CLANNAD+1 (ミコノス)
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1話

一挙放送を見て書きました。

何かと書こう書こうとは思っていたのですが、中々真面目に取り組む気にもなれず放置していたのを一念発起して始めようと思います。

とりあえず、短くても書いて投稿しちゃえば後戻りできなくなるだろうの精神でスタートです。初投稿、初文章ということでつたない部分しかありませんが、皆様どうかよろしくご指導ご鞭撻のほどお願いいたします。


「ウィーっす、おはよう岡崎。」

「おう、三井か。おはよう。今日は春原と一緒じゃないのか?」

「毎日あいつと一緒だと俺もやばいやつだと思われるだろ?」

 

「今更何言ってるんだお前……。もう十分ヤバいやつだぞ。」

「その言葉そっくりそのままお前に返すぞコラ。」

 

軽口を交わしながら自分の席へと座る。

時刻はすでにお昼過ぎ。もう少ししたら五時間目が始まるであろうその時間に、俺たちは登校していた。

 

「三井がこんな時間から学校来るなんて珍しいよな。昼過ぎたらだいたいはそのまま来ないくせに。」

「たまたまだよ、たまたま。本当はもう少し眠るつもりだったんだがな。どうにも目がさえちまって、そのまま学校に来たんだよ。岡崎こそなんだよ。今日はいつから来てんだ?」

「俺だってついさっきからだよ。見ればわかるだろ。」

「確かに。みっともない顔してるわな。」

「ほっとけ。」

 

昨日は夜遅くまで遊んでいたし、夕方まで寝ているつもりだったんだ。

なのに、深い眠りだったせいか12時前に起きてから全く眠くならねえときたもんだ。

どうせ家でゴロゴロするだけなら、学校行っても変わんねえかと思ってのこの時間ってわけだ。

 

「あ、あの………岡崎くん、三井くん。」

「あ?」「ん?なんだ委員長。」

「お二人とも今日も遅刻ですね。」

「だから?」

「あの……毎日ちゃんと登校したほうがいいと思います。」

「さすが委員長。遅刻は見逃せないってか?」

 

そう言って少しからかう。

こいつはD組のクラス委員長である藤林椋。世の中の委員長と名の付く役職は大概、2パターンに分かれる。率先してハキハキと出来るやつと、他のやつに押し付けられた引っ込み思案なやつだ。藤林の場合は後者で、いつも俺たちに話しかける時はこうして、おどおどとおっかなびっくり話しかける。それでも厄介者である俺たちに対して、正面切って話しかけられる時点で中々見所はあるやつだと思う。今だって別に本気で馬鹿にしているわけではない。

 

「あんまりやりすぎるなよ、三井。泣かすとあいつが飛んでくるぞ。」

「おっと、それは困るな。あいつ容赦ねぇからなぁ……。」

「大丈夫です。泣いてませんから……。」

「わかったわかった。それじゃあ、明日の気分次第ってことで。なあ、岡崎くん?」

「そうだな。明日のことは明日わかるだろ。それでいいか?藤林。」

 

岡崎がめんどくさそうに言った。ま、いくら藤林でもこれで引き下がるだろ……。

 

「そ、それじゃあ私が明日のこと占ってあげます。私、占いが趣味だから。」

 

おおう。今日はやけに食い下がるな。だいたいはこのくらいであきらめるのに。

懐からトランプを取り出してゆっくりとシャッフルをする委員長。趣味でやっている割にはどこか危なっかしい。あ、やっぱり失敗した。

 

「岡崎君と三井君、明日遅刻です。」

「「はあ!?」」

 

なんでぶちまけたトランプからそんなことになるんだ。

なんだあれか?こいつは俺に対してケンカを売ってるのか?

 

「カ、カードに出てますから……。こういう占いなんだと思います。」

「思いますってお前……。」

「素敵な女性とロマンチックな出会いがあって、それから時が経つのを忘れてしまって遅刻してしまいます。」

「いやに具体的な占いだな……。」

「俺たちにそんな出会いがあるわけないだろ。こちとら不良なんだぜ。」

「乙女のインスピレーションですから。たぶんそうなります。」

「具体的な割には『たぶん』とか『思います』なんだな……。」

 

基本的には占いなんて信じない性質なんだが……。今回は妙に嫌な予感がする。適度に具体的で適度にぼかされてるから、なんか当たりそうな感じがしてくる。そもそも素敵な女性ってなんだよ。道に迷ったおばあさんも該当するのか?性別は女性だし。

 

「コラーーーーーー!!!!」

 

声と共に耳元をものすごい勢いで何かが駆け抜けていった。岡崎はとっさにしゃがみこむことによってそれを避けていたが、完全に直撃コースだった。この声、そしてこの威力で物をぶん投げるやつは俺の周りには一人しかいない。

 

「杏!!テメエ、いきなり何しやがる!」

「あんたたちが私の妹いじめてるからでしょうが!」

 

こいつの名前は藤林杏、名前でわかるように委員長、藤林椋の双子の姉だ。杏がロングヘア―で委員長がショートヘア―。髪以外の外見が瓜二つに対して内面は真逆。アクティブさを全部吸い取ったみたいにグイグイ絡んでくるのが杏だ。今だって辞書をぶん投げながら話しかけてくる。委員長なら人生を何回やりなおしたってこんなことしそうにない。

 

「いじめてなんかいねえよ!なあ、岡崎。」

「ああ!大きな誤解だ!だから、その第二陣を構えるのをやめてくれ!」

 

気づくと杏は新しく辞書を構えているところだった。ほんと容赦ねえなコイツ。誤解だって説明している最中だってのに、もう準備してやがる。

 

「椋、本当なの?」

「そうだよ、お姉ちゃん。別にいじめられてないよ!」

「ふ~ん。なら、いいんだけどね。」

 

そう言うと、すぐに構えていた辞書をしまっていた。ちょっと待て。その辞書今どこに消えたんだ?一瞬で消えたように見えたんだが……。

 

「何よ、雄平。ジロジロ見て。」

「いや、何でもない。」

 

どう考えても収まらないサイズだったんだが、どこかにしまったらしい。いつも何かしら投げてくるけど、どこから取り出しているか見たことないな。杏のポケットは、どこぞの青いロボットにでももらったのだろうか。……俺的七不思議に入れておこう。

 

「ん?あんたたち、椋に占いしてもらってたの?」

「俺と三井に、明日素敵な女性とロマンチックな出会いがあるんだとさ。」

「へえ~~~そうなんだ~~~。」

「なんだよその顔と態度は。」

「べっつに~~~?あんたたちも大変だなと思ってね~。」

 

なんだなんだ。ただの占いじゃないのかコレ。素敵な女性と出会って遅刻するってそんなにやばい内容なのかよ。

 

「ま、お二人さんとも頑張んなさいよね。あっはっは~~~。」

 

クソッ。自分だけわかったような顔しやがって。こっちの不安を煽るだけ煽って出ていきやがった。俺と岡崎は明日いったいどんな目に遭うんだよ。不安でしょうがねえじゃねえか。それと委員長。おまえまでキョトンとした顔するんじゃねえ。お前が占ったんだろうが!

 

「はあ……気にしててもしょうがないか。岡崎ー、お前昼飯どうするよ?まだ食ってねえだろ。」

「適当に校内をぶらついて考えるわ。付き合わせるのも悪いから合わせなくていいぞ。」

「そうかよ。じゃあ俺もどっか適当なとこに行くか。」

 

別に飯を食えるのは校内だけじゃないからな。外に出れば何か食いたい物も見つかるだろ。

そうと決まればこんなとこに用はねえな。さっさと退散、退散。少し乱暴に立つとそのまま一直線にドアへと向かう。

 

「あ、あの授業前にはちゃんと戻ってきてくださいね。」

「わかってるよ、委員長。じゃそういうことで~。」

 

まあ、戻る気なんてさらさらないけどな。そんな内心を隠しながら俺は教室を後にした。

 



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2話

「さてと……、今日は何を食おうかね。」

 

外は柔らかな日差しが降り注ぎ心地よい温かさで、まさに春の陽気を感じさせるものだった。体も動かしやすいとなれば、元運動部の血が騒ぐというもの。

 

「今日は少し遠くまで足を延ばしてみるか……。確か春原が行きつけの丼もの屋があったな。よし!今日はそこにするか。そうと決まれば……。」

 

俺は校門を出ると、そこから少し歩いた先にある春原が住まう学生寮へと向かうことにした。学校からは徒歩数分の距離という驚きの立地。加えて寮母さんもいるのだから破格の物件である。

 

「そういえば、委員長の占いだと明日は遅刻するんだったな。素敵な女性と出会って遅刻らしいし、出会うのは通学路の途中か。」

 

それなら、いっそのこと春原の家から通学するのはどうだろうか。通学路が短ければ短いほど出会いの遭遇率も下がる。このまま明日を迎えて、占い通りになったらそれはそれでなんだか負けたような気がするし、こっちだって不良やっている意地がある。委員長の言う通りってのはその矜持に反するのだ。

 

そんなつまらない意地を張っているうちに目の前には目的の学生寮。ここに俺のもう一人の悪友がいる。

 

「おーい、美佐枝さーん。」

 

いくら平日の昼間とはいえ、ここは学生寮。無言で入るのはさすがに忍びないので、一応あいさつをしとかないとな。

 

「はいはい。どちら様……って三井じゃない。何か用?」

「大した用はないんですけど……。無言のまま入るのもどうかなと。」

「はぁ~~。岡崎もそうなんだけど変な所で律儀よねあんたたち。別に今さら黙ってどうのこうの言うほど、うるさいように見える?あたし。」

「そういうわけにはいかねえって。最低限の礼儀位俺にだってあるさ。」

 

いくら不良だからと言ってもクズではない。ちゃんと礼儀を尽くすときは尽くしている………つもりである。

 

「あんたが用事あるのは春原でしょ?まだ寮から出たところは見てないから、まだへやにいるんじゃ……」

「ヒィィィィィィィィィ!!!!」

「……いるみたいだな。」

「ついでに黙らせてもらえると嬉しいわ。」

「善処するよ。」

 

あのバカへのお願いが一つ増えたな。連れ出す予定なので一石二鳥か。

 

「ギャァァァァァァ!!!」

「あいつホント何してんだよ……。」

 

なんか断末魔みたいなのが立て続けに聞こえるんだが。果たして俺があいつの部屋にたどり着くまでに生きているのだろうか。

 

「おい、春原。お前さっきから一体何して……。」

 

上の階へ上がるとまず目に入ってきたのは春原とラグビー部が猛烈に絡み合っている姿だった。しかも、お互いに上半身裸で。どこからどうみても男同士でくんずほぐれつしている様にしか見えない。春原が下になって抵抗しているのがさらにリアル感がある。二人は互いに顔を赤らめながら……。やめよう。これ以上は気分が悪くなる。

 

「お邪魔みたいなんで帰らせてもらうわ。すまん。」

「待て待て待て待て三井ぃ!!!この状況でよく帰れますねぇ!?」

「いや、むしろこの状況だから帰るんだろ。どうみてもお邪魔虫だし。」

「邪魔じゃない!むしろグッド!ベストタイミング!頼むからこっち来てください!!」

「え……?まさか俺までそこに加えようと……?」

「なんでだよ!どう考えても襲われてる(被害者)のを助ける為だろ!?」

「ああ、(加害者側を)助けようとしてるぞ。」

「逆だろ!?ボクを助けろよ!?」

 

助けるって言ってもなぁ……、ラグビー部なんて、何もしてなくて手を上げるようなやつらじゃないと思うんだが。

 

「なあ、アンタ春原に何かされたのか?」

「ん?なんだ、三井のやつか。ウチの後輩が美佐枝さんに内緒でしてた相談事があったんだが、そいつをこのバカが言いふらそうとしてたんだよ。だから、後輩に代わって成敗してやってるんだ。」

「春原、有罪。」

「待ってくれぇ!!!」

 

やはり、発端は春原だったか。コイツ人のそういう話好きだもんなぁ。

それじゃあ、仕方ないな。別に飯ならどこでも食えるし、今日は思う存分にやってもらうこととしよう。

 

「じゃあラグビー部君。存分に春原におしおきしたまえ。」

 

最後に一言残してその場を立ち去ることにした。

ごめん、美佐枝さん。春原の介護は俺にはレベルが高すぎたよ……。

 

それにしても、美佐枝さんは寮生相手に相談事まで受けてるのか……。思春期真っ盛りの男子高校生のお悩み相談とかよく引き受けられるな。男子寮の寮母さんってだけでも珍しいのに、そんなことまでしてくれる人がいったい日本中にどれだけいることやら。やっぱり、よくできた人ていうのは俺みたいな人間とはモノの考え方からして違うよな。

 

そんなことを考えながら一人坂道を下っていると、前方からものすごいスピードでバイクが通り過ぎっていった。

 

「あいつらは……。」

 

確か、先週あたりに因縁つけてきたから返り討ちにしてやったやつらのような……。あいつらがこの坂道を上っていく用事なんてひとつしか思いつかない。

 

「クソッ。やり返すなら個人的に来いってんだよ!」

 

昼飯なんて後だ。自分のいざこざに他人を巻き込むなんて死んでもしたくねえ!

絶対にほかのやつには手出すんじゃねえぞ!

 

俺は繁華街へと向いていた足を急いで変え、坂道を駆け上がった。

 



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