いいかー。不死身と無敵は違うんだからな! (炬燵猫鍋氏)
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藤宮続行:ゲームオーバー

チュートリアルで死んでしまうとは情けない……。


総人口の8割が何らかの特異な力を有する社会。

かつては超常・異能と呼ばれ、その存在が眉唾とされた時代は遠く過ぎ去り、誰も彼もが有する力は『個性』と称されていた。

 

その有り様は様々だ。

 

下半身が馬の様になっている個性:ケンタウロス。

電車やバスの座席に座れないで困るとか。

手にした液体を全て水に変えられる個性:浄水。

間違って発動させるとすっごく損した気になるとか。

どんなに離れていても、一瞬にして自宅に帰れる個性:瞬間帰宅。

引っ越した後、なかなか新しい家に帰れず慣れるまで電車帰宅を繰り返すことになったとか。

 

とにかくこの世にどれだけの個性が有るのかわからない程だ。

大抵は両親の持つ個性のどちらかを受け継ぐか、その両方の影響を受けた個性となるのだが、稀に二つ以上の個性を持つ複合型や、突然変異のように全く異なる個性を発現させることも有るらしい。

 

発現時期は早ければ生誕時。

記録に残っている最初の個性持ちは生まれたときに光輝いていたらしいし。

遅くとも、4~5才までには現れるのが普通だ。

 

で、問題は。

俺、明日で14才なんだけど、まだ個性が現れてないんだわ。

無個性って奴かって?

いやいや。確かに『総人口』の8割が個性持ち=2割は無個性って事だけどさ。

個性持ちが世界に現れてから、俺達の世代でざっくりと5世代目。

世代を重ねるごとに個性持ちは増えていって、俺らだと無個性なんて100人に1人もいないんじゃないかな?

 

それに、心配した両親が、精密検査受けさせたのよ。

わざわざでっかい病院連れて行ってくれて。

んで、『個性因子』っていう個性持ちの細胞とか血液内に存在してる物質は確かに俺の中にも存在してるんだと。たっぷりと。

でも、今の医学では個性の判断は発現するまでわからないんだと。

だからね、個性届けって奴にはこうなってる。

 

藤宮続行(ふじみや・つづく)個性:未覚醒』ってな。

 

父さんの個性は傷や病気の治りが速い個性:高速回復。

母さんの個性は老化が極端におそい個性:不老。

 

今んとこ怪我しても治りは普通っぽいし、ひょっとしたら母さんの個性がこれから発現するのかもしれない。

 

て、いうか、それなら逆に高校生とか大学生になるまで発現しない方がいいな。

だって、母さんの外見年齢って今の俺と同じくらいなんだぜ。

俺と並んでる時にお姉さん?とか言われていたのが、そろそろ妹さん?になりそうなんだ。

……本人は俺が生まれてから今日までに身長が2センチ伸びてる!とか、よくわかんない事を力説してるけど。

 

何というか、身長はもう少し欲しいし、将来的にも行く先々で子供扱いされる人生は送りたくない。

 

将来……そうそう、進路希望の話、今日有るんだよな。

何か知らんがクラスの皆はこぞってヒーロー科なんだと。

ヒーローって職業はかなり特殊だ。

往来で無闇に使うことを法律で禁じられてる個性を、自己の判断で自由に使うことを許され、ヴィランって呼ばれてる個性を悪用した犯罪者を制圧・捕縛するお仕事。

 

大概がカッコいいコスチュームに身を包み、町をパトロールしてる。

有名になるとメディアへの顔出しも増えて、長者番付の上位に名を乗せるヒーローもたくさんいるとか。

 

でもなー、ヒーロー多すぎじゃね?

確か国内にヒーローの事務所って二万くらい有るらしいし。華やかな仕事に見えて、経営が結構いっぱいいっぱいな事務所多いらしいよ?父さんに聞いたけど。

 

父さんの仕事は警察の総務。ヒーローとのやり取りも仕事の内で、よくヒーローの舞台裏、はっきりいうと夢を見ていられないような話をしてくれる。

 

だから、俺の望む進路はヒーローじゃない。

経営のしっかりしたヒーロー事務所に就職する一般職だ。

学校の成績も、模試の結果も国立高の上位を狙う手応え充分だ。

こういう話をすると、クラスの連中は〝夢がない〟とか、〝お前、個性無いからなー〟とかいいやがる。

 

……ったく、小学生じゃ無ぇーんだから、夢物語を進路希望にしてどうすんだよ。

それに、一芸だけで務まるほど甘いもんじゃないだろ、ヒーローって。

正直、プロのヒーローになれる程の個性持ちはそんなにいないと思う。

なんかうちの担任の先生は皆ヒーロー科だよなーとか、無責任なことしか言ってこないし。

もう少し現実にそった指導って奴をさー……。

 

んなことを考えて歩いてたら、通学路に溢れる人々。

ん?何だ?

あー、あれか、ヴィランが暴れてるとか?

 

でけー。

なんだありゃ。巨体のヴィランとパッツンパッツンのコスチュームを着たヒーローな姉ちゃんがぶつかり合ってる。

うお、轟音。

 

ん?あの特徴的なモサモサ髪は……。

うちのクラスの緑谷じゃね?

マジもんの無個性。

地味目で引っ込み思案。でも勉強はトップクラスのヒーローオタク。

 

今のところ個性が発現してない俺と、緑谷の二人だけなんだよな。今の学年で個性を持ってない奴って。

 

きっと巨体のヒーローを見て〝緑谷ブツブツ〟と呼ばれる独り言で解析を始めてるに違いない。

 

 

『おーい!緑谷ぁーっ!』

 

声をかけると、即座に振り向くソバカス顔。

お、速攻で反応した。

 

『あ、藤宮君……あ、危ないっ!!』

 

ん?何が?

 

あっ?

 

 

デカイ、影。

 

瓦礫? コンクリ?

 

あ、今の、戦いで、ビル、崩れて。

 

最後に見えたものは、視界の隅でこちらに駆け寄ろうとする緑谷だった。

 

 

 

 

 

 

 

 




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藤宮続行:コンティニュー!

さてさて、ファーストステージまで無事にいけるかな?


あー、びっくりした。

 

何がビックリしたって、気がついたら全裸で腰抜かしてて、目の前にはでっかいコンクリの塊。

 

……で、その下からひび割れたアスファルトに流れる赤い染み。

その近くには俺のカバンが落っこちてて。

 

パニックになってる緑谷。

 

『え?藤宮……くん?無事?あれ、でも、今、潰されてて、ええっ?!』

 

うん、緑谷、落ち着こうか。

俺は潰されてないから。

ここにいる、俺は。

 

じゃあ、この瓦礫の下にいるであろう、潰された奴は……誰だ?

 

その後も大変だった。

ヒーローのシンリンカムイがやって来て、警察やって来て、救急車やって来て、救急車乗る直前に巨大なお姉さんが覆面越しにもわかる青ざめた顔で瓦礫持ち上げて。

 

うん、俺は救急車に乗せられたから見てないけど。

巨体のお姉さんの悲鳴が響いてた。

 

んで、病院に運ばれて、父さんや母さんが駆けつけて。

何かいろいろ検査して。

警察もやって来て。

落ち着いた頃にはすっかり夜になってた。

 

で、だ。要するに……。

俺の個性が発現したということだ。そうでなければこんな風にベッドで飯を食っていられるわけがない。

うん、少ない。

入院食ってのは育ち盛りの俺には物足りないね。

 

最初は父さんの個性のような、高速回復が発動したんだと思っていた。

しかも、父さんより強力な、致命傷からも即座に回復するような個性、たとえば、超再生って奴じゃねーの?

みたいに呑気に考えていた。

 

でも、違った。

検査の為に採血した針を刺した痕はそのまま残っているし。

なにより、……瓦礫の下には()()()()()()()()()()()()()()

 

現場にいた人達の話によると、瓦礫の下に広がる血溜まりから赤い靄のような物が立ち上ぼり、それが瞬く間に俺を……全裸で腰を抜かしている俺を形作った、らしいよ?

 

 

DNA照合の結果も、間違いなく同一人物。

つまり、俺は生き返った事になる。

父さんの高速回復、母さんの不老。

どうやら俺に遺伝したのは、二つの個性から新たに派生した俺だけの個性。

個性:復活。

 

なんていうのか、普通科に進学して将来は一般職につくつもりだったんだぜ?

なんでこんなレアな個性が発現するかな。

 

 

翌日。以前に検査を受けた病院に移されて再検査。

うん、俺の個性因子は以前と変わりないそうな。

つまり、もう一回死んでも生き返れるはず、だとか。

先生、もう少し言葉選ぼーよ。

父さんと母さんが睨んでるぜ?

 

……ってもなー、試す訳にもいかないし?

もし、一回こっきりの個性だったらアウトだし?

なにか発動条件が有るんだったら再現が確実じゃないし?

 

うん、すっごくラッキーで一命をとりとめたって考えるか!この個性に頼っちゃダメだよ、ダメ。

あれ、あれ?でもそうすると……無個性と変わんなくないか、俺。

 

ちなみに巨体のお姉さん、Mt.レディが謝りに来たり、ヒーロー協会の人と弁護士さんが両親に会いに来たり。

あれやこれやが続いて、俺が学校に行けるようになったのは、結局3日後だった。

 

 

教室に入ると、クラスの皆が一斉にどよめいた。

 

『よっ!不死身の男!』

『スゲー個性じゃん!マジ羨ましー!』

『な、な、今度俺の個性の練習台になってくれよ!』

 

おい、人をサンドバッグかモルモット扱いにした奴だれだ。

っていうか、なんで俺の個性の事が知れ渡ってるんだ?

あ、緑谷!

お前か、お前が言いふらしたのか!

 

『藤宮くん!良かったよ、元気そうで。ところで君の個性についてなんだけど。』

 

『待て緑谷。俺の身に起きた事を皆が知ってるのは何でだ?』

 

『え?だって……動画投稿サイトで凄い再生回数だよ。』

 

な、何ぃーっ!!!

 

俺は慌てて携帯端末を取り出す。

 

『不死身の少年ってタイトルでね……』

 

緑谷の説明の後半を聞き流しながら、音声入力で検索する。

Hero-Tubeにてヒット。

こ、これは……。

 

誰かが瓦礫の落ちた後を撮影していたのだろう。

流れ出す赤い液体。う、この下に、俺が、俺がいるのか。

そして、キラキラと輝く赤い靄が沸き上がる。

瓦礫の下に側で渦巻き、それは数秒とかからず人の姿になる。

俺だ。

 

……っていうか、顔にモザイクぐらいかけろーっ!!

もろ見えじゃねーかっ!

幸い、股間は角度的に映ってねーけど!

あ、緑谷も映ってる。

再生回数……30万以上、だと?

 

ヴおおっ!削除要請だっ!削除要請!

 

ん?盛り上がるクラスメイト。

1人心配そうな緑谷。

そして、なんかスゲー目付きで俺を睨む、爆発ヘヤーの少年。

爆豪、何だ?どーしてそんな目で俺を見る?

 

『おい、爆豪。俺に何か用か?』

 

『はっ!ザコが個性を手に入れたからってのぼせてるんじゃねーぞっ!』

 

うお、喧嘩腰。

緑谷の幼馴染らしいこいつは、爆破っていう戦闘向きの個性持ちだ。目付きはひどい、態度はデカイ、口は悪いと最悪なのだが、成績は優秀で、雄英高校に入学してトップヒーローになると公言している。

今まであまり関わっていないやつなんだが……。

 

『いや、九死に一生を得たクラスメイトにいう言葉か、それ。』

 

『そうだよ、かっちゃん。それに藤宮くんと僕たちは同じ雄英を受験する、云わば仲間じゃないか。それを……。』

 

え?緑谷、お前も雄英を受験するのか?

でもお前、無個性……あ、俺と同じ普通科か。

 

『うるせーぞクソナード!てめーは無個性のザコじゃねーかっ!それがヒーローになりたいだぁっ?』

 

まじ?緑谷、ヒーロー科受けるのか。凄いな。

ん?それに……何か俺の記憶では爆豪にいつも押しきられて、だまって俯いてたイメージなんだが。

おお、強く爆豪に視線を返して。

強くなってる?何か意識の変わることが?

 

ま、いいや。それよりも、と。

 

『俺は普通科を受けてヒーロー事務所の一般職を目指すんだよ。プロヒーローとの関わりが深い雄英ならいろいろ有利だからな。』

 

『そーだよな、お前ら一般人と俺は違うんだよ!』

 

ったく、つくづく天狗だよな。ガキ大将まんまだぜ。

 

『あのよー、バクゴーカツキ君?ヒーローだけでヒーロー活動できると思ってんの、お前。』

 

『あぁっ?!』

 

『警察各位との調整、自治体からの報償金の財務管理、スポンサーとの渉外、各メディアへの露出と副業のスケジュール対応。どんなに優秀なヒーローでも、1人でやっていける訳じゃねーぞ。で、高い給料払えば有能なスタッフが揃うわけでも、居着いてくれるわけでもない。』

 

『てめぇ……。』

 

反論しないってことは、わかってはいるんだよな、こいつも。

でも、無駄にプライドが高い、と。

競い合うとぶつかり合うと、潰し合うは別物だっつーのに。

 

『少なくとも、一流のヒーローになろうっていうなら、経営科や普通科をバカにすんじゃねーよ。……俺は、雄英を卒業しても、同じ雄英出身だとしても、()()()()を支えるスタッフにはなりたくねーな。』

 

『……だと?このクソモブがぁっ!ぶっ殺すぞ!』

 

『か、かっちゃん!』

 

あ、今なんつった?この野郎。

()()()()だと?

……言っていーことと、悪いことがあるだろうが?

 

『……バクゴー君よぉ、てめぇのザコ個性で、誰を殺すって?無理だね。てめぇに俺は殺せねぇよ。手がバチバチいうだけの宴会芸じゃなっ!』

 

あ、やべぇ。なんか、口が盛大にウルトラスリップしたぞっ!

俺、何かおかしくなってる?

 

『てめぇっ!だったら、試してみるかぁっ?!』

 

おぉっ!右手がバチバチいってる、バチバチっ!

いや、こう見えて爆豪はみみっちい。内申に響くような暴力沙汰はしないはず、あれだ、俺をビビらせるだけの脅しの……はずっ。

 

あれ?なんで、俺の、足、踏み出して、腕、前に?

 

『が、があっ?!』

 

右手を大きく振り下ろそうとしていた爆豪。

俺は、気がついたら両の手で爆豪の手首と肘を掴んでいた。

え?何これ?関節技?

 

『藤宮くん!それ以上いけない!』

 

えっと、何でこうなった?




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藤宮続行:ステージ・hell

どこでフラグが立つのやら。


はっはっは。

ヤバかった。

どーも、みなさん。フジミヤ=ツヅクです。

爆豪の腕、何か関節を極めちゃって、なんかミシミシいわせちゃったぜ。

 

離した直後に先生が来て、爆豪の反撃からは逃れられた。

うん、目付き凄かったけどな。

しっかし、何だったんだ?

体が勝手に動いたような、うーん、わからん。

さて、休み時間から放課後、爆豪からどうやって逃げようか、考えないとな。

 

ダッーシュッ!

とり、あえず!今日、は、逃げる!

考えず!逃げる!

あ、爆豪!個性でかっ飛ぼうとすんじゃねーよっ!

チクるぞっ!

内申に響くぞ!

あ、減速した。

……それはそれとして、なんか走るスピードも少し上がってないか、俺。

 

 

さて、と。

爆豪からは逃げられたが、どうしたもんかね。

俺の体と心に確実に異変が起きている……よな?

父さんと母さんに報告して、もう一度病院で調べてもらうしかないかなー。

 

 

んで、数日後。

……笑えない笑い話だな。

俺の保険が傷害に当たるか死亡に当たるかって、俺はこうして生きてるっての!

俺の遺体の処理の話とかさー。

はぁ、同席するんじゃなかった。

弁護士もヒーロー協会も嫌いになりそうだぜ。

ん?個性カウンセリング、ね。

あー、そういうの受けるのか。

めんどくせー

異形型でも任意発動でもないしなー。

あ、俺の自覚してるなんとなーくの変化に関しては、様子見だと。

 

 

と、いう訳で、気分転換の為に出かける俺です。

実は俺の趣味の一つに、芸能活動をしているヒーローの活動チェックがあったりします。

特に、ランキング……正式名ヒーロー・ビルボード・チャート・JP。

オールマイトとエンデヴァーが長年の一位、二位を不動の座とし、ランキング100位が有名と無名の線引きと

されているアレにおいて、頑張っている無名のヒーローのライブを見て応援するのが、結構好きだったりします。

ん?ガキの趣味にしてはナニだって?

放っといてくれ。

少なくとも、緑谷とはこの話題で結構盛り上がるんだぜ。

 

『ブルーベリーガール!植物操作系の個性で……』

 

『あぁ。地下アイドル・ヒーローで五年目の……』

 

ん?何か会話が噛み合って無かったような……気のせい、気のせい。

 

さて、気を取り直して……行くぜ!

プリズムレディの路上ライブ!

 

プリズムレディは自分の周りの光を自由に操るヒーローで、芸能活動を行うヒーローを擁しているダンシング・バロン事務所のサイドキックだ。

歌って踊れるヒーローとして、個性を活かした煌めくライブを行っている。

 

ヒーローが芸能活動を行う事に文句をいう奴もいるけれど、俺はいいことだと思う。

個性を使って人を楽しませ、人を笑顔にする。

手段は違っても、戦う力は劣っても、その目的はオールマイト、トップofトップのNo.1ヒーローと同じだと、俺は思う。

まぁ、結果としてヒーローが溢れかえる時代となって、クラスメイトが浮かれまくっているのだが、これはこれ!それはそれ!ということで。

 

 

華やかな衣装を身にまとい、プリズムレディが舞う。

髪も衣装も七色に輝き、シャボン玉のような光球がくるくるくるりと周りで踊る。

あー、楽しーなー。

もうアレだ。いろいろ有ったけど、今は忘れよーっと。

 

 

『ありがとーっ!今日は楽しんでもらえたかなぁっ?』

 

 

イェーイっ!

 

『この後、新曲のDVDか、ダウンロードのアクセスコードを買ってくださった方と、握手会を行いまーす♪』

 

財布チェッーク!よし、お小遣いはOK!

買うぜDVD!

 

 

購入完了!

さ、並んでプリズムレディとの握手だ!

うむ、今日はいい日だ!

お行儀よく並んで待つぜ!ウキウキ。ワクワク。

よーし、俺の番だーっ!

 

 

ドサッ。

 

え?

何?何だ?血まみれの人が、落ちて、どこから?

刀傷?

白い軍服みたいなコスチュームが赤く染まって、この男の人、どこかで?

 

『しょ、所長っ?!ど、どうしたんですか?』

 

所長?ダ、ダンシング・バロン?!

な、何で、どうして?

 

『ハァ~。往生際が、悪い。偽物め……。』

 

ゾワッ。

な、何だ?誰、誰が、いる?

後ろ、今の、声、ヤバい、ヤバい、ヤバいっ!

声だけで、なんで、こんな、怖い?!

 

ふ、振り向かなきゃ。

 

赤い、マフラー。

目元、包帯が。

め、目がコワイ。なんでこんな目を。

長い、舌が。

刃こぼれした、刀と、ナイフ。

こいつ、だ、誰だ。

ヴィラン。

でもこんな、こいつ、きっと、何人も、人を。

 

『おとなしく、供物になれ。……ハァ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 




……一般市民の中学生だから大丈夫(フラグ)


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藤宮続行:ゲームオーバー・2回目

少々短いですが、サブタイトル的に〝切りのいい〟ところまでで。


な、何だ、こ、こ、こいつ。

た、たぶん、何人も人を、こ、ころし、ころしてる。

 

『プ、プリズムっ!お客様を、ひ、避難させるのです!』

 

血にまみれたダンシング・バロン。

うめいて、でも、プリズムレディに、指示してる。

そ、そうだ、に、逃げなきゃ。

 

『君!こっちへ!』

 

気がついたら、歩行者天国に作られたステージにいるのは、俺とプリズムレディ。

そして、ダンシング・バロンと恐ろしいヴィランだけ。

 

『ハァ~。偽物なりのちっぽけな矜持、か。偽物の群れの頭目、今日の獲物は貴様だけだ。』

 

笑う。怖い。

笑顔、こんな、笑顔。狂気と、凶気。

 

プリズムレディに手を掴まれて、走る、離れて、周り。

人が……いっぱい?

 

『皆さん!早くここから避難してください!ヴィランです!』

 

離れてるけど、周りには、たくさんの人がいた。

何人も携帯端末を操作してる。

撮影。

SNSにアップ。

 

何をしてるん……だ?

 

『スゲー。ダンシング・バロンヤバくね?』

『おいおい、どうなるんだこれ?』

『あれさー、アレじゃね?〝ヒーロー殺し〟』

『マジかーっ?!これお宝画像くさくね?』

 

何、言ってる?

避難して、そして、通報しなきゃダメだろ?

誰か、警察に、連絡っ……!

 

 

……違うっ!!!

 

 

誰か、じゃない!

俺が、義務を果たさないと。

父さんが教えてくれたじゃないか!

俺は震えの止まらない手で携帯端末を取り出し、緊急コードで通報する。

 

何とか、場所と、ヴィランの様子と、ダンシング・バロンが危ないこと、そして自分の名前を言えた。

さぁ、逃げよう。

 

『あれあれ?君、アレじゃね?不死身クンじゃね?』

 

誰だ、あんた。大学生か。

逃げろよ。俺も、逃げるんだから。

 

『なーなー、不死身の個性をもってるんだろ?』

『マジ?あ、見たこと有るっぽい。』

 

撮るな。俺を撮ってる場合じゃないだろ?

 

『おいおい、不死身クンなら〝ヒーロー殺し〟の足止めとかできるんじゃね?なー、そーだろ?死なないし。』

 

何言って、る?

 

『不死身の少年対ヒーロー殺し?ヤバくね?』

 

ヤバいのは、あんたらの、頭の中だろうが。

 

なんで、逃げない。

なんで、プリズムレディを撮ってる。

なんで、ダンシング・バロンとヴィランを撮ってる。

なんで、俺を撮ってる。

 

もういい。無視だ。

俺は、父さんの教えてくれた通りに……。

 

『所長ーっ!!!』

 

プリズムレディの声。

 

振り向くと、彼女の視線の先。

 

『お前たちの愚かな行いが、社会を歪ませた。見ろ!お前の最期を喜んで見届けようとしている!……ハァ。報いを受けて死んでいけ。』

 

なぜだか、ヴィランの言葉が、やけにはっきりと聞こえて。

ヴィランの刀が、ダンシング・バロンの胸に。

なぜだか、やけにゆっくりと見えて。

 

『ぐゎぁっ!!!』

 

ダンシング・バロンの声。

そして、ヴィランの身につけている服が、マフラーが、まるで台風にあおられているかのように、激しく踊る。

 

踊る?

ダンシング・バロンの個性。

無機物を踊る様に操る、オブジェクト・ダンシング。

ひよっとして、最期に、個性の、暴発?

ヴィランの持っていた、刃物が撥ね飛ばされる。

いくつも、いくつも。

 

ヤバい!!

 

体が、考えるより早く動いた。

両腕で、顔を隠す。

これでしゃがめば、最悪の事態は避けられ……。

 

ドンッ!

 

え?後ろ?

誰だ?突き飛ばされた?

しゃがむ前に転んで、しまった、手を着いて。

あ、銀色の光。

 

最後に見えたのは、慌てて逃げる大学生。

そして、喉、熱

 

息、できな




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藤宮続行:コンティニュー&ルート選択

シリアスとコメディのバランスが難しいところです。



うぉぉぉぉっ?!

また、またか!

 

視点がいきなり変わった。

転んで、起き上がる前に喉に熱を感じて、息ができないと思った直後、俺は立ち上がっていた。

いや、おそらく、きっと、立ったまま現れたのだろう。

 

だって、足元に転んでいる。

俺が倒れている。

()()()()()()()()()()()()()()()()

また、生き返ったのか。

また、死んだのか。

うつ伏せになった俺の顔は見えない。

でも、撥ね飛ばされたナイフが、俺の首を半ばまで断っているのが分かる。

血が、あふれている。

また、俺は俺の血溜まりの側にいる。

 

遠巻きに離れた、でもまだこちらを見ている連中のどよめきが聞こえる。

ちくしょう。

俺は見せ物じゃないぞ。

ヴィランの言っていた、歪んだ社会って言葉が頭に浮かぶ。

でも、でも、今は。

 

俺は歩き出す。

ダンシング・バロンの体から引き抜いた凶器を両手に持ったままのヴィランのもとに。

もう、怖くはなかった。

 

なぁ?

わかるかい?

『死ぬほど怖い』っていうだろう?

じゃあさぁ。

死んじまったらさぁ、何が怖いんだ?

 

血染めのヴィラン。

俺が来るのを待っていてくれたのか?

聞きたいのかもな。

自分が殺したガキの言葉を。

 

『それが……お前の個性か?』

 

『あぁ。どうも俺は、死んだらその場で新しい体が創られるらしい。』

 

ヴィランの狂気が少しだけ和らいでいる?

興味をしめしているのか?

それとも。

 

ダンシング・バロンは……ピクリともしない。

呼吸、してないな。

そりゃそーだ。

普通は、殺されたら死ぬもんだからな。

 

『あんた、〝ヒーロー殺し〟か?』

 

ネットで騒がれるヴィランの異名。

ヒーローの在り方を暴力と殺意で問いただす男。

ヴィランに対しても粛正を行っているらしいが、そんなことはどうでもいい。

こいつは、この男は、()()()()

 

『……そうだ。俺は偽物のヒーローを粛正する。』

 

『俺は、ヒーローじゃないぜ。ただのガキだ。将来の夢だって一般職だしな。それを、あんたは殺した。』

 

目元が歪んだ?

包帯を巻いているせいで表情がわかりにくいが。

 

『……ハァ。偽物のヒーローが巷にあふれ、そいつらのせいで社会は歪んでいる。正義を成せぬ者の過ちが……』

 

『誤魔化すなよっ!確かに刃物が飛んできたのはダンシング・バロンの最期の個性!それを防げなかったのは!避けれなかッたのは!俺がもたもたしていたから!誰かが俺を突き飛ばしたから!……だが!俺を殺したのはお前のナイフだ!お前がここに来たからだ!』

 

『……そうだな。それで、お前は俺に何が言いたい。』

 

『てめぇの信念なんて知らねえ。そのイカレタ主張でどれだけのヒーローを殺すつもりなのか、どれだけのヴィランを殺していくのか。だがなぁ!忘れんな!お前は!俺を殺した!ヒーローでも!ヴィランでもない!ちっぽけなガキの俺をだ!』

 

俺は、倒れている俺を指差す。

そうだ。

俺にはこいつを止める力なんてない。

でも、でも、てめぇの理想に狂ったヴィランに、こうなったのも社会の歪みがどーとか、これも増えすぎたヒーローがなんだとか、そんな理屈で終わらせられてたまるかっ!

 

『てめぇの理屈で、てめぇが殺していいって決めた中に、俺を、俺を勝手に入れるなよっ!忘れるなっ!てめぇは、俺を殺したんだ。ヒーローに捕まろうが、ヴィランに殺されようが、それでも、それでも最後まで忘れんなっ!てめぇは、ただのガキ殺しだっ!!!』

 

さらに表情が歪んだ?

怒りか、それとも、後悔か。

 

『ハァ~、小僧。名前は?』

 

藤宮続行(ふじみや・つづく)だ。』

 

『……ステイン。そう、呼ばれている。お前の事は、覚えておく。』

 

ヴィラン……いや、ステインはそう答えると、路地へと駆け出した。ビルの壁から壁への跳躍で、見る間に上へと駆けていく。

 

サイレンの、音。

そうか、パトカーが来たんだ。

きっと、近くのヒーローも来るよな。

終わった。

終わったんだ。

ダンシング・バロンが殺されて……俺も殺されて。

ちくしょう。

なんでだよ。

死にたくない。もう、死にたくない。

自分の、自分の亡骸の傍で生き返る?

やり直せるからそれでいい?

違う。違う。

だって、俺は俺だけど、だったらあそこで倒れてる俺は誰なんだよ!

ヴィランとMt.レディが戦ったそばで瓦礫に潰されて。

ステインの持っていたナイフが首に刺さって。

俺は、何度も終わってるんだ。

個性が、コンティニューしてくれてるだけなんだよ。

 

『あ、あの……』

 

プリズムレディ?

 

『い、今、救急車が、来ますから。念のため病院に。』

 

優しいなぁ。ダンシング・バロンが殺されたのに。

青ざめた顔で、泣きそうな顔で、でも俺の事を心配してくれるのか。

 

『あと、それから、あの……』

 

ん?

 

『何か、着た方が……。』

 

あ。

 

俺。

 

全裸。

 

終わったぁぁぁっ!!!!

 

誰かーっ!誰か俺を殺してくれーっ!!!

 

あぁっ!ダメだ!そしたら全裸の俺の死体の側に、全裸の俺が立つだけだーっ!!!

 

 

 

 

……はい。数日たちました。

自宅です。

あの後パニックになりながら俺の死体から服を脱がそうとして、駆けつけた警官とヒーローに止められたり、救急車で運ばれた病院……連絡が回っていたのか、俺の精密検査を二回に渡って行ってくれた病院で、再々検査を行ったりしました。

うん、健康体だった。

知ってた。

でも、こうも言われた。

『個性因子』が増えている、って。

量の多い少ないは、単純には個性の優劣に結び付かないらしい。

でも、個性の成長と因子の増大は密接な関係にあるらしく、又、異形型の個性は他に比べて因子が多いのも確からしい。

つまり……。

 

『君の個性が成長している可能性がある。』

 

って、言われてもなー。つまり、あー、そーゆーこと?

 

 

警察とヒーロー協会の人からはステインの事をいろいろ聞かれたけど、ヤツが個性を使っているところは見なかったから、正直に答えておいた。

立ち去るときの動き、半端無かったからなー。

増強型かな?

あと、俺が殺された原因として、俺の側にいた大学生のこともしっかりと話しておいた。

〝俺が殺された〟ってフレーズで、刑事さん顔がひきつっていたけどな。

 

 

……動画投稿サイトにはやっぱりアップされてやんの。

 

〝不死身の全裸クンとヒーロー殺し〟

 

アぁっ!!!

削除しろ削除ぉーっ!

訴えて勝つぞゴラァーっ!!!

 

 

で、俺は今、父さんと母さんに相談しているところなんだな。

俺の進路について。

 

『ヒーロー科に進路を変更したいって、どうしてなの?』

 

母さんが心配そうな顔で聞いてくる。

可愛いよな。相変わらず。

ん?真面目な話じゃないのかって?

だって、俺の母さんは見た目中学生だし?

メイクもろくにしないし、髪型もファッションもティーンズ系なんだぜ。

父さん……ロリコンじゃねーよな?

 

と、いけないいけない。真面目な話でしたね。

 

『俺、悔しかった。ボケッとヴィランとMt.レディの戦い見てたせいで事故死して、ステイン……ヒーロー殺しのテロの時も逃げ損ねて殺されちまった。』

 

『それは、貴方のせいじゃないわ。』

 

違うんだよ、母さん。

 

『そうじゃないんだ。俺、たぶん……死が寄ってくる運命と、死んでもやり直す体が、セットの個性なんだと思う。』

 

なんとなく、だけどな。

なんとなくだけど、分かるんだ。

死んでも健康な体が生み出される。

検査してみれば、個性因子は増えている。

じゃあ、それを成すエネルギーはどこから来る?

 

きっと、俺は死を呼び寄せて、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『なっ……。そ、そんな。』

 

母さんが言葉を詰まらせる。

 

続行(つづく)。……運命と戦う力をヒーロー科で学びたいと、そういうことなのか。』

 

さすが父さん。

 

『だが、その個性に頼らず進むなら、お前は実質的に無個性の身でヒーローを目指すことになるぞ?』

 

大丈夫。

俺は、一人じゃないんだ。

 

『見てて、父さん、母さん。』

 

俺はポケットから10円玉を取り出す。

親指と人差し指で挟み、力を込める。

 

……ハッ!!!

 

グニャリ。折り畳まれる10円玉。

 

『なっ?!』

 

 

『生き返る度に、俺は強くなっているんだ。……死んでしまった俺の力を、新しい俺が受け継ぐことで。』

 

これは、少しだけ嘘だ。

きっと、これも死のエネルギー。

破壊と、暴力の力が、少しずつ俺に溜まっていくから。

 

さぁ、いくぞ雄英ヒーロー科!

 

 

……実技試験て、受験生が死ぬような内容じゃないよね?




ステータスアップ!
……さて、それだけでしょうか?

藤宮君の自覚が真実を確実に捉えているとも限りませんし?



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藤宮続行:トレーニングステージ Act1

爆豪君がヘドロ事件で有名になってる訳で。
この作品での藤宮君の騒ぎもほっとくとヤバいので、一応は対策がはいってます。


二度の死と復活。

ヒーロー殺しとの邂逅。

メディアがわらわら取り沙汰する状況は、警察とヒーロー協会が何とか押さえてくれた。

 

投稿された動画は、削除と再投稿のイタチごっこが続いている。

 

で、学校なんだが……。

だーかーらー!

俺はプライベートとプライバシーをお前らに提供するつもりはねぇーっーの!!!

 

ステインの襲撃現場に居合わせた。→ ステインの持っていたナイフが吹っ飛ばされてグサー。→復活!→全裸でステインにクレームをつけにいく。

 

そんだけわかってたら充分だろうが!

騒ぐな!

わめくな!

個性使うな!

担任も注意しろ!

爆豪!俺を睨むな!

 

緑谷!お前とはゆっくり話したいな!

ステインの事とか、俺の個性の事とか、お前のトレーニングのこととか。

 

そう。トレーニングだ。

ランニングしたり空気イスしたり、緑谷は1クラスメイトの俺から見てもわかるほどに己を鍛え始めたのだ。

雄英ヒーロー科を受けるための準備と考えて間違いないだろう。

もっとも、優秀なヒーロー志望の受験生が数多く集う雄英高校。

無個性の緑谷が実技試験を合格するためには、正直それだけで足りるものなのかとも思う。

 

……他人事ではなかった。

俺も又、ヒーロー科で雄英合格を狙う身。

二度の死と復活で身体能力が格段に増大してはいるが、経験が足りない。

そもそも俺はスポーツも嫌いじゃないっていうだけで、基本は文科系だ。

 

まぁ、警察勤務の父さんのコネで、コーチをつけてくれる人を見つけてもらう事にはなっているので、慌ててもしょうがないのだが。

 

ん、というわけで、みーどーりーやーくーん。

おーはーなーしーしーまーしょー!

 

 

『……ヒーロー科を受ける事になった理由が、そんな深刻だなんて。』

 

おおよ、マジ深刻。マジで。

 

『死の運命を引き寄せ、受け入れることでそのエネルギーで甦る個性。』

 

おぉ、一般人やってられそーにないんだな、これが。

 

『甦る度に、前の自分の力を少しずつ受け継いで強くなっていく。……まるで、それ、まさか、そんな。』

 

ん?何かな?緑谷君?

何か心当たりあるの?

(その辺りは嘘だけどな。)

 

『ま、あれだ緑谷!というわけで俺もヒーロー科受験に切り換えていくからがんばろーなっ!お互い!』

 

『う、うんっ!頑張ろうね!』

 

ところで緑谷、筆記の対策はしてるんだけどさ、実技の内容とか予想たててる?

ん?体作りが忙しくってそっちに手が回ってない?

 

うっし、じゃあ、資料集め俺がやるからさ、検討だけ知恵貸してくれよ。

あん?いーから、いーから。

受験はライバルかもしんねーけどさ、ヒーローは助け合いだぜ。助け合い。

 

爆豪?いやアイツも自分の受験準備にイソガシイだろうから、基本的にそっとしておいてやろうぜ、な?

 

 

さてー。

そんなこんなで雄英受験に向けて努力する日々。

つーか、緑谷は大丈夫かね?

何かオーバーワークっぽいな。

 

しかし、雄英の実技試験、過去の資料集めたら、マジ笑える。

 

プロヒーローとガチバトル。もちろん勝利が条件では無いが、瞬殺される様では望み無し。

 

災害現場を模した会場でのタイムトライアル。

お邪魔ヴィランや要救助者に扮した試験官への対応で得点の増減あり。

 

仮想ヴィランというロボットとの攻守入れ替わる追っかけッこ。索敵、穏身に対しての個性や知識、技能が問われる。

 

仮想ヴィランとのガチバトル。

非致死性なれど、模擬弾でのマシンガンやミサイルがマジでパねー。

 

あと、雄英体育祭の種目をヒントにするって手も有るが……。

 

機動性に知覚力、決断力に戦闘力を問うって感じ?

対策より、覚悟。かねーっ?

 

 

 

で、父さん父さん父さんっ!

コーチしてくれる人、当たりはつきましたかっ?

 

『テンション高いなー。あぁ、快く引き受けてくれるそうだ。週末に会いに行こう。』

 

おぉー。で、どんな人?

 

『ん、日用品での護身術を得意としている方でね、現役の……』

 

え?!現役!さすが父さん!プロヒーローだなんて。

 

『いや?違うぞ。現役のヴィジランテだ。』

 

 

 

……はい?

ちょ、ちょっと待ってよ。

父さん、警察職員でしょ?!

ヴィジランテって、要は自警団。

つまり、モグリのヒーローでしょ?!

 

『その方々の敷地内だから大丈夫だぞー。』

 

 

大丈夫な要素がまるで感じられないんですが?




藤宮君の身長は168㎝。
緑谷君より高くて爆豪君より低め。

体つきはそこそこしっかりしているよーです。

顔立ちは糸目の笑顔少年です。
アレですね、シリアスモードで目を開く系の。


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藤宮続行:トレーニングステージ Act2

この二次創作においては、ヤクザ屋さんとヴィジランテの解釈が原作と少々異なっておりますー。


何ていうか、大人の世界を甘く見てたわ、俺。

父さんの知り合いッていうか、勤務先の警察署と友好関係を結んでいるヴィジランテがいるなんて。

 

いや、だってさー。

 

個性を公共の場で自由に使っていいのはヒーローだけ。

後は私有地内での使用か、限定された条件下での許可となる業種別のライセンス持ちってのが常識でしょ?

 

で、個性を悪用するヴィランに対しての、個性での直接的な捕縛・制圧がヒーローのお仕事。

ヴィラン……っていうか、犯罪者に対しての捜査は基本的に警察のお仕事。

そこに適した個性を持つヒーローであれば、要請を受けて参加。

前提としてヒーローは捜査でなくパトロールが主、と。

 

そーゆー治安維持の大前提を覆す……は言い過ぎか、でも、ヴィジランテが町の治安を守っていたなんて、何十年も昔の話だと思うよ、普通は。

 

『ずっとずっと昔から町の治安を守って来られた人達なんだよ。ざっくり、300年以上かなぁ。』

 

へ?

300年?

それって、江戸時代だよね、父さん?

 

十手持ち?

はー、ほー、へー。

岡っ引きとか、目明かしとか?あ、その二つは同じか。

 

そうすると個性とか関係ない時代からかー。

でも、そうするとそもそもヴィジランテって訳じゃなくて……ん?何やってた人達なんだ?

 

『ははは。わかりやすく言うぞ。いわゆるヤクザ屋さんだな。』

 

 

……ヤクザ屋さん?!

へ?それって、あれか。指定(ヴィラン)団体ってヤツ。

あれ?違うの?

 

はぁ、元々指定暴力団って呼ばれてた連中が超常黎明期にヴィラン組織になった、と。

で、ヴィジランテが抗って、ヒーローが台頭して……皆さんご存知オールマイトが大活躍して、そのほとんどが摘発・解体されたわけか。

 

摘発を逃れた連中がヴィラン予備軍って扱いを受けて、監視を受けながらもどーにかこーにか生き延びてる、と。

 

えーと、つまり父さんの知り合いの人達は……。

ヴィラン組織扱いを受けることなくずっとやってこれたって事かー。

 

『地元をずっと守ってきた方達だからね。だから地元住民の信頼も厚いし、所轄である私たちの署もうまく付き合ってるわけさ。』

 

へー、いるんだねー、そんな人達。

え?芸能プロダクションに警備会社?

クリーニング業に各種屋台派遣?

あぁ、きちんとした肩書きもあるんだー。ふーん。

 

ちょっと楽しみになってきた。

 

 

 

んでっ!

父さんの車でやってきました!

ヴィジランテな人達のお住まい!

 

その名も竜爪会!名前それっぽい!

 

長く続く白い塀。上に監視カメラすげーついてる!

でっかい門の向こうに、広ーい庭!

あれだ、時代劇のお屋敷みてー!

倉みたいな、たぶん倉も建ってる!

 

 

俺達を迎えてくれて、広い庭の一角でお相手してくれる人は……二人?

 

 

一人は、長い黒髪の若い女の人。

アーミーっぽいシャツにパンツ。

おお、腕が六本ある。

ま、それはそれとして。

クール系って感じの美人のお姉ぇさん。

 

もう一人は……牛?

年はわかりにくいけど、たぶんおっちゃん。

いや、顔がもろ牛なんだわ。

組んだ腕がぶっとくて、あ、傷だらけ。

腰に巻いたツールベルトに、ドライバーとかバールとかスパナとか差し込んでる。

 

『おぉーっ。藤宮のだんなぁっ!わっしの大工(でぇく)流護身術を教えてくれっつぅ坊っちゃんがそちらで?』

 

 

大工流護身術ってなんだ。

 

っていうか、でぇくって発音されると緑谷を思い出すな。

緑谷流護身術……敵の解析は凄そうだ。

 

 

 

 




大工流護身術……奥義はでっかいハンマーで『光になれぇぇぇっ!!!!』かな。


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藤宮続行:トレーニングステージ Act3

私が幼い頃の話ですが、グレーゾーンなレベルで所轄警察とヤクザ屋さんの協力関係は存在していました。
ええ、自宅での話だから間違いない。

……どちらかは秘す。



よし!六本腕のお姉さんと、牛のおじさんにご挨拶!

 

 

『藤宮続行です!この度は無理をきいていただき、ありがとうございました!どうかよろしくお願いいたします!』

 

『礼儀正しい坊やねぇ。私は明日原亜夢(あすはら・あむ)。よろしくね。』

 

 

『わっしは森野久孫六(もりのく・まごろく)でさぁ。主にわっしが教えることになりやすなぁ。』

 

あすはら・あむさんに、もりのく・まごろくさんか。

……牛なのに森のクマゴローさんなのか。

いや、失礼だな、俺。

 

父さんの話によると、この竜爪会の人達はほとんどが異形型の個性持ちで、近接戦闘が得意な人が多いんだとか。

で、森野久さんを中心として、戦闘訓練を俺につけてくれるとの事。

 

 

冷静に考えるとスゲーな。

警察職員の息子が、父親公認で現役のヤクザ屋さんから戦闘訓練の指導をしてもらってヒーロー科の入学を目指すって。

 

思わず口にしたら、森野久さんに笑われた。

天下の雄英に入ってプロヒーローになる逸材なら、それくらいの豪快エピソードが有ってもいいだろうってさ。

 

ま、まぁ、入学前の豪快エピソードなら、もはやそれどころじゃないしな。

 

豪快エピソード:中学在籍時に二度死亡。

 

……誰も憧れねぇよっ!!!

 

 

『じゃあ、まずは続行(つづく)君が()()()()()()()()のか見てみましょうか?さ、どっからでもかかってきて。』

 

そう言って明日原さんが構える。

真っ直ぐに立って、6本の腕は複雑に位置を取る。

何かどっかで見たな。

お寺か何かで……。

 

よ、よし行くぞ。

俺はど素人だけど、二度の死と復活を通して身体能力がガッツリ上がっている。

自分でざっくりと確認した限りでは、ちょっとした肉体増強型個性って言っても通じそうな位だ。

おまけに、素手の攻防なら何となーく体が自然と動くようにもなっているし。

 

ペコリと一礼して、ダッーシュッ!

今の俺は、だいたい50メートルをざっくり4秒切るぜっ!

正直、殴るのは躊躇う。

でも、相手はきれいなお姉さんでも、武闘派のヴィジランテ!

俺は一から教えてもらう立場だ!

よし、右手を突き込んで……おろっ?

 

俺は、宙を舞っていた。

空が、空が見える。

うぉぉっ?!体、ひねって、何とかちゃ、着地!

投げられたタイミング、わかんなかったぞ?!

 

『勢いスゴいのねー?いっぱい跳んだじゃない。』

 

……なんだろう?

このお姉さんに言われると妙に恥ずかしいぞ。

いやいや、まだまだ行くぞーっ!

 

はっはっはっ。いやー、6本腕半端無ぇー。

なーんもできんわ、マジで。

捌かれる、掴まれる、極められる、投げられる。

こちらからは触れることもできませんでした!

 

でも、明日原お姉さんは、スピードもパワーも(個性無しの)トップアスリート級じゃなくって?って誉めてくれた。

 

で、森野久さん。

えーと、竹に、巻き藁?

居合いの試し切りに使う様なヤツをいくつも並べて、距離をおく。

 

『いきやすよぉっ!!!』

 

両の手がゆっくりと腰のツールベルトからドライバーとスパナを抜き出し、振りかぶることすらなく、肘から先のわずかな動作で投擲する。

 

ズドンと突き刺さるドライバー、ドボッとめり込むスパナ。

 

マジかー。

 

『んでっ、と!』

 

ずざざざっと蒔き藁に近づく森野久さん。

その右手にはいつ抜いたのか1メートルは有るバール。

平たくなっている方の端を無造作に突き入れ、両の手で握りなおすと、素早く、力強く捻り込んでいく!

 

バキバキバキバキ。

おお、蒔き藁が……。

 

『……っとこんなもんですなぁ、基本ちゅうとこは。』

 

森野久さんが笑う。

 

『坊っちゃん。こいつのいいところは……わっしはココで大工(でぇく)仕事をしておりやすから、何処にいても道具は何かしら持ってるんですわ。』

 

ふむふむ。

 

 

『だから、おっかねぇヴィランに襲われたりした時に、たまたま持ってた道具で身を守るってーのは何もおかしいこたぁありやせんし、たまったま当たり処が悪くても、あっちはヴィラン、こっちは善良な一般市民でありやすから……。』

 

 

……ふむ、ふむ?

 

 

『サツの旦那方も法律って奴も、けっこう味方についてくれるんですわ。』

 

 

嗤う森野久さん。

 

 

怖い。

……何か、怖い。

 

 

うん、父さんも笑ってないでよ。

 

でも、こうして俺は竜爪会の人達に、雄英受験の為の実技試験対策の一環として、戦闘訓練をつけてもらうこととなった。

 

週末1日~2日。

それ以外の日は自宅&近隣での自主訓練や筋トレがメインだ。

 

さぁ、問題は……ヴィジランテな方達のところに通っている間に、俺のそばに『死の運命』が近づいて来なければいいんだけど。

 

 

 

 

 

 

 




さて、次のお話でトレーニングは終わってファーストステージ(受験)になるはずです。

……3回目のゲームオーバーが無ければ、ですが。


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藤宮続行:トレーニングステージ Act4

このころ、緑谷くんは頑張って海岸の掃除をしているわけですな。


雄英の受験まで、ざっくりと10ヶ月。

俺は竜爪会の人達に指導を受け始めた。

 

各種工具で闘う技術を持つ牛頭のおっちゃん森野久孫六(もりのく・まごろく)さん。個性:ミノタウロス。

 

6本の腕を自在に操り、変幻自在の格闘技を魅せてくれるお姉さんにして、個性:多腕操作の持ち主。明日原亜夢(あすはら・あむ)さん。

 

他にも、索敵や逃走に役立つ観察術や穏身術を教えてくれる道鈴幻華(みちすず・げんか)さん。

災害やヴィラン犯罪に巻き込まれた被害者への応急処置などの対応を指導してくれる狸穴(まみあな)さん。

壁登りや跳び移りのコツを伝授してくれる跳渡(とびわたり)さん。

異形型ヴィランで人体構造が激しく異なる者への対処法の心得をレクチャーしてくれる若頭の鳴子(なるこ)さん。

 

他にも、きちんとした(表向きの)仕事について分かりやすく話してくれる人や、ヴィジランテとしての武勇伝を面白おかしく、多分、中学生の俺に聞かせられるレベルを心得て話してくれる人とかがたくさんいる。

 

うん、何か気に入られたっぽいね。

俺がヤクザだとかヴィジランテだとか、気にする様子が最初からほとんど見せなかったせいか、竜爪会の人達は実に親身になって俺に接してくれるんだ。

 

がんばろう。

こんなにも力になってくれる人がいる。

心から思えるよ、俺。

 

 

そして日々は過ぎて行く。

 

……緑谷が心配だ。

オーバーワークじゃねーの?

授業中とかスゲー疲れてるって感じなんだが。

でもなー、体育の授業で着替える時にわかるんだよなー。少しづつだけど、筋肉ついていってるのが。

 

うーん。口出しは野暮かなー。

ま、あいつとの共同受験対策の時間の時にそれとなーく言ってみるかね。

 

あ、俺?

鍛えてるよー!

復活の時に起こったパワーアップも加えて、()()に筋肉ついてきたからね。

パワーが上がればスピードも上がる!

いまなら大排気量のバイクだって持ち上げて振り回すバイクアクションができそうだねっ!

でもさ、明日原お姉さんから一本も取れねーの。

 

『速くて強くても、動き出しに柔軟さが足りないわね。』

 

だってさ。

 

 

 

と、いうわけで夏休みです。

俺は今、竜爪会の組長さんとDVDを見ています。

 

いやー、組長さんさー、俺と同じく芸能活動してるマイナー系のヒーローをチェックしてんの。

で、奥さんと娘さんはそっち系にぜんぜん理解してくれないんだって。

ちなみに、奥さんは元・プロヒーロー。

アメリカ出身のブロンド美人さん。

娘さんは日米ダブルのすげー美少女。

何と俺と同い年で雄英の普通科志望。

 

うん、ちょっとだけ勉強会やったら、俺へこんだわ。

……特待生とか狙えるんじゃねーの?!

 

ま、まぁともかく、おっかない顔の組長さんとアイドル系ヒーロー談義です。

組長さんがどれくらいおっかないかというと、顔がもろに竜!

て、いうか、二足二腕だけど全身が竜なんだな。

鱗生えてるし、牙するどいし、しっぽも角もあるし。

角とか鋭い爪は娘さんにも遺伝してたっけ。

 

『小僧、わかってんじゃねーか。』

 

『はい!シ姉妹のライブはダンスのあえて崩したバランスと、二人の微妙な表情が重要ですもんね!』

 

『あぁ、しかもこのデビューライブが最高だぜ!』

 

『こ、これは幻の富士特設ステージでのライブ映像っ!ど、どうして製品化されてないこれがっ?!』

 

『ばぁか、そりゃおめぇ、裏でゴニョゴニョしてな。』

 

『あ、組長さん悪い顔ですよー。』

 

あぁ、楽しいなぁ。

実は今日は夏祭りで、組の皆さんはその準備に追われている。

俺も何かお手伝いしましょーかって言ったら、何故か組長さんに引っ張られて、男二人でこうしてるのだ。

 

『ところで小僧ぉ。おめぇ、プリズムレディの……』

 

ん?組長さんが途中で言葉を飲み込んで、テーブルの上のでっかい灰皿をつかんだ。

 

ぶんっ!

 

スゴい勢いで、クリスタルガラス製の灰皿が俺の顔の横を通過し、そして……。

 

振り向いた俺の視線の先で、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

倒れる石の?襖。散らばるガラス片。

開け放たれた向こうから、黒いチャイナドレスを着た、灰色の髪をした女性。

 

『乱暴ねぇー。ま、暴力団の組長が暴力的なのは当たり前かしら?』

 

暗い眼差し。

どこか壊れた微笑み。

……ヴィラン。

 

『小僧、逃げろ。こいつの狙いは俺だろうからな。』

 

そうだ。俺がここにいても邪魔なだけ。

逃げて組の皆さんに伝えないと……。

……立てない?!いや、足の感覚がっ!

 

立ち上がろうとした俺の足はいうことを聞かず、視線を向ければ、膝から下が服ごと変色していた。

 

石のように。

 

絡み付いている、灰色のガスのようなもの。

 

『だぁめ。貴方は人質……いえ、暴虐の竜爪が全力を出せないようにするハンデ、かしらね。』

 

進行、している。石化が。腰まで、もう。

 

『大丈夫。全部石になっても、ちゃんと元に戻れるから。……そこのおじさんが暴れて砕いたりしなければ、ね。』

 

まずい。立てない。

それに、組長さんがこの女に飛びかかるのにも、俺が邪魔になる。

ガス?

息?

触れただけで石に?

 

俺は、テーブルの上のDVDのリモコンをつかんでいた。

 

まだ、動くっ!!

 

どごっ!!!

 

油断していてくれたのだろう。

 

森野久さん直伝の護身術。

〝怖くて近くに有った物をとっさに投げてしまいました。えぇ、無我夢中で。まさか、あんな事になるなんて考えもしませんでした〟は、見事に女の右目にぶち当たっていた。

 

へ、ざまぁ。

 

『ぎゃあぁっ!!!』

 

のけぞる女ヴィラン。

 

『よくやった、小僧ぉっ!!!』

 

吠える組長さん。

 

あ、やべ、石化まだ止まんね。

 

組長さん、後は、おまかせしま

 

 

 

 




ステータス異常か。
誰かーっ!金の針持ってきて!金の針!


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藤宮続行:ゲームオーバー・3回目&コンティニュー!

おや?

いしになったフジミヤくんのようすが……?


この展開ならさぁ、気がついたら全部解決していて、組長さんに誉められて、そのあと警察やヒーローがやって来て、でも何とか祭りには間に合って、ハッピーエンドって……思ったんだけど。

 

なんで、なんで、俺は、自分そっくりの石像の側に立ってる?

 

また、全裸だし。

 

『お、おい、小僧ぉ。……おまえ、死んだ、のか?』

 

『って事じゃないですか?こうして生きてる以上。』

 

この世でこれほど矛盾に満ちた会話があるだろうか?

 

組長さんも、女ヴィランも、唖然としていた。

 

『な、何なのよ、貴方。』

 

片目をおさえたまま、呻くように尋ねてくる。

うるせーよ。

また、また俺を殺しやがって。

 

『あんたに殺された中学生だよ。……何が元に戻れるだよ。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『そ、そんなはずは無いわ。完全に石化しても、私が解除すれば元通りになるんだからっ。』

 

 

はぁっ?!

じゃあ俺は、なんで……。

 

あ、そうか。

 

そういうことか。

 

俺は、唐突に理解した。

石になった、俺。

呼吸も無い。鼓動も無い。なら、脳も活動していないわけだ。

だったら、死んでいるのと同じじゃないか。

だから、()()()()()()()()()()()()()()()()()のか。

 

『だったら、試しに戻してみろよ、ほら。ほら。』

 

『な、なんで私がそんなことを……。』

 

『いいからやってみろよ、おらぁぁぁっ!!!』

 

俺の剣幕に気圧されたのか、それとも他の理由か。

女ヴィランは個性の解除を行おうとしたのだろう。

だが……。

 

『あ、あれ?!な、なんで?』

 

やっぱり、そうか。

もしかしたら、石化が解けて()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

ここに有るのは、〝石になって死んだ〟俺だ。

なら、戻るはずもない。

死の運命を確定させ、その結果から死のエネルギーを食らって俺は生き返る。

因果は、応報した。

俺がここにいる以上、『石化死』は覆らない。

 

3回目、3回目か。

ここにいたって俺は確信した。

死に続ける限り、俺は生き続ける。

 

『な、何なのよあんたっ!』

 

さっきも聞かなかったか、それ?

 

『知りたきゃもう一回やってみるか?無駄だけどな。』

 

そう言って俺は右足を蹴りあげる。

俺の足元にもう一度漂ってきていたガスを、風を起こして吹き飛ばす為に。

 

焦ったふりを続けて、ちゃっかりガスを吐いていやがった。

丸見えだぜ。

 

『ふ、風圧で?!』

 

今度はマジでびっくらこいたな。

さて、と。

俺は、俺の石像の腕を掴む。

 

間抜けなツラしてんなぁ。どや顔か?俺。

 

片手に力を込める。

あぁ、重てぇ。石の俺って何キロあるんだ?

片手で持ち上げるのスゲーきついぜ。

 

あ、組長さんがニヤニヤしてる。

ちっ。この程度の芸当じゃ驚かせられねーか。

 

『逃がさねーよ。くらえっ!』

 

行けっ!石化藤宮君!!!

俺は、石になった俺を女ヴィランに投げつける。

 

どがぁぁっ!!!

 

おーおー、石化藤宮君。

人様の家で女の人を押し倒すなんてやるなー。

目ぇ回しちゃってるじゃねーか。

 

力、また上がっちまったな。

 

それに、さっきの女ヴィランの攻撃。

何をしてるのか、わかっちまった。

目で見て見えないのに、気配っつーの?

何かそんなのが丸見えっぽかった。

 

努力とは関係ないところで、強くなるんだよな、俺。

 

『組長さん、俺……。』

 

『おぉ、小僧。なあ、これよぉ、うちに飾らせてもらってもいいか?』

 

いや、勘弁してください。

 

あと、何か服を貸してください。

 

夏祭りに行きたいんで。全裸はかんべんです。

 

 

その後も大変だった。

 

組員さんが駆けつけて、組長さんが無事かどうかって騒いで、俺が全裸なの見て絶句して、俺の石像見てフリーズして。

女ヴィランの侵入経路はどこだってやっぱり騒ぎになって。

この女ヴィランをどうするって話が出て、若頭の鳴子さんがちらっと俺を見て、小さく舌打ちしてから警察を呼ぶように指示して。

 

やって来た警察に事情説明して、詳しい調書は後日取らせてくれって話になって、石化藤宮君だけ連れていかれて、組長さんがソレちゃんと返してくれって話して、マジで飾るつもりかって俺がビビって。

 

でも祭りには何とか参加できて……何でかしらないけど明日原お姉さんにエスコートされてて。

そこで明日原お姉さんと道鈴お姉さんが二人とも組長さん(奥さん公認の)愛人って聞かされて羨まし……ビックリして。

 

こうして、俺の3回目の命日と、4回目の誕生日は過ぎていった。

 

 

 

其れからの日々も慌ただしかった。

 

何度かこう、事故っぽいものに巻き込まれはしたが、俺は、死なずに雄英受験に備えることができた。

死ぬ度に強くなる体は、今までの俺だったら抗えない死の運命にも屈しないで俺の、俺の4回目の生を守り通した。

 

はぁ。割れた窓ガラスがビルからわんさか降ってきた時にはビビったけどさ。

 

緑谷は何かマジでやばかったな。

ガチのオーバーワークで、これ潰れんじゃねって感じが……11月末だったかな。

何とか持ち直したっぽかったけど。

海浜公園で清掃ボランティアやってるった聞いたときは感心したね。

 

さぁて、俺の努力の日々、緑谷の努力の日々。

あと、ついでに爆豪の努力の日々!

 

泣いても笑っても、死んでも生き返っても、明日が雄英の入学試験!

 

行くぜヒーロー科!

生きて生きて生き抜くために!!!




身体能力は更にアップした模様。
石化藤宮君アタック、重さ200キロ以上あるよな?

……女ヴィラン平気なんだろうか。


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藤宮続行:ファーストステージ Act1

やっと受験だーッ!

独自解釈ありです。ご注意下さい。


男子三日会わざればなんとやら。

雄英高校の実技試験に一緒に行こうと、緑谷と待ち合わせたんだわ。

 

そしたら、しっかり逞しくなってやんの。

学生服の上からだとぱっと見わかりにくいが、肩、首、腕とかなり鍛え込んでいた。

 

ん?

それだけじゃねーな?

なんだ?よくわからんが……気配が違う?

あー、なんだ?

モーター駆動のシティ・コミューターが、いつの間にか大排気量のエンジン積んだハイブリッドカーになってるみたい、な?

 

ま、いいか。

こいつも雄英のヒーロー科を受けるんだ。

隠し球の一つや二つ持っててもおかしくないわな。

 

俺?石化ヴィランに殺されたせいで、パワーは又上がっちまったな。今ならバイクアクションじゃなくて、カーアクションができそうだぜ。

で、気配が読めるっつーか、いろいろ感覚が6感まで鋭くなったみたいだし?

 

『どけモブども!!』

 

ん?この声は爆豪か。なんか久しぶりな気がするな、何故だか。

 

『俺の前に立つな。殺すぞ。』

 

はぁ。相変わらずだな。

ん?緑谷ぁ。ビビってどーする?

俺なんか笑うぜ。

殺せるもんなら殺してみろ。そのかわり責任もって俺の遺体片付けてから試験受けろよ……ってな。

 

 

むむ?何か周りが語ってね?

『なぁアレ、バクゴーじゃね?〝ヘドロ事件の〟。』

『おお本物。』

 

そっか。俺が初めて死んで騒いでいた頃、そんな事件に巻き込まれたって聞いたな。

『お、おい!〝不死身少年〟がいるぞ!』

『まじか。〝ヒーロー殺し殺され〟の?』

 

おい、動画見たのか。

っていうか、なんだ〝ヒーロー殺し殺され〟って。

ゴロ悪いし。

……はぁ。緑谷、さっさと行こうぜー。

って、浮いてる?!

 

おぉ、転びそうなところを助けてくれたのか、そこの女の子。念動力?重力制御?可愛らしいのに強そうな個性だな。

 

おい緑谷。おまえ、今の女の子とマトモに話せてないぞ。

何かこう、へ……とか、あ……しか言えてないじゃねーか。

 

 

 

さて、でけぇ講堂だな。

実技試験のプレゼンテーション、か。

……プレゼント・マイクうるせぇぇっ!!!

 

10分間の模擬市街地演習、ね。

持ち込みは自由。ん?同じ中学は会場が振り分けか。

協力防止か、それとも喰い合い防止かね。

 

仮想ヴィランを三種配置。

ふん、ポイントが1~3。()()()()にすればポイントゲットね。っと、プリントには四種しるして有って、Dはゼロポイントって書いてあるな。

ふーん。行動不能にしてもポイントがもらえない、と。

……臭ぇな。

裏があるよな、こりゃ。

 

 

おぅ?メガネ君メガネ君。でっかい声のメガネ君。

誤載であればとか、痴態とか、もう少し考えるかプレゼント・マイクの説明待とーぜー。

ん?〝緑谷ブツブツ〟に突っ込んできやがった。

ははぁー、あれか、余裕ないのか。

ま、しょうがねーよなー。

 

ふん、0ポイントはお邪魔虫、ね。

暴れ続けるギミックねー。

やっぱり、怪しいね。

 

さて、俺も質問しますかねっ、と。

プリントにも受験要項にも明言されてないし、な。

 

『しつもーんっ!〝この実技試験で重傷を負ったり、万が一に死亡しても、受験者の自己責任です。〟みたいな契約はしてないんですけどー、何かあったら賠償してくれるってことでいーんすか?』

 

ありゃ?プレゼント・マイクの顔が引きつった?

ん?危険な試験だからもちろん対応するって?

ははぁー、こりゃ、あれだな。

見た目の押し出しが強かったり、バカでかかったりしても、安全面はかなり配慮してくれてるな。

受験資格で個性の有無や優劣を測ってなさそうだもんなー。

ロボット相手に向いてない奴が受験する可能性も高いしな。

よしよし、俺が死ぬ可能性は低い……かな?

低い……よな?

 

 

『そこの君!ここは雄英だぞ!試験においてもその困難は当然理解できているべきであろう!だいたい……』

 

 

ありゃ?メガネ君。今度は俺?

あ、周りのヤツも。

『なんだよ。ビビりか。』

『根性なしがくるんじゃねーよ。』

はぁ、だせぇ連中ばかりだな。

 

『言っておくがなぁ、俺達は受験生。つまり、雄英高校は俺達への配慮や対応に関して、在校生と同じ扱いをする義務はねぇんだよ。だから、この実技試験において相互の関係性を担保するのは、この国の法律!裁判上の判例!ソレ以外は受験要項とこのプレゼンテーションしかねぇの!』

 

プリントをヒラヒラさせながら俺は続ける。

 

『で、大事な大事な()()()()()()()について記されて無かったから、代わりに聞いてやったんだよ!あぁ、口約束でも法的な契約は成立するからな?……あくまで、お前らの為の質問だ。俺は、俺だけは何があろうとこの試験で()()()()()()()()()()()()()()()。』

 

『君はっ!そ、そうか。……失礼した。』

 

メガネ君、質問の真意に気がついたか?

いや、俺が誰か気がついただけか。

まぁいいか。

 

ん?プレゼント・マイクがまだなんぞ言ってくるな。

だから声でけぇって。

聴覚も鋭くなったからなー。

意識的にカットするの難しいんだよな。

 

Plus Ultra(更に向こうへ!!)、か。

 

あぁ、行ってやるさ。

生と死の向こう側へ、な。

 

 

さて、行くか。

あ、緑谷ぁー。お前、武器になるもん持ってきたか?

へ?じゃないよ。

持ち込み自由って受験要項に書いてあったろ?

個性に合わせた装備とかけっこう持ってくるぜ、普通。

よし!俺のバールをお守りに一本貸してやろう!

 

あ?いいって、大丈夫!

俺はたくさん持ってきたからな。

幾つって?

んー、15センチが8本。

50センチが4本。あ、これ一本貸してやるな。

120センチが2本!これが今回のメイン武器だ。

 

二人で過去の実技試験の資料、検討したろ?

ま、今回の仮想ヴィランは新型っぽいけどよ。

でもどう考えても、素材はカーボン系とアルミベースの軽合金で軽量化してる。

 

なら、このクロモリベースのバールの方が丈夫だ!

ん短いバールはどうするのかって?

投げるに決まってるだろが。

おかしなこと聞くなぁ、緑谷。

 

頑張ろうぜ、互いによ。

 

だーかーらぁー。なんで俺らを睨むのよ、爆豪君。

 

 

 

 

うおっ?!広っ!

模擬市街地……うん、街だね。確かに。

そっか、『セメントス』に『パワーローダー』だな。

さすが雄英。スケールがパねぇ。

こりゃあまず高所をおさえるべぇかね?

 

『ハイスタートォォォォッ!!!』

 

ちっ!カウントダウン無しかよっ!!

 

走っ……いやっ!

ジャンプ!、近くのビルのひさしを掴んで、更に体を上にっ!

ふふん。竜爪会の跳渡さん直伝の軽業だっ!

よしっ。屋上!

さて、視覚・聴覚全開っ!

 

先頭集団は、あそこか。

で、仮想ヴィランは……複数グループ確認!

あ、0ポイントでけぇな。

ビル壊すのか。

思い出すなー。Mt.レディと、巨大ヴィラン。

まだ距離あるから気にしねぇけど。

 

他の受験生と接敵するグループは捨てて、他の集団を先に仕留める!

ビルからビルへジャーンプっ!

 

一騎駆けじゃーっ!

ヒャッホーっ!

 

 

ん?何か違和感が。

目には見えないが……いや、陽炎めいた揺らぎがいくつも浮いてる。

光学迷彩?

あぁ、受験生を監視するドローンか!

そうすると……街路樹や街灯にもカメラが仕込まれてそうだな。

細かくチェックしてるってことか。

 

よしっ!接近っ!

んー、さすがに10階建てのビルからまっすぐ飛び降りたらケガするな。

なら!ビルとビルを蹴って降りるだけだぜ!

おらぁっ!いくぞっ!

 

『標的捕捉、ブッコロス!』

 

口悪いな。

着地するなり、一番近くにいた仮想ヴィランが合成音声でわめく。

1ポイントか。

蛇腹状の首で支えられたカメラアイ搭載の頭部。

同様のアームの先は打撃武器を兼ねたシールド、右のシールドの下にはガトリングガンパーツ。

過去のロボットヴィランの例にならうなら、硬質ゴムの模擬弾のはず。

 

『バール・シュート!!』

 

俺の右手から放たれた15センチのバールは、アームを支えるボディの中心をぶち抜くっ!

ふっ、所詮はカーボン複合材。

クローム・モリブデンをベースとしたバールの敵では無いわ!

よし、行動停止したな。

他の仮想ヴィランが俺を包囲する前に、今倒した仮想ヴィランに駆け寄り、アームを踏みつけながら左腕のパーツを引きちぎる!

 

『ヴィラン・シールド・シュート!』

 

投げ飛ばしたシールドパーツが、右側から回り込んだ蠍を模したような仮想ヴィラン、2ポイント対象のボディに深くめり込む。

よし、二体撃破っ!

 

おおっ?!ロケット弾発射装置のような物を背負った、大型車両のような仮想ヴィランがこちらを狙っている!

3ポイントかっ!

発射されるのは模擬弾にしても、まともに食らえば吹っ飛ばされるだけの衝撃は確定!

下手したら失神してアウトだ!だがっ!

 

俺はうつ伏せにばったりと倒れる。

……よし、攻撃は来ねぇっ!

行動不能になった受験生に対しての追撃は出来ないアルゴリズム!

だが俺は高速匍匐前進で間合いを詰める!!

 

この距離では飛び道具は使えないなっ!

両手で地面を叩いて跳ね起き、腰のベルトから120センチの長尺バールを二本引き抜く!

 

『ダブル・バール・ピアッサーッ!!!』

 

バールを突き込む。

ボディの奥深く。制御システムが搭載されている筈の場所に二本並べて叩き込み、グリグリと抉る。

 

よし、三体目撃破っ!

どんどん行くぜっ!!!

 

 

 

ふははははっ!

グループ一つ丸々一人で潰したった。

よし、次はっ!!

 

俺はもう一度ビルの屋上に登り、周囲の状況を確認する。

ふん、()()()()仮想ヴィラングループはさすがにもうないか。

でかぶつ0ポイントは離れて暴れてるだけ、と。

んな訳ないな。

アレが本格的に動くとしたら残り三分ぐらいが怪しいね。

ならその前に!

 

俺は乱戦状態、仮想ヴィランの方が多く見える戦場へと駆ける。

 

()()()()()()で屋上から着地、拳で2ポイント仮想ヴィランを砕いている奴の後方へ駆け寄る。

 

『ダブル・バール・カウンターッ!』

 

背中から襲おうとしていた1ポイント仮想ヴィランの両腕、蛇腹状のパーツへバールをカウンターで突き入れ、一気に切断する。

 

『あぁっ?』

 

振り向いた少年へ軽く頭を下げる。

 

『悪ぃ。横取りしちまったな。』

 

全身が金属と化している。拳一つで戦っていたのだ。

背中からの攻撃どなんともなかったろう。

 

『いや、早い者勝ちだろ。』

 

男臭い笑顔。いいやつだな。

 

『あんがとなっ!』

 

俺は乱戦に飛び込む。

優勢、善戦している受験生には関わらない。

 

一対多で苦戦しているところには一声かけて参加。

 

食らってノックバックしたり、ダウンしたところには黙って乱入!

うん、このケースの方が仮想ヴィランのタイムラグが発生しているから楽だな。

よし!

受験生から妨害されたと申請される恐れもないから、なるべくこっちで稼ごう!!

 

 

ん?

 

『あと三分~!』

 

 

来るか?!0ポイントっ!!

 

予想通りなら、死の危険なく残りの仮想ヴィランを一網打尽にできるはずっ!!!




ほぉ、死の危険無く稼げる……と?(フラグ)


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藤宮続行:ファーストステージ Act2

今回、藤宮君は持てるカードを全部切り、雄英側の手札を、役を頑張って推理しました。


さて、お邪魔虫の0ポイントが動き出した、か。

ビル群を薙ぎ倒しながら進む巨体。

はー。パワー・サイズ・強度、全部が他の仮想ヴィランとは段違いだな、ありゃ。

 

で、みんな逃げる、と。

 

そりゃそうだ。普通は逃げる。

勝てやしねー。

勝ってもポイントは入らねぇし。

 

でもなー、残り時間が短くなったところで動かす理由は?

いや、今の今まで他の仮想ヴィランや受験生に近づかなかった理由は?

試験官は、何かを判断しようとしてる。

何かはわからん。落ち着いて避難できるかどうかの冷静さかもしれんし、な。

 

俺が今狙っているのは、逃げ出した受験生が放り出した仮想ヴィランだ。

 

だから、俺は0ポイントに向かって走り出している。

あえて、ビルの屋上からの跳び移りは行わない。1~3ポイントの仮想ヴィランに発見してもらわんといかんからな。

 

『お、おい無茶だ!早く逃げろ!』

『危険だぞ!』

 

親切だなー。君たち。

でも、俺にも考えがあんのよ。

 

『あ、痛ぅっ。』

 

ん?あらま、転んだのか。女の子……か。

まぁ、助ける必要ないんだけどなー。

あ、響きわたる0ポイントの轟音に涙目になってる。

んー、しょうがないか。

 

『ほら、掴まんな。』

 

手ぇ伸ばして、と。

 

『あ、あ、ありがとーっ!』

 

ひょい、と立たせて。

 

『慌てずゆっくり逃げな。』

 

『で、でも、ゼ、ゼ、0ポイントが!』

 

『だーいじょーぶ。こっから先には行かせないから。』

 

『え?』

 

俺は0ポイントに向かって走り出す。

あ、誤解されたかね?

俺が食い止めるとか、倒すとか?

 

あはははは。ナイナイ。

 

あれは相手をする必要がないのさ。

 

俺は広い通りを選んで、大声を上げる。

 

『かかってこいやーっ!!ポンコツどもっ!!』

 

両手にはバール。

接近する0ポイントを睨みながら、集まってきた1~3ポイントに戦いを挑む。

 

『対象確認……殲滅スル。』

 

はっ!上等だ!

俺は2ポイントの仮想ヴィランの前足を両手のバールで同時に千切る。

前のめりにバランスを崩す仮想ヴィランに跳び乗り、尾のようなパーツの付け根にバールを2本とも打ち込みグリグリと抉った後、引き抜いて腰のベルトにバールを戻す。

そて、仮想ヴィランの尾を両手で掴み、思い切り引き上げる!

 

ちーぎーれーたっ!!!

 

そぉれっ!

 

『ヴィラン・テール・スイングーッ!!!』

 

ミスミスミスミス。

 

振り回す。振り回す。振り回す。

 

尾っぽパーツがボロボロになるころには、周りの仮想ヴィランにもいい感じでダメージが入っていた。

よっしゃっ!追撃だあっ!!

 

ん?0ポイントはどうしたのかって?

 

ああ、俺の近くで手足を使ってビルを攻撃してるぜ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

気をつけないといけないのは、落ちてくるビルの破片ぐらいか?

 

うん、つまり、あれはお邪魔虫なのさ。

あんな巨体で殴られたら、踏まれたら、死んじまうかもしれないだろ?

受験生の子どもたちが、さ。

だから、攻撃は出来ないのさ。

アルゴリズムなのか、試験官がコントロールしてるのかまではわかんねーけどな。

 

仮想ヴィランに撃破に熱中して、避難するのを忘れている俺みたいな奴がいても、脅すしかできねーのさ。

そのあたりを探るためにプレゼント・マイクにあんな質問をしたんだが。

 

どこまでいってもこれは高校受験だぜ?

 

まぁ、あら探しをするような行動がマイナス評点になる危険性はあるんだが……、状況判断を評価してくれることを祈るね。

 

ビルをあらかた壊してしまったせいか、0ポイントが足元をズガンッ!ズガンッ!と手と足で叩いてやがる。

 

ははっ、なんかだだっ子みてー。

 

ふははっ!

仮想ヴィラン、残り物撃破ーっ!!!

ふん、ざっくりいっても全部で60ポイントは潰したぞ!

さて、そろそろ終了か?

 

『終~了~っ!!!』

 

おお、ジャストタイミング!

 

よおしっ!

死なずに!ケガせずに!実技試験をやり遂げたぞ!

手応えも充分だっ!

 

ミシッ。バキッ。

ドゴォォォッ!!

 

へ?

なんだ?

あ、0ポイント?

足元が、崩れて、空洞?停止してたから、バランスが?

やべっ!

俺の、上に、倒れて、くる?

 

くそっ、どうするっ?

 

死んで、死んでたまるかっ!

 

死んでもいいわけじゃないんだっ!

 

あいつ、不死身だから、バカやっても受かったんだなんて!言われたくないんだっ!

 

今のパワーなら、耐えられるのか?

今のパワーなら、弾き返せるのか?

 

俺は、全力で拳を突き上げた。衝撃が放たれる。

あがる轟音。

……へこんだ。

それだけ。

止まらない。

落ちてくる。

潰される。

また、潰される。

 

い、いやだ!

死にたくない!

死にたくない!

死にたくない!

 

死 に た く な いっ!!!

 

 

こんな、こんなガラクタにツブサレルノハイヤダ。

 

オレガナンカイシンダトオモッテイル。

 

モウコノテイドノシハオレニフサワシクナイ。

 

ウセロクダラヌグウゼンヨ。

 

オレニケンジョウサレルベキオレノシハモットサツイニミチタヒツゼンデアルベキナノダ。

ソウデナクテハウツクシクナイ。

ソウデナクテハタノシクナイ。

ソウデナクテハウマクナイ。

 

ミライトカノウセイヲヌリツブスシニモキセンガアルノダ。

 

オレハコノクダラヌシヲキョゼツスル。

 

 

 

なんだ?

どうして、俺は、生きてる。

足元。

俺の死体は、無い。

服は、着てる。

 

俺は、生き延びたのか。

 

0ポイントは、何処に行った?

 

周り、白い。

白い粉が舞ってる。

白い粉がうず高く。

 

俺は、拳についたソレを、舐めてみる。

 

塩?

 

どうして、なんで、なにがっ!!!

 

どうして、0ポイントヴィランがっ!

 

塩の柱になってるっ!!!




いつのまにか、手札が全部ジョーカーになっていたとしたら?
貴方はどうしますか?


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幕間:試験官かく語りき

実技試験中の先生達の会話から、藤宮君について触れた部分を抜粋した感じです。
普段にもまして短いです。

一部の発言のみ、誰の発した言葉か考えていますが、あとはざっくりとした感じですかね。


『今年の受験生はどんな感じかな!』

 

『プレゼント・マイク先生のプレゼンテーション中に面白い発言をした生徒が……。』

 

『重傷や死亡時の対応について触れていないと指摘、か。』

 

『不安だったのでは?』

 

『いや、この少年は……〝不死身〟いや、〝復活者〟だ。』

 

『あのダンシング・バロンが殺された事件に巻き込まれたという少年かっ?!』

 

『……実技試験の構造に気がつき、あえて周囲の受験生に匂わせた、のか?』

 

 

 

 

『始まりましたな。』

 

『情報力・機動力・判断力・戦闘力。()()能力が問われる。ポイント数でね。』

 

『あら?この子は増強型じゃないのよね。』

 

『素の機動力か?凄いぞ。』

 

『ドローン群にも気がついた、か?』

 

『おいおい。バール?バール投げたのかよ!』

 

『わざとダウンしたな。……おい、アルゴリズムの隙を突かれてるぞ。』

 

『む、しかし、倒れた生徒に追撃はできないでしょう』

 

『強い。どう考えても5倍以上のパワーを発揮している。』

 

『個性届け……死亡後の復活で肉体の増強の副作用とあるぞ。』

 

『無傷で仮想ヴィランのグループを一つ潰したか。戦闘力はかなりだな。』

 

『技名を叫んでいるのは何なんだろうね』

 

『オールマイトに憧れる子どもにはよくあることでは?』

 

 

『今度は混戦中の集団に突入か。』

 

『ほぉ。横取りしないように留意しているな。レスキューポイントも丁寧に拾うか。』

 

『試験構造を見抜かれているのかな?』

 

『あくまで助けが必要な受験生をフォローしているだけでしょう?』

 

『いや、生徒のダメージチェックの為に行動が止まる隙を狙っているな、これ。』

 

 

 

 

 

『さあ、真価を問われるのは……。』

 

『これからさ!』

 

『む、0ポイントに向かっていくか。』

 

『助けたわ!女の子を!いいわね、いいわね!』

 

『残敵掃討か。だが、これは……。』

 

『……0ポイントのアルゴリズムも見抜かれているぞ。これは……どう評価する?』

 

『小賢しいともいえるが……これを評価しないのは合理性に欠きます。』

 

『この形式に関しては試験内容の見直しが必要になるな。』

 

 

 

 

 

『終了か。』

 

『0ポイント撃破が一人に、0ポイントを歯牙にもかけないで済ませたのが一人。』

 

『ぶっ飛ばした受験生は久しいな。』

 

 

『待ってください!0ポイントが、一体!転倒します!』

 

『地下の空洞が?!』

 

『再起動!バランサーを!』

 

『間に合いません!!』

 

『いかん!このままでは!』

 

『なん……だ?崩れた?粉に?』

 

『彼の個性は復活と、副作用の肉体増強でしょう?!』

 

『何が起きてる?!』

 

『本人も呆然としてないか?この表情。』

 

『複合……個性?いや、複数の?……不死身の体。いや、まさか……。』

 

『オールマイト先生?何か心当たりが?』

 

『い、いえ。』

 

『……校長先生。この彼に関してですが、筆記試験の終了後、合否判定に関わらず聞き取り、いえ、面接を行いたいのですが。』

 

『何か思うところが有るんだね!いいよ、ワタシも立ち会おう!!』

 

『は、ありがとうございます。』

 

『合理性に欠く気がしますが。』

 

『相澤君!君にはこっそり覗いていて欲しいんだ。』

 

『……聞けよ。……いや、()()()()()()()()()()()()()()()()。貴方ともあろう人が。』

 

『万に一つ、いや、百万に一つの危険性だが。()()()()()()()()()()というべきか。』




なお、原作のマンガで筆記試験のタイミングがわからなかったので、この作品においては実技試験の2日後と設定しております。


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藤宮続行:ドラマパート Act1

オールマイトと藤宮君の接触!
さぁどうなる?


今までも色々あった。

 

瓦礫に潰されて死んだり。

 

ヒーロー殺しに殺されたり。

 

女ヴィランに石にされて、そのまま死亡判定入ったり。

……あ、そういえば石化藤宮君、竜爪会の組長さんが警察から引きとっちゃったんだよな。自分の部屋に飾るって。

 

でも、今回のコレは異質だ。

いや、死んで生き返るのも充分に異質な気もするが。

 

油断して、倒れてくる0ポイントを避けれなかった。

全力で拳を振り上げたけど、いくら強化されてるといっても、今の俺のパワーではどうにもならなかった。

だから、俺は、また死ぬはずだったんだ。

 

それなのに、俺は生きている。死なずに済んでしまった。

塩の柱に、塩の山に囲まれて。

 

一瞬、意識が飛んだような気がした。

その時に何が起こった?

俺がやったのか、コレを?

俺にそんな力は無い……はずだ。

 

元素転換だとか、物体崩壊だとか、例えるならそんな個性の発揮された結果だろう。

なら、誰かに助けられたのか?

それも違う気がする、

矛盾しているが、俺にできるはずもないのに、これは俺のやったことだと確信があった。

矛盾……死に続けて生き続ける、俺の個性そのものかもしれない。

 

ざわざわ。

『おいアレ。白い……粉?塩、か?』

『あいつがやったのか?!』

『0ポイントに向かって行って、倒して塩に変えたのか? 』

『なんて個性だよ。』

『あれ?あいつ見たことあるぞ。』

『〝ヒーロー殺し殺され〟じゃね?』

 

おい、最後。

だからやめろ。ひーろーごろしころされ はやめろ。

っていうか、言い出したヤツだれだ。

訴えるぞ。

 

俺は慌ててその場を離れる。

 

ん?怪我人に治療してる、のか?

リカバリーガール。

雄英の屋台骨とまでいわれるお婆さんヒーローだ。

まぁ、俺は怪我してないしな。

 

『ハリボーをお食べ。ペッツも有るよ。』

 

あ、せっかくだから貰っていこう。

 

さて、緑谷はどうだったかな。

爆豪は問題ないだろう。

あいつのことだ、トップの成績でもおかしくない。

明後日の筆記試験の結果にもよるが。

 

 

あ、緑谷ぁーっ!

おぉっ。目が死んでる。

ダメだったのか。

 

『おい緑谷、どーだった?』

 

へ?ビビって全然?

バールは?

あぁ、使う余裕もなかった、と。

ん、返してくれるなら受け取っとく。

倒せたのは0ポイントだけか。

 

待 て や。

 

あのデカブツだけ倒したってどうなってるんですかねー緑谷くーん?

ん?つい先日個性が発現した?

全然コントロールできなくて、片手と両足が壊れた?

で、リカバリーガールに治してもらった、と。

 

まぁ俺も遅咲きの個性だからなー。

 

そっかー、()()()()()()()()()()()のか。

転んでた女の子、あー、あの無重力ガールを助けるために、ね。

 

デカブツ、実は襲ってこないアルゴリズムだったのは黙っておくか。

その代わりに……。

 

『緑谷。俺の予想ではあのお邪魔虫、裏ポイントに絡むぞ。もしかしたら、お前受かるかもよ。』

 

『ホントに?!藤宮君!』

 

『あぁ、いろいろ矛盾があったからなー。』

 

『そ、そっか。あ、ところで藤宮君は死なずにすんだの?』

 

『あったり前だっつーの!そしたら今頃、服がボロボロか血塗れだわっ!』

 

ん、ワンチャンあるよ、おまえ。

だから筆記も頑張ろうぜっ!!

 

『……でも、何か真っ白だよ?』

 

『塩だよ、塩!塩まみれになったの!』

 

『……なにがっ?!』

 

ふ、緑谷は元気になったし、俺も気分が紛れた。

さー、切り替えていくぞーっ!!!

 

 

 

 

うん。油断した。

まさか筆記試験で死にかけるとは。

 

……全然解けなかったんだろーなー。

いきなり試験中にキレて立ち上がったヤツがいてさ。

偶然、俺と目が合ってさ。

 

『うわぁぁぁっ!!!僕を見るなーっ!!!』

 

答案用紙掴んで投げてきやんの。

そしたら、ギュルルルルって高速回転しながら、俺の首に向かって飛んでくるのよ。

 

いやー、ビビったビビった。

 

あれもろに食らってたら、たぶん首に刺さって死んでたね、俺。

もしそうなってたら、血塗れの俺の死体。

血塗れの俺の答案用紙。

その側に立つ、全裸の俺。

 

試験を続行させてくれたかあやしーじゃん。

いやー、危なかった。

ん?どうやって防いだのかって?

咄嗟に筆箱の中から小さいバールを取り出して受け止めたけど?

 

やっぱり森野久さんの護身術は最高だな。

試験の結果が出たら改めてお礼にうかがおう。

 

筆記の手応え?

ん、かなりいい線いったな。うん。

 

さー、帰るかね。

 

へ?何ですか?

俺だけ、面接?

はぁ、いいですけど。

 

なんだろねー、実技の、あれか?塩対応か?

でも答えようがないしなー。

 

案内された部屋は仮眠室ってなってた。

待っていたのは……。

 

『ネズミなのか犬なのか……かくしてその正体は校長さ!』

 

遊園地のマスコットキャラのような、雄英高校の名物校長である根津校長先生と、そして。

 

『私が、先に来ていた!始めまして藤宮少年!!』

 

オ、オ、オ、オールマイトォっ?!

 

マジか!

スーツ着てるけど!

でけえっ!

画風違うなっ!マジでっ!彫り深いし!

 

なんだ、なんでNo.1ヒーローがっ?!

 

『うん、まず私がここにいる理由を教えようっ!私が雄英に教師として勤めることになったからだ!』

 

マジすか。おー、緑谷に教えてやろう。

っていうか、オールマイトに会ったっていったら羨ましがるだろうなー。

 

『そして、私たちがこの席を設けたのは、君の個性について直接話を聞かせてもらいたかったからだ。』

 

あー、やっぱなー。

 

『まず、君はかなり遅咲きの個性だったね。しかも、御両親の個性とは異なる混合……いや、突然変異型か。』

 

だよねー。

 

高速治癒と不老を混ぜたからって、ちょっと俺の個性はアレだ。

 

『聞くのは正直心苦しいのだが、今までに三回死んで……いるのだね。』

 

ですね。

三回目はちょっと毛色が異なるけど。

 

『それで、甦る度に力が増大する。まるで……まるで死んでいった自分の力を……()()()()()()()()()()()()()()()。』

 

はぁ。

ストックする、ですか。

その言い回しは使ったことも、言われたことも無いですけど、なんか面白いですね。

 

『ただそうなると……実技試験で君が引き起こした現象について謎が残る。』

 

あー、それなんですけど、自分でもわかんないんですよ。

あれがなんだったのか。

 

『複数の個性、では無いのかね?』

 

いやいや、んなわけ無いじゃないですか。

ってか、オールマイト、何か怖いっす。目が。

 

『君が、君が誰かに、個性を譲渡された可能性を……私たちは危惧している。』

 

へ?

何すかそれ。

そんなことできるわけ無いでしょうが。

どっからそんな荒唐……無稽……な。

 

あ、まさか、この人ら。

 

同じく中学で、同じクラス。

つい最近まで無個性と、未覚醒。

それを急に発現させた個性。

 

疑ってるのか。

俺と、緑谷を。

個性譲渡だなんて聞いたこともねーけどっ!

ふざけんなちくしょうっ!

 

『緑谷も、ですか。』

 

『ん?緑谷少年、かい?』

 

『緑谷出久のことも疑ってるんすね。』

 

『あ、いや、彼の事は……。』

 

何か動揺したなオールマイトさんよぉっ!

 

俺は疑われてもしかたがない。

こんな訳のわかんない個性だしな。

でも、あいつまでまとめて疑いの目を向けるならっ!!

 

黙ってないぞ!

校長だろうがっ!トップヒーローだろうがっ!!!

 

あんたに憧れている緑谷が。

あんたみたいな超パワーを手にいれて、制御もろくにできないのに、他の受験生を助ける為に、手足が折れても頑張った緑谷がっ!あんたに疑われていると知ったら!

 

あいつはどれだけ哀しむかっ!!!

 

緑谷、お前の、お前の疑いだけは晴らしてみせるからなっ!!!




あれ?
このお話『勘違いもの』だったかな?


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ヒーローネームを入力してください。なお、仮免取得前であれば、簡単な手続きで変更可能です

藤宮君叫ぶっ!!!


いいかっ!

緑谷は、緑谷出久はっ!

確かに鬱屈していた!

ヒーローになりたいと言いながらも!自分が無個性だという現実に!

 

いや!無個性はヒーローになどなれないと!

緑谷の夢をただの夢物語だと嗤い!

あるいは同情の眼差ししか向けて来なかった周りにだっ!

 

俺もそうさ。

俺はヒーローなんて夢見てなかった。

だから、緑谷の夢を、あんたへの憧れを!

理解できず!

いつかは醒めるもんだと正直思ってた!

 

聞いてくれてますか?!

オールマイト!!!

 

『あ、いや藤宮少年。今は緑谷少年より君の……。』

 

俺はいいんだよ!

俺は!今は緑谷の話をしたいんだっ!

 

正直、何が切っ掛けかわからない。

でも、あいつは変わった。

トレーニングを、体を鍛え始めたんだ。

ちょうど俺が、俺が初めて死んだ直後くらいの時期だったよ。

ハードなトレーニングだったな。

一度聞いた時は、睡眠時間も、食事のメニューまで管理した徹底ぶりに驚いたぜ。

 

それだけじゃない!

あいつのトレーニングは!

海浜公園の清掃も兼ねてたんだ!

信じられるか?!

流れ着く漂流物と、不法投棄された粗大ゴミで溢れた!

あの!行政も、プロヒーローも見て見ぬふりをしていた浜辺を!ボランティアで清掃してたんだぜ!

 

『あぁ、うん。知ってるかな……。』

 

知ってる?!

知ってるなら緑谷を疑うような考えをどうして持てる!

あいつは、緑谷は言ったんだ!

 

何倍も頑張らないと追い付けないって!

あんたみたいな最高のヒーローになりたいって!!!

 

無個性なのに!

無個性だったのに!!!

 

……一つ、緑谷に怖くて聞けないことが有ったんだ。

今でも、聞けてない。

 

あいつ、俺が初めて死んだあの場所にいて、俺、あいつの目の前で瓦礫に潰されました。

 

だから、ひょっとして、あいつが変わったことの切っ掛けに、俺の死が有ったのかなっ……て。

もしかして、感じないでいい責任を、あいつに背負わせたのかなって。

 

『藤宮少年!もしそうだとしても、それこそ君が……』

 

俺は!俺は怖くて!

もし、そうなら!だったら、少しでも、力に……いや!

俺も目指すことにしたヒーロー科の門を!

いっしょにあいつとくぐれればって思って、だから、受験対策を二人で協力してやったりして……。

 

俺は!俺は恵まれた!

死んでも!まだ()()()()()()()

俺の体を、死んでいった俺たちが支えてくれてる!

それだけじゃない!

優しい母さん。

警察で、地味な部署だけど、地域の安全の為に努力してる父さん。

そして、何百年も地元を守り続けてきた自警団(ヴィジランテ)、竜爪会の人達。

 

『竜爪会?!藤宮少年、君は……。』

 

あぁ、ヴィジランテだから雄英の校長先生やオールマイトからしたら認められない人達かもしれないけど!

確かにあの人達は法で認められたヒーローじゃない!

でも、優しく、 雄々しい、俺から見たら()()()()()()()さっ!

そんなたくさんの人達に支えられた俺と違って!

あいつは、緑谷は!たった一人で立ち上がって!

たった一人で走り出して!

たどりついたんだ!

ここに!

 

個性だってそうさ!

実技試験の直前に発現したって言ってた!

制御のしかたもわからなかったって!

 

『あぁ、うん、そう……だね。』

 

使えば体が壊れる超パワー!

オールマイト、あなたみたいな体があれば使っても平気だったろうが、この10ヵ月で鍛えた体でも、緑谷の体にはまだ扱いきれないものだったんだろうよ。

でも、そんなジョーカーを、あいつは人を助けるために使ったんだ!!!

手足が折れても!!!

 

俺にはできない……そんな勇気も、優しさも俺には無いんだ。

あいつは、あいつは俺なんかとは違うんだよ。

 

『あぁ……わかった。緑谷少年の事は、君が彼の事を友人としてどれだけ思っているかはわかったよ。』

 

 

よかった。

わかってもらえましたか。

じゃあ、俺はこれで……。

 

『ま、待ちたまえ藤宮少年!肝心の君の話がまだ……。』

 

俺はいいんです。

あの妙な……塩まみれ現象の説明はできないから、疑いを晴らすこともできません。

だから、もし雄英のヒーロー科に入れなかったら、他の学校でヒーローを目指します。

 

俺は、ヒーローにならなくっちゃいけないから。

俺の為に。今の俺の為に死んでいった、俺達の為に。

へへ、それに、もうヒーローネームも決めてるんですよ。

 

もうどこにもいない俺達の生と死が、たった一人の俺に繋がっている。支えてくれている。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ALL FOR ONE

 

それが俺の、藤宮続行のヒーローネームです。

では、失礼します!!

 

『なっ……!!!ま、待ちたまえ藤宮少年!』

 

 

 

あー、やっちまったかなー。

不合格かねー、こりゃ。

でも悔いはねーよ。

へへへ、生意気すぎてびっくりしたのかな。

あのオールマイトの顔。

なんか、とんでもないもの見たような表情でさ。

 

 

……緑谷、お前は止まるんじゃねえぞ。




ジャンル、勘違いものだったようです(笑)

仕方ないね。教科書にも書いてないから。


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幕間:衝撃を受けし大人達、かく語りき

藤宮君が退席した後の、校長・オールマイト・相澤先生の会話です。


『まさか、よりにもよってオール・フォー・ワンを私の前で名乗るとは……。』

 

ブバッ!

ストレスからか、オールマイトは大量に吐血。

巨体は蒸気をあげて萎んでいく。

 

『ふむ?しかし、彼の情熱、瞳の輝きに〝悪意〟は感じられなかったがね。その点はどうだい?オールマイト先生、相澤先生。』

 

ネズミなのか熊なのか、奇妙な動物である根津校長がオールマイトと、隣の部屋……戸の隙間から藤宮の様子を伺っていた相澤に発言を促す。

 

『確かに。藤宮少年の態度が演技とは思えません。と、いうより、裏が有る……最悪、ヤツが関わっていたとしたら、私の前でその名を口にさせるとは思えません。』

 

『どうかな?人心を操る狡猾な男だぜ。本人に気がつかせずに手駒にするぐらいやりかねないと思うね。』

 

オールマイトの言葉に疑問を返す校長。

 

『校長、オールマイト。……5年前の戦いで死んだはずの悪魔が生きている、と?』

 

相澤の言葉に頷きながら、机の上の紙束を校長は手に取る。

 

『誰も死体を確認できていないからね。オールマイトが頭を砕いたはずの死体を。』

 

紙束をパラパラとめくって目を通しながら、校長は言葉を続ける。

 

『そう、そして、藤宮続行という少年を通して、宣戦布告……いや、休戦の終わりを告げたとも考えられる。決して死ぬことの無い少年を、我々の次代育成の場に送り込む。藤宮君の全てがヤツのメッセージ……かもしれないよ。』

 

校長の言葉に顔をしかめながら、相澤はオールマイトに顔を向ける。

 

『オールマイト。貴方が目をかけているらしい少年との交流も含めて、が、戦略の危険性すらあるのでは?』

 

『……だが全てが推測。たとえ、推測が当たっていたとしても、藤宮少年に何の咎があろうか!ならば、我々は彼を守り、救わねばならない!』

 

『そうだね。では、彼の入学を認めよう。ま、そもそも全てが偶然の可能性もあるしね。』

 

校長の言葉に両名は頷きながらも、まだ筆記の結果が……と言いかける。

 

『ん、今、採点したぜ。なかなか優秀だ。これは総合で一位かな?』

 

手にしていた藤宮の答案用紙をひらひらと揺らしながら、校長が笑う。『ハイスペック』の個性持ちの面目躍如だ。

 

『そうですか。ならA組で私が預かりましょう。監視が必要なら、私の方が適しているはずです。』

 

 

(偶然……偶然、だとしたら? 連面と受け継がれしワン・フォー・オール。私の代で討ち取った筈のヤツが生き延びたなら、緑谷少年に託さねばならない。)

 

(だが、だが、()()()()()()()()()()()()()連面と()()()()()()()()()()()()個性の持ち主が、オール・フォー・ワンを名乗って、己の意志で緑谷少年の側に現れた。全くの、偶然で。そちらの方がよほど恐ろしいと思えるのは、私だけだろうか?)

 

(その意味するところは……繰り返すのか。形を変え て、鏡に写して繰り返すのか?)

 

(すまない。……すまない、緑谷少年。私は、多分、君たちの運命の決する場には、その頃にはもう、君たちの側にはいられないんだよ。)

 

 

『さっ!オールマイト先生は合格通知の撮影だよ!一番手は藤宮君へのメッセージだ!』

 

 

『あ、その、心の準備が……!』

 

 

 

 




あと、活動報告にて、アイデア募集のお知らせを書きました。
ご協力をお願いいたします。


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オール・フォー・ワン・ザ・リヴァイバー アドミッション!!

活動報告に書きましたキャラクター募集、さっそくご応募ありがとうございます。

ようやく雄英に藤宮君がたどり着きました。
皆さんのキャラクターとお会いできるよう精進いたしますー。


やっちまったーっ!!

 

豪快にやらかしちゃったよっ!

雄英の校長に、オールマイトだよ?

で、俺の個性使用に不明な点があるっていう面談だったのに、キレて力説しちゃったよー。

 

緑谷がどれだけ頑張ったのかを!!

 

バカだ、俺はバカだ!

いや、緑谷の努力を伝えたことに後悔はない。

あの場で言ったことに偽りはないしな。

 

でも、自分の件をわからない!の一言ですませて、その上でダメなら他の学校に行くって……捨て台詞かよ。

だーめーだーよー。

俺、オワタ。

 

それに、言っちゃったよヒーローネーム!

しかも、オールマイトの前で!

ALL FOR ONE だよオール・フォー・ワン!!

うん、いい名前だと思うんだ。

自分で言うのもなんだけどさぁ。

 

死んでいった3人の俺の先に今の俺がいて、その全ては繋がっている。

この先、俺が命を落としても、次の俺、その次の俺に繋がっていく。

 

だから、〝全ての俺は1人の俺の為に〟。

悪くない……よな。うん、悪くない。

でもさぁ、『オール』の部分、うん、意識したよ!

オールマイトを!!

で、それを!オールマイト本人に!

盛大にかましちゃったわけでさぁ!

 

すっごい顔してたよ、何を言ってるんだ!この少年は!って顔だったよ。

 

はぁ。

 

トータルで心証どーよって話だよな……。

 

今から受けれるヒーロー科ってあるかなー。

父さんと母さんに相談しよう。

んー、竜爪会の皆さんには、結果出てからの方がいいかなぁ。

 

 

 

ん?父さん?

どしたの?

言ったよ?オールマイトと校長先生の前で、俺のヒーローネーム(予定)。

だってさー、削除してもらっても削除してもらっても、俺の復活動画アップされるんだぜ。

〝全裸くん〟とか〝不死身の全裸少年〟とか〝ヒーロー殺し殺され〟とか呼ばれてるし。

だから、早いうちにヒーローネームを、雄英の中だけでも周知してもらおうって。

 

……なんかまずかった?ALL FOR ONE。

ちょっとオールマイトを意識し過ぎたかな、オール・フォー・ワンって。

 

え?今は言えないって何さ。

 

何でそんな顔してんだよ、父さん。

誰からも言われてないよ。俺1人で考えた名前さ。

 

……うん、わかった。

何か理由があるんだね。じゃあ、しばらく他人には言わないようにする。

 

っていうかさーっ!

訳ありってことは俺、やっぱりまずかった?

雄英入れない?

今から受けれるヒーロー科ってあるかなーっ?!

 

 

 

 

まぁ何というか、ドキドキしながら判決を待ちましたよ、はい。

 

緑谷にはオールマイトと会ったことは黙っておいた。

その代わり、お前なら受かるっ!と励まししつつ、改めて実技試験には絶対に裏ポイントがあるから、と俺の推測を話したことで、元気は出たようだ。

て、いうか、筆記試験で死にかけた話をしたら、メチャクチャ心配された。

 

で、5日が過ぎて……雄英からの手紙。

両親の前で開封すると、書類と……投影装置?

このタイプのスイッチは……裏か。

 

 

カチッとな。

 

『んっ!私が投影された!!!』

 

わおっ。空間をスクリーンにして、彫りの深い顔の巨漢、トップヒーローの姿が映し出された。

 

『藤宮少年!先だっては失礼した!誤解というか、こちらが根拠の薄い疑いをかけてしまったことを謝罪しよう!ゴメンねっ!!!』

 

うわー、暑苦しいなー。

うん、失礼だけど、画風がくどいなこの人。

 

『さて、君の事件の結果だが、まず筆記!スゴいな!一般入試で上位5位に入ってるよ!他の受験生に個性で攻撃されるトラブルに負けず、結果を出した!えらいな!』

 

そっか。

……嬉しいけど、複雑だな。

何か、記憶力っていうか、思い出す速さとか精度……いや、違うな。()()()()()が上がってるみたいって、最近になって気がついた。

()()()()()()()()()()()()()()俺が俺に言ってるみたいで、さ。

 

おっといけね、ちゃんと聞かないと。

 

『実技もスゴい!(ヴィラン)ポイントが62!()()()()()()2位だっ!戦闘力で君を上回る受験生は他にもいたが、タクティクスが素晴らしかった! 君は仮想ヴィランのアルゴリズムに気がついていたのだろう?』

 

俺より上……爆豪かなぁ?

いや、広域破壊や遠距離攻撃に向いたヤツとか他にもいたろうしな。

 

『そして、先の入試!見ていたのはヴィラン撃破のポイントのみにあらず!』

 

やっぱり有ったか裏ポイント!!

 

 

救助活動(レスキュー)ポイント!試験官が見ていたもう一つの基礎能力!審査制で加点だっ!!』

 

よしっ!やったな緑谷!!きっと受かってるぞお前も!

 

『藤宮続行38ポイント!切りよく合計100ポイントだっ!!』

 

わざと?

 

『文句なしのヒーロー科主席合格さっ!!』

 

おおっ!!

 

『ちなみに……0ポイント周りは評価保留となっている、理解してくれたまえ。』

 

あははは。

ですよねーっ。

 

『来たまえよ。藤宮少年。君の背負った運命、いまだ解けない謎があるというなら、いっしょに解き明かそうぜ!雄英が、ここが、君のヒーローアカデミアさっ!』

 

そっか、これが、これから、きっと……。

 

『私も、緑谷少年も、君を待ってる!』

 

来い!オール・フォー・ワン!

 

 

おおおおおっ!!

認めてくれたじゃん!

超気合い入った顔で呼んでくれたじゃん!!俺のヒーローネーム(仮)!!!

 

母さん!やったよ俺!

 

あれ?父さん?

何でオールマイトばりの凄い顔してんのさ。




藤宮君、藤宮君。
それ死亡フラグ、死亡フラグ。


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オール・フォー・ワン・ザ・リヴァイバー 海浜公園の激闘!

サブタイトルは話の流れで方向性がかわります。


合格通知を受け取って、喜び有頂天の俺です。

あ、そういえばオールマイト、緑谷も待ってるって言ってたな。

緑谷も合格かっ!

って、いいのかよ、個人情報保護的にさ。

オールマイトってけっこううっかりさんか?

ま、爆豪のヤツも十中八九受かってんだろーから……。

スゴくね?

折寺中から、3人、同じクラスから雄英ヒーロー科だぜ!

 

ん?父さんどったの?

何?校長先生やオールマイトと話さないといけないことがあるって?

竜爪会の組長さんも交えて?

ふーん。

えぇっ!組長さん、オールマイトと面識あるの?!

はぁ、大きな事件で関わったことが、ねー。

大物なんだなー。

ディープなアイドル・ヒーロー系オタクなのに。

 

そーなんだよ母さん!

シ姉妹のデビューライブとか、セラビィ・ローズの嵐の中の強硬ライブとかのDVD持ってんだよ組長さん!

ガチだよ、ガチ!

芸能コンサルタント所長の肩書き持ってるの伊達じゃないんだなー。

 

あ、それより緑谷だよ。

よし連絡してみるべ!

 

おー、緑谷?おれおれ。

合格したぜっ!

よしっ!お前もやったなっ!

いやー、オールマイトが投影された時はびっくりしたけどなっ!

そーそー、雄英の先生だもんよ!

良かったなーオールマイト・オタクの緑谷少年!

 

あ?何?コスチューム?あー、そーかそーか。

被服控除かー。どーすべかなー。

いや、ほら、俺さ。

 

復活するとき裸じゃん?

 

笑うなよ!こちとら真剣だっつの!

死ぬこと前提じゃ不味いけどさー、お前にも話したけど、俺、()()()()()()()()()()わけよ。

それに抗う為の強さを求めてヒーロー科に行くわけだけどさ、やっぱり危ない現場に行くってことは、死亡する確率が上がるわけよ、明確に。俺の場合は。

 

だから死ぬと全裸、側に俺の死体って状況とコスチュームをどうするかは、密接な関係があってさ。

 

ん?個性届けの写しがどうしたって?

あー、そっか。

お前、無個性扱いで受験したんだもんな。

 

そーかそーか。

そりゃオールマイトや校長が疑問視するわけだ。

タイミング的に間に合わなかったとはいえ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

ん、納得した。

 

ん?いや、こっちの話。気にすんな。

 

で、だ。

更新できるぜ。個性届け。

俺だって、未覚醒の為不明って申請してたしな。

今は〝復活〟ってなってる。

だからお前も更新できるぜ。

あー、国民ナンバーで、ネット手続きできっからよ。

詳しくはWebでってな。

 

あ、そんでさー、緑谷ぁ。

一緒に雄英の見学行ってみねー?

あー、新入生に設備とか見せてくれるんだってよ。

先生の引率つきで、うまくしたら訓練してる先輩とか見れるぜ?

 

なっ、興味有るだろ?よし、日にち決めよーぜっ!

 

 

緑谷との連絡は済ませた。

雄英の見学、楽しみだぜ!

 

しかし、ヒーローコスチュームか……。

 

生存率あげるなら、防弾・防刃・耐熱・耐冷。

特殊繊維とカーボン系で柔軟性重視。

眼球を守るゴーグル、有毒物質や高熱のガスから呼吸器系を守るマスク、低酸素環境で活動できる酸素ボンベ。

人命救助用にファーストエイド・キット。

高所活動やヴィラン捕縛に使える強靭なワイヤー。

水分補給と栄養補給を同時に行うドリンクゼリーもあった方がいいか。

 

んー、後は……。

 

超 硬 合 金 製 の 各 種 バ ー ル だ な!

 

よし、申請書書くか!

 

 

 

翌日、俺はたいへんお世話になった竜爪会の皆さんに、合格できたお礼を言う為に訪問した。

いやー、喜んでもらえた。

 

お嬢さんの竜爪冴子さんも普通科に合格したそうで、なんか勢いで宴会になっちまったぜ。

 

ははは、俺は未成年だから酒はダメです。

 

だーめーでーす。

 

ダメだっつってんだろ!

そこの石化藤宮君投げるぞ酔っぱらいども!!

 

ふう。

危ないところだった。

明日原お姉さんが脱ぎ始めた時はびっくりしたぜ。

さて、帰るか。

 

あ、多古場海浜公園寄ってくかな。

なんか新聞とかに載ったのな。綺麗に片付けられた海浜公園の謎!

対価を求めぬボランティアは何者?ってな。

緑谷の10ヶ月の成果を自分の目で見ていくってのも悪く無いしな。

 

 

あ、でもデートスポットとかになってるって……気にしたら負けだな、負け。

 

 

着いたっと。ありゃ。

なんか、こう、チンピラ風味のお兄さんがウ○コ座りしてんな。3人。

話してる内容、なんか物騒じゃね?

よし、意識集中……聴力アップ!

 

『まじ?』

『おお、センパイが声かけられて、大物ブローカー仕切りのパーティー参加して、すげーアガッたって。』

『で、ガチのヴィランチームにスカウトされてさ、シタク金ってもらったらしいぜ。』

『でかいヤマに参加するらしいな。』

『かー、うらやま!』

『……俺らも呼んでもらえるみてーよ。』

『マジのマジ?!』

『太く、短くパッと行くか。』

 

 

うわー、頭は悪いしモラルは無いし。

……通報しとくべ。

ん?

 

『景気づけによー、この先でイチャついてるヤツにテンチューかますべ。』

『いるかぁ?』

『行けばわかるな。』

 

うわー、暴行傷害に強盗かよ。

 

しょうがねーなー。

俺は携帯端末を取り出して、緊急コード(110番)を発信する。

わざと大きな声で、場所、三人組の会話、容貌をつたえ、最後に名前を小さめの声で伝えて切る。

 

さて、どうなる?

 

『ねーねー、そこのボクぅ?セイギカンですかー?』

 

スキンヘッドにピアスまみれ。

 

『かー、ガキがくっだんねーまねしやがってよぉ。』

 

お、一つ目だ。

 

『サツがくる前にヤキ入れてずらかるぞ。』

 

顔が、豚?いや、猪か。

 

来ますよねー。

さて、どうするかな。

 

俺はうつむいて、肩を少し震わせる。

 

『あららぁ?びびっちゃった?』

 

うるせーハゲ。

 

『チキンがだせーぞ、あぁ?』

 

泣かしてやるからな、ワン・アイ。

 

『ワビいれるか?小僧。』

 

猪がメッシュ入れてんじゃねーぞ。

 

息を吸う。息を吸う。 ゆっくりと、力一杯に息を吸う。

そんでぇっ!

三人組が目の前まで来たところでっ!

()()()()()()()

 

『うわぁぁぁっ!ヴィランだぁぁっ!!』

 

ふはははっ!硬直しておるわっ!

これぞ藤宮・スタン・シャウト(仮)!

そして!

後ろを向いて逃げる体勢から、足を振り上げる後ろ回し蹴り……っぽいポーズで土を、砂を蹴って叩き込む!

 

顔面に、な。

 

サンド・サミング・スプラッシュ(仮)だっ!!

 

『ぎゃあああっ!』

『目、目がぁっ!』

『ぐはっ!げほっ!ごはっ!』

 

見たか!ヴィランもどきども!これがヒーローを目指す一般中学生の底力よっ!

貴様らごときにバールを使うまでもないわ!

 

使ったら、お巡りさんとヒーローと父さんに怒られるからな!

 

さて、ヒーローと警官が来るまでの次の時間かせぎは……。

 

『もう大丈夫だっ!!……私が来たっ!』

 

 

……なんでいるんですか。オールマイト。

 

 

 




バール……持ち歩いてるのか。


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オール・フォー・ワン・ザ・リヴァイバー たどり着いた真実!

次回あたりから応募していただいたキャラクターや、原作の雄英生徒が登場し始める予定です。

たくさんのご応募ありがとうございます。








いや、なんでいるんですかオールマイト、まじで。

 

『む?君は藤宮少年!……先ほどのシャウトは君か。』

 

俺が事情を手早く説明すると、オールマイトは深く頷きながら、人差し指一本を立てて、まだ呻いてるヴィランもどきの側を通りすぎる。

 

ガクッ。ガクッ。ガクッ。

 

3人が糸の切れた人形のように倒れ伏す。

 

すげーな。顎を高速で掠めて脳震盪を起こさせたのか?

 

『指一本で3人の顎を一瞬で……マジすげえ。』

 

俺が呟くと、オールマイトは少し驚いたように俺を見る。

 

『藤宮少年!私の動きが見えたのかね?大したものだな。さすがヒーロー科入試一位だ!』

 

いやー、そっすか。誉められちった。

で、オールマイトはなんでここに……。

 

『オールマイトぉーっ!』

 

緑谷ぁっ?!

なんでお前もいるんだ?

 

ん?オールマイト、なんか汗かいてませんか?ん?

 

『あ、あれ?藤宮君?なんで?』

 

それは俺のセリフだ

っていうか、ここで会ってたの?オールマイトと?

どーゆーこった。

 

『いや、それはだな藤宮少年……。』

 

オールマイト、へどもどしないでくださいよ。

 

『騙すつもりはなかったんだけど、簡単に話せない事情がね……。』

 

緑谷、お前も落ち着け。

 

あ、お巡りさんとヒーローが来ちゃったじゃないか。

ん?あのお姉さんは……あぁっ。

Mt.レディだ!

 

あはは。お久しぶりでーす。

藤宮続行でーす。

いや、びびんないでくださいよ。

もう済んだことじゃないですか。

あー、保険の話、まだもめてるンすか。

 

『ごめんなさい。ホンットにごめんなさい!』

 

『あのー、Mt.レディ?この少年と何か?』

 

ほら、お巡りさんも困っちゃってるじゃないすか。

 

『私とヴィランの戦いでこの子が死んじゃって……。』

 

『はっ?!』

 

あーっ!事情知らない人にそーゆー言い方やめーっ!

 

『そういえば藤宮少年は何故ここに?』

 

『どこから藤宮君に話したらいいのか……。』

 

うおぉぉっ!!!

 

話が進まねぇぇぇっ!!!

 

 

 

 

オールマイトが話をまとめて、お巡りさんとMt.レディがヴィランもどきのチンピラーズを連行していってくれた。

 

ふう。

 

これで少しは落ち着いて話ができるかな。

で、何で二人がいっしょにいたんすか。

 

『すまない、藤宮少年!実は私は……緑谷少年に指導をしていた!』

 

へあっ?!

マジですか!

って事は……この海浜公園は……。

 

『私考案〝目指せ合格アメリカンドリームプラン〟!』

 

み、緑谷ぁっ!マジの、マジ?

マジですか!マジなんですかっ!!

 

うぁぁぁぁぁぁっ!!!

 

お、俺!

筆記試験の後!

オールマイトに!!

緑谷がどんだけ頑張ってるか、り、力説を!

 

『あー、その、なんだ、藤宮少年?』

 

見ないでください!

今の俺を見ないでくれぇぇっ!

 

 

ふう。

そっか。

俺、空回りしてたのか。

 

『いや。君の緑谷少年への熱い友情、確かに感じたぜ!……私もあの場で言い出し損ねたしね。』

 

そっすか。そう言っていただけると……ん?

そーすっと、オールマイトは無個性だった緑谷の為にトレーニングプランを組んだんすか。

 

『……っ! あぁ!緑谷少年の!考えるより体が動く!そんな資質に心打たれてねっ!』

 

そっか。

そうですね。

緑谷には、そう、そんな所ありますよね。

俺には無い、勇気が。

 

『そんなこと無いよ!藤宮君だって僕を支えてくれた。励ましてくれたじゃないか!』

 

……違うんだよ、緑谷。

俺は、お前みたいに強くない。俺は、死ぬのが怖いだけなんだ。

 

『それは誰だって……!』

 

お前、死んだこと無いだろ?

『そ、それはっ!……そりゃ、無いけど』

 

俺は、3回死んでる。

多分、これから何度も死に続ける。

それが嫌で、怖くて、何とかしたくてヒーロー科の門を叩いたんだ。

全部、自分の為なんだ。

お前とやった受験対策は、俺よりも優しい、お前の力になれたらって……自分勝手な俺が誰かの力になれるのが嬉しかったんだ。

 

『藤宮少年、君は……。』

 

あ、気にしないでください。

今、ダサい事を言っちまったけど、ほら、俺も緑谷も雄英に受かったし。

これからですよ。これから。

ほら、オールマイトの決め台詞じゃないけど、俺は、ここにいるから。……生きて、いるから。

 

俺は、いるからっ!!

 

『……っ!藤宮、少年。君は……。』

 

あ、そうそう!ってことは、緑谷の個性発現は偶然ってことですか。

 

『あ、あぁ!私も驚いたな。うん、まるで、うん。』

 

まるでオールマイトの個性みたい、ですか?

ですよねー。

あんなデカブツをワンパンで……って。

ん?

実技試験の日、俺は緑谷の気配が変わったようだと認識していた。

モーター式のシティ・コミューターが、大排気量のハイブリッド車になったかのように。

個性発現の証だろうと、今の今まで気にしてなかったが、緑谷とオールマイト……。

 

この二人の個性、何か似てっぞ?

 

オールマイトも緑谷も個性は〝超パワー系〟。

だから偶然似てる、のか?

 

緑谷に教えてもらった御両親の個性は、〝引き寄せ〟と〝口から火炎〟。

どちらとも似てないから、突然変異的な個性だと思っていたけれど。

 

オールマイトとよく似た個性。

雄英受験の為の、オールマイト作成の10ヶ月肉体改造プラン。

個性発現前から目をかけていて、その果てに同系統?の個性が覚醒……。

 

まさか、まさか、まさか。

緑谷の本当の父親はっ……!

 

いやいやいや。落ち着け。決めつけんな。

それに、万一そうだったとしても、緑谷が知らないままの可能性がある。

緑谷に迂闊な事を言えば、オールマイトと緑谷の双方に迷惑が掛ける結果になりかねん。

 

『藤宮少年?どうかしたかね?』

 

いやいや。何もどうもしませんよ。うん。

 

『本当にごめ……じゃない、藤宮君、ありがとう!』

 

いやいやいや。気にすんな。ダチじゃねーか。

 

『うむ。では、私はこれでっ!』

 

タッタカターっと走り去ろうとするオールマイト。

あ~、どーすっかな。

えぇい、ままよっ!!

 

ダッシュ!

オールマイトに追い付き、声を掛ける。

うん、緑谷とは距離があいたし、ちょうどいいかな。

 

オールマイト!

 

『む?何かね?すまんが時間が……。』

 

俺、頑張ります!

緑谷とは友人として、ライバルとして、いい関係を築きます!

 

『そうか!そうだね!』

 

()()()()()()()()俺と、()()()()()()()()()()緑谷。熱い3年間を過ごせると思うんです!

 

『……?!そう、か。やはり、君は……。』

 

オールマイトの表情!

やっぱり当たってたか……

 

余計な事は()()()()()()()()()()()()。だから、見守っていてくださいオールマイト!

 

うん、こう言っておけば安心してもらえるよな。

 

『わかった。……また会おう。彼と君の運命の舞台で!』

 

 

去り際にロマン溢れるコメントきたわー。

いいね、運命の舞台、か。

 

さて、と。

 

おーい緑谷ぁーっ!

 

雄英の見学日決めよーぜーっ!!

どっかで軽く食いながらさー!!




たどり着いてないよな、真実に。
藤宮君もオールマイトも。


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オール・フォー・ワン・ザ・リヴァイバー U-Aツアーに行こう!

このあたりから、緑谷君も原作イベントと、キャラの出会いがいろいろ変わってきます。


卒業式後に雄英の見学……内覧っつーの? に緑谷と行く約束をして、速攻で雄英のホームページから手続きをした俺です。

 

被服控除の申請も済ませたし、な。

耐電や、スタングレネード的な物への対策として、自動遮光とか音響調整も書き込んだぜ!

父さんからは、フェイスガードがゴツくなるとか、ヒーローっていうより特殊部隊の軍人みたいにならないかとか言われたけど、いいんだよ。生存率あげること前提なんだから。

 

しっかし、あれだよな。

爆豪にも困ったもんだよな、あれ。

 

 

『ウチの中学から雄英進学者が三人も出るとは!』

『特に緑谷は奇跡中の奇跡だなあ!』

 

職員室で先生ぇからそんな事いわれてさぁ、この発言もデリカシーなかったけど、爆豪君がずっと俺ら……いや、緑谷を睨んでんのよ。

でもって、顔貸せやデクぅっ!!とか言ってどっかに緑谷を引っ張って行くから、着いていきましたよ、俺。

 

『てめぇにゃあ用はねーんだよ!着いてくんな!』

 

これですよ、これ。

だから、ね。

 

『チクるぞぉ。っていうか、暴行と脅迫と個性不正使用で警察とヒーロー協会に通報すっぞ。マジで。』

 

おぉー、目付きスゲーわ。いや、だってお前のその構え、爆破の構えじゃん。

 

『だいたいよぉ!どんな汚ねぇ手ぇ使やあ無個性(こいつ)が受かるんだ あ!』

 

あー、まぁそっか。無個性だと思って……うん、そうだな。

でもなー、俺の口から言うのもなんだしな。

よくよく考えたら、俺も話だけで見てないしな。

 

『知らねーよ。んなこたぁ。……雄英の判断だぜ? それとも何か?()()()()()()()()()()()程度の入試だと思ってんのかよ、お前。』

 

んー、ちっと苦しいか。

でもバクゴー君の言ってる事は単なる我儘な言い掛かりだしなー。

 

『〝勝ち取ったんだ〟って言ってもらったんだ。だから、僕は……行くんだ!!』

 

おー、ビビりながらもよく言ったぜ、緑谷ぁ!

 

『な、爆豪くんよぉ。前に言ってた史上初とか、唯一とか、そんな話は仮に緑谷が受けなくても、受かんなくても、俺がいる段階で破綻してっぞ?』

 

 

『てめぇっ!!!』

 

あ、突っ込んできた。

んー、前より遅くなってねーか?お前。

 

右の大振りをはね上げて、と。

手首を掴んで締め付けて、肘も押さえてねじあげる。

 

『ぐわぁっ!て、てめぇっ!!』

 

ミシミシ、ミシミシ。

 

『藤宮君、それ以上いけない!』

 

ん?なんかデジャブが。

 

 

 

ま、そんなこんなで無事に卒業しましたとも!

 

卒業のお祝いで竜爪会の組長さんから、幻のアイドル・ヒーロー、校外活動(ヒーローインターン)中の1ヶ月しかステージに立たなかったプリンセス・ユーラのライブ映像DVDを焼いてもらったぜ!!

 

んで、今日は緑谷君と雄英の見学でございます!

地下鉄乗り継ぎ途中の駅で蕎麦を食う俺!

緑谷はカツ丼か。

 

ん?緑谷ぁ、どした?

電子レンジの卵がどーのこーのって?

いや、聞こえてるぞ〝緑谷ブツブツ〟。

カツ丼の卵の研究か。

でも爆発すっぞ。それ。

 

ん?個性のコントロールの話?

まだ調整が全然?

ふーん。

100%かますと骨が砕けるわけね。

 

んー。

今日さ、訓練場で練習してる先輩とか見せてもらえるらしいからさ、何かヒント掴めるんじゃね?

 

……っていうか、オールマイトからは何か指導なかったんか?

 

 

 

俺の推測でしか無いが、オールマイトと緑谷は血縁関係にある。

それも、実の父子ではなかろうか。

しかし、緑谷と緑谷のお母さんは良く似ている。

まぁ、長期海外赴任らしい親父さんの顔は知らんのだが。

 

では、オールマイトと緑谷のお母さんの間の……?

 

いやいや。

 

俺の考えでは、緑谷出久という少年は、緑谷夫妻に預けられたオールマイトの実子で、オールマイト本人、もしくはその妻が緑谷夫人の親戚なのではないか?というものだ。

 

そもそも、ヒーローはヴィランに狙われないように本名や素性、家族構成を秘密にしている場合がままある。

 

(竜爪会の若頭の鳴子さんからは、事務所の登記簿を閲覧するとけっこう割れるぞって教えてもらったが。)

 

オールマイトはNo.1ヒーローだけあってその最たるもの。本名不明、年齢不詳、個性の詳細不明ときたものだ。

平和の象徴とまでいわれ、あまたのヴィランを制圧し、ヴィランの組織だった活動は彼が終息させたとまで言われている。

 

そんな彼の実子の存在が世間に知られれば、闇の住人が放置しておくわけがない。

 

だから、緑谷出久は誰にも、本人にもその事実を知られることなく、信用のおける人物の元で育てられたのでは?

 

そして、この考えの根拠は他にも有る。

緑谷の個性の発現時期と、その性質だ。

 

個性は普通、4才までに発現する。

まぁ、俺も14才まで発現しなかったが、俺の場合は()()()()()()()()()()()ものだったから、この際おいておく。

 

だが、緑谷の個性が幼い頃に発現していたらどうなった?

なにかの拍子に発動したとしたら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

だから、緑谷の個性は充分な下地が、いうなれば器が完成するまで発現しない。

そんな特性を持っていたのでは?

 

そして当然、実父であるオールマイトはその事を知っていた。彼自身が過去に体験しているがゆえに。

 

しかるべき時に目覚めるはずだった個性。

だが、ここに父と息子の肉体の差違が問題となった。

緑谷出久の体は決して大きくない。

これは母方の遺伝かもしれないが、そのせいで個性の発現が大きく遅れ、高校でヒーロー科を受験する年に間に合わなくなってしまったのだ。

 

オールマイトの10ヶ月のプランとは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()為のものではなかったのか?

 

アメリカンドリームプランとは、実子である出久に夢を掴ませてやりたいという親心ではなかったのか?

 

……全ては推測。いや、妄想だ。だが、こうとでも考えなければ、オールマイトの行動と緑谷の個性との類似性が謎過ぎる。

かなり真実に近いと思うのだが、さて?

 

おっと、いかんいかん。

で、緑谷くん、どうだったのかな。

 

感覚?

電子レンジの中の卵ってイメージが湧いたって話したら、ワット数を下げるとか、タイマーを短くするイメージを反芻しろって?

 

……教え下手かっ!!!

 

うわー、うわー。

うん、ホントに今日の見学がヒントになるといいな。

俺もなんか考えてやるよ。

ってもなー、俺の中のパワーは普通に耐久力と打撃力セットで上がる感じだしなー。

 

 

 

 

おぉ、あれだぜ。

まずは雄英の目と鼻の先で事務所を開いているヒーローの所に行くんだ。

その人も雄英で教師をしてる。

実質、雄英の出張所扱いだべな。

俺らの学生証はまだセキュリティが認証してくれないらしいから、そこで通行許可IDを受けとるんだ。

 

U-Acafe

 

そのヒーロー事務所に併設されたカフェコーナーの名前だ。

 

絵がたくさん飾られているなぁ。

オールマイト、エンデヴァー、エッジショット、ベストジーニスト、ギャングオルカ etc……。

誰もが知る有名なヒーローの緻密な肖像画がところ狭しと壁に掛けられてんのな。

 

『すごい!銀時代(シルバーエイジ)の目元のシワも完璧だっ!!対比で0.8センチがちゃんと描かれてる!』

 

お、おぉ。オールマイトマニアはチェック細かいな。

 

 

そして先客達。

どうやら、複数のグループを一緒に案内する形の様だ。

 

『こんなチャンスがあるなんてよかったね、人使(ひとし)くん。あぁ、〝ジョージの奇妙なヒーローアカデミア〟の舞台である。ヒーロー科を見学できるなんて、しあわせだなぁ。』

 

連れに興奮ぎみに話しかける、前髪を残してオールバック気味に撫で付けた髪型の少年。

 

ジョージの奇妙なヒーローアカデミア。通称ジョジアカ。

雄英高校をモデルにした学校を舞台とする、ヒーローの卵と、学校内に潜む若きヴィランとの戦いを描いた人気漫画だ。

 

……っても、リアルの雄英見学をジョジアカの聖地訪問扱いとして興奮しているのはそうとうなマニアだ。

話しかけられている連れのヒトシ君とやらは……?

 

『俺はあくまで、のしあがる為の下見のつもりだからな、沈男(しずお)。』

 

ヒトシ君は、紫がかったライオンヘアー。うおっ、目の下の隈スゲーな。

えっと、シズオ君にヒトシ君、ね。

 

後は、フワフワのピンクの髪をした、メガネを掛けた女の子と、黒いチャイナ風ワンピースを着た、青い髪の女性。んー、お姉さんかな。顔立ち似てるし。

 

『ママはぁ、伊吹ちゃんの通う学舎を~保護者視点でぇ、しぃっかりチェックしますからねぇ♪』

 

母親だった。

いや、うちの母さんって例も有るしな。姉妹みたいな母娘がいてもおかしくないか。

 

『……案内してくださる方を困らせないようにね、母さん。』

 

『伊吹ちゃんってば、最近ママに冷たいわぁ~。』

 

うおっ、母親は甘ったるい喋り方するけど、娘さんは顔立ちの割にはクールだな。

あ、目線合った。

 

『……不死身の人?』

 

げっ?!動画チェックしてんのか、イブキちゃんとやら。

 

えーと、その不死身の人です。

皆さん、今日は御一緒させていただくみたいですね。

よろしくお願いいたします。

 

自分は藤宮続行。

こっちは緑谷出久。

ヒーロー科の新入生です。

 

『まぁ礼儀正しいのね~。私は綾吊塗息(あやつり・といき)。この子は娘の伊吹よぉ~。』

 

『綾吊伊吹です。私もヒーロー科です。……母は保護者用の見学で来ています。よろしく。』

 

ん、シズオ君とヒトシ君もこっち見てるわ。

 

『僕は重石沈男(おもいし・しずお)、彼は心操人使。二人とも普通科なんだけど、ヒーロー科の見学に来たんだ。』

 

『心操だ。……俺はヒーロー科の編入狙ってるから、目指す場所を目に焼き付けに来たつもり。』

 

これはまた、人当たりのいいヤツと不敵なヤツと、面白いコンビだな。

 

えーと、あ、ヒーロー来たわ。

 

白衣にベレー帽。

右手にはサインペン、左手にスケッチブック。

腰のベルトには多種多様な筆記道具に画材。

揺れる髪は見る角度で色合いが自在に変幻する美女。

彼女こそ、このヒーロー事務所兼カフェの主たる芸術ヒーロー。

 

『お待たせしました。雄英高校で二年生の近代ヒーロー美術史と美術の実技指導を担当している〝リアルアート〟です。』

 

ふむ。この方の案内で見学する、と。

あ、塗息さん以外ね。

 

『リアルアート!描いた絵を実体化させて戦う個性:実態絵を駆使するヒーローだよ、藤宮くん!!』

 

さすがだ緑谷。

 

 

ん?俺の顔に何かついてますか?リアルアート。

 

『藤宮続行君ね。……〝動画〟は見せてもらったわ。』

 

あー、そうですか。

削除が追いついてないんだなー、やっぱり。

 

『……貴方の死に様(生きざま)芸術的(アート)だわ。』

 

 

ほっといてください!!




今回登場した綾吊母娘は私のオリジナルキャラ。

重石沈男くんは山鳥田のカツドンさんが応募してくださったキャラクターを普通科に採用。

リアルアートは、肘神さまさんが応募してくださったキャラクター、塗江絵子を雄英の教師として採用。ヒーローネームはこちらでつけさせていただきました。

どうもありがとうございます。


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オール・フォー・ワン・ザ・リヴァイバー U-Aツアーに行きたいんだけどっ!?

今回でB組の生徒決定です。
応募大変ありがとうございました。

他のキャラクターも以前に説明した通り、できる限り出演していただくつもりです。


リアルアートさんの説明によると、先に見学をしているグループがそろそろここに戻ってくるそうだ。

 

そうしたらリアルアートさんが各施設を案内してくれるとのこと。

 

すいません!

訓練中の在校生の方とかいらっしゃいますか?

 

リアルアートさんは携帯端末を操作すると、ふむふむと頷いた。

 

『体育館γで……新三年生の有志がトレーニングをしていますね。優秀な生徒ですから……刺激になるかと。』

 

なるほど。緑谷、よかったな。

 

『なかなか前衛的(アバンギャルド)な生徒ですから。』

 

わかんねぇ。

どんな先輩なんだ、そりゃ。

 

『もうしばらくお待ち下さい。お飲み物をお出ししましょう。』

 

 

スゲー!

いや、さ。

出されたカフェラテにラテアートっていうヤツが。

うん。

オールマイトのラテアートとか初めて見たわ。

写真撮っとこ。

 

『あぁっ!飲むのがもったいない!』

 

いや、飲めよ緑谷。気持ちはわからんでもないが。

 

『あのー。君たち、ヒーロー科ってことはさぁ……。』

 

ん?重石君か。

あぁ、実技試験の話?

俺はまぁ、そこそこやれたよ。

んー、ヴィランポイントで62点取ったから……40体は倒してるなぁ。

バールで。

 

『バールで?!』

 

ん?みんな驚いてるな。

いや、緑谷。お前は知ってるだろ。

あぁ、数に驚いたのか。

リアルアート?その、アート・アートって相づちはなんなんすか。

 

『僕は個性を使いすぎて力尽きちゃってさぁ。10体もいかなかったなぁ。』

 

なるほど。

 

『伊吹ちゃんはぁ、25ぐらいよねぇ~。撃破数。』

 

『乱戦で後半はあまり稼げなかったです。』

 

へー。でも結構倒してるなぁ。

ふむ、レスキューポイントと合わせたときの合格ラインってどれくらいなんだろな?

緑谷から聞いた話だと、60ポイントで合格したらしいけど。

 

『俺は、ぜんぜんだったなぁ。対ロボットだけで判断されたら向かねぇよ。』

 

人使君は対人向きの個性なのかね。

いやいや、言い出すまで聞かないよ?マナー的にな。

 

『僕も、0ポイント一体しか倒せないで終わっちゃって。』

 

ははは。緑谷君。いろんな意味でみんなビックリしてるぞ。

いやだから、アーティスティックって相づちはなんなんすか。

 

『えぇっ!?でもそれだと、0ポイントだから……0だよねっ!ポイントが!』

 

重石君、リアクション激しいね。

ジョジアカの読者だからかね。

 

いや、合格通知で言ってたんだけど、レスキューポイントって隠しポイントが有ったんよ。

他の受験生を助けるとかの行動を試験官が評価するっていう、ね。

だから、さ。緑谷はちょっと特殊だけどさ、仮想ヴィランを倒さなくても合格できた可能性は有ったんじゃないかな?

 

あらら?心操くん?

 

『そうか、ヒーロー的な行動を判定していたのか。』

 

んー、まぁ俺なんか助けるっていうより、苦戦してるヤツの相手を倒す分には、横やりって認識されないかなーってセコい計算が有ったんよ。

それでもレスキューポイント入ってたからなー。

 

だから、難しい話だな、あの試験の是非は。

 

ショックだったかもしんないけどさ。

でも、よ。編入を狙って行動していくのは前向きでいいんじゃねぇの?

ほら、生きている限りチャンスは有るわけだし。

 

ん?緑谷、どうした?

 

『藤宮くんが()()()()()()()って言うと説得力が凄いような、逆にぜんぜん無いような……。』

 

うるせーよ。自分でも薄々はそう思ったっつーの。

 

『なぁ、ところで不死身の個性ってどうなってるんだ?』

 

あー、やはり気になるかね心操くん。

 

『あ~、私も聞きたいわぁ。そのお話ぃ。』

 

綾吊さんのお母さんは何て言うか、いちいち色っぽいな。

 

あー、どこから話したもんかな。

 

ん?戻ってきたのかな、お先の人達。

 

『仲がいいのね。私も妹や弟がいるから、気持ちはわかるの。ケロ。』

 

ケロ?

 

『あ、あのお兄ちゃんはお兄ちゃんじゃなくて、その……。』

 

『ははは、そりゃ同い年だからな。でも、俺にとって(いおり)は妹みたいなもんだからなー。』

 

『俺も、蛙吹さんが妹のように思えるよ。お兄ちゃんって呼んでいいぜ!』

 

染隠(そめがくれ)ちゃん。私たち、会ったばっかりなのよ。冗談が過ぎると思うの、ケロ。』

 

『冗談じゃないんだけどなぁ。』

 

『お兄ちゃんって呼んであげてもいいよっ!お兄ちゃん、何かおごって!可愛い妹に!』

 

『葉隠ちゃん。それは何だかアブナイ会話な気がするわ、ケロ。』

 

『じゃあ罷理(まかり)君でもいいよっ!ほら、トオルつながりってことでおごってもいいよ!』

 

『悪いが葉隠さん。俺が面倒見るのは庵だけだ。っていうかトオル同盟を勝手に作るな。』

 

『ワチャワチャ楽しいトークだねぇ。まぁみんな同じ新入生なわけだから、仲良くなったのはいいことかな?帰る前にカフェでもっと親睦を深めてもいいかもねぇ。青春だねえ。キュンキュンだねぇ。』

 

 

 

何だ何だ?

 

こっちのメンバーの比じゃない濃いノリの会話が聞こえてきたぞ。

 

えっと、男性2名、女性3名か。

 

『リアルアート、お待たせぇ。新入生の見学、無事終わったよぉ。和気あいあいのワキワキアイアイって感じだよぉ。』

 

あぁ、何か独特の喋り方してるこの女の人が引率の先生か。

髪の毛が何か、あれだな?

スポンジっぽいな。

ウィッグ?いや、個性か?

 

『スポンジ・ガール!この事務所をリアルアートと共同経営している吸水ヒーローだよっ!』

 

知っておるのか緑谷!って言うまでもなく解説ご苦労。

 

 

えーっと、スポンジガールを除くと……。

 

おっきい目と口がカエルっぽい女の子。ケロって言ってたな。

声もちょっと低めで印象的だわ。

 

おおっ、でけぇなっ!2メートル以上あるぞっ!

尖った口先からのぞく舌。出っ張った目。

カメレオン感がすげぇ少年だっ!

 

え、と、服が浮いてる!?

Tシャツにホットパンツと、靴?

透明人間な女の子かー。

 

あと、白い長い髪の女の子。

丸いサングラスに白い杖。

目が不自由なのか。ハンデ有るのに入学したって凄いな。あ、でもそこら辺をどーにかできる個性なのかな。

 

これで全員……じゃねぇよ!

 

白い髪の女の子と手を握ってる少年いるよっ!

影薄くて見落とすとこだったよ!

透明人間がめだってて、普通の少年見逃すとこだったよ!

……なんつうか、特徴ねぇなぁ。

 

さて、じゃあ俺たちの番、と。

 

『あ……?あ、あっ!!!』

 

え、なになになにっ!

何で白い髪の子が俺の方を見て? ん?見えてる、のか?

いやとにかく、俺の方に顔向けて、なにゆえいきなりそんなに怯えてんの!?

 

『きっさまーっ!!!(いおり)に何をしたぁっ!』

 

 

ちょ、待ちたまえよフツメン君!

 

殴りかかってこられても、その、困るっ!

 

こーゆー普通のトラブルも引き寄せるっけ?俺!?




キャラクターの本文での詳細は次回となりますが、前書きにも書いた通りに、B組の生徒が決定いたしました。

ジャギィさんより染隠麗音。
カワウソ太郎さんから和水庵。

他にもカワウソ太郎さんからもうひとり、罷理通。
妹思いの設定を、親戚の庵を妹のように可愛がると改変いたしました。普通科です。

百人目さんから、洗井海面。
スポンジガールというヒーローネームをこちらで設定して、雄英の教師として採用いたしました。

採用したキャラクターは、独自展開でいろいろ頑張ってもらうつもりです。

本当にありがとうございました。

なお、キャラクター募集は継続して受け付けます。
メッセージか、活動報告の感想まで。


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オール・フォー・ワン・ザ・リヴァイバー U-Aツアーにいつ行けるのかな?

オリジナル展開で、キャラが多いと会話が増えるということを思いしりました。


3回も死んだことで、俺の肉体的なスペックは跳ね上がっている。

 

すげーざっくり言えば、パワー5倍くらいの増強型個性って言っても通るほどだ。

で、それは反応速度とか、動体視力とかにも反映していて……。

 

つまり、俺は悩んでいる。

どうしよう?このフツメン君の冤罪ナックル、と。

 

えーと、さっき聞こえてきた会話から考えると、俺を見て?怯えた女の子がイオリちゃん。

 

で、このフツメン君が、同い年だけど兄貴のような関係のマカリ・トオル君。俺が何かしたと思って、兄貴分ナックルをかまそうとしているわけだ。

 

いや、俺は何もしてないから。

マジで、ガチで。

って、聞く耳もってないよな、妹ポジのイオリちゃんのこと超大切っぽいし。

 

んー、大して速くもない右ストレートか。

でも、このままだと左の頬っぺたにめり込むよなー。

 

① よける。 ……たぶん、次が来る。

② 受け止める……何か個性が発動したらヤダ。

③ カウンター……怒られる。

 

んー、①を選んで、リアルアートかスポンジ・ガールに止めてもらうのが正解か?

 

でもなー。今、椅子に座ってて、目の前にテーブルがあるんだよなぁ。ラテが入っていたカップ乗っかってるし。

高速で思考ブン回してるけど、避けるとなるともう無理かね。

 

ええいっままよっ!

左手を顔の前にかざして、掌で受け止める!

よしっ!痛くなーい。

 

ふっ。フツメン君のパンチは所詮は普通のパンチだったな。

俺のガードを破ろうと思った、ら、お、お、お!?

 

痛い痛い痛い!

地味に痛い!

何か、()()()()()()()()()()()()()()()()地味に痛い!!

 

『お前、庵に何をしたぁっ!!』

 

何もしてねーよっ!

っていうか、お前が俺に何をした!?

 

『罷理ちゃん、落ち着いて。和水(なごみ)ちゃんの話を聞いてあげて。ケロ。』

 

おぉっ!フォローあんがと蛙系女子!

 

『お兄ちゃん、違うの。私が、その人を視て、勝手に怖がっちゃっただけなの。』

 

ナゴミ・イオリちゃんか。そかそか……ん?

え?俺、怖いの?何で?て、いうか、見えてるの?

あれ、顔、そむけてるのは何で?

 

お、マカリくん。わかってくれたかね。

 

『そう……か。すまなかった。早とちりだった。どうにも庵の事となると頭に血が昇っちまって。』

 

いやいや。わかってくれたならいいや。

ただ……俺って、怖いの?地味にショックなんだが。

 

『はっはっは。まぁ、ほら、俺も小さい子どもに泣かれる事がたまに、ときどき、それなりに有るからな。気にするな!えっと、ヒーロー殺し殺されくん!』

 

おいカメレオン系少年。

フォローになってねーよ。

自分のちょっぴり切ないカミングアウトを明るくしてるだけじゃねーかよ。

っていうか、〝ヒーローごろしころされ〟はヤメロ。

 

『ヒーロー殺し殺されって、噂になった、不死身の人ですか?』

 

お、おお。そうだよ和水さん。

 

『だから、だから……()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

なっ……!?それが、わかる、のか!

だから、俺を見て怯えたのか。

 

『君は……見えないモノが視えているのか?』

 

『えっとねー。どうもそうらしいよっ!はっきりと見えるのとは違うっぽいけどね!私も視えるって!』

 

おい、透明系女子。

混ぜっ返してくんな。

あーっ!濃ゆい面々だな、本っ当によーっ!!

 

 

本来なら、さっさと俺らがリアルアートの引率で見学に行くはずだったのだが、何かトラブったからキチンと挨拶をしようって事になっちゃったんだけど。

まぁ、ナゴミさんとかマカリくんに聞きたいことはあっから、いいっちゃいいんだけど。アドレス交換してもらおうかねー。

 

『蛙吹梅雨よ。ヒーロー科なの。個性は蛙。ケロ。』

 

蛙系女子は個性が蛙だった。異形型に入るのだろうが、大きな目も口も何だか可愛らしいな。

ケロって口癖なのかな。

竜爪会の森野久さんは牛だったけど、別にモウとかは言ってなかったよな。

何か時代劇で聞くようなしゃべり方だったけどよ。

 

 

『俺は染隠麗音(そめがくれ・れおん)。ヒーロー科だぜ。個性はカメレオン。趣味は絵画観賞。リアルアートのアトリエカフェで蛙吹ちゃんと出会えた今日は、運命的なラッキーデイだな。マジだぜ。』

 

趣味とか蛙吹ちゃんと出会えた感想とか聞いてねぇよ、カメレオン系少年。そもそも知り合いでもなんでもねぇのか。ずいぶんと馴れ馴れしいが。

 

 

『葉隠透だよーっ!ヒーロー科!個性はね、見ての通り透明!って、見えないかーっ。好きな物はドッキリ番組観賞!』

 

元気だね。透明系女子。

っていうか、これって俺らも個性とか趣味とか言う流れになってないか?

 

和水庵(なごみ・いおり)です。ヒーロー科、です。えっと、趣味は甘い物を食べる事です。目が不自由なんですが、個性のおかげで何とか暮らせています。あ、個性はオーラ感知です。近くに有る物を感知したり、生き物の発してるオーラを知覚したりできます。あと、ちょっとだけ自分のオーラと人のオーラの波長を合わせて、痛みを和らげたりする応急処置みたいなことができます。』

 

白い髪の女の子。

俺が()()()()()()()()()存在だと視たというが、何かそーゆーオーラが出てるのか、俺。

今も俺の方に顔を向けてくれないし。

っていうか、ヒーロー科なのか。

人助けポイントを評価されたんだろーなー。

 

『俺は罷理通(まかり・とおる)。普通科だ。庵とは遠い親戚なんだが、隣同士で幼馴染。まぁどっちかと言えば兄妹みたいな関係だと思ってる。個性は……オーラによる普遍干渉、だな。』

 

罷理くんが、和水ちゃんの事が大好きお兄ちゃんなのはわかった。

普遍干渉ってなんぞな。

聞いてみよ。

 

『あー、水でも掴める。空気を蹴って走れる。鋼鉄の体でも、殴れば相手は痛がる。柔らかい・硬いは俺の個性には関係ないって……わかりにくいか。』

 

ふむ?

当人の地力に依存するにしても、なかなか汎用性がありそうな個性だな。

だが、俺の手……内側が痛んだのはどういう理屈だ?

後で話を聞きたいな、やはり。

 

しかし、なー。

 

カエル系の蛙吹ちゃん。

カメレオン系の染隠くん。

目が見えない和水ちゃん。

目に見えない葉隠透ちゃん。

超フツメンの罷理通くん。

 

なんだこの諸々のネタ合わせ具合。

 

カエルとカメレオン。

ソメガクレとハガクレ。

見えない子と見られない子。

トオル(女)とトオル(男)。

 

狙ったんすか、このメンバー構成。

リアルアート?

だからさ、アート・アートって頷くの、マジで意味わかんないすからっ。

 

 

『僕は、緑谷出久。ヒーロー科です。個性は……』

 

っておい、緑谷。罷理くんに聞きたい事が有ったのに自己紹介はじめちゃうの?

 

『超パワーって感じの増強系なんですけど、個性が発現したのがつい最近で全然制御ができなくって。反動がメチャクチャ有るんです。好きな食べ物はカツ丼。趣味はオールマイトグッズ収集です。』

 

ん?俺?

 

『えーっと、藤宮続行です。ヒーロー科です。個性は……復活、です。俺、死ぬとその場で新しい体が造り出されるんですよ。俺も個性の発現、中3になってからなんですけど、えーと、今日までに3回死んでて、うち2回はネットにアップされてるせいで、何か顔が売れちゃってるみたいっすね。』

 

『危険と隣り合わせのヒーロー稼業にはぴったりじゃね?冗談抜きで。』

 

『いやー、そうでもないんだな染隠君よ。えっと、和水さんが視えてたみたいだけど、俺、死の運命を引き寄せて、死ぬ機会が増えるところまで込みの個性なんだなーこれが。』

 

『わたし思ったことを何でも言っちゃうの、藤宮ちゃん。』

 

おぉっ。蛙吹ちゃんがズイッと。

 

『あなたの側にいると、危険に巻き込まれるかもしれないってことかしら?』

 

来たな。いつか誰かに言われると思ってたぜ。

 

『いや。おそらくだが、俺の個性は危険を引き起こす訳じゃなく、近くで起きた危険に俺を狙わせるんだと思う。一回目と二回目で考えると、間接的に周囲の人を守っていると言えないこともない。』

 

『どちらにしても大変なのね。ケロ。』

 

あぁ。大変なんだ。だって……。

 

『そうだなぁ。動画を見た人は知ってると思うが、復活した俺は裸だしなー。』

 

『私も本気だすときは裸だよっ!!』

 

『そっちは誰にも見られないだろうがっ!!』

 

『実は俺も本気を出すと見えなくなる!』

 

『聞いてねぇよ、カメレオン系!!』

 

ほんっとにノリがいいな、こいつら。

 

『私は綾吊伊吹。ヒーロー科です。個性は息使い。水中でも30分ぐらい活動できます。』

 

あ、綾吊さんが話始めちゃったよ。

 

『私も水の中は得意。ケロ。』

 

『陸上なら、吐き出す空気を圧縮して、ぶつけることで攻撃できます。父の職場のコネで、実技試験では個性を利用した装備を持ち込んで戦いました。空気圧を使った弾体発射と移動補助ツールですね。えっと、趣味は……アロマ集め、かな?』

 

おお、見た目はほんわか系だけど、口調はクールで個性はガチの戦闘型か。ギャップの魅力?

 

『はぁい。伊吹ちゃんのママの綾吊塗息でぇす。』

 

ちょっ!?なんで保護者さんが流れるように自己紹介してんですか!

 

『今日は保護者向けの見学をお願いしていまぁす♪個性はフレグランス。いろんな良い香りの息を出せるのよぉ。パパ……夫は都万土マテリアルにお勤めしていて、伊吹ちゃんの受験の為のツールもそのおかげで造れたのよぉ~。』

 

いや、娘さんがプルプルしてるから、そこらへんでやめた方が……。

 

『ぼ、僕は、重石沈男です。ヒーロー科は落ちちゃって、普通科です。個性は重力操作。』

 

ん?緑谷?ウララカさんって誰ぞ?似たような個性持ちなのか?

 

『趣味は……アニメやマンガが好きです。特に、ジョージのヒーローアカデミアの大ファンです!』

 

うん、そうだよな。

 

『あー、俺は心操人使。普通科だけど、入学後のヒーロー科への転科狙ってます。個性は……洗脳。あ、あんまり詳しくは話したくないんで。沈男も話すなよ。ネタがバレない方がいい。』

 

洗脳、か。スゴそうだが確かにロボット相手には使えないわな。

うーむ、怖いイメージは確かにあるな。

綾吊母娘がビックリしてるし。

 

『じゃあ~、せっかくだからぁ、アドレスの交換とかぁしておかない?特にお先の人達はもうお帰りでしょう?雄英でこれからも会えるにしてもぉ、記念とゆーことでぇ~。』

 

だから、なぜお母さんの貴女が。

 

 

さくさくアドレスを交換して、ようやく俺達は見学に出ることとなった。

うん、罷理くんと和水ちゃんには改めていろいろ聞こう。そうしよう。

綾吊さん(母)は別ルートなので、スポンジ・ガールが付き添い。

俺たちはリアルアートと一緒に校内へと足を踏み入れた。

 

 

 

受験の時も思ったが、厳ついよな。このゲート。

IDを所有してないと、特殊合金の扉が速攻でしまるらしい。

 

『これが雄英バリアーかぁっ!』

 

おぉ。重石君から称賛の説明ゼリフが。

緑谷以外にそれ系の人がいると便利かも。

 

『では、まずは教室から行きましょうか。』

 

さって、ようやく見学スタートか。

自主トレしてる先輩ってのが楽しみだ。

 

 

見学者を巻き込む致死性の高い個性とか、無いよな?

 

 

 

 

 

 

 




でも、染隠君に罷理君、和水ちゃん。
今後、いろいろ重要な立ち位置になる予定。
書いてても楽しいし。(特に染隠君。)


次回!雄英ビッグ5(?)が現れる予定!

藤宮君は生き残ることができるか!?


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