軍神に転生したけど、なんか質問ある? (刹那・F・セイエイ)
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なんで俺なわけ?
ふと気が付くと、なんか一面真っ白けな空間にいた。右を見ても左を見ても、ついでに言えば上を見ても下を見ても、見渡すばかり真っ白な世界。えーと、何?これってよくある神様転生の始まりってやつ?だとすると、これどっかに神様ってやつがいるはずなんだけど……おい、出てこいや神!!
「はい、なんでしょうか?」
「出てこいっつったら、あっさり出てきやがったな。もしかして、俺ちゃん死んじゃったわけ?」
「はい、とはいっても、手違いとかじゃなくて
おい、俺まだガルパン最終章1話しか見てねーんだぞ。と声を荒らげたかったが、みぽりんそっくりな神様がちょっとかわいそうなのでやめておく。どうやら、彼女は一番の下っ端らしく、上の命令に従って人間の生死の管理を一手に任されているとこの時に聞かされた。なんかかわいそうな気もするが、とりあえず俺を生き返らせてくれ。ガルパン最終章の続き気になるし。
「ああ、すみません。それ無理です」
「何でだよぉ、続き気になるんだよぉ。生き返らせてくれよぉ……」
「………そんなに気になるなら、自分で作ってみてはどうですか?」
ガルパン最終章に未練タラタラな俺を思いとどまらせたのは、彼女の何気ない一言だった。俺の動揺を知ってか知らずか、神様はお構いなしに続ける。
「続きが気になるなら、自分で書いてしまえばいい。シナリオが気に入らないのなら、自分で書き直せばいい。そうして書いて消してを繰り返して、あなただけの「ガールズ&パンツァー」を、自分の手でつくるんです」
「つまり、俺がガルパンキャラの誰かになって新しい話を作れと?」
「まぁ、そういうことになります」
「話が早くて助かる。」とでも言わんばかりにうなずき、おもむろにこちらに手を伸ばす。何をする気なんだ、コイツ。記憶でも読み取るつもりか?けど、俺の記憶ってたいしたものなんかないはずなんだが……何を探るつもりなんだ?
「んー……どうやら黒森峰時代の西住みほに納得がいっていないようですね、主に逸見エリカとの関係性で」
「あー、言われてみれば確かにそうかもな。あのふたりがもう少し仲良かったら、また違った展開もあったんじゃないかって思ってな」
「………あなた、もしかしてエリみほ好きですか?」
ああ、好きだよ。悪いか!!とか言っても詮無いことなので、黙っておく。とりあえず、転生先は西住みほで決まったとして……なんか特典くれ、特典。
「ああ、それについてはご用意しておりますよ。それが何かはご自分で見つけてもらいますが」
「………それ、ハズレとかないよな?」
「ありませんよ、ってわけで逝ってらっしゃい」
おい、最後字が違うだろぉぉぉ!!と全力で叫びつつ、俺の意識は暗闇へと落ちて行った。
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ドイツ戦車っていいよね。
俺──もとい、私──が未来の軍神となって、早数年。数々の黒歴史──ミルクだのオムツ替えだの……あぁ、もう思い出したくもねぇ……──を量産しつつ、無事すくすくと成長していった。ちなみに、なんで一人称が「私」かというと、言葉を覚えだした頃に、後に家元を襲名することになる
この世界に来て、嬉しかったことがひとつあるとするならニチアサがあったことだろう。ニチアサは偉大、古事記にもそう書いて……アッハイ、書いてないです。
「みほ、どうした?さっきからボーっとして……」
「ううん、なんでもない。それよりお姉ちゃん、お弁当の準備はできた?」
「ああ、バッチリだ。今日は天気もいいし、雨が降るという予報もない」
「じゃあ、心配ないね。パンツァー・フォー♪」
お弁当よし、水筒よし、レジャーシートよし、Ⅱ号のご機嫌よし。目的地は……お姉ちゃん任せで。道中の景色をキューポラから半身を乗り出して眺めつつ、目的地までの緩やかな時間を楽しむ。とりあえず、お姉ちゃんが目的地──どこへ行くのかは知らないけど──に着くまでの間に、今後の計画をざっと立てておこう。
まずはBC自由学園。もし仮に、現時点でBC高校と自由学園が既に統合していた場合、仲良くさせる以前に軌道修正すら絶望的な可能性が非常に高く、最悪の場合、内戦を引き起こしてサッサと廃校に追い込んだほうが手っ取り早く問題が解決する可能性すらある。しかし、そうなった場合、マジノ女学院にとっては迷惑極まりないのかもしれないが。
続いて聖グロリアーナ女学院。この学校はOGが在校生を支援する為にチャーチル・マチルダ・クルセイダーの三つのOG会を発足し、積極的にサポートしているようだが、年々規模が拡大するにつれて幅を効かせるようにもなり、しまいには戦車の編成はおろか、戦車の搭乗員にすら無遠慮に土足で踏み荒らして口を挟んでいく厄介者と化してしまっており、おかげで在校生──特に隊長──は頭痛と胃痛がストレスでマッハなんだとか。
そして最後に黒森峰女学園。この学校は他校と比較して特別戦車道に力を入れているのがよくわかり、戦車道専門の学科『機甲科』を現在戦車道全国大会に出場している高校の中で唯一発足しているのがその証拠である。西住流のお膝元でもあり、西住流門下生が多いのも特徴だ。しかし、問題点は指揮系統がガチガチ過ぎて硬直化している点か。ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワンと言えば聞こえはいいのだろうが、どちらかと言えば──というより、あえて言うとするならば──戦略シミュレーションゲームのプレーヤーである隊長の、戦車というユニットの
そんなことをしばらく考えていたのだが、突然の衝突による衝撃で我に返る。横合いからタックルをぶちかまされ、Ⅱ号が激しく揺れる。いったいどこの戦車……と見やると、中学生くらいの女子グループがこちらを見てけらけらと笑う姿が見える。こりゃ、ピクニックどころじゃないかもしれん。それに、サンダース大付属中学校にケンカを売られたとなっては、こちらとしても悪ふざけの過ぎた中坊どもを無罪放免も同然に長崎へ帰すわけにはいかない。とはいえ、こちらは弾薬など一発も積んでおらず、丸腰も同然。対して、相手は同じ軽戦車とはいえ、37mm砲を搭載したM3スチュアート。状況的にはこちらが圧倒的に不利、逃げようにも敵砲塔は確実にこちらを捉えている。最悪の場合、既に徹甲弾を装填済みでいつでもこちらを叩ける可能性を鑑みると、救援を要請せねば最悪帰宅すら不可能な状態に陥ってしまう。なりふり構ってる暇はないか……よし。
届くかどうかはわからないが、届く可能性に賭けて防犯ブザー代わりの信号拳銃を手に取り、出かける前に渡された信号弾3発を連射。ちなみに、信号弾の撃った数で内容が変わり、1発だと『問題発生』、2発だと『緊急事態』、そして3発だと『絶体絶命』となる。なんとか自宅のほうまで届いてればいいのだが……と若干弱気になっていると、後方で一際大きい青い信号弾の光がまばゆい光を放っているのが見えて、その不安が杞憂であることを知る。どうやら、救援は来てくれるらしい。とりあえず一安心、とほっと胸を撫で下ろしていると、どうやらサンダース中のほうも増援を要請していたらしく、スチュアートとローカストの混成部隊としばらく鬼ごっこを楽しむ羽目になったようだ。
とりあえず、やれることはやったはずなので、あとは全速力で逃げ回るのみ。お姉ちゃんの「みほ、どうする?」の問いに対し「地の利を生かしてとにかく逃げ回って」とだけ返し、キューポラから敵戦車隊を睨む。正直言って、速度的に言えば追いかけっこではⅡ号のほうが圧倒的に不利だが、行動距離の面においてはまだⅡ号に分があるといえる。スチュアートの燃料切れまで粘り切るか救援が到着してくれればこちらの勝ち、逆にこちらが撃破されればサンダース中の勝ち。ホントはもっとほのぼのとしたお出かけだったんだけどなぁ……と内心愚痴りつつ、逃げながら救援を待つ。そして逃走劇を始めてから数分、隊列を組んでこちらに向かってくるカーキ色の中戦車隊を発見する。どうやら、運命はこちらに味方したようだ。
黒森峰女学園
その後、何とか黒森峰高等部機甲科の護衛もあって無事に帰宅はできたものの、今回の一件で当面の間ピクニックが禁止になってしまった。
次回、エリカさん登場……?
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はじめての、戦車友達。
ピクニック禁止令発令から早二週間近く、私とお姉ちゃんは菊代さんにお使いを頼まれて近くのスーパーまでⅡ号を走らせていた。なんでも、チキンカツを作るためのパン粉を忘れていたらしく、このままではチキンカツが食べられないという事態になってしまう。メニュー変更ならまだいいが、最悪の場合山盛りキャベツをもりもりと食わされるハメになってしまう。何が悲しくて草食系女子に転向せねばならんのだか……なんとしてもそれだけは絶対に避けねばならない。
そんな感じで今日の夕飯のメニューに期待と不安を抱きつつ、キューポラの縁に頬杖をついてスーパーまでの道のりを揺られていると、Ⅱ号の進路上にイマイチあぜ道を歩き回るには不似合いそうな、いわゆるロリータファッションの同い年らしい子が、ぐずぐずと泣きながら危なげにフラフラと歩いている姿が見えたので、近くに停車して話を聞くことに。
彼女の名前は逸見エリカ。なんでも、戦車道を志すエリカと、戦車道を快く思わない両親との間で大喧嘩となり、行く宛もないままフラフラとさまよい歩いていたとのことらしい。とりあえず、ほったらかしにするわけにもいかないので、Ⅱ号に──やや強引に言いくるめて──乗せてスーパーまで同乗してもらうことに。親御さんに連絡するにしろ、そうでないにしろ、まずはスーパーまで連れていくのが先決だろう。
「なんで、助けてくれたの?別にほっといてくれてもよかったのに……」
「見捨てるわけにはいかないよ。一介の戦車乗りとして、そして戦車道
「………それって、お家事情のために助けたってこと?それとも、家のことはほんのついでで、同じ戦車好きだから助けたの?」
「もちろん後者、本気で戦車が好きじゃなきゃ、大喧嘩にだってならないでしょ?」
そう返すと、目元にうっすらと涙を浮かべて頷くエリカ。どうやら、戦車に対する愛情は本物らしく、道中ずっとドイツ戦車の良さをこれでもかと語り尽くす姿を見て、これは絶対親の反対を押し切って戦車に乗るだろうなという予感はした。なんせこの子、戦車道のこととなるとやたらと舌が回るのだ。それこそ、ほっといたら半日でも足らないくらいに。とりあえず、もうそろそろスーパーに着くし、降りる準備してもらってもいいかな?話はその後でゆっくり聞かせてもらうから。
目的地のスーパーに無事着いたので、とりあえず迷子のエリカを連れてお使いで頼まれていたパン粉を買うことに。頼まれていたパン粉と共に、余ったお使いのお金で棒アイスを買って三人で食べることになったのだが、ここで思わぬ乱入者が割って入る。エリカのお姉さんだ。どうやらお姉さん曰わく、両親は大の戦車嫌いで姉妹共々戦車の道から引き離したくて仕方ないそうだ。「あんな鉄屑が賛美されるなんておかしい、女の子はもっとお淑やかでなくてはならない」とは親御さんの弁だが、さすがにその無神経な発言にはキレそうになった。食べていた棒アイスを中途からへし折り、そのままがりごりと湧き出た不快感と共に噛み砕く。
その後、迎えにきたのであろう両親に連れられてお姉さんと共に帰路についたエリカを見送り、棒アイスを食べ終わったお姉ちゃんと共に帰宅。新しい友達ができたかもしれないのでちょっと嬉しかったが、お使いのお金を使い込んだのがバレて菊代さんに大目玉を食らい、来月のお小遣いが全額カットされてしまった。
西住流、島田流、あともうひとつの流派についてはそのうち。
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お小遣い復活作戦。
菊代さんに大目玉を食らってお小遣い全額カット宣言を食らって早一週間、私はどうやって菊代さんに宣言を撤回してもらおうかと考えていた。現在は第一線を退いたとはいえ、元黒森峰女学園の参謀長を務めていた経歴もあり、そう簡単に宣言を撤回してくれるとは思えない。とはいえ、お小遣いなしはキツい。どうすれば……と悩んでいると、菊代さんがどこか困惑した表情でこちらに向かってくるのが見えた。どんな用だろうか?
「みほお嬢様、急なお願いで申し訳ないのですが、来客用のお茶菓子を至急買ってきていただけないでしょうか?」
「………珍しいね、菊代さんがこんな初歩的な凡ミスするなんて」
「凡ミス、というよりは、次に来るお客様がゴネにゴネ倒してないものばかり要求してくるんです」
………饅頭と緑茶の何が不満なの?と心中で首を傾げつつ、ため息をつく菊代さんから受け取ったお使いのメモの中には、イマイチ聞き覚えのない謎の名前が羅列してあり、思わず頭上に疑問符を溢れ返らせる。これはいったいどこの国のお菓子なのか、そしてどこに行けば買えるのか、さらに言えばなんでこんなものをいちいち要求してきたのか、と疑問は尽きないものの、とりあえずお目当ての品を探しにお使いに出ることにする。
「みほお嬢様、多少遅くなっても構いませんので、すべて買い揃えてきてください。奥様には話はつけておきますので」
「わかった。けどそのかわり、Ⅱ号使わせてくれないかな?たぶんこれ、だいぶ遠出するハメになりそうだし」
「わかりました、お使い、よろしくお願いしますね」
そして、来月のお小遣いについて一言も切り出せないままあれよあれよとお使いへいくハメに。もしかすると、この一件を理由にお小遣い全額カットが撤回されるかもしれない、なんていう淡い期待を胸に、メモのひとつ目を探しに行くことに。まずひとつ目は、鳥のミルクケーキ。記憶が正しければ、確かソ連のケーキだったはずだが、などと悩みつつとりあえずケーキ屋さんに向かう。
「お嬢ちゃん、運がいいね。今日プラウダ高校の学園艦が停泊したそうだから、そっちに向かえば買えるんじゃないか?」とは、ダメ元で駆け込んだケーキ屋さんで気前よく話してくれた元戦車乗りのパティシエールからの情報で、その元戦車乗りのパティシエールにお礼を言いつつ、意気揚々と熊本港へ。プラウダ行きの連絡船に乗り、いざ、ケーキ屋さんへ。たまたまフラッと入ったケーキ屋さんで鳥のミルクケーキを買えたばかりか、そのケーキ屋さんで次々と情報が手に入り、二時間余り経つ頃にはお使いのメモすべてを買い揃えてしまっていた。………まさか、菊代さんはこれを見越して?などと珍妙であらぬ疑いをかけつつ、帰路につく。
その後、何とかお小遣い全額カットに関しては数日後に撤回してもらえたものの、その日来た
次回、西住流と対をなす二大流派、登場。
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