Re:雪のように白く、美しく (海童(ワダツミ))
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ハジマリの詩/修学旅行編
#1


はじめまして(?)海童(ワダツミ)です。

何で今更リメイクするか?理由は特にないですけど、強いて言うなら改良したかったからとしか言いようがありません。あと、アキブレリリース記念?
何で原作10巻から?理由は前作にも書きましたけど、改めて言うとめんどくさいからです。



完結したいなぁ(ボソッ


「俺はどうしたらいいんだろう……」

 

織斑 一夏は一人そんなことを呟いた。彼が悩むのも無理はない。自らを亡国企業の凶弾から守ってくれたアーリィさん……アリーシャ・ジョセスターフが亡国機業へと移ったのだ。

 

それだけではない。ついさっき亡国機業のスコールさんから告げられた言葉。

 

 

 

『織斑 千冬には気をつけなさい。それと、倉持技研の動きにも』

 

 

 

ただでさえわからないことだらけの状態なのに自分の身内に注意を払え、ひどく言い換えれば敵と思え、などと言われれば、どんな人間でも戸惑う。

 

「…………どうすればいいんだろうか、いや。俺は、どうしたいんだろうか………」

 

守られてばかりだった少年には、どうしたらいいかも解らない、非常な現実が待ち受けていた。

 

 

****

 

 

 

日本のどこかに存在するオフィスビルの地下。そこで刀魔・R・シルヴィエは暮らしていた。暮らしていた、といっても普通一般の人の居住空間ではない。

壁や床、天井は金属質を一切隠すことのなく、それでいて床には工具やケーブルが散らかっている。

辛うじて部屋の片隅にボロボロになったベッドと毛布がおいてあるが、状態も悪く粗大ごみ置き場にあってもおかしくはない外観だ。

 

「そろそろ、亡国機業は動くはずだ。そこを狙って………」

 

彼以外に誰もいない地下の一部屋。

 

「まずは今回で一機、よければもう一機落としておきたいな……『ガーベラ』、お前にしよう」

 

古ぼけたオフィスデスクの上に置いてあった3つの小型端末のうち、青いランプを灯す一つを手に取る。

少年の目には、深く濃い復讐の炎が滾っていた。

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

 

IS学園修学旅行、その自由時間、織斑 一夏は一人竹林の中にいた。

 

「はぁ……、一人でいた方が、落ち着くなこれ」

 

彼はふと自分の回りを思い浮かべる。彼の環境は、始まりこそめちゃくちゃだったものの、普通の男子高校生からすれば素晴らしい環境だった。女性しかいない学園の中に男子が一人。下世話な言い方をすれば、エロゲの主人公のように選り取りみどりである。

 

 

 

 

 

…………普通の男子高校生にとっては。

 

彼は自覚していた。自分は恋愛観に疎いと。しかし、そんな唐変朴で済む時期はもう過ぎた。ワールドパージ事件、誰かがそう名付けたISのコアインターネットを利用した学園の乗っとり。

結果としては単なる身内内の揉めにすぎなかったし、とんでもない被害を受けることもなかったが、皮肉にもその事件は織斑 一夏を成長させたのだ。他人の恋愛感情を汲み取ることができる、という風に。

 

「絶対箒とか俺のこと好きだよなぁ………セシリアに鈴、シャルにラウラ、おまけに刀奈に簪も……」

 

今まではただ単に友人の延長線じゃないか、あるいはたった一人の男子だから興味があるだけ、と思っていたが、もうそういうわけにはいかない。

 

一番の問題であり彼を苦しめるのは、誰か一人を選ばなければならない現状。

 

「随分悩んでいるな」

 

突然誰かに声をかけられた。しかも、男性の声だった。あまりにも気になったのか、声のした方を振り向いた。そこには織斑一夏と同じくらいの年齢ほどの男がたっていた。

 

「ひさしぶり………あ、いや。はじめましてだな、織斑一夏」

 

「………誰だ。何で俺の名前を知っている!?」

 

すると、男は不思議そうな、しかしどこか寂しそうな顔をした。

 

「いやいや、ニュースであれだけ堂々発表して君のことを知らないやつなんていない。名乗るのが遅くなった。俺の名前は刀魔。刀魔・R・シルヴィエだ。 単刀直入に言おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の仲間になってくれ。」

 




刀魔・R・シルヴィエと彼を取り巻く環境:年齢は織斑 一夏と同じでアメリカと日本のハーフである。数年前までは父の凛道 片刃、母のミリア=シルヴィエと一緒に暮らしていた。
しかし、母は彼が小学校に入る前に胃癌によって他界している。残された父と彼は母の死を受け止め、生きていた。
その日常も白騎士事件によってすべては壊れることになる。男性の立場の欠落。父は真っ先にそれの餌食となる。女社長による理不尽なリストラ、相次ぐ不採用、過剰なストレス蓄積。病で倒れるのはそう遅くはなかった。

彼も同様。学校での虐め。男子の顔を見れば使いっ走り、ストレスの捌け口として扱われ、抵抗すれば回りから指摘される。教師の助け船など存在するはずもない。それはもう少年が世界に絶望の感情を持つことを加速させた。

父は結果として一月もしないうちに他界。元々体が強いわけではなかった。

父の残した研究データ、『レイズコア』と一枚の写真が彼にとってのすべてである。


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#2

リメイクしているのに誤字が存在する雑魚は私です。
そうか、Wor○で打ち込んだら文章校正できるのか、盲点だった(白目


竹林の中、二人の高校生が対峙している。

 

「仲間になってくれ? ……全然先が見えないんだけど、いったい何をしてほしいんだ? いや、それは俺じゃないと出来ない―――っ!?」

 

 

一夏の頭の中に突然ノイズがかかる。

 

 

 

 

『なぁ一夏、**、刀*、**、俺たちいつまでこんな感じなんだろうな?』

『案外大人になってもこんな感じなんじゃねぇの? **』

『もしそうだったらおもしろそうだな!』

『どーせ大人になったって**には彼女なんていないでしょ?』

『一夏には*姉ちゃんがいるし、私は*魔君もらおっかなぁ………なんて(ボソッ』

『はいはい、聞こえてますよー』

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ………(何だ? 今の記憶は?)とにかく、お前は何がしたいんだ!?」

 

「俺がすることはただひとつ、

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界にあるISすべての破壊だ。

 

 

 

 

 

 

 

ぜひ手伝ってほしいんだ。」

 

刀魔の発言を理解することはできなかった。いや、したくなかったのだろう。今の一夏があるのはISのお陰であり、ISによって姉の千冬と再開でき、箒、セシリアたちに出会えた。

もちろん目の前の青年、刀魔が単なる遊びで言っているのかと思った。しかし、目の前の刀魔の目は嘘偽りのかけらも感じない本気のものだった。

それでも、一夏は応える。

 

「ごめん、それはできない。」

 

「…………そうか、それが今のお前の応えなんだな。今はそれでいい。次に会うときにはいい返事を待っている。」

 

その言葉を残して、刀魔は去っていった。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

無事に、とは言えないが二泊三日の修学旅行が終わった頃、織斑一夏は考え込んでいた。現在帰りのモノレールの駅前で全員が集合している。しかし、一夏の心には刀魔という男の影が見え隠れする。

 

「(なんで刀魔はISを破壊しようとしているんだ? そして、なんで俺にその事を伝えあまつさえ仲間になろうと誘ったんだ? ただ単に破壊するためなら「一夏?」俺じゃなくてもっと実践慣れしたやつに頼むものなんじゃないのか? それとも「一夏?」了承しそうなやつが俺ぐらいだからか?)」

 

「おい、一夏!? 聞いているのか!?」

 

反応がないのが気になったか体を揺らして一夏を呼ぶのは、黒髪ポニーテールのファースト幼馴染、箒である。

 

「うおぁっ!? ……なんだ、箒か。驚かすなよ……」

 

「驚かすもなにも、ずっと呼んだだろう。帰りのモノレールが来たぞ。早く乗らないとまた千冬さんに怒られるぞ。」

 

「あぁ、そうだな。ありがとう。」

 

そうしてIS学園の生徒は全員モノレールに乗った。何もなく帰れるかと思われた。しかし、そううまくいくことはなかった。

それは京都を出発してから10分も経っていない頃だった。

 

ガァァァン!

 

謎の振動が生徒の乗っているモノレールを襲う。

 

「身の安全を確保しろ! 専用機持ちはいつでもISを展開できるようにしておけ!」

 

生徒たちが戸惑う中、織斑千冬教諭の的確な指示が出される。それと間髪入れずに専用機持ちのIS、モノレールに備えられている専用回線を通じて音声メッセージが伝えられた。

 

「このモノレールは亡国機業がジャック、および爆弾を仕掛けさせてもらった! 用件はただひとつ、織斑一夏の白式を差し出せ!」

 

衝撃の原因を知るべく窓の外を見ると、

かつて文化祭の時に対峙した紫紺の蝶(サイレントゼフィルス)赤紫の土蜘蛛(アラクネ)がモノレールを挟みこちらを見ていた。

 

 

 

 

「馬鹿な、サイレント・ゼフィルスだと? それにあれはアラクネ……くそっ、専用機持ち全員に告ぐ! ISを展開し、やつらの足止めをしろ! 絶対に他の生徒に被害がでないようにするんだ! 更識 簪、お前は仕掛けられた爆弾の解除をしてもらう。我々教師陣と一緒に爆弾を探すぞ!」

 

「「「了解!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




レイズコア:白騎士事件の後、刀魔の父親が独自に開発したISと似て非なるもの。


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#3

やっぱり乱音には勝てなかったよ………(ビクンビクン)


更識 簪除く1年生専用機持ちが全員ISを纏いモノレールの天井から出てくる。

 

すでに日は沈みかけ、空は紅く染まっている。それに照らされ、6機と2機は対峙していた。先に言葉を発したのはオータムだった。

 

「さぁて、織斑 一夏ぁ! この前の恨みは晴らさせてもらうぜ!」

 

恐らくオータムは学園祭での一件を根に持っているらしい(一夏に非があるかは別だが)。

 

「もういいだろう!? なんでそこまで俺に固執するんだ! もう諦めて…………」

 

「てめぇが無駄な抵抗したせいで作戦がうまく進まなかったんだよ、おとなしくアラクネの餌食になりな!」

 

白式から警告アラートが発される。もちろん敵意を表しているのはオータムだけではない、隣にいる織斑 マドカも同じだ。

 

「織斑一夏。私は、私であるがためにお前を殺す! サイレント・ゼフィルス、いや………『黒騎士』! ゆくぞ!」

 

ゼフィルスの操縦者、マドカの掛け声と共に戦いの火蓋は切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ちろ!」

 

サイレント・ゼフィルスの銃BT武器、スターブレイカーが紫紺の光を放ち、白式を捉える。

 

「さすがに喰らわない!」

 

一夏も簡単に倒れるわけにはいかない。第二形態移行(セカンド・シフト)によって追加された武装エネルギーを無効化する盾………いわばビームシールドを構え対策する。もちろん白式にダメージは入らなかった。

 

「こんどはこちらからですわ、ブルーティアーズ!」

 

間髪いれずセシリアのスターライトMk-Ⅲの援護射撃、ついで波状ビット攻撃を挟む。しかし、それは予想されていたかのようにサイレント・ゼフィルスは攻撃を躱す。

そのままゼフィルスのビットによる反撃がセシリアを襲う。すんでのところでその攻撃は白式のシールドとシャルロットのシールドによって防いでいる。

 

「落とす!」

「うりゃあああ!」

 

ラウラのレールカノン、鈴の双天牙月による支援攻撃もどうということなく避ける。

 

「一夏、シャルロット、こいつを受けとれ!」

 

箒の紅椿のワンオフアビリティー『絢爛舞踏』によって白式、リヴァイヴのエネルギーが回復されていく。

お互いに均衡状態だが、一夏たちの方が有利である。6種類の機体で適切な役割分担、エネルギーの無限生成。長期戦に持ち込んでしまえば決着が着く。

 

…………しかし、あくまでも長期戦に持ち込めば、今の状況のままであればの話だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと別の方向から誰か女性の声が聞こえる。

 

「あら、愉しいことしてるじゃない? オータム、それに織斑一夏………私も混ぜなさい?」

 

夕焼けに溶け込むような黄金、機体の全長とほぼ同等の大きさをした巨大なテール、両肩の炎の鞭……無慈悲な天使の如く黄金の夜明け(ゴールデン・ドーン)がそこに臨界していた。

 

しかし、亡国機業側にだけ変化が現れたわけではなかった。

 

「あらあら、あいにくとまだ一夏くんを亡き者にされるわけにはいかないのよね…………、亡国機業、ここで滅びなさい! 更識家十七代目党首、楯無の名のもとに!」

 

力強い声の主は生徒会長である更識楯無のものだ。

 

「楯無さん!? なんでここにいるんですか! もしかしてこっそり着いてきて……」

 

「織斑先生の指示よ。もしかしたら亡国機業が尻尾を出すかもしれないっていうからね。――あのゴールデン・ドーンは私が相手するわ。皆、サイレント・ゼフィルスとアラクネはよろしくね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

 

モノレールからかなり離れた鉄塔の上、刀魔は一人戦闘を傍観している。

 

「ガーベラ、起動」

 

掛け声とともに刀魔の体が機械に包まれる。全身装甲で白を基調としたトリコロールカラー、頭部のV字アンテナ。背中の大きな羽、少し丸みを帯びつつもそのシルエットは見る者を魅了させる。だが、それよりも目を引くのは手に持った自分の全長の数倍もある銃………全長15メートルのメガ・ビーム・ランチャーである。

 

「…………予想通り、始まったな。誤算と言えば、あの場所に居るだけの機体が全部出てないっていうところか……仕方ない」

 

少し飛んで高層ビルの屋上に移り、ランチャーを構える。スコープに移るのは、レールカノンを構えているシュヴァルツィア・レーゲン、ラウラ。

 

 

「さて、復讐劇の幕開けといこうか」

 

 

 

 




MAX NAMAKEMONOさん、感想ありがとうございます。


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#4

アキブレ、星4・5を選ばせてくれるってどういうことなんでしょうね、ありがたいんですけど。かくいう私も星5:乱音、星4:のほほんさん、と万全の体制です。

Q,ん? (鈴ちゃんが)はいってないやん。どゆこと?
A,……ちゃうんや、許してください、なんでもしますから(なんでもするとは言ってない)




京都タワーの上、ゴールデン・ドーンとミステリアス・レイディは対峙していた。

 

「亡国機業、何が目的?」

 

「ふふっ、それを教えたとして、あなたには関係ないわ。そして、あなたでは止めることすらできない。―――無能なままで、いなさい。」

 

その言葉は、決して狙って放たれたわけではなかった。その場面にいたわけでもない、ただこの場面でスコールが思いついたスコールの言葉。

しかしそれは楯無が自らの妹との溝を深めてしまった台詞、楯無が冷静さを欠くには十分すぎるトリガーだった。

 

「はぁぁぁっ!」

 

ランスを前に突き出し距離を積める。それに合わせてスコールも大きな尻尾を前に構える。

 

擦れ会う金属音と火花が生まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

 

 

大文字山付近。

 

「はぁ………はぁ……………」

 

織斑一夏は肩を揺らしながら呼吸をする。その前ではサイレント・ゼフィルスが一夏を見下げている。

 

今も他の専用機持ちはオータムのアラクネと戦っている。混戦中にうまく誘導され、一夏とマドカがサシで戦う状況に持ち込まれていた。やはり経験の差というべきだろうか。

 

「(考えろ、この場面でできる最善策を!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

はじめこそラウラを狙っていた刀魔だったが、視界に移った一夏とマドカのタイマンを見て僅かに顔をゆがめる。

 

「………チッ、これはまずいか。仕方ない、はじめはシュヴァルツェア・レーゲンを壊す予定だったけど、織斑一夏に死なれちゃあ困るんだよな……!」

 

刀魔はメガ・ビーム・ランチャーをレーゲンからサイレント・ゼフィルスに構え直す。

 

「…………3……………2……………1……墜ちろ!」

 

収束された高エネルギービームが一直線にサイレント・ゼフィルスへと飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「興醒めだな。失せろ、織斑一夏。私が私であるために!」

 

大型ブレードが降り下ろされる。

 

「(しまった、避けれない――――)」

 

あまり意味はないと分かっているが、雪片を前に出し防御の構えをとる

しかし、その斬撃は届かなかった。代わりにけたましい爆発音とともに何かがマドカに直撃する瞬間を見た。

 

「グワァァァァァア!」

 

たったの一撃でサイレント・ゼフィルスの展開がとけ、マドカが地上へと落ちていく姿が見える。

 

「なっ、なんで解除されて、…………っ危ない!」

 

先ほどまで戦っていた相手とはいえ、急いでマドカが地面に落ちる前に拾う一夏。反応がないあたりどうやら気絶しているようだ。

 

「(まぁ、気絶してるほうが、変に抵抗されずにすむな。………ん? ペンダント?)」

 

マドカの胸にはロケットペンダントがかかっていた。中に写真をいれることのできるタイプで、先ほどの拍子かは知らないが開いていた。

そして、織斑一夏は知るべきではない――――いや、知らなければならないことを知る。

 

「な、なんで…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには自分の姉である織斑千冬とマドカのツーショット写真が埋め込まれていた。

 

 

 

 

 

 




Rainforestさん、感想ありがとうございます。


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#5

最近はTRPGにはまっている海童です。(身内卓用の)対立シナリオ書くの楽しいです。


「ふぅ、まずは一機。とは言っても亡国機業(あっち)は落とす気はなかったんだが、仕方ないか」

 

今刀魔の使ったメガ・ビーム・ランチャーにはかなりの癖がある。まずチャージ速度がかなり遅い。フルチャージするのには3分ほど。これでも開発当初よりは短時間に押さえられているらしい。その上に次弾発射までのクールダウンの時間はおよそ1時間。実戦においてはほとんど使いきりのようなものだ。

その代わりにISのシールドエネルギーを完全に削り取る、機体ダメージも限りなく大きい、最悪の場合量産機だと操縦者にも影響が出るかもしれないほどの威力を持つ。

 

刀魔はメガ・ビーム・ランチャーを背中に背負い、屋上から飛び降り、空中でブースターをかけ、浮かび上がる。

 

「少し順序は狂ったが、次はシュヴァルツェア・レーゲンだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刀魔とガーベラは、飢えていた。ISの滅び声に。

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

 

 

すこしばかり時間は戻って京都タワー。

 

「ふふっ、ずいぶんと頑張っているようだけど、そろそろ限界じゃないかしら? 更識楯無」

 

「まだ貴女ごときに心配されるほどじゃないわ」

 

軽口を叩く余裕はあるが、楯無は機体の状態からして満身創痍である。折れたランス、アクアクリスタルもあとひとつと言う状況だ。一方のスコールは機体の所々に傷はついているもののまだまだ戦うことができる状態である。

 

「…………見ていてうざったらしいわね。何がそこまであなたを動かすのかしら?」

 

「……私は生徒会長なのよ? ここで引けば皆に被害が届く。それじゃあトップとして失格なのよね」

 

ボロボロになりながらもランスを構え直す。

 

「ならばここで散りなさい?」

 

 

さらに威圧をかけ、かすかな希望をつぶしにかかるスコール。

しかし、その緊張した場面はすぐに吹き飛ぶこととなった。

 

爆発音。

 

 

 

もちろん二人ともそちらの方を見る。すると、サイレント・ゼフィルスを纏っていたはずのマドカが生身で地面に落ちていく姿が見えた。

 

「M!? それにこの連絡は……更識楯無、この勝負の決着は、いずれ」

 

それだけの言葉を残してゴールデン・ドーンは一夏とマドカのところへと向かった。その場に残された楯無

 

「…………っ、………助かった? はっ、織斑先生に連絡を――――」

 

 

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

 

 

「はっはっは! 流石に専用機5体じゃあ部が悪いと思ったが、案外なんとかなるもんだな! 所詮はただの青いガキってところか!」

 

オータムの目の前にはボロボロになった紅椿:篠ノ之 箒と小破状態のシュヴァルツェア・レーゲン:ラウラ・ボーデヴィッヒが並んでいた。

他の三人はISこそ解除されてないものの、這いつくばっている。見る限り戦い慣れしていたラウラと機体性能に助けられた箒が残った、というところか。

 

「くそっ、ここまで強いとは………箒、戦えるか?」

 

「不甲斐ないが、限界に近い……だが、恐らくあと少しで相手のシールドエネルギーも切れるはずだ。」

 

雨月、空裂を構える。幸いにも紅椿の場合は実体ダメージのみで、エネルギー面からすると無限に戦うことはできる。

 

「とっとと諦めちまえばいいんだよ!」

 

アラクネがレールガンを構える。ラウラも負けじとプラズマ手刀で体勢を整える。しかし、そんなオータムにプライベートチャンネルで連絡が入る。

 

『オータム、急いで撤退するわよ! Mが少しやりすぎたわ』

 

「くっ…………仕方ねぇ、今日のところは引いてやる!」

 

悔しそうにしながらそれだけ言い放ち、オータムは、そして亡国機業は去っていった。

 

 

 

 

「お、終わった……?」

 

『専用機持ち全員無事か? こちらは無事に爆弾は解除できた。我々も学園へ戻るぞ。』

 

「「「了解です」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モノレール内。

 

「どうやら全員命に別状はなさそうだな。………おい、織斑はどうした?」

 

この場には一夏以外の全員が揃っている。

意を決したかのように箒、ラウラが口を開く。

 

「それが、全く見当たりませんでした。それだけならまだしも、ISのほうもコアネットワークから切断しているため探知できません」

 

「おそらく乱戦にもつれ込んだ際に嫁だけが誘導されてしまったのだと思います、申し訳ありません」

 

それに続いて楯無が口を開く。

 

「それと、織斑先生。サイレント・ゼフィルスが何者かの一撃で撃破されました。」

 

その言葉で場の空気が明らかに変わった。それも当然だろう。現存していてかつデータ公開されているISスペックではシールドエネルギーを一撃で削りきれるものはない。

 

織斑千冬は一瞬不安げな顔をし、しかしすぐにするとい目付きに戻り、

 

「……すでに確認している。その事については学園についてから話そう。まずは織斑の回収が先だ。………あのバカ、迷惑をかけおってからに………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この戦い、まだ、終わる気配はない――――



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#6

ちょくちょく話が前作より変わってるけど、文章力は変わらない(もしかしたらマシになった?)、そんな作品。


とりあえずISを解除してマドカを安静な状態にする。そして、一夏の視線は例の写真にくぎ付けだった。

 

「………な、なんでこんな写真が……?」

 

織斑一夏は困惑していた。自分と同じ姓を名乗り、姉と瓜二つの顔を持つ少女、マドカの持っていたペンダント。そこにあったのは千冬姉とマドカのツーショット写真。

 

「(やっぱり、俺には千冬姉以外にも家族がいたのか……?)」

 

 

 

 

 

 

 

「織斑一夏」

 

はっとしたように声のした方を振り向く。そこにはゴールデン・ドーンとアラクネがいた。しかし、目の前でISの解除をしているのを見るともう敵意はなさそうだ。

 

「スコールさん、それにオータム、さん………」

 

「……Mを、マドカを助けてくれて、ありがとう。元はといえば、この子がちょっとやりすぎただけなんだけどね」

 

スコールが深く頭を下げる。

 

「そんな、俺は別に―――、(俺は少なくともマドカを倒そうとしていたのに)」

 

その一瞬の表情の陰りをスコールは見逃さなかった。

 

「あなたの考えていることはわかるわ。でもね、結果として貴方はマドカを助けた。それだけで良いじゃない。だからといってはなんだけど、少しだけヒントをあげるわ」

 

スコールが一夏に近づく。敵とはいえ、スコールも色香を持った女性。内心バクバクしながらも悟られないように一夏は耳を傾ける。

 

「……………貴方は、だあれ?」

 

とうていヒントとは言えないだろう、意味深な言葉をかけた後、スコールは離れる。

 

「それじゃあ、また会える日を楽しみにしてるわ。またね、巻紙 一夏君。」

 

「―――――えっ?」

 

一夏は急いで質問しようとしたが、時すでに遅く、亡国機業の面々は去ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(訳が、わからない、なんで、なんで、――――巻紙? どこかで聞いたような―――)」

 

再び一夏の頭にはノイズが纏わりつく。まるでその名前は、昔から呼ばれていたような―――

 

 

 

 

「どうしたんだ? ずいぶんと顔色が悪いぞ? 織斑一夏」

 

そこには、全身が機械の誰かがいた。頭部にV字型のアンテナ、トリコロールの装甲、背中に背負った折り畳まれてる大きな銃。

 

「だ、誰だ?」

 

生身だからどうしようもないが、とりあえず身構える。

 

「――――安心しろ、刀魔……刀魔・R・シルヴィエだ。いや、名前を聞いたほうが、安心できないか」

 

「と、刀魔か……ごめん。俺は、お前の仲間になる気はない」

 

「ふっ、ならば聞こう。それは、その答えは本当のお前の意思か?」

 

織斑一夏は、心を握られたような感覚を覚えた。そして、少しの間だが黙ってしまった。そしてそれは刀魔の問いを間接的に答えたことになる。

 

「………だろうな。お前の本質は、今のお前じゃない。さっきのサイレント・ゼフィルスとの戦いを見させてもらった。途中から随分と戦い方が変わっていたな。まるでそう、何かを思い出すように」

 

事実、一夏とマドカの戦いはそうであった。序盤は明らかに一夏が押されていた。しかし、途中から一夏の動きが変わり、ビット攻撃からの近接のコンビネーション攻撃に対処できていたのだ。………もっとも、マドカの実力には最後まで届かなかったが。

 

「これは俺の仮説だが、今のお前は本当のお前じゃない。――――ん、来たか」

 

刀魔は手に持っていた背中のよりは小さい銃を構える。その方向には簪の打鉄弐式とラウラのシュヴァルツェア・レーゲンがいた。

 

「簪! それにラウラ!」

 

「一夏、大丈夫?」

 

「嫁よ、無事か! ――――!?」

 

ラウラは急上昇した。一夏も一瞬はなぜそうしたのかわからなかったが、ラウラがさっきまでいた場所をビームが通りすぎるのを見ると納得した。

 

「刀魔、何をしてるんだ!? ラウラは俺の仲間だ、攻撃しないでくれ!」

 

「………何を勘違いしている? 俺は『シュヴァルツェア・レーゲン』を攻撃しただけで『ラウラ』を攻撃してはいない」

 

「迷ってられない………春雷、打て!」

 

打鉄弐式のマルチロックオンミサイル、春雷が放たれる。刀魔はビームライフルを構え直し、一個一個確実に撃ち落としていく。

 

「さっきはよくも!」

 

春雷に対応している隙を見てラウラがプラズマ手刀を展開し近づく。刀魔はそれを見て、バックステップをし、ビーム状の剣を取り出した。そしてすぐ前進、つばぜり合いの状態になった。

 

「ビーム系統のソードだと!? それにさっきからスキャンをかけているのにISの情報がでない………、貴様何者だ、そしてそのISはなんだ!?」

 

「(あのビームサーベル、敵ながらかっこいい………)」

 

刀魔はもう一方の手で別のビームサーベルを取りだし、ラウラをはねかえす。

 

「二刀か、私も本気で行かせてもらおう」

 

刀魔が二刀に持ち替えたのを見てラウラももう片側のプラズマ手刀を展開する。

先に動いたのはラウラだった。まだお互いの距離が近いため小回りの利くプラズマ手刀のほうが有利、素早く胴部分を狙う。が、刀魔は体を無理やりひねり、掠れる程度に被害を抑える。そのまま避けるだけでなくビームサーベルを下から振り上げ、レールカノンの先端を切り落とす。

ラウラも一瞬焦りの色を見せるがわずかな隙を狙い蹴りを放つ。今度は命中し、刀魔とラウラの距離が開く。

 

「はあっ……!」

 

ラウラの頭上から薙刀を構えた簪の攻撃が降りかかる。その刃は正確に左肩をとらえ、深い傷を入れる。

 

「ぐっ、―――うらぁあ!」

 

「きゃぁっ……」

 

ビームサーベルの刀身を最大まで伸ばして無理やり攻撃を当てる。

 

「ラウラ、簪! 一旦攻撃は止めてくれ! 刀魔、お前も銃を下げてくれ!」

 

白式を展開した一夏がどうにか間に入り込む。

それを見て刀魔はビームサーベルをしまい3人から大きく離れた。

 

「……機体については話すわけにはいかない。名前はそうだな、刀魔とだけ名乗っておこう」

 

「男……?」

 

「――――今日は引いてやる。だが、織斑一夏。これだけは言わせてもらおう、…………今のままでは、俺とお前は剣を交えることになる。次に会うときまでに強くなるか、自分を見つけろ」

 

そう言うと、刀魔はブースターを吹かし飛んでいった。

 

 

 



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#7

オフィスビルの地下、刀魔のすんでいるその一室で刀魔は倒れこんでいた。

 

「ガハッ………グ……ゲホッゲホッ…………はぁ、まだ、このぐらいなら………」

 

レイズコアで作られたパワードスーツにはすこしばかりの欠点がある。一番の特徴としては、ISではない、単なるパワードスーツだということだ。つまるところ、空中移動でのGをダイレクトに受ける、ビーム兵器・ミサイル・近接格闘すべてのダメージをダイレクトに受けるのだ。現に左肩には薄く切り傷が残り、服を赤く染めている。どうやら装甲をわずかだが貫通したようだ。

 

それだけでなく、一時的に反射速度をあげることはできるが、それは使用者の脳に大きな負担をかけるため、使いすぎると廃人同然となってしまうのだ。

先の戦いでも、春雷に対応するためにリミッターを少し解除したため、今の咳き込む状態になっている。

 

「はぁ、はぁ……………ふぅ、とりあえず1週間は休まないと。次の目標は―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イギリス、潰させてもらうぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

IS学園司令室。そこに専用機持ち全員が集まっていた。

 

「集まってもらったのは他でもない、亡国機業と、京都での戦闘結果、未確認機の報告だ。山田先生」

 

「はい。亡国機業が京都に拠点を持っている、との情報でしたが、更識楯無さん含む教師陣の捜索の結果、拠点は確認できましたが、完全に放棄した模様です。恐らく拠点は他にも複数あると思われます。そして、皆さんのISですが、打鉄弐式は問題ありませんが、シュヴァルツェア・レーゲン、白式がダメージレベルB、それ以外はCと判断されましたので、現在修復中です。そのため現段階でIS学園に存在する戦闘可能ISは打鉄弐式と訓練機のみです」

 

この言葉に、場は凍りついた。簡単に言えば、今ここを攻められると陥落することはほぼ確定しているということだ。

 

「そして織斑君たちが交戦した未確認機ですが、完全にデータがありません。登録されているコアとは別の存在です」

 

一夏と箒は千冬の方を見る。

 

「……あいつに聞いてみたが、『あんなのを作った覚えはない』そうだ。恐らく完全に自作だろう」

 

「織斑先生、しかしそれではあのコアはどこから入手したのでしょうか」

 

セシリアがもっともな質問をする。

 

「…………亡国機業が盗んだ、と考えていたのだが、あれのパイロットがサイレント・ゼフィルスを攻撃したとなると最早予想がつかない。とにかく、現状はあの未確認機に注意するよう! そしてこの事は機密情報だということを忘れず、解散!」

 

 

 

 

 

 

 

 

専用機持ち、山田先生が部屋を出て二人だけになる。口を開いたのは一夏だった。

 

「………なぁ、千冬姉」

 

「織斑先生と呼べ」

 

「…………やっぱり、俺たち以外にも兄妹はいるんじゃ「一夏」…っ」

 

「私たち以外に姉弟はいない」

 

「千冬姉!」

 

「……部屋に帰れ、今日はもう遅い」

 

それだけいって彼女は部屋をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでだよ、千冬姉…………」

 

一夏の声は悲しくこだました。

 




223系新快速さん、感想ありがとうございます。


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#8

修学旅行での一件から1週間、特になにも起こらなかった。しかし、あの日以来、一夏の頭のなかはいろんなことでぐちゃぐちゃになって、授業中も上の空である。

 

『またね、巻紙一夏君』

 

『その答えはお前の意思か?』

 

『今のお前はお前じゃない』

 

授業中であるというのに頭の中では全く別のことがこびり付くように残る。

 

パシーン

 

気がつけば一夏は出席簿で殴られていた。

 

「私の授業で他所事とは、いい度胸をしてるじゃないか? 織斑」

 

「す、すいません…………」

 

クスクスと笑い声が聞こえる。しかし、注意されたのも関係なく一夏には笑い声どころか、千冬の言葉すら頭に入らなかった。

 

「さて、次のところは――――」

 

教室の扉が開く。IS学園の教師の一人、榊原菜月が教室に入ってくる。

 

「榊原先生、まだ授業中なんだが……」

 

「織斑先生、それとオルコットさんに用がある、という人が来ました。自らをチェルシー・ブランケット、と名乗っています」

 

「チェルシー!? チェルシーがこちらにいらして!?」

 

その名を聞いたセシリアがすぐさま反応する。

 

「……話を聞こう、以降の授業は山田先生に変わってもらう。オルコットは私についてこい、――――それと、専用機持ちもだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園保健室。

 

「チェルシー! 大丈夫ですの!?」

 

駆け足でチェルシーの元に駆け寄るセシリア。

 

「お嬢様、私は問題ありません。少しばかり、大したことのない打撲をしただけです」

 

そこにいたのはメイド服を着た女性だ。確かに右腕のところに湿布が張ってあるあたり、目立ったケガはそこだけのようだ。しかし

 

「織斑先生、これを」

 

榊原は千冬に一つの端末を渡す。そこにはISの情報が記されていた。ダイヴ・トゥ・ブルー、イギリスの開発した第3世代にしてブルー・ティアーズ3号機。

しかし、そこにある情報はひどいものだった。腕部・脚部に大きな外傷、ブースターユニットの損傷、武装の完全破壊…ダメージレベルはC、いや、C以上かもしれない。

 

あまりの事態に千冬も何も口を出せない。代わりに話しだしたのはチェルシーだった。

 

「……申し訳ありません、お嬢様。――――イギリスが、墜ちました」

 

「――――――え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日のイギリス時間午前1時頃、突然IS開発の研究室が襲われました。イギリス全勢力をあげて迎撃したのですが、無様にも全滅、しかも………たった一人に」

 

一夏とラウラ、簪、そして千冬はあの機体を思い出した。

 

「――――被害はどれ程でして?」

 

「不思議なことに死者は零人、怪我人も軽い打撲や擦り傷程度です。ですが、ISコアはもちろん、運用データの入ったコンピュータはすべて破壊されました。現在イギリスが所有しているコアは私の専用機とお嬢様の二個のみです。申し訳ありません、私たちの力不足で――」

 

「そんなことはありませんわ」

 

そっとチェルシーを抱きしめるセシリア。その目はわずかだが潤んでいる。

 

「誰も命を落としていないのでしょう? 私がいない間、よく耐えてくれましたわ。むしろ謝るのは私のほうですわ、一大事に駆けつけることもできずに……」

 

「お嬢様……」

 

このとき、一夏はある言葉を思い出した。

 

『………何を勘違いしている? 俺は『シュヴァルツェア・レーゲン』を攻撃しただけで『ラウラ』を攻撃してはいない』

 

「(まさか、本当にISだけを狙っているっていうのか……)」

 

 

 

少し落ち着いたのか、セシリアとチェルシーは手は握られたままだが離れる。それを見てようやく千冬も口を開いた。

 

「わかった。チェルシー・ブランケット、しばらくこのIS学園に残ることを許可する。…………お前たち、次に襲撃を受けた情報が入り次第、お前たちも戦線に出てもらう。理由としては、お前たちの機体性能のほうが現地にあるISよりも高い。まぁドイツのハーゼ隊なら問題ないかもしれんが、他の国に関してはいくら国家代表がいたとしても機体性能で押し負ける可能性がある」

 

「織斑先生、でも私たちもそこまで戦闘経験があるわけではありません。他に対処法があるのでは……」

 

シャルロットが提案する。

 

「……確かに我々教師陣がでたほうがいいかもしれん。しかし、そうなるとIS学園の防御が弱くなる。IS学園にはISに関するデータのほぼすべてが残されている。お前たちにそれが守れるのならいい。

―――敵が一人でイギリスを無力にできる実力を持っていることが腹立たしい……」

 

その言葉を聞いて、誰も反論することはできなかった。

 

 

 

 

 

 

セシリアとチェルシー以外が保健室を離れたころ、チェルシーは話す。

 

「お嬢様、もしよければ聞いていただきたいことがあります。……本当の、イギリスでの事件を」

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

時は遡ってイギリス時間午前1時。

イギリス国IS開発研究所が見えるビルの上、そこにガーベラは立っていた。すでにメガ・ビーム・ランチャーの銃口はその建物の方を狙っている。

 

「…………まさか、あの辺りに見張りで生身の人間なんていないだろうな………当たってくれるなよ」

 

ランチャーから高密度のビーム粒子が放たれ、研究所入り口に大きな風穴を開けた。すぐさま刀魔が高性能スコープで確認する。

 

「よし、血痕はない。――――狩りの時間だ!」

 

 

 

 

 

 



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#9

『緊急事態、緊急事態、ただちに研究員は避難、戦闘班は対処お願いします。』

 

研究所内では謎の攻撃に戸惑い、多くの人間が入り乱れる。

 

「誰の攻撃だ!? 逃げられる前に急いで索敵しろ!」

 

「怪我人はいないな? ISを装備していない人間は急いで避難しろ、そうでないといずれここは戦地になるぞ!」

 

破壊された入口からIS、ラファール・リヴァイヴが10機、そして生身の人間が蜘蛛の子を散らすように出てくる。

研究所のほうは入口以外はまだ被害はないため、逃げるのなら今のうちだろう。そして、あらかたIS乗り以外が避難できたであろうタイミングで、それは現れた。

 

 

 

 

 

 

 

「慌てなくても、逃げたりなんかしない…………IS全部ぶっ壊すまではな!」

 

全身装甲の白と青ベースの機体、ガーベラ:刀魔だった。

 

「誰! あなたは何をしているの!? こんなことをして許されると思っているの!?」

 

「許してもらうつもりなんてはなから無いさ。………むしろ謝ってもらいたいくらいだ。『ISを利用して女尊男卑の世界を作り上げてごめんなさい』ってな!」

 

「きゃあっ!?」

 

ガーベラの手に握られたビームライフルは正確に一機のISを撃ち抜き、シールドエネルギーを削った。その攻撃はこれから始まる戦いの引き金となる。

 

 

 

 

 

「――――総員、目標はあのフルスキンよ、撃て!」

 

10体のラファールからマシンガンが放たれる。

当然刀魔はそれぞれを回避していく。が、連射攻撃を10方向から撃たれもすればすべてを避けることはできない

 

「ぐうっ!」

 

苦しい声が聞こえる。それもそうだろう、衝撃が肉体に届いているのだから。

 

「――――――墜ちろ」

 

威圧のある言葉とともに目の部分が怪しく光る。瞬間、ガーベラの姿が消えた。

 

「なっ、何処に」

「――――こっちだ。」

 

一機の後ろに回り込んでいる。そのまま手に持っていたビームサーベルで切り裂いた。攻撃を受けたISが解除される。

 

「嘘だ! そんな、一撃でだなんて――――」

 

それに驚いてしまったが最後、話菅な隙を見せてしまった残り9機のラファールも二刀のビームサーベルによって葬られた。そして、刀魔はISが解除されて倒れている女性の腕についているリングをすべて壊した。

 

「ゲホッ、ガハッ………これでイギリスは終わったか?」

 

「そこまでです」

 

刀魔の後ろに一人の女性がレイピアを構えていた。

 

「………まだいたか、墜ちろ!」

 

鋭い横凪ぎのサーベルが振られる。しかし、その女性はそれを避けた。

 

「………やるな、何者だ」

 

「私は只のメイドです。まだ、お嬢様が留守のうちに滅ぼさせるわけにはいきません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

「でやぁぁぁっ!」

 

ビームサーベルとレイピアがぶつかり合う。刀魔の左手にもう一本のサーベルが握られ、チェルシーの胴を狙うが、それを予想していたかのようにバックステップを踏み避け

 

 

 

 

突如、空気に沈み消えた。

 

 

 

「なにっ!?」

 

チェルシーの乗るダイヴ・トゥ・ブルーの単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)空間潜行(イン・ザ・ブルー)。それによって完全に視界から消えているのだ。

当然刀魔はすぐには対応できず、辺りをとりあえず見渡す。が、視界どころか簡易式レーダーにも反応しない。

 

「これはきついな……」

 

刀魔のつぶやきもお構いなく、背後に突如チェルシーの腕が現れ空中魚雷を放つ。

 

「ぐはっ……」

 

気づくはずもなく、まともに攻撃を喰らった刀魔は悲鳴を漏らす。後ろを確認するが、ちょうど腕が消えていくのが見えたところで何もできない。これにはお手上げ状態である。

チェルシーはお構いなく魚雷攻撃を続け、ついに刀魔の右腕の装甲が完全にはがれ、腕が完全に見える。

 

「なっ!?」

 

ダメージレベルがCにもなればその箇所が剥がれるのは不自然なことではない。が、彼女が驚いたのはそこではなく、剥がれて見えた刀魔の腕だ。4・5個の切り傷、もはや全体が変色しているほど無数の青あざ。到底普通にしていれば、ISを纏っていれば付くはずのない傷。

慌てて空間潜行、武装を解除し刀魔に近づく。さらにこの時チェルシーはあることに気付く。

 

「あなたのそれ、ISではありませんね?」

 

「……当然だ、男がISなんて使えるわけないだろうに」

 

普通ISなら絶対防御が働くため、こんな傷がつくのならとっくに解除されているはずである。

 

「どうしてそこまでしてこの施設を? 私にはいまだ理解ができませんが」

 

だが、その質問に答えは返ってこなかった。いや、返せなかった。

 

「――――!? おいお前、直ぐに離れろ!」

『上空より巨大な熱源反応接近』

 

刀魔の声かけと同時にISのセンサーが反応する。

二人が飛び離れた場所に、巨大なレーザー攻撃が降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 




この次から前作と違う流れになるため連続投稿がここで止まります(努力すればいいのに)


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#10

あけましておめでとうございます
君の名は をみた衝動で書き終えたこの回、さらに謎の追加タグ、この作品はどうなるのか……


「こんな隠し技があるのか……という感じではなさそうだな」

 

「間違っていないけど間違っています。とはいえこうなっては別です―――あなた、もしよければ協力していただけますか?」

 

「随分な手のひら返しで、協力すると思うか? 慈悲だ、話だけ聞いてやる」

 

チェルシーもまさか話を聞いてもらえるとは思っていなかったのだろう、面食らった表情を見せるが、すぐにまじめな顔に戻る。刀魔に話そうとするが、しかしそれは出来なかった。

―――第三者によって。

 

「はろはろ~、そこから先はこの私にお任せなのだ!」

 

「「篠ノ之 束!?」」

 

いい大人というのにうさ耳+不思議の国のアリスに出てきそうな歳不相応な格好をしているこの女性こそ、ISの生みの親、篠ノ之 束である。

 

「ところで君たち、この辺にカメラとか盗聴器とかってあるかな?」

 

「……なるほどな。無いぞ、束」

 

刀魔からのその言葉を聞いたとたんに、束は表情を変えた。それは、先ほどまでの何を考えているかわからない笑顔ではない、真剣な顔。当然世間一般の人がこの篠ノ之 束を見れば、百人中百人が誰だと尋ねるだろう。しかし、質問に答えた刀魔はおろかチェルシーも特別驚いた態度はとらなかった。

 

「今の攻撃はイギリスとアメリカが極秘裏に開発していた攻撃衛星、ううん、そこにいるチェルシーの妹、エクシアと融合したISなの。とーくん(・・・・)あれもお願いできるかな」

 

「あれがISというのなら、俺は壊すだけだ」

 

きっぱりと壊すと言い放った刀魔に対して、束は頬をかきながら申し訳なさそうにお願いをする。

 

「あーっと、出来たら今回はエクシアちゃんの救出をお願いしたいんだけど」

 

「それは俺の機体を知っていてのことなのか、それとも俺が男という前提条件を忘れているのか?」

 

「ん、そのことならあれをみて」

 

束が指をさすほう、小さな丘のほうから二つの影が見える。それはこちらに向かっているようで、しばらくすればその影は鮮明に見えた。一つは卵の形をした丸型ポッド、それなりの大きさでピンポイントに説明すれば、ISが一機入っていそうなサイズである。もう一つ、そのポッドを持っているのは紫紺のボディに流麗な羽、サイレント・ゼフィルスであった。

ISのデザイン上目元を隠している姿になっているマドカは、刀魔の姿を確認して少しおびえたようだが、そのまま刀魔と束、チェルシーの前に降りる。

ポッドが地についたのを確認し、束は表面についているボタンを押す。

ポッドは開かれ、そこにあらわれたのはやはりISだった。緑色の全身装甲、武装は全くなく、目の部分にある青く輝くパネルが刀魔を見つめる。

 

「―――ジェガン、そう名付けてる。別に言葉自体に意味はないんだけどね」

 

「これを、俺が使えるのか? いや、使えたところで俺がISを嫌うのは知っているだろう」

 

「これはISじゃないよ。システム自体はレイズコアのものを使っているし、今使っているそれに宇宙対応させただけのものだから」

 

心底いやそうな顔をしていたが、束の説明もあってかしぶしぶガーベラを解除、ジェガンに乗り換える。数回手を閉じては開き、軽くジャンプして動作を確かめる刀魔。

ある程度準備は出来たのか、束たちのほうを確認する。そこにはガーベラを纏い天に向けてメガ・ビーム・ランチャーを構えた束、BT粒子加速器「アフタヌーン・ブルー」に接続したチェルシー、マドカがすでに準備していた。

 

「私たちのほうは準備できました、あとは刀魔様のみです。」

 

「ふん、この件が終わればお前にはいくつか話さなければならんからな、覚えていろ」

 

「とーくん、あとはよろしくね」

 

刀魔:ジェガンはガーベラからビームサーベルを回収すると、その切っ先を宇宙へとむけた。

 

 

 

 

 

 

「ISを殺すのは、俺の仕事だ」

 

 



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#11

今回の話で訳の分からない点が生まれますが、いずれ判明するので問題ないです


辺りは既に一面の闇、遠くに見える月の光とブースターの炎がチラチラと輝く。不純物も無い真空の世界で刀魔は一人正面の衛星を見つめていた。

時は数時間前にさかのぼる。

 

****

 

 

「結局俺はどうすればいいんだ?」

 

「まず私たちがこのアフタヌーン・ブルーで衛星を攻撃して、壁に穴をあける。そこからとーくんは侵入して、内部のコントロールルームにある機械を止めてきて。それと、そこにエクシアちゃんもいるからこのポッドで回収をお願いできる?」

 

「人使いの荒い……このジェガンは貰っていいんだな?」

 

ため息をつきながらも話を飲む当たり、刀魔は元はいい人なのだろう。

 

「装備はないけどいいの?」

 

「武器なら作るさ」

 

****

 

「我ながら少し人が良すぎたか……と、あれがエクスカリバーか」

 

大きな4枚の羽には太陽光パネルらしきもがあり、上部とでもいうべきなのか、そこには大型エネルギータンクが3つ、開くように取り付けられている。

何よりも目につくのは、地上に向けられた一本のライフル口。先端に進むにつれそれは鋭利にとがり、それはさながら地球を貫く槍である。

 

「目標手前についた、撃て」

 

『わかったわ。全員、エネルギー充填! 3……2……1……シュート!』

 

通信で聞こえてくるカウントダウンに合わせて刀魔もビームサーベルを構える。

しばらくすると、刀魔の足元、地上から青い一筋の光が差し込む。光の奔流はただまっすぐに衛星に吸い込まれ、爆発を起こす。そこにはISが3機入り込めそうなサイズの穴が生まれ、すぐに刀魔も入り込んだ。

 

 

 

 

 

 

衛星内は部屋をいくつかのブロックに分け、円柱状のパイプ通路でつなげたような構造になっており、刀魔の突入した場所も含み外に面する場所はガラス張りになっている。今のところ他に誰かいるような気配はないが、攻撃衛星だからこそ内部の警備システムも存在するだろう。それを気付いているのか、隙一つ見せない。

侵入したところはちょうど部屋だったようで、間取りは広いが、大きな金属の箱が場所をとっている。

 

「まさかこれを破壊すれば何か作動するとかじゃないよな」

 

と言いながらもビームサーベルで次々とそれを切り捨てていく。滑らかに切断され、静かにずれていく金属製の箱はふわりと宙へ浮く。

 

「なるほど、まんまとはめられたな。このジェガン、ISか」

 

レイズコアを利用したパワードスーツは耐熱、耐衝撃はほどほどのうえ急激な気圧変動には対応していない。それは宇宙、深海での稼働を想定していない状態での開発ということである。だが、問題なく生体活動が行われている限り、これはISだと予想を立てても問題ないだろう。

もっとも、なぜ男である刀魔がISを使えているのかは謎だが、刀魔自身も今となってはどうでもいいのだろう。

 

なにせ、彼の目は今も殺意に満ち溢れているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

次々と部屋を移動しているが一向に目的の部屋にたどり着かない。加えて、防衛機構の一つも見つからない。そろそろ問題になってくるのはエクスカリバーの攻撃のクールダウン。あまり時間をかけると地上のほうにも被害が及ぶ。

 

「―――やっと見つかった。よし、ぶち壊す!」

 

今まで部屋と廊下をつなぐ扉は近づけば開く自動型だったのに対し、この扉だけはそばに電子ロック式の鍵がついている。時間がないことに加えまったく見つからない苛立ち、ISを壊すという信念もあり、刀魔は一寸の迷いなくビームサーベルで入口をくり抜く。

蹴破って突入した先は、これまでの部屋とはやはり違った。等間隔に建てられた天井までつながるガラス管には黄緑に発光する液体、中央部分にはひときわ大きなものが建てられている。その中央のガラス管には一人の少女が入っている、おそらく話にも出てきたエクシアだろう。

 

「よし、さっさとこいつで回収してエクスカリバーもスクラップにするか」

 

ポッドを床に置き、ガラス管に手をつけようとするが、それは一人の攻撃によって阻まれた。3個連続で放たれる火球、急いで後ろに飛びのき、直撃を免れる。すぐに飛んできた方向を見ると、一機のISとその搭乗者が刀魔をにらむ。そのシルエットはかなり特徴的で、両肩には犬の頭があしらわれている。

 

 

 

襲撃者は、ヘル・ハウンドver2.8:ダリル=ケイシーだった。

 

 

 

 

 



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#12

新規部分は書くのめんどいな……


多くのガラス管が立ち並ぶ異様な空間、2機のISがチェイスを続けている。次から次に火球を出しては投げつけるダリル、すんでのところでそれをかわし続ける刀魔。ガラス管を使ってうまく避けてはいるが、攻撃手段がビームサーベルしかないため、ずっと機会をうかがっているようだ。

 

「(そろそろ攻撃したいが、隙が無いな。そもそもこいつは例のリストに載っているISだから本来ここにはいないはず。さらに話す余地も無さそうなところから考えると……)」

 

思い切ったのか振り返り、反転。床を蹴りダリルへと接近していくが、当の本人は驚いた様子を見せない。

 

「あぁぁあ、邪魔、邪魔、邪魔なんだよぉお!」

 

――――もっともこの場合は、意思疎通すらままならない状態だが。

 

「(随分と精神状態が不安定だな。もとからこんな性格なのか、それとも何かがあったのか……)」

 

刀魔の脳裏には疑問が残るが、すぐに割り振り中心を狙い蹴りを浴びせようとする。が、蹴りが当たる直前にガーベラの脚部にひびが入る。一度も脚部にダメージは受けていないはずなのに、当然原因不明の損傷を受けることに驚き、蹴りの入りが弱くなる。

ダリルは叫びながらも刀魔の眼前に火球を生み出し即爆発、その反動で距離を置く。

 

「ぐっ、いよいよわかんねぇ……いや、今のは本当にISの攻撃か?」

 

データ上ではハウンドドッグは炎を操る、とまでしか表記されていない。しかし、ガーベラの損傷を見る限り、ヒートショックである。確かに現在は宇宙にいるがこの部屋には空気も存在するうえハウンドドッグの火球も存在できるから極低温の世界ではない。となると、火球によって温度が上がっている装甲を急激に冷やしたのは、

 

「搭乗者自身の能力っていうのか。そういう訳分からんのは管轄外だが―――邪魔をするのなら、消えてもらう。逃げるのも終わりだ」

 

手に持っているビームサーベルを握り直し、構える。

が、突如中央のエクシアが入っているガラス管がひときわ輝き、そこから緑色の粒子を放射状に噴出していく。それは逃げる隙を与えず二人を飲み込む。部屋一面を巻き込んだ光はしばらく残り、そして溶け込むように光は収まる。

光が晴れたころにはダリルはその場に倒れこんでいた。

 

「あっさりとした幕引きだが、まあいい」

 

ダリルに目もくれず中央まで歩いていく。改めて詳しく見ると、ガラス管内の少女は複数のコードでつながれ、やせ細った体がより一層弱弱しく見える。近くには液晶型のコントロールパネルがあり、どうやらエクシアのバイタル管理も自動で行われているらしい。画面を見る限り体調は問題なさそうだが、彼女はそれに反した見た目をしている。

刀魔は液晶パネルを触り、他の情報を探し始める。入口のロックといい、攻撃衛星であるという事実といい、この部屋にある情報も機密事項だと思われたが、パスワードがかけられていないためそこまでではないのだろう。

 

「(ISと人間の融合……これは、ISの破壊は無理そうだな。このシステムを破壊して、あとはこいつか)」

 

刀魔の見た先にはもう一人床に倒れ伏せている人物、そしてそれはISを纏っている。コールド・ブラッド、フォルテ。倒れた原因、この場所にいる理由こそ不明だが、おそらく彼女も回収対象に入ってくるのだろう。

刀魔はフォルテをいったん放置し手際よくパネルを操作、ガラス管を満たす液体は抜けていく。小気味良い空気音とともにガラスは下にさがり、エクシアはその姿を外に出した。

特に起きる気配もなく、寝息も聞こえるのを確認したため起きる前に救出用ポッドにその体を移す。

 

「(さて、そろそろイレギュラー二人を起こすとするか)おい起きろ」

 

強引にゆすって二人を起こそうとする。先に目覚めたのはダリルだった。

 

「ぐ……ぁあ、お前が何とかしてくれたのか、助かったよ。ところで顔を見せてくれると助かるんだが」

 

「……顔は見せんが、お前の協力者からの依頼だ。相方であっているんだったらそいつも連れて地球に帰れ。俺はもう一つ仕事が残っているんだ」

 

「あぁ、サンキューな」

 

ダリルはフォルテを起こし、コントロールルームから出ていく。二人の姿が見えなくなるのを見て、刀魔はビームサーベルでパネルを真っ二つにする。続けざまにあたりのガラス管も切り捨てていく。ポッドを抱え刀魔も脱出を試みるが、そう簡単にはいかないことを知らされる。

コントロールルームを出て直前の通路、壁や床から数基のタレットが損壊状態で点在している。壊したのはダリルだろうけれども、これでこの衛星内の防衛システムが作動しているのがわかった。

 

 

「これは、面倒だな」

 

 

 



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