ありす と あすか の 『アリアスの糸』 (四月一日雪)
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第0話 これからのことを話そうか
「ああ、なにも特別なことをするわけではないだろう?ボクらはいつも通りでいいんだから。」
「緊張感というものはないんですか?」
「そうだね、もしかしたら緊張しているのかもしれない。だけどそれを表に出さなければ、それは緊張していないことと何か違いはあるのだろうか?例えば……」
「その話、長そうですね。もう始まりますよ。」
「やあ、とりあえずはじめまして、と言っておこうか。ボクはアスカ、二宮飛鳥だ。」
「みなさん、はじめまして。橘ありすです。」
「今回からボクとアリスで『アリアスの糸』を始めるんだ。」
「橘です。これは私たちがアイドルやプロデューサーの皆さんから悩みや質問をいただき、解決していくという企画になっております。」
「ついに始まったね。まさかボクら二人で行うとは考えても見なかったよ。」
「そうですね、私も意外でした。私たちは共演したこともありましたが、その時もいろいろ考え方に違いがあったので。」
「同じ考えの人は誰一人いないからイイんだよ。ぶつかり合いながら高めあっていく、それもいいものだと分かったからね」
「まあ二宮さんは個性が強いのでぶつかることが多そうですね。」
「アリスもあまり人のことを言えないんじゃないのかい?」
「あの、どうしても名前で呼ぶんですか?」
「まさに少女の象徴だよ。いい名前じゃないか。」
「……どうもです。でも私はあまりこの名前が好きではないのですが。」
「ボクのことはアスカで構わないよ。これからよろしく頼むよアリス。」
「……仕方ないですね。飛鳥さん、よろしくお願いします。」
「とりあえず私たちの自己紹介から始めますか。では改めまして、橘ありすです。12歳で属性はクールです。趣味は読書です。どうぞ橘と呼んでください。」
「ボクの名前は二宮飛鳥だ。14歳で属性はクール。この話し方は俗にいう中二病ってやつだ。趣味はヘアアレンジといっておこうか。飛鳥とでも呼んでくれ。」
「アリスの好きな本のジャンルは何だい?」
「ミステリーですね。謎ときは非常に面白いです。細部まで細かく読むことで気付けることがあります。それに2回目でまた違った見方ができるのはお得です。」
「ミステリーはあまり読んでいないかな。トリックなどには興味があるけれど、どうもボクは探偵よりも犯人の方に共感してしあうことが多くてね。」
「飛鳥さんは好きなジャンルはありますか?あ、ライトノベルでも構いませよ。」
「聖書とか、神学・哲学に最近は手を出してみてるよ。昔から人間は同じことを考えているんだよ。」
「はあ、そういうものなんですか。」
「飛鳥さんはエクステはいつもつけているんですか?」
「どうしても寿命があるからね。数か月で変えているよ。」
「エクステに意味はあるんですか。牽引性脱毛症になりやすくなるとネットで見ました。将来を考えると屋めておいた方がいいのではないでしょうか。」
「これは手厳しいね……。意味なんて大層なものはないよ。これはファッション、カッコいいからだよ。今を楽しむのことが大事だと考えているからね。気にしないでくれ。」
「まあ個人の自由なんでいいですけど、ケアはちゃんとした方がいいですよ。」
「あ、ああ忠告に感謝するよ。」
「私にはあまり理解しがたいですね。」
◇
「自己紹介も終わったところで、それではこの企画について詳しく話していこうか。」
「まずこの企画の名前、『アリアスの糸』とは何でしょうか?」
「アリアスとはアリアドネと呼ばれることが一般的だね。アリアドネはクレタ王ミノスと妃パシパエのあいだの娘のことだ。
そしてアリアドネの糸といえば、英雄テセウスがミノタウロス退治する際に、迷宮からの脱出のためアリアドネが渡した糸のことをさす。」
「そこからアリアドネの糸という言葉は難問解決の手引き・方法といった意味の言葉になりました。というわけで私たちが悩みを解決していこうという企画になっています。」
「アリスはこの言葉を知っていたかい?」
「これくらいは当たり前です。飛鳥さんはアリアドネの糸の由来を知っていましたか?」
「まあ、ギリシャ神話をかじったことがある人ならみんな知っていると思うよ。」
「やっぱり神話とかは好きなんですね。」
「ああ、やはり心がくすぐられるよ。そして神々は昔から気まぐれだってことがよくわかるよ。アリスも調べてみたらいいんじゃないか?」
「興味はあるんですが、神話は幅広くて調べるのに一苦労しています。」
「それならボクが今度教えてあげようかい。」
「いえ、話が長そうなので結構です」
「それにしてもなぜこの企画に私たちが選ばれたのでしょうか?二人ともあまり人生経験が豊富というわけではないのですが。」
「今のボクたちにしかできない答えを期待しているのかもしれないね。」
「でも私はあまり年相応の返答というものはできそうにないです。飛鳥さんは年相応ですね。」
「まあ、すべての物事に意味を見いだせるとは限らないんだよ。」
「それを言い出したら話が終わってしまいますね。」
「運命、とでもいえば響きはよくなるだろう?」
「あくまで理由があるとは思いますが。名前のゴロがよかったからでしょうか。それとも私たちで決まった後にこのような名前が付けられたのでしょうか。」
「それは些細な問題だろう。それこそ鶏が先か、卵が先かのようなものだ。大事なのはこれからのことだろう。これまでの過程はカコのものだ。僕らはミライについて考えるべきだよ。」
「まあそれはそうですけど。」
「任された以上その期待に応えていく、そういうものだろう?」
「勿論その通りです。大事なのは中身です。私だって大人だというところを示して見せます。」
「しかし送られてきたとして、本当に解決できるんでしょうか?」
「大事なことは考えることだよ、アリス。答えを出すことではないんだよ。」
「それでいいんでしょうか?」
「人に与えられた答えに大きな価値はないだろう。ボクらが導き出した答えは所詮ボクらしか納得していないんだよ。」
「つまり私たちがお答えしたものを、もう一度考えていただくということですね。」
「そういうことかな。」
「記念すべき第一回目は年明けからになると思う。それまでに悩みがあれば何か送ってきてくれ。」
「来年のの話をすると鬼が笑うって言いますけど。」
「笑いたければ笑うがいいさ。それがボクらを止める理由にはならないからね。それに未来を思い描くことは信じることだからやめられないよ。」
「たぶん一回目は私たち二人の悩みをするんじゃないでしょうか。もし、プロデューサーの悩みであったとしてもそんな大したものは来ると思えません。」
「いや、案外何か考えているかもしれない。例えば、そうだなあ。アイドルが言うことを聞かないっていうのはどうだい?」
「……それって私のことですか?」
「いや、ボクは何も言っていないが。もしかしたらボクのことかな。それともアリスは心当たりがあるのかい?
「……まあいいです。そうですね、まず言うことを聞かない理由について考えるべきですね。プロデューサーが無茶な要求をしているのか、アイドルがわがままなのかを考えるべきです。」
「非常に論理的な考え方だ。」
「何事も順序立てて考えた方がいいんです。世の中は本当は単純にできているんです。」
「そうだね、セカイは簡潔で美しい。ただ、感情が邪魔をしてしまうんだ。」
「結局は感情論になりそうですね。面倒なはなしですね。」
「だけどそのおかげでセカイがさらに輝くことがある。」
「飛鳥さんってもっと斜に構えているかと思いましたが、意外とファンタジーな方ですね。」
「昔のボクは違ったかもしれないが、今のボクはそうかもしれない。ヒトは変わるものだからね。アリスもそうだろう?」
「否定はしませんね。私もそういうことに一応の理解はできるようになりました。大人に一歩ずつ近づいているということです。」
「彼に出会ったからじゃないのかい?」
「プロデューサーは関係ないです!」
「ボクは誰のことか言ってないけどね。」
「……っ!」
「でもそれは悪いことではない。やがて嫌でもボクらは大人になる。」
「私は早く大人になりたいです。子供扱いをされない、対等な立場になってみせます。」
「確かに肩を並べて歩くことにはあこがれるね。」
「ぜひ一緒にこの企画を通して成長しましょう。」
◇
「さてそろそろ終わりの時間のようだ。」
「こんな感じで私たちが話し合っていくという形になります。今後ゲストなどは来るのでしょうか?」
「まあ考える人は多い方がいいんではないか。価値観の違いは大事だ。三人寄れば文殊の知恵とも言うからね。」
「船頭多くして船山に登るとも言いますけどね。」
「まあそれも今後自ずとわかってくるだろう。この先どうなるかは神のみぞ知るってところかな。」
「結局何も決まっていないじゃないですか……。まあそれはしっかり話し合っておきましょう。」
「では今日はこの辺で失礼します。皆さんここまで『アリアスの糸』にお付き合いいただき、ありがとうございました。」
「それじゃあ、またいつか相まみえる日まで。お相手は二宮飛鳥と、」
「橘ありすでした。ばいばーい!」
「飛鳥さんお疲れ様でした。」
「ああ、アリスもお疲れ様。」
「それでは早速、今後についての段取りをしていきましょうか。」
「アリスはマジメだな、今は終わりの余韻に浸りたいんだ……。」
「何を言っているんですか。弛まぬ努力と綿密な準備が成功の秘訣です。」
「ハハッ、まいったな。そんなに急ぐことはないと思うけどな。」
「善は急げですよ。限りある時間をいかに有効的に使えるかは大事です。」
「……そうだね。ボクらの時間は有限だ。実り多きものにするにはあまりにも足りない。それじゃあ、行こうか。」
「ええ、忘れ物はないですね。では行きましょう。プロデューサーも待っているはずです。」
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第1話 何事も始めが肝心です
「やあ、ボクは飛鳥、二宮飛鳥だ。」
「こんにちは。橘ありすです。」
「第一回目が始まりました。」
「無事に始められてなりよりだ。てっきりあのまま終わってしまうかと思ってしまったよ。」
「そんなわけないじゃないですか。あれほど予告もしましたのに。」
「物事というものはいつ何が起きてもおかしくはないんだよ、アリス。」
「変なこと言わないでください。縁起が悪いです。」
「そうだね、どうせなら前向きに話そうか。」
「では改めてあけましておめでとう。今年もよろしく頼むよ、アリス。」
「はい、こちらこそよろしくお願いします、飛鳥さん。」
「今回はお題に入る前に何か決めるんだよね」
「ありきたりですが、今年の目標を決めましょうか。どういったことにしましょうか。」
「そうだね、ボクはそういったことは決めない主義なんだ。限界を決めているみたいで好きじゃないんだ。」
「しかし明確な目標は原動力にもなります。目標はいくつあってもいいわけですから、何かしらあった方がよいでしょう。」
「ただ容易なものは決める意味などない。目指すならより高みへ行きたいね。」
「そうしますと、一年間無事続けることが目標にしますか?」
「ああ、いいんじゃないかな。日々の積み重ねが大事だね。」
「より多くの人に見てもらえるように頑張っていきたいですね。私たちの考えをぜひ有効に使ってほしいです。」
「それじゃあ踏み出そうか、『アリアスの糸』記念すべき第一歩を。」
「アリアスネーム『働いたら負け』さんからいただきました。「お正月の3が日も終わってしまい、仕事が始まりそうです。そんなことは認めないぞ!二人からもプロデューサーに休むことの大切さを言ってほしい」だそうです。」
「なるほど、一回目にふさわしい質問だね。」
「本気でそう思っているんですか?あと誰から送られてきたのかすぐに分かるのですが。」
「誰が送ってきても構わないよ。それじゃあ考えてみようか。」
「まずは働くことの意義について考えてみるか。」
「そうですね、先に一般的なことを述べてから詳しく考えましょうか。」
「なぜ人は労働をするのだろうか?最初に思いつくのはわかりやすくお金のためだろう。生きていくのにお金は必要だ。」
「そうですね。タダで生きていくことができるのなら、働かないという人もいるでしょう。それができないから働くということですね。」
「いつだって現実は無慈悲だね。夢を見ることはタダだが、かなえるにはそうもいかない。」
「これは避けて通れない道ですね。」
「ほかには何かあるかな?」
「私が思いついたのは、憲法による義務だからですね。国民の三大義務の一つです。これは働く理由になると思います。」
「なるほど、ボクにはこの考えはなかったな。まさかこんなに強固な檻があったとはね。」
」
「実際には世の中働いていない人もいるわけで、考えかたの一つということですね。働かざるもの食うべからずとも言います。」
「セカイは誰かの仕事でまわっているからね。歯車無き機械は動かないからね。」
「やはりギブ&テイクの世の中ということですね。」
「今まで述べたことは受動的なことだったね。そうなると能動的な話もしたいね。」
「あとは労働そのものに意義を見出すことでしょうか。これができれば素晴らしいですね。」
「やりがい、というものだね。」
「意味を明確にできればモチベーションも上がります。好きなことならさらにいいですね。」
「だがこれは簡単な話ではないから、迷うこともあるだろう。」
「私たちがどのように考えているかも話しましょうか。」
「ボクたちはアイドルという職業は少し特殊だけけれど、まあ今回は質問者も同じだから構わないな。」
「まあ私たちも長くやっているわけではないので大層なことは言えませんですけど。」
「アリスはどうだい?」
「私はアイドルをしていて日々新鮮な思いがあります。ステージであったり、撮影であったり、様々なことをしますね。でもやっぱりレッスンの時間が一番長いです。」
「それで嫌になるときはないのかい?」
「確かにレッスンは大変です。でもそれは必要な努力なので受け入れます。」
「失敗や、挫折を感じることはないのかい?」
「私は事務所の中でもかなり年下です。でも立つステージは同じです。体力がなかったり、ステージでも失敗してしまうこともあります。
「でも、私は負けず嫌いなので、絶対うまくなってやると思います。そうしてやっているうちに夢中になっている自分がいます。そんな私の成長していく姿を見てもらいたいと思っています。」
「やはりアリスは強情なんだな。一緒にいて飽きないよ。」
「それはほめているんですか?そう言う飛鳥さんはどうなんですか?」
「ボクがなぜアイドルをやっているか?それはまだ見ぬボクを探し求めているからだよ。アイドルになって様々な経験をしてきた。それはこの道でしか得られないものだ。だから進み続けるんだ。」
「もっとクールな感じで行きたいと思ったりしませんか?」
「そうだね、ボクはボクを冷めている人だと思っていたよ。でも熱くなれることを教えてもらった。そしてユニットを組むことでまだ大人になれていないことを実感させられたよ。」
「悔しくないんですか?」
「必ず見返してやろうと思うさ。ボクはこんなところで立ち止まるはずはないからね。」
「それがステージに立つ理由ですね。」
「ああ、あの熱狂に充てられてしまったんだよ。この餓えを満たすものはステージの熱狂しかないと分かってしまったんだ。」
「さて、ボクたちはこんな感じで考えているかな。」
「私は杏さんもやるときはやる人だと思っています。普段はあんな感じですけど……。でも効率が良いというんでしょうか?それでも世渡りが上手とは言えませんね。」
「そうだね、アンズと一緒にユニットを組んだことがあるが、彼女は自由の翼をもつものだよ。羽ばたくことはほとんどないから不動の精神とでも言っておくか。能力を持つがモチベーションを保てない苦労人だ。」
「結局、私たちが話した内容で納得するんでしょうか?杏さんはすでにこのようなことは理解していそうですけれど。」
「アンズは働く理由があればしっかり働くんだけどね。今は外から理由をもらって働いている感じだ。だけど与えられるだけではきっと満足しないだろう。」
「では杏さんが自分で働く理由を見つけるのが一番ってことですね。」
「そう、いつか内なる渇望を見つける日が来る時まで。」
「では見つけるまで杏さんはファンのために、そして私たちのためにぜひ働いてほしいものですね。」
「そうしようか。これでひとまず解決ということになったかな?」
「それじゃあ、またいつか相まみえる日まで。お相手は二宮飛鳥と、」
「橘ありすでした。ばいばーい!」
「それではさっそく杏さんのところに行きましょうか。」
「相変わらずアリスはせっかちだね。」
「そんなことはないです。心持で人の行動は大きく変わります。」
「でも一心不乱に働くアンズの姿は想像できないな。」
「……私も想像できません。」
「それでもやらずに決めるのは早いからね。」
「そうです。ではいきましょう!」
「果たして起きているかな?」
「その前に事務所にいるんでしょうか?」
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第2話 ボクらは歩み始めるよ
「やあ、ボクは飛鳥、二宮飛鳥だ。」
「こんにちは。橘ありすです。」
「第二回目が始まりました。」
「ああ。またこの時が来たようだね。」
「まだ二回目ですよ。その言葉使うのは早すぎませんか?」
「ボクは感じたことを思うままに言っているだけだよ。」
「次回以降も同じことを言うんですか?」
「それは未来のボクにしか分からないことだね。今のボクが思ったところでこの先に……」
「あ、それではメールをいただきましたので早速参りましょう。」
「さて今回の質問はアリアスネーム『みうさぎ』さんからいただきました。「わたしは同い年のアイドルと比べて個性が薄い感じがします。普通というか今は方向性を探しています。是非アドバイスをください」だそうです。」
「個性についてか。悩む必要なんてあるのかな?ありのままでいればいい、ただそれだけさ。」
「私も特に気にしたことはありませんでしたが、言われてみると思うところはあります。」
「そうなのかい?」
「私が思うにこの事務所のアイドルは個性が強いです。」
「まあこれだけの人数が集まれば不思議でもないだろう。」
「そう簡単に済ませられないレベルの人が集まっていると思います。」
「見ていて驚かされることはあるね。」
「この事務所にいると違和感がなくなってきますが一般的にみて個性派の人が多いです。」
「このお悩みを送ってくださった方は名前から考えると14歳ですね。とくに各年齢層で見たときに14歳の方々は顕著だと思います。」
「おや奇遇だね、ボクは14歳なんだ。」
「知っています。ちゃんと個性的な方の数に入っています。」
「まあボク自身も少し世間から浮いている感覚はあるからね。個性的といえるかもしれない。」
「目をつむっていても話し方で分かる自信があります。それほど特徴的と感じます。」
「そもそも個性とは何だろうか?ボクは特別に何かをしているつもりはないよ」
「エクステしている人はアスカさん以外に見かけませんね。」
「事務所の中ではボクだけのようだね。」
「話し方も婉曲的な表現ありますね。いわゆる中二病です。」
「はは、その通りだね。でも目立つことだけでいいのなら、外見や言動を強調すればいいのかい?」
「個人特有の性質ですから、意味合いとしては間違っていないと思います。」
「後から意図的に付け足したものは果たして個性なのだろうか?」
「それは難しいところですね……。付け足すことができるのものなら、それは誰でも持つことができるという子ですから。」
「唯一無二なことなので果たしてあるのだろうか?」
「広い目で見たらないかもしれませんが、事務所内などで見ればあるんじゃないでしょうか」
「ボクは何も変わっていないのに、セカイの大きさによって個性と決まるなんて皮肉なものだね」
「唯一無二でなくとも要素を聞いて、連想できるならそれは個性と判断できる気がします」
「この個性を求めているものはアイドルとしてなのか、ありのままの自分であるかも大事じゃないですか?」
「ボクはいつもこんな感じさ。」
「そうですね。でも346のアイドルでキャラを作っている人もいます。猫キャラや、ロック、ウサミン星の方がいらっしゃいますね。これらはすべて後付けだと感じます。」
「なるほど、誰のことを言っているかわかる。」
「そうなるとキャラづけの意味や効果はありますね。ただキャラで売ると後々大変になるそうです。年齢やニーズによりギャップが生まれるそうです。」
「やはり自分を偽って見せるのは大変そうだ。ボクにはできそうにないよ。」
「余談ですが世の中にはギャップ萌えというものもが存在するようです。違うと分かっているからこそ良いらしいです。」
「セカイは広いね。」
「アリスは自分の個性を何だと思っているかい?」
「そう聞かれると少し困りますね。しいて言えば同い年の子よりかは大人びているところでしょうか。ですけれど大人の方々から見たらやはり私はまだ子供なのでしょう。」
「おや、もっと自分のことを大人というかと思ったよ。」
「子供扱いは好きではありません。ですが足りてないことはたくさんあると、受け止めることができるようになりました。」
「しっかり成長しているようだね。」
「ちゃんと勉強させてもらっています。そうですね、私を表す言葉は『真面目』だと考えています。」
「ピッタリだと思うよ。アリスはマジメすぎるね。」
「ほめているんですか?」
「ほめるも何もそれがアリスということだよ。でもアリスが普通とは違うところも知っていうよ」
「私にそんなところありましたか?」
「アリスはいちごパスタが好きなんだろう?これは珍しいだろう。」
「そ、そんなことないです!変じゃないです!おいしいから問題は全くありません。」
「ふふ、そういうものなのかな。」
「それは食べたことがないからそう思うだけなんです。食べてみればすぐに分かりますよ、アスカさんもぜひ食べてこのおいしさを布教させましょう!」
「い、いやボクは遠慮しておこうかな。」
「知らないのに語ることはよくないですよ。それは観測者としてどうなんですか?」
「うっ、いや今は個性の話をしているんだ。道をそれ過ぎてしまったね。」
「いつもはアウトローな雰囲気を出しているのに……。とりあえず後で話しましょう。」
「まあアリスも好きなことなどは年相応の幼さが見えるということかな。」
「そういうまとめ方は遺憾です。アスカさんだって時々可愛らしい少女の一面を見せますよね」
「そうだったかな?」
「いろいろな表情を持つのは当然ということです。」
◇
「では悩みの解決法をまとめていきましょうか。まずキャラづけという見方についてですね。」
「ただインパクトがほしいなら、新しさを求めるということかな。」
「そうですね、誰もやっていないことをすれば良いのではないでしょうか。かぶってしまうと印象が薄くなってしまいますから。」
「どんどんマイナーな路線に入ってしまいそうだ。」
「その点は難しいですね。何より素のままで同じ系統の人がいたときにかないませんから。」
「次に個性についてですね。」
「ボクの考える個性は確固たる信念だね。他者から否定されてもそのままであり続けることが自分の存在証明になるんだ。」
「やはり自分が感じていることを表現することが自分のことを伝えるうえで単純ですが、一番効果的だと思います。」
「ボクはありのままが一番かな。なりたい姿をイメージするんだ。それを表現するのさ。いや、因果が逆なのかもしれない。内なる衝動の結果がボクなんだ。」
「私も背伸びをして大人びる必要はないと感じるようになりました。」
「人間ですから似た性格や趣味の方がいることも当然あります。それは悪いことではないです。それに普通の方は大事です。私のような常識人はいつも振り回されていますから。」
「個性の強さは主張が激しいから仕方ない。ぶつかり合うことも少なくはないだろう。」
「ですからそういった人たちをつなぐ役目の人も必要とされています。もちろんその中で負けじとアピールすることは大事です。」
「誰にも負けない魅力を作ることもいいだろう。だけれど誰とでももうまく活動できることも大切だ。」
「それに自分では当たり前だと思っていることも他者から見たら違って見えるというものだね。セカイは観測者の見方次第でいくらでも変わるものさ。」
「自分では魅力がないと思っていても、そこに気が付きあなたをプロデュースした方がいます。惹かれている方は必ずいます。その方を信じてみませんか?」
「今回もたくさん話した気がするよ。」
「そうですね、一度自分の現在と目指すところを振り返れた気がします。」
「それじゃあ、またいつか相まみえる日まで。お相手は二宮飛鳥と、」
「橘ありすでした。ばいばーい!」
「飛鳥さん、お疲れ様でした」
「ああアリスもお疲れ」
「自分らしさはやっぱり難しいですね」
「そうだね、ボクらは成長していく。その中で得るものもあれば失うものもあるだろう。いつまでもこのままではいられないかもしれないからね。」
「新しいことにも挑戦していきたいですね。」
「ああ、恐れても歩みを止めずに進み続けていきたいね。」
「言いましたね?では覚えていますか、さっきのラジオの中で話していたことです。」
「え?」
「いちごパスタ早速作ってきます!」
「あ、いやそれは……」
「ほかにも食べたい人がいるかもしれませんから、たくさん作りましょう!」
「やはり個性は暴走すると恐ろしいものだ……」
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