「構わん、行け」という方は、気軽に感想書いたり、黄金バット見に行ってくれるといいと思います!(グルグル目)
「この剣は以下省略! 『
「お前なー! 今ギャグパートでもなければイベントでもねーんだぞオラー! 真面目にやれオラー!」
「先輩抑えて抑えて」
時は西暦1273年。場所はエルサレム。しかしそこにあるのは現代でも知られる聖地ではなく、獅子王を名乗る者――
そして今、彼女らの計画は最終段階に入ろうとしていた。
それ即ち、『聖槍による救済』。魔術王による人理焼却の後も人類を存続させる為の計画。
聞こえはいいが、その実態は「理想的な人間」…清く正しい人間ではなく何があっても正しい行動しかしない人間だけを『聖抜』により選別し、聖都キャメロット内部に保護という名目で閉じ込め、保管し、管理するというもの。
つまりは、それ以外の人類は全て切り捨てるという事。しかも、よしんば聖抜で選ばれたとしても、その人間は生命としての活動はできないのだ。
当然、これに反旗を翻す者が現れる。その筆頭が、人理修復を目的とし、様々な特異点を巡る者達……人理継続保障機関フィニス・カルデア、そこで数多ものサーヴァントを率いる人類最後のマスタ-である少女だ。
獅子王の目論みを阻止すべく、現地で協力が得られた人間やサーヴァントと共にキャメロット内部を目指す我らがカルデアご一行の往く手を、一人の男が遮る!
聖都の正門の守護者にして、聖抜を執り行っているセイバーのサーヴァント、ガウェイン。
獅子王が本来持つ聖剣エクスカリバー。その姉妹剣ガラディーンの担い手であり、本人も高レベルなステータスを誇る、恐るべき騎士である。
しかも、彼の持つ固有スキル『聖者の数字』により、太陽が出ている間は三倍に近い能力を発揮できるのだ。
ただでさえ強力無比だというのに、そこに獅子王から与えられた
これには全平行世界のマスター達が阿鼻叫喚の渦に叩き込まれた。
ここにいる少女も、まさにその一人だった。
「ちょっと! もう動くことすら億劫になってくるのだけど!? 何よあのゴリラ硬すぎでしょ!」
頼みの綱の男キラーの一人、エウリュアレも弓を引きながら、口を尖らせ文句を言い――
「……なぁ、マスター(の友)よ」
「な、なんでございましょうか孔明先生」
「流石に損耗が激し過ぎてな……これは一旦退くべきでは?」
「あーお客様孔明様いけません! あーいけません! 流石に今帰られては!!!」
――
何せ、メタ的な表現しちゃえば弱点であるアーチャーをぶつけても普通に硬いし、HPも馬鹿みたいにあるし、攻撃も痛いし、宝具はほんの2・3ターンもすればすぐ使ってくると来た。
投稿者も最初は挫けそうになったし、これを読んでいる読者の中にも、レ〇プ目になりかけたマスターが大勢いるだろう?(馴レーション)
「し、しかし孔明さんの言う通り、我々の継戦能力は低下の一途にあります! このままでは――!」
戦闘中だというのに鼻水垂らし号泣しながら孔明に縋りつくマスターの少女を、彼女の最初の相棒サーヴァントであるマシュが説得を試みる。
現在、マシュは徐々にサーヴァントとしての力を発揮しつつあるが、それでも消耗が著しい。
貴重な防御型のサーヴァント故に、その守りでなんとか今まで耐えていたが、それも時間の問題だろう。
同じように味方を援護していた孔明も、
ついでに言えば、アタッカーとして採用されたダビデ達もダウンし、今ここにいる三人しか残っておらず、加えてカルデアかなり追い詰められた状況であった。
しかし、退けぬ。何故ならこれは、所謂最後の決戦なのだから。山の民に、はぐれとして召喚されたサーヴァント達、その他諸々の勢力を味方につけた彼女らは、文字通り決死の覚悟でこの戦いに臨んでいる。
何より、今は別のところで粛清騎士達を相手に交戦しているであろう円卓の騎士……ベディヴィエールの為でもあるのだ。彼の願いは、彼の隻腕に移植された銀の腕、その真の姿たるエクスカリバーを、獅子王に返還する事。それこそが、獅子王攻略にも繋がるのだ。
「――そうだ!」
そこで、マスターの少女はある事を思い出す。
それは、騎士達の魔の手から山の村に逃げのび、そして出会ったハサン達と共に向かったとある場所での出来事――
『あ、貴方が初代ハサン……山の翁……!』
『然り』
大きな角の生えた髑髏の面。胸部に髑髏をあしらった装飾のある甲冑。そして、全身を包むような、ボロボロの布のような何か。
幽鬼という言葉が一瞬頭に過りそうになるほどに威圧的で、濃厚な『死』の気配を漂わせたその大男……初代ハサンこと山の翁は、マシュの震える声で発された質問に、ただ一言で肯定する。
ここまでカルデアの面々を連れてきたハサン三人組はと言えば、もはや彼を前にしておいそれと口を開けない状態だ。
この特異点に辿り着いて最初の頃に遭遇した実力者、オジマンディアスとの謁見以上に緊迫感溢れるこの状況で、変な真似をしようという者はいるまい。
……が、この状況でとんでもない事をしでかそうとする人間、というかしでかす人間がいた。
『わー、骨だ……なんか乾いてそう』
『せ、先輩、この状況で唐突に何を……?(小声)』
『えーと、山の翁さん? ひょっとしなくても喉乾いてない? 水いる?』
『先輩ーッ!?』
豪胆にも程があるだろと、ハサンの一人、百貌のは口に出したくなるが、喉の辺りまで出かかっていたのを無理矢理せき止めた。下手な事を言っては、どうなるかわかったものではない。
『……ふむ。些か能天気が過ぎるようだが、その優しさは本物なのであろう』
今度は山の翁に驚かされる番であった。内心汗ダラダラだったのが、もう心そのものが胸から飛び出さんばかりに、ハサン達とマシュは驚愕した。
確かにこのマスター、普段は優しいを通り越して妙に能天気だったり、かと思えば変なところでテンションが上がりまくったり激情に駆られたりと、常人離れした英霊達から見ても中々カオスな性格をしているが、よもや真っ当な評価が、それもよりにもよって山の翁から為されようとは。
が、当のマスターはと言えば、相も変わらず純粋な瞳を山の翁へと向けている。
『よかろう。汝の好意、ありがたく受け取ろう』
『はい水』
『どこからそんなバケツをーッ!?』
マシュが限りなく小声で叫んだ通り、マスターの少女が懐を弄ると、何故かどう見てもポケットに収まりそうにもないバケツが出現。しかも、中にはいつの間に汲まれたのか、水がたっぷりと入っているではないか。
これをどうするのかと、呪腕のは動けないながらも不安に駆られ、百貌のも息を飲み、静謐のはあわあわと困った表情を浮かべながら、手を宙に泳がせている。
『そぉい』
『あーッ!?』
『なっ……』
マシュが止める間もなく、マスターの少女は、あろう事かそのバケツいっぱいの水を山の翁に向かって浴びせかけたのだ。
なんという暴挙! 予想できたような出来なかったような、とにかく唐突過ぎてハサン達も動けない。
――その時、不思議な事が起こった。
『……フフ。フハハ』
『あ、あの……初代、様?』
『フハハハハハハ!!!』
マスターの凶行も突然だったが、山の翁の変化もまた、唐突だった。
突如として山の翁が高笑いを上げたかと思えば、その身体が黄金の光に包まれ出したではないか!
これには設定を大事にするファンもしかめっ面不可避だ!
が、そんなもん関係ない。何故なら――
『人類最後のマスターよ。汝の真心、しかと受け取った。これより我は……黄金ハサンである!』
『え、えぇ……? ……あの、百貌さん。なんでこんな事になったのかわかります?』
『知るわけないだろ普通』
『ですよねー』
黄金ハサンを自称しだした山の翁は、その際、マスターの少女にある事を教えた。ついでに言えばその直後、彼は掻き消すように姿を消した。
それを思い出した彼女は、藁にも縋る想いで、教えられた通りに言の葉を紡ぐ。
「髑髏さん、髑髏さん、お願い、助けて……」
「今更、一体誰に縋るつもりで――」
事情を知らないガウェインが彼女らに詰め寄る――が、三歩進んだところで、その歩みが止まった。
――おかしい。自分を照らす陽光に、陰りがあるような。
ハッとして振り返った瞬間、そこに、それはいた。
「フハハハハハハ!!!」
――高笑いを上げながら。
その姿は、シンプルに説明するなら黒いマントを羽織った、黄金の髑髏怪人。
その身から放つのは、なおも濃厚な死の気配と、そして黄金の輝き。
相反する二つをその身に宿した黄金髑髏は、手にした銀の両刃剣を掲げながら、高らかに宣言した。
「――我が名は、黄金ハサンである!」
「黄金……えっ?」
ガウェインは、らしくない声を上げてしまう。それはそうだ。ハサンという名も、存在もよく知っているが……あんなに「隠れ潜む」という言葉とは無縁な感じだったろうか?
「真心を持つ少女の願いに応え、此処に参上した」
「……そうか、姿は私が知るものとは異なるが……貴様が山の翁か?」
「然り。されど、今は山の翁として此処に来たのではない」
「では、何の為に来たのです」
「――それは、正義!」
荘厳な声と共に、山の翁、もとい黄金ハサンは銀の剣を振りかざしながら、ガウェインへと飛び掛かる!
「最後のマスターよ! 往くがいい! 正義の鐘は汝の名を指し示した!」
つまりどういう事だと、聞いてはいけない。そういう事に、小難しい理屈は不要なのだ。
「おのれ、行かせるわけには――グッ!?」
カルデアのマスター達を追おうとするガウェインを遮るように、黄金ハサンの剣が振り下ろされる。
ガウェインの目から見ても、恐るべき速度だ。
ガラディーンを横に構えて防ぐが、ずっしりという言葉が軽く思える程に、その一撃は重い。
「ッ、何の……今の私には、ギフトがある!」
そう呟くガウェインの顔には、しかし余裕の色はない。
先程の一撃だって、黄金ハサンの全力というわけではないだろう。
「太陽の加護無くば、我に太刀打ちできぬと? ――笑止!」
はたして、ガウェインの危惧は的中した。先程の縦一文字の振り下ろしが生易しいと思える、神速の連撃!
右、左、上、下、斜めと、次々に繰り出される斬撃を、ガウェインは目で追うのが精一杯だった。
おお、見よ。カルデアのマスターとの戦いの間ではほぼ無傷だったというのに、その鎧は至る所にヒビができ、血を流し、そして手が震えているではないか。
「こ、これが、正義だと、言うのか! こうなる事が、真理であると!!」
「――然り。故に、この一撃をもって、此度の汝との争いを終わらせよう」
その宣言と共に、黄金ハサンは銀の剣を天高く掲げる。
「――我がシルバーソードの威力を見よ!」
その声と共に、銀の剣が黄金のオーラを纏う。そのオーラが、天高く太陽へと昇っていくのが見て取れた。
「……! させて、なるものかァ!!」
しかし、ガウェインの戦意は、未だに尽き果てない。故に、ガウェインは強引にでも、
「
刀身が燃え上がったそれを、ガウェインが力任せに振るう。
瞬間発せられた炎の波は、しかしカルデアのマスター達に放ったそれよりも威力は劣る。それでも十分な威力を発揮するのは、偏に彼に与えられたギフトによるもの。
そして、その波ががら空きの黄金ハサンの腹部に到達し、派手に爆ぜた!
――しかし!
「効かぬ」
「ぐッ……!」
真っ赤な炎と陽炎の向こうから、青く輝く二つの炎が見え、そして真っ赤に輝く。
「――『
本来明かされる事のない、初代ハサンのザバーニーヤ。しかしこれは、本来のそれではない。これは、少女の真心から生み出された輝き。その真心に応えんとする想いの実現。
――想像など無意味。この黄金の輝きは絶対のものなり。
「う……グァァァァ!!!」
振り下ろされた黄金のオーラが、さながらビームのようにガウェインに殺到、たちまちその姿が、光の中へと消えていく!
(――嗚呼、王よ、申し訳、あり――)
そして、派手に爆発! 理屈? そんなものは知らん。
爆発の中で、自らの王に謝罪するガウェインの意識が、むなしくも掻き消えていく。
――その直後!
「む――」
空から降る、光の柱!
獅子王の宝具――ロンゴミニアドの一撃が、特になんの脈絡もなく飛来、黄金ハサンを飲み込んだ!
なんという事だろう! これが、黄金ハサンの最後なのだろうか!
――その後、カルデアのマスター達が見事獅子王を下し、第六特異点を修復。黄金ハサンのその後を知る事無く、彼らは第七の特異点、バビロニアへと向かう。
そして、現在彼女らが対峙しているのは、この特異点最大の敵――ティアマト神。
詳細やら諸々はネタバレなどを考慮して省かせてもらうが――決してうろ覚えだから書くのがめんどくさいとか、そんな事は無い。断じてない!――とにかく魔術王の野望やら何やらで出現した巨大な怪物の如き女神は、彼女が生み出した黒い泥のような混沌の海と、新しい人類ラフムを筆頭とする異形の子供達を伴い、ウルクを滅ぼさんとしていた。
「くっ、このままじゃ……」
無限に湧いてくる敵に、幾度となく苦難に立ち向かっていったカルデア一行は、何度目かもわからない苦境に陥っていた。
英雄王ギルガメッシュに、彼の召喚したサーヴァント、それに花の魔術師マーリン。数多もの助けを借りても、それでもなお、苦境の最中にあった。
――その時である!
「――フハハハハハハ!!!」
「あ……あの笑い声は……!」
突如として辺りに響き渡る荘厳な笑い声に、マスターの少女は確信する。
彼が、戻ってきたのだと。
「黄金ハサンは、不死身なり!」
――強い! 絶対に強い! 我らが正義の使者、黄金ハサン!
黄金ハサンの次なる活躍に、ご期待ください!
まぁ続くわけないんですけどね、読者さん。
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