キグミノマチノカスカナオモイデ (漣さん)
しおりを挟む

カナタノチノマイホーム

二作目を書くとは思いませんでした。
前作のようなマニアックさはないです。
ちょっと暗い作品です。





主人公紹介

香風架渚立(CV:下野紘)

Tall:170cm
Blood Type:AB型
Birthday:7/12(かに座)

容姿

チノと同じ淡い青色の髪をミディアムヘアにしている。
目鼻立ちは整っていて妹とよく似ている。
瞳は例えるならアクアマリン。
脚長で細身。

ココア、千夜、シャロと同い年。
リゼとシャロの学校に、共学化に向けた試験的な理由もあって特待生として転校してくる。
難病を患い、小学2年生の冬から都会の病院に入院する。
それ故に妹のチノとは疎遠になっていた。
7年にも及ぶ治療の末、高校1年生の6月に木組みの街に戻る。
自分で自分の事をあまり知らないという事もあって内向的だが人当たりは良く、また病気の経験から何事にも真面目。
趣味は読書等、一人でするものを好む。


一度乗った列車は否が応でも俺を目的地へ連れて行く。

 

列車は揺れながら、帰りたくて向かう訳ではない故郷へ。

 

車窓はくすんでいるのだろうか?

 

病院の窓とは違って鏡みたいに車内の俺を映さない。

 

でも、そのお陰で絵画のような光景が邪魔されずに楽しめる。

 

終点に近づく度に情景は変わっていく。

 

そしてそれは脳裏にある俺の記憶を浮上する泡のように蘇らせる。

 

チノとの、お母さんとの、お父さんとの、お爺ちゃんとの...。

 

元気かな、チノ...。

 

 

 

 

 

カナタ「ここか。」

 

来た以上引き返せまいと覚悟を決めて降り立った駅のホームから記憶を頼りに歩いていくと、昔と変わらない場所にそれはあった。

 

佇まいも昔のまま。

 

変わったのは看板かな。あの時はこんなにポップではなかった。

 

カナタ「喫茶店ラビットハウス...。」

 

恐る恐るドアに手をかける。

 

この先はパンドラの箱なんじゃないか。

 

そんな恐怖が湧き上がり、夏の暑さで吹き出た汗が冷や汗に化けたとの錯覚に陥ってしまう。

 

カナタ「あの病気だって...。なんのこれしき!」

 

腹をくくって扉を押し開ける。

 

抜けの悪いカウベルの音が俺を出迎えた。

 

ココア「いらっしゃいませ!」

 

続いて俺を待っていたのは客への挨拶。

 

その声はピンクの制服を着た、ストロベリーブロンドのセミロングヘアの少女のものだった。

 

威勢の良い声と太陽のようにまぶしくて温かい笑顔が快活な印象を与える。

 

童顔で可愛らしい。

 

リゼ「お好きな席へどうぞ。」

 

俺を誘導する彼女は、パープルの長髪をツインテールに仕立てていて、その麗しい髪と同じ紫色の制服に身を包んでいる。

 

女の子としては長身で、顔立ちは美しく、スタイルも良い。

 

大人びた雰囲気の子だ。

 

カナタ「はい...。」

 

チノ「...お兄さん!」

 

俺の声を聞いてピクッと反応した彼女は皿を洗う手を止めて顔を上げ、俺を見て固まった。

 

そして一呼吸分の間を置いて、小さな口で俺を呼んだ。

 

カナタ「チノ...ただいま...。」

 

ココア「えっ!?チノちゃんのお兄さん!?」

 

リゼ「どういう事なんだ!?」

 

ティッピー「久しぶりじゃのう。」

 

ん!?

 

どこからかお爺さんの声が!

 

チノ「お兄さん...カナタお兄さん...。」

 

我が妹、チノは皿を置いて駆け出し、俺の胸に飛び込んできた。

 

カナタ「うわっ!」

 

俺は彼女を受け止めた反動で後退りする。

 

病み上がりで大して筋肉も付いていない体には、小さな妹の勢いですら強いと感じる。

 

チノは俺の服を両手でぎゅっと握り、顔を埋めてすすり泣いている。

 

俺と同じ、淡いブルーの髪を撫でながら、再開できた喜びを肌で感じる。

 

髪の色と言い、顔つきと言い、内向的な所もそっくりだ。

 

チノ「...お兄さん、どうしてここに?病気は治ったんですか?」

 

カナタ「病院にはもうさよならしたよ。」

 

チノ「...それじゃあ!」

 

カナタ「これからよろしくね、チノ!」

 

チノ「...はい...。」

 

弱々しい声の彼女の泣き喚く声が、鼓動より強く胸を震わせる。

 

俺も涙をもらってしまいそうだ。

 

チノ「...お兄さん...大好きです...。」

 

カナタ「...チノ...。」

 

チノ「...でも...大嫌いです...。」

 

カナタ「どうして?」

 

チノ「...それは...。」

 

中々言い出さないチノ。

 

だんだん彼女の顔は赤くなっていく。

 

やがて林檎のように真っ赤になって、その顔面を胸にぐりぐり押し付けながら、お兄さんが大嫌いな理由をぼそっと話した。




ヨスガノソラに感化され、ふとアイデアが浮かんだので書いてみました。
前作『風と珈琲と六弦琴』と平行しながら(向こう優先ですが)執筆を続けようと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

イモウトトトモダチノオンナノコ

実家に帰って早々、カナタはココア達の忙しなさに飲まれていきます。


チノ「...お兄さん...大好きです...。」

 

カナタ「...チノ...。」

 

チノ「...でも...大嫌いです...。」

 

カナタ「どうして?」

 

チノ「...それは...。」

 

耳まで熟れた顔を俺の胸に数回押し付けてから、チノはボソッと口にした。

 

チノ「...だって戻って来る事、私に伝えてなかったじゃないですか...。」

 

俺がこれを秘密にしていたという点にいじけてるらしい。

 

やはり我が妹は可愛いな。

 

再会の喜びを敢えて真っ赤な仮面で隠す素直じゃない所が、俺は大好きだ。

 

女の子はこういう風に少し意地悪な位が魅力的なんじゃないかなって思う。

 

交友経験が少ない俺にとって女の子のイメージはチノだからな。

 

カナタ「ちょっとしたサプライズだよ。やりすぎたかな?」

 

チノ「やりすぎとかじゃなくて、やるシチュエーションを間違えてます。」

 

カナタ「あはは♪ごめんね。」

 

チノ「しょうがないお兄さんです。」

 

顔を見合わせてクスッと笑い、抱き締めていたチノを放した。

 

店員の二人の女の子に目を向けると、彼女達は涙を流しながらこちらを見ていた。

 

ツインテールの子は涙目程度だが、セミロングの少女は声を上げて泣いている。

 

二人が落ち着くまで待つ事にした。

 

 

 

 

 

カナタ「お恥ずかしいものを見せてしまいました。改めてチノの兄のカナタです。どうぞよろしく。」

 

リゼ「私はリゼだ。ここでバイトをしている。」

 

ココア「私ココア!ラビットハウスに下宿させてもらってるんだ!」

 

カナタ「いつも妹がお世話になってます。」

 

リゼ「こちらこそ。」

 

ココア「お世話してます!」

 

三人ささっと頭を下げる。

 

だがチノは不機嫌そうだ。

 

子供扱いしないで欲しいとでも思っているのだろうか?

 

チノ「ココアさんの挨拶はなんですか?いつも私がお世話してるじゃないですか...。」

 

ココア「えへへ~♪」

 

対するココアは照れ笑いで誤魔化している。

 

この言葉からするにチノの方がしっかり者のようだ。

 

カナタ「ココアとリゼで良いかな?」

 

リゼ「いきなり男子に呼び捨てなんて///」

 

物凄い照れているリゼ。

 

なんか申し訳なくなってくる...。

 

カナタ「ダメ?」

 

リゼ「いや...今まで親父以外の男にはお嬢と呼ばれてたから慣れてなくて///」

 

お嬢?

 

高貴な家なのかな?

 

ココア「うーん...カナタ君はいくつなの?」

 

カナタ「今は15で高校一年生に当たるかな。」

 

ココア「じゃあ私の弟だね!私の事はお姉ちゃんって呼んで!」

 

カナタ「弟!?お姉ちゃん!?」

 

唐突にココアに弟扱いされた。

 

きっと親睦を深めようとしてるんだな。

 

チノ「気にしなくて良いですよ、お兄さん。ココアさんは姉を気取りたいだけですから。」

 

カナタ「そうなの?」

 

単純にやりたかった、というだけらしい。

 

カナタ「二人は年上?」

 

リゼ「私は今高校二年生だ。」

 

ココア「私はカナタ君と同じ高校一年生だよ!私は四月生まれだから16歳!」

 

微々たる差だが俺よりも上。

 

弟扱いされても筋は通る。

 

ココア「私はカナタ君のお姉ちゃんだから、遠慮しなくていいよ!」

 

カナタ「う、うん...。」

 

こういう子と話した事ないからペースが乱される...。

 

チノが振り回されていてもおかしくないだろうな。

 

ココア「カナタ君、ずっと一人で寂しかったよね!お姉ちゃんがもふもふしてあげる!」

 

カナタ「もふもふ!?」

 

ココア「えい!」

 

カナタ「わっ!」

 

いきなりココアは俺に抱きついて、腕を伸ばして頭を撫でたり、頬を擦り寄せたりしてきた。

 

チノとは違った女の子の良い匂いとか、押し付けると変形する胸の柔らかさとか、若干感じる包容力とかの刺激で変になりそうだ。

 

ココア「カナタ君もチノちゃんみたいに良い匂いがするね~♪もふもふ~♪」

 

カナタ「ココア!?」

 

初対面でここまでする女の子がいるのか!?

 

匂い嗅がれているのがもの凄く恥ずかしい...。

 

チノ「ココアさん離れて下さい!お兄さん困ってます!」

 

リゼ「そうだぞ。解放してやれ。」

 

ココア「そんなー!」

 

リゼに羽交い締めにされたココアは、そのまま彼女に引き摺られてカウンターまで運ばれた。

 

この子が下宿してるのか...。騒がしい日常になりそうだな。

 

チノ「ココアさんには気をつけて下さいね。」

 

カナタ「わ、分かったよ...。」

 

チノの視線が冷たい。

 

妹の機嫌を損ねないように言われた通り用心しよう。

 

リゼ「さあ、仕事するぞ。」

 

ココア「うう...。カナタ君、お仕事終わったらもふもふの続きするからね!」

 

カナタ「えっ!?」

 

許可なんてものじゃない。宣告だ。

 

これは逃げられそうにないな...。

 

チノ「私は許しませんよ!」

 

ココア「じゃあ代わりにチノちゃんをもふもふしようかな♪」

 

チノ「うっ...。どうしてもふもふする事前提なんですか!?」

 

カナタ「まあまあ...。良いじゃないか。」

 

チノ「お兄さん、甘やかしたらダメって...。」

 

ココア「わーい!これでお仕事も頑張れるよ!」

 

リゼ「単純だな...。」

 

はしゃぐココアと見守るリゼ、そして振り回されるチノ。

 

これが彼女達の日常なのだろうな、と傍観しながら思う。

 

チノが楽しそうにしてて、お兄さん嬉しいよ。




活動報告にも書きましたが、前作『風と珈琲と六弦琴』を大幅な改編により一時的に非公開にします。
並行しながら進めるので、良ければそちらもお読み下さいね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ショニチノヨル

大変遅くなりました。
サボってました。
前作と平行しながら進めます。
というか、早く公開できるようにしないと。


お父さんの制服を借りて閉店まで店の手伝いをした後、リゼを見送った。

 

仕事が終わって緩んだココアの陽気な鼻唄を聴きながら階段を登り、ダイニングへ。

 

ココア「それじゃあチノちゃん!一緒にご飯作ろう!」

 

チノ「私一人でできますし、いつもそうしてるじゃないですか...。」

 

ココア「そんなー!」

 

困った様子でココアをあしらって、チノは調理器具を用意し始める。

 

一人で料理できる程に成長した彼女を見ると、嬉しくもあり寂しくもある。

 

チノ「お兄さんの前だからって張り切ってるんじゃないですか?」

 

ココア「うっ...そ、そんなことは...。」

 

チノ「...図星みたいですね。」

 

カナタ「あはは...。」

 

ココア「カナタ君に笑われたー!」

 

息の合った二人の掛け合いに、思わず笑いがこぼれる。

 

カナタ「いや、ココアを笑ったんじゃないよ。二人のやりとりが面白くて。」

 

顔に手を当て、落ち込むココアにフォローを入れる。

 

チノと違って、忙しない子だ。

 

ココア「私達息ピッタリだって、チノちゃん!姉妹漫才で世界も狙えるよ!」

 

チノ「料理中に抱きつかないで下さい...。あと姉妹でもないし漫才でもないです!世界も狙いません!」

 

ココア「えー!チノちゃんのいけずー!」

 

拒否反応を示されてもなお、ココアはチノに抱きついたまま、頬擦りをする。

 

本当にチノのことが好きなんだろうけど、料理の邪魔になってないか...。

 

 

 

 

 

俺は先にシャワーを浴びさせてもらった。

 

夏の汗でベタついた体もさっぱり。

 

今日の夕食はカレーみたいだ。

 

チノお手製のカレー、楽しみだな。

 

ココア「カナタ君、ご飯できてるよ!食べよう!」

 

扉を開けると、ココアが元気に迎えてくれた。

 

鍋を覗く。

 

どうやら夏野菜のカレーらしい。

 

器にご飯を盛り、ルーをかけてテーブルへ。

 

ココア「いただきまーす!」

 

カナタ「いただきます。」

 

期待して口に運んだ一口は、懐かしい味がした。

 

小さい時に食べた時のような、甘めの味。

 

安心感のある味だ。

 

カナタ「あんまり辛くないね。」

 

チノ「こ、これがウチの伝統の味なんです...。」

 

顔を赤くして、ぎこちなく答えるチノ。

 

まだ辛いものは苦手なのかな?

 

チノ「お兄さんに昔の事を思い出して欲しくて...。決して辛いのが苦手な訳では...。」

 

カナタ「...ふふ...。」

 

咀嚼する口を止め、スプーンを置く。

 

カチャン、と音がした後、一気に静かになった気がした。

 

カナタ「ありがとう、チノ。」

 

それは、滑らかに、自然に出た言葉だった。

 

微笑んだ俺の顔を見て、さらにチノは赤面した。

 

ココア「凄い!チノちゃんが一方的に!」

 

そしてココアは感動している。

 

ココア「これが本物のお兄ちゃん力...。し、師匠と呼ばせて下さい!」

 

カナタ「ええ...。」

 

それからチノはずっと俯いたまま、ココアからはどうすれば姉になれるのかみたいな事を聞かれ続けた。

 

もの凄く食べづらくて、カレーの味も良く分からなかった。

 

 

 

 

 

夕食を食べ終え、しばらく自室で過ごしていると、コンコンとドアをノックする音がした。

 

カナタ「どうぞ。」

 

ココア「カナタ君、一緒に寝よう!」

 

カナタ「はい!?」

 

え!?

 

何言ってるの!?

 

カナタ「今なんて言った?」

 

ココア「え?一緒に寝ようって。」

 

聞き間違いじゃなかった。

 

添い寝したいらしい。

 

ココア「チノちゃんも一緒に寝たいって!」

 

チノ「うぅ...。」

 

さっきは見えなかったがチノも来てたようだ。

 

恥ずかしそうにウサギの縫い包みで顔を隠している。

 

ココア「という訳でお邪魔しまーす!」

 

カナタ「え!?良いって言ってないよ!?」

 

許可を得ることなくズカズカと部屋に入るココアにチノが続く。

 

二人とも躊躇う事なく俺のベッドに横たわる。

 

ココア「さあ早くカナタ君も!」

 

カナタ「はぁ...。分かったよ...。」

 

奥からココア、チノ、俺という配置で寝ることになった。

 

初日から大変だ...。




どんなストーリーだったかはうろ覚えですが、ちゃんと形になれば良いなと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。