Assassin's Creed/Grand Order (キサラギ職員)
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グランドオーダー

つづかない
バイナリコードは変換するととあるアサシンになります


 愛する人が去っていく。否、愛していた人が去っていく。正直になるべきだろう。なおも、愛している人が、去っていく。

 信条が変わるように、人もまた変わっていく。

 愛する人が置いていった骨飾りが波打ち際に埋もれている。手にとってみると、一対の刃が向かい合うような格好の紋章が残っていた。

 

 このマークも、いずれは波にさらわれて消えてしまう。私自身もやがて死に葦の原野を歩くだろう。残されるのは、信条だけだ。唯一絶対永久に残るのは信条だけ。

 

 もはやかつて持っていた愛は砂に帰した。

 名前さえも。私はかつてと同じではいられない。

 

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「……どいつもこいつも統率のとれていないクズばかりで吐き気が止まらないな。人間というものはどうしてこう、定められた運命からズレたがるんだい?」

 

 レフ・ライノールが一同を嘲笑していた。なるほど、つまるところこいつは敵なのだ。

 人は運命などというものには従わない。何者にも従わない。自由意志こそが、人を人として成立させているものなのであると、信じてきた。もしもいるのであれば、神様にだって従わない、それが人である。

 

「マスター、下がって……下がってください! あの人は危険です……あれは、私達の知っているレフ教授ではありません!」

 

 マシュが叫ぶと盾を構えなおした。“目”を通してみても、彼女の持つ盾は尋常ではない情報量であり、宝具であることがわかる。場にいるみなは青。そして、不敵な笑みを浮かべる目の前の男―――あるいは、化け物は、真紅に染まっていた。

 

 「レフ……ああ、レフ、レフ、生きていたのねレフ! 良かった、あなたがいなくなったらわたし、この先どうやってカルデアを守ればいいか分からなかった!」

 

 ああ、反吐が出る。私は精一杯に媚びた声を上げて奴に歩み寄っていった。偽装は完璧だ。奴が違和感を覚えて解析を行ってくるそぶりさえなかった。こちらを見下しているらしい。好都合だった。

 以前の私であれば興奮のあまり前が見えなくなっていただろう。しかし、今は違う。私の体に流れている歴史が、遺伝子が、私以外の演技を可能とする。私を演じながら、これから、私自身ではないことをする。

 

 「やぁ、オルガ。元気そうで何よりだ。君も大変だったみたいだね」

 

 ねっとりとした声だった。にやにやと口元を歪めてこちらを見つめてくる。敵意、悪意、あらゆることに絶望し、あらゆることに殺意を覚えているであろう表情。どんな理由があって人類を抹殺しようと思ったのかはわからない。“やつら”がこの人類の決定的な絶滅を防ぐ為という名目を掲げているカルデアを一種の観測所として利用することで未来さえ牛耳ろうとしているのは知っていた。それを防ぐために奮闘している最中のことだった。人類を破滅させ、人類を根絶することなど、統制と管理の元に人類を存続させようとしている“やつら”が許すはずがない。この所業は、何か別に黒幕がいることは明らかだった。目の前の男は妙に口が軽いが、決定的なことをしゃべる素振りはない。情報を引き出すことはできないと直感した。

 

「ええ、ええ、そうなのレフ! 管制室は爆発するし、この街は廃墟そのものだし、カルデアには帰れないし! 予想外の事ばかりで頭がどうにかなりそうだった! でもいいの、あなたがいれば何とかなるわよね? だって、今までそうだったもの。今回だってわたしを助けてくれるんでしょう?」

 

 ああ、だめだ。笑うな。この男は次に私が死んでいると言うつもりだろう。それはありえない。奴が仕掛けた爆弾は、私が“目”を使ったおかげで、私自身を吹き飛ばさずに済んだのだから。偽装が巧妙で起爆直前まで気がつくことができず、私だけが逃げ延びるという無様な結果に終わったけれど。

 私はさらに一歩を進めた。

 仕事上ではよく助けてくれた彼だけど、内心では何を思っていたことか。

 

 「ああ。もちろんだとも。本当に予想外のことばかりで頭にくる」

 

 「所長!」

 

 マシュが何かを言っている。すべて想定内だ。 

 

 「その中でもっとも予想外なのが君だよ、オルガ。爆弾は君の足下に設置したのに、まさか生きているなんて……なに?」

 

 そうして私は、必殺の間合いへと自分自身を置いていた。疑問符を浮かべるレフへ飛び掛ると、左袖に格納していた必殺の刃を首に突き立てた。

 アサシンブレード。ヒドゥンブレード。呼び方は様々あるが、“我ら”が長年にわたって運用を続けてきた武器のひとつ。

 

 「―――ぐ、があッ!?」

 「爆弾で死んだ、そう推測したのであれば大きな過ちよレフ。私は生きている。そしてあなたはこれから暗闇を歩くことになる」

 

 首を突き刺しただけで殺せるなどとは思っていない。レフが魔術で応戦するよりも早く、右腕の刃を起動させて心臓を貫く。大量の毒を流し込むことを忘れずに。現代のアサシンが使うブレードは高機能である。刃を射出することもできるし、毒矢を放つこともできるし、刃に毒を塗ることはもちろん、電流を放つこともできる。

 キスでもするような距離にレフの顔があった。

 

 「再生なんてさせないわよ。ヒュドラ毒。これの意味するところはわかるかしら」

 「アサシン………き、さ、ま……」

 

 レフの体から急速に力が失われていくのがわかる。たとえ相手が悪魔だろうがなんだろうが、この毒は殺すことができる。まともな相手であれば。レフの体が薄れていく。

 

 「逃げるのね。いいわ。汝、闇に生き光に奉仕する我ら忘れることなかれ。いずれは、また」

 

これは―――空間転移か? 私が突き刺していた名残を残してあっという間に消えてしまう。殺し損ねたか。所詮は出来損ないの末裔にはこの程度が限界ということか。自嘲している暇はない。得た情報は少ない。私は唖然としているあのいけすかない新人マスターと、マシュ、サーヴァントに振り返った。

 

 「何をぼんやりとしているの? 空間の崩落が始まる。レイシフトで離脱するのでしょう!」

 

 

 

 

 オルガマリー・アニムスフィア。

 これは、私たちの物語だ。




アブスターゴ社 クリアランスA以上閲覧可
機密情報

PE:26 鞘
 性能:蘇生 回復 別次元へのアクセス
 分類:エデンのかけら
 状況:捜索中
 経緯:PE25剣と共にイングランド王に譲渡された
   :教団一派のモードレッドの反乱のため形勢不利と判断し、回収。
   :PE25性能試験のためPE25は回収せず戦争終結まで追跡後回収。
   :追記 1812時点ナポレオン・ボナパルトのもとに確認 後アサシン教団により回収され行方不明

ツリー:フランス調査続行中
   :ctOS導入による包括的調査の必要性を求む

関連ファイル:……

 (閲覧不可 より高次のクリアランス取得)
 実験体について :こいつは飯を食いすぎる。
         :“鷹の目”以外の超感覚を検出。調査中。

 →警告 無駄なメモに容量を裂かないこと


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霧のロンドンにて

オデッセイと絡めたらこうなるかなみたいな現代(?)編。
ロンドンはctOS導入で監視体制が整ってたりする感じ
短くない? お前が続きを書くんだよ!


 2000と、450年は待っただろうか。

 この場所を……この都市を門徒共から隠すためにはそれだけの時間を待つ必要があった。

 門徒。今はなんと呼ばれているのやら。曰く、騎士を名乗ったことがあるらしい。今は商売人の仮面を被っているという話も聞いた。

 神話は確かにあったのだ。だが、神話はあっても神などいなかった。

 我々の信じる真実(かみ)などなく、だからこそ守るべき理法もないのだから、許されぬことなどない。

 女がいる。あの女はきっと、門徒と敵対した戦士や思想家たちの遠い子孫だろう。

 役割を終えるときだ。この街を正しく使える人間に引き渡すのだ。

 

 

 

 

「こちらオルガマリー。レイラ、随分時間がかかってるわね」

 

 女がいた。ロンドンの町並みを、漆黒のレインコートを被って歩いている。手には防水仕様らしい携帯端末を握っており、操作しながら器用に人ごみを避けていた。

 

『ちょっとアブスターゴ……あっち(古代ギリシア)じゃコスモスの門徒っていうんだけど、コイツらがしつこくて』

「そう、お友達と楽しくするのもいいけど目的は杖と街なのだから忘れないように。今のところ連中の姿は見えないけど、偽装された監視カメラが街中に仕込まれているようね。すべて処理したけれど。オーバー」

『ありがとうオルガマリー。仕事の邪魔はしないわ』

 

 女はつい今しがた街中に仕掛けられていた監視カメラをctOSというオペレーションソフトウェアを介してループ映像と置き換える作業を行っていた。やったことは単純で同志が作ったソフトを起動させただけだが、効果は絶大だった。監視者達はひたすら流される何の変哲も無い人ごみの映像を見せられてさぞ退屈していることだろう。

 雨が容赦なく打ち付けてくる。携帯端末をしまうと、人ごみに紛れて歩き出す。傘を差した人の群れ。レインコートを被って走っていくものも少なくない。

 レインコート越しに空を見上げたオルガマリーの姿は、雷が一瞬街を染め上げただけで消失していた。

 

「……来たわね」

 

 雨が止み始めた。豪雨打ち付ける街並みにかかっていた霧が徐々に晴れていく。

 ビルの屋上に陣取ったオルガマリーは、丁度魔術師の巣でもある時計塔を望む位置についていた。ビルの屋上の転落防止用の手すりの上に仁王立ちしていた。

 レインコートを脱ぎ捨てる。ごくありきたりなパーカーが姿を見せる。顔を隠すように被られたフードには、猛禽類を彷彿とさせる飾りが縫い付けられている。

 オルガマリーの瞳が黄金に輝いていた。その瞳は、上空を周回する一羽の鷲に向けられていた。

 

「そう、わかった。今行く」

 

 両腕を水平に広げ、重力に身を任せて跳躍する。

 猛禽類の嘶きにも似た風斬り音を響かせ、霧に沈んだ街へと落ちていく――。




『携帯端末』
フードを被った骸骨のペイントがされたスマートフォン。
特定のコードを入力することで使用することができるようになり、
電子機器に疎い人でも自動で周辺の監視カメラに偽装映像を送り込むことができる。

『ヒドゥンブレード』
 クセルクセス王を暗殺した時に用いられたというアサシンたちにとっての象徴的な武器。
 ロープダートによる自動巻き上げ装置によって瞬時にビルの屋上によじ登ることができる他、ショックブレードなど非殺傷武器も備える。射程こそ短いがサプレッサー付きの隠し銃も備えている。
 同時に魔術師である彼女はこれを触媒として使えるように改造を施している。


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