FGO 召喚再会 (アマゾンズ)
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01・漆黒の勝利をもたらす王

その輝きは黒であった。

敵対する者を、眩しい輝きすらも飲み込む漆黒。

だが、惹かれていたのも確か。その暴力的な力を。




人理継続保障機関フィニス・カルデア、人類の絶滅を回避するためにあらゆる技術を結集して作られた機関である。

 

人類焼却という前代未聞の出来事とカルデア内部で起こった事故によって最後のマスターとなってしまった藤丸立香。

 

後輩たるマシュ・キリエライトがデミ・サーヴァントとなり、十字架型の盾を触媒とした召喚円陣を形成した。

 

 

その召喚円陣を使うのが立香だ。唯一のマスターであるために必然的に行う事になる。

 

触媒はたった一つ。出会ってきたサーヴァントとの縁だ。本来ならばマスターと性質が似ている者が召喚に応じるのだが、召喚円陣が宝具であることがあらゆるサーヴァントを呼べる要因になっているのだ。

 

立香は手にした聖晶石と呼ばれる魔力の満ちた結晶を召喚システムの上に置く。

 

 

今回は4つ用意した。4つでシステムが起動するのだ。立香はシステムから光が溢れ、起動を確認すると詠唱を始める。

 

祭壇となっているのはマシュの盾、聖遺物となる自分の縁を信じて。

 

この召喚方法にも欠点がある。縁によってサーヴァントを引き寄せるのだが、その過程で概念礼装という因果による現象を固定化した物も引き寄せてしまうのだ。

 

この欠陥はあらゆる時代へのレイシフトによって起きてしまうもので、故にサーヴァントが呼ばれるという保証はない。

 

 

 

 

 

 

「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。 繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

 

「―――――Anfang」

 

「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」

 

「汝三大の言霊を纏う七天、 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

 

柱が伸びていくかのように光が溢れ、一つの紋章が出てくる。その紋章に火花が走り、銀色から金色へと変化し再び光の輪を形成した。

 

 

その円の中心に一つの人影があった。サーヴァントを呼び寄せることに成功し、紋章に浮き上がっていたのはセイバーの紋様であった。

 

「・・・・召喚に応じ参上した。貴様が私のマスターとかいう奴か?」

 

黒いドレスのような鎧、威圧的だが威厳のある態度。顔を隠すように身につけている仮面のようなバイザー。極めつけは漆黒に染まった黒き聖なる剣。

 

その姿を立香とマシュは覚えていた。初めての特異点である特異点Fにおいて立ちはだかったサーヴァント。

 

「アーサー王・・・・だね?」

 

「その声は・・・どうやら貴様とは奇妙な縁があったようだな?カルデアの最後のマスターよ」

 

「覚えてるの?」

 

「ああ、座へと還ったはずなのに貴様との記憶だけはな・・・」

 

黒いアーサー王。セイバーオルタとも呼ばれる彼女は威厳を保ちつつも懐かしいという気持ちを押さえ込んでいた。

 

「これからは敵ではなく。お前のサーヴァントとして私に頼るといい」

 

「ありがとう!」

 

「だが、貴様が膝を屈した時・・・その首を頂こう」

 

厳しい発言とともに、セイバーオルタは黒い聖剣のきっさきを立香の首元に突きつけた。

 

抗い、戦い続けるのならば、邪龍にも近くなった漆黒の騎士王は力を貸すと言っている。

 

だが、敗北を認めた時は自分を食らうと言い放ったのだ。

 

「うん、わかった」

 

「いいだろう。契約は成立だ」

 

「あ、一緒にハンバーガー食べない?美味しいよ!」

 

「む?良いだろう付き合ってやる」

 

 

 

 

「もっきゅもっきゅ・・・もっきゅもっきゅ!」

 

「すごい・・ハンバーガーを一人で20個も」

 

よほど気に入ったのか、セイバーオルタは立香に目もくれずハンバーガーを食べ続けている。

 

「あの・・・これ、おかわりね」

 

「何!?いいのか!・・・・よろしく頼むぞ、マスター」

 

「うん、改めてね!」

 

おかわりのハンバーガーを見ながら、顔を赤くして答えるセイバーオルタを笑顔で見つめながら、次の戦いへと赴くことを考える立香であった。




第一弾は黒いアルトリアことセイバーオルタです。

結局は餌付けされるパターン。

次は誰にしようか・・・。

最初ということで今回だけは聖晶石が四つ必要だった頃で書きました。

次回からは3つになります。

では、次回に。


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02・薔薇の芸術と勝利へ導く王女

それはとある帝国の皇帝。

暴君とも残虐者とも呼ばれた。

だが、美しいものを愛し、民を愛した王でもあった。


ある国の女王

帝国の皇帝と敵対し、復讐のために剣を取った。

守りの戦でありながら勝利をもたらした。

しかし、王女が欲したのは家族との生活のみ


レイシフトから帰還し、聖晶石もある程度まで備蓄出来た立香は召喚システムのある部屋へマシュと共に趣いた。

 

「先輩・・・今回はどちらの召喚を?」

 

「今回は30の聖晶石を使う事にするよ」

 

「そんなに!?」

 

「使える時に使う、それだけだよ」

 

立香はそういうと聖晶石を置いていく。三つ目で輝きが増し、三十個目を置くと全体に輝きが増した。

 

職員が研究を重ね、システムが改善されたことにより、以前よりも魔力消費が軽減され、聖晶石の消費が僅かに抑えることが可能となっていた。

 

「行くよ」

 

立香は手の甲にある令呪と呼ばれる模様を見つめた後、詠唱に入った。

 

 

「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。 繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

 

「―――――Anfang」

 

「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」

 

「汝三大の言霊を纏う七天、 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

 

次々と現れるのは概念礼装、だが・・・八回目の回転にサーヴァントである事を示す紋章が現れた。それは騎乗兵の紋章、すなわちライダーだ。

 

「ブーディカだよ、よろしく。気軽にブーディカさんと呼んでもいいよ」

 

それは初めて、立香が抱える重圧を受け止めてくれた姉にも等しい英霊であった。

 

「ブーディカ・・・さん?本当にブーディカさん!?」

 

「その声と顔・・・もしかして立香?という事はここは君のいるカルデアって場所かな・・・っと」

 

「また、会えた!良かったよ」

 

「ふふ、頑張ってたもんね。よしよし」

 

抱きついてきた立香を受け取止めて頭を撫でる。だが、それを咎めたのがマシュだった。

 

「先輩、ブーディカさん・・・召喚は残ってますから召喚の円から離れたほうが良いかと」

 

「あ、そうだった」

 

「相変わらずだね、キミは」

 

苦笑しながら召喚システムから離れると九回目の光は概念礼装、そして最後の輝きで円陣が黄金色に輝いた。

 

「!これは・・・」

 

紋章は剣士・・すなわちセイバーだ。だが、光の中から現れたのは見覚えのある姿であった。

 

「サーヴァント・セイバー。ネロ・クラウディウス、呼び声に応じ推参した!うむ、よくぞ余を選んだ! 違いの分かる魔術師よな!」

 

「あ・・・ネ、ネロさん?」

 

「嘘・・・?」

 

「む?その声はマシュにリッカ!それにブーディカではないか!」

 

「アンタも呼ばれたんだね、すごい偶然だけどさ」

 

「うむ!余は嬉しいぞ!!再びそなた達に出会えるとはな!」

 

召喚後、ネロの一存で歓迎パーティーが始まってしまった。規模は小さいがブーディカもネロも黒アルトリアも顔には出さないが楽しんでいる。

 

「・・・ああ、この味・・・ようやく食べることができた」

 

立香が食べているのはブーディカのお手製のシチューだ。レシピを偶然読んで作りたくなり、材料もあったのでブーディカが腕を振舞った。

 

料理は変わってもブーディカが作る料理の味の基本は変わっていなかった。家族のためにつくる料理、愛情の入った暖かい料理の基本は。

 

「お姉さんも嬉しいよ。またキミに会えてさ」

 

「うん、ブーディカさんに再会できたらもう一度料理を作って欲しかったんだ」

 

「それくらいのことで?」

 

「それくらいの事が重要なの・・・!」

 

「アハハ、キミらしいね」

 

仲良く喋っているとネロがとんでもない事を言い始めた。

 

「うむ!余は歌うぞー!感謝の意を込めてな!」

 

「それだけはダメーーー!」

 

「な、なぜだマスター!!」

 

立香はネロからマイクを取り上げ、それを取り返そうとネロは追いかけまわる。

 

この宴はカルデアにいる全員をまとめての宴となり、翌日は全員笑顔で仕事に取り掛かったという。

 




二回目はお姉さん系の一人、ブーディカさんと子犬系サーヴァントのネロでした。

なんで星5を書かないんだと思われるかもしれませんが、星5のキャラは長めにしたいからです。

星1を含めればすごい数になりますが、ぐだーずを助けるために殿を努めたり、相打ちになったらり、自己犠牲したサーヴァントを重きにおいています。

それでは次回に!


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番外・冥界との縁、一輪の金華との再会

オリジナル要素が強いです。

イベントは関係ありません


※注意

呼符が10枚で来るわけねえだろ!10連の方は最低でも30連だろ!とかの意見があると思いますが、あくまでも召喚による再会がメインですので、ガチャの概念は無いものとして読んでください。


それは一つであったものが二つに分かれた。昼と夜、太陽と月、光と闇、地上と冥界、あらゆるものは表と裏で成り立っている。

 

はるか古代、地下がまだ冥界と繋がっていたウルクの時代。その中で意思を持った一つの存在。

 

女神の核となる存在が生まれた時、その核は二つに別れ、地上と冥界へと向かっていった。

 

一方は光と生の恩恵を受け、美しさと豊穣、戦いの女神と称され金星を司るとも言われる存在になった。

 

もう一方は闇と死の恩恵を受け、病魔と静寂、深淵の女神と称され死を司ると言われる存在になった。

 

二つに別れた姉妹の女神は互いに反発し合い、解り合う事もしないまま時は流れていった。

 

だが、深淵の女神は妹である金星の女神の行動が羨ましかった。煌びやかな光、楽しい宴、笑い合う人々。

 

閉ざされた冥界においては何一つない、真逆に映るすべてが眩しかったのだ。

 

冥界において肉体から解き放たれた魂に自我はほとんどないに等しい、持っていたとしてもそれは生前において負の感情が爆発し、それを晴らさねばならないほど汚染されたものだけだ。

 

そんな中、深淵の女神は神からすれば小さすぎる存在、それでも懸命に照らし続ける一つの光と出会った。

 

人の身でありながら英霊との交流を持ち、三女神同盟に挑んできた。妹である金星の女神までもが、その人間に力を貸していたというのだから驚きだ。

 

特異点となったウルクに最大最悪の厄災、人類悪が出現した。その時にあのウルクの王ですらその人間に力を貸していた。

 

冥界の女神たる自分に出来る事がないかと考えた深淵の女神は、自身が司る冥界において最大の禁忌を破った。

 

それは光たる人間とその従者たる半英霊に冥界の加護を与えるというものだ。これは己自身が定めた法を己で破るに等しいものであった。

 

だが、人類悪である原初の母を相手では光は飲み込まれてしまう。それを理解したからこそ深淵の女神は自ら女神の禁忌を破り、光に加護を与えた。

 

それが己自身の消滅になってしまおうとも・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

人類史修復を完了させ、亜種ともいえる特典を修復している最中、立香はその手にある物を持っていた。

 

それは呼符と呼ばれ、召喚の補助に使う物である。七日目の業務をこなし、特別報酬として貰えるものだ。

 

「先輩?召喚システムを使うのですか?」

 

「うん。ダヴィンチちゃんによると今はウルクとの霊基が繋がりやすくなっているそうだから」

 

「今回は私も見学させてちょうだい」

 

マシュの隣へ現れたのはイシュタル、ウルクの女神の一人で戦いの女神とも呼ばれている。今は諸葛孔明の寄り代となっているロード・エルメロイⅡと同じく、性質が最も似ており聖杯戦争に関連した人物を寄り代として現界した擬似サーヴァントである。

 

「イシュタル?珍しいね」

 

「英霊の召喚には私も興味深いのよ。あなたの縁は特別なものがあるのかもしれないし」

 

「それじゃ、始めるね?」

 

手にしている呼符は10枚、これまでの極小な修復や業務日程等をこなしながら貯めてきたものだ。立香は自分の勘が、今召喚しなければならないと言っているのを感じ、召喚を決意したのだ。

 

 

呼符を召喚サークルへ置き、起動させる。呼符は聖晶石とは違い、一枚ずつ使わなければシステムに負荷がかかり正常に機能しないのだ。

 

「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。 繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

 

「―――――Anfang」

 

「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

 

「なんだか・・・懐かしく思えるわね」

 

召喚の様子を見ているイシュタルはどこか懐かしく思える感覚が走った。おそらく自分の寄り代となっている人物が懐かしんでいるのだろう。

 

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」

 

「汝三大の言霊を纏う七天、 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

一枚ずつ呼符を消費していくが、出てくるのは概念礼装と召喚されているサーヴァント達ばかり、そして最後の一枚を使用する。

 

使用した瞬間、三つの光が重なりサーヴァントである事を示す紋章が現れる。それは槍兵を示しておりクラスはランサーだ。

 

更にはまるで電気が走り始めたかのように、銀色の紋章が金色へと昇華し、その姿が現れた。

 

 

「サーヴァント・ランサー。冥界の女主人、エレシュキガル。召喚に応じ参上したわ。一個人に力を貸すのは不本意だけど、呼ばれた以上は助けてあげる。感謝なさい」

 

「・・・。・・・・・・。・・・・・・・・・。って、なんで黙っているのかしら!?私、立派な女神なんですけど!」

 

「エ・・・エレシュキガル?」

 

「その声・・・もしかしてカルデアのマスター!?という事はここはカルデア?」

 

「あ、会いたかったよぉぉぉぉーー!!」

 

「きゃあ!?ちょ、ちょっと!いきなり、なんなのだわ!?」

 

立香に抱きつかれて慌てふためくエレシュキガルを横目にマシュは目元に涙を溜めながら笑っており、イシュタルは複雑な心境だったが声をかけた。

 

「遅かったじゃない。あまり待たせすぎるのも良くないわよ?」

 

「イ、イシュタル!?アンタまで此処に呼ばれてたの!?」

 

「まぁね。私との縁があったのだから、来るんじゃないかと思っていたけど」

 

「・・・・っ」

 

ウルクでの決戦終了時、立香はイシュタルの嘘を見抜いていたのだ。禁忌を犯した女神が消滅しないはずがない、それを心のどこかで感じ取っていたのだ。

 

その時に立香はイシュタルの嘘を気丈に振る舞うためのものとして受け入れていた。いくら反発し合っているとはいえど、自分と同質であり、姉妹でもある存在が居なくなる事は悲しいものだ。

 

しばらくして立香はエレシュキガルから離れると笑顔でその手をとった。ようやく再会できたという思いを込めているかのように、エレシュキガルにとって立香の手は暖かかった。

 

「いつもなら皮肉るところなんだけど、マスターも居るからね。やめておくわ」

 

「それと、エレシュキガルさん。私も先輩も言っておきたい言葉があったんです」

 

「うん、そうだね!マシュ」

 

「私もよ」

 

その言葉にエレシュキガルは一瞬たじろぎながら、聞く覚悟を固めた。

 

「な、何かしら?」

 

「お帰りなさい!」

 

「お帰りなさい、エレシュキガルさん!」

 

「お帰り、エレシュキガル」

 

お帰りなさい。この一言にエレシュキガルが涙が溢れそうになった。だが、彼女はそれをこらえ自分に出来る最高の笑顔で応えた。

 

「ええ!みんな、ただいまなのだわ!」




初の星5はエレシュキガルでした。

本来、イシュタルとエレシュキガルは反目し合っているのですが、此処ではウルクでの決戦時の出来事をイシュタルは記憶している状態にしています。


次回はルートに戻ります。


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