TSして最強美少女になった俺の恋姫無双道楽 (たぬたぬたぬき)
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平凡主人公、恋姫へ。
目の前の風景が切り替わって驚く。
見慣れた駅のホームから広い広い砂漠、ではなく荒野?に。
意味のわからないことに頭が働かない内に何やら話しかけられる。
いや、荒っぽい人には縁遠い俺には聞きなれない脅し・暴力関係の言葉だ。
「おうおう、姉ちゃん。一人じゃ危ないぜぇ?」
「あっし達が守ってやるでやんすよっ」
「ふひ、ふひひひ…」
だが不思議と何も感じない。
何とも思わない。
……やっぱり気色悪い寒気は感じたわ。
男達の体勢から、相手が晒している剣や斧といった武器が本物だと何故か分かる。
そしてやはり何も感じない。
掠りでもすればカッターで切ったのとは比ではない痛みが走るであろう、危険な物がそれこそ豆腐にでも見える。
「ちっ、気でもやってんのか?」
内面の変化に首を傾げて無反応なこちらを快く思わなかった、三人の中で一番強い男が歩むと同時に手を伸ばして来る。
何故か湧き上がる嫌悪感から、無手でも対応可能な手段を思い浮かべる。
身体へ打ち込み吹き飛ばす・腕を取り投げ飛ばす・手首を斬り落とす……。
様々な方法が武術を齧ったことすらない俺に出来るだろうと確信がある。
一つ適当に選ぶと、思考が走るのと同時に身体が動き相手が一歩目を踏み切る前には足元を軽く踏み付けていた。
漫画とかラノベなんかで出て来る、震脚って奴だったはず。
地団駄を踏むように、足元の虫を潰すような感覚だったはずなのに身体を正確に操作し効率この上なく良い動きをした確信がある。
まるで二重に人格があるのかと思うような若干の気分の悪さに顔を顰めていると男達は逃げ去って行った。
逃げ足早いな……武器の構えもなってないのに走りは達者なようだ。
広く、広く蜘蛛の巣状に裂けてしまった土地を見ては有り得ないと考えつつもまぁまぁだなと当然の様に納得してしまう二つの感想が浮かぶ。
一人になった所で現状を整理する。
確か、ここに来る前には駅にいた筈だ。
学校への通学途中。
午後からの講義を受ける為だから時間は11時位。
スマホを弄って電車を待っていた。
ここまでは間違いない。
それで、瞬きもしない間に一気に荒野に。
いや、何かあったような気がする。
けど思い出せない。
すごい情報量の出来事が起きたような…。
いきなり太陽を見たみたいに記憶が霞んでいる。
中々復活しない記憶に見切りをつけると今度は予想に入る。
一瞬の内に全く別の場所に移動している。
つまり、いつの間にか気絶していて目を覚ましたとか。
瞬間能力に目覚めたとか。
夢遊病みたいなのに掛かってしまったとかあるだろうか。
自分なりに意味不明な事象にあたりをつけてみるものの。
股間からなくなっているものと、胸にある膨らみが場所が移動しただけでないと訴えてくる。
性別変換にまで目覚めとかだったら男に戻れるのになぁと切に思う。
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白蓮殿との語らい。
あと太守なのに〇〇なのはおかしい!とかはあんまり深く考えないで下さい。作者はあんまり三国志とか歴史には詳しくないです。
中国の、昔話に三国志というのがある。
大雑把に言うと国が崩壊して国取ったる!みたいな。
日本でいうと戦国時代と同じだったはず。
俺でも呂布とか関羽位なら知ってる。
そしてその話を元に武将なんかを女体化させた話が、恋姫無双である。
俺が〇学〇年生の頃にやったアダルティーなゲームだ。
歴史が赤点スレスレか、どっぷり赤点な成績な俺でも楽しめたよいゲームだった。
何しろ楽しみ方としては、ほほー曹操の此処をこう解釈して女体化させて……ここら辺の歴史の流れはゲームオリジナルなんだなとかいうトンチキなものでなく。
うひょーこの子可愛いー、〇〇ちゃん。へーにょた元は…どうでもいいや、と言った感じ。
だってわざわざ真名なんて物があって、ぶっちゃけ曹操だの劉備だのなんてのはなくたって構わない風に作ってあるのだから。
脳内変換で、曹操は高慢ちき・自信家・野心家な属性。
それだけ理解出来たら後は華琳ちゃんの強がりシコシコと本名などポイーである。
現在俺の目の前でお供を引き連れ一緒に飯を食っているのも恋姫の登場人物の一人、公孫瓚こと白蓮だ。
名前ははくれん・びゃくれんのどっちかだったと思うが忘れた。
「で、公孫瓚さんはゆーしゅーくぐんの太守?です、と」
「ああ、かなり怪しい発音だが…間違いない」
「偉いんですね」
「それなりな、だから山狩りなんてのにも行く義務がある」
「その節は迷惑を掛けてしまって、ごめんなさい」
「あれほどの武を見れたんだからいいさ、お相子お相子」
公孫瓚さんが近くにいた部下になぁ?と同意を求めるとその人も笑って頷く。
いい人達だなぁと更に追加で飯を注文する。
あれから何故か服は着ていたので、飯と住処を探さねばと思って彷徨っていた所再度、最初の奴らとは違う山賊?に出会った。
勿論即締め上げたのだが、近くに潜んでいた山賊の仲間が逃げ出したので思わず追い掛ける。
追いかけて行った先が偶然にも山賊の本体だったため交戦。
こちらの実力が分かり出した所で大多数が懸命にも逃走を選び全員を殲滅すんのは難しいかと思っていた所で公孫瓚さん登場。
窮鼠が噛もうとする暇さえ与えずに電光石火の討伐だった。
結果太守の山狩り作戦を俺が乱入してしまった形になった訳だが。
上手く逃がさずに囲い込めはしたので良かった良かったという風になった。
当然並か多少の武力なら文句の一つでもあるのだろうけれど、自分で言うのもなんだが極上の力を持った人間災害を相手にやいやいと言うのも気が引けたのだと思う。
自分でも、今のような力を持たないまま例えば恋(呂布)に面と向かってあんた暴れ過ぎと指摘などとてもじゃないが出来ないし。
「つまり、行き先も現在地も分からずふらふら旅をしていて、ついでに山賊退治をしていたと」
「大体そんな感じです」
既に食後の茶に入っている公孫瓚さんを尻目に尚奢られながら今までの経緯を話す。
とは言ってもそのまま話せばまず話が通じないので、適当に歩いていたらとかなり、不味い位簡潔に話した。
そうすれば良い人の公孫瓚さんは自分話に肉付けをして理解してくれた。
「ボーッとした奴だと思ったが、性根の方も適当だなぁ」
「性分なんですよきっと」
「正しく適当だ」
笑われてしまった。
とは言ってもしょうがないと言えばしょうがない。
いつの間にかエロゲーの世界にいたというのを真面目に話してもどうしようもないし。
化け物じみた身体があるのだから、生きて行けるのは問題ない。
ある程度腰を落ち着けてから謎のエロゲー世界への性転換参加についてじっくりと考えようと思う。
「ご馳走様でした」
「よく食べたなぁ……」
「美味しかったです」
「それは良かった」
冷や汗をかいている公孫瓚さんに心を込めて頭を下げる。
大食いタレント並に食べちゃったからね。
でもまだ腹に余裕がある、というかまじで食べようと思えば倍は軽く食べられると思う。
腹一杯で止めたんでなく公孫瓚さんや一般兵の量と自分の食事量を比べてそろそろ止めとくかって決めたし。
運ばれてきた茶を啜りながら自身の体の不可思議に感心する。
「ところで」
「はい?」
「これからどうするんだ?」
ふむ。
まずは何処かに住む所を探して、飯が食えるようになるのが目標かなぁ。
最悪洞窟に住んで狩りで生活もスペック的には問題ないけど精神的に落ち着かない気がする。
やっぱり普通に屋根の下で文明的な生活がしたい。
キャンプやサバイバルは趣味がいい。
「住む所と職を探します」
「ほー」
「職はあんまり忙しくなくてぼちぼち給料が貰える所で…まかないとか付いてると最高ですね」
「住む所は?」
「……住み込みだとまとめて済んで楽ですよねぇ」
「見聞きした通りの奴だなぁ、お前は」
「どういう意味ですか」
「面倒臭がりの緩い奴だったことだよ」
間違いじゃないから困る。
楽な方がいいに決まってるだろう。
忙しすぎて忙殺も嫌だし、金がないのも嫌だ。
ならばほどほどが丁度いいでしょ。
バイトしかしたことない俺が語るのはおかがましいが。
「丁度いい、お前を楽させてやる提案があるぞ」
「何です?」
「お前の言うような感じの仕事があるんだ」
「なんと」
「雇い主の身分もしっかりしてるし、なんといっても太守直々の紹介だぞ?」
なるほどなー。
偉い人には伝があるって話は漫画とか噂で聞いたことがある。
こういうことがあるから偉い人とは仲良くしておけ、人脈大事にって言葉があるんだな。
「じゃあそれで」
「よし来た!任せておけ!」
筆が勝手に白蓮さんを…。
話はあらすじの一人旅とは反対方向にいってますが、定住はしません。
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太守殿と、賃上げ交渉。
はじめに。
実際の客将とこのお話の客将は異なる場合がありますので、ご注意下さい。
客将。
普通は将軍なんかは勢力に属していて、つまり公孫瓚さんの部下であり忠誠を誓っているものなのである。
ところが客将というのはお客さんなのである。
つまり兵士なんかのトップだけどその上司に、頼むからやってくれよ、とお願いされて地位に着いているのだ。
野球における外人選手、親会社からの出向社長、 雇われ店長なんかがニュアンス的に近いだろう。
物凄く乱暴に言うと人でなく金とか生活の保証に忠誠を誓っているもの様なものだな。
いつぞややっていた派遣のドラマみたいなもので、太守はスキルを、客将は金とかを求めている。
戦国時代としては浪漫のろの字もない話だがそう簡単に忠誠を誓える人に会える訳でもないのでありとしては普通にありだ。
これもまた現実的で夢の少ない話だが。
「もう一声!もう一声!」
「ちょ、本当に勘弁してくれ!」
という訳で契約というのは大事なのである。
これが普通の文官武官、じゃーお前らまとめてこれ位ね、と言われる様なら逆にしない方が良い値上げ交渉。
武は天下無双、頭はぼちぼち、一軍も何故か率いることが出来る現在の俺の能力を省みての行動だ。
「俺みたいなの滅多にいないよ? だったらもっと出してもいい筈!」
「それはそうなんだけどさ! 客将にこれ以上は出せないって!」
「んな建前よりも能力に応じた賃金を望みます」
「ぬぬぬぬ………」
「ほらほら、俺をこの値段でこき使っていいのかにゃー」
「人聞きが悪いことを…!」
「ふふん、俺の給料低いわーって言いふらしちゃうぞ」
「本当に止めてくれ…というかお前の為にもやるなよ」
確かに。
雇われて太守に直接賃上げ交渉して、上げてもらったのに安いわー安いわーと言いふらすのはあまりにも人聞きが悪い。
既に交渉したのは多めに見てもらってもいいだろう。
ほら、1回目だし、ある程度自身のある人は誰だってやってる気がする。
「少なくとも、私はこんなにしつこくてやり難いのは初めてだな」
「下手に能力があって自重してないからなぁ」
「自覚はやっぱりあるんだ……」
脱力して机に突っ伏す公孫瓚さん。
前までの普通に平凡な能力値で、特にずば抜けた努力もしてない凡人の頃より超スペックだから。
ナチュラルに世界最強と言ってもあながち間違ってなさそうな今。
ろくに法もなく単純かつ有効な暴力が推定トップなのだからそりゃタガも外れるってものだ。
「ま、いつまでも粘っても仕方なし」
「ついに決める気になったか!」
ここで相手に決定を委ねているような姿勢は太守としてどうなんだろうか。
立場は上なのだからこれで決めろとか……最初の方に言ってた気がするな。
「ん、ここはばっさり切って、ついでにちょっと引いてこれで」
「おー……これで小言に少しでも言い返せる…」
やはり余り高いと財務担当?の人とかに言われてしまうのか。
偉いと言っても万能に上の立場になれる訳ではないらしい。
お金は偉いと世知辛いことを再確認してから立ち上がり部屋を出る。
「で、引いたんだから変わりに偶にでいいからお願い聞いてね」
「ちょ」
「宜しく」
「あーもうっ、あんまり無茶なのは無しだからな!」
そこで駄目だとか言わない辺りいい人だなぁと思う。
やったぜとガッツポーズで返事をしてから公孫瓚さんと別れる。
さて、何をしようか。
公孫瓚さん曰くサボりすぎなければいい、極論出かけた時に武功を上げればそれで構わないという。
流石に本当に武功だけだと不味いから一般兵の指導などもやってくれと言われているが。
身体を動かす系ではないものも一応あるが、外様にわざわざ重要な案件を任せる筈もなくきちんとやらなくてもすぐに済むものだ。
であるならば必然と訓練に参加するとなるのだが…。
「やや、これはこれは……悠殿ではありませんか」
「どうも、趙雲さん」
「折角会ったことですしどうですかな?」
何故か何時でも戦場に赴けるレベルで気合いから整え、武器もちゃっかり用意している趙雲さんに会ってしまった。
槍を掲げ軽い誘い文句の言葉とは裏腹に響きや目が絶対に逃がさねぇと言っている。
この人、微妙に苦手なんだよな……。
ちなみに悠は俺の名前。
女になっても通用する響きだからそのまま使っている。
「ささ、そうと決まれば早速参りましょう、時は待ってくれませんぞ」
俺はまだ何も返事してぬぇ。
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趙雲さんと、手合わせな一幕。
「まだですかな?」
「もーちょい待ってー」
俺は目の前の趙雲さんが割と苦手である。
正しくは苦手であった。
というのも第一印象が、あー何か話しにくいかもというだけであるが。
普通ならそこである程度距離を置いて話しやすい人の方に流れていくと思う、俺は。
だがしかし俺にけちょんけちょんにされた趙雲さんは何故か俺によく絡んできてくれて、俺はほいほいと仲良くなったのである。
いつの間にか話しにくいのもなくなっているのは俺のコミュ力の高さか、あるいは趙雲さんのコミュ力の高さか。
「ん、っと」
少し散らかっている訓練用の武器郡から槍を選び出して軽く振る。
多少古いけど一番バランスが良くて扱いやすい。
普通に持ったり指の上に尻の部分を載せたり真ん中ら辺を指に載せてヤジロベーじみた事をやって確認する。
最後に数度突き払ってから槍を支点に飛び上がり地面に向かって叩きつける。
気を通し通常時より遥かに優れた頑丈さを持っている槍は深く地面を抉る。
舞い上がった土煙を一息で蹴散らすと準備完了だ。
「じゃあどうぞ」
「では……参る!」
隙は少なく構えた型から吶喊してくる趙雲さん。
地を蹴った後ほとんど間を置かずに突いてくる。
わざと読みすぎることなく一手ずつ突きの軌道を予測しては避け柄で逸らしていく。
力は込めすぎず丁寧に。
突きが終われば払い次々打ち込んでくる攻撃を流して捌く。
良すぎる目と圧倒的なセンス、無尽蔵に動いてくれる身体が淡々と趙雲さんの槍をいなすことを可能にしてくれる。
息も乱さず捌いていると頃合。
受けに徹していればまぁまず有効打を受けることがないと分かっているはずだろうに焦れる趙雲さん。
仕切り直そうと思い、こちらの柄が向かって来る穂先に接触する瞬間に押し返す力を叩き込む。
「っつぅ…!」
暴れる槍を見事に抑え込む趙雲さんを後退する様に連続して力を発する。
苦悶の声と共に槍でも届かない距離に押し帰っていった趙雲さんは何とか勢いを殺して再度構える。
「お見事です」
耐えた趙雲さんへと今度はこちらから踏み込んで行く。
「そろそろ終わりましょっか」
「はぁ、はぁ…は、はい……」
息も絶え絶えに返事をしてくれる趙雲さんの返事を聞いてから汗を拭き水分を取る。
キンキンに冷えたなんてのは到底出来ないものの温くても運動後の水は美味い。
一気に飲みで軽く腹をちゃぽらせてから趙雲さんに近付く。
「お疲れ様です」
「ははは……そんなことないですぞ、と軽口を言えればむぷっ」
飄々とした趙雲さんは俺との手合わせの後は大抵余裕がなくなっている。
大の字で寝転んだりはしないものの膝を付いたり地面に座り込んだりして一歩も動こうとしなくなる。
本当に疲れ果てているのが分かる様相だ。
なので新しいタオル代わりの布を顔に押し付けてもみもみと汗を拭ってあげる。
当然布は透明でもないので顔が揉まれて歪む所は見えないものの好きな様に弄られる趙雲さんというのが既に面白い。
唯一の抵抗として声を上げるも変な声になるように俺がわざと布を押し付けるので無抵抗になったしまったのも面白い。
男特有のむらむらはなくなったものの女性への興味はなくなってないからこういうのが凄く楽しい。
今は同性だから遠慮しなくていいし。
性欲がなくなったんだからこれ位いいよね。
「きれいきれい……」
「……」
「きれいきれい……」
「……」
「ほい、出来上がり」
「あの、本当にもう勘弁してくれ下され」
布を退けた下の趙雲さんの顔は結構赤い。
今までのやり取りでこういうのならいいかなぁと思ったんだけど。
前とか小脇に抱えて自室まで連れて帰ってあげたりしてたんだけど。
駄目だったかなぁと謝る。
「ごめんごめん」
「分かって下されば良いのです」
「にしてもこういう趙雲さんも中々…」
「くっ……動きの鈍い自分の身体が憎い……!」
手足が震えて子鹿の様な趙雲さんの顔を弄りまくる。
ほっぺを揉んだり耳朶を弄ったり。
一応抵抗してくるが、体力を最後まで絞り出す様にじっくり戦ったので無いに等しい。
「……後で酷いですぞ」
「………」
「あ、ちょ、なにを……!」
基本的にからかい的な意味でたちの悪い趙雲さんの後での仕返しは怖いが。
やったものは仕方ないので開き直るとしよう。
強引に肩車をすると城の中を駆け回り始める。
俺も多少恥ずかしいが普段クールを心掛けている趙雲さんの方がダメージでかいはず。
公孫瓚さんの所は勿論欠かさずに確りと趙雲さんの勇姿を披露して回った。
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ゆるゆると盗賊討伐遠征。
旅なんてものをしたのは、男であった頃の小学生だか中学生の時に家族としたものだったか。
荷物をトランクに放り込んでから父親の車に乗り込み向かったことを覚えている。
投げてやることが出来る位だから荷物量もたかが知れていた筈だ。
1日分の着替えに携帯ゲーム、おやつだったような気がする。
大きくないバックの中身を改めて頭の中で羅列させるとあまりの少なさに驚く。
まぁ、20だか21世紀だかは移動では汗1つ流さず1時間で100キロでも動ける車に、住だけでなく衣食プラスサービスも提供してくれる宿に泊まるのだ、コンビニまで活用すれば財布だけでも寧ろ行ける。
(だからこれはないわー)
数えるのも馬鹿らしい人数が隊列を組んで行軍。
目標は何と言ったか、なんちゃらという盗賊の討伐。
食い詰めたのか落ちぶれたのかは知らないがこういう手合いはいつの世もなくならないと趙雲さんが言っていた、なるほどなーと思った。
なんちゃらという盗賊を狩りに行くのは良いがそこは広大な中国。
あまり近い場所で盗みをやる馬鹿な盗賊ではもないのである程度遠い場所で活動している、それを狩るならつまり遠征だ。
ある程度遠い場所(1日で行って帰れる距離ではない)
広すぎる国土に改めてげんなりする、過ぎたるは及ばざるが如しという言葉が浮かぶ。
幾日にも及ぶ行軍では武器は勿論飯なども必要になる。
つまり旅先で必要なものプラス戦闘に必要なもの。
そりゃー物も多くなるというものだなぁ。
俺が運んでいる訳じゃないけど何となく重い。
なんというか、動きの鈍い集団に所属してるから自分の身体まで重くなったような気がする。
絶対一人旅のが性に合ってる。
以前からの適当な性格に、今は絶対的な武力まであるのだ。
好きにふらふらして、腕っ節を商品に生計を立てることも可能。
女になったのがあれだけど、万歳この肉体!
「どうかされましたかな?」
女になったけどメリットの方がデカイような気がするのに満足していると趙雲さんに話し掛けられる。
「………俺って滅茶苦茶強くて良いよねってかんがえてた」
「何故行軍の最中に、や、自画自賛ですかな、など思うことは多々ありますが、まぁ強いことは何よりで」
「だよねー」
自分でわちゃくちゃなと思う結論だけ話したんだけど。
納得しちゃうこの人もなかなか来てるな、この時代だと自然なのかもしれないが。
今回の行軍の目的は盗賊の塵殺である。
具体的にはこの位の規模だからこれ位は狩って頭領的なのの首を上げようって話だ。
皆殺しとかはそもそも皆って何人だよとかいう問題もあるしね、無理だね。
頭領も部外者の俺たちに分かる筈もないのだが……やっぱり分かってないと。
ああ、なるほどね、それっぽいのを確保して報告するのが重要なのか。
既成事実って重要だからね。
「しっかり数さえ減らせば、首自体は誰でもいいと」
「誰でもじゃないと思いますがねぇ」
「貫禄で髭は必要だね」
「いやいや、実際それでかなり納得するもんですよ、上も」
「まじか」
俺につけられた副官の人と突撃前に軽く話す。
見た目とかやっぱり大事なんだなぁ。
きっちりスーツにネクタイ、革靴に七三分けとか。
大学生続けてたらそっちコースで働くつもりだったんだよなぁ。
この身体でこの時代に来れてよかった。
「身分は高くなるにつれて格好も…ってのは名家も商人も、盗賊でも変わらないんですよ」
「不思議なもんだなぁ、俺は武将で良かったわ」
「いや、どうせどっかに落ち着くんですから、その実力ですと否が応でも…」
「え。なにそれ、ちょっと詳しく」
何言ってるんですかと俺の生き方に突っ込みが入り、詳しく聞こうとした所で銅鑼が鳴った。
作戦の第一段階、俺達が突っ込んで引っ掻き回す合図だ。
くそう、貴重な意見が聞けるところだったのに。
「ああもうっ、副官! 後で詳しく聴かせて貰うから死ぬなよ!」
(この人、結構抜けてるんだよなぁ…)
「おしっ、行くぞ!」
適当に突っ込んで味方を巻き込まないように気を付けて三國無双しているといつの間にか終わっていた。
ちなみに三國無双との違いは敵がほぼ確実に逃げて行くのでそれを追い掛けないといけないことね。
終わったあとに副官を捕まえて話を聞くと、どうも俺の実力だと確実に何かしらの役職を持つことになるだろうからある程度お堅い服装もするでしょうとのこと。
何言ってんだこいつは。
客将でも楽な服装を通している俺がその程度で揺らぐか。
なに、朝廷?
………それは少しまずいかもしれないな。
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