューラビット》を召喚!》」

 

レスキューラビットATK300

 

ヘルメットをかぶり、首から通信機をぶら下げたウサギが現れた瞬間、観客席の女子達から黄色い声が上がる。

 

「レスキューラビット?初めて見るモンスターだな。それにレベル4にしては異常に攻撃力が低い……。効果が強力なのか?」

 

流石は三沢、ステータスが低くても油断はしないか、ブルーの男子、特に万丈目辺りは絶対油断するだろうな。現にさっきそれで負けてたし。

 

「レスキューラビットを除外して効果発動!デッキからレベル4以下の同名通常モンスター二体を特殊召喚する。デッキから二体の《ジェムナイト・ガネット》を特殊召喚!」

 

ジェムナイト・ガネット(一体目)ATK1900、ジェムナイト・ガネット(二体目)ATK1900

 

「そして墓地のアレキサンドを除外してジェムナイト・フュージョンを回収し、速攻魔法《手札断殺》発動。お互いに手札を二枚墓地に送りデッキから二枚ドローする。」

 

「また手札交換か」

 

ドローした二枚のカードを確認する。

………これは、さっきのレスキューラビットといい、この二枚といい、トメさんに感謝しなきゃな。

 

「三沢、俺の新しい切り札を見せてやるよ」

 

「新しい切り札だと?」

 

「儀式魔法《大邪神の儀式》発動!レベルの合計が8以上になるように場か手札のモンスターを生け贄に捧げ《大邪神レシェフ》を儀式召喚する。レベル4のガネット二体を生け贄に、降臨せよ!《大邪神レシェフ》!」

 

フィールドに現れた石板がヒビ割れ神々しくも禍々しいモンスターが現れる。

これこそがこのデュエルを終わらせる機械仕掛けの神デウス・エクス・マキナ。

 

大邪神レシェフATK2500

 

レシェフが現れた時は驚いていた三沢だったがステータスがそれ程高くないことに気付き、初めて見るモンスターを警戒している。

 

「墓地のクリスタを除外してジェムナイト・フュージョンを回収。そしてレシェフの効果発動!一ターンに一度手札の魔法カード一枚を墓地に送ることでエンドフェイズまで相手フィールド上のモンスター一体のコントロールを得る!」

 

「コントロール奪取だと!?」

 

「『邪神の洗礼』!」

 

レシェフから放たれた怪光線が当たり、ギリギリと音が出そうな動きで身体の向きを変えるリトマスの死の剣士。

そのまま命令を降す。

 

「リトマスの死の剣士でダイレクトアタック『裏切りの葬死斬』!」

 

「ぐあああぁぁぁっ!」

 

三沢:LP850→0

 

元配下の裏切りにより、三沢のライフは0を刻んだ。

 

 

 

 

 

試験は無事に終わり、俺は十代達と打ち上げを行った。詳細は省くが楽しいものだったことだけは述べておく。万丈目に勝利し、昇格を告げられたが赤が好きだからと断った十代。そのことを泣いて喜ぶ翔。同じく喜ぶ隼人。次は負けないと意気込む三沢。次も負けないさと返す俺。そんな俺達を見て笑うエリア。途中から来た明日香達も交えた打ち上げは夕方まで続いた。

 

 

 

 

 

因みに、デュエル中にエリアとした約束の結末はエリアがジャンボパフェを五杯も食べるという暴挙により、俺の財布ポイントが0を刻むというものだった。

 




仕事が現在単純作業なので作業中にデュエル構成を考え中。
一週間以内に次話投稿したいなあ。

感想・評価お待ちしてます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。