東方緑妖想 (和菓子屋蜜柑)
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コラボ・読み飛ばし可
狼と異世界人 


東方聖霊夜を書いている聖魂のマキシさんとのコラボをさせていただきました
なんか、駆真君の話方が違うような気がする・・・orz
本編には関係のない内容となっておりますので、お嫌いな方は読み飛ばし推奨


「紫~。ねぇ、なんかいい働き手ない~?」

 

 

「どうしたのよ。あなたには爽歩に妖夢がいるでしょ?」

 

 

「いやぁ、ちょっと雪が積もっちゃって、大変なのよ。爽歩も妖夢も必死雪かきしてくれてるんだけど、そうすると屋敷の中での働き手がないのよ」

 

 

「ふぅん。式でもつかえばいいじゃないと言いたいところだけど、うーん。あ、そうね。違う世界の幻想郷の住民を連れてくるっていうのはどうかしら?」

 

 

「違う世界の住民?」

 

 

「ええ。世界はいくつもあってね、この世界の私は一人しかいないけど、違う世界の私はその世界で一人しかいないっていう平行世界(パラレルワールド)ってやつね」

 

 

「へぇ。面白そうね」

 

 

「そうね、言い出したのは私だけど、面白そうね。ちょっと待っててね-」

 

 

紫はそういうと、スキマをのぞき込んだ

 

 

「うーん。あ、いい人間発見」

 

 

「ほんと?きちんと働きそう?」

 

 

「そうねぇ。なんか大会?やってるけど、まぁ、幽々子の家が雪の重みでつぶれる方が駄目ですものね。連れてくるわ」

 

 

「やったぁ。ふふふ。楽しみだわ」

 

 

「んー?あれ?おかしいわ・・・あ、やっちゃったかも」

 

 

「どうしたの?」

 

 

「ちょっとスキマの座標の位置間違えたかもしれない・・・」

 

 

「え」

 

 

「だ、大丈夫。あ、いたわ。白玉楼の前に落としてしまったようよ」

 

 

「・・・門も前ならきっと妖夢が気づいてくれるわね。しばらくコキ使ってみるわ。ありがと。紫」

 

 

「いいえ、あなた(幽々子)のためならこんなことお安いご用よ」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「うう、寒い」

 

 

刀の代わりに、箒を持ち。私は雪を掃いていた

ボトッ。

 

 

「なんか音がした・・・?もしかして、泥棒!?・・白玉楼に入るとはいい度胸です。この刀の錆にしてあげましょう」

 

 

白楼剣を構え、私は音のした方へ走る。

いた!

男かっ!居合いの要領で思い切り踏み込む。

その男を真っ二つにするため

 

 

「わああああああああああああああああああああああああああ」

 

 

その男は悲鳴を上げ、背を反った

 

 

「ちっ・・・。外しましたか。」

 

 

「待ってエエエエエエエええエエエエエエエ!!!!!!!!」

 

 

脚が光っており、脚力強化をしているようだった

小賢しい。早く片付けて雪かきをしないと

一気に方をつける!

 

 

剣伎「桜花閃々」

 

 

「スペカっ!?玄武『グランド・ドライブ』!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ドーン

 

 

「はっ!?」

 

 

音がした方向を見るとそこは妖夢が雪かきをすると言って、分担した区域だった

・・・もしかして、何か妖夢にあった?

僕は急いで狼化し、その場に駆けつけた

その場で見たのは、妖夢が倒れてる僕と同じくらいの男の子を剣先でさそうとしていた

 

 

「待って!待って!」

 

 

「うるさいです。この白楼剣の錆にしてあげます」

 

 

・・・・なんだ?この状況は

 

あ、これが混沌(カオス)ってやつか

この前、紫さんが言ってたの思い出した

ついでに、あの後すぐに幽々様が来て、事情を説明した

 

 

 

「ってことなのよ~」

 

 

「と、いうことは、君は異世界の子?」

 

 

「俺は神崎駆真。えっと、多分、あなたが魂魄妖夢さんでいいんですよね・・・?」

 

 

「・・・先ほどは本当に失礼しましたっ!」

 

 

「もう、妖夢は。勘違いで奔っちゃ駄目だよっていつも言ってるのに・・・。えっと、駆真君。僕はここの白玉楼の従者の一人の夢魂爽歩だよ。よろしく」

 

 

「え、あ?さっきの狼?」

 

 

「うん。僕の姿の1つなんだよ。あ、獣人じゃないからね。一応、後天的な半人半霊です」

 

 

「狼に変身できるっていいなぁ。」

 

 

「僕には相棒がいるからね」

 

 

人魂に手を伸ばすと、嬉しそうに腕に絡まりついた

 

 

「それじゃ、今回の駆真の担当は爽歩でいい?あ、妖夢は今から説教ね~」

 

 

ずるずると妖夢は襟元をつかまれ、幽々様の部屋に連れて行かれた

南無

 

 

「それじゃ、よろしくね」

 

 

「まぁ、元の世界に戻る為に頑張るよ」

 

 

「それじゃ、今から雪かきの続きいくよー」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

駆真視点

 

 

「ゼェゼェ・・・・」

 

 

「大丈夫?」

 

 

あれから、2時間が経過した。少しでも手を休めると爽歩から嫌な威圧感が。

無言で休むなよ?と言われてるみたいだ

 

 

「それじゃ、次は館の雑巾がけだよ」

 

 

「よ、よし、雑巾がけなら・・・」

 

 

って、俺はこの屋敷の大きさをなめていた

これは・・・ない

 

 

「って、なにこの廊下」

 

 

 

「え?これ、白玉楼だよ?」

 

 

もの凄い広かったorz

もちろん爽歩は軽々とこなしていく

俺は筋肉痛がバッキバキ。

雑巾がけの最中にうつぶせに突っ伏した

 

「あ、大丈夫?うーん。ちょっと我慢してね?」

 

 

「え?ちょっと、え?何?何でその手光ってるの!?」

 

 

爽歩の手からバチバチと電気が目に見えていた

 

 

「大丈夫。多分、駆真君にも効果あるから」

 

 

爽歩が俺の背中に手を当てた

バチィ

まるでスタンガンを押しつけられたかのような電流が体中に奔った

 

 

「うーん。どうかな?」

 

 

「へ・・・?あ、身体が軽い・・・」

 

 

「君の身体に電気を流して筋肉を和らげてみたんだけど・・・・」

 

 

「うん!うん!治った!」

 

 

「よかった。それじゃ、次は最後だよ」

 

 

そう、爽歩に言われ連れてこられた先は厨房だった

 

 

「・・・これが一番大変なんだよね・・・」

 

 

爽歩を見るとなんか目が笑っていなく既に疲れきった顔をしていた

 

 

「何が大変なんだ?」

 

 

「幽々様はもの凄く食べるんだよ・・・・、半端ないくらいに。駆真君が来てくれて助かったよ。」

 

 

(まぁ、食べると言っても・・・・ね?)

 

 

このとき、俺はなめていた。

あんな事になろうとは思って居なかった

 

 

「駆真君ー!これ運ぶの手伝って-」

 

 

「うーい。って・・・・え?これ全部?」

 

 

「うん。そうだね。それじゃ行くよ-?」

 

 

もの凄い量を渡されて、俺は厨房に再び戻る。

え?コレ全部料理するの?

爽歩が包丁を使いガンガン材料を切っていく

え。見えない

なにこれ?料理ってこんなに戦場みたいだったっけ

 

 

「ううう、ただいま戻りましたー。爽歩さん、私も手伝います」

 

 

そこでピンチヒッターの妖夢が出てきた

 

 

「妖夢!いいところに!そこの魚捌いて!駆真君はサラダ作って!」

 

 

サラダの材料を見ても、どう考えても、これ、作りすぎにならないのかな・・・

まぁ。作るか・・・

隣の妖夢を見ると、魚を宙に放り投げていた

 

 

「え!?ちょーー!」

 

 

その瞬間、妖夢の手にしていた刀が一瞬ブレ、捌かれた魚が刺身となって皿の上に盛られていた

おわかりいただけただろうか・・・・

 

「妖夢-!刀使ったら駄目って何度も~」

 

 

爽歩の話を聞く限り、刀を柄って料理するのはもうおなじみみたいだ

なんだかんだやってる内に、何とか料理は完成した

(もうキャベツ切りたくない・・・・)

 

食卓に並べ、もの凄い量の米を持って行くと、既に、主の幽々子がいた

箸を構え、準備万端のようだ

すぐにご飯が始まった

幽々子は優雅にかつ、美味しそうに食べるのだが、その箸の動きは速い

爽歩と妖夢を見ると、普通に食べている

あ、やっぱり、こっちが普通なんだよね?

 

 

「あ、あのー。すいません」

 

 

「あら、なぁに?」

 

 

「俺、戻りたいんですけど・・・」

 

 

「そうねぇ、紫~」

 

 

「はいはーい。あっちの私に怒られちゃいましたわ。すぐにでもあっちに戻しますわ」

 

 

「今日、一日だけど楽しかったよ。ありがとう駆真君。用事があったみたいなんだね。そんなときに本当に手伝ってくれてありがとう」

 

 

「今日は本当に手伝ってくださりがりがとうございました・・・・今朝の事は本当にすいませんでした」

 

 

 

「お別れは済んだかしら?それじゃ、戻しますわ」

 

 

俺の真下に大きな目が開き、俺はボッシュートされた

その中は目が一杯でSAN値が減りそうだ

それも・・・

 

「ああああああああ、まだご飯の途中ーーー!」

 

 

その瞬間、何か投げ入れられ、俺の手の中にあった

 

 

「お土産だよー!」

 

 

爽歩の声が聞こえた気がする

藍色の風呂敷に包まれた何かは俺の腕の中に。

 

 

宙を浮いている感覚からいきなり、地面にたたきつけられた

 

 

「うぐっ・・いたたた」

 

 

周囲を見渡すとそこは元のいた世界とわかった

何でって言われても、聖霊夜の開催している会場だったから

 

 

 

「おかえりなさい、駆真君」

 

 

声の方向を見ると、そこには聖さんがいた

 

 

「状況は妖怪の賢者に聞きました。大変でしたね」

 

 

「あ、ありがとうございます・・・。あ、そういえば、お土産もらったんでした」

 

 

包みを開くと、半霊と蝶が描いてある弁当箱。

 

 

「お弁当・・ですね」

 

 

「それもきちんと、数人分の箸が入ってる」

 

 

「ふふふ、あとでみんなで食べましょうか」

 

 

「そうですね・・・」

 

 

そのあと、妖夢が弁当箱の中身をつついて驚いたのは別の話ーーーー




と、いうわけで、東方聖霊夜とのコラボでした
マキシさん、いかがでしたでしょうか?
白玉楼の弁当は幻想郷1~!!
次回の更新で、爽歩君のイメージ画をUPします
それでは次回までゆっくりしていってね!


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本編
プロローグ


東方麗霊想に続く「想シリーズ」第2段です
作者の趣味全開で行きますのでご注意ください。投稿スピードは遅め。(連休に入ると少々速くなります)
ハーレムは作る気は全くもってありません。ハーレムを希望する方はバックステップでお願いします
作者は白い粉(砂糖)が大好きです。
誹謗・中傷は勘弁してください。作者は豆腐メンタルです

そんなものでもよろしければ、よろしくお願いします


私、魂魄妖夢は白玉楼の庭師だ

主人の幽々子様に仕える庭師。

それ以外でもそれ以下でもない。

幽々子様をお守りするのが使命。

そう、思っていた

それが一番大事で、ずっとそうだった。

 

 

 

そう、私があいつに出会ったのは、春が来るにはまだ当分先という季節。冬だった

一面が銀世界になり、更にその銀世界を作り出す雪が降っている時だった

 

 

「ううう。寒い」

 

マフラーを付けて外に出て、庭の掃除をする。

冬でも白玉楼の庭は手入れをしないといけない。主にすることは、雪かきになるが・・・

木に降り積もる雪を落とさないと、木の枝が折れてしまったりするために、この作業は毎日欠かせない

・・・まぁ、一回さぼってしまって、枝を折ってしまった事が原因なのだが、それに対する幽々子様のお仕置きは酷かった。

 

 

「一日6食も食べるなんて、拷問すぎる・・・」

 

 

そう、お仕置きの内容は一日6食を幽々子様が食事回数を増やすというものだった

この食事回数を増やすというものが、酷い。

幽々子様はたくさんお食べになる。それこそ、あの細い身体のどこに入っていると問いたくなるくらいに食べる。

その食欲を満たすために、米を一回に一升炊くのは当たり前。それに足しておかずも山のように食べる

亡霊だからそんなに食べなくてもいいと思うのになぁ・・と思うのは御愛嬌

まぁ、そんな鬼のように食べる(鬼もそんなに食べない)食事を作るのは、私の仕事の1つのなっている

この大量の食事を作るのが大変なのだ。

しいて言うなら、あの時は白玉楼の1週間は保たれる食糧庫が4日でなくなったのは、泣いてしまった

(買い物も大変なのだ)

 

 

「まぁ、お仕置きに比べたら・・・このくらい・・・」

 

 

そう思い、私は箒で木をゆらし、雪を落とし続ける

最後の木。一番大きい西行妖の雪おろしをしようとしたその時だった

白銀の世界に1つ違った銀色が見えた気がした

場所は西行妖より少し歩いた場所。

 

 

(なんだろ・・・)

 

 

なんとなく、気になってしまいそこに向かって歩く

雪に足と取られつつも、そこに到達して違う銀色の正体を見た

 

 

私の銀色の髪と同じ毛色の獣・・・犬だろうか

 

 

「なんでこんな所に・・・。それと、刀?」

 

 

銀色の毛並みは雪で濡れており、その眼は固く閉じられている。不思議な事に、その口には日本刀が咥えられ、取ろうとしても取る事ができなかった。その刀は柄に白い布が付いており、さらにその先には鈴が付いていた

私はその犬と推定される獣を持ちあげた。迷い込んできてしまったのだろうか

抱き上げた瞬間に力が抜けたのか、口から咥えていた刀をポトリと落とした。

とりあえず、雪で水分を吸って濡れてしまっている犬を抱き上げ、そして、犬が持っていた刀も一緒に持ち、急いで白玉楼に戻った

白玉楼の与えられている自室に戻るとすぐに犬をタオルで拭いて、温かいよう毛布でくるむ。

とりあえずはこれでいいだろう。

元気になったら、また白玉楼の外に逃がしてあげよう

 

 

「よし・・・。これで目が覚めるのを待てばいいかな・・・。その前に急いで西行妖の雪を落としてこないと」

 

 

そうして再び妖夢は白銀の世界に戻っていった

 

ーーーーーーーーーー

 

「ふぅ・・・。寒かった。」

 

自室に戻ってくるとさっき拾ってきた獣をくるんでいるはずの毛布がモゾモゾと動いていた

 

 

「あ、目が覚めたんだ。」

 

 

毛布をめくってやると、空色の瞳と目があった。透き通るような空の色

 

 

「君が、僕を助けてくれたヒト?」

 

 

ん?どうしてだろう。私しかいない部屋で言葉が聞こえた

 

 

「君だよ。助けてくれてありがとう」

 

 

「みょん!?」

 

 

そう、声の主は私が拾ってきた獣だった

 

 

「僕の名前は夢魂爽歩(むこん そうほ)しがない剣士だよ」

 

 

「剣士!?犬なのに!?」

 

 

「あぁ、今の姿はそうだったね。あ、ヤバイ。そろそろ戻りそうかも。」

 

 

(怪しいなぁ)

 

 

仮に嘘で襲いかかってきたとしてもきちんと刀に手をかけ、いつでも抜刀できる準備はしていた。

 

 

「ふぅ、ようやく戻れた・・・」

 

 

振り向くとそこには、毛布を被って頭だけを出した短い銀色の髪の私と同じぐらいの歳の子がいた

 

 

「・・・どちら様でしょうか?」

 

 

「やっぱりこの姿だとわかんないかぁ。さっき犬・・・の姿をしていた夢魂爽歩だよ」

 

 

「でも、獣耳はないじゃないですか」

 

 

「・・一応僕は人間だから。それはさておき、ここはどこ・・になるのかな?」

 

 

なんなんだ。この人。

 

 

「・・・白玉楼です。ここは冥界の白玉楼で我が主の西行寺幽々子様が治められていらっしゃいます」

 

 

「そっか、ここが白玉楼。ようやくたどり着いた・・・ねぇ、いきなりで本当に申し訳ないのだけれど、君の主である西行寺幽々子さんに会うことはできない・・・かな」

 

 

「幽々子様に?何用でしょうか?私は側近で有る故、聞く権利くらいはあるかと」

 

 

「凄い!側近なんだ!君もさっき見たと思うが、僕は狼になるんだ。人なんだけどね。それを解決できるのは白玉楼の主という話を妖怪の賢者から聞いてね。来たんだけど、狼には変化しちゃうし、途中で吹雪きで力尽きるし、さんざんだったんだ」

 

 

まるで犬が悄気るような顔で言った

その姿に一切の悪意、虚偽は見あたらなかった

 

 

「・・・付いていてください。幽々子様の元に案内いたします」

 

 

失礼ながら半霊を幽々子様の元に行かせ話の事情を説明し、許可は同時にとった 

途中で半霊がかじられたけど・・・

 

 

「ありがとう、ええと・・・・」

 

 

「魂魄妖夢です。」

 

 

「ありがとう魂魄さん」

 

 

「それでは、案内いたしますので付いてきてください」

 

 

一応、虚偽は無い。幽々子様を危機に貶めるような輩じゃないことも確認できた

・・・・まぁ、用心することに超したことはないのだけど。

 

 

そうして私は、幽々子様の元に夢魂爽歩さんをお連れした

 

 

「幽々子様、客人をお連れしました」

 

 

「入っていいわ」

 

 

柔らかい声がする。私の主人である幽々子様の声

私は幽々子様のお許しが出たのを確認し、襖をそっと開く。そして、銀色の彼に中に入るように促した

 

 

「こんにちわ、あなたが夢魂爽歩・・・君でいいのよね?私は、白玉楼の主人である西行寺幽々子よ。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

僕はいつだったか覚えていない

犬・・よりも鋭い感覚をもつ狼に変化できるようになってしまった。その変化は任意で行えるものではなく、勝手に起きてしまう

昔は変化して自我が保てなくて暴れてしまっていた。山で暴れていたおかげで人間には手を出していない

そんな狼に変化できる僕は当然村人たちから迫害され、僕は餓死直前になり死を覚えた

そのとき、神様が通りかかり僕を拾ってくれ育ててくれた。まぁ本当の神様じゃなく、人間だけども。

その人は、刀を使い、僕に人として生きる技術を教えてくれた。

あるとき、そんな師匠と一緒に暮らしていた時のことだった。魂魄妖忌という剣士が師匠と戦った。勝敗は覚えてないけど、彼は僕を見て言った

「もし、お前のその体質を抑さえたいと思うならば、白玉楼に行け。きっと・・我が主なら何か知っているだろう」と言い残して去っていった

師匠がしばらくして流行病で逝くと僕はあの剣士の言っていたことを思い出し、白玉楼に行く決心をした。

まぁ、途中で狼に変化して、食べ物も無くなり、おまけに吹雪も吹いて僕は倒れ意識を失い、気がつくと、和風な家に寝かされていた

しばらくして、この部屋の主であろう、銀髪の線の細そうな美少女が帰ってきて話を聞くとここ白玉楼だということが判明した

もしかしたら、僕のこの体質が治るかもしれない

銀髪の少女が案内してくれた。そして僕は白玉楼の主である西行寺幽々子に出会った

 

 

 



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狼と亡霊姫

どうも、和菓子屋蜜柑です
前作から来ていただいているかた、本当にありがとうございます
今作から来ているかたも本当にありがとうございます
こんな駄文ですが、これからよろしくお願いします


「はじめまして、私がこの白玉楼の主人である西行寺幽々子よ。」

 

 

桃色の緩くウェーブのかかった髪が揺れ動く

亡霊姫なんて呼ばれているけど、そんな風には全く見えない

足・・・もある。本当に死んでいるのだろうか・・・。

 

 

「お初にお目にかかります。僕は夢魂爽歩(むこん そうほ)と申します。あなたなら僕の体質を直せるかもしれないと聞いてここに来ました」

 

 

「体質・・・ねぇ。そうねぇ」

 

 

西行寺幽々子は僕を見て言った

 

 

「あなたはもし、体質が治るとしたら対価はどうするつもりだったの?亡霊相手に無料で治してもらえるなんて思っていないわよね?」

 

 

「・・・それは・・・僕の一番大切な刀を・・・差し出します。いえ、刀だけでなく僕自身も生涯尽くします。僕はまだ生きたい。生きて大切なものを見つけたいんです。師匠との約束なんです。お願いします」

 

僕は地面に頭を付け、懇願した

まだ、生きていたい。

どんな形であっても、生きていたいのだ

 

 

「そうねぇ。それはともかく、まず、ズバリ言うわね。このままだとあなたも感じている通りにあなたは死ぬわ。あなたの中には、二つの魂がいて、狼の魂があなたの魂を食べてる状況なのよ。あなたの魂はすでに半分食べられていて、このままだとかなり危険な状況よ。紫もこれだと境界をいじっても手の施しようがないがないし、・・・ねぇ。本当にどんな形でも生きていたいって言ったわよね?」

 

 

「はい。どんな形でも、生きていたいです。その気持ちにかわりはありません」

 

 

「・・・・そう。それなら、あなた、妖怪になってもらうわ。そこの私の従者の妖夢と同じ半人半霊じゃないとあなたを生かせれない。」

 

 

どうやら、西行寺幽々子の話だと、僕のなかにいる狼の魂を魂魄さんの白楼剣で僕の魂を喰っている狼の魂の半分を切り、そこから西行寺幽々子の「死に誘う程度の能力」を使い、魂魄さんが切った狼の魂の半分を消滅させる。魂は1つにまとまろうとする性質を利用し、喰われていた僕の半分の魂と残っている狼の魂を上手く1つにまとめる・・・という事らしい。

 

ー夢魂ノートー

魂は1でないといけない。(魂魄さんの半人半妖も言葉通り半分人、半分妖怪ということらしい)

このまま放っとくと、僕の魂は喰われ、身体を狼に奪われる。

現在僕の中にある魂は狼の魂に喰われた自分の魂(0.5)と狼の魂(1)がいる

僕が自我を保つ為には、狼の魂(1)を魂魄さんの剣で半分に切り、僕の半分の魂と融合させる必要がある。(0.5+0.5=1)

治療?が成功したら、僕は半人半妖という扱いになり、一応、人のカテゴリーから外れる。

 

 

 

 

「成功したら、そのときにあなたに対価を求めるわ。・・・そうね。今日は満月だから、今晩にしましょう、妖夢」

 

 

「はい」

 

 

「準備よろしくね」

 

 

「かしこまりました」

 

 

「それでは、夢魂様。こちらに。」

 

 

そうして僕は魂魄さんに連れられ、西行寺幽々子の部屋を後にした

部屋に連れられると、

 

「とりあえす、夜になるまでここでお過ごしください。」

 

 

「ええと・・ありがとうございます」

 

 

「・・・あなたも剣を使うのですか?」

 

 

「え?」

 

 

「いえ、お気になさらず」

 

 

「・・・。魂魄さんも剣を使うのですよね。・・・もしよければ、手合わせをお願いできませんか?もし、死んだら、もう剣も握れないので」

 

 

「・・・人間の最後の勝負ということですか。わかりました。幸い今日は食事の下ごしらえは終わっているので、修行の一環と言うことで私でよければ、相手になりましょう」

 

 

「よろしくお願いします」

 

 

「それでは、庭に出ましょう」

 

魂魄さんの後に続き、外に出る。自分の分身とも言える師匠から譲り受けた刀を握りしめ、目の前の少女との戦いができるのは嬉しかった

先ほどの西行寺幽々子の話では、僕が支払う対価は成功してからだ。

魂を半分に切られたら、普通は生きていられない。そして、狼の魂が僕の魂を取り込んで、再び狼の魂になると言うことも考えられる。けっこうリスクのあるという事だ。

狼に魂を喰われるにも、僕自身が耐えきれなくても、死ぬ前に剣を握ってから死にたい

 

 

「ふふふ、二人とも手合わせかしら?」

 

 

気配もなく近くの縁側に座っていた西行寺幽々子。

・・・あぁ、亡霊なのだから気配はなくて当然なのか?

 

 

「はい、お願いします、幽々子様。」

 

 

「それじゃ、この石が地に落ちたら開始よ」

 

 

庭に落ちていた石を拾い、言う。

魂魄さんが、普通よりも長い刀を構える。

それにならい僕も構える。

西行寺幽々子の手から放たれた石は放物線を描き、地に向かう

 

カンッ

 

 

その音と同時に魂魄さんが動く

一気に間合いを詰め、その長い刀のリーチを生かし、攻め込んでくる。

高速の突き。

冷静にその動きを見る。大丈夫。目で見えない速さじゃない。これならーーー

軸足に力を入れつつ僕の愛刀・鈴音で魂魄さんの刀の力をそのまま受け流し、そのまま、受け流した力を使い、背後に回り一撃。きちんと峰で打っているいため、痛いだけだ

 

 

「ぐっ・・・」

 

 

「ほら、妖夢。彼を人間と思ってなめてると負けるわよ」

 

 

西行寺幽々子の声がかかった瞬間に更に速度が上がる。

・・・やっぱり手を抜いていのたか。人間と妖怪では基本の身体の性能が違う。(極希に例外もいる)

一応、僕も例外にはいるのか、刀を使うには、普通じゃない能力を持っていた

 

 

「現世斬」

 

 

「!?」

 

一瞬、魂魄さんがブレたと思った瞬間に、魂魄さんは僕の背後におり、更に、一撃重い攻撃が胴に入った

 

 

「魂魄さん。それは能力ですか?」

 

 

「・・・そうです。」

 

 

「そっか。あなたが能力を使ったなら、遠慮はいらないよね」

 

 

身体に電気を纏わせる。身体の反応が跳ね上がる。

 

 

「雷脚斬」

 

 

脚に電気を纏わせ、魂魄さんの刀の柄を狙い、蹴り上げる。

人間である僕の身体は光速の動きについて行くのは一瞬しかできない。それ以上やると、身体が壊れる。

でも、今は一瞬でいい。

光速の動きに反応出来なかった魂魄さんはそのまま僕の狙い通りに刀を蹴り上げられ、手から刀は失われた。しかし、そこから魂魄さんは速かった。手から刀が無くなった瞬間に彼女の腰にあった脇差しのような長さの刀をすぐに取り出し、カウンター気味に僕の喉に突きつけた

 

 

「・・・参りました」

 

 

僕のこの雷脚斬は問題があり、能力を使用した後が大幅に身体能力が低下する。身体が能力の使用で悲鳴をあげてしまうからだ。さっきの魂魄さんはそれのスキをついて攻撃を仕掛けられた

 

 

「そこまで。勝者、魂魄妖夢」

 

 

「「ありがとうございました」」

 

 

西行寺幽々子の声で試合は終了。僕は彼女に負けた。

 



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狼と魂

どうも、和菓子屋蜜柑です
まだまだできたてホヤホヤの東方緑妖想。ゆっくりしていってね!


あのあと、僕は夕飯に呼ばれ、魂魄さんが作った料理を食べ、夜を待った

思い出すのは師匠との約束。最後の言葉。

僕の師匠が遺した言葉は「大切な人を見つけろ。それが強くなる道だ」

そう言い残し最後は逝った

 

ー強くなりたいー

 

 

そう、僕は強くなりたい。誰にも負けないくらい。

魂魄さんの師匠の妖忌さん。あの人のように。師匠が負けたあの人に

ここで死ぬわけにはいかない

 

 

満月が登りきったその夜、僕は昼に魂魄さんと戦った庭に出ていた

あのときは澄み切った空気と殺気の入り混じった空間で、見る余裕は無かったけど、改めてみると、凄い綺麗な庭だ。

 

 

「綺麗な庭だ」

 

 

心からそう思う

 

 

「私が手入れしてるんですよ。」

 

 

いつの間にか横に立っていた魂魄さんが言った

・・・さっき西行寺幽々子と同じで魂魄さんも気配が読めない。

 

 

「それじゃ、向こうで幽々子様がお待ちですので、行きましょう」

 

 

魂魄さんに連れられ、一際大きい空間がある庭に連れてこられた。

そこには、一本大きな木が。

 

 

「・・・桜の木?」

 

 

「西行妖と言うのよ。あなたは準備はいいかしら?」

 

 

「・・・よろしくお願いします」

 

 

庭の中央に僕は立たされる

 

 

「夢魂さん。今から、あなたの魂を食べている狼の魂を切ります。そのあとは切り取った狼の魂の半分を幽々子様の能力で死に誘い、そこから夢魂さんの勝負になります。」

 

 

その後、詳しく聞くとこんな感じらしい

ー夢魂ノートー

1、魂魄さんの刀で狼の魂を半分切る。

2,切った狼の魂を西行寺幽々子の力を使い、殺す

3、残った狼の魂は、僕の魂を取り込もうとするため、逆に僕は狼の魂を取り込む(綱引き状態?)

 

 

 

前と被っているような感じもするが、こんな感じかな

 

 

「それでは、いきます断命剣「冥想斬」」

 

 

魂魄さんは脇差しの方の長さの刀を抜刀。次の瞬間、その刀は光り輝き、倍以上の長さになり彼女は僕の迷うことなく切った

 

 

「っーーー!?」

 

 

切られた瞬間、僕の身体から何か飛び出た。

そして魂魄さんが叫んだ

 

 

「幽々子様!」

 

 

「そんなに慌てなくても大丈夫よ。妖夢」

 

 

扇子を片手で広げ、そして亡霊姫の周囲には蝶蝶が飛んだ

その蝶蝶が僕に近づき、僕から出てきたモノに触れるとそれが消滅した

 

 

「さぁ、あなたの番よ」

 

 

その声が聞こえた時にはすでに僕は狼の魂と対峙していた

今まで見えなかったけど、今なら見える。銀色の毛並みをしている狼。

凶暴なまでにギラギラ光るその目。捕食者の目。

その銀狼は僕に飛びかかってきた

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「それでは、いきます断命剣「冥想斬」」

 

 

正直、幽々子様から、夢魂さんの魂を切れと言われた瞬間戸惑った

私は、まだまだ未熟で、剣士としても、人としても半人前。庭師の仕事でさえも半人前。

本当なら、私が、白楼剣で切ったらその魂は未練を失って、消滅するハズだった。でも、今の私にはそれが出来ない。

だから、幽々子様が手伝ってくれた。

冥想斬を夢魂さんに放ち、上手く魂を切れた。その瞬間、私は興奮して「幽々子様!」と呼んだ

半人前の私でもできた

そして、幽々子様が能力を使い、魂を死へ誘ってくださった瞬間、夢魂さんは急変した

 

 

「がああああああああああああああああああああああああっ」

 

 

まるで狼の遠吠え・・・いや、断末魔みたいな声で叫んだ。

夢魂さんの身体はまるで妖怪の山に住む白狼天狗のようだった。狼の耳が生え、口からは鋭い牙が。

 

 

「紫、見てるんでしょ」

 

 

「ふふふ、流石ね幽々子」

 

 

「のぞき魔のあなたですもの。こんな大変なことを見ないのは紫じゃないわ。・・・これ以上暴れると白玉楼が大変なことになるから結界張ってもらってもいい?」

 

 

「他のない友人の頼みなら」

 

 

のぞいていた妖怪の賢者に結界の依頼をした。

 

 

「・・・でも結界は必要ないみたいね」

 

 

そう彼女が言うと、夢魂さんからうっすらと蒸気が出ているのがわかり、そのまま力尽きたのか、ばったりと雪の上に倒れた

 

 

「妖夢。」

 

 

「はい」

 

 

「あの子を部屋に連れていきなさい。」

 

 

「でも・・・」

 

 

でも、夢魂さんはもし負けていて、狼になっていたりしたらー

 

 

「妖夢。あなたは私の剣術指南役よね?もし、そうなっていたら、躾なさい」

 

 

「・・・わかりました」

 

 

夢魂さんの身体は私と同じくらいで、これなら、最初運んだ時の狼の時と同じく運べれそう

私は倒れた夢魂さんの上体をあげ、膝を曲げ、肩に手を回す。

一応、私も鍛えている。大丈夫。幽々子様に応えないと

膝に力を入れ、立ち上げる。・・・見た目よりも重い

身体の力が抜けている夢魂さんを立ち上がらせ、そのまま背に乗せる。

 

 

「それでは、失礼します」

 

 

幽々子様に一礼し、夢魂さんを部屋に運んでいった

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ねぇ、幽々子」

 

 

「なぁに、紫」

 

 

「あの子をどうするつもり?」

 

 

従者がいなくなった庭で幽々子と紫は話していた

 

 

「あの子を、うちの子にするの。さっき、試合をしていたのを見たんだけど、人間であの能力は不釣り合いで、能力に振り回されていたわ。それだけでもなく、剣術も妖夢よりも劣るけど、筋はいい」

 

 

「・・・半人半妖になった彼をそのまま育てるというのね?」

 

 

「ふふふ、そうよ。妖夢のいい相手になりそうじゃない?あと、普段の様子を見ても、適度に力が抜けているようだったわ。妖夢があの子と一緒にいていい刺激になりそう」

 

 

「そう、それじゃまだ冬だから、私は寝に戻るわね」

 

 

「ふふふ、紫もあんまり従者を困らせちゃ駄目よ?」

 

 

「・・・善処するわ」

 

 

「それじゃ、また。おやすみ、紫」

 

 

「ええ、また春にね。おやすみ、幽々子」

 




東方の迷宮2をメロンブックスさんで飼ってきました
バレットリポートと迷ったのですが、東方の迷宮にしました
なんたって、嫁(霊夢・妖夢)がでるから!!
次回は爽歩がどうなったかが出てきます
さぁ、爽歩へ犬として調教されるのか。もしくは人間としているのか!?

次回 狼と半霊


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狼と半霊

どうもです
9月に入る前にもう少し頑張りますよ


僕は足場のない空間にいた。

立とうと思えば、立てた。でも、地というものがない空間。まるで空にでもいるみたいだ

 

 

「ここは・・・どこだ?」

 

 

真っ白な空間。

僕はそこに彷徨っていた

しばらくすると、銀色が見えた

なんとなくそっちに行けると思った僕はそっちに向かった。そして、そこにアイツがいた

 

 

「グルルルル」

 

 

唸り声をあげ、僕を威嚇していた。

今にも襲いかかってきそうだ

 

今の僕には身体一つしかない。

いつも一緒にいた鈴音さえ、いれば・・・

 

そう思うと、いつの間にか手に僕の愛刀の鈴音が握られていた。

能力は・・・よし、使える。

 

 

身体を流れる電気を確認し、僕が戦えることを確認でき、自信が出てきた

今ならあの技ができる気がする。

鈴音を鞘から解き放つ。抜き身の刀にし、中段に構える。

 

 

銀色の毛並を持つ狼が飛びかかる。その飛びかかる残像は刀の残像にも似ていた

呼吸を合わせ、僕は技を放った

 

 

「雷刀『紫電一閃』」

 

 

僕が放った一撃は鈴音に紫色の電気を纏わせ、放った。

鋭くとがった紫電が銀色の狼に直撃した

直撃した狼はそのまま紫電にぶっ飛ばされ、そのままバウンドし転がっていった。

紫電は高圧な電気をそのままぶつけるため、焼き焦げるかと思いきや、銀色の毛並は焼き焦げた跡一つもなかった。

狼を倒し、銀色の扉が現れた。何故だか、そこを通れば僕は現実に戻れるとわかった。

バウンドし、転がっていった狼に歩み寄った。

このまま一人で行くと、この狼は死んでしまうような気がしたから

 

 

「なぁ、僕と一緒に来る?」

 

 

銀色の毛並をなでる。柔らかくモフモフとした毛並だった

ゆっくりと顔を持ち上げ、狼は僕の手をなめた

 

 

「・・・一緒に来てくれるの?」

 

 

「グゥ」

 

 

「そっか。立てる?」

 

 

銀色の狼は立ち上がり、僕の隣に座った。

 

 

「それじゃ、行こう」

 

 

尻尾をふり、狼は鳴いた。そして僕と銀色の狼は一緒に現実に戻っていった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「うっ・・・・」

 

目を開けると月明かりが照らしていた

 

 

「あ、気がついた?」

 

 

そこには白玉楼の主である西行寺幽々子がいた

 

 

「うふふ、さっそくだけど、約束覚えてるかしら」

 

 

「約束・・・あ」

 

 

思い出した。僕を助けてくれる代わりに、対価を要求するというアレだ

 

 

「あなた、料理とかできるかしら?」

 

 

「料理ですか・・・一応作れます」

 

 

師匠のご飯を作っていたのは僕だったから一応、作ることには作れる。

 

 

「そうねぇ、あとは・・・妖夢は庭師なの知ってる?」

 

 

「はい。」

 

 

「庭師は基本外仕事よね。この屋敷も維持するのが大変でねぇ、屋敷の世話を頼みたいのよ。外の世界でいうと執事っていうやつかしら。あとは私の剣術指南役。あ、これは妖夢と同じね」

 

 

「・・・そんなことをいきなり僕に任せてもいいのですか?」

 

 

「ふふふ、あなたが真面目だってことは今までを見てればわかるわ。それで、引き受けてくれる?」

 

 

「・・・不詳、夢魂爽歩、未熟な身ですが、その役目を受けさせていただきます」

 

 

「よろしくね、爽歩。・・・妖夢」

 

 

「はい」

 

 

襖一枚を挟んで返事があった

そこに待機していたんだろう

 

 

「今日から同僚の子が入ったわ。仕事を教えてあげてね?

 

 

「わかりました。・・・今日からよろしくお願いします。夢魂さん。同じ使用人という立場なので、私の事は妖夢と呼び捨てでお願いします」

 

 

「僕の事も爽歩でいいよ。これからよろしく妖夢」

 

 

「うふふ、若いっていいわねぇ。それで、爽歩。あなたの中にいた狼はどうなったの?」

 

 

「それ、私も気になってました。あの狼の魂の半分を私が切っているのですし」

 

 

「ええと、今は僕と一緒に共存してます。」

 

 

「あ、私と同じ半霊が出てる。でも、私の半霊にはないなんか獣耳が1つ付いてる・・・。夢魂さn・・・じゃなくて、爽歩さん。それは狼の魂でいいの?」

 

 

「うーん。たぶんそういう解釈でいいと思う。」

 

 

なんとなく、新しい自分の使い方がわかる。

僕は片手を宙に置くとその手の上に半霊が乗ってきた

そしてその半霊はそのまま僕の手からするりと僕の体内に入っていった。

少しガタガタしてるけど、穴の空いた場所にしっかり入った感じがした

そのあとすぐに僕は視界がおかしいことに気がついた。目線が低い。花のような甘い香りがする。などといった身体の異変を感じた

 

 

「あら、可愛い。銀色の狼ね」

 

 

僕の主人となった幽々子・・・様が言った。銀色の狼?誰が?

 

 

「えと、爽歩。これを」

 

スッと渡された鏡を見るとそこには人間としての自分が映っていなく、銀色の狼が映し出されていた。

 

 

「・・・もしかしてと思ったけど、やっぱりこの姿か」

 

 

「自分の意志で変化出来るようになったってとてもいいことよ」

 

 

「・・・確かにそういわれると、今までは勝手に変化して、勝手に戻って・・・という感じだったからちょうどいいかもしれないなぁ」

 

 

「ねぇ、妖夢。まだ食材に余裕あるかしら?」

 

 

「とりあえず、まだ余裕はありますよ?どうかしたんですか?」

 

 

「ええ、新しい家族も増えた事ですし、3人で宴会でも開きましょ?」

 

 

「・・・・うう。わかりました。爽歩さん、今から急いで食事の準備をするので手伝ってください」

 

 

「わ、わかった!」

 

 

「それでは幽々子様、失礼します!」

 

 

「失礼します」

 

 

部屋に幽々子一人残して、僕と妖夢は台所で修羅場が始まった

それが僕の白玉楼での仕最初の仕事だった。





それでは次回まで


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狼と穴掘り

おはようございます
今日は朝一で投稿でっす
なんか、妖夢とゆゆさまの話し方が安定していない気がします
あれ?口調ってこんな感じだっけか?


どうも、夢魂爽歩です

僕が白玉楼へ就職してから、初めての里のお使いです。

先日、幽々子様が宴会と称して、白玉楼にあった食料をすべて食いきってしまったらしく、妖夢が頭を抱えていました。

 

 

「・・・ねぇ、妖夢。そんなに落ち込まないでよ」

 

 

「うう、幽々子様の馬鹿・・・。ほとんど食べちゃはなくてもいいのに・・・」

 

 

「大変なのは買い物なんでしょ?僕も手伝うから」

 

 

「・・・ほんとですか?」

 

 

「うん。荷物持ちでよかったらきちんと手伝うよ」

 

 

「二人なら、だいぶ軽くなる?・・・よし、それじゃ爽歩さん。明後日の昼前には出ましょう。ちょうど、幽々子様はどこかに出かけてくとおっしゃってましたし。まぁ、晩ご飯を作らないといけないので、晩ご飯前には帰らないと駄目ですけど」

 

 

「わかったよ。それじゃ、僕はお風呂を沸かしてくるから、沸いたら呼ぶね」

 

 

白玉楼には立派なお風呂がある。それこそ、10人以上で入っても大丈夫そうなものがある

初めて見たときは驚いた。まぁ、冷静になればこれだけ大きな屋敷だったら内装だって大きくなるだろう

でも、ここの風呂を沸かすのは大変だ。竈に薪を入れ、火を点す。それから、先に入れておいた水を温める。

 

これは身体がバキバキになりそうだ。

温泉でも近く沸いていればなぁ・・・いつでも入れるようになると思うんだけど・・・。

 

 

「幽々子様-。お風呂の準備整いました~。」

 

 

「爽歩、ありがとう。ふふふ、一緒に入る?」

 

 

「!?」

 

 

なんと幽々子様がなんというお誘いをくださった

 

 

「ふふふ、冗談よぉ?」

 

 

そう、笑いながら幽々子様はお風呂に向かわれた。幽々子様はついでに自分の着替えは主人であろうが、自分で持っていってるらしい。

男なら覗きをしろって?いやいや、そんな事をやった瞬間に僕は斬り殺される自信がある

 

 

そいや、初めて狼化したときに、なんかあったんだよな。なんかこう、他と匂いが違ってる・・・みたいな

アレ、掘ってみたら何かあるんだろうか

 

 

とりあえず、僕は半霊を身体に入れ、狼の姿をとった

人間のときよりも鋭い嗅覚を使って、地面を嗅いでいく

 

 

ふんふん・ふんふん

 

どれだけそうしていたかわからないけど、そろそろ日が暮れそうだった

正直、狼の姿でいることに関しては抵抗はない

なんかありそうなんだけどなぁ・・・。

もう少しだけ、わからないかな。

あ、なんかここ匂いが違う

 

 

「爽歩さん?なにやってるんです?もうすぐお夕飯できますけど・・・。・・・お手洗いは流石に、庭ではやめてくださいね?」

 

 

僕を探しにきた妖夢に不思議そうな顔で見られた

そりゃ、狼化してる状態で、地面に

 

 

「違うよ!?この前、初めて狼化したときに、何か一カ所だけ、匂いが違った場所があったんだ。そこを探してたんだ」

 

 

「匂いの違う場所?」

 

 

「それで、もし、そこを掘り返してみたら、何かあるかもーって思ったんだ。あ、妖夢でも土を掘り返す許可ってもらえるのかな?一応、幽々子様に庭の一部を掘り返してもいいか聞いてたほうがいい?」

 

 

「そうですね、流石にここの庭師といえども、勝手に土を掘り返すのは・・・・」

 

 

「夕飯の時に幽々子様に聞いてみるよ。ありがとう妖夢」

 

 

「・・・あ、爽歩さん。触っても・・・いいですか・・・?」

 

 

「触る?あ、そっか。どうぞ?」

 

 

おずおずと妖夢が手を伸ばしてきて、僕の頭に触れた。

そのまま優しくなでられる。

あ、なんか気持ちいかも

 

 

 

 

「よーむー?お夕飯は~?」

 

 

「あ!いけない!爽歩さん、先に行きます!」

 

 

幽々子様に呼ばれるまで、熱中していたようだ。正直僕もかなり気持ちよかった。

なんだろう。何回か師匠になでられた(人間の時)は正直子供扱いされてるようでもの凄い嫌だったけど、犬?(狼)の状態だろうか。これは・・・イイ

そんなとき、ぐぅぅと僕の腹が鳴った

 

 

「・・・いくか」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

「庭を掘ってもいいかって?いいわよぉ」

 

 

「え、そんな簡単に許しちゃうんですか?幽々子様」

 

 

「ええ、だってまだ爽歩は狼の力をどこまで信用していいかわからないでしょ?だったら出来ることはしちゃってもいいんじゃないかしら。」

 

 

現在僕はあれから人化し元に戻り、食卓にいる。その際、さっき妖夢と話していた事を言ってみた

 

 

「ええと、幽々子様、本当にいいんですか?」

 

 

「それで私たちにも利益がでるなら、万々歳よ?」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

「それとね、爽歩。うーん。そうね、そんなに気にするなら、私のことを何か愛称で呼びなさい?」

 

 

・・・なんか絶対おもしろがっているっぽいぞ

 

 

「絶対ですか?」

 

 

「絶対よ?」

 

 

唇に人差し指を一本立て、にこりと幽々子様は笑った

 

 

「・・・主?」

 

 

「やだ。固い」

 

 

「マスター?」

 

 

「・・・そんなに変わってない気がしますね」

 

 

「・・・幽々様?」

 

 

「ゆゆ様、幽々様・・。うん、それがいいわね」

 

 

何度か、幽々子さm・・・は、その愛称を反復し、それが気にいったようだった

 

 

「ふふふ、それじゃ今度からそう呼んでね?あ、妖夢、ごちそうさま。片付けが終り次第、1回、爽歩の穴掘りを見に行ってあげて?」

 

 

「わかりました、あ、もし何も無かった場合は?」

 

 

「そうねぇ・・・。穴があるなら、新しい木でも植える?」

 

 

「あ、それはいいですね」

 

 

「もし、何も無かったときの話よ?」

 

 

「・・・そうならないように頑張ってきます」

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

夕飯を食べ終え、僕はさっきの場所に戻ってきた。匂いを場所をピンポイントで探すために、また狼化する。

よし、ここだな

そのまま、狼化したまま前足で穴を掘る。

・・・・今の僕の大きさは、大型犬程度だろうか。もっと大きかったら、速く掘れそうだなぁ。できないかな?

そう、思い身体に霊力を流し込む。霊力の使い方自体は師匠が亡くなる前に修行でやったから、平気だった

その結果、僕の視界は高くなった。普通に大きくなったんだと思う

そのまま、能力を微弱にして、爪に電気を通してみた。

試しに、そのまま土を掘ってみる。固かった石も簡単に細切れになり、楽に穴が掘りやすくなった

 

 

「みょん!?」

 

 

妙な鳴き声が聞こえた。1回穴を掘るのを中断し、その声の方を向くと、妖夢がいた

 

 

「おおおおおお、大きくなってますよ!?」

 

 

「あ、うん。霊力を身体に流したら、大きくなれたんだ。」

 

 

そのまま、妖夢が僕に突っ込んでた

ボフンを言う音がし、全身でモフモフしだした

 

 

「うわぁ・・・。もふもふ~。幸せかも・・・」

 

 

「・・・妖夢、妖夢、もの凄い顔がゆるんでるよ」

 

 

「はっ!?でもこのもふもふには耐え難いですよっ・・・」

 

 

・・・イイ立ち位置だと思うけど、きっとまぁ妖夢はこういう僕みたいな動物が好きなんだろうな

妖夢は美少女だし・・・狼化してる利点でいいかもしれない

とりあえず、掘り続けること半刻。地面からじんわりと水がにじみ出てきた

・・・なんか暖かい?

 

「ねぇ、妖夢。モフってないでさ、ちょっと見てこれ」

 

 

「え?なんです?」

 

 

「これこれ、もしかして、温泉じゃない?」

 

 

「あ、本当だ。あったかい」

 

 

「これ、もっと掘ったらきちんとお湯でないかな」

 

 

「爽歩さん!掘って見ましょう!」

 

 

どこからか持ってきたのか、妖夢はスコップを持っていた。あいもかわらず僕は狼化状態で掘り続ける。大きな部分を僕が掘って、細かい所を妖夢が掘るをいう形で、どんどん掘り続け、更に、手頃な岩を妖夢が切り出して、それを狼化してい僕が運んだりした結果、

 

 

「・・・うん。やり過ぎたね」

 

 

「あはは。。。やり過ぎちゃいましたね」

 

 

夜が明けて、朝日が拝める状態になった頃、僕たちの目の前には岩で囲まれた温泉ができあがった

 

 

「妖夢、爽歩?まだやってたの?」

 

 

「あ、幽々子様。おはようございます」

 

 

「ゆゆk・・・グホン。幽々様おはようございます。」

 

 

「これ、一晩で作りあげちゃったの?」

 

 

「「・・・はい。」」

 

 

「朝ご飯と行きたいけど、その前にあなたたち二人は土を落としてきなさい?結構ひどい顔してるわよ?」

 

 

楽しそうに言って、そのままくるりと幽々様は戻っていった

僕と妖夢はお互いの顔を見合わせ、一緒に笑った。二人とも酷い泥だらけだった

 

 

 




とりあえず、9月にはいるとまず、更新出来ないです
9月入って、三週間はまずPCにも触れない可能性が・・・orz
・・・・幽々子様と妖夢のしゃべり方がなんかだんだんおかしくなっていく気がする
やばい。
霊夢は正直、書きやすかったなぁ・・・


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狼と買い物

遅くなりました
ちょっとこのまえ、感想でアンケートしちゃったために運営様からストップをかけられました
もう復旧をしましたが、ご迷惑おかけしました


温泉が完成してから数日。僕は現在妖夢と白玉楼の門の前にいる。

 

 

「それじゃ、爽歩さん。行けます?」

 

 

「うん。いけるよ」

 

 

現在、ゆゆ様は既にお出かけをした。妖怪の賢者が直々に出迎えに来て、そのまま幽々様は紫さんのスキマと呼ばれる超常空間に入っていった

 

僕と妖夢は背中に巨大なリュックを持っている。その中身は今は空だ

妖夢にコレ一杯に食材を詰め込んでそれを持って帰ると言われた時は正直驚いたけど・・・、まぁ、ゆゆ様の食事を考えれば妥当かとも思った

 

今回は僕の飛行訓練も兼ねているらしい。

狼化の状態だと、簡単に飛べたけど、元の状態だとまだ上手く飛べない

狼化の状態は飛ぶという感じよりも空を駆けるという感じの方が正しいから、だから簡単なのかもしれない

 

「もし、落ちそうになっても、私が支えますので、頑張ってください」

 

 

「わかった。とりあえず、飛んでみる」

 

霊力を身体に纏わせ、浮くイメージ。

 

 

「・・・・とりあえず、いけそう」

 

 

「それじゃいきましょう。」

 

 

こうして、半人半妖になってから初めての里に行くことになった

 

 

飛行中はなんとか安定していけ、落ちることはなかった

(・・・途中で1回バランスを崩し、落ちそうになったけど、妖夢がすぐに助けてくれた)

 

 

「なんだか、すごい久しぶりな感じがする」

 

 

「あ、そっか。爽歩さんは一応人間でしたもんね。」

 

 

「うん。ねぇ、妖夢。1回、寄りたい所があるんだ」

 

 

「寄りたい所?」

 

 

「うん。いい?」

 

 

「いいですよ。どこですか?」

 

 

「寺子屋。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「慧音先生、こんにちわ」

 

 

「ん?誰だ?爽歩・・・と妖夢?」

 

 

「こんにちわ。慧音さん」

 

 

「どうしたんだ?妖夢は・・・まぁ、幽々子のお使いだとして・・・爽歩・・・?」

 

 

慧音は眉をひそめた

 

 

「お前、その身体どうした・・・?」

 

 

・・・さすが慧音先生。気がつかれてしまった

 

 

「僕は、人を辞めました・・・。半人半妖・・・になりました」

 

 

「・・・そうか・・・。自分の意志・・・か?妖夢がいるのもそのためか」

 

 

「はい。僕は人としては既に生きられない身体になっていたようで、幽々子様の力を借りて、僕は今生きています。まだ、生きて探したいことがあったので・・・。先生すいません・・・」

 

 

「・・・私もお前が生きていてくれるのは嬉しい。だけど、・・・なんで相談をしなかった」

 

 

「ごめんなさい。先生」

 

 

慧音先生の顔が見れない。

 

 

「どうしたんだー。慧音ー。客か?」

 

 

奥の扉からひょっこりと白銀の髪の妹紅がでてきた

 

 

「ん?妖夢・・・と爽歩!?お前その髪どうしたんだよ!?あ、もしかして、私とおそろいか?」

 

 

妹紅が空気をぶち壊した

 

 

一通りの説明を妹紅と慧音にして、今、僕は慧音先生の家でお茶を飲んでいる。事情説明には妖夢も一緒に説明してくれた

 

 

「まぁ、事情はわかった。とりあえず、爽歩はなんで私たちに相談をしなかったんだ」

 

 

「・・・正直、永遠亭でも治らないと聞いたから、最後はもう、そこしかないと思ったんだ」

 

 

「永遠亭・・・あぁ、そうか。一人で行けるわけがないな。妹紅。お前は知っていたんだな?」

 

 

「そうだね。知っていた。爽歩がなんで悩んでるのかも、知っていた。」

 

 

「なんでっ・・・黙っていた」

 

 

「だって、慧音。爽歩が亡霊姫のあの幽々子のとこに行くと聞けば、お前は必ず止めるだろう?それこそ、殴って、気絶までさせて」

 

 

「っつーーーーーーー」

 

 

「だから私は遠泳亭に案内した後、永遠亭の兎に爽歩を託した」

 

 

「・・・妹紅さん、すいません。その兎ってもしかして、耳の長くて、私よりも背の高いミニスカートをはいている子ですか?」

 

 

「いいや?ワンピースっぽい服を着ている小さい兎だよ」

 

 

「・・・・だからか・・・。1回、鈴仙さんに連絡してみよう・・・・」

 

 

なんか妖夢はその人物に心あたりがあるようだけど、とりあえず、こっちだ

 

 

 

「まぁ、そのおかげで、爽歩は今生きてる。その結果だけじゃだめなのか?慧音」

 

 

「・・・そう・・・だな」

 

 

「先生。正直、先生に相談をしたかった。でも先生は絶対に僕を止めてくれるから、・・・妹紅姉(もこねぇ)を頼ったんだ。そうしたときに、妹紅姉は自分がどうしたいのかを決めろって、僕に言ってくれたんだ。僕は・・・・どうしても生きたかった。どうしても、師匠との最後の約束を探したかった」

 

 

「・・・・私は教師失格だな爽歩の思ってることもわからなかったなんて。」

 

 

「そんなことないっ!」

 

 

「爽歩?」

 

 

「僕が相談しなかったのは、僕が悪い!先生にはたくさんの知識や、大切なものを教わったんだ!僕は先生は教師失格なんて思わないっ」

 

 

「そ、爽歩さん・・・・落ち着いてっ!」

 

 

妖夢が隣で何か言ってるが上手く頭に言葉が入ってこない

 

 

「そこまでだ」

 

 

僕と慧音先生の間に炎が迸る

きちんと制御された紅蓮の炎

 

 

「慧音。今、爽歩は生きてる。その事実で十分だろう?人のままで私もいさせてやりたかったけど、少しでも私たちが一緒に居られる時間が増えたんだ。私は蓬莱人なんだ。明るい方に考えろよ。爽歩。爽歩は前から言ってるけど、自分を責めるのをいい加減辞めるんだ。誰も悪くないんだ。泣いていたり、怒っていてもいいことなんてないんだから、な?」

 

 

「妹紅姉・・・」「妹紅・・・」

 

 

「ほら、妖夢もそんなとこで突っ立てないで、酒持ってくるから、飲もう。いいことが合ったときは皆で分け合うんだ」

 

 

それから、僕たち4人は少しの間、お茶とお酒で乾杯し、(僕と妖夢は一応、仕事中なので、お茶)時間を過ごした。

 

 

「爽歩。・・・また来い」

 

 

「爽歩!また来いよ!」

 

 

妹紅姉と先生に別れを告げ、僕たちは買い物に戻った

 

 

「・・・いい人たちですね」

 

 

「うん。僕の・・・大切な人たちだよ。ごめんね、妖夢。時間取らせちゃって」

 

 

「いえ、いいんですよ。それじゃ、行きましょうか」

 

 

「うん、ありがとう」

 

 

寺子屋を後にし、僕は妖夢と買い物に戻った

 

 

「えっと、米俵を2俵は確実に持って帰らないと、幽々子様は怒り狂います。」

 

 

「そうなの?」

 

 

「はい。1回やったことがあるんですけど・・・あれは酷いお仕置きだった」

 

 

ZUーNとうなだれる妖夢

 

 

「・・・最悪、今回は僕もいるから・・・ね?」

 

ちょっと自信がなくなってきた

え、女の子が米俵2俵もって帰るとか・・・信じられない

 

 

「そ、そうですね。爽歩さんもいるので、多少は安心してもいいのかな・・・」

 

 

それから僕と妖夢は急いで買い物をした。妖夢が買い物をしてると、彼女はこの人里で顔が意外と広いことがわかった

 

 

「妖夢ちゃん。今日もお使いかい?これ安くしとくよ」

 

 

「妖夢ちゃん!いい肉入ってるぜ」

 

 

「妖夢ちゃん!これあげるから付き合ってくれ!」

 

 

など、様々。

 

 

「妖夢はすごい人気なんだね」

 

 

「え、そうなんですか?」

 

 

「結婚してくれなんて言われてたじゃないか」

 

 

「そんなの絶対に嘘だってわかってますから。私には幽々子様だけですよ。それと、これで最後ですね」

 

 

最後、野菜を仕入れ、僕と妖夢の買い物は終わった。

背負った鞄から物が少しはみ出してるけど、そこは気にしてはならないところだろう

 

 

「よ、妖夢よくこんなもの持てるんだね」

 

 

妖怪になった恩恵か、人間だった頃よりも体力も筋力も数倍以上に上がっていた

 

 

「修行と思えば、軽い物ですよ。爽歩さんは大丈夫ですか?」

 

僕よりも細い女の子が軽々と持っているんだから、男の僕がそんな弱音を吐いてられない

 

 

「・・・あ。ちょっと妖夢。すこしだけ持ったもらってもいい?」

 

 

妖夢に僕の分を持ってもらい、僕は自分の半霊を身体の中に入れる

ぐっと胸が熱くなり、すぐに姿が変わり、目線が変わる。

 

 

「爽歩さん?」

 

 

僕はそのまま、霊力をコントロールし身体を巨大化させる

 

 

「妖夢。僕に荷物乗せれる?妖夢の分も」

 

 

「あ、はい。乗せてみますね」

 

 

 

妖夢が荷物を載せやすいように、伏せて待つ。背中のへんにどっしりとした重みが来るが、人間形態でいるよりも楽だ

 

 

これって2つ分だよね?

 

 

「爽歩さん?重くないんですか?」

 

 

「うん。人間形態でいるよりも遙かに軽いかも。

 

 

このままなら飛べそうかも

 

空を駆けるイメージ。うん。いけそう

 

 

「妖夢も疲れたでしょ?僕の背中で良かったら、乗る?」

 

 

「・・・もふもふ・・・。みょんっ!?いいんですか!?」

 

 

「うん。今日は僕の寄り道で遅くなっちゃったものだから。」

 

 

 

「ありがとう・・・ございます」

 

 

 

僕は首もとに妖夢が乗ったのを確認して空を駆けた。

目指すは白玉楼。しばらく空を駆けていると、小さな寝息が聞こえた。すぅすぅと微かな寝息

 

 

(妖夢・・・寝ちゃったみたいだね・・・)

ちらりと横目で確認すると、気気持ちよさそうに寝ていた

 

 

白玉楼につく頃に妖夢は目を覚まし、わたわたしていたけどちょっと顔を紅くし急いで食料庫へ向かっていった

・・・食料の入った鞄は僕の背中にまだあるんだけどな・・・

尻尾を揺らしながら、僕は妖夢の後ろを歩いて行った




いやはや、運営様に迷惑かけてしまい本当に申し訳なかった
次からは、気を付けよう。


妖夢が爽歩(狼形態)に乗せたかった!それだけで書いたのが今回ですね
まぁ、元が人間だったと言うことで、爽歩に慧音先生と妹紅を絡ませてみました
妹紅のことを、妹紅姉と呼ぶ爽歩。いんじゃねw
絶対もこたん爽歩のこと猫かわいがりしてると思う


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狼と料理 前編

前編と後編に分けますよ!


僕は現在厨房に立っている。

あれ?なんでこんな事になったんだっけ?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「幽々子様。明日、一日お休みをもらってもいいでしょうか?」

 

 

「お休み-?いいわよぉ」

 

 

「妖夢。そうなると僕が明日仕事すればいいのかな?」

 

 

「ええと、朝ご飯は作っておきますので、幽々子様にお昼ご飯を作って、白玉楼のお掃除をしてくださればいいですよ。晩ご飯までには帰ってきますので、晩ご飯は作らなくても大丈夫です」

 

 

「それはそうと、あの兎さんと遊びにいくの?」

 

 

「あ、はい。鈴仙さんと新しく里にできたって言う甘味屋に行ってきます。和菓子屋さんらしいんですけど、すごい綺麗な和菓子を作るそうで今、有名らしいですよ」

 

 

「へぇ。最近、洋菓子が主流になってきてるのに、和菓子か。あれ?幽々様と妖夢は甘い物って好きなんですか?」

 

 

「ふふふ。爽歩。女性は基本的に甘い物が好きなものよ。まぁ、例外もいるけどね。」

 

 

「私も甘い物は好きですね・・・。口に入れて、甘みが広がると幸せな気分になるんですよ」

 

 

「うーん。でも妖夢って甘い物を作らないよね」

 

 

「うっ・・。それはなんと言いましょうか・・・・」

 

 

「ダメよ爽歩。妖夢は普通のご飯は美味しく作れるけど、甘い物が上手く作れないのよ。この前なんて、ケーキをつくろうとしてたみたいなんだけど・・・」

 

 

「あああああああああ!幽々子様!それ以上駄目です!スポンジが爆発したとか言っちゃ駄目です!」

 

 

わたわたと手を振りながら焦って幽々様の言葉を遮った

けど、妖夢。うん。自爆は駄目だと思うよ?

どうしたらスポンジが爆発するんだろうか

 

 

「僕は一応、師匠も甘党だったんで、クッキーくらいは焼けるけど・・」

 

 

そういうと、妖夢はうなだれた。あ、もしかして僕地雷踏んだ?

 

 

 

「ふふふ。爽歩さん。ご飯食べ終わったらすぐに修行しましょうか・・・」

 

 

「・・・お手柔らかにおねがいします・・・」

 

 

 

その後、ぼろぼろになった爽歩とすっきりした顔の妖夢が見られた

 

 

「ほら、爽歩。こっちいらっしゃい。怪我してるわよぉ」

 

 

幽々様が救急箱を持って来てくださっていた

 

 

「あ、すいません幽々様」

 

 

「ゆっ幽々子様!?すいません!私が代りますので!」

 

 

「ふふふ、妖夢。あんまりいじめちゃ駄目よ?きちんと見極めることも修行の1つよ?」

 

 

「・・・うう。申し訳ございません・・・」

 

 

ちょっとしょんぼりしてる妖夢。

 

 

「ほら、爽歩。そこに座りなさい?」

 

 

「ありがとうございます。でも、主人の手を煩わすのは・・」

 

 

「何言ってるのよ。私たちは主従関係を結んでるけど、大切な家族でしょ?」

 

 

「かぞく・・・」

 

 

「幽々子様・・・」

 

 

初めて僕は幽々様のカリスマを見た。その姿はまるで女神のようで、優しさに包まれているようだった

 

 

「いたたたた・・・」

 

 

綿球を消毒液(アルコール)に浸し、傷口にぐりぐりと当ててくる

 

 

 

「ゆ、幽々様っ痛い!痛いです!」

 

 

「ふふふ、怪我なんてするからよ~?」

 

 

・・・。主人はスパルタだった

 

 

「・・・私もよく幽々子様にそれ、やられてました・・・」

 

 

一応、妖怪とはいえども、僕と妖夢は半分は人の身。普通の人間よりは丈夫で長生きで、怪我の治りも速いけど、膿もするし熱も出す。幽々様もそういう事は妖夢や妖忌・・・さんを通し知っているようで、そういった類はすぐに処置するように言っている。

 

 

「これでおしまい」

 

 

「幽々子様、これをどうぞ」

 

 

永遠亭特製の軟膏を塗り、幽々様は妖夢の用意した水と布で手を清めて笑顔で言った

 

 

「ううう、すいません。ありがとうございます・・・」

 

 

「いいのよ?大切な従者なんだから。あ、爽歩。今日の仕事は終わってる?」

 

 

「あ、はい。今日予定していた仕事は一応終わってます」

 

 

「そう。それじゃ、今日はもう休みなさい。その傷なら明日には治ってると思うから。」

 

 

「すいません・・・・」

 

 

「いいのよ、偶にはゆっくりしなさい」

 

 

そういって幽々様は部屋に自室に戻って行った。

 

 

「爽歩さん、すいません」

 

 

「へ?」

 

 

「少しやり過ぎました・・・・」

 

 

「大丈夫だよ。僕ももっと強くならないとね・・・。ね、妖夢。」

 

 

「なんですか?」

 

 

「僕、半人半妖になってよかったかも」

 

 

「え・・・」

 

 

 

「それじゃ、僕は今日はもう休むね。」

 

 

「そ、爽歩さん!」

 

 

立ち上がり、部屋を出て行こうとしたとき、呼び止められた

 

 

「なに?」

 

 

「怒っていないんですか?」

 

 

「どうして?」

 

 

「だって私・・・あなたを私怨で傷付けたんですよ!?」

 

 

「あ、そんなことなんだ?そんなの気にしないよ。僕も悪かったしね。ね、妖夢。僕は幽々様も妖夢も大好きだよ。ここに来ることができて本当によかった」

 

 

言った瞬間、ぼふんという効果音をつけて妖夢の顔が沸騰した

 

 

「それじゃ」

 

 

僕はそのまま自室にもどった

 

 

最後に居間に残ったのは顔が真っ赤で取り残された妖夢の姿だった

 




カリスマな幽々子様が書きたかった!
今回は地味に妖夢が空気になるかも・・・
ついでに今回は、幽々様が爽歩に対して感じているものを集めていきたいかと思っております
妖夢と恋愛するには、主人の協力は必須だよねっ!(確信)
私の感覚で行きますと、主従の恋を温かく応援していくといいなって思って居ます
あ、リア友様から支援絵頂きました
珍しくハサミで盆栽を切ってます。
可愛く書いてくれたリア友様に感謝。
次回は来週の土日までに上げれたらいいなぁ・・・っていう願望。


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狼と料理 後編

最後の10代だ!派手にいこうぜ!


「それじゃ、行ってきます。爽歩さん、幽々子様のご飯よろしくお願いします」

 

 

「うん。任せておいて。・・・美味しく作れるかは正直わかんないけど」

 

 

「最悪、お味噌汁とご飯(一升)があれが問題ないです。あ、お漬け物も出しておくといいかもしれないです」

 

 

「そっか。そう思うと気楽につくれるね。妖夢、行ってらっしゃい」

 

 

「行ってきます」

 

 

「よーむー!来たわよ-!」

 

 

「わわ、鈴仙さんだ!それじゃ幽々子様、行ってきます!」

 

 

「いってらっしゃい妖夢。兎さんによろしくねぇ。」

 

 

「はい。鈴仙さーん!今、行きます!」

 

 

わたわたと玄関から出ていった

玄関の扉が開いた瞬間、長い兎の耳と幻想郷には珍しい形の服が見えた

 

 

「さてと、それじゃ、爽歩。今日はよろしくね?」

 

 

「はい。よろしくお願いします」

 

 

 

こうして、妖夢がいない一日が始まった

掃除、洗濯は朝の内に妖夢がやっておいてくれたようだ。流石に、女物の下着を干すのはどきどきするお年頃である。

僕の仕事である白玉楼の掃除を開始。巨大なこの館を一気に掃き掃除をし、そのあとで雑巾で床を磨き上げる

 

 

「ふふふ、爽歩。精がでるわねぇ」

 

 

「ゆっ幽々様!?」

 

 

たすきを使い、現在主人の目の前に出られるような状態じゃない。

一応、普段は洋服を着ているが、お仕事中の時は着物?を着ている

 

 

「いいのよー。そのままで。爽歩を見に来たんだから。そのままお仕事続けてちょうだい-?」

 

 

「は・・・はい」

 

 

じー。と見られている。

じーっと見られている

・・・。うう。やりにくい

主人にどっかいってくださいなんて言えない為にその状態で雑巾をかけ終わった

 

 

「終わった?それじゃ、ご飯にしましょ」

 

 

「わかりました・・・」

 

 

なんかいつもよりも疲れた。

ご飯時はみんなで食べるという幽々様の方針から、急いで服を着替えてきて食事の準備に取りかかる

今日、妖夢が作ってくれといたものは、肉じゃが、味噌汁、白米、ほうれん草のおひたしだった

とりあえず、きちんと温めて幽々子様とのご飯を食べた

 

 

「うーん。流石妖夢ねぇ。その子は和食がすごい美味しいのよね。これ、妖夢には内緒よ?」

 

 

口元をハンカチで押さえながら言う

 

 

「あの子、和食しか作れないのを少し気にしてるみたいなのよね・・・。どこかにー他の料理を作れる子いないかしらー」

 

 

最後の方棒読みだ

あ、うん。わかった。これは僕に料理を習って作れってことだよね?

 

 

「わ、わかりました」

 

 

「そうそう、爽歩。今日の晩ご飯はシチューが食べてみたいわ」

 

 

「・・・了解です」

 

 

僕はご飯を食べ終えた後、すぐに狼化し人里に行った

材料の1つである牛乳が足りないという事がわかったからだ

寸胴鍋一杯に作ってようやく足りるくらいだから、かなりの量を買ってこないといけない

 

 

「あ、アリスさん」

 

 

「あ、爽歩。久しぶり。最近、姿見ないからどうしたのか心配してたのよ?」

 

 

「す、すいません。あの、アリスさんって洋食とか作れますか?魔女だから食べなかったりします?」

 

 

「私は魔女だけど、基本は食べるわよ。まぁ、たまに研究に没頭してると1週間くらい忘れちゃうことがあるけど。それで、洋食?どうしたの?」

 

 

「あ、はい。シチューを作ろうと思ってるんですけど、材料はわかるんですけども、作り方がわからなくて・・・・」

 

 

「ふぅん。・・・今日それじゃ、シチューにしましょうか。作り方教えるから、私の家まで来る?」

 

 

「はいっ。」

 

 

アリスさんは金色の髪と手がとても綺麗な女性だ。この人が魔女と言うのは本当は嘘じゃないかと思うくらいいい人だ

その後、僕はアリスさんの家で、紅茶の入れ方とシチューの作り方。その他のレシピを教えて貰い、白玉楼()に戻った

一応、下ごしらえをしてきておいたため、後はアリスさんに習った通りに煮込む。

ぐつぐつと鍋を見ている最中に、幽々様がやってきた

 

 

「あら、本当に作ってるとは・・・」

 

 

「え?シチューが食べたいって言ってましたよね!?」

 

 

「そうよ?爽歩が作れると思ってなかったから」

 

 

「それと、食後にお楽しみを作ってあるので、もうちょっと待っててくださいね」

 

 

「お楽しみ?」

 

 

「はい。お楽しみです。」

 

 

「そう、それは楽しみね。ね、爽歩。作りながらでいいから聞いて頂戴?」

 

 

「はい」

 

 

「私は最初、爽歩をここに置きたいと思ったの。家族になりたいって思ったの。妖夢と歳も近いしきっと妖夢にいい影響を与えてくれるって」

 

 

「妖夢・・・いい子ですもんね。努力家で、優しいし、まじめだし」

 

 

「そうね。思い込みが激しいのが玉に傷だけど」

 

 

「従者とか、主人とか関係を超えて、家族になりたいって出来るかしら」

 

 

「幽々様なら、必ず。」

 

 

「ふふふ、ありがとう。爽歩、もし悩み事があったりしたらきちんと相談しなさい。」

 

 

「・・・ありがとうございます」

 

 

「あなたは、妖夢と妖忌に似ているわ。性格は違うけど、根本が同じ。剣を使う人ってこういうものかしら。それは置いておいて、あと、私からのお願い」

 

 

「お願いですか。」

 

 

命令ではなく、お願い

 

 

「もし、何かあっても家族を守って」

 

 

 

「・・・わかりました。お願い・・・ですもんね。」

 

 

「ふふふ、ありがとう。爽歩、それじゃ、お夕飯、楽しみにしてるわよ」

 

 

「はい」

 

 

幽々様は去っていった。

お母さんが僕にもいたらああいう感じだったのかもしれない

優しさで包んでくれて、時には厳しさを持っている。

そう、考えながら僕はシチューを完成させるべく手を動かした

 

 

 

「ただいま帰りました」

 

 

妖夢が戻ってきた。手にはお土産を携えて

 

 

「あ、お帰り妖夢」

 

 

「え?爽歩さん。お夕飯作ってくれたんですか?」

 

 

未だにエプロンをつけている僕を見て驚いている

 

 

「うん。今日はシチューだよ。お米で作ったパンもあるよ」

 

 

米粉でパンの作り方もアリスさんから教えて貰っておいて良かった

 

 

「もうすぐ、ごはんだから、手を洗って広間に来てね」

 

 

「は、はい」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「「「いただきます」」」

 

 

「爽歩!美味しいわ!」

 

 

「よ、洋食。ゴクリ・・・美味しい・・・」

 

 

「このパンももちもちして美味しいわ!」

 

 

「じゃがいもが形が残っているけどしっかり蕩けてて美味しい・・・・」

 

 

「爽歩!おかわり!」「爽歩さん、おかわりお願いしてもいいですか?」

 

 

「まだまだたくさんあるから、そんなに急がずに食べてね」

 

 

シチューの寸胴鍋がすっかり底をついたのを確認して、僕は食後のお楽しみを持ちに行く

 

 

「はい。プリンも作って見ました」

 

 

「あ、私のお土産もあります」

 

 

その後、幽々様はバケツプリン、妖夢と僕は普通サイズのプリンと妖夢の買ってきた和菓子を堪能した

妖夢の買ってきてくれた和菓子は、今の時期にぴったりな椛の練り切りと栗の乗った饅頭。

食器を洗うと申し出てくれた妖夢を断り、

「今日は妖夢の非番の日だから僕がやる」というと、ちょっと嬉しそうに「みょん」と妖夢が鳴いた

・・・みょんってなんなんだろう。ちょっと気になるけど、まぁ、いいや

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「爽歩さん。」

 

 

「ん?妖夢?」

 

 

お風呂上がりに妖夢が部屋の前で待っていた

妖夢は既にお風呂に入った後だから、もしかして、部屋の前でずっと待ってた?」

 

 

「妖夢、僕の部屋、入る?」

 

 

「あ、はい」

 

 

妖夢の手を握ると、やっぱり少し冷えていた

備え付けの湯沸かし器で湯を沸かし、お茶を入れて妖夢に渡す

 

「はい、ごめんね。冷えちゃってる。」

 

 

「ありがとうございます。大丈夫ですよ。水仕事の方が冷えちゃいますから」

 

 

「・・・僕が今度から代るから。女の子が身体を冷やしたら駄目だよ」

 

 

「でも」「いいから。僕がやるね」

 

 

「・・・ありがとうございます」

 

 

「それで、どうして僕の部屋の前にいたの?」

 

 

「あ、はい。今日のお土産・・・になるのかな。鈴仙さん・・・あ、私の友達なんですけど、一緒に里を回ってたら、爽歩さんに似合いそうなものを見つけて・・・・」

 

 

妖夢がその手に持っていたのは2つの鈴

 

 

「爽歩さんの刀って鈴がついてたから、綺麗な鈴をみたからどうかなって思ったんですけど・・・どうですか?」

 

 

「ありがとう・・・・。」

 

 

僕は鈴音を取り出し、今付いている鈴を取り外し、妖夢のくれた鈴をつけた

 

 

「この取った鈴、どうしよう。まぁ置いておこう。妖夢、ありがとう。」

 

 

「いえ、この前のお詫びも込めてです。ふわぁ・・・・。そろそろ、自室に戻りますね」

 

 

「もう、こんな時間かぁ。ふわぁ・・・。僕も眠くなってきたから、今日はもう寝ようかな。」

 

 

「明日も早いですから。おやすみなさい。爽歩さん」

 

 

「おやすみ、妖夢」

 

 

妖夢から空になったカップを受け取り、襖から妖夢が出て行くのを見送ってから僕は布団を引いて、妖夢からもらった鈴を見ながら眠った

明日も、良い一日になりますように・・・

明日、稽古の時間に久しぶりに舞いを踊ってみよう。




まぁ、派手じゃないんですけどねw
とりあえず、今日で10代が終わります。明日からは20代です
はぁ、10代終わっちゃうよ

それはさておき、アリス登場です。このときはまだ、霊夢たちとエンカウントしていない状態って事で。ツッコミは無しの方向で・・・
春雪異変をおこす上での必要な処置だと思ってください。
春雪異変はもう少し先の予定ですが、・・・うん。まぁ、待っててください。
もう少し、爽歩の剣術の腕が上がらないと、異変を起こせないんですよねぇ・・・。(裏事情)
次は20代になった和菓子屋蜜柑を是非ともよろしくお願いします!


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狼と稽古 ☆

遅くなりました
なんか、不完全燃焼・・・
うーん。動くのって苦手


朝、僕は日が登りきる前に起きる。

井戸に行き、顔を洗っていると、後ろから気配を読み取った

 

 

「おはよう、妖夢」

 

 

「おはようございます。爽歩さん」

 

 

「珍しいね。僕よりも妖夢の方が遅いなんて」

 

 

「うう。ちょっと昨日、読み物をしてたら、ついつい面白くて・・・」

 

 

「へぇ。何読んでいたのさ?」

 

 

「うどんげさんに貸してもらった銃術に関する本です。なかなか面白いです」

 

 

「えっと、うどんげさんっていうと、竹林の医者、永淋先生のお弟子さんだったよね。あの人、強いんですか?」

 

 

「強いですよ-!うどんげさんは頭も良くて可愛いんです!」

 

 

ふんす、とちょっと鼻息の荒い妖夢を見つつ、僕はもう一回顔を洗った

うどんげさんかぁ。1回、会ってみたいなぁ

 

 

「あ、妖夢。今日の朝は米は僕が炊いておいたから、そんなに急がなくても大丈夫だよ」

 

 

「爽歩さん、すいません。今日、私の当番なのに」

 

 

「いいよ。偶には。その代わり、僕が寝坊したときはよろしくね?」

 

 

「はい、もちろん」

 

 

「それじゃ妖夢。僕は先に中庭にいるね。」

 

 

「わかりました。あとで私も行きますね」

 

 

「ん、わかった」

 

 

僕は1回自室に戻り、丁寧に手入れした愛刀・鈴音を取りに来るついでに、いつもの仕事着に着替え(寝間着は浴衣)外に出た

 

それはともかく、洋服の方が動きやすい。

靴も草履とかじゃないぶん、動きやすいし、消耗が激しくなくていい

 

 

ちりん、ちりんと鈴音に付いている妖夢からもらった鈴が鳴る

中庭に出て、鈴音を抜く。

中段に構え、心を無にし、集中する

思い出すのは、尊敬する師匠の姿。あの人は剣士じゃなかったけど、とても格好良かった。

1回だけ見せてもらった舞を僕流にアレンジしたもの

 

 

鈴の音を止めるべく、完全に動の動きと止め、静の動きに入る

 

 

この状態に入ると、すべての音が透明(クリア)に聞こえる

葉がこすれる音、風の音、無の音、すべてに僕自身が調和されるように、合わせる

終わった瞬間に・・・・動くっ!

 

 

いつもは鈴の音色がちりん、ちりんというのに対し、風を切る音が加わり、しゃん、しゃんと鳴る

最小限の動きで、刀を振るい、また、最大限の力で身体を動かす

次第に暖まってきた身体を確認し、身体にうっすらと雷を纏う

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

妖夢視点

 

うう、うどんげさんに借りた本が異常に面白くて、ついつい夜更かししちゃいました・・

お米炊かないと・・・

 

そう思い私は台所に行った

お釜には既にお米が仕掛けられており、河童特製の炊飯器と言ったものが、動いていた

あれ?私がやっていないのになぁ・・・。みょん!?もしかして・・・爽歩さん!?

 

 

朝起きて、やることが無くなってしまったので、井戸に顔を洗いに行った

ぴちょん、ぴちょんと水の音がしていて、目を向けると見慣れた白銀にうっすらと蒼の髪。

爽歩さんがいた

案の定、爽歩さんがお米を仕掛けてくれたらしく、ちょっと申し訳ない気持ちになった。

爽歩さんは、私の気持ちを知ってか、

「僕が寝坊したときはよろしくね」と言い、笑ってくれた。

爽歩さんは今日は朝から稽古に入ると言っていた。今日は剣舞をやるっていってたな・・・

後で見に行ってみよう。初めて見るかも

 

 

中庭に出ると、既に爽歩さんは中段に構えていた

ぴりぴりと張り詰めたような空気ではなく、そこには一種の神々しさがあった

里で1回だけ、遠目から見たことがある

紅白の巫女が大幣を持って、舞を踊っていた。あんな感じに似ている

 

ちりん、ちりんと鳴っていた鈴の音が止まり、その数瞬、爽歩さんが動き始めた

しゃん、しゃんという音を立て、爽歩さんが振るう刀が響く。

風切り音まで、1つの楽器になったかのような感覚。

次第に激しくなっていく剣舞に合わせ、爽歩さんの能力である電気を纏わせ、さらに音は変わっていく

電気が爆ぜる音が加わる。

終りが見えたときに、爽歩さんの電気が暴発した

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「痛っ・・・」

 

 

電気の、雷の制御が甘かったせいか、僕の能力制御が失敗してしまい、最後までいけなかった

もう少し・・・だったのにな

結局、人間だったときよりも完成までもう少しって所まできたかぁ・・・

でも、まだ先は遠いなぁ

 

 

「お疲れ様です」

 

 

へたり込んで座っていた所に、首に柔らかくていい匂いのする手ぬぐいがかけられた

 

 

「あ、妖夢。見てたんだ」

 

 

「すごいですね・・・」

 

 

「あはは。まだ完成もしてないけどね。人間だったときよりもだいぶ動けるようになったけど、目標よりもまだ遠い・・・・な」

 

 

「爽歩さん、さっきの剣舞の最後はどうなってるんですか?」

 

 

「・・・実を言うとまだないんだ」

 

 

「みょん?」

 

 

「思い描いても、すべて何かが違うって思うんだ。外の世界では、パズルのピースがはまらないっていうのかな」

 

 

「パズル・・・ですか」

 

 

 

「うん。何かが足りないんだよなぁ」

 

 

「・・・もしかしたら、爽歩さんのお師匠様の言っていた『大切なもの』なんじゃないんでしょうか?」

 

 

 

「大切な・・・ものかぁ。と、いうことは僕はまだ大切なものを持っていないってことになるんだね・・・。うーん。わかんないなぁ。妖夢の大切なものってある?」

 

 

「大切なものですか・・・・そうですね・・・やっぱり幽々子様でしょうか」

 

 

「そっかぁ。うーん。僕は・・・やっぱりわからないな・・・。まだ。いつか、見つかるかな・・・」

 

 

「きっと見つかりますよ」

 

 

「・・・ありがと、妖夢」

 

 

「いいえ、それじゃそろそろ幽々子様もお目覚めになられる時間に近いので、朝ご飯の支度に私は入りますね。爽歩さんは着替えて来てください」

 

 

「ん、わかった。ありがとう。水浴びて着替えたら手伝いにいくね」

 

 

「はい」

 

 

僕は妖夢の後ろ姿を見送り、ゆらゆらと付いていく半霊を見ながら、「ああ、敵わないなぁ」と思った

僕にはわかる。

妖夢には大切なものがあるっていう事が。

僕にも・・・いつかわかるだろうか

 




動きを表現するのって難しいですよね・・・
それはともかく、なんとなく書いた爽歩君を色つけてみました


【挿絵表示】

白銀という髪の色があれ?なんか銀だけど、光にあてると銀蒼っぽいよー!みたいな
色塗りも適当です
影とかつけてない
むしろ、つけれないぜ
絵の上手い絵師さんとかの勉強をせねば・・・


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狼と月兎 ☆

遅くなりました。今回、前編と後編に分けなかったので、すごいボリュームになってしまいました
あれ?前作の一番多いのでも4000だったはずなのに・・・orz
今回は5000文字オーバーです。それでは、ゆっくりしていってください!
1回、後書きの方をご覧ください


「うう。今日は寒いな。もう秋も終りかぁ」

 

 

布団から出たくなくなってきた時期。

そんな時期に事件は起きた

 

 

「うう、げほげほ・・・喉も痛いし頭がぐらぐらするぅ」

 

 

「だ、大丈夫か?」

 

 

 

「うう、面目ないです・・・」

 

 

 

簡単に説明すると、妖夢が風邪をひいた

 

 

「あ、なんか半霊も少し赤いな。ちょっと、妖夢ごめん」

 

 

僕は額に手を乗せた

 

 

「ふぁあ。爽歩さんの手、冷たくて気持ちいいでうー」

 

 

なんか妖夢はいつも違って呂律が回っていない

・・・なんか可愛いかも

 

 

「幽々様には僕が言っておくからさ、今日は安静にしててよ」

 

 

「そーほさん、ありがとうございます・・ゴホ」

 

 

「大丈夫よ。爽歩、妖夢」

 

 

妖夢の部屋の襖が開かれ、僕たちの主の姿がいた

 

 

「ゆゆこ・・さま?」「幽々様」

 

 

「話は聞いていたわ。まったく妖夢は・・・。自分の体調管理もできていないの?」

 

 

「うう・・・すいません・・・」

 

 

「そんな子は今日は一日養生なさい。早く治しなさい?」

 

 

「幽々様。あまり、風邪っぴきの妖夢に近づいては駄目です」

 

 

「大丈夫よ、爽歩。だって私は完全なる霊だもの。半分人間のあなたたちと違ってね・・?」

 

 

「・・・そういう問題ではないんです・・・すいません幽々子様。あまり幽々子様の前では弱った姿を見せたくないのです・・・ゴホッ」

 

 

「むぅ。そういうものなのかしら。妖忌も昔病気にかかったときに私のお見舞い拒否したのはそういうことだったのかしら」

 

 

「・・・まぁ、とりあえず、幽々様。ゆっくりと妖夢が寝られないと思うので、僕たちは退散しましょう」

 

 

「うう、爽歩がいじめる。そんな爽歩には今日一日休みを与えます」

 

 

「へっ!?」

 

 

「私は今から紫の所に遊びに行くから」

 

 

「だったらお供します」

 

 

「駄目」

 

 

「え?」

 

 

「全く。鈍いわね。まぁ、とりあえず、今日は一日何もしなくていいから。晩ご飯も食べてくるから大丈夫よ。お風呂は沸かしておいて欲しいけど」

 

 

「・・・わかりました」

 

 

多分、幽々様は僕に妖夢の看病をしろっていうことだろう。

そういうと、すぐに幽々様は飛んでいってしまった

見送りだけして、すぐに僕は井戸まで走る

桶に水をくんできて、手ぬぐいを水のなかに突っ込む

その桶を妖夢の部屋に持ってくと、すでに妖夢はうっつらと意識が眠気に襲われているようで、僕が入って来たことに気がついていなかった

手ぬぐいを適度に絞り、妖夢の額に乗せる

次に、動脈が走っている場所に手ぬぐいを当てる。師匠が僕が風邪を引いたときにやってくれた。確か、動脈が走っている場所から冷やすことで身体は冷えやすいらしい

 

 

「あ・・・薬・・・」

 

 

薬箱を見ると、中には傷薬ならなにやらが入っていた

しかし、目当てのものが見あたらない

 

 

「複合薬がない・・・」

 

 

半人半霊の僕と妖夢は妖怪用と人間用の微妙なバランスの薬が必要になってくる。

人間用だと効果が出にくいし、妖怪用だと効き過ぎてしまう。だから永淋先生に頼らざるを得ない

永遠亭まで、多分取りに行かないといかないだろう

僕は急いで狼化し里まで駆けた。目指す場所は慧音先生の家

 

 

妹紅姉(もこねぇ)!」

 

 

ちょうど、外に出ていたみたいですぐに妹紅姉を見つけることが出来た

 

 

「狼!?」

 

 

わ、忘れてた!狼化しっぱなしだった!

 

 

「妹紅姉待って!僕だよ!爽歩!爽歩!」

 

 

人の姿に戻ると安心した様子の妹紅だった

 

 

「どうしたんだ?そんなに焦って」

 

 

「妹紅姉、永遠亭に連れてってもらえないかな」

 

 

「永遠亭?まぁ、いいけど。どうしたんだ?

 

 

「妖夢が風邪引いて倒れたんだ」

 

 

「ん。わかった。それじゃ、今は仕事もないし、すぐ行くか」

 

 

「ありがとう妹紅姉。急ぎたいから、背中に乗ってもらって良い?」

 

 

「いいのか!?あのもふもふに乗っても良いのか!?」

 

 

「うん。だから、道案内よろしく」

 

 

急がないと

急がないと、妖夢が苦しんでいる

僕は妹紅姉に竹林の道を教えてもらい、永遠亭に到着した

 

 

「私はここで待ってるから」

 

 

「ありがと妹紅姉!」

 

 

走りながら人化し、永遠亭に入った

 

 

「すいません!永淋先生はいらっしゃいますか!?」

 

 

「んあ?どうしたうさ?」

 

 

「てゐさん!実は・・・」

 

 

「わかったうさ。でも、永淋は今、○○里の救急患者の元に行ってていないうさよ」

 

 

「薬だけでもっ!」

 

 

てゐさんの肩を持ち、揺さぶる

 

 

「あばばばば、揺さぶらないでほしいうさ・・・だから、鈴仙が・・・」

 

 

「鈴仙・・・?」

 

 

「と、とりあえず、落ち着いて。そして、付いてくるうさ」

 

 

 

付いていくと、永淋先生の診察室ではない場所につれていかれた

 

 

「鈴仙。入るうさよ」

 

 

「てゐ?」

 

 

中から、女性の声がする

ちょっと高め張りがある声

入ると、薄紫色の長髪が見えた。その頭から見えるのは兎の耳。てゐさんとかの耳と違って長い

 

 

「どうしたのって・・・あ、患者さん?」

 

 

「すいません、僕は白玉楼で務めている者でして・・・」

 

 

「あ、はい。とりあえず、お座りください。あなたが夢魂爽歩さんですね?」

 

 

鈴仙さんに僕が白玉楼で務めている事を話したら、すぐに、僕が夢魂爽歩だということがわかったらしい。妖夢が前から話していたそうだ

 

 

「妖夢が言っていた通りの人ね。それでどうしたの?」

 

 

「妖夢が熱で倒れました」

 

 

「!?」

 

 

「薬だけでも・・・って思い来たのですが・・・」

 

 

「・・・わかったわ。すぐに準備するわ。ちょっと待ってて」

 

 

鈴仙さんはそういうとすぐに箱を持った

重たそうな箱

中にいろいろな器具を詰めていく。その中には、薬草と思うようなものもあった

 

 

「それじゃいきましょ」

 

 

「あ、少し待ってください!」

 

 

妹紅姉が待ってる。

門をすぐに出ると、妹紅がいた。

 

 

「ん?今から行くのか?気にしなくていいぞ。ほら、行ってこい」

 

 

すぐに事情を察ししてくれた妹紅姉がひらひらと手を振り、竹林に歩いて行った

・・・また何かお礼に持って行こう

 

 

「鈴仙さん!お待たせしました」

 

 

「それじゃ急ぎましょう」

 

 

鈴仙さんは飛ぶのは速かったけど・・・遅い。

僕は最初こそ人の状態で飛んでいたが、すぐに狼化した

 

 

「鈴仙さん。僕の背中に乗って」

 

 

「・・・わかったわ」

 

 

「かなり急ぐので、しっかり捕まっててください」

 

 

脚に高圧電流を纏わせる。雷の威力にまでそれは届くように纏わせる。

パリパリと電気が爆ぜるような音がし始め。それを合図に僕は空を思い切り駆けた

 

 

「行きますっ」「わ、わわあああああああああああああああああああ!?」

 

 

急がないと。いそがないと。ようむが

 

 

門から入らずに僕は庭に直接降りた

そのまま妖夢の部屋の前まで走る

鈴仙さんは、髪こそ風圧で乱れているこそ、しっかりとした足取りで妖夢の部屋に入っていった

 

(あのスピードで駆けた後なのに、すごいな。妖夢に1回やったことあるけど、離しはしなかったものの、目を回していっけ)

 

 

とりあえず、永遠亭から出るときに言われたことを思い出した。鈴仙さんは妖夢の診察に入り、その間、僕は部屋の外で待っていて欲しいと

しばらくすると、鈴仙さんが部屋から出てきた

 

 

「妖夢は風邪ね・・・。本当はここにいて看病してあげたいけど、私は師匠の代わりに永遠亭にいないといけないから。それに、妖夢にはきちんと素敵な王子様がついてるみたいだから、私の出番は今日はないわよ」

 

 

「王子様?」

 

 

 

「まぁ、そこは気にしないで。はいこれ。妖夢の風邪薬。師匠の薬だから効果はバツグンよ」

 

 

「ありがとうございます!あ、あの送っていったほうがいいですか?」

 

 

「いいのいいの。君が行きを早く来てくれたおかげでそんなに帰りに時間がかからなくて良さそうだから」

 

 

 

「また、お礼しにいきます。本当にありがとうございました!」

 

 

思い切り頭を下げた。

僕の動作に合わせ、ちりんと鈴が鳴る

 

 

「真面目なところはそっくりね。あれ?その鈴・・・」

 

 

「あ、これですか?この前妖夢にもらったんです」

 

 

「ふふふ、そっかぁ。やっぱりかぁ。妖夢がコレを君に・・・。その鈴、大切にね?」

 

 

「もちろんです」

 

 

鈴仙さんを門まで送っていって、姿が見えなくなるまで見ていた

その後、僕はとりあえず、台所に行き、一人用の土鍋を出した

いつも、鍋をやるときは、大きい土鍋を使うのだが、ここにはきちんと一人用の小さな土鍋もあった

昨日の米(珍しく余った)のを土鍋に入れ、水を入れる

、米、、卵、すり下ろしたしょうが、ネギ、飲み込みやすいように小さく刻んだ人参、鰹節でとった出汁を少々、水を入れ、煮込む

蓋を開け、確認すると良い感じに卵粥が出来た

 

取り皿とスプーン。鍋敷きを盆に載せ、鍋敷きの上に完成した卵粥の土鍋をのせ、妖夢の部屋に再び戻る

 

 

「妖夢入るよ」

 

 

うーん、うーんとうなされている妖夢をみた

額の上の手ぬぐいと寝巻きは変えられているようだった。

 

 

(ああ、鈴仙さんが変えていってくれたんだな)

 

正直、妖夢の寝巻きを変えていってくれたのは助かった。流石に男の僕では女の子の着替えはまずいだろうと思って板ところだった

まぁ、ちょっと、残念な気もするが・・・そこは、お年頃な時期である

あの、綺麗なすみれ色の兎。なんで僕を見て生暖かいような目で見ていたんだろう

 

 

「妖夢、妖夢。起きれる?」

 

 

呼びかけるとぼんやりと妖夢は起きた

 

 

「そーほさん?」

 

 

「うん。僕だよ。妖夢、少しでも良いから、ご飯食べれる?お粥作ってきたんだけど・・・」

 

 

「すこしなら・・・」

 

 

妖夢の返事を聞き、僕は土鍋の蓋をあけ、いつも妖夢が使っている緑色の茶碗にお粥をよそう。

木製の匙を一緒に渡す

 

 

「起き上がれる?」

 

 

「うう、はい」

 

 

「・・・ちょっと失礼するよ」

 

 

身体が動かしづらそうだったので、背中に手を回しゆっくり起き上がるのを補助する

自然と身体が密着するかたちとなってしまい、妖夢の香りが鼻孔をくすぐる

甘い香りと汗ばんだ香りが混じって、なんとも・・・

 

 

「そーほさん、ありがとうございますぅ」

 

 

「熱いから、ゆっくり食べてね」

 

 

先ほどの茶碗を妖夢に渡す

ゆっくりとした動作で、匙を口に運んでいく

 

 

「あ・・・おいし・・・。」

 

 

味がお気に召したのか、ゆっくりだけど、妖夢はちまちまと食べ始めた

茶碗一杯をなんとか完食したところで流石に身体がつらくなったのか、食べるのを辞めた

 

 

「ごちそう・・・さまです」

 

 

「お粗末様です。妖夢、コレ飲んで?」

 

 

鈴仙さんにもらった薬を1包妖夢に渡す

飲みやすい温度の白湯を妖夢に渡し、きちんと飲んだのを確認した

 

 

茶碗を片付け妖夢を布団に戻し、額の手ぬぐいを濡らすなどのことを座ったままやっていたら、いつのまにか妖夢は眠っていた

立ち上がろうとすると、僕のシャツの端をぎゅっと握って眠っていた。

手を放させようとするが、とれない。ついでに、なんとなく、半霊をみたら、僕の半霊が丸くなっており、その丸くなっている狼の腹の部分に妖夢の半霊が乗っかっており寝ていた

 

 

「風邪を引くと人恋しくなるか・・・。妖夢もそうなのかもしれないな」

 

 

いつも、水仕事も庭の整備も料理もやってくれる妖夢

水仕事は僕が来てからからり僕の方にまわすようにはしてるけど、ソレを除いても妖夢は頑張り屋で常に全力で当たっている

彼女は何故この白玉楼で働いているんだろう。正直、働く条件としてはあまりよくないのに

むしろ、悪条件ともいえるだろう

でも、幽々様と一緒に居るときの彼女の顔はとても楽しそうで、嬉しそうだ

もやもやする。なんだか、少し胸が痛くなった

 

 

(・・・?なんで痛くなる?怪我なんてしてないのに)

 

 

楽しそうに笑う妖夢。なんでそんなに楽しそうに笑えるんだろう。

 

 

「みょん・・・」

 

 

考えを巡らせていると薬が効いてきたのか、表情がだいぶ楽になって、安らかに眠っている妖夢の姿があった。

 

 

「ははは、なんだか考えるのも馬鹿らしくなってきた」

 

 

いつもは見れない妖夢の表情(かお)

安らかに眠る彼女を見るとだんだん、僕まで眠くなってきた

 

 

秋も終りになり、そろそろ雪が降る季節。

そんな中でも、部屋の中は温かく、十分に眠気を誘った

 

 

「半霊も・・・寝てるし・・・いいよね・・・?」

 

抗いがたい眠気に負けた

最後にもう一度だけ妖夢の額のてぬぐいを水に浸して絞り、額に戻してからあぐらを組んで目をつむった

 

 

ーーーーーーーー

幽々子視点

 

「ただいまー」

 

 

帰ると何も返ってこなかった

いつもなら、必ず妖夢か爽歩が出迎えてくれる

でも、それは今日はなかった。休みとはいえども、それは必ずあることだった

 

 

「どうしたのかしら。妖夢は寝てるとして、爽歩が来ないのはおかしいわね」

 

 

主人として、家族として心配になった

もしかして、爽歩も倒れてるのではないか・・・と

爽歩の部屋に行くが部屋には電気も灯って無く、人気もない(人がいると必ず光りが自動で灯るためわかる)

 

(まさか・・・ね)

 

 

妖夢の部屋に行くと、そこには気配が2つ

襖をそっと開いてみると布団で寝ている妖夢の側にあぐらを組んで動かない爽歩がいた

瞑想でもしてるのかと思いきや、規則正しい二人分の寝息が聞こえる

 

 

(それもそうよね、爽歩なら瞑想しているなら、襖を開けた時点でわかるものね)

 

 

1回、気配を消して瞑想中の爽歩に近づいた事はあるがばれていたことを思い出した

妖夢の部屋を見ると、隅には爽歩の狼の形を取っている半霊が丸くなっているその腹に妖夢の半霊が(うずくま)っていた

その様子を見て、幽々子は爽歩の自室から、上着を取りに行き、そっと爽歩にかけた

その際に、妖夢の手が爽歩の手を握っているのを見て、子供の成長を見るような感覚になった

 

 

(お休みなさい。妖夢、爽歩)

 

幽々子は音もなく部屋から出て行った




うどんげが結構空気。
ごめん、うどんげ。こんなハズじゃなかったんだ
この二人、何気に好意があるはずなのに、それをきちんとわかっていなかったりします
(妖夢の行動と、うどんげの行動から考えると、妖夢は・・・)
でも、半霊は自分の分身であり、とても正直だと私は思っています
爽歩の半霊は人魂っぽくもなれるし、狼の姿をしているときもありますが、基本、狼の形です。爽歩が狼化するときは、人魂に瞬時に代わり、中に入る・・・みたいな感覚と思ってください。

てぃらむーすさんから支援絵を頂きました。

【挿絵表示】

前に爽歩のなんとなくのイメージ画像から、描いてくださりました
あんなヘタクソな絵からこのような支援絵をいただけるとか、ホントありがとうございます
この支援絵のおかげで、今回煮詰まっていた『狼と月兎』が完成する事ができました
いつも朝スマホからマイページで確認してるんですけど、驚きました
多分、周囲の方からの視線は冷たかった。。。。
支援絵ってこんなにも力になるものなんですね・・・。これからも頑張らさせていただきます!
それはともかく、章をつけました。
コラボは本編と関わり合いがあるけど、ない感じでこれから書いていこうと思っています
スキップが出来るようにこっちは番外だよ!コラボだよ!みたいな感覚でいこうと思っています。要は読み飛ばしが出来るってことですね
本編が煮詰まって、気分転換でコラボの方を書いていたり、内輪の知り合いの作家さんたちで書いていることがあるので、もし、コラボ作品が苦手な方はスキップできるように章をつけて区切ることにしました
出来る限り、本編に支障が出ない感じでやっていくつもりです

これからも、東方緑妖想をよろしくお願いします



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狼と南瓜 ☆

HAPPY HALLOWEEN!
もう、今日くらいはネタに走ってもいいよねっ!?



今日はお使い(食料調達)の日

 

 

「アリスさん。すいません・・・いますか?」

 

 

「どうしたの・・・って、服ぼろぼろじゃない」

 

 

「途中でルーミアに襲われてしまって・・・・」

 

 

「いいわよ、そこに座りなさい。いつもご苦労様。あ、そうだ。これでも食べてちょっと待ってなさい」

 

 

妖夢はお使いに出た際に、ルーミアに遭遇した

ちょうど荷物を背負っているときにルーミアと遭遇してしまい、持ち物を庇った際にグレイズしまくり、服がぼろぼろになった

このまま急いで帰ってもいいのだが、流石に下着まできっちり見えてしまっているほどの服で彼に会えない。

流石に恥ずかしすぎる

 

 

「はい、服脱いで?あと寒いと思うから、これですこし待ってて」

 

 

「うう、ありがとうございます」

 

 

そこで、魔法の森にちょうどさしかかり、アリスの家に行き、服を直してもらってから、帰ろうと思ったのだ

アリスが出してくれた紅茶とクッキーという焼き菓子を食べつつ、貸してくれた毛布を使い、身体を隠す

 

 

「あちゃー。すごいグレイズしたのね。前側ぼろぼろじゃない」

 

 

「うう、不覚です」

 

 

最近、お使いに出るときは、爽歩さんの背に乗って行くのが習慣だった

だが、今日は幽々子が爽歩を供に付け、紫の所に遊びに行ってしまったのだ

 

 

「うーん。これは直すのが難しそうね。これなら一着新しいのを作った方が早いわ。明後日新しいのを仕上げておいてあげるから、今日は別の服を着て帰りなさい」

 

 

「すいません・・・ありがとうございます・・・」

 

 

「いいのよ。妖夢の体型だと・・・・あ、これなんていいわね」

 

 

アリスが手に持った物は、黒のゴスロリ

 

 

「みょん!?無理です!」

 

 

「んーそれなら・・・これはどう?」

 

 

次に出したものはミニスカートにブレザー

 

 

「うどんげさんが着てるやつですか?あ、でも私には大きすぎます・・・」

 

 

主にどこが大きく作られているなんか言わない。

言ったら寂しくなる

 

 

「そうね。それに似てるやつ。うーん。あ、それなら、こんなのどうかしら」

 

 

最後にアリスが取り出したもの

 

 

「それくらいなら・・・・マントも付いてるし」

 

 

「はい。これ付属品」

 

 

「付属品?」

 

 

「一応・・・ね?あ、そうそう。ちょうど日もいいわね。trick or treatと爽歩に会ったら言ってみなさい?」

 

 

「とりっく・おあ・とりーと?」

 

 

「魔法の言葉よ。今日はハロウィンなの。ちょうど仮装もしてるしいいでしょ。間違っても幽々子には言っちゃだめよ?」

 

 

「よくわからないけど、わかりました」

 

アリスの家を出て、白玉楼に帰ると、ちょうど爽歩と幽々子が空から降りてくるところだった

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

僕は珍しく幽々様と紫さんの所に行った。今日は妖夢を供に連れるのではなく、僕の気分だったらしい

紫さんは情報通だ。いろんなことを教えてくれる。たまに間違った事をわざと教えたりもする。多分、おもしろがってやってるんだろうなぁって思う。

紫さんはいつもの扇子を口元で広げ、妖艶な方だ。話は妖夢の話になると、紫さんは僕の方を見た

「似たもの同士というか、この子は鈍感そうねぇ。自分の気持ちに」

それを笑って幽々子様は

「そうよねぇ。報われるといいんだけど、この子、結構鈍感だから」

って、笑っていた。僕が鈍感?

「そういう所が鈍感なのよ。狼さん?」

紫さんはそういうと、お茶を飲んで笑った

 

帰ってくると、妖夢が魔女の格好をしていた

南瓜色の服に、黒いマント

・・・あれ?これって昔、慧音先生が言っていた外の世界のハロウィーンっていうやつかな?

 

 

「あら、妖夢。良い格好してるわね」

 

 

「よ、妖夢?」

 

 

「あ、幽々子様、お帰りなさい。今、お茶お入れるので待っていてください。あ、爽歩さん。とりっく・おあ・とりーと」

 

 

妖夢が言っている「とりっく・おあ・とりーと」は多分trick or treatの事なんだろう

紫さんが言ってた・・・。えっと、確か、お菓子くれないとイタズラするぞ?だったけな。

ちょうど、今手持ちには何もない

お土産は幽々様が我慢できなくて、その場で食べちゃったし。

 

 

「妖夢-。ちょっとこっちにきなさい?」

 

 

「は、はい」

 

 

僕がどうしようか迷っていると、幽々様が妖夢を呼んだ。何かこそこそ話をしている

 

 

「みょん!?」

 

 

「だからーーーーーーーーなのよ?」

 

 

「ええええええええええ!?」

 

 

「言っちゃったからには、きちんと行動なさい?」

 

 

「ほ、本当にしないといけないんですか?」

 

 

「ええ。ほら、私の従者でしょ?」

 

 

「うう、わかりました」

 

 

妖夢が戻ってくると、顔が赤い

 

 

「とりっく・おあ・とりーと」

 

 

やっぱり、ハロウィンか

 

 

「ごめん、妖夢。今、手持ちにお菓子ないんだ」

 

 

「えっと、それじゃ失礼します」

 

 

ゆっくりとした動作で僕の右手を取る。そのまま服をまくり上げると、そのまま妖夢の顔が近づいた

そして、腕に一瞬柔らかいものが当たった

 

 

「!?」

 

 

「それじゃ、私急いで晩ご飯作ってきます!」

 

 

頭に乗った黒い三角の魔女帽子とマントが揺れる

顔を更に真っ赤にさせ、妖夢は慌てて台所走っていった

 

 

「ふふふ。妖夢どこであんな事覚えてきたのかしら~?多分、月兎さんのとこだと思うけど。可愛いわねぇ。ね?爽歩?」

 

 

 




「妖夢-。ちょっとこっちにきなさい?」
「は、はい」
「お菓子くれないと接吻するって意味なのよ?」
「みょん!?」
「だからお菓子くれないと接吻すると言う意味なのよ?ほら、言っちゃったからには行動なさい?」


腕へのキスの意味は是非とも調べてください
妖夢は魔女コスして、顔真っ赤にしているのを想像したら書きたくなってしまったんだ!
反省はしている。後悔はしていない。

支援絵頂ました!てぃらむーすさんありがとうございます!

【挿絵表示】

「狼と月兎」の場面です
ホント、妖夢可愛いです
妖夢可愛いよ、妖夢!


追伸
次の更新が少し遅れるかもしれません。
11月に入るとリアルが忙しくなるので・・・orz
気長に更新をお待ちください
あと、評価に文字数制限を入れさせていただきました
評価を入れる際は申し訳ありませんが、コメントを頂きたいです


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狼と主従関係

難産でした・・・


それは毎朝の稽古の時

 

 

「ねぇ、妖夢。久々に手合わせしない?」

 

 

「あ、いいですね。形式はどうします?」

 

 

「そんな、決まってるでしょ。真剣勝負だよ。いつも通りの」

 

 

「わかりました。それじゃ、中庭に移動しましょうか。お米は炊いてきたので、気にしないでくださいね?」

 

 

「あ、さっき鶏が卵産んでたから、今日は厚焼き卵と秋刀魚にしよう」

 

 

「いいですねぇ、最後の秋刀魚になりそうですしね」

 

 

「ん、じゃ、いこっか」

 

 

「はい」

 

 

その後僕たちは白玉楼の中庭に来た

僕は愛刀・鈴音を。妖夢は白楼剣と楼観剣を

正直、僕の刀の鈴音は普通の刀よりも長い。でも、それよりも更に長い刀・楼観剣を自在に振り回せる妖夢はすごいと思う。

1回、持たせてもらったけど、長物なだけあって扱いづらい。

 

 

「合図はどうする?」

 

 

「それじゃ、この石が落ちたら開始ということはどうでしょうか?」

 

 

「うん。それじゃそうしよう。妖夢投げて?」

 

 

「わかりました。それじゃ、行きます」

 

 

妖夢が庭の石を拾い、僕と妖夢の中間に落ちるように投げる

綺麗な放物線を描き、石は重力に引かれながら落ちていく。

 

鯉口を緩める。

初撃でまず、自分の調子を確かめるっ

 

 

石が落ちた瞬間に、僕たちは動いた

 

 

僕と妖夢の間合いは、楼観剣を使っている妖夢の方が広い。

しかし、僕は妖夢よりも、取り回しがきく

ならばーーーーーーー

 

 

「初撃をもらうっ」

 

 

最初の一歩を電気で地を弾き、居合い切りの応用で高速の動きで迫る

半人になったおかげで身体が丈夫になり、この能力もかなり使えるようになった

 

 

「甘いですっ!」

 

 

妖夢はそれを体裁きだけで躱す

更に、軸足を中心に身体を回転させ、僕を切り伏せようとするが、僕は勢いに乗ったまま、刀を翻す

金属音が鳴り響く。

鍔迫り合い。きりきりと互いの刀がぶつかり、力の勝負になる・・・・訳がない

僕よりも力のない妖夢は刀の力をわざと抜いた。そのまま、柳のように受け流す

受け流した体勢から、蹴りと刀の柄での連続攻撃が入る

 

 

「っ」

 

さらにコンボで妖夢は斬撃を飛ばす

 

「断命剣『冥想斬』」

 

なにも、刀は近距離だけの攻撃ではない。

霊力の塊を刀に込めて放ってくる。あれは威力も強いが、なにより、貯めが短い。

 

 

「狼符『魂狼烈牙』」

 

僕はそれを打ち砕くために、スペカ()を使う。

霊力を消費させ狼を具現化させる。狼が妖夢の冥想斬を噛み砕く

 

 

それを妖夢は予想していなかったのか、一瞬驚いた顔をしている

それもそうだろう。最近になって、僕の半霊である狼を具現化することが出来たのだから

僕だって、日々精進しているつもりだ

そして、僕は賭に出る

 

 

「電符『雷刃一閃』」

 

 

鈴音に高圧電流を纏わせる

妖夢のいる場所に向かい、そのまま横に振り抜く

高圧電流は刀から離れ、妖夢に一直線に向かっていく

電気は人よりも早い。これは、避けられないだろう

 

 

「っ!?断迷剣『迷津慈航斬』」

 

 

妖夢は瞬時に霊力を楼観剣に乗せた

あの長い刀身から更に考えられないほど、大きい霊力でできた刀身ができあがる

そして、そのまま妖夢は僕の電気を薙ぎ払った

 

 

(か、回避っーーーーーー)

 

回避しようにも、範囲が広すぎる

威力も強すぎた

そして僕はまた地に伏せることになった

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

完全に負けてしまった僕は妖夢の手を借りて立ち上がった

 

「大丈夫ですか?」

 

 

「なんとかね。最近、受け身が上手くなったきた気がする・・・・」

 

 

なんとも嫌な上達だ。

まぁ、怪我をしにくくなったという時点でかなり良いのかな

 

 

「それにしても驚いたよ。あんな大きい刀身。あれは避けれないと思ったんだけどなぁ」

 

 

「私も、あれには焦りましたよ・・・あ、はい爽歩さん」

 

 

妖夢から手ぬぐいを受け取り、汗をぬぐう

ついでに持って来ていた竹の水筒から水を飲む

隣をみると、妖夢も水を飲んでいた

 

 

「・・・ねぇ、妖夢。聞いてもいい?」

 

 

「なんでしょうか?」

 

 

「もし、妖夢は(幽々様)が間違ってても、意見できる?」

 

 

「え?いきなりなんですか?」

 

 

「このまえの里に買い物を行った時のことなんだけどね、天人がいたんだ」

 

 

「あれ?珍しい。里に天人がいるなんて・・・」

 

 

「従者を連れていたんだけど、その天人は自分勝手に振る舞って里の人に迷惑をかけてて、その従者の人は主である天人を折檻していたんだ」

 

 

「まぁ、悪いことをしてるならしょうがないですね」

 

 

「そのときに見て、思ったんだ。僕はもし幽々様が間違った事をしていたら、どうするんだろうって」

 

 

「・・・。幽々子様が間違っていても、最後まで私はあの方に付いていきます」

 

 

妖夢はまっすぐ僕を見て言った

 

 

「例え、誰が相手でも、幽々子様が何かを実行なさるなら、お望みになられるなら、私は・・・私は、幽々子様の剣で、盾になります。爽歩さんは・・・・?」

 

 

「僕は・・・わからないんだ。まだ、わからない。幽々様は命を救ってもらった恩もあるし、僕は主人としても、幽々様を慕っている。でも、もし、悪行を働くとなると、僕は今、どうするのかはわからない。家族を守りたいのは絶対だけど」

 

 

「爽歩さん。まだ、その答えは出さなくても良いんじゃないんでしょうか?」

 

 

「そう・・・なのかな」

 

 

「私は私の考え。爽歩さんは爽歩さんの考えがあるんです。人間、迷って仕方ないんです。あ、私たちは半人半霊ですけどね」

 

 

妖夢はどこか遠い所を見ながら言った

 

 

「私も・・・いろんな事に迷ってます。お師匠様みたいに強くなれるのかとか、幽々子様の従者にふさわしくないんじゃないかとか、爽歩さんの事とか・・・」

 

 

僕のこと?

 

 

「でも・・・私は・・・きっと、幽々子様を取ります」

 

 

「そっか・・・」

 

 

まっすぐと前を向いた妖夢には、どこか陰りが見えた気がした

 

 

「さ、爽歩さん。そろそろ、お米が炊ける1時間前ですよ。朝ご飯、作りましょ?」

 

 

「あ、うん。そうだね。ありがとう、妖夢。話にのってくれて。僕、もう少し考えててみるよ」

 

 

「はい。それじゃ、また着替えて、台所で」

 

 

「うん。それじゃ」

 

 

そして、僕たちは雪がまだ積もるけど、春が近い時期に入った。

 




章をまた少しいじってみました
意見があり、コラボの章を上にしてみたのですが、うーん。どうでしょう
なんかしっくり来ない感がしたりするのですが、こんなもんなんでしょうかね
でも、新しい小説を投稿するときにわざわざ章管理を行う必要は無くなったんですけど、まだ違和感がぬぐえない
どっちがいいんだろう・・orz
なんか、もしかしたら、また章をいじるかもしれないです
読んでくださっている方、ちまちま変動するかもしれないですが、申し訳ないです
次回から春雪異変に入ります
ようやく大きく物語は動き始めます
これからも、東方緑妖想をよろしくお願いします


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狼と春集め 其ノ壱

どうも、和菓子屋蜜柑デス
今回から、異変に入っていこうと思います
11月になり、今週からかなり投稿スペースが遅れてくかもしれませんが、よろしくお願いします
春雪異変は、原作沿いに行く予定ですが、その内容までは、原作沿いではないと思います
それでは、狼と春集め。よろしくお願いします


「ねぇ、妖夢、爽歩」

 

時は冬。春になろうとするちょうど境目。桜が咲いてもおかしくはない時期。

僕がここの使用人を務めて幾数年。西行妖の前に立っていた主人(幽々子様)が言った。

 

 

「この桜が満開になったとき、何があるのかしら。私は・・・この西行妖が満開になった所を見たことないわ・・・」

 

 

まるで、幽々子様は何かを探しているようだった。それが何かは僕にはわからない。横目を使って、隣にいた妖夢を見たけど、彼女も困惑しているようで、まるでわかってはいないようだった。

 

 

「幽々様・・・いきなりどうしたのですか?花見でもしたくなったのですか?春妖精でも連れてきますか?」

 

 

「そうじゃないのよ。爽歩。いつもこの桜を見ると、何かを思うの。何かはわからないけど、何か大切なものがある・・・って」

 

 

「・・・西行妖は、1回だけ咲いたと言う話を聞いたことがあります」

 

 

「それはいつかしら。妖夢」

 

 

「私の祖父がここ白玉楼で庭師をしていた時のことです」

 

 

「・・・妖忌さんが・・・?」

 

 

「はい。1回、そのときに満開になったみたいです。」

 

 

「そう・・・。妖忌は何か言ってた?」

 

 

「・・・祖父は遠くを向いて、すごく悲しそうな顔をして、言っていました。『あの桜の木だけは咲かせてはならん。だが、手入れは必ずどの草木よりも行わなければならないー。』と。」

 

 

 

「・・・。そう。妖忌が。そういえば、彼はすごく西行妖を手入れしてたわね。私が聞いても何も教えてくれなかったけど」

 

 

「・・・それなら、妖忌さんを探せばいいじゃないですか」

 

 

「妖忌を?」

 

 

「はい。武者修行に出ているとはいえ、妖怪の賢者の紫さんならば何か知ってるハズ。」

 

 

「・・・そう、ね。紫に聞いてみるのもいいかもしれない。彼女なら、何か知ってるはず。・・・爽歩」

 

 

「はい」

 

 

「紫の元に行って西行妖の事を聞きに行きなさい」

 

 

そういうと、幽々様は蝶を出した。蒼と桃色が混じり合ったような蝶。

幽々様の能力。

 

 

「この蝶について行きなさい。紫の元へ導いてくれるわ」

 

 

「妖忌さんじゃなくてもいいんですか?」

 

 

「ええ、妖忌じゃなくとも紫なら、必ず何か知ってるはずよ」

 

 

「わかりました。妖夢、悪いんだけど、僕がいない間白玉楼を任せてもいいかな」

 

 

「もちろんです。幽々子様も白玉楼も私が守ります!」

 

 

「それじゃ、行ってきます。幽々様、食べ過ぎちゃ駄目ですよ。それとあまり白玉楼内でも薄着でいないでください」

 

 

「わかってるわ。爽歩」

 

 

「ありがとう」

 

 

「いえ、主の為ですから。それじゃ、妖夢。幽々様を頼むね。妖夢も無理はしちゃ駄目だよ。絶対に。約束だよ」

 

 

「だ、大丈夫です!」

 

妖夢は拳を握り、胸を叩いた。

だ、大丈夫かなぁ。心配だ・・・

僕はそのまま半霊を手に取り、身体に入れる。

少し胸が熱くなり狼化状態になった

今回通常の大きさであまり霊力を消耗しないように身体を整える

 

 

「ふふふ、それじゃいってらっしゃい。私の狼さん」

 

 

「行ってらっしゃい。爽歩さん」

 

 

幽々様と妖夢に一礼し、そのまま空を駆けた。

冬はまだ明けない

春もまだ当分こないだろう

 

 

(そういえば、紫さん冬になってから全く見ない・・・。体調でも悪いんだろうか)

 

 

幽々様の蝶はひらひひらりと案内し始める。僕もそれに付いていく

 

 

「・・・霧だってきたなぁ」

 

 

あろう事か、僕は大きな失敗をしてしまった

その霧が濃くなってきて、幽々様の淡い光を放つ蝶を見逃してしまった

まるで、一瞬の隙をついて、消えたかのように・・・

そこで困ったことが1つ出来た

 

 

「・・・迷った。どうしようかな」

 

 

わたわたとしていると、ひとつぼんやりとした光を見つけた

 

 

 

「あれは・・・家?」

 

 

見えたのは家だった。古風な日本家屋。

しょうがない。あそこで道を聞くとしよう

行くと、そこには猫がたくさんいた

狼の姿を解除して、入っていくと、弾幕がいきなりきた

 

 

「ここに入らないで!狼!」

 

 

猫耳を生やした女の子。猫又ってやつだろうか

多分、僕を敵と思って居るのだろう。仕方ないよね、猫と犬って基本的に相性悪いことが多いから・・・

 

 

「待って!僕は迷ったんだ!」

 

 

「うるさい!」

 

 

毛を逆立てて、怒る様子はまるで猫。

でも、このままでは埒があかない。どうしても道を聞かないと

僕は愛刀・鈴音を床に置いた

 

 

「これで信じてもらえないかな。僕の愛刀なんだ。僕は争う気はない。お願いだ。道を教えてくれ」

 

 

「・・・本当に道だけ?」

 

 

「ああ、道だけだ。教えてくれたら、すぐに引き返す」

 

 

「怪しい!」

 

 

そのまま、飛びかかってきた。

直線的な動きは撃退のできるルート

 

 

「ぐっ・・・」

 

わざと僕はその攻撃を受け止めた

シャツが破れ、血が吹き出る

首を狙われなかっただけいいだろうか

 

 

「僕は君と争うつもりはない」

 

 

「私はここの猫を守るんだっ!『童符「護法天童乱舞」』

 

 

次は完全に人を傷付ける為の弾幕が張られた。弾幕ごっこの威力ではない

多分、この子とわかり合うためには、絶対に反撃はしては駄目だろう

これは避けるしか・・・ないか

退路を探すために周囲をぐるりと見渡す

1つ、退路は見つけた。だけど、

 

 

「猫がいるっ!」

 

 

僕は腰を抜かしてしまったのか、動けない猫を見つけてしまった

それも、その猫のいる場所は弾幕がぶつかるルート。あれでは避けれないだろ

 

 

(ああ、もう!)

 

 

弾幕のぶつかるルートを脚に電気を纏わせ、移動する

ぶつかる寸前に、猫を腕の中に入れ、自身の頭を打たないよう身体を丸くさせ受け身の態勢を取る。

その瞬間、背中に弾幕がぶつかった

 

「っつーーー!」

 

背中に火傷のような嫌な痛みが奔る

そのまま僕はごろごろと転がっていった

弾幕が終わるまで、猫放さない。ようやく、最後の弾幕が過ぎていくころには、僕の上着はぼろぼろ、シャツも破れ、身体からは赤い血が流れ出ていた

腕の中からでてきた猫は心配そうに「にゃー」と泣いていた

 

 

「!?」

 

 

猫又少女はそれをみて、敵であると認識している僕が逆に猫を守っていて、逆に、自身が守るはずの猫を傷付けようとしていたことを気がついたらしい

 

 

「ごめんなさいっ!」

 

 

僕に近づいてきて、謝った

本当に僕が道に迷ってしまっただけだと、ようやく理解してくれたようだった

 

「いたたた・・・ごめん、悪いんだけど、包帯かなにかあるかな・・・・」

 

 

「ちょっと待っててください!」

 

 

猫又少女は奥に行き、すぐに止血できるものを持って来てくれた

その間、僕は鈴音を取りに行き、さっきの弾幕で歪んでないかを確認した。よかった。歪んでいない

止血をしている間、ここの事を教えて貰った

ここは、マヨヒガと言い、猫の里であるらしい

で、この子の名前は橙。

 

 

「私は藍様の式なのです」

 

 

「藍?」

 

 

「八雲藍様です」

 

 

「ね、もしかして、紫さんの家も知ってる?」

 

 

「はい!藍様も紫様と一緒に住んでいるのでわかります!」

 

 

「僕は、夢魂爽歩。白玉楼の西行寺幽々子様の従者をしているんだ。幽々子様の命で紫さんに用事があるんだけど、案内してもらえないかな」

 

 

「お客様!?どうしよぅ‥‥。藍様に叱られる」

 

 

紫の客に傷をつけてしまった事に対し、先ほどよりも落ちこんでいるのがわかる

 

 

「次から、気を付ければいいんだよ橙。誰にだって失敗はあるから」

 

 

橙を元気づけ、僕は猫又の少女と共に八雲邸に向かった

多分、この子がいなかったら、僕はたどり着けなかっただろう

八雲邸は、一般の妖怪ではわからない場所にあり、僕程度の実力の者が気楽に行けるような場所ではないらしい

橙が道を案内してくれているおかげで、迷わず、まっすぐと目的地にたどり着いた

八雲邸は、思っていたよりも小さく、平屋の一軒家と言う感じだった

妖怪の賢者だから、もっと大きな場所に住んでいるイメージがあった

 

「藍様ただいま!」

 

 

「橙、お帰り。・・・おや、珍しい。お客様か」

 

 

玄関を入ったところで、金色の狐がいた

 

 

ぞわり

 

 

寒気がはしる。絶対的な強者。自分よりも上の捕食者に心臓を捕まれるイメージ

 

 

「すまない。大丈夫かい?」

 

 

目の前の人物に肩を叩かれ、気がついた

 

 

「す、すいません」

 

 

「すまないな。多分、私の妖力に当てられたんだろう。紹介が遅れた。私は八雲藍だ。紫様の式で、九尾の妖狐だ」

 

 

「ぼ、僕は白玉楼の主、西行寺幽々子様の従者の夢魂爽歩と申します。一応、半人半霊です」

 

 

「君の半霊は蒼銀狼!?」

 

 

「蒼銀狼?」

 

 

「銀狼の亜種さ。紫様が殺した妖獣でも一際強かった存在だ。私も退治対象の一匹だったけど、紫様が式の道を示してくれたからここにいるんだ」

 

 

「知り合い・・だったんですか?」

 

 

「昔、縄張り争いをしていただけだ」

 

 

(な、縄張り争いって・・・。もしかしてでも、こいつすごい奴だったのか)

 

 

手を向けると、嬉しそうに腕に絡まりついてくる

こうしてると、僕の魂を半分喰らった狼とは思えない

 

 

「それで、どうしたんだ?」

 

 

「あ、はい。あの、紫さんはいらっしゃいますか?」

 

 

「あぁ。紫様か。今、寝ておられーー「いるわよ」

 

 

藍の後ろから、更に声がした

白玉楼でも、何度も聞いたことのある声

紫色のドレスを纏い、アリスさんとはまた違った綺麗な金髪を持ち、アメジストのような色合いの知性を醸し出す瞳。そこには妖怪の賢者、八雲紫がいた

 

 

 




爽歩はこれから八雲さん家に訪問でっす
橙は良い子だと信じてる
猫耳~。妖夢がつけて欲しいw
よし。いつか、短編でやろう。ハロウィンコスもやったんだから、猫耳もいいハズだ
紫が起きているのは、これから幽明結界をいじる作業があるためです
・・・。妖夢と爽歩が里に出歩いている件に関しては、まぁ、ご都合と言うことで、お願いします。(和菓子屋も春雪異変を書いていて思い出したorz
ほら、きっと、何かしろ、ゆかりんの力で里に下りてたんだよっ
爽歩はこれからどうなるのか・・・・乞うご期待!


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狼と春集め 其ノ弐

どうも、和菓子屋蜜柑デス
なんとか、三連休最後に投稿することができました
たぶん、次からちょいと遅れます



「こんにちわ。幽々子の可愛い狼さん。名前は爽歩で合ってるわよね」

 

 

「はい」

 

 

「それで、こんな寒い中何しに来たの?」

 

 

「白玉楼の我が主、西行寺幽々子様からの疑問を聞くために来ました」

 

 

「何を聞きに来たのかしら」

 

 

(あれ・・・。紫さんはもしかして、僕の聞きたい内容を知らない?)

 

 

「あ、そうそう。私、冬は冬眠しているから、覗きはしてないわよ」

 

 

なるほど。疑問が晴れた

 

 

「・・・白玉楼の桜。西行妖の事を聞きに来ました」

 

 

「!?。・・・そう。藍、お茶を入れて頂戴。爽歩、中に入りなさい。長くなるわ。」

 

 

西行妖の事を口にした瞬間、紫さんの表情が変わった

普段、表情がそんなに変わらないのに。紫さんの表情の変化は、青ざめたとでも言うべきか

 

 

 

 

「お茶、どうぞ」

 

僕は、八雲邸の居間に通された

藍さんが、お茶を入れて、机に置いてくれる。普段、僕がやっていることなので、微妙に居心地が悪い

 

 

「西行妖だったわよね」

 

 

「はい」

 

 

「・・・幽々子は何を言っていたの?」

 

 

紫さんの表情は今は険しい。その顔からは何となく予想はできているといった感じだった

 

 

「幽々子様は、西行妖が咲いたことが、自分が生きている時に1回も見たことがない事。そして、咲いたらどうなるのか」

 

 

「そう。やっぱり・・・・」

 

 

「やっぱり・・・?」

 

 

「いいわ、話しましょう。幽々子の過去を。そして、西行妖の始まりをーーー」

 

 

西行妖の元で、幽々様のお父上が大きな桜の木の下で自害したこと

そのお父上は様々な方に好かれており、幽々様のお父上が自害した桜の木の下でたくさんの方が自害したこと

その桜の木が、人の精気を吸い、人を殺す妖木となってしまったこと

 

 

「それから、幽々子は人を殺すただの妖木となってしまった桜の木を嘆いた。そして、幽々子は、西行妖の元で自身の体を封印の鍵として桜の木に封印を施したの。幽々子は本来、「死霊を操る程度の能力」を持つ人間だったけど、妖木となった桜の木ーー西行妖の影響で、「師を操る程度の能力」となり、鍵となった幽々子は転生をすることが不可能になったわ。亡霊になった幽々子は生前の記憶を全て無くし、四季映姫・閻魔大王とでも言った方が、わかりやすいかしら・・・。彼女に転生ができない幽々子に冥界を任せ、白玉楼ができあがった」

 

 

「・・・!?」

 

 

西行妖の下に幽々様の体がある!?

 

 

「そして・・・あの桜を咲かせてしまうと、封印が解けるわ」

 

 

 

封印が解ける・・・

体・・・亡霊となったが、幽々様の魂・・・

まさか・・・

 

 

「そう、そのまさかよ。封印が解けると幽々子の死体が解き放たれ、幽々子を亡霊にさせている原因がなくなるわ」

 

 

「それでは、幽々様は人に、人間に戻るというという事ですか?」

 

 

「いいえ。そんな昔の死体が保たれているはずがないでしょう。朽ちた体に、魂が入っても・・・」

 

 

「生き返ることはできない」

 

 

「そう。そして、幽々子は転生ができない。そこから推測されることはーーー幽々子自身の消滅の可能性」

 

 

「っ!?」

 

 

血の気が引いていく感覚。

西行妖が咲くと、幽々様が消滅する可能性がある・・・

そんなことを告げられて僕の頭がパンクしそうになった時、1つの声が聞こえた

 

 

「紫様」

 

 

「どうしたの藍」

 

 

「幻想郷の春が白玉楼に集められているようです」

 

 

「えーーー」

 

 

「幽々子・・・。動いてしまったのね」

 

 

「どうなさいますか?」

 

 

「私たちは・・・動くことができない」

 

 

「紫さんっ!どういう事ですか!?」

 

 

「・・・幻想郷の春が集められているわ。白玉楼に。多分、幽々子が妖夢に命じたのでしょう。西行妖を咲かせるために」

 

 

「そ、それは・・・」

 

 

「そう、先ほど話をした封印を解く事にしたのよ。彼女は。咲くと、封印が解け、妖夢もきっと西行妖に喰われるでしょう」

 

 

ドクンッ

心臓が締め付けられ、痛みを発する

幽々様が・・・・妖夢がいなくなる・・・・?

あそこ(白玉楼)で過ごした日々の中で、たくさんの思い出が甦る

 

 

「ゆ・・・紫さんなら止めれるのではっ!?」

 

 

「・・・私は止めることは出来ない」

 

 

「すまないな、爽歩。」

 

 

「どういうことですか・・・紫さんは幽々様の親友ではないのですかっ!?」

 

 

声が震える

頭がぐらぐらする

 

 

「これだけの規模になってしまうと、私が直接手を出すことが迂闊にできないのよ・・・。だけど、間接的ならば、爽歩、あなたを支援しましょう。私は・・・・二度と親友を失いたくない」

 

 

紫の言葉は重みがあった

二度と失いたくない。これは、きっと、生前の幽々様を示すのだろう。

 

 

「あなたは・・・どうする?幽々子と共に異変を成し遂げて見せる?それとも、異変を止める・・・?」

 

 

 

「・・・僕はっ・・・・」

 

 

酸欠のような頭で考える

あの温かい場所(白玉楼)を失いたくない。けど・・・、僕は幽々様の従者。

命の恩がある

 

 

「・・・まだ、幻想郷の春は全て集められてはいないわ。あなたの判断はまだ遅くない。だから、今は向かいなさい。異変の地へ

博麗の巫女、あなたを霊夢の元に送るわ。本当は幽々子の元に送りたいけれども、異変の元凶の場所へは手が出せない。だから、あなたは異変を解決する霊夢と共に幽々子の元へたどり着きなさい。そして・・・・幽々子を止めて頂戴」

 

 

「わかりました・・・・!」

 

 

僕は立ち上がる

 

 

「その前に、爽歩。あなたその状態で万全に戦えるの?」

 

 

紫さんは僕の傷を指で示した

橙とやったときの傷

 

 

「藍。爽歩の手当をしてあげて」

 

 

「御意に」

 

 

導師服を着た藍さんが清潔な脱脂綿やアルコールなどの消毒品に止血するための包帯を持って来た

 

 

「ほら、傷を見せてくれ・・・。すごい傷じゃないか。これは・・・橙の霊力の残滓?」

 

 

「来るときに、橙と戦ったんです」

 

 

「何・・・・?」

 

 

藍さんから、凄まじい霊力が発せられる

その霊力の波動からは最初の元とのは全く違うもの。

それはーー怒気

 

 

「僕は手を出してはいません。道を訪ねた際に、橙から襲いかかってきたのです」

 

 

説得を試みる

このままだと僕はこの場で殺される

 

 

「そこまでよ、藍」

 

 

「紫様」

 

 

「あなたは誰の式?何いきなり私の親友の従者に手を出そうとしているの?」

 

 

「紫様です・・・。申し訳ありませんでした・・・」

 

 

「自分の式を過保護にしすぎではないかしら?ほら、橙。」

 

 

ぷるぷると震える橙がいた

 

 

「藍しゃま・・・すいません。爽歩の言った事は本当です」

 

 

「橙・・・。」

 

 

「・・・これでどちらが正しいかはっきりしたわよね?藍。あなたはあなたの式に対して過保護過ぎるわ」

 

 

「・・・・以後・・・気を付けます。済まなかった爽歩」

 

 

「いえ、わかってくだされば・・・」

 

 

その後、すぐに藍さんは僕の手当を行ってくれた

腹部の傷と、背中の傷はざっくりと裂けていた為、縫うことになった

 

 

「腹部は自分で出来ます・・・が、背中を頼んでもいいですか?」

 

 

「あぁ。任されよう」

 

 

痲酔なんてものはこの場にはない。

とりあえず、傷口さえ閉まって、血が出なくなれば上等。早く、行かないと

痲酔があったとしても、多分僕は使わなかっただろう。痲酔を使ってしまうと、しばらく四肢の感覚が鈍る。この後すぐに動かないといけない身としては、そんな状態で行っても足手まといになる

歯を食いしばって、傷口を縫い合わせる

橙の攻撃は、幸い、傷口をボロボロにさせるようなものではなく、本当に綺麗に切れていたため、縫うことが楽だった。もちろん激痛は奔る。肉と肉を糸で引っ張り、無理矢理合わせる。

後ろは藍に縫ってもらい、なんとか傷口を塞ぐ

 

 

「大丈夫か?」

 

 

「・・・はい。なんとか」

 

 

顔中に脂汗が半端ない

だが、このまま血が流れ続けると、体力にも関わってくる。

 

 

「ほら、爽歩。ちょうど良い服あったからこれ着ていきなさい」

 

 

そう、スキマの中に手を突っ込んだ紫さんが出してくれたものは、黒いズボン。白いシャツ。そして、枯草色の上着。上着にしては長く、紫さんに聞くと、「ロングコート」と呼ばれるものらしい。背中にはベルトが付いており、そのベルトは長い。

それを着ると僕は鈴音を剣帯に吊した

 

 

「紫さん、ありがとう。僕は行きます」

 

 

「わかったわ。それじゃ、道を開くわ」

 

 

僕よりも少し大きいスキマが開かれた

 

 

「幽々子を、助けてあげて頂戴・・・」

 

 

スキマが閉まる瞬間に聞こえた声は鳴きそうな声だった

 

 

「行ったわね・・・。藍。結界をいじるわ。霊夢が、異変解決者たちが冥界に向かいやすいように、幽明結界を薄くするわ」

 

 

「御意」

 

 

紫が開いたスキマを通り、二人は消えていった




と、言うわけで、次回は嫁が登場
ふふふ。さぁ、果たしてこれから爽歩どうするのでしょうか
問題は延期しただけ。
予想しながらお待ちください!


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狼と春集め 其ノ参 ☆

どうも、おはこんばんわ。
和菓子屋蜜柑です
多分、これで今月は終了です



不気味な目の空間、スキマを通り、僕は人気のない神社に降り立った

 

 

「うう、寒いわね。あら、参拝客の方かしら。」

 

 

そこにいたのは紅白の巫女だった

いつか、遠目で見た紅白の改造巫女服を着ている巫女

 

 

「君が・・・博麗霊夢?」

 

 

「そうだけど。素敵な賽銭箱はあちらよ」

 

 

「賽銭・・・?あぁ。この異変が解決されてから行くよ。君は今から異変を終わらせにいくんだろ?」

 

 

「そうよ。寒いのは嫌いなの。縁側でお茶も飲めやしない。暦なら本当はもう桜が咲いてもいいはずなのに、なんでまだ冬なのよ」

 

 

「そのことで頼みがあるんだ」

 

 

「何よ」

 

 

「僕を、異変解決に連れていって欲しい」

 

 

「嫌よ」

 

 

即答だった

 

 

「何で知りもしないあんたを連れていかないといけないのよ。それも、あんた半人半妖でしょ。別に、妖怪を差別する意味じゃないけど、怪しいわ。なんだか、今回の異変と関わってそうだし」

 

 

「・・・申し遅れた。僕の名前は夢魂爽歩。白玉楼の従者をしている。訳あって、異変解決に強力したい」

 

 

「ふぅん。白玉楼っていったら、冥界じゃない。信用はしてあげるけど、異変の素人を連れていくことはできないわ。どうしてもというなら、紅魔館に行きなさい」

 

 

「紅魔館?あの湖の近くに出来た吸血鬼の館かい?」

 

 

「そうよ」

 

 

「何で?」

 

 

「勘よ。なんだか、あそこにいる従者・十六夜咲夜なら動くと思うわ。私の勘はよく当たるのよ」

 

 

「・・・わかった。ありがとう。紅魔館に訪ねてみることにする。もし、緑色の服を着た銀髪の剣士の女の子を・・・いや。なんでもない。異変解決後にまた賽銭入れにくるよ」

 

 

「賽銭入れてくれる人はいい人よ。私は連れて行くことができないけど、悪いわね」

 

 

「いや、無理を言ったのは僕の方だ。ありがとう。それじゃ」

 

 

僕はそのまま博麗神社の屋根に跳躍した。そのまま、周囲を見渡すと、すぐに紅魔館は見つかった

真っ赤な屋敷。

しかし、さっきの霊夢みたいに断られてしまうかもしれない

・・・しょうがない。駄目もとで行くしかない・・か

 

 

「行こう」

 

 

半霊に向かって言うと、力強く頷いた気がした

いつも通り、手をかざし、狼化する

 

 

「あ、いいなぁ、もふもふ・・・」

 

 

霊夢の声を聞きながら飛びだった

 

 

脚力を強化した狼化状態で、すぐに紅魔館に着いた

門の前に降り立つと銀髪の従者服(メイド服)を着た人と、門番らしき人が話をしていた

 

 

「あ、あの、すいません」

 

 

「なにかしら」

 

 

「どうしたんですかー?」

 

 

「今から、異変解決に行くのですか?」

 

 

「そうよ。冬が終わらないから暖房の燃料がきれてしまいそうなの」

 

 

「咲夜さんも人間なのですから、もう少し気を付けて・・・」

 

 

「僕は、夢魂爽歩と申します。白玉楼の主、西行寺幽々子様の元で、従者をしています」

 

 

「あら、同じ従者なのね。私は十六夜咲夜。この紅魔館の主、レミリア・スカーレットお嬢様の従者をしてるわ」

 

 

「私は紅美鈴。同じく紅魔館の主、レミリア様に仕える者です。門番をやってます」

 

 

「それで、夢魂さんは、なぜこの異変解決をしようとしてるの?」

 

 

「・・・。この異変を起こした人物が僕の主人だからです。僕のことは爽歩でお願いします」

 

 

「「っ!?」」

 

 

「それは・・・本当?」

 

 

「僕は・・・主人の元に向かいたい。でも、多分、一人では向かえない」

 

 

「いろいろ、事情があるみたいね。わかったわ。私も以前、異変を起こした主に務めてたから、わかる。一緒に行きましょう?」

 

 

「ありがとう・・・」

 

 

「えーと、爽歩さんでしたか?咲夜さんに、不埒なマネをしたら、私が許しませんよ?」

 

 

「ぼ、僕は妖夢がっ・・・!」

 

 

ん?僕は妖夢が・・・・?

僕は妖夢がなんなんだ?

 

 

「へぇ、あなたにはいるのね」

 

 

咲夜さんが呟く

 

 

「美鈴。私がいない間、お嬢様のお世話をよろしく。今日のおやつはもう仕掛けてあるから、焼き上がったのを、お嬢様、パチュリー様、妹様に届けて頂戴。あとは、妖精メイドと一緒に、美鈴も食べて?」

 

 

「わーい!咲夜さん大好きです!」

 

 

美鈴さんは、咲夜さんに抱きつく

まるで、大型の犬みたい

 

 

「ちょ、美鈴!やめなさい!」

 

 

咲夜さんも抵抗はしているけど、嬉しそう

もしかして・・・

 

 

「美鈴!」

 

 

咲夜さんの声が鋭くなったかと思ったら、美鈴さんの腕の中から咲夜さんの姿が消え、僕の隣にいた

ついでに、美鈴さんの頭にはナイフが刺さっている。

え?どうやったんだ?あと、咲夜さんの獲物はナイフか?

 

 

「いい加減にしなさい。それじゃ、行ってくるわよ」

 

 

「行ってらっしゃい。咲夜さん」

 

 

こうして、僕は十六夜咲夜さんと共に、異変の地、白玉楼へ向かった

 

 

「ね、爽歩。寒くないの?あと、敬語はやめて頂戴。同じ従者同士でしょ?」

 

 

「あ、・・・わかった。僕は寒くはないかな。相棒のおかげで」

 

 

「相棒?」

 

 

「紹介してなかったですね。僕は後天的な半人半霊なんだ。この半霊が僕の相棒」

 

 

人魂の状態だった半霊を狼の元の姿に戻し、咲夜さんに見せた

 

 

「犬・・・?いえ、狼かしら。それと、後天的な半人半霊って・・・?」

 

 

僕は、僕が半人半霊になった

経緯を咲夜さんに教えた

 

 

「そう・・大変だったわね」

 

 

「霊夢さんが僕に咲夜さんを教えてくださった意味は・・・何故だったのかわかりますか?」

 

 

「・・・1つだけ考えられることがあるわ。私はこの異変が起きる前に異変を起こしたの。まぁ、起こしたのは、私の主だけど」

 

 

「・・・そのとき咲夜さんは・・・どうしたんですか?」

 

 

「私はお嬢様についたわ。正直、掃除が大変だったぐらいの気持ちしか無かったわ」

 

 

この人なら・・・・相談できるかもしれない

 

 

「咲夜さん・・・この異変を起こしているのは、僕の主です」

 

 

「そう。それであなたは邪魔するのかしら?」

 

 

「・・・僕は・・この異変、止めるか、そのまま幽々様に付くか悩んでるんだ・・・」

 

 

西行妖という桜が咲くと、今までの生活が無くなるかもしれない事

幽々様と、妖夢が大切なこと

西行妖の事は、幽々様が消滅する事と、人の命を吸い取ることは伏せて話した

 

 

「あぁ、もう。泣かないの」

 

 

咲夜さんに言われて気がつく

涙が出ていた

袖で涙をぬぐうと差し出されたのは、真っ白なハンカチ

 

 

「はい、これで涙をぬぐいなさい」

 

 

「あ゛、ありがとうございます」

 

 

涙に1回気がつくと、どんどん流れてくる

視界が涙でぼやける

 

 

「ちょっと、落ち着いた方がいいわね・・・あら。あそこに、ちょうどいい家があるわ」

 

 

咲夜さんは涙で視界がにじんでいる僕の手を掴んで、暖かな家に入った

涙が収まり、周囲をいると、そこはマヨヒガだった

 

 

「そーほさん!」

 

 

聞き覚えのある声が後ろからした

振り返ると、橙がいた

 

 

「そーほさん泣いてたの?あ!お前知ってる!吸血鬼の所の従者!あなたが、そーほさんを泣かしたの!?」

 

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい」「ちょっと待って!」

 

 

橙に事情を説明する

今回は、弾幕を最初から撃ってこなかった。少しだけ安心

二股の尻尾をゆらゆらと動かしながら、話を聞く橙

きちんと説明出来たところで、橙は

 

「そっかぁ。あ、私この先でごろごろしてるから、出るときは案内してあげるっ!そっちの銀色の従者は後で1回、弾幕勝負をしてほしいな!」

 

 

と言い、去っていった

 

 

「元気な猫ね。それで、話が脱線しちゃったけど・・・あなたは、日常を崩したくないのよね?」

 

 

僕は頷く

 

 

「でも、桜を咲かせちゃうと、日常は崩壊するし、主従としての立場がある・・・と」

 

 

更に頷く

 

 

「それなら・・・そうねぇ・・・。あなたにとって、今、仕えている場所はどういう場所?」

 

 

「庭が大きくて、馬鹿みたいに廊下がいっぱいあって・・・大食らいの主人がいて・・・」

 

 

「あ、そういうんじゃなくて、あなたがどう感じてるか。私に例えると、紅魔館は大切な人たちがいる特別な家。」

 

 

僕が思っている白玉楼・・・

優しい幽々様がいて、温かくて、それからーーー妖夢がいる

妖夢の何に対しても一生懸命な姿が大好きだ。

それが、失われるーーー

 

いきなり、頭痛が走り、幻視した

幽々様もいなく、妖夢の身体が冷たくなって動かない

 

 

「あ、あああああ・・・・!?」

 

 

「ちょ、ちょっと!?大丈夫!?」

 

 

咲夜さんに肩を揺すぶられる

その衝撃で僕はハッとした

あんな状態になるなら・・・・

僕は・・・・

 

 

「さ、咲夜さん。ありがとうございます。取り乱してすいません。でも・・・もう大丈夫です」

 

 

「本当に大丈夫?」

 

 

「はい。これ以上遅くなるわけには・・・・いかない。僕が今、足を引っ張ってる状態だから・・・。でも、もう本当に大丈夫」

 

 

「無茶は禁物よ」

 

 

「本当に大丈夫です。咲夜さんのおかげで、決心が付きました。僕は・・・」

 

 

僕は主に背き異変を止める

その代償は・・・僕には大きすぎるものだけど、幽々様と妖夢には安いかもしれない




いかがだったでしょうか
霊夢は「異変付いてきたいの?いいけど邪魔しないでよね」か「嫌よ、めんどくさい」の、どちらかだと思うんですよね
と、言うことで、後者を選んでみました
てな訳で、瀟洒なメイド様が登場です
同じ、従者で、異変を起こした主人同士なので気持ちがわかるのかなっと思い、咲夜さんでした
爽歩の決意とその代償とするものは・・・?
次回の更新は12月となります



【挿絵表示】

てぃらむーすさんから支援絵いただきました!
本当に感謝感激です
今回の妖夢はカッコいい。妖艶?
素敵イラスト頂くとやる気が出るね!やったね!


ー報告ー
活動報告にて、想シリーズの第3弾について書いてあります
もし、よろしければご覧ください


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狼と春集め 其ノ肆 ☆

今月最後の投稿となります


「あなた・・本気なの?」

 

 

「うん」

 

 

もう、揺らぎはしない

みんな死んでしまうよりかは、生きていて欲しい

それが、主人の命に背いてしまうことでも

 

 

「・・・そう、それなら何も言わないわ。それじゃ、急ぎましょうか」

 

 

咲夜さんは立ち上がってメイド服を軽くはたいた

僕も立ち上がろうとする

その瞬間

 

 

『ドクンッ』

 

 

心臓が大きく跳ねた。いや、正確には、心臓というよりも魂?それも、僕のじゃない

それも一瞬の事で、僕はすぐに立ち上がる

 

 

「咲夜さん、本当にありがとう。それじゃ、橙を呼びにいこう

 

 

「わかったわ」

 

 

橙がいる所まで行き、約束通りの咲夜と橙の弾幕勝負が始まる

彼女は隙のない弾幕と、どこかに隠し持っているナイフを使い、橙を追い詰めた

そして、決定打は彼女のスペルカード『幻符「殺人ドール」』

いつ、ばらまいたのかもわからない巨大なナイフが橙に向かって殺到する

最初こそ橙は避けていたが、その巨大なナイフを避けきれず、ついに落ちる

 

 

「ううー。負けちゃった」

 

 

「あなたも強かったわよ?」

 

 

「また、勝負してくれる?」

 

 

「もちろん」

 

 

「わぁ!ありがとう!それじゃ、弾幕ごっこもしたし、道、教えるね」

 

 

咲夜さんは動物や小さい者には優しいのかもしれない・・・

橙に付いていくと、マヨヒガをまっすぐに抜けれた

 

 

「この道を辿ると白玉楼だよ。・・・そーほさん。気をつけてね」

 

 

「橙、ありがとう」

 

 

「橙、この異変が解決できたら、紅魔館へいらっしゃい。お菓子程度なら振る舞わさせていただきますわ」

 

 

「本当!?行く行く!」

 

 

橙と咲夜さんとの約束もされ、橙に見送られながら、僕と咲夜さんは飛んだ

その途中でアリスさんに会った

 

 

「あら、爽歩、こんな寒い中、また、お使い?」

 

 

「・・・はい、最後のお使いってところですかね・・・」

 

 

「爽歩、あなた、もしかして妖夢の代わりにその女を・・・?」

 

 

「ちょっと待ちなさい。多分、私はあなたが思っている関係じゃないわ。あと、私の名前は十六夜咲夜。その女って呼ばないで頂戴。お嬢様から頂いた名前があるので」

 

 

「それならいいけど。申し遅れたわ。私の名前はアリス・マーガトロイド。アリスって呼んで頂戴?ってあなた達、春を集めているの?」

 

「春?」

 

「そう。春。爽歩はあの亡霊姫のために集めてるわけじゃないのね?その鈴に自然に集まってるみたいだけど、まぁ、そんなには入らないみたいだけど。」

 

「それで、あなたは私たちの邪魔をするの?」

 

咲夜さんが言う。

それに対して、アリスさんは、

 

「都会派は紅白を待ってるのよ。久しぶりに会いたいから、覚えてるといいんだけど」

 

紅白?あ、霊夢か

 

 

「へぇ。あなた、霊夢と知り合いだったの?」

 

「ええ。あっちは覚えてないかもしれないけど、私は覚えてるもの。久しぶりの友人に会いたいじゃない?」

 

「それじゃ、アリスさん。僕は白玉楼に行きます」

 

「そう、それじゃ、爽歩。またね。咲夜。あなたから洋菓子の香りがするわ。今度、伺ってもいいかしら?」

 

「お客様ならね。魔法使いなら、パチュリー様がお喜びになるわ」

 

こうして、僕はアリスさんと別れた。

 

 

「あの子って、人形遣いなのよね?」

 

 

「はい。魔力を糸にして、その糸で人形を操るんです。あと、裁縫とかもすごいですね」

 

 

「それは、いいことを聞いたわ。アリスが紅魔館に来た時に、お嬢様たちの服作ってくれないかしら・・・」

 

 

「・・・アリスさんに交渉ですね」

 

 

「ねぇ、ところで爽歩、なんかうるさくない?」

 

 

「そうですね。うるさいというよりか、これは・・・音楽?」

 

 

音を辿るとそこには騒霊がいた

 

 

「何?そこの騒霊。今から花見でもしようというの?」

 

 

「そうよ。宴会の演奏に呼ばれてるの」

 

 

咲夜さんが問い、その問いに対し白に近い桃色の騒霊が答えた

 

 

「宴会?呼ばれたって・・・」

 

 

「そこの先の大きな屋敷の主人だよ」

 

 

今度は黒い騒霊が答える

 

 

「幽々様・・・」

 

 

「お花見の前夜祭だよ!」

 

 

赤の騒霊が喋る

 

 

「それじゃ、僕たちは急ぐから」

 

 

僕はそのまま咲夜さんと共に白玉楼に向かおうとした。すると、

 

 

「楽しみの前には、弾幕ごっこで遊びましょ?」

 

と、騒霊たちは弾幕を撃ってきた

 

 

 

「もう。爽歩、相手するわよ」

 

 

「咲夜さん。僕が今度は行きます」

 

 

誘導弾と通常弾の間を通り、弾幕を回避。

こっちも軽く弾幕を張り、陽動をかける

レーザーが飛んできたりして、大変だが、意外とそうでもなかった

 

通常弾が円を描くように飛んできて、更に僕を狙った弾が飛んでくる

それを、跳躍しながら、左右に避ける

騒霊は、三人いるという数の理を生かし、三角に回りながら、数多い弾幕を形成した

 

 

(流石に、あの持っている楽器が傷付けるのはまずいよね・・・。(スペルカード)は・・・そうなるとこれがいいか)

 

 

「電符『雷脚』」

 

約15秒。脚に電気を纏わせ、更に脳内にある筋肉のリミッターを無理矢理外す。15秒はこれで動いても筋肉が千切れたりはしない

このスペルはただの身体能力強化。それも、名前の通り脚専用

 

 

「いくよ」

 

僕は地を思いきり蹴り、その場から消える

騒霊たちは僕が消えたことも気がついていない

 

 

「まず、一人」

 

 

後ろに回り込み、鞘を鈴音の鞘の方で、首筋に向かって振り下ろす

白に近い桃色の騒霊が地に落ちる

何が起ったのか気がついていない間に身体をひねり、近くにいた黒色を蹴り飛ばす

手加減はしたので、少ししたら動けるようになるだろう

 

 

「ごめんね、急いでるんだ」

 

 

「ーーーえ」

 

 

最後の赤色の子に向かって、黄色の弾幕を当て、地に落とし、僕は咲夜さんのところに戻った

 

 

「お見事」

 

 

「もうすぐ、白玉楼です。急ぎましょう」

 

 

「わかったわ」

 

 

雷脚の持続時間が終了し、 通常に戻ったのを確認し、僕と咲夜さんは再び空を駆けた




リリーは・・・書いてたんですけど、ボツになりましたorz
次回12月になります
まだ、次をかいていないので、いつになるかわからないです
次回はようやく妖夢が出てくるので、時間がかかるかもしれないです。構想はできてるんですけど、まだ、細かいとこまで決めれていなく、次回からかなり盛り上げて行く予定なので、もう少々お待ちを

【挿絵表示】

今回もてぃらむーすさんから支援絵頂きました!
猫耳妖夢ktkr!
毎回、本当にありがとうございます!本当に毎回感謝しきれないほどです

報告
ついに、緑妖想のお気に入りが100件突破しました
皆様に支えられて、和菓子屋蜜柑はここにいます。これからも、よろしくお願いします!
それでは、次回までゆっくりしていってください
支援絵、和菓子屋のヘタクソなイメージ絵などの絵が載っている所に、タイトルの最後に☆をつけてみました


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狼と春集め 其ノ伍☆

おはようございます。和菓子屋蜜柑です
なんとか、12月はじめに間に合った
今回は5000字オーバーです。


「咲夜さん、見えてきました!あの階段を上りきると白玉楼です」

 

「あらかさまに長い階段ね。飛べば問題ないのだけれど。何段あるのかしら?」

 

「僕も基本飛ぶので数えたことはないですね」

 

「そう」

 

僕と咲夜さんは弾幕で妖精を蹴散らしながら進んだ

もうすぐに白玉楼に着くためか、妖精の弾幕さえもきつくなってくる

 

「・・・・!」

 

「どうしたの?」

 

「・・・咲夜さん。彼女に会ったら手はず通りにお願いします」(僕があの二人と止めないと。僕があの二人を助けないと・・・)

 

「・・・そう。近いのね。わかったわ」

 

ーーーーーーー

 

しばらく道のりに進むと、彼女がいた

銀色の前髪は整っているさらさらな髪。緑を主にした洋服、生真面目そうな表情。そして、なによりも背負った長い刀と脇差し

 

「妖夢」

 

「爽歩さん。お帰りなさい。そこをどいてください。幽々子様の邪魔をする彼女は侵入者です」

 

「・・・・咲夜さん」

 

「ええ」

 

僕は鈴音を抜いた

 

「そう・・・ほ、さん?」

 

「妖夢。僕は君に勝負を挑む。そして、幽々様の邪魔をさせてもらう」

 

「・・・え。どういう・・・ことですか・・・?」

 

「・・・言葉の通りだよ。」

 

「どういう・・・ことですか・・・!?

 

「抜いて、妖夢。僕は幽々様に用がある。あと、彼女は・・・僕をここまで導いてくれた女性だ。僕は・・・今を捨ててでも、居場所を失っても・・行かなきゃいけないんだ」

 

「な、なんでっ!?」

 

「ルールはいつも通り。妖夢が負けたら、ここを通して」

 

「なんで帰ってきていきなりっ・・・」

 

「ごめん、妖夢でも、やらなきゃいけないんだ。いつか言っていたあの話の答え、僕ようやく出たんだ」

 

「そう・・・ですか。でも、私は、私だけは幽々子様の元にいて、彼女をお守りしますっ」

 

「・・・うん。それなら、僕がいなくなっても大丈夫だよね」

 

「どういう意味ですか・・・?」

 

「ううん。気にしないで。それじゃ、いつも通り、石が地面に落ちたら・・・始め」

 

僕は手頃な石を取り出し、妖夢と僕の間に向かって投げる

放物線を描き飛んでいく。

落ちた瞬間、一歩を踏み出す

 

 

ーーー最初から全力で行かせてもらう!

 

 

『電符・雷脚』

 

あの騒霊の時に使ったものを最初に呼び出す

これで、初撃を加速させる

袈裟切りに妖夢に斬りかかる

 

「これきしっ!」

 

妖夢は白楼剣を抜き、そのまま僕の攻撃をそらす

 

「まだまだ行くよ」

 

雷脚の時間は余っている

りん、と僕が動く度に鈴が鳴った

強化した脚力で妖夢に思い切り回し蹴りを放つ

 

「っ!?」

 

流石、妖夢。即座に反応して、自分から飛んだ。

派手に飛んだが、ダメージはかなり軽減されてしまっただろう。

雷脚の時間は切れ、僕の脚力は通常に戻る

 

「・・・爽歩さん。どうしても・・・ですか?」

 

「・・・どうしても。僕は行かなきゃいけない。それじゃ、いくよ。雷刀『紫電追刃』」

 

鈴音に紫電を纏わせ、それを飛ばす

一直線に飛ぶこの技は威力は弱いが追尾をし、確実に麻痺をさせるための技

僕が一人で修行をしている時、猪などの獲物を狩る為に考案されたもの。麻痺の時間は決まっているけど、長くはない。むしろ、約15秒

技を放った瞬間、僕と相棒()の視界がリンクした。そして、先ほどの胸の痛み

 

「ぐっ・・・」

 

耐えきれない痛みじゃないけど・・・なんだ?この痛みは・・・

相棒から、伝わってくる?

痛みに耐えていると麻痺から、抜け出した妖夢の攻撃が始める

 

『剣伎「桜花閃々」』

 

妖夢が高速で前方に移動した瞬間、間髪入れずに、斬撃がきた

痛みで避けきれず、桜色の剣閃が僕に襲いかかった

 

「ぐぅっ」

 

「まだまだぁっ!『人鬼・未来永劫斬』」

 

妖夢の人符の強化版。未来永劫斬。その威力は人符の並ではない。やばい

僕は受け身をも取らずに、妖夢が走ってくる直線上から横に転がり、回避

 

「そんなんで回避できると思ってるんですかっ!」

 

妖夢は技の軌道を変え、その攻撃は再び、僕に襲いかかる

踏み込まれた剣閃は僕を空に投げ出す。

そして、そのまま、剣閃によって空に縫い止められた

四肢から、体幹まで切られ、切られた痛みを発し場所が熱くなる

傷口から血が流れて、地面を僕の血で赤く染めていく

せっかく、紫さんから服を頂いたのに・・・

そんなどうでも良いことを考えながら、除除に強くなっていく胸の痛みに耐える

妖夢の未来永劫斬が終わっても、僕は受け身を取らずに、地面にそのまま落ちた

 

「うう・・・」

 

痛い。やっぱり僕には妖夢は止めることはできないのか・・・?

僕は・・・妖夢を助けることなんて・・・出来ないのか・・・

 

地面の冷たい感触を味わいながら、思う

再び、相棒と視界がリンクした

そして、痛みが襲ってくる

相棒を見ると、必死になって何かを伝えている様子だった

何を・・・相棒は伝えたいんだ?

僕に痛みまで与えて・・・

狼化・・・すればいいのか・・・・?

 

血液を失った身体は重い

でも、そこまで深い傷がないことから、妖夢は手加減をしてくれているのは明白だった

・・・力が欲しい

妖夢を倒せるだけの力を

幽々様を、妖夢を守れるだけの力を

 

 

 

 

その瞬間、僕はいつか見た足場のないけど、立つことの出来る空間にいた

 

「ここは・・・」

 

ここは、僕と狼の始めて会った所

狼の精神世界・・・?

と、いうことは・・・あいつがどこかに・・・いる?

歩き始めると、少しした所にあいつはいた

前に見たときは、警戒心がとても強く、すぐに襲いかかってきた狼

でも今は、穏やかだけども、とても力強い目をしていた

 

「なんで・・・お前は僕に痛みを与えるんだ・・・?」

 

話しかけると、狼は近寄ってきた

そして、僕の身体にすり寄る

その瞬間、狼から伝えられた。言葉ではなく、脳に直接情報を送り理解させたと言った方がいいだろうか

 

狼が伝えてきたことは、狼化(ろうか)についてだった

爽歩が人の状態であると、それは、魂が人よりに傾いている

爽歩が狼化と呼ぶ状態で狼の形をとると、それは魂が狼側に傾くというものだった

 

狼と爽歩は半分半分同士の魂で1つだが、それは近郊が取れているわけではなかった。

どちらかの形をとるとどちらかに魂が傾き、その姿になっていただけ。

それは些細なバランス。それは幽々子もわからなかった些細すぎるバランス

 

「・・・そっか。僕たち本来の力を使う為には、きちんと釣り合わせないといけないと、言うことを君は伝えたかったのか」

 

狼は現実世界では、爽歩に詳しい事を伝えられない

何を思っているか程度なら、わかるが、詳しい事を伝えることが出来なかった為に、無理矢理伝えようとし、その結果人間の方に傾いている爽歩の魂に痛みを与えていた

妖夢により、意識を刈り取られた爽歩を、なんとか精神世界に連れてきて、ようやく伝えることができて、狼は満足そうだった

 

「・・・ありがとう」

 

礼を伝えると狼は嬉しそうに鳴いた。その泣き声はとても頼もしかった

 

「・・・行こう。まだ、終わってない」

 

 

再び僕と狼は出口に向かって走った

大丈夫。今度こそ、僕と(相棒)となら勝てる

 

 

意識が戻ると地面に這いつくばったままの姿だった

多分、それほど、意識を飛ばしてから時間はたってないだろう

重い身体に鞭を打って立ち上がる

 

「・・・爽歩さん。もうあなたの負けですよ、だから私の、幽々子様の邪魔をしないでください」

 

「まだ、負けていないよ。妖夢。これからが・・・勝負だ」

 

相棒に手を伸ばし、狼化をする準備をする。

 

「狼化・・・ですか」

 

いつもみたいに相棒を身体の中に入れる。でも、入れ方はいつもよりも丁寧で、もっと同調させるように。入れると身体の変化が訪れた

 

視界はいつものまま。感覚も人の状態と同じ

でも、身体に張り巡らされる活力はいつもの二倍以上

・・・いまなら何だってやれそう

 

「それじゃ、妖夢。これが、今の僕に出来る全て。『電符:轟雷(ごうらい)』」

 

理想を掲げたスペルの名前を呼ぶ

今まで一度も成功しなかった僕の切り札

身体中に電気が帯びていく感覚

自分の耳で聞こえるほど、強く電気を纏う

このスペルは雷脚の強化版。

 

「・・・それが・・・爽歩さんの全て・・・なんですね。それでは・・・私もその全力にお答えしますっ!『獄神剣・業風神閃斬』!」

 

妖夢の半霊から大玉の弾幕が生成され、飛び出し僕の逃げ場を潰す。更に隙間もないくらい弾幕を張り、僕に、妖夢が見えないほどの速さで剣を振るう

今までの僕一人で戦っていたなら、ここで真っ二つにされていただろう

でも、今は、見えるっ!

 

「『剣舞・鈴舞踏(すずぶとう)』」

 

愛刀の一降りする事で鈴を鳴らす

りん、となる音とともに僕はその場から弾かれたように飛び出した

避ける隙もない弾幕を踊るように回避。そのたびに鈴が鳴る

轟雷によって身体中が強化されている僕の今の身体はイメージ通りの動きを100%再現してくれた

身体がビキビキと音を立てているが、気にしない。

妖夢の技を全て剣で、体術で受け流し妖夢の目の前に辿り着く。

そして、一閃。

妖夢も反応し、一閃

僕と妖夢の刀が交差した

 

 

 

「ごめん、妖夢」

 

僕はその日初めて妖夢を倒した

僕が妖夢に切られたのは、鈴音の二つある内の一つの鈴の紐。

妖夢が僕に切られた所はないが、思い切り峰で叩きつけた

 

「そ・・・ほさん・・・行っちゃ・・だめ・・・今・・行ったら・・・そうほ、さん、ころされ・・・」

 

息も絶え絶えになった妖夢の側に鈴音の鈴が落ちた。

 

「大丈夫だよ」

 

もしかしたら妖夢も薄々気がついて、いたのかもしれない。妖夢は白玉楼の庭師だ。祖父の妖忌さんから西行妖について何らかしろ聞いていたんだろう

 

「・・・妖夢。ぼくは・・・僕は妖夢の事が好きだ。だから、行くね」

 

「そう・・・ほさんっ・・!!」

 

僕は持って来ていた医療道具(八意先生製)を妖夢の側に置いた

 

「さよなら、妖夢。大好きだよ」

 

僕は妖夢に背を向け、轟雷の効いたままの身体で一気に階段を駆け上った

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

妖夢side

 

地面に倒れ伏した爽歩さんを見て、私はこれで良かったんだと思った

倒れ伏した爽歩さんを切った罪悪感はある。でも、幽々子様に殺させるわけにはいかない。

しばらくすると、爽歩さんは満身創痍の状態で立ち上がった

 

「・・・爽歩さん。もうあなたの負けですよ、だから私の、幽々子様の邪魔をしないでください」

 

「まだ、負けていないよ。妖夢。これからが・・・勝負だ」

 

爽歩さんの目からは絶対に負けないという気迫が込められていた

お願いだからもう、そんな姿で動かないで。もう、諦めて

爽歩さんはいつも狼化する動きを見せた

しかし、狼化したハズの彼の姿は人のままで

でも、確かに変わっていた

人の物ではない獣の耳に銀と蒼の毛並みの尻尾が生えていた。それはまるで、妖怪の山に住むと言われる白狼天狗の姿のよう

爽歩さんの身体からは今までは全く違う力があふれ出ていた

 

「それじゃ、妖夢。これが、今の僕に出来る全て。『電符:轟雷(ごうらい)』」

 

爽歩さんがそのスペルを発動した瞬間、空気がざめいた

目の前には全身に電気を身に纏った爽歩さんの姿。爽歩さんの雷脚と同じ感じがする

雷脚と同じなら・・・危ない。でも、私は爽歩さんをいかせるわけにはいかない。だったらっ・・・

 

「・・・それが・・・爽歩さんの全て・・・なんですね。それでは・・・私もその全力にお答えしますっ!『獄神剣・業風神閃斬』!」

 

私が持つスペルの中でも最高の物。これならば絶対に負けないというもの。そう、思っていた

 

「『剣舞・鈴舞踏(すずぶとう)』」

 

爽歩さんがつかったスペルは、爽歩さんがよく練習として舞っている剣舞だった

動き出した爽歩さんの姿はまるで捕らえられない。轟雷は雷脚の強化版で合っているようだった避ける隙間もないほどに出した弾幕も、半霊から生成した大玉の弾幕も、自分の剣閃も全て爽歩さんの体術と剣によって受け流されていく

あの速さで私が反応出来たのは、爽歩さんの姿を一瞬だけ視界に取り入れることができ、爽歩さんが最後の一閃を放つ瞬間、私も一閃を放つ

銀色の剣同士が交差して、私が切った物は爽歩さんの鈴の紐。それに対して、爽歩さんの一閃はあの瞬間に

峰に返し、それで私を叩きつけた

 

「ごめん、妖夢」

 

身体に力が入らない

 

「そ・・・ほさん・・・行っちゃ・・だめ・・・今・・行ったら・・・そうほ、さん、ころされ・・・」

 

待って、行かないで

大好きなあなたが、殺されてしまうかもしれない

息も出来ないような満身創痍な状態で私は必死に叫んだ

その叫びは途切れ途切れになってしまったが

 

「大丈夫だよ」

 

爽歩さんが笑っていった。あぁ、その笑顔。その安心させるようで包み込むような優しい笑顔に最初は私は惹かれたんだ

この瞬間、私は、祖父から「西行妖を咲かせることはしてはいけないが、他の木よりも丁寧に扱え」という言葉を思い出した。何故今まで忘れてたんだろう

もしかしたら爽歩さんは西行妖が咲くとなにかが起きることを知っていたのかもしれない

 

「・・・妖夢。ぼくは・・・僕は妖夢の事が好きだ。だから、行くね」

 

え・・・?

爽歩さんは・・・今・・・

 

「そう・・・ほさんっ・・!!」

 

待って!行かないでっ!

 

爽歩さんは永遠邸の救急医療道具を私の目の前に置いた

それは・・・爽歩さんのもので、何かあったら絶対に必要な物なのにっ・・・・

 

「さよなら、妖夢。大好きだよ」

 

爽歩さんは、私に背を向けた

必死に手を伸ばすけど、届かない。空を切った私の手が掴んだ物は爽歩さんの紐の切れた鈴だけだった

目の前で爽歩さんは階段を駆け上っていった

私が切った爽歩さんの鈴が目の前に転がる

 

「う、ううう」

 

涙が止まらなかった

止めれなかった

さよならって・・・・・

 

「ううううう・・・・うあああああああああああああああああ!!!!」

 

 




とりあえず、一言。
妖夢ごめんよーーーーーー!!!!!!!
正直、これがあったから、今まで遅くなってたんだ!
それはさておき、評価で一言コメントを参考に、文との間を二行から、一行に変えてみました。どうでしょうか?
個人的な感想としては、ちょいと細々としていて、見にくい?と感じたのですが・・・
とりあえず、次回からもこれで行けたら行こうと思います
それと、今回も素敵な支援絵が届きました
てぃらむーすさんからの支援絵です

【挿絵表示】

いつか、これを元にして、私は幸せな妖夢と爽歩を書くんだっ!
この支援絵みたいに二人とも幸せになっていくように頑張るので、もう少し、妖夢頑張って!
と、もう一枚、今回届いております
因田司さんからの支援絵です

【挿絵表示】


妖夢と爽歩です
絵が描ける方って本当にすばらしい

次回は幽々様です
どーのくらーい次は開いてしまうのかな-?
とりあえず。第二週目は超が付くほど忙しいので、多分、3週目か、遅くても月末に上げる事ができたらいいなって思っています


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狼と春集め 其ノ陸

期間が空かなかった_| ̄|○
むしろ、あけれなかった


轟雷で身体を強化して、僕はそのまま階段を駆け上った

飛ぶ方が速いかと思ったが、現在の僕のこの状態は飛ぶよりも速く走れることがわかった。

白玉楼への階段が終盤となってきたところで、薄紅色の花びらが舞っている事に気がついた

 

「これは・・・桜の花びら・・・?っ!?」

 

この状況で咲く桜なんて、一つしかない

そして、同時に背筋に走る圧倒的な死の恐怖

藍さんと対峙したときよりも恐ろしい

 

(早くっ・・・!早く行かないと!!)

 

駆け上るスピードを更に上げる

同時に身体からビキビキと嫌な音が聞こえた気がした

白玉楼に近づくにつれ、桜の花びらは多く舞っていく

焦る気持ちと共に必死に脚を動かす

白玉楼に着くとそこには、八重咲きになっていた西行妖を見ることが出来た

知った庭を高速で走り抜け、西行妖の麓まで行くと、ボロボロになってもナイフを構える咲夜さんと結界を張っている霊夢、倒れ伏している白黒の女の子がいた

 

「咲夜さんっ!」

 

「爽歩・・?」

 

半ば俯いていた顔を上げ僕を見た

綺麗に整っていた顔は幽々様の弾幕であろうものによって痣や切り傷などの傷が出来てた

 

「遅かったのね・・・。ごめんなさい、霊夢が最後まで踏ん張ってくれているけど、どこまで持つかわからないわ」

 

「遅くなってごめんなさい。後は・・・僕が引き継ぎます。咲夜さんは休んでてください」

 

「そうさせてもらうわ・・・。あぁ、もう。こんなんじゃお嬢様に怒られちゃうわ」

 

「門番さんにも怒られちゃいますね。咲夜さんは人間なんだから無理はしないでください」

 

「・・・まったく。あなたも美鈴と同じ事をいうのね。でも、まぁ、そうね。引き継ぎ、よろしくね、爽歩」

 

「任されました」

 

咲夜さんと別れ、結界を張っている霊夢を見る

彼女も消耗が激しそうだ。

それと、西行妖が、だんだんと力をつけ始めている

まだ完全には封印が解かれていないとうだが、時間の問題かもしれない

 

「霊夢!」

 

「あら・・・。爽歩だったわよね。ちょうどいい。あんた、あの亡霊姫の従者なんですって?従者なら止めてきなさい」

 

「・・・もちろん止めてくるよ。そのために来たんだから」

 

「そろそろ、私の結界も持たないから、ヤバイのよね。あんたが来てくれて助かったわ。魔理沙も落ちちゃうし、火力不足だったよのね」

 

「それで、状況は?」

 

「あの亡霊姫を追い詰めた所までは良かったのだけど、『反魂蝶 -八分咲-』っていうスペカを使ったらあの妖木が咲き始めて、生命力を吸収し始めてきたのよ」

 

「・・・君にはあの桜が何に見える?」

 

「そうね、結界かしら」

 

「流石博麗の巫女。今から僕が幽々様を止めて来るけど、もし完全に西行妖が咲いてしまったら、すぐに封印し直して欲しいんだ」

 

「・・・やっぱりかなり危険なのね」

 

「かなり危険だ。咲いてしまったら、僕ごと封印してくれればいい」

 

「・・・わかったわ。でも、それだとあんたが・・」

 

「幽々様と戻ってくる予定だけど、もし、封印が解けてしまったら、幽々様一人で逝かせられないから、僕が一緒について行くだけのことだよ。・・・そうなったら緑の服を着た女の子を助けて欲しいけどいいかな?」

 

「・・・いいわけないでしょ。さっさと行って戻ってきなさい」

 

「ありがとう」

 

「異変で人が死んだら、紫も動かないといけなくなるから。あと、バランスが崩れるから」

 

「それでも、ありがとう」

 

霊夢に礼をいい、僕は幽々様と対峙した

いつもの朗らかなイメージと違っている。霊夢たちの交戦でかなり疲れているようにも見える。幽々様の服も所々破れていた。アレを縫うのは妖夢も泣きそうだなと、僕はこんな時なのに暢気に考えた

 

「幽々子様っ!」

 

「あら、爽歩。お帰りなさい。あなたが帰ってくるのが遅いから、西行妖を咲かせてみたわ」

 

「・・・今すぐに、咲かせるのをお止めください」

 

「・・・何故?」

 

「あなたの身に危険があるからです」

 

「咲かせると何かがあるの?」

 

「・・・言えません」

 

紫さんが親友である幽々様に話さなかった理由はわからないけど、言うのは辞めた方がいいのかもしれない。でも

 

「言いなさい」

 

言わないと、始まらない」

 

「西行妖には封印がかかっており、生前のあなたの身体が眠っております。西行妖を咲かせると封印が解け、・・・あなたが、幽々様が消滅する可能性があるとの事です」

 

「・・・それは紫から聞いた事?」

 

「はい」

 

「そう、可能性があるというだけで、消滅するとは限った事じゃないのね。それじゃ、私は咲かせるわ」

 

「っ-!・・・ならば、僕はそれを邪魔させていただきます」

 

「・・・爽歩?今何と言ったかしら?」

 

「僕は、あなたの邪魔をさせていただきます。決して西行妖を咲かせない!」

 

「あなたは、私の従者でしょう?なら、私の命に従いなさい」

 

「できません。咲かせたら、妖夢にだって危険が迫るからっ!」

 

「そう、それなら力尽くで止めて見せなさい」

 

そういうと、幽々様は弾幕を打ってきた

背後に桜や扇が見える

・・・霊力的な物が感じられる。あれは、当たると危ないだろう

幽々様も本気で弾幕を打ってきているようで、かなりの数が空を飛んできている

妖夢の弾幕とはまた違った美しさのある弾幕。

桜の花を模した追尾の弾幕や、幽々様の蝶の弾幕が迫ってくる

妖夢の弾幕よりもかなりの霊力が込められており、当たるとかなりきつそうだ

だが、今の僕には関係ない

弾幕よりももっと速く動けばいい

そのための力は今はある

 

「いきますっ」

 

幽々様の弾幕を刀で弾き飛ばし、身体を捻り、回避をしていく

この一撃で、幽々様の意識を刈り取る!

 

「・・・甘いわね。爽歩」

 

「なっ!?」

 

幽々様のいつも持っている扇で、僕の刀を受け止められていた

そして、0距離で弾幕をぶち当てられる

 

「うぐっ・・・・!」

 

「私が何も対策を取っていないとでも思った?流石に、私自身の従者相手にこれを使うなんて思っていなかったけど」

 

落ちる身体で、よく見れば、いつもの扇と違っていた

紙ではあり得ない輝き・・・。輝き?

それは、紙の扇ではなく、鉄扇だった

 

「さぁ、爽歩?邪魔しないで?」

 

身体が動かない。でも、指先は動くか

落ち、地面に叩きつけられる前に、最後のスペカを唱える

 

「電術・電脳操波」

 

昔、師匠に教わった技。禁符というだけある

筋肉を操るのは電気

それならば、僕の能力で動かせる

自分自身なら、思考が動いていれば、指先が動けば、僕はこれを発動出来る

指先に貯めておいた電気を無理矢理、脳へ送り込む。

その電気は、筋肉を操るための電気。

その電気を電気信号へと換え、普段は自動運転(オートマチック)で動いているのを、無理矢理、手動運転(マニュアル)に変えたという感じだろうか

その代償は、激しい頭痛

頭がガンガンと鳴り響き、耳鳴りが聞こえるが、身体が動くようになったのを確認し、空中で姿勢を直し、一気に幽々様へ駆けた

流石に動けると思っていなかった幽々様は急いで鉄扇で、応戦に入ろうとするが、接近戦は僕の舞台

 

「幽々子様っ!今日でお暇を頂きますっ!」

 

ここで妖夢なら負けていたかもしれない。

僕の最後の攻撃は、幽々様に綺麗に決まり、幽々様は地面に落ちていった

 

「でも、最後にやらないと・・・いけない」

 

西行妖へ向きなり、その春を集めているだろう、核を見つけた

それは、薄紅色の結晶となっていた

あれが・・・核

あれを破壊できれば、僕はこれでお役目が御免になる

妖夢とも、幽々様とも、さよならだ

あれを壊さなきゃ、僕の生活は終わらない。

そう、考えると、正直破壊するのを躊躇われる

 

「でも、やらなきゃいけないんだ」

 

頭痛と耳鳴りのする身体を引きずるように動くと、ビキビキと悲鳴を上げていた身体が決壊を始めた

ブチ、ブチと、限界を超えた筋肉が引き潰れていく。

想像を絶するとような痛みが身体を伝う

痛い、痛い、痛い、イタイ、イタイ、イタイ

それでも、一歩一歩、足を西行妖へ進める

身体のさまざまな筋肉が切れたところで、何とか僕はたどり着いた

 

「・・・これで・・・最後だ・・・」

 

片手で持てなくなった鈴音と、両手で持ち直す

肩も、腕の筋肉も、足の筋肉も切れてしまっているが、あとは、この核に突き刺すだけ

最後の気力を振り絞り、僕は核に刀を突き刺した

 

キィンと硝子が割れるような音をし、核は割れた

割れ、砕け散った核は、一つ一つが桜の花びらのようになって、散る

西行妖の桜も同時に枯れ始める

それはまるで、桜吹雪

 

「あ・・・やった・・・?」

 

やり遂げたのを確認し、僕の身体はゆっくりと倒れていく

 

「ちょっと、しっかりしなさい」

 

声が聞こえる

でも、もう見えない

もう、疲れたんだ

身体も動かないんだ

頭も痛い

主人を裏切って、大好きな人を斬って、だったら僕はこの世から、居なくなったっていいじゃないか。

そんな、僕に何が残るって言うんだ

生きている価値なんて‥ないじゃないか

 

 

だんだんと冷たくなっていく身体を抱きしめられ、揺さぶられる

 

「しっかりなさい!」

 

その声の主が妖夢だったらいいな、と思いながら僕は目を閉じた

霞む目が段々と暗くなっていく

あぁ、でも、最後に妖夢を一目見たかった




もう、書きたくてしょうがなかったんだ!!
これから、2通りの道を考えているけど、どうしようかな
八雲さん家行くか、紅魔館にお世話になるか
悩みどころっすな
まぁ、どっちも大まかな構想は出来てるんですけどね
それと、そろそろ、想シリーズ第3段を始動させたいです
もうちょいと、かかるかもしれないですが、近いうちに多分新作挙げます
霊夢、妖夢、さぁ、次はっ!?
とりあえず、妖夢。もうちょっと待ってて。君も絶対に幸せにして見せるっ!


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庭師とその後

サブタイトルの通り、妖夢視点です
爽歩が白玉楼を去ってからの話となります
爽歩がいなくなった詳しい詳細は次回で


動けるようになると、私は爽歩さんが置いていった救急医療道具で、手当を始めた

私も、一応持ってはいるが、包帯ぐらいしか、もっていない

爽歩さんが置いていってくれた救急医療道具の中身は常備薬(痛み止めから始まって、腹痛の薬など)包帯はもちろん、消毒薬、傷口を縫う針などもあった

爽歩さんは私に手加減をしていたようで、打撲が多かったけど、切り傷は、ほとんど無かった

傷の手あてが終わると、桜の花びらが私の目の前に舞い降りた

薄紅色の桜の花びら

これは・・・まさか・・・西行妖!?

 

「そう・・・ほさん?」

 

彼は幽々子様を止めることができなかったのだろうか

彼は幽々子様に殺されてしまったのだろうか

他に向かっていた異変を止める人間たちも幽々子様に殺されてしまったのだろうか

 

「はやく、いかないと・・・」

 

爽歩さんが、幽々子様が、どうなったのかを知るために

飛ぶ力も残ってなく、痛む身体で白玉楼へ続く道を上っていく

 

急がないと、急がないと

焦る気持ちと反比例して、脚は上手く動かない

怪我はそれほどしてないとは言えども、脚が鉛のように重い

 

「いっ・・・」

 

上手く脚が上がらずに、普段なら絶対に転ばないような階段で、脚がもつれて、転けてしまう

急がなきゃならないのに

両手を階段に付き、そのまま登る

まるで、あの人のように

 

「爽歩さんがみていた景色ってこんな感じだったのかな・・・」

 

四つ這いで進むと、さっきよりもマシに進める

 

でも、私は爽歩さんに会って何がしたいんだ

幽々子様の無事を確かめてなにがしたいんだ?

そもそも、私は白玉楼に帰ることは許されるのか

 

あと少しというところで、桜の花びらが止まった

空から舞って来た薄紅の花びらが消えた

代わりに暖かな風が私の頬を撫でた

それは春を思わせる風

 

と、いうことは・・・爽歩さんは・・・!

生きていると半ば思い込み、私は四つ這いだった体を起こし、両足に力をいれた

あの、サヨナラという意味を彼から聞いていない

 

「そう・・・ほさんっ!!」

 

さっきまで体が動かなかったなんて思わないくらい、足に力が入る

最後の階段を駆け上り、息が乱れたまま、西行妖の方に向かう

途中で脚がもつれて、何度も転びそうになる

でも、急がなきゃ

 

西行妖の元に着くと、そこにいたのは、紅白の博麗の巫女と白黒の魔法使いだった

・・・確か、幽々子様の元に行った人間は、もう一人いたはず

そう、爽歩さんと一緒にいた、あの銀色の髪をした女性。

幽々子様は、博麗の巫女と白黒の魔法使いの間で座っていた

 

「幽々子様っ!」

 

「あら、妖夢。無事だったのね」

 

「あ、半人半霊」

 

「失礼な。私には魂魄妖夢という、立派な名前があるんです」

 

白黒魔法使いに半人半霊と呼ばれて、癪にさわり、言い返す

種族名で呼ばないで欲しいものだ

 

「妖夢。ごめんなさいね」

 

何を話せばいいかわからなく、黙っていた私に、幽々子様が言う

 

「異変に巻き込んで」

 

「い、いえ」

 

「ところで、妖夢。爽歩を知らない?」

 

「え・・・」

 

「あ、爽歩なら咲夜に連れられてったわよ。ついでに私は霊夢。博麗霊夢」

 

博麗の巫女・・霊夢が言った

 

「あの、幽々子様。何も・・・言わないんですか?」

 

「・・・私に言える資格なんてないわ」

 

「あ~。幽々子?私たち帰るんだぜ。流石に生きてる私たちにはキツイからな」

 

「そうそう、宴会の費用、あんたらが出しなさいよ」

 

そう言って魔理沙と霊夢は飛んで帰った

幽々子様に手を貸し、起こすと、幽々子様は言った

今、一番私が知りたくて、知りたくない、触れて欲しくないこと

 

「ねぇ、妖夢。あなた・・・爽歩と戦ったの?」

 

「・・・はい」

 

「私も爽歩と戦ったわ。思い切り、弾幕もぶつけた」

 

「っ!」

 

「でも、勝てなかったわ。・・・私が今いるのは彼のおかげよ」

 

「私も・・・勝てませんでした。あの、幽々子様。なんで・・・爽歩さんは・・・いないんですか・・・?」

 

「妖夢・・・」

 

「爽歩さん、さよならって、私に言ったんです」

 

「爽歩は・・・暇を頂くと言って、私を落としたわ。私を、あなたを救うために」

 

暇を頂く・・・

白玉楼に務める事を辞める・・

 

「そんな・・・爽歩さんに、好きって言ってもらえたのに、大好きって言ってもらえたのに・・・もう・・・・会えないんですかっ・・・」

 

嗚咽が漏れる

涙が止まらない

私は俯いた

こんな顔、幽々子様に見せられない

 

「妖夢・・・ごめんね・・・私はあなたの気持ちは知ってたわ・・・。本当に・・・私の我が儘に付き合ってもらって、あなたの幸せを壊してごめんなさい」

 

幽々子様の悲痛な声

顔を上げると、形のいい目の端から涙が流れていた

 

「ごめんなさい、妖夢。ごめんなさい、爽歩」

 

自分(幽々子)に付いてきてくれた従者

自分(幽々子)に反旗を翻し、主人の命を救った従者

大切な従者と、従者だった者に対して謝っていた。

二人の従者の幸せを奪ってしまった事に対して、謝っていた

 

「幽々子様・・やめてください・・・。私に謝られる資格なんてありません・・・」

 

「違うわ。従者の幸せを祈るのは、主の役目なの・・・。妖夢、爽歩・・こんな主でごめんなさい・・・っ」

 

「ゆ、ゆゆこ、さまぁっ」

 

こんなに泣いたのは、師匠が、お祖父様が何も言わずに、白楼剣と楼観剣を置いて、白玉楼を去った時以来だろう

感情のまま、涙を流すし、流れる涙が涸れた頃、私はようやく顔を上げれた

 

「幽々子様、私、お夕飯の準備してきますね」

 

爽歩さんへの思いを逃れることから私は、夕飯の準備に取りかかった

目元が痛い。熱くなって、重い

多分、赤くなってるだろう。あとで幽々子様にも、氷嚢を持って行こう

厨房へやってくると、そこに置いてあったのは、爽歩さんの前掛け。

白玉楼から出る前に置いていったやつだ

私が爽歩さんに贈ったもので、とても大切にしてくれていたもの

 

「爽歩さん・・・」

 

涸れたはずだった涙がまた出そうになる

いけない。これじゃ、また振り出しだ・・・

 

「お夕飯・・・作らないと・・・」

 

「痛っ・・・あ・・・」

 

包丁で野菜を切っていると、指を切った

近くにあったちり紙で圧迫止血をする

予想以上に、ぼーっとしながら野菜を切っていたようだ

血が止まったのを確認して、私はまた夕飯を作り始めた

 

「こんなに、白玉楼の厨房って・・・広かったっけ・・・」

 

一人で立っている厨房は寂しくて、広かった

お夕飯ができあがって、いつもの机に箸を並べ、ご飯とおかずを全て並べた

幽々子様も既に座って待っている

 

「妖夢、大丈夫・・・?」

 

「はい、大丈夫です。幽々子様、これで目元をお冷やしください」

 

「ありがとう」

 

始まった夕食は、味気なく、寂しい

ぽつんと、抜けた場所は狭いけど、大きい

 

 




書いてて寂しくて、泣きたくなった
爽歩が白玉楼を辞めた理由は、主である幽々子に対し、牙を向き、挙げ句の果てに、本気の弾幕で落としたためです
爽歩は、、大切な場所である白玉楼を、妖夢や幽々子様のそばから自分がいなくなることで、自らの罪?を償おうとしました
一方、妖夢は爽歩に、好きと伝えられなくて、白玉楼から去ってしまった爽歩にもの凄い喪失感を抱いています
最後に、爽歩から伝えられた「大好き」という言葉と「さよなら」という言葉が昔、最愛の祖父である妖忌に何も言われずに白玉楼から去った姿とだぶっています


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狼と吸血鬼

ぎぃやあああああ!!!??
ホント申し訳ない!月咲想と間違えて投稿いてしまった!!
緑妖想だよ!
気がついた方、申し訳ない!


「う・・・ここは・・・?」

 

目が覚めるとそこは、白が基調の部屋だった

僕は・・・あの時死んだんじゃなかったのか

 

「あら、気がついた?」

 

「首も動かせないわよ」

 

2つの声が聞こえる。

その声に反応し、声の方に向こうとすると、首、それに連なる筋肉も全て激痛を催した

 

「ほら、言わんこっちゃ無い」

 

「まったく」

 

声の主が僕をのぞき込んだ

青色の髪に紅玉の瞳の人物と、月が付いたナイトキャップを被った薄紫色の髪の人物

 

「・・・ここは・・・?」

 

「ここは紅魔館。私は、レミリア・スカーレット。吸血鬼よ。あなた、咲夜を助けてくれたそうね。感謝するわ」

 

「私は、パチュリー・ノーレッジ。魔女をしてるわ。あなたの身体、全身の筋肉が引きちぎれているから、しばらくは動けないわよ。治癒を高める、マジックポーションを使用したから、後は、あなたの回復力次第」

 

「・・・ありがとうございます」

 

「死にたかったっていう顔をするわね。・・・。全く。本物の犬が聞いて呆れるわ」

 

「・・・」

 

「主に逆らったくらいで何?それが必要だったという事じゃないのか?これなら、咲夜の方がよっぽど犬らしいな」

 

「っ!あなたに・・・なにが・・・わかるんだ・・・!」

 

「わかるさ。主だからな。そして、伊達に長く生きてきたわけじゃない。部下の心情ぐらい察せなくてどうする」

 

「レミィ!」

 

レミリアさんが、僕のシャツをつかみ言う

 

「・・・。お前はこれからどうしたい?」

 

「・・・ゲホッ・・・」

 

「まぁ、いいさ。咲夜を助けてもらった恩があるからな。私が1つ、道を示そう。ここで働くのもよし、出て行くのもいい。とりあえず、怪我が治るまでは、ここに居させてやる」

 

「ゲホゲホ・・・あ、ありがとうございます」

 

「それじゃ、私は行くわね。何かあったら、咲夜を呼びなさい」

 

「・・・呼ぶって・・・?」

 

「そこのベルが付いている紐があるだろう。指だけは動かせるみたいだから、指に紐、つけといてやるから、指動かして、鳴らしてみろ」

 

僕はその指示に従って、指を動かした

その瞬間、

 

「爽歩!?目が覚めたのね!?」

 

「さ、くや、さん?」

 

「お嬢様、パチュリー様、ありがとうごいます」

 

「それじゃ、咲夜、後でいいから、紅茶頼む」

 

「私も本読みに戻るわ」

 

二人とも、部屋から出て行った

 

「咲夜さん・・・。あの後の事、教えてもらえますか・・・?」

 

「ええ、そうね。爽歩は自分が倒れたのは覚えているのかしら?」

 

「はい・・・」

 

「倒れた瞬間、私が受け止めて、そのまま、ここ、紅魔館に連れてきたの」

 

「あ・・・・・・・」

 

あれは、妖夢じゃなかった

妖夢・・・ではなかった

 

「パチュリー様の見立てでは、完治には1ヶ月。動けるようになるまでは、その半分って所らしいわ。一応、妖怪なだけあって、治りも早いみたいね。あとは、パチュリー様のマジックポーション。あれ、凄い効くのよ、まぁ、外傷だけだけど」

 

「・・・咲夜さん・・・僕は、どうすれば・・・いいんでしょうか」

 

「・・・」

 

「主を切り、好きな人をも切り、僕は・・・」

 

「切る事について、覚悟はしてたけど、その後を考えてなかった・・・と?」

 

「はい・・・」

 

「・・とりあえず、その怪我を治すことだけを考えなさい。その後、私も一緒に考えてあげるから。私は今から仕事だから、何かあったらすぐに呼んで?」

 

「・・・すいません」

 

「こういう時は、『ありがとう』よ?」

 

そういって、咲夜さんは出て行った

出て行く時のあの銀髪のきらきらとした光を反射し輝く髪が一瞬、妖夢と被って見えた

動けない身体で、凛々しく、可愛い、僕の好きだった人を思い、泣いた

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

咲夜side

 

チリンチリン

 

「お嬢様がお呼び・・・」

 

時を止め、急いで、お嬢様の部屋に行く

紅茶も忘れない

 

「失礼します」

 

「咲夜、入れ」

 

ワゴンを押して、室内に入る

室内に入り、一番最初に言われた言葉に私は戸惑った

 

「なぁ、咲夜。あいつ、どう思う?」

 

「爽歩・・・ですか?」

 

「ああ。お前は私の能力を知っていたな」

 

「運命を操る程度の能力・・・でしたよね」」

 

「そうだ」

 

「何か、見えたのですか?」

 

「あいつの未来がな」

 

「・・・え?」

 

お嬢様の運命を操る程度の能力は、文字通り、運命を操る。

そういう私も、お嬢様に拾われたとき、あの場に現れるのを知っていたらしいから、その能力は疑いようがない。

 

「・・・八雲紫に式にされる未来が見えた」

 

「八雲紫・・・。あの妖怪の賢者、ですよね」

 

「そうだ。・・・。咲夜。お前の報告だと、あの(爽歩)は冥界の姫の従者で、その庭師に恋愛感情を抱いていたんだよな?」

 

「はい。冥界の姫、西行寺幽々子の従者で、同じく庭師で従者の魂魄妖夢に恋をしていました」

 

「・・・ふむ。あの犬をそのまま、八雲紫に渡すのは、もったいないな」

 

「・・・どうなさるのですか?」

 

「あいつはそのまま、八雲紫に飼われると、高貴な牙と爪をもがれるだろう。自由へ走る事のできる脚を失うだろう。あいつが全快になるまで、あいつの身柄は紅魔館が、このレミリア・スカーレットが保護する。だが、あいつが全快してからが勝負だ。あいつをそのまま、ヤツ(八雲紫)に渡して。その気高い爪と牙をもがれるのは惜しい。それに、1回、ヤツには、苦渋をなめさせられているからな。・・・あいつの好きにはさせない」

 

「かしこまりました。それでは、私は何をすればいいですか?」

 

「とりあえず、あの犬の怪我の治療。本格的に動いてもらうのは、あいつが完治する2日前だ」

 

「しかし、お嬢様。八雲紫と全面戦争をするのは、この幻想郷にいられなくなるのでは・・・?」

 

「・・・だから、周囲を使うんだよ」

 

「・・・周囲ですか」

 

「物語の最後はハッピーエンドがいいものだろう?それに辿り着くには、優秀な、役者が必要よ」

 

「役者・・・・ですか」

 

「まぁ、正直私も、どう転ぶかはわからないけどね。咲夜は・・・どうかしら、協力してくれるかしら?」

 

私の主人が問う

それに答えるのは、従者の使命だと私は思う

脳裏に浮ぶのは、彼の寂しそうな顔。そして、両思いなのにもかかわらず、すれ違ってしまった、あの緑で、私と同じ銀髪の彼女

 

「・・・。年長者が人肌脱ぐくらいで、ハッピーエンドになるならば、喜んで」

 

「ふふ、それじゃ、決まりね。咲夜。八雲が動くまで、裏で様々な準備をしなさい。八雲から隙を作るのは、あなたの能力ならば、可能よね」

 

「勿論です」

 

「そうね、流石私の従者。・・・盛大な嫌がらせを八雲紫に。そして、気高き狼に夜の祝福を」

 




遅くなりましたぁぁぁーーーー!!
いや、うん。ホント申し訳ない
今回の話で、エンディングに上手く繋がるか・・・っていう所だったんです
と、言うわけで、次回からは最終章に突入させていただきます
妖夢の出番は、次はいつになるんだろう
まぁ、出来る限り早く出す予定(予定は未定)
そして、何?このレミリア。おぜう様じゃ無かった!!カリスマたっぷり!
最後まで、たっぷり・・・と言いたい所ですが、まぁ、そこら辺は、どうなるんでしょうね
それでは、次回まで


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狼と知識と日陰の少女

どうも、和菓子屋蜜柑です
いつもよりも、早く投稿できました(文章量は少ないけど)
それでは、ゆっくりしていってください!


あれから、2週間がたった

僕の身体はだいぶ動けるようになっていた

 

「ぐぅう・・」

 

動けるようになってすぐ、リハビリが開始された

一歩、一歩、歩く度、激痛に襲われ悲鳴をあげそうになる

そして、転ぶ

 

「爽歩っ!」

 

焦った声で駆けてくる声。最近では、だいぶ耳に残るようになった

僕と同じ、銀色の従者

 

「リハビリは早いってパチュリー様も言っていたのにっ」

 

助け起こそうとする咲夜の手を僕はあえて取らない

 

「だ、大丈夫。早く・・・動けるようにならない・・・と」

 

「だからって言って、無理する必要はないの」

 

「まったく・・・」

 

薄紫色の服が見えた。

 

「リハビリするのは結構だけど、あなたの筋肉はまだ繋がってない所のほうが多いのに、どうしてそんなに動き回れるのかしら」

 

「パチュリーさん」

 

紅魔館の魔女。そして意外と面倒見がいい

本人になんで僕を助けるのかを訪ねると、「愛玩動物は助ける物でしょ?」と本で顔を隠しながら言った。何となく、顔が赤かったのは気のせいだろう

 

「まぁ、無理矢理動き回るリハビリもどきのおかげで、あなたの筋肉は前よりもかなり強くなってるけどね。それにしても、今日は動き過ぎよ」

 

「でも、早く動けるようにならないとっ・・・」

 

「無理は禁物。こあ。」

 

「はーい」

 

パチュリーさんの側にいた小悪魔さんが僕に近づいてくる

 

「吸い取って」

 

「了解しましたぁ」

 

小悪魔さんが倒れている僕の背中に手を当てる。

 

「それじゃ、爽歩さん。いきますよ-。」

 

体力を吸い取られ、僕はそのまま意識を手放した

 

ーーーーーーーーーーーーー

パチュリーside

 

「咲夜」

 

「ありがとうございます。パチュリー様」

 

「この子、予想以上に筋肉の修復が早いわ」

 

「・・・・」

 

「半人半霊という種族になっているけど、修復力で言ったら、もうほとんど妖怪並よ。まぁ、レミィほどじゃないけど」

 

「・・・そう、ですか」

 

「残念?彼が人間じゃなくて」

 

「そう、ですね。もし彼が人間でも、優秀な部類の人間でしょう。だったら紅魔館の人材に欲しかったです」

 

「それだけじゃないでしょう?」

 

「・・・そう、ですね。人間の時に友人になって欲しかった・・・ですね」

 

咲夜は寂しそうに言った

霊夢、魔理沙という人間の友人しかいない咲夜にとっては、欲しかった友人。

霊夢は博麗の巫女。魔理沙は人間の魔法使いで、従者ではない

しかし、爽歩は後天的な半人半霊という。そして、咲夜と同じ従者

 

「・・・半人半霊でも、友人になればいいじゃない」

 

「・・・できるものなんでしょうか」

 

咲夜の迷いはもっともだ

咲夜を拾ってきた美鈴はともかく、初めての人外の友人候補

 

「・・・きっと、もう彼は咲夜のことを友人と思ってると思うわよ?」

 

「・・・彼が、もし、あの子の隣に帰ることができたら、そのときに、言ってみます」

 

「・・・そうね、コレばっかりは、レミィに賛成ね。この前の異変は図書館が荒らされて、さんざんだったけど、今回のは人助けならぬ、妖怪助けだから」

 

「パチュリー様は、どうして彼を助けるのを手伝ってくれるのですか?」

 

「・・・最初、見たときは助けようなんて考えては無かったわ。正直、自分で生きる気力を無くした獣なんて結末は見えているもの。でも、治療している内に見えたのよ」

 

「見えた?」

 

「ええ。誇り高い獣の姿。とても寂しそうな顔をしていたわ。そして、咲夜の話を聞く納得したわ。もし、爽歩がその、恋をしている半人半霊の隣に戻ったときの活力にあふれる姿を見てみたいと思った。それに、これほどの狼が自由に地を駆け回るっていうのも、すごく気になるし・・・」

 

「・・・」

 

「それと、恋物語は、バッドエンドやトゥルーエンドがあるけれど、恋物語はハッピーエンドが見てみたいものじゃない?こあ、爽歩を部屋に運んどいて。」

 

「わかりましたー」

 

「それじゃ、咲夜。私は図書館に戻るわ。何かあったら、また、呼んで頂戴」

 

「ありがとうございます」

 

さて、図書館に戻ったら、恋愛小説でも読み直してみるのもいいわね・・・

 

私も、魔女である以前に、女で、そういったものには興味あるのだ

それが、他人であろうと

ーーーーーーーーーーーーーーー

爽歩side

 

「うっ・・・」

 

気がつくと、またベッドの上だった

気を失う前は、確か、小悪魔さんに体力を根こそぎ吸い取られたんだっけか・・・

眠った分だけ、体力が戻るのを感じる

眠った分だけ、身体が動くようになるのを感じる

・・・。さっきよりも動ける気がする・・・

 

そう、思うと再び僕はベッドから降りた

・・・多分、ばれたら咲夜さんにまた怒られるんだろうなぁ・・・

でも、動いてみたい。

その欲求には逆らえず、無理に動く

気を失う前よりもだいぶ動けるようになっている

 

「ヒトだったときじゃ、考えられないなぁ」

 

思わず、苦笑。

ゆっくりと脚を進めていると、一際大きい扉に辿り着く

 

「なんだ・・・ここ」

 

扉を開けると、書物の匂い

白玉楼の書庫も凄かったが、それ以上ある

 

「あら、爽歩」

 

「パチュリーさん」

 

大きい机に座って本を何冊も重ねて読んでいる人物。そして、僕を助けてくれた一人、パチュリーさんがいた

 

「・・・またベッドから抜け出したのね」

 

「う・・・」

 

怒られる

そして、また、ベッドに直行

そのイメージが脳裏に浮んだ

ベッドで寝ているのは案外つまらないのだ

 

「まぁ、いいわ。咲夜には連絡しといてあげる。あの子、居なくなったってわかったら、また、あなたを探し回るでしょうから」

 

「・・・すいません」

 

「こあ。あと、よろしく」

 

パチュリーさんが、小悪魔さんと連絡を取り合ってる最中、1つの本棚に近づいた

それは、桜色の表紙の本。中身を見ると洋食のレシピ本だった。

 

「読むなら座りなさい」

 

「パチュリーさん、いいんですか?」

 

「図書館は知識を得る場所、何者にも知識を得るのに、邪魔はできないわ」

 

「ありがとうございます」

 

本から目を離さずにいうパチュリーさんに礼を言い、その本を読む

それから僕の日常に、本を読むという日常が追加された瞬間だった

 

この料理を作ったら、美味しいって言って喜んでくれる姿を思い浮べるのは、やはり、白玉楼にいる幽々子と妖夢の姿

そう、思うとズキリと胸が痛んだ

 

・・・その後、僕を探しに来た咲夜さんに怒られたのは、また、別の話

 




活動報告にて、アンケート実施中です!
興味ある方は覗いていってください


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狼と賢者

どうも、和菓子屋蜜柑です
今年最後の投稿となりそうです


僕が紅魔館にお邪魔して3週間目のことだった

もう、以前と同じくらい動けるようになっていた

・・・いや、以前よりも動きの調子は良いくらいだ。

 

「咲夜さん、おはようございます」

 

「おはよう、爽歩。もう動けるの?」

 

「はい。以前よりもなんか調子が良いみたいで」

 

「そう、よかった。・・・それより爽歩。今日から、図書館に部屋が移動になるけど、いいかしら」

 

「はい、僕をこの場に居させてくれているだけで、本当にありがたいですから」

 

「図書館の中にある、部屋でパチュリー様の隣の部屋に移動よ。詳しい場所はパチュリー様に聞いて」

 

「わかりました。それじゃ、早速行ってみますね」

 

図書館から借りてきた本を片手に、図書館に向かう

紅魔館は広いけど、その人物の匂いを辿れば、迷うことが無いことを、最近発見した。

多分、気配とかと同じなんだろう

 

「おはようございます。パチュリーさん」

 

「おはよう、爽歩」

 

「わー!パチュリー!この人が狼さん?」

 

パチュリーの隣に座っていたのは、綺麗な金髪の女の子。また、背中に宝石のような羽があった。照明に当たってきらきらと輝く髪と翼は、まるで日の当たらない図書館の太陽に思えた

 

「えと・・・」

 

「フラン。挨拶をしないと、彼が困っているわ」

 

「あ、そうだったね!私はフランドール・スカーレット。吸血鬼!フランって呼んで、お兄ちゃん!」

 

「えと・・。僕は夢魂爽歩。半人半霊だよ」

 

「半分死んでるの?」

 

「うーん・・・そこら辺、どうなんだろう。まぁ、僕の魂はコイツに喰われたしなぁ。半分死んでるっていう意味で間違いないのかも」

 

「それで、狼になれるの?」

 

「狼化だね。できるよ。」

 

「私、狼って図鑑の中でしか見たこと無いの!みたい!」

 

僕はパチュリーの方を見た

すると、彼女は首を振った

 

「駄目よ。まだ、爽歩は病み上がりよ。無理させちゃいけないわ。そして、フラン。あいつがやってきたら、問答無用で、殴りなさい。話はレミィから聞いてるでしょ?」

 

「うん。わかってるよ。それじゃ、お兄ちゃん。絵本読んで!

 

「ごめんね。ありがとう。フラン、どれが読んで欲しいの?」

 

フランが持って来た絵本を読む

隣で聞いているフランを見ていると、少し前まで寺子屋で小さい子たちに本を読んであげていたことを思い出した

身体が治ったら、先生と妹紅姉に顔出しに行こう

そして、旅に出よう

咲夜さんや、レミリアさんには申し訳ないけど、旅に出て、自分を鍛えよう

そう、思った瞬間だった

 

ードクンー

 

「!?」

 

圧倒的な威圧に反射的に半狼化をしてしまう

その瞬間、

 

「見つけた」

 

聞き覚えのある声を聞いた

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

爽歩が半狼化する少し前

咲夜side

 

「レミリア・スカーレット。隠している者を出しなさい」

 

「何の事かしら」

 

「夢魂爽歩。今、あなたが匿ってるんでしょう。」

 

唐突な訪問だった

お嬢様にお茶を入れていると、何もない空間にいきなり亀裂が入り、開いた

1回だけ、この能力を見たことがある

妖怪の賢者、八雲紫

 

「調べはついているんだ。無駄な殺し合いはしたくない。爽歩を渡してくれないか?」

 

続いて出てきたのは、九尾の妖狐にして、八雲紫の式・八雲藍

 

「あなたの親友の魔女のおかげで手間取ったわ。阻害魔法をかけて、彼の存在自体を隠蔽してるんですもの」

 

「・・・それで?あいつに何の用だ」

 

「あの子を式にします」

 

「・・・式にしてあいつをどうするつもりだ」

 

「あなたに言う必要はあって?」

 

「無いな。だが、私の客だ。あいつがここに居る限り、守らせてはもらうさ」

 

「と、いうことは、彼を出す気はない・・と」

 

その瞬間、お嬢様から、アイコンタクトを送られた

その意味は、事前に聞いている

私は、時間を止め、その場から脱出。それと同時にパチュリー様にもらったマジックアイテムを2つ発動させる。そして、目的の地まで駆ける

お嬢様。すいません、彼を頼みます

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

レミリアside

 

「・・・あなたの従者が居なくなったようだが、逃げたか」

 

「まぁ、藍。用があるのは、爽歩だけだから、やりなさい(・・・・・)

 

「わかりました」

 

藍が妖気を解放のがわかる

何がしたい

 

「そんな事をしても、私には勝てない」

 

「・・・いつ、私があなたと戦うと?」

 

八雲藍の妖気が館を包んでいく

この狐。私の館を狐臭くする気か。皮剥ぎ取って、飾り付けるぞ

 

濃厚になっていく妖気

それに反応して、1つ、霊力と妖気が混じり合う大きな気配が爆発した

 

「・・・そこね。行くわよ、藍」

 

「はい」

 

「っ-!行かせるか!グングニルっ」

 

槍を召還し、八雲紫に投げつける

無造作に八雲紫が手を挙げると、スキマと呼ばれる空間が生まれ、槍の攻撃を躱し、そのまま、人が入れるだけの大きさのスキマに入っていった

 

「・・・あっちには、フランとパチェがいる。急いで、私も向かうか」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

爽歩side

 

・・・あの感覚は、確か、藍さん

何故、ここに彼女が・・・?

 

「!!」

 

僕が半狼化した瞬間、大きな警告音が鳴り響く

その音を聞いて、隣に座っていたフランとパチュリーが動いた

 

「フラン」

 

「うん。わかってるよ」

 

パチュリーさんが魔法を詠唱し、何かに備える

何を詠唱しているかは、魔法の心得がない僕にはわからない

そして、もうひとつ、フランだ

その小さな身体に狂気と力を募らせていく

小さな身体にどれだけの力が宿っているのかは、正直、想像もつかない。

 

「見つけた」

 

その声は聞いた事のある声だった

八雲紫

僕に、幽々様の、妖夢を助ける術を教えてくれた賢者

1回だけ、見たことのある、空間が裂け、スキマと呼ばれる道が開かれた

中から出てくるのは、八雲紫、本人

 

「向かえに来たわ、夢魂爽歩」

 

「紫・・・さん?」

 

「きゅっとして、どかーん!」

 

その瞬間、空間が爆ぜた

 

「全く。痛いものだね」

 

紫さんの次にやってきたのが、やはり、藍さんだった

左手が血まみれになっている

多分、先ほどの紫さんに対してのフランの攻撃を、庇ったものだと見えた

半狼化しているおかげで、動体視力も良くなっていた僕には見えた

 

「藍、ありがとう。その子、連れて帰ったら、すぐに治療してあげるから、少し待ってなさい」

 

「ありがとうございます」

 

「さぁ、夢魂爽歩君。向かえに来たわ」

 

僕に近づき、その手を僕の頬に伸ばそうとした、瞬間、バチリと紫さんの手を何かが弾いた

 

「爽歩!逃げなさい!」

 

「!?」

 

「結界・・。境界を操る私には甘いわね」

 

地面にスキマが開き、そこから藍さんの手が伸び、僕の脚を無理矢理引っ張り、スキマの中に連れ込む

本能的にマズイと感じ、僕は地面に爪を立てた

 

「さっさと・・放してくれないかなっ?」

 

藍さんは渾身の力で脚を引っ張っているらしく、だんだんと床に立てた爪がギリギリとスキマに引き込まれていく

その間に紫さんがパチュリーさんの結界を破り、その手で、僕の手を床から離させた

そのまま僕はスキマに向かって落ちていく

その瞬間、中にいた藍さんに思い切り、鳩尾に拳をたたき込まれ、更に、首筋を手刀で頭を揺らされ、僕の意識は闇に落ちた

 




あと3日でお正月ー
今回、季節イベントとして、決定しましたのは、緑妖想!
お正月限定のものを描きます

本編とリンクさせていない状態で書こうと思いますので、舞台は白玉楼、爽歩は従者の関係でいこうと思います。ぶっちゃけ、関係は異変前の関係ですね。
私の心が砂糖を欲している!
ちょいと迷ってるのですが、両思いで描くか、両片思いの状態か・・・どっちで書こう・・・


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大晦日と正月の狭間 (読み飛ばし可能)

お久しぶりです
かなり今回は短いです


「うう、寒いです・・・」

 

「そ、そうだね、流石に寒い・・」

 

大晦日。僕たちは白玉楼にいた

白玉楼には、主である幽々様がいるのだが、今日は博麗神社にて、宴会にご出席の為に、ご不在だ

いつもなら、供に僕か、妖夢が付いていくのだが、紫さんが直接向かえに来た為に、「いらない」との事だった

 

現在、僕たちは白玉楼の屋根の雪下ろしをしていた後だった

積もってしまった雪を下ろしたために完全に身体が冷え切ってしまっていた

ガタガタと歯が鳴る

 

「よ、妖夢、外出る前に僕の部屋、こたつ入れてきたから、一緒にはいろう」

 

「ほ、本当ですか・・・?私の部屋こたつがないので、凄い嬉しいです」

 

急いで僕と妖夢は服に付いた雪を払い、濡れてしまった服を変えて僕の部屋に集合となった

 

「ふ、ふう」

 

「温かいですぅ~」

 

既に温めておいたこたつは正解だった

程よいぬくもりが、冷めた身体を温めてくれた

妖夢に至っては、顔が完全に溶けてしまっている。ついでに妖夢の半霊も温かくなってきたのが、本体とリンクされたのか、ほんのりと薄桃色になっていた

 

「あ、そうだ。ちょっと待っててくださいね」

 

こたつの誘惑から抜け出した妖夢がどこかに行った

しばらくすると、妖夢がお盆を持って帰ってきた

 

「爽歩さん-!ちょっと開けてもらえますか?」

 

「ん。はい。あ・・・」

 

妖夢が持っていたのは、蕎麦だった

 

「爽歩さん、食べましょう?」

 

「そうだね、うん。食べようか」

 

妖夢が作ってきてくれた蕎麦を受け取る。

だが、蕎麦を作りに行ったと言うことは、厨房に行ったと言うことだ

白玉楼の厨房は冬は寒い。

まぁ、幽々様のお食事を作る際は、ほぼ動きっぱなしとなるために、寒くは無いのだが・・・しかし、二人分の蕎麦作る為に居たと言うことは・・・

 

僕は妖夢の手を握った

 

「やっぱり・・・」

 

「そ、爽歩さん?」

 

妖夢の手は冷たくなってしまっていた

 

「竈の火に当たってたと思うけど、やっぱり冷えちゃってる・・・。ごめん、妖夢。僕が気がつけばよかった」

 

「爽歩さん。私は爽歩さんと一緒に蕎麦を食べたかっただけですから。好きな人から、謝りの言葉じゃなくて、お礼の言葉が聞きたいです」

 

「・・・ありがとう。」

 

「それじゃ、伸びちゃう前に食べましょっか」

 

いつの間にか、出汁から作っていたようで、凄い美味しいお汁で、蕎麦も美味しかった

ちゅるちゅると蕎麦を食べていく。

 

「ふぅ・・・。ご馳走様でした。」

 

「お粗末様でした」

 

「幽々様がいたら。多分。わんこ蕎麦になっていたんだろうなぁ」

 

「・・・考えただけでもぞっとしますね・・・」

 

そんな会話をしながら、時は過ぎていく

 

「・・・あ。そろそろだ」

 

「本当ですね」

 

半人半妖の店主が営む店で見つけてきた時計は、11時59分を指していた

そして、時刻は00時を示す

 

「妖夢。あけましておめでとう」

 

「爽歩さん。あけましておめでとうございます」

 

「無事に・・・年を越せたね」

 

「そう、ですね」

 

ちらりと、半霊を見ると、僕の半霊()と妖夢の半霊は、寄り添って丸くなっていた。

それを見るともの凄く羨ましく感じた

妖夢もそれを見ていたようで、

 

「爽歩さん・・・隣、失礼してもいいですか?」

 

「う、うん」

 

小さなコタツに向かい合って座っていたのを、妖夢が隣に座った

この、向かい合って座っていた時よりも、心臓の音が聞こえそうで、どきどきと言っているのがわかる

一人、どきまぎしていると、妖夢がうっつら、うっつらと船を漕いでいた

 

(普段なら、こんな遅くの時間まで起きていないもんな・・・。いつも頑張ってくれてるし・・・)

 

そんな事を思っていると、肩に少し重さがかかった

横目で確認すると、妖夢が完全に眠りの世界に入ってしまい、僕の肩に妖夢の頭が乗っていた

すぅ、すぅと寝息を立てながら眠る妖夢の姿を見ると、僕までも眠くなってくる

・・・こたつで寝ると風邪を引くんだけどなぁ・・・と内心思いつつも、この眠気に勝てずに、僕は意識を投げた

 

 




どうも、お久しぶりです。あけましておめでとうございます
和菓子屋蜜柑です
最近、本当にPCに座れないし、小説を書く時間がない
なんとか完成させたこれも、なんか、短いし・・・・本当に申し訳ないです
本編は、多分、もっと先になると思います
待ってくださっている方々、本当に申し訳ない



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メイドと半人半霊

お待たせしました
東方緑妖想
次はいつになるか、わかりませんがゆっくりしていってください!


私はパチュリー様から頂いたマジックアイテムを起動させた後すぐに紅魔館を出て行った

マジックアイテムの1つは警報。

これは、妖怪の賢者、八雲紫が現れたことを図書館にいるパチュリー様に伝えるためのもの。

警報を鳴らした瞬間、妹様の魔力が膨れあがった為、効果はあったのだろう

2つ目のマジックアイテムは、偽装。

これは、紅魔館に私がまだ居ると思わせるもの。使用者の力(霊力・魔力・妖力など)を半分ほどマジックアイテムに譲渡して、私の霊力をその場に留める事により、私はあの場の戦いから逃げ出した・・・と思わせるだけのもの。実際は私は紅魔館から離れているのだが・・・

 

「急がないとっ」

 

八雲紫が現れたという事は爽歩の身が危ない。

私では・・・彼の身は守れないし、守る資格がない。

だから、早く伝えないと。あの子の本当の主と恋人さんに

 

正直、あんな偽装のマジックアイテムで八雲が騙されるとは思わないし、思えない

でも、半分も魔力を支払ったんだ。それなりの効果がないと困る

魔力が半分になってしまっている今、急がなければ・・・

自分の全速力で空を飛び、目的の場所を目指す

あの時みたいに同行者はいないし、あのときみたいに雪は降っていない

これなら早く着けそうだ

冥界に行くときがこんなに近いなんて思ってもなかったが、しょうがない。とにかく、急がないと

 

途中、春を告げる妖怪に会ったり、金髪の小さな黒い服を着た妖怪に「食べてもいい人間?」と聞かれたが、とにかくスルーして空を駆けた

そして階段が見えた。

あの時、彼が彼女と戦った場所。そのときの残滓は残っていない。

最後の力を振り絞り、私は階段を上った

 

「はぁ、はぁ・・・遠すぎるのよ・・」

 

門は開いていた。

あの異変のように、桜は咲いていないが、それでも花や木々がきちんと手入れされており、美しい場所だった。

呼び鈴のようなものが付いており、それを少し乱暴にならすと、緑色の服を着た魂魄妖夢が出てきた

 

「あなたは・・・あのときの・・・」

 

あの異変の時よりも、頬がやせた気がする。目にも力が宿っていない。しかし、今はそんな事よりも

 

「妖夢っ・・・。彼が大変なのよっ!」

 

「・・・彼・・・?」

 

「爽歩よ!」

 

「っ!・・・少々お待ちください・・・いえ、こちらにどうぞ・・・」

 

何を思ったか、彼女は私を屋敷に案内した

中は紅魔館とは違う趣があり、綺麗である。あのときの異変のように、桜は咲いていないけど、それでもやはり綺麗。綺麗すぎて逆に恐くなる

 

「幽々子様、お客様です」

 

「わかってるわ。どうぞ」

 

妖夢が襖を開けると、そこには異変の主、西行寺幽々子がいた

この人が・・・爽歩の主・・・

 

「紅魔館に務める十六夜咲夜と申します。急に押しかけてしまい、すいません。ですが、火急の用事できました」

 

「・・・何?」

 

「あなたの従者は紅魔館で、保護していました。しかし、妖怪の賢者・八雲紫とその従者の八雲藍が、爽歩を無理矢理連れていきました。どうか、彼を、爽歩を助けてください」

 

「・・・でも、もう私の従者じゃないわ」

 

そう言い放つ西行寺幽々子の目に映るものは悲哀。

 

「彼は・・・この前の異変であなたを、そして、妖夢を切った事を後とても悔やんでいました。あなた方と対峙する直前まで、ずっと迷ってました。」

 

「・・・」

 

「あなた方に嫌われても、大好きなあなた方と離れても、あなた方に生きていて欲しいから、その選択を取ったのに・・・それでも、関係ないと言うのですかっ!?」

 

「っ・・・!!」

 

西行寺幽々子の瞳は依然悲しみを宿し、その従者の爽歩の思い人の妖夢は俯いていて表情が読み取れなかった

 

「あ・・・に、な・・が」

 

「・・?」

 

「あなたに何がわかるんですかっ!!斬り合った私の何がっ!何がわかるんですかっ!!」

 

そのとき、私は自然と身体が動いた

 

パンッ

 

妖夢の白い肌が赤く染まり、私は手を振り抜いていた

 

「わかるわよっ!私は彼と一緒に、あなたと別れるまで来たもの!」

 

「そんなことっ、そんなこと、爽歩さんの顔を見ればわかってましたよっ!!でもっ、私は、爽歩さんよりも、幽々子様を選んだんですっ!!」

 

「主を選んでも、自分の気持ちには正直じゃないみたいじゃないのっ!そこの、主もっ!自分の従者じゃないと言っておいて、泣きそうな目をしてるじゃないの!!」

 

もう、瀟洒なんて言ってられない。

感情のまま、言葉を発する。

顔が熱い

 

私たち(紅魔館)の力じゃ、彼を、爽歩を助けれないの!例え、助けられたとしても意味がないっ!彼の心の穴を塞げれるのは、貴方達(白玉楼)しかいないのよ!」

 

私では、彼は救えない

それは、本当の意味で。

だから、私にできる最大の事をやらせてもらう。

 

「でも・・・私には、もう爽歩さんに・・・会わせる顔がありません・・・」

 

「そんなこと、言ってるから、爽歩はっ「妖夢」

 

凜とした声が私の声を遮った

 

「いきましょう」

 

「ゆ、ゆゆこ・・・さま・・?」

 

「家族を取り戻しに・・・。紫でも、爽歩は渡さない」

 

私はこの威厳を知っている

私の敬愛する主、レミリア・スカーレットお嬢様と同じ威圧。

それは、人の上に立つ者の威厳

私が訪れたときの西行寺幽々子ではなく、異変時に見た本当の西行寺幽々子の顔。

 

「・・・私は・・幽々子様を選ばなくても・・・いいんですか・・・?」

 

「妖夢、私は、爽歩を迎えに行くわ。・・・再び私に使えてくれるかわからないけれど。妖夢、あなたはどうする?」

 

「・・も」

 

「?」

 

「私も行かせてください!!」

 

妖夢はその目に溜まった涙を手の甲で拭い、勢いよく立ち上がった

 

「爽歩さんを、爽歩さんと今度こそ共に道を歩みたいです!」

 

よかった、これで彼は、爽歩は・・・

 

「ありがとう、ございます。あなたに再び救われました」

 

「私はあなたたちを呼びに来ただけ」

 

「でも、私たちはその呼びかけに救われたわ、白玉楼の主として、爽歩の主として、礼を言わせてもらうわ」

 

「そう?なら早く彼を助けに行ってあげて」

 

「・・・咲夜さん、貴方の力もお借りしたいのですが・・・」

 

「勿論、着いていくわ」

 

「・・・それじゃ、行きましょう。妖夢、道案内は私に」

 

「御意・・・爽歩さん・・・今、行きます・・・」

 

妖夢の瞳には、この館にきた時とは全く違う力が宿っていた

それは、決意。

 

「・・・妖夢、紅魔館の従者さん」

 

「咲夜でいいわ」

 

「紫の元に向かうけれど、彼女の式が2人いるわ」

 

「・・・藍と橙ですね」

 

咲夜の脳裏に浮んだのは、マヨヒガが出会ったあの猫耳の少女

 

「きっと、一番弱い橙にも、何らかしろ紫か藍が強化を施していると思いなさい」

 

「・・・あの橙が・・・?」

 

「あなたは橙と面識があるようね。あの子は、九尾の狐の藍の式よ。あの子の力は、九尾から流れているものだから、きっとあの九尾が強化を施している事でしょう。前と一緒だと危ないわよ」

 

「・・・。わかったわ。でも、あのこの相手は私がさせてもらう」

 

「助かります」

 

「・・・それじゃ、行こうかしら。妖夢。準備は?」

 

「大丈夫です。もう、迷いません」

 

 




妖夢復活!!
最後まできちんと走っていくので、これからもよろしくお願いします


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半人半霊と首輪の狼

どうも、お久しぶりです
和菓子屋蜜柑です
ホント、遅れました。スランプも入ってるし、リアルが忙しすぎる
なんだ、この忙しさってくらい忙しい
・・・夏、入るまでに緑妖想、終わらせられるかな・・・orz



妖夢視点

 

私は咲夜さんと幽々子様と共に白玉楼を出た

ずっと、心に重りが引っかかって、ずっと重かった心と身体は咲夜さんの一喝で凄く軽くなった

今なら、何でも出来る。そう、思えてしまうくらいに。

だから、爽歩さん。待っててください。必ず、行きます

 

幽々子様の出した蝶が、導いていく

追っていた蝶が目の前で、突然、消えた

 

「なっ・・・!?」

 

「妖夢、大丈夫」

 

咲夜さんが片手で私を制する

同じ従者なのに、ここまで落ちついていて、すごく憧れる。

彼女はとても大人びて、綺麗だ。

きっと、従者の仕事もきちんとこなすのだろう。

1回、彼女の働いている場所を爽歩さんと共に見に行きたい

 

「そこに、空間がある・・・」

 

「あなたは、わかるのね?」

 

幽々子様が咲夜さんに向かって言う

少々驚いている

 

「ええ、まぁ、なんとなく・・・って、ところだけど」

 

「あ・・・能力ですか?」

 

「多分、そうだと思うわ。でも、ほんとうに何となくだから、道案内がなければ、わからなかったわ」

 

「・・・私も修行不足ですね。きっと祖父ならわかったかもしれません」

 

時を切るのに200年はかかるという。もしかしたら、時空も切れる日がやってくるかもしれない

 

「妖夢、咲夜。これから紫のテリトリーに入るわ。・・・何が起きるかわからないわ。最終確認よ」

 

「私は問題ないわ」

 

「ーーー必ず、爽歩さんを助け出します」

 

「ふふ、聞くまでもないようね。それじゃ、行くわよ。」

 

幽々子様を戦闘に空間に入り進むと蝶がひらひらと舞っていた

そのまま蝶が導くまま、進んでいく

 

「そこまでだよ!」

 

「橙・・・」

 

咲夜さんがぼそりと呟いた。

きっとこの子が咲夜さんの言っていた子なんだとすぐに理解した

 

「そこを退いてくれないかしら?紫の式の式さん」

 

「・・・駄目です。今行ったら駄目なんです・・・」

 

「どうして・・・?」

 

「藍しゃまに・・・言いつけられてるから」

 

「・・・ここは私が」

 

咲夜さんがナイフを構える

 

「橙。弾幕ごっこの続きしましょ?ほら、約束」

 

橙はハッとした顔になった

 

「そう!そうだね!弾幕ごっこなら、仕方ないよね!!」

 

橙がはっとした声をあげた

そして、構える

 

「それじゃ、後で追いつくから」

 

「わかりました。・・・お願いします」

 

咲夜のナイフが一瞬にしてばらまかれ、弾幕ごっこは開始された

 

「今度は負けないよ!」

 

ナイフを弾く音が、響き、風切り音が背後で聞こえる

 

(咲夜さん、ありがとうございます!必ず、爽歩さんを連れ戻して見せる・・・)

 

高ぶる気持ちを無理矢理静め、幽々子様と走る。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

咲夜side

 

「行ったわね・・・」

 

目の前には妖力のかなり増した橙がいた

爪も牙もまるで前戦った時と違う

圧倒的な威圧感

でも、これだけは聞かないといけない

 

「ねぇ、橙。あなた迷ってない?」

 

「っ!!」

 

橙がその強化された爪で襲いかかってくる

それをナイフで受け流し反撃。

 

「何も言わないわ。でも、ここであなたは足止めくらいはさせてもらうわね」

 

橙の攻撃を捌き、ナイフで反撃。

 

「っあ・・・!」

 

「橙、全部終わったら、紅魔館に来なさい?ね?美味しいお菓子と紅茶でもてなしてあげる。だから、今は気軽に・・・遊びましょ?」

 

そう橙に言うと、その大きな瞳に涙を浮べつつ大きく頷いた

 

「それじゃ、始めましょう?弾幕ごっこ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

妖夢side

 

咲夜さんと別れ、再び蝶を追いかけるとそこには9つの尻尾を持つ狐がいた

 

「・・・藍。」

 

隣にいた幽々子様が呟く

たしか、紫様の式には、九尾の狐がおり、とても優秀な式・・と聞いた事がある

この、狐が・・

 

「幽々子様・・・」

 

「妖夢。あなたは全力で駆けなさい」

 

ぽそりと、九尾の狐に聞こえないように言った

 

「でもっ・・」

 

「いい?あなたの目的は爽歩を紫から助け出す事。紫が何考えてるかわからない以上、爽歩の安全も保証されているわけじゃ無いわ。時間が重要なの。私は全力を出しても、貴方の全力のスピードには敵わない。そして、きっと藍に対抗する力は貴方にはない。だったら咲夜が来るまで、私がこの場を押さえるわ。」

 

唇を思い切り噛みしめ、私は前を向いて走り出した

 

「・・・必ず、助け出しますっ」

 

「勿論よ。帰ったら美味しいご飯、二人で作ってね?」

 

「・・・行かせないっ」

 

妖狐が弾幕を放ってくる。

それは、今まで見た幽々子様の本気の弾幕に匹敵するくらいの量

本能が警鐘を鳴らす

こいつは危ない。

殺される。

弾幕ごっことわかっていてもそれは、まるで鋭利なナイフを喉元に押しつけられているかのような妖力

 

でも、幽々子様に、自分に誓ったんだ。

必ず、彼を助け出す。

そして、彼に言うんだ。

私も貴方のことが好きです・・・と。

 

妖狐の弾幕をかいくぐり、走る。

その背後で幽々子様の弾幕の気配がし、私の道を切り開いた

しばらく駆けると濃密な妖力。

気を抜くと足から崩れそうになる

きっと、妖怪の賢者、八雲紫の妖力。

でも、その中で私はよく知っている気配を見つけた

 

「爽歩さんっ・・・!」

 

爽歩さんの気配を追うが、更に紫様の妖力が近づいてくる事がわかる

きっと、爽歩さんの側にいるんだろう

更に駆けるスピードを速めると、見えてきた

陣の中心に狼化している爽歩さんとその陣の外に紫様

狼化している爽歩さんの首には、里で人が飼っているような犬の首輪が形成されている途中だった

 

『ぐああああああああああああああっ!!』

 

狼の口から漏れる苦痛の声

紛れもない爽歩さんの声

聞きたかったはずの爽歩さんの声だけど、違うっ

 

「紫様っ!爽歩さんを返してください!」

 

「・・・あら、妖夢。この子はもう幽々子の手から離れたのでしょう?なら問題はないわよね?」

 

「っ!」

 

その言葉に息を飲む。まるで、ずっと爽歩さんの存在を狙っていたようで、まるで、幽々子様の元に居なかったら、今のようになっていたようで

 

「でも、私は…爽歩さんを、連れ戻しにきました。私の、私達の過ちを身体を張り、止め、そして、主を切った事を罪として自ら背負って1人になった爽歩さんをっ!!」

 

「彼は幻想郷の人柱となるのよ」

 

強烈だった妖気が更に膨れあがる。

周囲には気持ちが悪くなってくる大量の目

 

「・・・逆らうつもりかしら?」

 

白楼剣と楼観剣を抜き、構える

答えは決まってる。

否だ

 

「・・・そう。まったく。幽々子の従者だから余計な事はしたくなかったけど、仕方がないわよね」

 

目を細め、紫様が言う

 

「でも、もう遅いわよ?楔は完成する。ほら、見なさい」

 

「っ!!爽歩さんっ!!」

 

陣が一際強く光り、爽歩さんが吠える

そして、その光と咆哮が消えると、陣の中心で狼化したまま踞る(爽歩さん)がいた

 




と、言う訳で一端、麗霊想と月咲想を休載します
理由は夏までに終わらせないと、更新ができくなるから
ほんと、楽しみにしていた方、申し訳ない
・・とは言うものの、まぁ、うん。多分、息抜きで月咲想や麗霊想が上がる可能性は高いけど。期待はしないでください
ホント、リアルが馬鹿みたいに忙しい
なんだ。この忙しさ。まぁ、夏過ぎたらもっと忙しくなるのは、目に見えてるんですけどね・・・orz
あはははは・・・
それでは、いつになるかわからない、次回をお待ちください。

追記
因田司さんの、「東方卯霊恋譚~Noキミョン?Noウドンゲ?Yesうどみょん!」http://novel.syosetu.org/22697/
にアレンジを捧げてきました
タイトル名は、「If;ブランとノワール」
もし、よろしければ覗いてみてください。


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首輪の狼と半人前

お久しぶりです。
ちまちまと忙しい間をぬって書き上げました…(汗
かなり文字量が少ないですが本当に申し訳ない…
今回は繋ぎです、
そう、繋ぎ(と、言い訳してみる)


僕は光の中にいた。

心地良い光なんかではなく、それは痛みと苦しみを生み出すだけの力

全身全霊を振り絞り、その場から逃げようとするが、縫い止められたかのように、身体は動かない

 

痛い、痛い痛い痛いイタイイタイイタイ

 

首だけではなく全身に重りが付いたような重さ

僕は、痛みで本当の狼のように吠えた

 

「グアアアアアアアアアアアア!」

 

「爽歩さんっ!!」

 

意識がなくなるその瞬間、大好きで、もう二度と聞くことのないと思っていた愛しい人の声が聞こえた気がした・・・

 

 

目が覚めるとそこは真っ白で、なにも、だれも居ない空間だった

その空間は冷たく、まるで深い水のなかのよう

 

「う・・・」

 

身体が鉛弾のように重い

手足を動かそうとすると、なんとか動く。

動こうとすると、じゃらり、と音がした

重すぎる身体で音の発生源を見てみると、そこには鎖。繋がれているのは僕の首だった

 

「っ・・・!?なんだよ、これ・・・」

 

重い手足で外そうと試みるが、労力を使っただけでビクともしなかった

何度も、何度も外そうと試みるが硬い鎖の前では無意味だった

 

「・・牙ならっ・・・」

 

犬歯を思いっきり立てて鎖にかみつく

しかし結果は虚しいものだった

牙は欠けることはなかったが、鎖はびくともしなかった

 

「くそ・・・」

 

そんな微々たる抵抗をしていると、八雲紫の声によって引き戻された

 

「無駄よ、そんなんじゃ私の術は破れないわ。そして、あなたを博麗大結界の・・・人柱とするわ」

 

「人柱・・・?」

 

「そう、博麗の巫女を守る為の守護妖怪って言った方が正しいわね。博麗は居なくなることは許されない。そして、異変において誰にも負けることは許されない。この術式は、時空間に縛るものだから、貴方を半永久的に縛り付けるわ。博麗に」

 

「このっ・・・!!八雲紫ッ!!!」

 

怒りにまかせた声がし、白刃と緑が(むらさき)に襲いかかった

それは、愛しい少女のもので、もう、会えないと思った少女の声

 

「妖夢っ!?」

 

「爽歩さんをっ・・・放せっ!」

 

「無駄よ」

 

紫さん・・・いや、八雲が手を何もない空間に這わしただけだった

その瞬間に、障壁・・いや、結界ができ、妖夢の剣は受け止められた

 

「今の貴方ごときの剣では、私には届かない」

 

そして八雲は片手間に手を振った

その瞬間、衝撃波のようなものが妖夢を襲った

いや、衝撃波ではない。あれは・・・ただの妖力だ

 

「やめろっ!妖夢には関係がない!もう・・・既に縁を切ったんだ!」

 

「っ!?」

 

言い放った瞬間、ズキリと胸が痛む。もう、決めた事なのに。

言い放った瞬間、大好きなあの子(妖夢)の顔が歪む。違う、そんな顔をさせたい訳じゃないなに。

自ら言い放った言葉は棘となり、奥深く刺さった

 

「妖夢、もう帰れ!」

妖夢、もう、僕は君とは合う資格なんてないんだ

 

「妖夢!お前は弱いんだ!八雲になんて、勝てないから早く帰れ!!」

こんな僕のためになんか、必死になんてならないでくれ

 

妖夢が僕の鎖に剣を打ち込み、結界が展開され、弾かれる度に言葉にする

弾かれる度に妖夢の身体には打撲や土の後が刻まれていく

 

「妖夢!!!さっさと帰ってくれ!!!」

こんなに傷付く君を見たくない

 

「妖夢!!」

妖夢、頼むから傷つかないでくれ

 

「妖夢帰れ!!」

僕は君を守りたかっただけなのに

 

「妖夢!!!」

 

僕の叫びに妖夢が叫ぶ

 

「爽歩さんの大馬鹿っ!!」

 

妖夢が答えた瞬間、結界がヒビが入った。

 




爽歩、という名前はとても愛着があります
爽やかに人生を歩んでいく、という希望を込めて付けた名前です。
実際には、爽やかに歩ける事なんてないですけどね。
次回の予定はまだ先となりますが、また、気長にあいつ来ないかなー程度にお待ちください。
この和菓子屋にきてくださった方々に感謝を。


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狼と庭師と妖怪の賢者と

・・・どうも、こんばんは。
和菓子屋蜜柑デス
ほんと、遅くなり申し訳ない。もう、体調崩すわ、メンタル弾け飛ぶ、でさんざんでした。リアルも忙しい(震え声
本当に遅れて申し訳ない



結界に少しの傷が入り、罅が生じた

それは、火事場の馬鹿力だったのかもしれない

妖夢の今の力ではなく、今後この先厳しい修行の上で会得されるだろう、最高の剣技

 

「なっ・・・!?」

 

これには、八雲紫も驚いたようで目を見開いていた

 

「っぁ・・・爽歩さん・・・絶対に連れ戻して、見せます・・そしたら、白玉楼の家事を1日全部やらせて反省させますからっ・・・」

 

 

疲労困憊

 

まさにこの言葉が今の妖夢にはふさわしい

結界と衝突する度に妖夢の身体は傷つき、体力は奪われていく

しかし、それらと逆に高まるものがあった。そう、それは、集中力。

 

「待っててくださいね、絶対に、連れ戻して、地獄(白玉楼)に放り込んであげますから」

 

ゾクッ

 

(この状況だけど、どうしよう、あっち(白玉楼)に帰りたくないかも)

 

でも、僕の気持ちは決まっていた

紅魔館で少しの期間だけど居させてもらって、僕の居場所はここじゃない、そう、感じた

願わくば、僕の一番の少女(妖夢)と、成り行きで決まったけど、今は自分で定めた僕の主(幽々子)の元へ帰りたい

 

「爽歩さんっ!一緒に、帰りましょう!!」

 

再び妖夢が剣を振るう

今まで邪魔な力が身体に加わり出来なかった動作で、今は、極限の疲労と集中力により、身体の力が良い意味でぬけて、自然体で刀を振るえるようになっていた

 

キィン

 

酷く、澄み切った音。

それは、いつか目指した音の続き。

妖夢の楼観剣が八雲の結界を断ち切った

 

「爽歩さん」

 

帰りたいけど、こんな・・・。僕は・・・帰る資格なんて・・・

 

 

妖夢がそのまま手を伸ばす

結界に弾かれた衝撃で洋服もボロボロな状態。全身は打ち身による打撲痕。決して綺麗な状態とは言えないだろう

それでも、妖夢は笑って手を伸ばした

帰ろう、と

 

・・・僕は、僕は、帰りたい

 

自然に、手は伸びていた

 

「帰りましょう」

 

ゆっくりと指先がふれた

感じるのは、温かさ

いつの間にか、狼化は解除され、人としての姿に戻っていた

 

「よう、む・・・」

 

「爽歩さん、帰りましょう」

 

「・・・うん」

 

今度はしっかりと、妖夢の手を握り替えした

僕よりも、小さなその手は、剣ダコが出来ており、固いが、柔らかく、落ち着いた

 

立ち上がろうとした、瞬間、ジャランという金属の鎖のような音がした

それは、八雲紫からされた首輪から繋がる鎖

人柱となる鎖

 

主の元へ、好きな人の元へ帰る覚悟は決まった

しかし、そこには物理的な壁が立ちはだかった

八雲紫の術。

 

妖夢もその鎖を剣で切ろうとしてくれるが、体力も限界で、先ほどの力はもう出せないだろう

人に戻った事で、僕も自分の剣で鎖を断ち切ろうとするが、ただ、火花を散らすだけで鎖はびくともしなかった

 

 

くそ、くそ

帰るって、きめたんだ

帰るって、決めたんだ!あの場所へ!

 

「無駄よ。夢魂爽歩。結界が破られたのは驚いたけど、それは私の意志がないと外せないわ。無理に外そうとすると首が取れるかもしれないわよ」

 

八雲紫は扇子を広げ口元を隠して言った

僕はそれを睨み付け、

 

「僕は・・・っ!!帰るって決めたんだ!!」

 

人化の最後まで持っていた鈴音を使い、鎖に突き立て鎖の破壊を目指す

しかし、鎖は八雲紫がつけたもので、ただの鎖ではなく、刀を突き立てたくらいでは、全くビクともしなかった

何度も、何度も、鎖に剣を突き立てる

妖夢は何度でも立ち向かってきた。僕がここで負けるわけにはいかない

 

「くそっ・・・きれろ!切れろよ!!」

 

なんども、なんども、なんども

 

響くのは、金属が違いに響き合う音

 

「・・・滑稽ね」

 

静観していた八雲紫が呟く

 

「今更、主の元に帰ろうとするの?」

 

「約束したんだ!!」

 

「一度捨てたのに?」

 

「一度、一度捨てたからこそ・・・失ったものの大きさがわかったんだっ!!」

 

主と、好きな人を自分から捨てた僕には、ぽっかりと喪失感と後悔だけが残った。

ブラックな仕事場と比べ、暖かなあの場所は、僕にしっかりと居場所をくれた

流浪な師匠に拾われた孤児だった僕も、根無し草

でも、もう、あの温かさを知り、大切なものをshった僕には、失ったものが大きくて、昔のようにはもどらなかった

 

「僕は・・・僕は、白玉楼に帰るっ!!例え、許されなくても、僕は、あの場所に居たいっ!!」

 

力一杯に、鎖のついた首輪を引っ張る。先ほど、八雲紫から、首がとれると言われたが関係ない

ガシャン、と一際大きな音をたてながら、僕は首輪をぴっぱった

 

「そこまでよ」




クライマックスで突っ走れるとイイナー



ツイッターでフォローしてくださった方、ありがとうございます!
希に緑妖想の事とか、月咲想の事とか、さっちゃん可愛いとか、呟いてる可能性あります
それにしても、意外とフォローしてくださった方が多くて、本当に感謝です


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狼と庭師とその主

「そこまでよ」

むきゅう、と鳴き声を放ちつつ現れたのは、紫の洋服を着たごつい女性だった。
頭の帽子には、三日月が付いており、僕はそんな人は一人しかしらない。
紅魔館の動かないあの人。パチュリーさん。
なんで・・こんな筋肉が盛り上がってるんだ・・・!
僕よりも筋肉あるんじゃないのか!?
袖から見える上腕二頭筋は山のように隆起し、胸は胸筋によりおっぱいから雄っぱいへと変貌をとげ、スカートから見える足部の筋肉はとても筋張っており、脛を蹴っても、こちらが負けるであろう鋼のような筋肉をしていた

「ぱ、パチュリーさん・・・・?」

「待たせたわね、爽歩。助けに来たわよ」

「そんな・・・なんでパチュリーさんが・・・」

喘息持ちで、運動なんてしないって咲夜さんが言っていたのに・・・」

「リミッターを外したのよ。これが私の本当の姿」

サイドチェストを決め、彼女は言った

「こんな結界、指一本で足りるわ」

人差し指で僕に張られていた結界を破り、鎖をその逞しい両手で持ち、糸を引きちぎるかのように、ちぎった






はい、嘘です。
あまりにもマチョリーが多かったので遊びました。悔いはない
遅くなりました。それでは本編をどうぞ


「そこまでよ」

 

鈴とした声が響いた

この声は・・・

まさか、と思い、重い身体に鞭を打ち顔を上げた。

 

「紫」

 

桃色の髪が揺れ、薄水色服が所々破けたりしている

僕のたった一人の主がいた

 

「・・・幽々子」

 

八雲紫の顔は驚いたように、目を見開いていた

 

「・・なんで、貴方がここに・・・?」

 

「あなたの所の狐に凄く時間かけさせられたわ」

 

やれやれという仕草をしながら幽々様は答えた。

 

「幽々子・・・」

 

「紫、私の従者を返して」

 

幽々様の服は、所々破けており、弾幕ごっこをしただろうという事がわかる

そして、幽々様から出た「狐」

きっと、八雲紫の式神であり、八雲の姓を与えられた九尾の狐、八雲藍の事だろう

あの厄災とも言えるような妖力を持つ存在を幽々様は超えてきたのか・・?何故・・・?

 

「どうして・・幽々様・・・」

 

何故、どうして。

思わず、口から零れた本音。

僕の主は、それを聞き逃さなかったらしい

 

「どうしてって・・私の従者だからよ。爽歩」

 

「自分の・・従者を迎えに行く主がいますか・・・」

 

声が震える

 

「貴方が愛想を尽かしても、私は貴方を離すつもりはないわよ、それに、妖夢も」

 

「ゆゆ・・・さま・・・」

 

僕は、妖夢を斬り、主の望みを断ち切ったのに・・・

 

僕の親愛なる主は、鎖に触れた

 

「こんなもの、貴方にはいらないわ。貴方は縛られない番犬。偶には主を噛みつこうとするけど、それは、主の為を思ってですもの。鎖なんかで縛らなくても、貴方は離れない、離れられない。」

 

触れられた鎖はピシピシ、と細かな罅が入り、風化しサラサラと細かな粒子になり崩れていった

 

朽ち果てる鎖

何度も、何度も、外そうと試みた鎖は簡単に外れた

それは、僕の心にあった雁字搦めにしてしまった最後の鎖をも、外すようで

幽々様は、僕に向かって微笑んだ。

 

「爽歩、貴方は正しい事をしたわ。貴方のおかげで私は消滅せずに済んだわ・・・そして、紫」

 

主は、八雲紫に向かって言う

 

「もう、いいでしょ。お互い。ごめんなさい、ありがとう」

 

「・・・」

 

「あなたが、こんなに強情な手を使う時は、幻想郷の為と知ってるけど、それでも今回のは紫にしたら詰めが甘いの。普段の貴方ならあり得ないくらいの甘さ。まるで、最初からこうなることを望んいたような」

 

「幽々子・・・、それは、間違ってるわ。今回の夢魂爽歩を使用したのは、私が博麗大結界の礎を強化するための・・・」

 

「それ、あり得ないわ」

 

八雲紫の言葉に横やりが入る

その声は、少女のもの。

声に目を向けると新たな乱入者がそこにいた。

紅と白の装い。大幣を持ち、札を持ってそこに圧倒的な存在感を放っていた。

それは、この世界に必要な巫女、博麗霊夢。

 

「紫」

 

「れ、霊夢?」

 

八雲紫が動揺した声を出した

その前に・・・・なんで霊夢さんが・・・?

 

「あの冥界に続く結界だって、おかしいと思ってきたらやっぱり、変な事をしでかしてたのね。紫」

 

「れ、霊夢、違うの、これは・・・」

 

「大方、そいつ(爽歩)を人柱にし博麗の犬にして、私が喜ぶとか、思ったんじゃないかしら。まぁ、本当は、私にもよく知らないけど、そいつとそこの今回の異変の主の間にあった主従関係を戻したい、とか考えて、藍にも知らせずに動いてもらったとか、そんな感じじゃないかしら」

 

なんという事だろう

あの妖怪の賢者とも言われた八雲紫の表情が、見るも無惨に青ざめている

 

え、まさか、本当なのか?

 

「この、スキマ妖怪。頭いいのに、なんでそう無駄に状況を引っ掻き回そうとするの」

 

「・・・」

 

「ある意味、あんたが今回の黒幕だから、まぁ、しっかり歯を食いしばりなさい」

 

博麗の巫女、霊夢は陰陽玉と札に霊力を注ぎ込む

陰陽玉と札に恐ろしいくらいの霊力が注ぎ込まれ、光を放つ。

・・・あれ、普通に撃ったら僕たち妖怪ってタダじゃ済まないんじゃ・・・

 

見ていて冷や汗をかきながらも、その美しいまでの光を見つめた

 

「夢想封印」

 

閃光が迸る

動揺しすぎていたのか、八雲紫は、結界も張らずそのまま陰陽玉を受けたのを閃光の中僕は見た

八雲紫が穏やかな顔をしているのを。本当に、この異変?は僕たち主従関係を元に戻す為に自分が悪役になり、この場で制裁を受けるとこまで計算されていたと言うことを察した。

光が消え去ると、八雲紫は地面に落ちて仰向けになっていた

 

「ふぅ、そこの犬と春の亡霊とその従者。異変解決の定例宴会はアンタらの所と、それと、紫に持って貰うから。ふぅ。それじゃ帰ってお茶でも飲みましょ」

 

一仕事終えた、という達成感といつもの気怠そうな表情をしつつ、霊夢は言い、彼女はそのまま飛び帰って行った

 

「・・・・紫」

 

霊夢の夢想封印を受け、地面に落ちていた八雲紫に向かって幽々子は歩み寄った

 

「ごめんなさい、あと、ありがとう」

 

「・・・何に対してかしら?」

 

少し、ばつの悪そうな顔をし、妖怪の賢者は幽々子から顔を背けた

 

「それでも、よ。ありがとう」

 

「・・・次からはもう少しだけ、私の忠告も聞きなさいよ。まったく・・・。異変は起こしてもいいけど、友人である貴方が居なくなるのは、嫌よ」

 

「いつかの茶会で、確かそれらしいもの言われたわね。貴方はいつも遠回しに言い過ぎるのが悪い癖よ」

 

・・・幽々様は、以前に西行妖を咲かせることで、どうなるのかを聞いていた、らしかった。しかし、遠回ししすぎて、結局実行してしまう今回の異変になった・・・?

茶会は、いつのだ・・・?

 

「ほら、紫」

 

「・・・ありがとう、幽々子」

 

幽々様が八雲紫に手を伸ばし、それを八雲紫が受け取り、ゆっくりと立ち上がった。

 

「夢魂爽歩・・。貴方には、今回の異変で迷惑かけてしまったわ。ごめんなさい」

 

八雲紫が僕をまっすぐ見て言った

 

「許さなくてもいいわ。正直、人柱にしようとしたのは、本当の事だもの」

 

「・・・あなたが、僕を焚きつけたのも、今なら何故かわかります。そして、きっと頭の良い貴方ならば、僕の選択をも知っていた。霊夢さんの粛正を一人だけで、結界もなしに受けた気概から、僕はもう、何もいいません。だから、恨みもしません。それが、僕に出来るただ1つの事です」

 

「・・・そんなのでいいの?今の私なら、貴方の牙で一矢報いる事もできるはずなのに」

 

僕は、周囲を見渡した

そこには、座り込んで、僕にふにゃっとした笑みを浮べる妖夢、八雲紫を支えている幽々様、そして、息を切らせてやってきた咲夜さんと橙、服をボロボロにした八雲藍が八雲紫の周囲を囲んだ

 

「そんな事、誰も望みませんよ。誰も、失っていないから」

 

「そうですよ、紫様」

 

妖夢が地面に手をつき立ち上がりつつ言う。

 

「誰も、何も失っていません。爽歩さんも言っています。だから、今回の事件はコレで終りです」

 

そう、だれが悪いわけじゃない。

ただ僕たちは十分な言葉を交わさずにすれ違っていただけだ。

すれ違ったおかげで、僕は本当に大切なものを見つけることが出来た。

一歩道を間違えると、それこそ全てを失ってしまう可能性もあった。でも、結果、失っていない。

だから、今回はこれで終りで良いんだ。

 

「・・・紫さん(・・・)

 

だから僕は終りとして、彼女の名前を呼ぶ

 

「コレで、終りにしましょう。きっと皆、宴会を待って居ます。幻想郷の異変の後は呑んで、終りでしょう?もし、気になるなら、宴会の準備をきちんと手伝ってもらいます」

 

ぽかん、と口を開け間抜け面している紫さんを後に、僕は妖夢に手を述べた

 

「妖夢、ごめん、ありがとう。後で伝えたい事があるんだ。聞いてくれるかな・・?」

 

「伝えたい事・・・・?」

 

「うん、もう、僕は迷わない。そのためにも。だから、白玉楼に帰ったら、君の部屋に行っても良い?」

 

「話が、見えないですけど、わかりました」

 

これで、妖夢への用事は済ませた

そして、最後に

 

「幽々様」

 

僕は足を折り、地に頭を垂れた

 

「今まで申し訳ありませんでした。僕を、再び白玉楼で働かせてください。お願いします」

 

「・・・爽歩、顔を上げなさい。貴方をもう、手放すつもりは無いわ。それこそ、蝙蝠の館でなんか、引き取らせないわ。貴方には、いつか生まれるであろう子の剣術指南役をしてもらいます。どこかの爺みたいに、旅なんかに出させないから覚悟なさい」

 

顔を上げると微笑む主人がいた

僕は、また白玉楼で働ける。この人に遣うことができる

 

「ほら、いくわよ、妖夢、爽歩。早く宴会の準備をしましょう。私、お腹すいて来ちゃったわ」

 

「はい、幽々様」「はい。幽々子様」

 




幽々様の最後の辺の爽歩に言ったセリフが個人的には気にいってます
リアルでも、かなり大きくケジメをつけたため、爽歩と妖夢の物語も終りに向けて進んで行きたいと思います。
緑妖想は、宴会の話と宴会後白玉楼に戻った時の話、未来の話を書いて終了にしていきますかね・・・。
長々とお付き合いくださり、ありがとうございます。
まだもう少し続きますので、お付き合いください
和菓子屋蜜柑


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神社と狼と様々で

お久しぶりです。和菓子屋蜜柑です
かなり遅くなりましたが東方緑妖想の最終話です
首を長くさせてしまって本当に申し訳ありませんでした


あの後、温泉で汗を流し、服を着替え、ボロボロだった身なりを整えた

砂ぼこりなんて生ぬるい泥だらけ、血まみれだったから。

今から調理をするのでは、ボロボロの格好では不衛生だ。

温泉に入っているとき思い出したのは、ここに来てからのこと。お湯に傷が染みる。さらに今は時間がない。今は身体を流すだけにしているが、帰ってきたらゆっくり浸かろう。これからのことは終わってから考えればいい。

温泉から出てくると湯上がりの妖夢と鉢合わせた

 

「妖夢」

 

「あ、爽歩さん。爽歩さんも今上がりですか?」

 

妖夢の白い肌が、ほんのり桃色に染まっていてかわいい。半霊もほんのりと赤くなっている気がする。

 

妖夢は、まだ、しっとりと濡れた髪が首筋に張りつくようで、少し煩わしそうにしていた

こう、なんとも言えない色気がある気がする。なんというんだろう。美味しそう。

 

「爽歩さん?」

 

はっとして、思考が戻ってきて、僕は慌てて返事をした

ぼ、僕は今何を考えてたんだ!?

 

「な、なに!?」

 

「えへへ、呼んだだけですよ」

 

・・・どうしよう。すごい可愛い。

でも、今日が終わってからだ。そう、終わってから。

僕たち二人はそのまま庭にむかった

庭では、先に湯に入り身体を清め、着替え直した幽々様と食材がいた

 

「もういいかしら?」

 

「はい」

 

狼化状態になるために、相棒を身体の中に入れ、狼化する。

 

「妖夢、もう準備はいい?」

 

「大丈夫です」

 

背中に荷物を積んでもらい、妖夢と幽々様を背に乗せる

流石に酒と食材を積んだ状態だと重い。でも、走れる

身体は疲労が残っていても、心は今までにないくらい軽いから

 

「行きます」

 

僕は空を駆けた

その日の空は青々しく、雲1つ無い晴天だったのをきっと僕は忘れない。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

途中でアリスさんを誘い、プリズムラバーの子達を引き連れ、博麗神社に辿り着くと九尾の狐が敷物を引いていた

 

「おや、爽歩君」

 

「八雲藍・・・」

 

僕の背中から幽々様と妖夢が降り、八雲藍と対峙する

苦々しく呼ぶと八雲藍は眉尻を下げながら言った

 

「その節は悪かった。私も従者なんだ。紫様がやることには逆らえないが、あれは悪かったと思っている。もう、怪我は大事か?」

 

あぁ、そうか

この人もある種の僕と妖夢のような人なのか

 

主従

ずっと悩んでたもの

 

・・・そうだよ。僕にはもう既に紫さんを許したんだ

だから、この目の前に立っている人も何も悪くないんだ

 

「藍さん。この節はもう、水に流しましょう。紫さんにもそう、話しました」

 

そう、これでいい

 

「・・・そうか。また何かあったら真っ先に協力をしよう」

 

申し訳なさそうに言う藍さん。この人も従者なんだ。だからこの方の気持ちも僕はわかる

 

「・・・なら、そのうち大量の料理ができあがるので、料理運ぶの手伝ってもらえますか?」

 

「あ、あぁ。勿論」

 

「では、神社の厨房借りて、料理してきます」

 

藍さんと別れ、神社の厨房を借りに母屋に向かうと、縁側で茶をすすっている紅白の巫女がいた

 

「霊夢さん」

 

「あ、狼。今日のご飯きっちり作っててよね」

 

「ははは・・わかってるよ、それじゃお借りします。それと僕の名前は夢魂爽歩。覚えてくれると嬉しいな」

 

霊夢さんは特に何も気にしていない様子で、どこからか取り出した一升瓶を取り出した。

まって、今、何もないところから、出したよね?あれ?僕の見間違え?

 

軽く混乱していると、彼女はまっすぐ僕に見据えて言った

 

「自分が大切にしているものは自分の掌から失ってから気がつく事が多いけど、アンタは掌から失わずに済んだ。これからも大切にしなさいよ。爽歩」

 

縁側から、音もなく立ち上がり。呆然とした僕の目の前から去っていった

 

大切なもの。・・・そうだな。もっと、これから大切にしていこう。

心の中でもう一度、霊夢さんに礼を言い、軽く頭を下げた

 

「爽歩さんー!」

 

妖夢の呼ぶ声が聞こえる。

霊夢さんの言葉が言霊となり、心に染みこみ、僕に、大好きな声で現実に引き戻された

 

「爽歩さん・・・?どうしたんですか?怪我が痛みますか?」

 

心配そうに僕をのぞき込む妖夢を見て、大切なものを思わず、ぎゅっと抱きしめた

僕よりも小さな身体を抱きしめると、すっぽりと入った。僕の大切なものは小さいんだ。きっと幽々様も小さいんだろう。

距離が近くなったことで、妖夢の温かい体温と、甘いけど、さっぱりとした妖夢の匂いが香った

 

「わわわっ・・・?そうほさん・・・?どうしたんですか?」

 

妖夢の声が驚きに満ちており、慌てたような声をしていた

 

「妖夢。あのさ、僕と婚姻して欲しい。ずっと一緒に居て欲しい。」

 

「っ!?」

 

「頼りないかもしれないけど、もっと強くなる。もっと妖夢の側に居たいんだ」

 

もう、大切なものを見てみない振りをしないように。

僕自身のケジメ(プロポーズ)

 

「・・そ、そうほさんのばか・・・。こんな所で言わなくてもいいじゃないですか・・・」

 

真っ赤になった

半霊もせわしなく動き回ってる

 

「返事は、宴会の後でいいから・・・」

 

「いいえ、その必要はありません」と言いながら

 

「私も貴方のことが大好きです。でも、一方的は嫌です。・・・私も爽歩さんの隣で並んで歩きたいです、不束者ですが、よろしくお願いします」

 

その後照れながらも手をつなぎ僕と妖夢は台所に入っていった

 

「さて、やりますか」

 

「ですね」

 

大量の食材を手際よく調理していく

何をしてほしいかは、横目で妖夢を見ていればわかる

ガンガン調理は進んでいき、宴会も終盤になって、藍さんと咲夜さんが変わってくれて二人で飲むことになった

・・気を使わせちゃったかな

 

どこからか妖夢が一升瓶とお猪口を持ってきていた

 

「はい、爽歩さん」

 

「ありがとう」

 

お猪口に映る満月がとても綺麗で一つ思い出した

 

「ね、妖夢。こないだ紅魔館にいた時にさ、知ったんだ。・・・月が綺麗ですね」

 

「・・・???そうですね、綺麗な満月ですね」

 

やっぱり知らないみたいで、少し嬉しさを感じながら、ちびちびと僕たちは酒を煽った

 

 

ーーーーーーーーーーー

「幽々子、いいの?」

 

「ちょっと寂しいけど、忘れられてる訳じゃないし、あの子たちも大切にしたいからいいの。私には、貴方()もいるから」

 

「ふふふ、そうね。幽々子は知っているかしら。月が綺麗ですね?」

 

「勿論。・・・死んでもいいわ。もう死んでるけどね。紫、これからも、よろしくね?」

 

「幽々子には敵わないわ・・・」




これにて、東方緑妖想は完結となります
もしかしたら後日談の話などを忘れたころに書いているかもしれません
一先ず、爽歩と妖夢の二人に幸あれ
あぁ、でも何時か優曇華出したい・・・うどんげかわいい・・・


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