【Another Story】仮面ライダー大戦GP 仮面ライダー3号 (結城亮亮)
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第1話 異変

「スーパーヒーロー大戦GP」をリメイクする二次創作小説です。
劇場公開時の感想を書き留めていたものが出てきたので、
それをベースに書いてみようと思いました。

※要するに「俺得 仮面ライダー3号」です。
尺とか対象年齢とかを抜きにしたときに、
仮面ライダー3号がこういう作品だったらよかったな、という
個人的な感覚で書いていきます。


※※※原作以上に、敵味方が複雑になります。
また、それ故にライダー同士が殺しあう場面も多く、
死亡するライダーも少なくありません。
そのような描写が苦手な方はブラウザバックを推奨します。


荒野に響くエンジン音。並走する2人の英雄。

 

1973年 2月10日。

ゲルショッカーは全滅した。

そして恐るべき首領は死んだ。

ゲルショッカーとの激しい死闘を乗り越えた、

仮面ライダー本郷猛・一文字隼人にとっての長い苦悩の日は終わった

 

……はずだった。

 

 

 

          仮面ライダー3号

 

 

 

時は移り、2015年 3月某日。

都内某所では、仮面ライダードライブ タイプスピードと

機械生命体ロイミュード 102が戦闘状態にあった。

ロイミュードはまだ進化前であり、ドライブの鋭いパンチやキックに翻弄されている。

隙を見て、ドライブは飛んできたシフトカーを左腕のシフトブレスに装填した。

<タイヤコウカン!ミッドナイトシャドー!>

音声と共に手裏剣にも似た車輪が飛来し、

ロイミュードに一撃を与えつつ、ドライブの胸部に組み込まれた。

そのままドライブはベルトとシフトブレスの両方を操作して、必殺技の準備に入る。

<ヒッサツ!フルスロットル!シャドー!>

ドライブは駆け出すと同時に忍者のごとく3人に分身し、3方向から飛び蹴りを撃ち込んだ。

断末魔と共に爆散するロイミュード。炎の中から飛び出した、

102という数字の形をしたコアが、振り返ったドライブの眼前で砕け散った。

 

 

「Nice drive」

仮面ライダードライブ=泊進ノ介が一息つきながら変身を解除するのと同時に、ベルトに宿った

クリム・スタインベルトの人格、通称ベルトさんが進ノ介を労った。

そこへさらに、進ノ介の戦いを見守っていた、同僚の詩島霧子が駆け寄る。

「泊さん、やりましたね」

「ああ」

 

このように、警視庁特殊状況下事件捜査課、通称特状課に所属する進ノ介や霧子は、

市民の生活を脅かす機械生命体 ロイミュードが起こす事件の捜査をし、

追い詰めたロイミュードを倒すことを職務としている。

そのために進ノ介がベルトさんの力を借りて変身した姿、それが仮面ライダードライブである。

 

戦闘を終えた進ノ介たちは、特状課に帰還しようとしていた。と、そのとき、一瞬ではあるが、

とてつもなく大きな揺れが彼らの足元を襲った。

「うわっ!」

「きゃあ!」

バランスを崩すも、なんとか耐えた進ノ介と霧子。

何が起こったのかわからず、2人は周囲を見回す。

「と、泊さん!アレ……」

霧子の声に振り向き、進ノ介は彼女の指差す方向を見る。

2人が立つ高台の遥か向こうに見える都市が、緑色の波のような光に呑まれていた。

しかも、光は物凄いスピードでこちらに向かってきていた。

「逃げるぞ、霧子!」

「はい!」

 

光から逃れようと全力で走る2人。しかし、光はあっという間に追いつこうとしていた。

もうだめか、光に呑まれたらどうなってしまうのか、

そんな考えが2人の脳裏によぎったそのとき、シフトカーとシグナルバイクが1台ずつ、

彼らの眼前に飛び出してきた。進ノ介たちがこれまで見たことのない、

そのシフトカーとシグナルバイクが、それぞれ進ノ介と霧子が腰につけている

シフトカーホルダーの空きスペースに停まる。そして間髪入れずして、光は2人を呑み込んだ。

 

「……?」

体感時間にして数秒。ぎゅっと瞑っていた目を開けてみると、

進ノ介も霧子も思いの外無事だった。

自身の身体に違和感はなく、見る限り互いの身体に外傷はないようであった。

「今のは、一体何だったんでしょう……?」

「さあな……。それに、今現れたシフトカーも……って、あれっ?」

進ノ介がホルダーに目をやると、先ほど現れたシフトカーはもう姿を消していた。霧子もまた、

自身のホルダーを確認してみたが、同じく先ほどのシグナルバイクの姿はなかった。

「さっき確かにいたよな……?」

「はい、私もこの目で見ました。一体どこへ……」

そう言って周囲を探す霧子は、またしても遠方に奇妙なものを見つけた。

「泊さん……あんなもの、前からありましたか……?」

そう言われて進ノ介が目をやった先には、先ほどと同じ都市があった。

しかし、その雰囲気は、ほんの数十秒前に見たそれとは、全く異質なものとなっていた。

 

まず目立つのは、霧子が「あんなもの」と言った、巨大な飛行船である。

銀色の下地に黒い蠍のマークが描かれた飛行船が数隻浮かんでいた。

さらにこの蠍のマークが、看板や掲揚された旗や垂れ幕といった形式で

都市のあちこちに見られるようだった。

また、もっと手前を見てみると、高台の真下まで続く大きな道路の真ん中を、

日本では見たことがないような黒装束の集団が、寸分のズレもない綺麗な隊列を組んで、

パレードのように凱旋していた。隊列の先頭はやはり蠍のマークの旗を持っていて、

よく見ると黒装束の集団は皆、上半身前面が白い蠍のマークになっているようだった。

「と、とにかく一度特状課に戻ろう」

「は、はい」

周囲の急激な異変に戸惑いながらも2人は、特状課に戻ってみることにした。

 

 

進ノ介の愛車、トライドロンで帰還しつつ、街の様子を見る2人。

人々の雰囲気はそれほど変わっていないようにも見えるが、建物や掲示物はやはり蠍のマークが

あちこちに散りばめられていて、とても見知った街には見えなかった。

 

「!?」

街外れの道に差し掛かった辺りで、進ノ介はとっさにトライドロンのブレーキをかけた。

見ると、怪人が2体と、先ほどから見かける黒装束が十数体、進路を塞ぐように立っていた。

「アレって、ロイ……ミュード?」

「いや、そうではないみたいだ」

霧子の疑問にベルトさんが答えた。確かに、普段戦っている機械生命体とは、見た目や雰囲気が

全く異なっている。

「見つけたぞ、ドライブ!貴様を倒すのは俺たちだ!」

そう言って、青い怪人シオマネキングは、隣に立つ黄色の怪人タイガーロイド共に、

戦いの構えをとった。

「何にせよ、戦うことに変わりはないようだ。行こう、ベルトさん!」

「OK!Start your engine!」

降車した進ノ介はベルトを腰に巻き、ベルトのイグニッションキーを回す。そして、シフトスピードのシフトカーを左腕のシフトブレスに装填し、変身ポーズをとる。

「変身!」

シフトブレスを再度操作しながら進ノ介は怪人に向かっていく。

<ドライブ!タイプスピード!>

走る進ノ介の体にアーマーが重なり、続いて胸部にタイヤが設置されて、

ドライブへの変身が完了する。さらに、ドライブの基本装備の1つ、ハンドル剣が

ドライブの右手に握られ、それを用いてドライブは怪人たちへの攻撃を開始した。

 

「キーッ」「キーッ」

2体の怪人の攻撃の隙間を埋めるように、黒装束の戦闘員がドライブに攻撃を仕掛ける。

ドライブはそれを回避しながら戦闘員を次々に切り捨て、

2体の怪人にも拳を、蹴りを、鋭い太刀筋を浴びせていく。

その様子を、トライドロンから降りて見守る霧子。

ふと、霧子は視界の隅に、数名の少年の姿を見た。

 

「ぐぁぁぁ」

戦闘員は既に地に伏し、シオマネキングもドライブの攻撃によって地を転がった。

それと同時にタイガーロイドがドライブの背後から迫るが、

ドライブは振り向き様に一閃、さらに一太刀、もう一太刀と斬撃を浴びせ、

タイガーロイドも地を転がっていく。

「とどめだ!」

ドライブは剣のハンドル部分に手を伸ばす。

しかし、その手はハンドルに到達することなく静止した。

「やめろぉ!!」

膝をつくタイガーロイドの前に、小学生くらいの少年たちが駆け込んできた。

彼らは両手を横に広げてドライブを睨みつけている。

 

それはまるで、怪人を庇うような、善悪が逆転したような、異様な光景だった。

「君たち、何をやってるんだ!?危ないからそこをどけ!!」

「いやだ!!お前こそやめろ!!これ以上は僕たちが許さないぞ!!」

少年の1人がドライブに抗議する。

ドライブは子どもたちが向ける憎悪と恐怖を纏った視線に圧倒され、困惑してしまった。

自分が何故、この少年たちにこんな表情をさせているのか、全く理解できなかった。

その混乱の隙をついて、シオマネキングがドライブを羽交い締めにする。

先ほどまでかなりのダメージを受けていようと、やはり怪人の筋力は強い。

ドライブの両腕はしっかり押さえ込まれてしまっていた。

「くっ…………はぁっ!」

ドライブは、シオマネキングの膝を目掛けて鋭い後ろ蹴りを放った。

見事膝に命中した蹴りは、ドライブが拘束を抜け出す隙を作るのに充分だった。

ドライブは同時に、ハンドルを操作する。

<ターン!ドリフトカイテーン!>

ドライブは体を回転させ、必殺の斬撃をシオマネキングに食らわせる。

シオマネキングは致命傷を受けて、ドライブの眼前で爆発した。

 

「「シオマネキング!!」」

ドライブの背後で少年たちがシオマネキングの名前を叫んだ。

ドライブは何とかして残るタイガーロイドと少年たちを引き離し、

そのまま倒すことはできないか、と考えながら振り向いた。

しかし、振り向いた瞬間にドライブは再び動けなくなった。

少年たちの涙を流して悲しむ姿にショックを受けてしまったのだ。

 

「うう……シオマネキング…………」

「畜生!イーヴィルライダーめ!!」

少年たちは足元から石を拾い、ドライブに投げつけ始めた。

「イーヴィルライダー!!お前たちはどうして!!

どうしてこんな、酷いことができるんだ!!!」

「よくもシオマネキングを!!」

「イーヴィルライダーの馬鹿野郎!!」

口々にドライブを罵倒しながら石を投げる子どもたち。

ドライブのアーマーは子どもの腕力で投げられた石が直撃しようと、

装着者に傷ひとつつけることはない。

しかし、アーマーの中の泊進ノ介の心は、一言浴びる度に酷く傷ついていく。

「この子たちは何故こんな表情をしているんだ……?

俺は何故この子たちにこんな表情をさせているんだ……?

俺は一体何をしてしまったんだ……?」

 

進ノ介と共に、トライドロンの傍らでは霧子もまた、動揺を隠せないでいた。

「どうして泊さんが責められているの……?この状況は一体、何がどうなって……?」

そのときだった。霧子はドライブの後方から近づく新たな人物に気がついた。

気配を感じたドライブもまた、背後を振り返る。

 

黒いジャケットを羽織った、風格漂う男が、静かに歩んできていた。

「イーヴィルライダーよ、それ以上はこの俺が許さん」

そう言うと、男は自らの頭の右側に両手の拳を運び、力を蓄える。

「あんたは一体……?」

ドライブへの返答の代わりか、男はポーズをとった。

その動きに、ドライブは自分の変身プロセスを連想した。

「変身!」

男の身体が眩い光に包まれ、姿を変える。

光が消えたとき、そこに立っていたのは黒い戦士だった。

 

男の名は南光太郎。またの名を……

「仮面ライダーBLACK!!」

 

 

 

つづく



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第2話 デストロン

「スーパーヒーロー大戦GP」をリメイクする二次創作小説です。
劇場公開時の感想を書き留めていたものが出てきたので、
それをベースに書いてみようと思いました。

※要するに「俺得 仮面ライダー3号」です。
尺とか対象年齢とかを抜きにしたときに、
仮面ライダー3号がこういう作品だったらよかったな、という
個人的な感覚で書いていきます。


※※※原作以上に、敵味方が複雑になります。
また、それ故にライダー同士が殺しあう場面も多く、
死亡するライダーも少なくありません。
そのような描写が苦手な方はブラウザバックを推奨します。


「仮面ライダーBLACK!!」

そう名乗った黒い戦士はその場で跳躍し、ドライブとの距離を一気に詰めた。

そして透かさず鋭い拳と蹴りを次々に叩き込んでいく。

数撃の内にハンドル剣を弾かれ、ドライブは重い右ストレートを腹部に受けて

数メートル吹っ飛んでしまった。

BLACKは追い打ちをかけようと、さらに攻撃を仕掛ける。

ドライブはそれを何とか回避するが、BLACKの拳や蹴りは隙間なくドライブを襲い続けている。

 

霧子の目に写る光景は、あまりに一方的なものだった。

洗練されたBLACKの動きに対し、ドライブはギリギリでかわすのみである。

しかしドライブから攻撃をしないのは、単にBLACKが強いという理由のみではないことに、

霧子は、そしてBLACKもまた気がついていた。

 

BLACKが右腕の裏拳と左フックを放ち、ドライブはそれを順に受け止める。

「どうした?何故戦わない?シオマネキングを殺したんだろ。

俺のことも同じようにしないのか?」

「あんたこそ何故こんなことを!?あんたも仮面ライダーなんだろ?

仮面ライダー同士なら、俺たちが戦う理由なんてないはずだ!!」

ドライブは必死な声色で抗議した。BLACKの攻撃に触れたドライブは、

彼が邪悪な敵に思えなかった。

これまで戦ってきた敵と全く違う何かを、ドライブは感じ取っていた。

しかし、ドライブの抗議は図らずもBLACKの怒りを誘ってしまった。

「ふざけるな!!!」

自らの拳を押さえていたドライブの腕を振りほどき、

BLACKは強烈な右ストレートをドライブの胸部に打ち込んだ。

ドライブは先ほど以上に大きく吹っ飛び、地面を転がった。

「……そうだ、俺は仮面ライダーだ。お前たちイーヴィルライダーとは違う。」

BLACKは後ろを振り返った。視線の先では少年たちが手に汗を握って

BLACKを見守っている。BLACKは再びドライブに視線を戻した。

「子どもたちの夢を守り、希望の光を照らし続ける!!それが仮面ライダーだ!!!

イーヴィルライダーであるお前は、決して仮面ライダーではない!!!」

ドライブは膝をつきながらどうにか立ち上がる。

「仮面ライダーではない」という発言には、流石の進ノ介も頭に血を上らせていた。

「何なんだ……何故そんなことを言われなきゃならないんだ!

さっきから、『イーヴィルライダー』って一体何なんだ!?」

 

しかし、ドライブの再度の抗議は中断されてしまった。

タイガーロイドが戦闘に参加し、砲撃を炸裂させたのである。

またしても地に膝をつくドライブ。

それを見て、BLACKは必殺の一撃を放つ準備をした。

「とどめだ!」

BLACKは前方に向かって大きく跳躍し、右の拳に力を集中させた。

エネルギーを蓄えた拳は、真っ赤に光を放っている。

「ライダーパンチ!!」

 

そのとき、ドライブを救いに仮面ライダーマッハが駆けつけた。

マッハは専用バイク、ライドマッハーをジャンプさせると、

BLACKに横から突進した。BLACKは大きく吹っ飛んだ。

「剛!」

霧子の声に答えるよう一瞥すると共に、マッハはライドマッハーを停めた。

そして視線をドライブに移した。

「進兄さん、大丈夫?結構危なかったみたいだね」

「剛……すまない、助かった」

「『助かった』って言うにはまだ早いでしょ。とりあえずは……」

マッハはシグナルバイクを取り出し、変身ベルト、マッハドライバー炎に装填した。

<シグナルバイク!シグナル交換!トマーレ!>

マッハはBLACKとタイガーロイドに向けて光弾を撃ち出した。

着弾した光弾は停止の道路標識のような形になり、2体の動きを止めた。

「今の内に退却だ、進兄さん。姉ちゃんも」

そう言うと、マッハはライドマッハーにドライブを乗せて、

霧子の乗り込んだトライドロンと共に、その場から脱出した。

 

 

仮面ライダーマッハ=詩島剛は霧子の実弟であり、ドライブ=進ノ介が頼りにする仲間である。

廃工場に逃れた3人。ドライブとマッハは変身を解き、適当に腰かけた。

「泊さん、大丈夫ですか?」

「ああ……何とか」

霧子の労りに答える進ノ介。幸い、大きなダメージは受けていないようである。

「BLACKに遭遇してその程度で逃げきれたんだから、進兄さんの悪運も大概強いよね」

茶化すような口振りの剛。しかし進ノ介は、

剛がBLACKを知っているかのように話すことの方が気になった。

 

「剛。お前、あのBLACKとかいう仮面ライダーのこと、何か知ってるのか?」

「ほんのちょっとね。仮面ライダーBLACK、

デストロンで一番強いんじゃないか、とも噂されるベテラン戦士らしい。」

「デストロン?」

進ノ介は聞き慣れない単語について聞き返した。

「今、世界を統治している組織だよ」

進ノ介と霧子が困惑の表情を見せる。剛はそれを確認してから説明を続ける。

 

「1971年、世界に最初の仮面ライダーが生まれた。2人いたらしい。

仮面ライダー1号と2号。2人はショッカー、ゲルショッカーとかいう

世界征服を目論む秘密結社と戦っていた。

そして、1973年2月10日、2人はゲルショッカーを壊滅させた。

でも、その戦いのあと、2人は消息を絶ったらしい」

「え?どうしてだ?」

進ノ介が質問を挟んだ。剛は「知らない」と言う代わりに首を横に振った。

「そんな中、ゲルショッカーとライダーの不在を狙っていたかのようなタイミングで、

姿を現した組織がある。それがデストロン。

そしてデストロンは瞬く間に世界を征服して今に至る、って訳だ」

「ちょっと待って」

霧子が口を挟んだ。納得いかない、という様子だった。

「1973年からデストロンが世界を支配してる、なんて

私の知ってる歴史と違いすぎる。

デストロンなんて名前自体、今初めて聞いたぐらいなのに……」

 

「じゃあ、例えば『歴史が変わった』としたら?」

「……は?」

自分の反論に対し斜め上の返答をされて、霧子はさらに困惑した。

「全くあり得ないことでもないでしょ。もう慣れたもんだけど、

俺たちが普段遭遇するロイミュードや重加速だって、

初めてのときは信じられない話だったでしょ?でも実在してる。

同じように、今、日本が既に俺たちが知ってるのと別物になってる事実を踏まえたら、

歴史が変わっててもおかしくないと思うよ」

「それは……そうかもしれないけど……」

霧子はまだ納得しきれていないようだが、剛の意見はもっともだった。

 

ここで、何かに気づいたのか、今度は進ノ介が口を挟んだ。

「でも、歴史が変わったなら、何で俺たちは本当の歴史を認識しているんだ?

俺たちの存在だけ、この歴史において不自然すぎる」

進ノ介の疑問に、また剛が答える。

「それなんだけど、進兄さんや姉ちゃんのとこに、

見覚えのないシグナルバイクとかシフトカーって来なかった?」

そう聞かれて、進ノ介と霧子は顔を見合わせた。2人には覚えがあった。

緑色の光に呑まれる直前に現れた、あのシフトカーとシグナルバイクである。

「その様子だと来たんだね。……俺のとこにも来たんだ、初めて見るシグナルバイクが。

で、『何だコイツ?』って思ってる内に、世界がおかしくなってて、

それに気づいたときに、そのシグナルバイクはいなくなっちゃった。

2人のとこにも来たってことは、間違いない。

たぶん、あのシグナルバイクが俺を助けてくれた。俺の正気を保ってくれたんだと思う。」

進ノ介も霧子も沈黙した。剛の見解は、一応の筋が通っていた。

 

「ただ、助かった仮面ライダーが他にいればありがたいけど、望みは薄いだろうね」

「?どういうこと?」

新たに剛が放った一言に、霧子が疑問を返す。

「今、この世界で『仮面ライダー』という名前は、デストロンの社会を守る戦士の称号になってる。

BLACKみたいのが他にもいるんだ。体制に反発するライダーは『イーヴィルライダー』、

つまり悪のライダーと呼ばれて、怪人や仮面ライダーの標的になってるのさ」

「!……そんな」

霧子はショックを受けた。進ノ介と霧子は、BLACKや少年たちの言葉の意味をようやく理解した。

体制に反発する以上、自分たちは悪のライダーなのだ。

少年たちにとって、正義は怪人の方にあって、怪人を倒すライダーは悪の象徴なのだ。

さらに、それはつまり……

 

「……あの場にいた子どもたちは、俺をイーヴィルライダーと呼んで拒絶していた。

つまり、仮面ライダーだけじゃなくて、人々の心も」

「……デストロン寄りだね。この世界では、デストロンに従うのが正義。

警察も農業も工業も、デストロンやそれに従う人々の役に立つことが正しい。

デストロンの入隊試験に合格して、立派な改造人間にされるのが幸福なんだってさ」

「改造人間!?」

進ノ介は「信じられない」と言わんばかりに聞き返した。

「そうだよ。怪人にされる、人間でなくなるのさ。みんなそれを幸福だと思ってる。」

「……」

進ノ介は無言で、怒りに震えていた。あんな子どもまでが、人間であることを奪われ、

デストロンのために戦うだけの兵器に作り替えられる。

しかも、それを幸せだと思い込まされていて、自ずからそれを目指していく。

そんなのは間違っている。人々には、平和な日々を人間として生きる権利があるはずだ。

その権利を騙して奪い取るような、デストロンの在り方を許してはいけない、

進ノ介の中にそんな思いが募っていた。

 

「……俺が調べて、ちょっと考察したことはこんなもんだよ。

それで進兄さん、これからどうする?」

今度は剛が進ノ介に質問した。

「決まってる。デストロンを野放しにはできない。」

「それで?まさか俺たちだけで挑む、とか言わないよね?」

「わかってる。仲間を探すんだ。BLACKは『お前たちイーヴィルライダー』と言っていた。

共に戦えるライダーは間違いなくいる。それを見つけるんだ」

進ノ介の目は本気だった。剛はそれを見てニヤリと笑った。

「決まりだね。それならすぐに出発しよう」

 

 

と、そのときだった。3人の足元で火花が散った。見ると、廃工場の入口で、仮面ライダーG3-XがGX-05 ケルベロスを、仮面ライダーバースがバースバスターを構えていた。

「やれやれ、また新しい追手かよ」

「霧子、安全なところへ」

「はい!」

進ノ介と剛は、ベルトを腰に装着する。

「進ノ介、相手は仮面ライダーだが、今度は戦うのかね?」

「ああ。世界を正し、人々を守るためなら、俺も覚悟を決める!」

進ノ介と剛はそれぞれシフトカーとシグナルバイクを装填し、変身ポーズをとる。

「レッツ」

「「変身!!」」

<ドライブ!タイプスピード!>

<シグナルバイク!ライダー!マッハ!>

変身した2人はドア銃とゼンリンシューターを手に、それぞれG3-X、バースに向かっていく。

ドライブがG3-Xのガトリングを避けて間合いを詰めると、G3-Xはケルベロスを捨て、

左腕に備えた短刀、GK-06 ユニコーンでドライブの迎撃を図る。

その近くでは、ゼンリンシューターで攻撃を仕掛けるマッハを、

バースがバースバスターで迎え撃っていた。

 

「うわっ!」

ドライブが背中に斬撃を食らった。

背後を見ると、仮面ライダーイクサ バーストモードがイクサカリバーを手に佇んでいた。

「イーヴィルライダー、その命、神に返しなさい」

そう言うとイクサは、ドライブに追撃を試みて攻撃を仕掛けた。

ドライブは武器をハンドル剣に変え、2人の敵の太刀筋に立ち向かう。

 

「くっ!」

一方のマッハも、新たな敵に苦戦していた。

仮面ライダーザビー ライダーフォームがマッハを襲っていた。

ザビーはライダーより軽武装の部隊、ゼクトルーパーを4人率いていた。

余談だが、このゼクトルーパーはスーツに黄色いラインが入った

、ザビー直属部隊、シャドウの隊員であり、ザビーの意のままに行動する。

「各員、バースと俺の攻撃の隙間を埋めるように撃ち続けろ。反撃の隙を与えるな」

「了解!」

ザビーの格闘攻撃を弾き、ゼンリンシューターでの近接攻撃をしながら、

マッハはバースを狙って引き金を引く。

ゼクトルーパーは装甲の強さが中途半端のため、

まともに攻撃すればまず間違いなく死なせてしまう。

それを懸念したマッハは、ゼクトルーパーの攻撃もかわしつつ、

しかし、攻撃はザビーとバースに集中せざるを得なかった。

 

 

2人の仮面ライダーに追いやられ、ドライブはマッハと分断されて廃工場の外にいた。

1人ずつならば互角以上に渡り合える自信がドライブにはあったが、

そのレベルの敵を2人同時に相手をするとなると、流石に苦戦は免れなかった。

イクサカリバーを回避し、そこを狙ってユニコーンを振るうG3-Xの攻撃を弾き、

ドライブは自分の攻撃を確実に当てていく。

それでも、2人の連携による隙の少なさに、ドライブはあまり反撃できないでいた。

「くそっ、形勢逆転の隙が無さすぎる!それにあの青い仮面ライダー、

あいつも警察のライダーなのか……いよいよ身内に追われてるようでやりきれないな!」

ドライブはG3-Xの胸部に光る旭日章を睨みつけていた。

 

「……ん?」

ドライブ、イクサ、G3-Xはふと、こちらに近づく車両の走行音に気がついた。

3人が音のする方を振り返る。すると、白地に赤いラインの入ったスーパーカーが、

こちらに向かってきていた。

スーパーカーには太いマフラーが6本と、フロント部左右にガトリング砲、

フロント部中央にミサイルランチャーを搭載している。

スーパーカーのガトリング砲が、イクサとG3-Xを狙い撃つ。

まともに食らい、2人はドライブの後方に大きく吹っ飛んだ。

同時にスーパーカーは砲撃を止めて、ドライブの眼前で停車する。

「今度は何だ?味方なのか?」

警戒するドライブの前に、スーパーカーの運転席から何者かが降りてきた。

それは、昆虫の触覚のような構造を持つ紺色のヘルメットをした、

黄色の複眼、黄色のマフラー、青銅色のアーマーを身に纏う戦士だった。

 

 

 

つづく



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第3話 敵か味方か

「スーパーヒーロー大戦GP」をリメイクする二次創作小説です。
劇場公開時の感想を書き留めていたものが出てきたので、
それをベースに書いてみようと思いました。

※要するに「俺得 仮面ライダー3号」です。
尺とか対象年齢とかを抜きにしたときに、
仮面ライダー3号がこういう作品だったらよかったな、という
個人的な感覚で書いていきます。


※※※原作以上に、敵味方が複雑になります。
また、それ故にライダー同士が殺しあう場面も多く、
死亡するライダーも少なくありません。
そのような描写が苦手な方はブラウザバックを推奨します。

※※※今回は鬱展開注意です!!!大丈夫な方だけご覧ください!!!


ドライブと分断されたマッハは単身、

バース、ザビー、そして4人のゼクトルーパーと戦っていた。

シグナルバイクの力を使えるならば、状況を改善することは可能だった。

しかし、ザビーの命令に従ってマシンガンブレードの発砲を続けるゼクトルーパーに阻まれ、

マッハはその隙を作れないでいた。

その上、ロイミュードにダメージを与えるだけの威力を持つゼンリンシューターの銃撃を、

仮面ライダーほどの防御力のないゼクトルーパーに撃ち込むわけにもいかず、

マッハは少しずつ追い詰められていた。

「いい感じだ。このまま最後まで油断するな。それができてこそのパーフェクトハーモニーだ」

「「了解」」

ザビーの鼓舞に応えるように、ゼクトルーパーはより的確にマッハを狙い撃つ。

できる限り回避してダメージを抑えるマッハだが、

それでも既に受けたダメージの蓄積で、少しずつ動きが鈍くなっていた。

そして、そのタイミングを待っていたかのように、バースがマッハをロックオンする。

 

「ブレストキャノン、シュート!」

バースの胸部に装着された大砲から、太いレーザーがマッハに向かう。

しかし、そのレーザーは突如横切った、牡牛の頭のような列車に遮られ、

マッハの元へは届かなかった。

「何!?」

驚くバース。その眼前では列車が通り過ぎ、代わりに2人の仮面ライダーが立っていた。

緑色の仮面ライダー、ゼロノス アルタイルフォームと、

紺色の仮面ライダー、NEW電王 ストライクフォームである。

彼らはそれぞれ、ゼロガッシャー サーベルモードとマチェーテディを握っていた。

 

「最初に言っておく!俺はかーなーり、強い!」

そう言うとゼロノスはバースに、NEW電王はザビーに向かった。

ゼロノスはバースのブレストキャノンを破壊し、NEW電王は素早い太刀筋でザビーを翻弄する。

さらに、ゼクトルーパーには黒い体と銀色の腕を持つイマジン、デネブが挑み、

マッハへの攻撃を牽制していた。

「味方、なのか……?進兄さんの言う通り、一緒に戦える仲間が……いたのか……」

マッハは安心したのか、地に膝をついた。

様子を見ていた霧子が、マッハに駆け寄った。

「今だ!ゼロライナーに乗り込め!」

ゼロノスがそう言うと、先ほどの列車、ゼロライナーが再び現れた。

マッハと霧子は、言われた通りにゼロライナーに乗り込んだ。

それを確認すると、ゼロノス、NEW電王、デネブも隙を見て乗り込む。

そしてゼロライナーは出発し、線路の先に開いたワームホールを潜って

その場から姿を消した。

 

ドライブの眼前には、青銅色のアーマーと紺色のヘルメットをした謎の戦士が立っていた。

ドライブは、その戦士が放つただならぬ気配を前に、ただ立ちすくんでいた。

「くっ……」

背後からの声に、我に帰ったドライブは振り返った。

吹っ飛ばされたG3-Xとイクサが立ち上がっていた。2人がこちらに向かってくる。

すると、ドライブの背後から謎の戦士が駆け出し、2人と戦闘を始めた。

 

謎の戦士は2人の攻撃を容易くかわし、拳や蹴りを当てていく。

ドライブから見てBLACKと同じ程度に鋭い拳と蹴りは、2人の体力を一気に削っていた。

G3-Xは謎の戦士のキックでユニコーンを弾かれ、右脚に携帯する小銃、

GM-01 スコーピオンを使うが、謎の戦士は攻撃してきたイクサの腕と首を掴み、

盾にして弾丸をやり過ごす。

謎の戦士はイクサカリバーを奪い、イクサを蹴り飛ばすと

今度はイクサカリバーでG3-Xを斬りつける。

何度も、何度も、何度も、何度も斬りつけ、終いに、

イクサカリバーをG3-Xのベルトよりやや上の、装甲が薄い部分に突き刺した。

「ぐあっ……」

G3-Xは苦痛の声を漏らし、両膝をついた。

それを見て、謎の戦士は右腕を振り上げ、拳に力を蓄える。

右腕が小さく震えていた。

 

「おい!もういい!もういいだろ!それ以上やったら死んでしまう!」

ドライブが大声を上げながら、謎の戦士を止めようと駆け寄る。

しかし、ドライブは彼を止めることができなかった。

「ライダーパンチ!」

容赦なく拳が叩き込まれる。

必殺技をまともに受けたG3-Xは、謎の戦士の目の前で爆発した。

 

「ああっ!そんな……何てことを……」

ドライブは力なく立ち止まった。

仮面ライダーが仮面ライダーを、それも自分と同じ警察の仮面ライダーを殺害する瞬間は、

彼にはとても残酷な光景だった。

謎の戦士は、振り返ってポーズをとり、今度は右足に力を溜めて、大きく跳躍した。

「ライダーキック!」

謎の戦士のキックは、どうにか立ち上がったばかりのイクサに直撃した。

イクサは大きく吹っ飛ばされ、空中で爆発した。

 

G3-Xが爆発した場所で炎が揺れている。

ドライブと謎の戦士は、互いを真っ直ぐ見据えていた。

謎の戦士の腕は、また小さく震えている。

謎の戦士がノーモーションで人の姿になると、ドライブも変身を解除した。

進ノ介と彼より年上に見える男は、そのまま真っ直ぐ互いの目を見ていた。

 

 

「俺は桜井侑斗。こっちが野上幸太郎だ」

ゼロライナーの一室で、ゼロノスに変身していた青年が剛と霧子に自己紹介をした。

「それから……」

侑斗は幸太郎という青年の隣に立つ、紺色の、明らかに人間ではない何者かに視線を送った。

視線の先にいる人物は、一歩前に出る。

「テディだ。よろしく頼む。」

「デネブです」

先ほどゼクトルーパーを相手していた人物が「デネブです」と言いながら、

剛と霧子に棒つきキャンディーを手渡す。その様子から剛と霧子は、

テディとデネブがロイミュードでも敵でもないことを理解した。

「俺は詩島剛。こっちは姉の……」

「霧子です。さっきはありがとうございました」

霧子が侑斗たちに頭を下げ、それを見た剛も遅れて小さく頭を下げる。

「一応聞くが、あんたたちはデストロンと敵対するライダーで間違いないんだな?」

侑斗が問う。霧子は、自分たちの状況を説明した。

 

「なるほど。そのシグナルバイクのおかげで、歴史改変から逃れたってわけか」

「はい。信じてもらえないかもしれませんが……」

霧子が不安そうな表情をする。それを見て、幸太郎は侑斗の隣に腰かけた。

「信じるよ。俺たちも本来の歴史を知ってるから」

「!……本当に?」

幸太郎の言葉に霧子より一瞬早く剛が食いつく。

「ああ。俺は特異点っていう、まぁ細かい説明は省くけど、時間干渉の影響を受けなくて、

こっちの桜井さんは、この時の列車、ゼロライナーで時の中を移動していたから、

歴史改変の影響を受けてないんだ。」

「時の列車?これ、そんなすごいの?」

剛がまた食いついた。

「もっとも、今は時間が酷く歪んでいて、過去にも未来にも行けないがな」

侑斗が補足した。

 

「他にも仲間がいるんだ。仮面ライダーオーズと仮面ライダー電王。

オーズは以前、別の歴史改変事件に遭遇して耐性がついたのか、

今回は影響を受けなかったんだ。電王は野上良太郎っていって、俺のじいちゃん。

じいちゃんも特異点なんだ。」

「じいちゃん!?大丈夫なのか、それ?」

剛は幸太郎の言葉から、ヨボヨボの老人を想像した。

「大丈夫。むしろ俺がこの時代より未来から来てるだけで、

じいちゃんはれっきとしたこの時代のライダーだから。

それに、俺よりも何倍も強いんだ。」

幸太郎は自慢げにそう言った。

 

「歴史改変に気がついた俺たちは、それぞれ調査をしていたんだ。

何が歴史をねじ曲げたのか、その原因と対策について。

それで、これから電王とオーズと合流する。

このゼロライナーは今、合流地点に向かっている。」

それを聞いた剛は少し考え、すぐに口を開いた。

「俺たちも同行させてくれないか?

今のままじゃ、またさっきみたいな状況に陥ったらアウトだし、

俺たちにももう1人仲間がいて、その人と合流する取っ掛かりがほしいんだ。」

「もちろん。仲間は多い方がいい。一緒に戦おう」

幸太郎は、剛と霧子の目を見てそう言った。剛と霧子は顔を見合わせて喜んだ。

 

「手を組むのはいいが、その前にもう1つ教えてくれ。

もう1人の仲間っていうのは、仮面ライダー3号か?」

侑斗が口を挟んだ。

「3号、って誰?」

剛が素直な疑問を口にした。

「……いや、知らないならいいんだ。だが、もし3号と遭遇したら気をつけろ」

侑斗がぶっきらぼうに言う。続きを幸太郎が話す。

「仮面ライダー3号は、仮面ライダー1号と2号が戦った秘密結社、

ショッカーの最後の怪人……らしい。

でも、本来の歴史に仮面ライダー3号なんて存在しないんだ」

「?どういうこと?」

剛が問う。

「詳細はわからない。でも、いないはずのショッカー最後の怪人がいて、

1号と2号はショッカーやゲルショッカーとの決戦以降姿を消してしまった。

この事実から推測できるのは……」

「……3号が1号と2号を倒した!」

剛はハッとした顔で幸太郎の言葉の続きを口にした。

「俺たちは、それが歴史改変に関わってると睨んでる。

3号にはくれぐれも気をつけろ」

侑斗は剛に再び忠告した。

 

 

進ノ介と謎の男は互いの愛車を走らせ、山奥へ入っていった。

謎の男がスーパーカー、トライサイクロンのブレーキをかけると、

進ノ介もトライドロンのブレーキを踏み、2人は木々に囲まれた中で駐車した。

「ここまで来ればデストロンの目にもつくまい」

そう言って謎の男はトライサイクロンから降りた。

続けて進ノ介もトライドロンから降りる。

「自己紹介がまだだったな。俺は3号、黒井響一郎だ」

「……ドライブ、泊進ノ介だ」

進ノ介は少し不服そうに名乗った。

「……随分苦戦していたようだが、G3-Xとイクサがそんなに強敵だったか?」

批判するように、黒井は進ノ介に問う。

「……ああ。正直、あんたが現れて助かった。それについては素直に礼を言う。

でも、殺す必要があったのか?退けるだけじゃだめだったのか?」

進ノ介は強い口調で黒井を非難した。

黒井は鼻で笑い、進ノ介をより苛立たせた。

 

「仮面ライダー同士は殺しあうべきじゃない、と言いたいのか?」

「当たり前だ。わかりあえるかもしれないし、同じ人間じゃないか」

「そう言いながらお前は、シオマネキングを倒したな?」

黒井に指摘されて、進ノ介はハッとした。どこからか黒井は見ていたようだ。

「あのシオマネキングは改造人間だ。改造される前は、『同じ人間』だった。

この世界では、昨日までただの市民だった人間が戦闘員や怪人として

デストロン傘下で猛威を振るう。

仮面ライダーも、2000年にクウガが現れるまでは、皆改造人間だった。

今はデストロンの改造手術を受けずに、民間で開発されたベルトで変身するライダーも

それなりにいるが、お前は倒すライダーと倒さないライダーを区別して戦うつもりか?

それとも、ライダーも怪人も戦闘員も、倒さない程度に戦うつもりか?

それで生きたままデストロンを滅ぼせると思っているのか?」

「それは……」

進ノ介は答えられなかった。

デストロンの仮面ライダーと戦う覚悟は決めたつもりだった。

しかし、倒すつもりはなかった。

人々を改造人間になどさせない、と決意していたが、これまで機械生命体と戦っていた彼には、

人間が改造されて生まれた怪人や戦闘員と戦うということが、

このときまで実感を伴っていなかった。

だが、黒井の言う通り、敵を倒さずに世界を元に戻すことが不可能なのは明らかだった。

 

「世の中を変えたいのなら、本当の意味で覚悟を決めろ。

さもなくば、お前も敗者として歴史の闇に呑まれ、消えていくだけだ。」

黒井は右手で拳を握り、左手でそれを包んだ。

「敵は徹底的に叩きのめせ。それができなければ、勝ったとは言えない。

勝ち進むこと、それ以外にこの世界で生き残る術はない」

黒井は左手の力を強めた。まるで、震える右手を必死に抑えているようだった。

進ノ介は、黒井のその手を見ていた。

 

「あんたはこれからも、それを続けるのか?」

進ノ介が尋ねた。

「……そうだ。そして仲間と合流する。」

「仲間がいるのか?」

進ノ介はさらに尋ねる。

「ああ。反(アンチ)デストロン同盟という組織がある。

反デストロン同盟は近々、デストロンの拠点に奇襲作戦を仕掛ける。

そこに合流する。……お前はどうする?来るか?」

黒井の提案は進ノ介にとって価値のあるものだった。

進ノ介と剛、霧子の3人は「仲間を探そう」と話していた。

剛と霧子が無事なら、反デストロン同盟に参加しているかもしれない。

それならば、進ノ介も合流するするべきである。

「ああ。連れて行ってくれ。」

進ノ介がそう言うと、黒井は小さく笑みを浮かべた。

「よし、それならすぐ出発しよう」

黒井がそう言うと、2人は再び愛車に乗り込んだ。

 

エンジンが始動し、走り出す2台のスーパーマシン。

それを遥か後方から、1人の男が見ていた。

長髪のその男は、傍らに立つロボットの胸部についたスイッチを押す。

そしてロボットが変形したバイクに乗り、一定の距離を保って2人の追跡を始めた。

 

 

「姉ちゃん」

剛が霧子に声をかけた。霧子の手にはスマートフォンが握られていた。

「電話は止めときな。こんな世界だよ?傍受されるかも。

まぁ、そもそも時間の中を走ってる今、電話が繋がるかは疑問だけど」

「うん……」

霧子はスマートフォンをそっとしまった。

「大丈夫だって。進兄さんなら、絶対無事だよ。

オーズと電王が合流したら、探してもらおう」

「……うん」

霧子が頷くのとほぼ同時に、幸太郎が近づいてきた。

「そろそろ合流地点に着く。念のため霧子さんはゼロライナーで待ってて。」

 

 

合流地点では、電王 アックスフォームと、電王と契約するイマジン、

モモタロス、ウラタロス、リュウタロスが大量のデストロン戦闘員に包囲されていた。

その上空にゼロライナーが現れる。

ゼロライナーが電王のちょうど真上に来たタイミングで、

マッハ、ゼロノス、NEW電王が下車し、電王たちの前に降り立った。

 

「ずっとタイミング逃してたけど……

追跡、撲滅、いずれも……マッハ!仮面ライダーマッハ!!」

マッハが名乗りを上げる。

ゼロノスは無視して、敵を見据えながら背後の電王に呼びかける。

 

「野上!どうやら間に合ったようだな。オーズが来たら撤退する。

それまで持ちこたえられるな?」

マッハ、ゼロノス、NEW電王が武器を構える。

しかし、戦闘員は1体たりとも、攻撃を仕掛けてこなかった。

 

<フルチャージ>

「幸太郎!後ろだ!!」

武器としてNEW電王に握られているテディが大声で叫んだ。

NEW電王は振り返り、マチェーテディを振り上げようとしたが、

すぐに躊躇ってしまった。

その躊躇いの隙を突くように、電王は必殺のエネルギーが込められた

デンガッシャー アックスモードを容赦なく振り下ろし、マチェーテディを切断した。

「うわぁ!!!」

NEW電王はあまりの衝撃に、折れたマチェーテディを吹っ飛ばされてしまった。

 

「幸太郎!!野上!!何考えてるんだ!?」

怒りを露にするゼロノス。

しかしゼロノスにも、武器を持ったモモタロスとウラタロスが襲いかかる。

「どういうことだよ!?歴史改変の影響を受けてないんじゃなかったのかよ!?」

リュウタロスと交戦しながら、マッハはゼロノスに抗議した。

「ああ、確かに別れるまでは、野上もモモタロスたちも正気だったんだ!」

「じゃあ、デストロンに操られてるとでも言うのかよ!?」

イマジンたちに阻まれ、マッハもゼロノスもNEW電王を救出できないでいた。

その向こうではNEW電王が、デンガッシャーの重い一撃を何度も食らっていた。

 

「幸太郎……」

テディは地を這いながら幸太郎の名を呼んだ。

武器の状態で真っ二つにされたことで、テディは上半身だけの状態になっていた。

また、その断面の辺りは、既に砂と化していた。

 

「幸太郎!!……くっ!」

NEW電王が立っているのもやっとの状態なったのを見計らって、

デストロンの戦闘員がマッハとゼロノスを拘束した。

そして電王は、パワーアップアイテム、ケータロスをベルトにセットした。

<クライマックスフォーム>

アックスフォームの電仮面が電王の左肩に移動し、

さらに、電仮面と化したモモタロスたちが、電王の右肩、胸部、頭部に合体して、

電王はクライマックスフォームとなった。

電王は、デンガッシャーをソードモードに変形させる。

 

<チャージアンドアップ>

電王がライダーパスをケータロスにかざし、

デンガッシャーの刃にエネルギーを集中させた。

「嘘だろ……?おい!やめろよ!やめろ!!」

「野上!!やめろ!!幸太郎!!逃げろ!!幸太郎!!!」

今にも倒れそうなNEW電王に、電王の必殺技から逃れることは不可能であった。

どこにも届かない声でうわ言のように「テディ……」と呼ぶのみであった。

そんなNEW電王に、デンガッシャーを握った電王が迫り来る。

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

マッハの悲痛な叫びの中、電王はすれ違い様にNEW電王を切り裂いた。

 

電王の背後で大きな爆発が起こる。NEW電王は殺された。

 

 

 

つづく



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第4話 反デストロン同盟

「スーパーヒーロー大戦GP」をリメイクする二次創作小説です。
劇場公開時の感想を書き留めていたものが出てきたので、
それをベースに書いてみようと思いました。

※要するに「俺得 仮面ライダー3号」です。
尺とか対象年齢とかを抜きにしたときに、
仮面ライダー3号がこういう作品だったらよかったな、という
個人的な感覚で書いていきます。


※※※原作以上に、敵味方が複雑になります。
また、それ故にライダー同士が殺しあう場面も多く、
死亡するライダーも少なくありません。
そのような描写が苦手な方はブラウザバックを推奨します。


電王 クライマックスフォームの背後で大きな爆発が起こった。

その衝撃で、先ほどまでテディの身体を構成していた砂が宙に舞う。

この悲惨な光景を、マッハとゼロノスは為す術なく見せつけられていた。

 

「何だよ……これ……こんなのありかよ!?孫だったんだろ!?

家族だったんだろ!?それが何で……何でこうなっちまうんだよ!!!」

マッハが強い怒りを叫んだ。彼の心はかつてないほどに傷ついていた。

電王たちと出会ったばかりでありながら、ゼロノスに劣らないほどに悲しんでいた。

それは剛の若さ故か、それとも「家族」という部分に思うところがあったからか、

ともかく、マッハの心は荒れ狂っていた。

しかし、怒りを向けられても電王は何も答えなかった。

 

「野上!お前、本当にどうしちまったんだ……」

「俺が答えてやろう」

電王に代わって、どこからか声が響いた。

拘束されながらも、ゼロノスは周囲を見渡した。

「誰だ?どこにいる?」

ゼロノスの声に答えるように、どこからともなく仮面ライダーリュウガが姿を現した。

手にはドラグセイバーを携えている。

「電王は俺が倒した。そして彼らは、偉大なるデストロンの脳改造手術を受け、

デストロン首領に忠実な仮面ライダーとして生まれ変わったのだ!」

「脳改造手術だと!?」

ゼロノスが聞き返す。リュウガの言葉が本当ならば、

確かに電王が時間干渉を受けない存在であろうと関係はない。

「その通りだ。そして、次は貴様らに施術してやる」

「なんだと!!!」

リュウガの言葉に、マッハはまたしても怒りを露にした。

「貴様らを電王と共に献上すれば、首領もさぞお喜びになるだろう。

1人殺してしまったのは残念だが、電王の強さと、それを連れてきた俺の実力を示す

良いパフォーマンスとなったと思えば悪くない。

電王と貴様ら、合わせて3人、これから首領に尽くしてもらうぞ」

「ふっざけんな!!!」

マッハがさらに声を荒げる。しかしその感情に反して、

大量のデストロン戦闘員に拘束されたマッハの身体は一歩も動くことができなかった。

 

またどこからともなく、仮面ライダー龍騎と仮面ライダー龍玄 ブドウアームズが現れた。

<チャージアンドアップ>

<ブドウスカッシュ!>

電王の胸部の電仮面が開き、龍玄のブドウ龍砲と共にエネルギーを蓄える。

その傍ら、龍騎はドラグクローを構えた。

「やれ」

リュウガがドラグセイバーでマッハとゼロノスの方を指し示した。

それを合図に、電王 クライマックスフォームの必殺技、ボイスターズシャウト、

龍玄の必殺技、ドラゴンショット、龍騎がドラグクローを用いて

ドラグレッダーの火炎攻撃を打ち出す技、ドラグクローファイヤーが、

一斉に発射され、マッハたちに迫る。

「ちくしょう……」

マッハはリュウガの卑劣な行為と、それを前に何もできない自分に怒り、悔やんだ。

ゼロノス共々、「ここまでか……」と思った。

 

そこへいきなり、何者かが駆けつけた。

その人物はマッハたちの前で両腕を合わせて盾を作る。

すると、盾を始点に亀の甲のようなドーム状のエネルギーが展開され、

マッハとゼロノスを戦闘員ごと包み込んだ。

電王たちの必殺技がドームに着弾する。

しかし、ドラグレッダーの追突まで、ドームは一連の攻撃から内部の人物を守りきった。

 

「……ごめん、遅くなった」

そう言って防御を解除しながら、仮面ライダーオーズ ブラカワニコンボは振り向いた。

「火野!!」

ゼロノスが眼前のライダーの名を呼ぶ。それと同時に、ゼロノスとマッハの拘束が解かれる。

2人が振り向くと、仮面ライダークウガ ライジングタイタンフォームと

仮面ライダーウィザード ランドドラゴンが超怪力で戦闘員を引き剥がし、始末していた。

「とぉ!」

「はぁっ!」

リュウガと龍騎の前には、赤いヘルメットと青いボディの戦士、仮面ライダーV3が、

龍玄の前には、赤いボディに黄色の甲冑を纏う戦士、

仮面ライダーバロン バナナアームズが飛び込んだ。

V3とバロンは、すぐに眼前の敵との交戦を始めた。

<コネクト プリーズ>

ウィザードが魔法陣から鉄パイプを取り出し、クウガに渡す。

鉄パイプはクウガの手に触れるや否や、ライジングタイタンソードへと形を変えた。

「よっ。いきなりだけど、反撃開始の準備はいいか?」

マッハの隣に現れた仮面ライダー響鬼が尋ねる。

響鬼の傍らには仮面ライダーシン、ガタック ライダーフォーム、メテオ、

鎧武 オレンジアームズが集っていた。

「……当然、やってやるよ!!!」

マッハのその言葉と共に、集いしライダーたちは一斉に敵へ向かっていった。

 

<ズーット!マッハ!>

マッハは凄まじいスピードで駆け抜け、V3と戦っているリュウガを捕まえ、

一気に攻撃を叩き込んだ。そして、リュウガが怯んだところに強いキックを食らわせ、

吹っ飛んだ隙にシフトデッドヒートをベルトに装填した。

<シグナルバイク!シフトカー!ライダー!デッドヒート!>

デッドヒートマッハはリュウガへの猛攻を再開する。

その傍では、V3が龍騎を圧倒していた。龍騎の攻撃はことごとくV3に受け流され、

一方でV3の重い攻撃は龍騎の体力を一気に削っていく。

すぐ後ろで、ゼロノス アルタイルフォームはデストロン戦闘員と交戦していた。

ゼロノスは電王の相手をしようと向かっていくのだが、

次から次にまとわりつく戦闘員がそれをさせなかった。

 

「ぐああっ!」

バロンがバナスピアーで的確に龍玄を攻撃する。龍玄は既にブドウ龍砲を弾かれていた。

「フン、デストロンの強者の威光を借りなければ、貴様は俺に反撃1つできないのか?」

バロンはそう言いながら、なおも龍玄を攻めていく。

他のライダーたちは、周囲にいる大量の戦闘員を蹴散らしていた。

シンは腕のカッターで戦闘員を斬り伏せていく。

クウガとガタックもまた、ライジングタイタンソードとガタックカリバーで

戦闘員を斬り捨てていた。

響鬼は口から吐く紫の火炎攻撃、鬼幻術・鬼火で戦闘員を焼き尽くしていく。

オーズとウィザードはそれぞれタジャドルコンボとオールドラゴンに変身し、

飛行しながら戦闘員を攻撃している。

メテオはメテオストームに変身し、必殺技のメテオストームパニッシャーを

戦闘員に当てていく。

そして鎧武はスイカアームズに変身し、

その巨体で一撃ごとに大量の戦闘員を倒していった。

 

「終わりだ」

<バナナスパーキング!>

バロンはベルトを操作すると、バナスピアーを地面に突き刺した。

すると間もなく、バナナを模したオーラの槍が地中から龍玄を貫き、龍玄は爆発した。

バロンの必殺技、スピアビクトリーが決まったのだ。

「とぉ!」

V3が跳躍し、身体をきりもみ回転させながらキックの体勢をとる。

「V3きりもみキック!」

破壊力抜群の必殺キックが龍騎に命中する。龍騎は大きく吹っ飛んで、

地面に落ちると共に爆発した。

<ヒッサツ!バースト!フルスロットル!デッドヒート!>

続けて、マッハが熱を帯びながら跳躍し、空中で高速回転をする。

そのまま猛スピードでリュウガへ急降下し、必殺キック、ヒートキックマッハーを打ち込んだ。

「ぐああああっ!!」

リュウガは、着地したデッドヒートマッハの背後で大きく爆発した。

<フルチャージ>

ゼロノスがベルトからゼロノスカードを取り出し、ゼロガッシャーに差し込む。そして、

ゼロガッシャー サーベルモードの必殺技、スプレンデッドエンドで残る戦闘員を殲滅した。

いつの間にか電王は姿を消し、他の敵は全て倒されていた。

 

 

「本当にごめん、間に合わなくて……」

仮面ライダーオーズ=火野映司が謝罪の言葉を口にした。

一同はゼロライナーに乗り込み、変身を解除していた。

ただ、V3のみはライダーの姿のままだった。

「……いや、俺たちも野上の強さに甘えすぎていた。……この戦力差だ、

こういう事態も予測するべきだったんだ」

侑斗は抑えきれない悔しさを滲ませながら答えた。

 

「脳改造は、デストロンが直轄する怪人や戦闘員、仮面ライダーに行う常套手段なんだ。

……こう言っては悪いかもしれないが、あなたたちだけでも救出できてよかった」

仮面ライダーメテオ=朔田流星が言った。

実際、ゼロノスとマッハが脳改造手術を施されていたら、

デストロンと戦うライダーたちはより苦しい状況を強いられるだろう。

「絶対許さねぇ……」

仮面ライダー鎧武=葛葉紘汰がデストロンへの怒りを口にする。

「ああ。デストロンは絶対に潰す……!俺のこの手で……絶対に」

剛もまた、デストロンへの怒りを露にした。

 

「火野」

侑斗が映司に声をかける。

「こんな状況だ、一応聞かせてくれ。ここにいるライダーたちは、信用していいのか?」

不安を表情に浮かべる侑斗に、映司は微笑みを見せた。

「うん、彼らは反(アンチ)デストロン同盟。

正真正銘、デストロンに立ち向かう仲間たちだよ」

「反デストロン同盟?」

霧子が聞き返した。

「ああ。V3が立ち上げた、この世界の最後の希望だ」

仮面ライダーウィザード、操真晴人が答えた。

「最後の……」

「希望……」

霧子と侑斗は晴人の言葉を反芻した。

 

「俺たちは必ずデストロンを倒し、人間の自由を取り戻す。

それが俺たちの誓い、V3と1号、2号との誓いなんだ」

仮面ライダーシン=風祭真が静かに言った。

「1号と2号?でも、2人は死んだんじゃ……?」

剛が疑問を口にした。剛も霧子も侑斗も、ずっとそう認識していた。

「そうだ。1号と2号、本郷さんと一文字さんはもうこの世にいない」

V3が剛の問いに答えた。

「だが、2人が遺してくれたものは、今も俺の中にある」

そう言うと、V3は自らの過去を話し始めた。

 

 

1973年のことだった。青年、風見志郎はデストロンの怪人、ハサミジャガーに

両親と妹を殺害された。復讐に走った志郎は、返り討ちに遭い、瀕死の重傷を負ってしまった。

そんな志郎をギリギリのところで救った者がいた。

それが仮面ライダー1号と仮面ライダー2号であった。

2人は3号に敗北しながらも、辛うじて生きていたのだ。

志郎を救出し、手術台に寝かせた1号は、志郎に最後の言葉をかけた。

 

「風見、よく聞け。本来ならば、俺たちはお前を改造人間などにしたくはない。

人間でありながら人間でない、そんな存在は俺たちで終わりにするべきなんだ。

だが、俺たちにはもう死が迫っている。デストロンに立ち向かえる改造人間が、

このままではいなくなってしまうんだ。それだけは絶対に避けなければならない。

だから、俺たちはお前に、俺たちの全てを託す。

俺たちの全てを結集させた改造人間に、お前を作り替える。

だが忘れるな。お前はその力を、復讐のために用いてはならない。

お前は仮面ライダーとして、人間の自由のために戦うのだ!」

 

薄れていく意識の中で、志郎は2人の謝罪の言葉を何度か聞いた。

そして志郎が目覚めたとき、1号と2号は多くのパーツを失い、

生きていたときの形を崩して、手術台の下で死んでいた。

こうして、1号と2号の死と時を同じくして、風見志郎は仮面ライダーV3となった。

 

その後V3は、40年もの長きに渡ってデストロンと戦い続けた。

その途中で、X、アマゾン、ストロンガーと出会ったV3は、

4人の仮面ライダーで反デストロン同盟を結んだのだった。

その後スカイライダー、スーパー1が同盟に参加し、

6人の仮面ライダーは強い絆で結ばれていた。

だが、長すぎる戦いの中でX、アマゾン、スカイライダー、スーパー1はデストロンに敗れ、

脳改造を施されて敵となってしまった。

V3は志を共有した旧友と幾度も拳を交えた。

そして遂に、X、スカイライダー、スーパー1を自らの手で殺害してしまったのだった。

 

残る旧友、ストロンガーもまた、デルザー軍団の魔人たちを道連れに戦死してしまった。

それでもなお、V3は志を同じくする若人を率いて戦い続けていた。

1号、2号との誓いを守るために。

デストロンから人間の自由を取り戻すために。

そのために彼は、幾度となく自らの身体の再改造を行った。

今では脳以外の全てが人工物であり、既に人間の姿に戻る機能は失われていた。

 

 

「それで今もその姿なんですね……誓いを守るために」

霧子がV3を見て言った。剛も侑斗も、V3の壮絶な過去に圧倒されていた。

「……俺たちはイーヴィルライダーではない。

デストロンに従う奴らは仮面ライダーではない。

『仮面ライダー』とは人間の自由のために戦う戦士の名として、

本郷さんたちが遺してくれたものなんだ。

だから俺たちは、仮面ライダーの名と共に、人間の自由を奪い返さなくてはならない。必ず……」

 

V3は拳を握り、また沈黙した。

代わりに、仮面ライダーガタック=加賀美新が剛たちに近づいてきた。

「俺たちはこれから、デストロンの拠点に奇襲作戦を実行する。

君たちはこれからどうするんだ?」

加賀美が問う。すぐに剛が口を開いた。

「もちろん一緒に行くよ。デストロンを許しておけないし、

それに俺たち、人を探してて、この同盟に参加させてもらえれば、

何か手がかりが掴めるかもしれないし。」

剛と霧子は、進ノ介も仲間を探しているはずだと考えた。

だとしたら、反デストロン同盟に辿り着く可能性は高く、同盟に参加する意義は大きかった。

「侑斗もいいだろ?」

剛は侑斗に確認した。侑斗は力強く頷いた。

「決まりだ。行こうぜ、デストロンをぶっ潰しに!」

反デストロン同盟と決意を共有した剛たち。

彼らを乗せて、ゼロライナーは時の中を突き進んでいた。

 

 

 

つづく



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第5話 ギャレン

「スーパーヒーロー大戦GP」をリメイクする二次創作小説です。
劇場公開時の感想を書き留めていたものが出てきたので、
それをベースに書いてみようと思いました。

※要するに「俺得 仮面ライダー3号」です。
尺とか対象年齢とかを抜きにしたときに、
仮面ライダー3号がこういう作品だったらよかったな、という
個人的な感覚で書いていきます。


※※※原作以上に、敵味方が複雑になります。
また、それ故にライダー同士が殺しあう場面も多く、
死亡するライダーも少なくありません。
そのような描写が苦手な方はブラウザバックを推奨します。


進ノ介と黒井は、反デストロン同盟が奇襲をかけるという

デストロンの拠点を目指してマシンを走らせていた。

その途中、進ノ介が何かを発見し、トライドロンを停車させた。

 

「どうした?」

先導していたトライサイクロンを停めて、黒井がトライドロンに近づく。

進ノ介の視線の先、急な傾斜の下には、小さなサーキットがあり、

1台のレーシングカートが走行していた。

カートは鮮やかに最終コーナーを抜けて、ゴール前のストレートを風のように渡っていった。

カートはペースを落とし、やがて教官だと思われる人物の前で停車した。

ドライバーはエンジンを止め、立ち上がってヘルメットを脱いだ。

ドライバーの正体は中高生くらいの少年だった。

 

「あの歳で……すごいな」

進ノ介は素直に感心した。

「ああ。見たところ中学生か?

……卒業後はデストロンの入隊テストを受けて怪人になるつもりだろうな」

「え?」

黒井の物騒な発言が信じられず、進ノ介は聞き返した。

「慣習があるんだ。1号も2号も、2人を倒した怪人も、皆マシンの扱いに長けていたらしい。

だからデストロンは、マシンを巧みに操る人間を欲しがっている。

今や速さは、強さの代名詞だ。……見ろ」

黒井はサーキットの隅を指差した。車椅子に乗る男性と、その妻だと思われる女性が、

互いにすがりつきながら酷い表情で泣いていた。

「あの少年の両親だろう。父親は身体の一部が不自由なようだな。

着てるものを見ても、生活が苦しいのだろう。そんな家族を救うため、

あの少年はきっと進学せずにデストロンに入るだろう。

デストロンと民間とでは給与が違うし、

何よりあのドライビングテクニックがあれば、入隊も出世も思いのままだ。」

「そんな……」

 

進ノ介はショックを受けていた。

少年は教官に褒められているようだったが、少年の顔は笑みの中に影を含んでいた。

その向こうで少年の両親はずっと泣いていた。

あの家族の誰一人、デストロン入隊を望んでいないことが、進ノ介にはよくわかった。

「今じゃよくあるケースだ。だが、デストロンを倒せば、それも終わる。

……なんとしても勝つぞ、進ノ介」

「……ああ」

 

その時だった。2人の進行方向の少し先で爆発が起こった。

戦闘が行われているのかもしれない、もしかしたら仲間が戦っているのかもしれない、

そう思った2人は爆発のあった方向へマシンを走らせた。

 

 

「ぐぁぁ!」

爆炎の中で、ダメージに耐えられずに倒れる仮面ライダーギャレン。

その周囲をデストロン戦闘員が囲んでいる。

ギャレンの前に仮面ライダーレンゲルが近づく。

レンゲルはレンゲルラウザーの先端を一度ギャレンに向け、そして大きく振り上げた。

 

そこへ、トライドロンとトライサイクロンが現れる。

<タイヤフエール!>

トライドロンはマックスフレア、ミッドナイトシャドー、ファンキースパイクのタイヤを

手裏剣のように飛ばして戦闘員を一掃する。

トライサイクロンはガトリング砲でレンゲルを攻撃した。

「今の内に行くぞ!急げ!」

ドライブがギャレンに声をかける。

「あ、ああ」

ギャレンはよろめきながらもレッドランバスに乗り、3台のマシンはその場を後にした。

 

 

安全な場所に身を隠した3人はマシンを降りる。

「Nice drive」

ドライブと3号が変身を解く。ギャレンもまた、変身を解除した。

ギャレンがバックルのレバーを引くと青いゲートが飛び出し、ギャレンの身体を通過する。

ゲートから出てきた人物、橘朔也はその場で膝をついた。

「大丈夫か?」

進ノ介が橘に駆け寄り、身体を支える。

「ああ……それより、貴方たちは?」

「俺は3号、黒井だ」

「俺はドライブ、泊進ノ介だ」

「3号にドライブか。俺は橘、ギャレンだ。さっきは本当に助かった。感謝する」

「状況を教えてもらえるか?」

黒井が説明を促した。

 

「ああ。俺はブレイドと共に、デストロンが解放した不死生物、アンデッドを封印していた。

だが、カリスとレンゲルに襲われ、ブレイドが捕まってしまった。

奴らはブレイドの封印したアンデッドを再解放し、ブレイドを処刑するつもりなんだ。

すぐに助けに行かないと……」

橘は足を進めようとしたが、苦痛に顔を歪めて動きを止めた。

「そんなボロボロの状態じゃ無茶だ……」

進ノ介が橘を制止する。

「……わかった。俺と進ノ介でブレイドを救出しよう。味方は多いに越したことはない。

ただし2つ条件がある。まず、救出は不可能だと判断した時点で中断する。

次に、結果に関わらずお前には、共にデストロンと戦ってもらう。

救出成功の場合はブレイドもだ。この2つだ。いいな?」

黒井が提案した。橘は頷いた。

「わかった。だが気をつけてくれ。カリスもレンゲルも強敵だ。」

「心得た」

黒井は振り返り、トライサイクロンに乗り込む。

「あんたはここで待っていてくれ」

進ノ介は橘をそっと座らせると、トライドロンで黒井と共に発進した。

 

 

デストロン系列の小さな研究所。その外壁の陰で、到着した進ノ介と黒井は様子を窺っていた。

「よし、行くぞ」

黒井の合図で2人は駆け出し、門に立つ戦闘員を素手で蹴散らす。

そのまま施設に侵入し、向かってくる戦闘員をひたすら倒していく。

 

「フン、ここに来たということはブレイドの救出か?無駄なことを」

エコーがかかったような声がそう言った。

進ノ介が振り向くと、仮面ライダーカリスが佇んでいた。

「無駄だと?まさかブレイドはもう!?」

進ノ介が問う。

「まだだ。だが、お前たちは救出を達成できずに共に処刑されることになる。

だから無駄だと言っているんだ」

カリスは冷たく言い放った。

「そんなこと、させるものか!」

進ノ介はベルトを装着した。

「OK!Start your engine!」

黒井も同時にベルトを出現させている。2人は並んで変身ポーズをとった。

「「変身!」」

<ドライブ!タイプスピード!>

2人の姿がその場で変わった。3号はカリスに、ドライブは戦闘員に挑んでいく。

 

カリスは3号の攻撃をほとんど動かずに回避し、拳や手刀で3号に攻撃を返していく。

3号もカリスの攻撃をかわしている。

「ドライブ!カリスは俺が相手をする。お前は早くブレイドのところへ」

「わかった!」

<スピスピスピード!>

ドライブはシフトブレスを3回操作すると自らを加速させ、戦闘員を撃破しながら先へと進んだ。

 

 

研究所の深部。ドライブが辿り着いた先で、

仮面ライダーブレイドが鎖によって柱に固定されていた。

「大丈夫か?今助ける!」

ドライブはブレイドに駆け寄り鎖を解く。

しかしその瞬間、ブレイドはなんとドライブを殴り飛ばした。

「うわぁ!……どういうことだ!?」

困惑するドライブ。そこへ現れたのはレンゲルと、なんと橘朔也だった。

「あんたは!?……じゃあこれは」

「罠だったのか!」

ドライブの言葉をベルトさんが引き継ぐ。橘は無言でバックルを装着した。

 

「ハハハハッ、よくやったなギャレン。ブレイドもご苦労だった。

あとはこのイーヴィルライダーを始末すれば、俺たちの手柄になる!さあギャレン、変身しろ」

レンゲルが言い放つ。それに従って橘は変身ポーズをとった。

「変身」

<ターンアップ>

橘の前に青いゲートが出現し、橘はゆっくりゲートに近づいていく。

ゲートが橘と接触し、仮面ライダーギャレンへの変身が完了した。

ブレイド、ギャレン、レンゲルはそれぞれのラウザーを構えてドライブを包囲した。

 

「かかれ!」

レンゲルの合図で3人のライダーがドライブに襲いかかる。

ドライブはハンドル剣を装備して、応戦するが、

ブレイドの剣、レンゲルの杖、ギャレンの銃による攻撃を全て回避するのは難しく、

ドライブはすぐに窮地に立たされてしまった。

「ぐぁぁ!!」

壁を突き破り、カリスが飛んできた。その後から、3号が壊れた壁を越えて現れた。

3号はドライブの状況を見ると、レンゲルをドライブから引き離して攻撃した。

 

戦況はドライブVSブレイド・ギャレン、3号VSカリス・レンゲルとなった。

ドライブはハンドル剣でブレイドの剣術に応戦する。

しかし、ブレイドの攻撃の間を埋めるような、

ギャレンの銃撃と肉弾戦を合わせたファイトスタイルに、逆転の糸口を掴めずにいた。

一方の3号はカリスアローとレンゲルラウザーの攻撃をかわして反撃を試みるが、

カリスもレンゲルもリーチの長さを存分に活かしていて、

3号は有効打を与えられていなかった。

 

<バイオ>

<ブリザード>

カリスとレンゲルがカードをラウズする。

カリスはカリスアローから植物のツタを数本伸ばして3号の拘束を試みた。

3号は腕や脚でこれを薙ぎ払う。

しかし、陽動であるツタを相手している3号は、レンゲルに背後をとられていた。

レンゲルはレンゲルラウザーから冷気を噴出した。

振り返る3号、しかし既に遅く、3号の身体は首から下が凍りついてしまった。

<チョップ>

<トルネード>

<スピニングウェーブ>

カリスが2枚のカードをラウズして必殺技を発動する。

右手の手刀が竜巻を纏って切れ味を増していた。

カリスは3号の懐に入り、手刀を叩きつけた。

「ぐわぁぁぁ!!」

3号はドライブの背後に大きく吹っ飛んだ。

カリスの必殺技、スピニングウェーブで3号を拘束していた氷は砕け散っていた。

 

「3号!」

<スラッシュ>

<サンダー>

<ライトニングスラッシュ>

3号に気をとられるドライブの隙を突いて、ブレイドも必殺技を発動した。

ドライブがブレイドの方を向き直したとき、既にブレイドは間合いを詰めていた。

「ウェェイ!!」

ブレイドは帯電した刃をドライブに命中させた。

「うわぁぁぁ!!」

ドライブもまた、3号が倒れる辺りに吹っ飛ばされてしまった。

 

<バレット><ファイア>

「ぐっ……」

起き上がろうとするドライブ。その眼前に、カードをラウズしたギャレンが歩み寄る。

ギャレンはギャレンラウザーの銃口をドライブに向けた。

「フン、やはり無駄だったな」

カリスがドライブに言い放つ。ブレイドもレンゲルも、ギャレンの背後で見ていた。

「とどめをさせ、ギャレン」

レンゲルが命じた。

 

 

しかし、ギャレンは振り返り、火炎弾をブレイド、カリス、レンゲルに撃ち込んだ。

「くっ……どういうつもりだギャレン!!まさか裏切るというのか!?」

レンゲルが激昂して叫ぶ。ギャレンは返答せずに振り返り、ドライブに手を差しのべる。

ドライブは手を取って身体を起こし、ギャレンは続けて3号にも同じようにした。

「そんな……!?橘さん、説明してください!本当に裏切ったんですか!?」

ブレイドも叫んでいた。ギャレンは再びブレイドたちに向き直った。

「俺たちの心を裏切ったのはデストロンの方だ!

いや、俺たちは最初からデストロンに騙されていたんだ!」

「何だと?」

ギャレンの言葉を、カリスが静かに聞き返す。

 

「剣崎、始、睦月、聞いてくれ。デストロンは俺たちを悪事に利用しているにすぎない。

デストロンに正義はない!俺たちは、デストロンのために戦うべきじゃない!」

ギャレンは仲間の説得を試みていた。

ギャレンの言葉に対する、相川始の姿ではないカリスの心境や、

レンゲルのマスクの下の上城睦月の表情は不明だった。

しかし、ブレイドだけは、剣崎一真だけは明らかに動揺していた。

「落ち着け、ブレイド」

レンゲルがブレイドに呼びかける。そのままレンゲルはギャレンの目を見た。

「ギャレン、何があったんだ?」

レンゲルが尋ねた。

「デストロンは……奴らは俺の恋人を、小夜子を殺したんだ!」

ギャレンが答えた。

ブレイドは再び動揺し、ギャレンの背後ではドライブも息を飲んでいた。

 

 

 

つづく



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第6話 共闘

「スーパーヒーロー大戦GP」をリメイクする二次創作小説です。
劇場公開時の感想を書き留めていたものが出てきたので、
それをベースに書いてみようと思いました。

※要するに「俺得 仮面ライダー3号」です。
尺とか対象年齢とかを抜きにしたときに、
仮面ライダー3号がこういう作品だったらよかったな、という
個人的な感覚で書いていきます。


※※※原作以上に、敵味方が複雑になります。
また、それ故にライダー同士が殺しあう場面も多く、
死亡するライダーも少なくありません。
そのような描写が苦手な方はブラウザバックを推奨します。


橘朔也はデストロン支配下の世界で生まれ育った。

彼は兵器の研究・開発機関であるBOARDの職員として、

デストロンの指示に従って活動していた。

ブレイド、カリス、レンゲルとの出会いもBOARDに所属したことがきっかけだった。

しかし、橘がギャレンとして反抗勢力と数回戦った頃、彼は心身の不調を自覚するようになった。

 

橘が症状について相談したのは、大学の同期生にして、当時の恋人だった

深沢小夜子という女性だった。彼女は優秀なエンジニアであり、

裏ではデストロンの機密情報すら盗み出すほどのハッカーでもあった。

故に、小夜子はそのときも容易く目的の情報に辿り着いた。

しかし、彼女がその情報を直接橘に伝えることは叶わなかった。

彼女はハッキングに気がついたデストロンの刺客に殺害されてしまったのだ。

 

小夜子の死は事故として処理された。橘は彼女の遺品をいくつか受け取った。

だが、これが橘の運命を変える。橘は遺品の中からあるものを見つけた。

それは、橘が彼女に送った記念品のパズルのピースだった。

「いくら何でも不自然だ……なぜ小夜子はこのピースを持ち歩いていたんだ?」

そう考えた橘は、ピースを調べた。すると、ピースには小夜子の残したデータが、

専用の機械を通さないと視認も読み取りもできない加工でプリントされていたのだった。

橘はそのデータから、大きく2つのことを知った。

1つは、彼の不調が恐怖心の増大から来るライダーシステム特有の症状であること。

そしてもう1つは、デストロンの悪事、デストロンが仮面ライダーたちを利用して

非道な行為を繰り返していることだった。

 

 

「……小夜子の仇、ピーコックアンデッドは俺が封印した。」

ギャレンは、ダイヤのJのカードを取り出し、ブレイドたちに見せる。

「だが、小夜子は生き返らない。それだけじゃなく、

ピーコックアンデッドに抹殺を命じたデストロンは、今なおライダーや市民を欺いている。

俺が恐怖なんかに囚われて小夜子に相談しなければ……

もっと早くデストロンの正体に気づいていれば……」

ギャレンの声は静かながらも怒りと悔しさを含んでいた。

その声に一層の動揺をブレイドは見せている。

 

「それがどうした?」

レンゲルが口を開いた。ドライブとブレイドは驚いてレンゲルを見る。

「反体制派は処分される。この世界で誰もが知るルールだろ?

その女は反逆者だったからデストロンに裁かれた。それだけのことを何故騒ぐ?」

レンゲルは冷たく言い捨てた。しかし、ギャレンは冷静だった。

「睦月。今のお前もまた、デストロンの悪事の証拠だ」

「何?」

「お前と出会ったのは、お前がまだBOARDの研修生だった頃だ。

だが、お前がデストロン本部に呼ばれ、レンゲル一式を授かって俺たちの上司になってから、

お前は人が変わった。上城睦月という人間は、人が1人殺されたことを

『それだけのこと』と言える奴じゃなかったはずだ!」

「!?」

思い当たることがあるのか、ここでレンゲルが初めての動揺を見せた。

「馬鹿な……俺が……俺が操られているというのか……?この俺が……?」

 

さらにギャレンは、カリスに視線を移す。

「始。お前だってそうだ。お前にはデストロンの仮面ライダーカリスである以前に、

人間、相川始としての自我があったはずだ。だが、それは今抑圧されている。

始も睦月も、カテゴリーAの力を強化されて操られているんだ!」

「……」

カリスは無言でギャレンと視線を交えている。

だが、ブレイドとレンゲルは完全に動揺している。

「今、同じようなことが世界中で起きている。俺たちよりも遥かに非力な人たちまでもが、

デストロンに騙され、利用され、人生や生命を奪われている。

それを止められるのは、戦う力を持つ俺たち仮面ライダーだけだ!

俺たちは、戦えない全ての人のために、デストロンと戦うべきなんだ!!」

 

そう言うと、ギャレンはブレイドに向かって手を伸ばす。

「剣崎!俺に手を貸せ!始と睦月からカテゴリーAを回収し、2人を解放するんだ!」

「!?」

ギャレンがブレイドに呼びかける。ブレイドはなおも困惑している。

しかし無意識か、ブレイドの足はギャレンに向かおうとしていた。

 

「ブレイド!!!」

ギャレンに引き寄せられつつあったブレイドを、レンゲルが非常に強い口調で呼び止める。

「奴の口車に乗るな!ギャレンを拘束するんだ!!」

「!!」

ブレイドは、今度はレンゲルの言葉に動揺していた。

「俺の命令に従え、ブレイド。ギャレンの言葉が真実か戯言かは、この際どうでもいい。

後でじっくり聞いてやる。だが、ここで奴に負けたり、逃げられたりしたら

それも叶わないんだぞ?わかったら奴を拘束しろ!!」

 

ブレイドは俯き、葛藤している。

「剣崎!!」

「ブレイド!!!」

「……橘さん、すみません!」

ブレイドはブレイラウザーを握り、ギャレンに斬りかかった。

ギャレンはブレイドの攻撃を回避して、ブレイドを撃つ。

「剣崎!!考え直せ!!デストロンの思う壺だぞ!!」

カリス、レンゲルもギャレンに攻撃を試みる。

それをドライブと3号が遮る。3号がギャレンを振り返った。

「ギャレン、残念だが条件に従ってもらう。今、これ以上続けても無意味だ」

「……わかった」

ギャレンはクローバーの9のカードを取り出した。

<スモッグ>

ギャレンがギャレンラウザーの銃口をブレイドたちに向けると、

銃口から煙幕が吹き出し、ブレイドたちの視界を奪う。

その隙に、ドライブ、3号、ギャレンは研究所を脱出した。

 

 

「ブレイドたちと話す隙を作るためとはいえ、

騙したことは申し訳ないと思っている。本当に悪かった」

逃亡し、変身を解いた橘は、進ノ介と黒井に謝罪した。

「もういいさ。あんたの気持ちはわかったから。

それに、今度は本当に仲間だと思っていいんだろ?」

進ノ介は橘に頭を上げるよう促しながら言った。

「ああ。力を合わせて、デストロンに立ち向かおう」

「ならばすぐにでも出発するぞ。同盟の奇襲作戦決行まで、それほど時間はないんだ」

黒井はそう言って、トライサイクロンでの先導を再開した。

その後ろを、トライドロンとレッドランバスが追っていく。

 

それを遥か後方から、またしても長髪の男が見ていた。

 

 

剛、霧子、侑斗、デネブが反デストロン同盟に参加してから数日が経った。

一行は怪人たちと戦闘中だった。

「はあっ!」

クウガ ライジングドラゴンフォームがゴ・バダー・バと対決している。

ライジングドラゴンロッドとバダーの格闘戦術が一進一退の攻防を続けている。

その近くではシンが改造兵士レベル3と組み合っている。傍で響鬼が困っていた。

「お前ら似すぎ!もっとわかるようにしなさいよ!……おっと」

突如飛びついてきたサイコローグを避ける響鬼。

サイコローグはそのまま響鬼と戦闘を開始した。

その他、V3はウヴァと、ガタックはグリラスワームと、オーズはバッタヤミーと、

バロンはホッパー・ドーパントと交戦し、残りのライダーは大量の戦闘員と戦っていた。

戦闘員はデストロン規格のみならず、ワームのサナギ体や屑ヤミーも多く紛れている。

「くそっ、数が多すぎる!」

ゼロノス アルタイルフォームが悪態をつく。

彼もデネブも多くの戦闘員を倒しているが、それでも戦闘は終わる気配を見せなかった。

「本当、どんだけいるんだこいつら!」

マッハも敵の数に呆れて悪態をついた。

 

そのときだった。マッハの眼前で10体ほどの戦闘員が、

どこからか飛来した矢に射抜かれて倒れた。マッハは周囲を見回す。

すると、高台から、風のエルが戦闘員に向けて矢を一斉発射していた。

さらに、風のエルの後ろから水のエル、地のエルが姿を見せる。

水のエルが腕を上げる。

「行け。不浄なる者共を始末せよ」

そう言って水のエルが腕を下ろすと、色とりどりのジャガーロードやトータスロード、

クロウロード、そして大量のアントロードが一斉に姿を現し、戦闘員を襲い始めた。

驚くことに、新たに現れた怪人たちは、誰一人としてライダーを襲わなかった。

「何これ?何がどうなってんの?」

マッハが素直な驚きを口に出した。

「み、味方なのか?」

鎧武も戸惑っている。

「ひとまず、戦闘員を殲滅するぞ」

メテオが全体に指示を出して交戦を再開させた。

 

<1><2><3>

「ライダーキック!」

<ライダーキック!>

「「おりゃあ!!」」

クウガのライジングスプラッシュドラゴンとガタックのライダーキックが炸裂し、

吹っ飛ばされたゴ・バダー・バとグリラスワームが空中で接触して爆散した。

その場にいたデストロンの怪人と戦闘員は全て処理されていた。

残っていたのは反デストロン同盟のライダーと、

3体のエルロードが率いる新手の怪人軍団のみであった。

 

V3が、エルロードに近づく。

「救援、誠に感謝する。それで、お前たちは何者だ?」

V3が尋ねた。それに対し、水のエルが口を開く。

「我らはマラーク。貴様たちの言葉で言うところの、『神の使い』である」

「神だと!?そんなものが実在するのか!?」

バロンが食いついた。

「左様。我らは本来、主の御意志に背き殖えるアギトを滅する者である。

だが、人間はアギト以上に不浄なる存在を生み出し、醜く進化を進めている。」

「アギト以上の不浄?デストロンのことか?」

V3が聞き返す。風のエルが引き継いだ。

「左様。主は怒り、悲しまれている。そして主は我らに命じられたのだ。

デストロンを滅ぼせ、と」

 

再び水のエルが口を開いた。

「貴様たちは人間の側からデストロンを滅ぼさんとする者であるのだろう?

ならば我らに手を貸せ」

ライダーたちは驚き、顔を見合わせた。

言っていることは理解できるが、相手は自分たちから見れば怪人である。

信用していいのか、確かな判断は難しかった。

 

「どうする?V3」

響鬼がV3に判断を委ねた。他のライダーもV3を見る。

彼らはV3の判断に従うことにした。

「……お前たちの話に偽りがないと、お前たちの主に誓えるのだな?」

V3は水のエルに問いかける。

「もちろんだ。主テオスに誓って、全て真実である」

水のエルは答えた。V3はまた少し考え、それから返答をする。

「わかった。手を結ぼう。私たちはデストロンの拠点に奇襲をかける。

このまま行けば決行は予定通り明日になる。そこで共闘してもらうことはできるか?」

「よかろう。では明日、また会おう」

水のエルがそう言うと、マラークと名乗る者たちは急に発生した霧に包まれて姿を消した。

V3に判断を任せたライダーたちは、この場で起こったことについては何も言わなかった。

 

 

その日の夜。反デストロン同盟のメンバーは洞窟にゼロライナーを隠して体を休めていた。

デネブが作る和食の献立がライダーたちに供給され、

栄養補給が済んだライダーたちは休眠に入っていく。

しかし、侑斗は妙に寝つけないでいた。

「……」

侑斗は起き上がり、外で風を浴びることにした。

 

ゼロライナーの外に出ると、洞窟の入口にV3が立っていた。

「脳以外機械化しているから、眠らなくていいのか?」

侑斗はそんなことを頭に浮かべながらV3に近づいてみた。すると、剛もいることに気がついた。

 

「剛、寝なくていいのか?」

侑斗が声をかける。

「寝つけなくて。侑斗も同じじゃないの?」

剛が尋ねた返した。侑斗は小さく「まあな」と言って、今度はV3に話しかけた。

「V3。まだ聞いていなかったことがる。

今回の奇襲作戦は、どうしてこんなところの拠点なんだ?

都心から離れて寂れているようだし、デストロン本部ってわけでもないんだろ?」

侑斗に質問を受けて、V3が2人の顔を見る。

「今回の奇襲作戦は、オーズから聞いた『本来の歴史』の話がきっかけだった。

そして君たちからも『本来の歴史』の話を聞いて、

俺はこの奇襲作戦がデストロンを倒す決め手になると確信している」

「「!?」」

V3の言葉に驚く2人。侑斗がさらに尋ねる。

「何故確信しているんだ?」

「それは、今回攻撃する拠点には、『歴史改変マシン』なる装置が確認されているからだ!」

 

 

 

つづく



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第7話 歴史改変マシン

「スーパーヒーロー大戦GP」をリメイクする二次創作小説です。
劇場公開時の感想を書き留めていたものが出てきたので、
それをベースに書いてみようと思いました。

※要するに「俺得 仮面ライダー3号」です。
尺とか対象年齢とかを抜きにしたときに、
仮面ライダー3号がこういう作品だったらよかったな、という
個人的な感覚で書いていきます。


※※※原作以上に、敵味方が複雑になります。
また、それ故にライダー同士が殺しあう場面も多く、
死亡するライダーも少なくありません。
そのような描写が苦手な方はブラウザバックを推奨します。


「歴史改変マシン?」

剛と侑斗がV3に尋ねるのとは別の時間と場所で、

橘もまた黒井から歴史改変マシンの話を聞いていた。

「そうだ。十数日前、反体制派の1人がデストロンのサーバーに忍び込んだ。

その結果、俺たちが向かう拠点で

『歴史改変マシン』なる装置が稼働していることが発覚したんだ。」

黒井の説明を橘は、そして進ノ介は黙って聞いている。

「最初は誰もが半信半疑だった。

だが進ノ介のような、『デストロンが世界征服を達成していない歴史』を知る者が、

反デストロン同盟の方にも現れたようだ。

結果として、歴史改変マシンの実在と効力が事実であることがわかり、

同盟はそれを破壊することを決めたというわけだ」

「破壊?奪うんじゃないのか?」

橘が質問した。

「さっきも言ったように、歴史改変マシンは稼働を続けていることが確認されている。

つまり、歴史を変えるためにはマシンは稼働し続ける必要があるということだ。

逆に、マシンを破壊できれば……歴史は元に戻る」

 

黒井の説明が終わったところで、進ノ介が口を開いた。

「なあ、反デストロン同盟のところに現れたのって、もしかして剛や霧子か?」

「さあな。そこまでは俺の知るところじゃない。だが、行く価値はあるだろう。

拠点を同盟で押さえることができれば、万が一いなくても呼ぶことができる。

万が一破壊したマシンがまた必要になっても、拠点なら設計図も部品も調達できる。

だからとにかく、奇襲作戦には参加する。……改めて聞くが、それでいいな?」

「ああ」

橘が返事をする。進ノ介もまた、黒井の目を見て頷いた。

 

 

奇襲作戦決行当日。

ドライブたちは既に変身し、目標拠点の裏口に迫っていた。

裏口の前では、ショッカーのエンブレムを光らせる毒サソリ男と

さそり座の輝きを持つスコーピオン・ゾディアーツが見張りをしていた。

「よし、一気に制圧して突入する。俺に続け」

3号の指示に頷くドライブとギャレン。タイミングを見極めて、3号が毒サソリ男に殴りかかる。

続けてドライブとギャレンがスコーピオン・ゾディアーツと交戦開始する。

ドライブがスコーピオン・ゾディアーツに拳や蹴りを浴びせ、反撃が始まる前にギャレンが撃つ。

しかし、そのコンビネーションは早々に崩された。

 

「くっ!」

「うわぁ!」

「ぐあっ!」

新たにゴ・ザザル・バ、サソリ奇械人、スコルピオワーム、スコーピオンオルフェノク、

スコーピオンイマジンが現れ、ドライブたちを攻撃した。

攻撃によろめいたドライブが体勢を立て直して視認すると、

さらにマスカレイド・ドーパントの一団とデストロン戦闘員の一団が周囲を囲んでいて、

戦況は完全に覆されてしまった。

 

「サソリタイプの怪人が配備されていたか……

いよいよデストロンの拠点らしくなってきたじゃないか」

3号がそう言って、現れた怪人たちに挑む。

しかし、言葉とは裏腹に3号に余裕がないのはドライブには明らかだった。

怪人たちはドライブとギャレンにも襲いかかる。

ドライブはここを越えた先の戦闘を見越して攻撃を回避することに努めるが、

それでもかなりの攻撃を浴びてしまった。

「ぐっ!」

ギャレンが地を転がる。ギャレンはすぐに立ち上がるが、彼も多くの攻撃を受けていた。

 

「ドライブ!」

3号が呼ぶ。ドライブは攻撃を避けながら、耳を傾ける。

「カリスのときと同じ手だ。ここは俺とギャレンに任せて先に行け」

「!?何を言ってるんだ!!あのときと今とじゃ状況が違うだろ!

3人でもこの状況なのに……2人じゃ無理だ!!」

ドライブは強く抗議した。3号やギャレンをこんなところで死なせたくはなかった。

しかし、3号は冷静にドライブを諭す。

「全滅するよりマシだ。誰もこの先へ辿り着けなければ、

ここまでの旅の全部が無駄になるのがわからないのか?」

「それは……くっ!」

ドライブがスコーピオンイマジンの斧による一撃を受け、3号の近くに吹っ飛んだ。

「それ見ろ。……お前には無事を確認したい仲間がいるんだろ?だったらお前は行くべきだ。」

「……」

「心配しなくとも、ギャレンと共に追いつくさ。俺が勝ちに固執する性分なのは知ってるだろ?」

「……すまない、だが必ず生きて追いついてくれ!」

<スピスピスピード!>

ドライブはシフトブレスを操作して、怪人たちの隙間を駆け抜けて、拠点の奥へと進んで行った。

 

残された3号とギャレンは敵に囲まれ、背中合わせで並び立っている。

「そういうわけで、すまないな。ここまで巻き込んでしまって」

3号が謝罪する。

「お互い様だ。ブレイドたちのときは、俺も迷惑をかけたからな。

それよりドライブを行かせて、それで策が尽きたわけでもないんだろ?

何かあるのか?ここを抜ける策が」

ギャレンが背後の3号に尋ねた。

「……そうだな。1つある」

ふいに、3号は構えを解いて振り返える。

ギャレンは前方の敵に注意を向けていて、3号が自身を見据えていることに気づかない。

そんなギャレンの、信頼故に無防備な後ろ姿に3号が迫る。

「もらうぞ、貴様の命」

 

 

ドライブは一気に駆け抜けた。彼はいつの間にか地下空洞のような場所を走っていた。

ふと、ドライブは進行方向に、歴史改変の際の緑色の光と同じものを見つけた。

光は空洞の先にある大部屋から発せられていた。

大部屋は上の方にショッカーのエンブレムがあり、その下には玉座が置かれていた。

どうやら指令室のようである。

そして大部屋の中央には、ショッカーエンブレムの刻まれた、

直径2mほどの球体の装置が安置されていた。光はこの装置から放たれている。

「もしかしてこれが、歴史改変マシン?」

 

「進兄さん?」

ドライブは振り返った。マッハが近づいてきた。

「やっぱり進兄さんだ!ここまで来れば合流できると思っていたけど、アタリだったね」

マッハは数人のライダーを伴っていた。

「剛、この人たちって……」

「ああ、反デストロン同盟の仲間たちさ。進兄さんは独り?」

「いや、俺もギャレンと3号が一緒だったんだ。今は敵の足止めをしてくれて……」

「待て!3号だと!?」

ゼロノスがドライブの話を遮る。

ドライブはゼロノスのただならない様子に驚いた。

「あ、ああ。ここまで同行していたんだ。それがどうかしたのか?」

ドライブが尋ねる。

「……仮面ライダー3号こそ、1号と2号を倒した張本人らしい」

ドライブの問いにマッハが答えた。

「……何だって?」

「でも、それならどうして進兄さんをここまで連れてきたんだ?」

 

そのときだった。

「ようこそ、反デストロン同盟の諸君。待っていたよ」

突然の声に、ドライブと同盟のライダーたちは周囲を警戒した。

すると、歴史改変マシンの前に男が独り立っていた。

男は仮面ライダーのような、しかし、口元の出るヘルメットと銀のマントを身につけていて、

右腕にはパワーアームと呼ばれる装備をつけていた。

 

V3が前に出た。

「久しいな、アンチライダーマン!!」

V3は眼前の男に呼びかける。それは、長きに渡る因縁の相手に対する声だった。

「V3、そして貴様の仲間たちに倒された我が同胞の恨み、今日こそ晴らしてやる!!

出でよ、デストロンの精鋭たちよ!!」

アンチライダーマンが号令をかけた。すると、同盟のライダーを囲むように、

大部屋の内外に大量のライダーと怪人たちが現れた。

 

 

 

つづく



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第8話 デストロン万歳

「スーパーヒーロー大戦GP」をリメイクする二次創作小説です。
劇場公開時の感想を書き留めていたものが出てきたので、
それをベースに書いてみようと思いました。

※要するに「俺得 仮面ライダー3号」です。
尺とか対象年齢とかを抜きにしたときに、
仮面ライダー3号がこういう作品だったらよかったな、という
個人的な感覚で書いていきます。


※※※原作以上に、敵味方が複雑になります。
また、それ故にライダー同士が殺しあう場面も多く、
死亡するライダーも少なくありません。
そのような描写が苦手な方はブラウザバックを推奨します。

※※※今回は鬱展開注意です!!!大丈夫な方だけご覧ください!!!


反デストロン同盟とデストロンの激戦が始まった。

 

シンが、メ・ビラン・ギとバケネコを引き裂く。

すると、その眼前にアマゾン、シンの左右にZOとJが立ち、次々に連携攻撃を繰り出す。

 

クウガ ドラゴンフォームが複数のレイドラグーンを薙ぎ払う。

その背後から、バース・デイのドリルアームが迫る。

ギリギリのところで避けたクウガは、バース・デイの装甲を破るべく

タイタンフォームへ超変身した。

 

響鬼は音撃棒 烈火でキノコモルグ、サトリ、火焔大将を撃破した。

そこへゴルドラ、シルバラが現れ、左右から響鬼を攻撃する。

どうにかかわして反撃をしようとする響鬼。しかし、G電王の狙撃がそれを許さない。

 

ガタック ライダーフォームがバットイマジン、ホースファンガイア、

アームズ・ドーパントを斬り伏せる。ガタックは次に、ドラゴンオルフェノクと対峙する。

<クロックアップ>

ドラゴンオルフェノクが龍人態になると同時にガタックもクロックアップを発動し、

高速の激突を繰り広げている。

 

ゼロノス ゼロフォームが右手にゼロガッシャー サーベルモードを、

左手にデネビックバスターを携えて敵に挑む。

カメバズーカ、乱れ童子、ザンジオーがゼロノスに敗れていく。

ゼロノスはさらに、自らに迫り来るアルビノレオイマジンと

レオ・ゾディアーツに向けてデネビックバスターを撃った。

 

オーズ タトバコンボは右手に携えたメダジャリバーと左手のトラクローで

ソードフィッシュオルフェノク、トライアルD、Rナスカ・ドーパントと

応戦しながら恐竜グリードに迫った。恐竜グリードはオーズの腕を抑える。

「貴方は、真木博士なのか?」

オーズが問う。

「ほう、私をご存知で?もっとも私はそのコアメダル以外、貴方のことを知りませんが」

オーズと恐竜グリードが離れた。

「やっぱり世界の終末が目的なのか?」

オーズがさらに問う。

「はて、何のことでしょう?私は科学者として、

デストロン傘下でどこまで行けるのか、それにしか興味ありません。」

恐竜グリードがエネルギー弾を手から放つ。オーズは回避して、再度攻撃を試みる。

「博士の欲望が世界の終末じゃない?でも、博士はまたグリードに……

じゃあ、この歴史では紫のメダルの性質も違うのか?」

オーズは周囲の敵とも戦いながら、恐竜グリードに攻撃を続ける。

 

メテオストームが必殺技のメテオストームパニッシャーでソーンファンガイアと

オーディンを圧倒していた。瞬間移動を駆使するオーディンも、

移動した先でメテオストームの攻撃を浴び、遂に2体は爆散する。

メテオストームは安心する間もなく、キャンサー・ゾディアーツと交戦を始めていた。

 

ウィザードはこの戦いで全てを終わらせるため、魔力をフルに使っていた。

まず、デュープの魔法で分身したウィザードは、それぞれが

インフィニティースタイル、フレイムドラゴンに変身し、さらにフレイムドラゴンは

ドラゴタイマーで、ウォータードラゴン、ハリケーンドラゴン、ランドドラゴンを呼び出し、

5人で多くの敵に挑んでいく。

オリジナルであるインフィニティースタイルは、ソーサラー、ダークキバに対し、

アックスカリバー、ウィザーソードガンの二刀流で応戦している。

分身体の4人はそれぞれが、数体のカーバンクルを始め、リザードマン、

スミロドン・ドーパント、マンティスファンガイア、アリゲーターイマジン、

バットオルフェノク、ゴ・ベミウ・ギ、デスガロン、シュバリアン、

アポロガイストといった敵と交戦していた。

 

斬月 メロンアームズがバロン バナナアームズに襲いかかっていた。

「弟の、光実の仇を討たせてもらう!」

斬月は無双セイバーの先をバロンに向けて、あくまで冷静にそう言った。

「弟……それにその戦極ドライバー、なるほどな。貴様の事情はわかった。

だが、地を這うことになるのは貴様だ!」

バロンはバナスピアーで、斬月と刃を交える。

 

鎧武 オレンジアームズはデューク レモンエナジーアームズ、

シグルドチェリーエナジーアームズと交戦していた。

デュークとシグルドは愉快そうに、鎧武に刃と矢を当てていく。

鎧武は無双セイバーと大橙丸による、得意の二刀流で応戦していた。

 

マッハがビースト・ドーパントを倒した。その背中を、斧が襲う。

「ぐあっ!」

マッハが振り返ると、デストロン大幹部 カニレーザーが笑っていた。

<シグナルバイク!シフトカー!ライダー!デッドヒート!>

マッハはデッドヒートマッハに変身し、カニレーザーに挑む。

その近くでドライブはハンドル剣とドア銃を手に、ライオンオルフェノク、

スワローテイルファンガイアと戦っていた。

2体の攻撃の隙間を突いて襲い来るサラセニアン、メ・ガリマ・バを倒すドライブ。

ライオンオルフェノクの槍とスワローテイルファンガイアの剣をどうにかかわして、

ドライブは反撃を加える。

 

V3とチェーンソーアームを装備したアンチライダーマンが決戦を繰り広げていた。

V3の攻撃を、マントを翻しながら回避し、

アンチライダーマンは新たなカセットアームを装備した。

その右腕の先には、V3のベルト、ダブルタイフーンの風車と同じサイズの2つの穴がついていた。

 

 

クウガはライジングタイタンフォームになり、バース・デイの装甲を破壊して、

遂に必殺技、ライジングカラミティタイタンでバースを破った。

しかし、クウガはふいに、大きな衝撃を食らった。よろめくクウガの前に

ザビー ライダーフォームが現れ、再びクロックアップを発動して姿を消した。

ザビーは視認できない速さでクウガを襲い続ける。

ライジングタイタンの鎧でいくらかダメージ軽減をしているクウガだが、弱点でもある

ベルト、アークルをいつ狙われるかもわからず、このままではいられなかった。

「超変身!」

クウガは落ちているバースバスターを広いながらライジングペガサスフォームに変身した。

バースバスターはライジングペガサスボウガンに作り替えられた。

クウガはライジングペガサスフォーム特有の超感覚で、ザビーの姿を探す。

「……そこだ!」

クウガが必殺技、ライジングブラストペガサスを放つ。

3連射された弾丸は空中で消え、その場所にもがくザビーが現れる。

「くっ……うわぁぁぁぁぁ」

ザビーが爆発した。

しかし、ライジング形態の連続使用、

それもライジングペガサスフォームの使用とあって、クウガも膝をつく。

「はぁっ……うっ……」

意志の力で、通常形態、マイティフォームの姿で持ちこたえるクウガ。

その背後にはキバ ドガバキフォームが立っていた。

 

加速状態でドラゴンオルフェノクと交戦を続けるガタックは、

ガタックカリバーの片方をドラゴンオルフェノクの腹部に突き刺していた。

「ライダーキック!」

<ライダーキック!>

ガタックは必殺の回し蹴りをドラゴンオルフェノクに叩き込んだ。

ガタックの背後で爆発が起こる。ガタックはそのまま、モールイマジンを数体撃破するが、

カブト ライダーフォームが眼前に立ちはだかったために足を止めた。

無言で睨み合うカブトとガタック。2人は同時に腰のスイッチに手を伸ばす。

<<クロックアップ>>

 

 

「V3パンチ!」

V3がアンチライダーマンを狙う。対するアンチライダーマンは攻撃を回避し、

カセットアームの先をV3のダブルタイフーンに接続した。

「何っ!?」

「アンチV3アーム!!」

カセットアームが振動を始める。

カセットアームはダブルタイフーンに固定され、V3のエネルギーを引き出し始めた。

「ぐっ!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

V3の叫びと共に、カセットアームの後部についた排気口のような部分から

青いエネルギーが排出され始めた。

V3は為す術なく苦悶の叫びを上げている。

「V3、かつて貴様は逆ダブルタイフーンを使えば3時間の変身不能に陥ったな。

このアンチV3アームは、擬似的にそれと同様のエネルギー放出を促す、

対V3用のカセットアームだ!かつてと比べてエネルギーの蓄えが多く、

人間に戻ることすらない貴様といえども、すぐにエネルギーを空にしてやるぞ!!」

アンチライダーマンはそう言いながら、V3のエネルギーを奪っていく。

「うわぁぁぁぁぁ……ぐっ……ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

 

「V3!」

V3を心配するデッドヒートマッハ。

しかし、カニレーザーとそれを補佐する怪人の猛攻に、V3救出の隙を作れずにいた。

 

「くっ……このままじゃ……死ぬっ……」

クウガは再度タイタンフォームに変身してキバと戦っていたが、

消耗の大きさ故に苦戦を強いられ、

終にはドッガハンマーの魔眼、トゥルーアイの力で身動きを封じられていた。

雷を纏ったドッガハンマーを手に、キバが迫る。

「くっ……うぉ…おりゃぁぁぁぁぁぁぁ」

クウガが拘束に抗おうと、全身に力を込める。

ドッガハンマーが降り下ろされるそのとき、拘束を抜け出したクウガが

タイタンソードをキバに突き刺した。

「ぐはっ……うっ……はぁぁぁぁ」

キバット諸共腹部を貫かれたキバは、それでもクウガを突き飛ばして間合いを調節し、

ドッガハンマーの一撃をクウガに打ち込んだ。

「うわぁぁぁぁぁぁぁ」

絶叫するクウガ。キバとクウガは同時に地に倒れ、共に爆発した。

 

「クウガ!!!……くそぉぉぉぉぉ」

怒りに燃えるデッドヒートマッハが、他の敵の攻撃を無視しながらカニレーザーに反撃する。

そして、カニレーザーが怯んだ隙に歴史改変マシンを目指す。

「あれさえぶっ壊せば全部決着がつくんだ!」

<ヒッサツ!バースト!フルスロットル!デッドヒート!>

デッドヒートマッハは跳躍し、ヒートキックマッハーを歴史改変マシンに打ち込む。

マシンは小さな爆発を伴って、粉々になった。

「よし、これで歴史は元に戻り始めるはずだ!」

ゼロノスが叫んだ。

 

しかし、反デストロン同盟のライダーたちの期待に反して、戦況は変わらなかった。

再びカニレーザーがデッドヒートマッハを襲う。

「何でだよ!?話が違うだろ!!あれをぶっ壊せばいいんじゃなかったのかよ!?」

デッドヒートマッハが抗議する。

その向こうで、響鬼が烈火剣の一撃でG電王を倒した。響鬼が仲間に向かって叫ぶ。

「マシンはマッハが壊した!

変化は見られないが、これ以上の戦闘は不要だ!!全員退却するぞ!!」

 

 

メテオストームがキャンサー・ゾディアーツの攻撃に吹っ飛ばされて倒れ込んだ。

「くっ…………ぐはっ!」

立ち上がろうとしたメテオストームを、背後から何かが貫いた。

その何かが引き抜かれ、メテオストームはまた地に倒れた。

メテオストームの後ろには、太刀を握るクロウロードと、風のエルが立っていた。

「待たせたな。同胞たちよ、不浄なる者共を一掃せよ!」

水のエルが命令を出し、新たな怪人たちが反デストロン同盟に襲いかかってきた。

引き続きレオ・ゾディアーツの相手をするゼロノスを、マンティスロード、オルカロードが襲う。

「どういうつもりだ!神に誓って、共にデストロンを倒すんじゃなかったのか!?」

ゼロノスが抗議する。

「何のことだ?我々は主に誓って、デストロンを繁栄させる。それだけだ」

オルカロードはそう言って、ゼロノスへの攻撃を継続する。

 

バロンが斬月の猛攻にバナスピアーを弾き飛ばされ、一方的に斬撃を浴びていた。

そこへ多数のアントロードが群がり、バロンを蹂躙する。

「チッ……余計な真似を」

<メロンスカッシュ!>

斬月は無双セイバーにエネルギーを蓄え、

必殺技、無双斬でアントロードごとバロンを斬り裂いた。

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ」

バロンは断末魔の叫びと共に爆発した。

「戒斗っ!!」

鎧武が叫ぶ。そんな鎧武もまた、クイーンジャガーロードの杖と、

赤と青のジャガーロードの太刀による攻撃に晒されていた。

<<ロックオン>>

シグルドとデュークが、鎧武を狙う。

<チェリーエナジー!>

<レモンエナジー!>

2人の必殺技、ソニックボレーが鎧武を射抜く。

「ぐっ、ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ」

鎧武もまた爆発してしまった。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「ぐはぁぁぁぁぁぁぁ」

水のエルと地のエルの攻撃でウィザードの分身たちが、

ソーサラーとダークキバの攻撃にオリジナルのウィザードが、

ゴルドラ、シルバラの攻撃に響鬼が倒れて爆発していく。

「ライダーキック」

<ライダーキック!>

カブトの必殺キックに敗れ、ガタックが爆発する

「「ライダーキック!」」

ジャッカルロードの攻撃を受けて怯んでいたシンが、ZOとJの必殺キックに倒れて爆発する。

周囲でライダーたちが倒されていく中、遂にV3のエネルギーが尽きた。

V3はアンチV3アームから解き放たれ、アンチライダーマンの足元に崩れた。

「……悪く思うな、V3。戦うとは、こういうことだ」

アンチライダーマンのカセットアームが、マシンガンアームに変わる。

マシンガンアームは、V3の頭部を無慈悲に蜂の巣にした。

 

カニレーザー、スコーピオンロードがマッハを襲っていた。

マッハの体力も限界に近づいていた。ドライブはマッハの救援に向かいたかったが、

スワローテイルファンガイア、ヘッジホッグロード、ビートルロードがそれを遮っていた。

そこへ、ゼロライナーがやって来た。

ゼロライナーは何十体かの怪人をはね飛ばして、ゼロノスとオーズの近くに停車した。

少しして、ドアが開く。霧子が立っていた。

「皆さん!早く乗ってください!すぐに出します!」

「霧子!……わかった!」

了解するドライブ。しかし、周囲の怪人はドライブの進む道を閉ざし続ける。

ゼロノスはデネブを先にゼロライナーに乗り込ませ、発車準備をさせた。

「おい!早く乗れ」

叫びながら、ゼロノスはオーズと共にゼロライナーの入口を守っている。

2人で対応できるギリギリの数の怪人が集まっていた。

「今行くよ!」

マッハはそう言うと、スコーピオンロードとカニレーザーを吹っ飛ばして

ゼロライナーに向かった。しかし、マッハの意志に反して彼の足は歩みを止めた。

「フフフフ……」

どこからともなく、ヒルカメレオンが姿を見せた。

ヒルカメレオンの舌は、マッハの身体を拘束していた。

マッハの前でカニレーザーが立ち上がる。

「このっ!放せよ!」

「死ね!」

カニレーザーが太い光線をマッハへ照射した。

ヒルカメレオンは見事なタイミングで自分だけ回避し、マッハは独り、光線の直撃を受けた。

 

「剛!!!」

霧子が絶叫した。マッハは全身に電流を走らせ、火花を吹き上げている。

「姉…………ちゃ……………………」

マッハは倒れ、大きな炎を上げて爆発した。

「剛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

霧子は叫び、ゼロライナーを降りて駆け寄ろうとする。そんな彼女をオーズが制止する。

「降りちゃダメだ!戻って!」

「でも剛が!!!剛!!!剛!!!」

オーズの分も、ゼロノスが敵に対応する。しかし、それも限界に達しつつあった。

「デネブ!!ゼロライナー出せ!!」

ゼロノスの指示を受け、ゼロライナーがゆっくり動き出す。オーズは霧子と共に乗り込んだ。

 

「剛……そんな…………剛……………………」

失意に沈むドライブ。そんなドライブを狙って、アマゾンが飛来する。

「……!」

「大切断!!」

アマゾンライダーの必殺技がドライブのベルトに炸裂する。

ドライブは衝撃で地を転がり、変身解除されてしまった。

「くっ……………………何!?」

進ノ介は信じられないといった表情で目の前のそれを見た。

ドライブドライバーが真っ二つになって機能を停止していた。

「ベルトさん!!!おい!!!ベルトさん!!!ベルトさん!!!」

進ノ介は呼びかける。しかし、望んだ声は帰ってこなかった。

「泊さん!!!泊さん!!!」

霧子がオーズに抑えられながら進ノ介を呼ぶ。

ゼロライナーは既に動いていた。しかし、霧子の声は進ノ介には届かなかった。

ゼロノスが飛び乗るとゼロライナーは扉を閉め、時の中へ姿を消した。

 

 

「ベルトさん!!!ベルトさん!!!」

なおも呼びかけ続ける進ノ介。その襟をカニレーザーが掴み、進ノ介を宙に浮かせた。

「ぐっ、くそっ……」

「フフフフ……」

カニレーザーは進ノ介を放り投げた。

飛ばされ、またしても地を転がる進ノ介。四方八方、怪人に囲まれていた。

アンチライダーマンが進ノ介に迫る。

「終わりだ」

マシンガンアームの銃口が進ノ介の額に向けられる。

 

そのときだった。

「待て」

何者かが、アンチライダーマンを呼び止めた。

「そいつを始末する前に、少し話がしたい」

「……」

声の主の意を汲み、アンチライダーマンは進ノ介から離れる。

進ノ介はその声に聞き覚えがあった。

そして、その人物の登場も予測していた。

「出てくるならそろそろだと思ったぞ…………黒井」

 

名を呼ばれた男、黒井響一郎は不敵な笑みを浮かべて、進ノ介の前に歩み寄っていた。

 

 

 

つづく



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第9話 真相

「スーパーヒーロー大戦GP」をリメイクする二次創作小説です。
劇場公開時の感想を書き留めていたものが出てきたので、
それをベースに書いてみようと思いました。

※要するに「俺得 仮面ライダー3号」です。
尺とか対象年齢とかを抜きにしたときに、
仮面ライダー3号がこういう作品だったらよかったな、という
個人的な感覚で書いていきます。


※※※原作以上に、敵味方が複雑になります。
また、それ故にライダー同士が殺しあう場面も多く、
死亡するライダーも少なくありません。
そのような描写が苦手な方はブラウザバックを推奨します。


「黒井……」

正面から近づく男に対し、進ノ介は驚きを見せなかった。

「……ほう。俺が敵だといつから気づいていた?」

感心した様子で、黒井が進ノ介に問う。

「ほとんどついさっきだ。まず、この作戦は奇襲作戦のはずだった。

だが、蓋を開けてみれば本部でもないにも関わらず、

配備されていた怪人や仮面ライダーは精鋭揃いだった。

さらに、アンチライダーマンは『待っていた』と言ったんだ。」

進ノ介は努めて冷静に述べている。黒井を始め、周囲の誰もが黙って耳を傾けていた。

 

「不審な点はもう1つあった。反デストロン同盟のメンバーたちは、3号を警戒していた。

だが、俺はあんたから奇襲作戦の話を聞いたんだ。

じゃあ、あんたはどこから作戦について知ったのか、ということになる。

考えられるのは、あんたに作戦の話を漏らした第三者がいて、

そこからデストロンに伝わってしまったか、そうでなければ……」

「……俺自身が敵、か。結構頭が回るんだな。

お前を同行させて、行動を制限して正解だったようだ」

黒井がまた感心を示した。

 

「黒井、ギャレンはどうしたんだ?」

今度は進ノ介が尋ねた。

「フン、それも既に予想がついてるんだろ?」

「……つまり」

進ノ介は息を飲んだ。

「そうだ。俺が始末した。この手で……」

黒井は右腕を震わせ、拳を握って見せた。進ノ介はその手を見ていた。

「……もう1つだけ聞かせてくれ。ここに置かれていた歴史改変マシンは剛が破壊した。

だが、状況はこの通りだ。歴史改変マシンの話も嘘だったのか?」

あくまで冷静に、進ノ介がまた問う。

「いや、歴史改変マシンは確かに存在する。」

そう言いながら黒井は、右手の親指で自らの胸を指した。

「……ここに、な」

「何だって!?」

進ノ介が冷静を装っていた表情を崩して驚いた。

 

「3号!!喋りすぎだ!!」

アンチライダーマンが怒鳴る。

「問題ないだろう。冥土の土産で教えてやるだけだ」

黒井は抗議を意に介さず、さらに続ける。

「ショッカーの残党は、歴史改変マシンという究極の装置を完成させた。

そして、その運用と防御のため、ショッカー最大の宿敵、仮面ライダーをモデルに

新たな改造人間を生み出した。それが俺、仮面ライダー3号だ。

歴史改変マシンは俺の体内で稼働し、俺は唯一その力を使うことができる、というわけだ」

繕っていた表情が一度壊れた進ノ介は、驚いたまま黒井の話を聞いていた。

「実際に俺は歴史改変マシンを二度使用している。

一度目は、1973年に自分を送り込むことだった。

そこで俺は、ゲルショッカーを滅ぼした直後の1号と2号を倒した。そして二度目は……」

黒井は遠くにいる水のエルを顎で指した。

「ロード怪人たちをデストロンの勢力にすることだ。

奴らも昨日までは、打倒デストロンを掲げる勢力だった。

だから、その事実を改変した。結果、反デストロン同盟の殲滅は上手くいったようだな」

黒井がニヤリと笑う。一方の進ノ介の表情は、驚きから怒りに変わりつつあった。

 

「ちなみに歴史改変マシンは、装置の限界で3回しか改変ができない。

だが、言い換えればまだ1回、俺は歴史を思うままに変えることができる。

そして……」

黒井は息を吸い、進ノ介だけでなくその場の全体に意識を向けた。

「大きな反抗勢力は滅んだ!今この時をもって、デストロンは勝利を納めたのだ!!!」

「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」

その場にいた怪人とライダーたちが一斉に勝利の雄叫びを上げる。

アンチライダーマンも口元が笑っていた。

カニレーザーは斧を振り回し、ヒルカメレオンは万歳を繰り返している。

ソーサラーとダークキバは顔を見合わせ、ゴルドラとシルバラはハイタッチを交わした。

ロード怪人たちは武器を握る腕を天井に突き上げ、

その他の怪人たちも、思い思いの方法で喜びを表現していた。

 

 

「…………じゃない」

「?」

黒井が小さな声を聞き取り、全体に「静まれ」の合図を出した。

「何か言ったか?進ノ介」

「……まだ終わりじゃない、と言ったんだ」

進ノ介は真っ直ぐ黒井を見据えていた。

「ほう。その根拠は?」

黒井が尋ねる。

「まだ、俺がいる!」

進ノ介が強い口調で言った。

「フ、ハハハハッ……何を言うかと思えば……

お前のベルトはそこで残骸となっているだろ」

黒井が進ノ介を嘲りながらドライブドライバーを指差す。

「最早ライダーでさえないお前に、一体何ができるというんだ?」

「レースだ」

「……何?」

「俺とレースをしろ」

進ノ介が言い放つ。黒井の表情から嘲りの笑みが消えた。

「黒井、あんた言ったよな?この世界じゃ、速さが強さの代名詞だと。

それに、徹底的に叩きのめさなければ、勝ったとは言えないんだろ?」

「……」

今度は黒井が無言で、進ノ介の言葉を聞いていた。

「俺にはまだトライドロンが残っている。

あんたと俺の決着は、まだついちゃいない。黒井、俺と戦え」

 

進ノ介は最後まで強い口調と眼光で、黒井に戦いを挑んだ。

その姿に、周囲の怪人やライダーはどよめき、中には息を飲む者もいた。

「……馬鹿な!3号!そんな挑発に乗る必要はない!」

アンチライダーマンが3号に向かって叫び、その後進ノ介を見下ろす。

「貴様などこの場で始末して」

「いいだろう」

「!?」

黒井の言葉にアンチライダーマンが驚愕する。

「お前の言う通りだ、進ノ介。お前を叩きのめし、

その減らず口を封じてやらないことには、勝利とは言い難い。その勝負、受けて立つ」

黒井も進ノ介を真っ直ぐ見据えて、誘いに乗る意志を示した。

「3号!!何を考えているんだ!!そんな勝手が通ると思っているのか!?

首領に話を通してもいないんだぞ!!」

 

「……話は聞かせてもらった」

「「!?」」

突然部屋中に、威厳と恐ろしさを併せ持つ声が響き渡る。

進ノ介を含め、一同驚いている。

「何だ!?誰だ!!」

進ノ介が周囲を見回し、その他の者は膝をつき、頭を下げた。

「……初めまして、泊進ノ介。私こそが、デストロン首領だ」

声は部屋の奥、玉座が置かれたその上のショッカーエンブレムから響いていた。

「……全て見せてもらった。まずは大幹部諸君」

「「「はっ」」」

アンチライダーマン、カニレーザー、ヒルカメレオンが返事をする。

「此度の迎撃戦の結果は、実に素晴らしい。その功績を称えよう」

「「「勿体ない御言葉を賜り、大変光栄でございます」」」

「ふむ。して、3号よ」

「はっ」

「ドライブとのレース、実に興味深い。

この機に最速の仮面ライダーを決定するのも良いだろう。」

 

「デストロン首領の名の下に命ずる!!

1週間後、国立サーキットにてライダーグランプリを開催し、

ライダー最速の称号に相応しい者を決せよ!!!」

 

 

 

つづく



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第10話 ライダーグランプリ

「スーパーヒーロー大戦GP」をリメイクする二次創作小説です。
劇場公開時の感想を書き留めていたものが出てきたので、
それをベースに書いてみようと思いました。

※要するに「俺得 仮面ライダー3号」です。
尺とか対象年齢とかを抜きにしたときに、
仮面ライダー3号がこういう作品だったらよかったな、という
個人的な感覚で書いていきます。


※※※原作以上に、敵味方が複雑になります。
また、それ故にライダー同士が殺しあう場面も多く、
死亡するライダーも少なくありません。
そのような描写が苦手な方はブラウザバックを推奨します。


奇襲作戦失敗の後、進ノ介は連行された。

彼が通されたのはデストロン大幹部も利用する、豪華なホテルだった。

進ノ介の要求を黒井とデストロン首領が呑んだことで開催が決定したライダーグランプリ。

開催までの1週間、進ノ介はそのホテルに幽閉されることとなった。

しかし幽閉されている間、進ノ介が危害を加えられることはなかった。

それどころか首領は進ノ介に対し、身体やマシンをベストの状態にすることを要求し、

デストロンの構成員には戦闘はおろか、進ノ介に毒を盛ることも、

トライドロンに細工することも許さなかった。

進ノ介は首領の底知れなさを不気味に感じ、何らかの思惑があるのではないか、と疑っていた。

 

 

そうして、ライダーグランプリの準備だけが急ピッチで進められ、遂にグランプリ当日となった。

国立サーキットの観客席はデストロン戦闘員や非戦闘要員でデストロンに与する者で

埋め尽くされていた。また、サーキットの外部モニター前の広場では、

一般市民がレースの開始を今か今かと待ちわびていた。

 

ゼロライナーでは侑斗と映司が出発しようとしていた。

霧子は今にも泣き出しそうな顔で座り込んでいる。

剛の死を目の当たりにした心の傷も癒えていない彼女は、

進ノ介まで死んでしまったら、という恐怖に負けそうになっていた。

 

「……泊さん、大丈夫でしょうか……?

レースに勝って、無事に戻ってきてくれるんでしょうか?」

霧子が2人に聞いた。口を開いたのは侑斗だった。

「……さあな。変身できないっていうのはハンデとして重すぎる。

ライダーのマシンは特殊な力を秘めているものも多いし、

中には攻撃に特化したものもあるからな。レースに敗れるだけで済めば幸運かもな」

「そんな……」

 

侑斗の回答は霧子の望んだものとは大きく異なっていた。

しかし、侑斗の言葉には続きがあった。

「だが、たとえ変身できなくても、逆転の望みが薄くても、

それは何もやらないことの言い訳にはならない。

泊にもきっと、それがわかっていたんだと思う。

あいつも人間の自由のために戦う、仮面ライダーだからな」

 

 

レース開始予定時刻まであと僅か。サーキットは既に熱気に包まれていた。

「諸君。今日はよくぞ参ったな」

サーキットに首領の声が響く。観客は一斉に歓喜の叫びを上げた。

「間もなく、ライダーグランプリを始める。

ライダーたちには既に最終調整を終えさせ、入場準備を完了させている。

まずはグランプリの発案者、イーヴィルライダードライブ、泊進ノ介の入場だ。来るがよい」

首領の合図で、トライドロンがゲートから姿を現す。

歓喜の声は一転、ブーイングの嵐になる。

進ノ介はそれを全て無視して、トライドロンをスタート位置に進めた。

 

「さて、対するは、我がデストロンの中でも極めて優れる、

11人の仮面ライダーたちだ。さあ、入場せよ!」

観客たちは首領のアナウンスの間は沈黙し、トライサイクロンの姿が見えると

また歓声を上げ始めた。トライサイクロンに乗った3号を先頭に、

順にライダーたちが入場していく。

ジャングラーに乗ってアマゾンが、ローズアタッカーに乗って斬月 メロンアームズが、

マシンデンバードに乗って電王 ソードフォームが、ブルースペイダーに乗ってブレイドが、

Zブリンガーに乗ってZOが、ジェイクロッサーに乗ってJが、

カブトエクステンダー マスクドモードに乗ってカブト ライダーフォームが、

ヘルダイバーに乗ってZXが、マシントルネイダーに乗ってアギト グランドフォームが、

そして最後には仮面ライダーアクセルが自らを変形させバイクフォームとなって

スタート位置についた。

 

「なあ、誰が優勝すると思う?」

「やっぱZXだろ。V3に先立って誕生した、世界初のパーフェクトサイボーグだぜ?」

「マシンのスペックも考慮したら、アギトのマシントルネイダーに決まってんじゃん。

スライダーモードでぶっちぎりさ」

「それなら3号のトライサイクロンだろ」

「カブト空気読めよな……エクステンダーのキャストオフだけはやめてくれ」

「ドライブを倒せるならあとはどうでもいいや」

観客が好き勝手に話をしている。その内にレース開始の時間となった。

 

 

シグナルの赤いランプが1つ灯る。2つ。3つ。

そして、青いランプが灯ると同時に12台のライダーマシンが一斉にスタートした。

 

開始早々、先頭でトライドロンとトライサイクロンが争う。

そして、直ちにトライドロンがリードを奪う。

先頭を譲ったトライサイクロンはフロントのミサイル砲から十数発ものミサイルを発射した。

それを見た観客たちが歓声を上げた。

トライドロンは進ノ介のテクニックで、追撃と爆発を抜けていく。

「予想はしていたが、やっぱりそういうのアリなのか」

進ノ介が呟く。

 

間もなくして、また大きな歓声が上がった。進ノ介がサイドミラーで確認すると、

アギトの乗るマシントルネイダーがスライダーモードに変形して、

最後尾から一気に追い上げて来たのだった。

先頭のトライドロン、その後ろのトライサイクロンの間にアギトが入り込む。

アギトは4発のミサイルを搭載した兵器、ギガントを構えた。

そして、後続のライダーたちに向け、ミサイル攻撃を仕掛けた。

トライサイクロンを始め、ライダーマシンたちはそれを避けていく。

「アギトに……あんな武器あったか?」

観客の声はどよめきに変わっていた。

 

<アタックライド サイドバッシャー!>

アギトのベルトが一時的に別のベルトに姿を変え、

アギトが操作するとまたアギトのベルト、オルタリングに戻った。

すると今度は、マシントルネイダーがサイドカータイプのマシン、

サイドバッシャーに変化した。サイドバッシャーはバトルモードに変形して跳躍し、

トライドロンの前方に立ちはだかった。

サイドバッシャーは左腕のミサイル砲から、今度は大量のミサイルを撃ち出した。

「くっ!」

「うっ!」

ミサイルの雨とその数だけの爆発を潜っていくライダーたち。

しかし、ZOとJがミサイルの直撃を受け、炎の中に散った。

ZOとJは爆炎の中でマゼンダの光になり、アギトの手元に向かって飛んでいく。

 

残ったライダーたちも、進路を塞ぐサイドバッシャーを前に停止を余儀なくされた。

「貴様、アギトではないのか?」

「誰なんだ?あんた一体」

斬月とブレイドがアギトに向かって叫ぶ。

サイドバッシャーの上で、アギトの手にマゼンダの光が到達し、

ZOとJのカメンライドカードに変わった。同時に、アギトの姿も変わっていく。

「俺か?……俺は通りすがりの仮面ライダーだ」

アギトの正体、仮面ライダーディケイドが返答した。

観客席全体が静まり、息を飲む。

 

「ほう。久しいな、仮面ライダーディケイド」

沈黙を破ったのは首領の声だった。

「実験段階で行方不明になった貴様が、自ら戻ってくるとはな……

本物のアギトはどうしたのだ?」

首領が尋ねる。するとディケイドはZOとJのカードを持つ手に、さらに4枚のカードを加えた。

「ほう。アギトにW、フォーゼ、そしてBLACKまで!全て貴様が倒したというわけか」

「BLACKを倒しただと!?」

首領が感心を示し、一方で進ノ介は驚きを見せた。

実際に戦い、圧倒された進ノ介はBLACKの強さをよく知っている。

そのBLACKが敗れるなど、信じられない話だった。

また、これには観客たちも驚いていた。

 

「して、貴様の目的は何だ?デストロンの壊滅か?」

首領が再度尋ねる。

「そうだな、それも悪くない。だが、今はデストロンとか反体制とかに拘るつもりはない。

……俺は全てのライダーを破壊する。仮面ライダーもイーヴィルライダーも、全てだ」

「させん!!」

ディケイドの言葉に対する何者かの声。直後、一筋のレーザーがサイドバッシャーを撃ち抜いた。

ディケイドが翔ぶとサイドバッシャーは爆発し、マシンディケイダーの姿に戻って倒れた。

「これ以上、首領の御尊顔に泥を塗る行為を見逃すわけにはいかない!」

そう言うと、ディケイドの前方に現れたアンチライダーマンは

右腕のブラスターアームをディケイドに向けた。

「いいだろう。次は貴様を倒してやる」

ディケイドがそう言って、アンチライダーマンに向かって駆け出す。

アンチライダーマンはブラスターアームからレーザーを放ち、

ディケイドはそれを潜り抜けていく。

その隙に、ライダーたちは再びマシンを走らせ、その地点を後にした。

 

 

先頭を走るのはトライサイクロン、

その後ろをヘルダイバー、アクセル、トライドロンが追っている。

<ウォーターメロンアームズ!乱れ玉 ババババン!>

トライドロンの直後を走る斬月が、ウォーターメロンアームズに姿を変える。

斬月はウォーターメロンガトリングでトライドロンを狙う。

「くっ!」

進ノ介はスピードを維持しつつ回避を試みるが、斬月は執拗にトライドロンを撃ち続けている。

さらにそこへ、ガンナーAが現れる。

ガンナーAは、トライドロンの後ろに下がったアクセルと合体し、アクセルガンナーとなった。

アクセルガンナーはエネルギー砲、ガイアキャノンの一撃をトライドロンに命中させた。

「ぐあっ!!」

アクセルガンナー、ローズアタッカー、ジャングラー、カブトエクステンダー、

ブルースペイダー、マシンデンバードがトライドロンを抜いていく。

トライドロンは最下位になってしまった。

進ノ介はすぐに体勢を立て直し、前のライダーたちを追う。

 

 

<ガンフォーム>

追いついたトライドロンの前で、電王がガンフォームに変身した。

電王はガンモードのデンガッシャーでトライドロンを迎え撃つ。

進ノ介は電王を抜くタイミングを見計らう。

「ん?」

進ノ介は後方から来る何者かに気がついた。

それはマシンゼロホーンを操るゼロノス ベガフォームだった。

「最初に言っておく!電王の相手は俺に任せろ!」

ゼロノスは肩から放つゼロノスノヴァで電王を牽制する。

電王が怯むと、ゼロノスは進ノ介と電王の間に入り込んだ。

「ありがとう!」

進ノ介はトライドロンを加速させ、電王から離れていく。

「野上……みんな……必ず正気に戻してやる!」

ゼロノスは電王の足止めを続ける。

 

 

続いてトライドロンはブルースペイダーに追いついた。

抜き去ろうとする進ノ介。しかし、ブレイドもまた、簡単には抜かせない。

<サンダー>

ブレイドはブルースペイダーに電撃を纏わせた。

進ノ介はブルースペイダーとの接触を避けるので手一杯になった。

「くそっ!……ん?あれは」

後方からレッドランバスに乗ったギャレンが近づき、トライドロンと並走した。

「ギャレン!!生きていたのか!!」

「ああ、ギリギリのところでジェミニの分身と入れ替わって、倒されたふりをしていたんだ。

それより泊、ブレイドの相手は俺に任せてくれ」

そう言うとギャレンは加速し、ブレイドを大きく抜いて停車した。

 

<バレット>

<スコープ>

ギャレンがカードをラウズする。

そしてギャレンはカード効果で威力と命中精度を強化したギャレンラウザーで、

ブルースペイダーのフロントフォークを狙い、引き金を引いた。

弾丸はブルースペイダーのフロントフォークを破壊し、

前輪が外れたブルースペイダーはバランスを崩してブレイドを放り投げた。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」

地を転がるブレイド。その傍をトライドロンが通過する。

 

「くっ……橘さん……」

立ち上がるブレイド。ギャレンもレッドランバスを放置して、ブレイドに近づく。

「橘さん……俺は、橘さんが嘘を吐いているとは思えません。

でも、デストロンが悪だと信じることもできません!

それに、俺は橘さんと戦いたくない……」

ブレイドが言う。そこへ、カリスとレンゲルも現れた。

「剣崎、お前の想いはわかった。

だが、お前たちがデストロンに与して泊の邪魔をすると言うなら、俺はお前たちと戦う」

「橘さん……」

ギャレンが構える。カリスがギャレンに近づいた。

「ギャレン、いや、橘。何故お前はそこまでする?何がお前を突き動かすんだ?」

カリスが問う。

「……俺は全てを失った。信じるべき正義も、愛する者も、何もかもを……

だから最後に残った、仲間だけは失いたくない!!

だから、俺はお前たちを、デストロンから解放する!!!」

ギャレンと3人の仲間が交戦を始めた。

 

 

トライドロンは3号を先頭とする上位集団に追いついた。

その集団の最後尾を走るカブトが、トライドロンに迫る。

しかし、2台の間に銃弾の雨が降り、カブトの攻撃が妨げられた。

進ノ介とカブトが上空を確認する。

飛行するロボットが片手で盾を構え、空いた手にライダーが1人掴まっていた。

「現れたか……イーヴィルライダーファイズ」

カブトが上空のライダーの名を呼んだ。

「イーヴィルライダー?ってことは、あんた味方なのか?」

進ノ介が尋ねた。

「俺のことはいいから、早く行け」

ファイズがそう言うと、ロボット、オートバジンが盾から再び銃弾の雨を降らせ、

カブトを狙い撃った。カブトは後退し、ファイズも進路を塞ぐようにカブトの前に降りた。

「ファイズ、恩に着る」

進ノ介はトライドロンを先に進めた。

 

「……久しいな、ファイズ」

カブトエクステンダーから降りて、カブトが言った。

「お前は戦う意味を探して旅をしていたんじゃなかったか?何か見つけたのか?」

カブトが問う。

「さっきのあいつ、デストロンを倒して人間の自由を取り戻すのが夢なんだってな。

変身もできないくせして、大した夢だと思わねぇか?」

「……それがどうした?」

答えになっていない答えにカブトが少し苛立ちを見せる。

「何だお前、知らねぇのか。

夢を持つとな、時々すっごい切なくなるが、時々すっごい熱くなるんだぜ。

あいつも今、そうなんだろうな」

「……要領を得ないな。何が言いたい?」

カブトが苛立ちを強めた。

「……あいつの夢は、俺が守る」

<コンプリート>

ファイズがアクセルフォームに変身した。ファイズとカブトはそれぞれ構える。

<スタートアップ>

<クロックアップ>

超加速状態での戦いが始まった。

 

レース中盤。ジャングラー、ローズアタッカー、アクセルガンナー、

ヘルダイバーを抜くトライドロン。

トライドロンとトライサイクロンは速度を上げ、後続車を離して首位を争う。

サーキットは物凄い熱気に包まれていた。

 

 

 

つづく



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第11話 仮面ライダー

「スーパーヒーロー大戦GP」をリメイクする二次創作小説です。
劇場公開時の感想を書き留めていたものが出てきたので、
それをベースに書いてみようと思いました。

※要するに「俺得 仮面ライダー3号」です。
尺とか対象年齢とかを抜きにしたときに、
仮面ライダー3号がこういう作品だったらよかったな、という
個人的な感覚で書いていきます。


※※※原作以上に、敵味方が複雑になります。
また、それ故にライダー同士が殺しあう場面も多く、
死亡するライダーも少なくありません。
そのような描写が苦手な方はブラウザバックを推奨します。


国立サーキットの外。多くの一般市民が、大型スクリーンに映るレースの模様を見守っている。

スクリーンに映るトライサイクロンが、並走していたトライドロンの前に出る。

すると、市民たちの中から大きな歓声が上がった。

ただ、市民の全員が喜んでいるわけではなく、

また、歓声を上げる市民の多くは不自然なほど大袈裟に騒いでいた。

 

 

サーキットの内部ではトライサイクロンが首位、すぐ後ろをトライドロンが走り、

そこからかなり後ろを4台のマシンが走っていた。

先頭2台がコーナーを曲がる。直後の直線でトライドロンが前に出る。

すると3号の操作でトライサイクロンのガトリング砲がトライドロンを狙い撃つ。

僅かながらトライドロンの走行が不安定になり、その隙にトライサイクロンが再度、首位を奪う。

 

今度はトライドロンから、マックスフレア、ミッドナイトシャドー、

ファンキースパイクのタイヤが放たれ、トライサイクロンを襲う。

高い攻撃力を持つタイヤをかわすことを強いられ、トライサイクロンに隙が生じる。

そこを突いて、トライドロンが前に出ていく。

 

「くっ……行かせない!」

3号が車内のスイッチを1つ押す。トライサイクロンのミサイル砲が数発のミサイルを発射する。

コーナー直前だったトライドロンは思うようにミサイル回避ができず、まともに浴びてしまった。

「うわぁぁぁぁぁぁ」

爆炎の中、トライドロンは大きくスピンし、炎を抜けるとフェンスにぶつかって停止した。

 

 

「うっ……ぐあぁ…………」

車内で呻く進ノ介。トライサイクロンを停車した3号が近づいてドアを開け、

片手で進ノ介を引きずり出す。3号が手を離し、進ノ介はアスファルトに倒れ込んだ。

「……どうだ。変身できないお前など、この程度だ。」

3号が進ノ介を見下ろして言い放つ。

「俺はこのまま、ライダーグランプリをも制覇する。勝って勝って勝ち続ける」

3号は振り返り、トライサイクロンに戻ろうとしていた。

「……まだだ」

「……」

3号が再び進ノ介に目をやった。進ノ介は体を起こし、トライドロンに手をついて立ち上がる。

「俺は絶対あんたを勝たせない……

本当は、もう勝ち続けたくないあんたを、勝たせはしない……」

「何だと?」

進ノ介の言葉に、3号は耳を疑う。

「元々されていないのか、どこかで解けたのかはわからないが、

あんたは今、脳改造状態にない。違うか?」

「!」

進ノ介が問い詰める。3号は返答しないが、進ノ介の問いにどこか焦りを見せている。

 

「ライダーたちを倒す前後で、あんたの手はいつも震えていた。

そしてあんたはそれを抑え込んでいた。

あんたは本当は、ライダーたちを手にかけることを後悔していた!

ライダーたちを殺したくないと思っていたんだ!!」

3号は沈黙を続ける。

「でも、あんたはライダーを倒し続けた。1号と2号を倒してしまったことを肯定するために、

ライダーに勝ち続けて頂点に君臨する道を選んだんだ。

そして、ライダーを倒す度に引き返せなくなって、今のあんたは、その罪に苦しんでいる」

「黙れ!!」

堪えきれず、3号が進ノ介を怒鳴りつける。そのまま3号は進ノ介に迫る。

「だからどうしたんだ?俺の罪だと?そんなものはわかっている!

だが、勝つことを止めて何になる?それでこの罪が償えると言うのか?笑わせるな!!!」

3号は進ノ介の胸ぐらを掴んだ。

「負ければ歴史の闇に消える。それが嫌なら勝ち続けるしかないんだ!!」

3号が威圧する。しかし、進ノ介は怯まない。

 

「歴史の闇が何だ、大切なのは今だ!!!今何をするかだ!!!」

3号よりも力のこもった声で、進ノ介はそう言った。

その様子に、観客席も場外の市民も圧倒されていた。

「1号と2号を倒したとき、それはその場のあんたにとっての『今』だったはずだ。

あんたが変えたのは『歴史』じゃなくて『今』だったんだ。

だったらまた、今度はこの『今』を変えればいい!!

償えないのなら、戦えばいい!!デストロンと!!自分の運命と!!!」

進ノ介の胸ぐらを掴む手の力が弱まる。

3号の複眼越しに、進ノ介と黒井は互いの目を真っ直ぐ見ていた。

 

「……言わせておけば!!」

3号は進ノ介を突き飛ばした。進ノ介はトライドロンに背中を打ちつけ、再び地に伏す。

その間に、アクセルガンナー、ヘルダイバー、ジャングラー、

ローズアタッカーがその場を通過していく。

「そこまで言うなら証明してみろ!!

このレースに勝って、お前の言うことが正しいと、俺に見せてみろ!!」

3号はそう言い捨てて、トライサイクロンに乗り込み、先を急いだ。

 

 

残された進ノ介は、どうにか立ち上がろうとする。

しかし体が重く、すぐには立てない。

黒井の心を動かすには、彼の言う通りこのレースに勝つしかない。

しかしこのまま立ち上がれなければ、それも叶わない。

どうにか立たなくては、そう進ノ介が思ったときだった。

 

「立って!!!泊さん!!!」

進ノ介は自らを呼ぶ声に気づき、声のした方を向いた。

「霧子……」

少し離れたところで、霧子がフェンスに身を乗り出していた。

「V3が言ってました!仮面ライダーは人間の自由のために戦うって!

泊さんなら、きっと人間の自由を取り戻せるって、私信じてます!!

仮面ライダーである泊さんなら!!」

「霧子……」

いつの間にか、進ノ介は痛みを忘れて立ち上がっていた。

「行って!!仮面ライダードライブ!!!」

歴史が変わって以来一度も呼ばれなかった名前を呼ばれて、

進ノ介の中でギアが入った感覚があった。

進ノ介は霧子の目を見て頷き、トライドロンに乗り込んだ。

 

 

レースはいよいよ終盤。

先頭は、既にトライサイクロンが奪還していた。

その後ろを、4台のマシンが追っている。

「ん?何だあれ」

観客の1人が呟く。他の観客たちも、視線を走るマシンの後方に移した。

そして一同は目を丸くした。

左右にレーシングカート型のマシン、ライドブースターを合体させたトライドロンが、

高速で飛行して追いついてきたのである。トライドロンの飛行形態、ブースタートライドロンは

猛スピードで上位集団との距離を詰めていく。

 

「大変だ!サーキットの外で暴動が起こっている!」

「何だって!?」

「札幌支部から連絡、そっちも暴動が」

「大阪支部も!」

「名古屋支部もだ!」

観客席が急激に騒がしくなっていた。

 

サーキットの外では、あちこちで暴動が起こっていた。

進ノ介が3号に向けた言葉が、中継で聞いていた市民の心を動かしたのである。

もちろん、触発されたのは全ての市民ではない。中には体制に賛同する者もいた。

しかし、大半の市民は我も我もと暴動に加わり、全国のデストロンの手を焼かせることとなった。

 

サーキットで観戦中の戦闘員も、暴動鎮圧に出ていってしまった。

残された非戦闘員は、デストロンに従順な者は慌てふためき、

密かに反体制の意志を抱いていた者はレースに釘付けになっていた。

 

 

ブースタートライドロンが着陸を試みる。

しかし、斬月のウォーターメロンガトリング、アクセルガンナーのガイアキャノン、

ZXの手裏剣や爆弾がそれを許さない。

その隙に、トライサイクロンは速度を上げて独走していく。

進ノ介は先を急ぎたいが、ライダーたちの集中攻撃を前に、為す術がない。

 

「くそっ、埒が明かない!……ん?」

進ノ介はトライサイクロンが去った後ろ、

自らや4台のマシンの少し先に飛び込むオーズ タトバコンボの姿を目視した。

オーズは手にメダルを握っていた。

「……真木博士からくすねたこのメダル、今の俺に使えるかわからないけど……一か八か」

オーズはそう呟くと紫のメダルを3枚、オーズドライバーに装填してスキャナーを通した。

<プテラ!>

<トリケラ!>

<ティラノ!>

<プ・ト・ティラノ・ザウルス!!>

オーズの身体が変化し、白と紫の姿、プトティラコンボとなる。

オーズは直ちに、背中のマント状器官、エクスターナルフィンを肥大化させ、

翼竜の翼のごとく羽ばたかせた。その羽ばたきは強烈な冷気を一直線に飛ばし、

ジャングラー、ヘルダイバー、ローズアタッカー、そしてアクセルを

一瞬にして凍てつかせてしまった。

 

オーズはブースタートライドロンを見上げて手を振った。

「オーズ……感謝する!」

進ノ介はオーズの背後でトライドロンを着陸させ、黒井を追っていく。

残されたアマゾン、ZX、斬月は動かなくなったマシンを降りることを余儀なくされた。

「ここを通りたかったら、俺を倒してください。でも俺、負けませんから」

オーズはアックスモードのメダガブリューを構えた。

 

 

トライサイクロンが淡々と、サーキットを進む。

「……来たか」

3号がバックミラー越しに確認する背後から、トライドロンが現れ、一気に距離を詰めてくる。

瞬く間に、2台は今一度並走するに至った。

2台がそのままコーナーを曲がる。トライドロンが前に出た。

3号はミサイル砲のスイッチに手を伸ばし、しかしスイッチを押すことなく

ハンドルを握り直した。

トライサイクロンがトライドロンに寄り、2台の側面がぶつかる。

進ノ介が怯む隙にトライサイクロンが前に出る。

進ノ介もまた、3号の意図を汲み取り、タイヤによる攻撃をせず、

速さと技量でトライサイクロンに食らいつく。

 

一進一退の攻防が続く。2台はそのまま最終コーナーを曲がった。

2人の目にゴールが飛び込む。

進ノ介はシフトブレスに装填されたシフトフォーミュラを3回操作し、

同じタイミングで3号はミサイルとは別のスイッチを押した。

トライドロンのエンジンがフル稼働し、その隣でトライサイクロンのマフラーが一斉に火を吹く。

2台のマシンが急加速し、ゴールに向かって一直線に進んでいく。

トライサイクロンが前に出て、トライドロンが前に出て、2台が接触して……

なおも続くデッドヒート。どちらが勝ってもおかしくないまま、2台は遂にゴールに至る……

 

 

最後の一瞬、一瞬だけトライドロンが前輪まで前に出て、その状態でゴールに先着した。

その瞬間が、静止画としてスクリーンに表示される。

 

ライダーグランプリを制したのは、泊進ノ介だった。

 

 

サーキットの外で大歓声が上がり、サーキットの中まで届いていた。

最後まで頂点を争っていた2台のマシンは、少しずつ速度を落とし、ほぼ同じところで停車した。

マシンを降りた3号は静かに青空を仰いでいた。

「負けてみた感想はどうだ?」

進ノ介が声をかける。

「案外悪いもんじゃないだろ?」

「……そうかもな」

3号の声はいつになく穏やかなものだった。

 

「面白いものを見せてもらった」

「「!!」」

突如聞こえた首領の声に、進ノ介と3号は驚いた。

「ただの見栄でなく本当に3号に勝利し、その上世論まで動かすとは……

敵ながら見事だったぞ、泊進ノ介」

首領が重みを含みながらも愉快そうな声で進ノ介を称えた。

「さて、3号よ。デストロンの一員に敗走は許されない。

だが、貴様の功績がデストロン随一なのも事実である。

故に、貴様にはこれからもデストロンに貢献してもらおう。……私の肉体として!」

首領がそう言うと、赤い球状のエネルギー体が飛来し、3号の体内に入り込んだ。

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

3号が苦しみ出す。

「3号!!」

進ノ介は3号の身を案じるが、3号の身体は赤い稲妻を帯びていて、

生身の進ノ介が近づける状態ではなかった。

その内、3号の身体に変化が見られた。

胸部のプロテクターにはデストロンエンブレムと同じサソリのマークが黒く浮かび上がっている。

また、複眼が黄色から黒へ変色し、触角が消失し、ヘルメットの色は紺から白に変わった。

その顔は髑髏を連想させるものとなった。

最後に赤いマントが身体を包み、黒井の声は止まった。

 

「……3号?大丈夫か?」

進ノ介が近づく。

「……フン!」

進ノ介が近づいたその相手は右手をかざし、念動力を放って進ノ介を弾いた。

「うわぁ!」

進ノ介は地を転がった。

「……フハハハハハハ!!遂に手に入れた!!肉体も!!歴史改変マシンもだ!!」

「その声……首領か!?何で3号から首領の声が!?」

進ノ介は突然のことに驚いた。

「3号の自我は消えた。この肉体は私、デストロン首領の器となったのだ!

随分と待たされたが、これで残り1回の歴史改変も、

私の思うままというわけだ!!フハハハハハ……」

首領は勝ち誇り、大いに笑っていた。

 

「……なるほどな。ようやく全部繋がった。

首領が俺を殺さなかったのも、ライダーグランプリを最後まで実行させたのも全部、

最初からこうするつもりでの余興だったというわけか」

進ノ介が状況を察する。

「如何にも。そして私は歴史改変マシンの力をもって、この世界を完全に我が物にするのだ!」

「そうはさせるか!」

首領の言葉に間髪入れずして、3号の声がした。

首領と進ノ介が驚くと、今度は首領が苦しみ始めた。

「ぐぬぅぅぅぅぅ!……何故だ!何故消滅せぬのだ!!」

「進ノ介に負けた以上、俺もあんたと戦わなきゃならないんでな!」

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

首領が膝をつく。頭部のみ、3号に戻っていた。

「歴史改変マシン、最後の1回も俺が使わせてもらう!

最後の歴史改変……それは、仮面ライダーの復活だ!!

人間の自由のために戦う仮面ライダーたちよ、在るべき姿で、甦れ!!!」

3号の胸の奥で緑色の光が灯る。

さらにそこから同心円状に光の波が広がり、進ノ介を含め周囲を呑み込んで広がっていった。

 

 

眩しさに一度目を逸らした進ノ介は、再度3号を向き直る。

「これで首領は歴史改変を行えない。俺の自我もこれで本当に消されるだろう。

進ノ介、この肉体ごとマシンを破壊し、首領を倒せ!

仮面ライダーの歴史と人間の自由を取り戻してくれ!」

「黒井!!」

叫ぶ進ノ介の前で、3号はまた苦しみ出し、その場で項垂れた。

 

瞬く間に、頭部が首領のものに戻っていた。

「おのれ……3号め!最後に余計な真似を……」

立ち上がった首領が進ノ介を睨みつける。

そのまま首領は黒いエネルギー弾を進ノ介に放った。

避けようにも弾速が速く、進ノ介は直撃を覚悟して目を瞑った。

 

「……?」

覚悟とは裏腹に着弾しない攻撃を前に、進ノ介は目を開いた。

すると自身と首領の間に、眩い光に包まれた2人の戦士が赤いマフラーを靡かせて立っていた。

2人の戦士は拳を前に突き出していて、

進ノ介はその拳がエネルギー弾から守ってくれたのだと悟った。

2人を包む眩い光が徐々に消えていく。はっきりしてきた戦士たちの姿に、首領が反応する。

「まずは貴様らから甦ったか……1号、2号」

「!!じゃあこの人たちが……」

首領の言葉から進ノ介は、その2人が噂に聞く

仮面ライダー1号、仮面ライダー2号であることを理解した。

 

そんな進ノ介の左肩に、誰かが手を置いた。

「ごめん、進兄さん。かなり待たせちゃったね」

進ノ介が左を向いた。仮面ライダーマッハはいつもと変わらない様子でそこにいた。

「……剛!!」

それから進ノ介は、自らの背後にあるたくさんの気配に気がついた。

振り向く進ノ介。彼の目に入ったのは甦った仮面ライダーたちだった。

V3、ライダーマン、X、アマゾン、ストロンガー、スカイライダー、スーパー1、ZX、

BLACK RX、シン、ZO、J、クウガ、アギト、龍騎、ブレイド、カリス、レンゲル、響鬼、

カブト、電王、NEW電王、キバ、ディケイド、W、フォーゼ、ウィザード、鎧武……

その圧倒的な存在感に、進ノ介の胸も高鳴っていた。

 

そして最後に進ノ介は、自身がいつの間にか右手に何かを握っていることに気がついた。

その感触は、進ノ介が一番会いたかった存在のものだった。

「進ノ介、君のお陰で私も戻ってこられたよ!本当にありがとう!」

「……ベルトさん!!」

「おのれ……仮面ライダー共め……」

ライダーたちを睨みつける首領。一同も首領を注視した。

「こうなれば、全員この場で始末してくれる!!!」

「ふざけるな!茶番はここまでだ!」

首領の宣言に進ノ介が反発した。1号と2号が間を空け、そこから進ノ介が最前列に立った。

マッハとライダーたちの間にファイズ、ギャレン、ゼロノス、オーズも合流した。

 

「首領!絶対にお前を倒して、歴史と人間の自由を取り戻してやる!

俺たち仮面ライダーがな!!!」

進ノ介はベルトを装着した。

「OK!Start your engine!」

シフトスピードをシフトブレスに装填し、進ノ介がポーズをとる。

「変身!!」

<ドライブ!タイプスピード!>

進ノ介の身体が赤いアーマーに包まれ、胸部にタイヤが組み込まれて

仮面ライダードライブへの変身が完了する。

 

「デストロンの怪人軍団よ!!かかれ!!!」

首領の合図でどこからともなく怪人軍団が現れ、仮面ライダーたちに向かってくる。

「皆、行くぞ!!!」

「「おう!!!」」

1号の号令で仮面ライダーたちも怪人に挑んでいく。

かくして、仮面ライダーとデストロンの最終決戦の幕が開けた。

 

 

 

つづく



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第12話 決戦

「スーパーヒーロー大戦GP」をリメイクする二次創作小説です。
劇場公開時の感想を書き留めていたものが出てきたので、
それをベースに書いてみようと思いました。

※要するに「俺得 仮面ライダー3号」です。
尺とか対象年齢とかを抜きにしたときに、
仮面ライダー3号がこういう作品だったらよかったな、という
個人的な感覚で書いていきます。


※※※原作以上に、敵味方が複雑になります。
また、それ故にライダー同士が殺しあう場面も多く、
死亡するライダーも少なくありません。
そのような描写が苦手な方はブラウザバックを推奨します。


国立サーキットで開戦した仮面ライダーとデストロン軍団の決戦は、

四方を岩山や崖に囲まれた平地に場所を移していた。

戦闘員も含めれば数の上で20倍以上の差がある敵軍に、仮面ライダーたちは挑んでいる。

 

 

ドライブがテレビバエの攻撃を払い、拳を叩き込む。

さらに、背後に迫るギロチンザウルスに鋭い蹴りを突き刺した。

 

その近くで、1号はヒルカメレオン、スペースイカデビル、狼男を

一度に相手取りながら善戦している。技の1号の異名に恥じない、洗練された戦闘法で、

1号は幹部クラスの怪人さえも翻弄する。

一方、力の2号は超重量級怪人、ゴ・ガメゴ・レを持ち上げ、

デスイマジンやメデューサに思い切り投げつけた。

さらに、質量で身動きのとれない怪人たちを無理矢理起こし、

2号は強烈な攻撃を浴びせていく。

 

<ズーット!マッハ!>

マッハはクロックアップ状態のスコルピオワームと互角の戦いを繰り広げている。

その傍では、V3とライダーマンが背中合わせで立っていた。

「風見……すまなかった。俺は君に取り返しのつかないことを……」

ライダーマンが謝罪の言葉を口にする。

「何、もういいさ。それよりも、またお前とこうして戦えることが嬉しいよ。……行くぞ、結城」

「……ああ!」

一斉に飛び出す2人。V3はスコーピオンロード、スコーピオン・ゾディアーツ、

毒サソリ男を相手取る。スコーピオンロードの斧を、V3の緑色のボディが回避し、

直ちに反撃が為される。スコーピオン・ゾディアーツや毒サソリ男も同じく、

怪人たちはV3に傷1つつけることができない。

一方ライダーマンは仮面ライダー幽汽 ハイジャックフォームやユニコーンヤミーに

パワーアームで応戦する。敵のボディに、ライダーマンからの重い一撃が

的確に叩き込まれていく。

 

Xはスワローテイルファンガイアやピギーズイマジンに対し、

ライドルによる攻防一体の戦術を見せつけている。

アマゾンは仮面ライダーポセイドンの腕を掴み、装甲が薄い首の部分に噛みついた。

ストロンガーはサソリ奇械人やトライアルGに、電パンチを打ち込む。

その上空では、スカイライダーが数体のクロウロードやサドンダスと戦っている。

再び地上に注目すれば、スーパー1がマンティスロードやマグマ・ドーパントに

赤心少林拳の華麗な攻撃を当てていた。

その傍では、ZXがゴ・ザザル・バ、メ・ガドラ・ダ、マシンガンスネークを圧倒していた。

 

「リボルケイン!」

RXがベルトからリボルケインを取り出してジャーク将軍、ペルセウス・ゾディアーツ、

レギオンと武器を交える。RXは敵の攻撃を一切受けることなく、

その一方で自身の攻撃は少しずつ届かせていた。

近くではシンがオルカロード、ジャッカルロード、バーナーコウモリを蹂躙し、

ZOがタイガーロイド、イカファイア、スコーピオンイマジンを叩き伏せ、

Jがガライ、タイホウバッファロー、吸血カメレオンと渡り合っていた。

 

「てりゃあ!!」

電王 ソードフォームがカブトヤミーを斬り捨てる。

「タイミング逃してたけど……俺、参上!」

ポーズを決める電王、その背後に迫るバッファローロードをNEW電王が迎撃する。

「あ……幸太郎…………」

「幸太郎……」

「?」

電王の中の良太郎とモモタロスが、NEWを前に狼狽えた。

「その……操られていたからって、あんな酷いことして、本当にごめんなさい!!!」

「ごめんなさい!!!」

先に良太郎、続けてモモタロスが謝罪の言葉を口にし、頭を下げた。

そのタイミングで電王の背後にズ・メビオ・ダが、NEW電王の背後にバハムートが近づく。

2人のライダーは振り返って敵を斬りつけ、また向き直ると電王が再び頭を下げた。

「……今はとにかくここを切り抜けよう。話はそれからだ」

NEW電王が提案した。電王は静かに頭を上げる。

「心配しなくても、俺もテディももう負けないから」

「幸太郎……」

NEW電王の言葉に勇気づけられて、電王は体を震わせる。

「……よし!やってやろうぜ幸太郎!天丼!っていうか皆来い!!」

<クライマックスフォーム>

電王に、さらに3人のイマジン憑依し、クライマックスフォームへの変身が完了する。

そのまま電王はドラスを、NEW電王はデェムシュを迎え撃つ。

それを見て、ゼロノス ベガフォームも気分を高揚させる。

「最初……ではないが言っておく!侑斗もよろしく!」

ゼロノスはそう言うと、ゴ・ガドル・バ、オリオン・ゾディアーツ、

タイガーオルフェノクとの交戦を続けた。

 

「たあっ!」

ファイズはローズオルフェノクと3体のエルロードと互角に渡り合っている。その近くでは

ブレイドがメ・ギイガ・ギ、サンゲイザーファンガイア、ミサイルヤモリを斬り倒し、

ギャレンがカクタスオルフェノク、バイオレンス・ドーパント、ファルコンロードを

銃と拳で相手取っている。カリスはグリンシャ、鵺ヤミー、アルマジロイマジンを切り裂き、

レンゲルはクロコダイルオルフェノク、カミキリキッド、コマンダー・ドーパントを

薙ぎ払っている。

 

「はあっ!」

オーズ プトティラコンボはメダガブリューを振り上げて恐竜グリード、ショッカーグリード、

グランザイラスを叩き斬っていた。特に、オーズが意識的に深く斬りつけている恐竜グリードは、

既に3枚のコアメダルを砕かれていた。

 

クウガ ライジングマイティフォームが、スペースクモ男を殴り飛ばし、サイタンクを投げ、

ン・ガミオ・ゼダと打ち合っている。

その後ろでアギト トリニティフォームがスコーピオンオルフェノクを、ビートルロードを、

ヘッジホッグロードをフレイムセイバーで焼き斬り、ストームハルバードで薙ぎ払う。

龍騎サバイブがメテオバレットでアントロードやマスカレイド・ドーパント、デストロン戦闘員を

大勢撃破している。装甲響鬼が装甲声刃でゴルドラ、シルバラを圧倒する。

カブト ライダーフォームがクロックアップを使わずに仮面ライダーデューク、

仮面ライダーシグルド、仮面ライダータイラントを相手に立ち回る。

 

その上空をキバ 飛翔態、ウィザード インフィニティードラゴンが横切る。

キバとウィザードは火炎や翼や爪の攻撃で仮面ライダーダークキバ、仮面ライダーソーサラーを

追い詰めた。吹っ飛ばされたダークキバとソーサラーはそれぞれ正体である

バットファンガイア、ドレイクの姿を露にした。

キバ エンペラーフォーム、ウィザード インフィニティースタイルは地上に降り立ち、

各々の刃を因縁の相手に向ける。

「さあ、ショータイムだ」

 

ディケイドがウカワーム、クイーンアントロード、チェーンソーリザードを相手取る。

その傍でW サイクロンジョーカーエクストリームがプリズムビッカーで

スパイダーオルフェノク、アルティメットD、ユートピア・ドーパントに挑んでいる。

そこへ、アクセルブースターが飛来し、モレクイマジンを斬りつけた。

「照井!お前も来てくれたのか」

「ああ。……デストロン共、覚悟しろ。絶望がお前たちのゴールだ」

そう言うと、アクセルブースターはRナスカ・ドーパントや超銀河王に飛びかかっていく。

「……よし、俺たちもアレやるか!」

「ああ」

Wはビッカーシールドで指先の隠れる左手を敵に向ける。

「「さあ、お前たちの罪を数えろ!」」

 

フォーゼ エレキステイツがレオ・ゾディアーツに立ち向かう。

レオ・ゾディアーツの爪がフォーゼを弾き飛ばし、フォーゼは背中のブースターで相殺して

近くに留まった。その背中に、キャンサー・ゾディアーツが迫る。

「ぐあっ!」

「うおっ!びっくりした」

キャンサー・ゾディアーツはメテオストームのストームトッパーに弾かれた。

フォーゼは背後からの声でそれに気がついた。

フォーゼとキャンサー・ゾディアーツの間にメテオストームが割り込む。

「おお!流星キター!!」

フォーゼが歓喜の声を上げる。

「弦太朗、キャンサーは俺に任せてくれないか?……いたぶられた礼がしたい」

「おう、頼んだぜ!」

フォーゼはそう言うと、コズミックスイッチを取り出し、エレキスイッチと交換した。

<コズミックオン>

レオ・ゾディアーツがレオ・ダスタードを大量召喚する。フォーゼ コズミックステイツと

メテオストームはダスタードを蹴散らしながらゾディアーツに向かう。

「仮面ライダーの絆で、歴史と自由を掴む!」

「俺の運命は嵐を呼ぶぜ!」

 

フォーゼとメテオの近くでは鎧武 極アームズがジャガーロードたちを全て引き受けていた。

無双セイバー ナギナタモードが赤や青や黒のジャガーロードを斬りつけ、ソードブリンガーが

クイーンジャガーロードの杖を受け止めて反撃する。

先日戦ったときと比べて遥かに強い鎧武に、ジャガーロードたちは狼狽えている。

「まだまだ、俺たち仮面ライダーのステージは続くぜ!」

 

 

マッハの必殺技、キックマッハーがスコルピオワームを破った。

「いい絵だっ……うおっ!?」

決めポーズの途中、背後にある気配に気づいたマッハはとっさに回避した。

マッハが立っていた場所に太いレーザーが伸びる。

カニレーザーは不意討ちに失敗して舌打ちをした。

「お前か……前回のリベンジを果たしてやるぜ」

マッハは果敢にカニレーザーに挑む。マッハを一定距離以上近づけてしまったカニレーザーは、

斧を用いた戦法に切り替える。マッハは攻撃をかわしながら自らも攻撃するが、

甲殻類の特性を持つカニレーザーのボディに有効打を与えることができない。

 

また一方では、ドライブが怪人を蹴散らして首領に迫っていた。

ドライブは一気に距離を詰めて首領に拳や蹴りを放つ。

しかし、首領は身体のベースである3号以上の動きでドライブの攻撃を殺し、

逆にドライブに重い反撃を返していく。

「どうしたのだ?貴様の取り柄はマシンと口だけなのか?」

首領がドライブを煽りながら、重いキックを打ち込む。

ドライブは数メートル後ろに吹っ飛んだ。

「くっ、流石に強いな……」

ドライブは首領の強さに素直な感想を溢した。しかし、諦めることなく戦闘を続行した。

 

「泊さん……剛…………」

物陰から霧子が見守る。

そのとき、1台のシグナルバイクが霧子のすぐ左を通って彼女の後ろへ回った。

「キーッ」

霧子が振り向くと、彼女の背後にいたらしきデストロン戦闘員が、

シグナルバイクの攻撃で倒れされていた。シグナルバイクは、霧子の掌に停まった。

「これって……」

 

首領、カニレーザーを相手に、それぞれ苦戦するドライブとマッハ。

2体は眼前の仮面ライダーに大きな一撃を与えようとしていた。

「「死ね!」」

そこへ、シフトカーとシグナルバイクが1台ずつ飛来する。

2台は、首領やカニレーザーを攻撃して技の発動を妨害し、

それぞれドライブとマッハの手に飛び込んだ。

「お前!あのときのシグナルバイクか!」

マッハが叫ぶ。それは、歴史改変の際に

進ノ介たちのところに現れたシフトカーとシグナルバイクだった。

 

「やっぱりお前、俺たちを助けてくれたんだな」

「でも、それだけじゃない。このシフトカー……トライサイクロン!」

ドライブがつい先ほどまで競っていたマシンを間違えるはずはなかった。

手に停まっているシフトカーは、確かにトライサイクロンの姿をしている。

また、マッハの手にあるシグナルバイクは、1号、2号のバイク、新サイクロン号の姿をしていた。

「……ベルトさん、これ使ってもいいよな?」

「!…………よし、君の直感を信じよう」

「サンキュー。……黒井、お前の力を借りるぞ」

ドライブがシフトブレスにシフトトライサイクロンを装填する。

そしてマッハがマッハドライバー炎にシグナルサイクロンを装填した。

2人がそれぞれの装置を操作する。

<ドライブ!タイプトライサイクロン!>

<シグナルバイク!ライダー!サイクロン!>

2人の姿が変わる。

 

ドライブの胸部と肩のアーマーはトライサイクロンに似た白地に赤いラインのものになった。

下地のスーツは3号同様に、側面に黄色のラインが入ったものになり、

手足のプロテクターは3号のグローブやブーツと同じ色になっている。

右の手足には、3号のベルトについていたのと同様の小型ジェットがつき、

また、口部から伸びるパイプが6本になり、

その先がトライサイクロンのマフラーに似た構造となって、マスク側面に並んでいる。

トライサイクロンから発射され、ドライブの胸部に組み込まれたタイヤには

青いラインが走っていて、また、目は3号のように黄色に発光している。

 

マッハの胸部と肩のアーマーはサイクロン号同様に白と赤の配色となった。

首のマフラーは赤一色となり、右肩のタイヤには立花レーシングのマークが浮かんでいる。

スーツの下地は黒に変わり、腕側面には1本、脚側面には2本の白いラインが1号や2号のように

走っている。グローブは2号同様赤になり、ブーツは1号同様銀になっていた。

また、目の色は赤くなり、ヘルメット全体が1号、2号を思わせる配色になっていた。

 

ドライブ タイプトライサイクロンが高速で首領に駆け寄る。

そして、驚く首領に拳を打ち込んだ。

「ぬぅ!」

首領は衝撃で数歩後退した。ドライブはそのままもう一度拳を放つ。

今度は首領もそれを払い、鋭い拳を返す。

しかしドライブはそれを受け止めて、さらに一撃拳を返した。再び首領は数歩後退した。

「どうやら身体能力が全体的に向上しているようだ!」

ベルトさんが感嘆の声を上げた。

ドライブはまた、数発の攻撃を首領に浴びせる。

そして、右腕のジェットで威力を増した強力なパンチを首領の腹部に思い切り打ち込んだ。

その威力に、首領はついに数メートル後方へ吹っ飛ぶ。

「まだまだ行くぞ!首領、もうひとっ走り付き合えよ!!」

 

サイクロンマッハも、カニレーザーとの戦況を逆転していた。

力の2号の特性を授かったことで、その腕はカニレーザーの甲殻を傷つけ、

しっかりとしたダメージを与えるまでに強くなっていた。

カニレーザーは何度も地を転がり、立ち上がってはマッハの拳を浴びていた。

 

 

「そろそろ決めるよ」

<ヒッサツ!フルスロットル!サイクロン!>

サイクロンマッハが2号のポーズをとる。

そして跳躍し、ライダーパンチをカニレーザーにぶち当てる。カニレーザーは大きく吹っ飛ぶ。

「まだだ!」

サイクロンマッハは、今度は1号のポーズをとって跳躍した。そして空中のカニレーザーに対し、

必殺のライダーキックをヒットさせた。

カニレーザーはさらに吹っ飛び、地面にぶつかると同時に大きく爆散した。

マッハは着地すると爆炎を背に、今度こそ決めポーズをとった。

「いい絵だったでしょ?」

 

1号、2号がヒルカメレオン、スペースイカデビルを追い詰める。

「よし、俺たちもいくぞ!」

「おう!」

ダブルライダーがポーズをとって跳躍する。

「「ライダーダブルキック!!」」

必殺キックが2体の怪人に炸裂する。

「うぅぅぅぅ……首領万歳!!!」

叫び声を上げてヒルカメレオンが倒れ、続けてスペースイカデビルも倒れた。

「V3きりもみ反転キック!!」

V3の必殺技がスコーピオンロードを撃破し、空中に戻ったV3は続けて

毒サソリ男、スコーピオン・ゾディアーツを同様に撃破した。

「ロープアーム!」

ライダーマンが幽汽とユニコーンヤミーを縛り上げる。

ライダーマンはそのまま、2体を上空に放り投げた。

「スーパー大切断!!!」

既に大きく跳躍していたアマゾンの手刀が、幽汽とユニコーンヤミーを切り裂く。

アマゾンはそのまま、真下にいるポセイドンを真っ二つにした。

「リボルクラッシュ!!」

RXのリボルケインがジャーク将軍に突き刺さる。

必殺のエネルギーがジャーク将軍の体内に注ぎ込まれていく。

RXがリボルケインを引き抜いて振り返ると、ジャーク将軍は倒れ大きく爆発した。

X、ストロンガー、スカイライダー、スーパー1、ZX、シン、ZO、Jもまた、

必殺キックで怪人たちを倒していく。

 

「はあっ!」

オーズ プトティラコンボが敵を追い込んでいる。

そこへ、バースが現れた。

「後藤さん!」

「火野、すまなかった。よくはわからないが、お前にもかなり迷惑をかけたらしいな。

詫びというほどのものじゃないが、使ってくれ」

オーズがバースの背後を見ると、先代バース装着者、伊達明譲りの

大きなミルク缶が2缶置かれていた。

その口からは大量のセルメダルが入っているのが読み取れた。

「ありがとうございます!使わせていただきます!」

バースが時間を稼ぐ。その間にオーズはミルク缶の口を少し斬り、

セルメダルにメダガブリューの口を突っ込んだ。

メダガブリューはセルメダルを凄まじい勢いで飲み込んでいく。

約20秒ほどで、メダガブリューはセルメダルを飲み尽くした。

「後藤さん!」

「よし」

<カッターウィング>

オーズの呼びかけを合図に、バースは飛行ユニット、カッターウィングを装着して飛び上がった。

そして間髪入れずに、オーズの冷凍攻撃が恐竜グリード、ショッカーグリード、

グランザイラスを襲う。3体の怪人は身動きを封じられた。

そこへ、メダガブリューを構えたオーズが駆け寄る。

「はぁぁぁ……せいやぁぁぁぁぁ!!!」

オーズがメダガブリューを振り抜いた。

その斬撃はグリードたちのコアメダルとグランザイラスの骨をを砕き、

破壊のエネルギーを全身へ回らせた。オーズの背後で3体の怪人は大きな爆炎を上げて散った。

 

ドラス、デェムシュ、ゴ・ガドル・バが地を転がる。

その前では、電王 クライマックスフォーム、NEW電王、ゼロノス ベガフォームが構える。

<チャージアンドアップ>

<<フルチャージ>>

「へへっ、幸太郎!天丼!久しぶりにアレ頼む!」

「よし!テディ、10からだ!」

「わかった。……10、9」

マチェーテディがカウントダウンを始める。同時にNEW電王が怪人たちに向かって走る。

「8、7、6」

NEW電王がフリーエネルギーを蓄えた刃で怪人を斬りつける。

「5、4」

NEW電王が離れるとゼロノスがゼロガッシャー ボウガンモードから光の矢を連射し、

怪人たちにダメージを加えた。

「3、2」

最後に、電仮面を右脚に集約した電王が必殺のボイスターズキックで怪人たちを貫く。

「1、0」

電王、NEW電王の背後で、怪人たちが爆散し、大きな炎が上がる。

「決まったぜ!」

 

<スタートアップ>

ファイズ アクセルフォームの姿が消え、直後ローズオルフェノクや3体のエルロードの上に、

ファイズポインターのマーカーが2つずつ現れた。

そして、マーカーは瞬く間に怪人たちに突き刺さり、その身体を抉っていく。

<タイムアウト>

エルロードたちの頭上に光の輪が現れると同時に、ファイズも姿を現した。

<リフォメーション>

ファイズが通常形態に戻る背後で、ローズオルフェノクは青い炎を上げて灰になり、

エルロードたちは倒れて爆発した。

 

<ライトニングブラスト>

<バーニングスマッシュ>

<スピニングアタック>

<ブリザードクラッシュ>

ブレイド、ギャレン、カリス、レンゲルがカードをラウズし、キック技のコンボを発動する。

4人は同時に構えて、一斉に飛び上がった。

4人のキックが、怪人たちに炸裂する。

必殺技の直撃を受けた怪人たちは大きく吹き飛び、空中で爆散した。

 

アギト シャイニングフォームがキックのために力を蓄える。

その隣で、クウガ アメイジングマイティフォームが構えた。

2人が共に跳躍し、アメイジングマイティキックがン・ガミオ・ゼダを、

シャイニングライダーキックがヘッジホッグロードを打ち破る。

装甲響鬼が炎の刃でゴルドラ、シルバラを斬り伏せる。

カブト ライダーフォームがライダーキックでデューク、シグルド、タイラントを撃破する。

 

<ウェイクアップフィーバー!>

<チョーイイネ!キックストライク!サイコー!>

キバ エンペラーフォームのエンペラームーンブレイク、

ウィザード インフィニティースタイルのストライクウィザードが

バットファンガイア、ドレイクを粉砕した。

 

「「ビッカーファイナリュージョン!」」

W サイクロンジョーカーエクストリームがビッカーシールドから放つ必殺光線で敵を一掃する。

ユートピア・ドーパントのみが辛うじて立っているのを見て、

Wとアクセルブースターは次の必殺技の準備をする。

<<マキシマムドライブ!>>

アクセルブースターが横からユートピア・ドーパントを斬りつける。

直後、Wがプリズムビッカーを握って迫る。

「「ビッカーチャージブレイク!」」

連続の必殺技に、ユートピア・ドーパントは遂に倒された。

 

「ライダー超銀河フィニッシュ!!」

「メテオストームパニッシャー!!」

フォーゼとメテオの必殺技がゾディアーツたちに決まる。

レオ、キャンサーは共に爆発し、炎の中に消えた。

その他の怪人たちも、龍騎サバイブのメテオバレット、

鎧武 極アームズのアームズウェポン射出攻撃を受けて、粗方倒されていった。

 

 

そして、ドライブ タイプトライサイクロンが遂に首領を追い詰める。

「くっ……おのれ…………!」

悔しさを滲ませる首領を、ドライブが殴り飛ばす。

「ドライブ!」

自らを呼ぶ声にドライブが振り向く。声の主はRXだった。

「もし役に立つなら、俺のライドロンも使ってくれ」

RXの傍らには、彼の誇るスーパーマシン、ライドロンが停車していた。

「わかった!」

ドライブは了解すると、必殺技の発動準備に入った。

<ヒッサツ!フルスロットル!トライサイクロン!>

直後、トライドロン、トライサイクロン、ライドロンの3台が飛び出し、

首領の周囲を高速で走行して輪を描いた。

ドライブは跳躍し、右足のジェットの力で威力を底上げしたキックを首領に打ち込んだ。

次に首領を蹴った勢いで、周囲を走るトライドロンに飛び込み、自らを反射させることで

さらに威力を増したキックを首領に叩き込む。

またトライサイクロンに飛び込み、反射で威力を増したキックを叩き込み、

またライドロンから反射して首領にキックを炸裂させる。

この往復が繰り返され、ドライブは首領の四方八方から、

一撃毎に速さと威力を増していくキックを確実に当てていく。

 

「これで終わりだ!」

ドライブは最後にジェットを最大出力にして、

視認することも叶わないスピードのキックを首領の胸部に打ち込んだ。

そのキックは首領の身体の、歴史改変マシンが存在すると思われる辺りを貫いた。

 

「ぬぅぅぅぅぅ……忘れるな…………ショッカーの魂を…………受け継ぐ者が…………

次こそ……世界を……征……服し……て…………」

ドライブの背後で言葉を遺す首領。

その身体が膝をつき、大地に倒れ込み、異常なほどに大きな炎を伴って爆発する。

炎がドライブまで届き、続けて炎を追うように緑色の光の波が首領の倒れた地点を中心に

同心円上に広がり、世界を呑み込んでいった。

 

 

 

つづく



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最終話 Who's That Guy?

「スーパーヒーロー大戦GP」をリメイクする二次創作小説です。
劇場公開時の感想を書き留めていたものが出てきたので、
それをベースに書いてみようと思いました。

※要するに「俺得 仮面ライダー3号」です。
尺とか対象年齢とかを抜きにしたときに、
仮面ライダー3号がこういう作品だったらよかったな、という
個人的な感覚で書いています。


2015年 3月某日。

ドライブがロイミュード 102に勝利した場所に、進ノ介と霧子は立っていた。

その場から見える都市の風景は、2人がよく知るものだった。

「……この場所と日付に戻っているってことは、歴史は修正されたんでしょうか?」

「見た限り、そうみたいだな」

 

と、そのとき、強い向かい風に飛ばされてきた新聞紙が進ノ介の顔面に張りついた。

進ノ介は突然のことに驚き慌てふためく。

「………………………………ぷはっ!」

どうにか新聞紙を剥がす進ノ介。彼の視線は、ある記事の見出しに留まった。

「泊さん?」

霧子が記事を覗き込む。

「!」

霧子は掲載された写真を見て息を飲んだ。

「……『凄腕レーサー 謎の失踪』って、以前話題になった事件ですよね。

姿を消したと思われる日に重加速反応はなくて、未だに捜査が進展していないっていう……

どこかで見覚えがあると思ってましたけど、

まさかこれが今回のことに繋がっていたなんて…………」

霧子がそれきり黙り込む。

2人は写真に写る人物、黒井響一郎の顔をじっと見つめていた。

「…………黒井」

 

歴史は確かに修正された。

しかし、歴史改変マシンの破壊によって修正できるのは、

マシンの効果によってねじ曲げられた歴史のみである。

故に、黒井響一郎がショッカーに捕らえられたこと、

ショッカーが彼を改造したことは覆らなかった。

黒井の存在は、マシンの効果で1973年へ移動を試みた時点で消滅した。

その上歴史が修正された今、彼の末路を知るのは電王など特異点と呼ばれる存在と、

シフトトライサイクロンやシグナルサイクロンの影響を受けた

進ノ介、霧子、剛など、限られた者のみであった。

 

「……守らなきゃな、あいつの遺したものを」

進ノ介が沈黙を破る。霧子は進ノ介を見つめた。

「黒井の話の通りなら、この時代にはまだショッカーの残党が活動をしていることになる。

歪んだ歴史と共に仮面ライダー3号は消えた。

けど、その生き様は俺の心にちゃんと残ってる。

俺が意志を継いでショッカーを倒せば、あいつは歴史の闇になんか葬られない」

進ノ介は、真っ直ぐ前を見据えていた。

「……特状課に戻ろう」

進ノ介が霧子に微笑んだ。

「はい」

2人はその場を後にする。並んだ2つの背中が遠ざかっていく。

 

 

 

泊進ノ介=仮面ライダードライブはこれからも戦い続けるだろう。

少なくとも、機械生命体 ロイミュードとの死闘に決着がつく、その日までは。

その途上で待ち受けるものが如何なるものか、彼らはまだ知らない。

しかしそれが何であれ、進ノ介は走り続けるだろう。

人間の自由を守る仮面ライダーとして。

 

「……泊さん」

「ん?」

トライドロンに乗り込むなり、霧子が尋ねた。

「私たちの歴史はどこへ行くんでしょう?

戦いを繰り返して、私たちはどこへ行くんでしょうか……?」

「……さあな。でも、行けるとこまで行くさ」

 

 

 

2人を乗せたトライドロンが走っていく。

 

 

 

真っ直ぐ、走っていく。

 

 

 

 

 



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