.hack//OverLord:Another Side (ヨツバ)
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VOl.1 異界探索
異なる始まり


こんにちは。
これは.hack//OverLordの続編というよりも、.hack//OverLordのもう1つの物語と思って読んでいってくださいね!!
主人公はもちろんハセヲです!!


物語は1通のメールから続きを再開する。いや、彼にとっては始まりのメールである。

彼の名前はハセヲ。The Worldを救った英雄の1人だ。彼自身は英雄のガラじゃないと否定しているが間違いなく英雄である。

 

「パイからメールだ。何だ?」

 

メールを開くと見過ごせない内容であった。それは八咫とエンデュランスが何も分からずに行方不明というものだ。

単純にログインしていないだけではないのかと思ったが八咫はThe Worldのシステム管理機能の一部を持つ『知識の蛇』という施設の管理者だ。

何も分からないなんてことは絶対にあり得ない。ならば八咫とエンデュランスは何かに巻き込まれたのかもしれないのだ。癖のある奴らだが共に戦った仲間を無視することは出来ない。

すぐさま『知識の蛇』へとログインした。するとパイは居るのは当たり前だとしてアトリにクーン、朔までいる。

 

「ハセヲさんもメールが来たんですね!!」

「ああ。それにしても八咫とエンデュランスが行方不明って本当なのか?」

「ええ、そうなのよ。八咫様がログインした記録はあるのだけれどログアウトの記録が無いのよ。しかもThe Worldの全エリアを調査しても発見出来なかったのよ」

「おいおいマジかよ」

 

前にも八咫は行方不明になったことはあったが今回の理由が分からない。もしかしたら何が危険な事件に巻き込まれているのかもしれない。

それにエンデュランスも同じように行方不明なのだ。どこか不思議だが彼とハセヲは大切な仲間関係だから何も相談しないことはないはずだ。

 

「ハセヲ!!」

「ん・・・って、うわ!?」

 

朔がハセヲにタックルをかます。ダメージは無いがいきなりのタックルに対処がしきれないハセヲは転んでしまう。

 

「何しやがる朔!!」

「ハセヲがエン様をどっかに隠したんやろ。どこに隠したんや!!」

「どこも隠してねーよ!!」

 

ハセヲにとってエンデュランスを監禁もとい隠しても何も意味は無い。もし、本当にやったとしても逆にハセヲが危険かもしれない。

良く分からないがアトリからは「ハセヲさんってやっぱり男の方が」なんて呟いたから全力で否定しておいた。ここでパイが「そんなことはどうでもいいから話を聞きなさい」と言う。

確かに気になることがある。全てのエリアを探索しても見つからないのはあり得ないことだ。しかもログインがされている記録があるのにも関わらず。

 

「もしかしたらだけどロストグラウンドにいる可能性があるわ」

「ロストグラウンドか」

 

ロストグラウンド。それは運営会社であるCC社に作製されたものではなく、彼らでさえもこのエリアに干渉は出来ないエリアだ。。

しかもそのロストグラウンドがThe World内にまだ隠されているかもしれないと言うのだから驚きである。本当にThe Worldは謎だらけだ。

 

「可能性として八咫様は新たなロストグラウンドを発見して調査している時に何かあったと考えるべきだと思うわ」

「かもな。八咫自らが調査ってのは珍しいけど。パイ、何か八咫から聞いていないのか?」

 

クーンが最もなことを口にする。八咫は基本的に自分のことをあまり話さないがThe Worldの調査をするならパイに一言くらい何か伝えるだろう。しかし今回に関しては何もパイは聞かされていないのだ。

 

「でも昨日は調査のことを言って無いけど、昔の仲間に再開してくるとは言っていたわ」

「昔の仲間?」

「それってR:1の仲間のことじゃないですか?」

 

実はCC社は前作であるR:1のデータサーバーをついに復旧することに成功したのだ。サービスとして前作のプレイ者たちにアカウントを返信している。

 

「だから昨日から今日にかけて無駄にマク・アヌに人が多かったのか。それに知らねえキャラエディットが多かったし」

 

ハセヲは何となく覚えているキャラを思い出す。薔薇の文様が目立つ褐色の重剣士にファンシーな呪癒士、三葬騎士に似た奴らだ。

三葬騎士に似た奴らを見た時は一瞬驚いたが、まさかR:1のキャラが元ネタと初めて知ったものだ。

 

「じゃあ八咫は昔の仲間と共にロストグラウンドに行った可能性はあるかもな」

「じゃあエン様は!?」

「前に八咫様が言っていたけどエンデュランスとはR:1から知り合いだったみたいよ。あんまり関わりは無かったらしいけど」

「じゃあもしかしたらR:1時代の仲間たちと久しぶりに再会してロストグラウンドに行ったんじゃないですかね」

「アトリの予想は正解かもな」

 

昔の仲間に再開して今のThe Worldのロストグラウンドに行く。これは予想の可能性としては高いだろう。

だが、どこのロストグラウンドに行ったかだ。パイによると新たなロストグラウンドは情報としてない。ならば今存在しているロストグラウンドの何処かだろう。

 

「・・・グリーマ・レーヴ大聖堂」

「そのロストグラウンドはR:1からあるエリアだよな。何か手がかりがあるかもな」

「行ってみましょう」

 

グリーマ・レーヴ大聖堂。

ここはハセヲたちにとって重大な局面の際には必ず訪れる因縁の場所だ。

 

「誰かいる・・・子供?」

 

グリーマ・レーヴ大聖堂の女神が祀られていた祭壇に白い服にサフラン色の髪の女の子がいた。その女の子からは何か不思議な力を感じる。

この感覚はどこかで感じたものだ。思い出す記憶はクビアとの最終決戦で出会った女神アウラである。

 

「ア、アウラ?」

「・・・ママのことを知っているの?」

「ママぁ!?」

 

女神アウラの名前を呟いたら『ママ』と返事が返ってきた。これにはハセヲだけでなくパイたちも驚く。

何せ、その意味をそのまま捉えたら目の前にいる女の子が女神アウラの娘になるのだから。

 

「女神アウラに娘なんていたのか!?」

「・・・私も管理者の1人として初耳だわ」

 

全員が女神アウラの娘に注目する。

 

「名前は何て言うんだ?」

 

恐る恐る言葉を紡ぐ。敵か味方か分からないが今の所、敵意は感じない。

 

「私の名前はゼフィ。ヘタレの名前は知ってるハセヲでしょ」

「ヘ、ヘタレ!?」

 

自己紹介された後にまさかの毒舌にグサリとくる。クーンは少し笑ってしまったが次は自分がターゲットで「報われない男」言われグサリ。

アトリは「メルヘン女」、パイは「露出狂」、朔は「ストーカー」。ゼフィの毒舌は全開であった。

 

「誰がストーカーやねん!!」

 

朔のツッコミを華麗にスルーしてゼフィは祭壇を見て、「ママはこの世界にいない」と呟く。

確かに女神アウラはThe Worldから姿を消した。だがそれでもThe Worldにいるはずなのだ。完全に消えたわけでは無い。だがゼフィはThe Worldにいないと呟いた。

女神アウラの娘であるゼフィがグリーマ・レーヴ大聖堂に現れた事と八咫たちが姿を消した事に関連性があるのか。

ハセヲは考え込むが全然分からないので頭を掻いてしまう。ここでアトリが臆することなくゼフィに話しかける。

 

「あのゼフィちゃん。八咫さんって方とエンデュランスさんって方をご存じですか?」

「八咫? エンデュランス?」

「はい。褐色の修行僧みたいな方と青を基調とした装備で薔薇舞うイケメンの方です」

「・・・知ってるよ」

「本当ですか!!」

 

知っているなら聞き出す。この場所に来たことは正解だったようだ。

 

「どこにいるの!?」

「この先」

 

ゼフィが祭壇に指さすとグニャリと空間が歪んで穴が開く。それはまるで異世界にへと繋がるゲートのようである。

 

「この先に八咫とエンデュランスがいるのか」

 

ハセヲと朔が近づいた瞬間に瞬時に移動してきたゼフィにデコピンされて吹っ飛ばされる。この威力は仕様外という他ない。

 

「何すんだ!?」

「そうやそうや!!」

 

いきなりデコピンされた理由を説明求むとワイワイ言う朔。確かにデコピンされたら説明を求むだろう。

 

「無容易に近づかない。この先は危険」

「危険?」

「うん。この先は私もどうなっているかは分からない。だから危険」

 

女神アウラの娘であるゼフィが危険と言っているなら危険なのだろう。しかし仲間が危険な場所にいるのなら助けにいかないわけない。

そもそも今まで危険なことに首を突っ込んできたのだから今更である。だからハセヲは気にしない。

 

「この先に八咫とエンデュランスがいるならオレは助けにいく。今まで危険な橋を渡ってきたんだから今更だぜ」

 

彼の目に迷いは無い。その覚悟の目を見たゼフィは「ヘタレのくせに」と言ったが「うるせえ」と返される。ハセヲだけじゃなくアトリたちも覚悟ができている。

 

「私は八咫様を助けに行くわ」

「私も2人を助けに行きます!!」

「乗りかかった船は降りないもんだ」

「今助けに行きますエン様!!」

「オレの仲間たちは大丈夫だぜゼフィ」

「あっそ。じゃあついてきて。私もママを探しに行かないといけないから。後・・・パパもいる」

「・・・パパ?」

「ちょっと待ってくれるかしら?」

 

ここでパイがストップをかける。

 

「どうしましたパイさん?」

「覚悟は出来てるけどこのまま行くのは確かに危険よ。なら準備はしておくべきだわ」

「確かにな。それに他に力を貸してくれる奴も呼んでみよーぜハセヲ」

 

この先が危険なら準備は必要だろう。それに他の仲間も力を貸してもらえるなら貸してもらいたい。

 

「何人かに声を掛けてみるか」

 

これは危険なことだから声を掛けても強制では無い。ハセヲは力になってくれそうな仲間を思い浮かべる。

 

(あいつは力を貸してくれそうだな。あいつらは・・・駄目だ。危険な目にあわせるわけにはいかない)

「まだ行かないの?」

「ああ。準備があるから待ってくれ」

「分かった。ここで待ってる」

 

 

side変更

 

 

ハセヲは力になれそうな仲間にメールを送る。最も全員とも頼れる仲間だが今回は危険があるミッションだ。

誰彼構わずには送れないからハセヲは仲間を厳選する。特にシラバスやガスパーは無理だ。彼らも頼りがいのある仲間だが、優しい彼らに危険を犯せない。

余計なお世話かもしれないがこれはハセヲなりの優しさだ。優しい彼らは危険を犯さずにThe Worldを楽しんでもらいたいものである。

他にもし力になってくれるならギルド『月の樹』が良いかもしれない。特に欅は教えなくても自ら調べてひょっこりと目の前に現れそうである。仲間ではあるが本当に素性が分からない。

 

「メールしなくてもメールが来そうなんだが・・・」

 

そんなことを呟く本当に欅からメールが来た。内容は『ハセヲさん、こんにちわ。女神アウラの娘に出会ったんですってね。そして八咫さんとエンデュランスさんが行方不明みたいなんですよね。ならボクも手伝いますよ。危険な場所だってへっちゃたです』

このメールを読んで本当に欅が何者が分からないし、一瞬ビビッてしまう程だ。メールが届くタイミングを考えると、どこかに監視カメラでもあるんじゃないかと勘ぐってしまう。

 

「まさかのいきなり1人仲間確保って感じだ。松や楓も力を貸してくれるだろうか・・・次はどうするか」

 

メールアドレスを見る。全員がThe Worldで出会った仲間で頼りなる奴らばかりだ。しかし謎の場所に向かうには全員は一緒に行ってくれとは言えない。

先ほども思ったがシラバスやガスパーは無理だ。タビーたちだってリアルで忙しいはずで無理強いなんでできない。

 

「・・・『イコロ』の大火とか力を貸してくれるかな」

 

パソコンのキーボードを打ち込み内容を書き込んで頼りがいのある仲間たちに送信した。今回は強制では無い。

全員が来るかもしれないし、来ないかもしれない。そう思いながら待つ。

 

メールの内容は『ハセヲだ。八咫とエンデュランスが行方不明になったから行方を捜しに行く力を貸してほしい。だが今回は簡単で無く危険なんだ。危険と分かったうえで下記にしるしてある日にちにグリーマ・レーヴ大聖堂に集合してくれ。これは強制ではないから絶対に来なければというわけでは無いからな』

 

 

side変更

 

 

捜索隊メンバーはハセヲを筆頭にアトリ、クーン、朔望、パイ。更にギルド『月の樹』の欅、楓、松。『イコロ』の大火、太白、天狼。

他にも何故かメールを送っていない揺光や志乃、タビーまで参加してくれた。

 

「志乃にタビーまで!? 何で!?」

「アトリさんから連絡があったからだよ」

 

すぐにアトリに視線を送るが目を逸らされる。彼女たちにはもう危険な目には合わせたくない。彼女たちには純粋にThe Worldを楽しんでもらいたいのだ。

なのに危険なミッションに一緒に行くなんてハセヲとしてはできない。

 

「もうハセヲったら。困ったことがあったら頼ってよ!!」

「そうだよハセヲ」

「いやタビーに志乃そうじゃなくて」

「これでも強いんだよ。前は恐くてあまり力になれなかった。だから今回は役に立ちたいの!!」

 

恐いから戦いを避けた。そんなのは誰も責めない。戦いが怖いのは当たり前だ。全員が戦う勇気を持つ者ではない。

 

「だけど今回だって危険すぎ…」

「ああ、やっと来たのね」

 

いつの間にかゼフィがハセヲたちの前に現れる。まず一番に目を見開いたのが欅であった。ゼフィは女神アウラよりも隠された存在で、知っている者は本当にごく僅かしかいないだろう。

能力は女神アウラよりまだ劣るかもしれないが、女神アウラが次世代の存在として生んだというのならスペックは女神アウラを超える可能性はあるだろう。

 

「これで全員集まったのね。じゃあ今すぐ行くよ」

「ま、待てゼフィ!?」

「レッツ・ゴー」

「うおおおおああ!?」

 

ハセヲたちはゼフィの力によって異世界に飛ばされた。全ては行方不明のエンデュランスと八咫の捜索のため。

転移した先は未知の世界ということでハセヲは信頼できる仲間を招集。中には今回のミッションに関わらせたくない仲間もいたがついて来てしまい、ゼフィが一緒に転移させてしまってはもう手遅れだ。

ならばハセヲが守っていくしかない。最も彼女たちも守られてばかりではないと思うが。彼女たちだって強いのだから。

ハセヲたちは少しだけ遅れて『彼ら』の跡を追うように異世界へと転移した。

同じ異世界にいながらこれは『彼ら』とは別に歩んだ物語だ。『彼ら』と平行して進んだが合流はできなかった。いずれ合流することはできるがすぐには合流できない物語。

アナザーサイドの物語である。

 




読んでくれてありがとうございました。
さて、異世界に行くGUメンバーは上記のキャラたちで一応決定です。
もし、物語上に他のキャラが必要ならば途中で加わるかもしれません。もしかしたらですが。


ハセヲ「もう誰も巻き込んでねーよな!?」
ゼフィ「…さあ?」


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エ・ランテル

※物語を読む前に。混乱しないように説明です。
まず早速ハセヲたちが早速異世界を旅をしているくだりから始まります。
最初は異世界に転移して、感覚が~ 感触が~ ここは異世界!? なんてくだりを書いていたんですが気が付いたら…コレはカイトたちと似たような場面を書いてね?っとなりました。
なのでその場面は飛ばして早速物語を巻きで進めました。補足の物語なので。

そしてゼフィの力によって『知識の蛇』というホームを異世界の空間に繋げています。
簡単に言うとカイトたちのタルタルガのような拠点だと思ってください。

では始まります。 

.hack//OverLordの時系列でいうとクレマンティーヌとスケィス戦の後くらいです。


ハセヲたちは八咫とエンデュランスの行方を探す為に旅をし、エ・ランテルという城塞都市に到着した。

情報収集には特に適した場所だろう。旅をしている途中では人と会わなかった。やっと文化がある場所に到着してホッと息をつく。

 

「ハセヲさんハセヲさん。凄いですね。大きな都市に着きましたよ!!」

「見りゃ分かる」

 

アトリは異世界の都市を見て大興奮だ。ハセヲも顔には出していないが実は少しだけワクワクしている。エ・ランテルに入るとまさに中世な雰囲気に戦士という冒険者が歩いていた。

もうここがTHE WORLDではないことが再度理解させられる。

このエ・ランテルで八咫とエンデュランスの行方が分かればと思う。

 

「まず、情報収集にはこういう場所だと酒場になるのか。ゲームみたいに」

「そうとも限らないけど、この際そこでも良いわ。取り敢えず情報を得ましょう」

 

パイはエ・ランテルの道を堂々と歩いていく。その歩いていく最中、多くの視線を集めていた。主に男性から。その理由は彼女の格好だろう。露出が派手すぎるからだ。今は慣れたが最初の頃は驚いたものだ。

 

(目立ってんな)

 

ハセヲの格好も白を基調とした特殊なものだが自分のことは棚においておく。

さて、こういう場面だとフラグ的にいくつかある出来事が発生する。それはゲーム等のイベントみたいに発生するのだ。

なんだかありきたり過ぎて逆に珍しいのではなかろうか。

 

「よお、綺麗なおねーさん」

「へへっ。俺らと良いことしようぜ」

「そっちの子もいいじゃん。良い声を鳴かせたいぜ」

 

ハセヲは心のなかで「うわっ、絵に描いたようなチンピラ風な冒険者だ」と思うのであった。こうもフラグ的に起こるとは逆に珍しくて笑える。だがそろそろ助け船を出さないといけない。

 

「悪いけどアナタたちに構ってる暇は無いの。退いてちょうだい」

「ああん?おいおい、無視すんなよ」

 

チンピラがパイの肩を手で掴むが払いのける。その行為がチンピラの勘に触ったのか、彼らはパイを囲む。

 

「ちょっと痛い目にあってもらおうか」

「そのあとは気持ちいい治療をしてやるよ」

「そっちの子は待っててな」

「野郎は痛い目に会いたくなかったら消えな」

 

こんな街中で堂々と荒事をしでかすなんてエ・ランテルの治安はどうなっているのだろうか。やはりハセヲたちが余所者だからかもしれない。

周りの人は見てみぬふり。荒事に関わる奴はそうそういない。いるのは馬鹿か正義感の強い奴だけだ。

だが、ここは異世界で冒険者なんていう職業をこなす人物がいる。だからこそ絵のような正義感を持つ人もいるのだ。

「ちょっと待った!!」

 

ある好青年が待ったをかける。異世界だろうが現実世界だろうが良い人はいるのかもしれない。

その好青年はペテル・モーク。『漆黒の剣』という冒険者チームのリーダー。その後ろには仲間たちがいる。

 

「お前ら止め……ろ?」

 

ここで『漆黒の剣』の彼らが颯爽と助ければカッコいいのだろうが現実は斜め上をゆく。

 

「見逃してあげるからさっさと失せなさい」

 

パイが1人でチンピラ風な冒険者たちを軽くボコボコにしていた。

これにはペテルたちも呆然。ハセヲは「あーあ」と心の中で呟く。見せ場を失ったペテルは何を言えばよいか迷っているので仕方ないとハセヲが助け船を出すしかなかった。

 

「あー、その。助けようとしてくれてありがとな」

「あ、はい。その、お強いですね」

「まあな」

 

会話終了。話が続かないのに空気が悪くなる。

 

(どーすんだよこの空気!! いや、どっちも悪くないけどさ!?)

「あ、あのエ・ランテルでは見ない顔ですがもしかしてエ・ランテルは初めてですか?」

 

ペテルはなんとか会話の糸口を探そうとしてくれる。本当に彼は優しい人なんだろう。その優しさに助かるものだ。

 

「ああ。初めて立ち寄ったんだ。ちょっと行方不明の仲間を探しているんだよ」

「そうなんですか。それは大変ですね」

「なあ、この町で情報を聞けるような場所はあるか?」

「それなら冒険者組合が良いですね!!」

 

冒険者組合。多くの冒険者が集まる場所。ならば様々な情報が集まる場所ではないだろうか。これは情報収集には打ってつけだ。

 

「頼む」

「案内しますよ。ボクはペテル・モークです」

「ハセヲだ。よろしく頼む」

 

ハセヲたちが『漆黒の剣』に出会えたことはとても運が良いだろう。彼らほど良い人たちはいないのだから。

冒険者組合に向かうがてらお互いに自己紹介を簡単に済ませる。ペテルの仲間はルクルットにニニャ、ダイン。全員とも人が良さそうだ。

 

「アトリちゃん可愛いなあ。パイさんなんか、おおおお!!」

 

ルクルットはいつの間にか興奮している。彼の性格を知るものならアトリとパイを見れば当然の反応かもしれない。

特にパイには釘付けになっている。それはルクルットだけでなくペテルやダインもつい目を集中させてしまうのだが。

 

「ハセヲさん…パイさんはその、凄い格好ですね」

「ん、ああ。オレが出会ったときからあの格好だしな」

「そ、そうなんですか」

「パイは拳闘士だから動きやすい格好が良いんだとよ」

「け、拳闘士なんですか!?」

「ああ。実際、チンピラをボコってたろ」

「た、確かに」

 

動きやすいどうこうはハセヲを勝手な設定だ。この異世界に転移したら自キャラになっていたのだから自分の格好に文句なんて言えない。そもそも自分で考えたキャラなんだから文句なんてないだろう。ハセヲの姿に関してはいろいろと改造されているが。

 

「アトリちゃんにパイさん。俺はどっちを選べばいいんだー!?」

「ルクルット。何を訳の分からないことをいってるんですか。止めてください」

 

ニニャがルクルットを白い目で見る。

 

「いやだってよ。これだけの上物がいれば口説くだろ普通!!」

「何が普通ですか」

「あははは…」

「はあ」

 

ルクルットの調子にアトリは苦笑い。パイはため息だ。彼が悪い人ではないこと分かるが軟派すぎるのだろう。

 

「前はブラックローズさんとナーベさんに迷惑をかけたばかりじゃないですか」

「迷惑はかけていない!!」

「かけたである」

「ダインまで!?」

(ブラックローズにナーベ?)

 

知らない名前が出たが関係ないと聞き流す。まずは彼らに情報収集だ。行方不明のエンデュランスと八咫について聞く。

 

「エンデュランスさんにヤタさん?」

「ええ。何か少しでも知っていれば教えて欲しいわ」

「うーん、パイさんの役に立ちたいけど俺は知らないなあ」

「どんな人ですか?」

「八咫は褐色肌の修行僧みたいな奴で、エンデュランスはまさに美青年の剣士だな」

 

八咫はともかくエンデュランスは絶対に目立つだろう。斬撃の時に薔薇のエフェクトを出すくらいだから。そもそもあのエフェクトはどういったものか今も分からない。

 

「そんな人がエ・ランテルに来てれば嫌でも目立ちます」

「だよな」

「目立つと言えばモモンさんたちとカイトさんたちですね」

「であるな」

「モモンにカイト?」

 

ニニャが目立つと言えばと、ある人物たちの名前を言う。

カイト、ブラックローズ、ミストラル。

モモン、ナーベ。

彼はつい最近エ・ランテルにスケルトンなどのモンスター襲撃事件に最も活躍した冒険者たちだと言うのだ。

 

「へえ、そんなやつらがいんのか」

「そうなんですよ。彼らの実力はアダマンタイト級なほどなんです!」

「アダマンタイト?」

 

アトリが可愛く首を傾けるとルクルットが懇切丁寧に説明してくれた。簡単に言うと冒険者でいうところの最高ランクだそうだ。補足だが『漆黒の剣』はシルバー級。冒険者の実力で言うと中の下あたり。

 

(カイトにモモンか…)

「冒険者組合に着きましたよ。ここには色々な場所に旅をしている人もいますから何か情報があるかもしれません」

「おう。案内ありがとな」

 

冒険者組合に入ろうとしたとき、ハセヲは急に後ろを向いた。

 

「どうしたのハセヲ?」

「い、いや。何でもない」

「そう?」

(ただの見間違いか…)

 

ハセヲが見間違いをしたのはトライエッジ。葬炎のカイトだ。だがそれはあり得ない。だから見間違いだと思ったのだ。

それにいつものツギハギの姿ではなくて赤い外套を纏った姿だったような気もした。




読んでくれてありがとうございました。
さっそくエ・ランテルにハセヲが訪れた物語になりました。
異世界に転移したばかりの話は気が向けば追加するかもしれません。

そして各1話ごとに二部へとつなぐカギを書いていこうと思ってます。

ハセヲ「今のは…?」
赤い外套「…?」


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青紫色の獣

ハセヲたちだけじゃなくてチョクチョクはナザリックの面々も出てきます。
だってクロスオーバーだもの。

.hack//OverLordの時系列でいうとアインズVSシャルティアの後くらいです。


クーンと朔はハセヲたちと別行動して、ある村まで到達していた。そこの村の名前はカルネ村。

人間とゴブリンが共存している村だ。人間と魔物が共存とは珍しいものだが異世界ならこういう村もあってもおかしくはない。

関係無いかもだが実はThe Wolrdにはゴブリンを追いかけるゲームがあった。それは今回と本当に関係ないだろう。

 

「ちょっとまってくだせえ」

「ん、何や何や?」

 

朔たちの前にゴブリンたちのリーダーがストップをかける。よそ者には厳しい村なのかもしれない。

確かに朔たちはこの異世界では異質だ。魔物は何かしら感じ取ったのかもしれない。

 

「あんたたちから何かすげえのをビシビシ感じる。まったく最近はやべえのがよく村に来るな」

 

考えていたことが当たっていた。魔物には魔物の感知能力なのか本能なのか。朔たちから感じ取ったのはおそらく単純な実力と八相の力かもしれない。

ここで一触即発な状況になるはとてもマズイ。彼らがカルネ村に訪れたのは仲間の情報収集なのだから。ここは穏便に済ませたいのでクーンは両手をあげる。

 

「待ってくれ。俺たちはこの村で略奪だとか殺戮とかしない。ただの旅人で、行方不明の仲間を探しているんだ」

「仲間を探してる?」

「そうやエンデュランス様って言って、そりゃあもうお美しいお人や!!」

 

彼等に自分たちに敵意が無い事を懇切丁寧に説明する。自分たちは敵では無い、ただの旅人だと。

 

「むう…嘘をついてる感じはねえな」

「あれ、お客さん?」

「姐さん!!」

 

ゴブリン軍団の後ろから可愛い女の子が歩いて来た。まだ幼さが残るが美少女だ。クーンはあと2、3年経てば美人になると想像する。

 

「やあ可愛い子。こんにちは」

「あ、こ、こんにちは」

「俺らは旅人で行方不明の仲間を探して旅してるんだ。情報が欲しいから村に入れてくれないだろうか?」

「あ、はい分かりました。どうぞどうぞ。何も無い村ですがゆっくりしていってください」

「ありがとね。えーっと?」

「エンリです」

「可愛い名前だねエンリちゃん。俺はクーン」

「ウチは朔や!!」

「クーンさんにサクちゃん。ようこそカルネ村へ」

 

カルネ村は本当に異世界の村っていうのが似合う村だ。ゴブリンがいなければ中世の長閑な村というイメージ。

でもゴブリンも人間も互いに力を合わせているのを見ると本当に共存している。流石は異世界だ。

 

「昔からゴブリンと共存している村なのかなエンリちゃん?」

「いえ、そういうわけじゃないんです」

「そうなん?」

 

話を聞くと、何でも謎の兵集団が村を襲撃した時があるそうだ。その時ばかり凄惨で残虐、最悪な日だったという。

これは余計なことを聞いていしまったかとクーンは思ったがエンリは察したのか「大丈夫です」と答えてくれた。この話の続きが大切なのだ。

この村を救ってくれたのがとあるマジックキャスター。その名もアインズ・ウール・ゴウン。

 

「あいんずうーるごうん?」

「はい。黒いローブに赤い仮面をつけたマジックキャスター様です」

「なんや怪しいな」

 

黒いローブに仮面なんて確かに普通考えれば変質者だ。しかしマジックキャスターというジョブ。恐らく魔術師みたなものだろう。

それなら姿に関しては分かる。それでも怪しいものだが。それだと自分たちの仲間に対してブーメランをしているのは棚に置く。

 

「しかも王国の戦士長も助けに来てくれたんです。でも相手は強くて…でもアインズ様が助けてくれたんです!!」

「ほー。なあなあ、その中にエンデュランス様っつう美しい方はいなかったん?」

「エンデュランスさん…いえ、いませんでした。でも確か黒い鎧を着たアルベド様という方はいました」

「アルベド?」

 

これもまた知らない名前だ。もしかしたらエンデュランスたちの情報があるかと思ったら無いかもしれない。

アインズ・ウール・ゴウンにアルベド。全くもって自分たちに関係無さそうである。

他にも情報が無いか聞いてみると『漆黒の剣』という冒険者チームにモモンという漆黒の鎧を纏った戦士にナーベという美しいマジックキャスターが訪れたらしい。

特にモモンはトブの大森林にて主の1匹である南の主を服従させた功績により戦士として有名になったという。

 

「南の主ねえ」

 

『森の賢王』と称され数百年を生きた伝説の魔獣と言われており、モモンの凄さがエ・ランテルで一瞬で広まった。

最も南の主の正体を見ればクーンと朔は微妙な顔をするだろう。何故なら二つ名とのギャップがありすぎるからだ。

 

「他には珍しい誰かが訪れたりしたかな?」

「ええっと、他にも冒険者や商人が訪れましたけど…アインズ様やモモンさん程の方はいらしてないですね」

「そっか、ありがとねエンリちゃん。ところでエンリちゃんはこのあと暇かな。暇なら俺と一緒に…」

「わーわーわー!!」

「ん?」

 

ここにて新たな人物が現れる。その少年の名前はンフィーレア・バレアレ。彼は薬師であり、錬金術師でもある。

実はエンリに片思い中でクーンが彼女に対して迫っているのを見てしまい駆け付けたのだ。「ムム」とクーンに睨みつけてはエンリを背に隠す。

これにはクーンも察して彼に耳打ちをする。

 

「エンリちゃんは将来美人になるから絶対誰にも渡すなよ。頑張れ少年」

「ななっ!?」

 

急に真っ赤になるンフィーレア。これは青春だなっと思い笑顔になるクーンであった。

 

「なあなあ所で、トブの大森林には他にも主がおるん?」

「え、あ、はい。東や西の方にもいますね。こちらにまで来ませんが今は南の主がいないんで少しは森の状況も変わってるかもしれません」

「ふーん」

「あと、トブの大森林は探検する者が少ないので詳しい地形はあまり判明していないんです。それに珍しい薬草などがあってある意味宝庫なんですよ」

「ふむ…何かしらあるかもな。ちょっくら調べに行ってみるか」

 

何でも良いから情報は欲しい。現在のとこエンデュランスたちの情報は何も無いのだ。

少しでも彼等の痕跡があれば嬉しいものだ。もしかしたら八咫が未開の地ということで興味をもって探索しているかもしれない。

トブの大森林に向かうクーンと朔であった。

 

 

side変更

 

 

『西の魔蛇』ことナーガのリュラリュース・スペニア・アイ・インダルン。彼はトブの大森林の西の主だ。

彼は自分の縄張りにナニカが侵入してきたのを感じた。そのナニカは分からないがどうせ西の主の座を狙う魔物だろう。

そういう魔物はいくらでもおり、その度にうんざりするほど返り討ちにしてきた。今のリュラリュースと良い勝負をするのはトブの大森林では南と東の主くらいだ。

だからこそ近づいてくる魔物にリュラリュースはさっさと片づけて食ってしまおうと考えている。

ちょうど腹も空いてきたのでナイスタイミングだ。大物だと腹が膨れるから良い。

 

「さて、どんな輩か…」

 

リュラリュースは茂みの奥から這い出てくる青紫色の獣を見た瞬間に襲い掛かるのであった。

 

 

side変更

 

 

階層守護者のアウラはトブの大森林を探索していた。この森は謎が多く、アインズから情報を多く求められている。

そんな探索をしている中で彼女は変わった魔物を発見した。青紫色の大きな獣だ。さらに大きな王冠に三日月の首輪までつけている。

トブの大森林を探索している中で初めて見る魔物だ。ここまでこの森で異色と感じる魔物は初めてでもある。

ビーストマスターのアウラとしてはとても興味のある魔物だ。これは捕まえてペットにするのも良いし、色々調べてみるのも良い。

そのまま件の魔物を追っていくとある場所に近づいているのが分かった。

 

「あれ、この先は確か西の主がいる場所だっけ」

 

少し開けた場所に出ると西の主がいた。青紫色の獣が茂みから出た瞬間に西の主が襲い掛かったのだ。

しゅるしゅると蛇特有の相手を絞め殺す方法で青紫色の獣に巻き付いた。西の主リュラリュース自慢である太い尾で縛り上げて殺す。

せっかく捕まえようと思っていたのにアウラはちょっと残念がる。仕方ないからその場から立ち去ろうとしたが足を止めた。

なぜなら青紫色の獣は死んでいなかったからだ。しかもリュラリュースの締め付けをものともしていない。

肉を骨をへし折るつもりで絞めているのに青紫色の獣は苦しそうではなく平気そうな顔だ。青紫色の獣はそのまま真上に跳躍して背を下にして落ちていく。

考えが読めたのかリュラリュースはすぐさま離れる。巻き付いたままだったら一緒に地面へと墜落していただろう。

危険な行動をしかけた青紫色の獣は地面に落ちて痛がっていた。痛がっているわりに無事そうである。

 

「なんだこの魔物は?」

 

リュラリュースは西の主の勘として目の前にいる魔物が異色な存在だと気付いた。こんな魔物は見たことも噂も聞いたことも無い。

ここは慎重に相手を見極めて食い殺してやろうと思った矢先は青紫色の獣はリュラリュースに襲い掛かった。

 

「むお!?」

 

すぐさま回避しようとしたリュラリュースだが尻尾を踏みつかれて動けなくなる。そして近づく大きな口。

 

「ま、待て……!?」

 

リュラリュースが何か言う前に青紫色の獣に食われるのであった。

バリバリバリバリバリバリバリバリバリ。もちゅもちゅもちゅもちゅもちゅもちゅもちゅ。

 

「うわあ、西の主を食ってるよ」

 

西の主であるリュラリュースはこのトブの大森林では最強の一角である。そんな一角がいとも簡単に魔物に食われてしまったのだ。

 

「うーん…単純にあの魔物は主以上の強さってことだよね。しかもたぶんハムスケよりも強いね」

 

アウラはハムスケと青紫色の獣を比較するとハムスケがリュラリュースと同じように食い殺されるイメージしか浮かばなかった。

ハムスケをユグドラシルに換算するとレベルは約30くらいだ。ならば青紫色の獣はおそらく50くらいかもしれない。

ナザリック大墳墓でも少しは生き残る実力はある魔物だろう。これはより興味が持ち、捕まえたいと強く思うのであった。

いざ捕獲しようと木から降りようと思った時、2人の人間が現れた。

 

「おっと…こいつは食事中だったか」

「うげえ…」

 

バリバリバリもちゅもちゅもちゅ。

青紫色の獣が振り向くとそこにはクーンと策が微妙な顔をしていた。獣の口にはリュラリュースの尻尾がはみ出しており、もちゅるんと飲み込んでいた。

 

「うーん…こいつは逃げた方が良いかもな」

「せやな余計な……って何かあの魔物ウチを見てへん?」

「うん?」

 

青紫色の獣は何故かジィィィィィィィっと朔を見つめていた。彼女にとってあの獣は初めて見る。

だが向こうはまるで飼い主のように思っている目で見てくる。朔はあんな大きいペットは飼っていない。

のしのしっと近づいてくるのに2人は警戒する。喉を鳴らしながら青紫色の獣は朔を見続ける。

襲ってはこなさそうだがまだ安心できるわけじゃない。クーンは静かにスチームガンに手を置く。

 

(この異世界に来てから魔物は何度も遭遇しては倒せてきた。だが目の前にいるあいつはちょっと違う気がする)

 

クーンも朔も碑文使い。もし何かヤバくても切り札はある。だがここは異世界で未知なことが多いだろう。

力があるからといって何でも倒そうとする考えは愚策だろう。

 

「何やあの魔物は迷ってる感じやなあ」

 

青紫色の獣は朔を見ては首を傾けている。まるで何か悩んでいるようであり、飼い主に似ているかのような悩みだ。

 

「なあ朔はあの魔物を知らないんだよな」

「全く知らへんわ」

 

朔は本当に心の底から目の前にいる青紫色の獣を知らない。ならば襲って来れば戦うし、もしくはそのまま逃げる。

本来の目的であるトブの大森林内での探索はもう止めると考えたクーン。この森は広すぎるのでたった2人では限界がある。

パイたちと相談して後日探索する方が良いだろう。このトブの大森林での探索は大掛かりになるかもしれない。

 

「逃げるぞ朔。こんな奴を相手にしてる暇はない」

「こんな奴シバけはいいやない?」

「そこらの魔物なら簡単に倒せるが、こいつは何か違う。触らぬ神に祟りなしってやつだよ」

 

クーンはスチームガンを青紫色の獣の足元に撃ち、土煙を充満させた。その隙に全速力でその場から逃げるのであった。

 

(何故か分からないがあの魔物からはAIDAともクビアとも違う脅威を感じた。だが似たようなものも感じる。矛盾しているがそんな感覚だ。そうだな…仕様外の存在に似ているんだ)

 

ここは異世界なのだから仕様外級の存在がいてもおかしくはないだろう。こちらも仕様外の力をもっているとはいえ、効くかは分からない。

この異世界ではまだ分からないことが多いのだから慎重になるべきだろう。無駄な戦いは避けた方が良い。

 

「あの人間たち逃げちゃった。案外強そうだったのに…あの銀翼の剣士に緑肌の剣士くらいは」

 

今この場に残ったのはアウラと青紫色の獣のみ。誰もいないことを確認したアウラは隠れていた木から飛び出す。

 

「や、こんにちわ」

 

普通に挨拶するアウラ。まずはコミュニケーションから始めるビールトマスターだ。意思疎通ができるのなら良し。できなければ力で屈服させるだけだ。

相手は獣。こういう時はこちらが力を圧倒的に示せば良いだけだ。

鼻歌交じりで近づきながら鞭の柄に手を伸ばす。もし襲い掛かってきたらすぐさま仕置きをする。

 

「ふんふ~ん」

 

青紫色の獣は朔のようにアウラを見る。だがすぐに興味を失ったのか背を向けた。

 

「おろ。ねーねー、お話ししようよー!!」

 

ニヤリと笑いながらアウラが飛び出したと同時に青紫色の獣はロケットの如く逃げ出した。

「速っ!?」と言いながら追いかけるが向こう側の方が本当に速い。鞭で捕まえようとするがヒラリと躱される。なかなかの巨体のくせに身軽だ。

どこまで逃げていくかは知らないがアウラは森の中ならホームグラウンドだ。進行方向を変えて先回りをする。

そして真正面に追いついた瞬間に青紫色の獣がいきなり円球に包み込まれたと思えば消えた。

 

「え、何今の?」

 

 

side変更

 

 

ドコに行ってたの? エ?食事に行ってた? 西のヌシを食べちゃったのか。そんなのどうでもイイヨ。どうせ次のヌシが勝手に決まる。

 

それとアト、森デ面白い奴ラに出会ったのカ。ダークエルフの子供? それもどうでもイイ。

 

さらにワタシにそっくりのに出会っタ? ソレハ本当に面白いネ。

次はワタシも出会ってミタイヨ。それよりも食事がオワッタんならすぐに罪竜のトコロに行くよ。

 

あの白銀の騎士メ。ずっとずっと罪竜を追いかけては断罪しようとシヤガッテ。守るコッチのみになってミロ。

だがソレが白銀の騎士の役割ダカラな。他の4人もオノオノの役割ををもって動いていル。

 

さて、ワタシたちも役割を果たしにイコウ。敵は白銀の騎士ダケじゃなイし。最近は法国も動いていてメザワリだ。




読んでくれてありがとうございました。
今回の最後に新たな登場人物が現れました。正体はまだ伏せていますが分かる人は分かります。


朔「なんでウチをじっと見てたんやあの猫?」
???「ワタシとそっくりかぁ」


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新たな発見

少しずつハセヲたちはカイトやアインズたちの事件を見つけていきます!!

.hack//OverLordの時系列でいうとリザードマンたちがコキュートスと戦っているあたりです。


リ・エスティーゼ王国。

古き趣のある王国だ。人が多く文化的な場所である。旅をしていてこんな大きな国に到着できたのはとても運が良い。

揺光に太白、天狼はリ・エスティーゼ王国に到着したが入国はしないでいた。その理由は天狼だ。

彼等が入国する前に太白が天狼に対して「お前その姿で入るのか?」と言ったのだ。確かにここが異世界で自分の姿に違和感が無かったので考えもしなかったがリ・エスティーゼ王国が亜人の排他派だったら面倒だろう。

だからまずは揺光が先に国内に入って確認する。国内は人が多いが全て人間だ。獣人や亜人などはいない。

情報を聞いてみると排他派ではなさそうだが獣人がこの国いると少し面倒そうであるそうだ。

 

「なるほど…この姿だとちょっとした大騒ぎになるわけか」

「だろうね。だから取りあえず布やマントで隠した方がいいんじゃない?」

「おう。よっと」

 

天狼は取りあえずマントで身を隠す。そうすれば長身マント男の完成だ。

 

「うわ怪しっ!?」

「揺光っ、おま…着せといて怪しいとか!?」

 

怪しいと思ったのだから仕方ない。だがこれでマシになった方だろう。

 

「では行こう」

「何か言ってくれ太白」

「…まあ怪しいのは同意する」

「太白まで!?」

 

太白は冷静のまま先にリ・エスティーゼ王国に入国するのであった。太白に関してだが姿はどこからどう見ても紳士だ。逆に貴族だと思われてもおかしくないだろう。

道行く人たちに見られているがそれは太白なのか天狼なのか分からない。もちろん揺光も注目されているのだ主に男性から。

良くも悪くも注目される3人だ。まずは情報収集。仲間を探しているということでどこに多くの情報を得られるかということで聞いていくとやはり酒場らしい。

様式美すぎて苦笑するがやはり酒場には多くの人が集まり、情報も飛び交うのであろう。

 

「酒場か…まあ無難だな」

 

酒場に向かう途中にて彼等はある人物に出会う。その人物たちはまさにお嬢様に執事であった。

人が多く多少混雑していたので太白と執事の肩がぶつかり合う。

 

「すまない」

「いえ、こちらこそ余所見をしていました」

 

太白はこの異世界に来てから感覚が鋭くなっている。だからこそ今の執事が相当な実力者だというのが分かった。

 

(今の執事……相当な手練れだな)

 

この考えは執事の方も感知していた。

 

(今のお方は中々な実力ですね。この世界では稀に見ない戦士でしょうか?)

 

ナザリックの執事であるセバスは太白の実力を見抜いたが今は頭の片隅に置いておいた。もしかしたらいずれ再会するかもしれないが今はリ・エスティーゼ王国の調査だ。

 

「セバス様?」

「何でもありませんよソリュシャン」

 

一瞬の接触にすぎなかったがお互いに何も無かったの如く去るのであった。もし、何か関わりがうまれれば未来が少し変化したかもしれない。

 

「酒場についたな。相当酒臭いぞ」

「え、そんなに酒臭い?」

「この姿になったおかげなのか嗅覚が研ぎ澄まされてるからかもしれん」

 

天狼の姿は狼の獣人。ならば嗅覚が人間よりも上なのは当然かもしれない。

この姿になって初めて犬や狼の気持ちが少しだけ分かった気がしたのであった。

 

「入るぞ」

 

酒場に入れば酒場特有の臭いに騒がしさが鼻と耳に入る。まずは誰に話を聞くかは決まっている。酒場のマスターに聞けば良いのだ。

太白はまるで常連にようにカウンターに向かってマスターに話しかける。マスターにチップを渡して酒を頼む。

その一連の流れに揺光と天狼は「おおー」と称賛。慣れているのかと聞くとそうでもないと答えた。

 

((絶対嘘だ…))

 

そして太白は酒を持ってあるテーブルに向かった。そのテーブルには仮面をつけた少女に偉丈夫がいた。

 

「失礼。『蒼の薔薇』の方たちで間違いないですかな?」

「おっと、これはナイスミドルなオジサマじゃないか。ああ。俺は『蒼の薔薇』のガガーランだ。こっちにいるチビはイビルアイだ」

「私は太白だ。後ろに居るのが」

「アタシは揺光。よろしくな」

「…天狼だ」

 

酒を奢りながら簡単な自己紹介を終えて早速本題に移す。

 

「で、俺らに何の用だ?」

「人を探している。八咫とエンデュランスと言う名の男だ」

「どんな奴だよ?」

「褐色肌の修行僧みたいな男が八咫。青色の軽装備の美青年剣士がエンデュランスだ」

「ふうん。知らねえな」

 

蒼の薔薇は王国最大のアダマンタイト級冒険者だ。何かしら知っているかと思ったが当てが外れたようだ。

流石にそう簡単に見つからない。異世界は広い。何かしら情報が見つかれば運が良いもの。

 

「…そうか。情報提供感謝する」

「悪いな。もし何かしら情報を手に入れたら教えてやるよ」

「それは助かる」

「それにしてもあんたら…けっこう強いだろ」

「いや私なんて…だが蒼の薔薇にそこまで言ってもらえるとは光栄だ」

「謙遜すんなよ。分かる奴には分かるんだからよ…後ろにいる女とマントの男も強いだろ?」

 

どうやらアダマンタイト級の戦士となると相手の強さが分かるらしい。

 

「ん、どうしたお嬢ちゃ…確かイビルアイだったか?」

 

イビルアイが天狼を見ていた。お互いにマントで身体を隠しているので意気が合いそうなのだろうか。

 

「天狼。イビルアイを怖がらせんなよ」

「怖がらせないさ」

(…テンロウとかいう男は人間か?)

 

イビルアイは天狼を怪しく思う。彼女は亜人や獣人に出会ったことがある。だからこそ天狼からは獣人のような気を感じたのだ。

獣人なら身体をマントで隠しているのが分かる。だが悪い気は感じない。彼は揺光という女と仲が良さそうだ。

ならば無駄に正体を暴く真似はしないほうが良いとすぐさま判断したイビルアイ。

 

「…なんでもない」

「そうか」

(それにしてもこいつら強いな。特にこのタイハクという男強い。もしかしたら私たちと同じくらいか?)

 

イビルアイでさえ太白たちの強さが分かるらしい。まだ太白たちはこの異世界でどれほどの強さに位置するか分からないが、彼女たちが認めてくれるなら太白たちは相当な実力となる。

ならばハセヲはこの異世界でも稀をみない実力者だろう。彼は自分たちの中で一番強い。

 

「何だか最近は王国に実力のある旅人が来るもんだな」

「あいつらよりこっちの方が常識がありそうだがな」

「あいつらって?」

 

揺光が首を傾ける。

 

「最近仲間になってくれた奴らさ。1人は常識人だが、もう1人が厄介なんだよ」

「あんの黄金戦士め」

「黄金戦士?」

「全身が黄金の鎧を着た奴だ。しかも暑苦しい」

「ふーん。そんな奴がいるんだな」

 

揺光は、そういえばハセヲの知り合いに黄金の鎧を着こんだ重槍士がいるのを思い出した。

 

(まさかね)

 

あの黄金の重槍士を忘れて違う話でもしようかと思ったら酒場に新たな者が現れた。その男が酒場に入った瞬間に静かになったのだ。

その男はそのままマスターの元へと歩き、何かを話しては何かメモのようなものを渡していた。それが何かは分からない。

 

「あいつが酒場に入ったら急に静かになったけど…あいつは?」

「あいつは六大貴族の一角に加わり七大貴族になるんじゃないかと言われる男だ。そして八本指の幹部じゃないかとも言われている」

 

『六大貴族』に『八本指』という単語。どちらも聞かない単語だ。『六大貴族』に関しては何となく分かるが『八本指』は全く分からない。

その男の特徴は緑の髪に、耳にはヘッドホンのような耳当てを装着している。服装は貴族らしい黒い服にマントだ。

 

「あいつの名はオズワルド・アナ・ヴィクトーリアン。良くない噂を聞く奴だから関わらない方がいいぜ」

 

オズワルド・アナ・ヴィクトーリアン。恐らく関わりが無いと思うが頭の片隅に覚えておこうとする揺光たちであった。

 

 

side変更

 

 

欅と楓、松は謎の反応があった更地へと向かった。その場所を見た感想は更地というよりも砂漠に近い。

ここだけ砂漠なんておかしい。エ・ランテルの冒険者組合で聞く情報によるとここは何でも冒険者モモンという者が吸血鬼であるホニョペニョコを倒した場所とのことだ。

強力な吸血鬼を倒すために強力な魔法を込めた結晶を解放した結果がこの砂漠とのことだ。この異世界の魔法も馬鹿にはできないものだ。

 

「しっかし吸血鬼の名前がホニョペニョコって適当な名前だな」

「そうとも限りませんよ松。どの国にも決まった言葉で話されていて特別な意味を持った名前かもしれません」

 

日本語、英語、ドイツ語と言語は国ごとに様々だ。1つの言葉に対して様々な言い方があるのだ。

異世界もそうだろう。ならば吸血鬼につけられたホニョペニョコという名前もモモンという者の故郷で使われている言葉であろう。

 

「あはは、ホニョペニョコか。なんだかふわっとした名前ですよね」

「欅様」

「楓、松は向こうを調べてみてください」

「はい欅様」

「了解」

 

砂漠を探索しても砂一面の更地だが見つけるのは何かしらの反応だ。何かしら情報を見つけられれば良いのだ。

もしここに八咫やエンデュランスの反応があれば2人の行方が少し分かるかもしれない。この更地にした魔法とやらも実はThe Wolrdの魔法ならモモンという冒険者も関係性があるかもしれない。

姿は漆黒鎧で包んだ長身の男性らしいのでThe Wolrdのキャラという可能性はなくはない。ただ2人が変装しているというのも考えにくい。

 

「やっぱただの砂地だな。ここに何もないんじゃないんすか欅様」

「うーん…何かあると思ううですけどね。あ!!」

「何か反応がありましたか欅様?」

「ありましたよ…でもこれは」

 

欅が困った顔をしている。反応はあったが詳しくまでは分からない。この場で電子モニターを展開させて謎の反応を調べてみる。

すると衝撃の事実が分かったのだ。それはあの八相の反応と酷似しているのだ。

 

(八相…モルガナ因子。それともう1つこれはまさかウィルスバグ?)

 

反応が八相の他にウィスルバグのような反応があったのだ。ウィルスバグなんて電子世界で多くある。その反応の基準値に近しいのだ。

異世界にウィルスバグが存在するなんておかしい。八相のデータに関しては八咫やエンデュランスがこの異世界にいるのだから当然の反応だ。

 

「どうしました欅様?」

「…これは知識の蛇に戻って全員に周知させた方が良い案件ですね」




読んでくれてありがとうございました。
次回もゆくっりとお待ちください。

さて、今回の最後付近で新キャラがちょっと登場でした。
その名も『オズワルド・アナ・ヴィクトーリアン』。こいつの正体は分かる人には分かります。

陽光「暑苦しくて黄金戦士…あいつにそっくりだな」
ガガーラン「え、知り合い?」


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遭遇

今回でついにハセヲSIDEの敵側が登場します。
その正体も分かりますね!!

.hack//OverLordの時系列で言うとリザードマンとの戦いとフィドヘルとの戦いが終わった後くらいです。


ハセヲたちはトブの大森林へ調査に訪れていた。実は欅から有りえない情報を得たのだ。

それはまさかのウィルスバグの反応と八相の反応だ。この異世界にウィルスバグの反応は有りえない。

欅としては確定することは出来なかったので、もしかしたらウィルスバグに似たような存在がこの異世界にいるかもしれないというのが見解だ。これは気をつけながら調査をしないといけないだろう。

そして八相の反応。これはすぐさま八咫とエンデュランスではないかとすぐに思った。だが欅はイニスの反応だと言うのだ。八咫はフィドヘルで、エンデュランスはマハ。

イニスはアトリの持つ八相の力だ。彼女は欅が調査した場所には訪れていないのだからおかしい。何故イニスの反応があったのか分からなすぎる。

行方不明の仲間を探すために異世界に来たら予想外の情報を手に入れてしまったのだ。ウィルスバグに近い存在と、八相の反応。

本来の目的から厄介そうなものを見つけてしまったのだ。こればかりは無視できない。

それにもしかしたら八咫はこの2つの反応を調査をしているかもしれないのだ。ならばこちらも同じように調査すれば八咫たちと鉢合うかもしれないのだ。

 

「で、今度はこの森でウィルスバグと八相の反応があったと」

「そうですよ。しかも今度のモルガナ因子はフィドヘルでした」

「八咫か!!」

 

ついに大きな情報を手に入れられるかもしれない。ハセヲたちはトブの大森林を突き進んでいく。

今回のメンバーはハセヲの他に欅に大火、タビーだ。

 

「うにゃー。緑に草木がいっぱいだねハセヲ。これもうジャングルじゃない?」

「かっかっかっか。森ん中で飲む酒はまた別格だな!!」

「酒飲んでんじゃねえよ大火」

「良いじゃねえか。この姿になってから全然酔わねえんだ。こりゃいくらでも飲めるぜい!!」

 

その酒はどこから調達してきたのかとツッコミをしたいものだ。だが何だかんだで大火は頼りになる男だ。なんせハセヲが認めた師匠なのだから。

 

「おや、何か生物反応がありますね」

 

欅が生物反応があると言ってすぐさま身構える。魔物だろう。しかし油断はできないクーンからの報告だとトブの大森林には強い魔物がいるとのことだから。

ガサリと茂みの奥から出てきたのはリザードマンであった。

 

「お前たちは…亜人が2人に人間1人、獣人1人」

 

リザードマンは警戒している。手には氷の剣を持っていた。まさか知性のある魔物に遭遇するとは思わなかった。

これなら会話が成り立つだろう。すぐさまハセヲは口を開く。

 

「待ってくれ。俺らに敵意はない」

「…むう」

「そうだぜい。ワシらに敵意はねえ。どうだ一緒に酒を飲まねえか!!」

 

大火は堂々と笑いながらリザードマンに酒を持って近づく。彼の雰囲気にリザードマンは少しだけ毒気を抜けられる。

 

「あんま警戒すんなよ…って言ったって無理だわな。そりゃあ知らねえ奴がぞろぞろと森にいりゃあ警戒するもんだ。だが酒を片手に近づくのは友好の証だ」

(酒持って近づくのは友好の証か?)

(さあね)

 

大火の言葉にリザードマンは考え、氷の剣を降ろした。

 

「ワシは大火だ!!」

「ザリュースだ。その酒を貰おう」

「おうともよ!!」

 

大火の懐の深さというべきか、豪快な性格のせいなのか分からないがおかげでリザードマンもといザリュースと友好的にはなりそうだ。

 

「俺はハセヲだ」

「私タビー。よろしくにゃ」

「僕は欅です」

「…本当に珍しいな人間に亜人、獣人が一緒にいるとは」

「そうか?」

「ああ。もしかしてアークランドの者か?」

「アークランド?」

「違うようだな」

 

聞いたことも無い言葉だが、聞くところアークランド評議国は人間や亜人が住む国らしい。

それを聞けばハセヲたちをアークランドの者だと勘違いするだろう。

 

「お前たちはどうしてこの森に?」

「行方不明の仲間を探してるんだ。それとこの森で謎の反応があったから調査しに来たんだ」

「謎の反応…まさかアレか?」

「何か知ってるのか!?」

 

ザリュースは何かを知っている素振りを見せる。

 

「聞いた話だがこの森で黒い煙のようなものが発生したんだ。そして魔物なのか生物なのかよく分からない奴も出現したらしい」

「黒い煙に生物かどうかも分からない奴?」

「ああ。そいつらには何も攻撃が通じなかったと仲間が言っていたんだ」

 

攻撃が通じない。まるで仕様外の存在ではないだろうか。

だがそんな奴らをどうしたのか。彼からの雰囲気だと危機は去ったかのような感じである。

 

「そいつらはどうしたんだ?」

「我らの神が退けてくれたのだ」

「神?」

「うむ。我が神と神の眷属6人が黒い煙を消滅させた。生物なのかよくわからない奴に関しては彼方から眩い閃光によって消滅したのだ」

「神様に6人の眷属か…」

 

神ときても驚きはしない。実感が湧かないが異世界なのだから神がいてもおかしくはないだろう。

だが神とはどんな存在なのだろう。神なんてよく分からない。

 

「実は俺はこれでも死んだ身なのだ。だが神が俺を甦らせてくれたのだ」

「にゃ、死んで蘇った?」

「ああ。まあいろいろあったんだ。だが今は運気が良くなっている。結婚することもできたしな」

「えー結婚。おめでとうにゃ!!」

 

タビーがザリュースの結婚を祝う。これには彼もつい照れてしまう。

リザードマンも結婚する世界のようだ。何故か大火から「お前も早く決めろや」と言われたがハセヲは分からない。

 

「ザリュースさん。その場所まで案内…これは!?」

「どうした欅?」

「AIDA反応です!!」

「何だって!?」

 

AIDA。ハセヲたちにとって忘れられない存在だ。AIDAが存在したからこそハセヲはThe Worldを駆け巡ったのだ。

 

「嘘だろ欅。何でAIDAがこの世界にいるんだよ!?」

「分かりません…近いですよ」

 

タビーの耳がピクっと反応する。

 

「ハセヲ。向こうから誰か来るよ」

 

タビーが指さした方向を見る。誰も出てこないがザリュースも何か得体の知れない奴がいると呟いた。

ならば確実に誰かいるのだろう。ならばとハセヲは立ち上がり、森の奥に向けて叫ぶ。

 

「出てこい。居ることは分かってるんだよ!!」

 

ハセヲが叫ぶと森の奥からある人物が出てくる。

その人物は緑色の髪に、耳にはヘッドホンのような耳当てを装着している。服は黒く、マントも装着している。どこかの貴族と言っても信じられそうだ。

 

「人間に亜人、獣人、リザードマンですか」

 

ハセヲたちは武器を構える。

 

「これはこれは好戦的ですね。やはり亜人や獣人は野蛮だ…何故か人間もいますがね」

「何者だよ」

「私の名前はヘレン・ゲートキーパー。よろしく…そして、さようなら」

 

ヘレンと名乗った男は指の先端からレーザーを放出した。一直線に放出されるレーザーはハセヲの心臓を狙っていたが大剣で切断した。

 

「なんと!?」

「てめえもいきなりじゃねえか」

「まさか私のアルゴルレーザーを防ぐとは…貴方たちこそ何者ですか?」

「ただの冒険者だよ」

「冒険者のくせにプレートがありませんね」

 

ヘレンはもう一度指に光を集中させる。またレーザーを打ち込むつもりなのだ。

 

「あいつAIDA感染者か!?」

「そうですね。AIDA反応があります…でも何か」

 

AIDAとヘレンが聞いた瞬間に目を見開く。光の収束も消える。

それに彼の身体も震えているのを見て動揺しているのが分かった。急にどうしたというのだろうか。AIDAという言葉に反応したようだ。

 

「貴様ら何故AIDAを知っている!?」

 

ヘレンは急に声を荒げた。まるでAIDAを知っているのが絶対にあり得ないという感じだろう。

そもそも有りえないと思っているのはハセヲたちの方もだ。何故、異世界にAIDAが存在するのか。

 

「あ、有りえない。AIDAを私以外が知る者なんていないはずだ。例外があるとすれば…いや、それも有りえないはずだ。奴らからAIDAの情報が出るのは無い」

「おい。お前もAIDAを知っているのか!!」

「私に出会ったことに対して口封じをしようと思ったが止めです。貴様らにはいろいろと聞かせてもらいます…アナ!!」

 

ヘレンの身体を纏うように透き通った紫色の膜が出てくる。そしてミジンコのような微生物の形となる。

 

「あの姿は!?」

 

ヘレンが纏った姿はハセヲが忘れるわけもない姿だ。間違いない。ハセヲが初めて戦ったAIDAである。

 

「コボルブリッド!!」

 

複数の光球を放たれた。

 

「タビーは後ろに。大火行くぜ!!」

「おおともよ!!」

 

ハセヲは大鎌に持ち替え、大火が刀を持つ。2人は複数の光球を全て切り裂いた。

 

「また私の攻撃を!?」

「どうしたよ。まるで攻撃を防がれたのが有りえないように見えるぜ」

「この!?」

「くらえ。蒼天大車輪!!」

「私の身体に傷を!?」

 

大鎌でヘレンの纏っているAIDA部分を切り裂く。

 

「何故だ。何故私に傷を与えられる!?」

「完全に倒すにはやっぱデータドレインしかねえな」

「本当に貴様ら一体に何者だ!?」

「さっきも言ったろ。冒険者だよ」

「ヴィクトーリアン!!」

 

ハセヲがデータドレインを放とうした時、ヘレンの背中から黄色い羽が生えた。あの羽はどこかで見たことがあるような気がする。

 

「ロイヤルブリッド!!」

 

おびただしい量の光球が放たれた。これではデータドレインが放てる状態ではない。

ハセヲと大火がまた光球を切り裂くが追いつかない。だからタビーと欅にザリュースも光球を切り裂く。

 

「大丈夫か!?」

「大丈夫だよハセヲ」

「ワシもだ!!」

「平気です!!」

「同じく平気だ。何だったんだあの人間は…いや、人間なのかあいつは?」

 

ヘレンと名乗った男は消えていた。まさかのAIDA反応を発する者が現れた。

ウィルスバグに八相、そしてAIDA。この異世界はどうやら何か異変が起きているのかもしれない。だが何でAIDAがいるのか分からないのだ。AIDAは再誕によって消滅したはずなのだ。

なぜThe Worldの仕様外が異世界に存在しているのか。もう訳か分からずに頭がパンクしそうだ。

だが、AIDAがこの異世界に存在するならハセヲたちはすることは決まっている。

碑文使いはAIDAを引き寄せる。今度は異世界でAIDAとの戦いになるかもしれない。

 

 

side変更

 

 

何故あいつらはAIDAを知っていたのだろうか。それは本当に有りえないことだ。

AIDAの存在を知る者は私だけだ。誰も知らないはずだ。

そしてあいつらの攻撃が私に通じた。それも有りえない。私に攻撃が通じる奴なんてこの世界に存在しない。

 

私に攻撃が通じる相手が存在したとして考えてみると、恐らく竜王の奴らや十三英雄だろう。だが奴らはこの世界の知る人ぞ知る強者ではなかった。

これは調べる必要があるだろう。そういえば…AIDAを知る存在は私以外に一応いる。ウィルスバグのあの双子だ。だが彼等がAIDAの情報を流すメリットは無い。

 

まさかこの世界の創造神が…?

それも無いだろう。あの創造神はよっぽどのことが無い限りあの空間から出てこない。

本当に調べることはたくさんありそうだ。だがその前に王国で双子の奴が何かしでかそうとしている。それに合わせて私も動かなければならないだろう。

 




読んでくれてありがとうございました。
次回もゆっくりとお待ちください。

ついにハセヲSIDEの敵が現れました!!
その敵側はやはりAIDAです!!
なんで異世界にAIDAがいるのか。ヘレン・ゲートキーパーとは誰なのか。
それについては物語を進めていくと分かります。ということで頑張れ私。

ハセヲ「何でAIDAがいるんだー!?」
ヘレン?「なんでAIDAを知ってるんだー!?」


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VOl.2 異邦の神
王国の裏


今回からVOL:2に入ります。
ついにAIDAが出てきました。AIDAはこの異世界で何をしでかすのか。

.hack//OverLordの時系列でいうと『Vol.3 大侵食』の『新たな幕開け』の前日のあたりです。


八本指の定例会。ここには八部門全ての幹部が集まり、部門ごとに報告をする。報告なんて何があったとか、どれくらい稼いだとかくらい。

だが今回はいつもとちょっと違うようだ。麻薬取引部門の幹部であるヒルマは苦い顔をしている。

実は麻薬を製造していた重要な村が焼き払われたというのだ。これは麻薬取引部門にとってはとても痛い。おかげで麻薬を売る数が限られてしまったのだ。

 

「蒼の薔薇め…!!」

 

麻薬を製造していた村は『蒼の薔薇』という冒険者チームによって焼き払われたのである。ここ最近は蒼の薔薇が八本指の動向を探っていたのは知っていた。だがそこまで脅威と思っていなかったが今回の事件でそうも言っていられなくなったのだ。

今回の痛手は麻薬取引部門だけではなく、密輸部門も痛手を食らっている。麻薬取引部門で麻薬を受け取り各国に麻薬を密輸していたが肝心の麻薬が無いとなると仕事がなくなる。

これには密輸部門の幹部であるヘレン・ゲートキーパーは苦笑い。もっとも作り苦笑いだが。

 

「本当に痛手ですよねヒルマさん。これは密輸部門の仕事が少なくなりそうです」

「ふん、そんなこと言ってるけどアンタはそんな風には見えないけどね」

「いえいえヒルマさん。私としても本当に困りますよ。なんたって麻薬は密輸部門でも良い取引商品ですから…それが無くなるとなると商売あがったりです」

 

ヤレヤレといった表情をするが何処か気にしていない様子。重要な商品と言っておきながら全然気にしていないのだ。まるで商品は他にあるようだと言わんばかりに。

 

「しかし、こちらにもメンツというのがありますよね。ならば報復しかありません。八本指に立てついたことを知らしめるのですよ」

「んじゃ、お願いするぜオズワルド」

「ゼロさん…私の名前はオズワルドではありません。私の名前はヘレン・ゲートキーパーです。間違えないでください」

「悪い悪い。次は気を付けるぜヘレン」

「本当にお願いしますよ。…では、こっちはこれからイロイロと忙しくなりますので失礼します」

 

ゼロはヘレンをジェミニと同じように不気味に思う1人だ。ヘレン・ゲートキーパーは八本指の密輸部門の幹部だ。彼は麻薬取引部門や奴隷売買部門と連携して多くの国に商品を流したりしている。

結果的に八本指はヘレンのおかげで成長した部分もあるだろう。そして実力も八本指最強のゼロよりも圧倒することができる。

ヘレンは謎のタレント能力を持っているとゼロは考えるが実際はよく分からない。そもそも彼をよく知る者は八本指にも王国にもあまりいない謎な人物だ。

彼は八本指に居る時はヘレン・ゲートキーパーと名乗り、王国に居る時はオズワルド・アナ・ヴィクトーリアンと名乗っている。どっちかが本名か、もしくは両方とも偽名かもしれない。

全くもって分からない。

 

 

side変更

 

 

ハセヲたちは緊急会議を要していた。異世界で仲間を探しに来たというのにAIDAの存在を見つけてしまったからだ。

これははっきり言って異常なことだ。何で異世界にAIDAが存在するのか分からなすぎる。

 

「ねえハセヲ。そのAIDA反応は本当なの?」

「本当ですよパイさん。僕が間違いなくAIDA反応を感知しました」

「ああ。欅の言う通りだぜパイ。それにこの目で確かにAIDAを見た」

 

確かにAIDAを見たのだ。微生物のようなAIDAである。だが気になるのはAIDAを操っていた人間だ。

その人間は間違いなくAIDAをコントロールしており、能力まで使用していたのだ。

 

「AIDAをコントロールしていた人間がいたの?」

「ああ。その人間の特徴は緑髪にヘッドホンみたいな耳当てをつけてる男だ。服装は黒を基調にしていたと思う。名前はヘレン・ゲートキーパーっつってたぞ」

 

この特徴に反応したのが揺光たちだ。その人物について最近見た聞いたのである。

 

「アタシたちソイツをリ・エスティーゼ王国で見た気がするぞ」

「ああ。特徴が一致する…だが名前は違うな。こっちが見た男の名前はオズワルド・アナ・ヴィクトーリアンという」

 

ヘレン・ゲートキーパーにオズワルド・アナ・ヴィクトーリアン。この名前を持つ1人は別人なのか同一人物なのか。

分からないのならば王国に行って確かめるだけだ。

 

「王国に行けば分かるか…」

 

何でAIDAが異世界に存在するのか。そもそもAIDAはオーヴァンにの再誕によって消滅したはずなのだ。

分からないことばかりでハセヲだけでなく他の仲間たちも混乱してしまう。AIDAとの記憶なんて良いものは無い。

ここにいる仲間の大半がAIDAの被害者なのだ。AIDAのせいで仲間を傷つけ、自分の大切なものを壊し、自分を追い詰める。

 

「何で異世界にAIDAが存在するか分からない。でもAIDAが存在するなら俺たちは動かないわけにはいかない」

「ハセヲを言う通りだ。俺もこれは放っておくわけにはいかないだろ」

「はい。私も放っておけません!!」

 

クーンにアトリがAIDA問題を解決するべきだとハセヲに賛成していく。こればかりは全員が反対しないだろう。AIDAの被害者になった者はAIDAの脅威は嫌でも分かる。

AIDAに感染していて後遺症で覚えていなくとも、自分がやってしまった罪は消えない。だからこそ天狼や太白などはこれ以上犠牲者を出したくない気持ちが滲み出す。

ハセヲだってAIDAの脅威は見逃せない。AIDAのせいで彼は多くの事件に巻き込まれた。もううんざりなのだ。

 

「王国に行くぞ」

 

リ・エスティーゼ王国にいるであろうAIDAを操る男。奴を必ず捕まえてAIDAについて聞かねばならないだろう。

 

 

side変更

 

 

「なあ団長。どこに向かうんじゃ?」

「これからリ・エスティーゼ王国に向かう。やっとあの王国に俺が追っている奴がいることが分かったからな」

「奴…団長がここ最近いろんな国に向かってはおかしな奴を倒しているのに関係があるやつか?」

「そうだよリグリット」

 

立派な剣を下げ、無邪気な微笑みを湛えた老婆の名はリグリット・ベルスー・カウラウ。かの十三英雄の1人だ。

十三英雄は200年前の人物なのだが何故リグリットが今も生きているかは分からない。その理由を団長と呼ばれる男は気にしない。

 

「たしか…ウィルスバグとか言ったかのう?」

「それもそうだが今回は違う。もう1つの方だ」

「もう1つ…アイダとか言うやつか?」

「そうだ」

 

リグリットは身軽に歩く。老婆には見えないくらい身体を身軽に動かすのだ。

 

「アイダか。ウィルスバグは世界の災厄と聞いたがアイダはなんじゃ?」

 

リグリットは団長からウィルスバグのことを世界を滅ぼす災厄と聞いている。実際に目にしたことがあるし、戦ったこともある。

だがAIDAに関しては分からない。リグリットは団長とAIDAに接触したことはあるがウィルスバグと見分けがついてなかったのだ。

 

「AIDAはウィルスバグとは違う。ウィルスバグ生物に感染するがAIDAは生物に寄生するんだ」

「感染と寄生は同じようなもんじゃないのか?」

「違うよリグリット。ウィルスバグが生物に感染すれば死ぬ。だがAIDAに寄生されれば死にはしないが自分でなくなる。君も見ただろう?」

「ああ…アイダに寄生された奴はおかしい奴ばかりじゃったよ。なんというか己の本能を暴走させたようじゃった。特に酷いと身体に異常をきたしておったな」

 

リグリットはAIDAに寄生された者の中で特に酷い者を思い出す。

身体の一部が黒色状に覆われ触角のような隆起物が出現し、その上から血管のような物が走るというグロテスクな見た目に変化した者がいたのだ。

 

「人間や魔物の肉体あんなに変化させるなんて見たことがないのう」

「AIDAはこの世界にいてはならない。もちろんウィルスバグもな」

 

団長は迷うことなく王国へ歩いていく。

 

「それにしてもリ・エスティーゼ王国か。あそこにはあの泣き虫がおるのう」

「リグリットの昔の仲間かい?」

「ああ。泣き虫じゃが実力はあるぞ。ある特定の敵に関していえば圧倒的な優位に立てる」

 

リグリットの言う泣き虫とは蒼の薔薇という冒険者チームのうちの1人だ。しかもチームの切り札でもある。十三英雄のリグリットが認めるならば実力は確かだ。

 

「なるほど…俺よりも強いか?」

「団長よ。その問は愚問じゃろ…団長より強いのなんていないわ」

「それは買いかぶりすぎだよリグリット」

「そんなことないわい。前に手合わせした時なんてワシは全くもって敵わなかったぞ。それに団長にはまだ何か持ってるじゃろ?」

「…流石リグリットだな」

 

リグリットの実力は確かなものだ。だが彼女自身が団長の方が圧倒的に強いと確信している。それに団長は何か特別な力を持っていると確信もしている。その何かをリグリットは見抜いたのだ。

 

「本当に団長は何者なのかのう?」

「…いつも言っているだろう。ただの旅人さ」

「本当かのう」

 

リグリットは団長のことをよく知らない。

 

「団長に最初出会ったのはある洞窟じゃったのう。何であんなところで寝ていたんじゃか」

「それは俺も分からない。気が付いたら洞窟で横になっていた」

「その後、団長は死んだ魚のような目をしていたがウィルスバグやアイダを見つけたら水を得た魚のように生気を取り戻したよな」

「…この世界で俺が何かする役目があると思ったのさ」

「その役目がウィルスバグやアイダと戦うことで…黄昏の旅団を結成したのかオーヴァン団長よ」

「…かもな」




読んでくれてありがとうございました。

今回からは前作の.hack//OverLordに少し登場していたオーヴァンも活躍していきます。彼が異世界で結成した『黄昏の旅団』の目的も分かってきます。

オーヴァン「やっと出番か」
リグリット「ワシもアニメにやっとこさ登場じゃ!!」
ツアー「私もね」


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ハ本指:密輸部門

今回の話は.hack//OverLordの時系列でいうとVol.3 大侵食の 新たな幕開けの話の追加されるような形です。


ラナーは紅茶を口に含む。八本指の対策会議はクライムが加わってまだまだ続く。対策として、どこか援軍になる存在はいないかというのが出てくる。

 

「黄昏の旅団?」

「ええ、アークランド評議国の冒険者チーム。アダマンタイト級よ」

 

アダマンタイト級だがあまり聞かない冒険者チームだ。最もアークランド評議国のことをよく知らないラナーにとっては仕方がないかもしれないが。

 

「メンバー数は不明だけど私が出会ったのは3人ほど。男性に女性、リザードマン。男性のほうがリーダー」

「男性が人間で女性は亜人?」

「どっちも人間だったわ」

 

アークランド評議国の冒険者チームなら亜人の話が聞けると思ったがハズレてしまった。どちらも人間。そして人間がリーダーを勤めている。本当に珍しいのだ。

 

「まるで十三英雄みたいなチームね」

 

十三英雄は人間に亜人など複数の種族で構成されていたらしい。だとすると黄昏の旅団は十三英雄を真似ているのだろうか。

 

「真似ているかわからないけど、確かにそれっぽいわね」

「リザードマンはトブの大森林に集落があると聞いたことがあるわ。そこの出身かしら?」

「そこまでは分からないわ」

「名前とか聞いたの?」

「リザードマンは確かザリュース。女性がミドリ。リーダーが…オーヴァン」

 

人間2人にリザードマン。不思議な組み合わせである。戦っていないが実力は分かってしまった。

リザードマンは戦えば勝てるだろう。しかし、オーヴァンとミドリという人間には勝てるイメージが湧かなかったのだ。

ミドリという女性は副業で『殴られ屋』をやっており、1発でもヒットすれば賞金が貰える。試しにガガーランが挑戦してみたがカスリもしなかったのだ。

 

「あのガガーランの拳が届きませんか」

「ガガーラン悔しがってたわね。次に会ったらリベンジするって」

「余程強いのでしょうね。ならリーダーのオーヴァンとやらは更に強そうです」

「実際に強いと思うわ…ところで話が変わるけどオズワルドのヤツはなにか尻尾を出した?」

 

オズワルド。その人物は六大貴族に加わるかもしれない男で、八本指の幹部かもしれないのだ。

 

「今のところは尻尾は出してないわ。彼はよく六大貴族に贈り物をしているわね。私にも贈り物を寄越すわ」

「その贈り物に変なの入ってなかった?」

「ほとんどが金品だったわ。でも1だけ変わった品があったわね」

「それは?」

「黒い気泡のようなものが入った水晶よ」

「何それ怪しい」

 

ティナのいう通りだと同意するようにラキュースとクライムは頷く。八本指の幹部かもしれない贈り物なんて怪しすぎるものだが。

 

「なので捨てました」

「それが一番よ」

 

変な物や怪しい物は捨てるのが一番だ。

 

「オズワルドは密輸部門の幹部だっていう噂もあるわ」

「密輸部門か。見つけたアジトの中で密輸部門のアジトがあったわね」

「襲撃するかリーダー?」

「それはまだよ」

 

いずれは八本指のアジトに襲撃するだろう。だがそのいずれは近いうちになる。今のリ・エスティーゼ王国は様々な陰謀が渦巻いているのだ。そんかことをまだラキュースたちは気付かない。

 

(…クライム)

 

このとき、ラナーの片目が一瞬だけ黒く滲んだのを誰も見ることはなかった。

 

 

side変更

 

 

ハセヲは揺光たちがヘレン・ゲートキーパーと同じ容姿をしているというオズワルド・アナ・ヴィクトーリアンがいるリ・エスティーゼ王国まで訪れていた。

もし同一人物だというのならばとっちめてAIDAの情報を聞き出せばならないだろう。

ここは異世界だ。なのにThe Worldで戦ったAIDAがいる。この部分がおかしいのだ。

 

(ったく仲間を探しにきたのに何でAIDAと鉢合うんだか)

 

情報を知っている蒼の薔薇をまず探さなければならない。揺光たちは酒場で会ったが、何も蒼の薔薇は酒場がホームではない。

王国は広いから蒼の薔薇を探すのは難しい。でも有名なのだから手分けして探せば見つかるだろう。

ハセヲと志乃、揺光。天狼に太白。パイに望。という3チームで王国を探索している。

蒼の薔薇は本当に有名だ。王国の民に聞けば必ず蒼の薔薇の話は出てくる。これならばすぐに見つかりそうだ。

そして最初に見つけたのはパイたちだ。揺光たちから教えられた姿と合っている。

 

「もし、あなた方が蒼の薔薇でよろしい?」

「ん、誰だお前ら?」

(ふおおおおおおお)

 

何故かティアはパイを見つめてプルプルと静かに興奮していた。

 

「私はパイ。こっちは望よ」

「よ、よろしくです」

「うーん、まだガキか。ならオレの範囲外だな?」

「ん、範囲外?」

「いや、何でもねえ」

 

ガガーランが頭を掻く。さて、パイたちが何でガガーランたちを探しているかを聞くために真剣な顔をする。

ここ最近はいろんな奴に出会うなと思うガガーランであった。

 

「実は前に私の仲間が貴方たち出会ったそうで」

「あんたらの仲間?」

「あの、その、揺光さんたちのことです」

 

望がおずおずと言う。何故か可愛いと思ってしまう。

 

「ああー、そういえば前に会ったな。んで、何か用か?」

「オズワルド・アナ・ヴィクトーリアンとヘレン・ゲートキーパーという奴について聞きたいわ」

「あん?」

 

ガガーランとティア、イビルアイの纏う空気が変わる。

 

「オズワルドの名前はいいとして…ヘレンの名前までどうして知ってんだ?」

「私の仲間がヘレン・ゲートキーパーと名乗る男と戦闘になったのよ」

「マジか。で、大丈夫なのか?」

「ええ、仲間は無事よ。でもヘレンという男が気になる事を言っていたの。それを詳しく聞くために探してるのよ」

「気になる事?」

「こっちの事情よ」

 

流石にAIDAのことは話せない。話したとしても信じてくれるかどうか分からない。

説明したとしてもどう説明するべきか。AIDAをこの異世界であてはめるとしたらどんな存在だろうか。そのまんま寄生生物となるのだろうか。

 

「ヘレンねえ…その名前は八本指密輸部門の幹部の名前だ」

「八本指?」

 

八本指は王国の裏を牛耳る犯罪シンジゲートである。その名前の通り8つの部門に分かれている。

ヘレン・ゲートキーパーはその1部門である密輸部門の幹部らしい。そしてオズワルド・アナ・ヴィクトーリアンとの関連性は同一人物かもしれないということだ。

2つの顔を持つ男。もしかしたら2つの名前も偽名かもしれない。

 

「なるほどね」

 

これは大きな情報だろう。同一人物なら好都合だ。結局捕まえるのは1人のだから。

 

「そのヘレンでもオズワルドでもいいわ。その人物の居場所を知っているかしら?」

「…知っているが危険だぜ?」

「構わないわ。危険を伴うのは仕方ないことよ。それでもそのヘレンという奴は見過ごすことが出来ないの」

「なるほどな。まあオレらもヘレンもとい八本指のことに関しては調べてるんだ。その1つであるヘレンをお前たちがどうにかするならこっちとしても儲けもんだからな」

「おいガガーラン。こいつらに教えるのか?」

「ああ。こいつらはどうしても知りたいようだしな。だけど教えるだけだぜ。こっちにもいろいろとあるんでね。危険だが自己責任だぜ」

「構わないわ」

 

パイたちが店を出ていくのを見送ったガガーランたち。その後ろ姿を見送ったガガーランは消えたパイたちに対して口を開く。

 

「良い女じゃねえか。それに強いな」

「うん強い。……それに凄く良い」

 

ティアの顔は真顔だが心の中では凄く興奮していた。ティア実はレズビアン。だからこそパイを一目見ただけで惚れたのだ。

一応説明しとくがティナはショタコン。この場に彼女がいたら望に惚れてちょっかいをかけていたかもしれない。

 

「しかし密輸部門のヘレンの情報を探しているとはな」

「あいつらも八本指に恨みのある奴らなのかもな」

 

イビルアイがふうとため息を吐く。彼女たちは強いが八本指は強大だ。無駄死にしなければよいと思う。

そんな時に暑苦しい笑い声が聞こえてきてイビルアイは「うげえ」とつい口を零した。

 

「ハーハッハッハッハッハッハ!!」

「ぴろしぃ…」

「あ、どうも」

 

パイたちと入れ替わりにぴろし3となつめがガガーランたちのもとに訪れたのだ。

 

「むむ、さっきまで誰か居たのか?」

 

どうでもよいことだがぴろし3の顔を見てティアはパイの顔を忘れそうになったらしい。それほどまでぴろし3は強烈である。

 

 

side変更

 

 

ハセヲたちはガガーランの情報からヘレンという人物が八本指の密輸部門の幹部だと聞いてアジトに向かうことを決意する。

何故AIDAを知っているのか問わねばならないだろう。

 

(必ず決着をつける!!)

 

これからハセヲ密輸部門のアジトに向けて歩き出すと人とぶつかってしまう。

 

「あ痛!?」

「っと、悪い」

 

人だかりが多いのだからぶつかるのはしょうがない。

 

「大丈夫ですかカイトさん」

「って、お前は!?」

 

ハセヲは驚いてしまった。なんせ、ぶつかった相手はあの葬炎の騎士に瓜二つなのだから。

 

「カイトさんの知り合いですか?」

「いや、ボクは知らないかなモモンさん」

(…え!?)

 

あの葬炎の騎士はしゃべることはできない。だが目の前にいるそっくりさんはしゃべった。まさか本当にただのそっくりさんなのだろうか。

 

「あ、悪いな人違いだ。あんたにそっくりな知り合いがいるもんでな」

「そうなんですか」

「悪いな」

「いや、気にしてないよ」

 

ハセヲにカイト、アインズが顔を合わせたのは本当にただの偶然に過ぎなかった。




読んでくれてありがとうございました。

さて、今回の物語でまたいろいろと設定が加わりましたね。
実は隠し設定としてザリュースは元黄昏の旅団メンバーだったんです。その話を書こうとしてましたが結果的にできませんでした。なので設定だけで掘り下げることはありません。

そしてラナーは・・・!?

んでもってハセヲはカイトたちと接触してました。でもお互いの正体は知らないので単純にぶつかってしまっただけです。


ティア「パイ」
ティナ「ボウってショタはどこ!?」
パイ「なんか悪寒が」
望「ふええ…」


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オズワルドの屋敷

今回でやっとヘレンだがオズワルドの正体が分かっていきます。
AIDA側の正体ですね…まあAIDAなんですけど

本編での時系列でいうと今回の物語はゲヘナが実行される前日にあたります。


ヘレン・ゲートキーパーのアジトとオズワルド・アナ・ヴィクトーリアンの屋敷が王国に存在する。

どちらにヘレンだかオズワルドがいるか分からないがこれは二手に分かれないといけないだろう。なので2チームに分かれることになる。

ハセヲをリーダーとするチームは志乃に揺光。なんともハセヲがある意味困るチームだ。例えば恋愛の話になるとハセヲが困るという意味で。

 

次にもう1つのチームだがここでクーンとパイが入れ替わりだ。実は欅がトブの大森林で興味深いモノを発見したからパイを呼び戻したのだ。

クーンをリーダーとするチームは望に天狼、太白だ。クーン曰く野郎ばっかで華がないとのこと。それに望の中にいる朔はツッコミをするが望しか聞こえない。

まずはクーンたちの視点からだ。彼らはオズワルドの屋敷に向かっている。

 

「もし同一人物だとしてオズワルドの顔は貴族の顔だ。屋敷に行ったとしても門前払いかもしれない」

「ど、どうするのクーンさん」

「…侵入か?」

「あたりだ天狼」

 

クーンたちとオズワルドは知り合いでも何でもない。だから屋敷に行っても入れないだろう。そもそも相手がAIDAならそんなことも言っていられない。

だからこそ侵入だ。もしかしたら侵入したらすぐ戦闘になるかもしれない。クーンと望はAIDAに対抗できる碑文使いだ。

 

「望。気合い入れろよ」

「う、うん。ボク頑張るよ」

(ウチも力を貸すからな!!)

 

天狼も太白も力を貸す。彼らはAIDAに嫌な目にあっている。彼らはAIDAに対抗できる力を持たないがクーンたちをAIDAに向かわせることくらいはできる。

さて、オズワルドの屋敷は王国の貴族街に位置する。貴族街の中でも一番端だ。端にあるからこそ目立たず、ひっそりしている。

何でも王国貴族の中でも六大貴族はトップの貴族。その六大貴族に加わろうとしているのがオズワルドだ。そんな貴族としての顔を持つのに貴族街の端っこに位置するとは少し違和感だ。

トップの貴族グループに入るのならもっと良い立地のある場所かと思う。だけど貴族街の端っこである。

 

「ここがオズワルドの屋敷か。まあやっぱ貴族の顔だからか立派な屋敷だ」

 

クーンは屋敷のどこから侵入するかと考えていると天狼はあることに気付く。獣人の身体だからこそ人間のクーンたちには分からない微かな音や匂い、気配が分かるのだ。

 

「何だ…人の気配を感じない」

「そうなのか天狼?」

「ああ。こんな立派な屋敷なら使用人でも何でもいるはずだ。だが人の気配を全く感じない」

「天狼のいう通りかもしれん。見ろ」

 

太白が門を押すと開く。最初から開いていたのだ。これでは本当に誰もいないようである。

 

「…行ってみるか」

 

クーンたちは警戒しながら屋敷の中に入る。屋敷に入って、内装は綺麗だが確かに人の気配が無い。

これは本当に人がいないのかもしれない。そうなると武器を持っていつでも戦えるようにしておく。

このまま屋敷を捜索するが一向に誰とも会わない。完全に誰もいないようだ。こんな無人の屋敷が貴族の屋敷なのだろうか。

最初は嘘の情報でも貰ったかと思うが蒼の薔薇が嘘を言う理由がないだろう。

 

「もともと無人なのではないだろうか」

 

太白は自分の予想をみんなに伝える。彼の予想は正解かもしれない。ここはもともと無人の屋敷。

 

「おい、地下に通じる階段がある。慎重に行くぞ」

 

地下への階段を下りていくとある扉が現れる。その扉は厳重に封鎖されていた。これは何かあると思って天狼は自慢の拳で破壊する。

 

「破!!」

 

バコン!!と扉を破壊して室内に入る。室内は何かの研究室のようである。

壁中に多くのレポートが張り付けられており、何かの実験結果のレポートだ。1枚剥がしてレポートを読んでみるとクーンも顔が歪む。

 

「当たりのようだ。ここでAIDAの実験がされていたみたいだぜ」

「AIDAの実験?」

「ああ。この世界の人間に寄生させてどうなるかをまとめたレポートだコレ」

 

オズワルドは間違いなくAIDAと関係者だ。こんな実験レポートを見れば嫌でも分かる。

人間に寄生させてるし、モンスターにも寄生させている。他にも亜人や獣人にも寄生させて実験しているようだ。そしてその実験体がどのように変化したか、理性はどうなるか、凶暴性などの変化を事細かく書いている。

この実験の目的はAIDAの進化。どの種族が一番AIDAに適した生物か調べているようだ。その結果人間であることが分かったようだ。

人間の持つ心がAIDAの知的欲求を満たし、進化させている。亜人は次に良いらしい。モンスターはあまり適さないようだ。

 

「このレポートにはAIDAの進化した先について考察が書かれてやがる」

 

AIDAの進化した先。それはAIDAの自我誕生。AIDAは本能で動くが人間並みに自我を持ったAIDAはどう生きていくか考察されている。

もし、AIDAが人間並みに知性を持ったら人間社会に馴染めるとまで掛けている。無害なAIDAならそのまま人間社会に溶け込むが、害意あるAIDAならば人間社会を取り込む可能性があるとレポートにまとめられていた。

 

「AIDAが人間並みの知性を手に入れたらか…」

 

クーンは嫌な気しかしない。彼らが戦っていたAIDAはすべて本能的に動いたやつばかりだ。そんなAIDAが知性を持ったらどうなるか分かったもんではない。

 

「ん、このレポートは?」

 

太白は重要に保管されたレポートを発見した。このレポートはどうやらオズワルドにとって特に熱心に実験していたものかもしれない。

クーンは太白から渡されたレポートを読んでいく。

 

 

『このAIDAは私にとって特別なAIDAだ。このAIDAは特異変異体AIDA』

 

『このAIDAは彼女に寄生させよう。あの女ならばこのAIDAを成長させてくれるに違いない』

 

『あの女は私が認める人間の中でも特別だ。あの皇帝やこの国の王よりもAIDAに適している』

 

『法国にいる漆黒聖典のメンバーも気になるが今の私では近づけない。本当に惜しいものだ。特に番外次席に興味がある』

 

『ここ最近の彼女は寄生されているというのに変化はない。まさか逆に支配したのだろうか。会ってみるといつも通りの彼女だ』

 

『…どうやら違ったようだ。あのAIDAは彼女を使い分けているようである。自分が寄生されていると気付いていないのだ』

 

『さすがは特別なAIDAだ。こうも他のAIDAと違って進化しているとは驚きである』

 

『このAIDAはいずれ私を超えるだろう。このAIDAならばAIDAを新たな進化に導いてくれる』

 

『次に彼女に出会ってみてAIDAの成長を見てみると…とても成長していた』

 

『ここまで特別に進化するのは流石だ。少しこのAIDAの力を見せてもらったが…素晴らしい』

 

『一撃で私の腕を切断する斬撃を放つなど他のAIDAではできないことだ』

 

『これならばこの世界にいる存在は敵ではないだろう。コイツが本気を出せば国なんて陥落させることができる』

 

『リ・エスティーゼ王国だろうが、バハルス帝国だろうが、聖王国だろうが、アーグランド評議国だろうがな』

 

『では、このAIDAの成長を見せてもらいたい。でもその前にあの双子が何か仕出かすからその後にしよう』

 

 

ここでレポートが終わっている。

 

「なんだか不穏しかない内容だったな」

「う、うん。これは誰か…女の人がAIDAに寄生されているってことだよね」

「それも特別なAIDAにな」

 

またまた無視できない情報が出てきてしなった。当たり前だが情報を探せば新たな情報は出てくるものだ。

 

「ここにはオズワルドはいないようだ。ならヘレンのアジトかもしれん」

「…そうかもな。あっちはハセヲに任せるか」

 

クーンが研究室を出ようとしたが望が新たな隠し扉を発見した。

 

「隠し扉か」

 

隠し部屋に入ると薄暗い。だが天狼はすぐに誰かいることに気付く。

 

「誰かいるぞ」

 

目を凝らすと確かに誰かがいた。椅子に縛り付けられた男だ。

男なのだが異常なのだ。肉体が変化しており、どういう変化をしているかというと、黒色状に覆われ触角のような隆起物が出現している。さらにその上から血管のような物が走るというグロテスクな見た目なのだ。

これはまさしくAIDA感染者の中でも酷く感染された状態だ。その男はもう意識はなさそうだ。まるで麻薬中毒者のようである。

 

「おそらくオズワルドによって実験体にされた人間だろう」

 

この男の正体だが、実は八本指密輸部門の本来の幹部だ。この幹部はオズワルドが捕縛してAIDAの寄生実験をしていたのである。

こんな状態だがAIDAを取り除けば助かるのだろうか。

 

「うが…」

「ん?」

「うぎゅぐぎゃあああああああああああああああああああ!?」

 

いきなり男が奇声を発したと思えば身体中から黒い斑点が溢れ出し、肉体が変化していく。

その姿は蜘蛛であった。体色が赤い半透明な蜘蛛。そのAIDAの名前はGrunwald(グルンワルド)である。

 

「AIDA!?」

 

グルンワルドはそのままクーンたちへと迫る。

 

「ヤバッ!?」

 

スチームガンを装備してグルンワルドに発砲するクーンと太白。連撃で発砲するとどうやら攻撃は効いている。

望も天狼も攻撃が効くと分かれば援護する。だが決め手は碑文使いの力だ。

 

「どうやら通常の攻撃も効くようだ。ならばこのまま押し通すぞ!!」

「虎咬転進撃!!」

「パクドーン!!」

「「轟雷爆閃弾!!」」

 

苛烈な集中砲火攻撃。グルンワルドの動きが止まる。

この瞬間こそがチャンスだ。

 

「望、データドレインを展開するんだ!!」

「う、うん!!」

 

クーンと望のダブルデータドレイン。グルンワルドは消滅した。

 

「ったく、オズワルドはいなかったがこんなAIDAがいるとはな」

 

「はあ…」とため息を吐きながらクーンは地べたに座り込む。そして座り込んだと同時に欅からメッセージが入った。

何でも『興味深いモノ』と『興味深い情報』を手に入れたとのことだ。

 

「ハセヲの方はどうなってんだ?」

 

 

side変更

 

 

八本指密輸部門アジト。

ヘレンにしか入れない部屋で彼は必要な資材などをまとめていた。それはまるで夜逃げをするみたいだ。その例えはある意味正解だ。

ヘレンはリ・エスティーゼ王国もとい八本指から出ていくつもりだからだ。

 

「あの双子はこの国で何かをやらかすつもりだ。なら巻き込まれる前に出ていこう」

 

動物の皮で作成されたケースの中に1つ1つ丁寧にAIDAを封じ込めた卵のような物体を入れていく。

 

「どうせあの双子のことだ。王国にウィルスバグを解き放って飲み込むつもりだろう」

 

ヘレンの予想は正解だ。あの双子とは八相の破片データを取り込んだウィルスバグである。その名前はゴレ。

 

「あの特別なAIDAも連れていきたいが、アイツなら大丈夫だろう。アイツは私よりもスペックが高いのだから」

 

AIDAを封じ込めた物をケースにしまいこんだら今後はレポートに目を移す。

このレポートはAIDAによる実験レポートだ。人間や亜人、モンスターなどに寄生させてどうなるかをまとめたものである。

特に注目しているのが5体いる。

 

1体目は帝国の騎士に寄生させた。

2体目はトブの大森林で発見した巨大な樹のモンスターに寄生させた。

3体目は元密輸部門の幹部に寄生させた。

4体目は麻薬取引部門の幹部に寄生させた。

5体目はあの女に。

 

このまとめたレポートはもう記憶しているので残しておいてもしょうがないのでビリビリに破いてゴミ箱へと捨てる。

 

「次はどこで実験しようか。帝国なんていいかもしれない。ヘレンとオズワルドの名前は捨てて今度の名前はアナでいいか」

「王国を捨てて今度は帝国に行くのか?」

 

ピタリとヘレンの動きが止まる。この部屋はヘレンしかいないはずだし、ヘレン以外入れない。

だというのに他者の声が聞こえたのだ。

 

「やっと見つけたよ。お前があちこちにAIDAをばら撒いていた奴だろう?」

「……前々から私を嗅ぎまわる輩がいるかと思ったが貴様か」

 

ヘレンが振り向くとそこには男が立っていた。その男の名前はオーヴァン。

 

「各地でAIDAに寄生された奴らを倒しながら、ここまで来た」

「なるほど。各地でAIDAが消されていたのは貴様の仕業だったのか。てっきり『ファントム』たちに消されていたかと思ったよ」

(ファントム…あいつらのことか?)

「だがそうなると何故AIDAを知っているのだ。まさかあいつらの仲間か?」

「そのあいつらと私はおそらく関係ないだろう。私はAIDAをよく知っている。それだけだ」

 

オーヴァンは静かにスチームガンを手にかける。もう片手には剣を持つ。

 

「知性を持ったAIDAよ。お前の目論見もここまでだ」

「ッ!? 私が知性を持つAIDAとよく分かったな」

「言っただろうAIDAをよく知っていると」

「…オズワルド」

 

ヘレンの背中から半透明の蜘蛛の足が生える。

 

「どうやら貴様はただの敵のようだ」

「AIDAが人を食い物にしているかぎりこの世界の敵だ」

「言ってくれるな人間」

 

人間もAIDAも生きている。だがどちらかが害意を持てば戦になるのだ。

 

「お前はAIDAの中でも特別なAIDAのようだ」

「それも分かるか。その通りだ。私は特別だ!!」

 

ヘレンの背中から蜘蛛の足が伸びてオーヴァンへと襲いかかる。その攻撃を両手に持つ武器ですべて捌いていく。

彼の攻撃を捌ける人間はこの異世界で全くいない。この異世界、この時代にいるかも分からない。

ヘレンはトブの大森林で出会った白髪の男を思い出す。

 

「やるな…やはりお前はあのハセヲとかいう奴の仲間じゃないのか?」

「……」

「くらえ。アニケルショット!!」

「……そうか。あいつもこの世界にいるのか」

 




読んでくれてありがとうございました。
次回もゆっくりとお待ちください。

はい。ヘレンだかオズワルドだかの正体ですが…AIDAそのものでした。
でも特別なAIDAで人並の知性を得たAIDAです。
彼の目的、ボディのことや名前などは次回にて分かります。


ヘレン?「私の姿だけど分かる人は分かるんだよな」
オーヴァン「ああ、プラスの方か」


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ヘレンのアジト

はい連続で更新です。
この物語でヘレンだがオズワルドだかの名前がやっと分かります。
そしてハセヲたちによる王国での戦いは終了です。
補足の物語なのでどんどん物語は進んで行きますよ!!

本編での時系列でいうと、今回もゲヘナの前日あたりです。


八本指密輸部門アジト。

ハセヲたちはヘレンのアジトに侵入して捜索していたらいきなり壁が爆発したかと思ったらヘレンが出てくる。爆発した拍子に煙が充満して視界が悪くなる。

どうやらヘレンは誰かと戦っているようだ。

 

「ん、貴様はトブの大森林での奴か!?」

 

ヘレンはハセヲに気付く。彼の背中には半透明な蜘蛛の足が生えていた。

 

「ヘレン!!」

「こんな時に…くお!?」

 

煙が充満したした方向からエネルギー弾がヘレンに向かって放たれていく。

 

「誰かと戦っているのか!?」

「ええい…ヘレン!!」

 

ヘレンの腰の辺りから半透明な魚の尾が生えてくる。

蜘蛛の足に魚の尾。

 

「こんな時に限って私を追うものがアジトに侵入してくるとはな!!」

 

ヘレンは『プロログレーザー』を発動する。4列直線のレーザーが発射されたが避ける。

 

「誰か知らないがここからはオレに任せてくれ!!」

 

ハセヲは煙の向こう側の誰かに叫んだと同時に攻撃をする。

 

「くらいやがれ天葬蓮華!!」

 

大鎌に持ち替えて技を発動。

 

「アタシも援護するよ。旋風滅双刃!!」

「私も。ラプコーブ」

 

志乃と揺光も戦いに加わる。

志乃の援護魔法に揺光の援護攻撃。そしてハセヲのメインアタック。3人1組の良いチーム攻撃。

 

「うっとおしいぞ!! アラクノトラップ」

 

ヘレンが蜘蛛の糸を大量に放出した。その蜘蛛の糸はハセヲたちを絡めとろうと向かってくる。

 

「うわ!?」

「きゃあ!?」

「志乃、揺光!?」

 

ハセヲは大鎌で切り裂いて2人を開放する。

 

「くたばれ!!」

 

ハセヲは2人の前に立ちはだかり、ヘレンの攻撃を受けようとした瞬間にエネルギー弾がヘレンを襲う。

 

「また貴様か!?」

 

煙の向こう側の誰かが助けてくれたのだ。これには「助かった」と大きく叫ぶ。

 

「大丈夫か?」

「アタシは全然大丈夫」

「私も。ありがとうハセヲ」

「どちらも厄介だが…まずは貴様からだ!!」

 

ヘレンは煙が充満している方向へと向かって走り出す。どうやらヘレンは先にエネルギー弾を放った誰かを仕留めに行くと決めたらしい。

 

「待ってろ。オレも今行く!!」

 

ハセヲが煙の向こう側に走っていくが半透明な蜘蛛の足が襲ってくる。

 

「オレには蜘蛛の足だけで十分ってことかよ!!」

 

煙の向こう側で誰かが戦っている。もし互角に戦えたとしてもヘレンはAIDAの力を使う。だから碑文の力を使わないと勝てまい。

早く加勢に行かないとその誰かが無駄死になってしまう。

 

「このやろう!!」

「ハセヲ、揺光!!」

 

志乃は2人に援護魔法であるラプコーブとラプボーブを発動。

 

「ハセヲ、合わせろ!!」

 

双剣に持ち替えて2人は同時に技を繰り出す。

 

「「天下無双飯綱舞い!!」」

 

2人の斬撃により半透明な蜘蛛の足バラバラに切断される。

 

「よし!!」

「やったなハセヲ。アタシたちのコンビネーションは完璧だ!!」

 

切断された蜘蛛の足は煙の方へと引っ込む。その隙を見逃さずハセヲは突き進む。

そして目にしたのはヘレンが誰かの斬撃を受けた姿であった。

 

「くおお!?」

「やるじゃねえか。そこの誰かさんよ!!」

 

ハセヲは本当に凄いと思った。この異世界にもAIDAと戦える者はいるのだと。

それでも碑文使いがトドメを刺さないといけない。

 

「おらあ!!」

 

双剣による連続斬り。煙で隠れている誰かも合わせて援護射撃をしてくれる。

的確な援護射撃にハセヲはうまく攻撃が繰り出せる。即席のコンビ攻撃が良いのは相手が合わせてくれるのか分からないがこのままヘレンを攻めていく。

 

「く、ヴィクトーリアン!!」

 

背中に生えている蜘蛛の足を引っ込めて半透明な黄色の翼が生える。

 

「エレガントオーブ!!」

 

大きな光球が生成されて放たれた。

 

「死ぬがいい!!」

「死ぬかよ!!」

 

ハセヲは双銃に持ち替えてエヘルギーを込める。

 

「JUDGEMENT!!」

 

2人の攻撃が鬩ぎあう。

 

「おおおおおおおおおおお!!」

「私のエレガントオーブが打ち負かされた!?」

「終わりだ!!」

 

ハセヲの攻撃はヘレンの攻撃を飲み込んだ。そしてヘレンに直撃した。

 

「やったなハセヲ!!」

「ああ!!」

 

ヘレンは壁にもたれながら倒れていた。

警戒しながらハセヲが近づく。

 

「てめーは何者だ?」

「…私はAIDAそのものだ」

「AIDAそのもの?」

「ああ。私は人並みの知性を得たAIDAだ!!」

 

人並みにの知性を得たAIDA。それはまさしく進化したAIDA。

 

「この肉体は宿主ではない。私の肉体だ。いわば人型AIDAさ」

 

人型のAIDAなんて聞いたことがない。彼の正体にに動揺が走る。

 

「もちろんこの身体のモデルになった奴はいるがどうでもいいだろう」

「目的はなんだ?」

「そんなものは決まっている。進化だ」

 

ヘレンの目的はAIDAのさらなる進化。際限なく成長するAIDAの限界を見るためだ。

 

「進化が目的」

「その通りだ。生物は進化するものだろう?」

「ウィルスバグについて何か知っているか?」

 

トブの大森林で観測したウィルスバグに近しい何かについてだ。

 

「ウィルスバグか…知っているが勢力が違う。あれは別勢力でAIDAとは違う。

 

どうやら本当にウィルスバグは存在するようだ。そしてAIDAとウィルスバグは別勢力。

この異世界には敵勢力が2つ存在することになるだろう。どちらも無視できない勢力だ。

 

「ウィルスバグはどこにいる?」

「奴らは世界中にいる。自分で探すがいい…だがウィルスバグに関しては他の誰かたちが戦っているがな」

(他の誰かたち?)

 

ヘレンの言い方だとウィルスバグを違う勢力が戦っている。いや、その言葉の通りのままだ。

 

「話は戻るがAIDAは残りどれくらいいる?」

 

AIDAの大元は目の前にいるヘレン。だがAIDAはこいつだけではないだろう。他にも存在するはずだ。

The Worldに存在したようにこの異世界にも同じ数だけ存在するかもしれない。

 

「…各地にいくつかばら撒いたがいくつか消された。残っているのは4体だ…いや、今さっき一体消されたから3体だな」

「AIDAが消された…場所は?」

「それは教えられないな…自分で探すといい」

「てめえ」

 

ヘレンは歪むように笑う。

 

「何がおかしい!!」

「それはお前たちが…煙で隠れている奴も勝利を確信していることがだよ」

 

ヘレンの身体の至る所から黒い手が無数に生えて全員に襲い掛かる。

ハセヲは舌打ちをしながら志乃と揺光に襲い掛かる黒い手を切り裂いていく。煙の向こうにいる誰かも気配から無事そうだ。

 

「くくく。人間とは油断しかしない生物だな」

「逃がすかよ。データドレイン!!」

 

データドレインがヘレンの直撃する前に彼は身体から蜘蛛型のAIDAを出した。そのAIDAの名前はOswald(オズワルド)。

オズワルドがヘレンの代わりにデータドレインを受けたのだ。

 

「AIDAを放出した!?」

 

どういうことだ。あの蜘蛛が本体というわけではないのか。そういえば魚の尻尾にカラスのような翼。そして微生物のようなAIDAまで身体から生やしていた。

このことから考えられるのはヘレンの身体に複数のAIDAが結合もしくは潜んでいることになる。

 

「ではな。私はこのままオサラバしよう。この傷をまず癒さねば…あの平野に行こう」

(あの平野?)

 

煙の向こうからエネルギー弾が連射されるが伸びる黒い手で全て防いでいく。

 

「ここまで私を追い詰めたのだから名前くらいは教えておこう。私の名前はKazumi(カズミ)」

「カズミ!?」

「人並の知識を得て進化したAIDAだ!!」

 

カズミがおびただしい数の「ロイヤルブリッド」を発動してアジト中を破壊した。もうカズミはいない。

 

「チッ、逃げられたか」

 

追い詰めたかと思ったが最後の最後で逃げられてしまった。だが分かったことは多くある。情報は手にいられたのだ。何もないよりかはだいぶマシだろう。

 

「おい、援護してくれて助かっ…居ない?」

 

煙が晴れて一緒にカズミと戦った誰かに礼を言おうとしたが誰もいなかった。

 

『ハセヲさん聞こえますか?』

「欅か。聞こえるぞ」

『今、大丈夫ですか?』

「今、大丈夫になったぞ。どうかしたか?」

『トブの大森林で興味深いものを発見しました。全員を集めて報告がしたいのですよ』

「そうか、オレも報告することはある。今からそっちに行くぜ」

 

 

side変更

 

 

奴らのせいでいらない戦いをしてしまった。

 

この王国を捨てて違う国へ行こうとした矢先がかんなんだとはな。

AIDAを封じ込めた物を持っていくつもりだったかが奴らに全部消されたのは正直痛い。

それに肉体にもだいぶダメージを受けた。

 

私の一部であるオズワルドも犠牲にしたからな。カッツェ平野に行く前に麻薬取引部門の幹部であるヒルマに寄生さしたAIDAを回収して私の身体に結合させよう。

まずは傷を癒さねばならない。奴らは敵だ。この傷を修復したらすぐにでも消しに行く。

 

名は覚えたぞハセヲ!!

 

 

side変更

 

 

まさかハセヲたちまでこの世界にいるとはな…やはり彼とは縁があるらしい。

そしてAIDAとはいつまでも続く因縁があるらしい。なぜオレがこの異世界にいるかは分からない。再誕の影響なのかクビアと戦った影響なのかも分からない。

分からないがこの異世界でやることは決まっている。

 

AIDAのこと、ウィルスバグのこと、そしてこの異世界について。

AIDAはオレとハセヲたちが対処する。ウィルスバグは女神アウラが最も頼りにしている勇者が対処するはずだ。

ハセヲたちはどうやら何かあったのかホームに戻るらしい。王国でのAIDAの戦いは終わった。なら今度はウィルスバグの戦いだ。

 

オレの残りのやることが終わったらリグリットと合流しよう。ツアーから呼び出しがあったからな。

 

 

side変更

 

 

私は悪魔と契約してしまいました。もう後戻りはできません。

国を売ってしまいましたが後悔はしていません。

これも全て私とクライムのため。

 

悪魔との契約で私とクライムは悪魔たちから手を出されないことになっている。安全は確保されているわ。

クライムは悪魔と戦うかもしれないけど殺されないし、傷つけられない。

あの悪魔は人間を家畜のように思っているけれど今回の約束事は守ってくれると思います。あの悪魔は利用できる、使える人間は家畜と思わず利用できる人材として見てくれる。

私はそれに叶ったようだ。だから私も悪魔を利用しました。

 

あの悪魔はとても強いと思います。ラキュースたち蒼の薔薇でも戦士長でも敵わないでしょう。

使える人材が死んでしまうのはもったいないですが仕方ありません。

私とクライムさえ無事なら良いのです。

 

明日は激動の1日になるでしょう。そして王国は変わる。

八本指は潰れ、貴族たちは絶望に染まり、国は悪魔に蝕まれる。

本当に後悔していません。

 

これで良いのです・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・ラナーが悪魔と契約シタ。

 

馬鹿ナ女ダ。悪魔ト契約シタトコロでクライムとイウ男ハドウセ死ヌ。コノ国ノ王族、貴族、民ハ死ヌノダ。アノ悪魔ダッテ死ヌ。

 

ウィルスバグにヨッテ全テ飲ミ込マレルノダカラナ。

アノ悪魔もタイミングが悪イトイウカ運ガ無イトイウカ。コノ国ヲ狙ッタ時点デアノ悪魔ノ計画ハ終ワッテイルノダ。

 

ラナーは安全ガ確保デキタトイウガソレハ最初カラ。

ラナーはワタシの大事ナ大事ナ宿主ダ。オ前ニフリカカル火ノ粉ハワタシガ全テ切リ裂イテヤル。

オ前ハ新タナ宿主ガ見ツカルマデ生キテモラウ。オ前以上ノ存在ト出会マデハナ。

 

最初ハアノ悪魔モ良イト思ッタがラナー程デハナイ。

強サはナラーを一瞬デ肉塊ニデキルガ心ノホウニ狂気が足リナイ。

 

ワタシはラナー以上ノ存在ヲ求メル。

ワタシはモット進化シナイトイケナイノダ。




読んでくれてありがとうございました。
次回もゆっくりとお待ちください。

今回のAIDA側の主な敵の名前はKazumi(カズミ)です。
正体は知性を持ったAIDAです。姿は漫画版GUプラスに出てくる数見をモデルにしています。モデルにしているだけで数見本人じゃありませんよ。
もしかしたら知っている人は分かったかもしれませんね。

実は知性を持ったAIDAは.hackでも登場しているんですよね。
それが.hack//linkに登場するAIKA(アイカ) です。

アイカは無害なAIDAですがこの物語に出てくるカズミというAIDAは害意のあるAIDAとして登場しています。
カズミは様々なAIDAの結合体でもあります。
オズワルドにヘレン、アナ、ゲートキーパー、ヴィクトーリアン。
これら全てAIDAの名前です。
結合したAIDA。だから名前のまんまつなげただけなんですよね。

そして本編の裏側ではハセヲは気付かずオーヴァンと共闘してました。
ハセヲ気付け!!


オーヴァン「案外気付かないもんだな」
ハセヲ「…え!?」


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謎の巨大物体

※読む前に!!
今回のお話しですが、オーバーロードの異世界について独自に書かれています。
原作の方ではまだ異世界について書かれていないので私のオリジナル設定です。
.hackとオーバーロードのクロスだからこそ、という構成で異世界の設定が書かれていますので生暖かい目で読んでってください。
あと読みづらいのでスイマセン←本当です。すいません。

まだ異世界について全て書いてませんが、今回でけっこう書きました。
ユグドラシルとThe Worldがつながっているというのが大事!!

本編の時系列だとまたまたゲヘナの前日あたりです。


トブの大森林奥地。欅とパイは生物なのか建造物かよくわからないモノを発見した。最初発見したときは蔓など多くの植物が絡まったただの巨大な岩石かと思ったが違う。よく調べて見ると材質が石ではなかったのだ。

 

「何ですかねコレ?」

「分からないわ。何か…巨大な生物にも見えるけど。クジラ?」

「生物なら腐って異臭がすると思いますけど、しませんね」

 

欅は大鎌を取り出して絡まった植物を乱切りにしていくと大まかな形が分かってくる。どうやらパイが予想で呟いた鯨のような生物のようだ。

 

「大きな鯨のようですね…まるでタルタルガと似ていますね」

「タルタルガと同じなら内側に入る扉でもあるのかしら?」

「あ、ありましたよーパイさん!!」

 

扉があった。

 

「…この異世界とかけ離れてる内装だわ」

 

鯨の中は近未来的な研究室のようであり、ある組織の基地のようだ。

中世の文化程くらいであるこの異世界とは異質だ。どちらかと言うと、The Worldの世界観のほうがしっくりくる。

 

「うーん…人が生活できる施設もありますね。宇宙船だと言われたら信じちゃいますよ」

「貴方なら何か分かるんじゃないの?」

「あはは。流石のボクでも分からないことはありますよー」

 

欅は興味津々で鯨の中を探索していく。正直彼は謎が多い。そして何でも知っていそうだ。

 

「これがもし宇宙船ならコンピュータールームとかないかな?」

「あってもおかしくはないでしょうね。でも操作できるの?」

「ものはチャレンジですよ」

 

鯨の中を探索していくと、色々と発見していく。ドレスルームやショップルーム、人が寝泊まりするルームまであったのだ。もうここが宇宙から墜落した宇宙船と言われても信じる。

そして奥まで進んでいくとモニタールームのような場所にに到達する。モニタールームなのか、それともデータベースだろうか。

欅とパイは手始めに操作をしてみる。

 

「あら。操作出来るわね」

「みたいですね。ていうか、これボクたちの世界の作りじゃないですかね?」

「そうかもだけど…似たようなものの可能性もあるわよ」

 

近未来的なコンピューターだが操作方法に関してはだいたい理解できる。それは作りが元の世界と同じだからだ。こればかりは運が良かった。そもそも操作出来るか分からなかったからだ。

 

「これは…」

 

モニターに映し出されていく数字や文字。その全てが読める。異世界言語が読めるのではなくて、言語が元の世界のものだからだ。それは日本語や英語があるからだ。

 

「うーん…これは、ボクたちの世界から来たモノなんですかね?」

 

欅たちの世界とはThe Worldのことだ。この鯨はまさにタルタルガに似ている。規模は小さいが中身の方はもしかしたら上かもしれない。

 

「やっぱり破損しているみたいね。このクジラの機能が所々壊れてるみたい」

 

データベースまでたどり着くと、この鯨が何なのか分かるかと思ったがデータが破損していて分からない。

何かの船のようだが、ただの船ようなものなのか何か特別な機能の持つモノなのか。

 

「過去の記録データがあれば…これからなっと?」

 

欅がポチっとボタンを押すと過去の記録データがモニターに表示された。

 

 

 

 

『・・・・・oモ・ロイ船をみ・けタ』

 

『kの船はdate潜x艦@ラNホeールと言うラシイ』

 

『コノ船n機能hスバラシイ。どうやらyぐDrシルの時間date内を移動できrヨu/』

 

 

 

誰かのレポートのデータのようだ。文字化けしていて、文章が分からない部分もある。

 

 

 

『ユグDラ@Rの過Koを遡っていくとキョウミブカイ事実ga・ケ?されt。なんと言うことだろうか。まさかコンナ世界があるとwa。元々、ユグドrasirUはTHE わl@Dと言う世界トいヨう6』

 

『ザ・・るど。よくヨクカンガエテqzmユグドラeyには加野セ・イについて処ドコロソレヲ示すデータはアッタ。d@evmはヨクワカラナイでーたダッタガTHEわーY℃のことだったとは』

 

『マズワカッタのが女神の存在ダ。コノよ・な存在が居るとはな…ユグ℃羅汁とTHE和〰留℃は過去と未来。ならばユグ℃楽汁にも彼女の存在はいるだろう』

 

『過去にモドルト様THEまなザ・和阿流努についてわかった。この世界は何度も崩壊シカケテハ再誕している』

 

『泣き姫・・・罪竜・・・終焉の女王。クbI@・・・アID亞……八So・・・盛@gaナ』

 

『トキオ・・・ハs@w・・・カイx・・・ツかv』

 

『多くの脅威に、勇者たち。ユ・ドラ・ルではいなかった存在だ』

 

『…そして私の正体も分かった』

 

『私はユ・・ラ・ルで生まれたが自分の存在が分からなかった。だがあの世界で私について理解できた。することも理解できた』

 

『ユGドRシRはいずれ崩壊するだろう。繋ぎ止めることはできない。ならば私が安住できる世界がほしい』

 

『安住できる世界が欲しいならば創ればいい。基盤となる世界は過去で見つけた。前の私がそこを利用していた。ユグDRSRにも存在するはずだ』

 

 

 

文章が少しずつ明確になっていく。内容が内容なだけに興味深いというよりも怪しい。この記録データを打ち込んだのは誰だ。

 

 

 

『やはりYGDRSRにもアノ空間があった。これで新世界を創ることができる。新世界はユGDRSルやTHE W・・・Dのような世界にしたい』

 

 

 

まだ分からないことばかりであるがこの記録を残した人物は世界を創るようだ。それはまさに神の偉業。

 

「なんだかとんでもない情報を見つけましたね」

「簡単に言うけど、これこの異世界にとっては大発見じゃないかしら?」

「ですね」

「だって、この誰かさんは恐らくこの異世界を創った神でしょう。罪竜とか気になるワードがいくつかあったけど、憶測でそれしかない」

 

まだ記録データにはまだまだ続きがある。

 

 

 

『まずは基盤となる世界を創らなければならない。この世界には個体が必要だ。この世界には自然が必要だ。この世界には文化が必要だ』

 

『個体と自然はあの2つの世界を模範しよう。だが文化ばかりは世界に存在する個体たちが生み出していく概念だ。個体たちには知性が必要だ。個人の意志がひつようだ』

 

『ならば過去の世界で発見した技術とあの存在を利用しよう。アid@は知識を得ようとして動き、進化していく。その特性だけを利用しよう。それに模範する能力まであるとは』

 

『さらにA・・aには空間を造る能力もあるようだ。このA@@Aサーバーも利用しよう』

 

『アID@の特性を利用したのは正解だった。おかげで個体は意思を手に入れた。個体は集団を作り始め、文化を生み出そうとしている。世界もより世界らしくなった』

 

『この段階で小さな世界は誕生した。しかしまだ足りない。まだやることはある。この世界に様々な個体を増やそう。様々な事象を加えよう』

 

『この世界をよりよくするにはまだ何かが必要だ。この世界には防衛する力が無い。もしこの世界に協力なナニカが迫ってきたら負けてしまう。ならばこの世界を守る存在が必要だ』

 

『アレをこの世界の最終防衛機能に設置しよう。アレはワタシですら抑えるコトが難しい存在だが世界を脅かす敵対勢力を倒すことに関してみれば一番ダ』

 

『次にあのドラゴンをこの世界の大元となる守護者にしよう。更にこの世界には設定が必要だ。ただ創るのに面白みもないとモッタイナイ。あのドラゴンはこの世界の秘密を知る存在にしよう。あのドラゴンの罪はこの世界の秘密をしっていること』

 

『この世界を守る存在はアレとあのドラゴン。他にも必要だ。世界を守護する実行部隊だ』

 

『the ワ@@@℃からあの6人を模範して守護者を創ろう』

 

『紅の外套。黒き死神。翠の囚人。黒薔薇の剣士。白銀の騎士。紫色の悪戯猫』

 

『紅の外套には世界の脅威となる存在を駆除する役目を』

 

『黒き死神はこの世界をより強固にするため力を追い詰める役目を』

 

『翠の囚人はこの世界の個体を守る役目を』

 

『黒薔薇の剣士は紅の外套を補佐する役目を』

 

『白銀の騎士…コイツはサルベージしたデータより既に設定が強く残っていた。変更したいが、この設定だからこそコイツは存在することがデキル。正直不安だが仕方がない…白銀の騎士にあのドラゴンを断罪する役目を』

 

『紫色の悪戯猫。ならばコイツには白銀の騎士とは逆の設定にすればヨイ。紫色の悪戯猫にはあのドラゴンを守る役目を』

 

『カレらをファントムと名付けよう』

 

『コレデこの世界はより強固になった。安心だ。しかし今度は別の問題が起きた。世界の文化が停滞しはじめた。ナンデダ。何故あの2つの世界のように文化が発達しないのか。まだ発達するには時間が足りないのか?』

 

『この世界の様々な個体たちが争いを始めた…これも知識を得た結果だろうか。争いはあの2つの世界にもあった。ならば問題ナイ。だがもっと速くワタシの世界を発達させたい』

 

『あることを考えついた。この世界を指導者によって文化を発達させよう。その指導者はユGUド@シ@から呼ぼう』

 

『ユGドラRルから指導者を呼んだのはセイカイだった。カレラのおかげでまた1つ文化が発達したのだ。カレラは六大神なんて呼ばれるようになったナ』

 

『また同じようにユグド・・・から指導者を呼んだ。しかし今度は失敗かもしれない。新たに呼んだ指導者たちは六大神と争い始めた。結果的に六大神は消えた』

 

『新たな指導者たちは八欲王と呼ばれ、この世界を好き放題に動き始めた。まさかこんなことになるとは思わなかった』

 

『八欲王は多くの国を滅ぼし、優れた種族も滅ぼして世界を支配した。だが全てが悪い結果というわけではない。魔法という概念をこの世界に残した。それによって人間という個体も結果的には救うことになったのだ。結果的には』

 

『この世界の個体を守る役目を持つ翠の囚人はさっそく仕事をしてくれた。だが八欲王に負けてしまった。ドラゴンどもよりかは善戦したがな。まだファントムには調整が必要だ』

 

『八欲王はこの世界の上位種族であるドラゴンもほとんど駆逐してしまった…そしてヤツラは罪竜の存在に気付いてしまったのだ』

 

『この世界のドラゴンは罪竜を元に生まれた。ドラゴンからしてみれば始祖竜となるだろう。八欲王は駆逐したドラゴンから罪竜の情報を手に入れたのだろう。その情報から罪竜を探し始めた』

 

『八欲王は罪竜の秘密を知らない。ただ珍しさだけで罪竜を探そうとしている。それだけでもファントムは動く』

 

『今度は紅い外套に黒薔薇の剣士に、黒い死神、紫色の悪戯猫が動いた。八欲王はもうこの世界で異分子とファントムに判断されたのだ』

 

『八欲王は強かったがファントムが4人も集まれば全滅させることができた。これで罪竜は守られた。…最も八欲王が罪竜の元にたどり着いたとしても勝てるとは思えない。もしも罪竜がやられても、そうなれば最終防衛機能のアレがうごくだろうが』

 

『八欲王の時代でワタシの世界が荒れたがこれも進化のためだろう。ユグ・・シルとthe ワ・・℃に近づいた。だがそれでもまだまだ。文化の発達とは時間がかかるものだな』

 

『指導者を呼ぶのもよく考えないとイケナイ。次はどの指導者を呼ぶべきか』

 

『ワタシの世界も良いカタチとなった。あの2つの世界に比べれば拙いが…ココは確かに新たな世界だ。ワタシが安住できる世界。もう崩壊なんてナイ』

 

『もっと世界をよりよくしたい。今度は過去のデータより再現したA@@Aそのものを投入してみよう。コイツハワタシの世界でどのように成長するのだろう』

 

『そういえば、消えた六大神や八欲王どもの配下たちが最近どうしたか。ファントムたちに消されたか?』

 

『消された配下もいるが、しぶとく生き残っているヤツもいる。魔神なんてヨバレテイルナ』

 

『今回呼んだ指導者はナカナカ素晴らしい。カレラは十三英雄なんてヨバレテイル。カレラは魔神どもとの戦いに勝利した。この世界に初めて英雄譚がうまれた』

 

『英雄譚…この世界にもthe ワ・・・のような英雄譚がうまれたのだ。だけど十三英雄はあの世界のカレラほどではない。でもワタシの世界に英雄がうまれたのはうれしいものだ』

 

『アア…この世界にカレラを呼びたい。あの世界の英雄たちを呼びたい。そしてこの世界にサラナル英雄譚を残してもらいたい』

 

『カレラを呼ぼう。この世界に呼ぶことはデキルのだろうか。イヤ、デキルだろう。この世界は時間の概念が外と違うのだから』

 

『呼ぶ時期も考えないとイケナイ。呼ぶ時期はユグ・・・ルが消える時が良い。その時こそがワタシの世界が完全にユグド・・・から切り離され、真の意味で1つの世界となる』

 

 

ここでレポートデータが途切れていた。修復すれば続きのレポートデータや文字化けしている文字が直せるかもしれない。

そうすればレポート内容も全て把握できるかもしれない。これは信じられないかもしれないが異世界の創造した者が残したレポートにしか思えない。

神の存在を示すレポートだ。なんでこの異世界に似合わない建造物の中にこんなレポートが残っているか分からない。

 

「ほかにもいくつか気になるデータもありますよ」

「これね…イモータルダスク?についてや、その被験者リストデータ?」

 

その被験者リストの一番下に『モモンガ』とデータで記載されていた。

 

「イモータルダスクって何ですかね?」

「それについてのデータは酷く破損しているわ。修復できるかは正直なところ自信無いわね」

 

今回のAIDAや行方不明の仲間探しに必要な情報か分からないがこれはまさしく興味深い情報だ。

これは仲間たちに情報を共有しておかないといけないだろう。

 

「ハセヲさんとクーンさんに連絡しますね」

 




読んでくれてありがとうございました。
次回もゆっくりとお待ちください。

さてさて、今回のお話で異世界の設定についてオーバーロードと.hackのクロスだからこそ独自に設定を作ることができました。
なので異世界の歴史の事実がオリジナルになってますよ。

カイトたちやアインズたちが異世界に転移した理由もほんの少しだけ書かれています。
いやあ、本当に.hackにはオーバーロードにいい感じにつなぐことのできる設定があるからなあ。

あと『ファントム』さすがにわかっちゃうかな。

そして異世界を創生した『神様』って誰だろなー?
実はその正体をほのめかすくらい程度に書いたんですが気づきましたかね?


欅「神様かー」
パイ「この異世界ってもしかして」


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仮定でしかない

今回は異世界の真実を仮定としてハセヲたちがたどり着きました。
本編での時系列でいうと『カオスゲヘナ』くらいです。


トブの大森林で発見した謎の巨大建造物の内部にハセヲたちは全員集合していた。

何故集合していたかと言われれば欅が情報を共有させるために読んだのだ。それにハセヲやクーンが手に入れた情報も共有しないといけない。

それにしても欅とパイ以外は謎の巨大建造物の内部に驚いた。The Worldでは見慣れた光景かもしれないが、この異世界ではまず見ることが無い内装だからだ。

この異世界の文化レベルは特殊かもしれないがだいたい中世文化レベルだ。しかしこの内装は間違いなく近代科学レベルの内装なのだ。そのギャップに驚いているのだ。

 

「マジで何だココ?」

「どう見てもこの異世界には似合わないよな」

 

ゾロゾロとパイに案内されてモニタールームに到着する。そこに欅がニコニコしながら待っていた。

 

「みなさんお待ちしていました。どうぞ、好きなところにゆっくりしてください」

 

ゆっくりするような場所はあるかどうかも分からないが適当に座ったり、壁に寄りかかったりする。

コホンっと欅は咳払いして早速今回の話を始める。

 

「では、みなさんが集まったことですし、始めましょうか」

 

まずはクーンが話を始めた。

 

「オレたちはオズワルドの屋敷でAIDAに関しての実験レポートを発見した。そしてAIDAに寄生された人間もな」

「実験ですか」

「ああ。様々な種族に寄生させてAIDAの変化を記録しているようだぜ」

 

その言葉にハセヲはピンと来た。

 

「まずオズワルドって奴だが本当の名前はカズミだ」

「カズミ?」

「ああ、奴本人が言っていたことだ。そして正体は知性を持ったAIDAだ」

「AIDAが知性ですって?」

 

パイは特に驚く。前までAIDAに関して調べていたのだから、まさか人並みの知性を持つAIDAなんて初耳だ。

そんな人型のAIDAがいるのは正直驚きだろう。

 

「人型のAIDAね…これはまた」

 

まさかの情報に混乱しそうになるが落ち着くべきだ。今回集まったのは混乱するために集合したわけではない。

情報を共有するべきに集合したのだから。

 

「その実験レポートにはAIDAの変化…進化についてかクーン?」

「そうだ」

「…カズミの目的はAIDAの進化だってよ」

 

AIDAの進化。確かに実験レポートの結果よりそれしかないだろう。この異世界でAIDAは進化する。

人の知性を持ち、人型のAIDAが存在しているのなら確かにもう進化している。あのAIDAが人間へと近づいたことがとんでもない。

AIDAは進化し続ける存在。怖いことだがいずれAIDAは人間以上に進化するかもしれない。

 

「この異世界で進化するAIDAか」

「そもそも何でAIDAが存在するの?」

 

望はハセヲたちが気にしていることは呟く。

AIDAはオーヴァンの再誕によって消滅したはずなのだ。なのにAIDAが存在する。それが一番の謎だろう。

 

「信じたくないかもしれませんが…AIDAに生き残りがいたってことかもしれませんね」

 

誰もが予想したくない予想を欅が口にする。その可能性はあり得なくはないが、あの再誕から生き延びたという事実が驚きだろう。

 

「でも、そうなるとTne Worldにしか存在しないAIDAが何で異世界に?」

 

AIDAが何故か存在する理由は仮定として再誕から生き延びたとしよう。そうなると今度はAIDAが何で異世界にいるかだ。

情報を得れば得るほど謎が深まるばかりだ。

 

「それに関しては…ボクからがお話ししましょうか」

「欅。何か知ってるのか?」

「ここで手に入れた情報からボクが仮定した話になりますけどね」

 

欅は複数のモニターにあるデータを映す。所々が破損していたり、文字化けしていて読めないところがある。

 

「このデータを読んで分かったことがあります。それはこの異世界を創造した神だということです」

「この異世界を創造した神!?」

「おいおい、またとんだモノが出てきたじゃないか欅」

「仮定ですよ。でもデータを読んでいるとそれしか予想できないんです」

 

確かにデータを読んでいくと異世界創造について記載されているようだ。それならばこのデータを残したのはまさに創造神しかいない。

まるで自分が作った世界の成長過程をレポートに残しているようにしか見えない。

 

「この神は異世界を創造するのにある2つの世界を参考にしたようです。正確には1つみたいですけどね」

 

矛盾なことを言う欅。

 

「2つの世界なのに1つ?」

「はい。2つの世界と言いますがどうらある2つの世界は未来と過去の関係性があるようです。だから2つだけど1つということですよ」

 

この異世界を創造するのにある2つの世界を参考にした。そのある2つの世界の関係性は過去と未来。

 

「じゃあ1つの世界でいいじゃねえか」

「この神は参考にした世界を2つに分けてるんですよ。未来の世界と過去の世界で」

 

欅はキーボードを高速で打ち込んでいくとモニターの文字化けしていた文字が正常になっていく。

そこには『ユグドラシル』という文字が出てきた。

 

「ユグドラシル?」

「未来の世界を神はユグドラシルと呼んでいるようです」

 

まず1つ参考にした世界がユグドラシル。調べていくとこの異世界の魔法やスキルはユグドラシルを参考にしたようである。

 

「で、次ですが…」

 

またキーボードを打ち込むとまだ文字化けした文字が修正されていく。

その文字には『The World』とデータに記載されていた。

 

「The World!?」

「そうです。過去の世界とはThe Worldのようです」

 

この異世界はユグドラシルとThe Worldを参考によって創造されたことになる。

そして未来と過去の関係性ならばユグドラシルはThe Worldであり、The Worldはユグドラシルということだ。

 

「おいおい…こりゃあとんでもない事実じゃねえか」

「はい。この異世界はThe Worldからも参考にされているんです」

 

そうなるとAIDAとの関係性も納得できそうだ。

 

「魔法やスキルなどの大本はユグドラシルから。世界創造の大本はThe Worldの技術から参考にされているようです」

 

まさかこの異世界がThe Worldの単語が出てくるとは思わなかった。そして欅はさらにモニターに映っている文字を修正でしていく。

そし今度はAIDAという単語が出てくる。

 

「AIDAという単語がこのデータベースに残っています。この異世界にAIDAを放ったのが神かもしれません」

 

AIDAを放ったのがこの異世界の神。参考にしたということはAIDAを再現したということかもしれない。

ならばAIDAがこの異世界にいるのは納得できる。原因という言い方でいいのか分からないが、AIDAがいるのはこの異世界の神のせいということになるのだ。

神なんてよく分からないが万能の存在なのだろう。ならば神がAIDAを再現したと仮定しても違和感はない。なんてなんでも有りな言葉なんだろう『神』とは。

 

「…ハセヲさん。この神はデータを見ると仮定として元々はユグドラシルいたようです。この意味が分かりますか?」

「あ?」

「この異世界の神はファンタジーで言うところの説明できない存在ではないかもしれないということです」

「それってなんだよ?」

「いいですか。ユグドラシルとThe Worldは過去と未来です。The Worldって何ですか?」

「…ネットゲーム」

 

ならばユグドラシルもまたネットゲームということになる。そして神はデータの記録から見るとユグドラシルに存在したことになっているのだ。

 

「おいおい。この異世界の神はユグドラシルってゲームのキャラって言いたいのかよ」

そんなバカげた仮定はありえない。

「あり得ないと思いますか?」

「そんなこと…」

「The Worldには女神アウラが存在するのですよ」

「…っ!?」

 

The Worldには女神が存在する。それが女神アウラだ。

それならば未来のThe Worldであるユグドラシルにも女神アウラのような存在がいるかもしれないのだ。

 

「仕様外の存在か?」

「可能性としては」

 

この異世界の神がまさかネットゲームの仕様外とは。

 

「この神はこの船を使って色々と調べたようですよ。おそらくAIDAもこの船で調べたのでしょう」

「この船?」

 

またデータの文字を修復すると文字が出てくる。

 

「データ潜水艦グラン・ホエール?」

「この建造物の正体は船ですよ。しかもデータの海を潜る船です」

「こいつが?」

 

ユグドラシルにいた神。その過去であるThe Worldを知ったのはこのグラン・ホエールのおかげらしい。

未来と過去を見て異世界を創造しようとした。自分だけの世界を創ろうとしたのだ。そして自分の正体とやらはThe Worldで分かったというデータがあった。

ならばThe Worldにこの異世界の神がいたというのだろうか。

 

「異世界の神か」

 

現在の段階で全て仮定であるがまとめてみる。

この異世界には神が存在する。そしてこの異世界はユグドラシルとThe Worldから参考によって創造された。

ユグドラシルとThe Worldは未来と過去。神はユグドラシルにもともといた存在。おそらく女神アウラやAIDAなどの仕様外の存在の可能性がある。

何でも自分だけの世界を創造するために、この異世界を創った。全てはユグドラシルの崩壊から逃げるため。

神は世界を創造するのにユグドラシルとThe Worldから様々な技術を利用したようだ。

そして神がAIDAを異世界にばら撒いた。それは異世界の発達のためであり、どうやらAIDAの性質だけを利用しているようだ。

だからこの異世界にAIDAに存在するのだ。

 

「はい。ここまで全て仮定ですよ」

「仮定かもしれないけど…ここまでの情報があるとね」

「確定はできませんよ。もしかしたらThe Worldにそっくりな世界があるかもしれませんし」

 

その可能性はある。様々な説があって現実世界でも実は似た世界が存在するかもしれない。並行世界の存在。そういうのがあるのだ。

ならばゲームの世界が本当にゲームとしてではなく、1つのリアルの世界としても存在するかもしれない。

 

「ではこのまま仮定の話として進めますよ」

 

この異世界の秘密を知るドラゴンが存在する。それが罪竜。

 

「罪竜」

「罪竜。ギルティドラゴン。このドラゴンもまたユグドラシルやThe Worldから参考にされて生まれた存在」

 

ユグドラシルというのはよく分からないがThe Worldの方だと予想がつく。罪竜と言われれば分かる者は分かるのだ。

 

「罪竜。もしかしたらザワン・シンかもですね」

 

仮定として罪竜はザワン・シン。

 

「ファントムってなんだ?」

「この世界の守護者的な存在みたいですね。全部で6人いるようです」

 

ファントム。この異世界を守る守護者であり、罪竜を守る者。

そして気になるのがこの異世界の『最終防衛機能』とやらだ。コレだけは今調べた段階でも分からないが神が異世界を守るために『最終防衛機能』を設置させたとならば恐らく厄介なモノだろう。

 

「次にこのデータです」

 

今度モニターに『イモータルダスク』と映し出された。

 

「このイモータルダスクですが完全にデータが壊れているので全容は分かりません。ですが被験者リストを見てコレも仮定することができました」

 

『イモータルダスク』と『被験者リスト』の説明を始める。

被験者リストとは調べてみると神が異世界の文化レベルを上げるために『指導者』という呼んだ者たちのこと。その指導者たちはこの異世界の歴史で存在していた六大神や八欲王などだ。

そして彼ら指導者は全員ユグドラシルから呼ばれている。まさにハセヲたちのような状態だ。

自分の作成したキャラを肉体として異世界に存在する。まるでリアルからデジタルへ。人間がゲームの世界へ転移するようなものだ。

 

「このことからイモータルダスクとはまさにリアルデジタライズ…人間をデータの世界に送るようなプロジェクトですね」

「人を呼ぶか」

「はい。これで元の世界に戻らなければ『未帰還者』ですね」

 

未帰還者。これはもう事件案件になるだろう。

 

「事件です。でも未来の話ですからボクらじゃどうしようもありません」

 

ハセヲは過去の人間だ。未来のユグドラシルである人間は助けることはできることは不可能である。

 

「それにしても情報がいっぱいすぎて混乱しちゃうよアタシ」

 

ここで一旦まとめよう。

この異世界には全ての真実を知る罪竜が存在する。異世界の中心とも言うべき存在だ。仮定としてザワン・シン。

その罪竜および異世界を守護する『6人の守護者』が存在する。彼らは今もこの異世界で守るために戦っているかもしれない。

そしてこの異世界には『最終防衛機能』が存在する。その存在がナニカは分からない。だが厄介なモノだろう。できれば触れたくないモノだ。

神はこの異世界にユグドラシルから指導者を呼んだ。その方法はイモータルダスクというプロジェクト名で全容は分からないがリアルデジタライズのようなものだ。

そうするとこの異世界がまさかの可能性が出てくる。

 

「この異世界はまさか電子の世界なのか?」

「異世界なんてファンタジーを信じず、科学的な意味でこの異世界を証明するならそうでしょうね」

 

だが全て仮定の話なのだ。これは欅が全て仮定として説明した。

ここは異世界なのだから欅たちが想像できないようなモノかもしれないのだ。

 

「やることは?」

「この異世界のことはいずれ調べることになるかもしれねえ。でもまずはAIDAだ」

 

AIDAの大本であるカズミ。

彼は自分のとっておきのAIDAが残り3体いると言った。ならばカズミを含めると合計4体のAIDAがいることになるのだ。

 

「まずはAIDA?」

「カズミのやつは無視することはできない」

「ですよね」

 

ハセヲの言葉にアトリやクーンたちは頷く。

 

「無視できませんよねハセヲさん!!」

「だな」

 

揺光や松たちだって頷く。

 

「アタシは最後までハセヲについていくぜ!!」

「やるしかねえよな!!」

 

行方不明の仲間探しもそうだが、AIDAとの戦いへと目的が一旦変更する。

 

「AIDAとの戦いが終わったら今度こそ仲間を探す!!」

(そしていずれは『異世界の神』についても調べないといけませんね。おそらく全ての原因なのですから)

 

 

side変更

 

 

リ・エスティーゼ王国。

今この王国ではウィルスバグによってカオスゲヘナが発動している。カオスゲヘナとはウィルスバグが考えた王国の大侵食作戦だ。

そしてウィルスバグと敵対している勇者たちの殲滅も含まれている。八相の破片データを取り込んだウィルスバグのゴレとメイガスが本格的に動き出した。

ウィルスバグも王国で決着をつけるつもりなのだ。

 

「…結局あのAIDAを、カズミを逃がしてしまったか。この王国から出る前に片づけたかったんだがな」

 

オーヴァンはウィルスバグによって浸食されていく王国を歩いていく。

 

「カズミはどうやら八本指の幹部に寄生させていたAIDAを回収して逃げたか。そうなると残り二体…カズミを含めると3体」

 

それでもカズミが本当のことを口にしたかどうか信じられないが。だとするとカズミの言葉に惑わされずに独自に調べた方がよいかもしれない。

 

「だがまずはこの王国だな。オレがするのは手伝いだけだ。ウィルスバグの決着は勇者に任せるさ」

 

既にオーヴァンはメイガスにやられたカイトの仲間たちを助けている。データドレインを受けた時はもうダメかと思ったがカイトの仲間は腕輪の加護によって守られているのですぐに助けることができたのだ。

そしてメイガスリーフも壊せるところは破壊していく。

 

「ん、こいつは」

 

オーヴァンの目の前に悪魔が倒れていた。赤いスーツで腹部に風穴が空いている悪魔だ。

ウィルスバグによって徐々に浸食されている。これはいずれ完全に浸食されてただのバグモンスターになるだろう。

 

「そういえば勇者には別の仲間がいたな。こいつがその1人か…敵になるかもしれない奴か」

 

その悪魔はゲヘナを実行した悪魔でヤルダバオト。本当の名前はデミウルゴス。

 

「助ける価値があるかと言われれば迷うところだな。ま、今は仲間は多い方がいいか」

 

オーヴァンがデミウルゴスを助けたのは確かにカイトとアインズを助けることに繋がったのだ。




読んでくれてありがとうございました。
次回もゆっくりとお待ちください。

さてさて、ハセヲたちがカイトたちよりも先に異世界の真実にたどり着きました!!
もっともまだ『仮定の話』ですが。でも凄い情報をハセヲたちは手に入れてるんですよね。

次回からは時系列で言うと本編でいうとカオスゲヘナ~大墳墓の挑戦者の間の話になります。まあオリジナルです。ハセヲたちは残りのAIDAを倒しに動き回ります!!

そういえば…補足の物語とはいえ、アインズたち出番ないなあ(汗)
気が向いたら『Vol.EX:ぷれぷれ ぷれあです あ~んど ドットハック』なる番外編でも執筆しようかなぁ


アインズ「出番がねえ!?」
カイト「クロスオーバーなのにね」
ハセヲ「しょーがねーじゃん。主人公オレだし」
2人「「ボクらも主人公!!」」



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AIDA討伐作戦開始

今回からハセヲたちの目的もやっと明確になってきました。
AIDAとの戦いが徐々に始まります。今回は戦いではありませんが前ふりみたいなもんです。
本編の時系列的には大墳墓の挑戦者の前の出来事にあたります。


AIDAカズミの情報からだとこの異世界にAIDAが残り3体。カズミを含めれば4体だ。

ハセヲたちは完全にAIDAたちから敵対勢力として認識されている。ならばハセヲたちもAIDAを倒すために動くしかない。一応手掛かりはゼロではない。

だが情報が無いので今すぐには討伐はできない。こればかりは後手に回るしかない。先手を打つにはこちらから探さないといけないだろう。

前にトブの大森林にてカズミと遭遇したことがある。今思うと何で彼がトブの大森林にいたかと考えるとあの森にAIDAがいるのかもしれない。

彼は熱心にAIDAの研究レポートをまとめていた。ならば大いに可能性はあるだろう。

 

次に王国での出来事。まさかハセヲたちが王国を出た後にとんでもない事件が発生したなんて信じられない。

それがウィルスバグにおる王国大侵食事件だ。その事件を『カオスゲヘナ』というらしい。その前に悪魔ヤルダバオトによる『ゲヘナ』なんて悪魔襲撃事件もあったようだが。

その事件を解決したのがある人物たち。ドットハッカーズと漆黒、蒼の薔薇、ある王国の戦士たちらしい。

ここで気になったのがドットハッカーズという名前だ。ハセヲはどこかで聞いたことがある名前だったから気になったのだ。

 

ドットハッカーズのメンバーについて聞くとカイト、ブラックローズ、バルムンク、オルカ、寺島良子、ガルデニア、ミストラル、なつめ、ぴろし3だと聞いた。

この中ですぐにピンときたのが『なつめ』と『ぴろし3』だ。この2人は知り合いの名前だ。まさかあの2人までもがこの異世界にきているのだろうか。

ならばドットハッカーズというのはThe Worldのプレイヤーかもしれない。だがそうなるとどうやってこの異世界に来たかが疑問だ。

 

だけどその疑問もすぐに予想できたのだ。それは王国に女神が降臨したという。奇跡の音を聞いた後、白き女神がウィルスバグを浄化させたらしい。

可能性としては女神アウラかもしれないのだ。ならば女神アウラがドットハッカーズをこの異世界に呼んだのかもしれない。理由はまさにウィルスバグの駆逐だろう。

これは是が非でもドットハッカーズに、.hackersに会わないといけないだろう。

どうやらエ・ランテルを拠点にしているらしくすぐさま向かう準備をしないといけない。どうやってウィルスバグを倒したのか、女神アウラとはどういう関係なのか。聞かないといけないことはたくさんある。

 

次に帝国。帝国から来た旅人から聞いた話だと闘技場に『薔薇剣舞』の二つ名を持つチャンピオンがいるらしい。その名前はエンデュランス。

ついに、ついに仲間の情報を手に入れた。本来の目的である行方不明の仲間を探すための第一歩を踏み込めたのだ。

ハセヲたちは現段階で3つの目的に分けた。

1つ目がトブの大森林にいる可能性があるAIDAの探索と討伐。

2つ目が同じThe Worldから来たかもしれない.hackersの接触。

3つ目が帝国にいるエンデュランスの合流。

この3つの目的を達成しなければならない。やっと異世界にて自分たちの進む道ができた感じだ。

最初は仲間を探すためにがむしゃらに動いて、AIDAと遭遇してしまい戦うことになるってわけの分からない状況だった。本当になんだろうか。

やることは決まった。ならばさっそく動かないといけないだろう。チームを分けることにした。

 

 

side変更

 

 

エ・ランテルには欅と松、楓が訪れていた。.hackersの接触は彼らが動く。こういうのは欅に任せた方が良いだろう。彼は基本的に何でもできるし、ギルド『月の樹』のギルド長までしていたのだから。

話し合いには良いかもしれない。だから彼らに任せたのだ。

 

「それにしても.hackersかあ」

「欅様は.hackersをご存じなのですか?」

「はい。有名なんですよ」

「そうなのですか。私は申し訳ありませんが知りません」

「俺も知らねえな」

「ははは、松と楓が知らないのは当然かもしれないですね。だって.hackersはThe WorldのRe1時代に活躍した人たちですからね」

 

Re2のプレイヤーが.hackersのことを知っているのは数少ない。もし知っているとすればRe1時代のプレイヤーがRe2も続けてプレイしている人だけだろう。

今ではもう噂は消えたが当時は凄い噂されて.hackersはThe Worldの中でも伝説のギルドなんて言われているのだ。

 

「そんな人たちなのですね。知りませんでした」

「強い…って聞くまでもないか。伝説なんて言われてたら強いよな」

「とっても強いですよ。なんせ、当時ではThe Worldの最後の謎を解いた唯一のギルドなんて言われてますし」

「本当に凄いギルドですね」

「ま、でも.hackersは実はギルドじゃないんですけどね。最後の謎を解いたグループをどこかの誰かが.hackersって勝手に名付けて広まっただけなんですよ」

 

公式のギルドではなく非公式のギルドなのだ。噂だと.hackersに所属したいなんてプレイヤーも何人もいたらしい。

だけど非公式だし、ギルドとして成り立っていないので所属は不可能だ。それに本人たちは当時ギルドなんて思ってもいない。

気が付いたら多くの仲間が集まったのが.hackersなのである。

 

「メンバーは知ってるんですか欅様?」

「リーダーがカイト。副リーダーがブラックローズって言うんです」

「ほうほう」

「他にもバルムンクやオルカ、ヘルバにワイズマンなんて人もいたかな」

「構成人数はいっぱいるんすか?」

「そんなにいなかったみたいですよ。メンバーは十人いるかどうからしいです」

 

.hackersのメンバーは全員が明かされていない。未だに分からないメンバーだっているのだ。

 

「女神アウラの守護騎士がいますよね。実はあの3人は.hackersにいる3人をモデルにしてるんですよ」

 

女神アウラが最も頼りにしている3人を模して創り出したのが三葬騎士の正体だ。

 

「んで、その.hackersはエ・ランテルを拠点にしているらしいが見つかんねえな」

「広いですからね。こういう時は冒険者組合に行くのが一番ですよ。だって冒険者組合に登録してるらしいですし」

 

エ・ランテルはなんだかんだで広い。ならば、まずは情報が多く集まるであろう冒険者組合に行くのが一番だろう。

補足だが欅はエ・ランテルに来てから帽子を被っている。角を隠すためだ。亜人だなんだで問題が起きても困るからだ。

そのままずんずんと冒険者組合に向かうと黒髪の綺麗な女性を発見する。

 

「お、綺麗どころ」

「楓と同じで黒髪美人ですね。どうやら彼女の進行方向から考えると冒険者組合に行くみたいですね。ちょっと聞いてみましょう」

 

欅は予想だが彼女があの『漆黒』の美姫ナーベではないかと思っている。漆黒は.hackersと組んで王国の災厄を退けたチームだ。

 

「あのすいません。もしかして漆黒のナーベさんですか?」

 

欅は問いかけるが黒髪美人はそのまま進む。これには聞こえなかったのか首を傾けるが、はっきりと聞こえる声の大きさで問いかけたつもりだ。

でも彼女はまるで聞こえてないように進んでいく。

 

「まさか無視されましたかね?」

「…如何に王国を救った英雄の1人でも無視はよくありませんね」

「んじゃ、俺が行ってやる」

「松も待ちなさい。貴方はガラが悪いので私が行きます」

「ちょ、ガラが悪いって…」

 

確かに松はガラが悪いだろう。でも彼は漢だ。正直に言って彼に付いていきたくなる兄貴的な存在である。

ハセヲも昔は犬猿の仲であったが基本的には反りが合うタイプだ。今では仲が良い悪友になっている。

 

「そこの方。少々よろしいですか?」

 

楓が話しかけるがまた無視される。なので楓は彼女の前に出る。流石に前に出られれば止まる。

 

「…何ですか?」

「声を掛けたんですから無視はしないでください。何か理由があるのならこちらが謝ります」

「…要件は?」

「貴女が漆黒のナーベ様でよろしいですか?」

「そうだが何だ?」

 

欅の予想通り正解であった。

そもそもナーベが無視したのはいくつか理由がある。もちろん人間と話すつもりはないという心情もあるが、彼女の美貌によりうっとうしい男どもからナンパされることは多々あったのだ。

だから基本的に男性たちの言葉は無視しているのだ。

 

「実は私たちは.hackersという冒険者チームを探しているんですがどこにいるか知りませんか?」

「ドットハッカーズを?」

「はい。噂を聞くと貴女たち漆黒は.hackersと一緒だったことがあると聞いたので」

「……確かに知っていますが今はエ・ランテルにはいません」

「そうなのですか?」

「ええ。今は冒険者組合の依頼をこなすためにエ・ランテルを出ていますよ」

 

まさかちょうどエ・ランテルを出ているとは運が無かった。これは待つしかないかもしれない。

 

「情報ありがとうございます。これをどうぞ」

 

ナーベはチップを貰ってそのまま歩いて行った。

 

「まさかこの都市にいませんか。ははは、運が無いですね僕」

 

こういうのは仕方ないだろう。これは待つしかない。

 

「んー、ならさっきのナーベさんとモモンさんと話でも聞きますかね」

「もうナーベって女は消えちまったが」

「歩くの早いですねー」

 

 

SIDE変更

 

 

冒険者組合長のアインザックとラケシルはある部屋でちょっとした会議をしていた。その会議とはモモンに任せた特別な仕事についてと、ある目的についてだ。

モモンに任せた特別な仕事とはトブの大森林に自生している万能薬になるという薬草の採取だ。

とても難しい依頼であり、前回その依頼を受けたアダマンタイトチームはさらにミスリルチームを2つ加えてこなしたらしい。

万能薬になる薬草の採取だからこそ難しい。その場所に行くまでも大変でモンスター討伐よりも珍しいのだ。そもそも冒険者組合の仕事でもレアな依頼だ。

 

「そんな依頼をモモンくんは即答で請け負ってくれるとはな。凄いと思わないかラシケル?」

「そうだな。まったくモモン殿にはいつも驚かされてばっかりだ。もう来世の分まで驚かされたぞ」

「それは驚きすぎるだろ」

「いや、彼の活躍は正直言って目を見張る…目玉が飛び出すくらいだぞアインザック」

「まあ、そうだが」

「この依頼に関しては長期で進めても構わないと言ったが彼なら短期で達成しそうだぞ。明日には薬草を持ってくるんじゃないか?」

「それは流石に無いだろう」

 

流石にモモンもそこまで何でもできることはできない。それはラシケルの言い過ぎだ。

 

「でもカイト殿は来なかったか」

「モモンくんが言うには他の依頼をこなしているそうだ。実際に組合で調べてみると確かに依頼を受けてる最中だったな」

 

モモンにカイト。この2人はアインザックが特に注目している冒険者だ。エ・ランテルで最速でアダマンタイト級冒険者になった異例で最高な冒険者なのだ。

しかも彼らの凄さは留まらない。王国で起きた災厄事件。その災厄を解決したのが彼らなのだ。

たった2人で解決したわけではないが2人の尽力が大きい。最早カイトとモモンは英雄なのだ。そんな2人が今でもエ・ランテルで拠点にしてくれるのは嬉しいものだ。

彼らの価値を誰よりもアインザックが理解している。

 

「英雄が我が冒険者組合にいるのはとても大きい。はっきり言ってずっと居てもらいたい」

「そのために色々と画策してるんだろう?」

「ああ。今度彼らの歓迎会もとい慰労会でもしようと思っている。なんせ彼らはエ・ランテルにいるみんなが特別と思っているからな。この件に関しては全員が納得するだろう」

「その歓迎会だか慰労会で手配したあの店のトップたちが頑張るわけか」

「モモンくんとカイトくんにも頑張ってもらいたいがね」

 

あの店とは高級娼館。エ・ランテルに在店する3つの高級娼館の上位3人の美女たちを手配している。

 

「どうにか彼らをこのエ・ランテルに留まらせる楔をつくりたいのだ」

「女で留まらせることができるのか?」

「男を留まらせるのはやっぱり女だ。それ1人で足りないのなら何人でも構わない」

 

あながち間違いではないだろう。男だからこそ、というのがあるのだ。だがモモンとカイトにソレが効くかは分からないが。

 

「どうにかして2人には彼女たちと寝てもらう」

「酒を飲ませて美女たちが迫れば男は断らないだろうな」

「それに彼女たちには数日前には普段とは逆の薬を飲んでもらう」

「…逆って、まさか女に子供を産ませるつまりか?」

「ああ、彼らを繋ぎ止めるにはな。もし子供を捨てたとしてもその子が彼らの才能を受け継いでくれれば万々歳だ」

「複雑だな」

「仕方ないさ。それほど彼らの価値は凄いのだから」

 

確かにカイトとモモンの才能を受け継ぐ子供が生まれれば間違いなく将来は安泰だろう。きっと素晴らしい戦士になるはずだ。

この歓迎会を成功させるためにアインザックは慎重に事を進める。

 

「モモン殿は真面目だが…言うことは言うからな。責任を取るか分からん。しかしカイト殿は好青年だ…責任は取りそうだ」

 

ラシケルはモモンとカイトを比べたとして好感が持てるのはカイトだ。もちろんモモンだって素晴らしい人物だ。だけど比べてしまうとカイトなのだ。

モモンはいつも兜を被って顔を伺えないし、近寄りがたい雰囲気を少なからず感じるのだ。しかしカイトに関してはどこからどう見ても好青年。

話しやすいし、安心できる。2人のどちらかを応援するとしたらカイトになる。逆にアインザックはモモン派だ。モモンの仕事人という雰囲気が好きなのだ。

 

「まあカイトくんは私も責任は取ってくれると思うな。モモンくんは難しいかもな」

「そういえば女性の方は乗り気か。頼まれごととはいえ、子を産むなんて流石に覚悟がいるだろう。仕事で男と寝るとは違うのだからな」

「女性の方は乗り気だよ。なんせ相手は英雄だからな。それにカイトくんの方が人気だ。どうやら町中で前に会ったことがあるらしい」

「ほう、そうなのか」

「その時に親切されたとかなんとかで、既にカイトくんに惚れてる。だからこの依頼に関しては快く引き受けてくれたよ」

「おお。流石カイト殿だ。モモン殿にはそういうのは無いのか?」

「モモンくんを好いている女性はもちろんいるさ」

 

カイト。知らないところでフラグを立ててるのは流石と言うしかないだろう。もっともカイト自身は狙ってるわけではないので、そこがまた恐ろしい。

だがこのことがブラックローズたちに知れればカイトは不条理な目に合うのは確かだ。善意でやっていることが裏目になるなんて最悪だ。しかもカイトの善意は間違いなく迷惑をかけるようなものではない。

なんとも人生というかなんというか。世の中には不条理なことがあるものだ。

 

「そういえばアインザック。最近気になる冒険者がいると聞くが誰だそれ?」

「ああ、彼のことかな。残念だが彼は冒険者じゃないよ。私が一目見てビビっときただけに過ぎない」

「ビビっと来たってなんだよ」

「モモンくんやカイトくんのような才能を感じたのさ」

「お、そんな奴がいるのか!!」

「今度また会ったら話してみたいし、力を見てみたいものだ。名前は確か…仲間が口にしていたな。ハセオだか…ハセヲだったかな?」

 

 

SIDE変更

 

 

依頼書を見るカイトとアインズ。

 

「万能薬になる薬草か」

「そうなんですよ。一緒にやりませんかカイトさん?」

「採取のクエストか。ほとんどモンスター討伐が多い冒険者組合の依頼の中でも珍しいね。良いよ一緒に行こうかアインズさん」

「よし、早速準備して行きましょうか!!」

 

カイトとアインズがトブの大森林に行くことが決定した。

 




読んでくれてありがとうございました。
次回もゆっくりとお待ちください。

さてさて、ハセヲたちの目的が明確化しました、というかやっと本格的に進みそうです。次回からはドラマCDの物語を書いていくつもりです。分かる人には分かりますね。クロス作品なのでオリジナル要素マシマシなので注意ですよ。


カイト「やっと出番が回ってくるかな」
アインズ「こないと困る!!」
ハセヲ「ちょっとだけじゃね?」
2人「「その可能性があるからなあ…」」


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蠢く樹木

さっそくドラマCDの物語を元に物語が展開していきます。
そしてやっとこさカイトとアインズが登場です!!
クロス作品なのにアインズの登場が遅すぎだよ…

本編での時系列は前回と同じく大墳墓の挑戦者の前の出来事になります。


トブの大森林にいるであろうAIDAを探索及び討伐チームが結成された。

クーンをリーダーとしたチームで構成メンバーは天狼に太白、大火である。はっきり言って超プロ級のメンバーだ。

これほど安心できるというか背中を任せられる豪華なチームはないだろう。だがクーンは1つだけ不満があった。

 

「野郎ばっかじゃねーか!!」

 

このチームには華が無いということだ。これはクーンが口にしないと気が済まない状況である。せめて誰か1人でも華がいれば良かったのだが、その華たちは全てハセヲに持ってかれたのだ。

もちろんハセヲの独断ではないが、それでもクーンはハセヲを恨むしかない。これがモテる男とモテない男の差なのだろう。しかしおかしいものだ。クーンだって良い男なのに。

 

「ガハハハ、そう嘆くなって。こっちはこっちで楽しくやろーや」

「野郎と楽しくできるか!!」

「ほれ酒」

「これからAIDAの探索するんだよ!!」

 

クーンと大火のボケとツッコミ合戦。その様子を無視する天狼と太白。これがクーンが華が無いと嘆く要因の1つだろう。

無視を決め込んでいる天狼と太白は着々とトブの大森林でAIDA探索をしている。流石に広すぎるので1日では発見できないのでキャンプする覚悟だ。

討伐はできなくとも探索で発見だけはしたい。それが無理ならば情報だけでも手に入れたいものだ。

 

「野郎とキャンプなんて嫌だなあ」

 

凄く情けない声で呟くクーンだが大火は気にせずに肩をバンバン叩いて励ます。今夜は酒盛りだと元気に言いながらハイテンションだ。

どこに隠し持っているのか知らないが酒はいくらでも持っているらしい。そもそもどこで仕入れているのかすら分からない。

 

「飯はどーする。そこらの獣でも捕まえて焼くか?」

「まだ飯の時間じゃねえだろ…」

「何言ってんだ。サバイバルには早めに食材を手に入れないといけねえだろ」

「まあ、そうかもだけどよ…」

 

何故かもう森の中でキャンプする事が確定した瞬間であった。

 

「それにしても見つからないな」

「そう簡単には見つからないということだろう。こんな大森林の中で何かを探すのは骨が折れるということだ。ましてやAIDAだ」

「どいつに寄生しているかも分からないからな。だけど聞く話だと寄生されて酷い状態だと見た目ですぐ分かるらしいが」

 

天狼の言う通りでAIDAに寄生されて酷く浸食されると肉体に変化がある。実際に見たことはある。それはギルド月の樹の2番隊隊長の榊だ。彼はAIDAを自ら寄生させて肉体が変化していた。

トブの大森林には様々な種族がいるだろう。そういえばリザードマンがこの森に生息していたから彼らも調べてみるのも良いかもしれない。

 

「ま、こういう時は欅が開発したAIDAレーダーでも使うか」

 

欅とパイが共同開発したAIDAを発見するレーダーだ。名前はそのまんまAIDAレーダー。

カチリとスイッチを入れた瞬間にAIDAレーダーが即反応した。それはもう警報が鳴りっぱなしで緊急事態並み。

 

「反応したぞ!!」

「もう発見か!?」

 

まさかすぐさまAIDAレーダーに反応するとは思わなかった。どこから反応しているか天狼が確認しようとした瞬間に驚愕した顔になる。

こんな馬鹿なことがあるのかと言わんばかりの顔をしているのだ。

 

「どうした天狼!?」

「ありえん…AIDAがこの森全体から反応しているぞ!?」

「マジでか!?」

 

トブの大森林からAIDA反応がしている。彼らのいる周囲からAIDAがもういることになるのだ。

全員が武器を構えて襲撃に備えるが何も起こらない。でもレーダー画面にはもう満面なくAIDA反応がしている。

画面を広範囲にするとさらに驚きが加わる。AIDA反応がまだまだ森全体に広がっており、広げれば広げるとAIDAばかりだ。

これではクーンたちは森に入った瞬間にAIDAの胃の中にいるような状況である。これはどういうことなのか分からない。

 

「おいおい俺たちゃもうAIDAに先手を取られてるんじゃねーか?」

「そのようだな」

 

そのまま構えたままだがやはり何も起きない。

 

「…何も起きない?」

「何も起きないな」

「そのレーダー壊れてんじゃねーか?」

「欅とパイの共同開発品だ。不良品なんて渡さないだろう」

 

そうなるとやはりトブの大森林全体からAIDAが反応していることになる。でもだからと言ってすぐさまこちらに何か仕出かしてくる様子はなさそうだ。

 

「なあ天狼。そのレーダーで一番反応の強い所は分かるか?」

「待て、調べてみる…あったぞ」

「じゃあ気を付けながら行くぞ」

 

クーンはトブの大森林にいるAIDAが広範囲にかけて寄生していると予想していた。しかしどうやって森全体に寄生しているかが分からない。

AIDAが森に寄生することはありえない。ならば寄生している宿主を通して森に寄生していると考えるのが妥当だろう。

森へと寄生できる手助けができる宿主とは一体どんなやつなのか。

 

 

side変更

 

 

カイトとアインズは冒険者組合から特別に依頼されたクエストをこなすためにトブの大森林に訪れていた。

今回のメンバーはカイトにアインズ。それにアウラ、ブラックローズ、ハムスケだ。アウラとハムスケが今回選ばれたのはトブの大森林について知っているからだ。

アウラとハムスケがいるおかげでトブの大森林での探索はとても頼もしい。アウラの主導でハムスケの背中に乗って進む。

薬草の採取クエストなのでハムスケの背中に乗ってゆうゆうと進んでいるのだ。モンスター討伐依頼とは全く違う。ここまで余裕があるのは久しぶりな依頼である。

 

「はー…超暇ね」

「まあ、薬草採取だけだからね」

 

ブラックローズは背伸びして体をストレッチする。カイトも同じく軽めのストレッチ。

 

「こういう依頼もたまには良いものですよブラックローズさん」

「こんな依頼がアダマンタイト級とミスリル級2つが必要なのアインズさん?」

「それはまあ…確かに」

 

万能薬になるとはいえ、薬草を採取するだけのクエストでそこまで仰々しく人材が必要なのか気になるところだ。

そんなに採取する場所が危険なのだろうか。例えばモンスターが大量にいるとか。

 

「大量にモンスターがいるんなら分かるんだけどね」

「そうかもしれないですよ。だからアインザックさんがミスリル級の冒険者チームをいくつか手配してたようですし」

「ふーん。ま、現場に行けば分かるでしょ。ダメだっら仲間を増やしてまた来れば良いし」

 

ブラックローズの言う通りで仲間が必要だったらまた来れば良い。他にガルデニアやオルカだって付いてきてくれるだろう。

アインズの方にだってナーベラルやマーレだって心強い部下がいる。

 

「任せてくださいアインズ様。森のモンスターなんてアタシ1人で十分ですよ!!」

「ははは、頼りにしてるぞアウラ」

 

ハムスケの背中に乗りながら順調に進むが教えられた目的地までまだまだ先だ。このままだと夜になることは確定である。

ならば野営の準備をしないといけないだろう。

 

「どこで野営するアインズさん?」

「そうですね。もうちょっと開けたところまで行きましょうかカイトさん」

 

のっしのっしと進んでやっと野営地に最適な場所まで到達した。アウラからで一旦ナザリックに戻るかと提案してきたが、やっぱり冒険を楽しみたいのでキャンプすることが決定。

実は野営キャンプは憧れていたアインズであった。それにカイトたちと野営ができるなんてワクワクしている。そしてカイトもだ。

なんていうか、仲間と野営キャンプでワクワクしないだろうか。

 

「それにしても想像以上に開けているな」

「こんなものじゃないかな?」

「うーん。こんなものか」

 

早速コテージでも準備するかと思ってアインズはアイテムボックスからグリーンシークレットハウスを出した。

これにはハムスケが超驚いていたがとりあえず無視した。

 

「やっぱユグドラシルにはいろんなアイテムがあるんだ」

「ユグドラシルには本当に凄いアイテムからなんじゃこりゃってアイテムがありますからね」

 

本当にユグドラシルには色々なアイテムがある。何でこんなアイテムがあるかすら分からないし、何を思って作成したのか読めないほどだ。

運営の頭は狂っているのかもしれない。いや、その評価はユグドラシルプレイヤーから既になっている。

 

「The Worldにはなんか面白いアイテムとか無いんですか?」

「そうだね…そういえば装備すると様々な状態異常になるアイテムがあった気がする」

「ユグドラシルとあんま変わりませんね」

 

そういえば昔ぴろし3がそのアイテムを欲しがって一緒に手に入れた記憶がある。

 

「あと『色男になる薬』もあったなあ」

「え、何それイケメンになるの?」

「ただ身体にオレンジとかの色で染まるだけ」

「…ああ、そういう。って本当にそのままか」

「それにぴろし3から『ぴろしの自伝』なんてアイテムも貰ったなあ」

「本当に何それ!?」

 

一応アイテム効力を説明すると『魔法攻撃力が永久的にマイナス』になるらしい。はっきり言って使いどころが無い。

これはただのコレクションアイテムとして見るべきだろう。そもそも自分の名前が付くアイテムってまんま自分で作成したアイテムだ。しかもマイナスになる。

 

「それただの呪いのアイテム!!」

 

アインズが絶対に装備したくないアイテムだ。なんでこう、ぴろし3は人の斜め上を飛んでいくようなモノや武勇伝を持っているのだろうか。

何故か分からないが彼と戦ったとしても色んな意味で勝てない気がする。たぶんカイトでも勝てないかもしれない。

 

「アタシもぴろし3は苦手です…」

 

階層守護者のアウラまでも苦手としているらしい。

 

(おおアウラまで…彼女の苦手な存在ってそうそうないぞ)

 

ここにいなくても何か残す男。それがぴろし3。

何故か空にぴろし3の顔がキラーンと映った気がしないでもない。

 

「さて、食事は…」

「アインズ様。近くで生物反応を感知しました」

「なに?」

 

さっそく食事の用意でもしようかと思った矢先にアウラから謎の生物反応を感知したとの報告が来る。

どうやらいきなり生物がアウラの張った感知範囲内に現れたらしい。いきなり出現したからテレポートの類で誰かが転移してきた可能性があるだろう。

敵か味方か分からない。できれば敵で無い方がいい。

 

「カイトさん。まずはオレが魔法で目を飛ばします」

 

アインズが魔法で視覚を飛ばし、生物が現れた場所を確認する。するとドライアドという植物系の種族がいた。

周囲を確認してみるがどうやら、そのドライアド1体だけしかいないようだ。

 

「現れたのはどうやらドライアドのようです」

「ドライアドって確か植物系?」

「そうです。そのドライアドですよカイトさん」

 

個体としては子供くらいの大きさだ。だけど容姿と年齢がそぐわないなんていくらでもある。それが異世界なら尚更である。

まずはそのドライアドだが、どうやら何かするとというわけではなさそうである。観察してみるとただひょっこりと現れた感じである。

ひょっこりと現れたドライアドはその場に留まっている。そのまま無視してても大丈夫かもしれないが、もし何かあってからでは遅い。なので接触してみることに決定する。

 

「行ってみますか」

「そうだね」

「拙者も同行するでござる!!」

「ハムスケ。お前は待機」

「了解でごじゃる…」

 

ハムスケお留守番決定。

アインズたちはドライアドに敵意が無いことを言いながら近づいていく。

 

「おーいそこのドライアドくん。私たちに敵意は無い。良ければこの付近で野営をさせてくれないだろうか」

「ん、人間3人にダークエルフが1人?」

 

どうやら言葉が話せるようで助かる。これなら話もできる。

 

「もしかして前に来た人たちかと思ったけど…違うみたいだね」

「ローファンのことか?」

「誰それ?」

「む、違うのか。冒険者組合で聞いた者たちじゃないのか」

「えっと約束をしてて、若い人間が3人に大きい人が1人で年寄りの人間が1人、羽根の生えた1人、ドワーフが1人で7人組だよ」

 

冒険者組合で聞いていた前のアダマンタイトチームではないようだ。どうやら全く違う冒険者かもしれない。

それにしても様々な種族の混成されたチームであるようだ。

 

「その約束したとは?」

「ええと、そうだな。その約束ってのは魔樹を倒してくれるって約束」

「まじゅ…魔樹?」

 

話を聞くと魔樹とは世界を滅ぼすほどの植物系のモンスターらしい。その名前はザイトルクワエ。

この世界の大昔に天空が割れ、数多の化け物が降ってきて竜王たちと戦争を繰り広げたらしい。その生き残りだか、封印されたのがザイトルクワエで歪んだトレントとも言う。

 

「世界を滅ぼす魔樹か」

「なんか薬草採取のために来ただけなのにとんでもない話を聞きましたね」

「はあ…なんでこう、面倒ごとが来るんですかねー」

 

ブラックローズがため息を吐くしかないだろう。だって世界を滅ぼす魔樹なんて物騒でしかない。でもウィルスバグと戦っている身としては世界を滅ぼす魔樹なんて増えたところで変わらないのでドライアドが思っているほど危機感はない。

何故ならウィルスバグがこの異世界に存在している時点で危機感はマックスなのだから。ウィルスバグも世界を滅ぼす魔樹も変わらない。

 

「その魔樹とやらはそんなに強いのか?」

「強いなんてもんじゃないよ。竜王たちと互角に戦ったんだよ!!」

(竜王か…そういえばまだこの異世界でドラゴンは確認していないな)

 

アインズもカイトも異世界でドラゴンは見ていない。でもドライアドの口ぶりからすると確実に存在はしているだろう。

 

「でも空が割れて世界を滅ぼすモンスターが降ってきたって何よ」

「そんなの知らないよ。でも昔そんなことがあったのは確かだよ。現にこの森にザイトルクワエが眠っているんだから!!」

 

この異世界の空が割れて大量のモンスターが降ってきた。そんな天変地異は嫌なものだ。

 

「魔王が攻めてきたとかだったりしてね」

「あ、それ有りそう」

「魔王って何さ?」

「あ、こっちの話」

 

ファンタジーな世界だが魔王は実在するのだろうか。もしいなかったらアインズが魔王かもしれない。だって似合っているから。

 

「その時はドラゴンたちだけで戦ったのか?」

「えーと…嘘か本当か知らないけど6人の人間も戦ったなんてのもあったよ」

「6人の人間?」

「うん。でも本当に人間か分かんないけど…亜人かもしれない。だって竜王たちと互角に戦えてたらしい」

 

もしかしてアインズのようにユグドラシルプレイヤーかと考える。この異世界にはユグドラシルプレイヤーの存在が微かに存在するのだ。

例えば六大神や法国に八欲王。それに十三英雄もどこかユグドラシルプレイヤーのような存在を示す何かがあったりする。

 

「6人か…どんな奴か知らないが流石に生きているかどうか」

 

竜王たちが活躍していた時代は八欲王が跋扈していた時代でもある。もしかしたら元凶は八欲王の可能性だってあるかもしれない。

八欲王の時代は数百年前の話だ。ならば人間だったら生きていないだろう。もっとも全て仮定の話だからアインズの予想は外れているかもしれない。

 

「その6人は竜王たちからなんて呼ばれてたかな……ずっと昔に聞いたことがあったんだよなあ」

「6人の呼び名を思い出せるか?」

「えーっとなんだっけな。確か『漆黒の恐怖』とか『赤衣の狩人』とか…」

「それは名前じゃなくて二つ名っぽいな」

「じゃなくて、それよりザイトルクワエだよ!?」

 

ザイトルクワエは着々と復活が近づいているらしい。なんでも他の草木に浸食して全ての栄養を吸収している。ザイトルクワエの根は今まさにトブの大森林に広まっているのだ。

 

「今はまだこの森全てに根が広まっていないけど時間の問題なんだよ。そのうちこの森の外にまで根付くつもりに決まってるさ!!」

 

ウィルスバグほどではないがザイトルクワエも浸食していく力があるようだ。正確には浸食というよりも世界に根付くだろう。

ザイトルクワエは世界から全ての栄養でも吸い尽くす気なのかもしれない。

 

「どうしますカイトさん?」

「うーん。ここまで聞いたら無視できないよね」

「じゃあ倒すしかありませんか」

「何言ってんの!?」

「何って倒そうかと。ね、カイトさん」

「相手は世界を滅ぼす魔樹だよ!?」

 

しれっと言っているカイトとアインズだが、それには理由がある。

 

「「世界を滅ぼす相手ならもう戦ってる」」




読んでくれてありがとうございました。
次回もゆっくりとお待ちください。

さてさて、やっとカイトとアインズの活躍だぜ!!
いやあ遅すぎました。クロス作品なのにねえ…でもここからちょくちょく活躍させます!
そしてドラマCDを聞いたことがある人は分かると思いますがこの作品では展開はオリジナルになりますので注意です。

アインズ「出番きたー!!」
カイト「ボクはいいとしても流石にアインズさんは出番がないとダメだよね」
クーン「オーバーロードのクロスだしな」


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ザイトルクワエ

はい。タイトルで分かるようにザイトルクワエとの戦いです。
そしてクーンたちはAIDAと戦っています。
今回の話は現場は同じだけと別々に戦っています!!
本編の時系列でいうとまたまた大墳墓の挑戦者の前の話になります。


AIDAレーダーより反応が一番高い場所まで到達したクーンたち。現場の周囲は異様にひらけている。

状況から察すると周囲の緑が無いので枯れているようだ。何故枯れているかと言われれば原因はAIDAかもしれない。

 

「反応が一番ここが高い。発信源は真下だ!!」

 

天狼が地面に向けて拳を叩きだした。地面は砕かれ、その下が露わになった。

 

「おいおい…こういうことかよ」

 

地面の下からはまるで血管のようなグロテスクな樹の根が出てきた。その樹の根はまるでAIDA感染者が酷く進行した一部に酷似している。

グネグネと蠢いていてまるで生物のようだ。この樹の根はただの樹の根ではないだろう。おそらく予想として植物系のモンスターの根かもしれない。

それならばこの森に広範囲にAIDA反応がある理由が分かる。

 

「なるほどな。この根がトブの大森林に広まってるのか」

「AIDAの根ってところだな。これはまた新たなAIDAと言ってもいいかもしれない」

 

AIDAカズミがトブの大森林を訪れていた理由がこのAIDAの根だろう。確かにコレもAIDAの新たな進化の1つ。

反応が1番高い場所を指さす天狼。その指の先にはAIDAの核のような物から樹の根に感染しているものがある。胎動しており、あの核から何かが産まれてくる感じで不気味だ。

 

「んじゃあ早速討伐と行くか」

 

このままにしていたら恐らくトブの大森林がAIDAの大森林になるかもしれない。実際にAIDAの根が他の樹木の根に絡みついて徐々に同じように感染しているのだ。

だが根だけで本体である宿主が見当たらない。もっとも植物にとって根の部分は生命線のような部分なので根が本体かもしれないが。

 

「さて…って何だ!?」

 

いきなり地響きが発生したかと思えばクーンたちとは真逆の方向の場所で巨大すぎる樹木が生えだした。バキバキと周りの草木を潰して天へと高く伸びていく。

まるで空を割る勢いで成長しているのか、もともとあれくらいの大きさなのか。

 

「もしやあれがAIDAの宿主かもしれないな」

 

宿主とAIDAの距離が相当離れているが根の大きさからしてあれくらいが妥当だろう。それに先ほども考えた植物にとって根の部分が生命線なのだから根さえ無事ならいくらでも時間をかけて成長し直す。

あれほどの大きさの植物モンスターの根ならばトブの大森林にかけて広げることは可能だろう。このAIDAもまたとんでもないモンスターに寄生したものだ。

 

「AIDA自体が寄生したわけじゃない。カズミって奴が無理やり寄生させたんだったな」

 

AIDAの特性上、知性のある生物に寄生する。だが本能のみの植物系モンスターに寄生がするとは考えにくい。ならばカズミが実験的に寄生させたはずだ。

その結果がこの進化なのだろう。独自に進化して森に浸食しているのだからカズミの実験は成功している。

 

「覚悟決めるか。雷光閃弾!!」

 

樹の根で絡まっているAIDAの核に撃つ。クーンは樹の根の守りの甘い部分に狙いを定めた後、二発ほど銃を発射して破壊すした。

しかし樹の根はいくらでもある。すぐさまAIDAの核を守るように樹の根が絡みつく。

 

「まずは樹の根をどうにかしないといけないな」

「周囲の樹の根を潰すぞ!!」

 

クーンの号令で全員がアーツ技を発動する。

 

「金剛発破掌!!」

「塵球至錬弾!!」

「刺突散弾!!」

「夜叉車!!」

 

全員のアーツ攻撃が硬い樹の根を破壊していく。だが向こうもただ攻撃されるだけではない。樹の根が触手のように蠢きながら襲ってくる。

全方位からの触手攻撃は避ける暇はない。ならば全ての攻撃を叩き潰すしかないのだ。

 

「がははは森林破壊してるみたいで心が痛むぜ」

「安心しろ大火。これは森林破壊ではなく害虫駆除だ」

「こんなので心を痛めていたら死んでしまいますよ」

 

AIDAに感染した樹の根を切断し、撃ち砕くのは流石はイコロのチームだ。多量に蠢く樹の根の触手を全て破壊していく。

これにはクーンもヒュウっと口笛を吹く。大火はイコロを脱退しているが強さは本物だ。この異世界では肉体がまるで現実のようになっているので凄さがより身に染みるくらい分かってしまう。

 

(ま、ハセヲの師匠を名乗るだけはあるな)

 

ハセヲ曰く勝手に師匠を名乗ってるだけだがいつの間にかハセヲ自身も師匠と認めてしまっている。なんというかバカ親父と悪ガキのような関係性にも見える。

 

「ちと時間はかかるが根っこの除去作業だ…うごあっ!?」

 

クーンが根っこの一掃しようと散弾攻撃のアーツ技である『烈球操弾』を撃とうとエネルギーを溜めてたらいきなり何かがぶつかってきた。

そのままクーンは一緒に転げまわる。その何かは小さくて褐色であった。

 

「痛ってえ…何だ何だ!?」

「痛ったあい、あのデカイだけの枯れ木め。よくもアタシを吹っ飛ばしてくれたなー!!」

 

クーンの懐に飛び込んできたのはダークエルフの子供であった。

 

「え、なんだって小さな可愛い子ちゃんが飛んできたんだ!?」

「え、何で人間なんかがこんな所にいんのさ?」

「いや、こっちのセリフなんだが」

 

どこから飛んできたのか分からない。しかし今こんな所にいたら危険なのは確かだ。最悪な場合AIDAの犠牲になってしまう。

 

「ここか危険だから早く逃げるんだ」

「はあ、人間がアタシに命令すんな!!」

 

ここでダークエルフの子供はヒソヒソなにか呟きだした。まるで誰かと交信しているような感じだ。

 

「あ、アインズ様アタシは大丈夫です。でもちょっと人間と接触してしまいまして…」

 

まるでメッセージの伝える魔法でも使っているのだろうか。相手は同じようにダークエルフなのだろうか。でも様付けをしていたからダークエルフでも上の存在かもしれない。

 

「どうしますか。消しておきますか?」

 

一瞬だけ不穏な言葉が聞こえた気がしたが気のせいだと思いなおした。可愛い顔して怖いことを言うはずがないだろう。

 

「え、それは無視して良いんですか。分かりました」

 

何か決まったようで彼女は交信を終えたようだ。

 

「おい人間運が良かったな。死にたくなかったらさっさとここら消えることだね」

「いや、こっちはこっちでやることがあるんだが」

「そういえば何か木の根っこと戦ってるけど…そんなの無視して消えなよ」

「いや、それはできないことなんだが」

「いいから消えろ。じゃなきゃ死んじゃうからね!!」

 

そのまま言いたいことだけ言って走り出していったダークエルフであった。

 

「何だったんだ?」

 

 

side変更

 

 

カイトたちはドライアドもといピニスン・ポール・ペルリアによりザイトルクワエが封印されている場所まで案内される。

何故、案内されているかと言われればザイトルクワエの討伐のためだ。世界を滅ぼす魔樹であるザイトルクワエが復活するかもしれないと聞いてしまえば無視なんてできない。

 

ならば遅かれ早かれ倒すしかないだろう。そもそも世界を滅ぼすウィルスバグが存在するのだから世界を滅ぼす魔樹が1本追加されたところで変わりはしない。

ピニスンは「本気でザイトルクワエを倒す気!?」なんてパニックになりながら聞いてくるがカイトもアインズも声を揃えて「倒す」と即答。即答することができたのは力があるからだ。

力がなければ戦うなんて無謀なことはできない。それにしても万能薬になる薬草を採取しに来ただけなのに、こんな規模の話になるとは思わなかった。これでは薬草採取クエストは失敗かと思った矢先。

ピニスンよりその薬草はなんでもザイトルクワエのどこかに生えているとのこと。これまた嫌な展開である。なんでよりにもよってそんなところに自生しているのか。

でもちょうどよいと考えるべきだろう。薬草を採取してザイトルクワエを倒せばよい。

 

「ここだよ」

 

ピニスンより案内された場所は無駄に開けており、周囲には枯れた木々があるくらいだ。この枯れた木々はザイトルクワエによって栄養を全て吸収された木の成れの果てだろう。

枯れた木の枝に触れた瞬間に地震がおこる。

 

「おっと」

「揺れが大きいよ」

「うわわわわわわわわ!?」

 

地震の正体はザイトルクワエの目覚め。ピニスンの予想としてはザイトルクワエの復活はまもなくとは思っていたが、まさか今日だとは思わなかったらしい。ザイトルクワエは天へと目指しているのか知らないが高く高く伸びている。

 

「うそっ、ザイトルクワエが復活したああああ!?」

「大きい…」

「ちょ、想像したのよりデカイんだけど」

「ガルガンチュアより大きいな」

「復活しちゃいましたねアインズ様」

「でっかいでござるなあ」

 

ピニスンはパニック状態だがアインズたちは冷静。はっきり言って普通はピニスンの反応が正解だ。

アインズたちの冷静さが異常なのだ。なんでこんなに冷静か分からない。でも冷静なのは悪いことではない。

 

「どうやって倒しましょうか」

「これはボクの双剣でもキツイかも」

 

カイトの双剣が効かない。いや、ダメージは与えられるかもしれないがチマチマし過ぎで意味が無いかもしれないのだ。単純に質量と体積の問題だろう。

一匹の蟻が大きなゾウに噛みついたレベルの話にすると分かりやすい。

 

「オレも生半可な魔法じゃ有効だにならないな」

「え、アインズ様の魔法が効かないんですか!?」

「うむ。魔法も選ばないと効かないだろう。燃え盛る炎に少量の水を掛けたところでは意味はないだろう?」

「そ、そうですね」

 

ここでアウラには自分が万能説というのを改めてもらいたい。なんというか階層守護者のみんなはどこかアインズを万能の人だと思われている。

それが正直プレッシャーなのだ。期待を裏切りたくないがプレッシャーがキツイ。

 

(まったく…階層守護者と言わずナザリックのみんなはオレに超期待しているというか忠誠を誓いまくっているというか…重いなあ。オレにだって弱点はあるんですよ!!)

 

ザイトルクワエをアインズが倒すしたら上位の魔法だけだろう。しかも巨木である大きさに見合うだけの魔法だけ。

 

「アタシの場合だとアルティメットスキルを使えばどてっぱらに風穴は空けれそうね」

「う~ん。アタシはあれだけデカイと決定打になるスキルはあまりないかも」

 

ブラックローズのアルティメットスキル『メテオストライク』なら決定的なダメージを与えられるだろう。しかし、そのためにはザイトルクワエの6本の大きな枝を潰さないといけない。

あの大きな触手のような枝で防がれてしなったら威力は半減だろう。

 

「やはり植物系モンスターだからカイトさんとオレの炎系の魔法で燃やしますか?」

「そうだね。それが一番確実かもしれない」

 

植物系モンスターなら炎が有効。それはどこも変わらない認識のようだ。

カイトたちは冷静にザイトルクワエをどうやって倒そうと考えているがピニスンはそれどころじゃなかった。

 

「ちょちょちょ、何でそんなに冷静なのさ。魔樹が復活したんだよ!?」

「落ち着くでござるよピニスン殿」

「こんなの落ち着いていられないよ!?」

「慌てていても意味はないでござる。ならば冷静になっている方が活路を見いだせるでござらんか?」

「いや、そうかもだけどさ!?」

「殿たちを信じるでござるよ」

 

ハムスケはアインズたちに出会ってなければここまで冷静にはなれなかっただろう。何故彼女がここまで冷静なのはザイトルクワエよりもアインズたちの方が規格外だからだ。

だから冷静でいられる。ある種、アインズたちがいるからこそ大丈夫だと思っているのだ。

 

「じゃあ作戦開始!!」

「ブラックローズさんは周りの枯れ木を伐採。アウラはスキルでザイトルクワエの動きをできるだけ足止めしろ。私とカイトさんは炎系の魔法で攻める!!」

 

アインズの指示で全員が同時に動く。

まずはブラックローズは周囲の枯れ木を伐採していく。これはカイトとアインズの炎魔法の余波で枯れ木が燃え上がり、さらにトブの大森林に広がらないように配慮したものである。

アウラはザイトルクワエの動きを止める役割。カイトとアインズが魔法を撃てるようにサポートに徹する。そして隙を見て万能薬になる薬草を手に入れる。

カイトはエクシードを発動。蒼炎を身体に纏い、ザイトルクワエの枝に乗り移る。そして蒼炎を纏った双剣を突き刺して、アプドゥを発動。アプドゥは移動速度が一時的にアップさせる補助魔法だ。

そのままカイトは縦横無尽にザイトルクワエの枝を走り回る。枝に切り込みを入れて内側から燃やそうという魂胆だ。双剣に蒼炎が纏っているため、切り込みを入れた瞬間に枝の中に蒼炎が流れ込んでいく。

最後にアインズはカイトの入れた切り込みに魔法を放って、切り込みが広がって燃えて崩れる。みるみるうちにザイトルクワエの6本のうち1本の枝が破壊された。

 

「ほえ?」

「おおー流石でござるな!!」

「いやいや、え!?」

「どうしたでござるかピニスン殿?」

「だってあの魔樹の枝を一本を簡単に破壊したんだよ!?」

「流石でござる!!」

「その言葉で済まさないでよ!?」

 

ピニスンがまだパニック状態のようだ。そのうちにカイトたちは2本目の枝に乗り移る。

 

「あらよっと、牙烈火!!」

 

ブラックローズもザイトルクワエの枝に乗り移って炎系の剣技を繰り出す。

 

「ブラックローズ。もう枯れ木伐採は終わったの?」

「あんなの一瞬よ。アタシもこっちを手伝うわ」

 

カイトとブラックローズの2人でザイトルクワエの枝を切りつけながら縦横無尽に走り回る。ザイトルクワエもバカではないので危機を察知して2人を潰そうとするがアウラの影縫いの矢で動きを止める。

更にはアインズのエクスプロードマインを枝の周辺に設置して、少しでも枝が動けば爆撃地雷に引っかかって爆発。ザイトルクワエを自由に身動きさせない。

 

「アインズさん。切り込み完了です。一緒に魔法を放つよ!!」

「了解ですよカイトさん!!」

「ファバククルズ!!」

「エクスプロード!!」

 

2本目も破壊完了。

 

「もう二本目なの!?」

「凄いでござるな~」

「ははは、これって夢かな?」

「現実でござるよ」

 

3本目に突入。

アウラの『レインアロー』とアインズの『エクスプロードマイン』の二重攻撃によりザイトルクワエは完全に動きを封じらてている。

その隙にカイトとブラックローズは剣で枝に切り込みを入れていく。そしてアインズとカイトの炎系の魔法で破壊する。

これでもうザイトルクワエの半分の枝を破壊している。

時間はかかるがこれならザイトルクワエを倒すことは可能だろう。

 

「あっ、発見!!」

「どうしたのよ?」

「薬草を発見したのよ。アインズ様。発見しましたよ!!」

「でかしたぞアウラよ」

 

アウラはすぐさまザイトルクワエに生えている薬草を取りに行く。薬草を採取することはできた。

しかし、アウラの『レインアロー』を一旦止めたことで一瞬だけ枝の動きが自由になってしまい、アウラに直撃する。

 

「いでっ!?」

 

アウラはそのまま薬草を握ったまま彼方へと飛ばされた。

 

「アウラ!?」

「あちゃー、遠くに吹き飛ばされちゃったわよ!!」

「無事かアウラ!!」

『はい。大丈夫です!!』

 

どうやら無事のようだ。ホッと息を吐く。息なんて出ないが。

 

『あ、アインズ様アタシは大丈夫です。でもちょっと人間と接触してしまいまして…』

「人間か。無視して構わない。早く戻ってこい」

『え、それは無視して良いんですか。分かりました』

 

アウラが吹き飛ばされた方向に人間がいたようだが無視して構わない。今は人間よりもザイトルクワエだ。

それにしても何で人間がいるのだろうかと思ったがトブの大森林に冒険者がいてもおかしくないだろう。だけどちょうど良い。ザイトルクワエのことなら向こうでも見えているだろう。

これをモモンが倒したという噂の信憑性を上げるに使える。

 

「戻ってきましたアインズ様!!」

「おお、意外に早いな」

「アインズ様の元になら光の速さで戻ります!!」

「そ、そうか」

「薬草も無事です!!」

 

万能薬になる薬草採取は完了。あとはザイトルクワエを倒すだけ。

 

「ならば総攻撃をかけるぞ。アウラが戻っている間に枝は片づけたからな」

「そうなのですか。流石ですアインズ様!!」

「いやいや待ちなさい。アタシたちも頑張ったんだけど」

 

何故か枝を破壊したのがアインズ全てのおかげになっている。違うから、と心の中でアインズはアウラにツッコミを入れた。

今のザイトルクワエは枝が全て破壊されてり、巨木の部分に無数の切れ込みが入っている。しかも切れ込みから蒼炎がにじみ出ている。

 

「アウラよ。レインアローでザイトルクワエの切り込み部分をさらに広げろ」

「はい!!」

「ブラックローズさんは大きめの一撃をくらわしてより亀裂を広げてください!!」

「はいはい」

「カイトさんはオレと同時に高威力の炎魔法を放ちましょう!!」

「了解!!」

 

アウラが『レインアロー』を発動して亀裂に刺さり、より広がる。そこにダメ押しのようにブラックローズが力の限り大剣を振るった。

斬るというよりも砕く勢いで振ったのでヒットした個所からビシビシと亀裂が走る。

 

「合わせてくださいカイトさん!!」

「任せて!!」

「ナパーム!!」

「ファバククルズ!!」

 

カイトとアインズの炎系魔法でザイトルクワエは爆発し、一気に燃え上がった。

完全にザイトルクワエは燃えていき、どんどんと灰になっていく。

 

「嫌なキャンプファイヤーだな」

 

アインズは締めの言葉を言うがここでブラックローズがあること思う。

 

「そういえば万能薬になる薬草ってザイトルクワエに生えていたのよね」

「そうですが…どうしましたブラックローズさん?」

「ザイトルクワエが燃えたらもう薬草採取できないんじゃないの?」

「あ…」

 

ノーコメントで。

 

 

side変更

 

 

急に樹の根の動きが鈍くなった。そういえばこちら側より反対側の方にある大きな樹が大爆発して炎上している。

これはどう見ても向こうで何かあったのだ。あのダークエルフの子供が何かしたのかもしれない。彼女は大きな樹の方から飛んできては、また戻った。

まさかあの子供があのでかすぎる樹を燃やしたのだろうか。だけど今はチャンスである。

樹の根の動きが鈍くなっているのなら今のうちに畳みかける。

 

「全員全開で行くぞ!!」

 

クーンの掛け声とともに太白たちが全力で樹の根に寄生しているAIDAに集中砲火。樹の根に守られたAIDAは丸裸だ。

最後のトドメを刺そうとクーンは紋様を浮かび上がらせてAIDAに走る。

 

「来い。俺のメイガス!!」

 

アバター空間にAIDAを隔離し、決着をつける。向こうのAIDAも決着をつけることを理解したのか本体の姿を現す。

樹の根。正確にはザイトルクワエの根に寄生していたAIDAの正体はAnna(アナ)。ミジンコのような微生物の見た目で透き通った紫色の身体と、その中心に濃色の核が配置されている。

だけど前と少しだけ違った。クーンの目の前にいるアナは身体から根のような触手が生えている。やはり進化したAIDAのようだ。

 

「進化してようがオレは勝つ!!」

 

ハセヲだって今頃頑張っている。ならば兄貴分としてはここで勝利を刻まないと格好がつかないだろう。

憑神モードであるメイガスになり本体のアナに突撃する。

 

「おおおおおおおおおおおおお!!」

 

アナを掴んでそのままグルグルと回転させて投げつけて、そして勢いがついたらそのまま突撃してAIDAのプロテクトを完全に破壊した。

そしてすぐさまデータドレインを展開する。メイガスの腕から色鮮やかなの紋様が展開されて、照準をAIDAアナにセット。

 

「くらえデータドレイン!!」

 

全てを改竄する閃光がAIDAアナに突き刺さり、データを吸収していく。アナはデータドレインから抜け出そうと触手を伸ばしてクーンに絡みつくが既に遅い。

アナの身体はもうボロボロになっており、触手は崩れていく。

 

「終わりだぜAIDA」

 

クーンのデータドレインによってAIDAは消滅した。ザイトルクワエの根に寄生していたAIDAは消えたのでトブの大森林に広がっていた根は急速に枯れていく。

これならザイトルクワエが吸収した栄養はすぐにでもトブの大森林に還元されるだろう。

 

「やったなクーン」

「まあな。これでもハセヲの兄貴分だぜ」

 

ニカっと笑うクーン。ハセヲが頑張っているのに負けてられない。兄貴分としては先に成果を出したかったのだ。

 

「次はハセヲの番だぜ」

 

ところで向こう側。ザイトルクワエの方。

樹木部分であるザイトルクワエが燃えていたが何があったのかが気になるのだ。ザイトルクワエが燃えたおかげでAIDAに攻撃するチャンスができた。

ならば何で燃えた理由は何か。気になるのがダークエルフの子供だ。

 

(あの子が何かしたのか?)

 

クーンは『視覚』を司どるメイガスの力を使って遠くの方向を視る。するとザイトルクワエが燃えている下に何人かがいた。

赤い外套を着た双剣士と褐色肌の女の大剣士。それに子供のダークエルフと黒く高級そうなローブを着たエルダーリッチが見えたのだ。

 

(誰だあいつら?)

 

赤い外套を着た双剣士と褐色肌の女の大剣士を見たら頭に靄のようなものがかかったが、特に思うことはしなかった。




読んでくれてありがとうございました。
次回もゆっくりとお待ちください。

さてさて、今回はクーン視点とアインズ視点での物語でした。
ザイトルクワエの巨木部分をアインズたちが、
ザイトルクワエの根(AIDA)の部分をクーンたちが、

実は協力してザイトルクワエを討伐していたのです!!
アインズたちが巨木部分にダメージを与えたからクーンはAIDAを倒すことができたし、クーンたちがAIDAを倒したからアインズはAIDAの力を食らわずに済みました。

そして最後にクーンはカイトたちを見て頭に靄のようなものがかかったと評しましたがそれはちゃんと訳があります。
知っている人は分かるかもしれませんが、実はクーンってRe:1をプレイしていたんですよね。その時の名前は『ジーク』です。

彼は無印版では未帰還者になっており、最終決戦ではコルベニクのシールドを破壊するために応援に来てくれた1人です。なのでカイトたちを見た事実はありますが、未帰還者の後遺症で記憶障害になっているため、覚えていないのです。
(実際のところ公式では記憶障害になったかどうか発表されていませんがGUでは葬炎の騎士カイトやバルクンクにオルカを見てもなんも反応もなかったので記憶障害が濃厚だと私は思っています)


クーン「なんか他人じゃ無い気がするんだよなあ?」
バルムンク「ん?」
カイト「それならハセヲも…どこかで会ったような気がするんだよね」
ハセヲ「ああん?」


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強者たち

今回はハセヲたちの出番はありません。
また違うキャラたちの出番です!!


バタンっと倒れるリグリット。息は切らしていないが表情は悔しそうな顔をしていた。悔しい顔をしているのには理由がある。

それは勝負に負けたからからだ。誰だって勝負に負ければ悔しいだろう。ただ、あの十三英雄の1人であるリグリットを負かす相手がいるというのはこの世界の人からしてみれば驚きだろう。

 

「1発も拳があたらん!!」

「私の勝ち。おひねりを貰うわ」

「持っていくがいい泥棒め」

 

おひねりをぽいっと目の前の女性に渡す。目の前にいる女性は碧と言って黄昏の旅団のメンバーだ。

 

「今回も私の勝ちねリグリット」

「当たらなすぎじゃろ」

「でないと殴られ屋は務まらないわ」

 

碧は副業で『殴られ屋』をやっている。どんなものかというと碧に1発でも当てられたら賞金が貰える。逆に碧が制限時間に全て避けられたら金を取られるというものだ。

 

「今回も負けたか。やっぱ強いのう」

「リグリットもね。まだ本気だしてないでしょ?」

「そりゃお互いさまじゃ」

 

実は碧とリグリットは仲が良い。

 

「ふふふ。君たちの勝負は見ていて楽しいね」

「ツアー」

「黄昏の旅団も賑やかになったものだ。悪くない」

 

ツアーは昔を思い出しているのかしみじみとしている。昔とは十三英雄時代のことで黄昏の旅団に負けないくらいの個性的なメンバーがいたのだ。

 

「メンバー集めはまだままやるんじゃよな?」

「ああ。今はできる限り強い仲間が欲しいんだ」

 

ツアーが強い仲間を欲している理由は世界に仇名す者と戦うためだ。

この世界にはウィルスバグという災厄とAIDAと呼ばれる異常寄生生命体が存在する。この2つの脅威を教えてくれたのが黄昏の旅団の団長だ。

団長に出会わなかったら黄昏の旅団は結成しなかっただろう。

 

「団長…オーヴァン。そういえば新しいメンバーがいるんだっけ? 顔が見たい」

「蘇生させたばかりだから目覚めているか分からないぞ?」

「そろそろ起きているんじゃないかしら。私が見てくる」

 

そういうと碧はスタスタと新たな2人とやらの様子を見に行く。

 

「あの2人ねえ」

「どうしたんだいリグリット?」

「いやなに、元ズーラーノーンの幹部だからな」

「何かあったら俺が対処するさ」

「そうだね。オーヴァンに任せるよ」

 

新たな2人は一癖も二癖もあるらしい。

 

「んー、ザリュースが抜けたのは惜しかったのかもしれん」

「彼か。彼は世帯を持ったらしい」

「あいつ結婚したのか。こりゃめでたいのう!!」

「そういえば他にトブの大森林に候補がいたんだよね」

「森の賢人とか気になったがモモンという冒険者が捕獲したらしい」

 

他にも候補としてブレイン・アングラウスもいたが彼はいつの間にかリ・エスティーセ王国に所属していたため無しになった。

 

「連れてきたわ」

 

気がついたら碧が戻っていた。後ろには新たなメンバーがいる。

 

「な、ドラゴンだと!?」

「………」

 

ツアーを見て驚いたのは不気味な老人。一瞬ツアーを見て驚いたがすぐに無口なのは軽装備にレイピアを装備した女。

 

「ここはどこなんだ。ワシに一体何が起きたのだ!?」

「いろいろと混乱しているようだね」

「仕方ないじゃろ。おい落ち着かんかい、何も取って食おうなんてしてないからな」

 

落ち着かせたいがなかなか難しいものだ。

 

「あんたら何者?」

 

ここで無口だった女はやっと口を開く。

 

「俺たちは黄昏の旅団というチームだ」

「黄昏の旅団…冒険者チーム?」

「そうだ。俺たちは君たちを仲間として勧誘したい」

 

オーヴァンは団長として勧誘の話を進める。

 

「アタシたちを仲間に?」

「ああ。強い仲間がほしくてね」

 

ここでツアーも説明をする。彼は副団長なのだから。

 

「何のために?」

「それは世界を脅かす敵を倒すためにさ」

「敵ってもしかして黒いローブを着たリッチ?」

「いや、違うが…だがもしかしたら敵となってしまった場合戦うだろうな」

「ハッ、ならアタシたちは全滅ね」

 

いきなり全滅発言とはなかなか言ってくれる。何を思って全滅なのか。

彼女の言う黒いローブを着たリッチとやらが相当ヤバイのだろうか。

 

「そこのドラゴンはもしかしたら戦えるかもだけど、他は勝てないだろうね」

「そんなにそのリッチは強いのか?」

「ババアなんざ首折られて終わりよ」

「口が悪い小娘じゃのう」

 

そろそろ2人の名前を知りたいところだ。リグリットが名を尋ねるが女は口悪くこう返した。

 

「まず人の名前を聞くときは自分からだろババア」

「ったく本当に口が悪いのう。ワシはリグリットじゃ」

「…碧」

「私は副団長のツアーだ」

「団長のオーヴァン」

 

まずは黄昏の旅団メンバーの名前から。

次は2人の番。

 

「ワ、ワシはカジット…って、リグリット?」

「クレマンティーヌ」

「おいリグリットってあのリグリットか。十三英雄の?」

 

不気味な男もといカジットはどうやらリグリットを知っていたようだ。やはり有名人。

クレマンティーヌもまさか相手が十三英雄とは思わなかっただろう。

 

「ま、まさか他の奴もか!?」

「私はそうだが残りの2人は違うよ」

 

ドラゴンが十三英雄なんて聞いたこともない。だけどリグリットが認めているのだから真実なのだ。

 

「それでもアイツには敵わないでしょうね。こんな泥船は嫌」

 

クレマンティーヌはもしかしたら十三英雄ならあのアインズとやらを殺せるかもしれないと思っている。でもアインズの次元の超えた力を知ってしまったがゆえに冷静に評価してしまった。

リグリットもツアーも強いだろう。アインズとまともに戦えるかもしれない。でも決め手となる圧倒的な何かが足りない気がするのだ。

もっともリグリットとツアーの実力をしらないクレマンティーヌは現段階では勝てないと思っているだけだ。

そのリッチとやらは私なら良い勝負になるのかもしれないんだね」

 

「たぶんね」

「じゃあ団長なら勝てるね。団長は私より強いから」

「過大評価のし過ぎだよツアー」

「そんなことないさ」

 

ツアーはオーヴァンのことを自分より強いと言った。正直クレマンティーヌはオーヴァンがツアーより強そうには見えない。

 

「ハア?」

「そこのミドリも強いぞ。つーかここにいる全員はおぬしらより強いな。カッカッカッカ!!」

 

カジットはともかくクレマンティーヌの強さは英雄級だ。本物の十三英雄のリグリットとツアーはともかくオーヴァンと碧とやらに負けるつもりはない。

 

(そういえば蘇生したのにレベルダウンはしていない?)

「そういえば誰がワシらを蘇生させたのだ?」

「それはうちの団長じゃよ。団長の蘇生方法は特別でな、レベルダウンしとらんじゃろう」

「な、なんと…どんな蘇生魔法なのだ!?」

 

カジットがどうやら食いついたようだ。彼の本当の目的としてはオーヴァンの蘇生魔法は気になるだろう。

オーヴァンの蘇生の力。正確には転生の力をうまく利用しているのだ。それは彼だけが持つ『再誕』の力だ。これを知る者は黄昏の旅団にはいない。

ツアーやリグリットはオーヴァンの持つレアなタレント能力だと思っているのだ。

 

「ワシにその特別な蘇生魔法を教えてくれないか!?」

「…仲間になるなら団長が教えてやる」

「リグリット」

「いいじゃないか団長」

「まったく…」

 

オーヴァンはヤレヤレと言った顔をしている。どうせ『再誕』の力は教えられない。

 

「本当にそこの団長が強いの?」

「強いとも」

 

特別な蘇生魔法に関しては驚いたが、それでも強さが分からない。本当にあのアインズと戦うことになったら絶対に殺されるだろう。

でも今ここは黄昏の旅団にメンバーに入らないとどうなるか分からない。カジットは特別な蘇生魔法という餌で食いついたがクレマンティーヌは黄昏の旅団に入るメリットは無い。

蘇生させてくれたことはありがたいが、もしあのアインズと戦うとなるとすぐにでも脱退するつもりだ。

 

「…アタシも入るわ。それしか無さそうだしね」

「ふふふ、黄昏の旅団にようこそ。クレマンティーヌにカジット」

「でもその前に」

 

ここでクレマンティーヌがレイピアを抜く。

 

「団長とやらの実力は教えてもらおうかしら?」

「おいクレマンティーヌ」

「カジっちゃんは黙ってて」

 

特別な蘇生魔法で釣れたカジットは無視。

 

「やれやれ…好戦的な奴だな」

「お、やるのか団長。久しぶりに団長が戦うのを見るのう」

「オレが戦っているのは見ているじゃないか。ウィルスバグやAIDAとで」

「なに、対人戦は久しぶりじゃと思って。そうじゃツアーどっちが勝つか賭けをせんか?」

「賭けにならないだろうリグリット」

 

オーヴァン対クレマンティーヌ。その勝負だがリグリットたちの雰囲気から確実にオーヴァンが勝つと思っている。

その雰囲気はものすごく気にくわない。確かに十三英雄たちに比べれば勝てるか分からない。でも全く知らない男であるオーヴァンに勝てないと分かりやすく言われると彼女の性格上イラつくのは当然である。

 

「身体のどこかに風穴空いても恨まないでよね」

「構わない」

「言ったね」

 

クレマンティーヌは武技を発動していつでも最速で攻撃できる準備完了。逆にオーヴァンはスチームガンを装備したまま立っているだけ。

彼女はオーヴァンの余裕さによりイラつきを感じる。流石に殺すことはできないが本当に身体のどこかに風穴を空けるつもりだ。

 

(死ね)

 

一瞬で間合いを詰めてオーヴァンの腹部めがけてレイピアを突き刺した。そう思っていたクレマンティーヌだが現実は違っており、彼女はまだ動いていない。

頭ではもうオーヴァンの腹部にレイピアを突き刺した気でいたが、身体は動いていない。なんせ件のオーヴァンがクレマンティーヌの背後にいつの間にか移動していたのだから。

 

「い、いつの間に…!?」

「なに、ただ早く動いただけだよ」

 

カチャリと片手剣を彼女の首筋に置いた。

これで勝負は一瞬で決まった。ツアーの言う通り賭けにもならない。

クレマンティーヌは何が起きたか分からなかった。自分は何もできずに負けたのだ。アインは圧倒的な力を持っていたから負けた。

でもオーヴァンに関しては何も分からないまま負けたのが逆に不気味すぎる。『圧倒的な力』というのは理解できるが『何も分からない』という方が怖いのだ。

 

「あ、あんた何者よ?」

「黄昏の旅団の団長だ」

「さて、勝負が終わったところで私たちの目的を話そうか」

 

黄昏の旅団の目的をツアーは細かく説明するのであった。

閑話休題。

 

 

 

「そういえばツアー。君は『ファントム』というのを知っているか?」

 

『ファントム』という言葉を聞いてツアーは目を見開く。彼は全く驚いた姿は見せたことは無いが、目を見開くという動作だけでも珍しいものだ。

 

「団長…それをどこで聞いたんだ?」

「知性を持ったAIDAから聞いた。どうやら特別な存在であるようなのは確かだが」

「そうか、奴らも知っているのか…ファントムを」

 

ツアーの感じからすると余程特別な存在なのかもしれない。

 

「ファントム…何それ?」

「ワシも知らんのう」

 

クレマンティーヌは聞いたこともないと呟くし、長生きするリグリットですら知らない。

 

「まあ、せっかくだ。話しても良いかもしれないな。ファントムについてと八欲王についてもね」

「八欲王って…」

「八欲王についてどこまで知っているかな?」

「…仲間割れして自滅した最悪の存在たちでしょ」

「そうだね。クレマンティーヌの言う通りだ。でもそれは表向きの嘘で出来た真実だ」

「はあ?」

 

八欲王の歴史には嘘が組み込まれている。それが八欲王の死について。

歴史ではお互いの欲が強すぎて争いまで発達し、自滅したというのが語られているが実際のところは違う。本当は何者かたちに殺されているのだ。

 

「仲間割れじゃない?」

「ああ。八欲王はファントムたちに殺されたのさ」

「おいおい本当かツアー?」

「本当だよ。何せこの目で見たのだからね」

 

ツアーはまさしく目撃者だ。八欲王がファントムに殺されたのを直で見たドラゴンなのだ。

 

「ファントムについては謎なところが多いが…彼らは守護者だ」

「守護者?」

「ああ。この世界の守護者であり、罪竜を守る存在」

 

罪竜と聞いてクレマンティーヌは一瞬だけ動揺した。その動揺をツアーは見逃さない。

 

「クレマンティーヌは罪竜を知っているのかな?」

「…法国が躍起になって探してるよ」

「そうか。やっぱり探しているか…それは止めといた方がいいね。罪竜に近づきすぎると八欲王と同じ末路を辿るよ」

「今じゃ法国なんてどうでもいい。って八欲王と同じ末路ってまさか!?」

「うん。八欲王は罪竜の存在に気付いて打ち取ろうとしていたんだ。それがタブー…罪竜を守るファントムが動いて八欲王との全面戦争が起きた」

 

最初の始まりはドラゴン対八欲王だった。ドラゴンたちは善戦していたが徐々に八欲王に滅ぼされ始めたのだ。そんな時、ファントムの1人が現れてドラゴン側に組みしてくれたのである。

そのファントムは1人で八欲王を全員と戦った。ドラゴンたちが全面戦争しても苦戦していたのに、そのファントムはたった1人で八欲王と戦い、善戦したのだ。しかも八欲王の1人を完全に殺した。

でも、やはり多勢に無勢で残りの八欲王にそのファントムにやられたのだ。でも殺されてはいない。重症の状態のさなか、新たなファントムが回収しに来たのだ。

 

「たった1人で八欲王と戦ったねえ」

「私はそのファントムを翠のファントムと呼んでいる。彼には助けられた」

「敵ではないのか?」

「…敵では無いけど仲間でも無いかな」

 

その後はまたドラゴン対八欲王の戦いになったがすぐにファントムが合流してきた。今度のファントムは4人。

赤いファントムに黒いファントム、黒薔薇のファントムに猫のファントム。翠のファントムがたった1人で八欲王全員と戦っていたのに今度は4人も現れたとなると戦局は一気に変化する。

今まで八欲王が圧倒的に戦争をしていたが4人のファントムのおかげで彼らの戦争が狂ったのだ。八欲王は4人のファントムに押され始め、最終的に全員殺された。

 

「特に黒いファントムは圧倒的だったよ。あれはもう暴力を超えた暴力…ただの破壊だったね」

「黒いファントムと?」

「うん。あれは破壊の死神…1人で八欲王を圧倒していたよ。今思い出しても恐怖しかない」

「お主が恐怖を抱くなんて余程じゃのう…種族は?」

「人間なのか亜人なのか分からない」

 

ツアーが恐怖を抱くほどの存在。八欲王を滅ぼした存在。圧倒的強者。

 

「それがファントムか」

「ああ、でも昔の話だよ」

「あの知性を持ったAIDAの口ぶりからするとまだ生きている風だったが」

「そうか…彼らが生きているのか。もし彼らが仲間になってくれるのなら心強いのだがね…」

 

 

side変更

 

 

この異世界に来てからよく分からないことばかりだ。だから日記をつけようと思う。

まず始まりはThe WorldのRe.1時代のアカウントを復元できたところからだ。もう引退したけどCC社からご厚意で送られてきた時はどうしようかと思ってしまったよ。

でもせっかくだから勿体ないと思っていたら友人からメールが来たんだ。

また久しぶりにThe Worldをやってみないかと。昔の仲間も集まって今のThe Worldをやってみないかと。

その提案は悪くないと思って私は…ボクはThe Worldにログインしたんだ。

The Worldでのボクの名前は司。古い仲間は昴にミミル、銀漢、ベア、BT、クリム。

久しぶりに再会したボクらはあの場所に向かったんだ。グリーマ・レーヴ大聖堂。

だけどまさかそこで異世界に転移するとは思いもよらなかった。

 

 

最初は流石に驚いたよ。この現象はてっきりまたThe Worldに閉じこまれたと思った。なんせあの時とよく似ていたのだから。

しかも今回はボクだけじゃなくて昴たちまでも。今のThe Worldでも何かしら事件でも起きているのかもしれない。

ボクらはこの段階ではまだここがthe Worldではなくて異世界に転移しているとは思わなかった。

PCキャラと一体化してしまったがすこぶる調子は良い。ベアなんてリアルの年齢と思えないくらいハキハキしている。

クリムも銀漢も元気だ。

とにかくどこかのタウンに目指さないといけない。近くにゲートが無いから自分の足で動くしかないようだ。

 

 

タウンを探していたらこんな時にがぎってモンスターとエンカウントしてしまう。のはここがThe Worldのダンジョンエリアの1つだからだろう。

ボクは久しぶりだけど、他のみんなは初めての感覚だろう。ゲームだっていうのに感触が、痛覚があるのだから。

初めての戦いに最初はみんな戸惑っていたけど、はっきり言ってモンスターはザコだった。まさか何の苦戦もすることなくモンスターに勝てたよ。

どうやらモンスターレベルの低いエリアで助かったかもしれない。なんだかんだしていると夜になってしまった。

 

 

PCキャラとはいえ空腹の感覚があるみたいだ。野営の準備をしていると近くで戦闘をしている音が聞こえてきた。

やっと誰かに会えると思って向かってみると、数人の人たちが不気味なモンスターと戦っていた。

そもそも戦いというか何というか妙に生々しい。モンスターと戦ったボクらでも分かるように本当にリアルのような感覚。

今のThe Worldはここまでリアルなのかな。

 

 

どうやら手こずっているようで、手助けすることが決定。そのかわりタウンなどのことを教えてもらおう。

不気味なモンスターだけど道中で遭遇したモンスターより強い。援護しているけど強くてしぶといんだ。クリムたちでも冷や汗をかくくらい。

そしてもともと戦っていた人たちが切り札を出す準備ができた時に事件が起きた。切り札を発動したと同時に敵からの攻撃を受けて相打ちになったんだ。

 

 

補足だけどあの敵はヴァンパイアとのこと。正直ヴァンパイアにはみえないし、むしろヤツメウナギのモンスターの方がしっくりくる。

さらに補足だけどクリムいわくヤツメウナギは美味しいらしい。本当にどうでもいい。

 

 

ヴァンパイアとの戦いから撤退しているうちに日付が変わった。

あのヴァンパイアに精神操作がかかったため、追いかけてくることはないけどこちらの術者も負傷してしまったからどうしようもできない。それに仲間が2名やられたみたいだ。

仲間の遺体を回収してより遠くまで撤退したところでやっと休憩することができたのだ。

 

 

さて、ここで相手の仲間を蘇生させて傷を治癒したら何故か驚かれた。まるであり得ないものを見たように。

彼らの話を聞いているうちに違和感を感じる。彼らはThe Worldを知らない。

ボクらの話の食い違いがあるんだ。いろいろと話を聞いているとある仮設が出てくる。

それはここがThe Worldではなくて異世界ということだ。

そんなバカな世界があるようなことは信じられないが、まさにボクたちが証拠になっている。

 

 

仲間を蘇生してくれたお礼ということでボクらは『隊長』の案内で法国と呼ばれる国を訪れた。はっきり言ってここがThe Worldでないという状況で足を休める拠点が欲しかったところ。

『隊長』のご厚意に甘えることにした。

 

 

法国を拠点にして、この世界の様々なことを知った。

もうここがThe Worldでないことは確認済み。何でThe Worldからこんな異世界に来てしまったのか分からない。でも目的は決まっている。

必ず元の世界に帰ること。

 

 

何故か分からないけど『隊長』から呼ばれて法国のお偉いさんに顔を合わすはめになった。

話の内容は法国に力を貸してほしいとのこと。正直嫌だけどクリムは賛成らしい。

それは法国を拠点に…衣食住を提供してもらう代わりに力を貸すということだ。確かに衣食住は必要だ。異世界なら尚更。

クリムやベアが交渉してくれたおかげでボクたちは法国で特別な部隊になった。

その名前は『紅衣聖典』。ほとんど法国に縛られない独立部隊だけど。

ちなみに『隊長』は漆黒聖典のリーダーみたい。

 

 

今日は…

 

 

「ツカサ。失礼しますよ」

「漆黒聖典の隊長がこんなところに何の用なの?」

「頼まれごとです」

「どんな…ってそういうのはクリムかベアに言って」

 

基本的に依頼の話はクリムやベアが担当している。

 

「クリムは他のメンバーと修練しています。ベアはどうやら不在なようなので」

 

だから隊長は司のところにきたのだ。

 

「どんな内容?」

「カッツェ平野に行ってほしいのです」

 




読んでくれてありがとうございました。
次回もゆっくりとお待ちください。

さてさて、今回はあのオーヴァンたちと司たちの話でした。
本編ではちょこっとしか登場してなかったのでこちらで補足で足していきます。
本編でリタイアしていたクレマンティーヌたちも再度登場です!!

ここでさらに補足。
オーヴァンが異世界に来ていたのはみんなが予測してると思いますがベースはクビア戦後の影響です。そして碧はまた後日説明します。
司たちに関してはハセヲたちが異世界に転移したすぐ後にあの聖堂に来てしまったため、巻き込まれただけです。


司「巻き込まれただけ?」
ハセヲ「やっぱ巻き込んでじゃねーかゼフィ!!」
ゼフィ「それは単純にタイミングが悪いだけ」


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VOl.EX:ぷれぷれぷれあですア~ンドどっとはっく
始まっちまったよ


はい、久しぶりの投稿です。
ちょっと忙しくて遅れました。今回はちと息抜きで番外編です。
本編と関係なくて、キャラ崩壊が当たり前なので注意かもです。


アインズは超動揺していた。彼が動揺しているのがおかしいって?

確かにアインズはアンデットの身体になっているから精神安定により動揺するなんてことは有りえない。だが例外はあるものだ。

アインズはこの世界では無類の強さを持つが絶対的に無敵というわけではない。どんな存在にも弱点などが存在し、もしくは相性が悪かったり、限定的な効果があったりする。

今回はアインズに対して限定的にあるアイテムが聞いたのだ。アインズというよりはアンデット系に対してだろう。そのアイテムとは『完全なる狂騒』。

このアイテムは精神効果の効かないアンデット系に効果があるように仕向けるようにするものだ。

 

「あわわわわわ、やっちまったー!?」

 

アインズは手元を狂って『完全なる狂騒』を間違って自分に発動してしまったのだ。だから今のアインズの精神性は人間に戻っている。

 

「くあああ。今のオレが本来のオレだよ。普通はこんなことはできないだろが!?」

 

普通は異世界に転移したらすぐに冷静になれるはずがない。あたふたして不安になるだろう。いきなり自分の知らないところに、例えば日本からどこかの秘境の集落に転移した思えば分かるだろう。

 

「ヤバイヤバイヤバイ!?」

 

もうアインズはテンパっている。どうすれば良いかと考えるが、ナザリックの面々には説明できない。

今のアインズを超神聖化してくるナザリックメンバーに今の姿を見せたくない気持ちがあるのだ。

 

「こういう時はやっぱカイトさんに相談に相談かな」

 

こういう時は話を聞いてくれるカイトに相談するのが一番だろう。流石にナザリックの面々に相談できない。したら怖いから。

 

「まずはメッセージでカイトさんに来てもらおう」

 

カイトにメッセージをしていたらアルベドから連絡がきた。つーか、トビラの前で声をかけてきた。

これにすらビックリしているんだから今のアインズは動揺しているというか小心者になってしまったのか。

 

「アインズ様。今よろしいでしょうか?」

「ああ、アルベドが。ちょっと待ってくれないか…少し体調が」

「アインズ様大丈夫ですか!?」

 

急にいきなり大声を出されたらビックリするのだが。

 

「いやいや、大丈夫。やっぱ大丈夫!!」

「あ、まさかあの人間…カイトとかいう奴に何かされましたか!?」

「え!?」

「なんなら今すぐ私が殺しに…!!」

「しなくていい、しなくていい。するな!!」

「ああ、アインズ様の純潔を奪ったと言うなら私はカイトを必ず殺します!!!」

「…お前は何を言っているんだ」

 

最近アルベドが壊れてきたかもしれない。これも設定を弄ってしまった責任だろうか。

ていうかアルベドがトビラをぶち壊して入ってきたんだが…後で直してもらおう。

 

「アインズさん呼んだ?」

「あ、カイトさん」

「来たな恋敵!!」

「え?」

「ちょっと黙ろうかアルベド」

 

閑話休題。

 

「アルベドよ。私に用とは何だ?」

「はい。プレアデスたちが謁見したいとのことです」

「なるほど。分かった…だが今は体調が」

「では呼んできますね!!」

 

アルベドが話を聞かずに部屋を出て行った。

話を聞かないで出て行ったのはある意味良しとしよう。とりあえずカイトと2人で相談できる状況になった。

 

「どうしたのアインズさん?」

「実はカクカクシカジカで…」

「なるほど。マルマルウマウマなんですね」

 

アインズは凄く分かりやすく、都合の良い感じでカイトに自分の状況を説明した。カイトも都合のよい感じにアインズの状況を理解した。

 

「分かりました。今のアインズさんが精神操作にかかり易いからフォローしつつ、アイテムの効果が消えるまで一緒にいれば良いんですね!!」

「そうです。凄く話が分かってくれて助かります!!」

 

ガッシリと握手。男はたまに凄く話を瞬時に理解できる時があるのだ。

 

「じゃあこのあと、どうやらプレアデスが来ますのでフォローお願いします」

「プレアデスって言うと確かナーベラルが所属している戦闘メイドたちのことだよね」

「そうです。でもオレあんま知らないんだよなあ」

「え、自分のギルドのNPCなのに?」

「オレが作ったわけじゃなないですから…」

「じゃあ今回のでちょうど良いかもしれないね」

 

プレアデスはナザリック地下大墳墓第9階層の戦闘メイドチームである。

アインズは彼女たちの創作者ではないので詳しくは知らないのだ。ならば今回プレアデスの面々が謁見を求めているのならちょうど彼女たちを詳しく知れるのだ。

 

「カイトさんも覚えていってください」

「ボクも?」

 

そんなこんなでプレアデスが全員集合。カイトがここにいることに関してアルベドやナーベラルとかは一瞬だけ顔を歪ませたがアインズが適当に誤魔化して黙らす。

今の状態が動揺しまくるというのに戦闘メイドのプレアデスが6人も集まるのは緊張してまうじゃないか。

 

(ああ…胃が無いのに胃がキリキリする!?)

(胃が無いのに胃がキリキリするってどんな気持ち?)

 

アイテムのせいで今の状況だと尊大な口調で話すことはできない。

なので苦肉の策としてなんやかんや説明をつけてアインズ対して砕けた口調で話してほしいと命令した。おたがいに砕けた感じでやれば多少の動揺は隠せるかもしれないのだ。

プレアデスには普段の口調で自己紹介をしてもらう。

 

「ゆ、ユリ・アルファ。御身の前に」

 

いつも通り。

 

「ルプスベギナ・ベータ。御身の前っす!!」

 

元気だね。

 

「ナーベラル・ガンマ。御身の前に」

 

その紅茶セットどこから出したの?

 

「シズ・デルタ。いる」

 

なぜ柱の裏?

 

「ソルシャン・イプシロン。御身の前におりますわ」

 

良い感じに砕けた口調だ。

 

「エントマ・ヴァシリッサゼータ。御前ですわ」

 

超ゆったりしてる。てか横になってる。

 

(おお、これは新鮮!!)

(普段はこんな感じなんだね)

「アインズ様。私は…」

「あ、アルベドはもう知ってるからいい」

「そ、そんな!?」

 

 

次に続く

 

 

ナーベラル。

ナーベラルはドッペルゲンガーであるのだから何でも変身できるはずだがレベルを魔法職に全てつぎ込んだから変身はできないという。

ドッペルゲンガーであるのに変身ができないのならドッペルゲンガーではないのだろうか。それはともかく、アインズとナーベラルはよくわからない振りつけで踊っていた。

 

「「よいっしょ」」」

「……」

「「よいっしょ」」

「……」

「「よいっしょ」」

「何やってんの?」

「おわっ、ブラックローズさん!?」

「ボクもいるよアインズさん」

 

アインズとナーベラルが変な振りつけで踊っていたらカイトとブラックローズが来てくれたのだ。

実はカイトだけじゃきっと今のアインズをフォローできるのも限界があるから応援としてブラックローズを連れてきたのである。

そして件のアインズはナーベラルと踊っていたという。

 

「何その変な踊り?」

(変な踊り!?)

「口を慎めゴミ虫」

「ゴミ虫!?」

 

アインズはブラックローズの言葉にショック。ブラックローズはナーベラルの言葉にカチーン。

アインズに関しても自分で誤魔化し考えたとはいえやはり変だったかと思ってさらに自分のセンスに落ち込む。

 

「この踊りはアインズ様が考えたものです。踊ることで魔法の詠唱時間を短縮できるものなのです」

(ああぁぁ言わないでくれナーベラル。ほら、ブラックローズさんが残念そうな目でこっち見てるから!!)

 

ブラックローズはアインズに凄く残念そうな目で見ている。如何に忠誠心マックスなNPCとはいえ、変な振りつけで嘘を言うのはどうかと思う。

でもそうでしもしないとアインズに対してのNPCの気持ちを裏切ってしまうからだ。アインズはどこかNPC対して自分が主として尊厳を守らないといけないと必死になっている気がする。

それはアインズだけでなくNPCたちの重すぎる忠誠心も原因にあると思うのだが。

 

「アインズさん…ナーベラルにそんなこと言ったの?」

「ええ、まあ。はい」

「へえー」

(ああ、ブラックローズさんの目が痛い…)

 

ブラックローズは残念そうな目で見てくるがカイトはどうフォローしようか迷っている顔だ。

 

「貴様。アインズ様の言葉は全て真実であり、意味を持っているのだ!!」

「へえーそうなの」

「我々はアインズ様からアインズ様の言葉1つ1つに意味を持っているとお聞きした。ならば我々はアインズ様の言葉の意味をくみ取らなければならないのです」

「ふーん」

「ちゃんと話を聞いているのですか!!」

「んなの聞いてないわよ。アタシたちはアインズさんの部下じゃないし」

「これだからゴミ虫は!!」

「だから何でゴミ虫呼ばわりされなきゃなんないのよ!!」

 

ブラックローズとナーベラルは気が付いたらいつも口喧嘩をしている。初めて出会った時から喧嘩腰ではあったがもう最近は顔を会す度に口喧嘩をしているような気がする。

喧嘩するほど仲が良いなんて言うかもしれないが、彼女たちにそれを言うと全力で否定しそうだ。でも喧嘩が続いてギスギスした関係になるのは同盟としてはいけないだろう。

これはいずれどうにかしていきたいがナザリックのメンバーはカルマ値が極悪なの難しすぎる。同盟関係として接するのはできるが同じ仲間として見るのはできなさそうだ。

 

「でも少しは仲が良くなってる?」

「たぶんね。全員ってわけじゃないけど何人かは仲が良い?って感じになってるのかな?」

 

残念ながら仲が良いというベクトルではない。独自に関係さが出ているのだ。

例えばアルベドとなつめだが仲は良いというよりは同じ恋をする者として話がたまたま合うだけだ。

オルカとシャルティアはいがみ合う仲だが同じ敵と戦う場合は一緒には戦ってくれる。アウラとガルデニアは話をするくらいには打ち解けている。マーレとエンデュランスもだ。

デミウルゴスと八咫は仲が良いというよりかは腹の探り合いをする関係。

 

「確かに仲が良いって関係じゃないな…」

「でもマシなのもいるよね」

 

コキュートスと砂嵐三十郎は武人として仲はまずます良好。そしてセバスとバルムンクも同じく仲は良好。この2組が一番マシだ。

いや、本当にマシというか良い関係だと思う。他のメンバーもこの2組を見習ってほしいものだ。

 

「で、ブラックローズとナーベラルは悪友みたいな関係かな?」

「あ、それっぽい」

 

会うたびに煽りに口喧嘩。確かに悪友、というか喧嘩友達みたいに見える。

 

「まったくこれだから下等な人間は…」

「はっ、その下等な人間であるアタシに勝てないアンタはそれ以下じゃないの?」

「貴様!?」

「やるの!?」

 

ナーベラルはバチバチと『チェインドラゴンライトニング』を発動しようとし、ブラックローズはエクシードで『ローズブレイカー』を発動しようとしていた。

 

「「ストーップ!?」」

 

いつの間にか本当に喧嘩というか戦闘になりそうだから止めるはめになったカイトとアインズであった。

 

「つーか、これオレがフォローしてる!?」

「立場が逆になっちゃたね」

 

特にオチは無い気がする。まだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナザリックの宝物殿。

ここにはある領域守護者が存在する。その名前はパンドラズ・アクター。

彼はナザリックに存在するアイテムを全て管理する存在だ。だからナザリックにあるアイテムのことなら何でもござれ。

 

「ほうほう。これが『ぴろしの書』ですが珍しいものです」

「はっはっはっは。だろう!!」

「私もアイテム作成はできますが貴方もできるとは思いませんでした」

「まあ私はアイテム作成といよりはグラフィックの方が専門なのだがな」

 

パンドラズ・アクターの前には黄金戦士のぴろし3。

何で彼がナザリックの宝物殿にいるかは分からない。

 

「今度共同でアイテムを造るのも良いかもしれませんね」

「気が向けば手伝おうではないか!!」

 

まさかこの冗談のような会話の発端があんな事件を巻き起こすとはアインズが予想なんてつくはずもない。




読んでくれてありがとうございました。
次回も気長にお待ちください。


今回でわかるように『ぷれぷれぷれあです』にカイトたちを突っ込んだだけの物語です。最初に書いたとおり息抜きの作品なので生暖かい目で見てください。
そして最後のやつで分かるように『あんな事件』はマジでキャラ崩壊なので注意ですよ

はっきり言ってパロディがみんなを襲う!!


カイト「う、頭が…」
ブラックローズ「アタシも…」
アインズ「どうしたんですかまるで中二みたいに!?」


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なにがなんだか

こんにちは!!
なんだか最近ネタが思いつきません。
おっとなんでもありませんよー


ソリュシャン。

彼女の正体は捕食型スライムという異形種である。性格ははっきり言って人間を軽蔑視している。

人間を楽しむオモチャ程度しか見ていないし、ただの虫以下だと思っている。潰しても当たり前だと思っているのだ。

そんな彼女だが今はどこか太い。その太さにアインズは心の中でツッコんだ。

アインズとしては元の綺麗なソリュシャンの方に戻ってほしいものだ。

 

「太いぞ太いソリュシャン。私はいつものソリュシャンが好ましいぞ」

「そうですかアインズ様。こんなにも私のことを思ってくれるなんて…感動にで胸が膨れます」

 

何故か感動しているがアインズは動揺しないために元の姿に戻ってほしいだけである。

 

「そもそも何で太いんだ?」

「それはチムチムを食べたからよ」

「うわっヘルバさん!?」

 

気が付いたらヘルバがアインズの隣にいた。いつのまにかいたのでビックリで彼女は当たり前のようにナザリックで転移してくる。

そんなことは絶対にあり得ないのだがヘルバだからこそできるのだ。その理由は前にヘルバから教えてもらったのに驚愕したものだ。それは彼女のアバターがチート…改造アバターだからだ。

改造されているチートなのでそのアバターにどんなモノが組み込まれているか怖くて聞けない。だけどまず正面から戦えば勝てない。

カイトだって腕輪の力がなければヘルバには勝てないだろう。よくよく考えればヘルバ1人でナザリックや.hackersを壊滅させることができるのではないだろうか。

改造されているのならステータスなんて当たり前のようにMAXにできるし、むしろHPやMPだって無限にできるかもしれない。さらには相手の攻撃無視や防御無視なんてできるかもしれない。

ユグドラシルではチートアイテムなんて運営公式であったが、チートキャラはいなかった。そもそも自分のアバターを改造なんてできなかった。

そう考えるとThe Worldでは何でも有りであったのだろうか。

 

「何かしら?」

「いえ、なんでもありません。ところでチムチムとは?」

 

チムチム。紫色のマスコットのような存在だ。

アインズでもたまにみかける…なぜかナザリックで。

 

「チムチムはチムチムよ」

「え、いや具体的には」

「チムチム」

「あの…」

「チムチムよ」

「はい」

 

アインズはチムチムに関してよく分からなかった。

 

「アインズさん深く考えちゃだめだ」

「カイトさん?」

「感じるだ!!」

「いや、感じても分かりません」

 

チムチムを深く考えないようにしよう。

 

「そもそも何でチムチムをソリュシャンは飲み込んでいるのだ?」

「それは私から説明するわ…有効活用を探しているだけよ」

 

チムチムの活用方法。

それは食料やエネルギー変換にできれば良いと思っている。

 

「食材にはならないんじゃないですかね?」

「実はボクもそう思う」

「そうかしら?」

「もし食材になったら誰が食べるんですか」

 

おそらく誰も食べない。

 

「とりあえずソリュシャンはチムチムを出せ」

「はいアインズ様。仰せのままに…うおえっぺ!!」

 

チムチムが1匹。チムチムが2匹。チムチムが3匹。チムチムが4匹。チムチムが5匹。チムチムが…。

 

「何匹体内に入れているんだ!?」

 

数えたら20匹いました。

 

次に進む

 

エントマ。

アインズはまたプレアデスと一緒にいた。精神系の魔法などにかかりやすく超動揺していまう状況なら部屋に引きこもって入れいいのだが、何故か一緒にいるのだ。

アインズ自身も「あれ?何でオレって超動揺する状況のくせにプレアデスたちと一緒にいるんだ?」と思っている。本当に謎だ。

そして、今日はカイトとぴろし3がアインズのフォローの当番である。

 

(…申し訳ないですけどぴろし3がいるだけで動揺するんですが)

 

フォローのために来てくれるの助かるが人選ミスだと思っている。だってぴろし3はアインズをフォローするというよりは動揺させる側なのだから。

 

(だって会う度に驚くし!!)

 

アインズはぴろし3に会う度に彼の謎のパワーに圧倒されて驚かせれている。その度に精神安定に落ち着いているけど。

 

(今日だってまさか顔面アップであいさつされるとは思わなかったですし!!)

 

ぴろし3は人との距離が近い。特に仲が良い仲間にはさらに遠慮がなくなるので、カイトやハセヲもたまに遅れを取ることがある。

自由人でもあるが、時には本当に大人のカッコよさを見せるのだから分からないものだ。

 

「で、今日もプレアデスが揃っているな」

「いやあー勢ぞろいだなあ。ハッハッハッハッハッハ!!」

 

そういえばプレアデスの職業とか種族をおさらいするのもよいかもしれないと思ってアインズは思い出しながらプレアデスのメンバーを見ていく。

 

「ユリは確かデュラハンで職業がストライカーだったな」

「はい。チョーカーを外すと首が取れます。外してますか?」

「外さなくていいから!?」

 

真顔で首を外さないでほしい。

 

「え、私は見てみたいが?」

「ボクもちょっと気になるかも」

「2人とも!?」

 

首の断面図は見ても良いものじゃないと思う。何だろうかグロさ見たさではなくてデュラハンの秘密的な感覚で見たいというものかもしれない。

アインズも今が動揺している状況じゃなければカイトたちと一緒に見ていたかもしれない。

 

「ルプスレギナはワーウルフで職業がクレリックだったな」

「はい!!一発二発くらいなら一瞬で回復できますっす!!」

 

何が一発二発だ。横にいるアルベドが呟いているが怖いから無視。

 

「元気のある娘だな!!」

(変な方向で元気なのも困るけど)

 

下ネタトークなのか!?

 

「ギンギンっす!!」

 

やっぱ下ネタトークか!?

 

「はい次」

 

次はナーベラル。ドッペルゲンガーでウォー・ウィザード。

彼女はもう前に一緒に踊った仲だ。ブラックローズには冷ややかな目で見られたが。あの後は一緒にカイトさんと喧嘩していた2人をなだめるのは大変だった。

でもカイトがブラックローズをなだめる仕方がなんだか夫婦のやり取りに似ていると言ったらブラックローズに叩かれそうになった。

次。シズはオートマタのガンナーでソリュシャンはショゴスのアサシン。

ソリュシャンも同じく前に再度思い出したプレアデスの1人である。彼女は見た目は良いのだが中身が危ない。

あの時、体内に容れていたのが人間じゃなくてチムチムでまだマシだった。人間だったらマジでヤバイ。

溶けている人間なんて見たくもない。R18指定になってしまう。

 

「そしてアタシはフジュツシでございますぅ」

 

エントマはアラクノイドのフジュツシ。得意魔法は精神系で今のアインズにとってはマズイ相手だ。

なぜならこの異世界でアインズが一番うろたえやすい自信があるからだ。

 

(どやあ!!)

 

ドヤ顔できる立場ではないだろう。

 

「おおーエントマはフジュツシなのか!!」

「うげぇぴろし3…」

 

ぴろし3を見てエントマが後ずさる。何となくその気持ちが分かってしまうのはやはりアインズもぴろし3に毒されているのかもしれない。

そもそもエントマとぴろし3はアインズの知らないところでいろいろと面白い因縁があるらしい。簡単に言うと仕返しをしようとしたら相手に意図が伝わらず逆に返り討ちに会う的な感じを繰り返しているらしい。

カイト自身もぴろし3には振り回されているのだからエントマでなくともアインズだって振り回されるだろう。

 

「このぉ暑苦しい黄金戦士めえ!!」

「その通りである!!」

「認めたな!?」

 

エントマはガンガンぴろし3にくってかかっているが表情は変わらない。エントマはポーカーフェイスだなっと思って見つめていたら、エントマの顔は擬態の蟲の一部だというらしい。

昔聞いた話だとエントマは身体中にいくつかの蟲を付けているなんてことを思い出す。

 

(え、元の顔があるってこと?)

 

エントマはパカリと顔を開けた。そしたらアインズは心の中で「キャア!?」であった。

 

「身体はこうなってます」

(わああああ!?)

「ほーそうなっているのか!!」

「お前は見るなですぅ!!」

「恥ずかしがるな恥ずかしがるな。ハッハッハッハッハッハ!!」

「お前に見せるのが嫌なんですぅ!!」

 

なんかエントマとぴろし3が喧嘩を始めそうだ。もっともぴろし3は喧嘩をされているなんて思っていなく、ただじゃれてきているくらいしか思っていない。

 

「そもそも本当にお前は人間なんですかぁ!?」

「人間だとも!!」

「ならその身体はどうなんですかぁ!?」

 

ぴろし3の身体の構造だがカイトたちやブラックローズたちと違うのだ。どこの部分かと言われると…主に肩や腕の部分である。

あまり気にしなかったことだが気にすると興味深いものがある。だって黄金の鎧で隠されているけど、もし外したらどんな身体になっているか気になる。

パッと何となく考えてみると肩から腕の構造が確かに人間と違う。何か違和感があるのだ。

本当はもしかしたら気のせいかもしれないけど。ここ大事。

 

「普通の人間だ!!」

「嘘つくなですぅ!!」

「嘘ではないぞ!!」

「絶対嘘だぁ!!」

 

なんともコントみたいだ。これはこれで見ていて楽しいが、これ以上暴走でもしたら大変である。

 

「みょうな凸凹コンビですね」

「だねアインズさん。でも見ていて面白いよ」

「うん。見ていて確かに面白い…でも被害がこっち来たら困る」

「その時は残りのプレアデスのみんながなんとかしてくれるよ」

「……ですよね!!」

 

プレアデス全員でもぴろし3を止められないような気がしなくもないが、アインズは深く考えるのをやめた。

 

 

 

 

 

 

 

ナザリック宝物庫。

 

「こんなアイテムの作成を頼まれました。なのでどうでしょうか。一緒に創作してみませんかぴろし3殿?」

 

ぴろし3はある図面を見せられている。確かにこのアイテムは彼にとってもなかなか興味を持ってしまう。

彼は面白そうなものや興味を惹くものに対してはまっすぐに動く。それも周りのことを考えずに。その結果、本当に周囲を爆発的に巻き込む。

しかもぴろし3は好き勝手にやっているのでもう止まらない。でも迷惑と誰もが思っていないのだ。

実際はみんながもう「しょうがない」とか「どうしようもない」と思ってあきらめているのだ。

 

「面白い。精神に…心にアプローチをするアイテム」

「ええ。なんでもアインズ様が言うには…おっと内緒です」

「なぁにぃ~内緒だとぉ!?」

「はい。でもすぐに分かることですよ」

 

本当にすぐに分かることになる。まさか後日、あのカイトまでがああなるとは思いもしなかったのだから。

その時はアインズやナザリック階層守護者メンバーでなんとか対処したが…ウィルスバグと戦っている時よりも大変だったと言う。




読んでくれてありがとうございました。
次回もゆっくりとお待ちください。

今回も『ぷれぷれぷれあです』のネタでオリジナルです。
しっかし話の展開が・・・

カイト「ぴろし3はいつも通り」
アインズ「いつも通りって…リアルが気になる」


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もうだめかもしれない

今回も短いですが生暖かい目で読んでってください。


ルプスレギナ

 

 

今、アインズはルプスレギナからカルネ村での報告を聞いている。

彼女はカルネ村の監視のために派遣しており、何かあればすぐに報告するようにしているのだ。現在カルネ村では特に問題は起きていないので今回は定期報告だ。

 

「で、どうだった?」

「はいっす。カルネ村では異常はないっす!!」

「そ、そうか。異常はないか。なら良い…エンリやンフィーレアは元気か?」

 

エンリにンフィーレアはアインズが直々に保護した人間だ。彼らはナザリックには合わないが、この異世界でアインズが仲良くなった人間。このまま友好な関係でいたいものだ。

 

「エンリとンフィーレアはなかなかくっつかないっす」

「そう…え?」

「あいつら実は両想いのくせにくっつかないっすよ!!」

「ええ、うん。そうか」

 

急に恋愛の話になった。残念だがアインズはその手の話はどうしようもない。だって恋人ができたことないから。

 

「人間はよく分からないっすね。ゴブリンはすぐくっついて夜の営みをするのに人間は全然。エンリもンフィーレアもゴブリンのようにくっついてギンギンになればいいのに」

「んー…まあゴブリンと人間は違うからな。そう言ってやるなルプスレギナよ」

 

後ろに控えているアルベドが何故か興奮しているが怖いので無視。つーかこの話はそろそろストップだ。

うまく言い返しができないから。それにこの話を続けるとアルベドが色んな意味で怖くなるし。

 

「アインズさん」

「きたで…って仕事中かいな?」

 

カイトはいつも通りフォローで来てくれた。そして応援で来てくれたのはレイチェル。

 

「ああ、カイトさんにレイチェルさん。大丈夫ですよ」

 

カルネ村の報告はここでストップだ。聞きたいことは聞いたので終了である。

 

「来たな恋敵…!!」

「え?」

「アルベドは無視してください」

 

ルプスレギナってどんな子?

そう言われれば『誠実』に見えるというのがアインズの見解だ。でもそう言うと他のプレアデスたちから妙な反応をされるし、ルプスレギナをそれで弄っているのだ。

何でだろう?

 

「それってルプスレギナが誠実じゃないからやん?」

「え!?」

 

チラリとルプスレギナを見るとキラキラした目で見れくれる。

 

「せ、誠実」

「違うんじゃないの?」

 

もう一度チラリと見てもルプスレギナはキラキラして目で見てくる。

 

「せ、せいじつ…」

「女はいくらでも猫被るもんよ」

「……」

 

なんかもう分からなくなってきた。

 

「アインズさん大丈夫?」

「うう~ん」

 

実はルプスレギナがこれからいろいろとやらかすのをアインズは知らない。いや、もう何かやらかしているかもしれないが。

 

「なあなあルプスレギナ。報連相って知ってはるん?」

「ほうれんそう?なんすかそれ?」

「え、報連相知らないのかルプスレギナ!?」

 

アインズはルプスレギナに指導することを決めた。意味ないけど。

 

「アインズ様と2人きりで指導…間違いが!?」

「起きないぞー」

 

 

シズ

 

 

アインズにカイト、月長石はシズが改造されている姿を見ていた。

 

(シズが改造されてるー!?いや、オートマタだけども!?)

「まあ、改造は男のロマンだよね」

「…」

「月長石もそう思うって」

「月長石さん今無口だったよ!?」

 

カイトは月長石の意思疎通ができるので問題なし。どうやって意思疎通をしているかはナイショだ。

で、改造に関しては男のロマンというのにアインズも理解できる。なんならこの3人で語ってもいい。

 

「にしても改造しすぎだろう。シズの成分が顔しかないぞ」

 

今のシズはなんかもうどっかのゲームに出てくるようなロボット状態だ。しかも飛んでるし。

エントマとソリュシャンが悪ノリで改造したのだ。シズ自体が嫌がっていないなら尚更ノッているだろう。

 

「ドリルは男の武器だよね」

「…」

「あ、それ分かります。シズは女だけど」

 

何故か分からないけどドリルを装備したら天高く突き上げたい気持ちにかられる。本当にどうしてだろう?

 

「アインズ様。これはただの改造ではありませんわ。ナザリックの防衛に必要なことです」

「そうか。でもやりすぎな気がするが」

「これくらい普通ですよぉ」

「こんなもんかー?」

「はぁい。そして更にシズを赤く染めれば3倍は強化できますぅ」

 

おっとそこまでだ。何故か分からないが今のは話の展開的にしないほうがいい。作品が違う。

 

(エントマの創造主の源次郎さんが何か余計な知識でも設定したのかな?)

「なんかメタイ話かな?」

「一応今回は本編に関係ない番外編なので」

「またメタイセリフだ」

「…」

「月長石もそう思うって」

 

アインズたちの話にソリュシャンたちは分からない。分からなくてもいい。

 

「それにしてもシズはこの異世界だと合っていないよね。主に武器とか…だって近代の武器だし」

 

異世界の文化レベルは中世あたり。シズは近代文化に近いのでこの異世界じゃ浮いている。

 

「そうなんですよね。それのせいもあって外に出るのも限られてるですよ」

 

シズは基本的に無口だがモモンのお供候補として最有力であった。しかし文化レベルが合っていないから却下となりナーベラルとなったのだ。

 

「近代のレベルの武器が中世文化の国に流れたらその国なんていくらでも他の国を陥落していきますよね」

「ああー、やっぱそうだよね。ボクらのレベルがこの異世界じゃとんでもないけど武器までの文化レベルを変えたらマズイよね」

 

カイトたちの目的はウィルスバグの殲滅だ。異世界の文化レベルを変革させることではない。

 

「まあ、そもそもオレらなら文化レベルなんて関係なくどんな国でも堕とせそうですけどね」

「まあ、アインズ様流石ですわ。どんな国でも堕とせるなんて!!」

「ですねぇ!!」

 

つい呟いた言葉にエントマとソリュシャンがヨイショしてくれる。本当は国なんて陥落させるつもりなんてないのに。

 

「え!?ああ。そうだな。私は最強なのだから当然だ。どんな国でも手に入れてみせる」

「…」

「月長石がアインズさんでも堕とせない国があるって」

「はあ?何を言っているのかしら。アインズ様に堕とせない国はないわ」

「そうですよぉ」

 

アインズの力ならおそらくリ・エスティーゼ王国やバハルス帝国を堕とせるだろう。

まだ情報が少ないから絶対に落とせると言えないけど、ほとんどの国を堕とせる可能性はなくはない。

それほどまでに異世界とアインズのレベル差があるのだ。でもまだ見ぬ強敵はいるかもしれない。

 

「ほう、私に堕とせない国があるか。おもしろい。どんな国かね?」

 

アインズも興味があるので頑張って魔王ロールで聞いてみる。

この異世界を少しずつ調べているが、今のところ強大すぎる国は思いつかない。可能性としては法国やアークランド評議国、そして特に気になるのが遥か南方の砂漠に存在するという浮遊都市エリュエンティウだ。

 

(もしかしてカイトさんたちとか言うのかな。カイトさんたちは違うっていうけどあのタルタルガも浮遊国家だし)

 

さあ、どんな答えがくるのか。

 

「…」

「ふんふん」

「どんな国かね?」

「夢の国だって」

「ヴぇ!?」

 

アインズ超動揺。今日で一番動揺したのは間違いない。

 

「夢の国?何その国。そんな国なんて」

「それ以上はダメだソリュシャン!!」

「え!?は、はい!?」

「その国は絶対に喧嘩を売っちゃいけない国だから!!」

 

至高の四十一人全員集合しても勝てない。ナザリックと.hackers全員が力を合わせても勝てない。

 

「喧嘩売ったら本当に夢の国への片道チケットを送られるよね」

「この話はもう止めましょうマジで!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナザリック宝物殿

 

「ちょっと試作品を作ってみた」

「ほほう」

「で、試しに使ってみた」

「で、どうなりました?」

「おそらく成功したと思うのだよ。普段じゃ口にしない言葉とか言っていたしな」

 

ぴろし3が持っていたのはクラッカーのようなモノであった。

 

「ではソレを元に私の作品に組み込んでみましょう」

「うむ。作成するにいたって試作品を何度も作成しよう」

「ええ、勿論です。完成品に至るには試作品を何度も作らないと…モデルは私とアインズ様ですね」

「色はやはり金だな」

 

狂乱の宴まであと少し。

 




読んでくれてありがとうございました。
次回もゆっくりとお待ちください。


今回はちょっと疲れてたかもしれません。
やりすぎたかもしれませんね。 ネタがねえ・・・

カイト「ごめんなさい」
アインズ「ごめんなさい」
アルベド「あの、どこに謝っておられるのですか?」
2人「どっか」


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事件の前日的な

久しぶりの更新です。
お待たせしました。このオマケの物語も残り二話で終わりにするつもりです。
短いですが生暖かい目で読んでってください


「はああああああああああああああああ」

 

アインズがもの凄い溜息を吐いた。それは完全なる狂騒の一連の事件がやっと解決したからである。

解決したと言ってもとても大変であったのだ。なんせキャラ崩壊待った無しの出来事であったし。

 

それは最後の最後で完全なる狂騒の特殊効果である条件をアインズが偶然にも、本当にご都合主義みたいに揃えてしまって大参事であったのだ。

その場にカイトたちがいたが、彼も「ちょっとここまでキャラ崩壊するなんて思わなかった」と言う始末だ。もっともアインズもそう思ったけど。

だって最後の要であるユリですら自分の首でボーリングするし。これには流石にアインズも空いた口が塞がらない。アルベドに関してはいつも通りだった気がするが・・・。

 

「はああああああああああああああ」

「お疲れさまだねアインズさん」

 

もしこの異世界に自動販売機があれば缶コーヒーでも買って差し入れしたい気分であるカイト。

何故か分からないけど今のアインズは本当に疲れているように見える。心なしか覇気が無い覇気が。

そしていつもの負のオーラではなくて疲れたオーラを出していた。

 

「オレも凄いキャラ崩壊してた気がする…」

「そうでもないと思うよ」

「え」

「そんな予想外な顔されても…だってただ素のアインズさんが出てただけだし」

「そういやそうだ!?」

 

今回のことは本当に素のアインズ・・・鈴木悟として翻弄されてただけなのだ。

全く不思議なものだ。彼はアインズとしてアンデット寄りになっているがそれでもまだ人間としての心は残っている。それはカイトのおかげでもあるが。

心という理性のある存在としては、あんなアイテムだけでここまで左右されるものは不思議である。

 

そもそも今まで気にしていなかったが異世界転移して、ゲームのキャラクターに成り代わっただけでここまで自分が変わるものなのだろうか。

アインズはまさにリアルの自分の時と比べれば変わっている。カイトたちだってそうだ。

 

性格云々は変わっていないけど異世界でこうも戦えているのに不思議だ。なんせ命のやり取りをしているのだから。

それを普通に戦えている。普通だったらちょっとおかしいものだ。もっともカイトたちはゲームであっても命がけの戦いをしたものだが。

でもこの異世界では現実味がある。ゲームとは違う。

 

(…今まで考えなかったことだけど何で異世界転移した時にゲームのキャラクターに心に反映されるんだろう。特にアインズさん)

 

アンデットキャラクターだからと言って心が人間から化け物寄りになるものなのだろうか。

カイトたちは全員がヒト種だからそこまでの変化が分からない。でも命のやり取り…戦いに関して気にせずに戦えたというのが少し引っかかる。

 

(というか何でそのことを考えなかったんだろう?)

 

心が浸食される。それって結構重大なことだと思う。でもアインズは『そういうものだ』と決めつけて考えから外していた。

カイトだってその話を聞いても特に気にもしなかった。まるでその事を考えないように。

 

「あーあ。もう疲れた」

「ゆっくりするか気分転換に冒険者組合の依頼でもこなす?」

「…依頼に行きましょう!!」

 

ガシリとカイトの手を掴むアインズであった。

これでやっと完全なる狂騒に関わる事件が終わったかと思えたが…終わりではなかった!!

まだこの後トンデモナイ事件が起きようとはアインズは予想できなかった。そしてカイトがあんなことになるなんて思いもよらなかった。

 

あの事件はアインズ史上最大の戦いにもなったものだ。まさかカイトと戦うことになるとは思わなかったのだから。

ユグドラシル時代では1000を超えるプレイヤーにナザリックを堕とされるかと思ったが防衛した。しかしアノ事件はカイト1人だけでナザリックを乗っ取られるかと思ったのだから。

 

完全なる狂騒の事件はまだ終わらない。

 

 

side変更

 

 

「ここをこうすれば良いんじゃないでしょうか!!」

「ならば私はこうするぞ。HAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!」

 

トンテンカンカン。トンテンカンカン。トンテンカンカン。

ギュイーン。カンカンカンカンカンカンカン。ギュインギュイン。

 

ナザリックのある場所である開発をする2人。ぴろし3とパンドラズ・アクター。

彼らの開発があの事件を引き起こす原因となるなんて思わなかっただろう。でも彼らは面白おかしくアイテムを作成しているので結果がどうなろうとも気にはしない。

パンドラズ・アクターはアインズに喜んでもらえれば良いのでそこは真剣に作っている。完成品は真面目に作る。だが試作品に関しては何でもトンデモ挑戦するが。

 

「こっれでどうですか!!」

「こうだこうだこうだ!!」

「んアインズ様のためえええええ!!」

「うむ。頑張りたまえ!!」

 

そして完成されたのがアインズにとって素晴らしいアイテムだと思える物になったわけだが・・・それがアインズの手に渡ることは無かった。

だってアインズは試作品の方を手にしてしまったのだから。

 

「…ところで心にアプローチするアイテムか」

「んーどうしましたぴろし3様?」

「いや何…不思議に思ったことがあったんでな」

「何ですか?」

「…いや、何でもないぞ。HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!」

 

今回のことに関してあまり関係ないかもしれないが・・・ふと気になったのが何で創造されたPCUがこの異世界に来たからと言って意思を持ったのだろうかというものだ。

目の前にいるパンドラズ・アクターや階層守護者たちがもともとはただのゲームのキャラ。それが異世界転移したからと言って意思を持つ。とても不思議だ。

彼らは女神アウラのような存在ではない。もともとAIというわけでもない。なのに何で意思を持っているか分からない。

 

(どうやって彼らは意思を手にしたのだろうか?)

 

まさか異世界に転移した影響だなんて言葉で片づけてよいものなのだろうか。だは今の状況では分からない。

それよりも今はアイテム作成に集中しているのであった。そしてあのはっちゃけたというか、暴走したというか・・・そんな事件が起こる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???カイト

「そうかぁ、フハハハ!とうとう俺も必殺技を会得したってわけか!!」

「あ、ひでぇ!削除されてやがる!!」

「くらえ奥義・暗黒吸魂輪掌破!!」

「超次元霊界航法を実行する!!」

 

 

歴?王・ヒロイン兼お母さん?・ヤンデレ?ブラックローズ

「いけませんいけません!」

「今、下に来てるんだけど……部屋番号、いくつだっけ?」

「私…あなたのお母さんなの」

 

 

?学王バルムンク

「最終兵器オメガ13改の完成はもうすぐだ!!」

「Uノザワ・シンがこの異世界に!?」

「甘い!!対数関数と指数関数の関係は?」

 

 

田中わ?助オルカ

「お嬢さあああああん!?」

 

 

二重人格?改造人間?ミストラル

「私たちって改造人間なのよね」

「わけありかい…しょうがないねぇ。人それぞれだもんねぇ」

 

 

毒電波エンデュランス

「ららんろりりる、こんにちは。いじけイチゴは冷蔵庫。野菜室の奥の奥で、しなびてる」

「また通信が来てるよ。今度はベガからの電波だっぱぴぃ」

 

 

病弱野郎の八咫

「細菌学的に言えば口の中は校門以上に菌だらけだ。キスするならケツにしろ」

「動け僕の心臓」

「働け、僕の腸内細菌」

 

 

いつものぴろし3

「オヌシ、いい眼をしているな」

 

 

性格改変。暴走・暴走・大暴走。圧倒的なまでの厨二。これが若さゆえの過ちか。

 

 

「暴走しまくるぞ!!色んな意味で!!」

「それはダメだ!!」

「人生一度は過ちを犯すものだ!!」

「よくぞ言った!!ならばそれは永遠に黒歴史になるだろう!!」」

「誰も俺を止められねえ!!」

 

 

ナザリックにて最大最悪暴走な事件が起こる。

 

 

アインズ

「なんじゃこりゃあああああああああああああ!?」

 

 

そ・れ・は『パロディ』




読んでくれてありがとうございました。
次回もゆっくりとお待ちください。

さてさて、今回も流石にはっちゃけましたかね…特に最後。
でもでも最後のは原作でも公式なんですよね。


アインズ「どういうことなんだ…」
カイト?「気にするな。そっちだってオマケ劇場ではっちゃけてるじゃん」


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狂乱の宴

お久しぶりです。
本当に久しぶりの更新ですよ。

久しぶりなのでもしかしたら内容にブレがあるかもしれません。


アインズの目の前には階層守護者たちとプレアデスのメンバーが全員集合していた。

今日全員招集している理由はアインズが持っているアイテム完全なる狂騒・改だ。このアイテムを使って全員の関係を一歩先の段階に進めようということだ。

どんな効果かは使えば分かる。そんなわけで発動したの・・・なんかちょっとおかしい。

 

「ああん…なんか全身がうずくでありんす」

「あらあら。まさか本当にビッチになったのかしら。ああ、ビッチ臭いわ」

「ビッチトハ、ドレクライビッチナノカ!!」

「「ワーイワーイワーイ!!」」

「なるほど。このアイテムは精神攻撃を想定して訓練するものなですねモジャノシ!!」

 

なんか・・・なんかもう階層守護者たちが変である。

もともとは訓練とかではなくて、階層守護者たちの本音を聞きたいだけなのであるが。

さっきの訓練やらどうだかに関してはただのデミウルゴスの深読みである。

 

「まあ…ではこれからお互いに本音を曝け出して語ろうではないか。カイトさんたちと一緒に!!」

 

実はここにカイトたちも一緒にいた。これは階層守護者たちがカイトたちをどう思っているかも聞きたいからだ。

上手く同盟関係は成り立っているが、実際のところどう思っているか分からない。もし何かあって同盟関係が崩れたら大問題だ。

なので今回は階層守護者とある程度…ある程度は関わりのある.hackersのメンバーを呼んでいる。

まずはカイト。次にブラックローズにバルムンクにオルカにエンデュランス、八咫である。

 

「ではカイトさん。メンバーごとに話し合いをしましょう!!」

「…………」

「…カイトさん?」

「大丈夫大丈夫。んじゃあさっそく話そうぜ…これからお互いを知るためにさ」

(あれ…なんかカイトさんの雰囲気がいつもより違うような?)

「ところで昔飼っていたハムスターとか知らない?」

「ハムスター!?」

 

いきなりハムスターとか言われてアインズはちょっと動揺。

なんだろうか・・・本当にカイトさんがいつもと違ってナニカかがズレている。

 

「ブラックローズさん。なんかカイトさんいつもと違いませんか?」

「ナザリック地下大墳墓。それま大きな古墳のようなもの…でもそれは一体誰の墓なのか。そもそもこの墓を作り上げたのは誰? それにこの造りはまさに文明があった。どのような種族が作り上げたのか。何故滅んでしまったのか。いやいや滅んでしまったとは限らない。まだ生き残ってるかも…ならばこのナザリック地下大墳墓の歴史を聞かなくては」

 

ブラックローズがナザリック地下大墳墓についてブツブツを呟いていた。しかもまるで歴史オタクの如くのめり込んだように。

 

「ブラックローズさぁん!?」

 

なんかいつものブラックローズではない。

なんだこれは…どうなんているのだろうか。もしかしたら他のメンバーもと思ってオルカたちの方を見ようとしたがカイトに服を掴まれてセバスが用意した部屋にレッツラゴーされた。

 

「さあ行こうかアインズさん!!」

「ちょ、服引っ張りすぎですカイトさん!!」

「どうせ伸びないから大丈夫だよ」

「いやいや伸びますって!?」

 

カイトに無理矢理引っ張られていくアインズであった。

 

 

side変更

 

 

しゃるてぃあと話そう

 

アインズはシャルティアとアルベドは仲が良いかと聞かれれば良くないらしい。

本音なのだからそうなのだろう。これにはちょっと…予想はしていたけど。

でも仲が悪いのはよくない。これではいざという時に力を発揮できないだろう。

何故仲が良くないのか聞いてみたら、しょうもない理由であった。

 

「そいつの胸が気に入らないでありんす!!」

(胸かい!?)

「あ~らただのひがみね。やはり持つ者と持たざる者で世界は分かれているのね」

「おのれぇ!!」

 

しょうもない理由にアインズは出鼻挫かれる。でも原因が何であれ、解決はしておこう。

 

「だってペペロンチーノ様はオッパイが正義と言っていました!!」

(ペペロンチーノさん…)

 

ペペロンチーノの言葉は分からないでもないが今は置いておいてほしい。

 

「まあ、待て世の中は豊満よりかは逆の方が好きというのもあるのだぞ」

「逆…でありんすか?」

「ああ…それは、ひんぬーだ!!」

 

ここぞと言うところで噛んでしまった。やっぱちょっと恥があったかもしれない。

 

「「ひんぬー」」

(あ、ヤバイ。ダメだったか?)

「なんか、可愛らしい言葉ですねアインズ様!!」

「ええ、なんというか、ほんわりした言葉です」

(そうじゃないけど、まあいっか)

「ほんわりとはしてないけどな」

「オルカさん!?」

 

本音を代わりにオルカが言ってくれた。

 

「じゃあアインズ様は豊満なオッパイとひんぬーなオッパイどちらが好きなんですか!?」

「え!?」

 

藪から棒に困った質問が来てしまった。まったく何でこんな質問をするのだか。

返答によってはまた場がややこしくなる。

 

「どっちが良いんでありんすか!?」

「もちろん豊満の方ですよねアインズ様」

「いや、ええっと…えー!?」

 

ヤバイ。答えることができない。

 

「男は小さくても大きくてもオッパイが好きなんだよ」

「オルカさん!?」

 

まさかのオルカの言葉にビックリ。

 

「オルカさんってこんなこと言う人でしたっけ!?」

 

 

side変更

 

 

こきゅーとす、あうら、まーれと話そう

 

次はコキュートスとアウラにマーレだ。

アウラとマーレはアイテムの効果で見た目と同じように元気な子供だ。

コキュートスは開放的になったというか繊細というか、少しのことで傷つく。

 

(うん、これもアイテムも効果なんだな。でも…こっちは)

「ミュミュミュミュミュ…銀河より宇宙的交信を受信したびよ」

(エンデュランスさんが凄い毒電波になっているぅぅぅ!?)

 

コキュートスたちよりもエンデュランスの変化が凄い気になる。

オルカの時より気になったがまさか彼らにもアイテムの効果が出ているのだろうか。

 

「あれは何、これはアレ、ソレはそれ」

「何それー?」

「何なのー?」

「ソ、ソレトハ、エッチ、ナコトナノカ?」

 

急に彼らしか分からない会話が始まった。もうアインズは蚊帳の外。

 

「ソレはソレ。秘密の扉ぴよ」

「「秘密の扉ー?」」

「ヤッパリ、エッチカ!!」

 

どんどんと話がよく分からなくなる。

 

「まったく会話してないけど終了!!」

 

だって毒電波とはしゃいでいる子供たちと色んな意味で開放的になっている人となんて会話できないからだ。

会話できないと言うよりアインズの話を聞いてくれないという意味で。

実際にアインズは空気になっていた。

 

(あれ、何か寂しい?)

 

 

side変更

 

 

でみうるごす、せばすと話そう

 

今度は仲良くない2人を並べてしまった。デミウルゴスは語尾が変なだけでいつもとは変わらない気がする。

セバスはアイテムの効果を受けていなそうに見える。たまに乗除不安定のようでプルプル震えているような気がしなくもない。

 

「く、動け僕の心臓…」

「連立方程式と関数、確率を組み込ませて…オメガ13改を」

 

バルムンクと八咫の方もまたおかしい。

八咫は何故か病弱キャラっぽいし、バルムンクはどこが博士っぽい。

 

(どうしたんだろう2人は…)

「セバスどうしました。何か震えていませんか?」

「いえいえ、気のせいでしょう。私はいつも通りですよ」

「アイテムの効果を受けていないと?」

「はい」

 

完璧執事であろうとするセバスだが墓穴を掘った。我慢しているより実はアイテムの影響を受けていると正直に言った方が気が楽になるものを。

今のセバスはぶっとんだキャラに近い。今すぐにでも仰々しくド派手なポーズを決めたいものだ。

 

「ふむ…Uノザワシンの復活も近い。早くオメガ13改の開発を急がねば」

(バルムンクさんは一体何を言っているんだろう?)

 

バルムンクは会話に入らずブツブツとずっと呟いている。そして八咫はというと…。

 

「ふう、落ち着いたか僕の心臓」

 

何故か自分の病弱と戦っていた。

シャルティアから始まって今までまともに会話をしていない気がする。

せっかくアイテムを使って階層守護者たちの本音を聞こうと思ったのに意味がない。

 

「アインズ様!!」

(あ、また話がこじれる要因が…)

 

まさかのアルベド参戦。

 

「やっぱり胸は大きい方が良いですわよね!?)

「その話まだ引っ張るの!?」

 

もはやカオス。

 

「アルベド、今は私たちの番なのですよモナモシ」

「今はこっちが火急なのよ!!」

 

火急でもなんでもない。

 

「もしアインズ様は胸が大きい方が好きなら私のを揉んでもらえるかもしれないじゃない!!」

「お前は何を言っているんだ」

「そしたら次はキ、キスだって…」

「だから何を言っているんだ」

「待て」

 

まさかのここで八咫が待ったをかける。何を言ってくれるのかと期待したが…まさかの言葉が出た。

 

「細菌学的に言えば口の中は校門以上に菌だらけだ。キスするならケツにしろ」

「何を言うんですか八咫さん!?」

「そうよアナタ一体何を…でもアインズ様が私のを…ああ、それはそれで興奮するわ!!」

「アルベドは本当に何を言っているんだ!?」

 

もう収拾がつかない。

 

 

side変更

 

 

いろいろとあったが、よく分からないまま結果的にみんなが暴走した。

 

「何故に!?」

 

原因はどうやらパンドラズ・アクターとぴろし3が共同開発したアイテムによる。完成品ならばこう暴走はしなかっただろう。

暴走したのは試作品を使ってしまったからだ。

試作品と完成品の違いが発動するまで分からないなんてアインズだって間違える。そもそも開発者だって区別がついていない。

これはアインズを責めても仕方ないだろう。だけどこの暴走は酷かったものだ。なんせ階層守護者たちだけでなく、ブラックローズたち.hackesもおかしくなっていたのだから。

 

寧ろ階層守護者たちよりイロイロと酷かったものだ。主に発言が酷すぎた。

そもそも本人なのかって言いたくなるほど性格も変化していた。エンデュランスなんてまさに別人だと言いたくなるくらいである。

そんなカオスな空間であったがアイテムの効果を打ち消すアイテムを使用したおかげで何とか鎮静化。

一応、効果が無かった?と思われるデミウルゴスとアルベドにアイテムを使用した。

 

「はあ…大変だった」

「申し訳ありませんアインズ様」

「いや、これはお前たちのせいではない。これは何も確認しなかった私のせいだ」

「いえ、アインズ様に落ち度はありません。全てはあのパンドラズ・アクターと黄金戦士が…!!」

「いや、よい……ところでカイトさんは何処だ?」

 

そういえばカイトの姿がどこにも見えない。

改変したブラックローズたちはアイテムを使用した影響なのか気を失ったまま。でもカイトはいない。

そもそもカイトには沈静化させるアイテムは使っていないし、そういえば最初の段階でしか居なかった記憶しかない。

 

「そういえばいませんねカイト様は」

「セバスか。もう大丈夫か」

「はい。何があったか分かりませんが申し訳ない気持ちでいっぱいです」

「気にするな」

 

どうやらアイテムの影響を強く受けていた者たちは沈静化すると効果を受けていた時の記憶は無いらしい。

 

「そういえばどこからカイトさんは居なくなったんだ?」

 

カイトが何処に行ったか考え始めた時にユリから緊急のメッセージが届いた。

 

『アインズ様大変です!?』

「どうしたユリ?」

『ナザリックが侵略されています!!』

「なんだとう!?」

 

まさかのナザリックが侵略されていると報告が来た。どこのどいつが大切なナザリックを責めているのか。

 

「誰が攻めてきている。外はまさか囲まれているのか?」

『いえ、内部から攻撃されてます!!』

「内部から!?」

『はい。そ、その…相手が』

「相手は誰だ!?」

『カ、カイトです』

「へえ!?」

 

まさかの相手にアインズはアホな声が出た。

 

「フハハハハハハハ。ここが何処か分からないがココを攻略してやるぜ!!」

 

唯我独尊カイト爆走中。




読んでくれてありがとうございました。
次回もまたゆっくりとお待ちください。

本当に久しぶりです。
さて、今回もパロディ色が濃くて本編とあり得ないくらいおかしいです。
そして最後にまさかのカイトがナザリックを攻略するという・・・(汗)

まずカイトですが、パロディとある漫画版カイトを融合させたような人格になってますのであしからず。
知っている人は知ってますがある漫画版のカイトはハセヲすら恐れる唯我独尊の存在です。


ある漫画版カイト「フハハハハ!!」
アインズ「え、ちょ、カイトさんですか!?」
ハセヲ「…あのカイトはちょっとなあ」


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狂乱の宴閉幕

またまた、こっちではお久しぶりです。
まだエタらないので…頑張ります!!

本当に遅くなりました・・・


ナザリック大墳墓が異世界に転移して以降、最大最悪の事件が今始まった。

 

「カイトが物凄いスピードでナザリックを攻略しています!!」

「な、今カイトさんはどこにいる!?」

「今は第3階層です。既に第8階層から第4階層は攻略されました!!」

「うお、マジか!?」

 

そういえば最初の時から見ていなかったと気にしてなかったが、まさかナザリックを攻略していたなんて思いもよらなかったのだ。

だがアイテムの効果を聞いたら可能性はあった。そもそも性格をあり得ないくらい改変されている時点でそういう危険性も考慮するべきだったのだ。

それでもやっぱりあのカイトがナザリックを単独で攻略なんて想像できるはずもない。

 

「どうしますかアインズ様!!」

「そんなのものは決まっている。カイトさんを正気に戻すぞ!!」

 

先ほどまで暴走していた階層守護者たちはもう動ける。プレアデスたちも健在だ。

 

(暴走しているカイトさんがどうなっているか分からないけど、この布陣なら絶対に止められるはずだ)

「アインズ様。カイトがもうすぐ地上に出そうです!!」

「え、もう。早ぁ!?」

 

暴走したカイトがナザリックを出たら何をするのか想像もつかない。こうなったら何が何でも彼を絶対に止めないといけないだろう。

 

「そもそもナザリックを攻略ってどうされたんだ?」

「ええと…各階層に『カイト参上!!』と落書きされてますね」

「攻略ってそういう!?」

 

 

side変更

 

 

アインズたち全員がナザリックの屋外にテレポーテションなどでカイトより先回りする。

そしてちょうど目の前に暴走したカイトが到着した。

 

「さあ外だ!!」

「カイトさん!!」

「む、何だ骨の王か。まさか出迎えてくれるなんて思わなかったな」

「な、アインズ様を骨の王などと…同盟関係があるとはいえ不敬よ!!」

「うるさい。愛が重すぎる夢魔め」

「何ですって!?」

(…今カイトさんが言ったのは否定できないな)

 

アルベドの愛が重いのはアインズも嫌というほど理解している。それが自分のせいだというのも含めて。

それにしてもカイトが汚い言葉。そこまで汚い言葉ではないけど人を攻撃するような言葉を言うのはすごく違和感があるものだ。

これもやっぱりアイテムの影響なのだろう。これに関しては物凄く申し訳ないものだ。

はやくいつもの誠実なカイトに戻さないといけない。そうでないと此方も色んな意味でダメージを受けそうだ。

 

「お前たち。カイトさんは今正気ではない。彼が何を言おうが気にはせん。なんせこれは私の責任だからな」

「そんなアインズ様に落ち度まありません」

「そう言ってくれると助かる」

 

アインズの手には正気に戻すアイテムが握られている。このアイテムでカイトを治すことができるのだ。

 

「まさか、そのピコピコハンマーでボクの頭を叩く気なのかい?」

「ああ、そうだ。これを使えばカイトさんを正気に戻せる」

「なら出来るものならやってみてよ!!」

 

カイトの身体から蒼炎が放出される。

これはもう話し合いはできないと言っているものだ。

 

「カイトさん。今あなたは正気ではない。このアイテムを使えば正気に戻りますから!!」

「信じられるか!!」

「そ、そんな!?」

「骸骨がハンマーもって叩けば正気に戻ると言っても信じられるか!!」

「ぐわっ、正論!?」

 

見た目って大事。

これはもう無理矢理アイテムを使うしかないだろう。そうでなければ暴走カイトを止められない。

 

「アインズ様。これはもう気絶でもさせなければいけないのでしょうか」

「そうだな。よし、お前たち。カイトさんたちを抑えるのだ。殺してはならないからな。殺してはならないからな!!」

 

大事なので2回言う。

階層守護者たちがカイトの目の前に出る。プレアデスたちは階層守護者たちの援護だ。

手加減してほしいが、相手は暴走しているカイトだ。

はっきり言って正気の時より何をしてくるか分からない。なので実際は本気で迎え撃った方がいいはずなのだ。

本気で迎え撃ってほしいが手加減しろ。こんな無茶な命令をしてしまったが、それでもカイトの無事が大事なのだ。

 

「へえ、骨の王の部下が先に相手か。いいだろう相手になるよ」

 

蒼炎がより大きく燃え上がる。

 

「さあ、どこからでもかかって…」

「守護者統括の名の元にカイトに一斉攻撃を!!」

 

アルベドがカイトの台詞と被せ気味に攻撃宣言を放つ。

 

「グレーター・リーサル!!」

「レインアロー!!」

「アース・サージ」

「ソドムの火と硫黄」

「不動明王撃!!」

 

各階層守護者をカイトに一転集中で攻撃をしたのだ。しかもどこからどうみても手加減ではなく本気で潰しにかかっていた。

 

(容赦ねえー!?)

 

まさかの部下たちの攻撃に顎が外れそうになった。

 

(え、これカイトさんマジで大丈夫なの!?)

 

物凄く土煙が舞っていてカイトの安否が分からない。だがよく見ると土煙の中心にカイトが立っている。

 

「カイトさんーー」

 

カイトをよく見ると右腕を掲げて腕輪を展開させていた。データドレインで全て防いだのだろう。

安心したけど、すぐに焦る。あの暴走状態のカイトもデータドレインを使用するという事実だ。

 

「データドレインを使うのか…」

「どうだ。これが奥義・暗黒吸魂輪掌破だ!!」

(ぐわああっカイトさんが中二病ぉ!!)

 

人の中二病を見ていると昔の自分を思い出してしまって悶えそうだ。

 

「今度は僕の番だ!!」

 

カイトがその場から消えたかと思ったらアルベドたち階層守護者の中心に現れていた。

 

「超次元霊界航法だ!!」

 

ゲートハッキングで瞬間移動しただけである。

そのまま階層守護者全員へと瞬時に攻撃に転じる。自慢の双剣で切り裂き、蹴りを駆使し、炎の魔法を発動。

彼のキレのある動きは暴走状態でも健在のようだ。寧ろ、暴走状態の時の方が遠慮がないからこそ恐怖だ。

 

「一双燕返し!!」

「ええいこのぉ!! なんでありんすか!!」

「その程度か!!」

「もう、避けてんじゃないわよ!!」

「フハハハ。ボクを止められる人は誰もいない!!」

「えと、えと、えと」

「はっ、昔のエルクみたいだな!!」

「エルク、トハ、誰ダ?」

「昔の話だ!!」

「このカイトは本当にとんでもないですね」

「眼鏡か。知的キャラだな」

 

階層守護者全員と相手取るなんてやはりとんでもない。あのアイテムに暴走付与だけでなく強化付与もあったのだろうか。

プレアデスの面々も援護で戦いに加わっているが悲しいかな、カイトに相手にされていない。そのせいかユリとシズ以外がイラついている。

なんというか片手間で相手にされているのだ。レベル差なのかカイトの実力なのか分からないが、これはアインズ自身も出た方がいいかもしれない。

 

「私も出よう」

「アインズ様!!」

「これは私もただ見ているだけでは済まなそうだからな」

 

まさかカイト相手にナザリックの現段階の最高戦力をぶつけるのは如何なものかとおもうが仕方ない。

実はまだまだナザリックには隠し玉はあるが流石に使えない。使えばあとが大変だからだ。だから今いる戦力でカイトを止めるしかないのだ。

アインズが動くと知って階層守護者たちやプレアデスたちの士気が上がる。やはり戦いには大将が前線に出るというのは兵の士気が上がるってものだ。

今のカイトは未曾有な存在だ。こんな時にブラックローズたちがいればより解決しやすかったかもしれないが今は彼女たちはアイテムの影響で気を失っている。

 

(こういう時に限って運が悪いってのはよくあるよなあ)

 

アインズはすぐさまスキルや魔法で強化をする。感覚も研ぎ澄ます。

今はマジで行かないとマズイ。洗脳されたシャルティアやウィルスバグとの戦いよりもいっそう感覚を研ぎ澄ます。

少しでも気を抜いたら双剣でやられそうだ。

 

「全力で行くぞ!!」

「「「無論です!!」」」

「でも殺しちゃ駄目だからな!!」

 

何か占まらない。

アインズの号令と共にもう一度攻撃に転じる。

 

「何度来ても無駄だよ!!」

 

たったカイト1人を倒すためにナザリックの最高戦力たちが動く。

 

「くっ、やはり1人じゃやっぱキツイか。でもボクならこの窮地を脱せる…なんせボクは主人公だから!!」

「ちょ、カイトさん!?」

「主人公補正でイケる!!」

「何かメタっぽい事言ってるんですけど!!」

 

正気に戻すハンマーでカイトの頭を叩こうとするが避けられる。というか、カイトが意味深なことばかり言うのでソッチに意識がいってしまうのだ。

なんせ物凄くツッコミどころばっかりなのだから。階層守護者たちはカイトの言っていることが理解してないようだが。

 

「ええい、カイトは何を言っているでありんすか!?」

「ムウ、我々デハ分カラナイ高度ナ話ノヨウダ。アインズ様ハ理解シテオルカラナ」

「流石はアインズ様ですわ!!」

 

そんな事を言っているがそう大事な事ではない。ただリアルの話に近いものなだけだ。

 

「アインズ様はやはり博識なお方。私ごときでは遠く及ばない」

(いや、こんなので評価が上がっても…というか後で説明を求められたらどうするんだよ)

 

戦いは意外にも激化。こんなどうしようもない事でウィルスバグとの戦い並みになってどうするのだろうか。

 

「意外にも決着がつかないんだけど!?」

「フハハハハハハハ、この程度でボクが負けるはずがない。そんなハンマーがボクの頭に当たるもんか!!」

「やっぱカイトさん強い………でもこっちだって何もせずに攻撃してるだけじゃないんですよ!!」

「ハンマーが!?」

 

アインズの手にはハンマーが無い。ではどこにいったのか。

そのハンマーはソリュシャンの手に。

彼女はカイトの背後に現れていた。彼女は盗賊・暗殺系の職業を修得しているので、このように気配を消して近づくことは可能だ。

 

(このまま!!)

「ふん。その程度くらい気付いていたよ!!」

「なっ!?」

 

エクシードの蒼炎を発動。

燃え上がる蒼炎でソリュシャンを近づかせない。

 

「この大混戦の戦いの中でいつのまにかプレアデスのソリュシャンが消えていた。なら考えられるのは逃げたか不意打ち狙いくらいしかないだろう!!」

 

大混戦だが周囲の状況を忘れない。自分はたった1人なのだからこそ周囲の状況を忘れず警戒するのは当たり前だ。

だからこそソリュシャンが消えたのにすぐに気づいたのだ。

 

「どうだ。このボクに死角なし。それとも無理やりボクを叩くか!!」

 

双剣を振るう。

 

「その前に倒すけどね!!」

 

蒼炎を双剣を纏わせてソリュシャンに突き刺そうとするが、そんなことをさせるはずがないアインズ。

 

「ソリュシャン!!」

「アインズ様!!」

「テレポーテーションか!!」

 

ソリュシャンがハンマーを投げてアインズがキャッチする。

 

「カイトさん!!」

「こっちが早い!!」

 

先に振りかぶったのはカイトだ。アインズがハンマーを振り上げた時にはカイトの双剣がアインズに近づいている。

 

「ボクの勝ちだ!!」

「まだだ!!」

 

双剣が空を斬る。

 

「なに!?」

「テレポーテーションだ!!」

 

連続でワープし、カイトの前上に現れるアインズ。振りかぶったハンマーはついにカイトの頭に。

 

「あうっ!?」

 

カイトは棒のように倒れるのであった。

 

「やっと…やっと終わった」

 

このままだったら最悪な事になっていたかもしれない。それを事前に防げて良かったと思う。

これはきっとこの異世界に転移してからウィルスバグ事件に並ぶ事件だとアインズは記憶することになるだろう。

原因はアインズ自身なのだがそこは忘れる。

 

「まずは気絶したカイトさんを…」

「今の内に仕留めますか?」

「今なら事故に見せかけられます」

「しないからねそんなこと!?」

 

もう一度、あとで階層守護者をハンマーで軽く叩いておいた方が良いかもしれない。

これで本当にオマケは終わり。




読んでくれてありがとうございました。
次回もゆっくりと気長にお待ちください。

今回でオマケ編は終了です。
次回からVOL.3に入ります。この物語の最終章です。
やっとハセヲの出番がまた回ってきました!!


カイト「なんか夢を見ていた気がする」
アインズ「きっと夢です」
カイト「まあ、いっか。じゃあ次回はまたハセヲにバトンタッチだね」
ハセヲ「やっと茶番が終わったんだな…」


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