陳寿著「呉書・徐盛伝」外伝補記―徐盛さんが頑張るそうですよ?― (八意 暮葉)
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序章 徐盛さんが仕官するそうですよ?
こんにちは、過去の俺


こんばんは、紅夜猫です。

今回から「徐盛さんが頑張るそうですよ?」という恋姫の二次創作を書かせて頂きます。

前回、恋姫の二次創作とタグを付けながら失敗した「斉桓伝」の教訓を頑張って生かしながら書くので暖かい目で見つめていてください。


「ん~・・・。朝は辛いな・・・。」

 

俺は伸びをしながらそう、独りで呟く。

 

端から見たらおかしな人にしか見えないかもしれないが昔からの癖だから許してほしい。

 

(コン……コン……)

 

控え目なノックの音が聞こえる。どうやら、俺の雇い主が来たようだ。

 

「起きていますか?燈。」

 

雇い主が俺の真名を呼ぶ。

 

「起きているぞ、莱。」

 

俺も雇い主の真名を呼ぶ。すると、扉が開かれ腰まで伸ばした黒い髪と大きな眼鏡が特徴的な俺の雇い主、賀斉公苗が入ってきた。

 

「今日は起きれたようですね♪」

 

莱が母親の様な笑顔で告げてくる。悔しいが反論できない。

 

俺は低血圧で起きるのが苦手なのだから……。

 

「それで莱。今日は何の用だ?」

 

莱がいつも来るときは何かしらの用事を持ってくる。今回もその類いだろうと思っていたが……

 

「いえ……今日は燈と会ってちょうど一年が過ぎたので少し、思い出話をしようと思いまして。」

 

相変わらずの丁寧口調だ。雇われてすぐの時は慣れなかったな……と振り返りつつ

 

「別に良いぞ?」

 

と、俺は思い出話に応じたのだった。

 

紀元後177年。徐州瑯邪郡。

 

俺はそこで3度目ではあるが生を受けた。

 

実は俺はこれから1800年も先の時代で死に、そして、江戸幕府の成立を阻止し、死んで転生した者なのだ。

 

その時の名前は島崎義直、なぜか今は徐盛を名乗っている。戦国時代での記憶は薄れていたが武術や工芸品の作り方などの生活の役にたつ知識と三国志の知識だけは残っていた。

 

両親と共に俺も幼いときから畑仕事をし、時には武芸を身に付けたりもした。

 

そして、184年。

 

俺は悪夢を見たような思いだった。

 

そう。太平道の蜂起。俗にいう黄巾の乱が起きたのだった。

 

その時、俺は遊びに出ていたから難を免れたが、両親は黄巾賊に殺された。

 

俺は怖くなって逃げた。朝も逃げて、昼も逃げて、夜も逃げて3日3晩くらい逃げて……楊州呉郡に着いた。

 

俺は・・・呉郡に着くとすぐに衰弱で倒れてしまった。

 

その時、意識を手放す前に

 

「坊主、無事か?」

 

と言う声が聞こえたのを覚えている。

 

それが莱の親父の賀輔殿だった。

 

俺が次に目覚めた時、見知らぬ天井が広がっていた。

 

「あっ、目覚められましたね。」

 

傍らから声が聞こえる。そこには可憐な少女……莱が居た。

 

「父上~、お目覚めになられましたよ~!!」

 

莱が賀輔殿を呼んだ。すると、賀輔殿は少ししてやって来た。

 

俺は賀輔殿を見たとき、瑯邪で見た光景が蘇って震えた。

 

すると、賀輔殿は

 

「よく・・・頑張ったな坊主。」

 

と言って俺を抱きしめてくれた。俺は安心からか涙が出てきた。

 

「泣け、泣け坊主。俺の胸を親父の胸と思って泣け。」

 

この人はトコトン優しかった。

 

そして、俺が泣き止んだ頃を見計らい

 

「坊主、名前は言えるか?」

 

と聞いてきた。俺は言葉に詰まりながらも

 

「姓は……徐。名は……盛。」

 

と言った。

 

「そうか……瑯邪の役人の息子だったか……。」

 

賀輔殿はそう呟いた。

 

「親父を……親父を知っているのですか!?」

 

俺は思わず聞いていた。すると、賀輔殿は笑いながら

 

「あぁ。お前の親父とは懇意にしててな、もしもの事があったら子供たちを頼み会う仲だったが……そうか……徐傑が……。」

 

俺は黙ることしかできなかった。そして、悔しくて震えて……(もう、あんなことが起きないようにしてやる)と心に誓った。

 

俺が誓いを心に刻み込んだとき、賀輔殿が口を開いた。

 

「盛。俺の息子になって賀家の将になれ!」

 

その時の提案に俺は唖然とさせられた。




さて、1話目はいかがでしたでしょうか?

中々終わりが見つからず2話目も過去話になります。

申し訳ありません。

それと、徐盛の父親の事ですが、資料がなかったので名前と経歴は創作させていただきました。

もし、ご存知の方が居りましたら感想の欄にお願いします。

それと賀輔さんですが元々は会稽の人ですが……ここでは呉郡に避難しているという設定にさせていただきました。

申し訳ありません。

それと、この様な駄文小説を読んでいただける人々に感謝を申し上げます。

それでは、また次回まで


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こんにちは、未来の主

「盛、俺の息子になって賀家の将となれ!」

 

賀輔殿……いや、今は賀輔伯父さんと呼ぼう。

 

賀輔伯父さんの提案から早1週間。俺は悩んでいた。

 

「伯父さんの息子か……」

 

伯父さんは孫堅様と繋がりがあるらしいから俺の将軍への夢は半ば保証されていると言っても良い。

 

だけど……それで良いのだろうか?

 

伯父さんの息子になれるのは嬉しい。少し頑張れば将軍になれることも嬉しい。

 

だが……俺は楽な道を望んでいるのだろうか。

 

さっきからその様な事ばかり考えて悶えていて莱が扉の隙間から覗いてることに気付かなかった。

 

「あの……何をされているのですか?」

 

その声で俺の意識は現実に還った。

 

「あ……いや、その……これは………」

 

しどろもどろになってしまう俺を莱は笑って許してくれた。

 

「ふふ、可愛い弟ができたみたいです♪」

 

莱は微笑みながらそう言った。

 

(え……弟……だって?)

 

驚いた俺は莱に聞いた。すると、莱は俺の2つ上だと発覚した。

 

それを聞いて俺は更に悶えた。それを見ていた莱は

 

「こんな弟が居てくれたら……毎日が楽しいですが……」

 

と、ふと溢した。その時、俺は決めて、部屋を飛び出した。

 

向かうは伯父さんの部屋だ。

 

(そこの廊下を右に曲がり、2番目の曲がり角を左に曲がれば伯父さんの部屋だ!)

 

俺は呉郡賀家の地図を頭に描き、目的の扉を見つけると開け放った。

 

突然現れた俺に伯父さんは驚いたが俺の来た意味を理解したのかすぐにいつもの笑顔になった。

 

「それで、盛。決まったのか?」

 

「ああ。俺を……徐盛を伯父さんの義息にしてくれ!」

 

伯父さんの質問に俺は意を決して答えた。

 

伯父さんは相変わらず笑顔で俺を迎え入れてくれた。

 

それから3年が過ぎたある日。

 

賀家に客人が来た。

 

俺と莱は部屋に待機して話し合っていた。

 

「燈。今回の客人はどのような人だと思われますか?」

 

「ん~……義父上の顔から察すると呉の重鎮だと思う。」

 

「あら、燈もそう思いますか?」

 

「って……莱。俺をバカにしているのか?いくら雇用関係とは言え酷いぞ?」

 

莱の質問に答え、いつものように切り返す。

 

「燈の勘は良いですからね……。ふむぅ……。」

 

また始まってしまった。莱の考え込む悪い癖が……

 

今日は止めないとまずいなと思って莱に声を掛けようとしたとき……

 

廊下から足音が聞こえ、身構えた。

 

(音から察するに……数は二人か。)

 

刀の柄に手を添える。賊なら一太刀で仕留めようと考えた。

 

だが、俺は乱暴に開け放たれた扉の向こうの人物に呆気をとられた。

 

「おっ邪魔しま~す!!」

 

現れたの光の加減次第では白に見間違えるほどの薄桃色の髪に褐色の肌をした少女だった。

 

その後から来たのは眼鏡を掛けた黒髪のこれまた褐色の肌をした少女だった。

 

「全く……雪蓮。お前は何をしているんだ……。」

 

「だって、私の勘がこっちに強い人が居るって告げてたから。」

 

嫌な予感を覚えて……霧散した警戒心を再度集め、身構えた。

 

「あー……君、すまない。私たちは君と争いに来たのではないんだ。」

 

黒髪の少女が頭を下げた。それを見て俺は刀の柄に掛けていた手を卸し警戒心を解いた。

 

「なら、何をしにここへ?」

 

俺は訊ねずには要られなかった。

 

「それは……孫堅殿が賀輔殿に挨拶に来たのだが……雪蓮が部屋を飛び出してな……。」

 

「私は強そうな人が居るって勘が告げてたから出たのよ?」

 

アハハ……そうか……。孫堅殿が……?

 

おい、嘘だろ……。孫堅殿って……

 

俺はひたすら混乱していた。そこに追い討ちをかけるように

 

「貴方、良い目をしてるわ。私は孫策。孫堅文台の娘よ。私が家督を継いだら登用するから覚悟しなさい!」

 

雪蓮と呼ばれた少女がそう告げた。

 

「すまない……雪蓮は昔からこんな調子でな……そして、申し遅れたが私は周瑜。洛陽県令を勤めている周異の一人娘だ。」

 

俺たちはその後、仲良く語り合った。お互いの過去の事、家の事など

 

そして、その後だが、孫堅殿が来て二人を連れ帰った。

 

孫堅殿は義父上にひたすら謝っていたが義父上は笑ってそれを許した。

 

そして、話と時は飛んでこれから四年後俺と莱は雪蓮と呼ばれていた少女に招聘されたのだった。




さて、無茶苦茶な終わりになりましたがいかがでしたでしょうか。

2話目で何とか原作キャラを出せました。

やはり、文章を書くのは難しくて他の書き手さんの腕前に舌を巻いてしまいます。

私はやはり駄文野郎なので中々精進できず申し訳ありません。

次回は反董卓連合軍編ですが、燈が色々と歴史を改竄してしまいます。

そして、賀輔さん何者でしょうか。

私個人としては賀輔さんが一番怖いです。

それでは次話でまたお会いできますように。


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黄蓋の真意。孫策の楽しみ。

こんばんは、紅夜猫の阿呆です。
前回の無理矢理な終わりから数日。
腹痛で死線をさまよいました。
それで、今回は復帰して何とか書いていきますのでお願いします。

さぁ、自分の腹との戦争の開始だ……!


191年

 

―橋瑁が反董卓連合軍の結成を呼び掛ける檄文を各地の諸侯に送る―

 

これはすぐさま董卓・・・いや、張譲の知れるところとなり、橋瑁は殺害。晒し首にされた。

 

しかし、その時には檄文は各地の諸侯に渡っていた。

 

諸侯は軍を挙げ、豫州陳留へと集いはじめていた。

 

また、ここ楊州呉郡も例外ではなかった。

 

「さて、皆。この檄文をどう思う?」

 

楊州孫家当主孫堅文台が家臣達に尋ねた。

 

「どうもこうも・・・これは立ち上がるしかありますまい。」

 

孫家四天王の一人、祖茂大栄がいう。

 

「確かにここで立ち上がらねば孫家が潰されますな。」

 

冷静な戦略眼で物を言うのは四天王筆頭の程普徳謀。

 

「私たちが立たねば洛陽の民は苦しみから解放されません!!」

 

そして、熱いのは韓当義公。これも四天王の一人だ。

 

そして、このあと議論は沸騰しあぁでもない、こうでもないと言い交わしあいが続く。

 

その様な中、一人の女性が静かに議論を眺めていた。

 

女性の名は黄蓋公覆。孫家の中では程普と同じくらい古くから仕えている。

 

「止めい、議論はそこまでだ!!結論は明日、出す。」

 

孫堅は澄んだ声でそう、告げた。

 

こうして、軍儀の終わりが告げられ将は一人、また一人と大広間を退出していく。

 

黄蓋も皆が出ていったことを確認し、主君に挨拶をし、退出しようとした。

 

「待て、祭。」

 

主君に止められた。何用だろうか

 

「祭、お前は議論で一言も話さなかったが……胸中で何か考えているな?」

 

「ハッハッハ、さすがですな我が君。」

 

参った。この人は変なところで勘が良いんだった。

 

「さて、お前の胸中を聞くために引き留めたのだが……聞かせてもらえるだろうか?」

 

「ええ。良いでしょう。儂の胸中、お聞かせ致しましょう。」

 

私はそれから主君に全てを話した。

 

洛陽の現状。反董卓連合の意義。そして、橋瑁の真意を。

 

それを聞いた主人は苦い顔をしていた。

 

「そうか……橋瑁は『乱』を望んでいたのか……」

 

孫堅の消えるような呟きの真意を知るのは私を除いて居なかった。

 

―楊州 会稽郡―

 

ここに、一組の女性が表れた。

 

「何者だ!!」

 

門番は表れた者たちに対し、いつも通りの職務をこなしていた。

 

「あら、ごめんなさい。怪しいものではないの。賀家に孫家の人間が来たって伝えて頂戴。」

 

門番は目を丸くし、慌てて駆けていった。

 

しばらくし、会稽城の門が開いた。

 

「さ、行きましょうか冥琳♪」

 

「相変わらず無茶苦茶だな、雪蓮……」

 

隣の相棒に声を掛けて中に入る。

 

さぁ、3年前の約束を果たしに来たわ!!

 

私は内心でそう呟く。

 

私はあの日から1日たりとも忘れなかった。 あの高揚感を。

 

さぁ、私に仕えて楽しませて頂戴、徐盛文嚮!




さて……どうしてこうなった……。
祭さんがどうしてシリアスキャラに……。

悩んでも仕方ないのは分かるのに悩む……。

でも、諦めて自分の書きたいように書こうと思います。

さて、少しだけ解説です。

祭さん『だけ』が理解した孫堅の真意。

本当なら祭さんにも聞こえては居ないのです。
しかし、祭さんは理解してしまった。
これが後々の伏線に……なることを祈りたいです。

孫策が徐盛の名前を知っている理由

会稽郡に戻っていた賀輔さん一家を孫堅さんが訊ねたあと、
帰り道に孫策が興味を持って賀輔さん一家のことを尋ねたためです。


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徐盛の復活。

やっぱり・・・腹との戦争は勝ち目が無かったんだ・・・
畜生・・・無駄に太田胃散を殺しちまった・・・

俺が毎年体を苦しめてる腹痛に勝とうなんて無謀だった・・・

去年は胃腸炎に悩まされたというのに・・・

後は・・・頼んだぜ・・・皆・・・・

※遺書みたいになってますが作者はただの腹痛で寝込んでいるだけで死んではいません。


「・・・・・・・・・」

 

ここは会稽城内の賀家屋敷。

 

その屋敷の一室で男―徐盛は悩んでいた。

 

彼の父、徐傑が生きていた頃に聞いた話。

 

「燈。良いか、よく聞け。お前は私の子ではない。」

 

「親・・・父・・・?何を言って・・・」

 

「お前は・・・私の家の前に落ちていたのだ・・・」

 

「っ・・・!?」

 

このときは驚きを隠せなかった。今も・・・少しばかり驚くこともあるが・・・

 

「お前は・・・神様が地上に遣わした子だ・・・」

 

「親父、どうしてそう思うんだ?」

 

俺は不思議に思い訊ねた。しかし、今の俺からしたらこの質問の方が不思議だった。

 

「今の漢は・・・汚職、賄賂など腐敗が進んでいる。

 

そして、才があっても中央で官職を得ることも儘ならない。

 

挙げ句の果てには・・・重税、過剰な労役。殆どの州牧は自分の利益しか考えていない。

 

我が徐州を見てみろ。重税により農民は田畑を捨て、荒れている。

 

田畑を捨てた農民は賊となり村を襲う。田畑は焼かれ、その土地の民は賊となる。

 

悪循環の繰り返しだ。それなのに州牧は救済の措置も出さない。

 

これならば天上の神々も嘆かれて当然だ。」

 

不思議と親父の言葉はすんなりと入っていった。

 

「そんな時、私が寝ているときに枕元に高貴な人が立ってこう言った。

 

義侠の心に燃えるお主に天よりの遣いを授けよう。と・・・そして、翌日。我が家の戸外にお前が落ちていた。

 

私はその時、天帝が今の腐敗した世を正すためお前を天から遣わされたのだと思った。」

 

「そうか……なるほどな……。」

 

「燈。お前は血は繋がってないが大切な息子だ。気に病むなよ。」

 

「分かった。ありがとうな親父・・・。」

 

それが俺と親父の交わした最後の言葉だった。

 

翌日、親父は俺がいない間に瑯邪に押し寄せてきた賊を撃退するために撃って出たが・・・敵に討たれた。

 

その時、共に居た兵士が「賊に壊滅的な被害を与えましたが・・・凄絶な最期を迎えられました・・・」と言われて俺はその兵士を殴りたくなった。

 

でも、そいつの目に涙が溜まっているのを見て殴れなくなった。

 

俺はその兵士から親父の形見の槍を貰い、瑯邪から逃げ出した。

 

そして、3日3晩逃げて今に至っている。

 

「懐かしいな・・・」

 

回想を終えた俺はそう呟いた。親父は俺を天の御遣いの様に言ったが違う。

 

俺は前世ではただの社会人で戦国時代にタイムスリップし、今に至っているだけだ。

 

本当の御遣いは別に居る・・・はずだ。

 

そして、ソイツはきっと呉に来ることはない。それだけは確信できる。

 

そこまで思案し・・・俺は傍らの槍を手に取った。

 

8年くらい使っているが古びた様子は全くない。

 

まだ初陣を迎えてないからかもしれない。

 

でも、この槍はこれから先も古びる気がないように感じてしまう。

 

「親父……これからも頼むよ。」

 

この槍に親父の面影を見たような気がして俺は……声を掛けた。

 

さて、家のなかが騒々しいから挨拶にでも行くか……。

 

大方、孫呉の戦闘狂の姫……もとい、孫呉の次期当主とその軍師が来ているだろうから少しくらい挨拶に出向かないと不謹慎になりそうだな……。

 

まぁ、挨拶と言っても血の雨が降る可能性があるけどな!

 

俺は物騒な考えをしながら来訪者のいる場所を目指して歩き始めた。




さて、雪蓮と冥琳が訪ねる少し前から訪ねて少し後くらいの話に当たります。

今回は徐盛こと燈の生い立ちと、父・徐傑の昔話です。

最初は燈に生き別れた妹が居るって話でその妹が徐晃だという設定にしようかと思いましたが無理があるなと思い、燈が現代人だという設定に変えました。

燈が戦国時代にタイムスリップしたというのはもうひとつの話のオリキャラと同一人物でそちらの話には現代人という設定は付け損ねました。

次回は多分、雪蓮との戦闘になると思います。

その後から閑話を挟むかもしれませんが燈の工作と暗躍の反董卓連合編に入らせて貰います。

そして、お気に入りも10件を越えました。この場でお礼を申し上げさせていただきます。

こんな拙い物語ですが読んで頂いてもらっている皆様に感謝しています。

それでは次回までゆっくり待っていてください。


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周瑜の説教。賀斉の仲裁。

部屋を出た後、孫策を見つけた俺は庭に連れて行き互いに己の得物を持って対峙していた。

孫策の手には孫家の家宝「南海覇王」が。俺の手には親父の槍「御霊殺し」が握られていた。



お互いに動かないまま時間が過ぎていった。

 

孫策が来たときにはあれほど騒いでいた使用人たちも今では落ち着きを取り戻しいつもの仕事を行っていた。

 

この庭の前以外の場所を通ったとき限定だが。それほどここの空気は異質すぎた。

 

例えるなら……剣豪同士が刀を構え気で相手を崩そうとしているときに似ている。

 

最も俺達は剣豪ではないし、構えている得物も両刃剣と鉄槍だからそのような空気は出てくるわけではない。

 

しかし……孫策がここまで攻撃をしてこないことは不気味で仕方ない。

 

史実の孫策は気性が激しく裏切り者には容赦をしない織田信長の様な人物で恋姫世界の孫策も血の気が濃い武将だった気がする。

 

(・・・もしかして誘っているのか?)

 

俺はそんな疑念すら抱き始めた。それがイケなかったのだろう。

 

孫策はすぐさま地を蹴り俺に肉薄してきた。対処が贈れた俺は槍の柄を縦にし、防ぐことしかできなかった。

 

「良いわね、久々に熱くなれそうよ!」

 

「ソイツはどうも。俺は穏便に事を済ませたいから……さっさと突かれてくれないか?」

 

「そんなの……イヤに決まってるじゃない。」

 

緊張した空気が変わったことにより俺達は軽口すら交わせるようになった。

 

まぁ、内心冷や汗をかいてる俺に対して、孫策の奴は笑っていたけど。

 

俺は槍を構え直し、孫策の首を刈りにかかった。

 

孫策は槍の軌道を剣でずらし、そのまま接近してきた。

 

何とも恐ろしい化け物だ。

 

「楽しかったけど……ごめんなさい。そろそろ終わりにさせてもらうわ。」

 

俺の目の前まで来た化け物はそう告げて南海覇王を振り上げた。

 

俺は・・・それを待っていた。

 

「まだまだ甘いんだよ!」

 

御霊殺しの穂を地面に刺し棒高跳びの要領で跳びながら蹴りを見舞ってやった。

 

「ガッ……はっ……」

 

孫策は苦しそうに呻きながらも後ろに跳躍し受け身を取った。

 

「ふぅぅ……中々やるじゃない……」

 

「俺も伊達には鍛えてないってことさ。」

 

一気に形勢逆転。絶体絶命のピンチから相手に一矢報いダメージを与えてやった。

 

このまま、一気に終わらせようと御霊殺しの柄に力を込めて握り直したが……

 

「雪蓮、何をやっているんだ!!」

 

高く、よく通る声が聞こえてきたので1度槍を降ろした。

 

やって来たのは周瑜だった。

 

「全く・・・雪蓮が迷惑をかけてしまってスマナイ。」

 

「ちょっと、これは私が挑んで相手も承知した上での試合なのよ?」

 

あぁ……孫策と周瑜の夫婦漫才が始まってしまった。幼馴染みでもある二人だから為せることで収まるには時間が掛かるだろう。

 

「だから、雪蓮。何度言えば解るんだ!?」

 

「冥琳こそ……私の言い分をちゃんと聞いてよね?」

 

「ああ。今回は私の早とちりだった……。でも、何度迷惑を掛ければ気が済むのだ!?」

 

あぁ……周瑜の説教が始まった……。

 

その時、廊下から聞き覚えのある足音が聞こえてくる。音の方に目を向けると莱が来ていた。

 

「あの……スミマセン。」

 

莱が二人に声をかけた。しかし、周瑜の説教は続く。

 

「スミマセン、ケンカはその辺りにしてよろしければ一緒に朝食でもどうですか?」

 

莱の放った一言は衝撃すぎて俺は度肝を抜かれた。しかし、二人には効果覿面だった。

 

「あぁ……そう言えば朝、なにも食べていなかったな……。よろしければ相伴に預かりたい。」

 

「そうね……私もお腹が空いたからよければ食べさせてもらいたいわ。」

 

そう言って矛を納め、四人で仲良く朝食を食べることになったのだった。




UA2000突破しました。ありがとうございます!

こんな拙い作品を読んでいただきありがとうございます。

今回は孫策と徐盛の戦闘でした。描写は……拙いですね……

さて……次は閑話を入れさせていただきます。内容は投稿してからのお楽しみで。

それでは、読者の皆様に感謝して……次回もゆっくり待っていってね!


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閑章・1 孫堅さんが賊を討伐するそうですよ?
古今無双の楯。


これは中華全土を震撼させた黄巾の乱後のお話。

孫堅文台は呉郡の自室で考え事をしていた。

それは新しく孫策の配下として加わったと言う徐盛文嚮について。

彼女は不思議に感じていたがそれは1つの報せによって止めざるを得なくなった。


「孫堅文台。汝を荊州長沙郡の太守に任ずる。速急に当地に赴き賊・区星を討伐せよ。

これは勅命だ。それと・・・長沙太守の印璽と任命書だ。」

 

私は恭しくそれを受け取った。受け取ったことを確認した使者は満足そうな顔をして立ち去っていった。

 

「・・・・・・。」

 

長沙か・・・。私はまた考え事をしていた。今度は長沙で暴れている区星軍の規模と我々呉軍の動員できる兵数についてだ。

 

区星軍の規模は2000。対して私たちが使えるのは呉、会稽両郡の守備兵を引いて1700。

 

兵数では分が悪いが・・・今回の長沙赴任に連れていける将はそれなりにいるから大丈夫だ。

 

私は・・・自室に戻り軍の編成を考えた。

 

長沙征伐軍:1700

 

総大将:孫堅

 

副将:祖茂

 

その他:孫静、波才、魯粛

 

呉郡守備隊:1200

 

総大将:程普

 

副将:韓当

 

その他:陸遜、凌操、孫羌、孫濆

 

会稽郡守備隊:1000

 

総大将:黄蓋

 

副将:賀輔

 

その他:孫策、周瑜、呂蒙、賀斉

 

私は賀斉の名まで書いたところでふと・・・手を止めた。

 

あの徐盛という子なら・・・この陣容をどう思うだろうか・・・。

 

そう考えてしまった。しかし、まだ12の子どもに言っても明確な答えは返ってこないだろう。

 

私はそう考えて筆を取り直し、好奇心で魯粛の後に徐盛と書いたのであった。

 

翌日。

 

陣触れを発表すると・・・驚いたことに反論が来なかった。

 

皆、口を揃えて「孫堅様の考えたことだ。異論はない。」と言ってきた。

 

こうして、私は長沙征伐軍を艦隊に乗せ長沙郡へ向かおうとしたが

 

「孫堅様……少々よろしいでしょうか?」

 

ふと、幼さが残る声が聞こえて顔を向けてみると……そこには徐盛が居た。

 

「どうしたの?」

 

私は優しい声で訊ねた。すると、彼は長沙に向かう前に一人の人を味方にしたいと言った。

 

私は・・・彼の言を取り入れ、荊州南陽郡に艦隊を進めることにした。

 

彼の言った人の名は文聘仲業。

 

私は期待はしていないが失望しない人物であってくれよ。

 

そして、呉郡を出立して5日後。

 

無事に南陽郡に着いた。文家には私と徐盛だけで行くことにした。

 

街の人に聞きながら文家に着くことが出来た。

 

「突然の来訪すまない。ここに文聘という子は居るか?」

 

私は門の外にいた少女に尋ねた。すると、少女は……

 

「私の事ですが……何でしょうか?」

 

と言った。私は驚きで固まったが徐盛は平然と話しかけていた。

 

「ごめんなさい、この人は呉の孫堅文台様。僕は徐盛文嚮って言うんだ。」

 

「私は・・・文聘。」

 

「文聘ちゃん。突然で悪いけど・・・僕たちの味方になってくれないかな?」

 

「良いよ?貴方たちは長沙に行くのでしょう?なら、私も行く。」

 

「うん。ありがとう♪」

 

文聘はあっさりと仲間になってくれた。

 

私は・・・この時、この少女に期待はしていなかったが・・・

 

まさか、区星討伐戦であのような恐ろしいことをしてのけるとは夢にも思わなかった。

 

 




こんばんは、紅夜猫です。

今回は……急展開過ぎました。反省しています。

本当なら1話で纏めるつもりだったのですが…2話になってしまいそうです。

今回の話は文聘さん呉への加入フラグ。魏の戦力弱体化です。

波才さんは史実では黄巾の乱で孫堅さんに討伐されましたが・・・この話では捕虜になり、説得されて呉の将になったことにしています。

さて、次こそは……戦闘に入りたいですが……頑張ってみますので温かい目でお願いします。

P.S. UA3000突破とお気に入り登録30件ありがとうございます。
皆様がお気に入り登録してくれたり閲覧くれていることが何よりの力になっています。本当にありがとうございます


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麒麟児・文聘。

文聘を新しく陣営に迎え、私たちは長沙に向かっていた。

賊・区星の軍は私たちが長沙に着く頃には3000まで膨れ上がっていた。

二倍近い敵に対し、若き二人はどのような柔軟な行動を取るか楽しみだ。

期待はしていない。策は纏まっているから取り上げることもないだろう無いだろう。

と船上の私はその時思っていた。


―文聘side―

「さて、徐盛。文聘。お前たちの初陣となるが……区星軍は我が呉軍の二倍近い兵を持っている。お前たちならどうする?」

 

私は孫堅様に聞かれた。策は考えてあるが……取り上げられる確率は少ないだろう。

 

しかし、駄目元でも言うしかあるまい。

 

「すみません、文台様。愚見を申しても良いでしょうか。」

 

「良いぞ文聘。言ってみろ。」

 

一応、聞くだけは聞いてもらえる。なら・・・

 

「ここは1700の兵を3手に分けます。」

 

「ふむ・・・・」

 

「正面に文台様率いる900。左翼に大栄様率いる400。右翼に波才様率いる400を配置します。」

 

「1700の兵で倍近い区星軍を包み込むようにする気か?」

 

文台様の顔は呆れて物を言えないと言いたげだったが・・・私は首を横に振り

 

「大栄様、波才様は区星軍から見えないように迂回しながら長沙城を目指してもらいます。」

 

「何・・・だと・・・!?」

 

文台様の顔が驚愕に染まったところで畳み掛ける。

 

「前漢の名将・韓信も同様の策で趙軍を挟撃しました。

 

その時は趙軍を全て誘い出すことで砦を陥落させました。なので・・・この策は文台様自身が全面に出て敵の主力を誘い出さなければ成功しません。」

 

文台様は暫し唸り考えたあと

 

「分かった・・・文聘の策を採用する。角(波才)と敬憶(祖茂)はそれぞれ400ずつ率いて敵に見つからないように長沙に迎え。

 

私たちは残りの兵で区星軍を誘き出すぞ!!」

 

「「「「「「オォォォォォォォ!!!」」」」」」

 

兵達の歓声が上がる。勝負はこれからだ。

 

―side out―

 

―区星side―

 

「区星様、敵軍が表れました!!」

 

長沙城の城主の間で筋骨隆々の男が報告を聞いていた。

 

男の名は区星。反乱軍の総大将だ。

 

「それで、敵の大将は?」

 

「はっ。それが孫堅のようです。」

 

ふむ・・・孫堅か・・・儂が出ねばなるまい。

 

「趙弘。2000の兵を集めろ。一揉みに潰す。」

 

「言われずとも準備は整ってます。後は区星殿の号令1つです。」

 

「よし、向かうぞ。・・・孫堅の首を拝む為にな!」

 

儂は長沙の門を開き、出陣した。

 

―side out―

 

―文聘side―

 

漸く……区星軍が出てきましたか……。

 

私は長槍兵100名を隙間なく配置しながら考えていた。

 

数はこちらの二倍と少し。そして、歩兵が主体。

 

こちらは重装歩兵、騎馬隊、長槍兵、弓兵が平等に居る。

 

負ける気はしない。それに・・・騎兵と重装歩兵にはある策を授けた。

 

抜かりはないはずだが……実践経験が乏しいから不安だ……。

 

初陣だから負けたくはない。死にたくもない。そして・・・

 

誰も死なせない。

 

私は長槍兵を配置し、遠くに見える区星軍を睨みながら弓兵の配置を促した。

 

―side out―




皆さん、ごめんなさい。
今回も戦闘描写を書けませんでした。

前回は文聘の加入フラグで今回こそ区星の乱の戦闘に行きたかったのですが……

策がないとどうしても皆様に伝わらないだろうと思って書いた果てが戦闘描写を書けないということに繋がってしまいました。

次回こそは……区星の乱の戦闘と鎮圧を行いますのでどうか・・・温かい目でお願いします。

※文聘の策は韓信の趙討伐戦を引用させていただいてますが……モデルとしては戊辰戦争時の白河城攻略戦で新政府軍参謀の伊知地正治の用いた作戦となっています。


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悩める虎。

辺りに血の臭いが立ち込め出した。

私は中軍から前線の様子を眺めた。

全身に矢が刺さり息絶えるもの。騎馬に踏み潰され肉塊とされるもの。槍衾に刺されながらも残り少ない命の焔を燃やそうとする馬。

そこにはただ生き残りたい為だけに戦い続ける獣しか居なかった。


一半前。

 

区星軍が見えてきた。

 

斥候の報告に寄れば2000。我軍の約3倍だ。私たちは背後に長江を抱えている。

 

逃げ場はない。いや・・・孫呉の兵にその様な弱気な者は居ないな。

 

前線では文聘が長槍兵を前、弩弓兵を後ろと巧みに配置している。

 

だが・・・あれでは騎馬隊、重装歩兵が活かせない。それには文聘も薄々気付いているはずだろう。

 

ここで私が下手に口出しをすると将来の将の芽を摘んでしまいかねない。

 

「報告します!区星軍は趙弘を先陣に鋒矢陣で西方より進軍中!」

 

「・・・・・そうか。」

 

斥候の報告を聞いても私は少しも動揺しなかった。鋒矢陣で進軍。

 

それはこの陣を一点突破し指揮系統を崩そうとしているということの表れだ。

 

しかし、先陣の様子を見ていると不思議と落ち着いてしまう。

 

陣の前に塹壕を掘り、逆茂木・砕けた刀片を入れ込み柵を張り巡らせる。

 

そして、柵の間から長槍が顔を覗かせている。

 

鋒矢陣に対し最も厄介な陣城だった。

 

文聘の陣城の完成からし四半刻後。

 

賊軍が突撃してきた。しかし、区星の先陣は約1割の兵が塹壕と長槍の餌食となった。

 

「1度、体制を立て直せ!!闇雲に突撃するだけでは被害が増すだけだぞ!」

 

将らしき男の声が響く。あれが趙弘。区星の元に居るのが惜しいか分からない。

 

でも・・・普通の将なら兵の3割程度を失いそうなあの陣城で1割しか損害を出さなかったところを見ると・・・中々の智将だ。

 

「区星殿の本隊が来てから再度突撃を仕掛けるのだ!」

 

趙弘が兵を退く。しかし、それは失敗だったのかもしれない。

 

「今です!騎馬隊追撃を!!」

 

文聘の声が響く。ふむ・・・あの歳でこの戦の駆け引き・・・。些か粗さが目立つが磨けばよき将になる。期待はしていなかったが良き買い物だった。

 

呉軍の騎馬隊が陣を出て追いかける。

 

退却しながらの戦だから区星軍が一方的に蹂躙されるだろう。

 

そう考えていた私は予想を大きく裏切られた。

 

「弓兵!騎馬の上の兵を狙え!!槍兵、騎馬の足を狙え!!」

 

趙弘は退却しながらも兵に的確に指示を与えた。

 

賊の槍が突き出される。賊の矢が降り注ぐ。

 

蹂躙するだろうと思われていた呉軍の騎馬隊は・・・1割の兵が馬から振り落とされ槍で串刺しに1割の兵が矢の雨の餌食に・・・

 

結局、相手の軍に突撃できた騎馬は全体の3割程度でしかなかった。

 

それから・・・少しの硬直状態となり、区星本軍が到着してしまった・・・

 

区星軍本隊が来てから・・・趙弘の指示通り突撃をしてきた。

 

文聘はよく堪えている。柵を倒されそうになっても・・・縄を切り持ちこたえている。

 

しかし、いつまで持つかは分からない・・・。

 

今すぐにでも柵を倒され陣内に入り込まれるかもしれない・・・

 

だから・・・急いでくれ、祖茂・・・徐盛!!




皆様、こんばんは。

本日、また1つ歳を取った紅夜猫です。

何とか戦闘には入れましたが・・・描写がダメですね。

描写を何とかレベルアップさせたいです・・・。

時間を作っては書いていますが・・・受験勉強と平行しているのでレベルアップには時間が掛かりそうです。

さて、今回は最後に前回とは矛盾した文を書いてますが……これはわざとです。

理由は次回話します。勘の好い人、日本史のある偉人を知っている人なら気付いているかもしれませんね

今回も拙い文ですが・・・お気に入りをしてくれる皆様、読んでくれている皆様に迷惑をかけないようこれからも精進致しますのでこれからもどうかよろしくお願いします。

今回は・・・皆様への感謝をもって締めさせていただきます。

ありがとうございました。次回もまたお願いします。


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功臣の親子。

長沙城攻めに向かう道中。

俺は内心不安だった。今回の作戦は陣内に敵の間者が紛れ込んでいると考えた上でのものだ

まず……文聘に私の考えた策を言わせる。まぁ……文聘も同じ作戦を考えていたみたいだから手間は省けたが。

その後に文台様に陣内に触れを出す。

そして、軍団を編成し終えた所で波才殿と変わってもらう。

相手は間者の報告で祖茂殿、波才殿が居ないと知って慢心するはずだ。

と俺は考えていた。


「祖茂殿。少しよろしいでしょうか?」

 

俺は馬上より祖茂殿に声を掛けた。

 

「どうした、徐盛?」

 

「長沙城攻めの事で献策したいことがありまして。」

 

「そうか・・・言ってみてくれ。」

 

「はい。まず・・・ここに居る700の兵を長沙の全門に配置してください。

 

そして・・・兵達に長沙城内に向けて『区星は討ち取られたぞ』と大声で言わせてください。

 

その時の相手の出方でこちらもどうするかを決めます。」

 

「お前は……どのような出方をするかとそれに対しての策を考えているのか?」

 

祖茂殿の質問に俺は腹中の策を話す。

 

「まず、相手が動揺しなかった場合。その時は……高梯子、破砕槌等を使い城門を破壊します。

 

相手が斥候を放った場合は斥候が出るときを突いて城内に雪崩れ込みます。

 

そして・・・最悪の場合の・・・敵が出撃した場合ですが・・・その時は攻められた所の兵に狼煙を上げてもらいます。」

 

「なら・・・私が最も少なく兵を率いれば良いな。」

 

「!? よく気付かれましたね。」

 

驚いた。俺の頼み辛かったことを察して引き受けてくれるとは

 

「お主はまだ若いから・・・思ってる事が顔に出ておるぞ?」

 

笑われたが・・・反論できない。

 

「それと・・・お主は将の事も懸念しているみたいだが安心するが良い。

 

紅蓮様(孫堅)のお陰で私も人を見る目が養われてな。

 

朱治、朱然。居るなら来い!」

 

俺は祖茂殿の呼んだ名前に聞き覚えがあった。思い出そうと頑張ったが……程なく一人の中年の男と若々しい女子が表れた。

 

「朱治及び朱然。御呼びにより馳せ参じました。」

 

「其方らを呼んだのは他でもない。

 

彼処に見える長沙城攻めでそれぞれ軍を任せたいからだ。

 

朱治は200の兵を率いて南門を、朱然は同じく200の兵を率いて東門を攻めよ。

 

私は100を率いて北門を攻める。」

 

「『御意。』」

 

朱治、朱然親子の声が揃った。これで・・・準備が整ったと思ったら

 

「祖茂殿、西門は何方が?」

 

朱然が核弾頭を落とした。

 

「ああ。それはここに居る徐盛が行う。」

 

嗚呼……見てくださいよ。朱然さんの顔がとても嫌そうなものになってますよ。

 

それから……朱然は祖茂殿に食いかかったが……大人しく引き下がった。

 

それが・・・一刻前の話。

 

今、俺達は長沙城で兵達に叫ばせていた。

 

「『「『「『「『区星は我等が大将孫堅様に討ち取られて晒し首にされてるぞ!!』」』」』」』」

 

兵達は楽しそうだ。騒ぎたてる度に城内の混乱が増しているから。

 

素人の俺から見ても……落城は時間の問題に見えた。実際、今も郊外で剣戟の交わりあう音が聞こえているが城内の兵達はそれを聞く余裕すら無いみたいだ。

 

「畜生、どうするんだよ!?大将が討ち取られたなんて……終わりじゃねえか!!」

 

「クソッ……!こうなったら意地でも逃げてやる……!」

 

何度叫んだだろうか……気付くとそのような話し声が聞こえ……北門が開かれた。

 

「へへっ……ここなら兵が少ねぇから脱出できるな。」

 

「はい、御苦労様。」

 

脱走しようとした兵の首は血飛沫を上げて空に舞った。

 

祖茂殿が切り捨てたのだ。

 

「さぁ、今こそ長沙を落とすときだ!!」

 

祖茂殿率いる兵は城内に雪崩れ込み、四方の門を開けた。

 

そうなると戦況は決まった。逃げ惑う者、諦めて城壁から身を投げる者と様々だった。

 

そして・・・門が開けられてまもなく長沙城は孫堅軍の手に落ちた。




こんばんは、無理矢理感が有りすぎる事で有名な紅夜猫です。

今回は朱治、朱然親子(養子ですが)の登場と残念すぎる長沙城攻めです。

徐盛の献策が長くて殆ど書けませんでした・・・ごめんなさい。

次回は・・・区星の乱、最終面です。(1話間違ってしまって予約投稿にしたので後書きがおかしいですが)

UAもまもなく10000件に入りそうで期待しています。

UAは読んでくれる皆様のお陰で伸びているのでいつも感謝しつつですが。

さて、長い後書きも嫌われるのでここら辺で締めさせていただきます。

それでは次回もゆっくり読んでいってね!


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血気盛んな将軍。

嗚呼……辺りの血の臭いが心地良い……

黄巾に居たときは……孫堅様に捕まるまでは……多くの官軍を屠って来た。

黄天を目指して……皆の笑える世を目指して……。

でも、それはいつの間にか己の内に眠る獣に喰われた。

獣が目覚めてからは官軍を見境なしに殺した……血が降り注ぎ……悲鳴が上がる。

そして……俺は何時しか「紅禽の波才」と呼ばれるようになった。





「報告します。区星軍本隊が到着し我軍の陣を攻撃しています。」

 

「戦況はどうだ?」

 

「依然として文聘殿の指揮により賊軍の被害は増すばかりで破られる気配はありません。」

 

俺は報告に来た斥候に陣の様子を聞いたが……今しばらくは問題ないように見える。

 

「賊軍のどのくらいの人数が陣を攻めている?」

 

「・・・・・約6割です。」

 

「両軍の被害はどのくらいだ?」

 

「呉軍2割弱、賊軍3割程度です。」

 

そうなると・・・賊は1000程度の兵で600程度の呉軍を叩きに掛かっているのか・・・なら、そろそろかな・・・

 

「そうか・・・。部下どもに戦闘体制を取るように命じろ。」

 

「了解しました!」

 

報告に来た斥候を伝令に換え、全軍に命令させた。

 

被害を受けた人数と攻めている人数から考えて・・・本陣を守るのは300~400程度の兵だ。

 

ここで急襲を行えば区星の首を取れるかもしれないが……俺が死ぬこともあり得る。

 

本陣を守るのは敵の精鋭の中の精鋭だ。こちらも被害・・・勝利の為の尊い命を散らさなければいけない。

 

青臭いガキの言うことは・・・いつも面倒だと思っていたが

あのガキの言っていた事は正論だった。

 

俺の手元の200の重装歩兵。コイツらを・・・少しでも多く生かしてみるか。

 

「全軍、準備が整いました。」

 

先程の伝令が突撃できるようになったことを伝える。

 

俺は騎乗し、全軍に呼び掛けた。

 

「良いか、お前ら!これから狩るのは人の皮を被った餓鬼だ!

 

俺らも昔、餓鬼に堕ちかけたが孫堅様が救ってくれた!

 

今こそその恩を返すときだ!全軍、『勝った、勝った!!』と叫びながら敵陣に突っ込むぞ!!」

 

「「「「「「オォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!」」」」」」

 

黄巾の時から闘ってきた仲間達の大音声が地を震わせる。

 

俺はそれに一種の感動と痺れを覚えながら号令をかけた

 

「全軍、突撃ィィィィ!!」

 

200の兵が丘を駆け降りる。

 

区星軍の本陣の脇を抉るように。

 

「邪魔だ!!」

 

道を塞ぐ餓鬼を大斧を奮って切り捨てる。

 

大斧を奮う度、賊軍に恐怖が伝播する。

 

そして、何時しか誰かが気付いたように

 

「こっ・・・紅巾の波才だぁぁぁぁ!!助けてくれぇぇぇぇぇ!!」

 

と叫んだ。中土を賑わせた黄巾の乱。その軍の中でも張曼成、菅亥、程遠志と言った猛将が居たがそれらを越えた名将として俺は有名だった。

 

そんな名将が表れた事、そして俺の配下が「勝った、勝った!!」と虚報を流した事により区星軍の指揮系統は混乱を始めた。

 

その中で一人、怒号を飛ばしている奴がいた。俺はそいつの元に馬を飛ばし……

 

「この軍の大将、区星と見受ける。この俺、波才と尋常に勝負せよ!」

 

と告げた。区星と思われる男は

 

「如何にも。俺が区星だ!勝負してやろう、命知らずめ!」

 

呆れた。相手の力量すら量れぬとは……もう……一思いに楽にしてやるか。

 

俺は馬を駆り、区星と一合も合わせることなく一刀両断した。




こんばんは紅夜猫です。

今回で区星の乱は終結しました。

次回から……漸く反董卓連合編に入れそうです。

後、お気に入りが60件越えました。ありがとうございます♪

これからも精進しますのでどうかよろしくお願いします。


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2章1幕 反董卓連合への呼びかけ。三英傑の思惑
誓いを新にした虎。―惑う孫堅―


私は明確な目標を持たなかった。

故に空虚な入れ物だった。

黄巾の乱の時だって将軍の言われるままに転戦していた。

でも・・・涼州へ行ったとき。人々の生活を目の当たりにしたとき。

私は決めた。

「天下を買い戻そう。」




区星の乱を鎮圧して2年が経った。

 

あれから世の中は平穏を取り戻したかのように静かだった。

 

それを破ったのは霊帝の崩御だった。

 

霊帝が崩御し、朝廷は太子・劉弁を担ぐ何進派と陳留王・劉協を担ぐ十常侍派に別れた。

 

大将軍何進は武力にものを言わせて劉協の養育係を勤めていた董太后を暗殺し反対意見を抑えた上で劉弁を帝位に着けた。

 

これが少帝の誕生である。

 

しかし、これが波紋を呼んだ。十常侍はこの何進の一連の行動に憤りを覚え彼の妹である何皇后の呼び出しと称して何進を宮中に単身呼び込んだ。

 

そこで何進を殺害した。十常侍はそれだけでは飽きたらず彼の首を宮門の外にいた何進の元部下たちの前に投げ捨てた。

 

これにより袁紹率いる何進旧臣団は怒り狂い、宮中に押し入り十常侍以下宮中の者を虐殺していった。

 

しかし、十常侍筆頭の張譲はいち早く少帝と陳留王を連れ出して涼州へ向かっていた。

 

涼州には自分が刺史にした董卓が居るからだ。

 

袁紹たちにとって不運な事に董卓はその頃洛陽郊外に居た。

 

張譲は生きた心地がしたのだろうが……董卓は張譲を殺し少帝と陳留王を保護して戻り、政権を牛耳った。

 

彼女は袁紹を渤海太守に任命し恩を売った。これにより董卓に表立って反抗する勢力は居なくなった。

 

しかし、翌年。袁紹は反董卓連合の兵を募り挙兵した。

 

「民草を虐げている逆賊董卓を討て……か……」

 

私は届いた檄文に目を通していた。先の橋瑁といい、袁紹といいケンカが好きなのか?

私は目を疑いたかった。私の知る董卓はそんな事をするはずがない。

 

そう叫びたくもなった。しかし……最後に見たのは3年前。それから何があっても可笑しくはない。

 

私は檄文を折り畳み、片付けた。

 

今回は……乗り気ではないが参加せねばなるまいな。

 

生憎、私たち孫呉は今、長沙、呉、零陵、桂陽、会稽があるとは言え他の諸侯に比べれば天と地ほどの差の開きがある。

 

ここで参加を拒否すれば潰される。

 

嫌々だが……参加しよう。行軍中にでも荊州刺史の王叡でも殺して目の上の瘤を除くとともに憂さ晴らしでもしよう。

 

王叡はいつも私をイヤらしい目で見てくる上に会うと常々嫁に貰ってやるとかおぞましい事を言ってるし・・・区星の乱の時だって手柄を横取りしようとしていたから天罰と称して誅殺しても文句は言われないはずだ。

 

後は……私怨になってしまうが南陽の張咨も葬ろう。この前、長沙郡を切り取ろうとしてたし……。アイツは民からも不平不満を言われているから誅殺だな。

 

よし……黒い考えが沸いてしまったが反董卓連合の為の編成を行うとしようか。

 

私は竹簡を取りだし、下書きを作った上で紙に清書を行っていった。

 




こんばんは、紅夜猫です。

今回はブラック紅蓮さん登場です。

王叡も張咨も嫌いではないですが……中々二人が殺られる理由が見当たらなかったので二人には悪いですが汚名を来てもらいました。

それと紅蓮さんの「天下を買い戻そう。」は三極姫の呉ルートからの引用となっています。

今回から反董卓連合編。これは多分長くなると思いますが根気強くお付き合い頂ければと思います。

それでは、また次回までゆっくり待っててね♪

ここまで読んでいただきありがとうございました


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徐盛百人隊―繚乱隊―

私は……ようやく外の喧騒に気付いた。

酸棗の街を董卓軍が囲んでいる。

ようやく出てきたか……長すぎて退屈してたんだ。

衛衡は檄文を配っている。ここにいるのは俺と1000の兵だけ。

外にいる董卓軍は目視する限りでは華雄、張遼率いる6000ってところか……。

元より降伏する気は無いが……怖じ気ついてしまうな。

俺は……手元に弓を手繰り寄せ、なけなしの勇気を振り絞った。






「弩弓兵、第1陣構え!」

 

長沙郊外の平原に文聘の声が響き渡る。それを合図に15名程の兵たちは用意しておいた弩を構える。

 

そして、俺は騎馬に跨がり気を窺っていた。

 

(弩弓兵たちは準備が整ったみたいだな。)

 

俺は後ろを一瞥し、馬の腹を蹴る。

 

文聘は遠ざかる徐盛の後ろ姿を見ながら……ある程度の距離ができたところで

 

「弩弓兵、放てぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

号令をかけた。弩弓兵たちは先を潰した矢を放つ。矢は先陣をきる徐盛を援護するように放物線を描いているが……1本だけ明らかに俺を狙っていた……。

 

それを打ち落とし……決まった……と思っていたら……やはり、刺さった。

 

「痛い痛い痛い痛い!!先を潰してても地味に痛い!!」

 

俺は落馬し野原をのたうち回っていた。

 

「燈様、御無事ですか!?」

 

文聘―雪香―が慌てて駆け寄ってくる。それを見て

 

「燈!!」

 

賀斉も嫉妬してからなのか急いでやってくる。

 

 

雪香と莱―賀斉―が揃ったとき。そこには火花が飛び散る。まるで燈を渡すわけにはいかないとものがたるように。

 

 

これは呉軍徐盛百人隊―通称・繚乱隊―お馴染みの光景の1つである。

 

 

俺は……今は二人に奪われている暇はないっ!俺はそう判断し……何とか立ち上がり俺に弩の矢を当ててきた犯人を呼び出す。

 

「篝!居るんだろ?出てこい!」

 

篝―朱然―は虫の居所が悪いと言いたげな顔をしてやって来た。

 

「何で、私が貴方に呼び出されないといけないのかしら?」

 

開口一番で逆ギレされた。

 

「それは……お前が矢を俺を狙って当ててきたからだ。」

 

こいつの相手は毎度毎度疲れてしまう……。

 

まあ……いつもの様に論破して負け惜しみを聞くのがオチだが……

 

「え・・・?私は今回は狙ってないわよ?」

 

篝は意外だというように驚いていたが・・・内心では俺が一番驚いている。

 

矢の飛んできたコースは俺から見て後ろ・・・繚乱隊の部隊員たちが居るところ・・・

 

そして、毎回俺に矢を飛ばしてくる篝が当ててないとなると……誰なんだ?

 

俺は・・・真剣に思考を巡らしていたが・・・それを1つの笑い声が止めた。

 

「あっ……あひっ……バッカじゃないの?真剣に考えちゃって」

 

・・・見ると篝がお腹を抱えて大笑いをしていたから俺は笑顔で近付き拳骨を野茂英雄さんのトルネード投法の要領で篝の脳天に撃ち降ろした。

 

「痛い……」

 

篝は涙目だったが俺は気にしていない。自業自得だ。

 

さて……まだ争っている二人……莱と雪香を止めようかと動こうとした矢先だった。

 

「伝令!伝令!徐盛殿、祖茂様が御呼びにございます!」

 

伝令がやってきて戦乱の嵐の到来を告げようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




こんにちは、猫です。

今回の話、正直書くのが辛かったです。最初は何も浮かばず書けなくて……

二度目は孫堅さんが長沙を離れていてその間に徐盛が幼い馬良と仲良くなるというのを考えましたがそれも続かず……最終的に今の形に収まりました。

こんなダメダメな私が悩んでいる間でも読んでくれている人が居たことには感謝しています。

それとこの話を投稿するにあたって……今までの話のUAが1話平均1000を越えました。

ありがとうございます。これからも精進していくので応援お願いします


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出陣前―紅禽は何を思う―

さすがに・・・分が悪かったか・・・

酸棗の城壁に倒れて動かない兵を見てぼやく。

―兵少なく、食尽く―

これは秦が滅び、前漢が成立する前。俗に言う楚漢戦争の最後の部分の話だ。

西楚の覇王―項羽は前漢の高祖―劉邦と戦い、和睦し、垓下の地に追い詰められた。

その時の楚軍を表したのが先程の一節だ。

董卓軍は勇猛だった。しかし、私の軍は最後まで戦ってくれた。

彼らに敬意を表し、私は董卓軍の前に表れた。

「華雄、張遼!よく聞け!私の首が欲しければくれてやる。だが、貴様ら率いる雑兵に討たれるほど橋瑁の首は易くないぞ!」

私―いや、俺は剣を抜き、首の大動脈を思いきり切り裂いた。

俺の意識はそこで途切れた。



伝令が来てから雪華に部隊を任せ、俺は単身長沙城に戻ってきた。

 

「開門!開門!徐盛文嚮、祖大栄殿の御呼びにより参上仕った!」

 

用件を告げるも門番は快く門を開いてくれた。開いたのを確認し、俺は馬を走らせた。

 

俺は祖茂の旦那に頼まれてガキを待っていた。

 

本来ならアイツは今日は休みで部隊の調練に行っていたそうだが・・・何でも急用が入ったらしく呼び戻したらしい。

 

しかし・・・あのときの旦那の顔は青ざめていたから何か良くないことでもあったのだろう。

 

馬の蹄の音が聞こえる。どうやら戻ってきたらしい。

 

「波才殿!徐盛、ただいま到着致しました!」

 

「それくらい見たら分かる。俺はガキじゃないんだ。」

 

「それは申し訳ありませんでした。」

 

「ほら、行くぞガキ。旦那が待ってる。」

 

徐盛は律儀に後を着けてきている。そのまま、庁舎に入り、廊下をいくつか曲がり目的の部屋の扉の前にたどり着いた。

 

「旦那、徐盛を連れてきたぞ?」

 

「ああ……角か。ありがとう下がって良いぞ。」

 

そう言われて俺はもと来た道を引き返す。後ろでガキがお礼を言っていた気がするが気にしない。

 

俺はそのまま歩き続け街へ出て……遂には城壁の上に来た。

 

俺は・・・どうして戦いを始めたのだろうか・・・

 

―蒼天已死 黄夫将立 歳在庚子 天下大吉―

 

清流派に憧れ前漢を変えようと燃えた青年時代。俺は太賢良師様―張角様―にこの頃出会った。

 

今は亡きあの人は太平道を説き、この国を貧しいものの居ない国に変えようとした。

 

俺はそのための矛となり腐敗した漢の軍を凪ぎ払っていった。

 

漢の軍を倒していけばいつか、洛陽の皇帝も気付くはずだと思っていた。

 

太平道による黄巾の乱を収める為に話し合いをしてくれるはずだ。

 

そう・・・信じていた。しかし、皇帝が下したのは賊軍―太平道―を討てと言う非情な勅命だった。

 

俺は泣いた。そして、己の内に眠る獣の赴くままに。

 

でも、それは間違いだった。獣の赴くままに大斧を奮えば獣はより大きくなり歯止めが効かなくなっていった。

 

そんな時、俺は孫堅文台に捕らえられた。

 

初めてだった。獣となっていた俺を負かしたのは。

 

そして、祖茂の旦那と会った。孫堅様に捕らわれた後、俺は旦那の陣に預けられた。

 

旦那は俺の縄を躊躇なく切った。今でも不思議に思える。

 

自由の身となった俺は逃げなかった。本能が逃げることを許さなかったからだ。

 

そして、旦那は地面に正座した俺を見て今でも忘れられない言葉を言った。

 

「波才。お前の武を我らが天下を買い戻すために使ってくれ。」

 

あのときは驚いた。俺の武を天下を買い戻すために使えなんて思いもよらなかったからだ。

 

でも、今は呉軍が帰る家になってしまった。後悔はしていない。

 

でも、俺は考えてしまう。天下を買い戻すために自身の武は奮えているだろうかと。

 

 

・・・嗚呼、戦乱の嵐が吹き荒れようとしている。俺は、答えを見つけられるだろうか。

 

 

 

 

 




こんばんは、八雲 暮葉です。

今回もやはり書くのに悩みました。曹操陣営を書くか、いつも通り呉軍を書くかで。

結局、いつもの話になりました。

今回の話は明日で70年経つことになる学徒出陣に影響されています。

生きて帰ることはないと家族に宛てて書いた自由主義者の大学生の手紙。

手紙を書いた人は悩み、苦しんだと思います。

だから、私たちは今ある平和の重みを真の意味で理解する必要があるのかもしれません。

次回はまた投稿が遅れるかもしれませんがどうかゆっくり待っていてください。

P.S.活動報告の方もお願いします


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覇王は中華を舞う―曹操―

橋瑁が死んだわね・・・

衛衡が檄文を届けてからというもの私は夜々星空を見上げるようになっていた。

檄文が届いてから今日で1週間・・・西へ1つの星が一際大きな光を放ち堕ちていった。

堕ちた先は・・・酸棗。橋瑁の城だった所だ。

彼が潰えた今、檄文はただの紙切れになった。

しかし、せっかく蒔かれた戦乱の種だ・・・ここで逃す手はない。


翌朝。

 

私は大広間に主だった将を集めていた。もちろん、衛衡も居る。

 

皆が集まったところで・・・

 

「華琳様、何事でしょうか?」

 

と夏候惇―春蘭―が代表して口を開く。

 

私は努めて平静に・・・そして、胸の昂りを隠すように面白くなさげに話した

 

「そうね・・・皆に集まってもらったのは他でもないわ。・・・橋瑁が死んだのよ。」

 

案の定・・・皆がざわめいた。

 

「冗談も・・・大概にしていただきたい!!」

 

その中で衛衡が口を開いた。

 

「橋瑁殿が死ぬなど・・・あり得ません!!何かの嘘です!!」

 

彼女は錯乱している。無理もないだろう・・・仕えていた主人が亡くなったのだから。

 

「秋蘭、衛衡を休ませてあげて?」

 

「承知」

 

春蘭の妹の夏候淵―秋蘭―に衛衡を気絶させてもらい寝室に運ばせた。

 

私は・・・秋蘭が出たあと・・・一人欠けていることに気付いた。

 

「孝牙、勇磁。彩華はどうしたの?」

 

曹仁―彩華―の事を弟の曹純―孝牙―と片腕の牛金―勇磁―に聞くと・・・二人とも仲良く顔を背けた。

 

しかも、口笛までするという周到ぶりで。

 

「孝牙、勇磁。答えなかったら・・・体に聞くわよ?」

 

私は笑顔で「絶」を手に取った。すると、二人は慌てて

 

「分かった、分かった!話すから!華琳姐、それをしまって!!」

 

「そうです!話しますから!どうか勘弁してください!!」

 

「最初から・・・そうやって素直に言えば良かったのよ。」

 

私は絶をしまった。そうして……ようやく、孝牙が口を開く。

 

「彩華姉さんは・・・・・・・」

 

一同は唾を飲み込んで・・・見守り・・・

 

「サボった。」

 

勇磁、秋蘭、衛衡を除いた全員が一斉にずっこけた。

 

「孝牙……やっぱり斬っていいかしら?」

 

私は再度、絶を手に取った。しかし、孝牙は

 

「嘘じゃないって!!朝、彩姉の部屋に行って伝えたら……

 

『んー……軍儀ぃ……孝くんも行くのよね……でも……面倒だし………どうしよ……』

 

って葛藤があって……結局サボってんだよ!?」

 

「本当かしら……勇磁?」

 

「ええ……孝牙様の言っていることは本当ですね」

 

「分かったわ……彩華には孝牙が後から伝えて。」

 

「分かったよ、華琳姐。」

 

孝牙への折檻が長かったのだろうか……いつの間にか秋蘭が戻ってきていた。

 

「さて、秋蘭が戻ってきたから……軍儀を再開するわ。」

 

是非を取るまでも無い。皆、分かっていたのだから。

 

だから、結論だけ伝える。

 

「私は・・・反董卓連合軍をここ、陳留で立ち上げるわ。」

 

私の意見を伝えると大広間に集っていた将たちは感動のあまり震えていた。

 

さあ……ここから私の覇道の始まりよ。

 

 

乱世の奸勇……そして、超世の傑「曹操孟徳」動き出す。

 

 

 

 




さて……こんばんは、八雲です。

今回は呉√をお休みして魏√を書かせていただきました。

実は今回出てきた曹純、牛金、そして回想だけしかなかった曹仁は三の丸さんからのリクエストです。

今も活動報告の「徐盛さんからのお願い」で募集していますのでどうかお願いします。

さて……次回ですが……また呉√をお休みして……蜀&一刀くん√を書きたいと思いますのでどうか楽しみに待っていただけたら幸いです。

それでは……次回もゆっくりしていってください!


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夢見る大徳の王は何を知る?―劉備、本郷一刀―

はぁ……今日も平和だ……。

2年前まであった黄巾の乱は嘘のように静かになり……首領として祭り上げられていた張角、張宝、張梁こと数え役満姉妹は自分達の望んだ通りアイドルとして羽ばたいていった。

それから、1ヶ月後、俺らは安徽県の警察署長になったが……賄賂を要求してきた督郵を鈴々(張飛)、一樹(簡雍)が懲らしめ……白蓮(公孫瓚)の元に身を寄せることになり……

平原相に任命された。それにしても今日も平和で良い日だな……


「一刀、のんびりしてないで助けてくれよ!?」

 

一樹が走りながら俺に助けを求めてくる。

 

「一樹、いい加減にしないと怒るって何度言えば……!」

 

「一刀兄さん、一樹さんを渡してもらえますか?」

 

俺の目の前には鬼の形相の愛紗(関羽)と良い笑顔をしている桃夏(劉封)がいた。

 

「うん……すまない、一樹。いくら俺でも……今のこの二人を見てるとお前を助けようとする気が全く起きないんだ。」

 

「一刀ーーーー!!!!助けてくれ!!止めろーーー!!死にたくなーーーい!!死にたくなーーーーーーい!!」

 

一樹の悲鳴をBGMに俺は茶を口に含む。

 

「一くん・・・僕は顔を出さなくて正解だったのかな・・・」

 

「ん・・・舜は出なくて正解だったな。お前が出てたら・・・一樹が狂いそうになってたから」

 

劉備軍の隠密総元締の舜(羅候)が柱の陰から表れて尋ねたが……俺の返す答えはいつも通りだった。

 

舜は・・・体のメリハリを隠すために布地の厚い服を着ているため分かりにくいが・・・れっきとした女性である。

 

「そうそう……桃華が一くんを呼んでたけど何かしちゃったの?」

 

「ん・・・ああ・・・あの件かも・・・」

 

「あの件って・・・まさか・・・!?」

 

舜の顔が驚きに染まっていたので言ってしまおう。

 

「曹操から来た……反董卓連合軍結成の密書。」

 

「やっぱりか……私は……参加することに気が引けるけどね……」

 

俺は薄々感づいていた。黄巾の乱の張三兄弟が女性で……全員が生き残っていたところから違和感を感じ……

 

公孫瓚と袁紹と戈を交える前に劉備が平原相になっていたころから違和感が膨らんで……

 

密書が来てから……俺は決意して舜に洛陽の調査を頼んだ。

 

頼んでから数日後、舜は史実とは全く逆の董卓の情報をもたらしてくれたが……俺は桃華にそれを伝えることなく……天下への足掛かりのための犠牲にしようと考え……参加を勧めた。

 

しかし、桃華は悩んだ。そして……今日の呼び出しで答えが聞けるのだろう。

 

俺は……桃華の元へ歩いていき……大広間の扉を開けた。

 

「ご主人様……。私、決めたよ。」

 

そこには目に決意を浮かべながらも不安そうな表情の女の子が居た。

 

「朱里ちゃん、雛里ちゃん。愛紗ちゃん、一樹くん、鈴々ちゃんを呼んできて?」

 

「はわわ、分かりましゅた!!」

 

「あわわ、しゅぐに呼んできましゅ!」

 

我らの臥竜、鳳雛は主力を召集しに行った。

 

「ご主人様、私、決めたよ。洛陽の人たちを助ける!!」

 

「そうか……なら、頑張らないとな♪」

 

俺は桃華の頭を撫でてやりながら考える。

 

(いくら、現実を知らなくても……理想を語り続けても……周りに現実を見ている人が多くいるなら……桃華は壊れたりしないだろうな……)

 

思案から意識を戻すと……皆がこちらを見ていた。

 

「ご主人様っ!!」

 

「お兄ちゃん!!」

 

「一刀ぉぉぉぉ!!」

 

「一刀兄さん!!」

 

「「ご主人様!!」」

 

「「「「何をしているんですか!!」」」」

 

「鈴々も撫でてほしいのだ!!」

 

「一刀、お前、裏切りやがったな!!」

 

皆から注意される。一樹に至っては殺気をぶつけて来やがる……

 

どうしたものかと考えたが……

 

「皆、反董卓連合軍に参加するから準備して!!」

 

「「「「「「御意!!」」」」」」

 

桃華の鶴の一声で助けられた。

 

こうして、俺は……俺らは反董卓連合軍に参加し……戦乱の大過に呑まれることとなった。




熱で辛い……でも、書かないと……

どうも、作者の八意暮葉です。今回は熱の中での執筆です。

ものすごく読みにくいかと思います……それでも、読んでくださると信じて後書きに書いてます。

今回も……色んな原作外キャラが出てきて……いつもよりはネタは多くなってるかなと思います。

それと……一刀君は今回、天の御遣いとしての登場ですが……原作よりも実利主義的なところが強くなってしまいました。

このままになるか、それとも変わるかは決めていません。

そして、今回はここまで……それでは次回までゆっくりしていってください


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2章2幕 反董卓連合結成
高らかに掲げよ。大義の旗を―袁紹―


「華琳様、袁紹及び鮑忠殿が着陣されました。」

傍らに侍る桂花の声を聞きながら私は思案を巡らせている。

(総大将は・・・麗羽が持っていく。私は参謀に収まれば良い。だが、先陣は誰に任せるべきかしら・・・公孫瓚?孔融?それとも……劉備かしら……)

「ふふふ・・・楽しくなりそうね・・・♪」

桂花がビクッと体を震わせた。いつの間にか声に出ていたみたいね。

でも、仕方ない……こんなに心が踊るような事はないのだもの!!

「さあ、桂花。挨拶の為の軍議に行くわよ。」

「はっ、はい!」

桂花が律儀に着いてくる

さて……乱世の助長を促す脚本作りを始めましょうかね。


「だから、この軍の総大将は四代に渡り三公を輩出してきた汝南袁家の当主であるこの、袁紹本初を除いて居ないと思いますのよ!!」

 

私は軍議を行う為の天幕で集った諸侯の皆さんを前に自分が如何に総大将に相応しいかを語っていました。

 

もちろん、私が総大将になったときには……華琳さんを参謀に起用しますわ。

 

しかし、皆さんったら私がいくら熱弁しようともうんとも……すんとも言ってくれません……だんだん泣きたくなってきましたわ……。

 

『あのー・・・スミマセン。平原県令の劉備なのですが・・・軍議に参加してもよろしいでしょうか?』

 

その時、天幕の外から声が聞こえたので……入室を促しましたわ。

 

「スミマセン……遅れてしまって……それで軍議はどこまで進みましたか?」

 

入ってきたのは、桃色の髪をしたとても抜けているといった印象を受けてしまう少女でした。

 

「生憎……総大将を決めるところで止まってしまってるわ……」

 

華琳さんがそう伝えたとき……

 

「どうして、総大将すら決めてないんですか!!この軍は洛陽の人々を助けるためにたちあがったのでしょう!?」

 

私は目の前の少女が……かの劉秀皇帝の如く見受けられました。

 

今、私は劉秀皇帝がなぜ後漢を建国することができたのか理解できました。

 

「総大将は袁紹さんで良いじゃないですか!」

 

え……?私は一瞬何を言われたのか分かりませんでした。

 

「そうね、麗羽が総大将なら文句は誰も言えないわよね~」

 

華琳さんが意地の悪い笑みでこちらを見ています。

 

他の諸侯さんも賛意を表されています……。

 

「分かりましたわ。この、袁紹本初。反董卓連合軍の総大将の任を謹んでお受けいたします。」

 

こうして、私は総大将の任を受けました。 本当なら劉備さんが相応しいのでしょうけれど……。

 

「総大将も決まりましたし……私から提案を1つよろしいでしょうか?」

 

皆さんの視線が私に集まります。正直、怖いです……

 

「参謀に曹操さんを起用したいのです。」

 

華琳さん、劉備さんを除いた皆さんの顔が驚きに染まっています。

 

仕方もありませんね……。しかし……皆さんはなぜか突然納得したような顔になりました。

 

「曹操殿を参謀に迎えることに私たちは異存はありません。」

 

諸侯の皆さんを代表して劉岱さんが意見を述べてくれましたわね。

 

「それでは・・・汜水関攻めの先陣を決めたいのですが・・・」

 

「麗羽、少し待ってくれないかしら?」

 

先陣を決めようとしたとき華琳さんが制止を掛けました。

 

「まだ、一人ここに来ていないのが居るのよ……。だから、その人に先陣を任せてあげてほしいわ。」

 

「それは・・・誰ですの?」

 

知らず知らず・・・声が震えてました。そして、彼女の次の言葉を聞いて・・・私は声を失いました。

 

「江東の虎・孫堅文台よ」




こんにちは、八意 暮葉です。

麗羽さんの口調……完全に失敗しました。もう、頭を石にぶつけたいくらいです。

今回もまた、いつもと作風が違うような感じがして仕方ないですが……書いてるのは紛れもなく同じ作者です。

それと……次回から急展開になる可能性があるかも知れないのでご注意ください。

それと……感想待ってます。

それでは、次回までゆっくり待っててね


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忠義一徹―祖茂―

「孫堅さん、貴女に汜水関の先鋒をお任せしますわ!」

今、起こったことをありのままに話すぜ……

反董卓連合軍に参加しに陳留の街に向かっていた私は

道中後顧の憂いにならないよう(と称して私怨を晴らすため)に荊州刺史・王叡、南陽郡太守・張咨を粛清していった。

そして、陳留に着いたとき……袁術ちゃんから預州刺史の官位を貰い

本陣に出向いた。そして、先頭に遡るってわけだ。

何をいっているか分からない?大丈夫だ、私にも分からないから。


「袁紹とやらは・・・派手にやってくれるねぇ・・・」

 

俺は自身の率いる祖茂隊を進軍させながら馬上で愚痴っていた。

 

「仕方ないでしょう、旦那。相手は名門汝南袁家なんですから・・・下手に逆らえば・・・ここからオサラバですよ?」

 

隣の角が自分の首の辺りを叩きながら言ってくる。

 

「そうなんだよな・・・いくら、俺らが8000の精鋭を率いていても・・・相手は倍近い兵を整えて来ているからな・・・」

 

「そうですよ・・・いくら、精鋭でも数の前には屈することも度々ですから」

 

「それは・・・西楚の覇王の事か?」

 

「そうですよ・・・覇王は精鋭8000騎と20万の兵を持ちながらも最後は漢軍60万の兵に敗れましたから。」

 

考えてみれば……恐ろしいものだと思う。項羽は彭城で漢軍30万を3万で破りながら総大将を逃がしただけで一転して滅亡に追い込まれた。

 

俺らも……そんな風になってしまうのだろうか……

 

「旦那、汜水関が見えてきましたよ。」

 

角の声で意識が戻った。目の前には山を切り開き造り上げた天然の要害を利用した要塞が広がっていた。

 

「はっ……はは……笑えねえな…………とりあえず、野営の準備をしておけ!!」

 

野営を準備させながら……俺は目の前から目を離さなかった……いや、離せなかった。

 

そういえば……この地は陽人とか言っていたな。日輪を表す陽の字があるとは……縁起が良いな。

 

この日は……相手側からの夜襲もなく……無事に眠ることができた。

 

次の日の朝の事だった。 この日、突然汜水関の門が開いた。

 

すると、関から灰色かかった髪をもった女性が出てきて……

 

「音にあるものはよく聞けぇ!!私は董卓様を護りし矛・華雄なり!!私と一騎討ちをし、見事討ち取ってみせるものはおるか!!」

 

朝から……うるさい……

 

「我こそは……紅巾の波才!!華雄とやら……お主を討ち取り連合への手柄とさせてもらうぞ!!」

 

我が隊にも……生真面目で……熱くて……恩義を貫くバカが居たな……

 

まあ、角が負けることはないだろうから……安心して見ていられるな……

 

「波才……ふふ……お主が相手とは……これほど心踊ることはないぞ!!」

 

「それはこっちのセリフだ!橋瑁を討ち取ったお前を討ち取り橋瑁への餞にもしてやる!!

 

華雄、波才の得物が閃いた。一合目ではさすがに決まることは無さそうだな。

 

俺はしばらく二人の一騎討ちを眺めていた。十合、五十合、七十合……数を重ねていくが……波才が有利に見える。

 

そして・・・八十六合目を撃ち合ったとき・・・波才の馬が石に躓いたのを見て、俺は自然と駆け出していた。

 

「死ねぇぇぇぇ!!波才!!」

 

(間に合えっ!!)

 

そう思い……華雄の得物が……波才に届こうとしたとき……

 

俺の視界は真っ赤に染まり……血に濡れし折れた双刀が手に握られていた。

 

俺の意識はそこで途切れた。




こんばんは、二日連続の八意 暮葉です。

今回はようやく……残酷な表現っぽいものが出せたかなって思います。

それと……急展開になってしまい申し訳ありません。

どれもこれも私の文章力が足りないせいです。ごめんなさい。

それと・・・このあと・・・祖茂さんがどうなったかは・・・察しのいい人たちは気付かれるかもしれません。その辺りは次回以降に綴ることとなります。

華雄さん、波才の事も気になるかもしれませんが……それはまた次の話まで……!

それでは、次回までゆっくり待っていてください!
※感想とかあったら……お願いしますね?


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恐怖に縛られし己が身―華雄―

今回は華雄さん加入フラグその1。

そして、後書きに重大なお話。後書きはなるべく全話読んでもらいたいと切に願う日々


私は呆然とした。本来なら……波才の首を切り落としているはずの金剛爆斧が……見知らぬ貴人の双刀を半ばから折り、首の中ほどに埋まっていたから……

 

「華雄っ!貴様、よくも祖茂の旦那を……殺りやがったな!」

 

私は波才の怒号で意識が引き戻され、目の前の貴人が孫堅軍の副将・祖茂大栄であることに気付いた。

 

「はは・・・一騎討ちに割って入ってきたのが悪いのだ!」

 

私は・・・自棄になって獲物を大振りで振ろうとした。

 

その時、鈴の鳴るような声が響いた。

 

「角、華雄を殺そうと思うな。コイツは死ぬには惜しいやつだ。」

 

「何でだよ!?華雄は旦那の命を奪ったヤツだ!上司の仇を討つのは道理に叶ってるだろ!?」

 

「俺は・・・な、角。お前の落馬を見て・・・死なせたくなくて一騎討ちに割ってはいった。その結果がこれだ・・・。だから、華雄は・・・華雄は・・・悪くないんだ。」

 

私は思わず言葉に詰まってしまった。

 

(どうして?どうしてなんだ!?目の前の敵将はどうして死ぬのが分かって冷静でいられる!?)

 

私は理解できなかった。そして・・・この人に投降を促されることに・・・ 得体の知れない恐怖を感じた。

 

「華雄・・・すまなかった。角・・・波才は俺の大切な・・・仲間でな・・・失うのが惜しかったからしゃしゃり出てしまったよ。」

 

・・・怖い。本当に怖い。手から冷や汗が止まらない。

 

「それで・・・華雄よ・・・私から頼みがある。」

 

「なっ・・・何だ?」

 

驚きと恐怖のあまり、声が上擦った。

 

「波才と・・・もう一度、一騎討ちをして・・・負けたら・・・呉の軍門に降ってくれ・・・」

 

「もし、私が勝ったら?」

 

「その時は・・・お前さんに・・・任せるよ。」

 

祖茂の声が少しずつ力を失ってきていた。

 

「分かった。この華雄、一人の武人として祖茂大栄殿との約束を守ることを誓おう。」

 

私がそう告げると祖茂はフッと笑い、静かに目を閉じた。

 

「華雄・・・命拾いしたな・・・だが・・・貴様の命も次限りだ。」

 

「そういう貴様こそ・・・確りと首を洗って、馬を整えて来い。」

 

私はそう告げて・・・祖茂の頸から金剛爆斧をゆっくりと抜き、関の中に戻っていった。

 

「救護班!今すぐ旦那を天幕まで運んで医者を呼んでこい!」

 

後ろでは・・・波才の怒号が飛んでいた。

 

私が関に入り・・・それを確認した門兵がゆっくりと門を閉じ始めた。

 

門が閉じる音を聞きながら・・・私は足りない頭で考えを巡らせていた。

 

そして・・・門が音を立てて閉じたとき

 

 

 

 

私は・・・私の体はゆっくりと馬上から滑り落ちていった。




華雄さん加入フラグはあと少し続きます。

そして、重大なお知らせと言うのは……一刀君と徐盛のことです。

天の御遣いが二人いるのはおかしいじゃないかと指摘されたのですが……一刀君がいるのは色々な原作に関わってくる重大なフラグを回収するため(赤壁の闘いの呉蜀同盟など)の歯車の役割のためであり……作者としては一刀君のフラグ乱立も考えていません。

それに、題名にもありますが……これは大筋は陳寿の「三国志」の流れを踏襲する形を踏んで……武将の加入する陣営を弄ったものなので……最終的には1つの国に纏められます。

それが……魏なのか、蜀なのか、呉なのか、晋なのか……それは最後までのお楽しみになります。

長々とした後書きでしたが……作者の考えを理解していただきたかったので長くなりましたすみません。

それでは、また次回までゆっくり待っていってね!


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菫に誓いたる思いの丈―華雄―

私が雍州に居たとき……李陵の話をよく耳にした。

「悲劇の将」、「無鉄砲」など……彼に寄せられる言葉は数多あったが……その中でも

菫色の髪をした少女の言葉はよく覚えている。

「彼は誰よりも漢を愛し、誰よりも漢を嘆いた男」

そう……少女は答えた。

それが……私と月様の初めての邂逅だった


随分と……懐かしい夢を観ていた気がする。

 

あれは……4年前だったか……月様は涼州刺史として赴任することになった。

 

そして、涼州に向かう道中、雍州陳倉で私と会った。

 

最初、私は彼女をバカにしていた。このような小娘が刺史など笑わせてくれるとも言った。

 

しかし、私は見誤っていた。彼女の内に眠る王の器を見ていなかったのだ。

 

そして、当時の彼女はまだ未熟ではあったが……大胆なことに私を自分の軍へと勧誘してきた。

 

私は……面白いものだと思い、彼女に付いて行った。

 

そして、いつしか惹かれ……この人以外に命を捧げるものはいないと思った。

 

「懐かしいものだな……」

 

「どないした、華雄?」

 

「いや、何でもないぞ霞。」

 

声をかけてきた痴女もとい張遼といつもと変わらない会話を交わした。

 

「今日は……ええ日和やな……ホンマ、お前が羨ましいわ」

 

「霞」

 

羨望の声をかけてくる彼女に私は静かに告げなければならなかった。

 

「私が負けたら……頼んだ。」

 

「……負けへんよ、華雄は。」

 

私の言葉に対して霞は真面目な調子で応えた。

 

「そうだな……それでは……またな」

 

私はそう、彼女に告げて静かに馬へと跨がり関の外へと出た。

 

 

外には徒士の波才が立っていた。

 

「遅かったな。」

 

「・・・・・・」

 

波才の言葉に私は得物を構えることで応えた。

 

「ふ・・・言葉で語るは無し・・・か。ならば、戦で語ろうか!」

 

波才のその言葉が合図だった。互いに弓から放たれた矢のごとく接近する。

 

普通ならば……徒士と騎馬であれば……騎馬の方が有利である。

 

しかし、それはあくまで普通の話であって……目の前の徒士の化け物には当てはまらない。

 

一合目から互いの得物が交錯する。

 

「ふ!腕を上げたか波才!!」

 

「何を言ってんだ……俺は元々徒士武者なんだよ!」

 

会話を交わすくらいに燃えてしまう……きっと、私の頬は三日月につり上がっているだろう。

 

嗚呼……こんなに楽しい一騎討ちは何時ぶりだろうか……

 

嗚呼……目の前の者が味方ならどれだけ心強いだろうか……

 

私はそんなことばかり考えてしまう。しかし、得物を奮う手は止めない。

 

十合、二十合、三十合……打ち合いは続く。どこまでも続いていく。

 

九十九合……百合!

 

100を越えてもまだ止められない……止まらない!

 

波才の顔を見ればこの一騎討ちを楽しむかのように笑っていた。

 

「楽しいな……華雄!」

 

「ああ、そうだな……波才!」

 

さらに……五十合は打ち合っただろうか……

 

「っ……!?」

 

手に痺れが走った。何故今になって!?

 

私は錯乱しかけた……だが、意地で痛みは顔に出さなかった。

 

痛いのは相手も同じはずだ……。

 

更に……二十合撃ち合い……私は金剛爆斧を手から落としてしまった。

 

波才の得物たる大斧が喉元に突き付けられる。

 

「勝負……ありだな。」

 

私は……一騎討ちに負けた。

 

だが……心はとても晴れやかなものだった。




華雄さん加入フラグ回収?

今回は華雄さんと波才の一騎討ち。

本来なら波才は祖茂の仇討ちの為に臨むのですが……やっぱりそこは武人。

強者との戦いに胸を踊らせ……いつしか本来の目的を忘れてしまいました。

そして、華雄さんもいつの間にか一騎討ちを楽しんでます。

さて、次回ですが……20話の後書きをしっかりと読んでいただけると幸いです。

それでは、次回までゆっくり待っててね!


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散る華の如く―祖茂隊―

・・・気が付くと俺は天幕に寝かされていた。

傍らには、紅蓮様、角、静焔(朱治)・・・隠れるように灰色の髪をした仮面を着けた女性が居た。

「敬憶・・・大丈夫か?」

心配して紅蓮様が声をかけてくる。

しかし、俺は『大丈夫ですから、心配しないでください』の一言すら掛けられないくらいに体が弱っていた。


「祖茂殿の命だが……あと3日持てば良い方だろうな……」

 

華佗が悲痛な顔でそう、告げてくる。

 

呉国一の名医に見せ、治療させたが……延命が限界だったらしい。

 

「あの人は……首を斬られながらも鼓動が止まってなかったから……助けられるかもしれないと思ったが……延命が限界だったみたいだ……すまない……」

 

「良いんだ……華佗。お前はよくやってくれた。謝ることはないさ。」

 

私は華佗を労る。本当なら助けてほしい。でも・・・アイツはもう助からないと分かってしまうくらい・・・キズが深かった。

 

「それで・・・波才が捕虜にしたアイツはどうする?」

 

華佗が話題を変えるため……華雄の事を出してきた。

 

「本当なら……首を斬って本陣に送らないといけない……いや、首を斬ってしまいたい……」

 

「でも……出来ないんだよな?」

 

「そうよ……彼女の首を斬らないでほしいって……敬憶、角、燈に言われたもの」

 

「波才と……徐家の坊っちゃんは分かるとして……祖茂殿は話せないはずだろう?」

 

「ええ……話せないけど……目で訴えかけてきたわ……」

 

あのときの彼の目を思い出すと……目頭が熱くなって……目の前が霞んでしまう。

 

なぜ、華雄を助けたがるのか……私としては理解できない。

 

自分の命を奪った大将を許すのが分からない。

 

そして、味方に加えようとしていることも。

 

「俺は……祖茂殿の気持ちが何となく分かる気がするよ……」

 

「どういうことだ?」

 

理解ができなかった。どうして……医師である華佗に理解できて、私に理解できないのだろうか……

 

「祖茂殿は……自分の命が長くないことを理解してて……華雄を自分の穴埋めとして迎えて欲しいのだと思ってるんだ。」

 

華佗に言われて……私は改めて敬憶の死に向かい合う事となった。

 

彼が死ねば……現在の呉軍では将が居ないから部隊は1つ無くなってしまう。

 

それは私たちにとっては大きな痛手だ。アイツはそれを理解してて……無理を承知で願い出てきた。

 

どこの軍でも・・・仇討ちは当たり前の如く通っている。

 

そして、敬憶が死ねば・・・私が華雄の首を撥ねることで彼の仇を討つことになる。

 

でも、そうしてしまうと・・・私たちは一人の将を得る機会と一つの部隊を失ってしまうという負の連鎖に巻き込まれてしまう。

 

それを防ぐための策。そして、代わりの者の首を送ることで……何も知らない本陣を欺き……私たちへの信頼を損なわないようにする。

 

最後まで……敬憶は敬憶なりに私たちの事を考えていてくれた。

 

なら、私もそれに答えなくてはいけない。

 

そう思い……私は華雄の捕らえられている陣幕に入った。

 

「華雄……お前は死んだこととして本陣に報告し……敵方にも触れ回る事とした。」

 

「そうか……」

 

華雄は敵将ながら堂々とし、落ち着いた様子で淡々と答えた。

 

私は、その態度に感銘を覚え、初めて自分の意思で殺すのが惜しいと思った。

 

そこで……私は一つの提案を持ち掛けた。

 

「華雄。降伏してくれ。」

 

「敗軍の将に投降を持ち掛けるなど……阿呆か?」

 

猪にバカにされ、腹立たしく思った。

 

「と、昔の私なら言っていた。でも・・・今は祖茂とやらを見て変わった。」

 

華雄が突然語りだし、驚いてしまった。

 

「彼の将が命を賭してまで……守りたいものが見たくなった。だから、この華雄が命……孫堅文台殿に御預けいたす。」

 

交渉は成立した。だから、私は一つの命令を下す。

 

「華雄。華雄はこれから死んだこととして扱われる。だから、これからは……」




こんばんは。八意です。

今回は区切りが微妙ですが……どうしてもここで区切りたい理由が有りました。

それは……読者の皆さんに華雄の新たな名前と……真名をつけてほしいからです。

これは感想や活動報告の追加してほしい武将などのところに書いていただければ幸いです。

後、私情ですが……お気に入りが遂に……100件越えました!

ありがとうございます。これからも少しずつ精進していくので……温かい目で見守っていただけると幸いです。

それでは……次回までゆっくり待っていってね!

※感想等があればお願いします

※華雄の新たな名前と真名が応募されて……決まり次第次話を投稿します


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虎ノ背―孫堅―

徐盛さんは多分、2章では主軸としては出てこない。

むしろ、彼が主人公でることにき疑問を持たれてしまって悩み書く気力を無くし

生きる気力を半分なくした作者の送る徐盛伝、久々に幕開け


「華雄、お前はこれから……陳武、字は子烈と名乗れ。」

 

「私に……名と字を……どうしてだ!?」

 

新たな名と字を付けると華雄は驚き……私の胸ぐらを掴んできた。

 

「それは・・・・・

 

 

 

 

お前は・・・華雄はすでに死んだ人となったからだ。」

 

そう。華雄は死んだこととなっている。

 

私は角と華雄の一騎討ちが終わったあと・・・陳留にある連合軍本陣に戦勝の報告の使いを出した。

 

そこで求められたのは

 

『敵将・華雄の首実検を行う。速やかに討ち取った華雄の首を差し出せ。』

 

というものだった。私は困り果ててしまった。

 

祖茂との約束は破ることはできない―そんなことをしたら部下からの信用は無くなる

 

連合軍の命令に逆らうこともできない―そんなことをすれば私は逆賊扱いをされ、討伐される

 

そこで私は陣を見回り・・・ある1つの天幕を訪ねたときに妙案を思い付いた。

 

訪れたのは一つの伍の天幕。先日、伍の一員が病で亡くなったと聞き弔問に来た。

 

そこで見たのは・・・華雄と瓜二つとはいかないものの華雄によく似た顔の兵士だった。

 

私はすぐに伍長に頼みその兵の首を取った。

 

そして、本陣に送り・・・華雄の死は大々的に発表された。

 

私はそのことを端寄ってだが彼女に説明した。

 

彼女は目を閉じたまま聞き、話終えたところで

 

「そうか・・・なら、致し方無い。」

 

と、納得してくれた。

 

「それで・・・真名は無いのか?」

 

華雄がとんでもない爆弾を落としてきた。

 

「真名は・・・もう少し待ってくれ・・・良いのが思い付かないのだ・・・」

 

実は真名を考えていなかった。

 

「そうか・・・」

 

華雄は悲しそうな顔を一瞬したがすぐに元の顔に戻った。

 

「まあ・・・良い。この華雄・・・改めて陳子烈・・・孫呉に忠誠を誓わせてもらう。」

 

「武人の御心に誓ってか?」

 

「如何にも。」

 

華雄が礼をもって接したので私も礼に乗っ取った対応をする。

 

こうして、孫呉には一人の将が加わることになった。

 

そして・・・その日。

 

私は祖茂の天幕に向かった。祖茂は静かに目を閉じ横たわっていた。

 

私はその彼の手を握り語りかけた。

 

「敬憶・・・華雄はしかと・・・呉軍に迎え入れたからな。

 

連合軍を欺いたが・・・お前との約束はキチンと守ったぞ・・・!」

 

「だから・・・だから・・・帰ってきてくれ・・・敬憶・・・っ!」

 

すると、祖茂はフッと微笑んだ気がした。

 

だが、それきりであった。

 

同時刻、夜空に浮かびし1つの星が尾を引き、筋を夜空に残して汜水関の近くに墜ちた。

 

その星は将星で、墜ちた場所は陽人。

 

星が墜ち、祖茂大栄は華雄が孫呉に迎えられた日、自分の役割を終えたかのように静かに息を引き取った。




こんばんは、八意暮葉です。

最後は雑になってしまいました。ごめんなさい。

今回も……苦難しながらも徐盛伝、投稿できました。

皆様が読んでいただいてくれるので……それを希望に何とか書いています。

今回、もしかしたら……年内最後の投稿かもしれません。

なので、皆さんに言わせて頂きます。

本年は徐盛伝を御読みいただきありがとうございます。

本作はとても拙く、視点もぶれてばかりで時間軸もおかしく読みにくいものだったと思います。

しかし、この物語を完結させながらになりますが……少しずつ修正しながら頑張るので来年もよろしければ読んでいただけると幸いです。

それでは、皆さん次回までゆっくり待っててよいお年をお迎えください!


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If Story―新年の初代繚乱隊―

この話は時間軸として置くとすれば赤壁の戦い後~合肥の戦い前となります。

本編では語られることのないIf Story。本編未出演のキャラもいますが大目に見てください。

それでは新年の特別回。

始まります。


「そういえば、今日は元旦だったな……」

 

「元旦?何なのそれは」

 

「ん、ああ……年が一周して新たに始まるのを祝う行事だ。」

 

俺はいつも通り柴桑城の食堂で莱と和やかに朝食を取っていたが……ふと、本日が1月1日、俺が居た世界で元日と呼ばれる日だと言うことを思い出した。

 

「餅……食いたい……」

 

「餅?東方にそのような食べ物があるとは聞いたことがあるけど……」

 

「・・・・・・」

 

俺は気付いた。無いなら作る、実物がないなら作るべきだと。

 

「莱、今から呼ぶやつを集めてくれないか?」

 

「どうせ、雪香、篝、貂良、田恢、董襲を呼べって言うんでしょう?」

「言わなくても分かっていたみたいだな……」

 

「当たり前でしょう?私が燈と何年一緒だと思ってるのよ」

 

俺は苦笑いを禁じ得なかった。そして、初代繚乱隊及び現繚乱隊の主だった5人に声をかけて……

 

「面白そうだから儂も混ぜさせてもらうぞ♪」

 

「こんな、楽しそうなことを隠してやろうなんて……燈も冷たくなったわね~」

 

「力仕事でこの太刀の韓当が居ないのは大問題だ!」

 

「このごろは楽しいことも中々無かったからな……私も混ぜさせてもらいましょうか」

 

なぜ、こうなった?

 

なぜか……祭さん、松花様、碧さん、蒼さんが来ていた。

 

「今回は……遊びではありませんよ?それと、松花様。死んだことになっている先々代が堂々と来たらダメですし、祭さんは仕事終わらせてないでしょう!?」

 

「・・・・・・・」

 

「・・・まあ、そうね。迂闊だったわ」

 

祭さんは目を逸らし、松花様は大人しく反省しているかのように見えた。

 

「仕事、仕事と・・・たまには肩の力を抜いても良かろう!!」

 

「変装すれば良かったのね!!」

 

・・・二人とも反省の色が見えませんでした。

 

「「燈、あの二人は昔からああだから諦めておけ」」

 

碧さんと蒼さんの四天王コンビが肩に手を乗せてそう言ってくる。

 

うん。元から分かってた。昔からあの二人を見ているから警告や注意は無駄だって。

 

「とりあえず、あの二人は放置して始めましょうか!」

 

松花様と祭さんに背を向けて皆にそう、告げた。

 

とりあえず、用意したのは訓練用に用いられる木槌と石が良かったが……一般兵の兜を台座で固定した擬似的な臼。そして、なぜか存在していたもち米だ。

 

食堂の厨房の皆+蓮華様の力を借りてもち米は炊いてもらっている。

 

蓮華様に話したらノリノリで参加してくれたのは驚いたが……

 

とりあえず……予想外もあったが……何人かの組に分けた。

 

組はそれぞれ

 

篝、貂良ペア、董襲、雪香ペア、祭さん、碧さんペア、松花様、蒼さんペア

 

そして、俺と莱と田恢ペアだ。

 

一応、バランスは考えて振り分けてはある。

 

それぞれ突く人間と捏ねる人間とで構成した。

 

「皆、もち米持ってきたわよー!!」

 

蓮華様のその一言が開戦の合図だった。

 

「甘くみるではないわ!!」

 

「祭、落ちついて!!」

 

碧さん……お疲れさまです。祭さんがあそこまで暴走すると誰も止められない。

 

暴走はせめて……祭さんだけであってほしいものだ……

 

「あははは!!米ごときが私の覇道を止められるとは思わないでよね!!」

 

「・・・・・」

 

「ちょっと、蒼!何するのよ!?って、ちょっと待って!待ってってば!!」

 

松花様も暴走したけど……蒼さんのビンタに止められた。

 

うん、祭さん以外は大丈夫だな。そう思いながら俺も木槌を振り上げた

 

「よいしょっ!!」

 

「えいっ!!」

 

「はいっ!!」

 

俺、莱の順に突き、田恢が捏ねるが長年の付き合いからか息は合わさった。

 

「ねえ、燈、田恢。」

 

「どうした?」

 

「?」

 

「こんな時間がずっと続いてほしいわね♪」

 

「ああ、そうだな!」

 

「ふふ、そのためには燈様が今以上に頑張らないといけませんね?」

 

そんな軽口を叩きあいながら餅をついていき……2刻後……全部のもち米を突き終えた。

 

そのあと、俺たちは餅を街の人に配った。

 

また、これは後日談だが……

 

「祭様」

 

「なんじゃ?」

 

「弁償代、祭様の給料から引いておきました。」

 

「この、薄情者ぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「何とでも言ってください」

 

とても黒い笑顔をした瑰と絶叫に近い悲鳴をあげた祭さんが目撃されたらしい。




こんにちは、八意です。

正月特別回いかがでしたでしょうか?

今回は本編未出演の方々が何人か居ましたが……ここで紹介させていただきます

松花=張昭=故・孫堅
碧=韓当
蒼=程普
貂良=華雄
瑰=諸葛瑾
董襲=初代繚乱隊の伍長、現・水軍左将
田恢=現繚乱隊(3代目)の副将

となります。今年も本日より始まりました。

本年もダラダラ不定期更新の「徐盛さんが頑張るそうですよ」をよろしくお願いします


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2章3幕 天道を語る刃
廻る予兆―徐盛―


少年は夢を見る。


そこは赤く燃え盛った荒野だった。

 

地には息をしていない人形たち。中には見覚えのある顔もいくつかある。

 

荒野の中央で少年……いや、青年は少女と対峙していた。

 

少女の手には幾多もの人間の血を吸った方天画戟が……

 

青年の手には肉を切り裂き続けて刃毀れをしてしまった槍が握られている。

 

「呂布……」

 

青年の目は血走っていた。

 

対して少女の目はまるで虚空を見つめているように見えた。

 

「よくも……よくも……皆を!!」

 

彼は吼えた。吼えて……突撃をした。

 

「五月蝿い……。」

 

赤髪の少女は得物を振り切り裂こうとする。

 

「ちぃ……っ!!」

 

得物は柄に当たり……彼の肉に届くことはない。

 

「お前……不思議。弱いのに……恋に挑んでくる。」

 

「黙れ……」

 

「お前……恋に勝てない。」

 

「黙れっ……!」

 

「大丈夫……恋が楽にする。」

 

「黙れ、黙れ、黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇぇぇぇぇぇ!!」

 

少女はゆっくりと狙いを定める。

 

「サヨナラ……。」

 

彼女はそう短く告げて……画戟を振り下ろした。

 

青年は動かない……否、動けなかった。

 

(俺は……また守れないのか……?)

 

脳天目掛けて振り下ろされる画戟を見つめながら彼は悔やんでいた。

 

(莱……ごめんな……帰れないかもしれない……。

雪香……俺の代わりに……隊は頼んだ……

篝……お前には憎まれ口を叩かれてばかりだったな……

祭さん……一緒に酒、飲みたかったですね……。

冥琳……仕事……増やしてしまうな……

 

 

雪蓮様……貴女の天下を見ずに先に逝くことを御許しください……)

 

「(燈、お前はそこで終わるような人間だったのか?)」

 

幻聴が聞こえたような気がした。

 

(敬憶……殿?)

 

ずっと昔に亡くなった祖茂の声が聞こえたような気がした。

 

「(お前がここで死んだら……雪蓮様や蓮華様はどうなる?)」

 

(そんなの……知ったことじゃありません。)

 

「(・・・バカだな。お前はこんな所で死んではいけないんだ。)」

 

ゆっくりと槍の柄を握り直す。

 

「(それで良い。お前は本当はまだ生きたいと思ってるはずだ。)」

 

呂布の顔が少しだけ動いた。

 

「俺は……俺は……まだ生きるんだよっ!!」

 

両足に力を籠めて……槍を方天画戟の柄を目掛けて撃ち込む。

 

「まだだ……まだ、終われねぇんだよ!!」

 

そのまま……吹き飛ばす。

 

「ハハ……やったぞ……生き延びたぞ!!」

 

彼はそのまま……倒れて……意識は闇のなかに落ちていく。

 

「ん……ぅ……?」

 

そして、起きたとき……

 

「あれ……確か、俺……呂布と戦って……」

 

夢だったと気付く。

 

「って、あれ全部夢だったのかよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 




こんばんは……八意です。

センター試験終えて……執筆してみたけれど色々とおかしいです。

そして、今回から……2章3の始まり。
恋ちゃんには一足早く出てもらいました。

そして、夢の話は……この先の未来、有り得るであろう分岐の1つです。(多分、書きませんが

本来なら……祖茂さんの所は別の人の予定だったのですが……急遽祖茂さんに変えました。
さて、今年もまたのんべんだらりと執筆しますのでよろしくお願いします。

それでは次回までゆっくりしていってね!


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交わされる言葉、躱される策―徐盛―

夢とは実に面白く、実に恐ろしい。

俺がもし、もっと早く転生していたら今ごろ虎牢関に居たかもしれない。

そう考えてみると、今がとても幸せに思えて仕方ない


そろそろだろうか。

 

朝、目覚めてみると外がやけに騒がしかった。

 

「伝令!伝令!陽人の孫堅様より伝令だ!」

 

伝令が来たのか……どうせ、今回も黄蓋殿か韓当殿が出てくれるだろう。

 

「何だ?そんなに大声で騒ぎ立てなくても誰か出てくるからな?」

 

案の定韓当殿が伝令の元へ行った。

 

韓当殿を見つけた伝令は礼を正し、書簡を渡した。

 

「はっ、申し訳ありませぬが……火急の用向きであったのです。」

 

「・・・・・っ!」

 

書簡に目を通している韓当殿の顔色はみるみる青くなり……そして、赤くなった。

 

「あの・・・バカ憶がっ!!」

 

遠目からで分かりにくいがよく見ると韓当殿の頬は濡れていた。

 

「バカバカバカバカ!何で勝手に逝ったんだ!!」

 

どうやら・・・祖茂殿が戦死したらしい。

 

俺は大して泣かなかった。ただ・・・頬を伝うものがあった。

 

転生した身であるから、大まかな流れと何があったかは分かっている。

 

しかし、それは転生者としての俺であって俺ではない。

 

本当は大声を上げて泣きたかった。だが、俺はそれを許さなかった。

 

陽人の戦いが終わった。それは即ち……汜水関攻めが佳境に差し掛かったことと虎牢関攻めが迫っていることを意味している。

 

急がないと危うい。汜水関が落ちるのはまだ良い……問題はその後だ……

 

―虎牢関―三国志の中では外してはイケないものだ。

 

反董卓連合戦で呂布が30000の兵と共に入り、公孫瓚らから成る部隊を散々に痛め付けた。

 

それに向こうには華雄が居なくなったとはいえ李儒、賈駆、陳宮ら軍師陣。

 

それに呂布を筆頭として李確、郭汜、張済、樊調の董卓四天王、張遼、高順、徐栄、牛輔、胡診などいる。

 

汜水関に董卓自身が入っても虎牢関、洛陽の備えが必要になる。

 

俺が董卓なら、汜水関は棄てる……しかも、兵糧を虎牢関に回して壊せる限り壊して。

 

そして、虎牢関には呂布、張遼、高順、陳宮、牛輔を。

 

撤退も考えて長安への道に李儒、張済、樊調を回すだろう。

 

史実通りなら陽人はまだ董卓軍のものだ。

 

俺は自室にとんぼ返りで戻り竹簡に逐一書いていった。

 

 

後年に回想している今だから言えるのだが……このときの俺は孫堅様が陽人を陥落させていることを夢にも思っていなかった。

 

だから、最後の最後で詰めを甘くしてしまった。

 

 

竹簡を書き上げ……先程の伝令を探す。

 

「誰か、誰かいないか!!」

 

大声で呼んでみた。しかし、返ってきたのは静寂。

 

「畜生……急いでるっていうのに!」

 

その時、後ろに気配を感じた。

 

「あの・・・私で良ければ聞きますよ?」

 

そこに居たのは鉢金・・・鉢巻きを着けて刀を背負った少女だった。

 

 

 




お久しぶりです。八意です。

受験シーズンで受験生だけど平然と小説を書いています。

久々なので頭が疲れました。今回、原作キャラを名前だけだったりだけど色々と出させてもらいました。

最後に出てきた少女・・・勘の好い人なら分かりますよね?

次回にその子に活躍してもらうので待っていてください

それでは、次回までゆっくり待っていてね!


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設定の話―虎牢関、汜水関攻め前に―

今回は主人公たちキャラの能力値と少し補足を

能力は実況パワフルプロ野球と同じです。
S=100、A=80~99、B=70~79、C=60~69、D=50~59、E=40~49、F=30~39、G~29

能力は武勇、用兵、統率、知略、内政の5分野です。

※一部ネタバレあり


徐盛文嚮 男

 

初期設定:武勇 D 用兵 C 統率 C 知略 S 内政 G

 

とある企画後:武勇 B 用兵 B 統率 C 知略 C 内政 G

 

一言:元は現代に生きる普通の青年。有ることから戦国時代に迷い混み秀吉の陪臣(家臣の家臣)となる。秀吉の天下統一戦に活躍し、関ヶ原で一度死ぬ。その後転生して関ヶ原に再度望み歴史を変えたあと現代に戻るが……また、タイムスリップして恋姫の三国時代に徐盛として転生。大の三国志好きで色々と覚えている。

 

賀斉公苗 女

 

初期設定:武勇 E 用兵 C 統率 B 知略 A 内政 A

 

一言:黄巾の乱を避けてきた徐盛を保護した名家の娘。色々と苦労を重ねているがそれを顔に出さない頑張りや。徐盛が百人将になってからは副将として支える。文官としてはまだまだ発展途上にあるが父親譲りの大器の片鱗を見せている。2章では一気に影が薄くなってしまった。

 

文聘仲業 女

 

初期設定:武勇 C 用兵 B 統率 B 知略 B 内政 C

 

一言:区星の乱を鎮圧する前、徐盛が引っこ抜いた魏の楯。史実では魏の要として活躍するが劉表にも曹操にも仕えず孫堅に仕えることとなった。徐盛が百人将になってからは軍師として支える。後に一軍の将になるように打診されたが断っている。良くも悪くも平凡な将だが味方にすると心強く、敵に回すと恐ろしい武将の一人。

 

朱然義封 女

 

初期設定:武勇 B 用兵 C 統率 B 知略 C 内政 F

 

一言:朱治の甥で養子。武勇は朱治譲りであるが義父と違い軍略などにはあまり明るくない。周瑜、魯粛両将に指摘されてから呂蒙と切磋琢磨しあうが内政には向かず軍略を極めるようになった。後に一軍の将になり軍を率いるようになる。意外とツンデレで人をからかうが惚れた男にはトコトン尽くすタイプ。

 

波才 男

 

初期設定:武勇 S 用兵 B 統率 B 知略 D 内政 G

 

一言:合戦においてはチートじゃないかと思えるくらい強い将。黄巾の乱の徐州での戦いにおいて祖茂に捕らわれる。その際に自害しようとしたが孫堅、祖茂に止められる。それ以来二人に心酔している。祖茂隊の副将で陽人で祖茂が討死したとき一時我を忘れて暴れまわる。黄巾時代から重装歩兵集団「鉄備兵」を率いる。通称「紅禽の波才」。

 

陳武子烈 女

 

初期設定:武勇 A 用兵 D 統率 B 知略 D 内政 G

 

一言:元・華雄。陽人で波才と一騎討ちを行い、破れ去る。本来ならば斬首され晒し首にされるところであったが瀕死の祖茂が止めさせた。しかし、連合軍は華雄の首を要求してきたので仕方なく華雄によく似た戦死した雑兵の首を斬り死んだことにされた。死人が居ると不自然に思われると指摘した徐盛からコリュス式仮面(顔と鼻を覆うような仮面)を孫堅から名と字を与えられる。元々は猪武者であったが一騎討ちに破れて降伏(?)してからは兵法の勉強に励むようになった。




今回はこの物語の大体の主要人物の一部の紹介になりました。

真名は考えてない人がいたので乗せていません。

それと徐盛の項のとある企画というのはこんなところさんの作品「霧雨さん家の兄貴。」の弾幕ファイトでコラボさせていただいた事です。

その時の活躍から少し能力値を修正しました。

今回は主人公たちの設定でした。

それでは次回までゆっくり待っていてね!


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交わりて邂逅して―孫堅―

陽人を陥落させた後、私は虎牢関攻めに選ばれ

陽人は袁術に接収された。

あくまでこれは盟主の指示で従わなくても良いのだが……
要らぬ不和を招きたくなかった私は大人しく従った。

だが、この判断は後に大きな悲劇を招いてしまうなんて予想はできなかった。


虎牢関―それは嘗て西周の時代。

5代目の王である穆王が虎を飼ったことから名が付き河南の要衝として聳え立ってきた。

 

「30000の兵を入れれば抜かれることはない。」

 

これは虎牢関を表す言葉だ。董卓は……いや、董卓を操ってる何者かはここに呂布と30000の兵を入れてきた。

 

また、汜水関には牛輔ら50000の兵を投入している。

 

ここで袁紹は軍を二手に分けた。

 

虎牢関は私、曹操、劉備、公孫瓚、鮑忠、王匡、張貘、李煜ら50000の兵だ。

 

袁紹……あの娘は兵法を知ってるのかしら……

 

不安は残ってしまう。城攻めを行うときは相手の3倍の兵が必要だと言われている。

 

しかし、今回虎牢関に向かうのは相手の1.7倍程度の兵である。

 

「私たちがいくら強いとは言え……今回は厳しい戦いになりそうね……」

 

「紅蓮様らしくありませんね」

 

私の呟きに長年私の補佐役兼副将を勤めた程普が応える。

 

「敵が如何なるものであっても……私たちには守るべき家族がいるはずでしょう?」

 

「・・・ふふふ、あはは、そうだな!」

 

「殿は殿らしく振る舞っていれば良いのです。」

 

いつの間にか程普が仕事状態に入っていた。

 

こうなると誰にも止めることはできない。

 

「さて・・・陽人では働かせてもらえなかった分・・・キチンと払ってもらいましょうか」

 

(程普さん……スイマセンでした。)

 

馬上なのに立場は私が上なのに……私は思わず地面にひれ伏して謝りたいと素直に思ってしまった。

 

「虎牢関・・・見えてきましたね。」

 

「え?あ、ああ……そうだな。」

 

罪悪感に苛まされていたためか……程普の言葉に反応が遅れてしまう。

 

「あそこに・・・人中の呂布が居るのですよね。」

 

「ああ。人中の呂布、神速の張遼、陥陣営高順、破軍星徐栄とかの名だたる武将がいる。」

 

「・・・・・・」

 

「どうした、程普?」

 

程普が黙ってしまったので声をかけると・・・

 

「殿・・・あの、大斧を持った少女は何者ですか?」

 

指された指先を目で追うと・・・大斧を持った人形のような少女が立っていた。

 

「誰か分かるものはい「あれは・・・!」」

 

私が訪ねようとしたとき陳武(元・華雄)が驚いたような声をあげた。

 

「陳武、知ってるのかしら?」

 

「知ってるも何も・・・アイツは私の因縁の敵みたいなモノだ・・・!」

 

怒りのためか彼女の手が震えていた。

 

「アイツは徐晃。白波賊の副頭目にして・・・私たちが派遣した討伐軍を幾度となく退けた化け物だ・・・」

 

「へぇ・・・面白そうね・・・」

 

知らず知らず南海覇王に手を伸ばしてしまっている。

 

「殿、我慢してください。」

 

南海覇王の柄に手を掛けたとき、程普の手刀が襲ってきた。

 

「痛っ!何するのよ~・・・」

 

「今は夜営の準備をすることと・・・殿が暴れるのを防ぐためです。」

 

「ちょっとくらい・・・暴れても良いじゃない・・・」

 

「殿?」

 

「ごめんなさいごめんなさい、暴れませんから許してください~!!」

 

程普が笑顔で鉄脊を取り出したので私は地面に頭を打ち付けて平謝りした。

 

「さすが・・・女房役は違うな・・・」

 

陳武がそんなことを呟いたような気もするが耳に入らなかった。




こんにちは、八意です。

3週間くらい書いてなかったので腕が落ちてしまいました。

今回は少し訳あって紅蓮さんの話が二回続きます。虎牢関の戦いを書きたいですし。

そして、裏話も少々。

今回、程普の真名を出さなかった理由ですが……これはちょっとした理由があります。

程普は紅蓮に真名を許しています。しかし、彼女は真名を呼ぶのは身内……一部の古参の家臣たちがいるところだけにして欲しいとお願いをしたからです。

そして、重要な人物とも言える徐晃。

彼女は楊奉が献帝の護衛をしているときに初めて登場しますが……前倒しで出させてもらいました。

基本的に無口に近く、口を開けば高確率で毒舌です。

しかし、そんな彼女も兄にはデレデレの模様。

兄については語りませんが皆さんの頭の中で考えていただければ面白いかなと少しばかり思っていたりします。

さて、次回は遅くなるかもしれませんがゆっくり待っていてくれれば幸いかと思います。

それでは次回までゆっくり待っていってね!


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長江の家族

伝令が私の陣を駆けていく。

顔色だけで何が起きているかは大体予想はつく。

もしかすると・・・


雪蓮にあとを任せないといけないかもしれないな。


伝令が駆け抜けた後、私は主だった将を帷幕内に集めていた。

 

「皆、これから言うことを心して聞いてくれ。」

 

これから話されることが最悪のことだと伝わったためか皆の唾を飲む音が聞こえた。

 

「さっき我々の陣を駆け抜けていった伝令。あれはおおよそ呂布の出撃を知らせに行ったものだろう。」

 

「・・・・・・」

 

呂布の二文字を聞いて程普、陳武の両将以外は顔から血の気が引いていった。

 

「大本営は呂布に対しての備えをしていないだろう。」

 

「それは・・・どうしてですか?」

 

将の一人の呉景が重くなっていた口を開いた。

 

「簡単なことだ。相手を生ける伝説だと思って分かっていてもこちらのほうが戦力的には上だと過信し、油断しているからだ。」

 

「ならば・・・我々は大本営の防備を整えるまでの捨て駒になればいいのですね。」

 

程普はいつになく冷酷な意見を口にした。

 

それほど、袁家の姉妹に対して憤りを感じているということだ。

 

「いや・・・私が、私一人で時間を稼ぐ。

 

だから、命の惜しいものは引き上げてもいい。」

 

これは苦肉の選択だった。

 

雪蓮のために一人でも多くの将を生かしておきたい。

 

だが、若くして親を失うという辛さも味あわせたくない。

 

 

どちらかを選ばなければ・・・この反董卓連合軍は瓦解してしまう。

 

前者を選べば、親としての責任を失い、

 

後者を選べば、最悪の場合孫堅軍を失ってしまう。

 

だが、戦場において・・・一軍の将にとって私情は挟んではいけない。

 

私は心を鬼にして、選択を下した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その結果、帷幕から去る者は一人としていなかった。

 

ましてや、さきほどまで怯えていた将の奴らでさえ血気に溢れていた。

 

「おまえら・・・良いのか?」

 

「紅蓮様。」

 

程普が話しかける。

 

「私たちがあなたを見捨ててまで逃げると御思いですか?」

 

「貴殿に拾われた命なのに、恩人を見捨てられるわけないだろう?」

 

陳武までも口を挟んでくる。

 

「姉上、一言くらい相談があってもよろしかったではないですか?」

 

いつも柔和な微笑みを浮かべている孫静が笑顔のまま怒っている。

 

正直、怖い。

 

「我らは紅蓮様が長江のほとりで大暴れしたときからあなたに命を預けているのですから主君を護るだけですぞ!!」

 

「全く・・・どうして私の家族はこんなにも大馬鹿ばかりなんだろうな・・・」

 

呉景の発言にあきれて大馬鹿たちと言ってしまったが・・・きっと私の頬は緩んでしまっているだろう。

 

もしものためにと遺しておいた雪蓮への遺言状はあとで破り捨てよう。

 

私はまだ、大馬鹿たちの集う家を守らなければならないから。




3ヶ月ぶりに投稿になります。

今回の話は呂布との決戦前の少しだけのゆとりとなります。

この話のあとには呂布と戦火を交えることとなります。

実は、何か月か前に大学に入る前に一応書き上げてはいたのですが、データと本文とかが吹き飛んで投稿できず、新しく書き直しました。

何か月か前のものは呂布との戦で展開が強引過ぎたので今となっては吹き飛んでよかったかもしれないと感じてますが・・・

さて、次回はいつの投稿になるかはわかりませんがゆっくり待ってもらえると幸いです。







レポートが辛いです。


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戦場の華

虎牢関は天然の要害を切り拓かれて造られた要塞だが、攻め手側にも守り手側にも利点と難点が存在している。


虎牢関は関の前が切り立った崖のようになっている。

 

そのため、守備する側は隘路を抜けてきた敵を弓で射掛けたり

 

道中で待ち伏せすることで落石を仕掛けたりと守るには好都合なのだが・・・

 

逆手にとれば、騎兵や歩兵主体で構成された部隊を出撃させることができないという難点を抱えてしまっている。

 

また、攻撃する側も隘路を抜けない限り有効的な一打を打つことはできないが

 

下手に攻め込むことをせず、虎牢関に敵主力を縫い付け別働隊を動かすことで

 

都・洛陽であったり敵の本拠を突くことを可能にしている。

 

だが、今回は話がまるで違う。

 

相手は呂布。

 

 

一人で万近い敵を蹂躙することなどたやすいだろう。

 

だからこそ、私が・・・いや、私たちが採ることができる作戦は必然的に絞られる。

 

「呉景、孫静!」

 

「はっ!」

 

「お前らは弓・弩兵を主体とした部隊を率いて虎牢関前の崖の上に待機だ!」

 

「蒼、陳武!」

 

「はっ!」

 

「!!」

 

「蒼は騎兵を、陳武は重装歩兵を率いろ!」

 

「凌操!」

 

「お前は・・・馬で他の陣に触れ回ってこい!」

 

「なんか、俺だけ地味じゃないですか!?」

 

「良いか、凌操。」

 

私は、凌操に眼を合わせながら話す。

 

「私の軍の中でも有数の乗馬技術を持ち合わせているお前だから頼んでいるんだ

 

お前が他の諸侯の陣に触れを出すことで私たちに援軍を出す軍が現れてくるかもしれない

 

そうすれば、私たちの命はお前の力で繋がれるかもしれないんだ。」

 

「俺が・・・姐さんたちの命を・・・?」

 

「ああ。それに戦は首級を獲るだけのものではない。

 

伝令も斥候も皆、重要なんだ。」

 

話を終えると凌操は涙を流していた。

 

 

「分かりやした!!漢・凌操、命に変えても伝えてきます!!」

 

そういうなり凌操は馬に乗って飛び出していった。

 

後ろのほうから「上手く、煙に撒きましたね」とか聞こえてこない。

 

きっと、幻聴だろう。

 

 

 

「良いか、野郎ども!!出陣だ!!」

 

凌操が見えなくなってから私は出陣の号令をかけた。

 

先遣隊で呉景と孫静がいないから数は少ないが士気は高揚している。

 

目の前から土煙を濛々とあげながら迫ってくる紅い点を目標に最高速度で進撃する。

 

一歩、さらに一歩と踏み出すたびに紅い点が馬と人の形を帯びていく。

 

「月を・・・殺そうとするやつは・・・恋が狩る!!」

 

点が人馬となったとき、剣戟が交わされる。

 

 

 

嗚呼、こんなに重い一撃を喰らうのは何時以来だろう。

 

私は心が躍った。

 

 

一撃交え、離れる。

 

また一撃を交え、肉薄する。

 

それが何度も繰り返される。

 

「こんなに楽しい一騎打ちは何時以来だろうねぇ!!」

 

昂ぶった感情が声として吐き出される。

 

私の顔は狂気じみた楽しみに塗られているだろう。

 

「恋は・・・はやく終わらせたい・・・」

 

「そんなツレないことを言わないでおくれよっ!」

 

楽しみたい。目の前の伝説と一人の挑戦者として戦いたいという気持ちが心を満たしていく。

 

50合くらい交えたころだろうか。

 

背後から鬨の声が聞こえてきた。

 

援軍?かと思った。

 

しかし、その思いは現れた将の顔とともに打ち砕かれる。

 

「ハッハッハッ!!道を開けやがれクズどもが!!」

 

閻象が・・・袁術軍が一軍を率いて、襲撃してきた。

 

兵卒は蒼と陳武が食い止めているが閻象がこちらに向かってくる。

 

「呂布、逃げろ!!」

 

閻象が呂布目掛けて刀を振り下ろそうとしている。

 

それに気づいた私は、咄嗟に呂布を庇った。

 

それにより、呂布は逃げることができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、閻象の刀の軌跡上にあった私の右手は・・・肘から先を失くすこととなってしまった。

 

 

 

 




こんにちは、テスト勉強をしている八意です。

今月1回目の更新。

なんだかんだで時間ができたので投稿しています。

今回は呂布との戦闘と袁術軍の介入でした。

個人的には袁術は嫌いではないですが、汚れ役になってもらいました。

それに、袁術軍のことはまだまだ勉強しないといけないですね・・・。

次回は未定ですが、また投稿したら読んでいただけると幸いです。

それでは、次回までゆっくりしていってね!


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境界線

目覚めると、私は虚空にいた。

 

周りには何もない。ただ、闇が広がっているだけ。

 

起き上がって周りを歩いてみる。

 

しかし、何も起きない。

 

自分の足音すら響かない。

 

目の前に自分の両腕を持ってくるが、右手は肘から先が消失している。

 

私はそれを虚ろな目で見ているのだろう。

 

いくら叫んでも、いくら泣いても・・・呂布を護るために失った右手は戻ってこない。

 

ならば、どうして私は呂布を護ったのだろか?

 

失いたくないから?―それはあるだろう。―

 

手柄を横取りされたくないから?―それもある。―

 

彼女に同情の気持ちが湧いたから?―それはきっと・・・違う。―

 

こうして少しずつ考えているうちに私は答えを見つけた。

 

私が呂布を護ったのは・・・身勝手な自己満足のためと、彼女に恋をしたからだろう。

 

彼女の武勇に純粋に惚れた。

 

喩えるなら、欲しいものを手に入れた子供のような気持ちだ。

 

そう、彼女を前にすると私の心は高鳴り、血肉は湧き踊るのだ!!

 

ああ、もう一度戦場で戦いたい!

 

できるなら、誰の邪魔も入らないところで!!

 

だが・・・それも叶わぬ夢となってしまった。

 

閻象に怒りはすれど、恨みはせぬ。

 

彼とて命を受けて呂布の命を討ちに来たのだ。

 

それを私が邪魔をしてこの右腕を失ったのだ。

 

自業自得といえばそうなのかもしれない。

 

だが、閻象の・・・袁術の本当の狙いは私であったかもしれない。

 

ならば、どうして袁術は私の命など狙うのだろうか?

 

いや・・・袁術はあくまで承認しただけであって誰かに吹き込まれたのかもしれない・・・

 

なら、誰がそれを企む?

 

張勲か?紀霊か?もしくは・・・他の第三者か?

 

曹操、公孫瓉、袁紹など数多の諸侯が参加しているこの戦。

 

その中で台頭著しい私や曹操などを邪険にしているものも少なからずいよう。

 

そういった奴らが袁術の側近を介して何かしらの策を吹き込んだとしてもおかしくはない。

 

古くからの権力に胡坐をかいているものほど、既得の権益を脅かされることに敏感だ。

 

そのようなものの大半は無能で、民の生活を顧みないものばかりだ。

 

秦の趙高や楚の項羽は彼らとは違えど生きた教本ではある。

 

趙高は有能ではあった。

 

しかし、彼は自分の権力を肥大化させようとして嘗ては協力者であった丞相の李斯を処刑したり、自らの傀儡であった皇帝の胡亥を自害に追い込んだ挙句・・・暗殺されている。

 

項羽は戦においては並外れた力を持っていた。

 

だが、自分の叔父である項伯を大切にしなかったり、軍師であった范増の献策を聞き入れず陳平お策に嵌まり彼を放逐した。

 

また、敖倉を確保せず兵糧を重視せずに咸陽、大梁を始めとした魏の国の守備を固めなかったため最後は前漢の高祖に敗れ去った。

 

それに比べれば・・・ここにいる諸侯はどうだ!!

 

呆れるほどに傲慢で、無能な奴らばかりだ!!

 

これならば、このような奴らばかりなら・・・雪蓮の蓮華の、小蓮の将来が心配で大人しく泉下から見守ることなどできない。

 

それにさっきから私を呼ぶ声がうるさいのだ。

 

きっと私が目覚めなければ、止むことはないだろう。

 

だから、私はゆっくりとだが目覚めよう。

 

大切な娘たちのために。

 

大切な家族たちのために。




こんばんは、お久しぶりです。八意です。

実に二か月ぶりの更新となりました。

待っている人には待たせてしまったと思います。

この話、書きながら不安になっていて難産でした。

はじめての地の文だけの話。視点はもちろん孫堅さんです。

そして、表題の「境界線」。

これは生と死の境目で、走馬灯として流れた時間を彼女が色々と試行錯誤している場面を表しています。

次回は、また虎牢関に戻ります。

そして、更新も相変わらず遅いです。

それでも、読んでいただける方はお茶か何かを飲みながらゆっくり待っていてください。



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逃避行-Exodus-

目覚める。ゆっくりと空気を吸い、息を吐き出す。

 

周りを見渡す。

 

辺りには涙を流すもの、あまりの驚きに開いた口が閉じられないものが大勢居た

 

しかし、私の目に留まったのは申し訳なさそうに顔を伏せて

 

今にも泣きそうな顔をしていた袁術-美羽-の姿だった。

 

「紅蓮・・・・・」

 

美羽が口を開く。場は剣呑な雰囲気に包まれてしまう。

 

幼きこの少女にはとても辛い状況のなか・・・頑張ったと言えよう。

 

「紅蓮・・・紅蓮・・・ごめん、なさい・・・」

 

「・・・・・・」

 

やっとの思いで贖罪の言葉を振り絞った美羽に対して、

 

私は何も言わなかった。

 

 

ただ、小さな彼女の体をそっと抱きしめた。

 

抱きしめた体は震え、とてもか細く感じられた。

 

その体から、私は色んなことを理解した。

 

きっと・・・私が眠りについてる間に色々と、あったのだろう。

 

だが、それは私の家族とはいえ許されることではない。

 

私は美羽の髪をやさしく撫でる。

 

彼女の震えていた体は少しずつ落ち着いていく。

 

「美羽。」

 

私は彼女の気持ちに落ち着きが戻ったころを見計らい話しかける。

 

「なんであろうか?」

 

「閻象を出撃させたのは誰かしら?」

 

「!!」

 

閻象と聞いて美羽の顔が変わった。

 

「すまぬ・・・妾も把握できておらぬのじゃ・・・」

 

悲しげな顔つきで顔を伏せてしまう。

 

どうやら、美羽は白らしい。

 

ならば、このようなことをするのは一人くらいだ。

 

そして、私が生きていると知ったら・・・・・

 

娘を人質に取るだろう。

 

猛虎の牙を剥けられた相手は為す術などほとんど持ち合わせていない。

 

故に牙を剥けられる前に牙を手折るか抜いておく。

 

いくら猛虎と呼ばれた私であっても所詮は人の子に過ぎない。

 

子を人質にとられれば為す術もなく服属を余儀なくされる。

 

ならば、採ることのできる作戦は1つしかない。

 

「美羽。」

 

「何じゃ?」

 

私はそっと耳打ちした。

 

「私を・・・私は死んだことにしておいてくれないか?」

 

「どうしてなのじゃ?」

 

「閻象を仕掛けた人物・・・私を殺そうとした人物は私が生きてることを知っていたら人質を盗ったりするなどより汚い手を用いてくるだろう・・・」

 

「・・・・・」

 

彼女は幼いだけであって決して頭が悪いというわけではない。

 

誰だとは言っていないが彼女は気付いているだろう。

 

「そうか・・・」

 

「ごめんなさいね・・・」

 

「紅蓮、わがままを聞いてはくれないか?」

 

「ええ、良いわよ?」

 

「少しだけ・・・お母様と呼ばせてはくれないかの?」

 

私は美羽を胸元に抱き寄せた。

 

「お母様・・・。」

 

美羽は甘えてきた。

 

幼き時分に母をなくした彼女からしてみれば母親の愛情に飢えていたのだろう。

 

私はゆっくりと彼女が眠りにつくそのときまで彼女の髪を撫でたのだった。




こんばんは、八意です。

相変わらずの牛歩投稿です。

狂いきった精神状態で書いているためかおかしな文章になっている可能性が大です

やっぱり憔悴しきった状態で書くべきではないですね。

実験に講義などやることが山積みで壊れそうです。

次回は壊れないうちに書き上げようと思いますので呼んでいただける方はゆっくり待っていてください。


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ある人の回想―Memoir―

反董卓連合編、完結の話。


美羽に相談した後・・・

 

数日後の話となるが私の死が伝聞した後の連合軍の話をしよう。

 

まずは袁術軍。

 

主犯格と考えられる張勲は処罰を受けることはなかった。

 

だが、実行犯である閻象は本来なら死罪となるところだったが紀霊の嘆願により死罪は免れた。

 

だが、将軍位を剥奪され一兵卒に落とされた。

 

次に袁紹軍。

 

袁紹は盟主であったため、私の死についての事後処理に追われ敵の防御を固める時間を与えてしまうことになった。

 

その後、文醜が大暴れして、袁紹軍の事務処理および苦情受付の顔良が涙目になりながら戦後処理に追われたらしい。

 

そして、董卓軍。

 

私が抜けた・・・孫堅軍を欠いた連合軍は大きく戦力を落とすこととなってしまったが呂布を撤退させた。

 

これは相手の戦意を大きく削ぐことに成功したが連合軍の方も袁紹軍副将愈渉、豫州太守孔紬など重要な人物を失った。

 

呂布を撤退させた連合軍は虎牢関を陥落させ、洛陽を伺っていた。

 

そして、董卓軍は呂布が撤退したことを受けて長安・涼州への遷都と再軍備・迎撃を模索していたらしい。

 

だが、洛陽を脱出する前に事件は起こった。

 

虎牢関で様子を伺っていた連合軍・・・いや、連合軍の一部が夜半に洛陽に潜入していた。

 

曹操・劉備の両軍は董卓を捕獲しようと動いていた。

 

曹操は功名を上げるため、劉備はある人の薦めに従い董卓を保護しようとしていた。

 

虎牢関が陥落して15日後。

 

董卓、賈駆は兵に命じてあらかじめ住民を避難させておいた区域に放火を行い一般人の服装に着替え避難する民衆に紛れて逃げていた。

 

しかし、董卓の服装は変えられても、彼女の高貴な雰囲気までは隠すことができなかった。

 

曹操軍に見つかればさらし首、劉備軍に見つかれば何をされるか分からない。

 

二人はそう考えながら路地裏をいくつも経由しながら逃げていた。

 

少女は、少女たちは洛陽の西門の近くの路地を抜けたとき知った。

 

この世には希望が残っていたことを。

 

少女たちは一人の顔立ちに幼さが残る少年、桃色の髪をもった陽だまりのような少女、黒い艶やかな髪をもった凛々しい少女に出会った。

 

彼女らは、この少年―本郷一刀―たち、劉備軍に保護された。

 

だが、対価はあまりにも大きすぎた。

 

彼女たちは生きていくために名を捨てた。

 

病死し、身代わりとなり、晒し首となっているもののために。

 

真名だけで生きていくこととした。

 

世に混乱と騒乱を招かないために。

 

それはあまりにも残酷だったが、董卓の命と笑顔を守れたのだから仕方ない。

 

この後、劉備は平原県の太守に、曹操は豫州刺史となった。

 

そして、孫堅軍・・・

 

大将であった私が表向きには戦没したことにより、軍は孫策が引き継いだ。

 

しかし、孫策は若年であることを理由に袁術軍に軍を併合(実際には強奪である。)され、客将とされた。

 

もちろん、洛陽に入城もしている。

 

そしてこのとき、あの娘の運命を大きく左右するものと接触したのであった。




おはようございます。

10月に2話分投稿できるかもと思いながら書いて失敗した八意です。

今回の物語は反董卓連合編の最終話。

なのに、相変わらずグダグダな薄い文章になってしまいました。

今回のは董卓たちのところだけ時間軸は離れています。

これは劉備軍と同盟を締結したときに彼女たちから聞いたという設定にしているためです。(回想している方は本人と会うまでは死んだと思っています。)

そして、次回。

孫堅さんがいないため、荊州のことはなにも触れられない状態です。

そのため、次章は7年ほど時間が飛びます。

それでもいい方はゆっくりしながら待っていてください。



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3章 江東の暴風雨
財貨蓄え、兵を養う


お久しぶりです。
多分、まだ精神的な病み気が60年位続きそうな八意と名乗っていた凡愚です。

年単位で投稿してなかったから自分の作風も忘れ、新たなものになっていると思います。
それでもよろしければまた、これからお願いします。




待っていたであろう人たちの期待を裏切った私に待ってる人が居るとは思えませんが。


母ー孫文台が戦没してから7年が経った。

私が成長を遂げるまでに祭や蒼は袁術軍で私に変わって目醒しい活躍を遂げてくれた。

だが、彼女たち…旧孫堅軍が活躍する度に一部を除いた袁術軍の主な将校たちは眉を潜め、文官たちは私に大きな力を与えてしまうとし、解体の声を大にしていた。

 

袁術は文官たちの前では孫堅軍を解体し、それぞれの軍に小分けに編入することに賛成していたが裏では母との友情とも言えた同盟のことがあったため実行に移そうとすると良心が咎めているような顔をしていた。

今の袁術は軍と今は亡き友人の間に板挟みになって苦しんでいる。

客将としては彼女を助けるべきなのだろうが孫堅文台の娘としては助けることは気が進まなかった。

 

この年まで、後見人として私を育ててくれた義理はあるがあくまでも仇敵の上司なのだ。

そのような相手を助けようものなら世間は不義として私を糾弾するかもしれないし、母が報われない気がする。

 

「はぁ…。」

 

私は長江のほとりでも一際高い断崖の上で膝を抱え込み人知れず溜め息を吐いた。

 

「こんなときに冥琳がいてくれたらいい方法でも言ってくれるのかしら…。」

「雪蓮、こんな所で何してるんだ?」

 

何気なく独り言を零すと後ろから声がして慌てて振り返った。声に関しては聞き覚えがあったのだが、あれから7年も経っているのだから確証が持てなかった。

 

「燈…。」

「久しぶりだな。

ここにくるお前を見かけて懐かしい気持ちに駆られてやってきたが…昔に比べて暗くなったな。」

「…私は昔と変わってないわよ。変わったのは貴方の方じゃないかしら?」

「全く…そういった強情さは親顔負けだな。」

「母様の話は関係ないでしょう?」

「…あの人のことは残念だったな。」

「母様の話は止めて!!」

 

母様の話を切り出そうとする燈の言葉を遮るように大声を上げた。

死に目にも立ち会えなかったからこそ、母様がどこかで生きていると未だに信じている。

燈の言葉はそんな甘い幻想を打ち砕くものであり、最も私が聞きたくない言葉なのだ。

 

「あの人はいつだって輝いていた。日輪のごとく眩しかった。

だが、お前はどうだ。孫伯符!月のように他者の光が無ければ輝けないのか?

違うだろう!?お前は嵐のように傍若無人であり、夜天においても輝きを失うことのない火のような存在だったはずだ!」

「止めて、止めてちょうだい………」

 

私は私の心など構わず話す燈の言葉を聞きたくなかった。

聞いてしまえば今まで抑えこんでいた雪蓮が出てしまい、長い間袁術軍で培ってきた孫策伯符という存在が崩れてしまう。

 

「お前は、母親の死で立ち止まるような存在じゃないだろう。

あの日、賀家に乗り込んで俺を散々掻き回した雪蓮は偽物だったのか?」

「五月蠅い…。」

「あの日、俺に情熱を教え、胸をときめかせたのも偽りだったのか?」

「五月蠅い、五月蠅い…」

「答えろ、雪蓮。お前は何者だ」

「五月蠅いのよ!知ったように口を聞いて!私だって母様が死んだのは悲しい!!

でも、死に目にすら立ち会うことが出来なかった!

軍を動揺させないように纏め上げることが精一杯で遺体を確認することが出来なかった

だから…生きてることを夢見たって良いじゃない…。

玉璽のように奇跡が起きるかもしれないじゃない…。」

 

私は目から球粒の涙を溢した。

心の奥に蓋をしていた感情が堰を切って溢れ出してくる。

いくら拭っても次から次へと溢れていく

 

「私は火なんかではないの…。

人の子でしかないから、いつだって明るくなんて振る舞えはしないわ。」

「遅すぎる。分かってたのなら素直に吐き出せってもんだ。」

「そんなの無理に決まってるでしょう!

私はあくまでも孫家の頭領の娘だったのよ!?

頭領の娘なのだから気丈に振る舞わないといけないじゃない!」

「はははは、それもそうだな」

「何よ、笑うなんて酷いじゃない!」

「いや、悪い悪い。ようやく…いつもの調子に戻ってくれたと思ってな。」

「あっ…。」

 

指摘されてから気がついたが、いつの間にか冥琳としているような言い合いになっていた。

そこにはここに来た時にあった孫策伯符など無く、雪蓮としての私がいた。

 

「さて、と…何をしてたのかは知らないが…お前はお前の信じる道を進めば良いんじゃないかな?」

 

燈が突然そんなことを言った。

きっと時間なのだろう。

 

「お前の母親と袁術は懇意にしていた。

そして、袁術はお前の愛した場所を守り続けて、今も独りで戦ってる。

儒教にある礼など孫呉には関係のないことだ。」

 

確かにそうだ。

江東に身を起こし、江東と共に生きてきた孫家にとって中央の奨励する教典など意味を殆どなさない。

 

「黄巾も若人も流人も人は皆、掛け替えのない財貨だ。

官位よりも財貨を蓄えることを旨とする孫呉にとっては…分かるな?」

「言われなくとも分かってるわよ。」

 

相手が仇敵の上司であろうと、本人に罪は存在しない。

それに美羽は1種のカリスマも持っている。

 

私怨で柵に囚われてしまっていたが…彼女は私の恩人だ。

それは変えようのない事実である。

それならば私が取るべき道は決まっている。

 

「俺はそろそろ会稽に戻るとするよ。」

「分かったわ。私が会稽を手に入れるまできちんと生きてるのよ?」

「酷いな。俺は孫家に使えて将軍になるのだから会稽を手に入れても死なねぇよ。

だが…それよりも早くお前が死ぬんじゃないぞ?」

「燈も酷いわね。これから私は袁術から玉璽を使って軍を取り返して旗揚げしてやるわ

そこから3年以内に江東の大半を平らげるわ。」

「それなら期待せずに待ってるとするよ。」

 

燈は言いたいことを言い終えてから馬上の人となった。

私もそろそろ城に戻るとしよう。

さすがの張勲が相手だと分が悪いから皆と相談しなければならない…。

 

だが、成功すれば孫呉復活の第一歩目となる。

1000人の兵と碧、蒼、祭の古参の猛将が揃えば尚良しだ。

 

 

まだ皮算用にしか過ぎない夢に私の胸は高く躍った。




今回から(多分)3章目、本編の三国志で言えば孫策19歳の時の旗揚げの話からの始まりです。

この話を投稿するまでに実際、週3本のレポートを消化したり、単位を1つ落としたりといろいろありましたが…これからゆるりと復活すると思うのでまたろくろ首よりも首を長くして待たせるかもしれませんが宜しくお願いします。


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