オメガとオーバーロードの進む道 (おじぎり)
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始まりの始まり

どうも、おじぎりでございます。
多分これ見て分かった人はだいぶいると思いますが、気にしません。
それでは、本編を、どぞ。


 ――DMMORPG――リアルと全く変わらないほどのクオリティーと操作性が売りのゲームである。

 そしてそのゲームの中でも異色かつ、圧倒的人気を誇るゲーム『ユグドラシル』。その普遍的とも思われてきた人気ももはや今となっては風に巻き上げられた埃の一つに成り下がってしまった。そして今、その長きにわたるサービスもこの日を以て終了することになってしまった。

 それと時を同じくして、もう一つのゲームも終わりを告げようとしていた。

 それは、サービスが開始してから早5年にも満たないゲーム。その名も『デジモンストーリーズ・ザ・ワールド』。遠い昔に流行し、かつてアニメにもなっていたゲーム。

 パソコンという電脳世界において生息している生き物『デジモン』。ある時はその世界に迷い込んだ少年少女たちの冒険。ある時は現実世界に迷い込んだデジモンたちとの物語。

 世界の命運をその背に背負い、デジモンたちと心を通わせ、そして強大な敵を打ち倒す英雄譜。

その物語のデジモンになれるゲーム。

 過去のアニメ、ゲームに登場した数百種全てのデジモンになれるというそのゲームは、膨大な金額がかかっていたにもかかわらず、プレイをする人たちは少なかった。

 そのため、5年という短い期間で終了の憂き目にあってしまった。

 しかし、どんなゲームでもファンというものはいるのだ。この『デジモンストーリーズ・ザ・ワールド』にもそれはいた。

 ――あ~あ、もうサービス終了ですかい。

 目の前にいる黒い竜とヒトを融合させたかのようなデジモンを前に感慨に耽っていた。

 ――結構面白いゲームだったんだけどなー。

 思考をしているのを遮るかのように目の前のデジモンが姿を消し瞬きする間もなく目の前に現れ、その両の腕に備え付けている大きく鋭い爪を付けた甲を振りかざす。

 ――ほいっと

 しかしそれを左腕の剣を出しそして振るう。その瞬間――

『オールデリート』

 交差した爪と重厚な剣が交差し、本来ならばそこで止まるはずであった剣はそのまま空気を切り裂くかの如く爪と甲を裂き、その勢いを留めたまま体までも切り裂く。

 切り裂かれたデジモンは声を上げることなくポリゴンとなり、そしてそのポリゴンが吸収された。

 『レベルが上がりました』

 『レベルが上限値に上がりました』

 『称号、〈限界まで極めた者〉を獲得しました』

 『称号の効果により新たにもう一体、又は究極体デジモンを配下にする権利が解放されました』

 ――ふい~これで完了っと。

 サービス終了の1時間前だというのにいまだにログインし、プレイしているその男のプレイヤー名は「おじじさま」。なぜ、ログインしているのか。それは――

 ――これで究極体デジモンを配下にできる!! 

 このゲームでは、称号を得ることによって様々な効果が得られる。その一つにデジモンを配下にすることができるものもあるのだが、完全体まででかつ一体のみ。しかし先ほどの称号を得ることによりその効果が上がったのだ。

 ――っと急いで戻らないと。

 そう言い、おじじさまが向かう場所は己の拠点。その中にあるデジファーム。

 配下にできるデジモンはあまり強いとはいえない完全体。それゆえプレイヤーの間ではほぼ使うものがおらず、しかも一帯だけしか入らないのでただの庭扱いされていたがこの男、生活の殆どをこのゲームに費やしただけあり、本来ならかなりの時間を使いかつ解放が困難な、デジモンを配下にする権利を得るための条件をクリアし、そして見事エンジェウ―モンを配下にしていた。だけでなく、課金までして枠を増やし、新たに今日、レディーデビモンを配下に加え、そしてアイテムを使い、友情値を限界まで上げる。その目的はただ一つ。

 ――ようやくっ!! マスティモンを作ることができる!!

 震える手? を抑え、パネルをタッチ。『進化しますか?』の欄を見ることなく即座にYESを押す。二体のデジモンが融合し、やがて一体のデジモンになる。4枚の天使の羽と4枚の悪魔の羽が対になった女性型のデジモンが膝まづいた姿で姿を現す。

 ――ウッヒョー!!!! 究極体キタ――!!

 この時点ですでにテンションはMaxである。

 ひとしきり興奮し終えたおじじさまが冷静になったのは終了1分前。

 ――……もう終わり、か。ここに来るまで色々長かったけど。ありがとうな。

 そう目の前のマスティモンに対して、なんとなく感謝の言葉を贈るがただのデータでしかないマスティモンは返事をしない。

 ――サービス終了まであと30秒か。

 視界の端に移る時計を確認し、そして腕を組んで目を瞑る。

 刻一刻と時間が刻まれ――。

 23:55、56、57、58、59……

 00:00

 現実世界に戻る―――はずだった。

 ――ん?

 しかし、目を開いても映るのは見知ったゲーム内の自分の拠点。

 何が起きたかわからず混乱していると、

 「如何なさいましたか? ご主人様」

 本来ならばしゃべるはずのない、ただのデータでしかないマスティモンがそう尋ねてきたのである。

 




 わかりにくかったらすいません。あと、誤字脱字報告ございましたら、ご連絡ください。
 こんな優柔不断な野郎ですが今後ともよろしくお願いいたします。
あと、ゲームに関してはほとんど『ぼくのかんがえたさいこうのげえむ』です。ご容赦ください。
 それより、かっこいいですよね……ⅹ抗体のデジモンって。その中でもこれがお気に入りです。


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混乱と客

 え~どうもおじぎりです。
 一話目で20件ですか……正直多くてびっくりしました。
 何はともあれ今年初の投稿。というわけで二話続けていっちゃいます。読者の皆様に楽しんでいただけると嬉しいです。
 それでは本編!!



二話

 突然のことに、思考回路がショートしたおじじさまにまた同じことを尋ねるマティスモン。

「あ、ああ、大丈夫だ。なんともない。ただ、思考の海に浸っていただけだ」

 と返すのが精いっぱいだった。

 なお、本来ならばこの男、こんなこと女性にどころか同性に対してもいうことができないチキン野郎であるがこのときは混乱して自分でも何言ったのか把握していない。

「こ、これはとんだ失礼を!! お許しください!! ご主人様」

 マスティモンは慌ててさらに跪いた状態で頭を下げる。

「いや、気にするな。大した思考じゃない。その頭を上げ、そして自室にて待機せよ」

 これまた混乱した状態でそう返す。

 マティスモンはそれに対し一例をすると、デジファームへと戻っていった。

 一方のおじじさまは拠点の自室に戻って、何が起きたのかを思考する。

 思考を初めて1時間。出した結論は――

 ゲームがリアルになった。ということである。

 まず、本来ならしゃべることができないはずだが何の苦労もなく言葉を発したこと、そしてデータでしかない自分の配下が話しかけたということ。これらからそう結論付けた。

 ――さて、こう結論を出したはいいものの何をするべきか。

 再び思考の海につかり始めたその時、自室の扉からノックの音が聞こえた。

「ご主人様、マスティモンです」

「どうした?」

「お客様がお見えです」

「何?」

  客。客とは一体?――

 疑問をよそにおいて、とりあえず玄関のホールに向かうのだった。

 

 

 

 

ナザリックside

『モモンガ様、セバスでございます。実は、大墳墓の近くに屋敷を発見いたしました。人が住んでいる可能性もありますが、いかがなさいますか?』

『とりあえず、中にいる住民の様子を見て、友好的であれば可能な限りこちらへ連れてこい。周辺の話も聞きたいからな』

「かしこまりました」

  モモンガとのメッセージのやり取りを終えたセバスは、屋敷の扉をノックする。

  すると中から奇妙な口元だけ見えるヘルムをかぶった女性が顔をのぞかせる。

「どちら様でしょうか」

  そう尋ねる女性に主人ですかと伝えると、いいえと返される。主人に会いたいと告げるとりあえず中にお入りくださいと、案内される。

  案内されるまま屋敷の中に入ると、女性の全身が見えた。

 天使と悪魔の4枚の対の羽を背中に浮かせた、自分の知らない種族。驚きはしたものの、女性からは敵意が見えないので気にせずにホールの大理石でできたラウンドテーブルの席に案内される。

「しばらくここでお待ち下さい」

 そう一言つげ、奥へ姿を消す。

 セバスはモモンガにメッセ―ジを繋げる。

 しばらくすると女性が現れ、その後ろから鎧を纏った人物が現れた。

 表は白、裏は紅いマントを翻し、白を基調とした鎧を纏う。胸の中央に青い光を宿し、左手は竜の頭をそのものの様な小手。右手は狼の様な小手。肩にはそれぞれ、小型の盾と棘のついた肩の装甲。頭部には中央と左右に角のついたヘルム。ヘルムの奥には凛とした輝きを宿す眼。

 堂々とした佇まいはまさしく〝騎士″そのもの。その姿に不覚にも己の作り主であり、至高の御方の一人であった『たっち・みー』を想像してしまう。

「初めまして、私の名前はオメガモン。世界を守護するロイヤルナイツの末席に身を置くものです。訳あって鎧は外すことはできませんが、ご容赦ください。こちらは、部下のマティスモンです。」

 セバスを前に、その人物は総自己紹介をすると一礼をする。

「こちらこそ初めまして。私の名前はセバス。こちらには少々聞きたいことがございましてお邪魔いたしました」

「聞きたいこと・・・ですか」

 そう尋ね返すおじじさまことオメガモンに、セバスは自分と自身の所属している組織の正体を隠して事情を話す。

「なるほど、この周辺のことを知りたい、と。しかし、残念ながらこちらも少々事情がございまして、この周辺のことは知らないのです」

 そう言って今度は自分たちの状況を話した。

 本当のことを話さず、ただ、異世界から来た。とだけ。

 それを聞いたセバスは、少し考えてメッセージをモモンガに繋げる。

『モモンガ様。少々よろしいでしょうか』

『どうした、セバス』

『先ほどの屋敷に入ったのですが、どうやらこの世界の住人ではない様子。いかがなさいましょう』

『……フム。危険はないのか』

『はい、今のところはこちらに対して友好的です』

『わかった。ならばこちらに来るように説得してくれ。できなければそのままでも良い。優先順位は低いからな』

『かしこまりました』

 そう返答し、メッセージを切る。

「先ほどから静かですがどうかされましたか?」

 メッセージをしている間の沈黙を不思議に思ったオメガモンがそう尋ねると、

「お待たせしてしまい申し訳ありません。主人と連絡をしていたので」

「ああ、そういうことならお気にせず」

「それと、先ほど主人からこちらへ来ていただくよう連絡をいただきましたので、できれば着いて来て頂けますか」

「……少々考えさせてほしい」

 オメガモンはそう返すとしばらく顎に手? を当て考え込むそぶりはしたものの、それはすぐに終わった。

「わかった。ついていこう。場所は?」




 文才がない……
 原作キャラクターの口調ってこれでいいのでしょうか……?
 質問、疑問又は指摘があれば教えていただけると嬉しいです。あと誤字脱字も。
 それではもう一話、追加で投稿します。


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両者、対面

二話目です


三話

 

「こちらでございます」

マスティモンと共にそうセバスから案内されて数十分。着いたところはまるで墳墓の様な所だった。

 案内されたオメガモンとは言うと、表面上は冷静でありながら、心の中は短い間に起きた様々な現象に対処しきれず、騒ぎっぱなしであった。そのまま、セバスに案内され、玉座のままでついていく。と、そこには異形の者たちがずらりと並んでいた。

 青い甲殻を持つ二足歩行の巨大な昆虫の様な人。

 一見して普通の人間のように見えるが、とがった耳と、尾てい骨あたりから尻尾が生えている男。

 褐色肌のオッドアイで、とがった耳が特徴の兄と妹。

 白銀の髪を持つお嬢様の様な者。

 そして腰から黒い翼が生え、角を生やした美しい女性。

 それらがこちらをじっとりとみているのだ。何かを見定めるかのように。

 それだけでも常人ならば気を失うであろう。しかし、さらにその奥。玉座に座するものはさらに異形であった。

  そもそも生物ではない。骸骨だ。黒を基調とした芸術品の様なローブを纏い、黄金の蛇が絡みつく杖をその手に持ち、眼球のない眼窩には、赤い光が差している。

  オメガモンは直感的にこう思った。

(あ、だめだこりゃ逃げるか)

 しかし、ここで逃げれば失礼に値するし何よりも自分と配下の命が危ない。

 覚悟を持って、その骸骨の前に進む。

  そして、玉座に至る階段の前で止まり、そして目の前にたたずむ人物? を見上げる。と、そこで尻尾を生やした男が口を開く。

「我らの至高の御方に対して失礼ではないかね? 『ひれ伏したまえ』」

 その声が聞こえた瞬間、何か圧力がかかったような気がしたが一瞬のことであり、特に何も変わらなかった。

  一方声を発した男はというとなぜか驚いた表情でこちらを見ている。いやその男だけでなくほかの者からも驚いた気配がする。

 それは一瞬のうちに見定める視線から、警戒するような視線へと変わっていく。

「デミウルゴス、良い。気にする必要はない」

 目の前の人物が男――デミウルゴスにそう言うと、

「ようこそ、ナザリック地下大墳墓に。歓迎しよう、私の名は――モモンガだ」

  と、その人物は聞いたことのある名前で自己紹介をした。

 

 

 

 

モモンガ

  さてどうするか。目の前にいるオメガモンを見ながらモモンガはそう思案する。

  異世界から来たというこの男――この世界の情報を持っているとは考えにくい。本来ならばそのまま放置していればいいだろう。しかし、ナザリックに近い場所にいて、さらに自分の知りえない種族の者を連れている。危険かどうか、それを見極めるために連れてこさせた。

「アインズ殿か、ならばこちらも自己紹介を。私の名前はオメガモン。世界を守護する『ロイヤルナイツ』十三の騎士の末席に身を置くものだ。こちらは従者のマスティモン。ところで、一つ質問してもよいだろうか」

「なんだ?」

「――ユグドラシル」

「っ!?」

  目の前の男が発した単語、それは自分がここに来る前にやっていたゲームの名前であった。まさか聞くことになるとは思いもしなかったそれに、思わず反応してしまう。

「その様子だと、やはりこの墳墓の名はナザリックで間違いないようだ」

  またまた目の前の男が発した単語を前に、先ほどの失態はしないもののモモンガは心中で警戒レベルをもう一つ上にあげる。と同時に、ある期待も高くなる。

  ユグドラシルのプレイヤーか、又は別の手段でこちらの存在を知ったか。そして、敵対するプレイヤーか、そうでないか。

  それを確認するためにモモンガも決定的になる一手を打つ。

「オメガモン、といったな。ではこちらからも質問をしよう」

  この一手でこの男に対する全てが決まる。

「あなたはプレイヤーですか」

  緊張からか期待からか、知らず知らずに敬語になる。

  オメガモンは、一瞬考えるそぶりを見せた後

「ユグドラシル、だけを範囲にしないのであれば、『YES』だな」

  と告げた。

  その答えに落胆と期待と警戒が心の中に渦巻く。

「ただ、一つ言わせてもらうと、此処のことは間接的に知っている。敵対はしない」

 また発せられた言葉に、警戒心が強まる。

 知っていると、いうことはネットか何かで見たのだろう。つまり、こちらのやったこと(今までの悪行)を知っているということ、それを踏まえて敵対はしない。

  ―――怪しいとしか言いようがない。

「フム……つまりこちらのことは知っていると。ならばこれまでの行いも知っているのであろう?」

  暗に、敵か味方か。どちらだという意味を込めて問う。

「人伝から聞いた話である以上、正確性もあやふや。その者の心理状態も話の中に加味されているとなれば、信用も半分になる。」

  つまり、と繋げて

「実際に目で見てみないとわからない。人物や行いは聞けば知ることができるが、人となりは知りうることができないのでな」

 そう語る目の前の騎士。

 その言葉を前にモモンガは―――――

「ッハハハ!! ハハハハハ……ッチ、沈静化されたか。確かにな!! そのものが嫉妬か悪意で流したかも知れない噂より、自分の目で確かめた方が確かではあるな。当たり前のことだ」

 高らかに笑うもそのあとに来た沈静化の効果によりすぐに抑えられたが、声に喜色の色がこもっているのを感じる。

 腹芸はここまでか。とりあえず警戒はするが、歓迎はしよう。

 そう思ったモモンガは声高らかに告げる。

「オメガモンにその従者、マティスモン。改めて言おう。―――ようこそナザリック地下大墳墓に。私はあなたたちを歓迎しよう!!」




1/28、矛盾点を発見したので訂正しました。
アインズ➡モモンガ
マティスモン➡マスティモン
まだこの時点ではモモンガでした・・・
そして、感想欄で言われた間違いを直しました。
 デジモン好きが聞いてあきれる・・・・(´;ω;`)


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力の片鱗

どうも、おじぎりです。
いやー、気が付けばもう1月終わりごろ。
そして近づくリア充御用達のイベント。その名も・・・言いたくない!
さてさてそれはそうと4話目です。
楽しんでいただけると嬉しいです。
それでは、本編へ!!


 ナザリック地下大墳墓。

 いくつもの広大なエリアを有す、その墳墓の一つ、第6階層のジャングル。その中にある円形闘技場。

 その中では――――

「フッ!」

 オメガモンが大量のモンスターを相手に剣を振り、大砲を打ち、縦横無尽に蹂躙していた。

 

―――ことは2時間前―――

 

 モモンガはオメガモンを歓迎する旨の言葉を発すると、周りにいるシモベたがざわめきだした。

「静かにせよ。さて、オメガモン。あなたはこれからどうするおつもりで?」

 シモベたちを静めた後、オメガモンにこの後の予定を聞く。

「うむ、それがまだ決まってなくてな」

「それならこちらで過ごしてはどうだ?」

 モモンガの発したその提案にまたもやシモベたちが騒ぎ出す。

「危険です!!」

「このようなものを栄えあるナザリックに迎えるなどー」

静かにせよ(・・・・・)!!」

 一喝してそれらを静めた後、

「これは今後のことに必要なことなのだ」

 そして説明を始めた。

 ・協力者がいるということは、様々な方法が取れる。

 ・効率が良くなる。

 ・第3者からの目線があれば何か気づかないこともわかる。

 と、大方この様な理由でナザリックに迎え入れる。異論のあるものは挙手せよ。と

 むろん誰も異論があるわけでもなく、平穏にことが進むかと思った―――が、一人大型の二足歩行の虫のモンスターが挙手をする。

「なんだ、コキュートス」

「ソノ御方ヲ迎エ入レルコトニハ賛成デス。コノコキュートスガ知リタイノハ、力量デゴザイマス。ドノ程度ノ力ガアルノカ。迎エ入レルイジョウ、知ッテオカナケレバナラナイカト」

 コキュートスと呼ばれたそのモンスターはそう質問をする。

「ああ、そうだな。オメガモン。そういうわけだが――」

 モモンガは尋ねる。

「もちろん構わないさ。マスティモン、異論は」

「いえ、ご主人様の仰せのままに」

「ならば決まりだ」

 異論はない。言葉には出さなかったがそれは相手にはうまく伝わった様で、おもむろに立ち上がると玉座から降りてドアに手をかける。

「着いて来てくれ、力量を試すには打って付けのところがある。そこてやろう」

 

―――――――移動はCUT!!

 

 着いたのは6階層ジャングルの中にある円形闘技場。その中央にオメガモンはいた。

「まずルールを確認する。

 ・戦うのは一人

 ・モンスターは出てくるごとに強くなる

 ・限界を感じたら速やかに合図を出すこと

                   以上で間違いないか」

 シモベとオメガモンにモモンガはルールの確認をする。

 頷くシモベとオメガモン。それを見たモモンガは

「それでは始めようか。--≪下位アンデット創造≫--」

 杖を掲げるとたちまち地面を突き破って現れるアンデットの大群。一体一体は強くはないが量だけはかなりの数がある。普通の人ならば背を向けて逃げ出すはずの光景にオメガモンは――

 ジャコッ! ザン!! 

 すぐに剣を出現させ切りかかっていった。

 それから1時間。すでに大量のアンデットを倒している。敵も強くはなってきているが、疲労の様子を一つも見せずにひたすらに蹂躙をしていた。

 骨を切り、武器を破壊し、後ろら襲う敵は振り向かずに剣を突き出す。もう片方の腕で別方向から来た敵をかみ砕く。

 ただただ、蹂躙していくその様子にシモベたちは感心する。

「なかなかの腕でありんすね」

「へえー。結構やるじゃん」

「なるほど、これほどまでですか」

「ココマデトハナ」

 その言葉にマティスモンは当然よ、と返す。

「私の主が弱いはずがない」

 自慢げに言う彼女に、デミウルゴスが訪ねてくる。

「あのオメガモンという方は、どのような方で?」

 そうね、と一呼吸おいて

「かつてデジタルワールドという世界の秩序を守る13人の騎士の一人であり、ありとあらゆる環境下でもその絶大な力を如何なく発揮することのできる御方よ。ここ数日でさらに力が上がったのだけれど、私はその力を見たことがないわ」

 その言葉に、シモベたちの警戒心と関心が高まる。と、

「では終わりにしようか。≪|召喚:根源の水精霊《サモン:ブライマル・ウォーターエレメンタル》、召喚:根源の土精霊(サモン:ブライマル・アースエレメンタル)召喚:根源の風精霊(サモン:ブライマル・エアエレメンタル)、|召喚:根源の火精霊《サモン:ブライマル・ファイアーエレメンタル》」

 レベル87の精霊を召喚して向かわせる。レベル100のプレイヤーでも4体苦戦するものだろう。シモベも、モモンガもそう思っていたが――――

「なるほど、では少しばかり張り切るとしよう」

 自信満々にオメガモンは言うと、出現させている剣が青く淡い光を放つ。

 そしてその剣を脇に置き、回転しながら四方向から襲ってくる精霊たちを斬る。

 ――――『オールデリート』――――

 瞬間、精霊が消えた。

 冗談でなく、本当に消えた。まるで存在そのものが最初からなかったかの如く。

 シモベも、モモンガも、そしてマスティモンも。何が起きたのかわからないと言わんばかりに唖然としている。

 「モモンガ殿、これでよろしいですかな?」

 オメガモンの問いかける声が妙に闘技場に響き渡った。




どうでしょうか?
なるべく早くに投稿したいと思います。
それでは!! 次回また会いましょう!! 
追伸:誤字脱字、又は感想文が増えてくれますように…!! 何でもしますから(なんでもするとは、言ってな、あっちょっと待って、助けてください!!お願いします!! あ、あ、ああ、アーーッ♂!)


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5話

 どうも、おじぎりです。
 ボロボロですが何とか生きてます。
 しかし驚きました……80近くものお気に入り追加。うれしいです。
 それでは皆様、本編をどうぞ。


 ―――敵に回さなくてよかった。

「モモンガ殿?」

 闘技場の真ん中で佇むオメガモンを見て、モモンガはそう思う。

 ―――あの力はいったいなんだ? 魔力の気配も無く、スキルの発動でもない。未知の力。それもプライマルエレメンタルをたった一回振っただけで消し飛ばした。

「モモンガ殿?」

「……あ、ああそうだな。皆、これで異論はないか」

 三度目の呼びかけで思考を止めて己のシモベに問いかける。

 今度は誰も意見が上がらなかった。

「ならばお前たちは各階層に戻り守護せよ。アルべドとセバスは私についてこい。オメガモン殿とマスティモン殿はこちらへ」

 シモベたちは頷くとアルべドを除き己の担当する階層へ向かう。

 アルべドはモモンガのもとに向かい、傍に着いた。セバスはモモンガの後ろに着く

 それを見たオメガモンはマスティモンを傍に置いてモモンガと共に円卓の間に向かう。

 

 *****

 

「さて、今後のことについて話すことがあるのでアルべドとセバスはそこで待機せよ」

「モモンガ様!! 危険です。せめてセバスを――」

「いや、これは重要なことだ、我々二人で決めなければならない」

「・・・かしこまりました」

 しぶしぶといった表情で従うアルべド。セバスは一礼して待機している。

「ならばマスティモン、お前もここで待機だ」

「かしこまりました」

 そう一礼して待機する。

「かたじけないな」

「いや、それでは行こうかモモンガ殿」

 そういうと二人は円卓の間に入る。

 扉が閉まるとモモンガはフウ…と一息着くと、

「精神的に疲れた…」

 とボロを出した。

「あ、此処は防音もしっかりしているので大声出しても大丈夫です」

 その声をきいてオメガモンも―――

「あ――いやだ。疲れた。にしてもよく持ちましたねそのロールプレイ」

「ええ、まあ・・・よくやっているので、貴方もよくロールプレイできますね」

「いや、この体になってなぜかこうなるんですよ。体に引っ張られているんですかね?」

 先ほどの威厳などどかかへと捨て去り軽い口調で話し始める二人。

「しっかしまぁーよく造りましたね。此処」

「ええ。ギルドのみんなで作り上げたものですから」

「みんな。ですか・・・」

「ええ。あなたはいたんですか?」

「いやー基本ソロプレイですから」

 和気藹々と話す二人。

「アッハハハハハハ!! やりますねぇ~、見たかったです。VS大規模討伐隊の激戦。ネットの書き込みは見たんですけど、動画を見ることはなくて」

「いやいや、貴方のイベントの究極体100体討伐もなかなかじゃないですか」

「いやいやいや」

 時間にして一時間。すっかり打ち解けあったところで

「・・・さて、もう少し話したいのですがここまでとしましょう」

 と前置きして

「どうします?」

 言わずもがな今後の予定のことである。

「うーん、と言いましてもねぇ・・・・まず近くにあるコミュニティーに接触するしか・・・」

「此処の世界のレベル1がこちらのレベル100かもしれない今、それは危険じゃないですか?」

「でもいつまでも引きこもる訳にはいかないでしょう? 何しろ目立つ建物がいきなり現れたんです。いつか見つけた人が此処を調べないとも限りません。その時に対処するのでは遅すぎると思うのですが・・・」

「・・・まあ、確かにそうですね。じゃあ二日後に辺りの散策でもしましょう」

 そうですねと返し、数十分お互いに検証したところで二人は円卓の間から出た。

 円卓の間から出るとなぜかマスティモンとアルべドが手を握り合っていた。

「ほう、いつの間にやら打ち解けたようだな」

 再び元のロールに戻るとそうアルべドにいうモモンガ。

「ええ、お互いの目的が一致したので・・・ねぇ?」

「ええ。フフフフ・・・・」

 そう言ってほほ笑む二人。その後ろにいるセバスは心なしか青褪めている。

 モモンガはこの話題に突っ込むのは危険だと察知して、次の話題に移る。

「では、二日後に周囲の散策を始める。それまでに準備をするとしよう。オメガモン殿、送っていきましょう」

「いや・・・モモンガ殿。ここに拠点を置いてもいいかな? そうすればお互いに近い方がいいだろう」

「できるので?」

「ああ、というかあれはアイテムのうちに入るのだよ。手持ち式の移動拠点としてな」

「でしたら6階層の空いているところならば」

「感謝する。マスティモン、行くぞ」

「わかりました」

 

 ―――二日後――――

 

 オメガモンとマスティモンはダークエルフーーアウラに許可をもらい、選んでくれたところに拠点を置き、準備等を済ませてモモンガの自室にいた。

「フム、こうか? いやこうだな」

 モモンガは鏡の前で手をかざしている。遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)を使っているのだ。

「モモンガ殿? これは・・・?」

「まあ、遠くを見るのに使うものだと思ってくれれば・・・ん?」

 オメガモンの問いかけに応えようとしたとき、何かを発見する。

「祭りか?」

 見つけた村から煙が上がっていた。

「フム? いや襲われているのではないか?」

 覗き込んだオメガモンがモモンガの疑問に答える。

「今なら助けに行けるが・・・

「見捨て・・・いや助けましょう。此処の情報を得るいい機会です」

 オメガモンのセリフにかぶせてバッサリと切り捨てようとするが一昨日のセリフとかつてのギルドメンバーの姿を思い出し、助けに行くことを決めるモモンガ。

「たっち・みーさん。今度は恩返ししますよ」

 そう呟いて、アルべドとともに準備に取り掛かった。

 

******

 

 ―――エンリ・エモットは妹のネムを抱えながら恐怖に怯えて逃げていた。

(なんでこんなことになったの!?)

 いつも通りの日々になると思ていた。しかし突如現れた騎士団がそれを壊した。父が必死に騎士を止めて逃げるように言ったのを背後に聞きながら森まで逃げていた。

 しかし、普段から体を鍛えている騎士たちの体力にかなうこともなく、さらに恐慌状態のことも相まってもつれて転げる二人。

 騎士が追いつき、剣が背中に当たる。熱い感覚が襲い掛かってくるが、ネムを抱え歯を食いしばって耐えている。

 騎士が剣を再び振り掲げるのを陰で確認する。

(嗚呼、此処で死ぬのね…)

 そう諦めかけていたが、痛みは襲い掛かってこない。不思議に思い、後ろを振り返ると奇妙な竜の頭部が騎士の首を掴んでいた。

 もがく騎士を掴んでいる頭部の元を辿るとぽっかりとした深淵がそこにあった。

「――抵抗せぬ民人に剣を振るうとは騎士の風上にも置けんな」

 その深淵から声がしたあと、巨大な影が姿を現す。

 マントを羽織り、白い甲冑を被った者が出てきた。竜の頭部は装甲の一部なのだろう。もう片方の腕は青い狼の頭部を模した装甲だ。もがいている騎士より一回りも大きい

 そんな奇妙な姿であるにもかかわらず、なぜかお伽噺に出てくるような騎士の様な。そんな高潔さを身に纏っていた。

「遅れて申し訳ありません」

 再び深淵から声がして、黒い翼と白い翼の両方を身に纏う女の人が現れる。

「いや、ちょうどいい。そこの娘二人を治癒してくれ」

「かしこまりました」

 そう言うと二人の前に立ち、

『ファイナルオーラ』

 手を向けたと思えば、光が溢れ二人を包み込む。そして光が収まると無傷の状態になる。

 驚愕する二人を置いて状況はさらに進んだ。

「待たせてしまったな」

「いや、このぐらいなら待ったという範疇ではないさ」

 深淵からまた。今度は悍ましくも神々しい雰囲気を放つ骸骨と、黒い翼を生やし甲冑に身を包んだ女性。

 もう、エンリの脳のキャパシティーはオーバーし、ただただ見ることしかできない。

「どうだ? 強いか?」

「そう見えるか?」

「いや、見えないな」

 そう笑いあう二人に、騎士たちは逃げ腰になる。

「フム、相手が違うと逃げ腰になるのかね?」

 骸骨がそういうのと同時に背を向けて逃げ出す。

「仲間が此処にいるのだがな・・・・」

 そう言って巨大な騎士は掴んでいる方の手に力を入れる。すると濁った音がして騎士の首はありえない方向に曲がった。

「ならば、"それ"を使っていいか?」

「ああ、スキルを使うのか。かまわないさ」

 そういって、地面に置く。と骸骨は何かを呟く。すると死んだ騎士に黒い泥のような液体が覆い被さり、それが消えると騎士は悍ましいアンデットに成り替わった。

「さて、これで現地での準備は整った――――デスナイトよ、この村を襲っている騎士どもに恐怖を植え付けろ」

 厳かな声で骸骨は、アンデット―――デスナイトに命令を下す。

 蹂躙する者が蹂躙される者に成り下がった瞬間である。

 ―――尤も、それを知るものはこの場にいるものを置いて他にはいないが。




 無理やりだがようやく来れたカルネ村。やったねスレイン法国!! (頭痛の薬と胃薬という)友達増えるよ! やったね!!
 次回、蹂躙。ニグ何とかサンのウンメーは如何に!! 法国死す! デュエルスタンバイ!!
 できたらギルド加入まで行きたいです。
 それでは次回!!


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蹂躙劇

 はい、どうもおじぎりです。
 5話でここまでのお気に入り登録に驚きを通り越して恐怖しています。
 ヒィィ!? 怖い!
 ・・・・さて、お話はここまでで本編をどうぞ!


――ロンデス・ディ・グランプ――

 

「オアアアアアアアァァァァァ!!」

 いったい何の冗談だ。ロンデスは何度目かわからないつぶやきと己の信じる神への罵声を心の中で繰り返していた。

 数分前まで狩る側であった自分たちが今度は狩られる側になった。しかも悍ましい化け物からというおまけ付きで。

 眼前の化け物に名を付けるとするならば『死の騎士』であろうか。その顔の部分が開かれている兜からは生者への渇望、又は恨みといった負の感情が伝わる。

 村人を適当に殺して撤退するはずだった。村の中央に村人を集めていたとき、騎士の一人がスライムのように地面を跳ねていったのを確認したのが悪夢の始まりだった。

 そこから一人、また一人と殺されていった。殺されたものの共通点は『背を向けて逃げた』ということ。逆におびえながらも攻撃してきたものには剣を使わず、盾で弾き飛ばす。死なない程度に。つまりこれは、猫がネズミを遊びながら殺すといった『お遊び』程度にしか、あの死の騎士は感じていないのである。

 弾き飛ばすとき、切り殺す時に見せる表情が奴の感情を物語っている。ジワリ、ジワリと弱らせられている自分たちの表情は、先ほどまでの村人たちと大差ないだろうし奴の喜びをさらに大きくさせるものであろう。

 幾人かが膝をつき神に慈悲を乞うようにつぶやいている中、一人だけが違う反応を見せた。

「き、貴様ら! あの化け物を抑えよ‼」

 音程の狂った声でそう叫ぶのは死の騎士の傍にいたベリュース隊長だ。

 国ではある程度の資産家であり、箔をつけるためにも舞台に参加した男である。

「俺は、こんなところで死んでいい人間じゃない! お前ら、時間を稼げ! 俺の盾になるんだ!」

 その命令に反応するものは当然ながら誰もいない。そんな男のためにかける命ではないからである。いや、一人だけ反応したものがいた。

 ―――傍にいた死の騎士だ。

 死の騎士はベリュースの方を向くとゆっくりと近づいていく。

「ヒッ!? く、来るな!! お、お前ら! 金貨100、いや500枚やる! 助けろ!」

 かなりの大金を提示して助けを求めるが誰も動かない。お金より自分の命が大事だからだ。

 いや、もう一人いた。一人というよりかは半分といった方が正しいのだろうか。体長の近くにいた半分に切り裂かれた死体が足を掴んだのだ。

「――あああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 掴まれたベリュースは絶叫と共に地面に崩れ落ちる。その無防備な体を、死の騎士のフランベルジュが突き刺さる。一度だけでなく、何度も、何度も。

 耳を塞ぎたくなるような絶叫と命乞いを繰り返していたベリュースがやがて声を出さなくなり、痙攣のみを繰り返してやがて糸が切れたかのようにぷっつりと途切れると周りにいた仲間たちが一斉に錯乱し悲鳴を上げ始める。

 ロンデスはその声よりも大きい悲鳴のような声で撤退の合図を出すと、全員が一斉に走り出す。

 命がかかっているからか、今までにない統率を見せると死の騎士は逃がさないとばかりに動き始め、その巨体からは到底うかがえないような軽やかさで一息の間に数人を殺す。

 ロンデスはそんな死の騎士に対し、剣を振るうも届かず――――

 ――――最後に見たのは反転した地面と、首から上のない己の体だった。

 消えゆく意識の中、誰かの声が聞こえた気がした。

 ~~~~~sideend~~~

 

~~モモンガ~~~

「そこまでだ死の騎士(デス・ナイト)よ」

 オメガモンに提案されて被った仮面越しから自分のスキルで生成したアンデットに指示を下すと、一緒に来たアルべドと共に地面に降り立つ。

「始めまして、諸君。私の名前はアインズ・ウール・ゴウンという。投稿すれば命は保証しよう。まだ戦いたいと―――」

 言い切る前に地面に置かれたというよりは投げ出される剣。それを見てアインズは続けて発言をする。

「諸君には生きて帰ってもらう。そしてつたえよ、飼い主たちに。これ以上このあたりで騒ぐようであるなら、今度は貴様らの国に死を振りまくと」

「さあ、行け!」

 その声と共にはじかれたように逃げ出す騎士たちをしり目に、今度は村人たちの方に視線を向け、怯えるようにこちらを向く人々にこう告げた

「さあ、君たちはもう安全だ。安心してほしい。」

 まだまだ演技は続く―――モモンガの精神の疲れを無視して。

~~~sideend~~~~

 

~~オメガモン~~~

 先に飛行の魔法で飛んで行ってしまったモモンガにぶつくさ内心で文句を言いながら数十分遅れて村にたどり着く。

「オメガモン殿、先に行ってしまい申し訳ない」

 村についたオメガモンに開口一番に詫びを告げるモモンガ。

 先に詫びを言われてしまえば、少しばかり文句を言ってやろうかという気も起きなくなってしまい気にしていないという旨の返答を返すと何か情報は得られたかと問う。

「少しばかり有益な情報は得られましたね。周辺の地理情報とその国家間の関係、あとは通貨などですがね」

「そうか。で、顔を隠すことで無駄な混乱は避けられたようだな」

「ええ、素顔のまま言っていたら面倒なことになっていましたね。あの少女たちにはあとで少し記憶の改ざんを施しておきましょう」

「魔法でそんなこともできるのか」

「ええ、といっても消費される魔力は大きいですけどね」

 埋葬をしている村人たちを見ながら話しをしていると、一人の男がオメガモンの存在に気が付きモモンガに聞いてくる。

「アインズ殿、この方はいったい・・・?」

「ああ、村長殿。この方は私の友人でしてね、偶然近くを通った時に先程逃げた騎士たちをみてこちらに来たのです」

 そう説明するモモンガに納得した村長と呼ばれた男は再び埋葬の作業に戻る。

「モモンガ殿、今のは・・・」

「ああ、言い遅れましたが今はアインズと呼んでください。アインズ・ウール・ゴウンです」

「ギルドの名前を使うのか?」

「この世界に私たちと同じプレイヤーがいると仮定したとき、ギルド名の方がわかりやすいかと思いまして」

 まあそれだけじゃないんですけど。というモモンガ――アインズととりとめのない話としているともう埋葬が終わっていた、日ももう地平線に近づいていた。

 アインズは村を去ることにし、最後に別れの挨拶をしようと村長の方に向かうが広場の隅で村人と真剣な表情で話す村長を見て厄介ごとのにおいがすると、内心で疲れたようにつぶやくのであった。

「どうかされましたか? 村長殿」

 村長の話だと戦士風の者が近づいているという話であり、乗り掛かった舟ならばと無償で助けることにする。

 村人たちを村長の家に集めオメガモンにその家の守備を任せ、村長と共に近づいて来る者たちを迎える。やがてその姿が見えると統一感のない各自の手を加えた武装に違和感を感じる。

 やがてその戦士風の一団が広場に入ってくると村長とアインズの前に統率者らしき男が現れる。

「私の名前はガゼフ・ストロノーフ。リ・エスティーゼ王国、王国戦士長を務めている。この近隣を荒らしまわっている帝国の騎士達を討伐するために王の御命令を受け村々を回っているものである」

「王国戦士長・・・・・・」

 その男、ガゼフという者の名前を聞いて村長がぼそりとつぶやく

 そのつぶやきにアインズが村長にだけ聞こえるような声で問いかける。

「どのような人物で?」

「商人たちの話では、かつて王国の御全試合で優勝を果たした人物で、王直属の精鋭兵士たちを指揮する方だとか」

 それを聞いて今度は戦士たちの武装に目を凝らすと胸に同じ紋章が刻み込まれているのがわかる。村長の話に出てきた王国の紋章なのだろう。

「この村の村長だな」

 アインズの問いかけに応えた村長にガゼフが聞く

「横にいる者、そして後ろで家を守護しているのは一体誰なのか教えてもらいたい」

 村長が答えようと口を開くのを制しアインズがそれに答える。

「それには及びません。初めまして、王国戦士長殿。私はアインズ・ウール・ゴウン。この村が騎士に襲われているのを見まして助けに来た魔法詠唱者(マジックキャスター)です。あちらにいるのは私の友人のオメガモンです。」

 それを聞いたガゼフは乗っていた馬から降りると頭を下げて感謝をした。

「この村を救っていただき、感謝の言葉もない」

 王国戦士長という肩書を持つ者だというのに得体のしれないアインズに頭を下げる。

 その対応からアインズは大体の人柄を判断する。

「・・・・・・いえいえ、実際は私も報酬目当てですから、御気にされず」

「ほう、といことは冒険者なのかな?」

「それに近いものです」

「ふむ・・・となると・・・・」

 そんなアインズとガゼフの話を遠くから聞いていたオメガモンは、傍にいたマスティモンから話を聞いていた

「オメガ様、この村に接近してくる気配が」

 ご主人様はなんとなく恥ずかしいからと、治すように言っておいた呼び方で報告をするマスティモン。

「数は?」

「十数人程度です。装備は軽装、傍に天使と思わしき風貌のデジモ・・・モンスターを使役しています。なお、村を包囲するように地下図いてきている模様」

「強いか?」

「いえ、人もその使役しているモンスターもさほど脅威ではないかと。しかし隊長らしき者が持っているアイテムが少々強力なもので・・・」

「どのようなものだ?」

「何か・・・封じ込めている気配が・・・・申し訳ありません。これ以上は」

「いや、良いそこまでわかれば準備のし様がある」

 話し込んでいると、どうやらガゼフの部隊の一人が大きな声で先ほどマスティモンが言っていた者たちの情報を伝えに来た。

 

  *****

 

「なるほど……確かにいるな」

 家の陰から周囲を覗き報告された人影を窺う。

「彼らはいったい何者なのでしょう? このような村に価値はないと思うのですが?」

「ゴウン殿に心当たりは……無いようだ。となると狙いは」

「憎まれているのですね、戦士長殿は」

「地位上仕方がないことだが・・・本当に困ったものだ。これだけ天使をそろえることができ、装備も充実しているところを見ると、相手はスレイン法国。そしてこのような任務に従事するとなれば、特殊工作部隊の六色聖典。噂には聞いていたが、数も腕もあちらの方が上」

「ゴウン殿、オメガモン殿、良ければ雇われないか?」

 アインズが召喚されている天使についてつぶやいているとガゼフがそう問いかけてきた

「……お断りさせていただきましょう」

「申し訳ないが私も。国家間同士のいざこざに巻き込まれるのは御免でね」

「王国の法を用いてもか?」

「それならば我々は抵抗いたしますよ?」

「・・・恐ろしいな。法国の者と戦う前にこちらが全滅してしまう」

「御冗談を。しかし、理解していただけたのなら幸いです」

 ガゼフは、決意を決めるとアインズとオメガモンに礼を言い、できればこの村を守ってほしいとお願いをする。

 それに対してアインズとオメガモンは己の名前にかけて約束すると、ガゼフは部隊の者を引き連れて外に出て行った。

「アインズ殿」

「・・・どうしました、オメガモン殿」

「先ほど私はガゼフ殿の話を断ってしまったのだが・・・」

「みなまで言わずとも。うすうす気がついてはいましたから。かまいませんよ。私もいろいろ支援いたしますので。ただ、六色聖典とやらは逃がさず殺さずでお願いします。聞きたいことがありますので」

「承知した。なら、いつ行けばいいだろうか?」

「ガゼフ殿が危なくなっってから出ては? モニターを出しておくので」

「承知」

 そうして二人でモニターを見ているとだんだん押され始めたガゼフの部隊を見て、オメガモンとマスティモンは頃合いとみて外に出るのだった。

 

  ***

 

 ――――何者だ、この者たちは。

 ニグン・グリッド・ルーインは突如現れた乱入者に最大限の警戒をしていた。

 ガゼフ・ストロノーフにとどめを刺そうと、部下に天使を仕向させた瞬間に天から降ってきた二人の人物――奇妙な甲冑を纏った性別不明の者と顔が見えない兜らしき女――はどうやったのか一瞬で天使たちを消し飛ばすと、女はガゼフとその部下を浮かせて後退していった。

 たしかに飛行という魔法もあるが、それでも浮かせることができるのは術者一人だけだ。それをあの女は何の苦も無く行使したどころか大の男たちを涼しげな顔で浮かばせて飛んで行ったのである。

 自分の知らない高位の魔法詠唱者(マジックキャスター)か、それとも生まれ持った異能(タレント)か。どちらにせよ警戒する必要がある。しかし、それだけでなくこの目の前の者。女が後退し一人だけだというのに只々仁王立ちし、腕を組みこちらを見据える姿は覇気を感じる。圧倒的強者特有の気配が。かつて己の顔に傷をつけた蒼薔薇と同等いや、それ以上の。

 再び召喚された天使たちを一旦引かせ、自分たちを守るように配置する。そしてそのまま様子を見ているとゆっくりと目の前の者は口を開いた。

「初めまして、といえばいいのだろうか。スレイン法国の諸君。私の名前はオメガモン。訳あって旅をしているしがない根無し草だ」

「先ほど運んで行った彼女は私の仲間だ。さて、まずは(・・・)あなた方と取引がしたいと思い、少しばかり時間をくれないだろうか?」

 目の前の人物の声からして男だろうか。名前と性別しか知りえた情報はない。根無し草とは言っているが冒険者だろう。しかし、プレートが見当たらない。それにあれほどまでの強さを持つ冒険者の中にあの男の名前は入っていない。偽名という線もあり得る。もう少し情報を引き出す必要があると判断したニグンはそのまま会話を続けるように顎をしゃくる。

「これはありがたい。まず、初めに言っておかなければならない」

 言葉を区切る。瞬間、

「貴様らで私を倒すことは不可能である。と」

 ――――ザワリ。

 風が吹いていないのに、草原が揺れた。目の前の男を中心として。 

 一瞬恐怖を感じたニグンであったが、数という絶対的優位に冷静に保つ。

「確かに私一人では負けるだろう。しかし、この数、何度も召喚できる天使を見て、そのうえで言っているのであれば無知と言わざるを得ないな」

「ふむ―――なるほど。確かに数では私は劣っている。何度も召喚できるとなれば不利、ではある。が、

 

 

 

 

 

 逆にその態度ならば問題ないからこそ来た(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)。という結論には至らないのか?」

 正論である。それに見合った実力があるならば。

「で、なんだ。取引というのは、命乞いか? それならー」

「いや、命乞いではない。それと、取引とは言ったが実際に言えば命令に近い。この村を、もっと言えばガゼフ・ストロノーフをあきらめ即刻自国へ戻れ。であるならば見逃そう。そうでなければーー」

 ギイィンッ!!

 オメガモンがすべてを言う前に天使を突撃させたが、聞こえるのは鉄を貫き肉を抉る音ではなく、硬い何かに阻まれた音であった。

「・・・・これは交渉決裂ということでいいのか? ならば――――」

 容赦は必要ないな。

 その言葉と共に、突撃した天使が『消えた』。

 天使が消えて阻まれていた視界が開ける。そこには、左の奇妙な装甲から剣を出現させたオメガモンがその剣を横に振りぬいた姿勢で止まっていた。

「次はそちらだな」

 そういうと今度は右の装甲から筒の様な者を出現させ、こちらに向ける。瞬間、筒が火を噴く、地面が炸裂する。

 何とか無事ではあったが、天使たちが一斉に消えている。ニグンは己の召喚した監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)に目を向けるも、目に映るのは消えた後の光のかけらのみ。

「あ、あ、あ、ありえるかあアァァァァッ!! たかが人間ごときにこのようなことができるはずがない! 何者だ!! 貴様の様な者が無名でいるはずがない、本当の名前は何だ!!」

 錯乱し大声で叫ぶニグンに対して、それに冷静に答える

「偽名でも何でもないのだがな・・・・・。それにたかが人間といったな? いつから私が人間だと錯覚していた?」

 あくまで冷静に答えるオメガモン。夕日の光がその装甲に影を落とし不気味にさせる。

 自分に指示を求める部下をよそに、本国からもらい受けたクリスタルを取り出す。

「お前たち、最高位天使を召喚する。 時間を稼げ!」

「・・・・・・?」

 その声に一気に色めき立つ部下たちに、そして聞こえてきた最高位天使というワードに警戒するオメガモン。

「確かにお前は強かった。しかし、このクリスタルで召喚される天使はかの魔人を単騎で滅ぼした最強の天使!! 貴様にはこれを使うだけのつよ跡価値があると判断した。個人的にはお前をこちらに引き込みたかった。しかし、それは許されてはいない。せめて覚えておこう。お前の名前を」

 そう言い終わると同時に、クリスタルから光が溢れ――――

「見よ! 最高位天使の尊き姿を! 威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)

 光り輝く翼の集合体が現れる。笏をその手に持ち、たたずむその姿に歓声が爆発する。

「!?・・・・アインズさん? え? ああ、なるほど”コール”ですか。え? あれは威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)。はあ・・・最高位天使と言ってましたが・・・え? そこまで強くない? あっそうですか。まあ、見た感じそうですしね。じゃあこちらも召喚します。大丈夫です、あちらより確実に強いんで」

 オメガモンが頭に手を当ててうつむいて何かをつぶやいている。こちらまでには届かないが恐れをなしているのだろうと思いながら反応を待っていると。

「それが貴様らの『限界』か? ならばこちらも行こうか」

 顔を上げてそういうオメガモンの右の装甲には、怪しく金色に光る右腕らしきものが挟まっていた。

―――召喚。七大魔王が一人、『色欲のリリスモン』――――

 かつてゲーム時代に、イベントで手に入れたアイテムがある。その一つに、『魅惑の金腕』というものがある。

 これは使用するとその場でリリスモンが召喚。そのまま配下になるというアイテムであり、その枠は最初からプレイヤーが持っていた枠とは全くの別物で埋まる。つまり、何体でも配下にすることができるのであるが、これの上位互換に『魔性の黄金腕』がある。これは二つ名持ちのリリスモンを呼び出すことができるのである。

 二つ名持ちとは、通常のデジモンとは比べ物にならないくらい強力で且つ様々な特殊能力を有している。

 このアイテムを入手するためだけに挑戦し、撃沈してきたプレイヤーは数知れず。高難度で、アイテムはランダムで手に入るため、入手できるのはほぼいなかった。

 オメガモンはそれをあと3つもっている。 

 ほかのアイテムを使ってもよかったのだが、使い勝手の良さでリリスモンが妥当だろうと判断した。

 この二つ名持ちリリスモンの特殊能力。それは完全魅了、悪魔タイプのデジモンの能力全大幅向上、さらに状態異常の確率を8割以上にする。というもの。元々の能力が大幅に上がっているうえにこの特殊能力で泣かせられたプレイヤーは数知れず。

 「さあ、こちらも最高位で行くとしよう」

 黄金の腕が光り輝き―――

 魔性の女帝が姿を現した。

 濡れ羽色の艶やかな髪。整った顔立ちに怪しげに垂れた目は情欲を誘う色香を放つ。着崩した和服からは豊満な胸が見え隠れしている。

 しかし。右腕の黄金色の異形の腕、背中から生えている黒い翼が人でないことを示している。

「あ~ら? かわいらしいボウやがたくさんいること」

 その女帝はニグンたちを見ると上唇を少し下で舐める。

「色欲の魔王。早速で悪いのだが・・・」

 それを後ろからオメガモンが声をかける。

「何か御命令でしょうか、あなた様?」

 微笑を浮かべながら聞く。

「あそこにいる天使を始末――」

「アアァァァァァラアァァァァァァ? 天使? 天使ぃぃぃぃ? ・・・失礼いたしました。かしこまりました」

 そう言って天使の方を向く。

「御免なさいね? 遊びたかったのだけどねぇ? 天使がいるからしょうがなわよね」

 と空中に何かを書き始めた。

 それは魔法陣。その光は強くなり―――

 『ファントムペイン』

 瞬間威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)の体に紫電が走り、その姿が消え去った。それはあっけなく。突然に。

「――――何、者だ」

 ぽつりとつぶやいたその一言に応える言葉はない。

 ―――ピシリッ!!

 空間がひび割れたような音を出し、割れる。しかしすぐに元に戻る。

「フム、どうやら監視がいたようだな。だが私の友人が対策をしてくれたのでほとんど見られてはいない。安心してくれ」

 その一言で、監視されているという事実と、この男と同じ強さの者がもう一人いるという事実を読み取り絶望する。

「さて、それで終わりか? なら―――」

「お、おまちくだs--」

 ニグンが命乞いをする前に、装甲が意識を奪った―――。

 

 ****

 

「さて、これでいいか。リリスモン、戻るぞ」

「かしこまりました。あ・な・た・様 」

 にっこりと腕を絡ませるリリスモン。

「・・・何の真似だ?」

「ダメでしょうか?」

「いや、いきなり呼んだのだぞ? 何か思うことはないのか?」

「? どうしてでしょうか。あなた以外に私の『王』は務まらないのですよ? それともご迷惑でしたか?」

「・・・・好きにしろ」

 泣きそうな顔をされて断ることもできない。そのままにさせて村まで歩く二人だった。

 そのあとアインズに根掘り葉掘り聞かれるのと、マスティモンとリリスモンが喧嘩腰になるのと、リリスモンとアルべドが仲良くなったりとあったがそれは割愛。




 途中どこまで切ればいいのかわからなくなってこの文字数になってしまいました。ご容赦ください。
 さて、もう一体リリスモンが出ましたが、このシステムについてはこちらのオリジナルです。リリスモンにした理由ですが・・・単純です。

 エロいかr・・・おや、誰か来たようだ。ではまた次回まで! 次回こそは冒険者編に突入させると思うので!!
 


 ハイハ~イ・・・エ、ア、チョ、マッテ、ファントプペインハ・・・・アーーーー♂


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冒険者として

 どうも、おじぎりです。
 今回は〇の〇〇のお二人と対面します。
 こんなん違げぇっ!! と思ったら言って下さい。直していきたいと思うので。
 それでは、本編


 リ・エスティーゼ王国の都市、エ・ランテルのある宿。冒険者たちが飲み、食い、そして騒ぐその場に、場違いともいうべき二人が現れたのは昼過ぎのことであった。

 一人は漆黒の全身鎧(フルプレート)に身を包んだ性別不明の者。もう一人はそしてその後ろには艶やかな黒髪と白魚の様な肌をしたおしとやかそうな美女。

 明らかに異色であるその二人の唯一の共通点は首から下げている(カッパー)のプレート。

 その場にいた冒険者は一斉に視線をそちらに向ける。

 付き従う美女に目を向けニヤリと笑う者、前の方に目を向ける者。さまざまであるが、そのすべてを一身に受けても我関せずと奥のカウンターにいる主人の元に向かう。

「宿か。何泊だ?」

「―――一泊だ」

 

 ****

 

 時を同じくして王国のギルド。ボードに張り付けられている依頼書を見ている二人組がいた。

 一人は白い全身鎧(フルプレート)に両手には奇妙な装甲を装着をし、赤いマントを付けている者。もう一人は白く薄い衣に身を包み、顔の上半分が見えないような兜を身に着けている女。オメガモンとマスティモンである。その首には(カッパー)のプレートが下がっている。

 どうしてこうなったのか。時はスレイン法国との戦闘とも言えない戦闘の翌日にまで遡る。

 

  ****

 

「オメガモンさん。そろそろ外に出ようと思うのですが」

「ああ、情報を集めるためですか」

「ええ、いつまでも引き籠っている訳にもいきませんし。そこで、貴方にも外で色々やってもらいたいことがあるのですが」

「ええ、良いですよ。何をすればいいんです?」

「冒険者として名を挙げてほしいんです」

「そんな職業あるんですか」

「ええ、といっても夢のない仕事ですが」

「いいですけど・・・貴方もやるんですか? それだったら別々で行動したほうがいいと思うんですがどうでしょうか」

「なるほど、別々で動くことで色々な情報を集めるのですね? いいアイデアです」

「で、誰を連れて行くんです? 二人以上で言った方が安全だと思うのですが」

「そうですね・・・考えてみます。あなたは?」

「マスティモン一択です。リリスモンを連れて行ったら大変なことになること間違いなしです。マスティモンだったらあの浮いている翼を装備として言い張れば行けると思うので」

「ええ・・・・あの新しく入ってきたデジモンの性能は凶悪ですね」

「それに神に関係する者を見せたら暴走しますし」

「なぜに?」

「まあ・・・彼女の設定上」

「ほう? 聞いてもいいでしょうか」

「ええ、わかりました。彼女はですね・・・・・

 

   ****

 

 そんな訳で別々に行動しているのだが……

(・・・読めん)

 登録を終え、宿に泊まる前に依頼書でも見ようか――そう思ってボードの前に立ったのはいいが、根本的な問題が立ちはだかる。読めないのだ。どう見てもミミズののたうったような線にしか見えない。

 ならばとオメガモンは受付に向かう。そして一言

「すまないがおすすめの依頼はないか」

 と尋ねる。

 受け付けは顎に手を当て、少々お待ちくださいと奥に消えた後、しばらくして戻ってきた。

「でしたらこの護衛の依頼などどうでしょうか? 報酬も高く、さらにそれほど強いモンスターも出現することもありません。腕に自信がおありでしたらどうでしょうか?」

「ならばそれにしよう。いつがいいだろうか」

「こちらで連絡をしておきますので、そうですね。2日後の朝、此処で集合でどうでしょうか」

「と言われてもな。初心者故詳しいことはわからない。そちらの言うとおりにしよう」

「わかりました。ではまた後日」

 そう言って頭を下げる受付に礼を言い、王国の街並みに戻る。

「さて、時間が余ったがこれからどうするか。マスティ」

 ここでは一応偽名として、オメガとマスティと呼び合うことにしている。

「ここで過ごす以上、街並みを覚えるためにしばらく散策するのが良いかと。主要なところとその付近だけでも覚えるといいかもしれません」

「そうだな。そうしよう」

 散策という言葉に、見知らぬ土地への冒険心を隠しながらも同意して街中を歩く。

 方や大柄。方や奇妙な姿にすれ違う人が振り返るが、それに気にした様子もなく平然と歩く。と、反対から歩く男とマスティモンの肩がぶつかった。

「いったあぁ!!」

 わざとらしく大きな声を上げ、マスティモンに近寄る。

「おいおい痛ぇじゃねえかよ嬢ちゃん。わびとして1にt・・・」

 言い切る前に男の顔にマスティモンの回し蹴りが男の顔を襲う。男は石ころのように吹き飛ぶと、その進路上にいた大柄な男に向かっていく。

「おっと、危ねぇな」

 その男はぶつかる前に片手で受け止める。

「申し訳ありません。けがはございませんか?」

 マスティモンが謝罪をする。

「いや、ないさ。気にすんな。ところであんたらは冒険者なり立てか?」

「ええ、そうです」

「フーン? それにしちゃあ強そうなんだが? 特に後ろのお前さん」

「いや、それほどでもないさ。ところで貴方の名前は?」

「ガガーランっていうんだ。お前さん方は?」

「私はオメガ。こちらはマスティ。ともに遠くの方から来たものだ。何分今日ここに来たばかりでな。知らないことだらけなのだ」

「お、そうかい。ところでこの後どうだい? ちょっと宿でヤらないか?」

「いや、すまない。私は男好きではないのでな・・・すまない」

「・・・俺は女だぜ?」

「何!?・・・それはすまなかった」

「いいって気にすんな」

 その後も話を続けていると、小柄な仮面をかぶった女の子が近づく。

「おい、ガガーラン。何を油を売っている」

「おお、イビルアイか。ワリィ、これから仕事があるんでな」

「いや、こちらこそ邪魔をした。それでは」

「おう、じゃーな」

 そう言って二人が人ごみに消えたのを確認して、オメガはマスティに言った。

「人の体とは神秘で満ちているな」

「私は最初から女性と気づいていましたが」

「・・・そうか」

「そろそろ行きましょうか」

「ああ」

 再び街の散策へと戻るのであった。

 

――――――

 

「ガガーラン、気づいたか?」

「ああ、隠しちゃいるが漏れている。あいつらは俺らより強い」

「ラキュースの闇の力をもってしてもか?」

「・・・わからねえ。多分、それ以上だろう。とりあえず警戒はしておいたほうがいい」

「そうだな。後でラキュースに話をしておく」

「おう、頼む・・・・・・なあ、イビルアイ」

「なんだ?」

「俺って、女に見えねえか?」

「・・・いや、そんなことはない。筋肉が付きすぎているという点を除いては」(スッ

「おう、そんならこっちを見て言えや」




 独自データ:色欲のリリスモン
    強さ:通常のリリスモンより3倍強い。特に魔法に関しては5倍。
プロフィール:リリスモンが長い時を経て力を付けた個体。元々の色香にさらに磨きがかかり、天使型デジモンを多く堕天させた。中には最高のデジモンもいる。
 天使型デジモンに容赦のなかった通常個体よりさらに毛嫌いし容赦を捨て、徹底的に心を折り、プライドを折り、ありとあらゆる方法ですべてを奪い去る。なお、悪魔型デジモンに対しては慈悲の心を見せる。
        


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始まりは何時も唐突に

どうもおじぎりです。

遅くなってしまい申し訳ありません。理由としてはPCがぶっ壊れたこと、新学期に入って色んな行事が押し寄せたこと、あと、pcのクラッシュ繋がるのですが、iPadでの操作に慣れず、四苦八苦してしまったことが挙げられます。申し訳ありませんでした。
なのでこの際言います。不定期更新になります。完結まではしっかり投稿するのでよろしくお願いいたします。
それでは早速本編へ


街の大まかな探索を終え、二人はギルドから勧められた宿で一夜を明かした。

 

次の日の朝、まだ月が遠くで白く見えるくらいの時間にマスティモンと共にギルドに向かう。が、やはりそこには誰の姿もなく、オメガは集合時間も聞いておくべきだったかと一人後悔したが、過ぎてしまったことなので仕方ないと割り切りギルドの前で待つことにした。

 

どれくらいの時間が経っただろうか。月が完全に沈み、日の光が本格的にあたりを照らし始めた頃、一人の男がギルドの前に現れた。

「オメガさんと、マスティさんでしょうか?」

その男は、二人を見てそう尋ねた。

「ああ、そうだが貴方は?」

オメガがそう尋ねると、男は一礼をして自己紹介をした。

「本日は依頼を受けていただきありがとうございます。私、依頼主のベルモットと申します。よろしくお願いいたします」

ベルモットはそう言い終えると再び一礼する。

「ああ、こちらこそよろしく頼む、ベルモット殿」

オメガはそういうと、早速仕事の話を切り出す。

「それで、今回の仕事はエ・ランテルまでの護衛だったな」

「ええ、そうです。正確に言うと、支店までの護衛ですね。何時もは知り合いの冒険者に頼んでいたのですが、別の依頼でこの街にはいなかったので今回依頼を出させていただきました」

「ここからエ・ランテルまでの道のりはどれくらいかかるのだ?」

「大体一週間程度でしょうか。失礼ですが食事の用意などは済ませてありますか?もしないのであれば、私が…」

ご用意しますと言う前にオメガは首を振って断る。

「いや、私たちは特殊な方法を使って暫くの間食事などが不要になっている。心配はいらない」

その言葉にベルモットは少し怪訝そうにしながらも、冒険者には様々な者がいるものだと知っているので、時に詮索はしなかった。

「分かりました。では早速出発したいのですがよろしいでしょうか」

その言葉に二人は頷き、こうして初めての依頼が始まった。

 

※※※※

 

依頼が始まって早2日が経った。馬車での移動は特に大して強い敵が来るわけでなく、群れからはぐれたゴブリンが現れたり、狼が数匹の徒党を組んで現れたりなどと言った程度の問題が発生した他は特に無かった。

3日目になると流石に慣れてきたのか、ベルモットと話す機会も多くなり、夜には様々な話を聞くことができた。

どれもこの世界に来て日も浅いオメガにとっては興味深い話な上、さすが商人と言うべきか人を引き込む力があり、ついつい話に集中してしまう。

ベルモットが寝た後は、周囲の警戒と時々来るアインズとの情報交換のメッセージをして夜をすごす。

6日目の朝、オメガは珍しく来たアインズ改めモモンのメッセージから、合流することになるかもしれないと言う旨の話を聞き、どうせだから合流してしまおうと、言う結論に至った。

そしてその日の昼頃に、モモン達のグループと合流することが出来た。

「久しぶりだな、オメガ。まさか王国で冒険者をやっていたとはな」

「こっちも驚いた。まさかお前がエ・ランテルで冒険者をしていたとはな」

事前の打ち合わせで二人は昔共に冒険をしていた仲であると言う体にすることになっており、その設定通りに話を進めることにしている。

そんな二人を見て、モモンと共に依頼を受けている『漆黒の剣』の面々は聞こえない(と思っている)声で話し始める

『なあペテル、モモンさんの隣にいる奴、なんか対照的だな』

『うむ、ルクルットの言う通りであるな』

その言葉にダインが同意する。

『モモンさん、心なしか楽しそうだな』

『昔の仲間じゃないか? もう会えないと思っていたけど、会うことができて喜んでるとか』

『……』

ペテルの言葉を聞いて先日の出来事を思い出したニニャが、暗い顔をしたのに気がつくとルクルットは慌てて別の方向に話題を向けた。

「そ、それより、あっちの女の人、顔が見えねえが、なかなか綺麗な顔してないか?」

ルクルットの意図に気がついたのか他の面々も、そちらの方に話題を変更していく。

「まったく、ルクルットは相変わらずであるな」

「そうだぞ、あまりやりすぎると昨日のようになるぞ」

重くなって来た空気が少し和らいだのを感じ、仲間に感謝すると同時に相変わらずな話題に苦笑いをするニニャ。

 

一方互いの依頼主の方はと言うと、そちらもそちらで話が進んでいた。

「いやはや、まさかあのバレアレ家の後継とこうして話ができるとは思っても見ませんでした」

「いえ、こちらも王国からの商人と話しができるとは思ってなかったのでお互い様ですよ」

「いやしかし随分と強大な魔獣ですな」

「あれは森の賢王と言いまして、モモンさんが従えているんですよ」

「なんと、あの森の賢王!それはまたとんでもない御仁ですな」

「ええ、あれでまだ銅級なんです」

「それはそれは。いずれオリハルコン、いやアダマンタイトになる日も近いのでは? そのような方に依頼ができるとは運がいい」

「そちらの方も強そうに見えます。モモンさんと仲が良いようですし」

他愛ない話題を振りつつ一行は目的地に向かって歩く。

 

エ・ランテルにたどり着いたときにはもう日は沈みきり、街灯の明かりが道を照らしている。

「では、僕たちはこれで」

「ええ、今度会うときはいい商談ができることを期待しております」

そう言って、ンフィーレアとベルモットは別れた。

オメガもモモンとの話を終わらせ、それぞれの依頼主に方に向かう。

 

※※※※

 

ベルモットは、支店に着くと馬を店の人に頼み、荷物を降ろした後オメガ達に提案する。

「ここまでの護衛お疲れ様でした。もし宜しければこちらの方で宿をとりますがどうでしょうか?」

その提案に、宿のことをすっかり忘れていたオメガは喜んで乗ることにした。

「それならば……」

喜んで、と言おうとしたオメガはしかし、マスティモンの次の言葉で遮られる形となる。

「お話のところ申し訳ありません。向こうの方角から剣がぶつかり合うような音が」

マスティモンが指した方角、そこはさっきモモン達が向かった方角。常人には聞こえないがたしかに剣がぶつかりあう音が聞こえる。

「申し訳ない!急ぎの用事ができたので失礼する!」

そう詫びを入れて二人は全速力で駆け出した。間に合うように祈りながら。




どうでしょうか。iPad なので勝手が違いますが、それでもちょくちょく更新します。
感想や誤字脱字報告等ありましたらぜひお願いします。
それでは次回まで。


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二人の英雄

本当にこの度は申し訳ありませんでした。詳しいことは活動報告にてお願いいたします。


〜Side漆黒の剣〜

 

「ニニャ、依頼主を連れて逃げろ!」

 

 依頼が終わり、ンフィーレア・バレアレと共に荷物下ろし家へ着く。中に入ると見知らぬ女がいた。見た目は金髪赤眼の美女ではある。が、ンフィーレアを攫うついでに少し『遊ぶ』と笑いながらスティレットを抜くその様はまさしく狂人のソレである。ただ事ではないと判断したペテルはニニャにそう言う。

 

「で、でも」

 

「いいから! じゃねぇとー」

 

 何かを言いかけたニニャにペテルが何か言いかけるとスティレットがペテルの顔目掛け襲ってくる。

 ありえないくらいの速さで来たその刃に、寸での所で顔とスティレットの間に剣を割り込ませる。瞬間、体が吹き飛びそにうになる程の衝撃が体に掛かる。

 何とか足を踏ん張ることで吹き飛ばずに済んだが、それでも1mは後ろに下がる。

 

「おやぁ〜? 雑魚ばかりかなぁ~? と思ったらちょっとは遊べそうな子みっけ〜お姉さん嬉し〜」

 

 女は新しい玩具を見つけた子供のような表情をすると、いつの間にいたのかしわがれた老人のような男が女の後ろから現れた。

 

「遊ぶのはいいがあまり時間をかけるでない。早く件の少年を確保しなければ余計な連中が来るぞ」

「わ〜かってるってカジっちゃん。すぐに終わらせるってば」

 

 そう言うと、女はルクルット達の方を向いて構える。

「と、言うわけでぇー、オネーサン残念だけど忙しいから直ぐに終わらせちゃうね。あーあ、ガッカリ」

 

 そんなこと微塵も思っていないような顔をして、一気に詰め寄って来る。二度目の攻撃に剣を構えて備えているとーー

 

「ざんねーん。こっちだよ」

 女の姿がかき消え、後ろからその女の声が聞こえて来た。反応した時はもう遅い。スティレットが目の前にあった。これで終わりか、そう思った瞬間ーーー

 壁を突き破って巨大な剣が女に襲い掛かった。

 

 轟音を立てて迫り来るそれをしかし女は紙一重で躱し、後ろに飛びのく。

 

「申し訳ない。緊急事態だった故家を多少破壊させてもらった」

 先ほど別れたばかりのその声を聞いて漆黒の剣は驚く。

 

 どうやってこの状況を知ったのか、先ほど別れたばかりだと言っても距離はあったはず。なのになぜー

 

「すまないが、話しは後にしてくれないか、先ずは目の前のことだろう」

 

 その人物ーオメガがそういうと女達の方を向く。

 

「あっはー、また新しいコがきちゃった」

「フム・・・・・・彼女は一体何者だ?」

 

 顔だけ後ろに向け、尋ねる。

 

「わかりません。けど、強いです! あり得ないくらいに!! オメガさん気を付けてー」

 

 言うよりも早く女がオメガに詰め寄る。それは先ほどと同じく目には見えない早さで。そしてスティレットを鎧の薄い部分ーつなぎ目の中でもさらに致命的である首元へと向けた。

 

「そうか、強い、か」

 

「だがー

 

 

 

 

 

 

 

 

別に倒してしまってもかまわんのだろう?」

 

 真正面から一歩も引かずに剣で受け止める。

 その後ろ姿は、かつて彼が幼いころに夢に見た『騎士』であった。

 

〜side out 〜

 

〜sideオメガ〜

 

 オメガは受け止めたスティレットごと女を吹き飛ばし対峙する。

 

「なんか面白い言葉が聞こえたんだけどさぁ? この英雄にして人外のクレマンティーネ様を? 倒す? アッハハハ〜面白いこと言うねぇー」

 

 女ークレマンティーネと言うらしいーが笑いながらこちらを見る。その目は殺意で満たされていた。

 クレマンティーネがこちらに走り出す。ゆっくりと。

ーーこれで強い、のか?

 

 オメガは困惑しながら迫り来るスティレットを剣で受け止めーようとした。

「武技、流水加速」

 クレマンティーネの体が『僅か』に加速し、剣を紙一重ですり抜けて肩にスティレットが突き刺さーらずに金属質な音を立てて止まった。

 

止まった隙を逃さずに片方の手で体を捕まえる。

「なっ!?」

 

 必死で抵抗するが、そんなものはオメガにとっては文字通り『虫の抵抗』でしかない。

 スティレットで、目の部分を突き刺そうが首を突き刺そうが痛くも痒くもないのである。

「なんだよ!? 何なんだよテメェは! 只の銅級冒険者だろ!?」

「すまないが旅をしていたのでな。冒険者になるのは今回が初めてなのだよ。運が悪かったと思って諦めろ」

暫く抵抗していたクレマンティーネだったが徐々に捕まえている手の圧力を掛けていくと肺が圧迫されて呼吸ができなくなったのか気絶した。

「さて、もう一人の老人の方はー」

 

 床にクレマンティーネを放り投げ、もう一人を探すとー

 

「逃げようとしていたので捉えて来ました」

マスティが何処から持って来たのか縄でグルグルに縛り付けられグッタリしていた。

「ム、すまんな。目を離した隙に逃げていたのか。助かる」

「そんな! 畏れ多い」

「さて・・・どうするか」

 

 事態が終わってしまったので、この二人組みをどうするか考えているとモモン達が帰ってきた。

「すまない。ハムスケの登録にーー何が起きた? なぜ此処にオメガがいる?」

 

 家が破壊されているのを見て叫び声を上げている老婆と困惑しているモモンに漆黒の剣と一緒に事情を説明する。

「成程。それで、件の犯人には然るべきところにー」

 

 一通り説明し終え、モモンがこの後の対処を聞こうとした時、男が叫び出した。

 

「ワシの計画はここで終わらせん、 長年かけて完成まであと少しであったこの計画を!!」

 

 そう言い出すと胸元から光が漏れ出した。不気味な黒い光は一層強くなりそれが収まった瞬間、咆哮が街に響き渡った。何事かと身構えると空から『ソレ』は現れた。

 

 巨大な身体に見合った太くて頑丈な骨格。その伽藍堂であるはずの双眸からは生者への憎悪で満たされでいるかのように恐ろしい光が漏れ出している。あるはずのない翼を広げ、辺りを睥睨する様はまさしく王者。現れたのはまぎれもないドラゴンのアンデット。

 

「少年を確保することはできない上に最悪の事態ではあるがこうなっては仕方がない。最終段階までは至らなかったが儀式を始めるとしよう!!」

 

 男はそういうとドラゴンが男を確保し、飛び去るーことはなかった。

 マスティが飛び去ろうとしたドラゴンに魔法攻撃ーに見せかけた一撃を加えるとあっさりと霧散し男が再び落ちたからである。

 呆然とした顔で落ちてくるその男を再び捕まえると今度は首を絞めることで完全にオトして、地面に転がした。

 

 こうして、本来ならば甚大な被害を齎す筈だった悪夢は、この場にいるものを除き誰一人として認知することなく幕を引いた。




 えー、かなりの期間が開いてしまい作品としてのクオリティも下がっているかと思いますが、それでも更新を待っていただける方々がいたことに、感謝いたします。
 誤字脱字報告、評価や感想などをお願いします。
 ではまた次回まで


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