チノの旅 (ウボァ(ヽ´ω'))
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1話

 初めまして!そして明けましておめでとうございます。

 ウボァ(ヽ´ω')と申します。絵文字通りの性格をしているので、投稿ペースは遅いです。初めての投稿となり、至らない部分も多くあると思いますが、少しずつ精進していきたいと思います。

 今作の主人公「チノ」はサスケ真伝に出てくるキャラです。見た目と年齢にギャップがあるので私が気に入っているキャラです。原作の方に出してみたいな~という短絡的発想でこの話を考えました。

 楽しんでいただければ幸いです。


 私は転生者だ。異世界で生まれて、物心ついた頃に前世の記憶の一部を思い出したのだ。記憶を思い出し、この世界の正体に気が付いた。忍者がいて、チャクラがあって、火の国木の葉隠れ、風の国砂隠れなどの忍びの隠れ里がある。


……あれ?これ『NARUTO』の世界じゃない?


 そして異世界転生によくあるのが原作キャラに憑依しているというお決まりだ。鏡を見て自分の姿を確認した。一目ではわからなかった。主要なキャラではなかったのだ。それどころか木の葉の人でも、他の五大国の人でもない。数分間頭を捻り、記憶をひっくり返してようやく気が付いた。私がNARUTOに多少詳しくて良かった。


……サスケ真伝に出てくる『チノ』じゃん!cv.加隈亜衣じゃん!


 チノとはNARUTOの外伝の一つであるサスケ真伝に登場するキャラクターだ。血継限界を持つ人物で、原作ではうちは一族、そしてその生き残りであるサスケに復讐しようとした人物だ。小さく幼い容姿が特徴のキャラ。

 まだショートカットになる前の薄い黄色の長いくせっ毛。血之池一族の血継限界、血龍眼を宿すであろう大きな瞳。前世から大幅に美少女へとレベルアップした体を自覚して、鏡の前で一人喜んだのは恥ずかしい思い出である。


 しかし、この体に転生してショックを受けたこともある。


 一つは本編に登場しないキャラであること。異世界転生、それも『NARUTO』の世界だ。原作に関わり、改変とかしてみたいが、チノは能力こそ強力だが戦闘はさほど強くなかった。無理に原作に介入などしても、動乱の中で死んでしまうかもしれない。

 もう一つは……この体だ。確かに美少女でとても可愛いのだが、チノは恐らく全然成長しない。身長と……胸が。サスケ真伝では、忍界大戦の後のサスケの腰ほどの身長しかない。だがサスケよりも年上だ。それも無表情のサスケの眉がピクっと動くほど。その後の展開で、あの年齢詐称大得意な大蛇丸すらサスケよりも年上ということに驚くほどのロリ体質なのだ。


 そんな私は今、原作通り御屋城エンと呼ばれる男の元で飼われている。住んでいるのではなく、飼われているのだ。

 御屋城エンは武器商人。その上血継限界コレクターでもある。行き場の失った血継限界を持つ者を屋敷で飼い、護衛団や仕事を手伝わせている。そのコレクションの中の一つとして私は飼われている。

 ただ、この時点で御屋城エンは私にあることを隠している。彼は私の実の父親なのだ。これは原作知識であり理由ももちろん知っている。彼が血之池一族を自身と私を残して全滅させたからだ。

 確か流れとしては罪を一族に擦り付けられ、うちは一族を雇った者たちから地獄谷と呼ばれる不毛の地に追いやられた。血の池一族は不毛の地で細々と暮らすことを余儀なくされたらしい。

 そして、小さなコミュニティ故のいざこざが積もり重なり、憎しみになって、最後は一族間で殺し合い。それにエンの妻、つまり私の母が巻き込まれ死亡。そして全てどうでもよくなったエンが一族を皆殺し。……それでも娘は可愛いと私は生き残ることができた。

 父親が親バカのおかげで助かった。だがそれを隠す為に、彼は私に今の生活を送らせている。苦しいが彼の絶望を考えると憎むことはできなかった。それほど耐えられない生活ということもないしね。コレクションとしての仲間もいたし、やることといえば戦闘訓練を受け、彼の実務を手伝うだけだ。


 いつかは親だと知っていると言うつもりなのだが、まだ勇気が持てないのだ。もうしばらくして尋ねてみるつもりではある。

 
 これが私の憑依転生後の生活。この生活は私が十二歳になるまで続いた。


◆◆◆◆◆◆◆


 「あの……私ってあなたの子供なんだよね?」

 十二歳になった頃、私は御屋城エンと二人っきりになる時にとうとう尋ねた。その問いを投げた瞬間、彼の雰囲気が一変した。彼は普段奇妙な形のサングラスをかけた、明るく気さくでノリの軽い人だった。だが私の問いに反応して冷たい威圧感を彼から感じた。

 私はたまらず尻餅をついた。予想と反応が全然違ったからだ。彼は私に嘘をついていても親バカだったはずだ。それなのに……そう考えていると彼の雰囲気が元に戻った。


 「ふ~……いつから気づいてたの?」

 彼は頭を掻きながらいつもの口調で尋ねてくる。どうやら私の急なカミングアウトに動揺を隠せなかったようだ。ばれるとは思っていなかったのだろう。現に彼の屋敷には私と彼を繋ぐものは無く、彼も血龍眼を見せず自身の術も戦闘訓練での怪我を治す医療忍術しか使わなかった。

 「ずっと前から……なんとなくだけど」
 「そっか……」

 彼はしばらく私から視線を外し虚空を見つめていた。そのサングラスの奥に見える瞳は、悲しげに遠い過去を見据えているようだった。

 「どうしてもっと早く言わなかったのさ?」
 「確証が無かったし、何か訳があると思ったから」

 原作知識で全部知ってるとはさすがに言えない。
 彼はまた何か思いふけた後、再び大きな溜め息をつく。そして私に近づき、未だ震える私の頭に優しく手をのせた。

 「ごめんな。バカな親で」

 それから彼は過去を話してくれた。大方原作と同じ内容。本人から聞ける分より詳しかった。原作以上の情報としては彼の妻、私の母について知れたことだろうか。よほど愛していたのか、妻の話になると止まらなくなっていた。

 ただその話の中に私にとって非常に影響のある情報が一つあった。母も低身長だったらしい。……成長は諦めよう。そう思った。

 
 それから私は彼の娘、御屋城チノとして生活し始めた。とは言っても公にではない。何故なら急に娘贔屓にされると今までの仲間に申し訳ないからだ。だから彼のコレクションの一人としての生活は続いた。これは私から父、御屋城エンに言ったことだ。

 ただ変わったことももちろんある。父と共に過ごす時間が増えた。戦闘訓練は継続しているし、彼の実務も以前に増して手伝っている。父と過ごす時間が増えて変わったことと言えば、彼自身に修行を付けてもらっていることだろうか。基礎的なことから、血之池一族の術、医療忍術を学んでいる。

 コレクションの仲間には、私がエンのお気に入りとなったと思われているらしい。そりゃあ実の娘だからね。こんな可愛いからね。

 そして父との確執を取り除いた今、私にはやるべき目標ができたのだ。今の目的は父の抱えるコレクション、血継限界を持つ忍の解放である。そのことについて父に話したこともある。実の娘に言われて検討してくれたのか、彼らの生活待遇は少し改善した。しかし、今すぐ解放は現実的に無理だとも言われた。


 元々彼らのほとんどはその特異故に、行き場を失った者たち。中には父がろくでもない方法で連れてきた者もいるが、大方は住んでいる場所を追われた者たちなのだ。今解放しても行く当ては無く、別の人の物になるのは明らかだった。


 世界が変わらなければ、彼らの様な者は自由に生きていけない。原作で言うなら第四次忍界大戦が終わった後の、忍の意識が変わった後でなければ彼らに居場所は無いのである。
 
 よって、私の目標は少し手順を踏まなければならない。第四次忍界大戦を終えなければならないのだ。


 本来なら戦争も止め、世界を平和に……と、息巻きたいところだが、私一人の原作への影響度などたかが知れている。うちはオビトやうちはマダラを止めることはできない。むしろ第四次忍界大戦を起こしてもらわなければ、私の望む平和にならない。あの全忍が協力せざるえない状況を作るしか平和の道は見えない。

……必要悪とはよく言ったものだ。まさに王道バトル漫画。


 ただ、私も戦争で大勢の人が死ぬのを許容できるわけではない。第四次忍界大戦を起こした上で、死者を限りなく抑える方法は……うちはオビトに輪廻転生の術を使わせること。

 実際に彼はナルトたちとの戦いで自分を取り戻し、輪廻転生を行おうとした。原作では黒ゼツに操られ、マダラを復活させてしまうことになるが。

 まぁ、具体的な方法はゆっくりと考えよう。まだ第四次忍界大戦までかなりあるはず。まずは自分を鍛えることから始めよう。力が無い者がいくら吠えても何も変わらないからね。



◆◆◆◆◆◆◆


 約三年間、父の指導の元忍術の修行に励んだ。彼は一族を全滅させた程の腕を持っており、引退した今でもかなりの実力を持っていた。能ある鷹は爪を隠すとはまさにこのことだった。

 
 さて私の修行の成果というと、チャクラコントロールは並の忍以上とのこと。血継限界の忍術や医療忍術を習得する上で必須の能力だったが、私には才能があったようだ。

 私の血継限界の能力の一つ、血龍眼もある程度使いこなせるようになった。幻術に特化した瞳術眼で、普通の写輪眼になら幻術で負けないそうだ。もちろん個人差はある。

 付け加えるなら写輪眼には万華鏡写輪眼など強力なのもある。万華鏡写輪眼にはおそらく幻術でも勝てない。良くて互角かな。

 使えるのは幻術だけで、技の解析もコピーもできない。こう説明すると写輪眼の劣化版だ。血之池一族を追い詰めるためにうちは一族を使ったのもうなずける。ていうか写輪眼が特別すぎるだけだから。さすが三大瞳術。

 ただ血之池一族の血継限界の能力はもう一つある。血を媒介にする能力だ。原作でチノが使っていたのは池に自分の血を垂らし、水を大量にコントロールする術と、対象の血液中に自分のチャクラを流し込み、起爆人間にするという爆弾魔もびっくりの術だ。他にも自分や相手の血を使う秘術をいくつか学んだ。

 他にも自身の性質変化である水と土。……はい、水と土で木遁って思った人、後で地獄谷ね。私転生特典とかこれといって無いからね。この世界の主人公じゃないから。

 後は分身や口寄せなどの基本的な術、医療忍術なども取得できた。ただチャクラ量はあまり多くない。むしろ主要な原作キャラが多く持っているだけ。螺旋丸とか千鳥とか、チャクラを扱う身になった者からしたら、なんであんなにポンポン使えるのって感じだ。私はいたって正常量である。

 また、体術はこれっぽっちも上達しない。まず体格が絶望的に終わっている。チャクラを纏えば多少ましに戦えるだろうが、基本接近戦はしない方が良いだろう。

 とまぁ、細々と成果を出しながら私は十五歳になった。ちなみに成長は止まった。……もう気にしない。


◆◆◆◆◆◆◆


 修行が実を結び始めたことを実感しだしてから半年間、私はとある準備に追われていた。調べたところ、今は原作スタートからおよそ五年前である。原作から五年前と言えば、イタチがうちは一族を虐殺するころである。確か今年イタチは十三歳。

……イタチってあの顔で私より二歳年下だったんだね。

 ちなみに準備と言っても、うちは一族全滅を回避するわけではない。現実的に無理だ。有名でもなんでもなく、どこの里にも属さない私が干渉できることは何もない。

 さらに言えば、私はうちはという一族を助けるつもりはない。そこまで気にしていないとはいえ、血之池一族を追い込んだ一族だ。うちはもうちはで悲劇の一族だが、そのうちはに悲劇を作られたのが私たちの一族だ。ただの善意で助けるつもりはない。

 先の二つも理由の一因だが、一番の理由は別だ。私は原作と乖離してしまう行為はしたくない。私が目指すのは第四次忍界大戦後の平和な世界だ。それまで私はコソコソと活動するつもりでいる。

 私が下手に動いて未来(ものがたり)が大幅に変化してしまうと困るのだ。私は物語の終盤だけ改変しようとしている。原作よりももっといいハッピーエンドを迎えたいのだ。

……願わくば私のこれからの行動が、バタフライエフェクトを起こさないことを祈るのみである。



  今回はこの作品の説明なのでつまらなかったと思いますが、最後まで読んでいただき誠にありがとうございます。次も見ていただければ幸いです。


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2話

 「はぁ?!……旅に出る?」

 私は父、御屋城エンに旅に出たいことを告げた。その反応は予想していたものだった。十五歳の忍はこの世界では一人前の年齢だ。彼が驚くのはきっと私が血継限界だからだろう。

 「ダメダメ!チノはまだ子供なんだから」

 前言撤回……違ったようだ。どうもこの三年間で彼の親バカには磨きがかかった。というより、彼は私を実年齢より低く見ているのではないか?そう思えるほど子供扱いしてくる。

 「もう私も成長したんだよ?やりたいこともあるしさ」
 「と言ってもね〜……ほら、僕達は少々特殊だからさ」
 「血継限界だから危ないって?」
 「そうそう。どうせ護衛も付けずに一人で行くつもりでしょ〜?」
 「護衛ならいるよ。『口寄せの術』」

 私は親指の皮に歯で小さな傷を付け、少し血で汚れた手で印を結ぶ。すると私の頭の上で小さな煙がポンっと爆ぜた。

 自身の血で契約した動物や道具を呼び出すことのできる忍術、それが『口寄せの術』だ。チャクラ量は呼び出すものの質量や大きさに依存する。ちなみに私にとって得意な術の一つである。

 呼び出されたのは一匹の鼠。鼠は小さい忍装束を纏い、背中には小さな巻物を掛けている。野生の鼠よりも少しデフォルメされている鼠だ。夢の国程じゃないけどね……ハハッ。
 

 「お呼びでしょうか?ご主人」

 頭の上に現れ、後ろ足二足で立つ鼠が私に尋ねる。名前は(のり)、愛称はノリさん。由来はもちろんチューである。ノリさんを見て父はサングラスの奥の目を細める。

 「……護衛?」
 「そう、護衛」

 彼は渋い顔をしているがノリさんは結構有能である。人語を話せるし、小さい体で偵察潜入も出来る。さらに鼠たちの大将のような立場らしく、周囲の鼠の協力を得ることができる。私がこれからしようとしていることにはうってつけの口寄せなのだ。

 「はぁ〜、どうせ言っても聞かないんだろう?……それに僕にはチノを止める権利は無いからね〜。僕も好きなことしてるし…………気をつけなよ」
 「うん」
 「ところでどこに向かうんだい?」
 「色々な所に行くつもりだけど、最初は火の国に行くよ」

 その後、父から武具や食料、路銀などをねだってふんだくった。さすが親バカ、なんだかんだで甘い。

 さて、目指せ木ノ葉隠れの里。


◆◆◆◆◆◆◆


 道中は特に何事も無い。確かに私は血継限界持ちだが、それが世間に知れ渡ってるなんてことは無いからだ。父の元で隠されたように育てられたのもあるが、一番は血之池一族の知名度だろう。血之池一族を知る者は、一族を追い詰めた雷の国の一部の人間。うちはや日向とは違い今を生きている一族ではない。故に、知っている者の中でも既に滅亡したことになっている。

 だが目立ってなかったかと言われればそれも違う。フード付きのコートを着ているとはいえ、この身長と顔だ。度々子供の一人旅は危ないよと、窘められるのだ。恐らく齢十歳未満だと見られているのだろう。その度に説明するのは疲れた。


 ただその疲れを忘れるように私は道中感動していた。思い返してみれば、今私は『NARUTO』の世界を旅しているのだ。ファンとしてはこれほど感動を覚えることも無いだろう。

 転生してもう十五年。今更かと思うが、私はその間ずっと父の屋敷で、半ば軟禁状態だった。護衛の際に少し出ることはあっても、自由ではなく常に緊張感を持っていた。こんな気楽に『NARUTO』の世界観を味わえたのは今回の旅が初めてだ。


 そんなわけで私は今木ノ葉隠れに続く道を歩いている。あともう少しで木ノ葉隠れを守る感知結界があるのかな。……全くもって見えないけど。

 木ノ葉の里を常に覆っている感知結界は空中、地下含めて球状をしている。木ノ葉の上忍や暗部が結界をすり抜ける暗号を持っていたはずだ。

 私は暗号を持っていないが案ずることは無い。暗号を持っていない者が入れないというものではないからだ。明確な理由と証明があれば里には比較的安全に入れる。木ノ葉は他の国や他の里からも依頼を受けるし、観光客も受け入れている。

 堂々と感知結界を越え、木ノ葉の里へ近付く。原作で見たことが何度もある『あ』『ん』の大きな門が見えてきた。デカっと門を見上げて口を開けていると、門の近くから声をかけられた。

 「お嬢ちゃん、木ノ葉の里に何か用かな?」

 話しかけてきた人は、なんと言うかあまり特徴が無い人だった。原作でも記憶に無い。

 門番といえば髪はぼさぼさで目の下あたりを包帯で隠しているのが特徴の人だったような。えーっと、あの人顔は覚えているんだけどな〜。誰だったかな〜?まぁ、ここにいない人の名前は置いといて……。

 私はフードを捲った。門番には顔を見せる必要がある。ぶっちゃけ変化の術とかでなんとでもなりそうだけどね。

 「私、お嬢ちゃんって歳でもないよ。それより貴方が門番さん?」
 「あぁ、そうだが。親御さんやお連れの人は?」
 「だからぁ、私はそんな子供じゃないって……はいコレ」

 私がポーチから取り出し渡したのは里に入る許可証。本来はここから手続きをする必要があるのだが、よく里を訪れる商人や、依頼におけるいわゆるお得意様には、里に入るのがスムーズになる様にこの様な許可証が与えられる。もちろん里との一定の信頼関係と利害関係は必要だ。

 私の父は商人だ。ただしその前に、死の、がつく武器商人だが。小さい組織を初めとして、五大国にも武器を売っている。そのコネで私は木ノ葉の里へ入ることにした。ねだったらすぐ作ってくれたしね。

 何を取り扱っているかは伏せているが、私は商人の部下として、里での市場調査を名目に許可を得る手筈だ。

 「…まさか十五とはな」

 門番のボソッとした声に私の耳は反応した。人の耳は聞きたくない言葉ほど敏感に反応してしまうものである。私のほっぺたは無意識に膨らんだ。許可書には偽名を書いているが年齢は変えなかった。

 「何か文句ある?」
 「ははは……」

 門番は苦笑いを浮かべてその場を流そうとする。私も里に入る前に揉めるのもあれなので、怒りを収めることにした。

 「よし、通っていいぞ」


 祝、木ノ葉隠れの里!やっぱ心躍るね〜っと、浮かれている場合じゃなかった。私はポーチから木ノ葉の簡易的な地図を取り出し、それを広げながら声を出した。

 「ノリさん」

 私が呼ぶと、コートの隙間から私の頼れる愛鼠こと、ノリさんが出てきた。するすると右肩にたどり着いたノリさんが尋ねる。

 「御命令ですか?」
 「うん」

 私は声を潜めて伝える。

 「木ノ葉のうちは一族の居住区、それと南賀ノ川付近の鼠を掌握するのにどのくらいかかる?」

 地図を見ながらノリさんは思案する。少しして答えを出した。

 「この広さなら、一日あれば充分かと。この場所で何を調べたら良いでしょうか?」
 「うちは一族の会合について」
 「かしこまりました」

 要件を聞くとノリさんは肩から飛び降り、空中で四回ほど回転しながら地面にスタッと着地した。……かっこいい。その後、とっとこと建物の隙間へ走っていった。……可愛い。
 

 さて、私はどうするかな〜。情報が無いと動けないし、情報はノリさんが集めに行ったし……従者が優秀だと主はすることが無いのよね〜。

 あてもなく目的も無く、ぶらぶらと木ノ葉を巡ることにした。火影の顔岩を見て、ちょっと早めの昼ご飯として一楽の美味しいラーメンを食べて、食後に美味しい団子を食べた。

 それだけでもファンとして満足なのだが、どこか物足りない。理由はわかっていた。せっかく木ノ葉に来ているのに原作キャラに会わないのだ。まぁ、原作スタート前だから主要なキャラが少ないのはしょうがない。……あっ、そっかこの頃はアカデミーにいるのか。そりゃあ会わないわ。そうなれば急げ、火影の顔岩。


 火影の顔岩のすぐ下に忍者養成学校こと、アカデミーが存在する。アカデミーの目的は、本来忍者を作ることではなく「身の丈に合った任務を受けられる審査機関を作る」という考えの元、二代目火影の頃に設立された。忍者の階級制度及び任務ランク制度として確立され、そうした任務を遂行できる下忍を擁立するためのシステムの一つである。

 入学条件は1.里を愛し、その平和と繁栄に尽力する者であること。2.不撓不屈の精神を有し、たゆまぬ努力と鍛錬を行う者であること。3.心身ともに健全であること。以上三つである。

 「むぅ……誰もいない」

 アカデミーに近い建物の屋上から、校庭を見つめるが授業中なのか人っ子一人いない。つまらないなぁ。今はお昼過ぎ、もうちょっと待ってみようか。


 しばらくすると校舎からたくさんの忍者の卵が出てきた。その中には原作キャラもいる。私が見ておきたかった二人もその中に。未来の英雄二人。うずまきナルトとうちはサスケだ。ナルトがサスケに突っかかっている。サスケの周りにはファンであろう取り巻きの少女たちが。その中には春野サクラと山中いの、その集団に隠れるようにしてナルトを見つめる日向ヒナタの姿もそこにはあった。

 「平和だな~」

 子供たちが遊んでいるのを見るとやはり和む。この身はまだ十五だが、前世での記憶が少し残っている私は少し精神年齢が高いのだろうか。……中身だけ大人、どこかの名探偵かな。それにしても今の主人公たちはかわいいな~。それが数年後には殺伐とした世界に生きていくことになるのか。サスケなんて何があったってくらい変わっていくから。……強く生きてね。……まぁ、ほっといても勝手に強くなっちゃうんだけど。

 「さてっと」

 いつまでも子供たちを見ている訳にはいかない。そろそろノリさんに頼んだことも終わるだろう。私の本来の目的に切り替えなくては。


 「『口寄せの術』」

 日が暮れた後、適当に借りた宿屋の部屋のベットに座りながら、私はノリさんを口寄せした。ポンッという小さな音と共に、私の膝の上にノリさんが現れた。

 「首尾はどう?」

 ノリさんは私の顔を見上げながら成果を教えてくれた。まず、うちは一族の居住区と南賀ノ川付近の鼠の掌握は完了。今鼠たちはうちは一族の言動に目を光らせているようだ。壁に耳あり障子に目ありというが、こうなれば何処にも鼠あり状態。しかも、本人たちは気にも留めない小さな監視者たちだ。

 「それと会合の件ですが、近日中に開かれるとのこと。それも最近は頻繁に開かれているそうです。南賀ノ神社の敷地を住処にしている鼠の確かな情報です」

 まだ数週間、長くて数ヵ月間程余裕があるかと思えば違った。うちは滅亡の明確な日付がわからない以上ここだけは運の要素だったが、私はぎりぎりのところで木ノ葉に到着したようだ。間に合って良かった。

 「それから居住区でクーデターや革命といった不穏な会話が交わされているようです」

 うん、流石私の愛鼠。有能すぎる。なんで忍の皆さん諜報に鼠使わないのだろう。主要なキャラが使ってなかっただけかな。

 「ありがとうノリさん。はい、ご褒美」

 私はポーチから今日買っておいた小さいチーズを取り出した。ノリさんの今までのきりっとした目が急に輝きだし、細い尻尾をぶんぶんと振っている。

 「いえ、拙者はそんな大したことは……」
 「はいはい我慢しなくていいから。全然隠せてないし」

 犬も顔負けの様に尻尾を振るノリさんに、掌に乗せたチーズを近づけた。何度か私の顔とチーズを見比べた後、小さい口でそれを頬張る姿はとても愛らしい。


 ノリさんとは一年前に出会った。父のお屋敷の調理場でこっそりと食料を食べていたところを私が発見。その姿が可愛くて最初見逃し、次に会った時に私がチーズをあげると懐いた。珍しく人語を話せたので契約して口寄せ動物に。まさかここまで有能になるとは思いもしなかった。

 ノリさんのおかげで私の目標に筋道ができたと言っても過言ではない。その為にまずは……うちはシスイを救出する。


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3話

感想やお気に入り登録ありがとうございます。これからも見ていただければ嬉しいです。


 うちはシスイを助ける。それも私の目的の為に原作に触れないように。幸い、原作でもシスイの死体は見つからない。彼を匿うだけでいいのだ。とはいえただ匿うだけでは意味が無い。これからは彼の力が必要だ。その為に少々考えることがある。

 「写輪眼をどうやって手に入れるか……」

 シスイは両眼を失う。一つはダンゾウに奪われ、一つはイタチに託して。

 最強幻術『別天神』(ことあまつかみ)。相手の脳内に入り、己の意志であるかのように疑似体験させ、術にかかった者は操られていることにすら気付かないという、瞳術でも最高クラスの万華鏡写輪眼。

 平和を願い情に厚い忍だが、別次元の力を開眼したが故に、原作では自ら命を絶つ悲しき忍。自分の力と「『陰から平和を支える名もなき者』それが本当の忍である」その意思をイタチに託して、彼は非業の死を迎える。原作で最も私が忍らしいと思えたのがシスイという男だった。

 だからこそ彼の力を借りたいと思った。そして彼の十全な力を借りるには、彼自身の眼を取り返すか、代わりの写輪眼を探す必要がある。

 もちろん一番は本人の眼を取り戻せればいいのだが、持っている相手が相手だ。忍の闇の代名詞とまで言われるダンゾウ。そしてうちはイタチ。

 ダンゾウから取り返すのは論外だ。彼の持つ組織力と力は私では太刀打ちできない。イタチの方は私が敵じゃない事を説明できれば、シスイの眼を返してもらえるかもしれない。

 しかし、タイミングが悪い。イタチがようやく決意した覚悟に水を差してしまいそうだ。決意してシスイを殺し、一族を皆殺しにした後で、シスイは生きてるから写輪眼返して……うん、殺されそう。それに私はまだ第三者もいいところだからね。

 となると代わりの写輪眼がいる。誰からどうやって取るか……何か私今、結構物騒なこと考えてるな〜。だいぶNARUTOの世界に毒されてきたかも。

 ダメダメ。思考がズレてきた。……生きた写輪眼使いからはリスク高いから、やっぱりイタチが一族殺す時に誰かの取るしかないかな。……完全に火事場泥棒だけど。それにしても……嫌だなぁ。うちはイタチとうちはオビトが殺気撒き散らしている中に突っ込まないといけないのか。見つかったら……完全に死んじゃうね。

 「そうなると必要な物は……」

 ダンゾウ含む根に傷を負わされるシスイの手術場所にその道具。数日籠るための食料。眼を取る際に必要な容器と保存液などかな。

 場所は自分で作るとして、道具類はどうしようか。麻酔とかその辺に売ってるわけないし。最悪、ショック与えて気絶……やめとこ。

 医療機関から拝借するしかないかな。……借りるだけだよ。盗みはしないよ。いつか何らかの形で返すよ。言い訳にしかならないけどね。さて、そうなるともう行動しちゃおうか。ちょうど日も沈んで、盗m…じゃなかった、物を借りるには良い時間帯だからね。この近くにある病院は地図によると木ノ葉病院かな?


 そんなわけでやってきました木ノ葉病院。街灯が所々に点いており、通常の営業時間が終わったのか正面玄関は薄暗い。しかし、建物の所々には明かりが付いており入院患者や研究者、医者や看護師がまだ居ることはわかる。

 ん〜どうやって入ろうかな。普通に入ったらまぁ見つかるよね。ここ普通の医者から忍医もいるし。警備だってしっかりしてるだろうし。まぁ、困った時は……

 「ノリさんよろしく」

 それだけ伝えると私の肩から飛び降り、そそくさと木ノ葉病院に走っていく。ノリさんは院内に入り、人目につかない部屋や場所で合図をくれるはずだ。

 私も病院から少し離れる。近くにあった建物の隙間へ、見つからないように注意しつつ身を隠す。……誰も見てないよね?

 ちょうど身を隠したところで、私の右の手の平が暖かみを宿す。手を開くとチャクラが活性化されており、そこには''完''の文字が浮かび上がっている。これがノリさんからの合図だ。

 ノリさんは背中に小さな巻物を背負っている。私のチャクラを込めているそれは、開けてノリさんの持つチャクラを通すと、私の手に合図を送るようになっている。そしてそれはただの合図だけではなく、もう一つ重要な役割がある。

 「『逆口寄せの術』」

 右手を地面に当て、私の得意忍術を行使する。ノリさんの持つ巻物のもう一つの役割とは私の術のマーキングだ。……本当はノリさんに逆口寄せの術をやってほしいのだが、ノリさんはネズミだ。仙人でもないためチャクラは微々たる量しかない。とても人間サイズを口寄せできる力は無いのだ。鼠の仙人とかいないのかな?

 話を戻し、私は特定の条件で自ら逆口寄せの術をし、ノリさんの元へ飛べるようになった。……一応、これも時空間忍術だからね。飛雷神の術とかと比べると見劣りするかもしれないけど。……原作キャラと比べないで。


 私が飛んだ先はどうやら院内の使われていない一室。箱が山積みしているから、倉庫か物置に使っているのかもしれない。この部屋には運良く様々な器具が置いてあったので少し拝借した。後は薬や麻酔なんだけど、ここには無いかな。まぁ薬は毒だから厳重に保管してあるだろう。薬品庫探さないと。

 とまぁ、その後何事も無く薬品庫を見つけて、薬類は確保出来た。警備の人にすれ違ったけど、軽く挨拶しただけだよ。……血龍眼による挨拶(幻術)をね。

 後は潜入した時と同じ手順で帰還した。これで後はその日を待つのみ。


◆◆◆◆◆◆◆


 数日が経過し、また鼠たちの情報があった。今日うちは一族の会合が行われるらしい。その為、私は今南賀ノ川に来ている。ここは原作でシスイが死ぬ場所だ。シスイが身を投げるのはこの川の崖の上から。私は崖下の川に点在する岩の一つで印を組んでいた。

 「『土遁・土流壁』」

 印を組み終え、岩に手をつける。すると小さな地鳴りとともに川下から土の壁が出来る。この術は地面や口から土の壁を作り主に防御が目的の土遁の術。今回はそれで川を塞き止めた。

 なぜなら普段の南賀ノ川の川底は浅い。こんな所に身を投げたら普通に死ねる。私の術の目的は川を深くする事。堰き止めて水位を上げ、死なない程度の深さにする事だ。……まぁこの高さから落ちるから気絶はしそうだね。

 「『水遁・霧隠れの術』」

 印を結び、川の水から薄い霧を発生させる。イタチにはシスイ救出を見つからないようにしなければならないし、こうしないと川の変化に気が付かれるかもしれない。


 後はこれでシスイが降ってくるのを待つだけだ。


 ちなみに待つのはこれで二回目。前の会合ではシスイが降ってこなかった。今度こそ降ってきて欲しい。

◆◆◆◆◆◆◆


 待ち続けて夕暮れになった。待っていると崖の上から微かに声が聞こえる。耳を澄ますとどうやらイタチとシスイのようだ。今回は当たりらしい。

 「───残念だが、もううちはのクーデターを止められそうにない」

 原作通りということか。そうでないと困るのだが、直面すると切なさがあるよね。

 「なんて顔してる。今の俺でもお前の顔は簡単にわかるぞ。……不安な表情はお前には似合わない」

 イタチに最期となる言葉をかけていくシスイ。

 「大丈夫だ。自信を持て」
 「……俺は…お前と共に、うちはを……」

 イタチの悲痛な思いが川の音に紛れて聞こえてくる。……ダメだな。感情移入しないようにしないといけないのに。この場面は……目が熱くなる。

 「……これからのお前は暗く辛い道を歩むことになるかもしれない。そんなお前の隣に居てやれないこと、申し訳なく思う。……それでも俺は、お前が木ノ葉の忍として道を外さず進んでくれると、強く信じている。だからこそ託せるんだ。俺の意思も……万華鏡もな」

 いい言葉だけど、これはイタチにとって呪いかもしれない。これでイタチの道は決まってしまった。イタチを信じているからこその言葉だろうが。

 「俺の道はここで終わる。だがそれがお前の糧となり、新たな力となる。」

 シスイ、アンタの道は終わらせない。私が繋いでみせる。この先私にも、世界にも、イタチやサスケにもアンタは必要だ。

 「さぁイタチ、今がその時だ。お前の手で己の道を開いてみせろ。……お前なら、できるはずだ」

 そして最後の最後に、まるで遊びの後に別れるように、シスイは声を出した。

 「じゃあな親友!……後は、任せたぞ」

 来る!シスイが着水すると同時に助けられるように、先に川へと入る。ダンゾウに襲われ傷を負ったシスイが、着水の衝撃に耐えられるか、そこは天に任せるしかない。シスイが落ちる際にキャッチしようかとも思ったが、それではイタチにばれてしまう恐れがある。イタチにはシスイの死を見届けさせる必要があるのだ。

 
 大きな水飛沫が上がる。そこを目掛けて泳ぐと、水中に漂うシスイを見つける。どうやら動く気配がない。死んでいるのか、気絶しているだけなのか。

 シスイの元にたどり着く。辺りには彼の目や傷口から染み出た血が漂っている。体を揺らし意識を確認する。反応は無い。急いで彼の胸に手をあてる。服の上、なおかつ水中という事で反応はわかりずらかったが、微かに鼓動は感じられた。

……鼓動が弱い!急がないと!

 急いで彼の肩に手を回し、印を結ぶ。

……逆口寄せの術!

 私たちは水中から飛んだ。飛ぶ先は今まで泊まっていた宿屋ではなく、シスイを匿うに適した場所。私は土遁の性質変化を持っているので、地中に隠れ家を作った。場所は火影の顔岩の後ろの崖。灯台下暗し感出るでしょ。

 「ご主人?!そんなずぶ濡れで一体何処に?!」

 逆口寄せのマーキングとして隠れ家にいたノリさんが、私の姿を見てあたふたしている。その姿を愛でていたいが今はそれどころではない。土で作られた硬いベッドに布を敷き、そこにシスイを寝かせる。

 不安になったのでシスイの胸に耳をあてた。やっぱり弱い。傷と着水時の衝撃でだいぶダメージを受けたようだ。

 シスイが身に付けている物を取り外し、症状を確認していく。体のあちこちが骨折や脱臼で腫れている。何よりも大問題がある。呼吸が止まっているのだ。

 人間の舌は意識を失うと咽頭に落ち込んで気道を塞いでしまう。気道を確保する為、片手を額に当て、もう一方の手の人差し指と中指を顎の先にあて、頭を反らせるように持ち上げる。そしてシスイの口元に耳を近づける。しかし呼吸音は無い。こうなってしまったらあの処置しなければならない。

……人工呼吸だ〜。私のファーストキスが〜。

 私は羞恥心を押し殺し、人工呼吸を始める。これでも医療をかじっている身だ。今は羞恥心よりも目の前の生命を救う方が先決。胸骨圧迫と人工呼吸を繰り返し、どうにか呼吸は元に戻った。

 後は全身に掌仙術をかけまくるだけ。このダメージだと私のチャクラ量じゃ完治まで持たない。後はシスイが持ち直せるかにかかっている。

 私の体力とチャクラが続く限り、シスイを治療を施し、私は意識を失った。



明日は……投稿できるかなぁ……


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4話

やっぱり……昨日はダメだったよ……

感想やお気に入り登録ありがとうございます!励みになります。

注意)今回視点がコロコロ変わります。


 体中に痛みが走り、俺は意識を覚ました。最初に感じたのは、何故俺が生きているのかという事だ。俺は確かに死ぬはずだった。一瞬ここはあの世なのかとも思ったが、両眼の空洞感と全身の痛み、それが現実である事を主張する。

 ひとまず状況を確認していく。といっても何も見えない漆黒の中だ。手で自分の体と周囲の感触を探るしかない。動かせる手は右腕だけ、その右腕も動かすだけで胴体にまで軋む様な痛みが響く。

……布の上に寝かされ、処置も施されている。敵方に捕まった訳ではないのか?いや、希望的観測過ぎるな

 人は視覚からの情報に頼り過ぎている。それは忍者とて変わらない。情報の八割強を視覚から得ている。それを失った今、他の感覚を研ぎ澄まさなければならない。

 嗅覚で土の匂いを感じた。耳は特に何も聞き取れない。人の声も風の音も拾い取れない。肌も風を感じることは無く、あるのは包帯の布の感触だけだ。

 土の匂いから外かと思えば、風を感じず、人の気配も無い。……情報が少な過ぎる。他には何かないかともう一度右腕を動かす。先程より遠くを触るため、痛みを我慢し腕を伸ばす。

 すると先程感じなかった感触を感じる。それはまるで綺麗な繊維。そしてそれが球体を包んでいる。それを撫でるのが心地良い。

 「……人の頭撫でて楽しいかな?」
 「うぉっ?!痛っ!」

 驚いた。心臓が跳ねた。それに連動して全身に痛みが走る。聞こえてきたのは幼い女の子の声。という事は今まで俺は女の子の髪を撫でていたのか?

 「ふぁ~〜、おはよう。ようやく目覚めたね。気分はどう?」

 女の子は欠伸をすると俺に挨拶した。もしかすると彼女は今まで寝ていて、それを俺は起こしてしまったのか?いや、今はそれよりも……

 「俺を助けてくれたのか?」

 彼女の質問の返答になってないが俺は尋ねるしかなかった。今の状況を早く把握する必要がある。……決して今さっきの行為を流そうとか思ってないぞ。

 「焦らない焦らない。全部説明してあげるから」

 彼女に宥められる。この様子や雰囲気からやはり敵ではないのか。……仮に敵だとしても、今の俺に抗う手段はない。出来る事といったら、舌を噛み切って死ぬ事だけだ。

 「さてっと、まずは自己紹介だね。私はチノ。どこの国にも里にも属していないから安心しなよ。もちろん野盗とかでもないからね」
 「……本当か?」
 「本当だよ。まぁ、証明は難しいけどね。アンタの症状は全身を強く打った事による骨折や脱臼。内臓も衝撃でダメージがあったよ。両眼は言わずもがな。すぐに助けたから間に合ったけど、少し遅れたら手遅れだった」

 全身の痛みがその症状を証明していた。だが、それよりも気になる事がある。

 「……すぐに助けたのか?」
 「うん」
 「俺が落ちるところを見たのか?」
 「うん、それがどうしたの?」

 おかしい。あんな時間にたまたまあの場所にいるのは考えられない。崖上の森ならともかく、崖下の川にいるのは不自然だ。……何かの任務でもない限り。もしくは、俺やイタチを追跡してでもいない限り。

 「……俺の後をつけてきたのか?」
 「つける?どういう事?」
 「そうでもないと、あの場所にいる理由がわからない」

 「あ〜……そういう考えになっちゃうのか」

 少し雰囲気が変わった。やはり何か隠しているのか。いざという時のために、今一度覚悟を固める。一回死んだようなものだ。もう一度くらいわけない。

 「私はね……未来がわかるんだよ」

 予想だにしない答えに、俺の覚悟や警戒心はどっかに行ってしまった。


◆◆◆◆◆◆◆


 「私はね……未来がわかるんだよ」

 私はシスイの問いにそう答えた。何故あそこに私がいるか、そこまで考えが及んでいなかった。まぁ、元々シスイにはある程度の事を伝える予定だったので良いかな。

……それにしても看病で疲れて、そのまま寝ていた私を無理矢理起こすなんて酷い

 「……冗談はよしてくれ」
 「まぁ、信じないだろうね」
 「当たり前だろ」

 むしろ信じられたら怖い。この時のために自分の設定は考えている。自分は違う世界から転生してきたと言うのはさすがに信用されないからね。自分で作った新しい設定もだいぶ無理矢理だけど。

 「信じる信じないは勝手にしていいよ。……私はたまに予知夢を見ることがあるんだ。理由は私にもわかんないけどね。アンタを助けたのは予知夢を見たからさ。アンタが死ぬ夢をね」
 「予知夢……ハッ、本当に俺の夢を見たとでも?」

 シスイは鼻で笑って信じていない事をアピールしてくる。まぁね、信じないよね。妙木山の大ガマ仙人でもないただの人間だからね。

 「なら、詳しく言ってあげようか。……アンタはうちはシスイ。うちは一族一の手練。うちは一族のクーデターを止めようと自身の万華鏡写輪眼、『別天神(ことあまつかみ)』を仕掛けようとするも、ダンゾウに邪魔され失敗。同時に片眼を奪われる。うちはイタチに残りの眼を託し、イタチに万華鏡写輪眼を開眼させる為、川に身を投げた……でしょ?」

 私の原作知識を聞いたシスイの雰囲気が変わる。先程とは違い多少動揺、そして私を疑っているようだ。

 「……どこまで知っている?」
 「……信じるかい?」
 「いや、今の話は俺を監視していればわかることだ。別に予知夢じゃなくてもな……ただ」
 「ただ?」
 「もし仮に未来を見たと言うなら……この先どうなる?里と……うちはは」

 私は口を噤んだ。言っていいものか。それともわからないと答えるべきなのか。それもあるが、一番はこのあとの惨劇を伝えるのに躊躇いがあるというのが正しい。

 「……聞いてどうするの?」
 「言えないのか?」

 答えなかったら私は信用されないよね。暗に、お前は予知夢なんて見てないって事になるし。ただ、言ったとしてももうシスイに出来ることは無い。今からうちは滅亡までに身体は元には戻らない。

 「私が教えても、もうアンタにはどうしようもないよ。……それでも良いの?」
 「あぁ、覚悟ならとうの昔に出来ている」

 そりゃあそうだよね。親友の父親を幻術に嵌めようとしたり、自ら死を選んだりなんて並の覚悟じゃ出来るもんじゃない。……仕方ないかな。

 「うちは一族は二人を残して滅亡。それが事の結末だよ」
 「………イタチとサスケか?」
 「ご名答。よくわかったね」
 「そうか……あの二人は生きれるのか」

 まるで安堵する様に言葉を漏らす。本当に二人の事を大切に思っているようだ。一族が全滅するというのに、二人が生きているだけで安心している。

 「……信じるの?」
 「もっと詳しくわかるか?」

 むぅ、さっきまで信じようとしてなかったくせに。ていうか私の質問に質問で返すのはそろそろやめてくれないかな。

 「……三代目が和解策を模索しようとするけど、裏でダンゾウがイタチに二つの選択肢を与える」
 「ダンゾウがイタチに?」
 「そう。一族と共にクーデターを起こすか……弟の身を保証する代わりに、一族全滅に協力するか。この二択をね」

 本当に嫌な二択だ。イタチの場合ほとんど一択みたいなもの。原作では多少悩んでいたようだけど。

 「……イタチは……アイツはやるだろうな。サスケの為なら」
 「うん。うちは一族の名誉の為、木ノ葉の為、そして弟の為、イタチは自分の手で一族の歴史に幕を降ろす。汚名と憎しみを背負うことでね……ここまでが、今回見た予知夢の内容」

 しばしの沈黙が隠れ家に漂う。もう、こうなるってわかってたから言いたくなかったのに。

 「そうならない可能性は無いのか?」
 「もちろん無いとは言いきれないよ。私がアンタを助けて未来が変わってしまったかもしれないからね」

 
◆◆◆◆◆◆◆


 この少女の言っている事を全部信じる訳では無いが、ここまで何の根拠も無く言っている様子では無い。根拠があるか、それとも予知夢なのかはわからないが、可能性の一つとしてありえる未来だ。それもかなりの現実味を帯びた。

 特に三代目の裏でダンゾウが動く事。これは自分でも納得出来た。ダンゾウはなりふり構わず自分のやり方で里を守る気だ。アイツは初めからうちはを滅ぼすつもりだった。イタチに脅迫じみた任務を与えてもおかしくない。

……イタチ…お前は茨の道を進むのか。全てを背負って

 俺はイタチとサスケ、あの兄弟の為にクーデターなんて馬鹿な真似を止めようとした。例えどんな手を使ってでも。そしてそれであの二人に恨まれたとしてもだ。

 だが、失敗した。その尻拭いがイタチに回ってしまった。おそらくこの少女の言った未来通りなら、イタチは木ノ葉を抜けるだろう。サスケはイタチを憎むだろう。

……もう、あの二人が笑い合う未来は来ないのか

 そう思うと急に自分が情けなくなる。歯を噛み締める。拳を血が滲むほど強く握る。力むと体のあちこちが連動して痛む。でも、どんなに痛みが増そうとも、この憤りは消えてくれない。

 強く握り締める手に、柔らかな感触が乗る。少女の手だ。優しく触れられて、拳の力が抜けていく。

 「……あまり自分を責めるんじゃないよ。今は体を回復させる事だけを考えないとね」

 そう言われると体中から力が抜けていく。どうやらこの体は意識を保つのも難しいようだ。……後はイタチに任せるしかないのか。


◆◆◆◆◆◆◆


 一度目覚めた後、シスイは起きる事は無かった。数日間ひたすら眠り続けている。傷ついた体が治癒に集中しているのだろうか。もしくはこれからの現実から目を逸らしたいだけだろうか。

 そして今日はうちは滅亡の日。日付は調べなくてもわかった。今日はそれはそれは綺麗な満月の夜なのだ。

 私は動きやすく目立たない為に、暗部のような服装だ。ついでに暗部や根が使うような面も装着している。日が沈む頃、うちは一族居住区に近いビルの最上階から、コソコソ様子を窺っている。

……ノリさんがいないのが超怖い

 シスイを匿っている為、隠れ家には私かノリさんの監視がいないといけない。隠れ家が木の葉の忍に見つかるかもしれないし、シスイの容態が悪化するかもしれない。無いとは思うが、シスイが目覚めて出て行ってしまうかもしれない。

 本当はノリさんに突入させて、逆口寄せの流れで安全に潜入したかったが仕方ない。ここは私がビシッと……嫌だー行きたくない。死にたくない。



 その時が来るまでは不穏な程静かだった。大きな満月がうちは最期の舞台を照らす。……隠密ミッションには最悪の夜だ。新月の日に変えてくれないかな。

 今回の目的はシスイの代わりとなる写輪眼。一番良いのはイタチの父親、うちはフガクの万華鏡写輪眼。だがそれはかなり難しい。うちはフガクの家は居住区の中央。それに殺されるのは最後の方だ。そこまでイタチとオビト、さらにはサスケに見つからないようにしなければならない。……うん、無理。

 普通の写輪眼が手に入ったら撤退しようかな。万華鏡写輪眼は運が良ければ程度で。写輪眼も一部の人しか持っていないからね。死体の一つ一つの眼球を確認していく必要がある。


 しばらくするとイタチが暗部服で居住区の入口に現れた。もうすぐ始まってしまう。転生してからの人生で初の修羅場に鼓動が早くなる。誰にも見つからないように、建物の隙間に降り立つ。

 「『土遁・土竜隠れの術』」

 チャクラによって身に触れている地面を細かい砂に変え、地面を進む術。潜入や逃走に便利な術であり、作中ではデイダラや、彼と組んでいた時のトビが使用していた術でもある。感覚的には地面を泳ぐ感じ。チャクラコントロールを乱せば、地面で溺れるという珍な体験をすることが出来る。

 この術を使い、うちは一族の居住区に侵入する。地面の下に隠れ、ただその時を待つ。




 静寂を切り裂くように、女性の悲鳴が上がる。それを皮切りに老若男女様々な悲鳴が地上から聞こえ始めた。しばらくそれを聞きいていると、徐々に悲鳴が遠くなる。

 私は息を潜め、地上に出る。改めて感じる外の空気は、術で潜る前と全く違うものだった。濃厚な血の匂い。そして全身の毛が逆立つような強い殺気。

 初めて近くに感じる死の気配。私は震える手足で最初の死体へと駆け寄った。



最後まで読んでいただきありがとうございます!


※タグにいろいろ追加しました。特に変化はありません。保険ってやつですね。


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5話

どういう事だ?!
評価バーに色ついてる!
ランキングに載ってる!
幻術なのか? …… イヤ…幻術じゃない……! ……イヤ、幻術か? ︎また、幻術なのか…イヤ… なんだこれは ︎?!

感想、お気に入り登録、評価ありがとうございます!


……怖い!怖い!……怖いっ!

 イタチとオビトの殺気が全身を襲う。体が強張り、手足は小刻みに震える。私の意思では止められそうにもない。

 私だってもうこの世界の住人だ。父の護衛時に命を賭けた戦闘も命を奪った事も少なからずある。何度も自分の命の危機もあった。……でも、それはぬるま湯だと思い知らされた。

 今この場に撒き散らされている殺気は、これまでと比べることも出来なかった。これが本当の殺意という事を否応なしに、私の本能に刷り込まれる。

 呼吸をするのが怖い。息遣い一つで死ぬかもしれない。動くのが怖い。体が動くのを拒否しているようだ。……それでも動けるのは、早く事を済ませたいからだ。体を叱咤し、身を潜めながら行動する。

……一人目…………違う。……二人目……これも違う

 遺体へと近づき、瞳を確認する。その色は黒く絶望に染まっている。死んだ際に瞼を閉じている死体は、小刻みに震える指で開いて確認しなければならない。この僅かな動作もしたくない。

 老人や子供、女性の死体は無視だ。写輪眼を開眼している可能性が高い成人男性を中心に確認していく。

 眼を確認するという事は、その死体の顔を見てしまうという事。そのどれもが恐怖に染まっていた。子供を庇って死んでいるの親の死体。男女で折り重なるように死んでいる死体。妊婦のお腹が突き刺された死体。様々な死と絶望がそこにはあった。

 もう二十を超える死体を見て、十を超える眼を確認した。しかし写輪眼を持つ者は見つからない。そろそろ脱出しないと身の危険もそうだが、心が持たない。今も吐き気をこらえている。常に感じる殺気と広がる惨劇に、心が悲鳴をあげている。

……こうなるってわかっていたのに

 覚悟が足りなかったのか。死の経験が足りなかったのか。それとも心がまだ幼かったのか。

……いや、こうなるってわかっていたから

 私はその考えを飲み込んだ。これ以上この場でソレを考えてしまっては、動けなくなりそうだ。

 そんな中、とある一軒の家の居間で三体の死体を発見する。父親と母親と子供だろう。父親の眼を確認するために、死体に近づく。でもそれは誤りだった。

 「ゴボッ……」

 突如発生したその音に私の体は跳ねた。どうやら父親と思われる死体は、生きていたようだ。喉を切られているので、もうすぐ死ぬだろう。

 その人は私を睨みつけていた。私が探していた赤い双眸で。こちらも幻術対策に血龍眼を発動する。そしてまだ生きている男に近づき、クナイを心臓に深く突き刺した。確実に殺した。


 その瞬間、私は本当の意味で心を殺すという事を知った。いや、私の心が耐えられなくなって、心の自衛の為勝手に死んだだけだろう。

 それから恐怖が無くなった。死者に対する哀れみも、悲しみも感じない。機械のように淡々と医療忍術で写輪眼を取り出す。それを保存液が入った容器へと入れる。

 眼をくり抜かれた男の死体には何も感じなかった。罪悪感も後悔も無い。


 目的を達した私は逆口寄せの術で隠れ家に戻る。壁に背を預け、そのまま座り込んだ。視界の端でノリさんが私を心配そうに見つめている。それを自覚した時、私の心は元に戻った。

 体に付着した返り血を見ると、今さっきまでの体験を鮮明に思い出した。また震えが止まらなくなる。吐き気が込み上げてくる。ここにはイタチもオビトもいないというのに。

 なぜここまで嫌な気分になるのか。それは少し考えれば理解出来た。別に死体を見た事が原因じゃない。殺気にあてられた事も原因だが、これはただの引き金だ。本当はある考えがよぎったからだ。

……わかっていた……あの惨劇は。私はそれを黙認した。未来の為にと、あの犠牲を許容した……知っていて見捨てた

 うちは一族の滅亡を私がどうにかできるはずがなかった。でも、多少出来ることはあったかもしれない。一人でも二人でも逃がすことはできたかもしれない。

 でもそれをあえてしなかった。未来が変わると困るから。未来が変わってしまうのが怖かったから。あえて見捨てた。そのくせシスイだけは助けて。

 原作と違い、もう彼らはもうモブなどではない。れっきとした一つの命だ。私は原作キャラ以外を軽視してしまっていた。物語ではない現実となった今、どの命も等しいというのに。




……まるで私が命の選別をしている







  ………………もう疲れた










 「……主人……ご主人」

 耳元で私を呼ぶ声が聞こえる。いつの間にか寝ていたらしい。私の肩に乗ったノリさんが私を起こしたようだ。起きたくはなかったが、仕方なく反応を返す。

 「……どうしたの?」
 「シスイ殿がお目覚めになりました」

 そっか、シスイが目覚めたのか。本当は眠っている間に写輪眼を移植しておきたかった。そういえば私はどれくらい寝てたのだろう。

 「ノリさん……今は朝?」
 「いえ、昼でございます」
 「……そう」

 それだけ返した。昨日ほどではないがまだ気分が悪い。だが、シスイを放っとくわけにもいかない。重たい体で無理矢理立った。

 「ご主人……」

 ノリさんがいつもと違い、消え入りそうな声で私を呼ぶ。ダメだな、心配させてしまった。私は笑顔を浮かべて、大丈夫だよとノリさんを撫でた。

 寝起きということで手鏡で顔を見る。……酷い顔だ。せっかくの可愛い顔が台無し。何より目付きがやばい。顔でも洗ってくるか。




 「やぁ、調子はどう?」

 前と変わらぬ口調で寝たきりのシスイに声をかける。数日間ぐっすり寝たためか、怪我はだいぶ治っている。その間ずっと私が掌仙術を施していた。治って貰わないと困る。

 「かなり良くなった。多少なら動けそうなくらいにはな」
 「そりゃあ良かった。でも、まだ安静にね。今は治りかけの段階だからさ」
 「あぁ、わかっている。……なぁ、俺が寝ている間に……どうなった?」

 正直言って答えたくない。いや、思い出したくないが正しいのだろう。だが説明するしかない。ありのままに。

 「変わらないよ。うちは一族は昨夜滅亡した。表向きには二人の生き残りを残して……そして、イタチは木ノ葉を抜けた。イタチは任務を完遂したよ」
 「……そうか」
 「それから伝えておく事がある。私はそろそろ木ノ葉を離れる。……シスイはこれからどうする?」

 一族は滅亡。イタチも木ノ葉を抜けた。そして何より、ダンゾウと敵対してしまった。シスイが生きているとわかれば手を打たないわけがない。……それはシスイもわかっているはずだ。




 「もし良かったら、私と一緒に来ない?」


◆◆◆◆◆◆◆


 俺が目覚めると、うちは一族は滅亡していた。俺は……何も出来なかった。体はある程度回復したが、胸の内はボロボロだと自覚する。

 「私と一緒に来ない?」

 そんな中、俺を助けてくれたチノからそう提案された。……彼女の雰囲気が、前に話した時とは少し違ったのは気のせいだろうか?


 俺に帰る家はもう無い。居場所も無くなった。イタチも木ノ葉にはもういない。俺に残されたものといえばサスケだ。イタチの代わりにサスケを見守ってやりたい。だが、木ノ葉にはダンゾウがいる。アイツは俺の存在を許さないだろう。

 三代目に報告すれば、身も保証されダンゾウの動きも抑えることができるだろう。しかし、それはそれで新たな対立を里に生んでしまう。癪な話だが、うちは一族が滅亡し里の危機は去った。今新しい溝を作るのは里に悪い影響を与える。

 それに俺が生きている事でサスケに危害が及ぶかもしれない。俺の口を塞ぐためにサスケを使うなどダンゾウならやりかねない。

 「アンタは自殺した事になっている。ある意味自由。このまま木ノ葉にいるよりかは良いと思うよ」

 チノの言う通りだ。このまま表向き死んでいた方が安全だろう。俺も、サスケも。……助けてもらったのに、今の俺には生きていく目的が無い。むしろ死んだ方が……いや、それはチノに失礼だ。

 「だが……迷惑じゃないか?俺にはもう……」

 眼を失った。忍者にとって、特に瞳術使いにとって、それは戦う力を失ったも同然だ。盲目で戦う忍もいるようだが、それは特殊な能力か長年の訓練が必要。今からではとても身に付きそうではない。

 「……ここに写輪眼がある」
 「なっ?!お前それ……まさか?!」

 うちは一族が滅亡したタイミングで、ここに写輪眼がある。それはつまりその時に取ってきたという事だろう。

 「うん、昨日の夜取ってきた……今思えば、行かない方が良かったけどね」

 うちは一族にとって眼を取られるほど屈辱的な事は無い。だが、その行為は俺の為だ。眼があれば俺はまた……

 「これがあればアンタは完全とは言えないけど、また忍として生きることが出来る……ただ条件がある」

 写輪眼ともなればどこの里も欲しがるものだ。それを対価に彼女は俺に何を望むのか。

 「これから私のする事を手伝って欲しい」
 「……何をする気だ?」

 今更彼女は木ノ葉やサスケを害する行動はしないだろう。余程の事じゃない限り手伝う気でいる。助けてくれた恩くらいは返さなければならない。

 「どこの国にも、どこの里にも、どの組織にもの属さない中立の情報屋。それで各国や各里に対する発言力を得たいんだ」

 情報屋。それは多くの情報を集め、信用される事が必要だ。それは生半可な事では出来ない。そして何よりも、この忍の世において情報の価値は大きい。それを大量に持つという事は、多くの国や組織から狙われる。フリーランスともなれば、どこからの手助けも無い。

 「……危険すぎる」
 「だから写輪眼取ってきたんじゃないか。私戦闘はからっきしだし」

 俺が用心棒という事か。だとしても疑問がある。

 「どうして発言力を求める?」
 「……何かあった時に、何も出来ないのは嫌でしょ。私は……ほら、予知夢で未来見えるしさ。今回のうちは一族みたいに、わかっていて何も出来ないのは辛いんだよ」

 そうか。チノは予知夢を見れるとか言っていたな。それが本当だとしたら……本当はうちは一族を助けたかったのかもしれない。知っていて助けられない、その無力感は今の俺には痛いほどわかる。

 「もしもこの先……今回みたいに大きな事件が起こる未来を見るかもしれない。それを変える事で平和を守りたいんだ」

 まぁ、私の自己満足なんだけどね、彼女はそう付け足す。この時点で俺の心は半信半疑だった。本当に信じて良いのだろうか。俺を利用する為の建前ではないのか。


 しかし、次の言葉で俺は彼女を信用した。


 「アンタには平和を支える名も無き者になって欲しい。それが私からの条件だよ」


 どうして彼女の口からその言葉が出てきたのか。目を洗われる思いだ。……今俺に眼は無いが。

 この言葉で俺は彼女の考えと能力、それが平和に繋がると確信した。自分の忍道とも繋がる。だからこそチノ(平和)を支える名も無き者になる事を決めた。



ちょっと主人公の心弱くし過ぎたかな?というよりいじめ過ぎたかな?

次回も読んでいただけると嬉しいです!


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6話

シスイ救出からあまり考えてなかったなんて、絶対に言えない!


感想、お気に入り登録、評価ありがとうございます!ぶっちゃけチノを主人公にしたから、読む人少ないだろうなと思ってた。


 シスイに嘘をついた。予知夢で平和を守るなどと言いながら、私はこれから先多くを見捨てていくだろう。未来の為という免罪符を使いながら。……第四次忍界大戦まで私の心は持つだろうか。

 いいさ、嘘つきにでもろくでなしにもなってやる。薄情にもなろう。非道な事もやってやる。今更引き返すつもりもない。

 写輪眼の移植手術は無事終わった。ついでに彼の体も確認したが、もう動くことはできる。リハビリの必要は無いが、数日間動かしていなかった体だ。無理は禁物。戦闘なんてもってのほかだ。

 手術の際に使った麻酔の効果が切れ、シスイが目覚めた。彼はスムーズに上半身を起こす。数日前までが嘘のようだ。

 「大丈夫?痛みは無い?」
 「……問題無い。それよりも、もう包帯を取っていいか?」

 眼球を移植して、まだ数時間しか経っていない。しかし、私が目隠しの要領で掌仙術をかけていた。無理な動かし方や、写輪眼を使わない限り大丈夫だろう。

 「まぁ良いかな。ただし、写輪眼は使っちゃダメ。馴染んでないと感じたらすぐに言うこと。わかった?」
 「りょーかい」

 シスイは目に巻いている包帯をほどく。そしてゆっくりと瞼を開ける。なんか相手に初めて見られると思うと、初対面みたいに緊張するね。……うん、瞳の動きに異常なしっと。


◆◆◆◆◆◆◆


 数日ぶりに俺の視界は色を取り入れた。久しぶりに瞼を開くと、うすぼけた光景が広がる。焦点が合わせにくい。普段当たり前にしていた事も、数日間できないとこうも難しくなるのか。

 ようやく焦点が合ってきた。見えたのは俺の恩人。チノが俺の顔を覗き込んでいる。声からかなり幼いと想像していたが、それよりも幼いんじゃないだろうか。イタチよりも年下だろう。

 「違和感とか無い?」
 「大丈夫だ。それにしてもお前凄いな。そんな歳で医療忍術まで……ん?どうした?」

 彼女の顔が膨れている。……何か機嫌を損ねるような事をしただろうか。俺としては褒めたつもりなのだが。

 医療忍術には必要なスキルがある。微細ともいえるチャクラコントロール。そして膨大な量の専門知識を修め、それを広く応用する頭脳と根気だ。だからこそ育ちにくい。それをチノは見た目、齢一桁なのに習得している。それは素晴らしい事だ。

 「……シスイってさぁ、歳いくつ?」
 「十五だが」
 「なんだ、同い歳か…」

 
 「…………冗談だろ?」


 「冗談なもんか。私は十五歳だよ」

 この見た目でイタチよりも二歳年上だと?!いや、俺と同い歳だと?!イタチも歳不相応だったが、チノはそれ以上だ。こんなの年齢詐称だろ。

 「……はぁー、まぁいいや。そんな事よりそろそろ出発するよ。服とか適当に用意してるからそれに着替えて。私はこの隠れ家壊して、隠蔽する準備してるから」
 「おっ、おう……」

 俺はチノへの接し方がわからなくなった。


 「お前さ、俺が写輪眼持って不安じゃないのか?」

 俺は着替えながら、隠れ家に何か施しているチノに尋ねる。

 写輪眼の畏怖されるのはその瞳力だ。幻術と催眠を一瞥で行える。それは敵だけでなく味方にも恐れられるものだ。誰だっていつの間にか操られるのは御免だ。その俺の疑問に対して、彼女は作業を止めることなく返答した。

 「んー、私はシスイ信用してるよ。じゃないと助けないもん。それに……」

 そう言って彼女は手を止めた。そして俺に振り向く。そこには俺の質問の答えがあった。


 「万華鏡じゃない写輪眼に遅れはとらないよ」


 チノの眼は血のように赤く染まっていた。そしてその眼を視認した途端、俺の意識は血の海に引きずり込まれた。……幻術だ。血の海で溺れかけたのもつかの間、俺の視界は元に戻る。幻術は一瞬だけだった。



 「なるほど……お前も瞳術使いだったのか」

 目には目を。瞳術に対抗するには瞳術が必要だ。自分が持っているなら、相手が瞳術使いでも対処出来る。もちろん警戒するに越したことはないが。

 「シスイに『別天神』があれば話は別だけどね。この眼は幻術特化の瞳術眼だよ」

 予知能力に瞳術眼、狙われる要素が多い。そのくせ情報で商いをする。鴨がネギしょって、ついでに鍋まで持っているようだ。本来チノの事はなるべく隠すべきなのだろうが、各国に対する発言力が欲しいとなると、当然知名度が必要になる。……俺一人で守りきれるだろうか。


 支度を整え、隠れ家を出る。念の為二人とも変化の術で木ノ葉の上忍風に化けている。隠れ家から地上に上り、少し歩けば火影様方の顔岩の上だ。そこから見る景色は普段と何も変わらない。うちは一族の犠牲の上に、この木ノ葉の平穏は守られた。

 「……思い残す事があるのかな?」
 「無い……と言えば嘘になるな」

 サスケの事が気がかりだ。だが、今から会うことは出来ない。次に会えるのはいつになるだろうか。そして、例え会うことになっても、シスイとして会うことはもう無い。俺はもう死んだのだから。

 「ごめんね……アンタには見守る事しかさせてやれない」
 「お前のせいじゃない。それに見守れるだけでも十分だ。……それにサスケなら大丈夫だろう。なんたってアイツの弟だからな」
 「……じゃあ、そろそろ行こうか」

 こうして俺は木ノ葉を去った。後ろ髪を引かれる思いで。


◆◆◆◆◆◆◆


 木ノ葉からの帰りは来た道ではなく、森の中を進んだ。幸いシスイは長年木ノ葉の上忍だった。感知結界をすり抜ける暗号を持っている。バレないように急ぎ、結界を抜けると次の町へと足を向けた。

 「ここまで来れば、そこまで慎重にならなくてもいいかな。体は平気かい?」

 少し急ぎ過ぎた。私も疲れたし、シスイは病み上がりだ。ここからはゆっくりでいいだろう。

 「問題無い……と言いたいところだけど、やはり鈍っている。体のキレを取り戻すのには多少時間がかかりそうだ。でも、結界を越えたなら警戒は弱めていいだろうな。後は国境を越える時に注意すればいい。一応変化はそのままにしておこう」

 今シスイは三十位の男性。私もナイスバディな大人の女性に変化している。……別に欲望とかじゃない。元の姿とかけ離れるように変化しただけだ。……うぅ、自分で変化しててあれだけど、悲しくなってきた。
 
 「さて、取り敢えずこれからどう動くんだ?情報屋っていっても、一から始めるとなると……」

 情報屋なんて一から始めるつもりは無い。ノウハウも無いし、人脈も資金も無い。だが、これらを全て持っている人を知っている。ついでにいえば、その人の情報網だけである程度やっていける。だから今は……

 「まずは私の屋敷へ帰るよ。路銀ももう尽きるし」
 「屋敷?」
 「そうだよ。一応私大富豪の娘だしね」

 シスイは意外そうな顔をする。それもそうだろう。なぜなら私たちは特殊なのだから。特殊な人間が忍以外で大成するのは難しいどころではない。

 「血継限界の家系で大富豪か……珍しいというか、凄いな」

 私のやっている事と生活基準は不相応だけどね。改めて考えると父は偉大である。一族を滅ぼした後、たった一人で商人として大成功した。アジトは各国に一つ以上は作っている。しかも、そのどれもがアジトと言うより屋敷だ。ただ、武器商人は仕方ないとして、血継限界の孤児たちを集める趣味はやめて欲しい。

 「すっごい悪趣味な人だから、シスイ気を付けてね」
 「あれか?人を馬鹿にしたような性格なのか?」
 「人としては普通だよ。ただ血継限界コレクターなんだ。シスイの写輪眼とか好きだと思うよ」

 シスイが少し怒っている。血継限界、人によってはコンプレックスともいえるものを趣味として集めていると言えば、同じ血継限界としては黙ってはおけないのだろう。本人も血継限界なのにね。


◆◆◆◆◆◆◆


 俺はチノの案内で数日かけて、彼女の父の屋敷がある霜の国の霜隠れの里にやってきている。木ノ葉隠れの里の北西に湯隠れと雲隠れに挟まれて位置している里だ。任務でも来たことが無い小さな隠れ里。その里の外れの大きな屋敷に来た。

 その屋敷に入り、チノにここで待っててと言われて、大きな部屋に一人でいる。彼女の父親はフランクだが、死の商人で血継限界コレクターという悪趣味を持っているらしい。屋敷には多くの使用人の他に、忍らしい子供もいた。その子たちが血継限界の子たちだろう。……複雑な気持ちだ。

 「やぁ〜、君がうちはシスイ君だね。僕は御屋城エン。隠しているけどチノの父親だよ」

 しばらくしてチノと一緒に、奇妙なサングラスをした男が部屋にやってきた。彼は俺に手を伸ばし、握手を求めてきた。

 「話は聞いたよ。大変だったそうじゃないか」
 「チノのおかげで命を救われました。大変だったのは彼女です」
 「本当にね〜……僕に似ず優しく育ったもんだ」

 彼は優しそうな目でチノの頭を撫でた。本人は顔を赤く染めてその手を払おうとしているが。俺の予想していた人物像とは違った。

 「ところでさぁ、シスイ君」
 「なんですか?」
 「君の写輪眼見せ「ちょっと!デリカシー考えて!」……わかったわかった。ごめんて」

 チノが父親を叱りつけている。その光景を見ていると不思議と笑みがこぼれそうになる。それはまるであの兄弟を見ていた時のような。……やっぱり家族っていうのは良いもんだ。

 「はぁ……まぁ、チノを頼むよ。どうも大変な事をしようとしているみたいだからさ」
 「はい」
 「あとチノが可愛いからって変な事しないでよ〜。チノもなんかされてないよね?」
 「無い無い…………あっ……ファーストキスはあげたっけ」

 「は?」
 「……シスイ君?……どういう事かな?」

 待て!何の話だ?!チノの父さんの眼が赤くなってる!俺の記憶にはチノとキスした記憶なんて無いぞ!……なんて殺気だ!この人……できる!

 「シスイ頑張ってね。この人超強いから」

 チノは既に部屋の隅で観戦状態に入っている。くそっ!あとで覚えてろよ!


◆◆◆◆◆◆◆


 私はシスイと父を会わせる前に、父にこれからの事とシスイについて話した。お願いという形で。

 一つ、シスイの素性は私と同じ様に秘匿する事。二つ、父の持つ情報網や資金を使わせて欲しい事。三つ、各地に散らばるアジトを使わせて欲しい事。この三つをお願いした。

 最初は首を縦に振ってくれなかった。要望が聞けないわけではない。私が危険な事をするのが認められないらしい。私の身を案じてくれるのは嬉しいが……無理に押し通した。

 
 そして私は今、下手な芝居でシスイと父を戦わせている。もちろん本気ではないだろう。……父は若干本気出しそうな気もしているが。

 何故こんなことをしたかというと、シスイの実力を知りたかったからだ。もちろんシスイの強さを認めていないわけではない。うちは一族一の手練が弱いなんて思っていない。……だが原作でほぼ戦闘シーンが無かった為、よく知らないだけなのだ。

 私が今まで出会ってきた忍の中では、父はおそらくトップクラスの実力を持っている。その父相手に、シスイがどのように戦うのか知っておきたかった。


 二人は共に眼を赤くし、主に体術と瞬身の術、見ててはわからないが幻術もかけ合っているだろう。屋敷の中で攻撃忍術を使用するとは思えない。……それにしてもシスイめちゃくちゃ速い。部屋全体に彼の瞬身の残像が無数に作られている。分身でも無いため、父が攻撃してもすり抜けるだけだ。だが、シスイの攻撃は全て実体として存在する。こりゃ瞬身のシスイなんて二つ名が付くわけだ。


 痺れを切らしたのか、父は印を結ぶ。それを見た瞬間、私は焦って父の前に立った。父がやろうとしていた術は血之池の秘術。そんなもの使ったらシスイが危ない。


 この後、父を止めるのに苦労したのは言うまでもない。 



最後まで読んでいただきありがとうございます。


これから投稿ペースは落ちると思いますがご了承ください。


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7話

大変遅くなりました。申し訳ない。

感想、お気に入り登録ありがとうございます!そして数多くの誤字報告ありがたいです!


 「ハァ……ハァ…………酷い目にあった」
 「ごめんて。……まぁ良いリハビリだと思って、ね?」

 なんとか父を止めることができた。部屋の内装と、病み上がりのシスイの体力を犠牲に。……燃えたり、濡れてないだけマシかな。

 「人工呼吸とはいえ……チノのファーストキスが〜……」

 なんで私より傷ついてるの。ていうか他人に言葉にされると恥ずかしいからやめて。ていうかシスイ相手に息上がってないとか、強すぎでしょ。

 座り込み肩で息をする青年と、うずくまり暗いオーラを発する壮年。……うん、そっとしておこう。部屋片付けようかな。


 多少の時間を掛け、シスイは息を整え、父は心を整え、私は部屋を整えた。父はそのまま部屋を後にする。私たちに言葉を残して。

 「はぁ……まぁ、写輪眼も見えたし、今日のところは許してあげるか。……それにしても血之池とうちはが手を取り合う時が来るとは、わからないもんだね〜」

 まためんどくさい爆弾を落として行った。説明しなきゃいけないじゃん。シスイが話に興味持った感じになってるし。

 「ん?どしたの?」
 「さっきのチノの父さんの言葉って……」
 「……血之池はうちはに追い込まれたんだ。……血継限界の一族にはよくある話だよ」

 その後、簡潔にだが血之池一族の話をした。シスイは話を聞いて申し訳そうな顔をするが、それに対して私が申し訳なくなる。せっかく黙ってたのに父のおかげでこの場の空気は気不味いものとなった。

 「うちはにそんな過去が……」
 「うちはだからこそだよ。栄光はそれまで倒してきた敵の量によって決まる。……うちは一族は強かった。それだけの話さ」

 栄誉や名誉の裏には、それで補いきれない犠牲もある。忍の世界では当たり前の事だ。だが、仮初の平和で栄光を支えた力は、畏怖の対象になってしまった。こう思うとやはり今の世界は血継限界の生きにくい世界だ。

 原作では血継限界を持つ忍が戦争で活躍したり、里の長になっている場面があったが、あんなのほんの一握りだ。現実は人身売買の恰好の獲物にされ、身内からも遠ざけられる。中には親族がおらず、それ故に自身の異能をコントロールする方法がわからずに、やむを得ず死を選ぶ者もいる。

 この屋敷で働く子たちの大半の理由がそんな感じだ。虐待に無理な労働。厄介払いに売られたり、両親を殺され辛くも逃げてきた子。自分の異能で家族を殺してしまった子。この屋敷で飼われる事に感謝するほどの仕打ちを受けた子もいる。……そう考えると私はなんて恵まれているのだろう。

 救ってやりたい。それだけが私の原動力だ。


 


 「じゃあ、二人とも気をつけて。シスイ君、チノを……娘をよろしく頼むよ」
 「はい、必ず」

 あれから数日、私とシスイはそろそろ出発する事にした。というのも、これからは父のお得意先の国や組織に武器を運ぶついでに人脈を広げていく。

 私たちは傍から見ると完全に商人だ。笠を被り、大きな背負い箪笥を持っている。さらに用心の為に特殊な変化の術も使っている。

 血之池一族の秘術の一つ、『血潮変化の術』。血之池一族の特殊なチャクラを血液中に通し、自身や対象の体を変化させる術。自身の体を全て変える『変化の術』と比べてバレにくく、長時間使用してもチャクラ消費が少ないのが特徴だ。ただ体を全てを変えるのではなく、元の体を変化させる術の為、使用直後と解術直後に多少の違和感を感じるのが欠点だ。

 箪笥の中は刀やクナイ、手裏剣などの忍具が入っている。旅をしながら客の元に赴き商品を売買し、各地にある父のアジトで商品を補充し次の場所へ。その際に相手の知りたい事を聞き、それを調べて情報を売りつける。

 重いので口寄せで運んではダメか聞いてみたが、「既に第三者に契約されている武器なんて欲しい?」と一蹴された。おかげでこの大荷物だ。

 「じゃあ、行ってきます」

 父にそう言うと彼は無言で小さく手を振る。その眼がうるうるしている。今生の別れでも無いのに大げさだなぁ。



 霜隠れの里から出て、霜の国の中を西へ歩く。日程は今から二日掛けて湯隠れの里に向かう。今背負っている忍具の多くがそこの忍からの注文だ。

 「湯隠れの里か……平和主義を掲げていたはずだが」

 シスイがそう呟く。湯の国は先の大戦以降、国をあげての平和主義を掲げている。武力を持つことを極端に避ける様に軍縮を進め、豊富な自然と温泉などの観光資源を用いて国を運営している。

 だからといっても忍がいないわけでもなく、隠れ里も存在する。原作で出ている忍としては暁の飛段がいる。しかし周りの国や里からは忍の練度が低いと評されてもいる。別名、戦を忘れた里と呼ばれている。

 「まぁ、都合があるんでしょ。今の私たちはただの商人。過度な詮索は御法度だよ」
 「わかっている。交渉はお前に任せる」

 お客様は神様だ、などと言うつもりは無いが、揉め事は無い方がいい。これは自分の客ではなく父の客だ。人脈を借りる以上迷惑をかける訳にはいかない。だが、父は裏の大物。もちろんの事、犯罪組織や悪どい人物にも商品を卸している。その中には木ノ葉の里を狙う者のいないとは言いきれない。シスイには耐えて貰わなければならない事もいずれあるだろう。


 二つの宿場町を越えて湯隠れの里にたどり着いた。そのまま里の中央に足を進める。さすが湯の国だ。二つの町でもそうだったが、あちこちに足湯や温泉施設があり、至る所で湯煙が立ち上っている。

 その中には飲泉所と呼ばれる所もあるのが湯の国独特の光景だろう。この国の人々は普段から温泉を飲むのだ。温泉の効能によってはそのまま薬として飲むこともあるらしい。その為の専門職とされる温泉医などもいるらしく、医療に携わる者としては少々興味をそそられる話題だ。


 里の中央の建物に着く。大きく湯と書かれた看板の建物には多くの忍が出入りしていた。その中で一人をずっと見ている男がいる。壮年位の忍者だろうか。約一分ほどのこちらに視線を向けている。

 その者がこちらにに向かってくる。恐らく私たちの依頼人かその使いの者だろう。私たちの大荷物を見て判断したに違いない。

 「失礼、あなた方が御屋城様の使いの方でしょうか?」
 「はい、という事はあなたが依頼された方ですね」

 普段より圧倒的に大人びた声で返事をする。といっても年齢を考えると普段より年相応になっただけだ。

 「すぐに気づけなくて申し訳ない。前回の方と違っていたもので」
 「あぁ、そういう事でしたか。私どもは御屋城様の部下ではないんですよ」
 「どういう事でしょうか?」

 当たり前の質問に私は用意していた台詞を思い出しながら伝える。これからしばらくはこんな感じだ。

 「私どもは御屋城様に御贔屓にさせて貰っている情報で商いをする者です。今回は御屋城様の都合が悪いそうなので、代理として納品に来ました」
 「そうですか、それではこちらに」

 男の案内で建物の中に入り、応接室らしき場所に通される。そこで父から預かったメモ通りに商品を渡していく。その多くはクナイや手裏剣、起爆札や煙玉といった所謂基本的な忍具だ。わざわざ武器商人に買い付けるような物ではないはずだが。

 「わざわざ申し訳ない。この程度の道具くらい、本来自身の里で調達するべき物なのですが……」
 「いえいえ、これも仕事ですから」

 営業スマイルで決まり文句を言う。だが、相手方の憂い表情は治らなかった。これなら理由を聞いても当然の流れになるだろう。

 「何か訳ありの様ですね。良かったらお聞きしても?」
 「……実は、また軍縮が進みまして───」

 聞くと湯隠れの里の上層部が再び軍縮を始めたそうだ。それに伴って、忍具を作る職人やいつも卸している商人が見切りをつけ湯隠れの里から撤退。まぁ、市場が小さくなるので商人の選択に間違いは無い。だが忍側は急な撤退に対応できず、今はクナイや手裏剣は中古品を使い回し、消耗品は節約しているらしい。それで限界が来てどこの国にも組織にも属さない武器商人の父に話が回ってきた様だ。ただ、一つ気になるのが、

 「あの〜、私が聞くのもあれですが、情報で商う者にそんな話して良いんですか?」
 「構いませんよ。どうせすぐにバレる事です」

 男は疲れた笑みを浮かべてそう話すと、思い出したようにこちらを見る。

 「ところで、あなた方は情報を取り扱っているんですよね?」
 「えぇ、まだまだこれからのペーペーですけどね」
 「たまに頼りにさせて貰っても構いませんか?」
 「えっ?……それは構いませんが、良いんですか?こんな初対面の私どもで?」
 「御屋城様が御贔屓にされているなら多少信用できます。それにこれから軍縮が更に進むと諜報も難しくなるかもしれない。そう考えるとここで一つ縁を結んでおくのも悪くないと思いましてね」

 父は偉大なり。こう話がポンポン進むとは思わなかった。湯隠れの里の軍縮状況もあってだが、人脈を広げる事ができた。次の所もこうだと良いのだが。


 湯隠れの里から出て、私たちは次の場所にすぐに赴かず進路を変えた。湯の国に来たので個人的に行っておきたい場所があった。私の一族が暮らしていたであろう地獄谷だ。

 「ごめんね。寄り道して」
 「いや……俺も見ておきたい」

 私の一族とシスイの一族。血之池とうちは。その過去がそこにはあるはずだ。もちろんどんな所かは原作で知っている。だが、やはり一度見ておきたかった。

 地獄谷はへんぴな場所にあり、本来は地元の者でなければその場所はわからない。それに地元の人は地獄谷について語るのを拒むらしい。今ではそこは禁忌の土地として伝わってた。だが、私の父はその場所に住んでいた。道は簡単に教えてくれた。本人はもう一度も戻ってないそうだが。


 丸一日かけて地獄谷にたどり着いた。湯の国の各地で見たのとは比較にならないほどの煙が立ち上っている。そして濃厚で噎せ返るほどの臭気。草木の気配はほとんど無く、想像より広かった谷は茶褐色に染まっていた。

 二人とも言葉が出なかった。とてもじゃないけど人の生きていける場所ではないことは明らかだった。こんな所で十数年前まで私の一族は暮らしていたのか。

 「チノ……これ」

 シスイは視線で赤い池の中を示した。その池のそこには人の骸骨が沈んでいる。人の暮らしていた証拠だ。父の言葉を思い出す。

 『あらぬ疑いをかけられ、うちは一族によってこの場所に閉じ込められた。うちは一族に話し合いの場を求めても、彼らは聞く耳は持たなかった。僕たちの血龍眼は、三大瞳術と呼ばれる白眼、写輪眼、輪廻眼と比べられ、バカにされていたからね。うちは一族は血之池を見下してたのさ。
 だからあそこで暮らすしかなかった。臭気に耐え、煮えたぎる湯を飲み、空飛ぶ鳥を撃ち落とし、僅かに生えた草を喰らって生き延びた。争いに疲れた一族は外の世界への渇望すら失い、谷で細々と暮した。
 ……だが、そんな小さなコミュニティでは争いごとが生まれやすい。長年共に肩を寄せ合い生きてきたというのに、小さないざこざが積もり重なり憎しみ合って最後は同士討ち。
 僕だって最初はその流れを止めようと思ったさ。でも、妻が巻き込まれ死んだ時点で、色んなことがどうでもよくなった。気がつけばどうして自分はこんな所に縛られているのか、こんな一族の為に苦しまなくてはならないんだ。……そう思うと勝手に体は動いた。結果、僕は一族を終わらせた。僕とチノを残してね』

 谷の最奥に小さくボロボロの祠がある。そこには雑だが墓があった。誰の物でもない、父が一族の為に作った簡素な墓だ。そこでただ手を合わせた。


 「見に来て良かったのか?」

 帰り際にシスイに言われた。来た意味はあった。ここの赤池は血之池の力を引き出すのに適した、鉄分を多く含む池だ。これを私の口寄せで呼び出せば、戦闘でかなり役に立つはずだ。

 そしてもう一つ。ここは私の決意を固めてくれた。これからの私がする事、辛い事苦しい事はあるだろう。多くを犠牲に目を瞑り、多くを見捨てていくはずだ。でも、ここの事を思い出せば心が揺るぐ事は無い。

 私の一族のような悲劇が起きない世界へ。国や里、人種問わず優しい世界へ。それまではただ忍び耐えよう。どうせ第四次忍界大戦までの我慢だ。この腐りきった世界が緩やかに変化できるように、死力を尽くそう。それが前世の記憶を持って生まれた私の義務だと思うから。



これで原作過去は終わり……だと思う。次はたぶん原作スタートまで飛ばすつもり……まだ予定だけですよ。


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8話

原作まで飛んでます。


投稿ペースがカメからナマケモノになってきた。

多くの誤字報告ありがとうございます!評価、お気に入り登録も嬉しいです!


 この仕事を始めてからもう二年半程が経過した。最初は細々していた仕事も、今では大掛かりな潜入捜査や危険な情報も集めるようになった。そして集めた情報量は大陸でもトップクラスだろう。だからこそこういう場面に遭遇する事もしばしば。

 「は〜今月三回目だね〜」

 森の木々を全力で渡りながら横にいる人物に話しかけた。その人物は今面を被っていて表情は見えないが、周囲に注意を飛ばしているというのは雰囲気から読み取れた。二年半も一緒に居ればそうなる。

 「呑気な事言っている場合か!……追っ手は六人。やれない事も無いが……どうする?」

 今月三回目の事、依頼人に裏切られたのだ。情報渡してサイナラ〜しようとしたら、攻撃されてコチラを捕まえる気満々なのだ。も〜嫌になっちゃう。

 「どのみち報復はしないといけないからね〜」

 物騒な話だが報復は義務だ。じゃないと狙われ続ける事になる。私たちに手を出すと、方法は様々だがその個人や組織に手痛いダメージを与える。手を出せば痛い目を見る、そう認識されることがが抑止力になるのだ。

 さて、今回はどうしようか?今の追っ手を殺しただけでは痛手は与えられない。今回も内部情報を敵対組織に漏洩でいいかな。なら、残念だけど追っ手には何の価値も無い。どうせ下っ端だもん。

 「一人だけ残してやっちゃえ」
 「あいよっ!」

 シスイが昔の二つ名の由来、瞬身の術を駆使してあっという間に片付けた。残りの一人は気絶中。あれからシスイはもっと速く、強くなった。体や顔つきも原作の頃と比べさらにしっかりしている。もうすっかり大人の男性だ。それに引き替え私は全く変化しない。……解せぬ。

 「いや〜相変わらず素晴らしい手口だね」
 「手口言うな」
 「さてと、じゃあいつものやりますか」

 仰向けになって気絶している生き残りの腕に、私のチャクラを宿した千本を刺す。こうすることで対象の血液中を私のチャクラが流れ、対象の体をある程度支配できる。既に気絶しているが念の為だ。

 さらに瞼を指で開く。焦点の合ってない目に、私たちはそれぞれの眼を向ける。写輪眼と血龍眼、この二つの瞳術にかかればもう自由は無い。……ちなみにコイツは何も有益な情報を持ってなかった。

 私たちはこうして情報を抜き取ってきた。さらに鼠たちの協力もあり、大方の国や里、組織の情報は集めたと思う。ただ、暁は別だ。探る気も起きない。ゼツやオビトの目を掻い潜れる自信は無い。あと大蛇丸も難しい。彼らのアジト周囲には蛇が多くおり、鼠たちが近づけないのだ。

 「こんな形になったけど、依頼は消化だね」
 「裏切った奴をまだ依頼人扱いするのはどうかと思うぞ……で、これからどうするよ?もう依頼無いだろ?」

 シスイの言うように、もう手持ちの依頼は無い。とは言っても需要が無いわけではない。多数の依頼はあったが最近は断っていた。何故ならばもう原作が始まったからである。今頃はナルトたちはアカデミーを卒業し各班に配属されている頃だろう。

 「そろそろサスケちゃんの成長でも見てみたいんじゃない?」
 「それはつまり……木ノ葉に戻るのか?」
 「いやーどうも違うみたいでね。波の国っぽいよ」

 これからカカシ班は波の国での護衛任務につく。私としてはそろそろここら辺で主要人物たちに接点を持ちたいのだ。そしてゆっくりとだが信頼が欲しい。それだけで今後の展開がかなり楽になる。

 「その言い方だと……予知夢か」
 「うん。サスケちゃんの班が波の国まで任務で行くのを見たんだ。ちょうど依頼もないし……私も情報屋として、木ノ葉との接点は欲しいからね」
 「サスケの担当上忍と接点を作るのか……誰なんだ?」

 「写輪眼のはたけカカシだよ」
 「カカシさんか。あの人がサスケの担当なら安心だ」
 「それはどうかな〜」

 波の国編でサスケほぼ死にかけるんだよね。再不斬にカカシ先生手一杯だったから。白の優しさが無いと確定で死んでたし。先生が第四次忍界大戦の時の様に強かったらそんなことないんだろうけど。あの人もまだまだ成長中ってことかな。


 とりあえず私たちは帰路についた。波の国に滞在する準備をする為だ。何せ波の国は今はまだガトーが牛耳っており、橋も完成していない。向こうで色々調達しようにも出来ない。宿屋も取れそうにないので、シスイを助けた時同様、穴蔵暮らしの始まりである。

 さらに今回の本当の目的の為にはいろいろ準備しなければならない。必要な物を揃えると同時に、鼠たちのネットワークを使い、波の国周辺の情報を教えてもらえるように手配した。

 今回の目的は新たな仲間を引き入れることだ。流石に素性はバレてないにしろ、私たちの存在は広まってきた。先程の様に襲われる頻度も高まってきた。今のところはシスイと私で凌げているが、そろそろきつくなってくる頃だ。……主に私が。

 という訳で、白を助けるとしよう。

 優しい、強い、そして美人。三拍子揃った少年だ。彼が協力してくれたら嬉しい。だがシスイの時同様、彼の死も原作では必要だ。彼と再不斬の死がナルトたちに与える影響は大きいのだ。それを変えては原作からずれてしまうかもしれない。それは避けねばならない。原作のシーンを再現しながら白を助ける。かなり難易度が高いがやるしかない。





 てなわけでやって来ました波の国。まぁ、わかってたことだけど町の雰囲気は最悪だ。店に品は無く、宿屋も嘘みたいな値段設定だ。

 こんな所はさっさと通り過ぎ、町の外れから広く拡がる森にやってきた。原作の舞台としては、おそらくここのどこかに再不斬たちの隠れ家、白が薬草を摘む場所、カカシ班の壁登り修行の場所がある筈だ。

 小一時間周囲を確認し、白が摘むであろう薬草が生えている場所を見つけた。ここの周囲にこの薬草が生えている場所は無いので、ナルトと白が出会うのはここで間違いない。そこから少し離れた木の根元に土遁で隠れ家を造る。

 隠れ家を造り、様々な家具や道具を口寄せして、過ごしやすい住居は完成。多分今の波の国の宿より良い環境だと思う。

 「ご主人、鼠たちからターゲットが波の国に入ったと連絡がありました」

 ノリさんからの報告でナルトたちの場所は把握できた。後は白たちの動向だけだ。そう思っていたら隠れ家に開けた鼠用の小さな横穴から一匹の別の鼠が現れた。それはするするとシスイの体を登り、彼の右肩に到達する。

 「主よ、森の中に指示された建物あったぞ」
 「おっ、ごくろーさん」
 「ただ中は誰もおらんかったで」

 この鼠はシスイ担当の口寄せ鼠。顔はノリさんに比べて細目。名前は宙、愛称もソラ。名前はもちろんチューが由来である。ノリさんが人語を話せる新たな鼠を推薦してくれたのだ。この鼠も背中に小さな巻物を背負っており、私とシスイのマーキングが施してある。

 そしてソラの報告で再不斬たちの隠れ家も把握した。ここから少し離れた木々の深い所らしい。シスイはソラに再不斬たちの隠れ家の監視を指示した。これで再不斬たちに動きがあれば私たちにサインをくれるだろう。また横穴を通って隠れ家から出ていった。

 「さて、ターゲットが居ないようだが」
 「ん〜……もう向かってるのかな?」

 シスイには再不斬たちの目的も、カカシ班の任務も伝えてある。そしてどういう流れになるかも。こちらが出るタイミングまでは動向の監視する手筈だった。だがもう再不斬たちはタズナ抹殺に動いているらしい。

 「とりあえず行くだけ行ってみようか。ノリさん案内して」
 「かしこまりました」


 隠れ家から出て森を西へ走る。森は途中からマングローブへと変わっていた。ノリさんの道案内に従い、建設中の未来のナルト大橋の近くまで辿り着く。すると急に霧がかかった。

 「霧……にしては急だな」
 「霧隠れの術だね。霧の濃い方に再不斬たちはいるかな」

 もう戦いは始まったようだ。でもここからは慎重に、カカシ班が初めて再不斬と戦う時、白はその様子を観察している。こちらに気づかれるかもしれない。そうなったらご破算だ。

 「ここからは変化してからいこう」

 私は鼠に変化した。シスイもそれに続く。鼠の体は慣れないが、ノリさんの後に続き森を走る。人の一歩は鼠の十数歩。感覚の違いに手こずりつつも、私たちはその現場にたどり着いた。そのまま近くの木に登る。この後ここ水浸しになっちゃうからね。

 「大きくなったもんだ……ってこれ不味くないか?!」

 現在、カカシ先生は水牢の術にかかっている。眼下には再不斬の水分身と対峙する三人の下忍がいた。シスイはサスケの成長を実感すると同時に、この状況に焦っている。カカシ先生なら安心と思っていた矢先のコレである。兄貴分としてはさぞ心配だろう。

 「はいはい、落ち着いて。絶対に手を出したらダメだからね。……アンタはもう死んでるんだから」

 そうシスイを鎮めている眼下で、再不斬の肘打ちによってサスケが吹っ飛ばされた。そのまま浮いた体を地面に叩きつけられる。それを見たシスイは小さい鼠の体を力ませた。それを見て、私は動くと同時にノリさんに指示を飛ばす。

 「ノリさん!このバカ抑えるよ!」
 「承知!シスイ殿、失礼する!」
 「くっ!離せっ!」

 今にも戦場へ飛び降りようとした鼠(シスイ)を二匹の鼠(私とノリさん)で抑え込む。私が腕を抑え、ノリさんが体に覆いかぶさるように押さえつける。

 「少しはサスケちゃんを信じなさいって!死なないのはわかってるんだから!」

 殴られるだけでこの心配のしよう……ん〜あの兄弟と離れて長いからな〜。その分の情が高まったのかな。……この次の戦闘でサスケは白の千本でサボテンみたいになるんだけど……このシスイの様子じゃあ、あらかじめ手をうっとかないと不味いかも。

 そんな眼下では原作通り、ナルトの意外性でカカシ先生を捕らえていた水牢の術が解かれた。それを見てシスイはようやく心を落ち着けた。

 「……すまん」

 謝るシスイ鼠の下を、再不斬とカカシ先生の『水遁水龍弾の術』の余波が流れていく。今立っている木が揺れる。そろそろ逃げよう。だってこの次は……

 「しょせんは2番せんじ、「お前はオレには勝てねーよサルやろー!!」」

 あーこの角度不味いわー。カカシ先生と私たちで再不斬を一直線に結んでる。そんでもってカカシ先生がこっちに向かって術使おうとしてる。鼠のままじゃ確定で死ぬ。でもここで変化解いたらバレちゃうから……

 「退避ーー!」

 私はシスイとノリさんに声を飛ばした。ここよりもっと木の上層へ。ここじゃあ巻き込まれる。


 「『水遁大瀑布の術』!!」


 大量の水が渦を巻きながら流れていく。私たちは直撃こそしなかったものの、今立っている木が大きく揺さぶられ必死にしがみついている状況だ。……我ながらみっともないが鼠の体じゃこれが精一杯。これ別のアニメか漫画の構図じゃない?少なくとも私の知ってるNARUTOじゃない。

 「二人とも大丈夫?」
 「なんとかな……」
 「心配無用です」

 シスイは私と同じく無様な姿だ。うちはの名が泣くぞ。それに対してノリさんはこの揺れの中二本足で踏ん張っている。さすがとしかいいようがない。鼠の体でそれは無理。

 その後は白が無事に再不斬を仮死状態にして持ち帰った。二年半ほど活動してきたが、どうやら原作に支障はないらしい。これならば多少主人公たちと関わっても問題は無いだろう。

 それがわかったから、今回の行動にも意味があったと言える。それが働き分と釣り合うかと言われれば微妙だが。さてとこれから約一週間。やることはまだまだある。



次回も見に来てください!


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