終末なにしてますか?死にたくないですか?助けてもらっていいですか? (朝が嫌いな人間)
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原作前
いつも通りの朝/


初めまして、朝が嫌いな人間です。何分初心者なので、見苦しいところもあるかもしれませんが、大目に見てほしいです。


ゴーン、ゴーンという鐘の音で目が覚める。

「眠い………。」

 

朝起きようとすればするほど眠くなるのは何故だろう。きっと布団が悪いんだ、これが俺たちを誘惑するんだ。そんなバカなことを考えながら、布団でモゾモゾしている。ああ、でも早く起きないとうるさい姉さん達が起こしにきてしまう。仕方なく布団から出て、顔を洗いに行く。朝から元気に廊下を走り回っているチビたちを注意しながらかおを洗いに行く。顔を洗ってさっぱりと目が覚める・・・なんてわけもなく相変わらず眠い。このまま眠そうにしていると姉さんに怒られそうなので風に当たりに外に行く。そうして、しばらくしてから食堂に行く。

 

「こらー、食べながら歩かない!」

 

一番上の姉が朝から小さな妹たちと追いかけっこしているのを横目にしながら端っこの席に座る。

「おはようレン」

見慣れた灰色の髪の一つ下の妹に挨拶する。

「おはようルツ」

眠そうな目をこちらに向けてそう返す。

 

「相変わらず眠そうだね」

 

「ルツにだけは言われたくない……」

 

ジト目でそう返されてしまった。そんなに、眠そうだろうか・・・確かに眠いけど、顔に出しているつもりはないんだけどな~。そんなことを思いながら、いつもと同じように食事をしていつもと同じように片付ける。今日は何もすることもないし、本でも読もうかな……。

「はーい、注目~。」赤い髪を揺らした20歳~25歳位の美女が手をたたいた。

この妖精倉庫管理者のナイグラートである。一見、人間族に見えるがトロールである。こんな見た目をしておいて、実は少女趣味なんだよな~。最初は、驚いたものだ。

 

「今日は、お客様が来るから大人しくしてるのよ~、ちゃんとクトリの言うこと聞くのよ~。それじゃあ解散!」

 

「はーい」

 

みんなちりじりに部屋に戻って行く。不思議だそんなこと聞かされた覚えがないし、こんなところに来る物好きなどそうそういない。

 

「いやー、一体誰なんすかねー。その来客ってのは。」

 

そんなことを言いながら近ついて来るのは明るい稲穂色の髪をした少女だ。そしてそのまま『ガバァ』と抱きついて来る。「離れろアイセア…………重い」気恥ずかしくてそんな言葉が出てくる。

 

「うわ~、そんなこといちゃうんっすか~。女の子に重さを意識させるなんてサイテーっすよ!」

 

アイセアはプンプンと、擬音が聞こえそうな顔で怒ってくる。

「でも確かにに気になるわよね」青い髪を揺らしながら一番上の姉が近付いて来る。

「おはようクトリ………その内来たらわかるよ。」そう返しながらも、心の中で気になっていた…。

 

 

★★★★

 

「ルツちょっといいかしら。」

 

食堂から部屋にときに戻る途中ナイグラートに呼び止められた。

 

「何?」

 

ナイグラートに聞き返す。

 

「今日来るお客様はあなたに用があるみたいなの。」

「俺に?」予想外の答えに思わず聞き返してしまう。

「そう…だから一緒にきて会ってくれるかしら?」

「わかった」色々と気になったが取り合えず会って見ることにした。

 

ナイグラートと客室に向かっていると、こそこそしてる4人の影が見えた。ちょっとしたいたずら心で近づいてみる。そーっと後ろから近付いて声を掛ける。

 

「何してんだ、君たち」

 

「うあ~」

 

「おう、ルツ奇遇だ~」

 

「やあ~ルツいい朝だね。別に何も企んでないとも。」

 

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

 

上から、ティアット、コロン、パ二バル、ラキシュだ。期待通りの反応だ。何度見ても飽きない。

 

「こんなところにいるってことは、客がだれか気になるんだろ。」

 

「おう~気になる~」

 

コロンが言い放つ後ろで、ラキシュがアワアワしている。

「ナイグラートに言われただろ、部屋でおとなしくしてなさいって。」

 

「きちんと守らないと・・・「食べちゃうわよ」」

 

後ろからナイグラートが来て、セリフをかぶせる。そうすると面白いぐらい、ピシッっと擬音が聞こえそうな速さで気を付けをし、一斉に逃げていく。本当に仲のいいことだ。4人の背中を見送った後、気を取り直して部屋に向かう。部屋の前に着く・・・扉を開けるとそこには軍服を着た黒い毛をした兎徴族|≪ハンレサントロポス≫がいた。

 




設定
主人公
ルツ・イア・アグニール
好きなもの
読書、甘いもの、ネフレンといる時間
嫌いなもの
軍の偉そうにしてる人
容姿
黒い髪、身長は、ネフレンより少し高い位


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灰色と黒と約束

ちょっとした矛盾は目をつむってほしいです・・・。


「君がルツ・イア・アグニールだな。」

 

扉を開けて中に入るとそこに居たのは軍服を着た黒い毛をした兎徴族だ

 

「あなたは?」

 

「これは失敬、申し遅れた私は、イグナ・キオルキ一位武官だ。」

 

軍の人は苦手だ。こう・・・堅苦しいのだ。そして、偉そうだ・・・。

「それで何の御用なのでしょう。」ナイグラートが聞く。

 

「単刀直入に言わせてもらう・・・ルツ・イア・アグニールに出撃命令が出ている。」

 

「ッ……・・・」

 

ナイグラートが息をのむ。普段は、無線による連絡なのに一位武官が来るほどのことらしい。

「順を追って説明する。3日前、獣らしきものが発見された。それの調査をしてもらう…もちろん我々も同行する。メンバーは少数精鋭だ。急で悪いが、これは決定事項だ。」

 

「予知できなかったのですか?」

 

「・・・そうだ、今回の獣に関する情報はあまりに少ない。故に、調査に行くのだ。」

 

調査というが要するに偵察用の捨て駒だろう。事前情報もなしに獣に挑むのは自殺行為だ。そんなことに戦力を使いたくないから少数精鋭の編成なのろう。だが、幾ら精鋭でも幾ら俺の聖剣が生き残るのに効果を発揮するものだとしても、生存確率はかなり低いだろう。結局戦えるのは、俺だけなんだから。

 

「…何故、自分が抜擢されたのでしょうか?」

 

理由は察しが付くが一応聞いておく。

 

「君の持つ聖剣アグニールの力は生き残ることにおいては最も適した能力だともいえるものだ。今回の調査で最小限の犠牲で済ますために君が抜擢された。ただ、未確認のけものが居るという報告がある。かなり危険だと理解しておいてもらいたい。」

 

一位武官は淡々と語っていく。

 

「門を開く、なんてこともあるんですか?」

 

「・・・時と場合による。その場で開けるなんてことにするつもりはないが」

 

「話は以上だ。明日に出発だ。」

 

「な……そんなに急に!」

 

ナイグラートが驚く。

 

「ああ、これは決定事項だ。」

 

そう言い残して彼は帰えって行った。彼の固くに握られた拳が印象に残った。

 

★★★★

 

妖精兵には、獣と戦う義務がある。それは、分かっているつもりだし、死ぬかもしれないことも分かっている。妖精に『死』は恐怖の対象になりえない。でも、死ぬのが嫌じゃないかと聞かれれば、嫌に決まっている。妖精にだって、痛覚はあるし感情もある戦いに行きたくて行ってるわけじゃない。死ねばもうここには戻ってこれないんだ。・・・

 

でも、そんなことを言うわけにはいかない。先輩たちだって、覚悟を決めてみんなのためになると信じて死んでいったんだ。自分だけそんなこと言ったら、覚悟を決めた姉さんにも申し訳ない。

部屋に戻ると、レンがいた。

 

「何でいるの?」

 

「何の話だったの?」

 

ガン無視された。ていうか質問を質問で返すなし・・・

適当にごまかそうと思ったけどレンの言葉で出来なくなった。

 

「ルツは嫌なことがあるとすぐに布団に入って寝るから。ここに来たってことは嫌なことがあったんだと思う。あと首飾りもいじってるし・・・。」

 

心臓がドキリと跳ねた。レンには隠し事はできないな。

 

「未確認の獣の調査に行くことになった………。今回は、結構危険な任務だ」

 

声を抑えてそう言った。

 

「そう…………」

 

そう短く返事をした後抱き着いてきた。一瞬のことで反応できなかった。

 

「ここで位は無理しなくていいんだよ?」

 

今まで抑えていたものがこぼれてしまいそうだった。本当は行きたくないと叫びたかった。

何で俺なんだ!!!!と叫びたかったが仮に俺が行かなくても妖精倉庫の誰かが行くことになる。ネフレンや他のみんなが行く羽目になる。それはダメだ。

自分はやっぱり、ここでの生活を気に入ってるんだなっと思った。しばらくの間、抱き合っていたら落ち着いてきた。

 

「……………落ち着いた、もう大丈夫。」

 

そう言ってネフレンから距離をとる。そういえば、最初の出撃の時も同じようなことがあった。

 

★★★★

 

その時は別に、死ぬ確率の高い任務ではなかった。でも、尊敬していた先輩が門を開けたすぐ後で、だいぶ、動揺していたんだと思う。俺は、クトリ姉さんみたいに、自分も立派な妖精兵になるんだ、なーんて風には考えられなかった。今もそうだ、浮遊大陸群のために、戦うなんてピンとこないのだ。

当時は、怖くて不安で仕方なかった。出撃前夜に、レンに呼び出されたのだ。

 

「今のルツは見ていられない」

 

そう言われて、抱きしめられた。しばらくして、離れると首から先輩からもらった首飾りがないことに気づいた。レンのほうを向くと、レンの手の中に首飾りがあった。

 

「ルツが戻るまであづかっておく」

 

そう言われて意図に気づいた。返してほしければ、帰って来いというのだ。

返せという気にもなれず、「分かった」と返してしまった。その時には、なんだか戦いに行く意味が分かったような気がした。

 

ああ・・そうだ・・・決めたじゃないか・・・俺は、ここに帰ってきてただいまを言うんだ。

覚悟が決まった。

 

「必ず生きて戻ってくるから。」

 

昔よりも自信をもって言えたと思う。

 

 

 

 

 




3000字とか書いてる人凄すぎじゃないですかね。


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兎と妖精と覚悟

ギリギリ間に合ったー


次の日、チビッ子達に気が付かれないようにそーと出ていこうとすると、

玄関に、ナイグラート・クトリ姉さん・アイセア・レンがいた。

どうやらナイグラートが教えたらしい。あんまり見送りとかされたら決意が揺らぎそうなのだが…。

 

「いやー黙って出ていくなんて水臭いっすよー」

 

「見送り位するわよ」

 

「必ず生きて帰ってくるのよ」

 

ナイグラートに抱き着かれる。

 

「大丈夫…必ず生きて帰るよ」

 

レンがこちらを見ている。

 

「それでも心配ならこれ・・・預けておく」

 

そう言って、自分の首飾りをつけてあげる。かつて、先輩から誕生日にもらったものだ。

 

「それじゃあいってらっしゃい」

 

「行ってきます」今度は目を見て言えた。

 

★★★★

 

「昨日ぶりですね、イグナ一位武官」

 

「面倒だから、調査中はイグナでいいよ」態度が軟化していた。やっぱり、妖精倉庫での態度は、無理をしていたんだ。

本当に、軍人らしくないな・・・

乗組員を紹介しよう。

狼徴族のヤクハ、蛙族のグハム、鬼族のコノハそしてイグナ一位武官これが主要メンバーだ。

より正確に言うなら妖精兵を知っている者たちだ。

 

「これより調査に向かう!」

 

「了解」

 

★★★★

 

さて、俺は何をしているかというと指令室で聖剣を持って立っている。精神統一している。

先輩の真似事だ。だが、一応理由がある。

俺の聖剣アグニールは未来を見ることができるのだ………といってもそんなに便利ではなく、精々3秒から8秒位しか見ることは出来ない。ただそれだけ見えれば、緊急回避ができるのだ。しかし結構、集中力が必要で戦闘中は3秒位が限度だ。だから、少しでも集中しておくのだ。

 

「着いたぞ34番島だ。総員、配置につけ!」

 

「俺はどうしたら?」

 

「君には徒歩で問題の場所に侵入してもらう。」

 

34番島は、ほとんどゴーストタウンと化していた。

 

「住人はどこに行ったんです?」

そう聞くと、イグナ一位武官は苦虫を噛み潰したような顔をしながら「住人は、ほとんど死んだ」

そう言った。恐らく、本人としては思うところがあるのだろう。

 

「君は嫌じゃないのか?・・・死ぬかもしれないんだぞ」

 

さっきよりも、苦虫をかみつぶしたような顔で言った。

 

「俺たち、『妖精兵』使い捨ての兵器なので。」

 

そう言うとイグナは顔をしかめる。きっと彼は良識派の人間なのだろう、俺のようなまだ子供の命を使って生き残ることに納得できていないのだ。だが、そんな人間ほど軍人には向かない。・・・俺たちに、やさしさを向ける人が、石灰岩の肌|〈〈ライムスキン〉〉一位武官以外にいるとは・・・。本当に、軍人に向かない人だ。でも、ダメだ、ここで立ち止まったら死んでいった………いや、消費されていった先輩たちの命が無駄になってしまいかねないんだ。それに・・・

 

「俺は、死ぬ気なんてありませんよ・・・約束したんで」

 

そう言うと、イグナは驚いたように目を見開く。

 

「フッ・・・覚悟がないのは自分のほうだったか・・・」

 

「それにしても、一人称が『自分』ではなく、『俺』に戻ってるぞ。」

 

言われて気づく。

 

「まだまだ、子供だな」

 

にやにやしながら言われる。つい反射で、「おっさんのにやにや顔なんて、需要ないですよ」

と言ってしまった。すると、イグナは突然笑い出した。

 

「背伸びしてなければ、小生意気なただの子供だな・・・・・大丈夫だその約束は果たされる、我々は全員で生きて帰るのだ」

 

最初は頼りがいのなさそうな印象を受けたのに、そう言い切ったイグナの背中を見て、少し頼もしく思ってしまったのは内緒だ。

 

★★★★★

 

ここらへんで獣が発見されたらしい。あたりを見回してみるが何もいないい。しかし、何かが暴れた後は残っている。

 

「いませんね・・・」「そうだな」

 

ヤクハとグアハが話しているのを聞きながら、探索を続ける。【突然地面から触手が出てきてヤクハとグアハを貫いた】………ハッ・・・今のはアグニールが見せた未来だ。

魔力を熾し、ヤクハとグアハを突き飛ばしその場から離れると、今いた場所に触手が出てきていた・・・危なかった。

「イグナ!!!!」そう叫ぶ。イグナも理解したようで、「全員配置につけ!!!」

と叫んでいる。イグナの迅速の指示で、兵たちが引いていく。俺の、役割はこの獣の全体像を引っ張り出して、できるだけ長く戦闘し情報を集めること。

「戦闘開始だ!」

 

 




未来予知の場面は【】で表現しています。


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剣と妖精と獣

「行くぞ!!!」

 

未来視を駆使して、地上に出ている分の触手の群れを切り倒していく。

【上からの攻撃、斜め下からの薙ぎ払い、正面からの突き】…全てアグニールが教えてくれる。俺にはこの攻撃が見えている・・・躱して、躱して、躱して、魔力を限界まで熾して、全て薙ぎ払う。斬って、斬って、斬って、斬って切り倒していく。耐えきれなくなったのか、獣が完全に姿を現した。あれは・・・そこに居たのは、やはり深く潜む六番目の獣(ティメレ)と白い翼の生えた未確認の獣だった。

 

次の瞬間、相当つかれていたのか予知が解けてしまい背後から迫りくる触手に気が付くのが遅れた。ハンマーで強く殴られたような衝撃が背中から全体に駆け巡る。

痛みで、息が・・・

 

「カハッ・・・・」

 

クソ・・・意識が・・・・・・・約束したのに・・・・・・・そこで意識が暗転した。

最後に目に浮かんだのはネフレンの顔だった。

 

★★★★

 

ここはどこだろう?辺り一面が花畑になっている。ハハ、天国てやつかな。

 

「違うよ。ここは君の精神世界だよ。君の一番印象に残っている場所を再現してみたのさ。」

 

「君は誰?」目の前に、15歳ぐらいの少女がいる。

 

「僕のことはいい。それより君だ。今の君は死ぬ寸前だ。このままでいいのか?」

 

いいわけない。でもどうしようもないだろ。

 

「ハア~。君は帰りたいんだろ。」

 

ああ、帰りたいよ、約束したんだ必ず帰るって。でも力が足りないんだ。あんな数相手にどうしろっていうんだ。

 

「力がほしいの?」

 

ああ、ほしい。この状況を打破できる力がほしい。

 

「いいよ。貸してあげよう。今回は、サービスだ。いけルツ!」

 

目が覚める。あれだけ、攻撃を受けたのに、体が動く。魔力が熾せる。どうすればいいのか分かる。俺は、魔力を聖剣に流す・・・そして放つ。

轟音の後に目の前が、消し飛んでいた。そこで今度こそ、意識が消えた。

 

 

★★★★

 

 

 

ハッ・・・・体を反射的に起こそうとすると痛みが走った。

「いっ・・・」あまりの痛みに、思わず顔をしかめてしまうがそんな暇はない。

辺りを見回すと、辺り一面がれきの山だった。あれからどうなったのだろう。戦闘音はもうしないし、やけに静かだ。みんなはどうなったのだろう?無事だといいのだが・・・。痛みで一人で動けそうにない。がれきが邪魔で周りが見えない。中々厳しいな・・・・。太陽の位置からして結構時間が経っているだろうな。このままではらちが明かないな・・だが、無理やり魔力を熾しての移動は可能なはずだ。思いっきり、魔力を熾して、空を飛ぶ。そして唖然とした。周りは、一面がれきだらけだったのである。来た時はここまでひどくはなかったぞ・・・。ただ、船の残骸は見つからなかった。みんな撤退できたのだろう。ただ、帰る手段もなく途方に暮れてしまっていた。

 

 

 

 

イグナside

数時間前・・・・

「クソ・・・まだ、ルツは見つからないのか!!!」

ルツが攻撃を受け落下してから5分が経つ。これ以上の捜索は、全滅に繋がる。

一位武官としては、撤退するべきなのだろう。だが、『イグナ』個人としては、何としてでも助けたい。しかし、現実は甘くない・・・。獣の猛攻を潜り抜けながらこれ以上捜索するのは無理だ。これ以上は、獣に殺されかねない。あれだけ大口をたたいたのにこの様か・・・クソ!

「撤退の準備できました。」「何時でも飛び立てます!」

決断しなければならない。

 

「撤退だ・・・・総員撤退!!!!」

 

声が震える。だが、抑えなければならない・・気丈に振る舞え!!!唇を血の味がするまでかみしめる。

心の中で、あの勇敢な少年に謝るそして、必ず助けに戻ると、誓う・・・生きていてくれよ・・・。島を飛び立った時、白い光が目の前を覆った。目をかばい腕で隠す。

「何だ!?」目を開けると、島が半分なくなっていた。

 

 

 

ルツside

取り合えず、何故か獣が活動していない今に、移動しないと・・・。

どこか見晴らしのいい場所はないか辺りを見回す。・・・するとちょうどいい感じの場所を見つけた。あそこで救助を待つことにする。・・・・安心したら、眠くなってしまった。

今日はもう寝よう。

 

 

 

 

★★★★

 

「やあ、さっきぶりだね」

 

目を覚ますと辺りが花畑になっている・・・。さっき着た場所だ。正直、まだ受け入れられない。

 

「君は、結局誰なんだ?」

 

「僕の名前は、アグニール。君の聖剣さ」

 

「聖剣・・・俺の聖剣には意思があるとでも?」

 

「そうだよ、信じられないって顔だね。でもさ、君があの土壇場で、獣を倒せたのが偶然だとでも?君、自分がどうやって獣を倒したか、覚えてるか?」

 

そう言われると、確かに思い出せない。ん・・・

 

「・・・獣を倒したって言ったか?」

 

 

「そうだよ、君は島ごと、獣を消し飛ばしたんだ。」

 

さらに聞こうとすると、眠くなってきた。

 

「時間切れだ。この話は他の人に話しちゃだめだよ」

 

意識が・・・

 

★★★★

 

68番島 同日夜・・・

ナイグラートside

子供たちが任務に行くときはいつも心配で胸が張り裂けそうだ・・・。

 

「何でいつも危険な目に合うのはうちの子たちだけなの・・・」

 

あの子たちは、まだまだこれからなのに、どうして・・・   

本当は、ルツには、行ってほしくなかった。ルツは聖剣の能力の特性上、生存率が高くない任務に就く場合が他の子たちよ多いのだ。

まだ14歳だというのに、色々なことに諦観している・・・いや大人ぶってるだけで、本当は行きたくないはずなのだ。でも彼は理解してしまっている、妖精兵の意味を、自分のなすべきことを・・・それでもかえって来ようとするのは、ネフレンの存在が大きいだろう。

 

「駄目ね、私がこんなんじゃ他の子たちに、示しがつかないわね。」

 

気持ちを整理して、寝ようとしたとき無線連絡機から連絡がきた。

嫌な予感がした。

 

「はい・・・こちら68番島妖精倉庫」

 

「こちら第二師団・・・イグナ一位武官だ。報告だ・・・今回の作戦で、深く潜む六番目の獣(ティメレ)と新種の獣を確認、妖精兵ルツ・イア・アグニールがこれを撃退。島は半壊彼以外のメンバー以外は生還した。

「っッ・・・」声が出なかった

「詳しいことは、後日報告させてもらう。以上だ」

そう言って通信は一方的に切られた・・・。

声にならない嗚咽がもれる。今夜は寝れそうにない。

 



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大賢者とグラサン

同時刻イグナside

何とか言い切った。あれ以上話していたら感情を押さえつけていられる自信がない。

みんなで帰ると約束したのにルツには待っている人が居るのに、置いてきてしまった。だから、自分にできることをしよう。

上司の爬虫種のライムスキンのところへ行く。部屋の前でノックをする。

 

「ハエリタマエ」

 

「失礼します」

 

「ナンノヨウダ・・・ホウコクナラキイテイル。」

 

「今回はお願いがあってきました」ライムスキンは目を細めると

 

「フム・・・ハナシをキコウ」

 

「もう一度、ルツ・イア・アグニールの探索に行かせてほしいのです」

 

「・・・・」

 

「自分は、彼と約束したのです、全員で生きて帰ると。軍人失格かもしれない、偽善かもしれない。でも、ここで彼を見捨てたら後悔する気がするのです。」

 

「お願いします」

 

「ソノコトダガ、モウキュウジョニムカッテイルノダ。」

 

「なっ」驚いて声が出ない。しかし、これで助けられるかもしれないのだ。よっかた・・・・。安堵して力が抜けそうになる。

 

「では、無事に救助された場合に備えて向かいに行ってもいいですか?すぐに、妖精倉庫に返してあげたいのです。」

 

「ダメダ・・・ブジデアッテモ、シバラク、ヨウセイソウコニハカエサナイ。」

 

「な・・・なぜですか。詳しく、説明してください!」」

 

「カレハホカノヨウセイ兵とはチガウノダ」「え・・・それはどういう・・・」

 

「ハナシはイジョウカ?・・・デハカエリタマエ」有無を言わせずに言い切る。これ以上は無理だと判断して退出しようとする

 

「・・・了解しました」「失礼します」

扉に手をかけたタイミングで「ツカレテイルヨウダナ、ホンでもヨンデヤスムトイイ」

 

「・・・・」

 

部屋を出て落ち着ける場所にいく。

そして、さっきの言葉を思い出す・・・自分で調べろということか。

なんだかんだ言って、甘い上司だ。

 

 

★★★★

 

 

 

ルツside

目を覚ますと知らない天井だった。

「何処だここは・・・。」

「船の中だ・・・そしてお前にはある場所に向かってもらう。」

 

頭の上から声が聞こえた。ここは、軍艦らしい。だが、状況が呑み込めない。

辺りを見回そうとすると、目隠しをされた。「っっっ・・・何を」抵抗しようにも体も、うまく動かないし従うしかないようだ。いつもならパニックに陥りそうな状況なのに不思議と落ち着いている。

しばらくして、船が止まった感じがした。すると上から声をかけられる。

 

「これから貴様を降ろす。まだ目隠しをとるなよ。」 そう言われるや、何人かに担がれ、運ばれる。・・・そして降ろされた感じがした後に足音が離れていく。このまま置き去りかよ・・・。しばらくすると足跡が聞こえてきた。誰か近付いて来る。そして、足音が目の前で止まった。

「まず、目隠しをとって、やる。」そう言って目隠しを取られる。

視界が戻った。急に戻ったせいで目がちかちかする。ようやく、目の前のものに焦点が合う。そこに居たのは、黒い軍服を着た兎徴種の男だった。何故かサングラスをかけている。

 

「私の名はバロ二・マキシ一位武官だ」

 

一位武官・・・・イグナと同じ・・・・。

 

「それより、ここまで連れてこられたのはなぜか教えてもらってもいいですか?」

 

「ついてくればわかる」そういて歩き始める。

 

「あのー申し上げにくいんですが1人じゃあ動けないんですが。」

そういうとバロ二一位武官はどこにあったのか車椅子に俺を乗せる。

歩いていくと大きな建物が一つあった。まるで魔王の居城だ。趣味が悪い。そこに入るらしい。

中は意外ときれいだった。まるでだれか住んでいるように・・・実際だれか住んでいるのだろう。奥のほうに進んでいく。すると、大きな扉の前についた。バロ二一位武官がノックする。「入れ」男の声がした。中に入るとそこには、背の高い妙に迫力のある白マントの老人と車椅子に乗っている骸骨だった。まるで、映画のワンシーンだな。余りのカオスっぷりに驚き、声が出ない。

 

「では、私はこれで・・・」そういって、バロニ一位武官は帰ってしまった。

えーーーーここに置いて行かれるのかー。突然、叫びたい衝動に駆られる。

そんなバカなことを考えているうちに老人のほうが近付いて来る。

 

「儂はスウォン・カンデル・・・人々からは〈大賢者〉と呼ばれており、護翼軍の相談役を担っている。」

 

 



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大賢者と妖精と秘密

「儂はスウォン・カンデル・・・人々からは〈大賢者〉と呼ばれており、護翼軍の相談役を担っている。」

 

思わぬビックネームに驚きを隠せない。

 

「こっちの骸骨は気にせんでいい」

 

すごい無茶なことを言われた気がする・・・。

 

「ルツ・イア・アグニールです」

 

「ところでルツ、貴様が適合した聖剣アグニールの調子はどうだ?」

 

「どうとは?」

 

「アグニールは、今まで1人の例外を除き誰も適合しなかった遺跡兵装だ・・・そしてそれにはある特性がある。それは、遺跡兵装自体に意思があるということだ。」

通常であればあり得ない話だ。しかし、事実なのだろう。

なんとなく、呼ばれた理由が見えてきた。

 

「前任者はどうなったのですか?」

 

「聖剣に自我を乗っ取られて死んだ。」

 

恐らく殺されたのだろう。

 

「思い当たる節はあるか」

 

「いえ、特にはありません」

 

なんとなくしゃべったらいけない気がした。

 

「そうか・・・・」

 

「その聖剣は、使用者の強い願望に反応し、心をむしばむ」

「情報がなくてな・・・何かあれば報告に来い。」

つまり、モルモットといったところか。

 

「決して、モルモットではない。ただ、精神を乗っ取られ暴走した場合には、殺す必要があるのでな。」

随分と怖いことを言ってくれる。

 

「分かりました。気を付けます。」

 

「ああ気を付けろ・・・その聖剣は、悪魔の契約を持ち掛けてくるらしいからな」

 

「それとここでのことは、誰にも言うな。」

 

話は終わりらしい。このまま、帰っていいのだろうか・・・。

 

「もう帰っていいですか?っていうか返してもらえるんですか?」

 

「ああ、68番島まで送って行こう。」

 

「そろそろ、薬も切れるころだ。」

 

何の話だ・・・。そう尋ねようとしたら、体中に、激痛が走った。その代り、体が動く。

 

「骨がいくつか、折れているらしいからな麻酔のようなものを、打ったと聞いている」

 

マジか・・・。そういえば、左腕が動かない。

 

「ここで、応急処置だけしてやる。帰るのはその後だ。」

 

「お願いします」

 

処置は10分ぐらいで終わった。すると、さっきのバロニ一位武官が戻ってきた。

 

「帰りは、彼に頼む。・・・では、あとは任せたぞ」

 

「はい」

 

そう言って、彼は歩き出す。痛む体を引きずりながら、着いていく。

ああ、やっと帰れる。獣と戦ってから、余り時間が経っていないはずなのに、ひどく昔のことに思える。

だが、約束を守れそうだ。そんなことを考えていると、バロニ一位武官が話しかけてくる。

 

「大賢者様に、用があるときは、私に連絡しろ。」

 

「了解しました」

 

「ああ、それと目隠しさせてもらうぞ。この島の位置を知られるわけには、行かないのでな」

 

「・・・了解しました」

 

最後まで、楽にはさせてくれないようである。

 

 

★★★★

 

「やはり、あの聖剣の中にはいるな。」

 

骸骨こと黒燭公が、そう言う。

 

「やはりか・・・お前と会わせたのは正解だったな。」

 

「しかし、あの妖精も厄介なのに好かれたな」

 

「前任者のようにならなければいいのだがな」

スウォンが遠い目をする。

 

「近々、もう一度呼び出す」

 

「魔力の扱いについて面倒を見てやれ」

 

「マジかよ・・・まあ、いいぜ暇だしよ」

 

「悪いな、何分、儂も忙しくて」

 

「ハン、よく言うぜ」

 

★★★★

 

68番島が見えてきた…ようやく帰ってきたのだ。

降りる準備をしていると、バロニ一位武官が来る。そして

「君が、行方不明なことは、妖精倉庫に伝えたが、無事に保護されたことはまだ伝えてない。」

・・・・とんでもない爆弾発言をされた気がする

「も、もう一度行ってもらっても?」

ニヤリと笑い、「君が、無事に保護されたことはまだ伝えてないといったんだ。」

この野郎確信犯だな。いい性格している。・・・嫌な予感がする。

確実に何か言われるだろう。

船が、島に着いたようだ。今は、夜の12時位だ。もう、チビたちは寝ている時間だ。

「ではな・・・後は何とかしろ」

そんな無責任なことを言い、バロニは、帰って行った。

 



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帰還と朝とヴィレム

明けましておめでとうございます。


「ハァ~」ため息をつき、覚悟を決める。

扉の前に立ち、扉をノックする。パタパタと足音がする。

誰か起きていたようだ。扉が開いた。

そこのいたのは、懐かしく感じてしまう灰色の髪をした少女・・・恐らく、一番心配してくれていたであろうと思われるネフレンだった。

体が痛むはずなのに、思わず抱き着いてしまった。ネフレンは驚いた顔をしていたが、事態を理解したのか抱きしめ返してくる。

「ただいま・・・ネフレン」

 

「おかえり・・・ルツ」

 

★★★★

 

「はい口を開けて」

 

そう言ってスプーンを差し出してくるネフレン・・・・

どうしてこうなった・・・・

数時間前に遡る。・・・

 

 

知ってる天井だ・・・。朝起きると、横にネフレンが居た。いつも任務から、帰ってくるとネフレンと寝るのが何時からか恒例になっている。ネフレンといると安心できるのだ。・・・ああ、帰ってきたなと感じる。ネフレンを起こさないようにして、ベットを出る。部屋を出て、顔を洗いに行くときに昨日のことを思い出していた。

あの後、ナイグラートも出てきて、大変だったのだ。結局、夜も遅いから、明日話すよといい何とか切り抜けたのだ。結構めんどくさい・・・。

自分でも、なんだかんだでいろいろありすぎて整理できてない。

そんなことを、思いながらいつもの日課の読書のため、図書室に行く。

本を読もうとしたら、左腕が使えないことに今頃気づいた。

・・・・・困った、これ朝食食べれないんじゃない?・・・・

包帯を巻いただけに見えるが、痛みがなくなっている。流石大賢者だ。というか、実は大賢者のほうが、俺らよりも不思議な存在だ。おかげで腕は痛くないのだが。・・・

だが、っ本格的にまずい。このままだと、ナイグラートが嬉々として飛んできて、食べさせてあげる!とか言ってきそうだ。そんな羞恥プレイは、イヤだーーー。

そんなことを考えているうちに、外が騒がしくなってきた。チビたちが起きてきたようだ。ぐずぐずしているとあっという間に朝食の時間になってしまう。

うぁぁぁぁぁと悶えていると・・・・「なにやってるの?」

後ろにネフレンが居た。・・・・・

 

「・・・」

 

恥ずかしさで顔が赤くなっていくのを感じる。

だからなのだろう。変なことを口走ってしまったのは。

 

「俺に、ご飯食べさせてくれない?」

 

・・・・・・何言ってんだ俺!!!!!

 

「良いよ。」

 

まさかのOKである。

そして、この状況である。

思春期真っ盛りなこの年にこれはつらい

食べさせてくるネフレンの顔がほんのり赤いのが余計にいけないことをしているようにさっかくさせてくる。

 

「いやーいいご身分っすねー」

 

アイセアが横から冷やかしてくる。

 

「こーんな可愛い美少女に毎朝アーンしてもらえるなんて」

 

いい加減殴りたくなってきた。

 

「こらこら、あんましからかわないの。」

 

クトリ姉さんが助け舟を出してくれる。アイセアが全く反省してなさそうに

「分かってるっスー」と言っているそんなこんなで朝食の時間は過ぎてい居た。

 

「今日は姉さんどっかに行くの?」

 

出かける準備をしているクトリ姉さんに話しかける。

 

「うん、ちょっと28番島まで」

 

「へー気を付けてね」

 

「ルツこそ怪我治ってないんだから無理しちゃだめだよ」

 

「分かってる、いってらしゃい」

 

「うん、行ってきます」

 

クトリ姉さんを送った後、本を読みに、図書室に来ていた。

そこには、レンが居た。いつも道理、レンの隣に座って、本を読む。

この時間が好きだった。

 

 

今、夜の森の中を走っている。なぜかというと・・・・

夜、夕飯を食べ終わった後、廊下を歩いていると、パ二バルが外に走っていくのが見えた。・・・気になってついていくことに。追いかけていると、「こらーパ二バルどこに行ったのー」と言いながら走り回っている姉さんと合流。今に至るというわけである。

 

「しかし、・・ハァハァ・・・まだ怪我を引きずっていて、早く走れないな。姉さん先に行って」

 

「分かった」

 

そう言って姉さんを先に行かせる。しばらくすると、ずぶ濡れの状態の徴なしの男と、パ二バル、そして姉さんが来た。どんな状況だこれ・・・・・・。

相手の人が、男の人なので風呂までの案内役を頼まれた。

 

「ここが風呂です。終わったら声をかけてください」

 

「わかった。悪いな・・・。」

 

そうして、出てくるのを待っている間彼について考える。

恐らく、軍から来た管理者だろうな。そんなことを考えていると、彼が出てきた。

では、ここのもう一人の管理者のところにお連れします。

 

「別に、敬語じゃなくていいぞ」

 

「・・・じゃあとりあえず、名前を教えてもらっても?」

 

「ヴィレムだ、ヴィレム・クメシュ。お前の名前は?」

 

「ルツ・・・ルツ・イア・アグニール」

 

「そうか。よろしくルツ。・・・ところで、ここは軍の管理倉庫だろ。なんで子供がいるんだ。」

 

「それは、もう一人の管理官に聞いてくれたほうが早いよ」

 

「ここだ。」そう言って、入り口まで連れてくる。

 

「じゃあ後は、頑張ってね。」

 

「ちょ・・・頑張っててどういうことだよ・・・」

 

「食べられないようにさ」

 

「はぁ!?食べられる?」

 

「それって、どういうことだ・・・・」

 

そんな叫び声が聞こえるが無視無視。

 

彼が、ナイグラートの餌にならないことを祈って自分の部屋へ帰ることにする。




次は、ネプレンside書くかも。


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原作開始
ヴィレムと餌付けと秘密


すいません。ネフレンsideはまた今度にします。


朝目が覚める。いつも道理、食堂に行き端っこの席に座る。

 

「おはよう、レン」

 

「おはよう、ルツ」

 

いつも道理の挨拶をして、食事を始める。

すると、ナイグラートが声を掛ける。

 

「みんな注目―。今日からみんなと過ごすことになったヴィレム二位呪器技官です」

 

「みんなよろしくな」

 

そうあいさつするも、みんな怯えて、近づこうとしない。

これには、彼も驚いたようで・・・「え?」と漏らしていた。

次の日も・・・・

「早起きだなお前ら」と声を掛けるも怯えられ、掃除の手伝いをしても、怯えられ、

挙句食われる、攫われる~と言われ、なんだかちょっと可哀そうになってきた。

ここは男がほとんどいないから、ヴィレムには残ってほしいんだけどこの分だと難しそうだ。

 

「個々の子供たちは大人の男性に慣れてないからどうすればいいか分からないのよ」

 

屋上に、話を聞きに来たヴィレムにナイグラートが言う。

 

「それは、分かっているが何日も子供を怯えさせておくのもな・・・」

 

「なるほど~。つまりヴィレム二位技官はロリコンって事っすか~」

 

そうアイセアが茶化す。なんだか俺も悪乗りしたくなって

 

「うわ~ここの子供たちをそんな目で見てたのか~こわいー」

 

と援護する。

 

「子供は好きだぞ」

 

まさかの答えが返ってきた。

 

「お~マジっすか!で、で、どの子が好みっすか?」

 

「やっかましいあたしことアイセアから、我が道を行くちっちゃなネフレン」

 

「そして当方おすすめ!青いむっつり顔の~」

 

「クトリだろ知ってる」

 

「おお~じゃあまさかまさかのルツっすか~」

 

「ヴィレム二位技官マジですか・・・」悪乗りしてみる。

 

「ちが・・・」「こ、来ないでください・・・」

 

「ご、誤解だ」

 

からかい買いがあって面白い。そろそろかわいそうなので種明かし。

 

「いや~冗談ですよ。」

 

「お前な~」

 

「ところで、チビたちの心をつかむならお菓子作りはどうですか。例えば、プリンとか・・・

「単にルツが食べたいだけ」

 

レンの鋭いツッコミが入る。

 

「それだ!!!!」

 

しかしヴィレムには、好評だったようだ。

レンのジト目が痛い。

それからあれよあれよとことが進み、お菓子作り成功に終わった。

こうして、ヴィレムは妖精倉庫に受け入れられた。

 

 

★★★★

次の日図書室で本を読んでると、庭からチビたちの声に混ざってヴィレムの声が聞こえた。どうやら完璧に溶け込めたようだ。なんだか子供慣れしてるな~っと思った。ただヴィレムはどこまで俺らのことを知っているのだろう。まあ、あの様子だと全くと言っていいほど知らされていないのだろうな~そんなことを考えていると、「アルミター」と叫び声が聞こえた。

何かあったようだ・・・ま、いっかいつものことだしなー。

と思っていましたとも。どうやら、アルミタが崖から落ちたらしい。それはいい。

怪我は、すぐに、治るらしいし。まあ、ヴィレムとナイグラートは慌てただろうが。恐らく問題は、ヴィレムがこの異常なチビたちの反応に気づいたことだろう。たぶん、明日から彼は今まで道理にできないだろう。そんなことを考えると残念でならなかった。

 

★★★★

 

ヴィレムside

朝早く目覚めてしまった。昨日のナイグラートの言葉が忘れられない。頭を整理したくて、図書室に向かう。

中に入ると、ルツが居た。

 

「よう、ルツ朝早くから読書か。」

 

「おはよう、ヴィレム。その顔を見るに、俺らについて知ったんでしょ」

 

「・・・ああ」俺はなんて答えればいいのか分からなかった。

 

「・・・少し話をしようか。俺らのことどこまで知ったの?」

 

俺は迷ったが、素直に言ったほうがいいと思った。

 

「別に、お前らが妖精兵で、聖剣を使える存在ってだけだ。」

 

「・・・詳しく語る気はないけど、それだけ知ってれば分かるだろ」

 

ルツは自分の服の袖をまくる。そして、包帯を巻かれた腕を差し出してきたのだ。

 

「俺らは、使い捨ての兵器だ。死を恐れない消耗品だ。それでも、俺たちに今まで道理の態度がとれるか?」

 

どこか自虐的で、悲しそうな顔をしながらルツがそう問うてくる。

 

「ああ、答えは変わらない。子供たちは可愛いし、それに昔同じようなやつがいてな、放っておけないんだ。何とかしたいと思ってるんだ」

 

「自分になら助けられると?」

 

「ああ、そうだ。」

 

「・・・クトリは、あと少しで15番島で門を開けることになっている。賭けをしよう。5日後までに、今までの出撃記録を探しておく。それと妖精についての書物も。その代り、姉さん・・・クトリを助けて見せたら君の勝ち。打開策を提示して見せればいい。そしたら信用する。」

 

そう言い残して、ルツは部屋を出て行ってしまった。

 

 

 




原作のところは少しはしょったりしています。


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