幻想郷物語 (Koki6425)
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幻想郷物語
幻想入り


妄想暴発によるものなので嫌な方はご退出を・・・(しないでください‥泣‥)

大丈夫な方はゆっくりしていってね

 

 

 

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幻想入り

 

 

 

 

「どこだここは?」

 

俺(航生)はそういって立ち上がる。今さっきまで学校帰りだったはずなのに間を開けたらいきなり知らない

野原にいたのだ。

「そ、そうだ。こういう時の為に携帯持ってきてたんだ・・・。」

そういって俺は背負っていた通学用カバンから携帯を取り出す。電源を入れてエコモードにし、連絡を取ろうとし

た。(なぜエコモードなのかは聞かないでくれ)しかしつながらない。つながるわけがない。

「圏外じゃねぇかぁぁぁ!」

という心の叫びが表に出てしまう。(あんまりだぁぁ~)それに怒りの念を覚えた十秒後、周りの探索に乗り出した。十分ほど歩いて森に入る直前、不自然に立てずむ石の建物があった。誰かの家かもしれないと思った俺はノックをして入ろうとした。‥しかし応答がない。

ドアを開けようとすると鍵が開いていると知り、ドアを開けて中に入った。

「おじゃましまーす」

その建物の中にあったのは、簡素なベッド。そして何が入っているのかわからない箱があった。正直得するようなものがないと判断した俺はすぐに建物から出た。

「さて、じゃあ次は…」

???「そこで何をしてるの⁉」

「おわぁぁぁぁぁ!」

後ろからいきなり話しかけられたのでびっくりして倒れそうになるのを何とかこらえる。

「誰だ!?」

そういって後ろを振り向く。するとそこには俺と同じくらいの女の子がいた。

「あぁ~びっくりしたぁ~。」

「びっくりさせて悪かったわね。」

特徴的な珍しい巫女服に、頭に大きいリボンをつけ、お祓い棒を持ち目の前に立つ彼女は・・・。

「自己紹介が遅れたわ。私は博麗霊夢。分け隔てられた世界『幻想郷』の巫女をしているわ」

霊夢と名乗る彼女のことを俺は知っていた。俺の好きな二次創作のキャラの一人なのだ。

「俺は航生って呼んで。」

「了解。それで航生。あなた・・・この世界の人間じゃないわね?」

「よくご存じでらっしゃる。」

霊夢は苦笑いする。彼女は周りを少し警戒したかと思うとすぐに俺に話しかけてきた。

「詳しい話は博麗神社でしましょう。ついてきて。」

「ああ分かった。ついてくよ。」

そういって俺は霊夢の後についていった。しかし一つ疑問に思ったことがあったので霊夢に問いかけた。

「なあ霊夢。」

「どうしたの?」

「お前って空飛たりしないの?」

すると霊夢は俺に驚きの念が隠せていない表情を向ける。

「あなた私が飛べるの知ってるの!?。」

「まあすぐそこだから飛ばなくていいか。」

そういって俺は笑いながら霊夢の後に再びついていった。しかし、ついていこうと足を踏み出したとき何故か誰かから見られているような感覚があった。薄気味悪かったが、黙って霊夢についていった。

(みんなは今何してるかな・・・。だいじょうぶなのかな・・・)

考え事をしながらも感じる視線に俺は警戒せざるをえなかった。何故か。俺が外から来た人間だから。外から来た人間は不確定要素をたぶんに含む。首謀者側から監視されてもおかしくない。

(ヤベーすむ場所ねぇ)

などとかんがえるうちにおれは神社に足を踏み入れていた。

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また出します。

次回予告

『俺の現実と幻想』

お楽しみに!



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俺の『現実』と『幻想』

話グダグダです
すみません。


歩いている途中、俺は一つの考えが頭をよぎった。八雲紫なしで来れる幻想郷。能力が封じられている住人。しかし霊夢は連れてこれた。仲間が行方不明だが建物はそのまま。能力持ちの俺。それを知っている霊夢。・・・仲間が行方不明?

「なぁ、霊夢。一つ聞きたいんだが。」

「何?」

「・・・この世界の住人で確認できる奴ってどれくらい?」

すると霊夢は言いにくげな顔をした後話した。

「魔理沙だけよ。今は博麗神社で一緒に暮らしてるわ。」

・・・そうか!そういうことか!

「霊夢!急いで神社行くぞ!」

「え、なんで?」

「魔理沙が危ない!」

そういって急いで走って向かった。

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博麗神社につくとそこには少量の血と折れた長い木の棒があった。

「お前の好きにはさせないぜ・・・あぁ!」

「魔理沙!」

すると霊夢は走って裏のほうに回った。

「ついに来たな博麗の巫女。」

「見ない顔ね。」

するとわけのわからない奴は微笑。

「霊夢!離れろ・・!こいつは危険だ・・」

すると魔理沙が口から少し血を吐いた。

「あなたは誰?何しに来たの?」

「私は魔帝ゼルエル様に仕えるものだ。ゼルエル様の志の邪魔になるお前たちには消えてもらう。」

霊夢は魔理沙を人質に取られているため動けない

「お前・・・幻想郷の人間ではないな。ちょうどいい。消えてもらおう。ここにいるやつらごとなぁ!」

すると下っ端?は何かを手に出した。・・・。頭の中でイメージした

(頼む・・。俺の知ってる剣『エリュシデータ』を・・)

すると俺の手に一つの黒い光が出る。強くエリュシデータをイメージする。すると爆発する前の予兆らしき収縮が見えた。それと同時にエリュシデータが出現する。俺はエリュシデータを構え突進をする。

「くらえぇぇぇぇぇぇぇ!」

ドォォォォォォォォォォォォォォォン!

「どあぁ!」

「魔理沙!」

「ぐあぁぁぁぁぁぁ!」

ドサッ。

「魔理沙!大丈夫か!?」

「お前は・・・」

「とりあえず部屋まで運ぼうか」

そういって俺は魔理沙を抱きかかえ霊夢の家まで運ぼうとした。

「!?お、おろすんだぜ!」

「バカ言え。怪我してるじゃねぇか。」

(あいつら何だったんだ?)

そう思いながら俺は魔理沙を運んだ。

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家に入って、俺は霊夢・魔理沙を正面に座った。色々あるがまずはこちらの用事から済ませようとした。

「まぁ、まず自己紹介か。俺の名前は航生。よろしく。」

「それは知ってるわ。とりあえずあの話題にしましょう。」

「その前に一つ聞きたい!」

真っ先に手を挙げたのは魔理沙だった。

「お前のさっきのは何だ!?」

(俺にだってわからねぇよ)

「航生。あなたを読んでしまったことについては謝らせて。ごめん・・。」

魔理沙の話を耳にも通さず、霊夢は頭を下げた。下げられても困るのだがまず頭を上げさせる。

「別に気にしてないよ。それと魔理沙。さっきの質問だが俺にもわからん。」

「そ、そうか・・。ごめんな。」

「いや気にしてないからいいよ。」

魔理沙はそれを聞いた後すごく深いため息をついた。何でかはよくわかるが、深く掘り下げてはかわいそうだ。

「あ、あの・・・。」

そういって霊夢が何か申し訳なさそうに手を挙げた。ちょっとは予想していたが・・そのあと霊夢が発した言葉は全然違うものだった。

「ごめん。生活についてなんだけど・・。食料が付きそうなの・・・」

「「え?」」

「それに航生の寝る布団もないの・・」

「いやそれはいいけどさ。」

(そういう話すんのかよ・・・・)

「「はぁ~・・・」」

俺と魔理沙は二人そろって大きなため息をついた。

 

 




次回未定。
受験期間ですので・・・。
すみません。
また読んでくださいね。


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つかの間の日常

「な、何か変な話してる?」

((自覚なしかよ!!))

「ま、まぁ確かに腹が減っては戦はできないよな。」

(おい魔理沙)

(なんだ?)

(ここの霊夢はいつもこんな感じなのか?)

(そうだぜ)

「あいつらの調査は明日から始めましょう。もう少しで日が暮れるわ。」

((あ、案外ちゃんと考えてる))

「そうだな。今日はもう日も暮れるから明日から始めようか。」

「それじゃあご飯の支度をしないとね。」

「食材何があるの?」

「ご飯なり、魚なり、野菜なり色々あるわよ。」

「肉はないのか?」

魔理沙は肉好きなのか、真剣なまなざしを霊夢に向けている。

「あるわよ。でも作るのめんどくさいわ。」

「じゃあ俺が作るか。」

俺が立ち上がると二人は「「え?」」という言葉をそのまま顔に張り付けたようにこちらを向いている。

「霊夢台所借りるぜー。」

そういって立ちあがり台所に向かう。しかし問題が発生した。

(俺、IHヒーター以外使ったことねぇよ・・・)

「まあいっか。さてフライパンはと・・・」

そう呟きながら俺は台所をあさる。

仕事をしない巫女の割にはちゃんと片付いていることに感心する。

(やっぱり・・あいつらについて考えるか・・・)

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「そういや、霊夢。」

そういって私は霊夢に話しかける。しかし霊夢は頭をうずめて話を聞こうとしていない。

「おい!霊夢!」

思わず声を上げてしまう。

「何?魔理沙」

「航生のことだけどさ。あいつのさっきのあれについてどう思う?」

さっきのあれというのは、航生が使ったあの『能力』の事だ。

あれは普通の人間には到底できないものだった。私や霊夢のように能力を身に着けたり

する者はいるが、航生はそんなことはしてこなかっただろうし・・・。

「そのことだけどね。あれは多分、こっちに来てから身についたものだと思うわ。」

「どういうことだよ?」

「あのね、幻想郷に来る人間はなぜか知らないけど能力を身に着ける人が多いの。多分航生もその分類に入ると思うわ。」

「だよな~。そういやよ、霊夢。話をころころ変えるようで悪いけどさ。」

「何?」

「お前なんで顔赤いんだ?」

「え!?わたし顔赤い!?」

「ああ、まるで愛する人のこと考えてるかのようだぜwww」

「ぶち殺すわよあんた・・・」

「怖いこと言うなぁ。ははは。」

(やっべぇー殺されるとこだったぜ)

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何やら今でがやがや騒ぐ声が聞こえる。何してるんだ、と思いつつも

料理を終わらせ居間に運ぶ。

「できたぞー。材料の種類が少ないから豪華なもんは作れなかったけど・・・。」

そういって俺は居間に作った料理を運ぶ。

「今日はカレーにしたぜ。まぁそんな量はないけど・・・。」

「いやいや、十分だぜ。」

そういって、俺たち三人は夕食を食べ始めた。魔理沙はスプーンでカレーは飲み物と言わんばかりに掻き込んでいく。

「美味いぜコレ!」

「そうですか。それはよかったでござる。」

そういってカレーを食べ終わると、三人一緒に霊夢の入れたお茶をすすりながら会話を再開した。

 



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作戦会議

色々落ち着いたのでまた投稿します。


「じゃあどこから話すか」

晩御飯の最中は三人でワイワイ話しながらも

束の間の安らぎを感じていた。

食べ終わったので、今後のことについて話すことにした。

「今回の異変。さっきのやつもそうだけど割と厄介かもしれない。」

俺の考察はこうだ。

今回の異変。それは俺の知る『紅霧異変』、『春雪異変』『永夜異変』などの異変とは異なり、完全に殺しに来てる。今回は弱いやつで助かったが間違いなく、早く終わらせるべきだと俺は思っている。

霊夢や魔理沙の使う『スペルカード』は美しさを競うものであるが、あいつらにそれはなかった。今回はそもそも能力が封じられているので戦うことすらままならない。俺一人では圧倒的大差をつけられて敗北し、幻想郷は崩壊する。勝つためには全員の能力を復活させ、魔帝ゼルエル(?)を倒さないといけない。俺は幸い能力が使えるので戦える。せめて後一人まともに戦える人がいれば・・・。

「と、今言った感じだ」

「ごめんなさい。私たちのせいで巻き込んでしまって」

そう言いながら霊夢は頭を下げて来た。頭を下げられても困るのだが

「全然大丈夫だ」と言って顔を上げさせる。

確かに俺は恐れている。まだやりたいことがたくさんある。知り合ったのは今日だがそれでも友達、仲間であると思っている。死にたくないが仲間を見捨てるわけにはいかない。霊夢達が安全に暮らせるようになればそれで良いと思っている。

「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいわ」

さっき魔理沙が傷ついた時に見た霊夢の顔。

「わたしのせいで・・・」と言わんばかりの顔。

今はピンピンしているがそれでも霊夢は負い目を感じている。その時の霊夢の目には光を反射する一粒の雫があった。涙。人が悲しくなった時に流す物体。もう泣かせない。霊夢を不幸にしたくない。

俺はその時の顔を思い出し、命に代えてでも仲間を、そして

みんなの笑顔を守る決心をするのだった。

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話も終わり、一段落したので、風呂に入ることにした。英気を養い、明日からの解決に備えるためにも必要である。霊夢と魔理沙に入ることを伝え、俺は風呂場に向かった。予想以上に大きい風呂。何人でも入れそうで入りたくなる雰囲気をかもひだしている。俺はゆっくりつかると「ふぅ〜」と大きく息を吐いた。風呂に入るとどうしても眠くなる。仕方ないので早めに出ることにした。身体と頭を洗い、またある程度浸かった後、風呂場から離脱した。服を着て、部屋に戻ろうとすると居間から話し声が聞こえて来た。霊夢と魔理沙の声。(当たり前だが)今日は俺はもう寝ることにした。布団が無いと言うものだから仕方なく持っていたタオルをかけて寝ることにした。電気を消し、布団(タオル)に入る。春先であるため、流石に寒い。そして目をつぶろうとした時、霊夢の声が聞こえた。

「ねぇ航生。起きてる?」

「ああ、起きてるよ。どうしたの?」

「寒くない?」

「さっき大丈夫って言った気がするけど?」

正直寒い。だが流石に居候である俺は迷惑をかけられない。すると霊夢は俺が寒がっているのを見ていたようで、

「嘘おっしゃい。さっき寒がってたじゃない。」

「はい・・・」

「仕方ないわね・・・ほらっ」

そう言って霊夢は魔理沙側により布団をあけた。

(これは寝ろと言っているのか?)

俺は断った。しかし、しつこいほど言ってくるので仕方なくその布団で寝ることにした。

「あったけぇ〜」

布団に入るやいなや、俺がこのセリフを言ったので霊夢は

クスクス笑っていた。

「もし嫌じゃないなら・・・」

「い、いいいいや!なんでもない!おやすみ!」

「あ、ああ。おやすみ」

そう言って俺は目を閉じた。

 

 




設定に合わせるとこんな感じですね。
ではまた次回お会いしましょう。


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紅魔館へ

楽しんでいってくださいね。


「んん・・・」

朝の日の光が顔にあたり俺は目を覚ます。正直まだ寝ていたい。しかしそうも言ってられない。今日は紅魔館に行く予定なのだから。レミリア達には告げていないらしいが、まぁ、早く起きて損はないだろう。春先の寒さに耐えながら俺は布団から出ようとした。その時に感じた強烈な重力。とてつもなく重いというわけではないが起きたばっかりなので力が入らず、重く感じる。そう、今この場所、時間、状況全てを考えると可能性は1つ。それを確かめるべく、俺は後ろを見た。すると案の定、俺の背中に、霊夢がいた。寝ているにしてはあまりにも抱きつく力が大きすぎる。とにかく起き上がろうとするが起こしたくはない。こういう時に限ってこいつは起きる。

「んん?こーき?」

目を手で擦りながら少しずつ目を開ける霊夢を見た。寝起きだからか少しだけ体が熱い。しかしこの後、体がもっと熱くなる事態が起こった。この時俺は霊夢に抱きつかれていた。抱き枕扱いにされたのは

少しカチンときたが寝ていたのだから仕方ない。このタイミングで目を覚ました霊夢。俺は1つの答えにたどり着いてしまった

「あー、俺、オワタ」

「イヤァァァァァァァァァ!」

その後数分の記憶は俺にはない。

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気がつくと俺は体が横になっていた。しかも二の腕のあたりにあるふかふかした感覚。布団だろうか。魔理沙か霊夢がかけてくれたのだろうか。しかもちょうど寝てる両隣で話し声が聞こえる。何を話しているか気になるので寝たふりをしておくことにした。するとちょうどよく会話が再開した。

「お前・・・いくら何でもやりすぎだろ・・・」

「仕方ないでしょ!確かにいきなり叩いちゃったのは悪いけど・・」

(そうか・・俺は叩かれて気絶したんだな・・・)

それを聞いた瞬間「早く逃げればよかった」と思ってしまった。

「しかもあの格好を見られるなんて恥ずかしいったらありゃしない」

確かにあの時の霊夢の服装は危なかった。昔ならではの寝巻きといった感じだし、昔ならではの寝巻きといえば和服でよくあるあれが起こる。特に寝てる時にしか起きないが・・。寝ている時に服がはだけて、あと少しで女性の胸にある突起物が見えてしまいそうだったのだ。そのため起きた時に自分の服装を見て霊夢は甲高い悲鳴をあげたのだ。このことはもう忘れようと思う。しかし、会話はこのままで終わらなかった。徐々にエスカレートしていったのだ。

「まぁ、起きた時にそういう服装なら先に航生に見られただろうな」

「起きたら殺す・・・」

「まぁまぁ、元はと言えばお前が寝返り打ちまくった結果なんだから仕方ないじゃないか」

(そうだぞ霊夢)

「しかもその服装で抱きついてたとか寝ていたとはいえ変態だぞ」

その後は眠気が勝ち、全く何を話していたのかわからない。

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ご飯も食べ終わって、俺たちは博麗神社を出て紅魔館へ向かった。割と近くて30分もかからなかった。敵にも会わなかったし、本当に危険なのかと思ってしまうほど安全に紅魔館に着いた。いつもなら門の前に門番の美鈴があるはずなのだが、今はいない。まだ起きていないのだろう。仕方なく紅魔館は直接入っていった。入るとすぐにメイド姿の女性が出てきた。

「あなた・・・何者?」

そういう彼女は十六夜咲夜。この紅魔館に仕えるメイドである。霊夢がいてくれたおかげで俺は攻撃されずに済んだ。すぐに紅魔館の主、レミリアのもとに連れていってもらった。

「自己紹介が遅れたわね。私は十六夜咲夜。メイドよ。本当なら私は時を止められるけど今は無理ね。よろしく」

「俺は航生。霊夢に幻想郷に連れてこられて異変解決の手伝いをしてるんだ。よろしくな」

そうこうしている内に俺たちはレミリアの部屋にたどり着いた。

「お嬢様、咲夜です。」

「いいわ、入りなさい。」

「失礼します。」

俺は咲夜たちと一緒にレミリアの部屋に入った。

「なんか久しぶりに会った気がするわね、霊夢。」

「そうでもない気がするけど・・・」

などという会話の後に俺の方を見た。

「あなたがこの前霊夢が言ってた人間ね。私は紅魔館の主、レミリア・スカーレット。異変解決の手伝いをしてくれたこと、感謝するわ。」

名前は能力制限がかかる前に能力で見たらしい。

「まあ、よろしく」

「レミリア、今日ここにきたのはある程度の場所を教えとこうと思ってね。」

「フランはいないのか?」

唐突に首を突っ込んでくる魔理沙。その話をした瞬間二人の顔が一気に青ざめた。その様子からして何かあったのは明確だ。

「フランは今大怪我して寝てるわ」

そう言ってドアから紫髮のパジャマが出てきた。

「パチュリー!フランに何があった⁉︎」

思わず魔理沙と揃って声をあげる。パチュリーは一度俺を見たが、

すぐに向き直り話を続ける。

「フランは能力制限がかかる直前で能力を発動したせいで制限がかからなかったの。だけどそれを敵が感知したみたいで、この紅魔館に攻めてきた。美鈴と咲夜とフランが応戦したんだけど、数まではどうしようもできなくて、やられてしまった。咲夜の手と足の包帯はそういう理由。美鈴は今昨日まで不眠不休で門番をしてくれていたから休んでる。・・・というより、今は幻想郷の住人全員紅魔館と白玉楼で集中管理してる。」

「ん?ちょっと待ってよ!人里は!?」

そうパチュリーのいう幻想郷の住人というのは能力持ちのこと。

なんの能力ももたない人里の人間はどうしたと思っても不思議ではない。俺も今それを言おうとしたのだから。

「人里の人間はにとりがいるから『山』に任せてるわ」

『山』というのは幻想郷にある妖怪の山のことである。今回の異変は幻想郷の運命に関わる重要な案件だから、妖怪の山も協力するそうだ。

「それでフランの容体は?」

魔理沙がどんどん聞いていく。パチュリー曰く「傷は深いけど、吸血鬼の再生力がすごいおかげで傷はない」そうだ。

「よかった。」

しかし、俺は思ってしまった。

「地底の方が安全なんじゃ・・・」と。パチュリーはそれを聞いていたようだ。

「確かに地底にはそう言ったわ。でも、「人里の人たちが行く気にならないだろうから本当に満帆になったときまでとっておく」だって」

(なるほど理解)地底とは忌み嫌われたものたちの集う場所。旧地獄である。鬼や覚妖怪など沢山いる。そこは本来人間はいかないのだ。

そんなことはさておき、本を見てみようと図書館にいった。そこではおそらく数万冊という数の本があった。よくこんな沢山集めたな、と思ってしまう。図書館で魔道書の本を見てみようと思ったとき、殺気を感じた。なんの殺気かわからないが少し外に出て見てみることにた。

「みんな、俺ちょっと外見てくる。中庭も見て見たい。」

「わかったわ、気をつけてね航生」

「ああ、もちろんだ」

そういいながら手を振り図書館を出た。




今回はいつもより文字が多くなりました。
話としてはまぁ面白いんじゃないかと思います。
ちなみにこの小説は次の話からYouTubeの
『幻想郷物語』と連動させて行く予定です。
多少ずれている部分はありますが、
「何言ってんだ?」と矛盾することはないようにします。
次回もよろしくお願いします。


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第二次防衛戦

時間はかかりましたが自分的にはいいものが書けたと思います


先程の殺気を感じ取った俺は、急いで紅魔館門前にいった。

(やばい・・・どう戦えばいいのかわからん・・・)

勝てる確証もなく、死ぬ覚悟で俺は来たのだが正直

「ムリ(^o^)」

そう確信できた。なぜなら・・・ゾロゾロと沢山よくわからんやつらが来たからだ。数はザッと見て100人程度だろうか。

戦闘初心者VS下っ端?×100

勝てるわけがない。なんとなく剣を構えたが、全く勝てる自信がない。それでも俺は戦うしかない。この地下には霊夢達がいる。立ち入らせるわけにはいかない。俺は死の恐怖に震えながらも、剣を握って

「さあ!死にたい奴からかかってこい!」と叫び、覚悟を決めた。

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「遅いわね・・・」

遅い。そう口に最初に出したのはレミリアだった。

「中庭見てくる。」と言ったきり戻ってこない。花に見とれる気持ちも分からなくはないが、幾ら何でも遅すぎる。何があったのではないか、と気になってしまって仕方がない。行って戦っていた場合、戦えない私たちがいたら100%足手まといになってしまう。フランが復活していればいいが、今はそんな余裕は吸血鬼といえどないだろう。しかし、図書館にいた奴ら全員の不安は的中した。

「今のなんの音!?」

みんな揃って鼓膜が破れるかもしれないくらい大きな音に振り向く。外の方から聞こえてくるような音だった。爆発音、と言った方が近いのかもしれないが・・・。そんなこんな話していると突然声が聞こえて来た。

『みんな無事か!?』

そう叫んで来たのは航生だった。何やら疲れたように息を荒だてている。やはり外で何かあったのだ。

『今俺は能力で使える魔法の1つで脳内に直接話しかけている。余裕がなくてそっちの話し声まで聞こえるようにできなかった。聞こえていることを祈る。』

「い、一体何があったんだぜ!?」

『今外で100人くらいの敵だと思われるやつと戦っている。今やっと20人倒し終わったところだ。あと80人残ってる。そこでお願いがあるんだ。』

『80人も残っている』という航生の台詞にいる奴全員が絶句した。

確かに航生に能力が使えることは言ったが、幾ら何でも初めて戦うのに残り80人は初心者には不可能だ。ましてや上級者でさえも悲鳴をあげるほどなのだ。そして、その後に航生が言った言葉は衝撃を受けるものだった。

『今ここにいる奴ら全員連れて山側の出口から出て欲しい。出たところにスキマを用意してある。それを通れば俺が知っている外の世界の隠れ家に繋がっているんだ。生きていればそこへ迎えに行く。それまでそこに隠れてるんだ。死んでいた場合は、死ぬ寸前にそちらにある箱を渡す。その箱に色々入ってるからそこで暮らしてくれ。そこから山の中にトンネルを掘ってある。もしも戻りたいのなら霊夢の力を借りるといい。外の世界で能力の制限は無いからな。』

これは遺言という奴だろうか。私が呼んでからまだ二日もたってないのに遺言を言っているのだ。これは私達に生きて欲しいという願いだろう。その言葉を聞いた時私たちは言葉を失った。特に私は異変を解決しなければいけないのに、それを航生に任せているようなものなのだ。しかも、一度だけだがご飯も作ってくれたし、お賽銭に一年は生活にも困らないほどのお金も入れてくれた。とても感謝しきれない。

『ありがとうみんな 生きてくれ』

その言葉を最後にして通信は途絶えた。

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気づけば俺は肩を上下に動かし息を吐いていた。自分でも信じられないほどの敵を倒した(殺したのも含める)。あまりにも多すぎたが、今は後20人ほどまで減らすことができた。しかし、こちらは人間であちらはモンスターのようなもの。人間と怪物では体力にも力にも圧倒的な差がある。初陣である俺ならなおさらだ。

「霊夢達は脱出しただろうか。」

不意に漏らす心配。しかし、今はそんなことをしている暇はない。疲れて来ているにもかかわらず剣を振り続ける俺の体は悲鳴をあげていた。運動不足だけが理由ではない。初めて戦うやつがノーダメージで戦えるわけがない。何度か攻撃をくらい、両腕に複数のあざ。足にはかすり傷。頰にはレイピアの先端で削られた傷が残っている。こう考えながらも戦ったおかげであと3人まで減らせた。しかし、能ある鷹は爪を隠す。その3人は100人いた奴らのチームのリーダーのような存在でいくら攻撃しても防がれた。3人まとまってしまっているおかげでなかなか倒せなかった。それだけで30分は時間をかけてしまった。このままではこっちの体力が先に尽きて、倒れて殺されるのがオチだ。しかし、俺も何も考えずに戦っているわけではない。俺を迎え入れてくれた幻想郷をそう簡単に潰させてなるものか。相手の剣をエリュシデータでは弾き続け隙をうかがう。3対1という完全アンフェアな状況ながらも、俺は一人倒すことに成功。さらには、驚いて好きを見せたもう1人も撃破。残すはあと1人になった。長く戦う必要もなかったのだが、やはり手強かった。流石にひとつの軍隊をまとめる力があるやつと、初めて戦うやつとは力量に大きな力の差があってとてもかなわない。(などと、その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ)怒りの力は人間の力を増大させる。いつもならガチギレすることはないのだが、今回に関してはガチギレしてしまった。最後の一人には苦戦した。攻撃防がれるし、それなのに相手の猛攻でダメージ受けるしで全くと言っていいほど相手にならなかった。だが、最後に俺の首を狙ってきた攻撃をスレスレでよけ(少しかすれたけど)、バランスを崩した隙に相手の首にエリュシデータを喰らわせる。流石に予想していなかったようで、相手も避けきれずにモロにくらった。地面に崩れ落ちたやつに向かって完全に破壊するあの言葉を発した。

「ギュッとしてドカーン!」

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「本当に大丈夫かしらね・・・」

私は思わず声に出してしまった。普通ならこんなこと言わないのに、今回に限っては心配になって仕方がない。さっきは大丈夫だと言ったが、心配には変わりない。その時・・・

「ドッカァァァァァァァァァァン」

爆発音でさらに振り向く。図書館にいた全員が思わず走って外に出た。外に出た私達はそこで信じられない光景を目にした。

「ああ、やっぱり出てなかったのな」

平然と話しかけてくる航生にみんな唖然としてしまう。爆発したことでできたクレーター、折れた剣。そして血痕。これらは先程まで戦闘していたことを証明できる証である。

「大丈夫なの?」

そう聞こうと思って近付いた時、航生はその場に倒れ込んだ。

「航生!」

我慢できずに走って駆けつける。倒れた航生には苦痛の表情はなかったが、疲労の表情がうかがえた。慣れない全開戦闘で疲れたのだろうか。それともなにか夢を見ているのだろうか。航生には安堵の表情をうかがうことが出来た。

(少女介護中・・・)

私が航生を担当して数時間たった。何度も戦っているフラン、美鈴、そして咲夜でさえ叶わなかった大軍勢を1人で退けている時点でこうなることは想像していた。永琳の部屋に連れていき、傷をある程度治してから寝かせたのだが、先程の安心からはうって変わり苦痛の表情が見えた。痛みというよりは呼吸困難という感じだ・・・。

(ん?呼吸困難・・・?)

「は、早く永琳読んでこないと・・・」

急いで永琳を呼びに行こうとしたら、タイミングよく永琳が来てくれた。慌てている様子の私を見て「どうしたの?」と聞いてくるが、こればかりは落ち着いていられない。

「なんか・・航生の様子が」

苦しそうに息をしているが、医療の知識は全くないのでどうしたらいいかわからない。そういう時はその手の専門家に頼むのが一番いい。

(あんた・・あったばっかりなのに嫌よ。そんな簡単にいなくならないでよ。)

私の不安は顔に出でいたようで、永琳は私の方を見て「大丈夫よ」と言ってくれた。永琳が患者(このバカ)を落ち着かせる薬を作るようなので、しばらく席を外すと言ってきた。

「私・・・何やってんだろ・・・」

いつもの私じゃない。いつもなら永琳に催促なんてしないのに今回に限ってそんなことをした。どうしてこの人のことを大切にしているのか自分でも理解できていなかった。ベッドに横たわる航生を見て落ち着いていることは到底できなかった。

私は、その時無意識に手を合わせてしまっていた。

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『君はそれでいいのか?』

ふと知らない声によって俺は意識を取り戻した。しかし、今俺が目覚めたのは全く知らない真っ白な空間だった。周りには何もない。ただひたすらにその声だけが聞こえてきた。誰のものともわからない。しかし、それにはどこか心が安らぐ要素が感じられた。

「あんたは誰なんだ?。」

俺はその虚空に向かって声を飛ばした。するとすぐに返答が返ってきた。

「うーん、そうだね・・・・」

そいつはもろに迷いを口に出して来た。どんだけ緩いんだと逆に感心してしまう。そいつはすぐに話を再開させた。

「僕は君の精神だよ。君の心、体どちらもよくわかっているよ。」

(俺の精神?なんじゃそりゃ?)

「ま、まぁ分かった。それでなんで俺はこんなとこにいるんだ?」

「君はさっき戦っていたね。その戦闘の過度な疲労のせいで君は倒れこんでしまったんだ。この世界を見ることができるのは、死ぬ直前だけなんだ。」

「つまり?」

「今君は生と死の境目にいるってことだよ。」

(え?俺今死にかけてるの?)

「そうだよ。君は今ベッドで介護されてるよ。」

死ぬ前の感覚を感じてみたいということを考えたことはあったが、まさか本当に体験する日が来るとは思ってもみなかった。

「もし君が戻りたいと思うなら今すぐに戻ることができる。」

「いや、あんたが俺の精神なら言わなくてもわかるだろ?」

すると確かにと言わんばかりの感覚が俺を襲った。俺はその感覚が俺自身のものであることにすぐに気づいた。そして『俺』は俺に向かっていった。

「そうだね。それじゃあ頑張ってみな。ぜったいどこかに道があるはずだから」

その言葉を最後に俺の意識は暗転した。

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永琳が薬を作っている間に航生の容態は安定したので、私を含む住人全員はひとまず安心といったところか・・・。なぜ航生の容態が安定したのかは不明だがそんなことはどうでもいい。無事だったのだからそこは喜ぶべきだ。どちらにしろ薬は必要なので永琳は薬づくりを再開するため作業場所に戻った。私と航生の二人になったところで私は大きくため息をついた。私はどうしても気になることが一つあった。なぜ航生は私たちを助けたのかということだ。本来ならあの時一緒に外の世界に避難しておけばこんなことにはならなかったはずなのに・・・。

「バカ・・・なんでなのよ・・・なんでこんなことしたのよ・・・。」

私は妖怪が傷つくところは何回も見てきたが人間が傷つくところはあまり、というかほとんど見たことがなかったのでこういうことへの耐性はあまりついていない。普段はあまり自分では見たことのない涙でさえこみ上げてきた。

「バカとは心外だな・・?」

「え?」

いきなりの声に思わず勢いよく顔を上げた。聞いたことのある声でこの低く成長過程を思わせる声は・・・

「いくら何でもひどすぎやしませんかね?霊夢さんやい」

そう、航生である。何事もなかったかのように話しかけてくる彼に怒りの念を抑えることができなかった。

「うるさいわよ!逆に心配して悪かったって言うの!?」

「滅相もございません」

怒ってはいるものの心の片隅では安心を覚えていた。ひと時危険域に入っていた彼が何事もなかったかのように話しかけてきてくれたのだから。健康で元気に過ごせること以外に私が何も望まない。

「心配したんだから・・。永琳が今薬を作ってきてくれるわ。外の世界で永琳がどんな扱いか知らないけどここの永琳は凄腕の医者よ。何も心配することはないわ」

外の世界の場合、永琳はやぶ医者とも呼ばれたりしているが、ここでは違うらしい。少し安心した。さっきまで顔を真っ赤に染めて怒っていた霊夢も今ではすっかり元の顔色に戻っていた。

「おつかれさま、航生・・・」

「ああ、ただいま」

 




どうだったでしょうか?もし楽しんでくれたのなら幸いです。


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いやな再開~動き出す保全計画~

「はぁ・・・つっかれた〜〜」

「そりゃそうよあんだけやったんだもの」

あの紅魔館の防衛戦から早1ヶ月がたった。その間敵も来たにはきたがフランが復活したのでそれほど疲れはしなかった。正直とても助かった。

ちなみに今何をしているのかというと、敵が来ても少なくとも身を守れるように霊夢と一緒に特訓しているところだ。紫さんがあの時の戦闘で能力が戻ったというのでまた戦える奴が増えたので俺も負担が減った。なぜ訓練をしているのかについては、この前紫に聞いた話が原因だった。

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「他世界の監視?」

「そうよこの世界でここまで被害が出るとなると、他の世界でも影響が出るかもしれない。そうなれば次元ごと崩壊する可能性がある。それを防ぐためよ。」

「断る」

「なぜかしら?」

「幻想郷のこの異変を解決するまではな」

「見るだけなのよ?」

「手を出す必要はないんだな?」

「えぇ、本当に危険な時以外はね」

「・・・はぁ、わかったよ。見るだけな。」

「ありがとう」

「だけど異変解決を優先するからこちらが安定するまではほとんど手を出さないぞ?」

「わかってるわ。頼むわよ」

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「はぁ、流石にめんどくさいぜ。」

「仕方ないわ。手伝ってもらってるのに悪いわね」

「いや別に構わないよ」

あの時の会話で別の世界まで気を配らなければいけなくなり正直負担が増えてイラついている。いいかげんにしろよBBA。

「一応俺少し先の未来までなら見えるから、何か見えたら向かえばいいんだけどね・・」

「あんたそれを先に言いなさいよ。」

そう、俺は自分の能力によって少し先の未来までなら見えるようになった。随分とチートな能力だなとは思うが仕方ない。しかし、俺はまだ違和感が抜けていなかった。

(・・・・・あの時出た俺の精神。あれはいったい・・・)

そいつを見た時から違和感を覚えてしまった。何が起こったのかわからないが気にしていたって仕方がない。・・・とはいうものの心の中は疑問で埋め尽くされていた。その考えをもとに俺はある一つの考えにたどり着いた。

(今の俺の能力は本当の俺の能力じゃない)

真剣な顔をしていたのだろうか。俺の顔をしたから霊夢がのぞいてきた。

「本当に大丈夫なの?」

「ああ、体に異常はないよ。」

「そうならいいけど・・・」

(能力の解明もしないとな・・・)

幻想郷にきて新たに目的ができた俺であった。

_________________________

航生の容態が落ち着いたので神社に帰れるようになりかえることにした。みんなには「ここにいたほうがいい」と言われたが、この幻想郷のかなめの博麗神社が壊されればここもただでは済まないので断った。

「航生だったかしら」

「なんすか永琳先生」

「容体は安定したけど気をつけなさいよ」

「はい、わかりました。ありがとうございました。」

「私に感謝するんじゃなくて霊夢に感謝なさい。ずっと見ててくれたんだから・・」

「ふぇ!?」

思わず声が裏返ってしまった。

「な、いったい何を言ってんの!?」

「いや、だって事実でしょ?少しくらいいなかったにしろほぼずっと見てたじゃない。」

「ううう・・・・」

そんなずっと見ていたつもりはなかったのだが・・・。心配していたことは確かにそうだがさすがに深い意味はない。ただただ心配だっただけなのだ。

「そうだったのか・・・。ごめんな。心配かけて・・・。それに、ありがとう。」

「え?いやいや別に謝られても困るし、お礼言われるほどのことは何もしたつもりはないんだけど・・・」

「じゃあせめて心配させたことに関しては謝らせてくれ。」

ここまで専願されるとかける言葉が見つからない。

「それじゃあそのことはこれからの生活態度で示してよね。」

「わかったよ。」

帰るときには紅魔館メンバー全員で見送ってくれた。私たちも注意勧告をして早々とその場を後にした。

_________________________

 帰った後俺たちは縁側でお茶を飲んでいた。俺が飲んでいたのを見て霊夢も飲みたくなったらしくお茶を入れて二人で飲んでいるのだ。それに何ら問題はないのだが、問題なのは・・・。

「なんでお前がここにいるんだよ・・・。」

「仕方ねぇだろ。というか俺もなんでここにいるのかわからねえんだよ。」

そう、こいつだ。こいつは龍哉。俺の同級生で腐れ縁というやつだ。小さいころから一緒で高校も同じところに入ったのだ。正直うっとうしい。その龍哉がなぜここにいるのか見当がついた。

「結界が崩壊しているからだろうな。」

そう。幻想郷は博麗大結界があることで成り立っている。その結界が崩壊を始めているのだ。

「これ急がないとやばいんじゃ・・・。それにこいつがいるということは・・・」

「ああ、察しがいいな。その通りあいつもいるぜ。」

ああ、やっぱりか・・・。

(ちなみにこいつは俗にいうリア充である。)

「久しぶりね航生。」

「やっぱり彩夏だったか。」

そうこいつだ。こいつは橋本彩夏。こいつも同じく幼馴染というやつで小さいころからずっと一緒だった。高校からは別になったのだが・・・なぜかこいつはずっと一緒に居たがるのでうっとおしい。

「なんでお前らがいるんだよ・・・?」

「私が連れてきたの。」

そういって現れたのは八雲紫である。

「紫!なんでこの子達まで連れてきたの!?」

「航生の助けになると思ったからよ」

(正直邪魔でしかない)

「俺たちそんなに邪魔か?」

「ああ、そうだな。」

その時こいつの顔に怒りが見えた気がしたがそれには目もくれない。こいつらは住む場所に困っているそうだが全く気にする必要もなかった。なぜなら紅魔館があるからだ。ほかにも地霊殿もあるのですむ場所には困らない。紫さんにこいつらを連れて行ってもらった後に再び茶飲み再開。

「全く・・・。なんであいつら連れてくるかなぁ。」

「ははは」

正直あいつらとは縁を切りたかった。過去に思い出したくない思い出があるからだ。しかしもう来てしまったものはしょうがない。一緒に生活するしかない。

大きくため息をつき、空を見つめる俺であった。




次回は割と早いと思います。


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並行世界に出る陰謀~次元を超えて~

この話は主にニセコイ要素多めです。
少し流血シーンがあります。


「おはよー一条君!」

聞きなれた声に俺、一条楽はいつも通り答える。

「おお、おはよう小野寺!」

こいつは小野寺小咲。中学のころからの同級生で同じ凡矢理高校に通っている。

「今日は千棘ちゃんは一緒じゃないの?」

いつもなら偽物の恋人を演じている桐崎千棘と一緒に登校するのだが、途中で彼女が「忘れ物した!すぐ追いつくから先行ってて!」と言われたものだから先に進んだのだがなぜか遅い。普通なら走ってくれば間に合う距離だし、歩いてきてもこの時間には学校についていてもおかしくない。正直不安に思っていたのだ。するとどたどたと走ってくる音が聞こえ、そのすぐ後にドアが開いた。

「ごめーん!遅くなったー!」

そういいながらいきなり入ってきたのは千棘だった。

「おせーぞ千棘。どこで油売ってたんだよ・・。」

「ごめんってば・・。」

いつも通りの顔にほっとしてしまう。とりあえずなにごともなくてよかった。しかし、朝起きた時から感じた違和感はいまだ残っている。気持ち悪いったらありゃしない。とにかくもう授業が始まるのでとりあえず席に着いた。授業が始まったが授業中ほぼずっと考え込んでいた。どうしても収まることのないこの違和感。どうしたものか・・・。

 

 

 

 

しばらくして授業は終わった。

「一条君。今からみんなで一緒に勉強するんだけど一緒にどう?」

小野寺から勉強に誘われ、正直うれしいと思った。しかし、今はちょうど集英組の晩御飯をしたくする時間だった。断ろうと思った。

『だめだ。今日一晩中こいつらと離れるな。』

なぜか俺の本能がそう言っている気がした。それをちょうど小野寺たちが気付いたようで俺はこのことを話した。もちろん変態扱いされた。

「みんなひどいな・・・。確かにいきなりこんなこと言われたら確かにそう思うかもしれない。でも俺の本能が警告してきていることなんだ。」

「確かに楽の本能は当たるからなぁ。」

集はわかってくれたようだ。女子たちには気持ち悪いだの、恥ずかしいだの言われていたが集の言葉で何とか信じてくれた。それぞれ親に連絡して今晩は俺のうちに泊まることになった。

 

 

「楽~これ教えてくんない?」

集が珍しく宮本ではなく俺に聞いてきた。俺がその問題を教えようとしたとき・・・。

「坊ちゃん!大変でやっせ!」

そういって入ってきたのはうちの若頭の竜だった。

「どうしたんだよ竜。」

「とにかくこっちに来てくだせぇ!」自分の部屋にTVはあるのでニュースでも見るのかと聞いたところそうだという。竜も気づいたらしく急いでつけるよう促してきた。

「1チャンネルでっせ!」

そういって俺は言われるがままTVをつける。

『こちら佐藤です!見てください!これを!』

彼女の後ろからは火が燃え盛る映像が出てきた。最近は初夏に入りかけているところなので、湿気もあるため普通の出来事だけでは火事は起こるはずはなかった。しかし、そのあとの記者の言葉で全く別の印象に変わった。

『こんな規模の大きい火災は高校を埋め尽くそうとしています!』

「お、おい・・・。ここ凡矢理じゃねえか!!」

そう火事が起きていたのは我らが凡矢理高校だったのだ。この後の騒動で俺の違和感は一挙に解放された。

『何故なのでしょうか!、って何ですかあなたは・・・!』

いきなり違うことを言い出した記者にこの場にいた全員が騒然とした。いつの間にかほかに集英組の奴らも集まっていた。

『い、いや・・・。近づかないでください・・・』

その画面の後ろからは何やら大きな日本刀を持った奴が出てきた。

『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

「みんな見るな!!」

そういって俺は小野寺と千棘の目をふさぐ。集や宮本たちはその映像を見て、口が開いたままふさがっていない。俺も正直吐きそうになった。その画面が途絶える前にカメラマンの断末魔が聞こえた。

---------------------------------

 

「航生。少しいいかしら。」

「なんだい紫さん。」

夜になってお茶を飲んでいると紫が話しかけてきた。

「この前異世界の監視の話したわよね」

「ああ、してたな・・・・・・・・・まさか!!!」

「ええ、そのまさかよ。」

こいつが前に話していた『異世界監視』。それはこの世界と並行する世界を監視するというもの。紫が言うには並行世界が崩壊すればこちらも崩壊するらしい。霊夢にも俺についていくよう頼んできた。もちろん反発した。その間。幻想郷は誰が見るのかと。もちろん普通なら博麗の巫女が監視しなければならないのだが、紫が言うには・・・。「あなたたちが行くのがこの世界の最善」らしい。紫のスキマはひと月に二回ほど未来につなげることができるらしい。未来を見てきたらしいがそこでは俺たちがその異世界に行っていたそうだ。しかし、それでも反発はやむことはなくしぶしぶだが行くことになった。

「まあ、霊夢。そう怒るなよ。」

「起こるにきまってるじゃない!何よあいつ!」

もしもこれで幻想郷の未来がいい方向へ向くならいくらでも協力しよう。

「それじゃあ準備はできたかしら?」

「まさか今から行くのか?」

「ええ、もう面倒ごとが起きてるからね」

あまりに突然の出来事に大きくため息をついてしまった。しぶしぶ準備を整えた。そこで紫に説明された。

「その世界はこちらの世界より一年遅れているわ。それと幻想郷にあいつらが入れないようにしておくから安心して。」

「わかった。じゃあ行ってくるよ。」

「ええ、行ってらっしゃい」

俺はその言葉を聞くと同時に霊夢と一緒にスキマを通って異世界に入ったのだった。




少しだったかな?また次もよろしく!


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異世界転移~始まりの日~

今回は前回より話とニセコイ要素のバランスが取れています。


先ほどのニュースを見た俺たちはみんな揃って一緒にいるべきだという結論に達した。そう、今の奴がここに来ないとも限らない。

(やべっ、今フラグ立てちまった。)

「楽。今日はお前の家に泊まることに賛成。というか賛成してここにいるんだけどな」俺は竜たちにみんなの布団を用意してもらうように頼んだ。即座に用意してくれるのでとても助かっている。俺はいつもこの時間には床に就くのだが、今日はみんなが来ているためまだ寝ない。というか、みんなさっきのニュースで眠れないのだろう。小野寺なんて目に水が溜まっている始末だ。しかし、この後さらにすごいことが起きるのだった。

 

 

ある程度勉強した俺たちはみんな風呂に入った後に晩御飯を食べようとしていた。竜たちのついでであったがそれでも作ってくれたことには感謝された。俺の部屋に料理を運び、みんなで食べ始めた。しかし、先ほどの予想通りさらにすごいことが起きてしまった。

とても大きな雑音。雷が落ちたかのような大きな音。しかもすぐそこに落ちたと見た。まさか庭に落ちたのではなかろうかとみんなで庭を見に行った。するとそこには・・。

「なるほど確かにめんどくさそうだ。」

そういって知らないやつが堂々庭に入ってきた。もちろん不法侵入だ。集英組のみんなが黙っているわけがない。しかしどこか見たことのある服装と持ち物。そしてみんなはまた口がふさがらなくなった。そいつは俺たちがさっきみていたニュースに出てきた日本刀使いだったのだ。(より正確には日本刀ではない)

「さてさて最初の獲物は誰だ?」

そういいながらその刀を持って近づいてくる。そいつは俺に向かって刀を振りかざして来た。その瞬間俺の意識は遥か彼方に吹き飛ばされてしまった。最後に聞いたのは小野寺や千棘たちの叫び声だった。

 

 

 

「やっと着いたな・・・」

「ここが紫の言っていた異世界ね。」

俺たちは紫のスキマを通り、異世界へ到着した。何が起きるかわからないが剣を常時装備しているわけにはいかなかった。そこへ・・・・・

「何今の音!?」

耳をつくようなうるさい音。それと同時に見えたまぶしい光。ちょうど雨っぽかったので最初は雷だと思っていたのだが、そのあとに見えたさらにまぶしい光でそうではないことがすぐに分かった。

「早速だな・・。」

「ええ、そうね・・」

当たり前のような会話とともに俺は霊夢を抱きかかえ空に飛び立った。毎回霊夢には反発されるが早く移動するには仕方がない。毎回それで了承してもらっている。俺たちは普通の人には認識できないスピードで飛んで行った。

 

 

さっき雷が落ちた場所へ俺たちは向かった。(本当は違う)そこは何やら大きな建物があった。大きい旅館のような建物だったが違ったようだ。そのままそちらに飛んでいくと何やら細い光。それは距離的にサーベルのように細いものであったがそこには数人の人間と何やらよくわからないやつらがいた。そいつが剣を振り一人の男が倒れこんでしまった。

「あれ、間違いなく紫の言ってたやつらだろ!」

「急ぐわよ!」

「霊夢高いところから飛び降りれるよな?今から俺は剣を持って突っ込むからお前は俺が合図だしたら手を放して飛び降りろ。」

「わ、わかったわ」

「よし、行くぞ!」

そういって俺は霊夢を手から離し、そのまま剣を持って突撃する。近づくにつれて声が聞こえてきた。

「さあ、ここを中心にこの世界は終わりだ!死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

「させるかあぁぁぁぁぁぁぁ!」

剣を構え突撃。さすがに後ろの相手に不意打ちされたため反応できなかったのだろう。とっさに聞こえた俺の声に反応できずそいつはもろに俺の攻撃を喰らった。剣を斬り、相手の首に傷をつけ戦闘不能に陥らせる。安直だが『ソードブレイク』とでも名付けようか。相手は首を抑えたまま、その場に倒れこんだ。俺はそいつを池の中に放り込んだ。しかしその瞬間になぜかそいつはポリゴンになって四散した。

「ふう、とりあえずひと段落だな・・・」

「お疲れ様」

いつも通りの会話をする俺たちに入り込んできたのは見知らぬ服を着た男性だった。

「お前は誰だ!?」

聞かれるのも無理はない。

「とりあえずその人を運びましょう。その人の部屋にでも案内してください。」

そこにいるほぼ全員に疑われたが、その人の安全のためにも案内してくれた。とりあえず布団に寝かせ、その場にその旅館らしき建物の住人と思われる少年少女4人に話をした。

「皆さん大丈夫ですか?」

とりあえず普通の会話。みんな戸惑っている様子だったがその静かな空間を破ったのは眼鏡をかけた子だった。

「とりあえず助かったわ。ありがとう。私は宮本るり。よろしく。」

「ご丁寧にどうも。」

その場にいる奴ら全員で自己紹介をした。寝ている少年は一条楽というそうだ。その少年をずっと見ている二人は小野寺小咲と桐崎千棘というらしい。その後ろにいるのは舞子集だというそうだ。

「ところで航生・・・だったっけ?・・・お前はいったい・・・」

「それに苗字は・・・?あるんじゃないの?」

正直名字のことは言いたくなかった。

「ごめん・・・。俺苗字があるにはあるんだが昔いろいろあって・・・」

「思い出したくないらしいの。ごめんねみんな・・・」

何とか霊夢がフォローしてくれたので助かった。過去にいろいろあって名字の事はあまり思い出したくない。とにかく状況説明をしようと思ったのだが霊夢に止められた。

(あんた!そんなこと言っても信じてもらえないのわかってるでしょう!?)

しかたなく、俺は親がいない住む場所もない。さらには学校にも行っていないということを伝えた。(嘘設定)すると舞子というやつが「だったらうちくれば?」といってきた。

「あんた何言ってるの?普通に考えたら無理でしょ・・・」

「ごもっともです。宮本さん・・・」

「別に編入試験受ければ入れるはずでしょ?」

「確かにそうだけど大丈夫なの?」

「わかんない・・・」

「じゃあ明日編入試験受けるわw」

「「はあぁぁぁぁぁ!?」」

---------------------------------

「な、なにいってるの!?あんた馬鹿じゃないの!?」

「バカじゃないです」

「そういう意味で言ってない!」

千棘さんにいろいろ罵倒された。やめて!俺のライフはもうゼロよ!

「確かに受けられるけどさ・・・」

「いや!俺はやる!」

「まあそこまで言うなら止めないわ。でも少なからず明日は無理よ」

なぜだ・・・・。

「少なくともあさってね」

そういわれ膝から足をついてしまう。しかたなく俺は申込書を書こうとした。しかし問題発生。住所がないのだ。中学は行ってはいたので入れないことはないのだが・・・。すると、この『集英組』の一代目が出てきた。

「何やら困っているそうじゃないか」

「こ、こんばんは・・・。」

「なに。そんなに緊張することはない。それで住所がなくて困っていると?それだったらうちの住所を書けばいい。保護者はわしがなろう。」

何を言っているんだこの人は・・・。こんな見ず知らずの人の保護者だって?

「ですけど・・・」

「なに、遠慮はいらん。息子と友達の命を救ってくれた恩だよ・・・」

「・・・そ、それじゃあお言葉に甘えて・・・」

____________というわけで俺たちは凡矢理を受けることになりました。




なんか急展開だったかな?


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再新入~新たにできる存在価値~

この話は平和ですよ。


二日前、編入試験の申し込みをした。そして今日はそのそのしけ試験当日である。ほぼ全くノー勉強で試験を受けるのは初めてだ。今日は凡矢理は授業があるので別の会館で受けることになった。霊夢はこちらの世界の事はあまり知らないので少し不安らしい。

(まさかニセコイの世界だったとは驚きだよ)

なにやら今回は突然であったため試験は選択問題。マークシート方式で行われるそうだ。

「3、2、1、・・・はじめ!」

合図とともに俺たちはペンを走らせた。ひたすらにマークしていく。正直霊夢は運のかかわる勝負で負けることはないので、合格できるだろう。ちなみに俺はすべて真面目に解いている。しかし何ら心配することはなく試験は終わった。

「結果は明日には出るだろう。そしたらあさってから学校にきて構わない。」

試験官の人の話を聞き、その日はそのまま家に帰った。

(ちなみに今俺たちは一条家で厄介になっている。住む家がないことを伝えた時に住んでもいいという許可をもらったのだ)

その日は楽や集たちと町の案内をしてもらう予定になっている。しかし、今はまだ授業中であり帰ってこない。しかたなく俺たちはそのまま家に帰った。

 

 

三時間ほどして楽が帰ってきた。迎えに来てくれたのだ。当初ぼ予定通り町の探索に出かけた。商店街や登下校に使う道町の名所などだった。そして最後に小野寺が和菓子屋らしいので行かせてもらった。外からの見た目も中の見た目もなんともきれいで博麗神社の倉庫の数万倍レベルだった。なぜか霊夢ににらまれたがオールスルー。すべてを見終わった俺はそのまま家に帰った。。霊夢は男ばっかのところに泊まるのは嫌だというので小野寺の家に泊まっている。今日は試験でも特に危ないところはなく、そのあとも問題なく過ごせたのでよし。今日はそのまま床に就こうと風呂に入り、そしてそのまま床に就いた。

 

『やあ、久しぶり。元気にしてたかい?』

「俺の意識か。確かに一か月間見てなかったな。」

なぜか普通に会話ができるようになった。しばらく話していなかったというのに不思議なものだ。

『どうやら力を使いこなせているみたいだね。』

「おかげさまでね。ところで今日はどうした。」

『今日は君の力についてだ。』

俺の力。本当の力は『アニメやゲームの技・能力を使う』というものではない。そんな気がしたのだ。

「そのことか・・・。本当の能力っていったい・・・」

『君の能力はとても強大だ。いわばこの世界のバランスの一角を担う存在だよ』

俺の能力の正体はまだわかっていないそうだ。

『より正確には今の能力にプラスしてもう一つあるということなんだけどね』

「つまり俺は能力を二つ持っていると」

『そういうことだよ。まぁ、これからの生活でまた来るはずだ。その時君の力は大いに役立つはずさ。頑張りな・・・』

_______________________

 

 

気が付くと俺は目が覚めていた。横にはまだ楽が寝ている。俺は元の服装から着替えて朝日を眺めようと外に出た。玄関のドアを開けると目の前にいたのは・・・。

「おはよう航生。」

「霊夢か・・・」

霊夢はいつもこんな時間に起きているので何も驚くことはなかった。いつも通りの話し方である。

「確か今日には来るのよね?」

「ああ、だからポストも見ようと思ったんだ」

さすがにこの時間にきているわけはないと思い、ポストの中に手を突っ込んだ。すると何やら大きい封筒が二つ入っていた。しかも、その封筒には凡矢理からのものであった。

「まじか!こんな時間にきてるなんて・・・」

二人そろって封筒を開いた。その中には二枚の紙が入っていた。

『博麗霊夢(航生)さん。本校に合格したことを通知させていただきます。教科書等については初投稿時に渡させていただきます。もし来れるならこれをもらった日から来ていただいて構いません。』

「「・・・・・・・・・・・・・・・」」

二人して唖然とした。まさか二人とも合格するなんて思ってなかった。

「ねえ、航生・・・。」

「ああ、俺も今同じこと考えてる・・・」

「「・・・・・・やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」

その日から俺たちは凡矢理高校へ入学することになった。

_____________________

 

俺はおとといの夜よくわからないやつらに気絶させられた。しかし次の日には登校できるくらいまでに回復し昨日は学校に行った。そして今日にいたるわけだ。今日も学校にいつも通り登校した。航生はとてもニヤついた顔をして俺を送り出した。正直ムカッと来た。学校に着くといつも通りあいつらが言ってくる。

「おはよう楽(ダーリン)(一条君)!」

「ああ、おはようみんな!」

俺はいつも通りあいさつを交わし席に着いた。

「あの二人どうなったんだろうね。」

「さあな、でも心配しても仕方ないだろ」

先生が来るまで俺たちは話をしていると、タイミングよく先生が来た。

「みんなー座れー。」

「キタキタ。きょーこちゃーん!」

「はーい舞子ー。座れー。」

「今日はみんなに新しい仲間を紹介するぞー。鶫。とかも加えてまた新しいが仲良くしろよー。じゃあ入ってこーい」

「なんかあいつらすごく地獄を見るような目してたんだけど・・・」

「「ところがどっこい!!」」

「・・・・・・え?」

「受かったんだよ!」

そういって入ってきたのは航生と霊夢だった。




ニセコイの世界に霊夢と一緒に行きたいなぁ。


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林間学校~一日目~

ニセコイ本作とは設定がだいぶ異なります。
まあ、妄想小説なんで当たり前ですよね?


林間学校。それは生徒たちが勉強でのつらい時間を忘れ、思う存分はしゃぎ回れる最高のイベントである。航生たちがあの日入学してきたが、その日の男子はうるさかった。

確かに霊夢の服装は普通に考えれば刺激的だろう。その日の二人はとても疲れていた。さて時は今に戻り、俺、一条楽はバスに乗り込んだ。そう乗り込むまではよかった。しかし、問題はここからだった。バスに乗り込み座ったのだが小野寺と千棘に挟まれ、さらにそのさらに奥から宮本と鶫に押されて正直きつい。同じバスの一つ手前には航生と霊夢が座っている。そいつらを含めた全員が俺たちを見てくるので違和感ありまくり。カーブを曲がるときは宮本が押してくるし、そのたびに男子からみられるしで落ち着いていられなかった。約一時間半ほどして俺たちはその泊まる部屋に就いた。その部屋には6人ずつで止まる予定だったのだが、部屋数が足りず予約の期限が切れてしまったため、今回は8人で泊まることになった。少し前仲良くなったばっかなのによくここまで仲良くなったなと思ってしまうほどだった。みんなで部屋に入り、荷物をそれぞれ置いた後・・・。

「時間もあるし、トランプやらね?最下位の奴には罰ゲーム付きで」

「どんな罰ゲームにするの?」

「今日の女子のp」グシャ!

「何色のp」ドカッ!

「どんなb」バキッ!

「は・・・初恋のエピソードとか・・・」

「うーん・・・それならいいか・・」

「「「えええええええええええええええ!?」」」

そして結局その罰ゲームでそれが嫌な奴は今好きなやつの話ということになった。

_________そして時は経ち・・・。

「ふう。何とか助かったな・・・」

現在残っているのは俺と千棘のみであった。最後の1枚を取ろうとしたとき・・。

「コラーーーーーーー!集合時間過ぎてんだ!早く集合!」

「は、はいいいい!」

「よかったな千棘。」

そして俺は手に持っていたカードを床に放り投げ集合場所へ向かった。

__________________

今日はなんか晩御飯は自分たちで作るらしく、いろいろ調味料や食材といったものが渡された。この仕事も班ごとで行うことになった。ちなみに一番おいしいものを作ったグループには次の日やらなければいけない仕事を先生たちがすべてやるという商品が出された。そしてみんなで晩御飯づくりが始まった。何を作ろうという話になった。渡された食材の内容で思いつく料理はカレーだった。しかし、この材料でカレーを作るのは鈍策だったのでみんなで悩んだ結果俺が担当することになった。

「おいおいさすがに俺だけじゃ無理だって楽も手伝ってくれるよな?」

「ああ、さすがに手伝わないときついだろ・・・」

そして結局俺たち二人で作ることになった。霊夢は「私は食べる専門」とか言っているし、宮本さんは日ごろの行いとかいうし、途中で楽さんが疲れて座り込むという事態に陥った。結果残ったのは俺だけ。そのあとは俺だけで料理を進めていった。

______二時間経過

「や、やっとできたあああああああああ!」

「お疲れ様」

途中から俺一人でやっていただけでなく手際の良さにもみんなに驚かれてしまった。俺が作ったのはとんかつ定食。味噌や豚肉まであったからこそ作れた一品だ。(当たり前だが人数分ある)それを先生に持って行ったところ大絶賛。そこにいた先生全員を食リポさせることができた。

「ごちそうさまー!おいしかった!」

「それはそれはよかったです」

どうやら皆さんご満悦のようです。食った後は暇だったんでトランプをした。昼間は途中で終わってしまったので最初からやり直した。そした結果・・・。

「な、なぜなんだ・・・」

「残ったのは俺と楽、集の男子だけだった。そして時は進み俺は何とか抜けることができた。そしてそしてさらに時間は進み、結果集がジョーカーを残して負けた。

「仕方ない。俺が言い出したんだから責任はとるぞ。といってもみんなだいたい想像つくでしょ?」

「ああ、きょーこちゃんか」

「そうだよ。」

なんて会話をしているうちにどんどん時間は進んでいき、あっという間に八時。風呂に入る時間になった。楽と一緒にふろに入ろうと思ったのだが後から行くことにした。しかし、なぜか電話がかかってきたそうで楽は電話に出に行った。楽が猛スピードで温泉に向かい俺もそのあとについていった。男子風呂に入ったはずなのに楽がいない。サウナにいるんだと思い全く気にしなかった。

風呂から出た後、楽が千棘に顔を真っ赤にして問い詰められていたのはまあ同じ話。

_________________

風呂から出た後俺は自室のベランダに座って空を眺めていた。より正確には自室のテーブルを窓側に寄せお茶を飲んでいた。するとちょうど一杯目のお茶を飲み終わったところで霊夢が風呂から出て戻ってきた。

「こんなとこにいたのねみんな下で遊んでるのに・・・」

「ああ、霊夢か?お前こそ一緒に遊んで来ればよかったのに・・・」

「あんたを呼びに来たのよ」

「それはどうも」

月がきれいだな・・・。ついつい見とれてしまう。夜にベランダの花が月の光で輝き、鳥が夜空を飛び、風の音が耳を通る。花鳥風月である。とても美しいものだから見とれてしまった。そして、いつの間にか霊夢も隣に座って月を見ていた。お茶を飲みながら月を見るとやはり落ち着く。

「航生・・・。今回はありがとね・・・」

「なんだよ急に改まって・・・」

「あなたは全く関係ないのに私たちが連れてきて、しかもこの前なんて疲労で倒してしまった。ごめんなさい・・・。」

「何も気にすることはないよ自分の意志でついてきたんだから」

「ありがとう・・・」

しばらくしんみりした会話を続け、お茶を入れてもらおうと霊夢に頼もうとした。

「霊夢。ちょっとお茶を・・・・」

「zzz」

(寝てるーーーー!?そんな眠かったのか!?まあ確かにいつもより遅いから当然だろうな・・・)

「後で布団に運んどくか・・・。」

俺は寝ている霊夢をとりあえず壁によらせていった。

「おやすみ・・・。霊夢。」




次話はちょっとだけいつもより長くなると思います。


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林間学校~二日目~笑いの中に隠れた愛情~

妄想+深夜テンションで書いた小説です


本日は林間学校二日目。二日目も一日目と変わらず色々しごとがあるはずだったのだが昨日航生と一緒に作ったとんかつ定食が大好評で朝ご飯に食べたいというやつが出てきた。さすがに無理だと思ったのだが泊まっている旅館(?)の料理人が「ぜひ作って欲しい」というものだから仕方なく作ることにした。朝早めに起きていたのが幸いし、全員が起きてくる前に作り終わることができた。

「皆さん!朝から重い料理ですが作ってくれた人に感謝して食べるように!」

朝から女子全員(俺たちが一緒だった奴ら)が(特にるり・小野寺・霊夢・千棘)妙に騒がしい。まぁ何かあったのだろう。気にせず自分の分も作ろうとした。しかしここで問題発生。

「材料たりねぇぇぇぇぇ ぇぇぇぇ!」

俺たちの分を作る材料がないことが判明。どうするか話し合ったのだが結果俺が食べて航生が食べないことになった。食堂のシェフに「パンとスープさえあればいい」というものだから心配したが何事もなかった。食べている途中で俺たちに先生が言ってきた。

「みなさん。昨日の晩御飯大賞を発表するよー!昨日の優勝は一条君たちのグループ!おめでとう。約束通り仕事は任せてね。ほんとに人手が足りないときは頼むかもしれないけど・・・。」

・・・というわけで暇です。何かしら仕事があるのに何もないのはやはり暇だ。今日の一番のイベントである夜の肝試し大会もまだ時間がある。あと数時間何をしたものか・・・。トランプは飽きたし、かといってポーカーをする気にもならない。あと定番のパーティーゲームといえば・・・。

「じゃあさ、王様ゲームはどうだ?」

王様ゲームとはくじを引き王様になっ人が番号を指定し命令を聞くというものだ。この禁断のゲームをやりたくない理由が一つだけあった。それは・・・。

「ひょえええええええええええい!」

「やっぱりか・・・」

そうこの変態が暴走しかねない。危険すぎた。しかし、反対したのは俺だけで7:1で数負けしてしまった。

「さぁー諸君始めようじゃないか!」

「「「「「「「「王様だーれだ!!!」」」」」」」」

 

「おー、私だ・・・それじゃあ・・・」

「『1番が4番の肩をもむ』で」

「あ、俺(私)1(4)番だ・・・」

あたったのはそれぞれ航生と霊夢。慣れているのかとても手つきがいい。そして何やら日ごろの恨みを込めている感じがする。最後には航生が肩を抑えて倒れこむ始末だ。

「・・・王様だーれだ・・・」

「よっし!俺だ!じゃあ2、3、5が今まで見た中で一番言いたくないことを言う」

王様は航生。あたったのはそれぞれるり・千棘・俺の三人。やっているうちに時間は過ぎ気づけば4時間なんてあっという間だった。

「時間も時間だし、これで最後にしようか。」

「「「「「「「「「王様だーれだ!」」」」」」」」

「あたしね・・・」

あたったのは宮本。ここにいる人全員がぞっとした。もしも、集に当たったらと思ったらしい。

「それじゃあ・・・3と8、2と6が1分間顔を、まあ鼻先を8㎝くらいまで近づける。」

予想通りの命令だった。そして自分の番号を見ると・・・。

「俺3番じゃねえか・・・・それで8番は誰だ・・・?]

「最悪・・・俺2番じゃん。それで6番だれだ・・・?」

「「あっ、私8(6)番だ・・・・。」」

「「・・・・」」

(は?え?え?な、なんで・・・!?お、小野寺と・・・!?まじででで!?)

(え、い、一条君と・・・・。これ下手したらキ、キ・・・)

「はぁ・・霊夢か・・・」

「何よ・・・不満だって言うの?」

「滅相もございません」

なんか前にも聞いた気がする会話だが気のせいだろう。

「やればいいんだろやれば・・・・」

そして俺たち二人より先に航生たちが始めていた。

~一分後~

(うん。無理(^^♪))

終わった二人の顔は何ともないように見えたがそんなことはなく、霊夢のほうは顔を真っ赤にしていた。

「お前一気に顔赤くなったなwww」

「うるさい!もう言わないで恥ずかしい!」

そしてバシバシ叩かれている奴を一人発見したが目もくれなかった。そして、次は俺たちの番になった。

~一分後~

「「はぁ~・・・」」

「お疲れ(・∀・)ニヤニヤ」

みんなからのニヤニヤ顔が無償にイラついたが俺にとってはご褒美だったので大丈夫。

ピ~ンポ~ン

『館内に残っている生徒にお知らせします。本日のメイン、肝試し大会を開始します。急ぎ外に出てきなさい。なお、服装は自由です。まぁみんな体育着かな?』

そして結局体育着でみんな外に出た。しかし航生たちは持っていないため私服だったそうだ。今回の肝試しは男女ペアで、しかも手をつないでいかないといけないらしい。(小野寺とペアになれないかな・・・・)

~小野寺サイド~

「私割と肝試し苦手なんだけど・・・」

「大丈夫でしょう」

そしてくじ抽選

「わ、私12番だった・・。」

「みんな~小咲は12番だよ~」

「ちょっとるりちゃん!?」

~楽サイド~

くじ引き----------------------

「あ、当たっちまった。」

「小野寺・・。俺12番だった・・・。」

「「・・・・・・」」

(よっしゃー!ktkr)

~小野寺サイド~

「小咲・・・いっそのこと今日告白すれば・・・?」

「ちょっと何言ってるの?」

「だってこの前失敗したんだから・・・」

「ううう・・・・・」

~一条サイド~

『12番のペアの方どうぞ~』

「い、行こうか小野寺・・・」

「う、うん・・・」

しばらく歩いて俺たちは何やらよくわからない場所に着いた。さびれた神社。人がいる気配はないが、地味にきれいで月一程度のペースで掃除をしていることがうかがえた。

「とまって!」

後ろから大きな叫び声どうやら俺たちに向かって言っているようだ。

「それ以上先に行ったら迷うわよ・・・」

そこには何やら意外な人物が一人ずつ。大丈夫そうなのに全然大丈夫ではない巫女を一名発見した。航生たちだな・・・。

「あ、ああ。わかった。ありがとう。」

~20分ほど経過~

「はぁ~やっと終わった~。」

「一条君お疲れ様」

「お疲れさん」

俺たち二人は無事ゴールにたどり着くことができた。やはり航生たちはすでに到着していたようだ。何やらけんかしているようにも見えるが大丈夫そうだ。(どっからその自信は来るんだ・・・)

刻一刻と時間が迫っている。終わった人は自分の部屋に戻って晩御飯が用意できるまで待機しろという指示が出ていたので俺たちはそのまま部屋に戻った。

~小野寺サイド~

「はぁ、いよいよか・・・」

私は先ほどるりちゃんに「告白しろ」といわれた。さすがに早いし、一条君がどう思ってくれているかわからないのに告白なんてできない、と反論したら「大丈夫」の一点張りだった。

「あんた、じゃあ一条君が好きじゃないの・・?」

「え?えっと・・・。そりゃあ、す、好きだけど・・・」

「じゃあ大丈夫よ。万が一フラれても避けることはされないわ。私が保証する」

「・・・わ、わかった。私、頑張ってみるよ!」

「うんうん、その意気だ。」

ということがあった。部屋に戻れば誰もいないだろうからそこで告白しよう。私はそう心に決めた。

「い、一条君」

「ん?どうした小野寺」

「部屋に戻ったらちょっと話があるんだけどいい?」

「ああ、かまわないよ。まず部屋に行こうか。」

「う、うん」

(はぁ~!恥ずかしい!私変じゃないかな!?)

~部屋にて~

「それで話って何だ小野寺・・・」

「あ、あのね一条君」

(ああ~!恥ずかしすぎる!でも、言うって決めたんだから!ここ逃したら言えなくなっちゃう!)

「この前学校で夕方話したの覚えてる?」

「ああ、あれか。覚えてるよ。野球ボール飛んできたやつでしょ?」

「うん。それで私があの時言おうとしてたこと。言っときたくて・・・」

「なるほどな。それで俺を呼んだんだ?」

「う、うん。正直もう言えなくなるかもしれないから言いたかったの・・・」

「(ま、まさか・・・)」

「私・・・。一条君・・・・。君のことが・・・・」

「好きです・・・!」

~楽サイド~

(え?えええええええええええええええ!?)

「え?ちょ・・・え?」

「・・・・」

小野寺は黙り込んだままだ。(え?小野寺って俺のこと好きなの?え?そうなの?マジで・・・?)

「中学の末のころから好きだった。何度も何度も邪魔されて言えなかったから今言ったの。私は一条君のこと好きなの・・・私と付き合ってください!」

(聞き間違いじゃなかった!)

「ひとつきいていい?」

「うん、いいよ」

正直これだけは聞いておきたかった。確かに俺も小野寺のことが好きだが小野寺の不幸になることはしたくない。

「本当に俺でいいのか・・・・?」

「私から頼んでるんだけど・・・」

ごもっとも。これは正直に言うべきだな・・・。

「ありがとう!まさか先に言われるとは思ってなかったよ。俺も今言おうとしてたんだよ。」

「それじゃあ・・・!」

「ああ、これからもよろしくな!小野寺!」

「うん!ありがとう!」

数年間望んでいた夢がかなってうれしかった。正直な目からはうれし涙を流してしまうほどだった。その涙を小野寺に拭かれてしまう醜態をさらしてしまったが、今はそんなことは考えてられなかった。嬉しい、ただそれだけだった。

 

しばらくして俺たちはベランダの椅子に座っていた。何パックか残っていたお茶を飲みながら月を眺めていた。

「ふふww私たちさっき両想いだってわかったのに初心だよねwww」

「そうだなwwだって初めてだもんなwww」

「ごもっともだよ一条君」

同じ椅子(ベンチ)に座って星を眺めるなんて初めてだった。二人でお茶を飲み終わり、部屋の中でくつろごうと横になった。ちょうど運よく小野寺とは布団が隣だったのでうれしい。

「本当にありがとな小野寺」

「こっちのセリフだよ一条君」

なんともいつも通りとは言えない会話を繰り広げること10分。やはり横になったからだろう。なんだか眠くなってきた。

「なんだか眠くなってきちゃったね・・・」

「俺もだよ・・・」

「zzzzz」

「って!もう寝てる!」

気づくと小野寺はすでに目を閉じていた。

「・・・おやすみ・・・後で起こすよ・・・」

「zzz」

そして俺も再び横になった。それから次の日の朝まで俺たちの記憶は存在しない。

_________________

「ふう・・疲れた。あいつらなんでこねぇんだよ・・・。」

俺は霊夢とペアを組んで肝試しをやった後ほかの奴らがすぐにゴールしたものだから部屋に戻る暇もなかった。そして点呼をしていたら、楽たちがいないことに気づいた先生が俺たち二人に楽たちを呼んでくるようお願いしてきたのだ。

「お~いお前らぁ、晩御飯だ・・・ぞ・・・・・」

そこには二人そろって幸せそうな寝顔で寝ている楽と小野寺を発見した。

「これは起こすのはかわいそうね・・・。」

「ああ、そうだな。寝かしといてやろう・・・」

「なんか見てると眠くなるな・・・。」

「霊夢お茶入れてくんない・・・?」

「ええ、いいわよ。私も少し飲みたいし・・・」

「あんがとさん」

俺たちは壁の端によりお茶をたしなんだ。

「しばらくしたら行こう」

「zzzz」

「まじかwww」

なぜか霊夢まで寝てしまった。これじゃあミイラ取りがミイラになってるじゃないか・・・。これも仕方ないので寝かしておくことにした。見てると眠くなる・・。

「俺も五分だけ寝よう・・・」

そういって俺は目を閉じた。その後俺に次の日の朝までの記憶はない。

~千棘サイド~

「あいつら遅い!なんでこんな遅いの・・・よ・・・」

(ああなるほど・・理解した・・・)

「そのままにしておくか・・・」

私はそのまま部屋を出て食堂へ向かった。これは話のネタにできるぞ・・・!小咲の顔には幸せの表情があふれるばかりに出ていたのだった。




楽こさ好きにはいい感じかな?
ちなみに私も楽こさです!


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林間学校最終日

今回は長くはないです。


「ん?もう朝か・・・」

(なんか昨日だかも同じこと言った気がするな・・・)

幻想郷に行ってからの生活習慣通り、日の出の時間に目を覚ます予定だったのにいつもより遅い起床となってしまった。いつもならもっと早く起きれるのになぜだろう。おかしい・・・。

「霊夢~もう朝だ・・・ぞ・・・」

驚くのも無理はないだろうな。なぜならこんな格好で寝ていれば・・・。

「ふぇ・・?ああ、航生か・・・。おはよ」

「うん、まずその服装をどうにかしろ。」

「・・・・・・」

霊夢は自分の体に目をやった。寝るときに和風の寝巻きなのは何ら問題はないのだが、ここまでになるのは相当寝相が悪くないとこうはならない。前にも同じことがあった気がする・・・。

「・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!」

「はい。見ないから早く着替えろ」

「//////」

まただ。また顔を真っ赤にして手で顔を隠す。各自に前にもあった(デジャブ)。まあいいのだが・・・。とりあえず霊夢には着替えてもらい、いつも通りのあの服装になってもらった。あれが一番霊夢に似合っている。

「ご、ごめんなさいね・・・。それにしても私なんでこんなところで寝てたの?」

「それは俺にもわからんよ・・・」

まあ、寝落ちしてしまったということくらいは想像できるのだが・・・。そんなことはさておき、俺たちはいつも通りベランダでお茶を飲もうとした。しかしベランダの椅子に一人、眼鏡をかけたやつが一人座っていた。

「おお、集じゃん。もう起きてたんだな・・・」

「おはようさん」

「昨日俺たちどんな感じだった?」

「ああ、昨日の夜お前が来ない楽たちを迎えに行ったんだけどな?帰ってこないから千棘に見に行ってもらったんだよ。そしたらお前らもそこの壁に寄りかかって寝てたんだよ。」

やっぱりか。予想通りだった。自分では迎えに行ったところまでは覚えているのにその先が思い出せない。やはり寝てしまっていたのだ。

「ごめんな。寝ちまって。」

「いや、別に仕方ないよ。責めるつもりはないさ」

「ありがと」

~二時間後~

「おはよう楽」

「おはよう集」

などとすごく当たり前の会話をする楽たちだった。集は昨日のことは水に流すそうだ。千棘にはるりからいったらしく「まあ、ダーリンが本当に好きなら邪魔しないわ。そのほうが幸せでしょう」といっていたらしい。るりには俺たちのことはばれていたらしいが何も言わないそうだ。ただより高い物はない。

朝ご飯の時間になり、俺たちは食堂へ向かった。今日もバイキング形式だった。霊夢は久しぶりに豪華なものを食べたといわんばかりの食べっぷり。先生に太鼓判を押されたほどだった。時間はあっという間に過ぎ、出立に時間になった。二日間だったがとても楽しかった。

「最後に先生よりお話があります。」

キョウコ先生が何かを話すのは久しぶりだった。

「今回の事のうちいろいろ思い出ができたやつもいるだろう。今から町のほうに行って自由時間を作る。お土産なり買いたいものなりいろいろ買ってこい‼」

主に女子からは歓声が上がる。確かにショッピングをしたい気持ちはわかる。しかし、男子にとっては地獄である。特に女子が一緒のグループは・・・。

「よっしゃあ!じゃあ行くわよ付き合え男子!」

「「「はぁ~・・・」」」

まあ小野寺と楽の二人には天国かもしれないんだけど集は地獄だし、この世界のことをあまり知らない霊夢は何をしでかすかわからない。俺は正直そっちが心配だ。仕方ないので楽たちに許可とって一緒についていくことにした。るりには反対されたが「くっつけるのに協力する」という条件でついていくのを許可された。まあ許可されなかったら千棘とかについていったのだが・・・。俺たちはそれぞれバラバラに行動しようといった。集は別の男子と一緒に回ることにし、るりと千棘は普通に回る。俺たちと楽たちは一緒に回ることにした。

「よし。じゃあ行こう」

散策開始

「じゃあまずはどこ見て回ろうか?」

「あ、じゃあ小野寺に頼みたいことがあるんだけど・・・」

「いいよ~。何すればいいの?」

「霊夢の替えの服を霊夢と一緒に選んできてくれないか?さすがに年中これはまずいでしょ・・・」

「そうだね・・・。でもせっかくだからみんなで行こうよ!」

「「はい?」」

俺と楽は同じことを考えただろう。『これ絶対長くなるやつやん』と。確かに女子の買い物は同級生がいる場合さらに長くなる。男子にとって最大の地獄。・・・ではない。付き合っているのなら男子からすれば天国だ。___というわけで買い物開始。正直どんなもの来てもいいとは思うが自分的にはそのままが一番いい。しかし、この世界と幻想郷では大きく変化が出るだろうからここの気候に合わせるべきだろう。・・・というわけでそろそろ夏なので夏用の服を買ってもらうことにした。楽曰く、「小野寺は服選びはすごい」らしいので心配はいらないだろう。おみやげはそれぞれ買っておいたらしいので時間を割く必要はない。

~二時間後~

何件か店をめぐり、もうそろそろお昼時。昼はみんなで食べる予定だったのだがどの店でもぶち当たる大きな問題。それは席だ。八人も一気に座れる席がある店など聞いたことがない。どこで食べようかと考えていると安定のあそこに決まった。それは・・・。

「いらっしゃいませ~。ご注文がお決まりのはこちらへどうぞ~」

そう、マ〇ドナ〇ドである。一般的だが一番楽でみんな座れるのでいい。味は変わらないので、毎日食べていると飽きてしまうがこうやって時々食べるのがいいのだ。それぞれ頼んだが楽たちはデートしているというのにこんなところでお昼食べて大丈夫なのだろうか・・。決めたなら口出しはしないのだが。

「そういえばよ楽」

「どした?」

「小咲にも聞きたいんだけど」

「なに?霊夢ちゃん」

「「よかったね両想いで」」

「「・・・・・・・・・・・・!?!?!?!?!?!?」

昨日の夜告白しているのは誰も見ていないがこの二人の前と現在の差を見れば一目瞭然である。気づいているのは俺たちだけではないはずだ。しかし、俺の世界ではこいつらは付き合っていない。ssとかではそうだが原作では違うのだ。俺はこのカップリングを望んでいたのだ。最高だぜ!

 

昼飯を食い終わりまたまた散策。集合時間は駅に6時だ。バスで学校に着くまでにだいたい1時間かかるそうだ。それまであと4時間弱。このまま何もしないのは暇の権化だ。(言葉の意味絶対違うwww)しかし、男女で別れて回るのは全然楽しくない(特にるりたちが)。なので4人で回ることにした。この辺りには誰も来たことはないが、地図もあるし迷うことはないだろう。ここにいる全員が同じ考えを持たなければ楽しめない。思い出になるようなことをしようと考えたのだが、何をするのか決まっていない。とりあえずぶらぶら回ろう。

~20分後~

「どうしてこうなった・・・」

そう。男子二人からすればこう思うのも無理はない。なぜなら、俺たち二人は男だ。女子のファッションに口を出していい身分ではない。なぜこういうことを言うのかは言うまでもないだろう。先ほど小野寺が「男子から見てどうなのかな」というものだから、ついていく羽目になったのだ。くそ・・・。楽しめているのならいいのだが・・・。

『お客様にお知らせします。ただいま震度6の地震が起こりました。建物が倒壊する恐れがありますので皆さま建物の外に避難してください。繰り返します。ただいま・・・・』

「「「「まじかよ・・・」」」」

女子がこんな言葉使うのはらしくないが、今はそんなこと言っている状況ではない。まあ、俺の場合結界があるから防げるのだがここで発動したら本当に倒壊してしまう。それはまずい。すると俺に一本の電話がかかってきた。

『航生君!?大丈夫!?』

「はい。大丈夫です。地震が起きたのは知ってますがどうしましたか?」

『いま、君たち以外・・・。あ、舞子と宮本さんもか・・。君たち以外全員一度集合しているわ。一度駅じゃなくてもいいから広い場所。それか避難する場所があるなら向かいなさい!いいわね?』

「あ、先生!」

『ツー、ツー、ツー』

「通話切れた・・・。」

「まあいいや。霊夢と楽たちはとりあえず駅に迎え。遠回りでもいい。多分みんなそこに向かっているはずだ。」

「わかった。気をつけてね?」

「ああ、少ししたら向かうよ」

そういって俺は霊夢たちを逃がした。会計は済ませてあるので盗んだことにはならないから安心。しかし、今はそんなことを心配している暇はない。さっきの地震。霊夢は気づいていないようだが俺にはわかった。あれは自然に起きたものじゃなく意図的に起こされたものだと。この地震に雷みたいなやつが落ちた時に感じた殺気のようなものを感じた。全く・・・。修学旅行くらい楽しませろっての・・・・。

「よっしゃぁ!ケリをつけてやる!どっからでもかかってこい!」

戦闘態勢万全。戦闘開始!




なんかグダグダですみません・・・。


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番外編ー人物紹介

東方は知ってても自作キャラは知らないと思うので
一応キャラ設定を紹介しときます


航生

物語の主人公(=俺、自分)

[能力]

ありとあらゆるすべてのものから干渉されない程度の能力

(ちなみに12話の時点では自覚なし)

[能力の説明]

その名の通りありとあらゆるものから干渉を受けない

次元の境界(二次元と三次元)

相手の技や能力 などなど

[使用例]

アニメの技・能力の使用。

次元を超える転移(アニメからアニメなど)

[能力の弱点]

物理干渉は能力で防げない

博麗霊夢

ほとんどの東方Projectの作品の主人公

[仕事]

博麗の巫女

幻想郷の管理を主に行う

博麗大結界を管理・修復を繰り返す。異変が起これば解決するのが仕事の一つ。

[能力]

空を飛ぶ程度の能力

 

 

神城龍哉

[能力]

ありとあらゆる物理法則を操る程度の能力

[人物紹介]

主人公の同級生。幼馴染であり、仲は悪くない。腐れ縁に近い。同じく同級生の彩夏と一応の恋人であり、よく一緒にいるところを見かける。こいつは三年間ニセコイの世界に行く前に幻想入りする。

 

橋本彩夏

[能力]

復元する程度の能力

能力の説明

物をもとの状態に戻す程度の能力。傷を治したり、壊れたものを治す頃ができる。しかし、死んだ人間を復活させることはできず主には直すのが主。

[人物紹介]

主人公の同級生。幼馴染であるが、龍哉より仲は良くない。龍哉の恋人であり、どんな時でも龍哉を最優先する人望の厚い人。同じく龍哉と幻想入りする。

 

 

~今後登場させる予定のキャラや土地~

 

二ブリス

[説明]

主人公たちが管理する世界のうちの一つ。幻想郷と同じで、魔法研究が盛んであり、並行世界。機械があるわけではないので現代世界よりは不便。転移魔法で別の世界に行くことが可能。しかし、幻想郷に入ることはできていない(試したものがいない)幻想郷と同じ作られた世界である。

 

 

二ブリス・アストロン

[説明]

本来世界に名前はないが二ブリスはこの人が命名した。正確にはこの人が二ブリスを作った。いわば二ブリスの創造神。人望は厚いが、身勝手な行動をよくする。下の位のものをこき使うなど人望がなくなるようなことをよくする。それでも実力は確かなものである。

不老不死の薬を飲み、老いて死ぬことはなくなった。しかし、魔力の消費燃費は年々悪くなっていて最近は新人に追い抜かれてしまうことがしばしば。

主に得意とする光学魔法、あとは全属性魔法を操ることができる。

その魔法で主人公たちの前に立ちはだかる。

体力が少ないので持久戦で勝てれば誰でも勝つことができてしまう。

しかし油断はできない




新しくキャラが出るときまたこうして紹介します。
それではまた。


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激化~死の境を乗り越えた巫女~

今回はほかのよりやばいかもです(そんなにグロくはない)。


「さてどうしたものか・・」

先ほどの人工地震で霊夢たちを逃がし、敵を待ち構えていた。俺はさっきいたデパートから出て屋上に行った。すると案の定空にいた。まあ、逃げろと言われているのに入るバカはいないが・・・。なんとなくだが声が聞こえた。

「ふん・・・やっと出てきたな。しかし、のこのこと出てきていると飛んで火にいる夏の虫。ここでひねりつぶしてやる。」

「あいにく捻り潰されるわけにはいかんなぁ。」

「ふん・・・」

『死符「デス・スター」』

「はぁ!?」

思わず叫んでしまう。(スペルカードを使ってくるとは・・・。しかし、殺しに来るならスペル宣言しなくても・・・。まあいいや。)黒く光る禍々しい弾幕が降り注ぐ。しかし、見た目だけなら魔理沙のスターダストレヴァリエにそっくりだ。しかし、問題は・・・・。

「密度すごすぎんだろ!!」

そうこの密度は目の前まで接近してきた弾幕結界と同じくらいの密度普通に考えてよけるのは難しい。目の前に来た弾幕を右へ左へとよけていくがどんどん追い詰められていった。そして目の前にその弾幕が接近。知らずのうちに来ていた弾幕を避けられず思わずガードしてしまう。剣に弾幕が当たった瞬間爆発した。

「おあぁ!!」

50M後方へ吹き飛ばされる。そしていきなり出てきた弾幕を避けることはできなかった。

「くっ・・・」

『禁忌「レーヴァテイン」!』

目の前に突如として出現した炎の剣によって目の前の弾幕は全て消し去られた。今のスペルカード。これは誰のか言うまでもないだろう。

「大丈夫!?お兄ちゃん!」

そう。こいつだ。

フランドール・スカーレット。正体は吸血鬼。見た目に反して年齢495歳。

「なんでフランがこんなとこにいるんだ!?」

「紫に送ってもらったの!この世界で変な妖気を感じたらしくて・・・」

なるほどそういうことか・・・。

「とりあえず助かったぜフラン。さて、問題は・・・・」

「吸血鬼か・・・。弱い奴がのこのこと・・・。しかし、私の事ばかり気にしていいのかな?」

「どういう・・・」

「お兄ちゃん!今すぐ霊夢のところに行って!霊夢が危ない!」

「まじか!わかった!でも・・・フラン一人でこいつを相手するには荷が重いんじゃ・・・」

「いいから!」

「わ、わかった。気をつけろよ」

「任せて!」

 

_________________

 

「禁忌『フォーオブアカインド』!」

「死海『暗黒の雨』」

私の分身からどんどん弾幕が飛び出す。それをあの人はスペカで全て消し去っていく。ずっと破壊しようとしているのに破壊できない。なんでかはすぐに検討が付いた。

「あなた・・・。もしかして能力持ち?」

「よく気が付いたな。そうだ。俺は破壊されたものを治す程度の能力。お前とは相性が悪いんだ。」

「そう・・・。なら・・・禁忌『レーヴァテイン」」

私のレーヴァテインが相手に襲い掛かるが効いている気配が全くない。そろそろ決着をつけようか。

「そろそろ終わらせてやる!」

「それじゃあ私も次で最後にしてあげるわ」

「禁断『スターボウブレイク』!」

「消滅『過去への回帰』」

私の弾幕と相手の弾幕が交差する。威力・弾速・密度が全く同じ。この条件で勝負を決めるのは技の威力。どれくらいの威力があるか。それが勝敗を分ける。しかし火力勝負なら私は負けることはない。唯一負けた覚えがあるのは霊夢、魔理沙。そしてお姉さまだけ。

「そんな・・・俺の技が・・・。うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「ふう、やっと片付いた・・・。お兄ちゃんは大丈夫かな・・・?」

 

_________________

「くっ!がはっ・・・」

「霊夢ちゃん!」

いきなりわけのわからないやつに襲われた私はみんなを何とか逃がそうと必死に戦っていた。しかし、相手は技なり能力なり色々使える。私では歯が立つはずはないが、時間稼ぎくらいはしようとして戦った。しかし、結果は言った通り全く効かずほぼ防戦一方だった。しかも、先ほどの攻撃でちょうど急所に入りまともに動けなくなってしまった。私は体に力が入らずそのまま地面へ倒れこんでしまった。

「ふっ・・博麗の巫女といえど能力なしではただの雑魚か・・・。本気を出して損したわ。」

「うう・・・」

そしてさらに体がほとんど動けない状況で首をつかまれる。引き離そうとするが、それには力が足りなさすぎる。そして本当に危ない状況でこの女は私を投げ飛ばした。首を絞められ、急所を突かれ体が動かない状況で私は何とか吹き飛ばされたということだけ理解した。

「やめろよ!なんでこんなことを・・・」

「雑魚は黙ってな!」

「ぐは!」

「一条君!」

この女が投げつけた大きめの石が楽を直撃。たまらず楽は顔を抑え倒れこむ。もし私の本当の力が出せるなら助けられてたかもしれないのに・・・。

「(まさか、ここまで動けないなんて・・・。本当に体に力が入らないわ・・・。それに・・・・ダメ・・・・意識・・・が・・・)」

意識がもうろうとし始めた。この状態では戦うことはできず、立つことすらままならない。そんな状況の私をこの女は殴り、蹴り、投げ飛ばし・・・。体がボロボロになるまで痛めつけた。ほんの少しだが右腕に痛みを感じる。しかし骨折しているという感覚ではない。

「(ご・・・め・・ん。航生・・・・・・。も・・・う・・・・ダメ・・・・・。わ・・・た・・・・・・し・・・・も・・・・・う)」

何とか保っていた意識ももう限界だった。少しだけ見える外の世界。目の前には敵。もう戦うことはできない。

「死ね。絶望のうちに。」

「(さよなら・・・・・・航生・・・・・・。)」

「そんなこと・・・させねえよ!」

「(こう・・・き・・・・)」

最後に見た航生を最後に私は何も見えなくなった。

__________________

「無茶しやがって・・・。」

「バカな!お前はあいつが止めていたはずだ!」

全速力で飛んできて体力は減ったが、目の前の敵を見る。どうやら戦闘でこうなったらしい。

「航生君!危ない!」

小咲の声に俺は短刀が振りかぶられていることに気づく。それを難なくエリュシデータで弾く。なぜか怒りがこみあげてきて、自分を抑えられなくなった。

「おい・・・てめぇ・・・。さんざん俺のダチを痛めつけてくれたなぁ?」

「くっ。だが私を倒しても・・・」

「死ねよゴミ」

そして俺は持っていた剣を振りかぶり、そいつの心臓に突き刺した。

「な!?」

目の前で見てた集が唖然としている。俺が剣を出したことより、こいつを殺したことに驚いているのだ。しかし、後悔はしていない。もともとこうなる覚悟でここに来たのだ。しかし先生たちは逃げていたようでその場にいたのは俺の班のメンバーだけだった。しかし、集は普通に俺に話しかけてきた。

「ありがとな。助けてくれて・・・。」

「別に・・・」

(気まずい・・・)

「とりあえず霊夢を運ぶから急ごうこの近くに病院は・・・?」

「凡矢理にある場所しか知らないわね。」

「それでもいいや!そこに行こう!」

救急車に霊夢を乗せ、俺は同伴でついていくことにした。集たちは事情説明に先生たちのところに向かってもらった。十分ほどで凡矢理に到着した。道がすいていたおかげだろう。治療にも時間はかからずすぐにベッドで寝かせられた。そして俺はその時にそこの医者に相談された。

「この子は相当危険な状態です。相当な数の殴られた跡がありました。逆によく耐えられたなと言いたいです。」

「大丈夫なんですか・・・?霊夢は・・・」

「臓器に目立った外傷は見られませんでした。脳波にも異常はないです。成人女性よりほんの少しずれがありますが、命に関わるほどのものでもありませんのでそこは大丈夫なのですが・・・。」

「ですが・・・?」

「意識が戻る気配が全くありません。このままだと恐らく・・・・」

「そこから先は!!何を言おうとしたんだよ!なぁ!!」

「この子はこのままだと恐らく・・・」

 

 

「死んでしまうでしょう・・・」

 

 

__________________

「・・・・・んんん・・・・・」

「ここは・・・?」

『やっと起きたの?』

「あんた誰よ・・・それにここどこ?」

私は虚空に向かって声を飛ばす。その言葉にはすぐに返事が返ってきた。

『ここは生と死の狭間。わかりやすくいうと、あなた死にかけている。』

「そうか・・・わたし・・・さっき・・・」

自分が何をしていたのか全て思い出した。さんざんボロボロにされていたことに。しかし、私はなぜまだ意識があるのだろう。もう死んでいたはずなのに・・・。

『さっきではないよ。もうあの日から現実時間で3日は経過している。』

そんなに時間がたったのか・・・。

『私がここに現れた理由は、君にある選択をさせるためだ。』

「選択?」

『君は今何を望む?選択ではないけど答えてほしい。』

今私が望むこと?そんなもの最初から決まっている。元居た場所に戻ることだ。それ以外に臨むことはない。もしそれが無理ならせめて最後に・・・。

「航生と一緒にいたかった・・・。」

『君にもまた困難があるだろう。だけど心配はいらない。彼が助けになってくれるはずさ。』

「そんな関係じゃないんだけど・・・」

『わかってるよ。それじゃあ頑張って。博麗の巫女・・・』

「ええ・・・」

その会話を最後に私の視界は真っ暗になった。

__________________

霊夢の脳波に異常がしてからもう三日。一度は死ぬかと思ったが死ななくてほっとした。霊夢を凡矢理の病院に運んできてから、もう1週間がたった。しかし、一向に目覚める気配はなかった。ご飯はコンビニで済ませたが、疲労は限界だった。ちゃんと寝ているはずなのに・・・。気疲れだろうか・・・。

「もうすぐ5時か・・・」

今はもう朝の5時になろうとしていた。いつも通りの時間に起きた。起きるたびに目に入る霊夢。昨日は医者に早く寝るよう言われたが、寝付けず・・・寝たのは確か1時くらいだった。ちなみに医者には昨日の夜、こういわれた。

『状態は安定してきたので大丈夫です。しかし、少なくとも今月中は入院生活でしょう。いつ起きるかわかりませんが、起きてある程度動けるようになるまで時間はかかります。もし体に異常があればリハビリをさせるつもりです』

「早く目を覚ましてくれよ・・・・。霊夢・・・・!」

目がにじんできた。その後2分間俺は涙をぬぐい続けた。こんなに泣いたのは久しぶりだ。必死になって目に力を入れるが涙は出てきて止まらなかった。なぜこんなに泣くのか。それは俺にもわからない。

「もう・・・。そんなに泣いたら、ベッドびしょぬれになるじゃない・・・」

聞き覚えのある声に俺は顔を素早く上げる。そこにはいつになくすがすがしい顔をした霊夢がいた。

「うわぁぁぁぁぁぁ!」

「そんな泣かないでって言ってるでしょ?」

言われた通り涙をぬぐって言うべき言葉を口にした。

「お帰り・・・。霊夢。」

「ただいま・・・。航生・・・」




言った通りでしょう?
まあ、少し感動要素を入れてみました。


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進歩~ちょっとした平和~

ありがとうございます!次の話では少し・・・。


「寝ちゃったわよ・・・・」

ついさっき私は目を覚まし、航生と再会を果たした。そして話しているときに突然航生が体を布団に倒した。よく見ると目の下にクマができている。疲れていたのだろう。月曜日はみんなで遊びに行く予定だったのに行けなくなったのは私のせい。私がこんなことにならなければみんなで行けたのに・・・。

「はあ・・・それで・・・。どうしてフランがここにいるのかしら?」

「実は・・・」

そのあとフランからいろいろと話を聞いた。とてつもない妖気を感じた紫が加勢させるために連れてきたのだそうだ。あのスキマも割と仕事するんだな・・・。話によると博麗大結界は崩壊しているはずなのにこの世界とかとつながっていないのは、別の何かが押さえ込んでいるからであるらしくその力の源は何かわからない。などといろいろ話しているうちにもう午前7時だ。フランは変えるつもりだというが正直苦戦を強いられるだろう。今回だってフランが時間を稼いでくれたおかげで航生は私を助けにこれたのだ。いくら航生でもこんな状態を長持ちはさせられない。だからこそあと一人でも戦力が欲しい。

「なんだ・・・・?もう朝か・・・?」

そんな話をしているときに航生が目を覚ました。なんと良くも悪くもないタイミングだろう。そして、なんだこの透き通った気分は・・・。まるで自分の心の闇をすべて外に出したような・・・。まあ、気にしたって仕方がない。とりあえず家に帰ろう。しかし、体が動かない・・・。なんで・・・?

「そりゃそうだよ。あんだけやられてればさすがに体が思考に追いつかないさ。」

昨日の痛みはとんでもなく楽になったが、疲労だけは抜け切れていないようだ。ここは航生の言う通り安静にしておくべきか・・・。

「そうだよ、霊夢。今倒れたら心配するのは私たちだけじゃないんだから・・・。ほかにも心配してくれている人はいるんだよ?」

私はドアのほうを見ると話声が聞こえた。

「俺だ。楽だけど・・・入っていいか?」

「どうぞ~」

そこには同じ班だったみんながいた。友達としてみてくれているのはどれだけ幸せなのだろう。

その後は先生や同じクラスの子。その子たちの親も来てくれた。一番びっくりしたのは・・・。

「博麗霊夢さんですね?私、日本安全保安局局長、板垣一といいます。政府の系列です。今回は本当にありがとうございました。」

そう、この板垣と名乗る男の人は何やら国で起きた騒動をすべて記録している場所で働いているらしい。そんなこんなで話は続きいろいろ来ていた見舞いも今日は来なくなった。小咲たちが帰ったのは夜の6時ころでちょうどこちらも晩御飯の時間だった。航生はご飯買ってくるといって近くのコンビニに向かった。そして・・。

「随分とひどい有様ね?霊夢・・・」

「紫じゃない・・・。こんなところで何してるのよ?」

「フランを回収しに来たの。さすがに吸血鬼がここにいるのはまずいでしょう?」

確かにその通りだ。フランだけは非現実的すぎる。

「じゃあ、またね霊夢。」

「ええ。またねフラン。」

そういって二人はまた行ってしまった。これ以上迷惑はかけられない。今回だって航生とフランに迷惑をかけた。私は今は無力な女。といってもこれでも強いほうだと思うのだが今回の異変に限って言えば違う。私は無力な人間の子供。私なんて・・・。

「そんな自分を過小評価することはないだろ?」

「航生・・・」

毎度毎度こんな感じのことを言う。正直聞き飽きた。逆になぜそこまでして私をかばうのかもわからない。有難迷惑だ。

「ほっといてよ・・・私のことなんか・・・」

自分が弱い。それは誰もが抱える悩み。だから誰かが物申していいものではない。そして私だってそう思う時もある。それが今だ。

「ほっとけるかよ。今だってこうして傷ついて動けない状態なのに・・・」

「ほっといてって言ってるでしょ!」

(しまった・・・。つい・・・。)

いつもの癖が表に出てしまった。昔からそうでよくこうなる。思ったことをそのまま口にする。いくら覚妖怪の前でもこんなにならないのに・・・。なんで・・・。なんでなのよ・・・。

「・・・そうか・・・・。わかった。何かあったら連絡くれこれ渡しとくから。」

そういって渡されたのは携帯電話という道具だ。霖之助さんから聞いたことがあるが、これで遠距離の相手とも話せるらしい。しかし、それを受け取った後も航生の言葉には答えず、航生が部屋を出るまで下を向いたままだった。

____________________________________________

「はぁ・・・」

元のように元気になったのはうれしいがここまで言われると俺のメンタルがもたない。何が彼女を苦しめたのだろうか。親離れしたい子供のように余計なおせっかいだったのだろうか。そういう感じはしなかった。どちらかというと・・・。

「苦しみか・・・。」

自分の感じた苦しみ。感じさせてしまった後悔からくる悲しみ。それぞれだ。おそらく霊夢の場合、後悔からの苦しみだろう。確かに人につらい思いをさせるのは堪える。俺も耐えられない。俺は確かにいろいろと傷ついた。でも俺はこれっぽっちも心が苦しいとは思わない。みんなのためになるならなんだってする。そう決めたのだ。

「霊夢が気にすることないのに・・・・。」

病室を出て、俺は近くの公園のベンチに座っていた。ずっと空を見つめていた。夜の空に光る星々。そして一番の輝きを放つ月。きれいだが何か物足りない。心残りがある。

「ホントあなたって鈍感よね・・・」

そういって俺の目の前に現れたのは、千棘だった。

「あんた・・・。あの言葉だけが真実じゃないことぐらいわかってるんじゃないの?」

それは知っている。しかし、なぜ霊夢があんなことを言ったのか。それに千棘は気づいてほしいのだろう。そんなことは気づいている。しかし、この問題は俺が解決すべきもの。

「まあ、それでも俺が解決すべきことだから任せてほしい」

「そこまでいうなら・・・」

俺はその日は病院のバルコニーで一夜を過ごした。眠いが眠れない。霊夢の部屋に戻りたくても気まずくて戻れない。しかし、夜は戻らなければ風邪をひく。とりあえず俺は病室に戻った。病室の扉を開けようとすると・・・。

「さすがにちょっと・・・」

「いいえ。絶対大丈夫だと思うけど・・・。」

そう聞こえてきた。何を話しているのか内容まではわからないが、できればすぐに入りたい。

「入ってきたらどう?航生・・・」

「ばれてたのか・・・。」

俺の存在を気付いていたそうだ。なぜかわからないが千棘がまた病室に来ていた。どうしよう・・・。

「じゃあ、あとは二人に任せるわ。お休み・・・」

そういって千棘は足早に病室を出て行った。そして病室には俺たち二人が取り残された。何かと見つめたまま言葉を交わそうとしない・・・。その静寂を打ち破ったのは霊夢だった。

「あの・・・さっきはごめんなさいね・・・・」

なんか素直に言ってきたのは気持ち悪いが気持ちだけは受け取っておく。

「別に大丈夫だよ。気にしてないさ。それでも謝る理由ないよ。」

布団の前の椅子に座ると、霊夢が起き上がってきた。

「おいおい・・・大丈夫なのか?」

「心配しないで・・・」

無理に起きている感じがする。そんな必死にならなくてもいいのに・・・。少し力を入れるたびに体が震えている。もう見てられない・・・。

「ったく・・・」

そのまま霊夢の体を支えて座らせる。

「ふぇ!?え?ちょ・・・ちょっと・・・」

「大丈夫か?」

「//////」

「とりあえず今日は寝ろ・・・。明日からは外に出れるらしいからな・・・。」

「わ、わかったわ・・・。」

そのまま霊夢は横になると思ったら、支えている状況のまま倒れこんでしまった。

「ちょ!?おまっ・・・」

「少しものお礼よ・・・。有難く受け取りなさい。」

顔が赤面するが何とか精神を保つことができた。

「ありがとう。・・・・って・・・あれ・・・?」

そして俺の中にいる霊夢の顔に幸せの表情が浮かんだ。手を放そうとすると顔をしかめる。仕方なくこのまま布団に寝かせた。このままの体制だと一緒に寝てしまう。やばいわ・・・。大変だ。

「おやすみ霊夢・・・」

 




頑張りました!


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苦戦

題名のセンスがないのは気にしないでください。
お願いします。


霊夢が退院してから三日。俺たちはまたいつものように学校に行った。退院したといっても未だに霊夢には後遺症が残っており、週一もしくはその症状が出てすぐに病院に行くことになっている。霊夢にこの世界のお金は渡していないのでその時は俺もついていくように先生に言われた。今のところ症状が出てないが、そもそも後遺症が残っているのかどうかさえ怪しい。まだ可能性なのだ。霊夢の回復力は超人並みで、リハビリなしでここまで歩けるようになった。まあ、それでも不安定なので支えてやるのだが・・・。

今日は授業が終わり、今日は帰ろうとしたとき・・・。

「よし!じゃあ今日は霊夢の退院祝いでどっかで食うか!」

「そうだな。それがいいでしょう。でもどこに行くのかは霊夢が決めることよ?」

「そうだな。霊夢、どこに行きたい?」

しかし、すぐに反応が返ってこなかった。思考に体がついていかないことはあったがそれは3週間たてば治ると先生は言っていた。その症状が出たのだとみんな理解した。しかし、それには反応が遅すぎる。普通じゃない。2分経ったのに全く返答がない。歩けているから大丈夫だと、この時確信した俺たち全員がばかだった。

「・・・・・・・」ドサッ

「霊夢!」

何故かその場に倒れこんだ霊夢。その顔は青ざめ、小刻みに震えている。そこにいる奴ら全員がすぐに理解した。これが後遺症なのだと。すぐに病院に連れて行くと病室で審問しているときに霊夢が目を覚ました。先生曰く、慣れない動きを行った結果だという。慣れない動き。それは病み上がりに普通の人と同じ生活をしたからだ。いくら何でも今の状態の霊夢にはハードすぎたのだ。

そんなこんなで話は終わり、帰る直前に「少しでも変化があればすぐに休ませなさい」という注意を受けた。とりあえず霊夢が厄介になっている小野寺の家に連れて行き、小野寺にこのことを説明した。すると小野寺は「任せて!」といって霊夢を部屋に連れて行った。そして俺はいつも通り家に戻った。俺が飯も食い終わり、楽と一緒に明日のことについて話しているとき電話がかかってきた。霊夢からの電話だった。

『ごめんねこんな夜に』

「大丈夫だよ。それでどうした?」

『あなたちょっと外見てくれない?』

「ああ・・・わかった」

霊夢に言われた通りに窓を開け、外を見た。すると空に流れ星が流れていた。ちょうどその時にニュース速報で流星が流れているというニュースが出ていた。

「すげぇ~」

『私も最近見てなかったからびっくりしちゃったわ。というか幻想郷だとあまり見えないのよね・・・』

「仕方ない。それでなんで電話なんだ?」

「気分よ」

「さいですか」

「それで、別の話になるんだけど・・・」

「どうした?」

「随分先になるんだけどさ。夏祭り一緒に行かない?」

唐突だった。まあ、行きたいのなら大賛成だ。英気を養うのにはちょうどいい。もちろんOKした。それまでに何も起こらなければいいのだが・・・。正直なところ少しだけ違うがシチュエーションとしては告白シーンとかにありそうだった。あと一か月。何も起こらないのが一番だが、何があっても無事幻想郷に帰る。その電話の時俺はそう決意したのだった。

__________________

航生に送ってもらって小咲の家に着いた私は、一緒に部屋に行った。最初に小咲の父母にはいろいろ言われたが材料の買い物等を小咲と手伝うので快くOKしてくれた。小咲の部屋に着いた後二人で話をしていた。

「ところで霊夢ちゃん」

「どうしたの小咲」

「いっそのこと付き合っちゃえば・・・?」

「ふぇ!?」

声が裏返ってしまった。小咲からそういった言葉が出てくるとは思わなかった。それでも小咲には話してもいいだろうかと考えているとまたさっきの流れ星の話が出てきた。ニュースでもいまだに続いている。などということを言いたいのではないのだ。私が言いたいのは、なんでいきなりそんなことを言うのかということだ。

「霊夢も顔が真っ赤になることあるんだね」

「うう~」

いじらないでくださいよ・・・。その日は二人でそのまま床に就いた。祭りまであと1か月。何をしようか考えながら私たちは目をつぶったのだった。

__________________

朝になり、俺たちは小咲と霊夢を迎えに行った。小咲は少し遅いが、霊夢はいつも通り早く起きてきて家に着いた時にはもう玄関にいた。まだ遅れる時間ではないので待っていると小咲のお母さんが「お茶でも飲んでって」というのでお言葉に甘えて家に上がらせもらった。和菓子屋のお茶はなぜかおいしく感じる。数分ほど待っていると小咲が支度を終わらせて出てきた。今日は金曜日。明日は休みなのでみんなで遊ぼうと考えた。全く予定は決まっていないのだが、それはまだいいだろう。何をしようかな・・・・。

「とりあえず学校行きましょう」

「そうだな」

俺たちは学校へ向かった。すると学校にはいつもより2分遅れて付いたが、気になったのはその教室の雰囲気だった。

「ねぇねぇ、うちのクラスの佐藤さんまだ来てなくない?」

「そうね、いつもこの時間に入るはずなのにね・・・。」

何やら登校が遅い生徒がいるようだ。学校では割と珍しいのでちょっとした騒ぎになっていたようだ。学校に着いてすぐにきょうこ先生が形相を変えてクラスに入ってきた。

「みなさん!今すぐ下校しなさい!」

「よっしゃぁーーー!・・・じゃなくてなんでですか!?」

理由はだいたい予想がついた。そうこのクラスの佐藤とかいう女子がいないことである。それだけなら下校にはしない。考えられるのは、行方不明ということだ。それも人為的な。その日は少し雨が降っていた。それが少し強くなった。もうこれは確定事項だろう・・・。そう・・・奴らだ。

「やっぱりか・・・。先生今は下校させないのが得策です」

「なんで?学校より家のほうが・・・」

「それじゃあ、外見てみればいいじゃないですか」

先生に外の状況を見せると唖然としていた。当たり前だろう。さっきは今みたいに強くなかったのに今では台風並みに強いのだ。雨が強いだけで風は強くないのが幸いだが、このまま帰らせればみんなの体に不調が生じる。

「航生・・・。あなたまさか・・・」

「そうだよ霊夢・・・・。あいつらだ・・・」

これが人為的なものなのは俺にはすぐにわかる。とりあえず先生がみんなを点呼するために体育館へ行くように伝えた。しかし、俺はその命令に背き外に向かった。するとやはり外には・・・

グルオァァァァァァ!!!

(めんどくせ~)

いつもと違うやつだがどんな奴だろうとすべて殺す。俺は剣を抜き、その鎧を着た魔獣に突っ込んでいった。

__________________

「先生!航生さんがいません!」

航生に避難するように言われた私だが、やはり心配だ。それでももし私がいたら足手まといになるだけなのでじっと待っていた。しかし、航生がいないことに気づいた学級委員が先生に言った。先生はすぐに探しに出た。しかし、私はそれを引き留めた。

「なんで止めるの!?」

「今外に出たら・・・!」

そう、外から今まで感じたことの少ない強大な妖気を感じた。それが今航生が戦っている奴の事だがこれだけでかい妖気を感じるということは、それなりに強いということだ。

グルオアァァァァ!

「何!?今の叫び声は!」

外から聞こえた叫びが気になりみんなが外を見た。

「霊夢!?何してるんだ!?だめだ!早く閉めろ!」

そんな忠告を聞いてすぐにドアを閉めようと思った。するとすぐにそこにいた鎧の魔獣はこちらを見た。そして耳を引き裂かれるような特大の咆哮。するとそいつは私たちに向かって何やら斬撃のようなものを飛ばしてきた。私はそれに殺意を感じた。明らかに私を狙っている。もしあれが追尾性じゃないなら私がよければみんなが死ぬ。それだけは避けるため、前に出た。

(みんな・・・。ありがとう・・・)

(・・・・・・・・・・・・あれ?)

今の斬撃に当たったはずなのに全く痛みがない。それどころか音だけしか感じられなかった。目を開けるとそこには・・・・

「クッソ・・・・!」

「航生!?」

目の前では結界を使い何とか斬撃波を食い止めている航生がいた。しかも、押し負けそうになっている。何とか踏ん張っているようだがどんどん私のほうに近づいている。防ぎきれていないのだ。

「霊夢!早くみんなをこの斬撃の範囲外に!」

「わかったわ!みんな!早く移動して!」

そうして一目散にみんなは逃げて行った。もし私が戦えたなら、こんなに苦戦しなかっただろうに・・・。

「そんなことは考えなくていいからお前も早く!」

「き、気を付けてね?」

「当たり前だ!」

そうして私もみんなについていった。

__________________

さっきからいろいろやっているのに全くやられる気配がない。そろそろやられてもいいころなのに・・・。なんで倒れないんだ・・・?不死身なのかこいつは・・。そんなこんな考えているうちに戦闘時間は40分を経過しようとしていた。そろそろ体力が持たない。急所を探しても、全身鎧では時間が持たないし。関節部も見たがそこには何やら反射結界のようなものが張ってあり、攻撃が聞かない。唯一倒せる可能性があるのは・・・。

「まとめて吹き飛ばすしかないか・・・。」

ああいった物理・魔法体制の強い奴を倒すにはそれを上回るエネルギーをぶつけてまとめて消滅させるしかない。確かに俺にもそういった攻撃を出せる技を知っているが、それを出すまでの隙が大きすぎて途中で妨害を食らう恐れがある。跳躍力があるので高いところでやっても当たらなければ意味がないし、再生能力が凄ければバラバラにはできない。この欠陥ばかりの作戦だがこれにかけることにした。

「一発デカいの喰らわせてやる!」

俺は相手の技をよけながら力をためていく。俺が幻想郷にいる間に考え付いたスペカ。魔理沙のマスパよりは強い自信がある。

「スペルカード発動!冥符『The end of world』!」

複数の闇の力をまとったレーザーが魔獣に向かっていく。これはよけないと確実に食らうスペカなので、当たったら即死する。普通のスペルカードルールでは使えない。が今は使っても問題はない。しかも俺はこの技で決まる自信があった。なぜならパワータイプの敵はだいたい力で押し勝とうとするためだ。このスペカは相手もエネルギーを吸収するので跳ね返せない。予想通り奴は受けてくれた。これを受けたら死は確実だ。そして静かに奴は動かなくなり、そのままそこに倒れこんだ。

「はぁ~おわったぁ~」

やはりこの後もいろいろと人が来ていろいろと聞かれたが、すべて受け流した。言っても信じないと思ったからだ。その日の帰り、俺はいつも通りみんなで下校していたのだが予想していた出来事がついに起きた。俺がいろいろやったので感謝金という名目でお金をもらっていたのだが、どう考えても高校生が普通に持てる金額ではない。よくわからん不良に絡まれてカツアゲされた。

「お~い兄ちゃん。ちょっといいか?」

「なんすか」

「金出せや!」

パシッ。

「は・・・・・?」

ドカバシグシャドサッ。

「「「・・・・・・」」」

「さあみんな帰ろうじゃないか」

「う・・・うん」

そんなわけで明日の予定を組むために家に戻ったのだった。




話グダグダですみません。


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約束の人

漫画版ニセコイの最後のシーンの小野寺版みたいな感じです


今日は土曜日。昨日みんなで遊ぶ時の予定を立てたのだ。なんか変な奴も出てきたが退けることに成功した。そして楽が起きた後小咲と霊夢を迎えに行った。3分もしないうちに二人は出てきてそのまま歩いて駅に行った。昨日俺が「楽の約束の場所に行ってみたい」といったところ、OKしてくれたので向かった。電車の中では少しだけ緊張した雰囲気が漂っていた。そんな緊張する要素がどこにあるというのだ。

時間というのは早いものであっという間にそこに着いた。そしてしばらく歩くと草原のような場所が見えてきたのでそこに向かった。そこから先は二人の領域なので俺たちは入らずに待っていることにした。何をしているのかと聞かれたが「昼寝でもしてるわ」といって俺たちはその二人を見失わない程度まで離れて野原に寝っ転がった。

「なあ・・・俺たちってさ・・・。何なのかな・・・」

「何よいきなり・・・」

「お前は生まれて以来博麗の巫女として生き、これからもそうだろ?」

霊夢は当たり前のようにうなずいた。

「それに比べて俺はもう人間を超える力を使っている。幻想郷じゃ普通じゃなくてもこういう場所とか俺の元居た場所とかでは異常なんだ・・・」

霊夢はその場に立ち上がり、俺のほうを振り向いた。

「それでも私は戦う使命がある。幻想郷のためならなんだってするわ」

この言葉には霊夢らしい強い信念を感じた。しかし、どこか迷っているような感じがした。

 

「過去に何があったのか教えてくれないか・・・?」

「ええ、いいわよ」

 

「私は昔、母さんと一緒に修行する年になった。人間だから年もとるわね。それで私が10歳のころ、お母さんが異変解決に向かったのだけど・・・」

「だけど・・・?」

「お母さんは帰ってこなかった。今もどこにいるかわからない」

「もういいよそこから先は話さなくても・・・」

それを話しているときの霊夢はとても苦しそうだった。さすがに見てられない。見たくない。そこから先の話はだいたい想像できたから、聞かないでおくことにしたのだけれど霊夢は俺の意思を読み取ったようで、意地を張って話をつづけた。

「紅霧異変の時がそうだった。私が初めて解決した大きな異変。その時はまだスペルカードシステムができたばっかで浸透しているわけではなかった。だから紅魔館に行く前に通る道ではほかにもたくさんの妖怪にあった。でもそんな奴らを私は」

「殺したくはないが、殺さなければ自分が殺される。だから殺すしかない・・か」

博麗の巫女は代々受け継がれているものなのだがいつかの代で何かしらの事件があり、結果的に霊夢の代まで続く羽目になってしまったということだ。

「私は妖怪だって生きていることを知っている。でも幻想郷では妖怪は人間を襲い人間は妖怪を退治しなければならないの。だから・・・・・」

霊夢の目にはついに涙さえも浮かんできてしまった。思い出したくない過去を思い出させてしまったのは俺の責任だ。

「それでも前よりはましになったほうなんだけどね・・・」

すぐに見抜ける。こんな作り笑いなんて何の意味もないことを霊夢は知っているはずだ。俺に弱い一面を見せたくないからだろうが、どう考えてもひどい。全然隠しきれてない。逆にばれるぞ・・・。俺も人間だから、もし俺が博麗の巫女だったら確かに妖怪を退治しただろう。退治しすぎれば、幻想郷は崩壊する。妖怪がいることで幻想郷は成り立っているのだから。

_____________それでも霊夢の顔にはまだ涙があふれるほどにたまっている。手を地面につけ、涙を流していた。考えないようにしていた昔の記憶。そういうものはいつまでたっても当事者を苦しめてしまうのだ。泣いているせいで服にはしみがついている。顔は真っ赤になっていて、髪の毛は汗で少し湿って首についている。

「霊夢・・・」

「何・・・ってちょっと!何してるのよ!」

俺は霊夢を癒すことはできない。俺の苦しみなんて霊夢からしたらたかが知れている。出来るのは苦しみをわかってやることだけだ。それしか俺にはできない。

「霊夢だけじゃない。俺だって昔は嫌なことがあった。でも俺はそれを受け止めて前に進むしかなかった。俺は霊夢みたいに強くはない。それでも今は博麗の巫女に死なれたら困るからな。頑張るんだ」

霊夢はそれを聞いて何かを感じたのか涙をぬぐっていった。

「ええ・・・!そうよ・・・ありがとう・・・航生」

「俺なんかでよければいくらでも手伝うぜ」

__________________

この草原。ここは俺が昔約束をした場所。航生たちの独断と偏見で決まってしまったことなのだが正直俺も気になっていた。あの鍵穴のカギは小野寺のものなのかもしれない。だから今日確認しよう。

「なんか久しぶりだなぁ・・・ここに来るの」

「私も少し見覚えがあるなぁ」

「・・・・小野寺・・・」

「何?一条君・・・」

正直俺はこの時聞くのをためらった。もし、小野寺が約束の人じゃなかったら今まで通り接してくれるのか不安だった。しかしここで聞かなければせっかくのチャンスを無駄にしてしまう。だから俺は今日ここで鍵について聞くことにした。

「この鍵穴・・・小野寺の鍵で開けられるのかな?」

「試してみればわかるでしょ?」

そういって小野寺は首元から一つの鍵を取り出した。この鍵がもしかしたら俺の鍵穴に入るかもしれない。前に千棘のも入ったが、その時は回そうとしたとき折れてしまった。鍵は本体が同じ大きさなら大体は鍵穴に入るはずだ。

カチ・・・・

「「!!!」

鍵穴に入った。問題はこれで回るのかどうかということ。回らなければ意味がないのだ。そして恐る恐る小野寺はそのカギを回した。

カチャッ

「「!!!!!」」

この音は鍵が開いたときによくなる音だ。小野寺はそのあと鍵をゆっくり抜いた。

「い、一条君・・・・」

「お、小野寺・・・・」

小野寺はわかりやすいのですぐわかる。小野寺の顔には感動の表情が浮かび、そして顔に涙を流していた。

「よかった・・・。一条君約束の人で・・・」

「小野寺・・・俺もだ・・・・」

俺たち二人で安心した後、時間になるまで一緒に話していたのはまた思い出の一つとなった。



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第一次幻想郷防衛戦

ネタねえ


「来るわね・・・」

「ついに終止符かしら?」

「そんなことないわ。おそらくほかにもまだ来る。でもこれがこの異変中最大の戦闘になるでしょうね」

「航生たちにも伝えといたほうがいいかしらね」

「そうね。今回は航生たちが活躍するわね・・・」

__________________

昨日、小野寺たちと遊びに行って、今日は日曜日だ。いつもなら何かと遊んだり勉強したりするのだが、なぜか今日だけそういう気になれなかった。何かが邪魔をしている。とても心地よくない嫌な予感がした。

「どうしたの?」

朝から霊夢と一緒にいる。いつもどおりといえばそうだが今日朝8時に一緒にいるのには理由があった。

~回想~

「小野寺と遊びに行ってくる?そんな大荷物もってか?」

「こないだの林間学校で王様ゲームもどきやったじゃん」

~終わり~

その王様ゲームもどきは確かトランプか何かと混ぜて勝った人は命令できるというもの。あの時千棘かるりが一位になりビリだった楽に『小咲と一緒に旅行に行く』という命令をした。普通なら昨日と今日だが、今週は月、火も休みなので遊びに行けるのだ。確か遊園地の近くの宿泊券を渡していたからそれだろう。そういうわけで楽たちが今家にいない。さて、どうしたものか。

「おはようお二人さん」

そういって背後から姿を現したのは紫だった。とても久しぶりに会う気がする。だいたい紫がいるということは面倒ごとが起こる前兆だ。俺の朝の違和感はそういうことだったのだ。

「悪いけど手伝ってもらうわよ」

そういって紫のスキマを通り幻想郷に再び足を踏み入れた。(ちなみに先生に連絡し、長くなりそうだから今週の授業には行けないかもしれないことを伝えておいたので問題なし)みんなに久しぶりに会い、とても懐かしかった。

「それで?何が起こるってんだ?」

紫と幽々子が一から説明してくれた。昔封印した幻想郷で暴れた妖怪。紫の能力が一時使えなかったことにより封印が解け脱出してしまったという。そいつがおそらく今回襲撃してくるのではないか、ということだった。というかそいつしか思いつかないそうだ。

「あなたには幻想郷でなくあの世界の護衛をしてもらうわ」

「了解」

いつ襲撃してくるかはわからないが準備はしておこう。霊夢はあちらの世界では知られているから、俺と一緒に防衛することになった。それと朗報で、龍哉たちが二人で敵の砦に乗り込みそこのボスを倒したところ魔理沙の能力が解放され戦える奴が増えたそうだ。これだけいれば幻想郷は問題ないそうだ(フラグだ)。とりあえず俺はあの世界に戻ったのだが、帰った瞬間に俺たちはびっくりした。

「そんな・・・」

スキマは近くの駅前に開いた。しかし、そこには血痕が複数存在し、銃がいくつか落ちていた。警察と戦闘になったのだ。心配になり俺たちは急いで剣を構え散策を開始した。

 

十分経っても何も見つからない。おかしい。普通なら何かしら感知するはずの俺が何も感知できないなんて。するといきなり叫び声が聞こえてきた。何かと思ってみてみると、やはりいた。少し身長がでかめな男と思われる。というかデカすぎる。明らかに奴らだと分かった。急いで向かおうとしたが、あちらにはほかにも何人か見えた。そいつらは振り向くと俺たちを見つけ、突進してきた。今回ばかりは危険なので霊夢をスキマで少し遠くに逃がした。多勢に無勢ではあるが勝たないと生きることはできない。

「ぶっ潰してやる!」

__________________

「厄介ね・・・」

今私の目の前には航生の今戦っている奴の仲間と思われるやつがいる。航生の追走から逃れてきたのだろう。そしてここに来たということは明らかに私を狙っているからだ。

 

「やばいわね・・・きつくなってきた・・・」

先ほどから戦闘しているが、やはりきつい。生半可なお札ではほとんどダメージが入らない。というかダメージが入っていない。このままでは分が悪い。さてどうしたものか・・・。

「なっ!?」

うかつだった。前を見た時、何やら結界のようなものが張られていた。そのためにつかまった。出ようにも今の私ではその結界をはがすことができない。このままでは確実にやられる。動きが封じられている状況では逃げることも避けることもできない。

「死ね・・・」

突如結界の中に入ってきた敵によって私は10M後方へ吹き飛ばされた。そこは駅の壁で見事に打ち付けられた。このタイミングで追撃してこないやつはいないだろう。

知らぬ間のうちに自分の腹には槍のようなものが刺さっていた。そのやりを抜こうとしてそのやりに触るといきなり体に電気が走った。そしていきなり体がしびれて動かなくなった。少しだけ前が見える。そこでは奴が何か投げようとしている。防ごうにも体が動かないので防ぐことができない。

「死符『デスランス』」

黒い闇の力をまとったやりが私に投げつけられる。

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

目をつぶる最後に聞こえたのは航生の絶叫だった。




次が思いつくか心配だよ全く・・・


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第一次幻想郷防衛戦part2

割とすぐに思いつきましたねww


「そんな・・・・・」

急いできたが遅かった。着く直前に霊夢の腹に槍が刺さってしまった。着いたときに霊夢の腹の槍が消え、霊夢がその場に崩れ落ちた。いつもだったら耐えられそうな攻撃も今では一撃必殺の威力を誇るものになってしまった。霊夢が倒れこんだ場所には円状に血が広がっていく。急いで霊夢に駆け寄り、傷を治した。しかし霊夢は目を覚まさず眠り込んでしまった。今回ばかりは本当に死んだと思ってしまっていた。そんな時に湧き上がってきたとても大きな感情。それは・・・。

「殺す・・・」

そう、殺意だ。何かをされた。大切な何かを失った時だけに出る感情。それで俺の心はいっぱいになった。

「死符『デスランス』」

再び霊夢に向かって投げていた槍を俺に投げつけてきた。その槍は威力こそ高いものの弱点はすぐに分かった。それは長く形を保ってられないということ。それなら俺に当たらない。

「死斬『Died End』」

闇には光。そんなものは今のこの状況では通用しない。威力が勝るのだ。こちらも闇の力をまとった斬撃波を飛ばす。そして衝突。すさまじいエネルギーが俺に伝わってきた。しかしそんなものに動じる俺ではない。

「そんな・・・俺の闇の力が通じないなんて・・・。」

そして斬撃波は直撃。真っ二つに斬れ、さして四散した。こいつらはいつもそうなのか?魔法を解除しようとしたのだが戻らなかった。そして俺はそのまま霊夢を神社に連れて行き、霊夢を横に寝かせ、横に座った時知らない声が聞こえてきた。

『タリナイ・・・マダタリナイ・・・』

__________________

「霊夢!」

声が聞こえる・・・。魔理沙の声だ・・・。さっきまで戦っていたのになんでこんなところにいるのだろう・・・。

「霊夢!!」

二回目で私は意識が覚醒し、勢いよく起き上がった。その時に魔理沙におでこをぶつけておさえる。

「大丈夫か!?」

「航生は!?」

さっきまで一緒に戦っていた航生がいなくなっていた。いつもなら一緒にいるのになぜかいなかった。魔理沙は少し言いにくそうな顔をして口を開いた。

「今幻想郷で航生が暴れている・・・。なんでかはわからん・・・」

私にはすぐに分かった。航生が使った魔法。あれはすごいパワーを出すことが可能だが下手の慣れていない状態で使うと心を病みに覆いつくされるというものだ。

「とりあえず霊夢はここで・・・」

「私も行くわ。助けないと・・・」

これだけは譲れなかった。そんな状況の航生を助けてやりたいという気持ちがとても大きかった。魔理沙は少し考えて連れて行ってくれた。

 

 

紅魔館に着くとそこは壊滅状態だった。航生が暴れたせいで壁はボロボロになっている。門の前には航生がたっているのが見えた。剣を持って立っている。そして別の獲物を探しに行こうとしたのか振り向いたところを見つかった。とんでもないスピードで突っ込んできた。明らかに私を狙っているのがよく分かった。

「霊夢!逃げろ!」

魔理沙が助けに入ろうとしてきたが疲労によって立つのがやっとだったらしくその場に膝をついてしまった。私に向かって迫ってくる航生。普通ならこのまま食らえば命はない。それでも私のすることは決まっている。それは・・・受け入れることだ。航生を受け入れれば航生を乗っ取っている闇も外にはじき出され消滅すると考えたからだ。目をつぶり手を広げ受け入れ態勢抜群の状態だ。私は航生が剣を振るより早く航生に近づき、そして、抱きしめた。

「航生・・・。目を覚まして・・・。みんなはここにいるわ・・・」

その時航生の体が明るく光り、光が消えたところから普通の航生が出てきた。戻っているのかどうかはよくわかる。先ほどの邪気が感じられないからだ。

「れ・・・い・・む・・・」

航生の目には涙が浮かび始めていた。なぜ涙が出ているのかはわからないがどんな状態でも受け入れるのだ。

「霊夢・・・」

泣きながら航生が抱きしめてきた。いつもなら殴り飛ばすところだが、今回だけは大目に見ることにした。

「おかえり・・・航生。そして・・・」

 

 

「お疲れ様・・・」

 



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休養

中間テスト終わった(いろんな意味で)


航生の闇の事件から一夜が経過した。航生は今日の朝にはいつも通り目を覚まし、朝ご飯を食べた。一方私はというと昨日腹に開けられた穴がまだ完全にふさがっていないため、そんなに激しい動きはできない。航生曰く、次に大きな戦闘が来た時が異変解決のための戦闘になるそうだ。まだ時間はあるのでゆっくり休むよう言われてしまった。何度も死にかけている私はまだ未熟だなと実感してしまった。そして今日の朝面倒だと思ったことがもう一つあった。

「霊夢よ。昨日はすごかったなww」

魔理沙が朝からバカにしてくるのだ。確かに昨日私は唯一思いついた方法で航生を助けたが正直あれをやって後悔した。航生も目の前にいるが、そこだけは鮮明に覚えているそうで恥ずかしい。私にとっては地獄でしかない。わけではない。

「魔理沙。私たちがいない間何があったのか教えてくれない?」

「わかったぜ。めんどいところは省くぜ」

そういって魔理沙は説明してくれた。何度か紅魔館に攻めてきたが龍哉と彩夏がいたおかげで追い返せたそうで、さらには二人(龍哉と彩夏)が単独で敵の拠点に、突っ込んでいって難なく帰ってきたそうで、二人が倒した奴が魔理沙の能力を封じていた術師で魔理沙の能力が使えるようになったそうだ。一応幻想郷と外の世界の時間は同機いるが、ほとんど関係ない。私がこれを気にするのはいくつか理由がある。その中で最も重要なのは壊したものの修復だ。航生と私は幻想郷の時間が体に染みついているためあちらの時間軸通りに直さないとちゃんと直せないのだ。

 

いろいろ魔理沙に説明してもらった後私は紅魔館に行こうと立ち上がったのだが。

「無理すんな。いくら博麗の巫女でも人間なんだから」

と、航生に止められてしまった。腹に穴をあけられてまだ完治していない(航生に魔法で傷はふさいでもらったが、体に染みついてしまっている疲労感だけは魔法でも直せない)ためすぐにその場に座り込んでしまった。

「俺が代わりに行ってくるから霊夢はここで・・・」

「いや。私が行くぜ」

と魔理沙が名乗りを上げた。図書館にある魔導書でどうにか戦えないか調べたいそうだ。そういうので私は航生に休むよう言い、紅魔館は魔理沙に任せた。「任された!」というと魔理沙は箒にのって飛んで行ってしまった。私と航生はその場に残された。することがない。この前までいたあの世界に戻ってもいいのだが、一応状況を確認しときたいと航生が言い出すものだから待っている。そうはいっても帰る時間を遅らせているのはこの私なのだが・・・。

「霊夢。傷は大丈夫か?」

「大丈夫よ」と軽く反応した。

「その・・・ごめん・・・」

なぜ謝る?謝る理由がどこにある?私は何をされたのだ?

「あの時すぐに駆け付けられなくて、負担をかけた上に傷つけてしまって・・・」

そんなことか・・・。私はそんなことは気にしていない。むしろ助けに来てくれて感謝しているのだ。あのままなら私は死んでいたのだから生きているだけありがたい。

「そんなこと?まだ自分のせいだと思ってるの?」

ちょっと起こり気味で行ってしまったが大丈夫だろう。

「ありがとう。霊夢」

「謝る理由はないわ。逆にこちらから言いたいわ。ありがとう」

__________________

さてと・・・どうしたものか。もうすぐ夏休みだ。その夏休みで、何をするか全く決めていない。ちなみに俺と霊夢は魔理沙に話を聞いた後、ニセコイの世界に再び足を踏み入れた。そして今学校にいるのであるが・・・。

「俺は夢でも見てるのか?」

なぜこんなことを言うのかはすぐにわかる。いつもならこの時間に来ているはずの楽と小咲がいないのだ。今はもう授業の時間であり、いててもおかしくなかった。今連れてきてもいいのだが、おそらく今は・・・。

「絶対あの二人まだホテルだよね」

「霊夢もそう思うか?実は俺もだwww」

おとといの一件で恐らく帰り道で通る駅が戦闘になったせいで電車が全面通行止めなのだろう。少し罪悪感が残ってしまう。それでもこちらからすれば死と隣り合わせなのだから許してくれるだろう。

 

 

今日は結局二人は学校に来なかった。楽の家に居候させてもらっているのだが今日はいつも以上に騒がしかった。集英組の奴らが坊ちゃん坊ちゃん言うのでうるさくて仕方がない。晩御飯を食べさせ、みんなも風呂に入ったので俺も入って寝ようと思ったら。

「やっと帰ってこれたぁ~!」

という声が聞こえた。楽が帰ってきたのだ。そういうときに誰がどうするのかは容易に想像がつくだろう。

「坊ちゃん!おかんなさいませ!」

集英組のいつもの出迎え。よくこいつらもここまでやるなと思わずにはいられないだろう。

「ごめんな。迎えに行けなくて・・・」

「いいんだよ。仕方なかったんだから」

__________________

楽が返ってきた一晩がたった。とは言いつつももうすぐ夏休みということもあってみんな気が抜け始めている。霊夢なんて抜けているというレベルではない。幻想郷にいたころと似たような生活になっている。まあ、それが霊夢の霊夢らしいところではある。カレンダーを見ると夏休みまであと2週間を切っていた。そのため授業は詰め込むに詰め込まれた。その後の二週間は何事もなく過ごすことができた。そして夏休み前最後の日。授業というようなものはなかったのでだいたい成績表とかで時間がつぶれた。全校集会は憂鬱でしかなくみんなまともに聞いていなかった。

「さぁ~みんなぁ!今日から夏休みだ!楽しめよ!でもちゃんと宿題はしろよ!」

挨拶をしてみんなが凄い勢いで教室を出た。ある人はみんなで遊ぼうといってゲーセンに行き、ある人はお泊り会だとか言って話をする女子もいたし、さらには夏休みの間丸々一緒に過ごすとか言って夜更かし宣言をしていた男子もいた。俺たち二人はいつも通りの生活習慣が抜けないのでいつも通りになりそうだった。やっぱり夏休みなら海に行くのもありかな?

「みんなぁ。ちゅうも~く」

集がいきなり話しかけてきた。その場に残っていた俺たち二人と、楽、小咲、千棘とるりが振り向いた。

「俺の知り合いが用事で行けなくなっちゃったらしいので、海の家の宿泊チケットもらいました。ここにいる人数分あります!」

最近旅行なんて言ってなかった(行く暇がなかった)のですごく楽しみだった。霊夢は海を見たことがないのでどんな反応をするのか楽しみだ。

「海行くなんて初めてだわ」

「霊夢はそうだな」

「それじゃあみんな当日は一応楽の家の前集合な!」

「なんで俺のうちの前のんだよ!?」

そんなこんなで予定も組み終わった。

__________________

「霊夢たち今頃何してんだろうな・・・」

航生が言っていた。外の世界では今は夏休みだそうだ。おそらくまた帰ってくるだろうが私は航生たちが戻ってから紅魔館の図書館で毎日毎日魔導書を読んでいる。いい魔法が思いつけば自分で試してきた。そして今までに3つほど魔法を習得することができた。ただしこれを使う日が来ないことを祈りたい。

「魔理沙~」

話しかけてきたのはフランだった。今は夕方の6時だ。もうそろそろ日もくれるのでこの時間に話しかけてくるということはだいたい想像がつく。

「弾幕ごっこしよう!」

「望むところだ!受けて立つぜ!」

「やめなさい」

そういって紫が割って入ってきた。これからお楽しみなのになんだというのだ。

「ただでさえ結界が緩んでいるんだから、弾幕ごっこでも結界は緩むのよ?」

知らなかった。ということは異変のたびに霊夢と紫は博麗大結界を直していたということだ。

「まあ、それでも異変の時はの話だけど」

確かに今は異変の真っ最中。ただでさえ結界が緩んでいるのだから紫が止めるのも無理はないだろう。

「この条件下でならやってもいいわ」

その条件とは『残機は3。スペカの枚数は2』だそうだ。しかも、そんなに頻繁にやれば結界が傷つく可能性があるから、月に2回紫の見ているところでやらなければいけない。それでもフランが暴走する可能性は抑えられるからいいか。

 

 

 

 

「「ふぅ~」」

フランとの弾幕ごっこも終わった。一応私が勝ったわけだが、物足りない。異変が解決した後で存分にやるという約束をフランとした。そして私は再び図書館に行って魔導書をあさり始めた。

__________________

夏休み初日。俺たち二人は楽の家の前で話していた。一応数日後に幻想郷に行く予定ではあるが今は今日の旅行を楽しまないと。今日は霊夢と二人で山の中腹にある有名旅館に泊まるのだ。この前の戦闘の報酬で霊夢が俺に「和風のホテルに泊まってみたい」というので旅館を取ったのだ。とても人気なので取るのに苦労したのだが何とか申し込むことができた。そして俺たちは荷物を持って駅に向かっていたのだが・・・。

「これ買ってこれ買って!!」

などと幼稚園児のようなはしゃぎようだ。みっともない。いい年してそんなことしてんじゃねえよバカ野郎。

 

駅でいろいろ買えたので電車に乗ろうと思ったのだがめんどくさい。空飛んで行ったほうが早く着くのに・・・。

「めんどくさいから空飛んでいきましょうよ」

霊夢も同じことを言い始めた。飛んでいいよね?良いに違いないな。そういうことで霊夢を箒に乗せ俺たちは空に飛び立った

 

 

旅館に到着。することもなくチェックイン。霊夢は足早に部屋に走っていった。俺もそのあとをついていった。部屋に入ってみると有名な高級旅館ということでとてもいい内装だ。これ幻想入りさせたら儲かるぞ。それでも人里の中にこれは持っていけないな。そもそも旅行なんて幻想郷の住人には疎い話だ。さてさて晩御飯まで時間があるし、外の商店街でも見てこようかな。

商店街に出てきたのだが、一応観光地でもあるのでとても賑やかだ。こんなに非血がいるところは久しぶりだった。とても楽しそうにしている人たちを見るとやはり気分はいい。霊夢も楽しんでくれているしよかったよかった。

「じゃあ航生。明日のお土産はここで買うわよ。もちろん航生のおごりで」

「はいはい」

そういうお金の話に関しては一切緩まない霊夢であった。



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終戦への動き

今回はネタがなくて短いです


俺は昨日まで霊夢と打ち上げ旅行に行っていた。帰ってきたときに皆から散々問い詰められたが何とか逃げ出すことができた。ちなみに今俺が何をしているのかというのは霊夢と魔理沙の特訓だ。少しずつ敵も強くなっていっているから自分だけは少しでも守れるようにしないと能力が使える奴らの負担が大きい。

「航生・・・ちょっといいかしら」

隙間から出てきたのは紫だった。何やら神妙な顔で俺を見ている。

「わかった。すぐ戻るから続けてて」

 

 

「それでどうしたんだよ?」

「今回の異変もしかしたらあなたが引き金かもしれないの」

「今回の異変の敵。あなたが知っているようなやつばかりじゃなかった?初めて見る反応をしていてもなんとなくで弱点を見つけてたし・・・」

確かにそうだ。今回の異変で戦っている敵の技は俺が知っている奴だ。しかし見た目までは俺は知らない。

「それは俺の能力を使ったからだ」

「いいえ。あなたが今使っている『アニメ・ゲームの技や能力を使う能力』はあなたの本当の能力じゃないわ」

紫の言っていることも一理ある。あくまで俺がそういう風に使っているだけでほかにも使い道はあるはずだ。霊夢の空を飛ぶ程度の能力の様に主に空を飛んでいるがそれは重力に縛られていないからであり、『縛られない』こと自体が能力だ。つまり、俺の能力はそういう風な定義からだいたいは推測することができる。

「それじゃあもしかして俺の能力は『二次元を司る能力』か?」

「違うわ」

違った。だがこれ以外に思いつくあてがない。

「おそらくだけどあなたの能力は『ありとあらゆるものから干渉を受けない程度の能力』だと思うわ」

その考えはなかった。しかし確かに思い当たる節がある。もろに相手のしびれ効果のある技を食らったことがあるがいつまでたってもしびれ効果は出なかった。確かにその考えが一番近いのかもしれない。ありとあらゆるものからの干渉を受けないということは俺の中の二次元と三次元の境界からの干渉を受けないということ。アニメやゲームの技を使うことにも納得がいく。

「それでさっきの話に戻るけど」

さっきの話というのは俺が異変の引き金であるかもしれないという話だ。しかし、どういう原理でそうなるのかがわからない。

「あなたの能力は『ありとあらゆるものからの干渉を受けない』。あなたが幻想入りした時一応は形になっている博麗大結界を通ってきた。確かに異変はその前から起きていたけど勢力はそれほど強くないし霊夢と魔理沙だけで解決できるくらいの異変だった。私たちが能力を使えなくなったのは人にもよるけど多くの人はあなたが幻想入りした後なの」

「つまり、川を流れる水みたいに岩をよけて流れていくように、少しだけ開いた穴から入ってきたってことか」

「そういうことね」

「おそらくだけどあなたの能力で異変を終わらせることができるかもしれない」

俺の能力で終わるならなんだってやってやる。

「今日で終わらせることができるのか?」

「ええ、おそらくできるけど・・・異変の主犯が抵抗してこないわけがない。あなたの能力なら倒せるはずよ。フランと魔理沙にも要請して・・・」

「いや、ボスは俺一人でやる」

無謀すぎる考えだが全く曲げる気はない。それに少々怒りを抑えられなくなってきているので怒りも晴らしたい。

「・・・・・わかった。じゃあ私たちは敵の幹部を相手にするわ」

「その方法はどうするの?」

「あなたの能力と私の能力で異空間を作り出すわ。その中に奴らを閉じ込めてそこで戦う。そうすれば外の世界に被害は出なくなる。ただし、そこに入ったらどちらかが死ぬまでその空間は壊れない。耐久戦になると考えたほうがいいわね」

「わかったそれじゃあさっそく始めよう。魔理沙とフランを頼むぜ」

「ええ、まかせて」

「それじゃあ俺の技を発動するから外から結界を張るんだ」

 

「無符『何もない空間』」

 

「頑張りなさいよ!」

「お互いな」

__________________

「遅いな・・・」

そう魔理沙がつぶやいた。確かにいくらなんでも遅すぎる。いったい何をしているというのだ。

「魔理沙、あなたに手伝ってほしいことがあるの」

「なんだぜ?」

「最終決戦よ・・・」

 



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絶望

即席で考えたのでちょっとつまらないかな?


戦うというのは何なのだろう。人のために戦う、自分のために戦う。様々な意味が存在する。人によってその答えは変わってくる。恐らくではあるが、ほとんどの人は『人のために戦う』ということをしないだろう。自分の望みを叶えるために戦うのだ。今までの幻想郷で起きた異変も自分が望んだ世界にするために起こしているのだから。異変解決をしてきた霊夢でさえも『迷惑だから』という理由で解決をしているのだ。すべての生き物は自分の欲望のために動くのだ。やり方は色々あるが、平和に生活してきた俺や龍哉と彩夏は知っていた。世界の残酷さ。そしてその世界がどれだけ思い通りにいかないかを。どんな残酷な世界でも必ず成功への道はあった。それを信じて突き進み夢を叶えたやつも少なくないだろう。俺たちは違った。いくら頑張っても思う通りに行かなかった奴らだ。元いた世界であった出来事すべてそうだった。上手くいくと思った人間関係も途中で崩れさり、自分や信用できる仲間を信じても結果は誰にもわからなかった。悪い方向に結果が進むことがほとんどであり、それを直す気力も失うしかなかった。そう、世界の不条理さはどうしようもならないのだ。『諦めなければ夢は叶う』とか『努力は人を裏切らない』とか色々言われてきた。確かに成功したこともあった。しかし、失敗することの方が多かった。今だってそうだった。

「ガハッ・・・!」

「やはり人間の力などその程度のものなのだな」

戦うことに価値を見いだせなかった。戦い続けることになんの得があるというのだ。自分達の思うがままに事を進ませることが出来る訳では無いのだからもう戦う意味はなかった。

「死ね・・・絶望のうちに・・・」

突如として降り注いだ弾幕を避ける気力もなく直撃。それを受け少ししてから体の力が徐々に抜けていき、動かすことが出来なくなった。

ーーーーーーーーーーーーーーー

「何とかなったわね・・・」

横では霊夢が腰に手を当てて大きく息を吐いていた。かく言う自分も魔力の大放出で体はヘトヘトだ。数人の幹部が襲いかかってきたが撃退もしくは殺すことに成功した。私たちの勝利だった。あとは航生が帰ってくるのを待つだけだ。そう、帰ってくればよかったのだ。帰ってこれれば良かったのに・・・。

「うそ・・・・だ・・・ろ・・・?」

目の前に現れたのは目をつぶり、体がピクリとも動かない航生だった。

「航生!!」

霊夢がものすごいスピードで航生に駆け寄り、耳を胸に当てていた。しばらく当てていたが離した時の霊夢の顔は凄かった。全面が絶望の表情に染まり、手をついて首を振っていた。

「嘘よ・・・嘘よね・・・航生・・・」

この台詞で私は察した。航生の心拍がなかったことを。自分の体でさえも冷えていくのが実感出来た。恐れ、怒り、それではない。今ここにいる全員が絶望に染まっている。勝てるはずだった。みんなで酒を交わす約束をした時のことを思い出してしまった。この異変が終わったらみんなで宴会をしようと決めていたのに・・・。

「心配するな。お前達もこいつと同じ場所に連れてってやるよ」

みんなの体は動いていなかった。膝をつき、下を向いているものが多かった。特に一番ヤバイ状態になっている奴がいた。

「嫌よ・・・イヤァァァァァ!!」

横では霊夢が航生を抱きしめ泣き叫んでいる。紫はいつも通りを装っている。さすが妖怪の賢者と言ったところか。それらを見た瞬間、自分の中で何かが吹っ切れたような感じがした。

「ふざけるなぁぁぁぁぁ!!!」

弾幕がゼルエルに降り注ぐがやつはそれら全てを手で弾いている。全くダメージが入っていない。ひたすらに撃ち続ける弾幕は全て反射されていた。ものによっては自分に跳ね返ってきて自分がくらってしまった。

「なんでだよ・・・なんで効かないんだよ!!」

他のみんなの弾幕もあいつには届いていなかった。みんな戦った。でも結果的には大敗。その後のみんなの顔には再び絶望が浮かび上がっていた。霊夢はいまだに航生を抱きしめて泣いている。帰ってくることの出来ない航生の死体をずっと・・・。そんな霊夢を見た私はなんとかしてやりたいとは思ったが、死者の生命回帰は神にも許されていない禁断の行為。どんな魔法でも命までは戻すことが出来ないのだ。

「・・・ス・・・」

突然霊夢が口を開いた。しかし声が低すぎてほとんど聞き取れていなかった。

「コロス!!」

霊夢の顔が絶望から一転、怒りに満ち溢れた表情に変わった。

「霊夢・・・」

「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス!」

霊力符と大幣を持って突進していく。他のみんなも負けじと突っ込んでいった。もちろん力任せの攻撃が『力』の名を冠するやつに叶うわけはなく、みんなの一斉攻撃は相殺されてしまった。特に霊夢は至近距離の瞬間火力がいちばん大きい時にあたったためダメージは大きく、後に吹き飛ばされ、他の奴らも地面とかに叩きつけられていた。

「霊夢さん・・・霊夢さん!?」

いきなり叫んだのは早苗だった。いつも通りの静かなイメージに反して大きな叫び声だった。

「魔理沙さん!霊夢さんが・・・」

まさかと思って霊夢の脈を見た。早苗も信じたくないだろう。これでは幻想郷が崩壊するのは時間の問題だった。しかしそうであっても、私に残っている最後の手段。これならこいつを倒せるかもしれない。この方法にかけてみるしかない。そう言いながら八卦炉を片手に魔力のチャージを開始した。



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終戦への道と新たなる事件

話が食い違わないようにしてるつもりです。



(そうか・・・私、死んだのね・・・)

いきなり現れた白い空間で最初に考えたこと。それは自分の死の実感だった。生き物なら何しも必ず死を迎えるのが当たり前。私もただその一つにすぎないのだ。何も怖いことは無い。自分が死ぬ。ただそれだけなのだ。

「お前はまだ死ぬべきじゃないぞ・・・」

いきなり聞こえてきた声に思わず振り向いた。聞き覚えのある少しだけトーンの高い声。聞き間違えることは絶対にない。聞いた瞬間に目には涙が浮かび始めた。泣かずにはいられない。振り向いた先にいたのは航生だった。

「なんでお前がこんなとこにいるんだよ。早く戻れ」

「でも私の心臓は・・・」

「まだ方法はある。俺の力を霊夢に託す。その力で幻想郷を俺の故郷を救ってくれ」

そんな大役をなんで私に任せるの?私の力なんてたかが知れてる。誰一人として救えない力のないただの人間にすぎない。

「頼むよ・・・お前は俺の最後の希望なんだよ。今も魔理沙がお前の死体をかばって戦ってる。みんなのためにお願いだ・・・」

私は昔魔理沙と会う前仲の良かった奴がいた。そいつとはとても小さい頃からお母さんが知り合いでよく一緒に遊んでいた。でもそいつはいつだったかは忘れてしまったがある時を境に私の前に姿を見せなくなった。そいつは最後に「また遊ぼう」と言っていた。その時の私は裏切られたと思って誰も信じなくなったことがあった。それが今でも覚えていることでためらいが生じている。自分が望む道と、自分が進まなければいけない道。どちらを選ぶべきかいつも迷っている。

「うぅ・・・」

私が出した答え。それは自分が望む道であり、他の皆も望んでいるであろう道。

「頼むぜ・・・俺たちの幻想郷を・・・」

その会話を最後に私の意識は現実に引き戻された。

ーーーーーーーーーーーーーーー

「霊夢・・・」

さっきからやられた霊夢を庇って戦っているのだがやはり難しい。いくら私であっても誰かを庇いながら何かをするのは無理に等しい。

「うわぁぁぁ!」

フランが腕を掴まれてこちらに投げられてきて衝突。一緒に地面に墜落した。そしてその場に残されたのは霊夢の死体。死んでいるはずはないとずっと思っているのだがここまで目を覚まさないとなると死んでいることを認めざるを得なかった。霊夢を無視してこちらに向かってきている奴をどう倒そうかと考えているのだが全く思いつかない。それどころかさっきから攻撃をよく喰らっているのでまともに動くことすらできない。一歩一歩近付いてくる。フランでさえも疲労で膝をついてしばらく動けなさそうな状態だ。

「これで終わりだ・・・地獄のそこへ沈め!」

周りには倒されて動けない奴らが沢山いた。私でさえももうこれ以上魔力を放出すればどうなるのか自分でもわかっていない。咄嗟にフランを庇って目をつぶった。

「霊符『夢想封印』!!」

7色に光り輝く球体がゼルエルに向かっていった。いきなり来た弾幕に咄嗟に防御したやつだったが、力に押されて後にのけぞった。

「情けない・・・あなたそれでも異変解決のプロを自称するの?」

聞き覚えのある声。この声は間違いなく霊夢のものだった。

「霊夢!」

情けないが嬉しくて涙が出てしまった。頬を流れ落ちる温度の高い液体は自分の手に落ちた。何度も何度も絶え間なく出てくる涙を拭っているがキリがない。嬉しい以外に表せる表現が出てこない。

「馬鹿な!博麗の巫女だと!?貴様はさっき・・・」

「あの程度の攻撃で私を殺そうなんて100年早いわ」

(余裕こいているけど実際死んでるんだよなぁ)

なんてことを考えているうちに霊夢はすごい速さで弾幕を打ち続けている。そして今までに見たことのない密度でもあり、完全防御型のゼルエルとは相性がいい。すべての弾幕を防げるわけはなかった。

「これで終わりよ」

「貴様如きにぃぃぃぃぃぃ!!」

「神霊『夢想封印 瞬』!」

霊夢のスペルがひと足早く発動。そして威力も絶大でどんどんゼルエルの攻撃を押し返していく。それをそばで見ていた私は霊夢が全く別人に見えた。怒りではなくアリスやパチュリーと似たような存在。しかし、霊夢は魔法を使わない。対してアリスたちは自分たちの魔力で活動に必要なエネルギーを補うことで不老不死となる。それに近しい存在になっている事が私には感じ取れた。霊夢の場合は・・・。

「もう少しちゃんと修行しとけばよかったわね・・・」

後悔しているようだが既にもう死なない体だぞお前・・・。より正確には老化による死を遂げなくなるだけであり、ほかの理由。つまり、殺されたりしない限りは死ぬことはないということなのだ。一応私もそれを目指しているが、まさか霊夢に先を越されるとは・・・。

「やったよ・・・航生」

私は霊夢が不老不死になったわけだか、また別の存在になる予感がしていた。

ーーーーーーーーーーーーーーー

「よかった。勝てたんだな・・・」

(ここで補足。さっきの霊夢の回想に出てきた俺は本物の俺である。よくある魂だけってやつだ)死の世界から現世を見る日が来るとは予想もしていなかった。今現在も見ているが外では仲間を失った悲しみ(死んだの俺だけ)から泣くやつ(二つの意味で?)と異変解決による喜びを表に出している人がいた。正直俺は後者の方が見たかった。実際はどうか知らないが俺の死で悲しんでいるのならやめてほしい。俺なんかの死でみんなの涙を見たくない。誰だってそうだろう。誰かの幸せが自分の喜びというやつは少なくないはずだ。俺もそのうちの一人だ。自分をなげうってでも自分の希望にすべてを捧げる。誇れることではないができるやつは少ないのではないだろうか。

「さてと・・・俺はお迎えを待ちますかね・・・」

『先に言っておくがいつまでたっても迎えは来ないぞ』

「誰だよ・・・」

『なんか飽きられそうだけど、一応神様だよ』

なんかもう聞き飽きた。神様はいいから早く死なせろ・・・。もう何も望むことは無い。異変はもう終わるんだ。

『まだ終わってない。君にはまだ活躍してもらわなければならない』

霊夢も心配する必要はないのだから活躍する場などあるはずがない。俺なんかより霊夢の方が力も経験もある。たしかに今回俺の力で解決させたようなものではあるが、霊夢の俺に対する影響は計り知れない程のものだった。

『君も気づいているはずだ。まだ倒せてない奴がいることを。そしてそいつが真の黒幕だということに』

確かに気づいている。紫たちが昔封印したやつが逃げてしまった。そいつは幻想郷を破滅に導くほどの力でその時の博麗の巫女が存在しない時代であったため紫とか幽々子とかが封印したのだが、そいつは今どこにいるかわからず何をしているのかもさっぱりわからない。

「そいつを倒したら本当にこの異変は解決するのか?」

『わからない。でもそいつを倒さないと君たちとあちら側の戦力差はひっくり返らないさ』

「・・・別に構わないが、わかると思うけど今俺死んでるんだぞ?仮に亡霊として出るにしても、力が回復していないこの状況でどうしろと・・・」

『言わなかったか?私は一応神様だ。私の持っている術式なら君を不老不死にすることも可能だよ。でもそれには大きな代償があることは君でもわかるだろう』

蓬莱の薬のように、不老不死を成し遂げた者は必ず自殺願望に溺れるという。しかし、死にたくても死ねない為ついには精神崩壊を起こし生きる屍となってしまうのだ。アリスたちは自分の魔力で生命力を補っているから物理的消滅を遂げることは可能だが、神様とか神霊とかは信仰心が生命エネルギーとなり、なければ消滅してしまう。諏訪子とか神奈子がいい例だ。こいつは俺に不老不死となれと言っている。それは俺を精神崩壊させるのと何ら変わりはない。

『もちろん強制はしない。その上、神様もしくは神霊としての存在に変わるにはとても長い時間を必要とする。そいつが出てくるまでに間に合うかどうかはわからない。それでももし、君がまだやりたいと思っていることがあるというのなら・・・』

もちろん俺はもう少し霊夢たちと一緒にいたいと思ってはいる。しかし、俺なんかが戻ったところでどうにもならない。現に俺はゼルエルに殺された。今目の前に生き返る手段が残されているのだから普通ならそれを選ぶだろう。不老不死は確かに望んだことがない訳では無いが、霊夢が先に死ぬのは目に見えていた。

『君のいう博麗霊夢だが、今彼女は死ねない体だよ』

「!?どういうことだよそれ!」

『彼女は君の力を受け取りゼルエルを撃破した。知っての通りゼルエルは力を冠する天使。天使とは天界に住む神の使いでもあり、神のように世界を想像する力はないものの、不老不死に近い体を持っている。ただ彼らが死ぬ条件。それは、跡形もなく消滅させられた時だけだ。霊夢の体はもう神様と同じ体なんだ。これが何を意味するかわかるかい?』

考えずともわかる。不老不死ということは、途中で死にたくなる可能性があるということ。人間として今までを過ごしてきた霊夢がいきなり輝夜と同じ体になったということに近い。霊夢がいくら精神力が強くとも、万が一目の前で誰かが殺されたら自分を責め続けて精神崩壊を起こしかねない。輝夜のように、体感感覚を操るような能力を持っているのであれば話は別だがそういう能力は持っていない。

『それでも君は彼女をそのままに出来るのか?』

出来るわけがないだろう。自殺願望に溺れる霊夢など見たくない。

「分かったよ。そこまで言うならその方法を受け入れようじゃないか」

『頼むよ・・・僕の故郷を・・・』

 



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新事実

まあまあ出来た笑


異変解決まで後一歩のところまで来た。私は、航生の能力を使って戦えるようになった。と言ってもこの前ゼルエルを倒したことにより私の能力は解放された。そのため異変解決にも普通に出かけられるようになったのだが、何かしらの違和感を私は感じていた。

「その話は私からしましょう」

そう言って目の前に姿を現したのは地獄の裁判長、四季映姫・ヤマザナドゥだ。

「博麗霊夢。あなたをは気づいていないようですが・・・」

「遠回しに言われるのは嫌いなの早めに済ませてくれる?」

「わかりました。博麗霊夢。あなたはもう人間ではないのです」

(・・・はい?なんて言った今・・・)

確か今映姫は『人間ではない』と言った。それはどういうことなのだろうか。私が人間でないというのなら一体何になったのだろうか。

「博麗霊夢。あなたも気づいているはずです。何かしらの違和感に」

たしかにここ数日体に妙な違和感を感じていた。それが何であるか私にはわかっていなかった。

「あなたは人間でない。そうするとだいたい限られてくるはずです。2つの選択肢に」

人間ではないがものに触れられる存在。それは亡霊、もしくは・・・。

「博麗神社の巫女であり、幻想郷の管理者である博麗霊夢よ。あなたは神として今を生きているのです」

予想通りだった。博麗神社に住まう神を見ることが出来ているのは巫女もしくは同じ神様だけ。しかし、普通巫女は見えるというより聞こえる程度なのだ。神様が見えるというのはそういうことだ。

「幻想郷の人間が不老不死になることは大罪です。しかし、あなたはもう人間ではなく神。その罪には縛られなくなった」

「私にどうしろというの?」

「博麗霊夢。あなたの力が大きすぎるあまり下手に動けば幻想郷は崩壊してしまいます。そのため大きすぎる技を使わないように警告に来たのです」

つまり今私は輝夜と同じ不老不死。違う点は神であるか人間であるかということだ。

「頼みましたよ・・・」

「・・・」

何も言えなかった。自分が神になろうがなんだろうがどうでもいいことなのだが、そこではない。私は力がないあまり航生を犠牲にし、人里の人間も何人か死んでしまった。私は人殺しなのだ。それなら殺されるなりなんなりしてバツをつけるのが当然だと思っていたのだが、死ねないということは永遠に罪を背負い生き続けるということになる。罪を背負うのは当たり前だがそれではない何かが私の心を締め付けた。異変が起き、それを解決できず航生という名の少年を連れてきて、異変解決を一任した挙句彼は自分を犠牲にしてまで私たちを救ってくれた。謝りたかった。死なせてしまったことを謝りたかった。

「この異変はまだ解決していません。あなたは戦えるのですから、人々を守る責任があるのです。あなたの博麗の巫女としての仕事なのですから」

少し考えた後、私は人々の犠牲を無駄にしないためにも異変を解決すると決めた。

ーーーーーーーーーーーー

どれくらいたっただろう。私の考えは当たっていたようで、霊夢が不老不死になったことは幻想郷の住人全員に知れ渡った。それが霊夢をどれだけ苦しめるかなんて私はその時考えていなかった。不老不死とは皆が望み、そして皆から恐れられるものだ。霊夢は今も異変解決のため各地を飛び回っているが、他のみんなはまだ回復しきれておらず、能力も復活できていないため戦えるのは私とフランだけだが、もちろん私達も戦えるほど回復している訳では無い。出かけた時の霊夢の顔はいつもと違い、責任という言葉を被ったように感じた。

さて、今私たちは異変最後の決戦に向けて準備をしているところなのだが、作戦は思いつかないし、霊夢いないしで会議どころの話ではなかった。霊夢が異変解決以外の目的も持っていたようでそれを知れればもしかしたらなんとか勝てるかもしれないのだが。

「あんまり詮索しないであげてくれる?」

紫からそう言われた。紫は一応私より長く霊夢と一緒にいたためなんとなくでも彼女の考えることがわかるのだ。そして、霊夢が貧乏と言われる理由が紫自身にあるということも紫は理解していたらしい。霊夢の母親がいない間(今もいない)、母親代わりとして見てきたからこそわかることだ。私のように途中で霊夢と戦って負けた悔しさから一緒にいる訳では無い。

「今は、霊夢を自由にさせてあげて?私たちは会議を続けましょう」

私たちが考えたことも理解出来たような口ぶりだった。でもそれこそ長く生きた知恵というやつだ。そこには尊敬できた。

ーーーーーーーーーー

人というものは、生きることで知恵を身につける生き物。たとえ神といえど生まれたばかりの頃は何も知らないのだ。私はまだ神としての自分を受け入れられていなかった。この私を見たら、航生はなんというのだろう。

「って、なんで航生の事考えてるのよ・・・」

ここ最近よく航生のことを考えてしまう。一応であっても少しは一緒に過ごした仲だ。特別な感情を抱いている訳では無いが、なんとなく寂しさを感じていた。死にかけた時も助けてくれたし、前に行った世界でもずっと一緒にいてくれた。妖怪からは好かれて(1部除く)も人間からの信仰がほとんどないに等しかったこの私と一緒に過ごすというのは下手したらいじめられっ子を助けた子のように嫌われてしまうのだ。博麗の巫女として生きていたため妖怪に強めな姿勢をとるのだが、紫のように親近感を出して近づいてくるやつとかがいるせいで、博麗神社には信仰がないのだ。そんな私を見てくれたことはとても嬉しかった。それでも私は彼を拒絶し続けた。確かに一緒に居たいと感じたこともあり、そういう時は甘えたこともあった。その彼ももういない。二度とこの世界には帰ってこれない。死んだ人間は戻ってこないのは理解しているし、1度経験しているから慣れているといえば慣れているのだが、それでももちろん寂しさを感じるのは人間誰しもそうだ。私も一応存在は神に近いらしいが、人間であった以上人間の心を持っている。当たり前の心。そう信じようとしていた。していたのにできなかった。航生だけはできなかった。魔理沙でも同じことを考えるだろう。もし私が死んでいたら同じことを考え、同じように行動するはずだ。

「そろそろ帰ろうかな・・・」

一応今日の調査を終わりにして、私は博麗神社へと向かった。

 

 

 

 

博麗神社に着いた私は晩御飯を食べたあと、普通に風呂に入り、布団を敷いてあとは寝るだけなのだが、私はそのまま布団には入らずお茶を入れた。そして縁側に腰をかけ、お茶をすすった。今日は月が今までにないくらい輝いて見えた。

「・・・情けないわね・・・私」

こんなところで感傷に浸っている場合でないのは重々承知しているつもりだ。

「そうよ、ただ元の生活に戻るだけよ・・・」

完全に戻っている訳では無いのにこんなことを口にする。ただただ寂しい。身近にいた人が1人いなくなるだけでここまで寂しくなるものなのだろうか。

「そろそろ布団はいろうかしら」

リボンを外して私は布団に入った。いつもはすぐに眠れる時間なのに、全く眠くならない。その上、寒い。温かみを感じていない。

「なんで・・・なんでいなくなっちゃったのよ・・・!」

目を閉じた瞬間、突如として思い出される思い出。航生と過ごした短い時間は私にとってとても大切なものとなっていた。

ーーーーーーーーーー

「霊夢・・・」

襖の奥には霊夢がいる。そして奥からは何やら泣いている声が聞こえた。寂しさを完璧に表に出している霊夢を見るのは初めてだった。慰めてやりたいとは思うが、私が言ったところで何が出来るわけではなかった。

「ほっとくのが一番か・・・」

私はその後そのまま家(紅魔館)に帰って、目をつぶった。



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『新たな敵』と『再開』

時間かけたのでうまくできたと思います


私は何日も探し続けた。でも、手がかりは一切見つからず時間だけが過ぎていった。異変解決のため各地を飛び回り情報収集したがこれといった手がかりはなかった。そんなことを続けているうちに3ヶ月が過ぎた。

 

 

 

「今日も成果なしかぁ・・・」

疲れがドッと押し寄せ畳で横になった。異変の主犯と思われる妖怪だが、出てくる気配がない。静かすぎる。いつもなら何かしらの妖気を感じるはずなのに(いつものヤツらを除く)妖気が感じられなかった。

「とりあえず寝ようかな・・・」

そしていつも通り横になろうと布団に入った時。

「霊夢!」

そう言って魔理沙が障子を勢いよく開けて入ってきた。

「急いでくれ!フランが!」

フランに何があったのだろうか。気になりつつも私は紅魔館に向かった。

 

 

「フラン!」

油断した。目の前ではフランが何者かに腹を貫かれていた。吸血鬼としての力が残っているはずのフランがここまで圧倒されるものだろうか・・・。

「やっと現れたな。博麗の巫女よ」

そう言ってそいつは私の方を見た。こいつが前に紫が言っていた幻想郷を破滅に導いた妖怪だろう。とてつもない力を持っているのがよくわかった。

「今なら我はこの幻想郷を支配できる。私の望む世界を作るのだ」

聞き飽きた台詞だった。レミリアが前に言っていたので慣れているが、こちらからしたら大迷惑だ。ただでさえまだやりたいことがあるというのに崩壊させられてはそれもできなくなってしまう。しかし、理由はそれだけではない。航生の愛した幻想郷だ。誰にも侵させはしない。

「あなたを倒してこの幻想郷を守る!」

魔理沙と一緒にやつに向かって弾幕を打ち続けた。

ーーーーーーーーーー

『あちゃー、もう始まっちゃったか・・・』

幻想郷では紫たちの封印から逃れた妖怪が暴れ始めたそうだ。もう少しで終わるというところで酷い。ほんのあと数時間だったというのに運が悪かった。

「急いでくれ!早くしないとみんなが・・・」

『これでも充分急いでるんだぞ』

あと数時間かかる所をあと数分まで短縮できたので万々歳だ。霊夢たちが、俺が行くまで持ちこたえてくれることを願うしかなかった。

「頑張ってくれ・・・2人とも・・・」

ーーーーーーーーーー

「「手強すぎるわ」」

10数分ほど前とはうって変わり少しずつ押され始めていた。威力も負けていないが回避力がすごすぎるあまりほとんど、というか全く当たっていない。相手も妖怪だ。人間と人間だったやつとでもキツいものはキツいのだから、押されて当然ではあるのだが。

「夢符『封魔陣』!」

さらに密度の濃い弾幕が襲いかかった。しかし・・・。

「『反射城壁』」

打った弾幕の軌道が反転し、私たち二人に襲いかかる。魔理沙はその弾幕を書き消そうとマスタースパークを連発しているが、そんなことをして魔力が持つのか心配だ。かくいう私も、霊力と神力の同時使用。普通の人間じゃないからいいが、もしも普通の人間なら体が持たない。私は一応神様と同じ肉体になっているが、半分は人間の血が流れている体なのだから疲労も感じるし、痛みもある。神というのは力を使いすぎると、当たり前のように力は落ちていく。私たちが今のままで戦えるのはあと約30分前後が限界になりそうだった。

「やはり神といえども力は我の足元にも及ばないのだな。ガッカリだ」

妖怪はなぜ生まれたのかわからない。なんの理由があり存在しているのかもわからない。だがしかし、これだけはわかる。私に害をなすやつは全て始末する。それだけだ。それ以外に理由などいらない。私は博麗の巫女。幻想郷を守るために戦うだけ。幻想郷を破壊することは私にとって害。そう、それだけわかっているなら問題ない。

「ぶっ飛ばしてやるわ」

ーーーーーーーーーー

「なんか霊夢の目が狂気に満ちてるんだけど・・・」

『やばいな。あのまま行くと下手したら・・・』

「下手したらどうなんだ?」

『幻想郷が崩壊する』

意味がわからなくもなかった。力を持つものは狂気に染まると力任せに攻撃をしてしまう。誰だってそうだとは思うが、霊夢の場合は狂気に染まってしまうと、力が大きすぎるあまり余波が形がもうほとんど留められていない博麗大結界が完全に修復不能になってしまう。そうなれば、新しく作ればいいのだがそれだけの時間が残されているだろうか。妖怪は人間を襲うことを生業としていると言ってもいい。博麗大結界が壊れたら外の世界。つまり、元々俺のいた現実世界に進出して色々とやばい絵面になる。本来博麗の巫女は妖怪を退治し、異変を解決したりすることで幻想郷内部のパワーバランスを一定に保つ役割があるが、狂気に満ちた場合霊夢が少しでも「邪魔」とか「ウザイ」とか負の感情を誰かに対して抱いたらそっちにも襲っていくかもしれない。まだ制御できなくなると決まった訳では無いが。

『よし!そろそろ終わるぞ!出れる準備しとけ』

一応目の前にいるやつも神である。そして俺は今その世界に入門したのだった。

ーーーーーーーーーー

「口ほどにもない・・・あなたそれでこの世界を統べるとか馬鹿げた幻想だわ」

やはり当たり前だった。神対神だから戦闘の激しさはいっそうすごかった。しかし、私が圧勝。目の前では倒れた妖怪がいる。私はそれ以上の力を持っているのだ。

「これで終わりよ、霊符『夢想封印』」

紅白の巨大な陰陽玉を直接食らわせた。

「これで終わったわね」

そう、これで終わりだと思っていた。しかし現実はそう簡単には進まない。生きていれば必ずどこかで躓くのだから。

「な!?」

後ろで魔理沙が口を開けたまま動けずにいた。無理もない。何故ならば倒したはずの妖怪が生きているのだから。殺すつもりでやったせいで負の感情をやつが吸い込み力を増幅させてしまったのだ。負の感情。それは恨み、悲しみ、憎しみと言った感情。確かに私は恨みと悲しみの感情を今抱いているものの攻撃にそれを入れているつもりはなかった。力任せの攻撃は精密さを鈍らせ、感情任せの攻撃は威力を鈍らせる。私の負の感情がやつの力を引き出してしまったのだった。

「冥土の土産に見せてやるぞ、再死『死への帰還』」

飽きるくらいよく見る闇の弾幕。咄嗟の判断で避けていくが反射的に避けるのには限界があり、反射による行動は、思考して行動する時より細かい動きができない。密度の高い弾幕では反射より予想して避ける方がいいのである。

「くっ!」

「霊夢!少し痛くなるかもしれんが踏ん張れ!」

「え?ちょ、何を・・・」

「恋符『マスタースパーク』!」

残りの魔力が怪しい魔理沙が放ったマスタースパーク。極太のレーザーが私と妖怪に直撃(ここから先その妖怪のことをアザゼルとでも言おう)。アザゼルがどのタイプに属しているのかは知らないが、食らえばひとたまりもないだろう。私でさえも堪えたのだから、アザゼルが耐えられるはずがない。

「そんな状態で放たれた魔法など、私には通じないぞ。たしかに今のは少し効いた方だが」

絶望した。魔理沙のフルパワーが通じないのは耐久力が高すぎる。確かに魔力残量は怪しかったが、それでも傷一つつかないのはおかしい。私も今ならつかないかもしれないが前までなら傷はついていた。

「そんな・・・」

「魔理沙!」

後ろで全ての魔力を解き放った魔理沙が倒れた。魔法使いが魔力を使い過ぎるとどうなるかはこの世界のほぼ全員が知っていた。その未来しか見えなかった私は魔理沙を起こそうとした。しかし反応はなかった。

「魔理沙!」

フランもよってきた。魔理沙を起こそうと必死に呼びかけるが応答はやはりない。それどころかどんどん体温が下がってしまっている。心臓は動いているし息もしている。死んでるわけではなさそうだが、普通の人間がこの状態のまま数時間昏睡状態だと、命の危険は免れない。魔理沙の場合魔力の消費もあったため、少なめに見積もってあと1時間が限界だろう。多めに見積もってもそれくらいだ。普通なら永琳のところに連れていくのに、今はそれができる状況ではない。

「魔理沙!起きてよ魔理沙!」

フランの呼び掛けには応答していない。気を失っているのだから当たり前だが、このままでは魔理沙だけでなく、私達も危険だった。フランは魔力がつきそうだし、そのうえ接近戦もしている。いくら吸血鬼でも体力が持つだろうか。私は慣れない神力を操っているため、体力がやばいうえに、霊力の補助もあって使う事で放出効率をあげているので霊力も尽きる可能性がある。しかし、あちら側はまだ余力がありそうだ。明らかにこちらが不利だった。魔理沙はまだ生きているし、フランも持つかどうかわからない。

「スキができてるぞ?」

「フラン!!」

油断した。魔理沙をかばおうとしていたフランが不意をつかれ投げ飛ばされた。

「戦いはそんなに上手くいくものではない。何年も生き戦争の時代を生きたからこそ言えること。お前らのような奴らにはわかりはしないだろう」

いつもなら龍哉が彩夏に助けを求めるのだが、2人は確か白玉楼にいる。そちらの防衛もしないと幽霊や亡霊を従える可能性があったので、お願いしたのだが仇となった。あっちからここに来るにはめんどくさいし、あちら側から戦闘が終了した知らせが来ていない。終わったら必ず連絡するように言ってあるのだ。確かに殺されているのなら話は別だがその都度戦況報告をしてくるので大丈夫そうだった。そして目の前の状況だ。分が悪過ぎる。

「くっ!霊夢!早く・・・逃げ・・・・て・・・・・」

「フラン!!!」

目の前ではフランが首を握られていた。助けようと動いたが、動くことが出来なかった。

「そこには結界が貼ってある。並大抵の力じゃ外せないぞ。お前はそこでこいつが殺されるところを見ているがいい」

二本の手足すべてが結界で縛られた挙句さらにその周りに結界。いつもなら気づくはずの罠にも気づけなかった。咲夜は戦闘不能、レミリアは腹に十字の剣。美鈴は肝臓の辺りを一突き紅魔館の妖精メイドの半数が死亡、残り半数は重軽傷。人里から避難してきた人の10くらいが殺された。魔理沙は魔力の大放出でダウンしている。ここでフランがやられると私だけになる。こいつがボスならこいつを倒せば異変は終わる。

「フランはやらせない・・・幻想郷は私たちが守るんだ!」

私の声ではない。別の誰か聞き覚えのある声。この声の主はさっき倒れたはずの魔理沙だった。

「魔理沙!無茶よ!その体で戦ったら・・・」

「んなこと知るか!吹き飛ばしてやる!」

「ダメ!」

「いやぁぁぁぁぁ!!」

聞きたくない悲鳴と音声。フランを見た時にはもう遅かった。フランには3本の槍が刺さっていた。2本は手に。残りの1本はフランの胴体(心臓ではない)だ。その時私は何かが吹っ切れた。体の緊張が解けすべてが開放されたような清々しい感覚。目の前には敵。後には仲間。

「地獄の淵に沈め!」

魔理沙のマスタースパークを真似たような極太のレーザーを出してきた。それを私は片手で防ぐ。

「ならばこれならどうだ?境目『世界の終わり』」

自分に降り注ぐ弾幕をすべて防いだ。結界の威力の桁違いさを身にしみて実感した。力の増大の原因は私にもわからなかった。それでも倒せるという確信があった。

「ならばこの世界まるごと消し去ってくれる!」

アザゼルはとてつもなく大きなエネルギー球を放とうとしていた。それを防ぐべく封印結界を出そうとした。しかし、現実は甘くなかった。

「!?」

ここで神力が切れてしまった。霊力も同時にそこをつき体がとてつもない疲労感に襲われた。披露に逆らえず膝をついて座り込んだ。

「こんな時に・・・!」

(ごめん・・・航生・・負けちゃったよ・・・)

そう言って私は目を閉じ死を受け入れた。神の体といえどエネルギーの大きさによっては吹き飛ばされる。今この時がそうだった。

「まだだ!諦めるなみんな!!」

「なんだと!?お前は・・・!」

「霊符『夢想封印』!」

私のスペルだった。この技を私以外に使えるのはさとりとあともう1人。

「間に合ったみたいだな・・・全くあの野郎もっと早く出来ねぇのかよ・・・」

私の前に姿を現したのは私たちのために戦って死んだはずの航生だった。



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解決

テスト中に書いていたのもあるのでめちゃくちゃやばい


「なんとか間に合ってよかった…無事か?」

「来るのが遅いのよ!!早く戻ってきなさいよ!」

久しぶりに聞いた声。まだ3〜4ヶ月しか経ってないのにとても懐かしく感じた。その短いようで長く感じた期間探し続けた彼が今ここにいた。確かに死んだと思って途中で探すのを諦めたのに見つかった。努力が無駄になった感じもしたが、それよりも喜びの方が力が圧倒的に強かった。

「馬鹿な!お前は死んだはずだ!」

「お前それこいつにも同じこと言ってただろ。もう少しセリフ考えとけっての」

命は帰ってこない。だからこそ命には価値があり、とても美しいのと同時にとても儚いのだ。しかし、私は今死ねない。つまり価値がない。そこの通称アザゼルが言ったようにお前ごときという言葉は私に似合っている。私につけるにはもったいないくらいの言葉だ。死ねない人間でも価値はあるが、私に価値などあるのだろうか。

「いい加減にしろよ!!」

突然私に向かって罵声を飛ばしてきた航生。その言葉には怒りでもなく、喜びでもなく、悲しみの混じった声だった。

「俺が何のためにここに戻ってきたと思ってるんだよ!俺だって殴られれば痛いし、他人から見捨てられれば悲しいよ?それでも生きないといけなかったんだ!なぜだか分かるか!?」

わかるわけがない。そんな話をしたところで何かなるわけではない。無駄なことだ。

「俺を好いてくれる奴がいるからだ。親、友達、その他にも沢山いたよ。俺のことを大切だと思ってくれる奴がいたんだ。ここまで言えばわかるだろ?」

「私を大切な存在だと思ってくれてる奴がいるってこと?何を言ってるの?私のことを大切に思ってくれてる人なんているわけないじゃない!」

つい強めに言ってしまった。怒りと混ざるとどうしても強く言ってしまう。

「じゃあ俺はこの数ヶ月なんのために戦ってたんだ!?俺を呼んだのはお前だろ!?それは幻想郷が大切だと思っているからやったんだろ!俺だって大切なものがあるから戦うんだよ!」

そんな怒りながら言って何かなるわけではない。私は落ちこぼれの力のない巫女なのよ・・・。

「そんなに力がないと自分を責め立てるのなら俺が助ける。俺がその手助けをしてやる」

私なんかの手助けなんてしなくていい。私のことよりほかのみんなのことを優先してほしい。確かに他のみんなは大切だが自分のことなんてどうでもいい。

「お前も一緒にだ。俺はお前がいないなら生きる意味もない。お前といると楽しいんだ。楽しみが一つなくなるのは辛い。まだ一緒に縁側でお茶飲みたいしな」

苦笑いしながら私に対して話しかけてくれる彼。戦闘中なのに話してくれるのはとても優しい心を持つ証拠だ。私も大切に考えてくれる彼の気持を踏みにじりたくない、という思いが強くなった。その彼の顔に嘘を感じられなかった。心を打ち明けて相手をしてくれたのは久しぶりだ。さとりでも心を読めるのが原因で人を傷つけぬよう嘘をつき、こいしだって心の闇を見たせいで心を閉ざしてしまった。みんな私のために戦ってくれていると、自分以外の何かのために戦っているというのが私にとってとても珍しかった。しかしそれ以上に心を動かしたのは航生の信念だった。

「……分かったわ!私も戦う。私は幻想郷を守る博麗の巫女よ!」

「そうだ!そう来なくっちゃ!」

とても大きな力が湧き上がってくるのを感じた。勝てる自信も同時に出てきた。

「行くわよ!航生!」

「よっしゃぁ!いくぞ!」

叫ぶとともに2人で突っ込んでいった。

「いいだろう。これで決着をつけてやろう」

「霊符『夢想封印』!」

「死符『世界の崩壊No.0806』」

「合体スペル!霊符『夢想封印』!」

航生のスペルと私のスペルが混じり合い、エネルギーの大きい紅白の陰陽玉を作り出す。それをアザゼルに向かって放った。対してあちら側も高威力の破壊系弾幕を発射。距離がちょうど中心のところでぶつかり競り合う。私は負ける気がしなかった。勝つ自信があった。今なら誰にも負ける気はしていなかった。

「いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

「な!?我の技が押し返されるだと!?そんなことが・・・」

耳をつんざくような爆発音とともに妖怪が消え去ったのが確認できた。とてつもない威力だった。確かにこれでは映姫が警告に来る気持ちもわかる。妖怪を一撃で吹き飛ばすのは相当危ない。しかし、疑問に思ったことがもうひとつあった。神様の体がどういう構造なのか知らないが、アリスやパチュリーのように老化では死なないが物理的破損。つまり、切られたり刺されたりした場合、どうなるのだろうか。

「聞こえる?霊夢」

頭の中に直接入り込んできたのは紫だった。いい加減にして欲しい。

「聞こえるようね。あなたの体についてだけど・・・映姫の言ってたことは少し間違っていたみたい」

「どういうことよ?」

「たしかにあなたの体は不老不死となった。正確には老化で死ぬことはなくなったらしいけど物理的接触による攻撃では死ぬ可能性があるらしいわ。でもそんな心配しなくてもいいわよ。体の傷は出来ても、妖怪並みの再生力で元に戻るらしいから」

つまり、今私の体は神のような体ではあるが信仰の減少で死ぬのではなく、物理的接触でしか死ねないということになる。それもそれで便利といえば便利だが、それと同時に悲しくなった。

「ごめんね、航生。なんか私だけチート級になっちゃって・・・」

「お前その言葉どこから覚えた・・・まあ、いいや。別に心配しなくてもお前の前から姿をなくすことはないから安心しろ。正直言っちゃうと俺お前と同じだから」

「どういうこと?」

「お前と同じ体ってことだよ」

私と同じ体。それはつまり神様のような体ということ。航生も老化では死なないが物理的接触では死ぬというのだ。

「そんなことどうでもいいわ。戻ってきてくれたんだもの・・・」

「目からなんか流れてますよ霊夢さん」

知らず知らずのうちに瞼に溜まった液体は頬を伝って、足元を濡らしていた。それはとめどなく溢れてきていくら拭っても止められなかった。謝りたい、迎え入れたいという2つの感情が頭の中を行き交い、それが止めるための妨げになっている。なんて言えばいいのか悩んでいたところ、先に航生が口を出した。

「大丈夫だよ、霊夢。確かに俺は1度死んだ。謝りたいと思ってるんだろうけど謝る必要はないよ。俺が好きでやったことなんだ。お前が自分を責める必要は無い。俺はそれよりも言ってほしいことがあるんだけど?」

こういった時に相応しい言葉。それはひとつしか思いつかなかった。涙をこらえながら、今自分が出せる一番いい笑顔で言った。

「おかえり、航生!」

「ああ、ただいま霊夢」

こいつとならこのあとの時間が楽しくなりそうだった。それを考えても今は仕方ない。今はとにかく一緒にいたい。それだけだった。

「とりあえず、みんなをどうにかしようか」

ちょっと気分が害された気がしたがそれでもいい。みんながいるから楽しいのだから。

 

 

 

「よし、これであとは寝かせときゃ治るはずだ」

手際よく負傷者の治療をしてあとの介護を永遠亭組に任せた。神力というのはやはり恐ろしいくらいすごい力を持っている。

「ありがとね」

「なんかお前が素直にお礼言うのも珍しいなww」

「わ、悪かったわね!どうせ私は似合わないわよ!」

「そう拗ねるなって」

とりあえず今日は休もうと博麗神社に帰った私たちであった。



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異変再来

アイムCRAZY!(勉強が上手くいかない)


「この力は素晴らしい。私がこの世界を統べる王となるのだ。まずは手始めに・・・」

暗闇に響く不気味な声。その声は何かを呼び覚まそうとするような声なのであった。

ーーーーーーーーーーーーーーー

「なんかすることないなー」

「いやいや、朝ごはんまだでしょ」

「はいはい、今作りますよ」

こんな会話ができるのは幸せだ。異変が解決してからもう1週間が経過した。能力が使えなかった他の住人もアザゼルを倒したことで完全に封印が解け、能力が少しずつ使えるようになった。ただ、制限がかかっていたせいでうまく扱えず慣れるには時間がかかるそうだ。

「あんたも取り敢えずご飯食べないと体壊すわよ」

「(っ'-')╮=͟͟͞͞ くブーメラン」

「ダメだこいつ。早く何とかしないと」

なんかすごく馬鹿にされたような気がしたが全く気にしない。今日は特に何もすることないから、白玉楼に行って妖夢と剣を鍛えようと思っていたところだ。ちなみにいつも異変解決後すぐに開く宴会はまだ開いていない。完全に回復するまで待とうという配慮からだった。朝ご飯を作って食べたあと、霊夢も行くというので一緒に行くことにした。ついでに紅魔館にいる龍哉と彩夏も誘うつもりだった。あの二人は一応剣を使うのでちょうどいいと思っていた。

 

 

紅魔館に2人を迎えに行ったあと、白玉楼に飛んでいった。龍哉は能力で飛べるが彩夏は無理なのでそこは龍哉に任せた。

「いらっしゃいみんな。取り敢えずあがって。お茶出すから」

さすが幽冥楼閣の守護者だ。気が回るのが早い。妖夢の能力は剣術を扱う程度の能力。主に楼観剣と白楼剣を使う。どちらも日本刀のような感じの剣だ。あまり間近で使っているのを見たことがないから楽しみだ。

「あらあら今日はお客様が多いのね?」

襖の奥から姿を現したのは幽々子さんだった。

「あまり、というか会うのは初めてだったかしら?念の為自己紹介するわ。私の名は西行寺幽々子。この冥界の地獄の閻魔から任されているの。よろしくね」

「ご丁寧にどうも。俺の名前は航生って言います。苗字は聞かないでください。いい思い出はない」

「ふふ、分かったわ。よろしくね。それでみんななんで今日はここにいるのかしら?」

俺達が今日ここにいるのは妖夢と剣を鍛えるためだ。平和ボケして実力を落としたくない。

「あー、それはな幽々子」

龍哉のすごく馴れ馴れしい性格は正直うざいがこういう時に役に立つものなのだな。何回があっているらしいから敬語とかは使わないらしい。しかし、彩夏の方は親しき仲にも礼儀あり。ちゃんと目上には敬語だった。それでも言っている内容は小並感。

「「この2人ついに結婚するんだよ!」」

「「ぶふぅ!!」」

2人して吹き出す。あちら側もすごく息の合った連携だ。白玉楼を守りきっただけのことはある。しかし違う。気にすべきはそこではない。

「な、いやいやいや。結婚!?なんで!?え?何?そういう趣味なの!?」

霊夢が必死に否定しようとする。そこまで強く力説されるとこちらは悲しくなってしまう。

「ぇ━(*´・д・)━!!!2人とも結婚するの!?おめでとう霊夢!」

「夢想封印・・・」

「すみませんでしたm(_ _)m」

端でなんか封印しようとする巫女とされそうになる半人半霊を見かけた気がするが見なかったことにしよう。取り敢えず落ち着こうか霊夢。

「あなたもなんか言ってやってよ!幼馴染なんでしょ!?」

幼馴染だからわかる。こいつら2人は昔からこういう奴らだからもう治らない。どうしようとも治せない。静かに俺は首を横に振った。

「ほらほら航生だって認めてるし、早く結婚式を・・・」

「神霊『夢想封印』」

「え?ちょ、まっ。うぎゃぁぁぁぁああああ」

(ピチューん)

止めておくべきだった。予想はしていたけど、霊夢は恥ずかしさを攻撃して紛らわすから困ったものだ。受けるこちらの身にもなってくれ。

「まったく・・・やめてよね?そんな関係にすらなってないわ」

「あら、残念。ちょっと期待したのに」

期待されても困りますよ幽々子さん。まあ、俺の場合霊夢が望めば受け入れるがな。

「いやいや、一緒に暮らしててもそこまで望まないわ」

「あれ?もしかして聞こえてた?」

「口に出してたじゃない」

出てた感覚なかった。よくある無意識ってやつか。まあ、一応外の世界にいた時は霊夢に会えるなんて思ってなかったし、十分満足だ。というか、一緒に暮らしてる時点でアウトな気がするがそこに気づいていないのだろうか。

「ま、まぁその話はまた後にするとして。約束守ってもらうわよ」

「いいぜ、まずは俺からだ」

ここに来たのは妖夢と手合わせをするためだ。なまった感覚を取り戻したいという願いに答えたのだ。白玉楼の庭に出て2人は剣を構えた。

「じゃあ俺が開始の合図をするわ。まずは妖夢と龍哉だな。行くぞ」

「こっちは準備オッケーだ!」

「こちらも準備出来ました!」

2人の間に少し火花が散っているように見えた。まあ、間違いではないだろう。妖力(妖夢の場合霊力)とぶつかっているのだから。

「3・・・2・・・1・・・始め!」

一応龍哉は刀を使っているので妖夢と似たような戦闘スタイルになるだろう。ただ、妖夢は二刀流のため龍哉には分が悪い。速さも技術も妖夢の方が上だが…。

「やはりやりますね」

「そりゃああの異変の解決者の1人だからな。これくらいはやるさ」

見ないうちに既に鍔迫り合いになっていた。しかし速さと技術が上の妖夢より少なくとも力はある龍哉が押していた。少しずつ後ずさりする妖夢には苦の表情が浮かぶ。

「いけー!龍哉押し勝てー!」

「妖夢も頑張れ!」

鍔迫り合いから抜け出そうとした妖夢が剣をそらし龍哉の刀にかかった力を逃がす。そのまま龍哉はバランスを崩して倒れ込む。そこにすかさず妖夢が飛び込み首元に剣を向けた。

「勝負ありですね」

「参った。やっぱかなうわけないわ」

妖夢もあのまま力押しになっていたら負けていただろう。咄嗟に力を逃がそうとした判断は正解だ。龍哉の場合まだ力で押そうとするくせが抜けていない。そこを直せば妖夢に勝てると思う。

「じゃあ次は私ね」

そう言って彩夏が立ち上がった。さっき聞いたが彩夏はレイピア。正確には細剣を使うらしい。速さで負けにくいがどうなのだろう。細剣は速さでは負けを取らないくらい強いが防御力が皆無だ。無いに等しい防御をどうカバーするかが鍵になってくる。

「じゃあ行くぞ・・・開始!」

先に突っ込んだのは彩夏。低めに剣を構え、妖夢の剣の射程外から刺突を繰り出す。刺突は直線上であれば、速さも威力も増す。しかし射線が読まれやすいのでよくかわされる。目の前では今言った通りギリギリのところでかわされている。妖夢は反撃のチャンスを伺っている。速すぎるため反撃しにくいのだ。少しずつ妖夢が押されていく。このままいけば勝てる。

「・・・!読めた!」

いきなり妖夢がジャンプした。突進していた彩夏は落ちてきた瞬間を狙おうとあとすこしで足がつくタイミングで突撃。そこで妖夢は地面に楼観剣を突き刺した。それを支えにして体を上に押し上げる。ギリギリのところでかわされていたのが完璧にかわされ、彩夏のスピードが落ちた。そこを逃さず妖夢は止まったところに楼観剣で詰め寄る。同じく彩夏も向き直り、妖夢に向かって剣を向けた。それでも妖夢が一足早かった。少しだけ砂煙が上がりその煙が完全になくなった時に見てみると、彩夏の心臓のところに剣が向けられていた。

「良し!」

「無理よこれ。絶対勝てないじゃない」

最後に残ったのは俺。俺は妖夢と力の差が確かにある。神様のような体なのでどうなるか分かったものじゃない。それでも全力でやるつもりだ。

「最後に俺だな」

剣を持って妖夢の正面に立つ。構えは下段だからどういう攻撃が来るかわかりにくいはずだ。攻撃によっては読まれるがまあいいだろう。剣に力を込める。まだ慣れていない新しい体での戦闘だが、記憶でなんとかなるだろう。

「行くぜ!」

俺の剣が発光する。出し惜しみなく行くと決めていた。最初から飛ばす。

「ヴォーパルストライク!」

一直線ではないが突進。妖夢もその技の観察してきた。そして見切れたのか俺の懐に入り込もうとしてきた。しかし、それは俺にとっては鈍作。そんなことを予想していないわけがない。

「あまいぜ!」

剣の軌道を変え、妖夢へ向かわせる。いきなり来た剣に対応が遅れていたがなんとか弾いてきた。さすが剣の達人だ。

「威力おかしいよそれ( ´-ω-)σ」

「これでも力は抑えてる方だぞ。まあ、俺が本気出さなくてすめばいいけど」

「いうね。でも私だって負けないよ!」

楼観剣と白楼剣を交差させて構えている。大して俺は再び剣に光をともらせる。さっきと同じ技は通じないのはわかっていたから違う技にした。

「お前も知ってるやつで行くぜ!」

「私も行きます!」

妖夢の方が少し技の発動が早かった。

「人符『現世斬』」

妖夢のスペルカードだ。力としてはすごいものだが予想できていた。

「人鬼『未来永劫斬』」

力では押し勝てる。剣と剣がぶつかり合う。エネルギーの衝突で衝撃波が周りに広がる。

「「負けるかぁぁぁぁぁぁぁ!」」

その時に感じた。力ではない別の何かを。自分の背後。忍びよろうとする凍りつくような眼差しを感じた。そしていきなり背後の圧力が変化した。何が起きたのかはわからない。既に危険だと判断した。

「『二重結界』!」

剣を1本と依代を2本出現させデルタ状に結界を張る。予想通りそこに何かしらのエネルギーがぶつかった。押さえ込もうとしたが力負けしそうになった。危険だと判断した俺は妖夢を掴んで離脱した。

「妖夢!みんな!」

なんとかその謎のエネルギーを抑え込むことに成功。しかし爆風までは抑え込めなかった。エネルギーが巨大すぎて危ない。

「えええええええ!?ちょ、何を・・・」

咄嗟に抱きつかれた妖夢は何が起こったのか理解出来ず口をパクパクさせている。傍から見たらただ抱きついているようにしか見えていないだろう。この状況を理解しているのは俺だけのようだった。直後に爆散。爆風で結界ごと吹き飛んだ。もちろんそれですぐ近くにいた俺だちが何も被害を受けなかったわけがなく、その爆風で吹き飛んだ。地面に激突し、そのまま転がる。勢いよく白玉楼の木でできた塀に体を強打させた。

「っ!痛てぇー!何者だコノヤロー!」

その声に応答するものは何もなかった。庭に残ったのは爆発で開いた大穴(半径5Mほど)だけだった。爆風で飛んできた石が何本か背中に刺さったが、今はどうでもいい。

「無事かみんな」

あちら側にも結界を張っておいて正解だった。どうやらあちらは無傷のようだ。

「あの、航生。ありがとね…」

「お気になさらず。気がついたからよかったよ」

何故か頬を赤らめる妖夢だったが別に変な意味はない。ただ、守ろうとして体が勝手に動いただけだ。

「妖夢!航生!大丈夫だった!?」

霊夢が走り寄ってくる。もちろん大丈夫だ。俺たちはその日妖夢立ちとお茶を再び飲んだ後、帰ったのだった。



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新たな襲撃

ダメだこいつ(→作者)早く何とかしないと


「なんだったんだろうな昨日の」

昨日起きた出来事は幻想郷中に知らせておいた。新たに襲撃が来るなら対策をしないといけない。「まあ、それは私も調べるわ。もう異変なんてこりごりよ」

珍しく働く霊夢に感心する。

「・・・まあいいわ。朝ごはん頼むわね」

「またかよ・・・了解」

最近は霊夢にめちゃくちゃこき使われるから正直言っちゃうとめんどくさい。朝5~6時に起きて、朝ごはんの支度をし、神社の清掃を手伝わされる。洗濯もやらされるし、ほとんどの仕事が俺任せだ。神社の清掃は神社に住み込むものとして当然だが、せめて洗濯くらいしてくれ。それにたまには霊夢の作る朝ごはんも食べたい。俺は使用人じゃないっつーの。

「家があるだけ感謝しなさい」

「昨日結婚の話でめちゃくちゃ動揺してたくせに何を言う」

何故か知らんが結婚でここまで動揺するやつは初めて見た。正直どうでもいい。楽しければ人生それでいいと思っている。その手段の一つとして結婚というものがあるだけなのだ。

「逆に反発しないあなたも頭おかしいと思うわよ」

よくあるツンデレというやつだろうか。なんかそんな感じがする。

「俺は迎え入れる準備出来てるぞ笑笑」

「今住んでるんだから迎え入れられてるっていうべきじゃない?」

「ごもっとも」

その後は何も言わずおかずをつつき、朝ご飯を食べ終わった。

「じゃあ、アレやるかな」

俺はあの異変が解決した後、幻想郷各地を週一で飛び回り状況を記録して紫に報告している。正確には他の地方でいなくなった、もしくは死んだ人数の計測だ。幻想郷は人間と妖怪の数の力が均等になって形を作っている。片方に力が偏らないように管理をしなければならないそうだ。霊夢が起きる前に飛び回って人数に関してはわかっているので資料を作ればいいだけだ。この資料は幻想郷縁起にも載せるそうだ。起きた異変の最終的な結果に付け加えたいと、稗田阿求から直接(紫を通して)言われたのだ。その異変のために来た俺と龍哉。そして彩夏も載せると言っていた。幻想郷の歴史には関わるから残しておくべきということだ。別に嫌ではないので許可はしておいた。ただ一つ気になったのは、外来人の欄に載せるのか、それとも英雄伝の方に載せるのかということ。龍哉と彩夏はおそらく英雄伝の方に載るだろう。しかし、1番めんどくさいのは俺と霊夢だ。霊夢は元は英雄伝に載っていたが、今は神霊のような体であるため神霊の類に入ると思っていたのだが、先日阿求から英雄伝の欄にそのまま載せておくそうだ。ちなみに俺も英雄伝に載るらしい。幻想郷のスターになった気分だがそんなに驚くことは無い。

「じゃあ人里行って資料渡してくるわ」

「私も少し慧音に用があるから付いてくわ」

お茶を飲んだあと2人で空に飛び立った。

ーーーーーーーーーーーーー

人里の入口に到着。そのまま地面に着地。途中まで進んだところで後で合流することにして1度分かれた。

 

私は人里の大通りを通って寺子屋に行った。そこでは時間的に1時間目の授業の始まる前だった。忙しそうだったが取り敢えずなかに入った。

「おお、霊夢じゃないか!」

「久しぶりな気がするわね。お邪魔するわ」

「もうすぐ授業だから私の部屋で終わるまで待っててくれるか?お茶と茶菓子くらいは出す」

「よし乗った」

早めに終わらせて帰りたいが、最近食べてない茶菓子は食べたいものだ。授業が終わるまでの約50分間私はずっと考えていた。あの時航生が言った言葉だ。

『俺にだって大切なものがあるから戦うんだよ!』

この言葉の意味。それをまだちゃんと理解出来ていなかった。私だって大切なものはある。そこではない。人それぞれ大切なものは違うのだ。では航生の大切なものとは一体何なのだろうか。自分、世界。友達や親。他にも沢山候補はある。大切なものの意味も価値も違う。それが何を意味しようと他人が首を突っ込んでいいものではない。しかし頭から離れない。私が考える必要はないのかもしれないが、どうしても気になって仕方がない。

「今日帰ったら聞いてみようかしらね」そう言いながら私は再びお茶を啜った。

 

 

「済まない霊夢待たせたな」

扉の奥から慧音が姿を現した。途中までの記憶が無い。どうやら寝てしまっていたようだ。

「なんか寝てたみたいだし、大丈夫よ」

私がここに来た理由を慧音に説明した。異変についての資料の全般をもうひとつ作っていたらしく、慧音に渡してほしいと航生に頼まれたのだ。慧音は「すまないな」と言ってその資料を山積みの資料の横に置いた。そしてもう1つ用があった。こちらが本命だ。

「ねぇ、慧音。1つ聞きたいんだけど……」

「答えられる範囲で答えるぞ」

「私、博麗の巫女としてこれまで生きてきたけど、今はもう巫女としての仕事をしているけど、私がなんで博麗の巫女なのか考えてるんだけど、なんでだと思う?」

「すごく答えにくい質問をするな。うーんそうだな」

さすがに無理だっただろうか。歴史を知る人物(半獣)だからわかると思ったがさすがに無理だったようだ。

「無理なら無理に答えなくてもいいわよ」

「推測でよければわかるぞ」

推測でもなんでもいい。それがわかるのなら何だっていい。私のいる意味を見つけたい。

「推測だがその答えは霊夢、お前だからだ」

「どういうことよ」

「お前のお母さんの時代から私はいるが先代は今より殺伐としていた。悪さをした妖怪を片っ端から倒していったんだ。ただ、心の中では人間と妖怪が手を取り合い生きていく世を望んでいたんだ。しかしそれは実現出来なかった。なぜだと思う?」

今答えを言っていたではないか。それはお母さんが妖怪を片っ端から倒したからだ。そうすれば博麗の巫女を恐れ妖怪側が敵対意識を持つに決まっている。なおかつ、妖怪を助けようとすれば人間からも敵対意識を持たれ、博麗の巫女としての仕事がしにくくなる。どっちをとってもお母さんには悪いことしか起きなかったのだ。だから、実現することは出来なかった。

「だからこそ、お前のお母さん。つまり先代博麗の巫女、博麗霊奈はお前にその夢を託したんだ。私はそうだと思っている」

私は結果的にスペルカードルールを作成した事で妖怪は博麗の巫女をそのルールの上では倒せるようになり、力のない人間も妖怪を撃退しやすくなった。結果、私を倒そうとする妖怪はいない。

「そういうことだ。霊夢、お前はもう既に博麗の巫女としての仕事が出来る状態ではない。それはお前もよくわかっているだろう?」

博麗の巫女は、結界の管理、妖怪退治、異変解決を生業とする職業だ。妖怪退治というのは単に妖怪を退治するのではなく、人間に対して悪さをしたもの全てを退治するということ。それは神だろうと関係ない。私は体の性質だけは神様と似たような感じになっている。だから、逆に言えば私は倒される側なのだ。しかし、博麗の巫女がいなくなるのを避けるため、今も私が博麗の巫女をしている。

「すみませーん!慧音さんに手紙が来ていまーす!」

「ああ、わかった!今行くぞー」

すると慧音は玄関に手紙を取りに行った。慧音に入れてもらったお茶をすする。出涸らしとは大違いでとても濃いいいお茶だった。すごく久しぶりに飲んだ感じがする。

「霊夢ー!今すぐ来てくれ!」

「おーい!霊夢早く頼む!」

「はーい!今行くわよ!ちょっとくらい待ちなさい!」

取り敢えず航生と慧音のいる玄関に向かった。

 

 

玄関のドアを開けると…。

「なにこれ!?」

引き戸の外の世界は地獄絵図だった。血が飛び散り、切られた破片がそこら辺に転がっている。人里の人間も何人か首が飛んで転がっている。慧音も満月のおかげでハクタクの妖怪に変身している。力も上がっているはずなのに血だらけだった。

「慧音先生!下がっててください!」

その奥では航生が剣を持っている。その服は血で真っ赤に染まっていた。左手の動きが鈍くなっているところを見るに、捻挫か骨折というところか。

「霊夢!早く逃げ・・・」

台詞を言い終わらずに私の方を向いた航生は何かで心臓を貫かれた。

「ガバッ!」

「航生!!」

そのまま地面に倒れ込む。すぐに駆け寄るが既に息はしていなかった。そんな私に少しずつ妖怪達が近づいてくる。それを見た時体の力が抜け、膝をついてしまった。

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・む・・・いむ・・・霊夢!」

いきなり聞こえた声に飛び上がる。目の前には心臓を貫かれたはずの航生がいた。何事も無かったかのように座っている。

「どうしたんだよ、随分うなされてたじゃないか」

「え、ええ……大丈夫よ」

ーーーーーーーーーーーーー

「んん・・・朝か?早く起きすぎたな……」

いつもより早く起きてしまったため、とても眠い。もうひと眠りしようとしたが何故か眠くならなかったため、起きて朝ごはんの支度をした。

 

 

朝飯の支度が終わったため、霊夢を起こそうと彼女の所へ向かうと。

「霊夢!」

体をうならせて、うなされている霊夢がいた。汗もすごくて、心臓の鼓動も今まで以上速かった。何があったのか分からず、とにかく起こそうとした。

「あ……あれ?航生?」

「どうしたんだよ?随分とうなされてたじゃないか」

「え、ええ……大丈夫よ」

すると霊夢が・・・何も言わずに俺に抱きついてきた。

「良かった……ほんとに良かった……」

何やら霊夢が抱きついた目のところがほんのり温かい。変な夢でも見て怖かったのだろうか。少しだけ霊夢から幼さを感じた。

「大丈夫だ……俺はいなくなったりしないから……気にしなくていいんだぞ」

「……(コクリ)」

霊夢の目にはまだ涙が浮かんでいる。俺に涙を見せまいと下を向いているが服が冷えて冷たいのでバレバレだ。外の世界では気の強い性格だが、実際はその裏にもちゃんと女の子らしい感情はあるらしい。そんな霊夢も可愛いと思う。

「でもどんな夢見てたんだ?」

思い出したくないようで顔を埋めたまま動かない。まあ、無理に聞いたら可愛そうだし聞かない方がいいだろう。

「今日は人里に用があるから言ってくるわ。なるべく早く帰るから」

靴を履いて出ようとした時再び霊夢が後から抱きついてきた。今度はさっきより強くて引き剥がそうにもできなかった。その体はとても小刻みに震えていた。博麗の巫女が恐れるものはないはずだが、何が怖いのだろうか。何をしようにもこのままでは何も出来ない。

「……ほんとに何も出来ないから放して欲しいんだけど」

「・・・・・」

「はぁ(*´Д`)わかったよ……でも条件だ。お前が見た夢の内容を教えろ」

「ありがとう。実は……」

 

 

「そういう事だったのか……その対策はすぐ思いついた。それを試して様子を見る。それでどうだ?」

「連れてって………」

「なんて?」

「私も連れてって」

離れたくないのか、少しずつ力が強くなっていく。流石に苦しくなってくるから弱めてほしいところだが、言っても聞かないだろう。夢が正夢になるとは思えない。

「わかった……行くぞ」

霊夢を連れて俺は家を出た。

 

 

 

人里についた俺は人里全体を覆う大きな結界を張った。神力で作った結界のためそれを通ろうとすると必然的に浄化される仕組みになっている(手を加えただけ)。力が強い場合その力を抑え込むようにしておいた。これで霊夢の夢のようにはならないはずだ。

「よし。これで大丈夫なはずだ。手短に用事を済ませるから寺子屋で待っててくれ」

「分かったわ……でも気をつけてね」

「当たり前だ」

ーーーーーーーーーーーーー

航生と別れたあと私は寺子屋に向かった。あの時なぜ戦えなかったのか。戦えていれば助けられたのに、と後悔していた。寺子屋につくと授業中だった。夢の中ではついた時10分前だったから単純に考えて10分間抱きついていたことになる。その事を考えた瞬間急に顔が熱くなった。誰かに見られているかもしれないと思い、両手で顔を隠す。隠していた手も熱くなってきた。こんな惨めな博麗の巫女を誰が見たことがあるだろうか。慧音に待っているように言われた部屋で待っているのだがとても平常心ではいられなかった。

 

 

数分してやっと落ち着いた。数分と言っても途中からの記憶はなかった。そして襖の奥からちょうど慧音が出てきたところを見るにゆうに50分は経っているだろう。しばらく休み時間なので慧音と話そうとしていたところ・・・。

「せんせー!せんせー!」

「おー!どうした?」

「なんかお腹に木の棒が刺さった血だらけの人が来た!」

「なんだと!?わかった!今行く!」

なんかとんでもない言葉を教えたなこの先生は。なんかとんでもないことが起きているらしい。迷いの竹林の自警団をよく呼ぶ慧音に助けを求めたのか知らないがその人は寺子屋に来たのだ。

「どうしたんだその怪我!とりあえず中に入れ!」

呑気にお茶を飲んでいる場合ではないと思い、玄関先に行くとそこにはさっきの叫び声通りの状況に陥っている航生がいた。

「航生!どうしたのその怪我!」

「すまん霊夢。力負けしたわ」

「それで!?そいつらは倒せたの!?」

「ああ、なんとか……」

さっきなんとなく感じた寒気はこの事だったのだ。航生は腹に刺さった槍を引き抜くと粉々に打ち砕いた。その破片は風で四散して無くなったのだが、その直後に航生から力が一気に抜けてその場に倒れ込んだ。それを滑り込んで頭を打つのを阻止した。

「すまないな霊夢……力が入らないわ……」

よく見ると頭からも血が出ていた。どうやら鈍器か何かで頭を強打されたのだろう。そのせいで神経感覚が鈍って動きにくいのだ。傷は見ぬうちにどんどん塞がっていったが、中身まではどうしようもできなかった。

「取り敢えず休みなさい。この状態じゃあっち着くまでに倒れちゃうわ。慧音、あなたの布団借りて寝かせていいかしら?」

「それは別に構わないがお前はどうする?完治するまで何をするつもりだ?」

「流石に看病くらいするわ。一応同居人なんだから」

というか、慧音は応急処置はできても大体を永遠亭に連れていくので、長期間になりかねない治療や世話には向いていない。今この状態でもし博麗神社に帰ったら襲撃があった際に航生は戦えず、結果として幻想郷が終わる。それにしても回復力は半分は人間だが、もう半分は人間ではないので超人的な回復力を持つ。航生の場合は神力も操るので完治するまでに3日くらいで大丈夫なはずだ。

「わかった。完治するまでここにいても構わないが、ここにいる以上生活時間とか頼む仕事とかはこちらで決めさせてもらうぞ?」

「交渉成立!」

私は慧音も死ぬはずだった未来も夢で見てしまった。予知夢というべきなのだろうか。この時の私は夢がどれだけ大切なものかちゃんと理解していなかった。



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テストが!テストがぁぁぁぁぁ!


あの日からもう4日経ち、航生はもうピンピンしている。元気になったのはよかったが良くなりすぎではないだろうか。元気なのがやはり1番な気もする。ちなみに今何をしているのかというと…。

「それで?どうしてあんなことしたのかしら?」

「いやいやいや!紛らわしかったお前にも非はあるだろ!」

「私は悪くない!だって私は悪くないのだから!」

「うん。まず文章を慧音先生のところで習ってこい」

何があったのかというと、今は夜。風呂に入って寝ようと思い、風呂に向かった。すると風呂の中に航生がいたのだ。まあ、私も一応女なので裸体を見られれば恥ずかしいし、それが男なら尚更だ。いくら一緒に住んでいるにしても流石に嫌だ。

「逆に俺が入ってるところに来たお前も悪いだろ!」

「問答無用!夢想封印!」

「やめっ、やめろォォォォォォ!」

目の前で盛大にピチュッた剣士を1人発見したがそのままにしておいた。そのままにしておけばどうせ残機回復に時間はかかれども戻ってくるからだ。(この知識は航生から教わった。外の世界で私たちはゲームの中の存在らしい)

「イッタイメガー!」

ぴちゅったのは間違いだったようだ。正直夢想封印受けて健在なのは神とか紫あたりで十分だ。確かに航生は神だなと思った瞬間だった(肉体は神様と同じ)。

 

 

「これでも言う?」

「すみませんでした霊夢様」

「よろしい」

何をしたか?そんなもの決まっている。弾幕ごっこだ。ちょっと苦戦したが、経験の差があり勝ったのは私だった。残機を最後まで削り残り1個まで追い詰めたのだからすごい腕だ。

「疲れた……なんか無駄に動いた気がするわ」

「あんたも早く寝なさいよ?傷も症状も完治したって言っても油断は禁物よ」

「わかってるよ……ヾ(*´・ω・`*)おやすみなさぁ~ぃ」

そう言って航生は布団の中に潜り込んだ。流石にさっきのは言いすぎたか?たしかに知らずに入った私も悪かったかもしれないが……。さっきの光景が再び頭に浮かび顔が熱くなった。これで何度目だろうか。最近何故か航生といると違和感があるというか、なんか苦しく感じる。別に一緒に暮らすのが嫌だと言っているのではない。心苦しく感じるだけなのだ。

「こんばんわー霊夢さんまだ起きてますか?」

「あら?早苗じゃない。いらっしゃい……と言いたいところだけどこんな夜中になんの用?」

「いえいえ、別に大した内容じゃないですけど霊夢さんにお話がありまして……」

「ワカッタ(。-`ω´-)" ワカッタ。お茶くらい出すからそこで座ってて」

縁側に早苗を座らせ、お茶を入れに行った。このタイミングで来るのはおかしい。顔赤くなったままでなかっただろうか。すごく心配だ。

「お茶入れたわよ、はい」

「ありがとうございます」

早苗がこの時間に来るのは大体この時間まで神社の仕事をしているからだ。何をしているのかは置いといて早苗の話を聞くことにした。

「それで?今日はどうしたって言うの?」

「実はですね……最近よく外の世界のものが幻想入りするようになったんですけど、博麗大結界の歪みが原因なんじゃないかと思って霊夢さんに確認してほしいと思ったんです」

博麗大結界の管理は博麗の巫女の仕事となっている。ただ歪みが出るのは60年周期で1回だけであり、それ以外の理由としては何者かによって人為的に破壊されるかのどちらかとなる。少なくとも私が70くらいになるまで歪みは出ないはずだから、その出た歪みは人為的なものになる。博麗大結界の崩壊は幻想郷の崩壊を意味する重要事項。今日の怪我だって殺意に満ちた妖怪の決死の特攻のような感じだった。そのせいで航生の結界を通り抜けたのだ。

「これでも食えば?話すにはもってこいだろ」

背後から声をかけられ振り返る。

「あんた寝ときなさいよ……」

「寝れねーんだよチキショー」

「あなたが航生君ですね」

「?ああ、そうか。こうやってタイマン(仮)で話すのは初めてか。初めまして。航生って言うんだよろしくな」

「ご丁寧にどうも。私は風祝をしている東風谷早苗です。気軽に早苗って呼んでください」

「それにしても霊夢さんの噂本当だったんですね」

噂?人里で何か言われているのだろうか。あまりそっちには行かないからそういう情報は入ってこない。私に対しての噂とすればだいたい思いつかないでもないが身構えてしまう。

「どんな噂なんだ?」

「人里の新聞に載ってましたよ?『博麗の巫女 ついに結婚』って」

「「あのデマ天狗!!」」

やっぱり予想通りだった。最近風圧がすごいと思ったことがあったがその時近くに文がいた事になる。いい加減あいつもしっかりして欲しいものだ。記者を名乗るならもうちょいマシな記事がかけないのか。

「やっぱり嘘だったんですね」

早苗と守矢組は気づいていたようだ。逆にそれで助かった。これ以上変な噂が広まるのは困る。

「その辺に対しては既に対策済みです。あの人里には嘘だって言ってあるんで」

「「ナイス早苗」」

ホントに困るところだった。もしそれが信じられていたら、『博麗の後継者現る』などという記事を書かれかねなかった。大体博麗の巫女の後継者は紫が連れてきたりしていた。私の場合は別だが、今回はどうなるかわからないと言っていた。どういう意味なのだろう。

「それと、どうした?霊夢の顔がなんか少しだけ赤みを帯びている気がするけど」

「え!?うそ!!」

顔のあちこち触って確認するが、自分の顔を自分で見るには鏡がないとダメなのでどうしようもない。目の前の風祝は、何故かニヤニヤしているし、航生はなんか呆れたようにため息をついている。私のどこがおかしいというの!?

「頭」

「服装」

2人して何だ。揃いに揃って馬鹿にしないでもらいたい。というか、今さっき初めてあったばっかりなのに何故そこまで連携が取れる?かくいう私も取れないことは無い。それどころか1番取れる自信がある。それはさておき、もういつもなら寝る時間なのに、全く眠くならない。それどころか心臓バクバクで寝ようにも寝られない。自分の心拍音で眠れないなど滑稽すぎる。何故ここまで心拍が速くなる?

「霊夢さん!やはりそれは恋……」

「それ以上言ったら神奈子に言いつけてお説教」

「それだけは勘弁してください」

当然の報いというやつだ。私は何も悪いことはしていない。むしろいいことをしたと誇るべきだ。「駄目だこいつ・・・早くなんとかしないと・・・」

「あんたにだけは言われたくないわ」

「お兄ちゃーん!!」

いきなり聞こえた声に神社の鳥居の方を見る。するとそこには安定の無意識少女。古明地こいしがいた。地底の妖怪は地底から出ることを許されていないが、こいしはその能力ゆえ、黙認されているとか。それでももう何年も生きている妖怪だ。

「お、お兄ちゃん!?もしかして俺のことか?」

「今この場にいる男の人はあなただけですよ航生君」

確かにそうだが、何故ここにいる。そしてなんで航生のことを知っている。地底の方にはまだ行かせていないはずだ。今までに行かせたことがあるのは永遠亭、白玉楼、そして紅魔館だ。地底はまた今度行こうと思っていたのだが。

「こいし……あなた無意識でついてきてたでしょ?」

「うん!そうだよ〜」

「こいし、さとりはどうしたの?」

「お姉ちゃんは寝てるよ〜私は何もすることがなかったから来ただけだよ〜」

暇なんですねわかります。叫ぶと同時にこいしは航生に向かってダイビング。みぞおちに当たったのか少し腹を押さえている。気にすることではないが、それよりも……。

「霊夢さん。気持ちはわからなくもありませんが抑えましょう。相手はこいしちゃんです。無意識なんですから仕方ないですよ」

私の考えなどわかって欲しくないが、取り敢えず早苗に同意してその場に座った。

「俺そろそろ寝たいんだけど……」

「こいし、航生寝たいって言ってるから放してあげなさい」

「一緒に寝ちゃダメ?」

「な……!?」

以外!それは嫉妬!ではなく、さすがに驚かざるを得ない。それをやられると私にまで被害が及ぶ可能性がある。あんな変態とこんな幼女が一緒に寝たら……。

「流石に一線を越えるようなことはしねーよ。俺はただ単に寝たいだけだ。睡眠の邪魔をしないなら俺は別に構わないぞ」

「というわけだからよろしく霊夢」

こいしの顔にも早苗と似たようなニヤニヤ顔が浮かんでいる。いい加減その意味を理解したいところだが教えてくれるとは思えない。航生はなんとなく理解しているようだが、教えてくれないだろう。最悪無理矢理吐かせるのも考えに入れとくべきだろうか。

 

 

結果的に一緒に寝たが、次の日の朝早苗にめちゃくちゃいじられたのはまた別の話。



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襲撃

今日は曇りだ。昨日散々早苗にいじられて、その八つ当たりを航生にされた覚えがあるが、それは一応ちゃんと謝られた。朝ご飯を食べ、いつもの服に着替えて外に出る。曇りだとなんとなく気分が落ち込んで、やる気が出ない。そして話はいきなり変わり、俺航生は現在進行形で死に際に立たされている。何が起きているのかは考えるまでもないだろう。前にも似たようなことがあった。この時俺はそのままぴちゅらされたが、今回はそうはいかまいとなんとか逃げ出す方法を考えている。しかしながらいい手立てが全く思いつかない。時期としてはもう夏なのでとても暑い。この状態で引き剥がさないこいつはどうかしている。

「霊夢ー!邪魔するぜー」

玄関の方から声が聞こえた。声的に魔理沙だ。こんな時間から来るとなるとなにか悪巧みをしていそうな気がする。

「……………邪魔したぜ」

「待て待て待て待て!助けてくれ!」

「嫌じゃないならほっといてやれ」

「嫌じゃないけど暑いのは嫌だ!早く助けて!」

「無理だぜ。あとは頑張れ」

「なんかいうことひとつ聞いてやるから!」

「よし乗った!」

 

 

 

「すまん………無理だったぜ」

「起き上がれただけマシだ。感謝」

魔理沙がいなかったらまたピチュるところだった。まあいいや。魔理沙にはああいったが、何をすればいいか………。

「この薬を霊夢に飲ませてみてくれ。もちろん私が作ったことを隠して」

また始まった。魔理沙は威力寄りの攻撃魔法は右に出る者がいないほど得意だが、細かい作業は苦手だ。アリスを少しは見習って欲しい。

「毒ではないぞ。私も飲んでみたが体に異常は出なかった」

なんか信用性に欠けるが毒ではないならまあいいだろう。ただどんな薬を作っていたのかは教えて欲しい。実験が成功したかしてないかを判断する材料かないと厳しい。

「一応最近暑くなってきたから発汗性をあげる薬だぜ。永琳に聞いて出しすぎて脱水にならないようにはしてみた。夏にもってこいだと思うが」

確かに夏にはもってこいの薬だ。ただ人間の汗は過度に出すぎると脱水だけでは済まないことがよくある。そちらに関しては心配だが、その時は薬の効果抜ける(かもしれない)魔法を使ってもらえばいい話だ。

「わかった。取り敢えず今日の朝はゴーヤチャンプルーにする予定だったんだ。味が苦かったならカモフラージュ出来るだろ」

そして俺は、魔理沙の言われるがまま朝ごはんの支度をしようとしたが、流石に明け方はいくら夏でも少し涼しいのでお茶くらいは出しておいた。

「サンキューな、霊夢とは大違いだぜ」

(どれだけケチなんだあいつは……)

「まあいいや。取り敢えず作るか」

俺はもう1回台所に戻って朝ご飯を作り始めた。

 

 

「さてさて今日の朝ご飯は何かしら?」

いつも通りの食欲で起きてきた紅白。既に着替えている。いつもと順番が違うのでなんか違和感が抜けない。

「それじゃ頂きます」

手を合わせて、口に朝ご飯を流し込む。よっぽど腹が減っていたのかいつもより食べる勢いがすごかった。

「今日は朝からゴーヤチャンプルーなのね……」

「健康が1番だろ?」

なんとか言い訳することに成功。あとは霊夢が食べてくれればいいだけだ。ちなみに魔理沙も一緒に朝ご飯を食べている。来たついでに出しているのだが、魔理沙はそわそわしてバレかねない。もう少しセーブしてくれないと困る。

「ただ、その上からゴーヤの苦味成分そのままかけてるから、普通より苦いかもしれん。ま、大丈夫っしょ」

「私苦さには強いわよ」

これで疑うことはないはずだ。そして霊夢はついにゴーヤチャンプルー(薬入り)を食べた。やはり苦いのかもの凄く噛んでいる。なんとか苦味を消そうとしているのだろうが、俺達からすれば好都合だ。ついに霊夢はそのチャンプルーもどきを飲み込んだ。魔理沙いわく食べたあとかららしいからその後は普通に朝ご飯を食べ進めた。

 

 

 

朝ご飯が食べ終わりいつものお茶タイム。そろそろ効果が出てもいい頃だが、遅い。魔理沙の時はすぐに出たということは、唾液でとかそうとしたため消化されて体内部を動き回っているということだろう。浸透するまで時間がかかるのは仕方がない。

「なんか今日いつもより暑くない!?」

ついにその効果が出たようだ。魔理沙と俺は隠れてガッツポーズをした。ただそれにしては顔が赤い。たしかに暑いと顔は赤くなるが、なんか別の意味で赤くなっている気がする。もしかして副作用かなにかだろうか。まあ主成分が出たのでいいだろう。

「じゃあ私は帰るぜ。またな」

魔理沙は最近魔法の研究に打ち込んでいるらしい。いいことだ。

魔理沙が飛び上がる寸前から霊夢は声が掠れ始めた。体に害のある副作用なら魔理沙を呼び戻すが……。

「…………航生………」

低い声で霊夢が俺を呼んだ。体の調子が悪いのか聞こうと振り向いた瞬間。

「航生!」

少し小さめの声で叫びながら抱きついてきた。起きたらこういうことをしないはずの霊夢がこんなことをするのは明らかにおかしい。なにか原因があるはず。そしてその原因は一つだけだ。

「まさか………」

背筋に虫唾が走る。魔理沙は実験は成功したがやはりどこか抜けている。この時期この状況で出て欲しくない副作用ランキングNo.1は有名どころのアレだ。

「大好き!」

「やっぱりかー!!!」

そう、惚れ薬だ。考えなかったことはないがまさか本当に出るとは思わなかった。最悪だ。今日は色々とやらないといけない予定があるのにタイミングが悪すぎる。しかも、その予定は1箇所だけではなく数箇所を転々と動くためとてつもなくやばい。惚れ薬にもレベルがあり、自制心を少し緩めるだけのパターンとそれの強力版。もしくは『頭の中を直接薬の効果が切れるまで恋愛感情で埋め尽くす』のどちらかだ。自制心を緩めるだけなら好きとまでは大胆に言わない。つまり残されている選択肢はひとつのみ。

「やばい方の効果かよチキショー」

しかも、副作用でここまで出るとなるととてつもなく強力だ。これなら普通に惚れ薬と出して売ればある1部の変態(龍哉とか)には買ってもらえるだろう。

「今日は、いいえ。ずっと一緒よ!」

そこまで力説されると理性が持つか心配だ。このままでは外に出られない。しかし、この用事は済ませておきたいというのが今日の予定の9割9分9厘を占めている。残り1厘は俺の趣味なので後回しでもいい。それと今もうひとつ思い出した。強力な方の惚れ薬は効いた人によってはもっとやばい方向まで行くという。流石にそこまではないだろうと心の中でフラグをたてたのが間違いだった。

「航生~こっち向いて〜」

少しだけ嫌な予感がした。今それは勘弁して欲しいと思いながら俺は霊夢の方を振り向いた。

「大好きよ!」

そう言って何をされたか?言うまでもないだろう。しかしわからない人のために一応教えてあげようじゃあないか。この状況で起きる可能性のある出来事は1つ。

「わむっ!?」

やめろという前に盛大に唇を奪われた。

(普通逆だろちきしょー。たしかに俺にとってはご褒b、ゲフンゲフン、毒だ。こんなこと俺は望まない(嬉しかったのは事実)。普通に愛し合ってからこういうことをしたい。)

しかもこれが1分半続いた。流石に意識が飛びそうだったがなんとかこらえた。

「あの……取り敢えず人里行きたいんで放してくれませんか?」

そう言って聞くわけはなく、結局霊夢も一緒に連れて行く羽目になった。勘弁してくれ。俺こういう状況に陥ったことないんだよ。しかもこれ霊夢が正気に戻ったあと何を言われるか分かったもんじゃない。ほんとにやばい。このままじゃあの新聞が真実になっちまう。

 

 

 

〜人里到着〜

「人里着いちゃったよ……。魔理沙いるかな?」

「呼んだか?」

背後から声をかけられて跳ね上がり振り向く。

「お前!完全ではないけど半分くらい失敗してんじゃねーかこれ!」

「良かったじゃないか。おかげでハッピーエンドDA☆ZE」

ウザイ。その言葉は霊夢の言葉でかき消された。

「魔理沙!?航生は渡さないわよ!」

「別にとるつもりないぜ。安心しろ」

「出来るか!!」

とてもセンスのないノリツッコミのようなものが飛び交っている。そろそろ朝市が始まる時間だ。人が集まってくれば大ピンチ。博麗の巫女が博麗の巫女として居れなくなる。それは必ず阻止しなければならない。

「取り敢えずアリスのところ行くか……」

アリスにも用事はあったので丁度いい。この状態の霊夢を治せるか聞いてみよう。

 

 

「無理ね。逆によくここまで強力なやつ作れたわね」

あっさり断られた。希望が完全に打ち砕かれた。薬は薬と思ったが、今日は永遠亭は別の用事だかなんだかで開いていないことを思い出したため完全に治せなくなった。薬の効果が切れるまで待つしかないそうだ。

「そうだアリス。これ。頼まれてたやつ作ってきたぞ」

「ありがとね。お礼にクッキーでも食べてって」

「THANKS」

アリスのクッキーはとても美味しい。売り出せば普通に儲かると思うが、そのつもりは無いらしい。

「そうだ。このあと紅魔館行くならついてっていい?ちょっとパチェに用があるの」

「別に構わないよ。俺が用があるのはレミリアと咲夜だし」

「わかったわ」

 

 

 

「……………」

「……………」

「霊夢たち何時からそんな関係に……」

「なってないからな!?」

〜少年説明中〜

「なるほど理解」

何故かロリ吸血鬼(姉)とパーフェクトメイドは黙ったままだ。フランは普通に理解してくれたようで助かった。もし残りの2人がまだ勘違いしているなら然るべき制裁を……。

「やめてあげて」

そう言って止めてきたのは霊夢だった。

「そんな人を傷つけるあなたは見たくないわ」

確かにそれはある。何もしてないやつを傷つけるのは重罪だ。ここは霊夢の言う通り何もしないのが得策だろう。

「す、すまん」

「ふふ笑 分かればいいのよ」

こんな状態の霊夢にも尻に敷かれそうになる俺って一体何なのだろう。

「てか、そろそろ仕事したいから放してくれるとありがたい、というか放してくれないと仕事が出来ない。頼む、放してくれ」

ちなみに仕事というのは、咲夜とレミリアの戦闘訓練だ。直々に2人に頼まれた。しかも、紅魔館の当主にも頭を下げられると俺も引き受けずにはいられない。能力が復活しつつある今、鍛えて紅魔館を守りたいというのが本音だそうだ。まあ、俺も鍛えないといけないという事で丁度いいので引き受けた。

「それじゃあ始めるわよ……」

「ダメだ。悪いが、今のお前らでは俺を倒せない。それどころか瞬殺されて終わるぞ」

「言うわね……神槍『スピア・ザ・グングニル』!」

「ちょっとムカついたわ。幻符『殺人ドール』!」

「法則変化『反転』」

レミリアたちの放った弾幕が逆転し、本人達に襲いかかる。2人ともこういう自体に弱いのだ。まだこれは小手調べにすらならない。この程度でやられてしまうのであれば、この先すぐに死ぬと思う。現に俺もやられたのだから。しかし、自分の放った弾幕のことを理解していないわけはなく、軽々と避けていく。それが出来ないのであれば(以下略)。俺が普通にこの技を使えたのは、威力がほとんど出ていないからだ。2つのスペルが互いに相殺しあったせいで本来のものが出ておらず、簡単に防がれるのだ。

「こりゃダメだ。一人一人やらないとだな。まず咲夜からやろうか」

「わかったわ。奇術『エターナルミーク』」

四方八方に散らばる弾幕。確かに密度もあるしスピードもあるがこの程度でやられてしまっては幻想郷を守る博麗の巫女の補佐としての名がすたる。それに1度この弾幕は体験しているので避け方もわかっている。しかし、避けるつもりは無い。避けた時隙を作るくらいなら。

「全部たたき落とす!」

正確には切り刻むだがどうでもいい。避けられない速さは切れない。だけどなんとなくでも避けきれる。つまり……。

「すべての弾幕を切り落とせるってことだ!鬼斬『ラストエンペラー』!」

最後の一撃にふさわしい名前(センスは皆無)だ。目の前に迫る弾幕をスペルで上乗せした剣で弾き続ける。余裕があれば斬る。ただの人間ではない俺でも普通の人間と同じ感覚を持っている。それで生活しているため、戦闘の時はよく感覚が鈍る。俺の特技は反射を使用した行動。つまり反射神経がいい。問題は反射神経などを利用して戦う超攻撃特化型(ダメージディーラー)だということ。確かに恐れはある。死ぬことは怖いと思うし、防御に徹することもある。今はそんなことは気にしなくていいのだから、戦うことに集中できる。

「そんな……私のナイフが全部弾かれるなんて……」

「咲夜の得意な戦い方は速さと手数。俺は手数は少ないが速さでは咲夜を上回れるからな。手数で勝負できるのは自分と同じ速さ、同じ威力の攻撃をしてくる奴だけだ。手数で威力をあげるなら、一点集中の攻撃をすることだ。じゃあ次はレミリアの番だな」

「うちの咲夜よりも速いのね、あなた。『紅色の幻想郷』!」

ちなみにこの戦闘訓練は自分が強いと思うスペルを2度まで使えるというルールにしてある。その弱点を見つけて教えるのが俺の仕事だ。

「レミリアは威力と手数はあるが速さとバランスが取れてないな。これには……そうだな………紅符『スカーレットシュート 改』!」

レミリアのスペルを真似たスペル。密度もスピードもパワーも原作より強い。密度はそれほど変わらないかもしれないが、パワーとスピードだけは勝っている。さらに霊夢のホーミングアミュレットの性質を利用し、ある程度追尾できるようにもしてある。視覚誘導もできるので、離れたところから弾幕を向かわせることも出来る。先程も述べた通りレミリアのスペルは威力はあるがスピードがない。ほんの少しの隙間を見つけ侵入できる。

「ヤバッ!」

結果被弾。そのまま地面に落ちた、が難なく着地。その後俺は結果を伝えた。

「確かに吸血鬼と人間じゃ魔力に差はあるが、片方にないものをもう片方が持っている。レミリアの威力と咲夜のスピードを活かせばいいだろ。時を止めれば、速さは補える。ただしそれはその時の中で動けないやつだけ。俺はあえて動かなかったが動ける奴もいる。時を止めないで速さと威力を補えれば強いスペルが作れるはずだ」

「わかったわ。咲夜やるわよ」

「はい!お嬢様!」

「今日中に思いつくとは思わないけど、思いついたら教えてくれ。ちょっとパチュリーのとこ行ってくるから」

 

 

 

「それは本当か!?」

「ええ、ほんとに稀だけど起きるらしいわ。その稀が当たったわね」

「それじゃあこのままだと誰も勝てないんじゃ……」

「そうね。航生でさえギリギリだったんだからあれより多いはずよ」

「何の話してたんだ?」

何やらやばそうな話をしていた。俺でもやばいとは何のことだろうか。

「そうね……この話は主要メンバーを集めて話しましょう。まあ、魔理沙のせいで霊夢はあの状態だけど……」

「返す言葉もないぜ」

「場所は今夜7時。ここ、紅魔館の図書館でいいわね」

「取り敢えず私は白玉楼に行ってくるぜ」

「それじゃあ私は永遠亭と人里だわ」

「いや、永遠亭は俺が行くから、アリスは人里と妖怪の山を頼む」

そういうわけで、俺は永遠亭に向かおうとした。行こうとした時パチュリーに止められた。

「航生……あなたには先に話しておくわ。このあと何が起こるのか」

すごい勢いで不安が押し寄せてくる。これでまた誰かが死ぬかもしれないのならと怖くて仕方ない。それでも戦うと決めたのだ。

「わかった。覚悟はできてる」

そして俺はすべてを聞かされた。人間に強すぎる敵対意識を持つ妖怪が何年かに一回集合することがあるらしい。集合するというのは一つの集合体。つまり、合体するという事。そうすればその妖怪(集合したやつ)の力は元のやつ(集合してない奴ら)の力も加算されるので量によっては力だけなら力の四天王を上回り、魔力は月と幻想の賢者も上回る。そしてそれが俺を前に襲ってきたやつだという。扱いなれてない力といえども勝てないということは幻想郷で勝てないということ。夢の中で聞こえた不気味な笑い。これがそうなのだ。俺の力は紫にすら、それどころか今のところ幻想郷内最強の博麗の巫女にすら勝てない俺では話にならない。人間に対しても妖怪に対しても中立な紫や博麗の巫女である霊夢が狙われないわけはない。というか、この前俺が倒した妖怪は、俺を狙っていたんじゃなく、博麗の巫女(=霊夢)にやられた奴らだろう。霊夢を襲おうとしたが俺に見つかり止められた。博麗の巫女に殺されかけた妖怪は少なくない。だから紫より霊夢が狙われやすい。幻想郷を統制出来るのは博麗の巫女だけ。日本で言う天皇のような人だ(つまり、いないとその国が成立しない)。それがいなくなればそこは壊滅する。博麗の巫女は幻想郷を守るのが義務化されている。

「わかった。一応その話は今日の夜もう一回しよう」

そして俺は永遠亭組を連れてこようと空に飛び立った。自分を守るためには何かを犠牲にする。逆に他のものを守ろうとすれば自分を犠牲にする。せめて霊夢だけは守る。この時俺はこの思いが1番強かった。

 



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夢で見た世界

「それじゃあ話し合いを始めるわよ」

紫の号令で開始した話し合い。幻想郷の妖怪達が結託して合体し、強力な妖怪になる時期に当たった俺達。白玉楼にいる龍哉達や紅魔館の美鈴(門番中)を除く全員。人里にいる慧音や、永遠亭の永琳と鈴仙。そして地底と妖怪の山の奴ら。幻想郷のすべての場所のリーダー格が全員揃って話し合った。霊夢もいるにはいるがこの状態なのでその話は記録してあとから話すことにした。

「今回の妖怪達の結託は幻想郷を崩壊させかねない重要事。その管理者はとんでもない状態になってるから、代わりに魔理沙にも聞いてもらうわ」

「もう言わないでくれ。反省してるんだ」

「まあいいわ。ここの図書館に幻想郷の歴史の本があって、それを探っていたら妖怪達の結託と融合により人間達に被害をもたらすというものがあったの」

ザワザワしているが仕方ないことだろう。唯一経験してるのは紫と永琳だけだ。その2人はまたかと言った表情だ。

「今回の異変の続きだと考えればいいわ。それで対策を練らないといけないのだけれど、紅魔館と地霊殿。そして白玉楼。この3箇所はいいけど問題は『人里』『永遠亭』そして、『博麗神社』。この3箇所は危険だわ。特に博麗神社はね」

それは理解している。その歴史を俺は知っているからだ。

「さらに永遠亭は妖怪人間問わず治療をするから信頼があって狙われる可能性は限りなく低い。問題は残りの2箇所」

博麗神社は俺たち2人だけでは守りきれないし、最悪幻想郷全体まとめて破壊できるほどの力を持つ可能性もあった。幻想郷を破壊するにはその境目である場所を攻撃するのが1番手っ取り早い。ここにいる全員理解しているが、全ての妖怪は幻想郷の人間を食べることが許されていない。その代わりとして紫がさらってきた人間を食べるのだ。もちろん普通の力の弱い妖怪がそれで満足するわけがない。そいつらが集合して強くなる。数は多ければ多いほど強くなる。この世界の倫理だ。それが1つとなるのだから強さは桁違い。前に起きた時は恨みや憎しみを持つ妖怪が少なかったため紫と幽々子。そして月の賢者である永琳で抑え込めた。ただし今回はそううまくは行かないそうだ。

「人里が潰れれば幻想郷を維持出来ない。最悪博麗神社自体壊されても直せばいいから人里優先で防衛しようと思うのだけど」

この作戦は俺が会議開始前紫に言った作戦。結界は結界組(紫・俺・霊夢)でなんとかなる。だから人里を優先すべきと判断した。

「おい!そんな事したら!」

「そうよ!そんなことすれば…」

そう。この作戦の弱点。それは戦力の減少にある。博麗神社は後回し。それはつまりそこにいるやつだけで防衛するということ。人里に前に張った結界が破られるという事で完全な実力任せの戦闘になる。

「ん?あれ?私なんでこんな所にいるの?」

グッドタイミング。霊夢が正気に戻ったようだ。別にこのままでもよかったが、手間が省けて助かった。戻った瞬間だけとても和む雰囲気になったがそのめんどくさい状態は異変が終わったらという事にして話を続けた。

「私もそれで構わないわ。自分の身くらい自分で守れるし、最悪紫呼べばスキマで逃げれるし」

あっさり受諾。

「ダメだ霊夢!そんなの自殺行為だ!いくら不老不死の体でも死ぬことは知っているはずだ!」

「別に構わないわ。それが博麗の巫女の仕事なんだもの」

霊夢は自分の命は軽く捨てる癖がある。そこは直して欲しい。

「大丈夫。霊夢とみんなは死んでも俺が守る」

これが幻想郷に入る時に霊夢と紫に出した条件だ。そしてもう1つ。

「みんな覚えてるか?異変解決後言ったこと」

「覚えてるわよ。『1回だけなにか頼んだ時それを必ず受け入れる』でしょ?」

「それを今全員に使う。今言った俺の作戦とこの異変が解決するまで俺の言う命令に逆らうな」

皆が反発しないわけはない。しかし、この幻想郷の中でいくら束になっても俺に勝てる奴はいない。今回の妖怪の件は別だが、魔理沙たちのような主要メンバーで敵う奴はいない。もし逆らうなら俺を倒してからにしろ。

「ぐっ!」

「その作戦を前提に話を進めるわ。まず人里は防御に徹しましょう。絶対に攻勢に出てはいけない。博麗神社はあなたに任せるわ。それで本当にいいのね?」

「俺が出した条件だし、もちろんだ」

 

 

 

話し合いは続き、最終段階の作戦の説明に入ろうとした時。

「………ちょっと待って?」

先程まで話していたのは博麗の巫女の損失は幻想郷で1番の問題。霊夢は紫たちのような妖怪以外にも割と好かれているので、霊夢は死なせるわけには行かないため最悪のことを考えて死にかけた場合逃がすというものだった。この条件で反発していた奴らは全員了承したはずだったがこの作戦の深い意味を理解しているのは俺以外だと紫、幽々子、さとり、永琳だけだった。そしてこのタイミングで発言してきたところを見るに、霊夢も気づいたようだ。

「あなたまさか…!」

「そうだよ。たとえお前でもさっきの条件には従ってもらう。約束だったはずだが?」

この作戦の最大の目的は守ること。俺は俺自身を犠牲にしても守るという原理に基づいてできている。倒せなかった場合紫に頼んで俺ごと封印することにした。人間に封印術は通用するので封印を食らうということは死ぬということと同じなのだ。まあ、最悪の場合だしその点に関しては心配ないだろう。

「いやよ!私はまた誰かを失わないといけないの!?」

「………」

紫から聞いたが先代の博麗の巫女。確か名前は博麗霊奈だったか。霊奈さんは異変解決後突然と姿を消し、未だ行方不明だという。もちろん紫も相談されたそうだが見つけられなかったそうだ。その事を思い出した俺だったがこれが俺の持てる最高の策だった。これ以外にやり方が思いつかない。確かにもう少しみんなといたい。でも龍哉と彩夏も死ぬのは覚悟の上で今ここに立っている。命は尊い物。俺も生きている物だからその権利は平等にある。

「霊夢……気持ちは分かるわ。でもそれは彼が決めたこと。あなたはそれを覆していい権利は持ってないわ。しかもまだ仮定の話。その方向に行かないことを願いましょう」

「わかったわ……でも一つだけ言わせて。絶対に……死なないで」

「もちろんだ。ここで死ぬわけにはいかないからな」

 

 

 

その後も話し合いは続き、だいたい話し始めてから4時間。夜の11時になっていた。いくらなんでもずっと話を聞いているのでは眠くなるわけで、妖夢なんか既に何度かコクコク寝かけてたし、地底のさとりの無意識妹は彼女(=さとり)の膝の上で寝ている。一応休憩時間はあったが、ほとんどのやつが寝なかった。そのせいで終わる寸前で大体のやつが寝てしまった。こいしとか妖夢は仕方ないかもしれない。ある程度話が終わったため紅魔館の話は終わったが、こいしを地底に置いてくると言って少しだけさとりは離脱。残った奴らは寺子屋に向かった。そこは黒板もあるので図もかけて便利だからだった。和室は現代(俺たちのいた世界)でも落ち着くとして評判だ。眠くなるやつも少なからずいて、龍哉と彩夏は既に寝てしまっている。寺子屋に来て30分足らずで寝てしまうのだからやばいが仕方ない。現に霊夢でさえ寝てしまったのだ。もしも霊夢の前見た予知夢があれば対策はさらに立てやすいのに……と思っているがそんなうまく見るわけがない。ただ、そんなフラグを俺は見事に回収することになる。

「なんか霊夢顔赤くない?」

いち早く気づいたのは咲夜だった。流石ともいうべきだろうがそこではない。前のパターンで行くとこの後体をうねらせて、うなされていた。今回はもっとやばかった。

「いや!いやぁぁぁぁぁぁぁ!」

突然霊夢が叫び出した。夢を見ているのであってもここまで叫ぶことはないはずだ。どんな妖怪でも夢の中に入れるやつはいない(紫を除く)。だから夢の中で攻撃されるということは無いはずだ。そこら辺で寝ていた奴らもその大きな叫び声で目を覚ます。寺子屋についた時使った防音魔法で近所迷惑対策はできている。そんなこと気にして何になる。

「寝ているから聞こえないかもしれないが落ち着け!」

「やめて!いかないで!私の前からいなくならないで!」

その叫び声は少しずつ激しさを増して言った。慣れているわけではないので正直うるさい。こんな叫び声をするのは悪い夢を見た時くらいだろうが、ここまでなるだろうか?遂に魔理沙は耳を塞ぎ始めた。確かに耳を貫くように痛くなる声だ。アリスは何かを詠唱してるところを見るに防音魔法だ。その詠唱が終わった時そこにいた耳を塞いでいたやつ(魔理沙)が手を離した。それで普通の声くらいの大きさに聞こえているのだろう。それを使われてない俺は普通に聞こえてくるがそちらの方がわかりやすくていい。

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!いやぁぁぁぁぁぁぁ!」

しまいには肩を抑えて縮こまりながら叫んでいる。このパターンは確実に悪い夢。しかも確実性のありそうなものだ。

「はぁ…はぁ…はぁ…んっ!はぁ…はぁ…」

どうやら起きたようだ。ここまでやばいやつを見たのは初めてだ。終わると思っていたのに終わりはしなかった。

「航生やめて!死なないで!」

どうやらまだ混乱しているようで再び叫び始めた。

「俺は死んでない!ここにいる!大丈夫だから!」

なんか泣き止まない赤ん坊をあやしている感覚があるが関係ない。とにかく落ち着かせようとする。精神科はこの世界にはないのでなんとか落ち着かせるしかないのだが、気絶させればまた同じ夢を見る可能性がある。そう、この類の専門家は1人だけだ。

「なんかすごい叫び声聞こえましたけど大丈夫ですか!?」

さとりだ。ちょうど良くさとりがきた。

「さとり!なんか後ろにこいしいるけどまあいいや!この状態の霊夢落ち着かせられるか!?」

そして少し霊夢を見つめる。心を読んでいるようだけどなんか調子が悪そうに見えてきた。

「無理です!ここまで精神のバランスが狂っているのでは私ではどうにもなりません!恐らく反転させる鬼でも無理です!」

反転させる鬼とは鬼人正邪の事だ。あいつの能力は『ありとあらゆるものを反転させる』というものであるが、この状態ではそれを振り切る可能性があるという。この時俺は前に話したことを思い出した。

〜回想〜

「精神崩壊する可能性?」

『そうだよ。不老不死では生きる目的を失ったりした時精神の歪みがでかくなる。普通の人間も確かに起きるし、その状態はどちらも同じくらいだ。どんな治療を施しても絶対に治せない不治の病だ』

「じゃあもし崩壊したら!」

『その人は生きる屍と化すだろうね』

〜回想終了〜

「このままいくと霊夢さんは!」

俺には心を治すことは出来ない。たしかに俺の能力を使えば精神侵入することは出来る。しかし、自分に外が及ばないよう壁になるものはどけようとする。そうすれば精神の規則正しい並びが崩れ、精神崩壊を引き起こす可能性が高くなる。この状態の霊夢だと確実に起きるだろう。しかもその精神内の感情は自分に強く作用するので強い自我を保たなければならない。そもそも人の精神内で自分の自我を保つのにも相当な精神力を使うのに、プラスでその保つための精神力の数十倍の精神力を加算しなければならない。はっきり言って確実に精神崩壊を誘発させるだろう。

「そうだ!」

ここで1つ案が思いついた。この状態の霊夢を助けることができるかもしれない方法がある。

「こいし!お前確か無意識操れたよな!?」

「うん……そういうことね!わかった!やってみるよ!」

そう、無意識を操って夢の中で起きたことは現実だと思い込んでいる霊夢を元に戻せると思ったのだ。しかし、そんな付け焼き刃の考えなどうまく通用するわけはなかった。

「ダメ!操ろうとしてるけど何かが壁になってうまく操れない!」

このままでは本当に危ない。永琳もそれは理解していたようだ。精神がどんな状態かはわからないが、それが体に及ぼす影響は理解出来たようで少しずつ顔が青ざめていった。レミリアも能力が効かないと言っているしやばい。紫も精神世界との境界をなくそうとしたが無理だったようだ。紫の能力が使えないとなると、俺でも効かない。静かにさせるなら気絶させるだけでいいが、その間も精神は蝕まれるとさとりがいった。妖夢の白楼剣も考えたが、迷いがある訳では無いので効かないと本人が言っている。ここまで長くなるというのはほかにも原因がある可能性がある。今までの会話の記憶からすぐに理解した。昔いなくなったお母さんのことがトラウマとなっているのかもしれない。その時感じた恐怖が蘇って上乗せされているのだ。魔法通じない、能力使えない。物理では精神崩壊を招く可能性がでかい。最悪の条件下である。精神世界に綻びができると他の何者かの精神が侵入しやすくなってしまう。それはなんとか阻止しなければならなかったが、落ち着かせる手段がないためにどうしようもない。そして霊夢の体が小刻みに震え始めた。恐怖、絶望、悲しみ、憎しみと言った負の感情の全てと言ってもいいくらいのもので霊夢の精神が埋め尽くされている証拠だ。そして恐怖と絶望に昔感じた楽しい思い出もそのエネルギーを増幅させてしまう。

「なんとか落ち着かせられないのか……」

俺には抱いてあげることしか出来ない。力の無さを悔やんだが悔やむ時間はもうない。

「くそ!くそ!くそ!」

こうしている間にも霊夢の発狂が止まることはなく、もう霊夢は博麗の巫女の原型をとどめていない別のものになっていた。心拍も凄く、身体も震え、もちろん息も荒い。この状態はさとり曰く10分もたないそうだ。そしてまた、俺は会話の続きを思い出した。

〜回想2回目〜

『万が一精神崩壊が起きた場合、それを治すには類によるがそうだな……不老不死にある身近な人が死んだとかかな?そのパターンが1番多い。そういう時、死んでいた場合は治せないから気絶させたり記憶を改ざんするしかなくなる訳だが、もし夢の中とかで死んでて現実で生きているという錯覚に陥った場合、1番いいのは』

「いいのは……?」

『精神に入ってそれを直接伝えればいいが、崩壊した精神に入るのは命がもたない。だから外部からその人が生きているという証を見せるしかない。それは人によってそれぞれだから確定事項は何も無い』

〜回想終了〜

タイムリミットまであと3分。俺はこの方法を実行することにした。

「みんな下がって!」

これしか思いつかないがやるしかない。生きて欲しい。俺が望むのはそれだけだ。

「大好きだよ」

そう言って抱きしめていた霊夢を引き寄せた。そして静かに唇を近づけ触れさせる。これで少しでも心拍が遅くなれば、成功しているはずだ。

「やった!心拍が少しずつ落ち着いてる!」

塞いでいたからでもあるが霊夢は叫んでいなかった。と言うよりかは失神しかけたということだろう。でも落ち着いたのでよかった。

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…私…また……」

霊夢の体はまだ震えている。抱きしめているからこそわかる。息も荒いし、心拍も普通以上速いが仕方ない。今さっきまであんな状態だったのだから。精神力が弱くなれば、人間はたってられなくなる。それどころか体に力を入れることすらできない。霊夢の体重すべてが俺にかかる。人間ではなくても心はあるのだ。

「なんかご…めん…わた……しの…せい…で」

そしてそのまま力が抜けて眠くなる。最悪またなったらアレやればいいだろう。と言うよりこれは眠っているというより気絶したと言った方がいいだろうか。

「とりあえず永琳。悪いけど今日一晩だけでいい。看護手伝って。俺じゃ限界がある」

「わかったわ。鈴仙。永遠亭から今から書くものまとめて持ってきてくれる?妹紅にも頼んでいいかしら?」

「わかりました」

「分かったよ」

そう言って2人は永遠亭に向かった。

「それじゃあ私たちは帰るぜ。またな」

そして魔理沙とアリスも飛んでいった。

「咲夜、主として命令よ。フランを連れてきなさい」

「呼んだ?」

タイミング良すぎだろ。レミリアは吸血鬼。夜は誰も勝てないとされる夜の帝王だ。フランも同じでレミリアの事だ。夜だけは護衛補佐するという事だろうが、いてくれると助かるのは事実だ。

「少しだけ寝ていいか?流石に丸一日寝ないのはきつい。早めに休んどかないといつ襲撃されるかわかったものじゃないからな」

「そうね…私が見張ってるからあなたは…」

「いや、その役目は私がやるわ」

そこで永琳が名乗りを上げた。確かによく考えたら永琳がいたことを忘れていた。それに最悪紫もいるしそれでいいだろうか。

「そういうわけだから紅魔館組は1度戻りなさい。あなた達は夜以外活動不可に等しいんだから」

というわけで、3人全員帰宅した。そこには俺と霊夢。永琳と慧音が残った。ついでに言うとスキマから紫が覗いているがそこは気にしないでおこう。俺の疲労は一応限界で、もう目をつぶったらすぐ寝れるくらいだった。

「頼むわ…おやすみ」

俺はそのまま目をつぶり、すぐに意識が夢の彼方へ飛んでいった。

 



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甘え

記憶が曖昧だ。今私がなんなのかそれも理解出来てない。私が今どこにいて、何をしているか。それすら分からない。ただ外の声だけは少し聞こえてきた。

「そうだな。これで我らの悲願は達成される。これで望む世が手に入るんだ」

自分の声が聞こえるが、自分で発しているわけではない。自分がわからないこの空間で分かったこと。それは、今していることが私の本当の望みじゃないと言うことだけだった。

ーーーーーーーーーー

体がうまく動かない。動かないというより、とても長い時間運動していた選手のように疲労が溜まっている。ちょっと動かすのでも一苦労しそうな感覚とともに私は目を覚ました。目を覚ましてすぐには目の前が真っ暗でなんなのか理解出来ていなかった。ただ温もりだけが感じる。天気のいい時に私を包み込んでくれるような心地よい感覚だった。温かいその何かを探ろうと私は手をついて体を起こした。

「やっと起きたわね霊夢」

横には永琳がいた。

「私どれくらい寝てたの?」

「そうね……、会議の時間から途中で起きたけどすぐに寝たことも含めると、だいたい半日くらいかしら」

そんなに長く寝てたのか。よく見てみると、私には何やら点滴のようなものがある。そこまでやばい状況になっていたということだろう。謝ろうにもなんかその気分ではなかった。

「別に謝る必要ないわ。これが仕事だもの」

正直体にうまく力が入らない。確かに半日近く寝ていれば体の動きも鈍くなって当然だ。疲れもまだ取れておらず、とてつもない睡魔に襲われるが耐えられた。

「今何時かしら?」

「今昼の10時ね」

そんなに寝ていたのか。いつもそんなに長く寝ないので体の疲れは抜けるはずだが、抜けていることは無かった。

「感謝しなさいよ、ずっと一緒にいたんだから」

「ええ、もちろんよ。ありがとう永琳」

「私じゃないわ、今あなたが顔を埋めている人に言ってもらえる?」

そして私は顔を上げて誰なのか確認した。

「え!?え、あ…えっと……」

私を抱いていたのは航生だった。いつもなら起きている時間なのに航生もぐっすり眠っている。なんとなくだけど察しがついた。私が夢のことで発狂した後すぐ眠ってしまった。それがちょうど航生にだかれている状態で落ち着いて寝落ちして、少し寝たけど寝足りなくて二度寝した(している)という事だろう。あまりの驚きに口が開いたまま閉じない私に永琳は呆れたように呟いた。

「あなた凄かったのよ?恥ずかしいとか関係なく感謝しなさい」

もちろんだ。感謝しないわけがない。と言っても、なんかまた眠くなってきた。それでも寝るわけにはいかない。航生達がずっと私を守ってくれていたのだ。今度は私が守る番だ。夢のようなことにはさせない。

「とりあえずそこら辺見てくるわ。何かあったら困るから」

「わかったわ。航生は私が見ておくから行ってきなさい」

「いや、その必要はないぜ」

航生が起きた。目を擦りながら立ち上がって「ついて行くぜ」と言った。

「ありがとう。じゃあちょっと手伝って」

「もちろんだぜ」

そして私達は空を飛んで見回りを開始した。

ーーーーーーーーーー

「ちょっと夢の事聞きたいんだけどいいか?」

俺はある程度見回ったあと、霊夢に聞こうと思っていたことを聞いた。それは、どんな夢をこいつが見たのかということ。前回があるので、もしかしたらその夢の通りに事が運ぶのではないかと思い、対策目的に聞こうと思った。でも、霊夢にとっては考えたくない未来だと思う。ただそれを防ぐにはそれしかないと思っている。

「ええ、もちろんいいわよ」

そう言って彼女はためらいながらも教えてくれた。その夢の内容は予想通り前回よりも大幅にひどかった。なんと夢の中では生存者は霊夢だけだという。勝利したらしいけど、残ったのは彼女だけだそうだ。一人だけになるのを恐れた時に息が絶えそうだったのが俺だったそうで、それで夢の中で泣き叫んだと言うが、それが普通外の世界まで聞こえるのはおかしいし、その夢のことをはっきり覚えているのもおかしい。必ず意味があるはずだ。

「その夢が現実になる可能性が高すぎるのよね」

そうだ。前回もあるし、確実にないとは言いきれない。1つ気にかかることがある。俺も最近変な夢を見る。それは別の世界の夢だ。その中では誰かが世界征服を企んでいたのだが、場所は知らない、誰かわからないというとても不確定な情報なので警戒せざるを得ない。霊夢に続き俺までそういう夢を見るとなると、明らかに起こることであると予想できる。もし同時にそれらが起こるなら、それを防ぐのは難しい。1度に2つ来ないことを祈るしかない。

「そんな夢の通りには絶対にさせない。みんなで生きて宴会するんだろ?」

「ええ、酒飲むためには頑張らないと」

俺は酒飲めないが、それは関係ない。みんなで楽しく生きるためには結局終わらせないといけないのだ。

「さあ、いくぞ!」

 

 

 

 

「とか言って動き回ったのはいいけど、成果なしか」

いつもの家に帰ってやっと一息つけた。それまでは良かったが、問題は成果なしということ。やみくもに動いた訳ではない。何かありそうだと思ったところ手当たり次第に見たが結局何も見つけられなかったのだ。復活した霊夢も襖を開けると「だぁー!」と言って倒れ込む。疲れもあるだろう。しかもここまで何も無いとイライラする気持ちもわかる。

「まあ、そう言っても仕方ない。今は休んで明日に備えようぜ」

「そうね。じゃあ先お風呂はいっちゃうから沸かしてくれる?」

「普通自分でやるだろ……まあいいや。俺も入りたいし」

そう言って俺は風呂場に行った。

ーーーーーーーーーー

記憶が曖昧だ。それはあの夢の前の事、私は今日の朝ゴーヤチャンプルーを食べたのだが、それを食べた後の記憶がほとんどない。考えられるとすれば、あれに何か入っていたということ。もしくはあの夢を見たせいで覚えてないだけ。その後は普通に晩御飯を食べた。

「そろそろ寝るわ。色々あって疲れた」

疲れが表に出ているのは当たり前かもしれないが、いつもより疲れているのは数ヶ月一緒に生活していたからわかった。目は二重になり、大きく口を開けあくびをしている。

「ええ、おやすみ」

それを聞いた彼は目の前に敷いてある布団に潜り込んで1分経たないうちに寝息を立て始めた。

「………別にいいわよね?」

既にいびき(もどき)をしている航生だ。何をしても気づかないだろう。この時何をしているのか私自身理解出来ていなかった。彼がいびきを立て始めたあと確かに布団に入った。しかしその後、彼に気づかれないように彼の布団に潜り込んだ。

「だ、大丈夫よね?起きないわよね?」

潜り込んだ時にもぞもぞしたから起きるかと思ったが起きなかった。今は誰もここにはいない。何をしても問題は無いはずだが、私としては紫が起きてるはずなので警戒しきれない。特になにかする訳では無いのだが……。

「おやすみ……航生」

ーーーーーーーーーー

「なんか暑いな……なんか最近よく暑くなるよなぁ」

毎朝感じる極度の体温上昇に違和感を覚えながら目を開ける。

「………なんだよこいつ。寝ているとはいえどうにか直して欲しいよ」

夏だから暑いのだがそれに加えてこいつがいるからなおさら暑い。それのせいで毎回朝起きると汗がすごいのだ。昼夜の気温差が大きくなる夏。夜と朝方は少し寒いかもしれないが起きる時も暑い。

「汗拭き取らないと風邪ひいちまうよまったく……こいつ締める力強くね?なんか抜け出せないんだけど。どうすんだよもう……」

そして俺はこいつが起きるまで何も出来ず、起きた瞬間に何故か怒られたのであった。

 



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再会と攻勢

異変解決のための攻勢まであと10日を切った。霊夢の夢もあって最終的には人里周辺で戦うことになったのだが、しばらくは力を蓄える必要があるため防衛の主体は俺が受け持つことになった。龍哉と彩夏には「似合わない」と言われたけどみんなからの多数決で結果的に俺になった。

「何かする事無いなぁ。攻めてこない間の美鈴の気持ちがわかった気がするよ……」

「2人とも!寝ないでちゃんとしなさいよ!」

「そうは言ってもなぁ。何もすることないだろ」

暇である。ひーまひまひまひまひまひまひま(うるさい)。今は博麗神社に全員(俺、霊夢、龍哉、彩夏)が集まっている。4人で呑気にお茶をしている。そんな場合ではないのだが。

「そろそろ敵来てくんねーかなぁ」

「縁起の悪ぃ事言うな。来ない方が幸せだろ」

「そうだけどよー」

「そんなこと言ってると……」

『航生!聞こえるかしら?』

「思考の境界なくさないでくれますか紫さん」

紫の能力は『境界を操る程度の能力』こういったことも可能なのだが、これをされるとさとりと同じような感覚に襲われるのでやめてほしい。気持ち悪くなる。まあ、こんな話をしてる時に話しかけてきたということだから予想はできている。

『攻めてきたわよ。数は100くらい。』

「了解した。それじゃあ3人とも。行ってくるよ」

「気をつけなさいよ?」

当たり前だと言って俺は撃退に向かった。

 

 

 

案外楽に倒せて戻るまでに30分もかからなかった。戻ると普通に昼寝をしているやつを見つけた。俺だって寝たいんだよ我慢しろコノヤロー!

「ホント呆れてものも言えないよ」

起きていたのは彩夏だった。霊夢と龍哉はぐっすりと寝ている。2人揃って気持ちよさそうな寝顔しやがって……。確かにもう夜だし眠くなるのもわからなくはないが。俺と彩夏は夜型人間だが、霊夢と龍哉は健康的な生活重視なのでこの時間には寝ていることがほとんどなのだ。

「とりあえずお茶入れてくるよ。飲むだろ?」

「うん。ありがとう」

そう言って即座に台所に行き、お茶を入れて彩夏に出した。彼女はゆっくりお茶を啜った。

「やっぱり美味しいよね。航生と霊夢が入れたお茶って」

「お気に召したようならよかったよ」

『航生ー!またよろしく』

ゆっくりしようと思ったのにそれを邪魔する紫賢者。

「ハイハイ、今行きますよ。人里か?」

『いいえ、三妖精の巨樹よ』

 

 

 

「んで〜?あそこにいるのは誰だろなっと」

そこでは誰かが戦っていた。しかし苦戦気味で少しずつ木に追い詰められていた。数を聞いていなかったが割と大丈夫そうだった。

「大丈夫か!?……って」

「あぁ!大丈ぶ……」

そしてお互いの顔を確認する。見たことある顔だった。リアルではよく話した仲だった。

「颯じゃねえか!」

「航生!?なんでこんなところに!?」

 

 

 

「というわけで連れ帰ってきました」

「久しぶりだな」

「まずなんであなたがここにいるのか説明してくれるかしら?」

「出来たらしてるよ!」

こいつは立花颯。同じく俺の同級生で仲良く4人同じ高校生活を送る予定だったのだが、幻想入りしてしまいそれでもう8月末くらい?になった。普通の異変は数日で終わるが今回は数ヶ月もかかった。ちなみに外の世界では俺と並んで大の東方好きと中学のヤツらに言われてきたものだ。そのためか好きなキャラは違くても仲は良かった。こいつの好きな東方キャラは妖夢だ。

「ハイハイ自己紹介はそこまで。ある程度主要な場所で人選を分けるべきなんだけど航生と霊夢はこのまま博麗神社の防衛。龍哉と彩夏は今まで通り紅魔館。まあ消去法的に魔理沙と颯君は白玉楼の2人を連れて永遠亭に避難して防衛。いいわね?」

「「「ラジャー!」」」

「ちょっと質問いいか?」

手を挙げたのは颯だった。こいつアニオタの癖に(俺もアニオタかもだけど)頭は冴える凄いやつだ。多分戦況のことに関してだろう。

「俺が防衛するのは永遠亭でいいけどよ。2人は?航生達は2人で博麗神社の防衛か?いくら何でも人数足りなくね?さっき航生から戦況記録見せてもらったけどいくらふたりが強かったとしても危険すぎると思うんだけど」

ここまで頭が回るのもすごい。

「正確に言えば防衛待機ね。最後に攻めてくる場所が人里ってなってるから全体的に見ると周りから囲んで挟み撃ちにするって感じかしら」

「確かに最終決戦は人里だな」

ちなみにこいつの勘はよく当たる。それどころかほぼ百発百中だ。本人曰く小学校の頃からよくあるらしく何もかも先読みするので鬼ごっこでは捕まらず、サッカーのPK戦ではゴールキーパーがとんでもない反射を持ってない限り必ず入っていたし、自分で作ったテストの対策問題がテストと全く同じ問題だったこともあった。つまり、頭がいいのもあるが学校での成績が良かったのはこの勘の良さがあるからなのである。過去に1度強盗に出くわし、拳銃を突きつけられたことがあったらしいが約1mの距離から撃たれたのにそれをかわすという神業も見せた。勘がいいにしてはおかしいという話をしたこともある。

「今の話を聞く限り航生達は何となく分かってるんじゃないかしら?」

「「「もちろん」」」

「多分、というかほぼ絶対こいつの能力だよな」

「颯君の能力は『未来を見る程度の能力』ね」

『未来を見る程度の能力』

名前からしたら単純だが未来を見るだけではない。未来を見るということはその行く末を知れるということ。未来を知ってそれに関わりそうなところに干渉できるということだ。干渉すれば未来は変わるが良い方向にも悪い方向にも行くのだ。こいつが点数が良かったのはそういうことだ。俺達はだいたい分かっていたがそれだとかなり作戦を訂正しなければいけない。未来を見てなるべく安全な策を抗するべきだ。

「作戦自体に穴はないけど、人里だけじゃなく妖怪の山や守矢神社。博麗神社に紅魔館とか結構いろんなところに来るぞ」

「仕方ないとりあえず人選はさっきのやつでいいとして、やばい時は俺がスキマで送ればいいでしょ」

「そうだな。じゃあ今のところはその作戦で行こう」

 

ーーーーーーーーーー

「・・・様全ての手はずは整いました。いつでも仕掛けられます」

暗闇の中2人が喋っている。

「行くぞ・・・世界を越えすべてを支配するのだ。まずは手始めにこの幻想郷とやらを頂こう」

「はっ!・・・様の仰せの通りに……」

 

 



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敵襲

そろそろクライマックスですよ!


『やあ、また会ったね』

何もない白い空間の中でそいつは話しかけてきた。こいつには色々と世話になっている。本人曰く神らしいがそれにしては力が弱い。元はとてつもない力を持っていたらしいが今はこの状態なのだという。

「なんだよ夢の中で……。夢も見ずに寝たいんだけど」

『まあまあそう言わず』

「んで?何か用か?」

『君はわからないと思うけどこの世界、と言ってもこの世全体かな?』

焦らしてくる神にイラつきを覚える。早めに終わらしてくれ。

『既にこの世界との境目。つまり、博麗大結界が崩壊を起こしている。このままでは私は完全に力を失ってしまう。それまでに君には決着をつけてほしい』

そんなことを言っても簡単ではない。力があるないに関わらず安全第一だ。危険をおかしてるのだから別にそれくらいはいいと思うが。

『とにかく頼むよ。私を、私たちの幻想郷を』

大役だなぁ、と思いながらも何も抵抗できない夢の中だし引き受ける以外の道はない。その前にここを守るために俺は来たのだ。

「当たり前だろ」

毎日のごとく見るこの夢の正体はなんなのだろうか。

ーーーーーーーーーー

「結局こいつら寝やがった」

昨日よくわからないやつに襲われたけど航生に助けられ無事だった。さっきの話で俺は未来が見える能力があると分かったが気が気でなかった。未来が見えてもそれに反して未来を作るのが役目であると思っているが、『見えていたのに何も出来なかった』なんてことになったら何を言われるのだろうか。こんなことを考えるのはある奴の死が見えたからだ。あるやつと焦らす理由はない。死ぬ未来が見えたのは航生だった。霊夢が殺されそうになる時航生が身代わりになって死ぬというものだった。これを航生に言った場合「霊夢のために死ぬなら本望だ」とか言うだろう。怖さを克服したのには尊敬するが自分の命をもっと重く扱ってほしいと思う。朝の5時。霊夢は起きている。彼女にそのことを伝えるべきなのだろうか。もしこれを伝えたら航生と同じことを言うだろう。それは断じて困るのだ。死なれたら困る。それこそ幻想郷は崩壊する。

「あなたが颯ね?私は幽々子。よろしく」

「知ってるよ。それで何の用ですか?幽々子さん」

「いつ敵が来るかわかるかしら?」

「それなら多分……」

幽々子さんとやらに未来視(ビジョン)のことを話した。来るのは明日の夜。場所は人里で数はやく10数万。数だけなら明らかにこちらが不利である。幽々子さんはまだ能力が使えないため、言ってしまうと足でまといだ。何もせずに逃げてもらった方がこちらとしてはいいのだが、それはなんとなく断るだろうと思っていた。そもそも幽々子さんは自分の見た未来には出てこなかった。つまりどこかにいたということになる。最悪死んでいるということになるが亡霊なので死ぬ事は無い。いつまでたっても航生が死ぬ未来は変わらなかった。それどころか見える未来すべて航生が死んでいる。誰かに決められたかのように変わっていない。

「仕方ないわ。あなたには早めに私と一緒に永遠亭に来てもらうわ。別にあなたとしての問題は無いでしょう?」

確かに問題はない。個人的には二人が心配だが心配しすぎて邪魔になりたくはないし、それに二人がそれを望まないだろう。幽々子さんに言われた通り俺は永遠亭に向かった。

ーーーーーーーーーーー

今の戻るとそこに颯の姿はなかった。その代わりに置手紙があり「永遠亭に行きます」と書いてあった。もとよりその予定だったので何ら問題があるわけではない。私はいつも通り朝ご飯の支度を始めた。

 

3人も起きてきて朝ご飯も食べ終わってまた暇時間の襲来だ。何もすることがないと眠くなるのだがなぜか寝たいとは思わなかった。気になることが一つあった。今はちょうど航生もいないし龍哉にでも聞いてみることにした。

「ねえ、龍哉。ちょっといい?」

聞きたい話というのは、さっきも言ったが航生のことだ。航生は以前私の身代わりになって死にかけたことがある。なぜそんなことをするのか気になった。私に助かってほしいのかもしれないが、私はそんなことを望んでいるわけではない。私からすれば私の事より自分の安全性を優先してほしいと思っている。航生がなぜ自分を犠牲にしてまで私を守ろうとするのかわからなかった。

「今航生が寝てるから話してやるよ」

そういって彼は話してくれた。

「航生には昔彼女がいたんだよ。だけどその彼女は航生の前から姿を消したんだ」

「なんで?付き合ってたならいなくなる理由ないじゃない」

そのあとすぐに龍哉は話しにくそうな顔をした後ため息をして話を続けた。

「そいつは一時期行方不明になってて学校でも捜索願を出して探し続けた。それでも見つからなかった。それなのに航生はあきらめずに探し続けた」

なんか話の先が読めた気がしたので聞く気にならなかったが話を聞いた。

「多分お前が考えてる通りだよ。あいつは行きそうな場所を手当たり次第に探し続けて最後に行ったのが初めに告白した場所だったんだけど」

「もし言いにくいなら言わなくてもいいのよ」

聞こえていなかったのか話を続けた。

「そこで見つけたのは彼女の死体と遺書だったよ」

予想通りだった。過去にそういう状況に出くわしたことがある。人里の人間だったが内容もほぼ同じだった。

「その遺書には『あなたにもう迷惑はかけられない。ごめんね』って書いてあった。なぜそんなことを書いたのかというとそいつはよくいじめを受けていたんだ。成績そこそこいいし、先生からの評判もそこそこよかったからそれより下のランクの奴からは嫌われた。こいつはそれをやめさせようとなんども言ったが効果は出なくて結果的にそれに耐えきれなくなって自殺したんだ。でもこいつがそんなウソを認めるわけがなかった。いじめの事実を知っていたからな」

「それで自分の大切な存在を守り切れなかった後悔から自分を犠牲にしてでも守ろうとしてくれてると」

「そういうことだと俺は思ってる」

何も言えなかった。その話を聞いた後私はまた無力だと思った。少なくとも同居している家族なのだからそれくらいは気づいてあげるべきだったのに。でも同情も共感も意味はない。出来るのは少しでも支えてあげることくらいだ。私のような無力な人間を大切だと思ってくれているのだからそのお礼くらいはしてあげるべきだと改めて思った。そして彼に無理をさせたくない。その思いがさらに強くなった。そして自分自身の力だけで守れるようになろうと強く決心した。

__________________

俺が起きた時に龍哉と霊夢が何やら辛気臭そうな話をしているのが聞こえてきた。何を話してるのか聞こえなかったので聞かなかったことにした。といってもほとんど聞こえてなかったのだがそんなことは気にしなかった。そして俺は襖を開けた。

「ああ、二人とも起きてたんだ。おはよ」

「あ、ああ。おはよう」

聞こえてなかった振りをしているがばれてはいないだろうかと気になって仕方がないがどうでもいい。今気にするべきことはそろそろ来るかもしれない襲撃についてだ。そろそろとは言うが颯の未来視ではだいたいあと8日くらいだろうか。本腰入れてはいるものの暇なせいで昨日のような有様にはなりたくない。

「とりあえずご飯にするわ。座ってて」

霊夢は台所に向かっていった。居間には俺と龍哉が残った。彩夏はどうしたのかというとまだ寝ていて起きる気配が全くない。起きなかったとしてもあとで龍哉が無理やり起こすだろうから心配はいらない。

「なあ龍哉。友達のよしみで聞いてくれないか?」

俺の最後の望み。それをかなえるために相談するのは個人的に長く接してきた龍哉だと判断し聞いてみることにした。

「まあいいけど。なんだ?」

「最後の戦い。多分主犯直々に攻めてくるだろうから。そいつは俺一人でやらせてくれないか?」

もちろん無謀だというのはわかっている。俺だけで敵うかどうかわからない奴だろう。それでも俺が一人で終わらせたいという理由はいくつかある。そのうちの一つであり龍哉と彩夏は理解していることである。

「はぁ!?おまっ!何言ってんだ!」

「自分で何をしようとしているかは重々承知だよ。だけど言い始めたら曲げない性格なの知ってるだろ。お前にダメと言われても強行するつもりだけどそれについてどう思う?」

「……別に俺はダメとも何とも言わないけど俺以外の事も考えろよ?」

龍哉以外の事とは誰の事だろうか?別に俺を重要視してくれる奴なんて龍哉くらいだと思っていた。

「お前霊夢が自分の事をどう思ってるのか考えてみたことあるか?」

霊夢がどう思っているのかなんてわかるはずがない。俺は霊夢じゃない。霊夢がどう思っていようと俺は俺のすべきことをするだけだ。俺の命なんてほかの奴に比べれば軽いもの。そんなに重要視する理由はないだろう。俺の事をみて自分を捨ててほしくない。少なくとも俺はそう思っている。

「まあいい。お前がどう考えようと俺の知ったこっちゃない。お前はお前の好きなように生きて死ね」

「もちろんそのつもりだよ」

などと話していると。

「みんな~朝ご飯できたから食べちゃいましょう!」

霊夢が朝ご飯を持ってきた。いつもどおり和食だが俺は大好物だ。というかこれ以上にうまい和食を見たことがない。ただ下があるというわけではない。ただ単においしいということである。朝ご飯を食べながらも俺は考え続けた。霊夢が俺の事をどう思っているのかについて。俺の事を大切に思ってくれるのはうれしいのだがなぜ俺の事を大切なものとして扱うのかが理解できない。かといってそれを聞くわけにもいかない。無理に聞く必要はないのでこの時は聞かないでおいた。

 

 

朝ご飯も食べ終わり、龍哉と彩夏は紅魔館に向かった。確か二人は紅魔館を防衛する予定だったはずだ。そして博麗神社には俺と霊夢が残っている。霊夢と紫は博麗大結界を管理する者であり彼女らがいなければ結界は保てない。

「まあそろそろ来るな……何時かはわからなかったらしいからいつ来てもおかしくなかったんだけどな」

俺の勘はよく当たる。颯の未来予知ほどではないがそれでも颯が読み切れなかった部分もよく見れる。予定までまだ一週間近くあるがそれで油断するべきではなかった。

「おい!来たぞ!やっぱ人里だ!数は15ほど!」

「まじかよ…わかったすぐ行く!」

俺たちは空を飛んで今までにない速度で現場に向かった。

 

 

人里に着いたのだがその時にはもう遅かった。建物が焼け落ち、血が飛び交い、死体がそこら中に転げ落ちていたのだ。それを見て女子が耐えていられるはずはないわけで霊夢は膝を地面につけて口を押えている。降りたのは寺子屋のところであったのだが寺子屋の中には龍哉が彩夏に治療を受けていた。俺たちが来るまでに戦闘が繰り広げられ龍哉は敗北。もしくは相打ちになったということだろうと考えられる。もし彩夏の能力がなければ死んでいたかもしれない大怪我だったそうだ。しかし大怪我したのは龍哉だけでその他は軽傷。もしくは無傷だった。人里の皆が口をそろえて言っていたのは『博麗の巫女は役立たず』だった。人里の奴らはみんな寝ているから起こすわけにもいかず何とか怒りをこらえていた。霊夢もそれを聞いて落ち込んでいたのだが「事実だから仕方ないわ。私はこの異変では全くの無力なんだし」と受け入れていた。それを見ていて耐えきれなかった。それを力づくで泊めてくるのは霊夢であり、いやであってもその現実を受け入れる姿勢に俺は抵抗できなかった。

「なんかごめんな…俺のせいで…」

「別にお前が悪いわけじゃない。お前が自分を責める理由はない」

「お前らが来るのが遅くなるのを俺は知っていたし責めることはできない」

颯がこういうのは彼の能力故である。こいつは『未来を見る』能力の持ち主なのだが正確には『因果律を見る』という能力である。先の事を見れるし、逆に過去を見ることもできる能力だ。話を戻すが仮に着いていたとしても村人の半数以上がこうなる運命は決まっていたらしくどうすることもできなかったため手が出せなかったそうだ。ただもしも龍哉がいなかったらこの里の人間は全滅していたそうなのでそれ故に龍哉は里の人たちから礼を言われることになったのだ。そしてほかの場所で起きていたことを知らない里の者は本来異変解決が仕事の博麗の巫女が来なかったことで『役立たず』などといっているのだ。俺が証人になろうとも『人里の半数が死んだ』という事実だけが彼らを動かし霊夢に不満の声を浴びせた。

「起きてしまったことは取り返しがつかない。それよりも先の事を優先しよう。明日、もう一回奴らが来る。今回より強い幹部とかが顔を出すから戦闘は一層激しくなる。龍哉がこうなってしまったとなると頼めるのは航生、霊夢、紫、魔理沙、フラン、彩夏の6人だからお願いしたい」

断る理由はない。俺たちの使命であるのだから破れば裏切り者だ。破るつもりはない。

「よし、決まりだな。明日が本当の最終決戦だ。みんなで生きて、宴会しようぜ」



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決戦前夜

最後の方になると長くなってきますね。
まあ当たり前か


「龍哉がこの状態だと真面目にきついな…俺と霊夢だけでこの数を相手にすることになるかもしれないのか…そうはならなかったとしても戦力の差は歴然としてるからなぁ」

皆がそろえて首を振っていた。数の差はそれほどなかったとしても力の差がどうなるか分かったものじゃない。

「それでもやるしかないだろ。この世界で戦えるのは俺たちだけなんだからさ」

そう。今この世界でまともな戦力になるのは俺たちだけ。簡単に言うと戦えるのは俺たちしかいないということ。みんなの命が俺に、訂正俺たちにかかっている。幻想郷の人里の奴らもおびえている。俺たちがやられれば幻想郷は終わり、外の世界も崩壊する。負けるわけにはいかない勝負だ。とはいったもののみんな不安を隠せずにいた。チルノはいつも調子に乗っているがその分気持ちに迷いがない。そこだけはうれしいと思う。しかし他のみんなだ。幻想郷の住人全員が不安を抱えているのは間違いない。『死なないだろうか』と思っているのだ。それを口に出した奴がいた。それは人里の慧音だ。慧音が心配性なのは知っていたがここでそれを言うべきではないことの判断を怠った。その場にいた全員の表情が変化し不安の色に変わった。

「なんで下を向くんだ!」

そういったのは魔理沙だった。どうやら考えていることは同じのようだ。

「死にたくないから戦わないだぁ!?そんなのおかしいだろ!何もしなかったとしてもどうせ死ぬんだから!死にたくないならあらがって奴らを倒すべきだろ!?」

俺が言おうとしていたことを魔理沙は口に出した。みんなの表情が一気に引き締まり、その後に元に戻った。いつも通りの笑顔。それが見れた。みんなこれが最後かもしれないと思っていたようだった。戦えば道は開けるかもしれないということを魔理沙はみんなに伝えようとしたのだ。みんなそれを言われたことで目が覚め、気持ちに余裕を持ち始めた。そこに萃香と勇儀が言った。

「いつも通りだろ?みんなで終わったら宴会するんだろ?だったら頑張ろうぜ!」

みんなそれでさらに少し気持ちにやる気に力がこもったように感じられた。俺は引きこもりのクソニートだがやると決めたことにはどんなことがあってもやりたいと思う人間だと思っている。

 

 

「俺たちどうなるのかな…正直なところめちゃくちゃ怖いわ」

「そんなもん誰だって同じだよ。怖いさ…でもやるしかないんだ。頑張ろうぜ」

「そうだよ。死にたくないよ…。だから頑張ろう?」

外の世界グループのところに行って話をしようと思った。こんなことに巻き込まれてどう思っているのか改めて聞きたかった。近づいて話しかけたらちょうどよくこの話題になった。みんな怖がっているのは当然だ。でも妖怪というものをあまり体験したことがないから恐怖は倍増する。

「なあ、航生。俺たち…戻れるよな?元の生活に…」

「当たり前だろ。俺たちで幻想郷の歴史書に載ってやろうぜ」

 

 

「鈴仙。ちょっといいか?」

次は永遠亭組。…といっても永琳と輝夜は紫のとこにいるのでここにはいない。今ここにいるのは俺と鈴仙だけだ。

「怖いか?」

「当たり前ですよ。私だって死にたくないですよ。でも月から逃げてきた私を受け入れてくれた幻想郷を見逃すわけにはいきません。奴ら全員吹き飛ばしてやりますよ!」

「そうか…強いな鈴仙は…。頑張ろうぜ!俺たちの世界を守ろう!」

「うん!」

 

 

「航生。ちょっといい?」

次に話したのは妖夢だった。というかあちらから話しかけてきたのだが…。

「私ね…死ぬかもしれないから最後に相談しときたいことがあるんだけど…」

「死ぬことはないよ。まあとりあえず聞くよ」

「うん…私。颯の事気に入ってるの。前に早苗に話したとき『それは恋ですね』って言われたんだけどいまいちわからなくて…」

恋の相談をされてもいまいちわからない。でも一つだけ確信していることがある。自分の経験から言えることだから確実性がある。

「後から何もできずに後悔するより先にやって後悔するべきだ。お前がそういう気持ちを抱くのは当たり前なんだ。だから言いたいなら先に言っとけばいいんじゃないか?」

「うん。ありがとう…」

妖夢はそういって颯の方に向かっていった。

 

 

「早苗…少しいいか?」

次は早苗にした。

「なんですか?」

「早苗は怖いか?」

「異変についてですか?そりゃあ怖いですよ。死にたくありませんよ。でも私は幻想郷を出ても家にいても居心地悪いですし、そういう理由もあって戦うことを決意してます。自分の身くらいは自分で守って見せますよ」

「そうか…それが聞けて良かった。ありがとな…」

「いえいえ、何かあったらまた呼んでください」

早苗の明るさは何度でも心を綺麗にしてくれる雰囲気を醸しだしてくれる。俺もそれで心を洗われたような気分になった。その言葉を聞いた後俺は早苗のもとを去った。

 

 

「航生、少しいいか?」

屋根の上にいると魔理沙が話しかけてきた。どうやら何か言いたそうな眼だった。

「さっき、私がみんなに喝を入れた時威張ってたけどさ…やっぱり私も怖いわ」

魔理沙の手は震えていた。何時しかの霊夢を見ているようだった。昔からずっと霊夢と一緒にいる友人だからか似てきているのだろう。

「私今はこんな感じに見栄っ張りだけど昔から治ってなくて怖がりなんだよ。それを紛らわすためでもあるけどこんな感じに性格をずらしてったんだ。でも…ほんとは…」

魔理沙の手に力が入っているのがなんとなくわかった。そして魔理沙の目には涙が浮かんでいた。力強さのある彼女でもやはり女の子のようだ。俺は魔理沙の手を握っていった。

「死ぬのが怖くない人なんて一人もいない。それに魔理沙がそれならみんなに笑われるぞ?泣くのをこらえて俺たちの力を奴らに見せてやろうよ。弾幕は力だろ?」

「ああ、わかった。でもしばらく…ほんの少しだけでいいから胸を貸してくれ…」

俺はうなずくと魔理沙は俺の胸へダイブ。強く抱きしめてきたので苦しかったがそれは我慢した。俺は魔理沙の頭を少しだけ撫でてしばらく過ごしていた。

 

 

「ちょっととなり座っていいかしら?」

魔理沙を早苗に預けて俺は再び屋根の上に登っていたところ霊夢も登ってきた。一人でいたかったのだと思うが俺がいたからなんとなくってところだろう。

「私ね…自分でよかったのかなって思ってるの…異変解決をする巫女が私でいいのかって」

「そうだな。それはお前が決めることだ。自分がいいと思うならそれでいいんじゃないか?」

「ふふっ、あんたらしいわ」

霊夢の笑う顔が久しぶりに見れた気がした。本当の笑顔というのはあまり見たことがなかったから新鮮だった。この笑顔を見たい。そのためにこれまで戦ってきたのかもしれない。

「いつまでも一緒にいてくれるか?」

「ええ、もちろんよ。いつまでも一緒よ」

そういって俺たちは話した後部屋に戻って床についた。

 




次で最終回の予定です


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幻想の世界の物語

今回最終回です!


「よし!行くぞみんな!」

みんな起きた。レミリアたちに夜の見張りをしてもらっていたのだが全く来なかったようだ。何が理由なのかは知らないが、それなら好都合。来ないならこっちから仕掛ければいいだけの事だ。建物を出て人里を回っていると見慣れないところに不思議な形をした『穴』があった。見るからに怪しいのでこれが奴らのアジトにつながるものだとすぐに分かった。ここで俺はみんなに報告すべきなのだが俺はそれをしなかった。しないで俺はその『穴』に飛び込んだ。

 

 

暗闇をしばらく歩くと小さな光が見えた。その光の先はとてもきれいな結晶がふわふわ浮いていた。とても魅了される空間だったのだがそんなことにかまっていられない。ラスボスを探しているとあちら側から出てきてくれた。

「お前が今回の異変の元凶か」

「当たり前だ。我が名はアストラル・マリンホールド。魔王ではないしこの世界の人間ではない」

「とりあえず二択だ。俺にぶっ飛ばされろ」

「そんなことを認めると思うか?」

「んなわけねえわなっと」

不意打ちをしてきたのが見えていたので軽々とよける。反射神経だけは定評があるので簡単だった。

「「最終決戦だ」」

__________

「あいつどこいったんだ?人里内探してもどこにもいねえし…」

俺は航生がいなくなったのでとりあえず探しているのだが全く気配すら感じられない。

「龍哉!敵だ!お前はケガしてるから無理はするなよ!」

颯からの連絡が来たがすぐに途絶えた。何かが電波の障害となりちょうどよく通信が切れたのだと思った。急いで応急処置をして建物を出るとそこはすでに乱戦状態だった。ほとんど颯が倒していたようだがその颯も限界に近いようだ。雑魚がたくさんではなくある程度強い奴がだいたい15人くらいいたので消耗もある程度は早くなる。颯は息を荒くして地面に足をつけている。当たり前ではあるのだが、何か気になることがあった。ほとんど颯が戦っていたはずなのにその周りも体力の消耗が激しいことだ。いくらなんでもおかしかったので考えてみたのだがすぐに答えは出た。敵の能力のせいだった。おそらく敵は魔法か何かを使い相手の体力、もしくは生命エネルギーを吸い取っていたのだと思う。それを自分の力にできるというところだろう。それが誰なのかわからないが颯たちが戦っていられるところを見るにその能力者を倒せたということだろう。俺も加勢しようとしたのだが体が思うように動かずこのまま参加すれば明らかに足手まといになるのでしばらく能力でサポートすることにした。

__________

「くっそ~こいつどんだけ強いんだよ…さっきから攻撃してもしても体力減ってねえじゃねえかよ…減ってないんじゃなくて回復してるのか?」

変な空間に誘い込まれた俺はアストラル。通称アストと呼ぶことにしよう。アストとの対決を1時間ほど継続中。しかしあいつの体力は一向に減らず、しかしこちらの体力は減る一方だった。しかし、途中から顔に焦りが浮かんでいたところを見るにどうやら体力が減ってきているということだろうか。一人で何かをつぶやいている、というか誰かと話そうとしているのだがつながっていないようだ。まあいい。こちらの目的を終わらせれば帰れるのだから。

「時間はかけたくない。すぐに終わらせるぞ」

「いいだろう。この私の力を見せてやろう」

そういって双方武器を構えた。俺は剣だが、あいつは魔法を使った両手剣。明らかにこちらの方が不利だ。しかし今となっては考えてる暇はない。力押しで勝つしかないのだ。

『少し力を貸してあげるよ』

誰だと思ったが誰の声かすぐに分かった。こいつは自称神を名乗るやつだ。ただ俺の体を修復していたところを見るにそれくらいの力はあるということだ。俺の力だけでは勝てそうにないのは自分自身わかっていた。しかし力を借りることを俺は拒否した。自分の未来くらいは自分で切り開きたい。

『頑張れよ…』

「行くぜ!俺の力を知らしめる。剣技『幻想剣(イマジネーションブレード)』」

「火炎『双竜爆炎撃』!」

二つの攻撃が混ざり合いとてつもない余波を感じて押し戻されそうになる。その余波の影響か空間がはがれ始め人里の家が見えてきた。この時に颯が最終決戦が人里といっていた意味が分かった。下では颯たちが戦っていた。やはり霊夢も戦っていた。当たり前なのだが。

「負けるかぁぁぁぁァァァァァァ!」

「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

そして相殺。下にいた敵たちはその余波にやられて消滅。俺たちも反動で吹き飛ばされた。すぐに剣を持ち突進。アストも剣を持って突っ込んでくる。

「「これで終わりだぁァァァァァァ!」」

そして俺たちの剣はどちらも交差した。そして両方の心臓に突き刺さっていた。そしてその状態を耐え切れなくなった俺はそのまま地面に落下。同じく目の前のラスボスも俺の攻撃を受けて地面に落下。直後体が透け始めた。

「どうやら…私の負けなようだな…今回は負けでいてやるが…次はこうはいかないぞ…」

少しずつ近づいて俺は言った。

「次はないぞ…何度だって止めてやるからな…」

その言葉を最後に彼の体は完全に消え去った。そしてその場にまた別の人間が姿を現したのだった。

『ありがとう…助けてくれて…』

若い女の声だった。彼女が何者なのかを俺は問いただした。彼女曰くアストに封印されていた人間で体の自由を奪われて気が付いたら意識がアストと一緒だったらしい。自我だけ封印すれば生き物はただの人形と化すのでそれで自分の中に取り込んだのだ。

「助かったならよかった…君はもう動けないんだろ…?言い方悪いかもだけど早く成仏してくれないとこっちもスッキリしない」

『うん…じゃあね…』

そういって彼女も体が透け始め、すぐに消えていった。そして体が耐えきれなくなり俺はその場に倒れこんだ。誰かが叫んでいる声が聞こえたが詳しく聞き取ることはできず体も力を入れられずあきらめて俺は目を閉じた。

__________

「航生!」

相打ちで倒れこんだ彼のもとに私は向かっていった。すでにもう虫の息だった。目をつぶって私の声にも反応しなかった。というより反応できなかったというべきだろうか。指先すらピクリとも反応せず自分の手で心臓を抑えていた。本来心臓を刺されたりした人間は数十秒で死に至るが、航生の場合魔法である程度固定しているので何とかもたせているということだ。

「なん…と…か……なったな…」

「なんでよ!嘘つき!死なないって言ったじゃない!」

「仕方…ねえ…だろ…俺の力…じゃ…敵わなかったんだよ…」

かすれた声で話をしているがもうすぐ力尽きるであろう感じだった。そしてこの状況に私は既視感を覚えていた。それはこの前見た夢だった。その夢ではちょうどこの状況と全く同じことが起きていた。認めたくなかった。目の前で人が死ぬということを認めたくなかった。大切な存在が目の前から消え去るという事実に目を背けたかった。それができないのが現実の残酷さだった。私の膝の上で目を閉じている彼に何もしてあげられなかった。力が落ちていく彼の目には涙が浮かんでいた。

「なん…だろうな…死にたくないや…ははは…」

こらえきれずに涙を流す彼と一緒に私の涙腺も一気に緩んでいて涙が出た。とても耐えられるものではないのが悲しみという感情である。

「れい…む…」

かすかに聞こえた彼の声に私は反応した。

「なく…なよ…おれ…死ぬんだから…さい…ご…くら…い…わらっ…て…くれよ」

笑えるわけがない。こんな状況で笑顔で入れる人なんているはずがない。だけど私は彼がいつか戻ってくることを信じて今出せる最高の笑顔で言った。

「行ってらっしゃい…航生」

「ああ、行ってきます…」

彼も笑顔を見せてくれた。はじめて彼の本当の笑顔を見た気がした。私の手を握っていた彼の手は何時しか私の手を離れ、地面に落ちて行った。

「行ってきますじゃないわよ……バカ!」

__________

「こいつ…ほんとに死んだのか…?」

全く動かなくなってしまった航生を抱いている霊夢を見て思った。

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

霊夢の叫びがみんなの耳を突き抜ける。隣で彩夏が口を押えて涙を流していた。俺は彼女の背中をさすった。もちろん彩夏の様になっていたのはほかにもたくさんいた。アリスや鈴仙、咲夜もそうだし、泣かずに耐えていたのは俺と颯以外だと紫だけだった。近づきたいけど彼女がいるので近づけない。だけど仕方がない。今は彼女を一人だけにしてあげるのが一番いいと思った。俺たちはその場を後にして寺子屋に戻った。

 

8/21

異変解決

負傷者10人ほど

死亡者1人

 

__________

「みんな…こうなるよな…」

寺子屋に戻った私たちだがみんな何とかなくのをこらえているという状況。何とかしたいがそんな力は私にはない。目の前では霊夢たちが泣いているし勇儀達は鬼なので悲しくても泣くことはない。そこが強いところだ。声を出して泣ける状況ではないためかの霊夢でさえ声を出すのをこらえているのだ。

「魔理沙…少しいいかしら?」

紫が隙間から手招きしているのに気付いたので私はスキマの中に入った。

「どうしたんだよ…」

「一応異変解決したからよかったわね。まずはお疲れ様」

異変解決より航生が死んだこと自体に気がとられていたのですっかり忘れていた。

「航生が死んだことは悲しいけど我慢して前に進むしかないの。これからの復興についてはあなたを主体にしようと思うのだけどいいかしら?」

「ああ、もちろんだぜ。霊夢が本来ならするわけだけどあの状態ならしばらく立ち直れないだろうからな」

この状況で霊夢にこの仕事を任せるのはさすがに荷が重すぎる。私は紫の申し出を快くではないが引き受けた。スキマの向こうでは霊夢が完全に生きる目的を失ったかのような状況で座り込みそれにアリスが付き添っている。

「とりあえず詳しい話はまた今度しよう。今はあいつをそっとしておいてやろう」

あの空間にいるのはあまり好きではないので私は紫のスキマで途中から盗み聞きしていた幽々子と一緒にお茶をすることにした

__________

「もう1か月か…早いのね…」

あの異変解決から1か月が経過した。私はいつも通りの生活に戻った。紫の計らいで異変解決後の復興のリーダーは魔理沙が自分から受け持つといった。外の世界から来た3人は親友を失った悲しみからすでに抜け出し幻想郷で普通に暮らしている。尊敬できる復帰力だ。

「航生…あっちでは元気にやっているかしらね…」

幻想郷で死んだ人間は冥界もしくは地獄に送られる。映姫の書物に航生の事はまだ書かれていないし、冥界にも新しく来た人はいない。

「航生……」

彼の事を考えるたびに目から涙が出てくる。こらえきれずに絶え間なく流れる液体を手で拭いながらなんとか泣くまいとしているけれどもこれ以上耐えられない。博麗の巫女としての仕事も最近は安定してきているが仕事中にでも思い出すと吐きそうになってしまう。今も何とか吐かずに耐えている。彼のために何かしてあげたいという後悔が私に波のように押し寄せてくる。ひどいときなんて仕事中に倒れてアリスに介護されていたこともある始末だ。今は縁側でお茶を飲んでいる。一人でお茶を飲むのは久しぶりだった。今までは航生とよく一緒にお茶を飲んでいた。その時のことを考えても二度と彼が返ってくることはない。彼と何気に取った写真だけが残っておりそれに何度も涙を流したことがある。

「航生…」

『おいおい…そんなに泣くことないだろ…そんな状態じゃ博麗の巫女なんて務まらないぞ?』

ついに幻聴まで聞こえ始めた。そろそろ本格的にやばくなってくるころなんだろうなと実感した。

『待て待て。まだ生きてるだろ…というか外傷ダメージでしか死なないから大丈夫だろ!あ、だからといって自殺はするなよ?』

聞き間違えではなかった。声の聞こえた方向へと目を向ける。何度も何度も聞いた声。過去にも似たようなことがあった。しかし颯の未来予知ですら見えなかった先の未来。それがちょうど今だった。目を疑った。そこには死んだと思っていた彼、航生がいたのだ。再び会えた。とても嬉しかった。しかし、体にはちょうど剣を回転させたような大きな穴が開いていた。再生しきっていないような感じの体になっていた。心臓のところにはぽっかり穴が開き内臓が丸見えだったが、航生であるとすぐに分かった。しかし見ているうちにみるみる穴は塞がっていき完全に穴は見えなくなった。私に笑顔を向けてくれている彼こそが私の望んだ未来だった。私は耐えきれなくて彼の胸に飛び込んだ。そして言った。

「お帰りなさい…航生」

「ただいま…霊夢」

__________

「お前らそんな仲だったっけ?あと航生は数十発殴らせろ」

「返り討ちにしてやるぜ」

くだらない会話をしているが今日は異変解決から2か月が経過した日だ。今日は紫によって宴会が行われる日だった。本来なら今日ちょうどこの日に葬式が行われる予定だったそうだ。誰の葬式かって?そりゃもちろん俺のだろう。そしてなぜ俺が殴られろといわれているのかというと今日の宴会と同時にもう一つイベントがあるから…というのは嘘であの日(俺復活)以来、霊夢が「さんざん私を悲しませたのだから少しくらい言うこと聞きなさい」というのでしばらく俺は霊夢の奴隷として生活している。しかし、それも今日で終わる予定だ。話が脱線したので戻すが、俺たちがこういわれている理由は霊夢が俺の手を握っているからだ。といってもその手はもうすぐしたら俺の手を離れる。どういうことか皆さまならもうわかるだろう。

 

 

~思考模索TIME~

 

 

恐らくほとんどの人は答えが出ただろう。言わなくてもわかると思うが答え合わせだ。自分の口から言うのはとても恥ずかしいのだが、今日はまあ、その…まあ、俺たちの結婚式が開催されるということである。そう、手を離れるというのはその当事者である霊夢は着替えなりなんなりがあるためその準備に向かうのだ。

「そろそろ時間かしらね…じゃあ航生、またあとでね」

「私もその手伝いしないといけないから行ってくるねー!」

「「おおー!行ってこい!」」

そうして彼女らは準備するために部屋に向かった。ちなみに会場は博麗神社ではない。博麗神社のほかにもう一つの神社がある。そう、守矢神社だ。守矢神社の早苗が寝泊まりしている部屋が準備部屋になっているそうだ。片づけをしているときに何やら叫び声が聞こえたので何があったのか気になったが深く探らないでおいた。

「まあ俺たち二人になったわけだけど…とりあえずおめでとさん」

「お前が素直に祝うとか雪でも降るんじゃないか?」

「うっさいわ」

「いやいや私たちだっているんだからな?」

話に割り込んできたのは普通の魔法使いと人形師、魔理沙とアリスだ。アリスも後で手伝いがあると思っていたのだがどうやらそこは経験者がやった方が良いらしくて、それならなぜ早苗が呼ばれたのか気になったがそれは後で聞くことにした。

「航生…結婚おめでとう」

「私からもおめでとさん」

「ありがとな二人とも。まさかこの年でこんなことになるなんて思ってなかったよ全く」

俺は現在16歳。霊夢も同い年で16。霊夢はいいが俺は外の世界では完全に法律違反だ。だから違和感があるものの祝ってくれるのでちゃんとお礼はしておく。

「博麗の巫女の連れになるんだから頑張らないとね」

「変なプレッシャーかけないでくれよ」

「今日の夜に宴会やるでしょ?その時は少しくらいは一緒に飲みましょう?」

「もちろんだよ」

 

 

 

 

 

「さてさて時間になりそうだから来てみたらなんであんたがここにいるんだよ紫さん?」

「あら、なんとも口の悪い。私そんな子に育てた覚えは」

「俺はお前の子供じゃねぇ」

会場に足を運んだ俺は用意された座布団の上で静かに座っていた。時々出されるお茶を飲みながら時間を潰している。そして人がどんどん変わっていく。今は紫が俺と話している。

「異変解決おめでとう。それに結婚おめでとう」

「ありがとうな。一応ちゃんと礼はしとくよ」

紫は扇子で自分の口を隠しながらおしとやかな雰囲気を醸し出そうとしているが中身がこうなので明らかに別の雰囲気になっている。それでもおそらく紫とまともに話すのは何気にはじめてな気がするので何とか話を振ろうとする。

「とりあえず私はほかのところに行ってきますわ。準備担当でもあるから」

「おう、行ってこい」

そして紫は立ち上がって部屋から出て行った。

 

それから何人もこの部屋を出入りし今回の式は俺の知っているキリスト方式で行われることとなった。その理由としてはこの場にいるほとんどの人が知っているからということだ。そしてキリスト方式でやるのに欠かせないのが神父であるがその役目は外の世界の奴だった早苗が引き受けてくれた。その話がされていた時『目の前でキスを見るのは嫌ですけどね』などと話していたらしい。

「それでは新婦が入ります」

知らないうちに結構時間が過ぎていたようだ。急いで姿勢を正して前を向く。襖をあけて入ってきたのはまるで別人のような霊夢だった。いつもはほぼ赤しか着ない彼女のためほぼ反対の白を着るのも珍しくとても美しかった。

「それでは…あぁーもう!無理です!こういう時でもいつもどおりが一番です!」

ついに早苗が耐えきれなくなって本音がポロリ。周りの人たちもそれに便乗してそうだそうだとヤジを飛ばしている。その多くは外の世界出身の奴らだった。

「さあ!早く済ませてください!誰にも盗まれることのない濃いものを!」

その言い方だと誤解する奴も出てくるからもう少し言い方変えてくれ。みんなヒューヒュー吹けない口笛を吹いている。それに呆れて二人でため息をついた。そして向き合って…俺たちはキスをした。お互いに表せる最強の愛情を込めながら。

「愛してるよ。霊夢」

「私もよ…航生」




一応続編は考えています。
というか書きます。皆さんこの後の話気になると思うので
書いたら読んでくださいね!


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異変後番外
永遠を誓った少年少女


もう二度とこんなシーン書かない



「「よっしゃー!今日は飲むぞ!」」

「「「うおおおおおああああああ!」」」

鬼二人と男3人が叫ぶ。その3人の中に俺もいるのだが。

結婚式も終わり、前から予定していた異変解決祝いの宴会。そして俺と霊夢の結婚祝いも兼ねたものらしい。鬼と男には「異変解決後のいつもの宴会だと思ってくれればいい」と言ってある。だからこそこんなに騒ぐのだ。

「じゃあそろそろ始めるか!異変解決、そして博麗の巫女結婚を祝って!乾杯!」

魔理沙が号令をしてみんなコップなり盃なりを打ち合ってお酒を飲み始める。俺たち外の世界の住人はこの年でお酒は飲めないのだが場の雰囲気に遅れては困るため飲んでみることにした。もちろん最初は抵抗したのだが鬼もいたのでほぼ強制的に飲まされている男を一人発見した。俺はそいつを見捨てて颯と飲むことにした。彩夏はどうやらにおい自体だめならしく、飲んでみたもののたくさんは飲めないので少しだけということで話を通らせた。俺のところと霊夢のところにはそれぞれ結構な人数の人が寄ってきた。とくに俺のところには異変解決の祝いと結婚祝いの2つが来ていたので落ち着いて飲むこともできなかった。割とちゃんとしていそうな慧音先生でさえこういうお酒の席では羽目を外しておりいつもとのギャップが凄すぎて笑えた。

「異変俺たちで解決したなんていまだに信じられないよなぁ!」

「そうね。私たちがこの世界を救ったなんて信じられないよね」

「お~い!たs」

「ほらほらまだまだあるから飲め飲め!」

口に盃を突き付けられている奴はほおっておいてみんなンでワイワイと話を続けた。最初はダメだった彩夏も少しは飲めるようになった。熱でアルコールのにおいが鼻に届いてきつかったらしいが何度か飲んで人並みには飲めるようになったそうだがまだ早苗と同じくらいだそうだ。ちなみに早苗はどうしたのかというと霊夢のところでお酒を注いで回っている。彩夏がなぜ動かないのか。違う、酔っ払って動けないのだ。すでにアルコールが体に回って酔っ払ってしまっているのでそれは不可能。早苗の場合お酒を飲むのはだいたい最後のほう。片づけを忘れてみんな寝てしまうときとかに一緒に飲むそうだ。

「それにしてもお前酒強かったんだな」

「いや、そんな強いわけじゃないけどアルコールのにおいとかが充満してる部屋とかにいたから全然問題ないってだけだよ。それにすんげー小さいころに酒飲んでいたっていうし」

「強いというか慣れてるってこと?」

「いや強いのもあるかもしれないけど慣れってのもあるかもしれない」

「ほらほら新郎まだまだあるぞ~」

俺のコップになみなみ一杯萃香が酒を入れてきた。いやいやいくらなんでも慣れてないやつが飲むとアルコール中毒になりかねないから勘弁してください。といった声は届かない。入れてもらった酒を飲まないわけにはいかない。とか言っているのに普通にその量を飲み干してしまった。割とうまかった。

「いやいや、お前どんだけ飲んでるんだよ…よく大丈夫だな…」

俺たちだけでなくこの場にいるほかの幻想郷の住民も楽しんでいる。この場にいれるだけでとても嬉しかった。

__________

「あいつらも楽しんでるな…」

私の視線の向こうには航生たちががやがやしながら酒を飲んでいる。かくいうこっちもこっちで騒ぎ立てている。ただ一つ気になるのはなぜ結婚した二人が一緒にいないのかということ。結婚祝いと解決後の宴会は別のものとして考えているのかもしれない。私からしたら一緒でもいいと思うのだが。

「ま~り~さ~こっちで一緒に飲みましょうよ~」

そしてまたまた視線を変えると霊夢がお酒の瓶を持ちながら私に向かって手招きをしている。

「お前夫のところに行かなくていいのか?」

「またあとで一緒に飲むわよ。今はあんたともいいかなぁって」

気持ち悪い。前と性格がだいぶ違う。紅霧異変の時も春雪異変の時も割と言い合いながら喧嘩していた記憶しかない。しかしそんなことはしにくくなってしまった。彼女は結婚してもう一緒にいるべき人がいるのだから霊夢に対して少しばかり抱いていたこの感情は押し殺して仲良く接していくことにした。

「わかったぜ…でも飲むといったからにはすんげ~長く付き合ってもらうぜ」

「望むところよ」

__________

「はひぇ?ひゅうひゃ?まあひいや…ほうきもほみまひょうよ~(あれ?龍哉?まあいいや…航生も飲みましょうよ~)」

「とりあえずお前はまず水を飲め」

彩夏がここまでもったのはすごいと思うのだがついに限界が来て、酔っ払うどころか泥酔してしまっている。すでに何人も撃沈してしまっている。鬼の2人は論外なレベルで酒に強いので外すが、それ以外だとだいたい同じ量飲んでいるのに大丈夫なのは俺以外だとレミリアとかそのあたりになってしまう。颯は飲みすぎるとやばくなりそうだからといって妖夢がなんか作っているらしいのでそれに加勢しに行ってしまった。絶対いい感じのあれになるな。

「お、帰ってきた。大丈夫かお前…」

「ひゃいひょおぶだっへの(大丈夫だっての)」

「大丈夫じゃありませんねわかりますって寝てるぞこいつ」

どうやら酒の飲みすぎで寝てしまったようだ。どうやらこいつも夫婦そろって寝てしまいそうだ。彩夏が起きていられるのが不思議なもんだ。その彩夏もデロンデロンになって言葉の3割も理解できないだろう。彩夏が酔っぱらうとこうなるのは面白いネタになりそうだ。そして今この宴会の会場でまともに会話しながら飲んでいるのは俺以外だと鬼と吸血鬼と霊夢と魔理沙くらいだ。そのほかで意識を保っている奴はいるのだがまともに会話できるのはそれくらいだ。話す相手もいなくなったので俺は霊夢たちのところへ近寄った。これがまた間違いだった。そこに鬼がいることを知っていたのに近寄った俺が馬鹿だった。それは目に入れば捕まってしまうわけでして。

「来たな新郎。とりあえず祝いの酒だ!のめのめ!」

「…わかりましたよ!俺たちが主催してるってのもあるんですから始めたからには最後まで付き合いますよ!」

「よしその意気だ!」

そして俺は鬼という酒豪に付き合わされることとなった。

 

 

 

「お前めちゃくちゃ酒強いんだな!」

「なんか知らないですけどね。ちなみに霊夢はどうなって…」

「うにゃあ~」

地獄絵図だ。新郎新婦に寄ってたかって酒を飲ませてくる。からかいたい気持ちはわからないでもないけどやられた方の気持ちも考えてくれ。霊夢なんてあとは猫耳着ければ完全に猫になるかもしれないくらいの酔っぱらいだ。やばいぞこいつら。

「みゃ~り~しゃ~まだあるんだから~のみゃないと~」

「だあぁぁぁぁ!離れろアリス!」

「アリスって酔っ払うとこうなるんだな」

結構酒は飲める霊夢でさえ酔っぱらう。先日魔理沙から聞いたのだが霊夢は鬼と渡り合えるくらいの実力持ちの酒豪らしいが普通ならこんなに酔っぱらわない。霊夢がここまで酔っぱらうのはある理由一つのみだ。その理由とは今現在レミリアが飲んでいる赤いウイスキーだ。外の世界では普通存在しないものだがこの世界ではレミリアの従者たちが作っている特注品。これがまたうまいらしくそのうえアルコール度数がとんでもなく高いものらしい。日本酒はどれくらいのものか知らないがウイスキーが普通の酒より度数が高いのは飲んだことはなくても知っている。もし俺が飲んでいたら、霊夢、もしくは龍哉の様になってしまっていただろう。飲まなくてよかったと本気思った。

「ほら~まだあたくさんあるわひょ~」

「だぁ~!お前もお前で慣れないものを飲むからぁ!」

「べちゅにいいじゃにゃいにょ~!にゃんならあんたものみぇ~!!」

「だぁもう!てかお前らも見てないで助けろー!!」

「お幸せに~!」

「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」

「しゃあ~にょめにょめ~!」

「もがぁぁぁぁぁ!」

逃げられなかった。魔理沙に酔っ払ったアリスに鬼たちにレミリアにそして早苗にも抑えられ身動きが取れず、そして酒を飲ませてきたのは霊夢だった。普通ならみんな抵抗するはずなのに俺たちの結婚祝いということもあるし、それに酒で酔っ払っていることもあるせいかその行動に反発する人はいない。早苗は酒をあまり飲んでいないはずなのにノリノリでいじってくる。体を押さえつけてこれから何するっていうんだよ!?。誰でもいいから助けてくれ!

「今夜は寝かさないわよ!」

口の中に何かを含みながらそう言っているように聞こえた。そして彼女はそっと俺に近づいて、口の中に入っていたものを直接俺に飲ませてきた。酔っ払いすぎだ。それに酒臭い。おそらく俺もそうなのかもしれないがここには酒豪が大勢集まっているしそんなにおいになっていてもおかしくない。そして口の中の液体を出すまでに1分ほどかかってやっと解放されたとき正直なところ記憶がない。さっき飲まされた液体というのは霊夢が飲んでいたとんでもないアルコール度数の紅魔館特製ウイスキーだ。霊夢と同じで日本酒では大丈夫なようだがウイスキーではダメなようだ。その場で俺はアルコールとその匂いそのものに加えて霊夢に口移しされたのでいろいろと頭が回らなくなりそのまま倒れてしまった。

__________

「やっと起きたわねこの酔っ払いは」

「ったく…お前も人のこと言えないだろ?例のウイスキー飲んで酔っ払ってただろ」

「あら、なんの事かしら?」

起きて早々くだらない言い合いをしている俺たちだったがそれこそ新婚らしい言動かもしれない。俺が起きたのは神社、だが守矢神社ではなく博麗神社だ。どうやら紫がスキマで泥酔した俺たちを送ってくれたようだ。という予想をしたがだいたいそうだろう。そしてその話に関連しているわけではないが気になったことがもう一つ。

「なんでお前は俺を膝枕なんてしてるんだ?いつもはそんなことしねえのに」

「別に結婚したんだからいいでしょ?それに前に貸してもらった借りを返してなかったしこれでチャラにしてもらえるかしら?」

「そういうのには敏感なんだから…」

霊夢の顔が赤いのは酒が抜けきっていないからであると思われる。というか霊夢が少し飲んだだけで酔っ払うウイスキーなんて聞いたことがなかったのだがほんとにウイスキーなのだろうか。などと考えているつもりはなく俺はそのまま起き上がって縁側に座った。

「結構月綺麗だし、今から二人で二次会でもやる?」

「ああ、別にいいぞ?」

「それじゃあお酒持ってくるから…ちょっと待ってて」

霊夢はそういって立ち上がりお酒を取りに行った。それまで俺はこの記念すべき日の夜に都合よく出てくれた月を眺めていた。なんとなく後ろを見ると霊夢が布団を敷いていた。すぐに寝れるように敷いているように見えたのだが。この短時間で風呂に入ってきたのかいつもと違う巫女服だった。それなら寝間着になるだろうと思ったがそんなことを考えていると霊夢が戻ってきた。酒を持ってきたと思って期待して後ろを振り向いたらいきなり口をふさがれて布団に引きずられた。そして霊夢に乗っかられて何故か口を口で塞がれてしまった。おいおいなんだこのよくあるあるの展開は!?お助けください!この後起こることはだいたい予想がつく。というかそん時だと確か男からだったはずだが霊夢がヤンデレ化し始めている気がするのは気のせいだろうか?

「別に結婚したんだし、よくない?」

「うぐっ!」

 

 

ここから先はもう何も言わずともわかると思うので書かないでおくことにしよう。ただとりあえず言っておくとすればその日の夜寝ないで一晩を過ごし、幸せな夜だったということだけ教えておくとしよう。



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