ガシャットぐらし! (よこちょ)
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特別編
特別編 ばれんたいん


どうも。よこちょです。滑り込みギリギリですが、バレンタインの特別編をお送り致します。
この話は時系列気にせず読んでください。
では、本編どうぞ!


2月14日

それは通常ならば「バレンタイン」と呼ばれるイベントが開催されやがる日である。

 

葛城「はぁ………」

 

由紀「?よっくんどうしたの?急にため息なんて吐いて」

 

葛城「…………んにゃ。なんでもないよ。」

 

何を隠そう、俺は今まで1度だってこの日にチョコを貰ったことがないのだ。まあそのおかげで無駄にソワソワしたりすることもなくなったのだが。

気にしていないといえば嘘になるが、こればかりはしょうがない。

 

葛城(とは言え、この歳になっても0はなぁ………)

 

 

コンコン

 

悠里「あら?お客さんかしら?」

 

胡桃「誰だろ?どうぞー」

 

貴利矢「おーっす!皆元気か?」

 

美紀「あ、貴利矢さんでしたか。今日はどうされたんですか?」

 

貴利矢「いやいや。ちょーっばっかし義彦を借りていこうかと。いいかな?」

 

ドアから唐突に入ってきたのは貴利矢さんだった。

相変わらずラフな格好をしているが、この時期にあの格好は寒くないんだろうか?

 

葛城「別に俺は構いませんよ。どこ行くんです?」

 

貴利矢「んーどこってわけじゃないんだが…………。まあ着いてくりゃ分かるさ。」

 

葛城「はぁ………了解です。んじゃ、ちょっと行ってくるよ。」

 

由紀「はー!行ってらっしゃーい!」

 

胡桃「ゆっくりしてこいよー」

 

美紀「あんまりゆっくりすぎてもダメですよ?ちゃんとした時間に帰ってきてくださいね」

 

悠里「ともかく、気をつけてね?」

 

葛城「はいよ。んじゃ、いってきます」

 

……………ちょっと気になるけど、まあいっか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

由紀「…………行ったかな?」

 

胡桃「もう大丈夫だろ。すみませーん!もういいですよー!」

 

胡桃はそう言い、窓を開ける。

すると、外から一機の鳥型の機械が飛んできた。

 

黎斗「ふぅ。お邪魔するよ。」

 

悠里「わざわざすみません。私達のワガママを聞いてくださって。」

 

黎斗「フフフ。気にしないでくれたまえ。これは私のためでもあるんだ。ほら、頼まれていた品だ。」

 

黎斗が手渡したのは、大きめなアタッシュケースだった。それには、でかでかと「学園生活部専用」と書かれており、中からはほんのりと甘い香りがしていた。

 

美紀「すごい!ホントに準備出来てるんだ!」

 

黎斗「当然だァ!神に不可能はなァアアアアい!」

 

胡桃「ははっ。相変わらずだな。黎斗さんは。」

 

黎斗「当然だ。神だからな。ともかく、材料は提供した。後は好きにやりたまえ。では。」

 

そう言い残し、黎斗はサッと飛び去って行った。

 

悠里「さて、私達も取り掛かりましょうか。」

 

由紀「おー!よーし。何作ろっかなー」

 

美紀「もう。はしゃぎすぎですよ。適度に急いで作っていかないと………」

 

胡桃「ま、早いとこやっちゃおうぜ!」

 

────────────────────────

 

一方その頃。

 

葛城「…………で、なんで俺はここにいるんすか?」

 

葛城が連れてこられたのは、近くの公園だった。

そこには他にも飛彩、貴利矢、黎斗もおり、バレンタインだというのに女性が一人もいないという残念な状況が生まれていた。

 

飛彩「………いや。少し、話しておきたいことがあってな。」

 

飛彩がそう話し始める。

 

飛彩「………お前は、『自分の気持ちを素直に伝える』ことは出来ているか?」

 

葛城「…………唐突ですね。」

 

飛彩「まあ驚くのも無理はない、か。だが、どうしても言っておきたかったんだ。」

 

飛彩の真剣な眼差しに、葛城背筋が伸びる。

それを見た飛彩は、そう緊張するな、と言いながら話を続ける。

 

飛彩「……………俺は、自分の気持ちが伝えられずに後悔したことがある。何度その時の自分を嘆いたか─数え切れん。」

 

飛彩の目は遠く、まるで過去をを見ているように見えた。

 

飛彩「だから、お前にはそんな思いをして欲しくなくてな。…………すまんな。こんな日だと言うのに。」

 

葛城「いえ。ありがとうございました。俺も、ちゃんと伝えたいと思います。」

 

飛彩「それがいい。」

 

しばし、公園に沈黙が流れる。

 

貴利矢「あーあ。腹減ったなぁー。なあ神。ちょっと近くのデパートに行かないか?」

 

そんな沈黙を破り、突拍子もなくそう言う貴利矢。

 

黎斗「ほう。いい提案じゃないか。デパートならば『色々とある』だろうしな。」

 

飛彩「俺も行こう。デパートには『ちょっとした用事』があってな。」

 

その提案に乗る黎斗と飛彩。その口元には笑みが浮かんでおり、いかにも楽しげであった。

 

黎斗「義彦君も一緒にどうだい?君も『用事』が出来たんじゃないか?」

 

葛城「───ええ。勿論行きます!」

 

そして、葛城の顔には、まるでイタズラを思いついた子供のように無邪気で本当に楽しそうな笑顔が浮かんでいた。

 

────────────────────────

 

葛城「ただいまー」

 

悠・由・胡・美「「「「おかえりー!」」」」

 

葛城「……?どうしたんだ?そんなニヤニヤして。」

 

胡桃「まぁまぁ気にすんなって。ほら、早く奥行けって。」

 

胡桃に背中を押され、窓際まで押される葛城。

 

葛城「っとっとっと。まじでどうしたんだよみんな。」

 

由紀「えへへー。えっとねー。はい!これ!」

 

心底不思議そうに首を傾げる葛城に差し出されたのは、1個のラッピングされた箱だった。

 

葛城「これは?」

 

由紀「バレンタインのチョコだよ!」

 

葛城「……………………まじか」

 

悠里「私からもあるわよ?はい。」

 

胡桃「あ、アタシだってあるからな!ほら。」

 

美紀「私からも。はい、どうぞ。」

 

全員から1つずつ、箱を渡される。

中からただよう甘い匂いは、間違いなくチョコの香りだ。

 

葛城「あ……あ………」

 

由紀「?どしたの?」

 

無言で涙を滝のように流す葛城は、こう言った。

 

葛城「ありがとう。…………本当に、ありがとう」

 

由紀達は驚いたように目を丸くしたが、ふっ、と笑顔になり、こう返した。

 

悠・由・胡・美「「「「どういたしまして」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葛城「……………実は俺も、渡したいものがあるんだ。はい。」

 

そう言って取り出したのは、同じ大きさの4つの箱。そして、包装紙に包まれた1つの包みだった。

 

由紀にはピンク、美紀には青、悠里には緑、胡桃にはオレンジの箱を渡す。

 

由紀「開けてみてもいい?」

 

葛城「勿論」

 

由紀「やったー!開けるね!」

 

葛城「みんなも開けてみて。」

 

そういうと、各々が自分の箱を開け始める。中に入って居たのは────

 

胡桃「これって」

 

美紀「ハンカチ」

 

悠里「よね?」

 

葛城「うん。えっと………その……………」

 

──────色違いでお揃いのハンカチだった。

驚くみんなを前に、気恥しそうにする葛城だったが、意を決し、自分の包みを開けた。

中に入っているのは、ハンカチ。これもお揃いだった。

 

葛城「えっと……その…………今までありがとう。そして、これからも………よろしくお願いします。」

 

葛城は、自分の気持ちを素直に伝えることにしたのだ。

「今まで一緒にいてくれて、ありがとう。」

そして、

「これからもよろしく。」

と。

 

葛城「す、すまん!急にこんなこと言って!」

 

悠里「………ううん。すっごく嬉しいわ。」

 

美紀「………ええ。気持ち、伝わりました。」

 

胡桃「だな。言われなくても、ずっと一緒だぞ。」

 

由紀「勿論だよね〜。学園生活部は、一生無くならないんだよ!みんな一緒だよ!」

 

葛城「………みんな。ありがとうな。」

 

こうして、学園生活部はバレンタインを期に、さらに絆を深め、確かめ合った。

彼らの物語にはまだまだ困難が待ち受けるだろう。時には、喧嘩したり、仲違いをするかもしれない。

だが、彼らの心にはずっと、この日が残り続けるだろう。

 

 

 

 

黎斗「ふっ、いい絵じゃないか。」

 

パシャリ、と撮られた写真には、5人の満開の笑みが映っていた。




彼らの物語は、まだまだ続く。

というわけでバレンタイン編お送り致しました。間に合ってよかった…………
こういったイベントの話も上げていきたいですね。
では、次の投稿まで!


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プロローグと設定
プロローグと設定


お初にお目にかかります。よこちょという者です。
文才はありませんが、ご了承ください。
では、設定をどうぞ。



その日、日本は変わってしまった。

とある根絶したはずのゲームウイルスによって。

とある神の才能の発明を強奪した組織によって。

感染者はゾンビのようになり、人を襲う。

襲われて噛まれたものも感染し、それが連鎖する。

生き残るには逃げるか戦うしかない。

この物語は、そんな世界になってしまった中で出会った1人の少年と、学園生活部の仲間たちが織り成す、笑い(多分)あり、シリアスありの物語である。

 

 

 

 

時系列は、エグゼイドの世界的には仮面ライダークロニクルの騒動からかなり経ったあとの世界。

がっこうぐらし!の世界的にはまだ”かれら”が出現する前の出来事です。

 

 

注意⚠

その1,この作品は「がっこうぐらし!」原作を読んだことがない主が書きます。

なので、「ここ原作とちげえじゃねえか!」

とか、「こいつ、設定無視してやがる!ぶっ○してやらぁ!」ってなることもあると思いますので、原作改変が苦手な方は、素直に読まないことをオススメします。

 

その2,主は文才0です。「話わかりにくい!」と思う部分も多々あると思います。そういうときは、コメントで教えてくれると幸いです。

 

その3,途中から完全オリジナルになります。ご注意ください

それでもいいぜっていう心に余裕のある人は、拙作ではありますが、楽しんでいってください。

 

 

設定です

原作の学園生活部の人達はほとんど変わりませんが、所々違う点もあると思いますが、ぬるーくスルーしてもらえると有難いです。

 

主人公(名前 葛城 義彦)

この話の主人公。

ゲームが好きな男子高校生。

巡々丘学院高等学校の2年生。

成績は真ん中くらいだが、運動は結構できる。(運動部程ではないが)

学校帰りにプロトマイティアクションXガシャットを拾ったことで、”かれら”からある程度身を守る手段を手に入れた。

既存のバグスターウイルスに対する抗体を生まれつき所持しており、ガシャットを問題なく使用できる。

ドライバーは所持していないので、武器の出現のみ。

(後後出す予定。)

そこそこ変態。

 

 

学園生活部のみんな

アニメと殆ど変わらない。

違う点としては、

1,備品としてガシャットが存在するという点

2,普通のバグスターウイルスに対する抗体があるという点

3,みんな結構前向きな性格になっているという点

です。

 

 

スクールライフガシャット

 

学園生活部の備品。いつのまにか部室にあったが、由紀の提案で、備品として扱われている。

ゲーム内容は不明だが、スイッチを押すと、学校の部活に関するものが武器として出てくる。

(竹刀やテニスラケットなど)

見た目は弱いが、ちゃんと倒せる。

 




良かった点や疑問な点、わかりにくかったところなどありましたら、コメント等にてお教えください。


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本編
第1話


読んでくださる方、ありがとうございます!
本編をどうぞ。


……ピピッピピッ

控えめな目覚まし時計の音が部屋の中から聞こえた

「む……うむう」

という変な声と共に目を覚ました男が1人。

「………もう朝か…」

男は伸びをすると起き上がり、カーテンを開けた

「ふむ……今日はいい天気だ」

確かに、空は晴れていた。普通なら気分のいい朝で、気分はすっきりしているだろう。

だが………

「………ほんと、こいつらさえいなけりゃいい朝なんだがなぁ………」

男はそう文句を言いながら歯を磨き、朝食を摂り、リュックを背負い、1つの黒い物体を手にして部屋を出た。

そう、”かれら”と戦い、生き延びるための物資を探すために………

「寝癖なおんねぇ……」

そんなしょうもないことをぼやきながら。

なぜこんなことになったか、なぜ彼が戦うことになったのか……それは、たった1ヶ月前の話。まだ彼が普通の高校生としていたころ。あるモノとの出会いが、彼の人生を大きく変えた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

side葛城

 

俺は巡々丘学院高等学校2年生の葛城義彦。

普通のどこにでもいる、ただの高校生だ。

その日、俺はいつも通り学校から帰っていた。

空が晴れていて、それはもう気分の良い日だった。

「……このまま帰るなんてもったいねえな…」

そう思い、なんとなくそのへんをぶらぶらしながら帰ることにした。……思えば、この気まぐれこそが俺の人生を変えたのだろう。

しばらくぶらっと歩いているうちに、川沿いへとたどり着いた。

「休憩するか………」

そう思い、

「よいしょっと…」

少しジジくさい言葉と共に川沿いへ寝転び、空を見上げた。

「ふぅ……」

思わず、ため息が漏れた。

(…………俺ジジくせえなぁ………まだ高校生だぜ?)

なんて思いながら、なんとなく背伸びをした。背中から聞こえるパキパキという音を聞いていると、なにかに手が当たった。

「ん?なんだこれ?」

立ち上がり、拾ってみると、黒い本体に半透明の板とスイッチのついている、不思議なモノだった。

「なんだこれ…………見たことねえな…。………ん?横になんか書いてあるぞ」

読んでみると、「マイティアクションX」と書いてあった

「マイティアクションXか………これって確かゲームだったような?しかも結構昔の」

マイティアクションXは、わりと昔のゲームであり、当時結構人気のゲームだったと本で読んだ記憶がある

「なんでこんなものがここに……?」

なんとなく気になってしまい、そのまま持って帰ることにした。

「帰ったらネットで調べてみるか」

そんなことを思いながら

 




文才がないので、あまり長い文章はかけません。
ご了承ください。
感想などはコメントへお願いします。


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第2話

なんとか年越しまでに投稿できました
それでは2話をどうぞ!


家に帰った俺は、早速パソコンを立ち上げ、ブラウジングを始めた。

「ええっと……マイティアクションXっと…おっ?これか」

そのサイトは、「幻夢コーポレーション」というゲーム製作会社の公式サイトだった。

「ほうほう……この会社が出していたのか……製作者は……檀黎斗神?」

変な名前だと思ったが、スルーしようと決めた。

「バンバンシューティングにタドルクエストか………

へぇ〜こんなゲームもあったのか。やってみてぇなぁ」

今度Am○zonで探してみよう。そう決意しながら、ニュースサイトを開き、ニュースを見ていた。

「昨日もロクなことなかったんだなぁ…………全く……昨日襲撃事件があったのか……危ないなぁ……。場所は……成都大学附属病院?ああ。昔、なんかの病気の治療に関わってたって習った気が……。なんでこんなところを?」

そう疑問を持ちながら詳しく読んでみると、記事にはこう書かれていた。

「襲撃事件発生 狙いはCRの技術か

昨日発生した襲撃事件において、犯人の狙いはCRの治療技術にあるとみて、警察は捜査を進めている」

「治療技術か………なんで襲撃してまで?」

そう思いながらも、俺は腹が減ったのでパソコンを閉じ、部屋を出た。

「……結局あれ、なんだったんだろうか?」

 

ご飯も終わり、部屋に帰ってきた。

「今日の晩飯美味かったぁ。……レトルトだけど。ついでに1人だけど。」

そう。俺は巡々丘学院高等学校に入るためにこの街へと1人で引っ越してきたのだ。だが家族は地元に残りたかったらしく、しかたなく1人暮らしをしているだ。

「ったく………一人暮らしは慣れたけども、やっぱ寂しいねぇ」

そう思ったが、今更言ってもしょうがない。

(最近コンビニ弁当とかレトルトばっかりだったから明日は自炊するか………)

そう決意しながら、パソコンを立ち上げた。

「やっぱゲーマーとしては、さっきの会社気になるんだよねぇ。どんな会社なんだろ?」

と、独り言をもらし、幻夢コーポレーションについて調べてみた。

「なになに?仮面ライダークロニクル?仮面ライダーエグゼイド?」

詳しく調べてみると、昔、仮面ライダーと呼ばれる戦士が、バグスターウイルスという名のウイルスを使った悪と戦い、勝利したらしい。(超ざっくり説明)

「ほえー。昔にこんなことがあったんかぁ……。そういえば習ったような気がするわ。ほう、こんなので変身してたのかぁ…。………あれ?これって…………」

件の「檀黎斗神」と書いてあった開発者の手にあった「ガシャット」と呼ばれる変身アイテム。それは、俺が川沿で拾った黒い物体にそっくり……というか、同じものだった。

「………まじか」

 




みなさんは年末はどう過ごしますか?
自分は紅白みながらダラダラと過ごします。


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第3話

あけましておめでとうございます!
今年1年、頑張って投稿するので、よろしくお願いします!
では!新年1発目の第3話!どうぞ!


前回のあらすじ

拾った物体は「ガシャット」と呼ばれる、仮面ライダーの変身アイテムだった!………しかしなぜあんなところに?

 

「………まじか」

俺がそう言ってしまったのも無理はないだろう。だって拾ったもんがかつて仮面ライダーが使っていた変身アイテムだったんだもん。

「……スイッチ、いれてみるか」

ポチッと押すと、結構大きな音で

『マイティアクションエーックス!』

って鳴った。そして、目の間になんかハンマーの表示がある、ゲーム画面みたいなのが出てきた。

「なんだこれ?」

ゲーム画面っぽかったのでとりあえず押してみた。

すると、なんということでしょう!目の前にハンマーみたいなのが出てきたではありませんか!

「…………なんだこれ」

いやわからん。

思わず内心で自問自答してしまったが、まじでわからん。これどうすりゃいいのさ?

側面にAとBのボタンがついていて、ゲームのコントローラーみたいな武器だ。

「………これ、どうやってしまうんだ?」

そう思ってとりあえず床に置いてみると、消えた。

「ありゃ。消えちゃったよ」

もう1回スイッチを押すと、ちゃんと出てきたので安心した。

「使い方わからんけど…………とりあえずっ…と」

とりあえず振ってみたが、結構軽く、使いやすいことがわかった。

「うーん………これ以上はわからんなぁ」

どうしようかを考えた結果、

「…………よしっ!諦めよう!これはきっと明日の俺がなんとかしてくれるさ!(希望的観測)」

そう結論付け、さっさと寝ることにした。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

その頃、日本のとある場所では………

 

???「さて……そろそろ始めるとするか…………」

とある男が真っ黒なガシャットを手に持ち、1人笑っていた。

???「CRの襲撃には少々手こずったが…………まあ、問題ないだろう。おかげでこいつを完成させられたんだからな。」

男がガシャットのスイッチを入れると、低く篭った声で

「パンデミック・クライシス」

と鳴った。それはまるで、地獄の底から響いてくるような声だった。

男は傍らにあったドライバーにそれを刺し、1人、夜の街へとバイクで楽しそうに消えていった。

???「さぁ………この世の地獄、私の理想を始めよう……!」

そしてその夜、一人の男によって日本が地獄へと作り替えられた。

 

そのころ葛城は……………

「……………………グゥ………」

…………気持ち良さそうにぐっすりと寝ていた。

外がどうなっているかも知らずに。

 




読んでくれた方、ありがとうございました!


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第4話

どうも。よこちょです。
正月ということで筆が乗り、もう1話投稿できました。
相変わらずの拙作ではありますが、読んでいただけると幸いです。
では!第4話!どうぞ!


前回のあらすじ

葛城side ガシャットのスイッチを入れると、ハンマーが出てきた!

???side「この世の地獄、私の理想を始めよう…!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

葛城side

ピピッ!ピピッ!ピピッ!

葛城「朝か…………」

電子音が自分の携帯から鳴り響き、目が覚めた。外を見ると少し雲はあったが、概ね晴れていた。

葛城「ん〜〜っ!」

伸びをして立ち上がり、ストレッチを始めた。これをするのとしないのとでは、結構朝の調子が違うのだ。それを済ませたあと、学校の準備を始めた。

葛城「今日の科目は………おっ!家庭科があったな。いや〜調理実習楽しみだわ〜」

なんていう独り言をいいながら机の上を見ると、昨日拾ったガシャットが目に入った。

葛城「持って行って友達に見せるか……なんか知ってるかもしれないし」

そう思い、ポケットへガシャットを突っ込んだ。

そして、朝の楽しみである朝食を取る。

葛城「ふむ、うまい。」

食べ終わった後、制服を着てから外へ出る。

葛城「行きますか!」

と言って自転車へまたがり、学校へと走り出した。

……………ここまでが、俺の平和だった人生だ。

 

 

自転車で学校へ向かう途中、前から男がふらふらとしながら歩いてくるのが見えた。

葛城「酔っ払いか?…危ないなぁ…………」

そう思い、避けて通ろうとしたその時、その人がいきなり顔を上げ、こちらを向いた。

急だったので驚き、顔を見てしまった。

そして、恐怖した。

……………目がないのだ。しかも肉が腐ったような匂いがする。

葛城「うおうっ!?」

思わず自転車から落っこちてしまった。結構痛い。

???「ヴァァ………」

その男はまるでゾンビのような声を出しながら、ゆっくりと俺の方へと歩を進めてきた。

葛城「ヒエッ!」

思わず変な声を出してしまうが、お構い無しに迫ってくる。

葛城「やっべえ!どうしよう…………」

状況が状況なので、助けも呼びにくい。

葛城「あっ!もしかしたら……………」

ふと思いついたことを実行してみることにする。

それは…………

葛城「こいつだァ〜ッ!」

ポケットからマイティアクションXを取り出し、スイッチをいれる。

『マイティアクションエーックス!』

という音とともに、目の前へ画面が出てきて、ゾンビっぽい人を吹っ飛ばした。

夢中で画面を叩き、ハンマーを取り出し、

葛城「さあこい!」

と構えるが、一向に襲ってくる気配がない。

葛城「ありゃ?」

吹っ飛んだ人に近づき、見てみると…………死んでいた。

葛城「うわっ…………どうしよう……。とりあえず警察か………。とうとう犯罪者の仲間入りか………。短い一般人人生だった………」

そう諦めながら携帯で警察へと電話をかける。だが、ザーっという音が聞こえるのみで、繋がる気配がない。

葛城「……おかしいな。普通ならすぐ繋がるはずなんだけど」

疑問に思い、何回もかけ直すが、一切繋がらない。

葛城「これからどうすべきか………」

考えた結果、

葛城「とりあえず家に戻るか………。家の電話なら繋がるかもしれないし。」

そう結論づけ、一旦家に帰ることにした。

葛城「にしても、さっきのあいつはなんだったんだろうか……」

そう考えながら。

 




みなさんは正月どう過ごしますか?
俺はFGOの福袋引いてからぐだっと過ごしてます。
では、良い正月を〜


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第5話

正月ということでなんか筆が乗ってまた書いちゃいましたw
楽しんでいただけると幸いです。
では、第5話、どうぞ!


前回のあらすじ

葛城「ゾンビっぽいのを殺してしまった。警察に通報しても繋がらない。やばい。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

家に帰る途中、さっきのゾンビみたいなヤツらとかなりの量遭遇してしまった。

葛城「これはまずいな………」

規模はどれくらいかはわからないが、どうやら街の人間がゾンビみたいになってしまっているらしい。

葛城「これは家に早く帰らないと………」

そう思い、走って家に帰ることにした。自転車で帰りたいのだが、あいにくとさっき倒れた衝撃で壊れてしまったので、使えない。

葛城「クソっ………もう少し運動しておけばよかったぜ………」

自分の普段の生活に悪態をつきながらも、急いで家へ帰った。

 

 

家に着いて中へ入り、鍵をかけた。これでしばらくはやつらは入ってこられないだろう。

葛城「これからどうしようか…………っと、その前に状況を整理しよう。」

そう思い、紙を取り出してペンでまとめてみた。

葛城「まずは……………外の状況だな」

窓から外を見てみると、さっきよりも大人数のゾンビのような奴らが外を徘徊していた。しばらく観察していると、少しわかってきたことがあった。

葛城「こいつら、意思はなさそうだな。ゲームのゾンビみたいに音とかに反応してるのか?」

そう思い、とりあえず近くにあったテレビのリモコンを外へ投げてみた。すると、近くのゾンビたちがそちらを向き、ゆっくりと歩いていった。

葛城「なるほど…………これはゲームと同じ感じか」

とりあえずそれだけがわかっただけで十分だ。

これからは外に行く時に音を立てないようにしなければ。

葛城「さて…………テレビは着くのかな?電話は繋がんなかったけど………。あれ?リモコンは……って……あ!やっちまった!さっき投げちゃったよ!……ったくしゃーない。取りに行くか」

そう決めて、とりあえず護身用にさっきのガシャットと皿を何枚か持ち、ゆっくりと音を立てないようにして外へ出た。

葛城「確かこの辺に………お。あったあった。」

外の木の植え込みの中に入っていたらしく、少し時間はかかったが見つけることが出来た。

葛城「ふい〜よかった〜。ん?これはなんだ?」

拾ってみると、ちょっと大きめの黒いケースが落ちていた。

葛城「なんかのケースだな。開くかな?」

すんなりと開き、中身が見えた。その中には、黒いガシャットが数本と、白いガシャットが一本入っていた。

葛城「ガシャットがこんなに!?なんでこんなに大量にここにあるんだ?」

中身を確認しようとしていると、今の声でやつらに気づかれたのか、徐々に近づいて来ていた。

葛城「っやっべえ!逃げるしかないな。」

そう結論づけ、心の中で逃〜げるんだよ〜と思いながら家へ走って帰った。

………皿いらんかったな。

 

無事家へ帰り着くと、流石に疲れて、廊下に倒れ込んでしまった。

葛城「あ〜疲れた〜。もう動きたくねえ〜」

そんなことを言いながらずっとゴロゴロしていた。

葛城「………これからどうしよう。」

今日は学校だったが、流石にこんな状況では学校はないだろう。となると、家に引きこもっておくしかない。外にやつらが彷徨いているということは、相当危険な状況だということだ。

だが、このままでいいのだろうか。このままずっと家に引きこもっていては、いずれ食料や水も尽きる。電気や水道もいつまで機能するかわからない。

この現象の規模がわからない以上、安易に考えてはいけないだろう。恐らく、助けも当分こまい。

葛城「外に………出るしかないのか。」

自分はゲームが好きだが、望んでこんなゾンビだらけの世界に行きたかったわけではなかった。

この世界にはゲームと違って、治療薬もない。HPゲージやバッドステータスが見える訳でもない。つまり、何が起こるかわからないのだ。

葛城「それでも…………行くしかない。」

そう。行くしかないのだ。たとえどれだけ危なかったとしても、ここにずっといたらいずれ死んでしまう。

その前に、ここを出るしかないのだ。

葛城「怖いけども…………仕方がない。出よう。この家を。よし!そうと決まれば!」

そう決意し、家を出る準備を始めた。

葛城「まずは水と食料か。持てるだけ持とう。」

食料として、日持ちのしそうな缶詰や真空パックのものを持っていくことにした。水はペットボトルでいうたろう。

葛城「あとは……乾電池に懐中電灯、携帯のバッテリーに充電コード、あとは携帯ラジオに小さいナイフっと、あああと、ロープもいるかな?お菓子とかココアとかも詰めてっと」

要りそうなもので家にあるものをピックアップして大きめのリュックに入れ込む。

葛城「うし、こんなもんか!」

少し大きくなってしまったが、まあ、これでいいだろう。

葛城「おっと、肝心のものを忘れるところだったぜ」

自分の持っていたマイティアクションXをポケットに入れ、さっき拾ったケースを手に持ち、

葛城「さて、行きますか!」気合を入れ直し、外へと出た。

ここからは危険が待っているだろう。もしかしたら死ぬかもしれない。だが、俺は最初の1歩を踏み出した。

死に抗うために。

 




ちょっと長かったですかね?
まあなによりもの問題は未だに学園生活部のメンバーと誰とも会ってないってことなんですが


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第6話

正月の三が日終わっちゃいましたね………
俺はひたすらFGOしてたらいつの間にか三が日終わってましたw
そんななか書いた第6話です。どうぞ!
※今回ちょっと下ネタが入ります。苦手な方は逃〜げるんだよ〜してください。


前回のあらすじ

外にゾンビは溢れかえり、このまま家にいては死んでしまう。外へ希望を託し、家から出ることを決意した。

葛城「我、家ノ外ヘ出陣ス。」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

外へ出て、最初に考えたのは「どこへ行こうか」ということだった。

普通に考えれば、コンビニやデパート、ショッピングモールなどへ行くだろう。もしかしたら生存者がいるかもしれない。それに、なにか知ってる人がいるかもしればい。

そう思い、とりあえずは近所のショッピングモールへ向かうことにした。

葛城「近くのショッピングモールは…………おっここか。最近行ってなかったからな〜。まさか、こんなときにもう1回行くことになるなんてな。」

そのショッピングモールの名は「リバーシティ・トロン」。近所にある中でかなり大きいショッピングモールだ。

ここならば食料品や水が手に入るかもしれない。

そう考えた俺はそのショッピングモールへと歩き出した。

 

数日後

や、やっとついた…………

てか途中のゾンビの量多すぎやしませんかね!?

ちょっと歩くだけでうじゃうじゃ居るんですが。

おかげで進むのに時間かかるわ途中の誰かの家を借りて寝なきゃならんわで大変だったわ。

まあ、それも今日で終わりだ。

ここには布団とかもあるだろうし、部屋もあるだろう。そこにバリケードでも作ってしばらくゆっくりするかな。流石連日硬い床で寝たから腰が痛いぜ………

そう考えながら俺はボロボロになっている入口から中へ侵入した。

 

side美紀

圭がこの部屋を出てから、数日が経った。私はまだ、この部屋にいる。

圭の言った、「生きていれば、それでいいの?」

という言葉が、何度も頭の中を駆け回る。

外に出ようかとも考えたが、どうしても最初の1歩を踏み出せない。きっと私は、怖いのだ。やつらに喰われて死んでしまうのが。1人でこのままいるのは。

でも、どうすればいいかわからず、惰性でこの部屋に残り続けている。

太郎丸「クゥーン」

太郎丸が気を使うような声をあげている。

慰めてくれたのだろうか。

少し嬉しくはなるものの、やはり気分が完全には晴れない。

どうしようかと今日もずっと悩んでいると、いきなり太郎丸が扉の外へ勝手に扉を開けて出ていってしまった。

美紀「あっ!太郎丸、待って!」

そう呼びかけるが、待ってはくれない。追いかけようとして扉の方へ足を向けたが、足がすくんで動けない。

もし、この先にやつらがいたら。

そう考えると足がすくんで動かない。

身体が勝手に震えてしまう。

そうしているうちに、外の方からゆっくりとした足音が聞こえた。その音は、だんだんとこの部屋へと近づいてきた。

美紀(まさか………!ここまでやつらが来ちゃったの!?)

そう思うと余計に震えてしまい、その場にへたりこんでしまった。近づく足跡が半開きの扉の前で足音が止まり、その扉が少しだけ開いてしまったとき、私は思わず悲鳴をあげてしまった。

美紀「キャーー!」

???「うみゃーーー!?」

 

side葛城

ショッピングモールのなかへ入った俺は食料品コーナーへ行き、食料品を探した。

葛城「うーん。あんまりないなぁ」

やはりこの出来事が起こってから数日経ったからか、あまり食料品はなかった。手に入ったのは缶詰が数個とペットボトルの水が数本だけだった。

葛城「他の階も見ておくか………とりあえず布団のある階に行くかな。あと部屋。」

今は動いていないエスカレーターを階段のようにして上り、上の階へとついた。

少し探すと、布団はすぐに見つかった。

葛城「おお!これは!あったかそう!」

久々の布団だったので、思わずテンションが上がってしまった。

そうしているうちに、何かがこちらへ猛スピードで走ってくるのが見えた。ゾンビかと思い、いつでもガシャットのスイッチを入れられるよう構えていると、

太郎丸「ワン!」

と鳴いた。

葛城「なんだ犬か……。脅かすなよ……」

持ち上げて頭を撫でていると、急に腕から飛び下り、こちらを見ながら歩き始めた。

葛城「ついてこいって言ってんのか?」

そう思い、ひとまずついていくことにした。

 

しばらくそうして歩いているうちに、半開きになった扉の前についた。

葛城(ここに入れってことだろうか?)

なんとなくそう思い、扉に手をかけた。少し押した瞬間、中から女性のものと思しき悲鳴が聞こえてきた。

美紀「キャーー!」

葛城「うみゃーー!?」

思わずすっげえ変な声出ししまっちゃったじゃねえか!恥っず!ってか中にいるのは誰だ!

って、

葛城「直樹…か?」

美紀「葛城くん……?」

葛城「……これは驚いたな。」

彼女は直樹美紀。

同じ高校の同学年だ。

1年の頃に同じクラスになったので名前は覚えているが、あまり話したことはない。だが、いつも親友の祠堂圭と一緒にいたことを覚えている。

葛城「直樹さん1人か?」

そう聞くと、こくりと頷いた。

葛城「………そうか。」

そしてしばらく沈黙が続いた。

葛城(き、気まづい〜ッ!俺女子と話したことあんまないんだけど!?どうすんだこれ?とりあえず落ち着け………素数を数えて落ち着くんだ………1,2,3,5,…って1は素数じゃねえし)

なんていうくだらない思考を必死にしているうちに、目線が徐々に下がっていった俺は見てしまった。

……………直樹のパンツを。

彼女は怖かったのか、へたりこんでしまったいる。そのせいで、見えてしまっているのだ。その………水色のあれが

どうすればいいか反応に困った俺がフリーズしていると、彼女も気がついてしまったようで………

美紀「…………………」

葛城「…………………」

お互い黙り込み、

美紀「キャーーーーー!」

本日2度目の悲鳴が響き渡り、俺の体は横へ飛んだ。

そう、ビンタされたのだ。

葛城「み、みずいろ……………」

俺はそんな間抜けな言葉を発しながら、意識を手放した。

 




はい。みーくんのパンツは水色でしたね。
ちなみにこの時の葛城のパンツは黒のブリーフだったそうです(超どうでもいい)
次は早めに投稿できると思います。
それまでお待ちください。


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第7話

どうも。よこちょです。
もうすぐ冬休みも終わりですね………
全く休んだ気がしないぜ……
それでが、第7話。どうぞ〜
今回はジョジョネタがあるので、苦手な方はご注意を
使い方間違ってたらごめんなさい。



前回のあらすじ

葛城「生存者に遭遇。なんとそれは知り合いの直樹美紀だった。だが、どうしていいかわからず困惑してるうちにパンツを見てしまって死にかけた」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

葛城「ううっ………」

美紀「あっ、大丈夫?さっきはごめんなさい………」

葛城「いや、こっちこそ悪かった。あまり女子と話したことなくて緊張しちゃってさ。」

美紀「いえ………すみませんでした……」

葛城「いやいや、こっちこそごめん」

こうして謝っているうちに少し可笑しくなってしまい、お互いに笑ってしまった。

そして、落ち着いたところで、お互いに自己紹介をしたあとに、情報交換をすることにした。

葛城「直樹さんはどうしてここに?」

美紀「美紀でいいです。友達と学校帰りにここへ寄っていたらこんなことに………」

葛城「………そうか……。その友人は?」

そう聞くと、美紀は首を横に振りながら

美紀「1人で外に。これを預かったので、きっと戻ってきてくれます。」

見ると、それはポータブルCDプレイヤーだった。

葛城「そうか…直樹さ……美紀さんはこれからどうするつもりだったんだ?」

美紀「それは…………」

葛城「……決断できなかったんだな。」

美紀「……はい…そのせいで、圭は1人で外へ………」

葛城「そうか…俺も怖いんだがな。頑張って1人で出てきたわ。」

美紀「…すごいですね。自分は絶対安全っていう保証もないのに。」

葛城「まあ、絶対ってわけじゃないけどこのままだといずれ死ぬし。それより外に出た方がマシかなって。」

美紀「………強いですね。」

葛城「そんなんじゃないさ。ただ、ちょっとばっかし運がよかったのさ。俺は。」

美紀「運……ですか?」

葛城「ああ。こいつのおかげだ。」

そう言って例の黒いプラスチックのケースを見せた。

美紀「これは?」

葛城「ガシャットって言われるものさ。昔仮面ライダーが変身に使ってたらしい。ドライバーがないから変身はできないけど、武器ならでるんだ。」

美紀「へぇ………使えるんですか?これ」

葛城「ああ。ちゃんと倒せたぞ。」(画面で吹っ飛ばして倒したなんて言えない………)

美紀「すごいですね……こんなにたくさん。どんな武器が出るんですか?」

葛城「ん?ああ。知らん」

美紀「へぇ〜ってえ!?知らないの!?」

葛城「ああ。言われて思い出したが確認してなかったわ。確認してみるか。」

ケースからガシャットを取り出すと、結構色々な種類があった。「タドルクエスト」や「バンバンシューティング」、「爆走バイク」、「ギリギリチャンバラ」に「マイティーブラザーズXX」、「デンジャラスゾンビ」が入っていた。

葛城「ホントに色々あるんだな。」

一個ずつスイッチを押して確認したが、「タドルクエスト」からは剣、「バンバンシューティング」からは銃、「爆走バイク」からはなんとバイクが、「ギリギリチャンバラ」からは弓が、「マイティーブラザーズXX」からは変形する銃と剣が合体したみたいなのが出てきた。唯一デンジャラスゾンビからは何も出てこなかったが、まあこれだけ出たなら十分だろう。

美紀「いろんな武器がありましたね。」

葛城「ああ。正直これは俺も予想外だったわ。」

二人でガシャットを見ていると、ふと気になったことがあったので、聞いてみた。

葛城「なあ、美紀さん。お前さんはこれからどうするんだ?」

美紀「…………わかりません。」

葛城「…………迷ってるのか?」

美紀「…………はい。」

葛城「そうか。なら、いいことを教えてやろう。」

美紀「いいこと?」

葛城「ああ。とある人がいてな。そいつは無実の罪で牢屋に入れられたんだ。牢屋の外には星が見えたんだ。他の囚人は壁を見ていた。だがその人は星を見ていたんだ。」

美紀「星を……?」

葛城「ああ。星だ。他の人と違って前を向いていたんだよ。その人は。つまり何が言いたいかと言うとだな、前を向いた方がいいのさ。横や後ろばっかりみるよりはな。俺はそう考えている。」

美紀「前を………向く……」

葛城「ああ。さて、質問だ。美紀さん。君は『壁』を見るかい?それとも『星』を見るかい?」

美紀「私は……私は『星』を見ていたい。次に進んでみたい。」

葛城「そうか。よく言った!なら、俺と一緒に来てくれないか?俺も1人じゃできんことがたくさんあるんだ。そんな俺を助けてくれないか?」

美紀「わかりました。一緒に行きます!」

葛城「おっし!んじゃ、そうと決まれば!」

と言いながら俺は扉の外を指差し、

葛城「………あれ倒すの手伝ってくれ。四体同時はキツい。」

そう言うと、美紀さんはクスッと笑い、

美紀「わかりました。お手伝いします!」

そう言って、ガシャットを1本取り出し、スイッチを入れた。彼女が選んだガシャット。それは、「バンバンシューティング」だった。

『バンバンシューティング!』

と鳴り美紀さんの手に銃が現れた。

美紀「さあ、行きましょう!」

葛城「あいよっ!」

負けじと俺もマイティーアクションXのスイッチを入れてハンマーを取り出し、横のボタンを押して剣モードに切り替え、扉を全開にして斬りかかった。

今までと違い、後からの援護がある分、非常に戦いやすかった。

しばらく戦い、戦闘が終わった。

葛城「うい〜疲れた〜」

美紀「私もです………」

葛城「まあでも、何はともあれ」

美紀「ええ。」

葛城・美紀『これからよろしく(お願いします)!』

そう言ってお互いに手を握り、固い握手をした。

 

葛城「ところで……なんで同級生なのに敬語なんだ?」

美紀「あっいえ、なんか年上っぽくって…。ダメ……でしたか?」

ここは男としてビシッと言ってやらねばなるまい。

葛城「い、いや、別に構わん。だが、ちと恥ずかしいがな。」

………俺、弱ッ!

いやさすがに美少女の上目遣いには勝てん。

葛城「ま、まあとにかくよろしく」

美紀「ええ。よろしくお願いします。」

 

 

彼はようやく生存者と出会い、仲間になることができた。

 




総合UA1000いったら記念になんか書こうかな〜と思ったりしてる。


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UA1000突破記念 あの日のCR

今回は話は進みません。
ですが、なぜ主人公の手にガシャットのケースが渡ったのか。今回はそこを書きました。
楽しんでくれると幸いです。
では、UA1000突破記念!どうぞ!
※ライダーたちがお互いをなんと呼びあっているかが間違ってるかもしれません。その時はコメントで教えて下さると助かります。


side黎斗神

成都大学附属病院が襲撃された。いや、正しくいえばCRが襲撃された、と言った方がいいだろうか。

相手はたった1人で、こちらは宝生永夢に、パラド、九条貴利矢の4人のライダーがいた。

が、奴の持っていたUSBのような装置を体に入れた瞬間見た目が異形に変わったばかりか、とんでもない強さになった。私の神の才能を持ってしても太刀打ちならず、宝生永夢は重症を負い、九条貴利矢はバイクへ変形して撤退した。私は貴重なライフを削り、時間差コンテニューをすることで難を逃れた。

敵が撤退したあと土管から出てきた私は、

黎斗神「ふむ………かなり不味いな。」

貴利矢「どうした?神」

九条貴利矢が宝生永夢を担いで戻ってきた。宝生永夢をベットへ寝かせたのを確認し、

黎斗神「見ろ。私のパソコンのデータが抜かれた形跡がある。おそらくガシャットのデータを抜いたのだろう。」

貴利矢「へぇ〜。んで、なんのガシャットのデータを抜かれたんだ?」

黎斗神「デンジャラスゾンビだ。正直私の死のデータが入っている以外重要性は無いはずだが………」

貴利矢「ふ〜ん。っておう永夢。起きたか」

永夢「はい。なんとか。二人も大丈夫でしたか?」

貴利矢「体調の面なら問題ない。だが、ガシャットのデータを盗まれたらしい。神曰く何故盗まれたかはわからないそうだ。」

永夢「ガシャットのデータを?本当になんの理由で?」

黎斗神「わからない………だが、なにか目的があったなら近いうちにアクションがあるはずだ。その時こそ、私の神の才能で倒してやるゥ!」

貴利矢「おう、頑張れよ(適当)」

そういって談笑したり、飛彩さんたちに連絡しているうちに夜になったのでそのまま解散して、家へ帰った。

 

そしてその日、パンデミックが発生した。

 

次の日のCR

永夢「黎斗さん!」

黎斗神「檀黎斗神だ!状況は理解しているとも。」

そう言っているうちに、次々とCRにドクターやパラド、ポッピーピポパポ達が集まり 、話し合いになった。

そして、昨日の襲撃のことを細かく話したあと対抗策が完全になくなったことを悟り、

黎斗神「もはや最終手段しかあるまい。」

永夢「それは………?」

黎斗神「ガシャットをばら撒くんだ。この街全体に。」

飛彩「危険すぎる!却下だ!」

大我「待てブレイブ。……どういうことだ?」

黎斗神「このままではパンデミックの影響で人が大勢死ぬだろう。それは避けられない。私たちも此処を防衛しなければならないから、救助に人員を割けない。敵はハイパー無敵すら倒したんだからな。ならば、生き残っている人に対抗手段を与えて生き延びてもらうしかないだろう?」

パラド「ばらまくガシャットはなんなんだ?」

黎斗神「この際だ。今あるガシャットを出来るだけすべてばらまく。」

永夢「そんな……!」

ポッピー「無茶だよ……!」

貴利矢「だが、こうするしかないのも事実だぜ?しょうがない。俺は乗せられてやるよ。その案。」

黎斗神「さすがは九条貴利矢だ。理解が早い。他の諸君はどうする?」

飛彩「…………しかたがない。やろう。」

大我「ああ。賛成だ。」

ポッピー「仕方ないか……」

永夢「…………それしかないのなら。」

パラド「オッケーだ。」

黎斗神「了解したァ。神の手にかかればこんなもんだ。」

といって、ケースをよこしてきた。

永夢「これは………プロトガシャットとガシャット?」

貴利矢「だが俺は持ってるぜ?」

黎斗神「ああ。複製した。プロト版にしたのは性能をあげるためだ。改良して副作用も出ないようにしてある。他のガシャットも複製だ。当然だが急ごしらえだから出力は落ちている。時間がなかったから使えそうな武器が出るやつだけピックアップした。」

大我「さすがはゲンムだ。」

飛彩「ああ。」

ポッピー「でも、どこに置くの?」

黎斗神「地図を見た限りだと……まあ、この辺でいいだろう。ここは比較的被害が少ない。」

パラド「了解した。んじゃ、俺が置くよ。」

黎斗神「ああ。了解した。」

そう言ってパラドは屋上へ行き、パズルゲーマーになり、

『伸縮化!伸縮化!伸縮化!』

と伸縮化を3枚取り、腕を伸ばして置いてきた。

パラド「これでオッケーだ。」

黎斗神「ご苦労だった。あとはここを死守しよう。ここを絶対に奪われてわならないのだからなァ」

そういい、CRへと戻った。




いかかでしょうか?
(ちなみに第1話に書かれているように、マイティアクションXは拾い物なのでこの中に入っていません。これはミスではなく、仕様です。そこは今後の話に書きます。)
UA1000を突破してもまだまだ腕は未熟ですが、これからも「ガシャットぐらし!」をよろしくお願いします。


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第8話

はいどうも。よこちょです。
もうすっかり正月ムードも終わって普通の日常に戻りましたね。学生の皆さんは(自分も含め)宿題に追われてたりするんでしょうか?終わってない人は終わらせましょう…………(ブーメラン)
さて、今回はついに学園生活部のみんなとみんな大好きあの人が出てきます。お楽しみに。
それでは第8話!
どうぞ!


前回のあらすじ

葛城「ガシャットから出る武器を確認した後、ゾンビを殲滅した。美紀さんも仲間になってくれたし、心強いな」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

side葛城

あの後、このショッピングモールの中の安全を確保するために、ガシャットを使ってモール内のゾンビの駆除を行った。普通の状況ならかなり困難な作業だろうが、俺らにはガシャットがある。そのおかげで、あまり苦労することなく駆除を完了できた。

葛城「ふぃ〜終わったな」

美紀「はい。あんなにいっぱい居たのが嘘みたいです。」

葛城「そうだな。」

とりあえずここの安全を確保したので、

葛城「さて、これからどうする?」

と、今後の方針を相談することにした。

 

 

side悠里

由紀ちゃんが「遠足に行こう!」と、急に言い出した。由紀ちゃんが突然こう言ったことを言い出すのは珍しくない。でも…………

悠里「忘れたの?学園生活部は学校に外にでちゃいけないのよ?」

他の学校行事はともかく、遠足は学校の外に出る行事だ。普通の状況なら歓迎するのだが、今は外にかれらが徘徊しているので、あまり安易に外に出られないのだ。だから、できれば外に出たくないのだ。

だが、

由紀「ええ〜いいじゃ〜ん行こうよ〜学校行事だよ〜?」

と、引いてくれない。

どうしたものかと考えていると、

胡桃「いいんじゃないか?遠足。私は賛成だぜ」

と、もう1人の部員である胡桃がそう言った。

胡桃「りーさんはどうなんだ?遠足。行こうぜ、せっかくだし」

悠里「うーんそうね………。じゃあとりあえず、顧問のめぐねえに聞いてみてくれるかしら?書類を作って提案してきたら?」

由紀「ふっふっふ〜、実はもう書いてあったりして!」

と言い、手書きの提案書を見せてきた。

悠里「いいんじゃないかしら。じゃあ、それをめぐねえに見せてきてくれる?」

由紀「は〜い!」

そう言って、元気に学園生活部の部室から職員室へと移動していった。

悠里「どういうつもり?賛成なんかして。」

胡桃「いい機会じゃないか。物資も足りなくなってきてたんだろ?もう購買部にもないし。外に行かないと死んじまうぜ?」

悠里「………それもそうね。」

危ないけど、物資が足りないのも事実だ。由紀ちゃんの遠足の案に乗って、外に行くことを決定した時、扉が開いた。

由紀「おっけーだってさ〜」

悠里「あらそう?よかったわね」

胡桃「んで?どこに行くんだ?」

由紀「え〜っと……めぐねえ、どこだっけ?」

と、誰もいない空間に向かって由紀ちゃんは話しかける。

実はめぐねえはある1件ですでに亡くなってしまっている。だが、それを受け入れられない由紀ちゃんは、めぐねえの幻覚を見ているのだ。他にも、教室に友達がいるように見えたりと、現実を見れていないところがある。だが、由紀ちゃんの笑顔が私たちの心の支えになっていることも確かな上、私たちは専門家ではないので、現状維持しかできず、解決できないのが実際だ。だから、私たちはそれに合わせて生活している。

由紀「ああ!そうそう。近くのショッピングモールだったよね〜。いや〜久々のお外だな〜。何買おっかな〜」

と、ご機嫌だ。

胡桃「由紀は相変わらずだな。あんまりはしゃぐなよ?周りのお客さんに迷惑になるからな。」

由紀「は〜い!」

悠里「じゃあ今日はそろそろ寝ましょうか。明日はみんなで早起きしましょう?めぐねえもそれでいいですよね?」

由紀ちゃんの反応からして、OKだったようなので、寝室へ移動する。そして、

皆「おやすみ〜」

そう言って、夢の世界へ入った。

 

 

悠里「う〜ん…………」

???「やあこんにちは。いや、こんばんはと言うべきかな?」

悠里「…………あなたは誰なの?この学校の関係者じゃないわよね?」

???「そんなに怖がらなくてもいいじゃないか。

ふむ、あなたは誰……か。今は事情があって名乗れないが…………まあ、神とでも呼んでもらおうか。なにせ私は神だからなァ!」

悠里「そんなことはいいわ。なんの用なの?ここはどこなの?」

神「ここは君の夢の中だ。そして私の要件は、これだ。」

自称神の手には、空色の本体に半透明の板のついた、不思議なものがあった。

神「これはガシャットと言われるものでね。これを君たちにあげよう。きっと役に立つはずだ。使い方はスイッチをいれるだけだ。そうしたら身を守るものが出てくる。」

悠里「………信用ならないわ。いきなりでてきてそんなものを渡すなんて。」

神「だろうな。ならば君にさらに2ついいものをやろう。それで信用してくれるはずだ。」

そういって、その男は横にチェーンソーのようなものがついた黒と紫の本体に、2つのボタンと銃口のようなものがついたものを渡してきた。

神「それはバグルドライバーⅢと言ってね。さっきのガシャットを使って変身ができるのさ。私の開発したものだ。まあ普通のものとは違って少し改造しているがね。」

悠里「へぇ…………で、もう1つって何」

少しつっけんどんな態度になってしまったが、相手は気にする風もなくこう言った。

神「それは私の名前だァ!私の名前は檀黎斗神!幻夢コーポレーションの元社長だァァァ!」

声が大きいし、自称神。怪しさMAXだが、本当なのだろう。自信満々だからだろうか、なぜかそう思えた。

黎斗神「私は君たちの味方だ。せっかく見つけた生存者だ。助けてやりたい。」

真意は測れないが、信用するしかない。

悠里「でもそれをどうやってわたすのよ。ここは夢の中よ?」

黎斗神「ふっ。神の才能に不可能はない。すでに君たちの部室に置いておいた。さあ、目を覚ますが良い。もう朝だ。」

悠里「え……?」

 

 

気がつくともうすでに朝だった。ちょうど胡桃も起きたようで、

胡桃「おはようりーさん。……顔色が悪いけど、眠れなかったのか?」

と、心配してくれる。

悠里「いいえ…大丈夫よ。ちょっと変な夢を見ちゃって………」

胡桃「へぇ〜どんな夢なんだ?」

悠里「ええと………黎斗神って名乗る男の人がガシャットっていうものとバグルドライバー?ってやつをもって来るって夢よ。」

胡桃「なんだよそれ。笑っちゃうな〜自称神だろ?」

悠里「そうよね〜ビックリしちゃったわ。」

そんなことを話しながら部室へはいると………

胡桃「なあ………あれって」

悠里「そんな…………まさか………」

自分がいつも座っている机の場所に、夢に出てきたドライバーとガシャットが、カードを添えられて置いてあった。

カードには、「神の才能にひれ伏すがいい!ヴェハハハハハハァァァ!」

と書いてあった。




はい。みんな大好き檀黎斗神の登場ですね。彼らCRの面々が今後どのように関わっていくのか…………楽しみにしておいてくださいね!
そして今後の投稿予定ですが、恐らく明日明後日は投稿できると思いますが、その後は未定です。
ですが絶対に失踪せず最後まで書くので、気長にお待ちください。


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第9話

はいどうも。よこちょです。
今回は今までの中で最長になっております。(クオリティは以下略)
そしてようやく学園生活部のみんなと葛城たちが合流します。
この出会いが今後彼らにどんな影響を与えるのか………!
では!第9話、どうぞ!
※今回ちょっと葛城が変態と化します。ご注意ください。


前回のあらすじ

悠里「自称神を名乗る男からバグルドライバーⅢとガシャットというものをもらった。彼はあまり信用ならないが、今は受け取るしかない。」

葛城「今後の予定を話し合おう!」

黎斗神「私の神の才能を受け取れェェェ!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

side悠里

胡桃「なあ………あれって……」

悠里「そんな………まさか………」

私のいつも座っている机の場所に、バグルドライバーⅢと水色のガシャットが置いてあった。

胡桃「どういうことだ?夢じゃなかったのか?」

胡桃がそう聞いてくる。

悠里「わからないわ………でも、あの夢が本当なら………」

私は水色のガシャットを手に取った。側面には、「スクールライフ」と書かれていた。

意を決してスイッチを押してみると、透明感のある声で

『スクール・ライフ!』

と鳴った。そして、目の前にたくさんゲーム画面のようなものが現れた。

胡桃「なんだこれは!?」

と胡桃がびっくりしている。私自身、驚きすぎて声が出ていない。

恐る恐る目の前の野球バットの映っている画面をタッチすると、他の画面が消え、野球バットの画面だけが残った。そして一瞬光った。唐突だったので目をつぶってしまった。目を開けると、目の前に金属バットが浮いていた。

悠里・胡桃「……………え?これだけ?」

ハモってしまった。でも、これだけだろうか?

胡桃「夢にまで出てきてこれだけか………でもどうする?これ。」

悠里「………一応、持っておきましょう。ないよりはあったほうがいいわ。」

胡桃「…そうだな。」

悠里「あら、もうこんな時間!胡桃 、由紀ちゃんを起こしてきてくれる?私は簡単な朝ごはん作るから。」

胡桃「はいよ〜っつっても、起きるかな………」

さて、うじうじ考えてもしょうがない。まずは朝ごはんを作らなくっちゃね。

 

朝ごはん後

悠里「由紀ちゃん。他のクラスは授業中だから、静かにね?」

由紀「は〜い(小声)」

朝ごはんも終わり、今はめぐねえの車に乗るために移動している。胡桃は、先に行って車を取ってきてもらっている。

………今更だけど、運転任せて大丈夫かしら……?

”かれら”に気づかれないようにそっと玄関まで出ると、ちょうど胡桃が車を持ってきたところだった。

胡桃「乗って!」

悠里「ええ。わかったわ。」

由紀「もぉ〜めぐねえも早く!」

全員が乗ったことを確認した胡桃は車を出し、学校の外へ出た。途中”かれら”を何人か跳ね飛ばしてはいたものの、危なげなく運転をしていた。

由紀「胡桃ちゃん運転うまいね!どっかで習ってたの?」

胡桃「いや?習ってないぞ。独学だ。」

由紀「へぇ〜。すごいねぇ〜」

胡桃「ああ。なかなかのもんだろ?いや〜いつもはハンドル操作じゃなくてパッドで操作するからな。できてよかったぜ。」

悠里「へぇー、いつもはパッドで………ん?胡桃、もしかして独学したものって………」

胡桃「ん?ああ。マ○オカート。」

悠里・由紀「………………」

悠里・由紀「ええ〜〜〜っ!!」

私と由紀ちゃんの絶叫がこだました。

 

時は流れ、ショッピングモール前

由紀「着いた〜!」

悠里「ゲーム感覚の運転で着いたって考えると、ちょっと複雑だけどね。」

胡桃「まあ、着いたんだからいいじゃんいいじゃん!さ、中に入ろうぜ!」

 

少女散策中………

胡桃「そっちはどうだった?」

悠里「何も無かったわ……」

由紀「風船くらいしかなかったよ?どうしちゃったのかな?」

悠里「きっと、品ぞろえが悪かったのね。しょうがないわ。こういうこともあるわよ。」

由紀「ねえねえ!でも上の階には洋服とか一杯あるよ!行こうよ!」

胡桃「ああ。久々にショッピングだ!」

悠里「……あんまりはしゃぎすぎないでね?」

由紀・胡桃「は〜い!」

そうしてしばらくの間、私たちはつかの間のショッピングを楽しんだ。

 

side葛城

葛城「………なあ、美紀。」

美紀「……なんでしょう?」

葛城「………声、聞こえねえか?」

美紀「………聞こえますね。」

葛城「………なあ。」

美紀「…………はい。」

葛城「………見に行かねえか?」

美紀「行きましょう!(即答)」

葛城「即答かよ………まあいいけど。念のため、これ持って。」

といってバンバンシューティングを渡し、扉から外へ出た。

太郎丸「ワン!」

葛城「すまん太郎丸!ちょっと留守番しといてくれ!」

 

洋服売り場にて

side葛城

久々に人の声がしたので、様子を見に来た俺たち。

そこで俺は、とんでもないものを見てしまった。

葛城「………なあ、美紀。」

美紀「………はい。なんでしょう。」

葛城「……今まで、ありがとう………(ドサッ)」

美紀「ちょっ!どんだけ耐性ないんですか!早く起きてください!失礼です!相手は初めてあった他の生存者ですよ!」

葛城(鼻血ダラダラ)

美紀「ちょっ!ホントに、早く!起き!てっ!」

葛城(チーン)

由紀・悠里・胡桃「…………(なんなんだ…この人は………)」

 

それは少し前の出来事だった。

 

第三者視点

部員3人は服屋でショッピングを楽しんでいた。

胡桃「なあなありーさん!コレ可愛くねえか?」

由紀「でもこっちもかわいいよ〜!」

悠里「そうね……じゃあどっちも買いましょうか。せっかくなんだし。」

胡桃「おおっ!りーさん太っ腹!」

由紀「りーさんありがとう!」

という具合に、満喫していた。

そして場所は変わり…………女性用下着取扱店

胡桃「なあ〜りーさんサイズいくつだ?」

悠里「もう。そんなこと聞かないの。」

由紀「これ可愛い〜」

胡桃「おっ。これとか動きやすそうだな。試してみるか。」

そう言って試着室に入り……

胡桃「おっ。これならシャベル持ってても大丈夫そうだな。これにするか!」

と吟味したり、

悠里「う〜ん(ちょっと大きめだけど……これにしようかしら……)」

と悩んで試着してみたりと、すごく満喫していた。

そう。そばに彼が来ているとも知らずに。

そして…………

 

葛城(鼻血ダラダラ)

由紀「ちょっ!起きて!くだ!さい!」

と、今に至っている。

当然彼女たちはここに男がいるなんて知らないからこそああいう風にできたわけで………

悠里・由紀・胡桃(は………恥ずかしい…………)

と、絶賛赤面中である。

そんななかで、彼がようやく意識を取り戻し………

葛城(ムクッ)

美紀「あ。やっと起きましたか。変た……葛城さん。」

葛城「ちょっと待て。俺は変態ではないぞ。ただあのその………あれがあれでちょっと耐性がないだけだ!」

美紀「女性の下着姿見て鼻血出した時点で言い逃れできない気がするんですが………」

葛城「やあそこの3人。待たせたね!(華麗なるスルー)

俺の名は葛城義彦。巡々丘高校の二年生だ。よろしく!」

悠里・由紀・胡桃「よ、よろしくお願いします……(小声)」

そして後ろを向き、

由紀(どうする!?変態さんだよ!)

胡桃(絶対やばいやつだぞ……あいつ……)

悠里(でも初めて会った生存者だし……女の子の方はまともそうだし………)

胡桃(じゃあ話してから決めてみるか………)

悠里(そうね………そうしましょう。)

そして前を向き、

悠里「じゃあ自己紹介させてもらうわね。私は若狭悠里。同じ学校の3年生よ。りーさんって呼んでちょうだい。」

胡桃「同じく3年の恵飛須沢胡桃だ。よろしくな。」

由紀「同じく3年の丈槍由紀だよ〜。よろしくね!」

美紀「ええと………同じ学校の2年生の直樹美紀です。よろしくお願いします。先輩。」

葛城「んじゃ改めて。同じく2年の葛城義彦だ。断じて変態じゃない。よろしく。先輩。」

由紀「先輩…………!いい響き……!ねえ!もう1回言って!」

美紀「??ええと、先輩?」

葛城「いいっすよ。先輩。」

由紀「はうぅ!」

葛城「………そんなに嬉しいんすか?先輩呼び。」

由紀「もちろんだよ!先輩って、なんかすっごいいいよ!」

葛城「アバウトだな……まあいっか。ところで、なんで先輩方はここに?」

悠里「私たちは、部活の一環で遠足に来たのよ。」

葛城「へぇ〜部活っすか。いいですね。なんて部活ですか?」

悠里「学園生活部よ。」

美紀「てことは……学校で生活されてるんですか?」

胡桃「そうだぞ。慣れれば結構快適なもんさ。」

美紀「へぇ〜。いいですね。なんか。そういうのって。」

葛城「ああ。俺らずっとここだったしな。」

由紀)チョイチョイ

悠里「ん?どうしたの?」

由紀「ねえりーさん。この二人、学園生活部に入れてあげようよ!」

悠里「え?それは構わないけど……どうして?」

由紀「せっかく後輩を見つけたんだよ!後輩だよ!いいじゃん!」

胡桃「お前なぁ……二人の意見も聞かないで……」

葛城「俺は構わないっすよ。というか、むしろ入れてくれませんか?学園生活部。」

美紀「そうですね……そろそろ外にものを取りに行かなきゃいけないとも思ってましたし。そちらがよろしければ、是非入れてくれませんか?」

悠里「ええ。歓迎よ。新入部員を探していたところなのよ。めぐねえも胡桃もいい?」

胡桃「いいぜ。よろしくな!2人とも。」

葛城(あの……悠里さん…)

悠里(りーさんでいいわ。どうしたの?)

葛城(じゃありーさんで。その……めぐねえって……誰ですか?誰もいないように見えますが………)

悠里(……めぐねえは、もうこの世にいない、私たちの部活の顧問の先生よ。でも、由紀ちゃんはまだ受け入れられないらしくって……幻覚として見えてるみたいなの。でも、解決方法がないから、ごめんだけど、合わせてくれないかしら?)

葛城(了解です。)

美紀も同じことを思っていたようで、葛城がそのことを説明すると、一応納得してくれたようで、合わせるようだ。

葛城「じゃあ先輩方、これからよろしくお願いします!」

美紀「お世話になります!」

悠里「これからは部活の仲間なんだし、これからは助け合っていきましょう。」

胡桃「そうだな。葛城には力仕事とか手伝ってもらおうかな。」

葛城「ええ。是非頼ってください。」

由紀「これからよろしくね!みーくん!よっくん!」

美紀「みーくんって……あだ名ですか?」

葛城「よっくん………初めて呼ばれたぞ……」

由紀「うん!美紀だからみーくん!義彦だからよっくんなの!」

美紀「美紀でいいのに……」

葛城「好きに呼んでいいですよ。よろしくお願いしますね。先輩。」

由紀「はうぅ!」

葛城がそういうと由紀が反応し、みんなで笑いあった。

そして今から移動しようという時に、

葛城「あの、すみません。」

悠里「ん?なあに?」

葛城「………犬連れてきていいですか?俺らが飼ってたんです。ちゃんと餌やりと散歩はするんで。」

胡桃「犬か!いいな!」

由紀「犬!可愛いよねぇ〜名前なんていうの?」

美紀「太郎丸です。可愛いですよ。」

悠里「もちろんよ。でも、早く連れてきてね?」

葛城「了解っす。んじゃ、先に玄関行っててください。」

そう言って部屋まで走った。

 

部屋の中

第三者視点

 

葛城「お〜い、太郎丸〜。外いくぞ〜。」

太郎丸「ワン!」

威勢のいい返事とともにリードを外してこっちへ向かってくる。

葛城「相変わらず首輪抜けるね〜。まあいっか。んじゃ、行くぞ!」

太郎丸「ワン!」

片手に太郎丸を抱え、もう片方の手で餌やトイレを持って、入口へ向かった。

 

 

玄関前

第三者視点

 

葛城「お待たせしました!ところで、みなさんはどうやってここまで来たんですか?」

胡桃「私が運転する車だ。乗ってくか?」

葛城「そうしたいんですが……それ、5人乗りですよね?りーさんに胡桃さんに由紀さんに美紀にめぐねえも乗ったら、一杯じゃないですか?」

悠里「あっ……!詰めればなんとか………」

葛城「いや……女子と近づくと死にかけちゃうんで……」

美紀「………じゃあ、走ってきますか?」

葛城「鬼か?あんた。いや、心配すんな。俺にはこれがある。美紀、太郎丸頼んだ。」

そう言って葛城は太郎丸を託し、ケースから爆走バイクを取り出し、スイッチを入れた。

そしてバイクを出し、

葛城「俺はこれでいくんで大丈夫です!心配せず先に行ってください!」

胡桃「お前……それどこで…」

葛城「近所で拾いました。結構便利ッスよ。」

悠里「………ちょっと後で話があるから、学校についたらちょっと来て。」

葛城「??は、はい。」

胡桃「んじゃ、先導するからついてきてくれ。」

葛城「了解っす。んじゃ、また後で。」

悠里「ええ。また後で。」

胡桃「ちゃんと付いてこいよ?」

由紀「後でね〜」

美紀「周りに注意してくださいね!」

 

そういって、彼らは学校へと走り出した。

来た時は3人だった部員を5人に増やして。

この出会いがまた、彼の人生を大きく変えることとなった。




はい。5000文字オーバーですね。
初めてこんなに長いのかいたんで間違ってたら指摘よろしくお願いします。
「スクールライフガシャット」と「バグルドライバーⅢ」の詳細はまとめて投稿しますのでしばしお待ちを。
次回の投稿は明日になると思いますのでお待ちください。
ではでは〜


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第10話

はいどうも。最近俺ガイルのアニメをまた見返してるよこちょです。原作は全部持ってるんですが2期のOPが好きすぎるんですよね。
まあそんな話は置いといて、冬休みが今日で終わる人もいるんじゃないでしょうか?
まあ俺も終わるんですが。
宿題やってない人は…………頑張ってください(丸投げ)
ではでは、そんな中(主の)冬休みラストの投稿!
第10話!どうぞ!



前回のあらすじ

葛城「生存者の先輩方と出会い、学園生活部に入れてもらえることになった。でもガシャットを使ったら後でこいと呼び出された。………俺なんか悪いことしたっけな………」

悠里「遠足先で、同じ学校の生存者2人と出会った。由紀ちゃんの提案で入部してもらったんだけど……葛城くんはガシャットを持っていた。どこで手に入れたかとかを、詳しく聞く必要がありそうね。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

帰る道中

胡桃「………なあ、りーさん。」

悠里「ん?なにかしら?」

胡桃「……もし私が感染したら………躊躇わないで欲しい。」

悠里「え………?」

胡桃「もしもの話だぞ!私は………自分のせいでみんなを感染させたくないんだ。」

悠里「………………」

胡桃「こんなこと頼めるのはりーさんくらいだからさ。だから、頼んだ。」

悠里「………わかったわ。」

胡桃「ありがとう。りーさん。」

 

こんなことがありながらも、一行は学校へと近づいていった。

そして………

 

 

学園生活部 部室

第三者視点

 

由紀「着いたよ!ここが、学園生活部の部室だよ!」

葛城「へぇ〜。結構広いんだな」

美紀「驚きですね…学校をこんなふうに使うなんて……」

胡桃「そうだろ?あ、荷物はそこに置いといてくれ。」

葛城「了解っす。」

悠里「じゃあひと休みしたら、学校内を案内するわ。」

美紀「別に今でも大丈夫ですよ?」

葛城「1回動かなくなるともう1回動くのキツいんで……今でもいいですかね?」

悠里「構わないわよ。胡桃、由紀ちゃんと一緒にいてくれるかしら?」

胡桃「了解!由紀〜荷物片付けちゃおうぜ〜」

由紀「は〜い!」

葛城「………なんかすみません。」

悠里「いいのよ。さ、行きましょうか。」

そうして2人はりーさんに学校のことを案内されながら教えてもらった。

 

悠里「とりあえず、こんなものかしら?」

美紀「そうですね。わざわざありがとうございます。」

悠里「いいのよ。これも助け合いよ」

葛城「んじゃ、部室に戻りますか。」

悠里「………ねえ。美紀さん。先に行っててもらっていいかしら?私はちょっとこの人に用事があるの。」

美紀「わかりました。なるべく早めにお願いしますね?」

悠里「わかってるわよ」

そう言って美紀は先に部室に戻った。

葛城「………で、話ってなんですか?」

悠里「あなたが持ってるそのガシャットのことよ。」

葛城「?これがどうかしましたか?」

悠里「実は……私も似たようなものを持っているのよ。」

と言って、スクールライフガシャットを見せた。

葛城「これは……スクールライフガシャット?」

悠里「ええ。夢に出てきた男がドライバーと一緒に、いつの間にか部室に置いていったのよ。」

葛城「夢に出てきた男が?」

悠里「そうよ。確か名前は……檀黎斗神だったかしら?」

葛城「檀黎斗神………ってあの幻夢コーポレーションの元社長の?」

悠里「知ってるの?」

葛城「名前は。俺のガシャットもその黎斗神が開発したものなんです。」

悠里「そうだったの……」

葛城「あの、すみません………その置いてあったドライバーを見せてくれませんか?」

悠里「ええ。いいわよ。」

そう言ってバグルドライバーⅢを差し出す。

葛城「これは………チェーンソーと銃口?」

悠里「ええ……バグルドライバーⅢっていうらしいわ。」

葛城「これ、使ったことは?」

悠里「ないわ。怪しいもの。」

葛城「………これ、俺が持っててもいいですかね?使えるやつがあるかもしれません。」

悠里「ええ。いいわよ。私が持ってても戦えないもの。」

葛城「ありがとうございます。ってこれ、腕につけられるのか。」

葛城はドライバーを腕につけておくことにした。

悠里「それと、タメ口でいいわよ。別に。」

葛城「すみません……なんか抜けなくって」

悠里「徐々にでいいわ。敬語だと、ちょっと距離を感じちゃうから。」

葛城「わ、わかった。」

悠里「ええ。頼むわね?」

葛城「えと……部室戻る?」

悠里「そうしようかしら。行きましょう?」

葛城「了解」

そう言って二人は部室へ戻った。

 

学園生活部部室

 

由紀「も〜二人とも遅いよ〜!」

悠里「ごめんなさいね。ちょっと話し込んじゃって」

由紀「もう〜。あ!そうだ!今日の晩ご飯は何〜?」

悠里「そうね……シチューでいいかしら?」

由紀「いいね〜!シチュー大好き!」

悠里「じゃあちょっと待っててくれるかしら?先にお風呂にでも入ってて」

由紀「は〜い!胡桃ちゃん!みーくん!行こっ!」

胡桃「おいおい!はしゃぎ過ぎだぞ!」

美紀「ちょっ!待ってください!由紀先輩!」

悠里「あんまり長く入ると、シチュー冷めちゃうわよ〜」

由紀「わかってる〜」

悠里「まったくもう……相変わらずね。」

葛城「………シチュー、手伝いますよ。」

悠里「あ、ありがとう。じゃあ野菜取ってくれるかしら?」

葛城「りょ〜かいっす。」

 

こうして夜は更けていった。

 

葛城(後でこのドライバー………試してみようかな?)




はい。こんな感じですね。
予定では次回で初変身を出す予定です。
その後にドライバーの詳細を出そうかなと考えています。
次回の投稿が何時になるかは未定ですが、気長にお待ちください。
では、次回の投稿まで!


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第11話

待っていた人は投稿遅れてすみません!
学校が始まってテストがあった故遅れました。

さて、今回で漸く葛城がベルトを使用して変身します。
音声が違うのはベルトが違うからだと思ってください。

では、久々の投稿第11話!どうぞです!

※言い忘れていましたが、幻夢コーポレーションは巡々丘市にあるという設定です。


前回のあらすじ

由紀「よっくんとみーくんが入部したよ!」

悠里「葛城くんの持ってたガシャットも檀黎斗神という男が作ったものだった。……でもなぜ私に?」

葛城「りーさんからドライバーを預かった。使えるガシャットを探してみよう。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

その日の夜

side葛城

みんなが寝静まったあと、俺は1人、寝床を抜け出していた。別にトイレに行きたいとか他の人の物を漁るとか、そういう理由ではない。

そう、俺は、

葛城「このドライバー使ってみたい」

ただそれだけの理由で抜け出している。

実戦で初めて使って使えなかったら困るからね。

ちなみにこのことは誰にも伝えていない。ベルトの存在はりーさんや胡桃、美紀は知っている。

でも………なんかこういうの1人でやるのってワクワクするじゃん?

というわけで只今1人で校舎を歩いている。

葛城「さてと………ここでいいかな?」

たどり着いたのは音楽室。ここならば音が漏れることもあるまい。

葛城「さて………このドライバーを腰に引っつけてっと」

腰に当てるとベルトが腰に巻かれた。

葛城「おお。こういうもんなのか。さて……この穴にガシャットを入れるのかな?よっと」

とりあえず一番最初に拾ったマイティアクションX

を入れてみることにした。

『マイティアクションエーックス!』

葛城「これを……ここに………っと」

『ガッチョーン』

葛城「この横のボタン押すのかな?」

『バグルアップ』

『ロード マイティアクション』

『チェンジ』

という音声がベルトから流れ、俺の姿が変わった。

見た目は前に調べた時に見たゲンムというライダーに似ている。でもちょっとフォルムが刺々しいかな?

葛城「へぇ………こんなふうになるのか……。別のも試してみるかな」

試してみたところ、原理的にさせないマイティブラザーズXXと、ギリギリチャンバラ以外は変身することができた。全部フォルムは刺々しいが、だいたい見た目は一緒だった。あと色が黒い。

唯一デンジャラスゾンビで変身した時だけ音が違ったし、全身白かった。

葛城「とりあえずこれで検証完了かな。変身解除は……ガシャットを抜くのか?」

『ガッシューン』

ガシャットを抜くと変身が解除された。

葛城「おお、戻った。さて、疲れたし………寝る…………か……………うっ……」

そう思って扉の方を向いた瞬間、急速に意識が途切れた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次の朝

胡桃side

 

胡桃「う〜ん!よく寝れたなぁ」

 

私は伸びをしながら布団から出た。

 

胡桃「他に起きてる人は………りーさんに葛城?りーさんはともかく、なんであいつも?」

 

不思議に思いながらも身支度を整え、部室へと移動した。

 

 

 

学園生活部部室

胡桃「おはよ〜」

 

悠里「あら。おはよう。今日は早いのね。ところで、葛城くんを見なかったかしら?」

 

胡桃「葛城を?ここにいないのか?てっきりここにいるのかと」

 

悠里「私が起きた時にはすでに布団は空だったわ。そんなに早起きしてるのかしら?」

 

胡桃「う〜ん。ちょっと探してみるよ」

 

悠里「お願いできる?」

 

胡桃「ああ。任せとけ!」

 

そう言って私は葛城を探しに行った。

そして……

 

 

音楽室

第三者視点

 

胡桃「あとはここだけか……ここにいなけりゃ外ってことになるよな……いなかったらどうしようか」

 

胡桃は少し心配しながらも葛城を探していた。

 

胡桃「入ってみるか」

 

そう言ってドアを開けると………

目の前に倒れている葛城を発見した。

 

胡桃「……っ!葛城!おい葛城!しっかりしろ!」

 

呼びかけながら体を揺らすと、葛城は目を開けた。

 

葛城「ううっ……胡桃……?」

 

胡桃「音楽室だ。全く……なんでこんなところに?」

 

葛城「ちょっとドライバーを試してみたくってさ。昨日のうちに布団抜け出して試してたんだよ。」

 

胡桃「へぇ…。全く……次は勝手に抜け出すなよ?誰かに言ってからやってくれ。」

 

葛城「へいへい。わかりましたよっと。」

 

胡桃「ホントか?」

 

葛城「ホントホント。じゃ、部室戻ろうぜ。腹減ったわ。」

 

胡桃「ああ。って、いつの間に敬語外れたんだな。」

 

葛城「ああ。昨日りーさんに言われちゃってさ。敬語外してくれって。つけた方がよかったか?」

 

胡桃「いいや。むしろ外しといてくれ。その方が喋りやすい。」

 

葛城「了解。んじゃ、部室行こうか」

 

胡桃「ああ。」

 

そう言って二人は連れ立って部室へと戻った。

彼らを見ている鳥のような機械には気が付かず。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

side黎斗神

 

黎斗神「なるほど。あのドライバーは葛城という男の手に渡ったか………面白い。」

 

貴利矢「ん?神、何見てんだ?」

 

黎斗神「巡々丘高校の様子だ。今そこに5人の生存者を確認した。」

 

貴利矢「まじかよ!助けに行った方がよくないか?」

 

黎斗神「その必要は無い。そこにいる生存者のなかに、仮面ライダーに変身できる男がいる。」

 

貴利矢「ってことは……運良くあのケースを拾えたんだな。」

 

黎斗神「そうらしいな。そして以前落としたマイティアクションXのβ版を彼が拾っていたとは………偶然もいいところだ。」

 

貴利矢「……………お前、落としてたのか。」

 

黎斗神「………ああ。以前道でつまづいて川に落ちて死んだことがあってな。その時に落とした。」

 

貴利矢「このアホが………まあなんにせよ、生存者が拾ってくれたなら結果的にはよかったんじゃないか?」

 

黎斗神「ああ。不幸中の幸いってやつだろうなァ。さすが私の神の才能だァ!死すら人の役に立つとはァ!」

 

貴利矢「はいはい。んで、どうやって確認してるんだ?」

 

黎斗神「以前風都という都市に取材に行ったことがあってなァ。そこにいた仮面ライダーの変身アイテムを参考にして作ったものがある。それで確認しているのさ。」

 

貴利矢「なるほど。んじゃ神、今日の見張り、頑張りますか。」

 

黎斗神「私は少しやることがある。君たちだけでやっておいてくれたまえ。」

 

貴利矢「ったくしゃあねえな。いいぜ。やっといてやるよ」

 

黎斗神「感謝するぞ九条貴利矢ァ」

 

九条貴利矢が退出したのを確認したあと、私は監視カメラの映像を確認していた。

 

黎斗神「こいつが襲撃者かァ………手に持っているのは…………以前風都へ行った時に見かけたガイアメモリか?」

 

ガイアメモリは風都だけでなくここにまで流通していたのか………それとも個人が持ち込んだのか………憶測すればキリがないので、ひとまず解析を行うことにした。

 

黎斗神「こいつが持っているのがガイアメモリならば横にアルファベットがついているはずだ………どこだ……あったぞ。この文字は………Eか?音声を聞いて見なければわからないな………これか」

 

音声を流すとスピーカーからはノイズともにガイアメモリから流れた音声をかろうじて拾っていた。

スピーカーから流れてきた音声。

それは、「エレシュキガル」だった。

 

黎斗神「エレシュキガルか……確か、メソポタミアの冥界の主人だったか?疫病と死を司っている部下がいたな………なるほど。今回のパンデミックならばぴったりだろうなァ。死人を増やしたのはエネルギーのためか?

……やはり分析して正解だった。ならば私の神の才能で対抗策を作るのみだァァァ!ヴェハハハハハハ!」

 

私は高笑いをし、開発に取りかかった。

エレシュキガルに対抗できるガシャットを作らねばなるまい。

 




襲撃者の使用していた能力が判明しましたね。
ここでまさかのガイアメモリの導入。
さあ、どうなるのか!
気長にお待ちください。

※このエレシュキガルメモリは自分がやってるFGOの設定と独自解釈で能力を決定したので、元の神話とズレてる可能性大です。ご了承ください。


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第12話

お待たせした!
いや〜インフルエンザになってしまって時間が出来たのでようやく投稿できました。
病気も案外役立ちますねw
では、第12話。どうぞ!


前回のあらすじ

葛城「ガシャットとドライバーを使って変身してみた。なれはしたのだが、かなり体力を使うようだ。実戦で使えるようにしなければ。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

学園生活部部室

side悠里

悠里「あっ。おかえりなさい。どこにいたの?」

 

葛城「いや〜昨日こっそり寝床抜けだして変身してみたはいいんだけど、予想以上に体力を使っちゃって……音楽室でぶっ倒れてた」

 

悠里「あらあら………心配したのよ?次からはちゃんと言ってから行ってね?」

 

葛城「わかってますって」

 

悠里「もう………。あっそうだ。胡桃、美紀さんと由紀ちゃんを起こしてきてくれるかしら?朝ごはんは出来てるから葛城くんは配膳を頼めるかしら?」

 

胡桃「おう。任せとけ!」

 

葛城「了解。皿どこにある?」

 

悠里「あっちの棚よ。敬語、抜けてきたわね。」

 

葛城「ああ。お蔭さまでな。」

 

悠里「ふふ。嬉しいわ。じゃあお皿、よろしくね。」

 

葛城「あいよっ」

 

しばらくして………

 

第三者視点

 

 

由紀「おはよ〜」

 

美紀「おはようございます。」

 

葛城「おっ、おはよう。」

 

悠里「二人ともおはよう。昨日はよく眠れたかしら?」

 

由紀「バッチリだよ!」

 

美紀「お蔭さまで、よく眠れました。」

 

悠里「それはよかったわ。」

 

胡桃「なありーさん。今日の朝食はなんだ?」

 

悠里「今日はパスタにしてみたわ。さ、席について」

 

みんなが席に座ったあと、

 

全員『いただきます!』

 

葛城「りーさん料理うまいな……」

 

美紀「そうですね……二人でショッピングモールにいた時は二人ともあんまり料理が得意じゃなくて同じような料理しか食べられませんでしたからね。」

 

葛城「悪かったな。料理がヘタで」

 

美紀「別に攻めてないですよ。……おかげで寂しくなかったですし(ボソッ)」

 

葛城「ん?なんか言ったか?」

 

美紀「い、いいえ!何も言ってないです!」

 

葛城「ん?そうか……やっぱりうまい!」

 

悠里「ふふふっ。そう言ってもらえると、作りがいがあるわ。おかわりもあるから、食べてちょうだい」

 

由紀「はい!おかわりしたい!」

 

胡桃「まったく……もう少し味わって食ったらどうだ?」

 

由紀「食べてるよ〜。美味しいから早いんだも〜ん」

 

悠里「でも、行儀悪く食べちゃダメよ?ゆっくり食べた方が体にもいいし」

 

美紀「そうですね。喉に詰まったりしたら大変ですし。」

 

由紀「は〜い。ゆっくり食べま〜す」

 

こうしてゆっくりと朝は始まった。

そして…………

 

由紀「ねえねえみんな!」

 

葛城「どうした?」

 

悠里「なにかあったの?」

 

胡桃「なんか企んでないだろうな?」

 

由紀「胡桃ちゃんひどい!企んでないよ!もう〜。

提案があるだけだよ。」

 

美紀「提案?なにを提案するんですか?」

 

由紀「ふっふっふ〜。みんなで運動会しよう!」

 

葛城「運動会……?」

 

胡桃「また唐突な………」

 

悠里「なんで運動会やりたいの?」

 

由紀「ええっとね〜。もっと仲良くなりたいから!よっくんとみーくんと!」

 

美紀「………いいんじゃないですか?(す、ストレートだ)」

 

葛城「あ、ああ。俺は賛成だぞ(正直に言われると恥ずかしいな……)」

 

由紀「やった〜!ねえりーさん、胡桃ちゃん、いいでしょ?」

 

胡桃「まあ、いいんじゃないか?な?りーさん。」

 

悠里「ええ。二人とも部員になったんだし、一緒に楽しみましょう?」

 

葛城・美紀「ああ!(はい!)」

 

由紀「じゃあみんなで一緒に準備をしよ〜」

 

全員『オー!』

 

 

そうして、運動会の準備が始まった。




やっぱ短いな………
長めに書けるよう努力します。


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第13話

遅れました!
どうもあまり筆が乗らず………
息抜きに違った感じの作品も書いてみようかな?
では、第13話。どうぞ!


前回のあらすじ

全員『運動会をやろう!』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

side葛城

 

葛城「りーさん!籠と棒はここに置いといていいか?」

 

悠里「ええ、大丈夫よ。そこに置いて、籠と棒をくっつけといてくれるかしら?」

 

葛城「了解〜。おーい美紀〜手伝ってくれ〜」

 

美紀「わかりました〜。こっちが終わったらそっちに行きますね〜」

 

葛城「了解だ〜」

 

 

胡桃「メジャーで50m測って…テープをはってっと。よし、これで完成かな?」

 

由紀「胡桃ちゃ〜ん!こっち手伝って〜」

 

胡桃「はいよ。ちょっと待ってろ。今行くから。」

 

 

と、みんなの声が校舎内に響き渡る。

 

今は親睦会を兼ねて、学園生活部みんなで運動会をするための準備をしているのだ。

体育館やいろんな教室を走り回って運動会に必要なものを集め、一日かかってやっとこさ準備が整った。

あとは階段のところにポスターをはって出来上がりだ。

 

葛城「んじゃ、俺ポスター貼ってくるわ〜」

 

美紀「よろしくお願いしますね。」

 

悠里「気をつけてね?」

 

葛城「わかってるって。んじゃ、行ってくるわ」

 

俺はそう言ってポスターと画鋲を持って階段へと急いだ。

 

side黎斗神

黎斗神「宝生永夢。私は今日行くところがある。だから少しここを開ける。」

 

永夢「唐突ですね。それはいいですけど………どこに行くんですか?」

 

黎斗神「ああ。こいつのテストをしたくてね。生憎バグスターである私達にしか使えないがね。まあ心配はいらない。すぐに戻ってくるさ。」

 

永夢「わかりました。みんなに伝えておきます。ところで、それはなんですか?」

 

黎斗神「これは私の試作品だ。エクストリームガシャットという名前でね。風都という都市に居た仮面ライダーの変身アイテムを参考に作ってみた。これが完成すれば街の中をこの中に入って自由に捜索ができる。」

 

永夢「すごいじゃないですか!」

 

黎斗神「ハハハハハーッ!そうだろう?では行ってくる。」

 

永夢「はい。気をつけてくださいね。」

 

黎斗神「では………ハッ!」

 

そう言い残し、私はエクストリームガシャットの中へ移動した。

 

エクストリームガシャット内部

第三者視点

 

黎斗神「やはり私は神だ……!完璧に動くぞ!ヴェハハハハハハ!」

 

黎斗神は高笑いをしている。

内部は一応10人までは入れるようにスペースが作ってあり、なかなか快適だ。

さらにこの飛行能力もなかなかよく、バイクと同じか、それ以上のスピードが出る。

 

黎斗神「さて………あの男はどんな人物なのか………確かめさせてもらおうかァ………」

 

そう言って手に持っていたドライバーを後ろへ置き、機体の方向を巡々丘高校の方へ変え、飛んでいった。

 

 

巡々丘高校 階段

side葛城

 

葛城「ええっと……ここのコルクボードでいいかな?

っと。画鋲画鋲………」

 

ポスターを画鋲で止め、とりあえず作業が完了した。

 

葛城「これでよしっと。さて、部室に戻るか。」

 

そう思って後ろを振り向くと、目の前に鳥のような機械があった。

 

葛城「うおっ!?なんだこりゃ!?」

 

びっくりして思わず後に下がってしまった。

すると、中からいきなり声が聞こえた。

 

黎斗神「やあ。初めまして。私の名前は檀黎斗神。君のその手につけているドライバーやガシャットの開発者だ。」

 

葛城「檀黎斗神……あ!あの幻夢コーポレーションの?」

 

黎斗神「その通りだァ!よく知っているなァ。」

 

葛城「以前調べたことがあったので。ですが………たしか人だったような覚えがあるんですが………いつ鳥になったんですか?」

 

黎斗神「おっと。私としたことが、まだ出てきていなかったね。少し待ちたまえ。」

 

黎斗神さんはそう言って鳥から出てきた。

 

…………え?

 

葛城「鳥から人がーッ!」

 

黎斗神「これは鳥ではない。ガシャットなのだ。そして私は1度死んでいてね。バグスターとして復活したのさ。」

 

葛城「は、はあ。そうなんですか。(1回死んでる?なんだそれは…………)と、ところで、なんでこんなところに?」

 

黎斗神「私は君に会いに来たのさ。どんな人物か確かめて見たくてね。だが安心した。君ならばこれが使えるだろう。」

 

そう言って黎斗神さんは黄色とピンクの蛍光色をした物を渡してきた。

 

葛城「これは………ドライバー?」

 

黎斗神「そうだ。ゲーマドライバーという、私の開発品だ。そっちのバグルドライバーⅢと同じように腰に巻いて変身するものだ。きっと役に立つだろう。一応予備も渡しておこう。」

 

そう言って同じものをもうひとつ渡してきた。

 

葛城「あ、ありがとうございます。でも、なんでここまでしてくれるんですか?」

 

黎斗神「………私はゲームの開発者だ。プレイする人は多ければ多いほうがいい。だから君たちには生き延びて貰わなければならないんだ。私のクリエイティブなゲームのためになァァァ!ヴェハハハハハハ!」

 

と、高笑いをしていた。

 

黎斗神「さて。私はそろそろ戻るとするよ。もし、何かあったら成都大学附属病院の地下にくるといい。そこがCRだ。私たちはそこにいる。」

 

そう言って黎斗神さんはガシャットの中へ戻り、飛んでいった。

 

葛城「…………行ったか。さて、今度こそ部室に戻ろうかな。」

 

そう思い、部室へと足を運んだ。

 

部室

第三者視点

 

葛城が部室へ戻ると、

 

由紀「あ!よっくん!おかえり〜遅かったね?」

 

胡桃「おかえり。随分時間かかったな。」

 

とかいう言葉をかけられた。

 

葛城「すまんすまん。人と会ってさ。これもらったわ。」

 

そういってゲーマドライバーを2つ机の上に乗せた。

 

美紀「これは……なんですか?すっごい色してますけど。」

 

葛城「ゲーマドライバーっつってな。さっき会った神に貰った。」

 

悠里「神……って、檀黎斗神のこと?」

 

葛城「そうだぞ。」

 

胡桃「そいつにあったのか!」

 

葛城「ああ。普通にいい人そうだったぞ。」

 

悠里「そう…………」

 

由紀「ねえねえ!これどうやって使うの?」

 

葛城「ああ。これを腰に巻いてだな、これで変身するんだ。」

 

由紀「へぇ〜。何に使うの?」

 

葛城「これはな、人を守るために使うんだ。」

 

由紀「人を守る………?あの時みたい……………うっ、うあぁっ………頭……痛い……あの時…………めぐね………ああっ!」

 

悠里「由紀ちゃん!」

 

胡桃「しっかろしろ!由紀!」

 

美紀「由紀先輩!」

 

悠里「早く布団に運んでちょうだい!」

 

胡桃「任せろ!」

 

そう言って胡桃は由紀をおぶって寝室へと急いだ。

 

葛城「……………ごめんなさい。まさかここまで状況が厳しいとは…………」

 

悠里「………正直、私もここまで反応が酷いとは思わなかったわ。前より悪化しているのかもしれないわ。」

 

美紀「…………やっぱり、本人に伝えた方がいいんじゃないでしょうか?」

 

悠里「…………。」

 

葛城「でも本人は覚えてはいるんだろう?それを無理やり引き出すのはちょっと酷な気がするが……」

 

悠里「…………そうね。せめて医者がいればいいんだけど…………」

 

葛城「…………あっ。」

 

美紀「どうかしましたか?」

 

葛城「…………成都大学附属病院。」

 

悠里「え?」

 

美紀「あの襲撃された?」

 

葛城「ああ。さっき会った黎斗神が言ってたんだ。地下にCRがあって、そこにライダーがいるって。ライダーのなかには医者もいたはずだ!」

 

悠里「それじゃあ………もしかして!」

 

葛城「ああ。治せるかもしれない。」

 

美紀「次遠出することがあったら、そこを目的地にしましょうか。」

 

悠里「ええ。でも、今は一旦保留ね。」

 

 

 

胡桃「寝かせてきたぞ」

 

葛城「……すまなかったな」

 

胡桃「いいって。まだ私達もハッキリとわかってないし。」

 

悠里「………とりあえず、夕食作るわね。」

 

美紀「あっ。手伝います。」

 

胡桃「んじゃ、私も手伝おうかな」

 

悠里「じゃあお願いできるかしら?葛城くんは、由紀ちゃんの様子見てきてくれる?」

 

葛城「分かった。んじゃ、行ってくるわ」

 

 

そう言って葛城は少しの罪悪感と共に寝室へと足を運んだ。

 




突然のシリアス
文才なくて不自然かも知れませんがご了承ください。
さて、次の投稿なんですが、この作品の筆が乗らなかった場合、もしかしたら別の感じの作品を投稿しちゃうかもしれません。
もし投稿したら、そっちのほうも見てやってください。

では、次の投稿まで!


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第14話

どうもお久しぶりです。
今回の話はあまり推敲ができていないので、いつも以上に変な点が多いと思いますので、指摘してもらえるとありがたいです。
では、14話、どうぞ!


前回のあらすじ

葛城「黎斗神と会ってドライバーをもらった。が、そのことを話している最中に由紀の記憶に触れてしまった。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

寝室

side葛城

 

葛城「………由紀。」

 

由紀「…………うん。」

 

葛城「……………さっきはすまなかった。」

 

由紀「………うん。大丈夫。」

 

葛城「……………」

 

由紀「……………」

 

葛城(どうしよう…………今回俺が悪いのは明らかなんだが…………。謝ってから後が気まづい………)

 

由紀「ねえ。」

 

葛城「ん?どうした?」

 

由紀「よっくんはさ、めぐねえのこと、どう思ってる?」

 

葛城「どうって………優しくていい先生だと思うよ。」

 

実際、普通にこの学校の生徒として通っていた頃にめぐねえと話したことがあったが、本当に生徒思いでいい先生だと思った。まあ、ちょっと頼りはなかったが……それでも、やっぱりいい先生だと思う。

 

由紀「私ね、めぐねえにこの部活に誘われて………この部活に入ったの。でも、その後にみんな、めぐねえが見えてない時があるみたいなの。でも、なんでか考えると、さっきみたいに頭が痛くなっちゃうんだ………」

 

葛城「…………」

 

これが恐らく、半分気づいているのだろう。だが、恐らく心が理解を拒んでいるんだ。りーさんから聞いた話だと、ドア1枚越しでめぐねえが身代わりになってくれたそうだ。自分の大好きな人がそんなことになったら………

俺だってこうなるだろう。

だが、

 

葛城「ねえ。由紀ちゃん。」

 

由紀「うん。」

 

葛城「めぐねえは、君の心の中にはいつでもいてくれる。だから、向き合ってあげてほしい。自分と。そして、めぐねえと。」

 

由紀「自分……と……?」

 

葛城「うん。でも、それは辛いことだと思う。怖いことだと思う。でも、それでも向き合ってほしい。」

 

由紀「………でも…怖いよ……痛いよ………」

 

由紀「ねえめぐねえ。私、怖いよ………」

 

そう言って泣き出してしまう由紀ちゃん。

このままでは最悪、精神が崩壊しかけない。

 

葛城「………由紀ちゃん。」

 

そう言って俺は由紀ちゃんを抱きしめて、背中を撫でた。

いや別に邪なことを考えてこうした訳ではない。

逆にここでそんなことを考えるやつはいないだろう。

こうしたのにはちゃんと理由がある。

その理由は、落ち着かせるためだ。

よくドラマとかで泣いてる人を抱きしめて落ち着かせるシーンがあるので、それを真似させてもらった。

 

葛城「由紀ちゃん。落ち着いて。頑張って。」

 

自分の無力さが悔しい。俺がマンガの主人公のように1発で落ち着かせられればいいが、それが出来ないのが歯がゆい。

 

由紀「よっくん………。あっ……めぐねえ……。うん。………そうだったね。めぐねえ。私、大事なこと忘れてたよ。ありがとう。めぐねえ。」

 

葛城「由紀ちゃん?」

 

由紀「うん。私、忘れちゃってたみたいなんだ。めぐねえのこと。あの時の出来事。でも、思い出して、受け止められたよ。よっくんのおかげ!ありがとう。おかげで、めぐねえの言葉を思い出せたよ。」

 

葛城「由紀ちゃん……!よかった。」

 

由紀「めぐねえは、今はここにはいない。でも、心にはいるんだ!いつまでも一緒!」

 

葛城「……うん。そうだね。存在は消えても、思い出は消えない。」

 

由紀「うん!」

 

葛城「やっと笑顔に戻ったね。よかった。」

 

由紀「うん。……みんなに迷惑かけちゃったかな。めぐねえのことで。」

 

葛城「大丈夫さ。きっと。みんなに教えてあげたら?思いだせたって。めぐねえのこと。」

 

由紀「うん!じゃあ先に部室行ってるね!」

 

葛城「ああ。」

 

そう言って由紀ちゃんは先に部室に戻った。

 

葛城「さてと………行きますかね。」

 

そう言って俺はちょっと屋上へと出かけた。

 

 

屋上にて

side葛城

 

葛城「………ここか。」

 

俺は、屋上にある十字架の所へと来ていた。

 

葛城「ここがめぐねえの………」

 

りーさんに案内された時に教えて貰ったこの場所。

俺がここに来た理由はただ1つ。

 

葛城「…………めぐねえ。学園生活部のみんなを支えてくれて、ありがとうございました。

ちょっと頼りないですが………これからは俺も頑張ります。みんなの希望になれるように。仮面ライダーとして。」

 

こうやって誓を立てるためだ。

俺はただの高校生だ。

なにか武術に長けている訳でもない。

なにかアニメやマンガの主人公のようにカリスマを持っている訳でもない。

でも、

 

葛城「仲間を守りたいと思います……見ていてください。めぐねえ。」

 

自分の仲間を守りたい。

この願いは誰にも負けない。

例えこの身が滅びようと、仲間を守ってみせる。

 

葛城「………らしくねえな。俺。」

 

そう言いつつも、顔は笑ってしまう。

 

葛城「………さて、部室に戻りますかね。」

 

そう言って後ろを振り向くと…………

 

その他みんな「……………………」

 

葛城「…………………」

 

何故か、みんながいた。しかも無言で。あ、ちょっと涙目だ。

 

葛城「あの………みなさん?」

 

ちょっと敬語になってしまった。

すると、

 

みんな「葛城くん(よっくん)!」

 

葛城「はい!?」

 

由紀「ありがとうね!」

 

葛城「え?あ。うん。」

 

胡桃「全く………守るって……。気負いすぎだ。でもまあ、ありがとうな。」

 

葛城「……うん。」

 

美紀「何カッコつけてるんですかもう………でも、ありがとうございます。」

 

葛城「……ああ。」

 

悠里「その気持ちは嬉しいけど………。あんまり無理しないでね?でも、ありがとう。」

 

葛城「……はい。」

 

悠里「さあ、みんな!部室に戻りましょう?シチューが冷めちゃうわ。」

 

葛城「まだ食べてなっかたのか……」

 

胡桃「当たり前だろ?全員揃ってないのに。」

 

由紀「そうそう!」

 

美紀「みんなで食べた方が美味しいですしね。」

 

葛城「………ありがとう。」

 

そうみんなで話しながら部室へと戻っていった。

 

葛城(そうだ。俺は仮面ライダーホープと名乗ろう。希望になれるように。)

 

そう思いながら。




はい。今回は由紀ちゃんとめぐねえがメインでしたね。
元々の話だともっと後にこのことは克服するのですが、どうしても早く解決してあげたくてこうなりました。
元々のままを期待してた人はすみません。

さて、ここからは違う話なんですが、前回の投稿の時に言っていた「別作品」。
あれがもう少しで完成しそうなので、完成したら投稿して見たいと思います。
よければそっちの方も読んでみてください。
では、次の投稿まで!


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第15話

どうもみなさん。よこちょです。
そういえばいい忘れていましたが、この世界での今の季節は夏です。でないと折角の水着回ができないからね。是非もないよネ!
まあそんなわけで(どんなわけだ)、第15話、どうぞ!


前回のあらすじ

 

葛城「由紀ちゃんと話しているうちに、めぐねえのことにケリをつけられたらしい。」

 

由紀「初めて男の人に抱きしめられちゃったよぉ………////」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

部室にて

第三者視点

 

葛城「なあ、みんな。ちょっといいか?」

 

ご飯を全員で食べ終わったあとに葛城が呼びかけた。

 

葛城「明日は運動会やるんだろ?なら、せっかくだし校庭を使えるようにしないか?」

 

美紀「校庭を……ですか?」

 

悠里「確かに使えたら便利だけども………」

 

胡桃「校庭のあいつらはどうするんだ?」

 

由紀「なにか作戦があるの?」

 

葛城「ああ。こいつを使ってある程度倒そっかなと思ってさ。」

 

そう言ってバグルドライバーⅢとガシャットケースを見せる葛城。

 

葛城「万が一奴らが凶暴化してここを襲った時に対処できなかったら困るだろ?だからある程度は慣れとなかないといけないし。ついでに外のあいつらを掃除するってわけ。」

 

由紀「なるほど!頭いいね〜!」

 

葛城「ふっ。だろ?」

 

胡桃「でも途中でまた倒れたらどうするんだよ?」

 

葛城「うーん。まあそうならないようにするよ。」

 

胡桃「まあもし倒れたら助けに行ってやるよ。」

 

葛城「無茶すんなよ?」

 

胡桃「お前もな。」

 

悠里「じゃあ悪いけどお願いできるかしら?」

 

葛城「おう任せとけ!んじゃ行ってくるわ」

 

美紀「あっ!私も行きます!」

 

胡桃「どうせならみんなで行かねえか?」

 

由紀「さんせ〜い!戦ってるとこ見てみたい!」

 

悠里「じゃあみんなで行きましょうか。」

 

葛城「へいへい。んじゃ、ここで変身しときますかね。」

 

そう言って腕のバグルドライバーⅢを外し、腰に巻き付ける。

ケースからマイティアクションXガシャットを取り出し、スイッチを入れる。

 

『マイティアクションエーックス!』

 

ベルトに差し込み、

 

『ガッチョーン』

 

葛城「変身!」

 

そう言って本体のスイッチを押す。

 

『バグルアップ』

『ロードマイティアクション』

 

葛城「さて。こんなもんだ。どうよ?この姿。カッコいいっしょ?」

 

一同「………………」

 

みんな黙りこくって何も言わない。

 

葛城「ん?どうした?まさか惚れちゃったか?なんてな。」

 

一同「………………………」

 

やっぱり黙っている。

 

葛城「?まあいいや。んじゃ、行ってくるからなんかあったらよろしく!とうっ!」

 

そう言って葛城は窓から校庭へと飛び降りていった。

 

………この時葛城は気が付かなかった。

その場に取り残された者達の頬がほんのりと赤く染まっていることに。

 

胡桃(普段があんなのだからあんま意識してなかったけど………)

 

悠里(真剣になった時の葛城くんの顔って……)

 

美紀(………なんか…)

 

由紀(………あの姿……)

 

一同((((カッコイイ………!))))

 

黙ってたみんながこんなことを思ってたなんてことも、もちろん気づいてない。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

校庭

第三者視点

 

葛城「よいしょっと!」

 

ドンッ!という大きな落下音と共に校庭へ辿り着いた(落ちた)仮面ライダーホープこと葛城。

その落下音に引き寄せられてゆっくりと葛城の方へと歩を進めてくるゾンビのようなモノたち。(以下彼ら)

 

葛城「さて、いっちょやりますか!」

 

そう言ってガシャコンブレイカーを取り出し、ボタンを叩いて剣モードへ変形させ、彼らの中へ進んでいく。

 

葛城「よっ。ほっ。そいやっさ!」

 

リズミカルに彼らを切っていく。

相手の動きが遅いから狙いを定める余裕があるので、戦闘初心者の葛城でも余裕を持って対処できる。

 

葛城「案外楽かもな。感覚的にモグラ叩きと変わんねえし。」

 

そうやって余裕をかましていると、いつの間にか囲まれていた。

どうやら前ばっかり見ていて後ろを見ていなかったらしい。

 

葛城「うおっ!やっべえ!」

 

そう言って後ろを向いたり前を向いたりして戦っているうちにめんどくさくなったらしく、

 

葛城「ああもう!めんどくせえ!一気に倒す!」

 

そう言って他のガシャットを手に取ろうとしてふと気づく。

 

葛城「………?あれ?あの2本刺しのやつどこいった?

……………あっ。」

 

そう。勢いで飛び降りてきたので思いっ切りガシャットケースを部室に忘れてきたのだ。

 

葛城「やっべえ……おい誰か!聞こえるか!?」

 

そう叫んでみるものの、遠い上に周りが彼らだらけで声が届いていない。

 

葛城「まずい………」

 

そうしている間にも少しずつ彼らは葛城を殴り、噛みつき、引っ掻いている。そのたびに彼のライダーゲージが少しづつ削られていく。

 

葛城「なんとか突破しねえと……」

 

そういった時間が続き、とうとうあと少しでライダーゲージが0になってしまうというところまできた。

これがゲームに則っているというのならば、ゲージはHP。当然死を意味しているということは充分わかっている。

 

葛城「………クソッ!」

 

ついに膝を付き、項垂れてしまう。

 

葛城「……ここまでか。」

 

そう思ってしまった彼に今まさに最後の1発が振り下ろされようとした瞬間、なぜか声が聞こえた。

 

???(随分とあっけないなァ。葛城義彦ォ。お前はなんのためにここにいるんだ?)

 

葛城(なんのため……?それは明日運動会を校庭でするために)

 

???(違うなァ。お前そんな理由で”戦い始めた”のか?)

 

葛城(俺は……守るために……)

 

???(そうだァ。お前は守るために戦うと決めた。なのにこのザマか?)

 

葛城(だってしょうがないじゃないか。俺は弱いんだ。)

 

???(なにかを助けようとするならば最後まで足掻け。そうして限界を超えたプレイヤーを見たことがある。お前はどうかなァ?葛城義彦ォ。)

 

葛城(………俺は……)

 

葛城「俺は……みんなの希望にッ!なるんだァァァ!」

 

そういった瞬間彼の手元にひとつの奇跡が生まれる。

 

その奇跡は彼の心から生まれたものだった。

 

「守りたい」その心から生まれたものだった。

 

その奇跡の名は、

「弱き守護者」(アンスキルドシールダー)

 

弱くてもいい。でも守りたい。

 

そんな思いが、奇跡を起こした。

 

葛城「オラァッ!」

 

振り下ろされかけていた腕を吹っ飛ばし、立ち上がった。

 

葛城「俺は……みんなの希望になるって誓ったんだ!こんなことろで!死んでたまるかーーーーッ!」

 

そう言って奇跡のスイッチを入れる。

 

『アンスキルドシールダー!』

 

差し込んでスイッチを入れる。

 

『ガッチョーン』

 

『バグルアップ』

 

『立ち上がれ弱者!立ち向かえ守護者!今こそ己は盾となり!』

 

そんな音声と共に姿が変化する。

 

片腕には大きな盾が現れ、腰には中世の騎士を思わせるような剣が下がっている。

アーマーも騎士のようになっており、全体的に銀色に光っている。その光が、新品であるような輝きを放っており、まだまだ未熟であることを暗示しているいうだ。

だが、全身から溢れる闘志から、「絶対に守る」という気持ちが伝わってくる。

 

そんな風に急に変化した目の前の獲物に対応できなかったのか、理性なき彼らも二三歩尻込みした。

 

その隙を逃さず、周りを囲んでいた彼らを一気に斬る。

 

それでもなおかかってくる彼らを葛城は片手の盾で受け止め、剣で斬る。

 

斬る。斬る。斬る。斬る。

弾く。弾く。弾く。弾く。

 

そうやってどんどん倒していき、ついに学校内にいる彼らを一人残さず倒した。

 

葛城「ふぅ。終わったか。」

 

そう言って変身解除すると、疲れが一気に来たのか、その場で倒れ込んでしまう。

 

???「よくやったァ!やればできるじゃないかァ。」

 

葛城「この声………黎斗神さん?」

 

黎斗「いかにも!私が神だァァァ!」

 

葛城「……さっきはありがとうございました。あなたの助言が無ければ俺はあそこで死んでました。」

 

黎斗「なに。礼には及ばない。私はゲームをプレイするプレイヤーを守る義務がある。当然の行動さ。」

 

葛城「……それでも、ありがとうございました。」

 

黎斗「まあ受け取っておこう。」

 

葛城「はい。」

 

黎斗「ところで急だが、質問をいいかね?」

 

葛城「はい?なんでしょう?」

 

黎斗「君はもしかしてゲーム病だったりするのかい?」

 

葛城「………?ホントに急ですね。そんなことないですよ。ピンピンしてますし。」

 

黎斗「………そうか。なに、ちょっと気になっただけだ。気にしないでくれたまえ。」

 

葛城「は、はい。」

 

黎斗「お詫びと言っちゃぁなんだが、君にこれを差し上げよう。」

 

そういって黎斗神は懐から1本のガシャットを取り出す。

 

黎斗「それはマイティアクションXのα版でね。コンテニュー機能が搭載されている。私が複製したものだがら回数は少ない。大事にしたまえ。」

 

葛城「あ、ありがとうございます。」

 

黎斗「では私はそろそろ帰るとしよう。何か用があれば連絡してくれたまえ。」

 

葛城「あの、連絡先知らないんですが………」

 

黎斗「そのドライバーに搭載されている。二つのスイッチを同時に二連続で押したまえ。」

 

葛城「はい。ありがとうございました!」

 

黎斗「ブェハハハハハハァァァ!さらばだァァァ!」

 

そう言ってエクストリームガシャットに乗り込んで去っていった。

 

葛城「…………さて、俺も戻るか。」

 

そう言って葛城もゆっくり部室へと足を運び始めた。

 

自分の居るべき場所へと。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

エクストリームガシャット内部

side檀黎斗神

 

黎斗「思わぬ結果になったな。」

 

私はさっきの出来事を振り返りながらそう思った。

寝る前の散歩がてら巡々丘高校まで足を運んでみると葛城義彦が戦っているのが見え、観戦しているとピンチになったので助言をしてガシャットを作る出させた。

言葉にするとこれだけだが、ここにひとつ大きな問題がある。

 

黎斗「なぜ彼は1からガシャットを生み出せたのだ……?」

 

ジュージューバーガーガシャットや宝生永夢のマイティブラザーズダブルエックスの件があったので、今更無断でのガシャットの製造に文句を言う気はない。

だが、今回は訳が違う。

 

ジュージューバーガーガシャットは1から「開発」して作られた。

マイティブラザーズダブルエックスは宝生永夢のゲーム病を利用したとはいえ、ブランク状態のガシャットがあったからできたことだ。

 

だが今回はそんなものは全くなかった。だが彼の手にはガシャットが生まれた。

 

黎斗「お前はなんなのだァァァ。葛城義彦ォ。」

 

そんなことを考えながら帰路についた。




そういえばいつの間にかUA3000超えてましたね。
ありがとうございました!
これからもこの作品をよろしくお願いします!

あとこの前コメントであったことなのですが、他のライダー達(ダブルなど)は、それぞれの街で戦っています。
いずれ共闘とかさせてみたいですね。

では、次の投稿まで!


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第1回アイテムのまとめ

どうも。よこちょです。
今回は本編更新ではなく、アイテムをまとめました。
では、どうぞ。

(ここの部分抜けてましたすみません。)


学園生活部側のアイテム

 

 

バグルドライバーⅢ(サード)

 

檀黎斗神がバグルドライバーを改良して作ったもの。

バグルドライバーやバグルドライバーⅡと違い、普通の人(適合手術を受けていない人のことを指す)でもガシャットを使った変身が可能になっている。

(葛城の場合、生まれつきバグスターウイルスに対する抗体があったためあまり関係はないが。)

さらに、追加機能として変身音が変わっていたり、自動で戦闘データを収集して敵の動きを予測するプログラムが組まれていたり、CRと連絡が取れたり(葛城はまだこのことを知らない。)と、極力戦いやすいように改造が施されている。

そういった「戦いやすさ」に重点を置いた反面、戦闘能力自体が少し落ちている。

(もっとも、そこら辺にいるゾンビを倒す分には全く支障はない。)

バグルドライバーと見た目やカラーリングは同じ。

勿論、腕につけてそのまま武器として扱ったりもできる。

 

変身形態(変身者 葛城義彦)

仮面ライダーホープ

 

葛城がバグルドライバーⅢを使って変身したライダー。使うガシャットによって姿や特徴が大きく変わる。以下のフォームはそれぞれレベル5と同等の力を持っている。

 

マイティアクションXフォーム

マイティアクションXを使って変身した姿。

ゲンムと見た目は似ている。

 

ターボバイクフォーム

プロト爆走バイクを使って変身した姿。

レーザーターボの黒い版みたいな見た目をしている。

 

ブレイブフォーム

プロトタドルクエストを使って変身した姿。

黒いブレイブに姿が似ている。

 

バンバンガンフォーム

プロトバンバンシューティングを使って変身した姿。

黒いスナイプに姿が似ている。

 

デンジャラスゾンビフォーム

デンジャラスゾンビガシャットを使って変身した姿。

見た目は殆どデンジャラスゾンビとほぼ一緒。

 

全部見た目はそれぞれのフォームに似ている。

スペックは各それぞれの本来のスペックより低め。

 

使用武器

ガシャコンキースマッシャー

ガシャコンマグナム

ガシャットスパロー

ガシャットソード

ガシャットブレイカー

 

状況に応じて、様々な武器を使い分ける。

 

 

 

 

弱き守護者(アンスキルドシールダー)ガシャット

 

葛城の「弱くてもみんなを守りたい」という思いから生まれたガシャット。

元になったゲームなどもないので、HPの概念はないので、実質無限に戦える。

だが、ダメージを受け続けたり、大きなダメージを食らうと変身が解除されてしまう。

本来は存在しないガシャットであり、檀黎斗神もなぜ生まれたのかは検討がつかないらしい。

バグルドライバーⅢでもゲーマドライバーでも使用可能。

レベルはX(エックス)。つまりこれからの成長次第で強くなる可能性を秘めている。

 

姿

 

片腕に盾、腰剣を下げて鎧を着た中世の騎士のような姿をしている。

鎧は新品のように輝いていて、まだ初心者であることを表している。

胸にもともとライダーゲージがあった場所に経験値ゲージが付いており、戦闘経験を積む事に溜まっていく。

なお、たまった結果何が起こるかは今は不明。

 

なお元にしたキャラクターは名前から想像してください。わかるひとはわかるはず(ヒント Fateシリーズ)。

 

 

 

敵側のアイテム

 

エレシュキガルメモリ

 

CRの襲撃者が使っていたメモリ。

本来のエレシュキガルとは違い、一緒に冥界にいたものたちの能力も併せ持っているとみて間違いないだろう。

「疫病」や「死」を司るメモリで、まさに今回の首謀者に適したメモリと言える。

元にしてるものが神話なので、普通のメモリと比べ、格段に強い。

出力ではハイパー無敵を上回っている。

また、神話の伝承から来た「死者を食べる」という能力を持っているようで、周囲のゾンビを吸収してさらに力を得ることも可能。

 

 

 

 




はい。こんな感じですね。
どこか変な点とかあったらコメントしてください。
あとぜひ評価も(露骨な評価稼ぎ)。

次は本編を更新できると思うので、その日までお待ちください。


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第16話

どうも、よこちょです。
この作品を書き始めてからというもの、エグゼイドにすっかり再度ハマってしまいましたw
おかげでこのまえ遂にプロトマイティアクションXを買っちゃいましたw
ベルトないですけど。
今回も相変わらずあんまり話は進みませんが、楽しんでくれるとありがたいです。

では、第16話!スタート!


前回のあらすじ

 

葛城「決意を新たに、新しい力を手に入れた。」

 

その他一同「葛城って意外とカッコイイ………!」

 

____________________________________________________

 

side葛城

 

疲れた体を引きずるようにして階段を上る。

 

いくらやつらを全員倒したとはいえ、油断は禁物だ。

 

周囲に警戒しながらもゆっくりと階段を登っていると、上からコツコツという足音が聞こえた。

 

胡桃「葛城!?大丈夫か?」

 

どうやら胡桃ちゃんらしい。

 

葛城「ああ。ちょっと疲れただけだ。噛まれてもないし。」

 

胡桃「そうか。肩貸してやるよ。ほら、掴まんな。」

 

葛城「すまん。」

 

胡桃「………ったく。ヤバいなら言ってくれりゃよかったのに。」

 

葛城「いや、呼んだんだがな。遠い上にあいつらが多すぎて届かなかったらしい。」

 

胡桃「まじか………。すまなかったな。」

 

葛城「いいって。おかげで新しいガシャットも手に入れたし。ほら。」

 

そう言ってアンスキルドシールダーガシャットを見せる。

 

胡桃「へえ。綺麗な色だな。真っ白で。」

 

葛城「だろ?まるで俺の心のようだぜ。」

 

胡桃「初対面で鼻血吹いてたやつが言うセリフか?それ。」

 

葛城「それは忘れてくれ…………」

 

胡桃「全く……ほら、着いたぞ。」

 

どうやら話しているうちに部室に着いたらしい。

 

葛城「ああ。ありがとう。よいしょっと。」

 

そう言って立ち上がる。

 

まだ少し疲れているが、普通に歩くぶんには問題なさそうだ。

ドアを開けると、他の部員達が声をかけてきた。

 

由紀「よっくん!」

 

美紀「大丈夫でしたか?」

 

悠里「怪我はない?」

 

葛城「大丈夫だったし無事だぞ。心配かけたな。」

 

悠里「そう……あまり無茶しないでね?」

 

由紀「ねえねえ!さっきのピカーってなったたのなに!?」

 

美紀「見せてもらった変身の時の格好とは違うように見えたんですが………」

 

葛城「ああ。あれは新しい力だ。なんかガシャットが出来てな。ほら。」

 

そう言ってさっきと同じようにアンスキルドシールダーガシャットを見せる。

 

由紀「真っ白だね〜」

 

悠里「あら。綺麗な色じゃない。」

 

美紀「ホントですね。」

 

葛城「しっかし、この学校に通信機とか無線機とかねえのか?携帯が使えない以上、連絡の取りようがないぞ。」

 

悠里「トランシーバーはあるんだけど、使えないのよ。」

 

葛城「うーん。………まあいいや。今度考えよう。もう今日は寝ようぜ。疲れちゃったし。」

 

悠里「そうね。明日は体育祭だから、早く寝ましょうか。」

 

美紀「でも校庭の掃除をしないと……ってあれ?」

 

由紀「なになに?どしたの?」

 

美紀「…………死体が、ないんです。」

 

葛城「なに?あんなに倒したのにか?」

 

美紀「はい。見てみてください。」

 

見ると、血の跡はあれど、死体どころかあいつらがいたという痕跡すら残っていなかった。

 

葛城「…………これは聞いてみる必要がありそうだな。」

 

悠里「聞いてみるって………誰に?」

 

葛城「CRだ。このベルトに通信機能があるらしくってな。」

 

美紀「CRって、あの仮面ライダーがいるっていう?」

 

葛城「ああ。んじゃ連絡入れてから寝るとするか。」

 

そう言ってボタンを言われた通りに押し、繋がるのを待った。

 

____________________________________________________

 

CR

 

第三者視点

 

永夢「えっ!?本当に生存者がいたんですか!?」

 

黎斗「ああ。接触してみたが、特に危険という訳じゃなさそうだったので、報告した。」

 

飛彩「なら早急にここへ連れてこなくては………」

 

大我「待てブレイブ。まだ話は終わってないだろ。」

 

黎斗「その通りだ。それに、私は彼らを無理にここへ連れてくる必要はないと思っている。」

 

永夢「どうしてですか!」

 

黎斗「彼らはあそこにいた方が安全かもしれない、という事だ。」

 

貴利矢「どういうことだ?神。」

 

黎斗「彼らが所属している学校……巡々丘高校と言ったかな?そこにはまるで仕組まれているかのように物資が揃っていたからだ。」

 

パラド「へえ。具体的には?」

 

黎斗「外から見ただけでも、ソーラーパネル、ろ過施設、貯水池と、住むことを想定したかのような設備が揃っていた。しかもそこで彼らが生活していた以上、ライフラインもある程度揃っているのだろう。それに、見えない部分にもなんだか秘密がありそうだ。」

 

ポッピー「じゃあ、放っておくっていうの?」

 

黎斗「そういう訳では無いさ。だが、無理にこっちへ招くよりは比較的安全な学校にいた方がいいんじゃないかと思っただけさ。」

 

大我「なるほどな。随分と優しんだな。ゲンム。」

 

黎斗「生存者は私のゲームをプレイしてくれるかもしれないからなァ。それにこんな状況で神の才能を見せてやるのも悪くない。」

 

大我「なるほど。根っこのとこは変わってねえんだな。」

 

黎斗「ふっ当然だ。」

 

そうやって話していると、突然CRに置いてある大きなモニターから音がなり始めた。

 

ニコ「なに!?また敵?」

 

黎斗「イヤ違う。これは通信だな。」

 

永夢「通信………って誰からの?」

 

黎斗「さっき話した生存者からだ。ベルトを渡しておいて正解だった。」

 

そう言ってキーボードを操作し、通話を開始する。

 

____________________________________________________

通信中

 

第三者視点

 

葛城「こんばんは。夜分おそくすいません。葛城です…………って、人がいる!」

 

黎斗「やあ葛城くん。さっきぶりだね。どうかしたのかい?」

 

葛城「実は、倒したあいつらの死体が消えちゃったんですよ。」

 

黎斗「ああ。その点ならば問題は無い。理由は不明だが、倒したら消えるという性質を彼らは持っているようだ。」

 

葛城「なんだよかった………。これで安心して寝れますよ。」

 

黎斗「それはよかった……っと、こっちの人達が君達と話したいそうなんだが、少しいいかね?」

 

葛城「ええ。大丈夫です。」

 

黎斗「では変わろう。」

 

少ししてから、

 

永夢「こんばんは。葛城くん……だっけ?僕は宝生永夢。CRのドクターだ。」

 

葛城「こんばんは。葛城義彦です。」

 

そう言ってお互いが自己紹介をしていった。

 

 

 

 

貴利矢「へえ。随分と女の子が多いんだな。」

 

葛城「俺もびっくりですよ。でも安心しました。画面越しとはいえ、黎斗神さん以外の生存者と会ったのって、ここに来てから初めてですから。」

 

貴利矢「そうかい。ま、この中で俺を含め4人はバグスターなんだがな。」

 

悠里「バグスターって、一時期世間を賑わせていたあの?」

 

由紀「てことは敵さんなの!?」

 

パラド「昔はそうだったが今は違う。命の大切さを知ったからな。」

 

由紀「へぇ〜。じゃあ安心だね!」

 

パラド「ああ。」

 

 

そうして各々がお喋りをしていると、

 

永夢「そろそろ時間も遅いし、このへんでお開きにしませんか?」

 

と、永夢が呼びかける。みんなが時計を見ると、11時を回ったところだった。

 

飛彩「そうだな。いくらそこが幾分安全とはいえ、睡眠不足はよくない。」

 

悠里「そうね。じゃあそろそろ寝ましょうか。」

 

美紀「そうですね。」

 

胡桃「まだまだ話し足りないけどな。」

 

葛城「そうだね。あっそういえば!黎斗神さん」

 

黎斗「黎斗でいい。どうした?」

 

葛城「この状況で使える通信機みたいなのってありませんかね?」

 

黎斗「あるぞ。なんなら明日持っていくが?」

 

葛城「まじっすか!ありがとうございます!」

 

由紀「ねえねえ!じゃあさ、この人たちも運動会に参加してもらおうよ!」

 

胡桃「それは流石に無理じゃないか?」

 

悠里「そうね。しなきゃいけないこともあるだろうし。」

 

貴利矢「いいんじゃねえか?1日くらい。ちょうど物資の補給とかもしなきゃいけなかったしな。」

 

永夢「僕も賛成です。たまには運動しないと。」

 

飛彩「じゃあ俺は残ろう。流石に無人にするわけにはいかない。」

 

大我「俺も残るぜ。」

 

ニコ「大我が残るなら残るよ。」

 

大我「お前なぁ………」

 

パラド「俺は行くぜ!久々の外なんて、心が踊るなぁ!」

 

ポッピー「うーん。じゃあ残ろうかな?」

 

貴利矢「もちろん参加するぜ。ノリノリでな!」

 

黎斗「私も行こう。運動会でも神の才能を見せてやる。」

 

永夢「じゃあ行けるメンバーで行くから、待っててくれる?」

 

由紀「うん!」

 

悠里「………すみません。無理言っちゃって。」

 

永夢「いやいや。どうせ外にはいかなきゃ行けなったし、いいきっかけになったよ。」

 

美紀「ありがとうございます!」

 

胡桃「じゃあ、CR対学園生活部だな!」

 

葛城「負けませんよ?」

 

永夢「ふふっ。うん。じゃあ、また明日。」

 

葛城「ええ。また明日。」

 

そう言って通話が切られた。

 

____________________________________________________

 

部室

 

第三者視点

 

葛城「さて、明日の予定も決まったことだし、寝るか!」

 

一同「「「「オー!」」」」

 

そう言って就寝場所へと行き、眠りについた。

 




はい。次回ようやく運動会ですね。
しかもCRの一部の面々も一緒に。
まだ書けてないのでどんな内容になるかはわかりませんが、気長にお待ちください。
感想などありましたらコメントへお願いします。

では、次回の投稿まで!


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第17話

こちらの作品ではお久しぶりです。
なかなかネタが思いつかずに書けませんでした。
待っていた方がいらっしゃいましたらすみません……。
今回はようやく運動会です。
ここまで持ってくるのにどんだけかかってんだ………。
これからもこんな感じでゆっくりとしか話が進みませんが、よろしくお願いします。

前置きが長くなりましたが、第17話、どうぞ!

P.S.評価してくださった「危なすぎるCHALLENGER」さん、ありがとうございました!励みになります!


前回のあらすじ

 

葛城「学園生活部と!」

 

永夢「CRの!」

 

一同「合同運動会開催決定!」

 

____________________________________________________

 

次の日

巡々丘高校正門前

 

side葛城

 

俺たちは今、CRの人達がここへ来るのを待っている。

 

 

由紀「実際に会うのは初めてだよね!」

 

美紀「ちょっと緊張しちゃいます。」

 

 

二人はそう言ってるが、俺自身はそうでもない。

なんせ以前黎斗さんとは実際に会って会話をした上に、ガシャットとベルトをもらってるからである。

まあその他の人もいい人そうだし、心配は要らないだろう。

 

 

胡桃「そういえば昼食はどうするんだろうな?」

 

悠里「食料にはまだ余裕があるし、なにか作りましょうか?」

 

胡桃「おっ、いいねそれ!」

 

由紀「じゃあみんなで一緒に食べよう!」

 

美紀「賛成です!」

 

 

と、こんな談笑をしている最中だろうがなんだろうが、声に反応してゆっくりとこっちへ向かってくるやつら。

とりあえず近寄られても面倒なので、バグルドライバーⅢの銃口から弾を放って片っ端から倒していく。

死体も残らないし、通行の邪魔にはならないだろう。

 

そうやって待つこと10分ほど。

遠くからバイクのエンジン音が聞こえた。

 

 

胡桃「このバイクの音は…………」

 

由紀「永夢さんたちかな?」

 

美紀「かもしれません。」

 

しばらくして、バイクの姿が見えてきた。

全身黒と黄色でカラーリングされた、イカすデザインのやつだった。

 

 

葛城「おお。なんかカッコイイぜ。」

 

 

思わずそう言ってしまう程には、かっこよかった。

 

 

美紀「やっぱりバイクとかの乗り物好きなんですか?」

 

葛城「ああ。やっぱなんかグッとくるんだよなー。

ロマンがあるっていうかさ、うまく言えねえけどカッコイイぜ。」

 

美紀「そうなんですね。」

 

 

そんなことを話しているあいだに、校門の前までバイクが近づいてきた。

 

 

永夢「やあみんな!お待たせ!」

 

バイク「悪ぃな。またせちまったか?」

 

葛城「え?貴利矢さん?どこにいるんです?」

 

バイク「ここだここ。俺のガシャットのレベル2はこの姿なんだよ。」

 

葛城「レベルアップとかできるんすね。」

 

貴利矢「まあな。ゲーマドライバーだけだが。」

 

胡桃「ところで、パラドさんと黎斗さんはどこに?」

 

パラド「俺はここだぜ。」

 

 

そう言って永夢さんの体から粒子のようなものが出てきて、人の形になった。

 

 

パラド「バグスターだからこういうのもできるんだぜ。」

 

由紀「すごい!」

 

美紀「なんでもありなんですね……」

 

胡桃「あれ?黎斗さんは?」

 

永夢「黎斗さんならちょっと用があるからって言ってたから、少し遅れてくるみたいだよ。」

 

悠里「そうなの。じゃあ少し待ってみましょうか?」

 

黎斗「その必要はなァァァい!」

 

 

りーさんがそう提案した時に大きな声が聞こえた。

 

 

葛城「これは……黎斗さん?」

 

美紀「でも姿がないですね。」

 

 

そうやって周囲を見渡していると、突然目の前から紫色の土管が生えてきたかと思えば、

 

 

プープープープープープー

黎斗「トウッ!」

 

 

変な音と掛け声とともに、黎斗さんが飛び出してきた。

 

 

胡桃「土管から出てきたんだが!」

 

由紀「すごーい!」

 

美紀「………ほんとになんでもありなんでしょうか……」

 

永夢「……黎斗さん、まさかとは思いますが来るためだけにコンテニューしたわけじゃないですよね?」

 

 

そういえばコンテニューできるとか言ってたな。

 

 

黎斗「いや。私の神の才能をもってすれば簡単なことだよ。」

 

 

そう言って懐からピンク色のガシャットを取り出した。

 

 

黎斗「これを調整していたら遅れてしまったのだ。だがやはり私の神の才能は素晴らしい!」

 

永夢「……これ、マイティアクションXですか?」

 

黎斗「いや。マイティアクションXのリメイク版。その名も『NEWマイティアクションX』だ。」

 

貴利矢「なにが違うんだ?」

 

黎斗「複数のセーブデータを作り、そこに土管で移動出来るようになっている。1度来た場所ならどこにでも行けるのだ。」

 

葛城「………それってズルなんじゃ」

 

黎斗「私はゲームマスターでもあるからこのくらいは大丈夫だ。」

 

美紀「は、はぁ。」

 

悠里「………とりあえず、校庭で運動会始めましょうか。」

 

胡桃「………そうだな。じゃあみんな、行こうぜ。」

 

永夢「行こうか。」

 

葛城「行こう。」

 

美紀「ですね。」

 

由紀「うん!」

 

黎斗「やはり私はァァァ、神だァァァ!」

 

 

そんなことを言ってる神は放っておいて、みんなで校庭に移動することにした。

 

 

黎斗「ヴェアハハハ!って、待てェェェ!」

 

 

あっ気づいた。

 

 

____________________________________________________

 

校庭

side葛城

 

 

黎斗さんを含め、この場にいる全員で校庭に移動してきた。

 

 

悠里「よし。じゃあ始めましょうか。」

 

胡桃「ああ。お互いが全力でな!」

 

パラド「全力か……心が踊るなぁ!」

 

永夢「久々だし、手加減はしないよ?」

 

貴利矢「んじゃ、ノリノリで行っちゃおうかな!」

 

黎斗「神の才能を持ってして圧勝してやるゥ。」

 

葛城「望むところだ!」

 

美紀「負けませんよ?」

 

由紀「みんなで頑張ろ〜!」

 

悠里「頑張るわよ!」

 

胡桃「全力で行かせて貰うぜ!」

 

悠里「では!第1回巡々丘高校学園生活部主催。運動会を開始します!一同礼!」

 

全員「「「お願いします!」」」

 

 

こうして、戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

__________________________________________________

 

第1種目

徒競走

 

九条貴利矢 VS 恵飛須沢胡桃

 

審判

葛城義彦

 

 

葛城「では行くよ?位置について!」

 

貴利矢「負けねえぜ?」

 

胡桃「こっちだって!」

 

葛城「よーい!スタート!」

 

 

合図と同時に両者がスタートラインから飛び出す。

同時に出ているが、若干貴利矢さんの方が早い。

 

 

葛城「やっぱバイクだから前傾姿勢慣れてんのかな?」

 

そんなことを思っていると、中盤になってから胡桃ちゃんがペースを上げてきた。

 

葛城「おっ。これはわかんなくななってきたぞ!」

 

そして両者がほぼ同時にゴールへ辿り着いた。

判定は、

 

葛城「勝者!九条貴利矢さん!」

 

貴利矢「ふぃ〜。危なかったぜ。」

 

胡桃「くっそぉー。惜しかった〜。」

 

貴利矢「ま、ギアチェンは俺の変身なんでね。悪ぃけど勝たせてもらったぜ。」

 

胡桃「くっ。次は負けないからな!」

 

貴利矢「ああ。また勝負しよう!」

 

お互いライバルっぽくなってるなぁ〜。

 

悠里「じゃあ次の種目よ〜。」

 

 

__________________________________________________

 

第2種目

玉入れ

 

宝生永夢&パラドの「天才ゲーマーM」コンビ

VS

丈槍由紀&直樹美紀の「先輩後輩コンビ」

 

審判

若狭悠里

 

 

由紀「よ〜し!負けないぞ!」

 

美紀「はい!絶対勝ちましょう!」

 

永夢「パラド、行くよ!」

 

パラド「ああ!」

 

悠里「じゃあ行くわよ?用意、どん!」

 

 

そう言って競技が始まった瞬間、パラドさんが粒子となって永夢さんの中へと吸い込まれていった。

その途端永夢さんの雰囲気が変わった。

髪が上がって目が変わり、纏っていたオーラも好戦的なものに変化した。そして、

 

天才ゲーマーM「「超協力プレイで!クリアしてやるぜ!」」

 

決めゼリフみたいなのを言ったあと、俊敏に動いて次々玉を入れていく。

だが、由紀ちゃんと美紀も負けていない。

 

由紀「とりゃぁ〜!」

 

とにかくいっぱい投げて玉を入れる由紀ちゃんと、

 

美紀「はっ!せいっ!やぁっ!」

 

気合いの入った掛け声とともに一つづつ着実に、しかし素早く玉を入れる美紀。

 

葛城「美紀は精密射撃とか得意だったしなぁ。」

 

まだ俺らがスーパーにいたころ、あいつらを殲滅するときにバンバンシューティングを持たせていたが、かなりの精密さで撃ち抜いていた。

恐らく才能があるのだろう。

 

そんなことを考えながら試合を見ていると、どっちのコンビも玉をどんどん入れているき、あっという間に時間切れ。

結果は…………

 

悠里「勝者!由紀ちゃん&美紀さんコンビ!」

 

由紀「やった〜!みーくんやったよ!」

 

美紀「ええ!やりましたね!」

 

パラド「まじか…………」

 

永夢「まさか負けるとは…………」

 

これは驚きだ。実戦経験豊富な2人に勝ってしまうとは!

 

胡桃「二人ともおめでとう!」

 

葛城「おめでとう!これで一勝だな!」

 

これで勝負はイーブン。

こっからが勝負だ。

 

そのそばで一人、

 

黎斗「ほう………」

 

黎斗さんだけ腕を組み、美紀ちゃんのほうを見ていた。

………変なこと考えてないといいけど。

 

 

_________________________________________________

 

そうやって次々に種目を消化していくこと数時間。

いくつもの種目をしたせいで皆くたびれ、休憩をしていた。

 

葛城「ふう。………お腹すいたなぁ。」

 

俺がそう言うと、すぐ近くからクゥ〜っという、可愛らしい音が聞こえた。

全員が一斉にそっちのほうを見ると、お腹を抑え、恥ずかしそうな顔をしている美紀ちゃんの姿があった。

 

胡桃「もうお昼の時間なのか。」

 

由紀「もうお腹ペコペコだよ〜。」

 

悠里「じゃあ部室からサンドイッチを取ってくるわ。」

 

葛城「じゃあ着いてくわ。さすがに1人じゃ危ないしな。」

 

悠里「お願いするわ。」

 

永夢「僕達お昼どうしようか?」

 

悠里「皆さんの分もあるので、食べてください。」

 

貴利矢「だってよ。お言葉に甘えようぜ。」

 

永夢「ありがとう。悠里さん。」

 

悠里「ええ。じゃあ行きましょ?」

 

葛城「了解。」

 

そういって2人連れ立って部室へと急いだ。

 

 

__________________________________________________

サンドイッチを食べおえ、食休みの休憩をとることになった。

俺もゆっくりしようと思い、校庭にシートを引いて寝っ転がっていると、黎斗さんが話しかけてきた。

 

黎斗「葛城君。少しいいだろうか?」

 

葛城「いいっすよ。何か用事でも?」

 

黎斗「まあ、そんなところだ。着いてきてくれ。」

 

そう言って校舎裏へと歩き始めた。

移動の途中でCRの面々にも声を掛けていた。

………どうやら、結構重要な話っぽいな

 




はい。もうちょっと運動会編が続きます。
次はもっと早く更新するので……しばらくお待ちください。
コメントと評価お待ちしてます。


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第18話

はいどうも。よこちょです。
先日学校で集合写真を撮ろうって話があったんですが俺がいなくても誰も気づかないというなかなかビックリする事件がありまして。
もう俺の転職はアサシンなんじゃないだろうか。(悟)

まあそれはともかく第18話、どうぞ!

※今回は平ジェネFinalのネタバレ注意です。

※今回はお知らせがあるので、あとがきに書いておきます。


前回のあらすじ

 

葛城「運動会開催!」

 

次々と種目をこなす中、黎斗から招集がかかる。

果たしてその内容とは……?

 

 

______________________________________________

 

校舎裏

 

休憩中に黎斗さんから招集がかかり、校舎裏に呼び出された俺たち。

黎斗さんがこうやって集めるのを俺は初めて見たので、少し緊張しながら黎斗さんが話始めるのを待っていた。

 

黎斗「待たせたな諸君。」

 

永夢「黎斗さんが集めるって珍しいですね。」

 

貴利矢「明日は雨か?」

 

パラド「いや、槍じゃねえか?」

 

黎斗「黙れェェェ!」

 

みんなの反応に渾身の叫び声をあげる黎斗さん。

 

黎斗「ゴホン……。まずはこの写真を見てほしい。」

 

そういって黎斗さんは脇に抱えていたパソコンの画面を見せてきた。

画面の中には恐らく空から撮ったであろう写真が映っていた。

写真にはゾンビのようになってしまった人間に狙撃銃のような銃を向け、何かを打ち出している人物の様子が映っていた。

その人物は変な見た目をしていた。

まるで蝙蝠のような………。

 

葛城「こいつは?」

 

黎斗「わからない。だがこいつの銃の取っ手の近くを見てくれ。」

 

そう言って次の写真を見せてくる。

銃にはキャップの付いたボトルのようなものが着いていた。

これがなんなのかわからず首を傾げていると、隣からパラドさんと永夢さんの息を呑む声が聞こえた。

 

パラド「ッ!これは!」

 

永夢「フルボトル!なんでこれがこっちの世界に!?」

 

どうやらこれがなんなのか知ってるらしい。

 

 

葛城「知ってるんですか?これのこと。」

 

パラド「ああ。永夢の変身能力を奪ったやつも使ってたやつだ。」

 

永夢「ああ。でもこれは平行世界にしか存在しないはず……。なんでここに……。」

 

葛城「???」

 

なんのことやらサッパリわからない俺に、貴利矢さんがこう言ってくる。

 

貴利矢「お前は真上にもう一個地球が現れた事件のこと、覚えてるか?」

 

葛城「ああ、あのでっかい腕みたいなのが出てきた。」

 

話を聞いてみると、あれは最上という男が「エニグマ」という装置を使って引き起こしたものらしい。

なんでもあの地球は「ビルド」という仮面ライダーがいる世界、要するに平行世界らしい。

それで、そのビルドとやらが変身に使っていたのがフルボトルというものらしい。

そして、それを裏で動かしていた組織があるという。

 

黎斗「それは財団Xだ。」

 

財団X。俺もその名前くらいは聞いたことがある。

科学研究財団として動いており、知名度は高い。

だが実際は様々な力を持った所謂「闇の組織」というやつだそうだ。

地球の記憶の力を持ったガイアメモリやコズミックエナジーを使ったスイッチ、欲望を使ったメダルにバグスターを元にしたガシャットなど未知数の力を有していて、未だ活動しているという。

恐らく今回も財団Xが絡んでいると言うのが黎斗さんの意見だ。

 

黎斗「まあこの推測を伝えたところでどうにかなるという訳では無い。だが、損もないだろう。そう思って伝えておいた。」

 

パラド「ふうん。ま、ありがとよ。」

 

永夢「じゃあそろそろ戻りましょうか。」

 

貴利矢「そうだな。運動会を再開しようぜ。」

 

葛城「そうっすね。」

 

そう言って校庭に戻った。

 

______________________________________________

 

運動会を再開してはや2時間。

途中で休憩を挟みながらも死力を尽くして闘い、いよいよ最後の種目になった。

ちなみにここまで同点である。

つまり、この勝負の結果がそのまま運動会の結果となるのだ。

そしてその内容は…………

 

黎斗「………本当にこれでいいのか?」

 

葛城「ええ。勿論です。」

 

俺との手合わせだ。

俺は当然ながら戦闘経験が全くない。この前までただの高校生だったからな。

だが、それを理由に弱いままではいられない。

そう思って黎斗さんに俺が頼み込んだのだ。

 

黎斗「………君がそう言うならいいだろう。」

 

葛城「はい。お願いします。」

 

美紀「………葛城君……。」

 

由紀「…。大丈夫かなぁ………。」

 

胡桃「………あいつならきっと大丈夫だ。」

 

悠里「ええ。信じて待ちましょう。」

 

部員の皆が心配してくれている。

でも、俺はこの仲間を守るって誓ったんだ。

だから、絶対に引かない。

 

永夢「………審判は僕がやるよ。」

 

貴利矢「あいつは死んでもコンテニューできるが、葛城は死ぬからな………。パラド。頼んだぞ。」

 

パラド「ああ。」

 

パラドさんには体力回復をお願いしてある。

どっちかが変身を解除したら試合終了だ。

 

永夢「ではこれより、仮面ライダーゲンム対仮面ライダーホープの一騎打ちを始めます。」

 

黎斗「………そういえばこうやって戦うのは初めてだな。」

 

葛城「ええ。俺は対人戦も初めてですよ。」

 

黎斗「そうか。でも、全力で行かせてもらおう。」

 

葛城「お手柔らかに。」

 

永夢「では両者、準備はいいですか?」

 

黎斗「ああ。」

 

葛城「はい。」

 

そう言って俺たちは手にガシャットを握る。

黎斗さんが持つのはマイティアクションXプロトオリジン。

俺が持つのはプロトマイティアクションX。

二人とも最初はマイティアクションで行くらしい。

 

永夢「では試合、開始!」

 

その掛け声とともに俺らはスイッチを入れる。

 

「「マイティアクションエーックス!」」

 

黎斗「グレードゼロ。」

 

葛城「レベル2。」

 

黎斗&葛城「「変身!!」」

 

「「レベルアップ!」」

 

「「マイティジャンプ!マイティキック!マイティアクションエーックス!」」

 

ここに、2人のライダーが闘いを始めた。

 

 

______________________________________________

 

第三者視点

 

開始の合図があり、先に動いたのはホープだった。

先手必勝とばかりに繰り出したストレートは当たる前にいなされ、お返しと言わんばかりに胸にストレートパンチを食らった。

 

ホープ「グッ……!」

 

苦しげに呻き声をあげる葛城。

 

ゲンム「まだまだァ!」

 

そう言って突進してきたゲンムの攻撃を躱せずにもろに受け、吹っ飛ぶホープ。

 

ゲンム「こんなものかァ?ホープ!」

 

ホープ「くっ。ならば!」

 

吹っ飛ばされた距離を生かそうと、ガシャコンマグナムを取り出す。

ボタンを押して連射するが、ひらりひらりと余裕げに躱される。

ゲンムのほうもガシャコンスパローを取り出して応戦する。

ホープはなんとか交わしているが、先程にダメージもあり、動きが鈍くなってきている。

このままではジリ貧なのは誰の目にも目に見えて明らかだ。

 

ホープ「これならどうだ!」

 

マイティアクションXを引き抜き、代わりに自分から作られたガシャット、「アンスキルドシールダーガシャット」を取り出し、スロットに入れてレバーを引く。

 

「レベルアンノウン!」

「立ち上がれ弱者!立ち向かえ守護者!今こそ己は盾となり!」

 

ホープは攻守に優れたホープシールダーゲーマーになり、接近戦を仕掛ける。

 

ライダー特有の脚力を生かした突進力でゲンムの懐に入り込み、鳩尾の部分を殴り飛ばす。

 

ゲンム「ゴホッ!」

 

鳩尾に綺麗に入って吹っ飛ばされ、苦しげに呻くゲンム。

初めて当たった攻撃は会心の1発だったらしい。

今度は腰から抜刀してから接近する。

さっきの攻撃が効いているのか、さっきより動きが鈍いゲンムを次々に切ってライダーゲージを減らしていく。

だがゲンムも不味いと思ったのか、俺を蹴ってその勢いで後ろに下がった。

 

ゲンム「なかなかやるじゃないか……。」

 

ホープ「まあ、そこそこにしか戦えませんがね。」

 

ゲンム「君ならきっと彼女らを守れる。少し安心したよ。」

 

貴利矢「………おい、明日は雨か?」(コソッ)

 

パラド「ああ。あいつが褒めるなんてな」(コソッ)

 

貴利矢達ががなにか言ってるがとりあえず葛城は無視した。

 

黎斗「黙れェェェ!」

 

黎斗は身体を捻って反応しているが。

 

ホープ「ありがとうございます。まあ、勝負はわかりませんがねッ!」

 

貴利矢達の発言をサラッとスルーし、そう言ってまたゲンムの懐へ潜ろうとする。

だが、それは失敗した。

 

「キメワザ!」

「マイティ!クリティカルストライク!」

 

ゲンムがいつの間にか必殺技を繰り出し始めていたからだ。多分さっき腰を捻って喋ってる時にキメワザスロットホルダーに入れていたんだろう。

 

ホープ「まずっ!間に合うか………!」

 

慌てて急停止してから俺もガシャットをスロットに入れ、必殺技を撃つ。

 

「キメワザ!」

「アンスキルド!クリティカルガード!」

 

ドライバーから音声が流れ、腕の盾が発光し、大きな半透明な盾が目の前に出現する。

その盾に手をかけ、思いっきり力を込める。

どうやらこのガシャットの必殺技は完全に防御型らしい。

 

ゲンム「オラァァ!」

 

ホープ「耐えてくれっ!」

 

ゲンムの必殺技が盾にあたり、ガリガリという音が鳴る。

音が鳴る度に俺の身体は押され、盾に少しずつヒビが入っていく。

 

ホープ「くっ。頼む……!」

 

ホープの想いが通じたのか、ゲンムの攻撃の勢いが止まり、身体が押されなくなった。

 

ゲンム「何ぃ!止めただと!」

 

ホープ「オオオオオ!」

 

剣を握り直し、一直線にゲンムの心臓部へと剣を突き出す。

胸部の部分にヒビが入り、ゲンムの身体を貫く。

ヒビが入ったライフゲージがどんどん減っていき、遂に0になった。

0になったと同時にゲンムの変身が解除され、黎斗さんが出てきた。

 

黎斗「私の負けだ。葛城義彦。」

 

「ゲームオーバー」

 

そう言ってゲンム、いや黎斗の身体がドットのように消えていき、消滅した。

 

永夢「勝者!仮面ライダーホープ、葛城義彦!」

 

______________________________________________

 

葛城side

 

葛城「ふぅ………。疲れた………。」

 

そう言って変身を解除し、その場に座り込む。

 

悠里「お疲れさま。」

 

胡桃「頑張ったな。」

 

美紀「本当に勝っちゃうとは驚きです。」

 

由紀「すごかったよ!」

 

葛城「ああ。ありがとよ。」

 

終わった瞬間囲まれて声をかけられた。

こういうのも悪くないと思っていると、

 

プープープープー!

 

黎斗「とうっ!」

 

奇妙な音声と共に紫のコンテニューと書かれた土管が現れ、中から黎斗さんが出てくる。

 

黎斗「私からも褒めさせてくれ。なんせ君はこの神のライフをひとつ削ったのだからな。」

 

葛城「結構ギリギリでしたけどね。」

 

今回は黎斗さんがレベル0だけで戦ってくれたが、実際はもっと強いのだろう。

 

葛城(………まだまだだ。もっと強くならないと………。)

 

そう思っていると、

 

パラド「………そういえばお前、残りライフ1じゃなかったか?」

 

パラドさんがとんでもないことを言い出した。

…はい?

 

永夢「………そういえばそうだったね。」

 

貴利矢「どういうことだ。神。」

 

黎斗「簡単な話だ。ゲームの情報をリセットしたのさ。」

 

詳しく聞くと、前まで残りライフ1だった状況を危惧した黎斗さんは、ゲーム自体をリセットして初期状態に戻したらしい。

それによって残りライフが回復、もとい元に戻り99になったという。

 

黎斗「ちなみに今の残りライフは1つ減って98だ。」

 

葛城「………すみません。折角元に戻したライフを削っちゃって。」

 

黎斗「気にすることは無い。こういう時にも使えるよう戻したのだからな。」

 

そう言って笑って流してくれる黎斗さん。

 

葛城(優しい人なんだな………)

 

改めてそう思っていると、

 

貴利矢「…………おいこいつは誰だまじで!」

 

パラド「………なんか変なもんでも食ったか?」

 

黎斗「失礼な奴らだ。私は私だ。神で変わりない。」

 

永夢「……ブレませんね。黎斗さん。」

 

黎斗「当然だァ。私は神だからな。」

 

そんなこんなでしばらく時間が流れ………

 

 

 

悠里「ではこれで第1回運動会を終わります。」

「姿勢、礼!」

 

一同「「「「ありがとうございました!!」」」」

 

こうして無事に、運動会を終了できた。

 

……………と思っていた。

 

ピピピピピピピッ!ピピピピピピピッ!

 

誰かの携帯だろうか?着信音がした。

 

永夢「あれ?僕のゲームスコープだ。」

 

そう言って永夢さんが聴診器(ゲームスコープと言うらしい)を取り出し、通話を始める。

 

永夢「はい、こちら永夢ですg「すまん。やられた。」」

 

返事をするより早く相手が話始める。

声から察するに、飛彩さんかな?

 

永夢「なにかあったんですか!」

 

飛彩「ああ。………CRがまた襲撃された。」

 

黎斗「何ィ!誰にだ!」

 

飛彩「…………スだ。」

 

永夢「え?」

 

飛彩「クロノスだ。……もっと正確に言うならば、檀正宗だ。」

 

パラド「檀正宗………だと……!」

 

黎斗「生きていたか……檀正宗ェェェ!」

 

……………どうやら無事とは言いきれないらしいな。




はい。ここで元社長の檀正宗とビルドから「あの人」が登場です。
クロノスはなぜCRを襲撃したのか。
なぜ復活しているのか。
なぜビルドの世界のものがこっちの世界にあるのか。
ちょっと謎を含ませたとこで今回は終了です。
次回の更新をお楽しみに。


※前書きで言ってたお知らせです。
今回の話の途中でビルド関連の人やシステムを登場させました。それは今後も増やしていく予定です。
そこで、この作品のタイトル「ガシャットぐらし!」
を「ライダーぐらし!」に変えようかと思っています。
ですが俺の一存で決めるのもおかしいと思うので、これを読んでる方がコメントで意見をくださるとありがたいです。
お願いします。


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第19話 CRの考察

申し訳ありませんでした!!!
前回の投稿から約半年。ここまで期間を開けた投稿になってしまい、本当に申し訳ありません。
これからは、こんなに投稿期間を開けずに投稿できるよう努力、精進して参りますので、これからもよろしお願い致します。

では、久々の「ガシャットぐらし!」をお楽しみください!


CR─電脳救命センター─

 

 

 

永夢「皆さん!大丈夫ですか!?」

 

電子ロックを解除する間も惜しいとばかりに、空いたドアの隙間に身体をねじ込み、声を掛ける永夢。後には運動会に参加していた面々も続いている。

 

飛彩「問題ない──とは言えないか。壁やモニターの一部分に傷ができてしまった。勿論、動作に支障はない。」

 

大我「機材の根幹部分にゃ一切傷は付いてねえよ。ったく。クロノスの野郎がまだ生きてるとはな。」

 

そういう2人は全身に軽い傷を負っているものの、大きな外傷などもなく、「あの」クロノスに襲撃された割には無事と言ってもいいくらいに元気であった。

 

貴利矢「クロノスにしちゃ随分と手緩いな。その辺どう思った?」

 

貴利矢が全員の気持ちを代弁して質問した。

 

飛彩「ああ。そこは俺達も感じていた。それに、本人が『今回はただの顔見せだ』と言っていたしな。」

 

大我「相変わらずいけ好かねえ高慢ちきな野郎だったがな。」

 

飛彩が冷静に、大我は吐き捨てる様に見解を述べた。

 

黎斗「………だが『仮面ライダークロニクル』のマスターガシャットなしでは変身できないはずだ。」

 

「仮面ライダークロニクル」のガシャットは檀正宗が体内に突き刺して砕け散り、そのまま消えたはずなのだ。だから本来はクロノスは存在するはずがないのだ。

 

ニコ「いや、壊れてたよ。多分。」

 

詳しく聞けば、クロノスの姿は全身にノイズが走っていて、ガシャットの起動音にもノイズがあったらしい。

 

飛彩「戦っていても以前ほどの強敵だとは感じられなかった。恐らくは壊れていたんだろうな。」

 

大我「まぁ問題はなんでぶっ壊れてんのに起動したのかって話と、なんであいつが生きてんのかって話だな。」

 

仮面ライダークロニクルガシャットの不完全復活と檀正宗の復活。

対処する事柄が一気に2つ増えたことで、全員の頭が若干痛くなった。ただでさえ未曾有のゾンビパニックが起こっているというのに、更に増えたんだから無理もない話である。

 

永夢「……でも、大きな怪我がなくて良かったです。」

 

永夢はそう笑い、締めくくった。

 

────────────────────────

 

黎斗「………檀正宗の復活も、クロノスの出現も。………ありえない話ではない。」

 

全員が寝静まった夜中。

黎斗は1人CRのパソコンを弄りながら独り言を呟く。

 

黎斗「鍵となるのはガシャットのみ。クロニクルガシャットさえあれば、マスターガシャットは複製可能だ。」

 

カタカタと、キーボードの音が響く。

画面には、ガシャットの基礎部分の基盤の設計図や詳細情報などがこと細かく映っていた。

その上に開いたウィンドウには、「ガシャットデータの複製」と書かれている。

 

黎斗「花家大我がクロニクルガシャットを持っていたな………。盗まれたか?」

 

色々な可能性はある。

衛生省が回収きれなかったものや回収されるのを嫌がった人の物など、一般家庭にも少なからずあるはずだ。

しかし、たとえ回収出来てもクリアできない問題があった。

 

黎斗「だが……複製法は私しか知らないはずだ。」

 

そう。ガシャットの製作はともかく、複製する方法やデータのサルベージ等は誰にもやらせたことがないので、誰も知っているはずがないのだ。

だが、黎斗の脳裏には小星作の姿が浮かんでいた。

彼は自分以外でガシャットを生み出せる存在だった。そしてそのことは黎斗自身も、実際に見るまで知らなかったのだ。

 

黎斗「………まさか、私の他にガシャットの複製が可能な人物が?」

 

黎斗は背筋に薄ら寒いものを感じ、パソコンの電源を落とした。

 

黎斗「…………私がこの程度で屈してたまるかァァァァァ!」

 

……と思いきや、パソコンの電源をまるで殴りつけるかのようにして再起動。

新たなソフトを起動し、疾風怒濤の勢いでキーボードを叩き始めた。

 

黎斗「目にものを見せてやるゥゥゥゥ!ヴェハハハハハ!!」

 

その夜は、キーボードの音とコンテニュー音が絶えなかったという。

 

 

 

 

 

 

 

余談だが、その翌日の朝に真っ白に燃え尽きかけた檀黎斗の姿が発見されたという。

その頭上には、ハートの中に54と書かれたゲーム画面が寂しげに輝いていたとか。




今回短めですが、次回長くなります。
理由ですか?あれです。サービスシーン的なやつです。
次回はできるだけ早く投稿いたしますので、しばしお待ちください。
では、次の投稿まで!


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第20話 おふろ

ヘイお待ちィ!(江戸っ子)
今回はタイトルでお察し、お風呂会だぜ!
というわけでどうぞ!

⚠今回結構キャラ崩壊します
具体的に言うと全員


巡ヶ丘高校 学園生活部部室

 

運動会も終わり、葛城を除く学園生活部の部員は、部室へと帰ってきていた。

 

胡桃「いや〜。疲れた疲れた。」

 

由紀「みんな頑張ったもんね〜。」

 

悠里「もう、二人とも?疲れてるのは分かるけど、床に寝転んじゃダメでしょ?」

 

美紀「そうですよ。女の子なんですからもうちょっと恥じらいをもってください。」

 

由紀「え〜。でも疲れたし〜。」

 

胡桃「でも運動会やって汗びっしょりになっちゃったな。あーあ。早くシャワー浴びたいぜ。」

 

悠里「そうなんだけど………。葛城くんが『ちょっと待ってて』って言うから一旦戻ってきたんだし、もうちょっと待ちましょう?」

 

美紀「全く……困った人です。汗まみれの女の子にシャワー浴びるの待ってなんて言うなんて。」

 

葛城がいない理由は、そこにあった。

なんでも、シャワーを浴びたいと言う女子に「30分待ってくれ」と言い残し、自分は先に校舎へと駆け出して言ってしまったのだ。

 

胡桃「…………まさかあいつ、先に入ってるわけじゃないだろうな?」

 

由紀「え!ずるいずるい!」

 

美紀「そうと決まった訳じゃないですけど………。うーん。」

 

信頼している美紀でもこう思うのも、無理はないだろう。

なんせ、汗まみれで早く汗を流したい中待たされているのだ。若干イライラしても仕方ないだろう。

 

悠里「………じゃあ、お風呂場に行くだけ行ってみましょうか。」

 

胡桃「だな。もし入ってたら蹴り出してやろうぜ。」

 

そう決めた4人は、タオルや下着類を手に、風呂場へと赴くのであった。

 

────────────────────────

 

風呂場前

 

 

 

胡桃「………着いたな。」

 

悠里「………ええ。」

 

風呂場に着いた4人を迎えたのは、もうもうと湯気が漏れ出てくる風呂場の扉であった。

4人ではいってもこんなに湯気は出ないのに、一体何をしたらこんなに湯気が出るのか。

電力の無駄遣いだとか水が勿体ないだとか、そんなことは4人の頭になかった。

4人の頭にあったのは、「本当に先に入ってたのか」という若干の落胆と、大部分のイラっときた怒りだった。

 

由紀「よーし。どうやって出そうかな〜。」

 

普段怒らない由紀までもが怒っている。

これのままでは葛城は絶対死ぬ。(精神的に)

だが、

 

葛城「ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁん!疲れたもーう!」

 

そんな状況をぶち壊して出てきたのは、葛城義彦その人であった。

 

葛城「ん?もう30分たってたっけな?まあいいや。もう入っていいぞ。たった今出来たばっk『死ねぇ!』ぶべらッ!」

 

何かを言いかけていた葛城の横っ腹に、胡桃の足蹴りが綺麗に決まった。

その勢いのまま横に吹っ飛び、腰をぶつける葛城。どう見ても重傷である。

 

葛城「いてててて。おいこら何しやがる!」

 

胡桃「うっさい!なんで男のお前が先に風呂はいってんだ!」

 

葛城「あ?別に俺風呂はいってねえぞ?」

 

胡桃「じゃあこの湯気はなんだ!?」

 

葛城「あぁ。これか?まぁ入りゃ分かるぜ。」

 

よっこらせと立ち上がり、「おーいてぇ」と腰を擦りながら先導して風呂場へともう一度入っていく。

 

悠里「…………とりあえず、入って見ましょうか。」

 

由紀「そうだね。」

 

美紀「まぁ、入ってみますか」

 

残る4人も、それに続いた。

 

 

 

 

 

葛城「ほれ。これが湯気の原因だ。」

 

胡桃「こ………これは!!」

 

入った4人の目に飛び込んで来たのは、床に空いた四角い空洞だった。その空洞にはお湯が張ってあり、周囲は少し段差ができていた。

そう。それは、「浴槽」と呼ばれる代物だった。

 

由紀「お風呂だーー!」

 

美紀「で、でも昨日までこんなの無かったのに!なんで急に?!」

 

葛城「だから今作ったんだって。まぁ簡易的すぎるがな。あ、あっためるのは火を使ってるから電力の心配はないぜ。まぁ排水溝の設備ができてないから校庭に流すだけだけど。」

 

葛城は少し説明するが、4人の耳には届いていなかった。

なにせ、パンデミックが発生してから初めてこんな設備を見るのだ。無理もない。

 

葛城「あー。んじゃ、俺は部室もどっとくから風呂はいっといてくれ。じゃな。」

 

そう言い残し、葛城は部室へと戻っていった。




お風呂会(脱ぐとは言っていない)
すみません、次回は脱ぐと思うので………
というわけで次の投稿まで!


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第21話 おふろ

若干遅くなって申し訳ないです………
ネロ祭り回ってたら執筆する時間がなくなってしまって………おのれ運営(人のせい)
やはりボックスガチャはいい文明です。異論は認めないっす。
それはさておき第21話、どうぞ!


お風呂

 

 

 

由紀「ほ、ホントにお風呂だ………!」

 

胡桃「あぁ………。あいつが作ったってのが若干不安だが………すげぇ。」

 

悠里「お風呂なんていつぶりかしら…………」

 

美紀「デパートにもなかったのにまさか学校で入れるなんて…………」

 

脱衣を無言でササッと済ませ、裸にタオルを巻いた状態で四者四様の反応を上げつつ、じぃっと浴槽を見る。

作り自体は単純で、ただ単に床を剥がしてその下を切断してから取り出すことで出来た穴にお湯を流し込んだだけだ。1人で作ったこともあって浴槽も、4人で入るのが限界といった感じだ。

だがこの状況下では、「いっぱいにたまったお湯」というだけで充分にお風呂と言える代物だった。

 

悠里「でもまずは身体洗っちゃいましょうか。」

 

美紀「そうですね。………早く入りたいですけど」

 

 

 

 

〜少女洗体中〜

 

 

由紀「洗い終わったー!」

 

胡桃「おーし!1番乗りだ!」

 

由紀「あ、ずるい!」

 

美紀「もう……先輩?行儀悪いですよ?」

 

悠里「はしゃぐ気持ちは分かるけど、暴れ過ぎないようにね?」

 

胡桃由紀「「はーい」」

 

やはりと言うべきか、全員が入ると少々手狭だった。

だが、

 

全員「「「「はふぅうううう〜〜〜〜」」」」

 

全身を余すことなく暖かいお湯に包まれ、身体の芯からじんわりとあったまるような感覚は、つかっている4人の口からため息を出させるには十分なものだった。

 

悠里「やっぱり気持ちいいわ〜」

 

美紀「そうですねぇ〜」

 

由紀「すごいいよぉ〜」

 

胡桃「ずっと入ってたいな〜」

 

4人はしばらく無言で全身の力を抜き、久々の湯船を堪能した。

 

美紀「ふぅ〜。やっぱりいいですね。こういうのって。」

 

由紀「そだね〜。」

 

胡桃「でもまぁ、結構辛いこともあるぞ…………」

 

美紀「?なんでですか?」

 

胡桃「だって………ほら。」

 

すっと湯船につかっていた腕をあげ、とある一点を指さす胡桃。その先には………

 

悠里「はぁ〜〜〜」(たゆ〜んたゆ〜ん)

 

湯船に浸かってなおその存在を主張するかのように水面をちゃぽちゃぽと波打たせる悠里の胸があった。

 

由紀「やっぱりーさんおっきいね〜」

 

胡桃「だろ?………それ見てると、な?」

 

美紀「あぁ………言いたいことが分かりました………。」

 

3人はそれぞれ下を向き、もう一度悠里のを見た後、はぁ〜っと、先程のため息とはまた違った意味合いのため息を吐いた。

 

悠里「もう、3人とも?おっきくたっていいことばっかじゃないのよ?肩も凝るし、運動の時もちょっと邪魔だし………。その点お風呂だと助かるのよね。浮力でちょっと軽くなるもの。」

 

胡桃「くっ……!これが持つものの悩みってやつなのか!」

 

美紀「いや若干違うと思いますけど……まぁいいです。」

 

由紀「ねーねーりーさん、触ってみてもいい〜?」

 

悠里「もう、由紀ちゃん?そんなこといっちゃダメでしょ?」

 

由紀「はーい。全く〜りーさんのケチ〜」

 

悠里「なにか言ったかしら?」

 

由紀「な、なんでもないで〜す!」

 

胡桃「すげぇな。お湯に浸かってんのに背筋が寒くなったぞ………」

 

美紀「私もです………」

 

悠里「 ふ た り と も ? 」

 

胡桃「さ、さぁ!そろそろ上がるかな〜なんて。」

 

美紀「そ、そうですね!のぼせちゃいますし!」

 

ざぶんという音が立つほどの勢いで飛ぶように湯船から上がり、風のように去っていった。その最中でも身体にタオルを巻き付けて行ったのは見事であろう。

 

悠里「もう………。さ、由紀ちゃんも上がりましょうか。」

 

由紀「うん!」

 

4人は久々のお風呂をじっくりと堪能してから、脱衣所へと移動して行った。

 

由紀「また皆で入ろうね!」

 

悠里「ええ。勿論よ。」

 

───────────────────────

 

一方、その頃の葛城は…………

 

葛城「暇だ」

 

太郎丸「▽・ω・▽わふぅ」

 

わしゃわしゃしてた太郎丸を床に置き、そう呟いた。

部室にて絶賛暇していた。

大急ぎでガシャコンスパローの二刀流で浴槽を作り、ガシャコンソードの炎でコンクリを固めたので身体が疲れてはいるのだが、そのまま寝る気にはなれず、現在こうして暇しているのだ。

普通生活ならゲームするなりして時間を潰すのだが、電力が勿体ないのでそれもできない。

 

葛城「………そういや、学校内で俺が調べてない場所ってあったっけ?」

 

ふとそんなことを思いつき、疲れであまり回らない頭で考える。

3階は調べたし………屋上も行った。

2階………もないか。

1階は…………あっ。

 

葛城「…………俺まだ職員室行ってねえや。」

 

学校内でも特に血が多かった印象があったため避けていたのをたった今思い出した。

 

葛城「…………暇だし 、行ってみるかな。」

 

よっこいしょと立ち上がり、背を伸ばす。ポキポキと小気味いい音を聞きながら扉へと足を運び、移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

職員室

 

 

 

葛城「着いたな。」

 

階段を下り、バリケードを超えた先にある職員室へと辿り着いた。中は一応綺麗にしたのだが、痛ましい血の跡や割れた窓などは対処できずに残しっぱなしてしまっているので、まるで時間が止まったように感じられた。

 

葛城「先生のデスクがあって、棚があって、テレビがあって………。普段と変わらんな。」

 

そう思いながらも一応、先生の机にあった資料や本をパラパラとめくって行く。

授業内容について書かれた本だとか、授業内容を書いたノートだとか、主に授業に関する物でいっぱいだった。今更ながら先生方の努力に気が付き、もう少し授業を真面目に受けておけば良かったと後悔が湧いてきた。

 

葛城「めぐねぇの国語の授業、受けてみたかったな。」

 

俺は国語が得意な方だったので、授業は半分以上寝て過ごしていた。だが、こんな生活を続けているとそんな授業も恋しく感じてしまうのだ。

 

葛城「ここがめぐねぇの机だったよな。」

 

記憶違いでなければ、ここで合ってるはずだ。

他の先生の机と同じように調べていると、ふと、新しめのノートが目に入った。表紙には「佐倉慈」という名前以外何も書いていない。

 

葛城「……………このノート、日記だったのか。ごめん。めぐねぇ。」

 

書いてあったことは後悔、懺悔、そしてパンデミック後の日常だった。

罪悪感が芽生え、ノートを元あったように戻す。

ため息をつくと、壁にあった棚が目に入った。上にめぐねぇの名前が書いてあるので、私物が入っているのだろうか?

中を覗くと、教材の他に心理学の分厚い本が見えた。二重人格や精神障害についての本だったので、十中八九由紀ちゃんの治療をしようと思って図書室から持ってきたんだろう。

 

葛城「………?ちょっとはみ出てる冊子があるな。これだけやけに薄いぞ?」

 

男の先生ならエロ本でも隠してるのか疑うところだが、めぐねぇなら絶対にないだろう。

 

葛城「戻って鍵借りてみっかな。」

 

俺はひとまず見ないふりをすることにした。

…………その本の見えていた部分に、「極秘」などの不穏な文字が見えたことも。




若干不穏な空気を残しつつ今回は終了です。
サービスシーンもっと濃いの書こうかとも思ったけど限度が分からんので軽めになりました。期待していて下さった方がいたら申し訳ない……

では、次の投稿まで!


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第22話 予兆

前回のあらすじ!

葛城「皆が風呂に入ってる間に見つけためぐねぇの棚。そこには見たことがないような冊子があった。不思議に思いつつも部室へと戻り、心当たりがないか聞こうとみんなを待つのであった………」

葛城「………まぁ今俺1人なんだがな。」


学園生活部部室

 

 

 

胡桃「変な本をめぐねぇの棚で見つけた?」

 

葛城「あぁ。」

 

風呂に入っていた女性陣と入れ替わりで風呂に入り、汗を流した俺は答えた。

 

葛城「つっても鍵がかかってて開かなかったんだがな。んで、鍵の在処を知らないか聞こうと思ってたんだが……知らないか?」

 

美紀「うーん、ありましたっけ?」

 

由紀「あ、あれかも!めぐねぇの私物入れにあったやつ!」

 

悠里「確かに、あの鍵はまだ試したこと無かったわね……。確か棚の上に置いたはずよ。胡桃?」

 

胡桃「任せとけって!よっと。」

 

身軽な動作で飛び上がり、カラフルな箱を取って着地した。相変わらず身軽なことだ。

 

胡桃「えーっと…あ、あったあった。これだろ?」

 

クルクルと指先で回しながら放る。

放物線を描いた鍵は俺の掌に収まり、カチャリと音を立てた。

飾りっけのないプレートが付いた鍵で、めぐねぇっぽさは一切なかった。が、プレートに書かれている名前からめぐねぇの私物だと判断できた。

 

葛城「さんきゅ。んじゃ、ちょっくら取ってくるわ。」

 

胡桃「寄り道すんなよ〜」

 

葛城「へいへい。お前は俺の母親かっての。」

 

胡桃「何言ってんだ?私は同じ部活の部員だぞ?」

 

葛城「わーってるよ。ノリだノリ。」

 

どうやら女性には某腐り目ボッチのやり取りは通じなかったらしい。

若干の残念さを背に、俺は先程までいた職員室へと再び足を運んだ。

残念さ孕んだ背中には、さっぱりと流したはずの汗がじっとりと熱を持っていた。

 

────────────────────────

 

職員室

 

 

 

再び戻ってきた。

あの嫌な雰囲気の冊子を取るためだけに。

出来れば見たくないという気持ちが大きい。

 

葛城「………開けるか。」

 

が、今ここで見ないのも嫌だ。

ただの直感なのだが、あの冊子には「何か」がある。それこそ、このパンデミックに関する重大な秘密とか、そういった類の物が。

 

意を決して引き戸をスライドさせる。

中からちょっとホコリが立ち、視界を狭める。それにより、人が触っていないことが判明したわけだ。

そして、目的の冊子は完全にホコリを被り、指紋の1つも付いていなかった。外についていたビニールが破れてるあたり、一回くらいしか読まなかったんだろう。

 

葛城「一回しか読んでない重要書類。でもって門外不出の禁断の書物………怪しすぎるだろ。」

 

おどけながらも慎重に最初のページを捲る。

 

葛城「ッ!!」

 

が、捲った途端に首を締められたような閉塞感を感じた。

表紙についていた血糊が原因ではない。原因はその内容だった。

 

 

曰く、

 

この巡々丘市自体が一種の実験都市と化しているということ。そしてこの巡々丘高校は、市内にいくつも作られていたシェルターの1つだということ。

そして───パンデミックが起こった時の対処法。

このパンデミックの元凶であるウイルスのこと。その種類。

 

 

 

 

内容を総括すればこんな感じのことが書かれていた。

 

葛城「…………道理でこんなに設備が整ってたりしてる訳だ。」

 

最初から少し疑問に思ってはいたのだ。

なぜこの学校には「普通の事態」では必要のない設備──雨水の浄水器や屋上菜園、大規模なソーラーパネル等─があったのか、と。楽しい生活の中では改めて考えることはしてなかったが………それは、最初から「こうなることを予想してた」としたら辻褄が合う。

そして、ついでに気づきたくないことまで気づいてしまった。

備蓄されていた資材数では、どう頑張っても全校生徒が生きながらえることは不可能だ、と。

俺達は少数人数だからこそ今日まで生きてこれたが、最初から俺ら生徒を生き残らせる気は無かったってことは確かだ。

考えただけでも寒気がする。

 

葛城「………とにかく戻ろう。このことを伝えなければ」

 

ページを閉じ、小脇に抱えて職員室をあとにした。

その足取りは、来た時よりもさらに沈んでいたとハッキリ自覚出来た。

 

────────────────────────

 

学園生活部 部室

 

 

 

悠里「この本が……………めぐねぇの棚に……………」

 

胡桃「嘘だろ………?」

 

由紀「嘘じゃ…………ないんだよ、ね?」

 

葛城「………あぁ。俺が伝えたことは憶測も混じってるが……大体の大筋は合ってると思う。」

 

俺は知り得た情報を隠すことなく伝え、更に情報の推測まで話した。

隠すことは当然出来た。が、今隠しても後にバレた時に更なる混乱を招くと考え、全て余すことなく話すことにしたのだ。

 

美紀「………みなさんが知らなかったってことは、隠してた。ってことですよね……?それって……」

 

胡桃「おい美紀。」

 

美紀「………すみません。失言でした。」

 

みんな一様にショックを受けている。今までの信頼を裏切られたような気がしたのだろう。無理もない。

だが、そんなことはないと思う。

 

葛城「いや、めぐねぇはそんなことはしない。多分、言いたくても言えなかったか、そもそも見てないんじゃないか?」

封もほぼ切られてなかったしな、と付け加える。

 

それに、例え見ていたとしても、言わなかった判断を褒めるべきだろう。俺は今回全てを話したが、それが常に正しいとは限らない。隠すべきこともあるだろう。特に、こんな重大なことなら。

 

胡桃「確かに、めぐねぇはそんなことする人じゃないな。」

 

悠里「きっとこの冊子の存在走ってたけど見るたことは無かったのね」

 

美紀「それで非常時になって見てみたら………ってところでしょうか?」

 

由紀「めぐねぇ………言ってくれればよかったのにね。」

 

各々が肯定的に受け止めてくれた様子を見て、そっと胸を撫で下ろした。もしかしたら受け止められずに倒れるんじゃないかとも危惧したんだが……杞憂に終わって何よりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

葛城「………さて、落ち着いたところでひとつ見てほしい。ここだ。」

 

みんながある程度落ち着き、いつもの調子を取り戻したところで本題に入った。

 

葛城「実は、この書類によってまだ未探索の場所があると判明した。」

 

冊子に書かれていた校内の見取り図の一部、地下二階部分を指す。確か、前見た時にはシャッターが閉まってたはずだ。だから迂闊に通れなかったんだが………何かあると分かれば話は別だ。

 

美紀「ホントですね」

 

胡桃「あぁ………ってことは!」

 

悠里「また新しい物資があるかも!」

 

由紀「ホント!?やったー!」

 

葛城「だろ?」

 

新しい物資。食料や水でもありがたいが、もしかしたら予備電源とかも見つかるかもしれない。というか最近曇り続きで残りの電気が心許ないし、電気系統が一番ありがたい。

 

胡桃「よし!そうと決まれば早速行ってみようぜ!」

 

葛城「いや、まだ未探索なんだ。念の為戦える俺らだけで行ってみることにしよう。」

 

悠里「大丈夫なの?」

 

葛城「任せとけって。パパっと行って来るだけだしさ。」

 

胡桃「そうそう。新たな物資を期待してくれたまえよ?」

 

俺はバグヴァイザーを腕に取り付けながら、胡桃ちゃんはスコップを片手に持って準備を整えながら、軽い調子で答える。

まぁあいつらは全員倒したしな。危険はないと思うが…………まぁ、念の為、な。

 

葛城「おし、じゃあ行ってくるわ」

 

胡桃「行ってくる〜」

 

美紀「いってらっしゃい!」

 

由紀「お土産待ってるねー!」

 

悠里「気をつけてね?」

 

こうして、俺達は未探索区域である地下二階へと繰り出した。

 




遂に地下二階へと足を踏み入れる2人。そこに待ち受けるものは!?
次回、ガシャットぐらし!第23話。「間違い」
お楽しみに!


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第23話 間違い

前回のあらすじ!

葛城「めぐねぇの私物棚に入っていた冊子。そこには、この事件が起こると予めわかっていたというような内容が書かれていた。失意にの中に新たな希望を見つけた学園生活部は、未探索区域である地下二階へと足を運ぶのであった。」

胡桃「まぁ向かってんのはあたしとお前だけだけどな。」

葛城「細かいことは気にすんなって。禿げるぞ?」

胡桃「女子に向かって禿げるとか言うな!」(ブォン)

葛城「おいスコップを振り回すんじゃない!危ねぇだろうが!悪かったって。謝るから。」

胡桃「ふんだ。変な事言うからですよーだ。」

葛城「だから悪かったって………。っと、そろそろ着くな。では、第23話!『間違い』お楽しみください!」

胡桃「お前誰に話してんだ?」

葛城「気にすんなって。禿げるぞ?」

胡桃「また言ったーーー!」

11月16日 加筆 内容に変更はなし


地下二階 シャッター前

 

葛城「ここだな」

 

未探索区域に繋がる地下二階への入り口。

一度見たら忘れないような血だらけのシャッターは、以前と全く変わらない様子──机がつっかえ棒の様になって若干開いてる──で、そこに存在していた。誰の血が付いているのかは考えないようにしながら、俺達は目の前に立つ。

 

葛城「………んで?どうやって入る?潜るか?」

 

胡桃「まぁ開ける訳にもいかないしな。」

 

葛城「了解。んじゃまぁ、失礼してっと。」

 

机一個分の隙間を屈んで潜り、向こう側へと移動する。

 

葛城「……なんでここ水浸しなんだよ。」

 

来て始めて分かったのだが、床全体に水が溜まっていた。お陰であいつらが居ても足音が聞きやすいのだが、こっちは足が水浸しだ。後で洗濯し直さなきゃならなくなっちまったぜちくしょう。

 

胡桃「うへぇ。びちょびちょだよ……」

 

胡桃ちゃんも濡れたらしく、嫌そうな顔をしている。

 

葛城「まさか濡れてるとはな」

 

胡桃「ホントだよ。あーあ。選択し直しかー」

 

葛城「まぁやるのは多分りーさんだけどな。……ちょっと待て。なんか聞こえるぞ。」

 

会話している声に釣られたのか、ピチャリ、ピチャリと水を踏む音が奥から聞こえてきた。

 

葛城「胡桃ちゃん」

 

胡桃「あぁ。」

 

俺はバグヴァイザーを、胡桃ちゃんはスコップを構え、どこからかかって来てもいいように臨戦態勢を整える。

その間にも足音はこちらへと近づいてきて──遂にそいつの顔が見えた。…………いや、見えてしまった。

 

胡桃「なんで………こんなのって………!」

 

息が詰まる。息の吸い方を忘れた肺が酸素を求めて暴れるが、そんなのも気にならないくらいに愕然とした。

驚きのあまり俺は声も出せず、ただ浅い呼吸のようなものを繰り返した。

 

葛城「…………めぐねぇ、か?」

 

漸く搾り出せた声は掠れ、音になっているかも怪しかった。

が、その声が聞こえたのだろうか。ゾンビの様になってしまっためぐねぇは、口の端を釣り上げて笑ったように見えた。

 

 

 

 

side胡桃

 

 

胡桃「ぁ………あぁぁぁぁぁッ!」

 

訳が分からなかった。

確かに、私達はめぐねぇが死んだという場面を直接見た訳では無い。だが、あの大群に囲まれて生きているということはないだろうと思った。だから屋上にめぐねぇのお墓も作った。

…………でも、どこかで一瞬考えたんだ。「めぐねぇの変わり果ててしまった姿を見たことがない」って。

でも、考えたくなかったんだ。あのめぐねぇがアイツらみたいになった姿なんて。

…………でも、こんな風に帰ってくるんだったら、ちゃんと考えとけばよかったな。

そんなことを頭の隅で考えながらスコップを振り上げ、前へと突進する。狙うのはめぐねぇの頭部。

 

胡桃(…………せめて。せめて苦しまないように!一撃で!)

 

心に生まれた恐怖とかを噛み砕くように大声を張り上げ、前へと進む。

 

葛城「胡桃ちゃん!」

 

後ろからあいつが叫ぶ声が聞こえる。

でも大丈夫。心配すんなって。ちゃんとやるからさ。

 

胡桃「あぁぁぁぁぁ!あっ………!」

 

大丈夫。ちゃんとやる。

そう思っていたのに………。

振り下ろす直前に頭を過ぎったのは、まだ葛城も美紀もいない最初の頃。まだめぐねぇの生きていた頃。

屋上に逃げ込んで……由紀やりーさんと出会って……先輩をスコップで倒して……めぐねぇに部活を作って貰って……

次々と思い出が走馬灯のように頭を走り、それは私の腕の動きを止めてしまった。

ギリギリとどんなに力を加えているつもりでも、腕が微かに震えるだけで1ミリたりとも進まない。

そんな私を見ためぐねぇはまた口の端を釣りあげて大きく口を開き、腕も勢いよく振り上げた。

 

胡桃(…………あぁ。あたし、しくじっちゃったかな。)

 

めぐねぇの振り下ろす腕がやけにゆっくり見える。

人間死にそうになると時間がゆっくり感じるってのは本当だったんだな。

 

胡桃(みんな………ごめん。)

 

そう思ったところであたしの意識は途切れ──ることはなかった。

 

葛城「うおぉぉぉぉぉ!」

 

バグヴァイザーからデタラメにビームを乱射しながらこっちに走ってくるのは、見間違いようもない。葛城だ。

 

葛城「ごめん!」

 

一言謝ってからあたしの制服を掴み、後ろへと勢いよく飛ばす。その間も、時間がゆっくり流れていた。

 

 

 

だから、しっかりと見えてしまったのだ。

 

 

 

 

 

あたしを後ろにやるためにはどうしても、自分が前に出なくてはならない。

だが、前にはめぐねぇがいた。

 

ザシュッ

 

 

ゆっくり見える視界の真ん中で、葛城がめぐねぇに攻撃されていた。

 

腕には大きく開けられた口がトラバサミのように喰い込んでおり、顔には大きく爪で引っかかれた跡があった。

 

 

葛城「ガッ……うおぉぉ!」

 

それでも一矢報いようとしたのか、バグヴァイザーのチェーンソーでめぐねぇの片足を斬り付けて体制を崩し、ヤクザキックで鳩尾を抉っていた。

 

そこで、あたしは地面にお尻から落下し、時間が戻った。

正常に戻った時間の中でまず目に入ったのは、鮮血で紅に染まった水だった。その紅の出処には、片目と腕を抑え必死に痛みに耐えている葛城と、薄い声を漏らしながら壁に倒れ込んでいるめぐねぇだった。

 

 

胡桃「か、葛城!!!」

 

 

 

side葛城

 

視界の半分が赤に染まる。

それと同時に、今まで感じたことの無いような痛みが全身を駆け巡り、俺の身体を燃やすように暴れている。抑えて鎮めようとしたが、全く効果がない。

 

胡桃「か、葛城!!!」

 

胡桃ちゃんが俺を呼ぶ声が微かに聞こえる。パシャパシャと水を跳ね飛ばしながらこちらへ来ているようだ。

 

葛城「馬鹿!こっち来んな!」

 

俺は噛まれたのだ。すぐに奴らのようになるだろう。せめて胡桃ちゃんだけでも無事に帰さなくては……!

 

胡桃「でもお前、血が!」

 

葛城「俺の事はいい!いいから行け!」

 

胡桃「でも………」

 

葛城「早く!」

 

行かせるために、そして生かせる為に少々荒っぽいがバグヴァイザーからビームを乱射する。絶対当たらないように狙いは外しているが…………まずい。身体が勝手に照準を合わせようとしやがる。

勝手に動く手を必死に抑えながら撃っていると、出て行ってくれた。

 

葛城「ふぅ………危機は去った、か。」

 

ずるりと壁にもたれこみ、荒い息を吐く。

 

葛城(あぁ。俺はここでおしまいだな。)

 

思い返せば、よくもまぁこんなに楽しい日々が遅れたものだ。

学園生活部に入部してからというもの、毎日がとても楽しくて楽しくてしょうがなかった。女子と無縁な生活を送っていた俺にとっては、最初で最後の女子と話す機会になっちまったが、それもいい思い出だ。

 

葛城(…………みんな。すまないな。俺が死んでも………元気でな。)

 

葛城「後は、頼んだ………ぞ………」

 

そう思い、俺の意識は闇の中へと消えていった。

そして沈む意識とは裏腹に、葛城の周囲は謎の光に満ちていた。

 

 

 




原作とは違い、胡桃の変わりに噛まれてしまった葛城。
彼が最後に願った学園生活部の安寧は崩れるのか否か。
そして闇に沈んだ意識を代償に生まれた光の正体は………?そしてその光が示すのは、希望か、絶望か。

次回、ガシャットぐらし!第24話『彼と願いと彼女らと』お楽しみに!感想待ってます(ステマ)

お知らせ この度、がっこうぐらし!の原作漫画を全巻買って読破しました!なので、タグから「原作未読」を削除させて頂きました。


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第24話 彼と願いと彼女らと

前回のあらすじ

未探索区域である地下二階へと脚を運んだ胡桃と葛城。だが、中に入ってから目にしためぐねぇの変わりように動転し、立ち竦んでしまう。
だが、そんなことはお構い無しに攻撃してきためぐねぇ。動けない胡桃を庇った葛城は噛まれ、感染してしまった。
それぞれの思いが交錯する時、そこには何が生まれるのか。
第24話、「彼と願いと彼女らと」。お楽しみください!


学園生活部 部室

 

由紀「…………2人とも遅いね〜。何してるんだろ?」

 

美紀「きっと、新しい物資に舞い上がって足でも挫いたんでしょう。」

 

悠里「葛城くんはドジなとこあるから。そうかもしれないわね。」

 

美紀「名前出てないのに確定されてるの、葛城君らしいですね。」

 

由紀「2人ともそんなこと言わないの!」

 

部室に残された3人は、元気に会話をしている。

──ように見えた。

会話をしながらも、3人の視線は部屋の壁にある時計に向きっぱなしだ。

胡桃と葛城が出発してからはや30分。ぱっと見てくると言っただけにしては、あまりに長い時間が経っていた。

時間の経過に何か嫌なことを感じたのか、はたまた急に降り始めた雨を見て不吉なことを感じたのか。3人はこうして空元気出し、明るい会話をしていた。

──もっとも、大体は葛城がドジやらかしたんだろうという内容だったのがなんとも言えないが。

 

悠里「………この天気だと、思い出すわね。」

 

由紀「………うん。めぐねえのこと、でしょ?」

 

美紀「めぐねぇが亡くなった日も…こんな天気だったんですか?」

 

悠里「えぇ。………ちょうど、こんな風な雨の日だったわ。」

 

コチ、コチ、コチ、コチ

 

秒針の音がやけにハッキリ響く。

これが沈黙のせいなのか、3人の心情のせいなのかは分からない。

 

美紀「…………きっと、偶然ですよ。ここ最近、曇りが続いてましたから。」

 

沈黙を破り、発言した美紀の口振りもどこか頼りなかった。

まるで、このあとを案じているかのような───

 

 

 

──それからさらに10分が経過した頃だろうか。

不意に廊下がドタドタと騒がしくなり、凄い勢いでドアが開いた。

 

胡桃「────みんな………ごめん…………」

 

ドカンという大きな音と共に姿を表したのは、大きな目を涙で泣き腫らし、今にも倒れてしまいそうな程に憔悴しきった胡桃だった。

 

悠里「胡桃!」

 

慌てて駆け寄り、倒れそうな身体を支える悠里。

 

悠里「由紀ちゃん、救急箱を!」

 

由紀「う、うん!」

 

タタタッと開いたドアから駆け出していく由紀。保健室に救急箱を取りに行ったのだ。

 

悠里「胡桃!大丈夫!何があった……ッ!あなた、血が!」

 

胡桃の制服や肌には既にドス黒くなってしまった血がこびりついていた。

 

胡桃「私じゃない。噛まれたのは……………葛城だ。」

 

 

 

 

 

 

その瞬間、沈黙が部屋を支配した。

 

悠里「う、嘘。葛城くんが───」

 

美紀「…………なんで……なんで………」

 

胡桃「私のせいなんだ。私のせいで………あいつは………」

 

また、沈黙。

会話が途切れた時とかの比では無いほどの重苦しい沈黙が、部室に漂っていた。

 

由紀「救急箱持ってきたよ!………って、あれ?みんなどしたの?」

 

重苦しい空気の中に由紀が帰ってきた。

葛城が噛まれた、と聞いた由紀は、ショックに耐えきれずに気絶してしまった。

 

悠里「由紀ちゃん!」

 

慌てて抱えおこし、ソファーに寝かせる。

 

胡桃「………とにかく、行かなくちゃ。」

 

悠里「行くって………まさかあなた!」

 

胡桃「アイツは……最期に頼むって言ったんだ。………なら、原因のあたしが!」

 

悠里「でもそんなこと!」

 

美紀「2人とも落ち着いてくさだい!」

 

悠里「………そうね。ごめんなさい。」

 

胡桃「………ごめん。」

 

ハッと我に返った2人。

謝罪を口にした後、現状の確認に入った。

胡桃は、めぐねぇがゾンビのような状態になって地下二階にいたこと。そして、自分を庇って葛城が噛まれたこと。そして、最期に「後は頼んだ」と言い残したことを話す。

 

悠里「………とにかく、CRの人達に状況を話しましょう。何か活路があるかもしれないわ。」

 

胡桃「でも………通信できるバグヴァイザーは葛城が持ちっぱなしだ。」

 

悠里「そんな……!」

 

探索で葛城が持っていったバグヴァイザーのみ、CRとの通信が可能だったのだ。それがない今、CRの面々とは連絡が取れない。

降って湧いた危機的状況が、さらに厳しいものであると知った3人は、頭を抱える。

そして

 

悠里「………なら、行くしかないわね。」

 

美紀「行くって……まさかCRに?」

 

悠里「えぇ。その病院なら何度か行ったことがあるし、なにより車の運転は私か胡桃しかできないもの。」

 

胡桃「じゃあ私が!」

 

悠里「胡桃は万が一のためにここに残って。」

 

美紀「………現状、それしか方法がありません。なら、出来ることをやりましょう。」

 

胡桃「………頼む。りーさん。」

 

悠里「えぇ。任せておいて。」

 

力強く頷き、駆け足で駐車場へ向かう悠里。

暫くしてからエンジン音がなり、車が校門から出ていくのを確認できた。

 

胡桃「とにかく、りーさんを待とう。」

 

美紀「えぇ。………その間に、何も起きなければいいんですが。」

 

美紀のぽつりと零した声は、またもこの後を案じるものだった。

 

 

────────────────────────

 

side???

 

…………つめたい

なんでおれはここに……?

 

そのモノが目を覚ました時、最初の感想はそれだった。

 

あぁ、そうだった。

おもいだした。

…………なら、かえらなきゃ。

あのへやに…………

 

???「アァ……………」

 

口から漏れる声はただの音となって空気を震わせる。

だがその音に意味はなく、ただの振動となって空中を進んだ。

 

あし おもい

あたま いたい

かべ じゃまだ

 

???「アァァ……………」

 

こわれた

いいや。すすめる

 

 

進む脚は何かを探すように右へ左へと揺れる。

失われていき緩慢となる思考力の中、己に残った最後の記憶を頼りに1歩ずつ進んで行った。

 

 

 

 

 

 

あった

 

 

 

 

 

 

おれの いばしょ

 

 

 

そのモノが辿り着いた部屋、『学園生活部』。

それはその男にとっての居場所であり、家でもあった。

男は腕を上げ、扉を叩いた。

 

 

 

 

────────────────────────

 

学園生活部 部室

 

胡桃「っ!美紀!」

 

美紀「はい!」

 

突如として叩かれた部室のドア。

それは悠里の帰還を示すものではなく、ただ力任せに殴られたような音だった。

当然悠里はそんなことをする人ではないし、こんな状況下では来客もない。

ならば、誰が叩いたのか。

──十中八九敵、ないしそれに準ずる危険人物だ。

そう判断した2人は武器を手に取り、戦闘態勢に入っていた。

 

そして、戦闘態勢に入った2人の目に入ったのは

 

胡桃「うそ、だろ?」

 

美紀「なんで………あなたが………!」

 

 

 

 

 

 

葛城「アァァァ…………!」

 

ゾンビのようになった葛城だった。

噛み付かれた腕はその部分だけ血の異様なテカリがあり、引っかかれた顔はまるで腐ったようにただれている。肌にも血の気がなく、一目見れば「死んでいるのに動いている」。その表現に相応しい風体だった。だが、虚ろな目は濁ってはおらず、生前と同じ輝きを放っていた。

 

 

 

 

胡桃「っ!来るぞ!」

 

脚は健在だったのか、生前と変わらない速さで走ってくる。

胡桃と美紀は突然の自体に動転しながらも、それを躱し、少しでも距離を離すために葛城を蹴った。

すると勢い余って葛城はそのまま窓へ衝突し、そのまま外へと放り出されて行った。

 

胡桃「葛城!」

 

死して害をなす存在になってしまったと分かっていても、つい心配になってしまったらしい。割れた窓から外を覗くと、下に大きな血溜まりができていた。

 

美紀「葛城君、大丈夫でしょうか。」

 

胡桃「分からない……。とにかく、下に行ってみよう。」

 

美紀「はい。」

 

 

 

 

 

side葛城

 

あぁ…………

 

ふたりがこわがってるのがきこえる

 

まもらなきゃ

 

まもらなきゃ

 

降りしきる雨の中、僅かに残った思考で思う。

葛城に残った残留思念のような使命感。それは、「仲間を守る」ということだった。

だが、その尊き使命感は悪い方向へ進んだ。

感染したウィルスのせいで。

 

 

 

まもらなきゃ

 

葛城「へん………しん………」

 

『ハザードゾンビ………』

 

『ガッチョーン バグルアップ………!』

 

『ハザードオン!デンジャーデンジャー!ハザードオブゾンビィィィィ!ヴァァァァァ!』

 

 

 

 

 

 

大切な仲間を守ろうと犠牲になった男は、死してなお手放さなかった力を新たにし…………

 

胡桃「な、なんだ………これは………」

 

美紀「まさか………葛城……君……?」

 

葛城「アァァァァァァ!!!」

 

その力を持って、仲間に牙を剥いた。

 




感染した葛城は、生前の力を手に仲間へと牙を剥いた。
迫り来る葛城に、胡桃と美紀が取った行動は………?
次回、ガシャットぐらし!第25話、「新たな力と断つ想い」
お楽しみに!
感想待ってるぜ(ボソリ)

──以下、新形態の詳細──


仮面ライダーホープ(?)ハザードゾンビゲーマ

パンデミックを引き起こしたウィルスに感染した葛城が創り出したガシャット、「ハザードゾンビ」をバグヴァイザーに挿入して変身した姿。
見た目はゾンビゲーマの装甲の色が所々欠け、剥がれ落ちている。また、ボロボロのマントを着けている。
葛城自信が目と腕をやられた影響か、ゲンムのように片目が赤でもう片目が青のオッドアイになっており、腕の装甲は完全に無くなっている。
また、ハザードの名に恥じぬ攻撃力を保持しており、装甲が無いからと油断しては容易に殺されるだろう。


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第25話 新たな力と断つ想い

どうも皆さん。お久しぶりです。よこちょです。
年末正月暇だろうなーとか思ってたら全く暇じゃなくて投稿できませんでした。待ってくださってた方は申し訳ないです………
そしてそうこうしている間にがっこうぐらし!の実写の詳細が発表され、胡桃の好きだった人の名前が葛城紡だったことが判明。

筆者「やっべえ被ったわ」
これからの展開はどうなる!?

では、第25話、どうぞ!


前回のあらすじ

 

地下二階の探索中、噛まれてしまった葛城。

尊き信念が暴走する中、新たな力─ハザードオブゾンビガシャットを使い変身する彼は、ついに学園生活部に牙を剥く。

この事件は、一体どう言った結末を迎えるのか?

 

─────────────────────────

「アァァァァ!」

 

葛城の新たな姿──仮面ライダーホープハザードオブゾンビゲーマー。

死の鎧を纏ったその姿で地を蹴り、未だ棒立ち状態の胡桃と美紀へと肉薄した。

 

胡桃「危ない!」

 

美紀「きゃぁっ!」

 

2人は危なげながらも攻撃を回避し、葛城へと向き直る。

 

胡桃「おい葛城!目を覚ませ!」

 

美紀「先輩!危ないです!」

 

胡桃「っ!でも!」

 

自らの危険を省みずに必死に放った声も届かず、ただただ暴れる葛城。その姿は学校外に存在しているかれらとなんら変わりがなく、恐怖が募る一方だった。

 

美紀「とりあえず校内に逃げましょう。校内の方が遮蔽物も多いので、安全かと。」

 

胡桃「………ああ。そうだな。行こう。」

 

胡桃も深呼吸をして落ち着き、2人で校内へ走った。

 

────────────────────────

 

胡桃「美紀、大丈夫か?」

 

美紀「ええ。日頃から由紀先輩みたいにダラダラしてませんから。………でも、まずいですね。」

 

窓の割れた廊下を走る。息を荒くしつつも、まだ軽口を叩く余裕を見せる美紀と胡桃。だが、後ろから追いかけられている状態では、その余裕が無くなるのも時間の問題だ。

 

胡桃「ああ。このままじゃまた部室に逆戻りだ。」

 

美紀「なにか策は…………あっ!」

 

当たりを見渡した後、一点を指さしながら叫ぶ美紀。

その指先が指しているのは──葛城の付けているドライバーだった。

 

美紀「部室にもう一個ドライバーがありますよね?あれを使えば対抗できるかもしれません。」

 

胡桃「その手があったか!部室に行くぞ!」

 

美紀「はい。でも、部室には由紀先輩がいます!」

 

胡桃「ならアタシがアイツを引きつける!その間に取ってきてくれ!」

 

美紀「了解です!お気をつけて!」

 

話し合いが終わったタイミングで階段に差し掛かり、美紀は上へ、胡桃はそのまま突き進む。

上手い具合に葛城は胡桃に狙いを定め、追い掛ける。

生死をかけた鬼ごっこは、始まったばかりである。

 

 

 

 

胡桃(………変だな。)

 

追いかけられながらも胡桃は、引っかかっていた点を考える。

 

胡桃(変身後の姿で追いかけてきてるのにアタシがまだ追いつかれてない………。)

 

通常、仮面ライダーの身体能力は生身の人間とは比べ物にならない程高く、本来ならあっという間に捕まって殺されてしまっていても不思議ではない。なのに、今こうして何とか逃げられている。

 

胡桃(なんでだ?何か枷でもあるのか?)

 

そう思い、逃げながら振り返って観察するも、速度が緩まってないからできなかった。

 

胡桃(なんとか隙を…………)

 

胡桃「あっ!」

 

後ろに注意を割きすぎたあまりに廊下で転び、転倒する。

 

胡桃「痛ってぇ………」

 

足を見ると、腫れてはいないものの血が出ている。

そしてその隙を見逃されるはずはなく、じりじりと迫ってくる葛城。

 

胡桃「あ……、あぁっ………!」

 

血を見たことと今の状況が合わさり、恐怖が倍増する。逃げていた時の余裕は跡形もなく吹き飛び、恐怖で腰が抜け、足が震える。

 

胡桃「く、来るなぁっ!」

 

そんな呼び声も虚しく、葛城はもうすぐ目の前まで迫っていた。

そして葛城は腕をゆっくりと上に持ち上げる。そのゆっくりとした動作とは裏腹に、物言わぬ迫力と、明確な「死」を伴っていた。

 

胡桃(…………結局、ここで終わっちゃうのかな。アタシ。)

 

胡桃の心は、さっきまでの地下二階の時のように崩れかかっていた。目の前の死を直視して身体がすくみ、生きることを諦めかけていた。

諦めが浮かび、輝きを失った目に死が映る。

 

胡桃(これで………終わりか………)

 

 

 

『後は、頼んだ』

 

 

 

 

 

 

胡桃「っ!」

 

胡桃の諦めかけていた心に、葛城からかけられた声がフラッシュバックする。

 

胡桃(そうだ。アタシにはまだ───)

 

 

胡桃「──しなきゃいけない事がある!」

 

体勢を建て直し、後ろへ跳躍。目くらましのために近くにあった消化器を持ち、噴射。そのまま後ろへ下がり、距離を取った。

 

胡桃「よし……。これで一先ず大丈夫っと。」

 

美紀「先輩!これ、持ってきました!」

 

ちょうどそのタイミングで美紀がドライバーとガシャットを持ってきた。

 

胡桃「お、ナイスタイミング!さて……どれにしようか」

 

美紀「私はこれで援護します。先輩に前線任せてもいいですか?」

 

胡桃「もちろんだ。じゃあ………これがいいか」

 

胡桃が手に取ったのは、「タドルクエスト」。剣を主体にして戦う、勇者をモチーフにしたガシャットだ。

 

胡桃「よし。確か……こうして、こう!」

 

『タドルクエスト!』

 

『ガシャット!』

 

胡桃「───変身!」

 

『ガッチャーン!レベルアップ!』

 

『辿る巡る辿る巡るタドルクエスト!』

 

胡桃「葛城、頼まれたぜ。」

 

────────────────────────

 

胡桃が恐怖に打ち勝ち、仮面ライダーへと変身を果たした時。

悠里は1人、荒れ果てた道でミニクーパーを走らせていた。

 

悠里「もう少し………もう少しで着くわ。」

 

道が荒れているせいで小刻みに、時には大きく揺れる車内。その揺れがまるで不安の波のように悠里を襲う。

 

悠里「駄目……。考えちゃだめ……。もう少しなんだから………!」

 

目を瞑り、その場でうずくまって叫びたい衝動を抑え、必死に車を走らせる。

 

悠里「っ!見えた!」

 

ようやく見えた聖都大学附属病院。悠里は閑散とした敷地内に車を停め、入口へ走る。

 

悠里「地下にあるって言ってたわよね。」

 

病院内の見取り図から場所を特定し、また走る。

目的の人達は、すぐそこだ。

 

────────────────────────

 

黎斗「………侵入者か。」

 

飛彩「本当か!映像を出せ!」

 

黎斗「今やっているゥ!私に指図するなァ!………これはどういうことだ」

 

ようやく直ったモニターに映像を映すと、そこにはCR目掛けて真っ直ぐ進む悠里の姿が映っていた。

 

永夢「あれは悠里ちゃん!?どうしてここに!?」

 

貴利矢「それよりまずは話聞かないとじゃん?迎えに行こう。」

 

永夢「僕が行きます!パラド、着いてきて。」

 

パラド「ああ。早く行こうぜ!」

 

急いで部屋を飛び出し、廊下を走る2人。

 

大我「だが本当になんでここまで来たんだ?ゲンムが通信用具渡しただろ?」

 

ニコ「なんか理由があったからでしょ。ホンットに大我はバカ大我なんだから。」

 

大我「誰が馬鹿だ。………とにかく今はエグゼイドとパラドクスを待たねえとな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永夢「えぇ!?葛城君が噛まれて感染しただって!?」

 

飛彩「しかも新たなガシャット生み出して襲いかかってきたというのか………。」

 

悠里「……………はい。」

 

状況を聞いたCRの面々の顔に、驚愕と悲痛の表情が浮かぶ。

それは噛まれて感染した葛城に対する心配、それともうひとつの感情から発せられていた。

 

飛彩「………………………。………なら、倒すしかないだろう。」

 

大我「ああ。だろうな。」

 

ニコ「ちょ、大我!何言ってんの!」

 

ある意味一番現状を冷静に見た2人の発言。

その言葉の裏には、「もう助からない」という諦めの念が浮かんでいた。

 

ポッピー「そうだよ!きっとどうにかする方法だって……!」

 

飛彩「あったら既に実行している。」

 

大我「現状がこれなんだ。なら、せめて楽にしてやるしかねえだろ。」

 

そして、最大限の譲歩した優しさ。つまり、「苦しみから解放してあげる」という考え方である。

 

貴利矢「ちょいちょい!そんな言い方ぁねえだろ。なぁ?永夢。」

 

永夢「はい。それに、その方法だと、葛城君は救えてもその周りの人達─学園生活部みんなのの笑顔が無くなってしまいます。なら僕は……その方法を取りたくありません。」

 

飛彩・大我「……………。」

 

本音ではそんなことはしたくないと思っている2人も黙り込み、場に沈黙が訪れる。

 

 

 

黎斗「…………確かに現状、噛まれた人間はどうすることも出来ない。」

 

その沈黙を破ったのは、黎斗だった。

 

悠里「そんな………!葛城君は、葛城君は助けられないんですか!」

 

悠里の悲痛な叫びが響く。

 

黎斗「誰が助けられないと言ったァ!私は神、檀黎斗神だ!出来ないことなどぬわぁあああい!」

 

そんな叫びを打ち消すほどの声量を伴って身体を逸らし、お決まりの神宣言をする黎斗。そんないつも通りの態度に、全員の顔に生気が戻る。

 

悠里「お願いします!葛城君を助けてください!」

 

黎斗「よかろう!私の神の才能に任せておけェェェェェェェ!」

 

 

 

 

貴利矢「…………で?どうやんのさ、それ。」

 

黎斗「いい質問だ九条貴利矢。まずはこれを見たまえ。」

 

そういってパソコンを示す。そこには、「パンデミック発生に伴うウイルス対策」と書かれていた。

 

黎斗「私が採取したサンプルを解析した結果、使われたウイルスはバグスターウイルスであることが判明した。そして、それが既存のものから変質したものだということもな。」

 

永夢「成程。つまり、ネビュラバグスターと似たようなもの、ってことですね?」

 

黎斗「その通りだ。何が原因かは分からないが………。バグスターウイルス相手なら、これが使える。」

 

そういって、1個のブランクガシャット取り出す。

 

黎斗「これに解析したデータを入れ、私に投与。あとはお察しの通りだ。」

 

貴利矢「なーるほど。前俺がやったみたいに、ってことね?」

 

黎斗「そういうことだ。だが、データがまだ足りない分完成はしないと予測される。まぁ抑制効果はあるだろうから十分だろうね。」

 

大我「ん?いや充分じゃねえだろ。もう既にゾンビになっちまってんだから。」

 

黎斗「このウイルスはバグスターウイルスと言っただろう?なら、それはまだ初期症状だ。本人の強い意志さえあれば抑え込める。」

 

飛彩「なるほど。その押さえ込んだ状態でそのワクチンを投与すれば……!」

 

ニコ「助かるってことか!」

 

ポッピー「黎斗すごーい!」

 

黎斗「檀黎斗神だァァァ!そうと決まれば早速取り掛かるぞ九条貴利矢ァ!」

 

貴利矢「ああ。行くぜ神!」

 

貴利矢と黎斗は外へ行き、ワクチンの開発に取り掛かった。

望みは生まれた。




恐怖を乗り越え、力を手にした胡桃。
しかし、そんな彼女の心にはやはりまだ悩みがあり………?
悩みのキーワードは「葛城」という苗字。はたしてその理由は?

次回、ガシャットぐらし!第26話。「2人の『葛城』」
お楽しみに!
気軽にコメントしってってくれてええんやで?(ステマ)


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第26話 2人の葛城

どうも皆さん。よこちょです。
今回はちょっとお知らせをします。
この度、同じくハーメルンで執筆活動をしている「みかん太郎(低速運転)」様の「124回死んだ男の学園生活」と、コラボさせて頂けることになりました!
この「ガシャットぐらし!」から仮面ライダーホープこと葛城義彦がゲスト出演します。
みかん太郎様の作品は多数のキャラクターが一斉に動くので迫力があり、読んでいると目の前にキャラクターの姿が浮かぶような作品なので、オススメです!また、会話も多いのでキャラ同士の絡みが見たい方にもオススメです!
是非、「124回死んだ男の学園生活」を読んでみてください!
さて、お知らせが長くなりましたが第26話、「2人の葛城」をどうぞ!


胡桃「行くぞ!美紀!」

 

美紀「はい!」

 

仮面ライダーへと変身を果たした胡桃。胡桃は己の武器である「ガシャコンソード」を握りしめ、葛城へと接近した。

 

胡桃「はぁっ!」

 

手始めに上から叩きつけるように振り、肩を狙う。まっすぐ振り下ろされた剣は装甲にあたり、火花を散らす。

 

葛城「シャアァァァァッ!」

 

だが、痛覚の鈍い状態の葛城には効果が薄く、胸の装甲を思いっきり殴られてしまう。

 

胡桃「うわぁっ!」

 

校庭を吹っ飛んでから転がり、サッカーゴールにぶつかって止まる。その際にゴールは鉄屑へと早変わりしたので、どれ程の強さだったのかは一目瞭然だった。

生身で食らってなくてよかったと安堵する暇もなく、葛城は接近してくる。

が、そうはさせまいと美紀が葛城の背後から射撃。

頭、腰、足の三ヶ所を正確に撃ち抜き、動きを止めた。

 

美紀「今のうちに!」

 

胡桃「サンキュー美紀!はあっ!」

 

その隙を生かすために胡桃は立ち上がり、走る。今度の狙いは肩ではなく──

 

胡桃(半端に峰打ちを狙ったりしたら躱されるか、装甲に弾かれる。──なら狙う場所は!)

 

──頭。それは、人間の脳が入っている場所であり、そこを潰されれば”かれら”といえど一溜りもない。だから、頭は胡桃がいつも”かれら”にトドメを刺すために狙う箇所であった。

そして────────

 

 

 

 

 

 

───自分が初めて殺した相手である、「『葛城』紡」を殺した時に狙った部位でもあった。

 

胡桃「ッ!」

 

胡桃の頭に激痛が走り、記憶がフラッシュバックする。

脳裏を焼き焦がさんばかりに駆け巡る記憶のフラッシュバックに、思わず頭を抱えてうずくまる胡桃。

だが、それでも痛みは止まらない。

 

葛城「グオォォオ!」

 

当然交戦中の葛城はその隙を逃すはずもなく、がら空きの胴へ強烈な蹴りを入れた。

 

美紀「胡桃先輩!」

 

蹴りの勢いで吹っ飛ばされ、近くの木に叩きつけられる。木が大きな音を立ててへし折れたのを見るに、相当な威力で蹴られているようだ。

慌てて駆け寄った美紀は胡桃を抱え起こす。変身は解除されていたため、顔が見えた。

胡桃の顔は蒼白を通り越してもはや死人のように白く、目にはさっきまであった戦意や威勢の良さは欠片も見当たらなかった。

 

美紀「しっかりしてください!先輩!」

 

胡桃「かつ…ら……ぎ…………せん…ぱい…………」

 

美紀「気を確かに!先輩!」

 

うわ言のように2つの単語、「葛城」と「先輩」を繰り返す胡桃に対し必死に呼びかけるも、それ以外の反応を示さない。どうやら精神的にも肉体的にもショックを受けたせいで、かなり参ってしまってるようだ。

 

美紀「どうしよう………どうしようどうしようしうしよう…………」

 

 

さっきまで前衛を担っていた胡桃がいない今、どうやって戦えばいいのか………。美紀には検討がつかなかった。

だが、そんな状況もお構い無しに葛城は迫る。

 

美紀「こ、来ないでください!」

 

ガシャコンマグナムからエネルギー弾を乱射して威嚇するが効果はなく、その歩みも止まることは無い。

 

美紀「に、逃げなきゃ……!」

 

美紀は撤退しようと胡桃を背負い、立ち上がる。

だが、ここまで走っていたことの疲労や焦りも合わさり、なかなか思うように動くことが出来ない。

それでもなんとか距離を取ろうと歩き続けるが、葛城との距離は一向に離れることは無い。

 

美紀「胡桃先輩!しっかりしてください!」

 

その間も声をかけ続けるが、反応は依然薄いままだ。

 

美紀「先輩のぶんまで………頑張らなきゃ………!」

 

美紀はそう心に決め、疲れた体に鞭打って脚を動かし続けた。

 

────────────────────────

 

一方意識を失った胡桃は、全てが真っ白な空間で目を覚ました。

 

胡桃「うぅん………どこだ?ここ。」

 

そこは果てしなく広くて壁のない空間であり、白さのあまり目が痛くなるほどだった。だが、胡桃はその景色に見覚えはなかった。

 

胡桃「アタシさっきまで学校にいて…………っ!そうだ美紀が!」

 

美紀の危険を思い出しここから出ようとするが、出口となりそうなものは見当たらなかった。

 

胡桃「クソっ。おい!誰かいないのか!誰か!」

 

そう叫び、何も無い空間を走る。

だが、行けども行けども景色は変わらず、段々と自分が走っているかすら分からなくなってしまった。

 

胡桃「おい!誰か!誰か───あっ!」

 

走っているうちに何かに足を取られて転ぶ。

上手く受身を取れずに手を付けられなかったため、おでこの辺りをぶつけてしまった。

ぶつけた衝撃で目の前が一瞬暗転し、火花が散る。

 

胡桃「痛ってぇ…………って、え───?」

 

視界に再び視界が戻る。

すると、目の前はいつの間にか真っ白な空間ではなくなっていた。

胡桃がいたのは──

 

胡桃「なんでだ………なんでアタシは─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────屋上にいるんだ!?」

 

 

──巡ヶ丘高校の屋上だった。

目の前には不気味なくらいに真っ赤な空があり、フェンス越しに下を見るとやつらが変わらず歩き回っていた。

 

胡桃「なんでここに……アタシはさっきまで変な空間に…………」

 

訳が分からず混乱していると、急に背後から悲鳴が聞こえた。

 

胡桃「この声は……………りーさん!?」

 

後ろを振り向くと、5人の人影が見えた。

その人影は悠里、由紀、めぐねぇ

そして───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──胡桃と、先輩こと「葛城紡」だった。

 

胡桃「アタシと………先輩?なんで………ていうかこのメンツ、この場所は……………『あの日』の………」

 

胡桃の言う『あの日』とは、胡桃が初めて人を介錯した日。つまり、葛城紡を殺した日の事だ。

胡桃にとっては忘れたくても忘れられない、一生心に残り続けるであろう記憶である。

 

胡桃「………って今先輩が生きてるってことは、まさか今から!」

 

その可能性──『今から胡桃が先輩を殺すこと』に気が付き、慌てて目をやると、ちょうど今胡桃がシャベルを紡の首へと振り上げているところだった。

 

胡桃「やめろッ!やめろぉおおおお!!!」

 

そしてシャベルが首筋を捉えて紡の命を狩り取ろうとしたまだにその時だった。

 

 

ガギギギギギギギギギギギギギギギギギギ……………

 

 

という音と共に視界が捻れるように破壊された。

 

胡桃「な、なんだ、次は何が起こるんだ!?」

 

再び視界が暗転し、目の前の情景が入れ替わる。

次に胡桃が居たのは、雨が降りしきる学校の校庭だった。

そして目の前には写ったのは───

 

胡桃「次はお前か───『葛城義彦』」

 

──部活仲間でもあり、葛城紡を殺した後に出会った『もう1人の葛城』である、仮面ライダーホープこと葛城義彦であった。

こちらは胡桃自身を庇って感染し、その状態で変身して暴走していた。

そして、当然のように目に映るのは、義彦から逃げ回るように飛び出てきた胡桃と美紀だった。

そこからの流れはここに来る前に見た光景の焼き直しだった。

変身した胡桃が葛城と剣や拳を交え、葛城を追い詰める。そして隙を見て葛城の頭へと剣を振りかぶる。

………が、突然頭を抱えて蹲り、剣を振ることなく蹴り飛ばされる。

 

胡桃「うっ、アタシあんなん喰らったのか………。大丈夫かな、身体。」

 

そんな若干呑気な心配をした時だった。

 

???「それでいいのか?」

 

胡桃「っ!誰だ!?」

 

ガチンッ!という音と共にかけられた声に驚き、振り向くと、そこには『黒い影』がいた。影の輪郭はぼやっとしており、ふとすると見失ってしまいそうなほどあやふやな存在だった。

だが、そこに存在することは確かであり、影から聞こえる声はハッキリとしていた。

 

???「誰だっていいだろ?そんなことより、それでいいのかって言ったんだ。」

 

胡桃「それでいいのかって…………どういうことだよ?」

 

影はニヤリと笑ったように含みのある声で答える。

 

???「お前は。お前は葛城に頼まれたんじゃないのか?『あとは頼む』って。」

 

胡桃「お前………なんでそれを知ってる!」

 

???「それもどうだっていいだろ?今大事なのは『この現状でいいのか』って話だ。」

 

胡桃「それはっ…………!」

 

???「で?どうなんだよ。お前は葛城紡を引きずってそのままおr、いや葛城義彦のことまで台無しにする気か?」

 

胡桃「………………」

 

???「だんまり、か。まぁいいさ。お前がそれでいいならな。」

 

胡桃「………お前は、お前はなんなんだよ。急に表れて、急にアタシの過去を掘り返して。何がしたいんだよ。」

 

???「さぁね。まぁ確かなのは、別に敵じゃないってことだ。」

 

しばらく、沈黙が流れる。

沈黙が流れる間も雨は降り続け、胡桃の身体を濡らしていく。

そして、沈黙を破った胡桃が語る。

 

胡桃「……………アタシだって。アタシだって嫌だよ。」

 

???「ほう?」

 

胡桃「先輩、『葛城紡』の事だって忘れられない。だけど、葛城、『葛城義彦』の言ったことだって守りたい。」

 

1度語り始めると止まることは無く、壊れた蛇口のように声は心中を紡ぐ。

 

胡桃「でも、できないんだよ!アイツらを相手取った時だって先輩の顔がよぎるんだ。ましてや一番大事な部活仲間を手にかけるなんて……アタシには………………………」

 

???「成程ねぇ。まぁ、らしいっちゃらしいな。」

 

謎の影は、どこか納得したように声を出す。

 

???「んじゃぁお前は、葛城紡を手にかけたことが間違っていたと?」

 

胡桃「それは………」

 

???「あの時お前が介錯してなけりゃ被害は更に増えていただろうし、下手すりゃ屋上にいたやつら全員死んでたかもしれないんだぜ?それに、お前の好きだった先輩は人に大迷惑かけて大勢巻き込んで死にたいと思うようなやつなのか?」

 

胡桃「そんなことない!」

 

???「ならお前のやった事は間違ってねえさ。」

 

胡桃「……………でも、」

 

???「あぁ。罪の意識は消えないだろうよ。だが、それはいい事だ。」

 

胡桃「えっ………?」

 

???「そりゃそうだ。もし人を殺したことをなにも思わないようなやつはどうしょうもねぇ。そのへんで歩いてるアイツらとなんにも変わらねえよ。」

 

胡桃「…………じゃあアタシは、アタシはどうすればいいんだ?」

 

???「ふぅむ。ま、一生その感情を胸に抱えて生きるしかないだろうよ。だが、いつか折り合いが付いたり、付けてくれるやつと会える日が来る。その日まで生きるのがお前のやるべき事なんじゃないか?」

 

胡桃「罪を抱えて、生きていく、か。」

 

???「あぁ。それがいいんじゃないか?」

 

胡桃はしばらく考えるように下を向き、ふぅっと息を吐く。その後顔を勢いよくあげた。

 

胡桃「………そうだな。そうするのが1番かもしれない。」

 

???「だろ?ならもう、お前のすべきことは分かってるんじゃないか?」

 

胡桃「あぁ。葛城、いや『義彦』をぶっ飛ばしてこっちに戻すことだな!」

 

???「そうだな。………まぁ、お手柔らかにな?」

 

胡桃「知らねぇよ。アイツ思いっきり蹴りやがったしな。1発くらいいいんじゃねえか?」

 

???「……………まぁ、な。」

 

胡桃「そうだ。」

 

影は苦笑し、どこか寂しそうに告げる。

 

???「じゃあ、あとは頼むわ。」

 

胡桃「え、それってどういう………おいお前!おい!」

 

胡桃の姿は掻き消え、この世界から弾き出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「ふぅ……………。全く、だ。慣れないことはするもんじゃねぇな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「後は頼んだよ?胡桃ちゃん。」

 

 

影は雨とは違った雫を落とし、雨に溶けるように姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

一方のCR

 

黎斗「コンテニュー43回目ェ…………遂に私の神の才能が抗体を完成させたぞォオオオオ!」グサッ、ゲームオーバー

 

プープープープープープー!

 

黎斗「トウッ!死んでも抗体が付いているゥ………完璧だァアアアアア!!!」

 

貴利矢「ハイハイ。全く……付き合うこっちの身にもなれってんだ。」

 

永夢「完成しましたか!じゃあ早速!」

 

大我「届けてやらねえとな。」

 

黎斗「それは私がやろう。できれば宝生永夢、君にも着いてきて欲しい。」

 

永夢「それは願ってもない申し出ですが……何故僕を?」

 

黎斗「なに、君のハイパームテキならば大抵の事はなんとかなるからね。それに、クロノスの奴が表れないとも限らないだろう?」

 

永夢「成程。では僕も行きましょう。あとのみなさんはCRを守っててくれますか?」

 

飛彩「承知した。任せておけ。」

 

ポッピー「永夢、黎斗。気をつけてね?」

 

永夢「はい。じゃあ、悠里さん、行こうか!」

 

悠里「はい!お願いします!」

 

黎斗「この私に任せておけェエエエエエエエ!」

 

永夢「五月蝿いですよ。ほら、行きますよ!」

 

そういって、3人は悠里の乗ってきたミニクーパーへと走り出した。




胡桃は再び前を向き直し、CR抗体の入ったガシャットも完成した。
果たして胡桃は美紀を救い、葛城を治すことができるのか。そして胡桃に前を向かせた「影」は、一体何者だったのか?

次回、「ガシャットぐらし!」第27話、『治療と覚悟』
お楽しみに!


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第27話 治療と覚悟

どうも!よこちょです。
最近リアルの方が忙しくて全く執筆時間が取れず、遅れてしまいました。待っててくださった方々、申し訳ありませんでした。これも全部テストが悪いんや…………
言い訳はこれくらいにして、ちょっとしお知らせをば。この度、ちょっとアンケート機能を使って、アンケートを取りたいと思います。
内容は、「この事件が終わった後の話」です。
選択肢として、「普通に本編を進める」、「閑話として別エピソードを挟む(CR側等)」、「葛城と学園生活部の女子達との恋愛チックエピソード」の3つです。協力よろしくお願い致します。
では、第27話「治療と覚悟」をどうぞ!


美紀「はぁ…はぁ……はぁ………」

 

雨が降り続けている校庭で、美紀はまだ逃げ続けていた。背負った胡桃も未だ目覚めぬままである。

 

美紀「はぁ…………はぁ……………はぁ………………」

 

一度呼吸する度にその息は浅くなり、体温は奪われていく。それでも希望を捨てず、なんとかこの状況を脱しようとあがいていた。

 

美紀「もう少し……もう少しだ…………頑張れ私………頑張れ私……………!」

 

己を鼓舞し、寒さで震える足を動かす。だが、ぐっちょりと濡れた制服が身体にまとわりつき、足取りは遅い。そのせいでじりじりと後ろとの距離が縮まっていってしまった。

 

美紀「まずい……早くしないと」

 

だが、その焦りが最大の危機を生んでしまった。

 

美紀「あっ………!」

 

寒さ、疲労、そして焦り。

奇しくも胡桃と似たような理由で足を取られ、転んでしまった。

立ち上がろうとするが一度止まってしまった足は動こうとせず、棒のように動かない。

 

美紀「嘘……!嫌!動いて!動いてよ!」

 

必死に動かそうとするがピクリとも反応はなく、まるで自分のものでは無いような感覚に囚われる。

その様子はまるで、蜘蛛の巣にかかった蝶。もしくは足をもがれたアリのようだった。

 

美紀「嫌…嫌……嫌………」

 

パニックに陥る美紀の前に、とうとう葛城が追いつく。

雨の中で長々と追いかけっこをさせられたせいで濡れた全身から水が滴り落ち、涙と同化して地に落ちる。

変身後の葛城の鋭角に尖った装甲から水が落ち、美紀の頬を濡らす。

 

美紀「嫌ぁああああああ!」

 

恐怖で目を瞑る美紀の人生に終止符を打たんと、右手をゆっくりとした動作で上げる。

そして右手はまるでギロチンのように勢いよく下がり、美紀の首を落とす

 

 

 

 

 

 

───────ことはなかった。

 

 

 

ガキンッ!

 

 

 

金属同士がぶつかる様な音を立てて、右手が止まる。

その音に目を開け、美紀が目にしたのは

 

美紀「胡桃せん……ぱい………?」

 

胡桃「おう!悪ぃな、美紀。遅くなっちまった。」

 

精神世界の影との対話を終え、覚悟を決めて戻ってきた胡桃だった。

胡桃の目には覚悟だけでなく、気絶する前にはなかったいつものような優しさと勝気な強い光があった。

 

胡桃「美紀は一旦下がっててくれ。こいつはアタシがやる。せいっ!」

 

生身のまま変身した葛城を蹴り、反動で後ろへ下がる。

葛城は急な反撃に驚いて体制を崩し、その場でよろめく。そして、隙が生まれた。

 

胡桃「よし!行くぜ!」

 

美紀が後ろへ下がったことを確認し、再び「タドルクエスト」のガシャットを手に持ち、起動させた。

 

 

『タドルクエスト!!』

 

心なしかいつもよりも大きな音に聞こえる電子音と共に現れたパネルを殴るように展開し、ニヤリと不敵に微笑む。

 

胡桃「アタシはもう、さっきまでとはひと味違うぜ?『義彦』。」

 

『ガシャット!ガッチャ〜ン!!レベルアップ!!!』

 

『辿る巡る辿る巡るタドルクエスト!!』

 

胡桃「義彦、お前を元に戻す!」

 

再変身を果たした胡桃は仮面の下でニカッと笑い、そう宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胡桃「美紀!さっきみたいに援護頼めるか!?」

 

美紀「もちろんです!今度こそ!」

 

胡桃「あぁ!義彦を引っぱたいて正気に戻そうぜ!」

 

美紀「えぇ!」

 

胡桃「いくぜ!はぁっ!」

 

さっきとは段違いの勢いで踏み込み、葛城の懐まで一瞬で肉薄する。そのままの勢いで拳を鳩尾の部分へ叩き込み、吹っ飛ばす。

 

葛城「ガァッ!」

 

これには流石に声を漏らす葛城だったが、ゾンビに近い肉体になって手に入れた強靭な肉体で即座に立ち上がり、突進する。

圧倒的パワーで重機関車のように突っ込んでくる葛城。普通に受け止めるには、胡桃だけでは少々力不足だろう。

だが、今ここに居るのは胡桃だけではない。

 

美紀「──っ!そこ!」

 

美紀が正確な射撃で頭、肩、腹、膝、脛を素早く撃ち抜き、勢いを大幅に殺す。

勢いを失った葛城は不利を悟る。跳躍で後ろへと一時撤退しようとするが、そうはいかせなかった。

 

『ガ、キーン!』

 

胡桃「それはもう予想済みだ!」

 

ガシャコンソードのモードを切り替え、地面に突き立てる。突き立てた場所から氷が伸び、周囲の水だけでなく降ってくる雨までもを凍らせる。

そして凍った氷は葛城の足をまるで植物のつるのように絡み取り、地面に縫いつけた。

普段の葛城ならば跳んで避けられたはずの攻撃。だが、力の代償に理性や判断力を失ってしまったこの状況ではいとも簡単に引っかかる。

 

胡桃「よっしゃ大成功!美紀、今のうちに決めるぞ!」

 

美紀「はいっ!」

 

胡桃はガシャットを引き抜き、腰のホルダーへ、美紀はガシャコンマグナム狙撃銃モードに変えてからスロットにガシャットを挿入した。

 

『キメワザ!』

 

『タドル!』『バンバン!』

 

『『クリティカルストライク!!』』

 

美紀「はぁあああああっ!」

 

胡桃「うおぉおおおおっ!」

 

胡桃美紀「「セイヤーーーーーーー!」」

 

銃口から放たれた光弾が一直線に葛城へと伸び、腹部直撃する。その衝撃で中に少し浮いて動けなくなった所に胡桃のキックが炸裂した。

必殺技をモロに二発も喰らった葛城は吹き飛び、崩れて鉄塊と変わり果てたサッカーゴールにぶつかって止まった。そしてその衝撃でバグルドライバーは吹っ飛び、胡桃の足元へと落ちてきた。

当然変身が解除された葛城はその場に倒れ、雨を受けていた。胸は上下しているので、生きている。

その事実に安堵した2人は胸をなでおろす。

 

胡桃「ふぅ。…………これで、いいんだよな?義彦」

 

胡桃は変身を解除して近づき、そう語りかける。

反応は返さないが、その顔から何かを感じ取ったのか、満足そうに笑う。

それに合わせたのか空模様も回復し、太陽が姿を見せ始めていた。

 

胡桃「ま、これでさっきのキックのお返しができたし、あとはりーさん達を待とうぜ」

 

美紀「はい。………それはともかく、結構エグいことしますね。胡桃先輩。」

 

胡桃「美紀も同罪だぜ?ま、義彦が起きたら謝ろうぜ。」

 

美紀「…………………………そうですね。」

 

────────────────────────

 

あぁ…………よかった。

 

 

影は1人、安堵する。

己の守らんとしたものに対し、牙を向いたことを後悔しながら。

 

 

あぁ…………寂しいな

 

 

影は1人、涙を流す。

己の大好きな居場所を傷つけ、迷惑をかけたことを悔やみながら。

 

 

そして影は1人、決意した。

だがその決意は、己にとっては1番残酷な道。

そして、己の居場所をさらに傷つけるものだと知っていながら。

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

 

一方その頃。

CR出発した悠里一行は、巡ヶ丘高校へと車を全速力で走らせていた。

 

パラド「おい永夢!もっとスピードでねえのか!?」

 

永夢「無茶言わないでよ!道にあいつらがいるせいで上手くスピードが出せないんだよ!」

 

と、必死の思いで走らせてはいるのだが、いかんせん道をゾンビや死体が塞いでいるので上手くスピードが出せずにいた。

 

永夢「くっ……こうなったら…………。黎斗さん!黎斗さんだけでも先に行ってください!」

 

黎斗「いいだろう!エクストリームガシャット、起動!!」

 

黎斗はエクストリームガシャットを起動させ、操縦席へと乗り込む。そしてミニクーパーの窓から飛び立ち、空から巡ヶ丘高校へと向かう

 

悠里「私も行きます!」

 

黎斗「え、ちょっと待、うおぉお!」

 

…………はずだったのだが、待ちきれなくなった悠里がエクストリームガシャットを掴み、一緒に空へと舞い上がって行った。

黎斗の情けない声と共にエクストリームガシャットは大きく体制を崩した。

 

黎斗「ば、馬鹿か君は!?落ちたらどうするつもりだ!?」

 

珍しく焦ったリアクションをする黎斗のことはガン無視し、悠里は言う。

 

悠里「その時は走っていきます!だから、早く!」

 

黎斗「くっ、いいだろう!しっかり捕まっておきたまえ!」

 

黎斗は悠里の目に、「仲間への思い」を感じ取り、できる限りのスピードでエクストリームガシャットを飛ばす。

少し予定外のアクシデントはあったものの、2人は先に、空から高校へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胡桃「わかりました!ありがとうございます!」

 

プツッ、と言う音と共に通信が切れる。

幸いなことに壊れてはいなかったバグヴァイザーで、胡桃は現状を確認するためにCRへと連絡を取ったのだ。

 

美紀「CRの方はなんと?」

 

胡桃「今向かってるってさ。りーさん、無事に着いたんだな」

 

美紀「そうですか、ホッとしました」

 

胡桃「だな。全く。一時はどうなるかと思った……けど、なんとかなったな!」

 

美紀「………いえ、まだ全部終わってはいませんよ。抗体を使って葛城君を目覚めさせないと。」

 

胡桃「まぁな。でも、こいつのことだ。案外ふっと目ぇ覚ますかもしれないぜ?」

 

美紀「………ありえそうなのが複雑です。」

 

胡桃「だろ?」

 

二人ともまだ疲れは残っており、身体を動かす元気はなかった。だが、目前の問題が解決に向かっていることで心の負担が軽くなり、何気ない会話と笑顔を出来るほどには回復出来ていた。

 

だからこそ、こんなことができたのかもしれない。

 

美紀「…………ところで、1つ聞いてもいいですか?」

 

胡桃「ん?なんだ?」

 

美紀「……………………なんで葛城君を膝枕してるんですか?」

 

現在葛城は気絶したまま胡桃に膝枕をされていた。

………当の本人は意識を失っているため気がついてはいないが。

 

胡桃「いやだって、地べたに転がしっぱなしじゃダメだろ?」

 

美紀「いや、そうですけど。でもそうじゃなくて、えっと……その!」

 

胡桃「なんだ?美紀も膝枕したいのか?」

 

美紀「違います!!」

 

胡桃がからかい、美紀が顔を真っ赤にして反論する。

こんな調子で漫才のようなやりとりをしていると、上から影が近づいてきた。

 

黎斗「ふぅ。待たせたね………っと、お邪魔だったかな?」

 

悠里「大丈夫!?…………ってなんで膝枕してるのよ」

 

美紀「あ、黎斗さんにりーさん!」

 

胡桃「お、来た来た!早いとこ治療してくれないか?」

 

黎斗からの生暖かい目線と悠里からのツッコミが刺さるが、4人とも葛城を早く元に戻したいという気持ちは変わらないので話を切り上げる。

 

黎斗「分かっているとも。とりあえず、ここじゃ治療がしづらい。部室を借りてもいいだろうか?」

 

胡桃「あぁ。じゃ、行こうぜ!」

 

黎斗「葛城君は私が背負おう。」

 

悠里「お願いします」

 

こうして、治療のために部室へと移動を開始した。




治療のために部室へと移動する胡桃達。部室で目を覚ました由紀と合流した彼女らは、葛城の蘇生を試みる。
無事何事もなく治療は完了するのか……?
そして影が放っていた言葉の意味とは一体……?
次回、ガシャットぐらし!第28話「決意は苦く、そして鋭い」。
次回をお楽しみに!


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第28話 おかえり

どうも、よこちょです。最近学生の本分である勉強が忙しすぎて全然小説を書く時間が取れてません。楽しみにしてくださってる方には本当に申し訳ないです…………。自分としても移動時間とかの時に書いてはいるんですが中々遅遅として進まなくて、結構困ってます。これからもこんな亀更新でよろしければお付き合いいただけるとありがたいです。
さて、今回は葛城を治療する回です。次回予告とタイトルが違うのに気づいた人は………察してください。
では、本編第28話をどうぞ!


学園生活部 部室

 

ガチャりとドアを開け、部室へと入る。

 

黎斗「ふぅ………やっと着いたか。」

 

悠里「黎斗さん、大丈夫ですか?」

 

黎斗「なぁに。少し疲れたくらいだ。問題は無い。」

 

由紀「あっ、皆!大丈夫だった!?ちゃんと無事!?」

 

先程まで気絶していた由紀も意識を取り戻して駆け寄ってくる。

その顔色は真っ青で、状況を理解した瞬間一気に不安に駆られたことが容易に想像出来た。

 

黎斗「大丈夫。ちゃんと治してみせるさ。」

 

そんな由紀を見て、ニッコリと人を安心させる笑顔をする黎斗。

彼に医者の資格は無くとも、その心はCRと同じ。

前までは自分を神と自称するエキセントリックで傍迷惑な存在でしかなかったのは、過去の話。

今では彼もまた、人々の心と身体を救う仮面ライダーにして、ドクターであった。

 

由紀「よかった………!」

 

それを聞いた由紀は幾分か顔色を取り戻し、ほっと息を吐く。

 

黎斗「では、葛城君を一旦置かせてもらおう。」

 

黎斗は葛城を机の上に下ろして寝かせ、白のハンカチで葛城の顔を拭く。泥と雨で汚れていた顔は幾分かマシになった。だが、マシになったが故にはっきりと見えてしまう。

 

悠里「これは………」

 

胡桃「………改めて見ると、やっぱり酷いな」

 

美紀「……えぇ。」

 

由紀「うぅ………」

 

肌は真っ白を通り越して蒼白。まるで死人のような肌色の上に、傷によって出た血が場違いな彩りを提供し、精神を削る。地下でやられた部分である爪痕は肉を裂いており、まだ血が滲んでいる。噛み付かれた腕はくっきりと跡が残っており、出血こそ止まっているものの、大惨事であった。

 

黎斗「………まずいな。早急にオペを始めよう。少し離れていてくれ。」

 

戦場と病院に身を置き、沢山の傷を見てきた黎斗がそう判断する。

一旦全員を下がらせ、自分が最前線に立つ。

 

黎斗(未知のバグスターウイルスの対処だ。本当は宝生永夢とパラドが居てくれた方がいいのだが………贅沢は言ってられないな。)

 

いざとなったら校舎の損壊を無視し、『ゴッドマキシマムマイティXガシャット』を使うことも視野に入れながらゲーマドライバーを腰に巻く。

『マイティアクションX』と『デンジャラスゾンビ』を差し込むだけ差し込み、いつでも変身できるような状態にしておく。

その状態で片手に『バグヴァイザー』を持ち、それについさっき作ったばかりのワクチンガシャット──『パンデミックドクターX』を挿入。

 

黎斗「では治療───開始!」

 

意を決し、バグヴァイザーのスイッチを押し込む。

銃口から吐き出された小さな粒子が葛城の身体を包み込み、体内へ入っていく。

だが、目立った反応は見られない。

よもや失敗か?

そう思った黎斗はゲームスコープを覗き、症状を確かめる。

 

黎斗(いや………確かにウイルスはほぼ除去しているし、残ったものも非活性化状態だ。だが、これが『完治している状態』だというのか!?)

 

ゲーム病自体は完治に近い状態にまでなり、その上再発症も殆どないと言う、ゲーム医療においては完璧とも言えるこの状態。

しかし、何故か葛城は回復しない。

 

黎斗(くっ………なぜだ………なぜだなぜだなぜだァアアア!!)

 

焦る黎斗。額からは汗が滲み、全身に震えが生じる。

しかし、背後にいる学園生活部の面々のことを思い出し、冷静になる。

 

黎斗(ふぅ……落ち着け。落ち着くんだ。まずは葛城君の意識を確認しよう。)

 

葛城の瞼を捲り、普段永夢達がやっているようにペンライトで照らし、意識を確認する。

結果、意識自体は回復していることが分かった。

 

黎斗(意識はあるのか。では何故…………)

 

そして、かつての自分──プロトガシャットからポッピーによって復活させられた時の様子を思い出す。

あの時の黎斗は意識だけはあったがただ最期の言葉を繰り返すだけであった。

そして、この状況は非常にその時の状況に似ていた。

 

黎斗「少しいいだろうか。恐らく、このままでは葛城君は治らない。」

 

由紀「えっ………」

 

美紀「そんな………」

 

突然黎斗の口から出てきた悲観的な言葉に、由紀達は絶望に顔を染める。

 

悠里「なんとか……なんとかならないんですか!?」

 

胡桃「なんとかなるよな!?なるって言ってくれよ!!」

 

黎斗「あぁ。なんとかしてみせる。そのためにはちょっと必要なものがある。」

 

胡桃「なんだ!?」

 

黎斗「葛城君の意識その物だよ。今の彼の中には彼自身を形作っている意識がないんだ。」

 

由紀「でも、意識ってどこにあるの?」

 

黎斗「………わからない。」

 

悔しそうに唇を噛み、絞り出すように告げる。

 

黎斗「普通の人間の意識なら、この状況では殺したバグスターのプロトガシャットに保存される。だが、この状況では恐らく………」

 

悠里「この状況を作ったガシャットに保存される………と?」

 

黎斗「………恐らくは。」

 

シン────っとした静寂が周囲を包む。

 

悠里「…………嫌よ。嫌よ嫌よ嫌よ!!」

 

そして、それに耐えられなくなったのか悠里の心の均衡が崩れる。

 

悠里「嫌よ………!もう………もう目の前で人を失うなんて…………私は………………!」

 

そして、再び沈黙が現れる。

だが、この沈黙はただの沈黙ではなく、福音を伴った喜びの沈黙だった。

 

由紀「……………えっ、よっくん?」

 

美紀「先輩、何を言ってるんですか?葛城君は今意識を……いや、もしかして!?」

 

胡桃「聞こえるのか?義彦の声が!」

 

由紀「うん。すっごいちっちゃいけど………確かに聞こえる!」

 

由紀の鋭い聴覚は、確かに葛城の声を捉えた。

それは、単なる聞き間違いだと普通なら思うかもしれない。だが、由紀の耳はそういったことは絶対に聞き逃がさないのだ。

 

由紀「多分この辺から…………あっ、これっ!」

 

そういうと由紀は葛城のポケットを探り、葛城が最初に生み出した、つまり葛城にとってのプロトガシャットである『アンスキルドシールダーガシャット』を取り出す。

 

由紀「これだよこれ!これから声が聞こえる!」

 

黎斗「……成程。プロトガシャットという概念は『最初に作られたガシャット』というわけか。お手柄だぞ丈槍由紀ィ!」

 

由紀「えっへん!私もよっくんの先輩だからね!」

 

黎斗「ふっ、いい先輩を持ったものだな。葛城君は。よし、あとはこれをこうして…………」

 

黎斗はアンスキルドシールダーガシャットを受け取り、葛城の腰にゲーマドライバーを巻いて差し込む。

そして正面のレバーを引き、ガシャットを起動させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が、しかし─────

 

 

 

 

 

 

黎斗「なぜだ……なぜ蘇らない!」

 

葛城は、回復しなかった。

 

黎斗「何故だァ!理論上では絶対に回復するはずだ!」

 

遂に冷静さを保てなくなり、頭を掻きむしり、身体を仰け反らせる。

だが、発狂したように騒ぐ黎斗の肩にポンッ、と手が4つ置かれる。

 

悠里「ありがとうございます。黎斗さん。」

 

由紀「でも、ここからは」

 

美紀「私達に」

 

胡桃「やらせてくれないか?」

 

そして、こんな提案をしてきた。

ゲーム医療においては完全に素人であるこの4人。治療道具はおろか、知識すらも持っていない。普通の医療であれば誰であっても止めるであろうこの頼みは、無茶というよりは客観的に見れば無謀とも言えるものであった。

だが………

 

「「「「お願いします!!!!」」」」

 

腰を直角近くにまで折り曲げ、真摯に頼み込む態度を見た黎斗は冷静さを取り戻し、そのうえでこう告げる。

 

黎斗「………いいだろう。君達の可能性に賭けよう。」

 

そう言って身を引き、後ろで腕を組む。

そして、1つのアドバイスをした。

 

黎斗「バグスターウイルスには恐らくだが、『願いを叶える』という性質がある。君達の願いを強く思いながらやってみるといいだろう。」

 

悠里「わかりました。」

 

悠里がそういったあと、4人は葛城へと近づく。

葛城が寝かされている机を囲むようにして立ち、全員でゲーマドライバーのレバーへと手を掛ける。

そして1人1人、自分の思いを口に出した。

 

悠里「私は………怖いの。仲間を失うことが。もう2度とお別れなんてしたくない!だから………戻ってきて欲しいの!」

 

由紀「私も同じだよ。もう誰も居なくなって欲しくない!よっくんの居ない学園生活部なんて………そんなの嫌だ!だから、戻ってきてよ!」

 

美紀「最初に、言いましたよね。『星が見たい』って。今の私にとっては、葛城君が星みたいなものなんです。私はまだ、星を見ていたいんです。だから………戻ってきて!」

 

胡桃「アタシはお前とこんな別れをしたくない!それに、まだまだずっと一緒にいたいんだ!だから……戻ってきてくれ!」

 

4人が強い思い──「また葛城に会いたい」という思いをのせ、レバーを強く握る。

すると、ガシャットを中心にしてゲーマドライバーが光を放ち始めた。そしてその光は葛城の身体全身を包み込み、わずかにだが暖かい熱を発する。

 

胡桃「いくぜ?みんな。」

 

悠里「えぇ!」

 

美紀「はい!」

 

由紀「うん!」

 

「「「「せーーーーーーの!」」」」

 

 

合図と共に一斉にレバーを引く。

 

『ガッチャーーーーーーン!レベルアップ!!!』

 

『立ち上がれ弱者!立ち向かえ守護者!今こそ我は蘇り!』

 

それと同時にいつもと少し違う変身音が流れる。

変身音が続くほど光は強く、そして熱くなって周囲を包む。そして一瞬強烈な光を放ち、全員の目を焼く。

思わず目を閉じた5人が再び目を開けると─────────

 

 

 

 

 

 

 

葛城「……………みんな、本当に済まなかった。そして────本当にありがとう。」

 

目を開け、自分の足でしっかりと地面に立っている葛城がいた。

 

「「「「葛城(義彦)ーーーーーー!!!」」」」

 

感極まって思わず飛びつく4人。

 

胡桃「お前!心配したんだからな!」

 

由紀「よかったよぉおおおお!戻ってきたよぉぉお!」

 

美紀「本当によかったです!」

 

悠里「信じてたわよ!戻ってきてくれるって!」

 

葛城「ちょ、お前ら!急にされると………うぉっと!」

 

思わず体勢を崩し、そのまま倒れ込む5人。

だがその顔には笑顔が溢れており、例外なく全員が再会を喜んでいることが見て取れた。

 

黎斗「おめでとう、学園生活部の諸君。よくぞ奇跡を成し遂げてくれた。そして葛城君。再び会えて嬉しいよ。」

 

惜しみない賞賛の拍手を送りながら再会を喜ぶ黎斗。

 

葛城「はい!わざわざありがとうございました。迷惑かけちゃってすいません………」

 

黎斗「なぁに。私はあまりやっていないとも。なにもかも彼女達がやってくれたんだ。礼も謝罪も彼女達にしたまえ。」

 

葛城「はい。それは勿論です!」

 

黎斗「よろしい。では、そろそろ私は帰るとしようか。後は部員水入らずで上手くやりたまえ。」

 

そういうと颯爽とエクストリームガシャットへ乗り込み、窓から去っていった。

 

葛城「………改めてみんな。迷惑かけちゃって本当にごめんなさい!」

 

葛城は心からの謝罪する。

 

葛城「胡桃のことも思いっきり蹴っちゃったし、美紀だって追い回して怯えさせた。りーさんにもわざわざ危険な外に行かせちゃったし、由紀ちゃんは凄い怖がらせちゃったし。それに───」

 

悠里「ストップよ。葛城君。」

 

悠里は指を葛城の唇に当て、続きを言わせない。

 

悠里「元々、危ないことを胡桃と葛城君にばかり任せてた私達にも責任はあるわ。」

 

胡桃「それに、義彦がやられたのだって、アタシを庇ってだ。むしろ謝んなきゃいけないのはアタシの方だよ。」

 

美紀「それに、私達はもう気にしてませんし。」

 

由紀「そうそう!戻ってきてくれただけで十分だよ!」

 

葛城「みんな………!」

 

例え何があっても再会を喜ぶ学園生活部の温かさに心を打たれ、涙を流す葛城。彼の胸には身体中を流れる血の他にも暖かいものが流れていた。

 

悠里「それに、言うべき言葉が違うでしょ?」

 

由紀「そうそう!学園生活部は私たちの家だからね!」

 

美紀「家に帰ってきたら!」

 

胡桃「言うことは1つ!だぞ?」

 

葛城は涙を拭い、精一杯の大声で帰宅を告げる。

 

葛城「あぁ。みんな────ただいま!」

 

「「「「おかえりなさい!!!」」」」

 

こうして、葛城は再び学園生活部へと戻ることが出来た。涙で顔を濡らす葛城の周りには、いつだって学園生活部がある。例え、それがどこであっても────

 

 

 

 

 

 

 

 

葛城「………というか、そろそろどいてくれ……俺が潰れる……………」

 

由紀「あっ、ごめん!ずっとそのままだった!」

 

悠里「まぁまぁ。たまにはいいじゃないの。」

 

胡桃「いや、ちょっと恥ずかしんだけど!?」

 

美紀「ちょ、動けないです!ふぁ、ふぁすへてふださい!」

 

悠里「ちょ、美紀さん!?私の胸のところで大声出さないでぇ!」

 

胡桃「りーさん!あんまり動かないで!くすぐったい!くすぐったい!」

 

由紀「お、胡桃ちゃんこちょこちょ効くの!?よーし!」

 

胡桃「ちょ、由紀!やめろ……やめろぉおおお!!」

 

葛城(…………誰か助けてくれ。俺が一番ヤバイ。)

 

 

彼らの日常は、まだまだ続く。




というわけで第28話、いかがでしたでしょうか?
ここからは暫く本編という名の日常編が続きます。
学校行事をしたり、みんなと仲を深めたり。ときには喧嘩したり、バトルが起きたり?そして葛城との恋愛関係は発展するのか………?
色々波乱万丈ながっこうぐらし!をする彼らの様子を書いてい気ますので、今後ともよろしくお願いします。
では、次回の投稿まで!


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第29話 動き出す停滞

お久しぶりです。よこちょです。
活動報告では既に言ったのですが、作者の女性経験があまりにも貧弱すぎるあまりに日常系会話を書きづらくて難産過ぎたという悲しい事件が発生しまして…………
急遽本編の方を進めることにしました。日常編を楽しみにしてくださっていた方はすみません………
書きかけの話達は出来上がり次第アップしたいと思いますので、気長にお待ちください。
さて、今回のお話は色々と動きます。新キャラとか新要素とか色々ぶっこみました。
では、本編をどうぞ!


俺が1回死んでから、はや数週間。この間は特に何か事件が起きることも無く、穏やかで───一部穏やかでないこともあったが、ゆったりと学園生活部の皆やCRの人達と過ごすことが出来た。

それはもう、まるで夢のような時間だった。

しかし、夢とはいずれ覚めるもの。

俺たちは夢の世界の心地良さに浸るあまり、どこか油断していたのかもしれない。

恵まれた設備から来るあまり不自由のない暮らし。『かれら』から身を守るための自衛手段として充分以上の力を持つ、「仮面ライダー」としての力。すぐに連絡を取れるCRという頼れる「大人」。これらは当初俺たちにあった警戒心や緊張感を緩めるには十分だったんだ。

その安全が、紙1枚分もない薄氷の上に成り立っているものだということを忘れさせるくらいには。

あれはそう。夏も終わりに近づき、涼しさを感じるようになってきた頃だった…………

 

 

────────────────────────

 

夏も終わりに近づいてきたこの頃。

我ら学園生活部は、「夏休み」と称し、様々な活動をしてきた。その色々と言うのは夏っぽいことだったり全く関係ないことだったりと色々あるので割愛させてもらうが、端的に言うと自分の人生の中でも最上位にランクインする程に楽しかった。今まで女性関係はからっきしで彼女いない歴=年齢だった事も影響しているが、それ以上に友人───最早親友とまで言える間柄の人達と過ごす日常は刺激的で、どんなことがあっても絶対忘れられないと思えた。

しかし、問題も発生した。

 

 

悠里「食料の備蓄が少なくなってきたわね………。」

 

胡桃「どれどれ………。うわぁ、結構無くなったな。」

 

由紀「夏休みのイベントとかでいっぱい使っちゃったもんね。」

 

美紀「食料だけでなく、水も電力も少し不足しそうです。電力はなんとかなりそうですが………水は雨頼みでは厳しそうです。」

 

葛城「購買部にも物無くなってきたしな。……………そろそろ、『外』にも目を向けるべきなのかもな。」

 

 

『外』。つまり、この安全な巡ヶ丘高校から外へ出て、食料や物資を探さねばならないということだ。

最初の頃───つまり、俺達がまだ出会うよりも前のように。

 

 

胡桃「………ま、しょうがないか。いずれこうなる事は分かってたわけだし。」

 

葛城「そういうこった。それに、今の俺たちには『これ』もあるしな。最初から変身して行けばそうそうやられないだろ。」

 

 

俺がゲーマドライバーとガシャットケースを撫でながら言うと、みんなが少し不安そうな顔をする。

 

 

葛城「大丈夫だって。無茶はしないし。それに、もう戦えるのは俺1人じゃないしな。」

 

胡桃「………そうだよな。あんまりくよくよばっかりもしてられねえな!」

 

葛城「そういうこと。」

 

美紀「本当に気をつけてくださいね?」

 

葛城「おう。」

 

 

さて、ばっちり約束も交わした事だし。早速行きますかね!

 

 

───────────────────────

 

side悠里

 

朗らかに笑う彼の顔には、全く陰りがない。まるで、自分が1度死んだことなんて全く気にしてないみたいに。………ううん。多分、本当に気にしてないんだと思う。

「希望になりたいから」。彼は最初にめぐねえのお墓の前でそう言っていた。多分、それが彼の行動の理由。「仮面ライダー」として戦う原動力。

最初に変身した姿を見た時、私は正直、安心した。「これで誰も怖がらなくて済む」って。でも、安心させてくれた彼自身が1度死んでしまったことは、私に深い傷を残した。別に彼のせいだとか、彼が悪いとか、そういう訳では無い。

多分私は、不安なんだと思う。

もし、この生活が崩壊してしまったら。

もし、誰かが大怪我を負ってしまったら。

もし──────誰かが欠けてしまったら。

そう考えると足が震える。

そしてそう考えたあと、こう考えてしまう。

『もし、私も彼と一緒に戦えたら────────

 

 

由紀「……ん?りーさんどうしたの?」

 

悠里「えっ!?い、いや、なんでもないわよ?」

 

由紀「ふーん?ホントに?」

 

悠里「………ええ。本当よ。心配してくれてありがとう。」

 

由紀「うん!でもなんかあったら言ってよ?絶対だよ!」

 

悠里「わかってるわ。でも、本当に大丈夫だから。」

 

 

そう。大丈夫。私は大丈夫だ。

 

 

───────────────────────

 

side葛城

 

 

善は急げ、というわけで早速バリケードを超えて街の方へとやってきた。

学校の周辺はある程度探索し終わってしまっていたので、今回はそれよりも少し向こう側へと来ていた。

 

 

葛城「今日はこの辺でいいんじゃないか?」

 

 

見た感じやつらの数も少なく、家の数も多いところを選び、車をおりる。

俺と胡桃の役割はここいら一帯のやつらの殲滅。当然家の中も含まれている。

 

 

胡桃「おし。じゃあ行くか!」

 

葛城「了解!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葛城「…………おかしい。」

 

 

あれから10分程。

目の前に現れるやつらを丁寧に倒していっているが…………明らかにおかしい。

まず、やつらの数が圧倒的に少ない。この周辺にある家の数は50軒。仮にこれら全てに1人づつ住んでいたとしても、最低50体はいるはずなのだ。

しかし、俺が回った25軒のうち、倒したやつらの数はたったの5体。これは明らかに異常だ。

 

 

葛城(それに…………なんか『ヤバいやつ』の気配がする。)

 

 

俺は1度死んでから、少しばかり気配に敏感になっている。所謂第六感ってやつだろうか。ともかく、そのおかげで今、かなりの『悪』の存在を感じ取っている。

 

 

葛城「………やっぱり変だな。」

 

 

やつらが少ない理由はその悪のせいなのか。それとも俺らの他の生存者が倒したのか。

ともかく一旦戻ってみんなに話してみよう。

そう思い、自分の担当区域をクリアリングした後車へ戻った。

 

 

───────────────────────

 

side悠里

 

 

胡桃と葛城君が車へ戻ってきた。

2人が無事であることにそっと胸を撫で下ろしていると、葛城君から「何か変だ」という話が出た。なんでも、やつらの数が少なすぎるんだという。

その事を話した結果、「とりあえず探索してみよう」と言う結論に至った。

というわけで各々別れて各方面の家を探索してみることにした。

私と由紀ちゃん、美紀さんの担当区域は西側。

私たちの学校がここから見て南側なので、1番車に近い区域を探索することになっている。ちなみに葛城君は北側、胡桃が東側。帰りに南側をみんなで探索して帰ることになったいる。

 

 

悠里「じゃあみんな。何も無いとは思うけど、一応気をつけてね。」

 

由紀「はーいっ!ねぇねぇ!お菓子とってもいいかな!?」

 

美紀「いいですけど、そればっかりじゃなくて普通の食べ物もとってくださいよ?車に載せられる量にも限界があるんですから。」

 

由紀「もう。みーくんは細かいなぁ。」

 

美紀「こ、細かくありません!とにかく、頼みますよ?」

 

由紀「はーい!」

 

 

この二人はいつでも変わらない。

見てると安心するのは私だけじゃないと思う。

願わくはいつまでもこんな風景を見ていたい────

 

 

由紀「りーさーーーん!早く行こー!」

 

悠里「わかってるわよー。今行くわー。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠里「ふぅ。こんなものかしら。」

 

 

探索を初めて20分。

私たちは1階と2階を分担して荷物をカバンに詰め込んでいた。私の担当は2階。主に日常品を詰めこんでいる。レディには色々と入り用なのよ。

化粧品やアレな用品などを詰め終わり、1階へ降り───

 

 

???「よォ!そこの綺麗なレディ。ちょっと、俺とお話していかないか?」

 

 

瞬間、背筋に氷柱を刺されたような感覚を覚えた。

今まで味わったことの無い未知の感覚を押し殺し、そっと後ろを見ると、そこには見たことの無い影が窓に座っていた。

ぱっと見た最初の印象は「異星人」。真っ赤な全身を包む鎧は血のように光を吸い、まるでそこにブラックホールでもあるかのような錯覚を覚えた。

 

 

???「お、やっぱり別嬪さんじゃねえか。いいねェ、若いってのは。」

 

悠里「………誰なの。貴方。」

 

???「話の早い奴は嫌いじゃないぜ?俺の名はエボルト。ま、『こっちの世界』じゃ初めて姿を見せるから、名前知らないのも無理はねえか。」

 

悠里「………目的は何?ここ探索してるわけではなさそうだけど。」

 

エボルト「そうだなァ。ま、噂の『学園生活部』ってやつをいっぺん見ときたいと思ってな。」

 

悠里「噂……?」

 

エボルト「あぁ。どう噂になってるかは言えねえがな。それに、個人的にも用があったんでな。」

 

悠里「…………その用事って、なにかしら。」

 

エボルト「ん?お前の事だよ。若狭悠里。」

 

悠里「私………?」

 

エボルト「あぁ。俺はお前の悩みを知ってるからな。」

 

 

その言葉に、さっきとは違った寒気が背中を駆ける。

 

 

悠里「私の………悩み…………」

 

エボルト「あぁ。誰も失いたくない。戦う力が欲しい。正義のヒーローである人を支えたい。そんないじらしい悩みだ。」

 

悠里「そ、そんなこと!」

 

エボルト「ないのか?」

 

悠里「……………………。」

 

エボルト「やっぱりな。図星って訳だ。いいじゃねぇかその悩み!お相手の……葛城、だったか?羨ましいねェ。こんな可愛いレディに想われてるなんてよォ。」

 

悠里「べ、別にそういうわけじゃ!?」

 

エボルト「まぁまぁ、気にすんなって。ほら、お詫びと言っちゃなんだが、これをやるよ。」

 

 

そういって何かを放ってくる、エボルトと名乗る不審な人物。慌てて投げられた物をキャッチして見てみると、懐中時計のような物だった。その懐中時計もどきにはなにも刻まれておらず、見た感じはただのガラクタでしかない。だが、それからは圧倒的な「可能性」を感じた。

 

 

悠里「これなんですか?」

 

エボルト「それはライドウォッチっつってな。それには強大な力が秘められてる。上のボタンを押せば、その力はお前のものになるだろう。勿論、お前の想い人だって助けられるだろう。」

 

悠里「…………………」

 

エボルト「だが、その力は一般人にはかなりの代物だ。力に飲まれないようにしなきゃいけない。それは理解しとけ。」

 

悠里「…………なんで、こんなにしてくれるんですか?」

 

 

私は思わず聞いてしまった。そうしたら目の前のエボルトは、ニィッと笑った。

 

 

エボルト「そりゃ、俺の趣味だよ。じゃ、そういう訳で。チャオ〜。」

 

 

そして一瞬強い風が吹いたかと思うと、その一瞬で姿が消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠里「……………なんだったんだろう。」

 

 

私は手に納まっている懐中時計──ライドウォッチを見つめる。

この圧倒的な可能性の懐中時計で、どんなことが出来るんだろう────

無意識に上のボタンに指をかけていることに気づき、慌てて指を離す。

浮かんだ考えを頭を振って追い出し、ハァっとため息をつく。

 

 

悠里「どうしようかしら、これ。」

 

 

正直、今は頭の中がぐちゃぐちゃだ。

力が手に入った嬉しさと戸惑い。

力の出処不明という点への不安。

葛城君や胡桃、学園生活部のために何かができるようになれる喜び。

色んな感情がごちゃ混ぜになっていて、頭が壊れそうだ。

 

 

悠里「……………本当に、どうしよう」

 

由紀「あ、りーさん!」

 

悠里「ひゃぁあああ!?」

 

 

どうやら考え事をしてたせいで、後ろから来ていた由紀ちゃんに気が付かなかったようだ。おかげで変な声が出てしまった。慌ててポケットに手を入れて振り返る。

不思議そうに見ている由紀ちゃんに目線を合わせ、どうしたのか聞いてみると、どうやら私を探していたらしい。腕時計を見てみると、既に30分以上が経過していた。どうやら相当長い時間考えこんでいたらしい。

 

 

悠里「ご、ごめんね。気が付かなくって。さぁ、車に戻ってましょうか。」

 

由紀「うん。…………ねぇ、りーさん。ホントに大丈夫なの?朝からちょっと変だけど………」

 

 

その言葉にドキリと心臓が跳ねる。前々から分かってはいたが、由紀ちゃんは人の心を読む………というか、感情の動きに聡い。

 

 

悠里「ええ。本当に大丈夫よ。さ、車に戻りましょう?美紀さんは?」

 

由紀「先に車に荷物積んでる〜」

 

悠里「そう。じゃあ早く行って手伝わないとね。」

 

由紀「そうだね!早く行こ!」

 

 

朗らかに笑う由紀ちゃんの顔が葛城君と重なり、胸が痛む。

────ごめんなさい。でも、少し考えさせて。

今は、そう心の中で謝ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

side???

 

 

???「成程な。この世界はエグゼイドの世界ではないのか。さしずめ、『平行世界のエグゼイド』ってところか。」

 

 

カシャリ、とシャッター音が響く。

すぐさま吐き出されるフィルムにはライドウォッチを片手に持つ少女、悠里の姿が写っていた。

 

 

???「ライドウォッチもエボルトも、本来この世界には無いものだ。なのにあるってことは───大分時空が歪んでる証拠だ。」

 

 

写真を日に透かしてそう呟く。

彼の名は「門矢士」。仮面ライダーディケイドにして世界の破壊者の異名を持つ旅人だ。

 

 

士「この世界の真実はどうだろうか。………それをカメラに収めるのも悪くない、か。」

 

 

そういって笑い、背後にオーロラを出現させる。

 

 

士「さて、俺がこの世界で与えられた役目は…………一体なんだろうな?」

 

 

最後にそう言い残し、オーロラと共にどこかへと消えていった。




というわけで二次創作ではおなじみの世界の破壊者さんと狂言回し代表エボルトさん、そしてライドウォッチの要素を入れました。
ちなみにこの3つ、自分の更新頻度が遅すぎて原作仮面ライダーが3作品ほど進んでしまった影響でプロットを変更したことで出現しました。(自業自得)
でも大筋に変更はないので、大丈夫です。
最後にお知らせを。
現在活動報告でアンケートをやってますので、よろしければ是非。学園生活部に似合うライダーを募集してますので。
では、次回の投稿まで!


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第30話 散らばる謎

どうもよこちょです。
これが今年最後の投稿となります。
中々時間が取れず更新が遅れてしまいすみません………
では、本編をどうぞ!


side葛城

 

 

葛城「うーん。あんまりいい物資がないなぁ。」

 

 

北側担当の俺は、独り言をぶつぶつといいながら作業を続けていた。

本当は誰かと一緒にやりたかったのだが、残念ながら戦える俺は自然と1人班。当然胡桃もだ。

俺は必然的かつ一時的にボッチへと復帰していた。しかしこの感覚は懐かしい。この頭を通さず勝手に独り言が頭から流れていく感覚は実に久々に味わった。…………そして悲しい気持ちになった。

 

 

葛城「友達………俺に友達っていたっけ?」

 

 

熟考した結果、どうも昔の記憶──特に世界がこんなふうになるまでがどうにもあやふやだ。

薄ぼんやりとは思い出せるんだが、どうも靄がかかったように感じてしまう。

まぁそもそも友達がいたかは怪しいんですがね。

とはいえ別に単独行動自体は別に嫌いではない。むしろ好きな部類に入るといっても過言じゃないだろう。

こんな世界になる前はよく1人でゲーセンとか本屋とか行っていたものだった。多分。その辺は覚えてる。

そしてカップルとかを見る度に舌打ちを心の中でしたあと、帰ってから若干死にたくなったのはよく覚えている。

うーん。なんだか考えてるだけで悲しくなってきたな。

 

 

葛城「よし。粗方こんなもんかね。」

 

 

独り言やぼうっとした考えも行動の妨げにはならず、手際よく(自称)見つけた物資をリュックへと放り込む。缶詰やペットボトル入りの水、レトルト食品や賞味期限がまだある食品を主に放り込み、背負って立つ。ずっしりと重いリュックは明日への希望だと思えばむしろ軽いくらいだった。

………そう考えるとなんだか軽い気がしてきたな。もうちょっと入れられるか?

 

 

 

 

 

 

 

結局さっきまでの1.5倍くらいの量を無理やり詰め込み、今度こそ外へ出る。

ちなみに増やした分の中には洋服があったりする。いくら俺が普段着を気にしないタイプだとはいえ、今は女子との共同生活。視線だって気になるし、ちょっとくらいカッコつけたいのだ。

それにいい加減季節の変わり目だから寝間着が欲しいしね。

そんなくだらないことを思いながら歩くこと数分。

とりあえず広い大通りに出た。

さて、と。

 

 

葛城「隠れてないで出てきてくれないかね?誰かは知らんけど。」

 

 

さっきから後ろを着いてくる変態(仮定)に声をかける。このまま車まで連れていくわけにはいかないので、この辺でご退場願おうか。

声をあげると、そいつは案外素直に顔を見せた。

 

 

葛城「…………誰だ?お前。」

 

 

顔を見せた、とは言ったものの、その表現は少し外れていたかもしれない。

現れた謎の生物(?)は凡そ顔と呼べるようなパーツは身体のどこにも存在せず、それどころか全身の輪郭すら危うかった。

端的に言うと───────幽霊?

 

 

葛城「『幽霊』ってわけじゃぁ無さそうだな。お前。」

 

 

幽霊に見えるその影は言葉を発することなく、手にナニカを具現化させる。

それは2つの穴が空いたバックルに横から取っ手のようなハンドルがついた物体───後に、『ビルドドライバー』という名前だと知った。を取り出し、腰であろう部位へあてがう。飛び出してきたベルトが一周し、俺もよく知る「仮面ライダーのベルト」っぽくなった。

 

 

葛城「なっ!?仮面ライダーだと!?」

 

 

俺の知らない仮面ライダー。

この世界には永夢さんたちみたいなエグゼイドとかしかいないと思ってたのに………!

そんな俺の驚きを知ってか知らずか、真っ黒な2本のボトルを取り出し、ベルトへと刺した。

 

 

『タンク!タンク!ガタガタゴッドンズッダンズダン!ガタガタゴッドンズッダンズダン!』

 

亡霊「………………………変身」

 

『アンコントロールスイッチ!ブラックハザード!ヤベーイ!』

 

 

亡霊の前後にプレス機のような物体が出現し、見た目の通り亡霊をプレスする。チーンという少々間抜けな音とともにプレス機が開いた時には、もうあやふやな亡霊もどきは存在していなかった。

そこにあったのは、破壊の兵器。

感情を殺し、破壊の限りを尽くす暴虐の黒き戦車である仮面ライダーがそこには立っていた。

 

 

亡霊「ふぅ……。ようやくまともに動けるな。」

 

葛城「…………誰だ。あんた。見た限りじゃ味方、ってわけでもなさそうだが。」

 

亡霊「俺は『メタルビルド』だ。お前たちの世界には元々存在しないがな。」

 

葛城「メタルビルド?すまんが俺の知り合いじゃなさそうだな。」

 

亡霊「だろうな。安心しろ。俺の、いや。『俺達の』目的はお前だけだ。お前の仲間には手を出さないさ。」

 

 

それを聞いて内心ホッとするが、狙いが俺というのが腑に落ちない。まさかこいつホモか?

 

 

亡霊「今回は挨拶程度にしておいてやる………よッ!」

 

 

そんな失礼な思考をしていたら、相手がいきなり殴りかかってきた。

慌ててしゃがんで頭を下にさげ、敵の拳を回避する。

そのまま足をバネのように跳ねあげ、後ろへと下がった。

 

 

葛城「あっぶねぇ!まだ俺なんもしてねえだろうが!」

 

 

そういいながら俺もゲーマドライバーを腰に装着。

ガシャットケースは戦闘用の武器としてりーさんに渡しているので、現在俺の持っているガシャットである「アンスキルドシールダー」と「マイティアクションX」を取り出す。

 

 

『マイティアクションX!アンスキルドシールダー!』

 

『ガシャット!!』

 

電源ボタンを押し、両ガシャットを起動。

ゲーマドライバーに差し込み、前面部を開く。

 

 

葛城「変身!」

 

 

『ガッチャ〜ン!レベルアップ!!』

 

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティ〜アクショ〜ンX!!アガッチャ!アンスキルドシールダー!』

 

 

葛城「さてと。まずはお前をとっちめてからゆっくり話を聞くとするか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変身を終えた葛城は空いていた距離をダッシュで詰め、まずは拳を叩き込む。わかっていたと言わんばかりに無言で拳の軌道を逸らしたメタルビルドはカウンター気味に膝蹴りを放ち、再び距離を取った。

 

 

「ったく。そう簡単にアドは取らせてくれないか。」

 

「当たり前だろう。」

 

 

そういいながら脚にキャタピラのような影を纏い、地面を滑るようにして接近してくる。そのままの勢いで殴り込んできたので、腕にある盾で防御。こちらも滑らせるようにして攻撃を上手く受け流し、葛城が相手の胸に勢いの乗った拳を叩き込む。

殴られたメタルビルドは勢いを殺さず、むしろ乗るようにして後ろへと下がった。

これでまた、両者の距離は振り出しへ戻った。

 

 

「なぁ、教えてくれよ。お前は『この事件』を起こした黒幕側だろ?」

 

「そうだ。」

 

 

殴り、殴られ。蹴り、蹴られ。

まるで鏡写しのような攻防を繰り広げる両者の間には油断はない。だが、最小限、言葉を交わしていた。

 

 

「お前たちの目的はなんだ。なんでこんなことをした!」

 

「それを言ったところでどうにかなるのか?」

 

 

だが、それは言葉を交わすと言うよりはただの葛城の激情を載せた音でしかなく。

そんな激情に駆られた葛城は油断をしてないとはいえ、隙があった。

そんな一瞬の隙にビルドドライバーのハンドルが回転。軽快な音楽を鳴らしながら死を運ぶ。

 

 

『Ready go!』

 

「しまっ………!」

 

 

鳴り響くビルドドライバーの陽気な音声。

それは必殺技の準備が整った合図に他ならない。

 

───今から必殺技で防御できるか?

 

そう思い、ガシャットを引き抜こうとする葛城だったが─────間に合わない。

 

 

「はぁっ!」

 

 

真っ直ぐに伸びたメタルビルドの足は戦車のキャタピラの幻影を纏い、一直線に葛城の胸元へと突き進む。

それはまるで、無力な兎に対する戦車の砲撃のようにも見えた。

声にならない声を肺から押し出され、吹き飛ばされる葛城。建物1個を貫通して破壊しながら飛んでいき、道路を挟んで反対側の家の塀にぶつかってようやく止まった。

 

 

「ふん。こんなもんか。」

 

 

メタルビルドがその名に反するほどの身軽さでひとっ飛びに跳躍し、反対側へと飛び移る。

そこには変身を解除され、無惨にも傷だらけで転がっている葛城の姿がある。少なくともメタルビルドは、そう思っていた。

 

 

「…………成程な。『あのお方』が言ってたのはそういう事か。」

 

 

視線の先には、全身から薄く青色の光を纏い、傷こそあれど大きなダメージを受けた様子のない葛城が居た。よく見れば、直撃したはずの腹の部分まで腕のシールドが伸びており、ダメージを吸収していたことも一目瞭然だった。

そして何よりも、それと同時に胸部にある経験値のゲージのようなものが減少していた。

だが、流石に衝撃までは吸収しきれなかったらしく、背中を強く打ち付けた葛城は苦しげに呼吸を繰り返す。しかし、今葛城にはそれよりもっと重要なことがあった。

 

 

「『あの御方』って………誰だ…………!」

 

 

ヒューヒューとか細げな呼吸をしながらも、しっかりした声でそう叫ぶ。

それを見たメタルビルドは少し驚いたような様子だ。

どうやら、思わず呟いた独り言が聞こえてるとは思っていなかったらしい。

だが、問題ないと判断したのかふっと笑い、答える。

 

 

「あの御方はあの御方だ。この事件を引き起こした黒幕でもあり、今我らを統べているお方でもある。つまるところ…………『この世界の神』にも等しい。いや、『この世界』って表現も可笑しいか。」

 

 

くつくつと仮面の下で歪んだ笑みを浮かべながら答えるメタルビルドからは歓喜が感じられる。

その様子はまるで、自分の信じる神の教えを告げる宣教師。狂気に染まった無機質な複眼は、真っ直ぐに葛城を射抜いた。

 

 

「お前にはあまり積極的に動いてもらっちゃ困るんだよ。特に、『お前の命に関わる様なこと』はね。」

 

「どういう意味だ!」

 

「そのままの意味だよ。『サバイバー』、葛城。君は死ぬことは無いだろうが…………死にそうな目にあってもらっても困るんだよ。精々安全な部屋に篭って震えてな。」

 

 

そういいながら、トントンと自分の胸部──葛城のゲージはある部分に相当するを叩きながらビルドドライバーのハンドル部分を回す。ゆっくりゆっくりと死を運ぶ軽快な音楽が再び耳に届く。

そして───『Ready go!』

その砲弾は放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、そうか。そいつがキーパーソンって訳か。成程。だいたいわかった。」

 

『Final Attack Ride!ディ・ディ・ディ・ディケイド!』

 

 

だが、死の砲弾は届くことはなく、跡形もなく破壊されて姿を消した。

文字通り、『破壊者』の手によって。

 

 

「き、貴様は………!『ディケイド』!」

 

「よう、確かメタルビルド、だったか。まあそんなことはどうでもいい。」

 

 

世界の破壊者、ディケイド。

数多の世界を巡る放浪者にして仮面ライダーである彼は今、マゼンタのベルトと鎧を纏って登場した。

 

 

「おい、そこの葛城とやら。仲間のことまで飛ばしてやるからとっととここから逃げろ!」

 

「は、いやそれはありがたいんだが……ってかアンタ誰なんだ?」

 

 

立ち上がってディケイドへと近づく葛城。

しかし、近づかれた本人であるディケイドは葛城をくるりと反転させ、そのまま突き飛ばした。

 

 

葛城「おい何すんだ………ってなんだこりゃ!?」

 

葛城の目の前に灰色のオーロラが出現し、通り過ぎる。そしてオーロラが通り過ぎた後には、何も残っていなかった。

 

 

「悪いな。後で事情は説明してやるよ。『お土産』、落とすんじゃねえぞ。」

 

 

オーロラの消え去った空間へと呟き、メタルビルドへと向き直るディケイド。

緑の複眼が真っ黒な複眼と向かい合い、火花が散る。

 

 

「さて。お前たちには色々と聞きたいことがあるが…………まずは一旦ボコボコにしてやるか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃。

葛城を除く学園生活部のメンバーは車に合流し、葛城の帰りを待っていた。

別段葛城が遅い訳ではないのだが、この区域には思っていたよりも資材となりそうな物が少なく、想定していた時間よりも短い時間で探索をし終わっていたのだ。

 

 

由紀「よっくんまだかな〜」

 

胡桃「アイツのことだ。多分きっちり時間いっぱい探索してんじゃないか?」

 

由紀「確かにそうかも!よっくんそういうとこ真面目だもんね〜」

 

 

足をぷらぷらさせながら待つ由紀の姿は、どこか落ち着きがない。しきりに窓の外を気にしていたり、外から聞こえるちょっとした音にも気を取られたりと、普段の彼女からすると考えられないような状態だった。

しかし、それは彼女だけではない。車の中で待っている他の3人も、どこか忙しなかった。全員、この状況に覚えがあったからだろう。

あの雨の日。帰りの遅い葛城が1度死んでしまったあの日。その事件出できた傷は治ることはあっても、心から消えることは無い。だから、この待っている時間は少し不安になってしまったのだ。

 

 

由紀「そういえばさ!みんなはよっくんのことどう思ってるの?」

 

 

その雰囲気を壊したのはやはり、ムードメーカーである由紀だった。

明るく振舞ってくれていることに感謝しながらも、その流れに全員が乗った。

 

 

悠里「そうねぇ。頼りがいはあるわよね。」

 

胡桃「色々危なっかしいけどな。頼りになるのは確かだ。」

 

美紀「それに、優しいと思いますよ。2人でデパートにいた時も、色々と気遣ってくれましたし。…………変態でしたけど。」

 

胡桃「ははっ。アイツは前っからそうだったんだな。知らなかったぜ。」

 

悠里「やっぱり一緒に生活してるからこそ、見えるものがあるわよね。」

 

 

さっきまでの雰囲気はどこへやら。

今は「葛城義彦」という男性の話題でおしゃべりに花を咲かせている。その様子は微笑ましく、周りがこんな状況でなければお泊まり会や昼休みの教室で見られるような恋バナに花を咲かせる女子そのものだった。

 

 

胡桃「でもさ〜。アタシ1個疑問があるんだよな。」

 

美紀「葛城君の好きな人でも気になるんですか?」

 

胡桃「ば、ばばバカヤロウ!違う!そうじゃなくってだな…………」

 

 

ちょっと顔を赤くしながらも、胡桃は疑問に思ってたけど言えていなかったことを場の雰囲気で口にする。

それはまるで意中の人のことを秘密めいて話す、恋する乙女のようだった。

 

 

胡桃「誰かさ。前々から義彦のこと知ってた人って………いたりするのか?」

 

 

一瞬、シンとした空気が流れる。

そして、全員の胸の内に疑問が生まれた。

「そういえば葛城のこと前から知ってる人………いなくない?」と。

ここにいるメンバーは社交性に優れ、クラスや学年を問わず仲のいい人がいると言っても過言ではないという様な人が多い。

したがって、他クラスや他学年の教室やフロアーへと赴くことがあった。

つまり、「名前を知らなかった」ことはあっても、「顔さえ分からない」人なんて殆ど居ないはずだったのだ。もちろん知らない人だっていただろう。サボりが多い人や体が弱くて病欠しがちな人だっていただろうから。

だが、その条件を満たし、なおかつここにいる全員が顔も見た事がない人間がいる可能性は──0に等しい。

 

 

悠里「言われてみれば…………そうね。私は屋上まで出入りしてたから断言出来るけど、屋上でサボる人達の中にはいなかったはずよ。」

 

美紀「それに、彼がそう簡単に病気になったりサボったりするような人には見えませんし…………。」

 

由紀「私は保健室けっこう言ってたけど、よっくんを見た事1回もないよ?それに、めぐねぇのことも知らなかったみたいだし…………。」

 

 

由紀の言葉に、一同ははっとした。

めぐねぇは確かに学校内の一教師でしかない。でも、同じ学校に2年間在籍していて、なおかつ校内でも相談に乗ってくれたり、可愛かったりとで有名な先生のことを知らない。なんてことはあるのだろうか?

 

再び、シンとした空気が車内に降りる。

そして、最初とは違う疑問が胸の内に生まれていた。

 

「葛城義彦という人間は、一体何者なのか」

 

この疑問は全員の脳内にこびりついた。

重苦しい空気が充満する。全員が喉の乾きを覚えるほどには。

 

 

胡桃「そっか。やっぱみんな、わかんないか。」

 

 

そういってはにかむ胡桃。そして、こう続ける。

 

 

胡桃「ま、でもアイツがどんなやつだって大丈夫だろ。多分。」

 

 

胡桃の口から出たのは、「信頼する」という意味に等しい言葉。

楽観的、といえば聞こえはいいが、1つ屋根の下どころか壁や障子1つすら間に挟まない共同生活をしている人が何者かわからない。そんな状況で言うにしては少々危機管理能力に欠けていると言っても過言じゃなかった。

だが。

 

 

胡桃「何があってもアイツはアイツだし。それに、皆も分かってるんだろ?『アイツは裏切らない』って。」

 

 

だが、胡桃の言葉はどこか確信があって言ったように聞こえた。

 

 

美紀「まぁ、そうですね。変態ですけど。」

 

悠里「そうね。彼なら、多分大丈夫よ。ちょっと抜けてるけど。」

 

由紀「だよね!よっくんなら大丈夫!ちょっとおっちょこちょいだけどね。」

 

胡桃「な?だろ?」

 

悠里「なんで胡桃がちょっと誇らしげなのよ。」

 

胡桃「べっ、別誇らしげじゃねえよ!」

 

 

再び和やかな雰囲気がゆるりと流れる。

それは葛城の人徳故でもあったが、それ以上に彼が紡いだ絆や安心感が作ったものだった。

 

 

胡桃「あーあ。早く帰ってこないかな。義彦。」

 

 

それを言い終わるか否か。

そんな瞬間だった。

 

 

ゴンッ!!

 

 

何か───めっちゃ固いものが地面にぶつかったような音がした。

 

 

葛城「いってぇなんか刺さった!!ったく、なんだったんだよあのピンク野郎………。」

 

 

そこには変身を解除された状態で盛大にお尻をアスファルトにぶつけた葛城がいた。




というわけで世界の破壊者降臨。あとメタルビルド。
今回は多分誰も覚えてないであろう葛城のガシャット、「アンスキルドシールダー」の設定に触れています。
覚えてねえ!って人は「第1回アイテムのまとめ」を見てください。(露骨なステマ)
次回はディケイドこと門矢士によって、この世界の黒幕の話や世界がこうなった原因などが1部明かされます。
どうぞお見逃し無く!


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