龍球絶唱シンフォギア (刹那ピロシキ)
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第0話 プロローグ

 人は何かに憧れているモノである。

 

 

 野球選手、宇宙船のパイロットなど憧れることが誰でもあるだろう

 

 

 

 この物語は夢でみた山吹色の胴着を着た戦士に憧れる少年が少女たちと紡ぐ物語である。

 

 

 

 

 ――――――― 少女の歌には血が流れ、少年の拳には想いが乗る ―――――――――――

 

 

 

 

 

 第0話    プロローグ

 

 

 

 

 

 朝日が上がった頃、一軒の住宅にある一部屋に目覚ましが鳴り響く、ピピッピピッとリズム良く鳴っている時計を一人の少年が止める。瞼を擦りながら体を起こす。

 

 

「………腹減った」

 

 

 そう言うと少年は部屋に置いてあるジャージに着替え部屋を出る。一階の居間に降り、朝食を食べる。だがその量は普通に見てもとてつもない量だった。白米もおかずも朝に食べる量ではないのだ。だがこの少年はものの数分で完食し片付け、居間の奥の部屋へと進む。

 その奥の部屋には仏壇がありそして橙色で中に星がある球体が置かれていた。少年は仏壇の前に座り拝んで一言修行に行ってくると言い家を出た。

 

 

 この少年の名前は孫 悟代

 

 

 夢に出てきた戦士のような強さを持って多くの人と戦うことと大切な人たちを守りたいと想う心優しい少年である。

 

 

 なぜこの少年悟代が強くなりたいのか。それは夢に出てきた山吹色の胴着を着た戦士が理由である。彼は最初人とは思えないほど強かったが修行の旅が進むにつれて彼よりも強い強敵が現れる。その中で彼の師匠や唯一の兄弟弟子や仲間たちが敵に殺されてしまうことがあった。

 しかし彼の戦士は次こそ勝ってみせると誓い悲しみを乗り越え力を付け強敵たちを倒していった。彼の物語の夢を見て少年はこんなにも強かったらどんな世界が見えるだろうと思い彼の戦士に近づくように修行を始めた。

 最初の頃は何度も自分の祖父に負け、負けた原因を考え次こそはと修行をしていき数年後には祖父を追い越していた。祖父も驚いていたがお前の強さの先が見てみたいと良い褒めてくれた。だがその祖父も病に倒れてしまう。親であり師匠でもあった祖父を亡くし沈んでいたが悟代の周りにいた友人たちが悟代を元気づけ立ち直らせてくれた。彼はそのことについて感謝してもしきれない恩を感じている。

 

 

(今日はだいぶ天気がいいなー、何か良いことがありそうだ)

 

 

 そんな呑気な事を考えながら彼は総重量100(・・・)㎏の重荷を付けながら日課のランニングをする。 

 そしてランニングのゴールである山の頂上に到着する。そして一息入れ呼吸を落ち着かせた後に夢で見た敵を目の前にイメージをし、対峙をする。トレーニングをする悟代にある二人の人物が声をかける。

 

 

「おはようさん悟代、相変わらず朝早いな」

 

 

「おはよう悟代君、本当に早いね」

 

 

声をかけられ一時中断して声がかかってきた方向に悟代は体を向け言う。

 その声をかけてきた二人は紅い髪で羽のような髪型で姉御肌を感じさせる女性と青い髪を楽譜などにあるト音記号のように留めている大人しそうな少女であった。この場に世間一般の人間がいれば驚き声を上げていただろう。なにせこの二人は今世間を騒がせているアーティストなのだから

 

 

「それはお互い様だろ?奏、翼」

 

 

「いやいや、お前のように重りを付けながら数十キロランニングした後に、そのままイメトレするほどじゃない」

 

 

「でも、改めて思うとすごいよね悟代君は、本当に中学生?」

 

 

「そうだよな翼ぁー、もしかしたら姿を偽った超人とか宇宙人だったりしてなぁ?」

 

 

「お前ぇら言いすぎだぞ、俺はれっきとした中学二年生だ」

 

 

 和気藹々と雑談をしているが普通の人彼女たちのような人気アーティストと話す機会はない。何故悟代が彼女たちと関係を持っているかというと以前彼が修行している姿をこの二人が見ていた事がきっかけである。悟代は修行で相手の気、人間の体内エネルギーを感じることが出来、二人の気を感知し位置を確認し彼から話しかけた。二人は驚いて警戒していたが話していくにつれて互いに無害だと感じそのまま友人としての交流を持った。まぁ、彼はあまりバラエティなどを見ていないため彼女らを知らなかったことも大きな原因だが…

 

 

「あっ、そうだ悟代。今度の土曜日暇か?」

 

 

「ん?特にないけどなんかあったんか?」

 

 

「その日に私たち《ツヴァイウィング》のライブがあるんだよ。悟代君は興味ある?」

 

 

と二人が言ってくるが今の悟代の脳内では

 

 

(どうすっかな、興味あるけど少し修行とかしてぇしなぁ。かといって断るのも申し訳ねぇしな)

 

と絶賛悩んでいた。だが最初の頃は音楽など興味がなく修行か食事の事しか考えていない脳筋なのでいいきっかけになるかなと考え

 

 

「じゃあ行ってみっかな、ライブでのお前ぇ達に興味があるし」

 

 

 そう悟代が答えると彼女らは喜んでいた。彼と出会った頃自分たちの事をまるっきり彼が知らなかったので悲しい思いをした。なので彼に自分たちの事を知り音楽に興味を持ってほしいと考えたので彼に自分たちのCDを渡すなどをしていた。結果として自分たちを知り、先ほどのように興味があると言ってくれたので彼女たちは大喜びだ。

 

 

「でも、そういうのはライブのチケットが無きゃ行けなくねぇか?俺無ぇぞチケット」

 

 

「そう言うと思ったよ。けど何であたし達がこの話をしたかわかる?」

 

 

「なんだ?そのチケットをくれるとかか?」

 

 

大正解!と奏が言い、翼に声をかける。翼は恥ずかしがりながらも、はいと俺に渡してきてくれた。

 

 

「おぉ、サンキュー翼」

 

 

「う、うん……」

 

 

「なんだ翼、照れてるのかー?」

 

 

「もう!わかってるくせに!………やっぱり奏は意地悪だ」

 

 

「ははは!ごめんごめん、やっぱり翼は可愛いや」

 

 

もう!といって翼は頬を軽く膨らましながらそっぽを向いた。その姿を見て悟代は、ハハハと笑い奏に言う

 

 

「あんまし翼をいじめんなって。コンビ解消されちまうぞ?」

 

 

「おっと、それは困るね。翼はあたしの唯一無二の相棒だからね」

 

 

そんな会話が聞こえて翼はまた顔を赤らめるが、あっと翼が思い出したかのように奏に聞く。

 

 

「そういえば奏もチケット持ってこなかった?奏も渡すとか言っていた気がするけれど?」

 

 

「え?あぁーあたしのは忘れちまったのさ。別にあたしのはいらないだろ?」

 

 

とやや焦っている感じを出した奏に対し翼は仕返しとばかりに

 

 

「へー?そのポケットから出てる紙は何だろうね?」

 

 

「え!?嘘!?」

 

 

と焦りポケットを確認する奏、してやったりと笑う翼、珍しいこともあるもんだと考える悟代

 

 

「なんだ出てないじゃん……って翼あたしを騙したな!」

 

 

「騙してないよ?奏が勝手に自爆したんだよ?」

 

 

「うぐっ、いつの間にあたしに仕返しできるようになったんだい?翼」

 

 

「内緒、ほら奏も悟代君に渡しなよ」

 

 

わかったよと観念しながら悟代にチケットを手渡す。

 

 

「これであと一人誘いなよ。あたし達が渡したチケットは良い席だからね、来ないと損するよ」

 

 

「おう、奏もサンキューな」

 

 

「じゃあ、あたし達はそろそろ行くよ。またな悟代」

 

 

「じゃあね、悟代君」

 

 

「おう、ライブ楽しみにしてっからな」

 

 

 と互いに別れを告げ彼女たちは去っていく。一人残された悟代は渡された二枚のチケットを見て誰を誘うか考えていたが後で考えるかと思い再びイメトレを始めた。家に帰るころには学生がちらほらと登校していたのですぐに汗を流し学校に行く準備をし、行くかと玄関に向かっている時に家のチャイムが鳴った。やっぱり良いタイミングで来るなと思いながら家の玄関を開けた。

 

 

「やっぱ良いタイミングで来るな、未来」

 

 

「おはよ悟代君。それと朝の鍛錬お疲れ様」

 

 

白いリボンが特徴で黒い髪をその白いリボンで結んでいる彼女は悟代の幼馴染で小日向未来という。もう一人彼には幼馴染がいるのだがここにはいない。大方今も布団の中であろう。

 

 

「おう、じゃあ行くか。あいつも起こしてやんねーとな」

 

 

あいつの寝坊で未来が遅刻でもしたら大変だしなというとフフッと笑いながらそうだねと答える。何気ない会話をしながら寝坊助である幼馴染の家に着いた。そのまま玄関の戸をノックをし暫くすると一人の女性が戸を開けた。

 

 

「おはよう悟代君、未来ちゃん。ごめんなさい響はまだ寝てるのよ」

 

 

「やっぱりっすか、しゃーない未来いつも通り起こしてきてやってくれ」

 

 

「うん、任せて」

 

 

 そういうと未来は当人の部屋に起こしに行った。いつもごめんなさいねと先ほど戸を開けた女性、響の母が謝ってきたがいつもの事だし気にしないでくださいと返した。そうするとある部屋で大きな音を立てながら起こされた本人が降りてきた。

 慌ただしく駆け下りてきた彼女は立花響、悟代のもう一人の幼馴染である。

 

 

「あぁ!悟代君おはよう!ごめん先に行ってて、すぐに行くから!」

 

 

「いつもの事だし気にすんな、待っててやるから準備して来い」

 

 

わかったー!と言いながらリビングへ駆け込む響を見送り玄関で待つ、そして二階から未来が降りてくる。

 

 

「もうっ響ったら」

 

 

「しゃあない、響はいつもあんなんだろ?」

 

 

「それはそうだけど……」

 

 

「いまさら余裕をもって生活しろーだなんて言って響ができると思うか?」

 

 

「うーん、頑張ればできるんじゃないかな?」

 

 

「それに余裕をもって生活してる響を想像してみろ、すごい違和感を感じるから」

 

 

今想像してもすごい違和感を感じる。本当にあの響か?って

 

 

「……ほんとだ、本当に響かな?」

 

 

「だろ?あれはあれでいいと思うぞ?俺は」

 

 

あのドタバタしている響が一番だと、あの性格でなければ見えないものもあるだろう。と悟代は考える

そして準備が整ったのか響がこちらに向かって歩いてくる。

 

 

「ごめんごめん、まさか時計が壊れてるなんて思わなくて私って呪われてるかも」

 

 

「そんなこと気にすんなって、それに仮に壊れてたとしても響は起きれたか?」

 

 

「ひどいよ悟代君!私はちゃんと起きれたよ!」

 

 

「ほー、なら今度から起こしに来なくてもいいな未来」

 

 

「うん、そうだね」

 

 

「えっ!?ウソウソやっぱり起こしに来てください!!」

 

 

折れるの早すぎだろと思いつつ三人は学校へ向かう。その登校中響が思い出したかのように口を開く

 

 

「そういえば未来、今度の土曜に行くんだよね?ツヴァイウィングのライブ」

 

 

「そうだよ響、だけどチケットが二枚しか取れなかったんだ」

 

 

「なら、未来と悟代君二人で行きなよ。私はよく分かんないし二人の方が良いって」

 

 

と響が遠慮してくるが俺はチケットは持ってるから気にするなというと二人が食いついてきた

 

 

「えっ?悟代君チケット持ってるの?」

 

 

「あぁ、、知り合いから貰ったんだ。絶対に来いよって」

 

 

「誰から貰ったの?」

 

 

 流石に本人たちからなんて言えないので知り合いからと濁した。二人は少し怪しみながらも話を続けた。

なら当日は三人で行こうと未来が提案してきたので断る理由もないのでその誘いに乗った。

 

 

「ならライブの日が楽しみだなー!みんなで見られるんだもん!」

 

 

「だね、響」

 

 

「そうだな」

 

 

そんな他愛のない会話をしながら学校へ足を進める。まさか待ち遠しくしてるライブがあのような惨劇が挽き起こるとは今の彼らには知る由もない

 

 

 

 

 




どうも作者です。今回はドラゴンボールとシンフォギアをクロスさせた小説を書いてみました。明らかにパワーバランスが合わないだろうなと考えていましたが人類最強OTONAがいるし問題ないだろということで書きました。何とか続けていきたいと思いますので応援よろしくお願いします!


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第1話 始まりの歌

第1話   始まりの歌

 

 

 

 

 

 ある土曜日、この日は有名アーティストである《ツヴァイウィング》のライブの日である。悟代は出発する準備をしながらも嫌な予感に頭を悩まされていた。

 

 

(せっかくのライブだってのになんだ、この嫌な感じは。まるでじっちゃんが死んだ時みてぇだ)

 

 

 嫌な考えを払うように机の引き出しを開け大事に保管していたある物を取り出す。それはポケットにすっぽり入ってしまうような棒で悟代の祖父の形見である。

 

 

(なんでこの小さい棒がお守りなのかは考えてもわからねぇけど、今回は持って行った方が良い気がする)

 

 

 そう思い悟代はポケットに仕舞い、準備を終えた悟代は一階に降り仏壇に向かう。彼の祖父にも友人の晴れ舞台を知ってもらいたく仏壇に置いてある宝玉を手に取り、一緒に行くかと宝玉に向かって言いかばんに入れ、準備を終え出発する。ライブ会場へ行く道中見慣れた後ろ姿があった。それは響で心なしか少し気落ちしているように見える。

 

 

 

「おす、今日は起きれたか響」

 

 

「あ、悟代君おはよう……」

 

 

「どうした?なんかあったのか?」

 

 

「へいきへっちゃらだよ、心配性だな悟代君はー」

 

 

「いいから言ってみろって。そんな辛気臭い顔されて平気とか信じられねぇぞ、相談に乗るから、な?」

 

 

 そう言うと響は少し考え込んだ顔をする。そこまで考える事なのかとしっかりとした答えを返してやらないとな、と思い響の言いたいことを聞いた。

 

 

「………実は」

 

 

「実は?」

 

 

「………ライブを楽しめるか心配なの」

 

 

「………うん?」

 

 

 何言ってんだ響はと思った。楽しめるか不安?未来が進めてきたんだしそこは信用できるだろうと響に言った。だが響はツヴァイウィングの事をよく知らないし、進めてくれた未来に迷惑をかけるかもと考えているそうだ。こういったことで悩む響はやっぱり友達思いだなと思い悟代自身の答えを響に言った。

 

 

「心配すんなって響、俺もライブに行くのは初めてだしな。響もこれが初めていくライブなんだろ?」

 

 

「うん……」

 

 

「なら楽しめなかったら仕方ねぇんじゃねぇか?」

 

 

「仕方ない?」

 

 

 そう、実際のところ仕方ないことだと思う。響はライブへ行った事がないし、ツヴァイウィングの事をよく知らないというのが現状である。ツヴァイウィングと響自身の相性もあるだろう。どんなことにも相性はあるものだ。実際のところ行って感じてみないと分からないと言うのが悟代としての答えである。

 

 

「そうだ。実際はよ響、お前ぇ自身はツヴァイウィングの事よく分かってないのと情報は未来から聞いた程度だろ?」

 

 

うん、と響は頷く

 

 

「ならこのライブを切っ掛けにツヴァイウィングを知ってそこから考えりゃいいんじゃねぇか?」

 

 

「でも未来がせっかく誘ったのに悲しませたりしないかな……」

 

 

「それはさっきも言った相性が良くなかっただけだ。自分の好みを人に左右されて一応好きになってもそれは自分の好きとは違ったものになるんじゃねぇか?」

 

 

 まぁそれが本気で好きになったらそれはそれでいいと思うけどなと補足を入れる。ようは切っ掛けを掴み自分の気持ちで決めればいいと悟代は言う。

 

 

「自分の気持ちに嘘をついたら駄目だ響、自分の気持ちをちゃんと俺や未来に言ってくれよ。相談に乗るからさ」

 

 

「………うん、ありがと悟代君」

 

 

「気にすんなって、俺や未来はお前ぇの友達だからな。それとさっき言った迷惑かけるかもしれないって言ってっけども朝の寝坊とかは迷惑かけてないってことか?」

 

 

「うぇ!?そ、それはー、あっ、あはははー」

 

 

「笑っても誤魔化されねぇぞー」

 

 

「うっ!…うぅ、それは卑怯だと思うよ悟代君」

 

 

「だからよぉ響、もう未来とかに迷惑かけちまってんだから気にすんなって、助けてやっからさ」

 

 

「うん分かった!そういうなら迷惑いっぱいかけちゃうよー?悟代君」

 

 

「つっても限度があるからな?響」

 

 

そんな会話をしながらライブ会場に向かって歩き続け、それから数十分後ツヴァイウィングのライブが開催される大きな会場に悟代と響の二人は到着した。到着した頃には大勢の人が長蛇の列を作っている。そして悟代たちは列に並ぶ。

 

 

「うわー、いっぱい人がいるねー」

 

 

「そうだな、これだけの人が来てんだからやっぱり人気なんだなあの二人は」

 

 

「あれ?未来の姿が見えないよ?」

 

 

と響が言うので未来の気を感知してみたところ未来はこの会場にはまだ来ていなかった。響に未来に連絡を取ってみろと言った直後に目的である未来自身が響の携帯に連絡をしてきた。未来が言うには盛岡の親戚が怪我をしたらしく未来の家族が見舞いに行くというので今日は来られないとのこと。響は落ち込んでいたが俺と楽しんでくると未来に伝えた。そして響から未来が悟代君にって携帯を渡してきた。

 

 

「もしもし?」

 

 

『悟代君本当にごめんね?』

 

 

「気にすんなって、それより俺になにか伝えたいことがあるって?」

 

 

『うんそのことなんだけど、響をちゃんとエスコートしてあげて。あの子迷いそうだから』

 

 

「なんだそんなことか、わかった。ちゃんと手綱握っとくよ」

 

 

と言うと響がなにそれー!と文句を言ってきたが軽くあしらう

 

 

『なら安心だね。じゃあ悟代君も楽しんできてね』

 

 

「おう、そっちも気を付けてなー」

 

 

と返事した後、通話が切れた携帯を響に返す

 

 

「私って呪われてるかも、ハァ」

 

 

「仕方ねぇさ響。未来には悪いけどよ、楽しんで未来に自慢してやるぐらいの気持ちで行こうぜ?」

 

 

というが響きは少し落ち込んでいる。仕方ねぇなと思いポケットからあの日二人から渡された二枚のチケットの内の一枚を響に渡した。

 

 

「悟代君、私チケット持ってるよ?」

 

 

「実はその席は特別な席らしくてな響にやるよ」

 

 

「えぇ!?でも悟代君はどうするの?」

 

 

というので小さい声で響に訳を伝えた。

 

 

「大丈夫だ、ここだけの話チケットを二枚貰っててな?もう一枚どうすっかなって思っててさ、丁度いいから響にやるよ」

 

 

「そんな、悪いよ」

 

 

「いいからそのチケット使って楽しめって?使ってやらないとあいつが文句言ってきそうだしな」

 

 

「あいつ?」

 

 

「あぁ知り合いの事だ、それより行くぞー」

 

 

「あっ、待ってよー悟代くーん!」

 

 

 ライブ会場に入り受付を済ましチケットに書かれている席に腰を下ろす。外から見ていたら中々の大きさだったが中の大きさも相当である。

 

 

「いやー大きな会場だね。うぅ緊張してきた」

 

 

「なんで響が緊張するんだよ、緊張するのは響じゃなくてツヴァイウィングの二人だろ?」

 

 

 正確に言えば翼が一番緊張しているのではないかと悟代は考える。翼は分かるが奏は緊張っていう言葉なぞ知らんといったサバサバしたイメージがあるなと。

 

 

 

「ん?」

 

 

「どうしたの?奏」

 

 

「いや、誰かあたしの噂してるなーって思ってね」

 

 

「?」

 

 

 直感とは恐ろしいものである。

 

 

 

 

 

 雑談などでライブが始まるまで待っていると横からあれ?君たちは?と誰かが声をかけてきた。声をかけてきた方を見ると悟代たちが通っている中学のサッカー部のキャプテンの栗田凜であった。

 

 

「やっぱり!悟代と立花だったか」

 

 

「おぉ、凜か奇遇だな」

 

 

「こんにちは栗田君」

 

 

「珍しいな、お前たちがこういった所に来るなんて小日向にでも誘われたか?」

 

 

「まぁそんなとこだな」

 

 

と軽く挨拶を交わす。

 

 

「それにしても初めて来るライブなのによく良い席取れたな?」

 

 

「知り合いから貰ったんだよ」

 

 

「本当かよ、良いやつ過ぎないか?その知り合い」

 

 

「確かにな良い奴らだよ」

 

 

「ならその知り合いに感謝だな、今日はお互い楽しもうぜ!」

 

 

「俺も響もそのつもりだ」

 

 

と軽く話し俺は向こうの席だから行くわと告げて別れた。そして会場が暗闇に包まれカウントダウンが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♪~♪~♪~♪~

 

 

 曲のイントロが流れ始め観客たちが歓声を上げる。各々手に持っているペンライトの明かりを付きライブ会場がペンライトの明かりで染まる。響も悟代もそのうちの一人だ。そして

 

 

 

 多くの歓声、多くの羽が舞う中、奏と翼の二人がステージに舞い降りた。その舞う姿はまさしく「両翼(ツヴァイウィング)」であった。

 

 

彼女たちが登場したことにより観客たちはもっと大きな歓声を上げた。

 

 

そして彼女たちは歌う。この世界のすべての人間に歌を、夢を届けるように。

 

 

彼女たちが歌い紡ぐその歌の名は――

 

 

 

《逆光のフリューゲル》

 

 

 

 悟代は言葉では言い表せない気持ちだった。それと同時にワクワクしていた。歌で心が震え上がるとは、悟代は思ってもいなかった。彼女たちが歌にかける想いが悟代にとって予想以上のものだった。そして周りの観客たちを見た。彼女たちの歌で観客たちの心は一つとなって精一杯応援をしている。

 

 

 

一瞬、奏と視線を交わす。

 

 

 

(どうだい悟代、あたし達ツヴァイウィングの歌は)

 

 

(あぁ、ありがちな事しか言えねぇけどよ。やっぱりスゲェよお前ぇ達二人は)

 

 

 と目と心で会話しお互いに笑う。まだまだ始まったばかりだぞと言わんばかりに奏は士気を高め歌う。翼もここにいる観客も負けじと士気を高める。

 

 

 歌も佳境に差し掛かり観客たちもまだまだと言わんばかりに歓声を高める。その様子を見て悟代は何か不安を感じた。

 

 

(やっぱり嫌な予感がする。歌が進むにつれてステージの地下にある気のようなものがどんどん膨れ上がっていく。このまま何もなければいいけどな)

 

 

だが直ぐにその考えを放棄する。まだ彼女たちが歌っているんだと。最後まで聞き届けなければと。

 

 

 

だが悟代がその考えを放棄しなければあのような事態にならなかったと分かるのはこの場には誰もいない。

 

 

 

一曲目が最高潮で終わり観客たちも興奮が収まらない。見惚れていた響もまだ興奮して二人を見ている。

 

 

 

「凄いね!!悟代君!」

 

 

「あぁ、やっぱりスゲェな」

 

 

「?どうしたの悟代君」

 

 

「いやちょっとな、警戒してたんだよ」

 

 

「警戒?なんの?」

 

 

 と聞いてくるので響がテンションあがって怪我しないかの警戒だと答えるとそんなことないと言って肩を叩いた。

実際には地下にある気が爆発しないか警戒していたがどうにか大丈夫そうだと悟代は考えていた。

 

 

 

「まだまだいくぞぉ!」

 

 

 

と奏が観客たちに声をかけ次の曲のイントロが流れる。だがその瞬間

 

 

 

(不味い!このままじゃ気が爆発しちまうぞ!あれが爆発でもしたら……)

 

 

 

悟代はそう思ったが次の瞬間、地下とステージの中央が爆発する。観客たちは歓声ではなく悲鳴を上げた。

 

 

それと同時に悟代は嫌な気を持った複数の存在を感じた。

 

 

人類が決して勝てるモノではない脅威の存在

 

 

「ノイズだぁーーー!」

 

 

 

 

ノイズの気を

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 観客たちは逃げ惑う。それもそうだ、どんな攻撃もノイズには通じない。触れればその身は炭素の塊になってしまう。観客たちは自分だけでも生きてやるといったように他人を押しのけて我こそはと、逃亡を図る。その中には友人を犠牲にしたり、恋人を犠牲にしてまで生きてやるといったさまざまである。その会場に逃げ遅れた人間がおりその中に奏と翼もいる。助けに行こうとする悟代を響が止める。

 

 

「悟代君!逃げよう!」

 

 

「響は先に行け!俺は逃げ遅れた人がいないか見てくる!」

 

 

「だめだよ!一緒に逃げようよ!悟代君にはどうすることもできないんだよ!?」

 

 

と響は一緒に逃げようと説得をしてきたが悟代は

 

 

「大丈夫、俺は死なないさ。すぐに戻る」

 

 

「でも………」

 

 

「心配すんなって、何とかなるさ」

 

 

 そう言うと響は黙る。悟代は響にそんな悲しい顔をさせて申し訳ない気持ちでいっぱいになるが逃げ遅れた人を見過ごすわけにはいかない。

 

 

「わかった……私は先に行くよ。必ず戻ってきてね」

 

 

「あぁ、約束する」

 

 

 約束を交わすと響は避難した。響と約束したからには絶対に戻ってやると誓いながら、逃げ遅れた人の気を感知し救出に向かった。

 

 

 

(ノイズが現れた時に聞こえた歌声は間違いなく奏と翼の二人だ。あの二人は大丈夫だと信じたい。だけどあの二人で逃げ遅れた人を全員助けられるとは思えない)

 

 

 

 そう思い悟代は逃げ遅れた人を救出・避難誘導を続けた。そして最後の一人である人物を見つけた。

 

 

 

「おい!大丈夫か!」

 

 

「その声は……悟代か?」

 

 

 最後に見つけたのは栗田だった。足に衝撃で崩れたであろう瓦礫が被さっており簡単には救出できないようになっていた。

 

 

「俺はいいから、お前は………」

 

 

「馬鹿言ってんじゃねぇ!誰が見捨てるかよ!」

 

 

「俺はもう駄目だ。足の感覚がないんだ……」

 

 

「諦めんな!絶対に助ける!」

 

 

そう栗田に言い全身の気をコントロールし瓦礫をどかし救出する、が足は血だらけで見るも無残になっていた。

悟代は悔しい顔をする。もう少し早ければこんなことにはならなかったと考えてしまう。その時栗田の声で意識が戻る。

 

 

「悟代!ノイズが来るぞ!」

 

 

目の前には大量のノイズがおり直ぐにでも襲ってくる気配だ。

 

 

「悟代!俺を置いて逃げろ!」

 

 

「それはしねぇって言ったろ!」

 

 

「じゃあどうするんだ!相手はノイズだぞ!」

 

 

今の悟代の手にはポケットにある短い棒と形見の宝玉である。悟代はポケットに手を入れ棒を取り出す。悟代自身にも何故この小さい棒を取り出したのかわからない。だが取り出さなければならないと悟代の直感が告げていた。

 

 

 

悟代たちにノイズが迫る。

 

 

 

凜は叫ぶ。悟代を救ってくれと

 

 

 

奏と翼は振り向く。叫び声がした方向に

 

 

 

その瞬間である。形見である宝玉が光り輝き悟代の体へ吸い込まれ悟代の体が光る。その時一瞬だが夢で見たあの戦いが脳裏をよぎる。

 

 

悟代は叫ぶ。記憶の通りに、この棒の名前を

 

 

 

「伸びろ!如意棒(・・・)!!」

 

 

 

手元にあった小さな棒が伸びノイズを貫き煤に変える。

 

 

 

ノイズの煤がはれ悟代は姿を現した。その姿は山吹色の胴着を身にまとい背中には棒を収める筒を背負っていた。

 

 

 

その姿は夢で見たあの戦士と同じものである。

 

 

 

この世界に一人のZ戦士が誕生した。

 




どうも作者です。遅くなって申し訳ありませんでした!まだ書き始めたばかりなので文章がめちゃくちゃだと思いますがどうか見守っていてください。



誤字などがありましたら報告していただけるとありがたいです。


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第2話  戦闘

遅くなって申し訳ありません!上手く文が纏まらなくてずっと考えてました!


正直、奏と翼の二人は間に合わないと思った。それと同時に後悔した。仕方ないとはいえ何故ノイズばかりに集中してしまったのか。まだ逃げ遅れた人がいたはずなのに何故それを優先しなかったのか、そして友人すらも守れないのかと。

 

 

 

だがそれは杞憂に終わった。友人である悟代がノイズを倒したのである。二人は驚愕した、ノイズに兵器など攻撃が通用しない。だが例外もある。今自分たちが纏っているシンフォギアがそうだ。

 

 

 

シンフォギアは、神話の時代の伝説や伝承に記された武器の欠片が歌、聖詠によって起動するものだ。だが悟代は聖詠を歌っていない。二人はすぐにわかったような気がした。

 

 

 

「まさか、完全聖遺物だっていうのか?」

 

 

「そんな、あり得ない」

 

 

あり得ないと思うもそれしか考えがつかない。だが今は悟代と共に戦い救出することを優先した。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「これは……」

 

 

 

悟代は自分の姿を見た。山吹色の胴着を身にまとい背中には自身が持っている如意棒を収める筒を背負っている。そして手には形見である棒『如意棒』が握られている。

 

 

 

「悟代……その姿、何があったんだ??」

 

 

「わかんねぇ、けどこれならノイズと闘うことが出来るしお前ぇを避難させることが出来る」

 

 

 

俺の事より、まずはおめぇだと言い避難しようとするが奏と翼の二人が声をかけてきた。

 

 

 

「悟代!無事か!?」

 

 

「あぁ!こっちは大丈夫だ!」

 

 

「悟代、貴方その姿は……」

 

 

「その話は後だ!俺もよく分かんねぇからな!」

 

 

 

一先ず凜を連れて避難をすると言いこの場から離れようとする。だがノイズはそう簡単にはさせてはくれない。

振り払うように如意棒を振るいノイズを煤にする。奏たちもノイズを殲滅する為に動き、逃げ遅れた人がいないか確認をする。

 

 

 

「クソッ、キリがねぇな!」

 

 

「すまない悟代、俺が怪我したばっかりに…」

 

 

「気にすんなって!何とかしてやっから!」

 

 

 

悟代に抱えられ落ち込んでいる凜を励ましながらも会場から脱出するように動く。だが次の瞬間

 

 

 

「悟代君!」

 

 

 

と、ここでは本来は聞こえない声と気が感じられた。それは先に避難した筈であろう響であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何で戻ってきたんだろう。そう私は思った。悟代君は私を守るために先に避難させたのにそれを不意にしてしまった。だが響は心の中でこう思っていた。悟代が一人で頑張っているのに対して自分は何もしないのか、悟代に何かしてあげられることがないだろうかと、そう思ってライブ会場に戻ってしまった。

 

 

 

「バカヤロー!何で戻ってきた!」

 

 

 

悟代君から私を罵倒する声が聞こえる。ごめんなさい悟代君。でも私は

 

 

 

「私も何か手伝えることがあるかと思って戻ってきたの!」

 

 

「この状況でおめぇに出来る事は何も無ぇ!だから戻れ!」

 

 

 

そう悟代君は言ったがその瞬間。

 

 

「きゃあ!」

 

 

私が立っていた観客席が崩れ落下する。

 

 

「うぅ……痛っ!」

 

 

落ちた拍子に足を怪我したみたいだった。そして顔を上げ前を確認するとノイズが迫ってきた。

 

 

 

「響ぃ!クソッ、おめぇたち邪魔だッ!」

 

 

 

悟代君の声が聞こえる。

 

 

 

殺される、そう私は目を閉じ怯えたがある人物がノイズを倒し私助けてくれた。その人物はあのツヴァイウィングの奏さんだった。何で奏さんがノイズと闘っているのだろう、あの恰好は何なんだろうと考えたが奏さんが

 

 

 

「駆け出せッ!!」

 

 

 

そう私に大きな声で言った。私は奏さんの言う通りに駆け出した。私は悟代君の手助けをする為に戻ったのに逆に足を引っ張ってしまっている。心の中で悔いながら駆け出す。やっぱり私は何のとりえのない役に立たない子だと考えながら

 

 

 

だから気付かなかった。奏さんが頑張ってノイズの攻撃を防いでいたがそれが限界を迎えていたということを

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

(危なかった。あたしがもう少し遅かったらあの子はやられていた。)

 

 

 

また後悔するところだったと奏は思う。先ほど悟代に対して後悔したのにまた後悔するところだったと。

 

 

 

(あの子は悟代の連れだからな。ダチの連れはあたしの連れだ)

 

 

 

守ってやるさ、そう奏は決意しノイズから響を守るために自身の武器である槍、ガングニールを振るい戦う。

 

 

 

しかし、その決意とは裏腹に奏は自分が限界だということを分かっていた。段々と自分の持っているガングニールの輝きが失い今にも消えそうだった。

 

 

 

(時限式は厳しいものがあるなッ!)

 

 

 

そう内心呟くが奏は手を緩めない。響が安全な場所に行くまで守る、自身のギアに罅が入ろうがだがバキンと音が鳴り響きギアが砕ける。その砕けた破片は勢いよく後ろへと飛びその威力は瓦礫に突き刺さるほどであった。そのギアの欠片が響へと深く突き刺さった。

 

 

 

 

血を吹き出しながら吹き飛ぶ響を見て悟代と奏は駆け寄る。

 

 

 

「おい死ぬなぁッ!目を開けてくれッ!」

 

 

「響!」

 

 

奏は意識を失っている響に必死に呼びかける。奏自身の声を、想いを、今意識を失っている響の魂まで声を響かせるように奏は言う。

 

 

「生きるのをあきらめるなッ!!!!」

 

 

その言葉を聞いて響はわずかだが目を開く。これを見た悟代と奏は安堵の表情を浮かべる。悟代はこの瞬間気が今の響に使えるのではと考えた。悟代は気がどういったモノなのかをある程度理解している。気は人間の生命エネルギーのような物なのでその生命エネルギーである気を外部から送れば響の命を少しだが持たせることが出来るのではないかと考えたのだ。悟代は直ぐに行動し、響に自身の気を分け与える。

 

 

 

(上手くいけばまだ響は生きて帰ってこれる!)

 

 

「悟代、何をしてるんだ?」

 

 

「響に俺の気を分けて少しでも生きる可能性を上げる!」

 

 

「そんな事が出来るのか?」

 

 

「気は人間の生命エネルギーだからな、他から分ければ何とかなる!」

 

 

良かったと安堵する凜と奏の二人だったがこれは応急処置だ。また何かあったら響は今度こそ助からないと二人に言う。

 

 

そして奏はそれを見届けると立ち上がる。そのまま、悟代たちの前に歩きノイズと向き合う。悟代はまさかと感じ奏に問う。

 

 

「奏おめぇ、そんなボロボロの身体でどうすんだ?」

 

 

奏は何も言わない、そんな奏に悟代は続ける。

 

 

「……自爆でもする気か?」

 

 

「…………」

 

 

「やっぱりか、そんな事させるわけにはいかねぇ」

 

 

「ならどうするんだ、これしかあんたたちを助ける方法がないと思うぜ?」

 

 

「今ならおめぇの代わりに戦える、お前は響と凜を連れて避難しろ」

 

 

「それは出来ないな。あんたみたいな戦ったことがない奴に任せられないよ」

 

 

「だからってお前が死ぬ必要は無ぇさ」

 

 

それにと悟代は言葉を続ける。

 

 

「おめぇが響に生きるの諦めんなって言ったくせにおめぇが諦めてどうすんだ?」

 

 

そういうと奏はそれはと言い淀む。それを聞いて苦笑いしつつ悟代は奏に言う。

 

 

「おめぇは生きて翼と一緒に歌を楽しみにしてる奴らの為に歌え、おめぇ達の歌はみんなを勇気づける歌だからな」

 

 

そう言うと奏は少しだけはっとして考える。次に奏はこう言う。

 

 

「………分かった言われた通りこの子たちを安全なところまで連れて行く」

 

 

その代わりにと奏は言葉を続ける。

 

 

絶対にあたしやこの子の所に帰ってこいと

 

 

そういわれた悟代は少しキョトンとした顔をした後に笑う

 

 

「当たり前だ、絶対に戻ってやっさ」

 

 

だから任せたぞと言い、奏は響と凜を連れて出口に駆け出し、悟代はノイズの方へ駆け出した。悟代は気付かなかったが響が悟代をわずかに開けた目で見つめていた。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

如意棒を振るいながらノイズを叩き潰し翼の元へと進む。

 

 

 

 

「翼!」

 

 

「悟代!奏は!?奏はどうしたの!」

 

 

「響と凜を連れて避難させた、あいつの体がボロボロだったからな」

 

 

それを聞き翼は顔を顰める。翼は奏の身体がボロボロなことを、もう戦えないことを知っていたのだろう。

 

 

「翼、まずはこいつらを倒すぞ」

 

 

「貴方はここから退きなさい。後は私がやる」

 

 

「この数を一人で出来るわけねぇだろ、俺もやるさ」

 

 

それを聞いた翼は悟代を睨めつけながら言う

 

 

 

「簡単に言わないで!つい先ほど起動させたあなたに何ができるの!?」

 

 

「今そんなこと言っても仕方ねぇだろ?心配すんなって何とかなるさ多分」

 

 

「だからそう簡単に……!」

 

 

そう言いかけた翼に対して悟代は如意棒を振るい大量のノイズを倒す

 

 

「今はこいつらを倒すことが先だろ?一時だけど背中は任せたぞ」

 

 

そう言い悟代はノイズを倒しに行く、翼は悟代の後ろ姿を見ながら呟く。

 

 

「なぜ防人でない貴方がそう簡単に言えるの」

 

 

翼のその言葉に答えるものはいなかった。

 

 

 

「だりゃあ!」

 

 

 

悟代は自分の拳、脚、如意棒をノイズに叩き込みながら減らしていく。翼もノイズをいくらか減らしてはいるがまだ多くのノイズが存在している。

 

 

(こりゃ面倒だな、よしこうなりゃ)

 

 

「翼!伏せろ!」

 

 

悟代はそう大声で翼に言い、言われた翼は驚いていたが直ぐに体を深く伏せた。悟代が何故翼に伏せろと言ったのか、それは

 

 

「伸びろ!如意棒!」

 

 

今いるノイズをすべて薙ぎ払う為に途轍もないほど長く如意棒を伸ばした。その結果周辺のノイズは粗方殲滅したが翼が怒った表情で悟代に攻め寄ってきた。

 

 

「悟代!先ほどの行動は何だ!」

 

 

「何だって、一気に振り払っただけじゃねぇか」

 

 

「いくらなんでも急すぎる!」

 

 

「そんな事言ったってよぉ」

 

 

 

悟代は面倒臭そうに翼の小言を聞くが今はそんな場合ではない。ライブ会場にいた小型のノイズをすべて振り払っただけでまだ奥にいる大型のノイズが残っている。

 

 

「そんな事より翼、あのデカい奴どうすっか」

 

 

「どうするも何も倒すしかないでしょう!」

 

 

そう言い翼が大型ノイズに向かって駆け出す。翼は大きく高く跳び武器である刀『天羽ヶ斬』を大刀に変化させ大技『蒼ノ一閃』を放つ。4、5体のうち1体を倒すが残った大型ノイズが反撃を翼にした。

 

 

「クッ!」

 

 

翼は刀を使いノイズの攻撃を逸らそうとしたが衝撃が凄まじく空中から地面へ叩きつけられそうになる。

 

 

(受け身を取らなければッ!)

 

 

そう考えていた矢先に思いがけない事が起こった。吹き飛ばされた翼を誰かが受け止めたのだ。

 

 

(誰?奏はここにはいない、悟代が空高く跳べるわけが……)

 

 

目を開けるとそこには

 

 

「大丈夫か?翼?」

 

 

悟代が翼を受け止めていた。だが悟代はただ跳んでいたわけではない、宙に浮きながら翼を受け止めていた。

 

 

「悟代!?これは、何故空に浮いているの!?」

 

 

「それは後で話してやるよ、それより怪我ねぇか?」

 

 

翼は怪我はないと返す。悟代はそれを聞いて安心し地面に降り翼を地面に降ろす。悟代は大型ノイズを見据えながら

 

「あいつ相手ならあれを試しても良いかもな」

 

 

と呟く。翼はそれを聞いて何をする気だと聞こうとしたが、聞く前に悟代は構えに入る。

 

 

「翼は離れてろ、巻き込まれたら大変だからな」

 

 

悟代は大型ノイズを前に両手の手首を合わせ、手を開き

 

 

    かぁ

 

ノイズはどんどん悟代へと近づく。悟代は動かない。翼はそれを見て何をやっていると叫ぶ。

 

    めぇ

 

腰に両手を持っていきながら体内の気を凝縮させる。

 

    はぁ    

 

今度は手に凝縮した気を集中させながら手を腰の後ろへと持っていく。

 

    めぇ

 

凝縮した気を手に溜め続ける。

 

 

そしてノイズに向かって一気に押し出すように放つ

 

    波ぁぁぁぁぁ!

 

 

その瞬間大きな一筋の光が走る。その光はノイズをたやすく貫き瞬く間に消し去る。この絶望的な状況でこの光を見た人間はこう思うだろう。

 

 

これは希望の光だと

 

 

光が消える。消えた場所にはノイズなど存在せず、ただ一人の戦士が立っていた。

 

 

 

孫悟代。この戦士が進む先には何が待っているか、それは誰にも分からない。

 

 

 




前書きにも書いてあった通り遅くなって申し訳ありませんでした。他の作品を見ていてどういった風に書けばいいのか分からなくなってしまい一か月も更新が遅れてしまいました。これからも精進するように頑張っていきますのでよろしくお願いします。


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