なんだかんだで彼女ら(彼ら)は再び戦車に乗る (眼鏡とタバコ)
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こうして彼らの第二の人生は始まる

はじめて投稿しました。
うまくできるか不安ですが暖かくお手柔らかにお願い致します(><)
基本は主人公視点でいきたいと思っています。


〜プロローグ〜

 

 

「此処は何処だ?」

 

気がつくと俺はそこに立っていた。綺麗な夕日、見上げれば何処までも続く空。

 

「ってちょっとまて、なんか見覚えあるぞこの光景!」

 

思い出せ俺!思考を止めるな!何処でみた!こんな絶景はそうそうに忘れるものではない!

 

「思い出した、S◯Oでキ◯トが死んだあとア◯ナと再会して茅◯から「ゲームクリアおめでとう」って言われたあの場所だ!」

 

ってことは・・・・・

 

「ってさすがにあの城はないかぁ〜」

 

ちょっと期待したんだけどなぁ〜〜。

俺は少しの間、その光景を眺めることにした。

 

「この光景が気に入りましたか?」

「ッ!誰だ!」

 

突然話しかけられたので体を反転し構える。

 

「そんなに身構えないでください。一応私、神様ですよ?」

 

・・・・・・・は?

 

「神様?」

「はい」

「GOD?」

「YES」

「・・・・・・・・・・」

 

何言ってのこの人?頭大丈夫?

 

「アナタは此処に来る前、何処で何をしていたのか覚えていますか?」

 

何言ってんだ?そんなの覚え・・・て・・・・。

 

「あっ」

「思い出したようですね」

 

そうだ、俺は・・・・。

 

「死んだんだ」

「はい、そうです」

 

そう、俺は長期間休み無しで仕事をして、やっとその仕事が終わったから同僚の中で一番仲が良い奴と二人で居酒屋で酒飲んで、飯食って、いい感じに時間が経ったから、次はカラオケに行こうとしていたら信号無視して突っ込んきた車両に轢かれて、そして。

 

「あいつはどうなった?」

「アナタの友人ですか?」

「あぁ」

 

そう、俺は車両に轢かれる直前、俺は隣を歩いてたあいつを突き飛ばした筈だ。

 

「残念ですが」

「・・・・そうか」

 

間に合わなかったのか。

 

「ですが」

 

そう言って俺の後ろを指差した。

俺は後ろを振り返る。

 

「なんでお前が」

 

そこにそいつは立っていた。

 

「よっ!また会ったな!」

 

軽く右手を挙げながらこちらに歩み寄ってくる。

 

「なんで・・・」

「私が招きました」

 

俺はまた神様に振り返る。

 

「今回の件、私の管轄ですのでお二人を此処に招きました」

 

俺は静かに涙を流した。

俺は再び俺のそいつに向き直った。

 

「すまない。俺がカラオケ行こうって言ったばっかりに。ホントすまない」

「気にすんな!って流石に無理があるか」

 

俺は俯く。俺があんなことを言わなければ、俺もこいつも死ぬことはなかった。

 

「でもな、過ぎた事を一々気にしてたらきりがないぞ。それにそんなのお前らしくないぞ」

「でも」

「それに見ろ!目の前に露出度の高く、そして手のひらにおさまりそうな丁度いい胸と丁度いい身長をして尚且つ、金髪で腰まで伸びた髪をした神様がいるんだぞ!最高じゃないか!」

「アナタそんな目で私を見ていたのですか!?」

「そうだぞ!さすがに口に出すなよ!セクハラで訴えられたらどうすんだよ!」

「アナタもですか!」

 

自然といつもの調子で馬鹿なやり取りをする。そう、これが俺たちの普通、周りに誰かいるとそんなにないが、俺達二人だけのときは必ずといっていいほどの確率でどちらかがボケて、どちらかがツッコむ。まぁ今回は神様がいるがこいつなりの気遣いなのだろう。

 

「・・・どうだ、元気出たか?」

「あぁ・・・ありがとな」

「いいって、今度なんか奢ってもらうから」

「いや、俺達死んでるから」

「そのことなのですが」

 

此処で神様が口を開く。

 

「お二人があまりに報われない死に方をなされましたので、私の権限でお二人を別の世界へ転生させようと思います」

「「マジ!?」」

 

つい俺達は叫んでしまった。

いやちょっとまてよ。

 

「それってどんな世界でも可能か?」

 

俺は問う。

 

「はい。どんな世界でも可能です」

 

てこは。

 

「なら俺は艦◯れの世界で提督がしたい!!」

 

やっぱりな、マジで言いやがったよこいつ、まぁ予想はしてたが。

 

「あほかお前」

「なんだよ!楽しそうじゃん!提督やりたくないのか!」

「よく考えろ、確かにゲームでやる分にはかまわない、艦娘とのハーレムパラダイスが待っているだろう。だがな、現実でやるとなると一日机に向かって書類整理、艦隊の運用、鎮守府のトップだから当然それなりに責任も伴う」

「まぁそうだな」

「俺達のトップの仕事ぶり思い出してみろ、あんなのになりたいのか?」

「断固拒否」

「それにお前デスクワークとか無理だろ」

「はぁ~~~~」

 

どうやら納得したらしい。

 

「だけどどうするんだよ、お前はなんか考えあんのかよ?」

「安心しろ、俺達にピッタリなのがある」

 

俺は神様に向かって言う。

 

「神様」

「はい」

「どんな世界も可能なんだよな?」

「可能です」

「アニメの世界も?」

「もちろんです、いくつか例外はありますが基本可能です」

 

俺はその例外が気になるが、大丈夫だよな?まぁいい。

俺は背中をあいつに向けたまま問う。

 

「お前もどんな世界でもいいのか?」

「お前が決めてくれるのに文句は言わねぇよ。それにお前と一緒ならどこでも楽しくやれるだろ」

 

了承は得た、なら俺達の答えは。

 

「ガールズ&パンツァーの世界で」

「わかりました」

 

内心ホッとしてする。だって確認したら例外があるって言うんだもん。

 

「ちなみにさっきの例外って?」

「例えば、バ◯オ◯ザー◯などです。こちらに関しましては人類のほとんどがゾンビ化しております。転生自体は可能ですが、転生して一時間も経たないうちにまたここに戻って来られる方が多い為禁止になりました。もちろん生き抜いた方もいますがそれも極僅かです」

 

だろうな。

 

「では転生後の容姿などを設定しますが何かご希望はありますか?」

「えっ、そんなのできんの?容姿ってことは性別もか?」

「はい」

 

これは以外、俺はこの姿のままガルパンの世界へ転生してガルパンの世界の設定自体を変えて男も参加できるようにするつもりでいた。

 

「俺は艦こ◯の吹雪ちゃんがいい!」

 

後ろにいたはずなのにいつの間にか俺の隣に来ていた。こいつはまだ艦◯れを諦めていないらしい。

 

「わかりました、アナタはどうされますか?」

 

神様は俺に問い、俺は悩む。

 

「なら俺はファ◯トム◯ブ◯ルのレーヴァテインで」

「わかりました、転生する時期はどうされますか?」

「俺は中1の入学式がいい!」

「わかりました、アナタはかまいませんか?」

「あぁ」

 

俺はそう答える、確かに原作よりも少し前がいいしな。

 

「地域はどうされますか?」

「地域?」

「都道府県です」

「あぁ」

 

俺の疑問に神様は答える、てか細かいな。

 

「なら熊本で」

「わかりました」

 

熊本なら実家の近くだからある程度はわかる。それに原作ではあそこには西住家がある。

 

「名前はどうされますか?」

 

俺は考える。

 

「俺は 笹原 紅音(ささはら あかね)って名前で」

「俺は 雪宮 吹雪(ゆきみや ふぶき)って名前だな」

 

名前も吹雪かよ。まぁいいけど。

 

「わかりました。他に何か付け足す設定はありますか?」

 

俺達は再び考える

 

「俺は艦◯れと携帯のゲームのデータを引き継ぎたい。あと一人でアパートに住んでいて親は遠方に居るって設定で」

 

俺はそう答える。

 

「なら俺はそれプラスアパートの部屋はこいつの隣の部屋で、あと俺達の通う学校には俺達を知っている人はいなくて俺達は幼馴染、それから戦車道のチームはそれなりに強いとこで、艦◯れや東◯プロ◯ェクトやファ◯ン◯ム◯ブ◯ルや俺◯イ◯とかあと色々なキャラがそこそこ出るように」

「わかりました」

 

細かいなこいつ。てか。

 

「おい、またお前の面倒見なくちゃいけないのかよ」

「いいだろ、少しは俺の意見取り入れろ」

 

まぁいっか。

世界バランスが崩壊しませんように・・・ってこれフラ

 

「おまたせしました。ではこちらの門をくぐったらそれでお終いです」

 

間違いなくフラグだな。まいっか。

 

「よし・・いくか吹雪」

「おう、頼むぜ紅音」

 

俺達が門をくぐろうとしたとき。

 

「少しよろしいですか?」

 

神様に呼び止められる。

 

「なんですか?」

 

俺達は振り返る。

 

「本当にこの世界でよろしいのですか?」

「どういうことですか?」

 

つい神様の疑問に疑問で返してしまう。

 

「確かに生前のとき培った知識、技術、経験をもってすればアナタ方はそこらあたりの人より強いです」

 

だろうな。

 

「私は生前のアナタ方を見ていました。だから問います。再び戦車に乗ることは苦ではないのですか?」

「「・・・・・・・・・・・・・」」

 

神様はどこか悲しい感じでそう言う。

そう、俺達は生前の時も戦車に乗っていた。真夏の暑い時も、雪が腰あたりまで積もった寒い冬も、俺達は戦車に乗っていた。確かに辛かった。だから聞いているのだろう。

 

「俺達にはこれしかないんだ」

「ですが!「それに!」ッ!」

「なんだかんだ言っても俺達は戦車が好きなんだよ」

 

そう、俺達は戦車好きだった。今でもそれは変わらない。

 

「お前もそうだろ?」

「まぁな。それに戦車があったからお前とも出会えた」

「だから気にしないでくれ神様」

「・・・・・・・・ですが」

 

神様は納得していないらしい。

 

「大丈夫だよ神様」

「なんたって俺達」

「「戦車のことなら誰にも負けたことないからな!!」」

 

綺麗に被ったなぁおい。

俺達はお互いの顔を見て、そして笑う腹を抱えて笑う。そう、生前の俺達は戦車があったから出会ったのだ。

それに俺達には戦車に乗った経験もある。

 

「・・・・わかりました、では悔いのない良き人生を」

 

気づけば神様は笑顔だった。どうやら納得してくれたようだ。

 

「では!」

「お元気で!」

 

俺達はそう言い残し門をくぐる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人とはわからないものですね。でも安心しました。」

 

誰も居ない空間で神様はそう呟いた。

 

 

 

 

 

 




次は2月までに投稿しようかと思っています。
ご意見、ご感想お待ちしておりますがはじめて投稿しましたのでお手柔らかにお願い致します(><)
ではまた。


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転生初日からドタバタ

なんか色々閃いたので覚えているうちに書きました。
ではどうぞ。


 

 

 

 

 

どうしたものか。

 

「5時45分かぁ〜〜〜〜」

 

枕の側にあった目覚まし時計見ながら俺は言う。

そう、実はもう起きていたのである。今から15分程前にいつもの調子で目が覚めてしまった。いつもこの時間帯に起きていたからもう習慣になってしまっている。

 

「とりあえず部屋を漁りますか」

 

そんな独り言を呟き寝室の扉を開ける。

 

「・・・・・・マジですか」

 

いや嬉しいけど、一人暮らしにはちょっと勿体無いんですが。

そう俺がいるのは、アパートではなくマンションだった。しかも2LDKで寝室の広さは6帖 でリビングは13.3帖 くらいかな?

えっ?なんでマンションだってわかったかって?リビングから見える外の景色でわかったよ、何故かカーテンが開いてたから。あれ?俺アパートって言ったよな?

そんなことを想っていながら辺りを見渡すとテーブルの上に置いてある物に目が止まる。

 

「なんだ?」

 

俺はテーブルに歩み寄って確認する。そこには教科書の類と学校の案内書、そして制服と財布と携帯と手紙があった。

 

「・・・・・・・・」

 

俺は先に手紙を確認する。

 

『無事に転生されたことをお祝いします。早速ですが、まず先アパートの件ですが、アナタが少しでも広々とくつろげるよう、こちらで勝手に決めました。冷蔵庫には食材が3日分あり日用品は全て揃っています。パソコンも、もう一つの部屋に用意しております。では良い人生を』

 

まぁ向こうなりの配慮なんだろけど、これだけ広いと掃除が大変なんだよなぁ。

まいっか、いざとなったら隣の部屋にいるであろうアイツに手伝っもらおう。

 

「まだ6時か」

 

リビングの壁に掛かっている時計を確認しながら呟く。

 

「・・・・・・・・とりあえず顔洗いますか」

 

そう呟き洗面所に向かう。リビングを出て左の突き当たりかな?目の前の扉はおそらく玄関だろうし、まぁとりあえず行ってみるか。

そう思いながら突き当たりの扉を開ける。おっ、あってた。そして洗面台の鏡の前に置いてあるコップとコップに入れてある歯ブラシと歯磨き粉をコップごと取ろうとしたとき。

 

「・・・・・・・マジでレーヴァテイン可愛いな」

 

鏡に映っている自分の顔に見惚れてしまう。なんと言うかゲームでは表現出来ないところまでしっかり表現されている感じである。

えっ?何を言ってあるか分かんないって?安心しろ。俺も分からん。

そんなことを思いつつ顔を洗って、歯磨きをする。

思ったけどレーヴァテインって見た目より胸あるんだな。

 

 

 

〜〜〜〜ちょっと早送り〜〜〜〜

 

 

AM07:30

 

あれから俺はある程度漁り、部屋にある物を把握し、これから先必要になる物をメモしていく。てかこのテーブルと椅子普通に高そうだな、いくらするんだろ。

幸いにも財布の中には5万入っていた。中学生が持つには大金だと思ったがそもそも転生する前は20歳超えてた、てかまだ20代前半だったから関係なかった。通帳は財布を文鎮代わりする形で下にあった。いやまさか通帳を確認したら1000万入っているからビビったわぁ。

そうこうしているうちに必要になる物をメモし終えたので携帯のアプリを起動しながら、い◯はすのなし味を飲む。もちろん朝ごはんは食べてない。何故なら、神様の手紙には<御飯>ではなく<食材>と書いてあった。俺も作り置き的な物があると思って冷蔵庫見たら食材と飲み物しかないからちょっとショックだった。

 

「せめてお米は炊いた状態であって欲しかった〜〜」

 

そんなわけで今お米は炊いている状態である。漁っているときにパソコンや携帯の中のデータを見てみたけど、生前のときのデータが入っていた。これで艦◯れもファ◯キ◯もF◯O出来るから安心だ。

 

「7時42分か。そろそろ制服に着替えるか」

 

そう言って制服を手に取る。

そこで俺はあることに気づく。俺は今、女である。制服はもちろんスカートである。わかってはいた、覚悟も顔を洗っているときに出来ていた、だが。

 

「これはちょっとなぁ〜〜〜〜」

 

何がって?俺は膝くらいまでのスカートを想像していたがまさか膝より上である。えっ?調整すればいいじゃんって?今やっとるわ!!

それでも膝から5〜6cmくらいだよ!!

 

「落ち着かねぇ〜〜。女っていつもこんな風が吹けばパンツが見えるかもしれない物はいてんのかよ」

 

まぁ仕方ないか、これは諦めるか。

俺はベランダの近くにある鏡まで移動して乱れがないかをチェックする。

 

「なんかゴッ◯イー◯ーの黒松高校の制服を連想させるデザインだな」

 

違いがあるならリボンの形とブレザーの襟の部分と背中に変なラインが入ってないことぐらいかな。どちらかと言うとファ◯キ◯のラグ女の制服に近いか?でも色は黒松高校っぽいし、もうラグ女のデザインで色は黒松高校っぽいでいっか。ちょっとシャツの上のボタン二つくらい開けて、ブレザーは全開でっと、よしOK。前世でも高校はブレザーだったから女子がどんな風に着崩してたか覚えているからその真似をしてみる。うん、ブレザーはやっぱりしっくりくる。

 

「さて、8時ちょっと前だしそろそろアイツのとこに行きますか。今日は入学式だから遅く登校してもいいし、荷物もスクールバックと筆記具だけで良かったはず」

 

最終的荷物の確認を学校の案内書を見ながらする。よし行くか。俺は玄関まで行き靴を履く、玄関の扉を開けて外へ。

 

「・・・・綺麗な景色だな」

 

玄関を出て俺は言う。確か田舎ではないが、都会と言う程都会ではない。自然それなりにある。視界の三分の一くらいはピンク、つまり桜である。因みに残り三分の一は青空で三分の一は街並みである。俺はこのくらいが丁度いいと思う。田舎過ぎず都会過ぎず、夜になってからの夜景が楽しみだ。

 

「っと、こうしてはいられない」

 

早くアイツの部屋に行かなければ、隣って言ってたな。右の部屋かな?あっ違った。プレートに【楠】って書いてある。じゃ左か、おっ、あったあった。俺はインターホンを押す。

・・・・・・・・反応がない。もう一回押す。

・・・・・・・・あら?

俺はインターホンを連打する。まさか。

扉のノブに手をかける。やはり開かないか、なら。

 

「吹雪〜〜!!起きなさ〜〜い!!」

 

一応女なのでそんな感じで声に出して扉を叩く。1分くらいして扉が開く。

 

「はーーい。って紅音?」

「そうよ。はぁ〜〜〜〜やっぱりまだ寝てたのね」

「寝てねぇよ。学校の準備してた。つかお前その話し方似あわねぇ〜〜」

「うるさい。こっちの世界では女だからそれっぽく話しているだけ、アンタも気をつけなさい。」

「にしてもお前、可愛い容姿してんな。ちょっと見惚れた。」

「人の話を聞け。まぁアンタも可愛い容姿してるよ」

「ありがと。ならちょっと待ってて、あと着替えるだけだから」

「早くしなさい」

 

そう言って吹雪は着替えるため部屋に戻る。この喋り方違和感しかねぇな。まぁそのうち慣れるだろ。にしてもアイツ寝癖ついてたけど、絶対に着替えるだけじゃ終わらないな。一応走る準備しとくかな。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜30分後〜〜〜〜

 

 

 

 

 

現在時刻は8時35分。タイムリミットまであと15分。

俺達は今走っている。ただひたすら走っている。やっぱりコイツ時間かかりやがった、走る準備してて良かった。

 

「急いで!遅刻する!」

「待ってよ紅音ちゃ〜ん!!」

「急いで!あ〜〜もう!バック貸して!私が持つ!」

「ありがと〜!」

 

そんなやり取りしながら走る。見えた!あの学校のはず、距離的に600mくらい、残り時間11分。

 

「よしペースを落とそう」

「もっ、もう無理。もう限界」

 

ジョギング位のペースまで落として走る。そして交差点の信号が赤に変わったので俺達は待つ。

 

「あの、ホント遅刻しちゃうのでもう・・・・」

「いいじゃん学校に休みの連絡すれば」

「そうそう、俺達と遊ぼうぜ?」

「でも・・・・」

 

右から声がしたので声が聞こえる方に俺達は顔だけ向ける。そこには俺と同じかな?髪の色の女子生徒と赤い髪の女子生徒が不良と思われる男子生徒二人に絡まれている状況だった。女子生徒達は同じ制服だが男子生徒達は学ランだった。つまり他校の生徒だ。いやこんなのアニメやゲームの中だけだと思ってたけど、リアルで目の当たりにすると凄いアホらし。

 

「どうする?」

 

吹雪に問う。

 

「時間まであと10分ある。5分くらいならいいじゃない?」

「なら殺りますか」

「一応言っておくけど、私達、中学生だから問題にならない程度に。入学式初日から先生達に目をつけられる状況だけは避けてね?」

「なら吹雪も手伝って。何一人で学校に向かってスタンディングスタートしてんの」

「冗談だって、なら5分いらないね」

「最初から私任せにするつもりだったんだ〜〜へぇ〜〜」

「さっ、時間がないよ」

 

あっ話逸らした。よし後でじっくり話をしよう。さて後でどうやってコイツを精神的に追い詰めようかな。そんなこと考えながら不良達に歩み寄る。

 

「あの〜」

「あぁ?」

 

二人の不良は体ごとこちらを向く。

 

「フッ!」

 

俺は不良の一人に上段回し蹴りをする。狙いはもちろん顎。爪先を伸ばさず、立てた状態で。

 

「ガッ!?」

 

はっ!?当たった!?ウソッ!?避けられると思ってたのに!

スタンバイしていた吹雪もこれには唖然とする。

 

「このっクソガキがっ!」

 

もう一人の不良が右ストレートをする。俺は上段回し蹴りをして不良に背中を向けている状態。当然ガードは間に合わない。なら!

 

「よっと!」

 

俺はそのままの勢いで後ろ回し蹴りをする。これも綺麗に踵が顳顬に入る。

 

「うっ!」

 

おっ耐えた。なら。

 

「はっ!」

 

不良の鳩尾に拳を叩き込む。ようやく不良が沈黙した。

 

「はぁ〜〜疲れた〜〜」

 

そう言いながら投げ捨ていたバックを拾う。いつ捨てたかって?不良に話し掛ける前に捨てた。

 

「やり過ぎだよ〜〜紅音ちゃん」

 

そう言いながら吹雪が歩み寄ってくる。

 

「だいたいアンタなんで何もしなかったのよ」

 

ちょっと不機嫌気味に言う。

 

「だってまさかあの上段回し蹴りが当たるって思ってなかったし、その後の後ろ回し蹴りも当たるって思わなかったよ〜〜」

 

吹雪は自分のバックを拾い上げる。あっ一緒に投げ捨ててた。

 

「まぁ・・・・私も思ってなかった」

 

マジどんだけ鈍いのこの不良。まぁコイツらもまさか蹴り入れられるとは思いもしなかっただろう。てかこの体にもまだ慣れていない。走っているときもだったが胸が邪魔だなぁ。まぁ胸ない人が聞いたら嫌味になるだろうが。あとこの体、足は前世の俺より速いが腕の、てか上半身を筋力は前世の俺より多分下だな。まぁいっか、女で筋肉ムキムキとか嫌だよな、俺も嫌だ。前世の俺とまではいかないが、それなりに筋トレするか、ムキムキにならない程度に。

 

「だから私は悪くない!」

 

両手を腰にあてて胸を張って言う吹雪。なんだろう仕方ないといえば仕方ないが、なんか凄くムカつく。

 

「今・・・イラっとした。・・・・あと何分?」

 

吹雪に残り時間を確認する。

 

「あと8分。凄いね!2分で終わらせたよ!」

「そりゃあんなに技が上手く決まればね」

 

別にあんまり嬉しくねぇな。寧ろ歯応えがなくてつまらん。

 

「ところで二人とも怪我ない?」

 

俺は不良二人に絡まれていた女子生徒の二人に話し掛ける。

 

「は、はい!」

「ありがとうございます」

 

二人はヘタリ込んだ状態でそう言う。

 

「大丈夫?立てる?」

「手、貸そうか?」

 

俺に続いて吹雪も手を差し伸べながら言う。

 

「すいません」

「申し訳ありません」

 

そう言って二人は手に捕まり立ち上がる。てかこの二人、俺達は知っている。まさか最初に出会うのがこの二人とはな。

 

「アナタ達新入生?」

「はい。そうですが」

 

赤髪の女子生徒が答える。

 

「名前聞いてもいい?」

「竹田ヒバリです」

「私は楠リッカだよ〜」

「そう、これから三年間よろしく」

「アナタ達も新入生?」

 

リッカが質問する。

 

「そうよ」

 

まさかゴッ◯イー◯ターの二人と出会うとはな。てか待て、楠?

 

「もしかしてアナタ◯◯◯◯◯マンションに住んでる?」

「えっ!?そうだけど、なんで知ってるの?」

 

やっぱりな。朝、隣の部屋のプレートに【楠】って書いてあったからな。

 

「私、アナタの隣の部屋に住んでるの」

「えっ!?そうなの!?」

 

リッカはかなり驚いてる。それもそうなるか、助けてくれた人が隣の住人なんだもん。

 

「紹介が遅れたわね、私は笹原 紅音。こっちは雪宮 吹雪」

「はじめまして。雪宮 吹雪です」

 

とりあえずこちら側の自己紹介は終わる。そしてあることに気づく。

 

「吹雪、残りあと何分?」

「あと5分だね」

 

まずいな。ここから下駄箱まで約500m。

 

「二人とも詳しい話はあとにして今は急ぎましょ!」

「「は、はい!」」

 

俺達は再び走りだす。

 

「え〜また走るの〜!?」

 

吹雪が嫌そうに言う。

 

「遅刻したければ勝手にしたら?」

「ならせめてバック持って〜〜。走りづらい〜〜。」

「知らない」

 

そんなやり取りをしながら俺達四人は学校へ向かう。

 

 

 




如何だったでしょうか?2月までに投稿すると言っていましたが思いのほか早く出来ました。
次は年末までに投稿しようと思います。
ご意見ご感想お待ちしております。
それではまた。


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彼女ら(彼ら)はよくトラブルを起こす


意外と早く出来ました。
クリスマスですね。あぁ彼女ほしい。
ではどうぞ!


 

 

 

 

〜〜〜〜体育館〜〜〜〜

 

 

 

 

 

あぁ眠い。早く終わんないかな〜。今俺は体育館にいる。入学式である。遅刻しなかったかって?チャイムと同時に教室に入ったからセーフである。1分50秒で500m走り、30秒で自分の下駄箱を探し、30秒で現在位置と自分の教室を確認し、30秒残りの三人を待ち、20秒で自分の教室まで走って1分20秒先生に怒られて、チャイムと同時に教室に入った。えっ?設定が細かいって?文字稼ぎだよ。メタいけど気にしちゃダメ。とりあえず遅刻はしなかった。偶然にも他の三人も一緒のクラスである。クラスの人数は40人であった。クラスに誰がいたのかはまた後で説明しよう。まぁ半分も覚えていないが。

 

「新入生代表、四季 映姫」

「はい!」

 

だいたいなんだよ常幻東中学校って。何が常に幻だよ。東があるなら西もあるのか?・・・・・って待て、今、四季映姫って言ったか?

マジか。ゴッ◯イー◯ーの次は東◯プロ◯ェク◯か。隣の吹雪が目を輝かせてるよ。

 

「今度は四季 映姫が出たね」

「静かにしなさい。あと落ち着きなさい」

「だってあの閻魔様だよ。やっぱり小さいね」

「だから落ち着きなさい」

 

周りに聞こえない様に小さい声と手で口元を隠しながら話していると。

 

「ーーーえーーーコホンッ!」

 

四季 映姫が咳払いをした。俺達は四季 映姫を見て、そして目が合う。

ヤベェは。先生にではなく閻魔様に目をつけられたよ。俺達は話をやめて姿勢を正す。ヤベェ多分これフラグだ。

 

「初日からヤバいかもね」

「アンタが悪いのよ吹雪」

 

こんな調子で入学式が終わった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜教室〜〜〜〜

 

 

 

 

 

ヤベェよマジヤベェよどのくらいヤバいって言うとマジヤベェよ。何言ってんの俺。入学式が終わったらまぁ教室に戻るよな。そのあと自己紹介やら連絡事項やら言ったら初日だから下校するよな、今クラスメイトが自己紹介中だけど。何がヤバいかって?クラスの人がヤバい。普通左の前から出席番号順に席に座るよな。でその出席番号ってだいたい五十音順だよな。俺のクラスは縦6席×横6席+後に4席、つまり左の4列は縦7席である。因みに俺のクラスは1-Bである。では俺のクラスメイトを発表しま〜〜す。

 

1番 アリサ・イリーニチナ・アミエーラ

2番 十六夜 咲夜

3番 五十鈴 香織 ※艦これの「五十鈴」

4番 逸見 エリカ

5番 宇佐見 蓮子

6番 火焔猫 燐

7番 川越 霞 ※艦これの「霞」

8番 霧雨 魔理沙

9番 楠 リッカ

10番 東風谷 早苗

11番 魂魄 妖夢

12番 佐々木 時雨 ※艦これの「時雨

13番 佐々木 白露 ※艦これの「白露」

14番 佐々木 春雨 ※艦これの「春雨」

15番 佐々木 村雨 ※艦これの「村雨」

16番 佐々木 夕立 ※艦これの「夕立」

17番 笹原 紅音

18番 四季 映姫

19番 射命丸 文

20番 瀬川 曙 ※艦これの「曙」

21番 竹田 ヒバリ

22番 橘 飛鳥 ※ファンキルの「ロンギヌス」

23番 寺本 沙緒里 ※ファンキルの「フォルカス」

24番 戸羽 晶 ※ファンキルの「シタ」

25番 二階堂 エリナ ※ゴッドイーターの「エリナ」

26番 乃村 陽炎 ※艦これの「陽炎」

27番 乃村 黒潮 ※艦これの「黒潮」

28番 乃村 不知火 ※艦これの「不知火」

29番 博麗 霊夢

30番 日巻 遥 ※ファンキルの「ムラマサ」

31番 平河 秋 ※ファンキルの「シユウ」

32番 三浦 優美子

33番 宗政 睦月 ※艦これの「睦月」

34番 由比ヶ浜 結衣

35番 夕張 茜 ※艦これの「夕張」

36番 雪宮 吹雪

37番 遊佐 愛莉 ※ファンキルの「シェキナー」

38番 湯沢 奏 ※ファンキルの「ケラウノス」

39番 柚園 麻希奈 ※ファンキルの「ネス」

40番 和田 真奈美 ※ファンキルの「草薙剣」

 

何このクラス?もう一度言おう。何このクラス。なんで男子が一人もいないんだよ。入学式の時確かに男子の人数は少なかったよ、新入生全体の二割くらいしかいなかったけど、まさか俺のクラスが女クラになるとは思ってもいなかった、いや確かに原作やらなんやらよりみんな幼くて可愛いけどせめて男子は5〜6人はいて欲しかった。いや変な意味ではなくてね。だって俺、容姿は女だけど中身男だから女子だけだと落ち着かない。あと落ち着かないもう一つの理由は四季 映姫が俺の後ろにいること。入学式のとき多分目をつけられたのだろう。なんか変なオーラを感じるし。

 

「では次、笹原さん。お願いします」

 

次は俺か。何話すか考えてなかった。俺はその場に立つ。

 

「笹原 紅音です。よろしく」

 

ヤベェ。女子しかいない緊張感と何を話すか考えていなかったためこんなことしか言えねぇ。

 

「ほ、他に何かありませんか?」

 

あーあ先生困らせちゃったなぁ〜〜。でもこれ以上話すことないし。

 

「以上です」

 

そう言って俺は席に着く。

 

「で、では次、四季さん。お願いします」

 

あぁ多分これクラスで浮いた存在になるだろなぁ〜〜。あんま目立ちたくないんだよなぁ〜〜。もう面倒くせぇ。放課後、戦車道に行って、帰って艦◯れするか。えっ?◯の意味ないって?気にしちゃダメ。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜放課後〜〜〜〜

 

 

 

 

 

やっと放課後だよ。と言ってもまだ昼前だけどな。

 

「紅音ちゃ〜ん!」

 

ちょっと大きめの声で吹雪が呼ぶ。俺は吹雪の方を向く。後ろにはリッカとヒバリもいた。

 

「何?」

 

吹雪に問う。まぁ察しはつくけど。

 

「このあと戦車道に行こっ」

 

やっぱりな。

 

「そうね。学校も終わったし行きましょ」

 

そう言って俺が席を立ったとき。

 

「少しよろしいですか?」

 

はい見事なフラグ回収。俺は声の主、後ろの席の四季 映姫の方に向く。

 

「何?」

「入学式といい、自己紹介といい。あなたはやる気はあるのですか?」

 

やる気って。二回目の中学生ライフは流石にやる気なんてないけど。ここは適当に流すか。

 

「入学式のときはごめんなさいね。それと自己紹介のときは緊張してて言葉が出なかったのよ」

 

嘘は言っていない。これなら相手もこれ以上追撃はしないだろう。なんだよ追撃って。

 

「そうですか。反省も自覚もしているようですね。今日は初日ですし、このくらいにします」

 

どうやら、お説教は終わったらしい。

 

「じゃ吹雪達、行こ」

 

そう言って行こうとしたとき。

 

「待ってください。まだ終わってませんよ」

 

再び呼び止められる。

 

「今度は何?」

 

再び四季 映姫をみる。

 

「私も戦車道に行きます」

 

・・・・・・・・・・は?

今なんて言った?いや聞こえなかったわけでわない。戦車道に行く?コイツが?マジで?これは予想外、あまりの展開に俺も吹雪も目を見開く。

 

「なんですか?そんなに意外ですか?」

 

ちょっと不機嫌そうに言う。いやだって意外過ぎる。

 

「いえ、その、意外っていうか、さっき話した感じからしてそういうのに興味なさそうっていうか」

「そうですね。確かに今まで興味はありませんでした。ですがとある雑誌を読んで興味を持ちました。それにこの学校の戦車道はそれなりに強いと聞いていますので入部しようかと」

「・・・・・わかった。それなら一緒に行きましょ」

 

まぁ入部する理由なんて人それぞれだしこれ以上詮索はやめよう。そんなことを考えながら進もうとしたらまた呼び止められた。

 

「あ、あの!」

 

今度は何?って次はアンタか。俺はそちらに顔だけ向ける。

 

「わ、私も一緒にいいかな?」

「えぇ、行きましょ逸見さん」

 

そう逸見エリカだ。コイツは原作にも出るキャラだ。それなりに信用できるだろう。

 

「お待たせ、ごめんね吹雪達。それじゃ行きましょ」

 

待たせていたことに謝罪をし、俺達は教室を出た。てか俺と吹雪が先頭に立って他四人を引き連れるって形になっちゃったけど、まぁいっか。

 

 

〜〜〜〜移動中〜〜〜〜

 

 

「あっそうだ。笹原さん、今朝はありがとうございます」

 

突然ヒバリからそんなことを言われた。みんな喋らないから気まずかったのだろう。

 

「気にしないで、あれは私が勝手にやったことだから」

「何かあったのですか?」

 

ここで四季がたずねてくる。

 

「今朝登校中に他校の不良に絡まれていたところを笹原さんと雪宮さんに助けてもらったの」

「だからアナタ達遅刻ギリギリだったのね」

 

リッカと逸見がそんなやり取りをする。

 

「なんか恥ずかしいからやめて」

 

やめて。ホントやめて。なんかマジで恥ずかしいからやめて。いま思い返せば何やってんだ今朝の俺。

 

「いいじゃん、今朝はかっこよかったよ紅音ちゃん。2分しか時間かけてないし」

「何か武道の経験があるんですか?」

 

ヒバリから質問される。吹雪め、こうなることわかってあんなこと言ったな。俺は吹雪を見る。やめろそのニヤニヤした顔、腹が立つ。

 

「別に何もしてないよ」

 

正直なところ嘘である。前世では色々やってきた。ボクシング、キックボクシング、ムエタイ、テコンドー、サバット、あと自衛隊格闘術と逮捕術が出来る。まぁ全部動画見て見様見真似にしただけなんだけどな。

 

「武道?どういうことですか?」

 

ほら閻魔様も反応しちゃったじゃん。上手いこと誤魔化そうしたらリッカが口を開いた。

 

「笹原さんってすごいんだよ。不良二人を蹴り二発と拳一発で倒しちゃったんだよ」

 

あーあバレちゃったじゃん。どうしてくれるん吹雪。こらこっち向け、顔逸らすな。

 

「事情を聞かせて下さい」

 

またお説教かよ。

 

 

 

〜〜〜〜説明中〜〜〜〜

 

 

 

「なるほど。そういうわけですか」

 

事情聴取終了。さて判決は如何に。

 

「まず、クラスメイトを助けたことは評価します。ただし、事態の解決の仕方は頂けません。どうあっても暴力で解決するのはよくありません。今回は時間もなかったようなので目を瞑ります。今後このようなことがないようにして下さい」

 

お説教が終わった。意外と短かったな。

 

「善処する」

「善処するのは当たり前です」

「頑張る」

「それも当たり前です」

「努力「当たり前です」・・・・・」

 

面倒くせぇ。いざという時うまく対処出来ないやん。

 

「気をつける」

「そうして下さい」

「大丈夫だよ四季ちゃん。紅音ちゃんは私が面倒見るから」

 

ここで吹雪が口を開らく。いや面倒を見るの俺だからな?俺は矛先を吹雪に向ける。

 

「今朝、着替えるだけって言って時間かかったの誰だったっけ?」

「え、え〜っと」

「登校しているときもバック持ったよね〜〜?」

「そ、それは」

「不良二人相手しているときも見てただけだったよね〜〜?」

「何も言えません」

 

不機嫌そうに言って俺は吹雪に詰め寄る。現在場所は廊下。吹雪は壁に追い詰められ逃げ道をなくす。

 

「なんか労ってくれてもいいんじゃないかな〜〜〜?」

「お疲「はぁ?」・・・えっと〜」

 

吹雪は考える。

 

「走っている途中でスーパー見つけたからそこで「ロールケーキ食べたいなぁ〜。3つくらい」奢らせていただきます!」

 

吹雪は敬礼して言う。いや海上自衛隊の敬礼だからな。

 

「それ、海上自衛隊の敬礼だから」

「じゃ、どうするの。こう?」

「それは陸上自衛隊の敬礼」

「じゃ、どうするの?」

「そもそも敬礼しろって言ってない」

「そこノリだよ!」

「いやよ。今日は朝から疲れたしそんなノリじゃない」

「ノリ悪いなぁ〜」

 

そんな風にやり取りする

 

「アンタ達仲良いわね」

 

逸見が言う。

 

「まぁね、否定はしないわ」

「そうだよ!」

 

綺麗に被ったな。

 

「それに下の名前で呼びあってるし」

「お二人はどういう関係なんですか?」

 

リッカ、ヒバリの順で言ってくる。

 

「腐れ縁」

「幼馴染み」

 

同時に言う。まぁ仲良いのは認める。前世では最期あんな死に方だったけど、それまでの人生はコイツが居たから生き延びることが出来た。コイツなら俺の命を預けられる、背中を任せられる。そのくらい俺はコイツを信用、信頼、評価している。

 

「そろそろ行きましょ」

「そうだね」

 

俺に続いて吹雪が言い、あとを四人が付いて来る。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜目的地到着〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「すいませ〜〜〜〜ん!!」

 

俺達は今、部室というか戦車を整備する工場?に来ている。部室が分からないから直接ここに来た。校内に工場らしき物があったら不自然である。工場が必要な部活は戦車道くらいだろう。

 

「はーーい!!」

 

声の主を探す。えっ?マジどこ?

 

「ここだよーー!!」

 

気づけば戦車の砲塔から顔を出している人がいる。あの戦車はセンチュリオンか。しかも島田愛里寿が乗っていたヤツ。てか工場広いな。縦250m×横150m×高さ15mくらいかな?割と広い。おまけに天井クレーンもある。そう思いながら工場の隅にあるセンチュリオンまで行く。

 

「すいません。私達新入生なんですが戦車道に入部したくて来ました」

「そんなだー!って笹原さん達じゃん!」

 

なんで知ってるの?って夕張さんじゃん!

 

「同じクラスの夕張さんだね?」

 

一応たずねるか。

 

「覚えてくれたんだ!ありがとう!」

 

そう言って俺の両手を取って上下に大きく振る。元気だなぁ〜。そりゃあんなクラスならすぐ覚えるよ。あるヤツは一番に拘るし、あるヤツはクズ呼ばわりするし、またあるヤツは貧乏巫女だし、その他諸々だし。

 

「それで隊長は何処にいるの?」

「え、え〜〜〜〜っと」

 

夕張は何かを躊躇っている。

 

「何かあったんですか?」

 

何かを察したのであろう四季は夕張に聞く。まぁ俺も予想はつく。何か問題があったのだろう。

 

「実は・・・・・・」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜夕張状況説明中〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「はぁ〜〜〜〜」

 

俺はちょっと深いため息をする。あぁタバコ吸いてぇ。前世ではタバコ吸ってたけど今は女子中学生だからタバコは吸えない。だからストレスが溜まる。

要するにこの学校が戦車道でそこそこ強かったのは卒業していった三年生のおかげで、今の三年生と二年生はそうでもないと。そしてこの学校には一年生は雑用やら整備しかさせてもらえず、試合に出れるは二、三年生だけと。だから二年生はこの風習を無くそう行動したが三年生は反対、それでも諦めなかった二年生に三年生はキレて、三年生は一年生と同じ扱い、要は雑用やら整備しかさせなくなった。反抗するものはいじめていると。

 

「くだらない」

「ここの三年生には呆れました」

「そう、くだらない理由だよ。でも逆らえば・・・・・」

 

俺、四季、夕張の順で言う。夕張は下を向いてそれから黙る。

 

「夕張さんはなんで戦車道に入ったんですか?」

 

ヒバリは訪ねる。

 

「だって戦車かっこいいじゃん!その戦車を整備したり改造したりするのが私は大好き」

「わかる!わかるよ夕張さん!こんなメカメカしい物、すごくすごく好き!」

「アナタも!?」

「えぇ!」

 

乱入してきたリッカはそう言って夕張と手を固く握手する。なんか危険な匂いがするのだが。

 

「しかし、こんな状況じゃとても・・・・」

 

そして再びお通夜ムード。仕方ない、さっきから考えていたことを実行しよう。

 

「夕張さん、部活の連絡網とかある?」

「あるけど、どうして?」

「今から二年生を全員呼び出して」

「?二年生なら多分そろそろ来ると思うよ?あの人達真面目そうだったし、先に行っててって言ってたし」

「そう、ならここで待たせてもらうわ」

「どうぞー」

「あと確認だけど、この戦車は使える?」

「うん!使えるよ、さっき整備終わったから」

 

流石夕張さん。そう思いながら待っているとある疑問がうまれた。

 

「そういえば夕張さんは二年生、三年生の人と面識あるの?」

「面識って程じゃないけど、朝早くに学校に来てここに来たら二年生と三年生が言い争いしてるのを目撃してね〜。その時入部届け出して連絡網とか貰った、放課後も、ここに来るに来る前に二年生に会ったし」

「なるほど」

 

そういうことか。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜15分後〜〜〜〜

 

 

 

 

 

俺達は二年生が全員揃ったのを連絡網を見ながら確認して自己紹介を終わらせる。ありがたいことに二年生は全員揃うまでその場に留まってくれた。

 

「単刀直入に言います。このままでいいんですか?」

 

二年生に問う。

 

「ッ!!・・夕張さんから聞いたのね」

 

夕張は俯く。

 

「ごめんなさい」

「いいのよ。いずれバレることだから」

「ごめんなさい」

「謝らないで。謝らなくちゃいけないのは私達だから。私達が・・・・無力だったから・・・」

 

まぁたお通夜ムードだよ。仕方ない。

 

「もう一度聞きます。このままでいいんですか?」

「いいわけないでしょ!!」

「私達だって嫌よ!」

「でも、だからってどうしろって言うのよ!」

「事情を知っているならわかるでしょ!」

 

俺の問いに二年生が言う。

 

「質問を変えます。皆さんは、戦車は好きですか?」

 

質問に二年生は黙る。それから。

 

「えぇ。好きよ。だから私達はここにいる」

「今年こそ、今までの雪辱を晴らしたい!」

「先輩達の!卒業していったみんなの夢を!叶えたい!優勝したい!」

 

気持ちも気合いも十分だな。なら。

 

「わかりました。私に考えがあります」

「何よ?」

「とりあえず、三年生を全員呼び出してください」

「なんでそん「いいから早く」・・・わかったわ」

 

不機嫌そうに言ったあと俺は吹雪のところまで歩み寄る。

 

「ごめん、また迷惑かける」

「いいよ。今に始まったことじゃないし。それに私もこんなの嫌だし」

「今から苦労かけるよ?」

「何をするのかはわからないけど。頑張ろ」

「ありがと」

 

やっぱりコイツは頼れるな。そう俺は再認識する。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜20分後〜〜〜〜

 

 

 

 

 

意外と早く集まったな。ざっと40人くらいかな?俺は二年生達より5歩くらい前に出て立っている。

 

「急に集まっていただきありがとうございます。早速ですが隊長はどなたですか?」

 

そう言うと一人の女子生徒が前に出る。出て来た瞬間二年生達が少し俯く。コイツが隊長か。

 

「私だけど要件は何?」

 

なんだこの不良娘。なんか殴りたくなってきたな。

 

「早速ですが今から勝負しませんか?」

 

その瞬間工場内が騒めく。まぁそうなるよな。

 

「へぇ〜〜。私と勝負?新入生が?勝てると思ってるの?」

 

完全に舐めきってるな。

 

「いいよ。一対一でしょ「いいえ」・・・は?」

「五対一でやりましょう。こちらは一で、そちらが五です」

 

工場内がさらに騒めく。俺は続ける。

 

「そちらが勝ったらパシリでもなんでもその指示に従います」

「私達が負けたら?」

「三年生には全員退部していただき、隊長の座を私に譲っていただきます」

 

この発言に戦車道の部員全員が騒めく。一人を除いて。

 

「いいよ。相手してあげる。随分とナメてくれたね。後で後悔するんじゃないよ」

「そちらこそ、負けたときのいいわけを今のうちに考えといてください」

「このっ!みんなやるよ!」

「「「「「おおぉーーーーー!!!」」」」」

 

三年生達が準備にかかった。俺は二年生達の方に歩み寄る。

 

「どうするのあんなこと言って!」

「それに勝てると思ってるの!?」

「勝てるわけないよ五対一なんて!」

 

二年生達がそんなことを言う。ちょっとうるさいなぁ〜。

 

 

 

「少し黙ってもらえませんか?」

 

 

 

不機嫌オーラMAXにして、少し睨みながら俺は言う。そして二年生達は黙る。あぁやっちまった。こんなのしたくないんだけどなぁ。仕方ない。

 

「私が砲手をする。吹雪は「操縦手だね」流石」

 

俺が指示する前に吹雪は言う。付き合いが長いだけあって俺の考えを言いあてる。やっぱり頼りになる。さっきみんな騒ついたとき、コイツだけ平然としてたし。

 

「逸見さん、車長お願いできる?」

「いいけど、あまりやったことないわよ?」

「それでもいい。周囲を見て常に情報を送って。最終的判断は私がする」

「わかったわ」

「楠さん、装填手お願いしてもいい?」

「わかったわ。でもそんなに早く装填はできないよ?」

「問題ない。それから装填以外にも車長と一緒に周囲の警戒もして。車長のカバーをお願い」

「わかった」

 

これでいいだろう。

 

「また随分大きくでたね」

 

吹雪がそんなことを言う

 

「このくらいやらないとあっちは負けを認めないでしょ」

「そうだけど。勝算はあるの?」

「それ、アナタが私に聞く?」

「愚問だったね」

「でしょ?」

 

勝算のない戦いは基本しない。まぁするときもあるが、よっぽどのことがない限りしない。

 

「で、私はこれからどうしたらいい?」

「吹雪は今から操縦席に行って戦車の癖を把握して。試合開始地点までの移動間も癖を調べて、開始までに完全に把握して。夕張からも話を聞いて。彼女が整備したのなら彼女が一番詳しいはず」

「オッケー。さっきのセンチュリオンだね。あぁ今から大変だなぁ〜」

「・・・・ロールケーキの件なしにしてあげる」

「それより私はシフォンケーキが食べたいなぁ〜」

「・・・・登校中にケーキ屋を見つけたからそれでいい?」

「一番安いヤツでいいよ〜」

「わかったわ。勝手に巻き込んでごめん」

「いいよ。それに私達が負けるわけないじゃん」

「またそうやってフラグをたてる。やめなよ」

「大丈夫でしょ私達なら」

「それもそうね」

 

そう言って俺達も準備にかかる。

 

 

 

 

 




如何だったでしょか?
次は大晦日までに投稿しようと思います。
最近艦これでビスマルクの建造に成功しました。
はいどうでもいいですね。
ではまた次回!


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世界は99%の実力と1%の運で出来ている

仕事とは言えなんでクリスマスに仕事しなきゃいけないんだよ!!
うわぁぁぁぁぁぁぁん!!
一人でクリスマスは寂しいよぉぉぉぉ!!


 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜熊本県某所〜〜〜〜

 

 

 

 

 

現在位置は熊本県が所有している場所。簡単に言えば、熊本県が管理している演習場にいる。15km四方の広さでエリアの中央にちょっとした山がありあとは草原。草は腰ぐらいの高さで山には森が広がっている。エリアは柵で囲い、柵の外は山に囲まれている、町には被害はでない。

 

「吹雪、戦車の状態は?」

「把握したよ〜。ただこの戦車ちょっとブレーキの効きが悪いみたい。それ以外は問題ないよ」

「許容範囲よ。逸見さん、楠さん、準備はいい?」

「こちら逸見、問題ないはいつでもいける」

「こちら楠、いつでもオッケー」

 

今俺達はエリアのの端にいる。両チームエリアの端からスタート、ルールは殲滅戦である。試合開始の合図は無線機で行う。にしても。

 

「ウチらの学校にまさかT-34-85にT-34-76、あとはIS-2に3とKV-2もあったなんてねぇ〜、どう思う吹雪?」

「あとはティーガーⅠにⅡあとパンターとかもあったね〜。ウチの学校って意外とお金持ち?紅音ちゃん、今からでも戦車交換してもらえば?」

「嫌よ。面倒くさい」

「それで勝率が変わるかもしれないよ?」

「いいわよ、センチュリオンなら十分に戦える」

「ある人は言ってたよ。『慢心!ダメ!絶対!』って」

「何?試合前におふざけしたいの?なら私はこう言うわ『慢心せずして何が王か!』って」

「はいそれフラグ〜〜www」

「普段あんなにフラグ建築してるアンタが言う!?この特級フラグ建築士!」

「アンタ達試合前なのに緊張感なさ過ぎ」

 

ここで逸見が乱入してくる。緊張感って言われてもなぁ〜。前世に比べたら大したことないし、それに戦争じゃないしなぁ〜。

 

「まぁこれが私と吹雪の緊張のほぐし方よ。それと吹雪。」

「何?」

「私が慢心してるって思う?」

「今までなかったとは言いきれないけど、少なくとも私が覚えている中で大事な選択肢のときに紅音ちゃんは慢心したことはなかったね」

「前半はいらなかったね」

「でも事実でしょ?」

「試合前に自信なくすようなこと言わないで、あと締まらないじゃない」

「ごめんごめん、でも今は慢心してないって思うよ」

「なんか納得いかないけどそれでいいわ」

「おしゃべりは終わった?なら集中しなさい。それにしてもなんで車体と砲塔と砲身にゴムを張り巡らせる必要があったの?」

 

『試合開始後30分前』

 

吹雪との会話が終わり逸見が疑問に思っていたことを口にしたとき、無線機から試合開始までの時間が知らされる。今戦車にはベルトと同じくらいの厚さと幅のゴムを張り巡らせている。何故かというと。

 

「逸見さんちょっとどいて」

「何?気分でも悪いの?」

「違うよ、さっきの質問に答えるだけ。逸見さんは双眼鏡か何かを使って周囲の警戒して、何か見つけたらすぐ知らせて」

「?まだ試合開始前よ」

「この試合は急遽決まった試合でちゃんとした審判がいない。ヘリとか使って実況してくれる人がいるなら話は別だけど、そんな人はいない。今の無線だって柵の外にいる二年生の人が送信したもの。つまり今この演習場に三年生達と私達しかいない。そんな状況で向こうがまともに戦うと思う?」

 

俺だったら絶対にルールは守らないな!

 

「確かに・・・・わかったわ」

「じゃお願い、あと装填手と操縦手は鎌持って降りてきて〜〜。あっ、あと操縦手はエンジン切って降りてね」

 

そしてリッカと吹雪は鎌を持って戦車から降りる、もちろん俺も鎌を持っている。リッカはこれから何をするかわかっていないだろな。それに対し吹雪はこれから何をするのかわかっているらしく、絶望した顔をしている。

 

「紅音ちゃん。ホントやらないとダメ?」

「当たり前よ」

 

それを聞いた吹雪は深いため息をする。

 

「今から何するの?」

 

まだ分からないかなぁ?

 

 

 

 

 

 

 

 

「今から草刈りをします」

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・え?」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜三年生サイド〜〜〜〜

 

『試合開始5分前』

 

試合開始まであと5分、私達はスタート位置から大きく前進し、山の近くまで来ていた。ここなら開始20分かからないくらいで相手戦車を見つけられる。

 

「しかし隊長も卑怯ですねー。スタート地点を山の近くにしておまけにこちらの戦車はIS-2と3、KV-2とT-34-85にT-34-76なんてwww」

「逆らってきたからお仕置きするだけよ。それにあんなに見下されて黙っていられるほど私は大人しくないわよ」

 

私の戦車の装填手はそう言って私は答える。そうあんなに見下されたのは生まれて初めて、何としても勝ってあの一年を従わせてやる。

 

『試合開始!』

 

その合図と共に私達は前進する。

 

「KV-2とIS-2は山の右から!IS-3は山の左から回り込んで!私と76はこの山をゆっくり登って上から砲撃する!」

『『『『了解!』』』』

 

さて今からあの一年の泣きっ面が楽しみだわ。

 

 

 

 

〜〜〜〜30分後〜〜〜〜

 

 

 

 

 

おかしい。試合開始して30分経過しているのに見つからない。私は山の頂上から探すがどこにも見当たらない。どこかに隠れている?あり得ない。隠れられる場所はこの山の森の中だけ、それなら偵察に出してT34-76から発見の報告が来るはず、なら一体どこに。

 

 

 

ドォォォォォォン!!

 

 

 

今の砲撃音はセンチュリオンのもの、続いて二発、三発と砲撃音がなった後。

 

『こちらKV-2!すいません撃破されました!』

「かまわない!敵はどこにいる!」

 

こうしているうちも砲撃は続いている。あの一年一体どこに隠れている。

 

『それが、砲弾が飛んできた方を確認しても何もありません!』

「何言っているの!もっとよく探しなさい!」

『こちらIS-2!撃破されました!』

『こちらIS-3!同じく撃破されました!』

 

一体どこから攻撃してきているのよ!一体・・・・。

 

『こちらT-34-76!センチュリオン発見!あいつらスタート地点からほとんど動いてません!』

「なんですって!?」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜笹原 紅音サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

いやぁまさか近くにゴルフ場のバンカーみたいな穴あるとは、あれより深くて車体が隠せるくらい、あとしっかりとした土だけど、なんでこんなのあるんだろ?でも正直、助かった〜〜。マジで戦いやすくなった、はっきり言って嫌だったんだよなぁ〜この戦い方。だって砲手やりながら車長と装填手から入ってくる情報だけで判断してみんなに指示出さないといけないんだもん。いや出来るんだよ?出来るんだけど終わったあとすごく疲れて動きたくなくなるんだよねぇ〜〜。

話を戻して、さっきから俺達は穴に入って砲塔だけ出ている状態である。そして車体と砲塔と砲身にはびっしりと言っていい程さっき刈った草をつけ偽装している。分かりやすく言うなら陸上自衛隊の戦車部隊がやってる様な感じ。

 

「T-34-76接近!」

「落ち着いて逸見さん。距離と風向きを教えて」

「距離2000!風は3時の方向!」

「オッケー。吹雪!前進して穴から出て!」

「いいの?」

「正直狙い難い」

「わかった」

 

戦車を前進させ穴から出る。よし、これなら狙える。草の揺れ具合からして風速は3mくらいかな?ならちょっと修正してっと。

 

「距離1200!」

 

よし、射程圏内に入った。

 

 

 

ドォォォォォォン!!!

 

 

 

砲弾は相手戦車の左の履帯にあたり相手戦車はその場に止まる。

 

「あらっ、ちょっとズレた。それならこのくらいかな?」

 

俺は再び修正をしはじめたとき。

 

 

 

ドォォォォォォン!!!

 

 

 

相手戦車が砲撃。センチュリオンの右の履帯に着弾する。

 

「右履帯破損!」

「次弾装填よし!」

 

 

 

ドォォォォォォン!!!

 

 

 

「敵戦車撃破!」

 

相手戦車にトドメを刺す。さてちょっとマズイなぁ。

 

「逸見さん、履帯の破損状況、程度を教えて」

「かなり酷い、履帯と転輪もやられてる。それに応急処置している時間もない」

 

それを聞いて前方を確認する。最後の一両がこちらに向かって前進してくる。

 

「マズイねぇ。どうしよっか」

「何呑気に言ってるのよ!このままじゃやられるわよ!」

「大丈夫。打開策はある。吹雪!」

「いつでもいけるよ!」

「わかった!装填手、操縦手交代!」

 

そう指示を出して装填手と操縦手が交代する。吹雪が交代して砲弾を装填し終わったとき。

 

「もぉ〜紅音ちゃんが戦車前進っていうから履帯やられちゃったじゃん」

「仕方ないじゃない、狙い難いんだから」

「でも、まぁこうなった以上仕方ないね。明日は筋肉痛かなぁ?」

「それを言うなら私はこれから疲労困憊状態よ。相手戦車との距離は?」

「だいたい4500」

「わかった」

 

そう言って俺は相手戦車に狙いを付ける。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜三年生サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

相手戦車までまだ距離はあるが履帯はやられて動けないはず。これで勝った!

 

「敵戦車砲撃!」

「気にせず前進しなさい!どうせあたらーーー」

 

 

 

ドォォォォォォン!!!

 

 

 

砲弾が車体の左側面を掠る。馬鹿な!距離はまだ3500近くあるはずなのに!いくら射程圏外で有効ダメージではないとはいえこれ以上あたるのはマズイ!

 

「蛇行しながら進んで!狙い難くなるけどそれは向こうも同じよ!」

「了解!」

 

 

 

ドォォォォォォン!!!

 

 

 

戦車は指示通りに蛇行しようとしたとき再び砲撃音がする。今度は砲塔の右側面を掠る。

 

「気にせずこのまま進んで!」

 

どうなっているの!?一発目を撃ってから5秒も経っていないのに二発目が放たれた!三年生の中でもそんな事出来る人はいないのに!

距離は約2000。遂に砲弾があたり右の履帯がやられる。白旗は上がっていないがこのままではマズイ。

 

「ッ!!砲手!ここから敵戦車を撃って!」

「無理です!ここからじゃあたりません!」

「そんなのはわかってる!でもこのままじゃこちらがやられる!」

「了解!」

 

砲手は次々と撃つがあたらない。五発目で相手戦車に当たろうとしたとき。

 

 

 

ドォォォォォォン!!!

 

 

 

相手戦車が砲撃した。放たれた砲弾はこちらの砲弾を撃ち落とす。

 

「なっ!?そんな!ありえない!!」

 

爆炎の所為で相手戦車が視認できない中。

 

 

 

ドォォォォォォン!!!

 

 

 

爆炎の中から砲弾が飛んでくる。

 

 

 

ドォォォォォォン!!!

 

 

 

こちらに砲弾があたる前に次の砲弾が飛んでくる。

 

 

 

ドォォォォォォン!!!

 

 

 

三発目が撃たれるのと同時に一発目があたる。車体、左の履帯、最後に砲塔。とうとう私の戦車が白旗を上げる。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜笹原 紅音サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

あぁ〜〜〜〜。

勝ったぁ〜〜〜〜。

超疲れたぁ〜〜〜〜。

俺は鉄の壁にもたれかかる。

いやぁ勝ててよかったわぁ。一発こちらに飛んできたときはちょっと焦ったけど、無事撃ち落とせてよかった。

 

「楠さん、逸見さん、怪我ない?」

 

集中して周りが見えていなかったから二人を見ながら確認する。

 

「「・・・・・・」」

 

二人は口を開いて俺と吹雪を見る。何?どうしたん?

 

「どうし「なんで私を心配してくれないの!?」」

 

ここで吹雪が乱入する。

 

「アンタは心配する必要ないでしょ」

「酷い!こっちは合図を送る前に撃たれて怖かったのに!」

「合図出す前に安全な体勢とってたでしょ」

「それでも合図出すまで待ってよ!」

「それを待ってたらこっちがやられてた」

「うっ!・・それでも待って!」

「ハイハイ悪かったわよ。・・・・・・それと・・・ありがと、装填手。正直助かったわ」

「はぁ〜〜〜〜〜。まぁいいよ。次からは気をつけてね」

「うん」

 

俺と吹雪の会話はここで途切れる。

 

「アンタ達一体何者?」

 

我に帰った逸見がようやく口を開く。いやさっきまで口は開いてたか、なんて表現したらいいんだろ。

 

「ただの新入生」

「同じく」

 

それを聞いた逸見は苦笑いする。

 

「すごい!すごいよ笹原さん!雪宮さん!」

 

リッカは目を輝かせながら言う。ホント元気だなぁ、こっちはクタクタだぞ。

 

「そうね。さっ帰りましょう」

 

そして俺は二年生の方に連絡をする。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜再び工事内〜〜〜〜

 

 

 

 

 

試合前と同じく二年生と三年生に別れてその間に俺が立つ。

 

「それでは約束通り、三年生には退部していただき、隊長の座を私に譲っていただきます」

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

三年生の隊長の人は何も言わない。いや言い返せないか。それもそうか、あんなに余裕で挑んでインチキまでしておいて負けたんだ。これで実力の差はわかった筈だ。

 

「あ、あの!」

 

二年生の一人が手を挙げて言う。

 

「やっぱり幾ら何でも退部はやり過ぎじゃ」

 

何を言ってんだか。

 

「ダメです。約束は守っていただきます。それにやる気がない人がいても()()なだけです」

 

三年生は苦虫を噛み潰したような顔をするが俺は続ける。

 

「別に上手いとか下手とかで全てを決めているわけではありません。確かに実力とか信用、その他色々大事です。ですが、一番はやる気です。どんなに下手でもやる気があるなら、私は絶対に見捨てません。ですが貴女方はどうですか?さっきの試合で貴女方の実力はわかりました。実力があってやる気がないならまだどうにか救いようがありますが、実力もなくやる気もない、そんなの部にとってただの()でしかありません」

 

ここまでまで言うとやはりというか何というか、わかっていた。言い過ぎたことに。とうとう三年生の人は怒りが爆発した。

 

「さっきから黙っていれば偉そうに!!」

「いい加減にしなさいよ!!」

「アナタ何様のつもりよ!!」

 

そんな怒りの言葉が飛んでくる。そんな中三年生の一人が近くにあったモンキーレンチを投げてくる。やべっ、頭直撃コースだ。そう思ったとき視界の端で何かが動いて。

 

 

 

ガン!

 

 

 

・・・・・・・・・・・あまりのことに状況が理解が追いつかない。

落ち着いて確認する。まず俺の前に吹雪が現れ、吹雪は鉄パイプで飛んできたモンキーレンチを叩き落としたと。てかお前、何処からそんなの取り出した。

 

「紅音ちゃん、あとでちょっと話がある」

 

あぁ〜これは怒ってるぞ吹雪のヤツ、俺は高速で首を縦に振る。それを確認した吹雪は。

 

「さっきレンチを投げた人、前に出てきてください」

「「「「「・・・・・・・・」」」」」

 

三年生の人達は黙り込む。吹雪は鉄パイプを大きく振り上げ地面に叩きつける。

 

「さっきレンチを投げた人!!」

 

吹雪は怒鳴る。そして一人の三年生が前に出てくる。

 

「どうゆうつもりですか?」

「そ、その「自分が何をしたのか理解してますか?」・・はい」

「さっきのレンチ、私が防いでいなかったから間違いなくあたっていました。それが大怪我に繋がるかもしれないとは考えなかったのですか?」

「・・・・・・・・」

「無視ですか?貴女は最悪、人を殺そうとしたのですよ?」

「ッ!そんなつもりじゃ「そんなつもりじゃなかったで済まされますか!」ッ!」

「防いだ私だからわかります。あれは頭にあたるところでした。それで紅音ちゃんが死んだのかもしれないんですよ?これがどうゆうことか分かりますか?」

「・・・・・・・・・はい」

「そうですか。言いたいことは山程ありますがこれ以上話をややこしくするわけにもいきませんし、今日のところはこのくらいにします」

 

そう言って吹雪は俺の横を通り過ぎどっかに行く。多分鉄パイプをもとあった場所に戻しに行ったのだろう。えっ?アイツマジでどっから持ってきた?

 

「それでは約束通り、三年生には退部していただきます」

 

それを聞いた三年生は次々と工場から出て行く。最後の一人が出て行ったのを確認して俺は二年生と四季、ヒバリ、リッカ、逸見、夕張のいる方を向く。

 

「それでは約束通りこれから隊長は私がを務めさせていただきます。異論反論抗議質問口答えは今だけ受け付けます。何か言いたいことがある人はどうぞ」

 

どこぞの現国教師見たいなことは流石にしない。何か言いたいことはあるはずだ、新入生が隊長を務めるのだから。しかし誰も何も言わない。あぁ、これから気まづくなるなぁ。

 

「ないですか?それでは「待って!」・・・吹雪」

 

吹雪はこちらに歩み寄ってくる。てかどこまで行ってたんだよ。そして俺の目の前まで来た。

 

「さっき話があるって言ったよね?」

「・・・・えぇ」

 

ヤバイ、変な汗が出てきた。

 

「先に言っておくね。ごめんなさい」

「えっ?」

 

 

 

 

 

パシィィィィーーーーーン!

 

 

 

 

 

えっ?えっ?今、俺叩かれた?吹雪に?

二年生や四季達がそれを見て驚く。

 

「さっきも今も!どうしてそんな言い方しか出来ないの紅音ちゃん!いつもいつもみんなを怒らせる様な言い方して!冷たい言葉で突き放す言い方をして!そんなんじゃ誰もついて来ないし誰もついて行きたくないよ!前にも言ってよね!これじゃみんなが辛いよ!そして一番辛くなるのは紅音ちゃんなんだよ!!」

 

 

 

 

『何でお前はいつもそんな言い方しか出来ないんだよ!いつもいつも!』

 

『仕方ないだろこれが俺なんだから。今さらどうにも出来ねぇよ』

 

『悔しくねぇのかよ!実力も経験も知識も負けていないのに認められないのが悔しくねぇのかよ!!俺は・・・俺は悔しいぞ。お前が・・・・俺の相方が、認められないのが』

 

 

 

 

 

生前の記憶がフラッシュバックする。

あぁ生前にもこんなことあったなぁ。俺はまたコイツに迷惑をかけてしまったのか。

 

「その・・・・ごめん・・なさい」

「うん。もうこんなことしないでね」

「ホントにごめんなさい」

「うん。なら許す」

 

俺はそれを聞いて再び二年生だに向き直る。

 

「えっと、これから部員の皆さん、特に二年生の方々には大変ご迷惑をおかけするかもしれませんが、隊長として恥ずかしくない様、精一杯頑張らせていただきます!よろしくお願いします!!」

 

ここまで言って反対されたらどうしよう。そう思っていると。

 

「これからよろしく新隊長!」

「よっ頑張ってぇ!」

「何かあったら私達が支えるから!」

「気にせず私達に頼ってきてねぇ!」

 

どうやら受け入れてもらえたようだ。

 

「これからよろしくお願いしますね。新隊長さん」

「よろしく。頑張りなさいよ新隊長」

「ファイトです!」

「ガンガン頼ってね!」

「特に整備関係!」

 

上から四季、逸見、ヒバリ、夕張、リッカの順に言う。みんな・・・・。

 

「よかったね。紅音ちゃん」

「ありがとう」

 

こうして俺達は第二の人生で再び戦車に乗り、戦車道生活がスタートした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

「ありがとうございました〜〜。」

 

俺はシフォンケーキを買い店を出る。吹雪とシフォンケーキの約束したからな。そのため他の部員よりも少し早く部活を切り上げていた。俺は吹雪のところまで歩み寄る。俺はシフォンケーキを、吹雪はロールケーキ3つをお互いに渡す。

 

「それにしてもアンタあの鉄パイプどこから持ってきたのよ?」

 

マジでどっから持ってきたの。それだけずっと疑問だった。

 

「工場の隅にドラム缶があってそのなかに鉄パイプがあったから何かあったときの為に隠し持ってた。まぁ確かに整備する上で鉄パイプが必要な場面はあるし、あっても不思議じゃないよ」

「準備が良いことで」

「それより口調戻しちゃダメ?」

「ダメよ。いつどこで誰が見ているかわからないんだから今の口調に「笹原さ〜〜ん!雪宮さ〜〜ん!」・・ほらね?」

「はぁ〜〜。わかったよ」

 

そして俺達は後ろを振り返る。そこには四季、逸見、リッカ、ヒバリ、夕張がいた。

 

「うわっ!ホントにシフォンケーキとロールケーキ3つ買ってる!」

「そんなに食べたら太るよ〜〜!」

 

相変わらずリッカと夕張は元気だなぁ〜おい。まぁとりあえず無視して。

 

「今から帰るの?」

「無視された!まぁいいわ、そうよ。あっ、聞いて実は四季さんも逸見さんも夕張さんも同じマンションなんだよ!すごくない!?」

 

なん・・・だ・・と!?嘘だろ!?閻魔様と同じマンションだなんて!・・・ってちょっとまて。

 

「あれ?竹田さんは?」

「ヒバリは私の隣の部屋よ?」

「えっ?隣って私じゃなかったっけ?」

「違う違う。反対の部屋」

 

えっ?つまり隣の隣の部屋?マジで?まてよ。

 

「四季さん、部屋何階?」

「6階です」

「逸見さんは?」

「6階よ?」

「夕張さんは?」

「私も6階よ?」

「・・・・・・・・・・」

 

言葉が出ない。そうここにいる全員が同じマンションの6階に住んでいるのだから。嘘だドンドコドーーン。

 

「ち、因みに何人暮らし?あと何号室?」

 

俺は確認する。確か吹雪が601で俺が602。リッカが603でヒバリが604。

 

「私は一人暮らしで606です」

「私も一人暮らしで607」

「私も一人暮らしで605だよ〜〜」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

つまりは、

 

吹雪ー俺ーリッカーヒバリー夕張ー四季ー逸見

 

の順である。

 

何これ?マジ何これ。

 

「すごーい!すごい偶然だね!」

「そうね!今日遊びに行っていい!?」

「いいよいいよ!おいで!」

「やったぁ!」

 

リッカと夕張が盛り上がるこの流れは。

 

「ねぇどこかの部屋でみんな集まろ!!てかお泊まり会しよ!!」

 

夕張がそう言う。マジかよ今日は疲れたから休ませて!

 

「それじゃ新隊長である笹原さんの部屋に集まろう!」

「私は構いません」

「いいんじゃない?」

「サンセーイ!!」

「お邪魔します」

 

上からリッカ、四季、逸見、夕張、ヒバリの順で言う。てか俺に拒否権はないの!?そう思っていると吹雪が俺の右肩に手を置いて首を横に振る。諦めろってか。はぁ〜〜。

 

「わかった。今から買い物して、着替えてから私の部屋に集合ね」

「「は〜〜い」」

「「はい」」

「わかったわ」

 

こうして俺達はお泊まり会をして遅くまでたくさん話した。

 

 

 

 

 




次回は射命丸 文とその他何人か出す予定です。
それではまた次回!


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なんだかんだで注目の的になる

どうも、実家に帰ったら大掃除の手伝いさせられて投稿がちょっと遅れました。
障子の張り替えって、思ったより腰にきますね。
今回は結構色んなキャラ出します。


 

 

 

 

 

〜〜〜〜近くの公園〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「ハッ・・・・ハッ・・・・ハッ・・・・」

 

時刻は午前6時50分、この声を聞いて何を連想した?残念ながらR-18展開ではないぜ!ただのランニングだ!マンションから走って3分、近くにランニングにうってつけの場所を見つけたので転生2日目から早速走っている。

 

「ハッ・・・・ハッ・・・・ハァァ・・・」

 

よし10km完走。かかった時間40分弱か。この体、やっぱり走りに優れている。前世なら割と疲れる時間と距離なんだがそこまで疲れていない。これなら1kmを3分20秒くらいのペースで走っても大丈夫だろう。

 

「ウゥゥゥ〜〜〜〜〜〜ン!」

 

俺は大きく伸びをして体操をする。

 

「あれ、笹っち?」

 

俺は悩んでる。正直隊長なんて面倒くさい。昨日は三年生の態度にイラッと来て、つい隊長の座を譲れって言ったけど、はっきり言って隊長なんて柄じゃないんだよなぁ〜〜。

 

「笹っち?」

 

これからどうすっかなぁ〜〜。

 

「笹っち〜〜」

 

まぁ、戦車に関する知識や経験、実力は今いる部員の中では俺と吹雪が一番だから必然というかなんというか。仕方ないか。これから個人の希望を取ってやりたい役割とか編成とか見極めとかしてチームをまとめて行けばいいか。今日から大変だなぁ。

 

「笹っち!」

 

誰だよさっきから笹っちて呼んでる奴は!俺は笹原だ!今の俺にそんなに親しく接してくる奴は吹雪以外いない!

俺は声がする方に顔だけ向ける。ってお前かよ。

 

「由比ヶ浜さん?」

 

ここは疑問系で聞くのが妥当だろう。

 

「うん!名前覚えてくれたんだ!ありがとう!でも酷いよ、無視するなんて!」

 

ちょっと頬を膨らませていじける由比ヶ浜。どうやら由比ヶ浜は犬の散歩をしていたらしい。お前がサブレか、かわいいなぁ。

 

「ごめんなさい。ちょっと考えごとしていたから気がつかなかったわ」

「へぇ〜〜。何考えてたの?」

「ちょっと部活のことを」

「笹っち部活に入るんだ」

「さ、笹っち?誰?」

「えっ?笹っちは笹っちだよ〜。笹原さんだから笹っち」

「ごめんなさいその呼び方やめて」

 

割とガチで。

 

「じゃ、あっちゃん?」

「それもやめて」

「全部拒否られた!?」

「別に普通に笹原って呼んで。あだ名とかで呼ばれるの好きじゃない」

「ご、ごめん!お、怒らせちゃった?」

「別に怒ってないから、これから気をつけて」

「うん!」

 

いや吹雪とかから呼ばれるのにはあまり抵抗はない、前世では同い年だったし、てかアイツがあだ名で呼ぶことがまず無いからそこは気にしていない。この世界でもコイツらとは同い年だが、実年齢は20代前半だから実質コイツらは年下である。俺は年下からあだ名とかで呼ばれるのは正直嫌である。コイツは仲良くしたくてあだ名で呼んだんだろ。仲良くしようとしてくれているのは、はっきり言って嬉しい。だがあだ名だけはやめてくれ。マジで!

 

「それで笹原さんは何部に入るの?陸上部?」

「陸上部に興味ない」

「そうなの!?なんか意外」

「そう?」

「だって今、ランニングの格好してたから、てっきり陸上部かなってて思ってた」

「これはただの日課よ。アナタの犬の散歩と一緒。」

「そうなんだぁ。結局部活って何?」

「戦車道よ」

「戦車道!?」

 

うるせぇなおい。

 

「そんなに意外?」

「意外も何も、さっきも言ったけど、陸上部って思っていたのもあるし、そこからの戦車道なんて想像できないし!」

 

うん。まぁ、それが普通だよな。

 

「私、今日から戦車道の隊長をすることになったの」

「タ、タイチョ、ウ?」

 

うん。思った通りのバカっぷり。

 

「簡単に言えば、部活の部長よ」

「笹原さん部長なんだ!?」

「そうよ」

「すごい!一年生で部長なんて!」

「そうね。っといけない、そろそろ帰らないと。じゃ由比ヶ浜さん、また学校で」

「またね!笹原さん!」

 

俺は走って帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

~~~~教室~~~~

 

 

 

 

 

おかしい。明らかにおかしい。俺はあれから、シャワー浴びて、飯食って、吹雪を起こして、学校に登校した。登校するまではいい。そこからすごく視線を感じる今でもクラスのみんなが俺と吹雪を見る。朝のHR前、とうとう吹雪がこの状況に耐えきれなくなり、俺の所まで来る。

 

「私達って何かしたっけ?心当たりある?紅音ちゃん?」

「いや・・・・・特には・・・昨日の不良の件かな?」

「あれは目撃者はいないはずだよ?」

「じゃ、わからないわ」

「それはおそらくこれが関係しています」

 

って、うぉぉぉぉい!!四季さんいきなり現れんなよ!心臓に悪い!

 

「これって?」

「これです」

 

吹雪の疑問に対して四季は手に持ってた物を見せる。

 

「新聞?なになに・・・・・・・・・」

 

吹雪だんだん、あちゃーーーやらかしたぜ、って顔になっていく

 

「どうしたのよ吹雪」

 

俺は吹雪から新聞を取り上げ内容を読む。そこには。

 

 

 

 

 

戦車道 新隊長 笹原 紅音

三年生との勝負に勝利して三年生全員を強制退部!!彼女目的は一体!?

 

 

 

 

 

おい待て。嘘だろ?なんで新聞にどうどうと俺の写真と名前書かれてんの?てか、どこ情報?いくら何でも早くね?そう思っていると誰かが走ってこちらに来る。

 

「笹原 紅音さんですね!!取材してもいいですか!!」

 

何!俺は今、超不機嫌なんですけど!ってお前か。

 

「射命丸さんね」

「あやや。もう名前を覚えていただいているとは!ありがとうございます!」

「もしかしてこの新聞は・・・」

「はい!私が書きました!!」

 

犯人はお前かーーーー!!!もう、ホントやめて。ホント新聞とかインタビューとか大ッキライなんだから。あの人達、こっちの気持ちとかプライベートとかお構いなしに、ただただ好奇心だけで動くから。なんなのホント。そう思っているとまた一人こちらに走って来る。こら!廊下は走っちゃいけません!

 

「失礼します!!笹原さん・・って一足遅かったか!!」

 

って今度はお前かーーーい!!!

 

「姫海棠さんね?」

 

まさかの姫海棠はたて。てかこの世界にいたんだ。

 

「なんで私のこと知ってるの!?」

 

いや、それは俺の台詞だからね?

 

「まぁいいわ。今、時間ありますか!取材させて下さい!!」

 

お前もかーーーい!!何?何なの?暇なの?そんなに娯楽に飢えてるの?

 

「あっ、はたて!私が先なんだから!」

「いいえ!私が先です!」

 

いや、するしない以前にお前らアポ取ってないないからな?てか姫海棠。お前は自分のクラスに帰れ。どこクラスだよ全く。って隣のA組じゃん。胸の所のネームプレートに書いてあった。

 

「だいたい貴女はA組でしょ!早く帰りなさい!」

「そういう文こそ取材なんか後にして席に着きなさい!その間に私が・・」

「そうはさせないわ!」

 

そもそも俺に人権はないのか?もう帰ってくれよ。割とマジで。

 

「だいたい文!貴女の新聞、誰が読むのよ!あんな、でっち上げ新聞!」

「それは貴女も同じでしょうが!はたて!」

 

・・・・・・・・あぁ~~~~ホントうるせぇ~~。ただでさえ新聞のネタにされて不機嫌なのに、こんな物見せやがって。何コイツら。

俺はその場に立って、机の脚を握る。そして机を投げる体勢を取る。もう我慢の限界である。文とはたてがこちらに気付いて目を見開く。俺が机を投げようとしたとき。

 

「はーーいストーーーップ。落ち着いて、紅音ちゃん」

「ひゃっ!!」

 

若干空気になっていた吹雪が後ろから俺の胸を両手で触ってくる。俺は慌てて両手で大きく胸を隠す感じに構え後ろを向く。マジでやめろ!思わず変な声が出ちまっただろうが!文とはたてだけでなく、クラス全員が唖然としてるだろうが!!

 

「な、なっ、なにすんのよ吹雪!!」

「流石に机はマズいよ~~。紅音ちゃん」

「じゃ、どうしろってのよ!!」

 

俺はちょっと怒鳴って言う。こっちは必死になって部活の今後のために勝利したのに、娯楽のネタにされたんだぞ!?これだから記者やパパラッチやマスコミは嫌いなんだよ!前世でもいいことなんて一つもなかったし。

俺はちょっと涙目になる。

これだからこういう奴らは。

俺の考えを察したのか、吹雪は俺の背中と後頭部に両手を回して自分の右の鎖骨付近に俺の顔をそっと持ってくる。

 

「はいはい。暴力で解決しようするのが紅音ちゃんの悪い所だよ?私が対処するから落ち着いて?ねっ?」

「・・・・・・・うん」

 

俺はちょっと甘える感じで言う。あぁ~~~~うれしくねぇ~~。だって俺と吹雪、中身男なんだぜ?中身が男ってわかってるからマジで複雑~~。でも容姿は女だし、こうでもしないと教室の中がピリピリした雰囲気になるし、なりより俺がクラスでかなり浮いた存在になる。それを少しでも払拭するにはこうするしかなかったのだろう。他に方法はなかったのか?もうこの際、文句は言わない。むしろよくあんな状況で即行動に移せたな。

 

「落ち着いた?」

「うん。ありがとう」

「じゃ私が対処ね」

 

そう言って吹雪は二人のところまで歩み寄る。って言っても俺の手が届く範囲だけどな。俺は机を戻して席に着く。

 

「全く、貴女は少し、学習して下さい。」

 

声のする後ろを向き、四季を見る。あぁ~、お説教モードだ。

 

「今回、悪いのはあちらの二人ですし、雪宮さんが止めてくださいましたのであまり言いたくないのですが。貴女はもっと自分の感情をコントロールして下さい」

「気をつける」

「まぁいいでしょう。私からは以上です」

 

それを聞いて前を向き吹雪達の会話に耳を傾ける。

 

「ごめんねぇ。悪いんだけどまた時間を改めてきてもらっていい?」

「で、ですが」

「紅音ちゃん、あーなるとなかなか話しを聞いてもらえないから、それに本人、目立つの結構嫌うから、新聞とかなら尚更ね。」

「は、はぁ」

「多分、娯楽のネタにされたと思ってるよ?」

「わ、私は、決してそういうつもりで書いたわけじゃ!」

「射命丸さんにその気がなくても本人はそう思ってるよ?記事にあーも書かれたら。それにいきなり取材はないんじゃないかな?」

「「・・・・・・・・・・」」

「わかってくれたら、あとで謝ってあげて。紅音ちゃん、そうそう誰かを嫌いになったりはしないけど、一度嫌うとずっと嫌うから、それに結構根に持つタイプだから」

「な、何かあったんですか?」

「昔、ちょっとね。だからこれからは、せめて事前に言ってね?」

 

どうやら会話が終わったらしい。

 

「紅音ちゃんもそれでいい?」

 

吹雪はこちらに振り返りながら聞く。俺は文とはたてを見る。二人は申し訳なさそうな顔をしていた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「「・・・・・・・・・・・・・・」」

「・・・・・・・・・・・・偶になら」

 

二人はちょっと安心した顔になる。

 

「では、早速で申し訳ないのですが。いつ頃なら時間が空いていますか?」

 

文がたずねる。

 

「今日でもいいよ。紅音ちゃんは?」

「・・・・・・・・・・・・放課後の部活のときなら」

「わかりました。ではまたそのときに取材します」

 

はたてはそう言ったあと、彼女は頭を下げた。

 

「先ほどは、すいませんでした」

「ごめんなさい」

 

はたて、文の順で謝る。

 

「もういいよ。・・・・・これから気をつけて」

 

そしてチャイムが教室に鳴り響き先生が入ってくる。

 

 

 

 

 

~~~~昼休み~~~~

 

 

 

 

 

あぁ~~つまんね~~。中1の授業マジつまんね~~~。

あのあとHRでいきなり先生が。

 

『じゃ一時限目、国語、理科、社会、算数の実力テストするから、勉強の時間にします』

 

って言うからみんな勉強しだしたけど、俺と吹雪は寝ていた。だって二回目の中学生ライフなんだぜ?

結果はこうなった。あっ、トップ10人だけ発表。

 

一位 笹原 紅音    400点

一位 四季 映姫    400点

一位 雪宮 吹雪    400点

四位 佐々木 時雨   398点

五位 東風谷 早苗   397点

六位 楠 リッカ    391点

七位 乃村 陽炎    389点

八位 逸見 エリカ   387点

九位 夕張 茜     385点

十位 博麗 霊夢    383点

 

テスト内容は小学生レベル。まぁ中1になったばかりの実力テストなんてこんなもんだろ。正直どうでもいい。マジでつまんねぇ~~。結局授業中、ずっとチームの編成ばっか考えてたし。

 

「朝は災難だったね笹原さん」

 

こ、この声は!!俺はゆっくり声の主の顔を見る。

 

「よかったらぼく達とお昼を食べないかい?」

 

キターーーーー!!!!時雨さん!!!そして白露型姉妹!!!

 

「うん。いいよ」

 

そう言うと時雨は笑顔になって、後ろの姉妹も、よっし、と小さく言う。

 

「それじゃ食堂でいいかい?」

「うん。なら行きましょ」

 

あぁ。時雨さんマジ癒されるは~~~。そう思いながら食堂に向かおうとしたとき。

 

「すいませんが私もよろしいでしょうか?」

「はいはーい私行く!」

「私も私もーー。今日作る時間なくってー」

「私もいいかしら?」

「私も忘れないで~~!」

「私もお願いします」

「私も行くわ。魔理沙の奢りで」

「自分で払おうZE☆」

「そうですよ。自分で払いましょうね霊夢さん」

「そうよ霊夢」

 

え、え~~っと。上から四季、夕張、リッカ、逸見、吹雪、ヒバリ、霊夢、魔理沙、早苗、咲夜。

 

「私達も行くわよ」

「ほなぁ~、いこかぁ~」

「お供します」

「私も行くにゃしぃ~~」

「わた・・せ、拙者もよろしいでしょうか?」

「なんだ?みんな行くのか?なら余も参る」

「ならあきもいくのだ~~」

「わ、私も!」

 

上から陽炎、黒潮、不知火、睦月、日巻、和田、平河、由比ヶ浜。っておいおい!

 

「それならあーしも」

「私も行く-!!」

「わ、私もご一緒してもいいですか?」

「行く行くーー!」

「フン!一緒に行ってあげるわ!」

「私も行くわ」

 

三浦、湯沢、橘、宇佐見、霞、五十鈴、待て待て。

どうしてこうなった。結局クラス全員かよ。

 

「え、え~~~~っと佐々木さん。いいかな?」

「フフッ。いいよ。みんなで行こう」

 

あぁ。時雨マジ天使。

 

 

 

 

 

~~~~食堂~~~~

 

 

 

 

 

食堂広いな~~、工場くらいはあるぞ。俺はナポリタンを食べながら思う。この学校ホントお金持ちだな。そういえば、この学校の校長って誰だっけ?

 

「それにしても、なんでみんな食堂来たのかしら?」

 

あまりにも不自然過ぎる。

 

「みんな笹原さんに興味があったんじゃないかな?」

 

俺の疑問に時雨が答える。

 

「どういうこと?」

「実はみんな、戦車道を入部したかったんだよ。ぼくや姉さん、あと霧雨さんや宇佐見さんや乃村さん達やアリサさんとか特に。でもみんな三年生の先輩達の噂を聞いて入るのを諦めていたんだよ」

 

なるほどそういうことか。時雨は続ける。

 

「そして、今朝の校内新聞をみんな見て興味を持ったってとこかな?まぁ、ぼくもその一人なんだけどね」

 

つまりは三年生がいなくなった今、入部しやすくなったと。

 

「佐々木さん達は入部したいの?」

 

白露型に質問する。

 

「あったり前じゃん!戦車道で1番になってやるんだから!」

「ぼくも入部したいな」

「私も~~」

「がんばるっぽい!」

「わ、私もがんばります」

 

白露、時雨、村雨、夕立、春雨の順で言う。

 

「・・・・・・・・わかったわ」

 

これはもしかしたらいけるかも。

 

 

 

 

 

~~~~六時限目~~~~

 

 

 

 

 

「それでは今から入部届けの用紙を配ります」

 

先生の指示に従ってみんなは用紙を配る。好都合な事にこの時間はクラスの係決めの時間であった。昼休みのうちに先生の相談してお願いした。今、戦車道は三年生がいなくなり、二年生の四十人と私達一年生の七人だけ。正直これだけでは運用は厳しい。もしここで三年生がいなくなった穴を埋められるなら。

 

「この用紙は、今週中に顧問の先生、もしくは部活の部長に提出するように」

 

この学校は部活に入らないといけない決まりはないが、緊張するな。何としても部員を確保したいな。

 

 

 

 

 

~~~~放課後~~~~

 

 

 

 

 

ようやく放課後か。さて、部活にいきますか。俺がバックを持って教室を出ようとしたとき。

 

「さっさはらさーーーーん!!」

 

この声は!

 

「いっちばーーーん!!!」

 

やはりお前か白露。

 

「何?」

「はい、これ。私達姉妹の入部届け。これからよろしくね」

 

そう聞いて用紙を見る。マジか。早速五人確保。

 

「ありがと」

「あっ、じゃ私達もいい?」

 

今度は陽炎型の三姉妹。これで八人。

 

「私もいい?」

「私も~~~」

「私もにゃしぃ~~~」

 

~~以下略~~

 

「みんな、ありがと」

 

いやマジで驚いた。まさかクラス全員入部してくれるとは。

 

「それじゃ私これを顧問の先生に渡してくる」

 

そう言って俺は教室をあとにする

 

 

 

 

 

~~~~廊下~~~~

 

 

 

 

 

あれ?そういえば、戦車道の顧問って誰だっけ?やっべ確認してなかった。

そんなことを考えてると廊下の曲がり角で誰かとぶつかった。

 

「あうっ」

 

って倒れるの俺だけかよ!

 

「す、すいません!」

 

あーーあ用紙ぶちまけちまったじゃん回収しないと。

 

「笹原さん?」

 

えっ?嘘?俺は回収した用紙を持って立ち上がり、ぶつかった人の顔を見る。なんでお前がいんの?

 

「はじめまして。学校長兼戦車道顧問の八雲 紫です」

 

マジかよ。校長兼顧問かよ。

 

「はじめまして、戦車道隊長 笹原 紅音です」

 

ここは挨拶をしておこう。

 

「笹原さんは、これから用事?」

「はい、実は校長に用件があります」

「私に?」

「はい、この入部届けの提出にきました」

 

そして先ほどの用紙を渡す。

 

「はい、確かに預かりました」

「では、失礼します」

「待って下さい」

 

なんの用だ?俺は紫を見る。

 

「この世界は、楽しい?」

「??・・どうゆうことですか?」

「隠さなくてもいいわ。()()()()()

 

ッ!! なんでコイツ知っているんだ!?

 

「なんのことですか?」

 

俺は平然として言う。

 

「それともこう呼んだ方がよかったかしら?()()さん」

「ッ!!・・・・・どうしてそれを」

 

どうして前世の俺の二つ名を知っている!!

 

「アナタも察しはついているんじゃないかしら?」

「・・・・・・・・・・・・神様か?」

「正解♪」

 

どうする。コイツには正直言って勝てる気がしない。かと言ってこのままじゃマズイ。

 

「それで、最古の妖怪が何の用だ?」

「そんなに身構えでちょうだい。これでもアナタの味方よ?」

「どういうことだ?」

「アナタがお世話になった神様、実は私の古くからの親友でね、アナタともう一人が心配だからってお願いされたの」

「・・・・・・・・このことを知っているのは?」

「この世界では私と、あと数人だけよ」

「霊夢達は?」

「安心して、この世界にいる霊夢達はまた違う世界線軸の霊夢達だから」

「そう・・・・・・他の人も?」

「えぇ」

 

なら害はないか。俺は警戒を解く。

 

「それでは私は部活がありますので失礼します」

「まだ、私の質問に答えてないわよ?」

 

そういえばそうだったな。

 

「答えは・・・・・YESです」

「素直でよろしい」

「言ってろ」

 

俺はそういって部活に向かった。

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。
なかなか感想などがなくて読者の反応がないのでちょっと不安です。
感想や意見をお待ちしています。
次回はちょっと、練習風景を入れていきたいと思っています。
では、次回。


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チームの編成、強化、そして

どうも!今回はちょっと短いですがよろしくお願いします。


 

 

 

 

「これからどうすっかな~~~」

 

戦力として使える人は、はっきり言って、俺、吹雪、逸見くらいだ、あとは二年生がそこそこ。

俺はそんなことを考えながら一人で帰宅していた。なんでかって?また入部届けの用紙を提出しに行ったからだよ!そしたら紫に絡まれたんだよ!吹雪は先に他の部員と一緒に帰宅させた。紫に用紙を提出したあと、工場に行ったらクラスの人じゃないヤツがいたから誰かと思ったらまさかの部員増員。

 

姫海棠 はたて 1-A

明石 麻奈 (艦これの「明石」)1-A

川越 朝潮 (艦これの「朝潮」)1-A

川越 荒潮 (艦これの「荒潮」)1-A

川越 満潮 (艦これの「満潮」)1-C

瀬川 綾波 (艦これの「綾波」)1ーC

瀬川 敷波 (艦これの「敷波」)1-C

瀬川 漣 (艦これの「漣」) 1-C

轟 弥生 (ファンキルの「ケラウノス」『獣刻』)

1ーC

三澤 千尋 (ファンキルの「ミストルティン」)1-C

 

この10人が新たに部員に加わった!やったぜ!って言いたいが、正直厳しい。まぁ、わかってはいたが、ほとんど初心者なわけである。これからどうしよう。

 

 

 

 

 

~~~~近くのスーパー~~~~

 

 

 

 

 

さてと、今日の晩飯どうすっかなぁ。とりあえず、白菜の漬け物と魚と白味噌と・・・・・。

 

「あれ?隊長?」

 

聞き覚えのある声がしたのでそちらの方見る。するとそこには同じ買い物カゴを持った逸見とアリサがいた。

 

「逸見さん、アリサさん、お疲れ」

「リーダーもお疲れ様です。今、帰りですか?」

 

そう言えば、アリサとはまだちゃんと話してなかったな。

 

「えぇ。貴女達も?」

「いえ、私と逸見さんは一度帰ってから買い物に来ました」

 

あーなるほど。さっきからなんか違和感あるなぁ、と思ったらこの二人バックを持っていなかった。これですっきり。でもなんで制服のまま?まぁいいか。

 

「あっ、隊長知ってました?アリサって私の隣の部屋なんですよ?」

 

えっ?いやっ、ちょっ、はぁぁーーーーーーーーー!!??

ってことは608の住人!?マジで!?あまりの事に目を見開いてしまう。

 

「そ、そんなに意外ですか?」

 

アリサはちょっと困った感じで言う

 

「意外も何も、あのマンションの6階の601~608まで今のところ1-Bよ?」

「そ、そうなんですか!?」

 

どうやらアリサは知らなかったらしい。

 

「それに隊長は602の部屋だし」

「そ、そうなの!?」

 

逸見の言葉にアリサはさらに驚く。いやマジでビックリだ。残りの609と610は誰が住んでんだろ。昨日も今日も確認しようとは思っていたんだけど、なぜか忘れるんだよねぇ。いやボケじゃないからね。

 

「それじゃ今晩、遊びに行ってもいいですか!」

 

またかよ!昨日、お泊まり会したばっかだぞ!!

俺の考えを見抜いたのか、逸見は俺に言う。

 

「いいじゃない。今回はアリサだけだし、昨日みたいなことはないって」

「昨日、何かあったんですか?」

 

逸見の言った言葉にアリサはたずねる。

 

「昨日、601~607のみんなでお泊まり会したのよ」

「そうなんですか!?えっ、602が隊長ならあとはだれなんですか?」

「601が雪宮さん、603が楠さん、604が竹田さん、605が夕張さん、606が四季さん、で607が私」

「ホ、ホントに1ーBなんだ」

 

そりゃ誰だって驚くわな。

 

「さっきのことなんだけど。いいわよ、私の部屋でよければ」

 

俺はアリサに言う。

 

「はい。ありがとうございます!」

「私もいいかしら?」

「いいわよ。逸見」

 

こうして二人が遊びに来ることになった。

 

 

 

 

 

~~~~マンションのエレベーター前~~~~

 

 

 

 

 

ふぅ〜〜。何とか今晩の買い出しが終わったぜ。

俺はエレベーターのボタンを押そうとしたとき、先んじてエレベーターが動いた。ん?今、6階から降りてきているのか。えっ?何でわかるのかって?ほら、エレベーターって動き出しの階の数字が点滅するじゃん。って逸見と俺とアリサ以外の誰かだな。そんなことを考えているとエレベーターの扉が開いた。

 

「よし!早く行くわよ!」

「まってぇ〜なぁ〜〜」

 

えっ。何でコイツらがいるの!?乃村三姉妹こと陽炎型三姉妹がエレベーターから降りてきた。

 

「ん?あれ!?隊長!?何でここに!?」

 

いや陽炎よ、そんなつまみ食いする瞬間を見られた見たいな反応すんなよ。

 

「いや、私もこのマンションに住んでいるの」

「えっ!?そうなん!?」

 

今度は黒潮が答える。いやぁマジでビックリだわぁ〜〜。マジでこのマンション同じ学校の生徒ばっかりだし、凄過ぎじゃない?

・・・・・・ちょっとまて。コイツら今6階から降りてきたよな?まさか。

 

「もしかして乃村さん達って6階に住んでるの?」

「ど、どうして知っているんですか!?」

 

不知火が答える。やっぱりかーーーーい!!いや、そんな気はしていたがまさか6階の住人かよ。

 

「私も6階に住んでいるの」

「「「そうなの!?」なん!?」ですか!?」

 

三人共仲良いなぁ〜〜。綺麗に被ってるよ。

 

「た、隊長は6階のどこですか?」

 

不知火が聞いてくる。

 

「私は602よ」

「そうなんですか。私は妹達と三人で610に住んでます」

「そうなんだ、今から買い物?」

「はい。隊長は今帰り?」

「ええ。あと出来れば部活以外は笹原って呼んで、なんか恥ずかしいから」

 

ホント恥ずかしいから。外で会ったときに隊長って言われてみろ、想像したくない。

ここで何かを思いついたかの様に陽炎はニヤリとする

 

「えぇーーいいじゃないですかぁ。()()

 

クソッ、コイツわざと言ってるな。気づいたら他の奴のニヤニヤしてるし。

 

「いいじゃない()()

「そやで()()

 

逸見、黒潮、やめろ!!マジでやめろ!!お願いやめて。

アリサと不知火は笑うのを堪えててるし。クソッ、俺に味方はいないのか!

 

「あれ?隊長?こんなところで何をしているんだい?」

 

こ、この女神とも思える声は、俺はマンションの入り口を見る。そこには、時雨、他佐々木姉妹こと白露型姉妹がいた。俺は今選択を迫られている。

 

1.ちょっと涙目になって時雨に甘える。

2.時雨の背中に隠れてちょっと可愛くコイツらを睨む。

3.時雨に話掛けて、コイツらを無視してこの場を切り抜ける。

4.今の内にエレベーターに逃げ込む。

5.近接戦闘。

 

5ってなんだよ!何が近接戦闘だよ!いかんな。前世では何かあれば即戦闘だったからつい。

 

「あっ、時雨やん。いやな、ちょっと()()をからかってただけや」

「そうよ。()()って言ってただけよ」

 

まだ言うか!よし、明日の部活で覚えてやがれ。

 

「あ、あははは。でもみんな、笹原さんも嫌がってるから、そのくらいにしてあげよ?」

 

時雨・・・お前だけだよ!!俺の味方は!

 

「笹原さんもそれがいいでしょ?」

「うん、時雨さんも部活以外では、笹原って呼んで」

「わかった。これからは気をつけるね」

 

そう言って時雨は、俺の頭を撫でてくれた。

あぁぁ。癒される〜〜。まさかのこんな展開になるとは予想外。生きててよかった〜〜。あっ、俺一度死んでるんだった

 

「それで、話は戻すけど。笹原さんはここで何をしているんだい?」

「あっ、そうだ。時雨聞いて!笹原さんって、私達と同じ6階に住んでるんだって!」

 

時雨の質問に陽炎が答えた。これには本人達もビックリした様で目を見開く。

 

「そ、そうなの!?」

「これにはビックリしたっぽい!」

「あら〜〜私もビックリだわ」

「うん、ぼくも驚いたよ」

「そ、そうなんですか!?」

 

上から白露、夕立、村雨、時雨、春雨の順に言う。

・・・・・・・・ちょっと待って。今陽炎、私達って言ったか?そしてこの驚き様。

 

「もしかして、佐々木さん達も?」

「そうだよ、ぼく達は609に住んでいるんだ」

 

俺の質問に時雨が答えた。

コンプリーーート!!!!6階の部屋、全員1ーBでした!!マジで!?こんな偶然ってあるの!?普通ないよ!!

 

「あっそうだ。私これからリーダ、じゃなかった。笹原さんの部屋に遊びに行きますが、皆さんも行きませんか?」

 

やめろアリサ!なぜ今それを言うんだ!!そんな言ったら間違いなく。

 

「サンセーーイ!!」

「ウチも行きたいわぁ〜」

「行きたいっぽい!」

「うん、ぼくも行きたいな」

 

上から陽炎、黒潮、夕立、時雨が言う。

またかよ!いやアリサと時雨がいるとはいえ、さすがに二日連続はキツイ。そう思っていると逸見が後ろから俺の右肩に手を置いた。俺が振り返ると逸見は首を横に振っていた。やめろ!!昨日、吹雪がやったことをお前がやるんじゃねぇ!

 

「ほな、ウチら今から鍋の材料、買ってくるわ!」

「三人で大丈夫かい?」

「それなら私が行くわ」

「夕立も行くっぽい!」

「私も行きます」

 

黒潮、時雨、村雨、夕立、アリサが言う。おい!俺の許可なしで鍋パーティーをしようとするな!

 

「世の中、諦めが肝心よ」

 

うぜぇ〜〜!!悟った風に言うな逸見!マジ腹立つ!!

 

「笹原さんもそれでいいかい?」

 

時雨が笑顔でこちらに振り返りながらたずねる。あぁ、守りたい、この笑顔!

 

「いいわよ」

 

こうして、二日連続でパーティーをすることになった。

というか逸見!なんでお前は二日連続で来てんだよ!

 

 

 

 

〜〜〜〜翌日の4時限目〜〜〜〜

 

 

 

 

 

う〜〜〜〜ん。編成どうすっかな〜〜。

今は、数学の授業中、正直中1の最初の数字なんて正負の数だから聞かなくてもわかる。だから今、チームの編成を考えていた。

昨日、部員の全員に希望を取って、二つのグループを作った。

一つは試合などで戦って活躍する前衛グループ。

もう一つは使った戦車などを修理、調整、整備する後衛グループ。

この二つのグループを作ったのには理由がある。

色々あるが、一番の理由は、私達はまだ中学生である。練習や試合が終わったあと、整備やら修理やらをする体力はおそらくないだろう。学校の勉強もあるし。だからグループを二つ作る必要があった。そういう意味では、この学校の風習の一年生が整備をするというのは、ある意味正しかったのかもしれない。

まぁ俺は一年生がやるっていうのが気に入らなかったが。

 

「笹原ーー、聞いてるかーー」

 

おっと、ちょっと没頭しすぎたか。先生が注意してくる。

 

「はーい、聞いてまーーす」

「よーし、ならこの問題を解いてみろーー」

 

おい、典型的なパターンだな。俺は前に出て問題を解く。てか、正負の数だから+、−をつけるだけじゃん。

 

「はい、正解」

 

俺はそう言われる前に、自分の席に戻る。まぁ、先生のちょっと悔しそうな顔が見れて嬉しかった。

話は戻すが、まぁ、このやり方を取り入れるのはまだ先である。先ずは、整備やら運用やら、必要最低限の知識、技術を身につけてもらい、そこから前衛、後衛に分かれる感じにしようと考えている。

その中で俺、吹雪、逸見は前衛になるのは、ほぼ確定なのだが、同じチームを組むか、それとも別々のチームを組むかを俺は悩んでいた。

ここで4時限目終了のチャイムが鳴る。そして先生が色々言って出て行く。

よし昼休みか。

俺が席を立ち、食堂に向かおうとしたとき。

 

「紅音ちゃん!」

 

突然吹雪がちょっと怒った様子でやってきた。

 

「な、何?」

「私が怒っている理由わかる?」

 

さっきの授業態度か?それ以外に思い当たる節がない。

 

「さっきの授業態度?」

「違うよ!」

 

じゃ、なんだ?

 

「昨日の帰りがちょっと遅かったこと?」

「それも違う!昨日!紅音ちゃん、鍋パーティーしたんだってね!」

 

あぁ〜〜そのことか。確かにちょっと騒がしかったなぁ。

 

「ごめん。ちょっと近所迷惑だったわね。これから「なんで私も誘ってくれなかったの!」怒るとこそこ!?」

「当たり前じゃん!私一人でご飯を食べて、お風呂入って、宿題して、寝たんだよ!?一人で寂しかったんだよ!?」

 

おいこら、20超えた社会人が寂しかったなんて言うなよ。なんか哀れに見えてくるだろ。

でも確かに、隣の部屋で親友が鍋パーティーしてるのに、自分が呼ばれなかったらちょっと悲しくなるよな、その気持ちわかる。前世ではよく経験した。

 

「わかった、わかったから、落ち着いて。今度からちゃんと吹雪も呼ぶから許して。ねっ。」

 

頼むから嘘泣きやめろ、周りの視線が。

 

「じゃ、食堂の日替わりランチ奢って♪」

 

コイツ!最初からこれが狙いか!クソッ!中身が男と分かっていても、吹雪の顔でそんなことをされたら。

 

「はぁ〜〜。わかったわ。それじゃ食堂に行きましょ」

「やったー!今日、お財布忘れたから困ってたんだー!」

「今・・・・・・イラッとした・・・・。」

 

コイツ、財布忘れたからって人にたかるなっ!

そして俺達が食堂に向かうのであったが。

 

(((((あの二人、仲良いなぁ〜〜〜〜〜)))))

 

と、クラス全員からそう思われていることに気づくことはなかった。

 

 

 

 

〜〜〜〜放課後、工場内〜〜〜〜

 

 

 

 

「それじゃ今から始めます。二年生の先輩方、お願いします。」

「「「「「オッケーーー!!!」」」」」

 

俺がそう指示を出すと二年生の方々が、それぞれ受け持ちの一年生の子達を教えていく。二年生は40人に対して一年生は50人。はっきり言って一年生50人全員を隊長の俺が教えるのは無理である。そこで二年生には一人に対して一〜二人の一年生を教えていくことにした。これなら一人にみっちり教え込むことが出来るし、二人だったら、もう一人は復習の時間に当てられる。

 

「それで、私達はどうするの?」

 

隣まで来ていた吹雪がたずねてくる。

 

「吹雪は、私と一緒に今月分と来月分のスケジュールを作るのを手伝って」

「わかった」

 

そして俺と吹雪は工場の横に設けてある部室に向かった。

 

 

 

 

〜〜〜〜PM18:30〜〜〜〜

 

 

 

 

「今日はここまでとします。来週までは、この調子で整備関係の必要最低限の知識を身につけてもらいます。二年生の先輩方にはご迷惑をおかけしますが、よろしくお願います。では、解散!」

 

こうして今日の一日が終わる。

 

「紅音ちゃん!一緒に帰ろ!」

 

吹雪が俺を誘う。元気だなぁおい。その元気をオラに少し分けてくれ。

 

「わかった、一緒に帰ろ」

 

そう言って俺は吹雪の頭をポフポフする。

 

(((((あの二人、ホント仲良いなぁ〜〜〜)))))

 

他の部員からそんな風に見られているとは知らずに。

 

 

 

 

 




如何でしたか?今回は練習風景がホントちょっとしか書けず申し訳ありません。次の次から本格的に書いていこうと思っています。
それでは!


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番外編 一年を振り返って、そして新しい一年

どうも、大晦日ですね。皆さんは今年どんな一年でしたか?
とある番組の企画で今年の一年を漢字で表すならなんですか?ってのをやってましたね。
私は「苦」です。
はい!どうでもいいですね!


 

 

 

 

 

〜〜〜〜笹原の部屋〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「吹雪〜〜。年越し蕎麦、食べる〜〜?」

「食べるりゅ〜〜」

 

おいこら、瑞鳳のセリフを言うんじゃない。

そう、今日は大晦日である。時刻は23時25分、俺の部屋に吹雪が遊びに来て、吹雪はコタツに入って紅白歌合戦を見ている。

 

「はい、年越し蕎麦」

「あっ、ありがとう」

 

ズズーーッ、ズーーーーッ

 

「今年は色々あったねぇ〜〜」

「そうね。車に轢かれて、死んで、そこから転生して、中1からやり直して」

「紅音ちゃんにとって、どんな一年だった?」

「二人だけだし、ちょっと口調を昔に戻さない?」

「もう、この口調が板に付いちゃったよ」

「そっ、まぁ私もなんだけどね」

 

そう言って、俺達はちょっと微笑む。

 

「どんな一年だったか、ねぇ。そういえば、なんかの番組で、今年一年を漢字一文字で表すなら、って企画をちらっと見たわね」

「そうなの?なら紅音ちゃんは?」

「私は・・・・・・忙しいの「忙」ね」

「何その、仕事で疲れきったサラリーマンの発想は・・・」

「だってそうじゃない。隊長やって、トラブルに巻き込まれて、あっ、疲労の「疲」でもいいわね」

「トラブルに関しては、巻き込まれてたのは私なんだけどね、紅音ちゃんはどちらかと言うとトラブルを起こしてたと思うけど」

「うん、自覚はある」

「あれ!?さっきのトラブルに巻き込まれてってセリフは一体何!?」

「そういうアンタはどうなのよ?」

「私?私は・・・・「楽」かな」

「ケッ!」

「あ、あれ!?」

「それはよぉござんしたね!」

「紅音ちゃん!?口調が昔に戻ってるよ!?板に付いちゃったんじゃないの!?」

「そりゃ俺が隊長やってればお前は()だろな!あぁ今年一年は大変だったなぁ!」

「そういう意味の楽じゃないよ〜〜!」

「じゃ、どういう意味だ!説明せい!」

「ほら、楽って漢字は楽しいって読むじゃん。私達、そんなにみんなでワイワイ楽しく過ごすことって、前世じゃあまりなかったじゃん」

 

急にお通夜ムードになる。そう、俺達二人は前世ではそんな生活をあまり経験したことはなかった。

 

「そういえば、そうだったわね」

「うん、だからね。私、今が一番楽しい。今までの人生で今が一番楽しいよ」

「そう」

 

俺は素っ気なく返す。ったく、でもまぁ、俺も今が一番楽しい。こんなに楽しいのはいつ以来だろう。

 

「あと20分かぁ」

「そうだね」

「あぁ〜〜!タバコ吸いたい〜〜!お酒飲みたい〜〜!」

「ダメだよ〜〜。私達まだ未成年なんだから」

「この身体ってこういう時、ホント不便だよね〜〜」

「あっ、でも甘酒なら私持ってきてるよ」

「ナイス!吹雪!」

「じゃ先ずは、年越し蕎麦を食べ終わろっか」

 

そして俺達は年越し蕎麦を食べて、甘酒を湯呑みに注いだ。

 

「「かんぱーーーい!!」」

 

そして俺達は一気に飲み干した。

 

「カーー!やっぱお酒はいいね!甘酒だけど!」

「うん!やっぱりいいね!甘酒だけど!」

 

俺に続いて吹雪が言う。みるみる瓶が空になる。そんなとき、突如テレビの前にスキマが開いた。

 

「私も混ぜてもらったいいかしら〜〜?」

「「出たな!スキマ妖怪!」」

「もう、その呼び方やめてちょうだい。ここでは校長なんだから」

「で、その校長がなんの用ですか?」

 

俺は紫にたずねる。

 

「霊夢が神社の仕事で忙しくて、構ってくれないから来ちゃった☆」

「「今すぐ帰れ!」」

「ひどい〜〜!」

「でも、さすがに大晦日と正月は手伝ってあげなよ」

「そうですよ。それに私と紅音ちゃんは今、甘酒飲んでるんだから」

「もー。つれないんだから。じゃ、これだけ置いていくわね」

 

そう言って紫は瓶を三本差し出してくる。

 

「これは?」

「甘酒よ♪」

「「結局甘酒かい!」」

 

言い終わる前に消えやがった。

 

「はぁ〜〜。じゃ、続けよっか」

「そうだね。紅音ちゃん」

 

いかにもR-18臭がする文脈だが気にしない。気にしたら負け。

 

「あと5分〜〜」

「あとちょっとだね〜〜」

「あっ、吹雪〜〜。次の瓶開けて〜」

「わかった〜〜」

 

吹雪が瓶を開けようとしたとき。

 

「あっそびにきたよー!!!」

 

突如リビングの扉が開けられた。

 

「敵襲ーー!!」

 

吹雪は脱兎の如く、ベランダの窓を開け脱出ルートを確保。俺は空になった瓶を持って、臨戦態勢に入った。

 

「な、何やってるのよ貴女達」

 

そこには乃村三姉妹こと陽炎型三姉妹がいた。

 

「なんだ貴女達だったのね。てっきり不審者かって思ったしまったわ」

 

吹雪はベランダの窓を閉めてコタツに戻り、俺も瓶を降ろしてコタツに戻る。

 

「だったらきちんと、玄関の扉に鍵かけなさい。不審者と間違われて、瓶を投げられたら、たまったもんじゃないわ」

「いや〜。インターホン押さずに入ってる時点で不法侵入やからな〜〜?陽炎?」

「全くです。それより、その瓶は一体なんですか?」

 

陽炎、黒潮、不知火の順で言う。そして不知火がたずねてくる。

 

「これ?さっき校長がここに来てね。甘酒三本もらったの」

「そうなの?ってさっきベランダの窓開けて空気の入れ替えしたから気がつかなかったけど、この部屋、酒臭いわよ!?」

「ん?そう?」

 

黒潮が近くにあったからの瓶を拾い上げ、ラベルをみる。

 

「これ!甘酒は甘酒やけど!酒粕やん!」

 

な、なんだってぇーー!?米麹じゃないの!?あのババァ、未成年に何飲ませとんねん!!でもまぁ、事故とは言え、お酒が飲めたのはラッキー。

 

「貴女達!何、未成年が、お酒飲んでんのよ!」

「ご、ごめん。校長が持ってきたのだから、てっきり米麹って思っちゃって、つい」

「酒粕か!酒粕なのか!?この肌と胸の秘訣は酒粕なのか!?酒粕には美容効果があるって言うしね!」

「何言ってるの!?って、ひゃっ!!」

 

さっきから何言ってんだよ陽炎!あと胸揉むな!変な声が出ちまっただろうが!このセクハラ!!

 

「そこまでにしいや!」

「あいたっ!」

 

ここで黒潮が、どこから取り出したかわからないハリセンで陽炎の頭を叩く。ナイス!

 

「まぁ事故やし、しゃないやろ。次からは気ぃつけりぃな?ほら、今年もあと1分やで!」

「そうね。吹雪〜〜。ってアンタ、大丈夫?」

「大〜丈〜夫〜〜」

「あかんな。完全に酔ってるわ」

「仕方ないわね。ほら吹雪」

 

そう言って俺は吹雪をコタツから引きずり出そうとするが、なかなか出てこない。そして吹雪はついに。

 

「さ〜む〜い〜〜」

「ってこら!」

 

吹雪を引きずり出すつもりが、逆にコタツの中に引きずり込まれてしまった。

 

「アンタ!風邪ひくわよ!起きなさい!」

「Zzz〜〜」

「こりゃダメね。笹原、せっかくだし私達もコタツ入っていい?」

「いいわよ」

 

陽炎がたずねてくる。まぁいっか。不法侵入だけど。

 

「あっ、カウントダウンが始まりました」

 

不知火が言う。もうそんな時間か。

 

「「「「5・・4・・3・・2・・1・・0!!」」」」

「「「「明けましておめでとう!!」」」」

 

それと同時に携帯のLINEの一年グループにメッセージがくる。ってみんなほぼ同時に送ってきたなぁ〜。俺も返そっと。

 

ピンポーン

 

誰だ?こんなタイミングに?

 

「ごめん、ちょっと出てくれる?」

「いいよ〜〜」

 

そう言って陽炎が出ていく。そして陽炎が意外な人物達を連れて戻ってくる。

 

「「「「「明けましておめでとう!!!」」」」」

 

陽炎の後ろにら、轟、妖夢、戸羽、宇佐見、睦月がいた。

 

「貴女達、何してんのよ?」

「いや〜〜。暇だったから遊びに来た!」

 

暇だったからって理由でここに来るな!何!?暇=俺部屋にGOなの!?そんな構図が出来上がってるの!?

 

「うわっ!酒臭っ!」

「あぁ〜、実はなぁ〜〜」

 

 

 

 

〜〜〜〜黒潮、説明中〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「と言うわけなんよ〜〜」

 

黒潮説明ありがとう。

 

「そうだったんだ〜〜。とりあえず、四季にバレないようにしなさいよ?」

 

と宇佐見が言う。確かにあの閻魔様にバレると色々面倒だな。

 

「私がなんですか?」

 

って、うおぉぉぉぉぉぉい!!!どっから湧いて出た!!

 

「い、いや四季!これは!」

 

俺は必死に弁解を試みる。

 

「事情は把握しています。今回は校長に非がありますので、私は何も言いません。強いて言うなら、扉の鍵をしっかりかけることと、これからしっかり確認してから飲んで下さい。扉の鍵は私がかけてきました。新年早々、私もあまり言いたくありません」

 

いや新年早々色々言ってるからな四季。

 

「雪宮さんは大丈夫なのですか?」

 

四季は吹雪を見ながら聞いてくる。吹雪といえば、俺の腹辺りに抱きついたまま寝ている。コイツ、ゲイじゃないだろうな?あっ、この場合レズか。

 

「大丈夫よ・・・・・多分」

「不安なる言い方はやめて下さい。それにしても本当に貴女方は仲がいいのですね」

「まぁ、昔からの付き合いだし」

「そうですか。それはそうと甘酒を持ってきました」

「・・・・・米麹?」

「当たり前です。では、皆さんで乾杯しましょう」

 

そう言って四季は瓶を開ける。どうやら四季もそれなりにノリ気のようだ。

こうして遅くまで楽しく過ごした。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜夜明け前〜〜〜〜

 

 

 

 

ん?いかん。ついコタツで寝てしまった。俺は近くに置いていた携帯で時間を確認しようとしたとき、電話がきた。アリサからだ。

 

「もしもし」

『あっ、笹原さん。明けましておめでとうございます』

「うん。おめでとう」

『突然で申し訳ないのですが、今からマンションの屋上に来れますか?』

 

何!?愛の告白!?同性愛に目覚めちゃった!?

 

『実は戦車道の一年生全員で、マンションの屋上から初日の出を見ようって事になりまして』

 

あっ、そういう事ね。ビックリしたぁ。告白だったらどうしようって思ったぜ。

 

『笹原さんは今どちらにいますか?』

「今、部屋にいるよー。吹雪達も一緒だからみんなと一緒に屋上に行くね」

『出来るだけ急いでください。もうほとんど集まってますから』

 

なんと。なら急がねば。

 

「じゃ、また屋上で」

 

そう言って俺は電話を切り、吹雪や轟達を起こす前に寝顔を写メって、そこから起こして、屋上に向かった。

四季の寝顔、可愛かったなぁ〜〜。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜屋上〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「あっ、笹原達!はやくはやく〜〜」

「はやくしなさいよ!」

「遅いのじゃ〜〜」

 

上からリッカ、霞、和田が言う。

 

「ごめん。みんながなかなか起きなくて」

「まぁ、間に合って良かったわ」

 

そこには神社で仕事をしているはずの霊夢がいた。

 

「あれ?神社の方は?」

「紫に任せてきた」

「なるほど」

 

つまりは、神社の仕事を手伝わなかった罰として、仕事を押し付けてきたのだろう。にしても、脇巫女でない霊夢もまた新鮮いいな。

 

「あまりじろじろ見ないで、着替えている時間がなかったのよ」

 

霊夢はちょっと恥ずかしそうに言う。かわいいなぁ。

 

「あっ、みんな!出たよ!」

 

白露が大きな声で叫んだ。俺達は太陽の方を見る。

 

「綺麗だね。紅音ちゃん」

「そうね」

 

吹雪は少し嬉しそうに言う。そういえば、大晦日と正月をこんな大勢で過ごしたのは初めてだったっけ。

 

「よし!みんなで写真撮りたいっぽい!」

 

夕立が言う。

 

「でも、どうやって撮るの?」

「「大丈夫!抜かりはないわ!」ありません!」

 

エリナの質問に文とはたてが答える。さすがパパラッチ。準備がいいな、ちゃんと三脚も用意している。

 

「それじゃ皆さん!撮りますのでもっと寄って下さい!」

「ほら、アンタ達は真ん中に行きなさい!」

「そやで、笹原と雪宮は真ん中や」

「そうです」

 

上から文、逸見、黒潮、寺本の順で言う。俺達は言われるがまま真ん中に行き、カメラを見る。

 

「紅音ちゃん」

「何?」

 

俺達は周りに聞こえないくらい小さな声で話す。

 

「私、今が一番楽しい」

「それ、昨日聞いた」

「うん、それでも言うよ。今が一番楽しい」

「そっ」

 

俺はちょっと素っ気なく答える。でも、確かに今が一番楽しい。

 

「それじゃ撮りまーーす!」

 

文はタイマーをセットしてこっちに走ってくる。

きっと、これからもたくさん、楽しいことがあるだろう。

 

パシャッ

 

 

 

 

 

 

 

 




如何だったでしょうか!
次回は戦車道の練習風景を書きます。
それで皆さん!良いお年を!
あと感想や評価をお待ちしております!


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これが私達(俺達)のやり方

投稿が少し遅くなり申し訳ありません。
やっぱり正月は気が緩みますね。
今回は練習風景をかきました。
どうぞ!


 

 

 

 

 

〜〜〜〜工場内〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「では、先程示したとおり、私と吹雪、それと二年生の十六名はこれから演習場に向かい射撃をします。今日はデータを取るため砲手は、たかが射撃と思わず、全力で取り組んでください。残った一年生は二年生と引き続き、戦車の整備や点検をしてもらいます。以上!」

 

入学してから一週間が経過した。今日からちょっと体制を変えていくことにした。二年生には一人で二人、一年生を見てもらう事にした。そして余った十六人で実戦練習をすることにした。

いや、さすがに一年生が上達するまで付きっ切りで面倒を見てたら、二年生はいつまで経っても、まともな練習出来ないし、そろそろ夏に向けて動いていかないとマズイじゃん。それに、二年生のレベルも気になるし。

 

「それでは先輩方、こちらの方、お願いします」

「「「「「まっかせて〜〜!」」」」」

「よろしくお願いします。では!演習場に向かう者は自分の戦車!又は扱い慣れている戦車に直ちに乗車!」

 

そう言って俺は、IS-3に乗って演習場に向かった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜演習場、戦車射撃場〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「それではこれより!射撃を実施します!」

 

射撃の要領は、先ず戦車に榴弾、徹甲弾を各十発ずつ積載し射場に四両入る。それから各種砲弾を各車の目標的に五発ずつ撃つ。これは練習及び修正、調整するための練成射撃である。そこからデータ収集の為の射撃、簡単に言えばテストだ。距離は1000m。その際、車長は目標的に当たったか、また、当たったら目標的の何処に当たったかを手持ちのバインダーに挟んだ用紙に記入する。もちろん全弾。

 

「では各車!準備が出来次第、私に無線を!射撃の号令、統制はこちらで行います!以上!」

 

そして各乗員が各種砲弾を積載し、射場に入る。俺は射撃車の後方の離れた位置に止めたIS-3からその様子をみる。

 

「二年生の人はどのくらい出来るかなぁ?」

 

吹雪は装填手席に来て早々にそんなことを言う。

 

「私達レベルの人がいないのはわかりきってる。最初からそこまでの期待はしていない」

「うわぁ〜〜。はっきり言ったね〜〜」

「事実でしょ」

 

俺達が何年戦車に乗ってきたと思っている。少なくとも、そこいらの高校生よりかは長く戦車に乗っているぞ。まぁ、西住流や島田流は別だけど。

 

「まぁ、最低でも命中率70%は超えてほしいわね」

「紅音ちゃんは今日、撃たないの?」

「撃ってもいいかな?どうせ予定通りなら十発は余るようにしてるし。そういうアンタはどうなの?久しぶりに砲手したら?」

「私はどうしよっかな〜〜。元々今日は撃つ予定じゃなかったし。でもたまには撃ってもいいかな」

「ならアンタが撃ちなさい。どうせ私が撃っても参考にならないし、アンタの方が何かと学ぶことが多いと思うから」

「確かに紅音ちゃんのは参考にならないかもね。わかった。予定通りにいって、弾が余ったら私が撃つよ」

「お願いね」

『各車、準備出来ました!』

 

おっ、きたか。

 

「それではこれより!練成射撃を実施します!各車先に榴弾を五発撃ったら一度射撃を中止し、こちらに報告を!それでは射撃開始!」

 

この調子で練成射撃、テスト射撃が終わっていった。こっちで決めた目標ラインを全員がクリアしてくれたから、正直安心した。まぁ目標ラインギリギリの子もいたけど、クリアしてるし、今回は目を瞑ろう。

 

「ではこれより!こちらの方で残った砲弾十発を撃ちます!射場にいる戦車は直ちに退避!」

 

そう指示を出し、全員を退避させる。距離は1500m。退避した二年生は俺達の後方からその様子を見る。

 

「紅音ちゃん。どの的を撃てばいいの?」

「この際どれでもいいわよ?なんなら四個的全部撃っていいわよ?」

「え〜〜やだよ〜〜」

「じゃ隊長命令。撃ちなさい」

「あっ、それズルい!わかった。命中率90%以上だったら、なんか奢って!」

「考えとく」

「やったー!」

 

まぁ、コイツなら外さないだろ。

 

「それでは撃ち方!はじめ!」

 

そしてどんどん撃っていく。

てか、装填手と車長の両方を俺がしなきゃいけないんだった。クソッ!俺が砲手をすれば良かった。

 

〜〜〜〜射撃終了〜〜〜〜

 

お〜〜。相変わらずいい腕してる。見事全弾命中。しかもほぼど真ん中。やっぱコイツからは色々学ばされる。

そして俺達は、二年生達を集めて、あらかじめ車長に渡していた用紙を回収する。

 

「それではこれより撤収します!総員!直ちに乗車!」

「あの、隊長」

「はい、なんでしょうか?」

 

二年生の一人が、戦車に乗ろうとした俺達を呼び止める。

 

「今の射撃って、隊長が砲手をなされたんですか?」

「いえ、今回は吹雪がしました」

 

そして二年生達は吹雪の方を見る。

あぁ〜〜なるほど、前回の三年生と戦ったとき俺が砲手したから、今回も俺が砲手をしたと思っていたのか。てか、さっき俺が車長で観測するためにちょくちょく顔を出していたのを見ていないのか?

 

「もしかして、ずっと的の方を見てましたか?」

「は、はい!申し訳ありません!」

「あ、いえ。別に謝ることではないので、その、気にしないでください」

 

なんか気まずいなぁ〜。いくら隊長とは言え、一応俺達は一年生だ、まぁ中身は20代前半だが。

 

「それでは撤収!撤収後は戦車の整備を行うのでそのつもりで。では総員乗車!」

 

さて、向こうの方に連絡しとくか。

 

プルプルプルプル・・・・プルプルプルプル・・・ガチャ〜。

 

『はい、もしもし夕張です』

「あ、夕張さん。今大丈夫?」

『問題ないよ〜〜』

「ちょっと二年生の人に電話変わってー」

『はいはーい・・・・・もしもし?』

 

誰だお前は!

いかんな。まだ二年生の人、誰一人名前を覚えてない。帰ったら名簿と顔写真で確認しよ。

 

「お疲れ様です。今からそちらに戻りますので、キリのいいところで切り上げて、一年生には汚れてもいい整備服に着替えて待機させていてください」

『いいけど。一年生って整備服持ってる〜〜?』

「先週の金曜に「汚れたくなかったら、整備服を買って月曜には持ってくるように」って言ってありますので大丈夫です。一応、二年生の方々も整備服に着替えおいてください」

『オッケー。みんなにはそう伝えておくー』

「お願いします。では」

 

これでよしっと。しかしなんで、着信音がワン◯ー◯の電伝虫なんだよ。思わず笑ってしまうところだった。

さて、帰りますか。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜再び工場内〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「整備服に着替えたあと操縦手は直ちに足まわりの点検、及び残燃料を測るように!何か不具合、故障があれば速やかに報告を!燃料補給が必要な戦車は、補給を確実に行うように!車長、砲手の人員をもって、砲身の整備!装填手は砲弾の薬莢を降ろした後、無線機は載せたままでいいので、車長と砲手の支援!こちらに残っていた二年生は一年生と一緒に全体的支援を!」

 

それだけを言い残して、整備服に着替える。

えっ?どこで?ちゃんと更衣室でだよ。

そして俺は、吹雪と一緒に自分の戦車に向かう。

 

「吹雪〜。わたしが残燃料を測るから、吹雪は足まわりの点検をお願い〜」

「はーーい」

「あの、隊長!」

 

誰だ?

振り返ると、瀬川姉妹こと綾波型四姉妹と、川越姉妹こと朝潮型四姉妹、そして二年生が四人いた。

 

「何?」

 

俺と対面する綾波はちょっともじもじする。可愛いなぁ。

そして何を決意した顔になり、俺に言う。

 

「あ、あの!こちらの方で、お手伝い出来ることはありますか!」

 

まぁ、その、そうなるよな。入学してまだ一週間、普段俺は、隊長の仕事をしていて、一年生とはまともな会話はあまりしていなかった。いかんな、ちゃんとコミュニケーションしないとな。

 

「ありがと。それじゃ川越さん達は、吹雪と一緒に足まわりの点検をして。二年生の方も二名お願いします。瀬川さん達は砲弾の薬莢を降ろすのを手伝って」

「了解です!」

 

元気だなぁ。若いっていいなぁ。俺もそのくらいの歳に戻りたい。あっ、俺も今中学生だった。

この調子で、時間は過ぎていった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜マンションの自室〜〜〜〜

 

 

 

 

 

さてと、今日のデータをパソコンに打ち込みますか。

パソコンの電源を入れる。あとはさっきコンビニで買ったココアと今日のデータをバックの中から取り出してっと。あっ、プリンターも用意しねぇと。データは読みやすくグラフとか使った方がいいかな?まぁ、打ち込みながら考えるか。

そんなことを考えながら作業を始めた。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜PM20:40〜〜〜〜

 

 

 

 

 

さ〜〜て、これからどうすっかなぁ。

晩飯を済ませた俺は、来月までのスケジュール表を片手にココアを飲みながら一人考えていた。正直、夏の大会までこのペースでやっていたら大会には間に合わない。部活の時間を伸ばすか、短時間でハードな作業をするか、土曜日に部活の時間をいれるか。

そんなことを考えているとインターホンが鳴る。

誰だ?こんな時間に?そう思って玄関に向かい、扉を開ける。

 

「あ、あの、夜分遅くにすいません」

 

そこには、瀬川姉妹こと綾波型四姉妹がいた。

 

「どうかしたの?」

 

俺は綾波に聞く。よく見ると綾波達は何か用紙を片手に持っていた。

 

「実は今日のことでわからないことがあって、その、よければ教えてくれませんか?」

 

真面目だなぁ。俺だったらそんなことしないな、面倒だし。まぁそんなことしたくないから俺はその時で覚えるんだけどな。わからなかったら先輩に聞くし。でも中学生って先輩にわからないことって聞きづらいよなぁ。特に部活の先輩とかって、よくわかる。

 

「いいわよ。ここで教えるのもなんだし、上がって」

「いいんですか?」

「気にしないで」

「それでは、その、ありがとうございます」

 

綾波はそう言って上がり、他三人も上がる。

 

「適当に椅子に座ってて〜。今お茶出すから」

「そんな、気を使わなくても大丈夫です」

「いいわよこのくらい」

 

ホント可愛いなぁ綾波は。ハグしたくなる。

そんなハグしたい気持ちを抑えてお茶を出す。

 

「それで四人は何がわからないの?」

「私は閉鎖機の分解と組み立て、その整備の要領です」

「私はそれにプラス足まわりの点検要領」

「私は無線機の取り扱いと整備、あと閉鎖機」

「私は履帯が外れたときの修理と砲塔内の整備です」

 

俺の質問に綾波、敷波、曙、漣が答える。

 

う〜〜ん困ったなぁ。

この手のものは口や用紙を使って説明するより実際にやって説明しないとわからないんだよなぁ。

 

「因みに戦車は?」

「私はティーガーⅠとⅡです」

「私はセンチュリオン」

「私はIS-2と3」

「私はパンターです」

 

うん、見事にバラバラ。どれか一つの戦車ならまだよかったけど、こうもバラバラだと正直厳しい。それに国が違えば戦車の作りも変わってくる。どうしたものか。

そう悩んでいるとまたインターホンが鳴った。今度は誰だ?

 

「ごめん、ちょっと出てくる」

「は、はい」

 

うーん。綾波とはまだちょっと距離を感じるなぁ。

 

 

 

 

どうしてこうなった。あのあと川越姉妹こと朝潮型四姉妹がやってきた。同じく整備関係のことについてだが、今度はチャーフィーとシャーマンとファイヤフライとパーシングときた。

流石に一人では無理だ。仕方ない。

俺は携帯を取り出した。

アイツに電話するか、ってコイツはメ◯ギ◯の無線音を着信音にしてんのかよ。

 

『モスモス、モスバーガー?』

「誰もモスバーガーに電話なんてしてないわよ」

『ご注文はお決まりですか?』

「人の話を聞こうか」

『店内で食べられますか?それともお持ち帰りですか?』

「切るね」

 

ブチッ。あぁぁぁ、電話をかける相手を間違えた。なんて思っているとすぐに電話がきた。

 

『ごめんごめん、ちょっとしたおふざ』

 

ブチッ。さてアイツは無視してリッカにと夕張に電話するか。

二人には事情を説明して俺の部屋に来てもらうように頼んだ。そしてすぐに二人は来てくれた。

 

「ごめんね二人共、私一人じゃみんなに教えきれなくて」

 

マジで申し訳ないなぁ

 

「気にしないで、今やってるところは全部知ってるから心配もいらないよ」

「正直、知ってるところばっかりだったから、ちょっと刺激がなかったし」

 

はっきり言うなぁ二人共。てか夕張、刺激を求めるのはいいけど、その刺激を爆発させるなよ?

そう思っているとインターホンがまた鳴る。今日はホント客が多いなぁ?今度は誰だ?

玄関に向かい扉を開ける。

 

「ごめんごめん、さっきはふざけ過ぎ」

 

バタン、ガチャ。よしこれでアイツは入って来れないな。そしてリビングに戻った。

 

「誰だった?」

 

リッカがちょっと不思議そうにたずねてくる。

 

「気にしなくていいわよ。部屋を間違えたらしから」

「もー酷いよ紅音ちゃん」

 

えっ?なんで?

 

「吹雪。アンタどうやって入って来たのよ?」

「いつでもこの部屋に入れるように合鍵作っちゃった。抜かりはないよ」

 

と言って吹雪は合鍵を見せてくる。

コイツいつの間にそんなことを!?何!?ゲイなの!?あっ、この場合レズか。

 

「今すぐその合鍵を渡しなさい」

「だが断る!」

 

即答かよ!

 

「なら選択肢をあげるわ。

1.大人しく合鍵を渡す。

2.両肩の関節を外される。

3.顎に蹴りを入れられる。

4.肋の骨を折られる。

5.ベランダから命綱なしのバンジージャンプをする。

さ、どれがいい?」

「6の誰にも渡さない!」

「そんな選択肢はない!」

 

それを合図に激しい近接戦闘が始まった。夕張達はいつの間にか台所に避難している。これなら被害はそこまで出ないだろ。

 

「何がモスモス、モスバーガーよ。ふざけてるの!?こっちは真剣になっているのに!」

「ごめんってばーー!」

「だいたいアンタ!いつ合鍵なんて作ったのよ!」

「この前の土曜日につくってきた☆」

「渡しなさい!」

「断る!」

「アンタいい加減にしないと本気で怒るわよ!?」

「もう怒ってるじゃん!あっ今日、射撃で命中率100%だったから許して☆」

「あぁもう!頭にきた!」

 

ついムキになって顎を狙って蹴りを入れるが、腕で防がれそのまま脇に挟まれる。

しまったーー!!不覚!!このままではやられる!

そう思っていると空いているもう片方の手で俺の襟元を掴んできて、そのあと反対の手は俺の腕を掴んだ。

コイツ、俺を投げる気か!?流石マズイ!!

って思っていたが、必死に逃げるために後ろに体重をかけ過ぎてバランスを崩し、俺は吹雪と一緒に倒れる。

なんでこんな体勢になった。

簡単に説明しよう。俺、仰向けの状態。吹雪、俺の胸に顔を埋めている。台所からは。

 

「うん、やっぱり笹原って大きいよね」

「そうだねー。あれ、目から汗が」

「わ、私もいつかあのくらいに・・・」

「現実って残酷だよねぇーー」

「アンタどこ見て言ってるの?」

「まぁまぁ落ち着いて、オーラが出てるよ」

 

リッカ、夕張、朝潮、漣、満潮、荒潮、そんなこと言ってないでこの状況をなんとかしてくれ、疲れて動けん。

 

「・・・んで・・」

「何?・・・吹雪?」

「なんでこんなに大きいのー!!」

「アンタ何言ってるのよ!?って胸揉むな!!」

 

そう言って吹雪の顎に拳を入れKO。勝者 笹原!何この終わり方。今の内に合鍵を回収するか。吹雪は・・・気絶してるし、俺のベットで寝かせておくか、邪魔だし。

そこからリッカと夕張と俺で整備関係のことを教えていき、気づいたら23時になっていた。一通り教え終わって、今日は泊まらないかと提案する。前世でそんなことしたら間違いなく警察行きだが、今は女だから問題ない。だから大丈夫!

だが朝潮型と綾波型はこのマンションの五階に住んでいるらしい。マジでこのマンションなんなの?

 

「そういえば、瀬川さん達と川越さん達はどうして私の部屋を知っていたの?」

「時雨ちゃんに教えてもらったの〜」

 

あぁなるほど、そういうことね。てか荒潮よ、お前とははじめて会話したな。

 

「それじゃ瀬川さん達、川越さん達、夕張さん、楠さん。また明日」

「「「「「「「「「「お邪魔しました」」」」」」」」」」

 

そう言ってみんなは帰っていった。

さて俺もシャワー浴びて寝るか。

えっ?吹雪?あっ忘れてた。

そして俺は気絶していた吹雪を起こして自分の部屋に帰した。

あぁ。なんか、かなり疲れた、明日も頑張ろう。

 

 

 

 

 




如何だったでしょうか。
まさかの綾波達が五階に。
ちなみに綾波型は501。朝潮型は502という設定です。
今度は1月10日までには投稿します。
ご意見、ご感想、お待ちしております。
次回はちょっと二年生(オリキャラ)を出していきたいと考えています。
それではまた!


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これが彼女達(彼ら)の実力、そして


突然ですがオリキャラの四人の紹介をします。

冴塚 明日香 2-B 副隊長 兼 第一小隊長
二年生で唯一、車長、砲手、操縦手、装填手、通信手の全てをこなせるが、基本は車長。
普段からのほほんとした口調と性格。だがそこからでは想像も付かない状況判断能力と指揮能力の持ち主。
見た目はアニメ、中二病のくみん先輩でちょっとが慎ましい感じ。

黒川 夏海 2-A 第ニ小隊長
基本は車長だが、砲手と装填手も出来て頼れるお姉さん的ポジション。
可愛いものならなんでも好き。なのでよく主人公に絡むが面倒見がいい先輩。
見た目はアニメ、食戟のソーマの榊 涼子に近い感じ。

相澤 ナズナ 2-B
二年生の中で射撃の腕はトップの砲手で通信手も出来る。
少し堅物で一年生から怖がられるのがたまに傷だが時折見せる猫見たいなところが可愛い先輩で、意外とゲテモノ料理好き。
見た目はアニメ、食戟のソーマの小林 竜胆に近い感じ。

神宮寺 華蓮 2-C
操縦手で、装填手と通信手も出来るツッコミ役、と言っても物静かな人なのでツッコミも激しいツッコミではない。
辛い物好きで料理が得意。
見た目は、キノの旅のキノでちょっと胸がある。



 

 

 

 

 

〜〜〜〜またまた工場内〜〜〜〜

 

 

 

 

 

あれからさらに一週間がたった今日。つまり、入学して三週目の月曜日、今日から一年生も実技練習に参加する。

にしても先週は疲れたなぁ。二年生のデータ採りの為に結構無茶した。砲手のデータ採りだけならまだいいが、車長、砲手、操縦手、装填手、通信手のデータを採る為に短時間でハードなスケジュールを組んで二年生には全員、全部をやってもらった。これで誰が何に向いているかがわかったし、編成が組みやすくなった。あとは一年生の育成である。

 

「それでは今から一〜五グループに別れてもらいます!今から用紙配るのでそれ通りに別れて下さい!」

 

そう言って用紙を配って一年生と二年生がそれぞれグループごとに別れる。

 

「グループごとに別れましたか?」

「私の名前がないんだけど」

「私もーー」

「私もないよー」

「私もないわよ?」

「私も・・ない」

 

そう言って逸見と轟と吹雪と黒川先輩と神宮寺先輩が手を挙げて言う。

 

「五人は私があとで指示を出しますので少し待っていて下さい。では、今週の予定を言います!一、ニグループは今から演習場に向かいます!一グループの一年生は砲手をし二年生は車長!ニグループの一年生は操縦手をし二年生は装填手!三、四グループはこちらに残って練習します!三グループの一年生は車長についての勉強をし、二年生はその指導を!四グループの一年生は装填手及び通信手についての勉強をし二年生はその指導をします!五グループは先週使った戦車の整備を!では一、二グループは私が、三、四、五グループは副隊長がそれぞれ指揮と取ります!分からないことは私か副隊長に聞くように!一、二グループを残して解散!副隊長は私のところまで!」

 

そう言って俺は副隊長を呼び出す。

 

「では副隊長、こちらの指揮をお願いします」

「まっかせて〜〜。ちゃんといい子に仕上げるから〜〜。」

「よろしくお願いします。もし可能なら、先週使った戦車の整備は今週中には仕上げられるようにと、五グループの皆さんに伝えて下さい」

「うん!それじゃみんな〜〜。私のところに集まって〜〜」

 

大丈夫かなあの人?でも二年生で一番出来るし、一応副隊長だから任せるか。

あと五グループの皆さん。一週間どころか、約一カ月ずっと整備だけですがお願いします。いや、嫌がらせじゃないよ。五グループはみんな二年生だけど、以前希望取ったとき唯一後方に希望出したのあの五グループの皆さんだけなんだもん。

 

「それでは一、ニグループはそれぞれ乗ってみたい戦車に乗車!今週はその戦車をずっと使うので真面目に選ぶように!」

 

そして、用紙に名前の書かれていなかった五人の元に向かう。

 

「こちらの五人ついては、先ず、吹雪は神宮寺先輩と轟さん、私は黒川先輩と逸見さんで編成を組みます。吹雪と私は車長、神宮寺先輩と黒川先輩は装填手、逸見さんと轟さんは砲手と操縦手をやってもらいます」

 

それを聞いた逸見と轟はちょっと苦い顔をする。まぁ普通はそうだよな。

 

「割とハードなスケジュールだね紅音ちゃん」

「そうなるわね。二人にはこれからちょっとハードになるけど、なんとか付いてきてほしいの」

「が、頑張るわ」

「頑・・張る・・」

「それと、今日から車長についての勉強も始めるから、部活が終わった後、私の部屋で勉強ね。そのときは吹雪は轟さん、私が逸見さんを見るわ」

「よ、容赦ないね紅音ちゃん。逸見さんはちょっとショック受ける程度で済んでるけど、轟さん・・ちょっと大丈夫?」

 

気がつけば轟は、両手両膝をついていた。そこまで絶望することか?イジメじゃないよ?色々理由があるんだよ、色々と。

 

「さっ、みんなを待たせているから行きましょ。私達はティーガーⅡ、吹雪は好きなのに乗って」

「オッケー」

 

そう言って、自分の戦車に向かおうとした時後ろから抱きつかれた、こんなことをするのは一人しかいない。

 

「突然なんですか、黒川先輩」

「あら、声をかけてないのによくわかったわね♪」

「黒川先輩以外で、私に抱きつく人はいないですからね。それで、何か用ですか?」

「もぉ〜冷たいなぁ。ちょっと癒しを補給したいだけ」

「早く戦車に乗りますよ」

「十秒だけ待って♪」

「・・・・・十秒だけですよ」

「は〜〜い」

 

俺は十秒だけ待つことにした、が。

 

「笹原ちゃんはもっと人に優しくしないとダメだよ?」

「・・・・何のことですか?」

「ま〜た、とぼけちゃって。可愛いなぁ」

 

この人はちょっと苦手だ、多分俺の考えに気づいてるな。

 

「逸見ちゃんと轟ちゃんを今度の大会に出てもらう予定なんでしょ?」

 

やっぱり気づいていたか。正直言って、今の戦力では厳しい。二年生は三十人、一年生は四十人出場。もしくは、二年生にはフルで一年生には二十〜三十人人の予定である。これらにはそれぞれメリットもありデメリットがある。前者の方は、試合が終わったあと早急に戦車の整備、修理、調整が可能であるが、戦力が低下してしまう。なにせ、一年生のほとんどが初心者なのだから。戦車道をはじめて三ヶ月程度で周りに動きを合わせるのは、はっきり言って難しい。後者の方はその逆になってしまう。みんなで整備にあたればすぐに終わる話なのだが、まだみんな中学生なのでそうもいかない。なのでどうして人員が必要のである。それに使う戦車によって必要な人員も変わってくる。どちらを選んでも、今度は一年生がこちらの指示通りに動けるかの問題が発生する。そう、一年生をまとめられる人員が必要なのだ。そこで逸見と轟だ。メタい話だが、原作では逸見は副隊長をしていたから、それなりの素質はある。轟は一年生の中では物事の習得スピードはずば抜けて早い。今はこの二人の頑張りに賭けるしかないのだ。

 

「よくわかりましたね。ですが、私は二人をただ参加させる程度にとどめるつもりはありませんよ」

「?まだ何か考えているの?」

「はい、ですが今のところは、まだ何とも言えません。これからの二人の頑張り次第です」

「そう、なら先輩からアドバイスをあげる」

「なんですか?」

「もっと周りをよく見て行動すること。もっと視野を広げること。そして、もっと先輩に頼ること」

 

 

 

 

『視野をもっと広げろ!そしてもっと先輩に頼れ!なんでもかんでも一人で抱えこむな!』

 

 

 

 

 

あぁ。なんで今、前世の記憶がフラッシュバックすんだよ。全く、それもそうだよな。もっとしっかりしないとな。なんだよこの人、俺の方が長く生きている筈なのに、なんでこんなに頼りになるんだよ。

 

「・・・ありがとうございます。少し気が楽になりました」

「どういたしまして、それじゃ行きましょ」

「はい」

 

そう言って戦車に乗り、演習場に向かった。

 

 

 

 

〜〜〜〜演習場、戦車射撃場〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「それでは今から!射撃の要領について説明します!」

 

要領は簡単である。榴弾と徹甲弾をそれぞれ十発ずつ撃つだけである。先に榴弾を撃ち、次は徹甲弾である。この際、車長は砲手の支援をすることである。なにせ初心者なのだから、弾が明後日の方向に行ったり、演習場外に飛んでいったりしたら流石に責任が取れない。なので支えてやる必要がある。それに今日は戦車が十両超えているので、二個グループに別れて射撃する。一個グループが射撃している間、もう一個グループは待機する形である。流石に十両以上となると色々面倒だしな。

 

「尚!逸見さんと轟さんには三〇発撃ってもらう予定なのでそのつもりでいて貰います!以上!」

 

そしてみんなは砲弾の積載しはじめ、準備にかかる

俺はさっきの五人を集める。

 

「こちらについては、一グループと一緒に射場に入り、周りの人と同じ要領で最初は榴弾十発、徹甲弾十発撃ちます。撃ち終わったら一グループと一緒に退避、操縦手を交代させて、二グループと一緒にまた射場に入り、今度は五発ずつ撃ちます。砲弾は四〇発積載します。何か質問はありますか?」

 

そして轟が質問する。

 

「私達が撃つのは三〇発なんじゃ?」

「それについては問題ありません。吹雪、準備しておいて」

「あぁ、そういうこと。わかった」

 

俺と吹雪以外は理解していないらしい。

 

「大丈夫。あとでいい物見せます。では、お願いします」

 

そう言って準備をはじめ、終わった者から戦車に乗り込み射場に入る。

 

「各車、準備出来たところから報告を」

 

距離は1000m。俺と吹雪ならこのくらいの距離は普通に当たる。さて、逸見の様子はどうかな?

 

「・・・・・・・・・・」

 

なんというか、大丈夫か?これ砲弾、明後日の方向に飛んでいかないか?って思うくらい緊張している。まぁ、中学に入ってはじめての射撃だもんな、無理もない。しかし、こうも緊張していては当たるものも当たらない。仕方ない。

 

「逸見さん」

「何?って!!」

 

そう言ってそっと後ろから抱きついて、頭を撫でる。いつも黒川先輩からされているように。

 

「落ち着いて、そんなに固まっていたら当たるものも当たらない。だからリラックスして、適度な緊張感で、心に余裕を持たせて。大丈夫。ゆっくり狙えば当たるから」

「・・・・・ありがとう」

 

よし、素直な子でよろしい。それに顔がちょっと赤くなって可愛い。てかいい匂いするなぁ。何のシャンプー使ってんだろ?今度聞いてみよ。今、黒川先輩の気持ちがわかった瞬間であった。

なんて思っていたら隣で黒川先輩がニヤニヤしていた。

 

「なんですか、黒川先輩」

「べっつに〜〜♪」

 

やっぱこの人は苦手だ。なんでこの人頼りになるのに、どうしてこういうところあるのかな?もういい、無視しよう。

 

『各車、準備出来ました!』

「了解。逸見さん目標的、もう狙ってて」

「了解」

「よし、それでは射撃を開始する!各車!撃ち方用意!はじめ!」

 

号令と同時に射撃される。さて、逸見の弾は当たったかな?

そして逸見の目標的を見て見る。以外にも目標的には当たっており、ちょっと右下にズレているくらいだった。

 

「すごいよ逸見さん!正直ここまで出来るって思ってなかったよ!」

「それ、褒めてるの!?」

「もちろん!」

 

思わずちょっとテンションが上がってしまった。ヤバイ、気をつけなければ。射撃自体はじめてのはずなのに、ここまで出来るのは正直すごい。これなら期待出来る。

 

「なら、ちょっと修正しよっか。逸見さん、照準はどこにある?」

「今は目標的の真ん中だけど」

「よし、それじゃ照準を上に修正しよっか、上だけ修正して」

「えっ?左はいいの?」

「今は風が吹いてるからね。右にずれたのは、おそらく風の影響だから上だけ修正して」

「わかったわ」

「それから右にズレた分、左に狙いをつけて、発射!」

 

 

 

ドォォォォォォン!!!

 

 

 

砲弾は綺麗に真ん中に飛んでいき、そして当たった。

 

「やった!ど真ん中よ!」

 

嬉しそうだなぁ。まぁ、二発目に真ん中に入ればそりゃテンションも上がるわな、俺もはじめの頃はそうだったし。

そう思っていると風向きが変わった。

 

「ほら、風向きが変わったわよ、私がサポートするから、指示通りに撃って」

「了解!」

「照準はさっきのまま?」

「ええ」

「五時の方向、風速3m・・・逸見さん、照準を真ん中に戻してから、ちょっと右」

「修正したわ」

「発射!」

 

 

 

ドォォォォォォン!!!

 

 

 

今度は上に飛んで行ったか。

 

「それじゃ逸見さん、なんで砲弾が上に行ったかわかる?」

「い、いえ」

「今回の射撃の特徴は?」

「?えっと・・・・ごめんなさい、わからないわ」

「今回の特徴は停車した状態からの射撃。いくら車体自体が重くて動かないとはいえ、固定砲台じゃないから必ずズレは生じる。それを踏まえてもう一回よく狙って」

「わかったわ」

「よし、それじゃズレた分修正しよっか」

「わかったわ・・・・修正したわ」

「よし、発射!」

 

 

 

ドォォォォォォン!!!

 

 

 

今度はど真ん中だ。

おっ、また風向きが変わった。

よし次のステップに進むか。

 

「よし逸見さん、それじゃここで問題」

「何かしら?」

「今何時の方角から何mの風が吹いているでしょう?あっ、目標的を見ながらね」

「えっ、え〜〜と・・・・わからないわ」

 

まだちょっと早いかな?

 

「ならテキトーに砲塔を動かして周りを見渡してみて」

 

そして逸見は砲塔を動かして見せる。

 

「・・・・・ごめんなさい、やっぱりわからないわ」

「うん、わかったわ。装填手は一度砲弾を抜いて待機!」

「了解!」

「逸見さん、ちょっと顔出してみよっか」

「?わかったわ」

 

そうして俺は戦車の車体の上に立って、逸見は砲塔から顔を出す。

 

「さて、再度問題。今何時の方角から何mの風が吹いているでしょう?」

「四時から2mくらいかしら?」

「正解。ではそれを肉眼で見分ける方法は?」

「・・・・・草木の揺れ具合?」

「正解。それじゃそれを踏まえて、残りの砲弾も撃っていきましょ。装填手は準備して!」

「了解!」

 

この調子で最初の二十発は撃ち終わった。残りの十発は逸見だけで撃たせたが、俺のサポートがなくなってちょっと命中精度が落ちたが、それでも全弾的に当たったので良しとするか。

 

「よく出来ていたわ。はじめてにしては文句なしの結果だったわ」

「アンタのおかげよ。残りの十発はどうするの?」

「ちょっと待って、吹雪聞こえる?」

『聞こえるよ〜。どうしたの?』

「そっちは撃ち終わった?」

『うん終わってるよー』

「それじゃ予定通り私と吹雪は交代ね」

『私はこのままでいいよ?』

「アンタが乗ってるのM26パーシングだったっけ?なら変わって。久しぶりにパーシングに乗りたいし、アンタもティーガーⅡの方が全力出せるでしょ」

『紅音ちゃんがそれでいいなら』

「逸見さんはどうする?一緒について来る?」

「いや、そもそもこれから何をするの?」

「これから、私と吹雪で残った十発を撃つの。ドイツ戦車なら、多分私より吹雪の方が扱いは上手だと思うけど、逸見さんはどうする?」

「私は・・・・・付いていくわ、アンタに。アンタの実力が見たいわ」

「わかったわ。吹雪、交代するとき轟さんも一緒に連れて行ってー」

『了解』

「よし、それじゃ周りが撃ち終わるまで待機」

 

そして他の戦車が撃ち終わった頃に無線で指示出す。

 

「それでは!私と吹雪の戦車を残して退避!吹雪と轟さん、私と逸見さんは交代!」

 

そして俺と逸見はティーガーⅡから降りてパーシングに移動する。そして向こうからは、吹雪と轟がこちらに来る。

 

「射程はどうする?このままにする?」

「そうね〜。どうせなら1500mくらいにしましょ。私が左の五個的使うから、吹雪は右の五個的を使って」

「それじゃちょっと移動かぁ、砲弾は?」

「最初に榴弾五発、次に徹甲弾五発」

「了解」

 

そして吹雪と轟はティーガーⅡに向かう。俺達はパーシングに乗り込む。

 

「神宮寺先輩、よろしくお願いします。」

「はい、よろしく」

『全車退避しました』

「了解。吹雪、それじゃ移動して」

『もう向かってるよ〜』

「わかった。退避しているみなさん!今から私と吹雪が射撃をします!よろしければ見ていて下さい!」

『『『『『了解!』』』』』

「よし、それじゃこちらも移動します。後方に下がって下さい。逸見さんは車長お願い」

「了解」

「わかったわ」

 

操縦手に指示を出し、距離を1500mとる。

 

『紅音ちゃん、せっかく撃つんだし、勝負しない?』

「えぇー嫌よ。面倒だし」

『それじゃつまんないよ〜。せっかくなんだし何かしようよ』

 

なんだよ、お前は文化祭のときの女子か。何その「せっかくだし、私達も何か出し物しようよ〜〜」見たいなノリ。あれホント面倒だからやめて。

 

「やらないわよ」

『えぇー。こんな機会あんまりないよ?それに前回は隊長命令で私が射撃したんだから、今度は私のお願いを聞いてほしいなぁ〜〜』

「あぁもう、わかったわよ。相手をしてあげるわ」

『やったー!』

「ルールはどうする?」

『一応、用紙を準備しているから点数勝負しよ!そうだ!五個的使うならいつものアレしよ!』

「準備いいわね、まぁ私の準備してたけど。アンタどこに用紙置いてるのよ?」

『あれ?あっ、置いて来ちゃった!ごめん〜用紙持ってきて〜〜』

「アンタは鬼畜?私もそっちに置いてるからアンタは私の使って、でアンタはどこに用紙置いてるのよ?」

『私のは入って後ろに置いているよ。紅音ちゃんは?』

「私は入って右のところ・・・っと、あったあった」

 

ちょっと逸見にはどいてもらって後ろから用紙と鉛筆を取る。

 

「ついでにタイムも競いましょ。制限時間なし、どっちがより早く、正確に撃てるか勝負ね」

『いいねぇ〜〜、じゃ何か賭けようよ。私が勝ったら今週一週間、朝、昼、夜は私の分までご飯を用意する。朝と夜は紅音ちゃんの部屋で、昼はお弁当ね』

「はぁ!?ふざけるんじゃないわよ!!何今月の食費に大ダメージ与えようとしてるのよ!!」

『だって紅音ちゃんの料理美味しいだもん。あっ、今晩はチンジャオロースがいい!』

「しかも勝った気でいるし」

「まさかここに料理仲間がいたとは」

 

いや神宮寺さん、何を言っているんどすか?

 

「わかったわ、それじゃ私が勝ったら、学校の近くの◯スト電気にある一番高いヘッドホンを買ってね」

『あ、あれっていくらだったっけ?』

「34800円よ」

『高い!高過ぎだよ!大体それ買って何に使うの!?』

「何って、音楽鑑賞よ。今使っているのどうもイマイチなのよねぇ〜〜。まぁ、私も食費が掛かっているから文句はないよねぇ」

『わかった、絶対に勝ってみせる』

「あと、妨害は禁止ね。砲弾を撃ち落としたり、相手戦車を攻撃したり」

『しないよ!ていうか、前者に至っては紅音ちゃんしか出来ないからね!?』

「それじゃルールの確認ね。まず、真ん中の目標的を狙った状態からスタート、一発目は一番左、次は一番右、三発目は左から二番目の目標的、四発目は右から二番目の目標的、五発は真ん中、ここで榴弾がなくなるから、徹甲弾に切り替えてさっきと同じ要領で、制限時間はなし、タイムが早く点数が高い方が勝ち、質問は?」

『ないよ!』

「尚、用紙はそれぞれ、轟さんと逸見さんに渡しておくこと、逸見さん、轟さん、時間測るのと用紙に記入、お願いね」

「『了解』」

「吹雪、準備はいい?」

『いつでもいけるよ』

「神宮寺先輩、ちょっと負担かけますがお願いします」

「いいよ」

「それじゃ」

 

「『はじめ!!!』」

 

先ずは一番左・・・よし!

 

 

 

ドォォォォォォン!!!

 

 

 

よし、ど真ん中!次!

 

 

 

 

 

〜〜〜〜ラスト一発〜〜〜〜

 

 

 

 

 

これでラスト!

 

 

 

ドォォォォォォン!!!

 

 

 

よしど真ん中だ!

 

「逸見さん!タイムは!」

「45秒52」

「吹雪は?」

『46秒32』

 

タイムは勝ったか。

 

「逸見さん、用紙貸して」

「はい」

 

そして用紙を逸見からもらう。うん、ある程度弾がまとまっているな。

俺は用紙に線を入れて、二十五分割する。真ん中が十点、その周りは七点、外側が五点って感じだ。

 

「一斉に言うわよ」

『オッケー』

 

「九十四点!」

『九十一点!』

 

よし勝った!

 

『あぁ〜!!また負けた〜〜!!』

「これで56戦36勝18敗2分けねwwww」

『うぅ〜〜〜〜。勝てると思ったのに〜〜』

「それじゃみんなのところに戻るわよ吹雪」

『うぅ〜。了解』

「操縦手、お願いします」

「オッケー」

 

それから俺達はみんなが待機しているところまで行ったが、なんだかみんながポカーンとしていた。

 

「あの、みんな、どうしたの?」

「アンタ達、どんだけ凄い事したのか自覚がないわけ?」

 

俺の隣に来ていた逸見がちょっと呆れて言う。なんだい?俺は至って真面目に射撃をしただけだが?

 

「それはどういうこと?」

「正直言って、私も驚いたわよ。風が吹いているのに、あれだけ早く正確に撃てるなんて、アンタ達何者よ」

 

いや何者って言われてもなぁ〜。俺からしたらこれが普通なんだがなぁ。っと吹雪達が帰って来たか。

吹雪はティーガーⅡから降りて俺のことろまで来る。うわぁ、悔しそうな顔してんなぁ。その顔がたまらん!その顔が見たかったんだよ!

 

「それじゃ吹雪、約束通りヘッドホン、忘れないでね」

 

俺はニヤニヤした顔で言う。あぁ、最高に気分がいい。

 

「今日は勝てるって思っていたのに〜〜」

「それにしても、パーシングなんて久しぶりだったわ。扱い慣れてない戦車で勝負なんてするもんじゃないわね」

「だから勝負もして賭けもしたのに〜〜!」

 

コイツ、だから勝負ふっかけたのかよ。相変わらずやることが姑息だなぁ。

 

「甘いわねー。私に勝ちたかったら、もっと腕を上げることね」

「いや、それより今慣れてないって言った?嘘でしょ?マジで?」

「ホントよ逸見さん。最後に乗ったのいつだったかしら?私はどちらかと言うとロシアの戦車が扱い慣れているわ」

 

そう言って逸見の質問に答えながら本人を見る。なんだよその嘘だドンドコドーーンみたいな顔は。

 

「凄いよ!どうやったらあんなに出来るんだい!」

「私にも教えてほしいっぽい!」

 

時雨と夕立が目の前まで来て問い詰めて来る。

 

「私も知りた〜〜い!」

「そうね、私も知りたいわ」

 

白露に黒川先輩、他の二年生まで来た。待って!マジでちょっと待って!

 

「吹雪ー・・・・」

 

あっ、ダメだ。吹雪の方にも人が集まっている。

 

「ちょ、ちょっと待って!みんな落ち着いて!」

 

ヤバイ、誰も聞いてない。このままでは俺と吹雪が揉みくちゃにされる。

 

「こ〜ら〜、隊長が困ってるよ〜。みんな落ち着いて〜」

 

そう言って割って入ったのは、轟だった。

 

「えぇー、私達まだ何も教えてもらってないっぽい〜」

「ダメだよ〜。そんなに一気に来たら、相手を困らせるだけだから〜」

「でも〜〜」

 

なかなか諦めない夕立、吹雪の方は神宮寺先輩が割って入ったため向こうは収まっている。

 

「夕立さん、それと他の皆さんも!今日はコツなどを教えることは出来ませんが、時間が出来たときに教えます!まずは撤収の準備をお願いします!」

 

えぇーー、って不満を漏らしながら白露や夕立、その他一年生と、まぁいっか、って諦める二年生。助かった、轟がいなかったらどうなっていたことか。

 

「ありがとう轟さん、助かったわ」

 

そう言って本人の顔を見たとき、俺は寒気を感じた。

 

「ううん、気にしないで!」

 

彼女は笑顔でそう返して来た。えっ?笑顔なのに何故寒気を感じたかって?ゲームをやっている人ならわかるだろう。

そう、彼女の血管がピクピクしているのだ。

 

「それじゃ撤収の準備をしよっか!」

 

そう言って轟はパーシングに向かって行った。

マズイなぁ。あれはいつ爆発するかわかんないぞ。あぁ〜、どうしよう。どうにかして機嫌を取らないと。

どうやって機嫌を取ろうかと考えながら、俺は自分がここまで乗って来たティーガーⅡに向かった。

 

 

 

 

 




如何でしたか?
ちょっと投稿ペースが落ちてきてしまい、申し訳ありません。
次回は1月15日までに投稿します。
やっぱりケラウノス(獣刻)はかわいいですね!一番はレーヴァテインですが!
それではまた次回!


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フラグって、こんな簡単に立てていいのか?

投稿が遅くなりすいませんでした。
ちょっと展開に詰まってしまいました。
ではどうぞ!


 

 

 

 

 

〜〜〜〜笹原の部屋〜〜〜〜

 

 

 

 

 

コーヒーを飲みながら俺はあることを考えていた。

マジでどうしよう、轟。

あれからますます轟の機嫌が悪くなった。先ず、演習場から帰ってきて俺を待っていたのは、学校に残っていた一年生と二年生からの問い詰めである。どうやら無線機の取り扱いに慣れさせる為、実際に無線機を使って練習していたところ、偶々俺達演習場に行っていたグループと繋がったらしい。そして俺と吹雪が射撃しているところを聞いていたと。なんで繋がっちゃうかなぁ。そして俺と吹雪は学校に残っていたグループに問い詰められるが、ここでまたしても轟が割って入って止めてくれた。そしてまた轟が不機嫌になってしまった。

先ずこれで一回。

二回目はその後である。俺は約束通り、吹雪と◯スト電気に行きヘッドホンを買ってもらい店を出たらたまたま前を通った轟と遭遇。吹雪と轟の三人で帰宅している途中で朝潮型の四人と綾波型の四人の計八人とさらに遭遇、そして今日の射撃のことで質問、もとい問い詰められ、轟とは会話をしていない。轟は吹雪と会話をしていたが、コイツも色々質問をしたかったのだろう。問い詰められているときちらちらこっちを見てるのには気づいていた、だが俺は八人の対応をしていて、問い詰めが終わって解放されてから轟のところに戻ったらなんか不機嫌になっていた。

そして今、時刻は午後21時丁度、俺は逸見に、吹雪は轟に今日の復習と車長についての勉強をしていた。

 

「それじゃキリがいいところで休憩しましょ。みんな何か飲みたいのある?」

「私は牛乳」

「私はコーヒー」

「私はアップルティー」

 

おいおい吹雪、牛乳ってお前なぁ〜〜。

俺はコップに牛乳をカップに逸見のコーヒーと轟のアップルティーを淹れながら思う。いやコーヒーとアップルティーはまだわかる。

だけど牛乳って・・・・・まさか。

 

「何よ吹雪、気にしているの?」

「ッ!!」

 

図星だな。俺はテーブルにコーヒーとアップルティー、そして牛乳を置いて吹雪の隣に座る。

まぁ、一番は俺、次は轟かな?そして逸見がきて、吹雪だ。

 

「気にすることはないし、恥じることもないわよ。私達まだ中一なんだしこれからよ」

「アンタ何の話してんのよ?」

 

どうやら逸見は話の内容がわかっていないらしい。轟に至っては頭にハテナマーク浮かべている。さっきから吹雪は俯いている。ならここでトドメを刺してやるか。

 

「胸よ」

「「あぁ〜〜」」

 

ガタンッ!!と吹雪が音を立ててテーブルに頭突きした。

 

「まぁ、その・・諦めなければ・・その、いつかは、ね?」

 

逸見さんや、そいつは慰めになってないぜ?

 

「そうだよ!結果は後から付いてくるものだから!」

 

轟よそんなんじゃコイツは余計に傷付くだけだぞ?

 

「・・・・なん・・・よ?」

「ごめん、聞こえない」

「何で私の周りは胸がデカイのよ!!??」

 

そう叫んで、吹雪は俺の胸を掴もうとする。

だが。

 

「甘いわよー」

「フギャッ!」

 

俺の隣に座っていた吹雪は俺に手を伸ばす。なら対処は簡単だ、吹雪の手を掴んで椅子に気をつけ、後ろに下がればいい。

急に引っ張られて体勢を崩した吹雪はそのまま前から倒れ、そのままうつ伏せになる。

 

「アンタさぁ、近接戦で私にほとんど勝ったことないんだからいい加減に懲りないよ」

「まだだ!まだ終わってないよ!」

「はいはい、諦めてねっと」

 

そう言って吹雪の背中に座る。もちろん両手をキッチリ掴んで。

 

「あぁーーん!なんで勝てないのよー!」

「アンタは攻撃する箇所を注視しすぎなのよ。そんなんじゃ次の攻撃が読まれるわよ」

「ふぇ〜〜ん」

 

ようやく大人しくなったか。だいたいなんで胸を揉みたがるかなぁ?なんなんだよ。

 

「ふーん。これは確かなかなかですなぁ〜」

 

そうして俺はいつの間にか背後に来ていた轟に気づかずにいた。

そしてそのまま胸を鷲掴みされた。

 

「ひゃっ!何すんのよ!」

「いや〜どんなものか、確かめてみたくなってね〜〜。しかしこの大きさって、ほんとに中学生?」

 

お前が言うな!お前も同じくらいだろ!

迂闊だった、コイツの趣味はナンパだった。えっ?もしかして俺も対象なの?おい待て!マジで誰か助けて!

 

「それよりもちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 

逸見がちょっと大きめの声で質問してくる。

ちょっと助けるの遅くありませんかねぇ。

 

「とりあえず座らない?流石に雪宮さんが可哀想よ」

 

あっ、そう言えば。

 

「ごめん吹雪、今どくから」

「・・・・・なんか私の扱い雑すぎない?」

「いつもでしょ。轟さん、いつまでも胸触ってないで自分のところに戻って」

「はーい!」

 

そう言って轟と吹雪は自分のところに戻り、俺も自分の席に座る。

 

「それで逸見さん、聞きたいことって何?」

 

逸見は真剣な表情で俺に言った。

 

「アンタ、一体何を考えているの?」

「・・・・・・・なんのことかな?」

「とぼけたって無駄よ、質問の仕方を変えるわ。なぜ、私と轟さんにここまでしてくれるのかしら?」

「嫌だった?」

「そういう意味じゃないわ。ただアンタからは、何か焦っている。そんな感じがしたのよ。」

 

あちゃー。バレちゃったかぁ〜〜。

正直、ちょっと切羽詰まっているのは事実だ。今のペースでは大会には間に合わない。優勝どころか、準優勝も怪しい。そんな状態だ。

それを逸見達に話すか?無理だ。初心者にこんなことを話してもプレッシャーになるだけだ。ましてやこの二人にやってもらうことはかなりの負担になることだ。

 

「今はまだ言えないわ」

「それは私達が信用出来ないってこと?」

「違う、今このことは、まだ誰にも話していないの。もちろん吹雪にも」

「だから?」

「だから・・・・このことはまだ言えない。今このことを貴女達に話すとプレッシャーになるから」

「それって要は信じてないってことでしょ」

「違う!」

 

あーもう、女ってほんとにめんどくさいなぁ。

そう思っていると吹雪が。

 

「あぁ〜もう!じれったい!素直になりなよ!それとも私のことも信用出来ないの?」

「それはち「違うなら話してよ。ね?もっと周りを頼って」」

 

あぁ〜。黒川先輩から言われたばっかりなのに。はぁー。

 

「わかったわ。でも話すからには二人には頑張ってもらうわよ」

 

さて、どこから話そうか。

 

「二人には今度の大会にはもちろん参加してもらうわ、貴女達二人だけじゃないわ。今ところ私の考えでは逸見さん、轟さん、あとの一年生達はまだなんとも言えないけど、今のところ川越さん達と瀬川さん達、佐々木さん達に乃村さん達は候補よ」

 

あとの一年生はまだ見ていないからなんとも言えないが。

 

「それはなんとなくわかっていたわ」

「私も〜〜」

「だけどそれなら私と轟さんにここまで教える理由にはならないわ」

「だよねー」

「それじゃここから本題に入るわ。二人のどちらかには()()()をやってもらうわ」

 

これには二人もビックリって表情だな。まぁ普通はそうだろ、入部してまだ日が浅いのにいきなりやれって言われたらちょっと混乱するよな。俺だったら丁重にお断りする。なんでかって?そんな責任重大なことはしたくない。まぁ隊長をやってる俺が言っても意味ないか。

 

「ちょっ、それは本気なの!?」

 

逸見はその場で立ち上がってテーブルに身を乗り出す。

 

「本気よ。細部の編成はまだ決めていないけど、どちらかには小隊長を、どちらかには私が率いる小隊の車長をやってもらうわ。もしくは二人共同じ戦車で組んでもらう」

「でも紅音ちゃん、それはいくらなんでも負担が大きいよ。私や紅音ちゃん、二年生の先輩方ならまだわかるけど、入部してまだそこまで経験を積んでいないのにいきなり小隊長はちょっと」

「もちろんそのことも考えたわ。なら質問するわ。私達の最大の弱点は何?逸見さん」

「えっ?えっと・・・みんなが初心者?」

「正確には違うね。轟さん」

「えっとね〜〜・・・戦車の数とか火力とか?」

「吹雪、正解は?」

「まず第一に人員不足だね。私達は全員で九十名だからかなり厳しい戦いになるね」

「九十人なら多いじゃないかな?」

「実は轟さん、これはかなり厳しいの」

「そう、吹雪の言う通り、これからはかなり厳しい戦いになるわ。まず戦車一両に対して必要な人員は?逸見さん」

「四〜五名、KV2とかなら六名」

「そうね、仮に一両に五人必要とするわ。そうなると十両で五十人必要になる」

「全然足りるじゃん」

「いえ、足りないわ」

 

ここで逸見が呟く。どうやら気づいたようだな。

 

「そう、足りないわ。轟さん、大会のルールは知っているかしら?」

「細かいところまでまだ」

「戦車道の基本ルールの中の一つ、準々決勝までは十両、準決勝は十五両、決勝は二十両で戦うの。つまり最低でも部員は百人は必要なの」

「あと十人足りない!」

「それじゃ吹雪、二つ目は?」

「第ニに一年生はみんな初心者で、経験者が二年生しかいない。これに関しては、三年生がいなくなったのがデカイ、っていうか痛いね。まぁ今更どうにも出来ないし、仕方ない。」

「それだけならまだいいわ。以前私が前衛で戦うのと後衛で支援するのどっちがいいか希望取ったの覚えてる?」

「あぁ〜あったわね」

「えっ?あったっけ?」

 

お前らなぁ〜〜。一応大事ことなんだけどな。

 

「まぁいいわ。それについては本人の希望を優先するけど、今ところ前衛で戦う前衛部隊と後衛で支援する整備、支援の部隊を作り、この二つに割れてもらうわ。予定では前衛部隊が六十〜七十人、整備、支援部隊が二十〜三十人ってところね」

「ちょっと待って紅音ちゃん、それをやるとなると」

「えぇ、必然的に人員がさらに足りなくなる」

「紅音ちゃん、この際、前衛後衛はなしにした方がいいんじゃない?」

「ダメよ吹雪」

「どうして?このままじゃ人員が足りないよ」

「最大の理由は、まだ私達が中学生ってこと。要はまだ体力が無いってことよ。逸見さんと轟さんに聞くけど、練習が終わってから戦車の整備をして正直キツイでしょ?」

「それは・・・・」

「まぁ・・・その」

「はっきり言って。今後の課題でもあり、乗り越えないといけない壁だから」

 

そう言って二人は静かに頷く。

 

「まぁそうでしょうね。別に悪いことじゃないわ、これから改善していけばいい話しだから。話しはちょっと変わるけど、戦車道の基本ルールの中に、開催地は公平を期するために連盟がルーレットで決め、各校はその通達を受けたら七十二時間以内に開催地に到着するものとするってあるわ。もちろん戦車の改造、整備、修理、編成、作戦立案も含めて」

「それって!」

「えぇ、私達が通っている学校は陸の上、学園艦ならまだしも、学校に戻って部員全員で戦車の整備、修理、改造してから開催地に向かってたら、体力が持たないし時間に間に合わないわ。通達まで時間はあるけど、仮に戦車が数両大破して開催地が北海道とかだったら確実に間に合わない」

「紅音ちゃんはそこところどうするの?」

「その為の前衛部隊と後衛部隊よ。私の考えでは、後衛部隊は学校で待機してもらって、前衛部隊は貨物列車に戦車を乗せて開催地に出発。試合が終わったら再び貨物列車に戦車を乗せて学校に戻る。その後、前衛部隊は次の対戦相手の情報収集や作戦立案、及び休息。後衛部隊は戦車の整備、改造、修理をする。開催地の通達までに戦車の整備、改造、修理が間に合わなければ別の戦車を使うわ。幸い、私達の学校は戦車の数は多いから予備は幾らでもあるわ。それの繰り返しね」

「悔しくけど、これが今の現状だね」

「アンタの考えはよくわかったわ。苦渋の決断ってヤツね」

「ウチの学校って、結構なハンデを背負っていたんだね〜〜」

 

吹雪はちょっと考える仕草を、逸見と轟は椅子の背もたれに体を預けて天を仰ぐ体勢を取った。

 

「貨物列車に戦車を乗せて運んでくれることと、私達の学校に戦車がたくさんあったことは唯一の救いね」

「でも紅音ちゃん、仮に準決勝まで進んだらとうするの?人員足りないよ?」

「準決勝までは十両、決勝は最悪十五両で戦うしかないわね」

「厳しいわね」

「そこの細かい見積もりはまた立て直すわ。これが私の今の考えよ」

「紅音ちゃん。これが全部じゃないでしょ」

「どうしてアンタはそうも私の考えを見抜くのかなぁ?えぇ、そうよ。これは貴女達三人に関係することよ」

「あっ、私も入ってるんだ」

「当たり前よ。今から言うことは他言無用よ」

 

三人は真剣な表情になって俺の次の言葉を待つ。

 

「この三人の中から、今年中に()()()を選ぶわ」

 

そしてしばらく静寂が続き。

 

「「「はっ、はぁーーー!!??」」」

 

うるさいなぁ。ご近所さんに迷惑でしょ?全く、最近の若者はなっとらんのぉ。

 

「ア、アンタ!何重要なことをさらっと言ってんのよ!」

「何!ついに私の時代が来たの!?」

「紅音ちゃん!私だよね!副隊長は私だよね!」

 

なんなんだよ、普通は逸見みたいな反応するのが常識だろ?轟、お前の時代は決して来ないぞ。吹雪、お前ちょっと落ち着け。

 

「落ち着いて、まぁ今のところ候補は吹雪だけど、頑張り次第では逸見さんや轟さんの可能性もあるわよ」

「やったーー!今のところ候補は私なんだね!」

「頑張り次第って言ってるでしょ。場合よっては逸見さんや轟さんもあり得るって話しよ。あと吹雪については二人より厳しく評価するからね」

「なんで!?」

「当たり前でしょ。私を除いて、一年生の中ではアンタがダントツトップなんだから、それじゃフェアじゃないわ。だからアンタは厳しく評価するわ。私的には逸見さんと轟さんに頑張ってほしいわ」

「私には何もないの!?」

「二人に負けたら、わかってるわね?」

「そんなぁ〜〜!」

「はい、今日の勉強会はここまで。今日のことは他言無用ね。この返事は、明日から部活に取り組む姿勢で示してね。もう遅いし、よかったら夜ご飯はこっちで用意するわ」

 

そう言って俺は作り置きのキノコのペペロンチーノを冷蔵庫から出して、レンジで温め、テーブルに運ぶ。

 

「「「「いただきます」」」」

 

さてちょっと自信作なんだがどうかなぁ。

 

「美味しい!やっぱり紅音ちゃんの料理は美味しいね!」

「ホント美味しいわね」

「美味しい!」

 

よかった。やっぱり人から美味しいって言ってもらえると嬉しいな。

 

「「お嫁に来て下さい!」」

「「アンタ達、何してんのよ」」

 

マジで何してんのだよ。

 

「さっ、早く食べて。逸見さんも早く食べて」

「・・・エリカ」

「えっ?」

「逸見じゃなくてエリカって呼んで」

「・・・わかったわ、エリカ」

 

よっしゃーー!!フラグ来ました!まさかエリカから下の名前で呼べと言われるとわ!!エリカさん!お嫁に来て下さい!!

ん?なんか視線を感じるな。俺はその視線の送り主を見る。そいつは血管をピクピクさせながら俺を見ていた。

 

「どうしたの轟さん?」

「な、なんでもないよ!」

 

おいーーーー!!なんで!?なんで轟が怒っているの!?えっ?俺なんかマズイことした?マジでなんで!?

 

 

 

 

〜〜〜〜22時〜〜〜〜

 

 

 

 

「それじゃ気をつけね」

 

俺は三人を玄関まで見送る。

 

「じゃね紅音ちゃん」

「まったねぇ〜〜!」

「お邪魔しました」

「また明日ね吹雪、轟さん、エリカ」

 

そして俺がエリカと名前を言って、轟がまた血管をピクピクさせる。

あぁそうことか。

 

「あぁ、その、轟さんはちょっと待って」

「えっ?」

「エリカ、吹雪、またね」

 

二人が帰ったのを確認してから轟を玄関に入れる。

 

「それで笹原さん、何か用事?」

 

俺は無言でそっと抱き寄せる。

 

「えっ?」

「ごめんなさい」

「えっ?えっ?何が?」

「ずっと我慢してたでしょ」

「な、なんのこと?」

「隠さなくていいわ。貴女がずっと怒りを我慢していたのに、私は何もしてあげられなかった。本当にごめんなさい」

「べ、別に怒ってなんか「貴女、我慢するとき血管をピクピクさせる癖があるでしょ」ッ!!」

 

図星だな。まぁゲームでもそうだったから知ってはいたが。

 

「・・・・・・いよ」

「轟さん?」

「今更遅いよ!!」

 

とうとう轟の怒りが爆破した。

 

「ごめんなさい」

「だから!今更謝っても遅いよ!!なんで!気づいていたらその場で言うのが当たり前でしょ!」

「そうね、本当にごめんなさい」

「もう遅いよ!!私、ずっと我慢してたのに!!色々聞きたいことたくさんあったのに!!なんで今謝るのよ!!」

 

だって、どうしていいのかわからなかったんだもん。

なんて言えないよな。

 

「ごめんなさい。私、そういうところ鈍くて、何か合図とかサインをしてくれないと気づかなくって。ごめんなさい轟さん」

「弥生!」

「えっ?」

「これから弥生って呼んでくれたら許す!」

「・・・・・わかったわ、弥生」

「うん、許す。それといきなり怒ってごめん。私、どうしても感情的になりやすくて、すぐカッとなってしまって、周りから怖がられるやすいからすぐ我慢しちゃうんだぁ。怖かったでしょ?」

「大丈夫よ。怖くないわ。それだけ他人のことを思ってるって証拠よ。弥生は優しい子だわ」

「なんかお母さんみたいな言い方だねっ!」

 

それ、俺も今思った。何ババくさいこと言ってんだろ俺。まだ子供を作った経験ないからなんとも言えないが、なんだろこの複雑な気持ち。

 

「何か悩み事があったら私に言って、いつでも相談に乗るから」

「うん!」

「それじゃまた明日ね。遅いけど大丈夫?家まで送るよ?」

「大丈夫!私もこのマンションの702だから!」

「そう、それじゃまた明日」

「うん!おやすみ()()()()()!」

 

そう言って弥生は帰っていった。

てか今さらっととんでもない言ってなかったかアイツ!?えっ!?702!?俺の部屋の真上じゃん!!しかも紅音って言ってなかったか!?おい、なんか恥ずかしいな!!

何!?一日でフラグを二つ建設しちまったよ俺!?

あぁもう!今日は寝る!!

そして俺はシャワーを浴びて、ベットへレッツダイブした。

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。
次回は1月19日までに投稿します。
ご意見、ご感想お待ちしております。
それではまた次回!


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またまたトラブルを起こす!前編

今回は前編です。
また主人公達が問題を起こします!
どうぞ!


 

 

 

 

 

あれから約一カ月、ゴールデンウィークも終わり五月下旬に入った頃、今日も学校が終わって、これから部活に向かおうとしたところ校内放送で紫から呼び出しをくらった。しかも俺と副隊長の冴塚先輩の二人で校長室に。

俺なんか悪いことしたかな?あれか?部活に力を入れすぎたか?いや、確かに練習メニューはハードで、ほとんど俺の独断で動いていたが、この前そのことで怒られて、それからはちゃんと一カ月のスケジュール表と毎週の月曜日に一週間のスケジュール、あと毎日その日一日の練習メニューについての報告はしているし。マジなんで呼ばれた?

 

「笹原ちゃん、なんか私達悪いことしたかな?」

 

俺の隣で一緒に校長室に向かっていた冴塚先輩も、どうやら心当たりがないらしい。

 

「いえ、私もわかりません。私はせいぜい、授業態度くらいです」

「授業態度?どういうこと?」

「今、前衛部隊と後衛部隊の編成について考えているんですよ。前衛部隊は誰と誰を同じ戦車で組むか。後衛部隊は誰を整備長にするとか、誰を試合の時、一緒に連れて行くとか、その他色々を授業中考えてました」

「あ〜〜、この前取り入れた新しい体制のことだね〜〜。でもダメだよ〜〜、ちゃんと授業を受けないと〜〜」

「授業はちゃんと受けてます。というか今やっているところはもう予習してますので、正直退屈です」

 

二回目の中学生ライフだからな、マジで退屈過ぎる。

 

「そうなんだ〜」

「そう言う冴塚先輩は何か心当たりはないんですか?」

「私?う〜〜ん・・・・・・・私も授業態度かな〜〜」

「何やったんですか」

「その言い方ひどいよ〜〜!ちょっと授業中に居眠りしただけだよ〜〜!」

「私よりもひどいじゃないですか。しかし隊長と副隊長、二人揃って授業態度が悪ければ、呼び出されるのも仕方ありませんね」

「でもそんなことで普通呼び出すかな〜〜。私、今まで何回も居眠りしたけど、呼び出されたの今日が初めてだよ〜〜?」

「先輩、ホントに成績大丈夫なんですか?」

「大丈夫だよー!私これでも学年三位なんだよー!」

 

マジで!?正直意外過ぎる。この人のことだから赤点ばっかだと思ってた。

そうこうしている間に校長室に着いた。俺はまた怒られるのを覚悟して扉をノックする。

 

「笹原 紅音、以下二名入ります」

「どうぞ〜〜」

 

緊張感のない声だな〜、ホントなんで呼ばれた?

そんなことを思いながら扉を開けて中に入った。そこには見覚えのある人物一人がソファーに座っており、見覚えのない人物二人、見覚えのある人物の左にあるソファーに座っていた。

その見覚えのある人物とは。

 

「西行寺・・・幽々子・・・」

 

誰にも聞こえないようにそう呟く。

何故コイツがここに居る。そんなことを考えていると俺の考えを察したのか、紫が口を開く。

 

「紹介するわね。こちら常幻西中学校の校長、西行寺 幽々子。そちらの二人は常幻西中学校戦車道の隊長さんと副隊長さんよ」

 

いや、ちょっと待て。常幻・・西?マジであんのかよ!?いや、東があるなら西もあるのかなって思っていたけど、マジかよ!しかもそこの校長が幽々子かよ!

ないわ〜〜!

マジでないわ〜〜!!

コイツが校長なんてないわ〜〜!!

いや、紫がここの校長してるくらいだから、なんとも言えねぇ〜。

 

「とりあえず座ったら?立ったままでだと疲れるでしょ?」

「・・・わかりました。では」

 

紫に言われた俺はそう言い、空いているソファー、常幻西の二人と対面する形で座る。

 

「それじゃ自己紹介からしましょうか。先ずは常幻西から」

「はい、常幻西中学校戦車道、隊長の三年 前原 沙奈です」

「同じく、副隊長の二年 藤井 麻奈です」

「ではこちらも、常幻東中学校戦車道、隊長の一年 笹原 紅音です」

「同じく、副隊長の二年 冴塚 明日香です」

 

紫に自己紹介するように言われた俺達はそれぞれ紹介した。

 

「東はとうとう一年を隊長にしてきましたか」

 

相手の隊長は、嫌味ったらしく言ってきた。

 

「何か問題でも」

「い〜え、ただ東も落ちたものだなって思っただけです」

 

あぁ、コイツはそういう奴か。まぁいいや。

 

「な、なんですって!」

「副隊長、落ち着いて下さい」

「で、でも笹原ちゃん!」

「気持ちはわかります。あと、ここでは隊長と呼んで下さい」

 

ちょっと睨み、冴塚先輩を黙らせる。

こんな奴の挑発にいちいち乗ってやる必要はない。

 

「・・・・・ごめんなさい」

「フン、分を弁えてるようですね。そういう奴は嫌いじゃないですよ、東の隊長さん」

「早速で申し訳ありませんが、八雲校長、本日はどの様なご用件で?」

 

相手の隊長を無視して、紫に問いかける。相手の隊長はそれが気に入らなかったのか、舌打ちをして黙る。

 

「実は西中からの申し出で、練習試合をしてほしいの」

 

また面倒なことを涼しい顔して言うなよ。

 

「まっ、勝敗は見えていますけどね。噂では東中の三年は全員退部したらしいじゃないですか。三年はいない、一年はほとんどが初心者、まともに戦えるは二年だけ、何故三年が全員退部したかは知らないですが、今年の東は初戦敗退かもしれませんね?」

 

コイツまだ言うか。そろそろホントうるさいんだけど。てかなんで紫と幽々子は扇子で口元隠してニコニコしてんだよ。何が楽しいんだよ。

 

「隊長!なんで何も言い返さないんですか!」

「落ち着いて下さい副隊長。今あちらが言われたことは全て事実です。確かに三年生の不在、一年生はほとんどが初心者、まともなのは二年生だけ、全て事実です。そんなことで腹を立てもなんの意味もありません」

「でも・・・・」

「東の隊長さんは自分達の立場をよく理解しているじゃないですか」

 

あぁ、もう、うっぜ。

紫と幽々子は動く気配ないし。

 

「えぇ、自分達の立場はよく理解しています。それを踏まえて、あえて言います」

「なんですか?」

「弱い犬ほど良く吠える」

「・・・・言いたいことはそれだけですか?」

 

挑発にしてはイマイチだったか。

 

「西中の生徒には正直ガッカリです。まさかここまで礼儀を知らないとは、馬鹿なんですか?礼儀作法の授業でも取り入れたらどうですか?」

「なんですっ「黙れ雑種」ッ」

 

うん、やっぱりAUOのセリフはいいな。

 

「ルールを決めましょう。試合は明々後日の土曜日、場所は熊本県が保有する演習場、十両編成。そして殲滅戦、問題ありませんか?」

「いいでしょう。格の違いを教えてあげます。校長、副隊長、行きましょう」

「私は八雲校長にまだ用事があるから、二人は先に行って校門で待ってて〜」

「わかりました。副隊長、行きますよ」

「はい」

 

そう言って二人は扉まで行く。

 

「絶対に後悔させてあげます。格下が」

 

あ?今アイツなんて言いやがった?まだ嫌味を言うか。

俺は西中の隊長のところに歩み寄ろうとした時。

 

「笹原さんは残って下さい。冴塚さんはちょっと席を外して下さい」

「わ、わかりました」

 

そして紫と幽々子、そして俺の三人だけになった。

 

「なんの用だ」

「用なんてないわ。アナタが西中の隊長に、何かよからぬことをしようとしたから止めただけ」

「・・・・・一つ確認したいことがある」

「何かしら?」

「全く関係ない話だけど、幽々子は俺のことを」

「もちろん知っているわ。紅狐さん」

「・・・・・失礼しました」

 

俺はそう言い残し、校長室を出て工場へ向かった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜廊下〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「さ、笹原ちゃん。どうしたの?」

 

俺は無言のまま工場に向かっていた。正直言って腹立たし。

俺も受け流すつもりだった、しかしあそこまで見下されたら何もしないわけにもいかない。絶対に負けるわけにはいかない。

それに紫と幽々子、あの二人はいい加減過ぎる。何故止めなかった、何を考えている。

 

「笹原ちゃん、校長から何か言われた?」

 

俺は歩みを止め、冴塚先輩に指示を出す。

 

「冴塚先輩、先に行って練習を全てストップしてみんなを工場に集めて下さい。事情は全て私から説明します。私は少し用事がありますので」

「わ、わかった。先に行ってるね」

 

そう言い残し、冴塚先輩は工場に向かった。

周りにはだれもいない。俺は近くにあった自販機でコーヒーを買って、一気に飲み干す。

 

ガコンッ!!

 

俺は自販機の側面を殴った。

 

「あの三下供が・・・・後悔させてやる・・・・」

 

そう呟き、空き缶を捨てて工場に向かった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜工場内〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「皆さん、貴重な練習時間に集まって頂き、ありがとうございます。早速本題に入ります。練習試合が決まりました」

 

工場内が騒つく、まぁそれはいい。

そして二年生の一人が質問してきた。

 

「相手はどこ?」

「対戦相手は常幻西中学校です」

 

工場内がさらに騒つく。

 

「今回の練習試合は、西中からの申し出で受けることになりました。ルールは十両編成で殲滅戦、場所は熊本県が保有する演習場、試合は明々後日です」

「これまた随分と急だね」

「申し訳ありません、私の独断で試合の日時、場所、ルールを決めました」

「アンタらしくないわね、何があったの?」

 

エリカがちょっと顔険しくしてたずねてくる。

 

「実は・・・・」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜状況説明〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「なるほど、事情はわかったわ」

 

エリカはちょっと呆れた口調でそう言った。

 

「雪宮さん、貴女の幼馴染はいつもこうなの?」

「うーん、まぁそうかな」

「はぁ〜」

 

エリカと吹雪がそんなことを言う。

いや、喧嘩売ってきたの向こうなのに、なんで俺が悪い見たいになってんの。

 

「まぁ、紅音ちゃんが人を殴ってないってわかったからいいよ」

「?何言ってんの?」

 

吹雪の言葉にエリカは首を傾げる。

 

「紅音ちゃん、右手で何か殴ったでしょ?」

「よくわかったわね」

「右手から血、出てるよ」

 

吹雪に言われて、右手の甲を確認する。よく見たら指の第三関節辺りから血が垂れていた。

 

「ちょっとアンタ!大丈夫なの!?」

「ムカついたから自販機の側面を殴った、反省はしていない」

「反省しなさい!」

 

コントか?コントなのか?俺はそんなつもりは全くないのだが、何故がこうなった。

 

「笹原ちゃん、校長室から出てきたときすごく不機嫌だったよね〜」

「あそこまで見下されたら不機嫌にもなります。相手校の隊長の胸ぐら掴んで殴ろうとも考えたくらいです」

「よ、よく我慢できたね〜」

「まぁ、最初は聞き流すつもりでしたが、最後の一言で病院送りにしてやろうと思ったのは事実です」

 

その一言で部員全員がちょっと引いた。

なんだよ。

 

「と、とりあえず救急箱持ってくるね〜〜」

 

そう言って冴塚先輩は部室に向かった。

 

「雪宮さん、貴女からも何か言ったら?」

「とりあえず、どうやって相手校を叩き潰す?」

「ちょっと貴女!」

「まぁ正直、それが目的で殲滅戦にしたわけだし、今のところ三つ作戦があるんだけど」

「アンタまで!」

「作戦立案は紅音ちゃんに任せるよ。編成は?」

「人の話を聞きなさい!」

「それもある程度考えてる。とりあえず吹雪は今日から明日の部活の時間まで相手校の情報収集にあたって、手段は問わない、今日もう上がっていいから。あとアンタには一個小隊の小隊長をやってもらうから覚えておいて」

「ちょっと待ちなさい!」

「オッケー!じゃお疲れ〜」

「お疲れ」

「コラーー!!」

 

全く、そんなに大声出して。どうしたんだい、何か良い事でもあったのかい?

 

「何?」

「何ってアンタ、雪宮さん一人でいいの!?」

「大丈夫よエリカ、吹雪は情報収集能力に結構長けてるから問題ないわ。副隊長!」

「何〜」

「今から私と一緒に編成を考えますので、一緒に来て下さい」

「わかった〜〜、そこで手当てもやろっか〜〜」

「ありがとうございます。黒川先輩!相澤先輩!」

「何?」

「うん?」

「申し訳ありませんが、今から私と副隊長は席を外します。今日の練習の指揮をしていただいてもよろしいでしょうか?」

「任せてちょうだい」

「オッケー」

「よろしくお願いします。副隊長、行きましょう」

 

それ言って俺と冴塚先輩は部室に向かった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜部室〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「それじゃちょっと右手出して〜〜」

「すいません。ありがとうございます」

 

俺と冴塚先輩は椅子に座り、向き合う形になっている。

 

「すごいな〜、笹原ちゃんは〜」

「?・・何のことですか?」

「校長室でのことだよ。流石に私でも、相手校にあんなことは言えないよ」

「いえ、私はただ言われっぱなしは嫌いなだけで」

「だからすごいな〜って、相手は三年生だよ?」

「私の中ではそんなの関係ありません。ほとんど実力で決まる、それが戦車道。私はそう思っています。強者は生き残り、敗者は死ぬ。年上年下なんて関係ありません」

「そうやってはっきり言え笹原ちゃんが、私は羨ましいよ」

「冴塚先輩も十分に強いです」

「えっ?」

「二年生で唯一、車長、砲手、操縦手、装填手、通信手全てが出来る。正直すごいです」

「・・・・・・そう言ってもらえて嬉しいよ」

 

先輩はちょっとくらい雰囲気で言う。

 

「私が隊長になる前、三年生の方達に言ったこと覚えてますか?どんなに下手でもやる気があるなら絶対に見捨てないって言ったのを」

「覚えてるよ」

「今の東中は確実に強くなっています。一年生も二年生もやる気は十分あります」

「そうだね、そうだよね」

「勝ちましょう、この試合」

「うん!」

 

そう言って冴塚先輩は元気なった。

今の東中は強くなってる、一年生も試合に出れる人材もそこそこいる。

さて、久々にちょっと本気を出しますか!

 

 

 

 

 




今度は1月26日までに投稿します。
ご意見、ご感想お待ちしています!
ではまた!


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またまたトラブルを起こす!後編

今回は投稿が遅れて申し訳ありません。
今回は後編になります。
ではどうぞ。


 

 

 

 

 

翌日、時刻は十二時三十分、練習試合が明後日に迫った今日、吹雪は欠席した。

理由は簡単、昨日の部活の時間、私は吹雪に試合相手である西中の情報を集めてくるように頼んだからだ。昨日は部活が終わってマンションに帰ったとき、なんとなく吹雪の部屋の扉を開けてみようとしたが帰っていなかった。そのあとも部屋に帰った様子はなかったが、まぁアイツのことだし、大丈夫だろう。

 

「笹原さん」

 

昼飯も食べ終わり、練習試合のことを考えていると意外な人物達から話かけられた。

 

「寺本さん、それと戸羽さんと和田さん」

 

まさかのファン◯ル組だった。えっ?◯の意味がない?気にするな!

 

「どうかしたの?」

「いえ、大したことじゃないけど、雪宮さん今日は欠席だったから何か聞いてないかなって」

 

おぉー、アイツを心配してくれているんだな。なんか意外。

 

「気にしなくても大丈夫よ。多分部活の時間までには帰ってくるから」

「そうなのか?」

 

こら和田、どこぞの人食い妖怪のセリフをパクるな。

 

「えぇ、心配してくれてありがとね」

 

それを聞いた三人はどこかへ行ってしまった。

 

「さて、編成は考えたし、あとは作戦ね」

「まだ考えていなかったのですか?」

 

今度は後ろに座っている四季から話かけられる。俺は四季と向き合い話す。

 

「作戦はいくつか考えているわ。でも相手がどういう戦い方をするかわからないの」

「つまり、雪宮さんからの情報がないと最終的な詰めが出来ないと」

「そういうこと」

「まぁ、こればかりは仕方ありませんね」

「でも雪宮さん一人に任せてよかったの?」

 

突然の乱入に、俺は四季の後ろを見る。そこには腕を組んで俺を見ている遊佐がいた。

 

「そこは問題ないわ。むしろこういうのは一人でさせてくれって言うくらいだし」

「信頼してるのね」

「まぁね。一番付き合いが長いし、お互いのことをよく理解してるしね」

 

さて、吹雪は一体どんな情報を持ち帰ってくるかな。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜工場内〜〜〜〜

 

 

 

 

 

さぁ放課後だ!マイクチェックの時間こら!何考えているんだ俺。

今、部員のみんなには待機してもらっている。何故か、それは吹雪の帰りを待っているからだ。

 

「あのリーダー、あとどのくらい待てばいいですか?」

 

不安になったアリサがたずねてくる。

 

「多分そろそろ帰ってくるからもう少しだけーー」

 

そのとき携帯が鳴った。電話の相手は吹雪からだった。

 

「もしもし、どうしたの?何かトラブル?」

『あっ、紅音ちゃん?そろそろ着くから待ってて〜』

「わかった、てか風の音がうるさいけど、アンタ今何処にいるの?」

『外に出たらわかるよ!今上空2000mくらいかな?』

「は?」

 

俺は慌てて工場の外に出て、空を見上げる。そこには何かが空から降ってきていた。それは途中でパラシュートを開きゆっくりと降下して着地した。

 

「ただいま!」

 

おいちょっと待て!お前は空挺部隊か!なんで降下作戦してんだよ!てかカッコイイなお前!!

 

「とりあえず言いたいことは山程あるけど、おかえり」

 

そんな俺と吹雪を除く他の部員は。

 

(((((いや!どうやって空から降ってきた!!!)))))

(((((そもそもそのパラシュートはどこから持ってきた!!!)))))

(((((普通に帰ってこいよ!!!)))))

 

そんなことを思っていたことに、俺と吹雪はこの時気付くことはなかった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜空き教室〜〜〜〜

 

 

 

 

 

俺達は空き教室に移動した。いや、流石に九十人ってなると部室にみんなは入りきれないし、そもそも部室に黒板ないし。

いや、空き教室でも結構キツキツだけど、部室よりはマシである。

 

「それでは西中の情報についてですが」

 

黒板の前に立つ吹雪が、教卓に手をついて話しはじめる。

 

「まず相手の戦い方は、統制された陣形、圧倒的な火力を用いての短期決戦、これを意識しているみたいだけど、紅音ちゃん、これが私がこの目で見て思ったことなんだけど」

 

おいちょっと待て、それって。

 

「西住流ね」

「正解」

 

俺が西住流という単語を口にした瞬間、教室がざわめいた。

 

「つまり、相手は西住流を意識して戦っているってこと、そう捉えていいのね」

「その通り」

 

うわぁ、面倒くせぇ。

 

「ちょっと、それってマズイじゃない!」

 

ここでエリカが加わる。

 

「えぇ、ちょっとマズイわね」

「ちょっとどころじゃないわよ!アンタ状況わかってるの!」

「落ち着いてエリカ。吹雪、西中に西住家の人はいるの?」

「そこは大丈夫。西中に西住家の人はいないよ」

「なら勝ち目はあるわね」

 

相手側に西住家の人間がいないならどうとでもなる。

 

「アンタ、それ本気で言ってるの?」

「もちろんよ」

「なら聞かせてちょうだい」

「わかったわ。吹雪、いくつか質問するわ」

「何?」

「まず一つ目、相手の基本戦術は?」

「十両編成の場合、五:五に別れることが多いみたい。あとは三:三:四に別れたり三:三:三:一に別れたりするけど、おそらく今回は最初の編成でくるのが濃厚」

「根拠は?」

「相手はこちらを格下と思っている。これが一番の理由、二つ目、三つ目の編成は主に強豪校と試合しているときに見られる編成だったからね」

 

なるほど、つまり眼中にない相手はそこまで警戒しないと。

 

「二つ目の質問、私達と西中、どちらが上手く連携がとれてる?」

「まず間違いなく、二年生()()なら西中かな、でもこちらは、これに一年生が加わると私達だね」

「西中ってそんなものなの?」

「紅音ちゃん、私達の最大の弱点は?」

「人員不足」

「その通り。でも紅音ちゃん、人員不足は決して弱点じゃないんだよ」

「というと?」

「人が多いってことは、必ず練度の低い人出て来る。つまり指導が行き届いていない人がいる」

「なるほど、いくら人が多くても全員の面倒が見れないと意味がないか」

「そういうこと」

「西中ってそんなに部員多いの?」

「三年生が六十人、二年生が六十人、一年生が百二十人だったかな?三年生は受験生だから部活よりもそっちの方を優先してるみたい。だから今は二年生が主体で動いてる」

「つまり、六十人で百二十人見てるの?」

「まぁそうだね。無責任だねぇ、三年生で部活してるの多分隊長とあと数人だけだよ」

 

マジかよ、ちょっと前のウチらとほぼ一緒じゃん。

 

「でも向こうの隊長がそう指示したみたい」

 

アホらしい、馬鹿じゃないの?

 

「でも、今度の試合で三年生が出ないって保証はないじゃない」

「そこも心配いらない。どうもあちらの隊長さん、今回の試合に参加させるのは主に二年生みたいだから」

「なんでわかるのよ?」

「盗聴器をセットしてきた!!!」

 

ちょっと待てぇぇぇ!!!!!!

 

「ちょっと吹雪!!」

「大丈夫!!ちゃんと回収したから!!」

「あっ、ならいいわ」

「いいわけないでしょ!!」

 

何がダメなんだ?勝つ為には手段は選ばない、当たり前だろ?

 

「どうしたのエリカ?」

「いや、冷静に考えなさい。そもそもその盗聴器はどこで手に入れたの?」

 

言われてみれば確かに。

 

「吹雪、どこで手に入れたの?」

「え、えっと、その、それは」

 

吹雪の目が泳いでいた。だが俺は見逃さなかった、その視線が一定間隔である人物に向けられていた。

俺はその視線の先にいるやつを見る。

 

「射命丸さん?」

「は、はい!」

「まさか、アナタが?」

「い、いや!それは!」

「別に私は怒ってないわ。寧ろ協力してくれてありがとう」

「は、はい!」

「ただ、なんでこんなもの持ってるの?」

「それは、その」

「文、それは私から説明するわ」

 

ここではたてが加わる。

 

「私も盗聴器は持っています。私と文が盗聴器を持っている理由、それは」

「それは?」

 

はたては深呼吸する。他の部員もはたてをみる。そして次に発せられた言葉を聞いて呆れ果てた。

 

「取材!!ネタを集める為です!!」

 

・・・・・・・・・。

おい、どうすんだよこの空気。みんな呆れて何も言わなくなったぞ。

てかちょっと待てよ。

 

「まさかとは思うけど、どこかに盗聴器とか仕掛けてないわよね?」

「ッ!!い、いえ!そんなことは決して!」

 

おい!あまりにも嘘付くのが下手だな。

 

「盗聴器があるってことは、盗撮用のカメラも持っているってことだよね?」

「あっ!私この前二人がこそこそしてるの見たよー!」

 

ここで弥生も参戦してくる。

俺は二人を見る。二人は額から汗を流していた。

 

「弥生、それはどこで?」

「部室の更衣室だったよ」

「ありがと。姫海棠さん、射命丸さん」

「「は、はい!!」」

「あとで二人には話があるので、部活が終わったら私のところまできてください。拒否権はありません。二人は確か私と同じマンションに住んでいましたね。逃げたら二人の部屋に訪問します。よろしいどすか?」

「「は、はい」」

「話が逸れてすいません。では今から作戦について話します」

 

そして俺は黒板の前に移動して作戦を伝える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜おまけ〜〜〜〜

 

 

 

 

 

作戦を立て、はたてと文にカメラと盗聴器を回収させて説教が終わったあと、俺と吹雪は一緒に下校していた。

 

「そういえば吹雪、アンタどうやって空から降下してきたのよ?」

 

俺は今日一日の中で一番の疑問を訪ねる。

 

「それはヒ・ミ・ツ!だよ」

「何よそれ」

 

なんだ教えてくれないのか、つまらん。

そう思っていたとき、後ろから誰かが走ってきた。

 

「雪宮さ〜〜ん!!」

「ん?あっ!」

 

吹雪はその小学生?に大きく手を振った。

いや、ちょっと待て。あのサイドテールの子は。

 

「今日は大艇ちゃんを貸してくれてありがとね」

「いいよいいよ。また貸して欲しかったらいつでも言ってほしいかも!」

「あれ?そういえば大艇ちゃんは?」

「今日は先に家に帰ってるかも!」

「そうなんだ、大艇ちゃんによろしく言っといて」

「うん!それじゃまたね!」

「バイバーイ!」

 

そう言って小学生は帰って行った。

 

「ア、アンタ、今の子って」

「さっ、早く帰ろ」

「ちょっと待ちなさい!大艇って、二式大艇のことよね!?てか今の子って」

「さっ、帰ろ帰ろ」

「アンタ!今の子とどうやって知り合ったのよ!」

 

俺は吹雪の両肩を掴む。

 

「紅音ちゃん、世の中には、知らなくていいこともあるんだよ。Need not to knowってやつだよ」

「何ここであの警部のセリフ言ってるのよ。って逃げるな!」

 

そうして俺達は走って帰って行った。

 

 

 

 

 




如何でしたか?
今度は2月4日に投稿します。
それではまた!


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開幕!初の練習試合!!前編

みなさんはモンハンワールド買いましたか?
私は買いました!
今回のモンハンワールドってミラルーツは出るんでしょうか?
ではどうぞ!


 

 

 

 

 

「整備班の人達は、戦車の燃料補給及び点検を行うように!不具合があれば速やかに報告を!試合に出場する人達は整列準備を!」

 

ここは、以前三年生と戦った演習場とはまた別の場所、そこの工場である。

マジ一個の県に複数演習場があるなんて、普通ありえないぜ。流石ガルパンの世界といったところか、戦車道に力入れてるなぁ。

今回編成は、一小隊は二年生、二小隊は一年生で編成を組むことにした。

一小隊長は冴塚先輩で、他の一小隊のメンバーは冴塚先輩に任せた。二小隊長は吹雪で二小隊のメンバーは俺が選んだという形になる。

えっ?メンバーが気になる?では発表しよう。

 

隊長 兼 IS-3車長 笹原 紅音(俺)

砲手 相澤先輩

操縦手 神宮寺先輩

装填手 宇佐見 蓮子

 

KV-2車長 五十鈴 香織

砲手 佐々木 白露

操縦手 佐々木 時雨

装填手 佐々木 春雨

装填手 佐々木 夕立

通信手 佐々木 村雨

 

M24軽戦車 チャーフィー車長 射命丸 文

砲手 姫海棠 はたて

操縦手 二階堂 エリナ

装填手 三浦 優美子

通信手 由比ヶ浜 結衣

 

一小隊長 兼 センチュリオン車長 冴塚先輩

砲手 二年生

操縦手 二年生

装填手 二年生

 

M26パーシング車長 黒川 夏海先輩

砲手 二年生

操縦手 二年生

装填手 二年生

通信手 二年生

 

シャーマン ファイアフライ車長 二年生

砲手 二年生

操縦手 二年生

装填手 二年生

 

二小隊長 兼 ティーガーI車長 雪宮 吹雪

砲手 湯沢 奏

操縦手 平河 秋

装填手 柚園 麻希奈

通信手 橘 飛鳥

 

ティーガーⅡ車長 逸見 エリカ

砲手 アリサ・イリーニチナ・アミエーラ

操縦手 寺本 沙緒里

装填手 火焔猫 燐

通信手 魂魄 妖夢

 

ヤークトティーガー車長 轟 弥生

砲手 三澤 千尋

操縦手 乃村 陽炎

装填手 乃村 黒潮

装填手 乃村 不知火

通信手 日巻 遥

 

ブラックプリンス歩兵戦車 車長 四季 映姫

砲手 霧雨 魔理沙

操縦手 博麗 霊夢

装填手 東風谷 早苗

通信手 十六夜 咲夜

 

といった具合である。

不本意ではあるが、整備班から数名程参加してもらう形になった。俺としても本人の意思を尊重したかったが、なにせ東中は今人員不足である。これに関しては仕方がない。

にしても四季達はなんでブラックプリンスを選んだのやら、いや別にダメではない、ブラックプリンスは装甲も厚いし、非公式ではあるが「スーパー・チャーチル」とも呼ばれてたくらいだからむしろありだと思う。ただなぁ、足が遅いんだよなぁ。大丈夫かなぁ。

 

「笹原ちゃ〜ん。試合に出る人達の方は準備出来たよ〜」

「ありがとうございます、副隊長。整備班の状況はどうですか?間に合いそうですか?」

「大丈夫だよ〜。全部の車両見てもらって、特に問題ないって言ってたよ〜。あとは燃料補給だけだね〜」

「わかりました。それと部活中は笹原ではなく隊長と呼んでください」

「え〜〜、笹原ちゃんの方がいい〜〜」

「そんな子供の我儘みたいな事言わないでください」

「いいじゃない〜〜。そっちの方がいいと思うのになぁ〜〜」

「はぁ・・・・・もう好きにしてください」

「わかった〜、そうするね〜笹原ちゃん」

「・・・・・・・・大丈夫ですよ」

「えっ?何が?」

「この練習試合、必ず勝てます。ですからそんなに緊張しないでください」

「やっぱり笹原ちゃんも緊張したりするの?」

「私はたかが練習試合でそこまで緊張なんかしませんね。私はむしろ、明日一日をどう過ごそうか考えているくらい心に余裕があります」

「随分と余裕だね〜」

「公式戦だったらそんな余裕はないですが、今回は練習試合です。気楽にやりましょう」

「そうだね。それにしても、私が緊張してるってよくわかったね〜。なんで〜?」

「だいたい緊張している人は、視線や仕草、あと顔を見ればわかります。先輩はまぁ、はっきり言ってわかりやすいです」

「え〜〜、そうなの〜〜?」

「その辺りもう少し頑張ったほ「隊長〜〜!!」」

 

俺と冴塚先輩は声のする方を見る。そこには明石がいた。

 

「どうかしましたか?何か不具合がありましたか?」

「違う違う。燃料補給が終わったからその報告」

「わかりました。ありがとうございます」

 

さてと、準備は出来た、時間はまだある、どうすっかなぁ。

 

「ねぇねぇ〜。笹原ちゃ〜ん」

 

冴塚先輩はニコニコしながら話かけてくる。

 

「なんでしょうか、副隊長」

 

なんでだろう。何故かものすごく嫌な予感がする。

 

「部員のみんなに何か一言だけいいから、言ってみたくない〜?」

 

・・・・・・・・・・はぁ?

いや聞こえなかったわけではない。要は喝を入れる為に何か言えってことだろ?そこまでは理解した。俺が理解出来ないのは、何故そんな事しないといけないのかというところである。

 

「お断りします」

「えぇ〜〜なんで〜〜?」

「逆に質問します。何故そんな事をしないといけないのですか?」

「いいじゃない〜。笹原ちゃんのことだから、何か一言だけ言えばみんな気合いが入ると思うよ〜」

「嫌です。そんなことするくらいなら、作戦を再度確認する「みんな〜!隊長からみんなに話があるって〜!」そんなことは一言も言ってません!」

 

なんでそんなこと言っちゃうかなぁ〜。あぁ〜もう、みんなこっち見てるじゃん。もう何か言わないとダメな雰囲気じゃん。

 

「それでは隊長〜。お願いしま〜す」

 

こういうときだけ隊長って呼びやがって、マジでやめて。

にしてもどうすっかなぁ〜。何も考えてねぇし、テキトウに言っとくか。

 

「えっと、とりあえず先に言っておきます。今のは副隊長がテキトウに言ったことですので、正直何を話すか考えてません。ですが、だからと言って、何も話さないってことはしません」

 

みんなは真剣に話を聞く。

 

「みなさん、一つだけ確認したいことがあります。・・・・・・昨日しっかりと寝れた人は挙手をお願いします」

 

それを聞いた部員は、自分の周りの様子を伺いながら恐る恐る手をあげる。一人を残して。

 

「ありがとうございます。別に怒っているわけではありません。むしろ試合前にしっかりと寝れたことが確認出来て安心しています。何事もそうです。テスト前にしろ、試合の前にしろ、しっかりと寝る、それはとても大事なことです。もし仮に、この中に夜更かしして遊んでいた人がいたら怒っていましたが」

 

部員のみんなは安心したのか、数人胸をなで下ろす。

 

「因みに私はあまり寝ていません。せいぜい四時間くらいです」

 

そう、さっきの一人は俺のことである。まぁ慣れているからどうということはない。

 

「アンタがダメじゃない!」

 

まさかのエリカのツッコミ。

 

「私は別に遊んでいたわけではない」

「じゃ何してたのよ」

「一応私は隊長だし、不測事態に備えて色々と対策を練っていたわ」

「そう、でも無理はしないようにね」

「ありがと。話が逸れましたね。私が言いたいことはただ一つです。私は今回の練習試合はただの通過点としか考えていません。言いたいことがわかりますか?今回の練習試合、私は負けるつもりはありません」

 

部員のみんなの雰囲気が変わった。

 

「西中の方に教えてやりましょう。どちらが格下なのかを、私から以上です。ではそろそろ行きましょう」

 

そう言って俺達は工場を後にした。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜整列完了〜〜〜〜

 

 

 

 

「それではこれより!常幻東中学校 対 常幻西中学校の練習試合を始めます!」

 

はぁ〜〜。なんというか、面倒くせぇ〜〜。

なんか相手の隊長さんはめっちゃ睨んでるし、副隊長は無表情だし、ウチの副隊長はオドオドしてるし、てかそんなに俺達が気に入らないのか?あぁ、だるい。

 

「今回の審判を務めます、蝶野です。よろしくお願いします」

 

まさかここで原作の蝶野さんが出てくるとは、いやマジで美人だなぁ。

 

「それでは、両校!礼!」

「「「「よろしくお願いします!」」」」

「それでは、良い試合を」

 

そう言い残し、蝶野さんは近くに止めていた一〇式戦車に向かった。

いつ見てもカッコいいなぁ。流石日本が誇る最新鋭戦車。

 

「行きましょう、副隊長」

「う、うん」

「待ちなさい!」

 

相手の隊長から呼び止められて、俺と副隊長は振り返る。

 

「なんでしょう?」

「・・・・・この練習試合で分からせてあげます。どちらが格下なのかを」

「まだそんなこと言っているんですか。下らない」

「なら賭けましょう。もし私が勝ったら、貴女は戦車道を辞めなさい。格上の者にたてついた罰です」

「そ、そんなこと「いいですよ」ッ!!隊長!!」

「もし私が勝ったら、そうですね。私達をバカにしたことについての謝罪を要求します」

「そんなことでいいのですか?」

「生憎、私は欲の無い人間ですので、それに賭けにも興味ありません」

「負ければ貴女は戦車道を辞めるのですよ?」

「ただ気に入らないという理由で賭けを仕掛けてくる人に負けるつもりはありません。最後に一言、随分と心の狭い人ですね」

「ッ!!行きましょう副隊長!!」

「はい」

 

そう言って、自分達の戦車に向かって行った。

 

「さ、笹原ちゃん!どうするの!」

「何言っているんですか。要は勝てばいいだけです」

「そ、それはそうだけど!」

「まぁ、いつもどおりしましょう。行きましょう、副隊長」

「ま、待ってよ〜〜!」

 

そして俺達は自分達の戦車に向かった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜試合開始ちょっと前〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「それで作戦通りに先ずは射命丸さん、先行して偵察に行き敵の位置をお願いします。一小隊は射命丸さんに付いて行って、発見次第砲撃して下さい。戦闘が始まったら射命丸さんは離脱し、他の敵を探して下さい。一小隊は三両で一両を攻撃し、二小隊のいる森の位置まで追い詰めて下さい。視界に入った戦車をただ撃破するのではなく、確実に一両一両、撃破していって下さい。二小隊は予め指定した森で待機し一小隊の追いやった敵を撃破、敵が逃げたら一小隊と一緒に五十鈴さんが待機している位置まで追い詰めて下さい。五十鈴さんと私はここで待機。以上」

『『『『『『『『『了解!!』』』』』』』』』

『両校、準備はいいですか?それでは、試合開始!』

 

蝶野さんの合図で試合が始まった。先程の指示通りに俺と五十鈴の車両を残し、それぞれが移動する。さてと。

 

「相澤先輩」

「何?」

「眠くないですか?」

「・・・・・・眠い」

「よし!お休みなさい!」

「お休み!」

 

そう言って俺と相澤先輩は、IS-3から降りて近くの木に登った。

 

「隊長は呑気だねぇ〜」

「貴女、勝つ気あるの?」

「ナズナー。戻っておいでー」

 

宇佐見、五十鈴、神宮寺先輩はそう言って俺達を見る。

 

「大丈夫よ。何かあればすぐ報告するように伝えているし、待機している私達はまだ時間があるから」

「って、隊長も言ってるから私も寝る。いいよね隊長?」

「許可します!」

「よし!」

 

そう言って俺と相澤先輩は、太い枝に仰向けの状態で寝ることにした。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜10分後〜〜〜〜

 

 

 

 

 

『こちら射命丸!聞こえますか隊長!』

 

射命丸の声で目が覚めた俺は、急いで木から飛び降りる。

 

「こちら笹原。どうしましたか?」

『敵戦車を発見しました。ですが・・・・・』

「どうしました?」

『その〜〜、いるんです。相手戦車、全部一箇所に』

 

・・・・・・・・・・はぁ〜〜。

つまり相手は、全部一箇所に固まっていると。

あぁ〜〜、まだ十分しか寝てないのに。

 

『どうしますか?』

「落ち着いて。射命丸さんは引き続き、相手から見えない位置で監視、何かあればすぐに報告を。それ以外は一度こちらに集結してください。作戦を変えます」

『『『『『『『『了解』』』』』』』』

「相澤先輩、私達も動きますので戻ってきて下さい」

「えぇ〜〜」

 

そう言いながら相澤先輩は戻ってきた。

 

「貴女、何か作戦はあるの?」

 

五十鈴は訪ねる。

 

「試合前に言ったでしょ?夜遅くまで不測事態に備えて対策を練っていたって」

「つまり、対策はあるのね」

「まぁ、これは想定内だからね」

「何よ、ちゃんと考えてるじゃない」

 

さっきまで呆れた顔をしていた五十鈴が笑顔になる。かわいいなぁ。

さて、俺の安眠を妨害した西中の奴ら、今から地獄を見せてやる。

 

 

 

 

 




最近アズールレーンも始めました。
以外と楽しくてハマりました。
ご意見、ご感想お待ちしています。
では次は2月12日までに投稿します。
では!


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開幕!初の練習試合!!後編

今回は後編です。
ではどうぞ!


 

 

 

 

 

「射命丸さんの車両以外全員集まりましたね。それでは作戦を変更します」

 

射命丸の車両以外の車長を集めて、作戦会議を始める。

今いるのは森の中、相澤先輩と神宮寺先輩、宇佐見に周囲の警戒をしてもらっている。

 

「現在、射命丸さんから入っている情報は、敵は一箇所に集まり、防御を固めているとのこと、場所は見晴らしのいい草原にいて周囲を警戒しており、動く様子はないとのことです」

「この陣形を崩すのは難しいねぇ〜。周囲を囲んで逃げ道を塞ぐ?」

 

吹雪が作戦を提案してくる。

 

「個々のレベルが高ければそれもありかもしれないけど、正直厳しいわね」

「そういえば紅音ちゃん、対策練っていたんだよね?紅音ちゃんはどんな作戦を立てたの?」

 

よくぞ聞いてくれた!正直いつ聞いてもらえるのかと、ちょっと不安になっていた。もし聞いてもらえずに、勝手に作戦を決められたら拗ねるつもりだった。

 

「では、作戦を伝えます」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜西中サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

『隊長、相手はどう攻めてきますかね?』

「可能性として、束になって一気に攻めるか、もしくは二つに別れて挟み撃ちにするかでしょうね。相手がどう攻めてきても動じないで冷静に対処しなさい。相手が攻めて来たらチャーチル五両が盾になりながら魚鱗の陣で前進し、この時クルセイダー二両は左右の一番端に、ある程度進んだらクルセイダーは相手に突撃、マチルダはチャーチルの後ろに控えて前進」

『『『『『『『『『了解』』』』』』』』』

 

さぁ、かかって来なさい。まだ完璧に西住流を再現出来たわけじゃないけど、日本で最古にして最大の流派の西住流のやり方を取り入れたのよ。負けるはずがない。

今年こそは優勝してみせる、その為に西住流を再現しようと血の滲むような努力をしてきたのよ。一年のときはベスト九位、西住流を取り入れたのは二年ときだが、そのときは六位、今年が中学最後の大会、なんとしても優秀しなければならない。その為にもニ、三回戦で敗退するような弱小校に負けられない、いや負けるはずがない。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜1時間経過〜〜〜〜

 

 

 

 

 

しばらく待機していると、森の方から戦車のエンジン音が聞こえてきた。

 

「総員!戦闘準備!」

 

随分とエンジンをふかしているわね、おかげで大体どこにいるかはわかった。

今私達がいるのは草原の真ん中におり、私達を中心に半円を描くように広がっている。森との距離は約2000mくらい、こちらを攻めるには絶対森から出なければならない。

 

 

 

 

ドォォォォォォン!!!

 

 

 

 

 

森の中から砲撃音がして、その砲弾は私達のいる位置の100m後ろに着弾した。

威力からしてKV-2だろう。

 

『どうしますか!?』

「落ち着きなさい。チャーチル五両とクルセイダー二両は前進、その後ろを残ったクルセイダーとマチルダは付いて来るように」

 

さぁ、どう攻めてくる。相手は火力が優れているとはいえ急造のチームとたいして変わらない、三年がいなくて二年と一年だけ、しかもそれ束ねているのが一年。

そうこうしていたら、森から相手側の戦車が出てきた、数は六両。

残り四両はこの六両を倒してから探そう。おそらく後方の森か、違う場所に身を隠して弱ったところを奇襲つもりでしょうね。

さぁ、どう攻めてーーーーー

 

 

 

 

 

ドドドドォォォォォォン!!!

 

 

 

 

 

『こちらクルセイダー!すみませんやられました!』

 

なるほど、確かに数両で一両を攻撃すれば幾ら素人でも撃破出来る。

それなら。

 

「チャーチル五両!ファイヤフライを狙って!撃てー!!」

 

私の合図でチャーチル五両が攻撃。

相手がその手で攻撃するならこちらも同じ手段を取るまで。

 

『ファイヤフライ撃破しました!』

「了解、次はブラックプリンスを狙って!撃てー!!」

 

距離は約1500mくらい、まだクルセイダーを向かわせるわけにはいかないわね。

 

『ブラックプリンス撃破しました!』

『こちらクルセイダー!すみません撃破されました!』

「了解、続いてチャーフィーを攻撃!」

 

 

 

 

 

ドォォォォォォン!!!

 

 

 

 

 

またしてもKV-2の砲弾が後方100mくらいに着弾する。さっきからずっと100mくらい後ろに着弾しているけど、どこ狙っているのかしら?

 

『チャーフィー撃破しました!』

「了解、続いてパーシングを攻ーー」

 

 

 

 

 

ドォォォォォォン!!!

 

 

 

 

 

後方から砲撃音がして、後ろにいたマチルダがやられた。

 

『こちらマチルダ!後方から攻撃を受け撃破されました!』

「そんな!」

 

私は後方を確認する。後方100mくらいはKV-2の撃った砲弾の煙で見えない。

徐々に煙が晴れていって、そこでめにしたのは。

 

「なんで・・・なんでここに相手が・・・」

 

そこにはティーガーⅠとⅡ、そしてヤークトティーガーがいた。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜笹原 紅音サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

『こちら吹雪、西中の隊長ようやくこっちに気づいたみたい』

「了解、そのまま吹雪は攻撃、弥生とエリカは吹雪の指示に従って」

『『了解!』』

「五十鈴さん、もういいですよ。今度は相手戦車を狙ってください」

『やっと私達の出番ね!行くわよみんな!』

『『『『『おー!』っぽい!』了解!』わかった!』了解です!』

 

さて、もうあとは指示出さなくてもいいでしょ、もう寝ていいですかね。

 

「隊長〜。次はどれ狙うんだ〜?」

 

はいダメですね。わかってた。

 

「冴塚先輩、黒川先輩、一番左のチャーチルを攻撃してください。合図は出します」

『『了解!!』』

『こちら吹雪、クルセイダー二両撃破したよ〜』

「了解、なら吹雪はそっちから見て一番左のチャーチルを攻撃して、タイミングは任せるから」

『了解〜』

「ではこちらも攻撃します。」

「『撃ち方!はじめ!』」

 

 

 

 

ドドドォォォォォォン!!!

ドドドォォォォォォン!!!

ドォォォォォォン!!!

 

 

 

 

 

私達側、吹雪側、そして五十鈴のKV-2が同時に攻撃した。

てか今、吹雪とかぶってたな、まぁいい。それにしてもすげぇな、今攻撃でチャーチル四両が撃破、内二両が横転している。

KV-2の攻撃で横転いたのだろう。

いや、大丈夫か?戦車が横転したら普通に中に乗っている人死ぬからね?

 

「残り一両、吹雪お願い」

『は〜〜い』

 

こうして、吹雪側の攻撃で最後の一両が撃破された。

 

『チャーチル、走行不能!勝者、常幻東中学校!』

 

 

 

 

 

〜〜〜〜西中サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

『チャーチル、走行不能!勝者、常幻東中学校!』

 

負けた、負けてしまった。

KV-2は下手で当てられなかったのではない、あえて当てなかったのだ。後方から攻める味方を気付かせない為に、私達は最初のKV-2の攻撃でハッチを閉め、攻撃してきた方向しか見ていなかった。

この時点で勝負は決まっていたのだ。

もっと周りを警戒していれば、もっと早くに後方に気づいていれば。

私は後悔するしかなかった。

 

悔しい。

 

格下と思っていた者に負かされてしまった。悔しい。

認めたくないが・・・相手は私達よりレベルは上だ。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜笹原 紅音サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

さて、試合も終わったしかえーーーー

 

『隊長!今日の一番は誰!?』

 

撤収の指示を出そうとしたら白露から無線がきた。

 

「一番?どういうこと?」

『姉さんは今日のMVPは誰なのかって聞いてるんだと思うよ』

 

あぁそういうことね、まぁ確かに今回の練習試合はそこまで被害は出てないし、みんな頑張ったしな。

 

「じゃ今回のMVPは『もちろん私だよね、紅音ちゃん!』」

 

いや吹雪、お前はないからな?

 

「吹雪」

『何?』

「それはない」

『なんで!?』

「当たり前でしょ。そもそも今回の作戦はKV-2がなければ成り立たない作戦だったもの。射命丸さんは1〜2両くらい撃破して、最後まで生き残っていたらMVPだったけど、今回は五十鈴さん達のKV-2ね」

『『『『『『やったーー!!』』』』』』

『あやや〜、私達はもっと精進しなければなりませんね』

「さぁ、試合も終わったし、総員撤収!」

 

さてと、あとは整列して帰るだけだ。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜再び整列〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「両校!礼!」

「「「「ありがとうございました!」」」」

 

さぁさっさと帰ろう。時間はまだ昼ちょっと過ぎたくらいだし、帰ってある程度修理したら今日は切り上げてあとは月曜日にしますか。

俺は後ろに振り返り、整列している部員に告げる。

 

「総員、撤収準備!先ずは動けなくなった戦車をトレーラーに乗せてもらいます!トレーラーについては校長にお願いして業者を呼んでいます!動けなくなった戦車の乗員は、こちらが指名した戦車に乗せてもらってください!準備が出来たら私に報告を、すぐに撤収します!」

「ちょっと休憩しな〜い?」

 

お前はもちっとシャキッとしろ吹雪。

 

「休憩したいなら学校でしなさい。言っておくけど、今日は休憩を挟んだら()()()修理にあたるから」

「じゃなんで整備班作ったの!?意味ないじゃん!」

「当たり前でしょ!流石に壊れた戦車をそのまま整備班に丸投げするわけにはいかないわ!それに全員であたるって言ってもある程度よ、今日は早めに切り上げてあとは整備班に任せるから」

「ならいいや」

「では、この後は先程の指示に従ってください!以上!」

 

さて、俺も撤収準備しますか。今日は終わったら食材買って帰らないと、あと夕方五時からの卵半額セールに間に合うように部活を切り上げないと。

 

「行きましょう、副隊長」

「うん!」

「笹原さん」

 

俺は後ろを振り返る。そこには西中の隊長がいた。

 

「なんでしょうか?」

「その・・・格下だの弱小だの言って見下したりしたことについて謝罪を、ごめんなさい。認めたくないけど、貴女達が私達よりレベルは上だわ」

 

そう言って西中の隊長は頭を下げる。

なんだそのことか、正直言ってどうでもいいことだったから忘れていた、なんて言えないよな。

てかその言い方、本当に反省してんのかな?

 

「副隊長、先に行って現場の指揮をお願いします」

「・・・・・わかった、あとでね笹原ちゃん」

 

そう言って冴塚先輩は走って行った。

 

「顔を上げてください」

 

そう言うと西中の隊長は顔上げて、俺の目を見る。

 

「これから気をつけて頂ければかまいません。少し聞きたい事あるのですがいいですか?」

「なんですか?」

「横転したチャーチルの乗員の方々に怪我はありませんでしたか?」

 

西中の隊長は少し驚いた顔をしたが、すぐに元に戻る。

 

「えぇ、ちょっと擦りむいただけで大したことはありません」

 

えぇ〜〜、うっそだぁ〜〜。

だって横転してんだよ?車内には砲弾とかあるんだよ?どんなに良くても骨折、最悪死人が出てもおかしくないのに擦りむいただけって、ありえねー。

 

「心配くれたんですね。ありがとうございます」

「敬語、やめませんか?私年下ですよ」

「そう、ならそうさせてもらうわ」

「とにかく、怪我なくて良かったです。正直言って結構心配してました」

「ありがとう」

「では、私はこれで失礼します。この後も予定詰まっていますので」

「それは申し訳ないことをしたわね」

「いえ、では私はこれで、次は公式戦でお会いしましょう」

「えぇ、では」

 

そう言って、お互い後ろを向き自分を待っている部員のところに帰った。

なんだかいまいちわからない人だなー。反省してるのかしてないのかよく分からんし。

そう思いながら俺は、俺のことを待っている部員のところに帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




SAO新作が以外と楽しいです!
次は2月18日までに投稿します!
ではまた!


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これが初めての出会いである

どうも!
今回はあのぼっちが出てきます。
ではどうぞ!


 

 

 

 

 

〜〜〜〜PM18:00〜〜〜〜

 

 

 

 

 

練習試合が終わり部活を終え、十七時の卵半額セールに間に合って主婦達との戦争を生き抜いた俺は、自室で椅子の上で胡座をかいてヘッドホンをつけてパソコンと睨めっこしていた。

予算の見積もりである。

今回の練習試合でファイヤフライ、チャーフィー、ブラックプリンスがやられた。学校の工場を知っていたが、部品が足りない。その為、必要な部品をパソコンに打ち込んでいた。書類という形にして提出すれば取り寄せると紫が言っていたので、月曜日にでも提出するつもりだ。

それだけではない、公式戦の間にかかる費用の見積もりもしなければならない。はっきり言って超多忙である。普通こういうのは顧問がするものだろ。しかし紫に任せようとするといつも話をはぐらかす、冴塚先輩に任せたらなんか不安だし、吹雪はこういう時に限って逃げるし、他の部員は、その・・・・とにかく俺がするしかないのだ。

 

「早く終わらせて、ご飯にしますか」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜PM19:30〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「よし、あと少しだし、そろそろご飯作ろう」

 

そう言って俺は台所に向かい、今日買ってきた食材を取り出す。今日は鮭のホイル焼きと卵スープとほうれん草のおひたしである。

俺は食材を取り出しているとあることに気づいた。

 

「あ、バターとワカメ忘れた」

 

ホイル焼きに使うバターと卵スープに使うワカメを買い忘れていた。

 

「仕方ない、買いに行くとしますか」

 

俺はウィンドブレーカーに着替えてランニングシューズを履き、スーパーに向かった。

服装が雑?いいだろう別に、すぐそこのスーパーなんだし。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜スーパーでの買い物終了〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「さて、買うものは買ったしさっさとーー」

 

俺はスーパーの隣にある本屋に目がいった。

そう言えば転生してから小説や漫画なんか全く読んでないな。

 

「ちょっと覗いてみようかな」

 

俺はそう呟き、本屋に入店した。

 

「いらっしゃいませー」

 

男の店員さんにそう言われた俺は辺りを見渡す。

以外に広いな。二階建てで一階は本屋、二階はゲームやDVDなどが置いてあるみたいだ。

俺は一階をまわることにした。

そこには前世とほとんど変わらない小説や漫画が並んでいた。なんだ、知らない本はちらほらあるがほとんど知っている本ばかりだ。

 

「本当に別世界か?」

 

そう呟くと、俺はあるコーナーで足を止めた。

 

「懐かしいなぁ〜」

 

そこはピアノの楽譜コーナーである。

アニソン、ボカロ、J-POP、クラシックなど様々なものがあった。

どうでもいい話だが俺はピアノが好きである、一応弾ける。

俺は楽譜を本を手に取り、気に入った本をそれぞれ一冊ずつを持ってレジに行った。

 

「4852円になります」

 

俺は会計を済ませた。

 

「ありがとうございましたー」

 

さて、次は二階に行くか、今後電子ピアノ買おう。

そう思いながらゲームコーナーに向かった。ここも前世とほとんど変わらない、ならあれあるかな?

俺はあるゲームを探した。

 

「お、あったあった」

 

あったZE、某ハンターゲーム。

なんのゲームかはご想像にお任せするZE☆

ゲーム機はあるしたまには息抜きするか。

俺はそれを手に取ろうとした時、左の手が伸びてきて、そして重なった。

俺は左の方を見る、そこには以外な人物がいた。

なぜお前がいる。

 

「あ、どうも」

「比企谷・・八幡君・・」

 

そう、まさかのあの、DHA豊富そうな腐った目をしてぼっち臭がプンプンするあの比企谷 八幡である。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜比企谷 八幡サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

えっ、なんでこんなところに戦車道の隊長さんがいるの?

俺はコイツを知っている。名前は忘れたけど。入学してそうそう、戦車道の三年に喧嘩売って勝利し、三年を全員強制退部させ隊長の座をもぎ取ったヤツだ。

入学して二日目の校内新聞で知った。生で見るのは初めてである。

なんか生って単語はいやらしい響きだな。俺だけですかそうですか。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜笹原 紅音サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

なんか馬鹿なことを考えてそうだけど、まぁいいか。

 

「比企谷君もこれを買いに?」

 

とりあえず話してみるか。

 

「ひゃ、ひゃい」

 

プッ!

俺は笑わずにはいられなかった。

コイツ今噛みやがった!ヤベェマジで笑える!

俺は必死に笑いを堪えていると、比企谷は顔を赤くして手を顔に当てていた。

 

「ご、ごめん。ただあまりにも面白くてつい」

 

俺はなんとか笑いを落ち着かせ比企谷を見る。

 

「いや、あの、えーと」

「安心して、誰にも言わないから」

「あ、ありがとうございます」

「敬語じゃなくていいよ。同じ一年生なんだし」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜比企谷 八幡サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

ヤベェ、噛んじまった。しかも相手はめっちゃ笑ってるし。

あぁ死にたい、初対面のヤツには笑われるし、小町はまだ隣のスーパーでお袋と買い物中だし。

 

「ご、ごめん。ただあまりにも面白くてつい」

 

そう言って相手は笑いを落ち着かせながら謝ってきた。

 

「いや、あの、えーと」

 

ヤベ、中学生になってから小町以外の女子と話すの初めてだから言葉が出ねー。

 

「安心して、誰にも言わないから」

 

ありがとうございます!俺にこれ以上黒歴史を増やさなくてありがとうございます!これでもしクラスの人間にバラされていたら不登校になるところだった。

 

「あ、ありがとうございます」

「敬語じゃなくていいよ。同じ一年生なんだし」

 

いや、初対面の、しかもぼっちの俺には難易度高すぎるからな?

 

 

 

 

 

〜〜〜〜笹原 紅音サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

さて、笑いも落ち着いたし。

 

「それで、比企谷君もこれを買いに来たの?」

「お、おうそうだ、え、えっと・・・」

「あ、そう言えば初対面だったね。初めまして、1ーBの笹原 紅音です。今は戦車道の隊長をしています」

「は、初めてまして、1ーAの比企谷 八幡です」

 

あれ?1ーAってことは。

 

「姫海棠さんと同じクラスなんだ」

「誰?」

 

あぁ、そうだった。

コイツぼっちだった。

 

「姫海棠はたてさん、Aクラスで私と同じ戦車道をやっている人よ」

「そんなヤツいたっけ」

「・・・・・まぁいいわ。で、どうするの?」

「何を?」

「これ」

 

そう言って俺はパッケージを見せる。

 

「私は新品を買いたいけど、比企谷君は?」

「俺も新品の方を」

「そ、ならレジに行きましょ」

 

俺はパッケージを持ってレジに向かう。

 

「すみません、これを二つお願いします。会計は別々で」

「はい、7880円になります」

 

俺は会計を済ませる。

 

「ほら、比企谷君」

 

そう言って、比企谷もを黙々と済ませる。

 

「その、ありがとな」

「いいわよ、このくらい」

「そういえば、なんで俺の名前知っていたんだ?」

「それは簡単よ。新入生全体の二割くらいしか男子がいないのに、その中でも()()、目が死んでいたのは貴方だけだったもの」

「容赦ないな」

「それで気になって誰かをちょっと調べたら君だったわけ」

 

まぁ、実際は最初から知っていただけなんだがな。

 

「そういうことか、ならクラスも知っていたのか?」

「入学案内書に入学式のときどこに座るか書いてあったでしょ。あれで調べたから名前はわかったけど、クラスまではわからなかったわ」

「そういうことか」

「あ、そういえばこれ、オンラインで協力プレイ出来たよね」

「それが?」

「暇なとき一緒に狩りに行かない?」

「えっ?それって「お兄ちゃん!」」

 

最後まで言い切る前に、後ろから小さな女の子が比企谷の後ろに抱きついた。

因みに、俺達がいるのはレジの前、比企谷は階段に背を向け俺は比企谷と向き合って立ったいる。

 

「お兄ちゃん遅いよ!もう買い物終わったよ!」

「すまん小町」

 

ほほう、これが妹の比企谷小町か。

かわいいな、特にこのアンテナはいい。

そして小町と俺の視線があった、小町が何かを言おうとした時。

 

「小町ー、走ってたら危ないでしょー」

「お母さーん、お兄ちゃんが女の人と一緒にいるー」

「な、何ですって!?」

 

あぁーなんか面倒くさくなってきたぞー。

 

「は、八幡に女ですって!?」

 

登場早いな!

 

「小町ちゃん、どうして話をややこしくするの?お兄ちゃんが女の子と一緒にいるのがそんにおかしな事?」

「だってあのお兄ちゃんだよ!?」

「だってあの八幡がよ!?」

「あれ、なんだか目から汗が」

 

比企谷の質問に小町と比企谷母は答える。比企谷、それは汗じゃないからな。

 

「えっと、とりあえず自己紹介します」

 

俺がそう切り出すと三人はこちらを向く。

 

「はじめまして、常幻東中学校、1ーBの笹原 紅音と言います。今は戦車道で隊長を務めています」

「初めてまして!お兄ちゃんの妹の小町です!」

「この子達の母の智恵と言います」

「はい!質問してもいいですか!」

 

小町が突然質問してくる。

 

「何?」

「お兄ちゃんとはどういう関係なんですか!?」

 

いきなりぶっ込んでくるなぁ〜。比企谷のヤツ、目がどんどん腐っていくぞ。

 

「ただの同級生だよ。クラスも違うし、話したのもさっきが初めてだし」

「そうなんですか!?」

「うん、だから小町ちゃんが想像している関係じゃないよ」

 

悪いが恋人関係は無理だ。だって中身男だもん俺。

最近は思考が少しずつ女の方に傾きつつある、なんとなくだがそれはわかる。

 

「そうだ、比企谷君」

「なんだ?」

「電話番号教えて、暇な時オンラインしよ」

「お、おう」

 

そして俺達は番号を教えあった。

 

「それじゃ暇な時に「あっ!ここにいた!」」

 

その声を聞いて、俺は比企谷達の後ろを見る。そこには吹雪がいた。

 

「吹雪、アンタなんでここにいるのよ?」

「紅音ちゃんを探すついでにゲームを買いに来た」

 

どっちがついでなのやら。

 

「それってこれのこと?」

 

俺はさっき買ったパッケージを見せる。

 

「そう!それ!店員さん、これまだありますか?」

「申し訳ありません。こちらの商品は今在庫切れでして」

「そんな〜!!」

 

吹雪は両手両膝をついた。

 

「立ちなさいよ、みっともない」

「そういえば、そちらの方々は?」

「比企谷 八幡君と妹の小町ちゃん、それと智恵さん」

「ど、どうも」

「はじめまして!」

「はじめまして、智恵です」

 

比企谷、小町、智恵さんの順で言う。

 

「はじめまして、1ーBの雪宮 吹雪です。紅音ちゃんとは幼馴染みで同じ戦車道をやってます」

 

吹雪は立ち上がって自己紹介をした。

 

「そういえば吹雪、私を探してたって言ってたけど、何かあったの?」

「あ、そうそう 、今から今日の勝利を祝してご飯と温泉に行こうってことになってさ、行かない?」

「行かないわよ」

「なんで!?」

「だいたい、それならもっと早く言いなさいよ。もう食材買っちゃったじゃない、それに月曜日までに提出しないといけない書類があるのよ」

「えぇー、いいじゃん」

「アンタが逃げなければすぐに書類は終わるんだけどなぁ〜」

 

俺は吹雪を睨む。おいこら、目をそらすな。

 

「と、とにかく行こ!ほとんどの人が集まっているから!」

「そもそも私、そんな話し聞いてないし」

「だって紅音ちゃん、それを話す前に帰っちゃったし」

「卵半額セール中だったもの」

「そういえば何買ったの?」

 

俺はレジ袋の中を見せる。

 

「あっ、楽譜買ったんだ」

「今度、電気屋で電子ピアノを買うつもり」

「そうなんだ、紅音ちゃんの曲、また聴きたいな〜」

「あの聞きたいことがあるんですが」

 

またしても小町が質問してくる。

 

「何かな?」

 

吹雪が言う。

 

「今日は何かいいことあったんですか?祝してご飯と温泉に行くって言っていましたし」

「今日は常幻西中学校と練習試合をして私達が勝ったのよ」

「えっ!?西中にですか!?」

「小町ちゃん?お兄ちゃんどのくらいすごいのかわからないから教えて」

「お兄ちゃんは馬鹿なの!?東中は毎年県予選で二、三回戦敗退だけど、西中は去年ベスト六位だよ!そんなところに勝つなんて至難だよ!」

 

まぁ、俺からいわせれば・・・これ以上はやめておこう。

それより、ウチの学校ってそんなに弱かったの?そこそこ強いんじゃないの?神様ちょっと恨むよ?

 

「それよりも早く行こうよー。みんなが待ってるよー」

「あぁもう、わかったわよ。その前に一度帰らせて、買い物袋を置きに行かせて、あと着替えさせて」

 

そう言って階段の方に向かう。

 

「それじゃ比企谷君、また学校でね。そうそう暇な時間は作れないけど、時間が出来たら電話するね」

「お、おう。またな」

 

それを聞いて俺と吹雪は一度帰宅することにし、その店を出た。

いや〜、正直嬉しかった。転生して初めて男の友達ができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜おまけ、比企谷 八幡サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は二人と別れたあと、車に乗って帰宅していた。

俺は手元の携帯を見ていた。

 

「お兄ちゃん良かったね!あんな綺麗な人と友達になれて」

「バッカ、違う。アレだよアレ、そうアレだよ」

「まーた変なこと言ってるー。でもいいじゃん、暇が出来たら電話するって言ってたし、そもそも女の子ってそんな簡単に電話番号とか教えないよ?小町でもそんな簡単に教えないもん」

「そうなのか?」

「そうよ。良かったじゃない八幡、アンタに友達ができて」

「だから違うって」

「ハイハイ。そろそろ着くから、着いたら荷物を降ろすの手伝ってね」

「はーい。それにしてもすごいねお兄ちゃん」

「何が?話すときはちゃんと主語と述語を使わないとわからないよ」

「笹原さんだよ。一年で隊長してるって学校、聞いたことないよ」

「そうなのか?」

「よほどの実力がないとなれないよ。小町はすごいと思うよ。」

 

アイツってそんなすごいのか。

 

「それに食材も買っていたから料理はできるでしょうね。楽譜もあったからピアノもできる。そして戦車道をやっている。かなりの優良物件じゃない、今時ピアノができる人ってそうそういないわよ」

「やめてくれ母さん。ホントそんなんじゃないから」

 

確かに、あれ?コイツ俺に気があるのか?ってちょっとは思ったよ。認めるよ。だがな、そんな勘違いでどれだけの世の男性が悲劇にあったことか。

俺はお袋と妹にからかわれながら帰宅していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




如何でしたか?
次は番外編を作ります!
ではまた!


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番外編 バレンタインデー!当日編

遅れてすいません!
今回はサイコパスの人が出て来ます!
どうぞ


 

 

 

 

 

二月十四日、みんなはこれが何を意味しているかおわかりだろうか。

ある者は厄日であり、ある者は喜劇的な一日を迎えたり、またある者は、昔なら貰う立場だったのに今度はあげる立場になって面倒になったり、あっ、最初と最後は俺である。

遂に来てしまった。バレンタインデー。碌な思い出がないんだよなぁ〜〜。前世でチョコ貰ったことなんて二回しかないし、しかもその二回は何かのあまり物のおこぼれを貰ったって感じだったし。

だが、今度はあげる立場である。

あー、今日は仮病で休もっかな〜。

いや、一応準備してるんだよ?手作り本命チョコ。誰にあげるかは秘密だけど。

最初は暇だったから軽い気持ちで作ってしまった、もちろん戦車道に所属する部員全員分も含めて。だが作り終わって気づいてしまった、何やってんだ俺?これじゃまるでアイツが好きみたいじゃないか!!

しかもこれ、渡さないといけないんだろ!?

作り終わって、ラッピングまでした俺は頭を抱えて両膝をついた。そして今日、碌に寝れず朝を迎えてしまった。

ダメだ、思考が完全に女の方に傾いてしまっている。

前世の記憶を引き継いでいるとはいえ体は女、仕方ないといえば仕方ないか。見た目は女!頭脳は男!ってな。

そんなことを思いながら俺は、部員全員分のチョコが入った大きめのボストンバックを二つ持って学校に向かった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜教室〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「な、何よこれ」

 

俺はそれ以外の言葉が見つからなかった。

学校に登校した俺は、自分の机の上が凄まじい状況になっていることに気づく。そこには山積みになってチョコがあった、しかも引き出しの中にもチョコが入っていた。

 

「モテモテだねー。紅音ちゃん」

 

丁度そこに吹雪が登校してきた。

 

「どうすんのよこれ」

「普通に食べたら?」

「いや、食べるけど。これ全部を一人で食べるってなるとね」

「でも食べないと作ってくれた人に失礼だよ」

 

その言葉を聞いた俺は、周りを見渡す。

やめろ弥生!なんでか知らないが、そんな怒った目で俺を見るな!

やめろ四季!笏で口元隠して目をそらすな!

やめろエリナ、リッカ、ヒバリ、アリサ!一箇所に固まってこっちを見るな!

やめろ和田!こっちを指差して笑うな!

やめろ射命丸、カメラを構えるな!そのカメラ叩き割るぞ!

 

「たくさん貰ってるわね。一つ貰っていいかしら?」

 

そう言って霊夢は俺のところに寄ってくる。

 

「部員全員分のチョコを作ってきたから、それをあげるわ。みんなも聞こえたと思うからこっちに来て」

 

それを聞いたクラスのみんなは俺のところに来る。

最後の吹雪に渡した時。

 

「ねぇねぇ。この中に本命はあるの?」

 

吹雪が訪ねてくる。

 

「残念だけど、この中にはないわ」

「へー、()()()()()ねー」ニヤニヤ

 

しまった!

 

「みんなー!紅音ちゃん、今日本命チョコを渡す人がいるんだってー!」

「「「「「な、なんだってー!!」」」」」

 

クラスのみんなが騒いだ!

 

「だ、誰よ!大人しく吐きなさい!」

「誰なんですか!?」

「私、今日本命なんて作ってないのに!」

「誰ですか!?この学校の人ですか!?」

「スクープですね!一体誰なんですか!」

「これは白黒はっきりさせないといけませんね」

 

エリカ、アリサ、由比ヶ浜、橘、射命丸、四季が食いつく。

 

「別にいいでしょ。誰だろうと」

 

そう言って俺はボストンバックを持って教室を出た。

 

「あれ、紅音ちゃんどこに行くの?」

「チョコ渡しに行くのよ、まだ時間があるし」

「そういえば部員全員分って言ってたね」

「えぇ、それじゃ行ってくるわね」

 

吹雪にそう言って、俺は教室を出た。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜昼休みに入る30秒前〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「それじゃ今日はここまで、明日から次の分野に入るから予習復習をしておくように、日直」

「起立、礼」

「「「「「ありがとうございました」」」」」

 

さて吹雪昼ご飯にしまーー。

 

「これより裁判を行います!」

 

四季が突然そう言った。

するとクラスのみんなが机を端に寄せ机をくっつけコの字を作り、四季は教卓の方に移動した。

教室の真ん中にポツンと取り残された俺は、状況が理解できなかった。

 

「被告人は席に座って下さい」

 

ちょっと待て、被告人ってなんのことだ。

 

「あー、お前らー。問題は起こすなよー、じゃ」ガラッ

 

ちょっと先生!少しは助けようって気にならないのか!!

俺はしぶしぶ自分の席に座る。

 

「では先ず、被告人に確認します」

「待って、四季。その前にどうしてこうなったのよ」

「そうですね。そこの説明をしていませんでしたね。今朝貴女がチョコを配りに教室を出たあと、問いただすグループと静かに見守るグループに意見が別れまして」

「それなら私いらなくない?」

「私も最初はそう思ったのですが、実は貴女が受け取ったチョコの中にはいくつか本命が入っているらしいんですよ」

「えっ・・嘘・・」

「そこは定かではありません。何せ情報源が射命丸さんですので、だからといって一人一人に確認するわけにはいきません」

 

俺は射命丸を睨む。こら、こっち見ろ。

 

「とにかく諦めて下さい。それと私は貴女の味方です」

「そう」

「それでは先ず確認から入ることにします。貴女が渡すチョコ、それは本命ですか?」

「そ、そうよ」

「それは異性ですか?」

「そ・・・・そうよ」

「「「「「キャーー!!!」」」」」

 

クラス全員から黄色声が。

やめろ!マジでやめろ!

 

「文ちゃん!紅音ちゃんが最近会った男子って誰がいる!」

「この学校では比企谷君ですね!」

 

弥生!何故そんなことを聞く!そして射命丸!何故知っている!

 

「よし!乃村さん達!彼を連れて来て!」

「「「了解」」」

 

弥生にそう言って、乃村三姉妹は教室を出て行った。

 

「一応聞きます。本命チョコを渡す相手というのは」

「八幡じゃないわ」

「そうですか」

 

四季の質問にそう答える。

 

「連れて来たわ!」

 

陽炎がそう言って入ってくる。後ろを見ると黒潮と不知火に両腕を捕まれた八幡がいた。

 

「乃村さん達、申し訳ありませんが彼ではないそうです」

「そんなー!」

 

四季の言葉にうなだれる陽炎。

 

「いや、そもそもなんで俺連れてこられたの?てか、この状況は何?」

「丁度いいわ。アンタも聞いていったら?」

「何を?」

「まぁ聞いてたらわかるわ」

 

やめろ陽炎!

 

「ま、まぁ聞くだけなら」

 

お前は帰れ!八幡!

 

「では裁判を続けます。その方は私達の知ってる方ですか?」

「貴女達の知らない・・・いや、何回か見かけたことがある人よ」

 

教室の中が騒めく。

 

「もうじれったい!紅音ちゃん!相手は誰!」

「なんで弥生が怒っているのよ」

「だって!・・だって・・せっかく一生懸命作ったのに」

 

おい待て!お前か!本命チョコ作ったのって!

弥生は涙目になりながらも必死に堪えていた。

 

「紅音ちゃん酷いよ!弥生ちゃんが一生懸命作ったのに」

「ちょっと待って、なんでそこで吹雪が出てくるの」

「そ・・それは、あーもう!はっきり言うわ!さっき四季ちゃんが言っていた本命チョコが入っている件!あれは事実だよ!」

「なんでアンタが知ってのよ!」

「だって私が、紅音ちゃんに本命チョコを渡したいって人を集めて、昨日私の部屋でチョコ作ったんだもん!」

 

な、なんだってーーーー!!!

だからか!昨日、隣の部屋がうるさかったのは!

 

「因みに!弥生ちゃんもその一人だよ!」

「う・・うぇ・・ぐすん」

 

やめろーーーー!!!

泣かないで!頼むから弥生!泣くな!!

 

「は、八幡!」

「な、なんだ!」

「悪いけど自分の教室に戻って」

「お、おう」(なんだったんだ)

 

そう言って八幡は教室を出て行った。

さて、残る問題は。

 

「弥生」

「ぐすん・・何?」

「おいで」

 

弥生は頭にクエスチョンマークを浮かべながら歩みよる。

俺はそっと、弥生を抱き寄せる。

 

「えっ?」

「ありがと。私のためにチョコを作ってくれて」

「う、うぇぇーーーーん!!!」

 

弥生はとうとう泣いてしまった。

 

「弥生、貴女のチョコ、貰ってもいい?」

「うん、バックの中に入ってる」

「吹雪」

「了解!」

 

そう言って吹雪は、弥生のバックの中から綺麗にラッピングされたものを取り出し、俺のところに持ってくる。

 

「食べもいい?」

「うん」

 

俺は弥生から許可を貰い中を開く。中にはハートの形をしたチョコクッキーが入っていた。

俺は一つ口にする。

 

「とても美味しいわ」

「う、うぇぇーーーーん!!!」

 

弥生は再び泣きだす。

 

「紅音ちゃんは私のだもん!誰にも渡さないもん!」

 

ちょっと待てーーー!!!なんてこと言っちゃってんの!!

 

「私、紅音ちゃんのことが好きだもん!」

 

おいーーーー!!

 

「被告人、返答を」

 

ちょっと待って!なんて言えばいいんだよ!

断れば、多分コイツのことだから悲劇が待っている!だが好きって言えば百合確定コース!!

俺にどうしろと!

 

「わ、私も好きよ」

 

言ってしまったーーーー!!

悲劇コースよりも百合確定コースの方がまだマシだ、そんな考えに至ってしまった。

だが俺は諦めない!

 

「うん!私も好き!だから「友達としてね」えっ?」

「だから、友達としてね」

 

弥生はぽかーんとしている。

 

「裁判を続けます。被告人は席に座って下さい、轟さんも」

 

えーー、まだ続けるの?弥生はテクテクと自分の席に戻って、顔を真っ赤にする。

俺も席に座る。

 

「最後に、その男性はこの学校の方ですか?」

「それを言ったらバレるから黙秘するわ」

「そうですか、ではそろそろ時間ですのでお開きにしましょう」

「待って!まだ相手が誰だかわかってないよ!」

「雪宮さん、時間を見て下さい」

 

時計を見る。昼休みが終わるまであと十二分。

 

「みなさん、お昼ご飯がまだです」

「「「「「あっ」」」」」

 

それからみんな、急いで昼ご飯を食べた。

そしてありがとう四季!

 

 

 

 

 

〜〜〜〜部活終了〜〜〜〜

 

 

 

 

 

さて、さっさと帰ってアイツにチョコを渡すか。

 

「お疲れ〜」

 

そう言って、部室の更衣室を出る。

なんだ?なんかものすごく視線を感じる。

校門のところ歩いて後ろを振り返る。振り返った先を見て俺は絶句する。そこには、先に帰った筈の部員達がいた。

俺達は数秒、その場で固まる。そして俺はダッシュした。

 

「逃げたっぽい!」

「追うわよ!」

 

夕立、白露、お前らじゃ俺には追い付けないぜ。

 

「は、速いっぽい〜!」

「誰か!隊長を追って!」

 

こら、部活以外で隊長って呼ぶな!

とにかく、なんとしてもにげーーーー

 

「そこまでだよ。笹原ちゃん」

「・・・冴塚先輩」

 

なんでアンタがいるんだよ。

 

「ごめんね。でも」

「でも?」

「私も!どうしても気になるの!だから大人しく捕まって!」

「お先に失礼します」

 

そう言って俺は、冴塚先輩の横を走り抜ける。ホント鈍いな〜あの人。

俺は走る、とにかく走る。そして信号で捕まってしまった。

早く!早く青に変われ!

 

「紅音ちゃん」

 

よりにもよってなんでお前なんだよ。俺はおそるおそる右を見る。

 

「弥生・・・お願いだから」

「絶対に逃がさないから」

 

お前はヤンデレか!怖いから!

 

「・・・・・今日の夜、私の部屋に遊びに来ていいから」

「それじゃダメ!」

「それじゃ、夜ご飯一緒に食べる?」

「是非!」

 

よし勝った!丁度信号が青になった。

 

「それじゃ二十時にまた」

「またね!」

 

俺は再び走りだした。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜某警察署〜〜〜〜

 

 

 

 

 

部員達から逃げ切った俺は、警察署に来ていた。

それにしても射命丸と姫海棠の二人はヤバかった。いつの間にか俺の制服にGPSを仕込んでやがった。なぜ気づいたかというと、いくら振り切っても振り切れないことに違和感を覚えた俺は手持ちのものをあらかたさぐった、そしたら、まぁ出て来たのはGPS、しかも二つ。

最終的にどうしたかというとGPSに気づいた俺は、一つはたまたま横に停車したタクシーに、もう一つはコンビニのトイレの中に置いてきた。

 

「アイツ・・・居るかなぁ・・・・」

 

さて、アイツに会いに来たものの、どうするかな。

いや、別に悪いことをしたわけではない。

どうしたものかと困っていると後ろから声をかけられる。

 

「あれ?笹原ちゃんじゃん」

 

俺が振り返るとそこには、縢 秀星と常守 朱が居た。

 

「何々?どうしたの?何かお困り?」 ズイズイ

「い、いえ、その」

 

やっぱりコイツはちょっと苦手だ。この手の奴はどう接していいのか未だにわからない。あと寄るな。

 

「縢君、紅音ちゃん困ってるよ」

 

ナイス常守さん!

 

「それでどうしたの?困ったことがあるなら相談にのるよ?」

「その、今日はあの人っていますか?」

「狡噛さんのこと?何か用なの?」

 

言わないとダメか。マジで恥ずいんだが、いやでも話さないと先には進まないし、堪えろ!堪えるんだ笹原!

 

「その・・今日は・・・えっと・・バレンタインだから・・チョコを渡しに」

 

それを聞いた常守はすっごい笑顔だった。待て!やめて!なんかものすごく恥ずかしいから!

 

「あーあー、いーなーコウちゃんは!女の子からチョコ貰って!俺なんて今日はゼロなのに!」

 

はぁ。安心しろ、ちゃんとお前の分も用意してるから、以前お前と常守さんにはお世話になったからそのお返しだ、ありがたく受け取れ。

俺は部員達から貰ったチョコが入ったボストンバック二つを地面に置いて、スクールバックの中を漁る。

 

「二人の分も用意してます。以前お世話になったときのお礼がまだだったので、受け取って下さい」

「マジ!?ありがとう!!」

「縢君はしゃぎ過ぎ。ありがとね、今狡噛さん呼ぶからちょっと待っててね」

 

そう言って常守さんは携帯を取り出した。

 

「ねね、そのボストンバックの中って何?何が入ってるの?」

 

常守さんが狡噛と電話している間、俺は縢と話すはめになった。

 

「これは部員のみんなとそれ以外に貰ったチョコが入ってます」

「えっ?マジで?笹原ちゃんて以外とモテるの?」

「私としてはすごく複雑な気持ちです。中には本命も幾つか入っているらしいです」

「えっ、それって百「皆まで言わないで下さい!」・・・因みに全部で幾つ?」

「部員は私も含めて九十二ですが、部員以外の人からもチョコを貰って、百を超えてからは数えるのをやめました」

「マ・・・マジで?」

「マジです」

 

縢は俺の隣で両手両膝をついた。ふっ、何故かわからないが気分がいい。

 

「狡噛さんもう少ししたら来るから・・・何してるの縢君?」

「朱ちゃんも笹原ちゃんの話を聞くといいよ」(なんで俺ってモテないんだろ)

「?それなら狡噛さんが来るまでお話ししてよっか。それで気になっていたんだけど、そのボストンバックはどうしたの?」

 

いきなりそこかよ。

 

「これはですね」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜説明終了〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「な、なんかすごいね」

「私としては、明日からどうして接していいのかわかりません。特に本命を渡してきた人達と」

「その本命を渡した人って?」

「一人しか分かっていません。しかもその一人は、今日の夜に私とご飯を食べることになってます」

「た、大変だね・・・あっ、来たみたい」

 

それを聞いて俺は警察署の入り口を見る。そこには、こちらに歩いて来る狡噛 慎也と後ろに唐之杜 志恩、征陸 智己の二人がいた、いやなんで?

 

「狡噛さん、お疲れ様です。征陸さんと唐之杜さんもお疲れ様です」

「あれ?コウちゃんはわかるけど、なんで二人まで一緒にいるの?」

「俺はちょっと用事が出来たから早めに上がろうとしたら面白い話が聞こえてきたからよ、ついでにに見に来たってわけよ」

「私は暇だったところ、二人が一緒にどこかに行っているのを見かけてついて来た」

 

なんでやねん!ふざけんな!

 

「それで笹原。俺はになんか用か?」

 

狡噛は俺にたずねる。

 

「その・・・今日が何の日か覚えてる?」

「・・?今日は何か特別な日だったか?」

「狡噛さんバレンタインですよ!バレンタイン!」

 

常守さんがフォローに入る。流石に俺もびっくりだ、まさかバレンタインを知らないとは。

 

「あー、そういえば今日は二月十四日だったな」

「コウ、最近お前休んでなかったからな、無理もねー」 ヤレヤレ

「それで?バレンタインがどうした?」

 

鈍いなぁー。唐之杜さん口元を手で隠しても無駄ですよ、笑ってるのバレバレですよ

 

「その・・・狡噛さん・・もしよければ・・これを受け取ってもらえませんか?」

 

そして俺は、綺麗にラッピングしたそれを狡噛に渡す。

 

(朱ちゃん!あれってもしかして!)

(間違いないよ縢君!あれは本命だよ!)

(ちょっと待って、コウちゃんに中学生の彼女がいるなんて聞いてないよ!)

(いや、まだ彼女かどうか分からないよ!狡噛さんちょっと鈍いところあるから!)

 

おいそこの二人、さっきから何コソコソ話してやがる。

 

(おい、コウのヤツ)

(安心して、まだ慎也くんは犯罪に手を出してないから)

(そうか、しかし物好きもいたものだな)

(そう?慎也くんって意外とモテそうだけど)

 

おいそこのとっつぁんと痴女、何ニヤニヤしてる。

 

「すまねーな、俺のために作ってくれて。ホワイトデーは楽しみにしてろ」

 

そう言って狡噛は俺の頭をワシャワシャしてくる。

クソッ!これで反応がないとは、どんだけ鈍いんだよ!普通男なら、あれ?これって俺に気があるの?って思うだろ!経験者の俺が言うから間違いない。

 

「それじゃ・・私はこれで失礼します」

 

そう言って俺はボストンバック二つとスクールバックを持って帰宅した。

次はどんな手を使うか・・・・ってこれじゃまるで、俺がマジでアイツが好きみたいじゃないか!!クソーーー!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜おまけ〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コウちゃん」

「なんだ縢?」

「もうちょっと女心を勉強しようよ」

「いきなりなんだ?」

「そうだぞコウ。あれはちょっとなー」

「アンタまで」

「そうよ慎也くん、貴方はホワイトデーは三倍どころか五倍にして返しなさい」

「そうですよ狡噛さん」

「一体なんなんだよ」

 

 

 

 




如何でしたか?
今度は2月26日までに投稿します!
では!


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番外編 バレンタインデー!前日編

どうも!今回はバレンタイン前日のお話です!
ではどうぞ!


 

 

 

 

 

〜〜〜〜雪宮 吹雪サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「みんなー!!チョコを作りたいかー!!」

「「「「「おーー!!」」」」」

「自分の想いを伝えたいかー!!」

「「「「「おーー!!」」」」」

「渡す相手はーー!!」

「「「「「笹原さーん!!」」」」」

「はい、という訳で今からチョコを作ります!」

 

どうもはじめまして、吹雪です!なんだかんだで私視点で話すのは今回が初めてですね。

ということで、明日はバレンタイン、今からチョコを作ります!

メンバーは弥生ちゃん、楠ちゃん、竹田ちゃん、二階堂ちゃん、アリサちゃん、白露ちゃん、時雨ちゃん、村雨ちゃん、夕立ちゃん、春雨ちゃん、橘ちゃん、以上十一人!モテる男ってつらいねー。あっ、今は女だったね。

 

「それじゃ今からグループ分けをするから、ホワイトボードに注目してねー」

 

私はホワイトボードに三つのグループを書いた。

 

「あの、雪宮さん」

「何?」

「一と二はわかります。三はなんですか?」

 

橘ちゃんが質問してくる。何かおかしいかな?

 

一 本命チョコ

二 友チョコ

三 ドッキリチョコ

 

うーん、何か間違ってるかな?一応説明しておこうかな。

 

「一と二は説明しなくてもわかるよね。三は色々混入して作る物だね!」

「なんか説明がザックリっぽい!」

「はい、じゃ別れてー!」

「スルーされたっぽい!」

 

そして別れた結果。

一グループ、弥生ちゃん、楠ちゃん、竹田ちゃん、二階堂ちゃん、橘ちゃん、アリサちゃん。

二グループ、時雨ちゃん、村雨ちゃん、春雨ちゃん。

三グループ、白露ちゃん、夕立ちゃんとなった。うん!何か予想出来てた!

 

「それじゃ早速作るけど、みんなどんなチョコを作るかを教えて」

 

私はみんなから何を作るかを聞いてチョコ作りに取り掛かる。にしても羨ましいなー笹原ちゃんは、こんなにも色んな人から愛されて。そのおかげで、本人も少し丸くなったし。

前世なんて。

 

 

 

『おい、もっと周りの人を頼れよなぁ、流石にあの態度はないんじゃないか?』

『知るか、信用出来るかあんな奴ら。周りが俺をどう評価しようがそれは周りの評価でしかない。だからアイツらが俺のことをどう思おうが俺はどうでもいい』

 

 

 

みたいな感じだったし、今よりもっと荒かったし、いい意味で本人が変わってくれて私は嬉しいな。

 

「雪宮ちゃん!ちょっといいかな?」

 

おっと、前世の思い出にふけるのはこの辺するかな。

 

「どうしたの、白露ちゃん?」

「ドッキリチョコを作るにあたって雪宮ちゃんの意見を聞きたくて、鳥の唐揚げと軟骨の唐揚げ、どっちがいいかな?」

 

そう言って白露ちゃんはタッパに入った鳥の唐揚げと軟骨の唐揚げの二つを取り出した。ちょっと待って、それどこから取り出したの?私そんなもの用意してないよ?

 

「姉さん・・・部屋から出るのが遅いなと思ったら、そんなの準備してかのかい?」

 

まさかの自前!?流石に他の姉妹もちょっと呆れている。

でも唐揚げかぁ。

 

「流石に笹原さんもそれじゃ「そうだよ白露ちゃん、そんなんじゃ紅音ちゃんはドッキリしないよ」君は何を言っているんだい!?」

 

甘いよ時雨ちゃん!前世でもよく一緒にいた私だから分かる。それじゃダメだと。

なぜなら昔、前世の話になるけど、ハンバーグを作ろうと思っていたけどその時お肉がなかった、困った私はその時閃いて蛇のお肉を材料にハンバーグを作った、本人に内緒で。全部食べ終わった本人はたずねてきた、このハンバーグの材料は何かと、私は正直に言ったけど本人はなんて言ったと思う?

 

 

 

『マジか!蛇も意外といけるな!また作ってくれ!』

 

 

 

だよ!ありえないよね!それ以降一度も作らなかった。いや、作った私もいけないけどさ。

 

「ちょっと待ってて、今いいもの出すから」

 

私は冷蔵庫の中からある物を取り出した。それを見たみんなは目を見開いた。

 

「ゆ、雪宮さん、それは一体何かな?」

 

時雨ちゃんは恐る恐るたずねる。

 

「ん?カエルのお肉だよ?」

「アウトっぽい!!!!」

「君はなんて物を取り出しているんだい!!」

「というより、どこで買ったんですか!?普通のお店には売ってませんよね!?」

 

春雨ちゃん、そんなにこのカエルのお肉の入手ルートが気になるのかい?聞きたい?聞きたいのかい?よかろう!ならば。

 

「その辺りにいた、おじさんに貰ったんだよ」

「ちょっと待って!その辺りのおじさんでも普通はカエルのお肉なんか持ってないよね!?」

「特徴を言うと、タンクトップで短パンを履いていて、あとバックと傘を持っていたね。あと坊主だったね」

「・・・・・なんか知っているような知らないような・・・」

「それで私がたまたま通りかかったときお腹に手を当ててしゃがんでいたから、どうしたのか聞いたら」

 

 

 

『おおおお腹が、すす空いたんだなぁ』

 

 

 

「って言ってたから」

「ちょっと待って!なんか聞き覚えのある口調だよ!」

「それで私はちょうど持っていたおにぎりを渡したら「なんでおにぎりを持っていたのかな!?」涙を流しながら食べて、変わりにカエルのお肉を貰ったんだよ。その時に」

 

 

 

『ああああありがとうなんだなぁ、かかかか感謝するんだだだなぁ』

 

 

 

「って言ってた」

「やっぱりその人裸の◯将だよ!」

「ほ、ホントにいたんだ・・」

 

時雨ちゃんのツッコミを流しながら説明をした私は春雨ちゃんから微妙な反応をされてしまった。

ちなみに、その時おにぎりを持っていた理由は、料理をするために材料を買いに行ったのは良かったけどお金がなくて、仕方なくコンビニのおにぎりで済ませようとしたからである。

 

「まっ細かいことは良しとして、早速このカエルのお肉を使ってドッキリチョコを作るよ!白露ちゃん!」

「君はなんてこと言っているんだい!」

「わかった!このお肉を使って、笹原ちゃんのハートを掴むよ!」

「掴んだ先に未来がないよ!」

「大丈夫だよ時雨ちゃん。紅音ちゃんのことだから、笑って済ませてくれるよ」

「無理だよね!どんなに頑張っても二人の悲惨な未来しか見えないよ!」

「安心して時雨、何があっても私が時雨を守るから」

「さりげなく僕を巻き込まないでくれるかな!?それに姉さんは守る側より守られる側だからね!?」

「それじゃ白露ちゃん!一緒に作ろ!」

「わかった!一番いいチョコを作ってみせるから!」

「ダメーーー!!!」

 

こうして、私と白露ちゃんのドッキリチョコ作りが始まった!

 

 

 

 

 

〜〜〜〜笹原 紅音サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「隣の部屋は賑やかね〜。てかうるさいわね」

 

何騒いでんだか。まぁいい、さっさとチョコ作りますか。

 

「アイツ・・・どんなのが好きかなぁ・・・」

 

ここは普通のチョコを作るべきか、意外性を出す為にウイスキーボンボン風に作るべきか、あえての変化球でドッキリチョコを作るべきか。

 

「悩むわねー」

 

こんなことなら好みとか聞き出しとけば良かったなぁ〜〜。

 

「ダメーーー!!!」

 

今の声は時雨かな?マジで何やってんだアイツら。気になる、だが確認するのも怖い。

 

「放置しておくか」

 

さて、こうなったら妥当なチョコを作るか。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜射命丸 文 & 姫海棠 はたてサイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

はカット!!

 

「させるかーーー!!」

「文うるさい!いきなり叫んでどうしたの」

「あやや、何やら阻止しなければならない事態だったみたいなのでついつい」

「?まぁいいわ、それよりさっさと作るわよ」

 

 

 

 

 

〜〜日巻 遥 & 湯沢 奏 & 戸羽 晶サイド〜〜

 

 

 

 

 

「奏さん、こ、こんな感じでいいですか?」

「どれどれ〜・・おっ、いい感じに仕上がってる。これでいいよ!」

「あ、ありが、じゃない・・かたじけない」

「うんうん!」

「奏〜。こっちも見て欲しいのだ〜〜」

「はいはーいちょっと待ってー。って晶ちゃん、もうちょっとお湯の温度を上げて湯煎しないとチョコ溶けないよ」

「そうなのか?」

「ちょっと待っててー」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜再び笹原 紅音サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「さてと、こんなところかな?」

 

俺はチョコをなんとか完成させた。させたはいいんだが。

 

「どうしよ・・・・これ・・・・」

 

ラッピングまでした俺はあることに気づいてしまった。

これ、渡すんだよな。

 

「う・・・うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

待て!落ち着け俺!作ったわいい!ラッピングしたわいい!だが待て!

これ渡すんだよな?

俺は両膝をついて両手で顔を覆った。

恥ずかしい、恥ずかし過ぎる!容姿は女だが中身は男だぞ!どうしたらいいんだ。

 

「やはり捨てるべきか」

 

そう考えた俺はチョコを持ってゴミ箱の待てに立つ。

 

「・・・・・・」

 

だが捨てなかった、捨てられなかった。

何を戸惑っているのか俺にもわからない、何を躊躇しているのかわからない。

ただなぜか、アイツの顔が頭をよぎる。

 

「あーーもう!」

 

結局捨てられなかった。

俺はチョコをテーブルの上に置き、使った器具の後片付けをする。

片付けをしているときに俺は思った、本当に女になってしまったんだなと、いくら前世の記憶を引き継いでいるとはいえ、今は女。

それはそうだよな、記憶を引き継いでいるだけであって、それを除けば全くの別人なんだ。思考が女の方に傾いていても不思議ではない。

 

「たく、何が紅狐だ。前世の自分が聞いたらどんな反応するのやら」

 

多分大爆笑するか呆れるかの二択だな。全く、紅狐とはよく言ったものだ。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜25分後〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「さてと、明日の準備もしたしちょっとゲームしようかな」

 

誰もいない、俺しかいない部屋でそう言った俺はP○4を起動する。

 

「よし、今日も一狩り行こうかな!」

 

そして俺はオンラインで適当に野良パーティーを組んでプレイをしていたらあるプレイヤーが部屋に入ってきた。

 

「あれ?このプレイヤーって」

 

そうこのキャラは、間違いない。

俺はすかさずキーボードでそのプレイヤーにメッセージを飛ばす。えっ?ボイチャしろって?相手も俺も持ってないから仕方ないだろ!

あっ、返信がきた。何々、やっぱりあたりだ。

そうそのプレイヤーはたまに一緒に狩りをしていてなんと隣のクラスの人間である。誰とまでは言わない、多分みんな知っているから。

俺はちょっと考えメッセージを送った、内容はこうだ。

 

『異性からチョコを貰えるならどんなチョコがいい?』

 

おっ、返信早いな。

 

『突然どうした?』

『明日なんの日か覚えてる?』

『なんかあったっけ?』

『本気で言ってる?』

『バレンタインだったな、さっき妹が教えてくれた』

『本当に忘れていたのね(;゚Д゚)』

『ボッチはバレンタインとは無縁だからな』

『それ自分で言ってて悲しくなんない?』

『ウチのごみぃちゃんがすみません!代わりに私が相談を聞きます!』

 

おい妹、突然乱入するな!ビックリするだろ。

 

『ありがと、一応ゲーム内だから名前出さないようにね』

『まっかせてください!それでどうしたんですか?』

『明日バレンタインなんだけど、渡すならどんなチョコいいかなって』

 

作った後にこんなこと聞くのも変な話なんだがな。

 

『もしかして相手はあの鈍感さんですか?』

 

ちょっと待て!何故それをお前が知っている!

 

『なんで知ってるの!?』

『それはヒ・ミ・ツです☆』

『・・・・・・まぁいいわ』

『ご、ごめんなさい!』

『別に怒ってないわ。それでどうしたらいいかな?』

『そうですね〜〜。あーいったタイプは変化球を入れるより、直球がいいと思います!』

『直球ねぇ〜〜』

『大丈夫です!むしろ当たって砕けろです!』

『いや、砕けたらダメだから!』

『でも何事も最初の一歩が大事だと思います、むしろ成功しないのが普通です!だから今回のバレンタインがダメでもまだチャンスはあります!』

『うっ、とても小学生の言い分とは思えない・・・』

『大丈夫です!自分に自信を持ってください!今回がダメだったら、何がダメだったかを考えて次に活かしましょう!』

『それもそうね』

『ところで話は変わりますけど、今からチョコを作るんですか?』

『いいえ、実はもう作っているんだけどね、受け取ってもらえるか不安で』

『・・・・ちなみにどんなチョコですか?』

『最初はハート型のチョコも考えたけど、ちょっと恥ずかしいからチョコケーキ』

『何気に高難易度なものを作ってた!!でも絶対いけます!頑張ってください!』

『あ、ありがと』

『それじゃ私はお風呂入って来ます!応援してます!』

『ありがとね、私もそろそろ落ちるね』

『おやすみなさい!』

『おやすみ』

 

さて、そろそろ寝るか。

俺はベットの中に潜り込んだ。そしてさっきのやり取りを思い返した。

あれ、俺何やってんだろ。

そしてどんどん顔が熱くなり恥ずかしくなった。

何やってんだ俺はーー!!!!!バカか!バカなのか!!バカだ俺!!!なんてこと相談してんだ俺は!!これじゃまるで俺がアイツを好きなってしまったみたいじゃないか!

 

「う、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!殺せ!!誰か俺を殺せーー!!!」

 

こうしてバレンタイン前日は終わっていった。

 

 

 

 

 




文「今回なんか私達の出番少なくないですか?」
は「出番というより扱いが雑ですね」
晶「それを言ったら私達はほとんど出てないぞー」
奏「そうだよーー、出番貰えるだけありがたいよ」
遥「そ、そうですね」
文&は「「申し訳ありません」」









今回はここまでです。
それと非ログインの方でも感想を書ける用に設定を変更しました。
ですのでご意見、ご感想お待ちしています。
次は3月5日までに投稿します。
それではまた!


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銭湯もたまにはいいものだな

ちょっと投稿が遅くなり申し訳ありません
ではどうぞ!


 

 

 

 

 

銭湯、それは、客が入浴できるようにした日本の公衆浴場の一種。風呂屋とも、湯屋とも呼ばれる。

もともとは、公衆浴場の業者には分類として風呂屋と湯屋が存在し、水蒸気に満ちた部屋に入って蒸気を浴びて汗を流す、蒸し風呂タイプの入浴法で営業している業者を風呂屋と呼び、沸かした湯を浴槽に入れ、湯を身体に掛けたり、浸かったりするタイプの入浴法で営業している業者を湯屋と呼んで区別していたらしい。いやその辺は俺も詳しくは知らん。

しかし、江戸時代中頃に入浴法の発達や、兼業して営業する業者が出るようになって、喜田川守貞が書いた『守貞謾稿』の「京大坂にては風呂屋と俗に云ひ、江戸では湯屋と云ひ訛る」だったかな?忘れたけど。との記述があるように、地域によって呼び方は異なることはあるが風呂屋と湯屋は混同されて使用されるようになった。

とまぁ何故こんなWikiでも検索したら出てきそうな(まぁ実際検索したんだけど)こと長々語ったかというと。

 

「点検終わりましたー」

「はーい」

 

俺は風呂場に向かう。

そこには、そこそこイケメンなお兄さんが作業を終えて撤収準備をしていた。

 

「それでどうでしたか?」

「一応、点検はしました。ですが今日一日は使用出来ませんね。明日もう一度道具を揃えて伺います」

「というと明日で終わりますか?」

「そうですね、明日には終わらせられますね」

 

そう言ってお兄さんを玄関まで見送る。

 

「それでまた明日伺います」

「はい、本当にありがとうございます」

「いえいえ、それでは」

 

そう言ってお兄さんは帰っていった。

さてどうしよう。

風呂が壊れた。

壊れたと言っても水漏れなのだが、二箇所水漏れをしていた。実際俺一人でも修理は可能なのだが、それに必要な工具と材料がないので修理が出来ない。なので仕方なく業者を呼んで修理を依頼した。

そこでさっきの話に戻る。

風呂が使えないと言われるのを分かっていた俺は近場の銭湯を携帯で探していた。最初は今日一日くらい風呂に入らなくてもいいかなって思ったのだが今は女、それに今日は部活で汗もかいているので流石にマズイ。

ならば、学校の水泳部が使っているシャワー室をこっそり使おうと思ったのだが、学校には警備員の人もいるし、何より校長である紫がどこからスキマで覗いてくるかわからない。

 

「おっ、近くにあるじゃん」

 

徒歩十分か、かなり近いな。

俺はジャージに着替え、銭湯に行く準備をした。えっ?何?もうちょっとオシャレをしろって?いいだろ別、どっか遠出をするわけではあるまいし。

そして俺は銭湯に向かった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜目的地ちょっと手前〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「ここを左に曲がって・・・・・あれかな?」

 

時刻は八時をちょっと過ぎた辺り、ここまでたどり着いくのに約二十分かかってしまった。

いや、たまにあるよね。携帯でマップ検索して表示される時間と実際にかかる時間の違いって。

まぁ途中道を間違えてしまったけどね。

とりあえず、さっさと体を洗って帰ろかな。まだ晩御飯食べてないし、書類の整理も終わってないし。

なんで、顧問の先生がしないといけないことを俺がやってんだろ、俺はとあるオタクお父さんみたいに、働きたくないでござる!絶対に働きたくないのでござる!って言って作業を吹雪に丸投げしたい。

そんなことを考えながら銭湯の入り口ちょっと手前までたどり着いたところで、反対方向から同じように入浴道具を持ったものすごく見知った集団がこちらに向かって歩いて来ていることに気づいた。てか、

 

「なんでアンタ達がここにいるのよ」

 

そう、まさかの吹雪、白露型五姉妹こと佐々木姉妹と寺本、遊佐、あとは霊夢と三浦である。

人数が多いなぁ。なんでこんなにいんの。

 

「ボク達は部活が終わったあと、ゆ◯タ◯ンに買い物に行ってたんだ。せっかくの土曜日だからね」

 

へぇー。俺誘われてないんだけど。

 

「笹原さんにも電話したんだけど繋がらなくて、何か用事でもあったのかい?」

「えっ」

 

俺は慌てて携帯を取り出し確認する。ホントだ電話は五件、メールが二件来ていた。

 

「ごめんなさい、気がつかなかったわ」

 

いかん、今日は部活が午前中に終わって、それからずっとパソコンの前にいたから全然気づかなかった。基本的に携帯はマナーモードにしてるし。

 

「ううん、気にしなくてもいいよ。話を戻すけど、それでその時雪宮さんが銭湯に行こうって言ったから、一度荷物を置きに行ってからここに来たんだよ」

 

そういうことか。

あれ?それなら俺と同じ方向から来るはずなんだが。

 

「そして銭湯に向かう途中、荷物を置きに帰る途中で夕立が面白い物を見つけたからそれを買いに行くっていいだして、ちょっと遠回りなったけどそれを買ってからここに来たんだ」

 

なんて迷惑なヤツだ、これが吹雪なら俺は間違いなくそんなの無視して一人で行くな。

 

「それにしてもこんなところで会うなんて、ホント()()だね」

「ホント土偶・・・は?」

 

俺は吹雪が言ったことに対してツッコミを入れようとしたとき、それは出てきた。

風呂道具が入っているであろう手提げバックの中から。

そう土偶が。

ちょっと待てーーー!!!何故世界遺産がここにある!?

 

「雪宮さん、それを言うなら()()です」

「あっ、そうだったね」

 

おいーー!!寺本、それは俺の仕事だ!俺のツッコミをとるな!

 

「まぁ、冗談はこれくらいにしてっと」

 

そう言って吹雪は土偶を後ろに放り投げた。

 

 

 

ガッシャーーーン!

 

 

 

「ちょっとーーー!!??」

「大丈夫だよ、ドン◯ホー◯で買ってヤツだから」

 

それならそうと早く言え!ビックリするだろ!

気がつけば佐々木姉妹は必死に笑いを堪えて、三浦、寺本、遊佐はちょっと呆れている。コイツら、初めから知っていたな。

 

「それより、紅音ちゃんはどうしてここに?」

「お風呂が壊れたのよ。正確には二箇所水漏れしていて、業者に頼んだけど修理は明日になるから今日はここに来たの」

「そうなんだ〜」

「そういうアンタはなんで銭湯に行こうっていいだしたのよ」

「気分かな!」

「あっそ」

「気分かな!」

「なんで二回言ったのよ。ちゃんと聞こえてるから」

「だって紅音ちゃんの反応微妙だったから」

「意味不明なんだけど」

 

そう言いながら、俺は吹雪の頭に軽くチョップした。

 

「てゆーかアンタ、なんでジャージ着てんのよ」

 

ここで三浦からのツッコミ、てかツッコむ場所そこ?

 

「いいでしょ別に、遠出をするわけではないし、帰ったらすぐ寝るし」

「笹原、アンタも女の子なんだからもっとオシャレしろし」

「そう言えば笹原さんって、制服とジャージ姿以外見たことないね、あとウィンドブレーカー」

「でしょ!そもそも笹原、アンタ私服持ってんの?」

 

こら寺本、ウィンドブレーカーをおまけみたいな感じで追加するな。それと三浦、いくら俺でも私服は持ってるぞ。

 

「あるにはあるけど、紅音ちゃんはあまり持ってないよねー」

「ちょっと待って吹雪、なんでアンタがそんなこと知ってるのよ」

「それはヒ・ミ・ツだよ☆」

 

なんか腹が立ってきた、てかなんで知ってんだよ。

 

「紅音ちゃん、ファッションセンスが絶望的にないからねー。黒と白と灰色のパーカーとあとGパンくらいじゃなかったっけ?あっ、あとタンクトップがあったね」

 

ホントなんで知ってんだよ!!

 

「アンタ、ホントに女子中学生?」

 

失礼だな三浦は、俺は女子中学生だぞ!中身は二十歳過ぎた男だけど。

 

「そんなことより、さっさと入りましょう」

 

俺はそう言って中に入って行って。誰かが逃げたって言っていたが俺は気にしない。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜前原 沙奈サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「ふう………」

 

少し熱めのお湯に肩まで浸して、私、前原 沙奈は疲れを吐き出すように深い溜息を吐いた。

私は、学寮から少し離れた位置にある銭湯に来ていた。

 

「……………ん」

 

私はふと、目を閉じる。

思い描くのは、つい先日の敗北。

常幻西中学校戦車道の隊長を務めていた私は、先日の東中との練習試合に敗北した。

正直言って、悔しかった。あのあと東中の隊長のことで可能な限り調べた。けど、ほとんど何も出なかった。

出てきたのは中一から戦車道を始めたことと、今は一人暮らしをしていること、あとは幼馴染みが一人いることくらいである。

そう、三年も戦車道をやっている私が、たった数ヶ月しか戦車道をやっていない人間に負けたのである。

悔しかった。ただただ悔しかった。

認めたくないが、認めざるをえない。自分が如何に思い上がっていたのかを。

そして反省しなくてはならない、これから先東中との対戦のようなイレギュラーな事態があっても対処出来るようにするためにも。

 

「隊長に、なってからかしらね・・・・・・」

 

思い返せばあの頃から、隊長を任されてから私は必死だった。

勝つ為にどうするべきか、その為には先ず技術、戦術、知識、連携、あらゆるものが私には足りなかった。正直不安だった、でもだからと言って、隊長を任された以上、責任放棄は出来ない。

私は色々試行錯誤をし、ある答えにたどり着いた。それが西住流である。

撃てば必中 守りは固く 進む姿は乱れ無し 鉄の掟 鋼の心 。

統制された陣形で、圧倒的な火力を用いて短期決戦で敵と決着をつける。

私はここに答えを見出した。私に足りないものが全て揃っていた。

一年の時ベスト九位だったのが、二年ではベスト六位になった。

この戦い方なら優勝の可能性もある、そう思っていた。

だが現実はそんなに甘くはなかった。

先日の敗北で思い知らされた。私は西住流に依存していたことを、そして本当の自分の戦い方を。

 

「いっちばーん!!・・・じゃなかった!!」

 

私は入り口の方に目を向け、声の主を見る。

あれは確か東中の生徒の一人、何故こんなところに。

そう思ったとき私は目を見開いた。何故ならそこには、先日の練習試合で私達西中に勝ち、現在、東中の隊長を務める笹原 紅音がいたからである。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜笹原 紅音サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「ゆ、遊佐さんってホントに大きいよね」

「うん、確かに。何を食べたらあんなに大きくなれるんだろ」

「くっ!私にも、私にもまだ可能性がある!まだ諦めるときじゃない!七つのボールを集めて願いを叶えれば!」

 

いや、それってむしろ諦めてないか?

白露、時雨、吹雪、あんま遊佐のある部分を見てやるな、本人も恥ずかしがっているだろ。ここではあえてどことは言わないが。

 

「大きくてもいいことばかりじゃありませんよ」

「肩と首がこりますし」

「そうよ。それに走ったりするとき、すぐ疲れるし」

 

遊佐、寺本、俺が大きいことでのデメリットを言っていく。

 

「嫌味!?嫌味なの!!どうせない人の気持ちなんてわからないないよ!」

「雪宮、そこまでにしな」

 

吹雪の怒り?を三浦が止める。なんかこういうとき何気ないのが助かるな。

 

「それじゃ私が一番風呂、頂くね!」

 

そう言って白露は走っていく。

こら、脱衣所は走ってはいけません。お父さんに教わりませんでしたか?

 

「いっちばーん!!・・・じゃなかった!!」

 

それはそうだろ、今日は土曜日だぞ。土曜日で客がいないってどんだけだよ、少なくともこの銭湯はまだそんなレベルまで落ちていないはず。見た感じ、内装は割と綺麗・・・だった・・し。

 

「えっ、なんで?」

 

大きめの浴槽、先に入っていたであろう客と目が合って俺は驚く。

 

「西中の隊長さんっぽい!」

 

そう、先日練習試合の相手。

確か、えっと、なんだっけ?

 

「そういえば、笹原さん以外の人はまだ自己紹介していませんでしたね。初めまして、常幻西中学校戦車道、三年の前原 沙奈です」

 

そうそう、前原さんだ。

 

「丁度よかったわ。笹原さん、貴女に色々聞きたいことがあるの、いいかしら?」

 

なーんかめんどくさいことになったぞぉー。

 

「わかりました。少し待っていて下さい」

 

そう言って俺は風呂椅子を二つ持って、吹雪のところ元に歩み寄る。

 

「はい、アンタの分」

「ありがとっ」

 

そう言って吹雪に風呂椅子を渡す。

 

「いっちばーていたたたたた!!」

「姉さん、ちゃんと体洗わないとダメだよ」

「わかった!わかったから離して!手が!手がぁぁぁーー!!」

 

全く、どっちがお姉さんなんだか。あと時雨、目が笑ってないからその笑顔やめろ、白露が怯えてるだろ。

そんなこんなで体とか色々洗ってから浴槽に入った。

 

「それでは笹原さん、早速いいかしら?」

「私の答えられる範囲なら」

 

何が聞きたいんだよ一体。

 

「では先ず一つ。貴女、どこで戦車道を覚えたのですか?」

「・・・・どういうことですか?」

「貴女ことを調べました。全くと言っていいほど何も出ませんでした。唯一出たのと言えば、貴女は中学に入ってから戦車道を始めたことと一人暮らしをしていること、そして幼馴染みがいることくらいです」

 

・・・・・・なるほど。

要するに俺が、もしくは吹雪もだが怪しいと。

 

「それ、私からしたら、どうやったらテストでそんないい点数が取れるの?という質問と同じレベルの質問なんですが」

「答えになっていません」

 

あ〜〜。全く、こういうタイプの人種はあまり嫌いなんだよなぁ。

 

「戦車道を始めたのは中学生からであってます。ですが戦車に初めて乗ったのは六歳のときです。今まで遊び程度しかやっていませんでしたので、調べて出てこないのも当然です」

 

それを聞いた前原さんは、少し考えるそぶりを見せてまた俺の目を見る。

 

「二つ目、あの作戦は貴女が考えたものですか、それとも他の誰かが?」

「作戦立案等をしたのは私です」

「では、これが最後です。東中の三年が全員退部した件、貴女が関わっていますね」

「・・・・・・・そうです」

 

この人、ちょっと面倒だな。

最初の質問の意図は力量を探るもの。それはそうだよな、戦車道始めて数ヶ月の人間がベスト六位のところに勝てるはずがない。当然相手はこっちのことを調べて作戦を立てるはずだ、だが調べた情報と実際の力量があまりにも違う。情報の食い違いってヤツだな。

二つ目はどれだけ頭が回るかってところだろう。一人で戦術を考えたのか、もしくは他の誰かが考えたものなのか。他の誰かが考えたものなら誰が考えたものなのか。

最後の質問の意図はちょっとわからなかったが、これも力量を探るものか?

 

「どうしたら貴女のように強くなれるのかしら?」

「・・・・真剣な質問をしているところ申し訳ありませんが、私は思い付きで作戦を立てているところもありますので、あまり参考にはなりませんよ」

「・・・そう」

「ただ一つ言えることがあります」

「・・・?」

「自分の戦い方を見つけること、これが大事です」

「どういうことかしら?」

「簡単なことです。テスト勉強なら、自分に合った勉強方法をしますよね」

「えぇ」

「戦車道も同じことです。自分に合った戦い方をする、そしてそれを伸ばす。その為にも自分のことを知ることが大切です。前原先輩の場合は西住流に頼っているところがあります。自分の戦い方ではなく他人の戦い方、そんなことをしても必ずどこかで限界がきます」

「・・・・・・・そうね」

「説教って訳ではありませんが、先輩は自分を見つめ直した方がいいかもしれませんね」

 

まっ、俺があまり人のこと言える立場じゃないがな。

 

「いえ、気にしなくていいわ。貴女と戦ってよくわかったわ、何故負けたのか。私も忘れていたわ、自分の戦い方を」

「そうですか」

「さ、笹原さーん!」

 

会話の途中まで遊佐がこちらに涙目でやってきた。

 

「どうしたの?」

「ゆ、雪宮さん達がぁ〜〜」

 

それを聞いて俺は吹雪達を見る。おいやめろ吹雪、手で変な動きをするな、白露、夕立、村雨、お前らもじわじわとこちらに近寄るな。

四人の後ろには寺本と時雨と思われる二つの、ってかちゃんと生きてるよなあれ?一瞬水死体って思ってしまった、浮いてるし。その横に三浦と春雨がいるから大丈夫だろう。

 

「何よアンタ達」

「理解の早い紅音ちゃんなら、言わなくてもわかると思うけど」

 

だから手のその動きをやめろ、ワキワキっていうんだっけ?とにかくやめろ。

 

「・・・・・・・・揉ませろと?」

「そうだよ。フッフッフッ、さぁどうする?」

「いいわよ」

「揉ませなかったらって、えっ?」

「だから、揉みたいならどうぞって」

「えっ、えっと、その」

「ただし」

「えっ?」

「揉みたいなら、それなりにリスクを背負ってもらうわよ?」

「リ、リスク?」

「揉んだ瞬間、というより触った瞬間、明後日の放課後どうなるか分かっているのでしょうね?」

「どどどどうなるのかな?」

「そうね、丁度夕立と白露は他の人より射撃の命中率が低かったわね、村雨はそれなりに命中率が高いからちょっと早いけど次のステップ行きましょうか。」

「な、何をするのかな?」

「なんか、とんでもないことになってしまったっぽい」

「あ、あはははは」

「二人は命中率が95%達成するまで帰さないわよ、もちろん暗くなっても関係ないわ。村雨は夜間射撃で命中率が90%出せるまで射撃よ。もちろん明かりは一切なしの肉眼で、吹雪は95%出せるまで」

「何気に私が一番ハードだぁ!!」

「そのリスクを背負ってでも揉みたいなら止めないわ。因みに私は夜間射撃で命中率は96%よ」

「「「え、えーーー!!!」」」

 

白露型の三人が驚く。

 

「安心して、不可能ではないわ。ちゃんとコツはあるから、それに私は自分に出来ないことを他人にやれって言わないわ。でどうするの?」

「「「「や、やっぱりやめます」」」」

「懸命な判断ね」

「あ、ありがとう笹原さん」

「気にしなくていいわ」

 

さて、ナイスタイミングで邪魔が入ってくれたからそろそろあがりますか。

 

「それでは前原先輩、そろそろ私達は上がります」

「え、えぇ」

「・・・・・見つかるといいですね、自分の戦い方」

「・・・・・えぇ」

「では、失礼します。吹雪、あそこに浮いてる二人を運んで」

「えぇーー」

「夜間射撃」

「喜んで!」

 

そして俺達は前原先輩より少し早く上がった。

 

「吹雪、大きくしたいなら左手を腰に当てて牛乳を飲むといいらしいわよ」

「ホント!?」

 

いや知らんけどな。

こうして俺達は銭湯でちょっとはしゃいで、お客さんやお店の人にちょっと迷惑をかけて、銭湯を出た。

 

 

 

 




いかがでしたか?
今週と来週はちょっと仕事が忙しくていつ投稿出来るかわかりません。遅くても3月16日までには投稿出来ると思います。
次回はいよいよ西住姉妹を出します。
ではまた!


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熊本県代表選開幕!!

少し投稿が遅くなり申し訳ありません。実はみなさんに報告があります。
感想欄にも書いていますが、すでに投稿した作品で色々と編集しました。
もしよろしければ、そちらも読んでください。




今回は西住姉妹が出ます。
どうぞ!



 

 

 

 

 

中間テストも終わって6月に入り、衣替えの時期に入りようやく暑苦しい格好から半袖へと移行する頃、戦車道の大会に向けてどこの学校も練習メニューは厳しさを増していた。もちろん俺達、東中も例外ではない。

3時限目が終わり休憩時間の今、俺は2-Bの教室に来ていた。冴塚先輩と相澤先輩、あと黒川先輩と神宮寺先輩を集めて今日の部活のことで話し合っていた。

 

「それでは、私と冴塚先輩は抽選会に行きますので、今日は昼から早退します。部活の時間には帰れると思いますが、間に合わなかった時は、それまで黒川先輩と神宮寺先輩、相澤先輩には部活で皆さんに指示を出しておいて下さい。練習メニューはこの紙に書いてありますので、これ通りにお願いします」

 

そう言って俺は、黒川先輩にA4サイズの紙を渡す。

 

「わかったわ。悪いけど明日香のこと、お願いね」

「もう、夏海ちゃんは心配しすぎだって〜〜」

「アンタはしっかり見張ってないと、すぐどっか行っちゃうでしょ」

「大丈夫だよ〜。今日は抽選会だけだし〜」

 

そう、今日は大会の抽選会に行くために、午後から早退するのである。

ついにこのときがやってきた、戦車道大会。

原作との違いは、この世界では各都道府県で県予選を行い、その県予選で勝ち残った上位2校、つまり1位と2位が全国大会への切符を手にすることが出来る。

因みに、ウチの学校は毎年県予選の2、3回戦で敗退しているらしい。ウチの学校って結構レベルが下だったんだな。バカな主人公が優秀クラスに喧嘩吹っかけて下克上する某アニメを思い出してしまった。

 

「それでは私はこれで、冴塚先輩は4時限目が終わったら校門で合流しましょう」

「わかった〜〜」

「いいなぁ〜、午後の授業サボれて」

「サボりじゃありません。なんだったら相澤先輩も来ますか?その代わり冴塚先輩をしっかり見張っていただきますが」

「やめとく」

「ちょっと二人とも〜〜!私をなんだと思ってるね〜〜」

「「天然ドジっ子娘」先輩」

「何一つ当てはまってないよ!?」

「いえいえそんなことは、ってそろそろ時間ですので、私は教室に戻ります」

 

そう言い残し自分の教室向かった。冴塚先輩が不貞腐れていたが気にしない。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜4時限目が終わり、校門前〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「笹原ちゃ〜ん」

「お疲れ様です、先輩。それじゃ行きましょう」

 

そう言って、俺と冴塚先輩は最寄りの駅に向かって歩き出す。と言っても徒歩20分弱くらいである。

 

「そう言えば、笹原ちゃんってこの前の中間テストの結果はどうだった?」

「私と吹雪が満点で学年1位です」

「えっ!?学年トップ!?」

「はい」

 

だってニ度目の中学生ライフだからな、流石に満点は取れる。英語はまだリスニングとかないし。

 

「苦手科目とかないの〜?」

「強いて言えば、文系が苦手です」

「そのなの?」

「はい、私はどちらかと言えば理系ですので。今回のテストも、数学と理科はそんなに勉強していません。その分、国語、英語、社会に勉強時間を当てました」

「そうなんだ〜」

 

学校での出来事、趣味の話、そんな話をしていたら駅に着いた。

ホームにはわずかではあるが学生がいた。

何人かはこちらに視線を向けたが、すぐに手元の携帯に視線を戻した。

 

「あの人達みんな他校の戦車道の人達かな〜?」

「多分そうだと思います。この時間に学生がいる理由なんてそれくらいでしょう」

 

俺は携帯とイヤホンを取り出し、適当に曲を流そうとした。

 

「笹原ちゃん、何聞いてるの?」

「アニソンです」

「へぇ〜〜、なんか意外だね。J-POPとかそのいうの聞くと思ってた〜」

「J-POPも聞きますよ。アニソンもボカロも聞きますし、クラシックやオーケストラも聞きます」

「色々聞くんだね〜」

 

そんな会話をしていると電車が来た。扉が開いて乗車し適当に座った。

俺は音楽を聴きながらカバンから小説を取り出して読みだした。

 

「笹原ちゃ〜ん」

 

隣に座った冴塚先輩が、名前を呼びながら肩を軽く叩いた。

 

「なんですか?」

「イヤホン、片方貸して。笹原ちゃんがどんなの聴くか興味があるなぁ〜」

「いいですよ」

「やった〜!」

 

そして俺は、右耳のイヤホンを外して冴塚先輩に渡す。

 

「これってなんて曲名?」

「ひぐ◯しの◯く頃にってアニメで流れた、Y◯Uって曲です」

 

夏も近いし、結構俺も気に入っている。

 

「詳しいね笹原ちゃん」

「ピアノで最初に弾けるようになった曲ですので」

「へぇ〜〜、笹原ちゃんってピアノ出来るんだ〜」

「趣味でやってます。この曲は、ヒグラシが鳴いてる時に弾くのが一番ですね」

 

ガタンゴトンとリズム良く音が車内に響く中、俺と冴塚先輩は時折会話を交えながら目的地に向かった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜目的地到着〜〜〜〜

 

 

 

 

 

さて、会場に着いたのだが何故だろう。

周りの人が時折、俺のことを見てくる。まぁ、特に害があるわけでもないので無視して会場の中に入った。

入ってすぐのところに受付の人がいたので、名前と学校名を書いて奥に進む。

 

「なんか緊張するね〜」

「緊張する要素がどこにあるんですか」

 

少し歩いたところで大ホールの入り口を見つけ中に入る。

席は特に指定されていないので、後ろの方に行き座る。

どうやら記者やマスコミ、カメラマンもいるようだ。たかが中学生の大会で、なんでこんな奴らまで来てんだ?理解出来ない。

他の学校もある程度来ており、適当に周りを見渡していると入り口の方がやけに騒ついていることに気づいたので、そちらに視線を向けた。

 

「おい、王者が来たぞ」

「あー、しかも今年は妹も入って、姉は隊長に昇任したからさらに強くなったな」

 

記者、マスコミ、カメラマンの人達がそんなことを口にしていた時、そいつらはやって来た。

 

「・・・・・黒森峰」

 

俺はそう呟いた。間違いない、あの先頭に立っているのは西住まほ、その後ろにいるのは妹のみほだ。てか黒森峰って中高一貫なんだな、それとも原作との違いか?

 

「来たね、黒森峰」

「そうですね」

「反応薄いね〜」

「正直どうでもいいです。決勝まで当たらないことを祈るだけです」

『まもなく抽選会を行います』

 

そのアナウンスを聞いて周りの学生やその他色々が座って、抽選会が始まった。

 

『それでは抽選会を始めます。まず最初は黒森峰女学院ですが、今回も例年通りシード校です』

『まぁ〜そうなりますね〜。出来るだけ公平にするためにはそうなりますね〜』

 

どうやら司会進行役と解説者?の女性二人でやっていくようだ。

それにしても、いいな〜黒森峰はシードかぁ。まぁ仕方ないか。

 

『続きまして、海元中学校』

『昨年は準々決勝で惜しくも敗れましたが、はたして今年はどうなるのか注目です!それでは海元中学校の生徒は前にお願いします!』

 

その学校の生徒と思われる学生がステージに向かって歩いて行き、ステージに用意された箱の中から一つのボールが取り出される。

 

『海元中学校、5番』

 

そして、ステージに設置されたスクリーンに海元中学校の名前が入る。ここは原作通りだな。

こんな感じで抽選会は進んでいった。途中、西中が呼ばれてすごい歓声が上がった。それもそうだよな、去年の全国ベスト6位だもんな。

 

『続きまして、常幻東中学校』

『今年の東中はすごいですよ〜〜。私的には黒森峰女学院の次に注目しています』

『今年は一味違うと?』

『はい、こちらで事前に得た情報によりますと、今年の隊長はなんと1年生です』

『これは珍しいですね、1年生ですか。いつもは3年生が隊長を務めていましたからね』

『資料によりますと、今年の東中は1年生と2年生で出場するようです』

『3年生は出場しないと?』

『いえ、どうやら3年生はいないそうです。今年の4月に全員退部したようです』

『退部ですか?』

『はい、原因はわかりませんが全員退部したそうです』

『そうだったんですか』

『それで今の隊長、笹原 紅音さんが新隊長になったんですが、今年の東中の隊長はすごいです。戦車道を始めたのは中学生になってからそうなので、実質戦車道歴はほんの数ヶ月だそうです。私も最初は信じられなかったのですが、先月西中との練習試合にも勝ったそうです』

『に、西中にですか!?これはかなりの注目ですね。それでは常幻東中学校の生徒は前にお願いします!』

「私、帰っていいですか?」

「ダメだよ笹原ちゃ〜ん」

「代わりに行っていただけませんか?私、あまり目立ちたくないのですが」

「私もやだ〜、笹原ちゃんの話で盛り上がってるのに副隊長の私が行ったら気まずいし〜」

「はぁ〜・・・・行って来ます」

 

俺はその場で立ち、ステージに向かった。

 

「頑張って〜、隊長〜!」

 

なんで大声でそんなこと言っちゃうかな〜。目立ちたくないって言ったばかりじゃん。それに頑張ることなんてなに一つないし。

 

「あの子が西中に勝ったって言う・・」

「あれが東中の隊長か・・・」

「まぐれでしょ」

 

まぁ、周りからそんな印象を持たれても仕方ないか、信じられないというより認めたくないんだろ。熊本県2位の西中に勝ったなんて、ましてや県予選で2、3回戦で敗退しているような学校が出しゃばるなって思ってんだろ。

ステージに上がり、箱の中からボールを一つ取り出す。

 

『常幻東中学校、32番』

 

32ってことは、黒森峰とは決勝まで当たらないな、よかった〜。

俺はボールを返して自分がいた席に戻る。

 

「お帰り♪」

「・・・・・」

 

俺はさっきのことで少しイラっとしていたので無言で座った。

 

「無視しないでよ笹原ちゃん〜」

「はぁ〜、わかりましたから、そんなに肩を揺らさないでください」

 

こんな調子で抽選会は進んでいき、最後の学校の抽選も終わった。

 

『それでは、これを持ちまして抽選会を終了させて頂きます』

『皆さん、頑張ってください!』

 

それを聞き、他校の生徒はホールから出ていく。

 

「それじゃ行きましょ、冴塚先輩」

「うん」

 

そう言って、俺と冴塚先輩はホールから出た。

 

「今年の目標をお願いします!」

「やはり今年も狙うのは優勝ですか!」

「西住 みほさん!こっち向いてください!」

「何か一言お願いします!」

 

ホールから出たところで黒森峰の西住姉妹が取材を受けていた。

 

「人気者だね〜、黒森峰は」

「いえ、黒森峰というより西住姉妹がでしょ。それより、ちょっと遅いですがお昼にしませんか?」

 

時刻は14時30分。俺達は4時限目を終えてすぐ会場に向かったため昼飯を食べていない。

 

「そうだね〜、近くにマク◯ナル◯があったと思うから、そこにしない?」

「そうですね、では「東中の方ですか?」」

 

俺はちょっと不機嫌になる。

誰だよ、記者か?カメラマンか?俺はそう言った人種は嫌いなんだが。

そう思って振り返るとそこには意外な人物がいた。

 

「初めまして」

 

赤星小梅であった。

何故コイツがここに?俺に何の用だ?

 

「黒森峰の方が、私に何の用でしょうか?」

「私達の隊長が、貴女方とお話がしたいそうです」

 

西住まほが?接点も心当たりも全くないはずなのに。

 

「どうする笹原ちゃん?」

「・・・・・わかりました。場所はどうしますか?」

「場所はこのメモ紙に書いてあります」

 

そう言って小梅はメモ紙を渡してくる。

 

「隊長は今インタビューを受けていますので、少し遅くなります。先に行ってお待ちになってください、では私はこれで」

 

そして小梅はどこかへ行ってしまった。

 

「ホントに行くの?」

「行きましょう、あまり気乗りはしませんが」

「なんで?」

「単に面倒だからです」

 

そう言って俺達はメモ紙に書かれた場所に向かった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜20分後〜〜〜〜

 

 

 

 

 

徒歩20分、俺達はとある喫茶店の前に来ていた。

 

「ここ・・だよね」

「そのはずです」

 

そこは特に目立った特徴があるわけでない普通の喫茶店だった。

 

「とりあえず中に入りましょう」

「そうだね」

 

扉を開けて中に入る。そこは観葉植物があるレトロな喫茶店だった。

 

「いらっしゃいませ、2名様ですか?」

「はい」

「では奥の方へどうぞ」

 

そう言われ俺達は奥の方へ行き、適当に座った。

 

「飲み物はどうされますか?」

「私はココアでお願いしま〜す」

「私はコーヒー、ブラックで」

「かしこまりました、ご注文が決まりましたらお声かけください」

 

そう言って店員さんは行ってしまった。

 

「笹原ちゃんって、コーヒー飲めるの?」

「普段からよく飲んでますよ」

「そうなんだ〜」

「冴塚先輩は飲まないんですか?」

「私にはまだ早いかな〜」

 

それから10分程、冴塚先輩と話していた時

 

「いらっしゃいませ、2名様ですか?」

「いや、待ち合わせをしているのだが」

 

来たか。

てか、俺達が入店した時客は俺と冴塚先輩しかいなかったはずだからすぐに来るはず。

 

「待たせてすまない」

「こんにちは」

 

俺は声のする方を向く。そこに西住まほと妹のみほがいた、まさか姉妹で来たか。

そして2人は俺達の向かいに座った。

 

「改めて自己紹介をする。知っていると思うが私は黒森峰女学院中等部2年の西住 まほだ、今は戦車道で隊長を務めている」

「妹の西住 みほです」

「常幻東中学校戦車道隊長、1年笹原 紅音です」

「副隊長で2年の冴塚 明日香です」

 

一通り自己紹介が済んだところで店員さんが来た。

 

「飲み物はどうされますか?」

「私は紅茶で」

「私はココアでお願いします」

「すいません、コーヒーのおかわりとイチゴショートを」

「私もココアのおかわりを」

「かしこまりました」

 

店員さんが行ってから、俺は西住 まほにたずねた。

 

「それで、黒森峰の隊長が私達に何の用ですか?」

「なに、少し興味があってな」

「興味?」

「ああ、1年生で隊長を務め、そして西中との練習試合で東中を勝利に導いた君に」

「それはどうも」

「随分と素っ気ないな」

「不愉快な気持ちにさせてしまったのであれば謝罪します」

「別にそんなつもりで言ったわけではない。気にしなくていい」

「お待たせしました」

 

ちょうど店員さんが注文した品を持ってきたくれた。俺がイチゴショートとコーヒー、冴塚先輩とみほはココア、まほが紅茶である。

俺がイチゴショートを食べようとフォークを手にしたとき、一人の視線を感じたのでそちらを向く。

 

「・・・・・・・・・」

 

みほである。

 

「半分、食べる?」

「えっ、いや、悪いですそんな」

「私一人だけケーキを食べていたら気まずいわ、だから一緒に食べない?」

「い、いいんですか?」

「えぇ、それと敬語はなしにしましょ。私達同級生よ」

「うん、ありがとう」

 

俺はみほにイチゴショートを渡す。みほはそれを受け取り、半分にカットして食べた。

 

「〜〜〜〜!美味しい!」

「妹がすまない」

「いえ、お気になさらないでください」

 

似た様なヤツをいつも相手しているからな。特に吹雪と弥生。

 

「色々聞きたいことがあるが、いいか?」

「答えられる範囲でなら」

「なら早速、西中にはどうやって勝利した」

 

いきなりその質問かよ。

 

「どうと言われましても、ただ普通に勝ったとしか言えません」

「そんなはずはない。西中は全国6位の強豪校だ、そんなところがそうそう負けるはずがない」

「・・・・作戦内容は教えられません。強いて言えば、ただの思い付きの作戦で勝ちました」

「そうか、次の質問だ。東中の3年生と試合をして強制退部をさせたのは事実か?」

 

それを聞いて俺は冴塚先輩を見る。だが先輩は首を横に振る。

どこからその情報を?普通に考えて、校内に彼女と繋がりがある人物から情報を得たと考えるのが妥当だろう。

 

「どこでそれを?」

「東中の入学式の時、私も同じところの演習場を使う予定だったんだが、先約がいてな。私は気になって試合を見に行ったころには、ちょうど試合が終わったところだった。そのとき3年生と相手していたのが」

「私達だったと」

「あぁ、双眼鏡で遠くからだが1年生のチームの中に君がいたことは覚えている」

「そうなの、お姉ちゃん?」

「あぁ、しかも5対1という不利な条件で勝ってみせた」

「えぇ!!」

 

まさかあれを見られていたとはな。試合そのものを見られなくてよかった。見られていたら俺の実力が筒抜けになる。

 

「その日から色々と調べていたら、次の日に3年生が全員退部したという情報が入ってな」

「それでその退部には、当時試合に参加していた私が関わっていると」

「そうだ」

「事実です。3年生に喧嘩を売って勝利し、隊長の座を奪って3年生を強制退部させました」

「何故そのようなことをした」

「それを教える義理はありませんよね?」

「・・・・・私にはわからない」

「何がです?」

「わざわざ戦力を減らした理由も、喧嘩を売ってまで隊長の座を奪った理由も、私にはわからない」

「そうですか」

「本当に話す気はないのだな」

「しつこいですよ。そこまで言うのであれば言います」

 

俺はちょっと不機嫌になって言った。

 

「不要な存在だと判断したから切り捨てた。それだけです」

「どういうことだ?」

「そのままの意味です。すみませんがこれ以上は言えません」

 

俺はそう言って冴塚先輩を見る。

彼女の顔は曇っていた。思い出したくないことを思い出した、そんな顔をしている。

 

「・・・・これ以上はやめておこう」

 

なんとなくこちらのことを察してくれたらしい。

 

「そうしていただけると助かります」

 

そう言って俺はコーヒーを飲む。

 

「ねぇ、笹原さん」

「何、西住さん?」

「みほでいいよ」

「わかったわ、それで何?」

「そのコーヒーってブラック?」

「えぇ、そうよ」

「ブラックって苦くない?あっ、イチゴショートありがとう」

 

そう言って、半分になったイチゴショートを渡してくる。

 

「いいわよそんなの、私は普段からブラックを飲んでるから」

「そ、そうなんだ」

「1回頼んでみたらどうかしら?飲めなかったら、私が貰うわ」

「う〜〜ん、やっぱりやめておこうかな」

 

そして、俺は残りのイチゴショートを食べ、カップに入っていたコーヒーを一気に飲み干した。

 

「すいませ〜ん、コーヒーとイチゴショート追加で」

「まだ注文するの、笹原ちゃん!?」

「出来ればケーキをホールで注文したいところです。お昼、何も食べていないからお腹が減りました」

「そんなに食べたら太っちゃうよ」

「そうですよ、笹原さん」

 

冴塚先輩とみほがそう言ってくる。だってホント腹減ってんだもん。マジで頼もうかな?

 

「私は大丈夫です。毎朝ランニングしていますので」

「へぇ〜、そうなんだ。あっ、そう言えば毎朝笹原ちゃんがランニングしてることを、誰かが言ってたような」

「そうなんですか。まぁ、どうでもいいですが。冴塚先輩も始めてみてはどうですか?」

「私はやめておこうかな」

「体を動かさせないと太りますよ」

「ぶ、部活で体動かしてるもん!」

「部活()()でしょ」

「う、うぅ〜〜」

 

そんな感じで、4人で会話をしていると電話がきた。相手は吹雪だった。

 

「もしもし」

『あっ、紅音ちゃん、今大丈夫?』

「問題ないけど、何かあった?」

『いや、抽選会終わったかな〜って思って』

 

俺は時計を確認する。時刻は15時50分であった。

 

「今終わったからこれから帰るわ」

『そっか、なら早く帰ってきてね。紅音ちゃんがいないと弥生ちゃん、何をするかわからないから』

「人を兵器の安全装置みたいに言うのやめてくれない」

『まぁ、冗談はこれくらいにして早く帰ってきてね。紅音ちゃんがいないと弥生ちゃんの凡ミス率高いから』

 

それってもはや一種の病気だぞ。

 

「わかったわ。なるべく早く帰るから」

『早く帰ってきてね〜。じゃまた』

「えぇ、また」

 

そう言って、電話を切った。

 

「雪宮ちゃんから?」

「はい、なるべく早く帰ってきてと言われました」

「もしかして、轟ちゃんのこと?」

「なんでわかったんですか」

「轟ちゃん、笹原ちゃんに懐いてるからね〜。なんていうか、ペットと飼い主って感じかな」

 

そんな主従関係を築いた覚えはないんだけどな〜。

 

「すみませんが私達はこれで失礼します」

「あっ、そうだ。笹原さん」

「何?」

「携帯の番号とメアドを教えて」

 

は?

いや、別に嫌って訳じゃない、正直驚いた。

みほってこんなに積極的な子だったか?

でも、せっかく向こうから言ってくれたのだから。

 

「いいわよ」

 

俺達はメアドと番号を教え、お互いに登録した。

 

「それでは西住さん、私達は失礼します。お金はここに置いておきます」

「あぁ、また会おう。それと私のことは、まほと呼んでくれ」

「わかりました。まほさん、みほも、次は決勝で会いましょう」

 

それを聞いたまほ、みほ、冴塚先輩は驚いていた。

 

「今日抽選会があったばかりだというのに、随分とおかしなことを言うな」

「別に慢心しているわけではありません。ただ負けるつもりはないっでだけです。他の学校も黒森峰にも。黒森峰とは一度戦ってみたいと思っていました。今の私の力でどこまで行けるのか、どこまで通用するのか」

「随分と強気に出たな。決勝が楽しみだ」

 

そう言って、まほは席を立った。

 

「そこまで言うなら、決勝で会うまで負けるんじゃないぞ」

 

そしてまほは右手を出す。

 

「わかりました。決勝で会いましょう」

 

俺も右手を出し、握手をする。

俺はみほの方を見た。

 

「みほ、次会ったときは友達じゃなく、敵だからね」

「っ!うん、わかった!」

 

そして再びまほを見る。

 

「ありがとう。妹と友達になってくれて」

「いえ、気にしないでください。それでは」

 

そう言って、俺と冴塚先輩は店を出た。

 

「行きましょう、冴塚先輩」

「うん」

「それと、大丈夫ですか?」

「何が?」

「3年生を強制退部させたって話をしていたときの先輩、思い出したくないことを思い出したって顔をしてましたよ」

「うん・・・・ごめんね、心配させて」

「いえ、そんなことはいいです。・・・・・・・これから忙しくなりますよ」

「頑張って県予選勝ち残らないとね」

「冴塚先輩」

「何?」

「先に確認します。私はルールに抵触しないなら、可能な範囲で全てを使って勝ちに行きます。例え邪道と言われても。先輩はそれでも、私について来てくれますか?」

「・・・・・・・・・・」

 

冴塚先輩は少し考えた。

そして。

 

「お手柔らかにね」

 

そう言ってくれた。

 

「わかりました。では少し急いで帰りましょう」

「うん!」

 

そして俺達は駅に向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか。
次は3月末あたりに投稿します。
では!


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なんてことはない日常

投稿が遅くなり申し訳ありません
ちょっとこちらの事情で遅くなりました。
ではどうぞ!


 

 

 

 

 

『荒久根中学校フラッグ車走行不能!勝者、常幻東中学校!』

 

さて、このアナウンスを突如聞いても状況がわからないという方が多数だと思うので説明しよう。

現在、3回戦が終了した、以上。

 

「ふぅ〜」

『終わったね〜、隊長〜』

「そうですね。総員、整列準備」

『『『『『了解!』』』』』

 

俺は全車両に無線で指示を出す。

その後、対戦相手の荒久根中に礼をした。

 

「総員、撤収準備!この後は、走行可能の車両は足回りの点検をして、走行不能の車両は輸送する為のトレーラーを用意していますのでそちら乗せて下さい!学校に戻ったら、車長と砲手は砲の整備!操縦手は足回りの点検、及び残燃料を測って、燃料が必要な車両は燃料補給!装塡手は薬莢を降ろしたら操縦手の支援!前衛部隊はこれらが終わり次第車両を全体的に点検をして、故障箇所があれば私に報告書を提出して下さい!整備班はその報告書が来るまで前衛部隊の支援を!以上!」

 

そう指示をし、俺も撤収準備をする為にみんなのところに向かった。

 

「紅音ちゃーん!」

 

俺はみんなのところに向かう途中で後ろから勢いよく抱き着かれた。

 

「どうしたの弥生?」

「今日は3両倒したよ、偉い?」

 

そう今回の3回戦で、弥生は相手戦車を3両倒した。2回戦では2両倒して結構活躍している。

以前、エリカと弥生のどちらかを小隊長にするという話をしたが、結果としてエリカが小隊長を務め、弥生は俺が率いる小隊で車長を務めている。今回の試合では2小隊長を黒川先輩、3小隊長をエリカが務めた。

ちなみに、俺の小隊は小隊長が俺、残り3両は弥生、副隊長、アリサが車長を務めた。

 

「偉いわ、よく頑張ったね」

「えへへ〜」

 

俺は弥生の頭を撫でると弥生は嬉しそうにする。

やっぱりまだ子供だな。いや、中1なんてそんなものか。あっ、俺も子供か。

 

「それじゃみんなのところに行こっ」

「うん!」

 

そう言って俺と弥生はみんなのところに向かった。

トレーラーの近くでは、副隊長の冴塚先輩が現場指揮をしていた。

 

「副隊長、お疲れ様でした」

「お疲れ様〜。あと2両乗せたら終わりだよ〜」

「車両の点検は」

「今操縦手の人達がやってるよ〜。もう少しかかるかな〜」

「分かりました。私は自分の使った戦車で少し休憩してきます、何かあったら報告をお願いします」

「わかった〜。使ってたのセンチュリオンだっけ?もう点検は終わってたと思うから休憩しても大丈夫だよ〜」

「分かりました。弥生は副隊長の手伝いをしてあげて」

「わかった!」

 

そう言って弥生と別れ、自分の使った戦車センチュリオンの車長席からいろ◯すナシ味を取り、左側のフェンダー部分に腰かけた。

いろ◯すを少しずつ飲んでいると誰かがセンチュリオンの横にやってきた。

 

「おつかれー紅音ちゃん」

「おつかれ吹雪。てか何サボってんのよ」

「紅音ちゃん、それブーメランだよ」

「私は休憩よ」

「私も休憩だよ」

「・・・・・・・・それで、要件は?」

「要件ってわけじゃないけど、大丈夫?」

「何が?」

「結構疲れてるみたいだったから」

「大丈夫か大丈夫じゃないかで言うと大丈夫よ」

 

前世でいくら体力があったとはいえ今は中学生。体力的に疲れが来ているが、これくらいどうってことはない。

 

「それならいいけど、1年生で隊長をやって、みんなをまとめるってなると体力的にキツイんじゃないかなって」

「心配してくれてありがと。限界が来る前に必ず言うから安心して」

「隊長ー!」

 

心配してくれている吹雪の後ろから明石が走って来た。

 

「どうしたの?」

「全車両の点検が終わったよ。あと戦車を1両トレーラーに乗せたら撤収準備完了だよ」

「わかった。明石さん、吹雪、手の余っている人は乗車待機するように指示出して」

「「オッケー」」

 

そう言って2人はみんなのところに向かった。

 

「さて、私も準備しますか」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜学校の空き教室〜〜〜〜

 

 

 

 

「それでは、今から会議を始めます」

 

学校に戻ってきた俺達は、トレーラーから戦車を降ろして簡単な車両の点検及び燃料の補給、整備してその日は解散していた。

そのあと、副隊長、整備長の明石、副長の夕張、各小隊長、何故かいる吹雪と弥生を集めて会議をしていた。

 

「先ず、整備班から報告をお願いします」

「はい、今日大破した戦車3両だけど、結構損傷が激しく修理完了まで5日はかかるかな」

「それ以上早めることは可能?」

「正直厳しい」

「分かったわ。時間はかけていいわ、安全第一に戦車の完全修理をお願い。夕張さんから何かある?」

「はい、私から一つだけ。今回の修理でパーツが幾つか在庫切れになっちゃった」

「分かったわ。あとで必要なパーツと不足気味になっているパーツをメモ紙でいいから書いて私に提出して」

「もう紙に書いてるから今渡すね」

 

そう言って俺にメモ紙を渡してきた。どれどれ・・・・。

足回りのパーツが不足しているのか。

 

「パーツについてはこっちで調整するわ。他に報告はありますか?」

「整備班から以上かな、夕張は?」

「私からもこれ以上はないかな」

「わかった、各小隊長から何かありますか?」

「2小隊からは特にないよ」

「3小隊も同じく」

「分かりました。副隊長から何かありますか?」

「次の対戦相手の偵察は誰が行く〜?」

「明日行われる海元中学校と廃空中学校の試合は、私と弥生、黒川先輩とエリカが行きます。吹雪は対戦相手が決まったら情報収集をお願い、手段は任せるわ。1人じゃ大変だと思うから、前衛部隊の人何人か使っていいわ」

「わかった」

「あれ?私は〜?」

「副隊長は明日、学校の方をお願いします」

「わかった〜」

「それでは他に報告はありませんか?なければ解散とします、お疲れ様でした」

「お疲れ〜」「お疲れ」「お疲れ様〜」「お疲れ様でした〜」「乙で〜す」「乙〜」「お疲れ様!」

 

そう言って俺達は空き教室から出ていき、下駄箱に向かった。

 

「紅音ちゃん!この後ご飯食べに行かない?」

 

弥生が俺の隣に来てそう言ってきた。

 

「そうね、今日はご飯を作る気になれないから外食で済ませようかな」

「じゃラーメン食べに行こっ!ラーメン!」

「いいわよ。他にも誰か誘う?」

「今からエリカちゃんと吹雪ちゃんにも声をかけるところ!」

「わかったわ」

 

それからエリカ、吹雪、弥生、俺の4人でラーメンを食べにしばらく歩き、目的地に到着した。

 

「いらっしゃいませ〜〜。4名様ですか?」

「はい」

「ではカウンターの席でお願いします」

 

俺達はカウンターの席に座り、メニューを見る。

 

「それじゃ私はこの豚骨ラーメンと餃子にするわ」

「アンタ決めるの早いわね。てか、そんなに油が多いの食べて太らないの?」

「毎日走ってるから大丈夫よ」

「じゃ私も紅音ちゃんと同じのにする!」

「じゃ私は醤油ラーメン」

「あとはエリカだけよ」

「アンタ達はもうちょっと考えてメニューを選びなさいよ!私は塩ラーメン!」

 

それからそれぞれ注文した。

 

「そういえば紅音ちゃん、黒森峰って3回戦から出るんだっけ?」

「そうよ。確か今日私達が使った演習場とは別の演習場で試合だったはず、一応試合のデータも欲しいからお願いしていい?」

「オッケー」

「前みたいに空から降ってこないで、普通に帰ってきてね」

「わかった、今度は匍匐前進しながら帰ってくるね!」

「人の話聞いてた?」

「吹雪ちゃんと紅音ちゃんって、ホント仲がいいよねー」

「まぁ、小さい頃からの付き合いだし」

「ただの腐れ縁よ」

「豚骨ラーメンと餃子をお待ちのお客様!」

「「はーい」」

 

そう言って、俺と弥生の前に豚骨ラーメンと餃子が置かれる。

 

「アンタ達、食べきれるの?」

「私は大丈夫だけど、弥生は?」

「が、頑張る」

「無理だったら言ってね、私が食べるから」

「醤油ラーメン、塩ラーメンをお待ちのお客様!」

「「はーい」」

 

注文したものが揃ったところで合掌する。

 

「「「「いただきます」」」」

 

ズズッ、ズズーーーッ。

 

「美味しい!」

「えぇ、美味しいわね」

「あっ、私も餃子が食べたくなったから、紅音ちゃん餃子ちょうだい」

「注文しなさい」

「すいませーん、餃子1つください」

 

速攻かよ。

 

「そういえば、次の準決勝から15両になるけど、編成は決まってるの?」

「編成自体はもう決まっているわ。次の対戦相手が決まったらまた招集をかけるから、その時はよろしくね」

「わかったわ」

「次は吹雪にも小隊長をやってもらうかもしれないから、一応そうことも頭に入れておいて」

「オッケー」

 

フー、フー、ズズーーーーッ。

 

「あっ、足りないパーツの補充ってどうするの?」

「吹雪、アンタが書類の整理を手伝ってくれるならスムーズに終わるんだけど」

「な、なな、なんのことかな〜〜」

「はぁ、今日中に書類にして、明日にでも校長に提出するわ。あとは校長がやってくれるでしょ」

 

ズッ、ズズーーーーッ、ズッ、ズッ。

 

「あっ、吹雪は大丈夫だと思うけど、エリカと弥生は今度の期末テストの勉強やってる?」

「私はぼちぼちね」

「忘れてた〜〜」

「弥生は私が教えるわ。吹雪はエリカを見てあげて」

「なんで私の心配はなしなの?」

「必要ないと判断したからよ。事実問題ないでしょ」

「まぁね」

「私の部屋使っていいから、弥生は今日からやるわよ」

「わかったわ」

「オッケー」

「はーーい」

 

ズッ、ズーーーーッ、ズッ、ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ、ドン、パン

 

「ごちそうさまでした」

「う〜〜、お腹が〜」

「だから言ったのに、ほらっラーメンと餃子をこっちにちょうだい」

「ごめん紅音ちゃ〜ん」

「アンタまだ食べるの?」

「正直まだ食べ足りないわ」

「昔から紅音ちゃんは大食漢だからね〜」

「その言い方はやめて。まるで私がデブみたいじゃない」

「そこまで言ってないよ〜」

「私はこれでも少食よ」

「ラーメン2杯目を食べてるのに?」

「今日はお腹が空いていたのよ」

「どんな胃袋してんのよ」

「ありがとー紅音ちゃん」

 

こうやって、俺達は腹いっぱいになるまでラーメンを食べてから帰宅した。

そのあとは俺の部屋で弥生、吹雪、エリカ、俺の4人で勉強会をしてから今日一日が終わった。

 

 

 

 

 




今月はちょっと仕事が忙しくなりますので、いつ投稿出来るかわかりません。中旬には投稿したいと思います。
では!


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勝つ為に手段なんか選んでられるか 前編

お久しぶりです!
今回は新キャラ4人出ます。艦娘達の敵である奴らが!
ではどうぞ!


 

 

 

 

『海元中学校フラッグ車走行不能!勝者、廃空中学校!』

 

俺は目の前の状況に驚かざるをえなかった。俺と黒川先輩、弥生、エリカは今、海元中学校と廃空中学校の試合を見に来ていた。

昨年、海元中学校は準々決勝まで勝ち進み、過去の資料では全国大会に出場した学校である。対して廃空中学校は毎年1、2回戦止まりだった。勝て要素はどこにもないはず。

 

「ありえないなんて事はありえない、か」

 

どこかの強欲な男も言っていたな。

俺は携帯を取り出し、吹雪に電話をかける。

 

『もしもし』

「アンタ試合見てた?」

『テレビで見たよ。想定外の事態になった〜』

「えぇ、まさか海元中学校が負けるなんて思わなかったわ」

『だねー。それじゃ予定通り、私は情報収集を始めるねー』

 

俺は携帯をしまい、その場に立った。

 

「皆さん、今日は部活もありませんので、帰宅していただいてかまいません。お疲れ様でした」

「アンタはどうすんのよ」

「私はこのあと用事があるから、それを済ませてから帰るわ」

「そう、わかったわ」

「笹原ちゃん、お疲れ」

「私は紅音ちゃんに付いて行くー」

「弥生は早く帰りなさい。それとエリカと弥生は今日もテスト勉強するからね」

「わかったわ」

「むぅ〜〜」

「不貞腐れてもダメよ」

 

困ったな、コイツは何が何でも付いてくるつもりだ。

 

「勉強が終わったら一緒に遊んであげるから」

「わかった!」

 

そう言って弥生は、エリカと黒川先輩に付いて行き帰った。

3人が見えなくなって、俺は大型スクリーンを見て呟いた。

 

「まさか、廃空中学校にアイツらがいるとはね」

 

目が赤く、白髪のツインテールの女の子がそこには映っていた。

それだけではない。その周りに集まっていた女の子達も目が赤く白髪だった。

 

「さて、行きますか」

 

そして俺は、会場を後にした。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜常幻東中学校、校長室前〜〜〜〜

 

 

 

 

 

俺は扉をノックする。

「どうぞ〜」

「失礼します」

 

俺は中に入った。

中に入ると八雲 紫、そして西行寺 幽々子がいた。

 

「なんで西行寺校長がここに?」

「気にしなくていいわ〜。それより、紫に用があってきたんじゃないの?」

「・・・まぁいいです。八雲校長、お聞きしたいことがあります」

「何かしら?」

「この世界には、私と吹雪以外に転生者はいるんですか?」

「いないわよ。それと私と幽々子しかいないから敬語は使わなくていいわよ」

「そう、もう一つ聞きたい。この学校以外にも弥生や白露型四姉妹みたいな人間はいるの?」

「もちろんいるわよ」

 

やはりいるのか。いや、俺と吹雪が望んだことだからいてもおかしくないか。

 

「ありがとう、それと不足しているパーツを書類にまとめたから、次の試合までに補充をお願いするわ。それとこっちの方はなるべく早く取り寄せて」

 

俺はバックの中から紙を2枚取り出し、紫に渡した。

 

「確かに受け取ったわ」

「では、私はこれで」

「次の試合には勝てそう?」

「どうだろ、正直わからないわ」

「そう、頑張ってね」

 

ひとごとみたいに言いやがって、まぁひとごとなんだが。

 

「失礼しました」

 

そう言って俺は校長室を後にした。

さて、今から弥生達と勉強会をして編成を変えないとな。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜翌日の部活の時間〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「それでは今から会議を始めます」

 

場所は空き教室、部員全員を集めた俺は部員の前に立ち、作戦会議を始めた。

 

「先ずは、作業をやめてここに集まっていただき、ありがとうございます。昨日行われた海元中学校と廃空中学校の試合、皆さんも知っていると思いますが、廃空中学校が勝ち進みました。そこで吹雪達が集めてくれた情報を元に作戦を立てて行きたいと思います。吹雪、射命丸さん、姫海棠さん、お願い」

「「「はーーい」」」

 

そう言って、3人が前に出て来る。

 

「先ず先に私から、今回の情報収集で得られた情報なんですが、紅音ちゃん、この資料を見て」

 

そう言われて、俺は吹雪から資料を受け取った。

 

「・・:・・・やっぱりね」

 

用紙は8枚、そこに書いてあったのは廃空中学校の部員の個人資料だった。

 

1年 深海 礼 (ふかみ れい) ※艦これの「戦艦レ級」

操縦手 兼 砲手

 

1年 南 遥 (みなみ はるか) ※艦これの「南方棲戦鬼」

砲手 兼 車長 兼 通信手

 

1年 防野 空 (ぼうの そら) ※艦これの「防空棲姫」

砲手 兼 装塡手 兼 操縦手

 

1年 空木 真夏 (うつろぎ まな) ※艦これの「空母棲姫」

通信手 兼 車長 兼 装填手

 

1人2枚の資料で、それぞれのポジションや練度等が書いてあった。

おいおいちょっと待てよ。よりにもよって深海棲艦がここで4人も出てくんのかよ。昨日は2人しかスクリーンに映っていなかったから2人だけだと思ったのに。

しかも技量はそこそこ高い、てかウチの部員といい勝負ができるぞ。

 

「今紅音ちゃんに渡したのは、廃空中学校の要注意人物だね」

「要注意人物って、ちょっとこれはマズイわね」

「口で説明するよりも、実際に見てもらった方が早いかな。文ちゃん、はたてちゃん、準備をお願い」

「わっかりましたー」「オッケー」

 

そう言ってテキパキとプロジェクターとスクリーンを準備して試合動画スタート。

1、2、3回戦の動画を見終わったところで休憩を挟み、自販機にコーヒーを買いに行った。

はぁ〜。これウチの部員達よりか技量は上じゃん。何がいい勝負だよ、全然じゃん。

 

「待って紅音ちゃん、私も行く」

 

そう言って吹雪も付いて来た。

 

「まさか深海棲艦もいるとは思ってなかったわ」

「だねー。今回はちょっと苦戦しそうだねー」

「そうね。吹雪、何が飲みたい?」

「いいの!?じゃ私はマウン◯ンデ◯ー!」

 

チャリン、ピッ、ガコンッ。

 

「はい」

「ありがとう」

 

チャリン、ピッ、ガコンッ。

 

「さっ、戻るわよ」

 

そして俺達は教室に戻り、会議を再開した。

 

「それじゃ会議を再開しますが、紅音ちゃん、試合の動画を見て何か感じた?」

「そうね。先ず第1に、この要注意人物達は間違いなく私と吹雪、エリカや弥生を除いた1年生と同じかそれ以上ね」

「笹原ちゃんと雪宮ちゃんはわかるけど、何で逸見ちゃんと轟ちゃんも除いたの?」

 

黒川先輩が質問してきた。まぁ普通そう思うよな。

 

「私と吹雪以外の1年生はほぼ初心者で、中学校に入学して戦車道を始めたのがほとんどです。そんな中、一番成長したのはエリカと弥生の2人だからです。まぁ、2人は私と吹雪が集中的に教えたってのもありますが」

「そっか。でも、逸見ちゃんと轟ちゃんの2人でその要注意人物達に勝てるの?」

「2人だけでは無理ですが、勝てます。絶対に」

 

俺はそう言い切ってから2人を見て話しを続ける。

 

「私と吹雪を除いてなら、2人は間違いなく1年生の中でトップです。エリカは車長としては、きちんとした状況判断をして的確な指示を出せますし、弥生は砲手としてならエリカより上で正確な射撃が出来ます。2人なら問題ありません」

「自慢の教え子だもんね〜。それで笹原ちゃん、作戦はあるの?」

「もちろんあります。ですが先ず、編成を発表します」

 

俺はそう言って教壇に立ち、黒板に編成を書いていく。

 

1小隊長 兼 IS-2車長 笹原 紅音

砲手 相澤 ナズナ

操縦手 神宮寺 華蓮

装填手 四季 映姫

 

クルセイダー車長 兼 装填手 雪宮 吹雪

砲手 兼 通信手 アリサ・イリーニチナ・アミエーラ

操縦手 宇佐見 蓮子

 

1小隊 兼 ティーガーⅡ車長 佐々木 白露

砲手 佐々木 時雨

操縦手 佐々木 夕立

装填手 佐々木 村雨

通信手 佐々木 春雨

 

1小隊 兼 ティーガーⅡ車長 川越 朝潮

砲手 川越 荒潮

操縦手 川越 満潮

装填手 川越 霞

通信手 五十鈴 香織

 

1小隊 兼 ヤークトティーガー車長 瀬川 綾波

砲手 瀬川 敷波

操縦手 三澤 千尋

装填手 瀬川 曙

装填手 瀬川 漣

通信手 遊佐 愛莉

 

1小隊 兼 ブラックプリンス車長 博麗 霊夢

砲手 霧雨 魔理沙

操縦手 東風谷 早苗

装填手 魂魄 妖夢

通信手 十六夜 咲夜

 

1小隊 兼 III号突撃砲車長 2年生

砲手 2年生

操縦手 2年生

装填手 2年生

 

1小隊 兼 III号突撃砲車長 2年生

砲手 2年生

操縦手 2年生

装填手 2年生

 

2小隊長 兼 ティーガーⅠ車長 冴塚 明日香

砲手 黒川 夏海

操縦手 2年生

装填手 2年生

通信手 2年生

 

2小隊 兼 ティーガーⅠ車長 逸見 エリカ

砲手 轟 弥生

操縦手 寺本 沙緒里

装填手 和田 真奈美

通信手 柚園 麻希奈

 

2小隊 兼 チャーフィー車長 射命丸 文

砲手 乃村 陽炎

操縦手 乃村 黒潮

装填手 乃村 不知火

通信手 湯沢 奏

 

2小隊 兼 チャーフィー車長 姫海棠 はたて

砲手 三浦 優美子

操縦手 二階堂 エリナ

装填手 由比ヶ浜 結衣

通信手 宗政 睦月

 

(※2年生と記載しているところは、主人公が2年生の名前を覚えていないのではなく、UP主が思いつかなかっただけです。申し訳ありません!)

 

「この編成でいきます。作戦については今から説明しますが、その前に何か質問等はありますか?」

「紅音ちゃん。私達の車両だけどこの小隊にも属してないよ」

「いい質問ね吹雪、今回の試合はアンタの冷静な判断が頼りよ」

「えっ?それってどう・・・い・・うこ・・と・・・・あっ!・・あぁぁぁぁぁ!!」

 

勢いよく立ち上がる吹雪、どうやら理解したらしい。

 

「ようやく気づいたようね」

「ちょ、ちょっと待って!これ私がやるの!?」

「私がやってもいいけど。アンタ、私の性格知ってるでしょ?だからアンタが向いてると判断したのよ」

「それはそうだけど・・・・」

「それにこの場合、アンタがフラッグ車をするより、私がフラッグ車をした方が作戦は上手くいく。適材適所ってやつよ」

「う〜〜ん、でもなぁ〜〜」

「それにアンタ、さっきジュース奢ったでしょ」

「ジュースの対価大き過ぎない!?」

「何も考えずに奢られたアンタが悪いわよ」

 

吹雪は悔しそうにこちらを睨んでくる。

いや、そんなに可愛く睨まれても変えないぞ?

 

「まっ、アンタに任せた方が私も安心できるわ。てかアンタ以外頼める人いないし」

「それをもっとツンデレキャラ風に言ってくれたら満点だけどなぁ〜〜」

「アンタ、私にどんなキャラ期待してんのよ」

「ハイハイわかったよ。それじゃ2小隊の作戦はこっちで決めていいんだよね?」

「構わないわ。吹雪以外に質問がある人」

「私も・・・・いいかしら」

 

そう言ったのはエリカだった。エリカだけではない、弥生も何か言いたそうだ。

 

「何で私を小隊長から外したの」

「私も、何で紅音ちゃんの率いる小隊から外してエリカと同じ戦車なの?エリカと同じ戦車なのが嫌ってわけじゃないけど、理由を教えて」

「それを含めて今から説明するけど、それじゃダメ?」

「・・・・わかったわ」

「私は今知りたい!」

「弥生・・・今回の作戦では仕方ないことなの」

「なんで!なんでこの編成になったの!!」

「・・弥生・・・・」

「小隊から外されて車長からも外されて、私は納得がいかない!!」

「車長としての技量は貴女よりエリカが上よ、でも砲手としての技量は貴女が上、貴女達2人を見てきた私と吹雪だからわかる、だからこの編成になったの」

「ならエリカを小隊長にして、私を車長にして!」

「・・・・それはどういう意味かしら」

「冴塚先輩を1小隊の編成にしてエリカを2小隊、そして私を車長に「弥生!」ッ!」

「貴女、何か勘違いしているみたいね」

 

俺は少し低いトーンで話す。

いつかこういったヤツが出てくるとはわかっていた。天狗になったヤツが。

ならどうするか、答えは簡単だ。

 

「貴女、今自分が何を発言したかわかってる?」

「何って」

「確かに貴女とエリカは、私と吹雪を除けば1年生の中でトップよ、それは一番貴女達2人に教えてきた私と吹雪だからわかるわ。でもね、それは1年生の中だけであって冴塚先輩や黒川先輩達と比べたらまだまだよ」

「そんなのやってみないと」

「わかるわ、そんなの」

「そんなの!」

「冴塚先輩」

「な、何?」

「行進間射撃の自分の成績はどのくらいですか?先輩の口から言って下さい」

「パーセントで言うと、きゅ、93%」

「弥生、貴女は?」

「・・・88%」

「そうね、でもそれは晴天で無風の時の点数よね。貴女は悪天候の時、酷ければ80未満だったわね。それに比べて冴塚先輩は行進間射撃、夜間射撃、悪天候の中での射撃、どんな状況下でも85より下に落ちたことはないわよ」

「そ、それは」

「それに、貴女は砲手以外で冴塚先輩に何か一つでも勝ってた?」

「・・・・いいえ」

「思い上がらないで、貴女がどんなに砲手としてのセンスがあっても、上には上がいるのよ」

 

教室の中が静寂に包まれる。

こういったヤツが今後出ないとは限らない。ならそういったヤツが出ないようにするには誰かを見せ締めにするしかない。教え子を見せ締めにするのは心苦しいが、これは俺の今までの行動が招いた結果だ。

 

「エリカ、まさかとは思うけど貴女もそうだったりしないわよね?正直に答えなさい」

「・・・・・・・・・・・」

「沈黙は肯定とみなすわよ」

「・・・・・ごめんなさい」

「素直でよろしい。皆さんも今後この2人のようにならないよう常に上を目指して下さい。別にじゃれ合いやおふざけをするなとは言いません。ですがもし、2人のように天狗になっている人がいれば、そのときは容赦はしません。いいですか?」

「「「「「はい!」」」」」

「では作戦内容を伝えます。先ずはーーーー」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜17時30分〜〜〜〜

 

 

 

 

 

部員全員が帰ったあと、俺は1人で空き教室に居た。

あぁ〜〜疲れた。2人を見せ締めにしたあと作戦会議したが、部員全員に笑顔がなかった。

はっきり言って気まずい。

試合前にあんなお通夜ムードになられては困る。どうしたものか。

 

「笹原ちゃん」

 

俺は教室の方に顔を向けた。そこには冴塚先輩、黒川先輩、相澤先輩、神宮寺先輩の4人が居た。

 

「どうしたんですか、冴塚先輩」

「大丈夫?」

「何がです?」

「今日の作戦会議、逸見ちゃんと轟ちゃんのことで疲れてるんじゃないかなと思って」

「大丈夫です。問題ありません」

「私にはそうは見えないよ」

「神宮寺先輩・・・」

「確かに笹原さんはすごい。1年生で隊長になって、私達2年生よりも実力は上、隊長として相応しい人だよ」

 

神宮寺先輩はここで会話をやめ、他の選手達を見て再度俺を見た。

 

「でもね、なにもかも自分1人で抱え込まなくてもいいんだよ」

「そうよ、隊長だからって1人で抱え込まなくていいのよ。前にも言ったけど、もっと先輩達や周りの人を頼ってね」

「そうだぞ笹原、それとも先輩達がそんなに頼りないか?」

「そうでは・・ありません」

「だったらもっと私達を頼って」

 

冴塚先輩がそう言ったあと、俺を抱き寄せた。

 

「練習メニューに書類の整理、作戦立案なんかも全部1人でやって、学校の成績もトップを維持して、そんなこと繰り返してるといつか身体を壊すよ。そうなる前に私達に頼って。1人で抱え込まないで」

「・・・・・ありがとうございます」

「うん!それとね、さっき連盟から通達が来てね、試合の場所が決まったよ」

「ッ!どこですか!」

 

俺は冴塚先輩から書類をもらい、確認する。

 

「・・・・・これは、場所取りが重要になるステージですね」

「でも、私達が一番早く待ち伏せ出来るステージとスタート位置だね」

「そうですね。作戦は変更しません、部員全員には私から一斉メールします」

「もう!さっき言ったばかりなのに、私からメールしておく」

「でも」

「いいの、もっと先輩を頼って」

「わ、わかりました」

「さっ、帰るわよ。笹原ちゃんも帰るわよ」

「わかりました、わかりましたから黒川先輩、後ろから抱きつかないでください、歩きにくいです」

 

そう言って俺達は教室をあとにした。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜試合当日〜〜〜〜

 

 

 

 

 

試合当日、この日までエリカと弥生とは一言も話していない。

大丈夫かアイツら?エリカは平然としているが、弥生はあの日からずっと落ち込んだ様子だ。

 

「笹原ちゃん」

 

隣に立っていた冴塚先輩が周りに聞こえないように小さな声で話しかけてきた。

 

「どうしましたか?」

「轟ちゃん大丈夫?逸見ちゃんは大丈夫だと思うけど。轟ちゃん、あれからずっと落ち込んだままだよ」

「私もあれから一言も話していないのでなんとも言えません。今回の作戦は冴塚先輩達2小隊が要なので、何かあればフォローをお願いします」

「わかった」

『放送します。各校の選手は整列をお願いします。繰り返します。各校の選手は整列をお願いします』

「さて、準備しますか。っとその前に」

 

俺はIS-2のフェンダーの上に立ち部員全員を見渡す。

 

「全員注目して下さい!」

 

部員全員が各々の作業の手を止めてこちらを注目した。

 

「いよいよ準決勝です!これに勝てば全国大会に出場出来ます!ですがお分りの通り、戦車の数、個々の技量、どれをとっても私達が不利です!」

 

俺はここで、一旦区切り全員の顔を見た。

不安な顔をしたやつ、悔しそうな顔をしたやつ、少し諦めた顔をしたやつ、全員様々顔をしていた。

 

「皆さん、色々思うところがあるでしょう。ですが、私はこう思っています。だからなんだ!部員の技量?戦車の数?下らない!そんなこと最初からわかっていることじゃないですか!いいですか!我々は弱者です!どれをとっても勝てる要素のない弱者です!」

 

全員の目の色がだんだんと変わってきた。なんか視界の端で1人笑っているが気にしない。

 

「人間が今までどうやってライオンや熊、その他の肉食動物達から生き残ってこれました!それは我々人間が知性にあったからです!だから我々人間は強者である肉食動物にも勝って生き残れました!」

 

こら視界の端のヤツ、いつまで笑っている。

 

「もう一度言います!我々は弱者です!なら弱者が強者を屠るためにはどうしたらいいか、ぐだぐだ下らないことで悩んでいる暇があるならどうやったら勝てるか、少しは頭を使え!」

 

あっヤベ、男口調になっちまった。

 

「見せてやりましょう!自分達が強者だと思って余裕ぶってる連中に目にものを!!」

「「「「「おーーー!!!」」」」」

「そのいきです!参加者は整列準備!」

 

俺はフェンダーから飛び降り、整列準備した。

そして視界の端にいたヤツが笑顔で走ってきた。

やめろその笑顔、腹立たしい。

 

「ねぇねぇ今どんな気持ち?ねぇ今どんな気持ち?」

「その笑顔やめてくれない?すごく腹立つから」

「それでなんのパクリ?ノ◯ラ?ノ◯ラのパクリ?ノ◯ラのセリフを自分なりにアレンジしたの?」

「コイツムカつく。バカやってないで行くわよ」

 

俺は無視して移動したが、その隣を並行してついてくる。

 

「何かいいことあった?」

「なんでそう思ったの?」

「だって、今まで率先してあんなことしたことなかったよね」

「いいことなんて何一つないわよ。特にエリカと弥生がね」

「まぁそこは冴塚先輩に任せるしかないよ」

「それもそうね。・・・・・この試合、バックであるアンタにかかってるんだからね」

「任せて、絶対に勝とうね」

 

そう言って俺達は移動して整列した。

目の前には黒髪ロングでちょっと身長の低い人と、南方棲戦鬼こと南 遥がいる。

 

「はじめまして、廃空中学校戦車道隊長、3年の犬井 咲だ」

「同じく副隊長の1年、南 遥です。よろしくね」

「常幻東中学校戦車道隊長、1年の笹原 紅音です」

「同じく副隊長、2年の冴塚 明日香です」

「貴女が噂の隊長か〜〜。同じ1年生とは思えないなぁ〜」

「そうかしら?まぁ、私としてはどうでもいいけど」

「冷たいなぁ〜〜。もしかして私嫌われてる?」

「私はいつもこうよ。不快な思いをさせたならごめんなさいね」

「ううん気にしないで。同じ1年生として興味あったからどんな人かなぁって思ってね。ねっ笹原さん、お願いがあるんだけど」

「何かしら?」

「この試合、負けてくれないかな」

「・・・・はぁ?」

 

何を言っているんだコイツ?意味がわからない。

 

「どういう意味かしら?」

「そのままの意味だよ。わざと負けてくれないかな」

「・・・・・犬井先輩、彼女はいつもこうなんですか?」

「すまない、彼女はいつもこうだ。気分を害したなら謝罪する」

「えぇ、実に不愉快。もちろん返答はNOです」

「あぁ、もちろんそれで構わない。お互いにいい試合をしよう」

「そうですね。ですがその前に、彼女に一言だけ言いたいことがあります」

「私に?何かな」

「あまり図に乗るな」

 

犬井先輩と南はちょっと驚いた顔をしていた。ちょっと怠そうな態度から急に態度が変わったんだ、わからなくもない。

 

「アンタみたいな人に会ったのは久しぶりだわ。今のうちに負けたときの言い訳を考えておきなさい」

「言うねぇ〜。勝てると思ってるの?」

「確かに総合的技量や戦車の数、その他色々なことを考慮しても勝てる要素はないわ。でもね、だから何?そんなこと最初から分かりきっていることよ。そんなことで勝敗が決まると思っているならそれで構わないわ、所詮貴女はそこまでの人間よ。見せてあげるわ、弱者の戦い方を」

「あははっ。それじゃ楽しみにしてるね」

「それではこれより!廃空中学校 対 常幻東中学校の試合を始めます!両校!礼!」

「「「「「よろしくお願いします!」」」」」

 

俺は、俺と冴塚先輩を待つ部員達のところへ向かった。

負けられない。ここまで上から目線でものを言われたのは久しぶりだ。前世の俺なら殴り掛かっていたが、ここは我慢だ。

このお返しは、しっかりと試合で返してやる。

 

「全員!乗車!」

 

俺は自分の戦車に乗り、スタート地点に向かった。

 

「全員!試合が始まったらそれぞれのポイントに向かい、到着次第作業開始して下さい!装填手、砲手はスタート地点に着くまでの間に、車内で作業服に着替えておいて下さい!」

『『『『『了解!』』』』』

 

 

 

 

 

〜〜〜〜南 遥サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

私は今、複雑な気持ちだ。

笹原さんには申し訳ないことをしたなぁ〜。彼女の最大の武器は冷静な判断と飛び抜けた発想、万年県予選敗退のチームをここまで引っ張って来たのだから相当な手練れだ。そんなのを相手にするんだ、まともな戦い方で勝てるはずがない。各試合のデータを見てわかった、とても同じ中学生とは思えなかった。

だから少しでも勝利をあげる為に挑発した。少しでも怒り狂ってくれることを期待して。この手の人は冷静な判断が出来なくなったら最後、あとはそこから自滅していくだけ。

私はともかく、犬井先輩や他の3年生の先輩方は今年が中学最後の試合。なんとしても全国大会に連れて行ってやりたい。

でもなぁ〜、笹原さんかわいかったなぁ〜。小さいしぶっきらぼうだったし、いじり甲斐ありそうだし、私の見立てに間違いなければあの子はツンデレタイプ。私としては仲良くしたかったなぁ〜。

 

『両校、スタート地点に到着しましたので試合を始めます!試合開始!』

 

まっいっか。今は試合に集中しよ。

 

『それでは打ち合わせ通り、私は後方に下がり指示を出す。南は現場指揮を頼む』

「了解!犬井先輩、何があっても前衛に出て来てはダメですからね〜」

『わ、わかっている!』

 

大丈夫かな〜。

犬井先輩ってちょっとおバカなところあるし、どちらかと言えばガンガン行こうぜ!って感じだし。

でも、そんなことろがちょっとカッコイイんだけどね。

 

「それじゃみんな行くよ〜。パンツァー、フォー!」

 

私の合図で全車が前進する。

さて、笹原さんは今回どんな戦い方を見せてくれるのかな〜。彼女の戦い方いつも驚かされている。試合中ほとんど止まらず、ずっと行進間射撃していた時もあったし、短期決戦に持ち込んで一気に試合を終わらせた時もあった、今日はどんなものを見せてくれるのかなぁ〜。

そんなことを考えながらしばらく前進した時だった。

 

 

 

ドーーーン!

 

 

 

突然砲撃音が響いた。

 

「全車周囲を警戒!」

 

音からしてかなり離れている。すぐに接触することはないはず。

 

『南、そちらの状況はどうだ』

「こちら南、現在周囲を警戒していますけど、発見出来ません」

『わかった、そのまま周囲を警戒しろ』

「了解」

 

 

 

ドーーーン!

ドーーーン!

ドーーーン!

ドーーーン!

 

 

 

いくつもの砲撃音が響く。

一体何を撃っているの?試合中に味方戦車を撃つようなことはありえないし、暴発?それもありえない。

そして砲撃音がやんだ。

 

『敵戦車は見つけたか?』

「いえ、やはり敵戦車はいません」

『わかった、引き続き周囲を警戒しつつ前進、敵戦車を発見次第攻撃しろ』

「了解!全車、周囲を警戒しつつ前進!」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜1時間後〜〜〜〜

 

 

 

 

 

おかしい、あの砲撃音からすでに1時間が経過した。あれから何度も止まっては周囲を見渡して、止まっては周囲を見渡してを繰り返している。だがそれでも発見には至っていない。

 

「犬井先輩、なんだかおかしくありませんか」

『あぁ、ここまで静かな試合は初めてだ』

「一体どこにーーー」

 

 

 

ドドドドドドドォォォォーーーン!!

 

 

 

突然何もないところから攻撃を受けた。

 

「全車、状況報告!」

『こちら3号車!すみません、撃破されました!』

『こちら7号車!同じく撃破!』

『8号車も同じく!』

『12号車もやられました!』

『4、6号車、履帯破損!』

「了解!動ける戦車は私にーーー」

 

 

 

ドドドドドドドォォォォーーーン!!

 

 

 

『5号車撃破されました!』

『9号車もやられました!』

『11号車も同じく!』

「動ける戦車は退避!」

 

私は慌てて退避命令を出す。

 

「犬井先輩、こちら南!敵戦車と接触!すみません、半数以上やられました」

『なっ!今すぐそこから離脱しろ!』

「今退避命令を出しました」

『よし、ではそちらの状況を教えてくれ』

「はい、現在3、5、7、8、9、11、12号車が撃破、4、6号車が履帯破損の状況。残りは後方へ後退、追撃はありません」

『半数以上やられたか、厳しい状況になってきたな』

「それより、何故敵は追撃して来ないのでしょう。私達は半数以上もやられてパニック状態でした。倒すには絶好のチャンスのはずです」

『分からん、とにかく今は近くの見つかりにくい森の中に隠れてくれ。作戦を立て直す』

「了解」

 

私は指示された通り後退しながら周囲を警戒しつつ、隠れやすい森を探した。

しかし私は腑に落ちなかった。

どうして?絶好のチャンスのはずなのに、どうして追撃がないの?

分からない。

どうして。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜遡ること1時間前〜〜〜〜

〜〜〜〜笹原 紅音サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「全車、ポイントに到着しましたか?」

『こちら白露、ポイントに到着』

『こちら朝潮、同じく』

『こちら霊夢、同じく到着』

『綾波も到着しました』

『III突2両も到着したよー』

 

俺達は今森の中にいる。

ただ森の中にいるのではない。作業服に着替え、作業靴に履き替え、側から見たら整備士の格好をしている。戦車に至っては砲身に砲塔、車体にもゴムを張りめぐらせている。

何故かって?

それは。

 

「それではディーガーⅡ2両とブラックプリンスは地面に向かって榴弾を撃って下さい!相澤先輩、お願いします」

「はいよー」

 

 

 

ドォォォーーーン!!

 

 

 

IS-2の砲撃で、地面に大きな穴が出来た。ちょっと大き過ぎたかな。戦車が入るには充分過ぎる大きさだ。

 

 

 

ドォォォーーーン!!

ドォォォーーーン!!

ドォォォーーーン!!

ドォォォーーーン!!

 

 

 

IS-2の砲撃音を合図に、他の戦車も地面に榴弾を撃っていった。

 

『ねぇ。この穴、ちょっと大き過ぎるんじゃないかしら?』

「大丈夫よ、問題ないわ。全車、エンジンを切って作業開始!装填手と操縦手と通信手は鉈を持って木に登り、枝をドンドン切り落としていって下さい!ただし切り落とし過ぎに注意して下さい!切り落とし過ぎると逆に不自然に見えて位置がバレます!5〜6本くらい切り落としたら次の木に移って下さい!砲手と車長はその枝を戦車に付けていって下さい!戦車だけでなく、射線方向の穴の縁の地面にも枝を刺して下さい!」

『『『了解!』』』

「III突2両とヤークトディーガーは試合前に渡した偽装ネットを戦車全体に覆い被せて、その辺の落ち葉を上から撒いて下さい!」

『『『了解!』』』

「さてと、四季さん、神宮寺先輩、お願いします!」

「わかった」

「わかりました」

 

四季と神宮寺先輩は木に登ってドンドンと枝を切り落としていく。

 

「しかしこうして見ると小さい頃を思い出すなー」

「小さい頃って、ついこの前まで私は小学生で、相澤先輩も中学生になってまだ2年経ってないじゃないですか」

「細かいことは気にするなってー」

「でもそうですね、小さい頃はよく木に登って虫を捕まえてましたね」

「おっ、意外だなー。笹原にもそんな時期があったのかー。てっきりそんなのに興味ないと思ってた」

「失礼ですね。私をなんだと思っているんですか」

「重度の面倒くさがり」

「ホント失礼ですね」

「ハイハイ、そんな顔しても可愛いだけだぞー」

 

まさか相澤先輩に言われるとは思っていなかった。

面倒くさがりは認めよう。だがな、面倒くさがりは面倒くさがりでも重度の面倒くさがりではない。重度の面倒くさがりと言うのはこの人のことを言うのだ。そもそも重度の面倒くさがりならこんな作戦を立てたりしない。だから俺は重度の面倒くさがりではない。面倒くさがりではあるが。

さて、俺は何回面倒くさがりという単語を使っただろう。暇な人、数えといてー。

 

「ナズナー。サボってないで手伝ってー」

「笹原さん、会話はその辺にして手伝って下さい」

 

木に登っていり2人からお叱りを受けてしまい、俺と相澤先輩は慌てて作業に入る。

 

『こちら綾波、隊長聞こえますか』

 

俺は車内に戻り無線を取る。

 

「こちら笹原、作業終わった?」

『はい、Ⅲ突2両も終わりました。これからどうしたらいいですか?』

「作業終わったら他の戦車の支援にまわって、先輩達にも伝えておいて」

『了解しました』

 

こうして作業は着々と進んでいき、偽装が完了した戦車は榴弾で作った穴の中に入った。

 

『ねぇ、やっぱりこの穴大き過ぎないかしら?』

「そうね、次はもっと別の方法を考えるわ」

『そうですか?私達の方はそこまで穴は大きくありませんが』

『朝潮、それは多分隊長と霊夢のところの地面が柔らかかっただけだと思うよ。私と朝潮のところは結構地面硬かったし』

『そのなのですか?』

「選定ミスねこれ。私のところは車体がすっぽり入っているけど射撃に支障はないわ。ただ穴がやっぱり大きいわね」

『私のところは車体どころか、砲身の付け根ギリギリの深さになったわ。おかげで負角が取れないわ』

「それ大丈夫なの?」

『大丈夫よ、射撃に支障はないわ。これでも結構穴は埋めた方だし』

「そんなに?私達もスコップ使って穴埋めしたけどそこまで酷くなかったわ」

『魔理沙が調子に乗って同じ穴に2発撃っちゃったのよ。妖夢は無意識に次弾装填しちゃってたし』

『いやーー、ついやっちゃったZE☆』

「・・・・・霧雨さん」

『なんだ?』

「この試合で1発でも外したら砲手から整備班に移動してもらいます」

『お、おいおい、冗談だろ?』

「それとも今この場で白旗をあげますか?」

『ちょっと待って!何も活躍しないまま退場は嫌よ!』

『そうです!確かに装填してしまった妖夢にも責任はあるけど、お叱りを受けるのは魔理沙だけにしてほしい!』

『私も作業服に着替えてスコップ持って穴埋めして、無線機をちょっと触っただけで終わるのは嫌よ』

『私も何も活躍せず戦車をただ運転しただけで終わるのは嫌です』

「らしいわよ霧雨さん、それじゃ頑張ってね」

『砲手から降ろされるのは嫌だ!絶対に全弾命中させる!』

 

そのやる気を普段の授業でも出してほしいものだ。いつも居眠りばかりして、先生から怒られる度に「こらーキノコ娘、起きんか。笹原ー、お前のところの部員はどうなってるー」と言われる俺の身になってくれ。

 

『おっ、あんなところにキノコがあ『こちら吹雪!紅音ちゃん、聞こえる!』』

「こちら笹原、どうしたの?」

『はたてちゃんから報告、紅音ちゃん達のところに敵戦車接近中。数は14両。あと10分でキルゾーンに到着』

「了解。霧雨さん、悪いけどキノコ狩りはまた今度にしてちょうだい」

『あと10分あればいけるZE☆』

「・・・・・言い残すことそれだけ?」

『よし!敵戦車、どんと来やがれ!』

「最初からそうしていればいいのに、それしても吹雪」

『何?』

「予想通りの展開になったわね」

『でしょ。私達の情報収集能力を甘く見ないでね』

「敵フラック車は見つかった?」

『まだみたい。もう少し時間がかかると思う。あと50分時間ちょうだい』

「こっちの状況次第ね。なるべく早く探してほしいわね」

『そこはどうにも出来ないよ』

 

さて、そろそろ今回の作戦の説明をした方がいいな。

簡単に言ってしまえば陽動作戦である。俺達1小隊が敵主力と交戦をし、2小隊はフラッグ車を叩く。

1小隊の指揮は俺が。吹雪は2小隊の指揮をしつつ全体の指揮をしている、1小隊の役割は陽動とバレないように敵主力と交戦。2小隊の具体的な役割は、はたてが敵主力を見つからない位置から監視、もちろん戦闘には参加しない。残り3両は敵フラッグ車の捜索及び撃破である。なので吹雪とはたての車両は試合には参加するが戦闘には参加しない。てかアイツらはどこに隠れた?見つからない場所に隠れているならいいが。

廃空中学校はここまでどの試合もフラッグ車だけ隠れ、それ以外の戦車が戦う戦術を取っていた。おそらくこのフラッグ車が指揮をしているのだろう。確かに悪くない作戦ではあるが、フラッグ車が隠れて指揮するとなると、見つかったときに対処出来なくなる。

この大きなリスクを背負ってまでそれするということは、南を含めた要注意人物達はよほどの実力者なのだろう。

そんなヤツと戦うとなると正攻法は通じない。そこで考えたのはアンブッシュ、待ち伏せである。

予め交戦地域やキルゾーンを設定して部隊を適所に配置し、敵に発見されることなく偽装して目標の観察をし、適時において奇襲を加えるという攻撃である。

今回のフィールドは森と草原の割合は5:5くらいである。戦闘するにも木々が多過ぎるも森の中でのあまり車線が通らない、だから草原の中で戦闘をするのが普通だ。

だが俺達の学校は部員が少ない上に技量はそこまで高くない、ついでに言うなら予算もあまりない。紫に頼んで予算を増やそうとしたが、「別にいいけど、これまで予選敗退している部活に予算をあげたら他の部活から苦情が来るわよ?」と言われ、渋々諦めた。全国大会前に面倒ごとは避けたかったからだ。

たがら少ない予算、少ない部員でやるとなるとこの作戦しかない。

 

『こちら吹雪、そろそろ敵主力が視認できると思うけど、見える?』

 

俺は双眼鏡でキルゾーン付近を見る。

 

「確認したわ。数は14両、間違いないわ」

『了解。それじゃ予定通り、紅音ちゃんは戦闘にだけ集中して。はたてちゃんから随時状況報告してもらうから、それを頼りにこっちから指示を出すね』

「了解」

「それしても笹原、わざわざこんな面倒な作戦をしなくても、笹原がまとめて指揮すれば良かったんじゃないか?」

「敵フラッグ車を発見次第、私が指揮します」

「そうじゃなくて、最初から笹原が指揮すればいいんじゃないかって話」

「今回は少ない数で倍の数を相手にしないといけません。予算を抑えたいのでこちらの被害はできるだけ出しなくありません。そうなると私がこちらに集中するしかないんです。多分、撃破確認している余裕がないくらいの戦闘になると思います。この状況では、流石には2小隊の指揮まで頭が回りません」

「そんなもんかね」

「そんなものです。まぁ私的には早く敵フラッグ車を見つけて叩いてくれるとありがたいです。楽ですから」

「だな〜」

 

まぁ、正直言って楽をしたかったというのもあるが。

 

「そろそろ敵主力がキルゾーンの入ります。各車、自分が狙い戦車を決めてください」

『私は先頭のシャーマンを狙うぜ』

『じゃボクはその後ろのシャーマンを狙うね』

『それじゃ私は最後尾のシャーマンを狙おうかしら〜』

『私はファイヤフライを狙うね』

『私はM7狙うね』

『私はパーシングにする』

「私もパーシングにするわ」

「了解」

 

キルゾーンまであと数十メートル。

 

「各車、撃ち方用意」

 

70・・・50・・・30・・・10・・・入った。

 

「撃てーー!!」

 

 

 

ドドドドドドドォォォォーーーン!!

 

 

 

「装填手次弾装填、急いで下さい!砲手!撃破確認はしないで次の戦車を狙って下さい!吹雪!姫海棠さん報告は!」

『今きた!4両撃破、2両履帯切ったよ!』

 

誰か1人外したな。って魔理沙のヤツ外してんじゃん。まぁいい。

 

「了解!次弾いきます!撃てーー!!」

 

 

 

ドドドドドドドォォォォーーーン!!

 

 

 

『3両撃破!』

 

これで半分、残り7両!

敵が後退し始めた。これはチャンスだ。

ヤツらは混乱しているはずだ、主力を潰すには今しかない。

 

「装填手、次弾装填!『待って紅音ちゃん!』ッ!」

『敵が後退し始めたってはたてちゃんから情報がきた、ならこっちも退いて』

「何を言っているの!?あと半分なのよ!!追撃して出来るだけ戦力を削いだ方が後々『紅音ちゃん!』ーーー!!各車後退!ヤークトティーガー、Ⅲ突は偽装ネットを回収!その他の車両は私に続いて下さい!」

『『『『『『了解!』』』』』』

 

俺は吹雪に指示され後退した。

あと半分、あと半分だったのに!

 

『紅音ちゃん、聞こえる?』

「・・・・・えぇ」

『なんで後退させたかわかる?』

「追撃したなら間違いなく、こちらの戦車が何両かは撃破される。私達の学校はあまり予算がない。予算を抑えるには、ここで退くしかない」

 

わかっていた。だからこのような作戦を立てた。

でも。

 

『今さっき自分が何をしようとしたかわかってる?』

「えぇ、わかってるわ。でも」

『でもじゃない!私達の学校は予算がないんだよ!ここで被害を出して無駄に出費を出してる余裕はないんだよ!だから今回みたいな作戦を立てたんだよ!それに今回の作戦立案者は紅音ちゃんだよね!自分で立てた作戦なのに、自分が作戦通りに動かないでどうするの!そんなの隊長として失格だよ!自分で立てた作戦なら作戦通りに動いて!』

「・・・ごめんなさい」

『はぁ〜〜。まぁ、いいよ。紅音ちゃんは自分の性格を理解した上で私をバックにつけたんだもんね。紅音ちゃんは気合入ると作戦とか無視することろがあるし、それを止めるという意味で私がバックにいるわけだし、これも私の役目だから気にしてないよ』

「ありがとう」

『いいよ。昔から紅音ちゃんのことはわかってるから』

「えぇ」

『はたてちゃんには後退した敵主力を追跡してもらってる。まだチャンスはあるから、落ち着いていこ』

「そうね」

『いや〜。雪宮も怒ることあるんだな〜』

『霧雨さん、その言い方は失礼ですよ』

『あら、そういう朝潮だってさっき雪宮さんが怒鳴ったとき飛び跳ねたじゃない』

『ちょ、ちょっと!五十鈴さん!何言ってるんですか!』

『妖夢も砲弾を落としそうになったわよね』

『霊夢!なんでバラすの!』

『バカじゃないの?』

『もっと緊張感持ちなさいよ』

『ハイハイみんな集中して下さい、今は試合中ですよ。心温まる喧嘩は試合が終わったあとにして下さい』

『ぽい〜〜。夕立もお話しに参加したかったぽい〜〜』

『夕立、遊佐さんの言った通りボク達も試合に集中しよ』

『ぽ〜〜い』

 

湿っぽくなった雰囲気を変えるべく魔理沙を始め、他の部員達が盛り上げてくれた。

 

『それに笹原もあんなに素直に謝ったのって始めてじゃないか?すげー驚いたぜ』

「うっ、それ以上は言わないで」

『おっ、もしかして恥ずかしいのか?可愛いなぁ!』

「それ以上喋ると整備班に移すわよ!だいたい、さっき1発外したでしょ!私はちゃんと見てたわよ!」

『うげっ。マジか』

「ホントよ、今まで砲手お疲れ様でした、明日から整備班頑張ってね」

『やめてくれーー!!』

「ふんっ」

 

まぁもちろん、整備班にするつもりはないが。

 

『ッ!紅音ちゃん!朗報だよ!エリカちゃん達が敵フラッグ車を発見したよ!』

「ッ!!吹雪!2小隊に無線機の周波数をこっちに合わせるように伝えて!」

『わかった、ちょっと待ってて!』

 

吹雪と通信が途絶えて数秒。

 

『こ・・らエリ・・聞こえ・・こちらエリカ』

「エリカ!」

『隊長、こっちはフラッグ車を見つけたわ!』

「わかってる、弥生!」

『な、何?』

「この作戦、貴女達2小隊が要だから、そっちは任せたわよ」

『わ、わかった』

「よし、これより指揮は吹雪から私が引き継ぎます!」

 

さぁ、第2ラウンドと行こうか。

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたか!
次は5月に投稿します!
では!


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勝つ為に手段なんか選んでられるか 後編

「・・・・・」仁王立ちする笹原

「・・・・・」正座するUP主

「何か言うことは?」

「この度は投稿期間が1カ月以上空いてしまい本当に申し訳ありませんでした」

「理由を教えてくれないかしら?」

「出張と残業の日々で毎日HP0になっていたので、書く時間と体力がありませんでした」

「他は?」

「パソコン壊れました」

「あとは?」

「・・・・」

「あ・と・は?」

「その際、自作のパソコンを作りました」

「パソコン作る体力はあるんだー」

「そこは組み立て代行に頼みました」

「そういうこと、とにかくこれからは気をつけなさい」

「気をつけます。では「勝つ為に手段なんか選んでられるか 後編」どうぞ」





 

 

 

 

 

「よし、これより指揮は吹雪から私が引き継ぎます!」

 

さぁ、第2ラウンドと行こうか。

 

『紅音ちゃん、私達はどうしたらいいかな?』

「吹雪達はこっちに合流して。敵主力が態勢を立て直す前に一気に叩くわよ」

『OK』

「はたてさん達は引き続き敵主力を位置情報、及び監視を。見つかった際は後退して」

『了解』

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜南 遥サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「犬井先輩、これからどうしたらいいですか?」

 

こんなはずじゃなかった。待ち伏せされ、まさか7両も撃破されるとは思っていなかった。

私は今、敵主力と交戦した場所から後退して森の中にいた。追撃がないところを見ると、うまく逃げれたはず。

 

『正面から挑むのは危険だろう。そうなるとこちらも待ち伏せをするか、あるいは偵察を出して敵の位置を探り、背後を取るしかないな。今から背後を取るのは難しいから』

「待ち伏せをするしかないですかね」

『この大会はフラッグ戦だから正面から挑んでフラッグ車だけを狙うのもありだが、それだと間違いなく守りを固めて来るだろ』

「待ち伏せしかなさそうですね」

 

やっぱ待ち伏せしかなさそうたなー。

そんな時である。

 

『敵戦車を確認!』

 

周囲を警戒していた味方から無線が入ってきた。

 

『そんな!確かに逃げきれたはず!』

『いくらなんでも早すぎる!』

「落ち着いてみんな!犬井先輩、作戦はこちらで立てていいですか」

『何か作戦があるのか?』

「敵がこちらの位置を正確に把握しているとは考えにくいです。なら、みんな散り散りになって一気に攻めた方がいいと思います」

『なるほど、的を絞らせないためか』

「はい。これなら2〜3両くらいなら減らせるはずです」

『わかった。ある程度数を減らしたらすぐに離脱しろ。判断はお前に任せる』

「了解。みんな!聞いての通り、今から散り散りになって敵の数を減らすよ!」

 

そう指示を出して、みんなは場所を移動しだした。

 

「誰か敵の数と位置、距離がわかる人いる?」

『数は7両、位置はここから2500離れた草原です』

「草原って言われても・・・・もっと具体的に」

『ちょうど私達が後退した時に通った経路上にいます』

 

私は双眼鏡を使って敵の位置を確認する。

 

『それにしても変ですね』

「変って?」

『数が合いません。敵は全部で12両のはずなのに5両足りません』

『別れたのかな?残り5両は隊長を探しに』

『かもしれないですねー。まぁ、すぐには見つからないでしょ』

 

私はまた違和感を感じた。

まただ。さっきの追撃がなかったことも、敵がこちらをあまりにも早く見つけたことも。

私は考えた。

さっきの待ち伏せのとき、確か攻撃してきたのは7両だ。12両で攻撃してくれば確実に私達を全滅させることが出来たはず。

なのに何故それをしなかった?

確かに少ない数で待ち伏せをすれば全体に指示は出しやすいし、見つかる危険性も減る。だけどそれだけじゃ、追撃してこなかった理由がわからない。折角のチャンスなのに。

 

『敵との距離2000!』

 

初めから私達を全滅させることが目的じゃなかった?

だとしたら目的は何?

あの場で私達を全滅させたら向こうは有利のはず、それを捨ててまで私達を全滅させなかった理由は・・・・。

私は考えた。そして試合前の笹原さんの言葉を思い出した。

 

『確かに総合的技量や戦車の数、その他色々なことを考慮しても勝てる要素はないわ。でもね、だから何?そんなこと最初から分かりきっていることよ。そんなことで勝敗が決まると思っているならそれで構わないわ、所詮貴女はそこまでの人間よ。見せてあげるわ、弱者の戦い方を』

 

そう、彼女は確かにそう言った。

 

『敵との距離1500!』

 

・・・・・もしかして。

 

『副隊長ーー、どうします?』

『もう射程圏内だよー』

 

もし、敵の目的が私達でないなら。

 

もし、敵の残りの戦車が犬井先輩を探しているなら。

 

もし、私の考えが間違っていないなら。

 

『副隊長ーー、どうしま「全車退避!」えっ?』

 

私は急いで指示を出した。

 

「これは陽動です!敵の狙いは私達の足止め、本当の目的は最初からフラッグ車です!」

『ちょっ、それってーーーー』

 

 

 

 

 

 

ドォォォーーーン!!

 

 

 

 

 

砲撃音が一つ、どこからか響いた。

 

『南!聞こえるか!』

「犬井先輩!どうしました!」

『敵から攻撃を受けた、向こうは最初からこちらが狙いみたいだ!』

 

遅かった。なんで気づかなかったんだ。

 

「犬井先輩!急いでこちらと合流してーーー」

 

 

 

 

 

ドドドドドドドォォォォーーーン!!

 

 

 

 

 

こちらも遅かったようだ。

 

『10号車撃破されました!』

『13号車、同じく撃破されました!』

『14号車もやられました!』

 

どうする、もうほとんどやられてしまった。このままでは。

 

『4、6号車履帯修理完了しました!今からそちらに向かいます!』

「急いで!犬井先輩はこちらと合流、15号車は私と一緒にーーー」

 

 

 

 

 

ドォォォーーーン!!

 

 

 

 

 

『15号車撃破されました!』

「・・・・・・4、6号車は急いでこちらと合流、犬井先輩は逃げ回って下さい」

 

私は深呼吸をして乗員に告げた。

 

「礼ちゃん、今から無茶苦茶な指示を出すけどいい?」

「しょうがないなぁ〜〜、終わったらアイス1本な」

「真夏ちゃん、もっと装填スピード早められる?」

「可能よ」

「空ちゃん、今から私の言う敵を狙って撃って」

「りょ〜かい〜」

「・・・・・これより敵フラッグ車を叩く!」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜笹原 紅音サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「姫海棠さん、敵はあとどのくらい?」

『あとファイアフライ1両と敵フラッグ車のM4シャーマンが1両、それと履帯が切れたパーシングが2両ですね』

「ありがとう。こっちはもういいからパーシング2両を見張ってて」

 

さーて、あと4両か。ここまで被害を出さずにきてるからこのまま終わってほしいけどなぁ。

 

『あっ、パーシング2両接近中』

「了解。ティーガーⅡ2両、ヤークトティーガーはパーシングの排除に向かって下さい」

『『『了解』』』

 

俺はティーガーⅡ2両とヤークトティーガーを見送り、吹雪と連絡を取る。

 

「吹雪〜。今どこ〜?」

『あと5分くらいしたら着くよ〜』

「早く来て〜、そして私を楽にさせて〜」

『理由が私的すぎない〜?』

「そんなことなーーーー」

 

 

 

 

 

ドォォォーーーン!!

 

 

 

 

 

『こちらⅢ突!撃破された!』

 

は?

俺は慌ててⅢ突を確認した。Ⅲ突は煙と白旗をあげていた。

 

 

 

 

 

ドォォォーーーン!!

 

 

 

 

 

次は俺の目の前にいたⅢ突に砲弾が命中した。

 

『こちらⅢ突!すまない、撃破された!』

「・・・・・・吹雪、真面目に急いで」

『わりと落ち着いてるね。あと5分持ち堪えて』

「2小隊、早急に敵フラッグ車を仕とめて下さい」

『こちら2小隊長、了解!』

 

ヤバイなぁ。

そう思っていたら森の中からファイアフライが1両出てきた。

 

「隊長どうする?私達の位置、思いっきり敵の射程圏内だぞー」

「逃げるのは無理でしょう。射撃のタイミングや判断は相澤先輩に基本任せますが、私が撃ってほしいときは私が指示を出します」

「了解♪」

「神宮寺先輩、申し訳ありませんが私の指示通りに動いて下さい」

「わかった」

「四季さん、今以上に装填速度を上げることは可能?」

「問題ありません」

「では今から吹雪及びパーシングを排除しに行った佐々木さん達が戻ってくるまでなんとか持ち堪えてます。姫海棠さんはこちらに合流して下さい」

『了解』

『隊長!私達がパーシングを撃破して戻ってくるまで持ち堪えて!』

『その前に、フラッグ車を仕とめるから持ち堪えて笹原ちゃん!』

 

いや、どうでもいいというわけじゃないけど、どっちかさっさと片付けくれ。マジで。

てかファイアフライの車長誰だ?

俺は目を凝らしてファイアフライの車長を見た。

 

「あっ」

 

俺は思わず声が漏れた。

まさかファイアフライの車長があの要注意人物の一人の南 遥とはな。

少しの間睨み合い、そして。

 

「左に全速後退!」

 

そう指示を出し、左に後退する。

 

 

 

 

 

ドォォォーーーン!!

 

 

 

 

 

ファイアフライの砲弾は、さっきまで俺達がいた場所を通り抜け後ろの森の中の一本の木に命中した。

 

「相澤先輩!」

「了解!」

 

こちらも後退しながら撃ち返すがギリギリのところで左に避けられた。

 

「ちぃっ、ハズレた!」

 

相澤先輩、女の子がなんだからそんな口調しないで。

 

「停止!前進して左にターン!」

「わかった!」

「ちょっと待て!敵に後ろ取られるとマズいぞ!」

「大丈夫です、考えがあります。とにかく前進して下さい!出来るだけジグザグに!」

 

さぁ、付いて来い。

 

「相澤先輩、合図を出したら適当に前方へ砲撃!神宮寺先輩は急停止して下さい!」

「なるほど、了解!」

「わかった!」

「四季さんは危ないから何かに捕まって安全を確保して!戦車が完全に止まってたら相澤先輩が次弾を撃つまでに速やかに装填!」

「わかりました!」

 

俺は後ろから付いてくるファイアフライを見る。

あれ?砲塔が動いていない。故障か?

・・・・まさか!

 

「左に回避!」

 

蛇行をやめ左に回避した。

 

 

 

 

 

ドォォォーーーン!!

 

 

 

 

 

ファイアフライの砲弾が右を通り抜ける。

あっぶねぇ〜。今右に行ってたら間違いなくやられてたわ!

ファイアフライは少しずつ距離を詰めてくる。

 

「相澤先輩、神宮寺先輩、四季さん、カウント5でいきます!0と言ったらやって下さい!準備を!」

「了解!」「わかった!」「わかりました!」

 

そう言って、俺も衝撃に備えた。

 

「5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・0!!」

 

IS-2は砲撃と急停止を同時に行い車体の後ろ側が浮いて停止する。

ファイアフライは俺達の突然の行動に対応出来ず、そのまま右側を走り抜けていく。

俺も戦車から放り出されないように踏ん張っていたが踏ん張りきれず、体を少し乗り出していたため腹を思いっきり衝撃がきた。

 

「カハッ!」

 

バカか俺!放り出される可能性だってあるのに、なんで乗り出してんだよ!俺のバカ!

ファイアフライもようやく停止し、砲塔を旋回する。

俺は腹の痛みを必死に堪え指示を出す。

 

「四季さん!」

「はい!」

 

頼む!間に合ってくれ!

 

「相澤先輩!」

「これならアタル!」

「装填完了!」

「撃てーー!!」

 

 

 

 

 

ドォォォーーーン!!

 

 

 

 

 

勝った、そう思った時だった。

またしてもギリギリのところで回避されハズレてしまう。

 

「マズい!」

 

このままでマズい。

 

『紅音ちゃん!バックして!』

「ッ!!全速後退!」

 

 

 

 

 

ドォォォーーーン!!

 

 

 

 

 

森の中から砲撃音と共に砲弾が飛んできてファイアフライに命中はしなかったが掠った。

 

『お待たせ!』

 

森の中からクルセイダーが1両、猛スピードで走ってきた。

 

「遅い!」

『ごめん!それで作戦は!』

「なんとか足止めをして!こっちで仕とめるから!この際1両や2両くらいなら損害出しても構わないわ!」

『そういう事なら、はたてちゃん!』

『はい!』

 

またしても森の中から、今度はチャーフィーが猛スピードで走ってきた。

そしてクルセイダーとチャーフィーはファイアフライの周りをグルグル回り、やがて2両でファイアフライを挟むように左右に停めた、というかぶつかりに行った。

 

「装填完了!」

「相澤先輩!」

「OK!」

 

 

 

 

 

ドォォォーーーン!!

 

 

 

 

 

砲弾はファイアフライに命中し、ファイアフライは煙と白旗を上げた。

 

「はぁ〜〜〜〜、なんとかなって、よかった〜〜」

 

俺はその場で伸びをしようとしたとき。

 

『こちら白露、パーシング2両撃破したよー!』

「りょーかい、ならこっちに合流してー」

『白露、了解!』

 

俺は車内から出て砲塔の上で仁王立ちをし、伸びをした。

 

「ん〜〜〜〜、ッ!!、いたたたっ」

 

伸びをしたはいいが、ヤベェ、さっきの腹の痛みが。

 

「はぁ、あとは2小隊に任せますか」

 

俺は一人、誰にも聞こえないようにそう呟いた。

てか、さっきから2小隊から無線が入ってこないがどうしたんだ?

 

 

 

 

 

〜〜〜〜轟 弥生サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「あーもう!じれったい!」

 

私はあまりにも苛立ち叫んでしまった。

 

『轟ちゃ〜ん今のは惜しかったから次は頑張ろう〜』

「なんで当たんないのよーー!」

『まぁまぁ落ち着いて。あとはフラッグ車だけだから〜』

 

あとフラッグ車、あとフラッグ車だけ。

これさえ倒せば、私達は全国に行ける。

 

 

 

 

 

ドォォォーーーン!!

 

 

 

 

 

敵フラッグ車のM4シャーマンは、最後の悪あがきと言わんばかりの砲撃をし、横にいた文ちゃんのチャーフィーに命中した。

 

『あやや〜、どうやら私達はここまでのようです。あとは任せました』

『はいは〜い、あとは任せてね〜』

 

ホント呑気だなぁー冴塚先輩。

 

「冴塚先輩、油断は禁物ですよ」

『油断はしてないよー逸見ちゃん』

「まぁ、それならいいんですが」

『それよりも轟ちゃん、もうちょっと落ち着いて射撃してみようね〜』

「私は落ち着いてます」

『それが落ち着いているって言えるのかなぁ〜』

「・・・・・・」

『それじゃ試合が終わったあとのことを考えよっか〜。逸見ちゃんはどうしたい〜?』

「何を言っているんですか。今は試合に『いいから〜〜。あっ夏海ちゃ〜んしばらく私指示出さないから夏海ちゃんの判断に任せるね〜〜』ちょ、ちょっと!」

『ん?どうしたの?』

「今は試合中ですよ!」

『まぁまぁいいから〜』

「黒川先輩も何か言って下さい!」

『もう慣れっこだし今更よ、それに私も気になるし』

「そ、そんな」

『まぁ私は会話にはあまり参加しないから。ッ!左に回避!』

 

 

 

 

 

ドォォォーーーン!!

 

 

 

 

 

『あっ、気にせず続けて〜』

 

黒川先輩すごっ。話聞きながら指示を出すなんて。

 

『ほらほら〜言いなよ〜。まずは逸見ちゃんからね〜』

「はぁ、わかりました。ですがその前にちょっと場所移動します」

 

私達は後方に下がった。

 

『それで逸見ちゃんは試合が終わったらどうするの〜?』

「そうですね。とりあえず決勝の準備と期末テストの勉強、あとは『それはやらなきゃいけないことで、したいことじゃないよ〜!』って言われましても」

『も〜う。2回戦のときに笹原ちゃんにも同じ質問したけど、笹原ちゃんは「早く帰って本屋に行きたいです。今日最新巻の発売日なんです」って即答したよ〜』

 

だからあの時いつもより早く試合が終わったのか。確か午前中で試合が終わって、午後1時くらいに解散したもんね。

「というか、それバラして大丈夫なんですか?」

『大丈夫だよ〜。今の話は笹原ちゃんには聞かれてないし、みんながバラさなきゃ大丈夫〜』

 

そう、私達2小隊は冴塚先輩の気遣いでファイアフライを撃破したあと1小隊の周波数から2小隊の周波数に戻したのである。

理由は私とエリカが笹原ちゃんと会話しないように。

 

『逸見ちゃんは考えておいてね〜。次は轟ちゃん』

「えっ?私ですか?」

『そうだよ〜』

 

私は・・・私は・・・・・・・。

 

「私は仲直りしたいです」

『誰と?』

「紅音ちゃんとです」

 

私は続けた。

 

「私、冴塚先輩のことを悪く言ってしまった日から一度も紅音ちゃんと話してないんです。紅音ちゃんを見るとつい避けてしまって、でもいつも通りにしようとしても上手くいかなくて、私どうしたらいいかわからなくて」

『轟ちゃん・・・・・』

「私、嫌われたくない!」

 

私はとうとう堪えきれずに泣きだしてしまった。

 

『そっか〜、仲直りしたいのか〜。でもね轟ちゃん、笹原ちゃんは別に轟ちゃんのことは嫌ってなかったよ〜』

「えっ?」

『笹原ちゃん、轟ちゃんのことすごく心配してたよ〜。多分笹原ちゃんも轟ちゃんと一緒でどうしたらいいかわからなかったんだと思うよ〜』

「でも」

『じゃあさ、試合が終わったら一緒に笹原ちゃんのところに行こっか〜。これなら怖くないでしょ〜』

「・・・・・お願いします」

『だから、今は落ち着いて試合に集中しよ。そんなんじゃあたらないよ』

「はい」

『逸見ちゃんはどうしたいか決まった〜?』

「私も、笹原と仲直りしたいです」

『決まり〜。試合が終わったら2人は笹原ちゃんのところね〜。あっ、夏海ちゃんありがとね〜・・・・。それじゃ試合に戻ろっか〜。私達が足止めするから逸見ちゃん達はスキをついて仕とめてね〜〜』

 

私は涙を拭いながら敵フラッグ車を狙った。正直、今いる場所から当てられなくもない。

私は深呼吸をする。落ち着け、あたる、あてられる。

冴塚先輩達が必死に避けては攻撃、避けては攻撃を繰り返している。

そして敵フラッグ車が完全に動きを止め、冴塚先輩を狙っているとき。

 

『轟ちゃん!』

 

私は撃った。

そして砲弾はM4シャーマンの車体側面にあたり、白旗をあげた。

 

『廃空中学校フラッグ車走行不能!勝者、常幻東中学校!』

 

勝利のアナウンスが無線機から聞こえてきた。

 

「勝った・・・・んだよね・・」

「そうよ!勝ったのよ弥生!」

「エリカ」

「これで私達全国に行けるのよ!」

 

私は嬉しかった。

そしてあまりにも嬉しくて、また泣いてしまった。

私はエリカと抱き合いった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜南 遥サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

負けた。負けてしまった。

 

『南、聞こえるか?』

「・・・犬井先輩」

『すまないな、お前達を全国に連れて行ってやれず』

「なんで・・なんで先輩が謝るんですか」

『南?』

「謝らなくちゃいけないのは私なんですよ!?中学最後の試合を台無しにしてしまったんですよ!?本来咎められるのは私なんですよ!?なんで先輩が謝るんですか!!」

『・・・・・』

「私は・・・私は!」

『気にするな南』

「なんでですか!」

『確かに中学最後まで全国には行けなかったが、別にもう戦車に乗れないわけじゃない。次は高校で全国を狙うだけさ』

「・・・先輩」

『だから気にするな』

「グスッ・・・・・はい!」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜笹原 紅音サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

あ〜〜〜〜、終わった〜〜。

一時はどうなるかと思っていたが、まぁ、勝ってよかった〜〜。

てかあのパパラッチ、最後の最後でやられやがって。

 

『あ・・・あー。聞こえる〜、笹原ちゃん〜』

「聞こえますよ副隊長」

『よかった〜、繋がって』

「途中から2小隊と繋がらなかったんですけど、何かあったんですか?」

『わかんな〜い、何か急に繋がらなくなっちゃって』

「まぁ試合には勝ちましたし、今こうやって繋がっているからよしとしましょう。それでは全車、整列準備!」

 

俺達は試合開始前みたいに整列をした。

 

「両校!礼!」

「「「「ありがとうございました!」」」」

 

さぁて帰りますか。

 

「それでは撤収準備!トレーラーはもう来ていますので、走行不能の戦車は乗せて下さい!それ以外の作業はいつも通り!」

 

そう言って、みんなはそれぞれの作業を開始する。

 

「笹原さん!」

 

俺は後ろを振り返る。そこには南 遥がいた。

 

「次こそは・・・次こそは絶対に勝ってみせる!」

 

彼女の目の周りが赤くなっていることに気づいた俺は南に歩み寄る。

 

「いい試合だったわ、また戦いましょう」

 

そう言って俺は手を出した。

 

「えっ?」

 

それを聞いた南はキョトンとした顔になった。

 

「どうしたの?」

「だ、だって、その・・・怒ってないの?試合前のこと」

「もういいわよあんなこと、今回はとても充実した試合だったから私は満足だわ」

「そうなの?」

「そうよ」

 

そう言って俺達は互いに握手をした。

ヤベッ、肌マジで白っ。

 

「ねぇ」

「何?」

「メアドと電話番号教えて」

「・・・・・・えっ!!??」

「何よ?」

「い、いきなり過ぎない!?」

「ごめんなさい言い方が悪かったわね」

 

俺は一呼吸して続けた。

 

「私と友達になってくれない?」

「突然だね。まぁ私はいいけど」

 

俺はそう言って南は携帯を取り出した。

そうしてメアドと電話番号を互いに登録した。

 

「来年はウチが全国に行くからね」

「ええ、楽しみにしているわ」

 

そして俺達は別れた。てか南のヤツ、試合に負けたっていうのに何でちょっと嬉しそうなんだ?

 

「笹原ちゃん〜」

 

今度は副隊長かよ。ん?エリカと弥生までいるな。どうしたんだ?

 

「お疲れ様です。どうかしましたか?」

「私じゃなくて、2人が笹原ちゃんに用があってね〜」

 

俺は2人を見る。エリカはちょっと目を逸らしてるし、弥生は俯いたままである。

あ〜〜、これ絶対この前のことだ。

 

「あ、あの」

 

弥生が口を開いた。

 

「えっと、その」

 

じれったい。

俺はエリカと弥生を抱き寄せた。

 

「えっ?」

「ちょっと!」

 

俺は静かに言葉を発した。

 

「この前は言い過ぎてしまってごめんなさい。そして今回は本当に助かったわ、ありがとう」

 

俺はそう言って2人を離した。

 

「アナタ、怒ってないの?」

「何で怒らないといけないの?」

「だって紅音ちゃん、私、冴塚先輩に酷いこと言ったし」

「あぁ、あの事ね。冴塚先輩はどうなんですか?」

「私は別に気にしてないよ〜〜」

「まぁ、そういうことだからもういいんじゃない?これから気をつければ。それよりも2人共よく頑張ってくれたわ」

「うん!」

 

おっ、いつもの弥生に戻ってる。

 

「ま、まぁね」

 

ヤバい、照れてるエリカさんマジ可愛い。

 

「ありがとね、それじゃ撤収準備しましょ」

 

そう言って俺達は撤収準備に取り掛かった。

 

 

 

 

 




いかがでしたか?
投稿が遅くなり申し訳ありません。
これからは事前に連絡しようと思います。
次は6月中旬に投稿します。
では!


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笹原 紅音はちょっと世話焼きである


通算UA10000突破!!
皆さま!本当にありがとうございます!
これからも頑張りますので、どうかよろしくお願いします!


 

 

 

 

 

6月も終わりに近づき、衣替えが6月最初から始まって本当に良かったと心底思っているこの頃、俺は普通の学校生活を送っていた。

 

「では、ここの問題を・・・・霧雨、解いてみろ」

「マジか!えっ、えーっと」

「ここの問題、昨日ちゃんと授業受けていたらわかる問題だぞー。ちゃんと受けていたら」

「センセー、わかりません!」

 

いや、諦めんなよ。

準決勝が終わって数日、今は3時限目の数学の時間で魔理沙は黒板に書かれている問題をあっさり諦めたところである。

ちなみに内容は乗法と除法である。

 

「はぁ〜、笹原答え」

「+5です」

「正解だ」

 

さて、次の試合の編成を考えないと。中1の授業なんかに時間を割いている暇なんかない。

 

「このように、おそらく授業をあまり聞いていないであろう笹原でも解ける問題だぞー」

「センセー、私は授業をちゃんと聞いています。霧雨さんと一緒にしないで下さい」

 

お前どんだけ俺のこと嫌いなんだよ。まぁ確かにあんま聞いていないが。

 

「じゃ昨日の授業の範囲、教科書19ページの問3の4問と、今やっている問4の8問、言ってみろ」

 

面倒くせぇ。

クラスのみんなが俺を見る。えっ?答えないとダメなの?

俺は教科書の問題を見る。

 

「計算式は面倒なので省略して答えだけ言います。+2、+9、−5、+12、−18、−7、+9、+3、−4、−6、−8、+1です。合っていますか?」

「正解だ」

 

おおーーー!!と歓声があがる。

 

「では先生に問題です。変数分離形の微分方程式の解き方は?」

「なっ!?」

 

教室内が少し騒つく

 

「変数分離形の微分方程式?」「えっ、そんなの習ったっけ?」「し、知らない」

 

周りはヒソヒソと言う。

 

「笹原さん、それは一体なんですか?」

「変数分離形の微分方程式。高校か大学くらいで習う数学よ」

 

ヒバリの質問にそう答えると教室内が更に騒つく。まぁそうだろな、たかが中1が高校か大学くらいで習う数学の問題を教師にしているんだから。

 

「笹原、お前はわかるのか?」

「無論です」

「問題は?」

「公式だけで構いません」

 

そう言って先生は黒板に公式を書いていく。

 

「合っているか?」

「正解です」

「なら笹原、ベルヌーイ形微分方程式は?」

「前提条件は?」

「n=0の場合は線形微分方程式になり,n=1の場合は変数分離形になるから,ここではこれらの場合は考えないこととする」

 

俺は黒板の前に立ち、公式を書いていく。

 

「正解だ」

「では先生、リッカチ形の微分方程式は?」

 

先生は書いていく。

 

「正解です」

「お前なんで中学校にいるんだよ?あとなんでこんな問題知ってんだよ?」

 

あっ、ヤベッちょっとイラってきたからやり返すつもりが。

 

「いけませんか?私これでも理数系なので」

「お前飛び級したら?」

「質問を質問で返さないで下さい。あと嫌です、面倒くさいので。では次は弾道学から問題ですがーーー」

「それは違う教科の問題だ!」

「いえ、計算があるので一応数学です」

「いや物理とか力学も使うからな!?」

「わかりました。では放物運動からーー」

「だからなんでそんなの知っている!?」

「いえ、これでも戦車に乗っていますので」

「普通中学生は知らんぞ」

「まぁ、普通は知らないでしょうね」

「はぁ、もういい。席に戻れ」

「はい」

 

俺は自分の席に戻る。

 

「あー、脱線してしまったが、これで授業は終わる」

 

おっと、もうそんな時間か。

 

「それとお前達に言っておく。今度の期末テストだが、中間のと合わせて60点未満の教科がある生徒は夏休み補習だ。これは数学だけでなく全教科だ」

 

な、なんだと!?

 

「ではこれで授業は終わる、日直」

「起立、礼」

「「「「「ありがとうございました」」」」」

 

俺は素早く携帯を取り出し、部員全員に一斉メールをした。

内容は『昼休み、部員は全員工場に筆記具とメモ帳を持って集合』である。

送信してすぐ携帯を取り出した部員が数名いたのでこのクラスは大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜昼休み〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「全員集まりましたか?」

 

俺は部員全員を工場に集める。

 

「それで笹原ちゃん〜、一体どうしたの〜?部員全員集めて」

「単刀直入に言います。この中で前回の中間テストで点数が悪かった人は挙手をお願いします」

 

そう言って恐る恐る挙手したのは数人。

おい魔理沙、お前は絶対に点数は悪いのになぜ手を挙げない。

 

「わかりました。ではメモ帳に自分の名前と中間テストの各教科の点数を書いて1年生は私が、2年生は冴塚先輩に出して下さい。()()()嘘偽りがないように、正直に書いて出して下さい」

 

そう言って全員がメモ帳に書いて俺に提出した。

どれどれって、魔理沙のやつほとんど30点未満じゃん!!

俺は魔理沙を睨むが、本人は慌てて外方を向いた。おい、こっち見んか。

 

「冴塚先輩、そっちはどうですか?」

「う〜ん。ちょっとマズイかな〜って子が6人かな〜」

 

俺は1年の全員分を確認する。

 

「こっちは15人です」

「それはマズイね〜。このままだと夏休み補習になっちゃうね〜」

「今日は木曜日です。おまけに決勝は来週でテストは決勝が終わって3日後で、勉強をする時間はあまりありません。不本意ですが、今日から4日間は部活を中止にします」

 

工場内が騒つく。

「そんな〜」「決勝前なのにー」「誰よ点数悪いの」とヒソヒソ言い合っている。まぁそうなるわな、大事な決勝前なのに部活中止なんて。

 

「仕方ありません。幸い全国には出場出来る状況です。補習で試合に参加出来ない方が問題です」

「そうだね〜。ただでさえ部員が少ないのに、更に部員がいなくなる方が問題だよね〜」

「2年生は冴塚先輩にお任せします。1人で無理なら他の人と協力して勉強会や居残りをして下さい。校長には私から説明します」

「わかった〜」

「1年生はあとで関係ある人にはメールを送ります。では解散としますが、皆さんはあまり点数が悪い人を責めないであげて下さい。誰しも得意不得意はあります、皆さんは出来るだけ協力してあげて下さい」

 

そう言って全員が解散していった。

ちなみに点数が悪かったのは魔理沙、白露、夕立、宇佐見、黒潮、不知火、湯沢、和田、荒潮、漣、弥生、火焔猫、平河、由比ヶ浜、睦月である。っておい弥生、なんでお前は点数が悪いんだよ!

 

 

 

 

 

〜〜〜〜放課後〜〜〜〜

 

 

 

 

 

部活の中止を紫に説明し、勉強会に関係ある人にメールをした俺は帰宅していた。

勉強会は俺とエリカと吹雪が白露、夕立、荒潮、漣、弥生を。

四季と咲夜と早苗が魔理沙、火焔猫、由比ヶ浜、宇佐見、睦月を。

遊佐と日巻が陽炎が黒潮、不知火、湯沢、和田、平河をそれぞれ見ることになった。

俺らのグループは俺の部屋で勉強することにしたが、そう以外はそれぞれに任せた。だってこれだけの人数は俺の部屋に入らんし。

しかし、部活をしないでこんなに早い時間に帰宅するなんて久しぶりだな。

 

「助けてーーー!!」

 

なんでこういったときにこうなんのかな。何?俺ってもしかして厄病神?

とはいえ流石に無視は出来んか。俺は声がした方に向かって走った。

走っていると小さな公園の前に車が停まっており、中年のおっさんが公園の入り口近くでランドセルをからった小学生を車の中に引き込もうとしていた。

 

「あれは、小町ちゃん!」

 

そう、その小学生は隣のクラスの比企谷八幡の妹、小町であった。

俺は近くに落ちていた小石を中年のおっさんを狙って全力投球したあと小町に向かって走った。

 

「イテッ!」

 

見事に顔面に小石があたったおっさんは、小町から手を離し、自分の顔を両手で抑えた。

 

「小町ちゃん!」

「笹原さん!?」

 

流石に小学生と一緒では逃げられないと判断した俺は小町の手を取り公園の中に入った。

 

「小町ちゃんは私のバックを持ってここにいて!」

「でも笹原さん!」

「いいからここで大人しくしていて!出来る?」

「わ、わかった」

「よし、偉い子ね」

 

そう言って俺は後ろに振り返って、おっさんと向き合った。

 

「アンタ、何私の知り合いを誘拐しようとしてんのよ」

「うるせぇ!!部外者は引っ込んでろ!!」

「アンタ人の話を聞いてた?部外者じゃなくて知り合いよ。」

「黙れ!!」

 

おっさんはそう言ってポケットからナイフを取り出した。

おいおい、銃刀法違反だぞ。

 

「死にたくなかったらさっさとそいつを寄越せ!」

 

バカらしい。

 

「アンタ、自分が何をしているのかわかってるの?」

「あぁ!?」

「他人に武器を向けるってことがどういうことわかってるのかって聞いてんのよ」

「うるせぇ!!黙れ!!」

 

おっさんはナイフで切りかかってきた。普通なら簡単に避けられたが俺はあえて怪我するように避けた。

 

「笹原さん!」

 

小町が後ろで叫んだ。

俺はというと左手の手のひらを軽く切った程度である。

 

「正当防衛成立ね」

 

俺はそう呟いてから攻撃の姿勢をとった。

今度はおっさんは、俺の肺の部分を目掛けて刺しにきた。

まぁ、このくらいなら躱せるが、こんなの躱す必要もない。

先ずは左手でナイフを受け流したあと、おっさんの顳顬を全力で殴る。

 

「ガァッ!」

 

次にそのまま胸ぐらを掴んで背負い投げをする。

 

「ガハッ!」

 

おっさんは投げ飛ばされるが、すぐに起き上がりナイフを逆手持ちにするとそのまま振り下ろしてくる。

 

「笹原さん!」

 

小町が叫んでいるが、今は無視だ。

俺は両手で受け止めたあと、おっさんの鳩尾辺りを膝蹴りをする。余程苦しかったのか、ナイフを手放しておっさんは片膝ついた。

俺は次に顔に膝蹴りをお見舞いして、渾身の力を込めて顔にミドルキックする。

綺麗にぶっ飛んだなぁ。

俺はナイフを拾い上げて、横たわるおっさんに歩み寄る。

 

「何気絶したフリしてんのよ」

 

そう言って俺は脛を思いっきり蹴り上げた。

 

「ガァァッー!!」

 

おっさんは脛を抑えてジタバタする。

俺はおっさんの胸ぐらを掴んで無理矢理立たせ、首元にナイフを突きつけた。

 

「いい?人に武器を向けるなら、それが自分に向けられる事も考えなさい。殺す覚悟も、殺される覚悟もない癖に武器なんて使うもんじゃないわよ!」

 

俺はナイフを捨て、おっさんの顎に拳を叩き込んだ。

おっさんは吹っ飛び、そのまま気絶して動かなくなった。

 

「小町ちゃん!」

 

俺は小町に向き直る。

 

「う、うぅ、うわぁぁぁぁん!!」

 

小町はとうとう泣きだし、俺の元に走り出したと思ったらそのまま抱きついてきた。

 

「あぁぁぁぁぁん!!死んじゃうっでおもっだぁぁぁ!!ざざはらざんが死んじゃうっでおもっだぁぁぁ!!」

「よしよし、私は大丈夫だから。ねっ、泣き止んで」

 

俺はしゃがんで、右手で小町を抱き寄せる。

 

「でもぉざざはらざんのひだりでがぁぁぁ!」

「大丈夫よ。ちょっと切っただけだから」

 

実際はポタポタと血が出ていた。ちらっと見たが左手は真っ赤になっていた。

あ〜、ハンカチとか持っとけば良かった。てか傷残んないよな?

 

「今からお巡りさん呼ぶから、小町ちゃんはここで待ってて」

 

俺はバックから携帯を取り出す。人生初の110番、って左手が血でベタベタするな〜。とりま制服で手を拭いとくか。

数分後パトカーが2台と救急車が1台が来ておっさんは逮捕、俺も簡単な状況説明をした後詳しく聞きたいが、先ずは傷の手当てが先となり、小町と一緒に先ずは病院に向かった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜警察署〜〜〜〜

 

 

 

 

 

病院で手当てを受けて、そのあと警察署に着いた俺は先ず事情聴取を受けている。それにしても、マジで縫合する程の傷じゃなくてよかった。もし傷が残るようならあのおっさんを亡き者にするところだった。

そんなことより。いや、なんて言っていいの?ここは警察署、それはわかる。でもね。

 

「では、笹原さんは比企谷さんの助けを呼ぶ声が聞こえて現場に駆けつけたときにはその状況だったのね」

 

なんでアンタがいるんだよ常守 朱さん!!

 

「はいそうです」

「それで、笹原さんは近くに落ちていた小石を犯人にぶつけ、犯人が比企谷さんから手を離した隙に比企谷さんを助け、逃げ切れないと判断した笹原さんは公園の中に逃げたと」

「はい」

「そのあとは犯人と取っ組み合いになり左手を負傷するも、顳顬に打撃を与えたあと背負い投げ、起き上がって犯人はナイフを逆手持ちに切り替えたあと振り下ろしたのね」

「はい」

「そのあと鳩尾辺り、顔に膝蹴りと普通の蹴りを与えあと横たわった犯人の脛に打撃を与えたあとは胸ぐら掴んで無理矢理立たせて顎に拳を叩き込んだ、であってる?」

「は、はい」

 

なんかそこだけ聞くと俺が圧倒的に悪く聞こえてくるな。

 

「わかりました。ご協力ありがとうございます」

「あの、小町ちゃんは大丈夫ですか?」

「はい、今は待合室で私の先輩が一緒にいますし、先程よりだいぶ落ち着いています」

「そうですか。よかった」

「では、事情聴取は終わります。今から待合室に案内しますね」

「ありがとうございます」

 

俺はそう言って常守さんに付いていく。

 

「笹原さん」

「なんですか?」

「あの、もし間違っていたら申し訳ないけど、笹原さんってもしかして東中で戦車道の隊長をしてる?」

「はい、常幻東中学校で戦車道の隊長をしてます」

「やっぱり!なんだか見覚えのある顔と名前と思ったら、やっぱりそっかー!!」

「あの、私のこと知っているんですか?」

「もちろん!試合いつも見てるよ!今度は黒森峰とだよね、頑張って!」

「あ、ありがとうございます」

「うん!応援してるね!あっここが待合室ね」

 

そうこうしている内待合室に着いた。

 

「お疲れ様です。事情聴取終わりました」

「おつかれー、朱ちゃん」

「おう、終わったか」

 

そこには唐之杜 志恩と征陸 智己がいた。

もう俺は何も突っ込まんぞ。

 

「笹原さん!」

 

小町はそう言って俺の元に走ってきた。

 

「ごめんね小町ちゃん、遅くなって」

「それにしても嬢ちゃん、アンタは大したもんだ」

 

征陸が突然そう言ってきた。

 

「何がですか?」

「よく逃げずに取っ組み合いで勝てたなって。連れてこられた犯人の顔はそりぁ酷かったぜー」

 

征陸は笑いながらそう言ってきた。

 

「あ、あれは自分でもやり過ぎたと思っています」

「いや何、そんなことで罪にはなんねーから安心しな」

「はい、ありがとうございます」

 

よかった〜。正直出場停止とかくらったらどうしようと考えてた。

 

「まっ、学校の方には連絡はいくがな」

 

ですよねー。わかっていたが聞きたくなかった。

 

「ところで嬢ちゃん、その子の家の電話番号は知ってるか?」

「え?」

「いや、その子携帯持ってないし、親の携帯の番号も家の番号もわかんねぇって言ってるからさ」

「大丈夫です、この子のお兄さんの番号は知っていますので」

「そうか、悪りぃが電話してくんねぇか?」

「わかりました」

 

俺は携帯を取り出し比企谷に電話をかける。

 

「あっ比企谷君?今大丈夫?」

『すまん!悪いがまたかけ直してくれるか!』

「妹さんのこと?」

『な、なんで知ってるんだ!』

「はぁー、小町ちゃんと一緒に警察署にいるからご両親と一緒に来なさい」

『悪い、親父とお袋は今出張でいないんだ』

「ならアンタだけでも来なさい。じゃ」

 

そう言って一方的に電話を切った。

 

「ご機嫌斜めね、大丈夫?」

「正直早く帰りたいです。このあとご飯作ったりテスト勉強したりしないといけないので」

「大変ね」

「はぁー、わざわざ部活を中止にしてまで勉強会の時間を設けたのに、結局帰る時間はいつもと一緒ですし」

「フフッ、仕方ないわよ」

 

唐之杜とそんなやりとりをしていると待合室の扉が開いた。

 

「取り調べ終わりましたー」

 

そう言って入ってきたのは縢 秀星である。その後ろを狡噛 慎也、宜野座 伸元が続いて入ってくる。突っ込まんぞー突っ込まんぞー。

 

「で、犯人の目的はなんだったんだ?」

「人質にして身代金を要求しようとしたんだと」

「全く、バカバカしい」

 

征陸の質問にそう答える狡噛と宜野座。

 

「それで、その子の親とは連絡は付いたのか?」

「今お兄さんが迎えに来てます」

「そうか」

 

ん?この世界では常守は狡噛に対して何もないのか?

常守と狡噛のやり取りを見ていた俺の元に縢が歩み寄る。

 

「にしてもすごいねー!笹原ちゃんだっけ?犯人とバトって勝ったんでしょ!犯人の顔を見て笑い堪えんのマジ大変だったわ!」

「えぇ、まぁ」

 

原作の方もそうだったが、コイツはちょっと苦手だ。

 

「おい縢、そのくらいにしろ」

 

宜野座に注意され縢は不貞腐れる。

 

「すまない、ウチの部下が失礼なことをした」

「い、いえ、気にしないで下さい」

「だが気になるのは確かだ、とても最近まで小学生だった奴が中年のおっさんに勝てるとは思えないんだが」

 

狡噛は煙草に火をつけながらそう言ってくる。いやここ待合室だよね?喫煙所じゃないよね?

 

「まぁ言われてみれば確かにそうだなぁ。嬢ちゃん、何か格闘技をやってんのか?」

 

俺はその質問に対して言葉が詰まる。

 

「あの、言わないとダメですか?」

「いや何、ダメって訳じゃないが、隠す必要のあることか?」

 

いや、別に隠してる訳じゃないがあんま言いたくないなー。

 

「ハイハイ、女の子にそんな質問したらダメでしょ。あと慎也くん、ここは禁煙よ」

「おっと、すまん」

 

ナイス唐之杜!

 

「すいません、先程の質問には武道の心得があるとだけ言わせて頂きます」

「いいわよ、ウチの男達がごめんなさいね」

「いえ」

「武道か、犯人の話と怪我した箇所から考えてもタダの武道じゃないな、プロってわけでもなければ素人ってわけでもない」

「慎也くん!」

「どうだ?」

 

なんでこの人はこんなに勘がいいんだよ。俺は諦めて話すことにした。

 

「アタリです。久しぶりでしたので上手くはいきませんでしたが」

「その口振りだと素人じゃないな」

「はい、色々出来ますが、まぁほとんどかじる程度です」

「かじる程度じゃあんなことは出来ない。今の会話からしてお前は複数の武道、格闘技が出来るな?」

「はい」

 

そう言って小町を除く全員が驚いた。

 

「これはたまげたぜ。まさかトンデモ嬢ちゃんだったとは」

「ちょっと、女の子にそんなこと言ったらダメでしょ」

「だが、驚いたのは事実だ」

 

そんなやりとりをする中1人だけハテナマークを頭に浮かべていた。

まぁ小学生にはわからんよなぁ。

 

「誰から教わったんだ?」

「ちょっと慎也くん!」

「独学です」

「本当か?」

「周り出来る人がいなかったので」

「そうか、色々聞いてすまなかった」

 

そう言って尋問?が終わった。

 

「ごめんね。ウチの慎也くんが」

「いえ、大丈夫です」

「慎也くんはあとで説教ね」

「何?」

「当たり前でしょ、女の子ってのは知られたくないことが10や20はあるものなのよ!」

 

いやそれは多すぎないか?

それから俺と小町、唐之杜は1階のロビーにあるソファで比企谷を待つことにした。しかし比企谷では小町も比企谷だしなぁ、もう面倒だから八幡でいいか。

 

「さっきはウチの慎也くんがごめんね。慎也くん、あーいうところがある子だから」

「大丈夫です。あの人、大抵なんでも1人で抱え込むタイプでしょ。あと、あの体格だと何か格闘技をしていますね。それも手練れ」

「よくわかったわね」

「他人に優しく、自分に厳しくって人でしょ」

「あら、その通りよなんでわかったの?」

「なんとなく親近感が」

「あら、笹原ちゃんもそうなの?」

「私はちょっと違いますが」

「あっ、お兄ちゃんだ!」

 

俺はそれを聞いて入り口の方に視線を向ける。そこには辺りをキョロキョロ見渡す八幡がいた。

 

「八幡!こっち!」

 

八幡はこっちに気づいた。

 

「あら、さっきは苗字じゃなかったっけ?」

「比企谷じゃ小町ちゃんも比企谷ですし、比企谷って呼びづらいです」

「フフッ、確かに」

 

そして八幡は俺達のところまでやってきた。

 

「小町、なんでここに」

「誘拐されそうだったところを私が助けたのよ」

「そ、そうなのか!?」

「ホントだよお兄ちゃん」

「すまない、本当にありがとう」

「・・・色々言いたいことはあるけど、私から一言だけ言わせて。なに小学生を1人で登下校させてんのよ。アンタちゃんと妹のこと考えてんの?」

「す、すまん」

「すまんじゃないでしょ。「はい」か「いいえ」で聞いてんのよこっちは。まぁ考えてんならこんな事にはなってないはずよ」

「・・・・・」

「これに懲りたら明日からでいいから、一緒に登下校してやんなさい。私からはもう何もいわないから。・・・・・次やったら拳だから」

「ほ、ほんとうにすまん」

 

そう言って八幡は首を縦に振る。

 

「それでは、私達はこれで失礼します」

「フフッ、確かに慎也くんとは違った優しさだわ。あと私の名前は唐之杜よ、よろしくね」

「はい。では唐之杜さん、失礼します」

 

そう言って、俺と八幡、小町は警察署を出た。警察署を出る前に、視界の端にさっきの5人がいたが気にしないでおこう。

 

「さーってと、今から晩御飯作んなきゃ。アンタ達はどうすんの?」

 

俺は振り返りながら八幡に訪ねる。

 

「俺はコンビニにしようかと」

「・・・・・まさか小町ちゃんも?」

「あ、あぁそうだ」

「はぁ〜、それじゃ栄養が偏るでしょ。アンタはともかく、小学生の小町ちゃんにはそんなのダメでしょ」

 

今のうちにちゃんとしたものを与えんと小町はいつまで経っても原作通りに小さいままだぞ!どうすればいい、あっそうだ。

 

「アンタ達、今日はウチでご飯食べなさい」

 

多少問題はあるがコイツは今両親が出張でいない、なら別に不自然ではないだろう。

 

「い、いや、流石に女の子にお世話になるわけには」

「何言ってんのよ両親は出張なんでしょ。それともアンタ料理出来るの?」

「いや、だからコンビニにしようかと」

「ダメに決まってるでしょ、小町ちゃんのためにも」

「お前は料理出来んのかよ?」

「当たり前でしょ、1人暮らししてるんだから。それにコンビニにしようにも私入りづらいしゃない、制服に血付いてるし」

「なんでお前も付いて来る前提なんだ」

「そんなの小町ちゃんを愛でる為よ」

「小町が狙いかよ」

 

当たり前だろ!他に何がある!

 

「小町ちゃんはどうしたい?」

 

俺は小町に聞いてみる。おい、なんだそのニコニコ笑顔。何企んでる。

 

「私は()()()()()と一緒に食べたい!」

 

・・・・・・・・・・今なんと?

 

「ごめん、もう一回言って」

「?()()()()()と一緒に食べたい」

 

・・・・・・・・・・な。

なんて破壊力だ!!お、お姉ちゃんだと!!

 

「ありがとう!!お姉ちゃんって呼んでくれて!!」

 

俺は小町の頬をスリスリする。

マジでこんな妹欲しい!!

 

「これからはお姉ちゃんって呼んで」

 

ヤバい、お持ち帰りしたい!テイクアウトしたい!

 

「ほら、小町ちゃんもこう言ってるんだしアンタもウチに来なさい」

「お前は俺が家に来ることに関しては何も思わないのかよ」

「別に何も」

「いや、流石にマズイだろ。男が女の家行くのは」

「いいから来なさい」

「あーもう、わかった。行きます、行けばいいんだろ」

「最初からそう言えばいいのに」

 

さて、そうと決まれば小町の為に頑張るぞ!

 

 

 

 

 

〜〜〜〜マンションの入り口前〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「ほら、そんなとこ突っ立ってないで早く来なさい」

「お前、こんな高そうなところに住んでんのか?」

「何言ってんの?いいから早く来なさい」

 

俺達は中に入ってエレベーターに向かう。ちょうどエレベーターの前には袋を片手に持ったエリカがいた。

 

「あら、エリカじゃない」

「あらじゃない、ってアンタどうしたのよ!?血だらけじゃない!」

 

振り返りながら何かを言いかけたエリカは、俺の姿を見るなり慌てて近く。

 

「一体どうしたのよ!?まさか、そっちの男!」

 

エリカは八幡を睨む。

 

「違うわよエリカ。とりあえず私の話を聞きなさい」

 

俺は小町が誘拐されそうになったこと、取っ組み合いで怪我をしたこと、そして警察署に行ったことを話した。

そこまで話したところで、エリカは呆れた顔をした。

 

「なんて言うか、アンタらしいと言えばアンタらしいわね。でも、アンタならすぐにやっつけられたんじゃないの?」

「何言ってるの、正当防衛を成立させるためにワザと負傷したのよ」

 

俺は包帯の巻かれた左手をヒラヒラさせながらそう言った。

 

「アンタったら、それよりなんで比企谷がここにいんのよ?」

「八幡達は今日は晩御飯がないから私が作るのよ」

 

そう言うとエリカは目を見開いて、そのあとニヤニヤしてきた。

 

「へぇ〜、アンタそういうのが好みなんだ」

「勘違いしないで、私は小町ちゃんのために晩御飯を作るのよ。八幡はおまけよ」

「またまた〜、ちゃっかり下の名前まで呼んでるくせに」

「この場合は仕方ないでしょ。八幡も小町ちゃんも同じ比企谷なんだし、それに比企谷って呼びづらいじゃない」

「本当かしら」

「・・・・・あまりしつこいと今後エリカだけハードな練習メニュー組むわよ」

「ごめんなさい私が悪かったわ」

 

そう言ったところでエレベーターが降りてきて扉が開く。

俺達は中に入って6階を押す。エレベーターの扉が閉まったところでエリカは何かを思い出したかのように口を開いた。

 

「あっ、でもアンタ左手怪我してるじゃない。そんなんで料理出来るの?」

「そこなのよね〜。簡単にドリアでも作ろうかしら」

「アンタ、ホントになんでも作れるのね。というか作る気なの」

「大丈夫でしょ」

「危ないから私達が作ってあげるわよ。私達もまだご飯を食べてないし」

「いいの?それならお言葉に甘え・・・ん?私達?」

 

俺はハテナマークを頭に浮かべてエリカを見るが、エリカは不思議そうに俺を見てくる。

 

「何言ってるの?もうアンタ抜きで勉強会しているんだからそのメンバーでご飯を作ってあげるって言ってんのよ」

「あ〜そういうことね。なら料理はエリカと吹雪にお願いしていいかしら?その間、弥生達の勉強は私が見るから」

「お願いするわ。場所はどうする?今、雪宮さんの部屋で勉強会してるんだけど」

「なら吹雪の部屋にしましょ」

「わかったわ」

「それより、エリカはなんで下にいたの?」

「私はシャー芯が切れたから、すぐそこのコンビニに買いに行っていたのよ。ついでに飲み物も」

 

そんな会話をしている間に6階に着き、俺は吹雪の部屋に向かう。

 

「雪宮さんの部屋に向かう前にアンタ着替えてきたら?流石にその格好はマズいでしょ」

「そうね。悪いけど先に吹雪の部屋に行っててもらえる?あっ、八幡達は外で待ってて」

「お、おう」

「小町ちゃんもちょっと待ってて」

「はーい」

 

そう言って俺とエリカは一旦別れ、俺は自分の部屋に戻った。適当に半袖、七部丈の白がベースで灰色のラインが入ったジャージに着替え再び外に出る。

 

「お待たせ」

「いや、そんなに待ってない」

「なら、吹雪の部屋に行きましょ。と言っても隣だけど」

 

そして俺はインターホンを押す。

・・・・・・・あれ?

おかしいな。エリカはさっき入っていったからいるはずなんだが。

俺は玄関の扉を開けた。

 

「おじゃまするわよ〜」

「お、おい、いいのかよ」

「いいわよ。アンタ達もあがんなさい」

 

俺は外履きのスリッパを脱いでリビングに向かう。

 

「エリカー。何かあった、ってアンタ達何してんのよ?」

 

そこには仁王立ちして腕を組んでいるエリカと、正座する吹雪達の姿があった。

 

「アンタからも何か言ってあげて」

「それ以前に、何があったのかわからないんだけど」

「私がいない間にゲームで遊んでたのよ」

 

俺はため息を吐き吹雪を見る。

 

「遅れた私が言うのもアレだけど、この場合はアンタがしっかりしないとダメしょ?せっかく全国行けるようになったのに、補習で出場出来ませんじゃ話にならないわ」

 

吹雪達は下を向いて黙り込むんでしまった。

 

「とりあえず吹雪、今から晩御飯作るからキッチン借りていいかしら?」

「あっ、冷蔵庫空っぽだからご飯ないよ」

「・・・・・仕方ないわ。皆んな、今から私の部屋に移動しましょ。吹雪とエリカは晩御飯の準備、その間の弥生達の勉強は私が見るわ」

「それはいいけど、1つ聞いていい?」

「晩御飯の準備はいいけど、なんで比企谷君と小町ちゃんがここにいるの?」

 

まぁ当然の疑問だよな。

 

「まさか紅音ちゃん、私の知らないところで・・・」

 

あの弥生さん、そんな怖い目で俺を見るのやめてもらえますか?

あと吹雪と漣は目をキラキラ輝かせながらこっちを見るな。

 

「もしかして・・・彼氏?」

 

おい吹雪、誤解を招くようなことを口走るな。

 

「彼氏キタコレ!」

 

やめろ漣、彼氏違うから。

あーー、弥生がどんどん不機嫌になっていく。

 

「とりあえず落ち着いて、きちんと説明するから」

 

俺はエリカに説明したように、学校が終わってから今に至るまでの説明をした。

 

「なるほど、だから2人がここにいるんだね」

「アンタ、取っ組み合いのことは何も言わないのね」

「今更だからね。紅音ちゃんは昔からそうだったし。まぁ正当防衛の為にわざと怪我したのはアレだったけど、縫合する程の怪我じゃなかったから私は何も言わない。小町ちゃんもこうして無事なわけだし」

「でもよかった、紅音ちゃんの彼氏じゃなくて」

「それはどういうことよ弥生」

「な、なんでもないよ!」

「まぁいいわ。それより皆んな、私の部屋に移動しましょ」

 

そして吹雪の部屋を出て、俺の部屋に移動する。

 

「それじゃエリカと吹雪はお願いね」

「メニューはどうするの紅音ちゃん?」

「なんでもいいけど、冷蔵庫の中のことも考えると・・・・そうね、オムライスドリアとかどうかしら?」

「オッケー」

「それじゃ吹雪達が晩御飯を作るまで私が見るわ」

「「「「はーい」」」」「ぽい」

「アンタ達も一緒に勉強する?」

 

俺は八幡と小町に訪ねた。

 

「いや、俺教科書とか持ってきてないし」

「私の貸してあげるわ」

「それじゃお前が勉強出来ないだろ」

「私の心配はしなくていいわ、必要ないから。小町ちゃんは宿題とかあった?」

「算数と国語と音読の宿題が出たよ()()()()()

 

そう言った瞬間、時が止まった。

 

「え?お姉ちゃん?え?」

「どういうことっぽい?」

「やっぱり紅音ちゃん、比企谷君と」

「修羅場キタコレ!」

「あらあら〜〜」

 

勉強組の奴等が俺を見てくる。だからやめろ弥生、目が怖い。

 

「何よ?」

「ねぇ紅音ちゃん。お姉ちゃんってどういうこと?」

 

怖い怖い怖い、怖いからその目やめて弥生。

 

「言っておくけど、小町ちゃんがそう言ってるだけで深い意味はないから」

 

そう言って勉強会を始めようとしたとき後ろから服を引っ張られ、振り返るとそこには小町が上目遣いで俺を見ていた。

 

「お姉ちゃんはお姉ちゃんって呼ばれるの嫌だった?」

「嫌じゃないよ!むしろお姉ちゃんって呼んで!これからずっとお姉ちゃんって呼んで!」

 

俺はそう即答して小町に抱き付く。小町はというとキャーキャー言いながらジタバタしている。可愛い。

そしては俺は気付いた。自分が何をしているか。

俺は恐る恐る弥生達を見るが、目をパチクリさせていたり唖然としていたり反応は様々だった。

 

「なんか、笹原ちゃんの意外な一面を見たっぽい」

「な、何よ。いいからさっさと勉強始めるわよ。小町ちゃんは私の隣ね」

 

そう言って勉強会を再開した。俺の向かいの席に白露、夕立、漣、荒潮が座り、俺の左隣に弥生、右隣に小町、八幡が座った。

 

「あっ、八幡は苦手教科は何?」

「いや、誰も勉強するとか言ってないし。そもそもこの前の中間テストはそんなに悪くなかったし」

「小町ちゃん、八幡の苦手教科って分かる?」

「ちょっと待て、小町がそんなこと「お兄ちゃん、この前数学の点数が悪くてお母さんに怒られてた」なんでそのこと言っちゃうの小町ちゃん」

「あら、なら丁度いいじゃない。私数学は得意よ」

「俺の意見は無視かよ。そもそもするとは言ってない」

「いいからやんなさいよ。もしかしてアンタ知らないの?」

「何が?」

「今度の期末テスト、中間のと合わせて60点未満の生徒は夏休み補習よ」

「えっ?マジで?」

「だから私達は必死になって勉強してるのよ」

「いや、必死になってってお前勉強してないじゃん」

「私は学年主席だから必要ないのよ。今回のテストで全教科0点でも補習ないし」

「何点取ったんだよ」

「全部100点よ。まぁ成績を維持するために勉強はしてるけど、正直授業だけで間に合ってるし」

「マ、マジか」

「言っておくけど、私も学年主席だからね〜比企谷君」

 

キッチンの方から吹雪がそう言ってきた。

 

「えっ?てことは、えーと・・・」

「吹雪、雪宮吹雪だよ」

「その、雪宮さんも全教科満点なんすか?」

「そうだよー。それと吹雪でいいからね。あと敬語じゃなくていいよ」

「アンタはいいから、料理に集中しなさい」

「は〜い」

「そんな言い方しなくてもいいと思うっぽい」

「お姉ちゃんと雪宮さんって仲が悪いの?」

 

まぁ、側から見たら仲の悪い者どうしのやり取りに見えるのだろう。

 

「そんなことはないわ。これが私達の普通よ」

「そうだね〜。最初の頃はそんなに不機嫌にならなくてもいいじゃんって思ってたけど、これが紅音ちゃんの普通なんだなってわかってからは自然とこれが当たり前になったね」

「アンタは私をなんだと思っているのよ」

「最初の頃は、能力はないけど色々と飛び抜けた某第1位様かな。紅音ちゃんは?」

「趣味と仕事、どっちが優先かと問われたら迷いなく趣味を優先する某2等陸尉」

「酷いよ紅音ちゃん。私は両立させるよ」

「アンタがそれ言う?私はあんな性格してないわよ」

「最初の頃だよ最初の頃」

「それじゃ今はどう思っているのよ」

「私を1番の理解してくれる人かな」

「あら奇遇ね。私もだわ」

 

ま、そうなるわな。前世からの付き合いだし。

 

「まぁこんな感じだけど、これが私達の普段のやり取りだからあまり気にしなくても大丈夫だよ」

「付き合いが長いと自然とこうなるものよ。さっ、私達のことはいいから勉強するわよ」

 

そんなこともあり勉強して、晩御飯を食べて、気づけば丁度いい時間になっていた。

 

「それじゃ、そろそろお開きにしましょ」

 

そう言って各々が勉強道具を片付けはじめた。

 

「お姉ちゃん!今日は勉強見てくれてありがとう!」

「いいわよ。またいつでも勉強見てあげるわ」

「うん!それとお姉ちゃんにお願いがあるんだけど」

「何?」

「実はお母さん達日曜日の夜まで帰って来なくて」

「えっ?」

 

俺は八幡の方を見る。

 

「本当なの?」

「あ、あぁ」

「はぁ〜、仕方ないから明日も来なさい。明後日と明々後日は朝から来なさい」

「いや、そこまでお世話になるわけにはいかないだろう」

「来なさい。そして小町ちゃんを愛でさせなさい」

「お前どんだけウチの小町気に入ってんだよ」

「この世の至宝。特にこの頭のアンテナは気に入ったわ」

「アンテナじゃねー。あと小町はやらんぞ」

「・・・・・シスコン」

「バッカ、違う、小町に変な輩が手を出さねぇ様にしてるだけだ」

「それを世間一般ではシスコンって言うのよ」

「ならお前はロリコンだ」

「ロリコンってのは、大人が少女に異性として惹かれること、またはその傾向のある大人のことよ」

「そんなの知ってる」

「アンタ、ここまで言ってもわからないの?私は大人じゃない上に私と小町ちゃんは同性よ、だからロリコンじゃないわ。この場合は百合って言うのよ。付け加えるなら私にその傾向はないわ。まぁ、小町ちゃんが私の妹だったらシスコンって言われてもいいわ」

「いいのかよ」

「そうだ小町ちゃん、いっそのこと今日から日曜日までここに泊まる?」

「おいバカやめろ、小町になに勧めてんだよ」

「泊まりたい!」

「ほら」

「いや、流石に小町1人残して帰るのもな」

「えっ、何、アンタも泊まりたいの?」

 

 

 

バンッ!!

 

 

 

俺達は音がした方に顔を向ける。そこにはニコニコした笑顔、だがものすごい殺気を放つ弥生がいた。

ヤバ、軽率な発言だった。

 

「泊まるのはいいけど、その場合アンタは殺される覚悟をしないとダメよ。言っておくけど、弥生は丁度この上の部屋だから」

「誰か泊まりたいって言った。そんな死ぬ覚悟をしないと泊まれないなんて俺だってヤダよ。いやそうじゃなくて、着替えとかどうすんだよって話だよ」

「あーそのことね。なら今から取りに行来ましょ」

「小町の勉強道具とか泊まり道具とかどうすんだよ。お前左手怪我してんだろ」

「吹雪〜。悪いけど一緒に来てくんない?」

「いいよ〜」

「はぁ〜、どうしてこうなった」

 

このあと八幡の家に行き、小町のお泊まり道具を持って行った。

 

 

 

 

 




いかがでしたか?
私事ですが、実はこの前、また静岡に出張で行きました。
そこで休日に観光で「若獅子神社」という場所に行きました。ここは昔、元陸軍少年戦車兵学校があった場所で、慰霊碑や実際に戦争時代に使われた九七式中戦車があります。
そして慰霊碑には偶然にも笹原という苗字の方が1人おられました。
いやー、偶然ってすごいですね。
皆さんも是非、静岡に行く機会があれば足を運んでみて下さい。
自分はとても感動しました。
写真も撮りましたので、次回載せたいと思います。
ではまた!


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いつか大きな花を咲かせると信じて




紅音「アンタ大丈夫?」

UP主「何が?」

紅音「今にも死にそうな顔してるわよ」

UP主「毎朝4時起きからの仕事、終わりは早くて17時、遅くて20時」

紅音「お疲れ様です」


 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜AM6時30分〜〜〜〜

 

 

 

 

 

さて、どうしたものか。

俺は1人、パソコンの画面と手元にある資料を交互に見て考えていた。

次は黒森峰だ。半端な作戦や戦力では太刀打ち出来ない。が、こっちは全国優勝とその後を見越して見積もりを立てている。故に予算の都合上、修理費、弾薬代、燃料代やその他もろもろを抑えなければならない。結果、今回の試合では出場する戦車の数を減らさないといけない。

えっ?なんでそんなに予算がないかって?簡単な話だ。万年県予選敗退している部活に予算が降りると思うか?無論降りるわけがない。かと言って全くないわけではない。さっきも話したが、俺は全国優勝とその後、つまり次の部活の予算会議までの見積もりを立てている。

この学校はどうやら年に一度、各部活の長と生徒会そして顧問の先生達と話し合って、その年でいくら使ったかを報告し、そこから次の年にいくら使うかを見積もり立て、それを学校側に報告する。そこからは学校側が職員会議で決定するらしい。今まで作業服にかかった代金やら弾薬代、その他戦車道でかかったお金は全ては領収書を取っている。もちろん昼飯代も。

いくら使ったかの報告は3月、予算会議は4月とのこと。

つまり4月までの見積もりを立てているのだ。

話が脱線してしまった。一応予算は次の予算会議まで持つぐらいはある。だが新しい戦車を買う余裕はない。なにせ全国大会となると色々とお金が掛かる。特に貨物列車に戦車乗せる時とか。

俺は作戦の最終チェックをして別のファイルを開く。

 

「う〜〜ん。なんとか全員分は用意できるかな〜」

 

俺は予算の残るであろう金額と睨めっこしながら考えた。

パンツァージャケットだ。今まで作業服やら学校の制服やらで戦車に乗っていたが、せっかく全国大会に出場できるんだ、記念として何かを作りたい。

それにしても、万年県予選敗退している部活によくこれだけの予算が降りたな。まぁ、戦車道は普通の部活と違ってお金が掛かるからな。

 

「あ、もうこんな時間か。そろそろ朝御飯の準備をしようかしら」

 

俺はキッチンに向かい、トースターに食パンを突っ込む。

 

「ふぁ〜〜。おはようお姉ちゃん」

「おはよう小町ちゃん。もう少しで朝御飯出来るから今のうちに顔洗っておいで」

 

そう言って、小町は洗面所へ行った。

 

「よし、こんなところかしら」

 

朝御飯の準備が出来たところで小町が洗面所から戻ってきた。

 

「小町ちゃん、用意出来たから食べましょ」

「うん」

 

俺達は合掌した。

 

「「いただきます」」

「小町ちゃん、今日も吹雪達が部屋に来るからその時一緒に宿題して、今日中に終わらせるわよ」

「は〜い」

「私は時間になるまで隣の部屋にいるけど、小町ちゃんはどうする?」

「そういえばもう一個の部屋に入ったことないけど、何があるの?」

「説明するより見た方が早いわね。あとでいらっしゃい」

「うん!」

 

そんな会話をしている時。

 

ピンポーン

 

「あっ、お兄ちゃんかな?」

「私が出るわ」

 

俺は玄関に向かい、鍵を開けてドアを開ける。

そこにはげんなりとした八幡がいた。

 

「いらっしゃい」

「お、おう」

「もう朝御飯出来てるから早く食べてね」

 

そう言って俺はリビングに戻った。

 

「あっ、お兄ちゃんおはよう」

「おう小町、おはよう」

 

そして俺達は朝食を終え、食器を洗い終わったところで八幡が切り出した。

 

「これからどうするんだ?まだ雪宮さん達来てないんだが」

「私は今から隣の部屋で色々するけど、アンタは?」

「俺はもう勉強を始めようかと、てか色々ってなんだよ」

「部活の部長とかやってるとやらないといけないがあるのよ。作戦立案とか予算の見積もりとか報告書の作成とか」

「ちょっと待て、本来顧問がする仕事も含まれていたぞ」

「うちの学校の戦車道は校長が顧問なのよ」

「マジか、つか校長って暇なんじゃないの?」

「違う違う、校長が信用出来ないから私がやってるの」

「いいのかそれで?」

「出来ないなら出来る人がやる、世の中ってそんなものよ。それじゃ小町ちゃん、いらっしゃい」

「はーい」

「ちょっと待て、小町を何処に連れて行くつもりだ」

「アンタってホント心配性ね。安心しなさい、小町ちゃんが隣の部屋を見たいって言うから見させるだけよ」

 

俺は小町を部屋に招く。

 

「失礼しま、ってなんですかこの部屋!?」

 

そんなに驚くことか?

俺が小町を招いた部屋を説明すると先ずL字机があって、その上にノートパソコンが1台とモニターが3台とプリンターが1台、ちょっと離してモニターが1台、机の下はモニター3台の下にデスクトップの本体とモニター1台の下にP○4がある。机の後ろには本棚があり、各部員の個人資料、今まで報告書等の副書、各校の資料、今までの試合の戦績、全て戦車道関係の物である。

あれ?これどう考えても中学生の部屋じゃなくね?

 

「まぁ、仕事部屋?ってヤツよ」

「なんで疑問形なんですか」

「どうした小ま、ってなんだこの部屋」

「何よ、アンタまでそう言うの」

「いや、モニター4台にノートパソコン1台、デスクトップ1台、P○4があるんだからもはやこれオタクの部屋だろ」

「アンタ、今ハッキリと失礼な言ったわね。まぁいいわ、小町ちゃんどうする?」

「小町はお姉ちゃんと一緒いる!」

「一緒にいても楽しくないわよ?」

 

俺は部屋を見渡し、何か暇を潰せる物を探した。

 

「お姉ちゃんこれ何?」

 

小町は本棚からファイルを1つ取り出した。

 

「それは県予選1回戦の時の資料よ」

「へぇ〜〜、見てもいい?」

「いいけど、いいの?」

「うん!」

 

小町は椅子に腰をかけ、楽しそうにファイルを見る。

俺も書類の整理をするためパソコンの前に座り仕事を始め、八幡もリビングで勉強を始めた。

しばらくしてようやく書類の整理が終わり時間を見るとまだ午前9時、少し伸びをして椅子から立ち上がって小町を見る。小町は2つ目のファイルを開いていた。俺は静かに部屋を出てリビングに向かう。

 

「八幡、何か飲む?」

「いや、大丈夫だ」

 

そう言って八幡はバックからマッ缶を取り出した。そういえばこの身体になってからまだ1回もマッ缶を飲んだことないな、今度飲んでみるか。

俺は冷蔵庫から麦茶出してコップ2つに注ぎ部屋に戻った。

 

「小町ちゃん、そろそろ休憩にしましょ」

「あっ、お姉ちゃんありがとう!」

 

俺は小町に麦茶を渡し、小町の向かいに椅子を持ってきて腰をかけた。

 

「ねぇお姉ちゃん、お願いがあるんだけど」

「何?」

「小町に戦車道教えて!」

 

ファッ!?

えっ、いきなりどした?どうしてそうなった?いきなりそんなこと言われてもお兄さん困るんですけど。あっ、今はお姉さんか。

 

「突然どうしたの?」

「?小町も戦車道やってみたいなって思ったから教えてって言っただけだけど?」

 

そう言われてもなぁ〜。

 

「そしてお姉ちゃんと一緒に戦車道やりたい!」

「それって2年後、私と同じ中学で戦車道をやるってこと?」

「うん!」

「私としては嬉しいけど、一度ご両親と話し合って、それでよかったら教えてあげる」

「ホントに!?」

「ええ、ただし教えるのは2学期からよ。今は大会中だからちょっと時間がないから」

「わかった!明日お父さんとお母さんに話してみる!」

 

ピンポーン

 

「あっ、雪宮さん達かな?」

「ちょっと出てくるわ」

 

それからは勉強会をして、その日は終わった。

翌日、学校の宿題を終わらせた小町は俺の隣で、俺の部屋から持ってきた資料を読んでいた。

俺はというと、もちろん朝から勉強会である。

 

「ここの問題はこうなるから、こうすると簡単に解けるわよ」

「あらあら、ホントだわ〜」

「・・・・・・・・」

 

こんな感じで小町は黙々と資料を読んでいる。

 

「アンタ、いいの?」

「何が?」

 

小町のことが気になったエリカが俺に訪ねてきた。

 

「小町ちゃんのことよ。さっきからずっと放ったらかしじゃない」

「あぁ、大丈夫よ。今日小町ちゃんがご両親と話し合って、それで戦車道やっていいってことになったら教えるから」

「あれ?俺そんなこと聞いてないんだけど」

「いいじゃないこのくらい、アンタはもうちょっと小町ちゃんを自由にやらせなさいよ」

「でもホントにいいの?」

「エリカも心配性ね、大丈夫よ」

「ならいいけど」

 

そんなことをやっているうちに時間は20時になり、午前中に帰り支度を済ませていたため俺と吹雪と八幡は小町の荷物を持って比企谷に向かった。

比企谷家は案外近く、徒歩で移動してもそんなに時間はかからない距離であった。

 

「あっ、お母さん達帰ってきてるみたい!」

 

比企谷家には明かりがついていることから、家に誰かいることはすぐにわかった。

 

「お母さん、お父さん、ただいまー!」

 

玄関に入ると小町は元気よく言った。

リビングの方からは小町達の母、智恵さんが出てきた。

 

「小町!」

「お母さん!」

 

智恵さんは小町に抱きついた。二度と離さない、そんな感じのものが伝わってきた。

 

「よかった、本当に良かった」

 

智恵さんは泣きながらそう言った。

 

「小町が帰ってきたのか!?」

 

今度は小町達の父と思われる男の人がリビングとはリビングとは別の扉から出てきた。手が濡れているとこからして多分あれトイレだな。

 

「よかった、無事でよかった!」

 

そう言って男の人は必死に涙を堪えながらそう言った。

あのー、俺達完全に空気になってるんですけど。

 

「笹原さん、この度は本当にありがとう」

 

俺達の存在にに気づいた智恵さんは俺にお礼を言う。あれ?吹雪何処行った?

 

「警察の人からも連絡は受けています」

「いえ、気にしないで下さい」

「そういうわけにはいかないわ。左手を怪我してまで小町を守ってくれたもの、何かお礼をさせてーーーー」

「いえ、こちらが勝手にやっただけですから」

 

このままじゃきりがない、そう思った時だった。

 

「お母さん、お父さん、ちょっと話があるんだけど」

「何小町?」

「私、戦車道がやりたい」

 

ちょっと待て、今それ言う?タイミングってものがあるだろ。

ほら、ご両親が困ってるじゃないか。

八幡?知らんな!

 

「お父さんは反対だ」

「俺も反対だ」

 

うん、予想していたが案の定男組は反対だった。

残るは智恵さんのみ。

 

「私は賛成です」

 

へぇ〜〜、なんか以外。てっきり反対するかと思った。

 

「智恵、もし小町が怪我したらどうするんだ」

「いいじゃない、小町のやりたいようにさせれば」

「しかしだな」

「アナタは過保護過ぎるのよ、小町の自由にさせなさいよ」

 

あっ、俺と同じこと言ってる。

 

「それに、いつかこうなることはわかっていたし」

「どういうこと?」

「私も学生の頃、戦車道やってたのよ」

「そうなの!?」

 

これには小町もびっくり、隣の八幡も驚いている様子。

 

「だから小町、やるからにはこれだけは守って」

「何?」

「諦めないこと、そして全力を尽くすこと。この2つよ」

「わかった!」

「おい智恵」

「笹原さん」

「はい」

「小町のことお願いします」

「わかりました」

 

そう言って俺は玄関を出る。

 

「あっ、まだお礼を」

「いえいいです。友達を家で待たせていますので」

「そう、何も出来ないでごめんなさい」

「いえ大丈夫です。では」

 

そう言って俺家を出た。そういえば吹雪のヤツ何処行ったんだ?

 

「早かったね」

 

家を出てすぐのところに吹雪は立っていた、丁度玄関から見えないところに。

 

「なんで急にいなくなったのよ」

「長くなりそうだったから、あと面白そうだったから」

「はぁ、もういい行くわよ」

 

俺はゆっくりと歩き始め、その隣を吹雪が歩く。

 

「2年後が楽しみだね」

「そうね。今はまだなんとも言えないけど、あの子にはちょっと期待してる」

 

今はまだ小さな蕾だが、そこから2年後どこまで成長するのか楽しみである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜おまけ、笹原 紅音サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

さてどうしたものか。左手は怪我しているから濡らすわけにはいかん。しかし、このままでいるわけにもいかん。

 

「お風呂どうしよう」

 

いや、濡らさないようにビニールすればいいとかそういう問題じゃなく、右手しか使えないから右腕洗えないし。

 

「お姉ちゃんどうしたの?」

「あっ、小町ちゃん」

「さっきからずっと考え事してるみたいだけど、何かあったの?」

「いや、今日左手怪我したじゃない、だからお風呂どうしようかなって」

「じゃ小町が洗ってあげる!」

 

その手があったか!

 

「じゃお願いね」

「うん!」

 

 

 

 







UP主「あっ、次回は黒森峰戦じゃないから」

紅・吹「はっ!?」

UP主「ではまた次回!サラダバー!あっ、画像載せました。「作:眼鏡とタバコ」→「その他」→「画像一覧」で見れます」


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明日から本気出す by UP主




投稿が遅くなり大変申し訳ございません。
理由については後に説明します。



 

 

 

 

 

UP主「第1回!おさらいコーナー!このコーナーは今まで読者の方々が気になっていることを説明、解説したり愚痴を言ったり、本音を暴露したり色々とぶっちゃけるコーナーです。本日のゲストは比企谷 小町さんです」

 

小町「よろしくお願いしまーす!ところでUP主さん」

 

UP主「何かな?」

 

小町「流石に24話まで来てまだ中1の夏休み前って、ちゃんと完結できるんですか?」

 

UP主「そこは心配いらない。この物語はきちんと完結させるよ」

 

小町「大丈夫かな?」

 

UP主「では早速読者の方々からの質問コーナーです!」

 

小町「いつそんなのとったんですか?」

 

UP主「尚、この質問はとある小説を書いて結構読者数を稼いでる人やミリオタ、その他の方から頂いた質問です」

 

小町「駄目じゃんこれ」

 

UP主「先ずはこれ」

 

 

 

『常幻東って「じょうげんひがし」って読みで合ってるの?』

 

 

 

UP主「はい、読み方は「じょうげんひがし」で合ってます」

 

小町「最初「じょうげんとう」って思ってた」

 

UP主「最初はなんて名前の学校にするか結構考えました。紫さんを校長にするのは決めていたからどうしても『幻』って漢字を入れたかったからね」

 

小町「変なところに力を入れていることがよくわかりました」

 

UP主「小町ちゃん、ちょっとそれひどくない?」

 

小町「それじゃ次の質問です」

 

UP主「あれ!?なんか主導権奪われた!?」

 

 

 

『原作では「学校で行われる戦車道は部活ではなく授業での履修という形をとっている」という設定になっているけど』

 

 

 

UP主「この質問を頂いた方は僕の親友からの質問ですね。はっきり言います。そんなの知っとるわい!!」

 

小町「確かに原作ではそういう設定になっていましたね。でもなんで部活って設定にしたんですか?」

 

UP主「君は履修って言葉は知ってるかい?」

 

小町「学校(大学などを含む)などにおいて、単位を修得するために特定の科目を学ぶこと、ですよね」

 

UP主「中学校で履修とかってあるのかな?少なくとも僕の学校にはなかったね」

 

小町「変なところでリアルな話持ってきますね」

 

UP主「それに部活って設定にして書きたい話があったから」

 

小町「多分こっちが本音だ〜」

 

UP主「まぁ、高校に入ったら履修って設定にするから」

 

小町「それバラしていいんですか?」

 

UP主「大丈夫、原作の設定に戻すってだけだから。続いてはこの質問です」

 

 

 

『冴塚先輩は行進間射撃の最高成績は93%、弥生は88%ってあったけど、もしかして他の部員もそのくらいなの?』

 

 

 

UP主「この質問の回答だけどあの2人が異常なだけで、他の部員は50%、よくて55%です」

 

小町「随分と低いですね」

 

UP主「この物語できちんと説明していなかったから今から説明するね。先ず、目標的は固定した状態で戦車だけ動いての射撃の命中率がそのくらいです。目標的を固定して停車した状態からの射撃はみんな大体70%〜80%くらいです」

 

小町「その中でもさっきの2人はずば抜けていると」

 

UP主「その通り。中でも冴塚先輩はどんな状況でも85%より下に下がったことがないって設定です」

 

小町「ちなみに弥生さんとエリカさんがは?」

 

UP主「弥生は停車状態では90%、行進間は88%。エリカは85%と72%って設定です。これはベスト記録って設定です」

 

小町「エリカさんも結構高いですね。あれ?相澤先輩も砲手でしたよね?」

 

UP主「相澤先輩も結構高いです。それも冴塚先輩以上に、それでも主人公には劣りますが」

 

小町「ならこの大会も優勝出来るんじゃないんですか?」

 

UP主「いや、そんなに甘くない」

 

小町「なんで?」

 

UP主「この記録はあくまで目標的が固定された状態での記録、本番では敵も動いて、尚且つ練習の様にはいかないからもっと命中率はさがる」

 

小町「へぇ〜〜」

 

UP主「ではでは次の質問です」

 

 

 

『4月辺りから投稿ペースが遅くなっているけど、何かあった?』

 

 

 

UP主「・・・・・・・・・・」

 

小町「これわたしも思ってた」

 

UP主「続きまして」

 

小町「いやいや!!」

 

UP主「何?」

 

小町「何じゃないですよ!説明しないと!!」

 

UP主「わかったよ。ぶっちゃけるよ?」

 

小町「何があったの?」

 

UP主「転職しました」

 

小町「・・・・・・・」

 

UP主「なんで黙るのさ」

 

小町「なんかごめんなさい」

 

UP主「謝るくらいなら聞かないで!!」

 

 

 

『コラボ予定は?』

 

 

 

UP主「あるわけねーだろ!!」

 

小町「まぁ、わかってたけどねー」

 

UP主「いや、コラボしたいなーとは思っているんだけ 僕そこまで人気があるわけではないし、多分そんな機会は一生ないと思う」

 

小町「ですよねー!では次の質問です!」

 

 

 

『今回も投稿ペースが遅いけど、何かあった?』

 

 

 

UP主「あー、うん、そのー・・・・あったと言えばあったかな」

 

小町「どうしたんですか急に?」

 

UP主「まぁ、その、なんて言うかね、言っていいのかなぁって」

 

小町「何があったんですか?」

 

UP主「仕事中に熱中症で死にかけた。危うくこの作品を完結させる前に自分の人生が完結するところだった」

 

小町「体には気をつけて下さい。続いてはこの質問です」

 

 

 

『工場の中に戦車があるの?それと別々?』

 

 

 

UP主「これきちんと説明していなかった僕が悪いですね。この作品で出ている工場とは整備工場のことを指していて、戦車を格納している格納庫はまた別にあります。一応「彼女ら(彼ら)はよくトラブルを起こす」では整備する工場って書いてるけどね。」

 

小町「そんなんですね」

 

UP主「ちなみに格納庫の規模は整備工場と同規模の大きさです。続いての質問です」

 

 

 

『比企谷や由比ヶ浜は出ているけど、雪ノ下姉妹や独神先生、その他の俺ガイルのキャラは出ないんですか?」

 

 

 

UP主「この質問ですが、雪ノ下姉妹は近々登場します。その他の方が登場するのはずっと先です」

 

小町「そうなんですか。分かりました。それではそろそろ頃合いですので、このコーナーはここまでにしたいと思います」

 

UP主「またいつかこんなコーナーをやりたいと思っています。読者の皆様は気になったことがあればどんどん質問をください!それではまた!」

 

小町「バイバーイ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吹雪「ていう夢を昨日見た!」

 

紅音「何それ?」

 

 

 

 






次は決勝戦です!
なるべく早く投稿しようと思います!
では!


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県予選決勝戦!! 前編






投稿が遅くなり申し訳ありません!
いよいよ決勝戦です!
どうぞ!


 

 

 

 

 

「その・・・・・すまなかった」

 

まほさんはなんとも言えない表情でそう言った。

 

「同情するくらいならお金をください!」

 

俺の隣にいる吹雪は四つん這いになってそう言う。

いやほんと、どうしてこうなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜時は遡ること2時間前〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いよいよ決勝戦まできた。と言ったも県予選の決勝戦だ、この試合に勝とうが負けようが全国大会に出場出来る。

やっとスタートラインに立てるのだ。

 

「各員はそれぞれ今日使う戦車の点検を再度点検してください!故障箇所があれば速やかに私や整備班に報告を!残燃料も測って、燃料補給が必要な戦車は補給を行なって下さい!あと今日の試合で車長を任されている人は私のところに集まって下さい、作戦の最終確認をします!」

 

俺は今、試合会場の工場にいる。どうやらここは他とは違い、熊本県では一番大きいらしく、設備も充実している。

そして俺はというと、今日使う戦車の最終点検を行なったり、作戦を再確認したりと多忙である。

 

「集まりましたね。それでは作戦の最終確認をーーー」

「申し訳ありません。こちらに笹原 紅音さんはいらっしゃいますか?」

 

声がする方に顔を向けるとそこには、カメラを持った中年の男の人とマイクを持った女の人と若いお兄さんがいた。

 

「はい、私が笹原です」

「お忙しいところ申し訳ありません、テレビ局の者です。今お時間は大丈夫でしょうか?」

 

でたよ、テレビ局。俺インタビューとか新聞とか嫌いなんだっての。

 

「申し訳ありません。今ちょっと手が離せないのでーーー」

「笹原ちゃ〜ん」

 

振り返るとそこには笑顔の冴塚先輩がいた。助かった、これでこの人達から逃げーーー。

 

「こっちは私に任せて行ってきていいよ〜」

 

られなかったーー!!

おい先輩!なんてこというんだ!適当に言い訳して逃げようと思ったのに!少しでも信じた俺が馬鹿だった!

 

「いえ、ですがまだ作戦の最終確認も済ませていませんし、車両の点検もまだです。あと隊長と呼んで下さい」

「大丈夫よ。こっちは私達に任せて行ってらっしゃい」

 

今度は冴塚先輩の後ろから現れた黒川先輩がそう言った。なんか視線を感じるなと思って周りを見渡すと、部員の何人かがこちらを見ていた。

 

「それに試合までまだ時間があるしね」

「はぁ、分かりました。作戦の最終確認は私が戻ってきてからにします。副隊長、少しの間こちらの指揮をお願いします。何かあれば私の携帯に電話をください」

「わかった〜」

 

そう言い残してテレビ局の人達のところへ向かう。

 

「お待たせしました」

「いえ、こちらこそお忙しいところ申し訳ありません」

 

それから少し雑談して場所を変えたらすぐに本番がきた。

てかこれ生だったんだな。

いかん、スマイルスマイル。

 

「はい、今私は試合会場に来ています。ご覧下さい、観客席には沢山の人が来ています」

 

それを聞いて俺も観客席の方を見る。確かに人多いなぁ。つかウチの生徒もいるぞ!?なんで制服!?今日休日だろ!?

 

「そして私は今から今大会注目の方、万年県予選敗退の学校をここまで引っ張ってきた笹原 紅音さんにインタビューをしたいと思います!」

 

おい、そこはもっとオブラートに包めよ。はっきり万年県予選敗退の学校って言うな。

 

「笹原さん、今のお気持ちを教えて下さい」

 

とうとう俺にマイクが向けられた。

 

「そうですね。まさかここまで勝ち進むことができると思っていなかったのですごく緊張しています」

「そうですか。決勝戦では王者、黒森峰女学園の中等部と戦いますが勝率どのくらいでしょうか」

「なんとも言えないですね。何せ黒森峰女学園と戦うのは今回が初めてですので分からないです」

「そうですか」

「ですが」

「?」

「勝率は決して0ではありません。例えどんなに低かろうと私は、私達は決して諦めません」

「・・・・・分かりました。最後に黒森峰女学園中等部隊長の西住 まほさんから笹原さんにメッセージが届いております」

 

えっ?あの人から?

 

「『君の試合はいつも見ていた、今大会ではどんな戦いを見せてくれるのか楽しみだ。期待している』とのことです」

 

なんだか、らしいと言えばらしいな。

しかし期待している、か。そんなこと言われてもなぁ。

 

「では私から、その期待に応えられるよう全力で挑ませていただきます!」

「ありがとうございます。以上、試合会場からでした」

 

どうやら終わったらしい。

はぁ〜終わった終わった。

 

「笹原さん、ありがとうございました」

「いえ、こちらこそ」

「決勝頑張って下さい」

「ありがとうございます」

 

俺はそう言って、工場に戻った。

 

「あっ、笹原ちゃんだ〜。お帰り〜」

 

冴塚先輩はそう言って歩み寄ってくる。ふと周りを見渡すと全員がこちらを見ていた。

 

「あの、どうしたんですか?」

 

俺がそう言うと冴塚先輩はポケットから携帯を取り出して操作し始めた。

 

「笹原ちゃん〜、これな〜んだ」

 

そう言って俺に携帯の画面を見せてきた。

 

『はい、今私は試合会場に来ています。ご覧下さい、観客席には沢山の人来ています。そして私は今から今大会注目の方、万年県予選敗退の学校をここまで引っ張ってきた笹原 紅音さんにインタビューをしたいと思います!』

 

ちょっと待てぇぇぇーーーー!!!

えっ!?なんで!?なんでさっきのインタビューが!?

 

「冴塚先輩、それは一体なんですか?」

 

落ち着け、落ち着くんだ俺。

 

「録画した動画だよ〜。最近のアプリって便利だね〜」

 

マジかよ。

 

「ちなみに録画した動画は部員のみんなに送ってあるから〜」

 

最悪だ。

 

「今すぐその動画を削除して下さい」

「やだ〜」

 

冴塚先輩は笑顔でそう言ってきた。

 

「いいじゃん紅音ちゃん」

 

後ろから吹雪が笑顔で言ってきた。

なんなんださっきから。冴塚先輩もそうだが、なんでお前まで笑顔なんだ?

 

「それに色々と手遅れだと思うよ」

 

そう言って吹雪は携帯の画面を俺に向けてきた。

そこにはこう書かれていた。

 

 

 

 

名無し1

あれは本当に中学生?

 

名無し2

今確認した。どうやら本当に中学生みたいだ。

 

名無し3

なんて体だ、けしからん。

 

名無し4

まさにボン、キュッ、ボンだったな。

 

名無し5

何を食べたらあんなになるんだ。

 

名無し6

将来有望な嫁になるな。

 

名無し7

今のうちにつばをつけなければ。

 

名無し8

お巡りさん!ここに性犯罪者がいまーす!

 

名無し9

通報しました。

 

名無し10

みんなー!逃げてー!

 

 

 

 

といった内容だった。

俺はそれを見て、地に落ちた。

誰だよ!そんなことを掲示板に書き込んでいる奴!

確かにスタイルはいいよ、自分で言うのもなんだが。ファ◯キ◯ルのレーヴァテインみたいにまだ身長164 B85 W57 H83はないよ。おそらく年相応の身体に神様が調整してくれたんだろう、声もちょと幼いし。

だがそれでも中学生にしてはどうかと思う身体だ。

でもそれをわざわざ掲示板に書き込むかね。

これだから新聞やマスコミやパパラッチは嫌いなんだよ。

 

「紅音ちゃん」

「・・・吹雪・・・」

「掲示板はどうにも出来ないけど、動画は私達だけに留めておくから!」

 

削除する気なしかよ!

 

「いいから早く削除しなさい」

「ヤダ!」

 

お前もかよ!

 

「確かに紅音ちゃんがこういったのが嫌いなのは知ってるよ。でも今回はいいじゃん、中学生でテレビに出られるなんて普通はないよ」

「別に私の望んだことじゃない」

「それに動画も私達だけに留めておくってことでいいじゃない。悪用しようってわけじゃないんだから」

 

そう言って吹雪は辺りを見渡す。

 

「皆さんも動画に関しては異存はありませんか?」

「私はそれでいいよ〜」

「私も〜」

「私もそれでいいわ」

「私も・・・・じゃないと後が怖いし」

 

誰だ最後に言った奴。

 

「はぁ、わかりました。それで手を打ちます」

 

俺は立ち上がりながらそう言った。

 

「それでは皆さん、作業に戻って下さい。車長の人達は私のところに集まって下さい、作戦の最終確認を行います」

 

それからは車長達は作戦の最終確認、その他の人は車両の点検を行った。

数十分後、作戦の最終確認や車両の点検等が終わり、試合開始まで待機することになった。

 

「いよいよ決勝戦だね〜」

 

戦車のフェンダーの上で音楽を聴いていた俺の隣に冴塚先輩がやってきた。

 

「隣いいかな〜?」

「どうぞ」

 

それを聞いて冴塚先輩は俺の隣に座った。

 

「何聴いてるの〜?」

「デスメタルです」

 

俺はイヤホンを外してポケットに携帯とイヤホンを突っ込む。

 

「本当にいろんな曲を聴くんだね〜」

「・・・・・・今日はどうしたんですか?」

「何が〜?」

「自分でわかっているでしょ」

「・・・・・やっぱり笹原ちゃんには敵わないな〜」

「それでどうしたんですか?」

「うん、その、ね。気を紛らわせたかった、かな?」

「何で疑問形なんですか」

「そのね、緊張してるのかな私。だって万年県予選敗退していた私達の学校が決勝戦まで勝ち進んで、全国大会出場も決めて。私はすごく嬉しいよ。でも、その嬉しい気持ちと同じくらい緊張してる」

「・・・・・・・・」

「だから少しでも気を紛らわせるために笹原ちゃんに話しかけた、かな。ごめんね、こんな気持ちにあまりなったことないから自分でもよくわからないんだ」

「いいじゃないですか」

「えっ?」

「緊張感を持つ、いいことじゃないですか。別に悪いことじゃありません。まぁ、それをどうするかは個人の問題なので、私はどうこうは言いません」

「笹原ちゃんは緊張したりしないの?」

「してますよ?いつもより」

「そうなんだ」

 

まぁ、その『いつも』もあまり緊張はしていないが。

なんとなくの気持ちで辺りを見渡す。やはり緊張している者が大半だった。吹雪はソシャゲしているが。

俺はその場に立ち上がって大きく伸びをした。

 

「笹原ちゃん?」

「ちょっと隊長らしいことをしますか」

 

俺は一度深呼吸をした。

 

「はーい、皆さん注目してくださーい!」

 

それを聞いた部員全員は俺に視線を向けた。

 

「点検や作業等お疲れ様でした。いきなりですが、私からお話があります」

 

それを聞いて、部員全員は静かになった。

 

「皆さん、いよいよ決勝戦です。緊張している人、不安の人、色々あると思います。ですが皆さん思い出して下さい。これまでの私達の頑張りを、そして忘れないで下さい、私達はまだスタートラインに立っただけであることを」

 

部員全員の目が少しずつ変わりはじめた。

 

「今回の試合、インタビューではあんなこと言いましたが、はっきり言って勝率はかなり低いです。それもそうです。なぜならこちらは部費が少ない、部員も少ない、戦車道経験歴が浅い人ばかり、そんな状況で全国優勝を目指すのです。さらに言えば、こちらは部費が少ないこともあり節約しなければならない。対して黒森峰は部費も部員も経験歴も圧倒的に上、付け加えて言うなら黒森峰には家元の娘2人がいます。勝率が低いのは当たり前です。ですが皆さん思い出して下さい。そんなこと分かりきっていたことじゃないですか。そんなこと覚悟の上じゃないですか」

 

そうだ、そんなの俺が隊長になったときからわかっていたことだ。

部費が少ない?部員が少ない?経験が浅い?だからなんだ!そんなの負ける理由にはなっても勝てない理由にはならないぞ!

部費が少ないなら被害を出さないようにするなり節約するなりすればいい。部員が少ないならその少ない人数で作戦を立てればいい。経験が浅いなら積ませればいい。

 

「言っておきますが今回の試合、私は負ける覚悟はしています。ですが、だからと言って勝つことを諦めたわけではありません。もちろん勝ちにいきます。見せてやりましょう黒森峰に、私達の戦いを、弱者の戦いを!!」

「「「「「「おーーー!!」」」」」

『まもなく、試合を開始します。出場する選手は速やかに整列準備してくだい。繰り返します。まもなく、試合を開始します。出場する選手は速やかに整列準備してくだい。』

「ちょうどいいタイミングです。皆さん、準備を!」

「「「「「はい!」」」」」

 

俺は戦車から降りて整列準備をした。

 

 

 

 

 

「それではこれより、黒森峰女学園 対 常幻東中学校の試合始めます!」

 

また蝶野さんか、この人もこの人で大変だなぁ。てかこの人年いくつなん?仮に20後半だとしよう、それで階級が1等陸尉は普通ありえない、よっぽどのエリートじゃない限り。

確か陸上自衛隊富士学校、富士教導団戦車教導隊所属だったよな。あそこの部隊は確かにエリートの集まりだが、この人がそのエリートって考えられない。だって撃破率120%って言ってる人だぜ?まぁ教導隊は教習で使う戦車の整備及び貸し出しや、教官以外の乗員の貸し出し等をする部隊だからなぁ、こういうのは本職じゃないから考え方が荒いのはわかるが。

 

「どうかした、笹原さん?」

「い、いえ」

 

いかん、ちょっと()()()から目を背けるために蝶野さんをずっと見てしまっていた。

俺は目の前のある人に向き直る。

 

「・・・・・・・」

 

まほさん!なんでそんなに不機嫌なんですか!いや確かにまほさんはいつも険しい顔しているから分かりづらいけど、あれ絶対怒ってるよ!

えっ?俺何かしたっけ?

いかん、心当たりがない。

どうしよう、話しかけた方がいいのか?しかしあんなまほさんに話しかけるなんて無理だ。

 

「それでは試合を「待ってください!」ッ!」

 

試合開始の合図をしようとした蝶野さんの声をまほさんが遮る。

 

「笹原」

「なんでしょうか?」

「まさかとは思うが、それで試合をするつもりか?」

「それとは具体的になんのことですか?」

「惚けるな。()()()1()0()()で試合をするつもりかと聞いている」

 

なんだそのことか。

そう今回の試合で俺達が使う戦車はたったの10両である。

理由はもちろん部費節約のためである。

もちろん俺達の学校が部費が少ないことは俺達しか知らない。まぁ知られたからどうってことはない。実際部費が少なくても戦える。だがそれを教えてやる義理はない、なんだか自分が惨めに思えてくるからな。

 

「そのつもりですが、何か問題でも?」

「随分とナメられたものだな。明確な数の差をつけることで私に油断させようという魂胆なんだろうが、私はそこまで君を過小評価していない」

「ナメるも何も私達は大真面目ですが「紅音ちゃん」・・・何よ吹雪」

 

後ろから吹雪が割って入ってきた。

 

「君は?」

「初めまして、紅音ちゃんの幼馴染みの雪宮 吹雪です」

「そうか。それで何の用だ」

「一言だけ言わせていただきます。貴女に私達の何がわかるんですか?」

「どういうことだ?」

「私達は他校とは違って大きなハンデを背負ってこの大会に参加しました」

「ハンデだと?」

 

そこまで言って、吹雪は膝から崩れ落ち四つん這いになった。

 

「私達にはお金がないんです!!」

 

その一言で場が静寂に包まれた。

てか何ぶっちゃけちゃってんの!!??

 

「3年生はおらず、1年生は中学に入って戦車道を始めた人ばかり、経験者は2年生だけ!これだけも充分なハンデなのに、万年予選敗退しているから部費もまともにない!わかります!?そのおかげで他校との練習試合はおろか、射撃練習も限られるんです!確かにそれは言い訳に聞こえるかもしれません!ですがね、私達はこの大会が終わったあと、つまりこの1年間を少ない部費でやりくりしないといけないんです!!先生に言ってなんとかしてもらおうともしましたよ!でも「してもいいけど実績がない部にそんなことしたら他の部に何言われるかわからないわよ?」って言われて結局ダメだったんです!紅音ちゃんも苦しんで悩んで、仕方なく戦車の数を減らすという決断をしたんです!その他にも隊長の仕事で苦しんで、私達が支えているんです!わかります!?わからないでしょ!?王者に私達の苦しみが!!」

 

吹雪の熱弁が終わり、また場が静寂に包まれる。笑い声もなく、同情の声もなく、ただただ静寂に包まれた。

 

「蝶野さん」

 

俺は近くにいた蝶野さんに声をかけた。

 

「な、何かしら」

 

あーあ、蝶野さんも困ってるじゃん。

 

「今ってカメラ回ってますか?」

「えぇ、バッチリと」

「音声も?」

「えぇ、でもこのくらいなら音は拾えてないと思うわ」

「すいませんが、10分程カメラを止めていただけないでしょうか?」

「わ、わかったわ。それにしても、今の話ホント?」

「はい、事実です。あっ、この話はここだけにしてください」

「わかったわ」

 

そう言ったあと、蝶野さんは近くにいた他の審判に指示を出した。

 

「その・・・・・すまなかった」

 

まほさんはなんとも言えない表情でそう言った。

 

「同情するくらいならお金をください!」

 

俺の隣にいる吹雪は四つん這いになってそう言う。

 

「ついでに胸も!」

 

お前は何言っているんだ。

 

「カメラ止めてもらったわ」

 

そう言って蝶野さんが歩み寄る。よし、今から俺ちょっとキレるからな、カメラで撮られるわけにはいかん。

 

「吹雪立ちなさい。みっともないわ」

 

吹雪はそれを聞いて立ち上がり、俺に向き直る。

 

「部費が少ないのは仕方のないことよ。その問題はこれから解決していけばいいの」

「でもそれじゃ「それよりも」ッ!」

「私、今すごく怒ってるんだけど、なんでかわかるかしら?」

 

吹雪は顎に手をあて考える。

 

「理由は2つあるわ」

「・・・・・・なんで?」

「一つ目は、なんでこちらの情報を敵に教えているのかしら」

「・・・・・あっ」

「二つ目は」

 

俺はそこまで言って吹雪の胸ぐらを掴む。もちろん逃げないようにするためである。

 

「あ、紅音ちゃん?どうしたの?なんかすっごい笑顔だよ?」

「貴女さっき私が苦しんで、悩んで、仕方なく決断したって言ったあとなんて言った?隊長の仕事で苦しんでる私を支えているって言ったわよね?えぇ確かに貴女には情報収集のことでは感謝しているわ。でもね、貴女の評価はプラス、マイナスで言えばマイナスよ」

「な、なんで!?」

「スケジュール表の作成と報告、必要な部品や道具の取り寄せ、作戦立案、チームの編成、書類作成、報告、管理、予算の見積もり、その他色々を今誰がやっているのかしら?」

「え、えーーっと」

「校長は頼りに・・・コホンッ、忙しいから校長の仕事も引き受けているのは誰かしら?」

「そ・・・それは・・」

「私よね?みんなには練度向上してほしいから仕方なく私がほぼ全部引き受けているわよね?でも貴女は部員の中では、私を除けばダントツでトップよね?というか私とはあまり実力差がないわよね?」

「あ、紅音ちゃん?」

「私、何回仕事を手伝ってって言ったかしら?正直私も20回まで数えていたけれど、それから先は数えるのをやめたわ。まぁ数なんて些細なことよ、問題はその度に貴女は逃げていたわよね?よくもまぁそれで支えているって言えたわね?」

 

俺は胸ぐらを掴んでいる左手と拳を握る右手に力を入れる。

 

「そ、その拳一体何かな?」

「吹雪、今から目を閉じて、足を開いて、歯を食いしばりなさい」

「いっ、嫌だーーー!!」

 

そう言って吹雪は必死に逃げようとするが胸ぐらを掴まれるて逃げることが出来ない。ついでに言うなら片足も踏んでいる。

 

「もう我慢の限界よ!大人しく私の拳をくらいなさい!」

「ごめん!ごめんってば!これからはちゃんと紅音ちゃんの手伝いをするから!」

「そのセリフは聞き飽きたわ!」

 

そう言って俺が殴るポーズをした時である。

 

「は〜い。ストップ〜」

 

冴塚先輩が割って入ってきた。

 

「まったく、何やってんのよアンタ達」

「紅音ちゃん、流石に試合前にそれはマズイよ」

 

エリカは吹雪を、弥生は俺の後ろにつき俺らを引き剥がした。

 

「離しなさい弥生!今日こそ吹雪に!」

「わかった、わかったから落ち着いて。みんな見てるから」

 

それを聞いた俺は我に返り、辺りを見渡す。

黒森峰の選手は困惑していた。まほさんは顔に手を当て、見ていられないといった様子だった。みほにいたってはオロオロしていた。

それに対してウチの生徒は、またやってるよって感じだ。

 

「・・・・・お見苦しいところを見せて、大変申し訳ございませんでした」

 

俺は黒森峰側と審判側に頭を下げ、謝る。

 

「も、もういいかしら?」

 

戸惑いながらも、蝶野さんはそうたずねる。

 

「申し訳ありません。お願いします。あっ、それと」

 

俺はまほさんの方を向く。

 

「随分とナメられたものだな、と仰っていましたね。確かにそちら側から見たらふざけているように見えるかもしれません。ですが生憎、私達はふざけてもいませんし勝利も諦めていません。油断しないでくださいね。でないとその王の座、貰いますから」

「ふっ、いいだろう。ならばこちらも全力で相手をさせてもらおう」

「準備はよろしいですか?では改めて、黒森峰女学園 対 常幻東中学校の試合始めます!両校、礼!」

「「「「「よろしくお願いします!」」」」」

 

 

 

 

 






次は10月中に投稿します!
では!


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県予選決勝戦!! 中編


会社の社長「UP主君、来週ちょっと長崎に行ってきて」

UP主「・・・はい」(嫌だーー!!また長崎かよ!!今週の長崎行って来週も長崎かよ!!出張多すぎ!!人使い荒すぎ!!)


 

 

 

 

『アルプス一万尺 小槍の上で アルペン踊りを 踊りましょ。ランラララララララ、ランララララララン、ランラララララララ、ラララララン』

 

試合が始まり、かれこれ30分くらいが経過した。

 

『昨日見た夢 でっかいちいさい夢だよのみがリュックしょって 富士登山。ランラララララララ、ランララララララン、ランラララララララ、ラララララン』

 

なぜかさっきから吹雪がアルプス一万尺を歌っている。

 

『岩魚釣る子に 山路を聞けば 雲のかなたを 竿で指す。ランラララララララ、ランララララララン、ランラララララララ、ラララララン』

 

何?ツッコミ待ち?ツッコミを待ってるの?

 

『お花畑で 昼寝をすれば 蝶々が飛んできて キスをする。ランラララララララ、ランララララララン、ランラララララララ、ラララララン』

「吹雪、アルプス一万尺歌うのはいいけどもっと緊張感を持ちなさい」

『え〜〜、せっかく緊張をほぐそうと思ってアルプス一万尺歌ってたのに、まさかのツッコミじゃなくて説教だなんて』

 

やはりツッコミ待ちだったか。

 

「そもそも何でアルプス一万尺なのよ?」

『気分「それはもういいから」ちょっ、最後まで言わせて!』

「じゃもっとレパートリー増やしなさい、気分かな一択はさすがに飽きるわ」

『むぅ〜〜!』

 

はいはい、そんな声出しても俺には無意味だから。

 

「まさかと思うけど、あれ最後まで歌うつもりだったの?」

『?そうだけど?』

「よく歌おうって思ったわね」

『だから気分「いやそれはもういいから」もう!』

『まぁまぁ〜、アルプス一万尺じゃない〜、すぐに終わるからいいじゃない〜』

『うんうん、それになんか懐かしくて面白いし』

「・・・・・・・・もしかして、皆さん知らないんですか?」

『何が〜?』

「あの歌って29番まで歌詞があるんですよ?」

『『『『『そうなの!!??』』』』』

 

そう、あの歌は29番まで歌詞があるのだ。付け加えるなら、一番ではよく「子ヤギの上」と間違えて歌っている人が多いが「小槍の上」である。

更に言えば、アルプス一万尺」は作詞者は不明であるが京大山岳部の学生という説もある。あとこの歌に出てくる「アルプス」とは日本アルプスのことで、歌詞の「小槍の上で アルペン踊りをさあ踊りましょう」の「小槍」とは、槍ヶ岳の山頂付近にある岩のことである。この「小槍」の標高は3,030mで、ちょうど一万尺だそうだ、いや知らんけど。

しかし誰だよ、「小槍の上で アルペン踊りをさあ踊りましょう」とか考えた奴、あれって本当に槍みたいな形してるから踊れないっつうの。

 

『し、知らなかった』

『あれってそんなに長い歌だったんだ』

 

どうやら全員知らない様子である。まぁそれもそうだろ、俺も前世で二十歳の誕生日を迎えるちょっと前に知ったからな、普通に生きていればしらないままだ。

しかも歌詞の内容がこれまた酷い。

 

「知らない方がいいわよ。むしろ4番で止めて正解だったわ、まさか最後まで歌うつもりだったなんて」

『何?そんなにおかしいの?』

「知りたい?あの歌はーーーーー」

 

 

 

 

 

ドドドドドォォォーーーーーン!!!!!

 

 

 

 

 

・・・・・は?

気づいたら左側を走行していたⅢ突2両から白旗がでていた。

 

『こちらⅢ突、すまないやられた!』

『こちらも同じく!』

 

俺は周囲を確認した、そして見つけた。森の中から隊列を崩さず進撃する黒森峰の戦車を。

 

「歌のことは試合が終わってから説明します!全車!全速で目の前の森に逃げて下さい!敵は森の中をショートカットして来ました!」

『紅音ちゃん、Ⅲ突が2両やられたけどこのあとはどうするの?』

「大丈夫よ。予想外ではあるけど、()()()()()()

『オッケー、とりあえず敵の数減らす?』

「そうね、2両くらい減らせる?」

『いけるよー。黒川先輩、ちょっと交代してください」

「相澤先輩も交代してください」

「いいけど、私車長出来ないぞ」

「問題ありません。すぐまた交代します。私と吹雪以外は攻撃せずに全速で森の中に逃げて下さい!」

『『『『『了解』』』』』

 

砲手席に座るのは久々な気がするが、感覚は鈍っていないだろうか。

 

「吹雪!」

『いつでもいけるよ!』

 

頼もしい相棒の言葉に、こちらも俄然気が引き締まる。この上ない安心感はきっと、アイツがやはり俺の親友であるという事の証左だろう。そう思うと、こんな状況だというのに少し頰が緩んだ。

 

「わかったわ!左のⅢ号戦車は任せるわ!」

 

そう指示を出して、俺はIV号駆逐戦車に狙いを定める。

 

 

 

 

 

ドォォォォォォーーーン!!

ドォォォォォォーーーン!!

 

 

 

 

 

俺と吹雪の砲撃でⅢ号戦車とIV号駆逐戦車から白旗があがったのを確認した俺は次に撃破出来る戦車を探す。

 

「吹雪!奥のティーガーⅠ狙える?」

『ダメ!手前のヤークトティーガーが邪魔になってる!その左にいるパンターならいける!』

「パンターね、同時にいくわよ!」

『合図は任せる!』

 

俺はティーガーⅠの左にいるパンターに狙いを定めた。

 

「撃て!」

 

 

 

 

 

ドドォォォォォォーーーン!!

 

 

 

 

 

『撃破確認!紅音ちゃん、そろそろ森に入るよ!』

「わかったわ!相澤先輩、交代してください」

「はいよ」

「全車!今から市街地に向かいます、付いて来て下さい!」

『あれ、囮作戦は?』

「この状況じゃ厳しいから省くわよ!」

『まぁ、それもそっか!』

 

 

 

 

 

ドォォォォォォーーーン!!

 

 

 

 

 

『Ⅲ号戦車撃破!』

 

これで16対8か、正直ちょっと厳しいな。まさかⅢ突2両やられるとは思っていなかった。

作戦としてはⅢ突2両を囮にして残り8両で森の中から攻撃し、ある程度減らしてから市街地戦で畳み掛ける予定だったが、ポジションを取られてしまった以上市街地で迎え討つしかない。

 

「さて、市街地でどこまで減らせるかしら」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜西住 まほサイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「全車、撃ち方やめ」

 

私はそう指示を出し、地図を取り出す。

 

『お姉ちゃん、この先って』

「あぁ、おそらく行き先は市街地だろう。20号車、敵はそちらに向かった、準備をしておけ」

『了解』

 

私はふと試合に笹原が言った言葉を思い出した。

 

『随分とナメられたものだな、と仰っていましたね。確かにそちら側から見たらふざけているように見えるかもしれません。ですが生憎、私達はふざけてもいませんし勝利も諦めていません。油断しないでくださいね。でないとその王の座、貰いますから』

 

フッ、面白い。

ならば今から起こる出来事をどう覆すか見せてもらおう。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜笹原 紅音サイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

さて、市街地には到着したが、どうするか。

 

「全車、周囲の警戒を怠らないでください」

 

本来は囮作戦してからの市街地戦の予定だったが、こうなってしまった以上市街地に向かってくる敵を普通に迎え討つしかない。

 

『隊長』

「なんですか?」

『あのマンションの隣にあるデカイのって何ですかね?』

「デカイの?どれですか?」

『隊長から見て9時の方向です』

 

俺は言われた方向を見た。

確かにそこにはデカイのがあった。てかあれって!?

 

「全車退却してーーーー」

 

 

 

 

 

ドォォォォォォーーーン!!

 

 

 

 

 

そのデカイのは突然砲撃して近くにいたパーシングに命中した。

 

『こちらパーシング!すいません、やられました!』

 

おいおい嘘だろ。あれって。

 

「マウスとか、マジふざけんじゃないわよ!!」

『チート乙!!』

 

そうまさかのマウスである。相手もマウスを使うだろうと予想はしていたが、さっきの集団の中にはマウスがいなかったのでいないだろうとふんでいたのに、まさか市街地に先回りされていたとは。

 

「吹雪、何ノゲラの白のパクリしてんのよ!」

『じゃ、逃げるんだよとっつぁん!!がよかった?』

「アンタずいぶんと余裕ね!!」

『そっちもツッコミするなんてずいぶんと余裕だね!!』

「余裕なんてないわよ!!」

『私もないよ!!』

「はぁ、吹雪、いける?」

『私と紅音ちゃんだけで?ちょっと厳しいかなー。でもそうするしかなさそうだね』

「わかったわ、全車!私と吹雪以外の車両は敵主力の迎撃にあたってください!」

『アンタ達はどうするの?』

「私と吹雪はここでマウスを倒すわ」

『2両だけじゃ不可能よ!私も残るわ!』

「じゃ聞くわエリカ、貴女はマウスをここで倒せる自信はある?」

『それは・・・・その・・・・』

「吹雪、貴女はマウスをここで倒せる自信は?」

『確かにさっき厳しいとは言ったけど、不可能じゃないね。必ずここで倒してみせるよ』

「わかったエリカ?これが貴女と吹雪の差よ」

『・・・・・』

「別に貴女を信用していないわけじゃないわよ。ただこれ以上やられるわけにはいかないの。それにやってもらいたいことがあるの」

『やってもらいたいこと?』

「貴女と弥生、それから副隊長を中心に敵主力の迎撃にあたってほしいの。私は貴女を信用する、だから貴女も私を信用して」

『・・・わかったわ、必ず倒しなさい』

「副隊長、そちらの指揮をお願いします」

『わかった!』

 

そう言って冴塚先輩達は迎撃に向かった。

 

「さてと、それじゃやるわよ吹雪!」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜逸見 エリカサイド〜〜〜〜

 

 

 

 

 

『敵主力接近!あと3分で到達と予想!』

『私と逸見ちゃんは前に!博麗ちゃんはそのまま敵の位置を監視及び報告、戦闘が始まったら移動して戦闘に参加!二階堂ちゃんと寺本ちゃんはマンションの影から射撃!』

 

私は副隊長の指示に従って前進した。

私は悔しかった。あの時、自信があると言えなかったこと、そしてそこまでの実力が自分にないこと。悔しかった。

 

『逸見ちゃん』

「は、はい!」

『あの時の逸見ちゃんの判断は間違ってないよ』

「えっと、なんのことですか?」

『さっきのことだよ。引き際をわきまえるってことは自分の実力をちゃんと知っているってことだよ。だから逸見ちゃんの判断は間違ってないよ』

「・・・・・」

『だから、笹原ちゃん達を信じよ』

「はい!」

 

そうよ、何くよくよしてるのよ。私は信用されてここを任されたのよ、私も信用しなくてどうするのよ。

 

『敵主力、まもなく来ます!』

『目視で確認!みんな、ここでなんとしても食い止めるよ!』

『『『『はい!』』』』

『博麗ちゃんはさっきの指示通りに、二階堂ちゃんと寺本ちゃんもあまり出すぎないように注意してね』

『『『了解!』』』

『よし!それじゃみんな、よーく狙ってーー!』

「弥生、準備して」

 

私は弥生に指示を出した。

 

「了解!」

 

弥生も敵戦車に狙いを定める。

 

『撃てーー!!』

 

 

 

 

 

ドォォォォォォーーーン!!

 

 

 

 

 

 

 

 





どうでしたか!
次もちょっと投稿が遅くなります!
意見、感想お待ちしています!
では!


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