ビルドアップファイター勇作 (PPlaper)
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佐藤勇作:オリジン

と、特撮書きたい病が……。


転生者、佐藤勇作は叫んだ。

 

 

 

 

マジっすか、と。

 

 

 

 

 

事は、一日前に遡る。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

転生して、剣と魔法があるものの現実世界、みたいな世界にきた勇作は、歓喜した。

 

 

やったぜ!夢のチートライフだ!と。

 

 

しかしながら、そんなことはなかった。

 

 

 

 

 

 

言い忘れていたが、この世界は『落第騎士の英雄譚』という物語の中である。

 

 

尚、勇作はそのことを知らない。

 

そもそも原作を知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幼稚園年中に上がると、伐刀者の適正検査が実施される。

 

 

伐刀者に憧れる幼稚園児達は、どんな伐刀者になれるだろう、と期待に胸を踊らせる。

 

 

勇作もその一人だ。

 

 

転生したし、さぞかしCHEATなやつなんだろーなー、と期待していた。

 

 

 

 

 

今思えば、これ多分フラグだったんだなって。

 

 

 

 

 

伐刀者の検査はふつう、色々と手順を踏んで行われるのだが、今回は、鑑定専門の伐刀者が出張で検査し、結果だけを書類にして事業者側に渡す、という形をとることとなった。

 

伐刀者であることが判明した子だけを集めて、講習をしたりもする。

 

試験的に。

 

 

 

 

 

そして、勇作の結果が、これだ。

 

 

 

 

攻撃力:F

 

防御力:F

 

魔力量:C

 

魔力制御:E

 

身体能力:C

 

運:B

 

固有霊装ーーー空のボトルとそれをはめるらしきベルト(仮称)

 

 

伐刀者ランク:ギリギリE

 

 

 

 

ーーーー総評、ちょっとプロは難しいかな。by鑑定専門の伐刀者

 

 

 

チートなんてなかった。現実は非情である。

 

追い打ちをかけるように、はめるらしき場所にはめても何の反応も返さない自分の固有霊装。

 

 

そもそも武器じゃねーし。

 

 

勇作は絶望した。

 

 

 

そして、勇作は周囲を見る。

 

 

 

 

剣を掲げて叫ぶ見知らぬ男子。

 

 

 

槍を持って構えの真似事をしてみる、やはり見知らぬ男子。

 

 

 

チャンバラをしようとして止められる、これまた見知らぬ男子達。

 

 

 

やつら和気藹々としていやがる。

 

 

 

 

 

 

 

というか、男佐藤勇作、絶賛孤立中。

 

 

 

 

……………これ、イジメられない?

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

別にイジメられませんでした。

 

 

まぁ、よく考えたらそもそも伐刀者な人の方が少なかった。

 

 

だが、いくらイジメられないからって、ボッチなのは変わらないただ一つの真実なのだ。

 

 

勇作は思った。

 

 

ーーーーー友達作ろう、友達。

 

イジメられないためにも。

 

 

 

 

……えっ、どうやって作るの?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

・近づきにくい奴

・伐刀者の話題を振りづらい

・ボッチ

 

 

この三重苦を脱するため、勇作は作戦を考えた。

 

 

一つは永遠に脱出できなさそうだが、無い知恵を絞って考えた。

 

 

そして、母の名言を思い出す。

 

 

母曰く、「今くらいの子なんて外で駆け回ってるものよ」らしい。

 

 

ママ友と話してるの聞いた。男だったけど。

 

 

外で遊ぶ=公園。

 

 

ならば、公園に行かねば。

 

 

 

 

 

というわけで、勇作は公園にやってきた、が、しかし。

 

 

右を見れば知らないやつ、怖い。

 

 

左を見れば知ってるような気がするけどやっぱ知らないやつ、怖い。

 

 

 

 

 

 

したがって、砂場でボッチで遊んでる集団に混じるのは必然だったのだ(名推理)

 

 

………何しに来たんだ、俺。

 

 

 

 

 

 

ところで皆さんは、砂場で黙々と遊んでいると、何だか、隣で遊んでるやつとわかりあえたような親近感がなんとなくしないか?

 

 

俺はする。

 

 

そして、子供ってのは何かそんな気持ちを感じるやつと遊ぶものだ。

 

 

したがって、隣で遊んでた子に話しかけられることもあるんだ。

 

 

 

あるんだよ(真顔)

 

 

 

 

 

「ボ、ボクはいっきっていうんだ。い、いっしょに、あそばないかい?」

 

 

 

 

 

 

その男の子は、黒髪黒目で、気弱そうな目をしていた。

 

 

だから、俺は、女受け良さそーだなーと思いつつ、こう返したんだ。

 

 

 

 

「い、いいぜ。いっしょにあそんでやるりょ!」

 

 

 

 

今だから言おう。

 

 

クッソ恥ずかったわ。

 

 

そしてそんなカミカミマンの俺の言葉で満面の笑みになるいっき君マジ天使。

 

 

あ、ショタコンじゃないっすよ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

いっき君マジで良いやつでした。

 

 

優しい、かわいい、よく気づく、の嫁三条件をよゆーでクリアしてる。男の子だけど。

 

 

マジなんでここでボッチしてたのかわかんないくらいいい子だった。

 

 

そして、仲良く話していると、自然と話は昨日の伐刀者検査へと変わっていった。

 

 

 

おれぶれいざーなんだぜー、なんて言って威張る俺氏。

 

 

そうなんだ!おそろいだね!と言って邪気のない目を向けてくるいっき君。

 

 

 

崩れ落ちる俺。

 

 

 

 

 

 

「おれは……おれはよごれていたよ……」

 

 

「ど、どうしたんだいゆうさくくん!」

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、お互いの固有霊装について話し合う俺たち。

 

 

「ぼくのでばいすはかたななんだ!ゆうさくくんのはどんなでばいすなんだい?」

 

 

「お、おれのは……これさ………」

 

 

「なんだいこれ?ボトル?《カシャン》あっ、あいた。で、ここからどうするんだい?なかみは……からだね」

 

 

「わかんない」

 

 

「えっ?」

 

 

「つかいかたわかんないんだよそれ……。これにはめてつかうんだとおもうけど、はめてもなにもおこらないんだ………」

 

 

「えっ、あっ、その……ごめん」

 

 

完全に地雷ですね。

 

 

こんなに優しいいっき君を困らせるなんて俺は何という奴なんだ……。

 

 

そうやって、さらに落ち込んでると、いっき君が口を開いた。

 

 

「ゆうさくくんは、KOKのさいきょうねねさんをしってる?」

 

 

「……たしか、さいきんリーグにはいってきたひとだよな」

 

 

「うん。それでね、さいきょうさんって、でばいすのかたちがおうぎのかたちしててさ」

 

 

「へぇ〜。しらなかったや」

 

 

「それでね、はじめはつかいかたもわかんなくてあきらめかけたけど、それでもあきらめなかったから、いまのわたしがいるんだっていってたんだ。だから、その、うまくいえないけど、だいじょうぶさ!」

 

 

「……そうかなぁ……」

 

 

「きっとそうさ!このボトルだって、なにかつかいみちがきっとあるはずだよ!」

 

 

「たとえば?」

 

 

「う、う〜ん。ふたをあけて、なかみをかける、とか?」

 

 

「………………うん、そうだな!ジーッとしてても、どうにもならないしな!よし!やってみよう!」

 

 

「…!うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、相談の末、近くの街灯にボトルを向ける俺たち。

 

 

すると、街灯が少し光って、その光がボトルに吸い寄せられていった。

 

 

 

俺たちは、その光景をぼうっと眺めていた。

 

 

 

光が、全て吸い寄せられる。

 

 

 

おもむろにふたを閉めると、ボトルが光って、その形を変えた。

 

 

ライトフルボトル。

 

 

そんな名前が、頭に浮かんだ。

 

 

 

 

 

「そうか……そういうことか……!」

 

 

「ど、どういうことなんだい!?」

 

 

「たぶん、おれたちの、ボトルからなにかがでてくるっていうかんがえがまちがってたんだ!このボトルは、なにかをきゅうしゅうして、ちからにかえるボトルだったんだ!そして、この、でんきのボトル。これ、かたちがかわって、ひだりがわにしかはまらなくなってる!つまり、これには、もっとしゅるいがあるはずなんだ!いっき!さがしにいこうぜ!」

 

 

手を伸ばす。

 

 

「あ、うん!いこう!」

 

 

手を繋ぐ。

 

 

女みたいな手だな、いっき君。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、一日町中を走り回って、タコ、イヌ、マンガ、海賊、忍者のボトルが集まった。

 

 

タコは魚屋、イヌはちょうど通りかかった飼い犬、マンガ、海賊、忍者は、本屋さんで集めてきた。

 

 

調べると、タコ、イヌ、海賊、忍者は俺から見て右側、ライト、マンガは左側にはまるらしいことが判明した。

 

 

 

「ねぇ、ゆうさくくん」

 

 

「なに?」

 

 

「これ、ふったら、音がなるよ?《シャカシャカ》」

 

 

「ふーむ、なんでだろう?」

 

 

 

と、言いつつ、振ったタコボトルをベルトにはめてみる。

 

 

 

 

《オクトパス!》

 

 

 

 

「「うわぁ!!」」

 

 

なんか鳴った!

 

 

「………もしかして」

 

 

 

ライトも振ってはめる。

 

 

 

《ライト》

 

 

「やっぱり!これは《ベストマッチ!》うわぁ!」

 

 

《デンデンカン♪デンデンデン♪デンデンカン♪デンデンデン♪》

 

 

えっ!?

 

 

 

「ちょっ、いっき!た、たすけてぇ!?」

 

 

「ぼくにどうしろと!?」

 

 

 

あっ、コケた。

 

 

 

 

コケた拍子に、ベルトについていたレバーが回る。

 

 

回る。《カン♪》

 

 

回る。《カン♪》

 

 

回る。《カン♪》

 

 

 

「えっ、ちょっ」

 

 

急いで立つ。

 

 

《カン♪カン♪カン♪カン♪カン♪カン♪カン♪カン♪》

 

 

ベルトが回る度に、ベルトから線のようなものが伸び、プラモのようなものが形成される。

 

 

形成され切ると、ベルトから音声が鳴った。

 

 

 

《Are you ready?》

 

 

 

「えっ!?あっ、は、はい!」

 

 

 

プラモが迫る。

 

 

 

「えっ」

 

 

 

《ガチャーン》《シュー》

 

 

 

余分な空気が抜かれ、スーツが体にフィットする。

 

 

 

《稲妻テクニシャン!オクトパスライト!》

 

《イェーイ!》

 

 

 

………。

 

…………………。

 

……………………………………………。

 

 

『いっき、おれ、どーなってる?』

 

 

「なんか、ヒーローみたい………。」

 

 

『…………………………………………えっ』

 

 

 

マ、マジっすか……。

 

 

 

 

 

 

 

これが、佐藤勇作の始まりの物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだな、一輝」

 

 

「もしかして、勇作君かい?久しぶりだね!あ、でも友人だからって手加減はしないよ!」

 

 

「ああ、もちろんだ。実はさ、あれから色々あったんだよ。少し話そうぜ」

 

 

「喜んで!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くぜ!ステラ・ヴァーミリオン!テメェなんぞに負けてたまるか!」

 

 

《ライオン!》《掃除機》

 

 

《ベストマッチ!》

 

 

「フン!大きくでたわね。私だって、負けられないのよ!傅きなさい!妃竜の罪剣(レーヴァテイン)!」

 

 

 

《Are you ready?》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それでは!試合開始(Let’s Go Ahead!)!』

 

 

 

 

 

《たてがみサイクロン!ライオンクリーナー!》

 

 

《イェーイ!》

 

 

 

 

『さぁ!実験を始めようか!』

 




要望があれば続き書きます。


あればね、あれば。


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爆炎の転校生

今年最後の更新…。

今年最後って言うほど更新してない。


……拙いところは脳内変換オナシャス。


午前九時、寮室。

 

 

春休みのある日、佐藤勇作は、寮室のベッドでケータイをいじりながらゴロゴロしていた。

 

 

「あ〜、これも、これも、それからこれもいい!来期はウキウキが止まらないなぁ〜」

 

 

同室の黒鉄一輝がストイックにランニングに行ってるのに比べたら、可哀想なくらい自堕落である。

 

まあ、彼のおかげで、一輝は進級できたようなものではあるのだが。

 

 

「うわー、これアニメ化するのか。この作品をアニメ化するなら、原作に忠実にして欲しいなぁ」

 

 

とてもそうは見えないが、一年生の間、方々を駆け回って汚職教師の証拠集めをしたり、中学の基礎が出来てない一輝に必死に勉強教えたり、自分のボトル集めたり、色々していたのである。

 

 

していたのである(強調)

 

 

 

 

 

そんな勇作の至福の時間が、突然破られる。

 

 

 

 

 

 

ガチャ。

 

戸を開ける音がした。

 

 

 

 

 

勇作は、一輝が帰ったのか、それにしてはなんか速いなぁ、とか呑気なことを考えながら、出迎えた。

 

「おかえり〜」

 

 

少しキツめの目をしているものの、それが問題にならない程の美少女が、靴を脱ぎながら此方を驚いたように見ていた。

 

 

「誰よアンタ」

 

 

「……えっ、誰だよ」

 

哀しきかな、この男、テレビをアニメ以外見ない人種の人間であった。

 

 

 

 

これが、ヴァーミリオン皇国第二皇女である、ステラ・ヴァーミリオンとのファーストコンタクトであった。

 

 

 

 

「私は、今日からこの部屋で暮らすことになった、ステラ・ヴァーミリオンよ。っていうか、結構有名だと思ってたんだけど、アタシ」

 

「スマンが、知らん。あー、俺は、二年の佐藤勇作だ。よろしく。あともう一人いるから、挨拶しとけよー」

 

そうやって言うだけ言って、ベッドへ引っ込む勇作。

 

第一印象は、ぶっちゃけ最悪である。

 

 

 

「そ、そう。意外と知られて無いのね……」

 

 

ちゃんと知られてますよ。

 

 

 

二時間ほどして。

 

「ただいま〜」

 

「「おかえり(なさい)〜」」

 

「えっ!?誰!?」

 

 

説明中…。

 

 

「新しい人か。…でも、それにしては早くないかい?何か事情が?」

 

黒鉄一輝、お前もか。

 

「え、ええ。アタシは、ヴァ「おいこら!人の事情を詮索するなよ!」えっ、ええ……」

 

割り込む勇作。

 

言ってることは間違ってないんだけどなー。

 

そして、確かに、と思い直す一輝。

 

「そ、そうだね。ごめんよ。軽い気持ちで踏み入っていいものじゃなかった」

 

 

ごめんなさい、一般公開されてるんですセンパイ方。

 

 

とも言い出せず、ステラは困っていた。

 

 

 

 

 

ピリリリリリリリ。

 

突然、寮室の内線が鳴る。

 

 

「一輝ー頼んだわー」

 

「はいはい…」

 

「ええ……」

 

お前動けよ…。

 

 

 

 

 

一輝が、受話器を置く。

 

「新しい学園長から、ステラさんを連れて学園長室まで来てくれ、ってさ」

 

頭を抱える勇作。

 

「おう…マジかよ…。……ハァ…仕方ないか。よし、行くぞ新入生ー」

 

「えっ?あ、ええ」

 

 

ステラ、困惑しっぱなしである。

 

 

 

 

 

 

「…………学園長室ってどこ?」

 

「自信満々だったのにソレ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園長室。

 

 

新学園長の神宮寺黒乃は、世情に疎い二人(アホ)に頭を抱えた。

 

「ハァ……。お前達はホンっとうに知らんのか」

 

「「知らないです」…場末のアイドルかなんかですか?」

 

 

ビキッ。

 

 

「………………ハァ…。おい、黒鉄」

 

「はっ、はい!」

 

「テレビをつけてみろ」

 

「えっ?あっ、はい」

 

 

ピッ。

 

 

 

 

 

 

『えー、本日、ヴァーミリオン皇国より来日した、ステラ・ヴァーミリオン第二皇女が、今日、日本に八つある内の騎士養成学校の一つである、破軍学園に入られました。ステラ第二皇女は、十年に一人とも言われる、魔力ランクAという素晴らしい才能を持ち、………………、…………』

 

 

 

 

 

 

 

皇国の皇女って言ったら、日本で言えば天皇様の娘と同レベルである。

 

勇作の血の気が引く。

 

 

「エ"ッ……マジすか……?」

 

「マジだ」

 

「ドッキリじゃなくて?」

 

「違う。というか、前々からテレビで大々的に報道されていただろう……」

 

「テレビはアニメ以外見ないんで」

 

 

キッパリと言う。お前はそれでいいのか。

 

 

「お、おう…そうか……。まあ、色々あってな。連絡が遅れた謝罪を、と思ったのだが……。必要なさそうだな」

 

 

全くだ。

 

 

「ところで、用件はもう一つあってな。お前たち、彼女と模擬戦をしないか?」

 

「やります」

 

「オイコラ一輝」

 

即答である。さすがミスターストイック。

 

「アタシも構いません」

 

ステラタス、おまえもか。

 

黒乃は、少し困惑した様子を見せた。

 

「二人とも、理由は聞かなくていいのか?」

 

「いりませ「聞きます聞きます!」

 

 

「……お前達の仲が良い理由が何となくわかった気がするな……」

 

考えてそうな脳筋(一輝)と、考えてなさそうな頭脳(勇作)ですね。わかります。

 

 

「まあ、留学、という便宜上、そういったことをしていますよ、というアピールをしておいた方がいいと思ってな。学期が始まってからそんなゴタゴタを起こすよりも今のうちにやっておきたい、というわけだ」

 

「ソレ俺らじゃなくても良くないっすか?」

 

「ちょうどいいところに居たのでな。何、無報酬というのもアレだろう。受けてくれれば、今日の晩飯の費用を経費で落とそう。どうだ?」

 

「………………まぁ、いいでしょう。で、どこでやるんですか?」

 

「第二訓練場辺りでいいだろう。では、一時間後に第二訓練場に集合するように、解散!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後。校舎廊下。

 

雑談しながら歩く三人。

 

「でも、即答なんてしてよかったの?黒鉄センパイ。アタシ、これでもAランクなのよ?」

 

「ああ。むしろこちらからお願いしたいくらいだ。それより、よかったのかい?勇作。今回も、実戦は嫌いだ!って断るかと思ったのに」

 

「あ?ああ、アレ?、別に、授業をサボる方便だし。久々に体も動かしたいしなー」

 

 

ピキッ。

 

 

「ねぇ?佐藤センパイ?さっきからずっとダルそうだけど、そんなで模擬戦大丈夫なの?負けても気分が悪かったんです〜とか、言わないでよ?」

 

「フン。地位と才能だけの奴に負けるよーな鍛え方してねーから安心しろよ」

 

「あっ」

 

コイツ地雷踏み抜きやがった。

 

 

 

 

ブチィッ。

 

 

 

 

「……へぇ……。いいわ。楽しみにしてる」

 

凄絶な笑みを浮かべると、ステラは走っていった。

 

 

 

「………いくらなんでも、それは無いよ勇作……」

 

「あのな、オマエらみたいなバケモンに勝つには、こういう手段取るしかないの、わかる!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間後。第二訓練場。入場門前。

 

 

「じゃあ一輝、先発なー」

 

「僕が先発なら勇作は中継ぎかい?」

 

「いや、俺大将だから。俺が戦わなくていいように勝ってこいよー」

 

「いやいや、剣道は先鋒だから」

 

 

「何でもいいからさっさと出てこいアホども」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー原作と同じなのでカットォ!ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後三時、模擬戦一回戦後。保健室。

 

学校の特性上、訓練場の中にある。

 

 

「ハァ、まさか黒鉄センパイがあんなに強いなんて……。この分だと、佐藤センパイも相当でしょうね。癪だけど。でも、あんな奴に負ける訳にはいかないのよ…………!」

 

拳を、握る。

 

あんな男に、負けてなるものか……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、そろそろお暇させて貰うよ。お目当てのものは見れたしね」

 

「いいのか?もう一戦あるんだが……。まぁ、アレはお前が嫌いな部類の人間だしなぁ」

 

 

 

「えっ?くーちゃん?私聞いてないんだけど!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十五分後。第二訓練場。

 

 

「では、今から、Aランク、ステラ・ヴァーミリオンと、Dランク、佐藤勇作の模擬戦を開始する……が、佐藤、霊装を展開しろ」

 

「わかってますよ」

 

おもむろにボトルを取り出す勇作。《シャカシャカ《カシャン》

 

「いくぜ!ステラ・ヴァーミリオン!テメェなんぞに負けてたまるかよ!」

 

 

《ライオン!》《掃除機》

 

《ベストマッチ!》

 

 

ベルトのレバーを回す。

 

 

《カン♪カン♪カン♪カン♪カン♪カン♪カン♪カン♪》

 

 

すると、リズミカルな音とともに線のような『スナップライドビルダー』が伸び、二つのハーフボディが形成された。

 

 

ステラはその様子を見ながら、顔を引き締める。

 

「フン!大きくでたわね。私だって、負けられないのよ!傅きなさい!妃竜の罪剣(レーヴァテイン)!」

 

 

「双方、準備はいいようだな。それではーーーーーーーー

 

 

 

《Are you ready ?》

 

 

 

 

ーーーーーーーー試合開始(Let's Go Ahead)ッ!!」

 

 

変身(ビルドアップ)!」

 

 

《たてがみサイクロン!ライオンクリーナー!》

 

《イエーイ!》

 

 

勇作の身体が変わる。

 

右は金色、左は青緑に。

 

その姿は、右腕に手甲、左腕に掃除機をつけた異様な姿をしていた。

 

だが、混ざり物のようでありながら、確かな調和を保った姿だった。

 

そして、その姿を見せつけるようにしながら、勇作は自信満々に言う。

 

 

『さぁ!実験を始めようか!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「よりによってこのアタシとの戦いを実験ですって………!貴方にだけは絶対に負けない!!…いくわよっ!」

 

 

先に仕掛けたステラが、大きく踏み込む。

 

それを見て、勇作は……。

 

 

(何もしない!?)

 

 

微動だにしなかった。

 

いくら鎧型の固有霊装(デバイス)だとしても、妃竜の罪剣(レーヴァテイン)の一撃をまともに受ければただでは済むまい。

 

もし、それが、余裕の表れだとするなら……。

 

 

(上等!その余裕を剥ぎ取ってやる!)

 

 

ステラの固有霊装(デバイス)が、日輪の如き軌道を描いて真横から迫る!!!

 

(もらったぁ!)

 

 

 

が、しかし、勇作もそこまで舐めた真似をするような男ではない。

 

 

 

『はっ!』

 

 

 

ガキンッ!

 

 

 

「ッ!嘘ッ!そんなッ!」

 

ステラには、いつ動いたのか見えなかった。

 

それほどに素早く、腕の掃除機が振り抜かれていたのだ。

 

 

勇作はそのまま体勢を変えずに、右の手甲でパンチを繰り出す!

 

 

「ぐっ、ならっ!」

 

 

咄嗟に、身体から炎をだして迎え撃つ。

 

 

 

ボォウ!!

 

 

霊装が弾かれた隙を埋めるように、ステラの身体を炎が舐める。

 

 

妃竜の羽衣(エンプレスドレス)ッ……!これでなんとか…!)

 

瞬間、腹に強い衝撃を感じた。

 

「かはッ!!」

 

 

ステラの炎は牽制にもならず、勇作の一撃はステラを撃ち抜く。

 

 

(なんっ…で…!私の妃竜の羽衣(エンプレスドレス)は摂氏3000度……!いくら鎧型でもブチ抜けるはずが……!)

 

 

驚愕に包まれながら吹き飛ばされるステラを見て、勇作は呟く。

 

 

『こんなもんか。中々良いデータが取れたな。さあ、次だ!まだ俺は試し足りないぞ!』

 

 

 

 

数メートル程飛ばされたステラは、倒れるのを堪えながら霊装を構える。

 

(あのスピードで近づかれる前にッ!)

 

 

妃竜の息吹(ドラゴンブレス)ッ!」

 

 

直線上の全てを炎で薙ぎ払う、ステラの伐刀絶技(ノウブルアーツ)

 

先程の炎とは違う、本気の一撃。

 

(どう防ぐ…!)

 

 

妃竜の息吹(ドラゴンブレス)が、勇作を焼き尽くさんと突き進む!

 

が、しかし。

 

 

 

ギュイイイイイン!

 

 

 

 

突然、勇作の腕の掃除機が唸りを上げる。

 

すると、みるみるうちに炎の勢いはなくなっていき、勇作の鎧には傷一つ残らなかった。

 

 

 

思わずステラは叫んだ。

 

「な、何ですって!?」

 

驚くべきことに、勇作の左腕の掃除機は、ステラの伐刀絶技(ノウブルアーツ)を吸い込んだのである!

 

吸い込まれた炎は、肩の装置に送られて回転しているのが見えた。

 

 

切り札ではないとはいえ、本気の一撃を易々といなされるのを見て、ステラは攻めあぐねていた。

 

本来なら、妃竜の息吹(ドラゴンブレス)を避けたところを狙う算段であったが、一歩も動かずに攻撃を無力化された為、切ることのできる手札が減ったのである。

 

剣技。あのスピードでは近接戦は難しいだろう。

 

遠距離からの魔術。腕の掃除機で無力化されて終わりだろう。

 

もう、打てる手がなさそうだ。

 

 

 

ならば、今こそ切り札を切る時だ。

 

 

 

 

「蒼天を穿て!!煉獄の炎!!!」

 

 

 

 

掲げた霊装から、爆炎が立ち昇る。

 

 

炎は天井の穴を広げながら、形を変えていく。

 

 

それはまるで、お伽話の中のドラゴンの様であった。

 

 

 

 

 

 

『いいねぇ!だったら俺も、最大稼働だ!!』

 

それを見た勇作は、ベルトについたレバーを回す。

 

 

《カン♪カン♪カン♪カン♪カン♪カン♪カン♪カン♪》

 

 

そして、腕の掃除機をステラに向ける。

 

 

 

 

 

 

天壌焼き焦がす(カルサリティオ)ォォオッ!!!!」

 

 

 

《Ready?》《Go!》

 

 

 

 

ステラが掲げた霊装を振り下ろすッーーーー!

 

 

 

竜王の炎(サラマンドラ)ァァァアアア!!!!」

 

 

 

 

それを見て、勇作は掃除機を前に翳しながら前進するッーーーー!

 

 

『負けるかぁ!』

 

 

掃除機の出力が上がり、右手の手甲に光が灯るッ!

 

 

『ォォオオオオオオッ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

掃除機と竜炎が拮抗する。

 

 

 

その様を見ながら、ステラは焦っていた。

 

確かに、魔力にはまだまだ余裕がある。

 

が、しかし、水を入れる容れ物が大きく、水を出す勢いが強くとも、出口がその勢いに耐えられなければ壊れてしまう。

 

それと同じ様に、ステラの身体は限界を迎え始めていた。

 

 

(こ…の……ままじゃ……、押し……負ける……ッ……)

 

こんな、こんな……ッ!

 

努力をバカにするようなヤツに!

 

負けて………た・ま・る・かぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!」

 

 

轟ッ!!!とステラの竜炎が、これ以上ない程に勢いを増す!!

 

 

 

それを見て、勇作は呟く。

 

 

 

『計算通りだ』

 

 

 

と。

 

 

 

 

 

《ボルテックフィニッシュ!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこで、ステラの意識は途絶えた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「そこまで!勝者、佐藤勇作!!」

 

 

 

衝撃の展開だった。

 

高々Dランク程度の騎士見習いが、世界的に有名なステラ・ヴァーミリオンを完封したのである。

 

それは、その場に居合わせた前理事長の高ランク主義の染みついた生徒たちからすれば、足下を崩されるかのような光景であった。

 

そんなざわつきを尻目に、現理事長である黒乃はため息をついていた。

 

黒鉄は模擬戦をしたから実力はわかっていたので、結果も予想できたのだが、まさか佐藤がこれほどの実力を隠し持っていたとは思わなかった。

 

良くて善戦、悪くて瞬殺、というのが黒乃の見立てだった。

 

何故なら、佐藤は、ランクDとはいえ霊装が用途不明のベルト型で、主に体術で戦う、というのが書類に記載されていた情報だったからだ。(なお勇作監修)

 

(ステラが黒鉄に負けたことで失った自信を……と考えていたが、軽々と計画をぶち壊しにしてくれる……。

 

まぁいい。これはただのおまけみたいなものだしな)

 

 

 

気を失ったステラを抱えながら、そう思う黒乃であった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

午後五時五十分、第二訓練場保険室。

 

 

ステラが、ゆっくりと目を覚ます。

 

「……んっ……ここは………。あ、そっか……アタシ、負けちゃったんだ………。ハァ……。まさかあそこまで通じないなんて……。くやしいなぁ…………!」

 

身体を起こす。

 

と、ドアが開く。

 

開けたのは、黒乃だった。

 

 

「具合はどうだ?夜ははいりそうか?」

 

 

「ええ。問題ないわ」

 

 

「そうか。……そうだな、ステラ・ヴァーミリオン。一つ、助言をして置こう」

 

 

「……何ですか?」

 

 

「佐藤勇作という人間は、理由なく人を罵倒したりせんよ。奴はあれで中々義理堅い男だ。佐藤が罵倒した理由を考えてみたまえ」

 

 

「………わかり…ました」

 

 

「さて、もう動いても問題ないなら、学園前に行くといい」

 

 

「何故です?」

 

 

「私からは言えんな。何、こういうのは学生の特権だ。今日は門限を問わんから、楽しんでこい」

 

 

「???」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

午後六時、破軍学園前。

 

二人の男達が、たむろしていた。

 

「ヴァーミリオンさんおせーなー」

 

「勇作があんな勝ち方するから……」

 

「うるせぇ!勝てばいいんだよ!勝てば!」

 

「それでもあれはないよ……」

 

騎士としてどうなんだろう、と思う一輝だった。

 

 

「お、きたな」

 

 

勇作の声を聞いて、顔を上げる。

 

彼女が、こちらに歩いてきているのが見えた。

 

 

ステラが、こちらを見て、うわっ、という顔をする。

 

それを見ながら、手招きをした。

 

 

 

 

「それで、何の用?アタシにも色々やることがあるんだけど」

 

「それよりも!まずやることがある」

 

「な、何よ」

 

 

歓迎会だ!!

 

 

「勇作うるさい」

 

 

 

「…………は?」

 

 

「というわけで!早速行くぞぉ!」

 

「ちょっとまって!?どこに行くのさ!?僕聞いてないんだけど」

 

「何を言ってるんだ。当然!夜は焼き肉っしょぉ!!アッハッハッハ……」

 

 

ステラが突然のことに戸惑っていると、勇作がこっちを向いて言った。

 

 

「ん?何してるんだ。置いて行くぞー?」

 

 

二人が、ニヤッと笑った。

 

 

 

その笑みを見ていると、ステラは、なんだか色々悩んでいるのが馬鹿らしくなった。

 

 

 

二人に向かって、走り出す。

 

 

「ちょっと!主役を置いてってどうするのよー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、朝、寮室。

 

 

 

「くっそ……。飲み過ぎた……。あったま痛い。飲んだ記憶がない。やっべえな……何したんだ俺……」

 

「おはよう勇作」

 

「お、おはよう…、一輝。なぁ、俺昨日何かマズイことしたか?」

 

一輝が、顔を引攣らせる。

 

「う、うん……、…何も、なかった……よ?」

 

「ねぇ、俺昨日何したの!?ねぇ!?」

 

勇作、あはれなり。




ステータスをば。

・佐藤勇作:SATOU YUSAKU

所属:破軍学園

伐刀者ランク:D

固有霊装:ビルドドライバー&エンプティフルボトル

伐刀絶技:変身(ビルドアップ)

一口メモ:IQ200越えの天才らしい。


攻撃力:D

防御力:E

魔力量:C

魔力制御:E 

身体能力:E

運:B


備考
・エンプティフルボトルは、特定の物質の成分を、概念や存在が疑われるものであっても吸収して、フルボトルへと変えることができる。
・フルボトルをビルドドライバーに装填することで、フルボトル内部に記憶されたハーフボディを形成、装着することができる。
・フルボトル同士の組み合わせ次第では、『ベストマッチ』と呼ばれる、特殊なフォームが存在する。
・ベストマッチではないトライアルフォームは、肉体への負荷がベストマッチよりも重いが、ベストマッチよりも出力が高い。
・ベストマッチフォームは、継戦能力と、安定性に優れている。(例外もある)
・使わない魔力はフルボトルに貯めることができる。もちろん、引き出すことも可能である。
・フルボトルから魔力を引き出す場合、引き出された魔力はそのフルボトルの性質を持つ。
・フルボトルは譲渡が可能である。譲渡した場合、そのフルボトルの成分をもう一度集めることで二つ目のフルボトルを作成できる。しかし、譲渡したフルボトルは使用不可になる。
・まだ、未覚醒の機能がある。





ツッコミはいつでもどーぞ。

随時修正します。


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それでもバトルはやって来る

正直息切れしてきた。

常時してるじゃんとかいってはいけない。


なんでこんなに更新遅いのかって?

忘れてたわけじゃないんです。

本当です!信じてください!





「最悪だぁ……」

 

 

佐藤勇作は、頭を抱えていた。

 

 

何故か。

 

それは、新学期早々に黒乃に「お前七星剣舞祭予選会強制参加な」と言われたことでもあるし、入学式後の黒鉄妹がエロエロ(死語)だったことでもあるし、模擬戦以来部屋にステラさんが加わって色々大変なことでもある。

 

 

しかし、今一番勇作の頭を悩ませているのは、生徒手帳に送られてきたメッセージであった。

 

 

 

『七星剣舞祭予選会 第一回戦

 

 

対戦相手:東堂刀華』

 

 

「嘘だろ……」

 

 

 

破軍学園生徒会長。二つ名は雷切、その力量は既にテロの鎮圧に駆り出されるほど、テロ鎮圧時の映像、普段の様子、彼女に関する根も葉もない噂まで。情報を集めに集めて、勇作は直感した。この女、一輝と同類っぽい、と。

 

 

映像では、勢いよく突っ込んで行く解放軍(リベリオン)を自らの代名詞でもある《雷切》で容赦なく膾切りにするところが写っていた。

 

 

「アカン」

 

 

これはこのまま行くと一切情け容赦なく叩き潰される奴だ。

 

しかも今のところ勝ち目が無い感じ……。

 

せめて雷切を確実に引き出せればまだ勝ち目はあるのだが……。

 

勇作、絶対絶命のピンチ!

 

 

 

 

気を紛らわせようと、勇作は一輝に対戦相手を聞いた。

 

 

「一輝の一回戦の対戦相手ダレー?」

 

「えーっと…まだ決まってない、かな。勇作は?」

 

「生徒会長」

 

「あっ(察し)、あー……、まあ、頑張って……」

 

「お前もなー。というか試練ってレベルじゃねぇぞ……」

 

 

疾走エンハ二回攻撃持ちの鬼畜生徒会長とか勘弁である。

 

 

 

一輝は大体どいつでも油断しなきゃいけると思うが、俺はなァ……。

 

汎用性がある代わりに、何かに特化してるやつに弱い。

 

それでもパンチが10tちょいあるって?当たらなければどうしようもないんですよねー……。

 

紙一重で躱してそのままぶった切りに来るからね、あいつら。

 

ほんと、勝てる気しないんじゃが。

 

 

「対戦相手交換しよーぜー。お前のことだし生徒会長とやりたいだろォ?」

 

「そうしたいのは山々だけど、無理じゃないかなぁ……」

 

 

だよなぁ……。マジどうしよう。

 

 

 

 

 

 

結局、結論は出ず、ベッドに入って寝た。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「いいか?せめて代表入りくらいはしてくれ。でなければー……わかるだろう?」

 

「いや分かってますけどね。流石に生徒会長はキツいっすよ……」

 

「それは仕方ないだろう。抽選の結果だ」

 

「じゃあ、今回の件で何かあるってことは……」

 

「無い。保証しよう」

 

「ってことは俺の運か……あれ、俺の運悪すぎ?」

 

「まぁ、伐刀者には運も必要だと言うことだろう。それでは、健闘を祈る。一回戦、楽しみにしているぞ」

 

「ああ、はい。それじゃ。失礼しました…」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

次の日、昼休み、破軍学園3階、渡り廊下。

 

 

 

人通りの少ない廊下を、ブツブツ独り言を呟きながら歩く怪しい男が一人。

 

「あーもーどーすっかなー。タカガトリングでの遠距離戦は雷撃で落とされるだろ?同じ理由でロケットパンダやローズコプターもダメ。フェニックスロボは……ワンチャン有るか?いや、ロボだしダメだな。オクトパスライトもショートさせられる可能性があるし、海賊レッシャーは……うーむ、決め手に欠けるんだよなぁ」

 

 

ドン、と人とぶつかる。

 

 

「おっと、すいませんね」

 

「いえいえ、私も余所見していましたから」

 

 

そう言って、同時に振り向く。

 

 

「「あ」」

 

 

次の対戦相手が、そこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よければなのですが、少しお話よろしいでしょうか」

 

「アッハイ、よろしくお願いします」

 

「あ、いえ。あまり畏まって頂かなくても結構ですよ。上級生とはいえ、一年しか違いませんし」

 

「いやぁ、そんな、畏れ多いですよー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒会室。

 

 

生徒会の一員であり、東堂刀華の幼馴染でもある御祓泡沫は、幼馴染があの佐藤勇作を連れてきた事に驚いていた。

 

「いやー、まさか刀華が彼を連れてくるなんて。思っても見なかったよ」

 

「今、ちょうどそこの廊下で会ったから、いい機会だと思って」

 

だからといって生徒会室はないんじゃないかなぁ……と思う泡沫であった。

 

 

 

「えーっと、あー、次の対戦相手です佐藤勇作と申します。後腐れない戦いにしましょう。……ところでなんで俺連れてこられたんです?」

 

「……まさかとは思うけど、説明せずに連れてきたの?」

 

信じられないものを見るような目で刀華を見る泡沫。

 

本来なら此方からアポを取って、きちんとすべきだろうに。感情的というか、行動的というか、全く。

 

「えっ!?あ、ああ!?……すいません、忘れてました……」

 

ちょっとしゅん、となる刀華。

 

「あー、いやいや、いいんですよ。別にそんな気にしてませんし」

 

 

 

嘘である。

ちょっと俺頭いーかなー(失笑)みたいなのを自負(笑)していた勇作からすれば、すんなり相手のホームに連れ込まれたのがショックだっただけである(爆笑)。

アレだ、多分今から「私と戦うに値するか、見極めさせて頂きます」とか言い始めるんだ……!と考える勇作。

 

よく考えなくても「そりゃねーよ、どこのマンガだ」と思うだろうが、勇作も割とテンパっていたのだ。

だって戦闘狂怖いし(体験済み)。

こっそりボトルを握る勇作であった。

 

 

 

ある程度落ち着いて、会話が始まる。

 

 

「今回佐藤君に足を運んでいただいたのは、遅ればせながら、謝罪をさせていただくためです」

 

その言葉で、神妙な顔になる二人の先輩達。

 

 

「えっ?」

 

困惑する勇作。

 

 

「この度は、貴方の親友である黒鉄一輝君を助けることができなくて、本当に申し訳ありませんでした。いずれは黒鉄君にも謝りたいと思っています」

 

「僕からもだ。ごめんよ、助けに動けなくて」

 

 

「えっ???」

まさか謝罪を受けるとは思わず、頭が真っ白になる勇作。

慌てて反応する。

 

 

「い、いやいやいや。俺も生徒会を取り巻く状態は知ってましたし。そんな謝罪だなんて」

 

「いえ、こうでもしなければ私達の気がすみません。このままでは、取り返しのつかない事になるところでしたから」

 

「うん、まぁ、僕たちも彼の置かれた窮状は理解していたんだけどね。言い訳見たいになってしまうんだけれど、手助けしようとすると、いつも邪魔が入ったんだ。突然解放軍(リベリオン)の討伐要請が入ったり、彼等の子飼いの生徒に問題を起こされたりね。だから、君にはとても感謝しているんだよ」

 

「本当は、こういう事をどうにかするのが生徒会の仕事だったのですが……。力及ばず、本当にごめんなさい」

 

「いいですって。そんな大したことしたわけじゃないですし」

 

ここまで殊勝な態度ならば、少し布石を打って置けるのでは、なんてようやく回転し始めた頭で考える勇作。

ちょっとゲスくないか俺……と思いつつ、策を実行に移す。

 

「いえ、ですがー「いいんですよ、別に。そんなに気にするなら、二日後の試合、全力で戦ってください」…………」

 

出来るだけ、真面目な顔を取り繕って、言う。

ちょっと強引過ぎたかもしれないが、このくらいしなければ謝り続けそうだったしな。

それは、なんか……ちょっと……申し訳ない。

さて、どう出る……。

 

「……まぁ、後輩にここまで言わせるのはね。ほら、刀華も」

 

「…………まぁ、わかりました。では、二日後の試合、全身全霊をもって挑ませて頂きます」

 

よし!これならいけそうだな。

早速帰ってシミュの開始だ。

 

「そうこなくちゃ。では、楽しみにしてますね」

 

「ええ、こちらこそ」

 

 

 

ガチャン。

 

戸が閉まる。

 

刀華が、不安そうに俯く。

 

「……これで、よかったんでしょうか」

 

「まぁ、よかったんじゃないかなぁ。謝罪も受け取ってくれたし、彼も特に何か変な要求したりしてこなかったし。トントンでしょ」

 

「でもっ!「まぁまぁ、そろそろ授業始まっちゃうよ?」えっ、あっ!もうこんな時間!?急がないと!…後でまた話しますからね!」

 

慌てて刀華が走り去る。

 

「全く、刀華は真面目だなあ」

 

独り言は、以外と大きく聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、寮室。

 

「ここでこうして……こうすると……こうなるから……こう!よし勝ったァ!ハッハッハー!これで怖いものなんてないわー!」

 

ドゴン!

 

「センパイうるさい!何時だと思ってるの!?」

 

「あっ、ゴメン」

 

現在、午前一時。

ぶっ続けである。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、中庭の時計台前。

 

勇作と一輝とステラは、人を待っていた。

 

「で、だ。何で俺はこんなとこにいるんだ」

 

「いや、さすがに同じ部屋の仲間を一人だけ仲間はずれにするのもな、と思って。珠雫に聞いてみたら問題ないって言うから」

 

「いや、そのりくつはおかしい」

 

「でも、珠雫も会ってみたいって言ってたし」

 

(一輝それ俺が殺されるヤツゥ!お前の妹さんヤンデレやん……)

 

「何?センパイ、あたし達と遊びに行くのがそんなにイヤなの?」

 

「だってさー俺生徒会長の対策してて忙しかったのにさー」

 

「昨日の夜、「勝ったなガハハ!」とか言ってたじゃない」

 

「え!?いや、えっと、その、それは……」

 

「何?センパイにはアタシたちの誘いを断るほどの大事な用事があるっていうの?」

 

「あー、えーっと……まぁ、気晴らしになるかなぁ……(メソラシ」

 

「それでいいのよ!で、シズクはまだなの?」

 

「いや、もうそろそろ来るはずだけど……」

 

「ん?アレじゃね?」

 

そう言って勇作が指差す方向には、妖精のような美貌と、その美しさを引き立てる装い(スゲえ可愛いゴスロリ)をした黒鉄(妹)と、見知らぬイケメンがいた。

 

 

 

「お待たせしました、お兄様。あとステラ。そして、お兄様のご学友の佐藤勇作さんですね。はじめまして、黒鉄珠雫と申します」

 

「あ、はい。サトー=デス、ドーゾヨロシク」

 

「? 宜しくお願いします」

 

「ところで珠雫、そちらの方は?」

 

「ああ、ご紹介します。こちら、寮で同室となった、有栖院凪と言います」

 

「ご紹介にあずかりました、有栖院凪よ。気軽にアリスって呼んでちょうだい」

 

(((なんか濃ゆいの来た!)))

 

「さて、自己紹介も済んだところで、早速行きましょうか。お兄様」

 

「あ、ああ。行こうか、皆」

 

 

 

「……アタシはおまけ扱い!?」

 

「ツンデレってやつじゃね?」

 

「それはちょっと違うんじゃないかしら」

 

 

 

 

そんなこんなで、破軍学園近隣のショッピングモールに着いた一同。

 

「で、今日はどうするんだい?珠雫」

 

「ええ、お兄様。今日はまず、アリスおススメのクレープ屋さんに行く予定です」

 

「そっか。皆はそれでいいかい?」

 

 

「いいんじゃない?」

 

「というかこれ以上甘くするつもりかよ……」

 

「まぁ、何年も敬愛するお兄様に会えなかったんだし。少しくらいは大目に見てあげてちょうだい。それに、最近は甘くないクレープも多いのよ」

 

「…………なぁ。今思ったんだけどあの二人ってさ、あのまま禁断の関係ルートとかないよな?」

 

「……大丈夫……だと、思うわ……」

 

「そう思うなら俺の目を見て喋れよ」

 

 

 

1F、クレープ屋。

 

「うっま!このクレープマジ美味え!」

 

「そうでしょう?このお店はね、よくあるチェーンのお店じゃなくて個人のお店なの。素材からこだわっていて、最近話題なのよ〜」

 

「へぇ〜。他にもそう言う店ってあるか?」

 

「ええ、勿論!例えばここのモールのフードコートの……」

 

 

(あっという間に仲良くなってる!?)

 

 

「お兄様、こちらのクレープはいかがですか?」

 

「うーん、珠雫はどれがいい?」

 

 

「(こっちはこっちでデキちゃってるー!?)ね、ねぇ、シズク、次はどうするの?」

 

「え?あ、ああ、はい、映画を観に行く予定です」

 

「そう。それで、どんな映画を「お兄様、こちらのクレープも美味しそうですよ?」…………ううっ」

 

 

 

「…………なぁ、ステラさん!」

 

「な、何よ!」

 

「あっちは忙しそうだからさ、こっちで昼飯の相談でもしようぜ。アリスのやつマジでスゲえ色々知ってるんだよ」

 

「……………………そ、そうね!お昼ご飯もあるものね!」

 

「え!?貴方達まだ食べるの!?」

 

 

 

 

2F、映画館前。

 

 

「で、どれ観るー?」

 

「その前に、皆はどんな映画が観たいの?」

 

「ラブロマンス(R-18)を」

 

「アクションがいいわ!」

 

「えーっと……、僕は別に何でもいいかなぁ……」

 

「俺このウルトラマン観たーい」

 

「見事にバラバラね……じゃんけんにしましょう。じゃあ私はこの『ガンジー 怒りの解脱』にするから、……お兄さんはこの『永遠のペロ』にしたらどうかしら」

 

「そうだね、それにするよ」

 

「じゃあいくぜ〜!」

 

「「「「「じゃんけん、ポン!」」」」」

 

グー←珠雫

 

グー←勇作

 

グー←一輝

 

パー←アリス

 

グー←ステラ

 

 

「あら、勝っちゃった」

 

「ってことは」

 

「あの出落ち映画か……」

 

「まぁ、きっと面白いよ」

 

「そうかしらねぇ……。選んだ私が言うのも何だけれど」

 

「いいじゃない!アタシこういうの好きよ!」

 

「ああ、アクションですからね……」

 

「あ、俺ちょっと雉撃ちに行って来るわ」

 

「じゃあ僕も」

 

「じゃあ私も」

 

「「え、あ、はい」」

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「え、ええ。行ってらっしゃい……。ねぇシズク、雉撃ちって何?」

 

「男性が用を足しに行くことの暗喩ですよ。女性なら花を摘む。どちらもしゃがむ事からきているそうです」

 

「へぇ〜、知らなかった!シズクは物知りね!」

 

「日本の一般常識ですーーーと言いたいところですが、最近は知らない方が増えてますからね。知らないのも無理はないでしょう(というより何故アリスは知っていたのかしら)」

 

(ーー乙女の秘密よーー)

 

「(こいつ、脳に直接ッ!)」

 

「?どうしたの、シズク?」

 

「い、いえ、なんでも。それより、観るものも決まりましたし、券を買いに…「大人しくしろ!両手を合わせて上に挙げてしゃがめ!」…!!」

 

 

 

 

「とは、行かなそうね……」

 

 

 

 

「動くな!少しでも動けば撃つ!」

 

どう見てもカタギの人間では無さそうな人達が、型は違えど人を殺傷するに足るような銃を手に、周りの人に脅しをかける。

 

「せっかくのお兄様との休日を……!」

 

憤慨する珠雫を、ステラが宥める。

 

「どうどう、落ち着きなさい」

 

妙に慣れた様子のステラが、珠雫の機嫌をあっという間に直してしまう。

 

「……なんか手馴れてますね」

 

「実は何回か経験あるのよ、こういうの。あ、コレ国家機密だったっけ。オフレコでお願い」

 

「貴女よくうっかりしてるって言われません?」

 

「あー、たまに言われるわね」

 

「(これでたまにですか……)」

 

 

そんな二人を覆面の男の内の一人が見咎める。

 

「そこの二人!何をしている!さっさとこっちに来い!」

 

男は二人に銃口を向け、命令に従うよう脅す。

 

二人は、アイコンタクトで事を荒立てないことに決め、指示に従った。

 

 

 

ーーーーーーさて、その頃の男……男?男性三人衆はというと。

 

 

ババババババババババ!!!!

 

 

「ハハハ!こんだけ撃てば中の奴は伐刀者でも死んでるだろうさ!」

 

「違いない!」

 

「「ハハハハハ!!」」

 

足音が遠ざかるのを感じてか、影が蠢く。

 

「……行ったかな?」

 

「ええ、行った筈よ。それより佐藤先輩は……!」

 

何故彼……彼?アリスでいいや。アリスが勇作を心配しているのかというと、勇作の安全だけ確保出来なかったからである。

 

アリスの霊装の能力は『影を操る』。

 

先程はそれを応用することで、一輝と自身の身体を影の中に入れて身を守ったのである。

 

 

 

作者は何故これがDランクなのか疑問である。

 

運とか言う謎ステータス載せるより普通に能力載せた方が良いのでは……と思う。

 

 

 

まぁそれは置いといて。

 

そういう訳で、勇作も影を伸ばして守ろうとしたのだが、勇作が影の中に入った感覚が無かったのである。

 

咄嗟のことだったので、影で守る事は出来ず。

 

彼は、銃弾の雨をモロに食らったのである。

 

 

 

勇作は死んでしまったのか!

 

もうこの作品は終わってしまうのか!

 

彼の犠牲に一輝君がキレて「This way……」してしまうのか!

 

 

次回を待て!

 

 




勇作「作者ウザいよねー」
全『それな』
私「そんなー」


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お前はなんてところでぶった切るんだ

そっと投稿。



前回のあらすじ
トイレで撃たれた。


「佐藤先輩!!」

 

バタン!と勢いよく個室のドアを開けるアリス。

 

その目は、血まみれの勇作を…………「あー!死ぬかと思ったァ!」映さなかった。

 

 

まあここで死なれたら困るし。

 

 

「勇作ー、大丈夫ー?」

 

一輝が、生存を確信した口ぶりで問う。

 

「あったりまえだろ!?ったく、畜生殺す気かよ!」

 

傷一つない姿で叫ぶ勇作。

 

その手に握られているのは、ダイヤモンドボトル。

振ることで『自身の身体をとても硬くする』という汎用性の高い能力を持つフルボトルである。

 

「あ〜っくそッ!ボトルの魔力残量がかなり減っちまった!!」

「命に比べれば安いって」

「それは……そうだけども」

 

苛々とした様子を隠せない勇作。

徐にビルドドライバーを取り出すと、それを腰に装着し「待って待って!外で使ったら不味いって!?」

「あー、クソッ!!そうだったな……」

 

勇作はドライバーをしまうと、自分のスマホを耳に当て、あるところに電話を掛ける。

 

「あ、理事長?」

「あ、そーゆーのいいんで霊装の使用許可ください」

「了解っす。はい、はい、わかりましたー」

 

「よし、使用許可出たぞ」

 

「「早っ!?しかも雑!!」」

 

電話を開始してわずか2分。

驚くべき早業である。

そして、勇作はその言葉を発するや否やすぐさま腰にビルドドライバーを装着し、フルボトルを装填する。

 

籠められた色は、紫と黄色。

 

 

《忍者!》

 

《コミック》

 

《ベストマッチ!》

 

ダン♪ダン♪というリズミカルな音に合わせて、スナップビルドライダーが伸びる。

その先に二色のハーフボディが形成されると同時に、音声が鳴る。

 

《Are you ready?》

 

変身(ビルドアップ)!」

 

《ガチャーン!》

《シューーー!》

 

余分な空気が排出され、アンリミテッドスーツが体にフィットする。

 

《忍びのエンターテイナー!!》

 

《ニンニンコミック!》

 

《イェーイ!》

 

「野郎ぶっ殺してやる」

 

軽快な音声とは裏腹に、勇作の声は怒りに満ちていた。

折角の休みを台無しにしやがって、という怒りである。

コイツ自分が行く予定じゃなかった事棚に上げてやがる。

 

「行くぞ!」

 

全く足音を立てずに走り出す勇作。

 

「あ、うん」

 

それに生身で足音を立てずに着いて行く一輝。

 

「え、え、ええ!?アタシ!?アタシが可笑しいの!?」

 

先輩が突然変身したり、一人着いていけないアリスであった。

ちなみにアリスは影に隠れながら着いていった。

 

 

ショッピングモール 1F踊り場

 

「オラァ!」

 

スパン!といい音がして、テロリストの脚が無防備な人質に突き刺さる。

 

「ガハッ!グッ……!」

 

「……あん?何だその反抗的な目はァ!!」

 

「グァッ!!」

 

一度蹴り上げた腹を、何度も何度も繰り返し蹴り続けるテロリスト。

最早息も絶え絶え、というところになるまでひたすら叩きのめした後、彼は他の人質に告ぐ。

 

「反抗的な真似した奴ァコイツみたいにしてやるからなァ……」

 

それは、憂さ晴らしと脅迫を兼ねた、警告の程を成さぬような悪辣な警告であった。

 

こう言った手合いの人間(荒くれ者)は、2種類に分けられる。

すなわち、心の奥底に良心があるかないかである。

 

この男は、前者に属する人間であった。

元々、彼は優秀……とまではいかないまでも、有能な伐刀者だった。

将来を、一般的な伐刀者くらい、嘱望される程度には。

 

しかし、時が経つにつれて彼の霊装と彼自身の才が、食い違って行く。

 

自身は徒手空拳の才があるのに、霊装は指輪型、その上能力の発動が自分から当てた場合は出来ない、という、致命的なまでに噛み合わない組み合わせだったのだ。

 

故に、伐刀者であるのに、霊装を使わない方が強い、という矛盾。

彼は、あまり使わなくなった自身の霊装を見て、いつも寂しそうに呟くのが癖になっていった。

 

ーーーーー「もっと、違う霊装なら良かったのに」

 

と。

 

霊装とは、自身の内から生まれ出ずるもの。

すなわち、自身の分身、とも言える。

彼は、自身の分身が自身の戦闘スタイルと噛み合わないことを嘆いていた。

 

けれど、それでも、無理に霊装を使おうとはしなかった。

使い物にならないと、決めつけていたから。

 

……そこが、分水嶺だったのだろう。

 

それからの彼は、必死に努力した。

伐刀者に与えられる恵体を鍛え上げ、格闘を学び、自身を高めた。

血を吐きながら、涙を流しながら、特訓を重ねた。

 

そう。

 

そうして彼は、とても強くなった。

並みの伐刀者なら相手にならないくらいには。

 

だが、現実は残酷で、過酷だ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

文字通り血を吐きながら行った特訓。

しかし、()()()()()なら、全員やっていた。

 

故に、彼は他の伐刀者に完敗を喫する。

次も。

次も。

その次も。

彼は、誰にも負けない自信があったが、それはその場の全員が持っていた感情であり。

 

彼の自信は、何度も繰り返し踏みにじられることとなった。

 

私にに足りなかったのは、霊装と、強い執念だ。

他の誰が何と言おうとも、少なくとも、彼はそう考えていた。

 

ーーーーーーだから、霊装にこだわった。

 

霊装に拘ることで、自身の努力が無駄ではないと思いたかった。

霊装に拘ることで、霊装がない自分が負けるのは仕方ないと思い(諦め)たかった。

霊装に拘ることで、自身の思いが彼らに比べて強くなかったことを正当化しようとした。

 

私には強い霊装がないから……霊装がないから、彼らに負けてしまったのだ。

強い霊装さえあれば。

霊装さえあれば。

霊装さえあれば!!

 

いつしか、努力は憂さ晴らしとなり。

諦めは取り返しのつかない諦念となり。

霊装への憧れと思いは、偏執となった。

 

彼が、解放軍(リベリオン)へと加入するのは、自明の理だったのかもしれない。

彼は、そこで選民思想と、道徳の放棄と、暴力を学んだ。

 

彼はもう、引き返せない。

最も、彼がその事に気付いているかは、甚だ疑問ではあるが。

 

 

「ビショウさん!人質の交換条件の提示終わりました!」

 

「よし、じゃあ、好きにしていいぞ」

 

「ヒャッホウ!さっすがビショウさん!話しがわかるぅ!」

 

 

……そう、それが、伐刀者ランクBの、解放軍(リベリオン)幹部である、ビショウという男。

霊装に拘るあまり、肉体での闘争を捨ててしまった、男である。




Q:主人公は?
A:ははははは

……次回を待て!!


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