Fate/Imaginary Fragment (パックスX)
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Episode of Fate
完成された魔術師な士郎・凛・桜がカルデアに来る話


1.5部の英霊剣豪七番勝負終了後に執筆した作品の為英霊剣豪までのネタバレ、及び異端なるセイレム、第2部開始による矛盾が生じております。


第1節「マスター」

 

―人理継続保障機関フィニス・カルデア第1会議室―

 

亜種並行世界より無事、人類最後のマスターである「藤丸立香」が帰還を果たしひと段落下ある日の事だ。

 

ダ・ヴィンチはマシュ、及び各部署代表にあたる職員数名を会議室へと集めていた。

 

「さぁ会議を始めようではないか」

 

「会議…はよろしいのですが、今日の議題はなんなのでしょうか?」

 

マシュがダ・ヴィンチへちゃんへと質問する。

 

「よくぞ聞いてくれた! 今日の議題はマスターについてだ」

 

「マスター? あの、先輩になにかあったのですか?」

 

「いやいや立夏くんは至って健康そのものだ。今日の議題のマスターとは”今後カルデアに必要となるであろうマスター”についてだよ」

 

その言葉に、各部門のスタッフ達も一瞬ざわつく。

そう、いつかはこの問題を解決せねばならない時が来るとはスタッフ達も思っていたのだ。

 

「現状カルデアのマスターは時間神殿での戦い後も彼1人だ。その後の新宿、アガルタとどうにかなってきてはいたが、今回の件でいよいよその体制の問題が浮き彫りになったという訳さ」

 

そう、今回の亜種並行世界の一件で藤丸立香は肉体のみを世界に残し、意識は別の場所へと飛ばされた。これについては”過去にも似たような事例”があったが、今回の件でいよいよマスターの体制について見直さねばならない時が来たのだ。

ダ・ヴィンチちゃんは説明を続ける。

今まで、時間神殿での戦いまでの約1年半の時間は「彼」1人に任せるしかない状況だった。

しかし外の世界も1年半という空白がありながらも無事動き出した今、彼1人にマスターを任せる必要性はない。

しかも今回の様に彼が何らかの窮地に陥った場合、もし同時に別の特異点やイレギュラーな事態が発生してもカルデアはどうする事も出来ない。

だからこそこの現状をどうにかせねばいけないという事だ。

 

「しかしマスター問題については……」

 

マシュが言いよどむ。

 

「はい、問題がある為今の今までこの体制が続いてきました」

 

魔術部門の代表者が言葉を続ける。

 

「事実魔術協会は、藤丸君に開位を与えつつも協会側からマスターとなるべく人物を送り込もうと計画していました。

 

しかしそれは現状難しい状況であると判断され計画は凍結状態となっています」

 

そう、魔術協会側からしてみれば藤丸立香という一般人の存在は邪魔なだけだが、多くのサーヴァントと縁を結び、人類悪、人間の獣性から生み出された七つの災害であるビーストⅠ及びⅡを打ち破り、世界を救ったという事実は変わらない。

英霊と共にある彼を裏から消そうという計画もあったが、百をも超す英霊がいる中それを実行するのは不可能だと判断され計画は頓挫。

調査団を派遣しデータの解析などを行った結果、カルデアの英霊召喚システムには縁が大きくかかわっている事も分かり、また藤丸立香という存在が重要となっている事も分かっていた。

だからこそ問題なのだった。カルデアの人間と話し合いをした所

 

「もし普通の魔術師が来よう物なら英霊たちは受け入れないだろう。彼らが求めるのは『魔術師』ではなく『人間』だ。こればっかしは我々でもどうしようも出来ない」

 

と結論が出されていた。もし魔術師を送り込んで殺されでもしようものなら貴重な魔術師の存在を失うだけでなく英霊の反感をかってしまう事となる。これだけならば魔術協会側を有利にできる状況となるだけなのだが問題は英霊の存在だ。

ふざけた話だが、封印指定の執行者を向けるなど英霊相手でも1人か2人程度ならどうにかできる手段が協会側にもある。だがカルデアには数多の英霊がいる。

その中でもとりわけ問題とされているのが「マーリン」や神代の英霊だ。

現代でギルガメシュ叙事詩やマハーバーラタの再演など始められたらたまったものではなく、彼らが本気を出した場合協会側もただ事では済まないと判断されているのだ。同時に特異点への対処も彼らがいないと出来ないのも事実であり、うかつに手を出し取り返しのつかない事態となった場合どうしようもできなくなるからでもある。

その為結局の所アニムスフィアの後継者問題が決まるまでの権限剥奪、同時に供給ストップという形で事態は平行線を辿っている。

 

「と事態は平行線を辿っているわけだが実は動きがあった。

何を思ったのか、興味を持っただけなのか、あの”魔法使い”であるキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグが連絡をよこしてきてね」

 

そんなダ・ヴィンチの言葉に今度こそ会議室内が大きくざわつく。

それもそのはずだ。

 

「キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ」

 

宝石翁などと呼ばれる彼は現存する数少ない魔法使いである。

 

「そ、その第2魔法の担い手はなんとおっしゃって……」

 

スタッフの一人が恐る恐る尋ねる。

 

「隠し事は無駄だと思って現状を話した所、一つの興味深い話をくれたよ。

 

彼が観測したいつかは消えてなくなる剪定事象の世界の一つにとある3人の魔術師の存在がいるらしい。そこの彼らに接触した際にこっちの世界での出来事を話したら大変興味を持ったそうでね。先のない剪定の果てに消える世界に留まるくらいなら、こっちの世界で協力したいと話していたそうだ」

更にスタッフ達はざわつく。

それもそうだ。ゼルレッチとの接触だけでも驚きだと言うのに、並行世界からこちらに協力したいと言っている存在がいるとは思いもよらなかったのだ。

 

「ですがその3人がこちらの世界に来る事は可能なのでしょうか?」

 

「それについては大丈夫なようだ。その世界へのレイシフトはゼルレッチの言う通りに座標などを合わせれば可能との事だし、話がまとまったら彼も出てくるらしい」

 

「それに今はカルデアにはいないが前例として「宮本武蔵」の存在もある事だ。可能と言えば可能なのだろう」

 

「では……」

 

「ああ、カルデアとしてはこの世界の魔術師を引き入れるリスクよりも並行世界からの……宝石翁のお墨付きともいえる者たちをマスターとした方が良いと考える。暗い話にはなるが、もし”何か”あったとしても”この世界”の人間でないならどうとでも良い訳が効くし”処理”も出来るからね」

 

「それでその3人の魔術師というのは一体どういう?」

 

「ああ、ゼルレッチ氏の言うには並行世界の第5次聖杯戦争の生き残り

 

マスターとしての適性を持ち

 

人間としての心を持ちながらにして

 

魔術師として完成された存在だそうだ――」

 

 

 

「という訳で。早速だが立香くんにはレイシフトしてもらおう」

 

「はぁ……とりあえず説明はさっき受けましたけど、今回はレイシフト先の並行政界で魔術師の人と会えば良いんですよね?」

 

「ああそうなるね。レイシフト先は君もよく知る冬木市だ。こちらからレイシフトすればあちらが異変を察知し接触してくるだろうって話だよ」

 

「分かりました。じゃあマシュ、今回も存在証明とかよろしくね」

 

「はい! 今回の並行世界へのレイシフトは武蔵さんの件でかなりデータは取れましたので今回は大丈夫だと思います」

 

 

 

『アンサモンプログラムスタート

 

 霊子変換を開始します

 

 レイシフト開始まで あと3、2、1……

 

 全行程完了』

亜種並行世界

 

AD.2014 並行剪定世界 冬木

 

 

「幕間」

 

――第5次聖杯戦争

 

それはイレギュラーを含んだ、とある世界では最後の聖杯戦争とされる戦争

 

その結末は幾つかあるとされ、カルデアに召喚されし英霊の中にも、その聖杯戦争の記憶を持つ存在はいる。

 

 

例えばそれは青き少女の話

とある騎士王と少年の物語であり

 

例えばそれは赤き少女の話

正義の味方、少年の歪みに向かい合う物語であり

 

例えばそれは桜色の少女の話

全てが異質、英霊ではなく人の物語である

 

だが今回のそれは違う

 

世界が枝のように分岐するように、一つの聖杯戦争でも更なる別の結末を迎える事もある

 

これは、全く別の結末を迎えたとある3人の人間の新たなる旅路への序章だ

 

 

 

第2節「赤き魔術師」

 

「という訳で冬木市に無事到着したけど……ここはどこ?」

 

「ふむ……どうやら教会の近くの森のようだな」

 

「私もどことなくヘラクレスと戦った記憶がありますね」

 

今回のレイシフトにあたってはレイシフトメンバーが限られていた。

冬木と縁のある英霊はランスロットを初めとしいたがどうやら今回は第5次聖杯戦争と関係のあるサーヴァントと一部側面のサーヴァントしかできなかったようだ。時代や年代が関係しているのであろうか。

今回はその中でも気にしているようだったエミヤとアルトリアの2人を連れて来た。

特異点でもなく大きな戦闘になるとは考えにくいので大丈夫だろうという判断である。

 

ちなみに2人はまだ並行世界の調査としか伝えていない。

なんでもダ・ヴィンチちゃん曰く「伝えると面倒な事になりそうだから」との事だ。

伝えないのはそれはそれで面倒な事になりそうな気がするのは立夏の思い違いではないだろう。

 

『お、どうやら無事着いたようだね』

 

『先輩、辺りは大丈夫そうですか?』

 

「うん、とりあえずは平和そのものかな」

 

「ところでダ・ヴィンチ氏よ、今回のレイシフトの目的はなんだね? 並行世界の調査と聞き及んでいるが」

 

『よくぞ聞いてくれた! ずばりカルデアに必要となるであろう新たな3人マスターとの接触さ。既にゼルレッチ氏とは話が付いているそうだから、冬木にレイシフトした時点で相手から察して出てくるだろうとも』

 

「なっ!? 新しいマスターだと!? しかも冬木で3人の魔術師となると……」

 

アーチャーの脳裏に浮かぶのはかつて殺そうともした自分でありながら自分でない存在の「衛宮士郎」、よく家にきていた儚げな後輩「間桐桜」、そしてかつては師匠でありマスターでもあった……

 

瞬間、何かがアーチャーを目掛けて飛来した

 

「ッ!?」

 

突然飛んできたガンドを干将・莫邪で撃ち落とす。

隣を見ればセイバーもマスターを守るように立ち、風王結界に隠された剣を構えている。

 

 

 

「あら、久しぶりだけど元気にやってるみたいね……

 アーチャー」

 

 

 

「凛……」

 

アーチャーは言葉に詰まる。

幾分か歳を重ねたようだが、そこにはアーチャーにとっては命の恩人であり、師匠であり、同級生であり、マスターでもあり、またいつかどこかの時空では恋人でもあった存在……遠坂凛がそこにはいた。

 

「なーに辛気臭い顔見せてんのよ。

恐らく私はあんたが知る遠坂凛じゃないだろうし、逆にあんたは私の知るアーチャーじゃないのだろうけど――

また会えて嬉しいわ、アーチャー」

 

「――ああ、私も会えて嬉しいよ凛

 

それに……随分と成長したな、うっかりは治ったのか――遠坂?」

 

アーチャーが優しい表情で言ったその言葉に凛は少し驚いた顔を見せ、やがて優しく微笑み

 

「相変わらず一言多いのよ、あんたは

 

――でも、お疲れ様、あんたも頑張ってきたのね……士郎」

 

 

 

今までカルデアでは見たことの無いような優しい雰囲気なエミヤと、イシュタルにそっくり……というか恐らく依り代となった少女の展開する固有結界(仮)に置いてけぼりなマスターと、どこか優し気に見守るセイバーであった。

 

「セイバーもお久しぶりね」

 

「ええ、元気そうで何よりです、凛」

 

「それとあなたが……大師父の言ってたカルデアのマスター「藤丸立香」で良いのかしら?」

 

「はい、えっと……遠坂凛さんでよろしいのですよね?」

 

「ええそうよ、遠坂6代目の継承者にして五大元素使いの魔術師なのがこの私、今回はよろしくね藤丸君」

 

「よろしくお願いします、遠坂さん」

 

一通りの挨拶を終えた一行は、森の中ではアレなのでと話の場を遠坂家へと移す事とした。

 

 

 

―遠坂邸―

 

「私が知るのは並行世界の10年前の事だが、変わらんなここも」

 

「そっか、エミヤは遠坂さんのサーヴァントだったんだよね」

 

「ああ、召喚時はまさか上空に放り出されるという乱暴な事このうえなく、掃除に令呪を使われるとは思ってもみなかったがな」

 

「ちょっとそこ、余計な事言わない!」

 

そんな2人の様子を見て、苦笑いをするセイバーであった。

 

「さて、本題に入るわ」

 

その一言で、場の空気が変わる。

アーチャーとセイバーは真剣な表情となり、立夏もまた気を引き締める

 

「大師父からおおよその話は聞いてるわ。人類悪と人理焼却、特異点……それと現状についても。

きっぱりと結論を言わせてもらうと、私達はそちらの世界へと行き協力しようと意見はまとまってるいるの」

 

「……凛、分かっているとは思いますがそれはこちらの世界を離れるという事になりますよ。それでもあなたは……」

 

「ええ、もちろん分かっている。最悪また大師父に頼めば戻ってこれるとはいえ、別の世界へ行くというのはどういう行為か。でもね、そっちの話を聞いたら止まっちゃいられない人がいるの……あなたも分かるでしょう?」

 

「士郎……ですね」

 

「ええ。それに私も、悪くないなと思っちゃって。数多くの英霊と共に世界を駆けるなんていうのもね」

 

「ところで凛、今話にも出たがあの小僧と……おそらくは桜くんだろうな、彼女はどうした?」

 

アーチャーは凛が出て来た時点で残りの2人がおそらくは衛宮士郎と間桐桜であることはおおよそ察していた。

だが遠坂邸に着いても2人が出てくる気配はない。

 

「2人は引継ぎ作業をしてもらってるわ」

 

「引継ぎ……?」

 

立香が首を傾げつつ尋ねる

 

「ええ、なんたって私は冬木の管理者。父も言峰もいない今このまま「はいさようなら」で出てく訳にもいかないのよ。

だから正式にこの地の管理とか諸々を引き継がなきゃいけない訳」

 

土地の管理についてはエーデルフェルトに

教会についてはそのままカレン・オルテンシアが

そしてその他裏の管理の一部を蒼崎橙子が

 

前者を桜が、後者を士郎が受け持ち調整の最終段階に入っていた。

 

「なるほど、それでレイシフトに指定された時期が今だったってわけですね」

 

「その通りよ。そして今夜には2人も帰って来るだろうし、後はもうこの世界と別れを済ませる、ってだけの段階よ。

済ませ次第大師父に連絡。すぐにそちらの世界へと渡れるっていう算段なの」

 

その後通信でのダ・ヴィンチちゃんからの説明や、今後の予定を立てて会議は終了となった。

時刻は15時を回ったところだった。

 

「まだ2人が帰って来るには時間があるわね……

そうだ、アーチャー。今から士郎の家に行って2人の帰りを待つんだけど、折角だからあなたの料理、久しぶりに食べたいわ」

 

「了解した。では食材を買いつつ向かうとしよう」

 

 

 

―道中―

 

「エミヤの料理は絶品だからねーカルデアでも大人気なんですよ」

 

「ええ、彼とタマモ、ブーディカの作る料理はいつも美味で私は幸せです」

 

「玉藻ってのあの九尾の狐の玉藻前よね……それにブーディカって……今から行くのが楽しみだわ」

 

最近エミヤはタマモキャットと共にパッションリップやメディアにお料理教室を開いているのだが、それがばれるのはまだちょっと先の話しだ。

 

「ところで凛、先ほど蒼崎という名が出ていたが、それは蒼崎姉妹のどちらだ?」

 

魔術の世界でも有名な蒼崎姉妹だが、その妹は第5魔法の使い手であり、姉は封印指定を受けている冠位の魔術師という恐ろしい姉妹だ。

 

「姉の蒼崎橙子さんの方よ」

 

「よく彼女に接触できたな……私は生前会う事は無かったのだが」

 

「ええ、まあ偶然彼女の弟子と知り合ってね、その子は魔術師というよりは魔術使い見習いだったんだけど、そこから両儀の家に繋がったのよ」

 

聞き覚えのある名前に立夏が反応する

 

「両儀って、もしかして両儀式の事ですか?」

 

「あら知り合いだったの?」

 

「いえ…彼女実はカルデアにもサーヴァントとしていまして」

 

「あら、それは驚きね。まあ直死の魔眼なんて持ってるしね、彼女」

 

実のところ彼女の本質は魔眼なんてもので済まされるものではないのだが、今は関係の無い事だ。

 

「そこで彼女の旦那さんと出会ってね」

 

(え!? 式ってまさかの人妻だったの!? いや彼氏っぽいというか大切な人がいるって話はあったけど!)

 

「その彼女の旦那っていうのがなんというか……一般人ではあるんだけど、ものを探す事に長けててね。元々関わりがあったらしいとはいえ、まさか日本の真裏にいた橙子さんを10日間で見つけてくるとは思いもしなかったわ」

 

「ず、随分と凄い一般人ですね……アルトリアみたいに直感か何か持ってそう……」

 

「本当にそうよ。

まあそれのおかげで彼女に接触出来て、冬木の面倒ごとの一部は頼めたわ。引換の報酬に間桐の遺産のほとんどやアインツベルンの遺産もあったからむしろお釣りを渡したい、って喜んでたけど。

彼女人形師だし、アインツベルン関係のは特にね」

 

(人形師……? あれ、どこかで最近聞いたような……)

 

「あの、その人形師さんもしかして眼鏡掛けてませんでしたか?」

 

「ええ、掛けてるけど……それがどうかした?」

 

(やっぱり武蔵ちゃんが言ってた人形師かー……)

 

世界の狭さと、思わぬつながりやら真実をしった立香であった。

 

 

 

第3節「衛宮」

―衛宮邸―

 

「さあ上がって。今日は藤村先生は来ないから大丈夫よ」

 

衛宮邸に到着した一行。

今ではほとんどの時間を冬木の外で3人は過ごしているが、藤村家の人や一成などが管理や掃除をしつつ保っているらしい。

 

「ここも懐かしいですね」

 

「俺は初めてくるけど……良いお屋敷だね」

 

どこか夏の孤島で見た気がしなくもない建物に自身の田舎の実家を重ね合わせつつ立夏は足を踏み入れる。

後で聞いた話だがなんでもこの屋敷には一時期セイバーだけでなくエミヤやライダーがいたり、キャスターやランサーも足を運んでいた時期があるらしい。

カルデアとは比較できないがそれでも十分凄い場所だ。

 

屋敷で腰を落ち着けると、さっそくエミヤは料理へと掛かる。

その間にセイバーと立夏は凛に特異点での出来事やカルデアでの生活について話していた。

 

 

外も闇夜に染まり始めた頃

玄関の引き戸が開く音が屋敷に響いた

 

「あっ、帰ってきたみたいね」

 

凛は玄関へと向かい2人と何やら話しているようだ。

数分すると、再び居間へと戻ってきた。

その後ろには一人の青年と女性がおり……

 

「初めまして。俺は衛宮士郎だ。

凜から話は聞いてるよ。これからよろしく頼むな」

 

「初めまして。私間桐桜と申します。

これからよろしくお願いしますね」

 

衛宮士郎と間桐桜がそこにはいた。

 

「まあ立ち話もなんだし、アーチャーの料理ももうほとんど完成しているから食べながらでも話しましょ」

 

その後は至って平和な時間だった。

士郎と桜を交え夕飯となり、今後についてや彼らについて話を聞き、良き時間となった。

 

 

 

―衛宮邸縁側―

 

夜も深まり満月が空に輝く頃

マスターである藤丸立夏が眠りに着いたのを確認し、アーチャーは縁側へと足を運び腰を掛け月を眺めていた。

ここはエミヤシロウという存在にとっては始まりとも言える場所だ。

あの時も空を眺め、切嗣と――

 

「ここにいたのか、アーチャー」

 

後ろから、衛宮士郎が声をかけてきた。

 

「何ようだ、衛宮士郎」

 

いつかと変わらぬ口調だが、その声に棘は無い。

答えを得た彼にはもう不要なものだ。

 

「いや、おまえと話がしたくてさ」

 

そういいつつ衛宮士郎はアーチャーの隣に腰をかけ、月を眺めつつ言葉を紡ぐ。

 

「アーチャー、お前は英霊へと至った

だが俺は英霊には至らなかった

それが良いことなのか悪いことなのか正直今でも分からない

……俺はあの聖杯戦争の後、世界を回った

そこには悲劇も喜劇も、希望も絶望も色々あった

多くの人を救ったとは思う

だけどそれは、俺の手の届く範囲での話だ

きっとおまえみたいな”正義の味方”ではないんだろうな」

 

「俺の隣にはいつも凛と桜がいた

歩みを進める先には眩しい星(セイバー)の輝きがあった

だからこそ俺は、お前とは違う一つの形に至った」

 

「この世界に未練はないと言えばうそになる

藤姉にはきっと泣かれるだろうな……

だけど一つ確かめたい事がある」

 

「俺はこの世界で歩みを進めて来た

そんな俺が今どこにいるのかを知りたい」

 

「アーチャー

――いや、エミヤシロウ

全ての準備が整った後で良い

俺と刃を交えてくれないか」

 

「――良いだろう、衛宮士郎。

今後マスターと共に世界を駆けるであろうお前の実力、試させてもらおう」

 

「手加減は無しだぞ、俺(エミヤ)」

 

「もちろんだとも、全力でいかせてもらうぞ、オレ(衛宮士郎)」

 

―衛宮低のある部屋―

 

そんな男と男のやり取りが交わされる中、ある部屋では女子会が開かれていた……

 

「……って事はなに? カルデアには私の体を依り代にしたイシュタル神と、桜を依り代としたパールヴァティ―、ジャガーマンと化した藤村先生にオルタ化したあいつや士郎のお父さん、更には大量のセイバーに別世界のイリヤスフィールまでいるって事……あぁ、頭痛くなってきたわ……」

 

「いいじゃないですか、楽しそうで。それにお料理が得意な英霊もいるんですよね? 今から楽しみですよ、わたし」

 

「ええ、雪山の上に建つカルデアでは娯楽が少なく食事とは皆のモチベーションを保つ重要な役割を果たしています。サクラ、今からあなたが彼やタマモと共にキッチンへ立つのが待ち遠しい。もし彼らが円卓に居たならば、我々は後1年は戦えた……」

 

「まあそれも良いけど、私たちはマスターとしてなるべく行くのよ。そこら辺もちゃんと忘れないようにね」

 

「分かってますよ、姉さん。 ……でも、私たちは英霊の方々に受け入れてもらえるのでしょうか……」

 

「……絶対にとは保証できません。ですが、あなた達なら大丈夫でしょう。リンとサクラは魔術師でありながら、魔術師らしくない。決して貶している訳ではありません。カルデアにいつ人たちが求める人間とはあなた方のような人であると、私は思います」

 

「そうかしらね……ま、無理だろうが何だろうがもう決めた事。最初に受け入れられなかったら、後から仲良くなるでも戦うでもして受け入れてもらえるように努力するだけよ」

 

………………

…………

……

 

 

 

第4節「収斂の極地」

 

翌日

 

―アインツベルンの森―

 

森の中にある開けた場所に人影があった

 

「さて、約束通り戦いを申し込むぞアーチャー」

 

「ああ分かっているさ。私にとってもいつしかと違って恨みも殺意もない純粋な自分自身との戦いだ。正々堂々受けてたとう」

 

向かい合うは2人の男。

衛宮士郎とエミヤ――

 

同じ名を持ちながら、全く別の人生を歩んだ2人の戦いが始まろうとしていた。

近くで2人の戦いを見て巻き込まれないのか、思いもしたがどうやら桜の魔術……つまりは虚数魔術によりもしこちらに剣や弓が飛んできても飲み込むので大丈夫らしい。

そんな中、ふと衛宮士郎が凛へと赤い布を渡す。

 

「凛、これは預かっていてくれ。あいつとの戦いには使いたくない」

 

それを見て、立香は首をかしげる

 

「それは何ですか……?」

 

「これはマグダラの聖骸布って言ってな、男性に対して大きな拘束力を持つ布なんだ。あいつに対して効果が高いのは分かってるが、これを使って勝てても実力とは言えないからな」

 

まあ普段は惜しみなく使うが、と付け足しながら衛宮士郎は答える。

 

「良い心がけだ、衛宮士郎。だがこちらも手加減はしないぞ」

 

「ああ

――――それじゃあ、始めようか」

 

瞬間、空気を裂く音が響く。

エミヤは弓を射り、士郎は手にした干将莫邪で弓を落とす。

次の瞬間にはエミヤは投影した剣をかの英雄王のごとく放つ。

だが相手も衛宮だ。全く同じ剣を投影し放ち相殺される。

 

戦いは正しく一進一退

 

同じ存在であるからこそ、相手が何をしようとしているのか、一挙手一投足がお互い分かり、拮抗しあう。

本来ならば英霊であるエミヤに選曲は傾くだろう。

しかし今回に至ってはそうならない。

 

何故ならばこの衛宮士郎は魔術師として完成された存在だ。

魔力も、練度も、何もかもが昔とは違う。

 

 

 

何手交えた時だっただろうか。

エミヤの動きが急に止まる。

お互い傷を負いながらも、決め手には至っていない。

 

「衛宮士郎、お前はまだ本気を出していないだろう」

 

「それはこっちのセリフだエミヤ」

 

「――固有結界

おまえが衛宮士郎であり、そしてあらゆる衛宮士郎の中でも完成された存在だというのならお前も至ったはずだ

凛や桜と共にありながら、それでも至ったであろうその世界を見せてみろ!」

 

「ならば遠慮なくいかせてもらうぞ!」

 

 

 

体は剣で出来ている

I am the bone of my sword.

 

血潮は鉄で心は硝子

Steel is my body,and fire is my blood.

 

幾たびの戦場を越えて不敗

I have created over a thousand blades.

 

ただ一度の敗走もなく、

Unaware of loss.

 

ただ一度の勝利もなし

Nor aware of gain.

 

担い手は星を背に

Aim for the glow of stars

 

剣の丘で花と生きる

Together with the sparkling flowers

 

故にその生涯を誇りに思い

Ask for one polar

 

その体は

My whole life is

 

無限の剣で出来ていた

"unlimited blade works“

 

 

 

――その景色は、とても美しいものだった

そこに広がるのは荒野と歯車の浮かぶ空でも、広がる荒野と夕焼けに染まる空でも、絶え間なく雪の吹雪く闇の雪原でも無かった

雲が絶え間なく流れる青空と、広がる丘。丘には無限の剣と共に、青、赤、桜、白色の花が咲き誇り、地平線には大きな月が輝く

 

これこそが、衛宮士郎の心象風景だった

 

言葉はいらなかった

 

再び戦いが始まる

 

エミヤは再び古今東西の剣を士郎に向けて掃射する。

土煙が舞い、士郎の姿が見えなくなるが……

 

瞬間、エミヤの頬に一筋のキズが出来た

 

「っふ、銃撃とは、ここからがお前の本領発揮という事か!」

 

土煙が晴れるとそこには、銃を構えた士郎の姿があった。

構えるは投影されたコンテンダー。かつて彼の憧れた正義の味方が使っていた銃だ。

 

「あれは……」

 

立香はカルデアに居る同じエミヤの名を持つアサシンと、エミヤ・オルタを思い出しながら呟く

 

「起源弾。今士郎が撃ったのは唯の銃弾だけど、本来は彼の養父が残した銃弾か、士郎自身の骨の一部を使った弾を用いるわ。士郎の起源は剣。そんな特殊な起源を持つ彼の銃弾は、被弾すれば体の内部から剣が突き刺さるという効果は絶大な代物よ」

 

もっとも、同存在であるアーチャーには効果が無いのだろうけど、と凛は付け足し説明した。

 

そして再び彼らは何手か打ち合った後、エミヤはとある剣を投影する

 

「このままでは埒が明かないな

――許せセイバー」

 

その手に握られるは黄金の聖剣

彼にとって星である女の持つ剣――

本物には至らない。だが、その輝きは――

 

「――そうか、なら俺も応えるべきだな」

 

その人生で彼は多くの剣を見た

宝物庫から放たれる原典である剣を見た

守護者となった自身の投影された剣を見た

ラスト・ファンタズム。星の様に輝く剣士の持つ剣を見た

王を選定する黄金の剣を見た

 

幾度となく投影をし、無限とも思える剣を使って来た

数多の剣を持ちてなお、彼は求めた

一振りの剣を

 

彼は鉄を打った、鉄を打ち続けた

宝石の如く輝く女と、桜の様に儚くも力強い女と共に歩みながら、既に亡き雪の似合う少女も思いながら、

地獄に落ちても忘れない運命の夜を胸に秘め

 

そして彼は生涯で唯一、オリジナルの刀を作り上げた

その刀の銘は――

 

「『無銘』

この世のどこにも残らない、幻とも呼べる剣――

故に刀に銘はいらず、名は無い」

 

この刀こそが、衛宮士郎の至った極地を象徴する剣である――

 

「―――この光は永久に届かぬ王の剣

 

永久に遥か黄金の剣(エクスカリバー・イマージュ)―――」

 

「―――収斂こそ理想の証

 

我が身は剣と共にありて、限界を超える―――」

 

無銘――名もなき刀は迫りくる黄金の輝きを受け止め続ける

 

「「うおおおォォォォ!!!」」

 

男と男の想いがぶつかり合い――

 

 

 

そして

そして

そして

 

 

 

光が晴れた

そこに立つ2人の男の手には剣が握られ――

 

エミヤの握る、とある王へ届かんとする剣が崩れ消えた

 

「オレの剣は想いこそあれど、所詮は贋作

 

――己の限界を超え、唯一つの本物を持つお前の勝ちだ、衛宮士郎」

 

………………

…………

……

 

 

第5節「別れの刻」

 

あいつとの戦いの後、俺たちはこの世界を去る準備を整えた

準備は2日程度で終わり、いよいよ明日の朝日が昇る前にはこの世界から並行世界にあるカルデアへと世界を超える。

今日はこの世界に居れる最後の一日。

故に俺はといえば最後の、この世界に居る人たちへの挨拶に回る事を決めていた

 

 

 

「これはこれは衛宮ではないか……半年ぶりだが、達者にしていたか?」

 

「ああ、もちろん。一成はどうだ?」

 

「こちらも無病息災、元気にやっとるよ」

 

「そうか、それは良かった」

 

「ところで衛宮、今回もすぐに出るのか?」

 

「そうだな、明日には出発する予定だ……それに、次は長くなると思う」

 

「ふむ、それは残念だ……まあ衛宮の事だ、心配はいらんだろう。達者でな」

 

「ああ”またな”一成。そっちこそ元気でやれよ」

 

 

 

「で、何しに来たわけ?」

 

「お前も知ってるだろ、俺たちが

 

「知ってるよ。桜と遠坂と一緒に並行世界へって話だろ。僕はもう魔術とは縁を切った唯の一般人だ。魔術師でもなければ、後継者でも間桐の当主でもない、唯のサラリーマンなんだよ。別世界でもどこでも好きに行ってくれ」

 

「慎二おまえなあ……」

 

「桜から聞いたが並行世界の人類の危機とか本当にバカだなあ、衛宮は。いつまで正義の味方続ける訳?」

 

「それは勿論、死ぬまでだろうな」

 

「……あ~あ馬鹿馬鹿しい」

 

「でもな慎二、俺は確かに多くの人を救いたい。だけど、自分の大切な物は守りとおすつもりだ」

 

「……やっぱ馬鹿だな衛宮は。それで藤村とか冬木に残した人を悲しませてどうすんのさ」

 

「それは……」

 

「ま、いいよ。誰が悲しもうが僕には関係ないことさ。

さ、僕も忙しいんでね。ここらへんで失礼させてもらうよ」

 

「……ああ、じゃあな慎二」

 

「はっ、精々並行世界でも死なないように頑張れよ、衛宮

――それと桜の事、頼んだぞ」

 

「素直じゃないな、おまえも――」

 

 

 

「……爺さん、イリヤ、俺がここに来れるのも今回が最後になりそうだ」

 

「まだこっちの世界に未練が無いと言ったら嘘になるけどさ、誰かが困ってたら放っとけない性分だからさ……」

 

「並行世界に行っても、爺さんの夢を叶えられるように頑張るし、イリヤの事だって絶対に忘れない」

 

「だからさ、見守っててくれよ、爺さん、イリヤ――」

 

 

 

「これはこれは、まだ何か用がありましたか? 衛宮士郎」

 

「ああ、もう今夜には去るし一言挨拶をな……と思って」

 

「私はあなたに告げる言葉なんかありませんが」

 

「そうかい」

 

「ええ」

 

「…………」

 

「…………」

 

「……それじゃあ冬木の事は頼んだぞ」

 

「ええ、私もこんな体質ですしいつまでここにいるかも分かりませんが、手続きや管理はしっかりとしますのでご心配なく」

 

「――それと、もしあちらに人間が大好きで大嫌いな刺繍男がいたら、よろしく伝えておいてください

 

――憧れた事は出来ましたか、と」

 

 

 

「ん~やっぱ士郎のご飯は美味しいわね~!

また腕あげたかしら?」

 

「ああ、海外とかじゃ色々な人に出会って、いろいろな料理を学べたからな」

 

「そうか~……」

 

「そういえば桜ちゃんや遠坂さんは?」

 

「2人とは今日は会ってないよ」

 

「そっか~士郎と2人での食事なんていつ以来ぶりかしらねぇ……」

 

「……藤ねえ、今日の料理は腕によりをかけて作ったからいっぱい食べてくれよ」

 

「言われなくてもそうさせて頂くわ!」

 

 

「士郎はさぁ~もう明日には出ちゃうんでしょう?」

 

「ああ、そのつもりだ」

 

「そっか~……夢、叶えられそう?」

 

「……まだ途中といった所かな」

 

「そうよねぇ……お姉ちゃんはいつまでも応援してるから、頑張るのよ士郎」

 

「ありがとうな、藤ねえ」

 

「うんうん、素直でよろしい! 

それじゃあ、そろそろお暇させて頂くわ」

 

 

「藤ねえ、体には気を付けるんだぞー。もういい歳してるんだからさ」

 

「士郎こそ、色々頑張るのは良いけど、無理しがちなところあるんだからちゃんと自分の事を考えなさいよ!」

 

「分かってるよ藤ねえ。

 

――いつも心配してくれて、応援してくれてありがとうな」

 

「――当たり前でしょう。私は士郎のお姉ちゃんであり教師なんだから。

士郎がどこにいても応援してるわよ」

 

「――”またな”藤ねえ」

 

「士郎こそ”またね!”」

 

 

最終節「Fate/Grand Order-Another New World-」

 

カルデアに3人の人間が訪れはや1週間

最初こそ色々あったが、今となってはカルデアに馴染みつつあった

 

―ある者は闘い

「ほう、現代の人間としてはやるようではないか。だがまだまだだな」

 

「はぁ、はぁ……ランサー、夕飯増やしてやるから助けてくれ」

 

「師匠がああなっちゃ俺は止められないな。ま、人生諦めも肝心ってわけだ坊主」

 

「馬鹿弟子、貴様も最近腑抜けておるからな、まとめて掛かってこい」

 

「ランサー……ご愁傷さまだ」

 

「いやオレまだ死んでないですからね!?」

 

―ある者は共に料理をし

「うむ、聖域の戦力が天元突破なのだな」

 

「いえいえ、私もまだアーチャーさんには及びませんので」

 

「桜君、もう君は洋食に至っては私と同じ域に達しているだろう。そう謙虚になるでない」

 

「そ、そうでしょうか……」

 

「ああ勿論だとも。桜君、カルデアには騎士王が数多とその他ケルトの連中やら、世界各地の英霊が多くいる。故に料理の幅も広がるのでな、期待してぞ」

 

「はい! ところでアーチャーさん? 先ほどから様子をうかがってる私と同じ顔をした神々しい方や、胸が凄い方、それと脚の凄い方になんか悪だくみしてそうな方々は一体……」

 

「おっと気づかれてしまいましたか! いや~、違うとはいえ私のオリジナルとなった人間がどんな方かと見に来てみれば、先客がいらっしゃいましたので」

 

「あの、私は今日も料理のお勉強で見学をしに……」

 

「私はいつも通り手伝いにきただけですよ」

 

「わ、私はちょっと立ち寄っただけよ!」

 

「……アーチャーさん、これは?」

 

「いや桜君、これはだね、セイバーが何人もいるのと同じような事情がだね」

 

「後でお話し、お願いしますね?」

 

「聖域かと思ったらいつの間にか時空を超えた月をも巻き込む昼ドラの現場と化していたのであるな。キャットは巻き込まれたくない故に本能に従い避難するのだワン!」

 

―ある者は教鞭を振るい

「つまり、宝石魔術とはその溜めた魔力量によっては魔法に等しい力を発揮する事もあるの。また他者に飲ませたりする事で一時期的とはいえ魔力の増大やパスの接続など使い道は様々でね――」

 

「――と、今日はこんな所かしらね。

 こんな感じで良いのかしら? ロード・エルメロイⅡ世」

 

「ああ良いだろう。出来れば得意分野をを中心とし全般的に教えてやって欲しい」

 

「あら、それならロードの方が得意でなくて?」

 

「それは基礎であればな。宝石魔術や第2魔法などは専門外だ。それに私は生憎ながら教えは出来ても実践は出来んのでな」

 

「あら? それならここには私よりよっぽどすごい魔術師の英霊がいると思うのだけど」

 

「……キャスタークー・フーリンのルーン魔術、メディアの失われた時代の大魔術、玉藻の前の呪術……教える側にどうにも偏りがあってな。おかげで緊急回避やらガンドやらは得意だが。今後彼に必要となるのは現代で生きるための魔術だ。だからこそエレナ女氏などの現代魔術に精通した者たちが必要でな」

 

「なるほどね、それで私が」

 

「そうだ。衛宮士郎に至ってはあまりにも特異すぎるが、君や間桐の娘ならこなせるだろう。間桐桜という女もかなり異質ではあるがね……」

 

 

―ある時は共に戦い

「モードレッドは前方のゴーレムを蹴散らしてくれ! 

 刑部姫、前方の様子は?」

 

「はいは~い、空から見る限りじゃ前のゴーレムだけかなー。

 衛宮さんたちはそのまま前身でだいじょぶそうだよー」

 

「そうかい、なら遠慮なくぶっ飛びな! ゴーレムなんてルーマニアで見飽きてるんだよ!」

 

 

 

「まったくキメラなんて品が無いわね。二人とも、遠慮なく片付けちゃって良いわよ。支援はまかせなさい」

 

「了解した。聖槍、抜錨」

 

「Arrrthurrrrrr!!」

 

 

 

「まったく、ワイバーンなんて羽虫みたいに五月蠅いですね。アストルフォさん、空からの敵襲はまかせます。百貌のハサン達はそのまま各所の偵察にあたってて」

 

「御意」

 

「了解マスター! でもマスターは一人で大丈夫なの?」

 

「ええ、こんな竜牙兵ごとき、影を振るう事も無く髪を用いた使い魔でどうにかなりますから」

 

 

 

『司令官代理。これは彼らを招き入れて正解でしたね』

 

『そうだね、今までは立香くん一人だったが故にどうしても作戦に限りがあったが4人に増えた事で四方から攻める事やまた遊撃隊と支援隊に分かれるなど作戦の幅が広がったのは大きい』

 

『それにしても凛さんたちは凄いです。人間でありながらサーヴァントに引けを取らない戦いをしています。私も万全であれば先輩をお守りしながら戦えたのですが……』

 

『マシュ、今の君は仕方ない。

 それに我々には彼らからの情報を纏め状況を見極め指示や各々に伝達をし纏めるという大きな仕事がある。今はそれを全力でこなそうではないか』

 

『はい、そうですね!

 ……先輩達はそのまま進んで大丈夫です。敵の本拠地が近いので桜さんと士郎さんは一度合流を。その後3方から同時に攻めいる作戦を展開したいと思います。

 なので凛さん達は――』

 

 

 

―ある時は語り合い

「……あなた方は、この世界で共に戦って下さるという選択をして良かったのですか?

 元の世界から離れるという選択を私はしたことが無いので分かりませんが、悩まなかった訳は無いと思うのですが……」

 

「そうだな……確かにどうするかは迷った。けれども世界が大変で誰かが困ってると知ったらほっとけなくてな」

 

「私はそんな先輩がほっとけなかったから着いて来ちゃいました。もう決して離れないって決めたんですから」

 

「私もよ。まあそれ以外にもこちらに現れた人類悪……Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ/Rは討伐されたようだけどまだ残りがいる。そしてそれが別の世界に現れないという訳でも無さそうなのよね。それと歴史の相違も気になる点があるし――」

 

「俺としては3人とも自分なんかよりよっぽど頼りになりますし、助かってますけどね」

 

「そうか? 立香はサーヴァントへの指示とかが的確で俺も学ぶことが多いぞ」

 

「そうですか? そう言って下さると…嬉しいです」

 

「自信を持ってれば大丈夫ですよ。もう一人の戦いじゃないんですから」

 

「そうですね……あ、そういえばそろそろ夕飯の時間だ」

 

「今日の料理当番はパールヴァティ―とアーチャーだったかしら」

 

「となるとインド料理か……まだまだ奥深くまでは知らない分野だな……」

 

「ふふっ…今後に期待してますよ、士郎さん」

 

「そういう桜こそ、ブーディカに――」

 

新たに仲間を加えたカルデアは、今日も賑やかに日常を送る――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――そう、これにて男独りでの戦いは終わった

 

3人の新たなる人間を加えた物語の幕が開く

 

7つの特異点と終局の地を巡る戦いは見事に成し遂げられた

 

魔神柱を巡る新宿、アガルタ、SE.RA.PH、そしてセイレムでの戦いは終わりを迎えようとしている

 

では次にきたる物語は何か

 

亜種並行世界にてその偏角を見せた■■■■■■■■■■

 

ゲーティアが顕現したが故に連鎖的にビーストが顕現する宿命を負った世界

 

とある王の追うビーストⅢ/L

 

不穏な気配を見せる■■・■■■■■■■とビーストⅥ

 

この世のどこかに顕現したビーストⅦ

 

断章を経て未来へと続く物語

 

だが、忘れてはいけない

 

――過去の物語に、一つだけ辻褄の合わない地がある事を

 

未来を見たが故に残された、過去の致命的な見落とし

 

終局を迎えてもなお顕れなかった英霊達

 

 

そう、かの地は今もなお運命の刻を刻み続ける――

 

 

 

 

 

 

特異点X 

 

AD.2004 ■■■■■■冬木

 

始まりの地にして終わりの地

全ての謎は、原初の地にて時を刻む

 

―人理の防人―

 

―古代の大気魔力―

 

―特異点F―

 

―聖杯―

 

―カルデアスの灯―

 

―剪定事象/編纂事象―

 

―光帯無き特異点―

 

そう、全ての謎は解決される為にある――

 

 

 

 

 

 




各種設定

並行世界の第5次聖杯戦争
Fate,UBW,HFと3つのルートを全て混ぜ込んだ挙句、HAも経験したかのような結末を迎えた聖杯戦争。
中身は自分でも想像しきれていないので省略ですが、結果として士郎、凛、桜はそれぞれが魔術師として完成される道を辿ります。それについては本編で書いた通り。
イリヤについてはどうするかをかなり悩んだけど、扱い切れなそうなので……
この世界では、聖杯戦争後大河や士郎、桜に見守られる中静かに息を引き取ったってイメージしてます。
セイバーについてはFateルートのような結末を迎えた後に消滅しています。
桜が髪を用いた魔術を使っているのはイリヤから受け継いだって感じですね。
後マグダラの聖骸布はもちろんの事カレンより貰っています。
凛は宝石魔術だけでなく、ルヴィアの使う宝石を媒体とした特殊なルーン魔術も使える

つまり
桜はイリヤスフィールから
凛はルヴィアから
士郎はカレンから
なんらかの魔術や礼装を受け継いでいる。
というのを1回くらいやってみたかった。だって敵とか仲間の技や切り札を主人公やヒロインが使うってなんか燃えるじゃん。とかいう妄想の産物。
でも一体どんなルートを辿ればこんな事になるのかは不明。
2014年にした理由は2004年の聖杯戦争から10年後というのもあるのですが、2017年にしちゃうと士郎と凛が30歳になってしまうのだ。
衛宮士郎(30)
遠坂凛(30)
間桐桜(29)
よりかは
衛宮士郎(27)
遠坂凛(27)
間桐桜(26)
の方が字面が良いし。
士郎がセイバーをアルトリアと呼んだり凛と呼んだりしているのはまあ幾年かの時間が経っているのと関係性が変化していたという事で。
つまり士郎は3人と関係を持っている……爆発しろ。でも凛に桜も最終的には子を作り継承していかなきゃいけないんだから良いと思うの。


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プリズマ☆イリヤ×FGO ストーリーや美遊兄とか美遊の設定妄想

FGO×プリヤな妄想設定集
映画公開時に勢いで書きました。
FGOは新宿までのちょっとしたネタバレが入りますのでご注意を。


 

 

異種特異点

 

“朔月の杯” AD.2007 並行破滅都市 冬木 

 

 

其れは、雪下の誓い

 

 

神代からの異常、世界の結末

――雪降る街で、少年と少女は願いを語る

 

 

 

――魔法少女――

 

――置換魔術――

 

――第6次聖杯戦争――

 

――鋼の大地――

 

――正義の味方(異なる者)――

 

――パンドラの箱――

 

――並行世界――

 

――第2魔法と第3魔法――

 

――世界の救済――

 

――聖杯(完璧なる器)――

 

 

 

「奴らは完全なるイレギュラーだ、速やかに処分しろ」

 

「ほう、これが貴様の心象風景か」

 

「田中はよくわからないですけど、あなた達は敵ではない気がするでーす!」

 

「はぁ!? どうして私が女神の依代になってるのよ!?」

 

「世界の救済ですか… いえ、かつて同じような事がありまして」

 

「雷神……であればこの力を振るうのみ。軍神と接続、発射まで、三秒」

 

「桜……今、あなたを解放してあげましょう」

 

「頼む、妹の為に力を貸してくれ」

 

 

 

真名:衛宮士郎

 

クラス:アーチャー

 

身長:167cm/体重:58kg

 

出典:Fate/kaleid liner

 

地域:日本

 

時代:2000年代

 

性別:男性

 

属性:混沌・悪/隠し属性:人

 

クラス別スキル:

単独行動:B

対魔力:D

 

固有スキル:

投影魔術:B++

雪下の誓い:A

聖杯の加護:EX

 

宝具:無限の剣製(アンリミテッド・ブレイド・ワークス)

 

筋力:D

耐久:C

敏捷:C

魔力:C

幸運:E

宝具:?

 

霊基再臨:

1:「俺はまだまだだよ……でもこの足を止める訳にはいかないんだ」

2:「あの英霊はこんな俺に力を貸してくれた。だからこそ今の自分があるんだ」

3:「正義の味方なんかにはなれないけど、妹を護れるような兄にはなりたいんだ」

4:「俺ではない俺が至った未来の英霊の力。かつて俺はその力をたったひとりの為に使った。今はその力を世界の為に振るうが、きっとどんな道を辿るとしても最後はやっぱりひとりの妹の為に使うよ」

 

絆レベル

1:「誰かと一緒に戦うなんて滅多になかったから新鮮な気分だよ」

2:「マスターはさ、俺なんかよりずっと立派な人間だと思うぞ」

3:「こんなたくさんの英霊を従えるなんてやっぱ凄いな。その精神力や姿勢は立派な事だと思うがあまり無理し過ぎないようにな?」

4:「俺がしてやれる事なんてそう多くはないが……良かったら今度料理をふるまうよ。あの英霊やタマモキャット並みの料理は無理だろうけど、それで良ければな?」

5:「世界を救うなんて簡単に言うが、それがいかに大変な事かは身をもって知ってるつもりだ。だからこそマスターには道を外すことなく、共に戦う仲間達と共に真っすぐ進んでいて欲しい、心からそう願うよ」

 

会話:

1:「行くとするか。大丈夫だ、今は世界の為に力を使うよ」

2:「的確な指示は凄い助かるよ。流石経験豊富なだけの事はあるな。だからといって油断は大敵だからな?」

3:「サーヴァントとマスターか……俺の世界では人間自身に英霊の力を宿して戦っていたから不思議な感がするな。感覚としては……そうだな、マシュさんとかに近い感じと言えばわかりやすいか?」

4:「俺はお兄ちゃんだからな――妹を守るのは当たり前だろ? だからいつか絶対美遊を守れるような兄になるように頑張っていくよ」(衛宮美遊 所持時)

5:「俺は貴方のような正義の味方にはなれなかった。だが、こんな最低の悪にも等しい未熟な俺に力を貸してくれてありがとう。おかげで妹の味方にはなれたよ」(エミヤ 所持時)

6:「君たちは美遊の……妹と笑い合って、支え合って、共に肩を並べる――友達になってくれて本当にありがとう」(イリヤ/クロエ 所持時)

7:「あの銃、あの姿、あの声……そうか――これが正義の味方に至れた爺さんの姿か。誰かなんと言おうと、その道は正しかった。俺はそう思う」(エミヤ[アサシン] 所持時)

8:「これが本物の英霊の実力か……まがい物でも凄かったが、こうやって間近で見るとその凄さを実感するよ」(アーサー系(剣)/クー・フーリン(槍)/メデューサ系/メディア/呪腕のハサン/ランスロット/ギルガメッシュ(弓)/子ギル 所持時)

9:「その声と容姿――いや、違うのか。例え姿が一緒でも、俺のよく知る日常は雪に散ったよ……でも出来る事ならもう一度くらい一緒に弓を射って、夕飯を共にしたいな」(BB/パールヴァティー 所持時)

 

好きなこと:「好きな事? 料理は昔からやってたし好きだな。後は弓道も2人しかいなかったけど部活をやってたから好きだ。だけど一番は、妹とごく普通の生活をする事だな」

嫌いなこと:「嫌いなもの……特にはないが、妹に害をなす者に容赦はしないつもりだ」

聖杯について:「かつて俺は聖杯を手にし、妹の幸せを願った。もしまた手に入れたとしても、俺は同じことを願うよ」

イベント開催中:「祭か? 結局美遊をどこにも連れていけなかったから、今度一緒に行きたいな」

誕生日:「人の成長を祝える良い日だな。おめでとう、マスター」

召喚:「例え贋作者と呼ばれようが、なんと呼ばれようが関係ない。最低の悪だと分かってはいても、この力をふるうとしよう。よそしくな、マスター」

 

マテリアル:

キャラクター詳細:

英霊エミヤの力を使い続け、侵食されながらも『一つの願い』の為に戦い続けた並行世界の衛宮士郎。

正規の英霊とは程遠く属性も元となった英霊と異なる。本来英霊の座に至るような存在ではないが、人理焼却と人理再編などのイレギュラーな事項が絡み、イリヤスフィールやクロエなどと同じ様な経緯で、美遊がいる事もあってカルデアに残っている。

今はそばに美遊がいる事と、カルデアへの恩などから世界の為に力をふるっているが、妹に何かがあれば、その力を世界に歯向かう事になろうが、妹の為に使う、そんな『妹の味方』である。

――誰にも理解されずとも、自身が最低の悪だと自負しようと、奇跡も、希望も、理想も失ったととしても、彼はその()が残る限り、妹の為に果てるまで歩みを止めない――

 

1:彼の戦闘スタイルは元となった英霊のもとの同じだが、細部は異なる。これは心象や経験の差による物と思われる。カルデア内においては、当のエミヤはそうでも無いようだが、別の世界の別の戦争の記憶からかアルトリアやクー・フーリンなどは彼の事が気になる模様。料理上手な事もあり、タマモキャットやブーディカからは絶賛歓迎された。

 

2:投影魔術:B++

この世界の彼には『全て遠き理想郷』が埋め込まれていた訳でも無かった為、起源や魔術属性共に『剣』とは無関係の物だったが、カードを使い続け英霊エミヤに置換(侵食)され続けた為、投影魔術を使う事ができる。だが正規の英霊ではない為、ランクは若干落ちている。

 

3:雪下の誓い:A

(奇跡)は無く、(希望)も無く、(理想)は闇に溶けた――

妹は囚われ、桜は散り、友も消え、何もかもが消えた雪夜の事

運命(セイバー)と出会う事も無い運命の地にて、彼は妹の為にただ一つ残った体で、戦う事を誓う――

 

4:聖杯の加護:EX

――とある一族は願った、子の健やかな成長を

――とある男は願った、世界の救済を

――とある少女は願った、兄と本当の兄妹になりたいと

 

とある兄は願う、妹の幸せを――

 

5:無限の剣製(アンリミテッド・ブレイド・ワークス)

ランク:E~A++ 種別:????

固有結界といわれる特殊魔術。魔術の最奥。

彼の心象風景はエミヤとは異なり、墓標の如き無数の剣が刺さる吹雪く闇夜の雪原となる。

本来彼の魔力では使用できず、かつては聖杯(美遊)という支えがあったからこそ使用できたが、カルデアにおいては魔力の心配がそこまで必要ない為、使用可能となっている。

 

FGO的のステータス

 

クラス:アーチャー☆4

 

HP:10914

ATK:9398

COST:12

 

所有カード:Quick×1 Arts×2 Buster×2

 

クラス別スキル:

単独行動:B

・自身のクリティカル威力をアップ

対魔力:D

・自身の弱体耐性を少しアップ

 

 

固有スキル:

投影魔術:B++

・自身のアーツカード性能をアップ&自身のクイックカード性能をアップ&自身のバスターカード性能をアップ(1T)

雪下の誓い:A

・自身に回避状態を付与(1T)&自身に無敵貫通状態を付与(2T)

聖杯の加護:EX

・自身のNPを100%アップ&自身の攻撃力をアップ(1T)&スター集中状態を付与(1T)(メリット) HPが減少&1T後スタン&戦闘中一度のみ使用可能(デメリット)

 

宝具:無限の剣製(アンリミテッド・ブレイド・ワークス)(バスター宝具)

・敵全体に強力な防御無視攻撃&敵全体の防御力をダウン

 

隠しステータス

・味方として使役する場合、敵の衛宮美遊、イリヤスフィール、クロエ、エミヤ、エミヤ(アサシン)、イシュタル、パールヴァティーへのサーヴァントへの攻撃力が10%ダウン

・敵として出現した場合、味方の衛宮美遊、イリヤスフィール、クロエ、エミヤ系、イシュタル、エレシュキガル、桜系のサーヴァントへの攻撃力&クリティカル発生率が10%ダウン。また、上記サーヴァント以外を優先して攻撃

・パーティー内にいる衛宮美遊、イリヤスフィール、クロエの攻撃力&クリティカル発生率を5%アップ

 

他サーヴァントからの衛宮士郎所持時の会話:

ジャガーマン:「う~ん、彼の事はよく知っているよな、でも知らないような……うむ! とりあえずご飯を作ってもらおう!」

エミヤ:「正義の為でなく、妹の為に己が力を使う存在か――私には決してそれを批判する事など出来ぬよ」

アルトリア(剣):「彼を見てると、懐かしい気持ちになります……私が知る彼とは違うようですが、自身の道を見つけられたようでなによりです」

パールヴァティ―:「先輩……? いえ、似て非なる別人、なんですね……」

イリヤスフィール:「あ、お兄ちゃ……士郎さん! 私クロに勝ちたいから、とりあえず料理を教えてくれませんか!」

クロエ:「全く、あなたはどこでも戦うつもりなのね……それはもうこの英霊の本質というか……諦めてはいるけど、辛くなったら言いなさいよ? お姉ちゃんがなでなでしてあ・げ・るから!」

美遊:「お兄ちゃん! お兄ちゃんのおかげで私は色々な事を知れたし、友達もできた。だから今度は、私がお兄ちゃんを守れるように、頑張るから……!」

 

メモ

・ステータスはエミヤに寄らせつつ若干劣化させている。

・HP&ATKはHPはクロエ、ATKはエミヤと同様。

・クラススキルはアーチャーの物だが、固有スキルは投影魔術を除いてオリジナル。

・宝具はエミヤの攻撃力ダウンを防御力ダウンに変えただけ。スキル3と合わせてロマン砲したい

・宝具演出は多分マンガや映画と同じ固有結界展開後エミヤと違い、剣を束と敵に撃ち込む感じ

・いつか美遊兄と美遊実装とかコラボイベント来ないかなーと思いながら書いた。クロとイリヤは我がカルデアにいるので早く来て下さい。

・クロは聖杯使ってレベル100、スキルマ、フォウマ(☆4フォウ君入手分全部突っ込んでる)けど凄い便利ですからおススメ。

 

 

 

 

真名:衛宮美遊

 

名称:朔月の聖杯/朔月美遊/美遊・エーデルフェルト

 

クラス:キャスター

 

身長:133cm/体重:30kg

 

出典:Fate/kaleid liner

 

地域:日本

 

時代:2000年代

 

性別:女性

 

属性:中立・中庸/隠し属性:人

 

クラス別スキル:

対魔力:B

完璧なる器:EX

 

固有スキル:

特殊魔術礼装:A

兄の願い:A

聖杯の器:EX

 

宝具:

|並列限定展開・聖剣集う天の逆月《パラレルインクルード・エクスカリバーカレイドスコープ》

|並列限定展開・万華鏡―鏡写す星光の剣―《パラレルインクルード・カレイドスコープ・エクスカリバー》

 

筋力:E

耐久:C

敏捷:D

魔力:B(EX)

幸運:A

宝具:A+

 

霊基再臨:

1:美遊「変身完了」

  サファイア「本日もお怪我なさいませんように」

  美遊「うん、効率的かつスムーズに」

2:サファイア「流石は経験豊富なマスターです」

  美遊「うん。的確な指示、分かりやすくて助かります」

  サファイア「これからも美遊様を何卒お願いいたします」

3:美遊「一人ではできない事でも、二人なら、他の仲間たちと一緒なら出来るという事を私は過去に何度も経験しました。だからこそ、今の私があるんです」

  サファイア「美遊様……私も全力でサポートいたしますので、これからも頑張りましょう!」

4:「私は過去に……いえ、今もお兄ちゃんに救われ続け、イリヤやクロにも支えられている。だから今度は私が頑張る番。これからもご協力をお願いします、マスターさん」

 

絆レベル

1:「カルデア内でのコミュニケーション……ですか? 私の友達はイリヤと……クロがいれば十分ですから」

2:「マスターさんの実力は認めます。ですから、これからも良き仲間としてお願いいたします」

3:「マスターさんは私の兄に少し似ている気がします」

4:「新たな居場所……そう思えるような、良い場所ですここは」

5:「ここに来てから、私の知らない事や経験したこの無いような事を教えて頂きありがとうございました。生きる楽しさや悲しみを、自分の世界観を広げる事ができて本当に良かったと思えます」

 

会話:

1:「状況開始、今は目の前の事に集中する」

2:「的確な指示、状況判断は重要なこと。油断一つで命を落としかけない」

3:「サーヴァントとマスター? 主従関係とかはよく分からないけど、私は自分のすべきことをするだけです」

4:「お兄ちゃん……いつも、出会った時から私の為に頑張ってくれて、助けてくれてありがとう。今度は私が頑張る番だからね。大丈夫、笑えあえるような、大切な友達もできたから」(衛宮士郎 所持時)

5:「いつも支えてくれて、そのまぶしい笑顔で助けてくれてありがとう。これからもよろしくね、イリヤ」(イリヤスフィール 所持時)

6:「正直時々驚いたり……理解できなかったりするけど、頼りにはしてる……それに、これからちゃんと友達になりたいから」(クロエ 所持時)

7:「貴方がお兄ちゃんの未来の……お兄ちゃんに力を貸してくれて、手を差し伸べてくれてありがとうございます」(エミヤ 所持時)

8:「え、凛さん!? ……違う? 神霊イシュタル? 世の中不思議な事はまだまだあるんですね……」(イシュタル 所持時)

9:「かつて戦ってきた相手と、数多くの英霊と共に戦う事になるなんて、思ってもみなかったです」(セイバーオルタ(剣)/メデューサ/メディア/百貌のハサン/ヘラクレス/ギルガメッシュ/子ギル 所持時)

 

好きなこと:「知識を得る事は良い……けど、最近は誰かと遊びに行ったり、騒いだり、そんな日常も悪くない……そう思ってる……後はお兄ちゃんの料理……かな(小声)」

嫌いなこと:「とくにはない……けど、今手に入れた日常を、お兄ちゃんや友達を失くす事だけはしたくない」

聖杯について:「私がどうこう言えた身じゃない事は分かってる……けど、出来る事なら誰かの幸せの為に使って欲しい」

イベント開催中:「お祭り……まだまだ知らない事が多い」

誕生日:「生まれて来た事や、みんなに会えた事、そのすべてに感謝する、そんな大切な日」

召喚:「美遊、衛宮美遊と申します。エーデルフェルトではないのか、ですか? いえ、その名前も私の姉のような存在の方からいただいた、大切な名前です」

 

マテリアル:

キャラクター詳細:

性格はクールで、時に辛辣な言葉を口にする事もあるが、ある程度心を開いた相手には、信頼感や、素の一面を見せる事もある。かつては無感情で、人間味の無い彼女だったが、兄のおかげで子供らしさを、人間らしさを手に入れた。最近では時たま暴走するイリヤや、魔力供給を迫って来るキス魔なクロ、年増さ2人組や同級生たちに振り回されつつも、日常を楽しんでいる。

 

1:「生まれながらに完成された聖杯」

それが彼女の正体である。しかし彼女は衛宮士郎と時間を共に、道具ではなく、偽りでもなく、兄と本当の兄妹となりたい事を願った。その後、様々な過程を経て、並行世界で友達を得て、笑い合えるような居場所を手にし、今の彼女へと至る。並行世界においては彼女の為に聖杯戦争が作られたとまでされる。

 

2:特殊魔術礼装:A

キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグが製作した魔術礼装。もう一つの特殊魔術礼装「ルビー」の妹となるのがこの「サファイア」である。姉の「ルビー」とは違い、落ち着いた性格となっているが、時たま感情的になる事も。その見た目などからは想像が付かないが第2魔法の応用で作られているとんでもない礼装である。

 

3:兄の願い:A

「美遊がもう苦しまなくていい世界になりますように。やさしい人たちに出会って――笑いあえる友達を作って――あたたかでささやかな――幸せをつかめますように」

正義の味方でも、英雄でもない兄が聖杯へと願った唯一つの想い――

その願いがあったからこそ、彼女の今がある――

 

4:聖杯の器:EX

アインツベルン・マキリ・遠坂による物とも、聖堂協会が生み出した物とも、ムーンセルとも違う、聖杯。それがただの器であるのなら何の問題も無かったが、何の因果か聖杯そのものが人格を持ってしまった。それが今の美遊である。聖杯の器となるべく調整された並行世界のイリヤスフィールやアイリスフィールを人工の聖杯とするなら、彼女は生まれた時点で全てを持つ完璧な天然の聖杯と言えよう。

 

5:並列限定展開・聖剣集う天の逆月【パラレルインクルード・エクスカリバーカレイドスコープ】

ランク:A+ 種別:対城宝具

並行世界より第2魔法を使いアーサー王が持つとされる「約束された勝利の剣」を顕現させ、攻撃する。理論上はこの世に存在するどの宝具を使用する事も可能だが、現状はラスト・ファンタズム、人ではなく星鍛えられた神造兵器を使用している。同時に顕現させられる本数に制限は無いが、魔力や周囲への被害などを考慮し、同時に5本程度までの使用を目安としている。

 

6:並列限定展開・万華鏡―鏡写す星光の剣―【パラレルインクルード・カレイドスコープ・エクスカリバー】

ランク:A++ 種別:対城宝具

イリヤスフィール・フォン・アインツベルンと共にヘラクレスへ放った一撃。第2魔法を応用し、並行世界よりアーサー王の持つ約束された勝利の剣を同時に9本顕現させ放たれた。その一撃はヘラクレスの残った9の命を一撃で破った。FOOにおいてはこちらが使用される事は基本ない。

 

FGO的のステータス

 

クラス:キャスター☆5

 

HP:13325

ATK:11377

COST:16

 

所有カード:Quick×1 Arts×2 Buster×2

 

クラス別スキル:

対魔力:B

・自身の弱体耐性をアップ

完璧なる器:EX

・自身に毎ターンNP獲得状態を付与

 

固有スキル:

特殊魔術礼装:A

・自身のバスターカード性能をアップ(1T)

兄の願い:A

・自身に無敵状態を付与(1T)&味方全体の防御力アップ(3T)

聖杯の器:EX

・自身のNPを増やす&味方全体のHPを回復&自身の攻撃力をアップ(1T)

 

宝具:|並列限定展開・聖剣集う天の逆月《パラレルインクルード・エクスカリバーカレイドスコープ》(バスター宝具)

・味方全体の攻撃力をアップ(1T)(メリット)+味方全体のNP獲得量をダウン(3T)(デメリット)&敵全体に強力な相性無視攻撃

 

隠しステータス

・味方として使役する場合、敵の衛宮士郎、イリヤスフィール、クロエ、エミヤ、エミヤ[アサシン]、イシュタルのサーヴァントへの攻撃力が10%ダウン

・敵として出現した場合、味方の衛宮士郎、イリヤスフィール、クロエ、エミヤ、エミヤ[アサシン]、イシュタルのサーヴァントへの攻撃力&クリティカル発生率が10%ダウン。また、上記サーヴァント以外を優先して攻撃

・パーティー内にいる衛宮士郎、イリヤスフィール、クロエの攻撃力を5%アップ&毎ターンNPを3%チャージ

 

他サーヴァントからの衛宮美遊所持時の会話:

イリヤスフィール「これからも、一緒に遊んで、笑って、戦って……色々な事をしようね、美遊! だって私たち、友達だもん!」

クロエ「ほら美遊、ちゃっちゃと戦いなんて終わらせちゃいましょう。そしてその後魔力供給~……冗談だからそんな哀れんだ目をしないでちょうだい」

イシュタル:「なんだかあの娘を見てると何かを思い出しそうな……金髪……ドリル……うっ、頭が……」

ギルガメッシュ:「ほう、珍しい事もあるものよ。完璧な聖杯だけでも珍しいというのにその聖杯が人格を宿すとは。ふっ、にしても雑種の世界とやらも詰んでいるにも程があるな。よもやあの箱が空いていないとは、愉快な事この上ない」

謎のヒロインX:「新たなセイバー出現の予感! いえ、宝具はエクスカリバーを5本使いますがクラスはキャスターです? そうですか、キャスターでしたか……いえいえいえ。納得しかけましたが聖剣を5本とは何事ですか!?」

衛宮士郎:「俺はお兄ちゃんだからな――妹を守るのは当たり前だろ? だからいつか絶対美遊を守れるような兄になるように頑張っていくよ」

 

メモ

・ステータスはイリヤを基にしている

・HPとATKはイリヤよりHPを-500、ATKを+500した数値

・宝具演出はアニメ第1期の並列限定展開みたいな感じ。

・宝具名について

・『並列限定展開・聖剣集う天の逆月』聖剣集う点の逆月の元ネタはCCCのレオの「聖剣集う絢爛の城(ソード・キャメロット)とhollow ataraxiaの天の逆月。

・『並列限定展開・万華鏡―鏡写す星光の剣―』元々は並列限定展開・万華鏡までしか漫画でも出てませんが、それっぽい名前にしたかったので付けた。ただ約束された勝利の剣ではつまらないしね。

・宝具の相性無視はつまり、アサシン、バーサーカーに有利、アサシン、ルーラーなどへも等倍入るって事ですね。水着ネロのスキルの攻撃版みたいな感じ。

・美遊マジで実装して欲しい。そしてイリヤ、美遊、クロで出撃した。その後ろにアイリ入れて聖杯パとか、美遊、士郎、切嗣で並行世界衛宮パとか組みたい。

・アインツベルン・マキリ・遠坂による物→冬木の聖杯(SNやアポなど)聖堂協会が生み出した物→プロトタイプ、ムーンセル→EXTRAシリーズ

 

 

やりたいシーン

 

 

 

その1「■■■と■■■」

 

「田中はよくわからないですけど、あなた達は敵ではない気がするでーす!」

 

「けど、そこの貴方」

 

「む? 余の事か?」

 

「貴方からは感じます……獣の香り、そう6番目の……」

 

 

 

その2「悪性サーヴァントによる雑魚(泥から生まれた英霊)一掃の時間」

 

「さあ、君たちの願いが叶うまで後僅か……と言いたいところだが、そうは問屋が卸さないようだね? 私も少々力を振るうとしよう。|終局的犯罪《ザ・ダイナミクス・オブ・アン・アステロイド》!」

 

「いいだろう、狩りの時間だ。周りに邪魔ものなどいない。思う存分この弓を射るとしよう! 二大神に奉る……訴状の矢文(ポイボス・カタストロフェ)!」

 

「なんと醜悪なのでしょう…真の喜劇を! 悲劇を! ご覧にいれましょう。往きなさい。我が海魔達よ! フフフハハハハハ!! アーハハハハハハハハハハ!!」

 

 

 

その3「世界の真実と探偵」

 

「ふむ、君たちのパンドラに関する推理は面白い。この世界ではそもそも箱が開いていない、ならば伝承や本に箱について記される事も無く、世界の人々に真実を知られる事は無い、か」

 

「だがそれは他世界からの干渉で破られ明らかになった」

 

「今考えるべきは一つ。パンドラの箱を開けて良いのか悪いのか。ふむ、久しぶりに面白い謎に挑めるようだ」

 

「――勿論、開けるべきか、開けないべきか、もしくは更なる何かをすべきなのか、それは謎を解かねば分からないがね」

 

 

 

その4「カッコいい兄貴の登場」

 

「サファイア! いくらランサーの槍を限定召喚しても埒が明かない。やはり夢幻召喚を……!」

 

「いけません美遊様! これ以上無茶をされればお身体が!」

 

「でも……」

 

「良いねえその気合、その気迫。諦めることなく立ち続ける女は嫌いじゃねぇぜ」

 

「この声は……?」

 

「けどよぉ、それじゃあまだ足りねえな。見てな嬢ちゃん、真の槍の使い方ってやつを、その目に刻ませてやる」

 

 

 

その5「クロのUBW」

 

I am the bone of my sword.

体は剣で出来ている。

 

Steel is my body, and fire is my blood.

血潮は鉄で、心は硝子。

 

I have created over a thousand blades.

幾たびの戦場を越えて不敗。

 

Unaware of begining.

たった一度の敗走もなく、

 

Nor aware of the end.

たった一度の勝利もなし。

 

While knowing that the body is a miracle

その身は奇跡と知りながら

 

Make a sword in the Castle

冬の城で鉄を鍛つ

 

Therefore that life is continue to the end

故にその生涯は果てるまで続き

 

It was fake Holy Grail

偽りの体でありながらも

 

"unlimited blade works"

無限の剣で出来ていた

 

 

 

それは魔術の最奥『固有結界』

心象風景の顕現、現実世界を塗り替える奥義

 

エミヤの力を宿し、衛宮士郎の生涯を知り、エミヤの在り方を知った彼女は、自身の心象風景を描き出す

 

――冬の森、木々と無限の剣が刺さるその森は深い雪に覆われ、止まぬ吹雪が吹き荒れ、背には無限の歯車でなく、唯一つ明かりが消えぬ城が立つ――

 

「さあ御覧なさい! 貴方達が挑むは無限の剣、剣戟の極地。

 この英霊とお兄ちゃんの想い、妹達の願いを背負った私を舐めないでちょうだいね!」

 

 

 

 




美遊実装はよ


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Episode of Ghostory
空の境界×化物語 the Garden of oddities


続・終物語の2018年アニメ化が決定して嬉しいです。
個人的には早く結物語を見たいですね(ひたぎ好き)

※執筆開始から完結までに結構期間が空いてしまった作品ですので若干矛盾している箇所もあると思います。

ちなみに章タイトルのGhostoryは化物語の英語版タイトルより


空物語 こよみキル<前>

 

其ノ壱

 

死とは別に人や動物の死だけの事を指す言葉ではない。

 

僕も一度死んだ経験はあるが、それはまた別の物語だ。今は死について話そう。

一般的には人間や動物の活動停止を指す言葉として多く使われるが、ほかにも多くの「死」が存在する。例えば犯罪を犯し捕まった人間は社会的な死とも言うし、自然の樹木などが枯れれば死んだという事もある。死とは別に命がある者だけに、物だけに使われる言葉ではないのだ。

 

ではなぜいきなりこのような話題を出したかと言えば、僕こと阿良々木暦は再び死と出会った。

大学生活にも慣れてきた大学一年生の春休みの事である。

 

 

其ノ弐

 

吸血鬼との出会いからいつの間にか二年も経過していた大学一年の春休みのある日。

僕はいつもと変わらない生活を送っていた。朝から彼女であるひたぎと共に過ごし、一緒に昼飯を食べ、ひたぎは午後は久しぶりに時間に余裕がある父親と過ごすらしく帰宅し、午後は暇となってしまった。

僕は大学でも友達がいない。その為誰かと遊ぶという選択肢など最初から無く、特に考えることもなく散歩へと出かけた。

まもなく二十歳を迎えようとする男が一人で散歩。なんとも健康で健全なシチュレーションだ。

 

散歩を初めて十分程が経ち、ふと何の気もなしに薄暗い裏路地へと入った。

別に怪談話で有名な場所でもなければ、不良がうろついているような所でも無いごく普通のありふれた裏路地。

だが今日に限りその裏路地は異質な存在があった。

 

和服の妙齢の女

 

とても裏路地には似合わない存在が、そこに在った。

まるで僕がここに来るのを分かっていたかのように、全てを見透かしたかのような目でこちらを見つめている。

 

僕は震えた。

その女性の美しさよりも先に恐怖を感じた。

全てを見透かしているかのようなその『瞳』に、恐怖感を抱いた。

 

 

其ノ参

 

「お前が阿良々木暦か?」

 

その女性はとてもその恰好からは想像出来ない男口調で僕の名前を口にした。

女性の姿を改めて見る。身長は僕と同じくらいか。紙は長く服装は和服。そして圧倒的な存在感。様子を見るに怪異でも無さそうだというのに圧倒されてしまいそうになる。何故だが体が恐怖を感じている。まるで、何か下手な事を起こしたら、この場で殺されてしまいそうな、そんな感覚が。

 

「……そう、ですが」

 

やっとの思いで言葉を口に出す。

 

「そうか。突然だが明日の予定は?」

 

「え? 彼女とデートの予定がありますけど…」

 

何故僕は初対面の女性に明日の予定など聞かれているのか。丁寧な言葉遣いになりつつ会話を続ける。

 

「なら悪いがそいつはキャンセルだな。明日はこっちに付き合ってもらうぞ」

 

「いや、いきなりそんな事を言われましても…そもそも何に付き合えば良いのですか?」

 

「まだ何も聞いて無かったのか? なら悪いが説明は後の奴から受けてくれ」

 

後ろ?

言葉につられ後ろを向くと。

 

「随分と久しぶりけど何かいいことでもあったのかい? 阿良々木くん」

 

1年前と全く変わらないアロハ姿の中年……忍野メメがそこにいた。

 

 

 

其ノ肆

 

「忍野!? なんでここに居るんだよ!?」

 

「なんでとは酷いな阿良々木くん。ちょっとした用事…というより置き土産を片付けに来たといった感じかな」

 

「置き土産? その置き土産とやらとあの女性が関係あるのか?」

 

脇目に和服の女性を見つつ問う。

 

「大ありだ。というかむしろ、今回の件は彼女が居なければ話が進まない位だ」

 

話がいまいち読めない。

そもそも今までずっと行方を晦ましていた忍野が何故突然この街に戻ってきたのか。

 

「説明は任せるから一度俺は帰るぞ」

 

「任されたよ両儀さん。明日までにこっちの調整はしっかりしておくとするよ」

 

あの女性は両儀さんというらしい。

恐らく名字であろうが、残念ながら僕は両儀という名字に関する情報を一切持ち合わせていない。

 

「それとお前の影の中にいるやつ、いきなり攻撃とかしてくんなよ。下手に何かされると存在も、そいつとの繋がりも切りかねないからな」

 

どういう事だ。

彼女は忍の存在を知っているらしい。

いや、それだけなら良い。忍野から聞いた可能性はある。だが彼女は繋がりもといった。つまり、僕と忍とのペアリングの事だろう。それを切りかねないとはどういう事だ。

そもそも仮に忍の存在を、正体を知っているのなら、それでも勝てるという自信があるのか。

 

(忍、おまえあの両儀さんとやらと知り合いなのか?)

 

時間的に起きているかは怪しいが、一応問いかける。

 

(ムニャムニャ…あのような人間は知らんわい。だが、両儀という名だけなら聞いたことはある。まぁそこにあのアロハの小僧がおるならそっちに聞くと良い。儂は眠いからまだ寝る…)

 

(いやいやなんか凄い重要そうな事だからできれば教えて欲しいんだが)

 

(儂は眠いのじゃ…それもこれもお前様があのツンデレ娘と朝から盛っとるのがいけないのじゃよ…)

 

(済みません僕のせいでした!)

 

 

 

 

 

空の境界 終幕破音 story in mystic

 

 

式と幹也。夫婦となり、娘も誕生しはや10年。

その日は平日ではあったが式と幹也の暇が重なり、娘の未那を学校に見送ってからはあまり多くはない二人きりの時間を両儀の屋敷で楽しんでいた。

 

しかしその平穏は突然の来客によりすぐに崩れ去る。

 

式の作った美味しい昼食を食べ終えて2人が一服していた時の事だった。

部屋に屋敷の者が来て、来客があるという事を伝えて来たのであった。

 

「今日は来客とかは無い予定だったはずだが、緊急か?」

 

「いえ、用件はまだ聞いておりません、ただ…」

 

「ただ、なんですか?」

 

「蒼崎が来た。そう伝えれば伝わるとだけ一言」

 

門の前で待っていると伝えられ、式と幹也は門へと向かう。

 

門で待っていた人物はやはり予想通りの人物だった。おおよそ10年ぶりの再会であるが、彼女の姿は全くと言って良い程変化は無かった。

 

「お久しぶりです橙子さん。お元気そうでなによりで」

 

式は黙って彼女の事を見ている。その顔は折角の休日に厄介な事を持ってきそうな人物が現れた事への不満を表しているようだ。

 

「お久しぶりだな式、黒桐…いや、今はどっちも両儀の名か」

 

「そうですけど、呼びやすいように黒桐で大丈夫ですよ」

 

「そうかい。じゃあ昔と変わらない呼び方でいこう」

 

久しぶりだというのに昔と変わらないやり取りをしていると、式が後ろからやっと出てくる。

 

「それで橙子、一体10年ぶりになんの用なんだ? わざわざ世間話を…っていう訳でも無いだろ」

 

「そりゃそうさ。私がこの街に戻ってきたのも式、君に仕事の依頼があってね」

 

「仕事だ?」

 

「ああそうさ仕事だ。一つ壊して…いや、殺して欲しい物があってね」

 

 

 

ともかく門ではなんですしと言って、屋敷の内の応接間に移動する。

勿論、屋敷の者には一切関わらないように言ってからだ。

 

ふと懐かしくなり、黒桐がコーヒーを淹れ、一服してから話は始まる。

 

「まず質問だ。お前たちは怪異を信じるか?」

 

「怪異というと、幽霊とか妖怪とか、そういうのですか?」

 

「それなら巫条ビルでの一件もあるし、いるんじゃないのか」

 

「そうだな…怪異というのは幽霊や妖怪とは少し違ってな、どちらかと言えば都市伝説や信仰などの存在に近い。まぁ今回はそういう話だ」

 

「また幽霊退治でもしろってか?」

 

「いやそういう訳では無い。式、君の直死の魔眼で殺して欲しいのは場所だ」

 

「場所……?」

 

「そうだ、正確にはかつて学習塾だった場所…だな」

 

学習塾。その名からイメージするのはそのまま学生が通う塾だろう。

だがどうしてそのような場所と式の魔眼が関係するのか。

 

「そうだな、それも含めて詳しく説明しよう」

 

「まず怪異というのは少々特殊な存在でな。それこそ中には吸血鬼や悪魔なんて物騒なもんもいるが、魔術とは一切関係ない。というよりも魔術の世界とは一線を引いてお互いが不干渉状態になっている。なにしろ怪異自体は魔術師にとって有益な存在という訳でも無いし、そもそもの『在り方』や『仕組』というのが根本的に違うからな。干渉せず、それで極一部では情報を共有しつつ今に至る。だが今回の件は少々特殊でな。私も旧知の知り合いからの頼み事という事でそいつの情報頼りになるが、その学習塾の跡と地脈が重なっていた。そこまでならよくある話だ。なにしろ魔術にも関わる地脈なんて世界中多々存在するし建物の下にある事なんていくらでもある。だが問題はその上で起こった事だ。その学習塾跡には吸血鬼を初めとし、蟹や虎、猫など多くの怪異が短い期間で多く現れ、多くの出来事があった。それによって良くない吹き溜まりのような物が出来てしまったらしい。放っておくと地脈と吹き溜まりが干渉しあって何が起こるか分からないからな、その吹き溜まりを無くしてほしいというのが今回の依頼だ。このままではその場所が小さいとはいえ特異点的存在になり、魔術協会なども動く事態になりかねん」

 

長い説明を終え、一息つく。

 

「つまりはその概念的存在を殺して、文字通りその学習塾跡とやらを無にすれば良い、そういう事か?」

 

「ま、要約すればそんな所さ。どうだい引き受けてくれるか?」

 

「そんな事言って、どうせ意地でも引き受けさせるつもりでしょうに」

 

「その通りだ黒桐。日程は1か月後の3月下旬で多少の調整は効くし、こちらかの報酬は交通費滞在費経費を除いて300万だ」

 

「実際の所はどうせまたなんか変な物でも貰って、それに釣られたんだろ?」

 

「まあそれもあるな。なにしろ怪異を専門とする連中と魔術の連中は極一部しか接点がなくてね。仮に旧知の知り合いでも中々話は聞けない。だが今回の件で私は報酬に多くの怪異談を知れる。中には怪異とは別な存在とはいえ関わり損ねた吸血鬼の物語もあるみたいだし、話を棒に振るなんてもっての他さ」

 

……彼女は10年経っても一切変わっていなかった。

 

「分かった、この話受けてやるよ」

 

「式、良いのかい?」

 

「ああ。なにしろここ数年は平穏な日々だったからな。そんな日々も悪くはないが偶には刺激も必要だ」

 

「式、君も母親なんだから…」

 

「その一般論も随分と久しぶりだな。まあそうだな、幹也、おまえがその土地とかを調べて危険だと判断したなら引こう。それ良いか橙子?」

 

「…分かったそれでいこう。だが返事は1週間以内に頼むぞ。先方への連絡もあるからな」

 

「それくらいあれば幹也なら余裕だよな?」

 

「……分かったよ、式。とりあえず橙子さん、その学習塾跡の場所の情報や関係者の簡単な情報だけでも貰えますか―――」

 

 

三日後

 

かつて伽藍の堂があり、今は瓶倉光溜という人物が興信所として利用している事務所に集まっていた。瓶倉本人は現在絶賛(強制)外出中であるのは当たり前だ。

 

「なんだかここにこの3人で揃うと懐かしい感じがしますね」

 

「ああそうだな。まあ思い出話は置いておいて黒桐、調査結果はどうだった」

 

「前に調べた浅神家なんかよりはよっぽど楽でしたよ。学習塾跡はかつて叡考塾と言われる塾で、内容自体はごく普通の小学生から高校生を対象とした塾だったようです。特にトラブル等も無かったみたいですが、この塾の親会社が経営破綻した事により叡考塾も潰れ学習塾跡となったようです。その後暫くは解体されることもなく放置されていましたが、地元住民によると数人の人間が出入りしていた時期もあったみたいです。その後8月に原因不明の火災により崩れ去り、本当の意味で学習塾跡へとなった…これが今回の現場ですね」

 

黒桐は一度区切りコーヒーを飲む。

式は簡単な和装で昔のように柱に寄りかかって話を聞いている。

 

「それで肝心の関係者ですが、橙子さんの言っていた阿良々木家はおおよそ調べられました。後は関係する人物について少々」

 

「まず阿良々木家自体は極普通の家でした。家系から怪しい所も無く、犯罪者や魔術師と思われるような人物もいません。そして現在の阿良々木家は両親と兄妹3人が暮らしています。兄が今回の当事者である暦、妹2人が火憐と月火。両親は警察官をしており、妹2人は『栂の木二中のファイヤーシスターズ』という地元で人助けなどをする活動をしていて有名、一方兄暦ですが高校では『不動の寡黙』とも呼ばれ、友達もほとんどおらず数学以外の成績は低く進学校の中でも落ちこぼれ的存在みたいです―――――」

 

 

 

とたっぷり1時間ほどで阿良々木暦と周辺人物、そして街の調査結果を報告し終えた。

 

「たった3日でよくそこまで調べたな。相変わらずのことながら感心するよ」

 

「いえいえ、今回はどうにも詳細不明なところが多くて申し訳ないです。それこそ戦場ヶ原ひたぎの病気の原因や、学習塾跡の火災の原因など……」

 

「まあ黒桐でも調べられないのは無理はない。それこそが今回関わる…怪異と呼ばれる存在だからだろう。普通の人間なら調査できなくて無理もない。むしろ出来ていたら私はお前の存在を疑わなければならんかもな」

 

「それで幹也、結論としてはどうなんだ? 大丈夫なのか、危険なのか」

 

「うん…まあ大丈夫だと思うよ。少なくとも専門家とかの同行があれば、の話だけど」

 

「それなら安心しろ。少々胡散臭い奴だがその街をよく知る男がいる。そいつと一緒の仕事になるだろうからな。それに式には魔眼がある。大体の事象には対処できるはずさ」

 

 

 

そして彼らは一つの物語と関わる事となる。

とある物語の終わりへと。破音の鳴り響く終幕へと。

 

 




クロスオーバー物ではFGO×ガルパン、FGO×シュタゲが構想にあったりします。
シュタゲはあまりにも独自設定が多すぎてシュタゲSSを先に書かねばならなそうだけど…
シュタゲ0もアニメが来年から始まるし書けたらなーと。


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空の境界×化物語 the Garden of night

空物語 こよみキル<中>

 

祖ノ伍

 

学習塾跡……は既に焼失し消失しているので、ミスドにて忍野と向かいう。

貝木といい忍野といい忍といい、ミスドになにか縁でもあるのだろうかとも思うが、今は気にしない事にしよう。

 

「さて阿良々木君、元気してたかい? ツンデレちゃんとは仲良くしてるかい?」

 

「ああ。一度別れたけど老倉……幼馴染のおかげでどうにかよりを戻したよ。それに大学にもちゃんと通ってるしな。それより忍野? 久しぶりの再会は嬉しいけど、どうにしてこの街に戻ってきたんだ?」

 

そう、これが最大の疑問であり、今回の議題である。

僕はてっきり忍野はもう二度とこの街に戻ってこないと思っていた。再開するとしても、それはどこか知らない場所の果ての時間で、何食わぬ顔で再開するもんだとばかり思っていた。

 

「そうだねえ……置き土産の処理、とでも言うのが正解かな」

 

「置き土産?」

 

全くもって心あたりがない。

思いつくのは千石撫子の一件だが、あれは貝木泥舟により決着が付き、忍野が関わった怪異談については、そのおおよそが何らかの形で結末を迎えている。

 

「阿良々木君が思っているのとは、ちょっと違うと思うよ? 少なくとも今回は怪異の問題ではない。少なくとも今の段階ではね」

 

忍野はドーナツを一口頬張ると、説明を始める。

ちなみにもう一人の忍野こと忍は脇でバクバクとゴールデンチョコレートを食している。

 

「僕が去った後、阿良々木君になにがあったのかは臥煙先輩におおよそ聞いてるよ。今回はその総決算……というよりかは幕を下ろしに戻ってきたんだ。僕も寝城にしていた根城こと学習塾、あそこがちょっとした特異点になりつつあってね、このままだと面倒な場所(魔術協会)に目を付けられる可能性もあるから処理しにきたのさ」

 

――学習塾跡

僕が吸血鬼と共に地獄のような春休みを過ごしていた時から関わる建物である。

確かにあそこには鬼、蟹、猿、虎を初めとし多くの怪異が訪れ、現れ、最後には虎の影響で燃え崩れ落ちた。

確かに北白蛇神社ほどでないにしろ、何か異常をきたしてもおかしくはない。

 

「大体の理由は分かったが、面倒な場所っていうのはなんだ? それとあの「両儀」さんとどういう関係があるんだ? 怪異の専門家かなにかか?」

 

「焦るなよ阿良々木君。一つずつ答えていくとも。ま、面倒な場所っていうのはこっちの事情さ、阿良々木君には”今は”関係ない。それと両儀さんだが、彼女は怪異の専門家ではない。そうだね……彼女は魔眼を持つ」

 

「魔眼? あのゲームとかに登場する?」

 

「そうだ。この世にはいくつか魔眼と呼ばれる特殊な力を持つ人間がいるが、その中でも彼女は別格の「直死の魔眼」と呼ばれるものを持つ。簡単に言ってしまえばモノが持つ死を視覚情報として捉えられる能力だ」

 

死を視覚情報として捉える。

なるほど、納得がいった。忍とのペアリングは切れる事がある。つまり消せる、死に近い概念がある。そして吸血鬼。吸血鬼は決して不死身ではなく、死がある。むしろ吸血鬼ほど殺せる方法が知られている存在というのも珍しいだろう。これは吸血鬼の殺し方に新しい項目を加えなければいけないのかもしれない。

すると今までドーナツを貪り食っていた…話を聞いていた忍がやっと話に入ってきた。

 

「なるほどのお、直死ときおったか……カカッ! どこぞの真祖の姫が最近東の地で果てたと噂を聞いておったが、その時も同じような名を聞きおったわい」

 

「ああ、確かにあの一件も直死の魔眼に関わる事件だったはずだけど、あっちの事件には両儀さんは関係無いさ」

 

もっとも、知り合いで関わっていた人間はいるみたいだけどね。と付け足しながら二人は話す。

どうやら僕が知らない所で、知りえない所で様々な事が起こっているようだ。

 

「でもそれなら心渡とかでどうにかならないのか?」

 

「断言しよう。無理だね。確かに怪異は関わっているが、特異点となりつつあるのは怪異ではない、もはや概念に近いものだ。心渡じゃ無理さ。まぁ阿良々木君にも立ち会って貰うよ。見て貰えれば、大体理解できるだろう」

 

「分かった。僕もあの場所に思い入れが無い訳じゃないからな。最期を見届けてやるよ」

 

「そうこなくっちゃ。じゃあ阿良々木君、明日の午前2時、草木も眠る丑三つ時にまた会おう」

 

 

 

 

 

空の境界 終幕破音 story in night

 

「それで忍野、昼間の奴は……阿良々木とか言ったっけ? あいつは”何”だ。影に化物飼ってる人間なんて初めて見たぜ」

 

時刻は0時

和服と長いその髪をビル風に靡かせながら、隣にいるアロハの男、忍野メメに問いかける。

 

「阿良々木君は人間じゃないさ。言うなれば人間に限りなく近い吸血鬼、といった所か」

 

「へぇ……今まで胡散臭い魔術師やら、起源覚醒者とやらとは出会ってきたが、吸血鬼は初めてだな」

 

「まぁ彼の場合は特殊さ。お互いを憎み合い、殺し合い、最悪の方法で救われ、結局今の形に収まっている。ちょっかいを出したい気持ちもわかるけど、今はそっとしておいてはくれないかい? 下手をすれば人類が滅亡しかねないからね」

 

そう、それは冗談でもなんでもない。

何か一つ歯車がズレれば、この世界は滅んでいた可能性だって、全く別の未来へと駒を進めていた可能性だって否定できない。そう、例えば蝸牛の少女が救われていたら……

 

「分かってるって。これでも一児の母なもんでね、世界の滅亡なんて望んではいないよ。今回の一件も橙子の奴がいなければ、決して交わる事の無い話だろ」

 

「そうだね。まあ僕としては、怪異談の幾つかで事が収まるというなら文句のつけようが無いさ。両儀さん、任せたよ」

 

 

 

空物語 こよみキル<後>

祖ノ陸

 

念の為、忍に血を吸ってもらってから学習塾跡へと向かう。

忍もちゃっかりと僕の背中に引っ付いている事から、何らかの思う事があるのだろう。

……ただの興味本位かもしれないが。

 

到着すると、そこにはやはり変わらずアロハの忍野と、日本刀を携えた和服姿の両儀さんが立っていた。

なんというか…両儀さんには勝てるビジョンが浮かばないのは何故だろうか。

それにどことなく全盛期の忍に声が近いような……おっといけない、余計なことを考えている場合ではないのだ今は。

 

「さて、阿良々木君も着いた事だし、始めようか」

 

忍野は何かお札を手にし、呪文を唱え、お札が光りだすと同時に何もない虚空へとお札を投げる。

するとだ、お札は何もない虚空にて止まり、後ろの空間に何かが姿を現す。いや、もともとそこにあったが目に見えていなかったモノが見えるようになったのだ。

 

「まぁ、あれが今回の元凶というやつだ。さっさと片付けて…」

 

忍野の言葉が途切れる。

目線の先には可視化した概念の塊のようなもの。だが、何かが違う。

概念に善も悪も無いはずだ。だが、あれは違う。そう感覚が訴えかけてくる。

 

刹那の出来事だった。可視化かした概念の塊からなにかが僕をめがけて攻撃を仕掛けてくる。腹に攻撃が当たり、口からは血をまき散らす。骨が何本か持っていかれが、忍に血を吸っていてもらった為、すぐに元通りになるだろう。

だが、アレは攻撃を止めない。いや、何かを狙っている。僕ではなく、この場で狙われるものといえば……忍しかいない!

 

「忍!」

 

「分かっておるわい!」

 

忍は急いで僕の影に飛び込む。

忍野も緊迫した声で叫ぶ

 

「両儀さん!」

 

「あぁ、分かってる」

 

彼女は月光の下、優雅に佇み、そして日本刀を構え、まるでその姿からは想像出来ない勢いで概念の塊へと向かい飛び出す。

 

 

 

「直死――死が、俺の前に立つんじゃない」

 

 

 

一閃

 

 

 

それだけで、事は終わった。

概念の塊はまるで最初からそこに存在しなかったかの様に消え去っていた。

なるほど、これが「直死の魔眼」の能力というやつなのか。

正直僕が仮にそんな能力を持っていても、もてあますどころか、死が見えてしまうなど発狂物だろう。恐らく彼女も何らかの方法で生活を送っているのだろうが、感服だ。

 

 

 

 

其ノ漆

 

 

「おい忍野、橙子やお前から聞いていたのと話が違うぞ。危険性は無いんじゃなかったのか」

 

そう、ある意味この概念の存在はかつて見た「くらやみ」に近いと思っていた。

だが、くらやみは自然現象に近い世界の修正力そのものであったのに対して、こちらは偶発的に誕生した存在に近い。意志などは持ち合わせず、ましてや忍を狙う理由がわからない。

 

「こればっかしは完全に想定外のイレギュラーだったよ。僕としても可視化後は何事もなく両儀さんに切ってもらうだけで終わるだけだと考えていた」

 

忍野をもってしもイレギュラーだというのか。

 

「間違いないのは”何者”かが意図的にしろ無いにしろ、この特異点に影響を与えたのだろう。全く心当たりは無いが……とりあえずこの件はこちらでどうにか探ってみよう。今はこの件が解決できた事を喜ぼうじゃないか」

 

イレギュラーは起こったが、本来の目的は達成できた。

今はそれを喜ぼう。

 

「だな。ありがとうございました、両儀さん。おかげで助かりました」

 

「礼は要らないよ、俺はただ依頼をこなしただけだ」

 

「だとしても、助けてもらったのに変わりはありません」

 

「ふっ。まるでおまえ幹也みたいだな」

 

両儀さんが、ぽつりと言葉をこぼす

 

「幹也?」

 

「俺の夫だよ。子供が生まれてからは落ち着いたが、昔は後先考えず誰かのために事件に首を突っ込んで厄介な事態に巻き込まれていたもんだ。お前もそういう口だろ?」

 

「えぇ、まあ」

 

驚きである。僕のような奴が他にもいたというのも驚きであるが、目の前の女性が子持ちの人妻だったのが驚きである。

美しい女性ではあるが、どこか孤高の存在というイメージがあったが、まさか子供までいたとは。別にその夫が羨ましいとは思わないが、果たしてどのようにこの女性をおとしたかというのには興味がある。

思い切って聞いてみよう。

 

「どういう経緯で結婚とかされたんですか?」

 

「あ?」

 

怖い。凄く怖い感じで睨まれた。

具体的には選択肢を誤ると首と胴体が漫画のごとくサヨナラしてしまいそうな予感すらしている。

 

「い、いえ。僕も将来結婚したいなーと思っている女性がいるもんで、普段結婚された女性なんて自分の母親以外と会わないので少しきになって」

 

これは本当である。漠然とではあるが、ふとした時に恋人であるひたぎと結婚したら……などと妄想する事はあるし、今は学生という身分だが、将来ちゃんと収入を得られるようになったらいつかは……という気持ちが僕の中には確かに存在する。

 

「俺の話なんて参考にならないと思うぞ。殺しと血と、死と陰謀と……そんな話だよ。お互い失ったものもあったが、それでも得られたものも大きかった。詳しくは語る気も無いけどな」

 

どうやらその幹也という男性は、経緯も中身も違くとも、僕と同じで少なからず厄介事に巻き込まれ、色々見て来たのであろう。だが、彼女の言う得たものが大きかったというのに間違いは無いだろう。

先ほどのような斬れる刃のような表情と視線は無くなり、どこか満足気に、穏やかな空気になっている。恐らくその表情は、普段家族にしか見せない母親としての、女性としての顔の一端なのだ。

 

「そうですか……ありがとうございます。僕も僕なりに頑張ってみますよ」

 

「そうかい。じゃあ、今度こそ俺はこれにて失礼させてもらうぞ。報酬とか事後処理とか、そこらへんは全部橙子にでも放り投げておいてくれ」

 

じゃあな

 

とそういう彼女は月の光の下を歩いて去っていく。

現代の日本にはとても異質的な恰好ではあるが、まるで映画のワンシーンを見ているような感覚に陥る。

 

「お疲れ様阿良々木君。とりあえず僕は明日まではちょっとした事後処理でこっちにいるから、僕にまた会いたくなったらまたこの学習塾跡にでも来てくれ」

 

「分かったよ忍野。とりあえず今晩はいったん帰らせてもらうさ」

 

そう言って僕は足を進める。

あの両儀さんが帰る場所があるように。僕もまた、両親や妹たちの暮らす、今の僕の帰る場所が、この街にはある。

 

 

 

 

空の境界 終幕破音 End of story

 

 

「お帰りなさい、式」

 

 

 

事を終えたその日の夜に両儀の屋敷へ帰ると、幹也がいつもと変わらぬ優しい表情で出迎えた。

 

 

 

「ただいま、幹也」

 

 

 

幹也と娘の3人で夕食を食べ、広い浴場で汗を流してから二人で縁側に座り、お茶を飲みながら今回の出来事について話していた。娘の未那は既に眠りについており、二人だけのゆったりとした時間が流れていた。

 

「そんな事があったんだ。僕としては吸血鬼とか怪異とかは興味深いけど、話を聞く限り関わらない方が良さそうだね」

 

「ああ、今回ので実感した。魔術師とかの連中も大概だがあいつらはまだ”人間”だ。だが怪異は”人”では無かった。普通に見えて、全く普通じゃなかったよ」

 

「でも僕としてはそんな事よりも、式が無事にちゃんと、帰ってきてくれた事が一番嬉しいな」

 

昔から変わらず本音を隠しもせず口にしてくる幹也に、式は年甲斐もなく顔を赤くしてしまう。

そんな幹也の事を愛おしく思い、彼の体に自身の体重を預ける。

 

「俺も……私も幹也がいるから今の私があると思ってるし、大切な娘も産まれた……こんな今の生活を手放したくは無いし、一生続けたいと思ってるわ」

 

「そう言ってくれて嬉しいよ。僕も式を、一生許さない(はなさない)でいるからね」

 

お互いの言葉にお互い顔を赤くし、穏やかに笑いあう。

 

「ねえ幹也、まだ眠くない?」

 

「うん、まだ眠くないけどどうして?」

 

「男なら察しなさいよ

 

 ――今夜は、優しくしてくれないかしら?」

 

「――うん、わかった」

 

春の訪れを予感させる風は流れ、夜は更けてゆく――

 

 

空物語 こよみキル<結>

其ノ捌

今回の事件……というよりも終幕のオチ。

両儀さんの一閃により、無事学習塾跡は、文字通り学習塾跡になったらしい。痕も残さず、址へとなった。

 

その後家へと帰り、僅かな睡眠をとり、日が昇る頃に再び学習塾跡へと足を運んでみた。

するとそこには言った通り忍野メメの姿があった。両儀さんの姿はなく、どうやらちゃんと事は終わったのだと実感する。

 

「やあ阿良々木君。別れの挨拶でもしに来てくれたのかい?」

 

「ああ、ひたぎの家に向かう途中にだけどな」

 

お互い積もる話はあるが、交わす言葉は少ない。

僕たちの関係はそれで良いのだ。

 

日がいつもと変わらず街を照らし始める。

普段早起きをしない僕はあまり目にしない光景で、ちょっとした感動を覚える。

 

「さて阿良々木君、今度こそ本当にお別れだ。恐らく僕はもう二度とこの街を訪れる事は無いだろう」

 

「分かってるさ、そんな事」

 

「だろうね。

 じゃあボクはここらへんでお暇させてもらおう。また生きてればいつかどこかで会う事もあるだろう」

 

「だな。その時にはせいぜい土産話の一つや二つ出来るようにしておくさ」

 

「楽しみにしてるよ。

 ……それとあの委員長ちゃんだけど、彼女の事は気にしていた方が良いと思うよ」

 

委員長ちゃん……つまりは羽川の事だ。

羽川翼。僕の恩人であり、同級生であり、今は世界中を巡り、世界から注目されている人間だ。

和製ジャンヌ・ダルクなどとも呼ばれ、メディアでも多く取り上げられている。

 

「なんでだよ?」

 

確かに羽川は地雷原に赴いたり、とても一般人では入れないような国へと来訪したりしているが、平和活動については尊敬したい位に活躍している。

 

「きっといつか分かる時が来るさ」

 

忍野は朝日へと向かうように足を進めながらそう言った。

 

「彼女は『本物の化物』にいつかなるよ」

 

忍野メメは、いつもと同じ口調で、そう呟いたのだった。

 

 

 

阿良々木暦がその言葉を理解するのは一年近く後である。

そして、羽川翼との『結』末を、『結』別を迎えるのは、まだしばらく先の話しだ。

 

 

 

未物語/the future of Avalon

 

化物語×Fate/Grand Order

 

「僕が背負えるのは、吸血鬼と、愛する嫁と、これから生まれてくる命くらいなもんだよ。人類なんて、とても手には負えない」

 

「先輩と阿良々木先輩の違いですか? ……価値観や考え方など色々ありますが、一番は心の差、でしょうか」

 

「カカッ! 人間の敵であるはずのこの儂が、まさか人間を救う手伝いなどさせられるとは……馬鹿にも程があるわい」

 

「阿良々木君、君は人間とはなんだと思う?」

 

「全く、暦はいつまでこんな事を続けるのかしら? 私と、これから産まれてくる子の事を見捨てて死んだら、人類滅亡ルートまっしぐらだから覚悟しておきなさい」

 

 

 

その旅路は、未来の為の物語

 

 

 

 

...To the infinity future

 




両原作者とも色々文体とかに特徴があるから混ぜるのが大変だったし全く上手に表現出来なかったのが後悔


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