バカとテストと召喚獣ークズの補佐官ー (24601)
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プロローグ

「はぁ・・・・・」

 

下校時間が近づき、活動に勤しんでいた部活動の生徒達が撤収を始めた頃、肩をがっくりと落としながら下校する生徒がいた。

 

彼の名は平賀源二、文月学園2年D組代表である。

 

補習担当教師、西村宗一による"鬼の補習"と呼ばれ恐れられる苦行を終えただけあって彼の顔には運動部の生徒以上に疲労が滲み出ているが、今回の彼の場合はそれ以上に心労が重くのし掛かっている。

 

こういう時こそ切り替えが大事かもしれないが、彼の立場上そういった選択肢はこれから訪れるであろう苦難を思うと霞んでしまう。

 

「ほんと、まさか負けるなんてな。ひ-」

 

「『姫路さんがFクラスにいるなんて思いもよらなかった』ってか?俺は他にも原因があると思うけどな、源二」

 

校門に差し掛かり、彼ーー源二が独り言を漏らすとそれに割って入る生徒が現れる。

 

「同感、私も」

 

 

「無理はない 姫路がいると 分からぬよ」

 

そして後に続く二人の男女。

 

どうやら三人して源二が来るのを待っていたらしい。

 

「何だ、義輝か。それに丸目さんと・・・・」

 

「性伊東 名前一刀 よろしくな」

 

「え?あ、ああ」

 

糸目の少年の自己紹介に源二は苦笑いで返す。

 

「一刀は口調は変わってる奴だけどいい奴だからさ。よろしくしてやってくれ」

 

「流石に口調ぐらいで差別したりはしないさ。・・・・で?原因が何だって?」

 

「まあ言わなくても分かっちゃいるだろうけどな。格下への油断、士気の低下、時間の長引き、放課後のゲリラ戦・・・挙げればキリがないな。それより何と言っても常識はずれな行動だよな」

 

「言い訳じゃないけど・・Fクラスは普通に消火器を使ったりスプリンクラーを壊したりしてDクラスの追撃を撒いたからね。木内先生の件や極めつけが姫路さんの存在。想定外ばかりさ」

 

そう言うと源二は再び肩をがっくりと落とす。

 

「普通、あり得ない。でも、勝てたはず。時間、かけなければ」

 

「返す言葉も無いよ、丸目さん。・・・で?義輝。わざわざ待ってたのは冷やかしの為じゃないんだろう?」

 

「さっすが元同じ中学。今回の戦争のことで聞きたいことが山ほどあってな」

 

「聞きたいこと?」

 

「まあ今後の為の情報収集ってとこだ。ウチのクラスの代表も情報を欲しがっているしな」

 

「代表ってことは霧島さんかい?」

 

「いやいや、源二。俺はそこまで頭は良くないよ」

 

義輝は苦笑いしながら胸ポケットに手をやると一枚の紙を取り出して源二に見せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『宍戸義輝 Bクラス次席』



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クズの補佐官

ー翌朝ー

 

「恭二ーー!面白いことになりそうだぞ!」

 

「義輝、うるさい」

 

勢いよくドアを開け、開口一番にBクラス代表根本恭二を呼ぶ義輝の高いテンションに呆れたのか、一緒に登校してきた彼の幼なじみ、丸目恵はやや引き気味だった。

 

「朝からうるせぇな。それに彼女連れで登校か。いいご身分だな、義輝」

 

恵と同じく呆れつつも恭二は教室の前に出てきながら、義輝にニヤニヤとした笑みを挨拶がわりに返す。

 

「はいはい。小山といい感じなお前に言われたくないね。・・・・で、本題なんだけどな。色々とDクラスの源二から聞いてきたぞ」

 

「仕事が早いな。というかお前、メールしてくれりゃ良かったじゃねぇか」

 

「それでも良かったんだけどな、文章で伝えるより直接言った方が分かりやすいと思ってな。・・・まず、Fクラスの奴らはAクラス打倒が最終目標、そして次の戦争で俺達Bクラスと戦うつもりらしい」

 

「はぁ?俺達どころかAクラス打倒?」

 

恭二は首を傾げる。

 

「その様子じゃ俺達と戦争になることはやっぱり予想してたか。で、重要なのがここから。DクラスはBクラスのエアコンの室外機をFクラスが指示した時に破壊することを条件に設備交換を免れた」

 

「実質引き分けにしたってことか。それにしても室外機ねぇ」

 

「意味、分からない」

 

「丸の言うとおり、まだ俺にも意味がわからない。まあお陰でBクラス攻めが分かったんだけどな。・・・これはいったん置いといて、恭二。何か策の目処は?」

 

「ああ、だいたいできてる。後で義輝やクラスの連中にも伝えるけどな。問題は姫路瑞希をどう抑えるかだ」

 

「そこなんだよなぁ。あれに無双されたら痛いし。・・・いつものように弱味を握るとかは?」

 

「根本、十八番」

 

「おいおいお二人さん。俺を誰だと思ってるんだ?バレない程度に監視はつけてあるさ。あとは奴が何かしらのボロを出すのを待つだけだ」

 

考え込んでいた恭二は義輝と恵に指摘された途端に生き生きとし始めたる。

 

「楽しそうで何よりだ。上手くいきゃ良いんだけどな。

後、提案なんだが・・・室外機の件については真意の如何を問わず、奴らの策にわざと嵌まる方向で行きたいんだが」

 

「わざと?何か考えでもあるのか?」

 

「いやぁ、まだ分からないんだけどさ、奴らの策を看破した上で戦う方が優位に立てそうだし、なによりDクラスに借りが作れる」

 

「・・・・信頼して良いんだな?」

 

「もちろん!ま、何も浮かばなかったら別の策を考えるなり、恭二に任せるなりするけど」

 

「ま、期待しないで待っとくさ。」

 

「それはありがたい。後は・・・クラスの連中とミーティングをする時でいいか。一刀や他の奴らもまだ来てないしな」

 

「オーケー、じゃあ後でだな」

 

クズの代表と補佐官は話を打ちきり、それぞれの席へ行く。

 

かたや悪巧みをしながら、かたや思案を巡らせながら。

 




この小説では根本恭二の更正は無しの方向で行こうと考えてます。

ご意見、感想、質問等お待ちしております。


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ミーティング ー演説ー

登校時間の門限が近づき、校門に立つ鉄人こと西村宗一が目を光らせ始めた頃にはすでにBクラスの全員が登校して来ていた。

 

Fクラスならそうはいかないのだが、そこは流石上位クラスの生徒といったところだろう。

 

「おい、お前ら。席に着け。今からミーティングを始める」

 

頃合いを見計らって代表である恭二が愛想のない命令口調で呼び掛ける。

 

『ミーティング?いきなり何だ?』

 

『面倒だな』

 

『話の途中なのに』

 

代表の言葉に不平不満を漏らしつつ、席に着くBクラス一同。

 

この様子からして恭二の人望の無さが多少うかがえるが、当の本人は全く気にならない様子である。

 

「既に知っているだろうが、昨日試召戦争でDクラスがFクラスのバカ共に負けた。で、義輝が手に入れた情報によるとFクラスの次のターゲットはBクラスだ。」

 

『はぁ!?』

 

『何してくれてんのアイツら!?』

 

『ちょっと、また授業が進まないじゃない!』

 

動揺が隠せないのか、口々に思った言葉を発する生徒が大半だった。

 

「とにかくだ。奴らは補給が終わり次第攻めて来るはずだ。しかし、心配するな。作戦は幾つか考えてある。頃合いを見て人質をとるとか、理系教師を拉致るとかな」

 

恭二はニヤリと意地の悪そうな笑みを浮かべる。

 

「当然、お前らには俺の命令に従ってもらうからな。どんな手を使ってでも勝ちにいくつもりだから文句は言わせねぇぞ」

 

「ち、ちょっと代表!」

 

恭二の方針を聞いて立ち上がったのは岩下律子。

 

「わざわざ汚い手なんて使わなくても相手はFクラスよ!?正面から捻り潰せばいいでしょ!」

 

おそらく、これはクラスの大半の全員が大半が思ったことだろう。

 

彼女はその代弁者にすぎない。

 

「代表命令だっての。・・・不服だっていうのか?俺はそれでもいいぞ。ただ、忘れてもらっちゃ困るが、俺は多少なりとも誰かさんの弱味を握ってるんだ。うっかり全校放送で垂れ流しちまうかもしれないけどーー」

 

「あー、はいはい、ストップ、ストップ!ちょっと落ち着こうか」

 

場の空気が不穏になってきたところで義輝が席を立ち前に出る。

 

「恭二、お前らしいとは思うけど脅すなら敵さんだけにしとけって。味方同士でいがみ合ってたら何も始まらないだろ?」

 

「けっ」

 

「あらら、臍曲げるなって。・・・とにかく、岩下もいったん落ち着いて座ってくれ。言いたいことは分かるから」

 

「え、ええ・・・」

 

「さて、まず、Bクラス次席として言わせてもらう。岩下の言うようにFクラスに対して正面からぶつかっていくなんてことはしない。策を用意した上で戦う。もちろん、卑劣なことだっていとわない。そりゃあ俺だって皆や他のクラスの連中が恭二のことを『卑怯者』『陰険』『腐れキノコ』だのなんだの呼んでいるのは知っている」

 

「待て義輝。前二つはともかく最後のは初めて聞いたぞ」

 

「まあまあ、気にしない。確かに恭二は勝負事において手段を選んで来なかった。ま、カンニングはしてないらしいけど。でも、大事なのは恭二は最終的に勝っているってことだ。卑怯とかいう謗りなんて負け犬の遠吠えにすぎない。負けたところでいくら吠えても結果は変わらないからな。昨日の戦争のFクラスを見てみようか。撤退する時に窓ガラスを割ったり、消火器をぶちまけたり、スプリンクラーを壊したり。果てには姫路瑞希によるアンブッシュ。奴らも恭二に負けず劣らずの卑怯者だろ?でも勝った」

 

『とは言ってもよ、アイツらがやってたからって俺達もやって良いって道理はたたないぞ』

 

「いやいや、それがたっちまうんだよ。昨日配られた試召戦争のルールのプリントの最後を見てほしい。『戦争の勝敗は、クラスの代表の敗北をもってのみ決定される。この勝敗に対し、教師が認めた勝負である限り、経緯や手段は不問とする』。この文言がずっと引っ掛かってた奴もいると思う。でも昨日、器物損壊という明確な犯罪行為でさえ不問になった。つまり、実質的にこれは免罪符だ。ルールの範囲内なら何でもオーケーってことだ。・・・色々と策を弄したFクラスに正面からぶつかったDクラスはどうなった?Fクラスが点差の激しいBクラスに挑んで来るってことは、昨日以上に卑劣な策を用意してるってことは明白だ。卑劣な策に勝つにはどうすれば良いか?簡単だ。あちら以上に卑劣な策を用意して捻り潰せば良い!」

 

『で、でも』

 

『そうは言ってもな・・・』

 

「まだ躊躇われるのか?安心しろって。こちらには『学園設備を破壊し、学校生活の平和をも破壊し脅かすFクラスを討伐する』という大義名分もある。そして何よりも考えて欲しい。俺達がこの快適な教室・設備を手に入れることがてきたのはなぜか?それは各々が一生懸命に努力を重ねてきたからだろ?・・・Fクラスはどうだ?俺達が必死こいて勉強している横で遊びほうけていた分際のくせに、俺達を引きずり下ろそうとしてやがる身の程知らずな侵略者だ!これを許しておけるのか!?・・・どうだ岩下?これでもまだ言うか?」

 

「・・・いや、やっぱり私達の努力を否定されてるみたいで腹が立つわね」

 

「そうよ律子!私と律子のコンビならFクラスなんてかなうはずないわよ!」

 

『しょうがない、やるか!』

 

『アイツらぶっ潰す!!』

 

律子の親友、菊入真由美の言葉を皮切りに先程とはうってかわって教室が賛同の声に包まれていく。

 

義輝の言葉が彼らのプライドを目覚めさせたのだ。

 

「あぁ、後な、恭二のことなんだがな。あぁは言ってたけど、実は皆のことが心配でたまらなくて思わず言っただけだ。根は腐っているけど心までは腐ってないから怒らないでくれ」

 

「根本、ツンデレ」

 

「ちょっ!!義輝、丸目!余計なことを言うんじゃねぇ!!」

 

『おいおい、顔が赤いぞ代表』

 

『根本君って素直じゃないだけなんだね』

 

今度は教室が笑いに包まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この瞬から、恥辱にまみれるはずだった一人の少年の未来は変わり始めた。

 

 




正直、Fクラスが根本をクズ呼ばわりするのはおこがましいと思うんですよね。

自分たちのことは棚上げしてるし。

皆さんはどう思いますか?




ご意見、質問、感想等お待ちしております。



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ミーティング ー敵情報募集、結果ー

なんとかクラスをまとめあげた義輝が次に行ったのは情報提供の呼び掛けだった。

 

昨日、源二を問い詰めてFクラスの中で誰が脅威たる人物なのかを聞き出しており、その生徒や他の生徒の詳細な情報をはっきりさせる為だ。

 

昨年同じクラスだった者は特に詳細な情報を持っていた。

 

源二が挙げた要注意人物に関しては以下の情報が集まった。

 

姫路瑞希

・Aクラス上位に匹敵する学力

・振り分け試験の際に途中退席した結果がFクラス

・体が弱い

・で、でかい(男子はおろか女子からの羨望含む)

 

木下秀吉

・女子としか思えない容姿でAクラスに所属する姉の木下優子と瓜二つ

・演劇部のホープ。演劇に没頭するあまりに学業が疎かに

・前線で指揮を執っていた

(その他特殊な嗜好の感想多数)

 

吉井明久

・観察処分者。昨年、没収品などを盗んだ

・とてつもないバカだが召喚獣の操作に慣れていると思われる

・前線で指揮を執っていた

(その他罵倒多数)

 

坂本雄二

・Fクラス代表

・昔は神童とまで呼ばれるほどの学力を有していた

・悪鬼羅刹と恐れられるほどの腕っぷし

・Fクラスのブレイン

・吉井明久とは仲が良いと思われる

・Aクラス代表との関係が噂されている

 

島田美波

・ドイツ帰りの帰国子女

・数学だけはB、Cクラス並みと思われる

・彼女にしたくない女子ランキング上位ランカー

・昨日、窓ガラスを割ったり、消火器を使用したり、スプリンクラーを破壊したりなどの蛮行を働いた(らしい)

・昨年、転校当初は孤立していたが吉井明久に優しく(?)され、それ以来吉井明久に好意以上の思いを抱いている節がある

・ベルリンの壁(彼女の特徴を見て)

 

 

そして追加として上がった要注意人物。

 

土屋康太

・通称ムッツリーニ。ムッツリ商会を運営しており、昨日初めて正体を明かした

・商会で生徒らの盗撮写真などを売りさばいており、顧客は多い

・昨年、保健体育の点数が異常に高かった。Aクラスをも凌ぐと思われる

 

須川亮

・丸と歩いていたら親の仇を見るかのように目を血走らせながら追いかけて来た(義輝談)

・異性と親しい男子生徒に対して並々ならぬ嫉妬や執着を見せ、同じ思想を共有する者がおり、その者ら限定で統率力に長けていると思われる(義輝談)

 

 

 

 

「いやぁ、意外に皆他人のこと見てるもんだな」

 

一通りの情報が出揃った所でミーティングをお開きにした後、義輝が恭二、一刀、恵に言う。

 

「最後のは 余計なことの 気がするが」

 

「そう言うな一刀。今朝というかさっきやっと振り切ったんだから」

 

「アイツら、醜い」

 

「・・・はっきり言うのな、丸。で、恭二。情報からして姫路以外でも結構揺さぶれそうだけど、どうだ?」

 

「言われるまでもねぇよ。・・・ただ、土屋、ムッツリーニの保健体育がヤバそうだな。」

 

「あぁ、姫路という切り札が明るみに出て来たのが気になってたが、こいつが2枚目のジョーカーで間違いない。後はこちらが対抗策、スペードの3を用意しないとな」

 

「大富豪かっての。それはそうと義輝、室外機の件はどうだ?」

 

「流石に短時間じゃあな。ま、続きはまた昼にしよう。それまでには進展するだろ」

 

欠伸を噛み殺しながら言う義輝。

 

「もうすぐ、ホームルーム」

 

「二人とも 策の立案 頼んだぞ」

 

四人は席へと帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 



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発想を逆転せよ with設定

〇オリジナルキャラクター

宍戸義輝
Bクラス次席。丸目恵とは幼なじみ。一年生の時に根本恭二と同じクラスになった。根本が周囲に卑怯者と蔑まれる中、彼を勝ちに徹することができる人物と評価し仲を深めた。それ以来根本とは度々組むようになった。善意には善意で応えるが同時に敵意には敵意で応える。
得意科目は日本史。苦手科目は数学。
名前の由来は吉川英治の小説に登場する、宮本武蔵と対峙した鎖鎌の達人宍戸梅軒と剣豪将軍こと足利義輝。

丸目恵
Bクラス書記。宍戸義輝とは幼なじみ。黒髪ツインテールが特徴。ドライな人物と思われがちだが、単に彼女の口数が少なくポーカーフェイスなだけである。
得意科目は世界史。苦手科目は物理。
名前の由来はタイ捨流兵法の祖、剣豪丸目長恵。

伊東一刀
Bクラス近衛部隊隊長。剣道部。一年生の時に義輝、恵と出会い仲を深めた。基本的に何かしら発言するときは五七五の俳句調。特徴は糸目。彼の糸目は本当に目が開いているか疑わしいレベルで、彼の開眼を見た人物には不幸が訪れるとも幸福が訪れるとも言われている。
得意科目は古典。苦手科目は理系科目で極端に点数が
低い。
名前の由来は一刀流剣術の祖剣豪伊東一刀齋。

その他
・この小説ではFクラスアンチで根本救済
・クラス設備などは一部架空の物
・モブキャラなどは適度にキャラ付け



「はぁ・・・後少しで何か掴めそうなのにな」

 

午前中の授業が全て終わり、昼休み。

 

生徒達は仲の良い者同士で集まり弁当包を広げ、舌づつみをうちながら話し込んでいる。

 

もっとも、話題の多くが試召戦争に関するものだが。

 

「義輝よ 未だ糸口 掴めぬか」

 

机の上に突っ伏している義輝のもとに一刀が弁当と椅子を持って現れ、恵がそれに続く。

 

「何で奴らは源二達に室外機を壊させるのか・・・これがおそらくFクラスの秘策だ。これさえ分かれば・・・とりあえず飯を食うか」

 

顔を上げて鞄から弁当を取り出す。

 

「あれ?ところで恭二はどこ行った?」

 

「根本、すぐ出て行った」

 

「根本なら Fクラスへと 駆け行った」

 

「Fクラスに?・・・あぁ、例のアレか。向こうは向こうで進展があるのかね。・・・ところでさ、丸と一刀はどう思う?何で奴らが室外機を狙ったのか」

 

「嫌がらせ としか思えん 今はまだ」

 

「まあ相手が嫌がることをするのは兵法の定石だよな。でもそれだけじゃ終わらないはずなんだ。それだけじゃこちらの反感を買うだけで終わるだけだ。BクラスにFクラスが勝つ決定打にはなり得ない。・・・丸はどうだ?」

 

「私、わからない。でも、義輝、落ち着くべき。冷静になって。こういう時・・・『発想を逆転させる』、とか」

 

「おいおい丸、それこの間貸した裁判ゲームの受け売りじゃ・・・・いや、待て。・・・・・『発想を逆転させる』?・・・・「『何でFクラスはBクラスの室外機をDクラスに壊させるのか?』じゃなくて『FクラスがBクラスの室外機をDクラスに壊させると何が起きて何がどうなるか?』・・・あぁ!そうか!そうだそうだ!そういうことか!何で気づかなかったかな!!」

 

恵の一言から義輝が閃きく。

 

天啓を得た、といったところか。

 

「義輝よ どういうことか 説明を」

 

「一刀、室外機が壊れたらまずどうなる?」

 

「壊れたら エアコン止まり 迷惑す」

 

「そう、止まるよな。でだ、丸。春先とは言え最近は初夏のように暑い。エアコンが使えないならどうする?」

 

「・・・・窓、開ける?」

 

「そう!それなんだよ。窓を開けて涼をとる!!つまり、教室のドアみたいに立派な侵入ルートが出来上がる!!」

 

「でもそれは 荒唐無稽 いささかな」

 

「普通なら窓から入って来るバカはいない。でも相手はFクラスだ。荒唐無稽でバカな連中の集まりだ。あり得なくはない。そう考えれば色々繋がるからな。・・・よし、早く恭二にーー」

 

「義輝!!喜べ、やっと掴んだぞ!」

 

恭二に知らせようと義輝が立ち上がったその時、恭二が教室に走り込んで来る。

 

手には一枚の便箋が握られており、『してやったり!』と言わんばかりに満面の笑みを浮かべている。

 

「恭二!丁度良いところに来たな!室外機の件、看破したぞ!そっちは?」

 

「そりゃあ良かった!お互いの案件が解決したか。・・・こっちは遂に姫路の弱みを掴んだぜ!」

 

「弱み?だから嬉しそうなのか。」

 

「根本、それは?」

 

恵が恭二が握っている便箋を指差す。

 

「これは姫路瑞希直筆のラブレターだ!奴が落としたんだ、間違いないねぇはずだ」

 

「恋文か 弱みとしては 大きいな」

 

「うわ、エグいな。ま、それでこそ恭二だ。・・・・ところでさ、恭二。美術部と演劇部の奴が必要になるんだけど・・・お前、博打は好きか?」

 

義輝は笑みを浮かべる。

 

 

 




この小説では姫路のラブレター入手をこの時期とします。

皆様のおかげでUA1000を突破しました。

ありがとうございます。


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博打と策

「ーーーー以上がFクラスの秘策に対する策だ。策というよりは博打に近いけどな。博打を打つにあたって近衛部隊の皆には大変なリスクを負ってもらうことになる。当然、俺も負う。ローリスクハイリターンが理想だけどこれはハイリスクハイリターンだ。不安な奴は今、やめてもらっても構わない」

 

クラスの生徒の多くが食事を終えた頃合いに緊急のミーティングを開き、義輝が考案した博打を伝える。

 

博打の内容は成功が確約されていない、まさに大博打。

 

持ちかけられた選抜された精鋭、近衛部隊の面々は不安を顔に浮かべつつも名乗り出る者はいない。

 

もっとも、使命感に燃えている訳ではなく単に誰も名乗り出ないから、という場の空気に流されやすい日本人特有の気質から来るもの故だろうが。

 

「ありがとう。そして本当にすまない。さっきも言ったようにリスクが伴うけどしっかりやってくれ。大事なのは『窓から着かず離れずの距離を保つこと』だ。これだけは忘れないでくれ。リスクを回避しやすくなるはずだから。後、演劇部と美術部の皆は『例の物』を頼んだ。アレこそが博打の肝だからな。・・・俺から言うことは・・・あぁ、まだあった。自分の点数に不安のある奴、上がる見込みのある奴は放課後にでもテストを受けてくれ。俺からは以上だ。」

 

「次は俺か」

 

義輝と入れ替わりで今度は恭二が教壇に立つ。

 

「まず朗報だ。姫路瑞希を抑え込むためのネタが手に入った。奴のラブレターだ」

 

そう言いながら恭二は見せびらかすように便箋をヒラヒラと振る。

 

『ここまでくるとむしろ清々しいな』

 

『うわ、姫路さんドンマイ・・・』

 

『どうやって手に入れたの?』

 

クラスの反応は様々だ。

 

今まで恭二に関する良くない噂を聞いたことがあれども実際に目にしたことがある者は少ない。

 

彼らはこれから片棒を担ぐことになるのだがようやく実感がわいてきたことだろう。

 

「これを適度に使って脅し・・・もといお願いをするわけだ。後、今回の戦争ではCクラスにも協力してもらう。午後に義輝、丸目、伊東は俺と一緒に交渉に行ってもらうから来い。そして他の策はーー」

 

恭二の話を噛み砕くと以下のようになる。

 

まず、策の担当を決めて部隊を編成する。

 

義輝の策を実行してもらう近衛部隊。

 

Cクラスと合同策を実行している間にFクラス教室の設備を破壊し、兵糧ともいえる補充テストを妨害する破壊工作部隊。

 

こちらはストレスが溜まっている者を中心にすぐに集まった。

 

そして理系科目教師や特定の生徒を拉致して妨害を計り揺さぶりをかける拉致工作部隊。

 

教師を拉致する(連れていくだけ)のはBクラスの多くの生徒が理系科目を苦手としているためであり、生徒を拉致するのは人質にして有利に事を運ぶためである。

 

最も多くの人員が割かれているのが前線部隊である。

 

こちらは近衛部隊の一部の生徒も兼任している。

 

時には押して、時には引いて前線のコントロールをはかる。

 

その他にも部隊ごとに指揮官や伝令も割り当てられた。

 

 

 

 

 

 

かくしてBクラスは着実に戦争の準備を整えて行った。

 

このとき、屋上ではFクラスの幹部達が生死の境をさ迷っていたのだがBクラスは知る由もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ恭二、頼みがあるんだが」

 

「あ?何だ義輝?」

 

「その姫路直筆ラブレター、俺に預からせてくれないか?なーに、ちょっと良いこと考えたんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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Be Our Guest!

午後の全ての授業、そしてホームルームが終了した。

 

通常なら部活動に行くなり、友人と一緒に帰宅するなりするものだが、Bクラスの生徒達はすぐに教室を出ようとはしなかった。。

 

来るFクラスとの戦争に備えるべく各々が動こうとしていた。

 

テストを受けようとする者達は参考書をチェックし、義輝から依頼されたブツを作る演劇部と美術部の部員達は集まって知識を持ちより如何にして作るか話し合い、その他の生徒達は同じ部隊ごとに集まって段取りを決めるべく所々で小さなグループを形成していた。

 

Bクラスの士気は高まるばかりである。

 

「よーし、皆動いてくれているようだな。恭二、俺達は俺達で動こうか」

 

「そうだな。友香と話をつけに行くか。義輝、丸目、伊東、着いてこーー」

 

恭二が着いて来いと言おうとした時だった。

 

『代表、Fクラスの吉井がこっちに向かって来るぞ!』

 

テストの実施を教師に依頼すべく職員室に向かおうと廊下に出た生徒が戻って来て侵略者の来訪を告げる。

 

その一報にクラスは静まる。

 

「遂に来やがったか。・・・なぁ、恭二。俺、思うんだけどさ、伝統って悪いものは廃止して良いものは受け継いで行くべきだと思うんだ」

 

「奇遇だな、義輝。俺もそう思っていたところだ。・・・お前ら、言わなくても分かるな?伝統に習って使者を歓迎しようじゃねぇか!」

 

二人して意地の悪そうな笑みを浮かべている様子を見て周囲は若干引きつつも侵略の使者をもてなすべなく準備にとりかかる。

 

ある者は獲物を手にし、ある者はストレッチを始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最下位クラスであるFクラス所属生徒にして観察処分者、吉井明久は使者という大任を果たすべく意気揚々とBクラスに向かっていた。

 

先日、Dクラスへ宣戦布告の使者として赴いた際は散々たる仕打ちを受けたが今回は違うらしい。

 

少なくとも腐れ縁である友人、坂本雄二はそう言っていた。

 

曰く、Bクラスの生徒達は美少年好きだとか。

 

同じく友人である木下秀吉には貶されたが、美少年である自分がひどい目に遭うことは無いだろう、と思っていた。

 

・・・こういうところが彼がバカだと言われる由縁なのだろう。

 

 

「失礼します!僕はFクラスの使者として来た!FクラスはBクラスに宣戦布告すー」

 

希望を胸にBクラスのドアを開けて一歩踏み出し宣言した時だった。

 

「一刀、ドアを塞げ!」

 

「心得た 此奴は俺が 逃がさぬよ」

 

「え!?」

 

明久が入った瞬間、キノコと比喩できる髪型をした生徒の隣にいた少年が命令を発すると、一刀と呼ばれた長身で糸目が特徴の生徒がピシャリとドアを閉め明久の背後に立つ。

 

(も、もしかして・・・)

 

「まあまあ、そんなに固くなるなって。で、それだけか?」

 

「(あ、あれは確かリア充と名高い・・・くっ!堪えるんだ!後で異端者は申告すれば良いんだ!)え、えーっと、戦争の開始時間は明日の午後一時、午後の授業開始と同時だよ」

 

「へぇ、そうか・・・ま、せっかく来たんだ。茶菓子は無いがゆっくりしていけよ。代わりと言っちゃなんだがフルコースを用意してある」

 

「え!?フルコース!?(なんだ、雄二の話は嘘じゃなかったんだ!まあ、僕は美少年だからね!)」

 

Bクラスの面々は知らないが明久は昼に姫路特製の殺人料理を食べさせられそうになったばかりだ。

 

普段から食に餓えている明久にとっては願ってもない話である。

 

 

 

 

それが本当で想像通りならばの話だが。

 

 

 

 

 

 

「よし、まずは前菜『運動部の正拳突き、膝蹴り添え』からだ」

 

吉井明久の幻想は脆くはかなく崩れ去る。

 

瞬く間に体格の良い生徒達が明久を取り囲む。

 

「だ、たまされたーーー!!」

 

校舎中に悲鳴が響き渡った。

 

 




やっと原作主人公が登場しましたね。


戦争までもうすぐです。


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共謀

義輝の指揮により宣戦布告の使者吉井明久に振る舞われた、Bクラス一同による最上のおもてなし、フルコース。

 

前菜『運動部の正拳突き、膝蹴り添え』から始まりデザート『吉井明久の油性ペンデコレーション』で終わり、明久はようやく解放された。

 

シャツと上着を脱がされ、上半身の至るところに落書きが施されるという無惨というより滑稽な姿になった明久は「もうお婿に行けない」などという捨て台詞を吐いて去っていった。

 

彼の額には恭二によって『僕は変態です』などと書かれていたのだが、本人は知らない。

 

また、道中はもちろんFクラスへ帰還した時に目撃した多くの生徒がいるのは言うまでもない。

 

「よし、皆。Bクラス初めての共同作業ご苦労。この調子でどんどん進めてくれ」

 

義輝の言葉に『結婚式かよ』と呟く声も聞こえたが生徒達の表情はどこか清々しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで?話って何なのよ、恭二」

 

所変わって場所はCクラス。

 

明久の来訪とおもてなしで遅延されてしまったが、恭二、義輝、恵、一刀らBクラス幹部四人は当初の予定通り交渉をするためにCクラス代表小山友香を含めたCクラス幹部と会っていた。

 

Cクラスの他の生徒達はすでに教室を出てしまっており、廊下で見張りをしている生徒を除けば彼女達しかいない。

 

「待たせてすまん、友香。俺達Bクラスは明日Fクラスの試召戦争をするハメになっちまってな」

 

「戦争?・・・ルールでは戦争に関しては他のクラスの協力は制限されてたはずよね?」

 

「それは問題ねぇよ。戦闘さえしなければ大丈夫だ」

 

「・・・Cクラスに何をして欲しいわけ?」

 

「話すと長くなるんだがなーー」

 

恭二の説明は以下の通りである。

 

Fクラスとの前線での攻防の頃合いを見てBクラスはある協定の締結を持ちかける。

 

『午後の授業が終了する午後4時までに戦争の決着がつかなければ、その時点をもって休戦し、続きは翌日の午前9時から再開する。両クラスはその間戦争に関する行為をしてはならない』という旨だ。

 

休戦期間に入ったらCクラスには試召戦争の準備をしてもらい、Fクラスに漁夫の利を得ようとしていると錯覚させる。

 

一方、Bクラスは精鋭部隊を連れ、さらには教師をCクラスに呼び、『教師に教科書の応用問題を解説してもらい、Cクラスと共に聞く』。

 

FクラスがCクラスに訪れたところでFクラスの協定違反を宣言し、攻撃する。

 

重要なのは教師を解説という名目で動員することであり、これによってFクラスを一方的に非難することができる。

 

 

「話は分かったわ。でも」

 

友香は怪しむようにして目を細める。

 

「それで、ウチのクラスに何のメリットがあるわけ?」

 

「そこなんだがな、小山」

 

恭二に代わって義輝が言う。

 

「例えば、Bクラスが勝てば残るのは疲弊した兵隊とBクラス設備。Fクラスが勝てば疲弊した雑魚とBクラス設備が残る。つまり、どっちが勝とうがCクラスの眼前にはチャンスが転がることになる。どうだ?」

 

「・・・なるほどね、宍戸。でも良いのかしら?あなた達が勝てばウチと戦争することになるのよ?」

 

「その時はその時ってことで。Bクラスとしてはそれはそれで構わない。で?この話、受けてくれるか?」

 

「なんかあなたの掌の上で転がされているような気分だけど・・・いいわ、乗ってあげる。Cクラスの皆には私から説明するわ」

 

「おっ!話を分かってくれて助かるよ」

 

 

 

 

 

こうしてBクラスとCクラスの密約は成った。

 

その裏には双方の思惑が渦巻いているのだが。

 

何にしれろまた一歩、Bクラスの勝利は近づいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いよいよ次回から戦争突入です。


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VS Fクラス ー開戦ー

翌日。

 

開戦の時刻である午後1時に備え、Bクラスの面々は早めに昼食を終えそれぞれの部隊で段取りの最終確認を行っていた。

 

特に気合いが入っているのは最前線で戦う故に最も戦死する可能性が高い前線部隊である。

 

というのも、相手は格下とはいえDクラスでの戦闘経験があってこちらよりも召喚獣操作にアドバンテージがあるとみることができ、すでに隠す必要がなくなったFクラスの切り札こと姫路瑞希の投入が予想されるからである。

 

また、『学年トップクラスの成績を誇る彼女の召喚獣は腕輪を装備しているかもしれない』という義輝のアドバイスもあった。

 

腕輪とはある一定以上の得点をとった者に与えられる物で、それを装備している召喚獣は点数を消費することを代価に特殊能力を使うことができる、言うなればチートであり強者の特権である。

 

生徒達が知る一説では腕輪の付与基準は400点と言われているが何にせよ警戒しなければならない。

 

しかし、特殊能力がどういったものか分からないため、発動の兆候があったらその場を離れ回避行動をとる、ということぐらいしか対策がないのが実情である。

 

 

 

 

 

 

 

 

義輝はというと、前線部隊のメンバー達に対し、内心申し訳ない気持ちでいっぱいであった。

 

姫路瑞希という脅威を制御することができるであろうラブレターを恭二から譲り受けた彼ではあるが、秘密兵器をむやみやたらと使うべきではない、という恭二との話し合いもあり序盤で使うことができなくなった。

 

序盤に使えば大勢のFクラスにラブレターの存在を知られることになり、何らかの弊害が生じる恐れがあった。

 

よって義輝はラブレターを使うのは明日に決め、『今日の放課後、一人で屋上に来い。他の者を連れてきたり知られてしまったならラブレターを全校放送で読み上げる』と書いた紙を使って瑞希を呼び出し脅しをかけることにした。

 

もちろん、これは恭二の全面バックアップのもとに行われる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時はまさに開戦時刻。

 

「良いかお前ら!身の程知らずのバカ共を蹴散らすぞ!」

 

『『『おおーー!!!』』』

 

恭二の音頭と同時にチャイムが鳴り響き、開戦の火蓋は切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前線部隊が出陣してから一時間後、逐一送られてくる伝令

によって本陣にいる義輝達は細かな状況を知ることができている。

 

前線部隊第一陣は律子と真由美の仲良しコンビ率いる総合科目小隊、だったのだがFクラスは数学の長谷川教諭を連れており、一部の隊員は苦手な数学で戦うことを余儀なくされてしまった。

 

そして予測通りに瑞希が登場し、なんとこれが400点オーバー、想定していた最悪のパターンだった。

 

しかし、特殊能力発動の兆候が見られた場合の行動を事前に決めていたこともあり動揺は少なかった。

 

しかし、逃げ遅れた男子生徒2名が戦死し、立ち上がりを攻撃されたことで回避が僅かに遅れ律子の召喚獣が大ダメージを負うなどの被害が出てしまった。

 

その後瑞希は追い討ちすることなく後方に下がったため、こちらの部隊も第二陣と交代。

 

以後、時たま前に出てくる瑞希の脅威を牽制しつつも攻め膠着状態に。

 

だが相手に操作の面で分があるのと数で押しきられているためか少しずつ押されている。

 

そして現在に至るというわけである。

 

「姫路が出ているとは言えここまでは想定していた通りか。恭二、協定持ちかけるならそろそろじゃないか?」

 

「そうだな。じゃあ伊東、丸目。二人に使者を頼む。渡り廊下を突っ切る訳にもいかねぇから、二階を経由して行って来い。」

 

「分かった、行く」

 

「行って来る この大任を 果たすべく」

 

指名された二人は小走りで出ていく。

 

「さぁて、ここからが本番だな。破壊工作部隊も準備しろ。隙を見計らって教室を荒らして来い。」

 

「ああ、待って恭二。工作部隊に渡すものがあるんだっ

た」

 

そう言って義輝は胸ポケットから一枚の紙を取り出す。

 

「逆ラブレターってところかな。これを姫路の鞄に開けたらすぐ見えるように入れといてくれ」

 

それは瑞希を脅すための一通の手紙だった。(上記の内容)

 

 

恭二と義輝の策謀が漸く始まる。




戦況は義輝にとっても雄二にとっても想定していた通りってところです。

また、義輝らオリキャラ三人は幹部ゆえに滅多に前線には行きません。

故に今回のようにダイジェストとなりました。


そして、そろそろ姫路さん涙目な展開に入ります。






ご意見、感想などお待ちしております。


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VS Fクラス ー驕りと盲目ー

開戦から一時間あまりが経過した時点ではFクラス代表坂本雄二は戦況に満足していた。

 

Dクラス戦ではリーサルウェポンとして使った姫路瑞希というFクラスには過ぎたる存在によって決勝打を与え勝利をおさめたわけだが、今回のBクラス戦ではうって代わって開幕初戦からの即時投入を敢行した。

 

瑞希の存在をちらつかせることによって雄二の狙い通りにBクラスを牽制することに成功し、戦力差はあれども主導権はFクラスが握りつつあった。

 

しかし、これに関して一つだけ懸念事項があった。

 

それは瑞希の体力がもつのかということである。

 

瑞希は血気盛んなFクラスの男子生徒48人+男子にひけをとらない島田美波とは違って体が弱い。

 

振り分け試験の際にはそれが原因で急に体調を崩して途中退席をしてしまった程である。

 

彼女が倒れれば戦況は180°変わり逆にBクラスに攻めこまれてしまうであろうことは容易に想像がつく。

 

何らかの対策を打たねばならない、と雄二が考えていたところに、Bクラスから鶴の一声がかかった。

 

二名の使者によればBクラスは時限つきの休戦協定を結びたい、とのこと。

 

雄二にとっては願ってもない話だ。

 

彼は使者の申し出を承諾するとクラスに残っていた九人の近衛部隊を引き連れ会場であるBクラスに向かった。

 

 

この時の雄二の失敗を挙げるとすれば油断の一言につきる。

 

Dクラス戦から現在にいたるまで全てが雄二の思惑通りに進んでおり、相手を自分の掌の上で転がしている感覚に陥った結果、過度な自信が刷り込まれてしまった。

 

その驕り高ぶりが重大な過ちだったと気づくのはもう少し後の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休戦協定は騙し討ち防止の為に教師立ち会いのもと締結された。

 

 

 

雄二が教室に帰還した時、彼の策は綻び始め、同時に恭二と義輝の術中に自ら飛び込むことになってしまったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明久、ワシらは教室にもどるぞ」

 

Bクラスが瑞希の脅威を警戒しつつ戦っている最中、Fクラスで小隊を指揮していた木下秀吉は別の小隊を指揮している明久に提案する。

 

「ん?なんで?」

 

「Bクラスの代表じゃが・・・・あの根本らしい」

 

「・・・し、知らないわけないじゃないか」

 

明久は昨日の辱しめを思い出したのか苦い表情になる。

 

「ああ、そういえばお主は身をもって知っておったか。じゃがそれだけならまだしも宍戸義輝もおる。二人して良い噂は聞かんしの」

 

秀吉も表情を苦くする。

 

恭二と義輝に関してはあまり評判は良くない。

 

恭二には球技大会で相手に一服持った、というものや喧嘩に刃物を持ち出すというような害のあった噂がある。

 

一方、義輝には恭二の裏で糸を引いているという黒幕説、敵対した生徒を完膚なきまでに叩きのめした、中学の時に丸目恵にセクハラ紛いのことをした教師が義輝によって嵌められありもしない罪を着せられた、などの噂がある。

 

噂というのは伝播するにつれ尾ひれがついて誇大されていくものでありどこまてが真実なのかは分からない。

 

しかし警戒するに越したことはないのだ。

 

「じゃあ何かあるかもしれないからいったん戻っておいたほうが良さそうだね」

 

「雄二になにかがあるとは思えんが、念のためにの」

 

二人は瑞希に一言報告を入れるとFクラスの教室に引き返した。

 

 

 

こうして雄二が後悔し始めている頃、二人は破壊し尽くされたFクラス教室を目の当たりにすることになったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Fクラスが教室の惨状に頭を抱えているころ、Bクラスでは別の動きがあった。

 

『伝令!拉致工作部隊の鈴木と吉田がFクラス島田美波を捕獲に成功!こちらにもう少しで到着します!』

 

義輝達がクラスに残った部隊と共に今後の確認や話し合いをしている最中に飛び込んできた一報。

 

まさか本当に上手くいくとは思っていなかったらしく、提案した恭二まで驚いていた。

 

「おいおい、まさか本当に捕まるなんてな」

 

「恭二、どうやって捕まえさせたんだ?」

 

「昨日の情報提供に、島田美波が吉井のことが好きってのがあっただろ?だけど実際どうしたら良いか分からないかったからダメ元で『吉井が姫路瑞希のパンツつを見て鼻血が止まらなくなって保健室に運ばれた』っつう噂を流させたら・・・まさかの爆釣ってわけだ」

 

「本当に信じて保健室までノコノコ来たのか」

 

「ちょっと!アンタら、ウチは吉井の所に行きたいの!」

 

義輝らBクラスの一同が呆れかえっていると美波が連行されて来た。

 

教師を伴い、美波の召喚獣は鈴木と吉田の召喚獣に武器を突きつけられている状態である。

 

美波の召喚獣は武器を捨てさせられたのか丸腰である。

 

「うるせぇな。嘘に決まってんだろ。バカじゃねぇの?」

 

わめき散らす美波に恭二が毒づく。

 

「な!?なんですって!?この卑怯者!!早く解放しなさいよ!」

 

「・・・ちょっとはさぁ、自分の非に気づけよ」

 

呆れかえっていた義輝が美波を遮るように言う。

 

「少し考えれば嘘って分かるだろ。周囲に確認をとるとか。その様子じゃ耳にした瞬間ダッシュで保健室まで行ったんだろ?それに何と言っても身勝手な単独行動。本当の戦争だったらむざむざ死ぬか軍法会議にかけられるかだぞ」

 

「な、なによ。ウチが吉井の心配して悪いって言うの?」

 

「・・・ダメだ。話にならない。根本から理解してないな。鈴木、吉田。すまないがしばらくそのままでいてくれ」

 

時間の無駄だと判断した義輝は一方的に話をきる。

 

恋は盲目とは言うがここまで来ると異常だな、と思いつつ美波をあるタイミングまで放置することにしたのだった。

 

この美波の勝手な行動がFクラスにもたらす損害をまだ彼女は知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回からゲスっぽいことをしていくことになります。

脅迫とか脅迫とか脅迫とか。

つまり漸く本領発揮です。




ご意見、感想などお待ちしております。


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VS Fクラス ー義輝、始動ー

「さぁて、そろそろかな」

 

時間は午後3時52分。

 

休戦協定が有効になるまであと僅かという時まで待っていたのか義輝は席を立つ。

 

「恭二、ちょっくら捕虜連れて前線に行って来るな」

 

「別に良いが、無いとは思うが死ぬなよ」

 

「分かってるって・・・鈴木、吉田!そいつを連れて行くから一緒に来てくれ」

 

「はぁ・・・やっとかよ宍戸」

 

「そうだぞ参謀。こいつの罵詈雑言を相手をする身になってくれ」

 

長時間の美波の監視はよほど疲れたのか二人は口をこぼす。

 

彼らに同伴している教諭も心なしか安堵の表情を浮かべているように見える。

 

「ちょっと、何をする気よ!?」

 

「何って・・・・まあ喜べよ。お望み通りに解放してやるからさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、聞いてたよりも攻めこまれてるんだな」

 

義輝が美波らを引き連れ廊下に出ると、前線はBクラスの教室手前まで押し上げられており、双方当初よりも数こそ減ったものの人だかりができており、その中心で召喚獣による戦闘を繰り広げていた。

 

「はーいはーい、ちょっと道を開けてくれ」

 

味方の部隊を間を縫って義輝は前に出る。

 

いきなり割り込まれて困惑したのか義輝に勝負を挑む者はいなかった。

 

「あ、先生。一応最前線に来たので召喚させてください」

 

「ええ。承認します」

 

「許可もおりたところで・・・試獣召喚《サモン》」

 

義輝の宣言と同時に足元に魔方陣が浮かび上がり、それが放つ光の中から一体の召喚獣が飛び出す。

 

彼の召喚獣は戦国時代の武将が着用するような鎧兜に甲冑を装備しており、赤備えと呼ばれ恐れられた武田騎馬軍団の山県昌景を彷彿とさせる赤色で統一されている。

 

そして手にしている得物は穂先に十字の刃がついている十文字槍でこちらも柄が赤色である。

 

『Bクラス 宍戸義輝 英語W 184点』

 

点数が表示されると、義輝は鈴木・吉田と同じく美波の召喚獣に刃を突きつけさせる。

 

 

「じゃあFクラスの皆さんちょっと注目。誰かのことを探してたんじゃないか?」

 

『お、おい。島田だぞ!』

 

『やっぱり人質にとられていたのか』

 

Fクラスの一部に動揺が広がる。

 

「ちょっと小耳に挟んだんだけど、この島田ってFクラスの数学の主力なんだろ?このまま殺しても良いんだけど、Fクラスにとっては痛手だよな。そこで取引しー」

 

「総員突撃ぃーっ!」

 

「どうしてよっ!?」

 

義輝の言葉を遮り突然の命令を下す明久。

 

「あの島田さんは偽物だ!変装しているてー」

 

「薄情な。こいつは『吉井が姫路瑞希のパンツを見て鼻血が止まらなくなって保健室に運ばれた』っていうこちらの流言を信じて心配してノコノコ捕まりに来たんだぞ」

 

「命令撤回!これ本物の島田さんだ!」

 

義輝が明久の思考回路を理解できずに呆れながら真実を述べると明久は即時命令を撤回した。

 

「やっと話を聞いてくれるようだな。単刀直入に言おう。休戦協定が有効になるまであと数分。それまでただ待つって言うなら直前にこいつを殺す。返して欲しければ誰か代わりに自害してくれ。ちなみにこちらを攻撃しようものなら即座に殺すからな」

 

「な、何よそれ!?」

 

「卑怯じゃないか!!」

 

「嫌なら良いんだ。島田を見殺しにすることになるけどな。ほら、休戦まで後少しだろ?その間にお互い多数の犠牲が出たら馬鹿らしい。ここは丸くおさめよう」

 

「でもそれでは一方的にこちらが不利じゃぞ」

 

後方から様子を見ていた秀吉が出てきて輪に加わる。

 

「こっちだって休戦協定において最大限の譲歩をしたんだ。姫路への配慮をした俺達のフェア精神を評価して欲しいぐらいだ。次はそっちが譲歩しろよ・・・何なら、演劇部の木下だったっけ?お前が身代わりになるか?」

 

「な、なんじゃと!?」

 

「演劇とかでもよくあるだろ、誰かの身代わりになって死ぬ話が」

 

「それとこれとはわけが違うのじゃ!何を言っておる!」

 

「・・・・」

 

義輝は秀吉に対しいったん間をおく。

 

そして口角を吊り上げ、微笑みながら言う。

 

「おいおい。『男なら』女子を身を呈して守るぐらいの根性を見せろよ。だから女と間違われるんだよ」

 

「なっ!!?・・・・・本当に身代わりになれば島田を解放するんじゃろうな」

 

義輝の言葉に目を見開くと、悔しそうな顔をしながら睨み付ける秀吉。

 

「ちょっと秀吉!?何を言ってるんだよ!?」

 

「明久よ、ワシもあそこまでいいように言われたら退けぬ!ワシの男としての沽券に関わるのじゃ!試獣召喚《サモン》!」

 

「承認します」

 

余程頭にきたのだろうか。

 

秀吉は明久の制止をふりきり召喚獣を呼び出す。

 

胴着に袴姿の召喚獣が魔方陣から飛び出すと、即座に手にしていた薙刀を捨てさせる。

 

「んじゃ遠慮なく」

 

義輝は召喚獣を秀吉の召喚獣の前に移動させ十文字槍を勢いよく突きださせる。

 

無抵抗な秀吉の召喚獣はあっけなく首を斬り飛ばされてしまう。

 

『Bクラス 宍戸義輝 英語W 189点 』

 

VS

 

『Fクラス 木下秀吉 英語W 0点』

 

 

 

 

 

「・・・これで満足じゃろ!?早く島田を解放せんか!」

 

「まあ、待て。4時まで後36秒だ。それまで待てよ。そしたら解放するから」

 

義輝は詰め寄る秀吉腕時計を見せながら言う。

 

「30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7ー」

 

義輝のカウントダウンは粛々と行われーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ているように見えた。

 

 

「吉田、鈴木!殺せ!」

 

「な!?」

 

突然、義輝はカウントダウンを無視して二人に命令した。

 

二人は一瞬驚きはするもののすぐに得物を美波の召喚獣に突き立てる。

 

『Fクラス 島田美波 英語W 0点』

 

 

それと同時に午後の授業の全てを終了することを告げるチャイムが鳴り響いた。

 

「ちょっとアンタ何でなのよ!?木下と約束してたじゃない」

 

「代わりに死ねば島田を解放するとは言ったけどな、無事に解放するとは一言も言ってないぞ。あくまでも拘束状態から解放しただけ。嘘は言ってない。ちょっとは考えろよ。その場の空気や感情のままに行動するなんてバカのすることだぞ」

 

「な、何だよ!これのどこが丸くおさまってるんだよ」

 

美波と共に明久が詰め寄る。

 

「バカは否定しないのか。少なくともBクラスにとっては丸くおさまってんだよ。じゃあ続きはまた明日。木下、犬死にご苦労さーん」

 

義輝は秀吉に清々しい爽やかな笑顔を向ける。

 

「お、おのれぇぇ!!」

 

激昂する秀吉達FクラスをよそにBクラスは教室へと戻って行った。

 




主人公の初戦闘がまさかの騙し打ち。

コンプレックスを利用し刺激するという。

ちょっと無理があったかもしれませんが比較的直情的で思慮にかける人間が多いFクラスならありえると思いました。

脅迫は多分次回か次次回です。



ご意見、感想などお待ちしております。


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VS Fクラス ー"お勉強会"ー

「丸、Fクラスの連中の様子は?」

 

「全員、教室に帰った」

 

義輝が教室のドアの近くにいた恵に尋ねると恵はドアから顔をだして確認した。

 

「それにしても・・・宍戸君も代表にひけをとらないぐらいやるのね」

 

先程の義輝を見ていた律子が苦笑いする。

 

「いやいや、岩下。さすがに恭二には敵わないって。それに俺は一切嘘をついていない。騙し打ちにはなったけど騙してはいないよ」

 

「はは。ものは言いようね」

 

真由美も輪に加わる。

 

「でも、ああいうのはされたら嫌だけどやる側として見ている分には逆にスカッとするわ」

 

「真由美、素質ありそう」

 

「ちょっと丸ちゃん!」

 

恵が真由美を茶化す。

 

「おい、いつまで喋ってんだ。早くCクラスに行くぞ」

 

四人が和んでいると恭二が次の策への移行を告げる。

 

「あ、そうだったそうだった。丁度岩下と菊入がいるし、数学で良いかな。二人は補充テストも受けてたよな。よし、他に何人か数学得意な奴を連れて先にCクラスに行っててくれ。勉強道具を持っていくのを忘れるな。俺は長谷川先生を呼んでくる」

 

「え?何でなの?」

 

律子は真由美と共に首をかしげる。

 

「ああ、説明してなかったな。すまない。・・・まあちょっとした"お勉強会"を開こうと思ってね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Bクラス参謀宍戸義輝の策謀によりFクラス島田美波及び木下秀吉が戦死。

 

休戦協定が有効になって数分後。

 

最前線から帰還したFクラスが持ち帰った一報は雄二にとって想定外以外の何ものでもなかった。

 

失った戦力はあまりにも大きい。

 

美波は他の教科は言語の壁のおかげでからっきしダメではあるが数学だけは例外でBクラス上位レベルの点数を誇る。

 

理系科目を苦手とする生徒の多いBクラス相手には姫路と共にストッパーのような存在だった。

 

一方、秀吉はというと点数こそ他のFクラス生徒と大差ないものの、彼にはいろんな意味で人望があり人気者であると同時に優秀な指揮官でもあった。

 

ここまでやってこれたのは秀吉の的確な指示のおかげでもあると言えるぐらいである。

 

 

「くそっ!!」

 

雄二は頭を抱える。

 

設備の破壊による補充テストの妨害。

 

協定によりいくら設備を復旧させたとしても明日の開戦までテストはお預け。

 

姫路は多少消耗したせいで数学で腕輪の能力が使えない。

 

Bクラスを押し込むことにほぼ成功したものの多数の犠牲を払うことになってしまった。

 

優秀な指揮官、戦力の喪失。

 

全体的に見ればFクラスの被害は想定よりも多大なもの

になっているではないか。

 

これで残っているカードは操作技術に長ける観察処分者の明久、学年トップクラスの戦力の瑞希、そしてーー

 

雄二が考えを整理していると後ろからムッツリーニこと土屋康太が袖を引っ張る。

 

「ん?どうしたんだ?」

 

「・・・・・Cクラスが戦争の準備をしている」

 

「Cクラスが?・・・まさか」

 

学年一、いや全校一のバカと称される明久でも狙いに気付くことができたらしい。

 

「ああ。奴ら漁夫の利を狙うつもりらしいな。Fクラスが勝とうがBクラスが勝とうが弱った隙を狙えば関係ないからな」

 

問題がまた一つ増えてしまった。

 

これでは勝っても瞬く間にやられてしまう。

 

雄二がは即座に頭を回転させる。

 

そして彼の頭脳は二つの策を打ち出した。

 

「・・・手がないことはない。ムッツリーニはここにいてくれ。そして秀吉が補習から帰って来たら伝えたいことがあるから待つように言ってくれ。明久、まだ教室に残っている奴を連れて一緒に来い。Cクラスと協定を結びに行くぞ」

 

「分かった。・・・あ、姫路さん!姫路さんも一緒に来てくれない?高得点者がいると心強いし」

 

「わ、私ですか?・・・すいません。ちょっと今は体調が・・・・」

 

明久が瑞希に呼び掛けると彼女は開けていた鞄を急いで閉じる。

 

「?・・・そっか。じゃあ須川君達を拾って行こう、雄二」

 

「ああ」

 

明久は瑞希の様子が少しおかしい、と思いつつも深く考えはせずに教室を出てCクラスへと向かった。

 

 

 

この時、明久と雄二はそれぞれミスを犯してしまっていた。

 

明久はもう少し瑞希のことを気にかけるべきだったし、雄二はもう少し思慮に深くなるべきだったのだ。

 

まあ雄二に関しては彼の秘策に対する絶対的な自信のせいだったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼する。Fクラス代表の坂本だがCクラスと不可侵協定を締結しに来た」

 

Cクラス教室のドアを開け中に入り開口一番に要件を告げる雄二。

 

「協定ですって?」

 

いぶかしげに雄二らFクラス一行を見る友香。

 

教室内では前方に生徒が集まっており、長谷川教諭による簡易的な授業を受けていたのだろうか、黒板には複雑な数式が書かれていた。

 

「ふーん。私は何とも思わないけど、彼らは違うんじゃない?特に・・・ねぇ、お二人さん?」

 

友香はうっすらと笑みを浮かべながらCクラス生徒達の集団に目を向ける。

 

するとまるで打ち合わせをしていたかのように生徒達がその場を離れていく。

 

するとーー

 

「いやぁ、酷いじゃないか、Fクラスの皆さん。こちらが譲歩に譲歩を重ねた協定を破るなんて。なあ、恭二?」

 

「ホントだぜ、義輝。戦争に関することは一切禁止っつったのによ」

 

彼らの輪の中心から現れたのは義輝らBクラスの生徒達。

 

「協定違反はペナルティ、そうですよね、長谷川先生?」

 

義輝が長谷川教諭に尋ねる。

 

「ええ、そのようですね」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!それを言うなら君達Bクラスだって何でCクラスにー」

 

明久が疑問を投げかける。

 

「何でって・・・BクラスとCクラスでクラス間交流の一環として有志で勉強会を開くことになってな。記念すべき第一回の今日は長谷川先生に教科書の難しい応用問題の解説をお願いしたんだよ。で、俺達が解説を聞いてたところにお前らがCクラスと協定を結びに来た。これってどう考えてもお前らが悪いよな?」

 

「私もそう聞いていますよ」

 

義輝の言葉に長谷川教諭が同意する。

 

「何にせよ協定違反はそっちだからな?お前ら、やれ!」

 

恭二が号令をかけFクラス一行を取り囲もうとする。

 

「違う!これはー」

 

「明久!無駄だ!この状況じゃあ言い逃れはできねぇ!とにかく逃げるぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局自ら罠に突っ込んでしまったFクラスは命からがら逃げ延びたが須川ら数人が戦死してしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 




あくまでも"お勉強会"をしてただけですからね。

ただし記念すべき第一回にして最終回ですが。

原作でも雄二は何で罠に気づかなかったのやら。

自分はそこは雄二の慢心とムッツリーニ奇襲に対する自信と解釈しました。

ご意見、感想などお待ちしております。


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VS Fクラス ー脅迫ー

明久や雄二達がBクラスとCクラスによって策に嵌められ命からがら逃げ帰って来た頃、Fクラス主力である姫路瑞希は屋上にいた。

 

昨日はクラスメートに自慢の料理を振る舞い今後について語り合った憩いの場であったこの場所だが、今の瑞希にとっては閻魔の沙汰を待つ場所に等しいであろう。

 

直前にトラブルはあったものの、協定通りに休戦になってから瑞希が教室に戻るとそこは瓦礫、もとい破壊された卓袱台の山でさらには筆記用具までもが破壊されていた。

 

Bクラスはなんて酷いことをするのだろう、と思いながら自身の荷物を整理していたのだがその時鞄から見つかった一通の手紙。

 

読んだ時には思わず目眩がして倒れてしまいそうだった。

 

勇気を出して悩みに悩んで想い人に宛て書いた一通のラブレター。

 

乙女の純粋な恋心を書き記したそれが他人の手に渡ってしまったのである。

 

それだけではなく指示に従わねば内容を多くの人に暴露されてしまう。

 

言うまでもなく最も瑞希が恐れていることだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっ、流石優等生。お早い到着じゃねぇか」

 

「Fクラスにはもったいないってつくづく思うね。あ、一刀、すまんが誰か来ないか入り口で見張っててくれ」

 

手紙の主が来たらしい。

 

瑞希は震えながら声のした方を振り向く。

 

そこにいたのは男子3人女子1人で、先ほど秀吉と美波を葬り去った義輝、ニヤニヤしながらこちらを見ている恭二、入り口に仁王立ちしている一刀、義輝の側にいる無表情の恵だった。

 

「姫路さんよぉ、ここにいるってことは義輝のラブレターを読んでくれたんだろ?」

 

「おい恭二!」

 

「ラブレター、違う」

 

恭二が義輝を茶化しながら切り出す。

 

「そ、 そうです。・・・あ、あの!あのお手紙は大事な物なんです。お願いします、返してください!」

 

「おいおい。こんな所に呼び出すんだから素直に返すわけないに決まってんだろが。優等生の頭の中はお花畑か?」

 

「そんな・・・」

 

「まあまあ恭二。・・・さて、姫路。探し物はこれだよな?」

 

義輝はポケットの中から便箋を取り出す。

 

「は、はい」

 

「ちなみに中身は読んでないからな。プライバシーぐらいは弁えているつもりだよ。ただし、こちらの要求に応えなければそこら辺の分別がつかなくなるかもしれないけどな」

 

「要求、ですか?」

 

瑞希は義輝の言葉に一度は顔を明るくするもののすぐに曇らせる。

 

「なぁに、明日の戦争でお前は何もしないだけで良い。前線に出てもいいが戦闘はするなよ。」

 

勝ち誇った顔で恭二が言う。

 

「恭二の捕捉をさせてもらうと、戦闘に参加したりこのことを教師みたいな第三者に告げ口したりして無理やりラブレターを回収しようとしたら、刺し違える形になってでも内容を全校にばらす。お仲間に言っても同じ。とにかく、こちらに何らかの害が及んだり、俺と恭二が要求通りに行動してないと判断したら・・・・ってことだ。俺達は戦争で得して姫路にはラブレターが帰ってくる、Win-Winの関係って奴だ」

 

「・・・本当・・・・ですか?」

 

「本当だ。こちらの要求を呑めばこれは返す。木下やあの五月蝿い奴にやったようなことはしないから安心しろって」

 

「・・・分かりました」

 

泣き目で俯きながら答えを出す瑞希。

 

「話のわかる優等生で助かったぜ。しかしあれだな。自分の利益の為とはいえ仲間を裏切るなんて、とんだ卑怯者じゃねぇか!じゃ、そういうことで頼むぜ、姫路さんよ!」

 

恭二は瑞希を罵倒すると挑発するように瑞希の肩に手を置く。

 

すると、瑞希は堪えきれなくなったのかその場に泣き崩れる。

 

「あーあ、恭二が泣かせた」

 

「お前も同罪だっての。じゃ、帰るか」

 

瑞希などには目もくれず恭二は義輝と共に階段の方へ引き返す。

 

傍観していた恵も後に続こうとしていた。

 

「ま・・・・丸目さん・・・でしたよね?」

 

瑞希が泣きながら恵を呼び止める。

 

「何?」

 

「おーい、丸。帰るぞ」

 

「皆、先に行って・・・・・・それで、何?」

 

義輝達を先に帰らせると恵は瑞希に近寄る。

 

「何で・・・何であんな酷いことをする人と一緒にいるんですか?」

 

「?」

 

「1年生の時から度々見かけてますけど、丸目さん、いつも宍戸君と一緒にいますよね?」

 

瑞希は不思議だった。

 

悪い評判もあるーーましてや今回のように乙女の純情を土足で踏みにじるようなことを平気でする義輝の側にいる恵。

 

同じ女性としてなんとも理解しがたいのだ。

 

普段、このようなことを他人に尋ねたりはしない瑞希だが気が動転しているのだろうか。

 

「・・・」

 

恵は少し瑞希を見つめると、瑞希と視線を合わせるようにしゃがみ、胸ポケットからハンカチを取り出す。

 

そして瑞希の頬を流れる涙を拭いていく。

 

「えっ・・・・あ、あの」

 

「義輝、味方には、優しい。敵には、厳しいだけ」

淡々と恵みは言う。

 

「卑怯なの、Fクラスも、同じ。善と悪、立場で、違う」

 

「・・・・・」

 

恵は瑞希の涙が止まったのを確認するとハンカチをしまい立ち上がる。

 

「明日、容赦しない」

 

そのまま瑞希の前から去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ようやく一日目が終わり戦争は折り返し地点へ。

 

しかし、双方の策はまだ出尽くしてはいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




何か無理やりでしたね。

文才が欲しいです。

まあ正義の反対は別の正義ってことですね。


さて、脅迫はしましたが序の口です。

これから終戦まで、義輝と恭二の合策は続きます。


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VS Fクラス ー看破、そして倍返しへ?ー

ー翌日ー

 

時刻は午前8時30分を過ぎ、昨日の戦争で戦死してしまった者は浮かぬ顔で補習に備え、生ける者は戦闘再開に備え段取りの再確認などをして時間を潰していた。

 

生ける者達の表情は明るい。

 

相手のFクラスは多数の兵隊の戦死に加え、義輝の騙し討ちによって優秀な指揮官と数学の脅威、各一名を失い、目に見える脅威は瑞希のみ。

 

状況は明らかにBクラスに有利である。

 

しかし、だからと言って驕りたかぶり油断するほど彼らは愚かではない。

 

窮鼠猫を噛むと言うが相手のFクラスは猫どころか王たる獅子、Aクラスを噛み殺さんと立ち上がった良い意味でも悪い意味でも馬鹿である。

 

何をするのか分からない、というのは常に念頭に置いておかなければならない。

 

まあ彼らの余裕は今の状況を作り上げたクラスの王たる恭二と参謀義輝への信頼の表れなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「拉致工作部隊の皆はちょっと時間は早いが理系科目教師の確保に向かってくれ。近衛部隊の皆は例のブツを忘れずに着けてくれ」

 

最終確認のためにそれぞれの部隊に指示を飛ばす義輝。

 

教室内を回って指示を出し終え、恭二と打ち合わせをしようとした彼の目にある者達が目に入った。

 

Cクラスの方の廊下から現れた三人はそのまま人目を避けるかのように小走りで去って行った。

 

当然、行きもBクラス前を通ったのだろうが備えに熱中するあまり気づかなかったようである。

 

そして三人というのは昨日BクラスとCクラスの"お勉強会"にノコノコとやって来たFクラス代表坂本雄二と観察処分者吉井明久、それとーー

 

「木下・・・か?」

 

一緒にいる面子からして秀吉で間違いないのだろうが彼はなぜか女子の制服を着ていた。

 

姉の木下優子かと間違えるほど瓜二つであるため、義輝は少し戸惑った。

 

「なあ恭二。さっきの見たか?」

 

「あ?何を?」

 

「さっきCクラスとDクラスの方からFクラスの坂本と吉井、そしてなぜか女子の制服を着た木下弟が走って来て教室前を通って行ったんだ」

 

「は?連中が?・・・何をしたーー」

 

『皆!!BクラスとFクラスなんてどうでも良いわ!!Aクラスと戦争よ!!』

 

「ーーのか分かったな」

 

教室に飛び込んで来たCクラス代表の友香の怒号に恭二は顔を歪める。

 

「・・・なるほど。自分達が勝った時のための保険ってところか。」

 

「ああ。とにかく行ってみるか」

 

義輝と恭二はCクラスへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと失礼。何やら不穏な空気になってるな。・・・小山、顔が怖いって」

 

「そうだぞ友香。こっちまで聞こえてたぞ」

 

教室に二人が入ると高揚した友香らCクラスの視線が突き刺さる。

 

「どうしたのって決まってるでしょ!?Aクラス、木下優子を叩きのめすのよ!!」

 

「おいおい。俺らが疲弊したのを叩くんじゃなかったのかよ。ちったぁ冷静になれっての」

 

「そうそう、落ち着けよ小山。」

 

顔を真っ赤にしてわめき散らす友香をなだめようとする二人。

 

「これが落ち着いていられるわけないわよ!!木下・・・ちょっと頭が良いからって私達のことを豚呼ばわりして!これほどの屈辱はーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着けって言ってんだろうが!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怒りのままに捲し立てる友香に対し、義輝は右手で黒板を強く叩きながら先程の友香をはるかに上回る怒号を飛ばす。

 

義輝の喝に友香は一瞬肩を震わせる。

 

「感情のままに行動するだけじゃ動物だろ。小山は代表なんだし尚更冷静にならないとダメだろ」

 

「・・・そ、そうね」

 

「とにかく友香、事実確認をするぞ」

 

友香が落ち着いたところで恭二は教室を出ようとドアに手をかける。

 

「ちょっと恭二。どこに行くのよ?」

 

「決まってんだろ。お前が馬鹿にされたって言う木下優子のところだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木下優子は目眩がした。

 

クズと名高い恭二とその片割れ義輝が来たのを見た時は多少警戒はしたがそんなものはすぐに吹き飛んだ。

 

というのも、一流ホテル顔負けの豪華絢爛なAクラス教室に来た二人が連れてきたCクラス代表の友香が言うには先程自分がCクラス教室に赴いて豚だの豚小屋がお似合いだの酷い暴言を吐いたと言うのだ。

 

当然、自分はそんなことはしていないしすることなど絶対にない。

 

今朝登校して教室に入ってから外には一歩たりとも出ていない。

 

考えられる可能性は一つしかなかった。

 

「あのね、小山さん。それ、やったのは弟の秀吉よ」

 

「お、弟!?」

 

「アタシには双子の弟がいてね、ホントにそっくりなの。それにあいつは演劇部だし声色も自由自在。アタシに成り済ますなんて簡単よ」

 

「ちなみにだな、小山。俺は小山がAクラスに戦争をしかけるって叫んだ直前にFクラスの坂本と吉井、そして女装した木下弟を見たぞ。あいつらCクラスの方からFクラスの方に走って行ってたから間違いない」

 

義輝が優子の言葉にフォローを入れる。

 

「え?じゃあ・・・私達はFクラスに騙されて無意味な戦争をするところだったのね・・・・」

 

「本当にごめんなさい。うちの愚弟があなた達を傷つけてしまうなんて」

 

うなだれる友香に対し優子は頭を下げる。

 

「やれやれ。やっと誤解が解けたか。」

 

義輝は苦笑いする。

 

「宍戸君、根本君。ありがとう。ーーーと言いたいところだけど、第三者であるBクラスが仲裁に入った理由が分からないんだけど?」

 

謝罪モードから即切り替えたのか優子は疑問を投げかける。

 

「あなた達には何のメリットもないはずよね?むしろCクラスがAクラスに矛先を向けてくれていたら戦争の後にはBクラスを攻めることはなくなるはず。何か裏があるとしか思えないんだけど?」

 

「お、痛いところ突いてくるな。流石Aクラス」

 

「裏って言っても何もねぇよ。Fクラスと戦争してる身にとっては奴らの思い通りに事が進むのは癪なだけだ。Fクラスは俺達に勝った後にAクラスに挑むらしいからその布石だったんだろ。・・・ただ、まあ、言うとすれば・・・Aクラスは戦争回避ができたってことでBクラスに借りができたってことになるよなぁ?」

 

ニタリ、と恭二は笑みを浮かべる。

 

「何も無いと言いながら結局はあるんじゃない。戦争をしなくて済んだことはありがたいけど、それとこれとは話が別ーー」

 

「・・・・別にいい」

 

「え?代表。いいの?」

 

奥から出てきたのはAクラス代表にして二年生の頂点に立つ学年主席霧島翔子。

 

凛とした様が王者の風格をうかがわせる。

 

「・・・・その変わり条件がある」

 

「条件?なんだよAクラス代表様」

 

恭二は首を傾げる。

 

「・・・・あなた達が勝っても、FクラスにはAクラスに挑ませてほしい」

 

「ちょっと代表!」

 

「・・・・優子、私達Aクラスは他のクラスの挑戦を受ける義務がある。」

 

優子に言い聞かせる翔子。

 

「・・・・そうしてくれたらAクラスは今後一回だけBクラスの要求に可能な限り応える」

 

「引き分けってことにしろってか?」

 

「まあでも敗北を引き分けにする為に条件を突きつければ変わらないだろ。俺は良いと思うぞ、恭二」

 

「・・・ちっ。分かった、それで構わねぇ」

 

恭二はつまらなそうに舌打ちしつつも了承する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、棚ぼただったな恭二」

 

Aクラスでのやり取りを終えて教室に戻って来た二人。

 

あの後さらに友香が借りを返すという形でFクラスとの戦争終了後に仕掛けはしないとの言葉をもらった。

 

Aクラスとの協約、Cクラスとの不可侵協定は大きいものである(もちろん、この二つは文書化する正式なもの)。

 

「・・・なあ、義輝」

 

「どうした?」

 

「俺としては自分の彼女をとことんコケにされておもしろくねぇんだよ」

 

「お、言うねぇ」

 

「この落とし前は必ずつけさせてやる」

 

恭二は邪悪な笑みを浮かべ、義輝と打ち合わせをするのだった。

 

 

 

 

 

 




更新が遅くなりました。

申し訳ありません。



CクラスをFクラスは扇動したわけですが、教室の場所的に考えて気づくことはできるんじゃないかなと。

という考えのもとやってみました。

さて、次回からは流行りのドラマみたいに倍返し!・・するかも?

ご意見、感想などお待ちしております。


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VS Fクラス ー再開そして災害ー

時刻は午前9時丁度となり、始業のチャイムと共に戦争が再開された。

 

開始地点は本来ならばBクラス教室前からなのだが、義輝と恭二の指示でBクラスの兵隊は最初から教室内に陣取ることになり、再開早々にして籠城戦という形になっている。

 

籠城戦というものは大抵の場合、劣勢の軍が多勢の軍に対して展開するものなのだが今回は様相が異なる。

 

始めFクラスは劣勢なぞなんのその、と果敢にBクラス教室内に侵入し攻め込もうとしたのだが、教室の狭い入り口から入ったとたんに多数のBクラス生に囲まれてしまい、Bクラスお得意の文系科目で挑まれ敢えなく戦死、閻魔の沙汰なくして補習という名の地獄へ落ちることに。

 

最初の一人が戦死し、鬼の補習担当教師西村宗一に連れ去られる様を見たFクラスは流石に自重、ただただにらみ合いを続けるしかない状態になってしまっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吉井明久は戸惑っていた。

 

雄二から下された命令は『何としても敵をBクラスに閉じ込めろ』、であったのだが敵のBクラスは押し込まれるどころか自らBクラス教室に入って行った。

 

それを追撃しようと本丸一番槍を果たした工藤信也は一瞬でやられてしまったし、それを見たクラスメートは攻撃に積極性を欠いてしまうことになってしまった。

 

それだけではない。

 

昨日前線指揮を担っていた秀吉が戦死してしまったことでクラスの士気も低下しなおかつ指揮系統がみだれ上手く機能していないようである。

 

そして、何と言っても瑞希の様子がおかしい。

 

雄二より直々に総司令官に任ぜられた彼女だが、昨日とうって変わって一切の指示を出すことなく、加えて戦闘に参加しようとしないのだ。

 

今のような状態において瑞希のような存在が突破口になりうるのだが、当の本人は涙目でおろおろしているだけである。

 

よって消去法で元々小隊を指揮していた明久が代わりに指揮をしなければならないのだがこれがまた難しい。

 

下手に攻めれば工藤の二の舞になりかねないし、昨日みたいに何かを企んでいる可能性が高い。

 

どうしたものか、と明久は悩んでいた。

 

 

 

 

その時である。

 

「おーい、一刀。ちょっと遊んできてくれ」

 

教室内から憎き義輝の声が聞こえ、すぐに糸目で長身の生徒が入り口に現れる。

 

宣戦布告の際に明久の退路を塞いでいただけあって明久はその顔を覚えていたが、それよりも気になったのが一刀は古典担当の竹中教諭を連れているだけで他の生徒をはおらず単騎で現れたことである。

 

「あれ、一人なの?」

 

明久は疑問を口にする。

 

(もしかして遊ばれているのかな?)

 

などと呑気な考えしか浮かばなかった。

 

「三人に 古典勝負 申し込む」

 

「承認します」

 

一刀は近場にいた田中、武藤、西村らを指差すと開口一番に戦闘を申し込む。

 

「試獣召喚《サモン》」

 

間髪入れずに一刀は先に召喚を始める。

 

「はぁ?なんだよいきなり」

 

「一人って俺達のこと舐めすぎだろ!」

 

「落ち着けお前ら。今度はこっちが頭数で勝っている。早くコイツを倒して憎きリア充を殲滅する足掛かりにするぞ!須川会長の仇討ちだ!」

 

「「「試獣召喚《サモン》!!!」」」

 

三人が同時に魔方陣を展開させる。

 

だが、それよりも早く召喚を始めていた一刀の召喚獣が先に魔方陣から飛び出す。

 

義輝の召喚獣と同じく鎧兜の色は赤色で統一された赤備で、剣豪佐々木小次郎の愛刀物干し竿を思わせるような長刀を手にしている。

 

 

そして、召喚獣の右腕には

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『Bクラス 伊東一刀 古典 711点』

 

腕輪があった。

 

『『『『はぁ!?』』』』

 

表示されたあり得ない点数に双方の軍から驚きの声が上がる。

 

教師に匹敵する点数に召喚を承認した竹中教諭の頬が若干ひきつっていたのだが誰も気づきはしない。

 

「古典なら 文月無双 我無敵」

 

一刀が呟くと召喚獣は長刀を構え、攻撃態勢に入る。

 

それと同時に腕輪が光りだす。

 

 

「ま、まずい!!」

 

桁外れな点数に呆気にとられていた明久は早く我に返ると竹中教諭のもとまでダッシュで駆け寄り、

 

「・・・ヅラ、ずれてますよ」

 

「っ!!し、少々席を外します!」

 

竹中教諭の泣き所を囁く。

 

すると竹中教諭は頭を押さえながら一目散に駆け出し戦線から離脱してしまった。

 

「無念なり 嗚呼無念なり 無念なり・・・」

 

「まあ、仕方がないって」

 

幹部故に前線で戦う機会に恵まれずようやく活躍できると内心て喜んでいたらしい一刀は突然のアクシデントに肩を落としながら引き返す。

そんな一刀に義輝は苦笑いしながら励ましの言葉を贈る。

 

「よし、これでこっちは少し楽になったはずだ!皆、一気になだれ込むんだ!」

 

明久の一声でFクラス生がBクラス教室内に押し入る。

 

Bクラスは一気に入り込まれたことで対応が遅れ侵入を許してしまった。

 

 

 

 

 

 

それを見届けると明久は瑞希の近くへ。

 

「姫路さん、どうかしたの?」

 

「そ、その、なんでもないですっ」

 

明久が問いかけると瑞希は大きく首を降って否定する。

「そうは見えないよ。なにかあったらーー」

 

明久は話ながら瑞希が先程から視線を向けている方へと目をやる。

 

目に入ったのは見覚えのある便箋を手にニヤニヤしながらこちらを見ている義輝と恭二であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、奴らこっちを見てるな。やっと気づいたか。」

 

「んじゃ、そろそろ始めるか、恭二」

 

明久と瑞希が自分達を見ていることに気づいた義輝と恭二は徐に腰を上げる。

 

「はーい、皆。ちょっとこっちに注目してくれ」

 

義輝が柏手をうちながら双方に喚起する。

 

「Bクラスには朗報、Fクラスに悲報がある。まず、この便箋を見てくれ」

 

義輝が便箋を掲げて見せる。

 

「この便箋は今この場にいる誰かさんの物だが、中身はなんとラブレター!」

 

恭二が続ける。

 

「その誰かさんってのがFクラスの裏切り者でな、このラブレターとひきかえにBクラスに味方してくれることになっててな。・・・でもな、もうその必要もなくなったようだから今から朗読会を始めようと思う」

恭二の言葉に周囲がざわつく。

 

もっとも、その大半がFクラスのもので、ある程度あたりをつけていたらしいBクラスはたいして驚きはしなかった。

 

「ち、ちょっと待ってください、根本君!!約束が違うじゃないですか!!」

 

血相を変えた瑞希が前に出て恭二に抗議する。

 

「あらら、カミングアウトするとはな。確かに、戦争で何もしなければこれは返すと言ったけど、俺達が他人にバラしたと判断したら即座に読み上げるとも言ったよな。なあ、義輝?」

 

「そうそう。ダメじゃないか、姫路。そこにいる吉井にバラすなんて」

 

「ま、待ってよ!よくわからないけど、姫路さんは別にバラしたわけじゃない!僕が勝手に気づいただけだ!」

 

「嘘つきは皆そう言うんだよ。こちらとしては一切約束を違えていない。落ち度があるのは今までFクラスを裏切ってFクラスを敗北に導びかんと協力してくれた姫路の方だ」

 

あえて強調する義輝。

 

「そ、そんな・・・」

 

瑞希の目にたまっていた涙が溢れだす。

「あーあ、義輝が泣かせた」

 

「お前、昨日のこと根に持ってるのかよ、恭二。・・・まあ、それはともかくとして、俺はエリクサーは最後までとっておくタイプなんだけど、あえて今使ってもいい。でも、流石に良心が痛むから、今から言う条件を呑んでくれたらこのラブレターは今すぐに、読み上げることなく返してやる。」

 

「ま、また・・・ですか・・・」

 

嗚咽混じりに姫路が言う。

 

「単純明快。今すぐに棄権してくれ。この戦場から離脱して補習を受けて貰えればそれでいい」

 

「ちょっと待ってください、宍戸君」

 

見かねた英語の遠藤教諭が止めに入る。

 

「いくらなんでもそれは酷すぎるかと。学校としてはそれは認められません」

 

同じ女性として看過できない、といったところだろうか。

 

『そ、そうだ卑怯者!!』

 

『姫路さんに謝れ!!』

 

遠藤教諭の言葉にFクラスの方から罵声が飛ぶ。

 

「先生、学校側は消火器の使用、スプリンクラーの破壊、窓ガラスの破壊などの犯罪行為という、怪我人がでてもおかしくなかったFクラスの策を容認したんですから、このような取引は規制するんじゃ筋が通りませんよ」

 

「・・・・」

 

押し黙る遠藤教諭。

 

「沈黙は肯定、ということですね。さて、姫路。どうする?」

 

「・・・本当に・・本当に返してくれるんですよね?」

 

「やるべきことをやったら、な」

 

「・・・・え、遠藤先生。私、棄権します」

 

「姫路さん!」

 

「ごめんなさい、吉井君、皆さん・・・」

 

「・・・・・納得はいきませんが承認します。宍戸君、直ちに返却をしてください」

 

「分かってますよ。ほら」

 

義輝が便箋を投げ捨てると、それを瑞希がすぐに拾う。

 

そしてそのまま脇目もふらずに駆け出し教室を出ていってしまった。

 

「宍戸君・・・ただではすまさないよ」

 

明久は義輝を睨み付ける。

 

「おいおい。俺は恭二が拾った落とし物をちゃんと返しただけだって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原本を」

 

「げ、原本!?・・・まさか」

 

義輝はポケットから折り畳まれた紙を取り出す。

 

「義輝はマメな奴でな。もしまたなくした時のために落とし主が困らないようにコピーをとっておいたんだとよ。優しいねぇ」

 

恭二が笑う。

 

「き、君達はどこまで卑怯なんだ!!」

 

「はぁ。・・・・吉井、言っただろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリクサーは最後までとっておくタイプだって」

 

義輝も笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ひどい。酷すぎる。

でも約束はきちんと守る義輝君です。

ちなみに伊東は土屋と同じく一教科特化です。


筆者はエリクサーをとっておいて結局は使わずに終わるタイプです。

バイオだったらマグナム弾や救急スプレーもあまります(笑)




さて、そろそろフィニッシュです。





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VS Fクラス ー裸の王様ー

ついに決着!


「み、皆!とりあえずここはいったん撤退だ!」

 

瑞希というFクラス最高戦力にして最高抑止力が義輝と恭二の外道ともいえる策略の前に消え去った今、明久達Fクラスを守る壁は崩壊。

 

このままではBクラスの精兵達の攻撃が激しくなるのは目に見えている。

 

ただでさえ少なくなった戦力を減らしてしまっては勝ちは遠退くばかりである。

 

そのような事態を防ぐために明久は撤退の命令を下す。

 

「おっと、逃げようなんて思うなよ。一人でも逃げたら暴露大会だからな。まあ俺達はそれでも構わねぇけどな」

 

「恭二の言う通りだ。せっかく来たんだ。昨日みたいなもてなしはできないけどゆっくりして行けよ、吉井」

 

命令に続けて殿は僕がやる、と明久は言おうとしたのだが義輝と恭二はそれを制しFクラスの退路を断つ。

 

「さあ、皆。長らくつらい思いをさせてしまってすまなかった。もう俺達を阻む姫路はいない。奴らを思う存分討ち取ってくれ。念のため言っておくけど雑魚だからって油断するなよ。こいつらは一応俺達よりかは召喚獣操作が上手いから、戦うときは必ず数の優位を保ってくれ」

 

蛇に睨まれた蛙のように動けなくなってしまったFクラスに対し、義輝は注意を促しつつ攻撃命令を下す。

 

『いぃよっしぁぁ!!』

 

『待ちくたびれたぞ、参謀、代表!!』

 

『覚悟しなさい!!』

 

『囲め、囲め!』

 

一気にBクラスの士気が、高まっていく。

 

今まで瑞希のおかげで獲物を前にしておあずけを余儀なくされていた分それは大きい。

 

戦前の義輝による演説の効果も相まってたまっていたフラストレーションを解き放つようである。

 

「ど、どうしよう!このままじゃ全滅だ」

 

『ちょ、しっかりしてくれよ吉井隊長!』

 

『俺、ここから生きて帰ったらー』

 

『いや、自分で立てずとも死亡フラグはもう立ってるからな!?』

 

『くそっ!、卑怯だぞ貴様ら!』

 

頭を抱える明久とその他大勢。

 

「へぇ、卑怯だとさ。一刀、どう思う?」

 

義輝が背後に控えている一刀に問いかける。

 

「賊徒討ち 和を取り戻す これ正義」

 

「早く、終わらせる」

 

「はいはい。お前らは近衛部隊だから前に出ないの」

 

戦いたくてウズウズしている一刀と恵を制す義輝。

 

「じゃあ皆、改めて命令。・・・死んでいった奴らの仇だ、蹂躙しろ!!」

 

『『『『おぉーー!!』』』』

 

命令というより雄叫びに近いそれに兵達は応え、取り囲み潰すべくジリジリと近づいていく。

 

「遠藤先生、Bクラス岩下、Fクラス吉井にーー」

 

そして尖兵達が事実上の死刑宣告をしようとした時だった。

 

 

 

 

 

 

 

「お、やってるじゃねぇか」

 

「ゆ、雄二!?」

 

近衛部隊を引き連れ戸口に現れたのはFクラス代表坂本雄二。

 

ドアに寄りかかりながら八重歯が見えるまで口を吊り上げ笑みを浮かべていた。

 

「しっかし暑いな。なんだ、冷房の一つもつけてねぇのかよ。窓ぐらい開けたらどうなんだ」

 

「ケッ、ボス猿のおでましかよ」

 

悪態をつきながらも雄二と同じく余裕の笑みを浮かべる恭二。

 

「すまないが何故か調子が悪くなったみたいだな。ま、エアコンなんて文明の利器、豚小屋みたいな教室にいるお前らにはもったいないだろ」

 

「・・・やっぱりてめぇらが横槍を入れやがったのか」

 

「さぁ、なんのことやら」

 

義輝の返しに自身の策の失敗の原因を見出だした雄二は義輝を睨むが本人はどこ吹く風、と笑みを返す。

 

「それで?今更何をしに来たんだ?数学がお得意な島田と演技がお得意な木下は昨日無様に犬死。頼みの綱の姫路はお前らを裏切って勝手に消えた。残りはちょっと操作が上手な馬鹿とその他大勢。それに対してこっちは余りある兵隊と戦力。こっちの勝ちは確定したようなもんなんだよ。それとも何か?命乞いでもしに来たのか?お前ら全員が土下座するなら考えてやらんでもないぞ?ほら、どこぞの銀行の常務みたいにやってみるか?」

 

口角を吊り上げ、楽しそうに言う恭二。

 

「はぁ?誰がてめぇらみたいなクズに頭を下げるかよ」

 

「へぇ・・・じゃあ死ねよ。お前ら、殺れ!!」

 

恭二の言葉で一斉に雄二目掛けて突撃を開始するBクラス。

 

だが、雄二は余裕の笑みを崩さない。

 

「無様に這いつくばって土下座するのはてめぇらだ、根本、宍戸!!」

 

 

 

 

 

雄二の言葉と共に、教室の窓ガラスが割れる音が響き渡る。

 

鼓膜を突き破らんと響く不快な音と共に一つの人影が教室に入って来た。

 

「・・・・・Fクラス、土屋康太」

 

「き、キサマ!」

 

遅れて教師も窓から入って来る。

 

「・・・・・Bクラス根本恭二に保健体育勝負を申し込む」

 

「ムッツリィニィーーッ!」

 

近衛部隊の一部を含むBクラスの生徒のほとんどが前衛に出てしまっており恭二の守りは限りなく薄い。

 

まさに丸裸。

 

完全に完璧に虚を突いたーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、雄二と康太は確信していたのだが。

 

「ぐっ・・・!!!」

 

「一刀!!!」

 

割れた窓ガラスの近くにいた一刀が腕を押さえて疼くまっていた。

 

押さえている箇所からポタポタとこぼれ落ちる赤色の液体。

 

どんなに圧迫しようとも止めどなく溢れてくる。

 

『な、なんだよ、あれ』

 

『きゃあぁぁーー!!』

 

振り返った者に戦慄が走る。

 

康太も思わず立ち止まる。

 

「丸!!至急一刀を保健室に!!早く!!」

 

「・・・!!分かった」

 

義輝の指示で恵はハンカチを取り出して一刀に駆け寄る。

 

腕の上部を縛り上げ措置を施す。

 

「一刀、立てる?」

 

恵の問いに一刀は苦しそうに弱々しく頷く。

 

恵に肩を借りてそのままよろよろと立ち上がり、両クラスの生徒達をかき分け出口へ。

 

「あなた、どいて」

 

「あ、ああ・・・」

 

陣取っていた雄二を冷たい目で睨み付け、雄二をどかすとそのまま去って行った。

 

「・・・大島先生、土屋は失格、良いですね?」

 

そして義輝は康太が引き連れてきた大島教諭を睨み付ける。

 

「・・・・しかし宍戸、そんなこと言ってる場合じゃー」

 

「こんな馬鹿げた正気の沙汰とは思えない作戦を了承したアンタにも責任があると言ってんだ!!・・・良いですね?」

 

「・・・やむを得ないな」

 

義輝の気迫に押され、大島教諭に反則判定を下す。

 

「・・・・・!!待て、これはーー」

 

「・・・補習の前に説教だ、土屋!来い、馬鹿者が!!」

 

康太が何かに気付き申し立てをしようとしたが神速の速さで教室に駆け込んできた鉄人西村に片手で抱えられる。

 

そしてそのまま補習用の教室、ではなく生徒指導室へと連れ去られてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、坂本。この落とし前、どうつけてくれるんだ?」

 

義輝は想定外の出来事に動揺していた雄二を睨む。

 

怒りの為か義輝の顔は強ばっている。

 

「・・・なあ。俺達だって血にまみれた戦争をしたくてしかけたわけじゃない。中止にしよう」

 

「断固として拒否する!!どんなことを持ちかけようともだ!」

 

「おいーー」

 

「ゴタゴタぬかすな!!責任を取れって言ってんだよ!!」

 

「・・・そっちの要求は何だ?」

 

「要求?決まってんだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前の首だよ」

 

強ばっていた顔を一変させ、勝ち誇った笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「竹中先生、Bクラス、丸目、伊東。坂本に古典勝負、申し込む」

 

雄二の後ろに人影が。

 

「ええ、承認します」

 

「・・・は?お前ら、なんで!?」

 

現れたのは保健室へ行ったはずの恵と一刀。

 

かつらを確認していたために状況を知らないまま連れて来られた竹中教諭はすんなりと承認する。

 

「「試獣召喚《サモン》」」

 

「嘘だろ!?試獣召喚《サモン》!!」

 

近衛部隊は教室の中。

 

 

 

 

そう。

 

丸裸になったのは恭二ではない。

 

雄二だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の召喚獣が雄二の召喚獣を切り刻んだ。

 

 

 

 

 

 




アニメでは確か康太は鉄人と共にガラスを突き破ってましたよね。

そこから思いつきました。




ようやく戦争終結です。

いろいろ無理がありましたがそこはご都合主義、ということで。

事の詳細は次回に。


ご意見、感想などお待ちしております。


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戦後交渉 ー説教ー

「さぁて、嬉し恥ずかしお楽しみ、戦後交渉へとしゃれこもうじゃねぇか。」

 

(主に恭二と義輝のせいで)波乱に満ちたBクラスとFクラスの戦争はBクラスの勝利で幕をおろし、戦後交渉という新たなステージへと進む。

 

両クラスがいるのは決着の場であるBクラスで、戦死して補習を受けていた者まで召集し、全員が集められることになった。

 

当然、義輝に嵌められた秀吉と美波も来ており、義輝を視線で射殺さんと睨み付けている。

 

また、同じFクラスの明久は手紙の一件が許せないらしく義輝と恭二を恨めしそうに見ており、その隣の雄二は余程信じられないのだろうか親指の爪を噛みながら何やらブツブツ呟いている。

 

鉄人のホームグラウンド、生徒指導室から解放された康太やその他生徒達は意気消沈といったところで、沙汰を前に何とも言えない悲壮なムードが漂っている。

 

そして最も居心地が悪そうにしていたのは言うまでもなく瑞希である。

 

乙女の純情を土足で踏みにじる恭二と義輝の取引に応じて戦闘に参加せず果てには棄権。

 

Fクラス敗北を決定付けたと言っても過言ではない。

 

そんな仲間に対する申し訳なさから来る罪悪感とBクラス2トップに対する恐怖・嫌悪という二重苦におろおろするばかりである。

 

「じゃあまずは何からー」

 

「ちょっと待ってよ」

 

「あ?」

 

恭二は明久に早速進行を妨げられる。

 

「宍戸君、もう戦争が終わったから良いだろ。早く姫路さんに手紙のコピーを返せよ」

 

「手紙のコピー?あぁ、これのことか」

 

義輝は先程と同じようにポケットから折り畳まれた紙を取り出す。

 

この時瑞希は生きた心地がしなかったことだろう。

 

自分の与り知れないところでラブレターのコピーが問題になっていたのだから。

 

「し、宍戸君!話が違うじゃないですか!お、お願いします、返してください!」

 

「ああ、いいよ。ほら」

 

必死な瑞希に対し義輝は紙を差し出す。

 

瑞希はそれを手を震わせながら受け取り誰にも見えないように気を配りながら即座に紙を広げて確認する。

 

 

 

 

 

 

 

 

が、白紙。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え・・・どうして・・・・!?」

 

「どうしたも何も、俺と恭二は手紙のコピーなんてとってないし、開封もしてないって」

 

義輝は面白そうに笑いながら言う。

 

「約束破ったら読み上げるだのコピーをとっているだのデリカシーやら常識やらすっ飛ばしたことを言っておけばお前らを満足に動けなくできると思ってな。ほら、恭二のネームバリューならやりかねないと思っただろ?あまりにも簡単に騙せるから俺と恭二としては笑いが止まらなかったよ。」

 

「おい、ネタばらししければ今年一年は揺すれたんじゃねぇか?」

 

「いや、俺らが勝ったのに俺らが悪いみたいな空気になってるからさぁ。木下弟や島田を見てみろ。奴ら何の悪びれもなくこっちを見てるだろ?」

 

「どの口が言うか!!悪いのはそちらの方じゃろうが!」

 

「そうよ、ウチや木下を騙して!瑞希に酷いことをして!」

 

義輝の言葉に秀吉と美波が食ってかかる。

 

「三流役者と無責任な馬鹿にだけは言われたくないな。・・・今朝、俺と恭二はとあるトラブルの仲裁に入ってな。しかも、その直前にはCクラスの方からFクラスの方に走り去る吉井、坂本、そして木下、お前を見たんだよ。で、話を聞いていったら双子の姉に成りすました弟が、Cクラスを言葉汚く罵った。それに激怒した小山達は木下姉に食ってかかった。・・・他人に感情移入させるぐらいなんだから役者としては優れているんだろうがそれは舞台の上ならば、の話だ。これじゃあただの詐欺師だろ。自分も同じようなことをやっといて自分の非を棚にあげて相手を非難するなんて、お前こそ最低だろ。この件に関してはウチのクラスの演劇部の奴も頭にきてるみたいだぞ」

 

三流役者、と言われ言い返そうとした秀吉だが淡々と続ける義輝の論を前に押し黙る。

 

「んで、島田。確か捕まるまでは数学をメインに小隊を指揮してたんだろ?それが勝手に独断で行動して捕まりあげくのはてには木下の犬死につながったよな。これ、責任ある立場としてはやっちゃだめだろ」

 

「でも結局は約束を破ったアンタが悪いんじゃない!」

 

「約束を破ったなんて酷いな。詐欺と謗られても仕方がない部分はあるけど、きちんとこと細かく内容を確認しなかったお前らが悪い。まあ、人生の授業料だと思ってあきらめろよ」

 

美波に呆れつつ言う義輝。

 

「おい、義輝。ここは説教する場じゃねぇんだぞ。馬鹿はほっとけ」

 

先程から話が脱線している状況にしびれをきらした恭二が呼び掛ける。

 

 

 

 

こうして両陣営険悪のまま戦後交渉はスタートした。




前回の説明は次回以降、ということで。


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戦後交渉 ー種明かしー

「それじゃあまずはFクラスの罪状を確認しようか。敗戦者を裁くのは戦勝者の特権だしな」

 

恭二は改めて仕切り直す。

 

「えーと・・・

協定違反、逃亡の際の消火器使用、Fクラスの分際でCクラスの侮辱並びに煽動、DクラスへのBクラスの室外機破壊示唆」

 

「ちっ・・・全部筒抜けだったのかよ。平賀の野郎、しゃべりやがったか」

 

ペラペラとしゃべる恭二に舌打ちする雄二。

 

「そしてBクラスの窓ガラス破壊に、そのせいで伊東が負傷」

 

「おい、待て。最後のは違ぇだろ。野郎、ピンピンしてやがるじゃねぇか」

 

雄二は義輝の隣に立っている一刀を指差す。

 

当の一刀は恵に肩を借りていたときのように弱々しくもなく何事もなかったように自然体でいる。

 

「まあ流石に時間が経てば分かるか」

 

異議を申し立てる雄二を見て義輝は苦笑いする。

 

「平賀からお前らから室外機を壊せば無罪放免って条件を提示されたって聞いてな。で、なんでそんなことをさせるのか考えた。答えは簡単、窓を開けさせて侵入経路を確保することだった。坂本、お前がBクラスに現れた時、暑いだの何だの言ってたよな。あれは窓が開いてないことに内心焦ってたんだろ。でも、結局そのまま強行した」

 

「・・・・・やらなければ勝利はなかった」

 

康太が呟く。

 

「俺だってまさか窓を突き破るなんて思ってなかった。でも万が一のことを考えて保険をかけることにしたんだよ。丸、例のブツを出してくれ」

 

義輝が恵の方へ目を向けると、恵は頷き袖口からあるものを取り出す。

 

恵が指でつまみ上げたのは小さなビニールで包まれた赤い液体だった。

 

「美術部と演劇部の連中に協力してもらって血糊を作ってもらったんだ。ま、演劇じゃあんまり使わないから実は専門外だったらしいけどな。とにかくそれを近衛部隊の皆に一つずつ配ってなおかつ窓から付かず離れずのところに立つように指示を出した。後は壊れた窓ガラスの近くにいたやつが袋を破って怪我をした振りをする。そして土屋の責任を問いただして失格にさせて後は保健室に行く振りをして後ろから不意討ち。本当にやるか分からなかったから博打みたいなもんだった。」

 

「・・・・・血の匂いがしなかった」

 

康太は悔しそうに言う。

 

普段何かとたいりの鼻血を流している康太だからこそ気づけたのだろうが、それを知らせる前に鉄人に連れ去られてしまったのだろう。

 

「いやぁ、それにしても皆の演技が中々良かった。岩下なんて素人とは思えない悲鳴のあげっぷりだったから、俺は内心爆笑だったんだぞ。だから俺は堪えるのに必死でそれを隠そうと怒った演技をするしかなかったんだから」

 

義輝が律子の方へ振り返る。

 

「ちょっとやめてよ宍戸君。恥ずかしさがこみあげてくるじゃない!」

 

「えぇ?でも律子、迫真の演技だったわよ」

 

顔を少し赤らめる律子を真由美がからかう。

 

「でも、根本、目が本気だった」

 

「ば、馬鹿言うな丸目!あれは演技だ演技!」

 

康太の奇襲の時の恭二の反応が槍玉に上がる。

 

『いや、あれはマジでビビってたっしょ』

 

『むっつりぃーにー!!、だったっけ?』

 

『俺、よく笑いをこらえたとおもうわ』

 

「お前ら、後で覚えとけよ・・・」

 

恵の一言から恭二をからかう空気になり、次々とBクラスの面々が口にする。

 

「まさか・・・お前が秀吉を狙ったのは」

 

雄二が何かに気づく。

 

「察しが良いな。腐っても代表か。人を騙すために演技をするやつでも一応演劇部のホープらしいからな。素人の演技がバレちゃまずいから犬死してもらったわけだ」

 

『一応』を強調して義輝が言う。

 

「くっ、ワシはまんまと罠に嵌まったということか・・・」

 

「木下だけじゃない。島田やら姫路やら、果てには坂本まで仲良く皆で罠に嵌まったんだよ。つまるところ、ぜーんぶ俺と恭二の掌の上だったよ」

 

「馬鹿みてぇに上手く行くから逆に不安だったぞ。あ、馬鹿みてぇじゃなくてホントに馬鹿だったな」

 

義輝と恭二はこれでもかと言わんばかりに勝ち誇った笑みをこぼす。

 

 

 

 

 

 

 




今回は短め。



実は秀吉の件まで計算してたんですね。

多少、無理がありますが。

ご意見、感想をお待ちしております。


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戦後交渉 ー爆弾投下ー

「さてと・・・最後はいよいよ処分の決定だな」

 

笑みを崩さずに恭二が言う。

 

「あ、待て恭二。まだ聞きたいことがあるんだよ」

 

「あぁ?また脱線かよ」

 

「そう渋い顔すんなって。これは皆も気になってたはずだからさ」

 

「・・・聞きたいことだ?」

 

「俺達Bクラスに勝ったらそのままAクラスを倒すつもりだったんだろ?理由が知りたいんだよ。なぜ最底辺クラスがトップの座を狙うのか。速攻で戦争をしかけて来てたんだからそれなりの理由があるんだろ?」

 

「は?そんなのてめぇらに教える義理はねぇだろ」

 

「おい、生殺与奪権はこっちが握ってるんだぞ。この際だから洗いざらい白状しろよ。もしかしたら心優しい俺達Bクラスが処分を軽くするかもしれないぞ?」

 

「お主が言うても説得力がないのじゃ・・・」

 

秀吉が呟く。

 

「・・・世の中学力が全てではないってことを証明したかった。それだけだ。それに設備にも不満があったしな」

 

『そうだそうだー!!』

 

『俺達だってクーラーが欲しいんじゃあー!!』

 

『彼女も欲しいんじゃあー!!』

 

『丸目さん、付き合ってください!』

 

『待て武藤、近藤!抜け駆けは許さんぞ!!』

 

『同じ学費を払ってるのにこの差はあんまりだろ!』

 

雄二に続いて不平不満をぶちまけるFクラスの野郎軍団。

 

一部関係無いのも混ざっていたが。

 

「へぇ・・・・・そんな馬鹿みたいなどうでも良い、くだらない理由で戦争してたのかよ」

 

それらを聞いた義輝の笑みが勝ち誇ったものから嘲笑に変わる。

 

そしてBクラスの生徒達は恭二いじりで和やかなムードだったのが一変して冷たくなる。

 

皆一様に冷たい眼差しをFクラスに向ける。

 

「なんだと?」

 

「俺達はな、それなりにそれ相応に努力して今の設備を手に入れたんだよ。寝る時間を惜しんで勉強したり、部活をやりつつも勉強と両立させたり、授業を一生懸命に受けたり、日々こつこつと取り組んでいたんだよ。それがお前らは何だ。部活に感けて勉強しない奴、女子の盗撮写真やら何やらを売りさばく奴、他人の物を勝手に盗む奴、女子と仲良くしている男子を追い回す奴、宿題をしない奴、授業を真面目に受けない奴。まあ一生懸命に勉強してから挑んで来るならまだ許せる。でも勉強もしないで、何の努力もしないで対価を求める?俺達を馬鹿にしてんのか?怠惰に遊び呆けていたお前らにはあの豚小屋で身分相応なんだよ。・・・そして極めつけが世の中学力が全てではないことを証明したい?何当たり前のことを言ってるんだよ。人の価値なんて学力じゃ推し量れるものじゃない。でも、ここは文月学園だ。点数が物を言う縦社会なんだから学力が必然的に全てになるに決まってんだろうが。大体な坂本、お前が戦争の駒として学力の高い姫路を使っている時点で矛盾していることに気づけよ」

 

「・・・・・・・」

 

雄二は拳を強く握りしめ唇を噛み締めながら義輝を睨む。

 

『ふざけんじゃねぇぞ馬鹿共!』

 

『アンタらのせいで授業が進まないじゃない!!』

 

『身の程知らずも大概にしろ!!』

 

今度はBクラスから声が上がる。

 

「待てよ・・・・。確かに僕達は実力でFクラスになったけど・・・姫路さんは・・・姫路さんは違うだろ!!僕達と違って実力もあるのに、テスト中に早退したってだけでFクラス行きはあんまりだろ!!」

 

「よ、吉井君・・・・」

 

義輝らBクラスの非難に明久は立ち上がる。

 

「あぁ、確かテスト中に高熱を出して受けられなかったんだって?気の毒だったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから何だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体調管理も実力のうちだろ。ウチのBクラスにだって体調を崩しやすい奴はいるよ。それにさ、文月学園の振り分けテストは今後の学園生活に多大な影響を与えるわけだから、与えられた同じ時間の中で勉強して同じ時間に同じ難易度の同じ問題をやる、公平なことに意義がある。体調管理ができなかったんでもう一回受けさせてくださいってのは後出しじゃんけんだろ。テスト前にそのルールに抗議するならまだしもそれは通らないと思うぞ。不公平になるからな。まあ可哀想とは思っても、姫路の待遇が戦争の動機の一つって言うなら俺達にとって迷惑極まりないだけだよ」

 

「た、確かに体調管理は実力のうちだけど、そんな言い方はーー」

 

「明久、止めておけ。コイツに何を言っても無駄だ」

 

義輝に突っかかろうとする明久を雄二が制す。

 

「それが賢明だ。平行線みたいだからな。・・・で、恭二、そろそろ処分を言い渡そう」

 

「だから長いっての。・・・そうだな、処分は・・・・まず設備ダウン、向こう三ヶ月の間停戦並びにFクラスにはBクラスの雑用をしてもらう。窓ガラスと室外機をぶち壊しやがったしな。掃除、買い出しとか色々だ。手を抜いたり渋ったりしたら一日ずつ延長な」

 

「あぁ、あと一刀の制服と丸のハンカチのクリーニング代も請求させてもらうから」

 

義輝が付け足す。

 

「あともう一つはFクラスには目的通りAクラスと戦争をしてもらう。もしお前らが勝てば前のやつは取り消し、俺達はお前らを三ヶ月間攻めない。だからこの戦争は表向きには和睦ってことになる」

 

 

「「「「はぁ!???」」」」

 

Fクラスから声が上がる。

 

 

「何を企んでやがる・・・」

 

「勝てば官軍って言うだろ、坂本。さっき義輝が言ったことを否定したいなら勝ってお前らが正しいことを証明すれば良い」

恭二は挑発するように言う。

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういやお前ら女子の制服を一着持っているんだよな。木下が着てたってやつ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

坂本、お前がAクラスに戦争をする時はお前がそれを着ろ」

 

邪悪な笑みのもと、爆弾を投下する。

 

「ふ、ふざけんな!!誰がそんなことをーー」

 

「おーい、Fクラスの皆さん。どうする?このままおとなしく設備ダウンして俺達のパシりに成り下がるか、このチャンスをものにするか。民主主義らしく多数決で決めよう」

 

『『『『『異議なし!!!』』』』』

 

「なっ!?て、てめぇら!何てことを言いやがる!!」

 

義輝が呼び掛けると大多数の生徒が即決する。

 

「じゃあ、決まりだな、Fクラス代表さん?せっかくおめかしをするんだからカメラを用意しなきゃ、なぁ?」

 

この上なく楽しそうな恭二だった。

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、雄二には原作の根本と同じ仕打ちをうけてもらうことになりました。

同じ屈辱を味わうがいい!!・・・・・・噴飯ものですな。



ご意見、感想などお待ちしております。


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見物ー坂本雄二ファッションショー?(おまけ:交渉)ー

恭二によって処分を言い渡された数日後、Bクラスとの試召戦争で失った点数を補充したFクラスは取り決め通りAクラスと交戦するために交渉すべく、幹部その他数名で敵の本丸を訪れていた。

 

代表である雄二、小隊長格である明久と秀吉(美波は勝手に行動し被害を出したということで解任)、筆頭戦力で裏切り者の汚名返上に燃える瑞希、同じく全力である康太というFクラスの首脳たる面子である。

 

本来ならば事前交渉だけならこの五人で事足りるのだが今回は事情が大いに異なる。

 

「く、くそっ!離せ、離しやがれ!!」

 

「・・・何なのよ、この絵面は」

 

Aクラス交渉役である優子は顔をひきつらせる。

 

それも当然である。

 

須川ら男子数名によって両腕を掴まれ犯罪者を連行するように引きずられてきた雄二が着ている服に問題があるためだ。

 

恭二が処分として最後に言い渡した言葉通り、男子生徒が着用する制服ではなく女子生徒のそれなのだ。

 

それに加えて先日秀吉がCクラスを騙して煽動した際に着用していた物と同じである。

 

小柄で細身かつ女顔である秀吉が着こなせばまさしく可憐な女子高生となるのだが、昔喧嘩で名を馳せていただけあって運動神経抜群かつ引き締まってはいるが筋骨隆々の雄二が着用するともはやただの変態である。

 

服のサイズが合わないのに無理矢理袖を通させたために今にも破れんばかりにパンパンでボタンをかけることは不可能なため下着に包まれた逞しい胸板が露になっている。

 

そして下のスカートは膝上まで短くされており、これまた逞しい脚が露に。

 

ちなみに脛毛は全剃りである。

 

顔を羞恥で赤らめじたばた喚き散らす雄二を二人のカメラマンが写真に収めていく。

 

「ムッツリーニ!!止めろ、撮るんじゃねぇ!!」

 

「・・・・・需要があるかもしれない」

 

一人はムッツリ商会会長にしてプロ並みのカメラの腕前を誇るムッツリーニこと康太である。

 

ありとあらゆる角度から雄二にの醜態を撮影していた。

 

「あるわけねぇだろ、あってたまるか!!てめぇもだ、根本!!ニヤニヤしながら撮ってんじゃねぇ!!」

 

もう一人はこの光景を作り出した張本人である恭二であった。

 

「いやぁ、ここまで酷いとは」

 

「敗戦の 将はかくも 惨めなり」

 

「あれ、醜い」

 

義輝は笑いをこらえながら、一刀と恵は一種の憐れみのこもった目で眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと聞きたいんだけど」

 

雄二が観念し落ち着いて来たところで本題に入ろうとしたのだが、その前に優子はBクラス幹部一行に尋ねる。

 

「この間の約束通りならFクラスだけでいいはずなんだけど何でBクラスまでいるわけ?」

 

訝しげに見る優子。

 

「取り決め通りFクラスには表向きは和睦にしてAクラスを攻めさせて今に至るんだけどな、その時に条件を出した。FクラスがAクラスに負けたらFクラスは向こう三ヶ月間俺達のパシり、勝ったら取り消しかつ三ヶ月の不可侵ってやつだ。それがかかっているから見届けさせてもらおうと思ってな」

 

恭二が応答する。

 

「本当にそれだけなの?」

 

「本当だって木下姉。大方戦争後に俺達が攻めて来やしないかと思ってるんだろ?考えてみろって。蟻が象を一噛みしたところで何か影響があるか?FクラスごときじゃAクラスを疲弊させられるわけないだろ?今回は単純に見物しに来ただけだよ。見物にあたって先生方の許可も得たし、絶対にAクラスに何もしない旨も伝えてある」

 

義輝が捕捉する。

 

「・・・まあ良いよ。ちょっと怪しいけどね。・・・・それで、坂本『さん』、何か要求があるんでしょ?」

 

「誰が坂本さんだ!これは根本の要求で仕方なくやっているだけでーー」

 

「なあ義輝。俺、そんなこと言ったっけ?」

 

「さあな。でも、世の中いろんな人がいるよな。だから突然女装に目覚める奴がいても不思議じゃない。ただ俺達に負けたらショックが大きかったんだろうな。ここはあたたかく見守ってやるのが俺達の務めだ」

 

恭二が惚けると義輝は態とらしく頷きながら言う。

 

「てめぇら・・・いつか絶対コロス!!」

 

額に青筋を浮かべ握りこぶしを作る雄二。

 

「事情は分かったから冗談はおいといて、要求は何なの?」

 

「お、おう・・・。Fクラスは試召戦争としてAクラス代表に一騎討ちを申し込む」

 

「一騎討ち?うーん、何が狙いなの?」

 

今度は雄二を訝しげに見る優子。

 

「もちろんFクラスの勝利だ」

 

「Bクラスに負けといてAクラスに勝てると思ってるの?それに代表に一騎討ちなんて何か企みがあってのことなんでしょ?一騎討ちなら時間をそれほど取られずにすむからありがたいけど、罠があるなら別よ。そうなったらAクラスには何のメリットもない。アタシ達は下位クラスの挑戦を受ける義務はあるけれどルールを縛らなければならないってことはないのよ?」

 

「おいおい、Aクラスともあろう者が怖じ気づいたのか?Fクラスからは俺が出る。今ここにいる全員が証人になってくれれば覆しようがないだろ?」

 

「それでも信頼できない。何せCクラスを騙したんだから、ね?ひ・で・よ・し?」

 

優子は愚弟を睨み付ける。

 

「ひっ!?」

 

秀吉は明久の背に隠れてしまった。

 

「でも時間がかからないのはやっぱり魅力的だから一騎討ちっていう提案は呑んであげる。ただし、代表同士の一騎討ちじゃなくて・・・・お互い五人ずつ選んで、一騎討ち五回で三回勝った方の勝ち、っていう条件なら」

 

「仕方ないか。けど勝負する内容はこちらで決めさせてもらう。そのくらいのハンデは認めてもらいたい」

 

「え?うーん・・・」

 

雄二の申し出に優子は悩む。

 

条件が変わってもなお自信のある態度を崩さない雄二を警戒しているのだろう。

 

「・・・・受けてもいい」

 

「うわっ!」

 

突然奥から現れたのはAクラス代表てある翔子に驚いたのか明久が情けない声を上げる。

 

「・・・・雄二の提案、受けてもいい」

 

「あれ?代表。いいの?」

 

「・・・・その代わり、条件がある」

 

「条件?」

 

「・・・・うん」

 

翔子は頷き、雄二から瑞希へと視線を移し、じっくり眺めた後再び雄二に視線を戻す。

 

「・・・・負けた方は何でも一つ言うことを聞く」

 

「・・・・・」

 

「ムッツリーニ、今撮影しようとする意味なんてないよ!というか、負ける気満々じゃないか!」

 

被写体を雄二から翔子と瑞希に変更すべくカメラを構え直した康太を明久がたしなめる。

 

はたから見たらまったく意味不明な光景であるのだが。

 

「じゃ、こうしよう?勝負内容は五つのうち三つはそっちに決めさせてあげる。二つはウチで決めさせて?」

 

優子が取り成す。

 

「交渉成立だな。」

 

「・・・・あと、根本、宍戸」

 

翔子は傍観していたBクラス2トップの方を見る。

 

「・・・・絶対に邪魔しないで」

 

「こちらとしちゃあどっちに転んでも一応利益はあるからな。邪魔はしないって明言してやるよ。ただ、あの約束は忘れんなよ?」

 

「・・・・分かってる」

 

恭二と言葉を交わす。

 

「・・・・雄二、時間は?」

 

「そうだな。十時からでどうだ?」

 

「・・・・分かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうしてAクラス対Fクラスの戦争の事前交渉が終わり、一旦解散となって各自教室へと戻って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、戦争の邪魔はしないよな、邪魔は。な、恭二」

 

「それか奴らが何かしてきたら別だがな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・土屋?でいいの?」

 

「・・・・・何だ?」

 

「・・・・後で写真を売ってほしい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ということで立ち会うことになったBクラス一行でした。

どうなることやら(笑)

ご意見、感想などお待ちしております。


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見物ー再会と策ー

今回一部下ネタ注意 (工藤絡みで)





「では、両名共準備は良いですか?これよりAクラス対Fクラスの特別ルールを用いた試召戦争を始めます。なお、今回は本戦の勝敗がBクラスとFクラス間の取り決めの内容に影響があるという事情で特別にBクラスの立ち会いのもと行います」

 

 

時刻はきっかり十時。

 

Aクラス担任にして学年主任である高橋教諭が両陣営及びBクラス一行に目を配りながら開戦を宣言する。

 

「高橋先生、一つ確認したいことがあるんですけど」

 

「何ですか、木下さん」

 

優子が手を挙げて前に出る。

 

「先程の交渉でBクラスの宍戸君がこの戦争の邪魔をしないし、終わった直後に戦争を申し込まないことを先生方に申し出たって聞いたんですが本当ですか?」

 

「はい、木下さん、その通りです。確かに私がその旨を聞いて立ち会いを許可しました」

 

「そうですか。分かりました」

 

 

 

 

 

 

「おうおう。すごい疑ってんなぁ」

 

優子が高橋教諭に確認をとる様子を見て恭二がぼやく。

 

手にはちゃっかりと頂戴したらしいコーヒーの入った紙コップが握られている。

 

Aクラス備え付けのドリンクバーが近くにあるのでそれだろう。

 

「我が物顔で設備を使えるお前もすごいよ」

 

苦笑する義輝。

 

「でも確かに滅茶苦茶警戒されているよな」

 

「視線、すごい」

 

義輝が周囲を確認すると何人ものAクラス生徒と目が合い、その度に視線をそらされる。

 

「本当に 多くの奴と 目が合うな」

 

「いや、お前その糸目でホントに見えてるのかよ」

 

一刀の一言にコーヒーを啜りながら突っ込みをいれる恭二。

 

「それは仕方がないよ」

 

Bクラス一行を敬遠するAクラスの一団から一人の少女が抜け出て話しかける。

 

「よぉ、工藤。久しぶり、でもないか」

 

「愛子、元気そう」

 

「・・・・(軽く会釈)」

 

「ああ、工藤か」

 

「やぁ、皆。相変わらずみたいだね」

 

少女の名は工藤愛子。

 

体育会系らしい快活さを思わせるような短髪である。

 

彼女は一年時の学年末ごろに義輝達のクラスに転校して来て、短い間に義輝・恵・一刀(おまけで恭二)と仲良くなり彼らを介して交友の輪を広げていったためか他のAクラス生徒達よりも友好的なようだ。

 

「ここのところずっとBクラスとFクラスの戦争のことで話題が持ちきりだったんだよ?ボクも聞いたよ、Fクラスをコテンパンにやっつけたって」

 

愛子は雄二を指差しながら苦笑する。

 

当の雄二は不敵な笑みを浮かべ腕を組んで仁王立ちしているのだが、その格好は前回述べた通りである。

 

顔では気丈を装ってはいるが両膝が小刻みに震えているところを見るとやはり堪えているらしい。

 

Aクラスの多くは引きつつも敢えて触れていないのだが表情を変えることなくそれをスルーした高橋教諭も相当なものだろう。

 

「やっぱりそれか。あれは正当防衛だって。AクラスとCクラスの戦争も未然に防いだんだし良かっただろ?」

 

「それは確かにありがたいけど、逆にBクラスが近々攻めて来るって話が盛り上がっちゃったんだ。鬼畜外道が攻めて来るぞ!って」

 

「鬼畜外道って・・・あぁ、姫路の件か」

 

飲み終えたコーヒーの紙コップを潰しながら答える恭二。

 

「あれは確かに・・・・楽しかったな。なぁ、義輝」

 

「あそこまで術中にハマってくれるとかえって清々しいよな。それにな、工藤。今回は丸と一刀が決着を付けたんだぞ」

 

「え?丸ちゃんと伊東君が?」

 

「Fクラスの土屋が窓ガラスを突き破って侵入して来た時、一刀がその時に怪我をしたふりをしてそれを丸が保健室に連れて行くふりをして教室を出てからあの女装している変態の背後をとって終了」

 

「我が演技 意外に意外 通じたぞ」

 

「けっこう、楽しかった」

 

「へぇ、そうなんだ。・・・あ、そろそろ一回目が始まるみたいだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは一人目の方、どうぞ」

 

「このまま出ます」

 

「ワシがやろう」

 

高橋教諭の呼び掛けに木下姉弟が出そろう。

 

「ところでさ、秀吉」

 

途端に笑顔になる優子。

 

「な、なんじゃ?姉上」

 

華やかだがどことなく凄味がある笑顔にたじろぐ秀吉。

 

「Cクラスの小山さんの件なんだけどね」

 

「こ、小山がどうーー」

 

「ちょーっとこっちに来てくれる?」

 

「あ、姉上!そっちは廊下じゃぞ。早く勝負をーー」

 

優子は有無を言わさず秀吉を廊下へと引きずり、姉弟は教室の外へ。

 

『姉上、どうしてワシの腕を掴む?』

 

『親切な人のおかげで分かったんだけど、アンタ、Cクラスでアタシに化けて小山さん達を豚呼ばわりしたそうじゃない?』

 

『いや、あれはワシなりに姉上の本性を推測してやっただけでーーあ、姉上っ!ちがっ・・・・・!その関節はそっちには曲がらなっ・・・・!』

 

秀吉の声が途切れると共に渇いた枝が折れるような音が響く。

 

「秀吉は急用ができたから帰るってさっ。代わりの人を出してくれる?」

 

ドアを開け返り血をハンカチで拭いながら笑顔で戻ってくる優子。

 

スポーツで良い汗をかいたかのような清々しい笑顔だ。

 

「い、いや・・・。ウチの不戦敗で良い」

 

流石の雄二も何も言えず棄権を宣言する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・おい、工藤。アレの方が鬼畜外道じゃねぇかよ」

 

「いや、まさか優子があんなことをするとはね・・・」

 

「まあ良いをじゃないか、恭二、工藤。姉と弟のスキンシップに他人が口を出すだけ野暮ってことで」

 

「それ、賢明」

 

「然るべき 裁きを受けた それだけだ」

 

義輝と恵の言葉に相槌を打ちながら言う一刀。

 

「・・・・・そう言えば工藤、お前もこの一騎討ちに出るのか?」

 

「え・・・・あ、うん。そうだよ。3番手で出る予定だよ。できれば教科は保健体育が良いな」

 

「保健体育か。俺は苦手だな」

 

「ボクで良ければ宍戸君にいつでも教えてあげるよ。もちろん、実技で♪・・・・・・丸ちゃん、ごめん、冗談だから!そんなに睨まないでよ!」

 

「・・・・・私が、教える」

 

愛子の義輝へのからかいを聞いて普段の冷静さから考えられないほど愛子を睨む恵。

 

「・・・これに何て言えば良いか分からないんだけど、恭二」

 

「・・・・突っ込めば良いんじゃね?」

 

「お前はお前で下ネタで被せてくんなよ!かかってるけどうまくないからな!?・・・・・あぁ、もう!だから保健体育は嫌なんだ、話題を戻そう!工藤、保健体育ならおそらく相手になるのは土屋だぞ?」

 

「土屋君?そういえばさっきの話にも出てきたよね?ってことは宍戸君達は土屋君に勝ったの?」

 

「いや、勝ってない。土屋が一刀に怪我をさせたと大島先生に誤認させて失格にしてもらったからな。・・・・ところで工藤、お前の召喚獣の装備は何だ?」

 

「装備?セーラー服に召喚獣よりも大きな斧だよ。ちなみに400点以上だから腕輪が使えるんだ」

 

胸を張り誇らしげに言う愛子。

 

「・・・・なるほど。工藤、俺の予想が正しければ、の話だけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが的中すればお前は100%勝てるぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

義輝が愛子に何か吹き込もうとしている時、教壇の前では二回目の一騎討ちが行われようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




下ネタは分からなくて良いと思います。

銀魂の読みすぎのせいです、はい。

苦手な方は不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。

工藤が絡む以上、こういったことは避けられませんね。






それはさておき、やっぱり何かを企んでいる義輝君。

どうなることやら。





ところで、更新って何時くらいがベストなんですかね?


ご意見、感想をお待ちしております。


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見物ー義輝先生の対ムッツリーニ講座ー

はじめに言っておきます。

ご都合主義炸裂。


「では、三人目の方どうぞ」

 

Aクラスの二番手佐藤美穂がFクラスの同じく二番手明久を瞬殺。

 

明久はこけおどしむなしく破れ去りAクラスは勝利へ王手となり、高橋教諭は次の勝負をコールする。

 

「・・・・・(スック)」

 

「(あ、ホントに土屋君が出るんだ)じゃ、ボクが行こうかな」

 

Fクラスからは康太が、Aクラスからは愛子が名乗り出る。

 

「一年の終わりに転校してきた工藤愛子です。よろしくね」

 

「教科は何にしますか?」

 

「・・・・・保健体育」

 

康太が教科選択権を行使し、自身が最も得意とするそれを選ぶ。

 

「土屋君だっけ?話は聞いてるよ。随分と保健体育が得意みたいだね?でも、ボクだってかなり得意なんだよ?・・・・キミとは違って、実技で、ね♪」

 

このからかいは彼女の常套句らしい。

 

またかよ、と義輝は呆れるばかりである。

 

しか義輝とは違い誘惑に負けているのかFクラス男子のほぼ全員が目を輝かせている。

 

なんとも気持ち悪い光景だろうか。

 

「そっちの君、吉井君だっけ?勉強苦手そうだし、保健体育で良かったらボクが教えてあげようか?もちろん実技で」

 

人一倍に熱い視線を向けていた明久がロックオンされる。

 

「フッ。望むところーー」

 

「アキには永遠にそんな機会なんて来ないから、保健体育の勉強なんて要らないのよ!」

 

「そうです!永遠に必要ありません!」

 

「・・・・・・」

 

「島田に姫路。明久が死ぬほど哀しそうな顔をしているんだが」

 

 

 

 

 

 

 

 

「(何様なんだろうな、あの二人)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ召喚を開始して下さい」

 

流れの脱線を正すべく高橋教諭が呼び掛ける。

 

「はーい。試獣召喚《サモン》っと」

 

「・・・・・試獣召喚《サモン》」

 

二人が宣言すると足下に魔方陣が出現し発せられる光の中から召喚獣が現れる。

 

愛子の召喚獣はセーラー服を着てはいるものの得物はとてつもなく巨大な斧であるため、何とも猟奇的である。

 

一方の康太の召喚獣は戦国時代の時代劇に登場するような忍者が着ているような忍び装束に小太刀二刀流。

 

一見両者の召喚獣を見るとちぐはぐな組み合わせにも思えて来るものだが彼らには一つだけ共通点がある。

 

腕輪だ。

 

400点以上を獲得した成績優秀者のみに与えられる特権。

 

先の戦争でも一刀が多勢相手に使おうとしたように、戦争において多大なアドバンテージをもたらすある意味バランスブレーカーと呼ぶにふさわしい物なのだ。

 

「実践派と理論派、どっちが強いか勝負だね」

 

愛子がそう言うと召喚獣は大斧を構え、康太の召喚獣に向かって駆け出す。

 

「・・・・・加速」

 

康太が呟くと召喚獣の腕輪が輝き、次の瞬間には愛子の召喚獣を目にも止まらぬ速さで一閃ーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金属と金属がぶつかり合う高い音が響き渡る。

 

 

 

 

 

 

 

「わぁ、すごいや、ホントに言った通りだ」

 

「!?」

 

小太刀の一閃は愛子の召喚獣を切り刻むことはなかった。

 

彼女の召喚獣は斧を逆手に持ち斧の頭が自身の盾になるように構え直していたため、刃は届くことなく分厚い盾に阻まれてしまった。

 

「それじゃあ、次はこっちの番だね♪」

 

愛子の召喚獣は斧を前に強く押して康太の召喚獣を押し返す。

 

康太の召喚獣はたまらずのけぞってしまいバランスを崩してしまう。

 

「・・・・・しまった!」

 

「バイバイ、ムッツリーニくん」

 

愛子の召喚獣の腕輪が輝き斧が雷光を纏い、斧を振り上げる。

 

康太の召喚獣は体勢を立て直すことはできない。

 

そして愛子の召喚獣の豪腕によって一刀両断されてしまった。

 

『Aクラス 工藤愛子 VS Fクラス 土屋康太

保健体育 446点 VS 0点』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー数分前、義輝と愛子ー

 

「これはあくまでも俺の予想だから信用するもしないも工藤の自由だ。」

 

「でも絶対に勝てる方法なんでしょ?」

 

「予想通りならな。まず土屋の召喚獣だ。奴は恭二の背後をとって奇襲して来た時には大島先生をつれているだけで単騎だった。この点は噂通り保健体育の点数が高いことを表していると言える。最低でもBクラス代表の恭二よりも大きい点数だろうから200点は軽く超えているはずだ。問題はここからだ。工藤、お前が同じ立場だったとしようか。相手の大将の背後をとった、周囲の近衛部隊は気づいていないし咄嗟に反応できない。お前ならこの時どうしたい?」

 

「うーん、さっさと気づかれる前に倒しちゃいたいね」

 

「そう。あの時の奇襲の場合何よりも速さが求められるんだ。もたもたしたらあっというまに防御を堅められてしまうしな。しかもだ、速さと同時に標的を圧倒する力も求められる。このことから予想できることは何か?」

 

「・・・・まさか、腕輪?」

 

「そう、それなんだよ。十中八九、奴は400点以上で腕輪を持っていて、もっと言えばその能力は速さに特化したものの可能性がある。その仮定でいけば対策は容易にたてられる。武器はすごくでかい斧なんだよな?奴が腕輪を使おうとしたらそれを盾にするだけで良い。高速で動くと、どうしても障害物の回避が自ずと難しくなる。狩りをする時に獲物を高速で追いかけるチーターでさえ回避しきれずに岩や木にぶつかったりするからな。奴の召喚獣が斧にぶつかったら後は弾き返してひるんだところを仕留めれば良い」

 

「へぇ、よくそこまで頭が回るね。いつも悪巧みしてるわけじゃないんだね。・・・・でもなぁ、ホントかなぁ」

 

「まあ一部こじつけだからな。信じるか信じないかは自由だ。俺はただ友達にアドバイスをしているだけだよ」

 

「・・・その言い方はずるいよ。ま、参考にさせてもらうね♪美穂も無事に勝ったみたいだし、行ってくるよ」

 

「ああ、決めてこいよ」

 

 

 

 

 

 

 

「では、三人目の方どうぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




原作のBクラス戦では土屋は腕輪を使いませんでしたがそこまで見越して奇襲をかけたんじゃないかと自分は思ったので義輝君に代弁していただきました。

ちょっと無理矢理ですがね(笑)


ご意見、感想等お待ちしております。


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見物ー注意ー

「工藤さんの勝利でAクラスの3勝となりましたので、AクラスとFクラスの試召戦争はAクラスの勝利です」

 

愛子の勝利を受けて高橋教諭が淡々とAクラスの勝利を告げる。

 

『おい・・・・・マジかよ!?』

 

『絶対にAクラスに勝てるんじゃなかったのか!?』

 

『坂本代表!どういうことだ!?』

 

Fクラスにおいて瑞季と双璧をなす絶対的切り札たる康太の敗北、そして三連敗によってあっさりと戦争に負けてしまったことに動揺を隠せないFクラス。

 

ただ呆然とする者、雄二に話が違うと詰め寄る者、敗北の代償を悲観する者など様々である。

 

「よーし、無事にAクラスが勝ったことだし安心してクラスに帰れるな。お前ら、帰るぞ」

 

恭二はニヤニヤした顔をFクラスに向けながら義輝、一刀、恵の三人に言う。

 

「ま、当然の結果だったな」

 

「当たり前 雑魚に王座は 盗れぬのは」

 

「来るまでも、なかった」

 

三人は恭二に続いて帰ろうと歩き出す。

 

「おい、待てよクズとその一味」

 

結果に抗議するクラスメートにもみくちゃにされていた雄二は何とか脱け出して恭二達を呼び止める。

 

「あ?何だよ?・・・・あぁ、そうだ。てめぇらFクラス、Aクラスに負けたんだから約束通り今日から俺達のパシりな」

 

「豚小屋と違って教室も広いし、雑用は山ほどあるからな。こっちとしては大助かりだな」

 

「つべこべ言ってねぇでこっちの話を聞け!宍戸、お前工藤に何か吹き込んでいただろ?邪魔をしないと公言しておいて、結局は邪魔してんじゃねぇか」

 

「あぁ、あれか。こっちの規定違反をこじつけてBクラスに制裁、あわよくば取り決めを反故にしようって腹か?

往生際が悪いぞ、変態」

 

「往生際が悪いも何も、これは明らかな介入だろ、ゲス野郎」

 

「こっちが先生に申し入れたのは『AクラスとFクラスの戦争の邪魔はしないかつAクラスが勝ってもすぐに攻めたりはしない』って内容だ。高橋先生、そうですよね?」

 

「ええ、確かにそう聞きました」

 

「Bクラスはこの文言通り、AクラスとFクラスの戦争の進行を一切妨げていない。そりゃ工藤にエールは贈った、友人として。それがどうして規定違反になるんだ?」

 

「ちょっと待ってください。話を整理しましょう。坂本君の主張は宍戸君が工藤さんに入れ知恵をしたせいで土屋君が敗北してしまった、そうですね?」

 

義輝と雄二の間に高橋教諭が入る。

 

「ああ」

 

「工藤さん、本当ですか?」

 

「えーと、はい、ボクが宍戸君と試合前に話していたことは本当です。『もしも相手が土屋君なら上手くやれば絶対に勝てる』って」

 

名指しされて困惑しつつ話す愛子。

 

「宍戸君の言う通りにしてあなたは勝ったのですか?」

 

「言う通りにしたというか参考にさせてもらったというか・・・・・とにかく宍戸君の予想通りだったので・・・」

 

「ほら見ろ、しっかり介入してるんじゃねぇか」

 

愛子の言葉に得意気になる雄二。

 

「・・・今回のBクラスは事前に許可をもらっての観戦。

先生、もう一度文言を思い出してください。『AクラスとFクラスの戦争の邪魔はしないかつAクラスが勝ってもすぐに攻めたりはしない』。戦争の進行をいつ妨げましたか?邪魔をしてはならないとはありますが、応援してはならないってことにはなりませんよね?」

 

「それではあくまでも宍戸君は工藤さんを応援しただけだと?」

 

「ええ、そうですよ。邪魔をしなければ中立でなくても良いんですよね?工藤が俺のエールを参考にしたところで、土屋に勝ったのは結局操作技術による実力ですよ。Fクラスは木下姉が確認した時、何の質問も異議申し立てをしなかった。一度認めておいて後出しじゃんけん。何の進歩もしてないな、Fクラスは」

 

義輝は雄二を嘲笑う。

 

「でも、そんなの屁理屈じゃないか!」

 

「おいおい吉井、屁理屈も立派な理屈だっての」

 

明久を鼻で笑う恭二。

 

「・・・・・文言に対して宍戸君の行為に違反はありません。Fクラスにとっては残念でしょうが、解釈が違ったというだけでは罰することはできませんし判定を覆すことはできません」

 

高橋教諭は静かに首を横に振る。

 

「・・・・くそっ!」

 

悪態をつく雄二。

 

「ですが、先の戦争に続き玉虫色の解釈を呼ぶような約定を交わし続けるBクラスにも多少なりとも落ち度はあります。学園生活は試召戦争だけではありません。このままでは通常の学園生活に支障がでる恐れがありますので、学園としては処分は下しませんが改善を求めます」

 

「善処しまーす」

 

ケタケタと恭二は笑いながら義輝らと共に教室を後にした。

 

 

 

 

 

 




ほどほどにしろよ、という注意でした。


今回、何でもないようなやり取りに見えて・・・・・



さて、やっと一巻が終わりましたのでぼちぼち二巻に入ります。

なのに、非アンチのバカテス二次創作案が浮かんでしまった。

どうしようかな・・・・・








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嵐の前の静けさ 壱

「おい、昼休みが始まったらBクラス教室に三分以内に来いって言ってんだろ。何度言えば分かるんだ?今日は13秒の遅刻だぞ?」

 

新学年新学期を祝うように満開に咲き誇っていた桜もすっかり散ってしまい春のポカポカとした陽気が夏の蒸し暑さに成り代わりつつある今日この頃。

 

午前中の授業が全て終わり昼休みに入っていた。

 

Bクラス拉致工作部隊隊長鈴木二郎は取り決めによって奴隷(と書いてパシりと読む)に成り下がったFクラスを代表してきた明久に自身の腕時計を見せながら言う。

 

「し、仕方がないじゃないか!今日は鉄人の授業と説教がずれ込んでーー」

「は?そんなこと知らねぇよ。今日は鉄人のせい、昨日は当番が居眠りをしていたから、一昨日は当番が坂本を追い回していたから。この調子じゃ明日は風邪か?」

 

二郎と同じく拉致工作部隊に属する吉田卓夫は走って来たため息切れしながら弁明する明久を笑う。

 

「それにだ。お前らまた掃除で手を抜きやがったな?汚い雑巾が出しっ放し。今日の遅刻も含めてパシり期間2日延長だからお前んとこの女装野郎に伝えとけよ。ほら、これがリストと金だ。早く買って来いよ」

 

二郎はBクラスの生徒の購入希望品をメモした紙とビニール袋に入れられた現金を明久に押し付ける。

 

「わ、分かったよ(ちくしょう!今に見ていろよ!)」

 

明久は内心で悪態をつきながら購買部へと駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、あいつらも上手くやるよな」

 

恭二、恵、一刀の三人と弁当を食べながら見ていた義輝は満足げに頷く。

 

「確か雑巾が出しっ放しだったってのは嘘なんだろ?」

 

卵焼きを頬張りながら言う恭二。

 

「根本、行儀悪い」

 

物を食べながら話すのを注意する恵。

 

「お前は俺の母親かっての」

 

「それが違うんだよ。昨日Fクラスの奴等は渋々掃除をやりつつも片付けはしたらしい。だけどその後で吉田がこっそりと掃除用具入れから雑巾を引っ張り出したんだよ。で、鈴木は鈴木であの腕時計、学校のより1分位進んでいるらしい」

 

「義輝と 根本の策が 感化した」

 

しみじみと一刀が呟く。

 

「へぇ。頼もしいじゃねぇか。流石俺のクラスの一員だ。まぁ俺の方がもっと上手くやれるけどな。主に揺すりたかり脅迫で」

 

恭二が誇らしげに言う。

 

「とにかくあいつらに一任して正解だったな。Fクラスがいつ気づくのか見物だ」

 

義輝はそう言うとご飯を口に掻き込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「義輝、頼みがある」

 

弁当を各自が食べ終え、義輝が食後のコーヒー(自前)を飲んでいるところに恵が話しかける。

 

「ん?何だ、丸?」

 

「如月ハイランドの、プレオープンチケット」

 

「プレオープンチケット?何でそんな物を?」

 

「ああ。あれだろ、今度の清涼祭でやる試験召喚大会トーナメントの副賞品。優勝賞品は特別な腕輪らしいけど」

 

心当たりがなくて首をかしげる義輝に恭二が教える。

 

「恭二、やけに詳しいな」

 

「俺も友香と一緒に出場することにしたからな。賞品は俺らが頂く」

 

「おー、熱いな代表バカップルは。で、丸。チケットを取るために一緒に出て欲しいのか?」

 

「私、出ない」

 

恵は首を横に振る。

 

「大勢の前に出るより、裏方やりたい」

 

「裏方?何の?」

 

「クラスの、出し物」

 

「・・・・・あぁ、そうだった。清涼祭の出し物、そろそろ決めなきゃな

、恭二」

 

「面倒くせぇな。今日のホームルーム辺りで決めるか」

 

はぁ、とため息をつく恭二。

 

「まあ丸が裏方やりたいならやりたいで良いけどそれじゃあ相方は・・・・・」

 

「お前も断らん辺りバカップルだな」

 

「うるさい。・・・一刀、お前誰かと出るのか?」

 

「出る予定 今のところは 特になし」

 

「んじゃ、すまないが一緒に出てくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、Bクラス内はこの話でもちきりで和気あいあいとした雰囲気であった。

 

しかし彼らはまだ知らない。

 

波乱と陰謀に満ちた清涼祭を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




第二巻突入。

義輝、一刀も参戦。

さてさてどうなることやら。


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嵐の前の静けさ 弐 ー理想と現実ー

「おい、席につけお前ら。これからBクラスホームルームを始める」

 

午後の授業を終え、Bクラス生徒たちは放課後の部活の用意や帰宅の準備、友人とダラダラと話すべく席を立とうとしていたのだが恭二がそれを制す。

 

「えー、って顔するなって。こっちだってやりたかねぇんだよ。時期が時期だから今から清涼祭のBクラスの出し物を決める」

 

恭二は気だるそうに教壇に片手をつきながら立ちため息交じりに言う。

 

「そういうわけで義輝、お前司会進行な」

 

「はいはい」

 

義輝に全てを一任すると恭二は自分の席に戻る。

 

そしてそのまま机に突っ伏す。

 

どうやら居眠りで知らん顔を決め込むつもりらしい。

 

早々の司会進行放棄に義輝は苦笑しつつも恭二と入れ替わりで教壇に立つ。

 

「それじゃ、ぼちぼち決めようか。さっき恭二が言ったようにそろそろ清涼祭の準備をしなくちゃならない。俺達の出し物も決めなくちゃならないけどその前に実行委員を決めよう。今のところ丸が志願しているんだけど他には希望者はいるか?」

 

『別に良いんじゃね?』

 

『異議なーし』

 

「他にいないみたいだからウチのクラスの実行委員は丸に決定な。肩書きの関係なしに手伝える奴は手伝ってやってくれ。丸、黒板にこれから出る意見を書いて」

 

「分かった」

 

恵は席を離れ黒板の前に立ちチョークを手にする。

 

「出し物で何をやりたいかまずは自由に意見を出してほしい。誰でも良いから」

 

『はーいはい、私喫茶店がやりたい!』

 

『なんか小物類を作って売るとかは?』

 

『クラス共同製作の展示とかさぁ、面白そうじゃね?』

 

『清涼祭、もとい文化祭なんだからさ。文化的なことをしよう、劇とかさ』

 

『他のクラスと被らなければ何でも良いよ』

 

『部展示とかもあるからさ、負担のかからないやつが良い』

 

机で一人夢の中の代表とは180°違ってやる気満々だったらしい。

 

口々に捲し立てる。

 

「・・・俺は聖徳太子じゃない。やる気なのは分かったから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・あ?ああ、寝てたのか。おい、義輝。決まったか?」

 

夢の中から帰って来た恭二が欠伸をしながら義輝の方を見る。

 

「ん?起きたか。今やっと三つに絞りこんだところだ。

意見が別れて決めあぐねててな」

 

義輝が黒板を指差す。

 

『クラス共同製作展示』

 

『劇』

 

『和菓子喫茶』

 

「・・・・・義輝、身内に優しく敵に厳しくはお前の美点だけどな、切り捨てるべきものは切り捨てろって」

 

「それはそうだけどな、戦争と違ってこればっかりは俺と恭二が主体になっても仕方がないと思ってな。ま、バトンタッチだ、代表さん」

 

義輝は恭二に教壇を譲る。

 

「さて、Bクラスの出し物は喫茶店に決定する」

 

恭二は再び立つと開口一番に決定を告げる。

 

『えー!?』

 

『何でよ!?』

 

『いきなりそれは横暴じゃないか』

 

恭二の言葉に不満を何人かが漏らす。

 

「理想よりも現実を見ようか。まず、この『クラス共同製作展示』。何を作るかは知らんがはっきり言おう、どうあがいてもできあがるのはゴミだ。作るのは大方大きな絵とかなんだろうが、素人の腕じゃたかが知れてる。だからそれを避けるために美術部が中心になり、その指示のもとで製作することになるはずだ。作っている間は楽しいかもしれないが結局は指示のままに作っただけで自主性も何もない。それじゃあクラス全員の作品じゃなくて美術部の作品だ。第一、素人のゴミみたいな作品をわざわざ観に来るか?教室の前を素通りされて終わりだ。んで次『劇』。これも却下だ。さっきと同じことが言えるが素人の演技を観て客はどう思うか?演劇部の奴との演技力の差が痛々しいだけだ。そしてこれも何をするか決まってねぇんだろ?演劇部の奴は分かっているだろうが、たかが文化祭の素人の劇だろうが著作権の問題がある。著作権が消滅していない作品を原作にするならいちいち許可を取らなきゃならない上に場合によっては著作権料を請求されるぞ?まあオリジナルをやったところで短期間で上手いシナリオや演出を思いつくのはプロでも困難ろ?中途半端になって客は飽きて、俺達身内でしか味わえない達成感という名の自己満足に終わるだけだ。それだけじゃなくて稽古のためにかなりの時間拘束されることになるぞ。その点、『和菓子喫茶』なら全てクリアだ。全員が参加できて自主性もあって、多少の研修で接客も調理も可能。消防云々が面倒だがな。サービスのクオリティに客が満足すれば金を落とす。利益が出ればその金を元手に打ち上げをするなりクラスで何かを買うなりできる。以上だ。何か質問はあるか?」

 

『そ、そこまで、言わなくても・・・』

 

『まぁ、冷静に考えてみれば、ね・・・』

 

『ていうか代表、卑怯なことばかり考えてるんじゃないんだな』

 

「でも良いじゃない、喫茶店!」

 

恭二の指摘にクラスの面々が圧倒される中、律子が立ち上がる。

 

「楽しそうだし、やりましょうよ!例えば浴衣を着るとかどう?」

真由美が呼応する。

 

「それ良いわね、真由美!」

 

『じゃあさ、俺親戚が田舎でお茶を栽培してるから、良い茶葉を安くで貰えないか頼んでみるわ』

 

『和風なら装飾もこだわりましょうよ!』

 

『団子とか良いかもな。バリエーションも報復だし』

 

『ホットケーキミックスを使えばどら焼きもどきが作れるだろ』

 

そして次々と意見が湧いて出てくる。

 

先程までの膠着状態が嘘のようである。

 

「へぇ・・・」

 

「何だよ義輝」

 

「いや、何か恭二が代表してるなぁって思って」

 

「・・・・今度こそ後は任せたからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうしてBクラスの出し物は決定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回一部実体験がまざってます。

あくまで自分の考えであって、他の方々を貶める意のものではありません。





ご意見、感想などお待ちしております。


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波乱と陰謀の清涼祭ー幕開けー

まず申し上げたい。

原作でのキャラクター達の行為はいかに常識はずれであろうともそれはギャグでありそれこそバカテスの魅力の一つである、ギャグに一々突っ込むのは無粋(サンタは存在しない、いたらただの犯罪者だと言うのと同じ)というのは百も承知です。

ただ、自分は「確かに面白いけど、冷静に考えたら・・・」というのをこの二次創作という形で表現しているに過ぎず、その結果としてのアンチです。

作品を嫌悪しているわけではありません。





「よし、準備に抜かりはないな」

 

清涼祭当日の朝。

 

一般解放の時間が迫る中、浴衣姿の義輝はクラスメートを集め教室を見渡す。

 

Aクラスには劣りはするもののそれなりに広いBクラス教室を仕切りで二分して厨房とフロアにし、机を何台かを合わせて上から和柄のテーブルクロスを被せたり、華道部の生徒が生けた花や演劇部から拝借した屏風を飾ったり、フロアの接客係(主に女子) は浴衣の着用するなどして和風喫茶を演出している。

 

「もうしばらくしたら客が入って来る。厨房班、フロア班、各自ローテーションを守って円滑に進めてくれ。誰かに負担がかかりすぎているってことがないようにな。特に厨房班は火の取り扱いには気をつけろ。フロア班は決して客に失礼のないように振る舞うんだぞ。万が一トラブルが起きた場合、俺か恭二か丸に必ず伝えてくれ」

 

「ちょっと宍戸君、その代表の姿が見当たらないんだけど?」

 

律子が恭二がこの場にいないことを指摘する。

 

「本人曰く『自分の評判や好感度くらいは理解している』、だそうだ。それを言ったら俺も怪しいけど。まあ、来るのは一般客だけじゃなくて学園の生徒もだからそのための配慮らしい。たださっきも言った通りトラブルの対処はするために顔は出すそうだからその時は頼ってくれ。『クレーマーの対処はまかせておけ』とも言ってたからな」

 

「・・・・妙に説得力があるわね」

 

どうせ録でもない手段をもってクレーマーを丸め込むのだろうと律子は想像した。

 

「申し開きは以上。後は各自で備えてくれ」

 

義輝が解散を告げると厨房班の生徒達はそれぞれの持ち場につき、フロア班はフロアを取りまとめる恵のもとに集まる。

 

それともう一つ、教室の入り口付近に一団ができている。

 

「・・・こうして見ると、ウチのクラスの参加者って多いんだな」

 

義輝がしみじみと呟く。

 

この一団、総勢16名全員が清涼祭メインイベントである試験召喚トーナメント大会の参加者であり、クラスメートにして敵同士なのだ。

 

「へぇ、組み合わせを見るとほとんどがDブロックに固まっているのね」

 

事前に配布されたトーナメント表を広げながら真由美が言う。

 

「組み合わせってランダムなんでしょ?それにしても身内対決って何か締まらないわ」

 

「いやいや岩下、こっちなんて同じCブロックに参謀がいるんだぞ?ある意味締まるぞ」

 

「あたるとしても4回戦だけどな」

 

律子の言葉に苦笑いする次郎。

 

彼と組んで出場する卓夫も同様である。

 

「身内でも 容赦はせぬ 本気出す」

 

4回戦が自身の最高得点である古典であるためか一刀が二郎と卓夫に自信満々に告げる。

 

「それを言ったら私と真由美だって2回戦で代表と小山さんなのよ?」

 

「俺も恭二も流石に身内対決で策だの何だのと無粋なことはしないって、多分」

 

「その含みのある言い方が怖いんだって」

 

ため息混じりに言う卓夫。

 

「ん?岩下と菊入の1回戦の対戦相手って坂本と吉井か」

 

自分もトーナメント表を広げる義輝。

 

因縁のある名前が目に留まる。

 

「そうなのよねぇ。嫌だなぁあんな変態の相手なんて。この前代表が見せびらかしていた写真を見たけど、思い出しただけで鳥肌が立つわ」

 

「ま、まぁ・・・・・私と律子のコンビネーションなら大丈夫よ」

 

坂本、という名前を聞いて恭二が持っていた雄二の女装写真のことが脳裏を過ったらしい。

 

その名状しがたいおぞましさに顔をひきつらせる二人。

 

「ま、各自健闘を祈る。そろそろ時間だから会場に行くか」

 

義輝の一言で一行は特設ステージのある校庭へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは試験召喚大会1回戦Cブロック第一試合を始めます」

 

「お、やっと俺達の番か。行くぞ一刀。岩下達の分まで頑張ろうな」

 

「・・・・・・」(コクリ)

 

立会人である数学の木内教諭のコールでステージに上がる義輝と一刀。

 

彼らが待機している間に他のブロックの1回戦が行われたのだが結果として突破したのは半数。

 

特に律子と真由美は意気込んでいたは良いものの明久の操作技術の高さと雄二のごり押しの前に破れてしまっていた。

 

「ど、ど、どどどうしよう兼定!?。2年とはいえ、初戦からBクラスだよ!?」

 

「狼狽えるな、兼亮。先輩である俺達の方が召喚獣の扱いにはなれているハズだ」

 

同じくステージに上がった義輝と一刀の対戦相手、3ーEの肝付兼定がとてつもなく不安になっているのをクラスメートの一条兼亮がたしなめる。

 

「先輩方、心配しなくても俺達数学が苦手なんでそこまで心配しなくても大丈夫ですよ」

 

二人の様子を見て義輝が言う。

 

「で、でも噂じゃ君はいろいろやらかしているって聞いたよ!?敵対したら最後だとか手段を選ばないとか夜道に気をつけなければならないとか、この間の戦争で鬼畜外道の限りをつくしたとか!!」

 

「大体合ってるけど一部違いますって」

 

どうやら悪評は学年内に止まらず校内に広まっているらしい。

 

それも恭二と合わさってかなりの尾ひれがついているようである。

 

「えぇー・・・・そろそろ良いでしょうか。召喚を開始してください」

 

見かねた木内教諭が催促する。

 

「と、とにかくっ!南無三っ!試獣召喚《サモン》!!」

 

「だから落ち着けって兼亮。試獣召喚《サモン》」

 

先に上級生二人組が召喚を始める。

 

彼らの足下に魔方陣が出現し、発する光と共に召喚獣が現れる。

 

二人の召喚獣は胴回りだけ鎧を着用してはいるものの兜は被っておらず得物はすぐに切れ味が落ちそうな安物の刀とまさに足軽といった出で立ちである。

 

『Eクラス 一条兼亮 数学 75点』

 

『Eクラス 肝付兼定 数学 81点』

 

「それじゃこっちも。試獣召喚《サモン》」

 

「試獣召喚《サモン》」

 

義輝と一刀も召喚を開始する。

 

赤色で統一された鎧兜を身につけた二体の召喚獣が現れる。

 

こちらは武将と言うに相応しいだろう。

 

『Bクラス 伊東一刀 数学 68点』

 

「・・・・・一刀、お前相変わらず数学ダメなんだな」

 

「・・・・・義輝よ 何も言うなよ 分かってる」

 

先に点数を表示され顔をそむける一刀。

 

「・・・なーんだ、心配して損したぜ!数学が苦手っつっても俺達以下だとはな!その首貰った!ヒャッハーーー!!」

 

先程までオドオドと気弱な発言を繰り返していたのはどこへいったのか、一刀の点数を見て某世紀末暗殺拳バトル漫画に生息するようなモヒカンの如く自信満々で驕りたかぶった態度に変貌した兼亮。

 

彼の召喚獣は単独で一刀の召喚獣へ駆け出す。

 

「や、止めろ兼亮! その『ヒャッハー!』は死亡フラ・・・じゃなかった、安易に突出するな!落ち着けと言っただろう!」

 

「止めるな兼定、下級生ごときに殺られる俺じゃねぇ!!これで終わりだー!!」

 

兼定の言葉むなしく、兼亮の召喚獣はそのまま一刀の召喚獣に斬りかかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『Bクラス 宍戸義輝 数学 181点 』

 

VS

 

『Eクラス 一条兼亮 数学 0点』

 

のだが刀を振り下ろす寸前で義輝の召喚獣の槍が兼亮の召喚獣の首をはねる。

 

文字通りの横槍だ。

 

「な、なんだとっ!?ば、馬鹿な、お前も数学が苦手なんじゃねぇのか!?」

 

「いやぁ、俺苦手意識があるだけで点数はそこそこ取れるんですよ。てか一刀、いつまでもブルーになってないで仕事しろよ」

 

「嗚呼すまん 現実逃避 していたか」

 

ようやく顔を上げる一刀。

 

「で、どうしますか先輩。こちらが頭数で有利になりましたが」

 

「流石にこの状況は覆せんよ。棄権するよ」

 

横目で兼亮を見ながら言う兼定。

 

「・・・・ひっ、ひぃぃぃーー!!ご、ご、ごごごごごめんなさいー!!」

 

再び気弱な態度に戻った兼亮は一心不乱に叫びながら駆け出してステージを飛び降り、そのまま校舎に消えた。

 

「すまないな。あいつはもともとすごく気が小さい奴でね。だけとたまに今回みたいに変なスイッチが入るんだ。

不快な思いをさせてしまったな」

 

兼定は頭を下げる。

 

「気にしないでくださいよ。誰だって祭りでテンションぐらい上がりますって」

 

「別に俺 何も気にして いはしない」

 

「そう言って貰えると助かるよ。ま、このまま優勝目指して頑張ってくれ」

 

 

こうして和気あいあいとした雰囲気のまま、義輝と一刀は

2回戦へと駒を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの生徒、確かBクラスの次席だったか。勝ち進めばマークする必要があるな。計画の邪魔になりかねん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




投稿が遅れて申し訳ない。


今回登場した三年生。

名前のモデルは歴史シュミレーションゲーム信長の野望における最弱武将、一条兼定と肝付兼亮でした。


ご意見、感想などお待ちしております。


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波乱と陰謀の清涼祭ー和風喫茶『都麗美庵』ー

遅れてしまいました。

なぜ遅れたかというと

原作を読み返す(1~8巻)

読み終わり床に平積みにして放置

それに向かって愛犬(チワワ)が粗相

買い戻すか悩む

結果、財布から福沢諭吉先生が旅立たれる

教訓、良い子の皆!後片付けはきちんとやろうね!



「オーダー入ったわよ、クリームどら焼2!」

 

「こっちは餡蜜3!」

 

「おい、テーブル2のどら焼出来たぞ」

 

「早いとこぜんざいを持ってってくれ」

 

トーナメント一回戦が終わると、学園を訪れる一般客の数も増え始めた。

 

多くのクラスへの来客が押し寄せており、義輝達も例外ではない。

 

2年Bクラス和風喫茶『都麗美庵(とれびあん、一刀が命名)』ではフロア・厨房スタッフ共々客の対応に追われていた。

 

浴衣姿のウエイトレス・ウェイター達はお茶を出しながら注文を聞いてまわり、厨房へ伝達。

 

厨房は注文された品々を用意する。

 

そしてそれを注文を受けた者が運んでいく。

 

また客が食べ終え帰った後片付けを速やかに行い、次の客を迎える。

 

打ち合わせなどを入念に行ってはいたものの、初めてかつ慣れない作業である。

 

最初はどこかぎこちない様子が感じられたのだが、数をこなしているうちにある程度コツを掴んだらしく一連の作業がスムーズに行えまでの域に達しつつあった。

 

 

 

 

「はぁ・・・・・」

 

試合を終えてあらかじめ決められたローテーション通り、教室の前で呼び込みを担当していた真由美は大きく溜め息をつく。

 

「ちょっと真由美、そんなに浮かない顔してたらお客さんが逃げちゃうでしょ?気持ちは分かるけどね」

 

同じ担当で相棒である律子が励ますように話しかける。

 

「しょうがないじゃない。まさかあんなのに負けるなんて」

 

真由美が言う『あんなの』とは言うまでもなく坂本雄二・吉井明久らFクラスコンビであり、片や女装の変態、もう一方は観察処分者である。

 

点差も十二分に開いていて、そしてコンビネーションもこちらの方が断然上であった。

 

しかし個人戦に持ち込んでしまったのが下策だった。

 

分断された結果圧倒的な点差を操作技術の高さでゴリ押しされてしまいあえなく敗北。

 

試合前に憂慮していた恭二・友香ペアとの対戦は杞憂となってしまったのだった。

 

「終わったことを悔やんでも仕方ないわ。きっと代表が仇を討ってくれるわよ」

 

「・・・・そうね。私達の代わりにボコボコにしてもらいましょ!」

 

律子の言葉に苦笑いしながら答える真由美。

 

先の戦争を見れば我らが代表はきっと何かをしでかす、否、絶対に何かをやるはずだ。

 

謎の信頼がそこにはあった。

 

「それにしても」

 

真由美は店内に目を向ける。

 

「今のところNo.1は丸ちゃんって感じよね」

 

目線の先には二人と同じく浴衣姿でウエイトレスをこなす恵の姿があった。

 

淡いピンク色に紫色の紫陽花があしらわれた浴衣を着ており、いつもは二つ結びにしている黒髪を一つにまとめ、本人の整った顔立ちも相まって派手さこそないものの華やかさに満ちている。

 

「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりでしょうか?」

 

加えて普段の彼女とのギャップである。

 

普段は表情の変化が少なく口数が少ないのだが、ウエイトレスをしている今は真逆。

 

学園の野郎連中、一部の女子が目を奪われる有り様だ。

 

「それと・・・・男子は宍戸君ね」

 

今度は律子がウェイターをしている義輝に目を向ける。

 

この男、実は比較的顔立ちが整っている方に分類することができる。

 

しかし恭二とつるんでいること、甘いマスクに反してかなり腹黒であることが玉に傷。

 

普段の評価は高くはない。

 

だがウェイターをしている今はただただ笑顔で接客をしているだけであるため、通常の何割か増しで他者の目に映る。

 

実際に店を訪れる女子(一般客含む)や極めて一部の男子の評価はうなぎ登りである。

 

 

 

義輝が女子から熱い目線を向けられながら接客する様子を見る度に恵のこめかみがピクリと動いているのだが。

 

「けっこう丸ちゃんって独占欲強いのね」

 

「宍戸君も罪よねぇ」

 

二人はしみじみと頷く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、参謀」

 

「ん?吉田か。何だ?」

 

卓二が義輝を呼び止める。

 

「いやぁ、ちょっとトラブルというか何というか・・・」

 

戸惑っているようである。

 

「トラブル?・・・・クレームか?それともまさか女子へのセクハラとか?」

 

義輝が顔をしかめる。

 

「いや、違う。」

 

卓二はある一点を指差し続ける。

 

「何というか、盗撮?」

 

その先ではどこから現れたのかFクラスの康太がウエイトレスに向かって一心不乱にシャッターを切りまくっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい」

 

「・・・・・野郎に用はない」

 

義輝が康太の前に立ち撮影を妨害すると康太は訝しげに義輝を見る。

 

「こっちには用があるんだよ。お前どうしてここにいるんだ」

 

「・・・・・十分間の休憩時間」

 

「知らねぇよ!客でもないのに入って来て堂々と盗撮とは良い度胸だな」

 

怒気を少しあらわにする義輝。

 

「・・・・・需要があるかーー」

 

「ふざけるなよ?盗撮しといて裏で売り捌くだ!?恥を知れ!!」

 

悪びれない康太の様子に頭に来たのか義輝は康太の首根っこを掴んで引きずっていき、教室の外へと連れて行ってしまった。

 

 

 

 

 

「珍しく荒々しかったな、参謀」

 

「そりゃあアレだよ卓夫。嫁を盗撮されてお怒りなんだろ」

 

首を傾げる卓夫に苦笑いしながら話す次郎。

 

「嫁って・・・・丸目か?え、あの二人付き合ってるのか?」

 

「本人達はそうでもないように振る舞ってるがな」

 

「・・・・へぇ、そうだったのか」

 

この後、卓夫及びその他Bクラス男子はムッツリ商会から購入した恵の写真を破棄しようと心に決めたという。

 

後が怖いから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後康太はBクラス立ち入り禁止、Bクラス生の盗撮及び写真の販売禁止、メモリー消去、並びにパシり期間延長が言い渡されたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




盗撮って確か現行犯じゃないと逮捕が難しいんでしたっけ。

義輝の外見は三國無双6、7の司馬昭みたいな感じが作者にとってのイメージです。

ご意見、感想などお待ちしております。


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波乱と陰謀の清涼祭ー平賀源二の憂鬱ー

「はぁ・・・・・・」

 

場所は2年Dクラス。

 

一般客への解放時間から押し寄せる客をなんとか捌ききり客足が減り始めたところで溜め息をつく少年が一人。

 

このクラスの長、平賀源二その人である。

 

なぜ溜め息をつくのか、というと原因は多々ある。

 

まず何と言っても先のFクラスとの試召戦争での敗北だろう。

結果として設備のランクダウンこそ免れたものの、Fクラスを侮った末に無様に散った戦犯筆頭とされ、さらにはクラスにおける自身の権力が弱まってしまった。

 

最も、瑞希という切り札をFクラスが持ち合わせているなどと普通は思いもしたないだろう。

 

義輝ならば情報収集しない方が悪いと言いそうなものだが。

 

そして自身の権力が弱まった結果クラス内で清水美春を中心とした女子勢力が台頭しつつある。

 

現に今回の清涼祭の出し物である喫茶店を仕切っているのは実家の喫茶店を手伝っている美春なのだ。

 

女子を中心とした経営手腕を発揮し、源二が入り口前で客引きをさせられているように、男子は裏方へと追いやられてしまった。

 

なかなか強気に出られない源二としてはますます肩身が狭い。

 

 

そして溜め息の原因がもう一つ。

 

源二は腹心である塚本と共に汚名返上名誉挽回を掲げてトーナメントにエントリーしている。

 

一回戦は運良くEクラスのペアとあたり難無く勝利したのだが、問題は次の相手である。

 

『2ーB 宍戸義輝

2ーB 伊東一刀』

 

宍戸義輝。

 

源二にとって中学時代からよく知る人物ではあるが評判は宜しくない。

 

仲の良い者には手厚く接するのだが敵対しようものなら容赦なく叩き潰す。

 

その姿勢のあらわれがBクラスとFクラスの戦争だ。

 

聞くところによると瑞希が綴ったラブレターを入手してそれを盾に瑞希を脅したとか、敗北したFクラスの面々を馬車馬のごとくこき使っているとか。

 

また、FクラスがAクラスに挑み敗北したのにも一枚噛んでいるという噂もある。

 

噂の真偽を問わず相まみえず友好関係を築くのが源二の理想だったのだがどうしたものか。

 

「はぁ・・・・・」

 

「どうした代表。さっきから溜め息ばかりじゃないか。そんなんじゃ客足が遠のくぞ」

 

源二の様子を見かねた塚本が持ち前のよく通る声で咎める。

 

「いや、何でこうなったのかなと思ってね」

 

「・・・・気持ちは分からんでもないが過ぎたことを悔やんでも何も始まらないぞ。今は耐え忍ぶ時だ。臥薪嘗胆という言葉があるだろ」

 

塚本は元気付けるように源二の背中を叩く。

 

苦境でも弱音を吐かず周囲を鼓舞する塚本を先の戦争で前線指揮官に任命したのは源二自身だが、こうして実感すると自分の采配で唯一の当たりだったんだな、と源二は思えた。

 

今となっては皮肉でしかないがそれでも塚本の言葉はありがたい。

 

「そうだね。くよくよするのも止めにーー」

 

しようとした時だ。

 

 

 

 

「ったくよ、Dクラスの奴らホントふざけているよな」

 

「全くだ。俺達のクラスのエアコンの室外機を壊しといて何の詫びも入れないであげくの果てに学校からお咎め無しときた。こちとら必死に勉強して今の設備を手に入れたというのによ」

 

 

隣のクラスの方から何やら愚痴が聞こえてきた。

 

その声がする方を見るとBクラスの前の廊下で客引きをしている男子生徒二名がおり、話し込んでいる様子だった。

 

「なぜかウチの代表も参謀も未だに動いていないしな。ちょうど良い、今度のHRでDクラスの制裁的について意見を出して審議してもらうか」

 

「そうだな。あの二人ならDクラスを叩きのめしてくれるだろうよ。特に参謀は『皆の意見』ってのを大事にするからな」

 

「そうと決まればクラスの連中に根回ししておかないとな」

 

「安心しろ。今のところ過半数の奴に話は通してある」

 

「・・・仕事が早いな」

 

「なぁに、代表と参謀見てりゃ悪知恵ぐらい働くって」

 

 

 

 

 

 

「・・・・・まずいな」

 

源二は顔をしかめる。

 

「で、でも代表、あれは嘘かもしれないだろ?」

 

「いや、塚本。義輝は身内だけには甘い。クラスに不満が溜まっているなら迷いなく捌け口を利用するぞ」

 

「・・・今の状態で何かされたらDクラスは瓦解しかねないな」

 

今現在、Dクラスは戦争ができない状態ではあるが義輝と恭二のことだ。

 

あらゆる手段を講じて制裁を加えてくるだろう。

 

そうなってしまっては肩身が狭いとかそのようなレベルの話ではない。

 

「とにかくそろそろ2回戦の時間だ」

 

源二は腕時計で時間を確認する。

 

「本人に聞いて確かめるのが手っ取り早いよ」

 

 

源二と塚本はメイン会場へと駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『引き続き試験召喚大会2回戦Cブロックの試合を執り行います。2ーB宍戸・伊東ペア、2ーD平賀・塚本ペア、ステージへどうぞ』

 

源二と塚本が会場に到着してまもなく、自身らの試合がコールされる。

 

周囲を見ると対戦相手である義輝達もおり、ステージへと足を進めていた。

 

「代表、行くぞ」

 

「あ、ああ・・・・」

 

塚本に背中を押されながら源二もステージへと向かう。

 

 

 

 

 

「思った通り、源二達が勝ち上がってきたか。知己とはやりづらいんだよな」

 

「仕方ない これも乱世の さだめなり」

 

「乱世と言っても文月学園内限定だけどな」

 

ステージ上で向かい合うと、義輝と一刀が口を開く。

 

「じゃ、源二。一つお手柔らかに頼むよ」

 

「いや、それはこっちの台詞だよ、義輝」

 

「待て、代表。聞きかなきゃならんことがあるだろう」

 

そのまま試合に突入しそうな雰囲気になり、塚本が流れを断つ。

 

「分かってるよ塚本。・・・・義輝、一つ聞きたいことがあるんだ」

 

「聞きたいこと?」

 

義輝は首を傾げる。

 

「Bクラスの中にDクラスに制裁を加えようって動きがあるって聞いたんだけど、本当なのか?」

 

「・・・あー、それか」

 

義輝は顔をしかめながら頭を掻く。

 

「ほら、前にDクラスはFクラスの命令で俺達のエアコンの室外機を壊しただろ?その件を快く思っていない連中が多いみたいでな。我慢の限界に近い。それにウチは基本的に多数決と俺と恭二の裁量で物事が決まるから今のままだったら間違いなくDクラスに何かすることになるだろうな」

 

「な、何かって?」

 

「例えば調略次第だけどEクラスかFクラスをけしかけるとか模擬の戦争を申し込むとか、だな」

 

「な!?そ、そんなの無理に決まってるだろ!」

 

塚本が声をあげる。

 

「無理も何も、それを可能にするのが俺の仕事なんだ。源二に恨みはないけど決定されればやらざるをえないな」

 

決定されればやる。

 

これは今の源二にとって非常にまずいことである。

 

義輝の策の実行によってDクラスが他のクラスと戦火を交えた場合、負けてしまえば己の地位がさらにダウンする。

 

勝とうと思っても今のDクラスの下がりに下がった士気、

男女間の連携のとれなさが足を引っ張ってしまうだろう。

 

そしてクラスはますます悪い方向へと向かってしまう。

 

 

「・・・・どうにかして回避できないかな?」

 

源二は声を震わせる。

 

「俺が説得するしかないだろうな」

 

「できるのか?」

 

「一応、俺はNo.2だからそれなりに発言権と信頼はあるぞ」

 

「・・・・頼む!」

 

「お、おい、代表!?」

 

頭を下げる源二に塚本が歩み寄る。

 

「・・・すまないけど、友達の頼みとはいえ今のままだったら無理だ。こちらに何のメリットもない」

 

「じゃ、じゃあメリットがあれば良いんだな!?こうしよう、俺と塚本はここで棄権する!そしてDクラスはBクラスの要求を可能な範囲で一つだけ呑む!」

 

「待て、代表!そこまでやる必要は無いだろ!?」

 

「考えてみろ塚本!!今のクラスの状態で他のクラスと戦争になって勝てると思うか!?勝つには信頼回復と男女の溝を埋める時間が必要なんだ。このままではクラスがダメになってしまう。お前は瓦解したクラスで一年を過ごしたいのか!?」

 

「・・・・・・」

 

源二の言葉に押し黙る塚本。

 

「分かった、源二。そこまで言うならその条件で良い。遠藤先生、今の約定の立会人になってくれません?」

 

義輝は2回戦の試合の担当である遠藤教諭に話を振る。

 

「しかし、代表である平賀君に対して宍戸君はBクラス次席ですよね?こういうものは代表同士でないとーー」

 

「その点なら問題ありません。清涼祭の間は俺がBクラスの全権を預かっていますから。なんなら本人に確認していただいても構いません」

 

「・・・分かりました。詳しい話は後日にしましょう。今は仮に約定を結ぶということで良いですね?」

 

「ええ」

 

「・・・はい」

 

遠藤教諭の言葉に義輝と源二は頷く。

 

「それではこの試合は平賀・塚本ペアの棄権により宍戸・伊東ペアの勝利とします」

 

高らかに義輝らの勝利が告げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、予想外だったな」

 

「揺さぶりが 早くも功を 奏したな」

 

教室へと戻る道中、義輝は笑みを浮かべていた。

 

「じっくりとDクラスを落とすつもりだったんだけどな」

 

 

もとより、Bクラスの面々はDクラスに対して何の恨みも抱いてはいない。

 

むしろ戦争の被害者だと憐れんでいたぐらいである。

 

それをあたかも恨んでいるかのように噂を流して戦争の準備をすることで本当に動くように見せ、Dクラスから何らかの提案を引き出す予定であったのだが、義輝の想像以上にDクラスは困窮し源二が追い詰められていたため、噂を流すという第一段階で源二が折れてしまったのだ。

 

しかも不戦勝というオマケ付きで。

 

「祭の日 謀るなどと 思うまい」

 

「ま、源二には悪いけど、これもBクラスの安寧のためだからな。さて、さっさと戻りますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祭の日に謀っているのは何も義輝達だけではない。

 

それに義輝が気づくのはもう少し先の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




リアルが忙しくて遅れました。

加えて空いた時間は信長の野望、無双の新作に費やしていたものですから。



人は追い詰められると正常な判断ができなくなるよ、というお話でした。


自分もコールオブデューティーシリーズのサーチ&デストロイで最後の一人になったら普段やらないようなことをしてしまいます。


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波乱と陰謀の清涼祭ー嫌な事件だったね・・・ー

「義輝、一刀、お帰り」

 

「・・・・・おい、これはどういう状況だ?」

 

Dクラスとの約定という土産を引っ提げて意気揚々とBクラスへ帰ってきた義輝と一刀。

 

二人を恵が迎えるが義輝はとある物を見て首を傾げる。

 

客足は落ち着いたとはいえまだまだ飲み食いする客で席が埋まっているのだが、その中の一つのテーブルに一人突っ伏して占領している者がいた。

 

顔は見えないものの、その特徴的な髪型はよく義輝も見知っている。

 

「何で恭二がいるんだ?できるだけ顔を出さないんじゃなかったのか?」

 

「あの様子 余程のことが あったのか?」

 

「根本、負けた。なぜかは知らない」

 

正体はこのクラスの主、恭二だ。

 

義輝と一刀が恵に事情を知らないか尋ねるが恵は首を横に振る。

 

「対戦相手は確かFクラスのバカ主従だったっけ?あんな風にしてるぐらいだから・・・・ま、とにかく本人に聞いてみるか」

 

原因が何かのかあたりをつけたらしく、義輝は恭二がいるテーブルへと向かい、一刀が後に続く。

 

 

 

 

 

「おい恭二。どうした、落ち込むなんてお前らしくないぞ?」

 

「・・・・・ああ」

 

義輝が恭二の向かい側に、一刀が恭二の隣の席に座る。

 

「おい根本 何があったか すぐ話せ」

 

「・・・・・ああ」

 

二人が呼び掛けるも恭二は腑抜けた声しか出さない。

 

「あぁ、もう、面倒だな。・・・・・・おい恭二、廊下にいるのって小山じゃないか?」

 

「何だとっ!?」

 

原因にある程度あたりをつけついた義輝が友香の名前を出すと、先ほどとはうって変わって恭二が即座に反応して立ち上がる。

 

「んだよ、いねぇじゃねぇか」

 

「嘘に決まってるだろ。お前がウジウジ不貞腐れているからだ。で、恭二。何があった?Fクラスのバカ共に何かされて友香と仲違いでもしたか?」

 

「仲違いなんかじゃねぇ、あれは誤解だ!」

 

恭二は座って悔しげに拳をテーブルに叩きつける。

 

そして二回戦で何があったのか語り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文月学園清涼祭試験召喚大会トーナメント。

 

恭二はこのイベントにCクラス代表である友香と共に参加していた。

 

一回戦の相手はAクラスとEクラスの生徒だった。

 

点数の高いAクラスの生徒を先に二人がかりで倒すことで

難なく勝利した。

 

そして二回戦。

 

恭二達はステージの上で対戦相手の到着を待っていた。

 

数分待った後に対戦相手がようやくステージ前に現れる。

 

「あ?バカ共にウチのクラスの岩下と菊入は負けたのか?」

 

恭二の予想に反して勝ち上がって来た相手は明久と雄二だった。

 

情けない奴等だ、と恭二がぼやく。

 

「あれ?誰かと思えばBクラスとCクラスの代表カップルじゃないか」

 

明久が雄二と共にステージに上がる。

 

「別に良いじゃない恭二。Fクラスの底辺コンビが相手なんだから、この勝負は貰ったようなものじゃない」

 

先の戦争で秀吉に騙されかけたこともあって二人を睨み付ける友香。

 

「あの時みてぇに仲がよろしいようだな」

 

雄二も雄二でBクラスとCクラスに嵌められたこともあってか忌々しげに睨み返す。

 

「友香、さっさとこの雑魚共を片付けて俺のクラスで茶でも飲むか」

 

「ええ、そうね。バカ共には負け犬姿がお似合いよ」

 

「何だと!さっきからバカバカとーー」

 

「落ち着け明久。挑発に乗るバカがあるか」

 

雄二は明久の襟首を掴んで宥める。

 

「おっと、ごめん雄二。僕としたことが危うくーー」

 

「あ、すまん。挑発に乗る乗らないに関係なくお前がはバカだったな」

 

「ぶっ殺す!!」

 

明久は拳を振り回して暴れようとする。

 

「あの、スケジュールも押してますのでそろそろ始めたいのですが」

 

しびれをきらした遠藤教諭が早く始めるように催促する。

 

「ちっ、命拾いをしたね雄二。一回戦の続きはまた今度だ」

 

「上等だ、コラ」

 

雄二が襟首から手をはなすと明久は乱れた服装を整える。

 

「けっ、仲間割れかよ。これはもう勝負は決まったようなもんだな」

 

その様子を見ていた恭二は嘲笑う。

 

 

さて、この後恭二は敗北を喫する訳だが原因は一つである。

 

それは相手をみくびって油断していたからではない。

 

普段、恭二は誰かと敵対する時には脅したり弱味を握ったり嫌がらせをしたりなどとにかくあらゆる手段を講じて自身を優位にたたせるのが常である。

 

しかし恭二はこのトーナメントにおいてはそのような真似は一切していない。

 

理由は簡単。

 

正面から堂々と相手を叩きのめして友香に良いところを見せたいという思春期ならではとも言える思惑があったからだ。

 

誰でも惚れた異性に対しては張り切るもの。

 

恭二にしては珍しく純粋な思いであるが今回はそれが仇となる。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ雄二、例のモノを」

 

仕切り直しと言わんばかりに明久が言う。

 

「おう。これのことだろう?」

 

ニヤリと笑い雄二は一枚の大きな紙を取り出して広げて見せる。

 

「んなっ!?何でそんな物が!?」

 

恭二はそれを見て驚きの声を上げる。

 

『奇跡の一枚根本恭二ver 本当のア・タ・シ』

 

そんなタイトルと共にその紙、ポスターに写っていたのは女子の制服に身を包んだ恭二の姿であった。

 

当然、恭二にはポスターに関して覚えがない。

 

それもそのはず。

 

これはムッツリーニこと康太が彼自身が持つ無駄に高い無駄な技術を施した物であり、雄二の女装写真に恭二の顔写真を合成しその他細かい処理を施した逸品である。

 

事情を知る者ならばそのからくりを見破ることは容易いであらうが、全く事情を知らない者を誤解させるには申し分ない効果を発揮する。

 

そう例えば、友香とか。

 

「・・・・・これはどういうことかしら?」

 

ポスターを見て顔をひきつらせる友香。

 

「ま、待て友香!これはこいつらの捏造ーー」

 

「明久、根本の口を塞げ!」

 

「了解」

 

「お、おいっ!」

 

恭二が何かを言う前に雄二が明久に命じると、明久は恭二の後ろに回ってチョークスリーパーホールドの要領で腕を首にまわした上で口を塞ぐ。

 

「まだまだあるぞ、Cクラス代表の小山とやら」

 

雄二はそう言うと空いた方の手でポケットから写真の束を取り出す。

 

言わずもがな、それらは女装した恭二が写っている合成写真である。

 

「さあ、これを手にとって見たければ今すぐに棄権してくれ」

 

「!!!? !!!?!」

 

雄二の言葉に恭二は何かを言おうと必死になるが明久に阻まれて声にならない。

 

「・・・・・いいわ、私達の負けよ」

 

「交渉成立、だな」

 

雄二がいっそう口角を吊り上げ、写真を友香に手渡す。

 

「は、放せ!!と、友香!!これは違うぞ、奴らの策略だ!こんな物捏造だ、誤解ーー」

 

明久の手を振りほどいて恭二が友香に詰め寄る。

 

当の友香は無表情で写真を確認していくと恭二に言う。

 

「そうね。私、誤解していたわ。

 

 

 

 

 

もう二度と私に付きまとわないで、変態」

 

まるでゴミを見るかのようか冷たい目をしながら恭二にいい放ち写真を投げつけ、そのままステージを降りて行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでそのまま棄権したって訳か。・・・まあなんだ、言うなれば『嫌な事件だったね・・・』ってか」

 

事のあらましを聞いた義輝は苦笑いし、一刀は慰めるように恭二の背をさする。

 

「どこぞの国家錬金術師かお前は」

 

「冗談はともかく・・・・・Fクラスの奴ら、また何か企んでいるようだな、恭二」

 

「報復を 恐れず根本 嵌めたのか」

 

「そうだ一刀。バカ共は今俺達の奴隷だ。下手にこちらに不利益をもたらそうものなら俺と恭二が黙っていないことぐらい分かるはずだ」

 

「じゃあ俺を嵌めてまで勝たなきゃならない理由があったってか?迷惑極まりないこった」

 

「何にせよ、下手に放っておけばBクラスに余計な火の粉が降りかかる恐れがあるな。・・・・・よし、一つ連中に探りを入れてみるか。店のローテーションも敗退組が帰って来ているから抜けても大丈夫みたいだからな。穴埋めは後ですれば良いし。一刀、お前も来るか?」

 

義輝が尋ねると一刀は頷く。

 

「恭二、お前は?」

 

「すまんがお前達に任せる。俺は友香の誤解を解きたい」

 

「ああ、分かった。どうせまた頭に血が上っているだけだけだって。ほとぼりが冷めたら行ってみろよ。さて、一刀。俺達はFクラスにーー」

 

『写っているのは男の足ばっかりじゃないか畜生!』

 

義輝が席を立とうとすると、廊下の方から聞き覚えのある声がした。

 

その方向を見やるとFクラス一行と小学生くらいの少女が向かいのAクラスに入って行くのが見えた。

 

 

 

 

 

 




根本君、ドンマイ。

新連載、始めました。

あちらの主人公はこちらの作品のBクラス生として出す予定でしたがタイミングを見失いました。

松永正久は言うなればSAN値がとても低い状態ですね。

ご意見、感想などありましたらどうぞ。


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波乱と陰謀の清涼祭ーAクラスメイド喫茶ー

「あ、宍戸君と伊東君だ!お帰りなさいませ、ご主人様♪」

 

Bクラス教室を出て向かいのAクラス教室のメイド喫茶に入ろうとしていた義輝と一刀をメイド服に身を包んだ愛子が出迎える。

 

スカートの端を指でつまみ上げ上目遣いでアピールする辺りが彼女らしいと言えよう。

 

先述の通り、Bクラスの和風喫茶に合わせて義輝と一刀は浴衣を着ているため、西洋のメイド服とはミスマッチなのだが当人達に気にする様子はない。

 

「よう、工藤。なかなか似合ってるな。だが俺のイメージでは残念ながらメイドとは清楚な人なんだ」

 

愛子のアピールに目もくれずに義輝が言うと一刀が頷く。

 

「あーあ、相変わらず面白い反応してくれないんだね。つまんないや」

 

愛子は頬を膨らませる。

 

「ところで、丸ちゃんは一緒じゃないの?」

 

「丸は喫茶店のフロアの纏め役だから忙しいようでな。後でウチの店に顔でも出してやってくれ。ほら、これをやるよ。数量限定のクーポン券だ。一枚につきどら焼き一個タダになるぞ」

 

そう言いながら義輝は愛子に二枚のクーポン券を手渡す。

 

友達を誘って来てくれ、ということらしい。

 

「え、いいの?やったぁ!」

 

「本当は父兄ようなんだけどな。俺の家族は仕事で来られないからな。・・・工藤、さっきFクラスの連中が

来たと思うんだけど、そいつらの隣の席って空いてるか?」

 

「俺達は 奴等に用が あるのでな」

 

「Fクラスってことは吉井君や姫路さん達のことだね。

ちょっと待ってね。えーと・・・・あ、大丈夫、空いてるよ」

 

愛子はクラスを覗きこんで確認する。

 

「それじゃあ案内してくれるか?」

 

「お安い御用だよ。ご主人様二名お帰りでーす!」

 

義輝と一刀は愛子に連れられメイド喫茶に入店した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これはこれはFクラスの皆さんお揃いで」

 

「ちっ、クズ野郎の手先が何しに来やがった」

 

「負け犬が何をほざいているのやら」

 

二人が席に案内されると義輝と雄二の間で早速火花が散る。

 

「宍戸君、今は営業中だからそういうのは困るんだけど・・・」

 

その様子を見た愛子が苦笑する。

 

「ま、今はお互い他所様の店に客として来てるんだ。おとなしくしないとな。工藤、俺と一刀にショートケーキとコーヒーを。」

 

「かしこまりました、ご主人様!」

 

義輝が席に座りながら言うと愛子は厨房へと向かう。

 

「・・・・・ところで」

 

義輝は雄二達の方を見る。

 

こちらを睨み付けている雄二と明久、その側に立っている翔子、手紙の件がトラウマになっているらしく怯えた表情をしている瑞希、騙されたことをまだ根にもっているらしく今にも飛び掛かって来そうな美波、そして・・・

 

「Fクラスが器物損壊とかの犯罪に手を染めていたことは知ってたが、まさか今度は誘拐に手を染めるとはな」

 

美波の隣に座っている幼い少女を見ながら義輝が言う。

 

「誘拐な訳ないでしょ!この子はウチの妹よ!」

 

「冗談に対して本気になるなよ」

 

食って掛かってきた美波を笑う義輝。

 

「お姉ちゃん、このお兄さんって誰なの?」

 

「葉月、こんな奴知らなくて良いの!」

 

「葉月ちゃんは知らなくて良いんです!」

 

少女、もとい葉月が首を傾げて尋ねると美波と瑞希の声が重なる。

 

「へぇ、妹なのか。よし、島田の妹」

 

「島田の妹じゃなくて葉月ですっ!」

 

義輝が島田の妹と呼んだことに対して訂正を求める葉月。

 

「じゃあ葉月。俺は宍戸義輝っていうんだ。まずはこれをあげよう。最後の一枚だ、この券をBクラスの喫茶店に持って来ればお菓子が一個タダになる」

 

「わぁ、ありがとうございますっ!」

 

椅子越しに身を乗り出して愛子に渡したのと同じクーポン券を葉月に渡す義輝。

 

そのやり取りを見た美波達は警戒しつつも不思議そうに見る。

 

彼女達の中では義輝とは不倶戴天鬼畜外道な男だという位置付けであるため、葉月にこのように優しく接しているということは想定外なのだ。

 

「良いか、よく聞くんだ。このFクラスのお兄ちゃん達を反面教師にするんだ。そうすればこの先生きて行くのにとても役に立つぞ」

 

「反面教師、ですか?」

 

反面教師という言葉は葉月にはまだ難しかったらしい。

 

分からないようで困った表情を浮かべる。

 

「い、いきなり何を言い出すのよ・・・」

 

「そ、そうだよ。僕達のことを教師だなんて」

 

美波と明久は困惑と照れた表情であった。

 

『・・・・・』

 

が、周囲は押し黙る。

 

「・・・すまない、坂本。皮肉った俺が悪かった。葉月、忘れてくれ」

 

「いや、良いんだ。日本語が不得手な島田はともかく明久のバカはこれが平常運転だ」

 

「お前達 いつから仲が 良くなった?」

 

義輝と雄二のやり取りに一刀が笑いを堪えながら言う。

 

「え?」

 

「ちょっとどういうこと?」

 

合点がいかないらしい明久と美波。

 

「あの、明久君、美波ちゃん。反面教師とは簡単に言うと参考にしたくないもの、ということです」

 

「おかしいと思ったよちくしょう!!」

 

「アンタ、ウチをどこまでバカにする気よ!!」

 

瑞希が申し訳なさそうに意味を教えるとテーブルを叩いて悔しがる二人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もう一方の小説、狂気の努力家もよろしければどうぞ。

ご意見、感想などお待ちしております。


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