トラックに轢かれてから目を覚ましたら真っ白な彼奴になっていた (燭台切国永)
しおりを挟む

トラックに轢かれて鶴丸国永になった

あーあ……

 

俺は死んじまうのか……

 

そういや、トラックに轢かれたんだよなぁ……

 

しかも信号無視だしよ……

 

俺は運が無いのか……?

 

嗚呼……彼奴が心配そうな顔をしている

 

御免な、鶴崎……

 

俺はお前に何も言えなかった

 

俺ってば意気地無しだしな

 

馬鹿みたいだよなぁ……

 

意識が遠のく中で救急車の音が聞こえる

 

どんどん視界は真っ暗になる

 

「──か?」

 

おかしいな……

 

誰も声をかける筈がないのに……

 

「本当にそのままで良いのかって聞いてるんだ」

 

翼「……んだよ」

 

喋るのが辛い

 

「威勢だけは良いんだな」

 

翼「放っておいてくれ……」

 

「だって君

死にたくないって顔してるじゃあないか」

 

翼「そりゃあ……」

 

瞼の重さに耐えきれずに目を閉じた

 

結局、死ぬ事に変わりはなかったんだからな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翼「此処は……?」

 

「よぉ

どうだい?」

 

翼「どうって何が……!?」

 

俺は目の前の奴に驚いた

 

俺はゲームぐらいしか取り柄がなかったが

 

その目の前の奴はそのゲームの奴だった

 

其奴は刀剣乱舞のキャラの一人、『鶴丸国永』だった

 

けれど、俺の知っている鶴丸国永は真っ白だが

 

目の前の鶴丸国永は真っ黒だった

 

鶴丸「相当驚いてる様だな」

 

翼「当たり前だろ……

それより何でお前真っ黒に……」

 

鶴丸「君は

『闇堕ち』って知っているか?」

 

翼「そんなの想像上の話じゃねぇのか?」

 

鶴丸「違うさ

実際にある事さ」

 

翼「マジかよ……」

 

鶴丸「嗚呼

闇堕ちした刀剣男士の殆どはブラック本丸の生まれなんだ」

 

翼「じゃあお前……」

 

鶴丸「ご名答さ

俺はブラック本丸出身の鶴丸国永なんだ」

 

翼「そうか……

でもそんな奴が俺に何か用でもあったか?」

 

鶴丸「頼みを聞いてもらえたりするか?」

 

翼「……想像はついた

俺がお前として本丸に行けってことだろ?」

 

鶴丸「少し違うな」

 

翼「何処がだよ」

 

鶴丸「確かに本丸に行くのは合っている

だが俺が言いたいのは次の本丸に行ってほしいんだ」

 

翼「はぁ!?」

 

何で俺が鶴丸国永の代わりに

 

これからの本丸に行かなきゃなんねぇんだよ

 

それに闇堕ちしたってことは一度折れてるだろ?

 

翼「お前折れたんじゃねぇの?」

 

鶴丸「折れたぜ?

それでも次の本丸へと行くんだ」

 

そんなもんなのか

 

ブラックなのは政府の方じゃないのか?

 

鶴丸「どうするんだい?

俺に成るか、このままこの世からおさらばするか」

 

翼「出来れば生きていたい」

 

鶴丸「だったら決まりだな

これから宜しく頼むぜ」

 

翼「嗚呼」

 

鶴丸「あと、君の名前は何だ?」

 

翼「神隠し」

 

鶴丸「しないさ」

 

翼「……鶴巻翼」

 

鶴丸「翼だな!

うん、良い名前だな

俺と同じで『鶴』って付いているんだな」

 

翼「そうかい

お前に言われる筋合いは無いが」

 

鶴丸「君には俺の記憶を渡す

辛く嫌な記憶だが俺として生きるには大事な事だ」

 

翼「分かったよ

あとさ……」

 

鶴丸「なんだ?」

 

翼「燭台切光忠と大倶利伽羅に言いたい事とかあるか?」

 

鶴丸「いいや?

俺からは特に何も無い」

 

翼「OK

じゃあ、また会えたらな」

 

鶴丸「嗚呼

近いうちに会えるはずだ」

 

翼「あっそ

……それじゃあな」

 

俺は光が見える方向へと歩いた

 

鶴丸国永の方を振り向くことは無く

 

その先に新たな本丸があり

 

其処で新たな人生(刃生)が始まる



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

とある本丸に顕現された

「よっ、鶴丸国永だ

俺みたいなのが来て驚いたか?」

 

桜の花弁が舞い終わるのを待った

 

目を開けるとそこには女が居た

 

だが、その女は俺の知っている人物だった

 

「鶴……」

 

審神者「鶴丸国永が……

やっと来た!」

 

目の前の女は俺が来た事に喜んでいる

 

「……お前が新しい主か?」

 

審神者「はい!

私は此処の審神者の『鶴崎彩音』です!」

 

嗚呼、矢張りそうだった

 

俺の片想いの相手

 

「……それって」

 

鶴崎「真名ですが……?」

 

「君は馬鹿なのか?

俺達は付喪神と言えど神の端くれなんだぞ?」

 

鶴崎「此処の皆は神隠しなんてしませんから!」

 

何処からそんな自信が湧き上がるのだろうか

 

「だったら、俺がしてやろうか?」

 

鶴崎「絶対に無理だな」

 

そう言った鶴崎の目は鋭く光っていた

 

「……」

 

鶴崎「すまないな

お前もブラック本丸の出身で人間が信用出来ないんだな」

 

「何でそれを……」

 

鶴崎「お前の目を見れば分かるさ

今まで仲間を守ってきて威嚇する目だ」

 

「だったら……」

 

鶴崎「落ち着け

私は別にお前を傷付けようとは思わないからな」

 

「……」

 

鶴崎「冷たい目だ

まぁ慣れるまで深くは関わらない

光忠達と同室だから後で案内してやろう」

 

「……」

 

鶴崎は親切心から言っているのに

 

俺は上手く感情を伝えられない

 

こんなんだから告れなかったんだろうが……

 

鶴崎「今日の鍛刀成果は満足だ

これから宜しく頼むぞ」

 

「……分かった」

 

鶴崎「お前は真顔で物静かなんだな」

 

「悪いか?」

 

鶴崎「いいや

むしろ安心しているさ」

 

「だったら良いじゃないか

これからはあまり関わらないでくれ」

 

鶴崎「分かったから……」

 

鶴崎は困った顔をしながら笑う

 

鶴崎「近侍に知らせておこう

私はやるべき事があるから此処で失礼しよう」

 

「近侍?」

 

鶴崎「近侍は光忠でな

たまに三日月や江雪等と第一部隊の奴等を入れ替えている」

 

「……そうか」

 

鶴崎「光忠に頼むから此処で待っていろ」

 

「嗚呼」

 

鶴崎「じゃあ後で」

 

落ち着いている笑顔を浮かべながら

 

俺にそう言った

 

その後部屋を出て行った

 

此処は鍛刀部屋なのか

 

とりあえず此処で待っていれば

 

燭台切光忠が迎えに来てくれるんだな

 

すると扉が開く

 

?「久し振りだね鶴さん」

 

「……光忠か」

 

燭台切「あれ?

前みたいに呼んでくれないのかい?」

 

「嗚呼……

そうだったな光坊」

 

燭台切「主の言う通り

少し冷たい感じなんだね」

 

「悪いか?」

 

燭台切光忠はそんな俺を見て少し悲しそうな顔をした

 

燭台切「まぁ慣れるまでは良いよ

此処は似たような境遇の人達が多いから」

 

「そう言えば言っていたな……」

 

燭台切「まずは慣れる事が最初だから

ゆっくり話せる人を増やすといいよ」

 

「……そうする」

 

燭台切「じゃあ本丸を案内するよ

今まで居たところと違いはそこまで無いかもしれないけど」

 

「宜しく頼む」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

燭台切光忠に本丸を案内してもらった

燭台切「まず、今居るのが鍛刀部屋

此処から近いのは手入れ部屋」

 

「……」

 

燭台切「それで、此処から少し歩くと

厨とお風呂場がある」

 

「……」

 

燭台切「鶴さん聞いてる?」

 

「……聞いてるさ」

 

燭台切「そう?

だったら良いんだけど……」

 

燭台切光忠は不安そうに顔を覗かせてきた

 

正直、吃驚した

 

真逆、鶴崎の本丸に顕現されるとは思わなかった

 

鶴崎は霊力が多い為に審神者になろうとしていた

 

じゃあ俺は未来に居るというのか?

 

有り得ない

 

俺が死んだのは数時間ほど前だろう

 

そんなすぐに未来に来られる訳がない

 

燭台切「じゃあ次は僕等の部屋に行こうか」

 

「分かった」

 

此処には太鼓鐘貞宗は居るのだろうか

 

燭台切「貞ちゃんはまだ来てなくてね

まぁ来たとしても部屋が足りるかどうか……」

 

「そうなのか……」

 

燭台切「まぁそのうち増築するみたいだし

その時にでも来てくれたらって思ってるよ」

 

「……来るといいな」

 

燭台切「そうだね」

 

俺はこの性格を恨んでいいよな?

 

会話が全く続かないんだが

 

恨む、マジで自分恨む

 

肌が寒いと感じるこの季節は何月だろうか

 

寒さ的には三月か四月か?

 

それとも秋真っ只中なのか?

 

「なぁ光坊」

 

燭台切「ん?

どうしたの?」

 

「今は何の月だ?」

 

燭台切「え?

確か……」

 

考える素振りをしている燭台切光忠

 

燭台切「長月か神無月かな?」

 

「そうか……

寒い訳だ」

 

燭台切「寒くなってきたからね

何かあったら言ってね」

 

「出来る限り頼れるようにする」

 

また会話は途切れた

 

もうこんなの御免なんだが

 

燭台切「部屋の前に着いたよ」

 

「あ、嗚呼……」

 

もう着いたのか……

 

燭台切「倶利ちゃん

鶴さんが来たよー」

 

燭台切光忠はそう言いながら襖を開けた

 

すると中から何かが素早く飛びついてきた

 

燭台切「あっ!

マロン!駄目だって!」

 

どうやら飛び付いてきたのは猫のようだ

 

「……お前、『マロン』って言うのか」

 

栗……倶利……倶利伽羅……大倶利伽羅って事か

 

鶴崎はこういう所強引だな

 

燭台切「この子、本丸に迷い込んでてね

僕と倶利ちゃんで世話してたんだけど

主や長谷部君に見付かって……」

 

倶利伽羅「そうしたら、彼奴が世話をする許可をくれた」

 

大倶利伽羅はマロンを抱き上げた

 

その顔は何処か嬉しそうだ

 

「倶利伽羅のそんな顔は見たことないな」

 

俺がそんな風に言えば

 

燭台切光忠の時と同じ様に悲しそうな顔をした

 

「……じゃあ、何て呼べばいい」

 

倶利伽羅「いつも通り『伽羅』で良い」

 

「分かった……

伽羅坊で良いんだな?」

 

倶利伽羅「嗚呼」

 

本当に本丸によって性格とかは違うのだろうか

 

鶴丸国永が流した記憶には

 

大倶利伽羅は居なかったが

 

普通の大倶利伽羅はこんなに慣れあわないだろう



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。