エロゲー世界に神様転生したのに負け組じゃないの? (のぶほし)
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序章
第01話 女神の館 プロローグ


『ALICEの館』のテーマBGMを聴きながら書きました。


 

「こんにちは。あなたは死にました」

 

「ちょっ、まっ……」

 

突然のことで理解が追いつかない。

目の前には女神を名乗る黒いリボンが特徴的な金髪美少女がいる。

ライトブルーの綺麗な瞳に合う淡い青色のエプロンドレスが特徴的だ。

 

空間には何度か聴いた記憶がある癒しの音楽が流れている。

 

「ガー」

 

何故か小さなカラスが僕の隣で鳴いている。

 

「あ、この子はペットの――」

 

「あのー。ペットの名前とか、どうでも良いので、

 説明をお願いできないでしょうか?」

 

「わかりました――」

 

生前の記憶は朧気だが、どうやら僕は死んだらしい。

とにかく死んだ原因が神様の手違いとか何とかで、

別の世界に転生させてあげるという話になった。

 

なんというテンプレ。いわゆる神様転生キタコレ!

 

しかも金髪美少女が担当する異世界はエロゲーの世界らしい。

 

俺TUEEEEどころか異世界ハーレムとか最高ッッ!!

 

しかし、その喜びもつかの間のことだった。

 

「では、一番人気『ランスⅩ』で良いですか?」

 

「えっ、……それって『ルドラサウム大陸』でしょうか?」

 

「はい。私の担当で一番多くの転生希望者がいる人気世界です」

 

ちょっと待て欲しい。たしかに「ランスシリーズ」は面白い。

平成元年から平成の最後までを駆け抜けた大長編エロゲの最高傑作だ。

 

老若男女問わず魅力的なキャラクターも大勢いるし退屈はしないだろう。

しかし問題は創造主である“巨大な白クジラ”ルドラサウムの存在だ。

 

ヤツは苦しみ、憎しみ、哀しみといった負の感情を心地よく感じるサディストだ。

死や破壊を好み、悲劇と混乱の観賞をこの上ない愉悦とする歪んだ精神の持ち主。

 

ランスシリーズの舞台となるルドラサウム大陸は、

魔物はもちろんのこと魔王や魔人といった無敵結界を持った存在が跋扈する危険な世界。

 

特にシリーズ最新作の「ランスⅩ」はディザーサイトの記憶によると――

ジャンルは大戦争RPGで、開幕から魔物と魔人が世界全土を突然襲う。

予期せぬ破壊と殺戮によって人類は戦力の大半を失い滅亡寸前という状態からのスタートだ。

 

たしか開戦から僅か2週間で1200万にも及ぶ犠牲が出てたはずだ。

 

そんな世界でエロエロと生きていけるのだろうか?

 

「えっと……何か能力(チート)はいただけるのでしょうか?」

 

「そうですね。上司に確認してみます」

 

女神様には上司がいるんだ……。

 

「上司に曰く『ランスくんの邪魔をしない程度なら大丈夫』だそうです」

 

女神の上司はゲーム主人公の「鬼畜戦士ランス」を大切にしているみたいだ。

神様転生特典(俺TUEEEE)で主人公を踏み台にしてハーレムとかいう展開は無理みたいだ。

 

能力の設定が書かれたキャラクターシートのようなものを手渡される。

才能限界は一万人に一人ぐらいのレベル。技能レベルはLV1が二つ貰えるのか。

時代はLP歴6年末「ランス9」のエンド直前で、ランスXの開始までは少しの猶予がある。

選べるのは自由都市の冒険者、ゼス所属の魔法使い、リーザス青の軍の兵士……。

 

って!死ぬし!この能力だと死んじゃうし!大戦争に参戦するにも地位が半端だ。

 

「qあwせdrftgyふじこlp」

 

「どうしましたか?」

 

よくよく考えたら僕はランスⅩ(2018年2月23日発売)をプレイする前に死んだのだ。

 

金髪美少女の話によると……その心残りを可哀想に思った神様(死亡の原因)が、

女神の上司に頼み込んで、異世界転生の手続きをすることになったのだと言う。

 

ありがたいような、ありがたくないような話だ。

これでは転生オリ主特有の原作知識チートとかもできない。

 

_| ̄|○ il||l

 

技能LV3(バランスブレイカー)は無理だとしても、

せめて必殺技が使える技能LV2は欲しい。

もう少し才能限界もサービスしてくれたって良いんじゃないかと(困惑)

 

とてもじゃないが鬼畜戦士ランスの作中に絡めるような地位のキャラじゃない。

そして魔人戦争といった死亡フラグ満載の世界で生きていける気が全くしない。

 

額から汗を垂れ流して必死に優しそうな女神様の情に訴える。

 

「お願いしますっ! 無理です。ランスシリーズは死んでしまいます!

 ほ、ほ、ほかの……他の世界は無いのでしょうか?

 ほら、超昂シリーズとか闘神都市とか色々とあると思うんですが……」

 

咄嗟に思いついた作品を並べたが、ほのぼのとした世界が無いぞ(激汗)

あ、アトラク=ナクア……駄目だ、あれはクトゥルフ神話系だ(白目)

 

「あっ、そうだ! 人妻や熟女好きの人のシリーズは駄目でしょうか?」

 

ええいっ!風麟世界はNTR(寝取られ)があるが少なくとも命の危険はないはずだ!!

 

「すいません。私の権限では何とも言えないので上司に聞いてみます」

 

女神様は何かと親切だが、やはり上司の意志が第一らしい。

 

…………

 

……………………

 

「そうですね。大シリーズであれば良いそうです」

 

丁寧にまとめられた設定資料が渡される。

 

大シリーズもアリスソフトの看板作品で、

今まで「大悪司」「大番長」「大帝国」の三作が出ている。

それぞれ世界観の違う作品で地域制圧SLGというジャンルのみ共通だ。

 

順に説明すれば、ヤクザ、番長、WWⅡだろうか……。

いずれにせよ暴力と血の匂いがするセックスバイオレンスな世界観だ。

 

転生するにしてもアリスソフトってエロゲーメーカーなのに、

シビアな世界設定が多いな……(泣)

 

(´Д⊂ モウダメポ

 

「あれ? 大帝国だけ他と比べてキャラの待遇が良くないですか?」

 

大悪司は、オオサカ市議会職員で進駐軍ウィミィの担当者で立場が弱い。

大番長は、暴走族集団カントウ獄煉の三下幹部のパシリだ。

大帝国だけ、何故かドクツ第三帝国の要人の地位が示されている。

 

「そうみたいですね」

 

女神様は案内役の看板娘で上司の意図まで分からないそうだ。

 

但し書きには、

 

レーティアちゃん(公式人気投票No1)の人気に比べて

 アルティメットアイドルENDの評判が芳しくないので何とかして欲しい』

 

と書いてとある。

 

ただの要望じゃんっ!!

 

『幹部候補、原作ゲーム未経験大歓迎、若い女性が頑張っているアットホームな環境、

 笑顔が絶えない職場、有能な上司の下で風通しの良い組織、勢力拡大のためやりがいあり、

 あなたの頑張りで原作改変できます……etc.』

 

若干ブラック求人の臭いがするのは気のせいだろうか……(汗)

 

ランスシリーズはキャラも世界も魅力的だけどチートが無いと無理。

大悪司や大番長の凡キャラは話にならない。

大帝国で社会的地位の高いキャラの方が良いかな?

 

よくよく考えてみたら大帝国はモテモテ設定の肉バイブ系主人公(東郷さんに抱かれたらきっと分かるよ)に、

僕がイマイチ魅力を感じなかっただけだ。

思い起こせば登場する女の子(ヒロイン)も多いし、かなり魅力的だ。

サブキャラも含めれば、属性もロリからBBAまでと幅広い。

R-18Gのキングコアルート(監禁・凌辱・拷問なんでもあり)さえ回避すれば悪くないかも知れない。

 

「決めました。これでお願いします!!」

 

選んだキャラクターシートを金髪美少女の女神様の前に差し出す。

 

「与えれる提督スキルは【敏腕P】です」

 

敏腕Pは、原作ゲーム主人公の東郷毅が持つ【大戦術】と同じ効果を発揮する強力なスキルだ。

地域制圧SLGは、登場する提督に細かなパラメータが殆どないが、

索敵と航空の<特性>や<指揮>にも不足はない。

特に気に入ったのが神様転生特典(チート)の一つなのだろう<幸運B>と<黄金律B>だ。

ラッキースケベも期待できるし、お金に困らないのも嬉しい。

原作知識チートに必要な<前世の知識>も設定に書かれている。

 

最近では高齢者を相手に最初に多数のオプション契約を結び、

後で解約を申し込んだら高額な解約料を求めるといったケースも多々ある。

設定(契約)内容のチェックに抜かりはない。

 

「はい。不足はありません」

 

同意書にサインすると「ガー」といってカラスが用紙を咥えて遠くの光に向かって飛んでいく。

 

徐々に身体が淡い光に包まれて薄く消えていく……

去り際に金髪美少女の女神様が爆弾発言を投げる。

 

「気を付けてください。敏腕P(プロデューサー)女性キャラ(アイドル)に手を出すと死にます(GAME OVER)

 

「えっ? ど、どうしてですか? 

 だって、原作はエロゲーですよね!? おかしくないですか?」

 

※二次創作元の『えろかみ大帝国(勝ち組)』はR-18二次小説です(宣伝) 

 

「だって、えっちなのはいけないと思います」

 

「ちょっ、まっ……」

 

「やらしいことばかり考えるのもアレだから記憶(人格)消去(デリート)した方が良いわよ?」

 

突然現れた眼帯に黒いエプロンドレスの金髪美女が口を挟む。その傍らには白い鳩がいる。

 

「えー かわいそうだよー」

 

「そう? なら封印は弛めておくわ」

 

「またねー」

 

「くぁwせdrftgyふじこlp」

 

抗議の言葉を口にすることなく僕の記憶は眩い光の中で薄れていった――。

 




二次創作元リスペクトの熱いダイレクトマーケティング

※改訂の補足
第12話投稿前に、第1話~第11話の文章規則のガイドラインを統一。
引用符による強調のガイドラインを決めてルビを減らした。


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第02話 ハンス・ウルリッヒ・シュペーア

この作品はルビを多用していますが、ルビは発音や読みではなく
心の声だったり、ニュアンスだったり、考えるな感じろ的なナニカです。


 

【えろかみ大帝国の宇宙史】

 

――――統一宇宙歴936年、ベルリン星域ミュンヘン地区――――

 

エル・プサイ・コングルゥ!(やあ初めまして!)

 

俺はハンス・ウルリッヒ・シュペーア、2X歳の退役軍人だ。

 

若い頃は女の子にもてもてな職業、フラグの建築家を目指していた。

芸術の惑星ウィーンにある一級フラグ建築士アカデミー(帝国美術アカデミー)を受験したんだが挫折。

交易商人だった父親が宇宙船の事故で死んでしまい一気に生活が苦しくなった。

 

仕方なく手に職をつけるためにドクツ空軍士官学校に入学して軍人になった。

VR弾幕系シューティングではルナティックモードも楽々クリアできてたし、

宇宙戦闘機の扱いには、それなりに自信があったのだ。

 

大戦の気配もあったから、徴兵されて素人に毛が生えた状態で、

最前線送りにされるよりマシだろうと当時は考えていたんだ。

前世界大戦における陸戦での戦死者の数を考えれば、我ながら慧眼だったと思うね。

 

これでも前世界大戦では宇宙戦闘機(アルバトロス)エースパイロット(ルナシューター)として活躍して、

皇帝陛下から青勲章を授与されたこともあったんだぜ。

 

 

うらぶれたミュンヘン地区の街並みを結社の尾行(エージェント)に注意しながら歩く。

 

これからアーネンエルベ<遺産協会>の会合が行われる。

とは言っても考古学趣味者(あたまのおかしなやつら)が集まっての飲み会だ。

 

結社の刺客(エージェント)に狙われる可能性があるため、

親しい人間(アーネンエルベ)にも秘密にしているが、俺には前世の知識(アカシックレコード)がある。

 

輪廻転生は欧州星海域の人間(正統派ライトノベル読者)には馴染みの薄い東洋思想の一つ(二次創作のテンプレ)だが、

このアーネンエルベ(ネット小説投稿サイト)には、魂の輪廻を信じる変人奇人(異世界転生テンプレ大好き)が大勢いる。

皆が自分は過去の偉大な英雄の生まれ変わりだ(転生者異世界ハーレム最高)とか言って前世探し(スコップ)に熱中している。

 

俺の前世の知識(デジタル)は、そんな流行(オカルト)とは一線を画している。

随分と朧げな知識だけど、どうやら統一宇宙歴以前に起こった出来事の知識みたいだ。

 

統一宇宙歴ゼロ年に人類が「ワープ航法」を発見する以前は、

星域間の移動には数百年以上の時間が必要であり、人類は限られた星域に点在していた。

 

ヨーロッパ星域で最も古い歴史を持つ王室は「エイリス帝国」だと言われているが、

人類発祥の惑星は今や名前や場所さえ失われた状態だ。

 

それでも宇宙宗教家(ペロリスト)が『性書』に書いたNOVAの箱舟やバベル軌道エレベーターの崩壊、

ニホンの『故事記』に書かれた天孫(わんわん)降臨、『慢心王叙事詩』(ギルガメッシュナイト)に描かれた宇宙怪獣や宇宙災害、

『大ローマ神話』や『北欧神話』など世界中に伝わるの神代の物語を読み解くと――

 

どうやら人類は何かの理由で故郷の星を失い、

離れ離れになって各星域に、散り散りに辿り着いたということが分かる。

 

いみじくも有名絵師が作品に名付けたように

「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか」という

哲学的命題を人類は今もなお抱き続けている。

 

故星を失った人類は、宇宙のすべてを求めて

気が遠くなるような期間を費やし、世代交代型宇宙船で新天地を目指した。

永きに渡る先史の時代だ。

 

俺の持つ前世の知識(アカシックレコード)は、この先史時代よりも以前、

人類が未だ宇宙空間を移動する術さえ持っていなかった時代の知識だ。

 

考古学的にも何一つ証拠となる遺跡や遺物が発見されてない

遺史時代と呼ばれる宇宙史のミッシングリンクだ。

昔この前世の知識を友人に打ち明けたら「中二病」だの「邪気眼」だの笑われて弄られた。

更に前世の知識をまとめた<黒革の手帳(黒歴史ノート)>は、原本が結社の連中(エージェント)に奪われてしまった。

 

芸術アカデミーに落ちたのも、航空幕僚になれなかったのも、結社の妨害(だいたいあいつらのせい)があったからだ。

前世の知識(アカシックレコード)は、妄想(オカルト)ではなく本物(デジタル)だ。だから結社(イルミナティ)も狙っているのだろう。

ネットに強い(ハッカーの)俺は前世の知識を利用して“健全なゲーム”を作成し、それなりの財産を築いた。

結社を警戒して財産は全て永世中立惑星スイスの銀行に預けているため貧乏だと偽っている……。

 

ハロー(やあ)、ハンス」

 

ヴィー ゲーツ ディア?(元気してた?)

 

闇に飲まれよ!(お疲れさまです!)

 

ナマステ!(नमस्ते)

 

ミュンヘン地区の裏通りにある醸造所レストラン(ビアホール)に入ると、

顔見知りのアーネンエルベ(遺産協会)仲間たち(奇人変人)が声をかけてくる。

一通りの挨拶を交わしてカウンターの奥に座って呑んでいると、

やたらと白い見知らぬ男が隣に腰掛けて声をかけて来た。

 

「あー、そこでアプフェルヴァイン(りんご酒)を飲んでる君!

 そう君だよ、君! せっかくの出会いだ。乾杯して語り合おうじゃないか」

 

彼はアーネンエルベ(考古学趣味者の集い)の中では珍しい世界史研究者(宇宙歴史家)の様だ。

 

 

統一宇宙史(世界史)は「ワープゲート」を利用して星域間を瞬時に移動するワープ航法の発見によって、

欧州星海域を中心としたヨーロッパの国々による大航海時代(ワンピース)の幕開けによって始まる。

 

「ワープコード」が徐々に見つかり、散らばっていた世界が点で繋がっていった。

世界の繋がりは、新たな文化との出会いや交流と共に、

宗派の対立による嫁戦争など価値観の違いによる争いを生んだ。

様々な星域国家が産声をあげ、あるいは滅んでいった。

 

アーネンエルベ(遺産協会)には求婚投機(チューリップバブル)によって滅んだ国の

難解な言語(蘭子語)インドカレーの踊りと音楽(ナンにでも合う)を研究する変わり者たちもいる。

 

大航海時代の幕開けから数百年、

世界地図と呼ばれる「星域ネットワーク図」は現在の形に近づき、

新たなワープコードが発見されることも殆どなくなっている……。

世界の広がりは限界に近づき、人類は限られた宇宙空間の資源を奪い合うようになった。

 

統一宇宙歴700年代にはエイリス帝国が、

世界の半分を植民地支配下におき「沈まぬ帝国」と呼ばれた。

 

しかし百年と待たず、独立戦争が勃発。「ガメリカ共和国」が誕生する。

 

現存する最古の国家とされ、将軍家が鎖国を守っていた日本は、

ガメリカ共和国の黒船による砲艦外交に屈し、

維新開国により新たな帝を迎えて「日本帝国」となった。

 

日本が最古の国家であることは、まず間違いないだろう。

調査して分かったことだが黒革の手帳(黒歴史ノート)には日本発だろうと思われる遺失知識が数多くあった。

俺が前世の知識を元に作った東洋趣味のVR弾幕系シューティング(東洋Project)は、

趣味人だけでなく宇宙戦闘機のフライトシミュレーターとして多くの航空機乗り(シューター)に遊ばれている。

 

宇宙史を学べば分かる。革命、独立、侵略……戦火は世界のどこかで灯り続けていた。

陰謀論(トンデモ)だとか笑われるかもしれないが結社(イルミナティ)が裏で動いているのだろう。

 

結社の誘導により、やがて各国が同盟を組み、連合を作り……勃発したのが初の世界大戦だ。

誰もがペロリストが『性書』で預言した黙示録(ハルマゲドン)だと思っただろう。

 

それくらい初の世界大戦は悲惨の一言では語れない壮絶な戦争だった。

欧米は植民地から収奪した富で産業革命を起こし宇宙技術を大きく進歩させた。

技術を持つものは、技術を持たないものを見下し始める。

 

宇宙を自由に行き来できるようになった人類は、己が新人類(ニュータイプ)になったと勘違いし、

惑星の重力に魂を引かれた旧人類たちを容赦なく攻撃していった。

 

カープ、島原、チェルノブで用いられた核レーザー兵器、核ミサイル兵器などの放射能兵器。

欧州西部戦線や惑星アウシュビッチ、魔都ジャン牌で用いられた

動屍化細菌(バイオハザード)鮫竜巻(シャークネード)などの生物兵器、毒ガスなどの化学兵器。

 

『俺のモノは俺のモノ。お前のモノは俺のモノ

 お前がモノ失っても、俺のモノだと思って探して見つけ出す。お前の痛みも俺のモノだ』

 

という心の友マルクス(蘭子語詩人)による『ジャイアニズム宣言』を、

前文だけ引用し曲解させた「中-チュン-帝国」の指導者による属国テポドンに対する

隕石落とし、コロニー落としなどの質量兵器……etc.

 

現在はCBR兵器として戦時国際法<ハンバーグ条約>で禁止された

ありとあらゆる兵器が宇宙空間から惑星上に用いられた。

初の世界大戦は国家の総力戦を範疇を超え、人類の殲滅戦に拡大する寸前だった。

 

宗教戦争(嫁戦争)により楽園派(ハーレム)聖女派(カトリック)たちの性地(エロサレム)が、

核の炎に包まれて修羅の国となったとき、

ようやく人類(エロリスト)は失った物の大きさに気づき戦争を止めた。

 

知っての通り祖国ドクツ帝国は連合国に敗れて屈辱的な「ベルサイユ条約」を結び、

<オジャルマル共和国>と名前を変えられて多額の賠償金を支払うことになった。

 

多くの犠牲を払った激動は富を生み、それを得た者をさらに貪欲にさせた。

 

全てが結社《軍産複合体》の陰謀だろう。

 

企みを阻止するために何とか力を得ようと、

戦後はオジャルマル国防省の幕僚を目指したけど権力争い(少ない椅子の奪い合い)に敗れて無職(予備役)となった。

同じエースパイロット(ルナシューター)でもゲーリングのヤツは、

上手く取り入って国防軍で出世を重ねているそうだ。

世界が不景気に苦しむ中で公務員生活(血税が給料)とは羨ましい限りだ。

 

戦後に発生した大恐慌によって、敗戦国だけではなく、戦勝国さえ不況に晒されている。

今や世界を蝕む不景気が各地で政権への不満を高めているのだ。

 

極東の国に征伐艦隊(バルチック)が敗れエイリスの仲介で講和を結んだ凍土の「ロシアン王国」では、

ジャイアニズムに対する反発から生まれた「共有主義」者たちによる革命が起こっている。

爆発的に支持者を増やしている「人類統合組織ソビエト」により、

王朝が倒れるのではないかと王政の国家は懸念している。

 

また「大ローマ星域」の「イタリン共和帝国」で始まった

「ファンシズム」運動の波が欧州星海域(ヨーロッパ)を席巻している。

 

巨乳お天気キャスターから「黒ビキニ党」の党首となった「ムッチーニ・ベニス」によって、

イタリンでは空前の巨乳ブームが巻き起こり、子豚(ポルコ族)大豚(イベリコ族)はお祭り騒ぎだ。

ムッチリーニが国民投票で総帥(ドゥーチェ)の座を手にするのも間近だろう。

 

日本帝国では帝の崩御により、軍事クーデターが起こったと聞いた。

日本は世界大戦後も満州事変の諍いから中-チュン-帝国と戦争状態にある。

 

前世界大戦で国土に被害を受けなかったガメリカの金融街(ニューヨーク)が国際経済の中心となった。

 

エイリス帝国は各星域の植民惑星で起こる反乱や暴動を許さず、

植民惑星の総督に軍権を与えて鎮圧するよう新たな議決プランを採択した。

 

結社(イルミナティ)は再び世界的な大戦を引き起こし、邪神(エロカンターレ)を封印から解き放つつもりだろう。

 

――ヘルマン・ヘスと名乗る宇宙歴史家と俺の意見は殆ど一致した。

 

 

「ほう、何という博識だ。ティンときた! 私は君のような人材を求めていたんだ!」

 

そう言ってヘスは<芸能事務所(政党団体)ドクツ第三プロダクション(6923プロ)>と書かれた名刺を差し出す。

彼は芸能界では名の知られた投資家(しゃちょー)で、芸能事務所(政党団体)経営者(代表)でもあるそうだ。

 

「多額な賠償金でハイパーインフレが発生し経済は破綻寸前。

 世界恐慌による失業(ワルプルギスの夜)、出口の見えぬどん底の闇の中で

 ドクツ民はイタリン民(ファンシスト)と同様に新たな救世主(アイドル)を求めている!

 次の総統選挙に向けて、我が社は今、

 アイドル候補者をトップアイドル(ドクツ総統)に導く、プロデューサー(職業選挙参謀)を募集しているのだよ!」

 

イタリンで興ったファンシズム運動は国家の代表を見た目だけで……

アイドル感覚で選ぶという風潮だ。

オジャルマル共和国政府も大衆の人気取りのため総統選挙を行うことを決めた。

 

ヘスの言う通りだろう。世界恐慌による不景気、失業、頼りないオジャルマル共和国政府……

戦争に負け希望を失ったドクツ民は何より世界を変革する魔法少女(本当のアイドル)を求めていた。

 

「どうだね、結社の陰謀(ワイルドハントの獣たち)に対抗するにはドクツ民が団結する必要がある。

 これから政党に優秀なプロデューサー(職業選挙参謀)が必要になる時代が来るだろう。

 私を助けてくれないだろうか?

 我が社のアイドルが総統になれば、

 国防軍の航空参謀を目指した君の見識を新政権で活かすこともできる」

 

これが後にドクツ第三帝国の母体となった芸能事務所(政党団体)

ドクツ第三プロダクション(6923プロ)の代表<ヘルマン・ヘス>との出会いだ。

 

後の第二次世界大戦中に数々の銀河アイドルたちをプロデュースした

敏腕P<ハンス・ウルリッヒ・シュペーア>の物語が今始まる――。

 




原作ゲーム「大帝国」のドクツ第三帝国には、オカルト要素が少ないと思ってやった。

「」とは原作ゲームで登場する単語。他は捏造設定です。

主人公のハンス・ウルリッヒ・シュペーアは、
前世の知識はあっても、転生の記憶はありません。今のところは……。

6923プロ代表ヘルマン・ヘスもオリキャラです。


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第03話 一人のアイドルと二人のプロデューサー

原作ゲーム未プレイでも、公式サイトの「登場人物」と
「大帝国 宇宙史&オープニングムービー 」を見て貰えば、
それなりに楽しめるようには書いているつもりです。

大帝国はOPのMAD動画で知っている人も多いかも。
興味を持って頂いて原作ゲームも購入してもらえると嬉しい。


 

「プロデューサー」(二次創作者)

 

それは薄い本の中で永遠の憧れ(叶わぬ妄想)を表現する存在。

 

「プロデューサー」(職業選挙参謀)

 

それはアイドル候補者を(担当アイドルと)ドクツの総統とし政権の中枢を担うこと(キャッキャウフフすること)を望む者たち。

 

だが総統選挙(アイドルアルティメット)を勝ち抜きドクツの頂点に立てるのは――ただ、一組。

 

そんな魑魅魍魎(サバイバル)な世界に

 

敏腕Pハンス・ウルリッヒ・シュペーアは担当アイドルと共に足を――

 

 

踏み入れるはずだったんだが……orz

 

 

ミュンヘン地区の裏通りにある醸造所レストラン(ビアホール)たぬき亭が入っている

雑居ビルの二階にドクツ第三プロダクション(6923プロ)芸能事務所(選挙事務所)を構えている。

 

今やイタリン民(アニメ化など)に端を発するファンシズム(アイドルゲームアプリ)の大流行により、

キノコやタケノコ(雨後の筍)のように芸能事務所(アイドルゲームやアニメ)が乱立し、群雄割拠の状態だ。

 

総統選挙にアイドル候補を擁立する各芸能事務所には、当然ながら政党思想(推しメン)が存在する。

今やファンシスト同士による(どのアイドルゲームも)思想対立も多々起こっていた。(それぞれ良さがあるよ)

 

芸能事務所(アイドル政党)6923プロの党の思想(経営方針)として存在しているのは、

「アイドル至上主義」「反無課金主義」「反共有主義」「魔法少女による世界革命」だ。

 

ヘルマン・ヘス代表が前大戦で体験した泥沼の消耗戦(恐怖のフェスティバル)の真実を書いた

自伝『我が闘争』(かきんのひび)はヨーロッパ中で大ベストセラーとなった。

その印税で設立された6923プロは、出来たばかりの小さな芸能事務所だ。

 

 

当然ながらアイドル候補者がいない。

可愛い事務員や素敵なマネージャーや綺麗なトレーナーもいない。

 

 

川越が生んだ鬼才が好むBGM(THE END)が頭の中に流れる。

 

たーーたらたー

 

たったーーたらたー

 

たーーたらたー

 

たらたらたんったたんっ

 

えろかみ大帝国スピンオフ、完。

 

※演奏は芸術発明家VTVNによる『ハンガリー舞曲第5番』

 

…………

 

……………………

 

リア充(エロ主)は爆発しろ!!」

 

ヘス代表に任された最初の仕事は担当アイドルのスカウトだった。

童貞にとって街中の女性をナンパする(声をかける)のは、かなりハードルの高いミッションだ。

 

とりあえず世界を変える魔法少女(ドクツ総統)に相応しい女の子(アイドル)を探して営業中(スカウト)だ。

 

“赤い瞳の淫獣”と呼ばれ恐れられている6923プロ代表ヘスは元営業(スカウト)マンで、

芸能事務所6923プロの募集広告は「私と契約して魔法少女になろうよ」だ。

業界では“白馬の騎士”(ホワイトナイト)と呼ばれ頼りにされているそうだ。

きっと肌の色と同じく企業経営もホワイトなのだろう。

 

担当アイドルのスカウトも質より量ではなく、何よりも質(才能)が大事だと諭された。

手当たり次第に魔法少女(アイドル)に声をかけるのは、営業マンとして二流らしい。

 

「就職先がブラックな企業じゃなくって良かった……」

 

とはいえ新米P(調査兵団)スカウト(壁外調査)に出かけて、何の成果も得られないのは大問題だろう。

土下座して「何でもしますから」と言って許しを請うのであれば別だろうが……。

 

「とりあえず何とかしないと……」

 

前世の知識(アカシックレコード)の中にもアイドル育成に関する幾多のノウハウ(アイドル育成SLGの知識)がある。

どうやら俺は前世ではプロデューサーが本業だったようだ。

 

最初は13人のアイドルが所属する小さな事務所でプロデューサーを務めて成功を収めて、

180名以上のアイドルが所属する大きな芸能プロダクションにスカウトされた。

そこでは毎日スタミナドリンクを飲みながら夜遅くまで命を削って働いていた。

残念なことに前世では担当アイドルが、

最初に一人は用意されていたのでスカウトの経験は少ない。

 

前世の知識による以前の職業(プロデューサー)がブラック企業の社畜だったことを考えれば、

外見も中身もホワイトな経営者であるヘス代表の芸能事務所に誘われたのは幸運だろう。

失業中の予備役軍人を拾ってくれたヘス代表の期待を裏切る訳にはいかない。

 

「こういうときは何か結社の陰謀(イベント)が起こるはずだ……」

 

今までも作戦会議に向かうと手動扉に入れ替えられた自動ドア(ただの勘違いです)に激突してしまったり、

大事な戦いの最中に急いで乗り換えた宇宙戦闘機が、練習用に替えられて(ただの乗り間違えです)いたり、

結社の妨害によって散々な痛い目にあって来た。

 

結社の陰謀は巧みで証拠を残さない。間違えなく(思い込み)男女兼用のお手洗いに入ったはずなのに、

個室で力んでいると女性に扉を開けられた挙げ句、悲鳴を上げられて痴漢や変態扱いされた。

何とか警官(エージェント)に捕まることなく逃げ延びることができたが、アレは危機一髪だった。

 

「そう。油断は禁物だ。

 結社にかかれば、空から女の子(隕石)が落ちてくる可能性さえある――」

 

そう思って空を見上げると、ひらひらと一枚の布切れ(ランジェリー)が降ってきて顔にかかってくる。

何かと思って手に取り、握った布切れを見つめる……。

 

「え……?」

 

親方、空からギャルのパンティーが!!

いや、アダルティな色気の漂うデザインだから所有者はギャルではないかもしれないが、

とにかく……ありがとう龍神様(シェンロン)

 

(男の子の夢を)成し遂げたぜ╭( ・ㅂ・)و

 

変態、それを返しなさい( `д´⊂彡☆))Д゜)!!! スパーン

 

 

――気が付けば街中で気の強そうな女に殴られていた。

 

「この変態、私の下着を盗んでフリマアプリ(メロカリ)で売ろうとしたわね」

 

世界恐慌の不景気でドクツでは“宇宙の闇市”(ブルセラショップ)と呼ばれるフリマアプリが流行していた。

 

「お、俺はナニもヤってないゾ」

 

「ウソおっしゃい! さっきまで手に握っていたコレは何よっ!!」

 

「あ、アレは空から降ってきて」

 

「漫画じゃああるまいし、下着が空から降ってくるわけないでしょ!!

 他の盗んだ下着は何処にやったのよ。ほら、罪を見つめてキリキリ吐きなさい」

 

「…………」

 

「黙秘する気ね。通勤途中に私の身体をいやらしく弄って来た痴漢も貴方でしょ?」

 

「くっ、ころせ……」

 

このままでは下着泥棒だけでなく痴漢の冤罪で捕まってしまう。

迷わず逃亡しようと思ったが……ぐっと堪える。

 

結社の罠に嵌り痴漢冤罪の容疑をかけられた遺産協会の仲間(変態紳士)が、

逃げようとパニックになってTENSEI社の大型トラックに轢き殺されたのだ。

 

冷静に対処するんだ。be cool and cool so cool……

母国語ではない言葉を唱えて頭を切り替えて落ち着きを取り戻す。

 

「そ、そうだ。弁護士を、冤罪(ネット)に強い弁護士を呼んでくれ」

 

疑われたらその場で戦うしかない。覚悟を決めて弁護士を呼ぶように主張する。

 

「弁護士を雇うお金なんかあるの? あなたって無職の下着泥棒でしょ? それに童貞よね?」

 

「ど、どど、無職じゃ、ありません!

 政府公認の芸能事務所(政党団体)に務めるプロデューサー(職業選挙参謀)です!」

 

入社初日にちゃんとした名刺を用意してくれていたヘス代表に感謝しながら、

女性に俺の名前が書かれた6923プロの名刺を手渡す。

 

「……6923プロ所属のプロデューサーのハンス・ウルリッヒ・シュペーアね」

 

名刺を受け取った女性は情報を名刺管理アプリに取り込み抜かりなく確認している。

 

「どうやら偽物ではないみたいね。

 芸能事務所のプロデューサーが、平日の昼間っから働きもせずにぶらぶらと何してるのよ?」

 

「あ、貴女こそ平日の昼間なのに……無職ですか? ニートですか?」

 

(言ってやった、言ってやった)

 

「は?(威圧) 私は大手デパートの宝飾売り場に勤めてるの。

 貴方が遊んでる休日に働いてるわけ、いい? わかった?」

 

「あ、はい」

 

「痴漢はともかく本当に下着を盗んでいないか、しっかりと確認させてもらうわ。

 未だ警察には突き出さないから、私を事務所まで連れて行きなさい」

 

「そ、それは……」

 

まだアイドル候補生をスカウトしてないのに、

情けない理由で事務所に戻ってヘス代表に迷惑をかける訳にはいかない。

 

「言い訳無用っ! ほら、シャキシャキと歩きなさい!!」

 

 

女性に引き連れられ大通りを逆走していると、急に女性が足を止める。

彼女を目線を追うと一人の少女が目に留まる。

 

地味な服装に、地味な髪型、加えてやぼたいメガネのとどめつき。

 

猫背で街頭に突っ立つ彼女が両手に掲げるスケッチブックには、

 

『ドクツに力を! 無所属 レーティア・アドルフ』

 

とだけ素っ気ない文字で書かれていた。

 

芸能事務所(政党団体)に所属しなくても総統選挙にアイドルとして立候補することはできる。

 

しかし選挙には政府に預ける供託金だけなく、様々な宣伝広告費(プロモーション費用)がかかる。

芸能事務所(政党団体)に所属していない地下アイドル(無所属候補者)が総統選挙を勝ち抜くのは難しいだろう――。

 

見た目も地味だし、さっきから立っているだけで、通り過ぎる人(有権者)

「よろしく」とか「お願いします」とか「応援して下さい」の一言もない。

 

総統選挙に向けてアイドル候補者たちのアピール合戦(街頭演説)は激化の一途を辿っている。

最近では地下アイドル(無所属候補者)が、過激なパフォーマンスを行って

公職選挙法違反で逮捕されたというニュースもあった。

 

大通りには彼女の他にも様々なアイドル候補生たちが選挙活動(アピール合戦)を行っていた。

アイドル候補生たちは積極的に有権者に声をかけて、握手をし、応援してくれるよう求める。

 

徒歩で街頭を回り通行人に握手を求める、有権者の一人ひとりに直接に支持を訴える方法は、

ドブ板選挙と呼ばれているが……名前を連呼する街宣カーと同様に古典的だが効果的な手法だ。

 

俺が物思いにふけながら職業柄もあり、アイドル候補者たちを観察し始めて10分は経っただろう。

 

「あなた、選挙に立候補してるのよね?

 立ってるだけじゃあ何をしたいのか全然わからないわ。

 ねえレーティア、私に話を聞かせてよ」

 

俺を無理やり引き摺って来た女性が、眼中から外していた地味な少女に声をかける。

ドブ板選挙や街宣カーでアイドル候補生が政策を訴えることはしない。

 

まずは支持者(ファン)を増やしてアイドルランク(選挙区)を上げることが先決だからだ。

 

アイドル候補者は、政策を歌詞に込めた楽曲を円盤(ディスク)で販売して支持者(ファン)を増やす。

アイドルランクに応じて演説できる場所(ライブ会場)も公職選挙法で決まっているのだ。

ランクさえ上がれば公開討論(オーディション)にも参加できるようになる。

総統選挙は長きに渡る盛大なお祭りなのだ。

 

今は有象無象の候補者(アイドル)たちが小選挙(E-Dランク)で乱立しているが、

中選挙→大選挙→と総統選挙が進むにつれて道はドンドンと細く狭くなっていく。

年に一度開催され、真のトップアイドル(ドクツ総統)を決める

総統選挙(アイドルアルティメット)に参加できるのは、選ばれた一握りの候補者(アイドル)だけだ。

 

地味な少女は必死に自らの政策を語る。それは完成された歌詞になっていない。

地下アイドルの彼女に楽曲を提供するプロデューサーもいないのだろう。

 

せっかく声をかけた女性も難解な専門用語が並べられた政策を飲み込むのに随分と苦労している。

おまけに地味な少女は口が悪い。ことある事にバカだバカだと言っている。

 

彼女は、自分が世界を変える大天才で、それを理解できない有権者(愚民)が悪いのだと言う。

俺は彼女の言葉を話半分に興味なさげに聞き流していた。

世の中には難解な専門用語(アウフヘーベン)で、有権者を煙に巻く三流アイドル候補者もいるのだ。

オジャルマル共和国のヒンデンブルク首相も答弁で周囲を煙に巻き、

忖度を必要とするハッキリとしない言葉を乱用してドクツ民の信頼を失っていた。

 

俺を下着泥棒扱いして冤罪(パンティ)をかぶせた頭の悪そうな女は、

それでもレーティアという少女の話を真剣に聞き、何とか内容を理解しようと努めていた。

 

「あの、今日はもう帰っていいですか?」

 

堪えきれなくなった俺は口を開く。

 

「貴方って本当にプロデューサー(職業選挙参謀)なの?」

 

女性が(¬_¬) ジト目でこちらを見つめてくる。

 

「こっちは名刺も渡して名前も事務所も連絡先も教えてるんだ。

 文句があるなら後日にして欲しいんだけど?」

 

「はああ……彼女の魅力が分からないなんて、アンタってホント童貞ね」

 

ど、どどどどーてーちゃうわΣ (゚Д゚;)

 

「わかったわ。……アンタじゃ話にならないってことが。

 後日6923プロダクションの代表と直接お話します。

 今日のことと私のことは、ちゃんと伝えておいて下さいね」

 

「ヘス代表は忙しい方です。

 名前さえ名乗らない女性のことをどうして――」

 

「悪かったわね。私の名前はグレシア・ゲッベルスよ。

 これが私の名刺よ。必ず代表に渡しなさい」

 

「……お金持ちのヘス代表に、

 大手デパートの販売員が宝飾品の営業(高額商品の訪問販売)でもするつもりですか?」

 

「違うわよっ! ヘス代表に伝えなさい。

 後日、世界を変える魔法少女(アルティメットアイドル)の卵、

 貴方のお眼鏡に適うアイドル候補生を連れていく――って」

 

そういうと話は終わったとばかりにゲッベルスは再びレーティアに向き直る。

 

「ごめんなさい、レーティア。

 私は頭のよくない女だから内容の半分も分からないけど、

 貴女の言葉に何一つ偽りがないのは分かるわ」

 

ゲッベルスはボソボソの髪、ボロボロの服、ボソボソと喋る少女に真剣な表情で向き合う。

有権者が一人のファンもいないであろう地下アイドル(無所属候補者)に休日の時間を使う。

世の中、奇特な人もいるもんだと思った。もう今日は家に帰って寝よう。

 

紹介したい候補者がいるという女性(ゲッベルス)に会ったとだけヘス代表に連絡して――

ゲッベルスの名刺を名刺管理アプリに取り込み、事務所に情報を送る。

簡単な連絡だけで直帰も許された。流石はホワイト企業だ。

 

「今日は疲れた。なんもかんも政治(結社)が悪い……」

 

それが後日に同僚となる「グレシア・ゲッベルス」と初めての出会いだった。

そしてゲッベルスが連れて来たアイドル候補者「レーティア・アドルフ」は、

約一年後に総統選挙(アイドルアルティメット)を制覇し、ドクツ総統となる。

 

 

この作品は“一人のアイドル”(レーティア・アドルフ)が、“二人のプロデューサー”(ゲッベルスとシュペーア)によって

ドクツ総統となるまでの奇跡の物語(シンデレラストーリー)――。




オリ主の性格が二次創作元のR-18版『えろかみ大帝国』(勝ち組)の
エロ主(伏見空)よりクズっぽい気がする……。

童貞弄りや童貞ネタがあるのは原作ゲーム「大帝国」の
「さては童貞だな?」をリスペクトしている為です。怒らないでね。

【高橋邦子】ベストアルバム【作業用BGM】


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第04話 芸能事務所ドクツ第三プロダクション

アイドル総統選挙はあくまでもアイドル活動です。
実際の選挙運動・政治活動とは一切関係ありません。

人間社会の風刺をパロディとして扱っているので、
現実社会でも聞いたことがあるような出来事があるかもしれません。


 

――――芸能事務所ドクツ第三プロダクション、応接室――――

 

芸能事務所(政党団体)はオジャルマル共和国の公職選挙法と風営法によって認められた公的私企業だ。

考古学趣味人の集まったサークルに過ぎない遺産協会-アーネンエルベ-とは全く違う。

 

芸能事務所に所属するプロデューサー(職業選挙参謀)ともなると半分くらいは公的な存在。

例えるならば民間企業だと言いながらも(放送利権や電波利権を独占して)公的な権力を背景に(公権力にしがみつき)お金を徴収する

なんか変な感じ(NHK)官報複合体特殊法人(KSRACK)の職員に近い存在だろう。

 

下着泥棒の疑いをかけられたシュペーアがゲッベルスに名刺を差し出したように、

ちゃんとした社会的な地位(ステータス)のある立場なのだ。

 

芸能事務所ドクツ第三プロダクションの[事業内容]は以下の通りである。

 

[1]アイドル候補者のプロデュース、マネージメント及び育成業務

[2]アイドル候補者が総統選挙で出演する公開討論(オーディション)演説会(ライブ)党大会(コンサート)など

   各種メディアにおける企画、制作及びキャスティング業務

[3]アイドル候補者の肖像、署名、愛称、音声を

   物品・サービスに付加使用する権利の管理及び運用

[4]総統選挙に付帯する一切の業務

 

アイドル候補者は芸能事務所(政党団体)に所属せずとも総統選挙に立候補することも可能だ。

しかし無所属のアイドル候補者は地下アイドル、泡沫アイドルと呼ばれ、

やる気のない売名(ちんけな)行為だと有権者からは思われている。

 

ドクツ第三プロダクション、通称「6923プロ」は

代表ヘルマン・ヘスの豊富な資金力をバックに

世界を変える魔法少女(アイドル候補者)を大々的に売り出そうとしていた。

 

応接室では総統選挙に立候補させるアイドル候補者の面接が行われていた。

 

「おはよう、君がゲッベルス君だね。話はシュペーア君から聞いている。

 何でも世界を変える魔法少女(魔女の卵)を我が社に推薦してくれるそうじゃないか」

 

「ヘス代表、お時間を設けて下さってありがとうございます。

 この子が私の推薦するアイドル候補者です」

 

 (さあ、レーティア、ちゃんと教えた通りに挨拶するのよ)

 

「はじめまして、私がレーティア・アドルフだ」

 

言葉遣いはともかく、しっかりした気持ちのこもった声でアドルフはヘスに挨拶をする。

アドルフは自らの才能に絶対の自信を持っていた。

自分は政党に採用されるのではなく、自分が政党を選ぶ立場なのだと思っている。

今までも何度か芸能事務所(政党団体)の面接を受けたこともあったが全てお祈りされた。

履歴書(プロフィール)と、少年週刊誌ほどの厚さに圧縮した政策課題(アジェンダ)を送っても相手にされなかった。

 

「ふむ。アドルフ君だね。魔法少女(アイドル)になる素質を秘めた良い瞳をしている」

 

「私はアイドルなんかに興味はない! ドクツの総統になって世界を変えたいだけだ」

 

「アドルフ君は、権力(ちから)そのものに憧れているのかい?」

 

「違う。私はドクツの運命(さだめ)を変えたいだけだ」

 

「このオジャルマル共和国の?」

 

「ベルサイユ条約で戦勝国に名付けられたオジャルマルなんて恥ずかしい国名はうんざりだ!

 私が総統になったらドクツに帝政時代の栄光を再び取り戻してみせる」

 

「なるほど。差し詰め、来るべき理想の国家(第三帝国)と言ったところかな?」

 

「名前までは考えてなかった。

 けど、このままだとドクツは世界恐慌の不景気(ワルプルギスの夜)に飲み込まれてしまう」

 

「君は世界恐慌の不景気(ワルプルギスの夜)を何とかするつもりかい?

 それがどれだけ大変なことか分かっているのかい?」

 

「分かっている。凡人には困難かもしれないが、大天才の私には可能なことだ」

 

「たしかに君に秘められた才能(ちから)を表現するのに大天才など控えめな部類だ。

 君には途方もない魔法少女(アイドル)才能(ちから)がある」

 

「アイドルとしての才能なんてどうだっていい。

 戦勝国として驕り高ぶってドクツから富を搾取する奴らを、

 エイリスの腐敗貴族たちを、ガメリカの死の商人(軍産複合体)たちを

 欧州星海域(ヨーロッパ)から消し去りたい。いや全ての宇宙から、この手で」

 

「おやおや世界恐慌の不景気(ワルプルギスの夜)だけではなく、

 アドルフ君は“もっと巨大な敵”(ワイルドハントの獣たち)を相手にするつもりなんだね」

 

「前大戦を戦ってきたドクツ民を、大戦の先に希望を信じたドクツ民を、

 私は泣かせたくない。みんなに笑顔でいてほしい。

 それを邪魔する奴らなんて、壊してみせる、世界を変えてみせる」

 

「それが君の祈り、君の願いかい?」

 

「そうだ。これが私の祈り、私の願いだ」

 

「たしかに、君なら運命(原作)を変えられる。

 避けようのない滅びも、嘆き(NTR)も、全て君が覆せばいい」

 

「……私に力を貸してくれるのか?」

 

「ああ、もちろさ。君が世界の変革を望むのなら、

 6923プロは総力を挙げて君を必ずドクツ総統(アイドル総統)にしよう。

 ただし魔法少女(アイドル候補者)としての契約を結んでもらうけどね」

 

「もちろんだ。ドクツを、みんなを救うことができるなら、

 アイドル候補者にだって、何にだってなる。何でもしてみせる」

 

「「ん? 今なんでもするって言ったよね?」」

 

なぜかヘス代表とゲッベルスの返しがハモる。

 

「ごほんっ、レーティア、分かってるの?

 魔法少女(世界を変えるアイドル)になったら、もう普通の女の子の生活には戻れないわよ?」

 

「ゲッベルス、ありがとう。私、魔法少女(アイドル候補者)になるよ」

 

「私の立場で急かすわけにはいかない。助言するのも(強引な勧誘も)ルール(風営法)違反だ。

 総統選挙はもう始まっている。私としては、早ければ早い程いいんだが……

 今日、我が6923プロと契約しても構わないんだね?」

 

「ああ、私に力を貸して欲しい」

 

「ヘス代表、お約束通りアイドル候補者(レーティア)と一緒に私も御社で雇って頂けますか?」

 

「勿論だ。君たちは二人は今日から我が6923プロの一員となる。

 アドルフ君はアイドル候補者(魔女の卵)として、

 ゲッベルス君には彼女の専属マネージャーを任せようと考えているのだが、どうかね?」

 

「レーティアのプロデュース(選挙活動)は誰が担当するんですか?」

 

「我が6923プロのプロデューサー(職業選挙参謀)は君も知っているシュペーア君だが?」

 

「ヘス代表、そのことですが――」

 

ゲッベルスは彼女がレーティアと出会った経緯を説明する。

埋もれた原石の輝きに気付くことができなかったお馬鹿な節穴(シューペア)に、

最高級の希少宝石(レッド・ダイヤモンド)の研磨を任せる訳にはいかないと思ったからだ。

 

レーティア・アドルフは只の宝石(ダイヤモンド)ではない。

ダイヤモンドは様々な色彩を帯びるという特徴がある。

 

希少性の順にクリア、ブルー、グリーン、ブラック、ピンク、オレンジ、パープル、レッド……。

つまり通常の宝石店に飾れている透明なダイヤは、ダイヤとしてはそれほど希少なものではない。

 

ダイヤモンドは原石の研磨、加工の仕方によって価値がいくらでも変わる。

宝飾店で働いているゲッベルスはそのことをよく分かっていた。

 

ヘス代表が節穴で未熟な童貞プロデューサー(職業選挙参謀)最高級の希少宝石(レッド・ダイヤモンド)を任せるなら、

ゲッベルスはレーティアを説得して他の芸能事務所(政党団体)を探すつもりでいた。

 

「ふむ、ゲッベルス君の言いたいことは分かった。シューペア君を呼ぼう」

 

 

――――芸能事務所ドクツ第三プロダクション、事務室――――

 

6923プロは本当にホワイト企業だ。

情報端末(パソコン)事務処理用(デスクトップ)持ち運び用(ノート)携帯端末(スマフォ)と一人三台支給される。

与えられた情報端末(デスクトップ)も安物ビジネス・モデルではなく

ゲーミングPCとしても使えるクリエーターPCだ。

軍用版のVR弾幕系シューティング(東洋Project)も楽々起動するもんだからついついと熱中してしまった。

 

月間ランキングの一位がいつの間にか

ハプスブルクレディとか言う新参に抜かれていたから、抜きかえてしておいた。

聞いたこともない名前のエースパイロット(ルナシューター)だが何者なのだろうか。

いつも上位に食い込んでいたゲーリングの名は、

国防軍で出世して忙しいのだろう。トップ10からは消えていた。

 

従業員の少ない6923プロは受信業務を受付代行会社に委託(アウトソーシング)しており、

嫌がらせの悪戯電話や意味不明なクレーム電話と言ったものを相手にする必要もない。

ヘス代表は見た目だけではなく噂通りのホワイトな人物だ。

しかも軍で働いていたとき(臨時公務員と言う名の使い捨て)より給与も高いし福利厚生も充実している。

お金に困っているわけではなかったが、拾って貰えたことに感謝する日々だ。

 

今は頭の悪そうな女(ゲッベルス)が連れて来たアイドル候補生の面接中だ。

頭の悪そうな女は、見た目や身体つきは好みだが、何せ第一印象(出会い)が悪い。

俺のことを下着泥棒や痴漢などと冤罪を擦り付け、おまけに童貞扱い。

確かに彼女いない歴=年齢の男だけどな!!

最後の戦い(ハルマゲドン)に備えて純潔(秘められた力)を守っていて悪いのかよッッ!!

我が家の家系は代々の聖女教(カトリック)清純派(ピューリタン)だ。

昨夜は腹いせに彼女のパンティ(アダルティ)を思い出して自家発電してやった。

 

(ヤってやった、ヤってやった)

 

「それにしても……アイドル候補者は何処で見つけて来たんだ?」

 

ゲッベルスが連れて来たアイドル候補者は、

応接室に案内する際にチラッと見ただけだが中々に可愛かった。

 

着て来た服はそれほど派手ではない自然な装いだったが、

それが逆に素材の魅力を引き立てていた。

 

アイドル候補者としてメイクアップさせて、

フリフリの衣装を着せれば、より一層映えるだろう。

 

俺も日々のスカウトの傍らで様々なアイドル候補者を見て来たが有象無象とは訳が違う。

大手の芸能事務所(政党団体)が総統選挙に向けて密かに用意していた隠し玉だと言われても驚かない。

 

ゲッベルスは宝飾店売り場に勤めているはずだが……贔屓客の一人かもしれない。

大手デパートの宝飾店ともなれば利用客は美人でお金持ちのお嬢様が多いような気もする(妄想)

 

それともゲッベルスも以前からプロデューサー(職業選挙参謀)を目指していたのだろうか?

たしかにプロデューサーは男女問わず誰もが一度は憧れるであろう子供に人気の職業(おおきいおともだちに大人気)だ。

 

そういえば出会ったときも、みすぼらしい地下アイドル(無所属アイドル候補者)の演説を飽きもせず聞いていた。

あの時は物好きな有権者がいるものだと思ったもんだが、

見向きもされない(マイナージャンルの)地下アイドル(ネット小説)泡沫アイドル(二次創作)たちを発掘(スコップ)していたのかもしれない。

 

ヘス代表が魔法少女(アイドル候補者)に求める要求(クオリティ)は大手と比較してもかなり高い。

出来たばかりの芸能事務所にも係わらず、ヘス代表は本気で総統選挙を勝ちに行っている。

 

今までヘス代表のお眼鏡に適う魔法少女(アイドル候補者)を見つけてくることはできなかった。

頭の悪そうな女が連れて来たアイドル候補者が採用されるとしたら複雑な気分だ。

 

「ま、ゲッベルスに出会ったのは俺だから、実質的には俺が見つけた(わしが育てた)ようなもんか」

 

心の友マルクスも著書で「俺のモノ(手柄)は俺のモノ、お前(他人)モノ(手柄)も俺のモノ」だと言っていた。

いつまでも心に残る良い台詞だと思う。原典-蘭子語の詩集-は難解で読めないが、

翻訳本『ジャイアニズム宣言』が大ベストセラーとなり世界中に思想が広まるのも当然だろう。

ジャイアニズム(個人所有)を否定する共有主義など持っての他だ。

 

それにアイドル候補者に罪はない。担当するアイドルになる可能性が高いのだ。

変な先入観を持つのは失礼だろう。キラキラとした輝き放つ天才肌(キュート)タイプのようだった。

個人的には一歩下がってPを立てるような清純淫乱派の大和撫子(ランスシリーズのリズナちゃんとか)がマイベストだが

……問題はない。大丈夫だ。

 

前世の知識(アカシックレコード)の中にあるアイドル育成に関する幾多のノウハウ(アイドル育成SLGの知識)があれば、

ボーカル、ダンス、ビジュアル、パッション、クール、キュート……

どんなアイドルでも対応が可能だ。

 

トゥットゥルー♪ トゥットゥルー♪

 

内線のコール音が鳴る。代表室からだ。急いで通信を開く。

 

「はい、ヘス代表。シューペアです。お呼びでしょうか?」

 




・えろかみ大帝国 勝ち組 小説投稿サイト暁 笠福京世 R-18
 エロ×架空戦記 原作沿い この三次創作の作品の元ネタ

・えろかみ大帝国 負け組 ハーメルン のぶほし 健全なR-15
 パロティ×アイドル×オカルト×社会風刺 原作崩壊 スピンオフ作品


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第05話 淫子物理学、そんなオカルトありえません!

 

――――芸能事務所ドクツ第三プロダクション、代表室――――

 

「失礼します。ハンス・ウルリッヒ・シュペーア、参りました」

 

「おお、よく来てくれたシュペーア君。

 紹介しよう、今日から一緒に働くことになったグレシア・ゲッベルス君だ」

 

頭の悪そうな女(ゲッベルス)魔法少女の卵(トップアイドル候補)を推薦するだけではなく

自分の転職活動(キャリアアップ)も狙っていたらしい。何とも抜け目のない女だ。

 

ということは推薦したアイドル候補者も採用が決まったのだろう。

 

「そして新たな魔法少女(アイドル候補者)として契約することになったレーティア・アドルフ君だ。

 とは言っても三人とも既に面識があると思うがね」

 

「……え?」

 

頭の悪そうな女(ゲッベルス)は、ともかく魔法少女(アイドル候補者)とは面識がないぞ。

こんなに可愛い女の子と出会っていたら忘れるはずなんて無いじゃないか。

 

「はああ、貴方って本当にプロデューサー(職業選挙参謀)失格ね。やっぱり童貞だわ」

 

この女、また童貞とか言いやがって!! 作品が違えば幕間で犯されるぞ。(R-18版えろかみ大帝国もヨロシクね)

 

「やれやれ、こうなるとゲッベルス君の諫言は受け入れるしかないね」

 

「ヘス代表、何のことですか?」

 

「ふん、私は覚えているぞ。

 先日、大通りでゲッベルスに出会ったとき、後ろにいた愚民だな?」

 

「ゲッベルスと一緒にいた……?」

 

「ホントに覚えてないの?(呆れ)

 あのとき『ドクツに力を! 無所属 レーティア・アドルフ』

 ってスケッチブックを掲げてた女の子よ」

 

「えっ? あのボロボサの服装と髪型の、やぼったい眼鏡の地下アイドル?」

 

ついつい二、三度、アイドル候補者をガン見してしまう。

確かに身長と髪の色、瞳の色は同じだ。それでも記憶の中の彼女と一致しないし信じられない。

 

「ボサボサの髪は、ちゃんと洗って、トリートメントして、ブラッシングしたら

 ……想像してた通りの天使の輝きを取り戻したわ」

 

「服装ですって? そんな取り替えのきくものなんて見るべきところではないわ。

 よく見なさい、レーティアの白くて綺麗な肌を。

 みずみずしくて、ぷにぷにで、どんなステージ衣装だって似合うに決まってるわ」

 

「貴方はボソボソと喋る彼女の言葉を、声を、真剣に聞こうとはしなかった。

 私には分かったわ。内に秘めた真摯な想いを歌詞に変えれば多くの人を惹きつける。

 それに甘さを備えた声は、歌を歌わせれば、みんなを和ませることができるって――」

 

反論の機会も与えず矢継ぎ早に繰り出せれる言葉のボディーブローに俺は耐えるしかない。

 

「女の子は魔法の力-メイクアップ-で化けるのよ。

 本質が見抜けないプロデューサーに最高の原石(才能)を磨くことができるのかしら?」

 

「まあまあ、ゲッベルス君。そのくらいにしておきたまえ。

 シュペーア君は何か反論はあるかね?」

 

「いえ、ありません。……彼女の言う通りです」

 

惨めな俺にヘル代表が救いの手を差し伸べてくれたが、すべて彼女の言う通りだ。

レーティア・アドルフの件に関しては自らが節穴だったと認めざる得ない。

苦し紛れの下手な言い訳は己の評価を更に下げることになるだろう――。

 

「ふむ、それではこうしよう。

 アドルフ君の育成業務は専属マネージャーのゲッベルス君が担当する。

 シューペア君は音楽プロデューサーとしてゲッベルス君を助けてやってくれたまえ」

 

「「えっ? こいつと一緒にですか?」」

 

シューペアとゲッベルス、二人の男女の台詞がハモる。

 

「私はアドルフ君が書いた政策課題(アジェンダ)を読んだが、

 政治、経済、軍事、発明と多岐にわたる政策課題(アジェンダ)が書かれていた。

 不満があるみたいだが、ゲッベルス君だけでは彼女の考えを歌詞(マニフェスト)にして、

 楽曲(公約)を作るのは難しいんじゃないかね?」

 

「そ、それは……」

 

「シューペア君は新米で今は未熟だが政策担当者(プロデューサー)としての力量は本物だ。

 専門の軍事だけではなく、政治、経済な感覚(センス)も優れている。

 きっとゲッベルス君の足りないところ助けてくれると思うがね」

 

「わかりました。ヘス代表がそう仰るなら異存はありません」

 

「アドルフ君も、シューペア君もそれでいいかね?」

 

「私は構わない。アイドルや総統選挙のことは何一つ分からないんだ。

 アイドル候補者としての私の才能を評価し、信じてくれた芸能事務所(政党団体)を信頼する」

 

「ヘル代表、汚名返上の機会を与えて下さってありがとうございます。

 専属マネージャーのゲッベルスと協力して、必ず彼女をトップアイドル(アイドル総統)にしてみせます」

 

「よし、ゲッベルス君は専属マネージャーとして

 アドルフ君の側につき、人付き合いや機微の利かぬ彼女を助けてあげなさい」

 

「はい」

 

「シューペア君はアドルフ君が真のトップアイドル(世界を変える魔法少女)となれるよう

 時に厳しく、時に優しく、指導してくれたまえ」

 

「はい!」

 

「アドルフ君、君は並ぶ者のない天才かもしれないが、この業界では素人だ。

 ゲッベルス君もシューペア君もそれぞれの分野で専門家(ファッハマン)だ。指示には従うように」

 

「わかった」

 

「それじゃあ、契約を始めよう♪」

 

 

ヘルマン・ヘスが大袈裟なポーズでパッチと指を鳴らすと部屋の景色が見る見ると変わっていく。

 

――願いごとを(Kommentare, )なんでもひとつ叶えてあげる(Anfragen für Arbeiten werden angenommen.)――

 

――願いごとは(Anfragen, )なんだってかまわない(werden innerhalb des Budgetbereichs ausgeführt.)――

 

ヘス代表がドイツ語の呪文を唱えていくと、

空間に古代ルーン文字が浮かび上がり代表室を包み込む。

 

――戦いの運命を受け入れるなら(Zumindest ist der Eindruck motiviert, )――どんな奇跡だって起こしてあげられる(die Arbeit fortzusetzen.)―――

 

応接室が御伽噺に描かれた奇妙な異世界のような異彩を放つ空間へと変貌を遂げ始める。

俺と同様にゲッベルスもアドルフも唖然と周囲を見渡している。

 

――願いから産まれるのが魔法少女(Diese Arbeit ist Fankunst.)――魔女は呪いから産まれた存在(Es existiert aufgrund des wunderschönen Originals.)――

 

色鮮やかな異空間に、かわいい感じの生き物から、怖いと感じる生き物まで、

見たことも無い様々な生き物たちが法則性の理解できない不思議な躍りを踊っている。

 

―――だから僕と契約して、魔法少女になってよ(Bitte lesen Sie mit einem großzügigen Herzen)―――

 

 

「これが“白い淫獣”とも呼ばれる私の固有結界(Magisches Geheimnis)

 【契約の絶対遵守―ギアスオブイヌカレー―(何でもするって言ったよね)】だ。

 この平行世界で結ばれた契約は必ず遵守される。

 もし契約を途中で破棄した場合、対象は世界規則から破棄され消滅する(エタる)

 

白い肌の淫獣が大きな赤い瞳を輝かせながら楽し気に説明する。

 

「ば、ばかな。幻覚だ。こんなことはありえない……」

 

合理主義者(デジタル打ち)のアドルフがありえない事象(オカルト)を必死に否定しようと呟く。

 

敏腕P(アイドルマスター)と呼ばれる超一流プロデューサーを目指すなら、

 シューペア君とゲッベルス君は覚えておくと良い。

 一流と二流の差は“想い”の強さだ。

 そして一流と超一流を隔てる壁が固有結界(Magisches Geheimnis)だ」

 

こんなことは……相対性理論(むずい)量子力学(ちょーむずい)統一宇宙理論(万物の理論)では説明できない。なんだこれは!」

 

ついにアドルフがありえない事象(パロディ時空)を否定しようと叫ぶ。

 

統一宇宙理論(現実世界の物理法則)では説明できない現象(ご都合主義)を理解するには、淫子について知る必要がある(だいたいこいつのせい)

 

「淫子……まさか日本人宇宙物理学者の氷川久兵衛(きゅうべい)が提唱した幻の素粒子……

 あんなふざけた理論(トンデモ)はオカルトだと思ってた。……インQベーター粒子は実在するのか?」

 

「私は久兵衛(きゅうべい)の理論は知らないが、

 この世界にはエントロピー(シリアス成分)の増大による宇宙の熱的死(パロディ世界の崩壊)を回避すべく

 働く力が間違いなく存在する。その力の源を私は淫子と呼ぶ」

 

「たしかに聞いたことがある……

 生身で宇宙を飛来し巡洋艦を沈めた東洋の忍者(明石大佐)

 素手で駆逐艦を沈めた中帝国の格闘家(マスターアジア)

 刀一本で宇宙怪獣を切り伏せた東洋の侍(タイガージョー)

 触れた他人の心を読む悟り(帝ちゃん)。異性を虜にする不思議な魅力の持ち主(原作主人公)

 レーザー兵器をバリアで防いだ超能力者(真希ちゃん)

 裸一貫、銛一本で宇宙魚類を退治した王様(ギガマグロ)

 真空の宇宙空間をひらひらと漂う幽霊(ミクロリータ)

 約束された勝利の剣(エクスカリバー)で宇宙要塞を落とした女王騎士(セイバー)

 ……前世界大戦で広まった噂は戯言だと思っていた」

 

「東洋では神力、道力、仙力、超能力などと呼ばれる力だ。

 私は汎用性のない個人に依存する力であることから固有結界(Magisches Geheimnis)と呼んでいる」

 

「すごい! 証明できればローベル賞ものの大発見だ!

 利用できれば世界の軍事科学技術が一変するぞ!! 

 ワープコード(悪魔の実)の発見による大航海時代(ワンピース)の始まりを最初とするなら、

 宇宙産業革命に次ぐ第三の技術革命だ!」

 

「なるほど。さしずめ淫子(インQベーター)革命、IT革命と言ったところかね?」

 

「いいネーミングだ! 世界恐慌の不景気(ワルプルギスの夜)を倒す武器(ちから)になる!」

 

さすが世界を変える素質を持つ魔法少女だけあってアドルフは平然としているが、

無言の俺とゲッベルスは先ほどから精神が摩耗し限界が近い。

SAN値(正気度)がドンドン削られてまともに頭を働かせることができない。

この契約の絶対遵守(ギアスオブイヌカレー)の空間に居続ければ、常人は発狂するだろう。

 

「ヘス代表、早く契約を」

 

「そ、そうね。私も早く契約を結びたいわ」

 

この日、俺とゲッベルスは契約書の中身をまともに確認もせず

6923プロの白い悪魔(ヘルマン・ヘス)と契約を結ぶ。

 

 

この業界に、クーリングオフの制度はない。

対価として己の存在の消滅(アカウントロック)を懸けた絶対遵守の契約。皆が一連托生の共犯者となった。

 

 

この日、俺はアイドル業界の闇を初めて垣間見た――。



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第一章 総統選挙 小選挙区
第06話 はじめてのレッスン


アイドル活動の第一歩はレッスンから


 

――――6923プロ会議室 はじめての会議、第01週――――

 

「トップアイドル」(A級アイドル候補者)

 

それは総統選挙(アイドルアルティメット)に参加する資格を持つトップアイドル候補者のこと。

 

「アイドルマスター」(アイドル総統)

 

それは総統選挙(アイドルアルティメット)を勝ち抜いた一人に与えられる最高のアイドル(世界を変える魔法少女)の証。

 

公職選挙法の区分によると無所属の地下アイドル、泡沫アイドルはEランク候補者に該当する。

芸能事務所(政党団体)に所属したアイドル候補者はD級ランク候補者としてデビューする。

小選挙区(Cランク)を勝ち抜いた者がCランク候補者(アイドル)として次の選挙区(ステージ)へと進む。

 

Cランク候補者たちが集う、中選挙区(Bランク)を勝ち抜けば、全国区のBランク候補者となる。

そして選ばれたB級アイドル候補者たちが集うのが、大選挙区の舞台(決戦のバトルフィールド)だ。

大選挙区(Aランク)を勝ち抜いて、ようやく総統選挙(アイドルアルティメット)参加(ノミネート)資格を得ることができる。

「トップアイドル」(A級ランク候補者)になるための道のりでさえ容易ではないのだ。

 

そんな魑魅魍魎(サバイバル)芸能界(せいじのせかい)を生き抜き頂点(総統)を目指すには、

候補者(アイドル)を支える芸能事務所(政党団体)裏方(スタッフ)たちの団結が何よりも大切である――

 

はずなのだが……orz

 

「この童貞! ちーがーうーでーしょー!」 (((((;`Д´)≡⊃)`Д)、;'.・

 

同僚となった馬鹿女(ゲッベルス)から朝一で暴行を受ける。

巨乳バストだけじゃなくって、いいパンチも持ってるじゃねえか。

見た目だけは美女で同僚のマネージャーだから寛大な俺が許してやってるけど……。

 

もしも三流候補者(アイドル)だったら、政策秘書に訴えられて傷害容疑で書類送検されるぞ。

分かってるのだろうか。ついでに童貞が禿げだったら流行語(ポリコレ)にもノミネートされるかもしれない。

 

候補者(アイドル)の不祥事は世間(マスゴミ)の恰好の餌なのだから――。

 

通常営業(ドブ板選挙)+レッスンと、街頭演説(ステージ)の割合が1対1。

 芸能事務所(政党団体)のD級アイドル候補者としては普通のスケジューリングだと思うだが?」

 

「わかってないわね! それは平均型(ノーマル)のアイドル候補者の場合でしょ?」

 

候補者(アイドル)には有権者(ファン)から求められるVo,Da,Viの三つの重大な要素がある。

ボーカル(Vocal)は「政策課題(アジェンダ)選挙公約(マニフェスト)」のことで、これは歌詞(理念)を曲にして歌うことで表現する。

ダンス(Dance)は「行動力や実行力」のことで、候補者(アイドル)としての手腕や器量が様々な踊り(ダンス)で試される。

ビジュアル(Visual)は「人柄や外見」のことで、候補者(アイドル)の内外の魅力そのものを示す。

 

アイドルとは言っても、殆どの候補者はVo,Da,Viを満遍なく身に着け|平均型。

つまり「無個性」「特徴がない」「メインヒロイン(笑)」と呼ばれる普通の女の子(ノーマル)だ。

 

「ということは、レーティアは一極集中型(スペシャル)なのか?」

 

一極集中型(スペシャル)は、一点突破型(マスター)とも呼ばれ

Vo,Da,Viのいずれかに突出した才能を持っているアイドルのことだ。

最も有名なのが“Visual Master”イタリン共和帝国のムッチーニ・ベニスだろう。

 

彼女はアイドルとしては政策能力(Vocal)も実行力(Dance)も凡庸だ。

しかし魅力(Visual)だけの一点突破でイタリン総帥の座を手中に収めようとしていた。

まさしくファンシズムの申し子と言える魔法少女(アイドル)と言えるだろう。

 

「貴方って本当に童貞(節穴)プロデューサー(職業選挙参謀)ね。

 彼女の特性(タイプ)平均型(ノーマル)でも一極集中型(スペシャル)でもないわ」

 

ゲッベルスが(¬_¬) ジト目でこちらを見つめてくる。

 

「なんだよ、じゃあ二極集中型(エクストラ)とでも言うのか?」

 

二極集中型(エクストラ)は、二つの得意分野(スペシャル)を備えた一億人に一人の才能を持つアイドル。

 

「どうなのかしら? ただ私の女の勘(ゴースト)が囁くの。

 この娘(レーティア)は、とびっきりの希少宝石の原石(レッド・ダイヤモンド)だってね!」

 

「女の勘って何だよっ!? 所詮は山勘だろ?」

 

「だから、それを確認する為にレーティアには、

 これから二週に渡って私が朝から晩まで付き添って、みっちりとレッスンを受けて貰うわ。

 貴方は第三週までに1stリリース(デビュー)曲が選択できるよう準備しておきなさい」

 

「スケジューリングではデビュー計画の発動は第六週ってところか?」

 

「そうよ。小選挙区(Cランク)最終投票日(ファイナルジャッジ)が第12週。私たちが出遅れているのは認めるわ。

 レーティアの才能なら余裕だとは思うけど、私たちが目指してるのは“頂点”(トップ)なのよ」

 

「そうだな。第40週の総統選挙(アイドルアルティメット)の最終選考日までに

 レーティアをトップアイドル(A級アイドル候補者)にする必要がある」

 

「とりあえず楽曲ができるまではレッスンが先決よ。レッスンスタジオも確保したわ。

 それまでは通常営業(プロモーション)街頭演説(ステージ)は無しよ。

 レッスンは私が担当するから、貴方は政策課題(アジェンダ)を読み解いて作曲に専念しなさい」

 

普通の候補者(ノーマルアイドル)は、曲が無くても選挙ポスター撮影(グラビア撮影)などで、

地道に知名度を上げていくもんなんだけど……この馬鹿女は選挙戦略(プロデュース)の定跡が分かっていない。

ヘス代表からはゲッベルスに協力するように言われてるから従うが、

後で俺に泣きついてきても知らんぞ! その時はしっかり謝罪と賠償を要求するつもりだ。

 

 

 

――――レッスンスタジオ はじめてのレッスン、第02週――――

 

「これは驚きだな……」

 

初レッスンということでシュペーアは年も近い新米(ルーキー)トレーナーを手配したのだが、

レーティアの才能を高く評価するゲッベルスは、ヘス代表に頼んでトレーナーを変更していた。

 

「はじめまして、私が貴女をレッスンさせてもらいます、担当(ノーマル)トレーナーです!

 そんなに緊張しないでね。体も心もストレッチすることが大切よ。

 まずは声を出して、軽く動いてみましょうか♪」

 

明るく挨拶をして来た四姉妹の三女だという若いトレーナーが、

最初のボイスレッスン、ポーズレッスンを終えると、

自分には手に負えないと言い出して次女を呼び出した。

 

見た目からすると20代半ばくらいだろうか……

しかし業界では既にベテランと呼ばれている次女が、

アドルフのダンスレッスンを見ながら驚きの声を上げる。

 

彼女(アドルフ)二極集中型(エクストラ)……いや、究極万能型(アルティメット)だと思う」

 

ベテラントレーナーが自信なさげに答える。

究極万能型(アルティメット)は、Vo,Da,Viの全てが突出した候補者(アイドル)で、

万能型(レジェンド)を超える平均型(ノーマル)の最終進化系と言われている。

 

5億人、いや10億人に一人と言われる才能だ。

業界で最高峰に位置する長女(マスター)から聞いてはいたが、次女(ベテラン)は今まで実在を疑っていた。

しかし規格外の才能(バケモノ)を目の前に、彼女の常識は粉々に打ち砕かれていた。

 

「ヘス代表から、とびっきりのアイドル候補者(世界を変える魔法少女)だと言われてはいたが……まさかこれほどとは」

 

「凄いわ……レーティア……貴女ってホント凄いわ!」

 

「はああ~~、まだ続けるのか? なんで政策課題(アジェンダ)を有権者に伝えるだけなのに……

 中身の精査じゃなくって、外見ばかり気にして……人間って面倒くさいなぁ」

 

「ふむ。アドルフ君、たしかに政策の中身(伝えたいこと)も大切だが、人という生き物は『伝え方が9割』だ」

 

Bランクのアイドルが行うレッスンを軽々こなしながら悪態をつくアドルフに、

ベテラントレーナーが苦言を呈す。

ヘス代表との約束もあってか、アドルフも専門家の意見には聞く耳も持つようになっていた。

 

「多くの有権者に政策の中身を精査する知識も時間も無いんだ。

 だからこそ皆がオピニオンリーダーと呼ばれる専門家や評論家の言葉を信頼するんだ。

 最近ではインフルエンサーと呼ばれる影響力を持ったカリスマの力も大きいな」

 

「自分(天才)を基準に考えては駄目だってことか」

 

「そうよ、レーティア! だからこそドイツ民は総統選挙(アイドルアルティメット)を求めているの。

 貴方の伝えたい、理念を歌詞にし、意志を声と踊りにこめて、想いの全てを楽曲で表現するの」

 

「君の願いと祈りを、有権者(ファンシスト)に届ける手助け(サポート)をする。

 それがアイドルを育てるトレーナーの役割だ。信頼してくれないか?」

 

「わかった。次は何をすればいい?」

 

「アドルフ君は、Vocal(政策能力)とDance(実行力)は既に高水準で備えている。

 今どきの候補者(アイドル)は、政策(Vocal)なんかは最も苦手とするモノなのだが……」

 

「そうなのか? アイドル候補者として大事なことだと思うが?」

 

「ファンシズムは何よりもVisual(見た目)重視だからな。今の流行はVisualだ。

 そこがアドルフ君の課題だ。極論で言えば『人は見た目が9割』だ」

 

「反論したい気持ちも強いが、イタリン民(子豚ども)がそれを証明しているか……」

 

「安心しろドクツの有権者(ファンシスト)は、

 空前の巨乳ブームで浮かれるイタリン民の豚どもほど愚かじゃない。

 総統選挙には百花繚乱のアイドル候補者たちが参加しているのが何よりの証拠だ」

 

「それでも政策(Vocal)実行力(Dance)が評価されず、

 見た目や人柄(Visual)だけでドクツの総統が選ばれてしまう可能性だってある」

 

「レーティア、貴方は違うでしょ? 貴方がドクツ総統(アイドルマスター)になれば何一つ問題はないの」

 

ダンケ(ありがとう)、ゲッベルス。そうだな、その為に私は魔法少女(アイドル)になったんだ」

 

「よし、それでは表現力レッスンを中心にレッスン計画を組み立てよう。

 デビュー曲が決まれば演技力レッスンも取り入れていくつもりだ。

 三女には荷が重い。彼女の担当トレーナーには私がなろう。

 専属マネージャーさんも、それで構わないかな?」

 

「ええ、お願いします。ヘス代表にも伝えておきます」

 

「こちらこそ、よろしく頼む。これほどの才能の塊(魔女の卵)を担当できるとはトレーナー冥利に尽きる。

 ふふふ、イタリン共和帝国に招かれている姉上が後で知ったら羨ましがるだろうな」

 

「もう、姉さんったら勝手に決めて! 後で怒られても私はフォローしませんからね」

 




政治用語(大帝国設定)と芸能用語(アイマス設定)が混在する際は、
ルビが多いですが極力減らすように努力します。


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第07話 ベルリンフィルの職匠歌人

 

――――6923プロ会議室 1stリリース曲の選択、第03週――――

 

楽曲の選定は政策参謀とも言われる音楽プロデューサーの大切な仕事の一つだ。

 

曲作りを専門とする音楽プロデューサー(選挙コンサルタント)もいるが、

アイドルの曲は、所属事務所(政党団体)の党の思想(政策理念)を元に作られるのが一般的だ。

 

アイドル候補者も所属事務所(政党団体)を選ぶ際は経営方針(党の思想)が、

自らが望む理想のトップアイドル像に近いかどうかを参考にする。

とは言っても大手芸能事務所の力は個人の理想など捻じ曲げてしまうほどに強いが……。

 

ゲッペルスが6923プロを選択したのも、

経営方針が、レーティアの政策課題(アジェンダ)と親和性が高いと判断したからだろう。

 

レーティアの政策課題「世界改変によるドクツ民の救済」を実現するには、

アイドル総統には独裁的な権限が必要になる。それが「アイドル至上主義」だ。

 

また世界恐慌の不景気(ワルプルギスの夜)を退治する財源の確保に、

ヘス代表の掲げる財政再建策「反無課金主義」は相性が良い。

 

「反共有主義」と「魔法少女による世界革命」については追々説明するとしよう。

 

国防省で航空参謀を目指していた俺は軍事政策(ドクトリン)については五月蠅い。

レーティアの掲げる軍事政策はドクツのお家芸ともいえる「電撃戦」(ブリッツクリーク)だ。

 

ヴェルサイユ条約によって軍備が制限されたオジャルマル共和国の国防軍は、

量的制約を補い、質的改善を進めるためには機動力が何より重要であると考えた。

この機動力重視の軍事教義(ドクトリン)こそが「電撃戦」なのだ。

 

お陰で空軍や海軍は陸軍派の国防軍に予算の大半が削られてしまい

前大戦のエースパイロット(ルナシュータ―)の俺でさえ失業(予備役)というありさまだ。

 

共和国では宇宙空母の研究開発予算がおりず、新鋭艦建造は不可能だと言われている。

 

デビュー曲は自らの得意分野で勝負したいと思うのはプロデューサーの性だろう。

そこで幾つか用意した1stリリース曲の中で一番のオススメは、

軍事政策を得意とする俺が作詞した『恋の電撃戦~ブリッツクリーク~』だった――

 

はずなのだが……orz

 

「この童貞(ハゲ)! だ―かーら、ちーがーうーでーしょー!」

 

ヽ( ゚∀゚)ノ┌┛)`Д゚)・;'シューペア

 

ついに馬鹿女(ゲッペルス)が手だけではなく足まで出しやがった。

ハイヒールにストッキング、這いつくばった角度から見える滑らかな脚線美。

いけない何かに目覚めてしまいそうだ。

いい胸元だけじゃなくって、いい太腿も持ってるじゃねえか。

あっ、もう少しで下着も……。

 

「早く起き上がりなさい、この変態がっ!」

 

ゲッペルス○(#゚Д゚)=(  #)≡○)Д`)・∴'.

 

この作品は“健全”だからって遠慮なしに殴りやがって(#゚Д゚) ムカムカ

政治的(著作権)な配慮もそうだけど、性的(R-15)な配慮ももっとしろよ。(ロック)されても知らんぞ。

 

 

俺がその気になれば二次創作者(R-18版えろかみ大帝国)にお願いして幕間(エロシーン)送りにできるんだぞ(できません)ヽ(`Д´#)ノ

 

あー、早くゲッペルスの幕間を書いてくれないかな(要望)

 

「作詞家が候補者(アイドル)のことを考えずに自己満足(オナニー)で曲を作ってどうするのよ!」

 

「す、すいません……けど歌詞はちゃんとアイドルの政策課題から選んで……」

 

そうだゾ!本気で自慰行為(オナニー)にするなら『恋する急降下爆撃機~ユンカース~』とかにするゾ!!

 

「あのね。今の流行はビジュアルなのよ? どうしてボーカル(政策)を押し出したの。

 しかも軍事政策(ドクトリン)なんて一般の有権者が興味を持たない

 マニアックでマイナーなジャンル曲を持ち出してくるわけ?」

 

「ぐっ……」

 

確かに日常生活に直結する景気対策などの経済政策(ポップミュージック)に比べて、軍事政策(パンクロック)有権者(ファン)の受けが悪い。

デビュー曲からドクトリンを歌ったパンクロックなどを全面に押し出してしまったら

色物アイドル候補者のレッテルが芸能記者(パパラッチ)によって貼られてしまう可能性もある。

 

「そういう意味では“ドクツ民の団結”をテーマにした(カントリーミュージックの)『READY!!』は悪くないわ。

 けど、これもビジュアルやダンスがボーカル(政策)に寄り過ぎてるのよね」

 

「だって音楽プロデューサーが歌詞に政策を込めるのは当たり前だろ?

 レーティアは既に自らしっかり考え(政策)を持っているんだ。

 プロダクション(政党団体)アイドル(候補者)政策を押し付ける(踏み絵をさせる)ケースも多いけど、

 レーティアの場合は、6923プロの経営方針(党の思想)との相性も良い。

 楽曲のジャンル(重要政策課題)は置いといてもボーカル(政策)重視で売り出すのも悪くはないんじゃないか?」

 

「あー、もうアナタって頭でっかちね。専門家(ファッハマン)って柔軟な発想(のーみそこねこね)ができないのかしら?」

 

「じゃあゲッペルスはどんなデビュー曲が希望なんだよ」

 

「ボーカル(政策)なんてどーでもいいの。第一に重要なのはビジュアル(見た目)よ!

 レーティアは小選挙区を勝ち抜くだけが目的じゃないの、目指すのはアイドル総統(アイドルマスター)よ。

 デビュー曲で有権者(ファン)に、この候補者(アイドル)総統選挙(アイドルアルティメット)の舞台に相応しい存在(アイドル)だって

 デビューの瞬間にティンっていう直観を感じてもらえることが何よりも大切なの!」

 

「楽曲に足りないのはビジュアルの要素、表現力か……」

 

「そうよ。アナタの楽曲には

 レーティアの持つ情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ……

 そして何よりも衝撃(インパクト)が足りないのよ!!」

 

「そんな……」 _| ̄|○ il||li

 

「……ふむ、どうかね二人とも。

 ここは一つ外部の音楽プロデューサーに作詞と作曲を依頼するというのは?」

 

「外部の音楽プロデューサー(選挙コンサルタント)ですか?」

 

「そうだ。シューペア君の独り善がりも問題だが、

 ゲッペルス君も少々アドルフ君に肩入れしすぎていて客観的な意見とは言えない。

 ここは第三者の視点からアドルフ君の魅力を引き出して貰うのも手だと思うがね?」

 

「……なるほど。でも楽曲制作を依頼できるような音楽プロデューサーに伝手があるんですか?」

 

「アイドルを贔屓しているマネージャーの私が言っては何ですが、

 レーティアの魅力を引き出すのは、そんじょそこらの作曲家では荷が重いと思います」

 

「実はね。担当(ベテラン)トレーナー君から芸術発明家のVTVN氏を紹介されているんだ」

 

「えっ? ベルリンフィルの職匠歌人(マイスタージンガー)って呼ばれてるあの?」

 

「子供でも知ってる古典音楽(クラシック)超有名作曲家(音楽プロデューサー)じゃない!」

 

「そうだ。彼はドクツ最高の天才と言われている人物だ。

 それに『天才を知る者は天才である』という言葉もある。

 アドルフ君の才能を量り、魅力を引き出す役目には最適だと思うが、どうかね?」

 

「しかしVTVN氏は総統選挙やポップアイドルに興味はなさそうですが?」

 

「そうね。かの高名な(クラシック)芸術家(アーティスト)がアイドルソングを作ったなんて聞いたこともないわ。

 デビューもしてないアイドル候補者に楽曲を提供してくれるなんてありえるのかしら?」

 

「業界でベテランと呼ばれてる次女トレーナー君が紹介してくれたんだ。

 何か考えがあってのことだろう。ダメ元でお願いしてみようじゃないか」

 

「「ヘス代表がそう仰られるなら――私たちに異存はありません」」

 

 

――――翌日、6923プロ会議室――――

 

「おはよう、諸君。さっそくVTVN氏から返答があった。

 報酬は契約金としてローベル賞の賞金と同額をスペースユーロによる前払いで要求。

 作曲を引き受けるかどうかは候補者(アイドル)と直に会って決めるそうだ」

 

「オジャルマルクが暴落中だからって、さすがにそれは……」

 

「そうね。いくら巨匠(マエストロ)と言っても過大な要求よ。馬鹿にしてるのかしら?」

 

「たしかに無茶な要求かもしれん。しかしVTVN氏にも言い分がある。

 今まで数多くの芸能事務所(政党団体)から作曲の依頼を受けたらしいが、

 お眼鏡に敵う適うアイドル候補者は一人もいなかったそうだ。

 VTVN氏は多忙な芸術発明家いわゆるマルチクリエーターだ。

 これ以上、クリエイティブでない仕事に煩わされたくないそうだ」

 

「そうなると問題はレーティアがVTVN氏に気に入られるかどうかか……」

 

「レーティアなら大丈夫よ! 問題はないわ」

 

「アドルフ君の才能ならVTVN氏と独占契約を結ぶことも可能だろう。

 我々にはアドルフ君を世界を変える魔法少女《アイドルマスター》にする義務がある。

 最高のカードが目の前にあるんだ。是非とも手中に入れたい」

 

「ヘス総統、契約金の方は大丈夫なんですか?」

 

「そのことだが、シューペア君にお願いがある。

 契約金の用意は問題ないが、今後の演説会(ライブ)党大会(コンサート)を考えると資金繰りにも不安がある。

 そこで資金を集める為に握手会(パーティー)を開こうと思うのだが」

 

「支援者に握手券(パーティー券)の購入を勧めてくれば宜しいんですね」

 

「アドルフ君は大事な金の卵(魔女の卵)だ。我が社としても安売りするつもりはない。

 握手券(パーティー券)風営法(ギリギリのライン)に注意しながらも高額で販売してくれたまえ。

 握手会(パーティー)の名称は『アドルフ君を励ます会』なんかで良いだろう」

 

「わかりました」

 

「あと外国人が券を購入することに禁止規定はないが、

 6923プロは総統選挙に対する他国からの干渉を良しとしていない。

 握手会(パーティー)を隠れ蓑にした献金(おふせ)集めも問題になっている。注意して欲しい」

 

「はいっ!」

 

「ゲッペルス君は、アドルフ君を連れてVTVN氏に会ってきて欲しい。

 契約金はすぐにスペースユーロを現金で準備をしよう」

 

「私でよろしいのですか?」

 

「アドルフ君の専属マネージャーは君だ。

 失敗を恐れず自信を持ってアイドル候補者を支えて欲しい。

 勿論、任せた私も事務所の全力でバックアップする。

 安心してくれたまえ」

 

「ありがとうございます。ヘス代表」

 



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第08話 選挙区のアイドル候補者たち

いよいよレーティア以外のアイドル候補者たちも登場。
本作における日本帝国は、現実の日本と一切関係ありません。
他の諸国もエロゲーの大帝国に登場する架空の宇宙国家です。


 

――――外国特派員協会――――

 

総統選挙(アイドルアルティメット)のアイドル候補者を擁立する芸能事務所(政党団体)に外資が入ることは禁止されていない。

エイリス帝国、ガメリカ共和国の超大国を始め各国がドクツの利権を貪ろうと、

自らの利に繋がる芸能事務所(政党団体)を表から裏から様々な形で支援していた。

 

それどころか外国籍のアイドル候補者の活動も公的に認められている。

オジャルマル国会では野党の女性党首に戸籍謄本を提出しろとか、

勘違いが多発した二重国籍問題が発生騒ぎになったが、そんなの関係ない。

 

ぶっちゃけエロゲー世界だからって法律がガバガバじゃないかと思うかもしれないが、

世界大戦の敗戦国であるドクツは、屈辱的なベルサイユ条約を受け入れて

オジャルマル共和国として再起したとは言え戦勝国から属国(植民地)同然の扱いを受けていた。

 

有権者であるドクツ国民もそのこと事態は理解しており国中に無気力が蔓延していた。

選ぶのはドクツ国民なのだから有能な人物であれば外国籍でも問題ないと発言する識者もいる。

 

長く続く政治不信により「政治なんて誰がやっても一緒」という意識が蔓延していたイタリンで、

美少女ムッチリーニが「誰がやっても一緒なら見た目が可愛い方がいいんじゃね?」

という国民の票を集め、最大政党のトップに登りつめたのがファンシズム運動の始まりだ。

 

先の見えないオジャルマル共和国にファンシズムの機運が高まっているのは当然と言えるだろう。

 

「アイドル候補者になってこいとか言われなくって良かった……」

 

愛国朝毎新聞の記者「栗田アスパラ」が、

小選挙区に立候補する芸能事務所所属のアイドル候補者達の会見を終えてため息を漏らす。

 

芸能(政治)記者という肩書は偽りで、彼女は日本帝国海軍所属の諜報員つまり軍人だ。

今や各国の諜報機関が特派員という形で軍人を派遣し、総統選挙の成り行きを調査している。

 

イタリン人ハーフで語学に長けた栗田アスパラは海軍士官学校を卒業後は軍令部に勤務し、

将来は情報参謀として期待され諜報畑を歩むエリートだ。

同僚の「山口ギャモン」とペアを組んで諜報活動を行ているが、

彼は日本帝国の駐在武官(芸能顧問)として大使館に詰めており頼りにならない。

 

満州事変以降、日本帝国と交戦状態になる中帝国は欧州星海域(ヨーロッパ)でのイメージアップの為に

“悦び組”というアイドルユニットを送り込んで反日運動や歴史戦(ネガティブキャンペーン)を行っている。

 

調査したところ「金海海」(キム)「項天天」(ジョンイル)の二人の候補者(アイドル)中帝国(チュン)の軍属だった。

日本帝国でも南雲圭子をアイドル候補者として送り込む案が海軍長官から出たらしい。

しかし新たな帝と陸軍長官に勅任された山下利古里が、

軍上層部の無理強い(セクハラとパワハラ)に嫌悪感を示し御前会議で流れたと聞いた。

 

「予算の無い国防省も、軍人をアイドルとして立候補させるって話らしいし……

 予備役の失業者だけじゃなくって現役ドクツ軍人も大変よね。ご愁傷様」

 

現役ドクツ軍人はドラフト会議(オークション)で各芸能事務所に振り分けられた。

お陰で国防省は仲介手数料を手に入れてホクホクだ。

軍属アイドル候補者がメジャーリーグと呼ばれる大選挙区まで行けば、

国防軍には多額の移籍金が手に入るのだ。

お陰でオジャルマルの国防相は人身売買に関与してると陰口を叩かれてる。

軍人たちも中選挙区でプロのアイドル候補者として活躍すれば出世も可能だ。

 

予備役軍人はリトルリーグの小選挙区を突破すれば国防軍の目に留まる可能性がある。

だから泣く泣く借金をして供託金を用意し地下アイドルとなった予備役軍人も多くいる。

 

「ハロー、ミス・アスパラ。今日も良い天気だね?」

 

如何にもといった感じの陽気なガメリカ人記者が声をかけてくる。

 

「はーい、ミスター・スプルアンス。相変わらず楽しそうね?」

 

「もちろんさ! 朝から素敵な君に出会えたからね。

 極東のローカル新聞社なんか辞めて、いつでもガメリカに来てくれれば良いのに」

 

栗田アスパラは誘いをかけてくるガメリカ人記者「スプルアンス」の正体が、

ガメリカの統合軍本部-ペンタゴン-の諜報員であること知っている。

相手もこちらが只の民間人記者だとは思っていないだろう。

 

「おいおい。彼女の手腕は新聞メディア大国エイリスにこそ相応しい」

 

「あら? コンパス卿、今日はどうしてこちらに?」

 

「いや、“赤い女帝”(ナポレオン)と呼ばれるロシアン系三人娘の公開収録(ライブイベント)が気になってな」

 

外国特派員協会は会員制の記者クラブ施設だが、

館内には主要会見で使用する記者室の他にも各種イベント施設が併設されている。

 

「流石は、コンパス卿。見た目と同じで、まだまだ若いですね! ハハハッ」

 

20代前半のスプルアンスがオヤジくさい笑い声をあげる。

エイリス貴族の「コンパス」卿は前大戦では北アフリカを守り続けていた提督だ。

四騎士の一人である騎士提督モントゴメリーとも旧知の仲で年齢もそろそろ40になると聞いた。

 

「金髪の正統派美少女のピロシキちゃん、銀髪のミステリアス美少女のボルシチちゃん、

 一押しは淫乱ピンクのキャビアちゃん、それぞれに個性があって、とてもイイ!!」

 

エイリス帝国の貴族提督(変態紳士)は総統選挙の視察の名目で外遊中のはずだが、

本来の目的など忘れたかのように選挙(グッズ)に多額のお金をつぎこんでいる。

 

日本帝国の議員・政治家が海外視察という名で行ている

税金を使った外遊そのものを見ている様な気分で栗田は少し憂鬱になる。

 

補足しておくが「ピロシキ」「ボルシチ」の外見的な印象はともかく

「キャビア」が淫乱ピンクなのは、あくまでコンパス卿の妄想の産物に過ぎない。

 

「しかしコンパス卿、“赤い女帝”はその名の通り、裏は真っ赤(ソビエト)だと聞きましたわ?」

 

「ヘイ! ミス・アスパラ、それは本当かい?

 女帝ナポレオンの名前を使っているからオフランスの資本かと思っていたよ!」

 

ソビエトの掲げる共有主義を警戒するガメリカ軍人が話に食いついてくる。

 

「ええ。1126(良い風呂)プロには真っ赤なお金が流れ込んでるとか?」

 

「ふむ。1126プロのカザフスタンPもやり手だと聞く、エイリス本国にも伝えておこう」

 

猫平首相が国会で「欧州情勢は複雑怪奇」と言ったことがあるが、

華やかな総統選挙の裏側では、各国の思惑が絡んだ熾烈な諜報戦が行われていた。

 

光り輝く舞台の裏側、芸能界の闇は深い――。

 

 

――――とある独立交易輸送艦の通信――――

 

あからさまに怪しげな輸送艦が星域間を航行する。

 

「毎度おおきに、誠実と友愛がモットーのブルーペット商会どす」

 

商売人(あきんど)から“いつもニコニコ這い寄る混沌商人”と恐れられる

商会長「ブルーペット」は国籍および正体不明の宇宙商人だ。

 

「――どこの国でも、お金さえ出してくれたら大歓迎。

 なんでも売りますさかい、よろしくどす。

 ええ、そうどす。うちは平和を愛する中立どすえ」

 

勿論、中立という平和を保障するのは完全武装の商船団だ。

 

新鋭輸送艦のスペースデプリは輸送艦とは名ばかりで、

防護巡洋艦として十分に通用する武装とバリア機能を備えいる。

 

国際政治と同じく宇宙空間における非武装中立など夢物語に過ぎない。

 

通信先は総統選挙で賑わうオジャルマル共和国。

けして日本帝国ではないことを念のため明記しておく。

 

「――え? 人身売買? いやでんなー。人聞きの悪い。

 あくまで労働者派遣法に基づいた人材サービスどすえ。

 移民反対とか外国籍とか入国がどうとか言うてもうても

 今なら外国人技能実習生という形で受け入れれば大丈夫ですやん」

 

ブルーペット商会は独自の交易路(秘匿ワープコード)を持っており、

闇のイージス艦から傭兵提督まで、物でも人でも何でも扱っている。

 

商売人(あきんど)のスローガンは「ゆりかごから墓場まで」だ。

 

商売人だけではなくハゲタカたちと呼ばれる金融投資家たちが、

巨利を得ようと旬のアイドル選挙ビジネスに群がるのは当然だろう。

 

ブルーペットもアイドルをプロダクションに斡旋しようと交渉を続ける。

売れ残った在庫を、弱小芸能事務所にバーゲンセールだ。

 

「1116(良い色)プロダクションはんは候補者が不足してるんでっしゃろ?

 今なら二人はすぐに手配できまっせ」

 

「――ひっひっひっ、えらいおおきに。

 ほんなら明日まで二人送りますわ。

 名前はヴィスベルとアルプスって言いますねん」

 

ブルーペット商会は送り出し機関と呼ばれる団体の一つだ。

先進国で働いて技能を身に着けながら稼げると言って途上国から若者たちを集める。

大きな期待を胸に抱きやってきた実習生はすぐに過酷な労働環境に直面する。

最低賃金以下の報酬に、技能など身に着くはずがない長時間の単純労働。

一部では宇宙の奴隷市場と呼ばれ、実習生を借金漬けにして、闇市に売り払うという噂さえある。

 

「ほな、さいならー」

 

売れなかったアイドル候補者は、総統選挙が終われば見向きもされないだろう。

資金不足の芸能事務所が技能実習生制度を利用して外国人アイドルを受け入れていた。

先進国のアイドル業界で身に着けた半端な知識や技能など、後進国で役に立つはずもない。

 

「何言ってはるんや?

 うちはただ必要とする国に、必要な人を売ってるだけやで」

 

そう。芸能界の闇は深い――。

 

 

――――とある芸能事務所――――

 

とある帝国の資金によって設立された芸能プロダクションの事務所にある地下室。

そこにはドクツ人のハンナ・ケッテンクラートが閉じ込められていた。

 

「はぅぅ……」(まさか、こんなことになるなんて)

 

彼女「ケッテンクラート」は飛行学校を首席で卒業するほど優秀な学生だった。

しかし士官学校入学時に奨学金詐欺にあい、

緑色の肌をした商人と白い淫獣を介した契約を結んだ。

 

「ハンナ、身体の調子はどうだ?」

 

「ぷ、プロデューサーさん……もう許して下さい」

 

そこに普段の生真面目でお堅い様子は見る影もない。

 

学生随一のエースパイロット(ルナシュータ―)として名を馳せる彼女は、

もはや一介のアイドル候補者に過ぎない。

そして絶対遵守の契約により、赤羽仁プロデューサーの指示に逆らうことができない。

 

「くくく、そんな甘えた気持ちで、

 アイドルとして通用するか心配だ。おいお前たち」

 

赤羽仁Pが部屋の外に呼びかけると、のっそりと男たちが入ってくる。

その誰の目にも、ハンナに対するまとわりつくような欲情が浮かび上がっていた。

 

「だ、誰!?」

 

「こいつらは、選りすぐりのドジっ子好きの支持者(ファン)達だ。

 騙されて候補者(アイドル)になるなんて笑えねえな。

 じゃあな! せいぜい支持者(ファン)には媚を売れよ!」

 

赤羽仁Pが笑い声をあげると続々と入室した男たちが、

ぞろぞろとハンナを囲むように歩みを進めていく。

 

「い、いやぁ……来ないで……いや、いやぁ―――ー!!」

 

「あいやー!」 「はにほー!」

 

アステカ帝国からやってきた緑色の埴輪(ハニー)達が一斉に騒ぎ始めた。

 

「なぁに少しだけ素直になってもらおうと思っているだけさ」

 

ズイっと圧迫感のある埴輪(ハニー)達が近寄ってくるが、

ハンナはフリフリのアイドル衣装の姿で柱に縛り付けられている。

匠の荒縄により巧みに縛り上げられた女体は身動き一つできずにいた。

 

「や、やだぁ……やめて……プロデューサーさぁぁん」

 

「ふんっ。これから視姦地獄(ポーズレッスン)を始める。

 さぁ、お前たち。まずはポーズを見てチェックするんだ。

 ねっとりと! ジロジロと! ネチッこくな!」

 

一人だけ赤色で目立つ埴輪(ハニー)赤羽仁(アカハニ)Pが指導(レッスン)を始める。

 

「じろじろー。じろじろじろじろー」

 

「素敵ー。ハンナちゃんって実は着やせするタイプ?」

 

「縛り上げられて……張り詰められた……おもち」

 

「い、いや……変なとこ見ないでぇ……」

 

(み、見られてる……こんなに……くやしい……!

 でも、心臓がドキドキしてきた……感じちゃう!)

 

ハンナがビクンビクンしていると視姦(見守)っていた赤羽仁(アカハニ)Pが声を上げる。

 

「よーし、眼鏡もってこい! かわいがり稽古(ビジュアルレッスン)だ」

 

「え、え、なに? なんなの? なんで眼鏡?」

 

「やったー。眼鏡だ眼鏡だー」

 

「ドジっ子眼鏡の誕生だー」

 

「髪型も眼鏡っ子に似合うのに変えようぜー」

 

「眼鏡っ子に叱られたり、罵られたりしたいねー」

 

芸能界のやみ、828(はにわ)プロは今日も平和だった――。

 

 




作中で名前が「」で囲まれたキャラは、
原作ゲームにグラフィック付きで登場するキャラです。

「栗田アスパラ」と「山口ギャモン」は日本帝国の汎用提督
「金海海」と「項天天」は中帝国の汎用提督
「スプルアンス」はガメリカの汎用提督
「コンパス」はエイリスの汎用提督
「ピロシキ」「ボルシチ」「キャビア」はソビエトの汎用提督

「ブルーペット」および「ヴィスベル」「アルプス」の傭兵提督は、
二次創作元の『えろかみ大帝国(R-18)』では登場しないのでこちらで。

できるだけR-18の方で活躍しないキャラを、
活躍させたいと思って設定と一緒に情報共有もしています。

ケッテンクラートは、ハンナの部分がオリジナルです。


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第09話 衝撃デビュー作戦プロジェクト・ニュンフェ

第一章「総統選挙編」のプロットが最後まで完成しました。

小選挙区が終わるまでが第一部。
中選挙区、大選挙区、総統選挙の起承転結の四部構成です。

今日から複数話は毎晩0時に予約投稿済みです。


 

――――ベルリンフィル VTVNの控室、第04週――――

 

「はじめまして、6923プロのグレシア・ゲッベルスです」

 

「は、はじめまして……

 私がレーティア・アドルフだ……です」

 

ゲッベルスはレーティアに「いつも通りで大丈夫だ」と事前に伝えていた。

相手が巨匠VTVNであろうとも、物怖じすることはないと考えていたのだ。

にもかかわらず、いつもと違って人前で緊張する少女の顔を訝しげに眺める。

 

ゲッベルスの視線に気づかないレーティアはVTVNの目を静かに見つめて、

しっかりと細い腕を伸ばし、気持ちの籠った言葉と共に握手を求める。

 

「私はVTVN先生の大ファンです。お会いできて光栄です。

 発明に関する先生の論文は中学生のとき全て目を通しました。

 発明と発見を愛するようになった私の原点です」

 

Σ(; ゚Д゚) レーティアが敬語を使うなんて初めて見たわ。

 

ゲッベルスが驚きの表情と素の言葉を思いっきり表に現す。

 

(私だって敬意を払うべき相手には、それなりの対応をするさ)

 

レーティアは内心で呟きながら、VTVNと握手と言葉を交わす。

 

「特に交響曲は宇宙空間での艦隊戦のBGMにピッタリだと思います。

 もし銀河を舞台に英雄たちが駆ける戯曲を私が書くなら

 音楽の中核は先生の交響曲になるでしょう」

 

「ふむ。私の歌劇(オペラ)作品を称賛する者は多いが、

 交響曲や指揮に関しては超モダンだと批評する者もいるがね」

 

「それは先生の天性の才を理解できぬ愚者の戯言です」

 

「うむ。今どきの候補者(アイドル)と聞いていたが、

 古典音楽(クラシック)にも精通している様で嬉しい」

 

候補者(アイドル)の私という存在に誤解があるようですが、

 流行曲(ポップス)よりも古典音楽(クラシック)の方が私は好きです」

 

「ふむ。では、一つ博識な君に質問しよう。

 私の歌劇(オペラ)作品と交響曲作品の違いは何だと思うかね?」

 

「元宮廷指揮者で“楽劇王”の別名でも知られる先生の歌劇は、

 ドクツ国民の抱くロマン、精神性に訴えかける作品だと思います。

 熱狂的に先生の歌劇を好むファン“ワグナリア”がいるのも納得ができます」

 

「……ふむ」

 

「比べて交響曲は、特定の国や星域に囚われてない作りのように私は感じます。

 私は無限旋律と呼ばれる先生独自のメロディの大作歌劇も好きですが、

 ドクツに囚われるず欧州星界域の全てに広がるような壮大な交響曲の方をより好みます」

 

「なるほど。失礼だが、君は本当にドクツ人かね?」

 

「生まれは今は無きハプスブルク帝国ですが、私の魂はドクツと共に」

 

「むう。私と同じハプスブルク帝国の生まれか」

 

「はい! 先生は音楽の都である惑星ウィーンで、

 聴衆や評論家との折り合いが悪化し苦労なされたと聞きました。

 私も幼い頃から先生の芸術に憧れて過ごしていました。

 そこで発明家としての一面も知って論文も読みました」

 

「芸術・発明、双方に精通した私のファンは珍しい。

 今の私は世間からドクツ人の音楽家であることを求められているが、

 未だに部外者、アウトサイダーとしての意識が消えていない。

 歌劇はドクツ人としての私の苦悩が生み出した作品だ」

 

「では、交響曲を生み出した先生はなに人ですか?」

 

「よい質問だ。あの交響曲を生み出した私はボヘミアンだ(Ich bin ein Böhme.)

 君が私の曲を望むなら、ドクツ人としてではなく、

 一人のボヘミアンとして作曲を引き受けるがどうかね?」

 

「VTVN氏、それはレーティアと独占契約を結んでくれるということでしょうか?」

 

トントン拍子に進む話に理解が追いつかず傍観していたゲッベルスが、

6923プロのマネージャーとしての職務を思い出して口を挟む。

 

「当然です。ヘス代表との約束は守りましょう。私は天才であります。

 他の天才を見抜けぬ、天才に意味など無いと思いませぬか」

 

「……天才ね。レーティアといい、私には無縁の世界よ。

 けど敵を作りやすい素の性格については天才の共通点なのかしら」

 

やれやれとゲッベルスが手を挙げるとレーティアが勇気を振り絞って声を出す。

 

「……先生、私を弟子にして欲しい!」

 

「歓迎しよう。レーティア君。私は君の師となり、教え子として導こう。

 いずれドクツは真の天才を迎えるであろう。

 天才とは表現によって人々に喜びを与える存在。

 それが天才の責務であり、また喜びであることを君はいずれ知るだろう」

 

レーティアが喜びの表情を露わにする。

 

(あー、すごくイイわ! 最高よ、レーティア! 盗撮できないのが残念だわ!!)

 

ジャッジャッジャッジャーン!!

 

VTVNは控室に置いてあったピアノで独奏する。

繊細な指使いから、落雷のように激しく音楽を刈り取る。

 

「私の時代は終わり、君の時代が来るのです。

 それまで私が君のそばで生きていられたらよいが!

 だが君は、私の光よ! 君はきっと生きてその日にめぐりあえるでしょう!」

 

ドクツ最高の天才との会合が、レーティアの情熱に連鎖爆発を起こす。

また、この日の出会いがレーティアの初期政策の中にあった

僅かな選民思想(大ドクツ主義)を見直すキッカケの一つになったと後にゲッベルスは語っている。

 

 

――――6923プロ会議室 作戦会議、第05週――――

 

おはよう。プロデューサーの一日は、

イメージ戦略の流行を知ることから始まる。では今日の最新流行――

 

ゲームが違うわよ! ( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン

 

総統選挙(アイドルアルティメット)は、一にビジュアル、二にビジュアル、三にビジュアル。

 確かに有権者が興味を持っている話題というのは存在するけど、あくまで目安よ。

 小選挙区や中選挙区の有権者にとって

 アイドルのボーカル(政策能力)やダンス(実行力)なんて飾りに過ぎないわ。

 偉ぶってる高尚な専門家とやらはそれが分かってないのよ!」

 

ゲッベルスが会議室の中央で大々的に宣言する。

 

「これがレーティアの衝撃デビュー作戦。

 妖精計画ことプロジェクト・ニュンフェの企画書よ!

 デビュー曲は歌詞(政策)を含めてVTVN氏が用意してくれるわ!!

 『妖精』(Die Feen)という歌劇(オペラ)を作曲したことのあるVTVN氏のお墨付きよ」

 

ド━━━━m9(゚∀゚)━━━━ン!!

 

「ふむ。我が6923プロは設立当初から

 世界を変える魔法少女(新人アイドル候補者)を大々的に売り出そうと努めて来た。

 資金の面もシューペア君がお陰で問題なくなった。ゲッベルス君の計画に異論はないよ」

 

はーい(,,゚Д゚)∩ゲッベルス先生質問です。

 

「なによ。プロジェクト・ニュンフェのネーミングに文句でもあるの?

 それとも作詞(政策)に関われないのが、政策担当プロデューサーとして不満?」

 

確かに妖精計画(プロジェクト・フェアリー)の名前は前世の知識(アカシックレコード)に引っ掛かる。

VTVN氏も作曲としての名声に比べ、政策に基づいた作詞家としての力量が未知数のは確かだ。

しかし、そこは問題ではない。問題はお前の企画書だ。この馬鹿女(ゲッベルス)ヽ(`Д´#)ノ

 

こいつは悪い意味で天才肌(キュート)というか感覚派(パッション)だ。自分の感性を言語化・数値化ができない。

妖精をニンフェとする素のネーミングセンスもアレだ。

日常で「勝負はネバーギブアップしてはいけない」とか言っちゃうタイプだ。

 

現役時代に天才と呼ばれたあるサッカー選手が監督になった際に自らのシュートを

「球がこうスッと来るだろ、そこをグゥーッと構えて腰をガッとする、

 あとはバァッといってガーンと蹴るんだ」

とか身振り手振りで選手に説明したらしいが……ゲッベルスは、その同類だろう。

 

妖精計画の企画書も数字や具体的なプランAの中身が全く書かれていない。

 

「ドカーンとデビューして、

 ワーッとなって、

 グッとなって、

 \(^o^)/バンザーイ」

 

この企画書が他の芸能事務所に流出しても妖精計画の全容を知るのは不可能だろう。

 

C級アイドルを目指すには、最低でも10万人の支持者(ファン)が目安だと言われている。

小選挙区(Cランク)の活動を通して投票最終日には30万人以上の有権者の支持を得ることが必要だ。

 

「1st曲のリリースが第6週から遅れて第8週になった。

 あのVTVN氏が制作するんだ。選曲に不安はない。

 問題は小選挙区の最終投票日が第12週にもかかわらず、

 未だにメディアへの露出を制限するって何を考えてるんだ?」

 

万に満たない支持者の数はカウントされておらず、

アイドル候補者レーティア・アドルフの知名度はストロングにZEROだ。

 

情報通の俺は毎日の多様な情報を欠かさずチェックしている。

オススメは総統選挙特集が大人気の欧州情勢の情報サイト『大海賊』(でらべっぴん)だ。

運営者はガメリカ人で第三者の視点から欧州の芸能界(ファンシズム)の動向を冷静に見守っている。

このサイトはViDaVoの総合評価に評判を加味したイメージレベルを業界に広めた。

 

【アイドルランクE~D(小選挙区を勝ち抜くのは不可能)】

 

Lv1 素人レベル

Lv2 半人前アイドル

Lv3 無名アイドル

 

【C級アイドル(中選挙区を勝ち抜くのは難しい)】

 

Lv4 一部で人気のアイドル

Lv5 気になるアイドル

Lv6 要注目アイドル

 

レーティア・アドルフのイメージレベルはポテンシャルはともかく

現状はLv3の<無名アイドル>と言ったところだろう。

 

いくら強力な候補者だからといって通常営業(プロモーション)街頭演説(ステージ)といった

選挙活動(プロパガンダ)も無しに支持者(ファン)を集めることは不可能だ。

レーティアは選挙ポスター(グラビア)撮影さえ行っていない。

 

「だから、ドカーンとデビューするって書いてあるじゃない?」

 

「具体的には? 小選挙区の公開討論会(エリアオーディション)の数は日程的に限られてくるぞ?」

 

アイドル候補者は選挙区(ランク)ごとの地域討論会(エリアオーディション)に参加するのが普通だ。

B級アイドル候補者になり、大選挙区の舞台(決戦のバトルフィールド)になってから、

ようやく全国規模の公開討論会(オーディション)に参加できるようになる。

 

「はあ……馬鹿じゃないの?

 ドカーンとデビューできる特別な公開討論会(スペシャルオーディション)なんて

 ワーッとなるような舞台(ステージ)は小選挙区には一つしかないじゃない」

 

特別討論会(スペシャルオーディション)とは<四大討論会-グランドスラム->とも呼ばれ、

数ある公開討論会(オーディション)の中でも格式の高い四つの特別な討論会を指す。

 

注目度は全国規模であり、勝者のファン増加数は他の討論会とは比べものにならない。

当然ながら難易度も高い。参加条件が厳しく、粒ぞろいの参加者が揃う中で合格枠は一つだけだ。

 

活動25週以上のBランク候補が最低参加条件の長寿番組「LONG TIME」は大選挙区。

全ての政策通ボーカリストが、一度は参加を夢みる「歌姫楽園」も大選挙区。 

オーディション不敗の候補者しか参加できない「TOP×TOP!」は中選挙区。残るは……。

 

「まさか“ルーキーズ”でデビューさせるつもりか?

 あれは全国規模で放送される党首討論会(ライバルオーディション)だぞ!」

 

小選挙期間に行われる新人アイドル限定オーディションの最高峰(全国区)が「ルーキーズ」だ。

党首討論会(ライバルオーディション)は、党首と呼ばれる政党団体(プロダクション)の代表候補者(アイドル)が、

直接対決する形式の公開討論会(オーディション)で、上手く勝てば数多くの相手ファンを引き抜ける。

しかし無様に負ければ候補者のみならず政党団体そのものが支持者を失う可能性がある。

芸能事務所(プロダクション)にとてはリスクの高い舞台(ギャンブルステージ)だ。初お披露目に選ぶのは普通ではない。

 

「そうよ。私たち6923プロ所属のアイドルはレーティア一人だけ、

 芸能事務所の代表アイドルつまり党首として何一つ問題はないわ。

 レーティアには中小の地域討論会(エリアオーディション)みたいな舞台(ステージ)は狭すぎるの。

 私はレーティアをスペシャルオーディションを中心に参加させるつもりでいるわ。

 プロジェクト・ニュンフェのプランAは、その序章に過ぎないの」

 

バ━━━━━ヽ( ゚Д゚)人(゚Д゚ )ノ━━━━━━ン

 

「ふむ。私もレーティア君なら四大討論会-グランドスラム-を制し、

 レジェンドの称号を得ることができると信じている」

 

グランドスラムの制覇を達成したアイドルはレジェンドと呼ばれ、

アイドルアルティメットが始まる前までトップアイドルとして最大級の称号だった。

 

候補者の特徴を表すアイドルタイプの分類一つ[万能型-レジェンド-]の語源だ。

 

これは四大討論会-グランドスラム-を制覇するには、

候補者に必要な三要素ViDaVo(魅力・手腕・政策)の全てがハイレベルである必要があるからだ。

一極集中型(スペシャル)二極集中型(エクストラ)候補者(アイドル)で、四大討論会(グランドスラム)を全て制した者は殆どいない。

 

例えばカリスマ一流芸能人として有名な男性アイドル

ビジュアル系ボーカリスト(エクストラの才能)のカクトでさえグランドスラム制覇は成し遂げていない。

 

「ヘス代表の言う通りよ。私はレーティアをレジェンドを超えるアイドル(究極万能型)だと信じている。

 常識的に考えたらダメなのよ。私たちが目指すのはアイドル総統(アイドルマスター)の地位一つよ。

 握手券(パーティー券)を一枚も売らずに政党資金を確保したアナタの手腕は認めるわ。

 けどそれは票読みや人員手配などの選挙ノウハウを商売道具としている選挙屋の範囲ね」

 

「選挙屋って言葉は気に言わらないが、プロの職業選挙参謀としては当然だろ?」

 

通常営業(ドブ板選挙)資金営業(プロモーション)選挙ポスター(グラビア)撮影、

 レッスンの方向性、オーディションの選択、リリース曲の選択……。

 どれもが平均型(ノーマル)を対象とした攻略Wikiサイトにあるような定跡ばかりよね。

 それって選挙におけるアイドル候補者の応援を趣味とする

 一般人のアマチュア選挙屋プロデューサーと何が違うのかしら?」

 

(@益@ .:;)ナンダト

 

「まあまあ、ゲッベルス君。シューペア君は業界に入って日の浅い新米Pだ。

 ゲッペル君もマネージャー兼任の見習いP。敏腕Pへの道のりは遠いよ」

 

ぐうの音も出ないが、ゲッベルスはいつも俺につかっかってくる。相性は最悪だ。

人格者のヘス代表が常に間を取り持ってくれるから事務所の雰囲気は悪くはないが……。

 

「6923プロの代表としてゲッベルス君のプロジェクト・ニンフェを承認しよう。

 新人アイドルのアドルフ君を党の代表候補者(世界を変える魔法少女)として大々的に売り出そうじゃないか。

 ゲッベルス君に限らず、シューペア君も思う通りの企画を立ち上げてくれて構わない。

 私が承認した企画は芸能事務所として責任を持って推し進めようじゃないか」

 




構想としては第一章のみだったのですが……。

アイドル総統となったレーティアによる、
世界恐慌の不景気「ワルプルギスの夜」との戦い。

原作ゲームにあったローベル賞三部門の受賞理由など
ドクツ第三帝国の誕生から第二次世界大戦の開戦前夜まで書いた
第二章「第三帝国編」のプロットも一万文字レベルであります。

ご迷惑かなと思ったのですが、
えろかみ大帝国(R-18)の笠福京世様からも大絶賛されて嬉しかったです。

今後も更新をガンバリマス。

VTVNは原作の元ネタ作曲家にプラス2名の作曲家ネタを加えています。
各オリキャラの設定は1キャラ3人くらいの元ネタを闇鍋にしています。


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第10話 ルーキーズ党首討論会

この話はTHE IDOLM@STER SPに登場する
ライバル961プロのプロジェクトフェアリーの
デビュー曲『オーバーマスター』を聞きながら書きました。

作中で同名の曲が登場しますが、
実際にレーティア・アドルフが歌った曲は当然別物です。


 

――――1103プロダクション 応接室、第08週――――

 

「あら、シューペアさん、御機嫌よう」

 

ひとみ芸能事務所(1103プロ)は個人経営の小さな芸能事務所だ。

正体不明のヴァーチャルプロデューサーの“電子の妖精”マリーPと

コンタクトの取れる数少ない芸能事務所の一つだ。

6923プロのヘス代表とは知り合いで相互に友好的な関係を築いている。

 

先日お世話になったばかりのシューペアは、

握手会(パーティー)に代わる選挙資金確保のお礼にレーティアの新曲を持参してきたのだ。

 

1103プロ総統選挙(アイドルアルティメット)には候補者(アイドル)を擁立していない。

 

「レイコが連れて来たアイドル候補者(魔法少女)も逸材でしたけど……はぁ」

 

夫のドクツ人バイオリニストと結婚したことで、

オジャルマル共和国の国籍を取得した日本帝国生まれの仁美・ミキ代表が、

完成したばかりのレーティアの1stリリース曲『オーバーマスター』を聞いてため息を漏らす。

 

魔法少女(アイドル)の仁美が寿引退後に芸能事務所を設立したのは、

お世話になった元プロデューサーのヘス代表の夢を叶える力になれるような

世界を変える魔法少女(ディアリースターズ)を見つけるためだった。

 

しかしヘス代表から“世界を変える魔法少女”(飛びっきりの魔女の卵)を見つけたと連絡があった。

 

P志望のレイコがスカウトしてきた魔法少女との奴隷(アイドル)契約は諦め、

この芸能界でも政治の世界(業界の闇)に関わらない場所で活動することを薦めた。

また総統選挙に興味を持つマリーPには、信頼できる他の芸能事務所の代表を紹介した。

もちろん経営者として金蔓の芸能事務所からの仲介手数料は弾んで貰ったのだが……。

マリーは気まぐれなヴァーチャルプロデューサーだが敏腕Pとしての手腕は本物だ。

魔法少女の才を持つ少女も総統選挙とは別の“きらめく舞台”で活躍できるだろう。

 

「それにしても凄いですわ。私も夫の関係で古典音楽(クラシック)には詳しい方ですが、

 事前に知らなければVTVN氏の作詞作曲だなんて全く分からないですわね」

 

6923プロの新米プロデューサーが持ってきた販売前の曲は、

ベルリンフィルの指揮者で古典音楽界の大御所であるVTVNが手掛けている。

 

発明芸術家(マルチクリエーター)のVTVNは、初の総統選挙に取り組む音楽プロデューサーとして、

アイドルソングに挑戦し、挑戦的な新曲(ポップス)を作り出していた。

 

6923プロはVTVNとの独占契約を公表しておらず、

この新曲も作詞作曲6923プロとだけ書かれて制作者は明らかにされていない。

 

基本的に新人アイドルのデビュー曲は政党団体(プロダクション)の所属のプロデューサーが作るので、

よほどのことがない限りは作詞作曲者を売りにすることはない。

 

「プロジェクトを手動しているマネージャーのゲッベルスによると、

 著名な音楽プロデューサーVTVN氏の名前を全面に出して販売したら、

 売れても候補者(アイドル)の存在が付属品(おまけ)になってしまうとのことでした」

 

「ええ。その者の言う通りだと思いますわ。

 プロデューサーはあくまでも、裏方でありアイドルの引き立て役ですもの」

 

仁美は元Pのヘス代表を命の恩人として慕っており、

シューペアから相談を受けた資金洗浄(マネーロンダリング)の手助けした。

 

シューペアは何故か多額の暗号仮想通貨EroCoinを入手しており、

それらを政治献金として、6923プロの政治資金にしたいと考えていたのだ。

 

出処は漏らせないそうだが、VTVN氏との契約に資金が必要だとは聞いた。

清廉潔白なヘス代表に迷惑をかけたくない気持ちは仁美も良く分かる。

 

量子通信による星域間ネット(ダーク・ウェブ)で生まれたの暗号仮想通貨EroCoinは、

仮想世界内で基軸通貨のスペースユーロ、スペースドルに代わる勢いで広まっている。

 

一流芸能人カクトも暗号通貨を絶賛し、新しい仮想通貨事業を始め宣伝しており、

欧米でも日本帝国に続いてEroCoinバブルが始まりつつあった。

庶民派の中には世界恐慌の不景気の中で汗水たらして安い賃金で働くより、

暗号通貨に投機(マイニング)した方がリターンが大きいと考えるものもおり、

実際にそれで利益を上げるものも増え始めていた。

 

ハイパーインフレで為替相場が乱高下している

オジャルマル共和国では政府が仮想通貨取引の税制強化や規制も検討していた。

 

芸能界(せいじのせかい)にはJKリフレの裏オプション(タックスヘイブン)のような方法で、

風営法の抜け穴をついた租税回避行為を続ける芸能事務所(政党団体)も少なからずある。

先日も芸能事務所シックスナイン(69プロ)の代表が風営法違反で逮捕された。

 

かといって綺麗ごとばかりで魑魅魍魎どもが蠢く芸能界では生きていけない。

清廉潔白なことから“白い騎士”(ホワイトナイト)と言われた辣腕営業マン(プロデューサー)のヘスは、

担当アイドルに枕営業(ハニートラップ)を強要するようなことはなかったが、

芸能界(せいじのせかい)において枕営業(ハニートラップ)による炎上商法(プロモーション)はありふれた出来事だ。

 

炎上を飯のタネにする芸能記者(パパラッチ)も業界には数多くいる。

 

シューペアの用意したEroCoinは、1103プロを通じて換金された。

 

知り合いのチュン帝国人の金満福耳(2933プロ代表)は黒い噂も絶えないが、

移籍業務(人身売買)資金洗浄(マネーロンダリング)といった代行(エージェント)業務で儲けていた。

話題のEroCoinにも大いに興味があったようで、話を持ち掛けたら案の定食いついて来た。

 

仁美も2933プロが、何処の事務所から現金(ナマモノ)を引っ張って来たのかは知らないが、

総統選挙(アイドルアルティメット)の裏側では、これまでにない多額の闇資金が動いてるのは確かだ。

 

未だ業界の闇に疎いだろう新米プロデューサーと言葉を交わしながら、

仁美はヘス代表について考える。最初に出会ったときから不思議な雰囲気の人物だった。

しかし彼は彼で業界の闇を見つめ続けて戦いながら敏腕Pとなった人間なのだ。

せいぜい中堅レベルの自分が心配することではないと気づく。

 

「あら、もうこんな時間……。ごめんなさい、お先に失礼しますわ」

 

 

――――特別党首討論会ルーキズ、第10週――――

 

「全員集合したわね? さあ、今日集まってもらった皆を、紹介するわ!」

 

集まった売り出し中の新人アイドルたちに審査員が声をかける。

 

複数のアイドル候補者を抱える大手芸能事務所からの参加者はいない。

党首討論会(ライバルオーディション)による党首ダメージは、政党団体そのもの損害に繋がるため

新人の登竜門である“ルーキズ”は総統選挙(アイドルアルティメット)法規制(ルール)では、

どうしてもギャンブル性が高いと考えられ敬遠されているためだ。

 

だから集まったのは一発逆転を狙う弱小芸能事務所(政党団体)の他に、

中堅どころの芸能事務所から代表候補者(アイドル)が党首として僅かに参加している。

 

中堅規模の芸能事務所の代表アイドル候補者(党首)となると

少なくとも10万人以上の支持者(ファン)を集めており小選挙区(Cランク)は勝ち抜けるだろう。

しかし中選挙区(Bランク)の勝ち抜きを見据えた芸能事務所(プロダクション)にとって、

ルーキズはリスクを冒してでも参加する価値のある魅力的な舞台に思えた。

 

C級アイドルとB級アイドルは、例えるなら市議会議員と国会議員くらいの差だろうか?

選挙区(ランク)が変わればアイドル選挙活動で動く金銭も手に入る利権も桁が大きく違うのだ。

 

集まったアイドル候補者達の力量を流行りのイメージレベルでいえば、

レベル4~6のアイドル候補者が中心の公開討論会(オーディション)と言えるだろう。

 

全国区で放送される特別公開討論(スペシャルオーディション)だけあって、

小選挙区(エリアオーディション)の平均レベル(1~3)に比べれば、随分と高いのは間違いないだろう。

 

「あら、忘れてたわ! みんなに素敵なお知らせよ。

 今日は何と芸能記者(政治記者)さんと外国特派員(海外諜報機関)さんが、いらしてるのよ!」

 

当然ながら注目度も決戦のバトルフィールド(メジャーリーグ)と呼ばれる全国区(大選挙区)と同レベルとなり、

将来の金の卵を生む鶏(トップアイドル候補)を探しに業界関係者が駆けつけてくる。

 

審査員は政治(やみ)には疎い生粋の芸能(メディア)関係者で自らの仕事に誇りを持っていた。

だからこそ芸能記者(パパラッチ)はともかく内政干渉ともいえる外国特派員(海外諜報機関)の存在は気に入らない。

最近では各国から審査員に圧力が加わっているという噂さえ聞く。

 

実際に今日の三人の専門審査員の内、外国審査員が二人もいる。

 

ビジュアル担当がファンシズム先進国を謳うイタリン人の子豚で、

ダンス担当が各国の政治的綱引きの結果選ばれた日本帝国の駐在武官(芸能顧問)だ。

 

ドクツ人審査員は「巨乳至上主義」(おっぱいサイコー)の傾向が強いイタリンの子豚を信用していない。

極東後進国(HENTAI JAPAN)の駐在武官(芸能顧問)にアイドル候補者の何が分かるのかと馬鹿にしている。

 

だからこそボーカル担当および審査員長の自分がシッカリしなければと思っている。

 

「運命の分かれ道って、いきなり来るものなのよ。ゾクゾクするわね!」

 

あえて作ったキャラクターのオカマ口調で声を出し自らを盛り上げる。

 

「う~ん、そうねぇ、1番ちゃん! 皆を代表して言うことないかしら?」

 

ふと見知らぬ無名アイドルに目が留まって思わず声をかける。

 

ゲッベルスが用意したビヨンドザスターズと呼ばれる

ビジュアル面の強調に特化した黄金色に輝く漆黒のステージ衣装が、

レーティア・アドルフの金髪と白い肌をより一層映えさせる。

 

「レーティア・アドルフだ。よろしく。

 この中からトップアイドルになるのは私だけだ。

 悪いが、みんな堕とさせて貰う」

 

少しだけ騒がしかった控室内の空気が、

吹雪でも入って来たのかと錯覚するほど一気に凍る。

 

「あ~ら、カッコつけた(ヤツ)は嫌いじゃないけど、

 出だしで目立とうとした作戦が失敗すると恥ずかしいわよん。

 次の計画(プランB)は用意してるのかしら?」

 

有権者に媚び売る牙の抜けた候補者が多い中で、

久しぶりに心が疼くホンモノが現れたと審査員は感じた。

 

だからこそ場の雰囲気を温め直そうと軽口を叩く。

 

「ハッタリかかどうかは、すぐに試してみればいい。

 もちろん、次の計画も用意されてはいるだろうが、

 プランBは中選挙区で、プランCは大選挙区の為の物だ。

 私はアイドル総統(アイドルマスター)になるつもりだから今年の楽しみにするといい」

 

この候補者(アイドル)は最初から狙う目標(ランク)が高すぎる!

 

審査員は内心の驚きを巧みに隠す。選挙参謀(プロデューサー)は正気か?

候補者(アイドル)の大半や付き添い(プロデューサー)、他の審査員も唖然としている。

 

総統選挙(アイドルアルティメット)の短い期間で無名の新人アイドルが、

トップアイドル(A級アイドル)に昇り詰めるなんて夢物語に近い。

 

E~Dの候補者はそれこそ万人単位でいる。

Cランクといえるアイドルは千人くらいだろう。

Bランク、全国区のアイドルともなれば百人にも満たず。

トップアイドルと呼ばれる存在は欧州星海域(ヨーロッパ)でも十人いるかいないかだ。

 

アイドルを夢見るなら誰だってトップアイドルになりたいと言うだろ。

言うだけなら無料だ。想うことだって自由だ。

 

だけど市議会議員に立候補する無名の新人候補者が、

街頭演説で一年以内に大臣や総理になりますなんて言ってたら、

誰もがほら吹き以前に頭の中身を疑うだろう。

 

プロデューサーやプロダクションの指示で、

高嶺の花というキャラづくりをしてるだけかもしれないが……。

 

「アピールタイムは十分ね。

 けどアイドル候補者なら、最後は自らの曲が

 有権者の心に響き渡らなくちゃ意味がないわよ」

 

注目を浴びたと同時に全ての候補者を敵に回した。

舞台の上に刺激的で危険な香りが漂う。

あえて初手から業界のタブーを冒したともいえる。

 

そして……この日、妖精が……

 

偶像の集う世界(せいじのせかい)で、初めて舞い踊る。

 

~~♪

 

今までの芸能界(せいじのせかい)では耳慣れない導入曲が流れる。

この曲をクラシックの巨匠が作詞作曲したと言っても信じる者はいないだろう。

 

~~♪~~♪

 

どこまでの自分の才能に絶対の自信を持ったアドルフが歌う曲。

 

今まで自分の才能を学術論文(ロジック)以外で、

他者に表現する手段を持ちえなかった大天才(アドルフ)が、

天才芸術家VTVNの力を借りて、その小さな美しい翼を大きく広げる。

 

ここに何一つ(リスク)を恐れない。絶対無敵(アルティメット)のアイドルが爆誕する。

 

~~♪~~♪~~♪~~♪

 

芸能界(せいじのせかい)のルールなんて関係ない。

私の魅力(才能)が見抜けない愚民(ファン)は相手にするつもりはない。

 

私は私のやりたいようにやると言わんばかりの態度を、

ボーカル(歌詞)とダンス(踊り)で見事に表現する。

 

オーバーマスターはゲッベルスの依頼に共感したVTVNが、

ボーカルもダンスもビジュアルの為に全振りした新曲(アイドルソング)だ。

 

~~♪~~♪~~♪

 

強気な態度とは相反する甘い声に可愛いルックス。

そのアンバランスな魅力が審査員を惹きつける。

 

何よりも素晴らしいのは圧倒的な存在感(ビジュアルアピール)だ。

 

~~♪

 

レーティア・アドルフがデビュー曲『オーバーマスター』を歌い終えた後、

全ての代表候補者が舞台に上がることを拒否し、党首討論の辞退を申し出た。

 

各芸能事務所のプロデューサーも所属政党団体へのダメージを恐れてそれを認めた。

 

辞退理由は仮病でもダブルブッキング何でもでも構わない。

この化け物と比べられるくらいなら、

最初っから参加しなかったことにした方がマシだと判断した。

 

異例づくめの党首討論会(ライバルオーディション)は、

6923プロ所属の新人アイドルの独演会(ライブステージ)となった。

 

アドルフの『オーバーマスター』は小選挙区の新人候補者のデビュー曲としては、

異例の初週ミリオンセラーを達成し、一度の討論会(オーディション)で100万人の支持者(ファン)を獲得した。

突如、現れたホンモノのアイドルは総統選挙における台風の目玉となる。

 

 




これで第一章、第一部が完結です。
原作ゲーム「大帝国」におけるアイドル総統の実力を加味すれば、
小選挙区や中選挙区のステージなどで苦戦するはずもありません。

小選挙区はあくまで物語の軸となる
プロデューサーとアイドルの出会いと紹介が中心です。

第二部の中選挙区では原作ゲームに登場する様々な人物が、
アイドルとしてプロデューサーとして芸能関係者として登場します。

※EroCoinネタの投稿後に仮想通貨全体が大幅下落して笑った。
できればワルプルギスの夜編で大暴落して欲しかったネタ的に


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第二章 総統選挙 中選挙区
第11話 匿名ネット記者エルの野望


原作ゲームでは主人公に監禁調教されるリットン記者が活躍?


 

――――総統選挙、第12週 小選挙区最終投票日後――――

 

「あー、あー、テステス……マイク良好。

 はじめまして。あたしの名前はリーザ・リットン。

 ガメリカ共和国に住むハイスクールスチューデントだ。

 夢は最も権威ある報道賞を受賞するレポーターになることだ」

 

彼女はいつか自伝を書く為に記録を残している。

今でも特ダネだろうが発表できいないのには理由がある。

 

「田舎学生のあたしがレポーターになりたいと思ったキッカケは、

 あたしの好きな東洋趣味のゲーム(東洋Project)に登場する天狗の職業が記者だからだ」

 

シューペアが前世の記憶を元に制作した東洋Projectは、

今や世界で最も有名なVR弾幕系シューティングだ。

シューペアは同人文化に寛容(無頓着)で多数の二次創作が作られており、

東洋趣味者の間で一大コンテンツとなっている。

 

とは言っても根幹技術だけは特許を取得し厳しく管理されており、

東洋ProjectのVR技術を利用したフライトシミュレーターは航空業界のみならず、

各国の空軍が宇宙戦闘機の飛行訓練装置として導入しているほどだ。

 

多くの航空機乗り(シューター)に遊ばれている東洋Projectの難易度は高い。

最高難易度のランキング上位者(ルナシュータ―)は、

全てが軍のエースパイロットだと言われているほどである。

 

「あたしはシューティングは苦手だが、東洋の音楽が好きで、そこからハマった口だ」

 

東洋趣味のキャラクタたちは様々な絵師に可愛らしく描かれて

ゲームはしらないけど音楽やキャラは好きという人も多いのが東洋趣味者の特徴である。

 

「あたしは天狗記者に憧れて流行りの報道(まとめ)サイトを始めた。

 今は学生だが、ネット上ではブルーバード大学卒のインテリ&イクメンで、

 ネットの闇を暴き真実のみを伝えるフリーの政治記者エルという架空の設定を用意した」

 

おりしもガメリカでは大統領選の予備選挙が始まっており名乗りを上げるチャンスだったのだ。

 

「しかし最初は意欲に反してサイトは不人気でアクセスは集まらなかった。

 あたしは根強く運営を続けて予備選挙が終わった頃、データ分析をしている際に気付いた」

 

リットンがフランク・ルーズを持ち上げる記事を書いた時だけ何故かアクセスが多いのだ。

ルーズ候補は二大政党の片翼の公認候補だが小太りのさえないオッサンである。

 

金銭に汚い実業家として知られ大々的なメディアキャンペーンで一躍有名になった。

何かと大言壮語で失言や炎上も多く、理知的な政治評論家からは批判も多い。

予備選挙を勝ち抜き党から大統領候補として選ばれたのが不思議なくらいだ。

 

「あたしは報道サイト(フェイクニュース)の方向性をルーズ絶賛に全振りした。

 ルーズ候補には会ったことさえないが、あたかも会ったことがあるように装った。

 ネットの真実(うわさ)をかき集めて独断と偏見で嘘と本当(ネットの闇)を見分けた結果。

 ルーズ候補が如何に誤解をうけており、実はどれだけ素晴らしい候補かとサイトで力説した」

 

「するとキャロットさんという慈善家がコンタクトをとってきて、

 あたしの記事に感動したと言って様々な支援(スポンサード)してくれるようになった。

 博識なキャロットさんはネットには出回ってない情報(ソース)を色々と提供してくれた」

 

キャロットという支援者は情報どころかルーズ候補のプライベート写真まで撮って送って来た。

 

「あたしの得意なインスタ蠅という写真加工技術を使えばアクセス数は瞬く間に急増した。

 勢いに乗ってサイトの運営を続けるだけで面白いように反響が増えた」

 

報道サイトにはルーズ信者が勝手に常駐し治安行為を始める。

批判コメントがあれば勝手に叩いたり通報してくる始末だった。

 

「ルーズ候補が過激な発言や失言をするたびにあたしのサイトは火消しで儲かった。

 ルーズ候補が女性蔑視の発言をすれば、いかに愛妻家であるかを説明した。

 金銭スキャンダルが起これば、そのお金が慈善事業に使われたと解説した。

 ソースとなる情報は支援者のキャロットさんが証拠の写真と共に送ってくれた。

 あたしはメディアが真実を恣意的に加工して世論を誘導していることを知った」

 

ルーズ候補は「CNNもBCCもNHKも偽ニュースばかり流している」と激怒し、

匿名記者のエルだけが「ネット社会の真実を見抜いている」と発言した。

いまやL(エル)といえば、名探偵記者ピューリッツァーの孫娘ドヌーヴに並ぶ

ガメリカ“三大ネット記者”の一人として知られている。

 

「あたしは特ダネと呼ばれる金の卵を産む鶏を発見したのだ!!

 ……っと、すまない。少し冷静になろう」

 

「やがてフランク・ルーズは選挙を勝ち抜き、いまや共和国大統領となった。

 USJの田舎娘が作った報道サイトがガメリカ最高の権力者を生み出したのだ。

 これぞまさに知られざるガメリカンドリームだ。

 自伝を発表した後には映画化されてもいいくらいだ」

 

大統領選挙を通してリットンは政治記者としての報道の使命に目覚めたのだ。

天狗たちが幻想の世界で特ダネを求めて自作自演を繰り返す気持ちが分かった。

 

百対一のマーフィー法則と呼ばれるものがある。

一万人の無言読者(サイレントマジョリティ)より、百人の支持者(ファン)の影響力の方が強い。

一人の記者の記事(ペン)が、一万人の支持者を集めれば、百万人の有権者を動かすだろう――。

 

エルには各大手新聞社からスカウトの誘いが何度もメールで来た。

ルーズ大統領はマイクパフォーマンスかもしれないが、

演説でエルにホワイトハウス報道官になって欲しいと発言した。

 

しかし今は明かせない特ダネを掴み調査中であり、

諜報機関に命を狙われる危険もあるので正体は明かせないと断った。

 

この発言によりガメリカ三大ネット記者の最後の一人、

匿名密告掲示板「ウィキリークス」の運営者エラルド=コイルの正体も

実はL(エル)ではないかとまことしやかに噂されている始末だ。

 

リットンはエラルド=コイルを名乗る人物から

「Lは死神(リューク)黒革の手帳(DEATH NOTE)を知っているか」という暗号通信を受けたことがある。

死神やデスノートなど知らないと伝えたらそれっきりだ。

 

エラルド=コイルがコンタクトをとって来た暗号通信の経路を調べ辿り着いのが、

遺産協会<アーネンエルベ>と呼ばれる闇ネット(ダークウェブ)の片隅だった。

それからは妄想(トンデモ)論者の集まり遺産協会(アーネンエルベ)からも情報(ソース)を時々集めている。

 

 

「大統領選挙が終わり日常に戻ったあたしは承認欲求(いいね!)に飢えていた。

 エルではないリーザ・リットンは、あくまでUSJの田舎の女子学生だからだ」

 

「あたしが次に目を付けたのが欧州星海域(ヨーロッパ)だった。

 おりしもキャロルさんは姉が女たらしのダメ男に騙されて洗脳されたとか何とかで

 急遽実家の仕事を引き継ぐために忙しくなって連絡が殆ど来なくなった」

 

「大統領選挙を通じて親には内緒の資金も増えた。

 リットンことエルは多額の仮想暗号通貨EroCoinを所有している。

 闇業者ブルーペット商会にサイト制作を依頼して完成したのが、

 欧州星海域(ヨーロッパ)大人向け政治情報誌(アダルトサイト)『大海賊』(でらべっぴん)だ」

 

リーザ・リットンは10代だが、エルは20代の既婚者なのだ何一つ問題は無い。

 

大統領選挙の際は「政治的に正しい言葉遣い」(ポリティカルコネクト)に注意しながらサイトを運営していた。

「日帝死ね」などの政治的に正しい発言はポリコレ賞と呼ばれる流行語大賞で評価されるからだ。

 

自由の国ガメリカは正義執行の為の武器の所有が認められており、

銃器と同じくポリコレ棍棒という名前の凶器を振り回す輩が多い。

実際に銃器乱射事件のように棍棒で殴られて死んだ人間も数多くいるのだ。

 

とにかく「大海賊」(でらべっぴん)大人向け芸能情報誌(アダルトサイト)なので、

多少はガメリカのポリコレに反する過激な発言もあるかもしれない。

これは文化の違いというヤツなので寛大な心で多めに見て欲しいとリットンは思っている。

 

「ヨーロッパ星海域といえば、まずはエイリス帝国だろう。

 しかしエイリスは芸能記者(パパラッチ)に厳しく塩対応だ。

 前女王エリザの退位のキッカケとなった不倫疑惑をスクープした芸能記者は交通事故で死んだ。

 もしも新女王セーラや妹のマリー王女の特ダネを得られれば一躍有名となれるだろうが、

 エイリス帝国の諜報機関の恐ろしさは007の映画『スパイ大作戦』でよく知っている。

 嘘から得た真で本当に命を狙われてしまってはシャレにもならない。

 覆面記者のL(エル)とは違って、リーザ・リットンはか弱い少女なのだから……」

 

人類統合組織(ソビエト)を名乗る共有主義者による革命騒ぎのロシアン王国もノーサンキューだ。

 ソビエトの実像は神秘のベールに包まれており、多くの戦場記者が内乱中の現地に入っている。

 未だに特ダネのスクープを入手し、生きて帰って来た人間が一人もいないのだ」

 

ダークウェブ界隈の深層で、情報を集めると遺産協会-アーネンエルベ-では、

ソビエトの最高委員会について、指導者はターニャという名前の金髪幼女だとか

同志を超能力者や催眠術で洗脳してるとか、幹部に眼鏡美女いるとか、

ターニャは転生者だとかトンデモ論が蔓延していた。

あまりにもバカバカしすぎて嘘と本当(ネットの闇)を見分ける必要もない。全てデタラメだ。

 

噂に過ぎないかもしれないが「秘密警察ゲーペ」が実在したらと考えると、

恐ろしくなってリットンはソビエトにクビをツッコムのは避けることにした。

 

「ヨーロッパでは宇宙宗教の中でも警告派(アラーム)過激派組織(アルカイダ)が暴れている。

 あたしは正統美少女派(プロテスタント)だが、宇宙宗教(エロリスト)の宗派は無数にあり、

 統一宇宙史を通しても宗派の違いによる嫁論争は絶えないのは説明するまでもない」

 

例えば最大宗派の聖女派(カトリック)でさえ、

聖女(ヒロイン)の定義で嫁論争を繰り返し複数の派閥に枝分かれ細分化している。

例えば清純派(ピューリタン)の中でも処女厨と呼ばれる純潔派(ユニコーン)などがそうだ。

政治に関わる芸能記者たるもの宗教を避けることはできないが好んで火中の栗を拾う必要はない。

 

前世界大戦では宗教戦争で性地エロサレムが核の炎に包まれ、

性的テーマパーク(水龍敬ランド)やヌーディストビーチといった人類の文化(エロ)遺産が失われたのだ。

俺TUEEEEで何をするか分からない過激派組織(アルカイダ)を敵に回すなど恐ろしいことはできない。

俺の嫁(宗教)問題というのは安易に手を出すのは危険なネタなのだ。

 

「あたしヨーロッパの大人向け政治情報誌(アダルトサイト)を地道に運営しているときに、

 キャロルさんから紹介されたのが新たな支援者(スポンサー)のロックマン氏だ。

 ロックマン氏からの依頼はファンシズムを煽って欲しいということだった。

 彼女はアイドル(戦争)が大好きなのでファンシズム運動が燃え広がって欲しいと言っていた」

 

「どうして『アダルトサイトにアイドルファンの支援者が?』と疑問に思った。

 L(エル)は政治記者であって、芸能記者ではないのだ。

 調べてみるとガメリカでは考えられないが、

 ファンシズムの席巻する欧州では芸能と政治は≒ということだった」

 

リットンはまずファンシズム発祥の地で、

空前の巨乳ブーム盛り上がるイタリン共和帝国に目を付けた。

 

「正直なところイタリンのファンシズムは、さほど面白くなかった。

 アレはおっぱいが大好きなの子豚たちのお祭り騒ぎだ」

 

政治記者としてボーカル(政策)を比較しようと思って

イタリンの政策討論番組を覗けば、

胸が大きい(巨乳派)か小さいか(貧乳派)が相争って

最後はオッパイに貴賎なしという言葉で閉められるお約束の展開。

張りか柔らかさか終わらぬ美乳論争会が24時間テレビで延々と続き。

至高のおわん党と究極のおもち党が党首討論を繰り広げる。

 

ダンス(手腕)もボーカル(政策)に引きずられて、

ダンス番組は実際の胸部の強調の仕方などの論評になる。

ダンス衣装の評価も胸をどのように魅せるかどうかだ。

結果が黒ビキニ党なんだから豚どもは頭がおかしいのだろう。

 

「そもそもファンシズムというのは政治なんて誰がやっても一緒だから

 皆で可愛いアイドル(美少女動物園)の中から最高の一人(一等賞)を選ぼうという乱暴な考え方だ。

 結果的にビジュアル(見た目)重視になるのは当然の帰結だ。

 見た目に惑わされず政策と実行力でルーズ大統領を選んだガメリカ人があたしは誇らしい」

 

すでに総帥(ドゥーチェ)を決めるイタリン選挙は、

UEFA杯「欧州星海域(ヨーロッパ)アイドルアカデミー大賞」を受賞し、

元祖アイドルマスターとなったムッチリーニ・ベニスの一強状態。

民放の巨乳お天気キャスターからアイドルに転進し、

今や最大与党「黒ビキニ党」の党首である彼女を止められる者はいない。

今さら豚の為にムッチリーニを持ち上げてもリットンに何のメリットも無い。

 

そんなときイタリンのファンシズム運動をモデルにした総統選挙(アイドルアルティメット)が、

旧ドクツ帝国、今は敗戦国のオジャルマル共和国で開催されることが決まった。

 

「あたしの記者としての嗅覚が再び金の卵を産む鶏(特ダネ)を嗅ぎつけた。

 総統選挙を制覇する候補者は現時点では誰にも分からない。

 外国籍の候補者の参政権も認められ、外資も入って芸能事務所(政党団体)が乱立し群雄割拠だ」

 

ファンシズムの選挙だから当然ビジュアルが最も重視されるが、

職人気質のドクツ人は細かいところに五月蠅く

ボーカルやダンスの多様性は大雑把なイタリンとは比べものにならない。

 

「あたしはファンシズムの元祖はイタリンだとしても、

 ファンシズムの最先端はドクツで間違いないと確信した」

 

リットンは 大海賊(でらべっぴん)総統選挙(アイドルアルティメット)特集を組んだ。

一般的な芸能情報サイト(アダルトサイト)と差別化するため徹底的な数値化と格付けに拘った。

 

「あたしが報道サイト(フェイクニュース)の運営者として学んだことは、

 人類という生き物は数学は苦手だが、単純な計算と数値と格付けが大好きということだ」

 

ヨーロッパ人の高尚な知識人は歴史と伝統を誇り何よりも遠回しな表現を好む。

例えばオフランス人のワイン紹介サイトを眺めると、

専門のワイン用語辞典を必要とするような様々な表現を並びたててワインを論評する。

 

自由の国であり何より挑戦心を好む新興国ガメリカ人は違う。

ワインの美味しさをズバッと数値化し、分かり易く点数付けして、格付けした本を毎年出版した。

今や結果として世界で最も影響力のあるワイン評論家はガメリカ人なのだ。

 

アイドルの総合的な魅力を数値化したのがイメージレベルだ。

今やアイドルの強さイメージレベルで表現することは業界全体に広まっている。

L(エル)といえばガメリカでは政治記者だが、ヨーロッパでは権威ある芸能評論家だ。

 

リットンはムッチーニをLv14の目安としてイメージレベルは15段階に設定した。

 

【Lによるアイドルのイメージレベル分類】

 

Lv1 素人レベル

Lv2 半人前アイドル

Lv3 無名アイドル

Lv4 一部で人気のアイドル

Lv5 気になるアイドル

Lv6 要注目アイドル

Lv7 噂のアイドル

Lv8 話題のアイドル

Lv9 ブレイクアイドル

Lv10 人気アイドル

Lv11 大人気アイドル

Lv12 スーパーアイドル

Lv13 カリスマアイドル

Lv14 国民的アイドル

Lv15 歴史的アイドル

 

目安としてLv1~3が泡沫候補で小選挙区を勝ち抜くのは不可能と断定。

Lv4~6は小選挙区(Cランク)はともかく中選挙区(Bランク)を勝ち抜くのは困難。

Lv7~8が中選挙区(Bランク)で当選可能なレベルで、芸能界で自他共に認める存在は此処からだろう。

Lv9以上が大選挙区(Aランク)を勝ち抜きトップアイドルと呼ばれる存在になれるだろう。

総統選挙(アイドルアルティメット)はLv10以上の候補者の祭典と予想される。

 

小選挙区は最終投票が終わり、万人規模の半端な候補者は淘汰された。

小選挙区の候補は殆どが一攫千金狙いなのだ。

もし小選挙区に当選し、大手芸能事務所に移籍できれば移籍金が手に入る。

選挙期間中の芸能事務所(政党団体)の移籍は自由に認められているので、

候補者の引き抜きは今後増えるだろう。

大手芸能事務所は候補者が落選しても他所から引っ張ってくることが可能だ。

 

「支援者のロックマン氏はアイドル(戦争)が大好きなので、

 できればロック(好戦的)ボーカル(政策)の候補を評価して欲しいと頼まれている」

 

例えば弱小事務所1116プロのヴィスベルという候補者は、

小選挙区では若干ながら当選の可能性があった。

元傭兵の彼女は体験を元に前大戦の悲惨さを訴える曲を歌っていたので、

エルがサイトでこき下ろした結果落選した。

 

828プロのハニーの玩具ハンナ・ケッテンクラートも

アカハニPの力量もあってか小選挙区は当選できる力があった。

しかしとあるオーディションの審査員から質問に対して

士官学校の学生であることを伝えた上で、

国防軍は必要だが意味の無い侵略戦争は良くないと言って落選した。

これはリットンの預かり知らぬところでロックマン氏が審査員に手をまわしてるからだ。

 

エルの芸能コラム記事「ロック(好戦論)でなければ落選?」が見事に証明(マッチポンプ)された。

また議員選挙とは違って若いアイドル候補者が多く残っているのも特徴だ。

その証拠に永遠の17歳を自称したクリオネちゃんという候補者がひっそりと落選している。

 

「総統選挙はこれからが本番だ」

 

リットンは小選挙区の結果を元に残った千人ほど候補者を採点していく……格付けは大切だ。

全国区は大選挙区からなので、中選挙区は小選挙区と同じくエリアの選択制だ。

大手の芸能事務所(政党団体)であれば候補者は各エリアに分散させるのが普通だ。

また有力候補のいるエリアを避けるのも職業選挙参謀(プロデューサー)の手腕の見せ所だろう。

 

中選挙区(Bランク)は16エリアで各選挙区の当選者は最大で上位四人のみ、

芸能人枠や敗者復活なども含めて大選挙区は百人未満の候補者で争う予定となっている。

となればLv8以上の候補がいる激戦区(エリア)はであれば避けたいところだろう。

 

芸能事務所(政党団体)が公的でもないランキングサイトに注目するのはそのためだ。

 

「ふふふ……あたしがルーズ候補を大統領にしたときと同じように、アイドル総統を選んでやる」

 

リーザ・リットンはUSJの片田舎で万能感に酔い痴れる。

大国間のパワーゲームの舞台である総統選挙(アイドルアルティメット)の行く末を決めるのは、

有権者ではなく、ガメリカ人のL(エル)なのだという傲慢な考えに支配されていた。

 




三大ネット記者 全員がガメリカ人と推測されている

L(エル) ガメリカの新鋭匿名政治記者でヨーロッパでは権威ある芸能評論家。
     今やエルによる数値化はLP(エルポイント)と呼ばれ重視されている。
     正体はUSJの田舎学生リーザ・リットン。(*原作の記者)

ドヌーヴ 最も権威ある報道賞の由来となった人物、
     名探偵記者ドヌーブ・ピューリツァーの孫娘
     ドヌーブ・ドーリトル。(*原作ゲームの汎用提督)

エラルド=コイル 匿名密告掲示板「ウィキリークス」の運営者
         EroCoinを大量に保有 闇サイトの帝王
     何故か黒革の手帳を知っている?(*正体不明) 

正体不明の支援者たち 原作ゲームに登場(若草会の四人娘)

キャロットさん 「キャロル・キリング」
 軍事産業に詳しい。ルーズ大統領と親しい。女たらしのダメ男に騙された姉がいる、

ロックマン氏 「ハンナ・ロック」
 キャロットさんの知り合いで世界中の資源に詳しく、世界情勢の動向を気にしている。
 アイドル好きと偽ってヨーロッパで好戦的な政策が広がるよう煽っている。

『大海賊』と『でらべっぴん』は休刊した芸能雑誌が元ネタ。
えろかみ大帝国とは「宇宙企画」繋がり。

欧州星海域の政治を語るなら宗教問題は避けて通れない。
宗教問題は俺の嫁戦争のパロディで実際の宗教とは当然関係ありません。

警告派はヒロインの偶像崇拝を禁止しています。
正統派はメインヒロインにこだわる宗派です。
正統美少女派は、正統派の中の一つです。
聖女派はヒロインの定義により分裂しています。

日本帝国の宇宙神道という宗教は、
八百万の神々が、それぞれの身近なアイドルを大切にしようという
かなり緩い教えです。ただし日本帝国には新興宗教も多いです。


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第12話 妖精計画プランB鋼鉄の灰熊退治

改訂内容

タブレットから誤字を修正した際に、
コピペ範囲を間違えて本文がヘンになっており修正しました。


――――6923プロ会議室 2stリリース曲の選択、第13週――――

 

ドクツ第三プロダクションの会議室には、

代表のヘルマン・ヘスの他にプロデューサーが二人。

 

見習いから新米Pに昇格したマネージャーのゲッベルス。

新米から普通Pとして扱われるようになったシューペア。

 

小選挙区を通過しC級アイドル候補者となったレーティアは、

師匠である音楽プロデューサーの発明芸術家VTVNの元で、

担当の次女トレーナーと一緒にレッスンの最中だ。

 

6923プロは一人のアイドル候補者を五人で支援している。

少数精鋭が基本方針で簡単な受付や事務作業などは全て外部委託している。

 

この業界には12人ものアイドル候補者を

二人の新人プロデューサーと一人の事務員で支えている

超ブラック経営な芸能事務所も存在するというから

ヘス代表がどれだけホワイトな経営者か実感できるだろう。

事務所の規模は小さいが人脈や資本力は中堅クラスといえる。

 

会議室で話し合われる内容は主に三つ。

まずは中選挙区でのデビュー曲となる2stリリース曲の選択。

そして16エリアから選んで立候補できる中選挙区の決定。

最後にアイドル候補の育成およびレッスン方針の決定だ

 

はーい(,,゚Д゚)∩ゲッベルス先生質問です。

 

口火を切ったのは政策担当の実務家シューペアだ。

ゲッベルスが作成した企画書を見開き指摘する。

 

「妖精計画のプランBの冒頭が理解できません」

 

「貴方、企画書もまともに読めないの?」

 

冒頭には『ガシッ!ボカッ!クマは死んだ。スイーツ(笑)』とだけ書かれいる。

 

「仕方ないわね。童貞にも分かるように説明するわ。

 レーティアが立候補するべき中選挙区はグループAよ!」

 

「ちょっと待って! グループAは当選枠が一つだけ。

 しかも国防軍の大物が立候補するって……まさかクマっていうのは?」

 

「そうよ。前世界大戦の英雄“鋼鉄の熊”マインシュタイン国防大将よ。

 当選枠が一つってことは本命以外は雑魚と考えていいわ。

 モブ候補をレーティアがガシッ!と一掃して、

 大物クマをボカッ!と倒して、美味しいところは独り占め。

 まさにスイーツ(笑)よ」

 

思ってた以上にプランBは意外とまともな内容だった。

けど(ノ`△´)ノ ┫:・'∵:.┻┻:・'.:∵ わかるかーい!

 

「たしかにレーティアが立候補すればグループAは、

 死の組って呼ばれてる激戦区……に変貌する。

 マインシュタイン大将の所属する1188(よいパパ)プロは、

 業界で言えば中堅の事務所だ。6923プロなら規模で渡り合える」

 

「それにマインシュタイン候補者は党首なの。

 中選挙区(Bランク)唯一の特別公開討論(スペシャルオーディション)のTOP×TOP!にも出てくると思わない?」

 

「ふむ。たしかにマインシュタイン君ほどの逸材が、

 地域討論会(エリアオーディション)で負けるとは思えないね。

 グループAが死の組になれば党首討論会にも参加せざるを得まい」

 

「なるほど。馬鹿女(ゲッベルス)もプロデューサーとして一皮むけたな」

 

「貴方は包茎のままだけどね。童貞男子君(シューペア)

 

ぐぬぬ(>д<)

 

「それじゃあ、君たち。まずはグループAで立候補すると仮定しよう。

 中選挙区で最初に披露する2stリリース曲は何になる?」

 

「マインシュタイン候補は国防軍の大将。

 あえて相手の得意分野で戦うのが本物のアイドルでしょう。

 軍事政策を元にした『恋の電撃戦~ブリッツクリーク~』で勝負すべきです」

 

国防軍の大将と軍事政策で討論を交わすなど

航空参謀を目指してた人間としては胸が熱くなる。

勿論、負けるつもりもない。

 

「はあ……。これだから童貞男子は……

 いつまで包茎のままでいるわけ?」

 

( ゚д゚)この野郎。いつもいつも喰ってかかりやがって。

これだからボーカル(政策)ごとのダンス(実力)も理解できない素人は困る。

 

軍事分野のダンスレッスンに付き合ったが、

大天才レーティアは軍事技術の発明家だけではなく、

軍事指揮官としての能力も十分秘めているように感じた。

 

それにVR弾幕フライトシミュレーターの実力も中々だ。

史上最強ルナシュータ―の俺様(自慢)には遠く及ばないないが、

正規の飛行訓練を受けていないにも関わらず

イージーモードを初見クリアできるんだから大したものだ。

重点的にダンスレッスンを行えばノーマルクリアもできるだろう。

 

「ゲッベルスはレーティアが軍事分野では、

 大将のマインシュタインに流石に劣るとでも?

 いつもレーティアのことを大絶賛する割に珍しく弱気じゃないか」

 

「は?(威圧) 貴方こそ何言ってるのよ!

 アイドル総統選挙で見るべきは、ライバルの敵対候補じゃないの。

 党首討論会や審査員を気にするより! 大事なのは有権者よ!

 どうやってアイドルのファンを増やすかって考えるのが、

 私たちプロデューサーの仕事でしょ? 間違ってるかしら?」

 

「ふむ。この勝負はシューペア君が一本取られたね。

 政策参謀として頭はキレるが、

 優秀な人間特有の視野狭窄になりがちなのが弱点だ。

 まあゲッベルス君は、少しシューペア君に厳しすぎると思うがね」

 

「すいません。ヘス代表、気を付けます」(お辞儀)

 

シューペア君も童貞扱いしてごめ~んね(๑´ڡ`๑)てへぺロ♡

 

絶対に本気で謝罪するつもりなのが伝わって来る――

 

でも可愛いから許す!!

 

「で、ゲッベルスが選んだ2stリリース曲は?

 また作詞も作曲もVTVN先生にお願いするのか?」

 

「いえ、ちゃんと貴方が用意してきた課題曲から選んだわ。

 1188プロは保守政党なの。つまりアピールすべきは家族層よ。

 そう考えれば“ドクツ民の団結”をテーマにした

 カントリーミュージックの『READY!!』が2stリリース曲に相応しいわ」

 

「ふむ。1st曲はビジュアル特化の挑戦的な新曲。

 次に大人も子供も満遍なく楽しめる曲を持ってくるんだね」

 

「そうレーティアはViDaVoの走攻守が揃ったアイドルなの。

 芸能情報誌では一極集中型って紹介されちゃったから訂正も必要ね」

 

「ああ、俺が提出した大海賊《でらべっぴん》のアイドル・レポートか」

 

「ふむ。資料を見せて貰ってもいいかね?」

 

【レーティア・アドルフ】

 

イメージレベル:Lv7(噂のアイドル)

ランク:小選挙第XXX区、首位当選

所属:6923プロ代表アイドル候補(党首) 

分類:一極集中型《スペシャル》

属性:天才肌《キュート》

 

Vi(外見):B+ 小選挙区でのデビュー曲が初週100万DLは快挙

Da(手腕):E? 露出が少なく低評価

Vo(政策):C? デビュー曲は素晴らしいが政策の中身が不明

 

推定アイドル戦闘力:7200LP

 

[エルによるコメント]

衝撃デビューを果たした噂のアイドル候補者だが露出が少ない。

パフォーマンスのスタイルからビジュアル特化だと推測した。

ビジュアル一辺倒であれば、露出は増やすべきだろう。

 

「そういえば推定アイドル戦闘力って何よ?」

 

「おいおい。もう少し業界のことは勉強した方がいいんじゃないの?」

 

「あんたみたいな理屈倒れの頭でっかちになりたくないのよ。

 そっちこそリフレでも行って、のーみそこねこねと

 頭髪マッサージして貰った方がいいと思うわ。禿げるわよ?」

 

_| ̄|○ il||li 肉体的な暴力ならともかく言葉の暴力はアカン

 

「ふむ。シューペア君が鬱死したので私が代りに説明しよう。

 イメージレベルがアイドルの三要素ViDaVoの総合値および

 現在の知名度や評判から計測した目安というは知ってるね?」

 

「ええ。私は今のレーティアはViDaVoの総合値なら

 ブレイクアイドル級(Lv9)の実力があると思ってるわ。

 けど評判や知名度を考えたらLv7には納得もしてるわ」

 

「推定アイドル戦闘力は総合値をより具体的に算出したものだ。

 ViDaVoの 三要素を7*3=21段階で評価している。

 下からF/E/D/C/B/A/Sの順だね。更に+-があって?は不明だね。

 LPはエルポイント、通称でアイドル戦闘力と呼ばれている。

 同じ条件の舞台《ステージ》で戦えば、

 アイドル戦闘力が高いアイドルが勝つという考えだね」

 

「営業マン《スカウト》のヘス代表から見てどう思われます?」

 

「芸能界のA級トップアイドルで標準値が出てるから分かり易い。

 Fは零、Dは十の位、Cは百の位、Bは千の位、Aは万の位だろうね。

 以前から業界ではランク(階級)が一つ違えば、

 オーディションの勝率は一割だと言われていた。

 私の経験からも納得のいくものだね」

 

「なるほどー。じゃあレーティアの現在ビジュアル評価は、

 今のところ上から三番目のBランクの上位って扱いなわけね。

 扱いとしてはビジュアル特化でも、

 中選挙区を突破してB級アイドルになれるってことね!」

 

「ちょっと待ったー!!」

 

「ふむ。復活したシューペア君、何かあるのかね?」

 

「こっちを見て下さいよ!」

 

 

【アイゼン・マンシュタイン】

 

イメージレベル:Lv8(話題のアイドル)

ランク:小選挙第XXX区、首位当選

所属:1188プロ代表アイドル候補(党首) 

分類:平均型《ノーマル》

属性:情熱家《パッション》

 

Vi(外見)C+:渋い外見が一部の層にバカ受けし写真集もヒット

Da(手腕)B+:鋼鉄の熊と呼ばれた前大戦におけるドクツの英雄

Vo(政策)B-:軍事政策に強く保守層や家族層の支持を受ける

 

推定アイドル戦闘力:12900LP

 

[エルによるコメント]

デビュー当時はビジュアルが弱点と思われていた。

しかし渋い外見が一部に評価されている話題のアイドル。

国防軍が送り込んで来た大型新人で階級も現役大将。

リーダシップもありダンス(手腕)の実力は間違いないだろう。

昔気質のドクツ人で流行曲(経済政策)や歌謡曲(雇用対策)を苦手とする。

曲を聴いたが拳の利いた演歌(国防政策)や歌劇(愛国保守)を得意としており

ボーカリストとしての能力も期待以上にある。

 

[補足]

当初は分類をダンスの一極集中型《スペシャル》としていたが、

現状を踏まえて平均型《ノーマル》に変更する。

ただし万能型《レジェンド》寄りの平均型であることに注意。

中選挙区の突破は確実な実力があり、大選挙区でも十分通用するだろう。

しかし芸能界でトップアイドルになれるかどうかのギリギリラインだ。

大選挙区では中堅プロダクションから敏腕Pの所属する大手への移籍もあり得る。

 

「イメージレベルだとランク(階級)が一つ違って、

 推定アイドル戦闘力も5000以上離されてますよ!

 これって党首討論会が不味いじゃないです!?」

 

前世の記憶にあるエリート戦闘民族の王子(ベジータ)部下(ナッパ)くらいの差を感じる

 

(((( ;゚д゚))))アワワワワ

 

「まあまあ、落ち着き給えシューペア君。

 レーティア君のレポートをよく直したまえ」

 

「大事なのはボーカルとダンスは暫定評価ってことね。

 レーティアの分類は一極集中型《スペシャル》じゃないわ。

 彼女の才能は万能型《レジェンド》をも超える

 究極万能型《アルティメット》なのよ。

 それに元々ビジュアルはレーティアの一番の苦手分野。

 小選挙区の間の短期集中レッスンで徹底的に矯正したものよ。

 それでビジュアルの一極集中型《スペシャル》になったのよ?」

 

「ハッ、そうかレーティアは、

 元からボーカル(政策)は得意としてたし、

 政策を実現するためのダンスレッスンにも積極的だ!」

 

「そ、そういうことよ。心配する必要はないの。

 レーティアには四大討論会-グランドスラム-を制覇して、

 アイドル総統になってもらうんだから!」

 

「よし。それじゃあ中選挙区のエリア選択はグループA。

 そして2stリリース曲はカントリーミュージックの『READY!!』。

 ここまでは二人とも問題ないかね?」

 

「「はい!」」

 

「さて私が懸念している一番の問題はレッスンなんだ……」

 

「え? レーティアのレッスンは順調よ。

 課題だったビジュアル面も克服できたし、日々凄い勢いで成長しているわ。

 いや、あれは殆ど進化ね」

 

「はい。俺もダンスとボーカルを中心に

 レーティアのレッスンには参加していますが、

 ゲッベルスと同意見です」

 

「ふむ。君たちの実力ではまだ気づいていないのも仕方あるまい――」

 




暁で連載中のR-18えろかみ大帝国(勝ち組)では、
デーニッツの幕間が投稿されて、次はゲッペルスのエロみたいです。
やったね!

えろかみ大帝国(勝ち組)の方は、
原作ゲームの数値を表に出さないようにやってますが、
こちらの負け組の方は反対に徹底的に数値化に挑戦。
原作ゲームで書かれていない前日譚のゲーム化です。


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第13話 プロデューサーとプロダクションの課題

――――6923プロ会議室 育成および方針の決定、第13週――――

 

「まさかレーティアに何か異常が?

 ハッ! シューペア、あなたアイドルにコミュニケーションとか言って

 パイタッチとかしてないでしょうね!?

 同性の私ならセーフでも、異性の貴方はアウトよ。すぐに通報するわ」

 

「プロデューサーが担当アイドルにセクハラなんかするかよッ! 

 それにコンディション管理はマネージャーの仕事じゃないの?

 責任転換はいい加減にしろよな!!」

 

ゲッベルスと同僚になってから自分の沸点が下がっているような気がする。

 

「いや、ゲッベルス君は専属マネージャ―として十分やってくれている。

 もちろんシューぺア君がセクハラをしたなんて話も聞いていない。

 それとは別の問題がアイドルではなく、我々支援者の側にあるんだよ」

 

「「私たち《プロデューサー》に?」」

 

「オッホン。担当の次女(ベテラン)トレーナーから報告を受けている。

 レーティアの成長の伸び率をグラフにしたところ緩やかに鈍化している」

 

「そ、それは……たしかに、初期の進化ともいえる成長率と比べれば……」

 

ビジュアルレッスンを毎日付きっきりで行って成長を間近で見守っていた

ゲッベルスにも自覚があったのだろう。反論ができず口ごもる。

 

「ビジュアルのレッスンでは水を吸い込むスッポンジのように、

 新しい取り組みは何でもすぐに覚えて、実践していきましたからね。

 早熟タイプのアイドルが初期の爆発的な成長期から

 安定期に入ったと考えるべきでは?」

 

「なるほど。レーティア君の成長タイプは早熟型かね?」

 

「……判断は早計ですが、初期の急激な成長は成熟型に多いかと。

 それに俺の担当するボーカルとダンスのレッスンは始まったばかりです。

 今の成長速度でも大選挙区までにはボーカルとダンスの底上げで、

 十分にA級アイドルの力量まで育成できるのでは?」

 

「ふむ。シューペア君がそこまで言うなら置いておくとしよう。

 今後のレッスンはアイドルの成長も注意しながら見守ってくれたまえ」

 

「はい!」「わかりました」

 

「さて、ベルリン星域の南部ミュンヘン地区に籍を置く我が6923プロは、

 中選挙区では南ブロックにあたり、そこのグループAに立候補する」

 

「「はいっ!」」

 

いよいよ中選挙区戦だ。やっぱり気合が入る。ゲッベルスも同じ様子だ。

 

「流石、我が6923プロの精鋭諸君だ。気合が入っているね。

 小選挙区は新人アイドル候補者のスカウトを含めて

 弱小芸能事務所の準備ということで設定された期間も長かった。

 しかし中選挙区は最終投票日が第24週だ。

 期間は小選挙区の半分だが、スケジュール管理は大丈夫かね?」

 

現在は初めての会議から数えて第13週目だが、

小選挙区はレーティアがやゲッベルスが所属する前から始まっていた。

6923プロは小選挙区の途中から準備を進めて候補者を擁立した。

 

「2ndシングル『READY!!』は作詞作曲の骨格ができています。

 音楽プロデューサーVTVN先生と協力すれば来週にもリリースできます」

 

「ドクツ民の団結による新生ドクツの幕開けが歌謡曲『READY!!』です。

 これはレーティアの魔法少女としての願いそのものでしょう。

 借りて来たものではなく彼女が綴った政策課題から生まれた理念です。

 マネージャーとしてレッスン期間も問題ありません」

 

「よくわかった。諸君が裏方の主役だ。よろしくたのむよ!

 中選挙区では最初に候補者のお披露目がある。

 第15週から幕を開ける南ブロックの全党大会(フェス)がそれだ。

 フェスにはA~Dグループの全てのアイドル候補者が一斉に集まる。

 ライブパフォーマンスも考えておいてくれたまえ」

 

「わかりました」「大丈夫です」

 

「それに中選挙区では中堅・大手の芸能事務所が、

 複数擁立のアイドル候補者の中から党首を選別しようと見定めている。

 同じ選挙区の他アイドル候補者のアイドル戦闘力を肌で感じる機会だ」

 

泡沫候補と呼ばれる地下アイドルの戦闘力を二桁だとすると、

小選挙区の舞台で戦った政党団体所属のアイドル候補者は、

アイドル戦闘力三桁が大半で四桁あれば突破といった戦いだ。

 

シューペアの前世の知識にある『龍玉探しの寓話』(ドラゴンボール)でいえば、

Zの前の天下一武道会や大魔王との戦いといった惑星レベルの段階だろう。

中選挙区になればアイドル戦闘力も四桁が基本、五桁あれば当選確実と言われる世界だ。

Zで言えば序盤だが、いよいよB級アイドル候補者(エリート戦闘民族)が参戦してくる段階だ。

 

「それと、ひとつだけ注意しておこう。

 総統選挙は芸能界と政界が協力した一大イベントだ。

 中選挙区ともなればオジャルマルの議員候補も参加してくる」

 

与野党問わず大手の芸能事務所は、

数多くの政治・芸能業界出身のアイドル候補者を抱えている。

しかしオジャルマル共和国議員が総統選挙に転身するのは難しい。

例えば若手国会議員のラディッツ氏の推定アイドル戦闘力は1500LP。

これは一人前の芸能業界人の実力としては最低レベルだろう。

 

現役の共和国の大臣やヒンデンブルク首相でさえ、

推定アイドル戦闘力は約2000~3500LPほどだと推測されている。

 

オジャル共和国議会の閻魔大王、ベルリン北区の界王と言った

政界で実績のある議員たちも人気取りで総統選挙に立候補している。

ただある程度はアイドルたちの引き立て役だと割り切っている。

もし総統選挙でC級やB級のアイドル候補者になれれば、

元アイドル候補の審査員として引退後に芸能界へと天下りできる。

 

また総統選挙で将来のアイドル総統とのコネを気づいて取り入れば、

政治家としての栄達の機会もある。

アイドル総統は政治権力とと密接に結びついた存在だ。

芸能界に巨額の資金が投資されているのも当然だろう。

 

「全党大会《フェス》には業界人が集まることになる。

 アドルフ君が蜘蛛の糸と呼ばれる利権構造に、

 絡み取られてしまわれないよう注意したまえ。

 もちろん君たちプロデューサーもだ」

 

「……はい。気を付けます」

 

業界の闇に詳しくないゲッベルスも剣呑な雰囲気に息をのみ応える。

 

「蜘蛛の糸……まさか旅団《クモ》ですか?」

 

「シューペア君、迂闊なことを口にするのはくれぐれも気を付け給え。

 芸能事務所“歓喜力行旅団”は総統選挙には、

 現在のところアイドル候補者を擁立していない。

 私は業界の複雑な利権構造をクモの糸に例えただけだ」

 

「しかし893プロは多くの系列を持つ業界最大手――」

 

「シューペア君、歓喜力行旅団のハイドリッヒ団長は、

 芸能事務所を数字で呼ぶことを嫌う。分かっているのかね」

 

「……はい。失礼しました」

 

「プロデューサーの迂闊な発言がアイドルを

 身の危険に晒すことだってある。注意したまえ」

 

いつになく重い声でシューペアに注意を促す6923プロ代表ヘス。

歓喜力行旅団の団長ロベルト・ハイドリッヒは、

かつて芸能界で“最強P”と呼ばれたヘルマン・ヘスの憎むべき仇敵。

 

伝説の男性アイドル“黒覇王”ルシルフルのプロデューサーとして

芸能界の頂点を極めて893プロを設立。今や芸能界のフィクサーだ。

狩人《ハンター》と呼ばれる好戦的なアイドルが系列に多数所属している。

 

「失礼しました……申し訳ありません」

 

シューペアも自らの迂闊さに気付き失言を詫びる。

893プロは“殺し屋”ゾルディック芸能事務所(564プロ)とも繋がりがある。

旅団(クモ)を敵に回すことは、芸能界の闇を全て敵に回す覚悟がいる。

 

「あの、ヘス代表? よろしいですか?」

 

とあることに気付いたシューペアがヘスに質問をする。

 

「今すぐにはともかく中選挙区が進めば、

 レーティアの人気が高まりファンの注目も集まります。

 今のところレーティアの送り迎えは、

 マネージャーのゲッベルスが担当してますが……

 女性二人だけでは何かあったときに危ないのでは?」

 

「ふむ。たしかにシューペア君も付き添うこともあるが……

 まずはアイドルの警護については信頼できる外部委託先を利用する。 

 ただ我が6923プロ単独の党大会《コンサート》の主催も考えれば、

 警護担当の要員《スタッフ》も必要なるだろう」

 

「そうですね」「そうね」

 

「ふむ。プロダクション側も課題が多いようだね。

 他にはあるかね?」

 

「私は今後重要機密が増えることを考えれば、

 情報処理に長けた事務担当のスタッフが必要だと思います」

 

6923プロは経理業務や申請業務や各種手続きなんかは、

かなり効率化されて外部にアウトソーシングしている。

電話してお願いすれば業者がやってくれるのだから超ホワイトだ。

 

それでもアウトソーシングできない書類業務もあるから

今はハッカーの俺様がサクサクと対処してる。

ゲッベルスは書類仕事は得意とはいえない人間だからな……。

今後は俺の業務が増えることを考えれば事務担当は必要だろう。

 

「たしかにシューペア君に頼り切りも問題だ。

 人員は増やしたいが……

 元スカウトの私はアイドルもスタッフも質にこだわるタイプなんだよ。

 少数精鋭《ライトスタッフ》によるホワイト経営が、

 我が6923プロのモットーだ。私も人材は探しておくが、

 素質を備えた人材が居ればアイドルに限らずドンドン推挙したまえ」

 

「はい!」「わかりました」

 

 

根本な人手不足(マンパワー)の問題を、

小手先の業務効率の改善計画とか、謎の機器の導入とか、

根性論による就労時間の増加とかで対処しない

ヘス代表をブラック企業を見習って欲しい。

 

二流・三流の経営者は「賃金が、固定費が、内部保留が」というが、

目標(経営理念)が高ければ、投資がかさむのは当たり前だ。

企業イノベーションは、創造的破壊スクラップ&スクラップからしか生まれない。

 

例えばアマゾン星域のアステカソフトだって、

エロ同人誌の通販業務を始めた際に多額の投資をして馬鹿にされた。

ハニーはCEOはエロ同人誌を売るために世界中に物流拠点を作ったのだ。

エロ同人誌を売るために巨大倉庫を各地に作った埴輪を皆が馬鹿にした。

 

そして書籍のネット通販から始まったアステカソフトは、

次にソフトウェアの販売に流通網を広げ、

今や電化製品から生鮮食品まで幅広く取り扱っている。

 

アマゾン星域の闇ネットにアクセスすれば手に入らないものはない。

ブルセラショップと呼ばれる宇宙の闇市エロカリもアステカ帝国にある。

実は闇ネットを通じた世界の物流の支配者は今や埴輪たちなのだ。

 

ガメリカの軍産複合体が唯一支配できていないが、

ハニーCEOが構築したアマゾンの物流および販売網なのだ。

 

ハニーCEOは今まで株主に利益を一銭も配当したことがない。

投資家の評判も、株価も気にせず、規模拡大の赤字経営を続けた。

儲けたお金は次のビジネス(遊び)に次々と投資していった。

 

最初は皆がハニーの放漫経営ではいつか破綻すると馬鹿にしていたが、

今やハニーCEOの勢力を馬鹿にする投資家は一人もいない。

世界で<埴輪陰謀論>などの噂が広がっているのはそのためだ。

 

暗号仮想通貨EroCoinは日本帝国の投げ銭文化から広まりを見せた。

しかし闇ネットの事実上の基軸通貨となっているのがハニーポイントだ。

ハニーポイントはアステカ帝国の法定通貨ではない。

あくまでアステカソフトの企業通貨ポイントに過ぎないが、

金券代りのギフトカードなどが、

各国で売られ殆ど公的な通貨と同じ扱いになっている。

オジャルマルクやスペース円より国際的な信用があるのだ。

 

俺が考え事をしている間に……、

ゲッベルスが担当アイドルのレーティアのためにと

女性の視点から働きやすいプロダクション作りの提案を行う。

内容はヘス代表に了承され十分な予算もおりたみたいだ。

 

「――ふむ。プロダクションの課題としてはこんなところかね。

 何かあればいつでも言ってくれたまえ。 

 さて話を全党大会《フェス》に戻そう。

 中選挙区は、各プロダクションにとってアイドルの育成期間でもある」

 

中選挙区をマイナーリーグと呼ぶ人がいるは育成の意味込めてだ。

 

大手の芸能事務所が使い捨てとして複数の業界未経験者を擁立している。

育成途上の新人アイドル候補者たちは、

業界では栽培マン《シンデレラガール予備軍》と呼ばれている。

彼女たちの推定アイドル戦闘力の初期値が1200LPほどだ。

 

中選挙区レベルでエラそうにしている中堅アイドル候補者の

アイドル戦闘力が4000LP程度とするとかなり低い。

しかし急激に成長しトップアイドルとなるシンデレラが生まれる可能性もある。

 

「他プロダクションの魔法少女の才能を持つ者に注意したまえ。

 グループ上位のアイドル候補者の実力を自らの目で確認することも大切だ。

 南ブロックはベルリン地区の北ブロックに比べれば……激戦区とはいえないだろう。

 それでも大選挙区で戦うライバルの底力も体感することができる」

 

例えばエリート戦闘民族《一流芸能人》のカクトは大選挙区からの参戦になるが、

芸能界で一流アイドルとして活躍していただけあって、

総統選挙という特殊な舞台でも戦闘力はA級アイドル候補者の18000LPと推定されている。

大選挙区では戦闘力五桁が当たり前、ドラゴンボールでいえばフリーザ編序盤だろう。

 

当初シューペアは初週100万枚の売り上げたレーティアの才能に、

かなり自信を持っていた。それは井の中の蛙大海を知らずだった。

芸能界のトップクラスともなれば1000万の売り上げが当たり前の世界だ。

 

今回の総統選挙にも中選挙区からVRユーチューバーの上位者、

ネットアイドル四天王が参戦すると噂されている。

 

「それに他事務所の敏腕プロデューサーとも出会えるかも知れない。

 君たちプロデューサーのレベルだって、

 アイドル候補と同様に比較されているのだよ」

 

中堅・大手事務所は成長したアイドル候補者を弱小事務所から引き抜くことだって可能だ。

移籍はアイドル候補者にとっても、より良い環境で成長でき、

大手のバックアップを受けれて更なる高みに昇れるというメリットがある。

 

また弱小事務所にとても移籍金は大事な収入源だ。

資本力がなく規模の小さいプロダクションでは大選挙区は戦えない。

そこでアイドル育成ビジネスを主軸に置いた芸能事務所も数多く存在する。

 

この業界で敏腕と呼ばれるプロデューサーになれば、

アイドルでなくとも大手からの引き抜きだって十分にある話だ。

 

全国区の大選挙区をメジャーリーグと呼ぶのはそのためだ。

メジャーとマイナーの舞台では、すべてに大きな差がある。

 

893プロ歓喜力行旅団だけではなく

大手といわれる事務所は数多くのプロダクションを傘下に収めている。

 

プロダクションごとに得意とする分野があるので、

特徴に合せてアイドル候補者を分散させるのは容易い。

 

当然だが系列のアイドル同士が戦わないように、

談合して選挙区を分けるプロダクションもある。

 

逆にあえて系列アイドル同士をじゃんけん大会などで競わる所もある。

893プロの系列では蟲毒のようなサバイバルレッスンが行われる。

過酷な競争下で鍛え上げられたアイドルは他所とはギラつきが違う。

生き残った者だけが旅団《クモ》の狩人《ハンター》なり、

ライバルオーデションなどで他事務所のアイドルを情け容赦なく蹂躙する。

 

「とにかくアドルフ君の才能に引っ張られるだけでは駄目だ。

 私たち大人もしっかり成長してアドルフ君を支えてあげる必要がある。

 それがプロデューサーとプロダクションの課題だ。

 今後もしも所属アイドルが躓くようなことがあれば、

 それはアイドルの責任ではなく、我々の責任なのだからね」

 

「アイドルの成功は、アイドルのもの。

 アイドルの失敗は、プロデューサーのもの

 それがプロデューサーの心構えだ。

 一に勉強、二に勉強、我々も成長を忘れてはいけない。

 何よりアイドルの失敗を、アイドルにせいにしてはいけないよ。

 私からは以上だ。……さて、他には何かあるかね?」

 

会議中のメモをざっと眺める

 

・中選挙区の南ブロックAグループに立候補

・南Aグループ本命はマインシュタイン大将

・特別公開討論の[TOP×TOP!]の党首討論会に参加(第19週)

・2st曲として『READY!!』をリリース(第14週)

・南ブロックの全党大会《フェス》が開催(第15週~)

・レーティアのレッスンは成長タイプを考慮しながら様子見

・警護担当の要員を雇用予定(要警備指揮能力)

・事務担当の要因を雇用予定(要情報処理能力)

 

ゲッベルスが俺の情報端末を覗いてくる。

てめえは社会人ならメモくらい取っとけ!

 

「あ、選挙ポスター《グラビア》の撮影がまだよ!」

 

「それだっ!!」

 

小選挙区で意図的に露出を控えてたから、選挙ポスターを用意していない。

全党大会《フェス》に選挙ポスター《グラビア》は必要だ。

 

「ふむ。写真家《カメラマン》の手配は……そうだね。

 シューペア君にお願いしてもいいかね?」

 

「はいっ! 分かりました」

 

写真家の伝手はないけどドクツのファンシズム連盟にでも相談に行けば大丈夫だろう……

あそこは芸能界における商工会議所のようなものだ。




できるだけ原作ゲーム「大帝国」の登場キャラ(軍人)が使いたい。
ということで無理やり理由を付けてアイドル総統選挙に投入してますが、
やはり業界関係者が足りないのでオリキャラも多いです。

ロベルト・ハイドリッヒはライバル事務所のポジションです。
893プロは961プロよりずっとえげつないですが……。

総統選挙編では宇宙艦隊の艦隊戦とかは書けないので、
アイドル候補者たちによるオーデション(公開討論会)での
ViDaVoを駆使した熱いアイドルバトル(政策討論)がメインで行われます。


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第14話 アドルフの専属写真家と元傭兵の警護員

小難しい業界話が続いたので、ほのぼの展開です。

美人プロデューサーに殴られたい。
美人プロデューサーに蹴られたい。
美人プロデューサーにいじめられたい。
美人プロヂューサーに辱しめられたい。
その姿をアイドルに視姦されたい……。

そんな変態的な需要にお応えしました。


 

――――6923プロ会議室 2nd曲リリース、第14週――――

 

「このバカチンがぁっ!」 (((((;`Д´)≡⊃)`Д)、;'.・

 

「……」

 

「何か言いなさいよっ!」 ヽ( ゚∀゚)ノ┌┛)`Д゚)・;'シューペアP

 

ある意味6923プロの恒例行事ともいえる光景だが、

いつもと明らかに威力が違う。手加減が一切ない。

マジパンチに、マジキックだ。シューペアは反撃も反論もしない。

 

「なあ、ヘス代表は止めないのか?」

 

「ふむ。今回はシューペア君に明らかな非があるからね」

 

二人のプロデューサーを周囲の仲間が見守る。

 

「ごめんな――」

 

ゲッペルスP○(#゚Д゚)=(  #)≡○)Д`)・∴'.ゴメンナサ…

 

「アイドル《レーティア》を傷物にして、ごめんですむかぁあ!!」

 

「お、おい。ゲッペルス。

 もう許してやったらどうだ?

 あのときは腹が立ったが、結局は何もなかったんだ。

 こ、このままではシューペアが死んでしまう」

 

ついに見かねた被害者《レーティア》が加害者を庇う。

 

「レーティア、貴方が優しいのは知ってるけど、

 こーいうダメ男を甘やかしたら危険よ」

 

イイワケアルノカシラヽ( ゚∀゚)ノ┌┛)`Д゚)・;'

 

_| ̄|○ il||li イエナニヒトツアリマセン

 

「ほら。本人もこう言ってるわ。

 童貞はすぐに調子に乗るから殴って躾ける必要があるの。

 もう何度も、何度もしょーもないミスを!!」

 

「いや、あのときはシューペアも側にいなかったんだ」

 

「カメラマンだけにグラビア撮影を任せて

 プロデューサーが現場を離れるなんてありえないわ!

 どうしてマネージャーの私に連絡しなかったのよッ」

 

(c=(c=(c=(c=(゚ロ゚;c=アチャチャチャチャチャ-!!

 

「シューペアも国営の事務所が紹介してくれた

 身元が確かなカメラマンが、

 まさかセクハラ写真家だなんて思いもしないさ」

 

「こいつのその考えが甘いのよ!

 地位や肩書とか資格とか保証とか……

 内面を視ずに外面にコロッと騙されるのが未熟なの!

 だから貴方はヒトを見る目がないって言ってるのよ!!」

 

 _ノフ○グッタリ ついにシューペアが動かなくなる。

 

「あのー。ゲッペルスさん?

 お陰で私が雇ってもらえたのだから

 ……結果オーライってことでダメかしら」

 

レーティアの隣に座る小柄な女性が取りなす。

背格好はレーティアより一回り以上小さい。

小動物のような見た目は明らかに幼女だろう。

 

短く切りそろえられたの水色の髪が儚い雰囲気を漂わせる。

体格に似合わない大きなライカ(写真機)が首からぶら下がっていた。

 

「もう二人とも優しいんだからッ!

 お姉さん一人が悪者みたいじゃない。

 仕方ないわね。今回はこれで許してあげるわ」

 

「おーい。生きてるか、シューペア?」

 

「あのー。シューペアさん、大丈夫ですか?」

 

( ;∀;) フタリハマジテンシダナー

 

「ふむ。どうやらシューペア君も大丈夫のようだ」

 

「当然よ。加減は心得てるわ」

 

((( 嘘だッ!!!)))

 

何人かの心の声が同調したが誰ひとり口には出さなかった。

 

「それでヘス代表、692プロからは返事があったんですか?」

 

芸能事務所の番号振り分けはアイドルアカデミー大賞(IA大賞)を主宰していた

欧州アイドル連盟(UEIA)が発展解消した欧州ファンシズム連盟(UEFA)が行っている。A

欧州ファンシズム連盟への届け出順で4桁の番号から任意の空き番号を選択できる。

設立時に各国に振り分けられており1~100は初期の番号、3桁の事務所は老舗の可能性が高い。

 

組織名は芸能事務所「○○××」や「○○××」芸能事務所が一般的だが特に規定はない。

業界内では番号プロが一般的に使われるが、あくまで業界用語である。

公の場では正式名称で呼ぶ。6923プロは、ドクツ第三プロダクションが正式名称だ。

 

あえて芸能事務所を名乗っていないところある。

政治色が強いところは「~党」「~団」「~本部」「~協会」がとなる。

逆に商売色が強いところは「~会社」「~放送局」といったところだろう。

 

692はドクツに振り分けられたドメイン(管理番号)だ。

6921~6929までのプロダクションは以前は全て国営事務所だった。

オジャルマル共和国になって国営プロダクションの一部民営化が実施され、

ヘスが官公オークションが行われ6923プロの権利を手に入れたのだ。

 

「オジャルマルク共和国ファンシズム連盟本部(692プロ)から回答があった。

 連盟本部が紹介した件のカメラマンは6921プロからの紹介で派遣されたそうだ」

 

「6921プロというと……今は?」

 

「旧名はドクツ第一プロダクションだったが、

 今はベルリンの外国特派員協会が使用中している管理番号だ」

 

「じゃあスケベカメラマンって外国特派員だったの!?」

 

「ああ、そういえばガメリカ人って言ってたな」

 

「ガメリカ人カメラマンのデビッド・キャヌホークですね。

 相当な女たらしで業界では有名ですよ」

 

「ああ、エーファ君の言う通りだ。

 デビッド・キャヌホーク氏はガメリカの統合本部(ペンタゴン)所属の

 従軍記者で総統選挙には駐在武官(芸能顧問)として関わっている」

 

「芸能顧問ってことはエロカメラマンが

 総統選挙でビジュアル審査員とかやってるわけ?

 いくら審査員が国内に足りないからって呆れたものね!」

 

「うほん。先方からは謝罪はあったがお咎めはなしだ。

 グラビア撮影中のSEXコミュニケーションは、

 ガメリカでは一般的だから文化の違いに気付かなかったと言っている」

 

「ふふふ、ふざけてるわね。ぶっ殺してやろうかしら」

 

ゲッペルP(#^ω^)ピキピキ

 

「落ち着いてくれゲッペルス。

 選挙ポスターの撮影にしては用意されてた衣装もおかしかったんだ」

 

「レーティアさん、どんな衣装があったんですかー?」

 

「オクトーバーフェストで着るようなドクツの民族衣装があったんだ。

 たしか『やっぱりドクツ娘なら民族衣装だよね』とか言ってた。

 他にもチュン帝国の……民族衣装……そうチャイナがあった。

 きわどい水着とかもあったけど、国ごとの衣装が多かった気がする」

 

「ふ~ん。コスプレ好きの変態カメラマンだったのかしら?」

 

「うーん。総統選挙は外国籍のアイドルもいるから、

 民族衣装なんかで個性を出すってのも一つのイメージ戦略ですよ?」

 

「うほん。話が脱線してるが、戻しても構わないかね。

 これがキャヌホーク氏から送られて来た謝罪文だ」

 

『ついカッとなってやった今は反省している。

 今までは悦んでくれるアイドルも沢山いたんだ。

 これもアイドルが魅力なのが悪いんだ。

 審査で減点とかするつもりはないから怒るなよ』

 

「絶対に殺す! ぶっ殺してやる!!」

 

「反省する気ゼロだな」

 

「うわー、これは酷いですね」

 

「つまり双方に遺恨はなしってことで有耶無耶ですか?」

 

「「うわ、シューペアが立った!!」」

 

「あ、シューペアさんが復活しましたね」

 

「残念ながらシューペア君のいう通りだ。

 正直なところ裁判に訴えても無駄だろう。

 アイドルの売名行為とも捉えられかねられん」

 

「いや私は訴えるつもりなんてないぞ」

 

「本気で裁判まで考えてたのは、

 ゲッペルスさんくらいですからねー」

 

「プロデューサーにとって

 担当アイドルは我が子より大事なのよ!!

 この童貞のせいで! 

 もう一発だけ本気で殴っていいかしら?」

 

「む、無理です。次は死んでしまいます」

 

ガクガク((( ;゚Д゚)))ブルブル

 

「震えて脅えてるシューペアさんって

 小動物みたいで可愛いですね(鬼畜)」

 

「まあまあ、落ち着き給えゲッペルス君」

 

「おーい、ゲッペルス。もう戻ってこい」

 

( ・_・)ノ☆(*_ _)アイドルチョップ!!

 

「私は今まで何を……」

 

(  ゚ ▽ ゚ ;)ハッ!! 

 

「どうやら……人格が悪魔に支配されてたみたいですねー」

 

「え、マジで? ゲッペルスの素じゃなかったの?」

 

「いや、だって発言もいつもより過激だったし――」

 

「エロゲーじゃないと表現できないような表情してましたよ?」

 

「ふむ。悪魔祓いができるとはアドルフ君の

 魔法少女としての才能は間違いなく本物だね」

 

「ところでヘス代表、レーティアの警護担当の件ですが?」

 

「おいっ! ゲッペルス、戻ったんなら謝れよ!」

 

「は?(威圧) 貴方、まだそんなこと言うわけ?」

 

「す、すいません。私が全て悪かったです……反省してます」

 

「ああ、良い人材が見つかってね。

 今晩、たるき亭で歓迎会をするよ予定だ。

 エーファ君も正式な専属契約は未だが一緒にどうかね?」

 

「はい! よろこんでー」

 

「そうね! 今日は一緒に飲みましょうエーファ。

 レーティアはグラビア撮影があるから

 お肌を考えてアルコールは厳禁よ」

 

「えっ? 水髪幼女にお酒飲ませて言い訳?

 未成年に対する飲酒強要は逮捕されるぞ」

 

「ぷー、失礼ですね! シューペアさん。

 私はこう見えてもゲッペルスさんより年上なんですよ!」

 

工工エエエエェェェ(゚Д゚)ェェェエエエエ工工

 

「あら? 私は20代だけど年下かと思ってたわ」

 

「俺は10代っていうか明らかに幼女かと」

 

「私は同い年くらいかと思ってた」

 

「ふむ。私は業界慣れしてる人間だとは思っていたがね」

 

「でも本当の年齢はひ・み・つです」

 

 

――――同日夕方、醸造所レストランたぬき亭――――

 

 

カンパーイ!! (*゚∀゚)ノ□☆□ヾ(∀`三´∀)ノ□☆□ヽ(゚∀゚*)っ カンパーイ!!

 

しばらく歓談が続き、6923プロ代表のヘルマン・ヘスが音頭をとる。

 

「さて、料理がどんどん運ばれてくる前に

 各自に簡単な自己紹介をやってもらうかな。

 それじゃあプロメンNo01のシューペア君からだ。

 紹介が終わったら後はてきとーにやってくれたまえ」

 

「政策担当プロデューサーのハンス・ウルリッヒ・シュペーアだ。

 予備役の空軍士官で元エースパイロット(ルナシュータ―)だ。

 趣味は――」

 

 挨拶は手短に( ‘д‘)つ))`Д´)グリグリ

 

「私がプロメンNo02のグレシア・ゲッベルスよ。

 レーティアの専属マネージャー兼メインプロデューサーね。

 前職は大手デパートの宝飾店に勤めていたわ」

 

「6923プロ代表アイドル候補者のレーティア・アドルフだ。

 プロメンNoは初めて聞いたが社員証に03とあるな。

 帝国美術アカデミーの芸術発明科の学生だ」

 

(;゚Д゚)(゚Д゚;(゚Д゚;)ナ、ナンダッテー!!

 

「い、いきなりどうしたんだ」

 

「え? レーティアってアカデミーの学生だったの?」

 

「失礼な私が無職のニートとでも思っていたのか」

 

「いや、それは思ってないけど……

 帝国美術アカデミーといえば欧州の芸術家が憧れる

 一級フラグ建築士の資格が取れる最高学府――」

 

一級フラグ建築士の資格があれば人脈を大きく広げることができる。

男なら一度は誰しもが憧れる最もモテる職業がフラグ建築家だ。

 

「あら? シューペアは知らなかったの?

 レーティアは一級フラグ建築士の資格も持ってるわよ。

 さすが人を惹きつける才能を持ってる人間は違うわよね」

 

「さすがレーティアさんですね!」

 

「……エリートなんだ」

 

_| ̄|○ 負けた。圧倒的な敗北感。

 

結社の陰謀さえなければ俺もフラグ建築士に……

いやエロカメラマンの件だって結社の仕業だ。

気付かなかったが間違えないだろう。

 

「ふむ。シューペア君は芸術コンプレックスがあるから

 そっとしておいてやりたまえ。

 新メンバーを紹介する前に私が先に名乗ろう。

 プロメンNo00代表のヘルマン・ヘスだ。

 No04のエーファ・ホフマン君、

 No05のヴィスペル君、我が6923プロにようこそ!!」

 

ヘスが告げると細身の人間が音もなく姿を現した。

 

「……プロメンNo05傭兵出身のヴィスペルです。

 契約通り働くので、よろしく」

 

「えー、私がプロメンNo04で良いんですか?

 ミュンヘン地区にアトリエを構える写真家で、

 エーファ・ホフマンと言います。

 華々しい実績はありませんが業界は長いです。

 今回は専属契約を結んで頂けるとのことで光栄です」(ぺこり)

 

「アドルフ君のグラビア撮影は、

 すべてホフマン君に任せるつもりだから

 よろしく頼むよ。そうそう。

 シューペア君もアーネンエルベのメンバーだ」

 

「シューペアさんも遺産協会員なんですか?

 ちょっと意外かもー」

 

「ヴィスペル君は、この通りの凛々しいお嬢さんだ。

 女性が二人も増えて。

 また職場が華やかになると思うが、

 みんなで仲良くしてやって欲しい」

 

頃合いを図っていたのか店主が料理を運んでくる。

たぬき亭はお酒も美味しいが、料理も美味しい。

アーネンエルベの会合にも使われるミュンヘン地区の穴場だ。

 

「それじゃあ改めまして」

 

"(●´・ω・`)/q旦☆旦p\(´・ω・`○)"カンパ~イ!!

 

じーー。水髪幼女が見つめてくる。

 

「どうかしたの?」

 

「いえ、アプフェルヴァイン(りんご酒)なんて珍しいなーと思って」

 

「シューペアってビールも普通に飲むけど、りんご酒好きよね」

 

「ベルリンの衛星フランクフルト出身なんだよ。

 だから名物のアプフェルヴァインは故郷の味なのさ」

 

「へー、シューペアはフランクフルト出身なのか。

 ゲッベルスはベルリンの衛星ケルン出身だからお隣みたいなものだな」

 

「キャーッ! レーティア、ありがとう。

 ちゃんと私の生まれを覚えてくれてたのね」

 

「そういえばヴィスペルは傭兵やってたらしいけど得意分野とかあるの?」

 

少し輪に入れていないヴィスペルにシューペアが声をかける。

 

「特技は艦砲戦(レーザー攻撃)に長けていることかな?」

 

「艦隊戦の花形の艦砲戦か。

 ま、航空戦の時代がすぐそこに来てるけどね」

 

「私はお金のために傭兵をやってただけだから戦い方には興味はないよ」

 

じーー。水髪幼女が素っ気ない元傭兵を見つめている。

 

「……なにか?」

 

「わたし傭兵や軍人とはご縁がないのですが、

 ヴィスペルさんって何処かで会ったことがある気がするんですよ」

 

「南回り航路《グランドライン》で戦っていたが?」

 

南回り航路《グランドライン》は、

星域ネットワーク図上(世界地図)が完成していなかった

大航海時代(ワンピース)のワープ航路の呼び方の名残だ。、

 

エイリス帝国と日本帝国を結ぶ航路で、

アラビア・アフリカ星海域を通るルートをグランドライン。

アジア星海域を通る北回り航路《レッドライン》と呼ぶ。

 

ちなみにガメリカ星海域をかつては《新世界》と呼ばれていた。

 

「いえ、もっと最近です。総統選挙のどこかで……あっ!」

 

「……くっ」

 

「そうだ。大航海《でらべっぴん》に確か――」

 

「え? ヴィスペルってアイドル候補者なの?」

 

「そうなのか、ヴィスペル?」

 

「うほん。本人から口止めされていたがこうなっては仕方ない。

 私が説明しよう。良いかねヴィスペル君?」

 

「……はい」

 

「ヴィスペル君は元1116プロ所属のアイドル候補者だ。

 残念ながら小選挙区で落選してるがね。

 とは言ってもヴィスペル君の力量不足というよりは事務所の支援不足だ」

 

「1116プロは弱小芸能事務所ですからね」

 

「もう一人の元傭兵アイドル候補者は小選挙区を通過したそうだ。

 1116プロには……言い方は悪いが穀潰しを養うような余裕はない」

 

「うっ……」

 

「そこで白羽の矢が立ったのが我が6923プロだ。

 アイドル候補者として総統選挙の経験がある元傭兵提督。

 警護担当要員として、これほど適任者は中々見つからないだろう。

 喜んで移籍金を支払ったよ」

 

「傭兵提督として護衛艦隊を指揮した経験が何度もある。

 アイドル候補者よりずっと楽な仕事だ。任せて欲しい」

 

「ヴィスペルはどうしてアイドルになったんだ?

 何か魔法少女としての願いがあったのか?」

 

「うっ……それは……」

 

「あ、それは私も気になるわね」

 

「1116プロはこれといった党の理念もない芸能事務所だし予想できないな」

 

「ヴィスペルさんの夢、私も聞きたいです!」

 

「あぅ、そ、それは……」

 

「自分の夢を語るのが恥ずかしいのか?」

 

「と、投資に失敗したんだ! その借金だ!!」

 

「「はあ?」」

 

「あー、そういえばワルプルギスの夜のせいで、

 株価や為替レートはボロボロの状態ですからね」

 

「そうだ! ワルプルギスの夜のせいで、

 都心のマンション(ファミリータイプ)一戸分の損失が出たんだ!!

 せっかく命がけで稼いだ報酬を計画的に投資してきたのに……」

 

「ご愁傷様、ワルプルギスの夜の影響を受けていないのは、

 アマゾンのハニーポイントとEroCoinくらいかな?」

 

「あんなのゼッタイに値上がりしないと思ってたのに……ちくしょう」

 

「ヴィスペルさん、すいません。失礼なこと聞いて」

 

「ごめんなさい。まさかマンション購入の夢が崩壊するなんて」

 

「ワルプルギスの夜は私が倒して敵を取ってみせる!」

 

「もういいよ。同情するならチップをくれ!

 あと、想像以上の働きをしたらボーナスをもらえると助かる」

 

「我が6923プロはアドルフ君が選挙区で当選するごとにボーナスが出る。

 アイドル候補者だけじゃないぞ。全社員にだ」

 

「ホントか!?」

 

「四大討論会-グランドスラム-ごとの臨時ボーナスもあったわよね」

 

「そういえば俺は1stシングル曲には殆ど関わってないのに

 オーバーマスターのミリオンヒットのときにボーナス貰ったわ」

 

「うわー、噂には聞いてましたけど超ホワイトなんですね」

 

「私も発明に費用がかさむからな。お金はいくらあっても足りない。

 アイドル総統になる前にもドンドンと稼ぐつもりだ!」

 

「ヘス代表! 私は卑しい鼠ですね。何でもしますからボーナス下さい!」

 

「「ん? 今なんでもするって言ったよね?」」

 

「うわー、三人がハモリましたよ。レーティアさん」

 

「ヴィスペル、忠告しとくが此処で何でもしますと言うと、

 本気で何でもさせられるから注意した方がいいぞ」

 

「……け、契約書通りに頼みます」

 

「あと我が6923プロでは、

 所属スタッフのクリエーション(創作活動)は禁じていないが、

 就業時間中の副業は禁止だから気をつけたまえ」

 

「は、はい気を付けます」

 

(創作活動限定だと個人消費者金融は難しそうだな……)

 

「そういえばレーティアさんってホント凄いんですね!」

 

「レーティアが、どうかしたの?」

 

「C級アイドル候補者なのに……ほら」

 

「え? ……非公式ファンサイト!?」

 

「レーティア・アドルフ私設親衛隊SS……ね。

 ネーミングは60点ってところかしら?」

 

「非公式ファンサイトなんて

 普通はトップアイドルの手前からですよね?」

 

「たしかに公式サイトだってディザーサイトのままなのに」

 

「それは貴方が連れて来たエロカメラマンのせいで、

 選挙ポスター《グラビア》撮影が遅れたからでしょ!」

 

「あ、はい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

 

「あー、シューペアさんが壊れた」

 

「ふむ、今回の件はシューペア君も随分とトラウマになってるみたいだ」

 

「……そうだ株式投資は止めて、次はEroCoin投資を」

 

「な、なあ。これは私が叩いたほう《アイドルチョップ》がいいのか?」

 

こうしてミュンヘンでの一夜は騒がしく過ぎていく。

 

シューペアはふと気づく。

失敗もあったが自分は6923プロでは幹部候補と言えるだろう。

有能な上司の下で風通しの良い組織。

若い女性が頑張っているアットホームな環境。

笑顔が絶えない職場で、勢力拡大のためやりがいもある。

しかも自分の頑張りでアイドル総統を誕生させることができるのだ。

 

負け組かと思っていた自分にも運が向いて来たのかもしれない。

 

対価として己の存在の消滅(アカウントロック)を懸けた絶対遵守の契約を忘れて

ほろ酔い気分で浮かれるシューペアの背中を死神がジッと見つめるのだった。

 




ヒロインのアイドル仲間が増えていく作品は多いですが、
こちらではヒロインを支えるスタッフが増えていきます。

一人のに対してプロデューサー
担当アイドルが無数に増えて行く展開などは考えてません。

いわゆる異世界ハーレム系に対するささやかな反抗です(嘘です)
えろかみ大帝国(R-18)と違って、
エロも書けないのにヒロイン増やすつもりはないです。
健全なアイドルはドンドンと増えるよ!!


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第15話 全党大会ズュート・ロックフェス

原作ゲーム「大帝国」の公式人気投票No4のデーニッツがついに登場


 

――――南ブロック全党大会前半、第15週――――

 

総統選挙《アイドルアルティメット》では――

芸能事務所(政党団体)主催の党大会をコンサート。

選挙管理委員会(692プロ)主催の全党大会をフェス。

 

とそれぞれ区別している。

 

公開討論会《オーディション》との違いは審査対象だ。

オーディションは例外もあるが基本的に審査員が、

参加したアイドル候補者を審査する。

 

オーディションを突破したアイドルには、

有権者にアピールする舞台(ライブ会場)が与えられる。

 

オーディションでは、

如何に対戦相手(敵アイドル)に打ち勝つかが重要になる。

 

コンサートやフェスは街頭演説の延長で、

演説会場《ライブステージ》が大きいものを示す。

つまり有権者、業界関係者へのアピールの舞台だ。

 

南ブロック<ズュート>の全党大会、

ズュート・ロックフェスが本日から開幕だ。

 

ベルリン星域の南北東西の四か所で開催される全党大会は、

四大ロックフェスと呼ばれ中選挙区の始まり告げる大イベントだ。

アイドル候補者が多いだけの小選挙区とはまた違う雰囲気で、

いよいよ候補者を真剣に選ぼうと家族層や保守層も集まり始める。

 

ゲッベルスはライブ準備でレーティアの付き添い。

ヴィスペルは二人の警護とライブ会場の視察。

 

手すきのシューペアとエーファが他のアイドル候補を物色していた。

エーファはレーティアの見事な選挙ポスター《グラビア》を完成させた。

 

堅物で服装とかに無頓着なレーティアも女の子らしいところがあって、

子猫や子犬の小物を集めたりと、可愛い生き物好きなのだ。

エーファはレーティアと比べても随分と小さい見た目幼女(年齢不詳)だ。

だから愛玩動物っぽいところがレーティアの琴線に触れたらしい。

時々ゲッペルスPが嫉妬するくらい今や二人は仲良しだ。

 

ヴィスペルは素の性格もあるのだろうが一歩距離を置きつつ、

きちんと契約通りの仕事をこなし、6923プロに溶け込んでいる。

 

シューペアも自分を政策担当プロデューサーとして特化させて、

ゲッベルスが苦手とする軍事分野や経済分野で、

ベテラントレーナーと連携しながらレーティアをレッスンを行っている。

 

レッスンが終わるとレーティアは師匠のVTVNのところに行き、

芸術、発明と趣味の創作活動(学術論文制作)を行っている。

ヘス代表の固有結界を体験したレーティアは淫子に興味を持ち、

相対性理論と量子理論を統合した統一宇宙理論に、

淫子の働きを加えた新しい淫子物理学の構築に励んでいた。

 

「う~ん、やっぱりAグループでは――

 1188プロのアイゼン・マンシュタイン候補が

 一歩、二歩と抜きんでてますね」

 

「各ブロックのAグループは首位当選の一枠のみだけからね。

 早々と大物候補が立候補を表明すると、

 他の芸能事務所はブッキングを避けるのが普通だよ」

 

マインシュタイン候補がステージで演歌を歌い終えて去っていく。

バリトンのオペラ歌手顔負けの華やかな、色気のある声が特徴だった。

古典的な表現は総統選挙の流行曲から大きく外れてはいるが、

こぶしのきいた演歌は多くの家族層を引き付けるだろう。

 

1188プロは規模は中堅だが歴史ある保守政党で、

原画理想主義《大ドクツ主義》を永らく掲げている。

いい父、いい母による理想のドクツの家庭の実現。

一般的に支持され易い愛国保守だと言えるだろう。

アイドル候補者の特徴と、プロダクションの方向性がマッチしている。

 

目ぼしい候補者や気になった候補者のライブはしっかりと観察しながらも、

小選挙区を何とか通過した程度の候補者のライブは退屈だ。

中選挙区は全体で1000人程度のアイドル候補者が立候補している。

南ブロックだけでも200~250ほどの候補者がいるのだ。

 

並行しながら別の会場で行われている他ブロックの

全党大会の中継《ライブヴューイング》を観戦したりする。

席に座りっぱなしの党大会《コンサート》と違って、

全党大会《フェス》は有権者がステージを自由に移動しながら

各アイドル候補者の政策を吟味するのが特徴だ。

 

ボーカルを特に重視することをロックと言ったりする。

だから政策を重視した有権者はロック・ファンと言われる。

全党大会がロック・フェスと言われるのも、

やはり固定ファンが集まる党大会に比べても有権者の意識が高いからだ。

 

ビジュアルは勿論だが、音楽性にうるさいファンを唸らせるには、

ボーカル能力(提案政策)やダンス能力(政策実行力)が必要となる。

 

「北ブロックAの本命が人気VRユーチューバー四天王の一人。

 総統選挙前に上場を果たした38(詐欺)プロの党首ですね。

 ドクツ系ガメリカ人“炎上芸人”エンゼルフレンチ・リヒト候補。

 政策は原画至上主義と、反ハニワ主義ですかー」

 

原画至上主義は、愛国主義政策の極右で、二次創作は認めないとする愛国政策だ。

分かり易く言えば、愛国の定義は国家が管理するという政治思想だ。

原画至上主義勢力がアイドル総統になれば間違いなく言論の自由は弾圧される。

 

反ハニワ主義は埴輪陰謀論に対する反発から生まれた人種差別政策の一種だ。

見た目が埴輪のハニー族やアライグマのマダラスカル族、

イタリンの子豚ポルコ族、大豚のイベリコ族、北欧の毛深いバイキング族など。

外見による人種差別というのは統一宇宙歴以前から存在し根強い。

 

原画至上主義の原画という言葉も民族間の外見の違いは、

原画(創造主)の違いだと主張する宗教思想からもたらされた考え方だ。

 

ただ民族によってかなり外見的な特徴が違う為、原画の違いは大勢に受け入れられている。

 

例えば理想的なドクツ民族の外見は「織音」顔だとされている。

またエイリス美女は「MIN-NARAKEN」顔だと褒めら讃えられる。

ロシアン民族は「むつみまさと」的な外見だと言われる。

豚が大好きなイタリン美女は「月餅」顔が特徴だ。

日本人に多い外見的な特徴は「おにぎりくん」顔とされる。

 

多民族国家のガメリカ共和国を除き、ある程度の原画に対する尊重は各国にある。

ただ原画至上主義となると極右思想といって問題ないだろう。

 

つまり極右思想でハニーに対する人種差別政策を掲げるアイドルが本命というわけだ。

 

「東ブロックBの本命がビジュアル系ボーカリストで9610(玄人)プロ所属、

 ドクツが認める“一流芸能人”カクト候補だね。まさか総統選挙に出てくるとは……」

 

「総統選挙は世界的ですもんねー。

 業界人であれば乗るしかないと思います。このビッグウェーブに」

 

「主要政策はアルトコイン(暗号仮想通貨)による金融政策。

 そしてカクトもリヒトに比べればマシとはいえ反ハニワ主義政策なのか」

 

「ハニーってホント世界中で嫌われてますよねー」

 

アマゾン星域のハニーは世界の物流経済を支配している。

ハニーポイントのダーク・ウェブ界における影響力も大きい。

あと性癖も特殊というか、少しずれていて各宗派を困惑させている。

 

「アルトコインはEroCoinと何が違うんですか?」

 

「EroCoinから派生した暗号仮想通貨をまとめてアルトコインと呼ぶんだ。

 カクト候補が選挙で訴えているのは、

 ガメリカ共和国のノイマンとロスチャが協力して開発しているはずで

 XRPギップルと言われてる疑似アルトコインだね」

 

「開発しているはず……ですか?」

 

「そう。EroCoinを超える最強の仮想通貨だって財閥は謳ってるけど、

 誰も見たことがない幻の通貨だ。アレは出る出る詐欺の一種だろうね」

 

「へー、シューペアさんって経済政策にもお強いって聞きましたけど詳しいんですね」

 

「ま、まあね。これでも俺様はネットに強い(ハッカー)だから!」(ドヤ顔)

 

「じゃあ、EroCoinも初期から採掘《マイニング》してたりしたんですかー?」

 

「うーん、まあ少しだけね……ほら先っちょだけ」

 

「EroCoinって100万倍近くに値上がりしてますよねー。凄いじゃないですか!」

 

「まあ日本帝国で広まってプチバブルになってたタイミングで、

 暗号仮想通貨をカクトが宣伝してくれたから、それなりにね」

 

カクトはXRPギップルを推薦しているが今は存在していない幻の仮想通貨だ。

そうなれば必然的に大本であるEroCoinに注目が集まり自然と値上がりする。

欧米でのEroCoin投資はようやく一般に広まったばかりという状態だ。

 

「もしかしてー、噂の鯨さん(ホエールズ)ですか?」

 

「ま、まさか! 俺がホルダーズのメンバーだったら大金持ちだ。

 だったら一介の芸能事務所なんかで働いてなくって豪遊してるよ」(汗々)

 

結社の刺客《エージェント》に狙わている(たぶん妄想)ので誤魔化してはいるが、

シューペアは永世中立惑星スイスの銀行に預けた東洋Project関連の特許資産の他にも

多額のEroCoin資産をダークウェブ上に保有している。

需要の高まりにつれて隠し資産は膨大な額になっていた。

 

「そうですよねー。でもシューペアさんって経済にも情報にも強いでしょ?

 こないだレーティアさんにEroCoinの論文について講義《レッスン》してたし――」

 

EroCoinは概要はネット上にヤジュウ・センパイの偽名で学術論文が発表されている。

日本帝国からEroCoinバブルが始まったこともあり開発者は日本人ではないかとも噂される。

世界中のEroCoinの半分は彼らが所有するとまことしやかにささやかれいる。

EroCoinの開発に携わったメンバーがホルダーズと言われる人々だ。

 

実はシューペアはEroCoin全体の30%を独りで保有しており。

「ホエールズ(クジラ)」の名前で知られる最重要人物だ。

EroCoinは前世の知識《アカシックレコード》を元に生み出されている。

概要の学術論文を書いたヤジュウ・センパイの正体がシューペア本人だ。

 

当然ながらEroCoinはシューペア一人では開発、実用化はできなかった。

ダーク・ウェブに集ったEroCoinの開発者が[ホルダーズ(hodlers)]だ。

 

彼らは玉葱機関(オニオン)によるダークウェブ(Dark Web)を利用している。

秘匿量子暗号通信帯域ではユーザはコテハンというコードネームをやりとりしており、

互いに実名や所在地を知らず連絡を取ってアイデアを出し合いEroCoinを完成させた。

 

野獣ことシューペアと助けたのは――

情報分野では超天才級ハッカーの魔女と妖精の双璧。

淫子理論仮説(きゅうべい)に基づいたアドバイスを行った天才科学者の博士。

豊富な金融知識を持ち金融工学に精通しブロックチェーン理論を補強した幼獣。

そしてVer1が試作された時点で採掘《マイニング》に参加した聖女と淫獣。

 

野獣を含めた七人のはガメリカではセブン・シスターズ(Seven Sisters)と呼ばれ、

軍産複合体でさえ、その正体を把握できず噂の影に脅えている。

 

しかしEroCoinは安定版のVer2が完成した後、

魔女、妖精、博士、幼獣が開発から抜けて技術開発が停滞。

アルトコインと呼ばれるEroCoin論文を元にした暗号仮想通貨が手探りで作られている。

しかしXRPギップルが開発されていないようにEroCoinを超える通貨は生み出さていない。

何しろEroCoin論文は大天才のレーティアでさえ、一人では読み解けないほど難解だ。

シューペアの講義《レッスン》を受けて専門家顔負けの知識を身に着けているが、

そのレーティアがEroCoinは、それぞれの専門分野に通じる

五人の革新的天才が偶然に集ったからこそ生まれた発明だと唸るほどだ。

 

「あ、ほら。いよいよ。出てくるよ南ブロックの本命だ――」

 

「リーベ・フェアビンドゥング候補。所属は業界中堅の3150(最高)プロ。

 VRユーチューバー四天王の中でも親分と言われる筆頭アイドル候補者。

 彼女が南Aグループを避けてBグループで立候補するんですから、

 芸能業界って世知辛いですよねー」

 

「3150プロは巨乳至上主義のボーカリスト(政策通)を

 ビジュアル重視で揃えた事務所だっけ?」

 

「そうですね。彼女のスタイルは巨乳というには美乳でしょうが、

 ボーカリストとしての経済政策は巨乳至上主義ですよ」

 

巨乳至上主義はイタリンのムッチーニが掲げた政策だが、

けしてビジュアル(外見)アピールだけの政策ではないのだ。

ボーカル(政策)としては経済政策の一分野で、

 

政府は借金をしてでも多額の資本を投下して、

ワルプルギスの夜(世界恐慌の不景気)を退治するべき――

これが巨乳至上主義の主張だ。

 

逆に政府の不甲斐なさ(財政赤字)からワルプルギスの夜が生まれており、

行政を効率化して緊縮財政で政府の借金を減らすことで退治できる――

こう言って主張しているのが貧乳至上主義だ。

 

巨乳と貧乳は同じボーカルが経済政策(ロック曲)を歌っても相いれないのだ。

ロックのグループが音楽性(政策)の違いで解散するのは政策の差異が理由だ。

 

俺の嫁(宗教問題)と同様に誰もが譲れない線というモノが政策《Rock》にはある。

 

「四天王の筆頭のリーベ候補だと……

 総統選挙における実力(アイドル戦闘力)ってどれほどなのかな?」

 

ヘス代表からは肌でアイドル候補者の実力を~と言われていたが、

ピンっと来ない。今まで芸能界には興味がなかったからな……。

 

現役芸能人のみ用意された推薦枠を使用し、

カクト候補、リヒト候補、リーベ候補は中選挙区からの出馬となっている。

芸能界の実力者たちはA級アイドル候補者の本命とされている。

 

小選挙区は供託金《お布施》さえ容易すれば誰でも立候補できる。

小選挙区を何とか当選できたC級アイドル候補は、

芸能界のトップアイドルからすればモブ同然の雑魚キャラだろう。

リトルリーグ(少年選手)が、マイナーやメジャーの大人に挑むような物だ。

モブは芸能人の前座を温める客寄せパンダとして集められたともいえる。

 

「う~ん。正直なところ難しいですねー。

 私も長いこと業界にいますが、総統選挙は特殊だと思います」

 

「やっぱり? だったら新人候補(芸能界未経験者)でもチャンスはある?」

 

「いえ、やはり新人候補は厳しいですよ。

 芸能人はビジュアル(人気)の基本値が高いですし、

 ボーカル、ダンスのレッスン適性(経験)もあります。

 総統選挙で足りないボーカル(政策)やダンス(手腕)の面は、

 中堅や大手ならプロダクションの支援でカバーできますから」

 

「まあレーティアやマインシュタイン候補が特殊だよね。

 一般人はビジュアルでは芸能人に勝てないし、

 ボーカル(政策)、ダンス(手腕)の適性がある人間は共和国議員になってる」

 

「はい。その通りです! わかってるじゃないですかー」

 

「いや理屈としては分かるんだよね。色んなことが……。

 けど感覚的っていうか目の前のアイドルが力量や潜在力となると

 もはや見えないもの、測れないもの感じる力が必要でしょ?」

 

「なるほどー。シューペアさんは合理主義者《デジタル打ち》ですか?」

 

思考回路(打ち筋)の違いがデジタルとオカルトだ。

デジタルはシリアス時空に繋がっており、

オカルトはパロディ時空に繋がっている――と遺産協会の雀士は語る。

基本的に卓さえ囲めば相手がデジタルかオカルトか分かる。

 

「いや、不思議な力《オカルト》の存在は否定しないよ」

 

「遺産協会《アーネンエルベ》はオカルトマニアの集まりですしねー」

 

合理主義者《デジタル打ち》は、オカルトは陰謀論《トンデモ》だと否定している。

世知辛い(シリアス)世界でパロディを模索する雀士が集まったが遺産協会だ。

 

「非合理《オカルト》は理解できない?」

 

「僕は不思議な力《オカルト》は解明できるという立場かな?」

 

「なるほどー。レーティアさんと同じですね!」

 

「宇宙物理学の淫子仮説理論(きゅうべい)に挑戦するレーティアほどの才能はないけどね」

 

「理系(シリアス)というより、文系(パロディ)の合理主義者《デジタル打ち》?」

 

「情報分野(シリアス)の出身だけど、経済学を文系(パロディ)とするならそうだろうね」

 

「なら、私と一緒ですね♪」

 

「えっ、エーファも合理主義者《デジタル打ち》なの?

 宇宙宗教が専門って言ってたから非合理《オカルト》の権化《神》かと思ってた」

 

「宗教はオカルトではありません!!

 宇宙宗教(俺の嫁)は人類の歴史(欲望や願望)そのものです。

 宇宙の宗教の謎を解き明かすことで、人類は歴史の真実に辿り着けるのです!」

 

「オカルトなのかデジタルなのかよくわからない考えだなー」

 

「少なくとも私はパロディじゃなくってシリアスだと思ってます!」

 

「宗教問題って怖くない?」

 

「いやいや、だって世界的に考えたら無宗教の方が異常ですよ」

 

「まあ私は宗教(俺の嫁)を信じていませんって言うのは、

 薔薇派(衆道主義)とは違った意味で

 ノンケなのに『私はホモです』とアピールしてるようなもんだからな」

 

「そうですよ! 無宗教=ホモ=ホモは嘘つき=やっぱわかんだね。

 これが宇宙の真理《例のアレ》の一つです!!」

 

やばい。エーファって6923プロの癒し系常識人枠かと思ってたけど違った。

まさか宗教スイッチを持っていたなんで、

この史上最強ルナシュータ―(海のリハク)のもってしても見抜けなかった!

一生の不覚だ!これだから遺産協会(アーネンエルベ)は頭のおかしな奴らの集まりだって言われるんだ。

 

「あ、ほら南ブロックBグループのアイドル候補者が出て来たよ。

 別グループだけど一応はチェックしようよ!」

 

何とかエーファの気を反らそうと必死だ。

なんか周囲にはエーファを拝んでる人さえいるし……ヤバい。

 

「あ、エルミー・デーニッツ候補ですね! 一部でかなり有名ですよ」

 

「え? 地味なアイドル候補者に見えるけど?」

 

「はい、彼女は一見すると地味な女の子ですが……ほら」

 

やばい!ストップだ!誰か止めろ!

 

全党大会《フェス》は子供連れの有権者《ファミリー層》もいる

健全な党大会《コンサート》だ。

 

それなのにデーニッツのパフォーマンスは明らかに大人向け――

 

「そう! 初心者に優しい芸能事務所(8341プロ)所属の

 エミール・デーニッツ候補の売りは過激なビジュアルパフォーマンスです!」

 

これ子供が見たらアカンやつだ!!

 

「ちなみに8341プロは表向きは健全な芸能事務所を装っていますが、

 歓喜力行旅団(893プロ)の系列事務所の傘下(孫請け)です」

 

 

後にアイドル総統レーティアの元で潜水艦隊を率いることになるデーニッツ提督との出会い。

旅団(クモ)に捕らえれたアイドルを、

魔法少女レーティアは救うことができるのかだろうか――。

 

このときはまだシューペアも、ゲッベルスも業界の闇を知らなかった。

ヘス代表が恐れていたのはアイドル業界の裏側で行われてきた光と闇の戦い。

総統選挙の裏でも、魔法少女と魔女の狩人《ハンター》の戦いが密かに行われていた。

 

つづく

 




コードネームだけのキャラやオリキャラが多いですが――
なかには原作キャラだけど仮名だったりコードネームもいます。

匿名ネット記者エルの回で支援者が若草会だと、
後書きでネタバレしましたが問題ない範囲です。

シューペアやヘスのように「オリキャラ」だと明記するキャラもいますが、
明記されていないのは原作のネタ元を想像しながら読むのも楽しいかと思われます。

デーニッツの扱いが酷いかもしれませんが囚われのくっころ女騎士です。


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第16話 アドルフの発明品、アイドルスカウター

 

エミール・デーニッツの過激なライブパフォーマンスが始った。

ステージ衣装はスクール水着に上着だけのセーラ服を羽織っている。

 

もしもシューペアに前世の記憶が残っていれば、

「戦国ランスの柚美じゃないか!」と叫んだだろう。

 

舞台の上で恥ずかしがりながら腰ふりダンスをする

デーニッツに有権者(観客)からは歓声と罵声が飛ぶ。

 

きたーー! もっとやれー! もっと脱げー! 

 

デーニッツちゃん、つるんつるん! ありがたや~。

 

R-18でやれよ! ひっこめー! アウトだー!

 

水着だから恥ずかしくないもん! 水着はセーフ!

 

デーニッツちゃん、エロいよ! ロリフェイス最高!

 

見ちゃダメよ! フェスには子供もいるんだぞ!

 

ちっぱい! ちっぱい! ふぅ。 なめたい!

 

「あれさ。警備員(運営)に追い出されないのか?」

 

「8341プロは孫請けとはいえ歓喜力行旅団(893プロ)の系列です。

 運営のお気に入りだから目こぼしがあるんでしょうねー。

 炎上芸の一つとして認めているってことでしょうか」

 

賛否両論の過激なパフォーマンスをまとめて“炎上芸”と言う。

炎上商法は敵も作るが、有権者(ファン)の注目をより集めることができる。

芸能や政治の業界で今や一般的となりつつあるプロモーションの手法だ。

VRユーチューバー“炎上芸人”エンゼルフレンチ・リヒト候補は、

この炎上芸で多くのキッズの支持を集めて人気芸人となり成り上がった。

 

「そういえばエロ写真者のときにも思ったけど、

 選挙ポスター《グラビア》の水着ってどこまで許されてんの?」

 

「そうですねー。最後はファンシズム運営本部(692プロ)の判断ですし、

 ……個々の判断も写真家(創作者)によって様々です。

 私なら手ぶらに紐パン水着までなら『水着です』って主張しますよ♪」

 

「手ぶらに紐パンで水着とはいったい……うごご」

 

「日本帝国の漫画雑誌『週刊飛翔』に過激なお色気が描かれるご時世です!

 とらぶるを恐れたら創作者は何も描けなくなりますよー」

 

アマゾンのアステカソフトを通じて日本帝国-HENTAI JAPAN-の漫画雑誌などが、

欧州星海域でも気軽に手に入るようになった。もちろん変態紳士向けの内容だ。

 

「ふう……健全だな」(賢者タイム)

 

「アイドルは事務所に無理やりさせられてるって感じですよねー」

 

「う~ん、ただ、それが羞恥心とかを生んでるとしたら……

 意外と計算されたプロデュースの一種なんじゃないか?」

 

「喜んで腰ふりダンスとかしてたら痴女アイドルですもんねー」

 

「政策は、原画至上主義(極右愛国)なのっ!?

 同じ“炎上芸”でもリヒト候補の原画至上主義と随分違うんだけど?」

 

「あー、彼女の場合は原画(R-18)至上主義ですね。

 その辺を説明しますと――」

 

極右愛国の原画至上主義は、国家による原画(言論)の統制を強め

二次創作(言論の自由)を許さないという政治的な主張をしている。

ここで問題になるのが大人向け(アダルト)の統制である。

一般的な極右愛国(原画至上)はアダルトには厳しい。

しかし原画(R-18)至上主義はアダルトに寛容な立場だ。

国家が二次創作(薄い本)を禁止する代案として、

公的に政府が大人向けのオカズを用意すると政策で主張している。

 

つまり彼女の炎上パフォーマンスは、ただのエロダンスではない。

身体を張った政策的な主張(ダンスパフォーマンス)なのだ。

 

「ピーピピピッ……あれで推定アイドル戦闘力は4800LPか」

 

「せっかく素材がキュートなのに勿体ないはね。

 私がPだったら違ったプロデュースをするわよ」

 

「レーティアさん、ゲッベルスさん!

 会場の下見は終わったんですか?」

 

「ええ、明日のライブは万全よ」

 

「レーティア、その電脳メガネは何だ?」

 

何故かレーティアはモノクル(片目)のメガネをしていた。

耳あての部分には電脳機器が装着されている。

 

「ああ、これは天才の私が発明したアイドルスカウターだ」

 

「アイドルスカウター!?」

 

「ああ、エーファ。大航海《でらべっぴん》にある

 彼女のデータを調べて教えてくれないか?」

 

【エミール・デーニッツ】

 

イメージレベル:Lv6(要注目アイドル)

ランク:小選挙第XXX区、当選

所属:8341プロ所属アイドル候補

分類:一極集中型《スペシャル》

属性:天才肌《キュート》

 

Visual:B- 過激なビジュアルパフォーマンスが売り

Dance:C+ トークは苦手だが、過激なダンス活動に要注目

Vocal:C+ 歌はイマイチ。所属事務所の政策を評価

 

推定アイドル戦闘力:4400LP

 

[エルによるコメント]

ビジュアルはキュートだが身体は貧弱。それを炎上パフォーマンスで補う。

公開討論会を見るとトークは苦手だが、過激な活動をダンスとして評価した。

性格はアイドル向きではないだろうが所属事務所の後押しに期待の要注目だ。

グラビアに続き、より過激なイメージビデオの販売に期待が高まっている。

 

「誤差は400LPか統計の偏差範囲だと言えるが……むむむ」

 

「なあ、レーティア。アイドルスカウターについて教えてくれないか?

 まさか、推定アイドル戦闘力が計測できるのか。俺も詳しく知りたいぞ」

 

「あ、馬鹿シューペアっ!」 

 

「なにっ! シューペアは私の発明に興味があるのか!?

 これは淫子仮説《きゅうべえ》理論を応用して作った発明品だ。

 まずはアイドルの芸能評論やファンの声をビッグデータとして集めて

 形態素解析して――」

 

「あーあ、シューペアさん地雷ですよ」

 

「数値化については大航海に芸能評論家のエルが、

 LPの算出方法を論文として掲載していたから参考にした。

 アイドルが纏うオーラを淫子として計測して――」

 

しまった!芸術発明家VTVNに師事するレーティアは発明オタクだ。

こうなると止まらない。ゲッベルスもエーファも知らんぷりだ。

 

「やはり合理主義者《デジタル打ち》としては、

 レッスンによる成長が数値化できないのは許せなかったんだ。

 このアイドルスカウターがあれば根性論や精神論のような

 非科学的《オカルト》なトレーニングをこの世から一層できる!」

 

「それどころか私はレーティアさんの発明って

 審査員の在り方そのものを変えるような気がしますー」

 

「それは難しい所だな。推定アイドル戦闘力(LP)は目安だ。

 ファンが百人いれば、アイドルの評価なんて百通りある。

 審査員は多くのファンが納得のいく評価を専門家として、

 それぞれの基準で行っているに過ぎないんだ」

 

「ビジュアル重視の審査員もいれば、

 ボーカル重視、ダンス重視の審査もいるわね」

 

「そう。アイドルスカウターはあくまでエルの基準を元にしたものだ。

 まあ統計的なデータを元に算出した値だから理解は得られやすいと思うが」

 

「なるほどー。でもイメージレベルやLPはほぼ業界標準ですからね。

 そのアイドルスカウターって私にも作ってもらえますか?」

 

「あら? エーファは私と同じで機械なんか頼らずに

 アイドルを自分の目で判断するタイプだと思ってたわ」

 

「いえ、アイドルファンの友達にプレゼントしようかと。

 私もプロの写真家ですから、ゲッベルさんと同じです。

 機械の評価値に頼り過ぎると、自分の判断力が鈍りそうで」

 

「なあ、レーティア。それは量産可能な発明なのか?」

 

「量産は可能だが今は試作の段階だな。

 難しいのがオーラを計測する人工知能AIの部分で――」

 

「ああ、わかった。情報分野は後で協力するから俺にも作ってくれよ!」

 

「なにそれ、貴方プロデューサーなのに機械なんかに頼るわけ?」

 

「政策担当プロデューサーは政策に応じた楽曲制作が仕事だ。

 残念ながら俺にアイドルを見る目が無いって言うのがよく分かったさ。

 そーいうのはゲッベルスやエーファに任せる」

 

「それって開き直りじゃない!

 まあ人を見る目がないのに知ったかぶりされるよりマシかしら」

 

「でもアイドルスカウターがあれば、

 シューペアさんでもライバルアイドル候補者の

 客観的な力量を測ることができるようになりますよー!」

 

「そうだな。天才の私にとっては玩具みたいな発明だ。

 一点ものではなく、量産も視野に入れようじゃないか」

 

「あ、皆さんいよいよ。

 本日のラストBグループ本命のライブが始まりますよー」

 

「リーベ・フェアビンドゥング候補ね」

 

「話題のトップアイドル候補者という奴か……ピーピピピッ」

 

「VRユーチューバー四天王筆頭の戦闘力は気になるな」

 

リーベ候補者が舞台に上がると大勢の支持者(ファン)が、

メインステージへと押し寄せてくる。

 

「ニワカのアイドル候補者は相手にならんよ!」

 

ワー! ワー! リーベちゃん! 親分! ワー!

 

「ピートゥルン……推定アイドル戦闘力は7000LPだ」

 

「なにそれ! レーティアの大航海の評価より低いじゃない」

 

「ニワカじゃないけどハニワだね。見掛け倒し?」

 

「いえ、皆さん芸能人の本気はこれからですよ?」

 

会場にリーベ候補者の持ち歌の曲が流れ始める……。

 

「さあ、お魅せしよう……四天王の打ちしゅじを!」

 

「あ、噛んだ」「噛みましたね」

 

「政策は反ハニワ主義に――」

 

「財政政策は美乳主義、社会保障は無課金主義、

 後はプロダクション主義みたいですねー」

 

「音楽性(政策)のいくつかは6923プロと反対だな」

 

「6923プロの経営理念(党の思想)は、

 反無課金主義とアイドル至上主義ですからね」

 

「総統選挙ってアイドル選挙なのに、

 アイドル至上主義って意外と少ないわよね」

 

「殆どがプロダクション主義ですね。

 ファン主義も根強いけどねー」

 

これらはアイドル総統選挙後の権力の在り方の議論だ。

アイドル主義はアイドル自身に権力を与える考え。

 

主義の前に優先や至上がつくことで権力範囲が変わる。

アイドル至上主義となればアイドル総統による独裁だ。

 

プロダクション主義は、

アイドルが所属する政党団体が政治の舵取りをする。

まあアイドル総統なんてお飾りなんだから当然だろう。

例えばイタリンの黒ビキニ党はプロダクション主義だ。

アイドル党首の「ムッチーニ」はお飾りで、

実質的には「ぴえとろ」が政党団体を動かしている。

 

ファン主義となると権力はファン(有権者)が持つ。

アイドル総統が政策を実行するたびにファンの判断を仰ぐことになる。

ガメリカ民は我らが至高のファン優先主義(民主主義)だと言うだろう。

ソビエト民は我らが究極のファン至上主義(共有主義)だと言うだろう。

 

アイドル至上主義を極右とするなら、

ファン至上主義は極左になるだろう。

 

「ま、戦闘力7000LPだと中選挙区は当選できても……」

 

「何を言ってるんですかシューペアさん、

 会場が温まって来てるのが感じ取れませんか?」

 

「たしかにリーベ候補が熱を、オーラを発してるのが凝視えるわ」

 

「そのオーラっていうのが分からないんだけど……」

 

「ゲッベルスさんは凝ができるんですねー。念の素質が十分みたい」

 

「凝? 念?」

 

「いえ、こちらの話です」

 

「ピーピピピッ……馬鹿な……LPがどんどん上がっていく……」

 

「そうですよー。アイドルが舞台に上がれば輝くのは当然です」

 

「なるほど。たしかにレーティアも普段の恰好と

 ステージの上ではアイドルとしての輝きが違うわね」

 

「レーティア、リービ候補の推定アイドル戦闘力は?」

 

「……8000の200,300,400,500……9200……まだまだ上がる……くっ、計測不能だ」

 

「計測不能?」

 

「試作品なんだ。一万を超えるLPになると淫子が揺らいで人工知能AIが働かないんだ」

 

「やっぱり大選挙区レベルとなると推定LPは一万を超えるのか」

 

「少し浮かれてたわ。余裕があったから発明の時間を確保してたけど、

 レッスン内容を見直す必要があるかもしれないわね」

 

「残業レッスンでもするんですか?」

 

「ヘス代表と違ってゲッベルスって考え方がブラックよりだよな」

 

「辞めてくれ! 就業時間内のレッスンで最大の成果を出す!

 ヘス代表だって創作の時間はちゃんと確保しろって言ってくれてるだろ。

 ほら、明日のライブでは天才の私が一万の壁を軽く超えて見せるさ!」

 

「そうよね。レーティアなら何一つ問題ないわよね!」

 

「相変わらずゲッベルスは手のひら返しが早いなー」「流石ですよねー」

 

ロックフェス一日目終了。




デーニッツの扱いが酷い? 下げて上げます。

以前登場したガメリカ人エロカメラマンの
デビッド・キャヌホークは原作ゲーム「大帝国」に出てきます。

R-18えろかみ大帝国のゲッベルスの幕間が期待とは違ったorz
いや手に汗握るバトルだったのですが、それはコッチでやるんで……。


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第17話 私設親衛隊SSによるライブコール!

第14回の東方Project人気投票の期間に、
動画『【東方シリーズ人気投票】 東方READY!!』を視聴しながら書きました。

BGM『READY!!』(THE IDOLM@STER アニメ前期OP)


第17話 アドルフ私設親衛隊SSによるライブコール!

 

――――南ブロック全党大会二日目、第15週――――

 

中選挙区の四大ロックフェス(全党大会)は野外フェスだ。

有権者はメインステージ、サブステージなどを行き来しながら

各アイドル候補者のライブ(演説)を楽しむ。

 

飲食屋台が立ち並ぶ場外のショップ・エリアでは、

芸能事務所(政党団体)がオフィシャルショップを出展している。

 

そこで新曲(マニフェスト)やグラビア(選挙ポスター)を

有権者に配布し、支持者(党員)になってもらうのだ。

 

少数精鋭の6923プロは、ひとみ芸能事務所(1103プロ)に

選挙グッズの販売を外部委託している。

 

ホテルではなく会場の一番近くあるキャンプサイトで寝泊まりする、

ロックフェスが大好きな政策通の有権者(ファン)が何百万人といるほどだ。

 

世代交代型宇宙船を模した移動式テント内は、

バーやミニステージが階段状に並ぶ。

 

毎夜国内外の選りすぐられた交響楽団と政治DJによる

最高のパフォーマンスが繰り広げられ総統選挙を盛り上げている。

 

ロマンティックなピンク色の空間に包まれた

広いダンスフロアでは「エロゲー」世界っぽい光景が繰り広げられてた。

 

健全なシューペアは宇宙港近くのビジネスホテルで寝泊まりしていたが――。

 

 

「いよいよ、レーティアさんの出番ですねー」

 

エーファが小型端末でタイムテーブルを念のため確認する。

レーティアの出番は二日目の午前、ライブ会場はメインステージだ。

 

周りを林に囲まれた野外ステージは、室内コンサート会場と違って

何だかワクワクするような自由な空気に包まれた独特の雰囲気を持っている。

日没後にはミラーボールによるライトアップや

3DマッピングやAR(拡張現実)の技術を盛り込んだ空間演出が行われる。

 

アドルフはアイドル候補者としてVisual(外見)の魅力だけで小選挙区を突破した。

だから多くの有権者たちは未知数なVocal(政策)やDance(手腕)を評価していない。

 

だからこそロックフェス(全党大会)での顔見世はチャンスだ!

レーティア・アドルフは可愛いだけのお飾りアイドルではない。

 

ロックなボーカリスト(好戦的な政策通)であることが、

これから有権者の目の前で明らかになるだろう。

 

三( ゚∀゚)ワーワー 三( ゚∀゚)ワイワイ 三( ゚∀゚)ワーワー

 

ゲッベルスが準備した6923プロのプロモーション映像が会場に流れる。

 

「さて、どうやら会場も温まってきたようだね」

 

( ̄◇ ̄;)エッ ( ̄◇ ̄;)ダレ? ( ̄◇ ̄;)アイドルトハチガウミタイ

 

「私はドクツ第三プロダクションという政党団体の代表、

 ヘルマン・ヘスだ」

 

三( ゚∀゚)CMデミタコトアル 三( ゚∀゚)マホウショウジョノ スカウトマンダ

 

「オジャルマル共和国は

 ワルプルギスの夜(世界恐慌の不景気)に支配されている。

 それが……不安や猜疑心、過剰な怒りや憎しみ、

 そういう災いの種を世界にもたらしている――」

 

総統選挙で何よりも有権者が注目しているのは、

ワルプルギスの夜をどうするかという

景気刺激策(財政政策)や雇用対策(社会保障)だろう。

 

巨乳主義、貧乳主義、課金主義、無課金主義を

選挙公約として各アイドル候補者が掲げているのはこのためだ。

 

「会場にお集まりの有権者の皆様に、

 是非とも見て頂きたいアイドル候補がいる」

 

ウォー (丿 ̄ο ̄)丿 ハヤクダセー (丿 ̄ο ̄)丿 ワーワー (丿 ̄ο ̄)丿 

 

「それでは紹介しよう!

 世界を変える魔法少女(アイドル候補者)のレーティア・アドルフ君だ!」

 

アドルフの2ndリリース曲『READY!!』のイントロが会場に流れる。

 

「アイドル候補者のレーティア・アドルフだ。

 ワルプルギスの夜は私が必ず退治する。

 その為にはドクツ民《ファンシスト》の団結が必要だ」

 

アドルフの政治思想は原画理想主義《大ドクツ主義》だ。

その点では保守候補のマインシュタイン国防軍大将に近い。

 

私生児として生まれたアドルフは家族愛に恵まれていたとは言えない。

父も母も平凡な市民だった。娘の天性の才など理解できなかった。

母は娘を愛していたが、父は娘を気味悪がった。

10代前半で家を出たアドルフはJC発明家として収入を得て、

自ら力だけで帝国美術アカデミーの席を勝ち取ったのだ。

 

だからだろう、人一番、理想の家庭(ドクツ)に憧れを抱いている。

だからこそ、今のオジャルマル共和国体制が許せないでいた。

 

「私たちならやればできる! ドクツが世界で一番だ!」

 

ドクツ民が団結して、総統選挙で最高で最強のアイドルを選ぼう。

 

巨大な敵、ワルプルギスの夜を退治するためには、

「アイドル至上主義」(独裁政治)による強権が必要だと訴える。

 

今日のステージは、新しいドクツのスタートとして歴史に残るだろう。

凡庸なシューペアでさえ、そう感じるほどの熱気をアドルフは発していた。

 

「願いは叶うって、私は信じている!

 さあ一緒に踏み出そう! 最初の一歩を!」

 

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!

 

会場から大きな声援が上がる。

 

6923プロの党の思想(経営理念)は「魔法少女による世界革命」だ。

世界を変える魔法少女《アルティメットアイドル》が運命(原作)を変える。

 

「ジーク・ハイルッ! ハイルッ! アドルフッ!」

 

「ジーク・ハイルッ! ハイルッ! アドルフッ!」

 

お揃いのオタ衣装で統一された非公式ファンクラブ親衛隊SSのメンバーが、

オタ芸と共にサイリウムを振り、曲に合わせてコールを発する。

 

シューペアは頼まれていたアイドルスカウターでの計測さえ忘れて魅入る。

計測するまでもない推定アイドル戦闘力は10000LP以上、計測不能だ。

 

「絶対に私がNo1のアイドル総統だ!」

 

「「ジーク・ハイル!! ハイル・アドルフ!!」」

 

(ノ゚ο゚)ノ オオオオォォォォォォ- (ノ゚ο゚)ノ オオオオォォォォォォ-

 

「さあ一緒に、歌って、踊ろう!

 一つ一つの出会いが、ドクツの新たな夢と希望に繋がっている!!」

 

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!

 

「私が立候補するのはグループAだ。

 四大討論会-グランドスラム-TOP×TOPの党首討論に

 同じグループAの本命である、

 国防軍大将マインシュタイン候補を相手として指名したい!

 前大戦の英雄よ! 私の挑戦を是非とも受けて欲しい!!」

 

ウオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!

 

 

グループAはマインシュタイン候補者の安全区だと思われていた。

しかし、この日のレーティア・アドルフの立候補表明により、

南ブロック屈指の死のグループ(激戦区)として大きな注目を浴びる。

 

この話を聞いたマインシュタインは「よろしい、本懐である」とだけ答えた。

 

 

――――演説後、メインステージ候補者控室――――

 

「お疲れ様、レーティア。最高の演説(ライブ)だったわよ♪」

 

演説を終えた後、控室で伸びをするアドルフにゲッベルスが労いの声をかける。

 

「なあ、ゲッベルス。歌ってた時のアレ、合いの手はコールであってるか?」

 

「そうよ。演説(ライブ)中の声かけ(コール)を野次と言って嫌う人もいるけど、

 お堅いコンサート(党大会)とは違って、四大ロックフェスのような

 自由な雰囲気の野外フェスなんかではライブコールは一般的な文化なのよ」

 

「やけに統制が取れてたけどゲッベルスや6923プロで何かやったのか?」

 

「いえ、何もやってないわ。

 非公式ファンクラブの親衛隊SSが自主的にやってくれたみたい」

 

「そうなのか。すごいな……」

 

「ええ、新曲が発表されたすぐに有志によるコールガイドが、

 非公式ファンサイトに掲載されたの。

 今日のために親衛隊SSも事前に随分と練習してたみたいだし、

 印刷したコール本を会場で無料配布してたわ」

 

「非公式ファンクラブって代表者とかいるのか?」

 

「興味あるの?」

 

「いや、お礼くらいした方が良いかなって」

 

「分かったわ。

 アイドル候補者が特定のファンを贔屓するのは問題になるから

 事務所の方で何ができるか考えておくわ」

 

「ん。そうなのか、よろしく頼む」

 

アドルフとゲッベルスが二人で言葉を交わしていると、

二人の褐色少女が近づいてくる。胸部は共に慎ましい。

控室に居ると言うことはアイドルとプロデューサーなのだろう。

 

「ワタし、パルぷナ・カらード……といいマス」

 

茶色のエイリス風のステージ衣装を来たアイドル候補者が、

拙いドクツ語でアドルフに話しかけてくる。

清楚で物静かな大人しい印象を受ける。

 

「初めまして、芸能プロダクション東インド会社の

 社長秘書サフラン・ヴェーダです。

 この娘、パルプナの専属プロデューサーでもあります」

 

秘書を名乗る褐色肌の少女は活発な印象よりも

他人を値踏みするような冷静な目からクールな印象を受ける。

ベルリン星域では珍しいインドカレー風のスーツスタイルだ。

 

「東インド会社と言えば、1107 (いい女)プロね」

 

「あら? ご存知でしたか。

 1107プロは新興の芸能事務所なんですが……」

 

「あれだけ資金営業(プロモーション)を行っておいてよく言うわね。

 資金力だけなら業界大手クラスに匹敵。

 エイリス帝国からどれだけワイロ(政治献金)を貰っているのやら……」

 

「芸能プロダクションを利用した

 エイリス帝国からの内政干渉か……」

 

「たしかに東インド会社はエイリス資本の株式会社です。

 しかしエイリス帝国の王室や議会とは一切関係ありません」

 

「じゃあ、何で総統選挙に候補者を擁立したのよ?」

 

「……しゅ、趣味です……(小声)」

 

「はい? はっきりと言いなさいよ」

 

「……クリオネ・アルメイン社長の趣味です!

 私は反対だったんですよ! それなのに社長が……」

 

「そういえば小選挙区で落選したクリオネちゃんって(察し)」

 

「どこの芸能事務所もプロデューサーは大変なんだな」

 

「あ、アノう……ワタしも……おハナシして、いいデスカ?」

 

「そうね。用事があったんでしょ? 何の話かしら?」

 

「パルプナ、ドクツ語が苦手ならエイリス語でも構わないぞ」

 

「ありがとうございます。

 アドルフさん、貴方はアイドルのフレンズですか?」

 

「はい?」 「フレンズって何よ?」




原作ゲーム「大帝国」のエイリス植民地勢から
パルプナ・カラード、サフラン・ヴェーダ、クリオネ・アルメインが登場。

中選挙区は、大選挙区キャラの顔見世も兼ねてます。
民間ファンクラブの私設親衛隊SSも本格的に登場です。


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