無料より怖いものはない (虹野衣司)
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無料より怖いものはない
「無料10連…!」
「えぇ、グラン、今日も10連ですか?はわわ、大変です…」
「ルリア、聞いてくれ…。実はな、今日がルーレット最終日なんだ」
「そんな…うぅ、悲しいです」
「では、お別れですぞ!」
「僕は悲しいよ…また会おう!…それまで生きていればね!」
「なんでやねん!めっちゃ俊敏な動きしてガチャピンが攻撃してくるんだけど!」
「グラン、私の力を…きゃあっ!」
「すまねえな、ルリア。お前たちが10連ばっかり引くからオイラの闇の力が高まっちまってよ…。そこで見ててもらうぜ」
「ビ、ビィさん…?どうして…その筋肉はいったい…う…」
「眠ったか。ふん、残りはお前だけだぜ、グラン――、ま、オイラの出番はなさそうだけどな」
「あああルリア!!くっ!てい!せいっ!!」
「あははは!グラン、君はやっぱり強いね。僕が一撃で決められなかったのはこれで2度目…。空の人間では、初めてだ。すごいよグラン!ふふ、でも残念だよ。3回耐えるのが精いっぱいだろう。次で楽にしてあげるよ…!」
「くそっ…どうしてこんなことをする…」
「え?分からないのかい?君たちはKMRやHKHRが何も考えずに最大100連の無料ガチャを提供するとでも思ったかい?」
「――」
「そうだよ、最初から分かってたんじゃないのかい。このルーレットはね、グラン。空の民の嘆きを吸収する装置なんだ。人の絶望をエネルギーに変える。そうすることで、僕たちは――」
「…うるさいな」
「ん?」
「うるさい、って言ったんだよ。絶望?エネルギー?ふざけるなよ…困っている人がいたら助ける。それが人間なんだ。大変な時でも助け合って生きてきたんだ。年末年始は今まで頑張ってきたね、これからも頑張ろう、っていうそういう期間なんだよ。なのにさ…お前たちは、その大事な期間に人間を絶望させて、エネルギーにするなんて勝手なことばかりいいやがって…」
「そこまでだよ、グラン。残念だ。もう息をするのが精いっぱいのようだね。君も望めば僕たちのエネルギーを貸そうと思ったけれど…そしたらあっという間にイスタルシアさ。君のお父さんにも会えるのに。その機会を捨てるというのかい。ここはね、グラン。僕たちを糾弾するのではなく、『いいですね!仲間に入れてくださいお願いします!』って土下座する場面だったんだ。残念だ、グラン。もう用はない。ムック、あれを」
「やっと出番ですぞ!ってあれ?あれ?どこに…」
「何をしているの、ムック。ポケットに入れたじゃないか」
「ええと…」
「ないと思うわ」
「新手か…」
「調査通りか」
「ふっふーん!私が来たからにはもう大丈夫だ」
「ベア。行くわよ!」
「ゼタ。邪魔をするなよ、ビィは私の獲物だ!」
「おっと、オイラをご指名か、ねえちゃん。いいぜ、やってやらぁ!」
「で、君たちは何者だい?そしてムックが持っていたあれをどこにやった?」
「これか」
「むむむむむ(けも耳のお兄さんに抑えられて喋れないのですぞ)」
「ゼタ、バザラガ。このけむくじゃらの人質はあまり意味をなさないだろう。命じる。あの緑を倒せ」
「ゼタ。行くぞ」
「言われなくてもやってやるわよ!」
「おい、お前、しっかりしろ…」
「ええっと、うぅ…イルザさん!?どうしてここに!そんなことよりみんなは!」
「質問に答える暇はない。ルリア、あれは出せるか」
「え、えっと…ってはわっ」
「勝手に出てきたか。いいだろう、これで幕引きだ」
「お願い、始原の竜!」
「総員、緑を狙え!赤筋肉は気にするな!ここで仕留めるぞ!」
『はっ!』
「ふん…ここまでだ!新年からクソみたいなことをさせるなよ、クソども!」
「そして、悉く燃やし尽くした――ああ、大事なのはその後よねー。まぁお疲れ様パーティーは開くとして、その後にどんな展開をしようかしら…むふふ!やっぱり当初の予定通りゼタベアを主軸に…ああでもそうすると定番だしなぁ、お互いのことを知り尽くしてそうで夢がないわね。やっぱりここは思い切ってグランをこうしてバザラガの首筋に…」
「あらルナールちゃん、何をしていたのかしら」
「ひゃっ!コ、コ、コルワ!」
「そんなに驚かなくても。楽しそうだったわよ?新年から楽しいのはいいことだわ」
「そ、それはそうだけど…」
「そうそう、この前セルエル様たちのお茶会に呼ばれてね。おいしい紅茶をいただいてきたのよ。ちょっとそれを淹れようと思って。ルナールちゃんも飲むわよね?」
「え、ええ…(めっちゃ焦ったぁ。まだ全年齢版のところでよかったわ…こういう先頭者は普段あまり描かないから取り乱してしまったけど、そうよ、全年齢版だわ!)」
「こうしていつもと変わらず、グランサイファーは新年を迎えるのであった――と深い闇からオイラが補足しておくぜ!あばよ!いい1年にしてくれよな!」
新年もガチャの欲には負けるな!
頑張るんだ空の民!というお話でした。
本年もよろしくお願いいたします。
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