リリカルな世界で苦労します (アカルト)
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転生生活編
ドッキリだと思ってました



にじファンからの移転です




「真っ白な空間だ、そしてなんか眩しい」

 

目をこすりながら起き上がる

周りを見渡して見ても続くのは白ばかり……あれぇ~?

 

「なんか不気味、ここまで真っ白だとなんか出てきそう。染みや汚れの一つないのか?」

 

ここの家主はよっぽど几帳面なんだろう。

てかここどこ?

 

「監禁か?それとも別世界とか?テンプレ風に言うと転生の間だったり?」

 

二次創作に出てくる転生の間って大体真っ白だしな~、芸術性センスとか無いんだろうな……神様………

 

「余計なお世話じゃっ!!」

 

「??」

 

後ろを向いたら何やら長く白い髭を生やし、更にありきたりなグルグルしてる気の杖を持つ何とまあ神様っぽいのがいた

うん

 

 

「チェンジで」

 

「まてゴラァ!!」

 

神様っぽいのが掴みかかってくる

 

「お前さんが望んでる神様じゃぞ!!何がチェンジじゃ何が!!というか神に対して失礼じゃないのかお主!!

確かに今までわしに(自称神)やら(頭が痛い爺)なんていう輩もおったがチェンジはないじゃろチェンジは!!

てかここは例え無神論者であっても跪くのが道理であろう!!大体お主達人間は「じゃあ言わせて貰うぞ神様」な、なんじゃ」

 

「ここは幼女姿の天使やらナイスバディなお姉様女神!!気の弱くて可愛い見習い神様が出てくるのが当たり前だろ!!

そんで持って俺が死んだ?事をちゃんと許して上げて頭撫でたりする事によって転生前に軽く萌えるのが一般常識だ!!

なのにいざ神様が登場すると何?このありきたりな格好?

いかにも(ネタがないのでこんなのになりました)って姿じゃねーか!!

てめぇみたいな神様見てもなんの感動もねーんだよ!」

 

「そりゃ確かに女神やロリロリな天使も居るとも!!だがじゃ!!わざわざこの最高神であるわしが出向いてやったのにその態度!!

一般の神はわしの姿を拝む事すら出来ぬのじゃぞ!!」

 

「てめぇらの価値観を人間に押し付けんな!!俺らはてめぇみたいなヨボヨボが出てくるよりも位は低くても可愛い娘が出てくるだけで十分なんだよ!!理解したか!!あぁ!!」

 

ふぅ、と一息つく

まあ、あれだ、何が言いたいのかというと……

 

「早くこっから出しやがれ、いくら誕生日のサプライズだと言ってもやりすぎだぞ」

 

「あれだけ自分で女神やら天使やら語り、更にわしを罵倒したくせにわしが神だという事を信じとらんのか!?」

 

まったく、確かに今日は俺の誕生日だからって……手の混んだドッキリしかけやがって

 

「当たり前だろ、たがだか一人の男子高校生相手にわざわざ神様が出向くって、どう考えてもあり得ねぇだろ」

 

「そこはテンプレという物で理解してくれ!!

いいか、心して聞け……お前は……死んだ!!」

 

「へぇー(棒)」

 

「棒読みで返事をするな棒読みで!!死因は二段ベッドからの転落!!責任はお主の書類にゲロ吐いたわしの責任じゃ!!

最近風邪気味での~」

 

「へぇー(棒)」

 

「くっ、ちゃんと聞いておるのか!?

そんでもって!!お主は寿命が来てないのでまだ天国にも地獄にも行けぬ!!

わしがミスって人を殺したなんか知られれば閻魔大王に殺される!!」

 

「閻魔大王>最高神というのに吹いた」

 

「うっ、だって……あやつの説教は長いんじゃもん………ま、まあそんなわけでお主を閻魔大王に見つからんうちに転生させる!!

行き先はランダムじゃ、履歴に残ったら困るのでな

なに大丈夫、バイオハザードなどの様な場所には転生させぬ」

 

「へぇー(棒)」

 

「ちゃんと聞け!!まったく、この前来た奴は泣いて喜んでいたというのに………まあそやつは『無限の剣製』を持って……ドラゴンボールの世界に送ってしまったわ………サイヤ人襲来編までは何とかなったんじゃが………流石にそれ以上は無理じゃった」

 

ご愁傷様、確かに『無限の剣製』は強いがあの世界ではどうしよもない

軽く銀河一つ破壊できる奴らがウジャウジャいるんだ、使い物にならん

 

「と、いうわけで、特典をやる

一応どんなにチート能力でも叶えられる様にしてやれるが……三つまでじゃぞ」

 

「んじゃ、お任せで」

 

「ふむ、お任せ………てっ、はぁ!?」

 

神様が驚いて居るが………うるさい

 

「お任せって、一杯他にもあるじゃろう!?

無限の剣製やら完成やら一方通行やら!!」

 

「どうせ、目が覚めたら自分のベッドにいるんだし、なんでもいいよ」

 

「まだ信用しておらんかった!!

本当にいいんじゃな?」

 

「早く起こしてくれ、学校遅れる」

 

神様が唸って居るが、長いドッキリだな

後で当事者を捕まえるか

 

「………ふむ、あいわかった

転生後はわしからの干渉は出来ん!!閻魔大王にばれてしまうのでな!!

ゆけい、第二の人生が待っておる!!」

 

「んでもってドアをくぐるとドッキリ大成功~、てか?よく出来てるよ、本当に」

 

相変わらず白い空間の中に、突然現れたドアに向かって歩き出す

こんだけ凝ったドッキリという事は……テレビ局とかが絡んでるのか?

うう、このドアの向こう側に大量のカメラがあんのか~、学校の奴等にからかられるな

 

「はぁ、んじゃ、ドッキリ~」

 

 

 

 

大成功と言おうとして目線が突如変わった

俺を抱いてる?のは白い服着たお姉さんで………

 

 

 

「おめでとうございます、元気な男の子ですよ!!」

 

 

「オギァァァァァァァァァァ(嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁ)!!!!!」

 

 

 

ちょっ!!ここ何処!?

 

えっ!?マジで!?

 

 

 

………転生?

 



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お金持ちにも悩みはある

 

 

あれから五年ぐらい経った

 

ん?飛んだ?

気にしないでくれ、二次創作で時間が飛ぶのはよくある事だ

 

「ケント様、食事の時間でございます」

 

「ん?わかった、今行く」

 

自己紹介が遅れた、今の俺の名前は『ケント・コルテット』

ミッドチルダの名門、『コルテット家』の長男だ

 

そう、ミッドチルダだ

あの!!ミッドチルダだ!!

 

もう気づいているだろう!!ここはリリカルでマジカルな世界!!

白い魔王に逆らえば即刻砲撃の世界なのだ!!

うぉ、考えたら身震いしちまった………

 

「なっ!?ケント様が身震いを!?」

 

「誰か上着を!上着をもってこい!!」

 

「大丈夫!!大丈夫だから!!」

 

俺がした微かな身震いに反応して近くのメイドさんが声を荒げる

メイド、家で専属に働いているメイドなんて転生する前は見た事がなかった

 

ここで俺が生まれた『コルテット家』について話をしよう

まあお気づきの方もいるだろう。コルテット家は『超』がつくほどの大金持ちだ

どうやら父さんが社長をしている会社、いや、『財閥』の年間売り上げは○○○○兆円

やろうと思えば一つの次元世界を丸々買えてしまうと聞いた

そんでもって母さんはそこの副社長、まあそのせいで、この世界の両親とは『二回』しか顔を合わせた事がないんだけど………

 

最初は神様がくれた特典の一つがこれだろうと思ったんだが………原因は俺にあったらしい………

 

「申し上げますケント様!!数日前にケント様がお買い上げしました三枚の宝くじの当選番号を調べた所……見事一等と二等を独占です!!

おめでとうございます!!」

 

『おめでとうございます』

 

「……………はぁ」

 

そう、俺転生してから……賭け事や株やらがむっちゃ強い、もう呪いと言ってもいいだろう

最初は俺のこの家柄が神様特典だと思ってたのだが……俺の前世の運は普通だった、いや、神様に殺されたので悪い方なのかもしれない

なのでこの前外に出た時にちょっとした実験をしたのだ、宝くじを買うという簡単な

余り買っても無駄、それに実験目的なので適当に三枚だけ買ったが………結果はこんな感じ……

ここからあぶり出した俺の特典が………

 

「慢心王の『黄金律』、だよな~」

 

『黄金律』はかの英雄王、曰く金ピカ王が持っているスキル

あいつのランクがAクラス

Aクラスだったら《一生お金に困る事なく、大富豪でもやっていける》だった感じがする

そして俺の状況は?

 

 

大富豪? ←それ以上

 

お金は?←五歳児なのに勝手に金が入ってくる

 

 

世の中のサラリーマンを完全に敵に回したようなスキルであるが……ある物はしょうがない

恐らく金持ちの両親の間に生まれたのもこのスキルのせいだろう

 

そして見てわかる特典がもう一つ……

 

(完全に………セイバーだよなぁ)

 

広間に置いてある鏡を見ながら小さくため息をつく

 

きらめく様な金髪にエメラルドの瞳

完全にセイバーです、ありがとうございました

 

性転換とかはなかったが……声が思いっきりそのまま、まあ前世でもセイバーは比較的好きなキャラだったからいいんだけどね

髪はZEROの、時みたいに下ろしている

一度バッサリ切ろうとも思ったのだけど……専属メイド達に全力で止められた

あと周りからは一応『男』として認識はされる。それでも『女』と言っても通じるみたい

 

美少年でもあり美少女にもなれる………前世の顔が普通だった俺からして見れば……なんか嬉しいのか悲しいのか………

 

そして今詳しく説明出来ないが……容姿がセイバーになった事で身体能力やらも案外チートだったりする

 

一番驚いたのはその直感力、マジで未来予知級だよ、自分が気持ち悪くなるぐらい凄まじい

もうカリムの出番ねぇんじゃねぇの?ってぐらい凄い

まあこれも後々紹介するとして………

 

てかセイバーに慢心王の黄金律って……絶対合わねぇだろ……性格真逆だって………

 

まあなってしまった事はしょうがない、俺はもうこの五年で諦めた、あと一つ特典があるんだが……ぶっちゃけ戦闘以外で使う要素が皆無なので説明はまた今度にする

 

「いただきます」

 

そうこう考えているうちに『超』豪華な食事を食べ始める俺

最初はかなりの抵抗があったが慣れた

てか量が多すぎる、俺一人で食えるわけないだろ

まああれだ、説明するなら中華の満開全席、あれの二三倍の量、俺は何処ぞの王族かよ……

一度俺の一食に使う食事費を聞いて見たが………うん百万とか聞こえた気がする

忘れよう、贅沢は敵だ

 

「ごちそうさまでした」

 

「今より三十分後には家庭教師の先生がいらっしゃいます。くれぐれも遅れないようにして下さい」

 

「りょ~かい」

 

爺の言う事に軽く返事をして自分の部屋に戻る

それと、これもいつもの事だが、俺の後ろをゾロゾロゾロゾロとSPやらメイドやら……勘弁してもらいたいね、ほんと、プライベートなんてありゃしない

 

食堂から俺の部屋まで約五分、歩いて五分だ、家なのに

もう慣れたがどんだけ広いんだよ

庭を車で移動するって……リアルで見たの始めてだぞ?

流石にSPやメイド達が部屋まで入ってくる事はないが……入り口でずっと警備している……はぁ……

 

自分のベッドに寝転がる

 

次に説明しないといけないのは原作についてだ

 

はっきり言おう、まだ原作は始まっていない

恐らく……俺は主人公達と同じ年齢なんだろう。あくまで推測だけど

 

ぶっちゃけ『地球』なんてミッドからしたら辺境の地、全くと言っていい程情報が無い

 

PT事件や闇の書事件が起これば始まったかどうかぐらいはわかると思けど、俺の身分がこの状況、外出するにもSPは必須

 

実際に数回攫われそうになったしな、もう慣れたけど……… 

 

それに俺は自分のデバイスを持っていない、両親にとって俺は会社の後を継ぐ重要な子供、魔法なんか糞食らえという思想だ

 

実際危険なんだったらSPやボディーガードに頼めばいいし俺を守っている中で一番強い奴は確か陸戦Sランクとか聞いた事がある

要するに魔法はいらないと言うわけだ

 

そんな訳で俺はデバイス未所持、魔法の練習皆無

 

それに家がこんなんなのに二つの大きな事件が起こった地球に行きたい?

 

事件が起こる前だとしてもそんな辺境の管理外世界へ? 

 

三期からだとしてもあの大規模テロに関わる?

 

 

うん無理だ、絶対…………家が許さない

 

「ケント様」

 

「なんだ?」

 

「ケント様の結婚に関してなの「帰れぇぇぇぇぇ!!」

 

五歳児相手に結婚結婚うるさいんだよ!!

どうせ金目当ての奴らしかいねぇんじゃねぇか!!

好い加減にしろぉぉぉぉぉ

 

 

 



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主人公設定

名前 ケント・コルテット

 

性別 男

 

容姿 そのまんまセイバー

 

魔力 AA

 

魔力光 黄金

 

特典1 黄金律 EX

 

慢心王ことギルガメッシュが持つスキル、正しギルガメッシュはAランクであるがケントはEXランク………なにもしないでもガッポガッポ金が入ってくる状態、ぶっちゃけ少しイラッ☆とくる

しかしケントはこれのせいでいろいろと苦労している

 

 

特典2 セイバーの容姿andスキル

 

容姿はそのまんまセイバー、ただし性転換はせずにちゃんとした男

セイバー自身が男として歴史で振舞っていたおかげか周りからは一応『男』としては認識される

ただし『女』と言っても気づかれない模様

セイバーの身体能力やスキルも引き継がれており結構チートだったりもし、剣の才能に関しては群を抜いている

性転換してない理由?

作者がただ単に嫌いなだけです

 

特典3 破壊

クラッシュ

 

 

触れた物を瞬時に破壊、または分解する事ができる (原子、分子レベルの分解)

ぶっちゃけ歩くロストロギア、気づかずに発動させていれば壁やらなんやら、全てを粉砕してしまい、レリックなんてただの宝石に成り下がる

人に当たれば………それも可能……

作者がなにをトチ狂ったのか、セイバーなのにエクスカリバーやアヴァロンなどの特典が無い

 

 

 

 

性格

 

もともとは家族もちゃんといて、友達にも恵まれていた普通の青年 (高校生)

神様が風邪気味であり、彼の書類にいろいろと吐いてしまった事によって転生

転生の間?で神様の事を全く信用していなかった為に自分の特典は神様がランダムに決めた

前世の生活は普通の一般人となんら変わらなかった為に今の生活はかなり苦労している

ちなみに何度か攫われかけた

なのはの原作は一様知っているが正確な時期などは覚えていない、好きなキャラはフェイト

自分では気づいていないが魔力はAAと結構高め、ただし魔法の練習は皆無

性格は少し几帳面で面倒くさがりや、ライトノベルで御馴染みの唐変木などではない普通の元高校生

 



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入学式

 

「だ~か~ら~、学校だよ?なんでSP?

馬鹿なの?死ぬの?」

 

「ですが、いくら学校ともいえど危険はつきもの、ケント様の安全を考えるとせめて十人のSPは必要かと」

 

「いらねぇよそんなに!!てか普段街を歩く時も五六人だったろ!!………まさか」

 

「はい、常に二十人のSPが影から監視をしておりました」

 

「余計なお世話だこんにゃろう!!」

 

あれから一年、俺は六歳になった

ん?飛んだ?

だから時間が飛ぶのは二次創作ではあたりまえだって~の

てか両親よ、やっぱり今年の誕生日も来てくれなかったな、電話もしてこないって……

俺が転生者で、精神年齢が少し大人びてるから耐えれるけど普通あり得ねぇって、まだ顔合わせたの二回だぞ?

しかもそのうち一回は生まれた時病院で、実質一回だけだ………顔思い出せねぇ……

 

まあそれは置いといてだ、俺ももう六歳、晴れて小学校に入学だ………っていうのに…

 

「ならば五人、五人で勘弁して下さい」

 

「十人でも五人でもダメだ!!とにかくSPは断固拒否!!」

 

「そんな………」

 

爺の奴、小学校にSPつかせるとか言い出したんだ!!

はっきり言おう、自慢じゃ無いが俺の友達は0、それどころか同年代の子供とすら話した事ねぇんだぞ!?

考えられるか?どんだけ過保護に育てるつもりなんだっての!!

お願いだから小学校ぐらいはキチンと通わせてくれ

 

あ、ちなみに俺が通うのは未来の聖王様と覇王様が通うであろう『St.ヒルデ魔法学院』

まあ俺が一番驚いたのはそこではなく《学校に通わしてくれる》という事だったが……

 

どうやら両親もそこまで非情ではなかったようだ、俺はてっきり『一生家庭教師』だと勘違いしていたが……ミッドにも義務教育があって良かった………働く事が許されるのは局員だけみたいだしね

 

「この六年間、ずっと家に監禁状態だったんだ!!学校ぐらい自由にさせてくれ!!」

 

「いくらケント様の頼みでもそれだけは聞くことが出来ませぬ、ケント様はコルテット家の大事な跡取り、万が一何か起こった場合爺は……爺はぁぁぁぁぁ!!」

 

「嘘泣きはいいから行ってくるぞ、送り迎えだけは許してやるから安心して校門で待ってろ、学校に乗り込んで来たらただじゃおかねぇからな!!」

 

そう捨て台詞を残して校門から中に入る、爺が俺を捕まえようと学校に入ろうとしてたが……入り口にいた騎士に捕まっていた

 

学校内は余程の事がない限り立ち入り禁止、それにこの学校はどんな生徒でも平等に扱う

俺がコルテットの子供だとしても教師は殆ど特別視しないだろう……多分……

 

そうでないとヴィヴィオは毎日「聖王様、聖王様」とか言って崇められるだろうからな

 

ただ……

 

《生徒は別だが………》

 

校門の前に立っていると……聞こえる聞こえる、コルテット家の噂

 

みんな近寄りづらいんだろうな、もし俺に少しでも怪我をさせたり、なにか悪口を言ったりすると……俺がチクった場合その親子、社会的に抹消されちまうからな………ほんと、自分の家だが怖い怖い

 

まあ聞いていていい気分はしないのだ、校門で騎士達と言い争っている爺は無視して学園内に入ろう

箱入り息子だったのだ、俺をコルテットと知ってる奴なんかいないだろ

 

 

 

 

 

 

結果から言うと俺の読みは半分正解だった

校門では爺がいたからコルテットだとばれたものの学校内はでは俺の噂をしている奴はいなかった………だけど……

 

「あいつなんだ?すっげー可愛くねぇか?」

 

「なになにあの子?凄くかっこいい」

 

流石?というべきか………男子からは可愛いと、女子からはかっこいいと……俺がズボンを履いているという事で男子諸君からの落胆の色は凄いが……逆にこの容姿のせいで誰も近づかない

確かにわかるよ、俺が普通の男子学生だったら廊下を歩いているセイバーに声をかけようなんて思わない

 

はぁ、と軽くため息をつく

まあいいか

 

それよりも………前世で俺が通っていたのは一般的な公立高校、薄汚い廊下に木と鉄で出来た椅子and机だったのだ。こういう二次元でよく出てくる学校なんかは憧れる

まあこの世界が元々二次元な事は置いといて……

まだ入学式には時間があるし……学校内を見て回ろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校内を一言で言うと……圧巻の一言だ

 

もうね、日本の超一流大学にいるみたい、確かに俺も受験してこの小学校にいるが……元が高校生だ、異世界とはいえ魔法の知識意外だったら一時的な頭脳チート、案外楽に受かってしまった

話を戻すと……オラワクワクしてきたぞ!!

ちなみに今は入学式ね、校長が延々と何かを言っているが聞く気はない、どこの世界に行っても校長の話はながいのか………あと………

 

「うぉぉぉぉぉ!!坊っちゃまーーー!!」

 

『うぉぉぉぉぉ!!』

 

読みが甘かった、確かにこの学園では生徒、先生以外の立ち入りは特例以外禁止されているが……今日は入学式、《親がいて当たり前なのだ》

まあ相変わらず俺の親は来ておらず、爺やとSPが出席しているのだが……泣きすぎだこの野郎、思いっきり目立ってるじゃねぇか

てかSP共、俺の成長に泣いてくれるのは嬉しいが怖いよお前ら、全員スーツにグラサン、それに爺やの坊っちゃま発言………俺の親父がヤクザの頭領と勘違いされてもおかしくないぞ

みんな見てるってー!!

 

『これで、校長先生からのお話は以上です』

 

入学式は平和に?終わったが……これからクラス発表、コルテットの名前が邪魔しなけりゃいいんだけどな………

 



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仮想とリアル

 

『~で、あるからして、王という物は』

 

「………………暇だ」

 

いくらなんでも入学式の日から授業をする必要がないんじゃないか?

と思いながら目の前のホワイトボードに目を落とす

入学式、クラス発表などが終わり今の俺は次席に座って勉強中、ちなみに社会だ

てかこの教師、ずっしりした図体に赤髮に赤髭、そして豪快な笑い声

はい第四次ライダーです。ありがとうございました。

今日から担任はこいつだと聞いた、担当は世界史と地理

もう狙っているとしか思えない、このままだと他のサーヴァントがいてもおかしくない

 

『王とは!!孤高であらず!!』

 

そんでもってこの担任、自分の自己紹介の途中から話が脱線して『王とは何か』という話になりやがった

ここって聖王教会直属の学校だろ?いいのか、一教師が王について語って

そう思ってたらチャイムがなる、入学式から授業と言ったが実際する授業は一時間だけ

こっからは直ぐに下校だ

てか教師よ、自分の自己紹介ばかりして俺ら生徒の自己紹介忘れてねぇか?

それでいいのか、担任

 

「お、もう終わりか……まあ王のあり方についてはまた語るとして………今日からお前たちはこの学校の初等科一年生!!

気持ちを切り替えて学校生活に望むこった!!」

 

ガッハッハと豪快な笑を残して教室から出て行く担任、これで……終わりなのだろうか?

てか小学校なんだから普通『終わりの会』とかするだろ!!

マジでそれでいいのか、担任!!

 

周りを見渡すとゾロゾロと帰り始める生徒達

 

あれだな、やっぱりご近所付き合いとか幼稚園から一緒とかもあるせいで、みんな自分の友達と喋りながら帰り始める

 

はぁ、けっきょくこの容姿と入学式の時の爺や達のせいで誰も話しかけて来なかった

 

よく二次創作の主人公は『友達が少ない』とかあるけどマジで勘弁してくれ!!

初等科~中等科まで友達0とか淋しすぎんだろ!!

グループ分けの時とか一人だけ余るのマジ勘弁!!

比較的心が広い原作キャラがいるわけでもないし……家に帰ったら半分監禁状態に等しいし………

 

はぁ、友達0とかギル様より少ねえじゃねぇーか、ギル様だって一人だけ友達いたんだぞ

 

やべ、泣きたくなって来た

 

そうこうしている内に誰もいなくなる教室……

家に帰るのも嫌だし……また学校内をブラブラして時間潰すか………

 

 

 

 

 

 

 

 

…………凄え

 

今の俺は学園内にある訓練所に来ている

まあ訓練所と言っても中にいるわけじゃなく二階から中を見学出来るスペースがあるからなのだが

中で行っているのは魔法の実技練習

学年は……中等科だろうか?

 

決して原作キャラ達が行っている大げさな戦いではない、もっとこじんまりした、格闘技とスフィアだけの戦い

そりゃ今までもテレビやらでもっと大掛かりな、魔法をつかった試合なんかを見て来たさ

だが今、俺の目の前で行われているのは『リアル』

前世では夢物語あったスフィアが飛び交い、人と人が全力で戦う試合

興奮する、自分もやって見たい!!

俺に魔力があるのかどうかは分からないが……落ちこぼれでもいい、俺はあの場所に立って見たい!!

 

「おお、コルテットじゃないか」

 

「っ!!先生?」

 

始めて他人から名前を呼ばれ、振り返ると今日から俺の担任になったイスカンダル似の教師が立っていた

流石に仕事中の飲酒は厳禁なのか、手には『BOSS』と書かれたコーヒーが握られている

 

「ハッハッ、どうだ生の魔法は、あれは中等科の一年だからまだまだひな鳥だが……凄いだろう」

 

俺の横に立って語りかけてくる先生

当然だ、魔法がこんなにも近くにある、これほど興奮する事はない!!

 

「明日は新入生の魔力測定をするつもりだ、お主ももしかしたら、金の卵かもしれんな」

 

「………でも、俺は…」

 

もしだ、もし人より魔力が高かったとしても………それを家が許さない

俺が戦う事を、絶対に許さない

 

「子供の夢を叶えさせる為にわしらはいるのよ!!」

 

「は?」

 

「自分のやりたい事に全力になって何が悪い!!夢は自分で決めるものじゃ、家の事情など気にするしつようはない」

 

「えっと……」

 

「どこかの世界にこんな言葉があったの~、『青年よ、大志をいだけ!!』っとな、ガッハッハッハッハッ!!」

 

それだけ言って何処かへ行く担任

………まあ、何事も最初っから諦めてたら駄目だよな

やれるところまでやってみよう

 

 



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ガキ大将

 

「AA………ねぇ~」

 

だだっ広い学校の廊下を歩きながら一人つぶやく

 

学校二日目、入学式の後、家に帰ると俺の入学祝いパーティーが行われた

うん、まああれだ

アニメとかでよく見る盛大なパーティー

管理局のお偉いさんとか一度は名前の聞いた事のある大企業の大物とか、更にこの世界でいう大物女優、男優達…………

一日のパーティーだけに○○億使ったとか聞こえたが………贅沢は敵だ………

てか……せめて連絡ぐらいしてこいよ両親………

まあそんな事もあり今日は少し寝不足

それでも学校を休むわけにはいかない、てか始めての自由時間な様な物なのだ、休みたくない

そして今日は待ちに待った魔力測定の日、結果は………

 

「空戦可能なAAランク相当の魔力、更なる鍛錬で伸びる可能性有り………セイバーの特典のせいか?」

 

今言った通りのAAランク

大した事ない?ふざけんなよ!!

原作キャラのSランクやはやてのSSランクがどれ程のチートか………AAランクの俺は今年入学した一年の中で最高なんだぞ!!

ちなみに殆どの奴がCやB

時々A−やEランクの奴ら、俺を抜いたら一人だけAA−がいたらしい……

このStヒルデ魔法学院はミットチルダの中でもかなりのエリート局員、教会騎士を排出しているらしいが………SやAAAの鬼才がいるのは三年や四年に一人

確か……今の中等科一年にSランクがいたという

 

まあそんな訳で俺の魔力量はAAランク………普通に捉えると喜ばしいことなんだけど……

 

(嫉妬の目線がな………マジで勘弁してくれよ……)

 

あれから男子、女子両方からの嫉妬の目線が凄い

更に魔力測定の前に軽い自己紹介をしたのだが………その時に俺が『コルテット』の人間だという事がばれた

まとめると……

 

 

 

セイバーの容姿←自分で言うのもなんだけどむっちゃかっこいい、又、可愛い

 

魔力量AA←将来のエリート

 

コルテット家←『超』がつく金持ち

 

 

 

これで嫉妬が無い方が可笑しい

確かにまだ『かっこいい』などで俺を見つめてくる女子の視線もあるが……そのせいで男子諸君からの呪いに近い視線が増加

 

確かに、周りから見れば俺は完璧人間、いわば勝ち組に見えるかもしれないだろう……

だが、しかしだ!!

 

俺は元超普通の高校生!!

成績は常に中の中、運動も体育で困らないぐらいの感じだったし家も何処ぞによくある《両親がいない~、両親が最悪~》などではなくこれまた普通の公務員と専業主婦!!

友達も結構いたし休日はみんなで馬鹿騒ぎしてた普通の高校生なのだ!!

 

それが突然こんな……周りから見て完璧人間になったってキツイ!!

もうね!!孤独なんだよ!!

愛と勇気だけが友達なヒーローなんかよりも孤独なんだよ!!

 

みんなも考えてみ!?

六歳まで自我があり、更に同年代の友達が一人もおらず、周りからは嫉妬の目線しかない状況を!!

 

 

…………え?赤ちゃんの頃の記憶?

自我はあったよ、よくオリ主は暗黒の記憶とか言ってるけど………まあ……一つだけ言えるのは………

 

 

 

メイドさんのはおっきかった

 

 

 

 

 

 

しょうがないじゃん!!

飲まないと生きて行けないじゃん!!

いつも言ってる様に両親には二度しかあった事がないから乳母が就くのは当たり前じゃん!!

それがどんな人でも俺喋れないじゃん!!

そ、それがまだ二十代前半の『お姉さん』だったとしても………やべっ、鼻血

 

 

 

 

 

〜少々お待ちください〜

 

 

 

 

 

 

ゴホンゴホンッ、話が逸れた

まあ話は長くなったけど、まとめるとこのままでは友達0の学校生活になってしまうという事だ!!

それだけは回避したい!!

原作キャラがいない状況で一人だけは勘弁!!

つー訳で、誰かに話しかけようと思ったのだが……

 

 

トテトテ←俺の足音

ザザザザザザザザッ!!

 

…………トテトテ

ザザザザザザザザザザザザザザッ!!

 

((((;゜Д゜)))))))………………(゜o゜;;

 

 

 

避けられる………俺が歩くと半径五メートル以内に誰も入ろうとしない……

そこまでなの俺?

友達つくるつくらないの前に誰にも近づけねぇじゃねーか

『僕は友達が少ない』どころじゃねーよ、このままだと『僕は友達がいない』が新連載しちまうよ!!

 

仕方が無いので自分の教室に足を進める

ヴィヴィオってどうやってリオとコロナなんていう友達つくったんだろう

あれか?《名前を呼んで》か?

それで友達になれるんだったら出席簿を奪い取って教卓の前で全員の名前を読んでやるわボゲェ!!

 

もう一度ため息をついて廊下を歩いていたら誰かと肩がぶつかる

少し力を抜きすぎたか?

 

「ああ、ごめん「てめぇ何様のつもりだよ!!」……え?」

 

はて?

この学校では『ごきげんよう』や『はしたない』などを平気で使う様な場所であったはずだ

なのに『てめえ』って………

 

顔をあげてみるとこれまたいかにもアニメ一話、ニ話ぐらいで出て来そうなガキ大将と子分二人………リアルで見る事が出来た事に謎の感動

 

「廊下の真ん中は上級生しか通ることが出来ねぇんだよ、入学したての奴が調子こいてんじゃねーぞ」

 

中心のガキ大将が何か言ってるが……何処の世界でもやっぱり太ってるよね、ガキ大将

まああれこれ言ってるが………周りに野次馬が集まってくる

先生の姿は……ないか……

 

「なんか言ったらどうなんだよ!!ああ!!」

 

………さて、目の前にはニヤニヤ笑う子分二人と逆ギレしてるガキ大将、今にも殴りかかってきそうだ

はっきり言って、状況はあまりよろしくない

もし喧嘩になったとしてもこの体はセイバーの身体能力をフルに受け継いでる。負けることはまず無い

だけど俺は何度も言うが元普通の高校生、売られた喧嘩を全部買う様なオリ主ではないのだ

しかも入学早々暴力で生徒指導、なんかにもなりたくない

さらに………教師からそれぞれの家に伝わって……恐らくこの三人、社会的に抹殺される

かと言って逃げる……なんてしたらこれからの俺に対する評価は余り良くなくなる……今も良くないんだけど………

てかこいつらそれわかってんのか?俺の中身がこれだからいいけど、普通の六歳児なら即アウト、お前らの家族、一生日の光拝めなくなるんだぞ?

 

「さっきから俺の言うこと無視しやがって!!」

 

…………逃げよう

俺の評価が悪くなるのは……この際どうでもいい

あいにく、人の人生狂わせるのを平気でやる程、人間腐ってないもんで!!

 

つうわけで周りを見る……あれ?

 

(野次馬多!!)

 

何時の間にやら数十人に囲まれてる

これじゃ逃げれねぇじゃねぇか!!

もし俺がこいつらに一度でも殴られたりしたら即アウトなんだぞ!!

てか教師!!好い加減気づけ!!

同じクラスの奴!!誰か先生呼びに行ってこい!!俺が何処の家の子で今こいつらがやばい事わかるだろ!!

 

そう心の中で叫んでいる間にも腕を鳴らし始めるガキ大将………やっべーまじやっべー!!

 

「…………えっと~」

 

「二度とこんな事できねぇように、俺様がたっぷり教育してやる」

 

腕を振り上げるガキ大将……こいつの人生オワタ\(^o^)/

 

当たらないように除けようとするが……神はこいつを見放してなかったようだ(最高神に会ったことあるが)

 

「やめなさいタイラント君、暴力では何も解決しないわよ」

 

「カ、カリム!?」

 

俺とガキ大将との間に一人の女の子が躍り出る

髪は俺より少し濃い金髪、制服から見ると……中等科か?

 

「おい何をやってる!!」

 

「げっ!?先生!!」

 

この子が呼んだのだろうか、メガネをかけた細い先生がこちらに駆け寄ってくる

てか野次馬共よ、逃げ足だけは早いな、散らばる時のチームワークが半端なかったぞ

 

先生が俺を見て顔を青くする、最悪の事態を考えたのだろうか?

 

「タイラント、直ぐに職員室に来なさい

あと……ケント君とグラシアさんも、放課後に来てくれますか?」

 

「わかりました」

 

「ちょっ!?先生!!なんで俺だけなんだよ!!」

 

「さっさとついて来なさい」

 

引きずられて行くガキ大将、曰くタイラント

…………てか目の前の女の子……何処かで見たような?

そう思ってたら女の子がこちらを振り向く

まあ助けて貰ったんだ、お礼はしないとな

 

「助けてくれて有難う、君は?」

 

「当然の事をしたまでですよ、お気になさらずに。

あと自己紹介ですね、私は中等科一年の『カリム・グラシア』

初めまして、ケント・コルテットさん」

 

始めて名前を呼ばれて少しドキッとする

この子は……俺を『コルテット』だと知って躍り出てきたのか………

てかそれよりも……カリムって……

 

 

 

 

 

 

原作キャラじゃねーか……

 

 



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悪気は無い

 

あのよくわからんゴタゴタがあって放課後

 

俺の隣にはカリム、いやねぇ、放課後に俺ら職員室に呼び出されたでしょ?

ぶっちゃけ言って俺な……職員室の場所わかんなかったんだよ

え?ダサい?

しょうがないじゃん、まだ入学して二日目だぞ!?

俺が前世で通っていたのは普通の公立高校!!

敷地は広いとも狭いともいえない、特に小学校や中学と変わらない校舎

それがいきなりこんな超有名私立高校にチェンジし、一日で前の倍以上ある校舎を覚えるなど到底不可能!!

てかこの学校無駄な所に凝ってんだよな

庭やら庭やら庭やら庭やら………

 

そんな訳でどうやって職員室に行こうかとウロウロしていたらカリムに見つかったわけだ

 

まあ向こうも俺を探してたみたいだし、中等科の彼女なら校内全部知ってるだろうと思って一緒に行動中だ

でもなぁ……彼女の隣を歩いてると………いつも以上の男子生徒諸君からの呪いのような目線が……

さっきまでは俺の事を知っている初等科の奴らばかりだったけど今度は中等科の先輩達まで………俺の今後の学校生活が不安でしょうがない……

 

「どうしたのですか?ケントさん」

 

「い、いや、なんでもないです」

 

ちなみに今声をかけてくれた人は中等科の三年生

髪の色は赤紫、ショートヘアの彼女は………

 

「ついて来てくれて有難う御座いました『シャッハ』、ここからは大丈夫なので」

 

「本当に大丈夫ですか?道間違えないでくださいね」

 

「こ、ここからなら間違えません!!」

 

後の『シスターシャッハ』、確か三期では陸戦AAAだった筈……

てかカリムがいたら彼女もいるよね普通、原作でもカリムとその弟の教育係って設定だった筈……

てかカリムさん、貴方中等科ではなかったでしたっけ?

なんでそんな心配されてるんですか!?

貴方この学校に何年いるんですか!?

 

そうこう心の中で叫んでいる内にシャッハさんが何処かへ行ってしまう………はて……

 

「ここは……どっちに曲がったらいいのでしょうか………」

 

「(゜o゜;;」

 

通りかかった先生に道聞きました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「本当に申し訳ございませんでした!!」」

 

「すみませんでしたぁ!!」

 

「えっと……顔を上げて下さい」

 

所変わって校長室

隣には困惑したような顔のカリム

部屋の端には気まずそうな顔をしている教師

目の前には………立派すぎる『DO☆GE★ZA』を披露している親子、一人はさっきのガキ大将という事からあと二人は必然的にガキ大将の両親…………

あれから俺達は職員室から校長に連れられてここにやって来た

最初は前世を含めて始めての校長室呼び出し……という事で内心かなりビクビクしてたのだが………入った瞬間この始末

ん、チキンだって?

だから俺の前世は超がつく程普通の高校生だったんだよ!!

授業は比較的マジメに受けてたし特に問題だって起こしてないんだよ!!

なのに入学二日目で校長室って………一瞬退学も考えちまったよ………

学校行けなくなったら絶対家庭教師だって、多分義務教育なんかもも金で何とかしちまいそうで怖ぇよ、いや、絶対するな……

まあ話が逸れたけど今は目の前で土下座している親子を何とかしないと、年上の大人を土下座させるなんていい気分がしないし……

 

「マジで顔上げて下さい、こっちは罪悪感で押しつぶされそうなんで」

 

「ですが!!」

 

「あーもう!!顔上げて下さい!!余計イライラします!!」

 

「「はいぃぃ!!」」

 

母親と父親が顔を上げる

やへぇ、母親の方半分涙目じゃん、罪悪感半端ねぇじゃん

 

「ケント君、今回の事は家の方に秘密にしてもらえないか?タイラント君のご両親もこう謝ってますので」

 

「ほんとごめんよぉ!!俺が悪かった!!」

 

校長が手を合わせて頭を下げ、ガキ大将曰くタイラントが涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら訴えかけてくる

 

「ケントさん、私からもお願いします。

タイラント君も悪気があってした訳ではないので……」

 

カリムもこっちを向いて語りかけてくる

 

ってえぇーーー!?

完全に俺悪役じゃん!!

別にさっきの事はもう気にしてないんだけど!!

てかコルテットーー!!俺が言うのも何だけど、どんだけ恐れられてんだぁぁぁ!!

 

「えっと……もうさっきの事は気にしてませんから、家にも報告しませんし貴方方に危害を加える気もありません

これから気をつけてもらえるだけで結構です」

 

「「ほんとにすみませんでしたぁぁぁ!!」」

 

「なんでまた土下座する!?」

 

 

 

 

 

それから一時間、ようやくタイラント君達が去って校長室

その間に謝罪が長引きそうなので爺に連絡入れて迎えを遅くして貰おうとしたら……全力でカリムと校長に止められた

どうやら俺が家に連絡すると思ったらしい、そんな事しないって、たったあれだけの事で人の人生狂わしたくないし……

 

今の校長室には俺とカリム、終わった後俺が「疲れた」と言ったら貸してくれた

目の前には高級そうな茶菓子……ぶっちゃけ家の菓子の方が高価だ……

てか転生してから前世の時よく食べてた駄菓子、食べれなくなったんだよな~

うまい棒食いて~

 

「今回の件、改めて私からお礼をさせてもらいます。

本当に有難う御座いました」

 

「いや、もう特に気にしてないよ、それに君は被害者じゃないか」

 

「ですが……もし、最悪の事態を考えると」

 

顔を暗くするカリム、そんなに俺って非道に見える?

そんな事軽はずみにしないって……

 

「そういえば………グラシアさん、でいいかな?」

 

「カリムでいいですよ」

 

「じゃあカリムさんで、カリムさんはどうしてあの時助けてくれたんですか?

俺がコルテットの人間だという事知ってましたよね?」

 

「えっと……それは……」

 

言葉を濁すカリム

ずっと気になってた、いくら彼女が原作キャラであったとしても下手すれば自分の身も危なかったのだ

俺がもし、ワン○ースで出てくる天竜人のような性格だったら……彼女もまた、二度と太陽の下を歩けなかったかもしれない

 

「あの………それは………」

 

「言えない事だったらいいですよ、すみません」

 

「いえ……その………教会に頼まれているのです」

 

「教会?」

 

「はい、私が引き受けたのは学校内でのケントさんの護衛と見張りです」

 

その後も話してると彼女、どうやら教会から学校に通ってるらしい

何故かは教えてくれなかったが……十中八九レアスキルのせいだ

名前は………なんだったか?

確かよく当たる占いをする能力だったと思うが……それが六課建設の理由の一つなんだよな

 

それで教会は比較的目の届く所にいる彼女に今年入学してくる『コルテット家』の一人息子、つまり俺の警備、及び見張りを任せたのであろう

 

どうやら『コルテット』は本局、更には聖王教会でも絶大なる発言力を持ってるのだろう

 

そこの社長の一人息子が、自身が創設した学校に通う………教会としては俺の行動に注意をしつつ、なおかつ美人のカリムを側に付かせる事で俺の機嫌を取ろうという事なのだろう。

カリムは将来、聖王教会でも重要な立ち位置にいた筈だ、今の内からカリムを使って俺を引き寄せようって訳か……

 

まあカリム本人に自覚はないんだろうけど……

………って事は万が一の為に弟もいるのか?

まあ、彼はレアスキルだけを注意すればいいし……前世なんて覗かれたらシャレにならん

 

てかカリムさん?

護衛はいいと思うが『見張り』って……本人の前で言ってもいいの?

 

「ふぅ、そろそろ帰りますか」

 

一息ついた所で立ち上がる、時間はまだ全然余裕だがどうせ友達のいない俺にはする事がないのだ………やべ、なんか自分で言っててさみしくなってきた………

 

「あの……ケントさん!!」

 

「ん?なんでしょうか?」

 

パンッ、と手を叩いて立ち上がるカリム

少し萌えたのは内緒だ

 

「入学したてなのでしょう?よければこの学校を案内しようと思うのですが」

 

「………道、大丈夫ですか?」

 

「…………………シャッハを呼びましょう」

 

 

シャッハさん呼びました

 



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お弁当

 

 

「……………暇だ」

 

広いグラウンドの上で突っ立っていながら一人呟いてみる

目の前には元気に走り回る同級生、足元には白黒のボール

遠くにあるネットが揺れる、どうやら得点をとったらしい

 

これでわかると思が今の時間は体育、内容はサッカー………

最初は嬉しかったさ、転生してから六年間、ろくにスポーツしてないし……

前世でサッカーは別段上手ではなかったが楽しみな物は楽しみ、それに体育を通して始めての友達が出来るかもしれない

そう思って臨んだんだけど………

 

「結果があれじゃあな~」

 

この身体のスペックはセイバーと変わらない

確かに、彼女の持ち味である強大な魔力放出などは、魔法を使った事がない俺だと使用する事が出来ない……筋力や耐久なんかは一般人まで下がってしまう

 

しかしだ!!

例え魔法が使えなくても英霊としての反射神経や未来予知並みの直感、もっと言うと全体的な運動神経などは常人を遥かに超えている!!

その能力をフルに使い!!サッカーボールを奪取したのだ!!だが!!

 

(なんでみんな逃げんだよ)

 

サッカーって普通相手のボールを奪うよね?

ディフェンスするよね?

なのに!!なのにだ!!

 

何故半径五メートル以内に近づかない!!

 

さみしすぎるよ!!ドリブルしてもド真ん中一直線!!

パスなんてする必要がないから渡す事も出来ない!!

せめてキーパーは……と思ってシュートしたけど『防ぐふり』してゴールした……

 

あれか?俺の機嫌を損ねない為か?

俺からボールを奪うのがそんなに怖いのか!!

俺のシュートを止めるのは駄目な事なのかよ!!

そんなに俺の機嫌損ねたくないのかよ!!

 

 

やめよう、悲しくなってきた………

 

そんな訳で今の俺は味方からパスを貰えない様な位置にいる

 

だってボールを受け取ったとしても……

 

周りに敵味方、自分以外合わせて二十一人から注目をあびながらの一直線ドリブル

 

必ず入る形だけのシュート

 

 

…………体育、早く終わらないかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたのですか?顔色が悪いですけど……」

 

「いや、大丈夫ですカリムさん、気にしないで下さい」

 

体育の時間が終わり今は昼休み

場所は庭で、目の前にはカリムが自分のお弁当を広げている

その隣にはシャッハが座っていたがさっき何処かへ行ってしまったきり帰って来ない

 

ん、お弁当?

そう、お弁当だ

 

何故だか知らんが俺が『一人で』昼飯を食べようとしていると二人がわざわざ中等科から声をかけに来てくれたのだ

 

どこのギャルゲーかと最初は思ったが俺はそんなに嬉しくない

 

だってこのよくわからん形をした庭で弁当を広げているのは俺らだけではないのだ

 

周りには同じ初等科の奴や中等科の先輩達だっている

 

そこにだ、中等科でも恐らくマドンナ的ポジションにいるカリムとシャッハをどこぞの初等科が一緒に食事している

 

俺がただの学生ならまだしも俺は『コルテット』の一人息子であり、自分で言うのはいつも恥ずかしいが顔も文句なし

 

嫉妬こそあれど何も言い返す事が出来ないのだ。

それこそ、自分達に俺より『勝る所』が無いために

 

それにまだある

昨日の事件、何処から漏れたのかは分からないが噂は中等科に広がってしまっている

 

曰く『家の力を乱用する最低野郎』

 

どこで知ったかって?

廊下を歩いてたら聞こえるんだよ……本人達は聞こえてないつもりでも丸聞こえ、トイレに入ろうとすると大声で怒鳴り声や俺に対する評価とか聞こえてくるしね

ちなみにそのトイレに入ったら中等科の男子達が顔を真っ青にして逃げ出した……はぁ……

 

それにカリムについてだって『脅されてる』とかも噂されてるし………

俺……そんな最低野郎に見えるかな………

なんかこの頃精神的に辛い事ばっかです

 

まあそんな理由もあって中等科男子からの視線が凄い

それに庭だけでなく校舎の窓からも………

視線で人を殺せたら何度死んでるかな……俺……

 

「あの……立派なお弁当ですね」

 

「ん……はい、普通でいいと言ってるんですけど毎日こんなのです」

 

俺の弁当を見ながらカリムが驚いた様な声をあげる

俺の弁当?

先ずは弁当箱、俺にはよく分からんが表面がツヤのある黒に金の装飾が満遍なく描かれている

これ……本物の金じゃないよな?

………今度値段聞いて見よ……

それが普通サイズで二段、初日にアニメでよく見る重箱なんか持たせやがったので変えさせた、量が半端ないし……

 

そんでもって中身

タコさんウインナーに卵焼きにミートボールに………な筈がない

俺始めて弁当にキャビアやらフォアグラやら入れてるの見たよ、どう考えてもあり得ないだろ

他にはこっちの世界で言うミシュ○ンの三ツ星シェフ達が腕によりをかけて作った具材

唯一変わらないのは白米だけだ……どんな白米かは別として……

 

あと料理の話で思い出したんだが、この前『リーガルマンモス』の肉とか出たんだよ

美味しくいただきました、ちなみに体はちゃんと光りました

 

「すみませんカリム、探して見たのですが……」

 

「そうですか、有難うございましたシャッハ」

 

何時の間にかシャッハさんが帰って来てた

探してた?何を?

 

「あ、まだ話していませんでしたね。

私には義弟がいて、一緒にお昼をしようと思ってたのですが……」

 

「また誰かをナンパしてるのでしょう、大丈夫です。心配かけました」

 

………ロッサだな

てかあいつ、この年からナンパしてたのか?

確かレアスキルのせいで恵まれた幼少期送れなかったんじゃなかったか?

…………俺の言えたことじゃないか、現に恵まれてないし、俺

 

嫉妬と呪いの視線が延々と突き刺さる中弁当を食べ始める

 

途中で二人が物欲しそうに見てくるのでそれぞれ好きなものを一つあげた

両方共その味に驚いてたが………俺的に別段美味しい訳じゃない

やばい、六年間もこんな料理食べてたせいで舌が肥えた……

 

このままじゃこの生活から抜け出せなくなっちまう!!

 

俺は普通の高校生にもどりてぇんだ!!

 

贅沢は敵だぁぁぁぁ!!

 

 

 

 

 

 

弁当は美味しくいただきました

 

 

 

 



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憧れの……

 

「魔法学……ねぇ……」

 

初等科の廊下を歩きながら呟いてみる

相変わらず周りの奴らが俺から逃げて行くが………もう慣れた

 

入学式から丁度一月余り、学校生活にも慣れて………きたこの頃

あれから何があったかって?そうだな……

 

まずカリム達が昼休みになると毎日俺を昼飯に誘いにくる事、確かに有難い事なのだが………周りからの視線は相変わらずだ

 

次に街を歩いてたらまた攫われかけた事、これはもう完全に慣れてしまった。てか俺の元へたどり着くまえに取り押さえられてしまうからな……

 

最後に、これは情報なんだけど……あのリンディさんが提督職についた事だ

適当にネットをいじっていたら出てきた、やはり指揮する船はアースラ

クロノはまだ執務官にはなっていないようで情報は一切なし、まあ俺が六歳だからまだクロノも十歳、そう簡単になれたら苦労しないわな

 

 

まあこの一ヶ月の動きはそれだけ

まあこれは置いといて……だ……

俺の手元には保護者用のプリント、中身は纏めるとこうだ

 

 

 

『魔法を使う授業をするのでご自身のデバイスがある場合は持たせてあげて下さい

また、自身のデバイスがない場合には学校の物を貸し出します』

 

 

まあ一言で言うと《魔法使うよ~》って事だ

まあ当たり前だろう、この学校に通っている殆どの奴らが将来局員や教会騎士を目指している。

てかこの世界では普通の公立高校でも簡易魔法ぐらいはするのだ、魔力0を除いてだが

正し魔法には危険が伴う、白い魔王様なんかは感覚で魔法使ってたけど世の中そんなに甘くない

魔力の構成やらリンカーコアの特性、メリットやデメリット、それらを踏まえた上での魔法

それらをキチンと理解しておかないと確実に痛い目にあう、魔王撃墜事件は良い例だ

まあそれらを理解しても魔法は危険だ、使い方を一歩間違えれば『バーン』とね

まあそんな感じでこのプリントは保護者への『質問』だ、魔法学の授業は絶対やらないといけない訳ではない、中には管理局員など危険な仕事をして欲しくないという両親だっている

なのでプリント、提出期限は来週まで

 

俺の意見か?

うん、あれだ………むっちゃ楽しみ!!

だって魔法だぜ!?

やっぱり自分が魔法使うなんて憧れるじゃねーか!!

セイバーの容姿なんだ、ぜってー「エクスカリバー」って砲撃魔法作ってやる!!

まあホント、現実はそんなに甘くないんだけどね……

 

「許して……くれるだろうか?」

 

何が?家がだ

前にも述べたように事実、『コルテット』は俺に魔法を教えるつもりは毛程もない、逆に魔法を教えて「俺、将来局員になる!!」とか言い出したらもう大問題

両親からしたら俺は大事な一人息子であり財閥の跡取り、魔法を教わる事を絶対に禁止してくる

はぁ………夢が遠のいて行く………

 

ふと外を眺めてみる、どうやら模擬戦をしてるみたいだが………

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

『あぁぁぉぁあぁぁ!!』

 

シャッハさん強ぇ~

あれだね、もはや一騎当千、シャッハさんの無双シリーズ出るかもってぐらい

てか人間、あんなに飛ぶんだね……

 

そうだな、もし魔法を学ぶ事がOKされたらシャッハさんにいろいろ教えて貰おう、確か六課でも教導の手伝い来てた筈だし

 

そう思ってるとポケットの携帯端末が音をたてる

デバイスは無くても携帯端末は持ってる、何かあった時には必要不可欠だしね

相手は爺、まあ登録されてるのは爺、カリム、シャッハぐらいしかいないんだけどね

てかカリム達って『友達』に数えていいのかな?

でも、彼女達の目的は《監視と見張り》、向こうも俺をそんな風に思ってないだろう

知り合い以上友達未満ってか?

まあ電話が鳴っているのだ出たほうがいいだろう

 

電話の内容は……客人が来てるので今日は早めに学校を出て欲しいという事だ

はて、客人?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい爺、何か言い残す事はあるか?」

 

「で、ですが!!これもケント様の将来を思っての「あぁ!?」ひぃ!!」

 

腕をパキパキ鳴らすと目の前の老いぼれが震え上がる

俺は今すっげぇ気分が悪い、だって……

 

「お見合い?将来の結婚相手?許嫁?

調子こいてんじゃねーぞ」

 

「ひぃ!!」

 

そう、許嫁だ

こいつ……俺の相談もなしに大量の『お嬢様』を呼びやがった

俺との結婚の為にだ!!

確かに!!今までそういう話はあったさ!!

ただそういう話題が振られるたびに軽く受け流したり怒鳴ったりする事で回避してきた

 

なのにこの老いぼれ……俺が学校へ行っているのを良い事に大企業の娘やら管理局お偉いさんの娘など……合計……わかんねぇ

 

俺は許嫁など作る気はさらさらないので全員お断りするのは確定なのだが……それでも呼ぶだけ呼んどいて返す訳にもいかない

断ると決めていても結局全員と顔を合わせないといけない訳である………めんどくせぇ……

 

 

 

 

 

一人目~

 

「そ、それでわたしは……あの、あの、あの……わ、わ、わ、わたしの……あ、あ、あ」

 

「……………………。」

 

 

二人目~

 

「とにかく私の考えではコルテットは少し商業展開が広すぎではないのかと、政府も言い出す事が出来ないだけでこの世には『独占禁止法』という物がありまして~」

 

「…………………(; ̄ェ ̄)」

 

 

三人目~

 

「結婚しないと風穴!!わかる!?結婚しないと風穴だからね!!」

 

「……………………(゜o゜;;」

 

 

十人目~

 

「いい?生徒会長になる為の条件ってわかる?それは……『最強』であること」

 

「……………何しに来たんですか?」

 

 

三十人目~

 

「またお会いしましたね」

 

「……………なんでカリムさんがいるんですか?」

 

「教会の人から行って欲しいと頼まれたので」

 

「…………………orz」

 

 

 

結果、ろくな人がいなかった

途中でピンクツインテールのS級武偵っぽいのや女性にしか反応しないパワードスーツを扱ってる学園の生徒会長っぽいのもいたが気のせいだろう、本人じゃないしね

てかカリムさんよぉ……貴方今回の事、ただのパーティーだと思ってたんですね

俺の許嫁を決める為の集まりだと聞いたら顔を真っ赤にして俯いてしまった………むっちゃ可愛かったから保存した

 

まあ三十人との対話、体に半端ない程の疲労がドッと押し寄せる

流石に……キツイ

 

「爺、今度余計な事したらぜってー絞める」

 

「うっ、申し訳ございませんでした」

 

隣にいる爺が頭を下げる、てっぺん禿げてるぞ?

 

「とりあえず今回俺を困らせたことに落とし前をつけて………一つだけ言う事聞け」

 

「爺に頼み……で御座いますか?

わかりました、どんな事でも聞き届けましょう」

 

「デバイス作れ」

 

「デバイスですね、それならもう手はずしている筈ですが」

 

「ふ~ん、て……え?」

 

デバイスを……手はずしてる?

 

「はい、申し上げていませんでしたが、ケント様の為に今デバイスを製作中でございます。

ケント様に悪影響を及ぼす事が心配なのでインテリジェントではなくストレージデバイスになりますが……」

 

「おいおい、ちょっ、まてよ!?」

 

魔法の勉強はさせないんじゃなかったのか?

 

「はい、それが奥方様から「ケントはイケメンで魔法の才能もある、そんな人物がこの会社の次期社長なのだ、今ある物を伸ばして更にイメージアップをさせたい」と」

 

へなへなと尻餅をつく

て事は……

 

「魔法の勉強……出来るのか?」

 

「おめでとうございます」

 

手足がワナワナと震える

理由は会社のイメージアップという胸糞悪い理由だけど……だけど……

 

「よっしゃーーーーーー!!」

 

むっちゃ嬉しい!!

転生してから一番の喜び

諦めたさかけてた魔法が………ようやく、ようやく解禁されたんだ!!

 

「デバイスはもう直ぐ完成だと聞いております。恐らくは……あと三日ぐらいでしょう」

 

「そいつの名前はなんて言うんだ!?

それとも自分でつけれるのか?」

 

自分で名前をつけれるとしたら何にしよう!!

カリバーンでもいいし……でもやっぱりエクスカリバーも捨てがたい……

 

「名前はもう決まってますが……変更する事も出来ます。

ストレージデバイスになるのでAIは搭載されていませんが性能は恐らくインテリジェントを遥かに凌ぐと思われます。

なんせコルテット家が総力をあげて設計しているのですから」

 

名前は……決まってるか……それでも魔法が使える事には変わりない!!

例えストレージになったとしてもだ!!

てかコルテットってなんの会社なんだろうな………どうでもいいか……

それよりも……

 

「なんて、名前なんだ?」

 

恐らくテンプレ通り進むと「エクスカリバー」か「カリバーン」

可能性としては「アヴァロン」などもありうる

 

「聞きたいですか?」

 

「聞きてぇ!!」

 

フフフと爺がドヤ顔を披露するが……絞めるぞ?

 

「ケント様には決して折れぬ信念を持ってもらいたいと思い、コルテットが総力を上げて作った近代ベルカデバイス……名は!!」

 

「おお!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デュランダル!!」

 

 

「聖処女!?」

 

 

思わず叫んだ俺は悪くないと思う

 

 



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我儘な皇帝

 

「痛ぇ………」

 

「大丈夫でございますか?」

 

爺が心配そうに俺を覗き込んでくるが……大丈夫……医者を呼ぶ程じゃない

頭を抱えながらメイド達を落ち着かせる、俺が痛いと言ってるのは………頭……

俗に言う頭痛、どうにかしてほしい

 

ぶっちゃけ今まで話していなかっただけで数年前から俺は頭痛持ちとなった

爺達が必死に原因を探ろうと数多の世界の高名な医者を呼び寄せたのだが……原因はまだ分かっていない

まあそう言っても頭痛がくるのは一ヶ月に約一回程度、そう頻繁に起こっている訳ではないので別に問題視はしてないのだが……

 

「ふぅ、収まって来た」

 

「今日は一日、お休みになった方が良いのでは?

学校もお休みですし………」

 

「分かった、んじゃ、魔法学の授業以外(家庭教師)はキャンセルしてくれ」

 

「わかりました」

 

デバイスを製作中という大ニュースを聞いてから一日

今日は休日、学校も休み、家庭教師があったのだが今の頭痛を言い訳にサボれそうだ

 

あの後俺は『魔法』についての学習をする為に早速行動に出た

まあ『魔法学』専用の家庭教師をつけるというだけなのだが………

つまり予習だ、魔法以外の範囲ならまだしも……全く新しい範囲を全くの無知の状態で望むのは流石にキツイ、それこそ、大量の魔力が無駄になってしまう

宝の持ち腐れと言うやつだ

 

確か授業は午後からだった筈なので……ぶっちゃけ友達のいない俺は暇だ

ヴィヴィオが羨ましい……

 

「さて、今からどうするか……」

 

家の中で出来る事など限られてくる、そうだな……

 

「爺、ちょっと来てくれ」

 

携帯端末を使って爺を呼ぶ、何かしたい場合は大体爺に知らせないといけないからな

 

「訓練場借りるぞ」

 

「はい?」

 

さて、この体のスペックがどんな物か……拝見しましょうかね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竹刀を持って構える

目の前には黒スーツの男たち……

 

「いくら何でも許しませぬ!!

もしケント様がお怪我をされましたら爺は……爺はどうすれば悔やんでも悔やみ切れませぬ!!」

 

「軽くやるだけだって、んな大袈裟な」

 

俺がいるのは『コルテット家』専属のSPを鍛える為の訓練場

広さは……東京ドームぐらいだと考えてくれたらいい

 

もうお分かりだろうか?俺がしたいのはこの体の『スペックの確認』

爺はやめろやめろと叫んでいるが、もし学校で『模擬戦』などとなった場合これはしておかなければいけない

この体はセイバーの直感や身体能力は受け継いでいるが、それが戦闘で満足に発揮出来るとは限らない

なので『確認』、戦闘素人の俺がこの体でどれだけ食らいついて行けるのかの……

 

だが相手を頼んだSP達は俺に対して本気になるなど出来ない、なので彼らには『一太刀でも浴びたら減給』という特別ルールを作らせてもらった

そうする事で彼らに《わざと負ける》という選択肢はなくなる

俺の攻撃に当たらない様に、なおかつ、俺に攻撃を当てない様に調整してくれる

本気では打ちに来てくれないだろうが……学校みたいにわざと負けられるよりは数倍役に立つだろう

 

さて、向こうは三人、最初は一体一にしようと思ったのだが………本気で無い分数でカバー……と言う事にした

 

さて………

 

「行きます」

 

「よろしくお願いします」

 

俺の声と共にあちらも構える、そして

 

「ハッ!!」

 

ただ単に竹刀を突き出す

 

だが………やはりど素人の俺が放った突きは軽々と打ち返され、また元の位置に後退してしまう

 

………いい気になりすぎたか?

 

いくらこの体がセイバースペックを誇っているからといって……中にいるのは彼女では無く俺なのだ

 

いくら底なしの強さを持つこの体でも使いこなさなければ意味がない、と言うよりかは俺は前世でも剣道をしてた訳ではないのだ。

スペックは同じだが彼女にあって俺にない決定的な差、それは経験

 

幾たびの戦場を越え、幾たびの決闘を繰り返し、手に入れたその経験こそが俺にないもの

今の俺がしているのは努力しないで結果を望んでいるのと同じ、二次創作に出てくるオリ主がチートを完璧に使いこなしているので俺も……なんて考えは甘い

 

(でも望んじまうよな……剣の才能)

 

ただ憧れる事は憧れるのだ

特に何の努力もせず、超人的な身体能力と何故かしている『場慣れ』、俗に言うテンプレに………

 

人間楽をしたいなどと言う発想は当たり前だ、また違う趣旨の二次創作のオリ主の様に、体をボロボロにしてまで強くなろうなどとも俺は思わない

あれから~年経った……とか気軽に言ってるけどマジでしようとすると多分死ぬ、俺にそんな根性はない

 

(どうにかならないかな~、圧倒的な剣の才能……)

 

そんな事を考えてみるがこれが現実

ないものは無いのだ、地道に練習するしかない

 

「よろしいですか?」

 

「ん?ああ!こい……」

 

相手の言葉で我に返る

少し考え過ぎてしまった

どうこう言ったが今は相手との試合中、失礼だろ俺……

もう一度竹刀を構える、今日からコツコツと練習しないといけないんだ、とにかく今は真面目に取り組む

 

「では、次はこちらから」

 

軽い口調で相手が一歩まえに踏み出す

そして竹刀を振り下ろす、特に早くも遅くもない、だが絶対に防げる程の早さ

さっきまでの俺ならギリギリ除けれると言ったところだろう……だが……

 

 

 

ズバンッ!!!!

 

 

「…………え?」

 

「なっ!?」

 

気付けば竹刀に確かな手応え

そして俺の前にいた筈の相手は真後ろに

ギャラリーも騒然としている、当たり前だ、決して本気などでは無いとはいえ、プロのSPが六歳児に一本取られたのだ

 

自分でも理解出来ない、ただ言えるのは……

 

『見えた』と言う事

 

見えた瞬間体が勝手に動いた、まるで『その身に染み付いた様に』

いや……違う……

確かに『その身に染み付いた様に』感じられた、だが……何かが違う……

 

まるで……『即席で使いこなした様な』

 

…………まさか!?

 

 

 

 

 

「爺!!、家の何処かに弓道場があった筈だ!!案内してくれ!!」

 

「は、はい!!」

 

俺の一声で静まり返っていたギャラリーが覚醒する

俺の読みがただしかったら……これは……

 

 

 

車で数分移動した場所に弓道場があった

 

初めて弓に触れ、ちょっとした説明を受けてから弓を構える

俺の体はセイバースペック、弓を扱うアーチャーには適用していない……

的に狙いを定める……それと同時に……《自分は一流の弓兵》だと決めつける

素人の弓が放たれる、普通は的に当たらずに全く違う方向に進む筈なのだが……弓は的の『ど真ん中』に一切の狂いも無く命中してしまう

 

これで確信した………隠されたセイバー特典の能力

これまで続く頭痛………そして初めての事を『一流』にやりこなす不可解な現象

ここから導き出されるスキル……それは……

 

 

 

「『皇帝特権』………だと……」

 

 

 

セイバーなら何でも有り……って事かよ……

 



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劇場

 

『皇帝特権』とかいうチート特典が判明した次の日……

俺は……鬱だ………

 

いや、対した努力もしないで結果を残せるスキルっていうのは素直に嬉しい、周りからは俺の事が最低系テンプレオリ主と映るかもしれないが人間なんてそんなものだ

 

正し、これによってマイナスもある

 

『皇帝特権』とはPSPで発売されたフェイト/エクストラに登場するアーサーとは別人のセイバー、俗に言う『赤セイバー』が持つスキル

赤セイバーの事を知らないのならググってくれ、決して説明が面倒な訳ではない

だが俺のスペックはアーサーそのもの、赤セイバーに直感なんてスキルは無かった

恐らく………あの最高神が原因……あいつ、二人のセイバーを同一視しやがったな……

 

話は逸れたがマイナス面の話をしよう……

確か赤セイバー………面倒だから《ネロ》とする。

ネロは幼い時から母親に少しづつ毒を飲まされ、母親を暗殺してからも解毒剤の位置は判明せず、『頭痛持ち』となったと聞かされている

 

そう、『頭痛』だ

 

俺が持つ頭痛の原因が判明しないのは当たり前だったのだ、だって『スキル』なのだから……

 

今はまだズキズキ痛む程度なんだけど………将来が怖い

 

地味じゃん?あの痛み、ズッキズッキズッキズッキと延々に………はっきり言って俺が戦闘する機会なんてそう多くないから……俺にとってはネロのスキルは総合でマイナスになりかねん

 

「ケント様、そろそろ………」

 

「ん、分かった~」

 

身なりを整えて部屋を出る

 

爺から聞いたのだが今日もまたパーティーをするらしい

場所は最近家に作ったらしい大ホール、そんなもん初めて聞いたぞ……

どうやらこれまでパーティーをしていたホールなどとは一線を超えた大ホールらしく、ミッドチルダでも最高規模、制作費は○○○○億とか聞こえた感じがする

もう驚かないぞ、もう……………

 

ん?家の大きさ?

 

う~ん………俺が生活してるのは一箇所だけなんだけど……大体甲子園球場一個分ぐらいのデカさ

敷地を考えると………地平線が綺麗だな………

家に専属で務めている人が殆どだからそういった人達の住居もあると言う事だ

 

そんな訳でホールへは車で約三十分、今回のパーティーには超大物のお偉いさん達がずらりと出席している

テレビをつけたら現場前中継とか他の世界の首脳陣などが………どうやらどこの世界でも『コルテット』の影響力は凄まじいのだろう

どこの世界もアピールをしようと必死だ

 

あと当然ながら両親は出席しない、何やってんだよ社長………

長々と話してしまったが一言で纏めると《でっかいホールが出来たからパーティー開くよ~》と言う事………めんどくせぇ……

 

「てか爺、新しく出来た大ホールの名前ってなんていうんだ?

そんだけりっぱなんだったら名前ぐらいあるだろ?」

 

「おや?マスコミなどで騒いでいるので知っていると思っていたのですが………、申し訳ありませんでした」

 

「ん、別に気にしてない

で、名前は?」

 

「はい、奥方様が全面的に創設に協力したミッドチルダ最大のホールの名前………それは……」

 

「それは?」

 

 

 

「黄金劇場!!!」

 

「赤セイバー!?」

 

 

また叫んでしまった俺は悪くない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホールは………もう壮絶の一言だった

 

目の前のホールに合うように周りの風景がローマの街並みと化している、爺に質問してみたら古代ベルカの時代を再現しているらしい

 

てか俺、初めて知ったんだけどコルテットの敷地内に街があるらしいんだよ……どうやら土地を持ち過ぎたみたいで盆地が増えてしまったらしい

なので一般開放エリアを作ってコルテットの許しを得た物ならそこの街に住んでも良い………規模は……普通と変わらん

今回のホールが出来た場所もそう言った一般開放エリアの一つ、どうやらコルテットの副社長、曰く俺の母親が大の芸術好きならしくこういった『古代の街並み』が多く作られているらしい

ちなみに周りには人が住んでる、なんかミッドに一つの国を作ってねぇか?コルテット……

 

「出て来ました、あれがコルテット家期待の跡取り、今回の事について何か一言お願いします!!」

 

「やはり噂は本当でした!!

あのエメラルドの瞳と整った顔立ち……正に王者の風格をあらわしています!!」

 

「このホールはコルテット副社長の全面協力があって作られたと噂されているのですが!!それは本当ですか!?」

 

車から出た途端大勢のマスコミに囲まれる

まあマスコミが俺の元へ到達する前にSP達が壁を作る………てかこれ、全国放送か?

見てみるとなんか別世界に生中継してるテレビ局もあるし………そう言えば今日のテレビ欄、コルテットの事で一杯だった感じがする

 

マスコミには悪いが全てに構っていられない、ホールに入れるのはごく限られた人のみだ、マスコミはマスコミ専用の位置があった気がする

 

まあそんな訳でホールに入ったのだが………完璧に黄金劇場

ドムス・アウレア

です、ありがとうございました

 

なんかもうここまで来ると黄金律が気持ち悪くなってくる。

爺から聞いた話だが俺が生まれた直後から一つも事業が失敗してないらしいし……ギル様半端ねぇ

 

「あ、ケントさん」

 

「おおカリムさん、呼ばれてたんだ」

 

キョロキョロしてるとカリムを見つけた、周りには教会の騎士の様な方々がズラリ……威厳あるなぁ………

 

「わざわざゴメンね、教会からここまで決して近くない道のりなのに……」

 

「いえ、それにしてもこの大ホール………ここまで素晴らしく、尚且つ美しい物を見たのは初めてです」

 

「ハハハ………」

 

カリムが目を輝かせてるが……女の子だなぁ……

やっぱり彼女もこういう物への憧れはあるのだろう。

 

てかシャッハはいないんだ……まあ彼女は『お偉いさん』という訳でも無いからな……という事は周りにいる騎士達はそれなりに権力を持った人のみ……だという事か……

 

 

少しカリムと話をしてたのだが……それからが大変だった

周りが俺の事を『コルテット』と認識するや我先にと挨拶してきた

 

やれ第何世界の首相やらやれ大会社何々の社長やらやれ管理局の将校やら……途中で見兼ねたのか爺がSPを動かして俺を非難させた

 

忘れていた、ここに集まっている人達の狙いは俺と面識を作る事、社長である両親とは絶対に会う事が出来ないので次期社長と期待される俺に気に入ってもらう事が目的

 

それに俺はまだ六歳、ちょっと甘やかしたり良い面をして近づけばそれだけで落ちる

 

はぁ、大人は大変だな…………

 

「お怪我はありませんか?」

 

「ありがとう爺、助かった」

 

周りが赤と金で囲まれた個室で休む、ホールには戻りたく無い

う~ん………上から下を見渡せる場所があったな、よく王様がコロシアムを見物する様な……

………カリムをそこに呼ぶか?

教会からしても俺とカリムが接点を持ってくれる事には万々歳だろうし

何しろ許嫁を決めるパーティーにカリムを出席させたんだ、もう狙っているとしか思えない

 

話を聞く限りは今日一日パーティーするらしいし………そんな中途中で『コルテット』である俺が欠席したら問題になるだろうし……

 

そういや明日から全面開放だったっけ?

入るだけでお金取るとか、抜け目無いなコルテット………

 

そう思ったら早速実行

カリムも素直にホールを気に入ってくれてるみたいだから俺以外は入れない様な場所を見せてみるなんて事もいい、

利益ばかり考えている大人に囲まれるよりは純粋な心を持った美少女と一緒にいたいし………

てかロッサは来てないのか?

まああいつの場合顔を合わせた事が無いからな……また会ってみたい

 

部屋から出てまあさっき説明した様な下を見渡せる場所に向かっていると………ん?

 

「あの………」

 

「はい、何でしょうか?」

 

敬礼をしながら答えてくれる局員

眼鏡をかけた優しそうな叔父さん…………なんか、どっかで見た事がある………

 

てか俺を見ても怖気づいてないな、大体の人間ならSPを連れたコルテットの人間に声かけられるなんて事ないのに……

 

少し目の前の叔父さんを見つめてみる………

あっ………

 

「だ、大丈夫です。

ご迷惑おかけしました」

 

「いえいえ、こちらこそ」

 

そう言って去って行く叔父さん……

 

あの人、どっかで見た事あると思ったらネットだ

何とかしてこの世界の情報を集めようとしていた時にネットで調べた………彼は

 

 

(足長おじさんじゃねーか)

 

そう、リリなのを代表する足長おじさん、曰く『グレアム提督』

確か過去にクロノの父親を闇の書と消滅してしまった事を今でも悔いてるんだったな、そんでもってはやてを永久凍結しようとした………

それが悪なのかはどうか分からないが……あの事件はかなり悲惨だったらしい……

これはネットの受け売りなのだが……あの時の闇の書によって募集された魔導師は数百を越える

その中には死んでしまった者や現役を引退した者……家族を養う事が出来なくなり落ちぶれた者や……魔力が再生する事が無く、そのショックで自殺した者

 

原作や二次創作の様にグレアムは完全な悪役ではない、いや、言い方は悪いが彼は《当然の事をしたまで》

不完全の悪役、それが彼、なのでこの件に関しては介入しない

恐らく、原作での終わり方が一番だろう

 

ん、また話が逸れた

まあ感嘆に纏めると《グレアムの目的は知ってるけど邪魔するつもりはないよ》って事、賛否両論だと思うが俺はこういうやり方で行きたいと思う。

 

 

「ケントさん!!」

 

「おっ、カリムさん」

 

カリムも来た事だし……少し探検でもするかね……

 



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皇帝特権

 

「くっ、はぁ!!」

 

「よい腕だ……だが、まだまだぁ!!」

 

訓練場に剣撃が鳴り響く

相手の振るう剣を避け、間合いに入って切りつけるが、また受け止められ斬りつけられ、受け流す………

何度この単純作業を繰り返しただろうか、額からは汗が滴り落ち、呼吸は荒い

 

「おらぁ!!」

 

「ぐっ!?」

 

力強い薙ぎ払いと共に俺の腕から得物が弾け飛ぶ、手の感覚も無くなって来た

 

「そこぉ!!」

 

「まだまだぁ!!」

 

後ろに弾け飛んだ様な体制をさらに後ろに反らす

目の前にあるのは地面、だが今の俺が当たる事はない

地面とキスをする前に片手を突き出し、そのまま………

 

「くらえぇ!!」

 

「おお!?」

 

後ろ蹴り、反撃されると思っていなかったのか相手が体を引き戻す

俺は体制を立て直し………そばに落ちていた俺の相棒、『デュランダル』を手に持つ

 

相手はガハハと笑っているが……俺にそんな余裕なんて無い

足元がふらつく、体力は底を尽きた

だが勝負は……まだ終わっていない

 

「魔力………収束!!」

 

「む?決めてくるか」

 

黄金の魔力が刀身に収束していく

自身の全魔力をつぎ込んだ……これで……決める!!

 

「こい!!正面から相手をしてやる!!」

 

「はああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

一気に相手との距離を詰める

時間が思いっきり引き伸ばされる

体が悲鳴を上げる

だけど………ここで止まる訳にはいかない!!

 

「エクス」

 

「こい!!」

 

「カリバァァァァァァ!!」

 

その瞬間、俺は意識を失った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっそ~、また勝てなかった!!」

 

「ガッハッハ!!最後は惜しかったの!!」

 

保健室のベッドの上で俺は声を上げる

 

その隣で豪快に笑っているのは俺の担任、あのイスカンダル似の先生だ

 

外からは蝉の大合唱、本格的な夏到来、と言ったところだろう

 

大ホールが創設されてから二ヶ月、魔法と言う物に触れて二ヶ月とも言ってもよい

その間は……特に何もなかった

普通に学校行って周りからの視線が半端無くて家でパーティーして……ぶっちゃけただの日常が続いたと思ってくれたらいい

 

ああ、一つ言うならば俺のデバイス、『デュランダル』が完成した事だ

こいつ、AIがないストレージデバイスだが性能が半端ない………何処がって?

う~ん………まあとにかく他とは一線超えているとだけ言っておく

 

そんな訳で本格的な魔法練習をスタートさせたんだけど………その時に二つの事が発覚した

一つは嬉しい報告で一つは萎える報告なんだが………まあ先ずは嬉しい報告からにしよう

 

なんと、俺に『レアスキル』が見つかったんだ!!

黄金律やセイバーチートやらまだ説明してない特典とは別の『俺が持つスキル』

内容は性質変化『風』

最初はホントに嬉しかったよ!!なんせアーサーの『風王結界』を使えると思うと胸が膨らんだ

まだ自力では刀身を隠したり出来ないんだけど……『皇帝特権』を使ったら出来た

てか先生曰く「風の性質変化で刀身を隠すなど普通不可能」だと言う事

 

あともう一つの報告が…………俺に『砲撃』の適性がなかった事

もう号泣したよ!!エクスカリバーやらカリバーンやらのチートが無い以上砲撃魔法で代用しようとしてた俺にとってこれは死活問題だった!!

『皇帝特権』を使って試して見てもなんと不可能!!どんだけ適性無いんだ俺!!

そんな訳で俺は『エクスカリバー』と言う名前の『斬撃』を使っている

まああれだ、ニートサムライが言ってた様な「近づいて斬れ」

魔力をデュランダルに収束して………そのまま叩き切る

原作者で例えるならばディバインバスター、あれって撃ち出す前に必ず魔力を収束して丸い塊が出来るよね?あれを振り回す様なもん

 

ごっつい危険だよ、放出してない分威力は増すけど相手との距離を詰めないといけないし下手すれば魔力が逆流してバーン

まあそこも『皇帝特権』でカバーしてる

赤セイバーさんマジチート

 

ん、話を戻そう

 

さっき俺がしてたのは教師との全力全開での模擬戦

相手は担任、本当は同じクラスの奴とペアになるのだが生憎、俺に友達はいないし最悪の事態を想定すると誰もペアになろうとはしない

 

最初は魔法学の先生が軽く手合わせするぐらいだったのだが………一瞬で終わってしまった

 

なので担任、こいつ、元教会騎士団の隊長を務めていたらしく陸戦SS

今は現役を退いたが今でも一騎当千の実力を持ってるらしい………これは俺の推測なんだが……わざと担任をこいつにしたのだと思う

俺が学校にいる間の護衛にこれ程適正な人材はいないだろう

 

そんでもって担任と手合わせしたのだが………一回も勝てた事がない

皇帝特権を使っても……だ……

 

何度か模擬戦をしていく内に俺は無敵に思える皇帝特権の弱点を見つけた………

 

それは……俺自身だ………

 

いくら皇帝特権を使って『一流』になったとしても剣を振るっているのは自分

いくら技術があったとしても体が……『頭』がついていかないのだ………

 

例えるならば意識はあるのに体が勝手に動いている様な感じ、当たり前だ、俺の頭では、俺の経験では『一流』の動きなんて出来ないのだから

 

そして体、まだ幼いなんて物じゃない、圧倒的に体力が足りない

この体が技術についていけていない、剣を振るおうとしても力の調整が全く出来ない、相手よりも早くに反応したつもりでも体がそれに追いつかない

 

皇帝特権で体力を増幅させてみたが……スキルが解けた後が酷かった

体が悲鳴を上げ、引きちぎられるなんて物じゃない、その日から俺は一週間も眠っていたらしい

当たり前の様にコルテット家の大騒動となり、ニュースでも大きく取り上げられてしまった

 

さっき言った頭についても試してみたんだが……これは体以上に酷かった……いや、『怖かった』と言うべきだろう

確かに戦闘面では異常なまでの成長をみせた、だがそれは《俺ではない》

戦闘慣れした……全く別の俺が出来上がってしまった

俺であって俺で無い、まるで体を乗っ取られたかの様な感覚

もし皇帝特権が延々と続く能力だったら……と思うと寒気がする

 

それにまだ弱点はある、皇帝特権とはそれを《本人が主張する事で短時間だけ身につける事が出来るスキル》

すなわち、《主張してなければただの俺》なのだ

なので俺は、最優のスペックを持っているのにも関わらず『暗殺者』には勝てる気が毛程もしない

 

まあ長々と話してしまったがこれがこの二ヶ月と言っておこう

 

………こうしてみると結構イベントあったんだな……

 

「むう、立てるか?」

 

「あ、はい」

 

てか今思ったんだがこいつ、イスカンダルってライダーだったよな?

近戦の一対一でセイバーがライダーに負けるとか………本物に出会ったら根性叩き直されそうだな………

 

あと疑問に思った人もいるかもしれないが俺が気絶するのは担任と模擬戦し始めてから結構ザラだ

 

最初は大騒動になったのだが……皇帝特権で交渉力を限界まで上げて乗り切った

 

この担任、原作ライダーみたいな破天荒な性格で俺をコルテットとして特別視しない

 

そんな人物は今まで始めて、今では良き相談相手でもあり俺の師、コルテットなんかに潰されてたまるか

 

ん、そういえば…………

 

「最後、気絶したんで覚えてないんですけど……俺ってどうやって負けたんですか?」

 

「ん、ああ、それのう」

 

ニヤニヤしながら話始める担任……うぜぇ

 

「簡単な事よ、避けた、ただそれだけだ」

 

「ああ、それで魔力切れ起こして……」

 

「だかのう」

 

「?」

 

だが?なんなんだ一体?

 

「お前さん、魔力でブーストかけて突っ込んで来たじゃろう?」

 

「はい、それが?」

 

確かに、俺の偽エクスカリバーは一回しか振る事が出来ない、なので避けられない様に体にブーストかけて突っ込んだんだが……それがどうした?

 

「むぅ、その後の事を考えてなかったのよ

お前さん、気絶したまま勢いを殺しきれずに転がってな」

 

「転がって?」

 

「模擬戦を見に来ていたカリム生徒のスカートの中にズボーンと」

 

「……………………。」

 

 

後で誠心誠意込めて謝ろうと誓った俺であった

 

 



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過去へ

 

「さて、何処だよここ」

 

手を顎に乗せながら考えてみる

耳元からは風がビュウビュウとなびいている音が聞こえてくるが………聞き間違いだろ、きっと………

 

「あ~、綺麗だな~、てか寒いな~」

 

着ている制服がなびく、小さくクシャミをする

目の前に広がっているのは綺麗な夜景、そして俺がいるのは……空………

 

「うん……ってえぇぇぇぇぇぇ!?」

 

なんでなんでなんで!?

なにこの状況!?なんで俺パラシュート無しパラグライダーやってんの!?

このまま行くとザクロになる自信あんだけど!?グチュッていくよ!グチュッて!!

 

「と、取り敢えず飛行魔法………ってまだ俺練習した事無いんだった!!」

 

どうするどうする!!

そう焦ってる間にも地面は迫ってくる、あと数十秒で血の海の完成だ!!

くそっ、考えろ考えろ考えろ………っそうだ!!

 

「いっけぇぇぇぇぇぇ!!」

 

『皇帝特権』によって全くした事がない『飛行』を行う

間に……会え………

 

「っく、はぁはぁはぁ………」

 

地面からほんの数十メートルの距離で落下

速度が0になる………危なかった、冗談無しに死んでた…………

 

俺が降り立ったのは何処かの公園、ちょうどいいのでベンチで休まして貰う……さて……

 

「なんでさ」

 

エミヤお決まりの発言

さっきまでの事を軽く振り返る……

 

時期は七月の終盤、もうすぐ夏休み、といった時期

俺はいつも通りの学校を終えて………爺達の迎えで家に帰ったはずなんだ………

そんでもって自分の部屋でゴロゴロしてたらなんか『歪み?』みたいなのを見つけて……触れた瞬間バーンと………

好き好んで飛び降りていた訳じゃ無いんだ、二度も死んでたまるかっつーの

 

今の俺の格好は《Stヒルデ魔法学園》の制服、持ち物は『デュランダル』、のみ

てか寒い、服が夏服なので無茶苦茶寒い、ここはミッドじゃ無いのか?

となると……何処だ?

 

「うう、デュランダル、コルテットと連絡は取れるか?」

 

泣けなしに聞いて見たが答えは『NO』

どうやらミッドまで通信が出来ないのだそうだ、となると……管理外世界か?

 

「とにかく……先ずはどっかに入るか」

 

いつまでも半袖はキツイ、見たところ文化のある世界なのだから餓え死にしたりしないだろう………ん?

 

「なんだこれ?」

 

ベンチの下に何やら頑丈な鍵が掛かったトランクケースを見つけた

もしかしたらこの世界についての情報が得られるかもしれない、と思いデュランダルに安全かどうか確認させた後、皇帝特権を使って錠を解除する

…………これは……

 

そこから出て来たのは昔憧れた人物

転生してからもう会えないと確信していた人がそこにいた………何百、何千人も……

 

「福沢さん………だと……」

 

そこに入っていたのは左上に10000と書かれた紙の束

右に書かれているのは見間違える事はない、福沢さんその人………

てか今まで、こんな方法で世界を調べた転生者なんているのだろうか?

 

「地球………だと………」

 

ちゃんと『日本銀行』って書いてありました

 

 

 

 

 

 

「さて、そんなイベントあったか?」

 

ユニクロでぶ厚目のジャケットを買って羽織る

ここが地球だと分かったのはいいが………先ずは原因を解明しないといけない

原作知識だとこんなイベント……無かった様な気がするのだが……

だってまだ俺六歳だぞ?と言う事は原作組も六歳、なのははまだ魔法に触れていない時期だ

 

「とにかく腹ごしらえ……ってか?

学校から帰って来て何も食べてねぇし……」

 

幸い金はある、さっきのトランクケースから何枚か拝借させて貰った

あれだけあんだ、何枚か貰ってもばれないだろ

てか公園で福沢さんを大量に見るなんてあれだろ?……考えられるのは『密売』

普通持ってこねぇだろ?てか今更ながら黄金律パネェ

 

どうして俺が地球にいるのかは分からないが久しぶりの里帰り、原作に関わるのもいいがそうなると爺達が心配するので先ずは帰る方法を見つけよう

 

まあ少し遊ばしてもらうけどな、まあ今は日にちと時間の確認をしたい……コンビニで食べ物と新聞でも買うか?

久しぶりのコンビニなんだ、この六年間食べる事がなかったジャンクフードも食べてみたい

 

っと、その時………

 

「結界?誰だよ」

 

周りの人が消える

まあ薄々気づいてはいたさ?デュランダルがこの街で巨大な魔力反応を感知してたし

でも関わりたくないな~て、まだ俺魔法覚えて幼いし………久々の地球を満喫したかったって言うのもあるし

 

「あの、そこの人」

 

「ん?」

 

後ろから声をかけられる

小さい女の子の声……ん?

 

「嘘だろ?」

 

「ふぇ?」

 

目の前にいるのは?

 

1 魔王

2 魔王

3 魔王

4 魔王

 

………一択しかない

え?可笑しいよね?

俺今六歳、初等科一年生

原作組、魔法に触れたの三年生……ん?

 

「現地の方……ではないですよね?

あの、時空管理局屈託魔導師の『高町 なのは』です。

あの、どちらから来たのか教えてくれませんか?」

 

「えっと……ミッドチルダから……」

 

「ミッドから?

あの、もしよかったら渡航許可証を見せて頂きますか?

あと名前と、年齢も……」

 

「えっと……ケント・コルテットです」

 

言われるがままに答えてしまったが……良かったのか?

てかもう原作始まってたのか?いや、あり得ん

ネットで毎日情報を集めていたつもりだし……原作開始はあと二年後だろ!?

てかなにこのテンプレ!?このありがちな展開!?

 

ん?二年後………海鳴……次元転移……あっ………

 

「あの、お話を「デュランダル!!セットアップ!!」えっ、ちょっと!!」

 

バリアジャケットに着込んで速攻でその場を離脱する

この世界……GODの世界じゃねーのか!?

 

GODを知らない!?あれだあれ、ゲーム化第二弾の!!

確かあれ異次元からの渡航者とか言ってたよね!?それでヴィヴィオやアインハルトやトーマやリリィが飛ばされて来たんだよね!?

 

あいつらが未来からだったから安心しちまってた!?過去からでもありなのかよ!?

 

てかなんで俺が飛ばされて来てんだ!?

もっと的確な奴いるんじゃねーのかよ!?

 

それにフルネーム喋っちまった~、ぜってーミッド組は俺の事知ってるよ!!

不味いよ!!これでもし『コルテット家』にこの事伝わったら大惨事だよ!!この時代の俺に壮絶な迷惑かけちまうよ!!

 

てな訳で逃げる!!飛ばされ組も《未来の人間関係が過去の人間にどうたらこうたら》とか言ってたし!!

 

「まっ、待って下さい!!」

 

「えっ?ちょっ!?砲撃!!」

 

ピンク色の本流が俺の横を通り過ぎる

what?貴方俺を殺す気?

あれ当たったら「やりすぎちゃった」じゃ済まされねーだろ!!

 

「あ、やっと止まってくれた」

 

「いやいやいやいや!!止まらないと死ぬだろ普通!!君どんどん砲撃撃ってくんだろ!!」

 

「えっ?大丈夫ですよ?ちゃんと非殺傷設定ですし………」

 

「そういう問題じゃないと思う」

 

この子、非殺傷なんだったら何でもぶっ放していいって思ってやがる……トラウマだわんなもん当たったら

 

「あの、お話を聞かせて下さい!!」

 

「俗に言うO☆HA★NA☆SIですか、原作キャラと会えて嬉しいんですが……それをされて帰って来た人はいないんでね!!」

 

「にゃっ!?字が可笑しいと思うの!!」

 

どうせ慣れない飛行で逃げても後ろから砲撃ぶちかまされるだけなのだ

それだったら……軽い一発を入れて直ぐに離脱する!!

 

デュランダルを構える、向こうもそれを察したのかレイさんを構える

なんか「私が勝ったら、お話聞かせて」とか言ってるが……やめてくれ、身震いする

 

ダッと駆け出す、勝負は……一瞬!!

 

「レイジングハート!!」

 

魔王がそう言うと出るわ出るわ、ピンク色のスフィアがこれでもかと言うぐらい

まあかと言って……当たるつもりは無いんだけど……

 

「ええぇぇぇ!?」

 

俺が全てを除けた事によって魔王が驚きの声を上げる

セイバーの直感舐めんなよ

魔王が砲撃の準備にかかるが……遅い!!

 

「インビジブル……エア!!」

 

風の性質変化を使って最大までにスピードを上げる

砲撃が間に合わないと悟ったのかシールドを張る魔王、だけどな………

 

「また今度!!」

 

「え?えええぇぇぇぇぇぇ!?」

 

俺は魔王の横を通り過ぎて逃走する

魔王は何か驚いているご様子……まあ、かなり間が開いたので後は簡単に逃走出来るだろう

捕まって『コルテット』に強制連行なんてシャレにならんぞ………

 

「ん?あれって……確か……」

 

ブラブラ空を飛んでたらビルの屋上に二つの影が………彼女達も時間を超えて来てるんだし……一緒に行動して損はない……かな?

 



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反面教師

 

「クリス~、まだ検索中?」

 

「(コクコク)」

 

「うう、夢なら覚めて欲しいのですが……なかなか覚めません」

 

「やはり……現実を戦わないといけません……」

 

「そうだな……現実逃避はよくない

ああ、久しぶりのマックポテト……うめぇ」

 

「あ、私も貰っていいですか?昨日の夜から何も食べて無くて」

 

そう言って手に持つポテトに手を伸ばす少女だが………直ぐに動きが止まる

その隣にいた少女も信じられない様な、困惑した様な顔をしているが……それは直ぐに……

 

「え……」

 

「?」

 

「「えええええぇぇぇぇぇぇ!!?」」

 

 

絶叫に変わった………

 

 

 

 

 

 

「い、何時の間にここにいたんですか!?全く気づかなかったんですけど!?」

 

「気付いたら逆に怖い、気配遮断のスキルを主張してたし……」

 

「け、気配遮断?」

 

「そうそう、そうした方が面白そうだし」

 

あ~ポテトうめぇ、毎日毎日高級料理ばっかだから久しぶりなんだよな~

 

「あとお前らの分も買っといたから、食べないと大きくならないぞ」

 

「あ、ありがとうございます……って違います!?」

 

ノリツッコミで返してくれる未来の覇王っ子、今考えると俺より年上なんだよな……中等部の一年生だし……

 

「え?Stヒルデ魔法学園の制服?」

 

「そうそう、俺も君らと同じ」

 

俺の制服を見て質問してくる聖王様、てか何この可愛い子達、ロリじゃ無いと言い切りたいけどリアルじゃ半端ない程可愛いじゃん

 

「私達と同じ………と言う事は貴方も未来から?」

 

「そうそう、俺の場合は過去からだけどね

『ケント・コルテット』って、聞いたことない?」

 

「え?」

 

俺の自己紹介を聞いて口をパクパクさせる聖王様、まあ確かに『コルテット』が目の前にいたら驚くと思うけどさ……なんでそんな信じられない様な顔してんだ?

 

「う……そ………ケント……さん?」

 

「ケントさんって……オフトレに来てた人ですか?」

 

「まて、今とてつもない事が聞こえた気がするんだが……オフトレ?」

 

「あっ、はい、ヴィヴィオさんのお母様方と行ったオフトレに………って何泣いてるんですか!?」

 

うるさい!!これが泣かずにいられるか!!

オフトレだぞオフトレ!!

あのvivid2巻の目玉であるお風呂シーンが大公開されたオフトレ編だぞ!?

それに……それに俺みたいな奴が原作介入で来てるなんて……やったな未来の俺!!生きる希望が見えて来たよ!!

 

「えっ!?ケントさん、今何歳ですか!?」

 

「グスッ、六ざい」

 

「私よりも四つ年下………って事は私達から数えて十年以上前のケントさん!?」

 

ああ、未来の俺よ、どんな方法を使ったのかは知らねぇがよくやった、ヴィヴィオに覚えられてくれてるとか………嬉しくて涙が止らねぇよ………

 

「ケントさんも私達と同じ様に……時間を超えて?」

 

「ぞうらじい………グスッ、帰る方法みづげる為に色々飛びまわっでだら魔力反応見つげで……」

 

「ああ、泣かないで下さい、えっと……はい、ハンカチ」

 

「ありがどう」

 

覇王っ子、俗に言うアインハルトからハンカチを渡されて涙をふく

我ながら恥ずかしい姿を見せたが……それ程までに嬉しかったのだ

だってオフトレに行ってるって事は原作キャラ達と少なからず交流はあるってことだぜ?

友達0で原作介入を諦めてた俺からするとこんなに嬉しい事はない

 

「えっと、ケントさんは今回の事について何か知ってますか?私達と同じ転移をして来た人が見つかれば何か分かるかなと思ったんですけど………」

 

「うぅ、ごめん、分からない」

 

いや、ぶっちゃけ知ってんだけどね?

真実とか原因とかの話以前に『原作知識』って言う最強のチートで………

でも……まだ言う訳にはいかないよな~

ん?

 

「誰か来る……反応は……3?」

 

「えっ?そんな反応はないですが……」

 

「デュランダルの性能は俺でも意味不明だからな、十年以上先のデバイスより高性能とか………」

 

「あっ、こちらも捉えました、三つともに挟撃体制」

 

「ママ達?それとも………」

 

「それはわからないけど……まあ挟撃体制って事は話してどうにかなる奴らじゃないって事じゃないのか?」

 

確かここで出て来るのは…。アインハルトとヴィヴィオの偽物だった筈……やっぱりゲームだから知識が少ない、殆どのストーリー覚えてねぇよ………

ん?三人……俺か………

 

「とにかく地上では危険です、一度セットアップして上空に上がりましょう」

 

「了解」

 

ポテト食ってからでもいいかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰の許しを得て俺を見ている?狂犬」

 

「俺かよ、てか何気に性格がギル化してねぇか?

セイバーの容姿でギル様になられたら違和感がやばいんだが………」

 

目の前にいるのは俺………のちょっと濃くしたバージョン

てかバリアジャケットォ………俺はZEROの黒スーツなんだけど金はないだろ金は……

金スーツってなんぞ?

 

「どういう風に育ったらそうなるんだ?

………俺のようにか?」

 

「黙れ狂犬、天に崇める筈の俺をいつまで見ている

その行いは万死に値するぞ」

 

手に持った『金色の』デュランダルを振り回す俺……じゃなくて相手

あれか?俺が友達いなくてグレたらあんな風になるのか?

てかここはセイバーオルタが来るべきだろ……てか俺のアホ毛を引っ張ったら黒化すんのかな?

……試してみたいけど……やめとこ……

黒歴史作ってしまいそうで怖い

 

「お前には俺自らが裁きを下してやろう、死ねぇ!!」

 

「はぁ……」

 

デュランダルを構える、なんかなぁ……自分を斬るとなると複雑な気持ち……

前世でゲームしててもなんか偽物が最後可哀想に見えて来るんだよね、この世に未練タラタラだし……

それに目の前のこいつ………

 

「皇帝特権使えてねぇじゃん」

 

「ガッ、ハッ!!」

 

皇帝特権を使って剣技やらなんやらを一流だと言い張ってみたんだけど……素人丸出し

どうやらこいつ、皇帝特権未使用時の俺をコピーした偽物らしいな、まあ納得、直感があったとしても体がそれに追いつかないと意味無いし

 

「ぐっ、この俺に……傷を負わせただとぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「当たり前だろ、スキルなかったらただの六歳児なんだし……」

 

「うるさいうるさいうるさい!!

この傷の代償!!もはやお前一人の命では償えんぞ!!」

 

「いや、だから………」

 

また軽くズバンと返す

目の前の俺は信じられないという顔で一人驚愕してるが………俺って少し間違えたらこんな性格になってたんだな……

つう訳で

 

「ストライク………」

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「エア!!」

 

単純に突進してくる俺を『(偽)風王鉄槌

ストライクエア

』で薙ぎ払う

なんで偽なのかって?だってこれただの風の性質変化だもん

 

「あ………あ…………」

 

「はぁ、反面教師だな……こうならない為努力しよ………」

 

「あああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

なんか絶叫をあげて消えて行く俺

さて、向こうも終わったみたいですし……合流しますか

 



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リア充野郎

 

「なあなあ、お互いを確かめる為に殴り合うってどうなんだ?」

 

「拳を重ね合う事で相手の事を理解出来ます。何も問題はないと思うのですが……」

 

「なにそれ怖い」

 

空を見ながら隣の覇王っ子に尋ねて見たらこれまたバトルジャンキーな答えが帰ってきた

今更ながらこの世界ってみんなこうなのか?

 

「はあぁぁぁぁ!!」

 

「はあぁぁぁぁ!!」

 

上空では二人の影

一人は聖王様で、もう一人がリア充

切っても切れない縁でしたね、わかります

 

『ピピー!!勝者、トーマ』

 

「あーん、DASSルールでトーマに負けた~」

 

いや知らんし、てかお前らなんでお互いを確かめる為に平気な顔して殴り合ってんだよ

てか不幸少年、いくら非破壊設定?だとしてもお前の武器怖すぎる

てか実物を見るとホント、悪役にしか見えねぇよな……あれが主人公でいいのか?

 

あっ、これじゃ分からないよな

 

あれからの事を簡単に説明すると……まず合流、やっぱりヴィヴィオの所には覇王っ子の偽物が、アインハルトの所には聖王様の偽物が現れたらしい

そんでもって一人なのに二つの反応がある誰かが近づいて来て……それをヴィヴィオが確認に………

で、現れたのは見るからに怪しい格好をした四期もう一人の主人公、全身タトゥーは無いって……年頃の女の子には刺激が強すぎんだろ

んで、リア充野郎はヴィヴィオを知っているらしいがヴィヴィオはリア充を知らない、と言う訳でリア充はヴィヴィオを偽物だと認識、それを確かめる為に何故か殴り合い………お前ら怖いよ………

あ、降りて来た……

 

 

 

 

んで、今覇王っ子のデバイスのティオがいかにも『厨二全開』な本をカジカジしてる、俺は無視、だってさっきからまた頭痛が……地味に痛い……

 

「っと、デバイスとうちの本が仲良くしている間に真面目な話をしよう」

 

「うん」

 

「状況をまとめると、俺たちはそれぞれ別の時間軸からやってきた」

 

「繋がってる時間だけど、私とアインハルトさんは新暦79年から」

 

「私とトーマは、新暦82年から」

 

「そこで頭を抱えてるケントさんは、新暦63年から……」

 

「大分……ズレてますね……」

 

『現在の時間軸……新暦66年』

 

「13年前……」

 

「私達からすると、16年前」

 

「うう、痛ぇ………俺は3年後だけどな……」

 

「ヴィヴィオはまだ、俺とは直接あった事がなくて……」

 

「うん。スバルさんといる時に、通信で話しただけ。」

 

「3年前なら……私とも会ってないよね……まだトーマとも会ってない頃だし」

 

「………ええと……」

 

「あ、ごめんね、アインハルト」

 

「ケントさんなんか……まだ八神部隊長とも会ってないんじゃ……」

 

「ん?俺と面識あんのか?」

 

「あ、はい、特務六課で………って何頭を壁に打ち付けてんですか!!」

 

「いや……この喜びを体で表現しようと思ってね……」

 

「えっと……すみません、アインハルトさん、トーマについて説明します……

トーマはスバルさんの弟みたいな子で、私は通信でちょっと話した事があって」

 

「戦闘中はあんなナリになっちゃうけど……別に怪しいもんじゃないっていう」

 

「嘘つけ、幼女にいきなり斬りかかる奴が普通な訳ねーだろ」

 

「うっ、それは……」

 

リア充が気まずそうな顔をする、まあ普通に考えてありえねぇよな………信憑性も殆ど無いし……

 

「で、三人はまだ知らないと思うけど、私は……あれ?」

 

「「?」」

 

なんか目の前でコソコソと話始める二人、爆発しやがれ

 

「えと、私はトーマとはちょっと切っても切れない繋がりがあって……それで、いつも一緒にいる間柄で……」

 

「リリィ、その言い方は誤解を招くかもしれない」

 

「お嫁さんですね、わかります」

 

「ケ、ケントさん!!

その、リリィは大事な友達でコンビのパートナー。

これでオーケー」

 

「了解、つまりリア充爆発しろですね」

 

「性格は昔っからなんですね!?」

 

リア充が講義の声をあげてくるが………世の中のリア充は消え去る定めなのだよ!!

俺?確かに容姿はいいと思うけどリア充じゃないぞ、友達さえいないのに彼女とか無理じゃね?

 

「えっと……はい、なんとなくわかりました」

 

「と、ともかく俺たちはそれぞれの時間軸から急に飛ばされてきた、なんとかして元の時間に帰りたい」

 

「その為の方法を、あの子が……」

 

『にゃーん』

 

『猫型端末の起毛、ページ間に侵入。

自動除去します』

 

「銀十字が調べてくれてる」

 

やべ、ティオ……だったか?

むっちゃ可愛いわ、お持ち帰りオーケーかな……

やべ、さっき買ったビックマックが冷めてる………

 

「銀十字、噛み心地がいいのかな………それともおいしい?」

 

デバイスって飯食うのか?

デュランダルに聞いて見ても相変わらずの無言……爺に今度無理言ってAIつけて貰おうか……

 

「ていうか……ケントさんにもこんな時期があったんですね……」

 

「そりゃあるさ、俺はお前の事知らねーけど……」

 

「うう、やっぱり昔から強かったのかな………」

 

リア充が乾いた笑を浮かべる

あ~、やっぱり歳月は人を強くすんのかな~

皇帝特権とか使いこなせばこれ以上ないチートだし……最後の特典なんか歩くロストロギア認定だってされてもおかしくないし……

 

「その、私達も未来に戻る方法を調べていました」

 

「私達以外に、同じ様に未来から来た人達がいる筈なの。

その人達が見つかれば……」

 

「そいつが、時間移動なんてトラブルを起こした張本人かも、って?」

 

リア充が顎に手を乗せ考えているとデュランダルが何かの転移反応を察知する

他の三機も気づいた様子……

 

『転送反応確認、脅威判定八体』

 

「8!?」

 

(一個多くないか?

………俺が来たせいで原作と、離れ出した……か………)

 

『捜索対象発見、西側20km』

 

「多分……これがトラブルの張本人!!」

 

「で、どうする?捕まえて縛り上げる?」

 

「そ、そんな事しませんよ!!

ただ少し話を聞きたいなと……」

 

「またO☆HA★NA☆SIですか、わかります」

 

「…………い、行きましょう、その人のところへ」

 

「でも脅威判定八体って、コレ追っ手だよね?」

 

「なのはさん達かもしれないけど……八神司令が来ませんように、来ませんように」

 

はやてってトーマに何かトラウマになる事してたか?

まあ……原作で性格を知ってる俺からすれば何とも言えないけど……おっぱい魔人だし…

 

「追っ手に足止めされてたら、取り逃がしちゃうかもしれない

大事にならない程度に切り抜けて、あとでちゃんと謝ろう」

 

(………俺の相手、シグナムとか言わねぇよな………いくらセイバースペックでも本職に勝てる気はしねぇぞ……)

 

 

取り合えず……ここは流れに任せますか……

 



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この戦い、我々の…etc

 

「くっ、ちょこまかと!!」

 

「ぐおっ!?またバインド!?

直感があるから回避出来てるけど……近づけねぇ!!」

 

デュランダルを構えながら目の前の少年を睨む……

さっきから近づく事が出来ない……砲撃系の魔法が使えたらまだしも……それが出来ない俺は近づく事が出来ないのは致命的だ

 

「ブレイズキャノン!!」

 

「くっ………くそっ!!」

 

右に避けるが……その直前、脳裏に『捕まる未来』が映像として流れる

上半身を思いっきりくねらして設置されていたバインドを回避、だが、回避した場所に的確に放たれるスナイプ、それをデュランダルで全て撃ち落とす

 

まるで………

 

「俺の戦闘法、よく知ってやがる!!」

 

「ケント!!なんでこんな場所にいるのかは知らないがとにかく話を聞いてくれないか!!

君が負傷すれば本局にとってもコルテットにとってもマイナス思考にしかならない筈だ!!」

 

「あいにくだけど執務官!!あんたが俺の事を知っていても、俺はあんたの事知らないんでね!!

 

「くっ!!どうしてだ!!」

 

俺が対峙しているのはオリ主達に『KY』と罵倒され、大体ストレス発散やハーレム作りの生贄とされるクロノ執務官

どうやら九歳の俺はカリム繋がりでクロノと面識があるらしい………てか彼曰く『友達』………………やったな未来の俺!!

今日は赤飯炊いてやる!!

 

俺的にクロノは好きなんだよね、いや、性的な意味じゃなくて、キャラとしてクロノは好きだ

性的な意味での好きだったらヤバイ、容姿がセイバーのせいで違和感がないのが悔しい……

 

なんでクロノと戦ってるって?

あれから俺達は別々に目的の場所に目指しているんだが……俺の前に現れたのはシグナムではなくクロノだったって訳だ

管理局への投降を呼びかけられたのだが……一応アインハルトの案に沿って時間移動の原因とも当たる人物に接触する

俺がいるせいで原作と少し離れ始めてるんだ……これ以上俺が介入すればどうなるか分かったもんじゃない

BAD ENDとか嫌だぞ俺……てか下手したらこの事件、主要キャラ全滅の可能性だってあるからな………

 

まあそのせいで今かなり苦労してるんだが……どうやらクロノ、未来の俺と何度か模擬戦をした事がある様だ

そのせいでクロノに近づけない、ストライクエアを使おうと思ってもスティンガーで牽制されてしまう

 

それに俺……防御魔法まだ覚えてないんだよね………

皇帝特権で使えると思うけど今でさえ飛行魔法の習得や剣技、その他諸々に重ねがけしてる状態だ

これ以上重ねて他に支障が出たらシャレにならない、特に飛行魔法

 

その為俺は相手の攻撃を避けるか斬って破壊するか………それに進行方向にはいくつもの設置型バインドがある為に上手く近づく事が出来ない

 

それにクロノ、さっきから全く大型魔法を放ってこない……牽制ばっかり

まあ……当たり前だわな…俺体力ねーし

ぶっちゃけ今でもかなり息が上がってるし……

 

「あーもう!!またバインドかよ!!」

 

「くっ、やはり当たらないか……」

 

クロノが遠くで舌打ちをする

バインドはクロノの代名詞だからな……チッ、またスティンガー!!

 

「このままじゃラチがあかねぇ……一気に決めるか?」

 

大量に迫りくるスティンガーを紙一重で全て避ける、クロノは……また距離を取ったか……

あいつ、この時期だったら空戦AAA+だったか?

そんなのをまだ魔法に触れて数ヶ月の甘ちゃんに当てるなんて管理局マジキチ……

 

ただ……このままじゃ防戦一方の硬直状態、いつかは俺の体力が切れて負けちまう……危険承知で……動くか?

 

(確かクロノは漫画の方でフェイトに勝利していた……その時は……保険の為に後ろに設置型バインドを仕掛けていたよな……なら、真っ正面から当たるしかねーか……)

 

考えれば考える程スキがない奴だ、ベルカの騎士とかじゃ戦いにくいだろうな……そんな話はどうでもいいか……

いま必要なのは………

 

(速さ……かな…)

 

クロノが視覚出来ない程の速さが必要だ、ストライクエアなどの使う前にタイムラグがある様なスピードじゃなくて、もっと一瞬の……最速を……

 

デュランダルに魔力を溜める……その瞬間、俺の動きが止まった事をクロノは見逃す奴じゃない

すぐに俺に向かって青のバインドが襲いかかる……だがまだだ、もっと……引き付ける……

 

そして……

 

「はあ!!」

 

「なっ!?」

 

クロノが目を見開く、そりゃそうだ、今の俺は『最速』

自身の剣をまるで『槍』の様に持ち突進する

途中でクロノが張っていたバインドが次々と発動機するが……全て俺を捉えきれずに不発に終わる

 

「槍バージョン!!(偽)!!エクス……」

 

「くっ!!デュランダル!!」

 

「カリバァァァァァ!!」

 

俺が放った近距離専用のエクスカリバーとクロノのプロテクションが激突する

振りかぶっていない分威力は下がっているが……即席のプロテクションを破るのは十分

パキパキとバリアにヒビが入る、クロノの額に汗が滲む……

 

この戦い、我々の勝利だ!!

 

そう、遠坂のマネをしてしまったのが原因だろうか……一気に手に入っていた力が抜ける。

いや、この場合『支えを無くした』と表現した方が正しいのか?

 

「?、ケント?」

 

「おいおい、マジかよ」

 

飛行魔法が……切れやがった………

 

今俺がいるのはスカイツリーも目じゃない空中…………またスリル満点のパンジージャンプかよ、パラシュート無しの……

 

「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ケ、ケント!?」

 

ものすごい速さで落下していく俺!!

俺のうっかりですね、皇帝特権で手に入るスキルは短時間のみだったね!!

そう言えば昨日の夜からずっとかけっぱなしだったよね!!

逆に今まで長続きしたのは初めてだよ!!

 

「ちょっ!!ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!」

 

顔面から落ちてんだけど!?

むっちゃ走馬灯見えるんですけど!?

前世のおじいちゃんがこっちに手振ってるんだけど!?

 

「捕ま……れぇぇぇぇぇ!!」

 

「ぐっ!!」

 

クロノが必死に追いかけてくるが……あいつ、魔力が切れてやがる……

最後の防御に全魔力を回した訳か………って……

 

「何呑気に考えてんだ俺!!」

 

「手を……のばせ!!」

 

「くっ!!」

 

あと数秒で地面に墜落してしまう、いくらバリアジャケットがあってもキツイものはキツイ……

あの高さから墜ちたら……ただではすまない………

 

「う……がっ……!!」

 

クロノの手が中を切る、もう、間に合わない

 

「おーーーーー」

 

「なっ!?」

 

「りゃーーーーーーーーー!!」

 

バシッと横から強い衝撃

反射的に目をつぶる……抱きしめられてる?

 

「フゥー、間一髪やったな~

大丈夫か~」

 

「えっと……ありがと………」

 

目を開けるとそこには短髪の女の子

白の帽子を被っていて傍にはなんかかっこいい本

 

うん、あれだね………

 

「大丈夫かケント!?

………ん、背、縮んでないか?」

 

「うわっ、なんでケント君がこんなとこおるん!?」

 

俺を俗に言う『お姫様抱っこ』しながらこっちを覗き込んでくる彼女……ん?お姫様抱っこ?

 

 

 

 

 

逆じゃね?

 



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もう一人の僕!!

 

「いや、もういいって……そこの執務官に肩かしてもらうから………」

 

「そんなん駄目や、怪我人は大人しくしとき」

 

「いや、俺は怪我なんかしてないって…」

 

「じゃあ子供はお姉ちゃんに甘え、今だけやでこうして貰えるの」

 

ああ言ったらこう言う、こんにちは、ケントです

クロノに撃墜され、危機一髪のところを夜天さんに助けて貰いました

いや、助けて貰った事は感謝してるんだけどね……ずっとお姫様抱っこはやめて、今頃俺顔真っ赤だから

いくらなんでも男が女の子にお姫様抱っこして貰うって……恥ずかしい事ない………

 

「それにしてもホンマ可愛いな~、男の子でも女の子でもいけるやん」

 

「ちょっ、ほっぺたクリクリしないで下さい!!」

 

「はやて………そろそろいいか?」

 

「はやてちゃん、なんだか可笑しいの……」

 

そんでもって周りは俺をずっと見てくるし………おいリア充、笑い堪えるのやめろ

 

あれからはやてにお姫様抱っこされながら連行された俺………いくら皇帝特権でもそう何度も連続して出来る訳ないから飛行魔法が出来ない俺はなされるがまま………

 

一応二人には事情を話した、俺は約三年前から時間移動させられて来た過去の『ケント・コルテット』だと言う事

そんでもってその原因に当たる人物が近くにいるので探していたと言う事

 

大きく分けたらこの二つだな、クロノは一人納得していたしはやては俺でずっと遊んでいる

うう……強く言い返したいけど可愛いから出来ない…………

 

まあ話しながら移動、時間移動の原因となったゲームオリジナルキャラのところに連れて行って貰うとそこにはさっき別れた三人の姿が………それからこの状況………

 

どうやら今すぐに元の時間に戻れないらしいな……なので俺たち時間移動組はアースラに搭乗する方向に決めた

 

なのだが…………

 

「ホンマに可愛いな~、こんな顔されたら女としての自信なくなってしまうわ~、今のケント君もいいけど六歳のケント君もいいな~、お持ち帰りしたいぐらいや」

 

「うー☆、うー☆」

 

喋れない………

 

「はやて、ケントは一応コルテットの一人息子なんだから………時間は違ってもあまり手荒な真似は……」

 

「いいやないか~、一人ぐらいお持ち帰りしてもバレへんって」

 

「いや、大問題だと思うが………」

 

………………プニプニしないで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「闇の欠片……砕け得ぬ闇………」

 

「そう、この事件が終わるまで帰れないの、それまで少しだけ待っててね」

 

アースラの一室でピンクの髪をした………お姉さん?から説明を受ける

ん~、まとめると闇の書の奥深くに眠っていたプログラムが起動してしまって、あまりにも強大な力を持っている為ほっとく事が出来ない……と……

名前はUーD………だったよな……前世ではゲームでかなり苦戦させられたもんだ……

そんでもってそのUーDが暴走する前にどうにかして止めたい、多分艦長のリンディさんからしたらアルカンシェルで終わらしたいところなんだろな……下手したら前線全滅の可能性もある訳だし………

 

それにUーD自体は破壊活動を望んでいない………難しい立ち回りだよな……艦長っていうのも……

 

「どうします……私としてはどうにかしてUーDを助けたいんですが………」

 

「私も賛成です、これも何かの縁、助けましょう。絶対」

 

「俺も賛成だ、俺もなのはさんやスゥちゃんに助けて貰ったからここにいる……今度は俺が助ける番だ!!」

 

「うん、頑張ろう、トーマ!!」

 

バッとこっちを向く四人……流れに……任せた方がいいよな?

 

「了解了解、やればいいんだろやれば」

 

「と、言う訳です、UーDの救出、私達も手伝います!!」

 

「ありがとう」

 

ピンクが頭を下げる……確か名前は……切嗣だったか?

いや、それじゃあキリしかあってない……

 

「あ~、ケント、少し来てくれないか?」

 

「おお執務官、どうした」

 

相変わらずのバリアジャケット姿で登場のクロノ、どうした?

 

「今の君と連絡が取れた、少し君と話がしたいらしい」

 

「………未来の……俺?」

 

なんか嫌な予感しかしない………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『マジかよ………』

 

「それはこっちが言いたい、マジかよ……」

 

画面越しで見つめ合う俺達

いや~、イケメンだね、自分で言うのもなんだがイケメンだね

 

『まさか俺がGODに介入してるとはな………原作に介入してなかった分こっちで介入してたか………』

 

「あ、やっぱり今回の事は記憶に無いんだ、まあ最後にはみんな記憶を消したからな……タイムパラドックス防ぐ為に………」

 

『いや、なんとな~く覚えてるぞ、夢みたいな感覚だけど………』

 

「そうなのか………てかそんな事より!!」

 

俺が叫んだ事に驚いたのか目の前の俺が少し引く

 

「はやてとクロノ、二人に面識があんだって!!やったな俺!!ついに友達ゲットじゃねーか!!」

 

『友達……か………そうだったらいいのにな………』

 

なぜか遠い目をする俺……ん?

 

『クロノもはやても……俺を友達だと見てくれてんのかな……管理局の回し者とかじゃ無いよな』

 

「管理局の……回し者?」

 

『ああ、この頃許嫁候補とかに管理局で将来が期待されてる奴とがが増えてきてな………それにコルテットの技術を盗もうとして俺に近づいてくる奴もいるし………はやてと喋ってたらカリムが不機嫌になるし……』

 

「カリムが不機嫌になる?それってフラグ立ってんじゃねーか?」

 

『は?お前も俺なら分かるだろ?

俺なんかに原作キャラを惚れさせる要素が何処にあんだ?

どいつもこいつも金目当ての駄女ばっかだよ………はやては比較的いい奴なんだけど……局に頼まれて俺に近づいているかのかどうなのか………

それにカリムは俺の見張りで教会のコマだしな………あんな綺麗な奴が俺と無理矢理結婚させられるなんて可哀想だ

教会の命令でイヤイヤ俺に近づくんじゃなくて本当に好きな人といた方が何倍も幸せに決まってる

それにクロノ、原作を見てたらあいつはそんな奴じゃ無い……ってわかってるんだが……やっぱりコルテットの技術を盗もうと局から俺に近づく様に『命令』されてる奴もいてな………友好的に接してくるんだが……そういう奴らは見ていると吐き気がしてくる』

 

「…………だよ……な……」

 

はぁ……期待した俺が馬鹿だった………

俺なんかに友達が出来る訳がないよな………

 

『まあ、お互い信じられるのは自分って意味さ、それでどうするんだ?

GODとかリリなのの中でかなり危険な部類だと思うが……』

 

「やれるとこまでやってみる……いざとなったら最後の特典使えばいい」

 

『うっ……出来ればやめてくれよ、まだ管理局にバレてないんだから……まあ過去の俺がピンチなんだ、リンディ提督も余程の事がなかったら戦わせたりしないと思うけど……一応爺と掛け合ってみる。

《地球に行かせてくれないか》って』

 

「皇帝特権とか俺より上手く使えるんだろ?

来てくれたら助かるよ」

 

『あまり期待するなよ……じゃっ、またな相棒!!』

 

「うん、もう一人の僕!!」

 

どこぞの王様とその相棒のマネをして通信を切る俺ら

クロノには『覚えていない』って伝えたらしいし……

はぁ、こっちの俺が言った様にリンディさんも過去といえどコルテットの人間を戦場に立たせたくはないだろうかな~

それに原作キャラだけでどうにかしてたし……俺の出番はないか!!

 



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緊急事態

 

「やっぱり俺は出ないんですね」

 

「協力してくれるのは嬉しいんだけど……危ないですから」

 

アースラの一室でリンディさんと話をする

やはり俺の出撃は無いらしい、まあ妥当と言えば妥当かな?

 

「戦力は足りてるわ、なのはさんにフェイトさん、マテリアルの子達に未来から来てくれた人達……これだけの人が協力してくれて失敗なんてあり得ないわ」

 

「まぁ……そーですよね」

 

特にあのリア充、多分この中では最強じゃないかな~

『魔道殺し』だし………なんか俺と話が合わなさそう

俺はセイバーでリア充が魔道殺し……なんか三回だけ命令されてバイバイ……ってか?

 

「もしも……本当に非常事態のときだけ助けて貰うわ、それまでは……ね?」

 

「わかりました」

 

非常事態……ね……

まあ考えたくは無いな、UーDって闇の書の闇と同等の力を持ってるらしいし……俗に言う合法チートだな!!

 

「作戦開始は一時間後、いいわね?」

 

『はい!!』

 

一同が返事をする

 

あと、なんかあれからちょっとしたいざこざがあったらしいが……確かキリエが一人で突撃しようとしたイベントだったな………

まあそれを姉のエミヤ………違う違う、アミタが何とかしたんだったか?

 

てかあの二人、高速移動するときに『アクセラレータ』って言うのやめろ

UーDなんかよりもっと凶悪なの来ちゃうから、魔法と科学が交差しちまうから!!

 

「ケントさんは来れないんですか……」

 

「なんでそこで肩を落とすリア充、俺なんか大した事ねーだろ」

 

「そんな事ないですよ!!未来ではどれほどのチートか………カレンと真っ正面から戦えるなんて………

てかリア充リア充って!!ケントさんだけには言われたくありません!!」

 

「俺がリア充?

妄想も大概にしろよ」

 

「はぁ、これだから………」

 

リア充野郎が頭を抱える

俺のどこにハーレムを作る要素があるんだ?

前世そこらにいる男子高校生

顔も普通で友達もそこそこ、彼女はいないし成績も中の中………転生後も顔だけだよ顔だけ………

ったく、なれるもんならなってみたいよ、リア充に………

ん?でも皇帝特権で『ニコポナデポ』も習得出来るのか……やめとこ、スキルを使って女の子を落とすなんて……俺もそこまで非道じゃねーし

 

「見ててな~、このはやてさんがパパッと解決するから!!」

 

「デスノートですねわかります、名前を書いてパパッと解決

と、なると隣にいるのは契約した死神ですか?可愛い死神もいたものですね~」

 

「八神違いや!!

そんで隣におるのがリィンフォース、どうや~、大っきいやろ、特におっぱいが~」

 

「俺まだ六歳ですよ?欲情なんてしません」

 

いや、してんだけどね!?

むっちゃ抱きつきたい衝動を抑えてますからね!?

てかホント何!?この空間!?

未来組を含めて『可愛い』or『美しい』しかいないじゃん!?

ご都合主義ですか!?リンディさんなんてまだ十代に見えるから不思議!!

 

「欲情せんのか?じゃあこの事件が終わったら一緒にお風呂入ろか~」

 

「なぜそうなった、なんか俺の威厳をいろいろ無くしそうなんで遠慮しときます」

 

「いいやないか~

なんやったらみんなでスーパー銭湯でも行く?ハーレムやでハーレム」

 

「童貞奪われそうなので遠慮します」

 

はやてって昔から悪ふざけ好きだったんだな~

いや、割とマジか?

今のうちに裸を見せるという恩を売っといて将来いろいろと言いつける……策士め!!

てかスーパー銭湯って……エリオ状態になりたくないぞ俺

いや、前世では羨ましいとか思ったけどさ…。実際に誘われたら……後に来る罪悪感やなんやらが怖い

 

「はやてちゃ~ん、そろそろ行きましょ~」

 

「わかった~シャマル、ほな、また後でな~」

 

シャマルさん………前世ではおばさんおばさん言われてたけど若いですね

いや、守護騎士全員もう百歳超えてんのか?

おばさん超えてお婆ちゃんじゃねーか

あとヴィータは相変わらずのロリだった、シグナムは……相変わらずのおっぱい……重くないのかな、あれ………

てか巨乳の人見るとなんか一瞬イラっとするんだよね、俺自身の感覚じゃ無くてなんかクセみたいに……俺?

巨乳大好きですよ?はい

 

多分……俺の元の人なのかな~

散々貧乳キャラでいじられてたし……赤の方は別として………

 

そんな事を考えていると原作キャラ達がUーDに接触したらしい……アースラの中でもノイズだらけだが映像が流れている

なんかUーDが垂れ流してる魔力が異常なんだと、それで上手く映像を出せなくてノイズがかかってる感じ

 

目の前にはなのはやら闇王やらリア充が黒い服着たUーDと戦ってる……黒い服?

 

ん?まてよ……UーDって白or赤服じゃなかった?

自分をある程度抑えてる時が白で暴走状態の時が赤……赤の時はなんかタトゥーが入ってたし……

で、ノイズだらけで良く見えないけど俺の目の前に映っているのは『黒の』服を着たUーD………なんかタトゥーも赤の時より多い感じもするし…………

 

あ、今闇王が刺された………刺された!?

 

『敵の魔力反応増大!!

推定ランク………測りきれません!!!』

 

『迎撃チームの反応、次々にロスト!!』

 

『すぐにみんなの救出を!!

医療班!!急いで!!』

 

『ダメです!!周辺魔力密度が濃いせいで転移させられません!!救出不可能です!!』

 

『アースラ内にいる動ける魔導師を救出に送って!!早く!!』

 

『無理です!!並大抵の魔導師では魔力密度の濃さで近づく事も出来ません!!』

 

『迎撃チームの反応全てロスト!!

UーD、アースラに向かってきます!!

艦長!!』

 

全員の視線が全てリンディさんに集まる………

 

『…………最悪の事も考えて、アルカンシェルの準備を……』

 

『艦長!!何を言ってるんですか!!

あそこには民間協力者やクロノ執務官もいるんですよ!!』

 

『……………準備を』

 

エイミィが声を荒げる

だが………皆の命を背負っているのが艦長……少数の命よりも多数の命を……これが最善

はぁ……これも俺のせいだよな……

たった一人のイレギュラーのせいでここまで変わるか……そんでもってこのままだと原作キャラ全滅か?

《世界の修正力》とかでUーDも殺してはいないだろうけど……てか非殺傷でみんな気絶しているだけだろうけど………このままいくとアースラと、その乗員が全滅……

そんでもって抑止力を失ったUーDによって地球滅亡……全く笑えねぇよ……

んな訳で……

 

「っ!?何処行くのケントさん!!」

 

「リンディさん言ったじゃないですか、『もしも』の時は頼むって」

 

「駄目!!貴方が行っても何も変わらない!!」

 

「主人公風に言うと『やってみなくちゃわからない』ですかね?

まあそんなわけで、時間稼ぎぐらいは出来ると思うんでみんなの救出お願いします」

 

「ケントさん!?」

 

リンディさんの制止を振り切って走る、周りの局員が俺を捕まえようとしてくるが……直感andチートスペックな俺を捕らえるなんてまず不可能!!

 

まあそんなわけで………

 

 

 

 

「死なない様に頑張りますか」

 

 

やれるとこまでやってみましょ~

 



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初戦闘、敵がチート

 

 

「逃…………げ……………」

 

「逃げてですね、わかります

てかその無表情やめて、目が死んでんじゃん、バレーに青春かけすぎたか?」

 

こんにちは、いや、周りが結構暗いからこんばんはか?

前回異常に美化されて主人公を頑張ったケントです

いや~、結構かっこよく飛びたして行ったんだけどね~

こうなったらUーDぶっ倒してハッピーエンド一直線な筈なんだけどね~

うん、全く勝てる気しねぇ………

 

いや、よくあるじゃん?

肌に感じる殺気……的な?

うん、殺気じゃないけどもうだだ漏れしてる魔力がピリピリきます

なにこの子?魔力値SSSいってんじゃないの?

 

それに頭が痛ぇ……なんでこんなときに頭痛?神様俺の事嫌いなの?ねぇ?

………最高神にあった事あるんでしたね、忘れてました

 

「うっ………」

 

「ワォ、嫌な予感がする、こんな予感は大体当たるのが当たり前」

 

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

絶叫と共にUーDの後ろに巨大な翼が現れる

そしてそこに集まる魔力………うわ~、真っ黒だな~

 

「って、そんな事言ってる場合じゃねーー!!」

 

もう数え切れない程のスフィアが襲いかかる、一発一発が一撃必殺じゃねーかよ!!

てか俺って本格的な魔法戦って初めてだよね!?

ハード過ぎねーかこのが内容!!

 

距離をとって持ち前の直感で除ける

攻撃範囲広すぎなんだよ!!なんつーチート技!!

てかこいつ誰か憑依してたりしねーのか!?

神様特典以上の強さだろ!?

 

「あーもう!!俺のモットーは《近づいて斬れ》、そんなわけでケント、行っきまーす!!」

 

ストライクエアを使っての電光石火によってUーDとの距離を一気に縮める

ワォ、近くで見たらやたら可愛いじゃねーか、むっちゃ俺の好みですハイ

だからと言ってお持ち帰り出来ない訳で………

 

「目ぇ覚ましやがれ!!」

 

デュランダルを一気に振り下ろす

UーDが放ったスフィアは俺を捉えきれていない……いける!!

 

 

と、思っていた時期が俺にもありました~

 

「絶対防御ってか?砂漠の風影さんもビックリだよ………」

 

「………………………。」

 

いや~、完全にフリーだったんだけどね~

忘れてたよ、この子、魔力切れ起こすまでは完全絶対防御なんだよね~

つな訳で俺の攻撃は通りません、はい

前世ではロングレンジで相手の魔力を減らしてから戦ってたな~、俺?

ロングレンジ出来ませんよ?

しかも今のUーDって完全暴走モードでしょ?

魔力切れって起こるの?すごく無理な感じがするんだけど……

 

「う…。あ………」

 

「って言ってるそばからーー!!」

 

UーDの背後から手?みたいなものが俺を捕縛にかかる

あれに掴まれたらお終いじゃね?グチュッて潰れてバッドエンドじゃね?

てな訳で全力で回避!!皇帝特権や直感やら全部つかってとにかく回避!!

だって二回も死にたくねーじゃん!?

セイバーに似合わないブサイクな避け方だったけど別にいーじゃん!?

 

そんなわけで再び距離を取るんだけど………どうしたものかね~

俺ってまだスフィアさえ撃てないんだよね、皇帝特権使えば出来るんだろうけどさ……クロノの時みたいに他に影響が出るのは避けたいし………

うわ~、八方塞がりじゃねーか、俺と相性悪すぎんだろ………

 

「って言ってるそばからバインドですか……捕まったら即アウト~」

 

直感によってバインドをしかけてくる前にその場を離脱する

さて、どうしよう……

俺に残された手段は(偽)エクスカリバーを使っての自爆特攻か………最後の特典を使ってのUーD完全破壊か………

 

うう、UーDの完全破壊なんてしたら原作キャラともう顔合わせられないよな……てか俺に人を殺す勇気なんて無いし……

 

マジでどうするか…………

 

「う………あ………」

 

「ん……嫌な予感……」

 

「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

絶叫を上げてUーDが襲いかかってくる

てか早!!Σ(・□・;)

俺のストライクエアエンジン付きの移動より早ぇじゃねーか!?

 

「っつ、くそっ!!」

 

UーDの背後から現れる二本の巨大な手をデュランダルを使って受け流す

やべ、重量が半端ねぇ………

 

「う、あっ」

 

「ノータイムでの砲撃!?そんなのありかよ!?」

 

左で牽制しながら右からノータイムでの砲撃を発射するUーD

それは俺に対しての嫌がらせか!?

砲撃が使えない俺に対しての嫌がらせか!?

 

また持ち前の直感を使い紙一重で避ける

だけど……この子賢いよ………

今の砲撃も……牽制だったよ………

 

「ガッ、ハッ!!」

 

「………貴方の劔は……多くの人を導いた筈なのに………」

 

激痛、俺の胸をUーDの腕が貫通している……いや、俺の胸に大きな『穴』が空いていて……そこにUーDが手を突っ込んでる感じか?

てか泣きながら喋るのやめろ、怒るに怒れない………

 

「貴方をここで潰してしまうのは……とても残念です………」

 

「う、あ、あ」

 

UーDが手を引きづり出す

そこから現れたのは巨大な『劔』

そして俺はこれを知っている、前世でのゲームでUーDが使っていた……フルドライブバースト……俗に言う……必殺技!!

 

「ですがここで」

 

劔を全て引きづり出しUーDが距離を取る

直感ではなく本能が告げる……あれは、やばい!!

体を動かそうとするが……魔力をごっそり持って行かれてる!!動けねぇ!!

 

「ぐっ、ぞっ!!」

 

「サヨナラです」

 

防御魔法を使えない俺はデュランダルを前に突き出す

勝てる自信は……ない……

 

UーDが俺に劔を投げつける

確か俺を貫いた後で……爆発するんだったか?

冗談よせよ、転生生活もここまで「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ」………?

 

「らぁ!!!!!」

 

ぶつかる寸前だった劔が爆散する……いや、粉々に『破壊』される

………なにこのありがちな展開、ピンチに助っ人が現れるとかもう見飽きたんですけど、てかもっと早く来れなかったの?

馬鹿なの?死ぬの?

 

「ふぅー、なんだよなんだよ、皇帝特権で長距離転移やらなんやらを主張して爺に無断で来てみれば………転移先がオカマバーって……てか何なんだあのオカマ達……SPびっくりの連携で俺を捕まえに来たんだけど……逃げる為に皇帝特権全開って……」

 

「それは……残念だったや」

 

「おー、大丈夫だったか相棒、あれって『エンシェントマトリクス』だろ?食らってたらいくら俺でも危ないな」

 

「いや、てかよかったのか?今のって『破壊

クラッシュ

』だろ?」

 

「あれ以外に思いつかなかった、後悔は……してる………」

 

「アースラから丸見えだからな~

コルテットからの脱走にロストロギア認定確実のレアスキル……頑張れ、もう一人の僕」

 

肩を落として落ち込んでいる俺を慰める

てかちょっと背が伸びてるけど異常な光景だよな、同じ顔した人が二人って……

ん?でもセイバーって青、白、黒、赤といるから今更か?

 

「で、どうすんだ?戦えるのか相棒?」

 

「今の状態で?魔力ごっそり奪われたよ……」

 

「と言う事は俺一人であれの相手をしろと?

俺のくせに案外鬼畜じゃね?」

 

「魔法に触れて数ヶ月の奴があんだけやったんだ、行って来いもう一人の僕」

 

てかUーDよ、案外律儀だったりすんだな

この間ずっと待っててくれるって……いい人だ……

 

「てか俺もあいつと相性悪いんだよね、砲撃相変わらず使えないし」

 

「え?」

 

予想通りな真実発見

それじゃあ数が増えた意味なくね?

ミックミクに殺られるのが目に見えてんじゃん

 

「なんかこの三年で習得した技とかないの!?ルフィだって二年でむっちゃ強くなったじゃん!!」

 

「ない……かな?

魔力値が少し上がったのと(偽)エクスカリバーがちょっと強くなったぐらい」

 

「全く使えねぇよコンチクショウ!!」

 

あんだけ派手に盛大に登場しといてこれはねーんじゃないの!?

 

「あ、あと体力が増えたぞ!!」

 

「この状況で必要か!?」

 

くそー、何か無いか何が!?

 

「うっ……」

 

「また撃ってキター!!」

 

最初に放ったスフィアを盛大にぶちかましてくるUーD!!

相変わらずやる事エゲついなおい!!

 

「はぁ、お前の気持ちも俺だからわかるけどよ……もう完全破壊でよくねぇか?

死んだら元も子もねぇーだろ」

 

「いや、この先の時代でも原作キャラ全員、俺だって生きてんだ!!未来の俺はどうにかしてこの状況をなんとかした筈!!」

 

「うおっ、頭いいなおい、過去の自分とは思えねぇ」

 

オフトレに一緒に行くぐらいだ、UーDを完全破壊なんかしちまったら合わせる顔が無いだろ!!

なにかないか……なにか……

 

「あーもう、派手に『エクスカリバー!!』とか宝具使えたら一発で終わるのに……」

 

「だから俺らは砲撃の適正皆無だろ!!

それに本物の聖剣が無いのに宝具なんて……出来るな」

 

「マジか?」

 

今考えたら不可能じゃなくね?

出来るか出来ないかの問題だけで皇帝特権の

延長線上にあるような物だし………

特に思い入れも無いんだけどね~

 

「いや、あるじゃん、セイバーと言えばエクスカリバーとかに目が行きがちだけど俺らにはセイバーがもう一人いるじゃん?」

 

「………ああ……確かにもう一人いないと俺ら即刻死んでるもんな」

 

だろ?

まあただ………

 

「よくあるじゃん?『一人じゃ無理だ!!仲間がいるから強くなれる!!』的な?」

 

「仲間なんていないけどな、自分だけどな」

 

「ほっとけ」

 

まあかなり大掛かりなので一人じゃ出来ない……って言いたいんだよ

本物のセイバーはそこに思い入れがあった訳だし……俺らの家には丁度いい『見本』があるし……

 

「出来んのか?」

 

「言い張ればいいんじゃないのか?あれって技術だし……」

 

「確かに」

 

今の俺が頷く

ちなみにUーDはまだスフィアを撃ってきてる……避けながら話をしてる?

違う違う、もう特典3がばれちゃったじゃん?

だから右手を突き出して俺に向かってくるスフィアを全て『破壊』してる

あれだね、この特典って触れた物しか破壊出来ないから『空間』ごと破壊してます、ハイ

今の俺、俺からしたら未来の俺も同じようにしてる

 

「で、すんの?」

 

「勝つ為にはそれしかなくね?」

 

「うん、そうだな」

 

即答する俺、こいつ、一人で戦おうとかいう意思はねーのか!!

まあそんなの訳でやります、宝具!!

 

「叫ばないとダメか?あれ?」

 

「叫んだ方がいいんじゃね?」

 

「はぁ……なんか過去の俺に命令されてる感じがするけど……了解」

 

グダグダだね~

そう言いながらもデュランダルを構える俺達

 

UーDからのスフィア?

諦めました、あの子

そんでもってスターライトブレイカー真っ青の巨大な収束してます、例えると『元気玉』

 

さて、気を取り直して………

 

「我が才を見よ!!」

 

未来の俺が叫ぶ

あんなこと言ってた割には結構ノリノリじゃね?

え~と、次は………

 

「万雷の喝采を聞け!!」

 

うん、こうだった筈

復唱間違えたらフィージョン失敗……みたいにならないよな……

 

「インペリウムの誉をここに!!」

 

「咲き誇る花の如く………」

 

さて……ラストォ!!

 

 

 

「「開け!!黄金の劇場よ!!」」

 

 

 

 

 

 

世界が光に包まれた

 



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黄金劇場

 

「自分でやっといてなんだけど……こりゃすげぇ………」

 

「マジで出来たよ……まぶしっ!?」

 

「う、あ…………」

 

周りを見渡しながら呟いてみる

そこにあったのは正しく赤の宮殿、己の願望を叶える為に作られた黄金の劇場………

見ている物を圧倒させる、堂々とした、煌びやかな黄金劇場がそこにはあった………

 

「さて、過去の俺よ、感激するのはわかるがあれ、どうする?」

 

「うわっ、なにあれ!?」

 

この宮殿にいるのは俺ら二人とUーDだけなのだが……UーDさん最後に元気玉的な何かを作ってたじゃん?

あれがヤバイのよね、当たったら死ぬじゃなくて蒸発しそうな勢いだよね!?

 

「ちょっ、未来の俺なら何とか出来るだろ!?年上なんだし!!」

 

「いやいや、普通は出来ない、まぁ……この空間なら可能っぽいけど……」

 

へ、と俺が一瞬止まった瞬間勢いよく未来の俺が前に出る

その先にはあの魔力砲……ちょっ、魔力収束もしてないっぽいけど大丈夫か!?

 

「よっと……よいしょっ!!」

 

「なっ!?」

 

目を疑う

軽い手さばきで魔力砲を『解体』していく俺……は?

 

「あ~くっそ、頭痛ぇ……おらよ!!」

 

「おいおいガチかよ……」

 

最後の一声と共に魔力砲が完全版に『消滅』する……デュランダルを振り回しただけでどうやったらあんな感じになるんだよ……

 

「疑問そうに思ってるな、まぁ簡単だ、黄金劇場内のアドバンテージ、大体分かるか?」

 

「えっと……敵の弱体化とこちらの強化……だったか?」

 

「それと加えて勝者が決まらない限り出れないって言うのもあるけどな、俺が使ったのは自身を強化する能力、『皇帝特権』をEXからさらに強化して『主張』した」

 

「なんて?」

 

「直視の魔眼」

 

なるほど、黄金劇場で強化された皇帝特権で他作品のスキルを『主張』すればいいのか……無双じゃね?

えっ、だったら俺も……

 

「あっ、それと………」

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

こんな事も出来ちゃうわけ!!

 

バンッ、とその場を強く蹴ってUーDに急接近する

相変わらずスフィアを撃ってくるが……無駄無駄無駄無駄無駄!!

 

「元の居場所へ」

 

「うっ」

 

「帰還しやがれぇ!!」

 

アクセラさんのベクトルパンチ

いや、一度『最強』になるの夢だったんだよね、これ使えたらガチで敵いなくね?

 

 

……っと、思っていた時期が俺にもありました

 

「ちょっ、ガッ、ウガッ!!」

 

「……………」

 

「あ~、うん、ドンマイ」

 

顔面からすっ転んだ、痛ぇ

てか反射は?

なんで半分理性失ってるUーDから哀れな視線を受けないといけないんだよ、解せぬ

 

「さっき俺がした感じだと黄金劇場と皇帝特権使っても使えるのは数秒だな、やっぱ世界の修正力的な何かだろーな、それに今のスキルは俺たちが持つ正規の物じゃない、使い方も分からないし加減も不明、そのせいでいきなり『死の線』なんて見た俺は頭がヤバイ」

 

「さいですか」

 

まぁ、あのスピードで途中から特典が消えたんだ、そりゃあ顔面から転がるよな

それに演算なんかしたから頭痛い、なんだよ、頭痛持ちは生まれつきか?

 

「まぁふざけるのもいいけどよ……向こう」

 

「?」

 

「そろそろヤバイみたいだぜ?」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

UーDさん、ガチで真っ黒に染まってきましたね

うん、どうすればいいか……

 

「取り敢えず俺が突っ込む、お前は援護な!!」

 

「おいっ、ちょっと待て!!」

 

俺の静止も聞かずに前に飛び出す俺、あーもう!!

 

「さて、俺らのコンビプレイ、いっちょ見せてやりますか!!」

 

「コンビプレイって、合わせた事もないだろ!!」

 

そうこう言っている内に再び撃ち込んでくる暴力スフィア

それを全て破壊しつつ一気に距離を詰める、俺らは遠距離戦闘全くだからな、距離を詰めないと話にならん

 

「くっ、おらよっ!!」

 

未来の俺に向かって降りかぶられた翼の様な腕?をデュランダルで受け止める

クッソ重い、小柄な体が吹っ飛ばされる、何とか受け身には成功したけど……勝てるかこれ?

 

「って、いい勝負してんじゃねーか」

 

さっきまでの場所に目を移すとそこにはUーDの猛抗を全て剣の軌道に合わせて受け流す俺の姿

やっぱり未来と今じゃ違うな、俺も怠けていなかったって事か

 

「………さて」

 

それでもUーDに苦戦しているのは目に見えて分かる、流石は合法チート、このままじゃこっちがガス欠で確実に負ける

あいつに勝つには一撃、ドデカイのを食らわして暴走の原因となっているコアを破壊するのが一番

だけど俺らにはそのコアが分からない、ん、危険な賭けになるけど……大丈夫だろ

それに対して先ずはあいつの防御を突破することが先決、ゲームの時もそうだったがあいつは一定量のダメージを与えない限りはほぼ無敵、てかずっと防御状態を維持して攻撃してくるような奴だ

ならばその防御自体を破壊して……あいつがひるんでいる瞬間にデカイのを決めるしか方法はない

 

「エクス………」

 

デュランダルに魔力が収束する

これで突破出来るとは毛ほども思ってないけど……これだけの技、流石のUーDも防御に集中する……筈!!

 

「カリバァァァァァァ!!」

 

未来の俺がUーDの翼を弾いた瞬間に一気に飛ぶ

カウンターが間に合わないと察したのかUーDは防御魔法を展開、エクスカリバーと競り合いになり……こちらが弾かれる

だけど……

 

「破壊(クラッシュ)」

 

割り込んで来た未来の俺によって防御魔法は完全破壊、一瞬怯むUーDだが戻って来た翼の一つで未来の俺を上空に振り上げる

その間完全な無防備、そしてその無防備な時間を……少しでも長引かせる!!

 

「ストライク」

 

「っ!?」

 

「エア!!」

 

放たれた風の魔力によってその場には踏ん張るが翼は真後ろに、腕は体を守る為にこちらを見ていない

いや、上空を見ていない

 

「エクス」

 

「う、あっ」

 

「カリバァァァァァァ!!」

 

俺がすかさず下がった瞬間、上空から現れた黄金の一閃がUーDを真っ二つに切り裂く、いや、非殺傷だから本当に切り裂いてるわけじゃないけど

 

だが、それで倒れるなんて思っていない、ラスト、一発!!

 

強化された皇帝特権で『あるスキル』を最大まで上げる

デュランダルを肩に担ぎ、短かな距離を一気に詰める

 

これで……

 

 

「童女謳う(ラウス・セント)」

 

「あああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「華の帝政(クラウディウス)!!」

 

 

終わりだ!!

 

 

 



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もきゅもきゅ

 

「「もきゅもきゅ」」

 

「よく……食べるんだな………」

 

クロノが若干引き気味に渡してきたピザをなりふり構わず受け取る

隣では未来の俺がチーズバーガーに手を延ばしている……それ俺が欲しかったのに………

 

「「もきゅもきゅ」」

 

「くっ、こんな子鴉共に救われるとは……ぐうぅぅぅ」

 

「少し落ち着いて下さい王、どんな形であろうと、『ユーリ』が救われたことは事実なのですから………」

 

「わかっておる!!だか!!」

 

「なに~王様!!嫉妬してる?」

 

「うるさい雷刃(レヴィ)!!嫉妬だと!?そんなものを余がするとでも思っておるのか!?」

 

むっ、これは………ケンタッキーか?

六年、いや、前世でもそんなに食べなかったからホント久しぶりだな………

 

「「もきゅもきゅ」」

 

「うにゃ~、ボロボロだった~」

 

「もっと強くならないといけませんね………誰かを守る為にも」

 

「うう、やっぱりケントさんはチートだぁぁぁ!!」

 

「し、しっかりしてトーマ!!

元の時代に帰ったらまた頑張ろっ、ね?」

 

おお、ドーナッツじゃないか!?

いや~、コルテットでは一個数万円のよくわからんドーナッツしか食べてないからな~

うん、うまい

 

「「もきゅもきゅ」」

 

「あいつら何もんだ?あたし達が勝てなかったユーリを止めるなんざ」

 

「わからん、主はやてのお知り合いだと言うが………」

 

「魔力量もそんなに高くはないみたいだし……う~ん」

 

「………………(何故俺だけ狼なのだ)」

 

あ、コーラ

爺に飲みたいっていったら「こんなどす黒い飲料水など!!爺は信用できませぬ!!ケント様に何かあった場合、爺は……爺はぁぁぁぁ!!」とか言われて一度も飲めずなんだよな~

 

「「ごくごく」」

 

「にゃ~、どうしてあんなに食べれるんだろう」

 

「う~ん……疲れた……のかな?ユーリ強かったし……」

 

「私もあんなに食べるなんて知らんかったわ~、もっと高級なんしか食べへんと思っとったからな~」

 

さて、これじゃあわからないよな

今の俺たち、未来の俺と俺は目の前にズラリと並べられたジャンクフードの数々を食いあさっている

自分でも何故これだけの量が食べれるのかは疑問だ、確かに体はセイバースペックだが大食いではなかった………

考えられるのは……魔力を多量に消費したからか?

今まで魔力全開って事はなかったし……担任との模擬戦だって所詮『模擬戦』の範囲、ある程度魔力を消費したら即終了だ

あと俺の目の前にあるジャンクフード、本来のセイバーなら『丁寧な料理』が好きな筈なのだが……味覚は俺が基準となるらしい

てか彼女がいう『丁寧な料理』というのは食べ飽きた、前世が高校生でこの六年間そんな料理しか食べていなかった俺としてはジャンクフードが恋しい………

オルタになると逆になるのだろうか?

 

「おおユーリ!!どうだったのだ!!」

 

「はい、おかげさまで……みんなが、助けてくれたから………」

 

ユーリが誰かって?

誰って……UーDの事だが?

 

えっと……彼女が人間としていた時につけられていた名前が『ユーリ・エーベルヴァイン』

普通なら今ここにUーD、いや、ユーリがいるのは奇跡に近い

原作ではユーリの力の源となり、この事件の原因であるシステム『永遠結晶(エグザミア)』が誤作動を起こしたので、最後は闇王(ディアーチェ)が飽和攻撃、並びにシステムの上書きをした事によってユーリは救われた

 

だが今回、あの場に闇王

ディアーチェ

はいなかった………では何故?となるのだが……

 

包み隠さず率直に言おう、『運が良かった』

 

は?、また二次創作でよくあるテンプレかよ~、と思うかもしれないがこれにだって理由がある

 

最後の一撃を決める時に、俺は『黄金劇場』で強化された皇帝特権を全開にして《幸運》を上昇させた

どこぞの赤い弓兵が泣いて塞ぎ込んでしまうほどの《幸運》、ランクでも表せないEX以上

 

その幸運が彼女を救った……『絶対にない』事が『偶然出来るかも』になっただけだが………

まあ賭だ、自分でもなんであんな事をしたのか今でも疑問に思う……まあ終わり良ければ全てよし、でいいだろう

 

ちなみに、ユーリの助かった理由が

 

『永遠結晶(エグザミア)の暴走原因の核部分のみを完璧に破壊し、更に大魔力の剣撃によってシステムに異常が起こり、新たなデータが作り出された』らしい………

 

俺にはさっぱりだが技術部のマリー……だったか?

彼女が目を見開いて驚いていたのは覚えている、曰く『数値に表せない本当の奇跡』、まあ……要するに科学者として認めたくないんだな……

 

 

「えっと、ケントさん、少しよろしいかしら?」

 

「「はい?」」

 

「あ、いえ、この時代のケントさんに、コルテットのお爺さんが……」

 

「げっ!?爺の奴、もう見つけ出したのかよ!?」

 

未来の俺が唸り声を上げながらリンディさんの方に歩いて行く

ん~、説教かな?

てか未来の俺って遠距離転移してきたんだろ?それを逆算したのか?

 

(プニッ)

 

「…………おもちゃじゃないんですが……」

 

「えっ!?えーと……はやてがしてたからいいのかな〜て………」

 

そう言って目を逸らすのは金髪幼女

……将来に期待ってとこかな?俺ロリコンじゃねーし

てか友達がやってたら自分もしても良いと?ほっぺプニプニを………

まあ別にいいけど……この時代のはやてにされてなんか慣れた、ただ今食事中だからやめて

まあ………そろそろお腹一杯になりそうだけど………

 

 

 

まあそれからあれやこれやと時間が経ち……ゲームオリジナルのエミヤと切嗣……ゴホンゴホンッ、アミタとキリエから軽い説明を受ける

やはり『現地の人が未来の情報を知ってしまった場合は、現地に関わる記憶は出来る限り封鎖するように』するらしい……

 

まあ原作通りって言うわけか……知ることで未来が変わる事もある……だっけ?

 

てか未来の俺、コルテットのSPに連行される様にして帰って行ったが……良かったのか?記憶消せねーじゃん……

 

まあそれは置いといて……現在組みは『時間移動という出来事が存在した』という箇所だけを………未来組みと俺は記憶そのものを抹消してしまうらしい………

 

う~ん……でも消されるのは『今の出来事』だけだからGODに関する記憶は消されない……か……

それも消されてしまうと未来の俺が俺を見て『GODから来た』なんて予測出来なかっただろうし………

あとユーリとマテリアルズは原作通りオリジナルキャラがいる未来の世界に行くらしい……まぁ、これはよかったのかな?

 

はぁ……もう外の世界は終わりか(−_−#)

 

 

 

と言うわけで記憶の封鎖を受け、軽い挨拶をしてから空に飛ぶ

拍子抜けするぐらいな感覚で目を閉じる………あっ……

 

 

 

 

 

定期テストもうすぐじゃん……

 

 



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プールのご予約

 

「ふっ、はっ!!」

 

「ほう……随分と太刀筋がよくなったのぅ………」

 

Stヒルデ魔法学院の訓練場でいつも通り担任と手合わせする

やはり……強い、まずスタミナが違うな、こっちは汗水流して剣を振るっているのに向こうは涼しい顔してそれを受け流す……いや、楽しんでるな……こいつ………

 

「っ、はぁ!!」

 

「むっ!?くっ!!」

 

皇帝特権を使ってのいつも通りの剣撃……それまでは涼しい顔をしていた担任の顔が一気に険しくなる

いける……押してる!!

 

「うぉ!!はぁぁぁぁ!!」

 

両手で力強く剣を横薙ぎに振るう

魔力は込めていないが渾身の一撃……獲った!!

 

「ほぅ、なかなかのものだ……だがっ!!」

 

その声とともに『ガンッ』と硬い音をたてて動かなくなるデュランダル……おいおい、マジかよ………

 

「腕一本で止めるとか………」

 

「惜しかったの……小僧!!」

 

俺が全身の力を込めて放った一撃は担任の『腕一本』で止められていた

いや、確かにお前の体格は征服王その人となんら変わりませんよ?

でも……ねぇ?腕一本で剣を止めるとか……漫画かよ………

 

当然、一度大きくチカラを込めた剣を戻す時に絶対スキは出来るわけで……

 

「うおぉら!!」

 

「ガハッ!!」

 

非殺傷にしてある担任の剣が俺を数十メートル先に吹っ飛ばす

ちょっ!?この先には!!

 

「え?きゃぁぁぁぁぁ!!」

 

「カリム退いてぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「ガッハッハ、これの事をなんと言うのだったかな?

………ラッキースケベか?」

 

「戯言がすぎるぞ征服王……わざと狙いましたよね………」

 

「そんな事はないぞ、ただちょっと手元が狂ってしまっただけであって……」

 

おい、目を反らしながら言っても全く信用ないぞ

そんな俺の頬には真っ赤な手形が……うう、まだヒリヒリする………

 

「ダハハ!!まあいいじゃないか!!

それでどうじゃった?大きかったか?」

 

「全く反省してませんよね?」

 

うう……ケントです

季節は夏休み真っ盛り、外では蝉の大合唱

 

来る時に爺に渡されたスポーツ飲料を飲みながらカリムへの謝罪を考える………流石にダメだろう……

事故とはいえ女の子の胸を鷲掴みにしてしまうなんて…………うう………

 

「それにしてもどうしたのだ?急に動きが良くなった気がするのだが」

 

「どうしてでしょうか……普通はなまるんですが……」

 

このところ担任と模擬戦はしていない、今日も久しぶりに手合わせした

 

理由は一学期の最後にあったテスト……その勉強の為に必死だったのだ

確かに……初等科一年生の国語やら算数ならは前世の記憶があるから簡単だ

しかしだ、この世界に来てから学んだ『魔法学』についてはどうしよもない……それに殆どの奴が入学する前から予習をしているのだ……それに比べ俺はつい最近『魔法』と言うものに触れたばかり……油断は出来ない

 

皇帝特権を使えばいい……なんて思うと思うがやはり『自分じゃない自分』が出来てしまうのは嫌だ、なんかこう……違和感が……

 

なのでテストまで家庭教師がつきっきりで勉強、結果どうにか平均よりも大分上を取る事が出来た

あとよくある『実技』についてはまだ先だ、確か……二学期の中間ぐらいにあったんじゃないのか?

 

さて、話を戻そう

 

今説明した様に俺はここ最近魔法の練習は殆どしていなかった……なのに剣の腕が上達しているのだ……何故?

 

う~ん、思い当たるとすれば前世でやっていた『なのはGOD』の夢を見たぐらいか?

 

内容は……俺がもし介入したら……あり得ないんだけどな、コルテットの俺が管理外の、それにPT事件、闇の書事件と二つもの事件が起きた星に行くなんて……保留だ保留、原作介入が出来ないせいでついに妄想をしだしたか……

 

「ふむ、まあ剣の腕が上達するのはよい事だ、わしを超える日もそう遠くもないかもしれんな」

 

「はぁ、努力します」

 

ドーピングと同じなんだけどな……俺の腕じゃないわけだし…………

ん?

 

「あの、少しよろしいでしょうか?」

 

「む?………中等科三年のシャッハ生徒か、どうしたのだ?」

 

「ケントさんを少しお借りしてもよろしいでしょうか?カリムが………」

 

「ほぅ……行ってやれケント生徒!!」

 

バンッと背中を叩く担任

てか痛えよ!!背中むっちゃヒリヒリすんだけど!?

てか……………

 

「カリムが?」

 

「はい」

 

え?八つ裂きにされるビジョンしか思い浮かばないんだけど………

そりゃあ……な……好きでもない人間にあんな事されたんだしな……どうしよう……

え、大きさ?柔らかかったか?

そんなもん知らねぇよ!!目が回って気がついたらこのざまだよ!!

 

「では、行きましょう」

 

「う、わかりました………」

 

非があるのはこっちだけど……誠心誠意謝れば許してくれる………はず

 

 

 

 

 

 

 

「プール?」

 

「はい、貸していただけたらと思いまして………」

 

夏休み中で誰もいない中等科教室でカリムが顔を赤くしながら尋ねてくる

あ、シャッハはいるよ

教室に入った瞬間に大声で謝まったのだが……カリムは顔を伏せたままブツブツ言ってるだけだった………

てかシャッハさん、なにニヤニヤしてるんですか?

不気味ですよ貴方

まあ、話を戻そう、カリムが俺に会う為にわざわざ学校に来た理由が『プールを貸して欲しい』というお願い

聖王教会では孤児や捨て子などを保護して育てていて、その中にはまだ幼稚園ぐらいの子供や小学生ぐらいの子まで様々

そんでもって夏に泳げる為に幼児プールと何処にでもある25メートルプールがあるらしいのだが……どうやら今年の春に壊れてしまったらしい

そんでもってカリムはそれをどうにかしようと考えたのだと、まあ彼女は優しいから……どうにかして力になりたいと思ったのだろう………

だがいくら将来が約束されているカリムと言ってもまだ子供、更には貴重な古代ベルカのレアスキルのせいでろくに外に出れないのだ、どうにか出来る手段などない……

 

そんでもって彼女が出した結論が……護衛であり監視対象の俺の家にあるプールを借りる事

彼女自身本当はしたくなかったのだがこれしか方法がない、勿論嫌なら断ってもいいらしいのだが…………う~ん………

 

(プールはあるが……一般開放エリア以外だと……難しいか?)

 

ぶっちゃけプールはある、特大のが

ただ………それは一般開放エリアじゃない、コルテットの完全なる私有地

俺でも警備システムを知らないのだ、それぐらいコルテットには敵が多い

外部の信用出来ない人間を、私有地に入れてもいいのかどうか………

それなら一般開放エリアに行けばいいと思うが……あいにく聖王教会とコルテットの一般開放エリアの距離はむちゃくちゃ遠い、それに一般の客もお金を払って来てるし……夏だから人も多いし……う~ん………

 

「ちょっと爺に相談してみるから、待ってて」

 

「あ、はい」

 

いまだに顔を赤くしたままカリムが小さく頷く

やべ、むっちゃ可愛いんだが………

 

まあそれは置いといて……携帯端末から爺に通信をかける

 

『どうしましたか坊っちゃま、何か問題でも?

迎えの車は正門前に止まっておりますが……』

 

「ああ爺、そうじゃなくて……」

 

 

 

 

〜事情説明中〜

 

 

 

 

 

 

『プールを……ですか……難しいですね、いくら聖王教会の方達とはいえ信用は出来ませぬ』

 

「だよな……だけどそこをなんとか出来ないか?」

 

『いくらケント様のお願いでもそれがケント様に危険が及ぶようでしたら爺も頷けませぬ、子供達には申し訳ありませんがここはお引き取りもらってもよろしいでしょうか?』

 

「うっ………」

 

まあ大体わかってはいたさ……

だけどな~、それは俺の良心が痛むというか……しょうがないけど………

 

小さくため息をついてカリムの方に振り向くのだが………カリムが『上目遣い』&『涙目』で何かを訴えてくる……何この可愛い生き物?

お持ち帰りって有りですか?

 

「お胸………」

 

「爺!!これは命令だ!!今すぐコルテット私有地内のプールの整備!!

急げ!!」

 

『ケ、ケント様!?』

 

爺が何かを言ってくるが無視だ!!

これぐらいでさっきの事がチャラになるんだったらむしろ安い!!

通信をブッチしてカリムの方を再度振り向く、うわぁ~、いい笑顔

 

 

「ありがとうございました、ではまた、連絡して下さいな」

 

「えっと……はい……」

 

 

 

女って怖ぇ………

 



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泳げない

 

「ああ……眼福………」

 

プールサイドで体育座りをしながらつぶやいてみる

季節は前回と変わらず夏まっさかり、蝉が相変わらずうるさいこの時期

 

目の前にはキャッキャッキャキャッと無邪気に遊んでいる子供達……とカリム

 

カリムからのあの相談があって三日、渋る爺になんとか頼み込んでプールの開放を許可してもらった

なんでもこのプール、コルテット家の長男、つまり俺の為に作られたプールだというのに俺も一回も使ったことがない………

そんな事しても金の無駄だと爺をなんとか説得させた

 

そっからはプールの整備やらなんやらで三日、数少ない連絡先であるカリムに整備がおわった事を伝えてお昼頃、教会の子供達を連れたバスがやってきた

 

あ、ちなみに警備の方は相変わらず

今俺もこうしてプールサイドに座っているが何人の人間に見られているかなんで数えたくない

今日一日監視されるんだろうな……いつもの事だけど…………

 

「泳がないのですか?ケントさん」

 

「あ、えっと………もう少ししてから」

 

カリムが問いかけて来たので顔を伏せながら返答する

誰だ!!カリムに白のビキニ着せたのは!?

水に濡れてエロいですカリムさん!?

貴方中一でしょ!?色気ヤバイんですが!!

 

水着の説明をするとカリムが白のビキニ、シスターシャッハが黒のセパレート水着

シャッハさんはいいとして……カリムさん……貴方自分の体型理解してます?

この人天然だから自覚ないんだろうな……ほら、教会暮らしの中等科の方々が鼻の下伸ばしてますよ

 

「気分が悪いんですか?それとも………」

 

「いえ、大丈夫です。すぐ行きます」

 

そう言うとカリムは「そうですか」と言ってチラチラとこちらを見ながらシスターシャッハの所へ歩いて行く

 

今このプールに来ているのは……だいたい五十人ぐらいか?

年齢はまだ小学生にもなっていない子から中等科の方々まで、流石に高等科の人になると騎士になる為に必死なのだろう

 

そしてここ、コルテット私有地のプールは……デカイ

超巨大ウォータースライダーから流れるプール、室内プールや風呂?の様な場所まで……

一般開放したらたちまち人が来るだろうな、使わないんだったら有効活用したらいいのに………

 

あ、あと俺の水着は下が黒の短パンで上にはよくわからんマークが入ったTシャツの様な水着を着ている

最初は下だけにしようと思っていたのだが……なんだか凄く抵抗が………

二次創作で今流行りの『男の娘』という事があって……なんか……上をさらけ出すのが何故か恥ずかしい

 

「喉……乾いたな……」

 

「スポーツ飲料でございます!!」

 

「どこから出てきた爺」

 

座っていても流石に暑いので何となくつぶやいて見たら爺登場

今コンクリートの地面が開かなかったか?ずっと下で待機してたのか!?

 

「この鮫島!!どこからでもケント様を見守っています!!」

 

「このストーカー野郎が」

 

そしてこの爺、この頃知ったのだが『鮫島』というらしい

試しに兄弟がいるかどうか聞いて見たら弟がいると……もう連絡は取り合っていないが遠い世界で爺をしていると…………何という裏設定………

 

「まあ、ありがと……」

 

「はっ!!」

 

そう返事をして忍者みたいに地面に消える爺

怖いよコルテット………

 

スポーツ飲料を飲みながらまたボーと目の前の風景を見る

俺が泳がない理由?

う~……そうだな、泳げないとかじゃないんだ、前世でも水泳は得意な方だったし

はっきり言うと……目の前の子供達の為

 

このプールではコルテット専属のSPやら何やらが少し離れた場所から俺を観察している

学校とは違うのだ、もし同じプールで泳いでいた子供が不注意で俺を殴ってしまったり蹴ってしまったら……考えたくもない

 

それはカリムだって同じ、声をかけてくれるのは嬉しいのだがもし何か周りで癇の触る事をしてしまうと……どうなるかわからない

カリムは天然だから自覚はないんだろうけど

 

てかカリムって俺の『監視と護衛』っていう件覚えてるのかな?

シャッハは間違いなく覚えてるだろうけど………どうなんだろうか?

 

まあその前にカリムが近づいて来たら俺の理性を抑えるのが大変だからって言うのが一番の理由

俺だって女の子を水着姿を見て何も思わない程枯れてないんです

どこぞの『世界で始めての男性操縦者』ほど人間出来てません、小物なのでその中学生とは思えぬ胸を見せて来るのやめてくれません?男なので下を抑えるので必死です

水着でなったら……恥ずかしいことこの上ないし……

 

「さて、どうするか………」

 

だがいくらプールで泳げないと言っても一日中ただ座っとく……というのもな~

 

「風呂でも行くか……」

 

昼間っから風呂に行く子供はいないだろ

みんなほぼ貸し切りのプールに夢中だし

 

確か屋内にあったよな、水着で入れる風呂

 

……行くか

 

「お兄ちゃんお兄ちゃん」

 

「ん?」

 

立って歩こうとすると三人ぐらいの幼稚園児が………この子達は俺の事知らないからこうやって声かけてくれるんだろうな……

あっ、やべ、涙が………

 

「これね、おじさんがお兄ちゃんに渡してくれって」

 

「ん?……ぬいぐるみ?」

 

手渡されたのはどこにでもある様な熊のぬいぐるみ

………ん?

 

「えっと……どうして?」

 

「ここに来る前どっかのおっちゃんに頼まれたんだ俺達!!

お兄ちゃんには昔お世話になったからお礼に……って」

 

色黒の元気そうな男の子が説明してくれる

昔お世話になった?

おっちゃん?

やべ、嫌な予感しかしねぇんだけど……

 

あとなんか……俺が持った途端『カチカチ」とか鳴り出したんだけど……

 

「お離れ下さいケント様!!」

 

突如現れた爺がぬいぐるみを思いっきり弾く

そしてそこからどこからともなく銃弾の嵐………やっぱり……

 

「爆弾?それに結界付き」

 

「お逃げ下さい!!」

 

爺が俺に逃げる様にいってくるが、そんな事をしている場合じゃない!!

確かに俺は逃げられるかもしれないが状況を飲み込めていない子供がいる!!巻き込まれたら死ぬぞ!!

 

「デュランダル!!」

 

「ヴィンデルシャフト!!」

 

俺とシャッハがデバイスを展開して躍り出る

バリアジャケットを展開している暇は無い!!

一刻も早く、あれを破壊する!!

 

「砕けろぉぉぉぉ!!」

 

俺とシャッハの渾身の一撃が爆弾に当たる……ちょっ、ビクともしないとか……

確かに魔力を貯める時間もなかったとはいえ……それはないって………

 

「ケント様!!」

 

爺が俺を助けるために走って来る

あー、これ………死んだわ

せめて、シスターシャッハだけでも……

 

「グォッウ!!」

 

「え?うわっと!?」

 

「っ!?防御魔法を!!」

 

刹那、目の前を緑色の犬が走り去る

爆弾は……犬が咥えた

何がなんだかわからんが!!とにかく防御魔法!!

 

 

爆音がなる

 

瞬時に展開した防御魔法によって俺達と子供は無事

てかとんでもない爆発……さっきまでの至近距離では防ぎ様がなかったな………

 

「はぁ、今日は査察官試験に向けて一日勉強するのではなかったのですか?」

 

「いや~、やっぱり退屈でね

やっぱり僕はこういう女の子が沢山いる所の方がいいよ」

 

頭を掻きながら現れる美少年

その隣にはさっきと同じ緑の犬………

 

 

「ヴァロッサ・アコース?」

 

タイミング良すぎじゃねーか?

 



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事件後

 

「はぁ……悩む事ばっかりだ……」

 

自室のベッドに腰をかける

もう夕方……空は赤く染まっている

 

あの爆発の後、色々と大変だった

教会のお偉いさん達からの謝罪、現場検証になんやら……

まあ一言で言うと……プールどころではなかったと言う事………

まあそんな事はどうでもいい、俺が一番堪えたのは………

 

「カリム……だよなぁ……」

 

カリムの落ち込みぐあいが半端なかった

まあ当然と言えば当然、自分が提案した事のせいで俺や教会の子供達を危険に晒してしまったのだ、元が優しいカリムが塞ぎこむのも当然

とりあえず俺がした事はぬいぐるみを渡して来た子供たちとカリムの安全の確保

教会としては俺との接点を作る為にカリムを近づけたのだ……だがそれが仇となって返って来た……

これでコルテットが教会を見放してしまうと教会の権力が一気に落ちてしまう……それ程までに『巨大な組織』はコルテットに依存してしまっている

一応『教会』だけあって聖王様やらなんやら言ってるので手荒な真似はしないと思うが……それでも安心は出来ない

お偉いさんの騎士達に俺から直々に釘を刺しておいたんで大丈夫だと思うが……不安だ

まあもし何かがあった場合シスターシャッハに連絡してもらうので対応はできる……と思う……

 

「フゥ……それにしても……」

 

問題はそこからだ、この事件、考えれば考える程悪い方向にしかいかない

まず爆弾、何故あれを持ち込む事が出来たのか………

爆弾を渡して来たあの子がナンバーズの5番、『チンク』だったのなら話はわかるが……三人とも普通の子供達だった

体の作りから魔力量まで至って平凡、戦闘機人であるはずがない

だったら外で作られた爆弾になるのだが……これも不自然

あそこはコルテット私有地のプール、俺が参加しているのはコルテットの人間全員が知っている筈なのでプールに入る時には空港ビックリの超最先端技術で検査した筈なのだ………

コルテットの技術を欺く程の技術……あり得ん……あの変態マッドサイエンティストなら話は別だが一体何の得がある?

てかこの時期に動いていたか?

 

そして動機……簡単に捉えると『コルテット潰し』だろう

一人息子で次期跡取りである俺を潰すと言う事はそれだけコルテットの力を弱める事が出来る

ただ、それだけではない

さっきも説明した様に『巨大な組織』程コルテットに依存している

では『巨大な組織』とは一体何を指すだろうか?

おそらく代表的なのは

 

・本局

・地上本部

・聖王教会

 

この三つ、つまりコルテットを潰すと言う事はこの三つの大組織に多大なダメージを与える事にもなるのだ

さらに今回は聖王教会関係者が多く関わっている……ここでもし俺が普通の六歳児の感性であったならば聖王教会自体に与えるダメージは非常に大きかっただろう

まああくまでも『六歳児の感性』だったらの話なのだが……俺としてはこれ以上カリムに泣いてほしくないと言うのが大きい………

 

まぁ、ここまではこんな感じていいだろう……本題はここから

最初に話した『コルテットを欺ける程の技術』

普通はあり得ない、変態なら出来るかもしれないがやはり今回の事での『得』が見当たらない

それにおじさん?今の時代の変態はバリバリの青年だ、おじさんではないだろう

 

なら変態は外すとする……そしたらそんな技術を持つ相手なんて俺は一つしか思い浮かばない

 

『同じコルテット』

 

コルテットの技術に対抗出来るのは同じコルテットだけだ、それならば納得がいく

それに……今爺やその他諸々が犯人を調べているのだが……一行に手がかりがない

おかしすぎる、捜査にもコルテットの最新技術を扱っている筈……それなのに何の進展も無いなんて……

くそっ、よく『巨大な組織には必ず影がある』とか言ってるのに……油断した、もうどこにも『安全』はねーじゃねーかよ……

 

バタンッ、とベッドに大の字で寝転がる

 

コルテット家の一人息子からこれだけ完璧に逃げ切ってみせてるんだ……相手はコルテットの中でもかなりの権力者と考えて間違いない

俺を殺して次期社長になりたいってか?

別にいい、好きにしてくれ

俺がここにいるのは俺を育ててくれた爺やメイド達、危険を冒して俺を守ってくれているSP達に多大な恩があるからだ、コルテットから逃げ出す事は出来ると

思うがそうなった場合彼らの立場はどうなる?

それがあるから俺はここにいるだけ、二度しか会ったことない両親には何の思いいれもないし家の事情に振り回されるのもうんざりしてるんだ………てか父さんも母さんも……殆ど顔を覚えていないんだがいい人そうだったのにな………

生まれた時には二人して泣いてくれたんだっけ?

二度目に会った時は忙しいのにわざわざ無理して時間をとって一緒に寝てくれたのにな………

それが今では顔も出さない連絡もない………ふざけんなっつーの………

 

「失礼します」

 

「ん~、いいぞ」

 

爺が部屋に訪ねてくる

こいつにも迷惑かけっぱなしだな………

 

「やはり痕跡は何も見つからず……申し訳ありません……必ずや爺が……鮫島の名にかけて見つけてみせます!!」

 

「ありがとう、でもあまり無理すんなよ」

 

「ハイッ!!」

 

相変わらず年寄りとは思えない元気さで返事をする爺

この人は……信用してもいいんだよな………

 

はぁ……とりあえず今回の事件は何か手がかりが見つかるまで保留……と言う事にしておこう……

 

先ずは目先の問題……カリムだな……

純粋な彼女だからこそ今回の事で一番傷ついた筈………

俺としてはカリムに塞ぎ込んでほしくないんだが……男として女の子を泣かせるとか最低じゃん?

罪悪感やばいんだよね、カリム可愛いから余計に………

ロッサの件もあるし………どうするか……

 



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神様

 

「はぁ~」

 

いつも通り蝉がうるさい中これもいつも通りベットに寝転がる

爆弾事件から数日………あれから犯人に関する情報は一切ない

爺や管理局も頑張ってくれているらしいのだが……もういい、どうせ見つからない

 

カリムともあれから会えていない、俺の立場もそうだし今が夏休み、というのも大きい

シスターシャッハから時々メールは来るんだけど……元気はないらしい

それでも大人の汚い事情に巻き込まれてはいない様だからよかった………

 

そして俺………

 

「外出禁止って………」

 

今まではSP有りならばそこそこ外出出来ていたのだが……今回の件で少なくとも『狙われている』というのが発覚した

なので犯人とそのグループが見つかるまでSPをつけても外出禁止………この長い夏休みをどうしろと?

隣にあったお菓子をボリボリと食べる

太る?大丈夫、問題無い

 

「む、美味いのこの菓子」

 

「当たり前だ、どうせこれも一つ一つが高級品なんだから」

 

ベットに寝転がりながらネットを開く

原作に関する事件が起きたら直ぐに確認できる様にネットは俺にとって必需品だ

 

「ふむ、インターネット中毒か?

最近の若いもんはだらしがないの~」

 

「ほっとけ、暇を潰せる唯一のアイテムなんだからよ」

 

ったく、うるせぇな……… 

俺が何しようと勝手だろ?

さっきからいらねぇこと話しかけてきやがっ……て?

 

「………………………。」

 

「…………………どうしたのじゃ?」

 

what?

 

「あんた……誰?」

 

「誰って……忘れたのかこの顔を、お主を転生させた神って何デバイス起動させとるんじゃ!?」

 

ああ………なんかすっげー懐かしくてすっげーウザい面した老いぼれが俺のベットで菓子食ってるよ

うわ~何?その「いるのが当然」っていうのやめてくんない?

 

「あんた確か……『転生先での干渉はしない』とか言ってなかったか?」

 

「バレたのじゃよ閻魔大王に!!

そんでもってきっちりとした謝罪をしてこいと言われたのじゃ!!」

 

へぇ……バレたんだ………

でも俺にはそんなの関係ねぇ……こんな苦労生活を俺に押し付けたこの老いぼれには一度痛い目にあってもらわないとなぁ?

 

「は、話を聞かんかバカモン!!

仮にも最高神の御前、ひれ伏さんか!!」

 

「俺無神論者だし、その偉大な神様に殺されたんだし」

 

「ふんっ!!人間一人程度の人生、別にいいじゃろう!!

それに新たな人生をテンプレチート付きで提供したのじゃ……お主は逆に感謝をってなに斬りつけてきとるんじゃ!?」

 

グダグダ怠い事ばかり話していたので一度斬りつけてみた、殺傷設定で

だって効かないだろ?『偉大な最高神様』なんだから

 

「そりゃ死にはせんが痛いものは痛い!!

お主、これ以上わしに何かしたらこの後の人生って斬りかかるなーー!!」

 

チッ、外したか……

ま、伊達に最高神語ってるわけじゃない……か……

さっきから俺の攻撃が誘導されてる……

 

「全く、今回は閻魔大王からの命令で謝りに来ただけじゃ、ったく、あの老いぼれ目が……長い説教しおって……」

 

「前から気になってたんだが……閻魔大王って最高神のお前よりも位が高いのか?」

 

「そんな訳なかろう!!

わしは神じゃぞ!!閻魔であるあいつより位が低いなど有り得る訳がない!!

そうじゃの………わしがお主で閻魔が爺……ならわかるかの?」

 

「なるほど納得」

 

怒る時は怒る部下って感じだな………

てか……

 

「いつばれたんだ、履歴的なものは消したんじゃなかったのか?」

 

「ばれたのはお主を転生させた直前からじゃよ………それからさっきまでずっと説教じゃ……」

 

「は?」

 

さっきまでずっと?

まてまて、バレたのが転生させた直前で説教が終わったのがさっき……つまりは……

 

「そう……神に寿命はないのじゃが体感時間は人間と同じよ……それなのに閻魔の奴……六年間も延々と説教しおって……」

 

「えっと……ご愁傷様……」

 

なんか怒る気失せた

だって六年間延々説教って……俺だったら自殺するよ?

うう……目の下にクマがあるって事は六年間寝てないのかな……やべっ、可哀想になってきた……

 

「それに六年間の間に溜まった仕事……毎日働いても消費するのに二倍はかかってしまう……」

 

「……がんば」

 

なんか同情しちまうよ……

 

「うう……今も閻魔がわしの事を覗いとるのじゃろう……

前世の事……本当にすまんなんだ……」

 

「こちらこそ……死んでしまってすみません」

 

これまでいるのかな?

殺した張本人に「死んですみません」って謝る人って……

 

「それで……前世のお詫びに一つ特典を増やせるのじゃが……どうする?」

 

「特典を……増やせる?」

 

なんというテンプレ的展開

これ以上特典もらったら明らかチートだろ、今でもかなりチートスペックなのに……なので……

 

「特典はいらね、ただ………」

 

「なんじゃ?」

 

さっきとは違って踏ん反りかえって返して来る最高神

この野郎、ちょっと自分が有利になったからって偉そうにしやがって……

はぁ……でも頼めるのはこいつしかいねぇし……

 

「その……この前の爆弾事件を『なかったこと』にしてくれねぇか?

もちろん俺以外から……最高神なんだからそれぐらい出来んだろ?」

 

「わしは過負荷ではないのじゃが……それぐらいなら出来るぞ、要するに爆弾事件が『なかった」 』事にすればいいのじゃな?

………本当にそれでよいのか?」

 

「ん、お願い」

 

はっきり言って俺にカリムを元気付けるイカした言葉なんて言えねぇし『内部に敵がいる』と言うことは俺だけが持っていればこちら側に大きなアドバンテージが出来る

事件が起きる前に調べればいいからな……どこぞの正義の味方が『過去は変えれない』とかほざいていたがそんなことはどうでもいい

それでカリムが泣かないで済むんだったら………使えるものはなんでも使わしてもらう……

 

「……青春じゃのう……」

 

「俺は前世からフェイト派だ、ただ近くにいてくれる人が離れてほしくないから……さっさと帰りやがれ駄神」

 

「駄神とはなんじゃ駄神とは!!

なら過去を少しだけ変えておくぞ、変わる前の過去を知っているのはお前だけになるはずじゃ、変わった後の世界ではプールを一日楽しんだ事になっておろう」

 

「助かる………」

 

最後に「すまなかったの」と捨て台詞を残して消えて行く最高神

それにしても………

 

 

 

「ご都合主義全開だな……」

 

素直に思った事を口に出してみた俺だった

 



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荒む心

 

「それでね、その時にシャッハが~」

 

「へ、へぇ~、そうなんだ……」

 

季節は相変わらず夏……と秋の間くらい

蝉の鳴き声も少しずつだが収まって来るこの時期 

 

休みが開けた学校の廊下を歩きながら隣の人物に目を移す

長く伸びた緑の髪に整った顔立ち…… 

 

十人中十人が『カッコいい』と答えるであろうその少年からはなんというか……よくわからんプレイボーイ臭…………

 

あの最高神が現れてから早一ヶ月、学校も二学期がスタート

 

夏休みの宿題は………頑張った………

なんなのあの《将来の夢について考えていることを原稿用紙10枚で書きなさい》って………エゲついにも程がある……

小一に原稿用紙10枚ってふざけてんじゃないの?

 

「それてその時姉さんが」

 

「へぇ~、そうなんだ………」

 

それと……最高神はちゃんと過去を改変してくれていた

 

爆弾事件の事は『なかった』事になり、あの日はみんな一日中コルテットのプールで遊んだ事になっている

もちろんプールに出来た爆発跡も全て消えていた、捜査も元からなかった事になってるしあれからの夏休みはSP付きだったら外に出る事が出来た

 

そして新学期………いつも通り教室で一人きり、昼休みにカリムが来る以外誰も俺に近づこうとしない筈なんだが………

 

「ん、聞いてるかい、ケント君?」

 

「うん、聞いてる聞いてる」

 

新学期から突然話しかけてきたのは五つ年上の初等科六年生、『ヴェロッサ・アコース』

カリムと同じく教会通いのレアスキル持ちエリート

ぶっちゃけそれまで俺は話した事もなかった筈なのにいきなり喋りかけてきたのだ。最初はかなり警戒した

 

なんたって『心を見透かす』レアスキルの持ち主なのだ、前世の事やコルテットの情報、『なかった』筈の事件などを知られてしまったらひとたまりもない

そんな相手が気軽に話しかけてきたのだ……警戒だってする

ただ………

 

「ん、もうこんな時間か……それじゃあ、またお昼に」

 

「ん、わかった」

 

ヴェロッサ………ロッサの話しによると俺らはプールの時に意気投合?してずっと一緒にいたらしいのだ………

 

プール爆発事件がなくなってしまったせいで俺以外の人間はあの日普通にプールを過ごしたのだ………

そしてその記憶の中には俺もいる

 

ロッサは爆発の直前に現れ、俺らを助けた。

だがそれは『爆弾事件』がある場合の話、この世界では一日プールを満喫した事になっているのだ

なのでロッサはあの時からプールに参加、その時に一人でプールサイドにいた俺に話しかけて来てもなんら不思議ではない

気軽なロッサのことだ……絶対に話しかけてくる………

 

はっきり言ってこれは誤算だった……そのせいで話題を合わせるのに必死………メイド達も俺の反応に不思議がるし爺もかなり不思議がっていた………

 

まあそんな事もあったらしいので、ロッサは今ではちょくちょく俺の教室に遊びに来て、お昼になるとカリムやシャッハと一緒にお昼を食べる

 

確か……公式設定ではロッサは幼少時代、親に捨てられたところを聖王教会に拾われ、世にも珍しい古代ベルカ式のレアスキル持ちだったからカリムと一緒にさせられたはずだ

だが現実はそう甘くない、学校ではそのレアスキルに対する妬みや嫉妬のせいで恵まれた幼少期を過ごせなかったそうだ……それが今の姿

確かに……この数日でロッサが同級生の男子といるところを見た事がない……女子に囲まれているのは見るが………

 

まあ、ちょくちょく俺とは違うが大部分は同じ……妬みと嫉妬………

こいつは……同類を見つけて嬉しいのだろうか………いや、原作ではそんな奴じゃなかった……もっと純粋な理由で、俺と一緒にいてくれている……筈……

 

だけど……油断は……出来ない……

 

なんたってあのレアスキル………教会からの指示でコルテット内部の情報を探りに近づいて来たかもしれない……

俺と一緒にいるのはただの『命令』なのかもしれない……

もしかしたら嫌々で俺のそばにいるのかもしれない………

仮初めの『友情ごっこ』をするために優しくしてくれているのかもしれない………

 

ダメだ……爆弾事件のあの日から周りの人間がどうしても信用出来なくなってきている……

 

今まで『安全』だと思っていた家までもが今では敵がいるかもしれないのだ………

今では誰も……信用出来ない………

 

そして………そしてもし、ロッサや、これから出会う人達がそんな『仮初め』の友情ごっこを望むんだったら………

 

 

 

初めから……友達なんて望まない

 

信じられるのは、自分だけ……

 

 

 

チャイムが鳴る

次は魔法学の授業だ………

 

それでも、今の俺は一人では生きていけないのもわかっている

だから、一人で生きていけるまで『仮初めの』友情ごっこに付き合おうじゃかいか……

俺を狙ってくる奴は全部付き合ってやろうじゃないか………

 

もう誰も信用出来ないのだ、自分を守るのは自分のみ

今はまず、力をつける

誰にも負けない、誰の助けも借りない自分になる

 

 

 

強くなるんだ……どこまでだって………

 



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実技試験前

 

「実技の試験……ね」

 

「ケントさんはどうするのですか?

貴方の実力では相手が出来る人は早々いませんよ」

 

いつも通り庭で昼飯を食べる

隣にはロッサ、さっき俺のおかずを欲しそうに見ていたのであげた、肉料理だと思うがよくわからん

俺にとっては生前に食べていたスーパーで安売りしている肉が尊い

ハンバーガーとか食べてないからな、この六年間、地球に帰ったらポテトとか食いてぇな、帰れるかわからないけど……

それはそうと今話しているのは二学期中盤にある『テスト』

学校で習う教科なら楽勝なのだが……今回からは魔法学と共に魔法を使った『実技』があるのだ

内容は……基本的には一対一の真剣勝負、もちろん非殺傷設定、審判は学校の先生が行い、先生の判断で勝ち負けが決定する

 

ぶっちゃけ………嫌だ

 

どうせ俺が出ても相手が勝手に負けに来るのはわかっているのだ、ドキドキもワクワクもない

それにその日は保護者の見学も許される、さらに聖王教会の騎士が視察、先輩方から未来の騎士候補を選抜するわけだ

まあそれでも入りたての一年だって見に来る、どう映るのだろう………コルテットという『権力』に跪き、わざと負けに来る子供というのは…………

頭ではわかっているとは思うがいい気はしない……その子の夢が騎士なのだとしたら、その憧れの騎士の面前で恥を晒す事になる……

 

さて、どうなる事やら………

 

「大丈夫です、先生と互角に戦えるのですから、ケントさんが負ける事は有りません」

 

「うん、そこまで強いのかい?ケントは………また見してもらってもいいかい?」

 

「ん、邪魔になる訳でもないからいいぞ」

 

カリムはどうやら俺の心配をしていたらしい………俺の事はどうでもいい、どうせつまらない試合になる事は決まっているのだから

 

「と、なると……一体誰がケントさんと試合をするのでしょうか?」

 

「初めての模擬戦は魔力値が同じぐらいの人とだった気がするよ、確か一年生は……AA−の子がいたんじゃないかな?」

 

まあ、俺が教師の立場ならそういう組み方はするよな……

まだ『魔法』と言うものを学び始めたばかりの一年生、誰が強いや誰が弱いなどもまだ何もわかっていない為に魔力値で試合を組む……妥当だ

と、なると必然的に俺の相手はAA−の奴とになる……可哀想に、AA−と言えば管理局では隊長クラス、騎士では中隊長には確定のエリートコース

それが俺なんかがいるせいで直ぐに挫折……か………こればかりはどうしよもない

 

「当日は見に行かせてもらうよ」

 

「好きにしてくれ」

 

どうせ爺やらなんやらが見に来るのだろう……またうるさくなるな……

 

「あ、そう言えばケント、少し提案があるんだが……」

 

「提案?」

 

ロッサが?珍しい………

 

「僕の親友に執務官志望の男の子がいるんだ、実力は十分だと思うんだが……会ってみないかい?」

 

「俺が一人で出歩けるとでも?」

 

「もちろん学校の施設を使うさ」

 

普通そんな提案しないだろ……てか執務官志望なんだったら余計だ

てかそれってクロノ確定でいいんだよな……まだ最年少執務官になっていなかった筈だし……

それより……クロノと模擬戦か………

学校の施設を使ったらいつも通り爺達にバレずに済むな……あいつの『頭脳』とは一回戦ってみたいと思ってたし………

 

「……………わかった、それじゃあ次の日曜日でどうだ」

 

「OK、じゃあ親友にも連絡をいれておく

テスト前のいい訓練になるんじゃないか?」

 

いい訓練……ね

俺は今まで担任としか戦った事がないからな………楽しみだ……

 

「それってクロノさんの事ですよね」

 

「そうだよ姉さん、いい勝負すると思わないかい?」

 

「確かに……あの年であそこまで戦える魔導師はなかなかいませんからね、いい経験になるでしょう」

 

シャッハさん、貴方も大概です

貴方の年であそこまで戦える人はいません、この前同じ学年の男子を薙ぎ倒して行くところ見ましたよ

あと、カリムは戦闘は出来るのだろうか……原作でもレアスキルしか使ってなかったが……

その前に魔力がほぼ0の奴はどうしたらいいんだ?

 

「魔力が0の人ですか?その人達は筆記で勝負……ですね

実技が無い分より多くの知識が試されます、点数は実際こっちの方が取りやすいですね」

 

まあ……当たり前か

局員だって全員戦う訳じゃない、事務仕事を全般的にやる人達、いわゆるロングアーチだっている

他にもデバイスマスターやらなんやら……道は広いって訳か……俺の道は一本しかないのだが………

 

「審判は………ケントのクラスの担任に見てもらおうか、彼なら公平に審判してくれるだろうし」

 

「決まりだな、まあ向こうの予定とかもあるだろうから駄目だったら言ってきてくれ、迷惑をかけたくもないし」

 

「了解だよ」

 

さて、原作執務官はフェイトを一対一で倒してたし(漫画)、俺はどこまで通じるか……

 



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クロノ

クロノが執務官になるのは諸事項で原作よりも少し遅いです



 

「ブレイズ」

 

「くっ!!」

 

「キャノン!!」

 

青の弾丸が俺に襲いかかる、逃げる事は、出来ない……

腕には青の拘束具、ガッチリ縛られている為に身動きがとれないのだ、この前では、ゲームオーバー……

 

「負けるか……よぉぉぉぉ!!」

 

「バインドを!?」

 

右腕に魔力を流して身体強化、『力づく』という荒技でバインドを粉砕する

手に持つデュランダルでともう片方のバインドも粉砕し……自身が持てる最高速度でその場を離脱する

『対魔力』なんて大層な物を持たない俺では危なかった、白い魔王様程ではないとしても直撃すれは致命傷だっただろう

 

「スティンガー!!」

 

「風王鉄槌(ストライクエア)!!」

 

相手が牽制の為に放ったスティンガーを大出力の突風で薙ぎ払う

今が、チャンス!!

 

「はっ!!」

 

「っ!?風にのって!!」

 

大きく一本踏み出し、自身が起こした風に乗って相手に急接近する

俺のスタイルは《近づいて斬れ》、これまでの戦いで相手もそれを理解しているはずだ、俺が近づいた事に焦っている……はず!?

 

「っ!?ぐおっ!!」

 

「くっ、避けたか」

 

脳裏によぎった少し先のビジョンを回避する為に突風にあえて逆らい、その場を転がりながら離脱する

突風の直線上には青い魔力光………またバインド!!

 

「蒼穹を駆ける白銀の翼

疾れ、風の剣」

 

「デュランダル!!」

 

デュランダルに魔力を溜める

あちこちにバインドがかけられてある………だったら、全て斬り伏せるのみ!!

 

「(偽)エクス」

 

「ブライズ」

 

「カリバァァァァ!!」

 

「キャノン!!」

 

俺の(偽)エクスカリバーと相手のキャノンがつば競り合う

明らかに此方が不利、このままでは押し負ける事が容易に見える

だが……真っ正面から相手をしようと言う訳ではないのだ

 

「はぁ!!」

 

つば競り合いから瞬時に離脱して駆け出す

相手はまだ反応出来きていない、当たり前だ、今の俺は『最速』

剣の英霊ではない、それを覆す『主張』によってあり得ないスピードを出す

デュランダルにはまだ魔力が溜まっている、そして後ろを………獲った!!

 

「(偽)エクス、カリバァァァァ!!」

 

真後ろから一気に振り下ろす

反応さえ出来ていない、いまなら……っ!?

 

「ぐっ!?」

 

「………………」

 

デュランダルを振り下ろそうとした体に絡みつく鎖

さっきまでのバインドとは違う、もっと強度な、頑丈なバインド……何時の間に……

 

「ブレイズの発射前に詠唱を、死角に回られた時の保険だよ」

 

「クソッ!!」

 

必死に振りほどこうとするが……無理だ

その間に相手がデバイスを俺に突きつける、勝負、有りか………

 

「うむ、勝者、クロノ・ハラオウン!!」

 

離れた所で見ていた担任が声をあげる

近寄って来るカリム達……俺の負けか……

 

 

 

 

 

 

「ガッハッハ、どちらも流石、クロノ……と言ったかの、お主は何を志望しとるんじゃ?」

 

「今の所は執務官を……」

 

「執務官、のぅ、勿体無い、実に勿体無い、お主程の実力者ならばさぞかそ立派な騎士になっただろうに」

 

「アハハ……」

 

クロノが苦笑いをする

担任が言いたい事は分かるがクロノは管理局が運営している訓練校の生徒、あそこではStヒルデ魔法学院の様に騎士になりたいと言う子供は少ないだろう

そんな事はお構いなしに担任は「勿体無い」と連呼してどこかに行ってしまう、無理して審判をしてもらったんだ。お礼はしておいた

 

今日は休日、数日前にロッサが提案した様に今日は執務官志望の少年、『クロノ・ハラオウン』を相手に模擬戦をした

ちなみに彼は俺が『コルテット』だと言う事を知らない、知ったら本気を出してくれないだろ?

なので秘密にしていてくれる様にロッサ達に初めから頼んでおいた、カリムだけ『なぜ?』という顔をしていたのだが……素なのだろうか………

 

そんでもって結果は俺の完敗、最初はかなり優勢だったもののクロノは冷静に俺の戦闘方法を観察し、距離をとって近づけさせない方法で攻めてきた

その為に後半は一太刀も浴びせられず、最後はクロノの罠に引っかかって試合終了

 

今考えたらこれ、フェイトと戦った時と全く同じ方法でやられたんだよな俺……情けない……

 

「うん、両方とも凄かったよ、僕ならあんなに動けないからね」

 

「そうですね、流石でした……ですがクロノさん!!」

 

「え?」

 

クロノは自分に振られるとは思っていなかったのだろう、思わず素っ頓狂な声をあげてシスターシャッハに返事をする

 

「えっ?ではありません!!なんですかあの逃げ腰は!!もっと正々堂々戦いなさい!!」

 

「で、でもあれが一番適切だと思いましたし……」

 

「砲撃が出来ないケントさんに遠くから牽制のスフィアと砲撃、バインドを繰り返してどうしろと?」

 

「えっと………」

 

困った様な顔をするクロノ

 

許してやれよシャッハさん……ああいう戦い方は俺の苦手分野である事に変わりはないけど………

 

「それにしても最後のあれ、どういう仕掛けだい?普通あんなスピードを出すなんて容易じゃない筈だけど……」

 

「ん?ああ、風の性質変化の応用……とでも思っといてくれ」

 

皇帝特権を話す訳にもいかないからな……

 

「こう見えても結構ギリギリだったんですよ、最初の猛攻は凄かったですし」

 

「む、確かに最初のケントさんは凄かったですね、私でもついていけるかどうか……」

 

そりゃ……主張してたからな

少年少女があの剣撃についてこられたら困る、あれでも一応『セイバー』のクラスなのだから

担任は別、あいつはいくつもの修羅場をくぐり抜けて来た怪物、そんじょそこらの騎士と一緒にしてはいけない

てかこの学校であいつより強い奴はいるのか?

 

「ケントさんはやはり『騎士』なのでしょうね、近距離戦では無敵なのではありませんか?」

 

「そうか?その前にまず『経験』がたりないからな、ちょっと頭を使われたら今の様にすぐ負ける」

 

頭脳戦は苦手だ、戦いの中で頭を使うとか難しすぎる、目先の事で精一杯だろ、普通

 

「今日はありがとう、いい勉強になった」

 

「こちらこそ」

 

俺より少しだけ背が高いクロノが笑って話しかけて来る、やっぱり小せえな、俺もセイバーなので元が女だけあって背は小さいのだが……小一と張り合えるって……

なぜStsであそこまで立派になったのかが不思議だ

 

「今度は僕の学校に来てみないか?歓迎するよ」

 

「え?あ~、ちょっとした事情聴取があってな、ここじゃないと駄目なんだよ」

 

ここ意外じゃ模擬戦の事バレる、それにSPをジャンジャカ引き連れて訓練校って……相手に悪いだろ、どう考えても

まあクロノは俺を普通の子供として誘ってくれたんだ、彼に非は無いんだけどな

 

「そんな事より執務官試験、いつからなんだ?受かれば最年少だろ?」

 

「まあね、受けるのは丁度来年、誕生日の直ぐ後だ」

 

今のクロノが12歳だから……クロノが執務官になるのは13と言う訳か

原作の丁度一年前だな、誕生日の後って事は

 

「ロッサはいつ査察官の試験を受けるんだい?勉強はしてるんだろ?」

 

「そうだね、まだ少し自身がないからクロノと同じ時期に受けようと思ってる。」

 

と、言う事はロッサも13で査察官か……

彼のレアスキルはそっち方面に上手く使えるからな、個人情報保護法やら人権やら全部無視してるけど

てか来年って事はシャッハが卒業なんだよな、彼女はどうするのだろうか……実力は問題無いから正式にシスターになるのかな

 

「ケントさんは何になるのですか?やはりコルテットの次期社長?」

 

「コルテット?どういう事だ?」

 

「あっ」

 

「「「……………………。」」」

 

やっぱりカリムは天然だ

 



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聖王教会

「不可能と言われた闇の書完全破壊、第97管理外世界……ね……」

 

インターネットをいじりながら記事に目を通す

画面には次元航空戦、『アースラ』の画像、グレアム提督の画像やクロノの画像もある

 

俺が『魔法』と言う物に触れてから三年……その間にあった事は……特に何もない

敷いて言えば、クロノとロッサが無事試験に合格した事、それと…いや、これはまた今度にでも話す事にしよう……

 

初等科三年生になった俺は学園内では『成績優秀』『最強生徒』など言われているが………まあ、そうなんだろう

初等科の勉強内容は魔法学以外は前世と相変わらず変わらない、それでも高等科になった時に苦労するのは目に見えているので今では高等科の予習をしている始末、それが知られたせいで『神童』のレッテルが何時の間にか貼られてしまった………高等科になった時どうなるか……成績は下がる事間違いないし……

そんでもって魔法を使った戦闘……三年前にした初めての『実技』結果は……目に見えている

もともと相手は負けるつもりで臨み、そうでなくても差は歴然、俺が負ける要素は一切ない

それが今ままでずっと続く筈だったのだが……ある日担任が乗り込んで来たのはマジでビビった……そんでもって同級生との模擬戦を完全に無視して担任との一対一

前にも述べた事がある様に担任は陸戦SSの元騎士

騎士を目指している人間で彼を知らない奴はまずいない、なのにその騎士と生徒が互角に渡りあっている……それまで『コルテット』の力で軽視されていた『俺自身』の実力が周りに知れ渡ってしまったのだ………

そのせいで今の俺についている二つ名が『剣姫』

誰だこれ考えた奴、ちょっと絞めるから出てこい

何が『姫』だ何が

 

ちなみに、俺と試合をし始めた担任が言うには「勿体無い」と言う事

なんでも実力を持っているのにそれを出せないなんて勿体無いと言う事……後からグチグチ騒がしかったコルテットの関係者は俺がなんとか押しとどめた、あの時は……しんどかった……

結果は俺の負けだったからな、グチグチ言われるのもしょうがない

 

「失礼します」

 

「おう、入ってくれ」

 

そう言って俺の部屋に入ってくるのは爺、ある程度年をとっている筈なのだがこいつ、全然年を感じさせねぇ

相変わらずの調子だ

 

「ロッサ様が迎えに来ております、行ってらっしゃいませ」

 

「どうせSPは付けるんだろ?まあ遅くならない様にはする」

 

普段着に着替えて部屋を出る

あれからの三年間、ロッサやカリム、クロノとの関係は相変わらずだ

三人ともいい奴なんだが……気を抜いた事はない

いつ、どこで本性を見せるかわからないのだ、この三年間で薄汚い大人やその子供は山の様に見て来た、逆に彼らとの関係がいまでも続いている事に疑問を抱く

 

「やあ、元気かい?」

 

「相変わらずだ、今日は世話になる」

 

「御免ね、頼んだのはこっちなのに」

 

「別にいい、学校以外、外に出る事は久しぶりだしな」

 

コルテットが用意した車に二人で乗り込む

前には先導車、後ろには俺を守る為に何台も車がついて来ているが慣れた

何度も襲われているが一度も攫われた事がないのだ、こいつらの事は俺が一番信用している

 

「それにしてもよく許してくれたものだね、今回も駄目だと思ってたのに」

 

「少し頑張った、それだけだよ」

 

今日俺が行くのは聖王教会、ロッサとカリムからお茶会に誘われたのが始まりだ

実際何度も彼らには誘われているのだが……今まで全て断らせてもらっていた

 

どこに行くのもSP必須の俺だ、唯一一人でいれる場所は学校ぐらい

そんな俺が薄汚い大人がうじゃうじゃいる聖王教会へ?馬鹿言え、無理に決まっている

 

だが………断るたびにカリムが涙目になるのが凄い罪悪感で……今回こっちが折れて聖王教会に行く事になったのだ

勿論の事ながらSPは必須、今もこうして車から、ビルの屋上から、人工衛星から見張られている

教会騎士も数十人体制で守護している……移動だけでこれだけの人数が動くのだ、もう慣れたが……

 

「今回はクロノも来るからね、久々だろ?」

 

「そうだな、このところ顔合わせてなかったし……」

 

あいつは地球での任務に忙しかった筈だしな

クロノとはあれからちょくちょく模擬戦を繰り返している、最初はあいつも俺の立場を考慮していたのだが……それではつまらないと手加減しているあいつに大きいのを一発食らわし、さらに怒鳴りつけたことによって今では好敵手になりつつある

ちなみに戦歴は俺の負け越し、五回に一度勝つか勝たないかぐらい

 

「任務が丁度終わったらしいからね、具体的な内容は言えないんだけど………」

 

「言えないんだったらいいよ、一応機密なんだろ?」

 

「すまない」

 

まあ打倒だわな、多くの人間を殺したロストロギア『闇の書』、それの主が今も生きていて、更には事件の元凶でもある守護騎士も生きている

管理局からしたらこれから手に入る貴重な戦力、教会からしたらカリムとロッサと同じ古代ベルカのレアスキルを持つ魔導師……隠したいのも頷ける

ただ………やはり人の噂を止めるなど不可能、ネットで調べれば出てきた内容なので知っている人は多いとおもうが……

 

まあ……今は教会だな

カリムに癒してもらおう……このところ疲れが溜まって堪らない……

 

「あ、ついたみたいだ」

 

車が止まる

周りには花で囲まれた庭……外には何やら豪華な服を来たジジイがいるが……またか、

 

「ようこそいらっしゃいました聖王教会へ、私はこの教会に「ロッサ、行こう」代々伝わる騎士の……家系……で……」

 

一人張り切ってるジジイを無視して教会に入る

ジジイが俺と話がしたいとSPに必死に訴えているが……当然のごとく無視された

ジジイの周りに集まっていた大人達も我先に俺に気に入られようと前に出て来るが……全てSPに弾き飛ばされる

ああいう大人はもう見飽きた、最初は相手してやったのだがどいつもこいつも薄汚れた奴らばかり、これに関してはもう罪悪感なんて全くない

 

「凄いねケント……彼、聖王教会の中でもお偉いさんだよ?」

 

「俺には関係ない、今回俺はお茶会をしに来たんだ、あいつらに構う必要はない」

 

アハハ、とロッサが苦笑いする

この様子だとロッサ自身もあんな事になっていると思っていなかったのだろう、流石に査察官にまでなると薄汚い世界なんかも理解しないといけないからな

カツカツとロッサに案内して貰いながら廊下を歩く

そらにしても……綺麗だな

窓には一面ステンドグラスで神秘さを強調している、今回は行かないのだが礼拝堂とかにも行って見たいな

 

「あっ、ここだよ」

 

廊下の途中にある一つのドアをロッサが開ける

中からは女性の談笑声、クロノの声も混じってるな

カリムとシャッハとクロノと……もう一人

誰だ?どこかで聞いたことがあるのだが………

 

「あ、いらっしゃいケントさん」

 

「久しぶりだなケント、元気にしてたか?」

 

「お久しぶりですケントさん」

 

「えっ?誰なんあの子!?」

 

黄色と青紫と黒と栗色がそれぞれこちらを向く

カリムはいつも通りのほほんと、シャッハは卒業してから殆ど会えなかったので久しぶり、クロノは相変わらず身長が伸びていない

そして栗色……短髪のショートヘアにバッテンの髪留め……そして車椅子……あっ……

 

 

 

なんでこんなところにいんだ?『八神はやて』

 



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解決

「あっ、えっと、八神はやてと言います」

 

「あ、うん、よろしく」

 

少しまだ慌てたままお辞儀をしてきたのでこちらも返す

クロノも苦笑い……と言った感じだろうか、彼女がなぜここにいるのかも知りたいのだが……それよりも、だ………

 

一言、たった一つだけ言わせてもらうと……可愛いのだ……

確かに、カリム達を通して原作キャラが皆可愛いと言う事はわかっていたつもりだ

だが、予想以上、相手は九歳なので『欲情』などは決してしないのだが……可愛いものは可愛い

思わず見入ってしまう、カリムとはまた少し違う『活発』と言ったイメージ………

 

「あの、何か顔についてますか?」

 

「え、いや、ケント・コルテットだ、よろしく」

 

俺が何も言わないのを不思議に思ったのだろう、はやてが怪訝そうに声をかけてくる

少しボーとしすぎたか?

 

「まあすわって座って、立ったままじゃしんどいだろ?」

 

「ん、ああ」

 

ロッサが俺の椅子を引いてくれたのでそれに腰を下ろす

目の前の菓子に手を伸ばす、うん、うまい

 

「はやてはこの前僕達が担当した事件に少し関わっていてね、その関係で聖王教会に来てるわけだ」

 

「と、なると事件には古代ベルカに関わっていたのか?物騒な話だな」

 

「物騒って……」

 

実際管理外世界で古代ベルカ関係の事件だからな、大昔の技術者のくせに他世界に迷惑かけすぎだ

 

「どうせなら彼女もってね、人数が多いに越した事はないだろ?」

 

まあ、普通はそうだな

せっかくのお茶会、人数が多いに越した事はない

ただ、正面から見れないのは事実、今頃俺の顔は真っ赤だろう

それにしても、守護騎士はいないのか……となると本局か?

と言うかはやて……何故か『初対面』と言った感じがしないのは気のせいなのだろうか……どこかで会った気がするのだが……いやない、管理外世界で一人だった彼女とコルテットの俺が会うなんて事ない、うん、多分

 

「ケントさんは聖王教会は初めてなのでしたね、どうでしたか?」

 

「普通に綺麗だと思うよ、また機会があったら礼拝堂とかも行って見たい」

 

シスターシャッハが話しかけてくる

彼女は三年前にStヒルデ魔法学園中等科を卒業、今の彼女はカリムの専属シスター、並びに教会騎士として活躍中している

彼女とはいつも学校で会っていた為それからは会う回数が激減、こうして話すのも久しぶりだったりする

ちなみにランクは陸戦AA、Stsでは確か陸戦AAAでシグナムと互角だった筈………

 

「後で行ってみますか?案内するけど……」

 

「道……わかる?」

 

「……………………。」

 

カリムが提案してくるが……あなた、ここに住んでるんでしょ?

なんで毎日行ってる礼拝堂がわからないの?

カリムがこの三年間で変わった事と言えば……羞恥心が芽生えて来たと言う事か……

恥ずかしい事をすると顔を赤くするしあれから毎年行っているコルテットでのプール開きでは普通のビキニを着る様になった

まあ、それでもエロい事には変わりないのだが……

それでも天然は相変わらず、中等科三年の最高学年になってもまだ学校の構造を把握していない始末、俺でも殆ど把握しているのに……今では俺がカリムに道を教える事は別段珍しい事ではない、中等科男子からの目線は半端ないのだが三年もあれば慣れる、慣れなければやっていけない

 

ん?

 

「なんかついてますか?」

 

「え?いや~、可愛いな~て思って」

 

今度ははやてがほわ~と俺の事を見ていたので聞いてみた

可愛い……ね、最近メイド達がそれで物凄くうるさい、なにかあるごとに「可愛い~」とか叫びまくってるし……俺は男だ

なんか「犬ではない、狼だ」的な感じになったな、はやてがいるってことはザフィーラもどっかにいんだろ?

一度でいいからモフモフしてぇ………

 

「えっと、ケント君、でいいんか?

クロノ君と同じくらい強いってホンマなん?

見たところ私達と同い年ぐらいに見えるけど」

 

「ん?クロノの方が強いぞ、それと八神さん、でいいのか?

貴方だって相当な魔力持ってそうですけど」

 

「わかるのか?」

 

「そりゃ……なぁ、上手く扱えてない気がするけど」

 

殆ど原作知識だがやはり未来のSS魔力

今の時点でもSだった筈だが……当然、魔法を使いこなしているわけじゃない

まぁ、漏れてるってわけだ、ある程度魔力持ってる奴だったら感じられる

 

目の前の紅茶に目を落とす、見た感じストレートティーか?

俺的にはミルクティーの方が好きなのだが……あとレモンも

子供舌?はっ、俺は子供だ

 

ん、それにしても目の前のはやて、純粋だな

何故かまだ『たぬき』の面影をほとんど感じさせない………A'sからStsの間に何があった………

 

はぁ………今は別にそんな事どうでもいいな、原作キャラに関わる……なんてのはすこし前の俺だったら嬉しくて壁に頭を打ち付けるとかしてそのうれしさを表現する様な奴だったが……今の俺にとってはどうでもいい

原作キャラも信用してない

 

と、その時だ

 

 

爆発音が響く

 

 

「えっ!?なんなん!?」

 

「これは……正面玄関の方かな」

 

「テロか?」

 

「……………」

 

クロノとロッサは立ち上がり迎撃体制へ、シャッハはカリムを守る様に、はやては何が起きたのかわからずオロオロしてる

………狙いは俺か?

だがどうしてここで、教会騎士だってコルテット専属のSPもウジャウジャいるこの教会で仕掛けて来てもデメリットしかないはずだが………

まあすぐに捕まるだろ、ほら、もう音やんだし

 

そして開かれるドア、そこにいたのは教会の騎士と思わせる人物数人とコルテットのSP数十人、そして………

ボロボロになった局員やいかにも『一般人』と思わしき人びと、よく見てみればほんとうに若い人物はいない、皆ある程度年をとった人ばかりだ

そして、そいつらの視線は俺を見ていない……成る程………

 

「何故……何故闇の書の主が生きている……」

 

こいつらの目線は皆はやて、やはり情報は隠し切れてなかった……と言うわけか

 

「俺の親父は前回の事件後で闇の書に殺された、俺達家族が今までどれ程の苦労をしてきたのか……わかっているのか」

 

「俺の人生は闇の書に狂わされた……リンカーコアが再生しねぇ………ふざけんな!!俺の人生を返しやがれ!!」

 

原作では闇の書の闇を破壊してハッピーエンド……の様になってるが……そんなことはまずありえない

今回の事件で死人が出ていないが……そんなものは関係ない

なのはやフェイトは若かったからよかった、だがみんながみんなリンカーコアが再生するとは限らない

襲われた局員は皆大人、もちろん子供程の回復力は持っていない

考えてみてほしい、今まで管理局の武装隊として人生を費やしてきた筈なのに、それが全て水の泡になったのだ

そしてその張本人が目の前にいる、更に局は適切なさばきを下さなかった……怒りが今の主に向くのは当然の事

それに未だに入院している魔導師もいると聞く……残された家族が受けないといけない経済的苦しみはどれ程のものか……

 

「殺す……殺っガホッ!!」

 

はやてに掴みかかろうとした男をSPの一人が乱暴に止める

ここにいる大体の人数は十人ってとこか?

大方はやてがここに来てる情報を掴んで襲撃しにきたのだろう、だが俺が来ていることは知らなかったな

 

はぁ……今目の前にいる女の子が背負うには重すぎる現実だろ

……………いつも通りやるか……

 

「爺を、よんでくれ」

 

「お呼びでございますか!!」

 

……………お前、今日は留守番してるはずじゃねーのか?

なんで天井から出てくんだ

 

「はぁ、まあいい、闇の書…だったか?

それで被害を受けた全ての人間と家族を洗いざらい調べ上げろ」

 

「出来ますが……なにを?」

 

「経済的に苦しい家には一生分の慰謝料を、入院してる奴にはコルテットの最先端医療を全額無料で、その他については……適当に対応してやってくれ」

 

「了解しました!!」

 

すぐに出て行く爺

はぁ、じゃあまずはこいつらの相手だな

 

「闇の書……だったか?

それが起こした事件についての賠償金だ………一人辺り……これぐらいでいいか?」

 

「ふざけんな!!俺らがして欲しいのは金なんかじゃ………っ!!!!」

 

威勢良く怒鳴って来たが俺が差し出した小切手の金額を見て目を見開く男達

その手はワナワナと震えている……結局は金か、闇の書に対する憎しみって言うのも対したことねぇな………まあ、それが人間か

 

「それもってこっから消えろ、二度と彼女を目の敵にするな」

 

「あ、あ、あ」

 

小切手に釘付けになっている男達をSPに指示して外に運ばせる

後ろではポカン……としているカリム達

 

 

 

さて、お茶会を続けましょうか

 



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別にいい

 

 

「ええっと……よかったのかい?ケント」

 

「なにがだ?」

 

目の前にある菓子をムシャムシャ食べてるとロッサが声をかけてくる

さっきまでいた襲撃犯達は普通に返した、局とかに連絡したらそのあとの事が怠いのでそのままにしたが……

クロノも一応理解してる様だし

 

「こんな言い方も悪いんだけど、『闇の書』と『コルテット』はなんの関係もないはずだ、なのに全ての賠償金を払うって……」

 

「そうや、あれは夜天の主の責任や、ケント君に迷惑かけたない」

 

確かに、闇の書とコルテットは全くなんの関係もない、コルテットがわざわざ金を出す必要はない

だが……

 

「あいつらもあいつらで苦労してる、それを助けるだけの力を俺は持っていた、それだけだよ」

 

「で、でもそれは私達がしていく事で」

 

「君に彼らを救えるだけの経済力はないだろう、これも何かの縁だ、やれるだけの事はしとくよ」

 

それに後からグダグダ言われるのも面倒くさい

俺にとってはあれぐらいは端金、減って何かあるわけでもない

 

「被害者に対する賠償はコルテットがやってやるよ、これで少しぐらい罪は軽くなるだろ」

 

「で、でも………」

 

「はぁ、そんなに遠慮しなくても……そうだな……じゃあもし、俺になんかあった時助けてくれ、これで貸し借りなしだ」

 

「え、あ、うん」

 

一生無いと思うけどな、仮にも原作キャラ、『助けてくれ』なんか適当な事言っとくと本気で信用して勝手に納得するからな

 

「はぁ、全く……気まぐれな奴だな」

 

「まぁな、そんな事より事件の内容、くわしく教えてもらおうか

謝礼金の提供者としてそれぐらいは知る権利はあるだろう?」

 

「ああ………そうだな……」

 

ぶっちゃけ内容は『原作知識』で把握しているのだが、俺が事件の内容をクロノに聞いた理由が二つある

 

一つ目、これは俺が来た事による原作改変

直接的には関わっていないがこの世界には『俺』というイレギュラーと『コルテット』という原作ではなかった大会社

世界に及ぼしている影響は大きい、未来などちょっとした事で変わってしまう

 

 

二つ目、これは《俺以外の転生者》について

俺はミッドスタート、もちろん、無印とA'sには全く介入していない

わからないのだ、海鳴の状況が

俺と同じ様に転生者がいるのか……いたとすれば必ず原作介入している筈だからな、特に俺の容姿がセイバーという事もあって相手からは簡単に俺が『転生者』だという事がバレるからな

同じ特典を持つ者どうし、情報が大きな鍵となる

 

………まあ結果から言うといなかった

 

転生者と思わしきレアスキルを持つ現地協力者は無し、あくまでも『高町なのは』

ふむ、という事はもしいるとしたらミッドか………これは十年後まで先送りか?

あと原作と少し違うところ……原作通りなのか?

ゲームのストーリーが出来る様にリインフォースがまだ生きてる、半年ぐらいの命らしいが………

マテリアルくるか?

 

 

「一応機密だから、内密に頼む」

 

「ネットで普通に流出してんだけどね」

 

「……………………。」

 

顔をそらすクロノ、まあ流出してるという事は機密でもなんでもないからね

 

「わかった、ならケント君が苦しい時は私が助けに行く、約束や」

 

「うん、よろしく頼む」

 

ヒロインってこういう所で律儀だよな……

まあ、はやても管理局入りする運命、気を許せる訳じゃないけどな

 

「また私の家族も連れてくるな、ちゃんとしたお礼も言いたいし」

 

「………わかった」

 

律儀すぎるのが難点か?

 

てか………

 

「なんでさっきからカリム、睨んでんだ?」

 

「睨んでなんかいません」

 

頬をプクーと膨らませていたカリムに純粋な質問を投げかける

なにか感に触る様な事したか?

金で解決したのがいけなかったか?これが一番手っ取り早い方法なんだが………

 

「フフ、あ、お茶のおかわりどうぞ」

 

「あ、ありがとう」

 

フゥ、さて、帰るか

さっきの事があるから長居は出来ないだろうし、爺が多分うるさいと思う

時間はそんなたってないがまた来ればいい、少し頑張れば聖王教会ぐらい来る事が出来るだろう

 

「もう帰るのかい?」

 

「ああ、楽しかったよ」

 

こうして何人かで集まるのは前世以来だ、まあ……前世では皆気の許せた友人達だったのだが………

 

「送っていこうかい?」

 

「いや、玄関に車が止まってると思うから」

 

コルテットから教会まで決して近くないしな、ロッサもしんどいだろう

 

「あっ、ちょっと待って」

 

「ん?」

 

俺が席を立つと同時にはやてが声をかけてくる

まだなんか用か?

微妙に目を泳がせてるし……そんなに言いづらい事か?

 

「えっと、その……プニプニさせてくれへん?」

 

「………………。」

 

 

 

プニプニさせてあげました

 



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組織

 

カチカチカチカチ

 

 

忙しくキーボードを叩く

画面には幾つもの『エラー』が映し出され、その先が『危険』だという事を示している

 

 

カチカチカチカチ………

 

 

それでも少年は手を止めない

一つずつ、的確にロックを外していく

そして………

 

「また……か………」

 

少年はフゥ、と一息ついて椅子の背にもたれかかる

額には汗、相当神経を使ったのだろう。顔には疲労の色が見える

 

「流石はコルテットの警備システム、安い仕事してねぇな」

 

ハハっと乾いた笑みを見せる少年

そして数分休むとまた画面に向き合う

その顔は……険しい……

 

「ただで済むとは……思うなよ」

 

そして少年は、また一人笑う

 

 

 

 

 

 

 

 

カチッ

 

「……………フゥ」

 

疲れた、やっぱり幾ら皇帝特権と言ってもなれない事を長時間するもんじゃない、おかげで頭が怠い怠い

だがそれだけの苦労が実り、今日は一つ、《研究所を再起不能》にさせる事が出来た

一つ丸々落とせる事なんてまず無いからな、今回はそれ程重要でもなかったという事か?

 

「お前にAIでもついてたら、労いの言葉一つかけてくれても可笑しく無いんだけどな」

 

三年間一緒にいる相棒に軽く語りかけてみる

そしてやはり無反応、まあもう慣れた

 

 

この三年間、俺の周りは殆ど変わっていない様にも見える

あれから内部からの襲撃が無いのが何とも不自然だが……それは一先ず置いておこう

 

俺は原作の進行度合いを確認する為に毎日と言っていい程インターネットに向き合っている、別に中毒やらなんやらじゃないから安心してほしい

そんでもって二年前、俺はある事を気がついた

 

『皇帝特権を使えばもっと情報集められるんじゃね?』と………

 

なので皇帝特権によって『ネットを完璧に使いこなせる』様に『主張』してみた

そうすれば出るわ出るわ、97という管理外世界なのに情報が

文化やら軍事力、人口から言語まで………

最初は楽しかったよ、皇帝特権で少し主張するだけで色々な情報を見る事が出来る

それだけにしとけば良かったんだ、そこで止めておけば今、俺がしている苦労は全部ない

 

本当に興味本位だった、あとのときは浮かれていた

 

もっと情報を集めたいと思った俺は、次に『一流のハッキング能力』を主張した

 

そこで見つけた………

 

 

 

『大企業の裏側を』

 

 

人体実験に軍事研究、細菌兵器の開発やクローン技術

 

そして、それをしていたのが『コルテット』

 

 

普通のハッキングでは決して入る事が出来ないエリアに俺は踏み込んでしまった

初めは自分の目を疑った、こんなの嘘だと

だがそれは真実、目の前で開かれた研究ファイルに入っていた画像には変わり果てた子供の姿………

 

俺と皆年は違わない、『新薬の開発』の為に研究所段階の薬を飲まされる子供達

 

『新たな技術』の為にクローンとして作られ、作られた瞬間に『不要』と言って殺される人達

 

『新たな兵器開発』の為に、細菌が充満した部屋に閉じ込めたその研究データ

 

 

 

………馬鹿げてる

 

一日に何百という人達が死んで行っている

そして、その殆どが親に捨てられ、人身売買によって売られた子供だということ……

 

あくまでもこれはコルテットの『裏』

コルテットの人間全てが関与している訳でもない、関与しているのはほんの僅か

さらに、コルテットは世界の市場を実質支配している大会社、管理局が動くことはない

そして……この実験によって世界の技術が進歩しているのも事実…………

 

 

馬鹿げてる…………

 

 

 

 

 

そして、やはりクローンというだけあってやはり『プロジェクトF』にも関与している……裏金、技術の提供、それらを『実験結果の報告』との対価交換

 

 

 

馬鹿げてる

 

 

 

 

やはり最初は吐いた

当たり前だろ、幾ら転生者と言っても中身は普通の人間、そんな画像を見れば誰だって吐く

調べれば調べる程、そんな情報は嫌という程入ってくる

調べれば調べる程、組織の裏側が見えてくる

 

…………現実は、残酷だ

 

 

「フゥ………これでよし」

 

カチッと、また一つの研究所にハッキングをかける

コルテットの警備システムは異常だ、普通の人間なら入る事はまず不可能

もし入れたとしても確実に足跡が残る、そうなれば『裏』が動き、ハッカーは社会的に消滅している

足跡を残さず、ハッキング出来るのは……俺しかいない

 

 

馬鹿げてる

 

 

 

「ハァハァ……ハァハァ」

 

頭をフルに回転させる

コルテットの警備システムの前ではたった一瞬のミスが命取りになってしまう

もしこれに……俺の両親が関わっているとすれば……俺も無事では済まない

 

 

 

馬鹿げてる!!

 

 

「くっ、思った以上に……硬い!!」

 

必死に手を動かすがセキリティが硬すぎてこれ以上は無理

皇帝特権の効力も切れ始めてきてる……今日は、終わりか………

 

「くっ……ハァハァ………ハァ」

 

皇帝特権が切れるギリギリのところでなんとかアクセスを切る

やっぱ……一日二つは無理があるか……

 

 

額の汗を拭う

やっぱり体力の消耗は想像以上、頭を使うだけあっていつもキツイ

だけど……これをやれるのは世界中どこを探しても俺だけ、他に頼る方法がない

 

この事実を知った俺が行っているのは《研究データの破壊工作》ならびに《自動迎撃システムの暴走》

研究データを完全に抹消させ、あらかじめ迎撃用に作られているガジェットの様なものを暴走させる、これで大概の研究所は潰せるのだが……やはり一回一回ハッキングをかける事によってセキリティが強化される

最初は難なく出来た破壊活動も今では一日一個出来たらまだよい方、酷いときは一週間手詰まりだった事もある

それに幾ら潰しても研究所は一行に減らない……絶対量が多すぎる、俺一人じゃ完全に破壊出来ない

こんなにあるのに局が知らない筈がない……確実に……上が黙認している

 

さらに……コルテットをもっと探ると数億の金が消えている事が判明した

それを見逃す程甘くない、ハッキングを繰り返し、それが地上本部に流失している事を確認

そこから地上本部の最新部、コルテットの技術がフルに使われたデータに皇帝特権を使って約一ヶ月調べた結果………それがあの脳味噌共に渡っていることが判明した

 

使い道はほぼ同じ、クローン技術や兵器開発、既に『無限の欲望』がコルテットとの共同開発によって作られている事もわかった

だがそんなことはまだ軽い、俺がこの世に生まれてきて一番目を疑ったもの……それは……

 

 

 

《魂の転移研究》

 

 

 

指定の相手の魂を抜き取り、他の相手に移し替える研究、いわば『憑依』

あの脳味噌共………完全に復活する気でいやがる………

詳しい研究内容や関わっている人物、研究所の場所は《皇帝特権を使ってもわからなかった》

なのでこの研究は続いているのか、はたまた凍結しているのかさえわからない

 

だがこんな技術が実現すれば最悪だ、気づかない内に体を乗っ取られている可能性だってある

くそっ、リリなのってこんな世界だったか!!

 

 

そして浮かび上がった不可解な点がもう一つ

 

 

今まで話したこれらの研究、全て《俺が生まれた直後に開始されたのだ》

なぜなのかは全くわからない、それに関する記述は何もない

ただ言えることは……《俺が生まれたときに何かがあったという事》

 

 

 

くっ、考えても仕方が無い

 

今は俺が『コルテット』として、やれる事をしていく必要がある

 

幾ら時間がかかってもいい、前に進まないといつまでたっても終わらない

 

 

 

一つ一つ、一歩づつ……自分一人で……

 

 

頼れる人間なんて、いないのだから……

 

 



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黒歴史 1

 

ピョンッ!!

 

「…………………。」

 

さて、こんにちは、ケントだ

 

今日はまた教会にお呼ばれしている、クロノとはやても偶々ミッドチルダに来ていた為に会いに来てくれるらしい

まあ、そんなことはいい、今俺がいるのは自室、化粧台?の様な場所にある鏡をジーと見つめてみる

 

自画自賛……なのだがやっぱりセイバー、可愛い事は可愛い

金髪にエメラルドの瞳、顔は小顔で整っている、そして………

 

このアホ毛……

 

 

ピョンッ!!

 

 

「……………………。」

 

このアホ毛、一言で言えば『強力』

 

普通寝癖などで立った髪の毛は風呂に入るなどすれば自然と直るものだが、このアホ毛はプールに入ってもお風呂に入っても湿ったまま立ち続ける

中に針金でも入っているのだろうか?

 

 

ピョンッ!!

 

 

手を使って少しチカラをいれ、離す

やっぱりアホ毛は元の場所にピョンッ、と効果音を立てて戻る

これも可愛い事は可愛いのだが……

 

 

 

ピョンッ!!

 

 

 

確か原作ではこれを引っこ抜く、もしくは強く握ると『セイバーオルタ』になってしまう筈

あれだろ、性格が変わってしまうやつ

そして俺、そしてこのアホ毛

最高神は『青セイバー』と『赤セイバー』を同一視しちまう様な奴だ、『オルタ』があっても可笑しくない

ただ……黒歴史を作るのが怖い、なんかいつもの俺と違う事をしてしまいそうで……

ただ一度確認しないと『不安』が残るのも事実、もし何かの拍子でアホ毛が抜けてしまったら……その時の対処法が思いつかない………

可能性は低いが『オルタ』が無い……とも考えられる……う~ん……

 

 

ピョンッ!!

 

 

(教会に行くまでは時間あるし……もしオルタになってもすぐに効果が切れるか?)

 

ぶっちゃけ今検証する必要も無いのだが一度考え始めたら止まらない

という訳でアホ毛を思いっきり握ってみる事にした、教会に行くまでに効果が切れれば何も問題ない、洗脳された訳ではないのだ、ある程度の制止は効く……筈……

 

さて………

 

アホ毛に手を添える

抜くのは勘弁、セイバーの容姿なのだ、十円ハゲだけはなりたくない

……では!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケント様!!ご無事でございますか!?」

 

「ケント様の安否と爆発の原因を調べろ!!急げ!!」

 

コルテット内が騒がしくなる

警備員やSP、メイド達が所狭しと走り回る

原因はついさっき起きた爆発音、さらに場所はケントの自室………

もしコルテットの一人息子に何か惨事があれば一大事、武装をした人間が大至急ケントの安否を確認しに走る

 

「「「ケント様!!」」」

 

大勢の人間が一斉にドアを開ける

だが……その瞬間だった

 

「グハッ!!」「グエッ!!」「ガハッ!!」

 

突入した大人達が一斉に空へ飛ぶ

いや、弾き飛ばされた

それに飛ばされたのは全員比較的ゴツイ……というか男ばかり

メイド達、女勢は全くの無傷

 

「ウダウダウダウダと騒がしい、なんだ、俺の休息を妨げる気か?」

 

『えっ?』

 

それを見ていた皆が全員思っただろう

まず、ケントの声が少し違う……なんというか、明るいのか暗いのかよくわからない

それでも『ケントの声』と認識出来るのが不思議だ

そしてもう一つ、ベッドに座りながらこちらにデュランダルを突き出しているケント自身

見間違いかもしれないが……肌が少し白い気がする

ハッキリとした金髪も白身が増したと言うべきか……目の色も少しばかり黄色い

 

「全く、今回は我の器の大きさに免じて許そう、ただ……次はないぞ?それはそうと外へくりだす、支度をしろ」

 

「そ、外へですか!?外へは鮫島様の許可が無いtっゲブシッ!!」

 

ケントの問いに答えた小太りのSPが弾き飛ばされる

ただ、先ほど飛ばされた人間も何事もなく回復しているのでそれ程強くはないらしいが

 

「馬鹿たれ、俺に報告する人間は美少年、美老人、美少女、『美』がつく者以外認めん」

 

(なんて横暴)

 

そこにいた全員が思った事だ

少なくとも、いつものケントはこんなのではない……何があったのだろうか………

 

「フッ、まあ事情はわかった、ようは我が外に出るには鮫島の許可が必要だと」

 

「あ、ハイ、ケント様のお世話の総責任者は鮫島様なので……」

 

いかにも『アイドル』の体型をしたメイドが一歩前に出る

これには先ほどの様に吹っ飛ばされる事もなかった……納得したのだろうか?

 

「総責任者……フッ、笑わせるな、いつから我が鮫島の配下となった、我の行動を制限される筋合いはない」

 

「で、ですが!!」

 

「我が外に出ると言ったのだ!!支度をしろ!!」

 

『は、はい!!』

 

その剣幕に圧倒されて次々と持ち場へつくコルテットの人間達………普通のケントならこんな事は言わない

皆が『偽物』と疑っただろうが………なぜか心の中であれが『本物』だと断定出来る

なぜなのだろうか?

 

「ふん、ならば我は外に出る為の服を選ばなければならぬな」

 

「服でございますか?それならこちらに……」

 

「むっ、どれどれ………」

 

一つ一つ『高級品』だと一目でわかる服を選ぶケント

だが、その中にはケントが着たい服はなかったらしい、すぐに服を放り投げたかと思うとネットを開く

ちなみに放り投げた服、地味にケントのお気に入りだったりもする

 

「ほう、これはいい」

 

「どれでございまっゲブッ!!」

 

覗き込んで来た男をデュランダルでぶっ飛ばすケント

数十メートル飛んだかと思うが……大丈夫なのだろう

 

「こ、これでございますか!?」

 

「何か意見でも?」

 

「いえ!!なんでもございません!!」

 

画面を見て来たメイドが驚愕の顔をするがケントは特に問題なし……と言った様にそれを切り捨てる

その間に……やはり一流、というところか?

何時の間にか車や守護するSP達も待機している

だが服を注文したのは今、いくら早く届ける様に頼んだからと行って最短一時間はかかると書いていた、彼らの苦労は無駄だろう

 

「あの~、ケント様?」

 

「どうした」

 

「一体、どうしたのでしょうか?」

 

メイドの一人が恐る恐る聞いてくる

どう考えてもおかしすぎる、いつものケントではない……だが……

 

「お前……かわいいな」

 

「へっ?」

 

マジマジと顔を見つめられて『可愛い』なと言われたので恥ずかしい物は恥ずかしい

メイドはその場で葺いてしまうが……それだけではない

 

「誰か、絵の具とスケッチをもってこい!!」

 

「え、絵の具とスケッチ!?」

 

聞きなおす暇があるならばさっさと動けと催促させる

 

「あの……午後から聖王教会に……」

 

「む、確かにそうだったな、だが今は街に出ての食べ歩きが先だ」

 

「え?」

 

 

 

やっぱり、何ががおかしいケントだった

 



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黒歴史 2

 

 

「おい店主!!何をもたもたしている!!」

 

「す、すみません!!」

 

店の従業員がドタバタと動き回る

その中心にいるのは一人の少年、十人に聞けば十人とも『カッコいい』と答えるであろうその少年は目の前に山の様に積まれたフライドポテトを滝の様に口に運ぶ

 

……壮観である、一体どこにこれだけの数のフライドポテトが収納されているのだろうか……

そこに隣から一人のメイドが声をかける

 

「ケント様、そんな油まみれの食べ物、お体に毒でございます!!」

 

「食べたい物を好きなだけ食べて何が悪い、これは中々に美味であるぞ?」

 

「で、ですがヘブしっ!!」

 

そのメイドを押しのけて一人のSPが前に出たのだが……これまた見えない早さで突きつけられたデュランダルによって飛んで行く

 

「何度も言わせるな、我に声をかけて良いのは美少年と美老人、美少女はもっといい!!」

 

((((横暴だ!!)))))

 

「店主!!これは飽きた!!次はこのチーズバーガーという物をあるだけもってこい!!」

 

「はいぃぃぃぃ!!」

 

今ケントがいるのはミッドチルダ中心部クラナガン……にあるファーストフード店

そこを『貸切』状態にしてしまっていたりする

ケントがオルタ化してから早二時間、後一時間ぐらいで家にロッサが迎えにくるだろう

だが……そんな事も異も返さず店にある物をとにかく食いまくるケント……ちなみにこれで三店目だったりする

 

食べた物はポテトにハンバーガーにクレープに牛丼に………いつもの食事とはまさに180度違う食べ物のオンパレード

 

そして一番はケントの服装………いつものケントはバリアジャケットと同じ様に黒スーツを着ていたり、もっとこう、高級だがカジュアルな服を私生活では愛用していた

 

だが今回は違う……ケントが着ている服、俗に言う『ゴスロリ』

黒を基準としたフリル付きのスカート、更に半ケツ……半ケツである

 

もう美少年ではなく完璧な美少女、さらに痴女、街中を歩く時はSPを物珍しく皆が見るのだが……今回はケントの方が注目を集めていたのは紛れもない事実である

中にはケントを見て少し危ない奴もいたが……大丈夫だろう、多分………

 

「ほう、これも中々に美味だ、外の世界にはこの様な食物が存在したとはな」

 

「ありがとうございます」

 

店の店主が頭を下げる

コルテットの一人息子に賞賛されたのだ、暫くは客に人足が増えることだろう

 

「ふぅ、確か今日は教会に行く予定であったな、そろそろ帰るとしよう

その前に店主、このコーラという物をあるだけもってこい、一度飲んで見たかったのだ」

 

「そ、そんなドス黒い飲料はっゲフッ!!」

 

こりない奴らである、またデュランダルによって吹っ飛ばされてしまう

もうそれに対してのリアクションはない、慣れてしまったのだろうか?

 

「フム、やはり美味である、店主よ、大義であった」

 

「は、はぁ……」

 

満足したのかその場から立ち去るケント、その後を必死で追うメイドとSP達

ちなみに、そのファーストフード店を黒化したケントが買い取ったのはまた別の話……

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分大胆な格好をしているね……お尻出てるよ?」

 

「何を言っておる、見えているのではない、見せているのだ!!」

 

「そ、そうなんだ」

 

ロッサの顔が若干引きつっているのが遠目からでも分かる

どちらかと言うと引いているのか?

あのロッサが引く程の変わり様……それ程までにインパクトがあったのだろう……

 

「フム、やはりまだこの芸術性を理解する奴はいないか……」

 

「へ、へぇ、芸術なんだ」

 

「フッ、素肌を他人に晒して何が可笑しい、何も恥じる事はないではないか!!」

 

「ちょっ!?だからってここで脱がないでくれ!!」

 

服を脱ぎ出したケントを必死で抑えるロッサ

周りから見れば女の子がロッサに襲われている光景にしかみえない………

 

「フッ、何を恥ずかしがっておるのだ」

 

「イヤイヤイヤイヤ!!」

 

全力で首を横に振るロッサ

色々な意味でヤバイ、ここでケントが服を脱げばロッサに対して色々な疑いがかけられる

 

ゲイやら同性愛やらなんやら………

 

「と、とにかく教会に行こう!!何か悩みがあるなら相談に乗るよ」

 

「天を統べる我に悩みなど不要!!今の我は人生を思いっきり楽しんでおる!!」

 

「よっぽどの事があったんだね……今回はクロノもいるし……教会で話を聞こう」

 

「フッ、我を心配してくれておるのか?

やはりお主は可愛い奴よ」

 

「………………。」

 

もう無言である

それ程までに今のケントはどうかしてる

 

「それより絵の具とスケッチはまだか!!

今の我はロッサという美少年を心ゆくまでスケッチしたい衝動に駆られておる!!」

 

「美少年って……」

 

「ケント様!!これをグバハァッ!!」

 

「お主のような男に頼んでおらんわ!!

美少年や美老人、もしくは美少女に持ってこさせい!!」

 

「………………」

 

 

 

 

 

なぜかロッサはやさぐれたまま、静かに車に乗った

 



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黒歴史 3

 

「好きだ!!我が妻となってくれ!!」

 

「えっ?」

 

周りが固まる

護衛についていたSP、はたまたメイドや騎士達まで

時間が止まってしまったのではないか?沈黙の時間が過ぎる………

 

「えっ、えっ………ちょっ、ちょっと待ちいや!!唐突過ぎるやろそれ!!」

 

「いや、我は本気だ!!このような美少女に会えた事はなんという奇跡か!!ここで妻とせずにいつ決める!!」

 

「いや、確かにケント君みたいなイケメンさんに告白されるなんて嬉しいで!!でもそれとこれとは話が別や!!前に会った時はこんな性格やったか!?」

 

「ケ、ケント!!少し落ち着け!!」

 

「そうだよケント!!本当にどうしたんだい!?」

 

ケントが彼女の手を握りながら必死に演説しているのだがそれをクロノとロッサが無理やり引き離す

周りはまだ固まっている、シャッハは苦笑い、カリムは頬をヒクつかせはやても少し引いている

 

「どうしたもこうしたもない!!目の前に美少女がいるのに何もしないというのが可笑しいではないか!!」

 

「だからって、それにその格好!!ロッサから連絡受けていたのだがこの数日間で何があった!?」

 

「む、お主も我を心配してくれるのか?フム、可愛い奴だ」

 

「だ~か~ら~!!」

 

クロノが頭をグシャグシャにかき回すのをロッサが止める

ケントの格好は相変わらずのゴスロリ半ケツ、これには教会騎士達も目を見開いて驚いていた、学校での評判は聖王教会にも聞こえてきている……成績優秀であるケントがまさかこんな人物像であるとは思っていなかったのだろう

 

「ま、まぁ座りましょう、ケントさんはお茶、どうします?」

 

「ム、茶か?我はサイダーという物を飲んで見たいのだが」

 

「サイダー……ですか?えっと、分かりました」

 

部屋を出て行くシャッハ……逃げたのだろう、彼女もケントがいるこのカオスな空間から一刻も早く抜け出したかったはずである

 

 

ロッサがケントを迎えに来て、教会についてすぐ

数日前に集まった部屋にロッサが案内した、そこまでの通路に置かれたあらゆる芸術品にケントが心を奪われ、買える物は全て言い値で買ったのは余談である

まあそんなこんなで歩いて一分ぐらいの部屋まで十分、ようやく部屋にたどり着き、中から皆が歓迎してくれたその時だ

 

ケントがはやての手を握り、『愛の告白』をしでかした

 

もちろん、ケントの性格を知っている者からすればケントがこんなに破天荒な性格ではない事ぐらい知っている、ただはやてはケントと知り合って数日、真っ正面から伝えられた言葉に動揺し、なんとかロッサとクロノがケントを押しとどめたのだが……まだ微かにはやての頬は赤い

人間意識してしまうも自然とそうなるものだ

 

「お主、スケッチを!!」

 

「はい!!」

 

近くのメイドに声をかけるとすぐにスケッチと絵の具をケントに渡す

というかコルテットのメイド達は皆常備している様なのだが……それ程までなのだろうか?

そして黙々と絵を書き始めるケント、邪魔はしない方がいいだろう

 

「クロノ、少し来てくれ、姉さんも…………ケント、少しみんなと話があるから部屋を出させてもらうよ」

 

「ウム、だがはやてはスケッチしているので駄目だぞ?」

 

「わかった」

 

ロッサがはやて以外の人間に声をかけて廊下へ出る

そして始まる相談会

 

「ロッサ、あのケントの変わり様ななんだ?連絡は受けていたとはいえ想像以上だぞ」

 

「なんだと聞かれても……僕が家に行った時はもうあんなだったからね、理由はよく………」

 

二人が腕を組んで考え込むが一向に原因はわからない

シスターシャッハも帰ってこないので、もう一人、カリムに意見を聞こうとして振り向いたのだが……。

 

「ね、姉………さん?」

 

「…………はい?どうかしましたか?」

 

笑顔で返すカリムだが……管理局最年少執務官と超エリート査察官が一瞬動けなくなった

カリムはそれ程までにドス黒いオーラを放出していた………スーパーサ○ヤ人びっくりのオーラだ………

 

「そうですね………一度頭を冷やしてもらった方がいいのではないでしょうか?」

 

「頭を冷やすって……具体的には?」

 

「S級指定のロストロギアを至近距離で爆発させるとか……アルカンシェルを使うとか………」

 

「「……………………(゜д゜lll)」」

 

最早人間相手にする事ではないだろう、それにカリムはこれを素で言っているので驚きだ、もし彼女にそんな権限があるのなら本気でやりそうである

 

「え、えっと……まあそれはおいといて、まずは原因を探らないとな」

 

「そ、そうだね、理由もなくあんな風にはならないだろうし」

 

取り合えず原因を探るという事で落ち着いた

しかし情報が少なすぎる、少なくとも彼らはケントの私生活や悩みを知っているわけではないのだから

 

「僕のスキルを使えば探れるとは思うけど……」

 

「そうなると色々とヤバイぞ、あれでもコルテットの一人息子、頭の中を覗いたなんて知れたらいくら僕でも庇いきれない、それに君自身、無闇に使いたくないんだろ?」

 

「まあね、それが親友となれば尚更だ」

 

再び考え込む二人、カリムはどこか上の空……と言った感じで使い物にならない、と、そこへ

 

「アホ毛が無かったですよね?」

 

「シスターシャッハ……何時の間に……ん?アホ毛?」

 

「はい、いつもあるじゃないですか」

 

どこからともなくシスターシャッハ登場、手にはどこから持って来たのか1.5リットルのサイダーが抱えられている

 

「確かに、今日はアホ毛が無かったな」

 

「もしかしたらあれが原因なんじゃ……」

 

「う~ん……アホ毛一本であそこまで変わるのかな?」

 

ロッサが首を捻らせるがぶっちゃけそれしか情報がないのだ

試す価値は……ある……

 

「だったらどうにかしてアホ毛を復活させよう、でも、どうやって………」

 

「僕に考えがあるんだが……クロノ、デュランダルは持って来てるかい?」

 

「ああ、ここにあるが………」

 

ポケットの中からカードの様な物を取り出すクロノ

ちなみにこれはケントのデュランダルとはまた違う、ケントのデュランダルは剣でクロノのデュランダルは杖、クロノのデュランダルも『超』高性能なのだがそれでもケントのデュランダルの方が良かったりもする

 

「……………出来るかい?」

 

「………やってみる」

 

小声で話し合った後、クロノがドアを少し開ける

そこにはやはり黙々と絵を書き続けるケント、はやてはと言うと未だ葺いている

周りに気づかれない様にクロノがデュランダルをドアの合間からケントに向け……

 

「エターナル……コフィン………」

 

小声で小さく呟く

するとどうだろう、ケントの『毛』が少しだけ凍りついた、いつもアホ毛になっている場所を同じ量だけ

毛は凍ってはいるがいつも通り堂々と佇む、完璧だ

 

 

そして……ケントの動きが止まる

何かプルプル震えているが……どうしたのだろうか?

 

「ケ、ケント?」

 

恐る恐るロッサが近づいて声をかける

それでもケントは下を向いてうつむいたまま……と、次の瞬間

 

 

「やっちまったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

後にこれは『ケントの乱』として語り継がれるのは、また別の話

 



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黒歴史 その後

 

さて、一言言っておこう

 

ヤバイ………

 

そりゃもう色々と、服装然り言動然り……

なぜか鮮明に記憶に焼き付いているので言い逃れは出来ない、てかなんで外に出たんだよ俺!?

何が芸術だ何が!!ただの痴女じゃねーか!?

それにはやてへの告白……やべっ、今思い出しただけでも恥ずかしい………

 

「えっと……正気に戻ったのか?」

 

「う……あ……あ………」

 

「ちょっ!?なんで泣いているんだ!!」

 

うるせぇ、これが泣かずにいられるか!?

黒歴史確定だぞ!?あんな姿で街中歩き回ったとかふざけてんだ……ろ……

 

「デュランダル!!セットアップ!!」

 

「えっ!?ちょっ!?」

 

クロノが反射的に構えるが今はそんな事関係ない!!

一刻も早く正常な服に戻す事が再前提!!

という事でバリアジャケットを羽織る俺、いつも通りの黒スーツ

 

「そ、その調子だと元に戻ったらしいね」

 

「はぁはぁ…………」

 

未だに顔が熱い

どうしよう……街中歩き回ったから絶対に噂広まってんじゃねーか

イメージとかその他諸々どうなっちまうんだ!?

 

「まあ……少し休んだら?だいぶ疲れてるみたいだし」

 

「(コクコク)」

 

首を縦に振ってロッサの言葉に肯定する

まずは体を休める事が先決だ、今のままじゃろくに話す事も出来ない

自分の椅子に座って顔を伏せる

みんなの顔を直視出来ない、特にはやて

好きでもない奴にいきなり告白されたのだ、めいわく以外何も無かっただろう

彼女、原作三人娘の一人なので彼氏とかも興味は無いと思うし………だってそうだろ?

25になってもお付き合い一つ無いって……寂しくないのかその青春………

まあそんな彼女が、二度会っただけの男にいきなり手を握られて愛の告白、それに別段性格が良いわけでもなくパッとしない俺なんかから………前世は彼女無しの俺なんかにはやてが釣り合うと思うか?

 

はぁ……いくら気が抜けていたとはいえあんまりだ………結果がこれとは……

 

まあ……とにかく……

 

「えっと……ごめん、迷惑かけた」

 

「大丈夫だよ、それにしても何かあったのかい?」

 

「えっと……具体的には言えない、ただ一つだけお願いするとすれば絶対に俺のこの毛を握らないでくれ」

 

「了解した」

 

アホ毛がちょっと凍ってるから……あ恐らくクロノが修復したのだろう

だいたいみんな察してくれている、だけどアホ毛⇒暴走とは思ってないだろうな……

 

「ん?という事はさっきの告白は嘘やったん?」

 

「俺とはやては釣り合わないよ、それでもお付き合い出来るんだったら喜んで」

 

「え?じゃあ「ケントさん!!」」

 

はやての言葉を遮ってカリムが一歩前に出る

頬を少し膨らましてるが……そんな事して『怒ってます』アピールしても可愛いだけだ

 

「ケントさんはコルテットの跡取り、なのでそれ相応の婚約者じゃないと駄目だと思うんです」

 

「う、うん」

 

まあな、こんな事言ってしまうのはなんだがはやては一般市民、それとコルテットの一人息子が付き合っているなんてなれば大スキャンダル間違い無し

て言うか最悪家が動く、それ以前に俺なんかがはやてにフラグ立てるなんて夢物語だけどな

 

「ですからケントさん、さっきの事は水に流して、ここは正当法で婚約者を決めましょう」

 

「いや、なんで婚約者の話になってんの?

今ここで決める事じゃないでしょ」

 

今でも数多の次元世界からお見合いの話が流れ込んできてる状況………

安易に婚約者とか決めたくないんだよな……てかカリムがそんな事言うって事はフラグ立ってる?

いや、それはない………カリムもvividになっても教会から殆ど出ない箱入り娘………お付き合いの話だって無かった筈……

ホント、ガード硬いよな、原作キャラって……それよりまずこんな美人なカリムが俺なんかと釣り合う訳がない

 

「うう……そうですよね」

 

シュンとなるカリム

この子にアホ毛があったら連動するのだろうか?

その表情だけで大半の男子は落ちるぞ?

 

「それよりも……あ、ちょっと」

 

「私ですか?」

 

「そうそう、鮫島と連絡繋いでくれないか?」

 

そう、鮫島だ

あいつ俺が暴走してるのに止めに来ないって……こういう時こそいないと駄目だろ

 

「申し訳ありません、鮫島様は管理外世界に出張中で少しの間連絡がつかないのです」

 

「管理外世界?どこかわかるか?」

 

「いえ、場所までは……」

 

う~ん、ついに管理外世界へと進出し始めたか?

はぁ……俺の噂いつまで続くだろうか……

どうせマスコミとかも嗅ぎつけてるんだろな………めんどくさい……

 

「まあ良かった、ケントが正気に戻ってくれて」

 

「あ、ああ、ホントありがと、いつ戻るかわかんなかったし」

 

う~ん……多分次の頭痛までは続いていたかもな~

これ以上の黒歴史は勘弁………

 

「あ、サイダーは?」

 

「ありがたく頂戴します」

 

次飲める機会いつかわからないからな、今の内に飲みまくろ

 



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よくある事

 

「はぁ~~~」

 

よくある『何とか海峡より深く~』と言ったような深い溜息をつく

 

俺が暴走……してから数日、あれからは………悲惨だった

 

マスコミやらネットやらで大々的に放送されたからな~、『コルテットの跡取りご乱心』って………

ホント、芸能ニュースはそれで独占、一番迷惑かけたのはカリム達か?

どこから調べたのかは知らないが俺たちがいつも一緒にいる事を掴み、接触しにくい俺ではなく俺の周りの人間に目をつけて来やがった

そんでもって聖王教会にはマスコミの波、自分のした事で他者に迷惑がかかるのはいい気分はしない

当然『コルテット』の力を使って全力で止めさせてもらった

詳しい事は『大人の事情』で分からないのだが………なんでもそれぞれの会社の『上』を軽く脅したのだろう

 

はっきり言って『コルテット』を全体的に敵に回すという事はこの世界では絶望的、その先に待っているものなど知れている

 

それ以来パタリと止んでしまった……マスコミはな

 

マスコミは頑張って止めたが『ネット』を止めるなんて逆の意味で絶望的、これはいくらコルテットでもお手上げ状態

 

はぁ……いつあの黒歴史が闇に葬りさられるのやら………

 

「失礼します」

 

「どうぞ~」

 

野太い声の持ち主が部屋のドアを開ける

コルテットのSPの一人だろう……片手には……ああ、またか……

 

「クソッ!!離せ!!」

 

「暴れるな!!」

 

片手には……少年……

髪は整っており全身から『お坊っちゃまオーラ』が嫌という程に感じ取れる………

 

「屋敷に侵入した者です、ケント様の友達と言い張るのですが………」

 

「くっ!!離せって言ってるだろ!!

僕を怒らせたらどうなるか分かっているのか!?僕のパパは管理局の准将だぞ!!」

 

どうしよもない親から生まれるのはどうしよもない子か………いちいち対応するのも面倒になってくる

 

「あっ!?いや~、こんにちは、ぼくは管理局の准将、エルドスカタロフの一人息子、オステリアカタロフって言って、知ってるだろ?僕のパパ、有名人だからね、それはそうと僕は君と少し話がしたくてさ~」

 

さっきまで騒いでいたのに俺を見ると一変、にこやかな笑みを作って気軽に話しかけてくる

………吐き気がする……面と向かうだけでも気分が悪い

 

しょっちゅう……という訳でもないがこういった輩はたまにいる

こいつの様な子供やナイスバディの大人の女性、俺より年下の幼女や本人直々になど……

 

皆『俺と仲良くなりたい』や『俺と話がしたい』など……そしてその背景にいるのが……権力者

 

目の前のこいつなんかはまだマシな方だ、恐らく親やその周りから頼まれてここに忍び込もうとしたのだろう、幼女も『お父さん』のお願いで捕まったりしている

 

たが……結果的にこいつらが見ているのは『コルテット』という組織、それと関係を持ちたいが為に俺と接触しようと……俺と関係を築こうとする……

一番堪えたのは数ヶ月前、一人の少女が捕まって俺の前に来た時だ

 

綺麗な子だった、だが痩せていた

そして彼女は自身が持つ全ての魔力を使ってSPの腕を振りほどき、『俺を押し倒してきた』

最初はビックリした、今までハニートラップは仕掛けられても『押し倒される』という事は無かった、しかもこんな子供に

そして泣きながら言うのだ「こうしないとまた怒られる」「お母さんが死んじゃう」……と………

 

SPが必死に彼女を俺から振りほどき、追い出そうとしたところを俺が止めた

勅命で彼女に身体検査を受けさせ……結果が身体中に残った切り傷や暴力の跡………

 

虐待………いくら俺でもそこまで人間やめていない、爺に命じて直ぐに彼女の父親を調査させ………潰した………

彼女の父親は巨大なIT企業の社長、それを木っ端微塵に、跡形もなく潰した

勿論そこに務めていた社員は全員『コルテット』に採用、彼女の母親はコルテットが保護

 

彼女は今、母親と一緒に暮らしているらしい

 

まあ、話は逸れたが俺が言いたいのは『コルテットを狙って近づいてくるやつもいる』と言う事

勿論、見たところこのお坊っちゃまにそう言った事情はありそうにないし………悪いがご退出願おう

 

「ちょっ!?何をする!!離せ!!」

 

俺が横に首を振るとSPが目の前のお坊っちゃまを連れて部屋から出て行く

 

はぁ………今月に入ってから三回目だな、よくコルテットの警備システムで死ななかったものだ……自動警備範囲に入る前に捕まえたのか?

話でしか聞いた事がないが……ワニとか普通にいるらしいからな……コルテットの技術ならリアル『ジュラシックパーク』とか作ってそうで怖い

 

はぁ…………うるさいのも出て行った訳だし……研究所潰しでも始めますかね

 

 

そう言えばクロノとはやてが地球である事件に当たってるらしい、十中八九『闇の欠片』だろうが……俺には関係ないか

 

さて、研究所を潰す前に掲示板でも潰すか?

あんな黒歴史ほっとくのも嫌だしな

 



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過去の俺

 

「マジか?」

 

『残念だか、大マジだ』

 

通信越しにうなだれる

こんにちは、ケントだ

 

いつも通り学校へ行き、いつも通り部屋でゴロゴロしてたら爺が俺を呼び出した

なんでも任務で出張中のクロノからだとか。……仕事中に連絡なんかしてくんなよと思いながら変わったのだが……そりゃ~連絡しないとおかしいわな 

 

ところで話は変わるが、『時間移動』って知ってるか?

ほら、あの青たぬ………猫型ロボットが持ってた世界そのものを過去から改変してしまうようなあれ

前世ではろくに規制とかされていないあの道具に物凄い疑問を抱いたのだが……この際ほっておく

 

あれは二次元の世界、まあ今のこの世界も元は二次元なのだがそこまで技術者が進歩しているわけじゃない

 

ドアを開けると一瞬で移動したりしょっちゅう故障し、電池切れになった瞬間墜落するプロペラも開発されていない

なのに……だ、まさか、まさかの

 

「過去の俺……だと……」

 

『ああ、今はコッチで保護してるのだが……』

 

いや、あり得ん

大体今の時代で開発されていない時間移動の願念をなんで過去の俺は達成しちまったんだ?

てか過去の俺でも俺は俺だろ?

そんな事した記憶力ないんだが……そもそもそこまで頭良くないし……

 

『まあ過去の君の事は置いて置いて、過去の君が関わっているということは今の君はこの事件をすでに経験済みだと思うんだ、事件の一刻も早い解決の為に情報をくれないか?』

 

「えっと………」

 

クロノは俺が過去に経験しているので事件の内容を知っているつもりでいるが………出来ればちゃんと教えてくれたらな~とも思う

てかマジで記憶にねーぞ、あれか?タイムパラドックスか?

俺が経験していない過去を過去の俺は経験してる的な?

 

だが……時間移動って……なんか引っかかる

そんなイベントあった様な無かった様な……なんか原作知識がだいぶ抜け落ちてるな、それはそれでしょうがないか

 

「えっと……一応事件の詳細を教えてくれないか?」

 

『ん?あ、ああ、わかった』

 

向こうは少し怪訝な顔をしたがわかってくれたらしい

懇切丁寧に説明をするクロノ……うん、そんなイベントあったね、すっかり忘れてたよ

あれってゲーム第二弾だからね~、リリなのの事件でも危険度上位に入るあれ

下手すれば全員死んじゃうし……どうしてそんなものに関わった、過去の俺よ………

 

「あ~、悪いがクロノ、その事件に関する記憶は全くない」

 

『記憶が、ないだと?』

 

深く考え込むクロノだが……まぁ、あれだね

 

「ただ夢みたいにフワーとした感覚はあるから……多分第三者によって消されたんだと思う、タイムパラドックスってあるだろ?」

 

『今の技術で特定の記憶だけを消す技術は

無いんだが……彼女達なら可能か……なるほど、確かに頷ける』

 

流石最年少執務官、理解が早い

ああ、クロノに説明された向こうの状況を簡単に説明しよう

まずはマテリアル達が出現、偽物や異世界からの渡航者が出現、ピンク色の切嗣……じゃなくてキリエと王様によって砕け得ぬ闇、『UーD』が現れて暴走

確か『ユーリ』って名前だったよな、なのは原作キャラの中でも俺好みだったのはよく覚えている

 

原作では確か……全員出撃の実質的リンチで元に戻ったはずだけど……今回は『俺』というイレギュラーがいるからな~

クロノが言うにはまだ六歳だって言うし……まだ魔法に触れて数ヶ月だろ?

う~ん、ユーリと決戦になったら即負けるな、皇帝特権使っても精々足止めが精一杯だろ

 

『そうか……ありがとう、情報提供感謝する』

 

「ああ、それとそっちの俺とちょっと話をさせてくれないか?

盗聴とかは社会問題になるからやめろよ」

 

『僕もそこまで馬鹿じゃないよ、盗聴なんかしないから安心してくれ』

 

そう言って一度通信を切るクロノ

こういう時だけ便利だよな、コルテット

まぁ、俺は自分の目で見ないとマジでは信じないからな、直接会うまでは………

 

「マジかよ…………」

 

『それはこっちが言いたい、マジかよ……』

 

……イケメンだね、六歳なのにイケメンだ

てかマジかよ、少しぐらい現実逃避の時間ぐらいくれよ

てかマジでか………

 

「まさか俺がGODに介入してるとはな……原作に介入してなかった分こっちで介入してたか……」

 

『あ、やっぱり今回の事は記憶に無いんだ、まあ最後にはみんな記憶消したからな、タイムパラドックス防ぐ為に………』

 

「いや、なんとな~く覚えているぞ、夢みたいな感覚だけど……」

 

ほんとフワーとだけどな

 

『そうなのか………てかそんな事より!!』

 

いきなり大声を出して来た俺、なりふり構わずとかちょっと引く

で、なんでそんなに興奮してるんだ?

 

『はやてとクロノ、二人に面識があんだって!!やったな俺!!ついに友達ゲットじゃねーか!!』

 

「友達……か………そうだったらいいのにな………」

 

まあ、本当にそうだったら嬉しいんだが……信用は……していない、だって……

 

「クロノもはやても……俺を友達だと見てくれてんのかな……管理局の回し者とかじゃ無いよな」

 

『管理局の……回し者?』

 

「ああ、この頃許嫁候補とかに管理局で将来が期待されてる奴とがが増えてきてな………それにコルテットの技術を盗もうとして俺に近づいてくる奴もいるし………はやてと喋ってたらカリムが不機嫌になるし……」

 

そう、『友達』という言葉は俺にとって毒でしかない

その言葉で俺を騙し、その言葉で俺に近づこうとする……こいつは、まだそれを知らないんだな

 

『カリムが不機嫌になる?それってフラグ立ってんじゃねーか?』

 

フラグ?そんなんだったら万々歳さ

だけどそんなおめでたい事は、俺なんかいう中身普通の高校生にはあり得ないよ

それに……はやて達だって……

 

 

「は?お前も俺なら分かるだろ?

俺なんかに原作キャラを惚れさせる要素が何処にあんだ?

どいつもこいつも金目当ての駄女ばっかだよ………はやては比較的いい奴なんだけど……局に頼まれて俺に近づいているのかどうなのか………

それにカリムは俺の見張りで教会のコマだしな………あんな綺麗な奴が俺と無理矢理結婚させられるなんて可哀想だ

教会の命令でイヤイヤ俺に近づくんじゃなくて本当に好きな人といた方が何倍も幸せに決まってる

それにクロノ、原作を見てたらあいつはそんな奴じゃ無い……ってわかってるんだが……やっぱりコルテットの技術を盗もうと局から俺に近づく様に『命令』されてる奴もいてな………友好的に接してくるんだが……そういう奴らは見ていると吐き気がしてくる」

 

そう、俺はそんな奴らに何人も対面してきた

そしてそいつらの多くは、俺と年が違わない子供だと言う事………

 

「…………だよ……な……」

 

向こうの俺が肩を落とす

残酷だが、これが事実上

こいつも分かる時がくるさ

 

「まあ、お互い信じられるのは自分って意味さ、それでどうするんだ?

GODとかリリなのの中でかなり危険な部類だと思うが……」

 

『やれるとこまでやってみる……いざとなったら最後の特典使えばいい』

 

最後の特典って………

 

「うっ……出来ればやめてくれよ、まだ管理局にバレてないんだから……まあ過去の俺がピンチなんだ、リンディ提督も余程の事がなかったら戦わせたりしないと思うけど……一応爺と掛け合ってみる。

《地球に行かせてくれないか》って」

 

『皇帝特権とか俺より上手く使えるんだろ?

来てくれたら助かるよ』

 

「あまり期待するなよ……じゃっ、またな相棒!!」

 

『うん、もう一人の僕!!』

 

通信を切る俺達

出来れば助けてやりたいんだが……爺がそんな事許してくれるだろうか?

………あり得ん、かと言ってコルテットの

人間を代わりに派遣してもユーリの前には虫けら同然だし………

過去の俺を見殺しにするのもな~、今のところ俺の事を唯一理解して受け入れてくれる人間だし

だってそうだろ?同じ『ケント・コルテット』なんだから『コルテット』を見る事はないしな

 

さて、どうするか………

 



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怖い者達

 

さて、少しだけ考えてみよう

 

さっき俺は『爺に相談してみる』と言ったが……無理じゃないか?

 

第97管理外世界『地球』、97という超高い数字を持ち、なおかつ管理外世界、更には魔法文化無し

さらには少し前にS級指定されたPT事件に同じくS級指定の闇の書事件………さらには絶賛S級事件中………

 

………無理じゃね?常識的に考えて

一応俺箱入りのお坊っちゃま、それなのにそんな危険極まりない世界に行きたい?

………断言しよう、絶対に不可能だ

全力で止められる事が目に見えている、俺が爺の立場でも止める

 

じゃあ、どうするか……

当然、過去の俺を見捨てるという選択肢は却下、そんな事してもし過去の俺が死ねばこの俺もどうなるか知ったこっちゃない

てか自分を見殺しにするなんて気分悪いだろ

だが今のところ手詰まり状態なのはどうしよもない事実……マジでどうなるか……

 

「一番手っ取り早いのは……脱走かな……」

 

今回ばかりは仕方がない、今まで周りに迷惑をかけたくないばかりにしてこなかったが………

だが問題はどうやって脱走するか……皮肉な話だがコルテットの警備システムは完ぺきだ、いくら皇帝特権を使ったも容易に抜け出す事は出来ない

さらには地球への移動、コルテットの技術を使えばほんの数分でたどり着けるかもしれないが許可をとれない状況で使う事はまず不可能、てかバレる

ホント手詰まりじゃねーか、俺の時はどうやって来たんだ?

 

腕を組んで考えるがいいアイデアが思いつかない

もっといい方法は無いのか?移動と脱走を一度で出来る様な………

 

「あるじゃねーか、適正があるかは知らないけど……」

 

ポンっと手のひらを拳で叩く

恐らく可能だろうが推測でしか無いので何とも言えないが……今のところこれしか手段はないのも事実

まあまずパソコンのスイッチを入れて地球の『座標』を調べる

確かフェイトが原作でどうたらこうたら言ってた筈だが……クソ長かったのだけは覚えてる

……流石に地球の座標なんて中々見つからないと思っていたが案外直ぐに見つかった、どうやら二つの事件のせいで比較的有名になってるようだ、ご丁寧に海鳴の座標を示してくれていた、相変わらずクソ長いのだが……

あとこれは余談だが……『冬木』っていう地名が出てきた時は流石に焦った、本物いたりしねーよな?

 

ま、まあ座標を紙に移し準備完了、あとは皇帝特権で主張すればいい

 

方法は簡単、『長距離転移魔法』を使う

はっきり言って転移魔法など一度も使った事がないヨチヨチベイビーがいきなり『長距離転移』など使うなど無謀なのだが……皇帝特権で一流にまで引き上げられているのだ、失敗はしない……多分………

 

間違えたら虚数空間に落ちる可能性があるのだが……大丈夫だよな……多分……

 

「さ、さてと」

 

デュランダルで一度セットアップし黒スーツを身に纏う

……この頃露出が激しい服にひかれるのは気のせいだろう……最近赤が好きな色になったのも……気のせいだと思いたい……

 

デュランダルを腰に刺して暗唱をする、ホントクソ長い座標だな、意味のわからん数字をただ言い続ける俺って周りから見れば変人にしか見えん

二分ぐらいの暗唱が終わりミッド式の黄金の魔方陣が光り輝く………軽く目を閉じて今からくる衝撃に備える

いきなり地面の中……などは無いと思うが……空中だったりはするかもしれない

海の中かもしれないし地面の上かもしれない、まあどんな状況でも対応出来る様に構える

 

ひときわ眩しく光り輝く黄金の魔力……エクスカリバーの時もこれぐらい演出してくれたら嬉しいんだけどな………

 

そして……足に軽い衝撃

どうやら空中でも海でもなく運良く地上に降りる事が出来たらしい

今の状況にふと安堵し、ゆっくりと目を開ける

ただ……そこで見たのは……

 

 

 

ピンク………

 

 

もうピンクとしか言いようがない、ハート形のオブジェにピンク色のフリルのついた服、そして………

 

 

髭の生えた『女性の様な格好をした人達』

 

 

額に汗がじわりと流れる

女の様な……いや、いい年したおっさん達の目線が俺を射殺す様に突き刺さる……英霊アルトリアもここまでの恐怖を感じた事があるのだろうか?

英霊エミヤでさえたじろぐであろうその空間はもはや『無限の剣製』など生ぬるい……

セイバー譲りの直感Aが警報を告げる、ここから早く逃げろと、早くしなければ命よりももっと大切な何かを失うと……

 

「かわ………」

 

「えっ?」

 

「「「可愛いーーーー!!」」」

 

「っ!?」

 

女口調だがかなり低い男声が決して広く無いこの空間に響く

魔の手が忍び寄る、ヤバすぎる、もう魔法の秘密などどうでもいい、今はただ……逃げるのみ!!

 

「デュランダル!!」

 

ストライクエアでの高速移動で唯一のドアの前まで移動し、デュランダルでドアを切り裂く

そこからはただただ走る、身体強化やらなんやらを全力で駆使してとにかく走る、ただ………

 

「こっちにいたわ!!」

 

「坊やーーー!!」

 

「怖くないわよーーー!!」

 

「一度だけ抱かせて~~」

 

「ひぃぃぃぃぃぃ!!」

 

あいつら、皇帝特権やら身体強化をフルに使ってもまだ追って来やがる!!

てか本気で童貞奪われそうなんだけど!!まだ九歳の俺に何欲情してんのあいつら!!

 

「坊やーーーー!!」

 

「デュ、デュランダルぅぅぅぅ!!」

 

ソニックフォーム顔負けのスピードで俺の目の前に洗われたオカマを非殺傷設定にしたデュランダルで斬りつける

なにが「アンッ」だ!!気持ち悪いだけだよ!!

てか応援呼ぶなお前!!数が半端なくなるだろ!!

 

「私も斬ってぇ~~」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」

 

こいつら斬られることに快楽覚えやがった!!

迂闊に斬れないじゃねーかよ!!ただ単に気持ち悪いだけだし!!

てかなんで俺追っかけてきてんの!?確かにセイバーの容姿は俺もいいと思うけどこの男だか女だかよくわからんおっさん達を全員欲情させちまうぐらいなの!?

 

「全国ショタっ子同盟サミットに舞い降りた一人の天使!!何がなんでも捕まえるのよ!!」

 

「だだの変態の集まりじゃねーか!?」

 

なんだよ全国ショタっ子同盟サミットって!?

なに?そのど真ん中に俺が転移してきたの?

そりゃ天使やら神やらと間違えるわな!?黄金の魔力だし容姿セイバーだしショタだし!!

 

「くそっ!!気は進まないけど……」

 

このまま鬼ごっこしても逃げきれる自信は……無いな……

それにここについてからどでかい魔力感じるし………時間はあまりない……

 

「ショタっ子ぉぉぉぉ!!」

 

「『超特大』、ストライク……」

 

デュランダルに高密度の風を集める

相手の威圧感は半端ないが、もっと引き付ける………いけ!!

 

「エア!!」

 

「「「あああぁぁぁぁぁん!!」」」

 

気持ち悪い声を出しながら吹っ飛んでいくオカマ達

こんな事の為に本家セイバーも宝具を使われると思って無いだろうな……って………

 

「捕まえたぁぁぁぁぁ!!」

 

「っ!!」

 

上空からの強襲、だけど……

 

「転移!!」

 

「えっ?」

 

素っ頓狂な声をあげるオカマだが知らん

転移場所は巨大な魔力が充満している上空、結界内に転移など普通は出来ないだろうが『一流』をなめてもらっては困る

 

 

 

 

 

目の前からオカマが消える、黄金の魔力に包まれて移動した場所は真っ暗な結界内

 

そして真下には………満身創痍の俺と手に巨大な劔を持つユーリ……って!?

 

「ちょっ!!やべぇ!!」

 

UーD改めユーリが手に持っているのは俺の魔力の塊、そして記憶が正しければあれはユーリのフルドライブ、『エンシェントマトリクス』

ゲームだったら戦闘不能ぐらいですんだけど現実であれをくらったら死亡確定じゃねーか!!

それにあれ、俺の(偽)エクスカリバーじゃ太刀打ち出来ねぇほど魔力が圧縮されてやがる!!

それになんで俺とユーリが一対一で戦ってんだ?周りに原作キャラいないってどう言う事だよ!?

……くそっ、なんなんだよこの急展開!!

 

下でユーリがグダグダ言ってる様だが無視!!一気に俺向かって急降下する

あ~、後々大変だろうな~、でもこれ以外方法見つからねぇし………

 

「うおぉぉぉぉぉぉ」

 

叫び声をあげながら急降下する俺に流石のユーリも気づいたらしい、だが……遅い

 

「らぁ!!」

 

拳を思いっきりユーリの持つ劔へと叩きつける………

魔力の塊である劔が一瞬で粉々に破壊され、目を見開くユーリ

 

 

そう、これが、第三特典でもあり、戦闘用の為だけにあるレアスキル『破壊(クラッシュ)』

 

 

 

……………レアスキル登録とかめんどくさそ………

 



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それぞれの思考

40

 

「ふぅー、なんだよなんだよ、皇帝特権で長距離転移やらなんやらを主張して爺に無断で来てみれば………転移先がオカマバーって……てか何なんだあのオカマ達……SPびっくりの連携で俺を捕まえに来たんだけど……逃げる為に皇帝特権全開って……」

 

「それは……残念だったな」

 

ナイスタイミングな登場をした俺だがさっきまでの不遇さに軽くぼやいてみる

うん……なんか過去の俺がえらくげっそりしているが大丈夫だろうか?

あとそんな哀れみの満ちた目で俺を見ないでくれ、軽く傷つくぞ?

 

「おー、大丈夫だったか相棒、あれって『エンシェントマトリクス』だろ?食らってたらいくら俺でも危ないな」

 

「いや、てかよかったのか?今のって『破壊(クラッシュ)』だろ?」

 

「あれ以外に思いつかなかった、後悔は……してる………」

 

「アースラから丸見えだからな~

コルテットからの脱走にロストロギア認定確実のレアスキル……頑張れ、もう一人の僕」

 

これからしないといけない申請やらなんやらを考えて肩を落とす

アースラから丸見えだろうからな~、クロノら辺はしつこく調べるだろうし……

あ~、せっかく隠してきた九年間は無駄になったか~

まぁ……とりあえずそれは置いておこう、それよりまずはげっそりしている過去の俺の心配だな……

 

「で、どうすんだ?戦えるのか相棒?」

 

「今の状態で?魔力ごっそり奪われたよ……」

 

「と言う事は俺一人であれの相手をしろと?

俺のくせに案外鬼畜じゃね?」

 

「魔法に触れて数ヶ月の奴があんだけやったんだ、行って来いもう一人の僕」

 

いや、お前の事情なんて知らんし

てか魔法触れてから数ヶ月のお前も今の俺もそんな変わらないだろ、まずあんな魔力の塊的な相手に一対一とか無謀すぎる

まあ、そんなことより……ユーリと俺との相性が先だ、だって……

 

「てか俺もあいつと相性悪いんだよね、砲撃相変わらず使えないし」

 

「え?」

 

素っ頓狂な声をあげる過去の俺

いや、予想ぐらいついてただろ?砲撃適性皆無だよ……

もうなんか適性そのものを破壊された感じ、使えそうなのに全く使えない的な?

なんなんだろうな、この感覚………

 

「なんかこの三年で習得した技とかないの!?ルフィだって二年でむっちゃ強くなったじゃん!!」

 

「ない……かな?

魔力値が少し上がったのと(偽)エクスカリバーがちょっと強くなったぐらい」

 

「全く使えねぇよコンチクショウ!!」

 

ぐぎぁぁぁぁと嘆く俺

だってしょうがないじゃん、変な期待するなっつーの

まずあんな漫画の様にホイホイ強くなれたら誰も苦労しねーよ、てかあいつらと一緒にすんな、覇王色の覇気とか勝てる気しねぇ……

だけど過去の俺から突き刺さる期待の目……くそっ、まぶしすぎんだろ!!

あ~、成長したのか?何かないか何か……あっ!?

 

「あ、あと体力が増えたぞ!!」

 

「この状況で必要か!?」

 

スパコーンと俺の三年間の努力を否定する過去の俺

これでも努力してんだぞ!!自分自身の剣の腕も一流に体を任せているおかげで大分上達したしな!!

……って………ユーリさん、なんですかその翼

赤と黒とか物騒すぎません?

ちょっ!!

 

「うっ……」

 

「また撃ってキター!!」

 

盛大に叫ぶ俺だがそんな事してる暇があるのなら避けろ!!

見た感じ一発でも当たれば致命傷じゃねーか!?てか他の原作キャラはどうしたんだよ!?

全員リンチで終わらなかったのか!?

てかもう………

 

「はぁ、お前の気持ちも俺だからわかるけどよ……もう完全破壊でよくねぇか?

死んだら元も子もねぇーだろ」

 

「いや、この先の時代でも原作キャラ全員、俺だって生きてんだ!!未来の俺はどうにかしてこの状況をなんとかした筈!!」

 

「うおっ、頭いいなおい、過去の自分とは思えねぇ」

 

まぁ……それぐらいは分かってるんだけどぶっちゃけめんどくさい

命かけてまで救う必要無くね?この頃の俺ってなんか純粋……

はぁ……てかこのままじゃ何年かかってもユーリ助けられねぇぞ、せめて……

 

「あーもう、派手に『エクスカリバー!!』とか宝具使えたら一発で終わるのに……」

 

「だから俺らは砲撃の適正皆無だろ!!

それに本物の聖剣が無いのに宝具なんて……出来るな」

 

「マジか?」

 

え?宝具出来んの?

いや、でも……無理じゃね?

俺らって特に特別な伝説作った武器持ってるわけじゃねーし……

 

「いや、あるじゃん、セイバーと言えばエクスカリバーとかに目が行きがちだけど俺らにはセイバーがもう一人いるじゃん?」

 

「………ああ……確かにもう一人いないと俺ら即刻死んでるもんな」

 

確かに……青のセイバーだけだとここまで俺なんかが戦う事が出来ないからな

合法チート能力使ってたの忘れてた……

 

「よくあるじゃん?『一人じゃ無理だ!!仲間がいるから強くなれる!!』的な?」

 

「仲間なんていないけどな、自分だけどな」

 

「ほっとけ」

 

さみしい事思い出させんな馬鹿野郎

マジで信じられるのは自分しかいねーんだよ

くそ、それはそうと……

 

「出来んのか?」

 

「言い張ればいいんじゃないのか?あれって技術だし……」

 

「確かに」

 

あ、あとユーリはまだスフィアを撃ってきてるぞ、避けながら話をしてるわけじゃない

 

右手を突き出して俺に向かってくるスフィアを全て『破壊』する、こっちの方が楽だしね

 

それでもこの特典、触れた物しか破壊出来ないから『空間』ごと破壊してる

過去の俺も手を顎に乗せながら同じ様に破壊している……シュールな光景……

 

「で、すんの?」

 

「勝つ為にはそれしかなくね?」

 

「うん、そうだな」

 

まあ、俺一人で戦うよりは数倍勝率は上がるだろ、まだ俺死にたくないし……

まあそんなの訳でやります、宝具!!

 

「叫ばないとダメか?あれ?」

 

「叫んだ方がいいんじゃね?」

 

「はぁ……なんか過去の俺に命令されてる感じがするけど……了解」

 

指導権握られちまってる感じがするんだが……まあ、いいか?

そっちの方が楽だし……

 

ユーリからのスフィア?

諦めたよ、あの子

で、次の手段としてなんか凄く大きな魔力の塊を作ってる……あんなのくらったら骨も残らず焼け死にそう……

 

さて、気を取り直して………

 

「我が才を見よ!!」

 

最初はやっぱり先輩である俺からだよな

これで……よかったっけ?

 

「万雷の喝采を聞け!!」

 

合ってるのか?

前世の知識とか殆ど覚えてないからわかんね

 

「インペリウムの誉をここに!!」

 

「咲き誇る花の如く………」

 

さて……次で………ラストォ!!

 

 

 

「「開け!!黄金の劇場よ!!」」

 

 

 

 

 

 

世界が光に包まれた

 

 

 

 

そう………光に包まれて終わる筈だった

 

だけど……………

 

 



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ノイズ

 

「童女謳う(ラウス・セント)」

 

「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「華の帝政(クラウディウス)!!」

 

過去の俺がとどめの一撃をユーリに当てる

……まさか赤セイバーの技をここで出してくるとはな……あまり表舞台に出て来ないから忘れてた……あいつはよく覚えていたものだ

 

流石に今の一撃は応えたのだろう、ユーリがゆっくりと崩れ落ちる

そして過去の俺も……さっきの一発に魔力使いすぎたな、すぐに目覚めると思うが………

 

「ふぅ……お、壊れるか?」

 

威風堂々と輝いていた黄金劇場にヒビが入り始める

勝者と敗者が決まった、役目が終わった劇場はもう用無し、さっさと崩れて貰っていい

 

てかこの黄金劇場についてもなんて説明しよう……リリなのの世界にこんな大魔法無いからな……

だからこそ二人がかりだったんだが……こりゃ後から面倒だ

 

デュランダルを肩に担いで元の世界に戻るのを待つ

ん、その前に過去の俺とユーリを回収しないとな、元が海の上だから飛行魔法かけとかないと真っ逆さまだし

 

よっこらせと立ち上がって二人を担ぎ上げる、二人とも軽いな、

身体強化してるのに簡単に持ち上げられる、今の俺も体重は軽いから過去の俺はいいとして……ユーリは意外だ

う~ん、『食事』という概念理解してるのかな?

プログラム体だから……大丈夫なのか?

てかマジで可愛い、ホント俺好み

おへそ出す服とかエロいだけ、担ぐと肌が触れて……うう………

 

と、その時だ………

 

 

 

ビビッ

 

「え?」

 

黄金劇場が崩壊する寸前、突然頭に直接的叩きつける様に走ったノイズ

頭痛がする、『頭痛持ちB』の効力でもない……くそっ、なんだこれは!?

 

 

 

 

ビビッ!

 

目の前が白くなる

それと同時に頭に送られてくるノイズがかかった映像……これは………

 

 

ビビッ!!

 

人影……誰だ?

その人影から放出される巨大すぎる魔力、その魔力が俺に狙いをつける……なんだこれは……

 

 

ビビビビッ!!

 

音は全くだが……豪風……

恐ろしいほどのプレッシャーが叩きつけられる

巨大な魔力が俺の中を流れる……そして俺に入ってくる『何か』

 

 

 

ビビビビビビビビッ!!

 

体を徐々に侵食していく魔力

とてつもなく嫌な予感がする、本能が警戒を告げる

そして……………

 

 

ビビビビビビビビビビビビッ!!

 

「う・・あ・・・ぁぁぁ・・・・ぁぁ・・!!」

 

微かに聞こえる絶叫、それと共に退いていく魔力

そして……俺の中の『何か』が壊れる感触

目の前の何者かの手が遠ざかる……クソッ、まだ…………

 

 

 

「はっ!?」

 

目が覚める

周りは一面暗闇の海

月の姿が水面に映る、結界のせいだろうか?

雲一つない漆黒の空が世界を支配する

あの煌びやかな劇場の姿は……ない………

 

「………………。」

 

いや、そんな事はどうでもいい

俺が気になるのは、さっきまでの映像

なんだったのだろうか?前世の世界で『魔法』なんて願念はそもそも存在していなかった

となると……この世界での出来事になる……だが、あんな記憶は無い

セイバーの直感が未来の出来事を映像化させたのだろうか?それとも………

 

『黄金劇場』というこの世界とは相寄らない力によって、『忘れている記憶』を掘り起こしたのか?

 

「…………まだ、調べる必要がありそうだ」

 

あんな映像を見せられたのだ、何か無い筈がない

そもそも『コルテット』という組織が今の俺の印象では『黒』なのだ、調べれば何かが出てくるかもしれない

 

だがあの人間……俺に何をしたかったのだろうか……

ただ、あの巨大な魔力は『異質』であったと断言出来る

そして、あの魔力を撃退した代わりに俺の中の『何か』が砕けた感じ……あれはいったい………

 

「時空管理局です!!武器を降ろして下さい!!」

 

「怪我人の確保!!急げ!!」

 

アースラの戦闘員……だろうか?

俺が担いでいる二人を預け、俺もアースラまで案内される

どうやら原作キャラ達、俺のせいでパワーアップしたユーリにボコボコにされたらしい

まぁ……気持ちはわからんでもない、彼女が合法チートだと言う事は対峙した俺が一番分かる

あれに『数の利』は通用しない、慣れない共闘をしたところで圧倒的火力で押し潰される

とてもじゃないが九歳児が真っ正面から立ち向かう相手じゃない、それこそ『無謀』である

 

ん?転送ポートに着いた様で疲れきったままだが何時の間にかアースラ内に転移する

 

………これ、コルテット製じゃね?

アースラの意外な一面を見た俺だった、だってこの内装、同じ様な製品見た事あるもん

てかコルテットって何作ってんだろ……薬やら船やら食料品やら………

 

はぁ……それはそうと寝かして欲しい……この体はまだ九歳、こんな深夜での戦いなど苦痛意外何者でもない

それに今夜は魔力行使をし過ぎた、瞼が自然と閉じていく

肩を担いでいる局員が声をかけてくるがそれに応答する力は残されていない

 

………おやすみなさい……

 



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身長

 

「ふぇ~、こうやって並ぶと壮観やね~」

 

「てか普通こんな事あり得ないからね、ん、てかプニプニしないで」

 

あの戦いから数時間……原作キャラの皆さん方は世界の修正力?的なもので奇跡的に皆無事だった

普通あり得ないんだけどな、ガチな殺傷設定、尚且つ魔力の塊みたいな奴を相手にして全員無事なんて……

 

まあそんな訳で、ベッドの上で目が覚めたら目の前にはやて………おでことおでこが触れた時は焦った

はやてもヤバイと思ったのだろうか……直ぐに頭を引いたのだが……あれは可愛い過ぎた……

いや、だって目の前に将来有望な美少女だぜ?いくら俺がロリコンでないと言っても今では同年代………顔が物凄く熱かった……

 

ちょっとした沈黙の後、何事も無かったかの様にはやてが何気ない話を振ってきたのでそこから正常

因みにはやてが『壮観』と言ったのは俺の隣に過去で俺が眠っているから……

う~ん、やっぱりちっちゃいな、俺が言えた事じゃないけど……

 

「うん、やっぱり弾力が違う、流石ケント君や」

 

「弾力って……そうか?」

 

う~ん、普段自分のほっぺたなんて触らないからな~、てかそれならはやてのほっぺたの方がいいんじゃないか?

 

「あ、はやてちゃん?リンディさんが呼んでますよ」

 

「あ、わかったシャマル、じゃあまた後でな~」

 

扉から出て行くはやて、残されるのは俺とオバ………金髪のお姉さん

何でだろうか……今一瞬大気が震えたのは気のせいだと思いたい

 

「え~と……ケント君でよかったかしら?」

 

「え、はい」

 

「一応体の検査しておきましょうか、大丈夫だとは思うけど……」

 

「は、はぁ……」

 

言われるがままに検査を受ける俺

……自己紹介とかはしないのだろうか、話しかけ辛くてしょうがない

 

「え~と…その~」

 

「………シャマルさんでしたよね?ありがとうございます」

 

「え、いえ、こちらこそ……」

 

……大人、と言えるだろうか?

俺が何者であるかは理解しているらしい、はやては純粋な子なのでそんな事は無いのだが………まあ分かっているんだったら無理に話しかける事もないだろう、彼女達は一応管理局の監視対象、その間に何かしでかす様ならば主であるはやてにどんな危害が加わるが分かったもんじゃない

 

「ああ、目が覚めたか」

 

「あ、クロノ君」

 

「おお、クロノ」

 

右手に包帯を巻きながら部屋に入ってくるクロノ

まぁ……無事で何よりだ、原作ではあまり登場してないが万が一があったら大変だしな

 

「今回の件、アースラの執務官として、局員として、悪い事をした」

 

「いやいやいやいや、あれは俺が勝手にした事であって謝られる筋合いはないから、謝るんだったら異次元からの渡航者?的な奴らに謝れよ」

 

「だ、だが……」

 

「管理局とコルテットの仲は安心しろ、俺が何とかしてやるから」

 

クロノはまだ何か言いたそうだったが強引に押しとどめる

何より、あれは俺が勝手に脱走して勝手に参加したものであってこいつらの責任じゃない

俺が勝手にした事が周りに迷惑をかけるのはいい気分はしない

まあ、あまり深く考えるなと言うことだ

 

「そう……か、分かった、それでどうだ?丁度お昼の時間だし、昼食を用意しているんだが」

 

「え?今昼なの?」

 

……知らなかった、精々夜明けだと思っていたんだが……

確かに、昨日の夜から何も食べていないせいで腹は減っている、ここはお言葉に甘えて貰おうかな………

 

「う……う~ん」

 

「お、過去の俺も起きたらしいな」

 

眠そうに目をこすりながら腕を伸ばす過去の俺

う~ん、違和感が凄い、特に自分がいつもしている動作だけに……

 

「立てるか?」

 

「ん、それぐらいは大丈夫、あ、それで検査の方は?」

 

「は、はい、異常なしです」

 

………硬くなってんな~

もうちょっと優しくなれないものかね~

まあ、しょうがないんだけど………

 

「ケント」

 

「なんだ~」

 

「あの魔法の事、キチンと教えてもらうからな」

 

「……………」

 

クロノのこの堅苦しい性格は、何とかならんのかね~

と、言う訳で寝起きの過去の俺を連れてやってきたのはアースラの食堂……原作キャラ勢ぞろいって感じだな

う~ん、まさかこんな形で巡り会えるとは……世の中よくわからん

かと言って近づくのも気が引ける、特に守護騎士とフェイトは今だ管理局による監査中……下手に接触して、彼女達の立場を悪くしたくない

……てか、あれってリインフォースとシグナムだよな?

なんつー胸してんだお前ら、特にリイン、胸の間をよくわからん紐?で分けるのやめろ

ただでさえエロい体が更にエロくなる、理性抑えるの大変だからやめて

それに何でバリアジャケット時のミニスカ?

やめて、マジやめて、その太ももを見せるのを自重して!!

 

「おー、ちょっと大っきくなった」

 

「…………初めまして」

 

「初めましてケントさ~ん、高町ヴィヴィオ十歳です!!」

 

元気よく挨拶してくれる金髪オッドアイ……間違いねぇ、二代目魔王だ……

てか何故俺に挨拶してきたのだろうか?

他にも色々いるだろ、過去のお母さんだっているし

 

「やっぱり……あまり身長変わってないな~」

 

「おいまて、今聞き捨てならぬ事が聞こえたのだが……」

 

自分と身長を比べて一人納得するヴィヴィオ

身長が変わってないだと……確かに、赤セイバーは身長が低い事をコンプレックスにしていたし青セイバーは14歳で選定の剣を抜いてから老化が止まっている

まさか……こんな部分でもセイバースペックの影響が出るのか?

ただで低い赤セイバーの身長を、さらに14で止めてしまっては……え?ヤバくない?

 

「ヴィヴィオちゃん……だったっけ?」

 

「そうですよ」

 

「未来から来たんだったよね……未来の俺の身長って……どれくらい?」

 

「えっと……確か………」

 

手を顎に乗せて考えるヴィヴィオ

ちなみに今の身長は138………せめて男なら……最低でも160は……

 

「『145』って言ってた様な……」

 

「…………オウゥ」

 

orz状態になる俺

この頃一番ショックだった事実ではないだろうか……男で145とか虚し過ぎる………

 

「えっと……ケントさん?」

 

「そっと……しといてくれ……」

 

心の中で涙を流す俺をヴィヴィオはオロオロしながら声をかける

うう……どうするか…最新の医学で身長伸びたりしねーのかな……

 

「え、え、あ!!こ、これだけ言わせて下さい」

 

「なに……」

 

「フェイトママをよろしくね」

 

そう言って去っていくヴィヴィオ……

……確かフェイトってヴィヴィオのママの一人になるんだよな……だけど今は関係ねぇーー!!こうなったらやけ食いじゃーー!!

 

目の前に積まれた料理の山に目を通す、ピザやらハンバーガーやら……コルテットでは食べれない料理ばかりだ

過去の俺はもきゅもきゅと食べ始めている……くそ、俺だって!!

 

『もきゅもきゅ』

 

爺が俺を見つけ出したのは、それから丁度一時間後

直ぐにミッドに連れ戻され罰として外出は当分禁止……あ……

 

 

 

 

 

記憶消さなくていいのかな?

 

 



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さて……

 

「高町なのは……ですか?」

 

「ああ、コルテットの病院に運ばれて来ているはずだ」

 

通信機の向こうで爺が問いかける

やはり……知らないか、まぁいい、調べさせたら直ぐに出る

 

「その者がどうか?」

 

「………はやてに泣き付かれてな、コルテットの最高技術でお迎えしてやれ、それで管理局に対しても恩を作れるからな」

 

「了解しました……その件は私共が全力を尽くして事に当たりますので……」

 

「……助かる」

 

通信機を切る

目の前には俺の胸に顔を埋めるはやて………ったく、美人が台無しじゃねーか………

 

「……行くか?」

 

「うん………」

 

周りの人間に指示を出す

指揮を上げる為に……行きますか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの事件から早二年

俺や原作キャラ達は十一歳になり、カリムはStヒルデ魔法学院を卒業後、今では立派な教会騎士に、クロノは将来を提督と期待される管理局のエリートとなった

当然、俺の周りもこの二年で変わってくる

まずは俺の立場……『世界を塗り替える大魔法』と『全ての物を粉砕する特典』が管理局から直々に歩くロストロギア認定された

 

『世界を塗り替える大魔法』についてはもう使えないのだが……もう一つについては闇の書さえも可愛く見えてしまうほどのチートぶり

簡単だ、ユーリ戦では『ユーリ本体』を破壊しない様に加減していたのだが……全力で使った場合とんでもない事になる

確かに『触れた物しか』破壊出来ないのは厄介だがそんな物『空間』ごと破壊してしまえばどうにでもなる

更に空間を破壊すると言う事は破壊した部分を『無』の状態にしてしまう。

まあ、そうは言っても『空間』、かなりの力を出さない限りは完全破壊などにはならないのだが……

だが、空間を『無』にされた事を当然『世界』が黙って見ているはずがない………

『無』の部分はその場にあった空間に再び侵食され……当然の如く元に戻る……

では……その一瞬の間に『無』の空間内に何かがあった場合どうなるのか?

『無』から再び世界が作られるのは約二秒のタイムラグが発生する、その間に人形を『無』に置いて見たのだが……消えた

そう、完全に、跡形もなく、魔力痕跡さえも見つからずに消えた

コルテットと管理局は『無』の空間は一種の『虚数空間』だと考えているのだが……正直なところわからない

ただ言える事は……人間には一生理解出来ないだろう………

 

そんでもって、俺は歩くロストロギア認定、いくらコルテットの力があるといえど監視は必須

稀少過ぎるレアスキルの為に誘拐の危険度も大幅にアップ、前と比べれば比較にならないほどのSPが同伴している

 

そして、みんなの記憶

GODでは皆、タイムパラドックスを防ぐ為に『時間移動があった』という部分だけに蓋をした筈なのだ……

つまり、時間移動をしていない俺は皆の記憶に残っている

はやてに聞いて見ても『助けてくれてありがとう』と返って来ただけだ、これは……どうでもいいか……

 

次に学校、こっちはもっと酷くなった

『稀少レアスキル』を持ち、魔力は今の時点でAAA………剣の才能に溢れ家は名家……周りから見れば絵に描いた様な人間なんだろう

そのせいで近寄ってくる人間は丸っ切りいなくなった、そして………

 

担任が、死んだ……

 

理由はわかっていない、だが、闘って死んだと言う事はわかっている

何故現役を退いた彼が闘い、エースである彼が負けたのかはわからない

ミッドの森で起こった大地震、原因調査の為に局の人間が出向いた頃には息を引き取っていた……体は血に濡れ、森には幾つものクレーターがあったという

犯人は不明、どれだけの実力の持ち主なのか……狙われた理由はなんなのか………

ただそのせいで、俺の学校での『拠り所』という物は無くなってしまった

生徒も教師も、俺を『コルテット』としか見ていない

俺に近づいてくる大人も、ガキ……全て金目当て……虫酸が走る……

 

そんな生活が二年、雪の降る冬のこの日……

 

学校が終わり、家に車で帰る所を目の前に人が現れた

見ると見慣れたバリアジャケット、可愛い筈のその顔は涙でグシャグシャになりはっきり言ってだらしない

 

SP達は直ぐに彼女を取り押さえようとしたが彼女は俺に懇願する様に頼んで来た

曰く、『親友を救ってくれ』と………

 

………ここまでされて無視するほど俺も非道じゃない

見れば彼女、この雪の中なりふり構わず飛んで来た様で手足が凍えている……いくらバリアジャケットでも万能ではない………

 

さて、彼女……いや、はやても落ち着いた所で……行きますか……

 



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一流

 

「ケ、ケント・コルテット!?」

 

「なんで彼がここに!?」

 

病院内から驚きの声が次々と上がる………あまり騒ぎ立てるなよ、すっごいうっとおしいから………

 

「で、彼女の容体は?」

 

「は、はい!!主にリンカーコアの~」

 

対応して来た医師が彼女の説明をする

………腹の部分がかなり抉られたらしいな、巨大な刃物でグサリッてか?

そんでもって直接的にリンカーコアを内部から攻撃され、ほぼ原型を保っていない

意識不明の重体であり、体もおかしい程衰弱していた為危険な状態、助かっても歩く事はまず不可能……ね……

 

ったく、いくら『世界の修正力』が動いても無理なもんは無理なんだぞ?

よく原作ではここから這い上がって来たもんだ、俺には到底無理だな

まぁ……まずは………

 

「あ~、今手術中だろ?案内しろ」

 

「は、はい、ですがコルテットの技術を最大限に活用しましてもまだ……」

 

「いいからいいから」

 

なされるがままに案内してくれる医師

周りの付き人が止めてくるが……少し黙ってくれ

 

「ケント様!?何故この様な所に!?」

 

「ん?ああ、爺か……いやなに、現場の指揮を高めようと思ってね」

 

「いけませぬケント様!!今も何処から狙われているかわかりませぬぞ!!」

 

「………はぁ」

 

爺の気持ちも分かる、てか医師免許ももたない俺がここに来たって役にたたない事ぐらい知っている

でも……なぁ……

 

「.……………」

 

「……………」

 

俺の腕を掴んで離さないはやて

二年間でよく歩ける様になったもんだ

はっきり言って強く掴まれてるので動きにくいのだが……離す気は無いらしい

彼女も直ぐになのはの元へ駆けつけたい筈なのだが……俺が行かない限りはここから動かないと思う

と、いうのは人間、大切な人が傷ついた事を理解したくないからだ、なのはのいる場所に近づけば近づく程、《彼女が死ぬかもしれない》という現実を受け入れなければならない

それが怖いのだろう……

 

だが、離れて欲しいのは事実

だって………膨らみかけの胸が……その、ずっと当たってる訳で………

 

………駄目だ駄目だ、雑念は退散

 

医師を急かして案内させる、爺も最初は止めたが……後からは諦めたのか何も言わなくなった

 

少しづつ近づく手術室……はやてが少し躊躇っているのが分かる………

角の向こう側……直感で分かる、あそこだ

 

そう、曲がろうとしたのだが

 

「主!!」

 

「シグ……ナム?」

 

後ろから声、振り向いて見るとバリアジャケット姿のシグナム………はやてよ、お前誰にも言わずに俺の所に来たのか?

むっちゃ『探してました』感がするんだけど

 

「はやて!!」

 

「はやてちゃん!?」

 

シグナムの声に気づいたのか、追って出てきた守護騎士達……

さらにそれに便乗する形で出てくる原作キャラ……クロノは……いないらしい……

まああいつは直ぐに抜け出して駆けつけれる事が立場上出来ないからな、今はいてくれた方が助かったけど……

てか、挟まれちまったじゃねーか、後ろは守護騎士で前は原作キャラ……それに反応してか俺の付き人達が迎撃体制に入ってるし……相手は女子供だぞ?そんなにマジになんなよ

 

いや、でもハニートラップ仕掛けて来たのってみんなシグナムみたいな体型の人だったよな、『友達になりたい』とか言って近づいて来たのも原作キャラと同じぐらいの年齢の奴ばっかだし……案外間違った反応じゃないのか?

 

「あ~あ~、そんなに硬くなるなっつーの、あいつらは大丈夫だ」

 

「ですが」

 

「えっと……ケント君でしたっけ?」

 

代表?してシャマルが前に出る

……確か直接会った事があるのはシャマルだけだったよな、覚えていたのか?

 

「あの、なんではやてちゃんが?」

 

「ああ、それは………」

 

いきさつを簡潔に話す………こうやって話してみるとけっこう恥ずかしいもんだな

だって泣き付かれたんだぜ?こんな可愛い子に……

そんな姿は好きな男に見せろっつーの、原作キャラはみんな可愛いから学校でも人気高いだろ

学年でも一人二人はイケメンもいる筈だしな

全く、今回はしょうがなかったとは言え……俺にはやてはつり合わないし……

 

「あの………」

 

「ん、どうした?」

 

「なのはは……助かりますよね……」

 

金髪の子が前に出る、その目には……涙

全く、愛されてんな~主人公、マジでお互いを大切に思っている友達じゃなきゃ泣くなんて無理だぞ、羨ましいにも程がある

 

俺には、俺の為に泣いてくれる友だちなんていないからな

 

「ああ、大丈夫、それぐらい出来ないとなんの為の技術だか?」

 

「ホントに?」

 

「ホントだ」

 

そう、その為の技術だろ?

いくつもの実験をして、いくつもの子供の血を浴びた……技術だろ?

こんな時に役に立たなくてどうすんだ……

 

さて……

 

「爺、少し話がある」

 

「なんでございましょうか?」

 

「俺の……力のカラクリについてだ」

 

 

 

その日、ケント・コルテットのレアスキルに『皇帝特権』が管理局から認められ

 

免許を持たない少年が、死の淵にいた少女をその手で救い出したのは、世に大きく知られる事となる

 



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手術後

 

「……なのは、だったっけ?彼女の容体は?」

 

「うん、ケント君のおかげや、凄い早さで治ってる」

 

聖王教会の一室、はやてと二人きりの部屋で話す

どうやらカリム達は遠くへ出かけているらしい……卒業してから中々会えないな、まあみんな、立場上当然か?

あの『高町なのは撃墜事件』から一年、月日が過ぎるのは早いものだ……

彼女は順調に回復、今では立って歩く事もできる様になり、少しづつだが魔力も取り戻しているらしい………今では簡単なスフィアを生成出来る様になったとも聞いた

流石主人公……想像以上の回復力だ

 

「………ケント君」

 

「何?謝罪ならもう受け付けないけど……」

 

「うう……」

 

はやてが何かを言おうとして押し黙る

親友が元気になる一方で、はやてはこの一年間、暗くなる一方だ

理由は単純明快、俺の皇帝特権が世に知られた事……

 

『破壊』という稀少スキルに加えてこの才能……最早世間からは俺の事を『人』として接してくる人間はいない

当たり前だ、この世の全ての人間が経験し、苦悩し、成し遂げた『努力』という概念を完璧に破壊してしまったのだ、所詮俺は、努力無し強者

その事もあり、世間からの嫉妬や羨ましいが為の八つ当たりなど、誹謗中傷が断然増えた

『剣姫』の二つ名は未だに健在だが今では『ドーピング野郎』とも言われている、俺の実力が、俺の努力が、俺の苦悩が、全て『皇帝特権』によってのものだと思われている

まぁ、否定はしない、今まで何度これに助けられたかわからない

だが……俺の事を知った様な口で話すのはやめてほしい……流石の俺もそれは堪える

 

そして、その事を知らないはやてではない

自分が迷惑かけなければ、自分が頼らなければ、自分が泣き付いたりしなければ……と、大概心の中で思っているのだろう

 

原作通りなら悩みを溜め込みやすい性格みたいだからな……なのはの様に無理しないといいのだが……

 

「ま、間に合いました」

 

「久しぶり、カリム」

 

「はい、お久しぶりです」

 

息を切らしながら入ってきたのはカリム

彼女も随分と大きくなった、と、いうかもう十八なんだよな……立派な女性だ

体つきもすっかりStsと変わらない……ここから全くふけないんだろ?怖い話だ

それにしても息を切らしているから……余程急いでいたのだろうか?

 

「ケントさんが来ていると聞いて、はやても久しぶり」

 

「久しぶりやなぁカリム、どや?またおっぱい大っきくなったんちゃうか?」

 

「きゃっ!?ケ、ケントさんが!!」

 

「いいではないかいいではないか~」

 

目の前で広げられる光景から目を反らす

………それでもはやても原作とだいぶ近づいて来た、こう、エロい所とか……

どこでこうなったのだろうか?昔のはやてはどこいった

 

「フゥ~、いい弾力でその大きさ、ほんまカリムは魔性の女やな~」

 

「うう……」

 

………どうやら終わったらしい、

目線を戻すと少し衣服が乱れたカリム、ぶっちゃけエロい、てか男がいる前でなんて事してくれてんだ

 

ゴホン、話を戻そう……

そうだな……この一年であった事は……ああ、そうだ

フェイトと会った事か?流石に一人では会えないからクロノが同伴していたが……

理由は簡単、なのはを助けた事

はっきり言おう……すごく可愛かった

髪は下ろしてたな、前世がフェイ党だったのでその影響は当然あるのだが思わず見惚れてしまった俺は悪くない

その後少しだけ話したぐらいか?

クロノの立場もあるので長々とは話せなかったのだが………このときはビビった

向こうが俺に対して質問して来た時だ

 

「どうしてケントさんは……そんなに淋しそうな目をしてるんですか?」

 

だったっけな………流石……フェイトさんってとこだな

どうやら彼女の様なキャラにはお見通しらしい、これじゃあなのはと対面したらなんて言われるか分かったもんじゃない

 

まぁ……実質会ったのはそれから二回、計三回

執務官試験を受けているんだったな、どうやら今のところ一度落ちているらしいが……なのはの回復が順調なので次ぐらいで合格するか?

一度会ったのだ、一応だが顔見知り……

合格してほしいのは当たり前だろう?

 

「あら?そういえばリインフォースさんは?」

 

「リインは今日はお留守番や、みんな出かけてるからな~」

 

アハハ~と笑うはやて

そういえば……はやてが『Ⅱ』を完成させた

勿論、リインフォースⅡの事だ

ユーリの『砕け得ぬ闇』事件から数ヶ月後、初代リインフォースは皆に見送られながら消滅したらしい

そんでもって、そのデータを受け継いで作られたのがリインフォースⅡ、一度だけ会ったが……はっきり言って人形と間違える

てかあの大きさで苦労しないのか?

蚊とかが物凄く大きく見えるだろ……エゲつくねぇか?

俺だったら耐えられないのだが……

 

「守護騎士の皆さんも大変ですからね」

 

「そやな~、お仕事で中々みんな集まれへんからな~」

 

彼女達も自分達の罪を少しでも精算しようと頑張っているらしいからな……

相変わらず、主想いのいい奴らだ

まあそう言っても、俺が彼女達と直接会った事は数えられるくらいしかないんだけどな、話した回数も少ないし……

 

「ケント様」

 

「ん、何?」

 

「コルテットにお客がいらっしゃっています」

 

「………りょ~かい」

 

こういう風に『伝えられる』と言う事はそれ相応の権力者な筈だし……そうじゃないと入り口で追い出してる

 

「もう帰るん?」

 

「うん、ゴメンなカリム、来てもらったばっかりだけど」

 

「いえいえ、気にしないで下さい」

 

少ししょんぼりしていたカリムを慰める

てかカリムはなんであんなに急いで来たのだか……別に俺と会っても何の得にもならないだろうに……

逆に気を使わないといけないからしんどいんじゃないか?

まぁ……いいか………

 

部屋を出る、そこには恒例の俺の護衛がズラリ

 

「で、そのお客様というのは?」

 

「はい、地上本部の現中将の方です」

 

「脳内の状態は?」

 

「……………若干ですが……乱れている模様……」

 

と言う事は……操られてるな?

たく、中将様を操れるなんて殆どいないと思うんだが………まぁ、簡単に受け流すか

 



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簡易洗脳

 

 

「アインへリアル?」

 

「はい、是非コルテットの技術を導入したいと」

 

目の前にいる髭のおっさんが見た目とは裏腹に優しそうな声で話しかけてくる

こんな声だせたんだな、テレビで見ているとかなりの厳格おじさんなのだが……

 

「あれに関してはもう作り始めている筈……何か不都合でもありましたか?」

 

「いえいえ、地上本部の象徴にもなるアインへリアルの設計にミスなどありません、ですが……警備システムが少し甘くてですね」

 

そこからたんたんと専門用語やらなんやらをふんだんに使って話し始める中将、もとい『レジアス・ゲイズ』

まぁ、内容は簡単、絶賛製作中の兵器、『アインへリアル』の警備システムの増強と強化

ただ、それだけならコルテットから直接買えばいい、わざわざこいつが足を運んだのは『コルテットがまだ発表していない新技術』や『今以上の技術の開発の催促』

簡単に言えば『勿体ぶらずにとっとと新しいもん出せやゴラァ!!』って感じ

 

どうやら『技術開発部』的な所からは断られたな、そうでなかったらわざわざ会いに来ないし

 

あと今のところ脳内電波は正常、さて、いつ出てくるものやら……

 

「ミッドの……地上の民の安全の為に、どうか!!」

 

「あ~、はいはい、考えておく」

 

アインへリアル……ミッドに作られている固定砲台の様な兵器、ミッドにいる敵ならいつでも、何処にいてもその広い攻撃範囲と殲滅力で敵を圧倒する地上本部の最強兵器

 

まぁ、だがクラナガンとかで暴れられたらどうしよもないんだけどな……その広い殲滅力が逆に足でまといになるし……ぶっちゃけ金の無駄遣いだ

 

それにしても……どうしようか……

原作ではナンバーズ達に全機破壊されてたよな……もし、もしだ、ここで手助けしてしまって原作と離れてしまったら……う~ん

 

「まあ、前向きに考えてみます、俺一人の判断で周りに迷惑かけたくないですし」

 

「ありがとうございます」

 

おっさんが頭を下げる

これは保留だ、保留、別に急ぐ必要もない

 

さて、本題はここから……

爺が頷く、さて、脳内電波が乱れてるようだな………

 

「さて、話は変わるのですが」

 

「何ですか?」

 

「貴方の『DNA』の、提供をお願いしたい」

 

「………は?」

 

思わず素っ頓狂な声が出てしまった俺は悪くないと思う

そんなもの……悪用されるに決まっている……何故こいつが……

 

「………一体、何が目的でしょうか?」

 

「いやなに、貴方のレアスキル、レアスキル保持者のDNAは特殊でしてね、もしかすると不治の病を治す薬となるかもしれない、この世の為に是非提供してほしいのですが……」

 

「………お断りします、てかそんな権限地上本部にお有りと思っているのですか?」

 

ふざけるなって話だ、第一研究するならばコルテットの技術の方が断然上、わざわざ管理局に渡す物じゃない

余りにもなめている、まぁ……俺が子供だから当然か?

世の為人の為だという事をちらつかせといてDNAの提供って……何処かの電撃娘と同じじゃねーか

それに地上本部にそんな権限いつできた?

さらにそんな事すれば『コルテット』という組織が黙っていない、いくら中将でもただでは済まない

 

「これは貴方のご両親も承諾済みです」

 

「へぇ~……え?」

 

また素っ頓狂な声を上げてしまった俺は悪くない

なんでここで会った事もない両親が出てくる……それに会う機会があったんだったら警備システムの事も相談しろよ

それとも……さっきのは前置きでこっちが本題か?

てか今のこいつって少し操られてるんだよな、成る程、両親と会ったのは操ってる張本人でレジアス自身は面会した事無いってか?

 

てかレジアスを操るなんて俺の頭の中では一つしかないんだよな、これで両親が黒か白かと言ったら黒に近い事がハッキリした………ったく、めんどくさい限りだよ

 

「両親……ね、今更愛情も糞も注いでもらってない奴らが出てきても鬱陶しいだけだから、俺が嫌だと言ったら嫌、わかった?」

 

「…………わかりました、では警備システムの方、よろしくお願いします」

 

秘書と一緒に退出する髭オヤジ

 

まだ娘のオーリスさんじゃないんだな……

 

 

 

どうでもいいか……

 



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Strikers編
登場人物紹介 Sts


【登場人物紹介】

 

○ケント・コルテット

 

この作品の主人公、頭の悪そうないかにも『神様』て奴が前世の主人公の命の書類?にゲロ吐いて死亡

閻魔大王からのお説教から逃れるために証拠隠滅と言う名の転生をさせてリリなのの世界に

特典はかの慢心王が持つ『黄金律』の強化版、ガウェインを除いた『セイバー』としての容姿とスキル、なぜかわからないが与えられた『破壊』である

ちなみに特典の副産物として貰った初回の魔力量はAA+、十五歳でAAA、十九歳でS−

ケント自身が持つ魔力量は不明、ただ特典魔力によって奥の方に『封印』された様な状態なのでケントが特典を持つ限りは表に現れる事はない

前世での性格は『超』がつくほどの平凡さ

別に生徒会長となって皆の前に出る訳でもなく最高のルックスを持っていた訳でもなく総理大臣を期待されるほどの頭脳を持っていたわけでもない、運動神経もそこそこのただの高校生

転生し、『コルテット』などという大組織の息子になり、九歳の時『悪い方向で』開き直った為に疑心暗鬼に……ただやはり『友』というのは心の奥底で望んでいる存在である為に完全に荒んでしまった訳ではない

十六歳、クロノの結婚式の時に自身のクローンである『ネリア』を保護、最初は警戒していたが今では自身と同じ立場である彼女には心を開く

身長は相変わらずの145、しかし『大人モード』使用時に167まで急成長、だだし魔力を使い続けなければならないので長い間使用する事は中々出来ないご様子……

二時創作の主人公としてはチキンである為に若干ウザい

 

 

○ネリア・コルテット

 

プロジェクトFを応用した技術で作られたケントのクローン、実験体としての名前は『No.14』

ケントが完璧なセイバーなのに対してこちらはやや垂れ目気味、髪は原作のセイバーの

戦闘体制時と同じ様な髪で縛っている為ケントの様に一括りではない

性格を一言で表すならいい子、オリジナルであるケントに対してなんの恨みも抱いておらず前向きな性格

コルテットに引き取られてからの三年間はケントと同じ『Stヒルデ魔法学園』に在籍、Stsでは十五歳である

ケントと違って前向きな性格である為に『孤独』という訳でも無いがやはり周りから疎まれていた、しかし本人は別段気にしていない様子………

『ブラコン』という訳でも無いがお兄ちゃんっ子である事には変わりなく、仲は良好、ケントが心を開く唯一の人物でもある

魔力量はオリジナルのケントを上回るSS+、その実力はデバイス無しの状態でフェイトと互角に戦ったほど (しかしこの場合のフェイトの目的はあくまでも『保護』なのでハンデ有りの状態)

デバイスは杖型のストレージデバイス、名は『ガラディーン』

太陽の騎士の持つ聖剣と同じ名前なのは多分気のせい………

身長はSts時で163と兄であるケントをゆうに超える、成長もまだまだ続いているのでフェイトほどでは無いが胸も多少は大きい

ケントに対しては『お兄様』、フェイトに対しては『フェイトお姉様』、後の人に対しては普通に『○○さん』と呼ぶ、大食い

 

 

○高町なのは

 

原作名がリリカル『なのは』だというのに空気な人

ケントとの面識は殆どなく砕け得ぬ闇事件と撃墜事件で会ったぐらい、クロノの結婚式で撃墜事件事に関してのお礼を言ったのだがそれだけなので本編ではカットされた

Stsでは原作通りわ不屈の心を持っての六課スターズ隊長

 

 

○フェイト・T・ハラオウン

 

作者の大好きなキャラ、この頃カードのスリーブをフェイトさんに変えた

最初は全く出てこなかったがこの頃出番が急上昇、カリムやはやてを差し置いてヒロインの座を我がものにしようと行動中

外の人間でネリアの事を唯一知っている人物であり彼女のお姉さん的ポジション、五年前からモヤモヤしていたケントへの気持ちもこの三年でだいぶ理解してきた

Stsでは原作通り、ライトニング分隊隊長

 

 

○八神はやて

 

ケントに心を寄せる一人、日頃から積極的にアタックしているが自分に自信がないケントには届かずじまいである

九歳の時にケントと交わした『ピンチになったら必ず助ける』という約束を今でも覚えている

実力はケント曰く『ネリアとはやてがガチったら町一つ消える』とまで言われている程

Stsでは原作通り機動六課の部隊長

 

 

○守護騎士の皆さん

 

空気な人達、シグナムさんは胸の話をされ、フェイトからの連絡をケントに渡しただけで出番無し、唯一シャマルさんだけがまともにケントと会話している

ロヴィータははやてを探しに、ザフィーは空の彼方へと旅立ったのだ(=´∀`)人(´∀`=)

 

 

○カリム・グラシア

 

結構初めの方からケントの側にいた割には現在かなり空気になりつつある人

理由としては『箱入り娘』と『箱入り息子』が出会える様なイベントが余り無い為、作者もカリムをだそうとするが………対した話題も無いので難しい

幼少期の頃はかなりの天然、色々とやらかしてしまった黒歴史が多数ある

今後の活躍に期待

 

 

○クロノ・ハラオウン

 

ケントの親友、ただこれはクロノが一方的に抱いている感情でありケントは肯定していない

それでも一緒にいる時間が長いのはそれ程彼の人望が厚い為であり作者としても嫌いではない、よく二時創作ではオリ主に『KY』やらなんやら言われて見せしめにされる

提督になった今でもたまにケントと模擬戦をする為に腕は落ちていない、才能や技術で劣る分その頭脳でケントに勝ち越している

次元航空船『クラウディア』の艦長であり二児の父

 

 

○ヴェロッサ・アコース

 

ケントの親友、その後の説明についてはクロノと同じ

だだクロノやカリムとは違い役職に囚われないフリーな人間なので登場は多めになる可能性が……

非常に強力なレアスキルを持つが彼自身は仕事以外で好んで使う事はない、なのでよくオリ主が出会い頭に額を触られそうになる事はまずない、もしそうだったらただの変態、ガチで刑務所に入っていても可笑しくない

容姿が良く、軽い性格な為にナンパをよくし、その度にシャッハにシバかれるのは日常茶飯事である

 

 

○シャッハ・ヌエラ

 

最初の方に出てきてた脳筋シスター、出番は少なめ

主人公達とかなり年が離れておりvividでも結婚した様子がなかった為に淋しい独り身である可能性が高い、ロッサと出来ている可能性は知らん

これ書くまで、作者はこの人を忘れていたりする

 

 

○爺

 

アリサ一家の『鮫島さん』の兄らしい、本名は不明、年齢も不明のスーパーマン

ところ構わず現れケントの側で警護する、彼自身の魔力値などもまた不明である

ネリアについて知っている数少ない人間の

一人、その事を考えるとケントも彼の事は多少なりとも信用している事が伺える

昔は管理外世界への出張が多かったがこの頃はだいぶ落ち着いたのでケントの近くにいる事が前以上に多くなった

 

 

○(ケントの)両親

 

限りなく黒に近い人達、ネリアを作ったのも彼らだとケントは睨んでいる

ケントとは生まれた時とその次の日のみ会っただけでありケント自身も顔がうる覚え、声もすっかり忘れてしまった

だが、『心優しそうな人達』だという事は覚えている為に本当に彼らが犯人なのかは不明である

 

 

○担任の先生

 

ケント曰く『かの征服王』

ケントが幼い頃から心を開いていた唯一の人物であり、ケントの事を『一人の子供』として見てくれた唯一の人物でもある

もう引退しているが昔は教会のエースであり、一騎当千の実力を誇っていた人物、その為『皇帝特権』により一流になったケントの剣でも勝利する事が出来なかった

ケントが中学の時に何者かとの激しい戦闘の据え死亡、犯人は未だわかっていない

 

 

○エリオ・モンディアル

 

よく『エロオ』と名前を間違えられる男の子

フェイトに『赤ちゃんってどうやったら生まれるの?』という『純粋』な質問をして困らせた

 

 

○スカさんと愉快な仲間達

 

今のところナンバーズの二番、三番、四番、六番が登場

オリ主にありがちな《チンクとばったり出会ってスカリエッティ救出フラグを立てる》なんてイベントは無かった

二度、ケントの捕獲に動くが失敗、二回目の際にメガネが『脳味噌』の事を話した為に誘拐の首謀者が脳味噌だという事がケントにバレている

スカさんに関してはまだ未登場、この人がケントを手に入れたい理由はやはりレアスキル関連、脳味噌も同じ

 

 

○タイラントくん

 

昔ケントに喧嘩ふっかけた子、完全なモブ

もともとガタイが良かった為に卒業後は無事聖王教会の騎士に、とてつもなく強い訳ではないが騎士として鍛錬に励んでいる

密かにカリムに思いを寄せていたりする

 

 

○神様

 

ケントの書類にゲロぶっかけて転生させた張本人

立場的には彼の方が上なのだが閻魔大王には頭が上がらない、人の命を奪ってしまった事を閻魔大王にバレない様にする為に前世のケントを転生させることで隠蔽を図ろうとしたが失敗、以後六年間ぶっ通しの説教を聞かされた

自身が言うには最高神らしい

 



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奇襲

 

「空港火災?………そんなイベントもあったな」

 

自室でテレビを見ながらホワーと考えてみる

画面には焼けた空港をバックにたんたんと説明している記者、そこから少ししてよくわからん評論家達が自分勝手に「ここが悪い」やら「何故こうしなかったんだ」とか評価をし始める……だったらお前たちが前線に出ろってんだ

 

転生から早十五年、『魔法』に触れてからもう九年……

とうとうStsがスタートするこの時期、誘拐や毒殺など、色々とされながらも何とか生き延びて来た

今までは傍観に徹していたが今回からは違う、舞台はこのミッドチルダに移り、『コルテット』という組織に生まれた以上無関係という訳ではないだろう

本格的に俺も介入する事になる……絶対……

 

まぁ………

 

「取り敢えず事故の処理だな、これだけの事件の後処理、管理局だけじゃ手が回らないだろうし」

 

見た感じかなり派手に焼けた様だしな、管理局だけでは後処理出来ないだろう

その前に空港など最先端技術の塊、確実に空港を経営していたのはコルテット、無関係という訳にもいかない

ん、てかもう動いてるか?

テレビ見るまで気づかなかったからな……遅かったか?

 

「…………現場には、流石に無理だよな~」

 

俺的には原作でかなり重要な場所だから一度行きたいというのはあるが……許してもらえねぇよな……

ただでさえ外出多いのに……

 

まぁ……取り敢えず……

 

「ほらよっ」

 

後ろの何もない空間に向かってデュランダルを放り投げる

デュランダルは壁に刺さり、穴を開けるが大した事ないだろう、それより問題は……

 

「いいかげんこっち見んのやめてくんない?うざいんだが………」

 

「…………。」

 

何もない空間に向かって喋りかけるが返答は無し、往生際の悪い奴だ

ツカツカと歩いてデュランダルを引き抜く、そして……

 

「よっと」

 

「っ!!!!」

 

これまた何もない空間に向かって一閃、今度は息を飲む音と小さな悲鳴が聴こえた

これで何もないとかだったらマジ恥ずかしかったからな、いてくれてよかったよ

 

「だいたい何処にいるのか分かるから、ああ大丈夫、君の力は本物、俺も勘で言ってるもんだから」

 

「くっ!!」

 

逃走を始める『見えない何か』

警備システムが反応しないという事は……もうハッキング済みか?

まぁ、『助ける』という選択肢は無い訳で……

 

「ほらよ」

 

「キャッ!!」

 

スフィアを飛ばして動きを封じる

向こうは何が何だか分かってない感じだな、一番信用しているスキルなだけにしょうがないか

てか空港火災で気を取られている間に俺の誘拐か?

あのマッドも手の込んだ事をする……

 

「くっ!!」

 

「よっと」

 

軽く斬ってみるが外れ、やっぱり姿が見えないって面倒だな、いくらセイバーの直感とは言え外れる時は外れるし……

ああもう、外の見張り役は何してんだ!!

 

がチャッ!!

 

「っ、そこっ!!」

 

食器がガチャッと揺れた場所にすかさずバインドを仕掛ける

するとどうだろうな、『何もない空間』をバインドが固定する、まるで『何かがいる様に』

 

「くっ、外れない」

 

「残念、という訳で大人しく捕まってもらうぞ」

 

軽く溜息をついてから近づく

てか姿消せて機械に強い奴なんて俺には一人しか思い浮かばないんだけどな、初っ端からこいつ捕まえたら原作とだいぶ離れるんじゃねーか?

まぁ……悪い方にはいかないか……って!!

 

「っく!!」

 

「クア姉!!」

 

勢い良く走り出すが、クソッ、距離がある!!

その間に『何か』は突然現れた水色の『何か』に連れて行かれる、後にあるのは静寂のみ……やられた、あんな奴もいたな~

 

「取り敢えず、あいつに直感が効いただけよかったとしますか」

 

あのマッド、なんの為に俺を誘拐しようとしたんだか……俺のクローンか?

魔力は受け継がれるかもしれないけど……レアスキルはどうなるのか?

これは『特典』だからな~、どちらかと言うと魂に直接インプットされた感じだから……

 

まぁ、今回はよしとするか

 



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赤ちゃんってどうやったらetc……

 

「公開意見陳述会?」

 

「はい、ケント様ももう十五、そろそろ良いかと思いまして」

 

ニッコリしながらそう言ってくる爺

始まりは簡単、晩飯食って部屋に戻ろうとしたら爺が話かけて来た

なんでも、そろそろいいだろうって……

『公開意見陳述会』、地上本部で行われる総決算のようなもの

去年どのような事をしたか……又、それを活かして今年はどのように平和を守るか決めていく会議

………俺だってテレビで見た事はある、原作ではStsで山場になった部分、忘れている訳がない

ただなぁ……コルテットという権力を持つ人間なので覚悟はしていたが……嫌だよなぁ……

だってあれ数十時間にも及ぶんだぜ?

しかも内容の殆どが本局と地上本部の対立……するだけ金の無駄、論外

 

 

「それって……行かないといけない?」

 

「はい、将来の為にも、参加するようにとご両親直々に」

 

……なんかこの頃よく出てくるな、両親

てか俺にも連絡くれよ、いくら黒そうとは言え自分の親、声を聞きたいのは当然だろ?

それにしても……はぁ、溜息が出る

 

俺の記憶が間違っていなければ……あれに入る時は武器の持ち込み禁止なんだったっけ?

恐らく……それがコルテットだとしても問答無用なんだろうな、管理局だっていきなりコルテットから内部を襲撃されたくないだろうし

そうなれば……誘拐やら暗殺やらの危険度がグッと上昇するし……だって体術のみだろ?

スカさんが未来でするテロなんて中々起こらないとは思うけど……原作とちょっと離れてる分なんか不安なんだよな……

……しゃーねぇ

 

「爺、そんじゃあ局にバレないようなステルスのデバイス……的なものを用意してくれ

外は局員が固めてるとはいえ油断は出来ないからな」

 

「はい、只今コルテット最高の技術開発部の方で準備に取り掛かっております

機能はデュランダルと比べ劣る事になりますでしょうが……戦闘に支障はないかと」

 

「仕事早ぇなオイ」

 

考えてる事はお見通しって訳か?

普通に陣述会行くならまだしも今回は両親から直々に命令されてるからな……何が起こるかわからん

当然、両親よりも権力が低い俺に拒否権はあるはずないし、それにしたって来年もあるんだ。いつまでも逃げ切れるとは限らない

 

「それにしても……陳述会ね~、お偉いさんが集まるんだろうな~」

 

「武器の持ち込みは不可ですが当日はいつも以上の護衛をつけるつもりでいます。

周りにたかるハエも近づけさせませぬ」

 

「りょ~かい」

 

爺もあの俺に集る権力者が鬱陶しいのだろう

あいつらのせいで色々と苦労してるからな……爺も

カレンダーを見てみる……後一ヶ月後か……めんどくせぇ

……ん?

 

「通信?ってこれは……」

 

「どうかなさいましたか?」

 

「あ、いや、なんでもない、じゃあ陳述会の件は任せたぞ」

 

「はい」

 

デュランダルに通信が入ったので爺と別れて部屋へと戻る

通信先は……フェイト

なんでも、クロノが彼女に教えたらしい

ただの顔見知り程度の筈なのだが……彼女が俺に連絡なんて珍しい

いや、まず連絡自体が珍しいのだ、教会への誘いも殆どがコルテットに伝えられてから俺へと伝わるから………どんな了見だ?

 

「もしもし、久しぶり、フェイトさん」

 

「えっ、あっ、久しぶりケント」

 

向こう側で慌てるフェイト……なんか可愛い

ちなみに俺は彼女をさん付で呼んでいる、殆ど会ったことない様な奴に呼び捨てで呼ばれるなんて嫌だろ?

はやてとかは……慣れだ、さん付とかしたら逆に近づこうとしてくるだろうし……

周りの奴らは誰一人信用してる気ないからな、これ以上近づこうとされたら面倒だ

 

「で、そっちから連絡とは珍しい……何か用でもあるの?」

 

「えっと……その……別に『急ぎ』ってわけじゃないんだけど…その、知りたい事があって」

 

「知りたい事?」

 

彼女は局でもエリートと言われる執務官、それに疑問に思う事があるのならば義母であるリンディさんもいるし義兄のクロノもいる

俺にはいない友達だって沢山いるだろうし……わざわざ俺に聞きたい事なんてあるのか?

 

「その、あのね」

 

「うん」

 

 

 

 

 

「赤ちゃんってどうやったらできるの?」

 

 

「……え?」

 

フェイトから発せられたばくだん発言に少しの間世界が停止する

……赤ちゃん?……まてまてまてまて!!

 

「なんでそんな事俺に聞く!?」

 

「えっ?だって……私が保護した子で『エリオ』って子がいてね。その子が私に聞いて来て……そう言えば私も知らないなーて」

 

「だからって……俺に?」

 

「え、一応みんなに聞いたんだよ、でもはやては話しを逸らすしなのはは逃げちゃうしクロノはケントの方が知ってるって言うし……」

 

おいクロノ、ちょっと出てこい、少し絞める

てか素なのか!?素なんだよな!!

フェイトも一応もう十五だろ!?保健で教えなかったのか私立学校!!

 

「それに母さんだって笑って誤魔化しちゃうし……これじゃあエリオに答えてあげられないよ、だからケントお願い!!」

 

「えっと……」

 

お願いって言われても……なんかこんな美人の子にそんな質問者されるなんて夢にも思わなかったんだが……

流石リリなのの天然キャラ……インターネットを使うという発想は思い浮かばなかったのか?

うう……俺も馬鹿正直に答える勇気は無いし……よし……

 

「フェイトさん、世の中には色々な情報を沢山知れる『ネット』と言うものがあってね」

 

「あ、そっか!!」

 

そう言って画面の向こうで検索し始めるフェイト……ってちょっとまてーーーーー!!

なんで通信したままなの!?

切ってからでいいじゃん!?ここは『ありがとう』って言ってバイバイするところじゃないの!?

 

「えっと………」

 

「フェイトさん!?切るよ!!今日は切る『アッ、アッ、アァァァァァ!!』………………………………」

 

画面の向こうから流れてくる女の人の声

いや、正確にはフェイトが開いているネットからと言った方が正しいか?

………うん

 

「えっ、うあっ、凄い……」

 

「……………………………」

 

気まずい……物凄く

フェイトは画面に呆気に取られてるし俺は通信を切ろうにも気まずくて切れない状態

なんで子供がどうやって生まれて来るかでいきなりAV動画が流れるんだよ……

彼女の事だから……エリオの為により正確に知ろうとしたんだな……分からない事はとことん調べ尽くすタイプだろうし……

 

「………………フェイトさん?」

 

「えっ?……あっ、キャッ!!」

 

俺が声をかけると驚きで転ぶ彼女……ただ呼んだだけなのだが……

 

だが、俺が瞬きをした瞬間、画面の向こう側写っていたのはスクラップと化したパソコン、そして息を荒げ、顔を真っ赤にしながらバルディッシュを担ぐフェイト………うん、目が合わせられない……

 

「う……」

 

「?」

 

「うわぁぁぁぁぁん!!」

 

ブツっと画面が消える……うん……

そっとしといてあげよう

知らないとは……罪だね……

 



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油断大敵

 

 

「えっと……その……前はすまなかった」

 

「いや、いいよ……フェイトさんは?」

 

「さっきまで一緒にいたんだが……ケントが来ると聞いて何処かに行ってしまったよ。顔真っ赤にして……」

 

「そっか……」

 

思わず苦笑いする

俺もどんな顔して会えばいいかわからないからな……

九月、ジンジンと照りつけていた太陽?も大分収まり、秋の息吹を感じさせるこの季節

俺がいるのは、時空管理局地上本部

 

そう、今日は『公開意見陳述会』当日

テレビカメラが動き回り、会場も大分騒がしくなってきた……まぁ当然、一年に一回行われる管理局の総決算、全管理世界の総決算でもあるのだから………

 

そして俺がいるのは……国会で与えられている様な椅子ではなく『小部屋』

例えるならば……野球で言う放送席を八倍ぐらい大っきくした感じ、発言する舞台を一階だとするとここはだいたい三階

前方は一面ガラスになっており、下の様子がよく見える……声はマイクで拾え、スピーカーで流す事も可能

睡眠の為のベッドや、飽きた?時用のテレビも完備してあるので……ぶっちゃけやろうと思えばここに住める

当然外には警護の人間が陳述会が終了するまで交代で、どこのスキもなく護衛している

まぁ……護衛がこの部屋に入ることは出来ないのだがな……理由?

 

うん、ホントは俺も生で聞く事は出来ないんだよね、普通

だってこれ、管理局で一定の権限を持った人間関係と報道の為の記者しか入れない会議、もちろん、一般人はテロ防止の為一人も入れないし、民間企業での権力者ですらこの会の出席は出来ない

 

では何故俺がこの会議出席しているか……うん、じゃあ説明するよ

 

『時空管理局本局所属少将ケント・コルテット』…………おk?

 

つまり局入りしました、俺、親が色々手を回したせいで

ま、あくまでも臨時、正式に局入りした訳じゃない

 

だけど……なんで本局なんだ?

陣述会は地上本部でするからてっきり地上本部所属になると思っていたのだが……

 

まぁ、そういう訳で俺は『局員として』正式に陳述会を聞く権利を与えられた、ぶっちゃけいらねぇ

そして、何故小部屋を与えられたかと言うと……これも特例

誘拐やらなんやらを防ぐ為に

もし局内で俺の身に万が一が起こったら局の信用問題にもなるからな…管理局も必死だ

 

そんでもって俺の部屋には権力者でもない、局員でもない護衛達はは陳述会を聞く事が出来ないので入る事が出来ない

 

なので十数時間ずっと俺一人でこの部屋貸切、まぁしんどくなったら途中で息抜きも出来るのだが……

で、今俺の部屋にはクロノ、こいつもう提督だからな、参加してて当然だ

フェイトは……地上本部の護衛に、彼女は執務官、将官などの権力者ではないからな……Stsの様に周りの警護に当たってる

 

「それにしても……豪華だな」

 

「十数時間もご苦労様なこった、鬱にならないのか?」

 

「もう慣れたさ」

 

慣れた……ね……

こいつは下にあるあの席の一つに座るのか?

……絶対寝ちまう、俺なら……

 

「そういえばカリムも来ている筈なんだが……もう会ったかい?」

 

「いや、全く見てない」

 

まぁ彼女達が来ていても可笑しくないよな……だけど全く見てないぞ、いつも絶対挨拶しに来る筈なのに………

 

「そうか……また迷っているのかもしれないな」

 

「だな」

 

カリム……けっきょく卒業するまで学校内の構造を覚えられなかったからな……

何度道案内したことか……

 

「ん、もうこんな時間か……それじゃあ僕は下に降りる」

 

「暇なら何時でも来い、俺は寝てると思うけど」

 

「ちゃんと聞いておけよ、その為の将官職なんだから」

 

「りょ~かい」

 

ハハッと笑いながら部屋を出て行くクロノ

う~ん、それにしても臨時とは言えいきなり将官ね~……これはマジビビった

まあそう言っても教会騎士であるカリムが原作で少将だったから……ある意味妥当なのか?

まぁ、最初から最後まで聞く気はさらさらないし……とりあえず……

 

「お休みなさい」

 

寝ましょうかね………

持ち込み不可のデバイスもあるし……大丈夫だろ

 

 

 

 

 

 

 

 

で、結局……

 

「油断した……って訳か」

 

「もう一度言う、動くな」

 

首元には魔力で出来た剣……マジ油断した

まさか目が覚めた瞬間『動くな』だからな、フードのせいで顔が見えないし……デバイスも手が届かないし……

金髪だけどカリムやフェイトじゃないな、先ず声が全く違う

さて、取り敢えずどうやってここまで来たか……外で別段騒ぎになった訳でも無かったし、先ずデバイス自体コルテットの技術でもなければ持ち込みは出来ない筈……

まぁ、だいたいわかってるのだが……

 

 

カチッ

 

 

「ウフフ」

 

「…………………ん」

 

拳銃……久々に見たな

まぁ、そんな事どうでもいいから気絶しているカリムに銃口向けるのやめろ四番、見ていて気持ちいいものじゃない

 

「無駄な抵抗はするな、不自然な動きをすれば彼女を殺す」

 

「わかりましたわかりました、抵抗しなければいいんだろ?」

 

多分こいつはナンバーズの二番、潜入方法は四番のステルスと六番の壁抜け

カリムは恐らく保険、俺が抵抗しないようにするための

魔法は上手く使えなくてもレアスキルには効果がないからな……少し力を入れれば一瞬でこいつらをただの灰にまで破壊出来るのだが……

人質取られたら動けないよな……

 

「で、俺をどうするの?襲うかい?」

 

「静かにして下さい」

 

「……………」

 

冗談は通じないタイプらしい

そう言ってる間にも六番は戻って来ているだろうし……さて……

 

 

どうするか……

 



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心 フェイト

 

「なのはは……助かりますよね……」

 

始めての出会いは忘れられない

なのはが病院に運び込まれた………信じられない事だった

私を救い出してくれた存在、この世で一番大切な人の一人……なのは

執務官試験なんて考えてられなかった……ひたすら急いだ、なのはの元に

 

だけど、現実は残酷で………一生歩く事すら出来ないほどの大怪我……目の前が真っ暗になるってこういう事だと思った

 

私はただ祈るしかなかった、ただただ……ユーノ、なのはのお父さんとお母さん……ヴィータやシグナムやシャマルさんも……みんな何も出来なかった

途方もない時間に感じた、ずっと手を組んで、なのはが助かるのを待った

 

だけど……そんな、祈るしか出来ない無力な私の目の前に現れたのはとても……顔の整った男の子

周りには黒スーツの人達が沢山囲んでいる、そして、男の子の隣には顔を埋めるはやて

 

………ケント・コルテット……砕け得ぬ闇事件を見事解決に導き、財閥『コルテット』の一人息子……

 

私にできる事なんて無い、だから……伝えないといけない

 

「なのはを……助けて」

 

 

 

 

 

 

 

 

「これはまた……近くで見ると物凄いな……」

 

「うわぁ……」

 

思わず見惚れてしまう程大きいお屋敷、あれからなのはは凄い早さで回復していってる、今では手すりに捕まって歩くぐらいは出来るようにまでになっている

ケント・コルテット……全ては彼のおかげ……彼がなのはを助けてくれた……いくら感謝祭してもしきれない

だけど……お礼を言いたくても会えないのが彼……この数ヶ月間ずっとお礼が言いたかった……

今思えば彼にたすけてもらいっぱなし、砕け得ぬ闇事件だってケントがいなきゃ解決しなかっただろうし……

出来れば……友だちになりたいな、クロノは『親友』だって言ってるし……

それで今日はクロノが同伴してやっと彼と会える日……それもコルテットのお屋敷で

クロノも中に入った事がない見たいでずっとお屋敷に見惚れてる……私もそうなんだけど……

それはそうと中を案内板してもらう私達……ケントの部屋で会うらしいから……うう、緊張する……

ケントってイケメンだし……よけいかな?

 

「ああ、久しぶりクロノ」

 

「ああ、久しぶり」

 

部屋……なんだろうね

広すぎてよくわからないよ……ベッドもつくえも全部高級品……うわぁ、このお菓子って一個数千円するんじゃなかったっけ?

 

「えっと……フェイトさん……でいいのかな?」

 

「ひゃうっ!?」

 

い、いきなり声かけないでよ~

それに今お菓子を見てた事……バレた?

卑しい子だと思われてないよね?

うう、ずっと見てるし~……恥ずかしい……

 

「えっと……」

 

「えっ、あっ、ゴメン、ちょっとね」

 

アハハって笑うケント

でも……なんでかな……笑ってるのに、笑ってない?

 

「取り敢えず適当に座って下さい、そのお菓子が欲しいならいくらでも取ってもいいですよ」

 

「えっ!?じゃあ……一個だけ……」

 

だって私も食べたいんだもん!!

 

「で、わざわざ来たのならなんか要件があんだろ?」

 

「ああ、フェイト」

 

「あ、うん」

 

椅子に座ってからケントが切り出す

大丈夫……うっ、かっこいい……

でも、ちゃんと伝えなきゃ

 

「なのはを助けてくれて……救ってくれて有難うございました」

 

「………………うん、どういたしたまして」

 

お辞儀をしてケントにちゃんと言えなかった『ありがとう』を伝える

ケントもちゃんと返してくれた、けど……

 

「あれは俺の単なる気の迷いだからね、お礼をいわれるほどの事はしてないよ」

 

「でもっ……親友を助けてくれた……本当にありがとう」

 

「親友……ね……」

 

どこか暗い顔をするケント……どうかしたのかな?

それに……『親友』って言葉に凄く反応してたけど……

 

「ケント……」

 

「どうしたクロノ?」

 

「お手洗いって何処かな、貸してほしいんだが……」

 

「ああ、それなら」

 

黒スーツの人達に連れていかれるクロノ

えっ!?二人きり!?

 

「えっ、え~と……」

 

「…………………」

 

無言のケント……どうしよう、何か話題は……

 

「……ねぇ」

 

「ひゃうっ!?なんですか!?」

 

いきなり話しかけられたのでまたビックリして声を出してしまう

うう、はずかしい

 

「君にとって……なのはってどんな存在?」

 

「なのは?」

 

どうしてそんな事聞くのだろう………

私のとってのなのは……それは……

 

「私にとっての……大切な人、だいじな親友」

 

「そう……」

 

そう、なのははわたしを救い出してくれた、私の名前を呼んでくれた人……

大切な友だち、私にとってかけがえの無い親友……なのはがいない世界なんて考えられない

 

でも……それを聞いているケントの眼はどこか虚ろで……だから聞いて見た、最初は興味本位だったんだけど……

 

「どうしてケントさんは………そんなに淋しそうな目をしているんですか?」

 

それを聞いたケントの目が見開いたのを……私は鮮明に覚えている

この時私は感じた、だって私と同じだったから……

 

 

ケントに、友達はいない……

 

 

 

 

 

何度か会って彼の事が少しずつわかってきたと思う………

一つだけ言える事は……今のケントの隣には誰もいないって事……

ネットワークでの誹謗中傷、彼への評価はとてつも無く悪い

私も目を疑った、彼は凄くいい人なんだけど……なんで見た事も、話した事もないのにこんな事が言えるのかが分からなかった

そして、ケントは誰一人として信じていない

私には分かる、誰かと話す時に見せるあの目……とても淋しそうな目……だけど……本心からじゃない

 

………彼は権力者だ、私だって執務官、彼がどういう立場なのかもよく知ってる

だからこそ、自分の隣に誰かを立たせる事が出来ない、本心では認めたいけど、実際は遠ざけてる

裏切られるのが、失うのが怖い、今の彼はそんな存在

友達だと認めたいのに、人と一緒にいたいのにその本心を認められない

 

孤独

 

その言葉が1番良く響く

だからこそ、クロノの前で見せたあの言葉は忘れない

 

「幸せに、なれたらいいのにな」

 

どんな話をしていたか分からない、クロノも気づいていなかったしケントも次には直ぐにまた淋しそうな目でクロノと話していた

 

そう、ケントは幸せになれてない、誰にも心を開けず、ずっと一人のまま……

 

だから……救いたいと思った、いつかの白い少女が、1人の少女を救った時の様に……

 

だから、待っててね、ケント

 

私が、貴方の隣で支えるから

貴方は、一人じゃないんだって……

 



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攻防

 

 

(さて………)

 

首元に魔力刀を押し付けられながら少し考えてみる

相手は恐らくナンバーズの二番、四番、六番、そして今俺の目の前にいるのは二番と四番

そしてカリムが人質に取られていて、六番が脱出経路の確認……だと思う

 

カリムさえ人質にとられていなければどうにかなったんだが……実質相手方の主要戦力は二番のみ……あとはどうとでもなる

しかし……銃弾以上の加速でカリムを助け出すなんていくらなんでも無理、最悪の場合この部屋ごと全て『破壊』するという手はあるのだがな………

そして二番が俺を何時までも気絶させない理由……皇帝特権が知られたからな、向こうも俺の事を警戒していると思っていい

俺を気絶させるにはなんらかのアクションを起こさないと無理、そしてその一瞬が命取りとなる

 

つまり………硬直状態ってわけだ

ま、恐らくだが六番が脱出経路の確認と一緒にお仲間を連れて来る可能性があるんだがな………多分三番

五番の幼女……チンクの能力は音が大き過ぎるから騒ぎになる……だけど弱った、三番がここで来られたら完全にスキが無くなってしまう

硬直状態と言っても動かなければこっちが不利になるだけだな………

 

(上手く……いくか……)

 

デバイス無しで魔法を使おうとしてみるが……やっぱり無理

Stsではお決まりだったAMFが使われているな……デバイス無しでの魔法は不可能だな

 

となると……いよいよヤバイな……

 

ったく、デバイスを今からスキをついて取っても展開できる時間も無いし……こいつらにとってカリムを殺す事は簡単だからな

まず躊躇なんてしないだろうし……

 

「セインは?」

 

「今トーレお姉様を連れてこっちに向かってきてま~す、これで終わりですね」

 

やっぱり三番かよ……クソッ、流石の俺でもこれだけの戦闘機人を人質取られながら相手にするのはキツイぞ

 

「フフ、これであの脳味噌達の依頼も終わりってわけですか」

 

「クアットロ、気を抜くな」

 

「は~い」

 

気の抜けた返事で再び銃口をカリムに押し付ける四番………油断したな?

 

「っ!?」

 

「ケントさん!!」

 

銃口を押し付ける直前にいきなり目を覚ましたカリムがそばにあったデバイスを俺に投げつける

戦闘機人達もそれには流石に反応出来なかった、俺を押さえつけていた二番は反射的にクアットロの方を向く……それだけあれば十分!!

 

「そらよっ!!」

 

「っ!?ぐっ!!」

 

俺も確かな確信はなかった

だが……これも直感、カリムの不意打ちとも言える行動に反応し、自分を拘束していたバインドを『破壊』によって木っ端微塵にし、まだ追いつけていない二番に軽い手刀を浴びせ、デバイスをキャッチする

 

「くっ!!」

 

「ふざけてんじゃねーぞ!!」

 

「えっ!?キャッ!!」

 

カリムに発砲しようとしていた四番をデバイスで殴り飛ばす

よし、これでカリムの安全は確保された

そして………

 

「ケント様!!ご無事でございますか!?」

 

「何者だ貴様ら!!」

 

これによって生じた音に反応して外で警備していたSP達が続けざまに部屋に入ってくる

皆見ているのはフードを被った二番と悔しそうに顔を歪めている四番……終わりだな

 

「ケント……さん」

 

「無事でよかったカリム、怪我とかないか?」

 

「はい、なんとか」

 

やはりこの狭い空間でこの数と戦う事がどれ程無謀かを理解したのだろう……二人がジリジリと真ん中に追い詰められる

そらにしても……カリムのおかげで形成逆転だな

 

カリムが投げ渡してくれたデバイスを構える

形状は相変わらずの剣、いや、ステルスにする時に余分な機能は全て捨て、軽量化重視にしたこのデバイスはまさに『刀』と表した方がいいだろう

 

さて、この二人にはさっきの『脳味噌』発言を含めていろいろと話してもらう必要があるな

それにもうこれ以上襲われるのは嫌だしな

 

と、その時だ

 

「ウォォォォォォォ!!」

 

「ぐっ!?グアッ!!」

 

天井から突然現れた『何か』によって吹き飛ばされる数人のSP

くそっ、これ以上逃がすか!!

 

「二人とも、セインに掴まれ!!」

 

「トーレお姉様!!」

 

「トーレ、すまない!!」

 

トーレが現れたことによって硬直している中で二番と四番がセインの元へ急ぐ

三番が逃げようとしているが……こっちの方が早い!!

 

「逃がすかっつーの!!」

 

「はぁ!!」

 

俺の斬撃と三番の攻撃がぶつかる

こっちのデバイスがスピード重視の分ガッシリとした体つきの三番には力負けしてしまう

だったら……一度戻して数で勝負すればいい!!

 

「オラァ!!」

 

「くっ!!」

 

防戦一方になる三番

せめて一人だけでも捕らえておけば後々だいぶ違ってくる……ならば三番を……

 

「調子に……」

 

「っ!?」

 

「のるな!!」

 

大きな一撃を放つ瞬間に腕を止める

理由は簡単、近くにいて、騒ぎに駆けつけた局員を掴み、盾にしたのだ

そして………

 

「うっ!!」

 

「セイン!!行け!!」

 

「あいよ!!」

 

局員を蹴り飛ばして俺の方へと飛ばす

だから……

 

「逃がすかっつーの!!」

 

飛ばされた局員をかわして奴らが潜ったかべに手を伸ばす……くらえっ!!

 

「破壊(クラッシュ)」

 

多少の怪我はあるだろうが……命に別状はない

 

だが、その程度の力で放った破壊も不発に終わったようだ……そこにあるのは瓦礫と化した壁のみ

 

あいつらが潜ってから俺が放つまでのタイムは殆どなかった、普通の早さなら今頃目を回して捕まっているはず……なら……

 

「ISの……同時使用か……」

 

三番と六番が持つISの同時使用

確か三番のISが速度上昇のようなスキルだったからな………壁の中でスピードをあげたか……

 

はぁ……下の方は今の騒ぎで話し合いも一時中断して混乱してるし……

 

……事後処理がめんどくさい……

 



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コウノトリさん

 

「このたびは、このたびは!!」

 

「あ~、はいはい、わかったから、そんでもって鬱陶しいから頭下げんな」

 

「で、ですが」

 

「わかったって聞こえなかった?」

 

「は、はぃぃ」

 

すごすごと戻って行くお偉いさんっぽいオヤジ

あの襲撃から数時間、地上本部の前にはマスコミや野次馬がズラリと並び、今か今かと俺が出てくるのを待っている

あれからは……色々と大変だった

まず陳述会は中止、地上本部と本局、二つの大組織による合同での犯人追跡

まぁ、もちろんだが捕まっていない、当たり前だろうな……

 

そういう俺は事情聴取やら犯人についての詳細やらを聞かれたのだが……ぶっちゃけ話せる事なんてごくわずか

彼女達が戦闘機人だということ……親がスカリエッティだということ……脳味噌の事……そのような事を馬鹿正直に話す事なんてしない

 

まず信用性、管理局のトップが脳味噌?

体が機械で出来た人間?その事を信じる人間がどれだけいるだろうか

それにリスク、なぜ俺がそんな事を知っているのか、それに脳味噌達は自分達の存在を知られたくない………

コルテットは巨大組織だが司法や行政を一括して行っている管理局程ではない、そりゃあコルテットが管理局を見限れば管理局に経済的なダメージを大きく与えられるが所詮ダメージ……真っ向から争って勝てるとは思っていない

 

そんな相手の、更には裏のトップの情報を安易に流す?………危険だ……

それにスカリエッティなどはまだ大きな活動を開始していない、それなのに箱入りの俺が脳味噌の計画を大きく反らす?

………これから先狙われる未来しか思い浮かばねぇ……この件については俺自身で調べないといけないな……

 

「ケント!!」

 

「ん、クロノか」

 

息を切らしながらこちらに走ってくるクロノ後ろにはロッサもいる……何か用か?

 

「大丈夫だったのかい?襲われたって聞いたけど」

 

「何とか無事、ギリギリだったけどな」

 

「よかった……それにしても壁の中を移動するなんて………やっかいなレアスキルがあったもんだね」

 

まぁ……六番のISはスカリエッティからしても予想外なんだったか?

はぁ……四番の透明マントといい……六番の通り抜けフープといい……厄介だよ

 

「それにしても地上本部の守りを抜けてくるなんて……一体何者なんだ?」

 

「さあな、ハッキングがうまい奴でもいるんじゃないの?」

 

これは半分ホントで半分ウソ

確かに、四番の能力は高いがそれでも『俺』がいる地上本部のネットワークを制圧し、誰にも気づかれずに俺の所まで辿り着くなどまず不可能

 

前にコルテットで襲ってきたときもそうだ、壁を潜る程度ならいつばれてもおかしくない

 

内通者がいる……コルテットに詳しく、地上本部にも顔のきく人物………

 

それがわからないから困っているのだが……ぶっちゃけコルテットの人間関係で地上本部との商業目的で派遣している人材育成など数えきれない程だ……その中から内通しを探し出すなど不可能に近いからな………

 

だがそんな事を言ってもまわりを無駄に混乱期させるだけ……それにあくまでも俺の推測でしかないからな………むやみやたらに言いふらすつもりはない

 

まぁそれは置いといて……だ

 

「カリムは?」

 

「姐さんなら『もしかしたら』って事もあるから聖王教会の病院へ、気絶している間、連中に何をされたかわからないからね」

 

「そうか」

 

お礼を言いたかったんだがな……あの時カリムが起きている事を隠し、咄嗟に動いてくれなかったら今頃俺は培養液の中かもしれなかったわけだし

ん?でもあれだけピンチになったのはカリムが油断して捕まったから?

 

………お礼、どうしよう………

 

「まぁ、無事でなによりだ、まぁそれでも当分会えなくなるだろうけど」

 

「まあな、狙われてるってわかったから暫く外出できないと思う。犯人が分かればいいんだけどな」

 

ま、見つかる事は無いと思うけどな

今回の件で脳味噌やら俺の両親やらが関与している事がわかったんだ、調べた情報なんて全部上で消されるに決まっている

それにしても……俺の両親は何をしたいんだ?

ぶっちゃけスカリエッティが何かをしてコルテットに有利になる様な事は何も無い、いや、逆にスカリエッティの技術がコルテットを超えてしまってマイナスになりかねない

 

両親が、脳味噌どもに肩入れする理由はいったい……

 

「ああ、それはそうとケン「ケント」………」

 

クロノが話している間に挟み込んできたのはフェイト………あれ?

 

「えっと……その……」

 

「え~と……」

 

まさかの不意打ちで面を食らってしまう

やべっ、最近生で会ってなかったからわかるけど………もうまさに『大人』じゃね?

管理局の制服なのに色気が出てるってどうよ?

髪は下ろしていて胸は大きいし………それにこの前の話のせいで顔が真っ赤だ

 

「その……こ、この前はありがとう!!」

 

「え…っと……どういたしまして」

 

気まずい、物凄く……

こんな可愛い女の子相手にいきなり性の勉強させて、そんでもってありがたがられる俺って………

 

「エ、エリオには上手く説明したからね、まだ六歳だし!!」

 

「大丈夫か?少しテンションが可笑しい気が………」

 

「大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫………ふにゃあ……」

 

顔から煙を出しながらふにゃふにゃと崩れるフェイト

やっぱり……内容が内容だけあって顔が真っ赤……

ちなみにエリオになんて説明したんだ?

 

「コウノトリさんが運んで来てくれるって~……ほにゃあ」

 

やべぇ、何この動物、すっげぇ可愛い

テイクアウトってOKですか?フェイト見てるとなんかすっごい誤ちをおかしてしまいそうで怖いのだが………

 

「コウノトリ?何の話だい?」

 

「大人の階段のぼる~♪」

 

「??」

 

ロッサよ、お前は大人なんだからすこしぐらい察しやがれ

 



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クロノの結婚

 

「クロノが結婚?」

 

「そうやねん、そんでもってケント君も招待したいってクロノ君が」

 

ああ、もうそんな時期だなと一人考えてみる

Stヒルデ魔法学園を卒業して一年、本格的にコルテットの次期当主としての勉強会を始めたこの頃

いつも通り、聖王教会の一室ではやてから伝えられたクロノの結婚

 

相手はやはりエイミィ、GODに介入した時にチラッと見たけど……なんでリリなのってこんなに美女率が高いんだろうな?

すっかりモブだと思っていたが想像以上、てかオバさんキャラで弄られているシャマルさんがあれだけ綺麗だったのだ………エイミィさんがブサイクな訳がない

 

そんでもって、原作通り二人はくっついたって感じ、とりあえず『おめでとう』とは言っておく事にはしよう

一年前の陳述会からなかなか会ってないからな………あの事件、結局犯人見つからなかったし

まぁ、調査は今も続行中なんだけどね

 

「それにしても……俺を招待?」

 

「そうや~、ケント君だけ仲間はずれって事にはせえへんで?」

 

………俺の事は結婚式の時ぐらい忘れたらいいのにな………

多分俺の護衛やら見張りやらをたのまれてるんだろうし………仕事中熱心な奴だ………

 

「それにしてもケント君……私と同い年やったよな?」

 

「そうだけど?」

 

「えっと……身長……」

 

「ほっとけ」

 

それについては禁句だバカヤロー

そう、俺の身長は只今145cm………俗に言う合法ショタ

もう十六だぞ?この屈辱分かるか?

そりゃあ女の子だったら『可愛らしい』で終わらせる事が出来るけど男で145って………くそったれ……

 

まぁ、それぐらいでへこたれる俺ではない、はやてや周りの奴には内緒だが只今俺はvivid編で大活躍していた『大人モード』の研究をしているのだ!!

ただ……セイバーの感じ、簡単に言うと『違和感』を無くす為に悪戦苦闘中……大きすぎてもダメだし小さすぎてもダメ……目標は160!!

 

「でもわたしは今のケント君が大好きやで?」

 

「ありがと」

 

軽く受け流す

はやては何と言うか……直ぐに『好き』やら何やらを使いたがる……よくわからん

まぁ原作のおかげでそういうキャラクターだと言うのは意識しているのだがもし知識が無かったら本気にしてしまってもおかしくない………時々顔赤らめながら言うのはマジ萌える

まぁ、もし本気にして返事なんてしてしまっても俺が恥かくだけだと思うけどな………向こうも本気じゃないと思うし

だって俺がはやてにフラグ立てるなんてできないし、そりゃあ容姿はいいと思うけど原作キャラを容姿でフラグ立たせる事が出来たら苦労しない

原作キャラには中身だね、あいにく俺は特に何の取り柄もない高校生、原作キャラを惚れさせる要素なんてこれっぽっちも無いからな 

「むぅ、結構本気やったねんで」

 

「はいはい、で、話が逸れたけどクロノの結婚式っていつなんだ?」

 

「むぅ……丁度二ヶ月後や、場所は……ここで」

 

はやてが不機嫌だが無視、ノリで乗ってあげてもよかったか?

それにしてもクロノ、伊達に提督やってねぇ……けっこう金使う所選んでんじゃねーか

 

そういえば……クロノの結婚式って事は原作者キャラ大集合って訳か……まぁもうしばらくは襲われる心配も無いし……頼めば行けるか?

だとしても俺、大丈夫なのだろうか……SPやらのせいで騒にならなければいいが……

 

………そういやクロノの子どもの名前って何だったっけ?まぁ……いいか?

 



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プラン提供

 

「その……なんだい……これは?」

 

「コルテットにあるプランの中から一番いいのを選んでもらった……一般の結婚式場なら気が抜けないし………かと言ってせっかく決めた結婚式場を俺の都合上で変えてしまうのも悪いからな……エイミィさんに聞いたら即刻決定したが………」

 

「そ、そうなんだ……」

 

ロッサが若干引いているがこの際無視する事にする

だが良かったよ……まだ式場とかが決まっただけで特に内容を考えて居るわけじゃなくて……

 

まあそんな事はどうでもいい、今俺がいるのはコルテットが持つプライベートの『次元航空船』………あれだ、前世で言ったらプライベートで宇宙艦持ってる様なもん

 

クロノの結婚式も明日に迫り、フェイトが妙にそわそわしているこの時期

クロノが決めていた結婚式には……案の定コルテットからのストップがかかった

ここ数年来で何度ピンチあってるかわからないぐらいなのだ……それに犯人まだみつかってないし……

そんなところに行くのは危険だと……それに報道陣も大量に集まってきてしまうのでクロノの結婚式どころではなくなる

 

そんでもってその事をクロノに相談してみたのだが……やはり難しかった……

ただ、クロノは式場を決めただけで場所の移動は出来ると………だったら『コルテットが用意出来る式場があるじゃないか』

ま、クロノからには反対されたのだが……『君にめいわくかけられない』って

だけどせっかく誘われたのだ、俺も生の結婚式は前世を含めて見た事がないし

 

そんでもってエイミィさんに説明したらあっさりOK、式場はコルテットの用意出来る場所に変更って訳だ

 

ん?どこにあるかだって?………ああ

 

『無人世界』だよ

 

まあ無人と言っても荒れ果てている訳ではない、爺曰く一回式揚げるだけで『ピー億円』かかると言う『超』セレブ結婚式

どんな場所かと言うと……vividに出て来たルーテシア親子がいたような世界、自然に覆われた花だらけの小さな世界

そしてこの世界、コルテットの完全なる私有地らしい……ふざけてんだろコルテット……

 

エイミィさんはテレビでしか見た事がない大式場で式を挙げられると聞いてなんか張り切っているしクロノは毎回毎回礼を言ってくる……あ、もちろん殆ど支払いは俺持ちな

クロノの財布が死んじまう……それでも「それは出来ない」と言って一割だけ払ってもらうが…

あと『俺持ち』って言うのは『俺が払う』と言う事、コルテットから出す気はない

なんだかんだ言って頼りっぱなしだからな……コルテットに……

それに俺、『黄金律』で溜まったお小遣い?が山ほどあるのだ……使っても使っても増えるだけなので別にいいかな~……と

 

それ言ったらクロノに唖然とされたが……全部俺が稼いだんだぞ……株やら何やらを暇潰しで……

 

「あ、ケント君」

 

「ん?はやてか」

 

「すごいな~この船……プールとかレストランとか全部揃ってるし……」

 

「俺もビックリだよ……そんでもって局の船より性能いいらしいし……」

 

「そうなん?」

 

「爺によると」

 

で、俺が乗ってる航空船……わけわかんねぇ

言い忘れていたが式場がある世界に行くまで大型船で丸々一日、その間を船で過ごすのだが……金の無駄遣いだろ…

確かに、局の次元航空船はコルテット製の物が殆どのだ、しかし法の下で動く組織が持つ船より民間企業の船の方が性能がいいとは……

それでこの船、プールやらレストランやら簡単なカジノやスポーツ場など……たった一日で何しろって言うんだ………

 

「ケント君も遊ばへん?主にプールで」

 

「何故プール……やめとく、女子率高いし」

 

男もいるんだけどな、主にクロノの同僚で

 

「なのはちゃんが会いたがっとったで~、なのはちゃん忙しいから会える機会無かったからな~、お礼が言いたいって」

 

「なのは……俺が治したあの子か?」

 

「そうそう、体の隅々までケント君にじっくりと観察されたなのはちゃんや」

 

「そう言われるとなんかエロい、俺が変態みたいに聞こえるからやめて」

 

「なんならいっそ変態になって私を押し倒してみる?」

 

「やめとく、好きな人の為に体は大事にしなさい」

 

「私はケント君好きやで?」

 

「クロノやロッサ、カリムもだろ?本当に大切な人の為に『好き』っていう言葉はとっておきな」

 

「むぅ」

 

プクーと膨れるはやて、ロッサは笑っているが……お前、原作でははやてと結構いい線までいってなかったか?

いや、ロッサはシャッハとか?………はやてはよく分からん

そんでもってなのは……ね……

彼女も責任感じて無ければいいけどな~、溜め込みやすい奴だろうし

いちいち謝られるのはなんか……はっきり言って鬱陶しいし……

転生してから謝られてばっかだからな………一度謝ればそれでいい

それにあれは俺の勝手な自己判断が引き起こした事で……はっきり言って自業自得だしな………

 

まぁ、溜め込んだままズルズルと引きずるのもよくないから一回会ってみるか……まだまだ時間はあるし……

 

それにしてもクロノ、あいつ周りに恵まれてんだな………同僚やら部下やら沢山いて……ホント、羨ましいよ……

 



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脱走

 

「はぁ……はぁ……」

 

「捕まえろ!!小娘一人に何を手間取っている!!」

 

真っ白の廊下、少女は走る

見に纏うのは灰色の……ボロボロの服

美しい筈の金髪の髪は乱れ、素顔を見る事が出来ない

 

「くっ、どうせ失敗作、殺せ!!外部に漏れたら面倒だ!!」

 

「火力兵器を使用する事を許可する!!どんな手を使ってでも止めろ!!」

 

白い廊下に火花が散る

鉄の固まりは少女の肌を焦がし、焼き、傷つける

赤い鮮血が飛ぶ、それでも……少女は走る

生き延びる為に……自分を保つために……

 

だが………現実は残酷だ……

 

「あっ」

 

少女の足から吹き出る血

盛大に頭から転がる、身体は銃弾による傷と打ち付けた事による打撲や内出血

息は荒く、もう立つ事すら出来ないだろう

白い白衣を着た、薄ら笑いを浮かべた男達が銃口を彼女に押し付ける

だが………

 

「ぐわっ!!」

 

「なんだ!?」

 

少女から溢れ出すちからによって吹き飛ばされる男達

少女の足元には『黄金』の魔方陣

 

「逃げろ!!こいつの魔力だけはオリジナル以上だ!!」

 

「あああぁぁぁぁあぁぁぁ!!」

 

轟音

 

たったそれだけで男達は吹き飛ばされる

男達と少女に出来る圧倒的な差、残酷なまでの力の暴力

そして、少女の手の中に集まる黄金の魔力

男達は恐怖に震え、少女は手を伸ばす

そして………

 

「ごめんなさい」

 

爆発した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このクソリア充がぁぁぁ!!」

 

「エイミィさん!!今からでも遅くない!!」

 

「そうだそうだ!!そんな堅物じゃなくて俺と結婚してくれ!!」

 

「君達は一体何しにきたんだ?」

 

クロノが呆れながら騒いでいた男達に話しかける

その隣にはエイミィさん、腹を抱えて笑っている、そのウエディング姿は何とも美しいものか………

 

大体の日程も終わり、結婚式も終わりを告げようとする今日この頃

花の咲き誇るこの小さな世界で、結婚式を挙げた二人

リンディさんとエイミィさんのご両親は成長した我が子を見て涙を流し、なのは達原作キャラは大いにお祝いし、クロノの同僚はふざけ合い、笑ながらも祝福している

 

自分で言うのは何だが……はっきり言ってよい結婚式になったと思っている

それにしても……やっぱり指輪交換って緊張するもんなんだな……あのクロノの手が見てわかる程震えていた

落とす……なんて事はなかったがな、流石提督

あ、ちなみにブーケトスはリンディさんが取った、何故いる………

確かあれって取った人が結婚しないと他の人は結婚出来ないんだよな……リンディさんは再婚の予定は無いようだし……残り全員結婚出来ないってことか?

 

そして『原作キャラなら仕方が無い』と感じている俺もいるのが不思議だ……前世のForceは完結せずにこの世界に来てしまったのだが……結局彼女達に春は来たのだろうか?

 

来てないだろうな……主に大人の事情で……

 

「あ、ケントさん」

 

「ん?カリム……料理はもういいのか?」

 

「私はそんな食いしん坊じゃありません!!」

 

さっきまで「見たことがない料理ばっかり」とか言って食べ歩いていたのは誰だ……

そりゃ見た事がないだろうよ、何気に一流シェフ大量にレンタルしてるし

フルコース数十万するのばっかりだ、そうなると食べにくいので周りには知らせていないが……

 

「それにしても……まさか見上げられる様になるなんて……」

 

「フフフ、まだまだ伸びますよ」

 

くそぅ……カリムに見下ろされるなんて……これはもう皇帝特権を最大まで引き出して早く大人モードにならないと……男としての威厳に関わる

 

「それに……今のケントさんも十分かっこいいですよ?」

 

「何故疑問形?……でもありがと」

 

「どういたしまして」

 

なんというか……やっぱりおしとやかだな

はやてとはまた違う、なんと言うか……お嬢様って感じ

 

と、その時だ……

 

「………なんだ?」

 

「??」

 

よくわからない、上手く説明出来ないが自身の直感が何かを感じ取る

場所は……近くも無く遠くもなく……魔力か?

でも誰が、この世界は基本無人だろ?

結婚式の出席者が魔法を行使したとは考えにくいし……

 

「わるいカリム、ちょっと用事があるから行くわ」

 

「えっ、あっ」

 

カリムに詫びをいれてその場から立ち去る

もし魔力反応があったのならそれなりの人間はいまのに気付いている筈だが……見渡した感じだといないな……

みんな結婚式に夢中になってる、守護騎士の面々も気付いていない……

 

「………行くか」

 

もし結婚式中に何かがあった場合クロノに悪いからな…。コルテットの人間に行かせてもいいがここまで感じ取れた魔力だ、相手は相当の実力者の可能性もある

コルテットの人間もこの世界では『モブ』に分類されるからな……死んでしまう可能性もあるし……だから『転生者』である俺が行く

だけど……今こうしている間も見張られてるからな……俺

だったら……

 

「トイレっと」

 

流石にトイレまで覗く様な奴はいないだろう

一応これでも男の娘、覗く様な奴がいれば即刻叩き切るし……

そんでもって皇帝特権を使用し、遠距離転移を可能にする……座標は……大体この辺か?

曖昧だけど直感が『ここっ』て反応している……

さて……とぶか………

 

黄金期の魔方陣が展開され、一瞬の内に掻き消える体

不思議な浮遊感が終わった後、目を開ける

 

そこにいたのは金髪の少女、力無く倒れ、周りは廃墟と化した『何か』

 

金髪の少女の息は絶え絶え、体には幾つもの傷痕があり、放置していたらこの無人世界では死んでしまうだろう

 

だが…….俺の頭には何も入ってこなかった

 

だって……この顔は誰よりも一番俺が知っている

 

確かに、ボサボサの髪のせいで顔はよく見えない、目は閉じているので瞳の色はわからない

だが……輪郭でわかる……こいつは……

 

 

 

「俺?」

 

 

そこにいたのは……俺だった

 



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クローン

 

「ふぅ……ひとまずこれでいいか?」

 

少女に当てていた手をどけて額の汗を拭う

今俺がいるのはコルテットの船の中

まだ結婚式は続いているのだが……事態は一刻を争ったので皇帝特権を使い、船の中まで飛んだ

そんでもって医療室、これだけ大きな船だ、医療用具も一通り揃ってある

外傷と内部の手当、麻酔を使って足に突き刺さっていた銃弾の除去

 

ひとまず一命は取り留めたとおもう、顔に表れていた苦痛の表情も今は大分マシになっている

 

そしてその素顔は………紛れも無く俺

いや、所々違うところもあるのだが………まずこの子、俺よりもなんかこう……顔全体が柔らかい感じ……女の子だ

年はどれくらいなのだろうか……俺よりも数センチだけ小さいと思う

ぶっちゃけ『双子』と言えば分からないのでは無いか……いや、間違える事はないのかもしれない

俺はセイバーなのに『男』と認識出来る様にこの子の第一印象は『女』、何と言うか……俺とはまた雰囲気が違う

 

そして……そこから導き出される結論は……

 

(クローンね……無人世界だから安心か、それに逃げても誰も頼りになる人間がいないし)

 

クローン………簡単に言うと俺の偽物

ここは無人世界、更にコルテットの私有地

そんでもって超セレブの結婚式ぐらいしかここに来る事がない……人体実験には丁度いい場所だ

もし逃げても無人世界なので庇ってくれる人間はいない、それにより外にこの事が漏れる心配もない

逃げたら逃げたでそこからはリアル鬼ごっこ、捜索の為に裏の人間を呼び、見つけ次第処分するってか?

今回のパターンは俺のクローンが逃げようとする最中に研究関係者に見つかる……逃げられないと悟り自身の力で撃退ってか?

よく見てないが……黒こげになった『何か』があったしな……残念ながら俺はそんな物を見慣れているわけではないのですぐに目を逸らしたのだけど………

 

「よいしょ」

 

取り合えずベッドの横に椅子を持って来て座る

寝息を立てる少女……恐らく数日は起きないだろう

複雑な気分だ……これは自分では無いと自覚しているのにこの子の境遇を考えると自分を照らし合わせてしまう……自分が銃弾の渦に呑まれ……実験動物の様な………

 

………この子は、プロジェクトFによって作られた子なのだろうか

もしそうだとすれば……心苦しいのだが少しだけ記憶からを消さないといけないな、前世の記憶や神なんて物の事を知られているとすれば面倒だ

 

そして……この子を作った組織……

 

恐らく……いや、絶対に………

巨大な組織には絶対に影がある……それは十分に知っていた事だった

しかし、映像で見るのと実際に見るのでは訳が違う

………苦しいのだ、この子の事を思うと……これが俺が好き勝手した事への罪だと思うと……

 

「はぁ……」

 

取り合えず……どうしようか……

馬鹿正直に『この子は僕のクローンです』なんて言う事は出来ない、コルテットにとっても局にとっても……この子の事を思っても……

かと言って『コルテットとの関係を切る』なんて事も出来ない

誰かが守ってやらなければすぐに消されてしまう……コルテットと対等に渡り合い、彼女を本気で守ってあげられる存在……

 

「俺しか……いねぇじゃねーか」

 

分かりきっていたことだ、この子を守れるのは俺しかいない

近いうちにあの研究所が潰された事、彼女が失踪したこともすぐに上へと伝わる……ならばその手から守ってやらないといけない

だが……それでも足りない……一応考えはあることにはあるのだが……それに彼女が頷いてくれるかどうか……

 

「…………通信か?」

 

気付けばディランダルが通信をキャッチしている

相手は……爺か……

まぁ当然だわな、もうかれこれ一時間以上はトイレの中、調べてみたらもぬけの殻だったのだろう

この子は当分起きないし……結婚式に戻ろうかね……

 

ここで出来ることは殆どないからな、それにしても彼女……

 

 

魔力値SS+って……どう考えてもおかしいだろ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「酷い」

 

一人つぶやきながら彼女は焼け跡を見渡す

そこには廃墟、火は殆ど消えているがチラホラまだ微かに燃えている所がある

だがこのクレーター、生存者は恐らく絶望的だろう

そして………

 

「血」

 

地面にべっとりとこびりついた血、そして銃弾

さらには転移した時の残留魔力、己のデバイスに座標の逆算をさせ、その目的地に彼女は目を見開く

彼女が今回の事に気づけたのはホントに偶然、偶々デバイスが遠くで爆発した魔力を察知したのだ

自分の仕事の為に自身のデバイスはこういった分野に少しだけ特化させてある、相手を逃がさない様に……出来るだけ早くに駆けつけてあげられる様に……

 

しかし結果は間に合わず、そこにあったのは廃墟と血の跡、そして残留魔力

もし、この銃弾を放ったのが転移魔導師なら………この血は被害者の血なら……

 

駄目だ、転移先は兄の結婚式場のすぐ近く、

このままでは……危ない

だが………

 

「ケントの……魔力?」

 

転移の為の残留魔力を調べた結果、その特性はケントの物

しかし………爆発したと思われる魔力についてはエラーが続くばかり

彼女の脳裏に最悪の光景がよぎる、この血がケントの物だったら………この銃弾がケントの肉を引き裂いていたら……

ケントが今も……助けを求めているのだとしたら………

 

彼女、フェイト・T・ハラオウンは飛ぶ

 

転移先は、コルテットの次元航空船

 



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バレる

 

「楽しかったな~、まだ明日もあるんやろ?」

 

「はやて、抱きつかないでくれる?

ここのホテルに泊まる予定だよ、明日はこの世界の観光」

 

『一日目の』結婚式が終わり、皆揃って歩く

エイミィさんもクロノも同僚や先輩、後輩に囲まれている

 

そう、この結婚式は二日、一日目はれっきとした結婚式で二日目は新郎新婦を中心とした観光

凄まじいぐらいに自然しかないこの世界、さらにその全てに手入れが入っていると言うのだから驚きだ

ま、小さな世界だからな、クロノが本気で飛べば二時間ぐらいで一周出来る

はぁ、それにしても出遅れちまったな、帰ってきたらもう式も終わり、呼んでくれたクロノには悪い事をしてしまったものだ

と、その時だ

 

「ケント・コルテット、いるか!?」

 

「なんや~シグナム、ケント君ならここにおるで?」

 

好い加減はやて……どいてくれないだろうか?

それにしてもシグナム、彼女とは面と向かって話したことはない筈だが……そんな緊張した顔で一体どうした?

 

「テスタロッサからだ、代わってくれと」

 

「フェイトさんが?」

 

そういえばここに戻って来てからフェイトの顔を見ていない、何処へ行っているのだろうか……

 

「ケント………今すぐ船まで来て」

 

「フェイトさん?どうしたんですか?」

 

通信機を受け取り、皆と離れた場所で開く

そこには顔を伏せ、何かを考え込んでいる様な彼女の姿……暗い顔してどうしたんだ……

それに……船って……

 

「いいから来て、今すぐに」

 

「今すぐって「あの子……なに?」っ、!?」

 

聞き返そうとしたらフェイトからの爆弾発言

なんでフェイトが知ってんだよ……あの子保護してからまだそんな経ってねぇぞ……

気分が悪くなって船の医務室行ったのか……いや、医務室ならこっちにもある……

わざわざ俺が船の医務室を使ったのは周りにバレない様にする為であって……

 

「いいからすぐ来て、あの爆発の跡の事も……詳しく聞かせてもらうから」

 

「…………わかった」

 

彼女、真剣だな

あの『のほほ~ん』とした天然では無くて本当の『執務官』としての顔

そりゃ扉開けたら俺のそっくりさんがいたら誰だって驚く、そして……その分野に関しては彼女自身が一番よく知っている

はやてやロッサならまだしも……一番にフェイトにバレる事になるとは……俺の完全な不注意だ……

 

「どうせ一度戻ろうとは思っていましたしね、詳しい事は俺にも分かりませんけど知ってる範囲なら」

 

「うん、お願い」

 

通信を切る

さて、船に行くのは決まったとして今度は周りを上手く撒かないとな…………トイレ行こう……

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……一日にこう何度も使うとくらくらすんな」

 

またまたトイレの中から移動して船の中

ホント、転移魔法って便利だよな……普通は転移専門の魔導師でしか扱えない高度な魔法なんだが……こういう時に皇帝特権は便利だ

 

さて、フェイトと待ち合わせしたのは医務室、あのクローンちゃんも数日は起きないから特に問題は無いと思うんだけど……流石に放置って訳にもいかないからな

 

あ、それと俺が爺に言い聞かせられ、戻った後にこっそりと付けられていた発信機、悪いが全部外させてもらった

今頃トイレの水道管を通ってよくわからん場所に流れているだろう、直感舐めんなよ

 

ま、そんな話題を変えるような現実逃避は無しにして医務室のドアを開ける

そこにはやはりねむったままのクローンちゃんと椅子に座ってこちらを見つめるフェイト、金髪もこんだけ集まれば壮観だね

 

「ケント、この子は一体……」

 

「単刀直入に聞いてくるね、まぁフェイトさんの予想通り、俺のクローンだよ」

 

フェイトが目を見開く

当然だろうな、自分自身がクローンなのだから、そんな事を言うつもりはないが

ただ……これで責任を感じないでほしいのだが……

 

「どういう……こと、あの爆発は一体…」

 

「そうだな……取り合えず座っていいか?」

 

フェイトが出してくれた椅子に座る

そこからは延々と説明

 

一つ、この子は俺のクローンだと言う事

 

一つ、この世界は基本無人なので人体実験には最適だと言う事

 

一つ、この子は身体中に傷を負っており、命が危なかったと言う事

 

一つ、あの爆発は恐らくこの子が起こした物で、この子の魔力はSS+だと言う事

 

まぁ、まとめるとこんな感じ

流石に『コルテット』の名前を出す様な事はしない、今度はフェイトが危なくなるからな

 

「この子が作られた理由は……」

 

「たぶん俺のレアスキル目的、この子に受け継がれているかどうかは知らないけどさ」

 

特典ってコピー可能なのか?

レアスキルと違って魂そのものにインプットされているから………無理なのか?

 

「それだけのために……」

 

「それだけのためにするだろうさ、世の中そんな人間ばっかりだ」

 

みんながみんなって訳ではないが俺の周りを見渡してみるとこういう事は余り不思議ではないからな

実際に見たのは始めてだが……今でも一日に一つを目標に研究所を潰している

その過程で実験データがあるからな……そういった『話』に関しては残念ながらなれてしまった自分がいる

 

「ケントは……どう思うの」

 

「俺?」

 

「だってじぶんのクローンだよ?その……気分が悪いとか、実在してほしくないとか」

 

「なるほど……ね」

 

確かに、現実味のある質問だ

よくアニメや二次創作などでは「クローンにだって生きる価値はある、この子と俺らとは何が違うんだ?」などと綺麗事をよく抜かしているがそんな事はあり得ない

確かに、この子と俺とは雰囲気や性別は違っているとはいえ俺の写し身、悪く言えば偽物

普通の人間ならそんな相手をみれば「二度と目の前に現れないで」などという態度が当たり前、素であんなカッコいいことが言えるのは本当の主人公体質を持つ人間かただの馬鹿、もしくは………

 

「こうなったのも俺の責任、俺が面倒を見るよ」

 

俺の様な『偽善者』

ハッキリ言っておこう、俺は今こうやってこの少女の治療をし、助ける事をしたが今、こうやって眠っている彼女を見るだけでも嫌な気分に襲われる

想像してみて欲しい、ある日突然自分の偽物が現れるのだ、それをすぐに受け入れ、認める事なんて出来るだろうか?

無理だ、どう考えても

だが……何度も言うが今回は俺の責任、俺が『転生』なんて物をして、この世界を変えてしまったので生まれてきた命

目の前にこうしている以上、『助ける』という選択肢以外を選んでしまう事は俺の心に一生傷を残す事になる

ただの偽善、純粋な『助けたい』という心なんて一つもない

ただ……それが『義務』だからするだけ

 

「そう……なんだ………方法は考えてあるの?」

 

「ああ、この子を『養子』にする、もちろん親名義でな」

 

「養子?」

 

「簡単に言うと俺の妹にする、そうやって世間一般に知らせる事でこいつを闇から助け出す」

 

「コルテットの人間にしてしまって……その知名度で助け様とするって言う事?」

 

「ま、そういうことだ」

 

上にこいつが逃げたと言う事を知られる前に俺の妹にしてしまう

コルテットの長女となるのだ、さらに世間一般にもその存在は知られている

裏で処分するのは難しい……

まぁ、これもすべてこの子が了承してくれたらなんだけどな

 

「ま、取り合えずフェイトさん、この事は内密にしといてくれませんか?

この子の為にも」

 

「うん、わかってる」

 

クローンなんて世間に知られてはいけないからな、

フェイトもそれを分かってくれている

さて……と

 

「取り合えずフェイトさん、この子の体を拭いてくれません?」

 

「え?」

 

「いや、風呂とか入れないじゃないですか?

かといって俺が拭くのも抵抗ありますし」

 

「え、あ、うん、大丈夫だよ」

 

結果オーライと言うべきか……女手が増えたのは少し嬉しいな

 



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ネリア

 

「御早う御座います」

 

「ああ、おはよう」

 

いつもと変わらない朝、近くにいたメイドが俺を起こして来る

学校を卒業してから対して行く場所も無い俺は殆ど家の中で過ごす、まぁそう言ってもまだこの家、知らない場所の方が多いのだが……

顔を洗い、髪を整える

ただてさえ長い髪だ、それでもこのアホ毛だけは凛々しく堂々と立っているのは……どういう原理なのだろうか?

後ろで一つに縛り、服を着替える

それにしても少し長いな……やはりここはズバッと切ってもらうか……そうつぶやいたら周りのメイド達に全力で説得された。特別な思い入れでもあんのかね~

ドアを開けて食事に向かう、後ろからは家の中だと言うのに大名行列の様な列……もう知らん

で、いつも通りいきすぎた料理の待つ食堂へ………いや、今となっては逆に足りないぐらいなのだが……

 

どでかいテーブルの中心に座り、大皿を一つ丸々平らげている金髪の少女……ったく

 

「あ、おはようございますお兄様」

 

「おはよう『ネリア』、ご飯粒付いてるぞ」

 

「キャッ」

 

慌てて周りのメイドからタオルを貰うネリア

………さて、あれからの話をしよう

 

クロノの結婚式は無事終わり、そろそろクロノのエイミィさんが第一子をもうけるのではないかというこの頃

俺が保護したクローンは結婚式が終わった三日後に目を覚ましたのだが……その後が大変だった

まぁ暴れるわ暴れるわ、また自分が捕まったのではないかと誤解していたらしくその時そばにいたフェイトとガチの戦闘になった

結果はフェイトが無事拘束したのだが……それでも無傷ではない

しかし……いくら魔力量が人以上だとは言えデバイス無しであのフェイトとやりあえるなんてな……はやてとガチバトルしたら町の一つ吹っ飛ぶんじゃないか?

 

で、駆けつけた俺が事情を説明、フェイトが結界を張ってくれたから助かったがもし病院を破壊していたらいくら俺でも庇いきれなかった、養子にするにしても内部からの反発があっただろうし

 

そして彼女、自分がクローンだという事は認識しているらしい

そして……俺がオリジナルだという事も……

そこから彼女に研究所内の事を聞いた、なんでも『クローン』として成功したのは彼女一人で後の全員が死んでしまっているらしいのだ

原因は不明、なんでも制作途中になんらかの『拒絶』を実験体が示し命を授かる前に使い物にならなくなったとか……彼女が生き延びたのは本当の偶然

拒絶というのは……もしかしたら俺が『転生者』だからなのかもしれないな…、

世界の修正力というかなんというか……彼女も一度は制作途中で死にかけているらしいし……

 

で、やはりたった一つの成功例である彼女には実験の日々、研究目的は俺が持つ『破壊』と『皇帝特権』の完全なるコピー

だが……それに関しては失敗だった、彼女にあったのはその莫大な魔力、それだけならばまだ使い道はあるのだがあいにく、そこで研究されていたのは俺のレアスキルについて、魔力の研究に関しては専門外

なので研究所通しの引き渡しの時に……自らにかかっていたリミッターをその魔力で強引に破壊して脱走……辛かっただろうに……

基本そういうリミッターは力尽くで解こうとするとそれに対しての防衛プログラムが施してある、それが非人道的な研究の実験台ならなおさらだ

 

激痛と苦しみの中で何とかその場から逃げ出した彼女を待っていたのは銃弾の雨、体をぶつけ、いたるところに怪我を負いながらも逃げ、足を撃たれた事で人としての本能、いわゆる『火事場の馬鹿力』の様なものが働き周りを木っ端微塵に粉砕した

これが彼女の辿って来た道のりだ

 

体年齢は14歳、生まれてからはまだたったの二年、それでも一般常識は生まれた時から見についていたようだが……

プロジェクトFのちょっとした応用で生み出された彼女だが肝心の記憶の方は全くだと言う事、これも俺が転生者だからだろう

前世の記憶は俺の脳に保管されているのではなく『魂に埋め込まれている』という方が近いのだろう……これに関しては安心した

 

そして、次は俺

 

何だかんだ言っていたが、当然の事ながら『俺一人』で全てが上手くいくなんて思っていない

いきなり『こいつを妹にする』なんて言って瓜二つの少女を前に出すなんて出来ない、俺何者だよ………

なので………彼女が俺のクローンだと言う事を爺に説明した……かなり驚いていた爺だったが俺の話を信じ、行動してくれた

『彼女は皆と同じ様に育てたかった』、『コルテットの長女』として一般に公開、『養子』なんて違和感マックスな方法ではなく『元からいたコルテット』として彼女を迎えい 入れた

両親が口を挟む時間さえも与えないスピード解決、黒に限りなく近い両親だが泣く泣く認めてくれている事にただ願うしかない

 

そういう長ったらしい経緯もあって今では彼女は俺の妹として、コルテットの長女として生活している

当然、言い方が悪いが『仮初め』の長女である彼女に俺の様な発言力はないのだが………それでもやはり世間一般には衝撃を与えたな

 

詳しい中身を知らないカリムとはやては掴みかかってきたし……何だよ『禁断の恋』って

そんなもんしてねぇよ……俺なんかに恋人役が出来るならそれはもう狂喜乱舞するのだが……『俺』を見てくれる人間なんかこの世界どこ探してもいないしな……いや、今では俺と同じ立場にいるネリアは分かってくれると思うのだが………

 

あ、『ネリア』というのは妹の名前、女だしセイバーだからな……真名である『ネロ』と『アルトリア』から少しずつとって『ネリア』

名前をつけてあげた時の喜びようは半端なかったな……今までは『No.14』とかいう番号だったらしいし………

 

「食べないのですか?お兄様」

 

「ああ、食べるよ」

 

ネリアの一声で我に返る

ゆっくりとネリアの隣に座って料理を食べる……朝から肉っておかしくないか?

 

それにしても……よく食べるものだ……

ネリア、俺が持って生まれたセイバー特典やレアスキルは受け継がなかったが一部受け継いだ?ものもあるらしい……

これがその食欲、ガツガツ食べて行儀が悪い訳ではないのだが食べる量が俺の五倍はある、その小さな体の一体どこに収納しているんだ?

それにネリア、俺の様に『選定の剣』によって身長が止まる事もないからな……いつ抜かれる事やら……

 

「おかわりお願いします、お兄様はおかわりどうしますか?」

 

「やめとく、これで十分だ」

 

そして彼女、俺がオリジナルだと知っているのに俺に対して憎悪の気持ちなどは持っていないそうだ

彼女曰く『そんなのは別に関係ない』

そればかりか今では俺の事を『お兄様』と言ってくる始末……

 

ハッキリ言って憎悪の言葉を浴びせられて、恨まれる方が安心出来た

 

ここまで素直だと……言い方が悪いが気味が悪い

 

「ふぅ、ごちそうさまでした」

 

「ごちそうさまでした」

 

まぁ、素直な事には変わりがないのだ……今はしばらく様子見だな

 



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後見人

61

 

タッタッタ

 

一人の少女が廊下をかける

後ろからはそれを止めようとして走るメイド達、しかしその差はジリジリと広がり、誰にも彼女を止める事は出来ないだろう

 

やがて少女は一つのドアの前で止まる

ドアノブに手をかけ、部屋に入ってから開口一番

 

「朝ですよーーーー、起きて下さいお兄様ーーーーー」

 

コルテット家長女ネリアは、今日も相変わらず元気である

 

 

 

 

 

 

 

「耳がキンキンする、それにネリア、毎回お前を見るたびに食欲を無くすんだけと」

 

「腹が減っては戦は出来ぬ、今日ははやてさんの部隊の視察に行くんでしょ?」

 

「戦じゃねーし」

 

近くにあったトーストを手に取りかぶりつく、ネリアの方は相変わらず、どうやったら朝から肉料理食えるんだよ………

それに……

 

「ネリア、一つ質問していいか?」

 

「なんですかお兄様?」

 

「何故太らない」

 

これだけ食べて締まるところはキチンと締まり出る所は原作のセイバーが怒り狂うぐらい出ているのだ………十五歳で……

 

「う~ん……お兄様の血が流れてるから……でしょうか?」

 

「サッパリわからん」

 

俺はちゃんと運動してんだぞ、室内プールでの水泳やらなんやら

 

ネリア、本名『ネリア・コルテット』

 

俺が彼女を保護し、義妹にしてから早三年

精神が周りと比べれば少し幼かった彼女も大分成長し、今では俺の身長をゆうに超える程になってしまっている

それにさっきも言ったように出る所は出て締まるところはキチンと締まる、もし俺が義兄でなかったら本気で惚れてしまうような美声と体つき、そして………性格

そう、ネリアは俺の思いとは裏腹に絵に描いたような『いい子』だった

 

素直で健気、今の時間をとことん大切にし人を元気付ける、危惧していた『オリジナルへの復讐』なんてものも全く見せず、思い返してみるとこの三年、俺の隣にはいつもネリアがいたかもしれない

 

だからかもしれない、あれだけ他人が怖かった俺がこいつにだけは素直に戻れるのは……恐らく最大の理由としては『自分と同じ立場』というのが大きいのだが………

 

「プハー、美味しかった~」

 

「ご飯粒ついてるぞ」

 

「えっ?キャッ」

 

頬についていたご飯粒を拭う

と、いうより俺が回想している間にどれだけ食べた?白い皿の山が見えるのはもう日常化しているが………

 

「あっ、とれた」

 

「ったく、今日はどっか行くのか?」

 

「学校休みだから特に予定はな~し、だからついて行こうと思って」

 

「つまらないぞ?」

 

「いいのいいの」

 

軽く鼻歌を歌いながらその場から離れるネリア

……食欲無くなったな

まぁそんな事を言ったが朝飯を抜くのは体に悪い、目の前にあるトーストをもう一度口に運ぶ

俺が今日向かうのは出来たばかりの新部隊、『機動六課』の視察

いかせん俺は後見人の一人、自分が支援した部隊なのだから一度ぐらい見にいかないとな………

え?俺がなんで後見人の一人になったのかって?

……率直に言うと『俺から提案した』

 

原作で、スカリエッティを捕まえる上で一番大切な部隊、それが機動六課

俺も最初は大丈夫だと思っていた、原作でも色々な反発はあったもののはやては部隊を立ち上げ、事件解決後には『奇跡の部隊』とまで言わせるようになった

 

しかし……だ……

 

コルテットの参入によるアインへリアルの『完全な』完成により、地上本部内でのレジアス派が大きく力を伸ばし、はやての前に立ちふさがった

はやても何とかしようと思ったのだが余りにも巨大すぎる派閥、『機動六課』という部隊の完成はもう不可能の状態………元を辿れば俺が悪いのだ

アインへリアルへの参入に同意したのは俺だしそれをレジアス相手に同意したのも俺

簡単に言えば『俺』という存在がいたせいで原作に必要不可欠な部隊が作られる前から壊滅寸前だったのだ

 

流石にそれだけはマズイ、という訳で形だけだが『少将』の位を持ち、バックに『コルテット』という組織を持つ俺がはやてに自分から相談し、殆ど強引に後見人として立った

レジアス派の人間達が力を強めたのはコルテットが参入した事によるアインへリアルの完成、ここでコルテットという組織を敵に回すのは不利だと考えたのか……機動六課に対する反発は激減、今こうして六課が設立された

 

はやては最後まで渋っていたがな……俺が後見人になることに

彼女曰く『自分は何も返せてないのにいつもケント君に助けてもらってる』だったか?

別に助けた覚えはないしお礼を目的に行動しているのではない、ただ単純に『無かったら困る』ので自分から動いただけだ

ぶっちゃけあまり原作と関わりのない部隊なら興味はない、はやてが自分から言ってこない限り協力は無かっただろう

 

まぁ、そんな訳で今日はその視察

まだ出来たてホヤホヤの部隊だ、新人達も取り入れて何とか稼働中って感じの

一波乱無ければいいんだけどな……俺の周り、いつも通り護衛が囲むからフェイトやはやてみたいに耐性がある奴じゃないと対応出来ないし……

 

それにしてもネリアも行くのか……多分目的はフェイトだろうな……

ネリアは自身の正体を知っている彼女の事を『フェイトお姉様』って呼ぶぐらいだしな……いつもいつも彼女に会いに行くので理由を聞いて見たら「恋愛のアドバイスしてるの」だからな………

フェイトって好きな人いたんだな、まぁ学校にも行ってたし仕事場にもイケメンの一人や二人はいるだろうし当然か……

だけど……前世でフェイ党だっただけあって複雑な気分だ、まぁ相手がいい奴だったら素直にお祝いするけど

 

「お兄様~、ボーとしてないで準備したらどうですか~」

 

「うぉっ、悪い」

 

気がつくと目の前にネリア

その服装はさっきのパジャマとは変わり現代風の、今時のファッション

ネリア、覗き込んで来るのはやめろ、その、なんだ、胸が強調されて……谷間とか……その……

一度注意した事はあるんだが、その時の返答が「大丈夫大丈夫、お兄様だったら」だからな………素直過ぎるのも問題か?

 

取り合えず、早く食べて着替えよ……

 



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視察 1

 

「フェイトお姉様~」

 

「ネ、ネリア!?キャッ!?」

 

グワッと黄色い影に向かい同じく黄色い影が突進する

後ろ向きに倒れたけど……頭とかぶつけてないよな……

 

「相変わらず元気一杯やな~」

 

「家に来た時から変わらずだよ」

 

椅子に座るはやてが笑う

ネリアは昔からこんな性格、今更だろう

 

今俺たちがいるのは機動六課部隊長室、こうして見るとやけに殺風景だな、デスク以外目立った物がない

 

「フフー、またまた大っきくなりましたねぇぇぇぇ!!」

 

「ちょっとネリアァァァァァ!!」

 

隣で起きているエロい光景には目を瞑ろう、昔からこんな性格?前言撤回、いつ教育を間違えた

 

「わかるかわかるか!!私やなのはちゃん以上にドンドン成長しとんねんで!?女としてのこの屈辱よ!!」

 

「フッ、貧乳」

 

「なんやてぇぇぇぇ!!」

 

いやいや、はやても十分にあると思うぞ、ただ周りが異常なだけで

それにしても………男の目の前でよくわからない争いやめてくれないか?

 

 

 

 

「あーーーもう、納得いかん!!どうしてみんな大きいんや!!」

 

「それはほっといて………視察に来たんだから案内してくれると嬉しい」

 

「そんな事ってなんなんそんな事って!!私にとっては死活問題や!!」

 

「はやて、落ち着こ、ね?」

 

「フェイトちゃんにはわからへんのや、大きい人には小さい人の気持ちが……」

 

「牛乳牛乳、毎日三リットル飲めば大きくなるって」

 

「ネリア、お前そんなに飲んでるのか?」

 

「朝二リットルにお風呂上がりに一リットルは当然!!」

 

我が妹が怖くなった

 

「あーーもう!!こうなったら開き直るしかあらへんやんか!!ケント君は小さい方が好みよな!!」

 

「いや、俺は大きい派だけど?」

 

「神は私を見捨てたぁぁぁぁぁ!!」

 

グワーと叫ぶはやてを尻目にネリアとフェイトは二人だけのガールズトーク?を始める始末

神は見捨ててないと思うぞ?そもそもロクな奴じゃないから

 

「案内はしてくれないのか?」

 

「酷いと思わんのケント君!!こんな迷える子羊に救いの手一つ差し出してくれへんの!?」

 

「案内」

 

「グスッ」

 

手を使って泣き真似をしながら椅子から立ち上がるはやて

ネリアに一言かけてその場を移動する……そもそも来た直後になんだよこの状況……軽く視察して帰るだけだったのに……

 

「ケント君の第一印象はどう思う?この部隊」

 

「立ち直りはやいなおい」

 

「開き直ったのです」

 

何それ怖い

 

それにしても………

 

「第一印象ね~、ただ綺麗だな~とか?」

 

「案外普通やな」

 

「まだ中見てないし」

 

そんなどうでもいい事を話しながら廊下を歩く

すれ違う奴が絶対に振り返るのだが……当然だろうな、はやてやフェイトは耐性が付いているので何でもないが俺たちの後ろには当然の事ながら護衛、普段見ないだろ?

てか絶対敬礼するんだな、一応管理局も軍事組織だし当然と言えば当然か?

 

「そないにしても私服って……ラフすぎるんちゃう?」

 

「局員の服なんて着たら色々と問題にならねぇか?」

 

「う~ん」

 

立場上の問題とか

 

「お、重たいよネリア」

 

「女の子に向かって重たいとか言ってはいけませ~ん」

 

「うう……」

 

後ろではネリアをおんぶする形で支えているフェイト、それは新手のイジメなのか?

 

「はい~、じゃあ簡単に説明するな、ここが司令室」

 

「女ばっかだな」

 

「気にしない気にしない」

 

メガネかけた奴しか見えなかったぞ、男

 

「はい~、ここがデスクワークルーム」

 

「女ばっかだな」

 

「気にしない気にしない」

 

ヘリのパイロットしか見えなかったのだが、男

 

「で、あそこが訓練場」

 

「戦争かなんかやってるのか?」

 

「気にしない気にしない」

 

あ、なんかピンク色のぶっといのが空に………

 

よくわからんが後先不安だこの部隊、これで成り立ったのが不思議

 

「訓練はお昼まで終わらんからな~、それが終わったらなのはちゃんにも会えるかも」

 

「ああ、あの子ね」

 

「ケント君が手術担当したのに殆ど会えてないやろ~」

 

同意、クロノの結婚式の時に少し話しただけでそれから全く会ってない、ここってリリカル『なのは』だよな?

 

「ちょっ、どこから出したのネリア!?」

 

「これを着れば好きな人のハートもキャッチ!!やっぱりそのスタイルを生かさないとね~」

 

後ろが気になって覗いて見るとネリアが何やら紺色の服?を持って胸を張っている

………スクール水着?それにご丁寧に胸の辺りに『てすたろっさ』と平仮名で書いてある

……何をさせる気なんだネリア?

 

「それとこれ!!」

 

「ネ、ネコミミ!?」

 

「まだまだあるよ~、ホレホレホレホレ」

 

肩からかける小さなバックからこれでもかっ、と出てくる小物類

マジでいつ教育を間違えた………

 

ネリア、フェイトの恋愛相談には乗っているがその殆どの知識が本やらなんやらだからな………ネリアが恋をした事は恐らくない

そんな事がもしあったら俺は……どうなるだろうか?

まぁそのせいでネリアがフェイトに教える知識はだいぶおかしな方向に歪んでるからな…

 

「こ、これは流石に……」

 

「お姉様のソニックフォームだってスク水と同じじゃーん、だったらこれぐらい楽勝だよね」

 

「そ、それは………」

 

フェイトがスク水とか………考えただけでもエロい

俺でも理性保てるかどうか………

 

「ケント君、今不謹慎な事考えへんかった?」

 

「いや大丈夫、何ともない」

 

「ふんだ、どうせ私は大きくないですよーだ」

 

さっきの事をまだ根に持ってるのか……

あ、訓練場のビルがピンクの光で倒壊したけど……新人って大丈夫なのか?

 

「はぁ、まあとりあえず訓練が終わったら隊長陣とは顔合わせしよか、それまでおれるんやろ?」

 

「今日一日ヒマなのだ~」

 

俺の代わりにネリアが答える

隊長陣か……これまで一度も話した事がないロヴィータとも会えるのだろうか?

 

「それとそれと」

 

「なに?」

 

「後で写真撮らせて、ヴィータとエリオとキャロとで」

 

「………………」

 

取り合えず一発殴っておいた

 



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視察 2

 

「ん!?ほんにひわケンホさん!!」

 

「なのはちゃん、せめて口のもんを食べてから喋ろな」

 

はやての一言で目の前の彼女は顔を真っ赤にしながら急いで口の物を飲み込む

………胸を叩いてるが大丈夫か?すごく苦しそうなのだが………

 

「ぷはぁ、はぁはぁ……こ、こんにちはケントさん」

 

「あ、うん、こんにちは」

 

栗色の髪をした彼女、『高町なのは』は息を切らしながらな敬礼してくる

……パスタのソースが口のまわりに着いているのはスルーしよう

 

「なのはちゃんには言ってなかったっけ?今日視察が来るの」

 

「視察が来るとは聞いたけどそれがケントさんだなんて聞いてないよ!!」

 

あー、と言いながら叫ぶ彼女

今俺達がいるのは六課の食堂、丁度訓練も終わり、新人達とお昼をとっている時間だと言うのでお邪魔したのだが……ホントに邪魔だったか?

彼女の周りにいる新人達は俺を見て放心してるし……あ、オレンジがフォーク落とした

 

「えっと、えっと……前はキチンとしたお礼が言えなくてすみませんでした!!」

 

「あー、うん、別にいいよ」

 

クロノの結婚式で会った時も殆ど話してないからなー、俺からするとえらく丁寧に挨拶されたつもりなんだけど……彼女にとっては少し雑だったのか?

まぁ三年ぶりだし無理もないか

 

「それより後遺症とかが無くて良かった、無理だけはしないように」

 

「あっ、はい」

 

それにしてもあれだけの重傷人がなんでここまで回復する……さっき見えたビームだって打ち出せるのが奇跡な筈なのに……これが主人公補正か!!

 

「なんや~、診察はせえへんの?」

 

「もう必要ないだろ」

 

「てっきり私は『診察』とか言って問答無用でなのはちゃんの服を脱がせてそのままアー!!やと思っとったんやけど……」

 

「俺をどんな目で見てんだ」

 

「お~目眩がする目眩がする、医務室で診察してくれへん?」

 

「えっと……八神部隊長?」

 

気になったのかオレンジの子がはやてに声をかける、そりゃ気になるよな、いきなりサングラスかけたスーツ男がズラリと俺たちの後ろに現れたのだ

周りからの視線も凄い、元から女性の割合が多い為か殆どが怖がってるし……

 

「あ、紹介するな、この背の低いイケメン君は本局少将の『ケント・コルテット』君、

六課の後見人の一人で今日は視察や」

 

「えっ……ティアティア!!コルテットってもしかして!!」

 

「ご無礼申し訳ございませんでした!!あの……その」

 

興奮する青色を無視して敬礼するオレンジ、

それにつられて同じく敬礼する赤とピンク、

そして遅れて青

う~ん、それより赤と青……めんどくさいから名前でいいか?スバルとエリオの前にあるパスタのパスの量はなんだ!?ネリアと同等じゃねぇか……

 

「おばちゃーん、パスタ特盛三つ~」

 

「はいよ~」

 

「ネリア様いけません、このような場所の物を口にされては!!」

 

「それとコーラのLLを五つ~」

 

「ネリア様ーーーーー!!」

 

ネリア、お前は気楽でいいよな………そんでもってどれだけ食うんだお前……

 

「あとはね~、LLのシーフードピザと~」

 

もう考えないぞ俺は、それに『と~』とはなんだ?

 

「あ~まあそう硬くならんと、どうやケント君?ここで何か食べて行くか?」

 

「いけませぬ!!いけませぬぞケント様!!」

 

肯定しようとした矢先に現れる爺……一体どこから現れた?

 

「気配を断ち、無を共に共有化する事で人は人を超える事ができるのです!!」

 

なにそれ怖い

つまり気配遮断スキルが異常なのね、わかります

 

「いけませぬぞケント様!!このような場所での御飲食、それは爺が許しませぬ!!」

 

「いいじゃねーかこれぐらい」

 

「断じて認められませぬ!!それに関してはネリア様も「おかわり~」ネリア様!?」

 

爺、お前が話している間にネリアは完食したぞ……あの量を

あの体のどこに入るのか………

 

「凄いね~、あの子」

 

「凄いですね~」

 

お前らも十分凄いと思うぞスバル、エリオ

それ見るだけで食欲なくす、エリオなんてなんでその中にその量が入るんだ?

と、一人考えていたら肩を後ろから叩かれる……誰だ?

 

「ニャ、ニャーオ」

 

「………………。」

 

ネコミミとネコ手?をつけたフェイトがいました

なにこれ可愛い、そしてなにこれカオス

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、う、恥ずかしかったよ………」

 

「大丈夫大丈夫、時間はまだまだあるって」

 

さっきのネコミミが余程恥ずかしかったのか……フェイトがネリアに抱きつきながら顔を真っ赤にしてふいている

あれって……練習だったのか?好きな人用の

てかネリア、やはり色々とお前がフェイトに与える知識がズレてるのはヤッパリそうだよな?どこでネコミミが出て来た……

 

「次はこれ!!」

 

「メ、メイド服!?」

 

「そうそう、これでシマパンを着て誘惑すれば大丈夫だよ!!」

 

それはおかしいぞネリア、確かにシマパンは宝だ、人類が作り出した宝具だとは思うがそんな事されれば確実に喰われるぞ、フェイトが

てかフェイトの好きな人ってシマパンが好きなのか?………仲良くなれそうだ

 

「なのはちゃん、ヴィータは?」

 

「ヴィータちゃんとシグナムさんは本局の方で仕事があるらしいから今日はいないよ」

 

「あちゃー、リインも今日はメンテの日やからな~、なかなかみんなに紹介でけへん」

 

リインのメンテってシャーリーだったか?

覗くのは……よくないな、メンテの時は全裸だったと思うし

 

ちなみに新人達は食べ終わったらここから抜け出して行った、やはり相当なプレッシャーがあるのだろう……エリオとキャロは話しで聞いた事があるぐらいで実際に顔を合わせた事はなかったし

 

「まぁ、まだまだ一年あるんだし、そう、急がなくても」

 

「でもわたしとケント君が知り合ってからもう十年やで十年!!それやのに家族を殆ど紹介できてへんのって……」

 

まぁな……実際キチンとした?会話が成立したのはシャマル先生とだけ、シグナムは一言二言だけだしザフィーラ、ヴィータ、リインフォースⅡに関しては顔わからないからな、撃墜事件の時にヴィータはチラッと見たがそれももう八年前、覚えている筈がない

 

「それにしても……まさかケントさんが六課の後見人だったなんて……」

 

「ホンマ、今回もケント君に救ってもろた、ケント君がおらんかったら六課作られへんかったからな~」

 

「そうなの!?」

 

「そうなの~」

 

なのはが驚きの声をあげる……隊長ならそれぐらいは教えておいてやれよ部隊長……

 

「はぁ~、私も胸があったらな~」

 

「だ、だからネリア、胸を揉むのはやめ…はうっ」

 

「おっ、ここかここか~」

 

隣から聞こえてくる会話は取り敢えず無視しよう、おい護衛、何見てんだ

 

「で、お昼どうするつもりなん?厨房貸し切って」

 

「知らん、またなんか呼んでるんじゃないか?」

 

「星は?」

 

「三つ」

 

俺の受け答えにはやては胸を踊らせて待つ

あの後爺が「インスタントなんてあり得ない!!」とか言ってなんか連絡取ってたんだよな……多分だけど………

 

「へいお待ち!!」

 

「今度は寿司か……」

 

「なんやこの大トロ、すっごい輝いてるんやけど……てかなんで金箔が乗っ取るん?」

 

「一貫一万円じゃぜ」

 

「へっ?」

 

職人からの受け答えで六課メンバーが放心する

てかネリア、それはなんだ………六課用巨大炊飯器が置かれているのは何故だ……どう考えても体積はお前の方が小さいだろう……

それにまだ食うのかお前、ガチで太らないのが謎だ……

 

「この後どうするん?医務室行くんやったら準備は大丈夫やけど?」

 

「シーツの換えもOKですよはやてちゃん」

 

なぜいるシャマル、ここで無理矢理出番を増やしに来たか……てかシーツの換えって……

 

「わたしが趣味で集めた大人用の『ピー』も豊富ですよ」

 

「流石シャマル、準備がいいな~」

 

ここはツッコンだ方がいいのだろうか……てかシャマル先生の意外な趣味が発覚した

 

「はぁ……午後からはあの訓練場を見て来るよ……あれもコルテットの技術なんだろ?」

 

「医務室には行かんの?」

 

「行かない、自分の体は大事な人の為に取っておけ」

 

「ケント君やったら大歓迎やで?」

 

「チェスト」

 

「はう」

 

軽くチョップする、もっと体を大事にしなさい

 

「訓練見に来るんですか?」

 

「やる事ないしな」

 

「みんな見所ありますよ~、よ~し、頑張ろう!!」

 

「やけに気合入ってますね」

 

「みんなまだまだ伸びますから、一年後には一流のエースです」

 

なるほどね

 

「うおぉぉぉぉぉぉ、フェイトさんのメイド姿だとぉぉぉぉぉ!!」

 

「撮れ!!この光景をおさめるのだぁぁぁぁ!!」

 

「ふぇ!?ふぇ!?」

 

取り敢えず数少ない男性局員よ、少し黙ろうか

あとフェイトさん、何故ここで実行する……

 



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手紙の遺言

 

夢を見た

 

一人の少女が……剣を地面に突き刺したまま某然と丘を見下ろしている

 

その目は儚く……力はない

 

体は重傷であり力は入らない、ただずっと、これまで共に戦って来た仲間を見る

 

………後悔しているのだろうか?

 

その目には生気がなく、髪だけが風によって揺れている

 

そして一言

 

 

 

 

 

 

「お兄様ーーーーーーーー」

 

「……………おはよう、ネリア」

 

どうやら朝のようだ

 

 

 

 

「こんなに早く起こさなくてもいいのに……学校ないんだぞ?俺は」

 

「食事はキチンと家族でとりましょ~、一人だと淋しいしね、あ、そこのバターとって」

 

「はいよ」

 

メイドが取ろうとした物を俺が渡す

起こされたのは朝の六時、学校に行ってた時はこれぐらいの時間に起きてたんだけど今ではやっぱり眠い、昨日が休日だったのと六課に行った事で余計にだ

ネリアは毎回起こしに来るんだよな、俺を

九時ぐらいまでは寝かさしてくれてもいいのにな………

ネリアの隣にはトーストが数十枚置かれている事にはあえて突っ込まない

 

「ふぅ、あっ、忘れてたけどフェイトお姉様のパンチラ写真いる?シマパンだけど」

 

「いつ撮ったんだよ」

 

「昨日」

 

そりゃ昨日だろうけど……あの後の話をしよう

まぁ、話と言ってもなのはが行なう訓練を見ただけだ、一言で言わせてもらうと鬼だな、うん

なのはは皆を巨人軍のエースにでもさせたいのだろうか、いつか強制ギプスを持って来そうで怖い

ネリアはガラディーンで遊んでたな、一撃でビル何個破壊出来るかっていうの

途中からはやても参戦したのだが……あれはダメだ、例えるなら怪獣大決戦

あ、ちなみにネリアのデバイスは杖型ストレージデバイスの『ガラディーン』

どこぞの騎士が持っているもう一振りの星の聖剣ではない、杖だし

そしてネリア、得意な事は『収束』と『放射』

スタイルは完璧にはやてと同じ、自分を守る周りがいれば無敵の移動砲台

見た事はないがはやてが使う『ラグナロク』ぐらいの魔法ならバンバか連射出来るのではないだろうか?

近距離特化の俺と遠距離特化のネリアが組めばもう怖い事なしの感じがする

それでもネリアには『レアスキル』が存在しない、本当に魔力特化の魔導師

なんというか……学校で力の加減間違えないか不安だな

この前のテストでは自分に付きまとっていた男子と模擬戦になったので訓練場ごとぶっ飛ばしたとか聞いたし……これ以上魔力値が上がる事がないのが救いか?

それにしても……どうして俺の遺伝子から生まれた人間が俺以上の魔力を持つんだ?

手を加えたならまだしもネリアを作った目的はあくまでも『レアスキル』のコピーの為……魔力そのものはそこまで重要視していなかった筈なのに……

俺のクローンを作ったなら俺と同等か……俺より少ない筈なのだが……考えても仕方が無い……か……

 

「お兄様は今日……聖王教会に行くんでしたっけ?」

 

「ああ、ちょっと大事な話らしいからネリアは連れていけないぞ?学校があるから当然だけど」

 

「終わってからは?」

 

「家で留守番」

 

なんでも昨日にロッサから連絡が来て「少し大事な話があるんだ、少し時間があるかい?」と

俺的には基本暇人なので時間はあるのだが……いかせん周りを説得させるのに苦労する……

なんとか許可はもらったのだが……ついてくるだろうな……

で、大事な話、俺の予想ではあの『予言』

カリムが出した『管理システムの崩壊』だったか?

その為に伝説の三提督やらが後見人として参加し、六課が設立されたのが本当の理由……俺は後見人だけど唯一その話を聞いていないからな、確実にそれだ

よく二次創作であるお決まりの「実はこの前新たな予言が~」とかがない事を祈ろう、そうなってくると後々面倒だ

原作知識もろくに機能しなくなってしまう可能性が高い、逆に原作知識に囚われてしまう可能性だって出てくるからな……

そんでもってネリア、その『行きたい』って顔をどうにかしろ、お前は学校があるんだからそっちに集中しろ

それに放課後になるまでいるつもりないから、多分お前が帰ってくる頃にはもう帰って来てるから

 

「う~、残念」

 

「それより時間大丈夫か?遅刻するぞ?」

 

「えっ?………ああっ、もうこんな時間!!」

 

そう叫ぶと最後のトーストを口に咥えながら走って部屋に戻る、専属のメイドも大変だな、ずっと走らされている感じがするし

俺は別段急ぐ必要もないしな、ゆっくりとさせてもらおう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果からするとなにも変わっていなかった

ただ原作者通り厨二乙という文章を聞いただけ、内容も全くもって同じ

新たな予言なんて巫山戯た物が出て来なくて本当に良かった、めんどくさいしな色々と

 

「むぅ、もっと真剣になったらどうですか?」

 

「ん、ごめんカリム、なにもふざけてるわけじゃないんだけど」

 

俺がホッとした態度を感じたのか、カリムがムスーとしながら話しかけて来る

 

こうしてカリムに会うのも久しぶりだ、縛りがないフリーなロッサとは時たま会う時があるがカリムは別、学校を卒業してからは聖王教会で保護されている箱入り娘

そしてそれは俺も例外ではない、外出する時は大勢の護衛を引き連れ、最低限しか外に出ない箱入り息子、そんな人間が簡単に会う事なんてまず出来ない

 

で、久しぶりに会ったカリムに対する感想だが……やっぱりフェイトやはやてが持っていたオーラとはまた違うな、もっと堂々とした『大人』としてのオーラ

よく忘れがちだがカリムと俺らではかなりの年の差がある人生の先輩、忘れがちだが、大切な事なので二回言った

 

それに落ち着いているし、家に元気なネリアがいるからなんか新鮮

 

「意外と驚かないんだね、はやてにこれを話した時は目を見開いて驚いていたのに」

 

「まぁ、俺は直接的管理局と関わりがあるわけじゃないからね、そうなのか~程度だよ」

 

「ケントさんらしい」

 

俺らしいってなんだよ

 

「で、俺を呼んだ理由はそれ?」

 

「まぁ、今のもあるんだけどね、もう一つケントに教えたい、いや、渡したい物があるんだ」

 

「渡したい?」

 

一体何をだろうか、別に今の季節が俺の誕生日ってわけでもないし何かの記念日があったわけでもないのだが……

 

「ケントさんは覚えてますか?騎士サンドロスを」

 

「勿論覚えているけど、俺の担任だったし」

 

騎士サンドロス、これが俺の担任だった奴の名前

原作では『イスカンダル』で名乗っていたけど有名なのは『アレクサンダー大王』又の名を『アレクサンドロス3世』

そこから『アレク』の名前をとったのが俺の担任であったサンドロス、名前を言ったのは初めてかもしれない、今までは全部『担任』だったし

まぁ俺をネリア以外なら唯一真っ正面から見てくれた彼も、数年前に何者かに殺されてこの世にはいないんだけどな

だけど、今更あいつがどうしたんだ?

 

「それが、教会で改めて彼の遺品を整理している時に、こんな物を見つけたのです」

 

「……………手紙?」

 

いや、手紙と言うより紙切れと言った方が正しいか?

一枚の紙切れを二つ折りにし、止めただけ

しかしそこにはちゃんと『ケント・コルテット』宛になっている……どういうことだ?

 

「最初は僕達も不思議に思ったんだけどね、やっぱり君宛の手紙だからちゃんと誰かに見られる前に君に渡す事にした、僕たちも中身を見てないよ」

 

「騎士のエースの彼が最後に残した手紙です、そんな真似はできません」

 

俺はロッサから手渡された手紙をマジマジと見る

至って普通の紙だ、特になんの仕掛けもない

 

だが………何だこの感覚……何かが……俺の中の何かがこの手紙を読むなと叫んでいる

直感……なのだろうか?

無意識の内に発動してしまうそれが警報を鳴らす

セイバーの直感は未来予知にも匹敵する……だけど……それほどまでに警報を鳴らすと言う事は逆にそれほどまで大切な事が書かれていると言う事

 

恐る恐るのりを剥がし、中を見る

 

そこに書かれていたのは一言だけ、手紙によくありがちな表現など一切入っていない一言

 

ただ、それを見た瞬間俺は手紙を持つ手を力強く握り締める、これなら、これなら何故あの強い担任が負けてしまったのかが納得が出来る

そう、勝てる筈がないのだ、こんな奴に

 

「クソッタレが」

 

歯に力が入る

もう、俺だけの問題じゃない、動かなければ一番危ないのはネリア

そう、担任は知ってしまったんだ、俺達の事を……

なんだ、全部、俺のせいじゃないか

あいつはこいつから俺を守ろうとして………

 

「ケントさん?」

 

頭を抱える俺にカリムが心配そうに寄って来る

手紙をポケットにしまう、これは俺の問題、こいつらに迷惑をかける気はさらさらない

 

あれに対抗出来るのは、俺しかいない

 

「いや、なんでもない、ただ俺の学校態度に対する文句をグダグダと書いていたからな、死んでまで何言ってんだって感じだよ」

 

「そう……ですか」

 

カリムに弁解する、出来るだけ明るい態度で

 

担任が残した手紙、これによって、俺とネリアは本当の意味で『安全』とは言えなくなった

 

 

 

 

『転生者と言う者に、気をつけろ』

 

 

 

それが担任が残した遺言でもあり、警告でもあった

 



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情報検索

 

「……………くそっ、なんで情報がない」

 

頭をかきながらひたすらにディスプレイを叩く

隅から隅まで調べるがいっこうに手がかりは無し……どういうことだ?

 

「………あーもう!!」

 

自分のベッドに大の字になって寝転がる

予想外過ぎて困る、もっとすぐに見つかるもんだと思っていたのだが……

 

「『王の財宝』に『無限の剣製』、『代行者』やら『魔術師殺し』………それに似たような物も駄目か………」

 

一人つぶやいて見る

教会で適当に話をはぐらかして一日……今日もネリアは学校なので家にはいない

俺は……俺以外にいるという『転生者』に関するヒントを探る為に皇帝特権による主張をフルに使ってネット上にある情報をかき集めている

だが……成果は著しくない……

特典に当てはまりそうなレアスキルを虱潰しに探るのだが一向に出てこない、そればかりか希少なレアスキルとして俺が大々的に取り上げられてしまっている

そもそも、俺の様な『どうみても神様特典』などを持っている奴は早々いない、てかいない

 

『破壊』もこの新暦が始まって始めて発見されたスキルであり、さらには『皇帝特権』など周りからすれば考えもつかなかったスキル

 

そんなスキルを持つ事自体がない、せいぜい『炎熱変換』やらそこら辺が普通、それでも人口は少ない

 

なので俺と同じ様に『行き過ぎたレアスキル』を探したのだが……ない

管理局のデーターベースにも……一般サイトの情報にも全くもって存在しない

 

ならばと思いFate関連のレアスキル、またはそれに似たような物も探したのだが……やはりない………

どうなっている……俺の様に『破壊』なんてレアスキルは使うだけで周りに知れてしまう、じっさい俺はユーリと戦うまで使わなかったから知られていなかっただけで神様特典など一度使えば必ず一目につく、そしてどこからかその情報は流れるはずだ……

 

……レアスキルを使った事がないのか?

それとも俺の皇帝特権の様に派手なものじゃない……いや、担任を殺したのが転生者なら少なくとも転生者はFateを知っている筈……だからこそ担任を他の転生者だと思いますが殺した……筈……

 

もしくは自分が不利益になる様な情報を掴まれたせいで殺した……か……恐らくどちらもか?

 

担任は俺にもしもの事があった時の為にあの手紙を書いていた筈だしな、少なくとも転生者が俺を狙っている事には気づいていた筈だ

 

だからFate関連のスキルを探したのだが……ハズレの様だ、Fateのスキルは絶対に気づかれる派手な物が多い、わざわざアサシンの気配遮断スキルを頼む奴は中々いないだろう、俺だったらやはり王道な『王の財宝』やらを頼むし……

 

はぁ、それにしても………

 

「厄介な奴には、変わりないよな……」

 

無印から今のStsまで……担任から言われるまで全く気付かなかった……

何故だろうか……生まれる時期が遅かった?

それともアンチ管理局?……いや、それだとしてもおかしい

何か原作に関われない理由があったのか?

わざわざ担任を殺した事から『平凡に生きたい』なんて明らかにおかしい事を抜かす奴ではないし………

 

……一体何が目的なんだ?

転生特典があるなら俺に近づく事は容易な筈、いくらなんでも担任を殺した相手にうちの護衛がかなうとは思っていない

 

それにこの三年間でネリアにはなんの被害は無かった……どういう事だ?

 

コルテットを恐れているのか?

いや、それならば反管理局ではなくなる、管理局アンチならば逆に襲って来る筈……

自然と管理局と敵対することになるからな……クソッ、相手の目的が全然わからねぇ

 

憑依か?

それならば納得もいく、原作に関われるし周りから疑われる心配事もない

だが、その場合誰だ?

なんで担任を殺す必要があった?

そしてなんで、担任はそいつが憑依者だと知る事が出来た?

 

担任が転生者だとは思っていない、あいつとは長い付き合いだ、根からああいう奴だという事は分かる

それに……イスカンダル自体は人気キャラだがわざわざあの容姿になりたいとは思わない、出来るのならばシロウやギルにしてもらうのが普通だろう

原作開始時期よりだいぶ前の人間関係でもあるしプレシアやリンディさんと面識があるわけでもない、元からあの容姿、もしくは俺というイレギュラーが生んだオリキャラ

 

「はぁ、手がかりだけでも見つけないと……」

 

前の俺だとここまで熱心に調べたりはしなかった、それ程までに自分の特典には自信がある

だが、今の俺には全く同じ容姿のネリアがいる。

彼女が襲われるのだけは避けなければいけない………絶対に………

 

(分からない事だらけだな……)

 

ふと思う、そう思い返せばわからない事を沢山先延ばしにしている感じがする

 

 

セイバー特典を持って生まれたのに対魔力や砲撃適性が皆無な事

 

いつまで経っても姿を見せない両親の事

 

コルテットが秘密裏に、皇帝特権を使っても入り込めない『魂の移転研究』

そして、それ以外の違法研究が俺の生まれた直後に始まった事

 

黄金劇場後に頭に流れた不可解なノイズ

 

脳味噌達が俺に対して執着する理由

 

最後に……転生者………

 

 

「……………………。」

 

何も話さずにまたディスプレイを展開する

 

立ち止まっていたら何も始まらない、かと言って誰かに相談できる内容でもない

見つけなければならない………全部を……

 

そして闇に隠れた転生者を……

 



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襲撃

 

「エクス………」

 

一歩前に出る、目の前には機械の軍勢

………いける!!

 

「カリバァァァァァ!!」

 

一気に横薙ぎに黄金に光り輝く剣を振るう

その輝きは辺りを照らし、機械の軍勢は抵抗も虚しくただのスクラップと化していく

実力の差は……歴然だ……

 

「ケント様!!なぜこのような場所に!?」

 

「そうです、元の場所にお戻り下さい!!」

 

「防衛線まで持ち堪えられなかったのはどこのどいつだよ!!」

 

迎撃に当たっていた護衛達に檄を飛ばす

そう言っている間にもどんどん送り込まれてくるガジェット……クソッ

 

「破壊(クラッシュ)!!」

 

右手をかざして叫ぶ、それにより空間に亀裂が入って行き……ガジェット達はただの瓦礫となる

いきなり現れた奴もいるからあの透明になる奴もいるとみていいな……初っ端からエンジン上げすぎだろ!!

 

「くっ、ケント様をお守りしろ!!」

 

周りの奴らが前進するが戦況は良くない……そもそもこいつら自体人を相手にする時は頼れるのだが今回の相手は機械……当然そんな六課で行っている訓練などしておらずあいつらが使う『AMF』によって中々一体破壊するのに苦戦している

 

ただの平日だったはず……なのにいきなりこれだ、ホントに嫌になる

 

丁度昼過ぎ頃にリニアレールに積まれているロストロギア、『レリック』を奪う為にガジェットが襲撃してからほんの数分、あのマッド野郎はご丁寧に自らコルテットの防衛システムを無効化した上でわざわざ転移魔法も使ってガジェットをコルテット敷地内に送りこんで来やがった……

管理局からの応援も要請しているが時間がない、先ほど言ったようにこちらの戦力は対ガジェット様に訓練していない

一部の高魔力持ちは善戦しているがそれだけだ………送り込んできた数が余りにも多く、更には種類も豊富な為防衛線を破られて屋敷に向って一直線って訳だ

そんでもって避難させられていた俺は周りの制止を振り切って出撃、どうせ後々ガジェットが攻めてきて戦う事になるのだ、それが早くなるか遅くなるかの事……

ちっ、それにしても原作では雑魚キャラだったガジェットもリアルで見たらかなりの強敵だ、AMFなんて厄介な事この上ない……俺の場合は特典があるのでいいがこんな奴を六課新人達はボコボコ壊せる様になるのか?

もう凡人じゃなくてその時点で一流じゃねーか

 

「チッ、数だけ揃えやがって!!」

 

デュランダルを縦横無尽に振るう

この感じでいくと六課が囮でこっちが本命か?どんだけ俺にアプローチしてんだ!!

これを止めるには何処かにある転移魔法陣を破壊したいんだが………

 

「っく!!」

 

直感が警報をあげる

体の動くままにデュランダルを持っていく、直後に交差する鋭利な刃物、だが……そこに『質量』はあるのに物質はない……ほんと……

 

「めんどうなんだよ!!」

 

手に持つデュランダルを力任せに押し出す

足に力を加え、思いっきり……踏み出す!!

 

「おらぁっ!!」

 

凄まじい音を立てて現れたのは一体のガジェット、なのはをあそこまでの重傷にしたタイプ

クソッ、向こうはガチかよ!!

 

周りを見渡して見る……だだっ広い平野の筈なのに今ではガジェットの軍勢に埋め尽くされている

これだけの数を潰すとなると俺には『破壊』しか手がない、だがそれをする場合には俺の攻撃範囲内に味方の一人さえもいてはいけない……それに魔力だってかなり消費する……

空にも数え切れない程飛んでるしな……狙いは俺なんだから俺だけを狙えばいいのに………

今はガジェットを潰す事だけをしているがいつ相手方の主力をぶつけてきても不思議じゃない、まぁ俺を相手に出来る奴なんて限られているけど……

 

「なっ!!」

 

『っ!!」

 

デュランダルに魔力を込めて一気に『何もない空間』に向って振り下ろす

ほら、やっぱり来た

 

「透過も出来て俺への接触も楽、相手は転移魔導師、色々な知識から合わせるとお前しか浮かばないのよ……」

 

『…………』

 

反応は……無しか

それに透明化を解く気は無いらしい……やっぱり俺と戦う上で原則なんだろうな……技術面を補う為に……

いくら俺には直感があるとはいえ四番のような『非戦闘型』ではないから苦戦は必須だな……負ける事はないと思うけど……

 

「チッ!!」

 

ブォン!!と風切り音が聞こえたかと思うとデュランダルに重い衝撃がのしかかる……これは、蹴りか?

技術面では優っているとはいえ筋力はどうにも出来ねぇからな……重てぇ……

 

「っく!?」

 

『…………』

 

とっさの判断でかおの横にシールドを張る

振るわれたのは一筋の斬撃……おいおい、相手方は俺を殺してでも連れて行くって算段か?

 

「なめんてじゃ……」

 

『…………』

 

「ねえよ!!」

 

スフィアを使って牽制を放つ、一瞬でも動きを止めれたらいいと思ったが無理だったようだ……距離は開ける事が出来たがまた振り出し………こんなに強いキャラだったか?

 

「おいおい……いいのか?局からの応援が来たみたいだぞ?」

 

『………………』

 

俺の後ろの為見えないがどうやら局からの応援が到着したらしい、数は一人

まあ『紫電一閃!!』やら叫んでるので大丈夫だろう、六課も手が早い

 

「っと!!」

 

見えない敵が高速でその拳を振るう

やっぱり『見えない』って言うのは大きい、動き自体はそこまで脅威ではないのにその筋力とアドバンテージによってカバーはしている………防戦一方ってか?

 

「って、余裕ぶってる場合じゃねぇか!!」

 

ガジェットからのレーザーが俺に向って放たれる、ニート侍の登場で焦ってるのか?相手方の標準が完璧に俺に定められた

『破壊』を使おうにも周りには未だ必死に戦っている奴ら、巻き込んで殺すなんて事出来ねぇぞ!!

 

「っ!!」

 

カキインと甲高い金属音

右手を見ればそこにデュランダルの姿はない、ああやべぇ………弾かれた

 

『ウウッ……………』

 

風切り音と共に拳が迫っているのが分かる

あれに当たったら……肋骨何本か持っていかれるな、そんでもってあの鉤爪で腹貫通型だろ……

まぁ、そんな事にはならないわけで……

 

「セットアップ」

 

小さく一声、それと同時に展開される『もう一つのデバイス』

公開意見陣述会の時から万が一の為に持ち歩いている、まさかデュランダルを囮にしてこれを使うなんて思っていなかったけど……

 

「ごめんな」

 

『っ!!!!』

 

デュランダルと比べ軽いその刀の斬撃は相手の拳が俺にめり込むより早く相手の『腕』を安安と切り裂く

相手、いや、『ガリュー』もそれによって反射的に姿を現す……危なかったとはいえ腕を斬る事になるとは……罪悪感がヤバイ

痛みに耐えて追撃しようとして来たガリューを蹴りによって間を開ける……どうやらニート侍もこっちに来たみたいだし……チェックメイトだな……

 

『ヴ、ヴ………』

 

「……………」

 

腕を抑えながら紫の光によって消えるガリュー

腕は……回収しきれなかったみたいだ、血を出しながら転がっている

俺を襲ったガリューを気に入らない奴が腕を燃やそうとしたが……止めた

俺自身『肉』を斬ったのは初めてだ、相手が虫だろうとなんだろうと………

周りのガジェットも何時の間にか現れたネリアによって一掃されている、終わりも近いだろう

この腕はコルテットが保管しよう……ルーテシアの『友達』だ、原作であれ程純粋だった少女の事だ……恐らく酷く傷ついているだろう……

 

はぁ、また苦労が一つ増えたな………

 

 



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色々難しい

 

「ごめんな、こっちもこっちで手一杯やって、1番近くにおったシグナムに行かせたんやけど遅かったらしいな〜」

 

「まぁ、しょうがないよ、荒らされたのは庭だけだしね、みんなの怪我も比較的に軽いみたいだし」

 

ボロボロになった庭、と名ばかりの平原を見ながら素直に話す

六課も初出撃で大変だったものをわざわざこっちに人員を出してくれたのだ、そこは素直にありがたかった

 

「はぁ、まだまだやな~私も、リニアの事ばかりに気を取られて本命がこっちやとは思わんかった」

 

「それもしょうがない、リニアのレリックを狙ってきたのは間違いないんだし結果的にそれは守れた、初出撃は成功だと思うけど?」

 

「ありがとうな~」

 

俺の隣にははやて、どうやらリニアの事件が終わった後に直ぐ自ら駆けつけてくれた、その時には全てが終わっていたのだがそこまでしてくれた彼女には素直に感謝している

 

「ふぅ、ケントお兄様、コルテットの防衛システムが正常に戻ったらしいですよ」

 

「う~ん、ぶっちゃけもうあまり意味無いんだけどね、相手はそれをくぐり抜けるだけの知識があるようだし」

 

それを聞いてはやてが拳に力を入れる、六課の本命はスカリエッティだからな……表面上では初出撃は成功なんだが彼女にとって恐らくよくは捉えていない……あいつの策にまんまと乗せられて本命にここまでの侵攻を許したんだ、『管理局の動きが遅い』と感じて六課を設立した彼女にとって現場に助けを送れなかったのは悔しいのだと思う

 

「はぁ、相手の目的はレリックとケント君自身、って捉えてもええな……となるとコルテット自体を警備したいんやけど……」

 

「それは多分無理、立場的な問題で、こちらでガジェットのコピーを作って警備の人間を訓練する事で対応すると思う」

 

「そう、やな……はぁ、中々難しいもんやな~」

 

立場上の問題がある、いくら管理局員とはいえコルテット内に安安と人を入れる事は出来ない、それによって技術の漏洩などが起こった場合の損害賠償を管理局が払うとは限らない、それは全部六課にいく事になるだろう

それに……悪いが機動六課という舞台は原作に大きく関係している、もしかしたら、転生者、または憑依者がいるかもしれないのだ、そう考えると簡単に局員を入れる事は出来ない

今回に関しては特例、いくらなんでも事件が起きたのにそれに関して局が無関係とは出来ない、なのでこうして現場検証やらなんやらをさせているのだ

実際、はやてがコルテットの敷地内に入ったのは初めての感じがする、昔フェイトとクロノが家に来たがそれだけだ

 

「現場の検証はフェイトちゃんがしてる、今回出てきたガジェットは今まで見た事ない形ばっかやったから……それに……」

 

「あの刃物持った奴、高町さんをあそこまでにしたタイプでしょ?」

 

「……………そうやねん、それとケント君から聞いた『透過能力』………私たち隊長陣でも厄介な相手や」

 

ヴィータら辺はトラウマだろうな、今回のこれで何か対策を立てる事が出来ればいいんだが……難しいか

 

「それと人型の蟲?やったっけ……ケント君と打ち合える実力、それだけでも十分脅威やのに問題なんはそれを召喚した術師がおるって事や」

 

「俺と打ち合えるから凄いって……過大評価しすぎじゃないか?」

 

「何言ってんねん、クロノ君と互角なんやろ?それに透明な相手と戦えるなんて凄すぎるわ」

 

「クロノには負け越してるしそれに関しては俺の力じゃない、ただの借り物だよ」

 

「そんなことない、ケント君は十分に強い」

 

「………………」

 

こうやって真っ正面から褒められるなんて久しぶりだな、それにはやても『皇帝特権』については知ってるはずなのに……

 

「ケント君を知ってる人はみんなそう思ってる、ケント君はそんなレアスキルなんか無くても凄く強い、今よりももっともっと」

 

「………ありがと」

 

逆にここまで褒められると恥ずかしい、それになんか顔が真剣だし……

 

「まっ、でもまだまだ未熟やな~、特に身長が」

 

「ほっとけ」

 

修正、はやてはやっぱりはやてだ

 

「でも、だから未熟なケント君を私が守るからな、一生」

 

「一生って……いつもいつも会える訳じゃないだろ」

 

「だから一緒に住むねん、そうしたらずっと一緒におれるやろ?」

 

「そうなると俺が理性を抑えれない、俺だって男の子なんだから」

 

「襲ってみる?私はいつでもOKやで?」

 

「遠慮しとく、いつか好きな人見つけて、一緒に住めばいいじゃねーか、俺を守るなんて事するよりもずっと幸せだと思うぞ?」

 

「だから私は「お兄様~、お腹減った~」」

 

はやての言葉を遮ってネリアが口を尖らせながら愚痴を言って来る

そう言えばもうおやつの時間過ぎちまってるな……こいつ、おやつにグラタンやらパスタやら食べるから相当きているのだろう、若干涙目だ

 

「あ~、うん、屋敷に戻って置いていいぞ、シェフになんか作って貰え」

 

「そうする~」

 

周りにいた護衛を二三人呼び止め、それに連れられながらトボトボと帰っていくネリア

事件の後からバタバタしてたからな、帰ろうにも帰れなかったんだろう……悪いことした

 

「えっと……はやて?」

 

「いや、なんでもない、ケント君は可愛いネリアちゃんとイチャイチャしてればいいやん」

 

「イチャイチャって……ネリアは兄妹だぞ?」

 

「ケント君やったらやりかねへん」

 

「俺をどういう風に見てるんだ?」

 

少なくともそこら辺はわきまえてるぞ?

話を途中で区切ってしまった事は悪いと思ってるけど機嫌が悪くなる事はしてない筈だけど……ん?

あれは……フェイトか?

 

「お疲れ様ですケント・コルテット少将、部隊長、現場の報告なのですが」

 

「………どうしたの?」

 

「勤務中なので」

 

「いつも通りでいいよ、はやてもそうだし」

 

「えっ?はやて?」

 

「あはは~」

 

まっ、この場合はやてがおかしいんだけどな……忘れてただろ………

 

「ま、まあいいやろフェイトちゃん、ケント君もいつも通りでいいって言ってくれてるし」

 

「う~ん……なら……いいのかな?

大丈夫だった?ケント」

 

「まあ怪我もしてないし大丈夫じゃないのか?それより現場検証ご苦労様」

 

「これが仕事だからね、それよりはやて、

やっぱりガジェットに製作者の名前が……」

 

「やっぱり……か」

 

ん?まだガジェットの製作者がスカリエッティだと知らないのか?

………確か六課設立直後にガジェットの残骸からスカリエッティの名前が出てきたんだったか?なるほど、今回の件で確定って訳か

 

「それに新型のガジェット、今のみんなじゃ太刀打ち出来ないね」

 

「なのはちゃんにも訓練プログラムとして組み込んで貰わなな………で、やフェイトちゃん、それはそうとなんで寄せて上げるブラなんて付けとん?」

 

「えっ!?これは……その……ネリアがこうした方がいいって……」

 

「ただでさえ大きいフェイトちゃんがそんなブラしたらどうなるか分かってるよな~、ネリアちゃんも中々考えるわ~」

 

フフフフフとはやてが不気味に笑う、てかよく一目見ただけでそんなブラだと分かったな……てかそんな事言われたらフェイトを直視出来ないじゃねーか

 

「ちょーーとお話しよか~、フェイトちゃん」

 

「えっ?痛い、痛いよはやて」

 

フェイトの耳をつねりながら引きずっていくはやて、軽くつまんでるだけだから大丈夫だとは思うんだが………何があった?

まぁ……

 

「俺も帰るか」

 

どうせここにいてもやる事ないし、今日はさっさと帰るか

 



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黒歴史 再来

 

「ねぇねぇねぇねぇ」

 

「……………どうした?」

 

雲一つ無い青空、心地よい風がふく今日この頃

特になんの変哲もない日、簡単に言うと一日暇

こんな中でも訓練頑張ってんだろうな~とか思いつつ庭でスフィアを作って遊んでいるとネリアがこっちに走って来る……転んだりしないよな?

 

「お兄様お兄様!!」

 

「……………?」

 

妙にテンションが高い、一体どうした?

俺の直感が警報を鳴らしているのは気のせいだと思いたい、うん、気のせいだろう

 

「その飛び出てる毛ってどうなってるんの!?」

 

「えっ?」

 

ネリアが俺のアホ毛に興味を持ったようです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~もう、何でもないから!!ただの毛だから!!」

 

「はやてさんに聞きました~!!その毛を抜くとお兄様が変身するって!!」

 

頭のアホ毛を抑えながら必死にネリアから逃げる、はやてぇ……

ここで一つ説明を入れよう、アホ毛は俺だけではなくネリアにもついている、ピョンと可愛い奴が

だが俺のアホ毛はセイバースペックという『特典』のチカラで立っているのであってネリアは素、水に濡れたら無くなるしワックスなどで固めても消えるだろう

しかし俺は違う、水に濡れようと固めようとそのまま、興味が行かないほうがおかしいだろう

恐らくこれについて知ってそうな奴、今回ははやてに聞いたのだろうが……これだけはダメだ、ようやく世間から忘れ去られようとしていた暗黒の歴史が再誕してしまう!!

 

「一回だけ!!一回だけでいいから握らせて!!」

 

「ダメったらダメだ!!取り返しのつかない事になる!!」

 

そして、そんな事を意も返さず好奇心旺盛に俺を追っかけるネリア、諦めては……くれなさそうだ……って

 

「うおっ!?」

 

「うっ、外れた」

 

設置型のバインド!?何時の間にこんな……

 

「少しぐらいはっちゃけたお兄様ならフェイトお姉様の思いにも気づいてくれる筈!!」

 

「ちょっ、ネリア!!」

 

なんか言ってるがよく聞こえない、てかスフィアとかやめろ、せっかく綺麗になった庭がまたボロボロになる!!

 

「ネ、ネリア様いけません!!」

 

「そうです、ケント様に向かってその様な事!!」

 

「お兄様の将来がかかってるのですーーーー!!」

 

なんだよ俺の将来って!?十九でアレになったら俺塞ぎこむぞ!!

 

「という訳で待って下さいお兄様ーーー!!」

 

「待てるかコンチクショウ!!」

 

スフィアとバインドを避けながら逃げる、くそっ、庭だからどこに逃げても見つかる……やっぱり………

 

「あっ!!お屋敷はルール違反だよ!!」

 

「俺の未来がかかってんだ!!」

 

屋敷の中ならネリアも暴れられまい、少し距離があるけどここからなら……

 

 

ズバンッ!!

 

 

「……………ネリア?」

 

「逃がさないよ~」

 

俺の隣を黄金の光が通り抜けた

跡に残るのは抉り取られた焼け野原、ガチかよ………

 

「なぁネリア、俺デバイス持って来てないんだけど」

 

「問答無用ーーー!!」

 

ガラディーンを振り回しながらディバインバスター並みの砲撃をドカドカ撃って来るネリア

おまっ、いくらなんでも危ないって!!

 

「好い加減お姉様の想いに気づけぇぇぇぇ!!」

 

「ネリア!!危ない、危ないよ!!」

 

暴走気味のネリアをなんとか止めようと近づこうとするが……難しい

周りの奴らもネリアのその砲撃のせいで近づけづにいる……妹に攻撃するのは嫌なんだけど……

 

「ちょっと……やり過ぎだ……」

 

皇帝特権で一気に『狙撃の腕』を上昇させる

手には一発のスフィア……いける!!

 

「いっけぇぇぇぇ!!」

 

「っ!!」

 

小さなスキマを使ってスフィアを投げつける

狙いはネリアの眉間!!

 

「甘い、甘いよお兄様!!」

 

「なっ!?」

 

たまらず驚きの声が漏れる

スフィアだったのがいけなかったのか……あいつ、砲撃を使って打ち消しやがった

 

「毛ぇぇぇぇぇ!!」

 

「っ!!転移!!」

 

足元に現れる転移魔法陣

デュランダルが無いので燃費は非常に悪いのだがこの際仕方がない……転移先は……六課で!!

 

一際光り輝く魔法陣

ネリアが手を伸ばす……いけ!!

 

 

 

ブチッ!!

 

 

 

「あっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ!?えっ!?えっ!?」

 

「…………………」

 

自分は訓練が終わって自室で休んでいた筈だ、この部屋は自分一人の筈だ

なのにいきなり人が降ってくるなんて誰が予想出来ただろうか、少なくともこの少年にはそんな予知能力はない

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

取り合えずは目の前の人の安全確認、もしかしたら次元遭難者かもしれないのだ、自分の部屋に落ちて来たのはなぜだか分からないが少なくとも普通じゃない、ここは慎重に……

 

「ここは……」

 

「よかった、目が覚めたんですね!!」

 

落ちて来た人、金髪の男性が目を開ける

それにしてもこの違和感はなんだ、てかなんでこの人がいる

それよりも!!

 

「お久しぶりです、ケント・コルテット少将!!」

 

「…………………。」

 

敬礼をして相手の反応を待つ、何があったのかは知らないが自分の部屋に転移してきたのだからそれなりの理由がある筈、緊張はするがここは……

 

「……………よい」

 

「はい?」

 

「よいではないか美少年よ!!目が覚めれば目の前に美少年!!ここに美少女がいれば完璧だ!!」

 

「は、はぁ」

 

この人はこんなキャラだっただろうか……前に見た時はもう少し落ち着いた人に見えたのだが……

 

「名は何という!!」

 

「は、はい、エリオ・モンディアル三等陸士です!!」

 

「そう硬くなるな!!お前は我が家臣にしてやる!!ありがたく思うがいい!!」

 

「か、家臣!?」

 

「さぁ行くぞエリオ!!先ずは美少女を探しに!!この世の『美』を全て我が物に!!」

 

「えっ、ちょっ、まって下さい!!」

 

逆らおうとするが手を握られてそれどころではない

てかそっちは………

 

「女の子用の部屋ーーーー!!」

 

「胸が高まる!!」

 

 

 

ケント・コルテット十九歳オルタ(赤)化しました

 



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やっちまった

 

「は☆な★せ☆」

 

「い★や☆や★」

 

 

額に青筋を立てながらはやてがロープをさらに硬く縛る

その後ろでは苦笑いしながら立ち尽くす機動六課の面々、とは言っても隊長陣とFWの新人達の事なのだが……

 

「さ~て、なんでアホ毛が抜かれてて暴走しとるんかは知らんけどとにかく、理由聞かせてもらおうか~」

 

「我は何も悪い事はしておらぬ!!目の前に洗練された『美』があったのならそれに触れ、評価するのは当然であろう!!」

 

「だからってなんでフェイトちゃんの胸を揉むんやーーーー!!」

 

はやての絶叫が部隊長室に響き渡りそれを聞いてフェイトが赤面する

なのはやFW陣は以前として苦笑いでありヴィータは呆れ、エリオに関しては何故かグッタリしていたりもする

 

「ただ見ているだけではつまらぬ、やはり『美』に触れ、その美しさを身を持って実感しなければ我の気が収まらぬ!!」

 

「だったら私のを揉めばいいやん!!」

 

「貧乳」

 

「なんやてぇぇぇぇ!!」

 

ウガーーーとはやてがまた叫ぶ

事の始まりはちょうど数十分前、ケントが六課に転移してきたすぐ後だ、ケントに振り回されそうになったエリオはすぐにストラーダを使ってケント・コルテットが六課に来ている事と様子がおかしい事を身近な人物達、隊長陣やFW陣に連絡、ぶっちゃけ人手が欲しかったのだが……

そして一番近くにいたフェイトが様子を見にケントに近付き………

 

 

出会い頭に胸を揉まれた

 

 

当然純粋な彼女がそんな事に対応出来る筈がない、それに相手は自分の好きな人だったりもする

本気で『嫌』というわけでも無く突然の事に対応が出来ない、その間もケントは胸を揉みながらよく分からない感想を言っていく

そしてそれを見つけたはやてがバインドで捕縛、暴れるケントを後から来たFW陣に持ってこさせてグルグル巻きというわけだ

 

そうして連れて来たのは部隊長室、コルテットにも連絡を入れすぐに迎えをよこすと言って来たのだが……問題は今のケントだ

 

「はぁ、このまま帰すって事は出来へんよな~」

 

「はやてちゃん、ケントさんどうしちゃったの?」

 

なのはが不思議そうにはやてに尋ねる、聞かれたはやては一度だけ天を仰いだ後にポツポツと話し始める

 

「う~ん、もう十年ぐらい前になるんかな~、この中でも知ってるのはおるやろ?『コルテット長男ご乱心』って」

 

「あっ、はい、聞いたことあります、なんでもコスプレをして町を練り歩いたとか」

 

「私も聞いた事あるかな……裁判がちょうど終わったんだよね」

 

ティアナとフェイトが手を上げる、ほとんどは知らないようだが………

 

「そうそう、あの時は色々な意味で大変やったんよ~、半ケツのゴスロリ服でいきなり『妻になってくれ!!』やからな~、いつもの男前な顔はなんかすごい美人やったしテンションは妙に高いし、性格がいつもの真逆やったからな~」

 

「半ケツ………」

 

「ゴスロリ………」

 

何故だろうか、みんなのケントを見る目が少し冷たくなった感じがする

 

「あの時はまだ九歳やからあの色々な行動も許せたけど……もう、な~、大抵の人は身長で『子供の仕業』とか言って許してくれるやろうけどぜったい正気に戻ったら塞ぎ込んでまうし、早めに治したるのがいいな~」

 

「その時はどうやって治したんですか?」

 

「アホ毛を再生させるんよ」

 

そう言って口にガムテープが貼られているケントに近づく、立場的には大問題なのだがこの際仕方が無い、ケント自身だってこれ以上暴走するのは嫌だろう

 

「こうやってアホ毛を立たせれば」

 

はやてがケントの毛の一部を掴む、ケントに近づく時にカッターシャツのボタンを少し外して少し色っぽくしたのは気のせいだろうか?

 

数秒間アホ毛をそのままの体制で維持し、アホ毛を離す

 

 

ふにゃあ

 

 

「…………あれ?」

 

アホ毛は……立たない

何度も何度も挑戦するが立たない、その間も口を縛られているケントはロープをどうにして外そうと暴れる

 

「お、おかしいな~、こうやったら治る筈やのに」

 

「治らないね」

 

「治らないですね」

 

「治らねーな」

 

「治らないようです」

 

「治らないわね~」

 

「ワンッ!!」

 

周りに味方はいないらしい

 

「え、えぇ、ちょっとまちい、だったらどうやって元にもどすん!?」

 

「え~と、八神部隊長、十年前は他に誰がいたんですか?」

 

普段は頭が悪いスバルがはやてに問いかける

他にケントの事を知っている人間がいるならはやてには無い知識を与えてくれるかもしれない

 

「十年前にはたしか……クロノ君にカリムにロッサやったかなーー、シスターシャッハは逃げてたし。…ん?ちょっと待ってよ……あの時確か……」

 

顎に手を乗せて考えるはやて、周りはその様子をじっと見守る

 

「……あの時は確かクロノ君がアホ毛を『凍らした』んやったかな……そうやって『固定』してた気がする」

 

「だったら同じく方法で」

 

「アーテム・デス・アイセス?」

 

「ケント死んじゃうよ」

 

いくら氷結魔法がそれしか無いにしても死んでしまう

 

「うぬ、やはり悩みはつきぬな、我であれば相談に乗るぞ」

 

「ありがとな~、じゃあ……って何時の間に抜け出しとんねん!?」

 

「うぬ、手強いロープだったが我の敵ではない、少し本気を出せばそれで終わりぞ……っておお」

 

「くっ、外した」

 

はやてがすかさずバインドを仕掛けるがケントはそれを難なくかわす、周りは知らないがケントの直感は今だ健在だ

 

「危ないではないかはやてよ、あまり反抗するならばいくら我でも怒らないといけなくなるぞ?」

 

「あんたをあんまり野放しにしたら色々とたいへんやねん!!みんな!!もう一度捕まえるで!!」

 

その声を聞いて周りの皆が動く、そして空中に展開されるのは

 

「ひ、卑怯ではないか!!こんなにも大量のバインドを避けろなど不可能だ!!」

 

「卑怯もなんもない!!というわけでリイン!!思いっきりやったって!!」

 

「はいです!!失礼しますよケントさん!!『凍てつく足枷』!!」

 

リインの声と共に現れるのは氷の柱

ケントの真下から現れたそれはケントを捕らえようとするが大量のバインドが設置された中ケントは避ける

 

バインドに触れないように一歩、体制をフラつかせながら一歩……そして…

 

「うおっ!!」

 

「えっ?」

 

フェイトの胸にダイブした 

 

「…………………」

 

「…………………」

 

『…………………』

 

静寂が空間を支配する

はっきり言って気まずい、フェイト然り周り然り

 

「…………フェイト」

 

「えっ!?きゃっ、はうっ」

 

ケントが低い声を上げたかと思うとフェイトの肩に手をおく

彼女の鼻にクシャクシャと何かが当たる、よくよくみるとそこには見慣れた毛が……気のせいだろうか、少し電気を浴びてるような気が……

 

「えっと、こんなのでよかったですか?」

 

みんなの目線が一人に集まる、そこにはエリオ

ストラーダの先からは微量の電気が流れており、それがケントのアホ毛を形成している

 

ケントはフェイトの肩に手をおいたまま胸に埋れた顔を上げる、そして一言

 

 

 

「すみませんでしたぁぁぁぁぁ!!」

 

 

苦労は絶えないらしい

 

 



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ちょっと待て

70

 

「さて、どうだったお兄様?フェイトお姉様のおっぱいは」

 

「ブッ!!」

 

飲んでいたお茶を吹きそうになる

場所は六課の部隊長室、迎えに来たコルテットの人間関係の一人にネリアがいたのだが開口一番この発言……どこで知りやがったこの野郎……

 

「弾力性があって中々の大きさ、好みの形で水着を着たら映える、でしたっけ?」

 

「ちょっ、まてっ!!それは俺じゃなくて!!」

 

「お兄様でしょ?」

 

「うっ!!」

 

こいつ、オルタ化した時の俺が言った言葉まで……

一体………どうして……

 

「ジャッジャジャーン、毛を抜く時に付けさせてもらいました~、発信機兼盗聴器~」

 

「没収」

 

「あーーーー!!」

 

ネリアが自慢気に出したそれを一瞬の隙に掻っ攫う

俺が転移するとふんで持っていたな、策士め!!

 

それにしてもネリアには一度怒らないといけないと思っていたのに……先を越されたな、凄く言いにくくなってしまった

 

「まっ、ちょっとは近づけたんじゃないのかな〜、お姉様も満更でも無さそうだったし」

 

「フェイト、怒ってたか?やっぱりあれは……なぁ」

 

女の子の胸を揉むのはカリム以来とはいえ、今回は意図的だし……言い逃れは出来ないな……

 

「いや~、全然大丈夫だと思うよ~」

 

「だったらいいんだけど……」

 

あの後逃げちゃったからな、フェイト

落ち込んでいなければいいんだけど……

 

「ネ・リ・アちゃ~ん」

 

「はやてさん?」

 

ネリアの後ろに這い寄るはやて、どこか不気味なのは気のせいか?

 

「どんな事でもやり過ぎはあかんでネリアちゃん」

 

「フッ、お姉様とお兄様の距離が縮まった事への嫉妬ですか?」

 

「そんな事はないで~、それにケント君もフェイトちゃんもくっ付けるには中々難しいで~」

 

「それを何とかするのが妹ですよ」

 

くっ付ける……とは何をだろうか?

話からすると俺とフェイトの様に取れるのだが……ないない、フェイトが俺に好意を抱いているなんて考えられないし彼女には好きな人がいたはずだ

フェイトが俺を好いていてくれているのなら飛び上がって喜ぶんだけどな……元々がフェイ党だし原作キャラだし……

まぁ俺に彼女の隣に立つ資格は無いし彼女に思い人がいるのなら応援するんだけどね、幸せが一番だ

 

はぁ、それにしても六課にも居辛くなったな……まさかここでオルタ化するとは……

はやて達が止めてくれたお陰で被害は少なくてすんだがあの光景を原作キャラの大半に見られたと思うと……鬱だ……

まぁそれから大分時間が経っているのでもうここには俺とはやて、ネリアしかいないのだが……誰かこの二人を止めてくれないか?

二人の間によくわからんオーラが火花を散らしているのだが……

 

「まぁ、帰ろうかネリア、家でしっかりとお説教してやる」

 

「私は何も悪いことしてませーん」

 

「庭ボコボコにした」

 

「直したよ」

 

なん……だと……

 

「だ、だけど毛を抜いてみんなに迷惑かけた」

 

「私は毛を抜いただけ、暴走したのはケントお兄様ですよ〜」

 

一理あるのが悔しい

そもそもネリアは毛を抜いただけなのだ、暴れたのは俺……何という正論

 

「このまま帰るのも勿体無いし……いっそお姉様の部屋に突撃する?」

 

「なっ!?馬鹿言うなネリア!!会わす顔がないだろ!!」

 

「そうそう、それにケント君は男の子や、女の子達がいる宿舎に行かすのは部隊長として見過ごせへん」

 

「お兄様の寝顔写真」

 

「特別に許したる」

 

「は、はやて!?」

 

そんな特別いらねーよ!!てかネリア!!そんなのいつ撮った!?

本当に、ガチでいつ教育間違えた!?

 

「さっ、お姉様の部屋に直行!!」

 

「いや、待てネリア、俺は行かないぞ!!」

 

「ホレ」

 

「なっ!?」

 

ネリアが差し出した写真を見て絶句する

俺の……下着姿だと……

 

「これ、ばら撒いちゃおっかな~」

 

「ネリア、何時の間にこんな……」

 

「他にも一杯あるよ~、大サービスだねお兄様!!」

 

「わかった、行くから写真全て没収だ、ちゃんと行くから」

 

「わかればよいのです!!」

 

胸を張るな胸を、むっちゃ揺れたぞ?

 

「その後は……お姉様をコルテットにお迎えしてお泊りして~」

 

「いやまてネリア、流石にそれは周りからの反発もあるし色々と問題が……」

 

「そうやネリアちゃん!!いくらなんでも六課の隊長をいきなり休みにさせるなんてでけへん、それにフェイトちゃんは執務官の仕事やってあるし」

 

「お兄様の写真データ十枚セット」

 

「部隊長権限でなんとかしたる、ついでに執務官の仕事の方も手を打つ」

 

「はやて!!ネリア、いくらなんでもやり過ぎだ!!」

 

「写真データが数百枚、アホ毛抜いた時のデータも記録完了、さて……流すか」

 

「爺やら周りは俺が手を打つ、だからあの状態の俺のデータは削除してくれ、残るなんて考えただけでも寒気がする」

 

我が妹がドンドン黒くなっていっている気がする

 

「その代わりネリアちゃん、六課が解散して落ち着いたら私も泊めてな」

 

「まぁ、それぐらいはいいね、その間に勝負がついたら別だけど」

 

なんの勝負だなんの……はぁ、また面倒事が増える

 

「さ~てお兄様、先ずはフェイトお姉様を誘いましょ~う」

 

「……わかった」

 

「もちろん泊まる部屋はお兄様の部屋で」

 

「なにそれ怖い」

 

 

主に俺の理性が怖い………

 

 



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お泊りのようです

 

「どうどう!?お姉様!!」

 

「凄く……大っきい……」

 

「誤解を招く返答やめてくれ、普通に凄いとかでいいじゃんかよ」

 

車から降りてから軽くツッコミをいれる

フェイトは顔を赤らめるのだが……しょうがない、俺だって直接顔を見る事は出来ない

 

「さあ入って入って!!時間は少ないんだからさ!!」

 

「ネ、ネリア!?」

 

「……………はぁ」

 

フェイトがコルテットで泊まる様です

 

 

 

 

〜昨日〜

 

 

 

 

 

「えっと……フェイトさん?」

 

「こんにちは~、お姉様~」

 

「えっ!?ちょっ、ネリア!!」

 

六課女子部屋?にネリアに強引に連れて来られて周りの目線が痛いケントです

そりゃあいつも通り周りにゴツイ黒スーツ共がいるからな……怖がるのは当たり前だ

 

「ケントまで!!ま、まって!!今片付けるから!!」

 

「お邪魔しま~す!!」

 

「ホントに待って!!ねっ?お願いだから!!特にケントは!!」

 

「は、はい」

 

ネリアは止められないと思ったのか俺に向かってビシッと指を指すフェイト

ネリア、奥に行っちゃったな……俺は玄関にいればいいのか?

 

「おっ、結構脱ぎ散らかしあるね~、下着が満載だ~」

 

「そ、それはなのはのだよ!!」

 

「ちょっと髪が湿ってるからシャワー浴びてたの?色っぽ~い」

 

「ネ、ネリア!!お願いだから私の下着観察するのやめて!!直ぐに片付けないといけないから!!」

 

「あ、この前あげたお兄様の写真、上着の内ポケットか~」

 

「あまり大声で言わないで!!玄関に本人いるんだよ!!恥ずかしいよ!!」

 

「恋愛物の本?真面目な本の後ろに隠すなんてホントにあるもんなんだね~」

 

「あ、荒らさないで……ね?お願いだから……えっ、ちょっ!?ネリア!?」

 

「せっかくの機会なんだからもっと色っぽくしないと~、ホレホレホレホレ~」

 

扉の向こうからエロい声が聞こえてくる、色々とネリアが暴走してる様だがこの際無視だ、てか俺の写真何個持ってんだ?

フェイトさんも入れたまま取り出すの忘れてただけだろ、恋愛物の本だってフェイトさん好きな人いるらしいし……そもそも恋愛相談に乗っているのはお前なんだし……

 

「お兄様~、もういいですよ~」

 

「ん、えっと……わかった」

 

入り辛い、そもそも部屋にOK出したのがフェイトじゃなくてネリアだという事が怖い

フェイトはどこいった……声がパタリと止んだのだが………

それに俺がここにいる意味なくね?速攻で帰ると言うのも一つの手だ

 

「帰るのは無しだよ?」

 

「おいネリア、それなんだ?」

 

「アホ毛抜いたお兄様の発言集」

 

俺に逃げ道は無いらしい

 

一度だけ大きなため息をついて前に進む

ネリアはわざとらしく鼻歌を歌っているが……あの純粋な少女が変わったものだ、悪い方向に……

ドアを開けて中に入る、そこには日の光が入る明るい部屋

そして……

 

「う……あ……」

 

「……………」

 

ベッドの上で布団を使って前を隠すフェイト、おい、まさかとは思うが……

 

「お前……脱がしたのか……」

 

「お姉様のフルヌード~、中々見れないよ~」

 

取り敢えず一発殴って近くにあったバルディッシュを投げ渡す

フェイトも理解したみたいですぐさまセットアップしてバリアジャケットを纏う……さて……

 

「ネリア、やり過ぎはよくない」

 

「そうだよネリア、今回はいくら私でも怒るよ?」

 

「えっと……なんでそんなに怒っているのかな?」

 

二人でネリアに詰め寄る……余裕そうな顔しやがって……

 

「それはそうとお姉様、明日ぐらいにコルテットにお泊りしません?」

 

「話を反らすのは駄目だよ、それに私には六課の仕事もあるしみんなが頑張っているのにお休みなんて出来ない、お誘いは嬉しいけどお断りだよ」

 

「ネリア、家でたっぷり説教してやる、帰るぞ」

 

「まぁまぁ、これを見てからでもいいでしょ」

 

そう言ってフェイトに一つの紙を見せるネリア……フェイト?

 

「ケント、今回は許してあげよ?ね?」

 

「フェ、フェイトさん?いきなり何を……」

 

「明日のお泊り楽しみだね~」

 

「う、うん、楽しみだね~」

 

ネリアが怖くなった

 

 

 

 

まぁそんなわけで今日から明日までフェイトの仕事は休み、コルテットに泊まる事になる

 

やっぱり入りにくいんだろな……場違いな感じがして……俺はもう慣れたけど……

 

「入って……いいんだよね?」

 

「当たり前~、さぁ、入った入った!!」

 

フェイトは目の前の屋敷を見て困惑してるし……一度来た事があると言っても八年も前だからな…流石に全部が全部記憶してるわけがないか

 

「ほらお兄様も!!せっかくのお泊りなんだから!!」

 

「ん、わかった」

 

まぁ、せっかく来てくれたんだからおもてなしはしないとな……

 

そう思って二人の後に続く、未だにフェイトの顔は赤いままなのだが……

ちなみに彼女の服は肩が出てる黒い服にスカート、まぁvividに出てそうな私服と思ってくれればいい

それにしても……

 

「お姉様の部屋はお兄様の部屋を使って下さ~い」

 

「え、えぇえ!?」

 

ネリアの奴、やっぱり懲りてないらしいな

あの後周りの奴らから危ないやらなんやらで物凄い怒られていたはずなのだが……受け流しやがったなあの野郎

それに俺の部屋って……ベッド一つしかないぞ?俺に床で寝ろと?

 

「ゴムいる~?」

 

「ネリア、少し黙ろうな?」

 

「ご、ごめんなさい」

 

少しやり過ぎだったので首元にデュランダルを当てながら静かに忠告する

少しぐらいのジョークだったら許すけどあまりやり過ぎたら俺だって怒る

 

「はぁ、あまり気にしないでフェイトさん、ネリアのしょうもない妄想だから」

 

「えっ?ゴムってあのゴムだよね、えっ、一つのベッドでケントと夜っで事は……えっ、えっ、えっ?」

 

「…………」

 

なんか頬に手を当てながら小声でクネクネしていた、キャラ崩壊してないか?

ネリアも何ニヤニヤしている、お前のせいだぞフェイトが壊れたの

 

「ネリア、お前の部屋に入れてやれ、俺の部屋はまだお前が仕掛けた盗聴器やら何やらがまだ全部見つかってないから」

 

「そういえば何であんなに簡単に見つけられるの?凄く難しい所に隠しているつもりなのに」

 

直感とは言えない

 

「大丈夫大丈夫、二人の夜の喘ぎ声は永久保存版にするから!!」

 

「ネリア、お前暫く昼メシ抜きだ」

 

「ごめんなさい、調子乗り過ぎました」

 

まったく

 

「取り敢えずネリアの部屋に案内しよ、て事で着いて来て下さいね」

 

「えっ、どうしよう!!私今日シマパンじゃないし……ケントってシマパンが好きだってネリアが言ってたし……ああ、コスプレして欲しいって言われたらどうしよう!!」

 

まだ小声でクネクネしていた、何言ってるか聞こえないけど……とにかく早く戻ってこい

 



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色々ヤバイ

 

「私……ずっと……」

 

「フェイ………ト?」

 

彼女の吐息が首にかかる、心臓が波打つ、顔が赤い

乱れた衣服がその体をより一層強調させる、彼女の手が俺の腹から下に、下に下がっていく

トロンとした目、胸元に当たる大きな、柔らかい感触……

状況をどうにかしようと動かした手は彼女の手に止められる、唇が近づく、心臓がさらに波打つ

 

「ケン……ト……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、お邪魔します!!」

 

「そう硬くならなくていいんだって~、リラックスリラックス」

 

俺の部屋に入る時ことに対してフェイトがかなり緊張している……?

別段緊張する事はないと思うんだが……ただの部屋だし、趣味とか特にないからベッドがあって机があっての普通な部屋、まぁ大きさは高級ホテルのスイートルーム並なんだけど……

てかネリア、緊張しなくていいんだよ~とか言ってるがここは俺の部屋、なぜお前が……

 

「ひ、広い……」

 

「はぁ、これだけ隠すスペースがあるのにエロ本の一つないんだよね~、十九歳にもなって」

 

「当たり前だろ」

 

いや、どちらかと言うと『買えない』と言うのがただしいんだが……どこに行く時も護衛が見てるし転移魔法を使ってバレないように買いに行ったとしても街中でコルテットだとバレたら色々と面倒だし……俺だってエロ本の一つぐらい欲しい、前世でも数冊隠してたし……俺だってもう十九だし……

 

「妹としてはお兄様の将来が心配です」

 

「これ何?」

 

「私が今日仕掛けたばかりの盗聴器……なぜバレる……」

 

直感です

 

「ま、盗聴器も全部無くなったと言う事でお姉様の寝室はここになりま~す」

 

「ガチだったのか?」

 

「当たり前~」

 

当たり前らしい

 

「ほ、本当にここで寝るの!?」

 

「もちろん、よい結果を期待するよ~」

 

何の結果だ何の……

 

「ま、荷物は置いて遊ぼ~、せっかくのお休みなんだしね!!」

 

「えっ、あっ、うん」

 

手を握られて連れていかれるフェイト……遊ぶって何で?

それにしても……まさか本当にコルテット内に外部の人間を入れるなんてな……今までの俺では到底しなかった事だ

近づいて来る奴に背中を見せない……今だって毎回心を許しているつもりはない……だけど……

 

「あまく、なったな……」

 

ネリアが来て俺はあまくなった、何に対しても

あいつは……ネリアは『俺』の事を知った上であれだけ元気づけようとしてくれているのだろうか……やっている事は無茶苦茶だが実際ネリアの

おかげで今では自然の形で笑う事が出来る

 

「お兄様~、はやく~」

 

「ああ、今行く」

 

コルテット内で遊べる所などあっただろうか……いや、俺が単に知らないだけでネリアなら色々と知っているのか?

 

そんな事を軽く思いながら彼女達を追いかける

こういうのも……いいかもしれないな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論からはっきり言おう………コルテット何でもあり過ぎだ

俺が知らないだけで娯楽施設だらけだった。遊園地やら水族館やら……何で今まで知らなかったんだ?

そして隣には目の前に出された見た事も無いような食事に苦戦しているフェイト、それを見てニヤニヤしているネリア……お前、よくわからないが怖いぞ?

 

「今まで私が食べて来たお肉って……なんなんだろう……」

 

「…………どうした、フェイト?」

 

涙目になりながらお肉を食べているフェイト……大丈夫か?

そこまで感動するほどじゃないと思うけど……俺の味覚がおかしくなってるのか?

 

「そんな一回一回気にしてたらここではやっていけないよ~、おかわり~」

 

んでもってフェイトが食べているのと同じ料理を山のように頬張るネリア……長い付き合いなので慣れた

毎回毎回思うのだがそれだけの量、どこにいってるんだ?そんでもって何で太らないんだ?

胸か、胸に栄養が送られているのか!!

 

「で、お姉様は明日のお昼過ぎに六課に戻るんだよね?もう少しゆっくりして行けばいいのに~」

 

「ありがと、でもみんな頑張ってるのに私だけ遊んでるってわけにもいかないしね、六課が終わったらエリオやキャロも遊ばしてあげて」

 

「もちろん!!」

 

また説得しないといけないのか……疲れる……

まぁフェイトがエリオとキャロを連れて来たいのは分かる、遊園地なんて貸し切りだからな、俺らで……

大きさやバリエーションは前世にあったネズミの所に負けないぐらい、ぶっちゃけ言って客がいないのが逆に不気味だ

エリオもキャロもあの年で局務めだからな……保護者としてはもっと子供らしく遊んでほしいという願いの方が大きいはずだし……それなら説得するのも苦にならないな……

 

「で、お風呂上がったらバッタリ~とかってイベントはあった?他にも着替えている時にお兄様がガチャリとかお姉様が入っている時にお兄様がアーとか」

 

「無かったな」

 

「う、うん!!そんなのは無かったよ!!」

 

言い忘れていた、こいつ、男湯と女湯をわざわざ変えやがった

フェイトが女湯に入った瞬間女湯を男湯にチェンジ、そこに俺が入るって感じ

まぁ『そうなるとは分かっていたので』俺は確認を取ってから本来の男湯へ、ホントに直感は便利だな……

 

「う~、残念、まぁいいや」

 

「このまま全てのことに対して諦めて欲しい所なんだが……」

 

「ところがどっこい、そう簡単には諦めないネリアなのだ~」

 

「………………」

 

この妹には何を言っても無意味らしい

 

「さぁさぁ、フェイトお姉様は食べ終わったら部屋に戻って、ね?」

 

「えっ、どうしたの?ネリア?」

 

フェイトが食べ終わったのを見計らってネリアがその腕を掴む、ネリアからしたらまだそんなに食べている感じはしないのだが……

それに比べてフェイトはなんか息が荒い、何かに耐えてるような……

 

「先にお部屋に連れて行っとくからね~、私は自分の部屋でやりかけのゲームでもしとくから~、お休み~」

 

「えっ、うん、お休み」

 

おかしすぎる、今はまだ八時過ぎ、俺としてはフェイトと二人でガールズトークでもすると思っていたのだが……

それにお休みという事はもう寝るのか?たしかに今日はかなり充実した日だったので疲れているとは思うのだが……深く考えても意味ないか?

食事を口に運ぶ、それにしても食べ終わってから強引につれていかれたフェイトはどうしたのだろうか……ぶっちゃけ暇じゃね?

こんな時間があるのならネリアと一緒にいたほうがいいと思うのだが……それに俺は俺の部屋でフェイトを寝かす許可をだした覚えはない、最低でもネリアの部屋だろ?

 

「まったく」

 

食べ終わってから席を立つ、これだけはハッキリさせておかないとな、フェイトと同じ部屋で寝るなんてどうかしてる、俺の理性がヤバい

ベッドも一つしかないし………はぁ、今回は少し強引に俺の主張を通させてもらおう

 

あまり遅くなるとネリアが寝てしまうので早めに自室に戻る、それにしてももうちょっと部屋と食道の距離を縮めてくれないかな……いくらなんでも遠すぎる

 

自室の扉を開けて外の見張りと別れる……あれ?

 

「フェイトさん?」

 

呼んでみるが返答は無し、誰かがいるという気配はあるのでいるとは思うのだが……もう寝たか?

いやわそれでもまだ八時過ぎ……いつもいつもオーバーワークをしている彼女にとってはそこまでの疲労では無かったと思うのだけど……

 

足を進めて奥に入る、着替えていたりしないだろうかともう一度声をかけてみたが返答は無し……どういうことだ?

 

「……………フェイトさん?」

 

いた、ベッドの上に

ただ明らかに様子がおかしい、右手は何かに耐えるようにシーツを掴んでいるし左腕は目を隠している

服は乱れて胸からチラチラと見える下着、そんでもって顔は赤く息が耳に聞こえてくる……かなりしんどそうだ

 

「大丈夫ですか、フェイトさん」

 

近づいておでこに手を当てる……目はトロンとしており顔は暑い……病気か?

 

「ちょっと待っててくれ、今だれかをっと!!」

 

振り返って誰かを呼びに行こうとした瞬間服の端を掴まれる

振り向いてみると目をトロンとしたままのフェイトがこちらをただ無言で、それでもって力強く服を掴んでいる……どうした?

 

「いて」

 

「ん?」

 

「一緒にいて」

 

殆ど動かない口から発せられた言葉、誰かを呼ぶのはデュランダルでも出来る、なので俺は言われるままベッドに座る

ずっと無言で横から見つめて来るフェイトが怖いがいつまでも座っているわけにはいかない、デュランダルをつかってディスプレイを開いた……その時だ……

 

「えっ、うおっ!!」

 

強引にベッドに押さえつけられる、そしてその上に乗って来るフェイト

顔が近い、吐息がかかり胸には柔らかく感覚

両手はフェイトの腕で止められており身動きが出来ない

 

「フェ、フェイト?」

 

「ケン………ト……」

 

嫌な予感がする、俺の直感が警報を上げる

 

ネリアがすぐにフェイトを部屋に帰らせた理由、ガールズトークだと思っていたのにすぐ俺の部屋から離れるようにした理由

そして………フェイトのこの状態……普通なら体はそうでもその精神まで持っていかれることはない、そんなのは同人誌や二次元の世界だけだ

だが……『コルテット』なら話は別、ネリア……あいつ……

 

 

 

フェイトにコルテット製の『媚薬』盛りやがった

 



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自重しよう

 

「………………寝た…な?」

 

よだれを垂らしながら眠るフェイトを見て心の中でため息をつく

『万が一』の為に設置していた催眠ガスが上手く効いたようだ、お陰で大事にならなくて済んだ

俺の魔力に反応して発動する特注のガスだ、もしもの時の為に作っておいた

デバイスが無くたって魔力は流せる、まぁそのガスのせいで俺も今息が出来ないんだが……

 

(取り敢えず窓を……)

 

部屋の窓を全開にしてガスを外に出す……さて……

 

「ネリア、『やり過ぎは良くない』って言ったよな?」

 

タンスの上に置かれていた超小型カメラをつまんで自分でもビックリするほどのドスの聞いた声で威嚇する

片手にはデュランダル……さて……

 

 

 

 

 

「少し、頭冷やそうか?」

 

 

 

 

 

俺がこれを言う事と時期的に早い事に違和感があるがそれ程怒っていると言う事だ、世の中にはやっていい事と悪い事がある

指の力だけでカメラを破壊する、フェイトはせっかく寝ているのだ、起こすのはよくない

遠くの方で護衛の奴らがネリアを呼ぶ声が聞こえる、大方逃げ出したんだろう……

 

「逃げ切れるとでも思ってんのか小娘よぉ?」

 

口元が笑う、直感舐めんじゃねーぞ?

 

「転移」

 

足元に現れるのは黄金の魔法陣、転移先はネリアの真後ろ……いくぞ?

 

「エクス………」

 

「えっ!?ちょっ!?お兄様!?」

 

「カリバァァァァァァ!!」

 

屋敷の中で黄金の魔力が勢い良く噴射される

窓ガラスやら何やらが盛大に吹き飛ぶが関係ねぇ、先ずは……

 

「へぇ、避けるのか?」

 

「当たり前じゃん!!妹に向かって何全力出してんの!?」

 

「………潰す」

 

「えっ、あっ、す、すみませんでした!!だから許してってアー!!」

 

超遠距離特化のお前が超近距離特化の俺に勝てると思ってんのか?

今回は許さねぇ、少し反省だ馬鹿野郎

 

「だ、だからさっきから謝ってってまってぇぇぇ!!」

 

「エクスカリバァァァァァァ!!」

 

「そ、それでもお姉様のエッチな体見れたでしょ!?それもこれも可愛い妹のお陰じゃん!!」

 

「エクスカリバァァァァァァ!!」

 

「あのまま一線越えれば良かったのにぃぃぃ!!」

 

「エクスカリバァァァァァァ!!」

 

さて、まだ避けるか……夜は……長いぞ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと……ネリアはどうしたの?」

 

「今日の朝飯は抜きだ」

 

「た~す~け~て~」

 

あーと叫んでるが知らん、自業自得だ馬鹿

 

「えっと、ネリアキツそうだよ?解いてあげようよ」

 

「フェイトさんは昨日の事を覚えてないからそんな事が言えるんだ、少しネリアは自重と言うものを覚えろ」

 

「お姉様~」

 

「えっと……頑張って?」

 

「神は私を見捨てた!?」

 

見捨てる前に見てないと思うぞ、神ってあいつだろ?

ちなみにネリアは俺が吊るした、ロープで

下ろしてくれやら腹減ったやらほざいているが一切無視だ、俺も怒る時は怒る

 

「せ、せめて朝ごはんだけでも!!」

 

「はい海苔」

 

「………これだけ?」

 

「これだけ」

 

わーと言いながら必死に抗議してくるネリア、味付け海苔?俺はそんなに優しくない

 

「こ、こんな事続けるとホントにシャワー写真流すよ!!」

 

「お前の部屋は全部調査して俺やフェイトに関わる物を全て処分した、俺たちだけじゃなくはやてやなのはの写真があった事に激しく疑問を抱いたんだけど」

 

「えっ!?もしかして見たの!?」

 

「なんでお前の部屋に同人誌があるんだ?」

 

「買って来てもらった」

 

「お前は少しぐらい恥じらいを知れ」

 

わざわざ買いに行かせるのかよ……

 

「と、言うわけでそれも含めて全て処理した」

 

「えっ、わ、私の宝が……」

 

何が宝だ何が……

 

「えっと……昨日何があったの?出来れば詳しく教えてほしいな~て」

 

「お姉様がお兄様を押し倒グバブッ!!」

 

「ネリアが調子に乗り過ぎただけだよ、そんでもってフェイトさんは日頃の疲れでダウンしたってだけですよ」

 

「えっと……うん」

 

それにしてもフェイトが昨日の事を覚えていなくて良かった、あんな事知れたら今後一切口聞いてくれなくなる可能性だってあった訳だし……

さて……

 

「フェイトさんは午後には六課に戻るんだったよな?送るから荷物の整理だけしてほしい」

 

「あ、うん」

 

六課までそれなりの距離あるし……早めに出た方がいいかな?

 

「えっと……あの……」

 

「?」

 

フェイトが妙にモジモジしてる、料理は食べ終わったので帰ろうとしていたのだが妙に帰り辛い

………どうした?

 

「えっと……一つだけ、お願いしてもいい?」

 

「ん?何?」

 

返答を返すとまたモジモジし始めるフェイト、俺にどうしろと?

 

「さ、さん付けじゃなくて呼び捨てで呼んでほしいな~て」

 

「………は?」

 

「い、嫌ならいいんだよ!!私のワガママだ「フェイト」っ!!」

 

いや、結構呼んでると思うんだけど、呼び捨てで

時々忘れるんだよな、フェイトさんよりフェイトの方が言いやすいし……

 

「お~、一歩前進だねお姉様!!」

 

「お前は少し黙ってろ」

 

うむ、ネリアに対する扱いが雑になったが気にしない、こいつにはあまく当たり過ぎたからな、今回からは厳しく当たらないと

 

「えっ、あっ、あ、ありがとう」

 

「ん、どういたしまして」

 

そう言うと逃げる様に部屋に戻るフェイト……どうした?

てか……呼び捨てにしてって言う事はもしかしてフラグ?上着の内ポケットに俺の写真とか言っていたし………いや、ない、どこでフェイトにフラグを立たせるイベントがあったんだよ……俺別にPT事件とかに関与して慰めたり心の支えになった事ないし

う~ん、やっぱりなのは流友達の作り方『名前を読んで』なのか?あれってさん付けは当てはまらないのだろうか……

 

「お姉様が成長して、私は嬉しいよ………」

 

「お前は少し変わろうな、いい方向に」

 

「ネリアを調教する気なのか……性的な方向に……」

 

「自重しようって言ったよな?」

 

ロープを更にキツく締めてネリアが表面上だけの悲鳴を上げる

さて、次の六課のイベントは……地球遠征か?それには関われないとして………アグスタのあれだな

 

さて、どうやって介入するか……

 



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100体抜き

74

 

「おっ、あった………」

 

画面を見つめながら声をあげる、う~ん、まさかとは思っていたけど……

 

「アグスタ……コルテットか~」

 

ホテル・アグスタ、あの『頭冷やそうか事件』の原因となる出来事が起こった場所

ロストロギアのオークションだったか?まあそんな事はどうでもいい

しいて言うならば……

 

「アグスタがコルテットが経営しているホテルだったとは……高級ホテルだから『まさか』とは思っ調べてみたけど……」

 

それにオークションをするのもコルテットのサポーターがあってこそ………原作ではどんなのだったんだ?

 

「まぁ、コルテットが経営してるんだったら介入も比較的楽……なのか?」

 

う~ん、普通考えたらそうなのだが今回は低級とはいえ『ロストロギアの』オークション、何が起こるかわからない

それに六課でも『ガジェット出現の可能性』を考えて出撃してたんだ……周りの奴らがそらを知らないわけがない

そして、ガジェットへの対策

はっきり言って俺も自信は無い、AMFに機械独自の動き、よくあんな物を入りたての新人達は相手に出来る……油断すれば俺でも落とされる可能性は十分にあると言うのに……

 

まぁ、これについてはこちらで対策をするのだが……

 

「ケント様、よろしいでしょうか?」

 

「ん、ああ、入ってくれ」

 

部屋の外から聞こえて来たのは爺の声、出来たって事だな

 

「ガジェットの複製、完了しました」

 

「りょ~かい」

 

さて、六課が実現出来なかった『完璧な』複製も出来上がった事だし……いきますか……

 

 

 

 

 

 

「へぇ~、コルテットでお兄様が訓練だなんて……よく通ったね」

 

「それだけ切羽詰まっているって事だ、この前まともに戦えた奴は少ないからな、俺と一部の人間関係だけだ」

 

歩きながら隣に来たネリアが話しかけてくる

……ガラディーンを持ってやる気そうだがお前はあくまでも見学だぞ?周りに守ってくれている人間がいて初めて戦えるスタイルなんだから……

 

………さて

 

「爺、始めてくれ」

 

「くれぐれも……くれぐれも危なくなりましたら止めて下さいませ、ケント様にこの様な試練を与えてしまう事を爺は……爺は…」

 

「はいはい」

 

丸いドームに入りながら上のコントロール室にいる爺が騒いでいる

 

俺がするのは簡単、『ガジェットとの戦闘』

 

高濃度のAMF空間内での魔法戦闘、護衛の奴らも訓練に励んでいるがそれでも成果はあまりよくない、こう見てるとやはり主人公自らの指導とはいかに凄い事なのかが分かる

まぁ、そんな訳で『万が一の防衛手段』として俺がガジェットを完璧にコピー、いや、

逆に強化しての訓練を提案、最初は断られたがこの前の襲撃で俺頼りだった事を出したら苦い顔で渋々了解してくれた。

さて、いくら非殺傷設定で攻めてくるとしても相手の数は100、その中には透過する奴や防御型、巨大な奴だっている……油断は……出来ない

そして今回、俺自身に定めたルールとしては第一に『破壊』を使わない事、あれを使うと半分程度の魔力でほぼ全てのガジェットを殲滅してしまう。万が一を踏まえた環境ではそんな訓練クソ程役に立たない

そして次、皇帝特権によって自身が使う力を『魔力以外に変換しない事』

皇帝特権で自身が使うチカラを『魔力では無い』と主張する事によって一時的に俺が使う力は魔力とはまた別物になってしまう。

そうなればAMFだって関係ない、そんな訓練も役に立たない

 

以上、この二つを踏まえた上で訓練に望み、アグスタでの万が一に備える

まだ介入する方法を思いついたわけではないが俺がこの世界に『異物』としている以上何が起こるかわからない、最終決戦などどれほどのガジェットを送り込んでくるのか分からないのだ、今から訓練しても遅くはない……はず……

 

『では……ケント・コルテット様によるガジェット100抜きを開始します』

 

ドームに流れる声、それとともに目の前に現れ出すガジェットの群れ

右手にデュランダルを……左にステルスデバイスを構える

二刀流なんて始めてだな、たまにはこういうのもいい

じゃあ……

 

「いくぞ、ダンゴムシ」

 

 

 

剣撃、舞う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

目の前のドームを見ながらネリア・コルテットは一人思案する

目の前で舞っているのは大好きな兄、自分を助けてくれた、自分を受け入れてくれた大切な家族

 

兄がまたその剣で一つ、鉄の塊を粉砕する。その剣撃は見とれてしまう程綺麗だ

 

だが……なぜいきなり兄はこんな訓練をするなどと言い出したのだろうか?

ガジェットに対する対策は必要だとは自分だって思う、実際にコルテットの警備が相手のアレに突破されたのは事実だし現実だ

 

しかし……なぜ今になって兄がここまで積極的にこの事件に介入する?

自分が狙われていると言うのも一理ある、しかしそれならばコルテットの護衛を強化すればいいだけの事

 

普通、『お坊っちゃま』と呼ばれる類の人間は大抵そうだ、自分が努力するなんてあり得ない

だが……ケントは違う、いつもは何に対しても関心を示さない兄がこの事件だけは非常に強い関心を示し、それでもって自分から動いている

 

わからない、なんでなのか……

 

言われてみれば最初に兄を意識し始めてから兄はおかしい事だらけだ、自分より下の人間に対しても優しいし……何より自分が自身の『クローン』だと知っても別段驚いた顔もせず、簡単に受け入れてくれた

 

ありえないのだ、これだけの地位につく人間ならば他人を少しぐらい下に見るしそんな違法実験に対する抵抗などあるはずもないので直ぐに舌を滑らせて秘密裏に処分されたっておかしくなかったのだ

 

コルテットという選ばれし人間にでありながらあの才能、あの整った容姿……ここまで揃えて生まれてくる人間なんていないのではないだろうか?

 

『70体!!』

 

……長々と考えてしまったが自分は大好きな兄の妹、その事には変わりない

兄は元からこんな人、目の前で困っている人がいたら助けるし、みんなを笑顔にする優しい人

だから幸せになってほしいとも思う、この『コルテット』という鎖を断ち切り、幸せになってもらいたい

 

『90!』

 

だから………私は……

 

 

『100!!』

 

 

大好きな兄に幸せになってもらうために、もっともっと頑張ろう

 

 

 

 

そのために先ずは、あの唐変木を何とかしないとね!!

お兄様!!目標は幸せな結婚ですね!!

その後お姉様とあんな事やこんな事を(以下略)

 

 



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よくある事 2

 

「おお、これは誉高きコルテット家の次期当主様ではありませんか、はじめまして私は~」

 

「あ~、うん、わかった、ちょっと用事あるからすまんな、また今度」

 

「えっ!?あの!!少しお待ちを!!」

 

必死でアピールしてくる小太りのおっさんを護衛に任して前を歩く

服はスーツ、髪は一つに縛り手には黒の手袋、後ろからは黒スーツにサングラスの男達がズラリ

周りからの目線が凄まじいが気にしない、何人かは俺に話しかけようと近づいてくるが辿り着く前に止められてしまう……ハニートラップも多そうだ……

 

「ようこそおいで下さいましたケント様、お部屋にご案内致します」

 

「ん、ありがと」

 

白の髭を少し生やした優しそうな男性がお辞儀をしながら話しかけてくる

……このホテルの総主任だろう、こいつも大変だな……

 

「じゃ、さっさと案内してくれ、ここは疲れる」

 

特に金持ちが多く集まるオークションなんてな

 

さて、もう気づいているとは思うが俺が今いる場所はあの『ホテル・アグスタ』

時期は丁度オークション当日、何とか来れたな

まぁ……俗に言うスペシャルゲスト、ホテルのオーナーでもありオークション主催者であるコルテットからの

見た所結構有名な奴が多数来ている事から簡単に許可が下りた、それだけ警備も頑丈になるらしいし

扱うロストロギアも暴走の心配が無い事が再度調査をさせてクリアした

で、ガジェットについては……可能性は低いだろうと言う事で

原作の六課が几帳面過ぎたと言うのがあるな、あくまでもガジェットが狙って来ているのはレリック、そして今回出品される中にレリックはない

ガジェットがレリック以外を狙って現れたという例は今までにない、そんなわけだ

ちなみにネリアはお留守番、というか学校

あいつも学生、ずっと家にいる事は出来ない、渋っていたが強制的に連行した

 

「うおっ、むっちゃいい部屋じゃん」

 

そんなこんな言っている内に部屋に到着……豪華じゃねぇか

高級ホテルのスイートルームだからな、てかどれだけ広いんだ?バーカウンターなんて置かれても俺酒は飲まないんだが……

あ、言っていなかったがオークションは二日に分けて行われる為多くの客がこのホテルに宿泊する。恐らく原作では事件の為に急遽オークションは中止、ホテルが使われる事も無かった

う~ん、勿体無い

 

「オークションは午後から、ケント様は初めのご挨拶をお願いします」

 

「りょーかい」

 

ん~、そういえばこのオークションであのユーノが登場するんだよな、無限書庫の……何だったっけ?

まぁ偉い位についていたのは覚えている、てかさっさとなのはと結ばれろと前世では何度感じた事か………

 

「取り敢えず暇な時間でこのホテルの間取り図を~」

 

ディスプレイを目の前に展開して少し弄る

表れたのはこのホテルの間取り図と警備位置……だいたい覚えた

 

ちなみに俺はティアナの事件に関わる事はない、あれはあれでティアナの成長に欠かせない事だったと思うしあいつと殆ど話した事が無く、特典なんてチートを持っている俺があいつに何を話しても聞いてくれそうにないしな

 

取り敢えず俺がするのは『転生者』の情報収集、この事件だって原作では重要な位置にあるイベント、ティアナの事で転生者が一枚絡む可能性だって十分にある

 

そしてもう一つ、出来る事ならルーテシアの保護

あいつの友達、ガリューの腕を斬ったのは俺だ、何があったにしろあの純粋な子に辛い思いをさせてしまった事には変わりない

だがコルテットにはガリューの腕をくっつけるだけの技術がある、メガーヌを助けるだけの力がある……上手くいくといいのだが……無理か?

近くにはあの渋男がいた筈だし……本職の『騎士』には勝てる気がしないんだよな……俺の、形だけの力じゃ

 

「……そういえば」

 

記憶が曖昧だがユーノの他にもロッサが来ていた筈、一度も見てないがまだなのか?

はやてといい雰囲気になるんだったか?てかロッサってはやてかシャッハかどっちなんだろうな、結構どちらでもお似合いだと思うが

 

………暇だし会いに行ってみるか?

 

「どちらに?」

 

「すこし散歩、オークションが始まるまでには戻るよ」

 

立ち上がって部屋からでたところでさっきの護衛が俺の後ろに並ぶ

う~ん、大名行列だな、これ

 

「あの~、すみません」

 

「……どうかしましたか?」

 

前の方からオドオドした女性が話しかけてくる

この階には俺の部屋しかないはずだが?

 

「えっと、道を迷ってしまって……教えてくれたら嬉しいのですが」

 

「私がご案内しましょう」

 

護衛の一人が名乗りをあげるが女性は地図を広げて俺に歩みよって来る……ったく

 

「で、どれ?」

 

「えっと……この階なのですが」

 

妙にひっついて来る彼女、やはり胸を当てて来てるな………またこれかよ

 

「そこのエレベーターを乗って五階に行って下さい、出た所を右に進めば部屋番号と同じ部屋があるはずです」

 

「えっと……よくわからないので教えてくれたら」

 

「却下です」

 

「えっ!?」

 

驚いた顔になる彼女、だって……なぁ……

 

「あなた、○○サービスコーポレーション社長の一人娘だろ?

あそこは昔からの大会社だがこの頃コルテットの進出により業績が悪化、今度コルテットによる買収が決まっている……だったか?

このホテルの常連客だし道は間違える筈がないとおもうのだが……気のせいか?」

 

「えっと……あの……」

 

「そんでもって父、社長は長年の疲労と業績悪化が重なって倒れ、そのまま入院、でもってそれを助けたのがコルテットだったか?

ま、色々負けて悔しい気持ちも分かるがその手首の部分に隠している短剣はしまえ、

魔力が無いとは聞いてはいたがまさかこんな方法で仕返しをしに来るとは……」

 

「……………」

 

ここまで言うと完全に黙る彼女、でもって今まで守り続けて来た会社をコルテットに吸収される事が悔しいんだろうな、負けず嫌いたとも聞いた事もあるし……

で、可能性が隠している短剣、ここまで接近はしているが護衛がそれを見破れていないわけではない、初めに取り押さえようと動こうとしていたのだが俺が目で止めたのだ。まあこの距離でも短剣が届く前に取り押さえちまうんだろうな……ったく、人間相手だったら頼れる奴らだ

 

「私は!!父さんが守りつづけて来た会社を潰すお前達が許せない……父さんをあんな風にしたお前達が許せない!!」

 

「許せないのは勝手だが俺を殺したその後はどうする?もうすぐお前の所の会社はコルテットに吸収される。そんな立場の人間が問題を起こしたらどうなるだろうな、確実にコルテットの力によって立ち直りそうなお前の会社は潰されるだろうな、他ならぬコルテットに」

 

「ぐっ……」

 

「……ったく、はよ帰れ、今なら何も見なかった事にしておいてやるからな」

 

「なっ!?危険人物ですぞ!!」

 

「いいからいいから、で、返答は?」

 

女はすこし顔を伏せた後その場を立ち去る、もう慣れたな、このやりとりも

 

さて……

 

 

「散歩いくか」

 

 

どうせ暇だしな

 



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知らんがな

 

「えっと…どこに行くんだいケント?」

 

「いや、せっかくのいい雰囲気なのに壊したら悪いかな~と、はやてにもとうとう春が来たかもしれないのに……」

 

「そんなことないそんなことない!!私にはロッサ何かよりも魅力的で好きな人がちゃんとおるねん!!」

 

「はやて、それは遠回しに酷くないかい?」

 

ロッサが一人でorz状態になっているが……いや知らんし

てかはやてにも好きな人っていたんだな、やっぱり二次元と現実は違うって事か、フェイトにもいるらしいし……ホント、こいつらに好意を寄せられるなんて……幸せな奴もいるもんだな……

 

「なんかすっごい勘違いされとる気がするんやけど……」

 

「ハハ、相変わらずだね、それはそうとケント、何でこんな所にいるんだい?」

 

立ち直り早いなロッサ、う~ん、そうだな……探していたら見つけた……では駄目か?

あれからウロウロとしてロッサを見つけた……と思ったらはやてといい感じで近づきにくかったんだよな……根っからの女垂らしが!!

まあそんなわけで話しかける事も気が引いてしまい帰ろうとしていた所をロッサに気づかれたって感じ……

 

俺がここにいる理由?知らないのか?

 

「オークションのスペシャルゲストだよ、一応このホテルのオーナーはコルテットだぞ?」

 

「ああ、確かに聞いた事があるね」

 

「あ~、確かそうやったな~」

 

今頃気づいたのだろうか?

はやて、お前は事前調査で知っている筈だろ?

 

「…………って、どう考えても危ないやろケント君は!!狙われてるねんで!!」

 

「まあまあ、相手もこんな所までは仕掛けてこないだろ」

 

「今回のオークションで売り出されるロストロギアに釣られてガジェットが集まって来る可能性だって十分にあるねん!!ケント君も六課が出動しとうの知っとるやろ!!」

 

「いや、知らんし」

 

「そんなぁ……」

 

ガックリと項垂れるはやて、そりゃあ守る対象が増えたしな、任務の難易度も高くなったもんだし

 

「まっ、そんな小さな事はええか、で、どうや~」

 

「それでいいのか部隊長」

 

お前も立ち直り早いな、自分達がする仕事が増えたのにそんな事って……

で、身につけているドレスを広げて自慢してくるはやて……何と言うか……

 

「………綺麗」

 

「へっ?」

 

「いや、純粋な感想、素直に綺麗だと思うよ」

 

「えっ、えっと……ありがとう」

 

さっきの明るい表情とは打って変わって俯くはやて、何か悪いこと言ったか?

 

「いや、ケント君にしてはえらい直球やな~とおもて」

 

「恥ずかしいのか?個人的にはいいと思うけど」

 

「う、卑怯やわケント君」

 

卑怯って……ロッサ、お前はクスクス笑うな

それにしても直で見てみるとホント綺麗だな……一言で言うと『プリンセス』か?

こうなればなのはやフェイトもどうなっているか……ホント、何で原作では結婚していなかったのか不思議に思う

こっちの世界ではフェイトとはやてには好きな人がいるから比較的早めに結婚出来ると思うけど……だって誰も断らないだろ?この二人なら告白されても

俺もコルテットとかいう立場さえ無かったら原作キャラと結ばれるように頑張るのにな……もう後の祭りか……

 

それにしても……

 

「それはおいて置いて……ごめんな、俺のせいで六課の仕事増えるかもしれないけど」

 

「気にしない気にしない、言ったやん『私が隣で守ったる』って」

 

「まぁ、そうだけど……」

 

今聞くと遠回しに告白されてる感じがするな……隣で守るって

よく平然とそんな誤解を招く言い方が出来る……やっぱり原作キャラならではだな……

 

「それにスペシャルゲストって事はホテルの中やろ?それなら私やなのはちゃん、フェイトちゃんもおるから安心や、ガジェットが来ても外で全部みんなが片付けてくれるし」

 

「えらい自信だな」

 

「そりゃあ私の部隊やもん」

 

まぁ、そうだけど……

 

「それにケント君はそんじょそこらの相手に負けたりせんやろ?」

 

「これまたえらくかってくれてるな……」

 

「だってケント君やもん」

 

これは意味が分からん

 

「はやて、警備に戻らなくていいのかい?ケントももうすぐオークション始まるよ?」

 

「おっ、もうこんな時間か……舞台裏行かないといけないんだよな~」

 

「私は客席におるからな、何かあったら連絡して」

 

「僕もいるからね、不審な動きがあったら知らせるよ」

 

不審な動きって……お前に分かるのか?

……もしかしてあの犬、外に放っているのか?

それだったらわかるけど……

 

「はぁ、ケントが来ているなら姉さんを連れてくればよかったな、この頃会えてなくてストレスが溜まってそうだし」

 

「カリムか、まぁ俺が聖王教会に行かないと会えないからな、今回も無理じゃないのか?」

 

「あはは、まあそうだね」

 

護衛付きなら結構自由な俺と違ってカリムはマジな箱入りだからな……会えないのもしょうがない

 

「それじゃケント君、終わったらまた会いに来てな~」

 

「なんでだよ」

 

「だってどうせスイートルームやろ?アグスタのスイートとか憧れるやんか~」

 

「俺以外入らせないつもりなんだが」

 

「いいやんいいやん、そのまま一夜寝てもいいねんで?」

 

「ちぇすと」

 

「はうっ」

 

ったく、好きな人がいるならもっと体を大事にしなさい

ま、このまま何も無いって事もあるし……そうなったら俺も暇なので呼ぶだけ呼んでやろう、一夜寝るのは別として

 



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男のロマン

 

アグスタの地下、ガサガサと動く『何か』

 

姿は全く見えない、ただその何かは、手に持つケースを抱え、逃げ出す事は……

 

「あんまり調子に乗るなよ?世の中上手く行く事は殆どねぇ」

 

『つ!?』

 

振り返った……のだろうか?

そこにいたのは金髪の青年、自身にとっては因縁の相手……

 

「まっ、そんな警戒すんな、いや、腕切っておいて警戒すんなって言う方が無理か……まぁ、細かい事は気にするなよ、お前に相談があるんだけど」

 

『ブオンッ』

 

「いいかっ……て!!」

 

当然、聞く気などない

 

 

 

 

 

 

問答無用で斬りかかってくるガリュー、当然か?

 

「あのなぁ、いくら透明になっても……」

 

何度か撃ち合うがガリューの斬撃は全て防御される、前回と比べて今回は片手なのだ、自然と攻撃数も減ってくる

 

「分かるし効かないんだよ」

 

『っ!!』

 

重い蹴りが一発

当然、防御の暇さえ与えない、脚力を強化して放たれた蹴りによってガリューの透明な体が吹っ飛ぶ、これで少しは黙ってくれるか?

 

「お前に言いたい事は全部で三つ、一つ目はスカ野郎のアジト、二つ目はある存在に対しての情報提供、三つ目はお前の主の保護……って、無理か?」

 

『(ガッ!!)』

 

目の前に展開したバリアで攻撃を防ぐ……何これ?

 

「鉤爪じゃ……ない?」

 

いや、おかしいだろ!?

ガリューの攻撃方法は鉤爪を使っての斬撃、なのに俺のバリアはなんか『ギュインギュイン』いって火花散ってるんだけど!?

ガリューってスピードで敵を翻弄するタイプだろ?こんな一撃が重たいのって……無かった筈……

 

 

「くっ!?ちょっ!!」

 

あまりの質量に耐えきれず破壊されるバリア

何とか躱したが……何だよあれ……

 

「ったく……計画がパーじゃねぇか」

 

オークションで本当にどうでもいい話して、アサシン先生特有の『気配遮断スキル』全開にしてここまで来たけど……ガリューパワーアップしてねぇか?

最初はガリューを少しだけ痛ぶってルーテシアによる強制的な退却、そこから魔力探知をして場所をあぶり出すって設定値だったんだけど……これは骨が折れるな

逆探知成功者してもルーテシアが話を聞いてくれる可能性も少ない、なのでゼストがいた今の時期を狙ったのだが……くそっ

ゼストならコルテットの技術力についてもよく知っているだろうと思ってたのに……これ失敗したら次いつだ?地上本部襲撃まで待たないといけないのか?

ヴィヴィオイベントの時に拘束するにしたって半分連れ去る様なものだし……てかあのイベントに介入出来る可能性だってあるわけでもないし……あーもう、イライラする!!

 

『(キイィィィィィ)』

 

「………えっ?」

 

えっと……ガリューって砲撃系使えたっけ?

てか……あの左腕何がついてるの?

 

「ぐおっ!?」

 

スレスレの距離で回避する

放たれたのはガリューと同じく透過している砲撃……ちょっ、ガチの殺傷設定じゃね?

くそっ、砲撃が使えない俺に対しての嫌味か!!

透過しているから『破壊(クラッシュ)』もロクに使えないし……下手に使ったら建物の自体を崩壊しかねないし……

だけど……

 

「スフィアなら使えるんだよ!!」

 

黄金期のスフィアを合計八個生成して放つ

それなりに魔力を込めた一発、並の魔導師ならこれで終わりなんだけど……

 

「ガチ……かよ」

 

ガリューの奴、左手の『何か』でスフィアを全部相殺しやがった……

またギュインギュインいってるし……もうあれだろ?あれなんだろ?

 

「あのマッドも……よくわかんねぇ」

 

まっ、あれならば一目見てみたいものだ、腕についたあれとかカッコよくね?

まぁ、原因は俺なんだけどさ……

 

『(ガッ!!)』

 

「おっと!」

 

鉤爪での斬撃をデュランダルで受け止める、これだけでも俺の体は弾かれそうなのに……左手がくると

 

「おっ!?おっ!?おぉぉぉ!!」

 

『(ギィィィィィィ!!)』

 

左手の攻撃をもう一つのデバイスで受け止めるが……刃こぼれしてねぇか?こりゃヤバイって!!

 

「うおっ!!」

 

ステルスデバイスが完全に破壊される

目の前には、てか見えないのだが恐らくあれ……当たれば抉られるな……当たればだけど……

 

『っ!?』

 

「成功、これって幻術魔法の応用だろ?いくらでも『主張』出来るんだって」

 

ガリューの後頭部と思われる部分に強い衝撃がかかる

 

そしてその衝撃で透過が解け、前乗りに倒れる体……油断大敵ってね?

 

理由は簡単、俺がさっき生成したスフィアが九個だった、ただそれだけ

違いと言えば一つだけ幻術魔法の応用で透過させていたということ、相手が無防備になった時に当てられるようにずっと待機させておいた

非殺傷だから大丈夫だけど……左手はやっぱりか

 

「ドリル……とか、これはスカ野郎の趣味なのか?ただ単に強いからなのか?」

 

必死に立ち上がろうとするがさっきの衝撃で動けないガリュー、そしてその左手には『ドリル』

 

いや~、立派だ、さっきの砲撃はこのドリルが開いて発射されたんだな……なんつー画期的なシステム

 

「はぁ、まぁそれはそれで嫌だろ?安心しろ、腕はちゃんと保存してあるから」

 

初期とそんなに変わらないぞ?

痛まないように保存してあるからな

 

「コルテットに来たら直してやるよ、ご主人様の母親の治療もしてやる」

 

「グ……ググ」

 

言葉は……一応分かるんだよな?

ただ喋れないだけで……全く……

 

「予想通りに進んでくれて助かるよ」

 

ガリューの真下に現れる紫の魔法陣、流石一流の召喚士、一瞬の内に消えちまった

まっ、魔力残痕はナカナカ消えないからこれを辿るのだが……その先にゼストもいるはずだし……

 

「転生者もいたら儲け物だけどな」

 

これまで一度も登場していない転生者、一番あり得る可能性は『管理局、原作キャラアンチ』

スカ野郎についてバッドエンドにしたい~とか考える奴、今回このイベントに参加してる可能性が十分にあるからな、ここで仕留められたらいいんだけど……

 

「解析完了、行くか」

 

 

そういやそろそろ俺がいない事バレたか?

六課の仕事増えちまうな……あとではやてに謝ろう

 



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勝てる筈がない

 

「はぁはぁ……くっ」

 

「……………」

 

腰の位置にデュランダルを構える

体には大量の切り傷に打撲、内出血も所々に出来ている

体力はもう殆どない、こうしてみると今まで自分がどれ程手加減されていたのかがわかる

 

「なんで……あんたは確かに……っ!!」

 

重い一撃を何とか受け流す、だが……

 

「くっ!!あっ!!」

 

首にかかる圧力、無防備になる体

左手をかざすために動かす、これさえ決まれば……

 

「ガッ……ハッ」

 

吐血、腹に凄まじい程の衝撃

首を抑えたままでの膝蹴り……後ろに吹っ飛んで威力を殺す事もできない……口の中に鉄の味が広がる

 

「ぐぞっ……たれっ!!」

 

体を捻らせ、腕力を強化した左腕で顔面を盛大に殴る

よろける巨体、首の拘束は解け、重力のままに下に落ちる

息切れをしながらその場から引く……くそっ……

 

「はぁ……はぁ……くそったれ」

 

両手が地面につく

酸欠……体が上手く動かない、あれ以上首絞められていたら……危なかったな……

 

「なんでだよ」

 

思わず呟く、目の前には見慣れた巨体

あの腕で俺の頭をかき、あのデバイスで俺を鍛え、あの心で俺を救ってくれた

その一つ一つが今度は狂気となって俺に襲いかかる……勝てるわけがない、俺が、あいつに………

 

 

 

「なんでだよ!!サンドロス先生!!」

 

 

 

その瞳には色はなく

 

ただ眼前の敵を打ち倒すのみ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

可能性を考えていなかったわけではない

第一級ロストロギア、『レリック』

どういう趣旨で作られたのか、またどういう趣旨で使われるのかは俺は知らない

ただ……原作では死亡した騎士『ゼスト』を一定期間だけこの世に呼び戻していたりもした

それだけの力を持つロストロギア、そしてそれを集めるマッドサイエンティスト

そして……ゼスト以上の騎士……これを使わずに何を使うのだろうか

 

ガリューを追って転移したのは森の中

アグスタともそう離れていない場所、ガリュー達の姿はすでに無かったがレリックの魔力残骸を辿った

そして……見つけた三人

フードを被ったおっさんとロングヘアの女の子

最後に……二人をゆうに超える身長のゴツ男、その目にハッキリとした生気はなく、ただ二人を守る『人形』の様な存在

そしてその瞬間に感じとった

 

 

 

『勝てる筈がない』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、おぉぉぉぉぉ!!」

 

両手にデュランダルを構えて疾走する

もうとっくにルーテシア達はここを去ってしまっている、恐らくもう間に合わないだろう……だけど…こいつだけでも!!

 

「破壊(クラッシュ)!!」

 

左手をかざして叫ぶ、抉られる地面、消えてゆく木々

しかしそれは相手に当たる事はなく、ただ中をきる

走る激痛、あのゴツイ右手で弾かれたらしい……たったそれだけ、たったそれだけでこの威力……そしてこの反射神経

くそっ、ライダーにセイバーが近距離戦闘で負けるなんて……アリかよそんなの……

 

「うっ!!グオォッ!!」

 

大刀をデュランダルで何とか防ぐ

そして、吹っ飛ぶ……二回、三回とバウンドしてようやく止まる体……

腕に力が入らない、どれだけ……力の差があんだよ……

 

「なんとか……喋ったらどうだよ……生徒をこんだけ痛みつけて楽しいか?」

 

「………………」

 

ノーコメントか……スカ野郎はこういった『理性がない存在』に関してはそこまで興味が無かったと記憶してんだけど……転生者関連か……

 

「………風よ」

 

上段にデュランダルを構える

刀身に集まるのは風、そして黄金の魔力……生前には一度も当てる事ができなかった……だけど……これしかもう望みがない……

 

「エクス……」

 

足に集まる魔力……いける!!

 

 

ズドンッ、そう地面を蹴る音と同時に風の加護を受けて前に飛び出す

一瞬の出来事、俺を返り討ちにしようと刀を振り上げるサンドロス……このままいくと絶対に押し負ける……だけど……まだだ!!

 

「グワッ!!」

 

「カリバァァァァァァァァァ!!」

 

サンドロスが見えない力によって前乗りに揺らぐ

ガリューと同じ作戦上が上手くいった……今なら!!

 

 

 

 

 

 

「えっ………」

 

「アアアァァァ」

 

身体が倒れる、目の前にはサンドロスが振り下ろした大刀

俺には届いていない、大刀が抉っているのは『地面』

 

地面がその巨大な力によってめくれ上がり……俺に飛来する

エクスカリバーは止められない、巨大な岩は破壊するが……その直後に見えたのは……

 

巨大な拳だった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいコルテット!!しっかりしろよ!!」

 

「…………ここは」

 

目を開けると……赤の少女

身体中が痛い、ここは……

 

「シグナム!!こいつ目覚ましたぞ!!」

 

「大声を出すなヴィータ……お前だってキツイだろう」

 

「ま、まあな」

 

よくよく見てみると木の影にもう一人、俺がいる場所も影の中で見下ろしている彼女もバリアジャケットがボロボロだ

それより……ヴィータ?

 

「局の者を呼びました、数分でここに到着するでしょう」

 

「……………あんたらは?」

 

「少し離れた所で爆発があって、見に来たらこのザマだ、お前もう少しで誘拐されるところだったんだぜ?」

 

「無事で何よりです、何とか撃退には成功したのですが……二人掛かりでこれとは……」

 

もう一人を見ても身体中に傷、胸の部分がエロい

二人掛かりでも凄い、俺なんてチート使っても倒せなかったのに……

 

「シグナム!!ヴィータ!!」

 

「ケント様!!」

 

こちらに飛んでくる大群、見たところ殆どがコルテットの奴だな

てか爺、お前飛べたんだな、魔力あったんだ

 

はぁ、これじゃあ暫くの間ロクに動けないな……説教とか怖そうだ

 



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入院

 

「全治三週間……まぁ、妥当だよな~」

 

ベッドの上で深くため息をつく、手には包帯、身体は傷だらけ……当然といっちゃあ当然か……

 

「ましてや骨折をしていなかったのが不幸中の幸いでした、所々にヒビは入っていましたが大事ではないかと」

 

「ありがと」

 

いえいえと言って病室を出る医師、はぁ、なんだかんだ言って暇

 

「ちょっとええか~、ケント君」

 

………ではなさそうだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アグスタから一番近い大型病院に運ばれ治癒を受けた俺

なんというか……散々だった

身体はボロボロ、意識もあまりない、骨折していなかっただけまだましだったのかもしれないが内出血や打撲、骨のヒビなどが凄まじかったらしい

そしてそれを見たメイド達が何人か気を喪ったらしいのだが……よく分からん

そうして今では丸一日、治療をあらかた終えた俺はコルテット直属の医療施設に移動、爺からのねちっこい説教を受けた後医師の説明を受け、いまここ

なんだか……ねぇ

 

「一番最初に来るのはネリアだとばかり思っていたんだけど」

 

「なんや~、私やったら不満なんか~」

 

そんな事はない、

入院して美女がお見舞いに来てくれるなんてどこのエロゲ?

いや、まあ世の中そんなに甘くないんだけどね、はやてだって俺のせいで大変だっただろうし……

 

「おーおー、顔に出とるで顔に、そんなに『しまった~』っていう顔せんでええで~」

 

「いや、でも……」

 

後見人でありコルテットの俺、そんな俺がこれだけの怪我をして運ばれたら管理局の矛先は六課に向く

なんで守れなかったんだ、なんで気づけなかったんだ……直には言われないだろうが影口は多くなるだろう……

 

「大丈夫やて、そんな事より私はケント君が無事でいてくれた事がなりより嬉しい」

 

「えっ、あ、うん」

 

柔らかい笑顔……なのだろうか……

そんな顔をされて思わず硬くなってしまう……顔が熱い

 

「まっ、それでも大変な事には変わりないな~、六課のみんなお仕事自体は成功やのに妙に暗いし」

 

「………俺のせい……だよな」

 

「うーん、まぁ他にもあるけどな、それでもケント君は多少なりとも関与してるねんな~」

 

俺だけではない……やはりティアナの『アレ』はあったらしいな

まぁ、この頃の隊長陣は彼女の苦悩に気づいていないのだが……はぁ、今の俺にこれは関係ないか……

 

「私の仕事もドカーと増えたし……肩もほんま疲れたわ~」

 

「…………揉もうか?」

 

「胸を?」

 

「ちぇすと」

 

「はうっ」

 

普通に言ったのに……怪我人が肩を揉む方がおかしいか?

はぁ……それで……

 

「俺に何させたいの?」

 

「おっ、察しが早いやんか」

 

ニヤリと狸顏を披露するはやて……お前が考えてる事ぐらい分かる

何をさせたいのかまではわからないが……

 

「簡単や、ケント君の護衛が出来るようにコルテットと交渉してくれへん?」

 

「俺の護衛?何でまた……」

 

それなら足りてるぞ?今回の事だって護衛が悪いのではなくて俺が勝手にしゃしゃり出ただけだし……

 

「相手は確実にケント君を狙ってる……確実にケント君と接触をとってくる……でも、裏を返せばケント君といれば確実に相手を誘き寄せる事が出来る」

 

「要するに囮?」

 

「それもある、ただ個人的な意見ではケント君を護りたいっていうのが一番や、ケント君が傷つく姿は見たくない、ケント君が苦しむ姿は見たくない、ケント君が……どこかに連れていかれるなんて考えたくない」

 

「はやて……」

 

彼女は……真剣だ……

元から許可などおりる筈がない、それほどの無茶を彼女は俺に頼んでいる

そんな事、わかっている筈なのに……

 

「私はな……ケント君の隣におりたい、ケント君とずっと一緒におりたい」

 

「は、はやて?」

 

いやいやいやいや、誤解を招く言い方はやめろ!!

てか何でそんなに息が荒い!?

 

不意に手を握られる、心臓の音が激しくなる

目の前には息が荒いはやて、彼女が身を乗り出す、こちらは動けない

顔が近づく、身体が硬直する、彼女の匂いがする

 

「だって……私はな……ずっと昔から」

 

「えっ、あっ」

 

顔が近い、吐息が当たる

手を強く握られる……柔らかい、女の子の手が小さく、ここまで柔らかい物だと改めて実感させられる

そして………

 

 

 

「お兄様~!!大丈夫ですか~!!」

 

 

 

光の早さで俺らは離れた

 

 

 

 

 

「ひ、久しぶりやな~ネリアちゃん、元気にしとったか~」

 

「お久しぶりですはやてさん!!仕事はいいのですか~」

 

「ちゃんと一段落させてから来たからな~、それよりネリアちゃん、学校はどないしたん?今日は平日なはずやけど」

 

「お兄様と面会室出来るって聞いて早退しました~、学校はなんて二の次です。それより……」

 

ジト目でこっちを見てくるネリア……なんだよ……

 

「お兄様の顔が妙に赤いのが気になるな~、なにかした?」

 

「いや~、なにも無かったよ~、なっ、ケント君?」

 

「えっ、あ、ああ、何も無かった」

 

うん、何も無かった……はず

 

「……まっ、何も無かったならいいか!!それよりお兄様!!なんでよくわからない無茶をしたんですか!?」

 

「えっと……え~」

 

うん、何も無かった……今だって心臓がバクバクいってるが何もなかった

………フラグ?

 

……いや、はやてだって何も無かったって言ってるし……原作キャラだからあんな誤解される言い方が出来たんだ、うん、きっとそうだ

 

「話す気あるんですか!?お兄様!!」

 

「えっと……あ~、そうだな」

 

さっきの事は置いておいてまずはこの妹の相手をしないと……爺並にグダグダ言われると面倒だ

 

 

 

 

 



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兄の思い

 

「えっと……背、伸びました?」

 

「それは素なんですか?短期間でこれだけ伸びたら神だよ」

 

へっ?と指を頬に当てる彼女を見て癒される

その隣には苦笑いの優イケメン、ったく

 

「えっと、カリム、これは大人モードといってな」

 

「ケントさんはもう大人ではないですか」

 

「いや、そうじゃなくて……」

 

ホント、天然だな、カリムは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入院してから一週間、てか退院してから早二日

えっ?寝てなくていいのかって?

う~ん、怪我自体はそこまでなんだよな、骨折れてないし、全て完全に治り切るまでに三週間ってだけでもう日常生活には殆ど支障はでない

それでもギプスやら包帯やらは巻いているのだが……動きにくいったらありゃしない

 

まぁそんなわけで無事退院した俺は聖王教会へ、理由は……言わなくしても分かるだろう

 

「騎士、サンドロスの事ですか……」

 

「そうそう、あれの死体って聖王教会が保管してただろ?高潔な騎士として」

 

サンドロスは聖王教会の中でも屈指の実力者でありエース、とうぜんの事ながら彼の死体は聖王教会内から保管すべきという声が多く、サンドロスの死体は厳重に保管されていた筈……

 

「調べさせたところ……キレイにすり替えられてました」

 

「すり替えられた?」

 

どういう事だ?あの巨体が別の何かに変わっていたらすぐに気付くと思うのだが……

 

「完全なる整形、筋肉のつきかた……その全てをコピーされた死体です……元が誰なのかも分からない、本物そっくりに作られた死体」

 

「なるほどね」

 

下手な人形ではなくガチの死体だったから分からなかったのか……誰も死体に手を加えて入れ替えるなんて思わないよな

 

「それでも……今回の件は注意を怠った聖王教会に非があります……どう償ったらいいか……」

 

「あ~いや、教会もある程度の警備はしてたんだろ?普通死体を持ち出そうなんて考える奴いないって……まっ、そんな訳で大丈夫、サンドロスだって無敵じゃないから数で押せば勝てる」

 

「まぁ、そうなんだけどね」

 

ロッサが押し黙る、数で押すのは無理なのか?

 

「数で押すとしてもS級三人は必要だね……はやての守護騎士二人、シグナムとヴィータが全力になっても五分五分、いや、押されていたらしいし」

 

「ベルカのベテラン二人で五分五分ね、あいつは本当の合法チートだな」

 

Fateの士郎並に

 

「そんな訳だから彼を倒すには六課なら戦力の殆どを回さないと勝てないね、逆に返り討ちにされる」

 

「りょ~かい、そこら辺ははやて経由だけど」

 

間の抜けた返事で返す、どうせこれぐらい強いという事ぐらい分かってたんだ。なんたってあいつの強さは俺が一番知っている

どうやって倒すかまでは……まだ考えていない……

 

「で、さっきからずっと気になっていたんだけど……身長盛りすぎじゃないかい?」

 

「これぐらいしないと違和感が凄い、合法ショタとかあり得ないだろ」

 

「いや、そうしゃなくて……その技術」

 

あ、大人モードについてね

 

「身体強化魔法の応用だよ、魔力を注ぎ続けるだけでこの大きさを保っていられる……まっ、大量の魔力を使うから普段あんまり使わないんだけどな」

 

「それでも凄い魔法だよ、子供の一番可愛い時期を飛ばして親に多大なダメージを与える魔法……よく考えたね」

 

「ちょっと待てロッサ」

 

いろいろズレてる、確かに俺だって前世で「うわ~、なのは達ってヴィヴィオの成長過程とかどうでもいいのかな~」とか思ったりしたけどさ!?

俺は大人でこれ以上にならない、分かる!?

 

「男らしくなりましたね、身体は……ガッシリした?」

 

「女々しいですね分かります」

 

それでもセイバースペックは変えられなかった……体は男らしいというか女々しい……いや、ちゃんと男なんだけどね!?

 

「その状態になって利点はあるのかい?」

 

「周りからの目線が大分マシになる、それと筋力の上昇……か?

前者はまだしも後者はイマイチ、魔力使い続けるから負担が大きい」

 

「なるほどね」

 

もうちょい改善する必要がありそうだ

 

「お茶のおかわりどうですか?」

 

「ありがとうございますシスターシャッハ」

 

この人ももう凄腕の騎士なんだな~、シグナムと対等に打ち合えるらしいし……

それでもサンドロス以上が教会にはいないんだよな……はぁ……

それにあいつを倒した転生者はどんな奴なんだよ……『王の財宝』程度じゃ気合で打ち破るぞ、あいつなら

 

「話を戻すよ、教会の中でもトップクラスのサンドロスだけど……弱点がない訳でもない」

 

「と、言うと?」

 

「簡単だ、騎士サンドロスや騎士ゼストを動かしているのはロストロギア『レリック』、遠距離からロストロギアを破壊するような大威力の攻撃を食らわせばいい……ベルカの騎士は近距離戦では無敵だけど遠距離は苦手だからね」

 

「ロッサは知ってるだろ?俺遠距離出来ないぞ?」

 

エクスカリバーを打てたらいいのだが……生憎俺に砲撃適性は皆無だ

 

「そう、だけど……遠距離ならコルテットには彼女がいる」

 

「おいおい、冗談はよせよ」

 

俺はあいつを戦わせる気はないぞ?

それに……傷つけたくない……

 

「ケント、君の実力はよく知っている、だからこそ君に勝てるサンドロスをコルテット側に当ててくる可能性は十分に高い……そうなってくるとコルテットを守れる人間は彼女しかいない」

 

「ちょっと待てよ、コルテットを甘く見過ぎじゃねーか?てかなんであいつが前線で戦わなくちゃいけないんだよ」

 

「近距離戦特化のケント、遠距離戦トップクラスのネリアちゃん……この二人でしか倒す手段はないよ、コルテットには」

 

「…………」

 

……考えてはいた、おれのエクスカリバーは当たらないし威力の高い『破壊』も逸らされ、カウンターを決められる始末

だからこそ、遠距離から馬鹿魔力を使って放たれるネリアが適切だという事ぐらい……だけど……

 

「まぁ、これは可能性論、一番はこのままサンドロスが出てこなくて、スカリエッティが捕まる事が一番なんだけどね」

 

「まぁ……そうだな」

 

だけど……サンドロスがコルテットに襲撃要因として来る可能性は高い……ネリアを戦わせるかどうか……よく考えないとな……

 



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兄妹

82

 

「ふぅ、何とか………」

 

全治した腕を振るう……うん、良好

目の前には叩き潰されたガジェット達……まだまだいるな……遠くに

 

「ネリア~、大っきいの一発頼む」

 

『りょ~かい、それではネリア様の大魔法、とくとご覧あれ!!』

 

遠くでどデカイ魔力反応……相変わらず無茶苦茶だ

そんでもって技名が………

 

『いくよ~、エアーーーーー!!』

 

いつ慢心王になったんだよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プハー、ストレス解消には丁度いいね~、ガジェット潰し」

 

「一機一機凄い値段すんだけどな、完璧な複製させたから」

 

百体抜きした俺が言えた事じゃないけどさ

 

まぁ、あれからの話……と言うか……まぁなんだ、怪我は完治した

全治三週間を二週間で、この回復力はビックリだ、流石コルテットの医療技術

そんでもって今いる場所はコルテットの訓練場、モチーフは廃墟ビル

している事はネリアと一緒にガジェット潰し、数は五十だった、もう0だけど

 

「てかネリア、お前にストレスってあるのか?」

 

「学校で積み重なったストレスはそう簡単には晴れないよ~」

 

「学校での……ストレスね……」

 

あれ……だろうか、俺が経験した

サンドロスもいないしな……心を支えてくれる人間がいない

 

「勝手に私のファンクラブとか作るし毎日呼び出されて告白されるし……まいっちゃうよ」

 

「…………は?」

 

今何て言った……ファンクラブ?告白?

 

「う~ん、何か知らない内に作られてたんだよね~、告白は一日に二三回のペースでされるし……全部断ってるんだけどさ……」

 

「いやまて、そんなの始めて聞いたぞ?何で今まで言わなかった」

 

「聞かれなかったから?」

 

「そりゃそうだ」

 

そんな二次元の世界の事が起こるなんて初めて聞いたぞ……

 

「無視はしないのか?てかよく男子、お前に告白する勇気があるな」

 

「無視はしないよ?向こうだって私がコルテットだって分かった上で勇気を出して呼び出してるんだし、だからこっちもちゃんと返事を返すよ?」

 

「さいですか」

 

俺の時とは大違いじゃねーか……

 

「お兄様は長男だから余計に言い出せなかった……のかな?それに女の子を取られた男子達って怖そうだし……爺が過激だし」

 

「あ、うん、それは同意」

 

俺の一番近くにいるのは爺だけどネリアは違うからな……また別の奴がいるし……まぁ爺もなんだけどさ……

それにしても爺ってよく考えるとハイスペックだよな……この前飛んでたからどれ程の実力か、試しに護衛何人かと戦わせたら瞬殺してたし……これが鮫島家の実力か?

 

「爺は少し自重したほうがいいよ、あれじゃあ誰もよってこない」

 

「自重した方がいいのはお前もだけどな、まぁ爺も爺なりに俺を守ろうとしてくれてるんだよ」

 

「お兄様は優しすぎです」

 

「そうか?」

 

まっ、ネリアの悩みがそれならまだ良かった、俺と同じ苦しみを背負っているのならこれ以上苦しい事はないからな……

後は……ネリアのファンクラブをどうやって潰すか……

 

「お兄様、何か黒い」

 

「そうか?」

 

いつも通りだが?

まっ、人の妹に手を出すとどうなるか、少し教えてあげるだけであって

 

「シスコン」

 

「なっ!?」

 

それは違う!!俺の好みはもっと……その……何と言うか……あーもう!!

 

「お姉様みたいな?」

 

「ちょっ!?おまっ!?」

 

そりゃあフェイトみたいな女性は理想だけど……俺と彼女が釣り合わないし……

そもそもフェイトには好きな人がいるんだろ?彼女の事だからアタックすればすぐに落ちると思うし……はぁ、今更彼女に思いを寄せても手遅れなんだろうな……勢いで告白しても拒否られるのが見えてるし……

どうせ断るのは慣れてるだろうしな……学生時代に………

 

「はぁ……これだから」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「いや~、何も」

 

はぁ、俺、一生独り身になるのかな……コルテットしか見てる奴と結婚する気はさらさらねーし

 

「まっ、お兄様が巨乳好きなのは知ってるんだけどね~」

 

「いやまて、それ何処で知った」

 

「お姉様やはやてさんと会うと絶対胸見てる、気づかれないように」

 

「おまっ、それは」

 

それは男の本能だ!!反射的に起きてしまうからしょうがないだろ!!

 

「しかも今認めたし、なんで知ったんだって」

 

「うっ」

 

こいつ……

 

「だったら私も狙われるな~、ホレホレ~」

 

「ちょっ、やめろ!!」

 

胸を押し上げて強調してくるネリア、それぐらいの境界線はついてるから安心しろ!!

 

「まっ、私もそれぐらいはわきまえてるよ、それでも兄妹じゃなかったら発情してるかも」

 

「おい、少し自重しろ」

 

キャーと言って逃げ出すネリア……ったく

……少しはお仕置きした方がいいかな?

 

「DASSルールで、ネリアと俺の一対一、始めて」

 

「えっ!?そんなの聞いてないよ!!」

 

 

「がんばって勝てよ~」

 

まっ、遠距離にされたら確実に負けるし、近距離で徹底的に攻めていこ

 

 

 

 



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心 はやて

 

「わかった、ならケント君が苦しい時は私が助けに行く、約束や」

 

「うん、よろしく頼む」

 

 

 

これが、私とケント君との間で交わした約束

あなたが忘れてしまっていても、私はずっと覚えてる……少し強引だったけど……右も左も分からず、どうやって闇の書の……家族が起こした事件の責任を取ればいいか全くわからなかったあの頃……恥ずかしそうにしながらも助けてくれた彼

 

初めの内はそんな事思わなかった……罪をお金で解決しようとする人……それでも助けてくれた事は事実やから何も言われへん……そう思ってた

 

でも、その常識はすぐに覆された

 

 

何度も誘拐されそうになる、命を常に狙われている、汚い大人達からの目線、周囲の偏見のみの評価、権力欲しさの女の人達、家そのものに対する恨み……考えれば考える程出てくる……彼はそんな遠い場所にいる人だった

 

こんな事を言ってしまってはなんだけど……私だったら耐えられない

あの事件が終わって、未だに私に対する悪い評価や偏見の目や恨みの目もあるけど……彼、ケント君があの時助けてくれたお陰で今こうして私は幸せに生きていられる

だけど……ケント君は違う、いくら頑張っても、いくら違うと言っても、いくら努力してもそれが報われる事はない、最後に評価されるのは後ろにある『コルテット』という組織だけ、ケント君の努力も、汗も……『コルテットの長男だから』で片付けられる……金持ちのお坊っちゃまだから……どうせ金で得た力なんだろ……そんな事ばっかり

 

ケント君は……そんな人じゃない

近くにいて、お話してそう感じた

恥ずかしがってるけど……本当はとても優しくて……カッコいい

だから……その優しさについ甘えてしまう自分がいる……この部隊を結成する時も……なのはちゃんが大怪我した時も……自分が不利になることを承知で助けてくれた

そして、いつもいつも私は助けてもらってばっかり……情けない

 

強くなった筈、大きくなった筈……でもそれは結局『筈』でしかなかったのだと実感させられる

 

「私が助ける」?今思うと全くそんな約束は果たせていない、ケント君は自分で何でも乗り越えてしまう

 

そんな彼を、はっきりと『好き』と感じたのはいつ頃だろう……はっきりと覚えてない

 

一緒にいると温かくて……優しくて……

 

彼は大きな存在、コルテットなんて関係ない、彼自身が大きい

 

身長は小さいんやけどな、まぁそれはしゃーない、可愛いは正義や

 

そんな、大きな彼の事が好き……はっきり言って無茶苦茶な事を言っていると思う、彼と私ではどう考えても釣り合わない

でも……誰にだって諦められないものがある、私はケント君の事が本気で好きやから

 

遠く、大きな存在、その隣に立ちたい、彼を、私がもっともっと頑張って支えたい

彼を守りたい、彼と一緒にいたい

 

欲張りやなぁとは私も思う、ライバルは多いしみんな可愛いし……当の本人は何か鈍いし

 

でも、この気持ちは本物

 

昔の私やったらどう思うやろ、今の私が普通の恋をして、こうして笑っていられるなんて

 

シグナムにヴィータ、シャマルにザフィーラ、なのはちゃんとフェイトちゃんと出会って……リィンフォースとも会って

 

今思ったらみんなと会う前の私は男の子との交流なんて無かった感じがする、だからかな?こうやって優しくしてくれたケント君をすぐ好きになってしもうたのは

 

でも、それで良かった、私は嬉しい、こうして恋が出来るなんて

 

今頃ケント君がいなかったら私は家族の罪を償うために恋なんか物とかけ離れた生活しとると思うし……ワーカーホリック?まぁ今はそんな感じなんやけど

 

こうして笑っていられるのもケント君のお陰、励ましてくれて、たすけてくれて

 

でも……そんな私が大好きな彼が、危ない

 

ジェイル・スカリエッティ……最初はカリムの予言を防ぐために六課の捕縛対象となった犯罪者

最初はその程度やった、でも今は違う

 

ケント君のレアスキルを狙って彼を襲う、アグスタでの事件、血だらけでボロボロな彼を見て気が狂いそうやった

 

もう彼を、ケント君をあんな目に合わせへん、一人で戦わせへん

 

ケント君が傷つくのは嫌や、苦しむのは嫌や

 

だから、もっともっと頑張って、早く彼の隣に立って支えないといけへん

 

私は、ケント君が大好きやから

 





作者の都合により明日から8月1日まで更新が出来ません
次回の更新は8月2日となります。


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男の子なら

 

「呼び出し?何だよそれ」

 

『ごめんな~、時間が空いてなかったら別にいいんやけど……』

 

はやてからの通信に首をひねらす

ただただ普通の休日、俺は一日暇でネリアは部屋で何かしてる……てか漫画読んでる

そしてはやてからの要求が『聖王教会に来て欲しい』………どうやらクロノと隊長陣全員も来るそうだ、と、なると……あれだな

 

『内容は……機動六課の事についてや』

 

「なるほどね~」

 

確か…管理システムの崩壊だったか?

カリムが予言した事で機動六課が設立される事になったやなんたらかんたら、後見人にはかの三提督……今考えたらそれに俺が加わるってエゲツイ事になってんだな……

 

「まっ、明日は暇だしな、大丈夫だろ」

 

『ありがとな~、助かるわ』

 

すまなさそうにするはやて……別にぜんぜん大丈夫なのに

ただ毎回毎回動くのが面倒なんだよな……準備やらなんやらでえらく時間食うし

 

てか……なんか早くねぇか?

予言の内容が知らされたのはヴィヴィオが出て来てからだった気もするけど……う~ん

 

『何してるんですか~』

 

『ああネリアちゃん、遊びに来たん?』

 

「ちょっと待てオイ」

 

なんであいつがそこにいる………

 

『え?あ、あ~、お兄様と連絡中でしたか~』

 

「いつ許可出した、てかはやて、さっきの言い方だといつもそっちに行っているように聞こえたんだが」

 

『え?ちゃんと護衛の人もおるしケント君が許可した~、て言ってるけど……』

 

「オイ待てネリア、そっから動くんじゃねーぞ、すぐそっち行くから」

 

『な、なんで怒ってるの!?ただ単に遊びに来てるだけだよ!!護衛もちゃんといるよ!!』

 

「そいつらも俺の名前出して動かしたんだろーが、爺にはちゃんと言ったのかよ」

 

『え、え~と、その~、あの』

 

こいつ……

 

「はやて、確保」

 

『了解や!!』

 

『ちょっ、はやてさん!!バインドの縛り方がなんだがエッチいよ!!』

 

んなもんは知らん

ったく、世話のかかる妹さんだよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、弁解は?」

 

「ちょっとぐらいいいじゃん、家の中にいるの暇だし」

 

目の前で吊るされてるネリアを木の棒で突つく

反抗的な目をしやがって、反抗期ですかコノヤロー

 

「私だって年頃の女の子なんですー、遊びたい気持ちだってあるんですー」

 

「ほう、爺呼ぶか?」

 

「ネチネチ説教されるのイヤ、呼んだらお兄様のエロ本全部焼却するよ!!」

 

「へぇ、ならお前の部屋にある同人誌全部塵にしてやる」

 

「この人でなしーーー!!」

 

ウガーとバインドから逃れようとするが……俺のお手製バインドだ、そう簡単には抜けられないよ

てか……こいつ、エロ本の位置知ってるのかよ……ん?買ってなかったんじゃ無かったのかって?

………俺もう十九です、性欲だってあるんです

いや、なんかね、フェイトやはやてとか、もう好きな人がいるんでしょ?

なのはに関しても完全にユーノだと思うし……投げやりなわけよ、もう

そう考えたら現実逃避とかもしたくなるのです、ハイ

で、やけになった俺は転移魔法を使って少し外に出て買ったわけです、数冊……

はぁ……それでもフェイトやはやてと比べたらブサイクなんだよな……フラグとか立ったりしねぇかな……無理か、二次創作じゃあるまいし

 

「ちょ~と聞いていいかなーーーネリアちゃん、エロ本って何?」

 

「お兄様の部屋にあったんだよ!!ようやく見つけた!!数は三!!どれもこれも巨乳の女の子!!」

 

「へぇ」

 

ちょっ!?ネリア!!なんでそんなに説明すんだ!!

はやてがなんか怒ってるじゃん!!てか周りに何時の間にか主要キャラ一杯いるじゃん!!

なのはやらフェイトやらも顔が赤いじゃん!!

 

「へぇ~、そうなん、へぇ~、エロ本な~」

 

「ケ、ケント、そ、そういうのはいけないと思うよ!!」

 

はやてさん、フラフラしながら近づいてくるのやめません?

フェイトさん、涙目になるのやめてくれません?よくわからん罪悪感が凄いんですが

 

「なんや~、やっぱりケント君も異性には興味があったんやな~、だったらなんで気付へんのかな~」

 

「はやてさんはやてさん!!全部焼却しとくからこのバインド解いて!!」

 

「りょうかいや」

 

「ちょっ!!はやて!!」

 

なんでそんなに軽々とバインド破壊出来んだよ!?

てか今腕力でブチ切らなかったか!?バインド!?

 

「ケント君ケント君、今日コルテットに行ってもええか~、拒否権は無いで~」

 

「私も行くよ!!強制立ち入り捜査だよ!!」

 

なんの捜査だよ、てか無理だ、今俺がどんだけ恥ずかしい思いしてると思ってる

ただでさえ女性が多い六課でエロ本の話しとか!?

 

「なのはちゃん、明日まで六課を任せてええか~、ケント君がどんなプレイが好きなんか勉強してくるわ~」

 

「え、あ、いっ、行ってらっしゃい」

 

苦笑いで答えるなのは、怖いです、はやてさん

 

「よし、じゃあ私が案内するからね~、お兄様は爺に許可もらっといてね~」

 

「ちょい待て!!誰も許可ださねぇぞ!!爺に許可取りたいんだったら自分で説得しろ!!」

 

それに気になってる人達にエロ本見られるとか取り返しがつかねぇぞ!!

し、しかも……似てるしな、みんなに……

 

「えっ!?ちょっ!?バインド!?」

 

「大人しく言う事聞こうね?ケント?」

 

「えっ、あ、ハイ」

 

笑顔が怖いです、フェイトさん

 



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ガサ入れ

 

「海~は~広い~な~大きい~な~」

 

もう十九年も前の世界の歌をただただ歌う

公開処刑ってこういう事を言うんだね……恥ずかしくて現実から逃げたくなる

 

てか、俺の部屋なのに入れないって可笑しくね?

立ち入り禁止って……もうないよ、本

三つだけだよ、なんでそんなにガサ入れするの?

 

『あ~、なんやねんこのロック!!固すぎるやろ!!』

 

『シャーリー、解析出来た?……え?難しすぎて解けない?』

 

『あ~もう、お兄様!!』

 

バンッとドアを開けて出てくるネリア

奥の方には右往左往しているお二人……どした?

 

「なんでネットのロックが固いの!?」

 

「普通だろ?あそこだけに皇帝特権使ったからな」

 

「ふざけないでよ~、一番怪しいじゃん!!」

 

「人のプライベート勝手に覗くなよ、お前の部屋の同人誌全部捨てたからな」

 

「保存用、鑑賞用と買い分けてあるのです」

 

「馬鹿じゃねぇのか?」

 

無駄遣いするなよ……

 

「で、捨てたのか?全部」

 

「いや~、お姉様とはやてさんが持って帰るって、何だか研究するらしいよ」

 

「何の研究だよ」

 

俺の好みとかか?……まさかな

 

『リイン!!このロックを解除する手伝いをして!!お願い!!』

 

『お兄ちゃん!!このロックの解除方法調べてくれる?』

 

よくわからんが周りを巻き込んでるな……まぁ、予備のパソコンで良かった

研究所潰しに使っているのはまた別だからな、あれは完全プライベート用……覗かれたら恥ずかしくて死ぬ、本はいいとして動画とか……

 

「それはそれとしてお兄様って……やっぱりシマパンやコスプレとか好きなんだね、バリアジャケットとか……後騎乗位と……金髪」

 

「兄妹で話す内容じゃねぇぞ、後金髪だけじななくて茶髪もある」

 

「短髪?」

 

「……………」

 

潰してやろうか?

 

「はぁ、妹キャラとかがなくて少しほっとした、結構怖かったもん」

 

「それはない、だからそれぐらいの境界線はつけてる」

 

妹に手を出すなんて……あり得ないぞ?

 

「まっ、二人とも今日は泊まっていくらしいよ、休暇も貰ってるみたいだし」

 

「六課の仕事はいいのか?」

 

「全部押し付けたって」

 

なんという……ワーカホリックだったんじゃないのか?二人とも……

 

「それに泊まるのは流石にさせないぞ、今こうしてコルテットの中にいる事自体俺の苦労があってこそなのに……泊まるとなればしんどいし……恥ずかしいから却下」

 

「媚薬はもうないからね~、全部没収されたし」

 

「次したら問答無用でぶっ飛ばすぞ」

 

「ごめんなさ~い」

 

まったく……

 

「ケント君、私たちはな、ケント君が欲求不満やと初めて知った」

 

「何時の間にそこにいたんだよはやて、てか欲求不満って」

 

「怒ってない、怒ってないねんで?逆に安心してるぐらいや」

 

「安心?」

 

俺がエロくて安心するって……普通引くだろ?

 

「今回のでケント君は少なくとも異性に興味があるって分かったからな、いつもの態度やったら本気で興味無しかと思っとったし」

 

「そこまで枯れてないぞ?流石に人間の本能として芽生えるだろ」

 

「やから安心してんねん、まだまだやりがいはあるしな」

 

やりがい?何言ってんだ?

てか今思い返すと俺、なんて事話してんだ……むっちゃ恥ずかしいじゃねぇか

フェイトは後ろで顔をこれでもかという程赤らめてるし……かわええなぁオイ

 

「ゴホン、本の内容は置いとくとして……あれ選んだのはどうしてなん?じっくり選んだ?それともよく見ずに買った?」

 

「なんでそんな事……」

 

「ええからええから」

 

目が笑ってないです

 

「………一応、選んだ」

 

「そうか~、いや~、だったら間違いはなかったねんな」

 

「何のだよ」

 

「こっちの話や~」

 

なんでいきなり機嫌良くなってんだよ……

 

『えっ、じゃあ出演者してた人達が私達に似てたのって……』

 

『まぐれじゃないかもですよ、まだまだチャンスはあります』

 

端の方でネリアとフェイトがゴニョゴニョしてるが……なぁ、もう部屋に入って……いいかな?

 



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理性ヤバイ

 

「俺思うんだ、いくら室内でもあまり無防備はやめた方がいいって、それにここ、他人の家だし」

 

「細かい事は気にせんでええで~、いっつもこんな感じやし」

 

「私も……なのはと同じ部屋にいる時はこんな感じかな?」

 

「主に俺の精神がガスガス削られていくからやめて、今回の事で分かったかもしれないけど手、出すかもしんねぇんだぞ?」

 

「別に気にせえへんって」

 

「大丈夫だよ、ケントなら」

 

なにそれ怖い

 

ガサ入れが終わり、無事に部屋に戻れた俺

今日は泊まる……というのに断固反対した俺だが……今回はネリアが周りを言いくるめやがった……何だよ『悪魔手帳』って……アメフト部の悪魔思い出した俺は悪くない

 

で、風呂にも入って何故か俺の部屋に集まった、ネリアもここにいる

理由とすれば『一番落ち着けるから』、お前ら女だろ?だったら同じ女のネリアの部屋の方がいいと思うんだが………

それになんだ、はやて、お前は何で俺のベッドに寝転がってる……そのまま寝るなよ?

 

「今日はここで寝るからな~」

 

「ガチやめて、マジで理性ヤバイから」

 

で、風呂上がりの彼女達の格好………シャツなのだ、簡単に言えばカッター

長めの奴なのであれなのだが……下は下着、上も透けて見えるしボタンとボタンの間からもチラチラ見える……ハッキリ言ってエロいのだ、ネリアは横でクスクス笑ってるし

 

「で、どうする~、やる事ないで~」

 

「ゲームでもする?私の部屋から持ってきて」

 

「いいな~、スマ○ラある?」

 

「あるよ~、ス○ブラでしょ?ちゃんと全キャラ出してるからね~」

 

「やるならネリアの部屋でやれよ、わざわざ俺の部屋に持って来なくても……」

 

「じゃあ持ってこさせるね~」

 

「オイ聞け」

 

俺の意見は無視かよ

ネリアが部屋を出てそこらの奴に取りに行かせる、ネリアがちゃんとしたパジャマなのに何でこんなに二人はエロいんだよ……

谷間とかむっちゃ見えるし……どこに目を向ければいいんだよ……

 

「ケント君のベッドふかふかやな~、いっつもこんなベッドで寝てるん?」

 

「枕に顔押し付けるなよ、まぁ、けっこう前から使ってるな、それ」

 

だいたい一年ぐらいか?

一年経ったら何時の間にか新しくなってるんだよな、やたらめったら高い筈なのに……

 

「あ~、このベッドで寝れるんやったらいい夢見れそうやな~」

 

「ったく、だったら今日はフェイトとはやて、二人でそこで寝ろよ、俺は布団持ってこさすから」

 

「ケント君もここで寝たらいいやん」

 

「馬鹿言え、いくらなんでも三人で一つのベットは狭いだろ、まぁ入れない事もないけどさ……それでも……色々と問題が」

 

「新しい布団引くのも面倒くさいやん、どうせやったらみんなで一緒に寝ればいいやん、なっ、フェイトちゃん」

 

「そうだよ、一人だけ仲間外れはよくないよ」

 

それ言ったらネリアが自室で一人なんだけどな、てかフェイト、それは素なのか?

いや、ねぇ、そんな格好した二人と、同じベッドで一夜を過ごすって、ヤバイ方向にしかいかない感じがするのよ、あり得ないだろ、普通

 

「お待たせ~、持って来たよ~」

 

「お前自身が持って来たのか?そこらにいる奴にたのめば良かったのに」

 

「それだったらお姉様達見られるじゃん」

 

ネリアにも二人の格好がエロいっていう自覚はあるんだね、てかそれだったら注意して欲しいな、同じ女の子として

 

「他にも色々持って来たよ、トランプとか人生ゲームとか」

 

「なにこのオーダーメイドのトランプ」

 

「金箔貼ってあるね」

 

「無駄遣いするなよ」

 

「違うよ、買いにいかせたらこれ買ってきたんだよ」

 

「さいですか」

 

金銭感覚おかしいぞ

 

「じゃ、配線つけよ~、えっと、あれ?」

 

「繋ぎ方わかんないのか?」

 

まぁ、だいたいはやって貰うしな

 

「ネリア、ちょっと貸して」

 

「う~、お姉様」

 

フェイトがテレビに配線を繋いでいく……って

 

「ブッ!!」

 

「えっ!?ど、どうしたの!?」

 

いや、配線繋ぐ時に四つん這いになって……こっちに……その……いいお尻でした……

 

「(それに何でシマパンなんだよ!!)」

 

頭に手を乗せながら苦悩する

青と白のシマシマ……こっちの好みどストレートじゃねぇか、ガチで理性無くすぞコラ!!

 

「う~、で、できた」

 

「お~、じゃあ始めよか」

 

「お姉様ガチガチ~」

 

俺がうしろを向いてリセットを立て直している内に配線を繋ぎ終わったらしい、恐る恐るフェイトを見る

疲れたのだろうか……顔を真っ赤にしているフェイト……バレてない……よな?

バレてたらヤバイよな……フェイトだって恥じらいはある筈だし……好きでもない奴にパンツ見られて何も感じないわけでも無い筈だし……

 

「じゃあ私はゴリラで行こうかな?」

 

「えっと、じゃあ、私は青ハリネズミ」

 

「う~ん、それやったら私はダンボール傭兵で、ケント君は?」

 

「え?じゃあ俺はメトロイドで」

 

そう言った瞬間ジト目で見られる俺……俺何かした?

 

「美女好きなんだね」

 

「巨乳好きなんやな~」

 

「お兄様エッチぃ~」

 

「いや、俺はそんなつもりじゃ!!」

 

そもそも俺はあいつの『貯めて撃つ』という自分に出来ない事を出来る事や切り札の砲撃が好きなだけであって別段中身に特別な思い入れがあるわけじゃない

 

「まっ、そんなケント君は置いといて賭へん?普通の勝負じゃつまらへんやろ?」

 

「お、賛成~」

 

「賭け?まぁいいけど……」

 

トントン拍子で進んでいく話……何だよ

 

「ん~、じゃあビリの人は後の三人の言う事を一つずつ聞くって言うのはどうや?大丈夫やって、ビリにならんかったらいいんやし」

 

「まてはやて、その勝負嫌な予感しかしない」

 

よくわからんが直感がそう告げる

 

「なんや~、そんなに腕に自信が無いんか~、大丈夫やって、ビリにさえならんかったら罰ゲームは無いねんで」

 

「それは……そうだけど……」

 

確実に狙われるだろ、俺

クソッ、こうなったら………

 

「分かったよはやて、その勝負受けてやる」

 

「ふふ~、一人命は三つな~、道具は全部あり、始めるで~」

 

はやての掛け声とともに画面には『GO』の文字……次の瞬間

 

「覚悟ぉぉぉぉ!!」

 

「行くよ!!」

 

「潰すよ~、お兄様!!」

 

一瞬で三人が俺に狙いをつける、ゴリラにハリネズミ、傭兵がそれぞれの得意技を出してくるが………

 

「甘いよ」

 

「え?ちょっ!?」

 

三人の間をくぐり抜けて傭兵にカウンターを与える

ハリネズミとゴリラはお互いのわざが当たりあって吹っ飛ぶ始末……ったく

 

「ちょっ、お兄様ってこのゲームした事あった!?」

 

「しかも今の動き……普通指が追いつかへんで!?」

 

二人が驚きの声をあげる……まぁこの世界に来てからしてないな、てかこの世界にもある事自体しらなかった

かと言ってもう十九年も前のゲーム、腕は衰えてるしあまり記憶にはない

だけどな……今の俺は『一流だ』

 

「まさかレアスキル!?ズルいよ!!勝てるわけないじゃん!?」

 

「ルール上何の問題もないさ、三対一、いいハンデだ」

 

「くっ、二人とも!!私がフルバック、フェイトちゃんがガードウイング、ネリアちゃんがフロントアタッカー、行くよ!!」

 

「指揮ははやてに任せるよ!!ライトニング01、エンゲージ!!」

 

「ガチで来いよ」

 

三対一でボロ勝ちしました

罰ゲーム?はぐらかされました

 



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予言

 

旧き結晶と無限の欲望が集い交わる地

 

 

死せる王の下、聖地よりかの翼が蘇る

 

 

死者達は踊り、中つ大地の法の塔は虚しく焼け落ち

 

 

それを先駆けに数多の海を守る法の船は砕け落ちる

 

 

 

 

 

 

 

 

「地上波本部壊滅に管理システムの崩壊、それを阻止する為に立ち上げられたのが機動六課ね~」

 

「信じられないかもしれませんが……」

 

暗い表情のカリム、いや、どちらかというとこの部屋が暗いので余計にそう見えてしまうだけかもしれないが……

聖王教会の一室、ぶっちゃけ言うといつもの部屋

そこに集まっているのは機動六課隊長三人と提督クロノ、聖王教会騎士であるカリム……そして俺

部屋にはカーテンが閉められ薄暗く、その中心に浮いているのは一枚の魔力で出来た紙………なるほどね

 

「ロストロギアがきっかけで始まる、管理局地上本部の壊滅と管理システムの崩壊」

 

「情報自体が不確定というのもありますが、管理局崩壊と言う事自体が現状ではあり得ないことですから」

 

まぁ、そりゃそうだよな、現状で管理局と真っ向から対立出来る組織なんてコルテットぐらいだし、それにいくらコルテットといえども出来る事は経済面での攻撃、持っている戦力などでは圧倒的に管理局、てかコルテットは何だかんだ言っても企業、司法組織と対立なんてあり得ない

だからと言って他の組織には管理局と対立出来るほどの力はない、聖王教会は微妙な所だがそれでもやはり管理局に軍配が上がる、管理システムの崩壊など出来ない

 

「そもそも、地上本部がテロやクーデターにあったとして、それで本局まで崩壊……なんて物も考えづらいしな」

 

ホントだな~、てか俺がここにいる理由がよく分からん

今の今まで流れで深く考えてたけど俺って殆ど無関係なんだよね、一応少将だけど形だけだし

 

あれからの事?そだな~

まず寝た、俺の部屋で三人

いや、本当に自分の事褒めたいよ……右見ても左見てもエロイ体つきして、なおかつエロイ格好した美女が寝てるんだぜ?

もうね、自分の理性抑えるの必死だった、そんでもってはやてもフェイトも寝ぼけて俺の腕に抱きついてくるし……胸あたるし……途中で抜け出そうとしたら思いのほか力が強くて抜けられないし………ぶっちゃけ寝不足、気づいたら間違いおかしてたなんてオチねーぞ

 

そんでもって朝起きて聖王教会へ、もともとこの為のメールでここまでなったんだよな、忘れてないぞ?

 

で、みんなが集まったら六課が出来た理由について、知ってるんだけどね、原作知識で

俺はどちらかというと二時創作でよくある『予言の改変』が怖くてきたんだけど……何だかんだ言って大丈夫そうだ

 

そえフワ~と考えている間にもトントン拍子で進む話、地上本部のレジアスがどうやら予言がどうやら

一番いい方法がヴィヴィオを上手く保護する事だよな、『ゆりかご』もヴィヴィオがいないと動かない筈だし

てか転生者がどこで介入してくるかが全くの謎なんだが……管理局アンチな転生者ならばStsを逃す事は無いと思うんだが……これを逃せば次はエクリプスぐらいだし……

 

「ポケ~としてるけど、大丈夫か?ケント?」

 

「ん?ああ、大丈夫だよ」

 

気づいたらカーテンも開けられて辺りも明るい、予言の披露は終わったらしい

皆の顔はやはりどこか暗い、妥当か?

 

「確かに、予言の内容自体はコルテットに直接的に関係があるわけでもない、だけど他にも解読出来ていない不明な予言だってあるんだ……気は抜けない」

 

「不明な予言?何だよそれ」

 

初耳だぞ?

 

「私の予言は解読自体が難しいですから……今回お話したのは解読がほぼ終わっている予言でしたが同じ時期に出された予言もあるのです……解読は進んでいないのですが……」

 

「ふぅん……」

 

聖王教会も大変なものだ、もう古代の文字と化した文章を一つ一つ解読していかないといかないとは….

 

「気がかりなんは相手方がケントくんを狙ってる理由なんよ、いくらレアスキルが稀少とはいえここまでのリスクを背負ってするもんじゃないし……」

 

「ケント自身も相当な魔導師だもんね、なのにあそこまで相手が執着する理由が分からない」

 

だよな、ぶっちゃけ俺を捕まえる為に物凄い数のガジェット無駄にしてるしな……後方である四番も投入したぐらいだし……

 

「まぁ、そこら辺は何とかなるだろ、最終的な目的さえ防げばいいんだし」

 

スカリエッティの計画はあくまでも管理局に対するテロ、ゆりかごを落として戦闘機人無効化すればお終いだし……その計画の延長線上に俺がいるだけだと思うしな……

脳味噌も放っておいたら勝手に暗殺されるし……Stsが終わったらコルテット内部の事の処理をすればいい、時間はたっぷりあることだしな……

 

「そういえばケント、君がレジアス中将に一声かければ地上本部の守りが硬くなるんじゃないか?」

 

「確かにそうだ」

 

アレ?結構問題解決した?

 



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それぞれのside

 

side   コルテットの護衛

 

 

 

最近妙だと思う………

何が?……コルテットがだ……

つい数年前まで完全なる隔離、他者であれば誰も受け入れない筈のコルテットがここの所何度も部外者を中に入れている

更にそれをケント様の部屋に……だ……

ケント様の許嫁ならよい、彼もそろそろコルテットの事を考えてお相手が出来てもよい頃だ

しかし毎回部屋に入れるのはただの執務官や将官でもない左官

絶世の美女らしいのだが……それだけでコルテットの時期頭首であるケント様の隣にいる事など出来ない、そもそも周りが納得しない

皆……疑問に思わないのだろうか……いや、何故だ?

そもそも執務官がコルテットに来たのは大分前の筈、なのに……何で俺は今の今まで疑問を抱かなかった?

何で、俺は今になって疑問を持った?

ケント様が俺たちを説得した?確かにそれもあった

だけど……なんで俺たちが、コルテット重役がそれを許した?

普通はコルテットの幹部全員の首が飛んでも可笑しくない筈……なのに何故、なんで……なんで、なんで……

 

 

ナンデ

 

 

 

 

 

 

 

 

side   ネリア

 

 

 

お姉様達がお泊りして、お兄様は聖王教会に行った

大事な話らしいから我儘言わなかったけど……聖王教会にもまた行ってみたいな、殆ど行った事ないし

まっ、それはそれとしてどうにかお泊り出来てよかった、はやてさんはお姉様のライバルだけど嫌いなわけじゃないしね、私の最終的な目的はお兄様が幸せになる事だし

それにしても悪魔手帳、ホントに使えるね~、これだけ頭の硬いコルテットを簡単に説得出来ちゃうなんて!!

 

…………あれ?悪魔手帳なんてあったっけ?

 

そういえば無いよ~な、あれ?作った……よね?

う~ん、あれ程の物だったら忘れない筈なんだけど……あれ?どうやって作ったんだったっけ?

お兄様の写真は大量に撮ってるしエッチい事も知ってるとして……私ってお兄様やお姉様以外の個人情報について興味あったっけ?

そんな事集めてるぐらいならお姉様達と遊んでた方が楽しいんだけど……アレ?

ん?じゃあ悪魔手帳なんてない?

だったら私、どうやってコルテットを説得したんだっけ?お兄様みたいな言語力私にはないし………

あれ……アレ?

 

 

 

 

 

 

 

 

side   コルテットのメイド

 

 

何でだろう……この頃コルテットに対して素直になった感じがする

最初は仕事が少なくて、求人募集とされていたパンレットを見て応募して……合格して……

別段コルテットに対して思い入れがあったわけでもありませんし、メイド服を見てずっと着なければいけない事に嫌気もさしていた筈……

なのに……今ではこの仕事を覚えてしまってケント様、ネリア様のお世話をする毎日

やってみると案外楽しくて、職場の同僚も増えて

ケント様もイケメンだし……性格もいい、周りに迷惑もあまりかけないようにしているご様子だし私たちの様な下っ端のメイドに対しても優しい

ずっとここで働いてもいいかな~、なんて思ったりもする、ケント様の為に……

ん?ケント様の為?

確かにそうだけど……あれ?なんででしょうか……この違和感

ホントにケント様の為?コルテットの為?

お給料の為?生活の為?

いつからこんなに考えがゴチャゴチャになったのだろう……あれ?これって私の意志だっけ?

そもそも職場の同僚達ともこの頃あまり喋ってない感じもする……あれ?

口を動かすより体が先に動いているというか……まるで知らない内に……自我があるのに操られているよう……

そ、そんな事ないですよね、少し疲れているだけ、明日は休暇をもらいましょう……

あれ?休暇ってとっていいんだっけ?

休みなんてあっていいんだっけ?

 

 

 

 

 

 

side   ???

 

 

『幻術……か、長時間かけ続ける事で自分がしている事に違和感を感じなくする、まるでそれが自身の意志の様に行動させる……コルテットの技術とは恐ろしい、その様な物を作ってしまうとは』

 

『全くだ、まぁ、お前の目的である《ケント・コルテット》に対しては無効……と言うのが少々気がかりであるが……それもこれもお前がいう《魂の質》が原因と言うべきか……』

 

 

真っ暗な部屋、そこに浮かぶのは脳

そしてそれを見守るのは一つの影、口を動かさず、だだその様子を見守る

 

『局の財力ではここまで持って来る事は出来なかった』

 

『お前の働きで今こうして、我等が直に動き、こうして《平和と秩序》を守ることが出来る』

 

この物達にとっての平和と秩序とはどの様な物なのかは分からないが……それがどれほどまでに腐りきった正義なのか、それによってどれほどの人々が犠牲になるのか……それをこの影の人物は知っている

だが……それを知っていてもやるべきことがある、もうそんなこと、この人物にとっては『その程度』なのだから……

どうせこいつらは自分が『中心』となる為の踏み台でしかないのだから

 

『魂の質……《指示をして》作らせた人形……やはりオリジナルとは程遠い存在だった、あのまま魔力タンクとして使い潰せればよかったのだが生憎、ケント・コルテットに保護されてしまい、新たな人形を作ろうにもあやつが研究所を潰してしまう始末よ』

 

『ふむ、やはりあのレアスキル、一筋縄ではいかぬか』

 

『目的を必ず達成し、あのスキル、必ず平和に役立てろ』

 

「……………わかりました」

 

影は一礼し、その場を後にする

 

後に残ったのは真っ黒な空間と、三つの巨大なビーカーの内の一つにに浮かぶ『一つの脳』、ただ……それだけ

 



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動物園

 

「外へ出かけよう?何でまたいきなり」

 

「う~ん、私ね、こういう『家族でのふれあい』が少ないと思うんだ」

 

は?

 

「いや~、ぶっちゃけ私にとって家族ってお兄様だけだしね~、コルテットっていう縛りがあるにしてもその……時にはちゃんと楽しみたいな~て……いたずらとかじゃなくて……」

 

お前、自分の行動がどんだけ破天荒かちゃんとわかってたのか?

それはそうとある休日、唐突に発したネリアの『一緒に遊びたい』という言葉、「コルテットの人間が何を言っているんだ?」と思うかもしれない……確かにそうだ

だが……今考えるとネリアを保護して三年間、いつもネリアが俺に話しかけて家で何かをする以外殆どかまってやった事がない気がする

曲がりなりにもコルテットの人間、行ける場所は限られているしその中に娯楽施設など当然ない、ネリアも俺も一人の若者として町中を歩いたこともない……いや、俺はあるのだが……オルタ時に……

それは置いといてだ、ネリアももう十五才、ふくざつなお年頃

テレビだって見るしファッションにも気をつかう、その中で今話題のブランドや飲食店、食べ歩きや娯楽施設、そういった物も多いだろう

俺はまだ我慢できる、しかしみんながみんなそうとは限らない、破天荒なネリアも今考えてみると本当に『駄目』と言った場所には行かないし我慢してる、同人誌などを周りに買いに行かせてるのなどがいい例だ

まぁ、媚薬諸々は置いて置いて

 

「ご、ごめんなさい!!忘れて、うん、今のは忘れて」

 

アハハ~と頭をかきながら笑う妹

……よし

 

「じゃ、行くか」

 

「そうだよね、駄目だよ……ね?」

 

「どこ行きたい?よっぽどの所じゃない限り行かせてやるぞ?」

 

「ケ、ケント様!?」

 

周りの奴がガヤガヤ言っているがキッ、と睨みつけて黙らせる

もともとコルテットなんか組織が出来てしまったのは俺のせい、こんな組織のせいで彼女の若い時の思い出が殆どない、どこにも行った事がない……なんていうのもあれだしな、多少の無理は聞いてやろう

 

「本当に……いいの?」

 

「ああ、何がしたい?食べ歩きか?それともテーマパークに行きたいか?それとも……」

 

確か……この前目を輝かせながら見てたよな……可愛いとかかっこいいとか……『危険』とか言われて行けなかったけど……まぁいいか

 

「動物園!!」

 

妹の心からの我儘も、たまには聞いてやるとするか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見て見てお兄様~、ペンギ~ン」

 

「遠くにいくなよ~」

 

はしゃぎ過ぎなネリアを見て苦笑いする

結局こんな形になったけど……まぁいいか

『動物園の購入』、それがコルテットが出した決定だった

広く、開放的な園内に獰猛な動物達……まぁこれは言い過ぎかもしれないが用は『遠距離から狙われる可能性がある』という事も意味している

てかネリアの心からの笑顔ってひさびさに見たな、何だかんだ言って結構コルテットとしている事で溜め込んでると思うし

俺は前世の記憶、ある程度成長した状態でこの生活を押し付けられたがネリアは違う、何だかんだ言ってもネリアはまだ三歳、『コルテット長女』などという重荷を背負うのには重すぎる

今って中三なんだよな……女の子友達とゲーセン行って、クラスの友達と遊んで、部活に青春する時期、それをネリアは『コルテット』という縛りのせいでできない、それがどれだけ辛い事か

そのせいもあってこんだけ甘いんだろうな、俺、ネリアって今まで心からの『我儘』を言う事は無かったから……

 

「お~、これがライオン………親近感を感じる」

 

「気のせいだ」

 

こう見たら普通の女の子……はぁ、俺もしっかりしないとな……

姿さえ見せた事がない転生者ばかりに気を取られてよっぽどの事がない限りかまってやれないし……

それにしてもネリア、なんでお前はライオンとそんなに目を合わせてるんだ……ライオンもライオンでどうした?

 

「何でだろう……無性に倒したくなってくる」

 

「因縁じゃないのか?もっと深い所からの」

 

「ん?」

 

本能だよ、赤い王としての本能

俺は無性にこいつのモノマネしたい衝動にかられるけどな、油断したら着ぐるみ発注しちまいそうだ

 

ともあれ……俺らと護衛以外に人がいないって不気味だ、動物園ってもっとゴチャゴチャした雰囲気あるからな、ここまで静かなのも滅多にないだろう……てか普通ない

ネリアはこれでよかったのかな……テレビとかでみた動物園ってリポーターがいて周りにインタビューを受ける人がいてってガヤガヤしてた筈だし………

 

「私はお兄様と来れたら別にいいよ、お姉様を連れて来れたらベストだったんだけど」

 

さいですか、そういやネリアにとってフェイトはもう『家族』なのかな……お姉様って呼んでるし

それにしても家族ねぇ、両親はどこで何かんがえてるかわからんから実質二人だけなんだよな、まぁ俺は別にそれでいいけど

ネリアにとってはどうなんだろうな……コルテットの裏事業に直接両親が関わっているという確証がまだ無い今、自身を作り出したのはコルテットであって両親ではない

それなのに一度も顔を出し出していない、彼女にとってはどんな気持ちなんだろうか……まるで自分は認められていないと……考え過ぎか?

フェイトの方はネリアが誘ったのだが断られたそうだ、なんでも今日一日は人手が少ないと

何でも日頃から休み無しの労働基準法など完全無視な新人達に一日休みを与えるようで、中心部にみんな行ってしまうと思うので後は隊長陣が仕事する……なんだこの違和感、何か忘れている気がするのだけど……

 

「お~、何この動物」

 

「サーベルタイガーとか、次元世界にはまだ存在してたんだな」

 

だいぶ前に絶滅してなかったか?

そういやミッド最大級の水族館で鯨の飼育に取り組み始めたとか何とか、科学技術が進んでる次元世界ならでわだな

 

「むぅ~」

 

「どうした?」

 

「ちゃんとみてる?」

 

「見てるよ」

 

頬を膨らまして目の前で怒るネリア、男子共がコルテットを恐れずに告白する勇気がでるのもわかる

まっ、まだまだネリアは俺の妹だけどな、どこの奴かわからない馬の骨に渡す気はさらさらない

それにしてもどうしようか、ここはミッド中心部にある動物園、腹も減ってきたし一度外に出て何か食いに行くか……毒味?させれば大半の物食えるだろうし……ん?

 

「報告します、ミッド中心部市街地でガジェットが出現した模様、そのうちの一編隊がこちらに向かっているという知らせが!!」

 

 

 

……………あっ、新人達の休日って……ヴィヴィオ事件じゃね?

 



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迎撃

 

少し状況を整理する

 

今俺たちがいるのはミッド中心部にある動物園、当然周りには人が住んでいるし従業員だっている

動物園にはサーベルタイガーなどという他の次元世界の動物もい、まだまだそういった動物園だっている

そしてここに向かっているのはガジェット、大型はいないだろうが原作知識からしてかなりの数

 

………非常にまずい

 

まずこの場所、市街地で戦闘とかあり得ない、当然住民を避難させる時間などないし逃げる間に襲われたら太刀打ちが出来ない

そして……ここにはたくさんの動物がいる、下手に戦闘をすれば獰猛な動物の檻を破壊する可能性もあるし音で刺激もしてしまう。

それに動物もガジェットや俺らの流れ弾から身を守るすべを持たない、檻の中にいるなら尚更だ

かといって檻から放てば近隣住民が危ない、蛇類や毒性を持つ昆虫など論外だ

 

そして……ネリア

 

彼女は基本的に遠距離砲撃型、近距離戦闘は殆ど出来ないしこんな場所では一発砲撃を撃っただけでもその一直線を焼け野原にする、当然怪我をする動物も出てくる

なので彼女ができる事は牽制のスフィアのみ、防御魔法もあまり得意では無い為十分な安全は保証出来ない

俺もそうだ、ガジェット相手に十分に戦えるとはいえ俺も攻撃を受け流したりもする、その受け流したレーザー動物を焼いてしまう可能性も否定出来ない

 

つまり……防戦となるのは確実、そこに戦闘機人が加われば尚更たちがわるい

 

この場所を離れる、バカいえ、普通はあり得ない事だが見せしめ、尚且つ人質として動物達に手を出されたら意味がない、この時点での戦闘機人達はvividの時程『思いやり』などに溢れた奴らではないのだ

てかヘリ撃ち落としたり相手に重傷負わして誘拐してる時点でアウト、よく四期では釈放されてたなと前世でも思ったぐらいだからな

 

特に場所的に戦闘機人の中でも『あいつ』にだけは来られたくない、攻めるに攻めきれなくなる

 

「お兄様……」

 

「……………」

 

どうするか……今のままでは八方塞がりだ

動かないのが一番悪い、どうするか……よし

 

「ネリア、ここで待っててくれるか?」

 

「お兄様はどうするの?」

 

 

 

 

「入り口で全て迎え撃つ、お前は中から援護してくれ」

 

これしか方法はない

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく、数だけは達者だな」

 

遠くに見えるガジェットの群れを見て思わず溜息をつく

空中戦用のガジェットの群れ、戦闘機人は今の所見えないが油断は出来ない

こちら側には前回の襲撃以降対ガジェット対策によって訓練所された護衛達、そのせいもあって中々に頼もしくも見える

空を飛べる奴はあまり多くないが……大丈夫だろう

さて、迎撃すると言っても使える場所は入り口付近のみ、はっきり言ってクソ狭い

囲まれる、不利になるのは必須、そこにネリアの砲撃でも落とせば一瞬なのだろうが範囲が広すぎる上に中の守りが無くなる、よって彼女は中で大量のスフィアを構えながら待機取り逃がして侵入したガジェットを片っ端から破壊してもらう

さて、おいでなさったか……

 

「近くにあるのは全て破壊しろ、絶対に侵入を許すな!!」

 

デュランダルを構える、SP達が放つ一斉射撃

近くによってくるガジェットを叩き切り、流れ弾になりそうな攻撃は全て防御魔法で受け止める

効率が悪い、埒があかない

しかしこれしか方法がない、雑魚のくせにこれだけ集まると厄介極まりない

周りを見ればどこも苦戦させられている、本当にガジェットに対して強いのは俺だけだもんな、いくらあれから訓練したと言っても実戦慣れしたわけじゃない

 

「ネリア!!三体行った!!」

 

「了解!!」

 

通り過ぎて行ったガジェットを見てネリアに指示を出す

中から聞こえてくる破壊音、意外と大きい、中の動物を刺激し過ぎなければいいんだが……

何時の間にか囲まれてるし、一発大きいの撃てればいいんだけど……難しい

それに………

 

「ちっ!!ぐおっ!!」

 

馬鹿でかい爆発が襲う

防御魔法が直感で間に合ったからよかったけど……くそっ!!

 

よりにもよってこいつかよ!!

 

爆発したのはクナイのような金属、投げつけて来たのは銀髪眼帯の美少女

戦闘機人の中でも戦闘経験が豊富で攻撃力が意外に高い、んでもって音がデカイのお墨付き

 

「うまくいかない事ばっかだよ!!」

 

この狭い空間の中で勝てるかどうか……

 



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爆弾娘

 

「くそっ、どうしろって言うんだよ!!」

 

「クッ、ちょこまかと!!」

 

風の性質変化を使って上手に爆風を上空に受け流す

また放たれるクナイ、数は八

一つ一つ、デュランダルを滑る様にして方向を変える、全て一瞬の出来事である為に自分でやっといて感心する

 

周りでは大量のガジェットに苦戦する護衛達、こっちを助けようと奮闘しているがなんせ数が多い、ただでさえ数で劣り、尚且つ場所も限定されているこの場所では防戦に徹するしかない

それは俺も同じ、ナンバーズ5、『チンク』は爆発系の戦闘機人

当然攻撃力は群を抜いて高く広範囲、遠距離系にとっては別段遠くに飛ばせる訳ではないので楽なのだが室内、限定された場所ではその真価を発揮する

そして今回は後者、周りはガジェットに囲まれ受け流す、除けるなどをすれば護衛達に直撃しこっちの戦力低下、かといって攻めようとしても圧倒的に空間がない、前に進もうとも進めない

行けるとすれば自滅覚悟の特攻、だが……そんな事を相手がやすやすと許すか?

 

「チッ、破壊(クラッシュ)!!」

 

俺を取り囲む様に展開されたクナイをクラッシュによって全て破壊する

どうせ自滅覚悟の特攻を仕掛けても後ろからガジェットでドーンだろうな、その為にいるもんだし

何よりこのまま長引けばこちらが全滅、俺一人対ガジェット+戦闘機人になるのは確実、何とかこちらから動かなければ……負ける

……こんな手は使いたくなかったけど……

 

右手を前にかざす、向こうが構えるが……ごめんな

俺がするのはチンクの『完全破壊』

クラッシュを使えば大きすぎる音もなく、尚且つ一瞬にして目の前の空間を『破壊』する事ができる……ただそれをしてしまったら……原子、分子レベルに破壊されたチンクを復元する事はまず不可能……人殺しは御免なんだけどな……これしか今の状況を打開する手段がない

だがその瞬間

 

 

彼女が笑った

 

 

 

右手を前にかざし、叫ぼうとした瞬間に後方へ吹っ飛ばされる

『大爆発』、まさにそういった方がいいだろう、吹っ飛んだ俺の体は一回、二回とバウンドした後にゴロゴロと転がる

理由は簡単、あいつ、俺の真ん前にクナイを『埋め込んで』いたのだ

一番俺が無防備で、一番油断している時に爆発させる、至近距離からモロに爆発を食らったのだ、本能によって咄嗟に後ろへ飛んだがダメージは大きい、少なくとも五体満足度なだけマシだ

ただ………

 

「う……う……」

 

ロクに体が言う事を聞かない、骨何本かいったか?

 

「ケント様!?」

 

護衛達が叫ぶが……無理、体動かねぇ

あ~、これが人殺そうとした罰ってか?まぁ止めてくれた事には感謝だな

その前に自分の心配か?このまま寝てたら誘拐されるし

 

「ドクターからの命令だ、来てもらうぞ」

 

「…………」

 

見上げればそこにはチンクの姿

運ぶ気満々らしい、隣にはギンガを詰めてた箱が置かれてある

周りの戦闘も終盤にさしかかって来ているらしい、主に悪い方向に

ったく、十九年間、積み立ててきた物って案外簡単に壊れちまうんだな、まさか神様特典持ってナンバーズに負けるなんて夢にも思わなかったし、それにチンクだし

 

箱が開けられる、持ち上げられる感覚

と、そのときだった

 

 

「お兄様を離せぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「むっ、ぐっ!?」

 

通り過ぎたのは暴力的なまでのスフィアの数

それをチンクはガジェットを盾に、時にはよけて対応するが一撃一撃が必殺の威力、無傷とはいかなかったらしくあのピチピチなボディスーツは所々焦げてしまっている

 

目線を向ければそこにいたのはネリア、後方には真っ黄色に染まるほどのスフィアの嵐

 

なんつー奴だよ

 

「そこの奴!!お兄様をとっとと離せ、今すぐに!!」

 

「成る程な、こいつが『ネリア・コルテット』か」

 

フム、と一つ感心するとクナイを構えるチンク

この距離なら……ネリアは負ける、大体爆弾を防ぐ様なご大層な盾は待ち合わせていない、強がってはいるが……状況が最悪なことには変わりない

 

(動……け)

 

ネリアの援護をするために、少しでも隙を作ろうと腕を上げ動かそうとしてみるが……無理

どちらとも火傷やら何やらで酷い、ひりひりするし骨がいったのか動かない……クソッ

 

「言い分は分かるが、今の状況は分かってるのか?」

 

「………っく」

 

右手、左手にクナイを持ち、チンクがいつでも近付ける様に体制を整える

距離を詰められたら一瞬で負ける……せめて……デカイ一撃が出るまでの間誰かが時間稼ぎをしないといけない

………ムリだな、ガジェットにチンク、防げる人間なんて限られてくる

クソッ、油断しなければ……こんな事には……

 

「フフ」

 

「何がおかしい」

 

ネリアがいきなり笑う……?

 

「情報を多く持ってるのはあなたじゃなくて私らしいね、知ってる?」

 

ネリアがニヤリと唇を動かす

……ああ、そう言うことか

 

 

 

 

「六課の方は、もう終わってるらしいよ」

 

金色の閃光が、敵を切り裂く

 



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金の閃光

 

「グッ、うがっ!!」

 

「っ!?」

 

振り下ろされた金の大刀が当たる事は……無かった

やはり戦闘経験が多い、『避けれない』と思ったチンクは一瞬の内に自分と相手の間にクナイを投影し……爆発させた

 

その爆風に乗って後方へ飛ぶ、相手の攻撃も当たらず、尚且つダメージを与える事が出来る

 

しかし、それはチンクにも例外ではない、至近距離で放たれた爆発により彼女のボディスーツは所々が破け、焼けてしまっている

綺麗な銀髪はボロボロになっておりその代価がうかがえる

 

「時空管理局機動六課、フェイト・T・ハラオウン、武器を捨てて投降して下さい」

 

「Fの遺産……と、なると他の皆は……」

 

失敗、ということになる

もし彼女達の作戦が上手くいっていたのならばここにフェイトが来ることはない、ガジェットによる足止め、ヘリの墜落、聖王の誘拐……これだけの事が一度に起こるのだ、すぐに気持ちを切り替えて出動……など出来ない

一番先にフェイトが来たのは……速いから……か?

なんだかんだ言って俺達がガジェット来てるのを知った時には六課の方で戦闘始まってたしな、あそこにいたガジェットの一分隊がこっちに送りこまれて来たんだし

原作では前編後編分けてたけど体感時間ではそんなだよな、現場だし

無事にヘリを守り切った所でコルテットからの要請、フェイトは六課の中でもスピードナンバー1だからな、数分すれば他の隊長陣も来るのだろう

 

「ケント、無事?」

 

「見りゃわかるだろ?無事に見える?」

 

「…………すぐに助けるからね、少し待ってて」

 

俺を守るように背を向けてカチャ、とバルディッシュを構えるフェイト

ネリアもこっちに駆け寄って来る……前衛がいる状態でのネリアは無双だからな、形勢逆転だ

ん?普通ってピンチの女の子を男が助けてフラグ立たせるんじゃないのか?

何この真逆のシチュエーション、恥ずかしすぎんだろ

 

「なるほど……これは……流石にマズイな……」

 

「もう一度言います、武器を捨てて投降しなさい」

 

ドスの効いた声でフェイトが忠告する

なんだかんだ言っても時間さえ稼げば六課無双陣が到着するのだ、いくら地の利があるとしても抵抗さえ出来ないだろう

うーん、てか忠告する前に攻撃ってアリなのかね、思いっきりぶった斬ってたけど、あのままだったら

 

「だが私も、捕まる気はさらさらない!!」

 

「くっ、バルデイッシュ!!」

 

飛んで来たクナイをバルデイッシュでぶった斬るフェイト

うん、ぶった斬る、俺にはあんな離れ技無理だな

バルデイッシュの長い刀身のお陰、俺があれを真似したら爆風で振っとん仕舞う

 

「ネリア!!支援お願い!!」

 

「任せて!!」

 

再び展開される暴力スフィア

フェイトはその移動をもってチンクの懐に入ろうとするがガジェットが邪魔をする

チンクは俺の事を諦めているらしくフェイト達と戦闘はしないつもりだ、自身を守る様にガジェットを配置して距離を開けていく

しかし、ネリアの支援によってガジェットはどんどんその形を変え、スクラップと化す

今は距離を開けているのでよいが全てのガジェットが殲滅し終わった時……チンクは終わりだろう

 

「はぁ!!」

 

「くっ!!」

 

投影し、投げつけたクナイを全て無力化するフェイト

ガジェットに乗っての移動であるチンクとフェイトの機動力の差は歴然……チッ!!

 

「ネリア、収束急げ!!」

 

「怪我人が大声出さない!!てか収束!?」

 

直感で分かる、数キロ離れた場所で大規模な魔力反応!!

ヘリを攻撃した奴、って事は三番の機動力で下手な規則や連絡がある局員よりも早くここに着いたって事になる

アレを撃たれて……まだ六課隊長陣が来ていない状態での戦闘はマズイ

 

「よく分からないけど収束するよ!!どこに撃てばいい!?」

 

「俺が指示をする、動物達に被害が及ばないように!!」

 

くそったれ、体が軋む……あーもう、いつ気を失ってもおかしくない状態なんだぞ!!

 

方向は……南西、魔力レベルは推定S……これぐらいなら……楽勝じゃね?

 

念話でフェイトに引くように伝える、ネリアの砲撃じゃあ被害を及ぼしかねん

 

「それじゃ~、いっくよ~」

 

「やべぇ、意識朦朧としてきた」

 

あ~しんどい

 

最後に聞いたのはネリアの生き生きとした叫び声、それだけだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、見慣れない天井、ここどこ?」

 

「コルテット直属病院だよ、なんであの怪我で治るの?」

 

はぁ、と溜息をついて目の下には隈をつくったネリア、なんかごめん

それはそうと病院か……どこぞのホテルのスイートルームに見えるのは気のせいだと思いたい

 

「少なくとも肋骨が折れて腕にヒビが入ってる筈なんだけど……なんで?」

 

「意識失う直前に『自己回復能力』を主張してみた、効き目がヤバくてびっくり」

 

「わたしの方がビックリだよ」

 

あれだよ、この前入院した時に余りにも暇だったから考えたんだよな、今度入院したらこれ主張してみようって

てか骨まで治すとは……治療もしたとはいえ何と言う回復力

型月の世界だったらAぐらいいくんじゃないか?

 

「で、どれくらい寝てた?」

 

「丸々二日だね、いっぱいお見舞い来たよ、六課のみんなとかよく分からないお偉いさんとか、後者は玄関で帰したけどね」

 

「よく分かってるじゃないか」

 

ネリアもいちいち相手にするのが怠くなってきたな

 

「じゃあ……相手は?」

 

「それは……ごめん」

 

頭を下げられる、別に謝られる必要はないんだけど

 

「逃がしちゃった、砲撃がぶつかり合ってる時に……一応相手が使っていたと思う大砲はボロボロな形で発見されたんだけど……」

 

「そうか……」

 

て事はやっぱりネリアが押し勝ったんだな、当然か

それにしても………

 

「暗いな、ネリア」

 

「…………ごめんね」

 

また謝られた、いつもハイテンションなネリアらしくない

 

「私が我儘言ったせいで……こんな事になって」

 

「あ~、運が悪かっただけだよ、それに楽しかったしな、ネリアは何も悪くない」

 

「で、でも!!」

 

原作知識があるのに忘れていた俺にも非はあるわけだし、妹さんの我儘ぐらい聞きたいしな

 

チンクに負けたのも俺の判断ミスだし、はぁ

この頃全然な感じが凄い

 

「今回の事でネリアが思い悩む必要はないよ、すぐに退院できそうだし……また動物園行こうな……」

 

「………うん」

 

あ~、ネリアもやっぱり抱え込むタイプなのかなぁ……

こりゃ当分この調子っぽいわ

 



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退院

 

『我が才を見よ』

 

怒りに満ちた声で詠唱する

 

『万雷の喝采を聞け』

 

必死に闇に手を伸ばす

大切な物の為に、失わない為に

 

『インペリウムの誉れをここに』

 

そこには目には闇を消すことのみ

全ての元凶を……この手で……

 

『咲き誇る花の如く……』

 

俺は………

 

『咲き狂え!!黄金の劇場よ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何だよ……寝覚め悪りぃ……

 

無事に退院だっつーのに

 

 

 

 

 

 

 

「よかったよ、よかったよ……無事に退院できて……」

 

「何でそこで泣くんだ、無事だったのはフェイトのお陰だろ?」

 

ぐすぐす泣くフェイトを何とか泣き止ませる

後ろでは苦笑いのはやて、何とかしろよ

てことで無事退院、自己回復能力が効いたね、たったの一週間だ

まぁ、その間二人とも大変な筈なのに殆ど毎日お見舞いに来てくれた、カリムはここにはいないが無理言って聖王教会から抜け出してきて来てくれたし

ネリアは学校、たぶん早退してくるだろう、ちゃんと最後までいろと連絡しとこうか……

 

「でもほんま、何事もなく無事でよかったで」

 

「後遺症とかも残らなかったからな、六課のお陰だよ」

 

「そんな事ないわ、結局間に合ったんはフェイトちゃんだけやし、私もケント君が大変やって事知らされとったのにすぐに動かれへんかった」

 

「そっちはそっちで大変だったんだからしょうがないだろ?それにそういう謝罪は入院中何回も聞いたしな、母親みたいにネチネチするなよ」

 

「は、母親って……ま、まだ早いわ」

 

えへへと体をクネクネしだすはやて……どうした……

 

「で、仕事はいいのか?ただ単に退院して帰るだけなんだけど」

 

「少しの間お休み作ったんだ、夜には戻らないといけないけど暫くは平気だよ」

 

なるほど……てか二人とも九歳の時からかなり休みが溜まってるんだよな……それを今使ってるわけか

 

「私は午後には帰らなあかんねん、色々と忙しいからな~」

 

「陳述会か?」

 

「それやねん」

 

 

『公開意見陳述会』、数年前に俺が襲われた会議だ

あれから一応警備は強化され、テロは起きていない

ちなみに俺はあれから毎年行ってるぞ?肩書きだけでも『少将』であることには変わりないからほぼ強制で行かないといけないんだ

まぁ、その代わり特例としてデュランダルの持ち込みが許可された、ぶっちゃけ俺の場合デバイス無しでも『破壊(クラッシュ)』持ってる時点で危ないからな、今更という感じだ

 

「そこで六課も警備に当たるからな、今年は予言の事もあって危ないし……本当はケント君に来て欲しくないんやけど……」

 

「ん~、俺としてもあのクソ怠い会議には出たくないんだけどな……決まりは決まりだから……」

 

俺も一応局員だからしょうがない

今年はマッドのテロもあるし……デュランダルがあるから大丈夫か?

 

「レジアス中将の方はどうやったん?予言ちゃんと聞いてくれたん?」

 

「あ~、まだ言ってない、てか会う機会がない、退院もしたし陳述会までには言えると思うんだけど……」

 

「う~ん、そっか……」

 

あいつもあいつで大変だからな、すぐに時間が空くわけでもないし

それにしてもあれだな、今まで何とも思わなかったけどお見舞いもかねて警備緩くなったな、コルテット

転生したばかりの頃はコルテットに関係ない他人との接触は全然させてくれなかったのに……それにこの二人は言い方は悪いが元犯罪者、コルテットがそれを知らないわけがない

う~ん、考えても仕方がないか、個人的には可愛い女の子がお見舞いに来てくれるなんてすごく嬉しいし……てかやべぇ、一週間ベッドに寝てたきりのせいで性欲溜まりすぎ

背中から抱きついて何故かクンカクンカしてる金の子犬襲ってもいいかな……可愛い過ぎて抱きしめたくなるんだけど……一日抱き枕として一緒に寝てくれない?割とガチで

 

「陣述会の時に六課隊長の誰か護衛につけさす……って事出来へんか交渉してくれへん?やっぱり不安やわ、私」

 

「大丈夫だよ、それにどちらかと言うとデバイス持って入れるんだから俺って一番安全なんだぜ?いざとなったら逃げるしな」

 

「う~ん、それでも……」

 

はやては優しいけどホント心配性だよな、まぁ負けて入院した俺が言えた事じゃないんだけどな……

 

「そういえばネリアは?学校?」

 

「学校だよ、多分帰ってくると思けど」

 

今思うと結構サボってるよな、あいつ

この頃はネリアのファンクラブも撃沈されまくってアタック少ないらしいから何か生き生きとしてた、ストレスはあるのね、ただ……やっぱり前の事件は自分のせいだと思い込んでいるらしく見舞いの時は暗いんだよな……俺は元気なネリアが好きなんだけど……

 

「さて、無事退院やけどこれからどうするん?私としても帰って体治すって事をお勧めしたいんやけど……」

 

「そう……だね、また来るよ」

 

「ん、そうしてくれ」

 

コルテット内部にはやすやすと入れられないからな、また六課に遊びに行くか……

 



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脅し

 

「陳述会での警備増量?どうしてまたそんな」

 

「あ~、やっぱり不安なんですよ、俺然りコルテット然り、この頃はガジェットの動きも活発ですからね~、前みたいな事が二度も起こったら地上本部の不信感にも繋がる、なので『地上本部の為に』少しお願いをしに来たのです」

 

設けられたソファに座りながら対面する俺達

目の前にはいかつい髭を生やしたオッサン、隣にはこれまたどちらかというと『ドS』、といった感じの眼鏡秘書、大概の男はこいつに足蹴りさせる事を望むんだろうな、俺にそっち系の趣味は無いからわからん

 

「フム、ですが陳述会に回す局員の数が多すぎて地上の警備が手薄になるのも事実、地上に暮らす人々の事を考えるとこちらにしてもこれ以上人員を割きたくないのも事実」

 

「人員不足、ね、まっ、それは昔から変わらないか」

 

特に地上本部はね、大概の『エリート』と呼ばれる奴らは本局に行くからな、なんだかんだ言って俺も『本局所属の少将』だし

オッサンから見れば嫌な立場だよな~、コルテットから見放されたら管理局はやっていけないしアインへリアルを完成させたのは実質コルテットだし

だからと言って俺は地上本部の人間ではなくライバル視してる本局の人間だし……うわ~、俺って相当嫌な奴?

 

「今年だけですよ、ガジェットの主犯が見つかればどうって事ない事ですし、何かあってからでは遅いですよ?いくら自分がコルテットの中で立場が高いにしても組織を支えているのは俺ではないですから、最終的には下の意見です」

 

「評判が悪くなれば庇えない……と、困った事ですね」

 

脅し、効いてるか?

まぁ事実は事実なのでしょうがない、いくら俺が地上を庇ったところでコルテットを動かしているのは俺ではない、俺だけが意見が違ってあとの大多数が地上を見限ればそれで終わりだ

難しい選択、ていうかこいつってマッドと繋がってるんだったっけ?

目的は……覚えてない、そもそもこいつが何をしたかったのかさえ記憶にないからな、前世における俺の中ではただのうるさいオッサン程度の認識だったし

 

「……出来る限りの検討はしてみましょう。結果が出しだいコルテットに報告させてもらいます」

 

「ありがとうございます。よい結果、期待してますよ」

 

う~ん、こいつは陳述会でテロが起こる事に関しては知っているのだろうか

もしそうだとしたらいくら警備を増強させたとしてもその『穴』を伝えてしまうから意味無いんだよな、てか一番手っ取り早いのはデバイス持ち込み不可っていう規則をある程度まで緩和するのがいいのに……

内部でテロが起こったらどうやって対処するんだ?持ち物検査?的な物に自信はあっても技術なんて日々進歩していくもんなんだぜ?

実際に俺が持っていたステルスデバイス見抜けなかった訳だし……

 

それにしても嫌な会談だったな~、殆ど俺の権力を使った脅しだし

もしそういった『立場』が無かったら言い負かされてるね、絶対

キャリアの違い、年季の違い、形だけの局員の俺とそれに対して人生かけてる奴、どう考えたって勝てないだろ

どうせ俺がこうやって会談を開いた理由もカリムの予言関連だなんてお見通しの筈だ、俺も一応後見人ですからね~

本局と協力している事で強い権限を持つ聖王教会、バックに本局のお偉いさん方や俺がいる機動六課、どちらも相当お嫌いだった記憶があるからあえて出さなかったんだけど……どうかねぇ

 

「ん~、見送りはいいよ、護衛もいるし」

 

「わかりました、では」

 

ビシッと敬礼して頭を下げる眼鏡秘書

あのオヤジの種からどうしたらこんな美人が生まれてくるんだ?生命の誕生とは不思議なものだ

 

それはそうと地上本部の一室を後にして廊下を歩く、陳述会まで後少し……いよいよStsも大詰めか……

 

う~ん、せっかく家から出たんだし……どうするか、このまま帰るのもなんだよな~

 

……六課行ってみるか?ヴィヴィオがいる筈だ

基本はやては連絡さえいれれば何時でも来ていいと言ってたからな、少し気分転換がてらに

それと六課FW陣がどれほどの実力なのかもちゃんと見ときたいというのもあるし、陳述会間近、訓練もしてるだろうしな

 

そうときまれば早速行くか……ネリア、また脱走してないだろうな……

 



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影に潜む『G』

「不気味だ………」

 

六課ロビーにて一人呟いてみる

いや、人はいる、案内役の人も仕事してる人も、ただ妙に静かだ

職場なのでこういう雰囲気でも普通は可笑しくないんだが六課の殆どは女性、話し声の一つや二つはする筈

なのに……それがない

 

新手のテロか?でもそれだったら守護騎士の面々が気づかないわけないし……どちらかと言うと『震えている』し……

それを察してか護衛達も臨戦体制を整えている……

 

「ケント君ケント君!!」

 

「ん、はやて」

 

こちらに走り寄って来るはやて、かなり慌ててるがどうしたんだ……汗ダラダラだし半泣きだし……

 

「いっけぇぇぇぇぇ!!」

 

「えっ、ちょっ!?」

 

そう思っていたらいきなり放たれるスフィア、って危ね!!

それに反応して何時でもはやてを捕らえられる様に陣形を作る護衛、お前らとはやてがサシで戦えば勝敗は見えてるよ……

そしてそんな事には慣れっこなのか息を切らしたまま制止するはやて、スフィアは俺の真横通っていったな……どこに着弾したか気になって振り向いてみる

 

 

結果、そこには見事に押し潰れた『G』の姿が

 

 

………は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり六課に対する嫌がらせの意味で住所不特定の人間が送りつけてきたと」

 

「そうや、『日頃お世話になっとる六課に感謝を~』って手紙があったから警戒が緩んでしまったんやな……ダンボールにはこれでもかという程の『アレ』が入っとたんや、恐ろしくて逃げてしもうてな~、そのアイツラは六課に散らばってみんな怖がってしもうとるわけよ」

 

なるほど、確かに六課は『過激戦力』+『強力な後見人』のせいであまり評価はよろしくないからな、特に地上からは

 

で、それに対する『テロ行為(誤字あらず)』がアレだったと、それにしてもどうやってあれだけの『G』を集めたんだよ、そう考えて近くに置いてあるダンボールに目を向ける

引越しなどに使われる大型のやつだ、うん、何百も入ってたんだろうな、Gが

 

逃げてしまった事はしょうがない、はやても女の子、ダンボールを覗き込んだ瞬間何百ものGの群れだったのならば俺だって逃げる、よく気絶しなかったぐらいだ

 

まぁそんなわけで今の六課は警戒体制、六課隊長陣は敵の殲滅(G)の為に動いているらしいが効果は著しくないらしい、どちらかと言うとあのエースオブエースが泣きながら逃げ帰ってくる始末

 

よって頼りはザフィーのみ、そうはいっても気持ち悪いものは気持ち悪い、ザフィーとしても苦労しているそうだ

 

炎熱変換持ちのシグナムにでも焼いてもらえばいいのにと思うが生憎彼女は聖王教会へ行ってしまっているらしい……女性ばかりの六課、うん、詰んだな

 

「エリオやフェイトちゃんの電撃変換、フリードのフレア、リインの氷結魔法、頑張ってはおるんやけど……今どれだけ駆除したか、どれくらいの数がいたのかも分からんからな……動きも早いし気づかせん内に回り込まれるし……ちなみにシャマルは白衣の下に潜り込まれたらしくて気絶してる」

 

「…………そりゃ、な」

 

俺だってGは苦手だ、動きやら姿形やら……

後ろで護衛がザワザワしてる、俺が『駆除しろ』と言われたらするしかないのだ、当然こいつらは何でも屋ではない、普通は嫌だ

 

「何とかする方法あると思う?ってキャッ!?」

 

「………先ずは一匹」

 

はやてに這い寄ろうとしていたGをスフィアで潰す

って、まだ動いてんじゃねーか!?生命力高過ぎだろこいつら!?

 

「破壊(クラッシュ)」

 

床を壊さないような、力加減を考えながらGを駆除する

この短時間で二匹だ、後どれだけいるのやら……

それでも六課は運行しないといけないんだけどな、Gが出たので今日は局員全員休日です……なんて出来ないし

 

「うう、どうしたらええと思う?」

 

「どうしたらいいって……六課を丸々『破壊』で壊してしまうのだったらあるけど?」

 

「それは駄目や」

 

「やっぱりな~」

 

いくら俺の直感やらスキル使っても今回ばかりは無茶だ、どこにいるかも分からない、いくついるかも分からない、事件は迷宮入りだな

 

「そんな事言わんと~」

 

「ん~」

 

一番簡単なのはゴキ○リホイホ○イを設置すること、時間はかかるが劇的に変化はするだろう

他にもバル○ンとか……けど部隊丸々バ○サンは色々と問題があるしな~

 

そしてもっと手っ取り早いのは……

 

チラっ

 

ブルブル

 

う~ん、やっぱりこいつらを何でも屋扱いするのには気が引ける

……ならば

 

「全員Gの駆除に動け、大丈夫、お前らだけに嫌な思いはさせないよ、俺も出る」

 

人に命令ばかりするんじゃなくて自分から動かないと

目についた数人に荷物がどこから届いたかを割り出してもらうように頼む

ついでにコルテットにも、Gに有効な商品があれば直ぐに持ってくるように

 

ディランダルを汚したくないから基本『破壊(クラッシュ)』だけになるが……大丈夫か?

 

さて……いきますか

 





超私事なのですが……やっと、やっと2ndA's見に行けた\(^o^)/
7月からずっと予定があって中々出ていけなかったので……うぅ、やっとです………
内容は……素晴らしいの一言ですね、前作よりも数段とパワーアップしてました((((;゚Д゚)))))))
あと一つ、アインス可愛いよ……ホントにもう……最高でした


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増殖する『G』

 

「アクセルシュート!!」

 

エースオブエースが並み居る犯罪者達を捉える時に使うスフィアを放つ

大概の魔導師がこのダウンするだろう

 

「プラズマランサー!!」

 

電撃を纏った直射魔法、それは的確に、正確に敵を貫く

 

「破壊(クラッシュ)!!」

 

歩くロストロギアの代名詞、その攻撃にかかった敵は、塵も残さず消えうせる

 

突如起こった最終戦争

敵は最強のロストロギア

星が残した憎い奴、人類の最大の敵であり唯一対抗できる生命物体

人はその生命物体をこう呼ぶ

 

『G』………と……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐおーー、消しても消してもキリがねぇ!!」

 

「貫いても動くよ!!感電させても動くよ!!」

 

「フェ、フェイトちゃん!?潰したら卵撒き散らしたんだけど!?」

 

なのはぁ!!Gに『潰す』という概念は通用しねぇ!!

奴らは確実に、次世代の種を残す!!潰すことによって卵を撒き散らすんだ!!

新聞紙&スリッパ隊!!絶対に潰すな!!

さっきまでの!?ちゃんと消毒したさ!!

 

「ふ、ふにゃ、ふにゃ、ス、スターライトブレイ……」

 

「やめてなのはちゃん!?六課が消えてまう!!」

 

暴走しようとしたなのはをはやてが必死に制止する

 

『うわぁーーーん!!マーーーマーーーー!!』

 

「ヴィヴィオ!?今行く……ディバインバスター!!」

 

廊下が無残な姿へと変貌しはやてが血の涙を流す

はやて、そんなにこっちを見ても出さないぞ、修理費、これはお前の部隊の問題なんだから

それにしてもヴィヴィオいたのね、この事態ですっかり忘れてた

恐らくはアイナ……だったか?その人と一緒に非難しているのだろうが……そこにも現れたか……

ちなみに今俺達がいるのは六課の中でも激戦区、『部隊長室前廊下』

 

どうやらさっき俺が案内された部屋にあったダンボールは『これくらいの大きさ』という見本であって本物は部隊長室に置きっぱなし

いくら俊敏なGといってもすぐに移動出来るわけではない、というかその場に固まる

そう、部隊長室、そこが決戦の舞台なのだ……そして今俺らがいる場所は前の廊下……どんだけいるんだよ……もう数十匹は殺したぞ?一人で

 

ん?そういや卵?

 

(ゴキブリを潰したら卵が飛び散る、だけど目には見えない筈……なんでなのはは飛び散ったとわかったんだ?)

 

分からん、確かめる為にさっきまでなのはがいた場所を見てみる

 

 

孵化した幼虫がいました

 

 

はい、魔法ですね、わかります

 

 

「クラァァァァァシュ!!」

 

プシャーンと消える幼虫

蟲の成長促進魔法……手間取りかけやがって!!

 

「え?Gってこんなに成長早いん!?」

 

「んなわけないだろ!魔法だ魔法!!絶望的な状況だぞこれは!!」

 

なんせ卵を完全消滅させないといけないのだ、無茶ぶりにも程がある

今の所完全破壊が出来るのは俺だけ、はやてやフェイトは部隊を出来るだけ壊さないようにしているが……これでは数が増える一方だ

 

「どうにかして一箇所に集めたいんだけど……シグナムとの連絡は?」

 

「あと数十分で着くって、カートリッジも問題無しや」

 

よし、炎熱系の魔法が使える人間が一人いるだけで全然違う

部隊長室に関しては一度軽く焼き払った方が良さそうだ

 

「ケント様……ってうわ!?」

 

「なんかコルテットで収穫あったか!?てかないんなら作らせる!!」

 

「これを!!」

 

投げ渡される一つの缶、こ、これは!?

 

「コルテット製のゴキジェットです!!これを一吹きすればGは器官レベルまで死滅します」

 

「これをありったけチャーターしろ!!大至急!!」

 

「了解!!」

 

やっぱりコルテット、伊達に財閥名乗ってねぇ!!

一吹きで終了とか、画期的過ぎるのにも程がある!!

 

「フェイト!!パス!!」

 

「うん、いくよ!!ゴキジェット!!」

 

いくよ、バルディッシュのノリでゴキジェットを片手に持つフェイト

そして、その後ろから放たれるオレンジ色の魔力弾

 

「フェイトさん、私が動きを抑えるんでその隙に!!」

 

「ありがとうティアナ!!うぉぉぉぉ!!」

 

ゴキジェット片手に雄叫びをあげる美女、シュールだ

それにしてもG相手に魔力弾を全て的確に当てるなんて凄ぇ、それを連射してるし

 

くそっ、まさか過激戦力で無敵の部隊とまで言われた六課がたった一つのダンボールで機能停止するとは……本局、地上本部に向かって大量のGを放っとけば原作でマッドは目的を達成できたんじゃないのか?

 

それはともかく、ここは俺や隊長陣が抑えているのでまだマシだが他は結構苦戦しているらしい、どこから現れるか、どのような攻撃を仕掛けてくるか全く分からないからな

クソッ、それにしても部隊長室までの道のりが遠い、ドンドン出てくるしゃねぇかG!!

 

「これだったら部隊長室でどれだけ繁殖力してるか……想像したくもないな!!」

 

「うう、あそこには私の宝物があるのに……」

 

宝物?それは……どうするか……

 

「ちなみに何?」

 

「写真」

 

「誰の?」

 

「それは……秘密や!!」

 

好きな人とデートでも行ったのだろうか

あれから結構経ってるから……付き合ってても不思議じゃないよな……

 

背中を合わせる、相手はG、油断は出来ない

 

しかし………

 

「あーーもう、ディバイン」

 

「え?なのはちゃん!?」

 

目に涙を溜めたなのは

ヴィヴィオの所でだいぶ苦戦したらしいな、そして何だ?その杖の先にたまる絶大な魔力は……

 

「バスタァァァァァ!!」

 

ズバァン、と廊下以上の大きさを誇る砲撃が通り過ぎる

向こう側にはどでかい穴、うん

 

「はやて、やっぱり修理費出してやる……」

 

「ハハ、ハハ……」

 

真っ白に燃え尽きたはやての肩に手を置く

ダメだ、返事がない

 

それにしても、今の一撃で廊下にいたGがまとめて消し飛んだな、これで少し楽になる

 

「なのは………」

 

「なのはさん……」

 

「なのは………」

 

「え?私のせいなの!?」

 

あなた以外に誰がいる

 

「まっ、残るは部隊長室一つ、後はコルテットの人間に任せればいいよ、それともシグナムが帰って来るまで待つか?」

 

「う~ん、シグナムが帰って来るまでに部隊長室にいるアレが外に漏れたらまた駆除しないといけないからね、私達で出来るようなら終わらせよう」

 

「了解」

 

取り合えず護衛が持ってきたゴキジェットを左手に持ちながら部隊長室のドアの前に立つ

左なのは右でスキル使うから、まっ、いざとなれば直観で何とかなるだろ

 

「なのはの砲撃でドアが壊れてるね、力づくで開けるしかない……か」

 

「ドアを吹っ飛ばすっていうのは?」

 

「考え方が暴力的過ぎる、てかそれしたら俺達だけで対象出来ない時に閉められないだろ?ザフィー呼ぶのが一番だって」

 

俺?力無いのです

セイバーの腕みてみろ、筋力Aには思えん、てか俺にはあいつみたいは無限魔力ってわけじゃない

 

「じゃあザフィーラさん呼んで来ますね、すぐに戻って来るので」

 

「ああ、よろしく頼む」

 

ティアナがザフィーラを呼びに行く

それにしてもホント、殺風景になったな、廊下

はやてはもう戦力外か、ヴィヴィオに突っつかれて遊ばれてる

………ヴィヴィオ?

 

「ちょっ!?何でヴィヴィオがここにいるの!?」

 

「ん~とね、アイナさんが倒れちゃったの」

 

アイナさん……気絶したな、幼いこの子にGの恐ろしさが分からない、よく言えばGに対抗しうる最強の手札、魔法が使えたらの話だが

 

「えっと、ちょっといいかな、ケント」

 

「どした~」

 

肩をフェイトにちょんちょんと突つかれる

仕草がいちいち可愛らしいのは天然なんだ、うん

 

「あのね……お願いがあるんだけど……いいかな?」

 

「お願い?何でまた……」

 

「えっとね……はやての宝物っていう写真、どうにかして取り戻して欲しいんだ……私とはやてはライバルだけど、やっぱりそういうのは良くないと思うから」

 

ライバル……ねぇ……

いいよなホント、リア充は………

 

「まっ、出来るかぎり頑張ってみるよ、写真なんて紛失したら二度と戻って来ないからな」

 

「うん、ありがと」

 

そうこう言っている内にザフィー到着

どうやらコルテットで『G生命反応レーダー』なるものが開発されていたらしい、それを使って今その部屋には何匹のGが潜んでいるか調査したのだとか

それを聞くとゆっくりだが順調に駆除は進んでいるらしい、後はこの部隊長室……

 

「では、開けるぞ」

 

なのははヴィヴィオを安全な場所へ、はやては戦力外、俺とフェイト、ザフィーだけだが何とかなるだろう

ザフィーはゴキジェット二刀流だし……拳使えよ盾の騎士……

 

ザフィーがとびらに手を当て横にずらす

配置としては扉を開けるザフィーの後ろに俺とフェイトが構えている状態………なぁ、一つ聞いていいか?

普通さ………

 

 

 

真っ黒な部屋ってないよな?

 

 

 

ピシャッと音がしてとびらにが閉まる

ザフィーは無言、俺も無言、フェイトは震えて俺に抱きついている……当たってるがそんな事を考えている余裕がない

……どうやって駆除すんだ?

 

「…….さて、どうする」

 

「………」

 

「………」

 

ザフィーの問いかけにも終始無言の俺達

いや、いくらなんでも繁殖力高すぎ、ダンボールが届いてどれくらいの時間が経っているのかは知らないがあれだけの量となれば逆にグロいぞ?

 

「ケン……ト」

 

そしてこの半泣きand上目遣いの子猫、持ち帰りホントに駄目ですか?

可愛い過ぎて全俺が萌えた

 

さて、かと言って問題が解決したわけでも無し

シグナムが帰って来ても一度で燃やせない可能性大、逆にやられるんじゃないか?

 

……どうするか

 



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進行する『G』

 

「さて……どうする」

 

「…………」

 

「…………」

 

ザフィーラもフェイトも何もいわない、そりゃそうか

扉を開けてから数十分、そう、本当はシグナムが帰ってくる時間

しかし彼女は……来ない

 

理由は簡単、ミッドに出没した犯罪者が近くにいるので捕まえてほしいとの局からの連絡があったから

当然、それが現行犯ならなおの事、彼女自身かなり渋ったようなのだが『部隊にGが出没した為出動できません!!』なんて言えない、てかふざけるなと返されるのがオチ

そういうわけでシグナムは来ない、現場検証やら事後処理やらで夜まで戻らない、ふざけるなっつーの

 

で、恐らくだが部隊長室では未だにGが増殖を続けている、原作Fateでの蟲蔵並みに充満しているのではないだろうか?

桜はあの中にいたんだね、ガチで同情するよ

 

「…………もう、六課ごと破壊するしかない感じがする」

 

「さっき言ってた写真は?」

 

「背に腹はかえられないよ」

 

フェイトさんが鬱になっております

彼女も乙女、長時間こんな空間にいる事自体が耐えられないよね

それはそうと部隊長室からはGはこれ以上外に出てこない

理由はと言うと俺の結界、皇帝特権使って『Gのみ対応』の封鎖結界作った、術式ならSランク並みの

そのせいで魔力凄い使ってるんだよな、俺だって無限に魔力があるわけでもないし早く解決しないとヤバイ

 

「ふむぅ、やはり『バル○ン』を投げ込むのが一番手っ取り早いと思うのだが……」

 

「コルテット製のか?駆除能力は保証するけど暫く部隊長室使えないぜ?完全破壊よりはいいかもしれないけど」

 

特に後処理、そこまでは面倒見ないぞ?

 

「それを抜きにしたらやっぱり焼き払う、かな?結界して外に炎がもれないようにしてから」

 

「まぁ、あの竜がいるから出来ない事もないと思うがあの大きさだと火力発電不足だな、少なくとも大っきくすればなんとかなるがどうやってはいるかが問題となる、開けた瞬間流れ込んで来るぞ?」

 

「うう……」

 

固有結界に閉じ込める……けどなぁ

『黄金劇場』を使ったのはもうなん年も昔の事だしあの時は二人だったから出来た芸当で……

まぁ歳月によってできる様になってるかもしれないけどあれ、みんな知らないんだよな、主に記憶の改変で

それに主な理由が黄金劇場にアレを入れたくない、汚れる

 

「フェイトちゃん、ケント君!!シグナムさんの代わりに助っ人呼んだよ~」

 

「はぁ?」

 

助っ人って、てかなのは、今までどこにいたんだよ

 

「ヴィヴィオを訓練場まで非難させてたんだよ、それとケント君が結界使ってるって聞いて助っ人呼んだんだ」

 

「へぇ、あ、話変わるけどお前、はやてがこんなになってる事に心当たりあるか?」

 

目線を移す

 

真白な灰、もといはやてがそこにいた

口からフワフワしている物が抜けそうだが放置で

そんな彼女を見て頬に指を当てるなのは

うん

 

「どうしたの?はやてちゃん?」

 

「………」

 

それは素で言ってるのかどうなのか……

取り合えずこの廊下見ろ、夢の部隊の成れの果てだ

まっ、話をもどして

 

「助っ人って誰?てかどこにいんの?」

 

「もうすぐ来ると思うよ、あっ、メール」

 

相手は……ユーノか……

ん?ユーノ?十九年間全く会ってなかったから忘れてた、確かなのはの恋人第一候補だよな?

いつまでも『友達以上恋人未満』の関係、本気でいつ結婚すんだよ、お前ら

 

「お待たせなのは」

 

タッタッタと走り寄って来る美男子……アレ?

 

(キャラ被ってる?)

 

今まで気にした事は無かったのだが……うん

 

後ろでくくった金髪の髪

エメラルドの瞳

どことなく『女』とも見える風貌

どちらもスーツ(俺は黒、ユーノは茶色)

自分で言うのもアレだがどちらも美男子

俺は今大人モードの為身長も差異無い

 

………違っているという所を上げれば……どちかと言うと俺は『凛々しくて』ユーノは『優しい』と言った感じか?

向こうも同じ事を思ったのだろうか、ユーノも少しの間硬直する、あ、焦ってる

 

「えっとえっと!!け、ケント・コルテット少将!!お初にお目にかかります!!」

 

「あ~、そんな硬くならなくていいよ、リラックスしていこ~」

 

硬過ぎも、ねぇ?

まぁ初対面でこれならまだいいほうかな?ガチな奴は何も言えなくて硬直したままの奴もいるし

 

「まぁ、はやて達と違って勤務外だろ?プライベートな感じでいいよ」

 

「「うっ!!」」

 

フェイトとなのはが今度は硬直する

お前らは勤務中、上官に対してホントは敬語なんだぞ?わかってるのか?

 

「け、ケント・コルテット少将」

 

「いや、冗談だから、無理して言わなくていいぞ?」

 

何でそこで涙目になるんだ、フェイトは?

 

「だって、ケントが何処か遠い存在になっちゃった感じがして……」

 

「はぁ?」

 

だからって泣くか?

 

「えっと、どうすればいいのかななのは?見た所かなり高度な結界が張られてる様だけど」

 

「け、ケント少将は術式のコピーお願い出来ますか?後は、こ、こちらが引き受けるので」

 

お前まで無理しなくてもいいぞ、なのは

てかこいつら、はやてに対してはちゃんと上官として扱うのに何で俺に関してはそんなに違和感MAXなんだよ、そんなに似合わないか?

まぁ……

 

「どうするつもりだ?結界の術者を移すと言っても問題解決にはならないだろ?」

 

「それは簡単、ユーノ君に結界を収縮してもらえばいいんだよ、ある程度小さく、Gをその場に集めたらケント君で全部破壊するって戦法」

 

「……………なるほど」

 

つまりは結界を搾まして中のGを小さい結界の中に集めるって戦法か

で、俺の手が空き、尚且つ小さい事で範囲を定めやすくなった『破壊』で一網打尽って事か、中々やるな、なのはも

 

「けど大丈夫なのか?相当難しいぞ?この結界」

 

「それは任せて下さい、支援は僕の本業ですから」

 

なるほどね、やっぱり本職は違うか

偽物の能力より日頃な努力だもんな、最終的には

 

「じゃあお願いする、ある程度縮小出来たら扉開けるから言って、俺が全部『破壊』する」

 

「はい、お願いします」

 

コピーが終わって教えたんだけど……凄え理解力、数分で読み込んぢまったよ、この天才

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果、なのはの案は上手くいった

部隊長室にいたGは全てバルーン状の結界の中に集められ、俺が完全破壊

気持ち悪かったな、アレ、なんだよギュウギュウにしてあの大きさって、四畳部屋一つ入るくらいの量いたぞ?Gが

グネグネ動いてるのは気持ち悪かった、トラウマだな、あれ

まっ、はやての宝物とかいうのも守られたし、部隊長の損傷もゼロ、センサーにも六課内にGがいない事も確認済み、これでようやく終わったという事になる

 

ただ………

 

「後片付けまでは……しないぞ?」

 

「………どうしよ、これ」

 

いや、誤算だったのよ、俺は『G』を完全に封じ込める結界を作ったけど……Gの排泄物までは考えてなかったんだよな~

おかげで部隊長は違う意味で真っ黒、そして臭い、うん、ドンマイ

はやてもまた違う感じで真っ白になってるし……はぁ

 

「取り合えずネリアが早く帰ってこいとうるさいから今日は帰るな、疲れたし」

 

「あっ、うん、お疲れや~」

 

アハハ~、と若干請われたはやてを尻目にその場を後にする

……また明日清掃班送っておいてやろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フム、それにしてもセイン、ウェンディ、この前君達が私に魔改造を頼んできた『アレ』はどこにやったんだい?」

 

薄暗いラボで一人の男が後ろではしゃいでいた水色の髪の女性、赤色の髪の女性に声をかける

二人は動きをピタリと止め、クスクスとお互い笑い合う……どちらかといえば悪役の笑い方ではなく『イタズラに成功した子供の笑い』に近いだろう

答えは簡単、数日前、この二人の父のラボ、研究機材の廃棄場である生物を見つけたのが事の始まり

探せば数匹を発見、何か面白い事に使えないかと思い父に魔改造を依頼、最強の『繁殖力』を……と……

たった数匹は一日で数十匹に増え、『ある場所』に到着するまでにまだまだ繁殖するだろう

そう考えると笑いが止まらない、これは一足早い宣戦布告なのだ、と

二人の父が疑問そうな顔をするので二人は「せーの」とくちを揃えて言う

 

「六課に送った(ッス)」

 

 

この事がバレて二人は六課前線陣+ケントからの地獄の晩餐が代わりに送られる事になるのだが、それはまた先の話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カサカサカサ………

 

影でなにかが動く

クネクネした触覚、黒光りした体

 

「ホント、いなくなってよかったね~」

 

「レーダーに反応ないそうだよ、これで安心だね」

 

 

カサカサカサカサ………

 

 

生物は生き残る為に日々進化する

科学の領域を超えた場所へと……

 

 

カサカサカサカサ……

 

 

壁の隅に空いた小さな穴

その中へスッポリと入る『何か』

そして……そこから光る幾つもの『目』

 

 

 

 

カサカサカサ………

 

 

 

カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ

 

 

 

 

奴らに滅びなど、ない

 



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終わりの始まり


消え去っていた話です

hotaruさんのおかげで載せる事が出来ました、本当にありがとうございました!!


 

「お疲れ様です」

 

「ああ、お疲れ様」

 

軽く敬礼をしながら局の制服をビシッと決めた初老の老人に挨拶する

 

後ろからはやはりいつも通りの護衛、全身黒スーツのいかにも怪しい集団なのだが今回ばかりは心強い、魔法の使用事態が原則禁止のこの場所で『素手での戦闘』が出来る人間がいるのは大きな違いだ

 

そして………

 

「お久しぶりですケントさん、いつもより増してカッコいいですね」

 

「久しぶりカリム、局の制服っていうのも中々に新鮮だぞ?お前も」

 

お世辞ではないのに~、と頬を膨らませるカリム、いつもは聖王教会でのシスター服?だからな、こういった制服は珍しい

 

「ケントさんはやはりあの特別処置の部屋ですか?私個人としてはここに来て欲しくありませんでしたけど……預言の事もありますし」

 

「まぁ大丈夫だよ、カリムも俺の実力知ってる筈だし特別にディランダルの持ち込みも許可されてるしな」

 

「ですが……」

 

渋るカリム、こうやって心配してくれるのは嬉しいんだけどここしかないしな、アイツが……転生者が出てくるイベントは……

 

「本当に危ない時は真っ先に逃げるから安心してくれ、いや、これじゃあかっこ悪いな」

 

「危険な時にかっこ悪いなんて関係ないですよ、私はケントさんが無事でいてくれるだけでいいですから」

 

ハハッと笑う俺

ったく、俺としてはみんなの方が心配なんだけどな、デバイス持ち込み禁止だし

後ろの護衛が耳打ちする……もうこんな時間か、ここに入る為に色々あったので思ったより遅いな

色々?記者やらなんやらを避けるために大変だったんだよ

 

「じゃあ、また後で、カリムも気をつけてな」

 

「はい、ケントさんも」

 

手を振って別れる

………さて、Stsの大一番

 

 

 

 

公開意見陳述会の始まりだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『よって今年の問題点、また~』

 

ステージの中央で毎年恒例の無駄な会議が開かれる

あそこにいるのは……知らないな、少なくとも将官職じゃない、地上の人間か?

 

近くにあったお茶に手を伸ばす、またよく分からん所に凝ってるお茶だな、俺としては爽健○茶の方が好みなんだが………

ふぅ、と一息ついてから背もたれにもたれる、今回は確実に事件が起こる事が分かってるからな、油断はしない

 

今回の陳述会、Stsでの大きなターニングポイントであり、次元世界全体を揺るがす大規模テロが起こるであろう今日

 

自身が狙われていると分かっていながらも、俺はここに来た

理由はやはり転生者、サンドロスというイレギュラーを除けば六課によって事件は自然と収束する、これはほぼ確実だ、戦闘機人ではフェイトやはやて達を倒せない

そこに転生者やサンドロスが割り込んでくるならば俺が介入すればいい、その為の俺なのだから

あと、ここで確かあの『脳味噌』達も殺された覚えがある、実質的に俺に対しての接触はなかったが転生者と同じ不安要素である事には変わりない、敵方転生者もあいつらの事ぐらいは分かっているだろう、生かしておいた所で利用価値もなし、これに関しては大丈夫

 

あと……レジアスに言っていた警備か、確かに増員はされた、確かにな

しかし……かといって防御が高くなったわけでもない、増員された人間は殆どが戦力としての足しにならない人間ばかり、実質的にプラスは0

まぁ俺も『戦闘員』を増やせとは言ってないからな、確かに人数は増えた、これなら地上の治安もある程度保たれる

あの老け狸が……やっぱり本職と俺とでは違うってことか

 

さて………

 

「事件が起こったところで俺はどう動くか……」

 

これが俺の悩みどころ、事件が起こったとしてどう動くか

出来るならば正体不明の転生者との正体は掴みたいところ、それさえわかればコルテットで何とかなる

しかし……どうやって掴む?

はっきり言って陳述会はルートが多すぎる、ギンガスバル然り六課然り、向こうからこっちに来てくれるのが一番なのだけどそう簡単にいくか?

う~ん、これはその場の状況に応じて考えるか

 

あと余談になるが今回のネリアはお留守番だ、俺みたいに役職持ってるわけじゃないからな

万が一の時の為にコルテット製の結界を貼らせておいた、これによって転移魔法でガジェットを送り込む事も出来ないし防犯プログラムの管理は全て爺に任せてある、まぁ安心と言っていいだろ

 

「それにしても……暇だ」

 

ふぁぁとあくびを出す

油断しない、と言ってもテロって確か陳述会の終盤だった記憶があるんだよな、暇じゃねぇかそれまでの時間

よくよく見てみると全員が全員話を聞いてるってわけじゃなさそうだし……はやて、お前寝るなよ、立場的にさ

テレビをつけて暇潰しをする

……どこも陳述会の報道ばっかりだな、少しはバラエティとか無いのか?

と、その時だ

 

 

ガガガガガガガガガガ!!

 

 

「………早くねぇか?」

 

うるさいほどの爆発音、今しがたつけたテレビでも地上本部が煙をあげているのが見える

原作ではもっと遅かった筈……まぁいいか……

 

「ケント様!!」

 

バンッ、と高い音を出して開かれる扉

………うん

 

「少し、どいてろ」

 

「えっ、なっ!?」

 

ステップで駆け出し、護衛の後ろに向かってデュランダルを放つ

その直後『がががが』と倒れる金属の固まり、ステルスにしたのか?

……俺が持ってたステルスデバイスか、破片回収して応用したと見ていいな

 

「なっ、なっ」

 

ヘナヘナと倒れこむ黒スーツの護衛

まぁデバイス無しでこいつらと当たるのはキツイわな、護衛達も対人を想定して来てる筈だし

ついさっきから魔法も使いづらいから本格的にテロが始まったと見ていいな……さて……

 

「行きますか」

 

初めっから全力全開で



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再戦

 

「よっと」

 

『破壊(クラッシュ)』を使って地面を壊す

範囲の固定が難しかったが……何とか成功だな

後ろを見る、護衛はいない、ちゃんと書き置きしてきたから大丈夫だろ

ったく、あいつら追尾だけは一級品だな、撒くのにどれだけ苦労した事か

さて………

 

「よいしょ」

 

衝撃を受けない様に上手く着地する

薄暗い、地下なのにテロのせいで電気が通ってないからか?

まぁ所々に転々としているのだが……

 

「行くか」

 

取り敢えずアホ毛が反応する方向へ走る

出来れば魔力は取っておきたいからな、AMFが展開されている今の状況なら尚更だ

アホ毛の事か?まぁ直感による補正だよ、うん

『ブロッソム先生』シリーズであっただろ?

こういう『行き先』を知りたい時にはアホ毛がどこを指しているかを辿ればいい

 

『公開意見陳述会』がいつもの様に始まっておよそ数時間、外に大きな動きがあった

なんでもシステム自体に侵入されて乗っ取られ、更には大量のガジェット……デバイスを持ち込めない陳述会での局員などただの紙同然だろう

今回、ネリアについてはコルテットに置いてきた、実際に管理局で正式な位を持つのは俺だけだ、ネリアの分も頼めば作ってくれるのだろうが生憎とそんな事にまで局の負担を上げさせたくない、コルテットには爺を中心に頼んだので恐らく大丈夫だろう

俺がリスクを犯してでもこの会に参加した理由は一つ、転生者関連の事でだ

原作賛成派だろうと、管理局アンチであろうとこの節目となる大きなイベントに参加してこない筈がない、サンドロスが殺された事でもう『傍観者』でないことは分かりきっているのだから

 

しかし、問題はある

転生者の情報が欲しいと思ってもそれが手に入る可能性は百パーセントではない、地上本部、機動六課、その他諸々、

色々な所で事件が現在進行形で起きている、俺の体は一つ、

その中で転生者がいる場所が分かっているわけじゃない

だからこそ、情報で妥協し、一番確実な場所を狙う

 

ピョコピョコ弾むアホ毛を尻目に長ったらしい道をただただ走る、てかここなんだよ、非難経路か?

原作でのなのは、フェイトもここに来てた筈だし……地上本部にはよく分からん事が多い

 

「……多分、ここの筈……」

 

トットと足を止める

地下の中でも何故かある広間、それでもやっぱり機動性重視の奴にはキツイかな、それと比べて広範囲に攻撃出来る奴にとっては絶好の場所

 

「上も本格的に始まったな……」

 

自分の上の階から微かだが戦闘音が聞こえてくる、やっぱ苦戦してるっぽいな、四番のせいで警備システムが乗っ取られてるんだから当然か、情報も敵の数も伝わっていないだろうから

 

はぁ、とまた溜息をついてから片手に持つ水を飲む、途中にあったので拝借させてもらった、水ぐらい別にいいだろ?

空になったペットボトルを投げ捨て、後ろからギュインギュインと音を鳴らす主を待つ、こう考えてみたらあいつとは初対面なんだよな、俺の事を知っているかどうか心配だ

 

「あ、あなたは!?」

 

「ん、こんにちは~」

 

アハハ~と軽く挨拶、こういうテロの時って見慣れない奴、怪しい奴は全部敵に見えるのが道理なんだよな、ここで怪しまれて得はないし、てか損しかないし……ん?いきなり笑ながら手を振るって結構怪しくないか?

 

「えっと、えっと、ケント・コルテット少将で間違いないですよ……ね?」

 

「ん、知ってんの?」

 

「あ、ハイ、六課後見人の一人でもありますし、その、妹からも時々話で聞くので……」

 

そういや今こいつって六課に手伝いに行ってるんだよな、娘二人して危険な事件に巻き込まれる部隊に所属しているお父さんってどんな気持ちなんだろうか………ゲンヤさん、だったか?

原作では数少ない『いい人』であり男性、これはいいとして二次創作ではレジアスや三提督からも一目置かれてるんだが……ホントかねぇ?

言い方は悪いがたかが一局員、更には非魔導師にそこまで期待はしないと思うのだが、というかこんな立場である俺さえ聞いた事ないし

おっと、話が逸れた、まぁ彼がいい人である事は確実なんだけど今俺の前にいる女性、名前は『ギンガ・ナカジマ』

妹と合わされば挑戦者達のプロジェクトが始動しそうな名前なのだがそこは省略、公開意見陳述会という場で、俺がこの人と合う、という事は俺がどのルートに進んだかお分かりだろう

そう………

 

「破壊(クラッシュ)!!」

 

「危ない!!」

 

ギンガが反応して俺を助けようと動くがそれより先に俺が飛んで来た『クナイ』を全て破壊する

当然、クナイによって斬り裂かれると思っていたギンガは目を丸くしてるし投げた本人は「チッ」と舌打ちして再びクナイを展開する

 

目線の先には煌びやかに光る銀髪に黒の眼帯、ピチピチのアンダースーツを着た幼児体型の戦闘機人

ついこの前俺を戦闘不能に追い込んだ奴、よくオリ主がこのイベントの前にこいつと接触してフラグ立ててこいつが改心し、ハーレムに加わる、とかよくあった感じがするがそんな簡単に終わるなら苦労しない、てかこいつ、忘れがちだが人殺しなんだぞ?ゼストこいつに殺されたんだぞ?

実際俺も死にはしなかったけど被害者の一人だし……

 

「タイプ0を回収しに来たのだが……まさかお前までいるとはな」

 

「残念だったね、ニ対一、逃げるか?逃がしはしないけど」

 

俺がこいつと接触した理由は二つ

 

一つ目、転生者に対する情報だ

ぶっちゃけ陳述会に来たはいいものの転生者と確実に接触出来るかと聞かれればそうでもない、いや、むしろ低い

六課、ギンガ、もしかしたらこのイベントには参加せず隠れているかもしれないし局員に紛れているのかもしれない

そうなればより確実に敵の正体を探る、そうなれば相手を知っているであろう奴を捕獲するのが一番

俺を含めた『転生者』によって確実にこの世界自体に変化は起こる、俺が一番顕著だろう、なんせ世界の財政を一身に背負う大会社が現れたのだから

今回、転生者がStsまで関わっていない理由は恐らく管理局アンチの為、そうなればスカリエッティという存在を忘れない

転生した時の特典と奴の頭脳、それにマッドに対し『俺』という存在が持つレアスキルが自分が持つ特典と同等な物、などと吹き込めば奴は動く、マッドなど所詮そんな存在だ

それでマッドが俺を欲しがっている理由は出来る、となれば戦闘機人の中でも比較的人気キャラ、チンクと接触する確率は高い

転生者など余程鈍感でもない限り原作キャラとの開墾はしたい筈だしな、それに向こう側に着く転生者は大体戦闘機人のハーレム作り、プラス原作後、洗脳した局側原作キャラのハーレムか?

う~ん、まぁこれはどうでもいい、所詮『成功したら』だ、失敗させれば何の心配もない

まぁこの理由でチンクが転生者の素性を知っている確率が高いと判断

『転生者』という単語は知らなくても戦闘機人でない味方と聞けばいけると思う

 

二つ目、なぜチンクなのか

まぁ上でも上げた理由もあるのだがぶっちゃけフェイト達と六課に戻るルートの方が戦闘機人と沢山会える、そうも思うだろう

三番もいた筈だしあの双子もいた筈だ、ルーテシアもいたしゼストもいた、特にゼストなどはどちらかと言うと話が分かる奴だしスカに対して直接味方、と言うわけでもないので少しの話し合いでいける可能性だってある

ただ……一つ問題点をあげるとすればタイミングを掴めない

どこでフェイトが足止めをくらったのかもわからないし六課に戻るとしてももぬけの殻だった場合意味がない、それにサンドロスが出て来た場合即アウトだ

ここにもサンドロスが出てくる可能性はあったのだが……どうやらいないようだ

もし出てきたのならば柱の一本ぐらいを破壊し、瓦礫を溺れさせて足止め、がここでは出来るからな

そんでもって戦闘を行っているであろうフェイトと合流、戦闘機人を捕縛、まぁ長々と話したがこんな理由だ

そんなわけで………

 

「さて、久しぶりだな、あの時の仕打ち、返させてもらえるか?」

 

「………」

 

無言でクナイを構えるチンク、どうやら向こうもやる気らしい

後ろでギンガも構えるが……え~と

 

「下がってて、ちょいこいつには因縁があってね」

 

「で、ですが人数は多い方が!?」

 

「いいからいいから」

 

最初に述べたようにこの場所では圧倒的に相性悪いからな、お前とチンク

どちらかというと防御系魔法嫌いで機動力で攻撃を避け、隙をついて力押しってタイプだろ?

それを考えると狭い場所でチンクとは無理、爆発自体威力高いし範囲広いし……外だったら逆なんだけどね、チンクもドバドバとクナイ投げれるわけじゃないから

 

それに比べ俺は……前回みたいに『被害を留める』とかを気にしなくていいからな、相性は良くもないが……よし……

 

 

ダッ!!

 

 

右足を踏み込んで一気に駆ける

チンクは五本のクナイを投影、こちらに向かって放射する

それを俺は………

 

 

デュランダルを左下から右上へ、クナイを滑らせるように上へと方向転換させる

 

 

その光景に目を見開くチンク、当然だ、爆発物に探知されないよう、剣の刀身でずらしたのだ、一流の芸当、正しく神業

だけど残念だったな、今の俺は……一流だ

 

肩にデュランダルを担ぐ様な形で一気に距離を詰める

チンクが防御魔法を発動するが……残念

 

 

 

「花散る天幕(ロサ・イクテゥス)!!」

 

 

それすらも、斬ってやる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて」

 

茫然自失とした目で天井を見上げるチンクに近寄る

彼女も敗北を悟ったのだろう、これ以上抗おうともせずに起き上がる、こう見ると案外潔いのかもしれない

 

「ハハ、一瞬か、先日お前を倒した出来事、あれは一体なんだったのだ?」

 

「周りの状況、圧倒的に俺が不利だったの目に見えてただろ?」

 

フッ、と笑うチンク、ったく

 

「私の完敗、降参だ」

 

「案外潔いな」

 

「あれだけの力の差があったんだ、今から逃げた所で意味はないだろう?」

 

「そういうものか?」

 

「そういうものだ」

 

そういうものらしい

 

「えっと……少将?」

 

「ん、ああ、お疲れさん」

 

戸惑いながら駆け寄ってきたギンガ

まぁ彼女自体どう対応したらいいか分からないもんな、実質的将官の面前だし

 

「取り敢えずこの子の護送しよ、バインドかけてくれる?」

 

「あっ、ハイ」

 

言われるがままにバインドをかけるギンガ

彼女に対しても抵抗する気はなさそうだ、大人しくお縄にかかるチンク、と、ここで彼女が口を開く

 

「それにしても驚いた、まさかお前がここにいるとはな」

 

「まぁな、陳述会にいたから当然だ、偶々ここを探索してただけ」

 

「そうか、なら………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コルテットに対する襲撃は、無駄になったのか」

 

 

 

 

 

 

思考が、停止した

 

 

 

 



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疾走

 

彼は平凡だった

 

ただ生活して、ただ遊んで、ただ楽しんで

 

そこに特別など何もない、青年は今のままでよかった

 

平凡な幸せ、ずっと続くであろう、この生活

 

しかし彼のそんな人生は、一瞬で幕を閉じる

 

交通事故、双方の不注意

 

彼は死んだ、あがいてあがいた末の、死

 

死は怖い、それは誰だって感じる

 

特別でも何でもない青年ならば余計だ、これから始まる人生、結婚して、家庭を作って……

 

死にたくない、生きたいと、そう願った

 

そして…………彼の願いは叶う

 

他ならぬ、『堕神』と呼ばれる存在によって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういう……事だよ」

 

こいつが何を言っているのか分からない

何でコルテットを狙う、あそこに俺がいないという情報くらい……掴んでる筈だろ?

 

「知らなかったのか?まぁ、もう遅いと思うが……」

 

チンクの言葉が言い終わるより早く俺は近くの人間に念話を繋ごうとする……くそっ、AMFで上手く作動しない!!

ならば転移……そう思ってコルテットの座標を指定し、魔方陣が開かれる……だが……

 

「なんでだよ」

 

一向に転移出来ない、否、妨害されている

コルテットで用意した転移阻害?という事は警備プログラムは作動してるのか?

馬鹿な、あれは俺が組んだプログラムにコルテットの技術を足して作ったんだぞ?

四番が直接ハッキングを仕掛けたのならばまだしも作動している状況での襲撃?

それだったらネリア一人で片付く筈……どう考えてもおかしいだろ!!

 

「クソッタレ!!」

 

地面を殴りつける

背中に冷たい汗が流れる、自身の直感が警報を鳴らす

あそこにはネリアがいる、警備プログラムが作動していない状況での襲撃、ガジェットだけならまだしも……まさか……

懇願する様にチンクを見つめる

汗が全身から流れ落ちる、嫌だ、もし、それが本当ならば……

 

「何を考えているのかは知らないが……残念だったな

 

 

 

 

 

 

コルテットに送り込んだのはあの狂戦士、サンドロスだ……恐らくあそこは火の海だろうよ……そして……」

 

 

 

 

壁を破壊してその場から走り出す

急がなければいけない、守らなければいけない

俺は……俺は!!

 

ここは地下、空を飛んでの移動、いや、あのガジェットが邪魔……だったら……

 

「駐車……場」

 

直感を頼りに壁を破壊し、辿り着いたのは駐車場……だったら……

 

「解析、解析完了、ハッキング終了、ロック解除」

 

目に付いたのは一台のバイク

電子ロックで守られていたバイクをデュランダルを通してハッキングする……時間は……三秒

 

力任せにハンドルを回す

甲高い音を立てては知り出すバイク、駐車場の中で時速200キロ

邪魔な壁や柱は全て粉砕し、全力疾走で出口から外へ出る

あちこちで上がる炎、地上本部へ流れ込むガジェット、それを止めようとする局員……

何体かがこちらに気づき襲ってくる、俺に対して発見すれば迎撃するプログラムでも組み込まれているのか?

なんにせよ………

 

 

「邪魔だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

なりふり構わず全てを『破壊』する

 

こんな奴はどうでもいい……目指すのは……コルテット……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青年は新しく命を授かる

 

自身が憧れた世界、前世で夢見たアニメの世界

 

『最高神』の邪魔をしろ、それが『堕神』の命令

 

自分を堕とした奴、復讐したい

 

しかし実力では堕ちた神などが森羅万象を司る最高神に勝てる筈がない、これはただの嫌がらせ

 

そして、その嫌がらせを完遂させるために自分自身が転生させた者にも『嫌がらせ』をする

 

生まれた境遇、両親が悪いわけでもない、環境に恵まれていないわけでもない

 

いや、恵まれてはいるだろう、ただ堕神は『転生』というものを使った

 

原作ハーレム、原作介入、その全てを奪った

 

しかし彼にとって、そんな事はどうでもよかった

 

『生きる』事の喜び、幸せな生活、彼の人生は前世と変わらないものだった

 

しかし……現実は甘くない

 

人間は、甘くない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バイクを最大速度まで飛ばしながらコルテットまで急ぐ

もともと持つ『騎乗B』、更に『皇帝特権』による上乗せ

クラクションを鳴らす車、うるさい

現に俺は全て避けている、通常の人間にならば何が起こっているのかさえ分からない早業で……

丘が見える……いつもは緑で覆われた広大な場所に、煌びやかな大豪邸がみえる筈だ

この『見る』ためだけに来る観光客は跡を絶たず、今回の為に絶対防御を兼ね備えた俺の家

 

だが、今の俺の目に映るのは光り輝く大豪邸ではなく

真っ赤に燃える廃墟だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青年は苦悩する

 

憧れの世界、望んだ世界、なのに……なのに今の自分はこんな所にいる

 

確かに自分は前世と同じ幸せな生活を望んだ、ああそうだとも、自分は幸せだ!!

 

だが……刺激があるこの世界で、主人公になれるこの世界で『転生者』である自分が何故、何故この程度の幸せで満足しなければならないのか

 

自分には力がある、才能がある、この才能のおかけで、父から認められ、弟からは尊敬される

 

だがなんだ!?こんな小さな世界で一生を生きろとでも?

 

世界はもっと広いはずだ、もっと楽しいはずだ、原作だってある、憧れたヒロインだっている!?

 

『転生者』である自分が、『オリ主』であらなければならない自分が、なぜ、なぜこんな『時代』に生まれて来なければならないのだ!?

 

狂ってる、本当の『主人公』である自分にスポットライトは当たらず、これから生まれてくる転生者が主人公となる……断じて許せない、許す事は出来ない!!

 

自分には力がある、知恵もある

 

ああ、なってやろう、あの堕神のいいなりになるのはシャクだが……その為の『特典』だ

 

ああ……

 

 

奪ってやるよ、主人公を………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ネリア!!」

 

燃え盛る豪邸に向かって叫ぶ

なんで誰もいない、消化活動はどうなってる!!

ガジェットは、サンドロスは!?

 

誰もいない大地に自分の声だけが響き渡る

 

戦っているのか?ネリアが?一体どこで?

 

連れ去られた事後?馬鹿な、なぜここには誰もいない、もぬけの殻なんだ!?

 

様々な考えが頭によぎる

 

ふざけるなふざけるなふざけるな、焦りで直感が働かない、どこだよ、どこにいるんだよネリア!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カスッ、カス、と芝生を歩く音がする

 

 

そして、何かを引きずる音

 

 

自身の直感が、生まれながらに備わった直感が反応する

 

 

何故かは分からない、ただ見てはいけない、全てが壊れる、そう感じた

 

 

だが、体は素直だ

 

 

恐る恐る、ゆっくりと……首が後ろを振り向く

 

 

血の匂い、焦げ臭い匂い

 

 

妹がいた、ネリアがいた

 

 

信じられない形で、ズルズルと、引きずられる形で………

 

 

髪を掴まれ、衣服は原型を留めておらず、全身からは血が大量に流れ落ち、腕や足には大量の傷跡

 

 

ゴミのように、髪を掴んだまま俺の目の前まで投げ捨てられる彼女

 

 

受け身を取れず、ゴロゴロと、大切な家族は、力なく転がる

 

 

そして、俺を、真っ赤に燃える炎と真逆、冷めたような目で見つめる、ネリアをこんな姿にした張本人

 

 

彼は笑う、十九年間、俺の隣で見せた、あの笑顔で

 

 

彼は笑う、共に笑ったように

 

 

彼は笑う、いつものように、主人を迎えるあの笑顔で

 

そして、いつものように、一言

 

 

 

 

 

 

 

「お帰りなさいませ、ケント様」

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには黒のスーツをネリアの血で真っ赤に染めた

 

 

鮫島が……立っていた

 



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彼の物語

 

朝日が差し込んだ直前の部屋、そんな時間に彼は起床する

同級生と比べると整った顔立ち、五体満足の立派な体、他と比べれば若干裕福な家

 

まだ時間は充分にあるのだが、彼はそのまま台所へと向かう

母親はまだ寝付いており、父は主人の家に泊り込み、恐らくは自分より早くに起き、今頃テキパキと部下の者へと指示を飛ばしている事だろう

 

そんな光景を頭に浮かべながら苦笑いする、手馴れた料理、母は多分また起きれなかったと自分に謝り、弟は喜んでくれるだろう。

自分は幸せだ、元よりだいぶ古い時代に生まれた俺だが……この家族に、この世界に不満を持ったことはない

よし、出来た、と目の前に並べられた日本食をテーブルに並べる、二階から階段を降りる音がする……母が起きたのだろう

その後からまた足音、母が申し訳ないように、されど嬉しそうに席につく

弟が自身の料理に目を輝かせ、いただきますと無我夢中で食いつく

何気ない日常、これが……幸せ

確かにこの世界には沢山の出来事が、刺激が満ち溢れているだろう

ただ……今の幸せを壊してまで願うものでもない、自分とは違う転生者?

俺は原作介入出来ない?だからどうした、俺は……小さな幸せさえあればそれでいい………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで……だよ……」

 

 

今だに燃え続ける豪邸を背に、ケントが信じられないような……受け止めたくないような目でこちらを彼を見つめる

信じてた、頼りにしてた、かけがえのない存在だと思ってた

いつも自分を支えてくれる存在、なのに……なのに……

 

「ああ、ああ、あぁぁぁぁ」

 

手がネリアの元へと伸びる

変わり果てた姿、これが、これが家族のものだとは思いたくない

彼女を抱き寄せる、懇願するように胸に手を当てる……息は………ある

 

「ネリア!!ネリア!!ネリア!!」

 

無意識の内に治療魔法の術式を組み立て、彼女に手を当てる

柔らかい光に包まれる彼女、傷の治りが早いとはいえないが、さっきと比べれば断然マシだ。

 

俺が悪いのだ……

 

何が、何が一人で生きていくだ、何が誰に対しても油断をしないだ

 

あの時に誓った事はなんだったんだ、強くなろうと……誓ったじゃないか

 

なのに、俺は……みんなと共に過ごして……心があまくなって、結局は何も守れていない

 

その場から顔を上げる、いつもと変わらない笑顔でこちらを見つめる……鮫島……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原作までまだまだ何十年もある

 

そう、『原作』だ、この世界の中心部でもあり、軸でもある、それ以外の事柄などただの『設定』でしかない

………俺は確かに幸せを望んだ……だが……小さ過ぎる

鮫島家は代々、主人を持ってその一生を主人に尽くす、この俺は弟とともに『バニングス家』で働く事になるだろう

確かに、原作の流れに乗るとするならば俺は確実に『アリサ・バニングス』との接触を持つ事になるだろう……だが、所詮その時点で俺は『モブ』

そんなのでいいのか?『堕』がつく神でも『選ばれた』存在であるこの俺が?

たしかにこのままでも充分に幸せだ、俺が望んだ光景だ

しかし、しかしだ、よく考えてみろ、今の俺には『これ以上の幸せを掴み取る力がある』

そんな人間がなぜ今のままで満足しなければいけない、俺はこの時代に生まれ、もう一人は主人公達と同じ年に生まれてくる、理不尽だとは思わないか?

生まれてくる時点でこれだけの差があるのだ、いや、もう『差』などではない、『競い合う』ことさえ出来ない

俺は新たに生まれてくる転生者が原作に介入し、『ヒーロー』となっていく姿をこんな、こんな小さな世界から指を咥えて見ていろと?

そんな事ありえないだろう!!

弟が武道の鍛錬に励む、父が、母が俺を『天才』と褒め、弟からは尊敬されている

いつか立派な執事になるだろうと、お前の上に立つ存在はいないと

ああ、確かにな、このスキルによって俺の将来は約束されているだろうよ、幸せな未来が待っているだろうよ

だけど……駄目なんだ、俺は『今』に満足出来ない、この世界に生まれ落ち、ただのモブになる?ふざけるな

俺には幸せを勝ち取る権利がある、主人公となるべき権利があるはずだ、その権利を、どこの馬の骨かも分からない転生者に奪われるなんてありえない

………こんな狭い場所にいること自体が駄目なんだ……

こんな小さな幸せに未練はない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで、なんで、なんで!!」

 

ネリアの治癒を続けながらケントが叫ぶ

懇願、嘘であってほしいと、何故こんな事をしたのかと……

ケントには分からない、初めから権利を奪われた人間の気持ちは、生まれながらにして負けていた人間の気持ちは

しかし、それならば可愛かった、それならばただの嫉妬、だが……時間は人を変える

 

 

 

「この世界は私の物である筈なのですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原作との大きな違い、こんな物は、原作には無かった

 

『コルテット』

 

魔力持ちの彼が地球に通りかかった次元航空船に転移し、密航を遂げてから始めたのは原作との違いを探すこと

現に自分という存在によって鮫島に兄がいる、というイレギュラーが生まれてしまっている

ならば、これから生まれてくる転生もなんらかの事で原作に影響を与えているだろう

そう、鮫島の予感は当たっていた、完全なる形で、目に見える形で

次元世界の経済を一身に束ねる大財閥、管理局にも顔がきき、技術の常に最先端を走る存在

彼の行動は早かった、今まで磨き上げた自分をアピールし、コルテット専属の護衛となった

原作までまだまだ時間はある、彼は努力した、少しでも力をつける為に少しでも這い上がる為に

自分は主人公になれると、転生者を蹴落としてでもなってやると

そして………

 

「君が、鮫島君かね?」

 

「本日より護衛を務めさせてもらいます。鮫島と申します」

 

彼の主人、『ギル・コルテット』、のちのケントの父親の付き人となる

 



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転生者

 

「どういう……意味だよ……この世界が……自分の物だなんて……」

 

掠れる声で目の前の男に問うケント

その手の先は未だにネリアに向けられ、目は髪で隠れて見る事が出来ない

 

「あなたは疑問に思った事はありませんか?この世界は『高町なのは』とヒロイン達を『軸』として回っている。なぜ?

確かに彼女達は主人公、そしてヒロインだ、だが彼女達がいる限り私たち『転生者』はただの登場人物、モブ同然なのですよ、私は『主人公』になりたい、一生をモブとして終える気なんてさらさらありません!!」

 

勝ち誇ったように、高らかに宣言する鮫島

だからなんだ、その為だけに……

 

「その為だけに、ネリアをこんな目に!!」

 

デュランダルを真っ直ぐ、鮫島に向ける

殺傷設定、透明な剣、そんな物を見せられても奴はニヤニヤと、ただ笑う

………こいつ

 

「デュランダルは誰が作ったのか覚えていますよね?いくら剣を透過させたところで刀身は嫌というほどわかっているのですが」

 

「じゃあぶっ殺される準備はできてるって事だよな」

 

バッ、と剣を振るう

早くこいつを斬り倒したいという衝動に駆られるが……先ほどから感じる嫌な予感……なんだ、これは

 

「ぶっ殺される……ですか、成る程ね、まぁ私の目的が達成されればこの体は用済みとなるのですが………」

 

「何を言ってる」

 

「こっちの話です。ですが……ケント様は知っていた方がいいですかね」

 

ポケットからカード型のデバイスを取り出す鮫島……なんだ……

 

「ケント様もそのご自慢のハッキング能力で知っていると思うのですが……こんな言葉聞いた事がありませんか?

 

『魂の移転』」

 

 

自分の目が細まるのが分かる

ああ、知っている、コルテット中でも最大の闇の研究、自身の魂を他者に移すという非人道的な開発

自身の皇帝特権よって作り出されたハッキング能力を持ってしても研究の全貌は明らかになっていない……分かるのは……あれだけが俺が生まれる前から進められているプロジェクトだという事

 

「ここで戦う前にケント様にいい事を教えてあげましよう、私の特典の一つは『魂の改竄』です」

 

「なんだよ……それは……」

 

また出てきた『魂』という単語、特典の効果は分からないが……ここまでくれば分かる事もある

 

「あの研究の第一人者は……お前って事か」

 

「そうですね、当主様の目を欺くのにも苦労しましたよ、絵に描いたような正義論には飽き飽きしてたんですけどねぇ」

 

ハハハと笑う鮫島……当主、ってことは…

 

「俺の、親か……」

 

「まぁそんな感じですね、もうあなたの親ではありませんが」

 

まぁ意味不可解な事を言い出す鮫島

俺の親が俺の親ではない?どういうことだ

それに……絵に描いたような正義論?

 

「私の特典、『魂の改竄』には大きく分けて二つの能力があります、一つは『魂の変更』まぁこっちは後々説明するとしてもう一つは……『魂の移転』です」

 

「……研究と同じ?」

 

どういう事だ?

 

「同じ性質を持つ相手に対し自分の魂を飛ばし、そのまま移植する、移植先に元からいた魂はそのままマナとなって消滅、まぁこんな感じです。

まぁ、この能力の問題点を上げるとするならば『私しか出来ない』という点でしたね、それに私の魂は他とは違う、そこらのモブに移転しようとしても相手の体が耐えきれずに即死ですからね、話が逸れました、それは置いといてです、その時の私にとってコルテットで真っ当な正義を振るうご両親は邪魔でしかありませんでした、コルテットという組織はこの世界では大きな位置を占める、この組織を私の思い通りにさせるには奴らをどうにかするしかなかった」

 

淡々と話す鮫島……こいつ……

 

「それでも不正を一切しない彼らを相手取るには中々しんどかったですよ、そのせいで指示は多く彼ら自体も魔導師でしたからね、魂の移転研究も『彼ら』の資金提供と助けがなければする事は出来なかった」

 

「………彼ら?」

 

「最高評議会ですよ」

 

サラッと発せられたその言葉、原作で最もダークゾーンにいた存在、自らを正義と名乗り、多くの人間を犠牲にする生に執着した者達………

 

「彼らの願いは簡単でした、本局、地上本部と並ぶ力を持つ民間団体を恐れたのでしょうね、たった一つだけ、『コルテットを管理下に置きたい』、それだけでした」

 

「無茶だ、会社にはトップがいる、それに地上本部とコルテットの力は実質的に並んでいる、強迫も効かない」

 

「だからこそ『魂の移転』」

 

ニヤリと笑みを浮かべるあいつ……どういう事だ……

 

「簡単です、ご両親をそのままトップにしたまま、最高評議会で操ればいい、そうする事で私の権威も上がり、目的の達成までにも近づく」

 

「まさか、幻術か」

 

「いえ、それならば直ぐにバレてしまう、私たちが欲しいのは『彼らの体』、中身には興味ありません」

 

ごくっと息を飲む、まさか………

 

「魂の移転研究の目的は私の能力を使い他者の魂を他者移転させるため、そして………

 

 

 

 

 

 

 

ご両親には退場いただきました、今の彼らの中身は腐りきった評議会の人間ですよ」

 

 

 

 

 

 

全てのピースが、埋まる

あの優しそうな両親が、なぜ顔を見せないのか

コルテットが行ってきた非人道的な研究が、なぜ管理局に掴まれないのか

 

そう、なぜなら……両親の中にいるのは別の人物だから

あの笑顔は、俺が生まれてきた時に見せた涙は……間違いでは……なかった……

 

「さて、十九年も前にもなりますか、ここまでくれば分かるでしょう?私が言いたい事は、私の魂を誰かに移植しようとすれば『転生者』という事で魂の質が違ってしまう、ならば私が他者に魂を移すとなれば『転生者』という規格外の物を内包していた体にしか不可能なのです。

昔、これもまた十九年、あの時は失敗してしまいましたが私の崩れていた魂が戻ったのがStsの時期だったのもまた運命、あなた風に言えば『Fate』でしょうか?」

 

「我が才を見よ」

 

黄金の魔法陣が俺を輝かせる

 

「許せませんか?許せないでしょうね、ですが私にとってはその程度、物語はここからです、私が主人公に、私がこの世界の主となる」

 

「万雷の喝采を聞け」

 

少しづつ、少しづつ世界が塗り替えられていく

ネリアを見る、必死に戦ってくれたのだろう、最後まで諦めなかったのだろう

もう大丈夫、後はお兄ちゃんに任せてくれ

 

「ヒロイン?ハーレム?そんな物にはもう興味はない、この世界の主人公は私となる、そのためには全てが邪魔だ!!」

 

「インペリウムの誉をここに」

 

相手の実力は未知数、こちらは筒抜け、だがそんな物は関係ない、俺は……ただ……

 

「咲き誇る花の如く」

 

「その為の第一歩、ケント様

 

 

 

 

 

 

 

あなたの体、もらいます」

 

「咲き狂え!!黄金の劇場よ!!」

 

 

こいつをぶっ殺すだけだ!!

 



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一枚上手

 

光輝く大舞台、今にも大歓声が聞こえてきそうなその場所にいるのはたったの二人

 

一人は目の前の男を睨みつけ、もう一人はただただ薄ら笑いを浮かべている

 

大きく一歩ケントがその場を踏み出す……そして……

 

「はぁ!!」

 

「……フム」

 

一瞬だった、目にも留まらぬ早さと言う物はこういう物を言うのだろう

その一瞬にして降りかぶられた不可視の剣は鮫島が持つ刀型デバイスによって防がれる、そこからまた目にも留まらぬ剣撃の乱舞、風が吹き狂い、火花が耐えず散る

まさに一流さえ超えた世界、黄金劇場の効果は絶大だった

しかし……驚きなのはその全てを防ぎ切る鮫島の実力、あり得ないのだ

黄金劇場は自らのステータスアップと相手のステータスを下げる役割を持つ、一流のその先、神業にまで匹敵するケントの猛襲をステータスが下がった状態で軽々と防ぐ鮫島、一体誰が想像するだろうか

黄金劇場が上手くはたらいていない?いや、それは絶対にない、黄金劇場によるパスはちゅんと繋がっている

ならばなんだ?もしこれが鮫島本人の実力はならば現実世界の彼は一体どれほどの実力者なんだ…………

 

(それに………)

 

絶えず猛襲を加えながらチラッと鮫島が持つデバイスを持つ

普通だ、逆に普通過ぎるデバイス、こんなデバイスがデュランダルの、尚且つ神業にまで達したレベルの剣撃に耐えられる筈がないのだ、絶対すぐデバイスが耐えきれなくなって破損する

だが、それがない……理由は直ぐに分かる、鮫島の手からデバイスに伸びている黒と赤の線、一見したら『汚染』されているように見えるデバイスの形状……ここから分かることは……

 

「騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)か……またマイナーな能力を……」

 

「そうですかね、案外使えますよ?これ」

 

確かに、『武器と認識した物を自身の宝具に変える』という能力はこれ以上ないくらいに強力だ、コルテットの技獣の結晶であるデュランダルでもただのデバイス……聖剣と平気で渡り合える宝具とでは格が違う

だがそれでも『王の財宝』や『無限の剣製』と比べると見劣りしてしまうような能力をなぜ……それにそれだけでは今の俺と真っ向から斬り合う事なんて出来ない、あれはどこまでいっても『武器』であって『技術』を上昇させるスキルではない

 

(……決めるか?)

 

黄金劇場内でこれだけの力を発揮している鮫島、神業に達する剣撃を平気な顔で受け流している姿でよく分かる

このまま剣撃を続けても拉致があかない、相手があともう一つ、どんなスキルを持っているか分からない以上早期の決着が望ましい

このまま打ち続けてもデュランダルが先に限界に達する、そうなれば苦戦する事は必須だ。

 

刹那、肩を入れて鮫島を押し出す、右足を前に蹴り出して即座に相手との距離を開く

その時間一秒足らず、まさに高速の早さで行われた出来事

デュランダルから右手を離し、そのまま前に、範囲固定、対象固定、右に避けても、左に避けても逃げられない

そして、俺は目を見開く

 

「中々よい手です」

 

「なっ!?」

 

彼の動きも一瞬だった

崩された体制を体を捻る事で瞬時に直し、更には踏み込んだ右足で俺との距離を一気に詰める

俺がした行動よりも早い、デュランダルは片手になっている為に無防備、右手をブラブラと前に出しているだけ、鮫島は右腕を腰の位置まで戻し、そして……

 

「ガハッ!!?」

 

「………フゥ」

 

腹に強い衝撃、口から血を噴き出す

人間とは思えないスピードで吹っ飛ぶ

壁には当たる事なくそのまま地面に何度かバウンドした後ゴロゴロとまた数十メートルの長さで転がる、デュランダルはもう手にはなくバウンドしている時に離してしまったのだろう。

ガッ、と音が響いて地面に突き刺さる音……クソッ、遠い!!

 

痛みを堪えながら立ち上がる、体は思いっきり吹っ飛んだ割には比較的軽傷、あいつは俺の体を欲しがっている、使い物にならない様にする事はないだろう

それにしても………

 

(どういう……事だよ)

 

先程の剣撃と今回の打撃、何らかのスキルを使っているにしても皇帝特権によって作られた『黄金劇場』の前ではスキル自体も弱体化してしまう筈

なのに……俺の底上げされた技術さえも上回るあの力……意味が分からない

 

「確かに、『破壊(クラッシュ)』を真っ正面から喰らえばいくら私でも即死でしょう、ならば使わせなければいいことです」

 

「ああそうかよ、だったらこの距離で」

 

右手を再度前に出す、鮫島との距離は十分、いくらなんでもこの距離を一瞬でよけるなんて不可の……っ!?

 

「ぐっ!?」

 

「隙だらけですよ」

 

叫ぼうとした瞬間に飛来するデュランダル

何とか躱すが距離また一瞬にして詰められる……舐めんな!!

 

(主張、クラス『アサシン』、所得スキル………)

 

横薙ぎに降りかぶられる鮫島のデバイス……遅いんだよ!!

 

「八極拳に……」

 

刹那、腰の位置まで下げた拳を一気に開放する

Fateシリーズにおけるチート武術……

 

「二の打ち要らず!!」

 

瞬間、鮫島を中心に広がる凄まじい衝撃波

振りかぶったのは胸の部分、普通の人間ならば肋骨が全て陥没し、内臓が破裂する程の衝撃……普通なら………

 

「なん……だよ……」

 

「これも中々です」

 

俺が込めた一撃は、鮫島の左手一本によって防がれる

『化け物』、その言葉を一身に感じる、黄金劇場内においては俺が中心に世界が回る、俺以外の敵はヒーローに倒される悪役でしかない

だが……どうだ?

倒す筈の化け物にヒーローの拳は届かず、威勢が良かったのは最初だけ

わけがわからない、これが『人』の手で行われているのであれば鮫島は神様だって殺す事が出来る………

 

「さて、私は男と手を繋ぐ事で興奮する様な趣味は持ち合わせておりませんので……」

 

「っ!?」

 

「離しましょう……か!!」

 

腕を弾かれ中央が無防備となる

目の前には宝具と化したデバイスに魔力を溜める鮫島……くそぅ………

 

「終わりですよ」

 

瞬間、真っ赤な魔力の本流が俺を包み込む

何とか意識を保つために精神を総動員する、非殺傷設定値での砲撃なので外傷こそないが……痛覚は普通に感じる

体中が焼ける程痛い、意識が遠のく

だけど………まだ………

 

 

 

 

 

 

 

 

「……随分としぶといですね」

 

目の前で疲労困憊になっている青年を見ながらポツリと呟く

黄金に光り輝いていた劇場は崩れ落ち、彼の魔力がいかに狡猾しているかが見てとれる

そもそも彼の魔力はS−、自分の魔力はS、砲撃の中で意識を保つために魔力を総動員したのだろう……

非殺傷設定なので完全には仕留められなかったがまあいい、あの体を使えなくしてしまうと自分の計画が台無しだ、何としても原作キャラと親密であり、若いあの体を奪わないといけない………

 

「いい事を教えてあげましょう」

 

どうせ最後なのだ、自分の最後のスキルを教えてあげてもよいだろう

 

「わたしの三つ目のスキル、それは『従は師より天高く』、簡単に言うとそうですね……『相手より一枚上手となるスキル』です」

 

聞こえているのかはわからないが……確かに立っている、倒れるまで話し続けるのもいいだろう

 

「そうですね、さっきの戦いを例にあげると……剣技では私はケント様より『一枚上手だった』、私はケント様がスキルを発動するよりも早く発動を防いだ、私が『一枚上手だった』、八極拳、ケント様が拳を私に当てるよりも早く筋力を上げて防いだ、『一枚上手だった』、そうですね……黄金劇場による弱体化を期待していた様ですが私のスキルはその程度では弱体化しない、『一枚上手だった』、さっとこんな感じです」

 

相手より『一枚上手』となるスキル、それはケントが持つ『皇帝特権』のアンチとなる

いくら『皇帝特権』によって技術上げても鮫島はその上をゆく、なんせ『一枚上手』なのだから

それに加え持つ武器が全て宝具となるオマケ付きである

 

「まぁ、相手一人を尊重して発動するので大勢対一、などでは弱いのですが……他にもこれも『魔力』で維持しているので相手の魔力が私よりも多い場合一枚上手となる事は出来ませんがね、少ない魔力を使って多くの魔力でを作るなんて不可能ですから」

 

やれやれ、と頭に手を置いて溜息をつく鮫島

今回の場合も鮫島の魔力はケントの魔力よりも高い、結果的に意味は無かったのだが……

 

「で、まだこんな状況にもなって諦めていないと」

 

鮫島がケントを見てまたやれやれと溜息をつく

ケントの手には再びデュランダルが握られ、その刀身には少しづつ溜まる魔力

ケントの魔力は狡猾しており、鮫島とケントの武器の差は歴然

それでも、彼は最後の一刀に全てを託した

 

「私はこんな少年漫画的なイベントは好きではないのですが……こういうのって大体善が勝って悪が負けるじゃないですか………私はまだ主人公ではないので悪ですが……まぁ直ぐに変わりますが……」

 

一気に力を抜く鮫島

魔力など集めていない、ただの自然な構え、だがそれだけでも、彼がいる事でまた違ったものになる

 

「まぁ、漫画なら勝てたんじゃないですか?」

 

「エクス………」

 

ボロボロの体に鞭を打ってケントが一気に飛び出す

降りかぶられるのは黄金の剣、約束されし勝利を誓う剣

 

 

 

しかし……その剣は鮫島に届く事はなかった

ケントの胸には鮫島の腕、そしてそこからは青い炎

 

瞬間、ケントの元に集まっていた魔力が拡散する、もとより『出来なかった』ように

 

 

 

「漫画ならね……」

 

鮫島の冷たい声が赤く燃える世界で響く

 

そしてケントはこの瞬間

 

 

 

 

全ての特典を失った

 

 

 



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雨の中で

 

ガクリ、と膝をつく

 

自分が何をされたのかが分からない、ただ一つ言えることは……俺から何かが奪われた

直感も皇帝特権も働いている感触がない……意味が分からない、何が起こっているのかも……

薄れる意識の中で深く考える事も出来ず、デュランダルを地面に刺して何とか倒れたいように体を支える

 

目が霞む、魔力は底を尽きた……ネリアに目を向ける、怪我は何とか治り、気絶しているためにスヤスヤと眠っているようにも見える……最低限、彼女だけでも………

 

「自分が何をされたのか分かっていませんね?」

 

真上から鮫島の声が聞こえる

憎悪も何もない、もう抵抗する手段もない、後はただ、自分の体を奪われるのを待つだけ

 

「私が行ったのは『魂の変更』、ケント様、今の貴方の魂は特典が刻まれている『転生者の魂』ではなく『本来生まれてくる筈だった魂』に変更させてもらいました、まぁ変更と

いうよりは一種の『封印』と考えてもらった方がいいでしょうが……」

 

意味が分からない、一体……

 

「貴方のその体には元々いる筈の魂があった、そこにケント様、転生者の魂によって圧迫してしまっていたかたちですからね、今回はケント様の転生後の魂を封印させてもらいました

まぁ貴方という人格はもうこの世界に定着していて、尚且つ容姿についても世界に『設定』として認められていますからね、変わらないのは当然でしょう」

 

つまりは……対転生者用のスキル、特典が刻まれた魂をそのまま封印し、元々の魂と交換したというわけか……

だが……こいつが欲しがっていたのは転生者の体の筈だ………

 

「ちなみに私の移転についてはなんの問題もありません、私が欲しいのは『転生者』という規格外の物を入れる事が出来る体ですから……そうですね、このスキルの欠点を述べるとするならば『上位には出来ない』という事でしょうか、あくまでも転生者の魂を元々の物と変えるだけ、もっと言えば格を下げるだけ、他人の魂の格を上げて転生者と同等にする事は出来ませんね、それが出来たら最早神の領域だ」

 

て事は自分の魂の格も下げる事ができるのか……まぁそれをしてしまったら自分の特典を消してしまって一生元には戻れないが……

 

「まぁ一種の封印ですから、私を殺すか魔力を空にすれば解除されるのではないでしょうか?移転をした後にマナとなった魂はその時点では消滅してしまって無理ですが」

 

ハハハと、愉快そうに、楽しそうに笑う鮫島

燃える大地をバックに俺は膝をつき、鮫島は笑う

特典を奪われ、援軍は期待できない

せめて……せめて……

 

「ネリア……だけは……」

 

「………はい?」

 

「ネリアだけは……お願いだ」

 

大事な妹、俺が負けた今、彼女を守る存在はここにはいない

ガジェットの一体でも来れば終わりだろう、最後の願いに、せめてネリアだけでも無事でいてほしい

 

「コルテットの技術で作った幻術装置をたった一人、『想い』で打ち破る、本当はここで殺してしまいたいところなのですが……」

 

はぁ、と溜息をつく鮫島

 

「生きていける事は生きていけるのではないですか?生きていけると言っても『一生魔力を供給し続ける燃料』になるだけだと思いますが……」

 

「て……めぇ……」

 

服の袖を掴む

力が入らない、体が思う様に動かない

そんなのは許せない、自分はどうなってもいい……せめて、せめて………

 

だが、そんな想いとは裏腹に袖にを掴んでいた手は簡単に振り払われる

首元に刀型デバイスが添えられる……デュランダルを持ち上げる力さえ……残っていない

 

「さて、今の状態では移転しても動けませんからね、まずは意識を完全に奪ってから治療するとしますか」

 

デバイスに魔力が集まり始める

真っ赤な魔力は燃えているようで……俺から全てを奪う力

両手はとっくに地面についた、顔を出しロクに見る事も出来ない、ただ刀が振り下ろされる時を待つのみ……だった………

 

「っ!?くっ!!」

 

「……………」

 

ゴウッ、と風が吹いたかと思えばそこにあったのは大きな背中

懐かしいような……頼れるような……

鮫島さえも目を見開いて驚いている様子が分かる、そういう俺もなぜなのか分からない

 

沈黙の後、原因となった主が口を開く

 

「この程度で……縛りきれると思うなよ小僧」

 

その声にはどこかしら威厳があり、彼が怒っているという事を嫌でも思い知らされる

ぎこちない動きで構える彼……なんで……だよ……理性が……

 

「久しぶりじゃのうコルテット、色々と迷惑をかけた」

 

「…………」

 

口を開いて声を出そうとするが出た音は掠れ掠れで上手く言葉に出来ない

それに対し……担任は一度うん、と頷くと目の前にいる鮫島に目を落とす……

 

「ロストロギア『レリック』、上手くわしを縛っていたが甘かったのう……生徒のピンチ、ただ見ているだけなど教師失格じゃろう」

 

「ほう、それにしてはアグスタで色々としたそうではないですか?」

 

「あれは扱きじゃ、樽んどる……とな」

 

余裕そうに言い返す担当だがその顔からは汗がポタポタと落ちている

戦っているのだろう、自分自身と、俺ではどんなものなのかは想像もつかないが恐らく一瞬でも油断すると理性を全て持っていかれる程……

 

「間に合ってよかった、豪邸にただただ火を付ける作業など飽きたわい」

 

「間に合って良かった?貴方、一度私に殺された事、忘れたわけではないでしょう?それに………」

 

プルプルと震える腕、動き自体がぎこちない、あれでは満足に動く事も出来ないし剣を振るう事さえ難しい

 

「まぁ役割としてはもういりませんし……使い捨てですね、貴方がそこをどかないと言うのなら殺しますが」

 

「やれるもんならやってみぃ」

 

「では」

 

刹那、高速の早さで鮫島が駆ける

担当はモーションさえ取る事無く……その宝具によって腹部を貫かれる

凄まじい程の血が流れ落ち、口からは大量に吐血する

手から剣は落ちている、いや、意図的に落とした

鮫島がデバイスを引き抜こうとするが動けない、当然だ、今の彼は担当の太い腕で肩をガッチリホールドされてしまっている状態、いくら『一枚上手』となっても筋力までは不可能らしい

 

そして………

 

「転移魔法!?」

 

「どこに着くかも分からんよ、ただの時間稼ぎじゃ」

 

口から血を吐きながら小さく担当がつぶやく

鮫島が必死に離れようとするがここが正念場と、担当は絶対離さない

掠れる目の先で担当がこちらに振り向き、笑った

最後に、『悪かった』……と………

 

鮫島が断末魔の様な叫び声をあげ、二人が光となって消える

残されたのは意識が朦朧としている俺と気絶しているネリア、豪邸は未だにバチバチと勢いよく燃えており夜の闇を照らしている

体から力が抜ける、バサッと地面に倒れ伏す

意識が遠のく、闇へと引きずり込まれる、俺はなす術がないまま、自然と意識を失った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨が降っている

大きな建物が燃えたからだろうか、炎は着実に小さくなり、闇が再び世界を覆う

ふと、柔らかな感触が伝わる

暖かい、誰かに抱きしめられている

意識など殆どない、次に起きる頃にはこな光景を覚えているかさえ怪しい

ぼやける視界の中で、雨に揺れる金髪の髪

……これは、雨なのだろうか?

額に、口に当たる雨がしょっぱい、彼女は俺の顔を抱き寄せ、小さく何かを呟く

手を握られる、暖かい

今にも崩れそうな顔で、悲しそうな顔で……もっと笑顔になれよ、お前にはそっちの方があってる

当然そんな事を言える筈もなく、口も動かない

おでことおでこが……当たる

意識が薄れる、全身の感覚が遠のく

だけど……最後に一言だけ……

 

「フェイト」

 

声は掠れて、小さくて

絶対に聞こえない声だけど、彼女は小さく頷いた

そして俺は今度こそ、本当に意識を失った

 





『にじファン』で行ったアンケートによってvividからのルートはヒロインがフェイト中心となります
『結婚』とかはしませんよ?ケントにそんなに早く幸せになってもらっては困ります
ただ単にケントも意識し始めるというか……睦まじい感じで
勿論、はやてやカリムも出しますよ(=´∀`)人(´∀`=)


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主人公

その赤子は死すべき運命にあった

 

生まれてくる前にして莫大なる力を保有し、その力は母体、胎児の二つに多大な影響を与えた

 

力が充満し、密度が高くなる

 

両親は必死に戦った、もてる技術を全て使い、自分達の子を、生まれてくる赤子を最後まで諦められなかった

 

希望にすがりつき、最後の最後まで諦めず……奇跡は起きる

 

力の収縮、密度の激減、本当の奇跡だった

 

ある者は歓喜し、またある者は世界で初となる存在が生まれてこない事を悔いた

 

両親は涙を流す、よく生まれて来てくれたと、私達の元に来てくれてありがとう……と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは………」

 

ゆっくりと目を開ける、白い天井、最初に見えたのはそれだけ

体が上手く動かないが……自分が寝かせられているという事ぐらいは分かる、隣を見る、ネリアがスヤスヤと寝息を立てている

そんな姿を見て心の中で少し苦笑する。

そして……徐々に思い出す

 

俺は……負けた、絶対に負けられない戦いで、俺たちの未来をかけた戦いで

自分が情けない、結局一撃も食らわせてない、本当の大敗

そして………

腹の辺りに違和感を感じて顔を動かしてみる

……天使、とでも表そうか?

そこには彼女がいた、スヤスヤと寝息を立てて、ベッドに上半身の体重を預けて寝ている……素直な感想、可愛い

自然と手が伸び、彼女の頭を撫でる……助けてくれた記憶が残っている

ずっとここにいてくれたのだろうか……嬉しい、近くに自分を思ってくれている存在がいて

 

「ん、ふぁ?」

 

「あっ」

 

彼女の頭に手が置いてある状態で彼女が目覚める

気まずい雰囲気、我に返りバッと手を引く

彼女の顔がドンドンと赤くなっていくのが見て分かる……

 

「お、おはよう」

 

「う、うん」

 

本当に気まずい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずおはようさん、案外起きんの早かったな~」

 

「ずっと寝てろと、結構鬼畜だったりする?」

 

「そんな事ないで~」

 

ほんわかとはやてが笑う

後ろには未だ赤面しているフェイトと苦笑しているなのは……

俺が起きてからおよそ三十分

シャマルによる検査やら何やらがあったがここで忙しい筈のはやてと対面……で、ここはどこかと言うともうアースラらしい……どうりで揺れがあると思った

まあそんなわけで今の現状確認、ここがアースラって事は原作通りに六課は焼けてるな……となればヴィヴィオは………大丈夫、原作でも悪用されただけであって命に支障はない……はず……

 

そしてここで本題

 

「コルテットの方は……どうなってる?」

 

「………うん、それな」

 

ポツポツと話し始めるはやて

やはり俺が住んでいた場所はほぼ全焼らしい、あの場所に誰もいなかったのは全員非難していたから……そして…

 

「俺が……指名手配?」

 

「ケント君だけじゃない、ネリアちゃんもや、罪状、というより根拠はスカリエッティと手を組んでのテロ行為、コルテット家に向けての破壊活動……実質的に今の六課はケント君達をかくまってる形や」

 

はやてがギュッと自身の制服を握り締める

……まぁ、大体そんな感じだろうとは思っていた、鮫島も未だ健在だし両親の正体も割れた、あいつらならコルテットで俺達を悪役に仕立て上げつつ管理局でも広域手配が出来る……ったく

今から管理局システムにハッキングを仕掛けて行動を起こしたいところなのだが……今の俺にはそんな力はない

リンカーコアの存在は感じられるがいつもとは感じが違う、また違った物

特典によってリンカーコアも貰っていたようなものだからな……これは特典に封印されていた……本来あるべき筈のリンカーコア……まだ起きたばかりで上手く動いてないな

今まで何でも出来たからこそ、今何も出来ないのが悔やまれる

 

「私も何度も確認を取ったんやけど……証拠を提出したのはコルテット当主、上からの圧力もかかっとうみたいで誰も信じてくれへん、ケント君が……そんな事する筈ないのに……」

 

「ありがとう」

 

出来る限りの笑顔でお礼を言う

はやては俺が寝てた間頑張ってくれたのだろう、彼女は二等陸佐、一人の意見では組織は動かせないしコルテットには逆らえない

それに圧力、と言っているがそれがコルテットの当主なのだ、俺の両親の中にいるのならスカリエッティに殺されていないし引き続き権力を握り続ける事が出来る

敵は……想像以上にデカイ

 

「よい、しょっと」

 

「ま、まだ寝とかんかったら駄目や、今起きたばっかりなんやろ!?」

 

はやてやフェイトがオロオロするが実際俺は魔力切れや特典の封印で気絶していただけ、あいつはこの体を欲しがっていたのだから外傷は殆ど無いと言ってもいいだろう

それに比べ、見つけた時に重傷だったネリアが今すぐ起きる事はない、命に別状はないと思うがかかった負担は大き過ぎる

隣に置いてあったスーツを着る、うん

 

「ちょっと待ちや」

 

「……どうした?」

 

はやてが服の裾を掴んでくる……ったく

 

「どこ行くつもりなん?」

 

「………ちょっと風に当たりに「嘘つき」」

 

今度はフェイトがこちらを睨んでくる……ちょっと怖い

 

「そんな真剣そうな顔で言われても誤魔化せないよ、今のままだったらケント、凄く……危ない」

 

「もう十年の付き合いやで、そう簡単に誤魔化せると思う?」

 

言葉が出ない

……正直、今の俺があいつに勝てるなんて思っていない

ここは現実だ、少年漫画の世界でも何でもない

力を失った少年が泥臭く、それでも王道の『諦めない』などという心を持って巨大な悪を打ち倒す?

馬鹿らしい……そんな事で上手くいくならとっくにしている、世の中そんなに甘くない

今の俺と鮫島がぶつかれば確実に俺は負ける、それ程までに底が見えない

だからこそ………ネリア

彼女だけは、助けたい、この世界で俺に出来た家族、かけがえのない宝物

鮫島にとってはどうでもいい存在かもしれない、だが……どうにかして、どうにかして彼女だけは救わなければいけない

そのためなら喜んで自分からこの体を差し出す、それでも駄目なら……自分の身を斬る

鮫島も年だ、みんなも、ネリアも、最後まで逃げ切れば生き残れる

最初から身を斬らないのは自分の中の可愛さ、俺は英雄でも何でもない、どこかで『まだ生き残れる』などという考えを持ってしまっている……自分で自分が恥ずかしい

と、その時だ

 

「う……あっ……」

 

「ケント!?」

 

「ケント君!!」

 

突如襲った身が焼ける様な痛みによりその場に崩れ落ちる

周りの皆が必死に俺の名前を呼ぶがよく聞こえない、そればかりか目の前が、空間が歪んで見える

何かが暴走する、体が弾ける

ただただ叫ぶ、痛みによる絶叫

そして…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両親は嬉しかった、我が子が無事に生まれて来た事が

 

彼らにはしなければいけない事が山ほどあったがそんなものはどうでもいい、出来るだけ時間を作り、我が子の元にいた

 

彼等は我が子に『ケント』と名付けた

 

だが、その幸せは一瞬で崩れ去る

 

彼等は戦った、我が子を守る為に、最後の最後まで、血を流しながら

 

そして、負けた

 

最後まで我が子をその胸に抱きしめ、最後まで敵の足を離さずに

 

力が、魂が移動する

 

敵も血を流した、それ程までに戦った末、夢が実現した

 

普段の彼なら侵さないべきであろうミス、『体』という殻がない魔力の塊、魂は生まれてすぐの赤ん坊に移動し、破壊された

 

『特典』として貰い受けた未完全の『対魔力』と魂を移転させる特典

 

敵はその魂をそのバラバラにされ、赤ん坊はあらゆるスキルと、その時の記憶を失った

 

元の魂に変化させておけばよかっただけのミス、そして今回、万が一を考え彼は保険をかけた、特典を使えないように

 

しかし、もし、もしもだ

 

 

 

 

その赤ん坊が、生まれついての『主人公』だったならば

 

 

 

 

未来は、どう変わるのだろうか?

 




次回からは本格的に『にじファン』の続きを書いて行きます
まぁ、二日に一回くらいのペースを目指します(=´∀`)人(´∀`=)


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決戦前


※内容を少しばかり変更しました
次元震なんたら、羽の少年なんたらが消えました



「ミッドチルダコルテット領、指定場所『黄金劇場』」

 

デュランダルに送られてきた内容を見てフゥ、と息を吐く

幸いにも今俺の周りに人はいない、まぁ当然といっちゃあ当然、俺が六課にいるということは隊長達しか知らない事実、一応手配中なのだ、他の人間との接触は避けたい

 

それにしても、あちらも大胆に出たものである

指定時間を見れば明らかに『ゆりかご』が稼働している時だというのが分かる、確かにその場合援軍は期待出来ないしな、六課陣も手が離せない

ネリアの場合も目は覚ましたとしてもロクに動けない事は明白、というよりか俺が彼女を前線に立たせたくない事をあいつは知っている

結果的に一対一、それがどれだけ俺に不利に働くか、それこそが相手の思う壷だと自覚はしているがどうもこうもない

 

今は、自分に出来る事をするだけ

 

「し、失礼します!!」

 

「ああ、どうぞ」

 

外からはじめて聞く声、みんなには迷惑かけっぱなしだな……フェイトもこんな時なのに笑ながらOKしてくれた

入ってきたのはメガネをかけた茶髪の女性

手に持つデュランダルを前に出す、じゃあ……

 

「よろしく頼みます」

 

「私個人の意見では反対側なんですけど……了解しました。」

 

初めてデュランダルを、他人に預けた

 

 

 

 

 

 

『で、どうだい?ケント達の様子は?』

 

「どうって言われてもな~、ネリアちゃんはまだ起きへんしケント君は不気味なくらい静かや、私個人としては力になってあげたいんやけど……」

 

『コルテットの当主と管理局上層部、こんな大ものが絡んでいるんだったら迂闊には動けないよね……』

 

部隊長室、目の前のモニターに映るのは長い付き合いであるロッサ

アジトの探索に時間を費やしているそうで大分範囲が狭まり、アジト捜索の途中経過といった感じで送られて来た通信、一通り説明した後、話題はケント達の事に移る

ケントも保護してもらっている身、いくらはやてやフェイトが親しい仲といえどもだからといってお尋ね者の自分をいつまでも構って下さい、というのはあまりにも自分勝手である

その為転生者関連は上手く誤魔化して事の大まかな説明を提督のクロノ、査察官のロッサ、六課隊長陣は受けている

クロノやロッサが入っているのは六課の保護の為、元々後見人としてケントがいる六課だ、手配となったケントがいる場所としては最上位に上げられる

その疑いを上手く誤魔化しているのが二人、それでも長いこと続かないのは明白だが………

 

『まさかあの鮫島さんが牙を向いて来るとはね、ケント自身のショックもそうとうなものだろうしね』

 

「信頼していた人間に裏切られたんや、どれだけ悲しい事かなんて、あたしらには想像もつかへん」

 

暗い、沈黙が流れる

はやて自身、もし家族から、親友から裏切られた時の事を考えると一生立ち直れない可能性もある

学校での人間関係も色々とあったがそれでもその程度、それに対して今のケントは生まれた時から共にいた人間に襲われ、今や犯罪者の汚名まで着せられてしまっている

自分ならば、立ち直れるだろうか?

 

『これからどうしていくつもりなんだい?六課にしろ、前のテロで大忙しなんだろ?』

 

「ケント君は六課が全面的に保護したい……って言いたいんやけど私が一番それが無理ってことは分かっとる、そりゃあ手助けはするで?でも、その……」

 

『はやてにも『立場』っていうものがある、その両肩には自分の部隊の局員達が全員乗っかっているんだ……ホントはこんな事を言いたくないけど……軽率な行動はあまり出来ないよ』

 

思わず俯いてしまう

分かっている、そんな事

お尋ね者でテロリストだと言われているケント君を六課が匿っている事を外部に漏れたらそれこそ皆に迷惑をかけてしまう

自分だけの問題ではないのだ、今の八神はやてには部下がいて、ついて来てくれる人達がいる……軽はずみな行動は、その人達の信頼を踏みにじる事と同じだ

 

「私、どうしたらええやろ……」

 

『信じてあげたらいいんじゃないかな……』

 

えっ、と画面に目を落とす

信じる……とは一体

 

『ケントがこのまま黙っていると思うかい?君達は、ケントの本当の強さを知ってるだろ?』

 

「……そうやな、ホントに」

 

 

 目を閉じる

先ずは、スカリエッティの逮捕とヴィヴィオの保護、それからケント君の手助け

やる事はいっぱいあるけど、全部、全部最高の形で終わらしたる

そう、胸に誓って

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隣に転がっている血だらけの死体をつまらなさそうに蹴り飛ばす

その巨体はゴロゴロと転がし、やがて止まる

 

面倒くさい事をしてくれたものだ……と

 

この死体にもう用はない、レリックを埋め込んでの洗脳が破られる可能性があるという以上、もう一度レリックを制御して生き返らせようとも思わない

 

それに、今、こいつの体に埋め込まれているレリックを取り出すのも面倒だ

 

まだ微かだが息はある、左腕を失ってなお諦めていない、大した根性だ

 

「大量出血に全身の骨をバキバキに折ったのですがね、そろそろ諦めたらどうですか?

生きている時も、こうした死んだ後でも貴方は私に敗れ、こうやって地に這いつくばっている

たかだかモブの分際で、図に乗るんじゃないですよ」

 

自身のデバイスを振り上げる

こいつさえいなければとっくに自分は新たな体でいれたものを……どちらにしろ結果が変わる事はないがただのイレギュラーに邪魔されたのが癇に障る

 

己のデバイスを振り上げる、勿論殺傷設定

いくらレリックがあろうとも心臓を貫けばそれで終わり

 

グサッ、と、肉が裂ける、鮮血が舞い散る

目の前の男はピクリとも動かない、だってもう、彼はこの世にはいないのだから

 

背を向いてそこを去る

 

残されるのは、一人の生徒を守る為に戦った、一人の教師の姿のみ

 



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「ホントに久しぶりだな……ここに来るのは」

 

煌びやかに彩られた劇場の中心でポツリとつぶやく

照明は全て落とされており、人は誰もいない、今頃はアースラ内で俺とネリアがいなくなっていることがバレて騒ぎになってるだろうな……まぁ、部隊長室に置き書きしておいたから暫くすると収まると思うが……

向こうは向こう、こちらはこちら、それぞれの戦いがある

この戦いは、俺一人で十分だ

ネリアは迷惑をかけてしまうが無理言ってカリムに頼んだ、少なくともこれから戦場に向かうあちらよりは安全で、尚且つ六課メンバーの負担にもならないだろう

 

電灯が一つずつ、確実に照らされていく

それと共に露わになる大劇場、その先に立つのは初老の男

手には見た事の無いような杖型のデバイスを持ち、その両隣と後ろには数十体のガジェットが控えている

 

心は……穏やかだ、怖いくらいに

 

俺の体に光が纏う、バリアジャケットが構築される

白を基準としたそのスーツは、どちらかというと『セイバーリリィ』を連想させる

俺の変化に気づいたのだろう、向こう側も一瞬軽く笑った後こちらに話しかけて来る

 

「気分一新、色々と工夫して来ましたか?諦めが悪いというか、無謀と言うか……」

 

「案外そんな事もないのかもしれないぜ?追い詰められた人間ほど、何してくるか分からないしな」

 

少しだけ、重たくなったデュランダルを腰から引き抜く

 

「まぁ、精々足掻いて下さいね、それはそうと知ってますか?この劇場はケント様の母君が生きている時に計画して、出来た場所なんですよ?」

 

鮫島が宙を仰ぐように上を見る

 

ここに初めて来た時、そういえば聞いた気がする

あの脳味噌がこんな物を作るとは考えにくい、だとすると提案したのは俺の本当の母親……

だったら、どうしたというんだ

 

「非常に楽しみにしてましたよ、家族でここへ来るのを、ケント様が将来、何かを発表する様な事があればここを使おうと」

 

「………」

 

「魔法だってそう、ご両親はどちらも随一の魔導師でしたからね、自らの手で教える事が楽しみだったでしょう。」

 

「………」

 

「良かったではありませんか、最後の最後にこうして、貴方はご両親と同じ末路を、この煌びやかな場所で辿るのです。

ご両親も息子の晴れ舞台を見れてさぞお喜びでしょう」

 

「……ひとつ、いいか?」

 

口を開く

 

「お前はこの世界の主人公になりたいと言った、この世界の主人公を殺す事で、本当の意味で自分は主人公になれると言った」

 

「それがどうしました?」

 

「俺からしたらお前は、『人生』というお前自身のストーリーから目を背け、一つの概念に囚われている愚かな人間でしかないんだけどな、好い加減気づけよ」

 

「そんな物は綺麗事です」

 

俺の言葉を真っ正面から否定する鮫島……ったく

 

「よく言います、『一人一人が主人公』、ふざけないで下さいよ?恵まれるのは一握りの人間だけ、世界に愛されるのはほんの一部、それ以外の人間など主人公を引き立てる脇役でしかない、私はそんなちっぽけな存在じゃない、そんな物では止まらない」

 

「……世の中の今を懸命に生きる人間に向けて、発する言葉じゃないな」

 

「どうせモブです、まぁ、お話もそろそろ終わりましょう。

あまりグダグダど話していても前に一行に進みませんし……ですが一つ、言わせて下さい」

 

「なんだよ」

 

 

「勝者こそが正義です」

 

 

目を細める、狂気に歪んだその顔に、俺が知る鮫島の面影はない

 

「どんな歴史だってそう、勝者が正義の概念を塗り替え、敗者が悪となる……大昔からの呪い、いくら愛と慈悲に混じれた言葉を重ねようとも、結局それが正しいかを決めるのは勝者です」

 

鮫島の言っている事は、驚くくらいに正論だ

源平合戦、源氏も平氏もそれぞれ自らの『正義』があり、それを守り通そうと戦い、片方が勝利し片方が敗北した

後に続く鎌倉時代、その時代の中で一体だれが『平氏が正しく源氏が悪だ』というのだろうか?

西南戦争、西郷軍は自らの思想の為に、政府軍は新たな未来の為に戦った

そして、また片方が敗れ片方が勝利する

その後の時代のどこで、武士が表立って出てきた時代があっただろうか?

武士時代の思想を悪とし、新たな体制が正義だと『決めた』のは勝利した政府である

 

歴史は、それを証明している

 

双方にそれぞれの正義があった、それぞれの価値観があった、それが叶うのは一方のみ、即ち、勝者こそ正義

 

こんな所で二次創作や漫画やアニメにありそうな綺麗事をいくら並べても意味はない

 

あいつを止めたいのなら、救いたいのなら……勝利して、無理矢理言い聞かせる!!

 

「非殺傷……ですか、また甘い考えを」

 

「なに、俺は人殺しなんてしたくはないんでな、ここは局員らしく、お前を逮捕して更生する方向で行かせてもらうわ」

 

ニヤリと笑う

所詮俺はその程度の人間、人殺しなんてする気もない、それがどんなに憎んでいる相手であっても……だ

今回は前回みたいに取り乱していない……負ける気はない

 

「特典が無い状態で勝つ気でいる、その姿勢は私も見習いたいものです、よっ!!」

 

腕を前に出した瞬間、大型のガジェットが二機、俺に向かって襲いかかる

どちらも並の魔導師なら苦戦するであろうである大きさ、特典がない状態ならばこれで十分だと思ったのだろう

 

デュランダルに魔力を貯める

今までよりも高密度な、バカ魔力を

目に見える程の魔力を見て鮫島が目を見開く、そして………

 

 

「ガラクタ飛ばしてんじゃねーよ」

 

 

一振り、たったのそれだけ、魔力によって生み出された『余波』でガジェット二機は粉々に粉砕される

これが……『俺本来』の力

 

「ずっと疑問に思ってた、ネリアの魔力量SS+、意図的に魔力を増やして生み出さない限りはそんな数値になる事はない、いや、SS+なんて人工的に作り出すのは不可能だ、今、お前に転生者としての魂を封印されてやっと分かったよ……その謎が」

 

デュランダルを下ろす

何故俺がこの体に生まれて来たのかも、これでようやく分かった

 

「お前なら知ってるだろ?コルテット家長男は、一瞬だが母親の腹の中で一度『息を引き取ってる』こと」

 

「…………」

 

「原因は胎児が持つ魔力量、生命機能さえも不完全な赤子が持っていた魔力量はおよそSS、当然ながらコントロールなんて出来ないその力の塊は胎児、母体両方に多大な影響を起こし、治療も間に合わず息を引き取った」

 

「……覚えてますよ、私もその場にいましたから」

 

一度ゆっくり目を閉じる

 

「だが奇跡が起きた、息を引き取ったその数秒後、赤子は生き返った、魔力も抑えられ、健康そのものの状態で」

 

「そう、でしたね」

 

「ここまでくれば簡単だ、後からその体に宿ったのは俺、そして……死んだ胎児にいたのはこれと全く同じ形の魂を持つ誰か……この意味、分かるか?」

 

鮫島が奥歯を噛み締めるのが分かる、ああ、そうだ

 

 

 

 

「単刀直入に言ってやろう、今の俺の魔力量は……これらの問題で存在さえ否定された『SSS』だ」

 

 

これが、あいつを倒す唯一の希望

 

 




一気に飛びましたが今の時間軸は丁度ゆりかごが飛び立ち、なのは達がゆりかご内に潜入している時です

ケントの本当の魔力値はSSS、まぁ封印が解けたらまたS−に戻るので一時的な物ですが
優勢に見えますが鮫島はそんなケントの『力づく』な戦いさえも『一枚上手』となるので優勢と言われてもそうではありません、技術面では劣ってますからね
まぁ、それでも今までの話の中で一度述べたように魔力値だけはどうにもなりませんから五分五分といった感じです。


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同じ

魔導の世界では『ランク』という物が存在する

色々とあるが一番有名なのは『魔力値』と『魔導師ランク』

前者は単純な魔力量を、後者は純粋な戦闘力を

当然、魔力値だけに慢心し素人丸出しの戦いをしていれば魔導師ランクは下がる。魔力値で強さを決めるのは浅はかだ

しかし、魔力値が高い程つよくなれるのも事実、ランクは上から順にSSS、SS++、SS+〜D、Eと決められているのだがその中でも最高のSSSに到達した者は今のところ発見されていない

ならば何故そんなランクが存在するのか、理由は単純、『不可能ではないから』である

どんな人間でも魔力持ちの人間は生まれながらにしてその体内に『リンカーコア』という魔力生成機を持ち、そこから魔力を作り出している

当然、その時点でその人間がどれだけの魔力を作り出せるかは決まっており、成長するごとに最大魔力値も上昇する

それによって、『この赤子は成長すればSSSになるだろう』と大体予測出来てしまうのだ。

ならば何故、今までSSSがいないのか、簡単だ、そう予測された存在は『生まれる前にすべて死んでいる』から

生命機能さえも出来上がっていない状態でのその魔力、当然制御出来る物ではないので垂れ流し

そうするとどうだろう、子宮内で溜まった魔力は密度を増し、子供の生体機能に多大なダメージを与え、母体にも想像を超えた負担が強いられる

帝王切開でも駄目だ、ただでさえ負担がかかっている体にメスを入れれば母体は直ぐに死に至る、それに腹の中の赤子はまだ外で生きていく為の機能が出来ていない、生物学的に無理だ

結局は赤子が死んで中絶、そう、不可能では無いが『生まれて来ていない』だけ

更にそういった存在が数年に一人という低い割合からでもある、いかに研究と進めようとしても活用性がない物を好き好んで研究する人間も少ない

 

だが、今ここにいる少年は『特別』だ

 

多大なる魔力を持ちながらもそれを『特典』によって封印し、今その封印が弾けた事で溜まりに溜まった魔力を放出している

 

本当は死ぬ筈だった生命、いる筈の無い存在、それが『ケント・コルテット』

 

放たれる一発の魔力弾、それをケントは『魔力の放出』のみで消失させる

そこに今までの『テクニック』や『技術』など微塵もない

 

「………成る程、確かに、いくら『一枚上手』となれても魔力はまた別物ですからね、このスキルも所詮魔力で構成されています。スキルを保つ魔力を使って『SSS』相当の魔力を作り出すなど不可能ですから」

 

「俺がお前より『上手』となれるのはこれしかなさそうだよ」

 

「まぁ、それでも……」

 

鮫島が持つ銃型のデバイスが変形する……斧?

 

「所詮は魔力に自信があるだけの素人、レベル1の勇者が最強の武器を持っても使いこなせないのと同じです……武器と術者は一心同体、どちらかでもかけていれば崩す事など容易いことです。

そういえば、セイバー容姿で魔力SSSなど、丸っ切り踏み台転生者ですね、今のケント様」

 

「言ってろ、どうせどれだけレベルを上げてもお前はそれより上をいくんだ、なんにせよ変わらねぇだろ

てかそのデバイスなんだ?今のからして武器だったら大体の形状になれる、とかじゃねぇだろうな」

 

「後察しがいいですね、チートや何やら思ってるかもしれませんがこの世界には生憎それを可能にする技術もありますので」

 

「ちゃんと言ってやるよ、このチート野郎が」

 

デュランダルを構える、先ずは……

 

「様子見っと」

 

「っ!?」

 

俺がデュランダルを下から上へと振り上げる

放たれる黄金の『斬撃』

鮫島が難なくかわすが……これは今までのケントからすれば『あり得ない』事でもある

率直に言おう、今のを一言で表すならば『砲撃』

デュランダルに魔力を集め、それを斬撃の形を保ったまま放出する、例えていうのならばBLE○CHの『月牙天衝 』をイメージしてもらえればいい

ただそんな事はどうでもいいのだ、問題は今、ケントが『砲撃』を使った事実

 

「………砲撃適正が無かったのは特典に組み込まれた一種の『バグ』とでも言うのでしょうか?」

 

「さぁな、何時の間にか出来る様になってたんだよ、使わないのは損だろ?」

 

「そうですね、まぁ……」

 

斧を肩に担ぐ鮫島

劇場は今の攻撃によって一部が破壊されている、恐らく、いや、絶対にこの戦闘が終わったら跡形もなく消滅している未来が脳裏に浮かぶ

 

「私が有利な事には変わりませんが」

 

冷たい汗がたらりと流れる

俺がSSS、砲撃が使える

だからどうした、鮫島ならば『それを踏まえた上で』俺より上手をいくだろう

本当に勝てるのだろうか、

今になっていいよらぬ恐怖が襲いかかる

 

……勝たないといけない

 

理由は色々とあるが、やはり一番にあるのは『死にたくない』という願望

 

もっとみんなと一緒にいたい

 

もっとこの世界にいたい

 

もっと魔法に触れていたい

 

もっと……彼女と一緒にいたい

 

 

雨の中、俺を抱きしめてくれた彼女

今思えばもっと昔から意識していたじゃないかと再認識する

なんだか照れ臭い、好きな人がいる彼女に対する、叶わない恋だなぁと思いながら心の中で苦笑する

 

彼女が思いを寄せる、見知らぬ男に軽く嫉妬する

 

……鮫島はどうだったのだろうか?

原作を知りながらも関われない、力がありながらも隣に立てない

いつも笑っているのは他の転生者、苦しみを癒してもらうのも他の転生者

 

……ああ、嫉妬する

 

俺と鮫島は同じなんだ、生まれがどうだったか、それだけ

 

俺が鮫島だったら、幸せを奪う力がこの手にあったのなら間違いなく俺はあいつになっていた

 

策を巡らし、願望を求め、年月が経つ

 

更なる欲望を求め、幸せになるために……

 

俺もあいつを叱る事なんて出来ないかもしれない、立場を逆転して考えるだけでこんなにも違う

 

それでも、他人を殺してまで幸せを得る事は間違いでもある

 

どちらも考えにも辿り着く、結局は同じ

 

だからって、俺は死ぬ事は出来ない

 

俺にも願望があるから、『生きたい』と、『守りたい』という願望が

 

その願望を、『願い』を守るために剣を取る

 

目を見開く、飛翔

 

お互いにシューターが展開され、放たれる

 

吹き荒れる爆風の中で、お互いの斬撃が、ぶつかり合った

 




転生したのに介入出来ない
憧れたキャラクターの隣にいるのは見知らぬ転生者
前世で特別違ったわけでもない、生まれの境遇、それだけ
そんな日を、ただ『見る』だけの毎日、自分が望んだ場所に他人がいるのを、何年も何年も繰り返し見続ける人生
自分に、もう一人の転生者を殺せば、憧れた幸せを手に入れる力があるとするならば

貴方はどうしますか?




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不可能な事

帰省してました、すみません



(……素人、と言うわけでは無い様ですね)

 

お互いの弾幕が爆発し、無数の斬撃が飛び交う中で鮫島は考える

特典を失ったケントは確かに魔力に自信のある魔導師だ、現に今も魔力に任せ、攻撃力のみを求めた形の斬撃を使って自分を攻撃している

一撃でも食らえば終わり、高密度に濃縮された魔力を食らえばさすがの自分も耐え切れないだろう

しかし、ケントもケントで有り余る魔力を上手くコントロールしている、剣撃も素人丸出しと言うわけでもない

皇帝特権が使えた頃よりも一回り二回りも劣ってしまうが……例えるならば『二流』だろうか?

推測するならば『努力の賜物』

皇帝特権を使った『与えられた』剣技でも、実際に使っているのはケント自身

それをおよそ十年近く、スキル自体が無いにしても体がある程度までは覚え、今生かされている

それに……

 

「カードリッジロード!!」

 

「っ!?、くっ!!」

 

デュランダルから何かが排出された瞬間に横凪に振るわれる剣

上手く軌道を反らして避けるが余波によって突風が吹き荒れる

 

『カードリッジシステム』、いつどこで付けたのかは分からないが自分がデュランダルの製作担当をした時は『安全面』を考慮して取り付けなかったシステムだ

 

勿論、今自分が使っているデバイスにもついているのだが焼け石に水だろう

 

なんといっても魔力SSSにカードリッジ、更にケントは無造作だが身体に魔力の膜を貼っている、肉弾技ならばまだしも牽制目的の魔力弾程度なら触れずに消すこともできる代物だ

 

だが……それだけ……

 

確かに全体的なスペックとしたら自分は圧倒的に劣っている

しかし、今身体に傷を作り、肩で息をしているのは……ケントに他ならない

当然だ、自分は『それらも全て考慮した上で』ケントよりも一枚上手となる事が出来るのだから

 

「行きなさい」

 

「っ、邪魔なんだよ!!」

 

近くにいたガジェットを接近させる、ケント様はうっとおしそうに剣を振るうが、その一瞬、スクラップとなったガジェットのせいで前が見えなかった事は致命的なミスとなる

 

「ガフッ!?」

 

「っと、少し、落ち着きましょうよ」

 

空中での回し蹴り、ケントの横顔に直撃し、スフィアが全て直撃する

もうもうと立ち込める爆風を魔力で無理矢理起こした風によって払う、鮫島は……上!!

 

「くっ、デュランダル!!」

 

「防げますかね?」

 

杖状に変形したデバイスから放たれるドス黒い魔力砲、みればそれが一種の『宝具』だということくらい容易に分かる

『騎士は徒手にて死せず』、かのランスロットが持つスキルによって宝具化したデバイスから放たれる砲撃は最早一撃必殺とも言っていい

しかし、それを覆すのが魔力

 

殆ど無理矢理砲撃をデュランダルによって相殺するケントだが、突如襲う後ろからの衝撃

肺の空気が全て放出される

 

(周り、こまれた!?)

 

相殺した時の『余波』に乗る事で瞬間的ににスピードを上げ、後ろに周りこんだ後に叩き落す

 

完全に、上手を取られている

 

魔力SSSというこっちの『利点』を活用し、確実にこちらに攻撃を与えて来ている

どれだけ有利な状況を作ろうとも、それよりも『上』にあり続けるのが鮫島という存在

 

「一つ覚えのバカ魔力だけでどうにかしようと思っているようですが、通るとでも思ってますか?」

 

「通るかどうかの問題じゃあねぇだろ、通すんだよ!!」

 

カードリッジをロードする

長期戦となればこちらが不利になる、いくら魔力がSSSという規格外でも無限というわけではないのだ、それにいまの俺の戦い方は『魔力を振り回す』事をしているだけ、使用魔力はバカみたいに多く先にスタミナが尽きるのはこちら、だからといっていきなり渡された魔力SSSを使いこなすだけの技量は俺にはない

短期決戦、しかし勝つためにはどうしたらいい?

どんな手を使っても『一枚上手』となられる相手に、どんな戦い方をすれば勝利をもぎ取れる?

幸い向こうはデバイスの設定は殺傷設定だが狙っているのは俺の体、動けなくなるような攻撃は今は受けていない

だからといって痛いものは痛いし食らうものは食らう、疲労やらなんやらで倒れるのも時間の問題

 

「動かないなら、こちらから」

 

「つ!?」

 

ガントレットに変形したデバイスでの右ストレートをギリギリのところでかわす

距離を取ってのスフィア全開、視界が見えなくなるほどの一斉掃射……っ!?

 

「バインド!?」

 

両手両足を瞬間的に縛られる

初めからここに誘導するために殴りかかってきた?

スフィアが晴れるがそこには誰もいない……後ろ!?

カチッと銃口を突きつけられる、今放たれたら俺の頭はザクロになるだろうな

バインド自体は力づくで破壊出来るが……その後はどうすればいい

相手が俺の体を狙って傷つけないように戦っているとしても向こうには最高評議会とコルテット、腕の一本くらいなら直ぐに蘇生出来る

生憎俺には腕を潰される痛さに耐えきれる程主人公属性は持っていないので迂闊に動きたくはない、だが……動かないとやられるだけ……

俺の腹辺りにスフィアを展開する、鮫島からは丁度死角になる位置……よし

 

「おいおい、俺の頭ザクロにしたら体奪うどころじゃなくなるぞ?原型とどめないから宝具で撃ったら」

 

「加減はしますよ、出来れば動かずにこのまま大人しくいてくれれば嬉しいのですが、それよりいいのですか?前みたいに『ネリアだけは助けてくれ』なんて言わなくて」

 

「あの時は精神とかだいぶ参ってたからな、今は……」

 

バチンッと音がしてバインドが弾かれる

鮫島が撃ってきた魔力弾にスフィアを当てて相殺させる、んでもって……

 

(いけ!!)

 

バインドを外したと同時に振り上げたデュランダルを一気に振り下ろす、今鮫島のデバイスは銃形態、素手相手なら……

 

「誰が一丁だと言いました?」

 

ガキンッ、という金属音と共にデュランダルの斬撃が左手から現れたもう一丁の銃で弾かれる

 

目を見開く時間も与えないまま顎から強く蹴り上げられ、軽く、吹っ飛ぶ……ったく、誰が……

 

「一発だけと言ったよ!!」

 

瞬間、鮫島の後頭部が大きく揺れた

前のめりに一瞬落下するが直ぐに立て直す……よし

 

「……痛い、ですね」

 

こちらを睨んでくる鮫島に対して軽く笑う

 

勝機が、無いわけでもなさそうだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局はなめてたというわけじゃよ、わしの力も、ロストロギアの力づくも……」

 

バキバキバキという音を立ててシャッターを粉砕する、その瞳が見つめる先には、二人の男女の姿

 

「『レリック』といったかの、死者さえも蘇らせるロストロギア、死ぬ直前、いや、死ぬ程の大怪我を負ってももう死んどるわい、あそこでレリックを回収しなかった慢心が、奴の弱点じゃったの」

 

ガチンと腰に刺さった大刀を抜く

生き返ったゼストがただでさえ瀕死だったからだろう、鮫島の大きなミス

ゼストとこいつを一緒にしてはいけない、死者さえも蘇らせるロストロギアに彼のロストロギアにも打ち勝つ執念、瀕死の重傷を負ったとしても、擬似的に蘇る力は彼にはある

まぁ一度こっきりじゃがのうと笑う彼には左手がついていない、小さな傷は数え切れず、着ている服からは耐えず血が滲み出ている

それでも彼はここに立ち、敵を見据えている

 

「腐り切った老いぼれが、生徒に害を成す所を黙って見ておれというのが無理な話しじゃわい、のう、『最高評議会殿』?」

 

騎士、サンドロスは大刀を構える

もとより死んだこの命、このまま勝って生き残ろうなどとは思っていない

今する事は、自らの教え子の為に道を開くこと

 

ミッドから遠く離れた世界でこの日、二つの『闇』が消え去った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぅ、と一つ息を吐く

俺の予想が正しければ、勝機はまだある

そう、体一つで完璧になれる人間なんてこの世にいない

 

「デュランダル!!」

 

カードリッジを一つ使い刀身に魔力を溜める、軽くスフィアを展開させ一気に斬りかかる

向こうは、銃のまま牽制の為の魔力弾

宝具と化した魔力弾を拘束で避ける、スフィアを飛ばし一気に加速

狙うのはデバイス、魔力を溜めた今のデュランダルなら宝具化したデバイスくらいならば粉砕出来る

 

「……ほんと、一つ覚えの魔力馬鹿ですね」

 

「っ!?」

 

斬りかかる瞬間、銃形態から斧へと変形したデバイスによって弾き飛ばされる

質量が圧倒的に違う、それでも……

 

「バインド……セット完了!!」

 

ガキンッと音を立てて鮫島に設置されるバインド

体制を立て直しすぐにカードリッジをロード、刀身に魔力を溜め垂直に構える

鮫島がバインドにかかった理由、簡単だ

いくら鮫島が俺より『一枚上手』となるスキルだとしてもあいつも人間、体一つでは『不可能』な事も存在する

 

さっきのスフィアは『俺のデュランダルを受け止め、尚且つ反撃で蹴りを入れた状態で後ろにも気を配れ』と言われても不可能だ、鮫島の後頭部に目があれば別かもしれないが

今のもそう、スフィアを迎撃しながらデバイスの形態を変え、俺の動きよりも一枚上手となりつつ行動を起こした瞬間に当てられるバインドに気を配れ、どちらも『一枚上手』を使った後に『カウンター』として与えている

鮫島には腕が三つあるわけではない、目が後頭部にあるわけでもない、右を見ながら左を見ろと言われても無理な話しだ

 

だからこそ俺は『二つの事を一度でした』、結果的に『一度上手』となるのは自分に被害が大きい方、もう片方は対応出来ない、まぁこれをするには半分捨て身で行かないといけないんだけどな……

 

ガシュンガシュンとカードリッジが排出され、身体に魔力が循環器する

勝てるチャンスなど何度もあるものじゃない、やるなら……いま!!

 

体の周りと刀身に炎が舞う、縛られた鮫島が口を開く

 

「……炎熱変換?レアスキルですか」

 

「誰がいつレアスキル無しって言った!!」

 

水平に構えたデュランダルに黄金の魔力と炎が集まる

そして一気に……突き放つ!!

 

 

 

「紅蓮の聖女《ラ・ピュセル》!!」

 

 

 

炎が、舞う

 




Fate/zeroのソーシャルゲーム初めました、モバゲーで
今のところレベル25で無課金、URはイケメン黒子とキレーさんとウェイバーですね
で、派閥が見つからんorz
いい派閥ないかな……今のところソロで頑張ってます

本編の方は、やっぱり戦闘は嫌です、まったり軽いノリが一番
ということで鮫島との戦闘は次で終わりそうです。早くSts編完結しないと……


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黄金の剣

掛け声と共にデュランダルに引っ張られる形で一気に加速する

激突寸前のところで鮫島がバインドを解除し防御魔法を張る……抜ける!!

 

 

突風、前が見えなくなるほどの風を前に目を見開く

散る火花、黄金の剣の先にはひび割れ始めたシールドの姿……いける!!

 

魔力を注ぎ込む、攻撃自体をズラされ始めている、このままでは魔力を使ったただの不発弾

完全にズレ切る前に、シールドを……抜く!!

 

デュランダルに自身の身を全て預ける、ひびが徐々に大きくなる

 

抜ける……直前………

 

「う……あっ……」

 

真横からの魔力弾、攻撃の重心が曲がるのがわかる

ガキィンと音がなる、攻撃が、弾かれたのが肌で分かる

シールドの奥で鮫島がニヤリと笑う、体が完全に無防備となる

馬鹿

 

 

笑いたいのはこっちだよ

 

 

今の攻撃を防ぐ為に鮫島は全力だった、かくいう俺はそうでない

抜こうと思えば抜けた、ただししなかっただけ、あれで倒れなかった場合、俺に勝機は完璧に無くなる

俺がしたかったのは、仕込み

 

「っ!?」

 

さっきとは比べ物にならない数のバインドが鮫島の身体にへばりつく

それに反応した鮫島が一気にスフィアを作り出し、俺に向けて放射する

ここからは時間勝負、スフィアを振り切る様に一気に雲まで飛ぶ

さっきので自分の魔力は確かに減った、ただそれだけがそれが問題じゃない

使い慣れないレアスキルのぶっつけ本番使用でクラクラする、体が怠い、それでも……飛ぶ

 

デュランダルを振り上げる、展開されるのは巨大すぎる魔法陣

 

一度拡散された魔力を呼び戻し、集め、収縮する

あらゆる場所から黄金の粒が刀身に集まる、半壊した劇場が光に照らされて輝く

刀身だけでない、俺自身の目の前にも現れる巨大な球

カードリッジがあるだけ排出される、体が軋みをあげる、自分の魔力を全てつぎ込む

俺と鮫島が撒き散らした魔力が全て集まり終える、そこにあるのは一つの『太陽』

 

鮫島は動かない、ただ天を埋め尽くす黄金の光の前に動けない

 

当然だ、今の彼に一体何が出来る?

逃げる?何処に?

一枚上手となる?どうやって?

 

今の鮫島に出来ることは、ただ終焉の時を待つのみ

 

「原作ではこうか?『受けてみて、これが私の全力全開』、ディバインバスターのバリエーションでもデュランダルと考えた技でもないただのパクリだがよぉ、こうやって一つの事を終わらすには丁度いいとは思わねぇか!!」

 

軋む身体に鞭を打ちながらニヤリと笑う

 

一歩、前に踏み出す

 

デュランダルを両手で掴む、鮫島が絶叫を上げて何十にもなった防御魔法を展開する

 

「エクス」

 

これで……

 

「カリバァァァァァァァ!!」

 

 

終わりだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

無、そう表すのが一番正しいのかもしれない

 

魔力SSSに二人が使い、撒き散らした魔力を再利用し、尚且つカードリッジをあらんばかりに使った収束砲撃

 

黄金に光り輝き続ける世界を眺めながら、鮫島を救出する為に改めて体に鞭を打つ

あれだけの爆発をしときながら非殺傷設定、気絶はしていると思うが身体的な問題はないだろう

鮫島の魔力が尽き、封印が解除され始めているのか慣れ親しんだ力が返ってくるのが分かる、使い果たしてしまった魔力もその影響で回復し始めている

 

一先ずは……終わった

 

若干オーバーキルな感じもするが無印なのはも同じ様な事をしてたしと割り切る、そもそもこれくらいしないとあの鮫島だ、気絶しない

 

光が徐々に収まってくる

地面は……自分でしといてなんだが悲惨だな、煙がヤバイ

劇場も瓦礫すらなくなってるだろうなと考えながら鮫島がいた場所に目を向ける、落ちたとしても直感付きの今ならすぐに見つかるだろう……あいつの処遇とかについてはまた考えよう、人殺すのとかは勘弁

ただ……なんだろうか、さっきから違和感が凄い

 

煙が晴れ始める、ゆっくりと降下し、鮫島らしき姿を見つける

 

……まだ飛べるのか?気絶はしてるようだが、てかなんだ、飛んでるというよりは

 

 

『何かに、支えられている感じがする』

 

 

目を見開く、あれは……腕?

鮫島の胸からあり得ないものが突き出ている、隠れてよく見えないがその後ろにはフードをかぶった誰か……なっ!?

 

「てめっ、何を!!」

 

ブーストをかけて何者かに斬りかかる、手を鮫島から抜き、すかさず回避する相手

 

血が……出ていない?

 

支える物がなくなり、ゆっくりと落ちて行く鮫島をしっかりと抱きかかえる

傷口からは相変わらず血が出ていないがそんなことは無視する、心臓がやられている、このままだと問答無用で死ぬ!!

 

キッ、とフードの相手を睨みつける、身長は高くない、せいぜい俺と同じくらい

身に纏う雰囲気から少年、だろうか?

今こいつの相手をしている時間はない、何とかここから離脱して鮫島の手当を

 

ふと背すじに冷たい物が流れる、何も考えずにデュランダルを使い後ろを薙ぎ払う

ガキンという金属音、デュランダルと少年の『腕』が競り合っていた

わけがわからない、少年の腕はどこまでも細く、純白、なのになぜ、デュランダルと均衡し合える!?

 

バッとその場から飛び退く、嫌な汗が流れる

本能が告げる、こいつと対峙してはいけない

 

少年は動かない、反射的に唱える

 

「破壊(クラッシュ)」

 

放ったのは俺の真後ろ、首元すれすれにあったのはその細い腕

 

心拍音が凄い、空中でその場に座り込む

熱くなった頭を何とかして冷やす、直感を頼りに周囲を確認する、嫌な汗は流れない、どうやら撃退はできたらしい

ゆっくりと、自分自身を落ち着かせながら、安全をある程度確認してから地上に降りる

今は終わった事をいちいち振り返っている場合じゃない

 

鮫島を寝かせ容体を見る、胸には穴、血は流れていない

そして、穴から広がる……ひび

 

「なんだよ……これ」

 

ひびは大きくなり、鮫島の手、足、顔へと広がっていく

わけがわからない、鮫島の体が崩れ始める、顔から精気がどんどん失われていく

必死に呼びかける、返事がない

皇帝特権で主張した治癒魔法をかける、崩壊は止まらない

そして………

 

「……え?」

 

パンッと、軽い音を立て、鮫島がポリゴンとなって消える

光の粒が弾け、消える

手から消える人の温もり

それはつまり、俺の手の中で一人の人間が『死んだ』という事実で

体が動かない、何が起こった、なんで、こんなこと……

 

 

震える手を見つめながら俺はただ、絶叫した

 

 




死にました、鮫島、ハイ
最高評議会の脳味噌(ケントの両親)は全て先生に丸投げです
鮫島の死に方としてはSAOの様にパリーンと、って感じですかね?
あっ、もちろんここは現実、機械で作られた世界うんぬんではないですよ


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事件後

もう少しでSts編も終わりです
そうですね、次は多分Stsとvividまでの空白期となるんじゃないでしょうか?
軽いネタはあるんで



 

「私が寝ている時に色々あったんだね~、家も燃えちゃったみたいだし」

 

「コルテットのトップが突然の死、ミッド上空に現れたゆりかご、それを墜落させた六課とスカリエッティの逮捕、色々とありすぎだ」

 

聖王教会の一室でふぅ、と軽く息を吐く

ベッドの上でお見舞いのフルーツを頬張っているのはネリア、どうやらもう大丈夫ならしく近々退院も出来るそうだ

 

あれから約二週間……ホントに色々とあった

六課の方は無事にゆりかごを撃墜してヴィヴィオを助けだし、スカリエッティも逮捕したけど……ガチで叱られたな、みんなに

心配したとか泣いたとか……その時になって『悪かった』って思った、本当に俺のこと心配してくれる人がいることが少し嬉しかった

で、コルテットトップの突然死

ゆりかごのテロ中に本局にデータが流れたらしい、コルテット上層部による策略やら罪のなすりつけやら

そんでもって俺たち兄妹の疑いが晴れ、こうして聖王教会で話が出来るんだが………

 

(世話になりっぱなしだったな、最後まで……)

 

俺の両親と共に倒れていたサンドロス、恐らくは彼が全てしてくれたのだろう

感謝の言葉をいくら並べても足りないくらいだがあいつなら多分『この程度』と言って笑い飛ばすだろう……金かけて墓でも作ってやればあいつもそれで何も言わない感じがする、てか墓なんていらないといいそうで怖い

 

「まぁ、コルテット自体の弱体化はまぬがれないよね、テロに直接的に関わってるんだから」

 

「そうだな、まぁそこら辺は俺が頑張るよ」

 

落ち込み気味なネリアを励ます

 

さっきも言ったとおり、今回のテロにはコルテット上層部、つまり俺の両親の体にいた脳味噌が関わっていた、世間ではコルテットのトップとしか発表されてないからコルテットのイメージダウンは大きいんだよな

てか脳味噌の事知ってるのって俺とスカリエッティ、サンドロスぐらいじゃねぇか?

まあそこらはコルテットを継ぐ俺が頑張るって事にしておこう

 

「その話、なんだけどね……お兄様に相談があるんだ」

 

「相談?」

 

いつも以上に真剣なネリアをみて思わず身を引き締める

 

「私、お兄様に助けてもらって、お兄様に生かしてもらって、でも私、お兄様に何の恩返しも出来てない。

今回だって……ずっと邪魔だったし……」

 

「何言ってんだよ、ネリアは最後まで戦っただろ?」

 

いくらあの鮫島だって気絶した相手に追い討ちをかけたりする奴じゃない、あそこまでやられる程、ネリアが食らいついたってことになる

 

「それでも!!いつも傷ついてるのはお兄様で、頑張ってるのはお兄様、だから、私ね、考えたんだ」

 

「考えた?」

 

何を?

 

「嫌ならいいんだよ、でも……コルテットっていう存在がお兄様の足かせになって、苦労する一番の重り、もしよかったら、うんん、お兄様の重りを、私が一緒に背負えるなら」

 

「………」

 

「私がコルテットを継ぐ、お兄様に……これ以上辛い思いはさせない!!」

 

 

 

 

 

 

 

聖王教会の廊下を歩きながら考える

コルテットを継ぐ、まさかネリアの口からそんな言葉が出てくるとは思わなかった

今のコルテットは重り以外何者でもない、確かにまだまだ実質的権力は維持しているが弱体化している事には変わりがない、元に戻すのは大変だ

ネリアは権力目当てで俺に提案したのではない、俺だってコルテットの権力に何の思いもない

あの時のネリアの目は真剣だった、本気で俺を助けたいと思い、本気で俺の事を考えてくれている

彼女にとってあれは『決意』だ、彼女なりの、彼女が考えた

 

だが……その好意に安安とは甘えられない

元々『俺』というイレギュラーがいる事で起こった弊害、全ての責任は俺が持つのが当たり前だろう

何よりも実の妹にそんな過酷な事をさせたくない、苦労するのは俺一人で十分だ

 

「何一人で悩んでるのかな?」

 

「……ロッサか」

 

事件後の大変な時に教会に帰ってくるとは呑気なことだ、と内心思いながら一緒に廊下を歩く

ロッサと歩く事は沢山あったが学校以外で護衛無し、というのは初めてかもしれない、なぜか新鮮だ

 

「管理局はどうなんだ?お前も仕事が溜まってるんじゃないのか?」

 

「まぁね、でも時には気分転換も大切だと思うよ、いつまでもデスクワークだけだとこう……肩がね」

 

「揉んでやろうか?」

 

「あとで頼むよ」

 

ハハッと笑う

 

「そういえばケントはこれからどうするんだい?家は焼けてしまったんだろう?」

 

「ん、ああ、同じところにまた再建してる、それまでは……多分他の世界にあるコルテットの別荘暮らしだな、みんなと会う機会は必然的に減るんじゃないか?」

 

「今のまま聖王教会に住んだらどうだい?部屋は沢山あるけど」

 

「まぁゆっくり考えるよ、暫くは聖王教会に泊めてもらうつもりだから動くのはネリアが十分回復したら、それからだ」

 

 

「まぁゆっくりと考えればいいよ、時間はたっぷりあるからね」

 

「まぁな、一応局員だから局で仕事をしてみるのも悪くないかもしんない」

 

「う~ん、やめておいた方がいいかもしれないよ、あの事件の後だから、その……死ぬよ?」

 

「忠告ありがとう」

 

確かに、今の局で仕事をしようとすれば死ぬな、人手不足に大事件、ロッサが特殊なだけかもしれない

 

「それで、話は戻るけど何を考えてたんだい?話せる内容なら相談にのるよ?」

 

「ん~、あ~、家関係、そうだな……コルテット関係だよ」

 

「ん~、今のコルテットは色々と大変だからね、力になれる事ならなんでもしたいところだけど生憎、僕はそっち関係は乏しいからね……不正を見つけるとかなら得意なんだけど」

 

「そいつは勘弁、不正やらなんやらはこっちでさせてくれ、少なくとも管理局からしてもコルテットがこれ以上弱体化するのはヤバイだろ?」

 

「心配しなくても大丈夫だよ、まあ今のコルテットに探りを入れてくる馬鹿はいると思うから注意をしておくに越した事はないんじゃないかな?」

 

「だよな」

 

コルテットに恨みを持ってる企業なんかはこれをチャンスと探りを入れてくるだろうな、で、弱味を握ってあーだこーだと、めんどくさい

 

「見つけましたよ!!ロッサァァァァ!!」

 

「いっ、シャッハ!?じゃあねケント、また今度!!」

 

「局の方から連絡が多数来てるんですよ!!ってこら!!」

 

頭に包帯巻いたまま走るシスターシャッハを見て思わず苦笑する

 

こういった風景を見ると、終わったんだなという実感がわく

 

鮫島や護衛がいない今、俺は世間一般から見れば普通の青年だし一々厳しい規則もない

てか、護衛もつけられないくらいコルテットが混乱してるって事だが

今のところネリアが言ったように俺へとコルテットの権限が譲られたわけじゃない、まあ少し落ち着けば俺へと移るんだと思うが

今のところは幹部共に任せて大丈夫だろ、幹部も幹部で直感使って不正しなさそうな奴を選んだし

 

エレベーターを使って下に降りる、向かう場所は駐車場

そういや俺、無免許でバイク使ったけど大丈夫だよな?そんな事を今思い出す

バレなければいいか?

 

周りに誰もいないエレベーター

いつもいつもむさ苦しい黒スーツが周り囲んでたからな、隣にはいつも鮫島がいて

 

……あれから独自にあの少年の事を探ったが、まったくと言っていい程何もなかった

関連する出来事も、情報も、あれ程の威圧感を放ち、尚且つ人殺しも平気でする存在の情報が零、頭をかかえたくなる

生憎と戦闘に必死でデータさえ取れていない、明らかに俺のミスだよな

あれから何も行動を起こしてこないので、逃げたと考えるのが得策か?

 

地下駐車場につく、相変わらずどこの世界でも駐車場ってこんなもんなのか?

薄暗くてコンクリートむき出しで、まあいいや

 

俺が行きたいのは拘置所、目的の人物はルーテシア

要件はガリューの腕関連、一応無事だからな、家に置いてたんじゃなくて一応正規の研究所で保管しておいたし

先ずは彼女に対する謝罪、それから手術について、断る事はまず無いだろ

で、免許無しの俺では移動出来ないから局の人間が迎えに来てくれてるらしいけど……俺一応少将、これくらいの事はしてくれる

 

………なんか真っ黒な車がこっち走って来たんだが

なぜかドリフトして俺の目の前に止まる車……なにこれ?

 

「久しぶりだねケント、じゃあ乗って?」

 

「疑問系な意味が分からん、てかなんでフェイト?」

 

「私もちょっと拘置所に用事があって、そのついでだよ」

 

「えっと……じゃあ」

 

フェイトと会うのは事件が終わって以来なんだけど……仕事大変だったらしいし

えっと、その……

 

「?」

 

「……お邪魔します」

 

今思えば二人きりになるのって初めてだよな、護衛やらなんやらが今までいたし

 

やべっ、緊張してきた

 

 

 



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恋心

「家買う?何処に?」

 

「まだ確定ってわけじゃないんだけどね、ほら、ヴィヴィオの学校とかあるでしょ?

だから本格的に学校付近に一戸建ての家を買おうかな~て、みんな一緒に暮らせるしね」

 

「なるほどな……いいんじゃないのか?フェイト達ってお金使うイメージないから溜まってるんじゃないか?」

 

ワーカーホリックだからな、二人とも

それにしても一戸建てか、十中八九vividに出てくるあの家だよな、結構大きい

それじゃあ今までどこに住んでたんだ?海鳴?

 

助手席に俺、ドライバーがフェイト

こうやって横から見てると相変わらず綺麗だな、と無意識に思う

その、何と言うか、綺麗だし可愛いし優しいし……今まで大丈夫だったのに今になって妙に緊張する

あ~もう、フェイトが思い寄せてる相手って誰なんだよ……まあ人の恋路を邪魔する気はないけど

 

「ん?顔に何かついてる?」

 

「え、いや、えっと、その……何と言うか……フェ、フェイトは何の用事があるんだ?

六課も大変だろうに」

 

「ん~、戦闘機人のみんなが調査に協力的かどうか……とかかな?

私としても無理矢理やらされた子達については出来るだけ助けてあげたいからね、みんな協力してくれるといいんだけど……」

 

あ~、協力的かどうかで待遇違うんだよな

人殺してるチンクでさえ三年後には釈放されてるくらいだからな、単に管理局が優秀な人材を欲しているだけかもしれんが

それでも戦闘機人は親であるスカリエッティに逆らえないわけだから不本意での犯罪も有り得る、元々ちゃんとした教育も受けれてないしな

命令されて嫌々と自ら進んでだと全く違う、四番なんてごもっともだ

 

「主犯はあくまでもスカリエッティ、他のみんなは巻き込まれた被害者、それをちゃんと立証して、キチンとした対応をとらなきゃいけないからね」

 

「ホント、どこまでも優しいな、フェイトは……ってオイ!?大丈夫か!?」

 

いきなりハンドルに頭を打ち付けたフェイトを元に戻す

道が一直線だったからよかったけど……どした?

 

「いきなりは……卑怯だよ……」

 

「なんか言ったか?」

 

「な、何も!!」

 

妙にオドオドしながら運転するフェイト、本当に大丈夫か?

俺としては事故りそうで不安なんだが

 

「えっと、そ、そういえばケントは大丈夫なの?こんな大変な時にのんびりしてて」

 

「まあ、今のところは幹部の奴らが全部やってるから、暫くは大丈夫だよ」

 

「そうなんだ……」

 

 

 

……………The 沈黙

 

 

え、なに?俺なんかした?

ずっとフェイトの方を見ていたら不自然なので目を背け前を向く

……こういう時はどうすればいいのだろうか、そもそも二人きりなど転生して以来なかったので余計わからん

前世の歳+今の歳=彼女いない歴の俺を舐めんなよ

沈黙の時間が続く、拘置所まではそこまでの距離はないのですぐにつくが……このまま気まずい状況なのは嫌だ

 

 

チラリと目を向ける

 

目が合う

 

お互い視線を反らす

 

 

え?フェイトもこっち見てたの?

何?俺の事変に思われてないよな、気持ち悪いとか思われていないよな?

あわあわと頭が混乱する、今までこんな事なかったのに!!

 

フェイトの方を向けなくなる、てか向くタイミングがなくなる

 

「え、えっと、ケント?」

 

「どうした?」

 

お互い妙にギクシャクしながら口を開く

反射的にフェイトを見る

 

 

なぜか赤面しているフェイトがいた

 

 

はっきりと言おう、『萌えた』

 

小動物の様に必死に抱きつきたい衝動を抑える、落ち着け俺、どう考えても十九の男子が同い年の、ましてや付き合ってもいない相手にいきなり抱きつくなどアウトだろ!!

それにフェイトにはお泊りの時やらなんやらで自制心はついている筈……

それにフェイトには好きな人がいるんだろ?俺はただの友達ケントだろ?

頭の中でよく分からん葛藤をする、なんだ?これが『本気で好きになる』って事か?

 

必死に自分を落ち着かせる、相手が話してるんだ、ちゃんと最後まで聞かないと……

 

「ケントってさ……家燃えちゃって、今は聖王教会にいるんだよね?

それで、ネリアの怪我が治ったら別世界の別荘に行っちゃうんだよね?」

 

「えっと、どこから仕入れた情報かはわからないけど合ってるよ?」

 

「情報っていうか、ネリアが教えてくれたんだ

そ、それでね、あの……今は実質ケントがコルテットのトップで前みたいな縛りがなくて……今までいた護衛さん達もいなくなって……えっと、その……もしね、もしケントが迷惑じゃなかったら」

 

 

 

「私達の所で暮らさない?なのはと、ヴィヴィオと、ネリアと………私と……」

 

 

へ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へ、返事はまた今度でいいからね!無理して考えなくてもいいからね!!」

 

「う、うん」

 

拘置所の入り口で俺とフェイトは別れた

フェイトはまずスカリエッティに会いに軌道上の拘置所まで行かないといけないらしい

局員に先導されながらフェイトに手を振り、一番最初の曲がり角を……曲が………

 

 

ゴンッ

 

 

「……大丈夫ですか?」

 

壁に頭をぶつける、漫画やアニメなら俺と壁の間から煙が立ち上っていると思う

顔は……真っ赤

 

住む?フェイトと?

いや、実際にはミッド高町家だが……もうなのはの許可はもらってるらしいし……

実感がわかない、てかまだ決めたわけじゃないのに言いようがない嬉しさやら恥ずかしさが立ち込めてくる

頭がボーとする、まさかあんな事を言われるとは思っていなかった

局員が声をかけてくれるので「大丈夫」と答えてまた歩きだす

時々不審な目を向けられたが……しょうがない、今の俺は誰から見ても不審きわわりないだろう

 

ただそんな事も言ってられない、ルーテシアちゃんと会える時間は限られており、その中で本人に対する謝罪やら何やらをするのだ、時間は大切に

 

自分の中で区切りをつけて歩き出す……白の廊下にいくつものドア……

 

「こちらです、面会時間は三十分となっています」

 

「ああ、ありがとう」

 

一応少将なのだから下に見られない対応を……不審には見られたが

ドアを開けてもらい中に入る

ガラス越しの向こうには紫幼女、修正、少女

 

向かい合う形で座る、向こうは俺の事を覚えているのだろうか?

 

「えっと、初めまして、かな?ルーテシアちゃん」

 

「………」

 

無言ッスか

どうやったらこの物静かそうな子が三年後にはハイテンション魔法少女になるのやら……性格自体は変わってないので元々ハイテンションなのかもしれないが

 

「まずは……すみませんでした!!」

 

頭を下げる

こんなとこコルテットの人間やら局員に見られたら止められるだろうな、まあこれは俺のケジメ、悪い事をしたら謝る、これ当然

 

「……どうして謝るの?

悪い事したの……私達」

 

「それでもルーテシアちゃんの使い魔、ガリューの腕を斬り落としたのは事実、本当にごめん!!」

 

「……腕?」

 

ルーテシアちゃんが不審に思ってる

この子は……腕を斬り落とした相手の事を覚えていないのか?

 

「斬り落とした腕は大切に保管してある、そっちが了承してくれればすぐにでも手術をしてあのドリルと付け替える事が出来るんだけど……」

 

ガリューはここには召喚出来ないから基本的に術者に了解を得れば大丈夫

ガリューだってルーテシアちゃんだって治してもらえるんだったらそうしてもらいたいだろうし……

 

「………うん、大丈夫、今のままで」

 

「大丈夫なわけがないだろ?ドリルだと色々使いづらいだろうし」

 

ましてや腕じゃないんだから

 

「別にいいの、だってガリュー……ドリル気に入ってるから」

 

 

…………は?

 

 

「つまり、別にいいって事は……腕よりもドリルのままがいいからって事か?」

 

「うん、腕がなくなっちゃった時は凄く落ち込んでたけど……ドリルつけてからずっとドリルの自慢ばかりしてくるの、ドリルのここが凄いとかカッコいいとか……ロマンだとか……」

 

「………そ、そうか」

 

ガリューの以外な一面を垣間見た

 

「それでも、ガリューにはまた話して見る、もし取り替えたいっていう時は、お願い

多分、無いと思うけど」

 

「りょ、了解」

 

結果オーライってか?

色々とマズい気もするが……無理に治す必要がないのなら現状維持で大丈夫か?

 

「ここに来たの、それだけ?」

 

「う~ん、時間もあるし……何かお話するか?」

 

ネタないけど

 

「一つ……聞いていい?」

 

「ん?どうした?」

 

向こうから話しかけてくるとは

 

「なんで、おでこそんなに赤いの?」

 

「……さっきそこで頭打ったんだよ」

 

思い出させんな恥ずかしい

思わず頭をかかえる

 

「どうして?」

 

「いや、それがな……ちょっと恥ずかしいっていうか、嬉しいっていうか……そんな感じの事があって、何だかこう、モヤモヤしてたっていうか」

 

「恋心?」

 

「……だと思う、一緒に暮らそうって……赤面して言うの反則だろ、フェイト……可愛いし綺麗だし優しいし……ハッ!?」

 

思わず顔を上げる

ニヤリと笑われてサムズアップしてきた

性格は根っからvividの時と同じ、え?弱味握られた?

 

「頑張れ、応援してる、クスッ」

 

「今笑ったよな、笑いましたよね」

 

「フェイト……可愛いし綺麗だし優しいし……」

 

「やめろぉぉぉぉ!!」

 

自分で言ったセリフなのに恥ずかしい!!さっきの事があったといえ何口走ってんだよ俺!!

ガチャッとドアが開く音

入ってくるのは先程の局員

 

「面会終了です……どうしました?」

 

「いや、大丈夫、と思いたい」

 

「応援してる」

 

 

ルーテシアが真っ黒だと実感した

 

 




どこまでもチキンハートなケントです



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進路相談

hotaruさんのおかげでにじファン削除してしまってのせられなかった『終わりの始まり』の回を載せる事が出来ました~
95話です、もしよければ見て下さい

本編は少し飛びます、ぶっちゃけ書くことが無いんで
元ネタはStsの漫画から、事件解決からどれくらいで解散か
忘れたのが本音ですけどね



 

「へぇ、FWのみんなも次の部署決まったんだ」

 

「そうなんよ~、スバルは湾岸特別救助隊、ティアナはフェイトちゃんの執務官補佐、エリオとキャロは一緒に自然保護隊に、私も嬉しいわ~」

 

向かい側のソファに座りながらお茶を飲むはやてに苦笑する

う~ん、幻術か?狸耳と尻尾が見えた感じがしたんだけど……

あれから数ヶ月、年月もあっという間に過ぎる様で季節も変わり、とうとう六課の試験運用も終わりが近づいてきているこの時期

はやてに『ちょっとした相談がある』と言われた俺は六課に出向いた、プライベートなので私服で

ネリアは今頃フェイト弄って遊んでるんじゃないだろうか、聖王教会は暇だと言ってついてきたし

 

「六課ももうすぐ終わりだからね、何というか……あっというま?」

 

「ホンマ、特にスカリエッティを捕まえてからは特に何もなかったからホンマあっという間やったわ、世の中では『奇跡の部隊~』なんて言われてるんやけどな、結構ホノボノしとる」

 

まぁな、あれだけのテロを過激戦力とはいえ鎮圧した部隊だ、はやても鼻が高いだろう

 

「で、俺を呼んだ理由は?ホノボノしてると言っても解散が近いんだ、部隊長は色々と大変だろ?」

 

「大変って言っても事件後に比べたら全然楽なんよ~、えっと、話っていうのは……私の進路の事なんやけど……」

 

「?」

 

進路?はやてのか?

……はやてってどんな進路選んだんだっけ?

FWやヴィータの教導隊入りに比べたら全然そんな視写がなかったのでわからん

特務六課と言ってもあれだけの為に集めた部隊だし……?

まぁそれでも

 

「管理局の歴史に残るテロから救った部隊の、更には設計やら何から何までやってのけた十九歳

それに魔力SSと古代ベルカのレアスキル、どこからでも引っ張りだこなんじゃないのか?

それに今なら六課創立時にあった批判とかもないだろうから部隊の指揮なんてやり放題だぞ?」

 

世間からも注目を集めてるし、なおかつアイドル顔負けの容姿ときた、局でやりたいものがあったらどこでも行けると思うんだけどな、将官とか執務官になりたいって無茶な事以外は……

 

「えっと……うん、そうなわやけど……部隊の指揮は、当分辞退しよっかなって」

 

お茶を飲む、気まずい雰囲気が流れる

うん、まあ

 

「六課創立の時は物凄い反発の中で部隊指揮したいって言ってたのに……実績上げたらやりたくない、俺は飾りの役職だからいいけど普通のお偉いさんが聞いたら発狂するぞ、とことん上に逆らってるし」

 

「発狂はせんと思うけど……ケント君も師匠と同じやね~」

 

「……師匠?」

 

「陸士108部隊のゲンヤ・ナカジマ陸佐、地上本部ではそれなりに知られとるんやけど……知っとる?」

 

……まあ知ってるんだけど、ここは

 

「いや、知らない、陸佐って言っても一杯いるしね」

 

「う~ん、まあそうやね~」

 

前にも述べた事もあるが原作知識ありならば知っているが悪く言えば彼は陸佐、将官ならまだしも佐官の事を何で知ってんだよ、となるだろ

 

「で、やりたくない理由とかあるの?部隊長やりたくなくなるくらい六課大変だった?」

 

「まあ仕事の量は多かったけど、そうじゃないんよ、やっぱり……私の力不足とか、そこら辺がこの一年間で感じたから」

 

ん~、はやてははやてでよくやってたと思うけど、まぁそれははやて自身じゃないと分からないか

 

「はやても毎日のほほんと過ごしてたんじゃないんだな、一年を通して考える事はあった……と、さっきの解答から推測するに指揮官をやりたくないんじゃないんだろ?」

 

「何や毎日のほほんって、私も色々と考えて毎日生きとんやで」

 

「はやてなら一日家でゴロ寝とかありそうなんだが」

 

「…………無いわ!!」

 

その間はなんだその間は……

 

「まぁ指揮官をやりたいって言うのはホントやわ」

 

「………一度初心に帰ってみたらどうだ?」

 

へ?とした表情でこっちを見つめてくるはやて、うん

 

「前は捜査官……だっけ?

一度戻って指揮官の勉強したらいいじゃねぇか、で、自分に自信がついてきたら部隊指揮やって、成功点と失敗点を見直して、勉強しての繰り返し、今のお前には時間もあるしそれができる実力だってあるんだから、前に進んでも後ろに戻る事は無いと思うよ」

 

はやてにはそれが出来るだけの才能も実力もあるからな、時間はかかるがそれが一番、何事も積み重ねが大切

 

「うん、そうやな、ありがとう、相談に乗ってくれて」

 

「いやいや」

 

こっちも勉強になったし、それより……

 

「今思ったんだが何で俺に相談?もっと周りに年食ったベテランとかいたんじゃないのか?」

 

「ん?ん~、気分?」

 

なんだよそれ

 

「あ、でも確かに、絶賛ニートのケント君に仕事の相談は無かったかな~」

 

「言うな恥ずかしい」

 

はやては笑ってるが俺にとっては大問題だ

コルテットの長男とはいえ権力の引き継ぎはまだだし将官と言っても肩書きだけ

どこかでバイトしようものなら大問題だし六課の仕事を手伝おうものなら上司と言う事でギクシャクされるし……抜け出せないんだよ、色々な要因が重なって

と、言うわけで今の俺は聖王教会で絶賛ニート満喫中です

 

「それで次はなのはちゃん達の家でヒモになるんやからな~、うんうん、いいな~、ヒモは」

 

「生活費は収めるしどうにかして金は稼ぐし、てか何で毎回その話になると変なオーラが出る

漫画だったら後ろに『ゴゴゴゴゴ』とか変な効果音つくぞ」

 

「うんうん、ホンマ、一歩遅かったわ~、やっぱり身内通しての情報はズルいわ~」

 

内容は……俺が高町家に住むって話

うん、お願いした、うん、お言葉に甘えて、多分顔赤くしながら

なのはからは「よろしくね」と、ヴィヴィオからは「家族が増える~」と、フェイトは何故かモジモジしててネリアは隣で笑ってた

で、はやてからは……この話が出るたびに界王拳さながらのオーラが出る、正直怖い

 

「ま、ケント君が決めた事やしいいんやけどな、それに家も近いし」

 

「そ、そうだな」

 

オーラが収まり心の中で一息つく

何が原因だ?

 

「そういえばケント君、六課解散の日は来るん?来れるんやったら来てほしいんやけど」

 

「ん?その日は……あれだ、サンドロスの墓参り、うん、そうだった筈」

 

「そうなんや、来たら楽しい事あったのに」

 

あの最後の模擬戦だろ?勘弁、あんな最終戦争に巻き込まれたくない

シグナムらへんが手合わせとか言って本気で斬りかかって来そうだからな、本職には勝てないのです

 

「まぁ一段落したら行くよ、出来るだけ急いで」

 

「うん、そうしてな~」

 

お茶を飲み干して席を立つ、はやても忙しいのだ、今日はこれでおいとまさせてもらおう

 

「あ、ケント君?」

 

「ん?」

 

はやてに呼び止められる、どした?

 

「あの~、なのはちゃんやフェイトちゃんと考えてる事なんやけどな……ケント君ってもう前みたいに縛られる事はないんやろ?」

 

「うん、今では全然だけど」

 

「それやったら……まだ予定、なんやけどな、六課解散後にFW陣みんな入れて……地球行かへん?」

 

 

 

 

 

…………what?

 



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六課解散

Stsはこれで終わりです
暫くはのんびりホノボノですね、軽く空白期です




「お~い、ネリアや、ネリアや」

 

「どうしたの?そんなにジジ臭くよんで」

 

平常心平常心

ああ、空が綺麗だ

 

「一つ質問してもよいかの?」

 

「えっと……はい?」

 

平常心平常心

怒らず焦らずゆっくり……

 

「なんでコルテットの主導権がお前に渡ってんだゴラァ、俺は了承もしてねぇしお前に言われた事の答えも出してねぇぞ!!」

 

「……てへぺろ」

 

「ああ?」

 

アイアンクローをかけて逃げ出そうとするネリアをとっ捕まえる

痛い?これしきの事で許されると思ったら大間違いじゃオラッ

 

「痛い痛い痛い!!だってだってお兄様絶対自分でやるとかネリアに迷惑かけたくないとかいうじゃん!!隠れてしないとお兄様が痛い痛い痛いよ!!」

 

「へぇ、そうか、ハハッ、だからって今一番身内で重要な話を一人で決めていいって話にはなんねぇよなぁ!!」

 

足払いをしておでこから地面に倒れるネリア

うにゃっ!!と聞こえたが同情する事はない

 

朝起きて協会内にあるサンドロスの墓参りして、んでもって今日解散の六課に行こうと思ったらカリムから「ようやくコルテットも落ち着きましたね」だ

部下に聞いてみるとネリアが当主で俺がコルテット相談役になっていると、誰がしたのかは単純明快

 

「ちょっ、ギブギブギブギブ!!許してお兄様痛い痛い!!」

 

「ん~、聞こえないな~、人に許してもらう時はどうすればいいのかな~」

 

逆エビ固めでネリアが床を叩いて半泣きで謝ってくる

謝ってももう遅いのだよ、世間一般にもう知られてしまっているのだよ

 

「ごめんなさいごめんなさい!!」

 

「はぁ、全く」

 

頭からプスーと煙を出しているネリアを放す

世の中にはやっていい事と悪いことと悪い事がある、それが世間で注目されていることなら尚更だ

 

「うう、お兄様に汚されちゃった、ああ、もうお嫁には「ああ?」すみません、なんでも御座いません」

 

土下座してくるネリアに向かって皮肉混じりの盛大なる溜息

しかしよく通ったな、俺サインとか何にもしてねぇぞ

 

「それは……お兄様が寝てる時にちょこ~と」

 

「……はぁ、しゃあねえ」

 

なってしまったものはしょうがない、中小企業ならまだしもコルテットは経済の中心でもある大企業、いくらなんでも就任直後に変えるなんて出来ないな

てか何だよ相談役って、ネリアのサポートだけど正直やる事ないぞ

 

「まぁ、いいか、まだまだ直接介入しなくても大丈夫だし、時間かけて考えよ」

 

「それはネリアが当主としてふさわしくないと」

 

「そんな事は言うつもりねぇが、お前俺みたいに勉強してきたのか?」

 

「……てへぺろ」

 

こいつ………

 

「許してやる代わりに一週間オヤツ抜きだ、いいな」

 

「そんな殺生な!!ネリアの体はオヤツで出来てるんだよ!!」

 

「知るかそんなの、ついでに夜食も抜きだ」

 

「ネリアは灰となった」

 

真っ白に燃え尽きるネリアを無視して車に乗り込む

ん?免許?俺だってずっとニートしてたわけじゃない、事件終わって今まで半年以上あったんだ、皇帝特権使えばすぐ取れる

 

「ネリアは行かないのか?六課も今日が最後なんだが」

 

「行くよ、もちろん行くよ、ただ夜食だけは、夜食だけは」

 

「もやしだけ許す、調味料とか使うなよ」

 

「お兄様って案外鬼畜?」

 

お黙り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、遅かったな~ケント君、どうしたんネリアちゃん、腰抑えて」

 

「逆エビ固めが意外と効いたらしい、腰がピキピキいってるんだと」

 

「逆エビ固め?」

 

何の事?と首を傾げるはやてを他所に絶賛空中で広げられている戦いに目を落とす

桜可哀想だよ、むっちゃ散ってるよ、ハゲまくってるよ

原作で細かい視写は無かったけどここでやってたんだな~と知る、てか何故練習場に桜立てた

 

「ケント君も混ざる?始まって結構経つけど」

 

「いや、やめとく、てか今入ると俺だけ孤立状態でリンチ食らうのが目に見えてる

てかはやては入らないのか?」

 

「わたしやネリアちゃんが入ったら練習場が消えるやんか~」

 

流石は魔力SS、歩くロストロギアは伊達じゃない

 

「それケント君やろ?それはそうとこれ、桜って言うんやで、綺麗やろ?」

 

「これは知ってる、綺麗だよな、これ」

 

「オオ、地球の植物知っとるんや」

 

元日本人です

そういやミッドには桜無かったね、見たことねぇや

 

「あ、スターライトブレイカー」

 

「ネリアちゃん、私らで相殺すんで、このままやったら六課が消える」

 

練習場じゃなくて六課と来たか、てかなのはってゆりかご内での事があって魔力値落ちてんじゃないの?

いいの?SLB撃って

 

ネリアが嫌々、はやてが全力で飛んで相殺する

なんか二人も加わった、無双じゃね?力押しで

 

「ケントさんは入らないのですか?」

 

「ん?えっと、シャマルさん、でしたか?」

 

「はい、湖の騎士シャマル、癒しと補助が担当です」

 

中の人はだいぶはっちゃけてるがな

 

「あ、ヴィヴィオ」

 

「こんにちはー、ケントさん」

 

こういう純粋な子っていいよね、

俺の周りにはお腹が真っ黒なおじさんばっかり

 

「俺も入って来た方がいいですかね、ノリ的に」

 

「ん~、後ろ」

 

後ろを振り向く

目を輝かせウキウキしながらデバイスを構えるシグナムさん、軽く苦笑い

 

「はぁ、デュランダル」

 

セットアップする、ここまで楽しみにされたらしょうがない、俺は一人での参戦だけど……まぁ

 

 

 

「やれるとこまで頑張りますか」

 

ニカッ、と一度笑って突っ込む

 

 

ケント・コルテット、今日も笑顔でいます。元気です。

 

 

 



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番外編 Fate/zero (途中)
番外編 Fate/zero 1


にじファンでも載せていた番外編、ぶっちゃけラストの事何も考えてない、アイリ救うの無理じゃね?
今のところ三話まで有り、そっから先は多分むっちゃ考える可能性大

話自体はネタが思い浮かばない時の暇潰し程度に書いたものなので期待はしないで下さい
戦闘はほぼカット、主人公前向き、展開壮絶に早いです



 「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。

  繰り返すつどに五度。

  ただ、満たされる刻を破却する」

 

 「――――――告げる」

 

 「――――告げる。

  汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

  聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

 「誓いを此処に。

  我は常世総ての善と成る者、

  我は常世総ての悪を敷く者。

 

  汝三大の言霊を纏う七天、

  抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

提唱が終わり、一際光り輝く魔方陣

それを見つめる男と女、霧が立ち込め、視界を遮る

最優の英霊、最強の騎士、そう思って自分達の雇い主が見つけ出した鞘

だが男は呆気に取られた様に、女も空いた口が塞がらないらしい

何故らら、そこにいたのは一人の『少女』

エメラルドの瞳に『赤』のドレス、身長は150あるかないかぐらい

どれぐらいの時間が流れただろうか……ほんの数秒の時間が延々にも感じられる

そして……先に口を開けたのは……少女だった……

 

「…………ここ、どこ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてこんにちは、『超』普通の高校生改め現在は絶賛セイバーです

いや、あの最高神って本物だったんだな~とつくづく思う、てか何故こんな死亡フラグが転がりまくっている世界に転生させた……

そう、俺は俗に言う転生者、ある日自称最高神の野郎が俺の書類?にゲロ吐いてぶっ殺し、そのお詫びというか隠蔽の為に転生させられた哀れな子羊だ

 

まぁ最初は手間取ったさ、アイリスフィールは終始苦笑いだしマスターであるキリちゃんは口もきいてもらえないし……ま、キリちゃんの対応には慣れたんだけどね、アイリスフィール改めアイリはすごく優しいし

 

う~ん、これって俺も聖杯戦争に参加しないと駄目なのかな……元々一般人なだけに英霊なんて規格外な物と戦いたくないんだが……

今は俺も英霊なんだけどね、それに対抗する手段、簡単に言えば『チート特典』も見つけたし……あ、説明しようか?

 

黄金律とセイバー完璧コピーと破壊、解説は別世界で頑張っている俺に聞いてくれ、二回も説明したくないし

違うところは作者が嫌いな性転換してたところかね~、別に変わりはないか

 

まぁそんな訳で、頑張っていこうかね~

 

 

 

 

 

 

1、ランサーと戦闘

 

「良くぞ来た。今日一日街を練り歩くもどいつもこいつも穴熊を決め込む腰抜けばかり。俺の誘いに応じた猛者はお前だけだ」

 

「どちらかと言えばアイリにつれて来られた……と言うのが正論、俺自身殺しとか無理だから、ここは一発話し合いで」

 

フッと笑って受け流してくるランサー、相変わらずイケメンだね~……爆発しろ!!

あ~、てかチャームの魔術、だったっけ?

俺にはただの黒子にしか見えん、あれのどこが魅力的なんだ?

その前に前世が男だったから変な欲情なんてしない、アイリ可愛いよ、アイリ(;´Д`A

 

「その様相、セイバーとお見受けするが如何に?」

 

「多分そうだと思う、みんな揃ってないから何とも言えないんだけどね~、俺ってバーサーカー以外ならどのランクにもなれるし、で、君はランサーで間違いない?」

 

「如何にも……これから死合おうという者と名乗りを交わすことも出来ないなど、興の乗らぬ縛りがあったものだ」

 

(俺にとっちゃあ真名って何名乗ればいいのかわかんねぇんだよな……アーサーでもネロでも……はたまた前世の名前でもいけるし)

 

あ、まだ説明してなかったな

俺って何故か『赤セイバー』の力を色濃く受け継いでいる、戦う時も殆ど『皇帝特権』頼みだし……

青セイバーの力も受け継いでるんだけどね、『対魔力』とか『風王結界』とか……エクスカリバー持ってないから真名開放は出来ないけど……

俺の剣?赤セイバーが持ってたなんかねじ曲がった剣、名前は忘れた

ちなみに俺の宝具はあの劇場、まだマスターにもお披露目した事ないんだけどね、ヤバイ程魔力使うし……

 

ま、まずは英霊相手に何処まで通じるか……試してみようかね!!

 

 

 

 

 

2、バサカからのとばっちり

 

 

「アアァァァァァァァ!!」

 

「うん、君は俺を誰と間違えてるのか知らないけどその殺気バンバンぶつけてくるのは辞めて、そう言うのには慣れてないし」

 

結局ランサー相手に大分善戦出来たな~、左腕に怪我も負わなかったし……

流石皇帝特権、テラパネェ

そんでもって原作通り王様お二人登場、ライダーは軽く受け流してアーチャーでは目を付けられない様に終始黙ってた

いや、『王の財宝』って間近で見せつけられたら体が動かんよ、一発一発が一撃必殺とかマジチート

そんでもってバサカとアーチャーが戦ってアーチャー帰還、ザマァ

で、バサカは原作通り俺をアーサー王と……いやまて、俺はたしかにアーサーの対魔力やらなんやらを受け継いでるがご本人じゃねーぞ、お前もランサーと俺とが戦っているのを見てたなら俺の剣がエクスカリバーじゃないの分かる筈だし

う~ん、でもアイリの中にある『アヴァロン』は正常に作動してるんだよな~、一括に俺がアーサーと同一人物ではないとは言い切れないし……

ま、中身はアーサーじゃなくて男子高校生なんですけどね、幾ら皇帝特権で技術チートになってるとはいえ殺気は止められねぇし……やべっ、襲いかかってきた………

 

 

 

 

3、旦那

 

「お迎えにあがりました聖処女よ」

 

(また面倒なやつキター)

 

アイリの暴走運転を体験してみて軽く逃げ出そうかと思っていた俺

あ、バサカと戦ったけど……なにあれ怖い

まずね、鉄塔の重量半端ねぇ、実力的には五分五分だけどマジで押された

んで、未だに手がヒリヒリするし、あと原作通り、ライダーに助けてもらいました

先生酷いよね、こんなにもピュアな心を持つ俺を殺せだなんて……冗談です、だから石投げないで!!

 

んで、目の前には旦那がお辞儀してる、目デカ!!

う~ん、ちょっと臭いのが残念、

 

「セイバー、この人、貴女の知り合い?」

 

「いや、知らない知らない」

 

「な、なんと!?」

 

あ~、めんどくせ

 

 

 

 

4、外道作戦

 

「僕達には他のマスターには無いアドバンテージが二つある。キャスターの真名がジル・ド・レェだと知っている。そして何故かセイバーをジャンヌ・ダルクと勘違いして付け狙っている。僕達は網を張って待ち構えるだけで良い」

 

…………眠い

サーヴァントでも眠い時は眠いのです、そんな訳で椅子ももらえずアイリの隣で一人アクビをする俺

特にあの旦那との話は疲れた、てかあれは話にもなってない感じがする

 

「キャスターは他のマスター全員が狙っている。令呪という賞品は確かに魅力的だからね、そして僕達はむしろキャスターを狙って血眼になっている連中こそが獲物だよ。ここにいればセイバーを狙ってキャスターが来る。それに吊られるマスターが一人や二人いるはずだ。まさか自分が狩る側から狩られる側に回るなんて思ってもいないだろう。その油断を遠慮なく突かせてもらう」

 

うわぁ、外道だ……

てかセイバー持ってて篭城とか無いわー、セイバーってキャスターの天敵なんだろ?

まぁ、このキリちゃんはこういう『効率的な方法』が大好きなんだけど……

ん、俺?別に反論したりはしないよ?

 

あの海魔とかいうの気持ち悪いからね、あれのせいで俺を題材とした薄い本が出るのも嫌だし……

てか赤セイバーの感性を受け継いでいるのかは知らないけどあれは生理的に受け付けない、気持ち悪いもん

あとランサーを殺したか殺してないか……とか言ってたけど別に興味ねーし、左腕怪我してないからね

そう思ってたら旦那がお城に入ってきたし……はぁ、薄い本が出る……

 

 

てか旦那よぉ、俺って前世が高校生だから『血』とか見慣れてないからホントそういう事やめて、子供が死んで行くの見て吐くの必死に抑えてんだから……

英霊が血を見て吐くとかしたらいくら自分のマスターでも怪しがられんじゃん?

あ~、でもいい気分しねぇ、特にいろいろと死んでいくのが……

うん、行こう、俺だって子供見捨てるほど人間関係やめてねぇし……

 

 

 

 

 

5、キャスター戦後

 

 

「うぉぉぉぉぉぉ!!」

 

アインツベルンの城にある風呂で必死に体を洗う俺

原産通り触手が体にべっとりと付きました、今思い出しただけでもあの感触……うう、寒気がする……

特に胸とか触られた時は焦った、くっ、この犯罪者が!!

青セイバーよりはあるからな、この弾力性、うん、余は満足じゃ

あとキレーさんがスタイリッシュ通り魔をちゃんと決めやがった、俺のアイリになんて事を!!

そんな事言ったらキリちゃんが眉間に銃突きつけてきたから黙った……キリちゃんにも『嫉妬』ってあるんだね

あとは……ああ、ランサーが異様にカッコつけてたからキモかった、あいつぜったい厨二だろ

てか出てくるタイミングがナイスすぐる、絶対狙ってたなあいつ

あ、それと先生の血が城にこびりついてた

けど……大丈夫かな?

 

 

次は……問答か?

嫌だな~、俺って元々王様じゃねーし、聖杯の事しってる俺に願いなんてねーし

ん?聖杯の事をついてマスターに言わないのかって?

馬鹿言うな、俺が言ったところで信用性皆無だろ、証拠もねーし

 

はぁ……先が思いやられる……

 



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番外編 Fate/zero 2

本音を言うとこれを投稿したのは絶賛苦悩中だからです、
ハイ
新話書こうとしたんですけど話グダグダで内容ごっちゃで、今のところ二回違う内容の話書いて二回とも消してます
大体八割ぐらい書いて「駄目だこりゃ」って感じですかね……

番外編は三話、三話投稿したら本編進めて暇な時にでも続き書きましょうかね

余談ですがボツになった二つは高町家の完成と地球旅行の二つ、どっちもグダリ過ぎて自分が見てて嫌でした

あと、このケントが軽いのは本編と違ってコルテットでの人間不信やら苦労がないからです
ぶっちゃけもう別キャラですね



6 もんどーは無し

 

あ、久しぶり、ZEROの世界に転生したケントです

いや、ニュースじゃなくてfateの方の、ニュースの世界に転生って……ん?あれって二次元じゃないから転生っていわないのか?

まぁ……はい、旦那が逃げて行ってから数日が経ちました

そういやケイネス先生の完璧な(笑)魔術工房ってどうなったんだろうね?

キリちゃんちゃんと爆破したのかな?

それはそうと問答終わりました、ハイ

いや、俺はいませんでしたよ?だって真名知られてないし、自分でもどれにしたらいいか分からないし

イスカンダルのおっちゃんはアインツベルンの城じゃなくてトッキーの家に上がり込んだらしいよ、結界ぶち抜いて

トッキーどうするんだろう……ずっと引きこもってる事が出来なくなったけど……

庭はライダーの……あの車輪でボロボロらしいし………

てかアッサシーンが脱落してないんだよね、アッカリーンは元からいないけど

今こうしてるのも見られてんのかな……え?今なにしてるかって?

入浴中でござんす、心は男の子だけど体は女の子、お風呂には入りたいのです

なんかこう言うとエロく聞こえる………

まぁアサシンがまだ生きてるおかげでアイリはまだ元気なんだけどね、俺と結婚するまで守りとおす!!騎士の剣にかけて!!

とか言ったらキリちゃんにあの礼装、眉間に突きつけられました。そんなにアイリ大事なんだったら聖杯戦争やめちゃいばいいのに

あーやべぇ、そういやこの体女だろ?合法的にアイリと風呂入れるんじゃね?

今ではロリロリのイリアもおまけで付いてくんじゃね?

よし、そうと決まれば早速実行…………キリちゃんに殺されかけました

アイリ口説いてる時に入ってくるとか……いいじゃないかいいじゃないか、同じ女なんだし

お前だってアイリと『ピー』したからイリアが生まれたんだろ?俺にも少し分けろよ

とか言ったら本気で礼装撃ち込まれました、除けたけど

てか危ねえよ!!しかもそれってナタリィが残してくれた数に限りがあるやつじゃないの?

いくら英霊でも痛いもんは痛いんだって!?

ちょっ、だったらイリアだけでも

 

なんかランチャー的なもん出して来ました、すみません、ガチで死ぬからやめて

いや死なないけど、てかそれってナタリィ殺したランチャーじゃね?

ごめん、マジすみませんでした

 

 

 

 

 

7 小林ぃぃぃぃぃぃぃ!!

 

「冷酷なる神よ(以下略)」

 

なんか物凄い大きな肉の塊きた

悪い旦那、それ俺の中には入らねよ……まだ指しか入れた事ないからわかんないけど

いや、俺を愛してくれるのは分かるけど…ねぇ、大きすぎるのも問題って言うか……

ランサーなら喜びそうだな、ゲイだし

え?指入れた?どこにって?

いや、なんでもありません、俺に対して変態のレッテル貼られるから

別世界で頑張ってる俺も変態になるから

 

うぉっ、あれって触手?

………過激なプレイをお望みの様だけど遠慮する……あれの感触はマジ気持ち悪かったし

もしあれが中に入ってきたら……自殺するわ、俺

ん?中って何かって?

さっきから下ネタばっかですみません、マジメにやるので石投げないで下さい

 

「ようセイバー」

 

「ん?ああ、来てたんだ」

 

「なんだその反応は、まあよい、まずはあのデカブツを何とかせにゃならん」

 

「自分のより大きいからって拗ねているのか?」

 

「聞き捨てならんぞセイバー!!我のアレを見くびるでない!!」

 

いや知らんし

 

「で、どうするのだセイバー、何か策はあるのか?」

 

「あ、いたんだランサー」

 

「……………。」

 

ライダーは音で若干分かってたけどこいつはマジ気付かなかった、アサシンでやっていけんじゃねーか?

 

「ん~、そうだな……よく覚えてないけど何かの加護を受けてるから水の上を歩けた……はず……」

 

「はずって……」

 

「大丈夫だよアイリ、君が今ここで婚約届けにサインしてくれればそれは確信に変わるから」

 

「いつも婚約届けを持ち歩いているの?」

 

「当然」

 

「のう坊主、あれがいわゆる『レズ』とか言うやつか?」

 

「お前ら!!マジメにしろよ!!」

 

結構マジメです、ん?

 

「お、飛行機」

 

「違う……戦闘機だ」

 

ぐちぐち言ってる間に到着してたのね

 

「く、食われた!?」

 

「小林ぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

「知り合い?」

 

「大丈夫だアイリ、ただ単に言いたかっただけ」

 

さて、エクスカリバーも使えないし……どうするか……

 

 

 

 

8 ランサーミサイル

 

 

「ああもうじれったい!!」

 

なんだよなんだよなんなんですかぁ!!

こいつ斬っても斬っても再生すんじゃねーか、これなんて無理ゲー?

それに……

 

(あのリア充がぁぁぁぁ!!)

 

そんな所で突っ立ってないで何か仕事しろよこのニート!!

なにが「狙撃する」だ!!泳いででも戦えよ幸運E!!

あーもう、イライラしてきたぁぁぁぁ

 

「ちょっ、セイバー!!どこ行くんだよ!!」

 

「ちょっとあの槍人間を有効活用しに!!」

 

少しの間あのデカブツはライダーに任せてランサーの元へ向かう

そして開口一番

 

「ランサー、風に乗って走れるか?」

 

「いきなりどうしたセイバー、前にもした様に一応可能だが」

 

「よし、じゃあ」

 

ランサーの後ろに立って剣を構える

ランサーも俺が何をしようか分かったらしい、槍を構える

 

「なるほど、風によって俺をあそこまで運ぶか」

 

「勢いもついて一石二鳥だろ?」

 

そう、風の力でランサーを勢いよく飛ばして一閃

こんな所で突っ立ってるんだったらこれぐらいの事してもらわねぇとな

 

「いくぞランサー、泳ぐ準備は十分か!!」

 

「ん?いやまてセイバー、もちろん飛ばした後の事は考えてあるんだろうなぁぁぁぁ!!」

 

ランサーがぐちぐち言っていたが問答無用で飛ばす

おお、肉の塊に一撃与えたな、まあそれでも力不足

あそこの部分は再生しないから十分だろ、よかったなランサー、これで『活躍』による令呪が受け取れるよ!!

後は水の中にドボン……泳げるよな?

 

「セイバー、貴方も酷い事するのね……」

 

「英霊だから大丈夫なんじゃね?霊体化出来るし」

 

さて、『ストレス発散』も終わった事だし、戦闘を続けるかね

 

 

 

9 あ、そういえば

 

「う~ん、どうしようかね~」

 

少し考えてみる

こいつ、別段強くはないんだけど面倒なんだよね~

原作では元祖セイバーの『エクス・カリバァ~』で一刀両断してたけど……俺無理だし

どうやって倒そうか、あれ

ライダーは何か言って結界に取り込んだし……なんか解決策考えないと色々やべぇ

 

「アインツベルン、何か策はあるのか?」

 

「え~と……」

 

アイリは言いづらいんだろうな……俺まだ真名知られてないから『エクスカリバー』の事言うの

でも俺使えねぇし、てか聖剣自体持ってねぇし

ん、キリちゃん?なんだって?

宝具を使って殲滅しろ?それが出来たら苦労しねぇ

黄金劇場に取り込んでも時間稼ぎしか出来ねぇしな~、対城宝具ね~

 

「セイバー、その宝具とは一撃であれを消し飛ばす事が出来るのか?」

 

「一撃で消し飛ばす………あ、あったわ」

 

今思い出した、そういや特典まだあったわ

てか………

 

「いたんだランサー」

 

「……………」

 

そう怒るな、憎たらしい顔が台無しだぞ?

あ、照明弾、キリちゃん上手くやったね

 

で、そっから現れる肉とライダー、ライダーも退いたし……手を前に出して……

 

「破壊(クラッシュ)」

 

水とか全部消えました、じゃなくて分子やら原子になりました

 

あ、なんか周りからの視線が痛い

アイリとか「かの王は~」とか「真名をうたう~」とか言ってたしな、全くもって黄金じゃないし………

 

………説明どうしよ……

 



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番外編 Fate/zero 3


予想以上に不評な為本編進めます
本編も出来が悪いのですが……番外編はちょくちょく書いていきたいと思います



 

「つまり貴方の中身は一般人で……召喚の時にイレギュラーな形でアーサー王に憑依してしまったと言っているの?」

 

「そうそう、アイリは飲み込みが早い、ま、アーサー王だけじゃなくてかの暴君のスキルも入ってるんだけどな、強さ二倍だ」

 

「でも……そんなことが……」

 

アイリが何か考え込んでいる、う~ん可愛い

あっ、あれからの事?

う~ん、そうだな……先ず旦那が「ジャンヌ~」とかいう夢を見るなんて時間も与えずに死んじゃっただろ?

そんでもってアイリは俺に説明を要求、あの宝具はなんなのかって

いや~、あれはどちらかといつと宝具じゃなくてスキルのようなものでして……はい

で、説明に困った俺は素直に真実をぶっちゃけました、神様伝伝は抜かせてもらって

 

説明した内容と言えば俺が元一般人高校生だという事、何らかの手違いでアーサー王に憑依したということ、でもって聖剣なんて待っておらず代わりにかの暴君のスキルを保有していること

この世界がアニメやら何やらは話していない、話した所で信用してくれるかは別だしうごきにくくもなる、聖杯が汚染されてる~などと言ったら逆に怪しまれるだろ、特にキリちゃんに

 

「まっ、深く考えないでいいって、聖杯にだってミスはあるさ」

 

「でも……なんの関係もない貴方を巻き込んでしまったのは事実、魔術師でもない、なのに、私達は」

 

「いいっていいって、今の刺激的な日常、俺は好きだよ」

 

やっぱりアイリはいい人だ、こんな話を信じてくれるなんて……

キリちゃんならそうはいかないんだろうな~、「僕らを錯乱させて、一体何を企んでいる」とか考えそうだし

 

「まっ、取り敢えずキリちゃんの命令通り、リア充が隠れてる場所に行こう、あまり遅くなってもしんどいしな」

 

「そうね……行きましょう」

 

う~ん、聖杯戦争に一般人を巻き込んだことがそんなに堪えたのか?

アイリは優しすぎるのかな……キリちゃん叱り俺叱り

 

まっ、それがアイリのいい所なんだけどね!!

 

 

 

10    そんなにも勝ちたいか~

 

 

「セイバー、俺は、お前と出会えてよかった」

 

「うっせぇリア充、殺す気満々で行くから覚悟しろ」

 

適当に話してたらランサーに感激されたセイバーです

別に濃い内容を話した気はないんだけどな~、確か今まで先生に前世の事で散々言われてたんだっけ?そのせいである程度優しく?接したらこんな風になるんだな~

 

「フィオナ騎士団一番槍、ディルムッドオディナ、参る!!」

 

「おっ、名乗りを上げたか……よし、そんじゃあ」

 

どうせさっきのアイリの会話だって聞いていたんだろ?

だったらもう関係ねぇ!!

 

「よろしい、騎士王、アーサー・ペンドラゴンが受けて立つ」

 

「なっ!?……かの誉れ高き騎士王との対戦、光栄だ!!」

 

「ぐちぐち言ってるがこの前俺に一太刀も与えられなかった事を忘れてんじゃねーぞ、槍二つとも折ってファイターにしてやるよ!!」

 

ニヤリと笑う、さて……

 

「「いざっ!!」」

 

赤い槍と赤い剣がぶつかり合う

やっぱりスピードに関しては完璧に負けてる、間合いも槍の方が広いしな……

 

(なんとかして剣が最大限に生かせるようにしたいんだが)

 

まっ、相手も一流の武人、そう簡単には間合いに入らせてはくれないか……

力ではこっちが押し勝っている……いけるか?

 

「はっ!!」

 

「くっ!!」

 

横凪に、力強く剣を振るう

そしてランサーは赤の剣が放った一撃を赤の槍で受け流す、当然の事ながら振り切った後と言うのはスキだらけなわけで……

 

「浅はかだったな!!セイバー!!」

 

「くそっ!!」

 

もう一振りの黄色の槍、ゲイ・ボウでの一突き

神速とも言えるその突きを躱す事などできない、だが、『突いてくる』とは知っていた

 

「破壊(クラッシュ)」

 

「なっ!?」

 

その神速の槍は俺に届く直前に掻き消える

槍の先には俺の左手……咄嗟だったから槍しか消せなかったけど……十分!!

 

「気い」

 

「っ!!」

 

「抜き過ぎだ!!」

 

剣を戻して再び斬りかかる

流石に体制を整えた方がいいと思ったのか……一度後ろに下がるランサー

 

「なるほど……キャスターを消しさったあれか」

 

「ホントはお前ごと消したかったんだけどな……早過ぎて槍一本壊すのが精一杯だったよ、まっ、これで怪我を気にせずに戦える」

 

「フッ、流石だな、だが槍一本俺から奪った程度で自惚れるなよ、俺にはまだ『ゲイ・ジャルク』がある」

 

「バーカ、魔法効果を打ち消すとか俺にとっては何の問題もねーんだよ、ただずっと痛みに耐えて戦うとかあり得ん」

 

痛みに耐性ないんです

 

「フッ、楽しいな、ならばその手品、この槍の前では無力だと言う事を知れ!!」

 

「おお怖い怖い、大丈夫、こっからはちゃんと剣で倒してやるよ!!」

 

肩に剣を担ぎ、ランサーは一本になった槍を振り回す

ったく、いい笑顔だよ……さて……そろそろか?

 

「ランサー!!」

 

「ん。セイバ……ア?」

 

ランサーが疑問の声をあげる、当然だ、今のランサーの槍はランサー自身に標準を定めていて……その手には自身の力がこもっている

対する俺はその槍を力づくで止めている状態、簡単に言えば俺がランサーを助けた

 

「セイバー、これは!?」

 

「おいおい、ちょ~とやり過ぎじゃね?キリちゃん」

 

ランサーの腕をを抑えながら顔だけを動かす

 

いたいた、ギロリと俺を睨みつけてるね~、余計な事してるから当然か?

 

「主!!一体!!」

 

「何故だ……」

 

ランサーはわけが分からないのだろう、そして先生は逆に震えている

ったく、さっき思い出していてよかったよ、

これzeroの中でもかなりグロいシーン、俗に言う『ディムる』じゃねーか

 

「何故、何故自決しない!!私は、私は令呪によって命じた筈だ!!」

 

「あ、主」

 

「死ね!!今すぐ死ね!!このままでは、私とソラウが………」

 

顔に手を当てて嘆く先生……好い加減ランサー、令呪に逆らうとかしてくれないかな?

腕がむっちゃ痛い

 

「ランサー、自身のマスターを殺されたくないのなら自決しろ」

 

手に持つ銃を先生に向けるキリちゃん、ちょっと怯えてるじゃねーか

で、ランサー、好い加減にしてくんないかな?そろそろ手がやヴァイ

 

「お前達は、そんなにも勝ちたいか、そこまでして聖杯がほしいか」

 

目には涙、主に裏切られた事が相当きたんだろうな……全く

てかホントどうしようかね、対魔力がそこまでなランサーが令呪に逆らった所でどっちみち死ぬし……めんどくさ

 

「何故、何故騎士王のようにお前達はなれない、何故騎士の道をけがす」

 

ランサーの顔には諦めと絶望、うん、そんな至近距離で見ないで、俺は男には興味がないから

 

と、その時だ!!

 

「っ!?セイバー!!」

 

「えっ?ちょっ!!」

 

半分力づくで引き離される

痛ぇじゃねえかよこの野郎、一体誰のおかげで助かってると思ってん……だ……

 

「…………グフッ」

 

「ランサー」

 

ランサーを貫いているのは原作と同じ真っ赤な槍

だが、その背中に刺さっているのは……

 

「ダークだと……チッ!!」

 

すぐさまランサーの元を離れてアイリの元へ駆け寄る

そしてアイリを担ぎ手キリちゃんの元へ、ったく、あいつらの事をすっかり忘れてた!!

 

「セイバー」

 

「なんだ?」

 

今にも消えそうなランサーが俺に声をかける

その目には安堵……だろうか?少なくとも怒りの目ではないのは確かだ

 

「俺は、お前と戦えて、お前と会えて、本当によかった」

 

「俺もだよ、このリア充野郎」

 

残り少ない命で俺を守るとはな……流石騎士ってとこか?

まっ、今はこいつらに集中しないとな、キリちゃんの愛人も戻ってきたし……

 

 

 

 

 

11    黄金劇場

 

 

今アサシンをぶつけてくるのは悪くない、いや、どちらかと言えばこれ以上の好機はない

 

こちらにはキリちゃんにアイリに愛人、ランサーのマスターであった先生に気絶したままのソラウ

その数に対して守護するのはキャスター、ランサーの連続性戦闘で疲れきっているセイバーたった一人、『破壊(クラッシュ)』の事も大量に魔力を使うと読んでの事だろう

最低、ランサーのマスターである先生とソラウは殺す事が出来る、そこから更にキリちゃんを殺してアイリを連れ去るならば儲け物

 

弱り切っているセイバーを倒すのも可能性としてはあり得る、逆にアサシンの数は大量、撃退されても何体かが逃げて再び情報収集に戻る事が出来る……ったく

 

「な、なんだこのアサシンは!?」

 

「くっ」

 

先生が悲痛な叫びをあげ、キリちゃんが舌打ちをする

キリちゃんは『魔術師殺し』とかで恐れられた最強のマスターだけど相手が英霊にもなると話は別、一体一体弱体化しているとはいえ相手は英雄、人間関係がかなう相手ではない

シロウ?あれは別、天然チート、ギル様倒すとかテラパネェ

あと先生、あんたは死ぬ時間が少し伸びただけだよ、どっちにしろ俺お前の事守らないし

 

「グハッ!!」

 

「………………」

 

ほらね、だいたいこの人数を守りながら相手にするとなると骨が折れる、てか無理

う~ん、どうやってアイリ達を逃がすか……運良く逃がす事が出来たとしても何体かアサシンが追うだろうし……しゃ~なしか?

 

「ていっ」

 

投げられたダークを剣で弾く

ライダーのように数で倒すってわけにはいかないけど……確実に倒すにはこれしか方法がないだろ?

アサシンに宝具使うことになるとはな~、ホント、嫌になる

さて……

 

「我が才を見よ」

 

剣を構えて詠唱する、始めてなので決してドキドキだ

 

「万雷の喝采を聞け」

 

アサシン達に戸惑いが見える、いきなり厨二臭い事言い出したら誰だって驚くよな……サーセン

 

「インペリウムの誉れをここに!!」

 

さて、もうやけだ、上げてくぜ?

 

「咲き誇る花の如く」

 

俺を中心に光り出す世界……ラストォ!!

 

 

 

 

 

「開け!!黄金の劇場よ!!」

 

 

 

さぁ、踊ろうか!!

 



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空白期 〜vivid
学校見学


出来は悪いです
う~ん、ちょっとしたスランプに入りましたかね……



「ごめんね、やっぱり案内してくれたら心強くて、ここ凄く広いもんね」

 

「ん~、気にしなくてもいいぞ、俺としても懐かしの学校だし」

 

俺、なのは、ヴィヴィオと歩く

場所は廊下、なのだが妙に煌びやかで凄く明るい

すれ違う子供もチラチラとこっちが気になっているご様子だがキチンと挨拶してくる

挨拶が『ごきげんよう』なのだが

俺にとっては約四年ぶりの校舎、正直な感想を述べるとここには余りよい思い出は無いのだが

ネリアが卒業しているので知り合いも皆無

 

今回、俺が来ているのは懐かしのStヒルデ魔法学院

俺の母校でもありネリアの母校、聖王教会直下のエリート学校

ここには二度と来る事はないって思ってたんだけどな、来ても意味無いし

取り合えず歩く、幸い学校内の構造は把握してる、迷う事はないだろう

その前に職員室か?カリムを通して伝えたのは『学校見学で子供とOBが来る』って事だけだから、門はすんなりだったけど俺が来た事知ったらどんな反応するかな、職員

 

現在、ネリアに職を取られて、尚且つ働いたら問題になるという意味分からん状況な俺は聖王教会で絶賛ニート三昧中

クロノからは恨めしそうな目線やメールが来るのだが気にしない、頑張れ提督

まぁそれでも金が入るのは可笑しいんだけどな、いつの間にか気づけば儲かってる。黄金律マジパネェ

 

で、やる事がない俺にメールしてきたのはまさかのなのは

どうにも「ヴィヴィオが行く学校の案内をしてほしい」という

てか俺がここ出身だということどっから仕入れたんだ?

まぁそれはいいとしてシスターシャッハやらが忙しく手が開いていないのでニートの俺に白羽の矢が立った

どうせ暇なのだからOKし、カリムに頼んで話しを通してもらい、今ここ

それでも誰が来るかとか伝えていないのがカリムらしい、ガチの天然

カリムからパスを貰い門通過、それでも職員室には顔出さないとただの怪しい奴、コルテット重役に管理局のエース、更には聖王殿を迎撃したとなれば大問題だと思うけど……何とかなるか

 

「どうヴィヴィオ、学校」

 

「ん~、わかんない」

 

そりゃそうだ

 

「ヴィヴィオっていつここに入れるつもりなんだ?区切りがいい二年から?それとも二学期から?」

 

「う~ん、出来れば今年には入学出来ればなって、それでも色々難しいんだけどね」

 

聖王だったりテロで重要参考人だったり、学校に入れるのもすぐとはいかないか

 

そんな事を言っている内に職員室……の前にピンクの半被を着、頭にはハチマキを巻くよく分からん集団

中等科か?所々初等科の奴もいるが

共通して言える事は女がいないと言う事、なのはが若干引いていて、ヴィヴィオは涙目になっている

凄まじいオーラだよな、あれ

 

集団がプルプル震える、なんだろう、とてつもなく嫌な予感しかしないのだが

 

『お兄様!!』

 

「……は?」

 

『ネリアさんを僕(達)に下さぁぁぁぁぁい!!』

 

手には斧やら剣やら槍やら杖

ピンクの半被軍団が俺たちに襲いかかる

なのはさん、気持ちは分かるけどレイジングハート構えないで、ヴィヴィオを泣かしたとか言って魔力チャージしないで、職員室ごと丸々消えるから

 

何の騒ぎだと職員室から出てくる先生達、見たことある顔触れもチラホラ

 

で、なんだって?

ネリアをくれ?

 

「誰がやるかぁぁぁぁぁ!!」

 

デュランダルを使って一人、また一人と斬る

ハッ、たかが生徒に負けるような生活送ってねぇんだよ!!

 

狭い廊下の中で全員を床にひれ伏す、なんだろうか、この優越感

せめてバリアジャケットは使わせる様にしような、将来騎士務まらねぇぞお前ら

 

デュランダルをしまってなのは達の方へ戻る

少し怖かった様でヴィヴィオはなのはにしがみついてるしなのはは苦笑い

で、俺の後ろには何人もの騎士、もとい職員がいて……

 

「貴様ら!!デバイスを床に置き手を上げろ!!拘束する!!」

 

「……学校見学者です」

 

こっちもちょっとやり過ぎた

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほんとぉぉぉに申し訳ございませんでした!!こちら側に全ての責任があります!!

生徒達にはキッチリとした処分を下します上何とぞ今回の出来事は」

 

「まぁいいけどいきなり襲いかかるのはいただけん、あいつら何なんだ、いきなり人の妹を欲しがるって」

 

昔と同じように俺に謝って来る校長、まだ校長やってたのね

つれて来られたのは懐かしの校長室、そういや入学してすぐに連れて来られたんだよな、暴力事件やなんやらで

しょうもない思い出に浸っているとさっきの事情を説明する校長、どうやら全ての原因はネリアにあるらしい

 

さっきのは学院に三つあるネリアファンクラブの一つ、襲いかかって来た理由はネリアが在学中、告白して来た男全員に言ってたのが

 

「お兄様に勝てたら付き合ってあげる」

 

信用されているのか使われているのか

元々OBであり、コルテット長男でもある俺に会うなどまず不可能、諦めかけていたファンクラブ員、そこにどこからか「学校に来るらしい」という情報

学校見学で職員室に来るのは必須、なので職員室前を陣取りネリアに良く似た俺に襲いかかって来た、と

ん~、って事は俺、この学校にいたら襲われる確率あるわけか、しょうがない

 

「あ~、ごめんなのは、俺がいたら色々めんどいらしいからヴィヴィオと一緒に学校内周ってもらっていい?校長、誰が案内の職員つけて貰えるとありがたいんだけど」

 

「わ、わかりました」

 

ビクビクしながら部屋を出る校長

最初は強気だったらしいんだけどね、生徒が数十人も大人にやられたって聞くと「ここに連れて来なさい」と管理局やらに訴える気もあったらしいし

 

腕組んで待っていたのだが入って来た俺を見て目玉が飛び出し、なのはを見て汗が流れ、ヴィヴィオを見て真っ白になった

校長にとっては悪夢だろうな、事情を詳しく聞くと生徒が悪いし

最悪の結果としては事件に関わった生徒全員退学も有りうるわけだし、そんな事するつもりないけど

 

「あはは、ネリアちゃんって……苦労してたんだね」

 

「時々愚痴漏らしてたしな、俺さえいなかったらヴィヴィオには無害だと思うから、今日は学校施設見て回るだけなんだろ?」

 

「うん、授業はまた今度体験で受けてみようかなって」

 

そういやなのは、この学校見てもそんなに驚いてなかったな、俺はあまりのデカさに度肝抜いたけど

そこら辺どうなんだ?

 

「ん?私の通ってた学校もこんな感じだったよ?」

 

なん……だと?

……そういやなのは、私立大学出身だったな、すっかり忘れてた

公立一筋だった俺とは感性が違う

 

「なのはママ、食べていい?」

 

「ん?いいんじゃないのかな?」

 

「俺のも欲しかったらやるぞ、ヴィヴィオ」

 

「えへへ、ありがとうございます」

 

お礼が言えて偉い偉い

出されていたケーキにかぶりつくヴィヴィオ、口の周りにクリーム付いてるぞ

 

「えっと、ケント君」

 

「知ってる知ってる、むっちゃ視線感じるしむっちゃ狙われてるし、窓の外に狙撃手いるし」

 

全部半被着てるし、色違うって事はまた違うグループか?

 

「多分なのはの事警戒してる、色々な意味で有名人だしね」

 

「色々な意味?」

 

「色々な意味」

 

それ以上は言えん

 

「まぁなんにせよ学校見学楽しんでよ、俺の事は気にしなくていいから」

 

「う~ん、まぁケント君なら大丈夫だよね!!」

 

信用してくれてるのか?

そうは言っても模擬戦で結果的に負けたからな、シグナムに

エクスカリバー耐え切って紫電一閃とか、あの後すぐ倒れたらしいけど先に倒れたのは俺だから俺の負け、あれいらい執拗につきまとってくるから怖い

 

「すみません、では高町さんとヴィヴィオさんはこちらで」

 

「ん、あ~、楽しんでおいで」

 

「ケント君も気をつけてね」

 

「ケントさんは一緒じゃないの?」

 

「ん、後でなヴィヴィオ」

 

校長が連れて来た教師に付いて行く二人

後は取り残される俺と校長

ビクビクしてるね、校長、もっとこう……威厳とかってないのか?

 

それはそうと……今もう一度考えてみればファンクラブの奴らも随分と肝が据わっている

俺の時は遠くや影で嫌味言うだけだったからな、女が関わるとこんなに強くなれるのか?男は

 

ま、まぁ……俺もかもしれないけど……

 

と、とにかくだ、ネリアを渡すつもりはないが奴らにとっては一生訪れる事のないかもしれないチャンス

正面から来るんだったら……まぁ、いいかな?

 

「あ~、校長、ちょっと頼みごとしていいか?」

 

「は、はい、なんなりと」

 

お前は家臣か

 

「昼休み、1番デカい訓練場に俺と戦いたい奴、放送で呼びかけてみてくれ」

 

 

 

 

「俺対全員で、ちょっと遊んでやるからよ」

 

 

この頃体動かしてないし、丁度いい運動になりそうだ

 



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色々と


これ書いていて思いました。
本格的なスランプ突入

もう一回一話から読み直してみるかな、自分の小説
元の感じに戻さないと……


 

「オラオラオラオラそんなんじゃ!!」

 

「グハッ!!」

 

「ネリアの心奪う事なんざ!!」

 

「げふっ!!」

 

「いつまで経っても出来ねぇぞ!!」

 

俺一人対二百人での戦闘

 

縦横無尽ってこういう事を言うんだね、こんなの一回してみたかった!!

 

閲覧席ではどの子が伸びるか見てるなのは、と嬉しそうに見つめるヴィヴィオ

 

……こちらを尊敬の眼差しで見つめるオッドアイ覇王っ子はあえて無視しよう、俺は拳で語れない

 

狙撃を軽く弾き、剣撃を受け止め、打撃を受け流す

ちなみに俺、バリアジャケット無し、好い加減使わせろオラっ!!

 

何人かが怖気づいて後退する……あ?

 

「ネリア狙ってるんだったらこいやオラァッ!!」

 

『アアアアアアアァァァ!!』

 

一気に数十人程吹き飛ばす

うん、爽快、ニートにとって良いストレス発散だ

 

「オラオラオラオラオラ!!」

 

魔力弾を飛ばすと面白い程簡単に当たってくれる学生達、お前達が選んだのは茨の道、簡単に超えられると思ってんのか?

あ~、ヤバイ、そういえば今まで俺が戦った『人』ってサンドロスだったりユーリだったり戦闘機人だったり鮫島だったりって……普通の奴いないんだよな……ヤバ、なのはがFW陣笑ながらぶっ飛ばしてた気持ち分かる気がする

あれ?俺って若干S?

 

「固まれ!!誰が一人でも、一撃でも攻撃を通せ!!」

 

「そっからタコ殴りじゃー!!」

 

「エクス」

 

一つに固まる学生達、へぇ、お前らってさ……Sランクの収束受けた事あるか?

……いや、俺のはなのはの足元にも及ばないと思うけどさ、ただの収束であって砲撃じゃないけどさ……

 

魔力を刀身から『伸ばして』フェイトのザンバーの様な形にする、こういう『駆除』には最適じゃね?

 

『ウォォォォォォォォ!!』

 

男共の咆哮、うん

 

「カリバァァァァァ!!」

 

俺は男に同情しない

 

 

 

 

 

 

 

「校長、未来の騎士候補なんだからもうちょっと訓練を、こんなのサンドロスが見たら泣きますよ?」

 

「貴方が規格外なだけだと思うのですが……」

 

若干引かれる、ちょっと傷つく

 

「まぁあれの掃除は任せますよ、どうだった~ヴィヴィオ~」

 

「カッコ良かったよ~」

 

「そうかそうか~」

 

ヴィヴィオが喜んでくれただけで満足です

でも俺は今の戦闘じゃなくて学校の事を聞いたんだが

 

「いい所だったよ、魔法関係の設備は充実してるしみんないい人だったからね」

 

「そりゃ良かった、もう見るとこないか?」

 

「学校は無いかな?えっと、私とヴィヴィオは今作ってる家を見て帰ろうと思うんだけど」

 

「お家~」

 

「新築だもんな、俺も行こうか……ついでに八神家にでも寄るか、またいつでも来てな~とかはやてが言ってたし」

 

「場所分かる?」

 

「後でマップ送って来てくれ、はやてにはメール入れてみる」

 

校長を完全無視して話を進める、流石名声

 

「あ、後俺、ストレス発散の為にちょくちょく来ますわ、その時にまた相手になるって言っといて下さい」

 

「わ、わかりました」

 

なのはだけじゃなくはやての名前が出た事でまたガチガチになっている校長、それで大丈夫なのか?

内容は……

 

『今何食ってる?』

 

そーしん

 

ちゃくしん

 

『枝豆とノンアルコールビール』

 

うん、家にいるな

 

今から行くと伝えてなのはに向き直る

 

手土産の一つでもないと失礼か?

……アイスでも買って行くか、ヴィータ喜ぶだろうし、仕事か?

 

「じゃあ帰るか、そういや建設中の家って学校からどれくらいなんだ?」

 

「歩いて十分くらいかな?ネリアちゃんやケント君がお金を出してくれたお陰でちょっと大きく出来たんだ」

 

そりゃ良かった、金出したって言っても割り勘だぜ?

住まわせてくれるんだからお金は払わないと、そのお陰で大きく出来たんだと

 

「ちゃんと一人づつのお部屋あるんだよ!!」

 

「でかしたなのは」

 

「えっへん」

 

胸を張るな胸を、ほら、その……揺れる

 

「じゃあ校長、またお世話になるから」

 

「は、はい……」

 

ちょっとやつれ気味の校長を置いて学校を出る……一つ、なのはに聞いとくか

 

「今日はフェイトいなくて良かったのか?あいつならヴィヴィオの学校見たいって言うだろうし」

 

「にゃはは、今日は仕事で忙しいらしいんだ、次の模擬授業の時は来れる様にしたいって」

 

次も絶対行こう

 

道路を歩く、なのはから八神家のデータを送ってもらう……またデカい家だな

なのはとヴィヴィオとの会話を眺めながら歩く、そういやこうやって外を歩くのも今まで経験して来なかったな……地味に新鮮だったりする

 

偶々近くにあったコンビニに目が行く

レジによく見慣れた姿、買ってるのは……本、いかがわしい

手に持ってるのは……アイスか?

本以外にも大量に買ってるらしい、レジ袋からはスイーツ的な何かが顔を覗かしている

………あいつ、今日は一日当主としての勉強するって……

 

「悪いなのは、ちょっとシバいて来るから家はまた今度見に行く」

 

「不穏な単語が聞こえたの!!ま、まぁ大丈夫だけど」

 

「ごめんな、あいつ捕まえたらはやての家に持っていく土産代浮くし」

 

節約節約、一日に数百万入る時もあるけど

 

信号を渡って目的の人物に近づく……うん

 

「何してんだテメェ」

 

「ヒィッ!!」

 

肩が震える、ガチガチとこちらを振り向き、完全に停止する……なになに……

 

「これ……十八禁じゃねぇか、てめぇまだ十五だろ」

 

「え、えっと」

 

「俺が言えた事じゃないが身長があるわけでもないし大人びてるわけでもない……どんなトリック使った?」

 

指をくるくるさせるネリア、まさか

 

「………お兄様が発表した大人モードを組んでみました~……てへぺろ?」

 

「ああ俺だ、コルテット当主発見、ただちに迎えに来てくれ」

 

「ちょっ、お兄様何連絡してんの!?むちゃくちゃ頑張って抜け出して来たんだよ!!

もう来たぁぁぁぁぁ!!」

 

探していたのだろう、黒スーツの男がゾロゾロとネリアを追いかける

逃げ出すネリアから直前スイーツが入った袋を取っておく、あいつ、逃げるのに必死で袋取られたこと気づいてねぇ

 

ばかぁぁぁぁ、と叫びながら逃げるネリアに軽く手を振る、今日はお前のせいで襲われたんだ。

これくらいは当然

 

途中はやてからのメール、見てみると今食べている物にツッコンで欲しかったらしい……嘘じゃないだろ?

 

『なんでバレたん』

 

ガチで枝豆だった

 

時間は丁度二時くらい、春が終わるこの時期、ちょい暑い

一人で歩く……正直寂しい

いや、今まで護衛がいたわけだしこうやって一人で歩くって言う事自体が久しぶり、しかも街中を

なんだかこうやって歩いてると……このアホ毛、想像以上にぴょこぴょこしてるんだな

 

軽く触ってみる、ふわふわしてた

 

場所は……高級住宅街ですか

見た感じむっちゃ綺麗な街並みだな、広場とかあるし

そういえば八神家の収入って結構高かったりするんだな、はやて自身もそうだしヴォルケンもそれなりに活躍してる筈だし

あれ?八神家ってかなり金持ち?

一際デカい家を見つける、これ……だよな

それにしても表札が『八神』って、漢字で書いてるけど読めるのか?

チャイムを押してみる、ピンポーンと懐かしい音

試しに気配遮断スキルを主張しようかと思ってやめる、俺局員だし、はやても局員だし

 

ドタドタドタドタと音がする、で、ドアが開き……

 

「いらっしゃ~(バタン)

 

閉める

 

「ちょっ、なんでなん?お出迎えしようとしてお客さんに拒否られるって何!?」

 

「なんで水着なんだよ意味がわかんねぇよお前には恥じらいってもんがないのか!?」

 

「ケント君やったら大丈夫や!!ちょっとオオカミさんやけど!!」

 

「なら余計だろ!!」

 

はやての水着?

……スク水でした、パッツンパッツンの、正直エロい

 

「とにかく着替えろ!!俺の理性が持たん!!」

 

「今のタイミングで来たケント君が悪いねんで、ちゃんと着替えるから取り敢えず入ってな」

 

目をそらしながらドアを開ける、うん、エロい

はやて以外は誰もいないのだろうか、家の中は妙に静かだったりする

 

「また何で、スク水なんか」

 

「また地球行く時に海行くやろ?で、家にどんな水着あったかな~て見とったんや」

 

だからってスク水はないだろ…

 

「これ、中学校の時に使っとったんやけど……ちょっとキツイな~」

 

「は、は、早く着替えろ!!」

 

目をつぶりながら叫ぶ、ブーブー言いながら二階に上がる……うぅ……

 

好きな人がいると言っても片思い、気持ちもちゃんと伝えられてないしこの気持ちも気づいたばっかり

はやてはアイドル顔負けの容姿に性格、気にならない方が可笑しい、少し……エロ過ぎた

 

「これでいいんやろ~、ホンマケント君はいけずやな~」

 

「………」

 

顔が真っ赤になっているのが分かる、今のはやては普通の私服……なのだが……頭の中でさっきの姿が記録されていて離れない

 

「それでどうしたん?いきなり来る~て」

 

「ん、ああ、近くにいたから八神家の場所確認と顔出しを、ってな、他のみんなは?」

 

「み~んな仕事や、私は捜査する事が今無いからな~、ちょっとの間暇やねん」

 

「へぇ、で、ガチだったな」

 

「何が?」

 

「枝豆とノンアルコール」

 

机に目を移す、コップと緑の食べ後……

 

「………食べる?」

 

「遠慮しとく」

 

片づけ忘れたな

 

 



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八神家

 

 

「何と言うか……暇なんだな、はやてって」

 

「人を駄目人間扱いせんといてくれるか~、まぁ暇なんはみとめたるけど~」

 

暇なんかい

はやてと二人でテレビを見ながら俺が持ってきた(かっぱらって来た?)スイーツを食べる

このエクレア美味いな、また買お

メールが着信、何々?

 

『オヤツ返せぇぇぇぇ!!』

 

あえて無視する、本は見逃したんだからありがたく思え

 

「なあなあケント君?」

 

「ん~」

 

目の前で芸人が『コルテット~屋敷に潜入!!』とかやってる、これは……どこだ?

十九年生きてて全く分からん、ヴァイゼン?

 

「ケント君ってこんなのが趣味なん?」

 

目を向ける、コンビニのレシート

 

エクレア、シュークリーム、プリン、ケーキ、『検問が入りました』、『検問が入りました』、『検問が入りました』、『検問が入りました』……って

 

「ちょっと待てぇぇぇぇ!!」

 

奪おうとしたらヒラリと躱される

ニヤニヤしたはやて、ちょっ!!

 

「誤解!!俺じゃない!!買ったのはネリア!!」

 

「ふ~ん、じゃあ何でネリアちゃんはここにおらへんの?」

 

「ちょっとした事情があってな、だからそのニヤニヤやめろ!!」

 

「やっぱりケント君は巨乳好きか~、なになに、魔法少女って……うわぁ」

 

「お願いしますはやてさん、そうやって距離取らないで、俺のライフがガスガス削られてるから」

 

そもそも魔法少女ってなんだよ!!

え、待て、少女って……

 

「もしかしてケント君、ロリコン?」

 

「違う!!」

 

そっとヴィータの私物を俺から離すはやて、うん、お願い、事情を……

 

「……まぁ、ええわ、ケント君やって男の子、そういうお年頃やもんな~」

 

「うっ」

 

前回見つかってるから何にも言えない

てか弁解した所でネリア本人がいないと信用性ゼロじゃね?

 

「にしても、こんな本に頼らんでもここに美少女がおるのに、まだ足りんのか」

 

「自分で言うか?まぁその通りだけど」

 

はやてに勝る奴って中々いないと思う

 

「む、今更おだてても遅いで~、さて、私は帰ってくるみんなのご飯作らなあかんねんな~、ケント君も食べて行く?」

 

「ん?迷惑じゃないか?」

 

「全然、ヴィータとリインに手ぇ出さへんって誓ってくれたらええで」

 

「だ、出さねぇよ!!」

 

了解や、とその場を立って奥に入るはやて

ネリアの野郎、レシートこっちの袋に入れてたか……

てかちゃんとみんな帰ってくるんだな、仕事と私生活はちゃんと分けてるか

シグナムにつっかかられるのが不安だが、食べたらすぐ帰れば大丈夫だろ、今すぐ帰ってくるわけでもないし食べて直ぐに動けないだろ

 

ガチャ

 

「ただいま帰りました、主はやて」

 

なーぜー

 

「おかえり~、シグナム」

 

はやての声が聞こえる、間違いなくシグナムらしい

なんだ、働きたくないでござるか?

今帰って来たって事は局を大体三時くらいに出たって事じゃねぇか、暇なのか?お前も暇なのか!!

 

「む」

 

「えっと、お邪魔してます」

 

局の制服のシグナム、相変わらず鋭い目つきだ

顔が少し綻んだ感じがする、うん

 

「夕食まではまだ時間があるな、手合わせ一度くらいは出来そうだ」

 

「いーやーだー」

 

俺は断じて死合(誤字あらず)をしに来たのではなくくつろぎに来たのだ!!

あんな体力精神力使い切る死合出来るか!!

 

「そう言うな、どうせロクに体を動かしていないのだろう?

私もこのところ犯罪者が手応えのない奴らばかりで腕が鈍っていてな、テスタロッサは忙しく相手をしてくれん

なに、一度だけだ」

 

どんなに時間があろうとたった一度でクタクタになるよ

 

「なに、心配いらん、お前に拒否権はない」

 

「横暴だ!!」

 

どこの魔王様だよお前は!!

 

「事件そのものが減るのはいい事だがそれによって腕が鈍るのも問題だ、剣を使う魔導師が少ないんだ、杖型ばかりで相に合わん」

 

「知らんがな、まぁ剣を使うのが少ないっていうのは認めるけど」

 

意外と剣を使う魔導師は少なかったりする

管理局は魔導師、聖王教会には騎士が多いのは当たり前でシグナムが務めている所は管理局

当然、周りは殆どが杖型デバイス主体の魔導師、騎士がいたとしても大体はリーチが長い槍やスバルの様な格闘型

リーチが短く、尚且つ習得するまで時間がかかる剣型デバイスを使う人間は必然的に少なくなるのだろう

てか知らない人もいると思うが剣と槍だったら圧倒的に槍が有利なんだぜ?

リーチの違いやら突きの早さの違いやら、一撃の大きさは違うけど殺傷設定なら槍で十分だ

それでなくても隙は作れるからな~、槍はチート

 

「まぁ私もすぐにとは言わん、休みたいのは本音なのでな」

 

「大体どれくらい?」

 

「三十分くらいだ」

 

その後は手合わせ付き合えと?

はやてと目が合う、見せつけられるレシート……あのチビ狸が……

 

「一回だけだぞ、軽く手合わせするだけだからな、『軽く』だからな!!」

 

「何心配ない、早く終わらせたければ私を早く倒せばいいだけのことだ」

 

それが出来たら苦労しねぇ

 

「ご飯が出来たら通信で呼ぶわ、どこでするん?」

 

「そうですね、海岸がいいかと、無断で結界を使うのは禁じられてますし」

 

「そうやな~、あそこやったら近所の子供も喜ぶやろ」

 

勝手に話が進む、大丈夫か海岸

終わった後コンクリートが変形してました~とかは勘弁

 

ん?結界魔法が禁止なのは何故かって?

結界が使えるのは局に許可貰って使う時と犯罪者を逃がさない時に使うくらい、普段は禁止されている

理由は結界があちこち張られていたら管理局が探知しにくいという理由と……空き巣の防止

結界を作ればそこに入れるのは術者が認めた者のみ、後はこじ開けて入るぐらい

その間どの建物にも人はいない、無断で中に入り金の場所や金庫の番号などをバレない様にするため

他にもプライバシーやら何やら、結界解けば全て元通り、空き巣なら計画が練りやすくなるし他人に知られたくないことが知られる可能性だってある

だからこそ結界を使えるのはシャマルなどの特化している奴しかいないし数も少ない、覚えたって正直使う機会がない

前線型なら攻撃魔法だけを、支援型ならバインドや結界の魔法だけを鍛えるのは当然だ

 

「それでは行くか、デバイスは当然持っているのだろうな」

 

「持ってるよ、てか休むんじゃなかったのか?まだ十分程度しか経ってないけど」

 

「向こうまで行く時間も合わせて三十分だ、少々歩くからな」

 

仕事から帰って来てすぐ剣振り回せるって……タフだな

 

玄関から出て軽く歩く

 

その途中で子供が何人か集まって来た、何でも皆魔法に興味があるのだとか

八神家は近所の子供を集めて近々道場を開くつもりらしい、ザフィーとかいい師範になりそうだ

 

海岸に着く、ウキウキして見つめてくる子供十数人、中には未来の八神家秘蔵っ子の姿もあるが気にしない

……手、抜けなくなったな、いくら知らない子達とはいえ恥ずかしい姿は見せられん

シグナム、知っててやったな……恨めしそうに見てやったらニヤリとされた

 

デュランダルを手に持つ、さっき弱い奴らを一斉に相手したから強さのギャップで動きが鈍くならないか心配

……まぁ、大丈夫だろ、一回だけだし

 

「では、行くぞ!!」

 

「りょーかい」

 

あ、終わる条件作るの忘れてた

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただ今戻りました」

 

「お邪魔、します」

 

若干グロッキーになりながらも八神家の玄関に到着する

対するシグナムは何だか嬉しそうだ、クソ、このバトルジャンキーが!!

 

「お帰り、ご飯出来とうで、シグナムは先にお風呂入る?」

 

「では、すぐに入って来ます」

 

ご飯先にするのかと思ったがやっぱりシグナムも女性なんだな、体は常に綺麗に……か

 

「ケント君もお風呂入って行く?今なら私も着いてくるけど」

 

「遠慮しとく、ご飯食べたら帰るよ、聖王教会にも迷惑かけられないし、それに体はある程度拭いてきたし汗もそんなにかいてないからな」

 

「私がついてくる~って言うのは無視か、まぁええけど、ほんならご飯しよか~」

 

リビングにはヴィータやシャマル、よっ、やら、お久しぶりです、などの挨拶をした後席につく

 

ご飯は焼き魚で普通に美味しかった、てか家庭の味って懐かし~

 

軽い感動をした後に食事も終わり、また来ると告げて八神家を後にする

 

……ザフィー、どこまで行っても犬なんだな、一人だけ食卓に加われてないのを見てちょっと同情した

 



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ミッド高町家


フェイトとのイチャイチャを望む声があったのでしてみた
凄く……初物です、二人とも何と言うか……緊張しぱなっしです
イチャイチャ……なのか?



 

 

 

「デカイな」

 

「大っきいね~」

 

「ケント達が住んでいた家と比べると、見劣りするかもしれないけど……」

 

いやいや、一般家庭でこのデカさは普通じゃない

まぁここに住む住人が普通じゃないのもあるのだが

綺麗で高そうな家が立ち並ぶ高級住宅街で俺とネリアは歓喜の声を上げる

隣では苦笑するフェイト、なのはとヴィヴィオはもう中らしい

 

簡単に説明すると……高町家が完成した

軽い庭やらなんやらがある、ある意味豪邸、俺とネリアが住むから原作よりも少し大きくなっているのではないだろうか

二階の窓からヴィヴィオが顔を覗かせる、落ちない様に気をつけろよ

我慢が出来なくなったのかネリアが家の中に突撃、フェイトと共に苦笑した後ゆっくりと中に入る

うん………

 

「いいよな、こういう家って」

 

「?」

 

前世以来じゃね?ちゃんとした家に住めるのって

いや、ホームレスとかじゃなくて……今まで家の構造さえも把握出来なかったからな、規格外な家はしんどい

それにフェイトもいるしな~、下心出ない様にしないと……

 

「二階にケントの部屋があるから、好きな様に使って

私はお昼の準備してくるから」

 

「了解、荷物持って来ないとな」

 

聖王教会から持ってくるとなれば、一苦労しそうだ

ん~、いっそ買い換えるか?ベッドやらなんやらは聖王教会に寄付して

 

「えっと……その……」

 

ちょっともじもじするフェイト、なにこの小動物、抱きついてみてもいい?

そんな下心も頑張って隠す、バレたりしたら嫌われかねん

やがて意を決心したかの様に右手を出してくるフェイト……?

 

「こ、これからよろしくね」

 

……握手、なのだろうか

えっ、ちょっと待て、そういや俺、フェイトと手を繋いだり掴んだりした事ないよな

えっ、ちょっ、自然にKOOLに

いや違う、KOOLじゃなくてCOOL、あれ?どっちだった?

とにかく落ち着け、落ち着け俺の心!!

 

「あ、うん、よろしく」

 

握り返す

むっちゃあったかい、すっごい手、柔らかい

なんだろ、自然と癒される、今の俺の顔が崩れてないかすっごい心配

ん、あっ

 

「ご、ごめん」

 

「ん、ううん」

 

何秒握ってただろうか

やっべー、意識飛んでた!!すっごい長い時間握ってたんじゃないのか!?

顔を伏せてしまうフェイト、えっと、えっと……

 

「ニヤリ」

 

「なっ!?」

 

階段の上、カメラ片手に笑うネリア

ちょっ、おまっ

 

ネリアに気づいたフェイトは何やら顔を真っ赤にして頭から湯気出てる、ここはCOOLに、ん?KOOL?まあとにかく冷静に

 

「ぶっ飛ばす」

 

「えっ」

 

取り合えずそのカメラは俺が預かろう

 

 

 

 

 

 

 

自室にて椅子にもたれかかる

大きさにして大体八畳、それが俺、ネリア、ヴィヴィオとあり、更にはなのはとフェイト様の二人部屋も二階に全てあるのだからどれくらいか想像がつくかもしれない

俺はまだ何も持ってきていないが他はダンボールの中身を開け、整理するのに必死だ

今日中に服だけでも持って来させるかな、時間もあるし出来ればベッドも持って来させたいな、誰に?勿論部下に

それにしても……椅子だけって言うのも淋しいよな、エアコンとかはあるけど

回線やら何やらは業者がやってくれたとして……俺が手伝える事ってあるか?

 

ふと右手を見る、顔を赤らめる

……綺麗だったな、ホント

 

頭を振って忘れる、この頃考えが変態だぞ俺、少し冷静になれ

 

気分を落ち着かせる為に外を見る、ほら、青い空に白い雲、心地よい春風にこちらを覗く黒スーツ……?

 

「なにしてんだ」

 

いや、ネリアも俺もここにいるから護衛としてはいいんだけどね?

ある意味覗きだから、気づかれない様になんて余計にタチが悪い

どうするか、心配してくれるのは嬉しいがネリアが直々に『護衛いらない』と公言したからな、当主命令は絶対だ

そらにこのままだったら高町家全体に迷惑もかかる、うん、注意しよ、んでもって俺の私物持ってくる様に指示しよう

少し距離があるので歩いて向かう、俺の動きに気づいたのだろう、上手く離れようとする護衛1

 

「よっ!」

 

「うわっ!?」

 

軽く転移、短い距離だったからバレてない……よな?

 

軽く話を聞いて指示した幹部に連絡を取らせる、んでもって心配してくれてありがとうとそれでも護衛は法に触る危険性も出てくるからいらないと言う事

んでもって生活に必要な物を軽く集めてもらえる様に指示、聖王教会に寄付できる物は寄付しよう

渋々と承諾する幹部、面倒だから他の幹部にも釘を刺す様に言っておく

 

どうやら東西南北、全ての方向から監視していたらしい……用意周到な奴らだ

 

戻ると昼飯、うどん的な物

どうやら夕方ぐらいから元六課メンバーが引っ越し祝いに来て軽いパーティーをすると言う事、なので昼飯は軽めに

ん?六課メンバーって事は自然保護隊のエリオとキャロもか?違う世界なのに大変だな

 

ヴィヴィオは箸の使い方がイマイチよく分からないらしい、ネリアもか?

 

「私やフェイトちゃんは地球出身だから出来るんだけど……ケント君、どこで知ったの?」

 

「え、え~と……あれだあれ、少し昔にネットで見たんだよ、ホラ、管理外世界の文化みたいな感じで」

 

「わかんなーい!!」

 

こらヴィヴィオ、諦めてフォークを持って来るな

 

「お姉様~、おかわり~」

 

「はい、どうぞ」

 

それにしてもネリアの食べる量を見越して作ったフェイト凄え

ん?作った、フェイト?

 

「えっと、これ作ったのって……誰?」

 

「私だけど……口に合わなかったかな?」

 

「いやむっちゃ美味いよ!!」

 

うん、むっちゃ美味い、冗談抜きで本気で

 

「えっと、その、ありがと」

 

「おかわり~」

 

ネリアは少し自重しろ

 

「晩御飯は私も手伝うからね、スバルやエリオも見越して一杯作らないと」

 

「ヴィヴィオも~」

 

「ありがとね、ヴィヴィオ」

 

家の妹と比べて何とも純粋な少女だ

 

「ネリアは今不快な電波を感じとったのです」

 

「気のせいだろ」

 

以心伝心

 

食べ終わって食器を持っていく、これ以上手伝いって言ってもやる事ないし邪魔になるだろうから……食器でも洗うか?

食器洗い機はまだ持って来てなさそうだ

 

「あ、大丈夫だよ、私が洗うから」

 

「ん~、これくらいは手伝わせてくれよ、俺も何もしないっていうのにはなりたくないからさ」

 

「じゃあ、私がケントを手伝うよ」

 

隣に来て手伝ってくれるフェイト

肩が当たる、何故か緊張する

……指、綺麗だな

 

何も考えるな、無になれ

心頭滅却すれば火もまた涼し

羊が一匹羊が二匹羊が三匹羊が四匹……って何言ってる俺!!

 

洗い終わる、気づかれないように心の中で息を吐く

動揺して割ったらどうしようかと思った、何とか……なった

 

直後、肩に軽い重み、腕を何かに抱きしめられる……凄く、柔らかい

 

ガチガチと首を回す、肩にはフェイトの頭が、腕は両手で、体で抱きしめられている

 

ん、え、あっ、ちょっ、フェ、フェイトさん?

 

「ケントの腕、温かいね……凄く、安心出来る」

 

「えっ、あっ」

 

「心も温かい、カッコいいし、優しいし」

 

ぎゅっと腕を抱きしめられる、今の俺は大人モードで約165くらいの身長

肩に軽く頭を乗せられている為に髪の毛が目の前にある……すっごくいい匂い

 

「えっとね、わ、私ね」

 

目が回る、どうしたらいいのか分からない

顔が真っ赤、軽く混乱する

 

フェイトが上を向き、俺と目が合う

至近距離、凄く、ドキドキする

 

「わ、私、昔かr「フェイトちゃんいる~?」

 

ばっと、まさに電光石火の如く離れる俺たち

見られてないよな、なのはの頭に『?』マーク、うん、大丈夫

 

「こんな所にいたんだ~、バルディッシュ、二階に置きっぱなしになってたよ」

 

「あ、ありがと、なのは」

 

少しテンパりながらバルディッシュを受け取るフェイト

なのはが二階に上がる、よく分からん空気が流れる

……俺もフェイトも顔真っ赤

 

「えっ、あっ、あうあうあうあう、あ」

 

「ちょっ」

 

不明な言葉を使いパタパタと二階に駆け上がるフェイト……うん

 

「少し、散歩しよ」

 

頭を冷やすのが先決だ

 



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糖分追加

元ネタは皆さん知ってるかもしれません
糖分追加、見ていて恥ずかしい話
元ネタでも恥ずかしいシーンでしたから、それをそのままケントとフェイトに当てはめてみました

103話『決戦前』を大きく訂正しました
フードの少年の記述を丸々なくしました、ネタとしてはアカルトの短編小説『天使と神と転生者』を使い、正体を『ミカエル』にするつもりだったのですが……やめました。もっと良さそうなのが見つかったので
フードの少年が出てくるのは鮫島が死ぬ所だけ、羽も次元震も訂正です
自分勝手な改変ですが、よろしくお願いします



「買い物?」

 

「そうそう、地球に行く時に海にも行くから、その時に着る水着をみんなで買いに行こうって」

 

高町家が完成してから数週間、自室に荷物も入れ終わり小物などのインテリアも置き始めたこの頃

部屋で一応『相談役』、兼コルテット長男として不正が無いかパソコンで調べていたらなのはが突然入ってきた

 

内容は地球の時に着る水着をみんなで買いに行こうという事

 

どうやらフェイトは二時頃には帰ってこれるらしい、ネリアに連絡してみたら何がなんでも帰ってくると

あ、一応ネリアはずっとこの家にいるわけでもなくて一部復旧した元コルテット家にも部屋を持っている、ちなみに俺もだが

 

もっぱり仕事をするには向こうにいた方が効率がいいので向こうで泊まる時の方が多い、まぁそれでも平均三日に一度は帰ってくるのだが……

みんなで出かけようとかなればどんな手を使っても帰ってくるだろうな……会議やら何やらスッポカして

ん~、今になってネリアが当主になった事に不安を抱く

 

ちなみになのはは今日一日休み、フェイトも仕事をしているがJS事件の功労者としてかなり今は楽しているそうだ

 

「ケント君が嫌なら私たちだけで行ってくるんだけど……」

 

「ん?いや、行くぞ?俺もそういったプライベートな水着は持ってないし」

 

「うん、じゃあみんなが帰って来たら行こ!!」

 

プライベートの水着を持ってないのはしょうがない、今まで一人で泳ぐのに競泳用を使うのはあったが『安全面』を考慮して誰かと泳ぐって言うのが昔の爆発事件の時しかなかったからな……

そういえばなのはとかフェイトとかって水着一杯持ってそうなイメージがあるんだが……

 

「ん?う~ん、私もフェイトちゃんも持ってるわ持ってるんだけど……えっと、その……」

 

「?」

 

「毎回、二人ともちっちゃくなってて……」

 

成る程……うん、ごめん、客観的に見たら今のただのセクハラだ

 

「ヴィ、ヴィヴィオの水着も買いに行かないといけないしね、ねっ!!」

 

「お、おう」

 

恥ずかしいのか思いっきり迫ってくるなのは、分かったから首のデバイスに手を伸ばすのやめて下さい

せっかく片付いたこの部屋が吹き飛ぶから……

 

「ママー、来てー」

 

「はーい、じゃあ準備しておいてね」

 

ヴィヴィオの呼び声に応え、部屋から出て行くなのは

準備って言っても必要な物をポケットに入れるくらいか、男なんてそんなもんだ

髪は括らないとな、毎回肩下まであるこの髪を切ろうとするのだがいつもみんなに止められる

金は……そろそろ少なくなってきたか?

内職(パソコン)じゃあこんなもんか

黄金律EXでお金が減るのか?俺もさ、考えてみたんだよ

いくらニートに近い今の状況とはいえこのままだとコルテットと並ぶ勢力が出来てしまうのではないかと……

少し考えた後……思いついた

 

『皇帝特権で黄金律が制御出来ると主張すればいいんじゃね?』

 

ランクとすればどちらもEXだしEXでEXを制御出来るんじゃね?

 

結果、出来ました

 

今の俺の黄金律はだいたいD、そうだな……普通に働いていれば金がドンドン入ってくるランク

例えを出せば琴線関係の賭け事とか取引先とかは大体成功する、いわばここから『駄目人間』が形成されるランク

Bにもなれば金持ちとして歴史的に名も残す、Aであればこの世の財は俺の物、Sであれば……なんだろ?

そんな感じで能力制限をしている……ちょっと外すか?

 

Sランクにして適当に株を買い、五分程待つ……で、適当に売ってみる

テレビをつけてみる、速報、○○社の株が急上昇、経済界になになに~……やり過ぎた

 

ランクを戻してどれくらい儲けたか見てみる……0が五つくらい増えている感じがするが気のせいだよな

常にEXだった頃はその殆どがコルテットに流れてたからな、俺がそこに含まれるから

どれだけコルテットという組織が一つのスキルによって強化されたのかが分かる、五分でこれなのだから元々大きかったコルテットが急成長するには十分過ぎる理由だ

特に過去の俺が来ていた時……黄金律EX×2って………

 

一気にFまで落とす、型月でFなんて位はなかったが単に小さ過ぎて表示されないだけだろう、Fなら福引でよく当たる程度、それさえ無い人は黄金律のスキル自体がない

 

ここまで一度に稼いだら暫くは……てか普通の生活をするなら一生遊んでくらせる

水着は奢ってやろうか……

 

軽く着替えてリビングへ、うおっ

 

「これはまた……」

 

「あ、ケント君」

 

床には大量に散らばった水着、ん~

 

「もう入らないからリサイクルしようと思ってね、少し整理してたの」

 

「この『高町』とか『テスタロッサ』とか書いてあるスクール水着は?」

 

「私とフェイトちゃんが小学校の時に来ていた水着かな~、懐かしいね~」

 

「なのは、少し考えを振り返れ、これをリサイクルに出せば戦争が勃発するぞ」

 

主にネットで、もしこれが一枚でも流出すれば全力で保護しないといけない

てか水着ってリサイクルする物なのか?普通はしないだろ

どこか抜けてるというか……なんというか……

 

何とか説得してこれらは保管するか捨てるかにしてもらった

最後まで『勿体無いよ~』と言ってたので恐らく保管だろう

 

で、フェイトも帰ってきてネリアも来て……何故かコルテットからネリアをどうにかしてくれという連絡が殺到したが……

 

まぁ……行くか

 

 

 

 

 

 

 

 

ワゴン車に乗ってやって来たのはショッピングモール

なんというか、魔法世界なだけあってかなり豪華な作りだ、噴水とかウネウネ動いてたし

かと言ってはっきり申しますと……自分はこんな所に正直言って殆ど興味はない

前世でも家族に連れられて行った事もあるが殆どウインドウショッピングで歩くのがしんどい、見飽きた、などの関係上こういった場所は苦手だ

それにその……恋人連れなどもいるわけで……

 

チラッと隣で歩くフェイトを見てみる、あれ……以来のフェイトとの関係は……普通だ

逆に普通過ぎて怖いくらいに、あれはなんだったのだろうか……

ただ時々……ソファに座ってテレビを見ていたらコテンっと眠ってこちらに倒れて来たりとか……リビングで眠ていて起きた瞬間目の前でフェイトが寝ている……など、色々と心臓に悪い事が多い

 

ネリアが色々な店を見つけるたびに入り、目を輝かせる

やっぱこういうのに憧れてたんだな、悪かったな……ホント

 

軽く意識を外に向ける、勘頼りだが……数は五って所か

 

結構遠いな、まぁそれくらいの監視はいいか、着替える所とかも見ていたらぶっ飛ばすけど

 

一通り見て回りながらようやく水着売り場につく、その間に俺の手荷物に紙袋が増えたのは気のせいだと思いたい

男の役回りってどこの世界でも同じなんだな……うん

 

「わたし持とうか?」

 

「ん?いや、俺が持つよ」

 

ネリア、お前はフェイトを見習え

 

一度みんなと別れ男用の水着売り場へ

……あれだな、やっぱ日焼け防止用の上も買っとくか

知らない人もいると思うが今の時代、男でも日焼け防止用に『上の』水着も売っている

ん~、知ってるか?そこら辺で売ってるし

まぁ俺の場合はそれにプラスしてセイバー容姿で上半身裸はちょっと……って感じだ

コルテットで競泳用の水着を着た時に上半身裸になったが、メイドからの黄色い歓声が怖かった

下はシンプルにぶかぶかの黒基準、両サイドに白のラインが入っているシンプルな奴

上は白基準で左胸に令呪?の様なマークが入り、両腕に水色のラインが入っている、細かい事気にしない

 

水着を買い、入り口付近でみんなを待つ

女の子だからな、恐らく長い、いや、彼女なんていなかった俺にどれくらいかと聞かれても想像でしかないが……

 

入って行く女性客の殆どがこちらを振り向く……なんだよ……

で、暫く経つと軽く俺の周りにギャラリー、ヒソヒソと話し声……怖い

 

ここ、離れた方がいいかな、俺不審者に見られてる?

 

ふと店の中で俺を呼ぶ様に手招きしている手を見つける……フェイト?

まぁ丁度いいかもしれない、このギャラリーはなんか怖いし……入ってしまえば何の問題もないだろ

 

もう一度店内に入る、今度は女性用水着売り場

男一人でここはヤダな、確実に変態と見られる

で、少し距離を開けながら入ってくる先ほどのギャラリー……ちょっ!?

 

柱の影の部分にいるフェイトに近づく、怖い怖い怖い怖い!!

あいつらって俺がコルテットの何やらとか知ってんの?まぁニュースやら何やらに出てたから有名人だとは思うけど!!

 

店内の曲がり角、そこにフェイト

近づき……押し込められた

 

「………え?」

 

「………………」

 

個室……だな

試着室なのだろうか、男性用の場所にはなかったな、やっぱり女の子には色々と選びたいっていうのもあるのか

それにしてもカーテン式ではなく完全なる個室にしてしまうとは……

ただ試着室なせいでやけに狭い、俺は押し込められた形で軽く抑えつけられているのでフェイトと肌が当たっている

 

「……えっと、ケント?」

 

「あ、ありがと、おかげで助かった」

 

外では俺を探す先ほどの女達、一体何なんだ?

 

「ん、ううん、その、あの」

 

「えっと、軽く撒いて来るよ、後で落ち合おうってみんなにも言っておいて」

 

ここにいると色々とフェイトの邪魔になるしな、俺は少し撒いて来るか

フェイトを避けて試着室から出て行こうとした瞬間、また抑えつけられる

……あの、フェイトさん、さっきから考えない様にしていたのですが……この狭い個室で大人二人は色々と無理があるわけで……その、ただでさえ大っきい胸が……あ、当たっているのですが……

 

顔を上げられる、至近距離

思考回路がダウンする、やバッ、いい匂い

 

「え、えっと……み、水着、どっちがいいかな?」

 

「え?」

 

抑えつけていた手を離して少し離れ、ハンガーでかけていた二つの水着を手に取る

片方は基本白でビキニのラインに沿って黒のヒラヒラがついているビキニ、もう一方は……黒、真っ黒

一つ言える事は……どちらも相当エロい

 

「え、えっと……」

 

はっきり言って俺に美的センスを求められても困る、何度も言うが彼女いない歴=前世+年齢の俺を舐めるなよ

どちらが……いいのだろうか

個人的には………

 

「し、白、かな?」

 

「う、うん」

 

何もない黒よりも可愛い白に、それ以外特に理由もない、てかこの密着状態はヤバい、フェイトの息までこっちに伝わってくる

フェイトが下を向く、ドアから出るにはフェイトに一度出てもらわないといけない

フェイトがドアを向き、服に手をかけ……って……

 

「ちょっ!!フェイト!!」

 

「後ろ、向いてて」

 

シュルッという音と共に上着を脱ぐ

反射的に、ガチガチとドアとは反対方向の壁へと向き直る

 

真後ろから服を脱ぐ音が直に伝わる

パサッと軽い物が落ちる音、足に当たる紐の様な物

え、ちょっ、これ

 

もう、我慢しなくていいよね?

俺十分に頑張ったよね、少しくらいいよね?

許される筈だよね?俺努力したんだもんね?

悪いのは俺じゃないもんな、決して悪いのは俺じゃないよな?

 

………なんて煩悩を必死に抑える、それこそ最低人間、何が頑張ったなだ

 

ただ……音は凄くリアルなわけで……

 

フェイトが、軽く屈む

何かを、脱ぐ音

屈まないと脱げない物など分かり切っている

 

何秒だったか……ヤバい、意識が薄れて来た

たったの一二分だというのに……えらく長い時間ここに立っていたと思う

 

音が止む

フェイトがこちらを向いているのが分かる

「いいよ」の声と共に、ガチガチと後ろを向く

 

………女神がいた

 

至近距離でビキニのフェイト、白ビキニでは胸は収まりきらないのか、その、下乳が……

必死で目を反らす、心頭滅却すれば火もまた涼し

 

「どう、かな?」

 

モジモジと聞いてくるフェイト

ありです、すっごいありです

 

「だ、駄目なら……こっちにも、着替えるけど……」

 

「いや、こっちがいい、すっごい似合ってる!!凄く可愛い!!」

 

あれをまたされたら堪らん!!てか理性を抑えられん!!

必死で本音を言う、本音だ、お世辞とかじゃない

それに上目遣いとか反則だ、ヤバい、呂律が回らなくなる

 

「えっと、じゃあ、こっちにするね」

 

「(コクコク)」

 

強く頷く

フェイトも納得してくれたようで良かった、ある意味バルハラだったが……やっと開放される

二度目は……して欲しいのは山々なのだが理性が警報を上げているのでしないほうがいい

 

「えっと、じゃあ、着替えるから………」

 

「えっ、ちょっ!!」

 

俺が言葉を発する前に反対側を向くフェイト、そして……

 

「お姉様~、ここ~」

 

「えっ」

 

「……ふぇ!?」

 

「………………御免ね、邪魔しちゃって」

 

ガチャリと閉めるネリア……水着のまま顔を赤くして顔を隠すフェイト

………ハハッ、ハハッ

 

フラフラと試着室から出る、もう付きまとってた女達はいない

 

少し離れた所にネリア、サムズアップされた

 

………取り敢えず、散歩しよ

 

 





付きまとってた女達は……ケントはセイバー容姿の『超』美青年ですよ?いつもは忘れているだけで



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夏の始め

「着替え持ったか?」

 

「持った~」

 

「洗面用具持ったか?」

 

「持った~」

 

「水着持ったか?」

 

「持った~」

 

「エロ本持ったか?」

 

「持った~……あ……」

 

取り合えず没収、こんなもんどこで使うつもりだ

返して~と懇願してくるネリアをよそになのはにパス、一瞬顔を赤らめた後にゴミ箱へと

血の涙を流すネリア、何よりヴィヴィオの教育に悪い

てかそんな物用意してる暇があったらさっさと行くぞ、待たせるのも嫌だし

 

一向にショックで動けないネリアの首根っこを掴んで引きずる、外に出たら汚れるからそろそろ立て

玄関にはヴィヴィオとフェイト、ヴィヴィオはそうでもないがフェイトはネリアを見て苦笑い、何故かそんな姿も可愛らしいと感じてしまう俺は変態なのだろうか……

 

「よいしょっと」

 

ワゴン車の荷台に大量の旅行鞄を乗せる、俺一人じゃなくて全員の分

……女の子の荷物って多いな、やっぱ色々入ってるのか?

バンッと荷物の扉を閉めて運転席へ、助手席にはネリアで後は後部座席

んじゃまぁ

 

「出発進行」

 

 

 

 

 

 

 

 

春が終わる

季節は夏の始め、ミッドの気温も上昇し始め、半袖の人が増え始めるこの時期

取り敢えず向かう場所は本局、乗せてもらうのは次元航空船

朝が早いので軽くあくび、もう八神家やその他諸々は着いているのだろうか、本局は近いからすぐだと思うけど……

 

後ろではヴィヴィオが足をばたつかせている、やっぱり六歳、無邪気である

 

着ている服は局員服ではなく全員私服、そこらは想像で

はやてが予定していた地球旅行、泊まる場所は六課で前回お世話になったコテージ、三泊四日

行きも帰りもクロノが飛ばすクラウディアに搭乗して地球に近づくいたら転移魔法、流石に97の管理外世界に止まってくれる旅客機はない

なので管理局が飛ばす船に乗せてもらう、最初はコルテットが出そうかと思ったのだが「そんな事までお世話になれへん」と周りの意見によってクロノに頼む事に、なに、コネを使えば一発

なのはもフェイトも長期休暇、ネリアは何かあった場合は通信を、俺は暇でヴィヴィオはまだ学校に行っていない

そんなわけで高町家は全員欠ける事なく集合完了ってわけだ

 

「それにしてもなのはさんの故郷でお姉様の育った世界か~、どんなとこだろ~ね」

 

「いい所だよ、すっごく」

 

まぁそうだろうな、少なくとも食文化はこっちよりも進んでる

別段特別な感じがしない、違うとわかっていても元いた俺の故郷と殆ど変わらないし

 

「海も綺麗だし空気も美味しいし、ネリアちゃん、ケーキとか好きだよね?」

 

「もうそりゃ」

 

「お父さんとお母さんに一杯作っておいてもらわないとな~」

 

そうしないとその日一日営業出来ないな、店にあるもん食い尽くされて

そんな感じで車を走らせる、後ろからは……つけて来ている車は二台ってとこか?

まぁ……これくらいはいいか

 

「お姉様はミッド出身で……地球?の学校に行ってたんだよね、文化の違いとか無かった?」

 

「……………」

 

「お姉様~」

 

「……えっ、な、何かなネリア!!」

 

「驚き過ぎだよ~、ボーとして大丈夫?」

 

「はうっ」

 

………ちなみにあの日からフェイトはずっとこんな感じ

あの日も帰るまで全く話せなかったし次の日から殆ど会ってない、仕事仕事仕事仕事

近づいたら離れられるしご飯の時もモジモジしてるし……避けられているというのが俺にとっては拷問

下心とか……丸見えだったのかな……それで嫌われたのかな……

 

……デュランダルに通信

 

「ネリア、代わりに出てくれないか?」

 

「りょーかい」

 

俺のポケットに手を伸ばしデュランダルを引き抜くネリア

端末を操作する……はやてか?

 

『おおっ、ネリアちゃんか、ケント君は……久々に働いてる様やな、運転か』

 

「免許取って一年経ってない新人ドライバーだけどね~」

 

誰にだって新人時代はある

 

『あとどれくらいで着く?私達は今本局に着いたんやけど」

 

「お兄様、あとどれくらいかだって」

 

「ん~、転送ポートに乗って二十分位かな、てかはやて、着くの早くね?」

 

『早く着くに越した事はないで~、今の所エリオ達が着いてるわ、スバルとティアナももうすぐ着くって』

 

「了解、じゃあ着いたら連絡する」

 

『分かった、じゃあ後でな』

 

通信が切れる

 

「ねぇねぇお兄様」

 

「ん?」

 

どうした?

 

「今気づいたんだけどさ……男の子ってエリオ君とお兄様だけだよね」

 

「言うな」

 

それがリリカルなのはだ

 

「ある一種のハーレムだね」

 

「お前の想像の中だけだろうけどな」

 

大体ハーレムとかガチであり得ん、オリ主はよくしてるが

俺に彼女達を惚れさせる要素がどこにあるんだ、顔取ったらただの一般人Kだぞ?

 

「そろそろネリアはお兄様に春が来たという朗報を聞きたいのです、ね、『お姉様』」

 

「ひゃうっ」

 

何だかんだ言ってる内に転送ポートに到着する

こっから管理局に入る手続きをして……ポートに乗り込む

クロノに連絡は、まぁいいや

 

さっきの男の子にザフィーが入ってない?

あいつは……犬だ♂

 

 

 

 

 

 

 

「「お久しぶりですなのはさん」」

 

「久しぶり、スバル、ティアナ、お仕事頑張ってる?」

 

「「はい!!」」

 

転送ポートから本局へ、そっからドッグへ

艦長であるクロノはもう乗っているらしい、色々と大変だな

六課の主要メンバーは全員到着、後は出発を待つのみ

通りかかる局員は絶対に振り向く、何だってここ、凄くピンクだからな……男が俺とエリオしかいない

それにエリオはまだ十歳、実質上怨念の篭った目で見られるのは俺だ

 

「着いたら直ぐに海やからな~、綺麗らしいで~」

 

「いきなりだなはやて、てか疑問なんだが何で一日目から海?」

 

隣から話しかけてくるはやて

この際だから聞いておこう、何故着いたら直ぐに海なのか

昨日に連絡が来て計画の変更?がされた、転送ポートから直ぐにコテージで海と近いんだと

それでも……移動時間とかあるだろ

 

「ん~、そうなんやけどな~、明日が雨らしいねん、今日は快晴らしいし……そんなに待たれへんやろ?」

 

「俺は大丈夫だが」

 

ネリアとかがな……

 

「とにかく着いたら海や、私やって楽しみなんやから」

 

「まぁ、そうだろうな」

 

俺は男だからいつでもいいが

 

「それにホラ」

 

「ちょっ!!おま!!」

 

いきなり自分のスカートをめくり上げるはやて……ってお前!!

 

慌てて隠すが……ずっと上げたままのはやて

ニヤニヤしてる……青の星柄、これって……

 

「ん~、何を想像したんかな~、教えてや~、ケント君」

 

「お前……」

 

「ま、これでも結構エッチいと思うけどな~、はいお終い」

 

パサリとスカートを離す

あれは……水着だ

下に着て来たのか……それでも、エロかった

特にスカートを上げながらというのが、また……うん

 

「私もいきなりパンツを見せる様な痴女じゃないよ?

ケント君がベッドに押し倒してくれるんやったらまた別やけど」

 

「なっ!?」

 

おまっ!!

 

「女ばかりの夏コテージ、海にお風呂にイベント三昧

ケント君が誰かと間違い犯さへんか心配やわ~」

 

「は、はやて」

 

こいつ……

 

「性欲溜まったら私のとこに来てええで~」

 

「冗談も程々にしとけよ」

 

「てへぺろ」

 

お前もかよ

 

「まぁ冗談や、ホンマにそうなるかはケント君次第やけどな~」

 

「そんな事するほど人間辞めてない」

 

確かに魅力的だけど……そんな事をするほど俺はゲスくない

 

「そろそろ出発ですよ~」

 

「分かったリイン、じゃ、乗ろか」

 

「う、うん」

 

前を歩くはやてに続く

 

………色々と大変そうだ、今回は

 




vividとforceのフルカラー買って来ましたーーo(^▽^)o
いや~、まぁ一言で言うなれば……エリオ、爆発しろ!!
あんな模擬戦に参加できるエリオが羨ましいです(−_−;)
で、いつもは買わないんですが今回はコンプエースを購入しました!!
目的は付録のトランプ!!いや~、水着三昧で眼福眼福
その後トランプはスリーブに二重で保護しました、ちなみになのはの絵柄です
それ位するのですよ、永久保存版です(^O^)/

そして、Fate/zeroのソーシャルゲーム
イベントが過酷過ぎる……今は個人で四百位代です
セイバーさんが当たらない、いつもいつも旦那とアサシンばかりです(ーー;)


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海での一コマ


この頃どうしても甘くなる(ーー;)
少しくらいは……シリアスとかも入れたいですよね


 

「海だー」

 

「海だ~」

 

「海鳴だー」

 

ザバーンと海に飛び込むネリア達を見て苦笑する

空は快晴、太陽はギラギラと照りつけて砂浜は焼けるように熱い

手に持つアクエ○アスを一気飲み、普段から部屋にこもりっきり(強制的に)だった俺に直射日光はキツイ、てかミッドでは夏始まったばかりなのに日本では夏休み真っ盛りなんだな、比較的涼しいミッドと比べればかなりの暑さだ

 

周りの客の目がこちらを向く、チラリチラリと見てくるのは大体男性、あ、今彼女にはたかれた

 

ビニールシートを敷き、パラソルを立て、日焼け止めクリームを塗って、そのまま横に……

 

「ケント君は遊ばないの?」

 

「ん~、俺的には海の音を聞きながら寝るのが最高に至福、時々来る風とかまさに神」

 

「へ、へぇ、そうなんだ」

 

若干引かれたが海に来たら寝る、それが十九年振りだろうと寝る

んでもって泳いで皇帝特権使って城作る、うん、完璧

 

「なのはも遊んで来たらどうだ、俺荷物番しとくから」

 

「う~ん、じゃあお言葉に甘えて」

 

フェイトと共にいたヴィヴィオの方向へ駆け寄るなのは、うん、エロい

ほら男共、そんな嫉妬の目線すんのやめろ、俺こうやって荷物番してんだろ?キャッキャッキャッキャッしてねぇだろ

 

一度溜息をついてから目線を戻す、なんて言うんだろ……眼福

みんなビキニだし、キャロやヴィヴィオはセパレートだが

 

今俺がいるのは第97管理外世界地球、海鳴市

 

簡単に言うとはやての『六課解散、お疲れ様でした旅行!!』がスタートした

 

隊長陣達の故郷でもあり、俺がいた地球と何ら大差ない世界

予定としては三泊四日

泊まる場所は前回現地協力者だった人が提供してくれているコテージ、参加者は高町家、八神家、FW陣、コルテット兄妹

 

で、一日目としていきなり海とは……なんでも明日が雨らしく快晴のこの日にやりたいんだとか

なんともはやてらしい意見である

 

「俺にとっては里帰り、となるのか?時間があったら俺が住んでた場所にでも行ってみるか、これで家があったら驚きだけど」

 

十九年経った今でも前世の住所は覚えている、ちなみにその町が捜してみたらあった

転移魔法で行ってみるか、ホント転移ガチヤバス

 

ふぁぁ、と、一度アクビ

男達をなんとかなだめようと一人ここに残ったが前世から俺の海が『寝る』だったのは決まっている

だってあの潮風とさざ波の音、最高じゃね?

 

まぁそれは建前、だって……あそこに入れと言われてもなぁ……

ホントは浮き輪持ってプカプカしたいけどそうなれば目線が凄いからな……周り然り容姿然り

こうでも言い聞かせないとやってらんねぇ、むっちゃ暑いし

 

「荷物番は私がするが」

 

「ん~、ザフィー……今回は人型なんだな」

 

「暑い」

 

毛皮は大変ですね

 

「いやホラ、目線が」

 

「むぅ、確かにな」

 

お前の場合はその筋肉のせいだと思うんだ

 

「おいザフィーラ!!こっちこい!!」

 

「どうしたヴィータ」

 

「ビーチバレーでシグナムがガチで来るんだよ!!勝てるわけねぇじゃん!!」

 

遠くの方でボールを持つシグナム、その後ろにははやて

シャマルが審判でもう一方はヴィータとリイン……うわぁ

 

「大人げない」

 

「だが私は」

 

「いいから来いっつーの!!」

 

ヴィータに引っ張られて連れていかれるザフィーラ

う~ん、ロリから巨乳まで集まった場所にガチムチか……違和感がすげえ

 

それにしても、金髪多いな

フェイトにネリアにヴィヴィオにアリサ、うん、多い

アリサに関してはこっちに来てから挨拶した、その時にニヤニヤしてたからよく分からんけど

ヴィヴィオがこっちに走って来る、ん?

 

「ジュース下さい!!」

 

「ヴィヴィオのどれだったっけ?」

 

「オレンジ~」

 

クーラーボックスからオレンジジュースを出す

美味しそうに飲むヴィヴィオ、あんまり飲むとトイレ行きたくなるぞ?

飲み終わり、クーラーボックスにしまうヴィヴィオ、レジャーシートの上が水浸しになったが気にしない

トテトテトテと走って戻って行く、転ぶなよ?

一応全部のジュースにはそれぞれ印がある、飲みかけを誰かが間違えないようにするために、ヴィヴィオはオレンジが飲みかけだったようだ

再度目線を戻す、後エリオ、お前に言いたい事はただ一つ……爆発しろ

彼女いた事がない俺に向かってその仕打ちはなんだ、てめぇ手を繋いで一緒に泳いでんじゃねーぞ

ったく、リア充が!!

 

体の汗を拭う、やっぱり海には入りたいな……誰かにここ任せるか?

もうホント暑い、日陰だけどむちゃくちゃ暑い

手に持っているアク○リアスが尽きる、新しいの開けるか

ん?

 

「えっと、ケ、ケントは泳がないの?」

 

「ま、まぁ……」

 

ヒタヒタと水に濡れ、金髪の髪が太陽で明るく輝く……フェイト

着ている水着はこの前の白基準の黒ライン、やっぱりアリだな、フェイトはいっつも黒ってイメージがあるが……これは……うん、綺麗だ

 

「私、ちょっと疲れちゃったから……荷物なら私が見ておくよ?」

 

「えっと、だ、大丈夫、もうちょっとここにいる」

 

「…………じゃあ」

 

体を軽く拭いた後俺の隣に腰をかけるフェイト

もちろん、今は水着であるわけで……いつもなら服で隠れている素肌が丸見えなわけで……

 

髪から水が滴り落ちる、いつもより大人に見える彼女は……ホントに綺麗で……

 

「えっと、ケント?」

 

「ん?」

 

「後で一緒に泳がない?その、浮き輪も余ってるし」

 

浮き輪を目を向ける、大型サイズが一つ

 

「うん、後でな」

 

「うん」

 

沈黙、てか今のって結構普通に反応したけどヤバくね?

一緒に泳ぐとか……何のエロゲ?

 

「みんな、楽しそうだね」

 

「うん」

 

ホントに、海に来た事がないネリアは特に

今まで我慢させてきたからな、悪い事をした

 

「むぅ」

 

「どうした?」

 

「さっきから何か暗いよ、何かあったの?」

 

暗いというか……フェイトが隣にいるからどうすればいいのか分からないだけなんだが……

 

「取り敢えず適当に飲み物取ってくれないか?」

 

「ん?分かった」

 

渡されたペットボトルの蓋を開けて飲む

……炭酸系だな、サイダーか?

 

「ありがと」

 

「う、うん」

 

俺が渡したサイダーをクーラーボックスに入れるフェイト

……さて

 

「俺が泳ぐとすればお昼からかな……その時はザフィーにでも任すか」

 

「それまでどうするの?」

 

「ん~、寝る」

 

フェイトと二人きりは嬉しいのだが理性に悪い

特に真横で水着だ、いつ狼になってもおかしくないぞ

それに地球とミッドでは時差もある、今寝ても違和感はない

 

「うん、じゃあ」

 

軽く正座をするフェイト……?

 

「えっと、はい」

 

「はいとは?」

 

「はい」

 

「…………」

 

いや、質問に答えて欲しかったんだが……

手を広げるフェイト……?

 

「はい」

 

「フェイトさん?」

 

「………横に、なって」

 

手で膝をポンポンと叩く

……って

 

「……膝枕」

 

「え?」

 

いやいやいやいや、生の太ももに膝枕って……それに水着

え、ちょっ、まっ

 

「……………」

 

「えっと……あ、ありがと」

 

無言でこっちを見続けてくるフェイトに抵抗出来ず、意を決して横になる

 

……暖かい、すごく

肌の温度を直接感じる……柔らかい

 

外側を向いているので今、フェイトがどんな表情をしているのかは分からない

ドキドキする、フェイトの手が肩に当たる

 

風がふく、周りではしゃぐ声が聞こえる

……涼しい、ホントに

まぶたが落ちてくる、時差がある為に眠たいのは当然だ

でも、寝たら……いつ起きれるかどうか

それでも体は正直で、この枕を離したくないと告げていて……

薄れていく意識の中、反対側に寝返りをうつ

上からキャッ、と声、眠たい、すごく

まぶたを閉じる……ああ

 

お休み

 

 

 

 

 

 

 

膝の上で眠っている青年を見て、軽く笑ってしまう

今思うと自分も随分と大胆になってしまった……今までの自分だったら……なかったかもしれない

 

手を伸ばしてクーラーボックスの中からある一本のペットボトルを取り出す、先ほどケントが口をつけたペットボトル

 

蓋の部分、黄色い星のマーク

 

顔が真っ赤になる……ホントに、大胆だ

このマークは……自分の物、ここに来るまでに口をつけて飲んで、自分が選んだ飲み物

それをケントは……迷わずに飲んだ

 

ほんの出来心、気づかれると思ってた

ただ話題を作りたくて……いや、そんな物は言い訳、飲んで欲しかったんだろう

 

蓋を開ける、先ほど彼が口をつけた先っぽ

一気に飲み干す、炭酸が溜まる

頭がポーとする、いけない事だと思っていても……理性が抑えられない

 

六課の時はこんな事を考えた事もなかった、今回も、この前の水着選びだって、告白しようとした時だって……

 

雲のうえの存在だった彼が、今は一つ屋根の下で住んでいて、自分に笑いかけてくれて

 

嬉しい、そんな気持ち

 

目の前には無防備な顔、スヤスヤと眠る、彼の姿

 

スッと撫でる、可愛い

 

殆ど無意識に、顔を近づける

すぐ目の前に彼の顔、彼の……唇

 

一度近づけ、また戻す

 

それは駄目、自分が告白する勇気を持てたら……その時に

 

彼のおでこに、一瞬だけキスをする

 

優しく笑う、そして、最後に

 

 

「大好きだよ、ケント」

 

そう言って口を閉じた

 

 

 

 

この行動が終始すずかに見られていたのは完全なる余談である

 



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今週の盟主

「雨だな~」

 

「雨だね~」

 

外でザー、と音をたてながら流れ落ちる雨

どかっとソファーに座る……暇だ

 

「みんな何処行ったんだ、この雨の中」

 

「ん~、なのはちゃんはこっちの家に顔出しで、スターズも一緒やな、フェイトちゃんは朝からすずかちゃんの家に押しかけとる

シグナムは剣道場、ヴィータはおじいちゃんおばあちゃんに、私とシャマルは昔お世話になった病院の先生に会いに行く予定や~」

 

「ネリアは?」

 

「フェイトちゃんと一緒よ~」

 

つまり俺は一人と

 

昨日の海から一日、時差があり、皆が疲れきっていたために夕食で豪勢に……というのは明日に持ち越された

午後からフェイトが泳ごう、と言っていたのだが、俺がした事はヴィヴィオの水泳指導

話しかけ様としたら何故かフェイトがすずかの前であたふたしてたからな、てか何か大変そうだった

そんなわけで指導、それにしてもヴィヴィオは上達が早い

たった半日の指導でクロール完璧か、やっぱ才能か?

風呂入って飯食ってベッドにダイブ、ちなみにエリオと同じ部屋

あんまり話しなかった、てかどっちも疲れてて出来なかった

また色々聞いてみるか……その、うん、色々と

 

朝起きたらザーザー降りの雨、飯食ったら各自自由

いつのまにか大広間には俺とはやてくらい、暇だ

 

「ケント君は何か予定無いん?」

 

「あー、うん、まぁ暇って言ったら暇だな、でも……いや、個人的に一人で行って見たい所もあるからそんな事も無かった」

 

「なんやねんそれ、折角暇なケント君を連れて行ったろうと思ったのに」

 

「悪いな」

 

自由だったら丁度いい、転移魔法で行って見たい場所もあるからな

 

「夕方には帰ってくるから、少し遠出してくる」

 

「まぁいいけど、程々にな」

 

分かってるって

大広間から出て自室へ戻る

換金したこっちの金、てか円を持って転移魔法を起動する

えっと、座標は……この辺か?

適当に東経やら北緯やらを入れとけば何とかなるか、幸いにもそれは覚えている

場所を固定する、じゃあ、行くか

 

俺の故郷へ

 

 

 

 

 

 

 

目を開けると公園だった

噴水があり、緑があり、原っぱ

少し遠くでは親子がボールを投げ合っている、近くにはスーパーが見える、図書館が見える

新幹線の滑走路、通学路として見慣れた国道

 

何もかもが一緒だった、自分が転生した事が、まるで嘘の様に

水面を見る、見慣れた騎士王の顔

女子高生らしき集団がこちらを見てキャーキャー言っている……ここ、離れようかな

取り合えずどこに行こうか、これ程同じだと家に俺がいそうで怖くなる

 

……いや、いるのかもしれない

 

俺がいるのはあくまでも平行世界の一つ、その中で『リリカルなのは』という物語を中心に、その他の人間が鮫島風にいうと『モブ』の世界

ならば、モブとして転生前の『俺』がいてもおかしい事はないんじゃないか?

 

まぁそれでも、今の地球の時代が俺がいる時代とは限らないが

それに………

 

「リリカルなのはについての記述は一切無し……か」

 

デュランダルを通してネットを開いて見た所どこを探しても『リリカルなのは』という記述を見つける事は出来なかった

 

よって、この世に存在しない、それどころか『Fate』の記述さえも

 

その他は実在する、例えばイン何とかさんが出て来る科学と魔術が交差する話とか、十歳で危険な生物がウヨウヨする世界に旅に出る話とか

 

まるで………

 

「俺、という存在を隠す為に作られた設定のようだ」

 

もしかしたらそうなのかもしれないが……

 

取り合えずここにいてもやる事が無いので適当にぶらつこうと足を動かす

海鳴は雨だったがこっちはある程度晴れている、少し暑いが大丈夫だろ

 

ほら、水遊びする子供とか図書館から帰る親子とか、サッカーボールを蹴って遊ぶ少年達とか金髪の幼女を取り囲むおっさん達とか……what?

 

目を向ける、汚らしい服を着たおっさん達数人が『見た事ある』幼女を取り囲んでいる

………ちょっ、なんであいつが

 

取り合えずあいつが暴れる、もしくは自己防衛をした場合、この公園自体が消える可能性だってある……なんとしてでも止めないと

 

「あ~、こんな所にいたのか、探したぞ?」

 

「へ?あ、あなたは……」

 

ギロッとこちらを睨んでくるおっさん達

数は三、てか臭い

 

「ほら、みんな待ってる、行くぞ」

 

「おい待てよ兄ちゃん」

 

手を取ろうとした瞬間はたかれる

少しゴツイ男、タイマンしたら負けそうだ

 

「この子は俺らに道聞いて来たんだよ、ちゃんと教えてやんねぇといけねぇんだ」

 

「ご親切にどーも、生憎今は俺っていう存在がいるから、知り合いに出会えたんだから、ここから彼女はちゃんと家に届けますよ」

 

「ああそうか、それにしてもこいつ、いい趣味してんじゃねぇか」

 

ニヤニヤするおっさん達

……まぁ、へそ出しにブカブカな服、何処ぞのコスプレだもんな

 

「知りませんよ、それよりも行くぞ」

 

「だから待てって」

 

今度はがっしりと手首を掴まれる

なんだよ………

 

「生憎俺らは飢えてんでね、ちょっくらこの子を貸してくれよ」

 

「性欲処理は自分自身でやれ、ロリコンが」

 

「聞くところによるとこいつは親も兄弟もいないらしいじゃねぇか、てめぇはこいつの知り合いらしいが……口封じしちまったら後は何もねぇ」

 

知らんがな

 

「こいつはビデオに撮って売れば高く売れるぜ、将来はもっと期待できる」

 

「だろうな、こいつが大人になったら確実に美人になる、だけど残念、悪いが俺にお前らみたいな趣味はねぇ、この子を売るつもりなんてさらさらない」

 

「保証するぜ?俺はその手に関しては一流だ、大儲け出来る

どうだ、一生に「くどい!!」」

 

スパーンと蹴りを入れる

ゴツイ体つきしてるわりには軽いなこいつ、てか雑魚い

ただの変態だと思っていたら違うらしい、こいつはもう救い用がないクズ、近づきたくもない

 

「な、てめ」

 

「てや」

 

身体強化を使い、皇帝特権を行使しての八極拳

Fateシリーズにおけるチート武術で残る二人を完全に沈め、起き上がろうとした男も叩きつける

 

ポカーンと見つめてくるギャラリー……あんまり目立つのは嫌だな

 

「それじゃ、行くぞ」

 

「え、な、なんで貴方がここに」

 

それはこっちが聞きてぇよ

 

「じゃあ何でお前がこんな所にいんだよ、『ユーリ』!!」

 

なのはシリーズ合法チートキャラ『ユーリ』、参上しました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~、つまりエルトリアで『ディアーチェ』の手伝いの為にクリスタルを持って来たら……いきなり光出してここに」

 

「そういう事です、あ、これがそのクリスタルです」

 

所変わって最初のコテージ

中には俺以外誰もいない、雨は相変わらず

俺とユーリは向かいあわせで途中買ってきたハンバーガーを頬張る

食べながら話を聞き、まとめた結果……何でも研究の手伝いの途中にミスをしたらしい

目の前にあるクリスタル、どうやって使えばいいのか分からないし何故起動したのかも分からない

 

頭を捻る、ユーリはあの事件があってからほぼ一年後から来たと言っている……となるとやはり時間逆行、時間を越えて来たか

勿論、今の俺たちが持つ技術でそんなものは無いから確実に未来から、面倒な事になった

 

「これの使い方は分からないんだよな」

 

「はい、私は王に持って来てくれと頼まれただけですから…」

 

取り合えず誰かが作動させてしまわないように封印する

こりぁあみんなが帰ってくるまで保留だな、俺一人の知識じゃ何とも出来ない

 

「取り合えず暫くここにいろ、みんな喜ぶと思うし」

 

「はい、そうさせて貰います

ですが……エルトリアのみんなが心配してないかどうか」

 

「使い方が分からない以上どうしよもない、調べてみるから適当に時間潰してろ」

 

ニッコリと笑って肯定するユーリ

こうやって笑えるようになったんだな……嬉しいことだ

 

 

あ~、そういえばこの時間逆行で誰か巻き込まれていないよな?

……心配だ

 



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巻き込まれたのは……

 

「相変わらずの私、いいおっぱいしてるね」

 

「まだまだ大きくなるよ、今の貴方なら」

 

「同人誌の数は」

 

「一万なんて遊に越えている」

 

「未来のお兄様は」

 

「それは自分で確かめなさい」

 

フッ、と笑う同じ顔

違った場所といえば……少しだけ身長と……胸

ったく、俺含めて同じ顔が三つかよ

 

「な~んか、今日作らへんとあかんご飯が倍になったね~」

 

「にゃはは、買い出し行ってこようか?」

 

はやての腕の中にはユーリ、疲れたのか寝ている

 

空は暗くなり雨も少しずつ弱まり出したこの頃

俺の目先にはビックリするくらい同じ顔立ちの二人、どちらもセイバー、胸以外

若干変な次元から殺気が飛んで来たが無視する、問題なのはこの二人、問題じゃないのかもしれんが

 

「あ~、ネリア」

 

「「なに?」」

 

「…………未来ネリア、お前の部屋はちゃんと作ってやるから、おとなしくしとけよ?」

 

「チッチッチ、お兄様、ネリアは今二十一歳、お兄様より年上

つまり、お兄様はネリアに対して『お姉ちゃん』と呼んでくれなければネリアはそれには承諾出来ない」

 

「お前が俺の事をお兄様って呼んでる時点でアウトだろ」

 

お兄様であって弟って……なんだその複雑な家族構成

 

「一度くらい呼んでほしいのです、カモンカモンお姉ちゃん!!」

 

「とにかく、未来に帰る方法が見つかるまでは保護してやるから、もう一度言う、おとなしくしとけよ?」

 

「ぶぅ」

 

膨れるんじゃない

 

夕方にみんなが帰って来た時、ユーリの事を説明

やはりなのは達は懐かしいのか何というのか……半分ユーリはおもちゃにされた

ユーリにとって一年前になのは達とお別れしただけ、いきなりの成長に少なからずびっくりしていた

で、コテージでゆっくりしていたのだが……そこにまさかのネリア2登場

当然、ネリアはコテージで休んでいたわけで……事情を聞けば気がついたらこの星にいたと

わけが分からなかったので取り合えず知っている場所に、このコテージが一番印象に残っていると

それにしても二十一歳のネリアか……丁度五年後、俺達が二十五歳、つまりはForceが始まる年

またよく分からん時代の人間を連れて来たもんだ

それにネリア二人とか……悪い予感しかしねぇ

 

「それにしてもこんな事あったあった、いや~あの時は……うん」

 

「そういやお前はこの経験してるんだよな、だったらクリスタルの使用方法も」

 

「それは教えられません、未来の人間が過去に余り干渉するものじゃないしね」

 

お前がここにいる時点で大分干渉されてる

 

「はやてはやて、今日の晩御飯どうすんだ?」

 

「ん、どーしよっかな、ネリアちゃん×2にスバルにエリオ、ここは無難にカレーでも作ろか」

 

あれだったら量作れるからな

 

「ネリアの時代の私達って……二十五なんだよね……どんな感じ?」

 

「何々~、お姉様は何が聞きたいの?」

 

「えっと、ほら、美容面とか」

 

「もっといい事知ってるけどな~」

 

フフ~と笑うネリア2、あいつ、黒いな

 

「はぁ、俺はじゃあこのクリスタルの解析続ける、後は自由でよくね?」

 

「そやな~、うん、じゃあケント君、お任せするわ」

 

「了解」

 

こんな未来の技術、俺以外に見したら大変な事になる

 

「お姉様はこっちこっち~、ネリア×2が色々な相談を受け付けるよ~」

 

「え、えっ?」

 

ネリア×2に連れていかれるフェイト

………一人なら自重してるが二人になると気分が高揚して何しでかすか分かったもんじゃないからな、正直怖い

 

「ユーリは私達の部屋来るか?他のみんなの事も聞きたいし」

 

「ヴィヴィオと遊ぼ~」

 

「あ、はい、わ、分かりました」

 

ユーリは何というか、むっちゃいい子だ

 

「あ、ケントさん、先に部屋に戻っておきますね」

 

「ん、ああ」

 

エリオが大広間から出て行く……所でネリア1に取り押さえられる……?

まぁ、いいか?

 

取り合えずクリスタルと向き合う、あれだな、例えるならRPGの転移結晶

なるべく触れない様に、変に触って起動させたりすれば帰って来れない可能性だってある

 

にしても……皇帝特権といえども未来の技術にはお手上げか?

あくまでどの時代の一流かは決められていないし……縄文時代で土器作りの一流だって言い訳だ

う~ん、適用するにはちょっと時間がかかるかな?

 

「はいどうぞ」

 

「………未来ネリアか、どうした?」

 

「それ結構難しそうだから、軽い差し入れ」

 

目を移すとそこにはエナジードリンクらしきビン

………何時の間にか一時間、むっちゃ集中してたんだな

台所からはカレーの匂い、差し入れって言ってるし貰っとくか

 

蓋を開けて一気に飲む……何だかあれだな、初めての味

なんぞこれ?

 

「コルテット製精力増強液」

 

「ブッ!!」

 

ゴホッゴホッと盛大に咳をする

ちょっ、何飲ましてんだゴラァ!!

 

「集中する為に時々息抜きする事も大切だよ?」

 

「その息抜きで俺に何させようとしてんだよ!!」

 

「怒らない怒らない、同人誌貸して上げるよ?それをオカズにすればいいじゃない」

 

「ぶっ飛ばすぞテメェ」

 

取り合えずこっから出てけ!!

 

渋々といった感じで出て行く未来ネリアに一睨みした後再び作業に戻る

………あ~もう、集中出来ない

 

クリスタルを封印魔法で頑丈に保管してソファから立ち上がる

 

ご飯ご飯、普通に腹減った

後でネリアはぶっ飛ばす……二人同時は流石にキツイかもしれない

 

カレーの匂いも強くなってきたしもうすぐ出来上がるだろう

食堂に足を進める、スターズの二人が配膳をしていた

 

台所に目をやる、給食室で使っている大型鍋が二つあるのは気のせい

でもって炊飯器が数十個並んでいるのも気のせい、うん、気のせい

 

そしてこの量を作る事が出来るはやては普通に凄いと思う

 

そういや今いるメンバーって何人だ?

俺にネリアになのはにフェイトに……十七か?

数え間違いは……分からん

あ、ちなみにアリサとすずかを足した数な

コップやらスプーンやらを取って並べる

ゾロゾロと集まるみんな、ユーリは私服、ヴィータのでも貸してもらったのか?

ネリアは並ばれると分からん、同一人物だからな、しょうがない

 

全員席につく、手を合わせていただきます

 

普通に美味かった、大食い組は知らん、見ているだけで食欲が削がれる

洗い物を流しに持って行ってクリスタルへ

………分からん

 

時間は無限じゃない、出来るだけこの旅行中に解明しないといけない

ユーリはいいとしてネリアは問題だ、コルテット当主が二人って……

 

頭を捻る、触れない事や余り強い魔力の干渉が出来ないのがしんどい

コトッと、何かが置かれる音……?

 

「またお前か」

 

「人をお邪魔虫みたいに言わないでよ~」

 

さっきあんな事されりゃあこうなる

 

「で、今度は何の用だよ」

 

「ホットミルク、あったまるよ?」

 

出されたカップには煙りをもくもくと立てるミルク……さっきのあれとは違うっぽい

 

「飲めと」

 

「ん~、私はお兄様の疲れを取ろうとしてるだけだけど?」

 

胸をはるな胸を

………一応善意なのでいただく、ミルクだし大丈夫だろ

少しずつだが全て飲み干す……うん、美味かった

 

「精力増強剤入りだけどね」

 

「ブーーーー!!」

 

盛大に噴いた

 

「てめぇはさっきから意味分かんねぇ事ばっかり!!」

 

「まぁまぁ、今日はエリオ部屋に帰ってこないし……もう休んだら?」

 

「どういう意味だどういう!!

お前、本気で自分の行動を自重しろ!!」

 

「私はすぐに元の時代に帰るんだからお兄様は怖くありませーん、取り合えず今出来る事をしてるだけです!!」

 

「だからその必要な事がいらない事なんだよ!!」

 

こいつの脳内どうなってやがる!?

 

「あーもう、クリスタルの検証は部屋でやる、ネリア!!おまえは入ってくるなよ!!」

 

「は~い」

 

気の抜けた返事のネリア

……コンチクショウ、ガチでムラムラしてきたじゃねぇかよ

 

 

 

 



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悪ふざけはほどほどに

 

ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン

 

何度も何かを打ち付ける音がこだまする

鈍く、重く………

誰も来ない、当たり前だ、音の発信源はコテージから少し離れた森の中

そこで………ケント・コルテットは、一人木に頭をぶつけ続ける、ちなみに血が飛んでる

何度も、何度も、何度も、何度も、同じ動作の繰り返し

 

「なっ、何をしているのだ!?」

 

「……ザフィーか、ほっといてくれ、俺は……ここで死ぬから」

 

「ば、馬鹿を言うな!!」

 

犬の耳は侮れない

人型となったザフィーに取り押さえられる、ケントは抵抗しない、というか完全に力がない

 

「どうしたというのだ一体、夜中に何があった……」

 

「それができりぁ」

 

 

 

 

 

「それができりゃあ苦労しねぇよ!!」

 

森に声がこだまする

 

 

 

 

 

 

 

 

落ち着け俺、いや、落ち着けない、てか落ち着いちゃいけない

いや、落ち着くべきだ、ここは落ち着いて……いやだから無理だって、落ち着けないんだって

 

フゥと軽く息を吐く、うん、大丈夫、いや大丈夫じゃないからこんなんなんだろ、てか大丈夫だったら頭打ち付けたりしないわけで

 

パニクっている頭を取り合えず冷やす、まずは状況を説明はさよう

 

昨日はあれからすぐ寝た、何か起きたら怖いからすぐ寝た

クリスタルもまだ時間あるし、ネリアによく分からん物飲まされた状態で急いでやる事でもねぇし

 

そんなわけでベッドには言った、ここまでは大丈夫、エリオはまだ帰って来て無かったからすぐ寝た、むっちゃ早い時間だったけど寝た

 

そう、記憶がないから寝た筈なのだ、ムラムラしていたが寝た筈なのだ、ぜったい寝た筈なのだ

 

で、昨日早く寝過ぎたせいで夜中、といっても三時くらいに目が覚める

いくらなんでも早すぎなのでベッドから降りる、誰かの寝息が聞こえる

エリオだと思って振り向く

 

 

………超絶金髪美少女がいた、いや、比喩じゃなくてマジで

それだけじゃなく若干服もはだけてる、いや、原作でも結構きわどい格好で寝てたけど……え?

周りを見渡してもエリオはいない、じゃあ何、この子は俺と同じくベッドで寝ていたわけ?

 

………俺の頭の中で最悪の事態がかけめぐる

いや、あり得ん、俺は寝てた、ぐっすり寝てた、まずそんな事考える事自体が不埒だ、いや、ない、絶対ない

いや、でも俺は寝る時真っ暗派、だが何故今は豆球がついている

 

………ないない、記憶が無いんだ、そんな事はない

それに俺はちゃんとパジャマ着てるしね、服もはだけてない

うん、ない、絶対ない、断じてない

彼女がここにいることも何かの事故だ、ほら、部屋間違えたとか

それはないか、でも可能性はゼロじゃない、慣れないコテージだから部屋間違えたんだよ、寝ぼけてたんだよ、きっと

 

でもこれじゃあもう一眠り出来ないな、取り合えず外に散歩しに行くか

デュランダルを手に取る、メール?

差出人は、匿名?

取り合えずメールを開く、ん?

 

『ごめんなさい』

 

なにが!?

 

『途中で邪魔しちゃって』

 

なにを!?

 

『えっと、楽しんで下さいね』

 

意味わかんねぇよ!!

 

荒い息をつきながら部屋を出る

誰だこのメール送って来たのは、敬語だということでだいたい絞れる

 

取り合えずは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夢であってほしいと願い、頭を打ち付けていた……と」

 

「うん、まぁ、そんな感じ」

 

ザフィーが腕を組む

やっぱり……夢じゃ無いのか

この痛みとか血も夢の再現だと思っていたんだが……

 

「少なくともお前からそんな匂いはしないが……そのメール、お前の力で差出人割り出せんのか?」

 

「ん、ああ、そうだった」

 

取り乱し過ぎて忘れていた

皇帝特権を使ってハッキングをかける

差出人は……うん

 

「ネリアァァァァァァァァ!!」

 

ぶっ潰す!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁケント君、なんであそこでネリアちゃん×2は吊るされとん?」

 

「正当な報復」

 

「「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」」

 

ったく

あの後二人を潰した、全力全開、手加減無しで

二人だと苦戦?ハッ、何を言ってるんだか、終始ワンサイドゲームだったが何か?

 

取り合えずとっ捕まえて事情を聞いた、何でも俺が寝て、フェイトも寝た後におぶって連れて来たとか何とか

あのメールも未来ネリアの物、アドレス的な物が変わっていたため分からなかったが発信元はネリアのガラディーン、すぐに分かった

問いただす途中で

 

「お兄様あのメールで何を連想したの?うわ~、エッチぃ~」

 

とか言い出したので朝飯は抜きにした

ちなみにフェイトは起きたら全く違う部屋なので戸惑ったとか何とか、エリオは無理やりキャロの部屋に押し付けられたらしい

まぁ一件落着、この件を知っているのはザフィーだけ

ザフィーにも口止めしておいたからまぁ大丈夫だろう、あいつなら

 

「お兄様!!年頃の女の子がご飯抜くと健康や肌に良くないんだよ!!可愛い妹が病気になってもいいの!?」

 

「それは困る、はい」

 

ネリア×2の前にザルを置く

 

「これは?」

 

「生タマネギ」

 

「「鬼ぃぃぃぃぃ!!」」

 

大丈夫、死にはしない

 

「何があったんか聞いても答えてくれんし……まぁええか、二人とも朝ご飯抜きなんやろ?」

 

「はやてさん!!教えてあげるから朝ご飯ゲフッ!!」

 

「少し黙ろうか、それとも何か?ネリア、お前だけコルテットに強制送還してやろうか?」

 

「ふっ、未来のネリアにそれは効かないのだ」

 

「お前もミッドに強制送還するんだよ、仕事はかどるだろ?」

 

「なんて黒い」

 

少なくとも一度した事ばかり、失敗はしないだろ?

一生こき使ってやる

 

「ケント君は今日用事あるん?」

 

「ん?いや、特にはないけど」

 

「ケント君昨日さっさと寝てしもて聞いてないと思うんやけど、みんなで遊園地行こかって、雨も止んだしな」

 

遊園地って、また何というか

 

「不満か?」

 

「ん~、いや、突然だな~て」

 

「そんなもんや」

 

「そんなもんか?」

 

そんなものらしい

飯を食べ終わり、ネリア×2を放置したまま部屋に戻る

途中で謝罪の声と講義の声が聞こえたが無視、行くまでそのままでいろ

 

部屋に入る、エリオはいない

何故かフェイト……?

 

「忘れ物?」

 

「ううん、ち、違うよ、あの……ネリアを降ろして欲しいなって」

 

?、どういうことだ

 

「えっと、あの、ネリアは……私が寝た後におんぶして来たって……言ってたよね?」

 

「ん?言ってたけど……ごめんな、迷惑かけて」

 

目が覚めたら男の布団って、普通は取り乱す

 

「ホントはね、違うんだよ」

 

「?」

 

違うって?

 

「わ、私、なんだよ」

 

「何が?」

 

取り合えず赤面してモジモジするのはやめてくれ、むっちゃ可愛い

 

「私が、その、あの、自分で」

 

腕を伸ばして手をギュッと握り締めるフェイト

 

「こ、こ……」

 

「こ?」

 

 

 

「私が自分でここまで来たの!!」

 

あまりの勢いにのけぞってしまう

………て

 

「へ?」

 

「あ、あ、はぅ」

 

頭から煙を出した後、あどけない足取りで部屋を後にするフェイト

 

 

………え?

 





本編とは全く関係ないのですが……vita版Fate/stay night、PVかっこいいですね
歌も好みですし、ほんと、Fateの歌はいい物ばかりだ
いや~、発売が待ち遠しい

………自分、vita持ってないんですがね!!
やるせない気持ちでいっぱいです(−_−;)


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使い方

やっとの思いで更新

時間が……ない(−_−;)




「あ~、あれだな、うん、理解した」

 

「ホントですか!?」

 

ちゃんと理解出来たから身を乗り出すな、怖いから

あれだな、皇帝特権も未来の技術に適応し始めたな

 

「ある程度の魔力を流し込む事で戻れるらしい、ホントは元の世界の座標やら何やらの細かい設定があるんだが……クリスタルの中に履歴として残ってる、大丈夫だろ」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

頭を下げるユーリ

ごめん、怖い、後ろから手が出て来ると思うと……なんだかな

 

「流石お兄様だね~、すぐ解いちゃうなんて」

 

「これでも約一日かかってるんだ、ガチで複雑だよ、これ」

 

「それでもだよ、遊園地我慢した甲斐があったね!!」

 

「やめろ、悲しくなる」

 

一度ため息

あの朝食の後……遊園地に行く準備をしていたらある事を思い出した

 

ユーリの持ってきたクリスタル

 

明日にはクロノの迎えが来る、となれば明日までにクリスタルの制御方法や使用方法を見つけ出さなければならない

皇帝特権がいつ適応するかも分からない

と、いうわけで俺は遊園地はお預け、他のみんなに行ってもらった、俺はお留守番

 

ホント、頑張ったよ、構造やら何やらも見て……俺、これ作れるよ?

ただ時代が技術に追いついていない、設計図はあってもそれを実現出来るだけの技術力がない

オハコクリンって何だよ……

 

終わったのは今、空は夕焼けに染まり、海は綺麗に照らし出されている

 

ん~、最終日を引きこもって過ごしちまったな、これは本格的ニートも近いか?

 

「晩御飯が終わったら転送する、それまでのんびりしとけ」

 

「あ、はい」

 

「ネリアは~」

 

「今帰るか?」

 

「ご飯食べる~」

 

肉はどれだけ消えるだろうか

 

「お、解析出来たんか?」

 

「なんか主婦みたいだな、お玉持ってエプロン」

 

「なりたいな~、専業主婦」

 

それは管理局を辞めたいということか?

 

「それよりもうちょっとしたら出来るで~、バーベキュー」

 

「おお、すぐ行く」

 

「ネリアは今行く~」

 

お前もう二十歳だろ、もう少し落ち着け

よいしょと腰を上げる、あ~、ずっと座ってたから痛ぇ

 

「あ、お疲れ様」

 

「ん?ああ、お疲れ様」

 

フェイトか、もう行ったと思ってたんだけど

 

「大変だったね、あ、これお茶」

 

「ん、ありがと」

 

一気に飲む、やっぱり腰が……

 

「これが、クリスタル?」

 

「まぁな、触ったら駄目だぞ?」

 

にしても……これまた厄介な代物だな

ユーリみたいな魔力が多い奴だとすぐに作動しかねん

今の時代ならば確実にロストロギア、恐らくS級指定

 

「みんな外いるよ?みんな待ってる」

 

「そうだな」

 

そろそろ行くか

 

 

 

 

 

 

「………………席、変わってくれないか?」

 

「遠慮しよう、食欲が失せる」

 

さいですか

 

遅れて来たのが悪かった、まさか激戦区に入れられるとは

隣ではスバルにエリオにネリア×2

バーベキューの串が山になってる、てかはやて、お前どんだけ買って来たんだよ、肉

後ろに山みたいなのがあるけど……気のせいか?

それはともあれ頑張って育てた肉に手を伸ばす、こうでもしとかないと何時の間にか消えてる

あとネリア、野菜も食えよ野菜も

いくら体質的に太らないとかいっても健康的に問題だから

 

「俺としては向こうの花園に行きたい、男子は駄目、乙女の会話ってなんだよ」

 

「そういうものではないのか?」

 

「そういうものか?」

 

まぁ長年女だらけの中にいたザフィーが言うならば納得だが

 

「ほらお兄様、焼けてるよ?」

 

「そう言って野菜ばっかじゃねぇか、肉を出せ肉を」

 

ったく

 

「それよりも遊園地、楽しかったか?六課の時は休みやらが殆ど無かったらしいからな」

 

「ハイ、久しぶりで楽しかったです!!」

 

「あのグワーて落ちる車、マッハキャリバーみたいでした」

 

お前の方が危ないがな

それよりもミッドにはジェットコースターって無かったか?

……あれも魔法使われてるんだったっけ?少し浮いてるんだよな

 

「私も楽しかったよ!!お店の人が泣いてたけど」

 

「飲食店で食い尽くしたか、そんでもって何故今そんなに食える?お前の腹はどうなってんだ?」

 

 

「そんなもんだよ」

 

あっそ

 

「ホントはお兄様にも来て欲しかったんだけど、遊園地なんてイベントの山だし」

 

「未来ネリアに問い詰めても知らないんだからしょうがないだろ、確かにあれをお前が理解しようとしても無理だ」

 

とてもじゃないが一般人が使える物じゃない

未来ネリアは影響やらなどでなくてただ知らなかっただけだ

全く、紛らわしい

 

「遊園地の、ジェットコースターやお化け屋敷でちょっとしたハプニング、夕暮れの中、二人は静かに愛を確かめ合い、そのままベッドに」

 

「何言ってんのか分からんがそんな少女漫画的な展開は無いからな」

 

夢持ち過ぎだ

 

「夢が無いと何事もやっていけないよ?」

 

「おまえの場合は妄想とごっちゃになってる」

 

もう少し現実も見ろ

 

「ま、お兄様の場合はネリアからすれば『何でくっつかない』っていうレベルだからね~、ネリアは見ていて凄く不思議に思う」

 

「は?」

 

何がくっつくんだよ

 

「時々いるよね、他人のことだったら分かるのに自分の事は分からないっていうの、典型的な形だね、お兄様は」

 

「自分の事は分からないって」

 

そりゃ、他人から見れば俺がどう写ってるか分からんしな

 

「ん?何の話?」

 

「スバルさんには一生縁の無い話かもしれません」

 

意味は分からんが今のはかなりの毒舌だという事は分かった

 

「にしてもスバルは大丈夫なのか?カロリーとか」

 

「はい、昔からいくら食べても太らないので」

 

ピキッと、向こう側の女性陣から音がする

そんでもって腹回りチェック、大丈夫、みんなかなりスレンダーだから

 

「エリオは……その体でどうしてそこまで入るのかが分からん、物理的に可能なのか?」

 

「出来てますから大丈夫じゃないんですか?」

 

それもそうだ

 

「お兄様もいっぱい食べないと身長伸びないよ?」

 

「ん~、未来のお兄様も今と変わっていない気がするけど」

 

今更驚いたり嘆いたりせん、アルトリアの選定の剣とネロの低身長が重なってこんな身長なんだ、特典の弊害、まぁそのために大人モードを開発したのだが

あ、ちなみに術式は世間一般に公開した、素人では出来ないと思うがある程度の魔導師ならすぐに習得出来ると思う

 

「あ~、私ももう帰らないといけないんだ、何だかな~、うん、もうちょっとのんびりしたいかも」

 

「悪いけどこっちにも色々あんだ、ネリアが2人とか知られてみろ?コルテット内部が混乱する」

 

「だろうね~、あー、また働かなくちゃ」

 

そんなに働くのが嫌か?

 

「この頃ネリアは働いたら負けだと思うのです」

 

つまりニート予備軍か

 

「で、どうする?記憶の改竄でもするの?

未来の人間が過去に干渉するのは良くない、お兄様なら改竄なんて簡単だと思うけど」

 

「そんな事言ってるがお前は今回の出来事を覚えていた、つまりは記憶いじってないんだろ?

てかそんなこと元からする気はない、正直めんどい」

 

「確かに、術式を一つ一つ組んで~、なんてめんどくさいもんね」

 

記憶の改竄とかどれだけ複雑なんだよ

下手すりゃ大人モードよりもむずい、エルトリア二人組はすぐにやってたけど今の技術じゃ難しい

 

「まぁ問題ないだろ、お前も変な情報は話してないんだろ?

あとそれは俺が育てた肉、取るなよ?」

 

「ぶぅ、私は殆ど話してないよ、重要そうなやつは全然話してないしね」

 

それくらいは理解してくれているよな

 

「話した方が色々と楽になる事もいっぱいあるけど……それは余計なお世話だもんね

それで変に未来が変わって、悪い方向に行っちゃったら大変だし」

 

「そうだな」

 

「それにお兄様達なら大丈夫、明るい未来を切り開けるよ」

 

「ちなみにその台詞、どこから引用した?」

 

「コミケで買った同人誌」

 

こいつの未来は全く明るくない

 

「性格は相変わらずって事か、駄目人間にだけはなるなよ?」

 

「ニートなお兄様に言われたくな~い」

 

………………え?

 

「これ以上ないくらい強い自宅警備員だよね」

 

「うっ」

 

未来の人間に言われてるのだから違うとは言い切れない

 

「はむ、うん、おいしい……あ、お兄様、ちょっと頼み事があるんだけど」

 

「なんだ?」

 

未来の人間の頼み事?

 

「翠屋のケーキ、買ってくれないかな?みんなに持って帰りたくて」

 

「それくらいなら何とでもなるけど」

 

「あ、ネリアもネリアも!!ホール十個くらいで!!」

 

「お前の場合ただ自分で食べたいだけだろ」

 

ホール十個って……予約しとかないといけないな

 

「あ、ケント君奢ってくれるん?じゃあ私も頼もうかな~」

 

「ヴィヴィオもヴィヴィオも!!」

 

「どうしてそうなる」

 

まぁ、お金は大丈夫なんだけど……士郎さんと桃子さん死ぬぞ?

………いや、あの人達なら大丈夫か

 

 



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獣耳

空白期での敵?です
いや、何と言うか……平和ですな
余り長引かせません、終わり次第vividです

※Sts編の最初に登場人物紹介を追加しました



この世で最も美しいものは何か

 

この世で最も輝いているものは何か

 

この世で最も強いのは何か

 

この男は間違いなくこう答えるであろう、『筋肉』と

 

 

 

ならばこの世で最も可愛いものは何か

 

この世で最も萌えるのは何か

 

この男は間違いなくこう答える、『獣耳』だと

 

 

 

一筋の光、輝きを放つカチューシャ………の形をしたロストロギア

 

やっと見つけた、これを見つける為だけに局入りし、夢を実現する為だけに働いた

カチューシャにはモフモフの耳、自らの体は海パン一丁

鍛え上げた筋肉はテカリを増し、己の全ての魔力を身体強化、筋力強化に注ぎ込む

 

男は涙を流す、かつて追い求めて来た理想郷、夢までに見たパラダイス

 

老若男女など問わない、皆があのモフモフを共有出来る世界

 

高らかに笑う、ロストロギアから溢れ出る魔力によって、よりテカリと筋肉を増す己の体

 

誰にも理解されない日々はもう終わり、筋肉×獣耳、このコラボが分からない人間には無理やりその魅力を伝える事が出来る

 

この力を使い、先ずはミッド、その次は管理世界、更には管理外世界へと

 

管理外のヘボ局員になど負ける気がしない、この腐りきった世の中を……俺が変える!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて皆さん、朝起きたら見慣れないものがあった時どうしますか?

いや、物とかじゃなくて、身体的な意味で

 

旅行も終わり、無事にミッドに帰って来て数日

何故か朝早くに起きてしまい、ならばなのはやフェイト、ヴィヴィオの分の朝食を作ってしまおうと思い台所へ

 

ただ寝起きという事は変わらない、サッパリ、兼ちゃんと目を覚ますために洗面所へ

 

バシャバシャと顔を洗いタオルで拭く

ふと顔を上げる

 

鏡には見慣れた自分の顔、いや、別にそれならいいのだが………

 

 

なんだ、この犬耳

 

 

頭の上に三角形のモフモフした物体がついている、てか感覚もある

力を入れてみる、動いた

 

触ってみる、触られた感触、すっごいモフモフ

 

腰の方に違和感、恐る恐る手を伸ばしてみる

何やら長くてモフモフしてる物、てか握られた感触

そして力の入れ方も分かる、力を入れる、立った……そしてまたすぐにしぼんだ

 

 

……………え?

 

 

 

 

 

 

 

 

『現在、ミッド全域で猫耳、犬耳が生えた、尻尾がある、などの情報が相次ぎ……私もそうなのですが……管理局は原因究明の為調査の開始を始め』

 

「……………ミッド全域かよ」

 

「凄いね」

 

「フワフワ~」

 

ヴィヴィオ、笑い事じゃありません

テレビの報道、画面の中には猫の耳と尻尾がついている女キャスター

俺の隣には自らの耳を触って癒されているヴィヴィオ、うさぎか………

 

そんなわけでこの現象、どうやらミッド全域で発生しているらしい

原因は今のところ不明、ただミッド全域という事はそれだけの魔力を有するロストロギアの可能性が高いだろう

 

「う~ん、体に支障はないと思うんだけど……」

 

「可愛いよね、これ」

 

ご覧の通り体には何の支障もない

ただ耳と尻尾がついただけ、判断力が落ちたやら知能が犬猫並みになったなどは一切ない

 

「フェイトちゃんは黒猫か~、いいな~、可愛い動物で」

 

「なのはのも可愛い……と思うよ?」

 

「ヴィヴィオは~」

 

「ヴィヴィオもすっごく可愛いよ」

 

「フェイトちゃん、なんでヴィヴィオには満面の笑みで、私には苦笑いなのかな?」

 

そんなもんだろ

 

ネリアはコルテットにいるのでどうなのかは知らないが、高町家の現状を確認しよう

先ずはフェイト、言わずと知れた黒猫

頭からは小さく猫耳、尻尾も綺麗だし何よりも……似合っている

無茶苦茶、これ以上ないくらい、抱きつきたいくらい

おっと、煩悩退散

 

で、ヴィヴィオは兎耳、将来のクリスやら何やらの影響だろうか?

尻尾には白く丸いのが一つ、愛くるしい

 

で、なのはなのだが………黄色基準に黒いシマシマ

耳の形やら尻尾からは猫型の動物を連想させる、てかどうしてそうなった

 

「なんで私は虎なのー!!」

 

……虎、それがなのはだ

いや、悪魔とかにならなくて良かったよな、獣に含まれるのかは知らないが

まぁ、性格的に考えればアリじゃないのか?怖いし怖いし怖いし

 

それはいいとして俺、頭には三角形の耳、しっぽからはフサフサとした毛

色はクリーム、悪意あるよな、これって

 

「ケントは……チワワだよね」

 

「世界最小の犬」

 

「甘えん坊さん!!」

 

「言うな」

 

俺は、チワワだ

 

地球では世界最小の犬として言われるチワワ、俺の身長を馬鹿にしてんのかこの野郎

 

「うう、可愛いからいいじゃん!!虎だよ虎!!」

 

「………肉食系?」

 

「わけが分からないよ!!」

 

インベキューター

 

「まぁすぐに解決するだろ、犯人はミッドの中心部にいるだろうし捜査官という事ではやても動いてるだろうし……午後からフェイトも仕事あるけどこれに当てられるんじゃないか?」

 

「はやては動いてるだろうね、シグナム達もかな?」

 

ミッド全域のある意味でのテロだからな、管理局が犯人を見つけるのも時間の問題

今日中には終わるだろ、多分

 

「あ、朝ご飯作って来るね」

 

「そうだったな、俺が作るつもりだったけど……悪い」

 

大丈夫だよ~、と言って台所へ向かうなのは

にしても……

 

「犯人の目的は何なんだろな、全然掴めん」

 

「う~ん、何か裏があるのかな?それともただの自己満足?」

 

「自己満足でここまでするか?」

 

ガチの変態じゃねぇか

 

「………ねぇケント」

 

「ん?」

 

「お魚食べたい」

 

……………は?

 

「いきなりどうした」

 

「えっと、何て言うのかな、無性にお魚が食べたいんだ、何でもいいから……なのはに頼んで来ようかな?」

 

まさかとは思うが生態まで一緒になるのか?

てか唐突だなオイ

 

「ふにゃあ」

 

「可愛いなオイ」

 

「はふぅ」

 

さっきから変だぞ?

と、突然

 

「ワッ、ワッ、ワッ!!キャアァァァァ!!」

 

「…………どした?」

 

なのはが走って逃げてくる

頭を抱え込みガクガク震える……ちょっ、何があった!?

 

「あ、あれ」

 

「は?」

 

なのはが指差した方向

いつもと変わらない台所

………Gでも出たか?

 

「ひ、ひ、ひ」

 

「ひ?」

 

………ああ、火か

 

「なのはママ、大丈夫?」

 

「火が怖いって……まさか」

 

恐る恐る台所に近づいてみる

コンロで燃える火、いつも通りの火

何故だろう、汗が止まらない

その前に体がこれ以上近づくなと警告を発している……うん

 

「マジかよ」

 

これはかなりヤバくないか?

動物は火が怖い、それは万国共通として言える事だ

コンロの火なら何とかなる、近づけないのなら魔法を使って電源を止めればいいだけのこと

 

ただ……これがミッド全体になればどうなる?

火事の場合、鍛え上げられた救急隊や消防士は恐怖から近づく事など出来ない

もしかしたら、事態は俺が思っているよりも深刻なのではないだろうか?

 

取り敢えず回線を遮断して火を消す

朝ご飯はパンだけでいいか

 

通信……はやてから

犯人捕まったか?

 

『ケント君、ヘルプや』

 

「なんだよいきなり、そしてお前……やっぱり狸か」

 

『う、まぁそんな事はいいねん、ホンマ助けて、むっちゃ助けて、一生のお願いや』

 

一生のお願い、こんな所で使ってしまってもいいのか?

 

「で、何だよ、火が怖いとかそういう系か?そっちにはザフィーだっているだろうに」

 

『いや違うねん、今犯人を局で追跡中なんやけど……無理や、アレ、真っ正面から立ち会いたくない』

 

「犯人見つけたか、だったらお前が一発デカイのを撃ったらそれで終わりじゃねぇか」

 

『したよもう、ラグナロク』

 

ほう、で、結果は?

 

『………殴られた』

 

「は?」

 

『だから殴られたねんって!!砲撃を!!』

 

………物理的に可能なのか?

 

『今そっちに画像データ送るわ!!可憐なる乙女を助けてくれや!!』

 

「それは見てから判断する、どれどれ」

 

うん

 

「マジか」

 

『大マジや』

 

はやてから送られて来た画像、こんなのが人類に実在するのか?

見た目はおっさん、体は一般人の二倍程に膨れ上がり、身につけている物はブリーフ型の海パン一丁

そして目に余る筋肉、テカテカ、そしてゴツゴツ

 

更に追加攻撃を仕掛けるのは……頭に生えた猫耳と尻尾

 

……悪夢だ

 

『元々は普通の局員で魔力もC位やったのがロストロギアの影響で今ではSランクにもなっとる、その全部を肉体強化、身体強化に回してこの有様や

それに使っとる術式がミッド式から古代ベルカ式に……攻撃力方法はただ殴る、攻撃は筋肉に阻まれて全く効かへん』

 

「古代ベルカ式になるって……まさかとは思うがベルカ戦乱期よ遺産だったりする?」

 

『………多分やけど』

 

何て物を作り出しやがった

 

『私の砲撃も通じんかった、恐らく拡散する攻撃は全部効かへん

ケント君みたいな一点集中の収束とかじゃないと』

 

「シグナムは?」

 

あいつの紫電一閃とかもいいと思うけど

 

『シグナムは……火が怖いって』

 

「あ、ああ、そうか」

 

自分の一番の持ち味が逆に仇となったか

今頃は……部屋の隅で震えてるかもしれないな

 

「このままだといろいろマズイし……うん、行く、無料かもしれないけど」

 

『座標はこっちで送る、頼むで!!』

 

ブツッと通信が切れる

戦闘中にかけてきたか、さて

 

「私も行くよ、近距離だったら大丈夫だし」

 

「わ、私も!!いつまでも虎は嫌だもん!!」

 

通信聞いてたか、う~ん、どうするか

俺個人としては少々刺激が強すぎる相手だと思うんだが……よし

 

タンスの上、裁縫用具

中を弄くる、見つけた

 

「なのは、フェイト、それ!!」

 

「「ふにゃ!!」」

 

二人同時に飛びつく

俺が投げたのは赤い毛玉、むっちゃ可愛い

 

「それじゃ、行ってくる」

 

「ふにゃ~」

 

「にゃ~」

 

…………これ、ずっと見ていていいかな?

 



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戦う相手は人外ばかり

 

「こりゃ、ひでぇ」

 

「気合が足りん!!筋肉が足りん!!萌えが足りん!!」

 

いや、気合と筋肉はあると思うけどお前から萌えの要素など一切感じられないから

 

ミッド中心部の廃墟街、そこで次々に魔導師や騎士達が屈強な筋肉によって吹っ飛ばされる光景

漫画みたいだ、どう考えても体の形可笑しいだろアレ

 

はやてからの座標と道案内で来た結果この有様

猫耳や犬耳の局員が一人の犯罪者に手も足も出ない状態

てか絶対に生態にまで響いてるよな、ここに来る途中街中で堂々と昼寝する一般市民を大量に見かけたのだが

 

「近づきたくねぇ、テカリと汗ヤバイだろ、キラキラしてるよあいつ」

 

「み~んな全然あかんねん、女性局員は気味悪がって逃げ出すし男性局員も犬ならまだしも猫はあかん」

 

「お前はどちらにも該当しないけどな、それよりなんだ?近距離戦闘のエキスパートなら俺じゃなくてヴィータやザフィーもいたはずじゃねぇか」

 

少なくともザフィーは元から犬だしヴィータは俺よりも一撃の威力は高い

 

「それはそうもいかんのよ、ヴィータは猫になってしもうて一向にお昼寝から起きる気配無し、ザフィーラは………本物の犬になってもうた」

 

「つまり?」

 

「犬と人間、両方が半々で保たれとったのにそのバランスが崩れたんよ、話しかけたら『ワンッ』て返されるし」

 

あいつ、狼としての威厳とか無いのか?

 

「助かったのはユニゾンデバイスのリインだけ、今は私とユニゾンしとるんやけどな」

 

『はいです!!』

 

デバイスには効果無し、か

それでもリイン単体での戦闘力は余り期待しない方がいいし、ユニゾンしてはやての一撃を強化した方がいいのか

それでも効かなかったと、あの筋肉ダルマには

 

「応援とかは無いの?」

 

「あんまり期待せんほうがええかな、地上本部は頑張っとるけど本局はそうもいかへん、他の世界では今でも犯罪は起きとる、管理局は人手不足よ〜」

 

「なるほどな」

 

つまり、今の主戦力は俺と

こんな事になるんだったらなのはとフェイト連れて来るんだったな、いや、やっぱり駄目だ

年頃の女の子にはやはり刺激が大き過ぎる、はやては知らん

 

「身長は……およそ2m以上、体重は軽く百キロは超えるな、魔力形態は古代ベルカでSランクの魔力は全て身体強化と肉体強化に、耳は……熊か?」

 

「近づいたら食べられそうで怖いねん、結構本気で」

 

「熊の相手をチワワにしろと?正気かはやて、口には出さないけどさっきから膝の震えが止まらん、生存本能が警報鳴らしてんだけど」

 

「なんや、ケント君はこの美少女が食べられてもいいっていうんか?」

 

「色々卑猥だ、まぁそれは……嫌だな」

 

あの筋肉ダルマ×はやてとか、想像したくない

 

「それともなんか?雑食の私に食べられてみる?」

 

「取り敢えずあれ何とかしよう、今思えば恐怖を断ち切って突っ込んでる局員って案外凄いんだな」

 

大体犬か猫なのに、熊に立ち向かう度胸は凄いと思う

 

「私の発言は無視か~、ユニゾン姿の私を見せるのは初めてやからケント君、少しはキュンッ、てくるかと思ったんやけど」

 

「ん?可愛いと思うぞ、目とか綺麗だし」

 

「卑怯者」

 

何がだよ

 

「じゃあはやては援護頼む、横入りは邪魔になる可能性があるから魔導師は一旦下がらして、騎士は様子見って事で」

 

「了解や」

 

そういやネリア以外で誰かと共闘するって初めてか?

まぁ、共闘って言ってもはやては細かな攻撃ではなく一撃必殺の大型砲撃主力だから、殆どする事は無いと思うけど

殺すつもりなんてさらさらないので『破壊』は何が何でも使わない、あれに非殺傷とかない

 

自分の周りにスフィアを五つ配置、デュランダルの刀身に魔力を集める

出来れば一撃で落としたいんだけど……行けるか!!

 

右足を蹴って一気に浮上、飛行魔法を使って一気に距離を詰める

向こうがこちらに気づく、遅い!!

 

俺の目の前には五つのスフィア、これで隙を作り、一気に決める

 

「小細工など通用せんわ!!」

 

「ちょっ、ガチで!?」

 

あいつ、スフィアを右手で軽く払っただけで全て相殺しやがった!!

いくらスフィアとはいえ小規模の爆発は確実、なのにピクリとも動いてない、目さえ閉じねぇ!!

 

「だけど!!」

 

「むぅ、煙玉」

 

払った瞬間にもうもうと奴の周りを白い煙が立ち込める

スフィアの中に軽い煙玉、世の中チートだけじゃやっていけねぇって今までの経験から知ってんだよ!!

 

その直後、黄金に輝くその剣を横凪に大きく振るう

入った、確実に

 

(偽)エクスカリバーと比べれば若干威力は劣る物の勝負はつく!!

 

バキン、という金属音……金属音?

 

そして……

 

「ガッ!?」

 

「ふんっ!!」

 

胴体をその巨大な腕で掴まれ思いっきり投げ飛ばされる

 

一回、二回、三回バウンドし……ビルに衝突して止まる

………クソ痛ぇ

 

「小さい!!弱い!!筋肉が足りん!!お前まさかその貧弱な一撃で俺の体に傷をおわせられると思っていたのか!!」

 

「筋肉とぶつかり合って金属音とか、そんなのアリかよ」

 

「スフィア?煙玉?収束?そんな小細工俺には通用せん!!収束自体は良かったがお前の身体的要因が悪かったな!!」

 

ちょっ、嘘だろ

つまりあいつは、『俺の力が弱かったから効かなかった』と言いたいのかよ

今のは非殺傷の魔力ダメージを与える攻撃だぞ、その威力はどこに逃がしたんだよ!!

 

「世の中にはエースオブエース、歩くロストロギア、無限の知能など様々な天才がいる、じゃがな、筋肉には凡人も天才もない!!

魔力の差、力の差、知能の差!!その全てを埋め、消す事が出来るのが筋肉!!至高の芸術!!神がお与えになった最強の力!!」

 

あいつが右足を大きく後ろに反らす、ヤバッ!!

 

「その府抜けた細い体、俺が直々に鍛え直してやる!!」

 

「くっ、デュランダル!!」

 

瞬時にデュランダルを地面に突き刺し、それを軸にして大きく飛翔

眼前には筋肉ダルマの肩、一瞬でも遅ければ、危なかった

筋肉があるということはそれだけ踏み込みが強いという事、瞬間の最高速度はフェイトを越えてたぞ!!

………っ!?

 

「グワッ!!」

 

「まだまだぁ!!」

 

風圧、それによって大きく飛ばされる

おい、こいつ本当に俺らと同じ人間か!?

 

「シールド!!」

 

「ラリアットォォォォォ!!」

 

カードリッジを三発つぎ込んだシールド……オイオイ、これって夢じゃないよな

 

「軽いわぁ!!」

 

「ガッ!?」

 

全身に激痛、上も下も右も左も分からない

ゴロゴロと超高速で転がる体、バリアジャケットが無かったら今頃ミンチだな

 

そして転がる途中、一瞬だけ見えた

 

目の前に、筋肉ダルマ

 

「先回りかよ」

 

「ふんぬ!!」

 

エルボー、地面に盛大に叩きつけられる

土煙が舞う、地面が砕ける……くそ

 

「俺は人殺しでは無いのでな、なに、死にはせん」

 

「………ゴホッ」

 

まるで胃の中身が全て無くなったかと思う感触

ここは………廃墟の中か、恐らくビル

………成る程ね

 

術式作成、右手を地面に向ける……こいつは、これくらいじゃ死なないだろ?

 

「破壊」

 

「ぬっ!?」

 

無くなった、地面が、ポッカリと

流石の筋肉ダルマでも今のには反応出来なかったらしい、大きく体制を崩す

そして

 

「転移!!」

 

「むぅ!!」

 

すかさず外へ転移、目の前には廃墟ビル

………軽く十階建てはあるか?まぁ、今の破壊で支えを失ったんだ、廃墟ビルなんて……簡単に倒壊する

 

土煙と砂嵐、それと共に一瞬で倒壊する廃墟ビル

魔力を刀身に溜める、今度は、一切の余裕も無し

 

目を瞑る、直感を最大限にまで生かす

………飛翔、場所は……倒壊したビルの一角!!

 

ふんぬっ!!という掛け声と共に瓦礫を吹っ飛ばしてはい出て来る筋肉ダルマ、今が、チャンス!!

 

「ぬ!?」

 

「エクス」

 

一気に斬る!!

 

「カリバァァァァァァ!!」

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

両手で振りかぶったエクスカリバーと筋肉ダルマの右ストレートがぶつかり合う

 

………あ、こりゃ駄目だ

 

 

「うぉぉぉぉぉ!!」

 

 

バキンッ、という音と共に、俺の両手は中に放り出される

完全なる無防備、なんでこう、俺が戦う奴って人外ばかりなのかな

 

 

「ぐおぉぉぉ!!」

 

 

筋肉ダルマの雄叫びと腹にかかった激痛により

 

俺の意識はプツリと途切れた

 

 




ケントのやる気が無さそうなのは相手が熱すぎるせい、
熱苦しすぎて逆にかなり冷静です
まぁそれでも、ボロボロですが(−_−;)


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うにゃー

平日は時間が無さ過ぎる……休日に頑張らないと(−_−;)



128

 

 

「ーーーーっ、体中が痛い、骨バキバキ言ってねぇか?」

 

「あれだけされて自然と受け身が取れとるケント君は素直に凄いと思うわ、はい、これで終わり」

 

パンッと背中を叩かれる

結構力入ってたっぽいから地味に痛い

 

「私がどれだけ心配したと思ってんねん、助けようとしてもハイレベル過ぎて何も出来へんし、ほんま役立たずよな~、私って」

 

「そんなに自分を悪く捉えるなよ、何でも出来るオールラウンダーなんていないんだから、はやてはそれでいいんだよ、守るのは前衛の役目なんだしな」

 

フゥ、と息を吐いて立ち上がる

あのダルマとの戦闘からおよそ一時間、局員達の治癒魔法と介抱のお陰でなんとか意識は取り戻した

今までの命懸けの戦いとは違い敵はあくまでも礼儀は持っている、全て非殺傷なので魔力ダメージと身体的な痛み以外は何ともない

ただ、今日の内に再戦は無理だろうな、また同じ事を繰り返すだけだし圧倒的に魔力が足りん

 

「ごめんなケント君、私が我儘言ったばっかりに」

 

「気にすることは無いよ、油断していたのは事実だし俺の力不足のせいでもあるし」

 

チート持ってるのに筋肉一つに負ける自分が情けない

 

「降りてくれてもええねんで?アレは私らで何とかするから」

 

「お前に全部任して置いていけないだろ、今日は無理だが対策練って明日再戦してみる、今度は勝つよ」

 

こっちから手を出さない限り向こうは何もしないらしいしな

火事やら何やらが起きた場合はあいつ自身が解決してるらしいし……筋肉で

まぁ、完璧な自己満足、そこまで悪い奴じゃないと言うことだけは分かった

 

う~ん、それでも、犯罪者なのだが

 

「にしても」

 

さっきの戦いを思い出してみる

高いスピードとパワー、んでもってガード

避ける事は出来るけど風圧による大勢の崩れは必須、こちらからの攻撃にはピクリとも動かない

………軽く詰んでるよな、これ

 

やっぱり俺の力不足か

『破壊』を抜いた状態での一番攻撃力が高い技は『(偽)エクスカリバー』、だがこれ、結構周りと比べればそこまで強い技じゃなかったりする

まず範囲、今のデュランダルに少しリーチをプラスしただけ、むっちゃ狭い

威力、俺のはいくら収束といえども斬撃である事には変わりない、力不足な俺の筋力ではあれを動かす事は不可能

う~ん、そうだな、例えで言うとシグナムの『紫電一閃』を少し強化したくらいのパワー、『飛竜一閃』を出されたら終わる

いや、それでも世間一般からすると十分過ぎるのだがいかせん、俺の周りで効く奴はあんまりいない

魔力ダメージは一応与えられているとは思うんだけど、最終的に体内のロストロギアを破壊すればいいんだからな

でも相手が仰け反ってくれなければ意味がない、攻撃した後が大きな隙となる

 

………どうしよ

 

軽く頭を捻ってみる、案は、三つ

 

まず一つ目、アホ毛引っこ抜いてオルタ(笑)となる事

 

確か原作では俊敏や幸運を下げる変わりに魔力を上げていた筈、つまりは一撃の攻撃力が上がる

ただ……確証は無いんだよな、ホントにそうなるかどうか

それに制御も出来ない、アレと戦ってくれるかさえも分からない

ん~、保留

 

 

二つ目、皇帝特権によって全ての特典を封印する

 

そうすれば鮫島と戦った時の様に魔力SSSになれる筈、なのだがそうした場合封印に使用した皇帝特権も封印してしまい解除方法が無くなってしまう、つまりは特典を失う

……保留

 

 

三つ目、二人で戦い隙を埋める

 

この戦いでの最終目標は筋肉ダルマを仕留めるのではなくてロストロギアの無効化、つまりは魔力ダメージを与えまくってロストロギアを破壊してしまえばいい

さっき述べた様にあの強靭な肉体の前にはどんなに攻撃しても仰け反らない、つまりは攻撃後は完璧な隙となる

その隙をもう一人がフォローして延々と斬り続けるという事

ただ、それだけの人間は中々いない

まずは俺と同じ剣士ではないといけない、リーチを同じにしなければ息が合わないし交代する時に隙が生まれる

次に俺と同じ、もしくは俺よりも強い剣士ではないといけない、自惚れている訳ではないがはっきりいって俺と同等の剣使いの魔導師、もしくは騎士など中々いない

そして最後、急ごしらえのコンビだ、お互いある程度、それぞれの形を把握していなければならない、つまりは初対面の人間など言語道断、それこそ背中を預けるなれない

 

………色々と条件はあるが、一番無難なのは三つ目、そしてその条件をクリア出来る存在を俺は知っている

ただ、今、どうしているか……なのだが

 

「何か思いついたんか?」

 

「ん、ん~、一度家に帰ってすぐに八神家に行かせてもらう。管理局はもう今日は引き上げるんだろ?」

 

「手が無いからな、明日になったらそれなりの魔導師も集まる、今日のところは戦力温存や~て」

 

それがいい、向こうから手出しをしてこない以上あまり執拗に追い回すのは時間の無駄だ

 

「それより家に来るん?何かあったん?」

 

「ちょっとした用事、こうやって動物化してるからどうも言えないけど」

 

ホント、どうも言えない

 

「分かった、私は少しまだやる事があるから、今日はホンマにごめんな」

 

「ん、大丈夫、じゃ、また後で」

 

一応役職としては少将、医務の人とかが心配してくれたが筋肉ダルマは元局員、後遺症やら骨折やらは全くない

面倒な書類とかは任せよう、今は作戦の下準備

あ~、でも、大丈夫か?あいつ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺を萌死させる気かこの娘達は」

 

ただいま~と帰ったらもう昼をとっくに過ぎて三時頃

返事は、ない

何かがあったのかと思ってリビングに入ったら、何と言うか、飛び込みたくなった

 

フェイトとなのはは体を丸める様にして寝ていて、その間にヴィヴィオ

そんでもっていつ来たのかは知らないがネリア、あれは……猫化だな

ホント、仕草と言いますか雰囲気といいますか、凄く可愛いです

あの時々ピクリと動く尻尾とか……うん、いいね

 

「ん………」

 

「あ、起きた?」

 

「……………にゃあ」

 

殺す気満々ですね、萌えで

フェイト、それは素なのか?

 

「…………ふにゃあ」

 

「………転がってた毛玉、ホレホレ~」

 

少し糸をほどいてフェイトの前でフリフリさせる

見つめるフェイト、何この可愛い生き物

 

「にゃ!!」

 

猫パンチ

 

「ふにゃ!!」

 

猫パンチ

 

「にゃにゃにゃにゃ!!」

 

猫パンチ猫パンチ猫パンチ猫パンチ

 

「あ、癖になりそう」

 

「…………はう!!」

 

目の色が変わった

……正気に戻ったか?

 

「今度こそおはよう、気持ち良さそうだったな」

 

「え、あ、あ、わ、忘れて忘れて!!今のは綺麗サッパリ忘れて!!」

 

「ん?という事は記憶はあるという事か、ごちそうさまでした」

 

「はうっ!!」

 

顔を真っ赤にして口をパクパク

ん?

 

「ば」

 

「ば?」

 

「バカーーーー!!」

 

盛大に殴られた

 

 

 

 

 

 

 

「凄く心配したんだよ!!はやてから連絡あってケントが気絶しててボコボコにやられてって!!」

 

「そう言ってた割には寝てたじゃん」

 

「そ、それは、その、何だか凄く眠気が襲ってきて……その、お日様が暖かくて」

 

猫ですね分かります

 

「この耳の原因なんでしょ?戦って来た相手って」

 

「そうだな、てかネリアはいつ来た。それにお前のモデルは何だ?」

 

「う~ん、十時くらいかな?それでモデルは多分ライオンだと思うよ」

 

セイバーライオンか

 

「今見たら凄い図だよね、チワワに猫に兎、同じ所に虎とライオンって」

 

「俺ら確実に食われるな、流石にそこまで受け継いでないか」

 

そうなってしまっては確実に大混乱だな

人食いって……ただ事じゃ無くなる

 

「で、お兄様には何か策はあるの?はやてさんの砲撃もお兄様の斬撃も効かないんでしょ?」

 

「肉体的には効いてないが内面的には効いてるな、少しずつだけど………何度も何度も打ち込まないといけないが」

 

この高町家にはそれが出来る人材がいない

基本的に『一撃必殺』の精神を持つからな、唯一近距離戦が出来るフェイトも一撃一撃が大振りで『連撃』には向いていない

てか、結構みんな男勝りだよな、この家の住民

 

「私とはやてさんが行って大っきいのドーンは?」

 

「却下、その土地が地図から消えて無くなる」

 

冗談なしに割とガチで

 

「じゃあなのはさんのSLB追加で」

 

星が砕ける

 

「アテに会うために少し出かけて来る。今どんな状態かは分からないけど」

 

「ケントと合わせられる剣士って、一人しかいないもんね」

 

フェイトが一番知ってるもんな

それでも彼女とフェイトでは戦い方が色々違う、スピードはフェイトだが圧倒的に大振り、連撃には向いていない

 

「シグナムさんだね、ケント君とシグナムさんでコンビか~、凄いんだろうな」

 

「それにミッド主体と古代ベルカ、中々見ない組み合わせだしね」

 

まあな

シグナムなら俺についてこれるし合わせる事も出来る

何度か打ち合っているのでお互いの事も分かるし同じ剣士という事もあって相性もいいと思う

ただ……なぁ

 

「まぁそんなわけで八神家行って来る、はやての事だから多分夕食は食べて帰ってくるから、あ、ちゃんと帰っては来るよ?」

 

「あ、当たり前だよ!!はやての家で泊まって来るなんて駄目だよ!!駄目なんだからね!!」

 

近い、フェイト

 

「次は私たちも行くよ、さっきはその……簡単に止められちゃったけど」

 

「それは駄目、刺激が強過ぎる」

 

それでも管理局から送られて来る情報で分かると思うが……現物と画像は別物だ

そういやフェイトって午後から仕事じゃ無かったか?それどころじゃない?

まぁ、いいや

 

「それでもだよ!!ほっとけないから!!」

 

「……あーもう、勝手にしろ」

 

明日家出る前に毛玉もう一回投げて行こう

 

「んじゃまあ行って来る。あまり遅くにはならないから」

 

「ま、待って、私も行くよ!!はやての家」

 

ん、ん~、フェイトは道端で寝てしまいそうで怖い

………しゃーない

 

「ほれっ」

 

「「「にゃーーーー」」」

 

毛玉投げた、帰って来る途中で買った物

ネリアにも適応か………

 

「にゃー」

 

「うにゃー」

 

「ふにゃー」

 

……………もうちょっと眺めとこ

 

 



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烈火の将

129

 

「いや、だからさ、ちょっと力貸してほしいな~て、いや、お願い、割りとガチで」

 

「すまないが今回ばかりは主の頼みであっても承諾出来ん。すまないな」

 

「ワンッ!!」

 

「zzzzzzz」

 

苦笑いのはやてと俺からの誘いを断固として拒否するシグナム

はやてに餌をねだる犬と相変わらず寝るヴィータ、何と言うか……なぁ?

 

「どうせ暇なんだろ?この前『強い相手がいないー』とか言って嫌がる俺を無理矢理連れ出してたじゃん?

絶好のチャンス到来だよ?無茶苦茶強い相手だよ?」

 

「それでもだ、断固として拒否する」

 

そこまで言わなくても………

場所は八神家、外はもう夕暮れ

かれこれ交渉し始めて三十分、シグナムの意思は相変わらず固い

耳から生えているのは猫耳、どうやら俺の勝手な推測だが男は犬化、女は猫化が多いようにも感じられる

あの筋肉ダルマは知らん

あとここに来る途中、チーター、いや、虎か?そんな耳を生やしたオッドアイの少女がいたとかも知らん、よくこの状況で鍛錬が出来るよな

にしても、折れてくれないかな

 

「そこまでして嫌な理由があるのか?ベルカの騎士にとってそんな戦いを拒否するような恐怖でもあるわけ?」

 

「いや、そんな物はないが……違う違う、単に今は調子が悪いというか、その、何というか」

 

シグナムに調子が悪いとかあるのかよ

熱出しても剣振ってるイメージしかないぞ

………少し挑発するか

 

「なんだ?もしかして自分の炎が怖いのか?烈火の将ともあろう方が」

 

「そ、そんな事はない!!烈火の将シグナム、恐怖も無ければまして自身の炎に恐れるなどは決してない!!断じてない!!」

 

そこまで否定しなくても

そんなに言ったら逆に肯してるもんだぞ、見栄っ張りというか、プライドが高いというか

 

「ほう、じゃあ何がお前を拒絶させるんだ?なに、心配ない、お前とは何度か模擬戦してる。息もピッタリだと思うしお互い信頼出来る。不要な心配は大丈夫だが?」

 

「そんな事ではない、ただ……その」

 

「それとも……あの筋肉ダルマには勝てないと思ったのか?戦う前に逃亡か?」

 

「違う!!断じて違う!!」

 

相手がどんな奴だろうと強ければいいっていう感じだからな、普段なら喜んで前線で戦ってるだろう

さっさと首を縦に振ればいいのに

 

「じゃあ何がそんなに不満なんだよ、いつものシグナムなら期待に胸を踊らせている筈だろ?」

 

「いや、だから、今回は」

 

顔を伏せてしまう

頑固だよなぁ

 

「じゃあこうしよう、俺とお前が戦って俺が勝てば明日の戦いに、お前が勝てばこの話は一切無かった事に、どうだ?」

 

「……………」

 

黙り込むシグナム

なんというか、なぁ?

 

「ああ、大丈夫、俺は今日筋肉ダルマと戦って魔力を消耗してる。シグナムが圧倒的に有利だぞ?もしかしてハンデまでつけられて逃げるのか?」

 

「うっ」

 

少なくとも今までシグナムは俺に全勝してる。ここで逃げる事など出来ない、というさそんな汚い事をシグナムはしない

それにハンデ付きだ、ベルカの騎士として誘われた勝負は受けるよ……な?

 

「……………了解した、三十分後に、前の浜辺だ」

 

「うし、んじゃ先に行ってる」

 

シグナムの気が変わらない内に八神家を出る

いじめ過ぎたか?だけどなぁ、この方法以外だと本気でオルタ(笑)使わないといけない可能性だってあるし

後は……他力本願だとキャロ?

ヴォルテールなら何とか……その前に真竜クラスをミッドのど真ん中に召喚するのでアウトだな、前はJS事件だったから特例だっただけだし

それにキャロ自体ミッドにいない、来るには最低一日かかるだろう

それにあの筋肉ダルマはヴォルテールだろうが何だろうが鉄拳一発で沈める可能性も否定出来ない……大地の神様が右ストレートで飛んで行く光景……シュールだ

そういや俺、六課メンバーの中では強さ的にどれくらいなんだろうな、隊長クラスにはなれるけど……ん?

相性とかもあるからな、関係ないか

いや、原作ではなのはとシグナムは昔、局の模擬戦で死闘を繰り広げたんだっけ?

遠距離主体のなのはに近距離主体のシグナムが戦えるのか、俺の場合直感があるからバインドはほぼ無意味だけど他はそうもいかないからな

それでもシグナムには中距離攻撃があるからカバー出来るんだと思うけど、俺は本当の意味で『近づいて斬れ』しか言えない身だからな

 

一つあくび、そんなくだらない事を考えている内に着いたらしい、目の前には夕日に照らされた海

……綺麗だよな、ホント

 

小学生くらいの子達が下校している。この辺だとどこになるんだろうな

手に持っているのはサッカーボール、ミッドにはサッカーは無いって原作でユーノが言って無かったか?

………細かい事は気にしちゃ負けか、ユーノ、普通の学校に行っているとは思えなかったし、あんな年から発掘作業してるんだもんな

どこであんな知識を身につけたんだか、てかその前に俺、ユーノと会った事ねぇ

 

衝撃の新事実、無限書庫や何やらの為に一度くらい接触しておいた方がいいか、これから何かがあったら使う事もあるかもしれないし

 

………いや、忘れてた、『G』が出た時に一瞬だけ会ったわ、影が薄いからすっかり忘れてた

 

もう一度サッカー少年達に目を向ける

懐かしいな、俺も中学の頃は部活に青春を燃やしてた、えっと、何部だったか?

えっと……ん、思い出せん

燃えてたんじゃ無かったのかよ、昔の記憶だからか?

ん、んー、俺って死ぬ直前まで高校で何してたっけ?

 

頭を捻らすが分からない、てか考え過ぎたら軽く耳鳴りがして来る

まぁ、今はいいか、別に今の世界で使う知識でもないし

 

そう、どうでもいいことなのだ

 

「お、来たか」

 

「…………」

 

無言でこちらに歩いて来るシグナム

むっちゃ睨んでる、当たり前だけど

俺が知っててやってるのも分かってるだろうしね、どうにかして恐怖を克服してもらわないと困るんだよ

 

俺とシグナムが向かいあう、俺もチワワである以上、火は怖い

だがそれを至近距離で見せられるシグナムはその何倍もの恐怖を感じる筈、なるべく俺はシグナムに反射的に性質変化を使わせる戦いをして……使われても極力驚かないように、逃げないようにする

 

「んじゃまぁ、日も暮れて来てるしさっさと始めるか、ルールはいつも通り、基本的に無制限だ」

 

「………分かった」

 

シグナムと俺が剣を構える

………一見落ち着いているようにも見えるが、汗ばんでるな、手

デバイスを構える事にも躊躇するのか……酷いな、これは

 

「よしじゃあ」

 

魔力を惑わす……よし

 

「始め!!」

 

双方一気に斬りかかる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、シグナム?」

 

「(ビクゥッ!!)」

 

目の前で砂浜に女の子座り?しているシグナムに手を伸ばす

むっちゃ怖がられた、目は半泣き、髪のリボンは取れて少し口に入っている

 

「……大丈夫か?その、あの」

 

「(フルフル)」

 

首を横に振られた

 

こうなったのも俺が原因、簡単だ、炎が出ればいいのだから無理してシグナムを待たなくてもいい、単に軽く爆発させてやれば充分なのだ

ただ、効果が絶大過ぎた、シグナムを丸々飲み込んだ爆炎が晴れる頃にはシグナム半泣き、完全なるキャラ崩壊

これ、俺が悪いんだろうな

 

「その、歩けるか?家までどうする?」

 

「………グスッ、あ、歩く」

 

何この小動物

 

「えっと、ホントに悪かった、調子に乗り過ぎた……今回の事はこっちで考えるからな?ごめんな?」

 

「い、いや、騎士が一度誓った約束だ、破る事は出来ん」

 

涙目で言われてもなぁ

今が日が暮れててよかったよ、周りから見たら絶対野次馬集まって来るもん

いや、俺が悪いんだけどさ

 

「それでもそれじゃあ全く戦えないだろ?」

 

「性質変化など無くても戦える、騎士をバカに……するな」

 

ん~、まぁ剣技に関しては何も問題は無いしな

カードリッジさえ使えるなら何とか、あいつは殴る蹴るだけだから爆発とかはしないだろうし

 

「だ、大丈夫だ、お前には頑張ってついていく」

 

「俺がシグナムに着いて行く形にはなると思うけど、じゃあ、明日はよろしくな」

 

「ああ」

 

この後シグナムを慕っている近所の子供達から非難を受けたのはまた別の話

 

 




この頃ニコ動内にある『耳かきボイス』にハマっている作者
声じゃなくてあのカリカリ音が堪らん、気づけば一時間くらいリピートで聞いてます(−_−;)


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戦闘開始

 

 

「わ・た・し・も・行くよーーーーー!!」

 

「あーもう、だから大丈夫だって、フェイトにあんなの見せられないって!!」

 

小鳥の鳴き声と混じってフェイトの怒声が混じる朝

耳がキンキンする、昨日からずっとこれだ

 

「容疑者の姿なら見た!!その……大丈夫!!私は執務官なんだよ!!」

 

「いや知らねぇし、それにその間はなんだ?あと写真と現物は違う、リアルで見たら現実って残酷だぞ?」

 

あのピチピチした筋肉とかマジであたま可笑しい

 

「それでも二人は無理だよ!!私だって強いよ!!頑張れるよ!!」

 

「あー、んー」

 

どうやらフェイトは『自分が信用されていない』と思っているらしい、そんな事ないんだけどな、ただ単に俺はシグナムが一番適正があると思っただけであってシグナムに対して変な感情を持っているわけではない

いや、ホントに、浮気なんてしませんよ?

ん?でも片思いって浮気自体があるのか?

まぁ、いいや

 

「聞いてる!?ケント!!」

 

「聞いてる聞いてる、連れていけってことだろ?」

 

………無理だな

目の前の彼女に対する思いが強いからこそあんな残酷な現実を見せたくない、筋肉×獣耳など……

 

「昨日作っておいて良かったよ」

 

ポケットをあさる、こんな事もあろうかと思って昨日家でかき集めた材料で作った最終兵器、うん

 

「ほらほらほらほらほらほら」

 

「うにゃ!?」

 

俺のお手製猫じゃらし

あ~、目をキョロキョロさせる仕草かわええ

 

「にゃー」

 

「おーおー、よしよし」

 

頭を撫でると気持ち良さそうな顔をするフェイト、あー、うん、理性は抑えよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ……か」

 

「まぁあれだ、てか昨日よりも大きくなってねぇか?」

 

ミッド中心部廃墟街、あぐらでグースカ寝ているのは筋肉ダルマ

もうちょっと警戒心を持てというか……別にどっちでもいいけど

隣にはシグナム、昨日のアレはもう大丈夫みたいでバリアジャケットを羽織って腰にレバ剣を刺している

レバ剣?いや、略してレバ剣だが

 

今回の戦いで気をつけなければならない事は二つ、まず一度連撃に入ったらもう後戻りは出来ない事

少しでもあいつに時間をやったらロストロギアの自己再生能でせっかく与えたダメージが全てパーになるらしい、つまりはロストロギアが回復する為の時間を与えない様にしなければならない

 

次にシグナムの事、派手な攻撃は出来るだけ却下

俺もそうだが広範囲に渡る爆発なんてされた場合対処出来ん、純粋な技術力でカバーするしかない

まぁ、あいつにとっては技術やら小細工やらは一切関係ないのだろうが……完璧なる力勝負、潔いまでの王道

スポーツ漫画とかでは絶対いるよな、ガタイがいい重量選手

あんなのになりたいなんて一切思った事ないけど

 

「私の事は構うな、全力でお前に食らいつく」

 

「食らいつくって、俺とシグナムだったらシグナムの方が強いわけだし……立場逆じゃね?」

 

前にも言ったが性質変化が使えないからといって何も出来ないわけじゃないからな、経験や何やらを考えてシグナムの圧倒だと思うのだが

 

「そんな事はない、事実、私がお前に勝てるのは中距離での攻撃が出来るからに過ぎん、『隼』や『シュランゲバイゼン』などの攻撃を私から抜き、単純な剣技のみの試合ならば私がお前相手に絶対勝てる自信はない、打ち込む場所が分かっているようにも感じるからな、お前の場合、それに単純な技術としたらお前と私に大差はない」

 

「ん~、そんなものか?」

 

打ち込む場所が分かるのは直感のおかげなんだけどな

そういや今まで負けた理由として一番大きいのはあの鞭みたいに長くなる奴だよな

あれはシグナム自身完全に制御出来るわけじゃないから軌道が読みにくいんだよな、近づこうにも近づけないし

 

「私にとっては何故魔導師でいるのかが不思議なくらいだ、どちらかと言うと騎士になった方がいいと思うが」

 

「それも考えた事はあるけど却下、俺、『騎士』って柄じゃないと思うし………ん?騎士王だから大丈夫なのか?」

 

ん~、まいっか

あと個人的な理由で騎士よりも昔からの憧れだった魔導師でいたいっていうのもあるよな、それにこの力自体が鍛錬して手に入れたわけでもないから多くの騎士達に悪いというか何と言うか

 

「そうか、残念だ、それでどうするんだ、寝ているが」

 

「なら絶好のチャンスだろ、初撃は確実に決められる」

 

戦闘になってからあの超スピードで動かれたら反応は出来るが前と同じになりかねない、寝ているなら絶好のチャンス、初撃を決めて後は腹をくくり、シグナムと一緒に連撃してロストロギアを魔力ダメージで破壊

やられた時とかはその時考えよう、死亡フラグになる

 

デュランダルを抜いて前に出る、ここからあそこまで全力で飛べば三秒程、いける

 

飛ぶ瞬間、肩を掴まれた

 

「なんだよ」

 

「少し待て、お前の意見は分かるが私は反対だ」

 

は?

 

「寝ている相手に斬りかかるのは騎士ではなく暗殺者のする行為、お前が言っているのが最善だとは思うが私は騎士としてそれは出来ん」

 

「だけど」

 

「曲げられん」

 

騎士になりたくない理由が増えた

 

「ったく、じゃあ待つか」

 

「すまんな」

 

シグナムが動いてくれないと勝てないのは分かりきった事、ここは彼女の言う通りにする他ない

てかあいつが起きなかったらどうすんだ、熟睡っぽいから当分起きないぞ

もう朝なんだから起きて筋トレでもしろ

 

「そういえばテスタロッサ達はどうしたんだ、あいつが黙って送り出すとは思えんのだが」

 

「昨日帰った後家にある物で軽い猫じゃらし的な物を作った、それやったらイチコロだったよ

あ~、録画でもしとけりゃ良かったな」

 

むっちゃ可愛ったし

ニャーニャー言うのは反則だと思うんだ、俺

 

「むぅ、猫じゃらしか……また主に買ってもらうか」

 

「今回で解決すりゃもういらねぇよ、解決出来ないといるだろうが」

 

もとより負ければ万策尽きる、オルタで賭けに出るかコルテットの力でキャロの真竜召喚の使用許可を得るか

どちらも嫌だよな、出来るだけキャロにはプレッシャーかけたくないから多分オルタを俺は選ぶと思うし

はぁ、どちらかと言うと筋肉ダルマを倒すより俺を止める方が大変だと思うのは俺だけか?

 

「むぅ、おお、昨日のヘナチョコか」

 

「誰がヘナチョコだ誰が、てか起きたか、俺らの話し声が聞こえたか?」

 

「むぅ、寝ている時に奇襲を仕掛けて来なかった事は評価しよう」

 

別にお前に評価されても嬉しくない

てか筋肉×獣耳を至高の芸術と言っている時点でお前の評価と言う物の単位が信用出来ない

 

「で、再戦か、あれだけボコボコにしたのだから今頃諦めたのかと思っていたのだがのう」

 

「色々と期待されちまってるからな、んでもってお前の言う通り今回は再戦、ニ対一だが……卑怯とか言うなよ?」

 

「なんの、いくら数が来ようともこの肉体を貫ける物はなし!!」

 

随分な自信だ、まぁ昨日は傷一つつけられなかったのだが

しかし今回はそのご自慢の体を貫こうなどという考えは一切ない、お前の体は頑丈でも中のロストロギアはそういうわけにもいかない、分厚い壁に守られてはいるが……それを貫かせてもらう

 

「烈火の将シグナム、お前のような強者と戦える事を誇りに思う」

 

「む、お前も見た事はある。確か……そうそう、あの奇跡の部隊の隊長さん、お手柄だったなあれは、あんな引きこもりの筋肉が全く感じられんような奴に負けるようでは管理局も地に落ちたも同然だからの」

 

「お前は何でも筋肉で決めるんだな」

 

筋肉さえあればどんな女性とでも付き合っていけそうな勢いだ

俺?俺はの好きなタイプは……うん、何でもない

 

「それでは他愛のない話はこの辺で良いだろう、騎士達よ、俺の全力を持って相手をする事にしよう」

 

「ヴォルケンリッターが一人シグナム、参る」

 

こう見てるとこの二人ってかなりのバトルジャンキーだよな

シグナムも手練れと出会えた事で炎の事など忘れてるっぽい、ホント、分かりやすい

 

熱い二人に隠れるように名乗りを上げてデュランダルを構える

相手がデカイガタイをしている割に速さはフェイト並だという事は事前にシグナムにも言ってある、後はどれだけ食らいつけるかどうか

 

「オアァ!!」

 

「ハァッ!!」

 

僅か一瞬の出来事

巨人の拳をシグナムが剣に滑らすようにして軌道を変える

音は刀と皮膚が当たってなお金属音、衝撃は殺せなかったようでシグナムの体制が崩れる

昨日はここで勝敗が決した、その僅かな時間で俺は吹っ飛ばされた

シグナムもまた、同じ道を辿るだろう………俺さえいなければ

 

「はぁ!!」

 

「むぅっ!?」

 

『目』に向かって『不可視の剣』を放つ

いくら筋肉があったとしても『目』や『耳』などの器官を鍛える事など不可能、それに今の俺のデュランダルは風の性質変化を使い原作同様不可能

当てるつもりはさらさらない、ただし『避けないと当たる』

大きく体を反る筋肉ダルマ、シグナムへの追撃など不可能

 

一旦距離を取る、手汗が凄い

風圧だけで吹っ飛ばされそうだ、それに今のフォローがなければ確実にシグナムはダウンしていた

 

「なるほど、大体強さは分かった……一筋縄ではいかんぞ、あれは」

 

「まぁな」

 

 

さて、本格的に行きますか

 



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限界突破

 

「相変わらず……無駄に固いなお前は!!」

 

「ふるぁ!!」

 

振るわれた拳をカードリッジを使った防御魔法で受け流す

凄まじい風圧が襲う、自身の体が思いっきり飛ばされそうになるのを必死で堪える

………重たい

 

「む!?」

 

「ぐっ!!」

 

レバ剣が鞭のようになって筋肉ダルマの腕を拘束する

一つ一つが剣なので普通はクソ痛い筈なんだが……動じてないってなんだよ

 

「軽いわぁ!!」

 

「ぐあっ!?」

 

腕を大きく振るう事で逆に大きく吹き飛ばされるシグナム

………こっちかよ!?

 

「うおっ!?」

 

「うっ」

 

俺がシグナムを受け止める形で大きく後ろに飛ぶ

レバ剣は何とか外れたけど……シグナムが邪魔で!!

 

「ふんっ!!」

 

一直線に俺たちに向かうその拳……ぐっ

 

「設置型……バインド!!」

 

「ぬっ!?」

 

飛ばされる直前に設置したバインドによって拘束される拳

ほんの数秒も持たないが……十分!!

 

「シグナム!!」

 

「分かっている!!」

 

同時に斬りかかる

改めて聞く金属音、剣撃がたやすく『肉体』によって弾き返される

下まで振り下ろす事など不可能、それでも……ロストロギア自体にダメージは通っている!!

 

「転移!!」

 

「ふんがぁっ!!」

 

シグナムを巻き込みすかさず転移魔法を使う

距離はほんの数十メートル、それでも……遅れていたら一瞬でバッドエンド

軽く背筋が凍る、粉砕された地面

あんなに強度はないっつーの、俺の体は

 

「攻め、られないな」

 

「ラチがあかん、このままでは」

 

肩で息をする

シグナムは平気みたいだ、流石は歴戦の勇士と言ったところか

 

戦闘を始めて数十分、個人対個人の戦闘でここまで長引くのは中々ない

それでも俺達は、まだ全然攻め切れていない

簡単に言うと改めて敵がチート過ぎる、スキというものが存在しない

いや、元々そんなものはない、剣撃が本体自体に効かない、敵が仰け反らない以上は連撃は難しい

だからこそ二人での戦闘に挑んだのだが……お互いの事はある程度知っていてもそれは己自身程じゃない

息が完璧にまだ合わない、ぶっつけ本番は無理があったようだ

それにどちらかといえば向こうのペース、まだ一撃も食らってはいないが全て紙一重、直感がなければ初っ端からミンチになっていた自信がある

それに比べてこちらはコンマ数秒の時間にそれぞれ一撃入れるだけ、これではロストロギアを破壊する前に殺られる

 

「しぶといの」

 

「さっきのバインド、一応カードリッジ一個消費したんだぜ?それを力任せに、何も無いように引きちぎるなよ」

 

拳を止めれたのはたった一瞬だけ、普通の魔導師や騎士相手なら恐らくあれで決着はつけられる筈なんだがな、こいつに『常識』の二文字通用しないのかもしれない

 

「言ったであろう、どんな小細工も、どんな技術も儂には通用せぬと」

 

「それでも小細工や技術に頼らなかったら勝てないのが俺なんだよ」

 

大体の人間はそうだしな、こいつが例外なだけ

そもそも、あんなガタイになるのなら俺は今のままがいい

 

「ふぅ、手応えはあるがここまで剣撃が入らない敵というのは……長く生きて来たが始めてかもしれん」

 

「今までいたらビックリだよ、てか一応古代ベルカのロストロギアだから可能性としてはあるのか?」

 

闇の書によって記憶が曖昧なだけで実際には会ってるかもしれないな、守護騎士は

 

「そんなヌルい攻撃ではいつまでたっても届かんぞ?」

 

「お前からしたらどんな攻撃もヌルいんだろうよ、レベルが高すぎる」

 

魔力SSSでの攻撃なら効くかもしれんがするつもりはない

分が悪いのは承知の上、なんとかして通すしかない、一つ覚えのヌルい攻撃を

 

「………転移魔法は、残りどれだけ使えそうだ」

 

「数十メートルの距離なら残り数回、そうなれば完全に魔力切れだ」

 

元々転移魔導師じゃないのに無理矢理使っているんだ、消費魔力は半端じゃない

それでも、使わないと避けられない

 

「中々うまくいかないものだな、それでどうするんだ、このままだと……負けるぞ?」

 

「わかってる」

 

ジリ貧になれば恐らく魔力切れでこちらが負ける、いや、絶対に負ける

少々危ない橋を渡らなければ、あれには届かない

 

………考えているのはある、ただ……それに俺の『体』が耐えられるのかどうか

 

「悩む事はない、やらずに負けるよりも危なくてもやる方がいい、私の事は気にするな」

 

「…………うん」

 

実際に使った事はない、あくまでも『知識だけ』

それにそうなれば当初の予定とは離れてしまう、シグナムを庇えない

それに……シグナムがついて来れるかどうかわからない

 

「どうした、動かぬならこちらから行くが?」

 

筋肉ダルマが構える

………よし

 

「シグナム」

 

「なんだ」

 

レバ剣を構えながら目だけこちらを向いてくるシグナム……ああ

 

「お前、二倍の速さで動けるか?」

 

「また突拍子に、お前こそ、私に置いていかれるなよ?」

 

それはないと思うが

………さて、『二倍で体を動かして、俺はどこまで耐えられるか』

時間との勝負、死ぬ程苦しいかもしれないが……やってみる価値はある

狙うは、唯一の弱点でもある『背中』

 

固有時制御(タイムアルター )

 

固有、とまではいかないが結界を作る

場所は、己の心臓

全身の血管がブチ切れて肉の塊にならないように祈ろう、一応身体強化をかけたからそうはならないと思うが……

 

「ふんっ!!」

 

一瞬で距離を詰めた筋肉ダルマの拳が襲う、シグナムが避けると信じ、俺は……己の役割を果たすだけ

 

 二倍速(ダブルアクセル )!!」

 

全身の血が暴走するのを感じる

皇帝特権でのあくまでも『イメージ』

無理矢理術式を組んだ欠陥魔法、それでも……使えないわけでもない!!

 

「なっ!?」

 

始めて筋肉ダルマが驚く声が聞こえる

目の前には巨大な背中、いける!!

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

五連撃、始めて筋肉ダルマの苦痛の声

だけど、そんな事に構っている余裕なんてない!!

 

「うあああああぁぁぁ!!」

 

十連撃

 

皇帝特権によって『一流』にまで引き上げられた剣撃が二倍の速さで、確実に人体の急所を狙い暴走する

 

口からは血反吐を吐きそうだ、汗が滴り落ちるのを感じる……まだ………

 

「紫電」

 

「ぬっ!?」

 

「一閃!!」

 

戦いを求めるシグナムそのものの本能が、借り物である猫の本能に優ったのか

半分無意識に振り下ろされた炎の剣線、それが俺に振り返った筋肉ダルマの背中に直撃する

まだ………

 

「ぐああああああああ!!」

 

二十連撃

 

真っ正面から目にも止まらぬ速さで斬りかかる……まだ、足りない!!

 

「小細工を!!」

 

振り下ろされる拳

避けて、転移

これ以上の速さに俺の体はついていけない、皇帝特権によって速さを最大にまで上げ、それを二倍にしている……人体の限界などとっくに超えてる!!

 

「シグナム!!」

 

「分かっている!!」

 

背中に向かっての連撃

シグナムと俺、二つの剣撃が走る

 

 

三十連撃

 

 

「いっけぇぇぇぇぇ!!」

 

「はあぁぁ!!」

 

二色の線がいくつも走る

もう自分が今どんな状態なのかま分からない、目の前が霞む

筋肉ダルマが俺達を振り払うためにその腕を動かす

 

 

四十連撃

 

 

「飛竜」

 

シグナムがレバ剣を大きく引き戻す、カードリッジが大量に排出される……ったく、涙目になるくらい火はダメなんじゃなかったのかよ!!

 

「一閃!!」

 

至近距離から放たれた大技は筋肉ダルマの腕に当たり、爆発した

手は、止めない

 

 

四十五連撃

 

 

煙の中から飛び出してきた腕が裏拳によってシグナムを殴り飛ばす

風圧で煙が全て晴れる、放たれるもう片方の拳、これが……

 

「エクス」

 

 

四十九連撃

 

 

「カリバァァァァァ!!」

 

 

ラスト!!

 

 

五十連撃

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

縦一閃、手応えはこれ以上ない程によい

時が止まった感じがした、指先一つ動かせない、魔力切れに身体的な疲労……デュランダルを手に握れているのは体が硬直しているから

血は驚く程静まっている、逆にそれが恐ろしいほどに

 

自然と膝が地面につく、立っているだけでもしんどい、いや、立っている事などとうに出来ない

切嗣とは違い、練習も無しでのぶっつけ本番二倍速、体が言う事を聞いただけでもよしとするべきだろう

 

てかEXランクの宝具があったからってこれで四倍速を実現した切嗣は素直に凄いと思う、考えただけでも恐ろしい

てか四倍速なんてしたら内臓が破裂して再生して破裂して再生しての繰り返しだろ?体に来る激痛は想像を絶するだろう

 

パキン、と、何かが割れた音がした

 

目の前には粉々になったカチューシャ、自分に生えていた耳が消えていくのが分かる

気付けば筋肉ダルマも膝をついていた、体が縮む………ったく、ロストロギア無しでもボディービルダーみたいな体してんじゃねーかよ

 

「終わり、だな」

 

「そうじゃの」

 

体が、徐々に落ち着きを取り戻して来る

まぁ動かせるのは口ぐらいだが、手やら足は疲労で動かない

 

「色々と勉強になったよ、お前を真似たいとは思わないけど」

 

「残念じゃの、お前ならば一流の筋肉王になれると思のじゃが」

 

何が筋肉王だ何が

 

ゾロゾロと湧いて来る局員、素早く相手の身柄を拘束する

 

………悪い奴じゃ無かったよな、根は……いい事思いついた

まぁ、それも罪を償ってからだけど

 

「ふぅ、立てるか」

 

「結構ピンピンしてんなシグナム」

 

「そんな事はない、一瞬意識を失いかけた」

 

流石は守護騎士、腕を抑えているがどこか楽しそうだ

 

「あー、悪い、コルテットに連絡しておいてくれねぇか?ちょっと、寝たい」

 

「分かった、取り敢えずはお疲れ様……か?」

 

クシャクシャと頭を掻き回された後、俺の意識は闇に沈んだ

 

 

 



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vivid編 前編(原作一年前)
もう一つ


一年早いですがvivid編開始です




 

「よっ」

 

軽く打ち込み

うわっ!!と叫んで転倒する子供……うん

 

「はっ」

 

足をかける

振り下ろしてきた斧が空を切る

 

「よっと」

 

放たれた槍を軽く受け流し……叩き落とす

 

「ていっ」

 

横凪にはらわれた剣撃、遅いし鈍いし実力不足

下から弾く……オイオイ

 

「好い加減バリアジャケットと……デバイスを使わせるくらいにはなれよ!!」

 

それぞれに一発づつ

後ろに弾け飛んでいく子供……手加減はしてんだ、感謝しろよ

 

ふう、と息を吐いて周りを見渡す……疲れてくたばっている者、なんとかして再び立ち上がろうとする者など様々だ

でも、今回はこれで終わりだな

 

「将来騎士になんだから、しっかりしろよ?今のままじゃろくに戦えねぇし」

 

場所は体育館、時間は夕方の四時頃

はい……と力の無い声が響く、ま、だんだんレベルが上がっているのは認めるよ

 

体育館の出口に歩く、苦笑いの教師達の姿

そして……なぜか目をキラキラさせるカリムと呆れたような顔をするシャッハ

まぁ、いつも通りの日常だ

 

 

 

 

 

 

JS事件が終わって早二年、俺も二十一という年齢になり精神年齢を考えたら軽くオッサンだな~と思い始めたこの頃

暮らしは実に平和、全く問題無しと言えるだろう

 

あった事と言えばヴィヴィオが晴れてこの学校、Stヒルデ魔法学院に入学した事だろうか?

 

写真撮ってパーティーして……ワイワイしていたのを覚えている

 

目の前に出された紅茶を飲む、今回はちゃんとミルクティー、紅茶で一番好きなのはこれだね、うん

甘党?子供舌?何とでも言え、甘党の何が悪い

 

「相変わらず容赦の無い人ですね、まぁ、未来の騎士達があれでは困るので丁度よいのかもしれませんが」

 

「まぁな、手加減とかも結構してるし……妹の身がかかってるから負けるつもりもねーけどな、その前に俺にバリアジャケットとデバイス、使わさせてくれないか?格闘技で全部ぶっ倒してんぞ」

 

シャッハに対しての愚痴、今のままじゃ将来が心配

 

先ほどしていたのは恒例の『ネリアの婿に来たけりゃ俺を倒してみやがれバトル』

大体月に一度来ては暇つぶし程度に戦っている、今回は五十人程度だったか?

ちなみにデュランダルを使わなかったのは今回が始めて、まさかここまでとは思ってなかった

そんなわけで八極拳(笑)にて完全殲滅、今はこうして時間潰しの為に個室でくつろいでいる

 

目の前で紅茶をフーフーと冷ましているカリムが可愛らしい

 

「学校の教師に強く言い聞かせないといけませんね、このところ緩くなりつつありますから」

 

「俺の時もサンドロスぐらいだったからな、まともだったの……いっそのこと全面的に入れ替えてもいいんじゃねぇか?」

 

まぁそんなに人材がいないのが騎士なんだろうけど

 

「はむ、おいしいですね、このお菓子」

 

「ん~、美味いなこれ」

 

自分で持って来た手土産であるクッキー、美味い……食べ慣れてるけど

 

「いっその事ケントさんが聖王教会に来て来れたらいいのに、騎士サンドロスの後継者として」

 

「ん~、カリム、俺は魔導師であって騎士じゃないんだよな~、それに家柄とか局から貰っている役職上無理」

 

俺が聖王教会に属したらかなり大変になるぞ?

今のところカリムが事実上トップにいるけど彼女も少将、俺も少将、つまりは局での位は同じ

さらにはカリムが名家の生まれ柄で俺も名家の生まれ柄、カリムは聖王教会直系の子孫で聖王教会内での力は大きいが俺はまさに現代の経済を担う存在、比べてしまうとどうしても今の利益を考えるならばコルテットを支持する人間も出てくる

そうなれば聖王教会が一枚岩では無くなる、俺やカリムに争う意思が無くても周りが勝手に俺達を持ち上げて争いになるだろう……断じて無理、絶対駄目

 

「分かってますよ、冗談です冗談」

 

「そうだよなー」

 

カリムも人の上に立つ以上、ずっとのほほんとしているわけでも無いからな

人を見る目とか探り合いなども昔からは考えも出来ないくらい成長してるし……性格は全然変わらないんだけどさ

 

「はむ、このお菓子、どこで売っているか教えてくれませんか?」

 

「ん?分かった、また家に帰ってから連絡する」

 

俺が買ったわけじゃないから何処のかは知らん

 

「それにしても今日はあの人は同伴ではないんですね、てっきりまたシャッハと戦いに来るのかと思ってたのに」

 

「ヴラドの事か?今日のあいつはコルテットの屋敷で護衛達を鍛えてるよ、何でも今日はテストだかどうだか言ってたし」

 

「シャッハとは気が合ってるようにも思えますしね、生徒にもいい勉強になるのだとか」

 

「だからと言って生徒達が筋肉ダルマになるのは嫌だぞ、あれは特別な例であって見習わせるのは駄目だ」

 

俺に挑んでくる奴らが全員筋肉ムキムキになって襲いかかって来たらもう絶対この学校には来ない、あんなのは一人で充分だ

あ、紹介が遅れた、今日はさっき話した通り今はここにいないのだが『ヴラド・ガルダ』、今ではコルテット護衛隊の隊長でもあり陸戦AAA−の実力者

ご存知の通り、一年ちょっと前に起こった『獣耳事件』の主犯である

彼自身、凶悪犯罪をするつもりでは無かったのと自身の強化中、災害にあった人間を多く救っていたなどの事からあまり大きな罪に問われず、わずか半年ちょっとで釈放となった

まぁ局員が獣耳になったぐらいで実質的な被害は出てないので当然と言えるが

で、釈放されたヴラドをうち、即ちコルテットで雇用したのだ

 

元からある筋肉にロストロギアを体に埋め込んだ時の『後遺症』によって魔力量がAA+にまで引き上げられた彼、今でも昔ほどではないのだが肉体強化+身体強化のコンボは強力でよく府抜けた護衛達を滅多打ちにしている

そんでもってシスターシャッハはよい好敵手であるらしく会うたびに模擬戦を繰り返している………今のところ五分五分だという

 

ま、色々と難ありだがちゃんとした正義感は持ってるし悪い奴じゃない、実力も充分と言う事で

てかやっぱ、筋肉男と暴力シスター、まさに気が合う二人だ

 

「ロッサはどうしてるんだ?この頃は会わないんだけど」

 

「ロッサは色々と世界を飛び回ってるとか……何だか凄く忙しい……というか、詳しくは教えてもらってないんだけど凄く厄介な事だとかで……確か名前は……エ、エ……?」

 

「そっか」

 

あのロッサが厄介と言うんだから相当な物なんだろう

危ない事に巻き込まれてなければいいんだが

 

「ロッサならそのうちひょっこり帰って来ますよ、あ、このクッキーホントに美味しい」

 

「あんまりガッツくとまた太るわよ?シャッハ、最近二キロ太ったんだから」

 

「なんで知ってるんですか!!」

 

予言じゃねーの?

解読する前にそれがどう言った予言なのかは分からないからな、解読してみないとそれがしょうもない物なのか重要な物なのかが全くわからない

 

「あ、ケントさん、予言の事なのですが……数年前に管理局システムの崩壊が書かれた文と……解読出来ていない予言があったの、覚えてますか?」

 

「ん?そういえばあったな」

 

今の今まで全く触れられていなかったから忘れてた

て、あれはなんだったんだ?

 

「あれなのですが……かなり高度な文章で、解読にはまだ時間がかかります、ですが……あの予言がこれから起きるものなのと……ケントさん、貴方について記されていると言う事が、ハッキリしました」

 

「俺?」

 

はて、シャッハの事については半分冗談だったが予言が『個人』の事について語るのか?

俺自身がそこまで大層な存在では無い気がするのだが

 

「解析は忙しているのですが、何分古代ベルカの言葉とはまた違う字体で書かれた文章もあって……時間はかなりかかるかと」

 

「ん~、まぁ、またわかったら教えて」

 

それが重大な事について書かれているのかは分からないわけだし

 

「古代ベルカ以外の文字で書かれた事なんか一度も無かった事なんですが、明らかに異例です」

 

「だよな、まぁ前向きに行こ、うん、それがいい」

 

未来の事なんて元から分からないわけだしな

何かがあるかもしれない……程度に考えておこ

 

「おっ、もう最終下校時間かよ、今日はこの辺で帰るわ、お茶、ありがとな」

 

「あ、いえ、こちらこそお菓子ありがとうございました」

 

残ったクッキーはシャッハに渡す、帰ってがっつくなよ?

部屋を出て別れを告げる、時期は夏、まだ太陽は登っている

 

それにしても予言か、何なんだろうな、大きな事件としては後Forceを残すのみだし……あまり考えても答えは出ないよな

 

溜息をついて住宅街を歩く、今日はなのはが早いんだったか?

現役を退いたから比較的帰るの早くなったんだよな、フェイトは相変わらずだけど

 

俺としてはずっといて欲しいぐらいなのだが、それは我儘だろう

ネリアは結構忙しいらしいし、絶賛ニートなのは俺だけかよ

 

ふと立ち止まる、今いる場所は帰路にある小さな公園

 

………彼女って今は初等科なんだね、その制服にはなぜか新鮮さがあるよ

 

「あ、あの」

 

「?」

 

目の前で直立不動、真っ直ぐにそのオッドアイで見つめてくるその瞳

 

あ~、うん、この頃からストリートファイターはしてないと思うけど……うん

 

「St.ヒルデ魔法学院初等科五年、アインハルト・ストラトスです!!」

 

「…………」

 

「今日の戦い、見てました!!あの、一度だけ……お手合わせお願いします!!」

 

 

あ~、なんでこうなんだろ

 

 




St.ヒルデ魔法学院が初等科は五年まで、中等科は三年までと『夜の魔王』さんから教えていただきました
修正しました、ありがとうございましたm(_ _)m


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覇王っ子


展開が早すぎるのが中々なおりません(−_−;)




さて、この子の事について感想を述べるとするなら……良かった、うん、ホントに

 

いや、原作同様通り魔なんてされてたらこの子ホント危なかったよ、社会的にも物理的にも

恐らく、いや、絶対に軽く探してみれば今でも監視はあるからね、コルテットの

 

当然今の状況も把握しているはず、いきなり問答無用に殴りかかってきたりしたらヤバかった

 

それに関しては……ちゃんと向こうも把握しているみたいだし

 

まず今も向こうは背筋伸ばしてずっと目を見てきている、戦闘体制に入っていない

 

それにまず自分で『St.ヒルデ魔法学院』の生徒だと名乗った、通り魔の時の様にバレても問題ないと言う事

つまり、知ってはいたけどいつもの俺の暇つぶしと言う名の戦闘を見ていた

で、自分で言うのもなんだがある程度強いとわかっていても剣士だったから関係ない、しかし今日はデバイス不使用の拳、興味が出た

 

ん~、整理すると

 

アインハルトちゃんは俺がコルテットの人間だと言う事を知っている

 

いつも俺の暇つぶしを見ていたが剣士には興味なし

 

だけど拳もいける

 

戦いたい

 

だけど迂闊には手は出せない

 

だったら頼めばいいじゃない←今ここ

 

 

「ん~、アインハルトちゃんだっけ?俺がわざわざあそこに行って戦ってるのはネリアを欲しいとかいう男子諸君を制裁しに行っているのであってね、鍛錬やらそんな目的じゃなくて」

 

「だったら私が勝ったらネリアさんという人を貰います」

 

どうしてそうなる

 

「なので、お手合わせお願いします!!」

 

バッ、と頭を下げるアインハルト

あー、んー、けどな……なんというか

彼女が望んでるのは格闘技による手合わせだろ?俺には女の子を殴る趣味はないし……てかしたくないし

けど手を抜くのはスポーツマンシップとしてそれはどうか……この子の願いにも答えてやれないし

んー、んー、弾く受け流すの動作なら大丈夫か……八極拳で

けど、それが通じる相手か?

 

「………一回だけだぞ?制限時間は十分、それまで思う存分来たらいい」

 

「ありがとうございます!!」

 

また頭を下げるアインハルトちゃん、こちらは弾く受け流すの動作のみなので勝つのは難しいだろう、それじゃあ多分延々とこの子は打ち込んでくる

だから制限時間、十分間だけ

まぁ一対一の戦闘で十分はかなり長い方だけど、それを知って彼女も承諾してくれたし

 

「防護服の着用をお願いします」

 

「着せたければ実力でしてみろ」

 

「…………武装形態」

 

彼女の体が光に包まれる、大人モード

術式を公開したからと言って早々マネ出来る魔法じゃないんだよな、あれ

それだけ頭がいいってことだよな

 

現れたのは一回り大きくなったアインハルトちゃん……一言で表そう、エロい

 

(盛り過ぎだろ、あれ……格闘型であれって男子にとっては眼福以外何ものでもねーぞ)

 

「覇王流、アインハルト・ストラトス」

 

女性にしか使えない戦闘兵器を思い出した俺は悪くない

あとなんだかんだ言って目が行ったのは最初だけで今は平常心、だってフェイトのと比べたら……ねぇ?

いや、負けず劣らずなんだけど

 

「参ります!!」

 

「っ!?」

 

ちょっ、これって!?

 

「覇王」

 

「嘘だろ!?」

 

「断空拳!!」

 

ほぼ垂直に、恐らく常人ならば何をされたのかも分からないほどの早さで放たれた必殺の一撃

相手の実力を測るにはまず自分の一番の大技を当てるべき、聞いた事はあるけど……まさかガチでやってくる奴がいたとわよ!!

 

それを俺は、己の直感を使い右腕で受け止めた

いや、受け止めながら受け流した、受け止めているが力を分散させた……といった感じに

原理とか何やらは本人自身が聞きたい

 

「よっ」

 

「くっ」

 

足を弾く

彼女の体が前のめりに倒れ始める、こちらからは全く力は加えていない、ただ自然に、断空の踏み込みによって前に……いかないんだよなぁ、これが

 

「はぁっ!!」

 

足を力強く、前に出す

倒れていた体を戻す勢いを使い、そのまま……アッパー!!

 

「ぐおっ」

 

大きく上半身を反らす

叩き落される前に、離脱!!

大きく後ろに飛ぶ、これ、ホントに十代前半の女子か?

色々な意味で怖いんだが

 

向こうも向こうで一度後退

んー、凄い、いや素直に

俺は『皇帝特権』なるチートがあるおかげで動けてるがあの年であんなに動けない、てか動くなんて無理じゃね?

魔法無し文化で格闘技したら全国でもトップレベルだろうな、それほどまでに洗練された……努力の結晶

多分だけどSt.ヒルデでも学年一位二位ぐらいにはいるだろ、優等生だな

 

ホントに凄い……尊敬する

 

でも……俺の知り合い?にはもっと速くて、もっと攻撃が重たい筋肉馬鹿がいる

あいつと比べたら駄目なんだろうが、まだマシだ

 

それでも十分間、バリアジャケット無しでよけ続けるのは難しいかも、ヒヤヒヤするし

 

………よし

 

向こうが動く、今度は体制を小さくして、先ほど程スピードは無いがその分慎重

ジョブのような攻撃、一発一発が細かい

それを平手で外に弾く、それの繰り返し

最初の様な決定打はない、これではジリ貧

だからこそ……あえて『隙をつくった』

ほんの一瞬、素人ならば見極めきれない瞬間

それをアインハルトは見逃さない、その一瞬に気づき……右での大きなストレート

 

この子、恐らく本物の『強者』と戦ったことは少ないんだろう

今のスキ、シグナムならば『意図的に作りだされた罠』だと見破って打ち込んでは来なかっただろう

経験の差、覇王の記憶を受け継いでいるとはしても、それは記憶の他にはならない、リアルと知識はまた違う

 

意図的に自分で作り出した罠だ、放たれた拳を容易に避ける

 

右腕を掴み……思い切り引く

そしてそのまま……

 

「あっ!?」

 

「よっと」

 

投げ、地面に伏せさせる

顔面スレスレ、当たるか当たらないかぐらいの距離まで放った手刀……うん

 

「俺の、勝ちだな」

 

「グッ、まだ、です」

 

起き上がろうとした彼女の肩を押さえつける

ったく

 

「この体制から逃れる術はあるの?この手刀、リアルで振り下ろされてたら命もう無いんだよ?」

 

「…………」

 

命やら何やらはこの子にとっては人一倍説得力がある

戦地でなら見逃されているものだからな、今の状況は

 

「…………私の、負けです」

 

「よろしい」

 

悔しそうに呟く

痛みは無い様に頑張ったんだけど………大丈夫か?

バリアジャケットもあるが、一応軽く検査しとくか、女の子に怪我とか負わしてたら洒落になんないし

 

彼女の肩から手を離そうとした瞬間……ドサッと、何かが落ちる音がした

 

………買い物袋、というかビニール袋

落とした主は見慣れた顔、てか同じ家の住人

 

「あ、おかえり、フェイト」

 

そう言えば俺も帰宅途中だったんだよな、ここも帰り道にある公園だし

なのはが早いのは聞いていたがフェイトも早く終わったのか?

 

それはそうと……何故そんなに震えてる

 

「え、あ、な、何してるの?」

 

「なにしてるって」

 

手合わせだけど、でもって今終わった所だけど?

 

………まて、少し落ち着け、今の体制、大人モードのアインハルトは地面に上を向いて倒れていて……俺はその肩を地面に押さえつけている

当然手刀と押さえつける為にしゃがんで馬乗りになって……馬乗りになって?

 

………これ、客観的に見たら俺がアインハルト(大人モード)を押し倒して押さえつけてるみたいな事にならないか?

 

「あの……そろそろ離していただけると助かるのですが」

 

「え、あ、わ、悪い」

 

バッと手を離す、パッパッと砂を払うアインハルト……

 

「あ、ケントって、そういう子が趣味だったんだ……ご、ごめんね?邪魔しちゃって」

 

「いや、フェイト!?」

 

「わ、私先に帰っとくね、じゃ、じゃあ後でね」

 

「ちょっ、誤解、誤解だって!!」

 

 

あーもう、なんでこうなるのかな!!

 

 

 



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悲願

「いや、だからだな、フェイトも俺がSt.ヒルデで学生と戦ってるの知ってるだろ?それに挑まれたんだって」

 

「ふぅーん、女の子に」

 

「女の子にだよ」

 

なのでそのゴミを見るような目は精神的にキツイのでやめてくれませんでしょうか

 

「で、ケントは女の子に対して殴りかかったってわけだ……サイテーだね」

 

「グハッ!!」

 

俺に9999のダメージ

ケントは目の前が真っ白になった

 

「怪我はしてないみたいだね、ケント君に変な事されなかった?」

 

「ありがとうございます、大丈夫です……どこにも痛みはありません」

 

向こうはいいよな、ホノボノしてて

そのホノボノをもうちょっとこっちに欲しい

 

「………アインハルトちゃん、ホントーに何もされなかった!?」

 

「はい、逆に……手を抜かれたくらいでしたから」

 

フェイトがもう一度念入りに確認する

いやね、いくら俺でもヴィヴィオとそう変わらない年の子に手を出したりしません、いや、大人モードは少し危なかったけど……駄目だ駄目だ、煩悩退散

てかアインハルト、手を抜かれたって分かったのか?

 

「はい、力の差が、ありすぎました」

 

いや、しゃーないだろ

 

アインハルトもかなり強いがそれでも十分前半の学生、ユーリやら戦闘機人やら筋肉ダルマなどの奴らと戦ってきた俺とは明らかに年期が違う

原作でのプライムマッチでも大人組にはリミッターが付いていたっていうのもあるしな、生まれつきチートスペックでも無い限りは早々に差は埋まらん

てか埋まってたら今までの俺ってなんだよって話

 

てかあれでもスゲーと思うしな、俺とアインハルトが同い年だったら結構いい勝負してると思う、十歳俺、皇帝特権有りで

 

「世界は広いです、自らの強さを証明しようとしていましたが……これ程強い方がいると分かった今では、勝てる様になるまで鍛錬あるのみです」

 

「え、あ、ああ、そうだな」

 

…………あれ?今の俺ってアインハルトの通り魔フラグへし折った?

今はヴィヴィオが近くの訓練場に行っているためいないのだがフェイトやなのはと会ってる時点でアウトだしな

………どうしよ

 

「ケント、話を反らしたら駄目だよ」

 

「あ、うん、悪い」

 

相変わらずそのジト目ですか

 

「まぁまぁお姉様、そこら辺で許してあげて?お兄様はそう簡単に女の子に手を出す男の子じゃないから」

 

「おいネリア、いつからいた」

 

「帰ってきたら修羅場だったから気配消してみたよー」

 

アサシンだな、てか修羅場って何だよ修羅場って

 

「それにしてもこの家って美女率高いよね~、私も含めて、この子もヴィヴィオも大きくなったら相当美人なんだろーね」

 

私も含めてって、まぁ否定はしないけど

俺は入れるなよ?『剣姫』とか子供時代に言われてたけど俺は男だからな?

 

「もぅ、今回は許すけど女の子に手を出したら駄目だよ?特に誤解されるような事はしない!!」

 

「りょ、了解」

 

ここは素直に従っておく

手を出すって、俺はそんなに腰の軽い男じゃねぇよ

 

「ヴィヴィオももうすぐ帰って来るし、アインハルトちゃんも晩御飯食べて行く?」

 

「いえ大丈夫です。歩いて帰ります」

 

そうだな、そうしてくれ

ここでヴィヴィオに会われるととてつもなく不味い気がする

 

「もう遅いからね~、お兄様とお姉様で送って行ったら~、夜は危ないぞ~」

 

なぜ二人で、片方いれば殆ど大丈夫だぞ?

 

「ここまで連れてきたお兄様はちゃんとアインハルトちゃんの安全を保証してあげないといけないし、お姉様はお兄様の監視だね~」

 

「あ、うん、夜は危ないからね!!」

 

だから俺はそんなに軽い男じゃないって

 

「それにしても覇王か~、変な因果があるもんだね~」

 

「なにニヤニヤしてんだよ」

 

「なにも~」

 

ネリアは気づいてるだろうな、ヴィヴィオと彼女の関係を

だからこそややこしいんだよ

 

「気をつけてね、夜は危ないから」

 

「なんだよホント」

 

ずっとニヤニヤするネリア、何考えてんのか……

 

取り合えずフェイトとアインハルトと家を出る、夜っていってもまだ七時ぐらい、暗くなり始める時間

この時間なら普通に学生歩いてるけどな、まぁいいか

 

アインハルトの歩く後ろについていく、大体どれくらいの距離なんだろうな、St.ヒルデだからそう遠くはない筈だし

 

「そういえばケントに模擬戦申し込んだのはアインハルトちゃんから……だったよね、えっと、その、女の子に興味があるわけでも無さそうだし……どうして戦いたい、って思ったのかな?」

 

そういや俺は知っているから聞かなかったが問い詰めてないよな、明らかに不自然だ

女の子に興味があるかないかは……今はノーカンと言う事で、無いと断言出来ないのが恐ろしい

 

で、アインハルトが求めてるのが『覇王の悲願』だったか?

正直俺にはよく分からん、原作でも『?』といった感じだったし

聖王を守りたかったのか、倒したかったのか

どこまで強くなれば満足するのか………正直言って目的がハッキリとしていない気がする

初代覇王様の記憶によって己とご先祖様、いわば他人をごっちゃにしている少女、もっといえば『自分自身が見えていない』

『クラウスが作り上げた覇王流が弱くなんかないと証明すること』、とかも話していた気もするし『守るべきもの、それを失わないための本当の強さ』とも言っていたが今のアインハルトに『守るべきもの』があるのかどうか

そしてそれは聖王に勝つと言う事だけで手に入れる事が出来るのか

倒したいのか守りたいのか証明したいのか……まぁ俺なんかに分かる筈のない事なのかもしれないけど

 

「………己の強さを、確かめたかったからです」

 

戦いを挑んだ理由とすればそれが妥当か

本物の『強者』と立ち会える機会なんて滅多にないことだし、サンドロスなら喜んで相手をしてくれただろうが今はもういないし

それを考えれば俺という存在はよく学校に来ていて戦ってるお手頃物件だったわけね

 

「それに、ケントさんを見ていると……オリヴィエの姿を思い出します」

 

「オリヴィエってベルカの聖王だよね……見たことあるの?」

 

「記憶で……」

 

まぁ普通は気づかないよな、ヴィヴィオと同じ様なオッドアイだけどすぐに『覇王だ』とは気づけない

そう考えるとネリア凄え

 

てかやっぱりお前も思うよな、オリヴィエとセイバーが似てるっていうの

俺も最初感じたよ、セイバーキターみたいな感じで

特に後ろのお団子なんてそっくり、目が一緒だったら違和感ないんじゃないか?

 

「悪いが俺は聖王の家系でも何でもないからな」

 

「はい、目で分かりました」

 

あっそ

聖王について聞いて来ないって事はまだヴィヴィオの存在について知らないか……あれは局や教会でもトップシークレット、原作ではよく情報を手に入れたもんだ

 

「あの、またお手合わせお願い出来ますか?学校には、満足のいく相手がいないので」

 

「ん、いいぞ、男子共の駆除が終わった後くらいにしたければ来たらいい」

 

「ありがとうございます」

 

暫く付き合ってやればいいだろ、目標を見つければ見える世界も違ってくると思うし

でもどうするか、これじゃあ原作通りには進まない……どうにでもなるか

もとより原作とここではまた違う、リアルと二次元を比べる事自体が間違ってる

この子が覇王でヴィヴィオが聖王である限りお互い引かれ合う運命にあるだろうしな

 

そうこう言っている内に家にたどり着き、ぺこりと頭を下げて、お礼を言われてから彼女と別れる

 

来た道を引き返す………あ、二人きりじゃん

 

「こうやって二人だけになるのって、久しぶりだね」

 

「そうだな、フェイトは忙しいしな、少しぐらいゆっくりしたらいいのに」

 

いつかワーカーホリックで倒れるぞ

一度なのはみたいに前線から引いてしばらく休めばいいのにな

 

「あはは、でもやらないといけないことは一杯あるからね、もう少し頑張るよ」

 

「無理すんなよ」

 

「うん」

 

並んで歩く、二年間の賜物、最初みたいな動揺はもうない

 

「………ケント、アインハルトちゃんは……なにを求めてるんだろうね」

 

「どうしたいきなり」

 

強さを確かめたかったって言ってたじゃん

 

「大人モード、デバイスに組み込んであるプログラムを使うならまだしもあの子はデバイスを持ってなかった。あれって凄く難しいんでしょ?

それを習得して……それに、目が違ってたし」

 

「目、ね」

 

「うん」

 

ま、それは彼女にしかわからないんだろうけど

 

「………あ、あそこのシュークリーム買って帰ろ、みんな喜ぶよ!!」

 

「ネリアの分考えたら財布がパーになるが……まぁいいか」

 

フェイトに手を握られて小走りで見せに向かう

 

 

………もしかしたら、何かを守るための力、失わないための力が欲しいというのは……みんなが思っている本質的な事なのかもしれないな

 

俺は………今の幸せをこの手で守ろう

 

 




正直に言うと作者もアインハルトの目的をあまり理解出来ていません

力が無かったせいで救えなかった
だから大切な物を守れる力が欲しい、覇王流が弱くないと証明したい

『ヴィヴィオ』という聖王の複製体がいたおかげで言えますが、ヴィヴィオはいなかった可能性の方が高いです
それを分かってて通り魔をしていましたが一体彼女は『誰に』『どの様にして』強さを証明させるつもりだったのでしょうか?
己よりも弱い相手を打ち負かした所で『強さの証明』にはなりませんし己よりも強い相手が現れ、鍛錬を重ね再戦し勝ったとしてもそれを認めてくれるのは覇王も
聖王も関係ない赤の他人一人

ヴィヴィオがいるからといってどのようにすれば覇王流の強さの証明と悲願の達成に繋がるのか、それが達成したと言えるのか、自分には分かりません

まぁ個人の意見ですので、国語力が低い作者では読み解けていないだけなのかもしれませんしね

最後のはアインハルトとの開墾で得たケントの決意です
『荒む心』の最後にあった決意と比べると、どれだけケントが変わったのかが分かります


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正直めんどくさい


ネタが思い浮かばなかったので短いです


そこは、どこなのだろうか

 

 

『赤い世界』

 

 

誰もいない

 

自分だけ

 

 

『黒い世界』

 

 

多くの涙があった

 

多くの絶望があった

 

それでもやめなかった

 

 

『白い世界』

 

 

繰り返された誤ち

 

なんにもない

 

全てが消えた

 

 

もう涙など枯れ果てた

 

声など枯れ果てた

 

どうしよもない世界

 

そこ中を、一人、歩く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「寝覚め悪りぃ」

 

朝っぱらから何だよ一体

 

 

 

 

 

 

「あ、遅かったね、ケント」

 

「ん、ああ」

 

まだ覚醒しきってない頭

時計を見ればもう十時、いつもなら七時くらいに起きる俺にとっては結構遅い方だろう

髪はボサボサ、手入れするのはめんどくさいが切ると言ったら皆から反対されるので頑張っている。

声をかけてくれたフェイトは黒色の服にエプロン姿、相変わらず可愛いのは言うまでもない

 

今日は……休みだったか?

なのはは局に、ヴィヴィオは学校に、ネリアはコルテットに、二人だけか

フェイトがトーストを焼いてくれている様なのでお言葉に甘えて作ってもらう

冷蔵庫の中から牛乳、今でも背は伸ばす為に日々奮闘中

ふわぁとあくびを一つ、椅子に座ってボーと待つ………

 

で、目の前には我が物顔で新聞を開き、湯気を立てるコーヒーを飲む見知った顔……うん

 

「仕事しろ」

 

「君にだけは言われたくない」

 

それを言われると酷く傷つく

紐じゃないし

 

「休みか?んじゃ家族サービスしろ、子供と遊んでやれ」

 

「長期休暇だ」

 

「へぇ」

 

だからってここに来る余裕があるんだ

………何しに来た

 

「妹の顔を見に来た以外に理由なんてあるかい?」

 

「シスコン」

 

「それとこれとはまた別だ」

 

別なんだ、あ~、まだ覚醒しきってないから話が続かねぇ

 

「それにエイミィも来てる、心配しなくていい」

 

「俺が寝ている間に何があった」

 

「サプライズの方がいいだろ?」

 

いや、一応連絡してくれると助かった

 

「知らなかったのはケントだけだよ」

 

「教えてくれよフェイト……無茶苦茶パジャマなんだけど」

 

ライオン柄の

 

「お兄ちゃんだから大丈夫だよ、髪ボサボサだね、後でといてあげようか?」

 

「いいのか?」

 

「ケントの髪綺麗だもんね」

 

お前には負ける、断る理由など毛ほどもないので素直に頼む

ああ、癒される

さて………

 

「クロノ、ガチで何しに来た?」

 

「……………まぁ後でだ、事件関連とかじゃないから安心してくれ」

 

そうなんだ

 

目の前のトーストにかぶりつく、可愛い、エプロンのフェイトが可愛い

 

「…………後で一戦交えるか?」

 

どうしてそうなる

 

 

 

 

 

 

 

 

「本局の警備システムの全面的な改良?」

 

「ああ、本局の防衛システム、警備システム、サーバーから全てを取り替えるっていう意見があってね、二三年でしてもらいたいんだけど……出来るか?」

 

商談かよ

髪をといてもらいながら話を聞く、むっちゃ気持ちいい

あれだな、フェイトは自分の髪やヴィヴィオの髪もといてるからな、俺くらいの長さなら手馴れたもんか

にしても本局全てのシステムを取っ替えとか、大きく出たよな

予算とか半端ないぞ

てかそういう話はネリアやら他の上層部に頼んで欲しいところだ

 

「JS事件の事を振り返って今のままでは駄目だって意見が局内でも多いんだ、だから全面的な一斉改装

ああ、コルテットの方には局から話は通すんだけど、僕がここに来た理由はこれを踏まえて君個人への頼みだ」

 

なんだよ、改装の為の金でも稼いで欲しいのか?

そんな事はないと思うけど、で、頼みとは

 

「それに伴うメインサーバーの防衛プログラムを、君に組んでほしいと思ってね」

 

「はぁ?」

 

本局のメインサーバーを俺が?

ちょい待て、その道にはその道のプロがいてだな、中途半端に一流になれる俺なんかが作っていい物じゃねーぞ

 

「確かにそうだ、ただあくまでもコルテットは民間の会社に過ぎないからね、技術は最高レベルなんだけどそっちに常に鍵を持たれている……といった状況を作りたくないんだ。

でも局内にコルテットの技術に合ったサーバーを作れる人間はいない、いるとしたら少将の……君だけだ」

 

「少将にそんな事をやらせようとする局もどうにかしてるぞ」

 

一応将官なんだからさ

 

「ちなみに僕の推薦でもある」

 

「ちょっと表出ろ」

 

フェイトが終わったら

 

「しょうがないだろ、一番信用出来る技術者が君ぐらいしかいないんだ」

 

「いや可笑しい、何若干二十代の若者にそんな大役押し付けちゃってんの?」

 

正直めんどくさいし

 

「めんどくさいだけだろ」

 

大当たり

 

「まぁ、ホントに嫌なら無理して頼むつもりもない、いきなりの話だからゆっくり考えてほしい」

 

「はぁ、まぁ考えとくよ」

 

俺一人の問題でもなくなったからな~、うーん

 

「はい、出来たよケント」

 

「ありがと、助かった」

 

「いえいえ、どういたしまして」

 

フェイトも聞いていたけど、良かったのか?

 

「ん?別に大丈夫だが」

 

「あ、ああ」

 

まぁ、いいのか?

 

「そういやエイミィさんは?来てるって言ってたけど」

 

「なのは達と一緒に買い物行ったよ、ヴィヴィオも今日はお休みだし」

 

あれ?そうだっけ?

………今日は祝日か

 

「……………さて、僕は少し散歩でもしてくるか」

 

「は?なんでいきなり」

 

「なに、少し空気を読んだだけだよ、すまなかったな」

 

何が

 

「あとケント、僕は君ならOKを出そう、母さんも絶対反対しない」

 

「は?」

 

だから何が

 

「そうだな、今からエイミィ達と合流するのも悪くないか……暫く帰って来ないから安心してくれ」

 

「えっと、お兄ちゃん?」

 

いやだから………

 

「勿論、OKの条件はケントがそれだけの『結果』を出してくれたらだが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロノに何時の間にか俺の気持ちが知られてしまっている……あれかな、なんか親友に弱みを握られた感じ

さっきからフェイトは動かないし……そろそろエプロン取ったらどうだ?パジャマな俺が言えた事じゃないけど

 

「はうはう……はぅ」

 

可愛い、異論は認めん

 

いつまでもパジャマはどうかと思うので着替える為に立ち上がる、軽い服装でいいか

にしてもライオン柄、いいよな、なんというか……ついこの前本能で買ってしまったが

 

「ケ、ケント!!」

 

「ん?」

 

肩を掴まれる

お、さっきの状態から元に戻ったか

 

「さっきの話、受けよう!!ケントなら出来るよ!!」

 

「え、いきなり」

 

「大丈夫!!私も手伝うよ!!マッサージとか耳かきとか、私に出来るお手伝いだったら何でもするよ!!」

 

ちょっ、なんでいきなりそんな真剣に

あとマッサージも耳かきもして下さい、無茶苦茶して欲しいです

 

「ね、みんなの為に頑張ろう!!」

 

「え、あ、ああ、うん」

 

凄い剣幕、顔近い

………綺麗な目してんな

てかそんなに言われたら断れない

 

「うんうん、一緒に頑張ろ!!」

 

「あ、はい」

 

なんだかんだで作る事に

早くて二年か、めんどくさそう

 

「んじゃマッサージお願いしようかな」

 

「はうっ!!」

 

いや、やってくれるって言ったじゃん

 

 




ちなみにクロノが理解したのはケントではなくフェイトの方です。
ケントが起きて来る前に話をしていたら勘付いたという感じです。



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悩み

 

 

 

「手合わせ?」

 

「そうそう、ケントさんにも見てもらいたいと思って!!」

 

フリルのついたミニスカートにフェイトと同じ様な金髪、赤と緑のオッドアイ少女、ヴィヴィオが手を広げてアピールしてくる

 

学校から帰って来てなんだと思ったらいきなり「手合わせしてほしい」だ、お前は覇王っ子と同じか聖王っ子

 

あと決してケント『パパ』ではない、ここ数年一緒に暮らしているがStsの時に多く接触してなかった事もあって今でも俺はケントさん

 

「いきなりどうした、それに軽い手合わせぐらいだったらいつでもしてやるぞ、なんなら今から夕飯までに一度するか?」

 

「本格的にしたいからいつもの公民館で!!」

 

…………ヴィヴィオの目的が見えて来た

 

「めんどくさい」

 

「お願ーい!!」

 

だって公民館とかだったらアイツらもいるんだろ?

なのはとかフェイトはもう綺麗サッパリ許してるが俺としては好きになれないからな

 

「そうじゃなきゃ手合わせは無し、もうすぐご飯だから手、洗っとけよ」

 

「ブーブー」

 

文句言っても意味ないぞ

 

それはともかく、今回のヴィヴィオの目的は十中八九俺と戦闘機人、つまりはナカジマ家の人々との仲を良くする事だろう

 

JS事件の後、比較的に捜査に協力的な人間と捜査に協力的でない人間、半々に別れた

大概の奴らは捜査に協力、事件の中心人物がスカリエッティである事と彼女達が『娘』である事から『不本意での犯行』だとしてフェイト達の尽力、また管理局の人手不足などの理由もあり僅かな日数の服役で釈放、今ではナカジマ家に養子に引き取られた者、聖王教会で働く者など様々だ

勿論、釈放時に俺らのところにもキチンとした謝罪は来た、ヴィヴィオの件、コルテット襲撃の件、キチンと、丁寧に

彼女達に罪は無いのは分かっている。作られた存在である彼女達に親へ反対する権利などはない

彼女達が持つスキルによって管理局、全管理世界の益になるのも分かる……ただ、罪を犯した事は事実だ

実験動物とされた人、大怪我を負った人

大切な物を失った人、事件によって破産した人

人生を狂わされた人は多い、ゼストやサンドロス、ナカジマ家だってそうだ

 

物を壊し、傷つけ、殺した

彼女達の中にはそれら全てをした奴だっている。

俺も一度大怪我を負わされたしたった一人の家族であるネリアも危なかった

 

それらを踏まえて『故意では無い為』や『管理局が人手不足な為』で納得する人間は少ない

 

残念な事ながら、俺という存在はそこまで出来上がった人間ではない、スバルやギンガの様に、母親を殺した人間を妹として迎えたりするような事など言語道断に近い

 

子供の様な思想かもしれない、俺以上に大怪我を負ったなのはも許しているし、俺以上に酷い目に合わされたヴィヴィオさえも平気

彼女達に悩まされ続けたはやてだって、同じく悲しい思いをしたフェイトだって

 

怒りでもない、悲しみでもない………言うなれば『嫌悪』

 

彼女達のした事はもう終わった事だ、もう今後一切関係ない

害を与えられる心配もないし今ではヴィヴィオのお姉さん的な立場にもある。

 

それでも、馴れ合いたくない

 

彼女達と話していると自分でも言葉が冷たいのが分かる、無意識に、自然に

 

本当につくづく、自分は小さな人間だ。

 

彼女達もそんな俺には近寄り難いらしく、ヴィヴィオが家に連れて来たりしても話す事は殆どない

 

そんな事を俺はしておいて、一体彼女達に何をしてほしいのだろうか

被害を受けた全ての人々への償い?今以上の謝罪?

いや、そんな事は無理だ、不可能だ

それに、それをしたからと言って何も解決しない

その先にあるのは、一生石を投げ続けられる彼女達のみ

 

何が問題か、やはり今だにこんな感情を持ち続けている俺自身の問題なんだ

子供みたいに駄々をこねているだけの自分をどこかで変えなければいけない、分かっている筈なのにな……

 

「ご飯出来たよ~」

 

「ん、今行く、早く鞄とか置いてこい」

 

「は~い」

 

渋々自室に帰るヴィヴィオ

ごめんな、気持ちの整理はまだつきそうにない

 

食卓につく、今日の当番はなのはなので彼女の手料理だ

ハヤシライス、やっぱり日本人、ミッドじゃこれはないぞ

この家に来てからこうしたなつかしい料理を結構味わえる。どちらかというとミッドの食文化は日本よりも下だからな

 

「今日はフェイトいないのか?」

 

「うん、少しの間局で泊まるんだって」

 

となると仕事ヤバイのか、出来るだけ帰って来れるようにはしているっぽいが時々泊りがけがあるからな……こっちから会いに行ってみるか?

 

「いい匂い!!」

 

「おかわり一杯あるからドンドン食べてね~」

 

ヴィヴィオが食卓につき三人で食べる

やっぱりおいしい、なのはもフェイトもはやても、みんな料理上手だからな

 

食が進む、ちなみに俺のコップには牛乳

日々努力あるのみ

 

「ケント君、ヴィヴィオ、いいお知らせがあります」

 

「いいお知らせ?」

 

「なになに!!」

 

食べている途中になのはが話しをしてくる

いいお知らせ?

 

「フェイトママやはやてちゃん達、色々な人と企画してるんだけどね?ルーテシアちゃんのいる世界、カルナージて知ってるよね?」

 

「うんうん」

 

………何となく察しがついた

そういやあれって原作の前にもしてるんだよな、すっかり忘れてた

 

「そこでママ達考えました!!みんなで一緒にそこで旅行やトレーニングが出来たらいいなって!!」

 

そういや前回にははやて達もいるとかも言ってたな、壮絶なる人数になるんじゃねーか?

 

「題して、『春の大自然旅行ツアー&ルーテシアもいっしょにみんなでオフトレーニング!!』」

 

「いえーい!!」

 

「題名長くね?」

 

足踏まれた、痛いです

 

「時期はヴィヴィオのテストが終わってからにしようかと思ってるんだ。お友達も誘っていいよ」

 

「うん、コロナ誘ってみるね!!」

 

そういやこの時期リオとは友達になってなかったんだっけか?

うわっ、ホントに凄まじい人数

 

「ケント君はネリアちゃんと……あと、あの子、ホラ、この前来てた子」

 

………えっ、マジで?

 

「えっと、アインハルトちゃん!!彼女も誘ってあげてほしいな!!」

 

あの、なのはさん……まだ原作一年前なのですが?

 




なのは、フェイト、ヴィヴィオ、ケント、ネリア、はやて、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、リイン、アギト、スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、ノーヴェ、アインハルト、コロナ、ルーテシア、かなりの人数になりそうですね

あと本編、この頃凄く短いorz


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参加の方向で

この頃ホントに一話が短い、なんとかしなければ……




「と言うわけで一応誘っておいた、来るかこないかは自由だ」

 

「凄く、唐突ですね」

 

バシッ、と言う音が体育館の中に響き渡る

彼女が拳を引く……来るか?

 

「覇王」

 

「まだ甘い」

 

「えっ、キャッ!?」

 

足をかけた事によって体の重心が大きく傾き、そのまま尻餅

まだ未完成って事か、技を出す前のモーションが大き過ぎる為に残念ながらそれ相応の手練れにはその隙を瞬時につかれてしまう

そうだな、なのはならば今の一瞬でバインド仕掛けて砲撃でドーンみたいな?

 

「ま、まだまだ」

 

「そう言ってかれこれ三十分、近距離の戦闘ならビックリするくらい長い時間だ、今日はここまで」

 

「うっ、はい」

 

しぶしぶと言った感じ

体から流れ出る汗をタオルで拭く、となりで休む彼女に向かってスポドリを投げ渡す

いや、小学生で三十分の近距離戦闘は凄えよ、それで物足りないって言うんだからこの子は……

それでもぶっ続け三十分はかなり堪えたらしく荒い息をして体を落ち着かせる彼女、取り敢えず汗拭け

 

「さっきの話はまぁ、ゆっくり考えればいい、突然だし周りは有名人だらけで緊張するかもしんないし」

 

「はい、確かに嬉しいお誘いなのですが、私が求めている『強さ』は見つかりそうにないので」

 

うん、俺も知らん

結局何が欲しいんだろうね、この子

そんな事はどうでもいいか

 

俺が今彼女、アインハルトに話しているのはなのはが企画したカルナージでのオフトレの話

 

いや、だって誘わない理由はないからな、なのは達に『原作~』とか言っても通じないし俺が露骨に嫌がったりでもしたら理由を問い詰められるだろうしまぁ問題ないだろ、うん、変な方向に進むわけじゃねぇ

 

「ケントさんはそこに行くのですか?」

 

「そりゃ行くよ、行かない理由がないだろ?」

 

なのは達に嫌われていたら行けないと思うが

………嫌われてないよな?

 

「お前に対するメリットといえば、そうだな、経験が詰めるって事と本当に強い人達と戦えるって事か?お前が足りない物は圧倒的に経験だからな」

 

「経験不足?」

 

うん

 

「俺の予想だけどお前、同じ学年に競い合えるライバル~、的な奴いねぇだろ?多分実戦なら学年トップ、だからこそ俺に戦いを挑んで来た」

 

「はい、こう言ってしまっては失礼なのですが、皆さん弱くて」

 

そりゃそうだ

 

「で、今回参加する奴らはオーバーSや現役の教導官や執務官、今では珍しい古代ベルカ式に融合機だっている。

その中に混じれる機会なんて一生に一度もねーぞ、普通なら金取るレベルだ」

 

これはガチ、あのレベルの人間にもなれば自分達の特訓を見せたり加わらせたりするだけで金が取れる。俺はそんな事する気一切無いが

 

「古代ベルカ式?」

 

「ああ、本物の騎士、中々お目にかかれないレベルの人間ばかりだ」

 

そういやシグナム達の事に関しては引き継いでるのかな?記憶

 

「……少し、考えてみます」

 

「ん、それがいい」

 

無理して来いとも言わないしな

それでも、彼女にとっては広い世界を一度見た方がいいと思うが

 

「見つけた」

 

「ん?」

 

振り向くとフェイト……仕事は休みか?

 

「家でやらなきゃいけない仕事はあるんだけどね、急ぎでもないし会いに来て見たんだ」

 

なるへそ

 

「久しぶりだね、アインハルト」

 

「えっと、お久しぶりです」

 

ぺこりと頭を下げるアインハルト

ちょっとオドオドしてるな、一度会っただけのフェイトだから名前忘れてるんだろう

 

「どう?訓練は順調?」

 

「ぼちぼちかな、いい筋行ってるけどまだまだ発展途上」

 

決して体格やら何やらではない

アインハルトは発展したら凄いからね

 

「それにしてもよくここだって分かったな、学校内も広いのに」

 

「場所は何度かケントと一緒に来てるから覚えたよ、それにいるとしたら大体体育館だしね」

 

なるほどなるほど、初等科中等科まで通ってて学校内覚えられなかったカリムに是非聞かせたいものだ

シャッハからまだ教会内でも迷子たななると聞いてるし、方向音痴は治らないだろうな

 

「それで、あの子達は?」

 

「自らの恋に全てをかけた者の末路」

 

指差した方向にはグッタリしている男子諸君約三十人、まだ諦めてない奴や俺の弱点を探ろうと何やらメモする奴など………大半の目がフェイトに行っているのだが

 

「えっと、人気者……なのかな?」

 

「それとこれとはまた違うと思う」

 

少なくとも倒すべき宿敵じゃねーか?

 

「それで、アインハルトにあの話したの?ヴィヴィオに紹介すると喜ぶとおもうんだけどな」

 

「ヴィヴィオ?」

 

アインハルトがヴィヴィオに興味を持った

 

「うん、アインハルトの後輩で私達の子供、ストライクアーツをやり始めたから同じ格闘者同士気が合うんじゃないかな?」

 

「ストライクアーツ……ですか」

 

アインハルトの中でストライクアーツってどんな感じに写ってるのかな

彼女としては覇王流、カイザーアーツが全てだしストライクは趣味でやってる人が殆どだから恐らくいいようには思っていないのかもしれない

 

「えっと、それにお子さんですか?そんなに若いのに……ケントさんとの間に?」

 

「えっ、ち、違うよ!!ヴィヴィオはその、ちょっとした事情があってだね、ケ、ケントとの子供じゃないよ!!」

 

「は、はぁ?」

 

俺もフェイトも二十一だから……ヴィヴィオを産んだ事になれば十一か……今思うと知らない人にとってはかなり複雑な家族構成だよな

あと俺はパパじゃない

 

「そ、それでどうするの!?アインハルトもオフトレ行く?」

 

「少し考えさせてくれだとさ、まぁ知らない人間ばかりだしいきなりだからしゃーない、時間はまだあるしゆっくり決めさせたらいいだろ」

 

そっかと言ってにっこりするフェイト

なんだかなぁ、やっぱりフェイトって『癒されオーラ』的な何かが常時出てるよな……近くにいるだけで癒されるし

 

「シグナムも言ってたよ、覇王流とは珍しい、是非拝見させてもらいたい~て」

 

「シグナムは分からんがザフィーなら頼めば指導とかしてくれるんじゃないか?同じ古代ベルカ同士だからアインハルトの型とかも壊さず指導できるだろうし」

 

犬だけどやる時はやるのです

 

「シグナムって……本局のあの?」

 

「知ってるの、シグナムの事?」

 

「はい、管理局では珍しい古代ベルカの実力者だと」

 

そりゃあ有名人だからな、機動六課関連で名前も売れてるし

 

「そのシグナムに並ぶ実力者が他にもいっぱい来る、さっき言ったザフィーラって奴は古代ベルカ式の打撃系だし」

 

「名前は、最近聞いた事があるような……ないような」

 

てかフェイトの名前をよく覚えてない時点で多分社会の動きとか有名人とかにはあまり興味はないんだろうね

ずっと特訓、凄い学生時代を過ごしそうだ

 

「えっと……」

 

「フェイトだよ」

 

「フェイトさんも、強いのですか?」

 

言わないけど本気出したら今のお前が触れない程に強い

多分模擬戦ではリミッターがつくんだけどさ、ソニックとかついていけないし……ほぼ直感頼り高速転移で頑張るしかない

んでもって一番厄介なのが目の置き場が無い事かな

 

「ケント程じゃないけどね、シグナムとはよく模擬戦してるかな?」

 

「………………」

 

新鮮な感じなんだろうな、こういった『強い人』が身近にいる事が

 

「ケントさん、あの……トレーニング、参加の方向でも大丈夫でしょうか?」

 

「逆に俺がここで断る理由が全くないが?」

 

フェイトも嬉しそうだしな、ここで断ればただの鬼

 

「日にちとか時間とかはこっちで教えるから、いい経験になるさ」

 

「なのはにも報告だね」

 

さて、一年早いがなんとかなるだろ

 

 



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航空船にて

 

「にしてもあれやな~、こんな美少女ばかりのお泊り会に参加出来るケント君には感謝してもらわなあかんな~」

 

「お前、もう少女の年じゃないだろ」

 

足踏まれた、痛いです

 

「いたいけな女の子に対して年齢の事は話したらあかんよ~、私やってまだ『魔法少女』で通るんやから」

 

「自分で言ってて恥ずかしくないのか?」

 

「ごめん、むっちゃ恥ずかしい……魔法少女は流石に無かったわ」

 

だよな

 

そんなこんなでオフトレ当日、流石に人数が多いので次元転移ではなく次元航空船で行く事に、時間としては約四時間の長旅である

アインハルトも結局行く事となり後はヴィヴィオの友達のコロナ、彼女は自分専用のデバイスを持っていない為に恐らく二日目の大規模模擬戦には不参加になるだろう

あ、あとアインハルトについてだがヴィヴィオにえらい興味を示していた、やっぱり目で分かるんだろうな

だからと言って聖王家の人間が現存している方が考えにくい、多分今頃自分の頭の中で試行錯誤してるだろうな……オッドアイ自体も確率が少ないだけであって生まれてこないわけでもないし

ま、そこら辺はアインハルト自身が聞いて来るまで何も言うつもりはない

 

大人組子供組合わせて結構な人数が朝が早かった為に眠っている。で、俺の隣にははやて

男同士と言う事でエリオやザフィー辺りか

 

なと思ってたんだけど……まぁいいや、はやてならもう慣れたし

 

「俺はてっきりはやてはヴィータの隣だと思ってたけど」

 

「なんや~、不服か~?」

 

「いや、全然、むしろはやてみたいな『美少女』と隣になれるなんて光栄だよ」

 

「む、少し嫌味を感じる」

 

美少女なんだろ?

ちなみにヴィータはというとシャマルの隣、ザフィーについてはアインハルトにちょっとした講義的な何かをしている

覇王流と言うわけではないが近距離戦闘の武術派同士、アインハルトに対して上手く指導ができるだろう

ザフィーとアインハルトが戦ったら?そりゃあ百回やって百回ザフィーが勝つだろ……記憶で『戦争』を知った彼女と体で『戦争』を知っているザフィーとでは見えないところで『覚悟』が違うし経験や技量もザフィーが圧倒してる

リミッターがついたらまた変わるけど

また話す時があると思うが『インターミドル』、この試合の上位入賞者であってもなのはやフェイト、俺やシグナムの前では油断しない限り負ける気はしない

 

「そういや八神道場の子供は連れて来なくて良かったのか?いい経験になっただろうに」

 

「ん~、私もそう思ったんやけどヴィータ達からすれば『まだまだそのレベルじゃない』って、現役教導官は厳しいな~」

 

「だな」

 

なのはと並ぶスパルタと聞いてる

その割に子供っぽさが愛される理由なんだとか

 

「そういやケント君、すっごく気になっとったんやけど……背、伸びた?いや、伸ばした?」

 

「………ちょっとだけな、実際は伸びてないけど」

 

「盛りすぎや」

 

「大人モード万歳」

 

現在の俺の身長は170、理想の170代である

リアルは……言いたくない、合法ショタとか言いたくない

前までは167だったのだが僅かに術式を弄って3cm上昇、誰も気づいてないと思ってたんだけどな……

 

「毎日会ってるなのはちゃん達にはまだしも私は分かるで?ちょっと見下された感があったもん」

 

「これ解いたら俺誰からにも見下されるんだけどな、悪いが今の状態は維持させてもらう」

 

大丈夫、これ以上盛る予定はないから

逆に魔力が尽きない限り解くつもりもないけど

 

「男前が更に男前になって」

 

「顔だけだよ顔だけ、それとったら何も残らない」

 

「そんなことあらへんと思うけどな~」

 

所詮特典で貰った顔だけだよ

まぁ前世の時と比べて顔だけもらえたから儲けものだと思うけど、顔普通性格(多分)普通成績普通、いいところも悪いところもない人間だったと思うし……

 

「あとケント君、今私が自分で美少女って言ったみたいに自分で美少年やって認めたよな?」

 

「美少年とは言ってない、なんだかんだでいいとこ無いしな」

 

「また自分の事悲観的に捉えて、ケント君は十分魅力的な男の子やで?それこそどっかのエロゲの主人公みたいな」

 

「それもそれで問題だ」

 

エロゲの主人公って……別に俺はそんなイベント起こしてねーじゃねーか

 

「今回のお泊りでもしかするとラッキースケベとかあるかもしれへんで?」

 

「変なフラグ立てるなよ、悪いけど俺は回収しねーぞ」

 

直感があるのである程度のフラグは避ける事が出来るしな

未来予知に匹敵する直感に死角無し

 

「うにゃーー!!」

 

「へ?キャッ!?」

 

「………………」

 

突然椅子の隙間からはやてを包みこむように腕が伸び……その、胸を鷲掴みにする

目を反らす、男の子には刺激的な光景なのです

 

「やっぱりお姉様のもいいけどここには美乳揃いだね~、そう思うでしょお兄様?」

 

「取り敢えずやめろ、目のやり場がない」

 

隣では軽く喘ぐはやて、やめようとしないのでネリアにチョップを入れておく

ちなみに席を表すと俺の隣にはやて、はやての後ろにネリア、ネリアの隣にフェイトといった感じである

フェイトに関しては……出発直後にリタイアしたらしく疲れて寝ている

 

「いや~、エロゲの主人公に関わらずこういった集まりではよくある事だよ。女の子同士のスキンシップスキンシップ」

 

「お前のは過激すぎだ」

 

限度を知らないからな、屋敷に住んでいた時にあった盗撮やらはやめさせたが……流石にそこはやり過ぎだと本人も自覚してくれたらしくある日いきなり謝罪してきたからな

まぁ、フェイトにとっても身内同然だし全然よかったんだけどさ

 

「あーうー、それにしてもこの頃お兄様強く叩き過ぎじゃない?ネリアの頭はカチ割れそうなのですが」

 

「大袈裟過ぎる、軽く叩いただけだろ」

 

ブーブー言ってるが知らん、はやては……息を整えている。

ネリア、お前………

 

「エッチな本見てると一杯知識って入ってくるんだよ?女の子一人倒すのなんて簡単簡単」

 

「……………」

 

いつ教育を間違えたのだろうか

 

「……大丈夫か?はやて」

 

取り敢えず声をかけてみた、目がトロンとしてる

うわ~、かわええ

 

「大丈夫や、ネリアちゃん、中々ええテクニックしとるやんか」

 

「伝授しようか?」

 

「是非」

 

変な師弟関係が生まれた

 

「あとその、服の乱れ直せ、さっきと同様目のやり場に困る」

 

「ん~、あ、ホンマや」

 

全体的に服装を正すはやて……普通に反応したが恥ずかしくないのか?

 

「ん~、そりゃあ恥ずかしいわ、やけどケント君やったら別に問題ないよ~」

 

「なんだよそれ」

 

「私やって見知らぬ男に自分の体好き好んで見せるような事せえへんで」

 

そりゃそうだろ

いや、でもそれは捉え方によっては知っている相手に対してにはノーガードというわけで……ん?

 

「えへへ、よいしょっと」

 

「ちょっ、はやて」

 

俺の肩に頭を乗せるはやて、ちょっ、はやてっ

 

「ちょっとぐらいええやんか、私もそろそろ眠くなって来たし……頭乗せる場所くらい提供してーな」

 

「………ったく」

 

まぁ、カルナージまであと一時間ちょい、俺も寝るか

 

後でヴィータが不機嫌だったのは、また別の話

 



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逃げました

評価0と評価10が消えただと((((;゚Д゚)))))))




 

「仕事に家庭事情にその他諸々、聞きたい事は山ほどあるけどやっぱりこれですよね!!

………恋は順調?」

 

「いや知らんし」

 

取り敢えずお前は子供組の方でよかったのか?

ん?自分は召喚師だから大丈夫?

いや……キャロとかも訓練行ったぞ?

う~ん、まぁ局員じゃないからいいのか

 

「で、で、順調なんですか!?」

 

「あ~う~、知らん、てか本人に聞くな」

 

そもそもそう言うのは付き合っている状態の人間に聞くものであってだな

 

てなわけで無事にカルナージに到着して荷物を置き、大人組は訓練で子供組は川に~、な感じになったこの頃

俺はキツイ運動など御免なので適当に理由つけて逃げて来たのだが………今気づけば子供組にはノーヴェがいるんじゃね?という考えに至ってどうしようか悩み中

 

そんな一人でいる中いきなりルーテシアからのこの質問、順調かどうかなんか分からんって

てか付き合ってもいないのに順調も何もないだろ………

 

それにしてもホント、人間母親がいるとここまで変わるもんなんだな、ほんの数年前まで彼女が根暗腹黒少女だと話しても誰も信用してくれまい

 

「なぜか今凄くイラッとしました」

 

「ん?」

 

俺並みの直感の持ち主ではないだろうか

 

「みんな行ったぞ?いいのか?」

 

「恋の話を他人に聞かれてもいいんですか?」

 

「これ以上話すことないと思うけど」

 

やっぱり女の子は恋バナが好きなんだな……

 

「ご要望なら夜までに混浴でも作っときましょうか?」

 

「遠慮しとく、あとお前魔導師じゃなくて建築士になれ」

 

夜までって、基本暇人のチカラって凄いな、極めてるじゃねーか

 

「ケントさんに言われたくありません」

 

「俺も暇人か」

 

否定は出来ん

 

「思い切って一歩踏み出さないと、いつまでも平行線なんて面白くないですし」

 

「面白くないって……」

 

う、うーん、ルーテシアからしたら他人事だから言い返せないけど

 

「せっかくの旅行なんだし一発バシーンと決めたらいいですよ、主に夜襲うとか夜襲うとか夜襲うとか夜襲うとか」

 

「お前の頭はどうなってる」

 

腐ってるぞ

 

「でもホント、踏み出さない限り何も進展しないのは事実ですよ!!もっと積極的にならないと!!」

 

「積極的にねぇ」

 

夜襲うは積極的と言うよりアウトだと思うのは俺だけだろうか

 

「てかネリアが何処行ったか知らないか?全く検討つかないんだが」

 

「ネリアさん?多分訓練場の方に行ったと思うけど」

 

「嘘だろ?」

 

て事は大人組でこっちに来てるのは俺だけ?

 

「えっと、そうだと思う」

 

「うー、転移」

 

それは色々マズイ、せめて見学でもいいからしとこ

いや、だって同年代のなのはやフェイト、年下のエリオやその他諸々が頑張ってるのに俺だけ逃げたとかかっこ悪いじゃん?

いや、行ったら見学じゃなくてレバ剣と打ち合う未来が見えてるんだけどさ、なんだって旅行に来て足腰立たなくなるまで頑張らないといけないのかねぇ

 

「転移魔法……今思ったらケントさんってCG(センターガード)以外だったら全部いけたりする?」

 

「基本的にはFA(フロントアタッカー)かGW(ガードウイング)、FB(フルバック)に関しては簡単な治癒魔法しか使えないし援護射撃無理だしな、突っ込む事しか出来ない単直な魔導師だよ」

 

「それでも負けないだけの実力があるじゃないですか」

 

「ん~、そうなの……かなぁ?」

 

まぁ何でも屋ではない事は事実である

 

「座標特定、んじゃ、俺は向こうと合流するな」

 

「引きこもりがどれだけ着いていけるかな~」

 

「言うな、後俺は引きこもりじゃなくてフリーターだ」

 

家の外には出てるから大丈夫……だと思いたい

ん?でもそうだとルーテシアはただの遊び人なんじゃ……

 

「私は特別」

 

「あらそう」

 

んじゃ転移

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃げたよね」

 

「重い荷物背負ったおばあちゃんがいて」

 

「逃げたよね」

 

「この広大な世界で道に迷って」

 

「逃げたよね」

 

「ごめんなさい」

 

ですからそのジト目はやめて下さい、我々の業界ではご褒b……いや、精神的に辛いものがあるのでやめていただけると嬉しいなと

 

そんなわけで転移した後バレないように気配遮断して「元からいたけど気づかなかったの?」作戦を実行しようとしたのだがなのはさんには通用しなかったらしい

なにこの人やべえ、アサシン先生涙目だよ

 

「そうは言ってもぶっちゃけ俺やることないし」

 

「ネリアちゃんだって頑張ってるんだよ、ほらアレ」

 

目を向ける、口からフワフワと何か半透明な物が出ているネリアがいた

フェイトに膝枕されている、こら、俺と代わりなさい

いやまぁ、そんなこと言う勇気なんて無いんだけどさ

 

「ケント君も一応大人なんだからみんなと基礎練しようよ、そこまでたいへんな事してないよ?」

 

「大概メンバーがこの短時間の間で肩で息をしているようにも見えるんだが、はやてなんか治癒魔法かけてもらってるぞ」

 

流石は俺と同類の暇人

なんだろ、そろそろ本気で自分が暇人だという意識に抵抗が無くなってきた

 

体力付けね~、確かに俺に足りない物は体力と筋力なんだけどな、その……しんどいのは嫌いと言うか、皇帝特権を知ってから努力に対して苦手意識持っちまったからな、まぁしないといけないんだけど

 

「そうだね、じゃあケント君はスバル達と混ざってウォールアクトやってみようか、やり方わかる?」

 

「分からん、やってみろって言われたら試行錯誤してやってみるし見本見してくれたら細かい説明はいらないよ、見れば出来る」

 

「うん、じゃあ休憩終わり、それぞれ頑張ろう」

 

ネリアのフワフワとした物がフェイトによって押し込まれはやてがフラフラと立ち上がる

やっぱでもヴォルケン組は健在だな、見ろよあのザフィーの筋肉、カッチカチやで

 

「取り敢えずジャージにでもなるか、転移してきたから持ってきてないし……バリアジャケットで代用するか?」

 

「筋力強化とかは出来るだけ使わないようにね」

 

「了解」

 

適当に術式構成する

ん~、こっちの世界に来てからジャージて着てないな……こんなもんか?

 

展開して装着する、サイズは……ちょっとデカイが大丈夫だろう……ん?

 

「どうしたフェイト?」

 

「えっと……プ○マなんだ」

 

「?」

 

ジャージと言ったらプ○マとかア○ィダスとかが支流なんじゃないのか?

 

「えっと、ケントが地球のジャージだった事にビックリして」

 

「あっ」

 

………えっと

 

「あれだ、その、一度みんなで行っただろ?その時にカッコいいな~て、通行人が来てたからさ」

 

「そ、そうなんだ」

 

そういう事にしておいて下さい

てかフェイトが赤って、また珍しい色を

 

「あっ、ウォールアクト分かる?説明するけど……」

 

「ん、いいよいいよ、さっきもなのはに言ったように大概の事は見れば出来るから」

 

「あ、うん、じゃあがんばろ」

 

なのは達の弾幕から避けないといけないんだよな、ドSかあの教導官

 

「見れば出来る、ね」

 

「どうしたネリア」

 

「なにも~、ただお兄様って凄いよね~て」

 

「は?」

 

一応機密になってるレアスキル(まぁだだ漏れなのだが)だけど親族のお前にはキチンと教えてるだろ?皇帝特権の事

 

「多分お兄様は本当に『見れば出来るだな~』って」

 

「……………」

 

なにが言いたいんだよ

 

「まっ、そんな事はどうでもいいよね、さー頑張ろー、今度の私は弾幕側だ!!」

 

「ったく」

 

スフィアで打ち落としてやろうか

 

「あとケント、これが終わったら軽く模擬戦らしいから、多分ケントは守護騎士のみんなとする事になるんじゃないかな?」

 

「嘘だろ?」

 

軽いリンチの始まりじゃ

 

 




さて、2〜3話後になるかと思う大規模模擬戦なのですが……どうしよう(ーー;)
いや~、人数多い上にDASSルールだとポイントやらなんやらあるじゃないですか?正直上手く書けるかどうか、もっと正直に言うとめんどくs……

あと今後の方針で行きますとvivid編はインターミドル終わりまでにしたいと思ってます、そこからは原作が進んでもしません

あとお願いなのですが思った以上にケントとアインハルトの出会いが早かったせいでGOD編と比べて少し違和感がある事になるかもしれませんがご了承下さい

今のところ考えている流れはvivid→オリジナル(シリアスになるかと)
→Forceの予定です
ただForceの前に一度様子見となるかと……原作が遅くまだ物語の中核などがハッキリとしていないので下手な原作改変をしてしまうと取り返しがつかなくなる可能性がありますので……

現在の予定はこんな感じです


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温泉で

「取り敢えず死ぬ、今すぐ死ぬ、絶対死ぬ」

 

「何不吉な事ばかり言ってるんですか、みんな行っちゃいましたよ?」

 

取り敢えずお前みたいに体力は俺にはねーんだよ……暇人舐めんなコノヤロー

 

「ぐおおおぉ、腰が痛い腕が痛い足が痛い……エリオ、俺を助けろ」

 

「ん~、背中に乗りますか?ただし大人モードは解除して下さいね?僕もフラフラですから」

 

「これを解除するくらいなら歩く」

 

小さいのはキライだ

何だかんだ言ったがエリオも疲れている筈なのでそんなおぶれなんて事は言わずにバキバキ足を鳴らしながら立ち上がる

あー、ちくしょー、こういった基礎練ばっかりするの初めてだよ、こんな集団リンチ受けんの初めてだよ……何?なんでなのははスターズ、フェイトはライトニング、俺は守護騎士なの?馬鹿なの?死ぬの?

 

そんなこんなでもう夕暮れ、訓練やら模擬戦も終わり皆ルーテシア製の温泉に向かう

あ~、やっぱり守護騎士戦は地獄だった

 

「それで対等に戦ってたケントさんは素直に凄いと思いますよ、ネリアさんもいましたけど」

 

「シャマルとヴィータの相手してもらったからな……相性はあまりよろしくなかったけど火力の差だったんだろ………俺は一人で剣術と格闘両方使って何とか死なない程度だったよ」

 

「やっぱり凄いと思います」

 

「ん~、だな」

 

やっぱり人数の差は埋められないよな~、シグナムはアギト使わなかったし……使われたら確実に負けてる

あそこで一流二種類はやっぱり無理があったか……

 

「あの、ケントさんって色々な事を一流にするスキルを持ってるんですよね?」

 

「ん?そうだがどうした?」

 

まぁこれ、初対面で全然知らない人に言えば絶対嫌われるスキルでもあるんだけどな

 

「あの、一度にいくつぐらい一度に扱えるんですか?さっきの話を聞いてたら二つしか使ってないようにも感じたんですけど……」

 

「ああ、そうだな……」

 

俺も理解はしてないけど……多分………

 

「なにしてるの~、早く行くよ~」

 

「ん……取り敢えず行こうぜ、風呂上がったら飯なんだし」

 

「あ、はい」

 

重い足を引きずりながら歩く……めんどくさいから転移で一発

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一言だけ、暇人って凄え」

 

「ルーテシアだけでここまで……」

 

「見事なものだ」

 

犬は禁止、犬じゃなくて狼?犬化だから駄目

 

さて、そんなわけでやって来た温泉……ルーテシアは本格的に魔導師辞めればいいと思う

 

いやねぇ、温泉が数種類あってそれぞれ効能が違って何故かスライダー的な物もあるとか引くわー、あまりにも凄すぎて引くわー

あれか?ここの湯はガリューが掘ったのか?あのドリルで

ん~、ありそう、何だかんだですっごい気に入ってるぽいからな、あのドリル……色々と目覚めてるとも聞いたし

 

なんだろ……勝てる気しない、今のガリューには

 

「今日作った混浴はもっと凄いとか言ってましたよね……」

 

「結局作ったとか言ってたな……行ってこいよエリオ、まだ十三歳だからギリギリ許される」

 

「アウトですよ!!どうしよもないくらいにアウトですよ!!」

 

キャロと同じ湯に入った事もあるくせによく言うよ

アレは不可抗力?過程がどうであれ結果こそ全てだよ

何で知ってるのか?面白い事を知っていて悪い事はあるのか?

 

にしてもルーテシア、今日の朝の話の後から全力で混浴作ったらしい……行く気はないが

それ伝える時にむっちゃ目が光ってたしな……残念だけどそんな期待には答えねーぞ

 

「ケントさん、お湯に入る時も大人モード解かないんですか?」

 

「うわ出たよ、身長高い奴には低い奴の気持ちなんてわかんねーんだよ」

 

「えっと……僕結構普通な方なんですが」

 

うっせー、お前は未来無茶苦茶デカくなる事が分かってんだよ

どうせ近い将来キャロの身長は伸びなくてもキャロの胸をデカくするサポートはすんだろ?ったく、これだからリア充は

 

「ケントさんは人の事言えないと思います……てか何ですかその……キャロの手伝いって!?」

 

「なんだ?もしかして近い将来じゃなくて現在進行形か?」

 

「ぬわっ!?」

 

あ、滑って転んだ

 

「何平然とそんな事言ってるんですか!?」

 

「否定しないとなるとガチなのか?」

 

「そんなわけありません!!」

 

あっそ、まぁそういう事にしとく

 

「何ですかそのニヤケ顏、絶対信じてませんよね」

 

「いやいや~、将来が楽しみだな~と」

 

ま、エリオはイケメンだからキャロ以外にも狙えばすぐに彼女出来そうなんだけどな

 

じゃ、今は今日の疲れを癒すとするかね

 

 

 

 

 

 

「前から触ってみたいと思ってたんだよね~、このお胸!!」

 

「ヒッ!?」

 

「ちょっとネリアさん!?」

 

ぐにゅ~と言って私をアインハルトちゃんから引き剥がそうとヴィヴィオが頑張ってるけど今はスルー

いや~、お姉様や巨乳の人は沢山いるけどこういうロリッ子のお胸は何とも言えぬ弾力感……エロゲだったら感触は味わえないからね~

 

「はうっ、あっ!」

 

「おっ?ここかここか?ここが気持ちいいのか!?」

 

うんうん、やっぱりこういった弱点を知ったら骨抜きに出来るよね

必死に抵抗しようとしてたけどもう完全に力抜けてるし……後は……

 

「いたっーー!!」

 

「立派な犯罪だよネリアちゃん」

 

だからっていきなり殴る!?

いや、これが高町式なんだろうけどさ!!

 

「ネリアちゃんはこれぐらいしないと止まらないでしょ?」

 

「そんな事言ってると今度はなのはさんに「ディバイン」嘘ですすみません」

 

取り敢えずデバイス無しで収束してたなのはさんは素直に化け物だと思う

私も出来るんだけどさ………

 

「でもでも!!こんにおっぱいがある中で何もしないって言うのは逆に失礼だと思う!!でしょでしょはやてさん!!」

 

「もう捕縛済みです」

 

「はやっ!?」

 

温泉の中でバインドに縛られるって何て新しいプレイ……てか裸で縛られてるからそっちの方が酷くない!?

 

「これ以上暴れるんだったらネリアちゃんもああなるけど」

 

「あ~、大人しくしておきます……お姉様だけで我慢します」

 

「わ、私!?」

 

バインド一丁あがり

手首に巻きつけられた……う~

 

温泉は今日だけじゃないから諦めるとして……やっぱりピンクのぽっちコンプリートはしないとね、うん

いや~、やっぱり壮観、美乳揃い、まだまだ発展途上もいるけどね

 

「あの、ネリアさん、少しお聞きしたい事があるのですが」

 

「どうしたの~アインハルトちゃん、今のでエッチに目覚めた~」

 

「ち、違います!!」

 

釣れないな~

 

「でも気持ちよかったでしょ~」

 

「はふっ!?」

 

だよね~

 

「あ、あの、ネリアさんはケントさんの妹さんですよね!!」

 

「そだよ、なになに?お兄様に一目惚れでもした?」

 

「違います!!」

 

そんなに強く否定しなくても……私が妹じゃなかったら惚れるよ?

 

「あの、その、聞きたい事というのは……ケントさんは何者かという事です」

 

「何者か?」

 

お兄様はお兄様だよ?

 

「そうではなくて……今日の訓練、少し拝見させてもらったのですが……あの人は体力もあまり無く、筋肉もそこまでなのに剣術も格闘技も出来る……その、勘違いだったら非常に失礼な言い方なのですが……努力の人ではないt「そうだよ?」……え?」

 

まぁアインハルトちゃんは一般人、殆ど漏れちゃってるけどお兄様のレアスキルは一応機密だからね~

 

「ん~、お兄様はちょっとしたレアスキルを持っててね、一言で言えば『一流になれるスキル』かな?」

 

「一流になれる?」

 

そうそう

 

「剣が上手くなりたいんだったらそれを主張すれば、格闘技が上手くなりたいんだったらそれを主張すれば……知っている範囲の事だったら『主張』するだけで一流になれる……それがお兄様」

 

「っ!?」

 

おー、驚いてる驚いてる

お兄様には悪いけど大体の人はこれ聞いた瞬間お兄様に対して軽蔑の目っぽいのを向けるんだよね~、まぁそれが普通の反応だと思うんだけど

私?お兄様は大好きだよ?

 

「という事は……私を倒したあの格闘技は……」

 

「多分主張したんだろうね~、自分が知ってる限りの格闘技を一流にして」

 

あのスキルの凄いところはやっぱりどんな事でも『一流』にする事だろうね

大概の事が絶対に知識不足だから……その知ってる範囲で一流にしちゃうんだもん

 

「今日の戦闘もそうだよ?ただ勘違いしないでね?それも含めてお兄様の力、貴方が知ってる戦場で『ズルい』だの『きたない』なんか関係ないんだから、貴方だって何だかんだで天性の才能持ってるんだし」

 

「はい、分かっています」

 

うんうん、どちらかと言うと『ズルい』とかよりも『打ち勝ってやる』って心の方が大きかったかな、彼女の場合

やっぱり心が強いね~

 

「ですが一流になるんだったら何故今日はずっと劣勢だったのですか?そう簡単には負ける筈がないと思うのですが」

 

「そりゃシグナムさん相手だったら単純な『剣術』だけだもん、経験とか何やらで優ってるシグナムさんがそりゃ勝つよ」

 

まぁ、逆に言うとお兄様は『剣術しか』主張してないって事だからね

色々言い訳してるけど、お兄様って無意識の内に手加減してるから………

 

同時にいくつものスキルを主張して、いくつもの能力を使いこなせば………

 

それに……多分

 

「あのスキルの本当の使い方はもっと凄いと思うよ……多分お兄様は……それを知っていてあえてしてないんだと思うけど」

 

「?」

 

ま、私の推測でしかないんだけどね

それでも、今日のお兄様の発言からするに多分正解かな?

 

「ま、取り敢えずこれで終わり、私は色々な山脈を調べ尽くさないといけないから」

 

「えっと、手首縛られてますよ?」

 

手首は縛られても指は使えるではないか

なのはさんは最終日にとっておいて今はみんなの性感帯を調べなくてはならないという使命がネリアにはあるのだ

 

「ネリア、いざ参る!!戦場へ!!」

 

「えっと、お気をつけて」

 

先ずはスターズの二人ぐらいから狙ってみようかな?

 




模擬戦チーム分け

赤組
FA アインハルト ノーヴェ
GW ケント シグナム+アギト
CG なのは ネリア
FB シャマル キャロ

青組
FA ヴィータ ザフィーラ スバル
GW フェイト エリオ
CG ティアナ はやて+リイン
FB ルーテシア

と言った感じでいきたいと思います
組み合わせた結果FAとFBが一人ずつ余ってしまったので赤組にFBを、青組にFAを
結果的に青組は突破力と勢いがあり赤組は高火力と耐久性に優れた形となりました
コロナとヴィヴィオはデバイスを持っていないので見学です
あと原作でコロナがついていたWBなのですがWiki先生に聞いても載ってなかったので今回は保留
次書く前にもう一度見直して戦力に差があり過ぎた場合は少し変更します


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魔狼

もう後先考えず全て勢いで書いてしまったのでツッコミやらなんやらは無しでお願いします
設定とか展開の早さとか……ふわ~と読んで欲しいです
ホントはお風呂前回で終わりにしたかったのに……
評価が悪ければ消します



 

「にしても疲れが取れる……やっぱり温泉文化はいいね~」

 

「ですね~」

 

「だな」

 

男三人、頭の上にタオル乗っけて並んで風呂に入る

もう日本人じゃないにしてもホント、素晴らしい文化だよ……とにかく気持ちいい

 

それに柵の向こうから女子達の話し声が聞こえて来るのがなんとも……人数多いから必然的に音量もデカくなるからな~

 

あんな化物揃いの所に覗きなんてすれば明日の朝日なんて拝めない事は確定済みなのでそこは堪えて我慢する

正直皇帝特権を最大出力まで上げて多々のスキルを上昇させればいけない事も無いとは思うが……幻術とかステルススフィアとか……

 

「ま、今はこの温泉で疲れを落とすか……あの練習量はハンパじゃない、エリオはあんなのを毎日してたんだろ?よく死ななかったな」

 

「死ぬって、ケントさんはなのはさんをどう見てるんですか」

 

「鬼教官」

 

間違ってないよな?

 

「そういや気になったんだがこの世界、全てルーテシアの貸切みたいなもんなんだろ?それでもこれだけデカイんだったら野生の動物の一頭や二頭いる筈だと思うんだが」

 

「あ~、今はルーテシアが使っている場所だけがこうなっているんですよ、少し歩けば山脈も森もありますよ?

獰猛な魔法動物はガリュー達で追い払ったらしいので一先ずは安心と言ってました」

 

「ふうん」

 

魔法動物ね、まあ名前の通り魔力をもった動物なんだけど他と違うのはやっぱり頭がいい事と繁殖力が半端ない事か?

魔力持ってるだけで他とは一線超えるからな、まさに食物連鎖の上位だし………追い払ったっていってもちゃんと森もあるみたいだし大丈夫だよな

用意周到な奴らだと時を見て仕返ししてくる事例も聞いてるし………まぁこれだけのメンバーが集まってるこの状況だったら大丈夫だと思うけど

 

「ケントさん、妙なフラグ立ててません?それ?」

 

「俺は立てたフラグは回収しないタイプだ、勘の良さだけは自慢出来るからな……まぁ余程の事がない限りそんなのは《ザッ》………………」

 

………何だろうか、今近くの茂みを何かが全力で横切った気がしたのだが

 

「…………獣の匂いだ、囲まれている」

 

「ちょっとまてぇぇぇぇ!!」

 

デュランダル持ってねぇぞぉぉぉぉ!!

 

「ザフィーラ何で今の今まで気づかなかったんだよ!!犬だろ!?」

 

「狼だ、かなり頭が回るぞ、自分たちの匂いを森の植物で一切遮断してきた……数は……三十くらいか、魔狼だな」

 

「ものホン狼!?」

 

取り敢えず手に持っていたタオルを腰に巻く

俺もエリオもデバイスは中に持ってきていない、となればバリアジャケットも装着出来ない

頼りになるのはザフィー、けど三十って

姿は全く見えない、全部隠れてやがる

 

「バスタァァァァァァ!!」

 

「いっ!?」

 

柵を破壊するピンクの一撃……それとともに吹っ飛ぶ一匹の狼

オイオイ、デバイス無しでアレかよ

 

って

 

「ちょっ、まっ!!」

 

「え、きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

スフィアスフィアスフィアスフィアスフィアスフィアスフィアスフィアスフィアスフィアスフィアスフィアスフィアスフィアスフィアスフィアスフィアスフィアスフィアスフィアって死ぬわ!!

 

「ちょっ、なのはストップ!!ストップ!!」

 

「そうや、今はそんな事言っとる場合とちゃう!!」

 

俺への弾幕をはやてが制止させる

………ごちそうさまでした

 

「取り敢えずエリオ、平常心だけは保っとけ、ここでテントの一つでもはれば今日からずっと非難の目を向けられる事になる」

 

「………はい」

 

ザフィーに至ってはそんな煩悩はなさそう

 

それにしてもアレだ、今の状況と言えば男湯と女湯、二つを囲むようにして隠れる三十の魔浪

男湯と女湯の柵はなのはによって木っ端微塵破壊され丸見えに、全員タオルを巻いているが体のラインはくっきりです

特にさ、胸は谷間びっしりだしタオルの長さが巻きタオルなどではないためにお尻がギリギリ隠れるくらいの超際どいライン、一度蹴りでも放てば全て丸見えだと思う……それはこっちもだけど

まぁ、そんな事はおいて置いて……このままだと食われるぞ

 

それに、デカさが異常である

さっきなのはがぶっ飛ばした魔浪、体長約二メートル前後……こんな奴の牙が真っ裸の肌に当たったら致命傷だぞ

 

「誰かデバイスを転移させて持って来れる奴はいないか!?」

 

「駄目だよケント、向こうが全部回収済み!!」

 

それガチかよ

 

それじゃあ何か?あの魔浪共は風呂という一番無防備になるこの瞬間を狙って襲ってきたわけ?

それにデバイスという存在も知っている、壊されてはいないだろうがデバイス自体が魔狼の魔力で捉えられてしまっていればこっちに持ってくる事は出来ない

 

デバイス無しでいけるのは……アインハルトとザフィーラ、そしてガリュー……後は融合機の二人くらいか?

 

デバイス無しだと技のタメは長くなるし隙が生まれやすい、魔力も大量に使うし何より調節もあまり出来ない

最低限全員食われるとかいう結果だけにはしてはいけない、後はタオル破られるとか

いくらザフィー達でも知能が高い狼三十とじゃあ不利、それに守りの姿勢を少しでも崩せば一気に来る

逆にあいつらもなのはが一匹やったせいで慎重になってる……ジリジリと歩み寄って来ているが………

みんな構えてるが今のままじゃ全員生還は難しい、確実に穴を見つけて誰かが殺られる

 

「破壊使うか……だけど範囲が狭すぎる」

 

向こうは大きく広がっているし、それに破壊をした後は若干の硬直だってある

俺としては全員生還しか頭にねーからな

取り敢えずは……後ろに下がる

みんなを一度固まらせる事が出来たらいいんだけど……

 

「混浴」

 

「ん?」

 

「ケントさん!!混浴なら室内です!!隔離した別棟に続いていてある程度の衝撃なら耐えれます」

 

「…………」

 

素直にすげえよ、いや、一日で作ったのが建物って

あいつらは鼻がいいけど……一瞬の錯乱なら……

 

(念話で伝えるけど……合図出すから一斉に混浴に逃げ込んでくれ、俺が幻術使って錯乱するから)

 

全員に向けての送信、ガリューには鋼の劔を頼む

デバイス無しならホントに一瞬だけど……大丈夫

 

(今!!)

 

念話での合図とともに一斉に走り出す

それとともに『主張』により幻術のスキルを一流にし……全員の幻術を作り出す

同時にザフィーによる盾、一斉に魔狼が飛びかかる

混浴の入り口への距離は十メートル弱、下が滑りやすいから転ぶのだけは……勘弁!!

 

「オラッ!!」

 

残り魔力全部使ってのブーストにより滑って転びそうなやつをキャッチする、んでもって

 

「ぐわっ!!」

 

「キャッ!!」

 

背中から中に突っ込む、ドアを閉めてザフィーが魔法でガッチリと入り口を固める……ふぅ

 

「全員……入ったか?」

 

「何とかね」

 

女性陣よ、タオルが凄く乱れてるから直しなさい、眼福だがキツイ

ほら、エリオなんて天を仰いで素数数えてるぞ………懸命にテントはらないように

 

あと……これって

 

「ルーテシア、混浴が一番凄いんじゃなかったのか?」

 

「最低限の隔離された空間で二人きりのお湯、中々いいシチュエーションだと思ったんだけどな」

 

中はオレンジ色のランプが灯る六畳くらいの温泉があるのみ……あとは二つだけシャワーやらなにやらがあるだけ

 

その中に総合計18と虫、さっきまでは距離があったのだが今回女と男の距離は無くなった

それによってみんなのボディラインがタオルによって強調されているのが余計リアルになって……皇帝特権で平常心を主張しておいてよかった

 

「おー、いいガタイしとるな~」

 

「滑って転んでたのはお前だったかはやて、抱きしめた事はすまなかった」

 

「な~んで謝るん、命の恩人やのに」

 

それでも……体に柔らかい感触は凄く伝わっていたわけで……皇帝特権持ってて良かった~

 

「女の子達は……イロイロアレだからお湯の中に浸かっておいて、まだ隠れるだろ?」

 

「そ、そうさせてもらいます」

 

キャロがお湯の中に浸かる、出来ればみんな入ってくれない?

あの、ボディラインホント凄い、出る所は出て締まる所は締まり過ぎ……これぞホントのボッキュッボンだよ

谷間も太ももも濡れた髪もエロい

まぁ俺もタオル一枚だから何とも言えないんだけどさ……

 

「で、どうする?このままここでいても何の解決にもならんぞ」

 

「それは、分かってるけど」

 

近づきながら話すなシグナム、お前は中でもとびっきりエロい体格してんだからさ

谷間ヤバイよ兵器だよ!!

 

「ルーテシア、結局あいつらなんなんだ?」

 

「ん~、そうだね……多分この世界を元々支配していた動物……なのかも、管理局が来てから資源とかそういった物を取るために開拓されて森に逃げ、時を待って人間に復讐……もうこの世界にある地下資源とかは取り尽くしてあるから私がここにいるんだけどあの狼達がそんな事知ってる筈がない……たまたま復讐の時にいたのが私たちだったのかも……デバイスとかを知ってるのは人間と何度か戦った事があるからじゃないかな?」

 

とばっちりという事か

デバイス無しじゃキツイな……俺もさっきの幻術で魔力の殆ど持っていかれたし

てか魔狼って大体魔力どれくらい持ってるんだ?

 

「大体B〜Cくらいに見えたな、生半可な攻撃では通用せんだろう」

 

「うわ~」

 

なにそれ、一般局員の平均魔力値より高いじゃん

それで二メートルの体格?勘弁してくれよ

 

「今のところはこちらの様子を伺っているな……建物の壁が分厚いから暫くは持つと思うが長居は出来ないぞ」

 

「だよな~」

 

結局迎撃か、そうなればもうタオル破けるの覚悟だな

………いっそもう破壊で全部消すか?

バリアジャケット着れれば全く違うんだが……

女性陣はタオル抑えるのに片手使うし……

 

「……はう、はうぅ」

 

「ん?よっと……大丈夫かフェイト」

 

のぼせたか……やっぱり温泉、長時間いるとのぼせて体が怠くなってくるよな

あ~、でもこちらに倒れて来て欲しくなかったかな……頭がボーとして本人は気づいてないと思うけどむっちゃ当たってるから、うん、タオル越しにむちゃくちゃ押し付けてますから

 

「ただケント、奴らの中には一匹狼達の『中心』となる存在がいる筈だ、それを叩けばいけるだろうな」

 

「………そっか」

 

さて、どうしたものか

 

 




全員タオル一枚、ケントとエリオは腰に巻くだけ、女性陣は谷間全開太もも全開足少し上げれば鼻血全開です



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努力の否定


昨日熱で今日も頭がボーとしながらの投稿、正直出来は最悪です
不評ならば消します。狼イベ、やらなきゃよかったな……


 

「せめて武器でもあればなんとか出来るかもしれないけど……この格好で素手はないよな~」

 

「お兄様ならいけると思うけど……」

 

おいおいネリア、素手って事は格闘戦だぞ?後手だけで戦うわけじゃないんだぞ?

足上げたりしたら悲鳴がこだまする事になるよ?

それとムフフ~とか言ってわざと胸を強調すんのやめろ、ボリューム凄いからヤバイから

 

「それにしても……こんな美女達がタオル一枚なのに興奮しないって……お兄様ホントに男の子?エリオは頑張って九九を繰り返してるのに……」

 

「エリオについては触れてやるな、俺は単に主張してるだけ、ザフィーは元々そっち方面には興味無さそうだからな……」

 

「チートだね、お姉様なんて今襲ったら凄そうなんだけど……流石にここでは駄目かな~」

 

「ちょっ!?ネリア!?」

 

聞いてるこっちも恥ずかしい

流石にここで変な事すんのはやめろよネリア、お前が悪くても俺らまで飛び火するだから……

 

「ルーテシア、軽い転移魔法とか出来ないのか?せめて子供だけでも逃がせたら最高なんだけど」

 

「ん~、出来てもどこに飛ぶのかわからなくなるよ?地面の中とか」

 

それじゃあ死ぬだろ

武器武器……ん~

 

手に魔力を集め、スフィア制作

それを剣の形に………し……て………

 

「うおっ!?」

 

爆発

 

「何してる」

 

シグナムからの冷たい目線

タオル一枚だからそういうのはご褒b………いえ、なんでもございません

 

「スフィアをなんとかして剣やら槍の形に固定してみようかなと……あれって一応物理攻撃の中に入ると思うから形を与えたら武器になるかなと、出来たとしても元が魔力だから切れ味とかは最悪なんだろうけど」

 

「凄まじい事を考えるな……そんな理論聞いたことないぞ」

 

やっぱりか……まぁ大人モード自体も概念すら無かったし魔法なんて何もない所から作られるんだからな、時間かければ不可能じゃない……はず

そんな時間今はないんだが

 

「ずっとここに閉じこもってもいられないからな……食料然り水然り理性然り」

 

「変な気を起こしたら全力で叩き切るからな」

 

「分かってる」

 

手刀ですか、あんたなら本当に殺りかねん

 

「まぁ、あいつらの討伐はザフィー、ガリュー、俺の三人かな?融合機二人とアインハルトは万が一の為に防衛かな?」

 

「わ、私も戦います!!」

 

「アタシもだ!!融合機だからって舐めんなよ!!」

 

バトルジャンキーと融合機がゴタゴタ言ってるが無視

あんな馬鹿デカイ狼なんて相手に融合機だからとか戦えるからって女の子を行かせれるかっつーの

俺?タオル一枚だが見られてなければいけるし奥の手の『破壊』もある

皇帝特権で技術を底上げすれば魔法なんか使わなくたって大抵の事は出来るしな

 

「あ、アタシも行く、アタシは戦闘機人だからデバイスに頼らなくても魔法くらい使える」

 

「あ~、うん、ここに残ってくれ、戦いにくい」

 

「邪魔だって言いたいのかよ!!」

 

うん、だっていくら嫌っていてもお前女だろ?いられたら思い切っての戦闘が出来ないんだよ……足上げたりしたりとか……ね

俺の貞操どうなんだ?

そんなわけで戦力になるかもしれないけど俺がヤバくなるから却下で、こんな事いっちゃ悪いけどお前と俺、百回戦ったら百回勝てる、総合的に見たらマイナスかな?

人間の羞恥心はすぐには消せないものなのです

 

その辺オブラートに包んで言ったら嫌々ながらも納得してくれたっぽい、本当に嫌々だが

 

「んじゃまあ、最終目標は狼共を森に追い返すとして今回の目標はデバイスの奪還、あれさえあればこっちのもんだ」

 

「そうだな」

 

「(コクコク)」

 

ガリューはどっちかは知らないが男チーム完成

エリオ?奴は何やら南無阿弥陀仏唱えてる。ミッドにもあるんだな、仏教

 

ドアの前に立ちガリューを前に、ギュインギュイン爆音を鳴らして回るドリル

……そういやこれってビームとかも出るんだよな、そして何やらドリルを構えるガリューの目がいつもより輝いて見えるのは気のせいか?

 

んじゃ

 

「先手、必勝!!」

 

バンッ、とドアを開けてガリューを突撃させる

二番目がザフィー、最後の俺がドアをガッチリと閉める

飛びたして来た狼一匹をザフィーが地面に叩きつける……見つけるのは狼のボスのみ

 

「グワッ!!」

 

「うおっ!?魔力弾!?」

 

魔力持ってるのは知ってたけどそりゃねーだろ!!

取り合えず避け、鼻に向かって裏拳を放つ……やっぱデカイ、打ち込んだのはこっちなのに吹っ飛びそうだ

 

「グオッ!!」

 

「ちいっ!!」

 

反対側から牙が迫る、対処が!!

 

「ておらぁ!!」

 

爆音、それと共に地面にめり込む狼

殴り飛ばしたのも狼……やっぱ強えな……

だがやはり数が数、二人とも奮闘しているが狼側は連携が上手い、実際倒せているのは殆どおらず向こうはドンドン交代する……ちっ!!

 

「主張、マジカル八極拳」

 

かの月でいたアサシン先生のように己を自然と同一化する……そんでそのまま……っ!!

 

「こいつら……鼻!?」

 

サーヴァントでも視認さえ出来ないこれを……鼻で……

巨大な爪をギリギリの所で躱す、よし

 

「はぁ!!」

 

「キャダ!!」

 

振るわれた前足の腱を叩き切る

こんな芸当が出来るのがマジカル八極拳の醍醐味なんだろうが……ん~

 

「ふぅ、はぁ」

 

空いた腹に回し蹴りを叩き込む、やっぱり大体の生物が腹が柔らかいからな……

それでもようやくこれで一体かよ、完全にこの狼戦闘慣れしてんだろ

 

「ぐうう」

 

「ちぃ、ザフィーラ!!」

 

爪をガッツリ受けている、腕で守ったのだが血が飛び散る

狼達はザフィーやガリューなどのデバイス無しで戦え、更に人間ではない事を危険視したのか一度に五体を相手にしている………いくらあいつらが強いからって数の暴力で殺られるぞ

 

「くそっ、こうなったら」

 

右手を前に突き出す、少し悪いが……何頭か消えてもらう

上手くザフィー達に当たらないようにして………

 

「うおっ!?」

 

頭上スレスレ、ギリギリの所でかがんでまぬがれる

………頭上スレスレ……頭上スレスレ?

 

「痛っ!?」

 

髪の毛を引き抜かれる痛み、我慢して今俺を襲った狼を見ると口の所に金色の毛

ちょっ、今完全に避けたのに……あ

 

「え、あっ、ない」

 

頭を確認、いつもピョコピョコしてる『アレ』がない

………あ~、あ~

意識が……

 

 

 

 

 

side  ザフィー

 

 

「喜べ、一時戯れてやる……獣が」

 

「む?」

 

ケントの様子が可笑しい、ただ意味の分からない程禍々しいオーラを纏っているのは事実

外見に関してはさほど問題はないのだが……先ほどまでとは何かが違う、慌てた様子もなし

目の前の狼を叩き伏せる……何があったにせよあんな場所で突っ立っていては殺られる

 

「何があったのかは知らぬが……伏せろ!!」

 

様子が可笑しいと思ったのは自分だけではない……三匹程の狼が一斉にケントへと襲いかかる

今までは私たちが気を引いていたのでケントへは一匹ずつだったが……デバイス無しで三匹はマズイ!!

 

「ぐうっ!!」

 

何とか近づこうとするが道を遮られる

一匹一匹が強い、魔力もあるせいで固く、腕からは出血している…間に合うか!!

 

「雑だな………それに軽い」

 

目を疑った、生身の人間が……二メートルある狼を最低限の動きで受け流し、三匹同時に弾き返した

それに今の動き、どこかで見た事が……

 

「身の程を知れ、獣共」

 

ケントの体が薄い魔力に覆われる……体制を立て直して再び襲い来る狼

それを……

 

「模写フェイト・T・ハラオウン……『ソニックムーブ』」

 

光の速さで……駆けた

何度も見た事がある、シグナムの立会いの時、模擬戦の時

あれは……ハラオウンのソニック

 

『一流になれるスキル』

 

確かに、まだ理論が確立されていないもの、ケント自身が知りもしない事を主張しても全く効果がない

いくら『魔法が一流になりたい』と主張してもケント自身が魔法の使い方、基礎知識、存在をしらなければいくら皇帝特権といえども不可能

だが……基礎、形、それその物、それさえ知ってしまえば基礎の中での一流、そこからの応用と発展させる事が出来る

そして……今のケント

 

『一度見れば大体出来る』

 

よくよく考えればその通りである、ケントが技を見て、それを主張すれば形を知っている事となるので『出来て当然』

さらには恐らく技の欠点を見抜き『一流にして』使いこなしているのだろう

 

少し考えれば気づけた筈、何を、今頃になって驚いているのだろうか

 

「模写、アインハルト・ストラトス……覇王」

 

移動したのは狼の真上、引いた拳は一気に真下に振り落とされ……

 

「断空拳!!」

 

地面に、相手を叩き込んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

side ネリア

 

 

「え、えっと……だ、大丈夫だった?」

 

「離せ!!離さぬか!!こんな物で、こんな物で我を縛るなど!!」

 

「はいはい、なんでアホ毛が切れとるかは知らんけど大人しくしよな~」

 

お兄様達が出て行ってから三十分、ザフィーラがげっそりした顔で帰ってきてもう大丈夫だって……中から出てきたらお兄様が狼達を従えさせていた……なに?

なんか様子が可笑しいと思ったらアホ毛無し、はやてさん達と協力してバインドでガッチリホールド、なんかね~

狼達はお兄様に命令させて森に返した、代わりにはやてさんが添い寝するから~て言ったら無茶苦茶簡単に納得した……普段のお兄様ならそんなのあり得ないんだけどね

 

「取り敢えず正気に戻ろか、助けてくれたお礼は言っとくわ」

 

「礼などいらん、代わりに我と夜を楽しもうではないか!!」

 

「ハイハイ、いつものケント君なら全然オッケーやけど今のケント君やったらお断りや、添い寝はしたるから我慢し~な」

 

それにお兄様はあんなに積極的じゃない、今夜を楽しもうなんて言ったせいでシグナムさんはレバンティンに手を伸ばしてたよ?

なんであーなるんだろうね、女の子からの押しに顔赤らめるだけのお兄様が欲望丸出しと言うか何と言うか……そのお陰ですぐに捕まえられたんだけど

 

ん~、それにしても今日ははやてさんにお兄様取られちゃったか……お姉様はあの状態のお兄様に耐性が無いみたいで後ろに隠れてばっかだし

なんかブツブツ「ケントの大っきかった」とか繰り返してるし……いつ見たの?

ん~、まぁタオル一枚なんだから事故で見ちゃったとかはあるのかな?

 

にしても……明日はどうにかしてお姉様に頑張ってほしいよね……どうしようか

 

あ、アホ毛復活したお兄様が気絶した

 

 

 





ケントは『一度見れば大体出来ます』
皇帝特権の本当の使い方です……オルタ(笑)なのでケント自身の意思に関係なく使いました
ケントがこれを使わないのは簡単、《嫌われる可能性》があるから
これ使うと本当の意味で『努力の全否定』となりますし他人が汗水流して習得した魔法をそれ以上にして一発で使いこなしますから、これ以上嫌な奴はいません
これで使えないのは砲撃や形質変化、デバイスに頼る魔法など
今の所知っているのはザフィーとガリュー、気づいてるのはネリア
ケント自身使ったことを覚えてませんし使うつもりもありません


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変身時に裸は原作だけのサービスです

区切りがいいところまでになってしまったのでいつもよりも短いです

オリジナルとForceの大体の筋書きは出来ましたね、ただForceは原作がどうなるかによりますが

あと最後に……熱、ぶり返しやがった(~_~;)



 

さて、朝起きたら目の前に美女が寝てた、貴方ならどうする?

 

…………取り上げず襲うとか言った奴は表出ろ、その煩悩を消し去ってくれる

そんな感じで今俺はどうしたらいいのかわかりません、てかいつ眠ったのかま覚えてません。

そういや昨日飯食ってなくね?

腹の虫が鳴る、いやいや、そんな事を考えている暇なんてない、今重要なのはこの状況をどう切り抜けるか

だって目が覚めたらカッターシャツのはやてだぞ?守護騎士一同なにしてんだコラッ

 

ぐっすり眠ってるっぽいから……ゆっくり出れば大丈夫か?

布団から注意をはらって抜ける……ん~

 

「ふわっ、おはよケント君」

 

「…………おはようはやて」

 

取り敢えずその胸元のボタンを閉めろ

 

 

 

 

 

 

 

 

「マジで暴走したとか……その、大丈夫だったか?色々と……さぁ?」

 

「ん~、ケント君がみんなのタオル全部剥ぎ取る以外はまぁ大丈夫やったかな~」

 

ブッ!!

ちょっ、それシャレになんない!!

 

「嘘や嘘や、おかしなったんわ一目で分かったから暴れる前に止めてあげたよ~、正気に戻った後すぐに気絶してしもうたけど」

 

「え、あぁ、よかった……」

 

ホントにそうなら朝食の時に殺されてない方がおかしいよな

 

そんなわけで朝食を食べ終え、はやてと共に移動中、なんでも予定通りチームでの模擬戦やるんだと、これがこの旅行のミソとかなんかで

やだね~ホント、旅行なら旅行でゆっくりしたいのに……てかチーム知らないぞ俺、またシグシグと当たったりしねぇだろうな………

 

「シグナムとケント君は同じチームやで?てかシグシグってなんや、聞いたらぶった斬られるで」

 

「だな」

 

いいと思うんだけどな、シグシグ

てかこのチーム分け、相手チーム突破力有りすぎじゃね?

ん、まぁその代わりこっちにはフルバックが二人か……火力としても申し分ないのかな?

 

「今回は敵チームやな、その前にええの?私は昨日の内に作戦とかの打ち合わせに参加したけどケント君は寝てたからしてないし、それにケント君、なーんも疑問に思うてへんみたいやけどみんな先に行って練習しとるで?」

 

「マジで?」

 

「大マジ」

 

だから朝食終わった後はやて以外誰もいなかったのか、てかはやてはいいのか?

 

「リインのメンテがあったからな~」

 

さいですか

今から行ったらシグシグに「遅いっ!!」とか言って斬られそうだ、まぁその時はその時で避けれb「遅いっ!!」

 

ぶった斬られました

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで俺戦う前からこんなに負傷してんの?いやHPだから問題無しとかじゃなくて」

 

「我々の業界ではご褒美ですじゃないの?」

 

「斬られてそんな事言えてるならただの病気、流石にそこまで落ちぶれちゃいねー」

 

てかネリアはどうなんだ?お兄様なら大丈夫?どこで教育間違えた

 

そんなわけで赤組の作戦会議、簡単に言っちゃうと最初は全体的に守備に専念して弱った所にデッカいのドーン

ネリアとなのはがいるからな~、まぁ向こうにもはやてとティアナがいるわけなんだから油断は禁物なんだけどさ

勝手な予想だけどこの勝負、最初に火力高い奴を倒したチームが勝つかな、一気に均衡が崩れる事になるだろうから

俺の目先の目標は体張って後ろを守り通す事、同じGWは速さが武器なエリオとフェイトだから注意しないと素通りされる危険性あるよな

 

(ま、収束ドーンはそう上手くいかないと思うけど)

 

向こうもそれくらい想定済みだと思うし対策くらい練ってくるだろ

ま、回復専門が二人いるから長期戦になればこっちのもんだろ

 

「あ、ケント君もリミッターつけるよ?魔力出力が下がるから実戦の時は気をつけてね」

 

「それっていつも出来てる事が出来なくなったりするって事だろ?それなら少し調整しておきたかったんだけど」

 

「そのために皆早朝練習してたのだが」

 

さいですか

 

ルーテシアにリミッターをかけてもらう……六課の時隊長陣がつけていたのとはまた違うタイプで魔力自体はそのままだけど出力が抑えられる

例えるならばタンクの中の水は同じでも蛇口が小さくなったみたいな、これじゃあ(偽)エクスカリバー撃つ時も普段よりタイムラグがあるだろうな

 

一通り作戦会議が終わって皆集合、今思うと金、赤、青、ピンク、茶、白などむっちゃカラフルだよな、そしてこの光景に抵抗の無い俺がいる

 

場所はまたまた六課時代新人達が非常にお世話になったというシュミレーター式の陸戦用空間

今思うと……これって一つの『世界』でもあるのか?質量もあるわけだし………案外この技術を応用すれば『(擬似)固有結界』も可能かもしれない……やんないけど

そしてそしてルール、というか勝敗を決めるのはDSAA公式試合用のタグ、身体的には殆ど食らってないつもりでもダメージとしてポイントから引かれてしまうのが痛いところだ

ああそういやDSAAって言ったらインターミドル、あれって珍しくコルテット無関係なんだよな

まぁ設備とかの投資はしてるから全部が全部無関係ってわけじゃないが、運営がちゃんとした一つの『協会』だからな

今年はスポンサーでもするか?

 

「えっと、ケント、ちゃんと聞いてた?」

 

「すまんフェイト、全く聞いてなかった」

 

ルールは知ってるから聞かなくてもいいかな~と

 

「ちゃんと人の話は聞かないと駄目だよ、それじゃあ、今日はお互い頑張ろうね」

 

ソニックだけは使わないでね

 

それぞれのチームに分かれ、なのはの「頑張っていこう!!」という掛け声と共に皆がデバイスを構える………変身時に裸になるアレ、んなもんないからな?

 

よし、じゃあ

 

 

 

 

 

 

『セーット!!アーップ!!』

 

 

 

 

 

 

 

子供組はいいとして、大人は叫んで恥ずかしくないのかね

 

 

 



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模擬戦開始

進行はケント視点だけで頑張りたいと思います。他色々してるとずっと終わらない気が……
てか今回短い感じがしますが文字数は平均だったりします

チーム表

赤組
FA アインハルト ノーヴェ
GW ケント シグナム+アギト
CG なのは ネリア
FB シャマル キャロ

青組
FA ヴィータ ザフィーラ スバル
GW フェイト エリオ
CG ティアナ はやて+リイン
FB ルーテシア


さて、全員変身して揃い、メガーヌさんのノリノリスタートで始まった今回の集団模擬戦

 

てか今思ったんだが俺らがオオカミに襲われてる時メガーヌさんどうしてたんだ?

………気づかずに飯作ってたとか?

 

まぁそんな事はどうでもいい、今は目の前の敵に集中する事が先決

俺らのチームの作戦は『まとめて潰す』、大規模砲撃魔法に頼った一撃必殺

もちろん、その最低条件として砲撃範囲内に敵チームメンバーを集めるというのがあるのだが……初っ端から失敗だよなこれ

模擬戦が始まった瞬間、相手がしてきたのはとにかく『散らばる』ということ

向こう側には機動力が高く、突破制に優れているのが多い、簡単に言えばサシで戦える奴が多いのだ

はやて(ユニゾン)、ティアナ、ルーテシア以外は全て大きく広がりながらこちらを潰しに来た、いうなれば短期決戦がお望みらしい

基本こういった模擬戦は一対一、こっちで戦える後衛はなのは以外いないからなぁ……本当に最初は防御一筋の展開になりそうだ

 

「で、てっきり俺はフェイトら辺を当てて来ると思ったんだがなぁ、まぁ同じGWで妥当として……お前と戦うのは始めてか?」

 

「そうですね、全力でいかせてもらいます!!」

 

やっぱりこう見たら……槍は嫌だよ槍は

リーチとか全然違うし、あれ反則じゃねーの?

あれだよなぁ、今思えば相性最悪のセイバーがランサー相手に互角だった事ってすごい事なんだよなぁ……うん

 

「フェイトはシグナムと、ヴィータはなのはと、ザフィーはアインハルトと、スバルはノーヴェと……こんな感じか?どっか一つでも崩れたらガラリと変わるなこれ」

 

「ならっ」

 

矛先をこちらに向けるエリオ、ストラーダからなんかブースター的な物が出て来てキイィィィィンとか音だしてる

ディランダルを構える……んじゃまぁ

 

「僕がそれを変えますよ」

 

「やれるもんならやってみろ」

 

取り合えずここから進ませない事に専念しようかねぇ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………早いねぇ」

 

「くっ!!」

 

周りの戦況は分からない、てか確認する暇もない

ライフは俺が2200、エリオが1500、GWの最初が2800なので俺は600食らっている計算になる

んで、これだけ見たら分かる通りこの戦闘、全体を通して俺が有利

剣術に格闘技、二つ主張してここまでついてこれている事自体が凄いんだとは思うけど

それでも、俺がエリオに対して大きな一撃を食らわして戦闘不能に出来ないのはエリオがこれでもかという程に食らいついて来るから

持ち味のスピードを生かす戦法で、細かく軽い攻撃しか入らない

 

「スフィア生成、全方向に発射」

 

「くっ、ストラーダ!!」

 

持ち前のスピードと動体視力で四方八方に発射したスフィアを全て回避していくエリオ……打ち落としたらどうしようかと思ったけど

 

「ここっ!!」

 

「うがっ!?」

 

ダンッ、という音と共に重い一撃が入る

普通の奴には出来ないがあのスフィア、全方向に発車したはいいがあえて簡単な逃げ道を用意した

エリオやフェイトのようなスピード型は考えるよりも先にどう動けば最適かを見極める力が必須、確実に一番簡単で、一番安全性の高い逃げ道を選ぶ事は予想出来た

後は巣にかかった敵を撃ち落とすだけ……まぁスフィアを一個一個破壊されたら元も子もなかったしスフィアを避けるだけの技量がない奴にも無効だけどな…………今の戦法はある程度強い奴にしか効かないってこと、でもってエリオにそれをして正解だった

それに

 

(カウンターで一撃貰ったな)

 

俺の攻撃を受けきれない、防げないと感じた瞬間防御を捨てて脇腹にそれなりに重いのを一撃食らった、ライフを見てみると600食らって残りは1600………思った以上だ

 

「まだ、まだ………」

 

「………まだライフ残ってるのか」

 

地面に衝突した後の土煙から姿を表したのはバリアジャケットがボロボロになったエリオ

ライフは300、一撃当てれば終わる

ま、一旦引き下げて来ると思うけどな、ライフ三桁での追撃は命取りだ

エリオの真下に桃色の魔方陣が展開される、キャロによる転移魔法

………一旦周りの戦況を把握してから引くか、いつでも動けるように

 

「……後は、お願いします」

 

「は?」

 

「よくやったエリオォ!!」

 

反射的にデュランダルを後ろに思い切り振る

低い金属音と共に凄まじい重量………ちょっ!?

 

「ガッ!?」

 

完全なる不意打ちだった為に受け流す、という事が出来ず。圧倒的重量によって地面に強く叩きつけられる

 

「吹っ飛べぇぇぇえ!!」

 

「くう、あっ!!」

 

ギリギリの位置での回避が間に合う

エリオの姿はもう無く、目の前には体と同等の大きさのハンマーを担いだ小さな騎士

そしてその隣に少し遅れて降り立つのはムキムキな体に犬耳のゴツイ男……って

 

「どうしてこんなとこにいるのかな、なのはがやられたとかはねーだろ」

 

「アインハルトは一旦引かせてあたしゃなのはから離脱して来たんだよ、テメーをぶっ飛ばす為にな」

 

そうですかい

今の攻撃で残りライフは500、ちとヤバイな

 

「そもそもなんで俺なんかに二対一、いや、エリオも入れたら三対一か」

 

「簡単だよ、あたりらにリミッター付けりゃその分技術面も悪くなるけどリミッターじゃあスキルは防げねぇ、お前だったら魔力の問題を考慮した中で一流になっちまう。つまりこの模擬戦で一番有利でいつも通りはお前ってわけだ。だったら数当てて潰せばいい」

 

なんかヴィータが説明すると違和感感じる

まぁつまりだ、リミッターつけたら蛇口が狭くなるわけだからいつも通りの戦闘が出来ない、簡単に言えばちょっと弱くなるわけだ

だが俺はスキルのお陰で蛇口が狭い事を考慮した上で一流になれる。いつもとそう変わらない力で戦えるというわけ

アインハルトが引いたと言うのはダメージ三桁での撤退、ザフィーと彼女なら確実にザフィーの方が実力は上だしな

で、ヴィータは完璧になのはを潰すわけではなく足止め、移動砲台のなのはに動かれれば厄介と感じたのだろう

最後に、エリオがザフィーがアインハルトを倒す時間を作ってヴィータと共に俺に当てる。その間にダメージも入るからな

恐らくは同じ様な感じで二人で一人を潰していく形、最後はFBの二人ってわけか……短期決戦どころか長期戦想定してんじゃねぇか

 

ザフィーのライフは残り1800、ヴィータのライフは1600、でもって俺は500、一旦引くと言っても転移中に攻撃されるのが目に見えてるし俺が落ちればシグナムに三対一……うわっ、これヤバイ

 

「いくぞアイゼン!!一瞬で終わらせっぞ!!」

 

「お手柔らかにお願いな!!」

 

とにかく、今は隙を作って逃げ出す事だけ考えよう

 

 



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師匠交代

忙しくてハーメルンにログイン出来ない日もあるこの頃です……
遅れての投稿、土日にはまた上げたいです



「でぇぇぇぇやぁ!!」

 

「うっ、ぐおっ」

 

ハンマーの軌道をズラしてスレスレの位置での回避

爆風と砂塵、抗う術などなくゴロゴロと転がる……クソッタレ

 

「スフィア展開、一斉放射!!」

 

「させん!」

 

およそ十数個のスフィアが全て硬い盾によって防がれる。ここから斬りかかればやられるのは目に見えている……だからこそ、確実に撤退を………

 

「鋼の劔!!」

 

「グアッ!?」

 

設置型の魔法によって後方へと飛ぶ、今ので受けたダメージは150、ギリギリのところで回避が出来た

残りは……120、100切ったら行動不能、撃墜って意味だからな……軽いのでも一瞬で終わる

 

撤退が出来なかった為に再び二人と向き合う、相変わらず体にあっていないハンマーを構えるヴィータと拳を向けるザフィー

それぞれのライフは全く減っていない、こっちから攻撃を仕掛けていないので当たり前と言えば当たり前なんだが

 

「せめて、ザフィーを引はがせれば何とかなるかもしれねぇけど」

 

それでもこのライフ差はキツイか?

どうしてザフィーなのかと言うとヴィータは俺にとって相性がいいから、ガチで

単純な理由なのだがあいつはパワー型、一撃に全てを込めるタイプ……その代わりと言っては何だが俺にとってはシグナムやフェイトより断然ノロい

ヴィータが一発打ち込んで来る間に俺は二発打ち込める、それにハンマーの軌道をズラす技術力もあるので一方的な試合展開に持ち込める可能性も高い

まっ、その代わりと言っては何だが防御が紙同然の俺では一撃食らっただけで大ダメージなんだろうが

 

「さて、どうする……」

 

正直このまま粘っても結果は見えている。

残ったライフ全て使っての特攻か、でも戦況が分からない今、前衛が抜けるのは痛手となるか……

 

「っ、ザフィーラ!!」

 

「分かっている」

 

満身創痍の所にピンク色の鎖が目の前を飛び交う

それと共に少しづつ軽くなる体……ふぅ

 

「そっちから来てくれるなんてな……なんというか、地獄に仏とはまさにこの事」

 

「後ろはシャマルさんがいるので大丈夫です。そう簡単にケントさんを落とさせません!!」

 

隣にフリードはいないがその姿はいつも以上に頼り甲斐がある

まあそれでも……

 

「そう簡単に捕まる様な奴らじゃないからな」

 

「サポートは任せて下さい、いけますか?」

 

おう、と答えて前に出る

ライフは少々回復したとはいえ210という数字、一撃食らえば終わりというのは変わりないのだがキャロが出来るのは回復だけじゃない

 

「ヤバい時はヤバい時でしっかりと引けよ、勝てる確証があるわけでもないんだから」

 

「分かりました」

 

それぞれが構える。キャロが来たとはいえ劣勢な事になんの変化もない

ま、それでも一人と二人は違うんだよ

 

「スピードの強化頼む!!」

 

「はい!!」

 

「行くぞザフィーラ!!先ずはキャロから狙うぞ!!」

 

「ああ!!」

 

キャロの詠唱と共に一気に体を前に押し出す

ヴィータが目を見開いているのが分かる……外から援護してもらうって始めてだな、自分でも速くなったのを感じる

 

「はぁっ」

 

「うっ!!」

 

下から振り上げたディランダルをアイゼンによって受け止められる

そのまま押し込めるなんて思わない……だからこそ……蹴り!!

 

紙一重で後退されて躱され、追撃の為にスフィアを展開、前方へ向けての一斉掃射

さっかきまで満身創痍だった状態が嘘のように動く、スフィアがザフィーラによって迎撃される。ヴィータがアイゼンを構え直す

残り少ないライフ、守ろうとすれば防御の上からでも落とされる

それでも真っ向から打ち合えば負ける。躱せばザフィーによる追撃は目に見えてる

だからこそ

 

「ホント、こういうブースター的なのはご都合主義みたいでスゲーわ」

 

キャロの補助によって蛇口を一気に広げ、一気に決めにかかる

転移によりヴィータの背後へ、使用後の一瞬の硬直の隙に相手がこちらを振り返る

先程の様な助走もない、この距離ならこっちの刃が早い

ザフィーとは距離がある、彼女を一撃で落として引けば……状況は一変する

 

速さだけに魔力を使う、いわば人間砲弾、刀身に魔力を集めるよりも速さを極める事で威力を上げる

一瞬の攻防、その直前

 

 

 

 

なんかピンクとか白とかオレンジとか金色の馬鹿みたいな魔力に飲み込まれたのは無かった事にしてほしい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれだよな、収束×4とか馬鹿なのか?今までの作戦とか攻防とかなんだったの?結局アレで全員戦闘不能ってなに?」

 

「じゃあ一時間後に第二戦ね~」

 

聞けよ

 

あれからちょっとばかし気を失って気がついて周りを見渡してみれば瓦礫となった元ビル群になんか抉れてる地面

試合は結果的に最期のブレイカー×4で全員戦闘不能だとかなんだとか……実戦では全員死んでるとか考えるとエゲツない

あと一時間後に次とか言ってるが一時間じゃ俺の魔力戻らないぞ?最後にブーストかけたわけだし

なのはだってブラスター1ぐらいは使ったわけだから身体的にしんどいだろ

 

「ん?全然平気だよ?」

 

それは多分貴方が異常なだけです

それはそうと大切な事だが砲撃でバリアジャケットがビリビリになってあーだこーだは無かったぞ、いや、意識あったら見れたかもしれないけど意識なかったから、あとフェイトは結果的にソニック使ってたらしく見れなくて残念とか全然思ってないから、思ってないからな!!

 

「いや~、やっぱりこれ、ポロリ大量祭りだね」

 

あとなんか何人かがげっそりしてて馬鹿妹が妙にテンション高いのも気のせいだ

取り合えずまた一日中死戦を繰り返すのは身が持たないのでパスする。その間にカメラを取り出しいつでも録画が出来る状態に……うん、完璧

 

「取り合えず没収や」

 

奪われた

いや、俺は日頃の訓練の資料にするためにカメラを設置したわけであって

 

「後で戦闘データ分けたるわ」

 

…………ありがとうございます。

だってさ、あれだけ死に物狂いで頑張ったんだからさ、これくらいの見返りがあってもいいと思うんだ

 

「なんかケント君、珍しく己の欲望に忠実や」

 

この模擬戦に期待してしまう自分がいます

てかそういうはやては大丈夫なのか?

 

「リインが補助してくれるから大丈夫よ~、ネリアちゃんは食べたら魔力なんてどうって事ないっていってたしな」

 

どういう理屈だそれ

 

なのはに次は辞退することを伝えに行く、渋々ながらも了承してくれた

少し離れて試合の観戦をするためにスフィアを作ってそこら辺に散らばらせる。隣にメガーヌさん……うん

 

「えっと」

 

「お疲れ様でした。凄かったですね」

 

そりゃどうも、俺もよくあの体力で戦えたもんだ

 

「それにしたってあの剣捌き、並の練習では身につかない筈ですから」

 

「ん、ん……まあそうなんでしょうね」

 

その努力やらなんやらを俺は本当にしたことがあるのかはわからないんだけどね

 

「あ、一応先程の試合データ、撮ってるんですが見ます?」

 

「あ、はい、お願いします」

 

「色々と修正はさせていただきましたけど」

 

…………はい

 

「仕事が早いでしょ?」

 

ホント、お早いです

 

俺の代わりにガリューが参加し、彼の代わりに俺がスタートの合図をかける

やはりというかなんというか、さっきは確認出来なかったんだがアインハルトが生き生きしている……楽しいというか、全力って感じ

 

「彼女、凄く変わった形ですよね、管理局で働いてたので色々な武術は見て来たんですけど……」

 

「まあ彼女のは例外ですよ、早々お目にかかれるものじゃないですし」

 

ふと気になったのだが覇王流って他に出来る奴はいるのか?

てかそもそもアインハルトって誰に教えてもらったんだ?我流か?

そんなこんなでザフィーラに突っ込んで行く彼女……これってアレじゃね?新しい師弟関係みたいなのでも生まれたか?

 

なんかノーヴェが師匠になるのが無くなったかもしれない、いや、そこまでするつもりは無かったけど……それでもアインハルトにとっては同じベルカの実力者でもあるザフィーの方が合ってるんだよなぁ

 

「どうしたんですか、頭をかかえて」

 

「世の中は、こんな筈じゃ無かった事ばかりだ」

 

クロノの名台詞を拝借

 

「てかさっきの模擬戦、どんな流れだったんですか?終始状況が掴めて無かったんで」

 

「そうねぇ、一言で表せばずっと均衡してたわね、それでそれを崩す為にブレイカーを撃ったら四人同時だったって感じ?」

 

いや、疑問系で返されても

まあ妥当かな、俺はエリオを落としてたわけだし敵チームのザフィーはアインハルトを落としてた、人数的には丁度いい感じってわけか

 

「最終的には全員収束砲撃に巻き込まれて撃沈、全部相殺しきれずに爆発したからみんな巻き込まれちゃったの」

 

人間が出来る次元を越えてる感じもするがな

それよりも壊してしまった建物の損害とかは大丈夫なのか?

 

「それならお構いなく、あの子が趣味で作った物ですし」

 

お子さんの将来は建築家で決まりですかね

 

ちなみに第二戦はシグナムとなのはの同士討ちで火力で有利となった青組が勝利を収めた

 

 

 





*キャロとルーテシアが逆になるという大きなミスがありました……急遽二人のチーム分けを変えさせていただきましたm(_ _)m


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夕食前

「インターミドル……ですか?」

 

「うんそう、もう流れとかそんなんガン無視してそういう話になるのが見えてたから切り出してみた……元なんて知ったこっちゃねぇ」

 

一年早い伝々はこいつがここに来てる時点でアウトなわけだしな

模擬戦もあらかた終わり、慣れていないのに全力で動き回った奴らがガクガクブルブルしてる中で取り合えず切り出した

ちなみにガクガクブルブルな奴らっていうのははやてとかネリアとかな、普段あんまり動かないのに無茶しすぎだ

 

「あの、私は遊びの為に戦っているのではなく……」

 

「あ~、出たい出たくないは自分で決めればいいと思うよ、俺もただの思いつきのわけだし」

 

インターミドルを彼女に紹介した理由もある

まず覇王の悲願やら使命やらなんたらの目的を遠ざける事、原作の影響が少しでも残っているんだったらいつかこいつは聖王のクローンがいる事を嗅ぎつけるしそれで何をするか分かりゃしない、最終的にどうなるかは知らんが大会を通してこいつがアインハルトという『競技者』に少しでも近づいてほしいこと

 

もう一つが広い世界を見せる事、今回の旅行で恐らく認識しただろうが子供を除くこのメンバーでアインハルトは最弱に近い、学校内でトップという小さな世界の中で『強さの証明』やら『悲願の達成』なんかよりももっと明確な目標を持ってほしいということ

 

「インターミドルですか、いいな~、私達は来年からじゃないと出られないんですよ」

 

「十歳以上ですからね~、アインハルトさんは今年から大丈夫なんですよね」

 

「ギリギリだな」

 

インターミドルの話題にヴィヴィオとコロナが食いついてくる

参加資格は十歳から十九歳……あれ、Stsでなのはとか出てたら無双出来たんじゃ………

 

「んじゃ後は師匠よろしく」

 

「誰が師匠だ誰が」

 

ザフィー以外どこにいる

説明&交渉はザフィーに全て丸投げする、いや、ザフィーも彼女の事なんだかんだで他の子供とは違うとは見破ってるしアインハルトの事を思うなら努力とは無縁の俺が説得するよりもザフィーの方がいいだろ?

やれやれと言った感じで説明をするザフィー、なんかもう……本当にザフィー師匠だよな、そこまでいかなくてもコーチは確定か?

 

「ん……しょ……」

 

軽く背伸び、この一日は模擬戦だけで殆どが終わった、てかもう夕方に近い

子供組はさっきの場所で、メガーヌさん、なのはは恐らくキッチン

八神組は一家でくつろいでるだろうしテスタロッサ家もまた同じ

他は散歩やらなんやら行ってる

 

「ネリアは……いないな、一人か」

 

夕飯までには少しある、引きこもりに近いこの体に一日鞭を打ったのだ、少々の眠気

軽く昼寝でもするかと思い自室へ

途中で水でも貰って行こうかと思いキッチンに寄り道

なのはからは栄養ドリンク……水じゃないけどまあいいか

ついでにリビングで待ってる人にも持って行ってあげてと言われたので承諾、相手は緑の長髪………あれ?

 

「お前いたっけ?」

 

「やあ久しぶり、ケント」

 

ロッサ?

 

 

 

 

 

 

「つまり今捜査している事の拠点としてここを使っていたと……なんか無茶苦茶久しぶりな気がする」

 

「知らなかったのかい?はやて達は普通だったんだが」

 

いや、はやて達は局員だから事件内容とかも知ってるかもしれないけど俺はそんなのに全く関係ない民間人だから

 

「ケントも局員じゃなかったっけ?」

 

「………あ」

 

はやて達より上だった

 

「てか俺がカリムから聞いた話だったら世界を飛び回ってるとか聞いたんだが……拠点って事はこの近くなのか?」

 

前聖王教会に行った時にそう聞いたんだが

 

「いや、それに関しては他に預けて今は別の事で調査してるんだ、比較的ここと近い世界だよ」

 

ロッサも大変そうだ、やっぱり引きこもりとは違うな

 

「で、どんな事を調査してんだ?危ない事とかしてんじゃねーだろーな」

 

「えっと、微妙かな?」

 

おい

 

「詳しい事は言えないんだけど……数年前に起きた戦争とそれを引き起こしたロストロギアの調査だよ、管理外世界で今は人どころか生物さえも生きていけないレベルなんだけどね」

 

「………どういうことだ?」

 

人は分かるが生物さえもって……いくら強力な爆弾が落ちようが隕石が落下しようが生きていく生物はいるんだぞ?

例えば……Gとか……

 

「僕たちはそのロストロギアが関係してると考えてる、戦争を終結させたのも、生物全てを殺し、この先何千年も不可能にしたのも………他の世界にそんな物が流失したら大変だからね、僕のスキルで絶賛調査中ってわけさ」

 

「ふーん」

 

管理外世界の出来事だから余程の事がない限り他世界に持ち出させる事は少ないだろう

てか戦争か……当たり前だよな、数多ある世界の中で今も平然のように戦争は起こっているわけだし

これ以上聞くのはお門違いなわけだしやめておく、何故かは知らんが生物が生きていけない世界での捜査なんだったらロッサには出来るだけ安全第一で頑張ってもらう事ぐらいか?

 

「そんな事より旅行はどうだい?これだけ女の子がいるんだからハプニングの一つ起こっても可笑しくないと思うんだけど」

 

「ハプニングというか命の危機はあったぞ、あれはラッキーだったのかアンラッキーだったのか分からん」

 

眼福ではあったがそれ以上にヤバかった

 

「拠点に帰って来てるってことは今日はここに泊まるんだろ?お前もお前でいい事あるといいな、イケメンなんだしそろそろ相手探してもいいんじゃないか?」

 

「ケントに言われたくはないんだけど……」

 

俺に彼女達はもったいない感じがする。今でも同居させてもらってるんだからそれで充分だ

 

「まぁ僕はこうやって友人がいてくれたらそれでいいよ、やる事も一杯あるしそこまでは手が回らないかな?」

 

「俺は男に興味はねーぞ」

 

「いや、そういう意味じゃなくて」

 

分かってる、ロッサがそっち系じゃないと信じてる

ただなぁ、子供時代に追いかけられた事もあるからなぁ……九歳の頃でGODだっけか、あれは辛かった

 

「幼馴染男組で勝ち組なのは、綺麗な嫁さんがいるクロノだけか」

 

「いや、勝ち組とか負け組とかそういうのじゃなくてね」

 

ロッサはすぐに見つかりそうだしな、聖王教会ないで美人なシスターでもふっかけそうだ

俺は何だかんだで近づいてくる女は全部金目当てだし……フェイトは生涯片思いで終わりそうだし……てかフェイトと俺では全く釣り合わねぇし………

 

「時々お兄様は深夜アニメの主人公かーて思う時があるのです」

 

「あ、久しぶりネリアちゃん」

 

「久しぶりでーすロッサさん」

 

椅子に座っている俺に対して後ろから抱いてくる形でネリア登場

疲れはすっかり癒えたらしい、少し湿っぽいから風呂にでも入ってたか?

 

「てか何故深夜アニメの主人公?」

 

「深夜アニメは見たことないけどなんか分かる気がするよ」

 

「でしょでしょ」

 

解せぬ

 

「思い切ってドバーッと、好きな相手がいるんだったら告白しちゃえばいいのに、二十歳にもなって恋人いない=年齢もどうかと思うよ」

 

恋人いない歴=年齢じゃない

恋人いない歴=年齢+前世だ!!

 

「てか当主がそんな事言っていいのか?今は減ったが当主としては有力者と俺を結婚させた方がこれからを考えれば都合いいと思うんだが……」

 

何だかんだ言ってネリアは当主、コルテットの純血でバックとしては権力者の俺にはそれなりにデカイ奴とくっ付けた方が家としては嬉しいだろう

 

「ん~、心外ですな~、お兄様が幸せになれるならコルテットなんてどーでもいいよ?そりゃあ幹部のジジイとか分家の奴らはうるさいだろうけど私はそんな事させるつもりはないよ~」

 

だろうと思った、家族思いというかなんと言うか……かと言って俺はしょーもない男にネリアをやる気はさらさらないんだが

 

…………てか今聞き慣れない単語があったな、分家?

 

「あ~、うん、お兄様が知らないのは当然だね、私も当主になって最近聞いた話だし」

 

「ちょいまて、そんなもんがあるのか?」

 

コルテットのシステムに侵入した事は多々あるがそんな単語は聞いた事もねーぞ

 

「私も直接見た事はないよ?ただ裏からのバックアップとして存在する影みたいなのらしくて……う~ん、どう言ったらいいのかな、役割としては婚約者とか?」

 

「はぁ?」

 

なんだそれは

 

「う~ん、世継ぎとかがいない場合は分家の人間が本家に来たり、婚約者がいなくてロクな企業もない、結婚出来ないとかって言うばあいはその婚約者としてとか……お兄様のお母さんとそうらしいよ、お兄様のお父さんの時にロクな企業が無かったから分家からもらったんだって」

 

「へぇ」

 

分家ねぇ、そういうからにはコルテットの家系なんだろ?

つまり親戚か、あったんだそんな血縁関係

 

「まぁ『血を守る』っていうのが最大の使命なんだろうね、てかコルテットっていつからあるんだろ、今の時代血とか気にしてるって相当だよ?」

 

「だよなぁ」

 

俺も詳しい事は知らね、俺が生まれてから力を増したのは事実だけどその前から大企業だったわけだし

 

「ま、あまり気にする必要もないよ、実際表に出てこないから関係ないわけだしお兄様には幸せになってもらえれば、それでネリアも幸せなのです」

 

「ありがとな」

 

えへへ~と笑うネリア、好きな相手に告白か……

 

「えっと、僕はここで聞いていて良かったのかな?」

 

「ん?大丈夫ですよ?まぁ念のため他言無用でお願いしますね」

 

「りょーかい」

 

内容自体はそこまで重要には思えないが俺でさえ知らなかったからな、もしかしたら極秘なのかもしれない

 

子供組がいる方からワーという声が聞こえてくる、ザフィーが説得し終えたようだ

キッチンからはいい匂いが漂ってくる、そろそろ夕食だ、さて

 

「風呂にでも行ってくるかな?」

 

夕食前にサッパリしておこう

 

 

 



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デバイス

vividってどうやったら完結するんでしょうね?
あらすじ通り行き当たりばったりのアカルトなので先の事は全く考えていません(ーー;)

まぁそんな事は置いて置いて非常事態です。FULL COLORコミックvivid&Forceの二冊がまだ買えていない……なのはシリーズのコミック全てを揃えている自分にとっては大変な事態です
ただ忙しくて買いにいけない……手にする時はいつになるやら(。-_-。)



 

「真正古代式のデバイスを俺に作れと、はやてなら楽々じゃねぇのか?」

 

「ん~、出来るは出来るんやけどやっぱりその道のプロの方がええかな~て」

 

夕食を食べながら隣に座っているはやてがそんな話を持ち出して来た

なんでもインターミドルに出るにはルールとしてCLASS3以上のデバイスを装備する事、アインハルトのは純正の覇王流なのでどうしても真正古代式のデバイスじゃないといけないんだと

てかホント、原作では八神家が作ってたんだからそれでいいだろ

 

「そもそも俺には真正古代の知識なんてねーぞ、せいぜい自分のデバイスをいじるのとメンテナンスの真似事するくらいだ」

 

「ん~、ケント君のレアスキルでいけるんとちゃうの?」

 

不思議そうにするはやて

まあ皇帝特権があれば何でも出来ると思われがちだけどな、案外そういうわけでもないんだ

 

「例えば俺が『数学』を扱いたいからそれを主張したとしよう」

 

「ふむふむ」

 

これって説明が難しいんだよな、明確な例えが少なくて

 

「しかしもしもだ、俺自身が1.2.3などの数字、+.−.×.÷などの記号、分数、少数、負の数、xやy………こんな初歩的な事を全て知らない状態で 『数学』を主張したところでなんの効果も得られない、基本を知らない0の状態からは何も生まれない、0にどれだけ有能な数字を掛け合わせても結局は0だ」

 

「………ん?」

 

分かりづらかったか?

 

「あ~、じゃあ大雑把になるけどはやては『イチゴ』を姿形、味や色も知らない状態で収穫しろとか取って来いとか言われても無理だろ?」

 

「そりゃ元を知らんかったら無理やな」

 

それと同じだ

 

「いくら有能な才能があっても元を知らなければ無理ってことだ、だけどしかし、俺という人間は『イチゴ』を育てる方法、『イチゴ』がどの辺に成っているなどの『最低限の情報』さえあればその小さな知識を応用して『その情報内で一流となれる』、そこからは『その一流の中』でさらに応用を効かせて……って感じ、最終的には味覚、形、土地など、全てにおいて最高のイチゴを作れる……みたいな?」

 

「まぁ簡単に言うとなんにも知らん状態で何かを作り出せへんってわけやな」

 

まぁそうだ、何事も基礎がなければ何も出来ない

メジャーリーグで活躍できる才能があっても野球とは無縁な生活だったらただ才能を持ってるだけの人間で止まる

 

「ただ今の話を聞いてる限りは基礎さえあればいいのが出来るんやろ?」

 

「まぁ、そうなるな」

 

真正古代式の知識さえあればミッド式デバイスをちょちょいと弄ればすぐ出来ると思うし

 

「って、はやてお前まさか」

 

「やったら手取り足取り教えたるで、せっかく始めてのデバイスなんや、アインハルトちゃんにはいいの持って貰わんとな」

 

勉強嫌でござる

てか俺はクロノから頼まれたのも作らないといけないんだ。これ以上の面倒事は御免蒙る

それに八神家総出で作ればそれ以上のが出来るだろ、俺が作っても確実にティオになるだろうし

 

「えっと、駄目なら、大丈夫です。何とかして探しますので」

 

「いや、そういうつもりは」

 

みんなからの目線が冷たくなる。

………俺が悪いのか?

 

「………分かった、作るよ、頑張るよ、仕事するよ、脱ニートするよ」

 

「了解や」

 

色々たぶらかしてはやてに殆どやらせよう

アインハルトのデバイスを作るとするならやっぱりティオが原型だな、てかこの流れになるとヴィヴィオら辺も来年頼まれる気がするんだが……俺は何でも屋じゃねーぞ?ただの引きこもりだぞ?

でもなぁ、アインハルトにインターミドル進めたのは俺だし、それくらいはしないといけないよなぁ

 

「……ったく、また今度コルテットにある研究施設でも使わしてもらう事になると思うけど、大丈夫か?」

 

「ん~、ネリアは全然平気だよ?てか我が家なんだからそんないちいち許可取るなんておかしいよ」

 

それもそうだな、取り敢えず聞いておきたかっただけだ

 

「結構本格的に作るつもりなんだね、てかケントってそんな技能もあったんだ……また今度バルディッシュの点検もしてもらっていいかな?」

 

「フェイトには専属みたいなもんいなかったか?補佐官でさ」

 

「えっと、うん、まぁ、そうなんだけど」

 

うう、と言って黙り込んでさはまうフェイト、いや、だってそうなったらシャーリーが立場なくなるだろ

 

「あらかじめ聞いておくけど武器とか何やらはいらないだろ?今の動きを良くする補助や魔力調節してくれる制御型みたいなのでいいか?」

 

「あ、はい、お願いします」

 

ぺこりと頭を下げるアインハルト、それで良かったよな?

詳しいことは全く覚えてない、余計な装備は無かったと思うからそれで大丈夫だろう

 

「あと大人モード自体の術式も組み込んどくよ、術式自体は公式発表したとはいえ上手く扱えてない燃費が悪い奴らが多いからな、キチンとした原型使っとけ」

 

「え、あの、原型って?」

 

言ってなかったか?

 

「大人モードを開発したのはケント君なんだよ?その本人も絶賛使用中」

 

「魔法解いたらホンマ小さいもんな~、合法ショタの出来上がりや」

 

「だからと言って解くつもりなどさらさらない、ショタなんてまっぴらごめんだ」

 

ポカンとするアインハルト、まぁそうだよな、俺自身も術式はかなり難しいと自負してるし普通はその道の専門家とかだと思うよな

これはホントに基礎しか無い中でのスタートだったから大変だったぜ、魔法の構成をちょっくらかじって後は応用に応用を重ねてだもんな、将来小さいままだと知ったからやめるわけにもいかなかったし

 

「す、すごいです」

 

「後はその知識を生かして働いてくれたら満点なんやけどな~」

 

「働かなくても紐じゃないんだよね、ケント君すぐどっかからお金集めてくるし」

 

黄金律全開にすれば経済を操れます

今更ながら凄いスキルだよね、皇帝特権無くてもこれさえあれば一生遊んで暮らせるわけだし……隠れたチートである

 

「この際だからヴィヴィオのも作って~」

 

「なのはから許可貰ったらな」

 

やっぱり言って来たよ、まぁコルテットの設備使えるんだったらアインハルトと一緒に作れるからな、そんなに手間のかかるもんでもないし

 

「ん~、作ってくれるって言ってくれるんだったらお願いしちゃおうかな?本当はマリーさんにお願いしようと思ってたんだけどね」

 

「やったーー!!」

 

ついでみたいな感覚だけどちゃんとするか、クリス基準で性能的にはアインハルトでいいよな

 

「この際だからコロナちゃんのも作るか、来年の為に」

 

「え、わ、悪いですそんな」

 

けどこの流れじゃ作らないと一人ぼっちでなんかなぁ、ゴーレムについては今の時点で知識があるか知らないから彼女と相談しながらの作業になるな

 

あーもう、ホントに脱ニートだよ、明日帰ったらやる事盛りだくさんだよ

 

「えっと、いいんですか?」

 

「やったねコロナ!!」

 

はしゃいでるが今の俺は基礎ちょっと知ってる素人だからな?今から勉強するんだからな?

 

ちなみにこの日、みんなのデバイスのメンテナンスをさせられた事は全く別の話だと思う

 



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局内散策

 

 

「主体となるコアをほぼ完成かな、後は機能やら軽量化やらに力をいれてやれば……ここまで長かった~」

 

自宅の机に体を放る

目の前にはデバイスの中核となるコアと外部に使うぬいぐるみが三つ

旅行から帰って来て五日、頼まれたデバイス制作を始めてから五日でもある

好きな奴は好きなんだろうな、デバイスいじくるの

 

そんなわけでデバイス制作も終盤に差し掛かった今日、一息つくためにリビングでお茶を飲む

 

家には誰もいない、てかみんな学校やら仕事やらで殆ど俺一人なんだけどな

 

序盤はコルテット研究施設でしていた制作も慣れるにつれ簡単な設備と道具さえあれば魔改造可能と判断、利益にもなんにもならない事で従業員の邪魔をするのも何なので家でしているわけだ

デバイスについては……恐らく原作より性能いいです、ハイ

具体的な事に関してはどうとも説明出来ないが明らかに魔改造施しました、てか二十年前に作られたデュランダルよりは遥かにいいと思う

わかりにくいか、まぁもっと言えば管理局中探してもこれと同レベルのもん持ってるのはいねーんじゃねーの?みたいな感じ、金出せば買えるようなデバイスなんだったらどうして俺が手作業で作ってるのか分からなくなるしどうせ作るんだったら極めないとな~と……皇帝特権、今更ながらにチートだよ

 

あとおまけであるデバイスの外見、これは原作通りの兎と虎、全く同じデザインのぬいぐるみ手に入れるのに苦労したんだぞ?

ついでに言っておくとコロナちゃんのデバイスにもぬいぐるみである、いやだって、二人は可愛らしい動物なのに彼女だけ原作尊重して短剣じゃあ……可哀想でしょ?

明らかにはぶられてるじゃん、無機物じゃん

デザインは犬、何故犬かって?

………いや、ポピュラーじゃん?虎って猫だろ?じゃあ犬じゃね?

犬種とかは知らん、茶色、ただそれだけ

 

大人モードに関してはどうしようか迷った、アインハルトには付けるの確定だしヴィヴィオに関してはそういった要望もないし

という事でヴィヴィオとコロナちゃんに関しては本人からの希望がありしだい付属する事に、結構ヴィヴィオの大人モードって読者サービスだったわけだろ?付いていようがなかろうが殆ど問題ない

 

「デバイス制作には一週間時間貰ったから、そこら辺足していくと……明日には終わるか、相変わらずのギリギリ、そんでもってクロノからの依頼全くやってねーし」

 

まぁクロノだしどうとでもなるか

え、だってクロノだし

 

時間はお昼前、一人で食うのは寂しいので八神家やら実家であるコルテットやら色々模索する。

………ん~

 

「局でも行ってみるか?」

 

いや、まぁそう『マックに行こう』みたいな軽い気分で行けるわけではないんだけど

理由はと言うとこの三日間、フェイトが帰って来ていないのだ

いや、別にそれが問題だ~とかってわけではないんだが、なのはやはやても局内で見る事は殆ど無いらしい

こちらからの連絡にも出ない時があるし連絡が通っても表情がなんだが優れていなかったりと正直に言えばあやしい

いや、断じてストーカーやらそういったわけではなくだな、軽く様子でも見にいくか~という

フェイトだからなんか徹夜で仕事とか平気でしてそうだし

一応俺も局員だし(将官だし)局内に入る事を断られたりはしないだろう。もしなんかあればクロノにでも頼めばいい、ホントクロノまじ便利

 

ついでにデバイスのコアを三つとも持っていって軽く見て貰えるようなら見てもらう事にする。いくら主張したと言えども素人には変わりない、検査してもらって悪くはならないだろう

 

ま、局に行ったところで邪魔ならすぐに帰ってくるし長居するつもりもないんだけどな、疲れた体の為に気分転換だ

 

車に乗って走り出す……今ふと思った事なのだがバイクを買うのもアリなのかもしれない

 

 

 

 

 

 

 

「で、なんで局にお前がいんだよ」

 

「ほう主か、なに、局の奴らを鍛える為に雇われてな、相変わらずここの人間は貧弱者が多すぎる」

 

そうですかとだけ答えて局内を散策する

本当の興味本位で訓練場を覗いてみれば見知った顔が、ロストロギア本体が無くなってもなお、常人を遥かに超える肉体を誇る奴、『ヴラド』

あの獣耳事件で大変にボコられたのは未だに記憶に新しい、今はロストロギアの影響が残るその体を評価してコルテットで雇っているのだが……

 

「あれか、鍛えるって言う前にお前がただ目の前の局員を弾き飛ばしてるだけじゃねーか、鍛えるも何も差がありすぎて幻滅してんじゃねーか」

 

「ふむ、シャッハも同じ方法でシスターを鍛えていたのだが」

 

あの人に常識を求めてはいけません、いやお前もだが

一つ言える事は今こいつがしているのは訓練ではなく殲滅に近いと言う事だけだ

 

「主もどうじゃ、一戦交えるか?」

 

「遠慮しとく、お前とやるとなるとこっちも相当な覚悟決めないといけないし正直言ってしんどい、あとめんどい」

 

最後のが本音である、シグナムみたいなバトルジャンキーだったらまだしも俺はそうではない、誰がお前みたいな暑苦しいのと戦うか

 

ヴラドと別れて再び本局を散策する、やはり局内で私服は珍しいらしくすれ違う局員がジロジロとこちらを見てくる

まぁそれでも中には俺の顔を知っている奴もいるらしくコソコソと話したり時折敬礼してくる奴もいるんだが……あ、局内には案外簡単に入れました。顔パスでござんす。

 

「にしてもこの広い局内、見知った顔を探すなんて難しいよな、まぁヴラドは別として……会議中とかだったら目も当てられないし」

 

まぁその時はその時で割り切ろう

 

己のアホ毛が示すまま歩く、一種の観光みたいである

不意にアホ毛が反応を示した、いやなんかそんな感じがしただけで特にどうこういった物ではないけど気分で

目の前には曲がり角……あれ

 

「あ、お兄様」

 

「仕事から逃げて来ただろ」

 

無論取り押さえた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うう、この毛が指し示した先にはまさかのお兄様だなんて、やっぱり兄妹だから引かれあってる?いつもなら嬉しいけど今回ばかりは嬉しくなーい」

 

「てか会議がめんどくさいからって普通局に逃げ込むか?お前の行動力に俺は呆れる」

 

「すごいでしょ」

 

「褒めてない」

 

だからその胸を張るな、胸を

 

「それでもコルテットに差し出さないお兄様は何だか凄く怖いのです」

 

「怖いってお前……俺はただ食事相手がいてくれたら助かると思ってだな、それが終わったら問答無用で差し出すからな」

 

「はいはいツンデレツンデレ~」

 

「ぶっ飛ばしてやろうか」

 

次に出会ったのはネリア、てかヴラドもネリアも局員じゃねーのに何でエンカウントするんだよ

どうやらネリア、今日開かれる会議がクソ長くなる恐れがあるので逃げて来たのだとか、いや、逃げるなよ当主、それに逃げた先が局っていうのもどうかと思うが

理由を聞けばフェイトなら匿ってくれると思ったのだとか、まぁ彼女ならなぁ……最終的に「今回だけだよ」と言ってくれそうだ

あと俺ら、さっきよりも目立っている。

まぁ顔が瓜二つだし私服だしで目立つ要素は数えだしたらキリがないんだけどな

どうやらネリアはフェイトの仕事場所を知っているらしく今回ばかりは俺もコルテットに差し出すのをやめてやった、公開意見陳述会で会議の大変さは俺もよく知っている。今回ぐらいは別にいいだろう

辿り着いたのは一つの部屋……てかここって仕事場所じゃなくて個室?

う~ん、まぁ局内で寝泊まりしてるくらいだから仮眠室とかはちゃんとあるのか、フェイトみたいなベテランだったら小さな個室の一つくらい与えられてもおかしくはないのか

周りを見渡すと同じ様なドアが続いてるし……女子寮的な何かか?まぁ本局は地上にあるわけじゃなくていちいちワープしないといけないからこっちの住み込みのほうが便利ちゃー便利か

あ、でもここって女子寮だろ?なんか凄く居辛い

 

ネリアがインターフォン的なのを鳴らす、なんかネリアを見ていると『今回だけ』という事ではなさそうだ

 

『えっと、はい』

 

「ネリアだよ~、遊びに来た~」

 

なんか凄くげんなりした声、寝てたんじゃないのか?

最初はそうだったのだがネリアの声を聞くといつも通り「今開けるね」と言ってドアに近づいて来る音が聞こえる……

………来ても良かったのだろうか?てか寝てたのならヤバイかもしれない、基本フェイトはかなり薄着で寝るのが好きらしくそれにここは女子寮、気は緩んでいるかもしれない

一旦離れようとしたところで……ドアが開いた

 

「来る時はちゃんと連絡してって言ったじゃん……ってケント?」

 

「えっと、よ」

 

フェイトの格好は……局員服だった

執務官用の黒い奴、やはり徹夜だったのだろうか、さっきのげんなりとした声もそれなら筋が通る

 

「取り合えず入っていいかな?お兄様もいるけど問題ない?」

 

「え、あ、うん、どうぞ」

 

先に入るネリア、中は妙に……薄暗くも感じた

 

……………さて

 

「その様子だとまた無茶してるんでしょ、駄目だよ体壊すまで働くなんて、私みたいに適度な休暇も入れないと」

 

「う~ん、ネリアはもうちょっと頑張ってもいいんじゃないかな?」

 

コンセントの裏、パソコンの中、時計の中にもか

あっちに関しては……スピーカーの中、窓にも魔法で巧妙に隠されてる……補助型か

 

「む~、それでも体は大切にしないと駄目だよ?健康が第一、二人が元気でいてくれればそれだけで私は満足なんだから」

 

「ふふ、そうだね、健康第一だもんね」

 

コンセントの周りを慎重に剥がす……当たってほしくなかったけど、やっぱりか

 

「お兄様からも何か言ってあげてよ……ってなにしてるの?」

 

「ケント?」

 

出て来たのは……黒くて小さな物体

小さなマイクがついておりそこから音声を拾う……さて

 

「盗聴器が三つに超小型カメラが二つ」

 

フェイトが目を見開く

今は無いがネリアに対処するためにこういった事に関して直感が馬鹿みたいに働くんだよ、じゃあ

 

「軽く、説明してくれねぇか?」

 

もしもの事をされてれば、俺は相手に少し怒らないといけないぞ?

 

 

 



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人海戦術

何度か書き直したのですが出来はあまりよくないです


 

 

 

『フェイト達はアイドルだ』そう言われると、俺は否定する気など全くない

否定する要素が無いからだ、言っちゃなんだが顔良し性格良しスタイル良し仕事も出来るエリート、あげていけばまだまだある

欠点なんて欠片もない、それほどまでに文句のつけようがない、完璧なのだ

フェイトを好いている人間なんて俺だけではない、絶対と断言出来る

なのはも、はやても……もっと言えば守護騎士達だって

もし数える事ができるとすればどれだけの数がいるのだろうか……考えただけでも寒気がする

 

なのにどうして、彼女達には男が出来ないのか……単純にお断りしているのもあるだろうが一番の要因は『周り』かもしれない

 

フェイトは親に元提督を持ち実の兄が元提督、本人自身も執務官

はやてはSSランクの魔力にレアスキル、出世街道間違いなしのエリートであり後見人は権力者であるグレアム(生きているかは知らん)

守護騎士達はそういった話題には興味はないだろう。彼女達にとってははやてを守り、側にいることが務めであり幸せ、主を置いて男について行くなど想像も出来ない

なのはについては……管理外世界出身で他とは違いバックがいない彼女なのだが噂によると『自分より弱い男には興味がない』などと酔った勢いで言ったらしく男達の間では攻略不可能となっている

 

そんな風に、彼女達という存在はまさに高嶺の花ともいえるだろう……競争率は高く、攻略は難しい

だからこそ大抵の者は諦める、勇気を出したとしても撃沈する

 

だが、万が一だ、『歪んだ愛』を持つ者がいたとすればどうなるだろう

自分だけの物とするために、他の誰にも取られないようにするために

 

一番なのが……『脅迫』

 

 

 

 

 

手口は昔からある物と同じである

 

カメラに盗聴器、それらで得たプライべートを使った脅迫

旅行から帰って来た後、この部屋のポストに入れられていたのだとか……中身は写真やら映像やら

要求をのまないとばら撒く、ただそれだけならフェイトは動くだろう……だからこそ『娘』『友』

彼女の同僚、友人、関係のある物に同じく機械を仕掛ける。ばら撒く

そうなると彼女は動けない、自分の事はどうだっていい、だけど他人には迷惑はかけられない

だから彼女は要求をのんだ、大まかに言うとこう

 

『本局から出るな』

 

決まった時間までに部屋に戻り、本局からは絶対に出るな

 

脅迫である、いくら本局といえどもどこから見られているか分からない、相手の正体も分からない

少しでもおかしな行動をすると周りを巻き込みかねない

決められた仕事をして、決められた時間にここに戻る

 

ずっと見られているという恐怖、着替える事すらままならない

これを三日、己をずっと見られている状態で三日

もしここに来ていなければもっと続いたのかもしれない

 

「ごめんね、心配、かけちゃって」

 

「何言ってんだよ、ホント、よく我慢した」

 

ふぅ、と息をはく

俺も小さい時はずっと見られていたが、それとこれとは話が違う

 

「それで、お兄様がここに来てお姉様が喋ったって事は……もう流されてる可能性もあるって事?」

 

「いや、それは不可能だよ」

 

部屋に設置されていたのを全ての機械を外し終える

……素人が見ても盗聴器だなんて思わないな、こりゃ

 

「その相手が言っている通り、これはいちいち録画して見るタイプじゃなくてリアルタイムで向こうに映像が流れるタイプ、普通ならもうさっきの会話も俺らが来た事もバレてるよ」

 

「なんで大丈夫なの?」

 

そうだな、俺以外には無理だとは言える

 

「『無線』っていうのは確かに便利だ、だけどな、『線』はあるんだぜ?」

 

「………電波?」

 

その通り

 

「来た時、これらが発していた電波に微量の魔力を乗せた……小型のスフィアみたいなもんだ、今頃向こうの電子機器は揃いも揃ってフリーズしてるかもな」

 

かなり高度な技術だ、俺以外に真似なんて出来ない

誰かに襲われる可能性があった、誰かに監視されている可能性もあった、どこかから情報が漏れてしまうかもしれなかった……そんなコルテットの長男として身につけた技術

 

ジュッと、何が溶ける音

 

今外した物体が全て溶けて行く……恐らくは外した瞬間に発動する隠蔽魔法か何かだろう

……まぁ当たり前か、ここは魔法世界、いくらでも隠蔽する方法はあるし逆に言えばいくらでも逆探知する方法だってある

ただ物体が無くなってしまうのは……ちょっとばかしキツイかもしれない

 

「本当に電波に乗せるだけの一種のバグ的な症状みたいなもんだ、普通だったら二時間、早ければ一時間で再起動かもな、それまでにどうにかしないといけない」

 

「で、お兄様一人でやれそうなの?」

 

「………見つける」

 

強がりを言う……正直に言えば不可能に近い

 

ここは本局、張り巡らされているネットワークは尋常ではない、手がかりも何もない状態の中一時間で相手を見つける?

不可能だ、いくら皇帝特権でも俺一人で出来る筈がない

 

「……うん、一時間か……お兄様が駄目なら数で勝負するだけだね」

 

「ネリア?」

 

ネリアがデバイスを手にとってどこかと繋げる

 

「お兄様はさ……お姉様の側にいてあげて?」

 

「えっ」

 

ネリアがフェイトの側を離れる

ふぅ、と一息

 

彼女は、いつもの様に笑っている

 

「取り合えずその溶けたのは借りて行くね、ここでは無理だけどちゃんとした施設なら何かわかるかもしれないから」

 

「えっと、ネリア?」

 

ポンポンと頭を撫でられる

……妹だからな?

 

「側にいてあげて、隣にいてあげて、声をかけてあげて、目を見てあげて」

 

フフ~とまた、いつもの様にはにかむ

いつも通りの妹

 

「我慢出来なくなったら押し倒しちゃえば?暫く帰って来ないしここなら誰にも見られない、二人は何も心配しなくていい、笑っていてくれればいい」

 

「………お前」

 

彼女の発言に何かを言い返す事は出来なかった

顔は今でも笑っている。いつも通り、変わらないまま

それでも……

 

 

 

「大丈夫だよ、私が全部……始末してくるから」

 

 

 

声はこんなにも、冷たい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相手が局員だという事は何かを確認せずにも分かる

局内に閉じ込めるくらいなのだ、局員でなかったら何も得するものがない

 

指示を飛ばす。圧倒的な数による人海戦術、先ほどの盗聴器やカメラは本家の施設で解析中である

 

洗いざらい、徹底的に、全てを探る

 

絞り込むのは補助系の魔導師、フェイト自身も一流の魔導師だ。その彼女自身が気づかなかったのだからかなり高位の魔導師と捉えてもいい

 

局内での捜索行為については上を脅せばどうにでもなった

大型の取引相手に対して失礼だの何だの批判は受けたがそんな事はどうでもいい、知った事ではない

 

「………目星くらいはついたかな?」

 

まぁそうは言っても、魔導師の中には補助系の者が少ないというのがある意味幸いした

まぁ少ないと言っても調べさせている数が数だけに少ないと言えるのだが

ちなみに補助系の魔導師が少ないのは極めて簡単、『派手でないから』

 

魔法だ、誰だって憧れるし誰だって使いたいとも思う。

砲撃魔法にカードリッジシステム、そんな活躍出来そうな、もっと言えばカッコいい事が出来るのに誰が治癒やら結界やらをしたがるだろうか

 

そのせいで補助系は数が少ない、している人間の殆どが『適性が無かった』や『前線に行くのは反対された』ぐらいだ

 

その中でも高位の魔導師、補助系を極めた人間などどれだけいるだろうか

せいぜい自分としては八神家のシャマルぐらいだろう。治癒魔法、結界、転移、その全てが一流である

 

送られて来たデータ、映し出されるのは一人の男

自分としてはデブのキモオタを想像していたのだが案外外れる者だ、映っていたのは明らかに好青年と思わせる男性

年は三十前、魔力はAAで位は三佐、エリート街道真っしぐらと言うわけだ

 

「…………普通に見たらイケメンだよねぇ、どうしてこうなっちゃったんだか」

 

大体の予想くらいはつく、やはり兄を置いて来たのは良かったかもしれない

本当にそうなら相手を余計興奮させるだけだ

 

「今日は非番で住居はミッド市街地……むしろそっちの方がやりやすいかな?」

 

自分のデバイス、『ガラディーン』を握りしめる

許す気はない、エリートだろうがイケメンだろうが許す気はないのでどうなったっていい、どうせなのだ、新しくなった『コレ』の実験相手くらいにはなるだろう

 

「手は出しちゃ駄目だよ?今は監視だけでいい、それじゃ」

 

案内よろしく、とだけ言い残して、彼女自らがそこに赴く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

「………………」

 

ずっと赤面、俺も赤面

 

二人きりである、それも自宅ではなくこうして個室に

 

最後のネリアの台詞に言い返せなかったのが災いした。何が「我慢出来なくなったら押し倒しちゃえば?」だ。そんな事すりゃ俺が最低野郎じゃねーか

 

「えっと……何か飲む?折角来てくれたのにごめんね?」

 

「ん?あ~、じゃあ貰おうかな」

 

そう言えば昼飯をまだ食べていない事を思い出す……まぁいいか

それにしてもなぁ、こんなにも俺が何も出来ないなんて事中々ないよな、いくらチートを持っていたとしても腕は二本で俺は一人、どこまでいっても限界はあるということか

 

この個室には台所などないので冷蔵庫からお茶を取り出し、コップに注いでくれる

……だからと言って話題が進むわけではない

 

「ごめんね、こんな事に巻き込んじゃって」

 

「何言ってんだよ、謝られる筋合いはないしむしろ見つけられて良かった」

 

もしこれが一週間、二週間と続けばメンタル面で大変だったと思うし……俺自身も気づいてやれなかった自分を許せなくなる

 

「ネリアが動いたって事はコルテットのSPやらなんやらを呼んだんだろうよ、基本的で一番手っ取り早い人海戦術。

戦闘ではそんなにだけど数だけはいるんだ、きっと何とかなる」

 

「そんなにって……それが言えるのはケントだけだと思うよ?」

 

そうか?

 

まぁ、一般人と比べたら天地の差があるとは思うが

 

トンッ、と、肩にちょっとした重り

フェイトが隣に座ってもたれかかった

 

「ごめんね、こんな時なのに……目が……」

 

妥当だろう

この三日間どこかしらで誰かもわからない人間に脅迫されていたのだ。個室だからと言って安易に眠れる筈がない

それに部屋に設置されていたという事はこの部屋に入れるという事、目が覚めたら捕まっている……なんて可能性もある、殆ど徹夜みたいな状態でいたのだろう。

安心したからこそその疲れがドッと出た

 

「ベッドまで行けるか?」

 

「…………あのね」

 

フェイトが膝に頭を乗せる……関係ないが髪が綺麗だ

 

「えへへ、ホントは逆なんだけど……いいかな?」

 

「………おやすみ」

 

よっぽど疲れていたのだろう、軽く撫でるとスヤスヤと寝息をたてはじめる

 

ネリアからは相手を見つけたとのメールが入った、もう安心だろう。だから……

 

「あんまりやり過ぎるなよ、ネリア」

 

それだけが一番心配だ

 

 

 




本編とは全く関係ないですが……EXTRA CCCでカルナとかどんだけ……ギル様でも勝てないかもしんねぇじゃん(−_−;)



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私にとって

 

 

逃げる

 

たったそれだけ、全力で、振り切る為に、己の全てを使って

 

それでも駄目、次は何処に飛べばいい、何処に隠れればいい

 

数の暴力、権力という壁

 

こんなにも奉仕した俺を局は見殺しにした、守ってくれるものなどない

 

逃げる

 

相手は魔導師じゃない、それでも

 

何度も転移する、何度も転移するのに睨まれている恐怖

 

逃げる

 

着いた場所は荒地、クラナガンからは大分離れた

 

管理局などもう見えない、そもそもここはミッドの何処なのかも分からない

 

魔力はまだ余裕がある、残った魔力を使って、別世界に転移すれば………

 

と、その時だ

 

 

 

「見ぃつけた」

 

 

後ろに悪魔が降り立った

 

 

 

 

 

 

 

 

散々転移した挙句、彼が降り立ったのはミッド自然保護公園………の片隅

首都のクラナガンからはかなり離れている。まぁAAの魔力、それを余計な事に使わず転移のみならば容易く来る事が出来るだろう

ただ……いくら飛ぼうが衛星で追跡出来る。

後は相手が安心したところを狙ってこちらは機械で移動すればいいだけだ、魔力消費などないし一発で飛べる

 

最初私を見た時驚いた顔をしていたが今は強きの姿勢、まぁゴツイスーツ男じゃなくて降り立ったのが女の子一人なら拍子抜けだね

 

「ハッ、なんだと思えば当主さん自らがお出ましとは……それほどの事したかねぇ?」

 

薄ら笑いをしながら真っ正面に立つ彼

……映像で見たとおりかなりのイケメン、テレビに出てくるダンスグループやアイドルでもやっていた方が局員していたよりも儲かるのに

 

「で、あの男共は呼ばなくていいのか?まさかあんたが相手するなんて言わないだろ?」

 

「そのまさかだよ、援軍を呼ぶ必要なんてないし呼ぶつもりもない、私が始末するって言って来ちゃったし」

 

ポカンとする彼

 

………妥当かな、何だかんだで私は局員じゃないしボンボンのお嬢様が現役バリバリの局員を相手にするだなんて冗談が過ぎる

魔力についても認知度は殆どないだろう

 

「ハハッ、そりゃいいな、俺としてはお前の兄貴が来ると思ってたから運が良かった、あんたを交渉材料に立ち回れば死ぬ心配も無さそうだ」

 

「で?取り合えず弁解だけ聞いてあげるよ……なんでお姉様にあんなことしたの?」

 

向こうは変に気分が高揚しているようだし一応弁解だけ聞いておく

まぁ、要するに理由だ

 

「何でってそりゃあ決まってんだろ」

 

 

 

 

「好きだからだよ」

 

 

あっさりと男は自らの気持ちを告白する

まぁここまではどうでもいい、他人を好きになる事を私は否定しないし結果的に幸せになってくれるのならお兄様もお姉様も別段くっつく必要もないのだ

金目当てやら何やらじゃなかっただけまだマシである

 

「俺の憧れでもあったんだ、年下だろうと関係ない、俺は彼女に憧れて、彼女の隣にいれる人間になろうと必死に努力した。砲撃適性がないから補助魔法を一流にまで上げ、漸く佐官に任命されたんだ……エリートだよ、自分で顔も悪くないと思っている。彼女の隣にいれるほどの男になったんだよ!!」

 

男が叫ぶ、まぁ三十前で佐官はエリートだという事を否定する気もない、魔力SSで守護騎士持ちのはやてと同じ位、血のにじむ努力、又は才能がない限り不可能だ

 

「無理言って職場まで近いところにして貰った、何度か食事を一緒にした事もある。太陽だった、輝いていた。沢山の女性から告白された。全て断った。俺には彼女しかいなかったから、そして等々告白した。友人にも力を貸してもらった。最高のシチュエーション、彼女の為なら命も惜しくない、全てを捧げるつもりだったのに」

 

まぁそれだけ一途だったと言うわけか、どうでもいいが

 

「帰って来たのは『ごめんなさい』、『好きな人がいます』」

 

そりゃそうだ、お前が一途な様にお姉様も一途なんだから

 

「ふざけるな、好きな人?俺より優れた人間なんて何処にいる。彼女に見合った男なんて何処にいる……ああいたよ、調べてみたらすぐ分かった」

 

「…………………」

 

「自室でずっと一人の男の写真を見つめる、連絡を取り合う時は俺に見せた事のない顔で話すんだよ、俺よりも強く、俺よりもイケメンで、生まれついての権力者のな」

 

だろうね、お前よりも遥かにカッコ良くて、お前よりも遥かに強くて、お前よりも遥かに高い権力者だよ

てかフられた直後からアレつけたんだね、いつ告ったかは知らないけど、これには少しムカついた

 

「お前の顔でもムシャクシャする、ぶっ潰したくなるよ、殺したくなる……俺の今までの努力はなんだった?どうやってあいつに勝てばいい、どうやったら彼女を俺のだけの物に出来るんだよ!!」

 

知らん、私の知ったこっちゃない

それにお姉様はお前の『物』じゃない

 

「考えたよ、考えたさ、彼女を振り向かせる為にどうしたらいいか!!だけど出てこなかった。『ケント・コルテット』なんて化け物、どうやったって超える事なんて出来ないんだよ!!」

 

まぁ、お兄様とあんたじゃ月とすっぽん、天と地の差がある。

比べる対象として間違ってる

 

「分けわかんねぇよ、彼女が生まれついてのお坊っちゃまの物になる?ふざけんなよ、彼女が俺以外の所へ行くんなら、太陽が俺以外を照らすんだったら」

 

 

 

「もう力ずくだよ」

 

 

「……………」

 

歪んじゃったね

 

「本当の所、弱って寝ちまった所をバインドで取り押さえて無理矢理犯そうとかも思ったけど想像以上にしぶとくてな、三日間全部徹夜なんだよ、まいっちまうよな、ホント」

 

三日間徹夜、本当にしんどくて、怖かったに違いない

頼れる人間だっていないし、何処で見られているかもわからない、いつ映像を流されるのかもわからない

 

「そんでもって最後はご本人登場と来た、どうやったのか知らないけどどうしてあそこからこっちの機能全停止なんて出来るんだよ、もう笑うしかねぇよ、どこまで世界は俺の事嫌ってるんだよ」

 

ハハハと笑い出す男

 

………今の話で全部みたいだね、まぁ予想した通り、お兄様に対する嫉妬というわけだ

 

「でもまぁ、悪い事ばかりじゃなかったかもな」

 

ジロリとこちらを見つめてくる……気色悪い

 

「何のつもりか知らねぇが送り込んで来たのがボンボンのお嬢様一人とか、とうとう頭イったか?こんなの好きな様に犯して下さいと言ってるもんじゃねーか」

 

…………………。

 

「どれだけ自信があるかは知らないが、恨むんだったら自分の兄貴を恨んでくれよっ!!」

 

男が駆け出す……話は終わったんだね、じゃあ

 

 

 

 

「終わり」

 

 

 

月/星空

 

 

金の空が光輝く、男の足が止まった

 

ワナワナと震えている、当たり前か

 

「どうして、こんな」

 

まるで数分前から収束でもしていたかの様な巨大な球体が三つ、その全てがスターライトブレイカー並み

それを取り囲むのは万を超えるスフィア、こんなのが一瞬で出て来たらそれはもう絶望でしかないのかもしれない

 

「第五世代って知ってる?」

 

空に向けられていた眼がこちらにゆっくりと動かされる

まぁ、知ってる筈がないか

 

「『魔力無効状況でも魔法が使用でき、魔力有効状況なら更なる強化が得られる』なんてコンセプトを立ててコルテットや他の企業、管理局との合同開発で作られているデバイスでね、まだ完成していない試作段階、そして私のデバイスが、その実験機」

 

これだけじゃあ説明にならないよね

 

「いきなり登場させたこれ、全部私の魔力、今持ってる分だけじゃないんだけどね……第五世代の特徴の一つ、『機体に魔力を溜められる』そして魔力を放出する蛇口は無いに等しい」

 

つまり言うと

 

「私は自分の魔力を溜め続けて来たんだ、この身は戦いとはほど遠いから一日に凄い量が溜まる。それを放出させただけ……今私の中に流れてる魔力を放出すると………」

 

杖を上空に向ける

 

集まる魔力………巨大な球体が、もう一つ増える

 

四つのSLBに空を覆い尽くす程のスフィア

 

「あっ、あっ……」

 

「人を好きになる事はいい事だよ?でもお姉様はあなたの『お人形』じゃない、お姉様が苦しむ理由にはならない」

 

男が尻餅をつく

逃げる?何処に?

逃げ場なんてない、運命は決まっている

 

「お姉様とお兄様はね、こんな偽りの命を与えられた私を助けてくれて、受け入れてくれて、育ててくれた………私にとって二人は姉であり、兄であり………『親だ』」

 

だから………

 

「そんな人を傷つけられて、はいそうですかと黙っていられる程人間やめてねーんだよ私は!!」

 

杖を向ける、殺しはしない

 

この砲撃が全て消えるまで、痛みの中に溺れるといい

 

 

 

 

 

 

 

天の杯(ヘブンズフィール )

 

 

 

天が大地を抉る

 

 

 




技名に関しては適当、特に意味はありません(笑)
スターライトブレイカー×4にスフィア万単位


ちなみに書類上の親に当たる元当主は合宿中ケントに対して『お兄様のお母さんとお父さん』と自分とは無関係であると表現しています



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第五世代

三日連続投稿

説明が長くて展開が早いのはいつもの事………(−_−;)



 

「よくやってくれた、本当に、俺一人じゃ何も出来なかったしネリアがいてくれなかったら今頃どうなっていたのかもわからなかった」

 

「えっへん」

 

胸を張るな胸を、凄く揺れるから

 

「だけどな………自然保護公園でクレーター作るとはなんて事してくれてんだゴラァ!!」

 

「てへぺろ♪」

 

てへぺろじゃねーよ!!

局が定めた保護区域になんてことしてくれてんだって言ってんだよ!!

賠償やら何やらにどれだけの金必要か分かってんのか!?

 

「えっと、それは……当主権限でちょこ~と借りれば」

 

「お前のお小遣いから差し引きな」

 

「そんなの絶対おかしいよ!!」

 

うるせぇ、ただでさえ俺ら兄妹は当主ってだけで好き放題金使ってるんだ。それぐらいは当然

 

「えっと……これ凄いね、ネリアがしたの?」

 

「そ~だよ」

 

フェイトがこの先にある例のクレーターを見つめながらネリアに問いかける

 

あれから暫くの仮眠を取った後、ネリアから「全部終わった」との連絡が来た

主犯の男は管理局に引き渡し俺とフェイトも現地に飛んだ

 

そこにいたのは大量の局員とネリア達コルテット……と隕石跡の様な巨大なクレーター

 

はぁ、やり過ぎたよなぁ、どう考えても

 

「なのはさんのSLB×4!!凄いでしょ!!」

 

「うわぁ」

 

実際に本物のSLBをくらった事があるフェイトなら肌身で知っているだろう

てかいくら魔力SSのネリアでもSLB×4なんて可能なのか?

 

「タネは……これか」

 

「あっ」

 

ネリアが持っていた明らかに重そうな杖を取り上げる

俺が与えてやったガラディーンはもっと軽かったが

 

「お兄様は第五世代デバイスって知ってる?」

 

「第五世代?」

 

フェイトが聞き直す

 

………確かにあったな、公式設定で

Forceで対エクリプス対策に使われた『魔力無効状況でも魔法が使用でき、魔力有効状況なら更なる強化が得られる』とかいうコンセプトを元に作られた次世代魔導端末だったか?

原作より大分早いが……もう形になってたのか

まぁ新しい技術なんて一年やそこらで作られるもんじゃないから妥当なのかもしれないが

公式の実験機としてはフェイトのバルディッシュが使われていたはずだ

 

同じ様な事をネリアが説明する。局との合同開発、ネリア自身はそれだけしか言わないがそうとなると管理局としてはエクリプスについて少しばかりは掴んでいるというわけか

 

「でもネリア……それならもしそれが量産された場合……殆ど魔力を持ってない人でも時間さえかければこれだけの力を出せるってこと?」

 

「う~ん、無理かな?」

 

フェイトの質問をネリアはあっさりと否定する

なんでだ?デバイス内に魔力を溜めれるんだったら時間さえかければSLBと同等の物を作れる気がするんだが

 

「『魔力変換資質保有者か極めて精緻な魔力コントロール技術を有する人じゃないと出力が安定しない、エネルギーロスが多く長時間運用に向かない』なんて欠点もあるし、まず一流の魔導師じゃないと扱いは難しいね、それに」

 

「それに?」

 

「魔力っていうのはずっとある物じゃないんだよ?」

 

………ああ、なるほど

 

「いくら魔力を溜めようがそれは無限にある物じゃない、お姉様って一ヶ月ぐらい魔力を使わなかったら魔力が体が膨張してはちきれちゃう?」

 

「えっ、それはないけど」

 

リンカーコアに意思があるわけじゃないんだ。アレは魔力を作り続けるだけ、つまり言えば魔力を定期的に使わなかったら普通体の中から爆発してしまう

 

「魔力は最終的に空気中のマナになって消滅してしまうんだ、収束砲はそれを集めた代名詞だね。それはいくらデバイスに溜めようが同じ事……毎日毎日魔力はマナになって消えていくからそれを上回る魔力を送り続けないといけない、魔力が少ない人なんてデバイスに全部の魔力を送り続けないと無理だね、次の日にはどれだけ減ってるかわからないけど」

 

「えっと………」

 

理解していても口で説明するのは難しいな

 

「例えるとだな……タチの悪い銀行みたいなもんだ、フェイトが一日に使える額を千円だとしよう」

 

「は、はい」

 

なんか勉強会みたいになってるな

 

「フェイトはそのお金を溜めて車を買いたい、だけどその世界ではお金を溜めるのは犯罪になってしまうので罰金を払わないといけない」

 

「??」

 

わかりやすい例えがねーんだよ

金を貯めると犯罪とかあり得ないだろうけど

 

「フェイトは一日の食費に500円使う。後の500円は貯金だ…。しかし、お金を溜めるには罰金として一日300円払わないといけない……溜めれるのはいくらだ?」

 

「200円だね」

 

その通り

 

「後はその繰り返し、500円食費で後は貯金、罰金で300円だから貯金出来るのは200円、元手がSランクを魔力を持つフェイトか、はたまたE程度の魔力しか持たず、一日200円しか金を使えない人間かどうか」

 

「う、う~ん……だいたい分かったよ」

 

まぁ元が200円なら食費に100円使ったとして残り100円……罰金で0、貯金出来るのは0

要するにこの武装はある程度魔力がある人間しか使えないわけだ

それに結局扱うのは己の使用量を遥かに超えた魔力……今回のネリアは自身の二倍くらいの魔力を扱ったんだと思うが普通の魔導師じゃ魔力が暴走してえらいことになる

精密な魔力コントロールが出来る人間じゃないと無理だな

 

「まぁそれでも、何人もの魔導師から魔力をその場で借りれば一つの大魔法が使えるかもしれないね」

 

「だな」

 

その場チャージならば魔力がマナと還元される心配はない

 

「で、ネリアは実験として『どれだけ溜める事が出来るのか』っていうのを検証してたんだけど……全部使っちゃった」

 

アハハ~と笑うネリア

ったく、まぁ魔力の量に関してならネリアが一番最適だろう

そうだとしても

 

「やり過ぎるのは良くない、次からは気をつける事」

 

「は~い」

 

分かってねぇだろこいつ

 

「………ねぇケント」

 

「ん?」

 

隣のフェイトが話しかけてくる

どうした?

 

「犯人ならとっくに連れて行かれちゃったよ?まぁどっちにしろ気絶してたんだけど」

 

「アハハ、そうらしいね」

 

ほぼ全裸だったらしい

 

「ちょっと、意外だったなって……いい人だったんだけどね」

 

「知り合いだったのか?」

 

俺はてっきり誰かも知らない人間からされていたんだとばっかり

 

「う~ん、仕事場は近かったかな?何度かご飯も一緒だった事もあるよ?」

 

「らしいね~」

 

なんでネリアも知ってんだよ

てかあれだよな、それってさ、フェイトに

 

「ついこの前……告白されたんだ」

 

……………なんか、フェイトにとっては結構ある物なのかな

普通そんな事言うか?

 

「断ったんだけどね、だって………やっぱり何でもない」

 

えへへ~と笑いながら顔を赤らめるフェイト

………素直に可愛い

 

「じゃあ帰りますか、無事に解決したわけだし」

 

くーと背伸び

正直言って腹減った、昼に何も食べてねぇ

この感じだとあれかな、帰れば夜になりそうだ

 

「ネリアは事後処理とか今回の事とか……あと協力する代わりにちゃんと今日の会議出席しないといけなくなっちゃったから、本家の方に行かないといけないんだ」

 

「私も、本局の部屋に色々と置いて来ちゃってるかな……取って帰ると真夜中になっちゃうかも」

 

……………俺一人ですかい

いや、なんつーか、まぁなのはとヴィヴィオは帰って来るんだが………帰り道が切ない

転移があるとかそういった問題以前にさ……てかここまで来るのに相当な魔力使ってるからな、俺

こんなミッドの辺境に一発で飛んだから魔力なんてすっからかん、帰りは局の車に乗せてもらうから……

 

「…………お兄様、お姉様の所に泊まればいいじゃん」

 

「は?」

 

それはおかしいだろ、そもそもあそこ女子寮だし着替えとかもねぇんだし

それにあんな個室だぜ?寝る所とかどうすんだよ

 

「こんな事があったその日にお姉様一人っていうのもどうかと思うしね~、大丈夫大丈夫、お泊りの道具とかはちゃんと持って行かせるから」

 

「いやまぁ、フェイト一人っていう点については俺も同意だが……それならなのはに向かわせてヴィヴィオは俺が見るとかあるだろ」

 

「……………ロリコン」

 

「違う!!」

 

だから半歩引かないで!!

 

「じゃあ決まり、お姉様もそれでいいよね?前にお姉様もこっちに泊まった事があるんだしそのお返しみたいな感じで」

 

「えっ、あっ、うん、全然大丈夫、歓迎するよ」

 

いや、だからあそこは女子寮、俺は男

 

「お兄様なら許してくれるって」

 

「その理屈はおかしい」

 

女装しろとか言われても絶対しねーぞ

 

「じゃあ逆に聞くけどそんなに嫌なの?本気で嫌だったんなら無理強いはしないけど」

 

「いや、決してそういうわけじゃ……」

 

嫌とかそんな事じゃなくて……一番問題なのは理性であって

 

「ごめんね、こんな事に巻き込んだ後に……嫌なら全然大丈夫だから、すぐに片付けして帰るから」

 

……………こんな事言わせておいて……嫌ですとかお断りしますなんて言えねぇじゃねーか

 

「えっと、じゃあ、今日一日お世話になります」

 

「は、はい!!」

 

「よし決まりぃぃぃぃ!!」

 

帰りネリアのテンションがおかしかったのは気のせいだろう

 

 



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女子寮にて

最後の方駆け足気味



 

「えっ、ちょっ、これ凄い、まさに私たちデバイスマスターを根本から否定する出来……てか素人にこんなの出来る筈ないじゃないですか!?」

 

「出来たもんはしゃーない、それのプログラムとか欲しいデータはやるから最終調整だけ頼むわ、そこは俺では出来ないし」

 

夕食を頬張りながら正面にいるメガネの相手をする

キラッーンと光った、なんか怖い

 

「いいんですね、ホントにいいんですね、隅から隅へと舐める様に調査させてもらいますがいいんですね」

 

「まぁコルテットと言っても市販のデータ使っただけだし後に加えたプログラムは完全に俺が作った物だからな、製作者がいいって言ってるんだから大丈夫じゃね?」

 

てか大丈夫と言っておかないと今直ぐに食ってかかりそうな勢い

隣のフェイトにヘルプを目で入れてみる。ニッコリと笑われた。可愛い

 

「期限は明日の朝になるがいけるか?徹夜になるかもしれないけど」

 

「こんなプログラム見せられて徹夜しないデバイスマスターなんていませんよ!!」

 

お、おぅ

凄い剣幕なので引き下がる。データをいくら見るのは構わないけどちゃんと頼んだ仕事もしてくれよ?

 

あの後無事に局に帰ってきた俺たち、かと言ってネリアからの遣いがないと着替える事も出来ないのでそれまで正直暇、てかいつも暇なのだが

そんなわけで当初の目的の一つであった作りかけのデバイス×3をフェイトの紹介で副官のシャーリーに見てもらう事に

 

なんでも仕事が終わっていないらしくフラフラした状態で食堂に現れたのだが渡したデバイスのデータを解析し始めると……あら不思議、目の下にあった隈などどこかに消えました

 

彼女に頼んだのはデバイスの最終調整、こればかりは素人の俺では何が良くて何が悪いかなど検討もつかないからやってもらう。報酬としては中にあるデータや技術の提供

コルテットの研究施設を使ったと言っても結局は設備だけ、独自の技術やら何やらは全く使っていない

完全に俺オリジナル、市販やら何やらシャーリーには言ったがそれはもし俺が『一から作りました』なんて言ったら後々大変になりそうだから、素人が始めてでここまで作ったなんて……ねぇ?

 

「それよりも急ぎ足の仕事っていうのは大丈夫なの?まだかなりあるって言ってたけど」

 

「大丈夫です!!フェイトさんには関係ない仕事なので差し支えはありません!!」

 

遅れる事前提かよ

まぁそれで違う人に怒られるんだろうな、もう彼女の目線はアレにしか向かってないし

 

夕食……であるラーメンをズルズルと啜る

…………普通だ

 

「夕食まだなら奢るぞ?ちなみにラーメンは普通だった」

 

「いえ、時間が惜しいのでこれで失礼させてもらいます!!」

 

元気いいね~

てかフェイト、シャーリーってこんなキャラなの?

 

「デバイスマスターの人って大体こんな感じだったりするかな?」

 

なるほど、つまり変人の集まりと

あと隣のフェイトはパスタ、ホワイトソースである

………口の周りが凄い事になってる気がするが……まぁいいや

そういやフェイトの好きな食べ物って何なんだ?

基本家でも口にしないからわからん

質問してみたら顔を赤くした後プイッとそっぽを向いてしまった……ホントなにこの可愛い生物

 

「逆に聞くけどケントの好きな食べ物ってどんなの?」

 

「俺か?」

 

………………ん?

 

「肉類も魚も野菜も甘いも辛いも……基本何でも好きだぞ?よくあるダークマターじゃない限り」

 

「へぇ、じゃあ嫌いな食べ物ってある?」

 

嫌いな食べ物?

ん~、元がセイバースペックだからな、嫌いな食べ物って

 

「ない……かな?あぁでも……強いて言うなら『タコ』」

 

「タコ?」

 

うん、何故か知らないけどさ、あれ見ると体がブルっとなるんだよね、理由はわからないけど

嫌いというより苦手意識か?

 

「ふぅん、確かにたこ焼きはした事ないよね……弱点克服の為に一度してみる?」

 

「なぜそうなる」

 

ドSか

 

「でもなんか意外だな~、変な弱点だね」

 

「誰にだってそういうのはあるよ」

 

知らないだけでさ

案外身近にいる人間程、知らない事だって一杯あると思うし

 

「ご馳走様でした。取り敢えず腹は満たされた」

 

昼から何も食ってないダメージは大きい、通常の人間関係よりも

 

「私もご馳走様でした。ケントの荷物もそろそろ届いてるかな?」

 

「まあ届いてるにしても届いてないにしても先にシャワールーム使ってくれ、俺は外に出ておくから」

 

「…………あ、えっと」

 

フェイトの目が泳ぐ……どうした?

 

「あ、えっと、シャワーはケントが先に使ってくれると嬉しいかな~て……駄目かな?」

 

「まぁ、いいけど」

 

あ、言い忘れていたが個室には一応シャワールームがある

シャワールームというより……ホテルにある感じのトイレと一緒の奴、あれである

局内は広い、シャワールームは勿論あるが訓練場の近くにあるだけで満遍なく作るなどしてない、行こうと思えば行けるが結構遠い

 

……恐らくだが脅迫されていた時はわざわざ訓練場の近くまで行ってたんだろう

 

「私ちょっと寄りたい所があるから……」

 

「じゃあ先に戻ってシャワー使っておくな、終わったら通信で呼ぶよ」

 

「うん」

 

フェイトがそういうのであらばお言葉に甘えさせてもらう

荷物を受け取らないと話が始まらないので局の玄関に

……メイドである、俺は見慣れているので何ともないがせめて黒スーツの方にしてほしかった。メイドなんて局内にいる事なんてないから周りからの目線が……

 

局内を暫く歩いて女子寮に辿り着く、何故かすれ違う女の人から変な目を向けられなかった……普通疑問に思うだろ、男が歩いてるんだから

それともなにか?俺を男と認識してないとかないよな?

 

フェイトから渡された合鍵を使って中に入る。

………なんと言うか、恥ずかしい

家にもそれぞれの部屋はあるがそれとこれとは話が別、ここはフェイトだけがいる部屋であって………煩悩退散煩悩退散

 

一度腰を下ろしてもらったショルダーバックの中を覗く

明日の為の軽い私服に下着にジャージに浴衣、後は洗面用具

まぁ普通だ、洗面用具の中に入っていた手鏡にダイヤが埋め込まれている以外は普通だ

 

こんな物かと思い浴衣と下着だけ取り出す。デュランダルも一応持っていく

浴衣は黒、なんだ、赤じゃ……なくていい、なんだ今の思考、赤い浴衣とか血に塗れてるだけじゃねーか

てか少し小さい、大人モードの設定いじれば丁度になるかしれないが今のままでは……まぁいいか

 

リュックを閉める……そういや前のチャックの部分には何か入ってるのか?

興味本位で開けてみる……白い箱?

 

中を取り出してみる……うん

 

「予想はしてたけど……ガチで入れて来るとは……」

 

精力剤とゴ………うん

変な誤解をされるのも嫌なので鞄の中にリターンしておく、油断も隙もない

 

気を取り直してシャワールームへ、個室が小さいのとベッドが一人用なのを除けば本当にホテルである

服を脱ぎ、トイレとの間にあるカーテンを閉めてシャワーを浴びる

………これはこっちに来て始めてだな、いつもは家の風呂かコルテットの銭湯顔負けの風呂かどっちかだもんな

フェイトはいつもここで浸かっているのだろうか、最初にお湯を溜めて後から身体を洗うのであれば可能な筈

そうだったら俺が出た後溜めておいた方がいいかな

………そういやタオルどうしよ

 

今気づいたのだがバックの中にタオルは入っていなかった、どうすればいいだろうか

洗面台のデュランダルに手を伸ばして通信、勿論こっちの顔は見えないぞ?

 

『あ、もう出たの?早いね』

 

「あぁ、まあもう出るんだけどさ……荷物の中にタオルが無くてそれに気づけなくて、どうすりゃいいかな」

 

…………無言

 

『あっ、えっ、あ、あの、せ、洗面台の近くに、わ、私のタオルがある、でしょ?

それ使っても大丈夫、うん、大丈夫』

 

「……………えっと」

 

『はうっ!?い、嫌ならすぐに買って帰るよ、うん!!』

 

「えっと、使っても大丈夫なのか?」

 

『勿論!!』

 

元気な返答、そりゃ俺にだって抵抗はある

家でさえ俺は自分専用と女子専用で分けているのだ。恥ずかしい気持ちというか、なんというか

シャワーを止めてタオルに手を伸ばす。白くてフワフワしたバスタオル、いい匂い………って

 

「何匂いなんて嗅いでるんだよ!!ただの変態じゃねーか!!」

 

自分で自分が気持ち悪い!!

申し訳なく思いながら借りたタオルで身体を拭き、綺麗にたたんで戻しておく

 

赤い顔を何とかして抑えながらシャワールームを出る。ベッドに座らせて貰いテレビをつけ……彼女に連絡を入れる

もう少しかかるらしい、何をしているのだろうか

 

テレビではニュース番組、特に目立ったニュースはなさそうだ

ネリアのは……もう気にしたら負けだ

 

そんなニュースをボーと眺めていたらフェイトが帰ってくる。時間にしておよそ三十分、タオル買って来るとなると俺はもう完全にふやけてるな

 

「えらく長かったけど、何かあったのか?」

 

「えっと……ちょっとね」

 

言葉を濁すフェイト……?

俺が質問する前にシャワーを浴びに入ってしまう。まぁ大丈夫か

 

テレビはニュースが終わり見た事もないドラマに変わっていた。

特に何かを考える事もなくドラマをただ眺める……大丈夫、ガチで暇な時は大体こうだ

それに今回は無心になるという意味も含めている

 

「えっと、ケント?」

 

「?」

 

呼ばれたので振り返る

風呂から上がったフェイトがドアを少しだけ開けてこっちを覗いている……どうしたんだ?

 

「あのね………浴衣、余ってたりしないかな?」

 

…………what?

 

「あいにく一着しかないんだけど、どうした?」

 

「えっと……あの、私ね」

 

 

 

 

 

「パジャマここに持って来てないんだ」

 

 

 

フェイトという女性は寝る時下着にシャツ、これが基本の人間である、なんでもそっちの方が寝やすいだとかなんだとか

勿論家ではパジャマ、ただ俺がいない時はそうらしい

てかここにはパジャマさえ準備してないとは………

 

「えっと……あの、あの格好で、大丈夫かな?」

 

「ちょい待ち」

 

ドアを一度閉めさせてバックをあさる

確かジャージがあった筈だが……完全に俺用である

フェイトなら確実にブカブカ………しゃーない

自分の小さい浴衣を脱いでジャージを着る……浴衣を着てたのは三十分ちょっとだし……いける、よな?

 

ドアをもう一度開けさせて渡す。フェイトも少しだけ躊躇したが最後はおずおずと受け取ってくれた

ワイシャツと下着だけで出てこられるよりは全然マシである

 

「えっと、ごめん」

 

「いいって、何故か予備でジャージ入ってたんだし」

 

今回はプ○マではなくちゃんとしたミッドの

どこでもどんな時でも使えるのがジャージだしな

 

フェイトが俺の隣に座って同じくテレビを見つめる

………内容は未だ全然分からない

 

「で、どこ行ってたんだ?結構遅かったけど」

 

「あ、うん、ちょっと地上本部にね」

 

地上本部?

局の転送ポートから確かにすぐだが何で?

 

「今日捕まった人に、会いに行ってたんだ」

 

「………………。」

 

今回の戦闘はミッドで起こった事、となれば捕まえるのは地上本部か

それにしてもなんで……

 

「面会しようと思ったんだけど……まだ気絶してるらしくてね、結局会えなかったんだけどね」

 

「普通自分を脅迫して来た犯人に会いたいと思うか?」

 

「……………そうなんだけど」

 

それは異常である

誰だってそんな奴に会いたいとは思わない、俺なら願い下げである

 

「彼が私に告白したって……言ったよね」

 

「あぁ」

 

フェイトにとっては何人目だったかは分からないが……

 

「それを私は断った、だけどもっとちゃんと気持ちを伝えていたら……彼はあんな事にならなかったんじゃないかって」

 

「……………。」

 

「そりゃああそこで『ハイ』って答えるんじゃなくて……もっとちゃんと彼に接してあげていたら、彼の人生は壊れずにすんだかもしれないなって」

 

それはifの世界、全く分からない

ただ一つ言える事は、フェイトという女性は優しすぎる

 

ああなったのはあいつの責任者でありフェイトは被害者である

フェイトが罪を感じる必要性なんてどこにもないし感じないといけない理由もない

ただそういう風に感じてしまうのが、彼女なのだろう

 

「だからね、ちゃんと伝えようって……ホントはすぐが良かったんだけど現場にはもういなかったし今日は気絶しちゃってるし……また今度になりそうだね」

 

それでも、こういう優しさこそが彼女の魅力でもある

ホント、敵わないな

 

「やっぱり、変かな?」

 

「いや、そうしてやってくれ」

 

それで彼も少しは真っ当になれるかもしれないしな

 

ちょっと暗い雰囲気になったので何か飲み物を貰う事にする……ビールですか、あ、ノンアルコール

おつまみはここにあったクッキー、テレビは先ほどのドラマから歌番組に変えた

 

…………こんな事をいうのはなんだが、胸元がエロい

そんな事を考えていたらフェイトがこちらにもたれかかって来る……覗き込む形になるので余計にエロい

 

「……そういえばさ、今日膝枕してもらったお返ししてないね」

 

「お返しって」

 

そんな物あるのか?

してくれるのなら、その、嬉しいけど……

 

「じゃあ、お返しに添い寝してあげるね」

 

「…………え」

 

いや、ちょっと待て

添い寝って……あれ一人用ベッド、ちょっと動けば当たるぞ

 

「む、はやては良くて私は駄目なの?」

 

「いや、そんな事はないけど」

 

それにはやてに関してもあの時は俺の意思じゃなくて……うん

 

「それにケントを床に寝かせるなんて出来ないから、枕は……私はケントの腕を貸してもらおうかな?」

 

「えっと……」

 

なにそれ

 

それにもうそろそろ寝るにもいい時間帯でもある、このまま黙っていたら押し切られる

 

「それに私も徹夜ばっかでお昼寝ぐらいじゃ眠くならないし……電気消して寝たいんだけど……いいかな?」

 

「あ、うん」

 

上目遣いは反則である

 

言われるがままに歯を磨き言われるがままにベッドに横たわる

 

……ヤバいヤバいと心で言っておきながら楽しみにしている自分がいる

 

フェイトが電気を消して隣に潜り込んで来る

正直に言えば真っ暗で何も見えない、慣れれば違うと思うけれど……

 

腕を使っているので自然と彼女を抱き寄せる様な体制になってしまう………ふとネリアが入れていたアレが頭をよぎる

 

………寝よう、このままでは冗談抜きでヤバい

 

特に会話もせずに目を閉じる

というか会話する余裕がなかっただけだと思う

皇帝特権での○太並の睡眠力を主張する。てか眠るのに技術って必要なのか?

それでもどんどん意識不明が遠のいていく……EXランクスキルの無駄遣い

 

「今日は、ありがとね」

 

彼女が何かを言う……上手く聞き取れない

皇帝特権による眠気は健在だ、振り払おうとしても言う事を聞かない

 

「寝ちゃったかな………今日の御礼、しなきゃね」

 

意識が遠のいていく

………何も聞こえない、もう、駄目

 

ただ、意識が消える瞬間に

 

何か柔らかい物が、唇に当たった感じがした

 



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朝です

 

朝日……なんてここにはないか

 

狭いベッドの上で目が覚める、太陽が照らない異次元空間に浮かぶ時空管理局本局、明確な時間は分からないが恐らく朝だろう

ボーとした頭を覚醒させる、シャーリーからデバイス受け取って、子供集めて渡してとやる事は多い……のだけど

 

「……どうしよ」

 

右腕を拘束されている。あの……当たってます

いや、押し付けられてます。抱き枕扱いですか?

どうにかして引き抜こうにも無理をすれば起こしてしまう……かといってこの……弾力は直接肌で感じてしまうわけであって……

それに浴衣だけあって寝ている間に乱れまくっている……朝からこれは刺激が強すぎると思うのですよ

 

「………ん」

 

体がビクリと反応する

ただ少し動いただけ、なのに締め付けは一層強くなった気もする

………頭の中に天使と悪魔がいる

襲っちゃえとか言ってるのとそんな事すれば間違いなく牢屋行きだと言ってるの

頭の中にネリアが入れた物が浮かぶ………だーもう!!

 

左手で頭をわしわしとかく、昨日から変だぞ、あいつが荷物を持って来させるとか言ってる時点でああいった物が入ってるのは予測がついたし俺はそんなになりふり構わず襲う様なケダモノでもない!!

これが一度でも女性を抱いた事があるなら話はまた別になってくるのだろうが少なくとも前世+現世を童貞で貫いている俺にはいきなり襲うなんて考えが浮かんでも実行する気なんてない!!

だけど今の状態は刺激があまりにも強すぎる、彼女は寝ているとはいえ乱れた姿で無防備、それにこの右の弾力、こんなのをいつまでも我慢できる鉄の心を持った勇者など存在するのか!!

そんな心をセイバースペックで何とか作り出そうと努力する。俺の元は騎士王なのだ、自分を制御し、抑えるくらいは……駄目だぁぁぁぁ!!

確かに騎士王だがセイバーはエロゲのヒロインだぞぉぉぉ、んな性的な願望をいつまでも抑えるなんて不可能だぁぁぁ!!

最初は堅物だったけど終盤無茶苦茶デレデレだったじゃねーか、士郎と魔力補充とか大義名文立ててしてたじゃねーか!!風呂場で何だかんだやってんじゃねーか!!

赤王なんて意味ねぇぇ、アレだよ、EXTRAはエロゲじゃねーけどあのデレだったら裏で何してっかわかんないぞ、てか奴に自制心なんつー物があるのは思えねぇ

 

がぁぁぁぁと心の中で奮闘する、悪魔と天使が己の死力を尽くして戦っている

せめてガウェインの能力も受け継いでいればこんな事にもならなかったのに!!

 

「えっと……大丈夫?」

 

「……………え?」

 

起きたようです

 

 

 

 

 

 

 

 

「嫌な夢でも見たの?すごくゲッソリしてるけど」

 

「いや、大丈夫だよ、うん」

 

必至に笑いかけようとするが顔が引き攣る

先ほどまで無理矢理押し倒すとか考えていたのだ。情けなくて顔を出し合わせられない

てかあのままだったらホントに我を無くしてたな、起きてくれなかったらどうなっていた事か……

局の廊下を歩く、昨日の今日だ。俺もフェイトも朝食だけ取って家に帰る事にする

今から取り敢えず飯食べてシャーリーの所でデバイスを受けとる。彼女の事だから今でも作業してそうだ……チェック終わってるかな

俺は私服でフェイトはあの黒い制服、朝っぱらから局内を私服ってどうなんだ?

かと言って局員専用の服を着るつもりはない、てか俺がアレ着るとしたら肩によく分からんヒラヒラ付きのやつになるんだよな、将官だから

自分で言うのもなんだが二十歳で将官など異例、今よりもずっと注目される

 

「あっ、あのね……昨日の事って、覚えてたりするかな?」

 

「昨日の事?」

 

何かあったか?

 

「えっと、ほら、ベッドに入った後の事」

 

「……あ、あ~」

 

フェイトが体をビクリと震わせる

………?

 

「悪い、何か言ってたよな、けどあの時凄い眠くて何を言ってるか聞き取れなかったんだ……大切な事だったのか?」

 

「え、あ、ううん、別にそういうわけじゃないよ?特に何ってわけでもなかったからね」

 

アハハ~と笑うフェイト

……怪しいが深くは追求しないでおく、俺も朝の事を聞かれたら何も答えられないし

にしてもの○太って0.2秒で寝るらしいな、その中で耐えようとした俺は凄いと思う

にしても主張を取りやめる力も無くなるとは……凄いな○び太

 

「覚えてない……それはそれで良かった、のかな?」

 

「フェイト?」

 

「ひゃうっ!?」

 

覗き込んだだけでそんなに飛び上がらなくても

 

「あう、あう、あ、きゅう」

 

完全に下を向いて顔を隠してしまう……この小動物はなんですか?

 

食堂が見えてくる、まぁ飯食ってれば直るだろう

やはり朝食の時間帯、案外混んでるな

空いている席に座る、やっぱり目立つ

中にはコソコソとこちらを見ながら話す者、項垂れる男、睨んでくる男など様々である

……なぜ睨む

 

「やっぱりパン系が多いな、朝からご飯食ってるうちは例外か」

 

「そうだね、なのはも私も子供の時は地球にいたからどうしてもそっち系のご飯になるから」

 

パンの時もあるしご飯の時もある。半々ぐらいが丁度いい

それでもメニューにはご飯系もあるので迷わずそれを選ばしてもらおう

 

「フェイトは何がいい?買って来るけど」

 

「ごめんね、じゃあ私はケントと同じので」

 

「僕はこれがいいかな、今日はパンが食べたい気分だからね」

 

「おう了解」

 

……………って

 

「いつからいた提督さん」

 

「君たちを見つけたから来ただけじゃないか、それともお邪魔だったかな?」

 

「俺は一応将官なんだけどな?」

 

「む、局内でそう言われたら立場がないな、ではよろしくお願いしますよ、ケント少将」

 

「自分で買え、クロノ提督」

 

影が薄いレベルじゃねーよ

 

 

 

 

 

 

「で、なんでお前が本局に?」

 

「昨日巡回が終わったんだよ、次に出発するまで休暇さ」

 

目の前でパンを頬張るクロノ、まさか会うなんて思ってなかった

昨日仕事が一段落ついたらしいなんつーか、よく分からん

 

「僕も驚きだよ、まさか朝から局にいるなんてね」

 

「色々あったんだよ」

 

色々とな

 

「てかお前が来てから余計目だってんじゃねーか、提督に執務官に私服男って」

 

「なんだ?局員服でも支給してほしいのか?」

 

いや、そのヒラヒラがついたやつはいらん

 

「色々と、ね、となると局に泊まったのか……どこで寝たんだ?」

 

「えっと……」

 

女子寮なんて言っていいのか?

でもクロノも気づいてるよな、この場には俺とフェイトしかいないわけだし

 

「……まぁいい、大体分かった」

 

「さいですか」

 

物分りがよろしいことで

 

「気にしなくていいぞ、別に珍しいパターンでもない」

 

「そうなのか?」

 

初耳だけど

 

「基本、民間協力者や参考人などが寝れる場所はあるのだが親しい者や友人の場合は別だよ、局員と民間協力者が同意すれば同じ場所で泊まれるし問題はない、まぁ問題を起こした場合は局員がその責任を取る形になるのだが」

 

「へぇ」

 

ま、それもアリって事か

そう思ってたらクロノが何やらニヤける……なんだよ

 

「だけどな、それが異性の場合は話が別だ、大体誘った方が誘われた相手に対して気g「ワァーー!!」グホッ!!」

 

………隣からフェイトの腹パンが炸裂した

 

「アハハ、何言ってるんだろうね~、お兄ちゃんは、アハハ~」

 

「取り敢えず首元を掴んで振り回すのやめてやったらどうだ?クロノ吐きそうだぞ」

 

口から泡吐いてやがる

てか今の魔力強化してたよな、リアルで大丈夫か?

 

「あっ、ごめんね、お兄ちゃん」

 

「フェ、フェイト……あ、足が」

 

何とかして意識を取り戻したクロノだが相変わらず痛みに悶えている

そんでもって机の下からグリグリという音……痛そうだ

 

「お兄ちゃん寝ちゃったね……もう、こんなところで寝たら風邪引くよ?」

 

「いや、気絶しただけだと思うけど」

 

「しょうがないな~、クラウディアの人に連絡して引き取ってもらおうか」

 

「え、あ、うん」

 

そうだね、そうしよう

 

 

 

 

 

 

暫くして来たクラウディアの乗務員にクロノを渡してシャーリーの元へと向かう

なんでもフェイトとも知り合いらしく気絶しているクロノを見ても深く聞いて来なかった……いや、あれは眠ってるんだ、そうだよ、日頃の疲れが溜まってたんだ

で………デバイスの管理室的な場所に来たんだけど

 

「……俺にはアレに対して話かける勇気はないんだけど」

 

「えっと、シャーリー?聞こえてる?」

 

時間は九時、昼前には家に帰れるだろう

そう言う事でデバイスを……うん

 

「………あっ、おはよーございまーす」

 

「充血した目でおはようなんて言われても困る。てか髪ボサボサだし滑舌おかしいぞ」

 

「ぜ~んぜ~ん」

 

駄目だこれ

 

「一日徹夜しただ~けで~すよ~、体はほら、ピンピンで~す」

 

徹夜したのは見てとれるけど使った精神力は半端ない物だな

少し休ませないと大変だぞ

 

「あっ、これ、ありがとうございました〜、おかげでこれからの魔改造がバージョンア~プですよ~」

 

「オイなんか今変な単語が聞こえたぞ」

 

個人で作る分は良しとしてそれを仕事にしてる人間が魔改造って

 

「フェイトさんのバルディッシュも貸~して下さいよ~」

 

「きょ、今日は遠慮がちしておこうかな?」

 

そうした方がいい、なんか色々と戻って来れなくなるぞ

 

「ま、その様子だとチェックは終わらせてくれた様だな、ありがと」

 

「いえいえ、私も新しい技術に触れられて嬉しかった……です」

 

バタンキューと倒れるシャーリー

……フェイトとアイコンタクトを交わしておぶってシャーリーの部屋まで連れて行く事に、今日一日は寝かせよう

 

 



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異世界の文化

間が空いた割には短いです
すみません、このところ色々大変でログインすら出来ない日もあって(−_−;)




 

「えっと、これは……」

 

「うわぁー」

 

「わぁー」

 

イヌ、ネコ、ウサギ

 

ピョコピョコ動き回るそれらに目を奪われている幼j……少女達

なんか一人頭の上で?マークが浮かんでいるがそれが普通の反応だろう

 

「外部フレームはおまけだからな~、ガチガチしたクリスタル型とか動かない喋らない愛想がない俺みたいなストレージよりはそっちの方がいいと思ってな、主にサポートが主体の形になってる」

 

って、聞いてないか

使い方とかは本人達で理解するだろう、俺もゲームは説明書を読まないタイプだ

 

「名前とかは決まってるんですか?」

 

「いや、それは持ち主であるコロナちゃん達が決めるものであって俺はただの設計者、多分一生一緒にいるパートナーになるんだろうからちゃんと名前をつけてあげてくれ」

 

流石に勝手に名前をつけたりはしないよ

 

「アインハルトのは話した通り大人モードの術式組み込んでおいたから後で正常に作動するか確認しといてくれ」

 

「は、はい」

 

場所は高町家、インターミドルも近くに迫った今日

局からフェイトの車に乗せてもらって無事に帰り、はやてがみんなを集めてくれていたのでデバイスを渡した

説明としたら前と同じ、ヴィヴィオがウサギでアインハルトはネコ……ぽい虎、コロナちゃんはイヌ

名前はまぁ原作と一緒になるだろう、コロナちゃんだけが変わるかもしれないが

 

「お疲れやな~、ケント君、大変やったやろ?」

 

「まぁな、一から作るなんてやっぱ楽じゃない」

 

「それでもたったの一週間で作り上げたケント君はもう人の域を超えてると思うで」

 

「マジ?」

 

否定できないのが悲しい

子供達はなのはやフェイトに任して俺は自室に戻ってベッドに横になる……なんだかんだで色々あったのだ、ガチで疲れた

 

「襲ってええか?」

 

「帰れ」

 

「なんやそれ、にしても部屋に入った途端ベッドで横になっとる美少年、これは襲わんかったら失礼や」

 

「勝手に入ってくるなよ」

 

ぶーと膨れるはやて

体を起こして目をこする……眠い

 

「別にええやん、見られて恥ずかしい物でもあるん?」

 

「そんなもんねーよ」

 

「過去の事があったから信憑性ないけどな」

 

「うっ……」

 

そう言われるとキツイものがあるんだが

 

「そんなに硬くならんでええやん、男の子やったらしゃーないで」

 

「そりゃあ、な」

 

男の定めである

 

「否定はせんねや」

 

「否定はしない」

 

俺も男の子なのだから

 

「そういやアインハルトはどんな感じだ?そっちで鍛えてるんだろ?」

 

「強引に話を反らしたな……生き生きとしとるよ、うちの門下生ともよく手合わせしとる」

 

話を反らした理由としては墓穴を掘りたくないからである

まぁ良い方向に進んでくれているのであればそれに越した事はない、流石はザフィーといったところだろうか

 

「インターミドルまであと少しだし、よろしく頼む」

 

「ケント君も教えたったらいいのに」

 

残念ながら俺はそんな本気で教えられるほど出来てる人間じゃない

せいぜい手合わせがいいところだし、結局俺は他人のパクリだしな

 

「なんや、自分に自信がないん?」

 

「言っちまうとそうなるかもな」

 

『皇帝特権』というスキルを持ってしまっている時点で、本物の赤王様以外はそう考えてしまう運命だ

 

「全く、スキルも実力の内やで?それにケント君自身が剣を持っている事には変わりがないんやから、胸はりや」

 

「ん、ありがと」

 

励ましてくれるはやてに笑い返す

ま、実際20年もあり続けたスキルなのだ、そろそろ割り切ってしまってもいいのかもしれないな

 

そんな事を考えながら軽く伸びをした後、唐突にはやてが口を開いた

 

「なぁケント君、『性夜』って知っとるか?」

 

「…………は?」

 

いきなりなんて事を言い出すのだろうかこの娘は

 

「えっと、いや、そんなリア充大量殺戮が増加する夜は知らないが」

 

「全国の童貞、処女が発狂するからなそれは……って違うわい!!『聖夜』や!!」

 

………ああ、聖夜ね

いや、はやてが言い出した事だから勝手に文字が別のに変換されていた、これが他の人間だったら大丈夫だったがはやてなら……ねぇ?

てか聖夜ってあれだろ?キリストが生まれた日、赤の服着た不法侵入者がプレゼントと称してある人間にはゲームソフト、ある人間には問題集を置いていくあれ……親とかその時の境遇によって全く違うあれ

 

まぁ…………

 

「なにそれ」

 

「やっぱり知らんのか~」

 

俺はミッド生まれミッド育ちなので全く知らないと突き通すが

いやねぇ、ミッドにクリスマスなんてあったら逆に怖いでしょ、キリストさん何者だよってなるでしょ?

流石にこの前地球に行ったときに知ったっていうのは無理がある、あの時夏だし

 

「そうやな~、地球の文化である夜に家族や友達、恋人とかとケーキ食べたりパーティーしたりプレゼント配ったりセクハラしたりする日があるんよ~」

 

「最初の三つは分かるけど最後のはないな、てかそれがどうしたんだ?」

 

「ズバリ、今日が地球の聖夜、クリスマスやねん!!」

 

…………へぇ

 

「なんや、薄い反応やな」

 

「いや、だってそれはミッドには無いから無関係じゃん」

 

そもそも日本なんて『エセクリスマス』なんだから……本気でキリスト教に属してる人なんてほんの一握りじゃねーのか?

 

「それでもや、私達地球組にはとてつもなく大きな意味があるんよ、というわけでケント君、今日じゃなくてもええからまた買い物とかに付き合って」

 

唐突過ぎるだろ?

それでもはやてにとってクリスマスは特別な事には変わらないんだし……って今日イブなのか?それともクリスマスなのか?

てか話の文脈関係なくね?

ケーキ食べたりパーティーしたりプレゼント配ったりする日だろ?なんで買い物付き合う話になってんだ

 

「てか買い物ぐらい、暇な時にはいつでも付き合ってやるけど」

 

「ケント君はいつでも暇ちゃうん?」

 

返す言葉もない

 

「よし、目的も達成したし、私はなのはちゃん達とクリスマスディナーでも作ろか、折角みんな集まっとるんやからね」

 

「おう、楽しみにしてる」

 

てかはやて、お前いつまでいるつもりなんだ?

……まっ、いっか、八神家全員来ても寝れるスペースはあるんだし、いざとなったら男は床で寝ればいい

クリスマスだ~とかいって何人かは酔い潰れそうだからな

 

「そうと決まれば早速実行、買い物行って色々買ってこなあかんな~、お肉にケーキに……媚薬?」

 

「おいはやて、お前絶対一度目に『性夜』って言ってただろ」

 

「せっかくの『性夜』なんやしな」

 

「なんか目的変わってねーか?」

 

一つ言える事は……今日一日、あやしいものは飲まないようにするだけだ

 

 

 




EXTCA CCCが延期ドゥ………はぁ(涙)
一ヶ月らしいですが、ホント、また延期しそうで怖いです

あと『めだかボックス』の安心院さんの声が水樹奈々さんになったそうですね!!無茶苦茶嬉しいです♪( ´▽`)
紅白の歌もなのは劇場版の感動を……楽しみだ


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ゴロゴロ

物語を進めるために時間を進めます

今回は兄妹の会話のみ
次回からインターミドル、ケント視点の物語なのであまり期待はしないで下さい


 

 

「平和だよな~」

 

「平和だね~」

 

日光の暖かい日差しに当たりながらただゴロゴロするだけ

クロノから言われた依頼も少しずつ進めているし、デバイスも出来たから休んでもいいだろ、うん、やっぱり無職は最高だぜ

そんな感じで何に対してもヤル気が起こらない今日、誰にだってそんな日もある

 

「働けバカヤロー」

 

「お前もなバカヤロー」

 

隣には仕事があるのか無いのか分からないネリア、逃げ出して来たのか、それとも休みなのかどうかは定かではない

 

「むにゃ、こうしてる間にも、ヴィヴィオ達はトレーニングしてるんだろうね~」

 

「だな~」

 

よくやるぜ、ホント

こうやって時には休む事も大切なのに

 

「明日インターミドルだけど、お兄様は何かアドバイスとかしなくていいの~」

 

「いいのいいの、俺にそんな大層な事が出来ると思うか?」

 

そうやって日々努力している人間に俺みたいな生まれついてのチート野郎がゴチャゴチャ言うなんて身の程をわきまえろってんだ

にしても明日か~、ホント早かったな~

 

「ヴィヴィオ達は来年から、出場するのはアインハルトだけだしあいつにはザフィーがついてるからな、心配ねーだろ」

 

「ちなみにお兄様から見てアインハルトはどれくらいまで行けると思う?」

 

確かそんな事を原作でも言ってたよな、まぁ

 

「そもそも俺はインターミドルについて詳しく知らねぇし、アインハルトがどれだけ伸びたのかも分からないからな、どこまで行けるかなんて努力次第だよ」

 

「じゃあ私が出たらどうなる?」

 

ん、ネリアは今17歳だから出場出来るのか……多分

 

「わかんねぇけど大型砲撃OKなら地区予選は優勝出来るんじゃね?」

 

「わーい」

 

修理費が大変になると思うけど

その前にインターミドルは格闘技が主体になるからネリアみたいな形の魔導師は審査の時点で落とされるかもな

 

「それじゃあ出てみようかな~、優勝出来たら何してくれる?」

 

「もう申し込み終わってるぞ」

 

「大丈夫だよ、ちょっと主催者側とお話すれば」

 

ミッドの『お話』はOHANASIだ

ネリアとなのはのスタイルは似ているからそれはさせられない

 

「それに相談役からストップだ、君は仕事しなさい」

 

「お兄様に言われたくな~い」

 

無職万歳

 

「お兄様は明日から見に行くんでしょ?お姉様達は?」

 

「なのはは仕事らしいけどフェイトは来るらしいぞ、ザフィーラ関連でシグナムは来るけどはやては無理だってさ」

 

「へぇ、帰りにでもホテルに連れていったら?」

 

「誰をだよ」

 

なんでいきなりそんな話になる

 

「お兄様は少しぐらい大胆な方がいいよ~、自分に自信を持ってさ~」

 

「そんな事言って……じゃあネリアはどうなんだよ、もういい年なんだし好きな相手の一人ぐらいいるんじゃないのか?」

 

兄としての立場では微妙なところがあるが……学校でもあんなだったんだし私生活の中での告白だっていくらでもあるかもしれかい

そんな感じで聞いて見たのだが、予想以上に嫌な顔をされた

 

「逆に聞くけどお兄様は私に彼氏作ってほしいの?」

 

「いや、そんなわけじゃないけど」

 

ふぅ、と息をつかれる

なんか悪い事言ったか?

 

「私は誰かにお兄様とお姉様から貰ったこの体を汚されるなんてまっぴらごめんだね、私は二人の色に染まっているのが一番いいし、その中に別の色を混ぜる事は死んでもしたくない」

 

「貰ったって……俺等はそんな大層な事をした覚えはないぞ?」

 

別にネリアを束縛するつもりなんてさらさらないし

 

「お兄様がそう思っていてもネリアは違う、二人がいなかったら私っていう人間は生きていないんだし……私の体は二人の物、私は二人が大好きだからね」

 

「……ん、そっか」

 

反発しようとしたのだが最後ので何も言えなくなる

いや、ネリアが俺達を好いてくれているのは知っているのだがまさかここまでとは……

 

「あ、もしお兄様が女の子に飢えたら抱いていいんだよ~、スタイルには自信があるんだし」

 

「しね~よ」

 

冗談でもそれはない、確かにネリアは赤王のスタイルを物凄く受け継いでいるが妹を襲うほど飢える気なんてない

 

「いや、結構本気で別にいいんだよ?さっきも言ったようにお兄様の色をつけられるのなら問題無いんだし」

 

「いや、だからしないって」

 

ネリアの事だから本気で言ってそうで怖い

…………冗談だよな?

 

「……ま、いっか、お兄様なら飢える事はないだろうし、多分もう少しだろうからね」

 

「なにがだよ」

 

「なんでもな~い」

 

あと飢える事はないっていうけど俺は童貞だ、前世も現世も童貞だ

いや、そんな事言うつもりはないけど

 

「で、さっきの話だけどネリアも行こうかな、インターミドル、出場は流石にしないけどね?」

 

「仕事は?」

 

「お休みもらう~」

 

休みと言うよりか逃げて来るの方が正しいだろ

 

「ああ、それと、アインハルトちゃん……近い内にヴィヴィオが聖王に関連してる、というか多分もう気づいてるけど、どうするつもり?」

 

「さぁ、そう言う事はその時に決めるよ」

 

アインハルトがどういう風に出てくるかでも決まって来るしな

ま、上手くザフィーがやってくれて、アインハルトが使命やら何やらを忘れてくれるのが一番なんだけどな

 

「でもホント、変な因果だよね~、聖王の人間が今いる事なんて奇跡だし、覇王の直系が今に続いてるのも奇跡だし」

 

「だよな、覇王の意思、というか記憶がアインハルトに異常に強いっていうのもまた奇跡みたいなもんだよな」

 

覇王の直系って言っても普通はそんな昔の事どうでもいいもんな

正直言うと……余計な奇跡というか、ああいう女の子は普通に生きてくれれば一番いいのに

 

「ま、私達には関係のないことだしね、お兄様もめんどくさいなら手を引いちゃってもいいんだよ~」

 

「ん?ネリアって困ってる奴がいたらほっとけないタイプだったりはしないのか?」

 

「何を今更、さっきも言ったけど私は二人が一番、覇王やらベルカやらに興味はないね」

 

あっそ

 

結構ネリアは親しい間柄の人間じゃないと興味がないらしい

 

「そんな事言ったらお兄様もよく分からないよ、ちょっと前までは組手やら指導みたいなのをしてたのに今はぜーんぶザフィーラに任せっきりで」

 

「あいつにとってはそれが一番なんだよ、俺なんかが教導の真似事をするよりかよっぽど」

 

それは間違っていない

実際はやては家で道場もどきを開いている、同年代の子供も沢山いることだろうし、その中で人間性が自然と育つしな

ザフィーもその道のプロなんだし、レベルが違うよ

 

「ふ~ん、まぁネリアが口出す事じゃないしね、あっ、冷蔵庫にプリンあるけどお兄様も食べる?」

 

「おう、貰う」

 

よいしょっと言って立ち上がり、そのまま台所へ向かうネリア

あ~、でも今少し話してみて思ったのが……もうちょっとネリアを突き放した方がいいのかな~

いや、なんか依存しちまってる感じがする、ホントになんでもしそうで怖いんだが

 

「はい、二個しかなかったよ」

 

「いや、それぞれ一個で充分だろ……お前何個食べるつもりだったんだ?」

 

「ん?最低でもバケツ一杯くらいはほしいよ」

 

そ、そうか……あっ

 

「ネリア」

 

「ん~」

 

「プリン頂戴と言ったらくれるか?」

 

「嫌だよ、何で?」

 

修正、ちゃんと否定が出来て嬉しい

 

「もしかして間接キスがしたいとか?なに?さっきの会話で目覚めたの?」

 

「いやちげーし」

 

「いくら何でも早過ぎるよ、ネリアもネリアで心の準備と言うものが」

 

「いや、だからちげーし」

 

「初めてだけど優しくしてね」

 

「いや、だから違うって」

 

途中からニヤニヤしだしたので冗談だと言うのは分かるが……俺は目覚めてなんかいない!!

 

「ん~、おいしい、こういう庶民的な味の方がしっくりくるよ」

 

「いつも何食ってんだ?」

 

「プリンについては金箔が上に乗っけてあるやつ」

 

あ~、あれか、昔デザートに時々出されたな

 

「あれうまいじゃん」

 

「おいしいけど飽きた」

 

なるほど

 

「で、これはネリアが買って来たのか?」

 

「いや~、普通に冷蔵庫にあったのを覚えてただけだよ」

 

なのはのだったら後が怖い

 

「大丈夫だよ、ヴィヴィオのだから」

 

「全然大丈夫じゃねーんだけど、ったく、後で別のを買いに行くか」

 

どうせ暇だし

 

「働きなさ~い」

 

「働いたら負けだと思う」

 

この頃本気でそう感じてきた

 

「ああ、最後にネリア、明日別に来るのはいいけどその分の会議は今日中に終わらせとけよ?」

 

「まだネリアは帰るつもりはないのに最後って、すごく不吉なんですが」

 

「本家に連絡した」

 

「バカヤロー!!」

 

うわーんと泣く真似をしながら家を飛び出すネリア……あ、捕まった

 

はぁ、何に対してもヤル気が起こらないって言ってもこれじゃあホントに駄目人間になっちまうし、クロノの依頼でも進めますかねぇ

 

 




ネリアの寄せる好意は恋愛感情ではなく二人にしか興味がないということ
その次に来るのが友人、単純になのはやはやて、その他大勢
見知らぬ誰かや単なる知り合いは表では笑顔でも全く興味がありません

あ、それと次の更新は年明けになりそうです
紅白の水樹奈々さんが楽しみです。それでは、よいお年を


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インターミドル

 

「まぁそうだよな……あれだけ衣服がビリビリに破れまくってたら確実に18歳以下は入室禁止だよな……安心したというか、勿体なかったというか……」

 

「何言ってるのケント?」

 

いいんだ、原作知っている奴なら期待してしまうイベント

合法的にロリの半裸が見る事が出来るなんて普通ありえないよな、うん

バリアジャケットはそこまでもろくないよな、うん

 

ついにインターミドル本番、というか俺にとっては別についにも何もないんだけどね

アインハルトとコーチのザフィーはもう控えに行っているらしくここにいるのは俺とフェイトとネリア、ヴィヴィオや八神道場の子供達はシグナムに連れられてもう入っているらしい

ん~、と言う事はミウラとヴィヴィオが顔見知りになったのか?

…………もう深く考えるのはやめよう頭痛が酷くなる

 

「にしても凄い人だね~、男共の目線がうっとおしいけど」

 

「え、え!?」

 

いや、そりゃそうだろ

 

フェイトもネリアもそれなりの有名人だし美女なんだから、胸も大きいし、それは男の本能としてしゃーない

 

「そんじゃ入るか、前の方は埋まってるかもしんないけど座れる事は座れるだろ」

 

「お話すればいいんじゃない?」

 

だからミッドのお話はOHANASI

 

「優勝候補とかもチェックしこと、レベルの低いのは見る気は無いし」

 

「だな~、今までレベルの高いのしか経験してないからどれも普通かもしんないけど」

 

「えっと、そんな事ないよ、みんな頑張ってるんだし」

 

まぁそれはそうだけどさ、なのはとか守護騎士とか見てるとなぁ、見劣りするというか

 

(ジーク、だったか?

まぁそれだけ見とけばこっちにもプラスになるだろ)

 

彼女の格闘技は八極拳とか覇王流とは違う強さがあるからな、万が一の為に『見とく』のは必要だろう

だけど彼女を探すのが面倒なんだよな、去年の大会で優勝してるけど原作では何らかの理由で途中欠場してるらしいし

 

「そ、それよりもみんなと合流しようよ、アインハルトの応援なんだしね」

 

「え~」

 

ネリアが不満の声をあげる……いや、別にいいだろ

 

「それじゃあ楽しくないよ、アインハルトを応援するにしても三人でいようよ」

 

「えっと」

 

フェイトが困ってるな、まぁフェイトは大人数の方が好きそうだし当たり前か

 

「ま、どちらにしろ入らないと分からないし、こんな事なら対戦表貰っとけば良かった」

 

「持ってないんだ」

 

「持ってない」

 

直感頼りでなんとかなる

 

入るのに入場料とかはないらしいので途中の自販機で飲み物を買って中に入る

人は……ごった返していた

てか熱気が凄い、どうやったらこんなに熱くなれるのかねぇ

 

辺りを見渡すとカメラ片手に子供の有志を収めようとする親、厚化粧のアニメに出てきそうな親、ガチムチのおっさんとか

あ、ヴィヴィオ発見

 

「後ろの方しか空いてないね~、ネリアは売店で何か買ってくるから席お願いね~」

 

「店ごとくれとか言うなよ」

 

「え」

 

「え」

 

そのつもりだったらしい

 

「あ、う、うん、大丈夫、それぞれ半分くらい貰ってくる」

 

「食えるのか?」

 

「当たり前だよ」

 

「え」

 

「え」

 

食えるらしい

 

「アインハルトは……あと一時間後くらい後らしいね」

 

「結構早いんだな、まぁ一回戦から負ける事はないだろ」

 

「そうだね、頑張って優勝してほしいね」

 

まぁ優勝はよほどの事がない限りは不可能だけど

準決勝くらいまでいけば上出来だろ

ネリアが場を離れたので言う通りに後ろの席を確保する

あまり見える場所じゃないけどまぁいいだろ、万が一にも瓦礫とか飛んで来たらどうするんだろうか、前の席の奴は

 

てかあれだ、こういう舞台と戦い方式を見てたらアレ思い出す

 

「天下一武闘会」

 

「え」

 

「え」

 

フェイトが反応した

 

「どうかしたのか?」

 

「えっと、かめはめ波~」

 

可愛い、意味分からないけど可愛い

 

「魔法だったら出来るよな、なのはとかバンバン撃ってるし」

 

「知ってるんだ」

 

「名作だよな」

 

「うん」

 

鳥山先生万歳

 

「まぁあのレベルまでいけばもはや魔法の域超えるよな、観客も危なくなるし」

 

「月壊しちゃうもんね、この競技場も一瞬で無くなっちゃうよ」

 

だよなぁ、でもなのはが出場したらありそうで怖い

 

「それにしてもシグナム一人に任せて大丈夫かな、子供一杯いたし」

 

「師範的な立場なんだから言う事くらい聞くだろ、近寄って来るチャラ男とかも自分で撃退出来るんだし」

 

「チャラ男?」

 

「フェイトも経験あると思うけど」

 

要するにナンパだよ、フェイトは経験あるだろ

 

「あ~、なのはと一緒にいる時に声かけられたりしたな~」

 

「ミッドで?」

 

「うん」

 

「高町なのはの名前出したら?」

 

「走って逃げてくよ」

 

だよなぁ

 

「シグシグなら黙れの一言で斬り伏せるだろ、容赦ねーし」

 

「シグシグなんて言ったらまた怒られるよ」

 

「言いやすいじゃん」

 

「私だったら何かある?」

 

「…………テステス?」

 

フェイフェイは言いにくい

テステスって、なんか可愛くなった、いや可愛いけど

 

「…………ケンケン」

 

「動作になってるな」

 

「…………コルコル」

 

「ネリアと被るぞ」

 

う~、と頭を抱える

いや、別にいいよ、無理して考えなくても

 

「そんな事よりも試合試合、今出ているお嬢様みたいな奴、すっげー電撃放出してるぞ」

 

「あ、ホントだ、魔力消費凄いんだろうな」

 

そっちかい

てかまた金髪か、いや、黄色混じりの銀髪か?

つーかなってねぇな、確かにあれの威力が凄くて、自分の魔力量に自信があるのは分かるけどもうちょい改善も出来るだろ、術式ちょっくらいじれば魔力運用もっと簡単になるのに

名前は……雷帝やら何やらでイタイ子の……ヴィクトーリアだったか?

そういや来年また『正統派魔女』とかで金髪増えるのか、やめてほしいよなホント、金髪だらけになる

 

「圧倒だね、力ずくというかなんというか」

 

「相手もそこそこ強かったっぽいけどな、数の暴力みたいな感じか」

 

ま、それも戦略の内、持っている手札をどうつかうかなんか本人の自由だ

 

「ちなみにフェイトはどれくらい発電出来る?」

 

「発電って、ん~、術式はだいぶ違ったけど……雷は落とせるよ?」

 

自家発電よりも自然に頼る方が強いもんな、正に格が違う

 

「ただいま~」

 

「お、サンキュ、ってなんだそれ」

 

「こんがりお肉」

 

骨付お肉、漫画かよ、軽く五キロはありそうだが

 

「ちなみに最高級五つ星」

 

「持ってきて貰ったな、取り皿あるか、フェイトも食うだろ?」

 

「え」

 

周りの目が凄いが気にしない、ああ大丈夫、俺等は一口二口貰うだけであって後は全部ネリアの腹に収まるから

 

「飲み物ここに置いとくね、どれでも好きなの取っていいよ」

 

「なんだこのヤシの実サイダーって」

 

「さぁ?」

 

とあるシリーズ

 

骨付肉にかぶりつくネリアを無視して試合を観戦する。フェイトはネリアの世話に忙しそうだ

そういや去年の上位グループはシード持ってるんだよな、だったらジークが出るのもまだ先か

 

原作で番長とか言われていた奴が軽く勝ってリングでガッツポーズ、今更ながら殴る蹴るの非殺傷って何なんだろうな、殴れば痛いし蹴っても痛いし、非殺傷なんかに出来るのか?

そんでもって番長のパンチで壁にめり込んだ相手の安否が非常に不安だったりもする

 

「アインハルト遅い」

 

一時間、短いと考えていたがこうしてみると案外長かった

てかどんだけ参加者いんだよ、永遠に終わらないじゃねーかよ

 

軽く伸びをする、空は快晴、絶好の試合日和といいますか

鳥が飛んでる、流れ弾に当たんなよ~、瓦礫とかにも当たるなよ~

そんな中に

 

 

 

『数十発の魔力弾』

 

 

 

数は多くないし一つ一つの威力も低いだろうそれは会場の『外』から放たれた物だ

管理局によって許可を得ない市街地での魔法使用は原則禁止とされている、それがこんな会場の外ならなおのこと、多くの人がいるここに魔力弾を放つのは一種のテロ行為

 

待機していた警備員が気づいて構える、試合も一度中断され競技者も上手く防ごうと空を見上げる

 

あの程度の魔力弾、バリアを張れば防ぐ事が出来るようにも思えるが……違う

 

何かが違う、あれは違う

 

 

 

あれは……毒だ

 

 

 

 

魔導師の天敵であり、放っておけばいずれ世界を食らう毒

 

バリアなど無意味、その上から食われる

 

触っては駄目だ、近くにいては駄目だ、そばにいては駄目だ

 

あれは防げない、あれが落ちれば……この会場にいるほとんどの人間が死ぬ

 

 

気付けば右手を上げていた

 

 

標準を合わせる、固定する

 

なんであんな物が会場の外から撃たれたのかなんて知らない

 

なんの目的があったのかも知らない

 

ただ、何も考えずに呟いた

 

 

破壊(クラッシュ)

 

 

世界の一部が壊れ、再生する

 

あるのは元通りの青空、ほとんどの人間が何が起こったのか分かっていない

 

魔力弾が放たれた方向、角度を計算する

この会場のすぐ外

 

野放しにしてはいけないと直感が強く告げて来る

 

放っておいたら、誰かが絶対に食われる

 

右手にはデュランダル、体を光が包み込む

 

フェイトの声を振り払って、その場から飛んだ

 

 

 

 




インターミドル、ケント視点では書く事がない

そんでもってバタフライ効果発動


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力押し

酷い駄文だ、戦闘シーンなど全く思い浮かばない
というわけですぐに終わりです

14日から17日まで諸事項により感想を返せません



飛ぶ、という表現よりもジャンプする、という表現の方が正しかったかもしれない

 

席は比較的後ろで魔力を乗せて飛躍したのだ、まぁ一般には飛ぶという感覚で合っているのだろうが

 

目的の物は探す手間もかからずに見つかった、銀髪というかなんというか……赤バンダナつけた長髪男

理由とすればそいつの周りにだけ人がいなかったからか?

それと中で悲鳴的な物が聞こえてこない事に首をかしげている……ま、俺が一つ言える事は

 

 

 

自分が魔導師である以上、今までみたいな加減はできない

 

 

 

「えっ、ちょっ!?」

 

「……フッ!」

 

着地早々デュランダルを横凪に振るう

直前に気づかれたためにかすり傷……だが、止めない

 

「フゥ、ハアァァァ!!」

 

「くそっ、ちょい待てじゃね!!」

 

待てと言われて待つ馬鹿はいない、ここぞとばかりに押しまくる

技術面ではこちらが一枚も二枚も上手、そして相手は素人

それでも得物である銃剣を振るって対抗してくる、人間、必死な時は想像以上の力が出るものだ

が、俺は長期戦を全く望んでいない、一対一なら別にそれでもいいんだが……いかせん場所が悪すぎる

 

「……ッハ!!」

 

「っ!?」

 

左手に持ち替えたデュランダルによる手首への剣撃、軽く出血するが目的はそこじゃない

遠心力というか何というか、反射的に銃剣を離し、外野に放る形となる……得物は、消えた

 

「うおっ、最悪じゃね!?」

 

「ハアァァァ!!」

 

左上に振るったデュランダルを空中で瞬時に右手に持ち変え……縦に斬りつけた

 

…………久しぶりだな、人体に刃物当てて金属音って言うのも

これされる前に捕獲したかったんだけど……甘かったか

 

「いきなり殺す気満々ってどうかしてんじゃーねの!?

てかなんでパニックになってないんじゃねーの?」

 

「じゃねーのじゃねーのうるせえ、あんなもんばら撒くなんて神経してるお前もどうかしてるしパニックにならないように俺が壊した、それだけだよ」

 

ったく、俺が甘かったせいで不利になっちまった

誰かが連絡を入れて局員の人間がかけつけて来る……もういいから、ここじゃ足でまといになるだけだから

それは二人にも言える事であって……

 

「ケント、大丈夫?」

 

「一体全体何事だ」

 

あの場にいたフェイトやシグナムも『局員として』参戦する事が出来る

未来でこいつより数段上の奴を瀕死にしたシグナムだけど今回は事前知識は全くなし、酷い状況だ

 

「あ~もう、これ撃ち込んで生き残ったのが『type0』で攫うだけの簡単な作業だったから引き受けたんじゃねーの、こんな状況最悪じゃねーの」

 

「type0?」

 

聞き慣れない単語だ、そもそも『アレ』が落ちてれば競技場の人間全員死んでいると思うが……

それにこのじゃねーの野郎、確か原作で無人世界で『実験』と称して人間を殺しまくってた片割れのはずだが、妙だ

今から四年後の時代でも実験する場所は無人世界を使っていた筈なのだ、なのに何故いきなりミッドの、それもこんな人が集まる競技場のど真ん中で?

こいつの言う『type0』というのはこの場でしか攫えない理由でもあるのか?

 

「時空管理局執務官、フェイト・T・ハラオウンです。市街地での無断魔法使用、及びテロ行為であなたを拘束させていただきます」

 

「それに執務官なんてますます最悪じゃねーの」

 

ニヤニヤしながら話している為に本当にそう思っているのかが不安なのだが

こちら側は俺とフェイトとシグナム、それと局員が六名ほど

ネリアは来ていないらしい、まぁ一応一般人だから当然と言えば当然だが

 

それに対してバンダナ男一人、名前は忘れた

能力は確か……筋肉関連だった気がする、まぁ先ほどの金属音で相当硬い事は立証済みだ

 

「さて……」

 

取り合えずは一度周りの人間をどかしたい、こいつと戦うなら最低限の事前知識が必要となってくるしな

かと言って俺も相性は最悪と言ってもいい程だが……魔法を無効化される点では立場は同じだ

 

「ま、俺はとっととこっから退散させてもらうんじゃねーの、こんだけ邪魔が入ったら目的どころじゃないんじゃねーの」

 

「悪いがお前の目的とやらは俺も興味があるんでな、大人しく捕まってくれたら嬉しいんだが」

 

「被験者は黙ってろ、じゃねーの」

 

「被験者ね」

 

ま、例えれば俺がネズミならこいつは猫、俺がバッタならこいつはカマキリ、俺等の天敵が目の前のこいつであり負ける事は絶対ないか

ただな、『窮鼠猫を噛む』って言葉があるくらいだから、あまりおごらないほうがいいと思う

 

隣で影が動く、シグナムが前に出た

レバンティンを腰に構えて抜刀でケリをつけるつもりだ、ただ……殺る気がない、こいつへよ魔法攻撃は殺る気が無ければ通じないのに

それに非殺傷、そればかりは……まさに効果なしである

 

シグナムの目が見開かれる、当然だ、本気では無かったとはいえ自分の抜刀を『腕一本』で受け止められた

一瞬動揺したところを見過ごす程男も甘くはない、受け止めた後すぐにその腕力でシグナムの首を押さえつける……ッチ

 

「っ、ケント!?」

 

デュランダルを捨てて駆け出す、ああいうタイプに斬撃は無意味だとサンドロスの経験から学ばせてもらっている

だから今は得物は不要、だから主張するのは……

 

「マジカル、八極拳!!」

 

シグナムと男の間に入り込み殴りこむ

手の拘束が緩んだところに手刀、そこからの回し蹴り

……うん、全然効いてねぇ

 

一発蹴りを入れて間を開ける、ゴホゴホと咳をしているようだがシグナムは平気だろう

 

にしてもマジカルチート八極拳でも無傷となると大変なんだよな、本格的に考えないといけない

 

いざとなったら『破壊』があるのだが……あれは最終手段だしな、殺したら目的も何も分からないし

 

「すまん、油断した」

 

「ああ、油断し過ぎ」

 

ここは別にいいとかいう場面なのだろうがあえて挑発

シグナムは結構こういう挑発に乗ってくれやすいからね、同じヘマはしないでいてくれると思う

 

「痛ぇじゃねーの、なにすんだ!!」

 

「だから同行お願いします行ってんじゃねーか、さっきの話し方だと指示した人間もいそうだしな、洗いざらい吐いてもらうぜ」

 

「現場の人間にゃあ上の考えなんてわかんねーんじゃねーの」

 

「じゃあ投降する気はないと」

 

「当たり前じゃねーの」

 

……そっか、じゃあ

 

「上、見てみ」

 

「へ?」

 

いや、「あ、UFOだ!!」みたいな流れじゃなくて

どうやら俺が何かをしなくても勝敗はつくっぽい

 

「え、あ、はあぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「お兄様~、出来るだけ離れててね~」

 

「逃げろよ一般人」

 

流石第五世代デバイス、ネリアが使うと迫力が違う

上空にはSLB×2程の球体が一つに膨大なスフィア、ま、これじゃいくら『分断』をしないといけなくなるからそこを俺が決めればいい

 

「えっと、ネ、ネリア!?」

 

「そ、取り合えず離れるか」

 

フェイトとシグナムの手を取って、二人だけ短距離転移

 

その瞬間にネリアの生き生きとした声と共に魔法が撃ち出される

いつでも動き出せるように拳を構える、今日ちゃんと見るつもりで来たけど結局見れてないし……ビデオの映像でどこまで再現できるか

などと思っていたらあっけなく光に包まれて行く男

 

……あれ?

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、捕獲完了だな、よくやったネリア」

 

「えっへん!!」

 

だから胸を張るな、揺れるから

 

場所は先ほどと同じスタジアム前、広場に変わって煙をプスプスとあげているクレーター前

この騒ぎのせいで今日の試合は中止、今年のインターミドルは果たしてどうなるのだろうか

 

あとネリアの砲撃によってぶっ飛ばした男をフェイト達が捕獲したのだが……なんか腑に落ちないんだよなぁ

 

「えっと、大丈夫だった、二人とも?」

 

「お疲れ様お姉様、私はお姉様に怪我がなくて一安心だよ」

 

「俺も、特に何もしてないから大丈夫」

 

結局手柄は全てネリア

 

「それで、さっきの男は?これからどうなるんだ?」

 

「えっと、意識はすぐに戻った見たいだから護送車や局での尋問になるね、ケントが言ってた通り指示した人間がいるみたいだし……そっちもちゃんと捕まえないと」

 

だよなぁ、アレ、つまり『エクリプス』今の時期に存在していたというのもビックリだし、どちらにせよ管理局はそういった危険な存在を確認し、局員全体に伝えておいた方がいい

第五世代デバイスが開発されているという事はエクリプスの存在は認知していたんだし、いつまでも極秘扱いだとクソ死亡者出るぞ

 

「フェイトは何か聞いた事は無いか、あの男の事で」

 

「ん?すぐに連れて行かれちゃったからよく分からないな、あ、でも『なんでディバイドが出来ねぇじゃん』って呟いてたよ?」

 

「ディバイドが出来ない?」

 

妙だな、ネリアが使っている第五世代デバイスはまだ試作途中、

今は第一段階である『魔力の貯蔵』しか出来ないはずだ

ん~、分からん

type0っていうのも気になるし

 

「まぁ管理局で尋問するんだったらいくらでも情報は聞き出せるか……あ」

 

尋問したら駄目じゃん、死んじゃうじゃん

 

 

 




vivid編を前編後編に分けました、理由としてはケントをこれ以上グダグダさせたくないし原作の方で『ジークの途中欠場の理由』や『古代ベルカに関して』の情報が無く、このまま進めたら原作との矛盾点が出て来そうで怖いからです
間にオリジナルを挟みます。あまり長くはなりません

あと一つ謝罪です
GODで登場したアインハルトとトーマの言葉に矛盾が生まれてきます
というかもう既にアインハルトはおかしくなっています
作者のミスですが彼らは『別次元のケントと知り合い』と言った感じで捉えてもらえると幸いです
本当にすみません


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反対

短いです。いつもの三分の二くらいの量です
取り敢えずここでvivid前編は区切ります



「やっちまった、頭から爆弾抜いてから色々聞き出せばよかった」

 

自室で一人頭を抱える俺

凡ミスだ、原作でも爆弾バーンだったの忘れたわけじゃないだろ

 

結局、あの後ある事に気がついた俺は本局に問い合わせて尋問を止めさせようとしたのだが後の祭り、バンダナ男はいきなり後ろに仰け反ったかと思えば頭から血を流して死んでいたらしい

原因は調査中だがすぐに分かるだろう、正解は脳内に埋め込まれた小型爆弾

原作でもそうだった、依頼者、つまりは奴を動かしていた黒幕に少しでも触れる様な事をはこうとしたら自動的に爆発する性格の悪い科学の結晶

埋め込まれている事を知っている人間なら首までズラして爆発させて逃れるらしいがバンダナ男はそんなものが体内にある事自体知らなかったからな、バカみたいに話そうとしてバーン

 

……少将の権力使って今回の事件もみ消すか、ロストロギアで力に溺れた者の犯行だって

出来ればやりたくなかったんだけどしかたない

確実にフェイトは調べてくるしな、今の時期にエクリプスなんて知ったら絶対彼女は動く、いや、彼女達だろうか

 

何故もみ消しなんてしようとするのか、そんなものは簡単だ、『俺は特務六課には反対である』

機動六課設立の時は後見人に俺もいたのに何故か、というかあれはしゃーない

機動六課は原作を進める為に必要なものだしはやての夢でもあった

こっちの利益としてはもう一人いた転生者、つまり鮫島をあぶり出す目的もあったわけだし

しかしだ、Forceでの特務六課は必ずしも必要な組織と言われればそうでもない

そこそこの実力を持った部隊が代わりに出て来てもいい筈なのだ、それにはやてとシグナムは重傷確定、そこまで知ってて設立を進めるなんて俺には出来ない

それが出来ないほどに、あの時の俺と比べて大切な人が増え過ぎた

 

「トーマの件は、どうしよ、俺トーマとこの時間では会ってないからただの他人だしな、可哀想だとは思うけど他人の面倒を見れる程俺もお人好しじゃないし」

 

そもそもあの遺跡がヴァイゼンのどこかも知らないしな、遺跡なんてああいう自然一杯世界にはいくらでもあるわけだし

正直言って面識があるならまだしも身も知らずの赤の他人に対して動くなんてめんどくさいし

 

まぁどっちにしろ、エクリプスの件については最悪一人で動く事も視野に入れている、あんな人殺ししか脳がない病気に関わらせてたまるかっつーの

 

だから情報は与えない、戦闘中もシグナム達に説明しなかったのもそのせいだ

 

「ま、その前に管理局自体も隠したがってるから大丈夫だとは思うけど」

 

「なに独り言言ってるの~」

 

ムニュッ、という効果音とともに後頭部に押し付けられる柔らかい物体……ってウオォォォ!?

 

「えっ、あっ、ちょっ、ネリア!!」

 

「そこまで驚くことないじゃん」

 

ムフフ~と半笑いしながらこちらを見つめてくるネリア

っていつからいたバカヤロー

 

「大丈夫だよ、お兄様の独り言は聞いてないから」

 

「それならいいんだけど、てかノックくらいしろ、いきなり来られたらビックリするだろ」

 

「ノックしても返してくれなかったんじゃん」

 

そうなのか?

ん~、まぁ深く考えてたから周りが見えてなかったのかもしれないけど

 

「それよりどうだった?

ブラをいつものとまた変えてみたんだけど」

 

「知るか、てかわざとやったのかよお前」

 

感触?

……柔らかかった、それしか言えない

 

「それで、何の用だ。イタズラしに来ただけじゃないんだろ?」

 

「イタズラで来ちゃ駄目?」

 

「当たり前だ」

 

普通に来るならまだしもイタズラはいけない

 

「インターミドルが延期になったんだって、まぁテロがあったんだから当然だね、逆に中止にならなかっただけでも凄いよ」

 

「延期か、まぁ中止にしたら来年から年齢制限で出れなくなる選手もいるわけだし」

 

「アインハルトもだいぶ落ち込んでたみたいだからね~、いや~、よかったよかった」

 

…………。

 

「他人事だな」

 

「他人事だもん」

 

まぁ、そうか

 

多分いつするかは未定だろう、今年中にはやるだろうけど

中止になったらアインハルトもまた覇王の因縁やらうんちゃらに逆戻りの可能性もあったわけだし、競技者でいられるようにはザフィーが頑張ってくれるか

いや、ホントザフィーいい師匠

 

「と、あともう一つ」

 

「まだあるのか?」

 

ゴソゴソとポケットを探るネリア、なんだ?

取り出したのは四枚の半券……?

 

「ここに遊園地とプールのペアチケットがあります」

 

「え、あ、うん」

 

「お兄様はどっちに行きたい?」

 

……二人で行きたいのか?

じゃあ

 

「ネリアが決めろよ、俺はどっちでもついて行ってあげるから」

 

「ん?あ~、違う違う、これはお兄様とお姉様の」

 

……は?

 

「いや、もう流石に引きずりすぎ、もっとこう、バシッとしないと」

 

「いや、だからって」

 

「お兄様は知らないと思うけど今度の休日、ヴィヴィオはコロナちゃんの家にお泊り、なのはさんは教導で合宿があるから帰ってこれない、お姉様は休み、ネリアは二日連続会議が入ってる」

 

「えっと……」

 

「こんな偶然が重なる日なんて滅多にないよ」

 

「そ、そうだな」

 

「だから!!」

 

バシッと指をさされる

あまりの見幕に思わずたじろいでしまう……だから?

 

「男らしく、当たって砕けて来いや~」

 

……砕けたら駄目だろ

 

 

 




どちらがいいと思いますか?
23日の間のみ受け付けます

※終了しました。アンケートご協力ありがとうございました



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ケント・コルテット編
オリキャラ設定



しばらくの間纏めていなかったので纏めてみました

抜けているキャラ、不足しているところ、間違っているところ、書いてほしいところなどがあればご意見下さい、答えられる範囲で追記します


 

オリキャラ設定

 

○ケント・コルテット

 

年齢/22歳(vivid)

 

魔力/S−(SSS)

 

身長/145(170)

 

性質変化/風(炎熱)

 

特典/セイバー特典/黄金律/破壊

 

デバイス/デュランダル

 

この小説の主人公、転生者

 

容姿はセイバーでありどちらかというとキリッとしている、オリジナル設定『コルテット家』の長男

性格としては真面目に見えていい加減、基本顔見知り以外の関わることには放置である

子供時代に社会の汚い部分、闇に触れて人間不信に、ただ成長するにつれて逆に優しさや背後にあるコルテットではなく『彼自身を見てくれる人』に囲まれたおかげで明るさを取り戻した

 

戦闘能力としては主にセイバー特典内にある『皇帝特権』を使用、自分の中で技術を『主張』することによって少しの間のみ主張した技術を一流にまで持って来ることが出来る

もう一つの使い方が『強化模写』、言い方を変えると『見れば出来る』

大体の事を『技術であるかぎり』一度見ることによって模写し、使いこなす事が可能、さらに技術の欠点を無くす『一度』に変えるのでオリジナル以上のものが完成する

ただし例外としてレアスキル、デバイスに頼った魔法、砲撃は不可

ケントが使わない理由は『嫌われるから』、これを知られてしまえば本当の意味での『努力の否定』となり、自分を見てくれる人が遠くに行ってしまうのではないかという不安感、過去のトラウマを持つ

他にも『黄金劇場』、これは一つの『世界』でありケント自身が主人公となる

主な効果としては自分の強化、敵の弱体化、勝敗がつくまで出れないなど

『殺す』ことに限るならば『破壊』

対象が物質であるならば魔力のある限り対象物を分子、原子レベルまでに壊す能力、当然次元世界でも異例中の異例である危険指定

ちなみにこれによって『世界の一部』も壊しているが修正力によって一瞬で再生される、その先は不明

 

転生した理由は『二段ベッドからの転落』もう少し詳しく言えば『神様が書類にゲロ吐いた』なのだがおかしな事にケントの前世の記憶が曖昧でありケント自身もそれに違和感をいだいていない

 

 

○ネリア・コルテット

 

年齢/18歳(vivid)

 

魔力/SS+

 

身長/163

 

デバイス/ガラディーン

 

レアスキル/なし

 

現コルテット家当主、ケントの妹

プロジェクトFの応用によって作られたケントのクローンであり容姿はセイバー、ただ少々目が垂れ目

研究所での呼ばれ方は『No.14』、ケントのレアスキルの再現の為に作られたと推測しているが彼女が逃げる際、研究所をまるごと吹っ飛ばしたので彼女を作り上げた詳しい理由は不明である

魔力はケントを上回るSS+、ただしケント本人の魔力はSSSなのでそれの影響

得意なのは『収束』と『放射』、ラグナロクレベルならばガンガンぶっ放せる

体型としてはボッキュッボン、胸は18歳でフェイトレベルにまで成長した

少々ヤンデレでもありお兄ちゃんっ子、ケントとフェイトがいなければ自分の命は無かった事から自分自身を『二人の物』として見ている、逆にその他の人間に対しては親しい間柄であっても『他人事』である事には変わりない為に若干冷たい

大食いでエロ、食事はスバル以上を平らげ本家にはエロゲ、エロ本、大人のおもちゃ、同人専用の倉庫を作ったりなど、ちなみに彼女自身は処女、破られるとしたらケントが狼さんになった時

ケントと同じ『St.ヒルデ魔法学園』を卒業しており、卒業した後もファンは耐ないでいたりする

 

 

 

○サンドロス

 

『St.ヒルデ魔法学園』の教師でありケントの担任でもあった先生

現役時代は聖王教会内でも二人といない実力者だったが前線を退いた後は次の世代を育てるという目的を持ち教師に

子供時代のケントに対し唯一『一人の生徒』として接した人物でもありケントが唯一心を開いた相手でもある

彼自身が長年捜査し続けていた『管理局の闇』の先に最高評議会、コルテットという組織を発見、行動を起こそうとするが鮫島に気づかれた事によって戦闘に、敗れ死亡した

死体は聖王教会に保管されていたのだが何者かによって強奪、スカリエッティ達の手にかかりロストロギア『レリック』を埋め込まれ物言わぬ人形とされケント達の前に立ち塞がった

しかしコルテット襲撃の際に意識を取り戻し己の中のレリックに食われながらも鮫島の計画を阻止、転移先で重傷

それでもレリック、そして自分自身の執念によってコルテット当主、最高評議会の二人を強襲、二つの闇と共に二度目の死を遂げた

 

 

 

○鮫島(兄)

 

特典/騎士は徒手にて死せず/従は師より天高く/魂の改竄

 

もう一人の転生者、原作鮫島の兄

もとは普通の幸せを望んだ普通の人間、特別な事など何も望んで無かったのだが時間、月日が経つにつれて『自分が特別な存在であること』『これ以上の幸せを得れる』ことに執着し始め鮫島家を抜け出す

原作との大きな相違点『コルテット』に目を付け自らの特典を使って地位を高め、ケントという存在と遭遇

最高評議会の魂をコルテット当主であった二人に移転させ二人を殺害、自らもケントに移ろうとしたのだが彼の『対魔力』に阻まれ失敗、自らの魂が崩壊寸前にまで追い詰められた

十九年の月日をかけて再び計画を実行、コルテット本家を強襲しケントとネリアを最高評議会のバックを使い指名手配犯に、ケントの転生後の魂を封印することで特典も封じ込めた

しかしケントとの最後の一騎打ちで敗北、『エクスカリバー』を受け、気絶したところをフードを被った謎の少年に腹部を貫かれ、血を出さずポリゴンになって消滅した

 

 

○ヴラド・ガルダ

 

魔力/AA−      陸戦/AAA−

 

vivid前に起こった『獣耳事件』の主犯であり元局員

筋肉と獣耳に最高の『美』を感じておりそれを皆に分かってもらう、夢を実現するという理想の元にロストロギアを捜索、発見し事件を起こした

最初はただの筋肉が凄いだえの局員だったのだがロストロギアの影響でホントのガチムチに、向かって来た局員をバッタバッタとなぎ倒した

一度はケントを圧倒的な筋肉で撃退したが二度目の勝負でケント、シグナムのコンビに敗北

実質的被害はみんなが獣耳になったこと、彼自身も事件中その筋肉で人命救助などに尽力したことから半年程で釈放、ロストロギアの後遺症により魔力量が上がっている彼をコルテットが雇った

今では管理局の新人の指導、コルテットSP部隊の隊長を務め、ライバルは聖王教会シスターシャッハ、ケントが聖王教会に行く時時々ついて来て拳と刃を交えているらしい

 

 

○最高神

 

ケントを転生させた張本人、理由としては彼の書類にゲロを吐いた事への謝罪

命あるものをそんな事で殺した事がバレたら閻魔から怒られるという理由でケントの前に現れたのだが詳細は不明、そもそもたった一人の人間の為に彼が出てくる事が異常だったりする

 

 

 



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恋愛経験零 1

アンケートは14対9で遊園地となりました
アンケートご協力ありがとうございましたm(_ _)m



人が行き交う

 

平凡な日常、何度も何度も、繰り返され、続く日常

 

親がいて、友達がいて、親戚がいて、こうして自分の脇を通る、見知らぬ人がいて

 

平日には学校、休日には部活、部活がない時は勉強、友達から連絡が来たら外出

 

新しいゲーム、漫画、それが欲しくて貯めた小遣い、禁止なのにやろうとしてたバイト

 

好きな子に告白したあの日、ごめんなさいと返された失恋

 

一回戦を勝った大会、二回戦で負けた悔しさ

 

兄妹と喧嘩して叱られたあの日、テストで成績が落ちて落ち込みもした

 

朝昼晩とご飯を食べて、明日の為の宿題をする

 

休日には父親が帰って来て、家族団欒の時間を過ごす

 

 

 

人並みの幸せ、繰り返される幸せ、人の温もり

 

 

 

ずっとあって欲しかったのは、たったそれだけ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にしてもどうするか、誘うにしても……な」

 

ネリアから渡されたチケットと睨めっこしながらその凡庸な脳味噌で考える

皇帝特権を使っても中々解決策思い浮かばないとはかなり難しい難解なのだろう、いや、その前に俺のチキンハートが皇帝特権以上の邪魔をしているだけかもしれないが

 

結局、ネリアから渡されたのは遊園地のチケット、マスコットキャラクターは『耳が大きい猫』、断じてネズミではない

あの黒い体に特徴的な鼻と耳をしたあのキャラクター、断じてネズミではない

 

遊園地を選んだ理由はあれだ、デバイスの持ち込みが可能だから

みんな知らないけど俺って一度プールでテロにあってるからな、ある程度の魔法ならそれでも使えるけどデバイスある事に越した事ないだろ、うん

ネリアは最後までブーブー言ってたが……なんでもプールの方があっち系のハプニングが起きやすいと……いや知らねぇよ

 

そんなこんなでチケット、まぁこっからが一番の問題だけど

いや、今まで『みんなでどこかに行く』というのはあったが二人きりというのは殆どない、しかも俺から提案したのだって

さらに言うと二人きりと言っても学校見学やら彼女の仕事関連やらばかりだし、それに俺は満足に娯楽施設には行ってないし

つまり言うと『どうやって誘えばいいのか分からない』、前世+年齢=彼女いない歴をなめんな

 

てかそもそもこの年になって遊園地はいいのか、いや、だからといって他の案を俺が出せるはずもないし……というか俺はフェイトを誘って結果的にはどうしたいんだ!?

告白、告白なのか?

出来るのか俺に、てかてか何で俺はネリアの勢いに釣られてチケットを貰っちまったんだ!?

 

「あー、頭痛い」

 

しょうがないだろこれは、下手すりゃコルテットのプロテクト破る時より頭使ったんじゃないか?

そしてそれでも答えは出ない、世の中の夫婦達はこんな困難を乗り越えているのか、気持ちを伝えるとはこんなにも過酷な事なのか

というかフェイトはどうなんだろ、今まで『原作だったら』とか言ってたけどあのスタイル、あの性格、あの容姿で誰とも付き合った事が無いっていう方が希望的推測な気がする

原作なんて所詮いいところやハプニングだけを切り抜いただけで裏までは語られないんだしね、あんないい女性誰も放っておかないよ、フェイトが『誰とも付き合った事が無い』って言っても本当かどうか分からないわけだし、てかガチでどうなんだ、忘れてたけど好きな男性とかどうとか言ってたよな

 

そういやこの頃聞かないよな、思いつめる様子もないし

……もう既に他人のもの……とかないよな、ないよな、ないと言ってくれ

局内で彼女がどうなのかなんて俺は知らないわけだしね、俺が知らない間にイチャイチャしてても可笑しくないわけだしね

学生時代、言っちゃあ思春期に一発誰かとかましちゃってても可笑しくないわけだしね!!

知ってるか、初めてを失う男女が一番多いのは高1の夏なんだってさ!!どうせ俺は売れ残りやんだよバカヤロー、一生童貞野郎でいいよバカヤロー!!

リア充消えろバカヤロー!!

俺だって男なんだよバカヤロー!!

性欲の一つや二つあるんだよバカヤロー!!

非童貞消えろバカヤロー!!

羨ましいぞバカヤロー!!

 

「ケントさん、ご飯ですよ~……ってどうしたんですか?」

 

「いや、なんでもないさ」

 

「なんでもないって……お、おでこから血が出てますよ!?

ママ~!!」

 

どうやら知らない間に机に向かって頭を何度も打ち付けていたらしい

ティッシュで血を拭いてくれるヴィヴィオは……俺みたいな淫らな考えなどない優しい子である

 

 

 

 

 

 

「大丈夫だった?自分で治してたけど」

 

「大丈夫大丈夫、あれくらいの傷なら数分で治るよ」

 

夕食後、傷の跡が無いかチェックしてくれるフェイト

なんと言うか、近いよフェイト

 

「それにしても何でいきなり……辛い事でもあった?私でよければ相談にのるけど」

 

「いや、大丈夫だよ、ちょっとした気の迷いみたいなもんだから」

 

疑惑の目を向けてくるフェイトだが「そっか」と言うと俺から離れる

相談って言ってもフェイトに対して言える内容じゃない、てか何考えてたんだ俺、馬鹿じゃないのか?

溜まり溜まった欲求が爆発したとかどうとかか、いや、もうやめよう、考えるのは

 

「まぁお兄様だから心配ないよ、跡がつくなら入院させるけどそこまでじゃなさそうだし」

 

「入院って……そんな大袈裟な」

 

「お兄様の顔に傷でも残ったら一大事だよ、入院している全患者を無視してでも治療するから」

 

おいおい、それは駄目だろ

机で未だにご飯を食べているネリア、ちなみになのはとヴィヴィオは二人で風呂に入っている

俺は一番最後

流石に男が入った風呂に女性が入るのは抵抗ある

みんなは気にしないと言ってくれているが俺が気にする、それだけだ

 

「にしてもあれだけの事でどこまで思いつめていたんだか、流石に情けないと思うよそれは」

 

「ネリアは知ってるの?」

 

「予想はつくけど大丈夫だよ」

 

全然大丈夫じゃないからああなったんだろ、それでも情けないと思うのは同意

だけど情けないからと言ってどうしろと、てかなんて声をかければいい

経験0の俺には分からない、誰か助けてほしい

 

はぁ、とネリアが溜息をつく

 

「そういやお姉様って今度の休日予定とかある?」

 

「え?

ん~、特に入ってないけど、あっ、臨時の収集とか事件とかがあったらまた別だけどね」

 

どうやらネリアが助け舟を出してくれるらしい

……妹に助けられるとは、つくづくホント情けない

 

「で、お兄様からお話があるのです」

 

……え?

 

(えっと、あの、ネリアさん?)

 

(自分の事は自分でしなさい)

 

念話での会話、そしてネリアの言うとおりでもある

パニクる頭をどうにかして落ち着かせる、えっ、えっと

 

「その……暇なんだったら……遊びに行こうというか、なんというか」

 

「うん、大丈夫だよ、それでどこ行くの?」

 

えっと、えっと……があぁぁぁぁぁ!!

 

「その、人が多いとは思うんだけど、ここに」

 

デュランダルに頼んでデータを出してもらう

頼むというか、指示しただけなんだけど

 

「……大丈夫なの?その、ケントとネリアは危ないからとか」

 

「え」

 

「え」

 

「はぁ」

 

上から俺、フェイト、ネリア

 

「違う違う、私は会議がビッシリだからその日は行けないよ」

 

「……え、え、それって」

 

理解出来たらしい

ちなみに俺の顔真っ赤、彼女の顔を直視できない

だから今彼女がどんな顔をしているのか分からないしどういう状況なのかも判断出来ない

 

「その、二人きりで」

 

「はぅ」

 

可愛い声、余計に緊張する

どうするどうする、気持ち悪いとかウザいとか怠いとかそんな事思われてたらどうする、てかこんな誘いフェイトなら何十回もされていても可笑しくないし断わる事だって慣れてしまっているだろうし俺もそんな奴らと同じかとか思われてる可能性だってあるし、体目当てのゲス野郎とか思われていたら修復不可能だって……うがあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

「う、うん、た、楽しみにしてるね」

 

「へ?」

 

思わず素っ頓狂な声を上げてしまった俺は悪くない

what?

OK?

ホントニOK?

 

「フェイトちゃん、お風呂空いたよ~」

 

「あ、うん、じゃ、じゃあ行こうかな」

 

俺が顔を上げるより早くにフェイトが立ち上がってそそくさとその場を後にする

……えっと

 

「お兄様にしたら……頑張ったよ」

 

「え、どうしたの?」

 

不思議そうにするなのはを尻目に

ホッと胸を撫で下ろした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは流石に……不味いとしか言いようがないかな」

 

自身の周りに稀少能力で作り出した猟犬を配置し身を屈める

場所は荒地、というか焼け野原というか……実に形容しにくい場所ではあるのだが少なくとも人が住める場所でない事は確か、彼自身今体全体を覆っている防護服がなければ……自分の全てを『蝕まれて』死んでしまう

そして彼は、今現在その『死』に本当の意味で直面していると言っても過言ではない

 

戦火の原因ともなったロストロギアの捜索、この星の状態から見ればロストロギアの性質など手に取るように分かるのだが、まさかこんな事になっているとは想像がつかなかった

ロストロギアの自律的行動、極悪人が悪事に使用、それならいい、どれだけいいか

よりにもよって、こんな……

 

「クロノが言ってたかな、『世界はこんな筈じゃ無かった事ばかりだ』って、全く、その通りだと思うよ」

 

元々彼の能力は偵察向けの能力であり魔法、頭を使って上手く立ち回ったり類稀なる才能を持つ親友達とは違う

だから今の彼に出来るのは逃げる事だけ、逃げ延びて、自身が得た情報を何とかして持って帰る

 

「…………っう」

 

 

黒い、塊

 

 

そうとしか形容できない、例えるとしたらテレビの砂嵐、あれを黒く塗りつぶしたらああなるかもしれない

それが前から、横から、後ろから、まるで虫のように這い出て来る

逃げなければいけない、勝ち目がない

触れたら駄目だ、近づいても駄目だ

彼の本能がアラートを鳴らす、いくらなんでも数が多すぎる

 

「……いくよ」

 

それでも、諦めたらそこで終わる

自身の観察力を持ってして『アレ』の一番薄いところを探す、周りにスフィアを展開

勝負は、一瞬

 

「はあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ありったけの魔力を注ぎ込み放射する魔力弾、それに続いて猟犬が一斉に走り出す

逃走に気づいたのか、周りの『』が一斉に彼を狙う……が遅い

前方の黒の殆どは燃えている、大丈夫だ、あの程度なら今着ている防護服で間に合わせる事が出来る

自身を取り囲むように走っていた猟犬達が一匹、また一匹と黒い塊に捕まって行く

一匹は断末魔のような声を上げて、また一匹は黒く侵食されて

猟犬の数はまだ足りる、転移ポートまで魔力は保つ

 

ひたすらに、がむしゃらに走って

 

 

終わりは一瞬

 

 

「……あ」

 

背後からの剣撃、ほんの一瞬の出来事

猟犬を従わせているにも気づかなかったとなると……一瞬で転移して斬りつけて来たのだろうか

短距離転移のレアスキルかな?などと気楽に考えてしまうのは自分の性格からだろうか

それがどうあれ、非殺傷で放たれたその斬撃は体を斬ることは無かったが、無情にもその防護服を斬り裂いた

 

そしてまた一瞬だった、体が侵食されていく感覚

五感が上手く作動しない、吐き気がする、目眩がする、頭痛がする

僅かな意識で斬りつけた相手の方向へ振り向く、もう迎撃する力なんて残っていない

朦朧とする意識の中、見つめた先にはフードの少年

顔は分からないけれど、どうしよもなく、誰かに似ていて

 

彼の意識は、そこで途絶えた

 

 

 

 



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恋愛経験零 2

インフルかかりました、いや~、しんどかった

山は去って熱は下がったんですが今週中は外出禁止なのです
最高体温が39度になって病院行ったら鼻の中に細い綿棒みたいなの突っ込まれて鼻水取り出されて、さらにリトマス紙?みたいなのにつけて暫くしたら赤と青の綺麗な線が
先生曰く「なり始めはうっすらとしか反応しないんですがね~、ここまでくっきりと線が出たら体の中ウイルスだらけですよ、こりゃ~多分無茶苦茶しんどいと思いますよ」
いや、思いますよじゃなくてしんどいんです、ハイ!!

ま、先ほど言ったように熱は下がったんでもう何ともないんですがね
前書き使って書いたのがそれだけです



 

この世界に生きて来て、恐怖やら人間不信やらなんやらあったが、ここまで緊張した場面というのもあまりないのでなないかも思う

 

待ち合わせした時間まであと少し、腕に巻かれた時計を自分でも呆れるくらい何度も見てしまう

 

というか待ち合わせ時間の二時間前に来てしまうのもどうなのだ、待たせたらいけないという強迫観念は確かにあるのだが今更ながらそれは『異常』と分類されるのではないか

 

いやいや、この二時間で尾行していた護衛は全て追っ払ったし万が一の為の迎撃術式も作成できた

……迎撃術式はやり過ぎたか、もしもフェイトをナンパする人間でもいようものならミッド辺境地にあるスラム街のど真ん中に転送させるという術式なんだが……

 

フェイトを無事に誘えたその後、色々と自分でプランを練りどう動こうかなども考えたのだが……正直どうすればいいのか分からない

というか一度でも恋愛経験があればまた違ったのだろうが俺にはサッパリ、でもって調べてみようとしたのだがクサイのしか出てこない

なんだよ夕日が見えるベンチやらあのドラマ見過ぎたおばちゃんが考えそうなストーリー、絶対に破局させようとしてるだろ、コメント欄が『末長く爆発しろ』で埋めつくされてたぞ

 

そんな感じで今日を迎えたのだが何でも、フェイト自身が昨日泊まりで仕事をしていたらしくこうして待ち合わせ的な感じになってしまった

 

無理させてないよな、俺のせいで徹夜……とかってわけじゃないよな

余計な事してくれやがってとか面倒だとか思われてないよな、思ってないと誰か言ってくれよ

 

いちいちこんな思考に走ってしまう自分自身をどうしよもないチキン野郎だと再実感しながらも負の連鎖が止まる事なんてない

こんな時ポジティブに考えられる人間はどうかしてるのではないのか、頭のネジが逆に何本か外れているのではないか

いや、実際に外れていると思われるのは俺であってうわあああ

 

「お~い、ケント~」

 

「…………はぅっ」

 

思考の海から目覚める

目の前には至近距離で顔を覗き込んで来るフェイト……え、あ

 

「どうしたの?すごくうなされてる感じだったけど……」

 

「どうもない、どうもないよハハ~」

 

二時間前に来ておいて何してんだ俺

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ~、懐かしいな、ここ」

 

「ん、フェイトは来た事あるのか?」

 

「子供の時母さんやクロノ達と一緒にね、テレビで見た事しか無かったから嬉しかったな~」

 

入り口でチケットを提示し、園内へと入場する

ミッドでも有数の娯楽施設だけあり園内はかなり広い、入り口すぐにあるこの広場では耳が大きい猫(ネズミっぽいが違う)やその仲間達、詳しく言うならばリスっぽいハムスター兄弟やアヒルっぽい白鳥♂、さらには犬っぽい狼などがそろって観客と記念撮影をしている

あとこれは余談なのだがこのキャラクター達、異常なほどに著作権にはうるさいと評判でもあったりするがネコである、耳が大きいネコである、そこだけは忘れてはいけない、ネコである!!

 

あれからここに来るまで一緒にいるうちにだいぶ慣れ、思考もしっかりとしてきた

いかせん今が特別だと思うからいけないのだ、実際同居しているから二人きりという場面は何度もあったわけだし今回もその延長線だと思えば気が楽になる

いや、まぁそれでも緊張している事はしているのだが……何度手の平に『人』の字を書いて気づかれないように飲み込んだ事か……

 

あとこれも余談だが入り口で人がごった返している中、俺達を見つけた一人の係員(スーツ)が行列完全無視して俺達を中に入れてくれた、しかも全てのアトラクションのエクスプレスパス付きで

ネリアとこの遊園地とでどんな話があったのかは知らないが深く考えるのはよそう、フェイトももうすでに俺達との十年以上に渡る付き合いの中で気にしていなかったらしいし

 

「さ、取り敢えずどのアトラクションから行こっか、せっかく来たんだから楽しまなきゃ損だしね」

 

「ん~、そうだな」

 

入り口で貰ったパンフレットを開ける

館内の地図、アトラクションの紹介、お土産屋さんなど様々、中にはオススメの記念撮影スポットなども載っている

エクスプレスパスがある為にどのアトラクションでも待ち時間は心配しなくて大丈夫そうだし、ここは近いところから順番や遠いところから順番などでもいいだろう

ま、一番近いところというのは……

 

「じゃああれ行こうよ」

 

目をキラキラさせながら指を指すアトラクション

その直後に『ゴー』という音が聞こえたと思うと乗客達の悲鳴

 

遊園地の定番、『ジェットコースター』である

 

 

 

 

 

 

ジェットコースター、俺の中の認識では『空戦魔導師では見慣れた景色』

実際シートベルトも安全装置だってあるジェットコースターは『魔力』という燃料が尽きると墜落……なんという飛行魔法などより安全かつ快適

それにいくらスピードを上げようがたかが知れている、上位魔導師の中には目にも見えない早さで動き回る人もいるのに目で追え、さらにはそこまで高くない場所からの急降下で怖がるなどどうにかしている

こっちの世界に来てから『危険』などと言われて乗っていなかったが全く心配ない、むしろフェイトもそんなに怖がらないのだろう

 

 

 

 

そんな事を思っていた時期が、俺にもありました

 

 

「ちょっと待てぇぇぇぇぇ!!」

 

『きゃあぁぁぁぁぁぁ!!』

 

俺の声と乗客達の声が狭い空間でこだまする

いや、無理だろ、おかしいだろ

なんで固定されてんの?

なんで早さ調節出来ないの?

なんで地面に向かってLet's flyingしちゃってんの?

当たり前だがあり得ない、先ほどの言葉を修正しよう

これは『対空戦魔導師に作られたアトラクションである』と

誰かが空は自由だと言った、馬鹿言え、空が自由だと感じるのは拘束されていないから

拘束されて振り回されるだけのこれでは自由なんてありゃしない

目が回る、自分の意思とは関係なく動く体

てか俺の騎乗スキルBはどうした!!

チラリと隣を見る、声を上げて楽しんでいる彼女の横顔

凄く、たくましいと思います

 

 

 

 

 

 

 

「ん~、久々に乗ったから興奮しちゃった、ケントは初めてだったんだよね?どうだった?」

 

「あ、うん、やっぱりいつも飛んでる感覚とはまた違うな」

 

ジェットコースターから降りてフェイトが大きく伸びをする

内心グロッキー状態になっている事など表に出さない、男がこれくらいでへばるなど情けない

逆にフェイトはかなり爽快だったらしい、顔はまだまだ明るく尻尾があれば千切れんばかりに振っていそうだ、いや、これは俺の希望的観測であって本当に喜んでいるかどうかは本人しかわからないわけなんだけれど

少し休憩したい気分でもあるのだがそんな気持ちもグッと堪える、おくびにも出さない

 

「というかバリアジャケット無しだとGってあれだけかかってるんだ……よく途中でバンザイとか出来たな」

 

「……え?」

 

俺の言葉に対して驚いた様子を見せるフェイト、え、何か問題があったか?

どこかで俺という人間は致命的なミスをおかしたとか……

 

「もしかして……ケントはこういうところ自体来るの初めて?」

 

「恥ずかしい話だけど」

 

というか遊園地自体が狙撃にもってこいの場所だからな

 

「え、え、大丈夫だった?

ご、ごめんね、怖かったりその」

 

「そこら辺は心配しなくていいよ、というか初めてと言っても知識だけなら分かるんだし」

 

先ほどのジェットコースターは死ぬかと思ったが絶対に表に出さない

 

「じゃ、じゃあどこがいいかな、ケントに合いそうな所ってえっと、えっと」

 

パンフレットを見ながら必死に考えてくれている彼女を見て思わず苦笑してしまう

それでもこのままでは今日一日彼女に気を使わせてしまう、そういうのは避けたい

どうしようか軽く悩む、俺としては怖いが怖くなかろうがフェイトといれたらそれでいいんだし何よりも楽しんでもらうのが一番だ

かといってここで「大丈夫」やら「心配ない」という先ほどの言葉をいくら言ってもずっと引きずってしまうだろうし……ま、ここは無難に一度この周辺を見て回る……とかか?

なんなら写真スポットだってあるだろうし売店やらここでしか食べられない物なんかも売っている筈だ、金は腐る程にあるんだし心配ない

それをフェイトに伝えようとして……

 

 

なんかいた

 

 

 

いや、『なんか』などという例え方は酷いだろう。正式には『知り合いがいた』

小さな子供の手を取り歩く一人の女性と、その前でもう一人の子供を肩車して歩く男性

確かに家族サービスぐらいしろとは言ったが何もこんな日じゃなくてもいい気がする、てか提督って結構暇なんじゃね?

向こうはこちらにまだ気づいていない様子、まぁ自分の言うところではないが容姿伝々で結構目立っているのは事実なのだ

フェイトも気づいていない、ならばここは上手く彼らと別の方向へ移動して鉢合わせしないというのが最優先

それが分かれば早速実行、モタモタしている暇はない

 

「と、取り敢えず園内見て回ろうぜ、食べ歩きとかしながら目に付いたアトラクション乗って行くとかさ」

 

「え、うん、ケントがそれでいいならそれでいいけど」

 

了承も得たのでフェイトの手を取って彼らと反対方向へ歩き出し、どこか入れるアトラクションを探す

……あった、アトラクションというか行列だが

アトラクション内容はどんなのかは知らないが大人やカップルが多く並んでいるという事は子供用の物ではないのだろう。そして恐らくだがフェイトは大概の物はいける

反対方向へ進んだからと行って直ぐに安全と言うわけでもなく少しでも後ろを振り向かれたら即アウトの距離なのだ、だったらこの行列の人混みに紛れて姿をくらました方がより安全

というより俺らは並ばなくていいんだからアトラクションの中に入れる、そっちの方がより安全

 

「じゃあアレ行ってみようよ、結構人いるから面白いんじゃないのか?」

 

「え、あ、うん、私は大丈夫だけど……ケントはいいの?」

 

「全然、問題なんかないって」

 

後ろを振り向いてフェイトを説得しようとしたのだが案外簡単だったようだ

と、いうより話しかける寸前は顔を赤くしてうつむいていたのだが俺がアトラクションを指示した瞬間にこっちを心配する顔になっているようにも見えたのだが……遊園地で怖いなんて物はさっき見たいな絶叫系以外思いつかないし、そもそもさっき乗ったジェットコースターがこの遊園地の中で一番大きそうだったのだ、あれを超えるのなどもう無いだろう

余裕余裕と正面を向けば入り口、受付にいたお姉さんは……何故か不気味な格好をしていた

少したじろいでしまったがチケットを取り出す為に持ち物を探る……というより結局ここは何なんだ?

確認する為に顔を上げてみる……あ~、なにこの廃墟、というよりビルとかホテルっぽいの、流石魔法世界スケールが違う

 

「あ~、うん、皇帝特権全開」

 

一つだけ言える事、俺ホラー系大嫌いです

 

 

 




マスコットキャラクターはにゃ○ちゅうを想像して下さい、決して他のキャラクターは想像しないで下さい、絶対に

あとこれも最後に、恐怖を消せる技術?
そんな物ありませんしあったとしてもケントは『知りません』


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だから俺は

 

 

お化け屋敷というのはデートのありふれた、またお決まりのようなイベントであり、少女漫画、ライトノベルなどでもよく見かける

王道としては少女漫画ではがっこいい男の子が何の取り柄もない自分を守ってくれる、ライトノベルだったら一人の男子を巡っての争奪戦であったり色々……まぁそれでも、どちらのイベントでも共通して言えるのは『男は強い』だろうか?

何事でもそうだ、女の子がピンチの時に男の子が守る、そこでキュンときたり距離が近づいたりラッキースケベがあったり……ただあえてここで言おう、俺はそんな展開一切期待していない

とゆうか女の子、女性と言っても俺の周りにはたくましい女性しかいないし何よりもそういう場所へは行きたくない、もっと行ってしまえば男と女の立場が逆になる恐れがあるのだ

 

俺という人間はホラー系が大嫌いだ、それはもうホントに、てかグロい系全般が不可能

心霊系、ゾンビ系、映画もテレビもゲームも無理、自分は平和なRPGや格闘ゲームで充分なのです、バイオ○ザードとかでも無理なのです

あれだね、やっぱりポケ○ンやマ○オが一番だね、平和万歳!!

 

「それでは、お気をつけて」

 

「あ、はい」

 

「暗いね」

 

そして間違えて、というか不注意で入ってしまったここ

どうやら典型的なお化け屋敷とかではないらしく一種の乗り物に乗って移動するそうだ、つまりはアトラクション

定員は一つにつき四人までらしく前後、ちなみに俺たちは前で後ろにはカップルが乗っている

シートベルトを締めた事を確認されゆっくり進んで行く乗り物、こういうアトラクションだから怖くないのか?とか思うが舐めたらいけない、直感Aを

俺がホラー系が嫌いな理由の一つ、それはこの直感A

だいたい分かってしまうのだ、嫌な物や怖い物がどこで出てくるかが

皇帝特権でどうにかすればいいとか考えたが無理、てか何その技術?

皇帝特権は技術を一流にするスキルであって怖さを軽減させるスキルじゃない、こんなのクソ程にも役に立たない

 

乗り物が暗闇の中へ移動し、辺りは何も見えなくなる

……っあ

 

「……まぁ、いいか」

 

ある程度予想出来てた事だし大丈夫だろ、てかこんなところであの二時間が活躍したか、世の中何があるかわかんないな

その前に……

 

「ギヤァァァァァァ!!」

 

盛大に叫んだ

 

 

 

 

 

 

 

「意外な所に弱点ってあるんだね、無理しないで良かったのに」

 

「あそこでやめるなんて男じゃないだろ、それにしてもフェイトはこういうの慣れてたのか?よく分からなかったけど」

 

「一度来た事があったからね」

 

そうですか

 

アトラクションが終わって我慢出来ずにベンチに持たれかかる、体はまだ熱くて倒れてしまいそうだ

そんな俺の隣で座っているフェイトはさっきのアトラクションなどどこ吹く風という感じで別段怖い物でもなかったようだ、そんな物でギャーギャー騒いでいた俺はさぞ耳障りだっただろう

 

「と、いうわけで心霊関連での悩み相談は今後力になれないと思ってくれ」

 

「そんな相談するつもりはないんだけどな~、あ、でもケントにやってもらいたい事とかがあると時はそういう写真を持って行けばいいのかな?」

 

「合成は意味ないぞ、直感で分かるから」

 

「ある意味凄いねそれは」

 

本物か偽物かを見分けるのは簡単だ、見た瞬間どっちか分かる

じゃあそっち系の仕事就けるんじゃね?などと甘い考えをしてはいけない、殆どは偽物だがごくたまに本物も混じっている、本物が出てくるたびに絶叫していたら意味ないだろ

 

「それと……私達の後ろにいた二人、どこに行っちゃったんだろうね、降りる時にはいなかったけど」

 

「ああ、あの二人ね」

 

フェイトが話した後ろの二人、まぁカップルなのだが俺たちが降りる時にはもういなかった、というか途中から

どうやら待ち合わせ二時間で作っていた迎撃術式が発動したらしい、あのナンパ撃退用の

アトラクション中、しかも彼女の前でナンパ、という事はないだろうから恐らくテロリストやら殺し屋やらそこら辺の人間なのだろう、基本敵意とか向けられない限りは発動しないわけだし

まあ真っ暗闇、しかもアトラクション内で動きが制限させる場だったのだ、殺すにしろ誘拐するにしろやりやすい場である

それでも勘弁してほしいものだ、慣れたからと言っても今日しなくてもいいのに

 

「え、それっt「うわぁぁぁん」

 

……遊園地とか大勢の人が集まる場所でこういうのが起きるのなんて本当の漫画やらアニメだけだと思ってたけど違うらしい

迷子の迷子の子猫さん、盛大に泣いていらっしゃる

それが目の前で起こったのだ、優しすぎるフェイトはもちろんの事俺だって見て見ぬ振りをする程鬼じゃない、そんな事すりゃ後から罪悪感が塊となって押し寄せてきそうだ

でもなぁ、迷子なら迷子でいいんだけど……ちゃんと面倒見やがれあの野郎

 

「あれ?カレル?」

 

「ひぐっ、ふぁ、おねーちゃん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デュランダルの錆にしてやろうか」

 

「まずはカレルを見つけてくれてありがとう、そして色々と邪魔をしてすまない……だからその……威圧というか何と言うか、それをやめてほしいんだが」

 

黙れこの畜生が、俺がどんな思いをしてお化け屋敷に乗り込んだか分かるか?どれだけの勇気を振り絞ってフェイトを誘ったか分かるか?

目の前にいるのは親友でもあり幼馴染の提督様、あれからカレルを見つけた事を連絡して合流、ちなみに俺達を見たエイミィさんは申し訳なさそうに頭を下げていた

だがそんな事子供達には関係無し、フェイトはカレル、リエラからしたら叔母さんに当たる人間なのだ、あんなに若いのに

そのせいで一緒に回ろ~みたいに泣きつかれて今現在フェイト、エイミィさん、カレルとリエラでアトラクションに並んでいる

そして俺等二人はその待ち、男二人でレストラン

……誰が好き好んで

 

「で、提督様のお仕事は大丈夫なのか、家族サービスしろと言ったのは俺だけどさ」

 

「ん、一昨日帰って来てね、短いけど少しの間休みをもらえたよ」

 

そーですかいあーですかい

 

「で、どうなんだ、調子は?」

 

「お前そんな事に興味あったか?」

 

「妹だぞ?」

 

その兄に詰め寄られてる気分にもなれ

 

「調子とかそんなんじゃねーよ、ただ楽しんでただけ」

 

「……はぁ、まあいい」

 

何故か呆れられる

 

「そういえばケントは母さんと会ったこと無かったよな……うん、どうせ暇なんだろ?」

 

「その暇で当然みたいな言い方やめろ、これでも色々してんだから」

 

……もうやる事ねーんだけど

そういえばと思ってデュランダルに入れているフォルダを弄る……空中に出て来たのはクソデッカいメモリーカード的な何か……てかこれだけデカイとバッテリーとか何かに見える

 

「ほれ、頼まれてたやつ」

 

「え、うおっ!?」

 

あまりの重量に驚いたのだろう、一度落としかけたのをお得意のバインドを使い空中にギリギリ固定する

ったく、俺の努力の結晶なんだから大切にしろよ

 

「管理局用のメインサーバーだよ、犯罪者さん達からしたら喉から手が出る程ほしいだろうな、プロテクトには自信ある」

 

「ちょっ、早すぎないか!?それにこんな場所で渡す事もないだろう!!」

 

お前のデュランダルの格納庫にでも仕舞っとけ

あと早いのは暇だから、暇人万歳ニート最強!!

 

「どんなのかは局に帰って解析すりゃ分かる、文句不満その他諸々あるならまた言ってくれ、その時はその時でまた弄るから」

 

「いやいや、それにこんなに小さいのか?管理局のメインサーバーになるんだぞ?」

 

「軽量化は技術力の象徴だからな、大丈夫、それを今の時代で再現しようとしたらスーパーコンピューターいくらあっても足りないから」

 

俺は鍵知ってる様なもんだから開けられるけど本気で相手どるなら黄金劇場使わないと無理かもな、そこまでのハッカーがいるとは考えづらいから大丈夫だとは思うけど

 

「時と場所を考えてほしかった」

 

「お前いつもどっか行ってるから次っていつになるか分からないし、渡せる時に渡しておくのが一番だろ」

 

「まぁ、そうなんだが」

 

そうだろう

 

 

目の前に出されているメロンソーダを口に含む、今からクロノ達と回るのか……まぁいいか、実際俺なんかはいつも暇なんだしまた勇気出して誘えばきっとOKしてくれるだろ、多分、うん、そう思いたい

取り合えず今日のところはそう割り切る、フェイトも俺も子供のお願いを無視したりは出来ないし……うん

 

「あっ、出て来たな」

 

「重ね重ねホントにすまん」

 

いやもういいんだよ、よく考えたらこっちも家族団欒を邪魔した様なもんなんだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから色々なアトラクションに乗った、スライダーやらメリーゴーランドやら

基本二人の意思によるものだったがそれもそれで良かったと思う、今考えればどうせ俺なら最終的にジタバタしてダメダメだった可能性もあるし……そう考えれば二人にリードされたような形……もっと言えば助けられたのかもしれない

一つ残念だったのは遊園地の代名詞とも言える観覧車も一緒だったということか、まぁそれも割り切ろう、そうでもしないとやっていけない

 

もうすぐ日がくれる、夜には恒例のパレードがあるだろう

人が集まり始める、人間こういうのは前で見たいというのが当然であり少し早めに俺たちも陣取る

あと三十分もすればパレードは始まる、そんな時

 

「御免ね二人とも、お姉さん達ちょっと行かないといけない場所が出来ちゃったんだ」

 

「え~」

 

「え~」

 

二人が残念そうな声をあげる、というか俺も呆然だ

もちろんそんな場所などないし話し合わせたわけでもない、というかフェイトは子供好きであるため帰る時まで離れないとも思っていた

そうなんだが……

 

「ね、ケント」

 

「え、あ、うん」

 

反射的にそう答えてしまう

二人はまだ不満そうな顔をしているがお姉さんがいうならしょうがない、といった感じなのだろうか

その様子を見てエイミィさんが説得してくれる

隣にいるクロノは腕を組んで見守っているのだが……っておい、一家の大黒柱としてなんかしろよ

最終的には諦めたのか二人は「またね」と、それに返す様に俺達も「またね」と

フェイトに腕を掴まれる……どこに行くのかは分からない

遠くなっていくクロノ達の姿を見ながら、遅れないようについていく

 

 

 

 

 

 

 

ついた場所は、人気のない場所だった

人工的に作られた湖が見える小さな公園の様なところ……ちょっとした休憩などにはもってこいなのかもしれない

当然パレードが近づいた今の時間には誰もおらずただただキャラクターが書かれた遊具や自販機があるだけなのだが

 

なんでこんな場所に来たのかは知らないが何もないというのも心もとない、座ろっか、というフェイトに対して自販機で飲み物だけ買ってくるといい、二人分のお茶を買う

気温は暑くもなく寒くもない適温、お茶を彼女に渡した後に隣に腰掛ける……あと十分もしたら暗くなるだろう

 

「御免ね、パレードがあるんだけど……ちょっと話さないといけない事があって」

 

「まぁいいけど、どうかしたのか?改まって」

 

何か重い話っぽい、少なくともキャーキャー騒げる類ではないだろう

実際パレードも絶対に見たいなどとも思わないわけだしお茶を飲みながら聞き返す、言い辛いことならゆっくりでいいしそこはフェイトのペースでいい

 

「その……ホントはもっと早くに言わないといけなかったんだけどね……怖くて、でも今日一緒にいて思ったんだ……逃げられない事なんだって」

 

深刻そうな顔、どちらかと言えば不安……なのだろうか?

というかもっと早くに言わないといけなかった?

 

「ケントは私に優しくしてくれるし、笑いかけてくれるし、今も一緒に暮らしてる……だから、ちゃんと話そうって」

 

まっすぐにこっちを見つめてくる彼女、それにつられて俺も真剣な表情になってしまう

……え、そんな難しい事でもあるの?

 

「その……私ね」

 

 

 

「ちゃんとした人間じゃないんだ」

 

 

 

察し、というか大体わかった

今思えば出会って十年ちょっと、彼女の口からその事は聞いてない気がする

 

そこからゆっくりと語り出す自分自身の過去、PT事件の全貌、彼女が俺に伝えたかったのは自分が『アリシア』という人間を元に作られたクローンであって普通の生まれ方をしていないと

そうだな、確かに原作では自分という存在を割り切っているがそれは事実であって逃れる事の出来ない現実、その時周りは受け入れてくれたと言っても今はどうか分からない

だってそうだろ?

自分の自己紹介の時に『私は○○のクローンです』なんて言うか?

答えはNO

そのせいでもしかするとそれまで親密な関係にあった人間と距離をおかれる事になるかもしれないし軽蔑されるかもしれない、悪ければ化物扱いだ

そんな話を彼女はしてくれている……それはどれほどの勇気が必要なのだろうか

でも、だからこそ

 

「フェイト、それ俺も知ってるよ」

 

「ふぇ?」

 

あえてそれを口にする

確かに原作知識もある、だけれども

 

「で、でも私、今まで一度も、他の人には……」

 

「じゃあ聞くけどフェイト、コルテットの次期当主第一候補の人間の周りにいる人間、みんな信用してると思ってる?いつもSPゴロゴロ連れて歩かせる様な組織が」

 

これも答えはNO、そもそもコルテットが子供時代の俺に望んでいたのはもっとほら、高貴な人間との交友関係であり一般人ではない、その一般人だって下心のある奴ばかりが近寄ってくるのだ、当然、害があるのか無いのかぐらいは調べるだろう

 

「こんな言い方をするのは良くないんだけど……フェイトと会った次の日に伝えられたよ、前科持ちのクローンだって、危険指定の人物だって」

 

「えっ」

 

ホントは当主が決める事なんだろうけどあのザマだったんだし、決定権は当然俺にある

だけど……さ

 

「俺は今もこうして側にいる、それが答えなんじゃないのか?」

 

「あ」

 

ま、あの時はこの事実を伝えられた時『いや、知ってるし、だから?』みたいな感じで病んでたからな……それはそれでしょうがないんだろうけど

 

「それにそんな事気にしてたらネリアは妹になってないしヴィヴィオとも暮らしていけねぇよ、それに魔法なんだから結局は何でもアリだと割り切れるし」

 

それを考えてフェイトも話せたんだと思うけどな

ちなみに危険指定の人物は他にもはやてとか守護騎士、なのは撃墜事件のあの時は場にいた奴殆どだよな、なのはだって管理外世界の得体の知れない存在だったんだし

まぁ結局それも『知ってるし、興味ないからどうでもいい』だったんだが……普通のお坊っちゃまなら気持ち悪がって勝手に嫌悪するんだろうな、俺は例外だからいいとして

ま、そういうわけで

 

「んな事気にすんなよ、俺は少なくともどうでもいい」

 

どうでもいい、それが一番

大丈夫とか別にとかでもなく、ただただどうでもいい

 

「って、泣く程の事なのか?」

 

「え、あ、ご、ごめんね」

 

いや、謝らなくてもいいのに

ハンカチを渡して涙を拭かせる

涙はすぐに収まった、一度「よし」と言ったあと立ち上がり、俺の手をとる

 

「時間とらせてごめんね、パレード始まっちゃうから行こうか」

 

気付けばもう空は暗い、遠くからはガヤガヤという声が聞こえてくる

俺の手を放してその場でクルリと回るフェイト、その姿が……とても愛おしく見えて

 

「?、どうしたの?」

 

涙の後が見える、頬は赤い

心は空っぽ、何も考えずに……口が開く

 

「俺も、ちょっとフェイトに話さない事があるんだ」

 

「ん?」

 

俺の表情が緩い事を知っての事だろう、フェイトの表情も柔らかい

それでもしっかり聞いてくれるのが、嬉しくて

 

「俺さ、一時期本気で笑えなくなった時があったんだ」

 

今となっては懐かしくも感じる……どうしてああなったのかさえもハッキリとしない

ただ……

 

「そんな中で、必死に俺を励ましてくれたその人が、眩しくて」

 

何度助けられたか分からない、ただ、気がつけば自然と笑える様になっていて

 

「なのに、本気で信頼していた人に裏切られて」

 

燃える屋敷と血だらけの妹、今でも忘れない

 

「心が壊れそうになっている時に見た、その人の顔が、ホントに、美しくて」

 

雨の中俺の為に涙を流してくれたその顔が、ホントに綺麗で

 

「俺はそれに救われた」

 

自分の為に、本気で涙を流してくれる人がいる事に

 

「だから」

 

 

 

 

 

「俺は、フェイトの事が好きなんだ」

 

 

生まれて初めて、自分の気持ちを口にする

 

ほんの少しの間の後、彼女から返されたのは

 

唇に触れる、温かなぬくもりだった

 

 

 




それでも世の中あまくない、青髭の旦那はアカルトが尊敬する人間の一人
色々とちゃんと書けてるか心配です


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風景

更新遅れました、それなのに今回は短め
次話から物語が動きます



 

朝の日差し、鳥の囀り

 

まだ覚醒していない頭を起こす、時間はもう九時だ

 

体を伸ばす、少し寝すぎた

 

部屋はポカポカしている、カーテンから入る日差しで温まったのだろう

 

隣には……もう誰もいなかった、代わりに下の階からトントンという音が聞こえる

 

ベッドから降りてスリッパを履く、そしてそのまま階段で下へ

 

いい匂いが漂ってくる、朝食は日本食だろうか

 

ドアを手にかけ、部屋に入るといたのは……エプロンをかけた一人の女性

 

こちらに気づき振り向く、いつもの様な柔らかい笑顔……うん

 

「おはようフェイト」

 

「おはようケント」

 

いつもと同じで、いつもとちょっと違う朝の風景

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日のケントはお寝坊さんだね、朝食の当番ケントだよ?」

 

「悪い、また代わりにやっとくな」

 

両手を合わせて謝るがフェイトは別段気にしていない様子

効果音を入れるとするならば『プンスカ』なのだろうか、何と言うか、可愛らしい

二人で『いただきます』と言って朝ご飯に手をつける、味噌汁が美味い

あとこれは余談なのだが味噌汁はこっちの人には余り好かれなかったり……美味いのになぁ

 

「そう言うけどケントは何でも出来るよね……どこかで料理習った事でもあるの?」

 

「ん~、テレビでやってたシェフのをパクっただけだよ、俺に家庭の味とかいうのは出来ないからな」

 

「そ、そうなんだ」

 

ま、実物を見たわけじゃなくあくまで画面の向こうだから再現率は八割から七割ぐらいなんだけどな

 

「で、フェイトはこの後予定あるのか?執務官の仕事とか」

 

「大丈夫だよ、夜にちょっとしないといけないかも知れないけど殆ど終わっちゃってるから」

 

そうか、ヴィヴィオもなのはも帰って来るのは夕方ぐらいだからそれまで二人か

 

「じゃあどこか買い物でも行くか、服とか靴とか、フェイトあんまりそういうの無いだろ、時間無いんだし」

 

「ケントとは違うからね」

 

「酷い」

 

間違ってないけど今言うか?

 

「ふふ、ケントから言い出したんだからお財布はお願いね」

 

「それも酷い」

 

いつものフェイトは何処行った

 

「あと荷物持ちも」

 

「ホントにフェイトか?」

 

むにーと頬を引っ張ってみる……あ、いい感触

 

「いひゃいいひゃい、冗談、冗談だよ」

 

「うおっ、ごめん」

 

う~、と言いながら頬を摩るフェイト、それも可愛いと思ってしまった俺はどうなんだろうか

 

「もう、荷物持ちは決定だね」

 

「うっ、了解しました」

 

あんなことしてしまった以上仕方が無い

 

朝ご飯を食べ終わって二人でごちそうさま、俺もまだパジャマのまま、フェイトもまだパジャマのまま、着替えてなんやらしないといけない

食器を持って席を立つ、女の子は準備に時間がかかるし朝食は作って貰った身なんだから食器洗いぐらいはしないといけない

食器洗いと言っても食器洗い機に並べてぶち込むだけなんだけどな

 

「ケント」

 

「ん?」

 

スタートボタンを押そうとした瞬間に呼び止められる

人間名前を呼ばれると振り向いてしまうのが普通だろう、俺もそうであって反射的に振り向き

 

 

「ん……」

 

唇を塞がれる

 

 

唐突な出来事だった為に思考が一旦停止……え

 

「それじゃ、着替えて来るからちょっと待っててね」

 

「え、あ、うん」

 

自分の顔はトマトの様に赤いだろう、というか思考が停止していた為に簡素な返事しか出来なかった

 

……フェイトがこんなにも積極的だとは思っていなかったりする

 

 

 

 

 

 

 

 

来たのはショッピングモール、服やらなんやら、ブランド品が多いとこ

いや、まぁブランド品と言ってもそこまでだとは思うのだが……フェイトが値段を見て顔を顰めていたから相当なのだろう

俺が買おうとも思ったが「じゃあ一番欲しいので」と言って断られた、一番欲しいのって……家とかか?

いやまあそういう事はないだろうから大丈夫、うん、金目当ての駄女は腐るほど見て来たからな……

そういうわけでショッピング、ブランドと言っても安い店だってあるしフェイトは何だかんだで小金持ち、いつの間にか紙袋四つ

買っている服や靴が殆ど黒なのはやはり彼女の趣向なのだろう、フェイトには黒が似合うし丁度いいのかもしれないが

俺?服とか靴とか考えないタイプです、それが着れればそれでいい

 

「オシャレは大切だよ、ケントって私服もあまり着ないし殆どスーツだったりするじゃん」

 

「バリアジャケットもスーツが主体だしな、それ以外思いつかないし」

 

セイバーって言ったら騎士装甲なのだろうが生憎、スカートを履きたいとは思わない

赤王なんかあり得ない、パンツ丸見えとか俺がやったらただの不審者だ、そんでもって変人変態確定……ガキの頃に似たような事をしてたのは忘れたい

 

「そんな考えだったら女の子にモテないよ?」

 

「モテなくていいよ」

 

なんでフェイトが俺に不倫をそそのかせてるんだよ

 

「冗談だよ、どっちにしろケントはモテモテだしね~」

 

「いやそれはない」

 

メイドにキャーキャー言われてたのはまた別だろうしどちらかというと憎まれ人間、近寄って来る女もさっきも言った通り金目当ての駄女ばかりだし……てか結局は金なんだよなぁ

 

「ケントはもうちょっと自分に自信を持ったらいいのに」

 

「フェイトもな」

 

「え」

 

「え」

 

結局こんな感じ

 

「朝の光景見たら発狂する男子がどれだけいるだろうか……俺って知らない間に無茶苦茶な人数の敵を作ってる気がすんだよ……次元さえ超えて」

 

「そ、それは大袈裟だよ」

 

いや、世界にはアニメキャラが好きすぎて抱き枕と結婚する外人だっているんだ……うん、いるんだ

 

「そういう意味では……フェイトって結婚してるのか?」

 

「え、わ、私はしてないよ!!」

 

ブンブンと首を横に振る

冗談とは分かってるけど、今思えば凄まじいよなアレ、フェイトの迷惑も少しは考えた方がいいと思う

 

「わ、私はその、結婚とかその……あの……」

 

急に一人でモジモジし始める……なにこの子可愛い

 

取り合えず気を取り直す、時間は丁度昼、いくら朝食が遅かったとしても小腹は空いてくる

ショッピングモール内のマップを見て適当なカフェを探す……あ、ちなみに俺コーヒー飲めないです。悪かったな子供舌で

 

「どうする、一番近い所でいい?」

 

「うん、大丈夫だよ」

 

荷物も重いしな

 

「普段鍛えてないからだよ」

 

「おっしゃる通り」

 

反論しようがない

いや、俺は『自宅警備員』として日々訓練を!!

 

「次元世界最強の自宅警備員だね」

 

「Sランク魔力の無駄使いだな」

 

もっとよい使い道はないのだろうか

 

「個人的には私の補佐、とかになってほしいんだけど上官だしね、いや、ケントなら逆に私が補佐官になってたりして」

 

「そんな面倒な事するつもりはないぞ、デスクワークとかマジ無理」

 

「ケントならすぐに終わると思うけど」

 

ガチになったらな、多分人の二倍から三倍程度

ただやる量は変わらないのだから怠い物は怠いのだ

 

「働いたら負けだと思う」

 

「私の彼氏は駄目人間」

 

それでも経済的に自立している。流石黄金律

 

「賭け事とかめっぽう強いしね」

 

「株とかもな」

 

黄金律万歳

 

「それにヤル気さえあれば何処でも働けるし」

 

皇帝特権万歳

 

「駄目人間にしては異常だよ」

 

「自分でもそう思う」

 

どう転んでも社会的に死ぬ事はない

 

「……今度執務官試験出してみよ」

 

「いやなんで」

 

「ケントなら私が落ちた試験も一発勝負で合格しそうだね」

 

否定出来ない所が怖い

 

「流石ケント、汚い」

 

「酷い」

 

なぜかフェイトが冷たい

 

精神的にボコられながらカフェに入る

ある程度広く内装は落ち着いた感じ、まあどこでも同じなのかもしれないが

 

腹が軽く鳴り、それを効かれて笑われてしまう

 

と、その時だった

 

 

「……通信?」

 

デュランダルに通信が入る、相手は聖王教会……という事はカリムか?

何か急用でもあるのだろうか、余程の事がない限り『聖王教会』からの連絡先は来ない、それにはコルテットと教会との間での権力やらなんやらがあるのだが大概は『カリム』からの私的なメールや通信、普段とはまた違う

 

「ちょっと御免、席外すな」

 

「あ、うん」

 

聞かれたら不味いことかもしれないので行ったん席を立ち、その場から離れる

外の方がいいかなと思ったのです外へ出てから通信を受け取る。

画面には……カリム、なのだが

 

「どうした?」

 

目に涙を溜めている彼女を見るのは初めてだろう、それが事の重大さを教えてくれる

聖王教会からの通信で涙を流すカリム、どれ程の事があったのだろうか

カリムの息は荒い

「あ、あ、」と声が出ないカリムを画面越しに一旦落ち着かせる、そしてゆっくりと

 

「助けて、下さい、ケントさん」

 

「え?」

 

教会からの通信でSOS、それは教会が襲われたとか何かか?

だが、そんな連絡はまだコルテットから一通も……

 

 

 

「ロッサが、意識不明の重体で!!」

 

 

 

………え?

 

 

 



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狂気

 

『狂気』、その言葉が一番当てはまるのかもしれない

 

素直に言ってしまえば純粋に『怖かった』、人間の危機感知能力……いや、生物としての本能

 

カリムは彼の状態が良くないからと、フェイトは機密事項に関わるからと

シスターシャッハがそう言ったのも頷ける。こんなもの、彼女達には見せられない

 

隣にいるシャッハが血が出る程に拳を握る。その表情は平然を保とうとしているのだが……

 

厚いガラス板の向こうには体を宇宙服の様な物で包んだ医師達

 

中心にいるのは……手首も足首も拘束され、身動きをされ

 

 

「殺してくれ」と、悲鳴と絶叫を上げる、ロッサの姿

 

 

 

 

 

 

 

ある世界があった

 

国があり、人がいて

 

魔法文化もそれなりには発達していたが管理局からの干渉はない、管理外世界

裕福な国だってあるし、貧しい国だってありました

お金持ちの人もいたし、今日食べる物がない人もいました

何だかんだで、どこにでもある世界

 

ある小さな、戦争中の国で、一人の科学者がある兵器を作りました

小さな国はその兵器を使い、相手の国を『駆逐』しました

一方的だった、絶望だった

なにも無かったのです、助けなど

 

他の国達はその兵器があぶないと思い、捨てる様に言いました

 

だけども小さな国はそれを拒否して、兵器の力を使って他の国へ戦争を起こしました

 

ですから他の国々は力を合わせ、小さな国を倒そうとしました

 

沢山の人が死にました、火に焼かれた人もいたし、兵器に殺された人も

 

何年も何年も戦いは続いて、ある日やっと終わりました

 

皮肉にも、兵器が全部の人を、殺してしまうことによって

 

 

 

 

 

 

過去の遺物、オーバーテクノロジー

行き過ぎた発明品、世界の定理を無視してしまうほどの

 

それらを総称して、自分達管理世界の人間は『ロストロギア』と言っている

殆どのロストロギアは時空管理局によって厳重に封印されている筈なのだが、まだ管理が行き届いていない世界、たまたま作り出された世界

いくら管理局といえども、そこまでのバックアップはする事が出来ない

ロストロギアによって滅んだ世界はどれ程あるだろうか、最早数える事など不可能なのかもしれない

そして、今回ロッサをあんな状態にしたのもそういった物の一つ、彼が危険と認識し、保護しなければならないと判断した兵器

 

「ロストロギア、『病気』です」

 

「病気?」

 

目の前にいるシャッハの口から告げられるその名は、誰しもが聞いた事のある存在

人間、動物、植物、この世に生きる生物の天敵である存在

となると……

 

「生物兵器か」

 

「はい、ロッサの調査によると、『病気』によってその星で争いが起こり、皮肉にも『病気』によって終結したと聞いています。ロッサも万全の対策をして調査をしていたのですが……まさかこんな事になるなんて」

 

対策……というのはやはり防護服やら何やらを指すのだろうか

ロッサに限って『不備があった』や『ミスして壊れた』などはあり得ないだろう、だとすれば

 

「誰かが『病気』を操り、故意にロッサに攻撃した」

 

「その可能性は高いと思います」

 

やっぱりな、てか話を聞く限りそんなイカれた物がミッドに入って来たらどれだけの人間が死ぬのだろうか、多分億はいくだろうな

まぁそれよりも今大切なのはロッサの命、俺はどこぞの正義の味方じゃない、今救える親友の命と危ないかもしれないミッド何十億の命、比べるとしたら親友に傾く

ミッドの中に他の人間がいたらまた別なのかもしれないが……

 

「で、ロッサの状態と余命は、さっき見た限りだと延命治療に相当頑張ってた様だけど上手くいってないんだろ?」

 

「……はい」

 

相当ヤバイ状態だって事は見て取れた

 

「現在のロッサは、大小合わせて約七十の病気を持ち、現代科学と魔法を使った治療でも二日持つかどうか、下手に手を加えるとロッサの体力がなくなり一つ治す間に他の病気で死ぬ……などという事もありますので手のうちようがありません」

 

「七十……ね」

 

普通の人間なら問答無用で死んでるな、大小合わせてっていうのだから下は風邪から上はガチでヤバイ病気もあるのだろう

さっきのロッサの絶叫からすると……壮絶な痛みを与える病気も幾つかありそうだ

 

「それに、体には腫瘍がいくつか」

 

「……そこまでか」

 

本当の意味でお手上げだな

いくら魔法技術があるからといっても二日……というか魔法って外傷は強いけど他には弱いからな

ロッサのあの状態だったら体に刃物入れるのは論外、今の状態から少しでも弱らしたら一瞬で死ぬ

 

「……人工的な治療は、不可能だな」

 

「…………。」

 

シャッハが黙り込む

彼女自身も分かっていた事だろう、今のロッサはどれだけの知恵をしぼったところで救える存在ではない

ましてや、奇跡を成就させるロストロギアやら何やらでも使わない限りは

 

「……大丈夫です、カリムには、私が」

 

「なぁ、シスターシャッハ」

 

俯いていた彼女が顔を上げる

……期待されても困るんだけどな、今から俺がする事は、人道的では無いんだし

 

「ロッサの寿命、十年程奪う事になるけど、いいか?」

 

「え?」

 

そりゃあそんな反応だろう

いきなり寿命奪う宣言、自分でも嫌になる、こんな方法、昔読んだ漫画と全く同じ、非人道的な内容

それを親友にしろと言うのだ、自分で自分を殴り飛ばしたい

 

「……それで、ロッサが救えるのですか?」

 

「分からない、そこはロッサの精神次第、痛みも今まで以上になるだろうさし、本格的に自殺願望者になる。治っても精神が大丈夫かも分からない」

 

ただ……

 

「治すのだったら、それしか方法はないと思う」

 

「……。」

 

そんな事、シスターシャッハ一人の権限で決められる物ではないだろう

ロッサは希少な古代ベルカのレアスキルを持つ人間、聖王教会からも手厚く保護されている

それでも……

 

「かまいません、それでロッサが救えるのなら」

 

彼女は即答した

 

そうと決まれば早い方がいい、場所を移動して防護服に着替える。防護服と言ってもロッサの病気が移らないようにする為の物だが

 

デュランダルの格納庫から一つの注射器を取り出す、本当に大切な人が大変な時の為に構築していた物だが、まさか本当に使う時が来るとはな

 

シャッハに頼み先ほどいた医師達を集め、ロッサの体を金具の他に鎖にも繋がせる、魔法を無意識に発動された場合の保険である

目の前には耐えず絶叫を上げる親友、目は血走っており、こちらなんか見えていない

体を動かないように人の手でも固定させた上で

 

 

注射針を、ロッサの腕に突き刺す

 

 

効果は一瞬だったと思う

ロッサの全身の血管が浮き出て、充血する

目が更に赤くなる、体が痙攣する

……およそ一週間の地獄、後で俺をどうにでもしていいから

 

今は、生きてくれ

 

 

 

地獄の底から吐き出された様な絶叫を背中に

俺はその部屋から退出した

 

 

 

 

 

 

 

「……ケントさん、あれって」

 

隣を歩くシャッハが問いかけて来る

当たり前だろう、俺があの治療を行ってからロッサの容体は客観的に見れば最悪だ、シャボン玉のように、触れれば割れてしまいそうな命

声はもうとっくに枯れ果てたはずなのに、声にならない悲鳴を今でもあげ続けている

 

「そうだな……俺がロッサに盛ったのは……ある意味『毒』だ」

 

「な!?」

 

彼女が硬直する、ただそうとしか例えようが無いのだ。

一度体に入れれば大変な事になる猛毒

 

「俺が昔読んだ漫画を元に作った物でな、あれを体には含んだら人間の『抵抗力』が常人の数十倍なる」

 

「それは」

 

まぁ普通は理解できないよな

 

「つまりだ、致死量の毒を浴びてもそれを使えば『人間が元から持つ抵抗力で何とかしてしまう』とか出来るイカれた薬だよ、副作用さえなければ歴史に名を残す大発明なんじゃねーのか?」

 

「副作用とは?」

 

「死を感じる激痛と寿命の短縮」

 

普通の健康体の人間にうったら間違いなくショック死だろうな

 

「そんな物が……」

 

「取り敢えず俺はフェイトと一旦合流させてもらうぞ、俺は俺でどうにかできないか思案する」

 

ここでは設備も時間も足りない、本格的にするならコルテットで何とかする方がいい

連絡を入れてチームを作る、もっといい手段はあるはずなのだ

 

「ありがとう、ございます」

 

「明日また来るよ、対応策が見つからなければ恐らく一週間以上はあの状態が続くも思ってくれ、その間の栄養管理などは任せる、点滴うってもらえば大丈夫だ」

 

「はい」

 

もういいよ、と言ってシャッハを下がらせる

あんな姿をカリムに見せられない以上、ロッサの近くにいる事が出来るのはシャッハだけなのだ

今のこの時間も、彼と一緒にいてくれた方が嬉しい

 

「……ケントさん、今回の事は本当にありがとうございます……その気持ちに嘘は一切ありません、ですが」

 

「………。」

 

シャッハが下を向く、拳から血が流れる

目から流れているのは、涙

 

「ロッサが治ったら、一度だけ全力で殴ります」

 

「ああ、そうしてくれ」

 

そうしてくれた方が、俺にとってもありがたい

 

彼女が戻って行くのを見送った後に教会内にある庭に出た、フェイトが待っているのは庭を挟んで向こう側、ここを通った方が近い

そこら中に花が埋められてあり、とても綺麗なのだろうが……何故だか今日だけはとても色あせて見える

自分でもふとした瞬間に足が止まる、そのまま拳を振り上げ

 

思いっきり、自分の顔を殴り飛ばした

 

 

当然ながら激痛、口の中に血の味が広がる

悔しかったのだ、こういう手段しかとれない現実が

情けなかったのだ、こんな事しかしてやれない自分自身が

ペッ、と口の中の血を吐く、鉄の味が残る

ただもうそんな事は関係なく、早々とフェイトを迎えに行こうとして

 

「大丈夫かよ兄ちゃん、ガッ、てリアルな音したけど」

 

「…………。」

 

……茶髪の少女

背丈はネリアぐらいで、ロングの髪

色はなのはより少し薄いくらいだろうか、見た目としたら十六程度

 

「おいおい血が出てんじゃねーか、医務室でも行って来たらいいんじゃねーか?」

 

「いや、いいんだ、少し急いでてね、それよりどうしたの?」

 

流石に自分で自分の事を殴る変人に好き好んで近寄って来たりはしないだろう

 

「まぁ大丈夫ならいいんだがよ、ああそれと、俺ここ来るの初めてでさ、道迷ったんだけど」

 

アハハ~、と頭をかく彼女

片手に地図を持っている事から本当に道に迷ったのかもしれない

 

「だからよ、ちょっくら道教えてくれると嬉しいんだ」

 

だけど、そう言ってくる彼女に対して

 

「道教えるのはいいが、その前に懐にある物騒な物は捨てようか」

 

そういうのは、見飽きた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん、ちょっと遅くなった」

 

「あ、どうだった?」

 

ふぅ、と一息ついた彼に対して尋ねる

ケントとここまで来たはいいが自分は部外者だからと言ってずっと待たされていた、別にそれ自体はいいのだが自分だって彼とは顔を合わせた事がある、心配だってする

 

「どうだったって、何が?」

 

「ほら、ヴェロッサさんだよ」

 

へ、と言った感じの彼だったが私の言葉に「ああ」と納得する

 

「詳しい事は家に帰ってから話そうかな、取り敢えず一旦帰ろう」

 

「え、あ、うん、それはあいんだけど、教会から送って貰えるの?来る時は転移で来ちゃったから車はショッピングセンターに置いたままだよ?」

 

「え、あ~、そうだな……転移許可とか降りない?」

 

「流石に今は……」

 

さっきは非常時だったからいいとして、今は違うでしょ

 

「はぁ、じゃあ少将として後で色々と言わせて貰おう、なぁ、フェイト執務官?」

 

「職権乱用だよ」

 

「いいじゃんいいじゃん」

 

本当は止めないといけないんだと思うんだけど、実際転移許可は今日一日、ケントは知らないから冗談言ってみたんだけどな、ちゃんと守るかどうか

 

「ほら、手に捕まって」

 

「あ、うん」

 

やれやれと思って彼に近づく

ケントが何でこんなに急かすのかは分からないけれどロッサさん関連で事情があるのだろう、これは暫くデートは出来ないかな……なんて思う

いつも通りの笑顔を見して手をこちらに差し出して来るケント、その手を掴もうとして……

 

 

 

何故か、足が止まった

 

 

 

「?、どうした、フェイト?」

 

「え、いや、何でも、ないよ?」

 

何をしているのだろうと彼に向かって笑う

それにつられて彼も笑ってくれて、今度こそ彼の手を掴もうとして

 

 

足が、一歩後ろに下がった

 

 

「……フェイト?」

 

「…………違う」

 

何を言っているのだろうか

体が妙に震える、自分自身が、目の前の彼を拒絶する

 

「どうしたんだ、体調でも悪いのか?」

 

「…………違う」

 

手を引っ込める、足が一歩、また一歩と後退する

 

ああ、やっと分かった、だって

 

 

 

 

「あなたは、誰?」

 

 

 

私は、この人を知らないんだもの

 

 

 

 




展開の早さと誤字は書き始めた当初からの課題


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二人


短いです


 

「えっと、どうした?」

 

不思議そうな顔をして覗き込んで来る彼

……違う

 

確かに声も、姿も、雰囲気も、目の色さえも彼そのものだ

頭のてっぺんから足の先まで全て、違うところなど何も無いだろう

まるで鏡合わせ、目の前にいるのは彼だ

 

なのに、違う

 

何がと言われたら全く分からない、なのに違う

もっと根本的な物が、彼とは違う、全くの真逆

 

「…………フェイト?」

 

「っ!?」

 

こちらに一歩近づいて来た彼に対して自分は逆に一歩下がる

彼にだけは心を許してはいけないと思った、本能、直感

ポケットの中にあるバルディッシュに手を伸ばす

 

「あのさ」

 

「来ないで」

 

キッ、と睨みつける

目の前にいる彼が誰なのかは分からない、だけど得体のしれない異形な物だという事だけは分かった

私以外なら受け入れてしまいそうな目の前の彼、だからこそ、私だけは……

 

「フェイト!!」

 

「えっ、あっ……」

 

手首を掴まれる、一気に力が抜ける

手の温もりさえ彼のもの、受け入れようとすれば受け入れてしまいそうな

心配そうにこちらを真っ直ぐに見つめて来るのは間違いなく彼の物で、でも、そうじゃなくて

 

「い、や」

 

心は拒絶しているのか受け入れているのかさえ分からない

だって彼なのに彼じゃないから、彼じゃないのに彼だから

分からない、全く、分からない

だから……

 

「はな……して……」

 

動かない、体が……

 

直後

 

 

 

「離れろ」

 

 

窓ガラスを突き破って、目の前の彼を斬りつける『彼』

一瞬の攻防、デュランダルで振り下ろされた斬撃を『彼』は同じデュランダルで受け流す

わけが分からない、鏡合わせのそんな状況の中、やっぱり『彼』は彼で……

 

「…………。」

 

「はぁぁ!!」

 

渾身の力で薙ぎ払われた斬撃に向こうが一旦後退する

その間に私を隠すように、彼、ケントが間に割って入る

向こうは呆れたようにこちらへと視線を向け、こちらはいつでも迎撃出来るように腰を落とす

 

「良かった、無事で」

 

「う、うん」

 

そんな返答しか出来ない

唐突の出来事だったし何が起こっているのかも分からなかったから

 

「……え?」

 

ふと気がついた、何故か彼の左肩が赤い

……これって

 

「ケント、血が……」

 

「……大丈夫、後で自分で治すよ」

 

こちらにそう笑いかけてくれる顔は明らかに余裕がなさそうに見えた

血は今でも流れ出ており、傷跡は銃弾で撃ち抜かれたような

ハッキリ言える事は今の攻防でついたものじゃない、考えて見ればケントは先ほど右手でしかデュランダルを振るっていない

 

「だ、駄目だよ、せめて傷だけでも塞がないと」

 

「はは、ただ、今はその魔力も惜しかったりする」

 

すぐに終わらせるから、下がってて、と彼が私に言ってくる

そんな事は出来ない、バルディッシュが伝えて来た、今のケントの魔力は信じられないほど少ない

ここに来るまで何があったのかは知らない、ただ左肩の傷も、魔力が少ないのも『何かがあった』という事を示している

だからこそ

 

「私も、一緒に」

 

彼一人を、置いていくつもりはない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

汗が流れる、ここから逃げ出したくなる

 

左肩からはまだ血が流れ続けているが痛み止めはした、無理すれば何とか動かせる

人体の急所、ツボと言うべきか、油断していたのもあるがまんまとやられた

 

目の前にいる『俺』を睨みつける、呆れたような、ガッカリしたような

 

状況はよく分からない、あいつが誰なのかも知らない

ただ言える事は、俺とあいつは会ってはいけなかった存在であり、いうなればあいつも俺で俺もあいつで

わけがわからない、ただ会ってはいけなかった、立ち会ってはならなかった

俺の天敵であり、存在してはいけない存在

ここから尻尾を巻いて逃げ出したい、フェイトを連れて離れたい

しかしそんな事は出来ない、魔力が少ない状態で、今の俺が俺自身から逃げ出す事なんて

 

「よう、久しぶり」

 

体がビクリと反応する、ただ話しかけられただけなのに自分の中で危険信号が鳴り響く

録音と言われたら信じてしまいそうだ、それほどまでの完成度

いや、あいつはもうロストロギアやら何やらによって俺を似せている存在じゃない、そんな事はとうに分かっているはず

 

「にしてもえらく早かったなぁ、流石俺というかなんと言うか……その傷を見る限りだいぶやられてるみたいだけどな、そこらはやっぱり甘ちゃんだ」

 

「くっ」

 

右手でデュランダルを差し出す

まるで俺が偽物と言っているような口調、それと同時に俺を知っているような口調

それに先ほど放った「久しぶり」と言う言葉、俺はあいつとどこかで会った事があるという事だ

残念だが俺はこんな奴は知らない、ネリアとはまた違う、こんな、俺自身なんて

 

「忘れた……とか?まぁ無理もないな、こっちに来てから会ったのは一度だけだしそれまでずっとお前と一緒だったんだから」

 

「……鮫島を殺った時の」

 

「そうそう、いや、ホントあれは感謝してもらいたいな、生かしてたら何してくるか分かったもんじゃねぇ」

 

そういってどこからともなく出して来るコート

……だからといって一緒にいた?

意味が分からない、そもそもあいつは何だ?

いや、俺はさっきから何を言ってる?

頭の中にノイズが走る、あいつの正体……何を言ってるんだ、俺はこっちに来た時から知っているじゃないか、だって

 

 

 

アイツガイルカラオレガ『ツクラレタ』ンダロウ?

 

 

ぞわっ、と

身体中の身の毛がよだつ、何だ今のは、意味が分からない、理解が出来ない

喉が乾く、俺と言う存在が、あいつという存在を否定する

先ほどの逃げたいという気持ちから一転、こいつはここにいてはいけないという思考が頭の中をループする

まるでプログラムされたように、命令されるかのように

 

「ケン……ト?」

 

デュランダルを握る手が震える、まるで自分という存在の否定を恐るかのように

今までの短いやりとりの間に何があった、普通の俺なら深く考えずに様々な思考を巡らせていて当然なのに

それだけ動揺している、目の前の俺に対して、この存在に対して

 

「くっ、そ」

 

気を保つ、意識を飛ばさないために拳を握る

俺が何をすべきなんて初めから全て決まっているはずだ、だったら……

 

「えらく動揺してんだな、恐怖か?感動か?

まぁどちらにしろ……」

 

 

 

 

 

「なんにも知らない偽物は、ここで退場、お前は失敗したんだよ、本物がこの場にいるって事で」

 

「あっ」

 

 

偽物、その言葉で何かの理性が吹っ切れる

何が、とか、どうして、とかという理屈じゃない

 

「あぁ」

 

ただ……

 

「あぁ」

 

どうしてか、今までの俺の全てに対する否定だから

それを本能が認めてしまったから

 

「あああああぁぁぁぁぁ!!」

 

目の前の『呪い』を排除する為に

俺は俺へと斬りかかった

 

 

 

 

 



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ケント・コルテット

すみません、投稿が遅れました



 

何もない

 

ただ一人

 

そこには幾つもの思いがあって

 

幾つもの生命があって

 

そんな世界に、ただ一人

 

幾つもの思いが『あった』

 

幾つもの生命が『あった』

 

あった、だけなのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一進一退、それ以上表す事など出来ない

素人が見れば何が起こっているのか分からない、自称専門家が見れば適当な考察をするのだろうが所詮素人には変わりがない

 

ケントという青年の二つ名は『剣姫』、大昔につけられた名前だが未だに健在

剣を振るうその姿は勇猛で、剣を振るう本人は言葉にならぬ程に美しい

まさに『姫』、その姿にどれほどの人間が魅了されただろうか

『一流』、それは言葉にすれば簡単な事だが実際には殆どいない

そもそもどの線引きで一流となるのか、大雑把になるが世界で『英雄』と呼ばれる人間は何かが『一流』である

アーサーは剣、イスカンダルはカリスマ、織田信長は軍略

逆に言えばそこまでいかなければ『一流』ではないのだ、単に周りがもてはやしているだけ、自意識過剰

人間など殆どが二流、三流、はたまたそんな事も名乗れない人間ばかりだ

誰かが『完璧な人間などいない』などと言っていた、その通り、どんな存在にも完璧などないしどこかしらの欠点がある

 

しかしだ、もし『完璧に近い人間がいる』とするならば

 

それは、『一流であればある程近づくのではないだろうか』

 

 

「アァアアア!!」

 

「暴れるなよ……まるで狂戦士だ」

 

暴風、そう形容出来る風の荒波を受け流し斬り捨てる

一流通しの戦いに決着がつく事など早々ない、あるとするならばその時の状態、有利不利

現状ならば圧倒的までケントが不利、まぁどちらも『ケント・コルテット』であるのだが

その姿はまるでプログラムされたかの様に精密で、ケモノの様に荒々しい

風を纏った見えない剣を自由自在に操り、その技量で敵を圧倒する

それと同時に、我を失ってもいた

 

目の前の存在を否定し、自分の中から溢れ出る衝動に不安し、それをうち払おうとする

どんな不安か、何故そうなるのか、そんな物本人でさえも分からない

だが、一つだけ、目の前の存在はいてはいけないのだと自身が告げている

 

「模写」

 

「おっ」

 

ケントの姿が掻き消える、一瞬目の前に存在するのは残像

回るは背後、

その間ほぼ零

 

「ソニックセイル」

 

「フェイトのか」

 

剣を後ろに回し斬撃をガード、高速で放たれた五つのスフィアも同じ数のスフィアで相殺する

ソニックセイル、魔法の内容は簡単、フェイトがソニックフォーム時に、両手足に常時起動させている高速機動魔法

光の羽根を手には2枚、足には3枚

それを120%再現、彼女が操作する物よりもより緻密に、正確に、簡略化し、高度にした

 

「人の技パクるの、俺嫌ってそうなんだけどな」

 

「模写」

 

左手を大きく戻す、体を捻る

単純な、単純過ぎる体術

 

「エレミア」

 

「レストリクトロック」

 

ガキン、という音と共に拘束される左腕

拳の威力を殺され衝撃もない

まぁ元々、ビデオ越しに真似した内容なので本物にも達していない失敗作なのだが

 

「「破壊」」

 

不意に二人から同時に発せられた一言、その一言のみで世界が壊れる

破壊を破壊する、空間は歪み、そこにあるのは『無』

その『無』さえ破壊され、たどり着くのは世界の拒絶、エネルギー

超高速で両者が弾き飛ばされる、バリアジャケットなど無いに等しい

力強く両者が地面に叩きつけられる、立ち昇る砂煙

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺とは一体何なのだろうか

そんな質問を、剣を交えながら自問する

転生しコルテットの人間として生まれて、学校に通って

嫉妬と妬みの中で育って、みんなと出会って

テロとか色々な物に巻き込まれたけど、馬鹿みたいに生き残ってて

ネリアと出会って、鮫島と戦って、恋をした

そして昨日、告白した

 

俺は、何だ?

 

目の前の男は何だ?

 

あるのは不安、恐怖

ただ恐れてる、自分自身を

何か、大切な物が、俺には抜けている気がして

それを、知ってはいけないのに

あいつはそれを、知っている気がして

 

「うっ、ぐ」

 

手をついて立ち上がる、負傷した左手でエレミアを使おうとしたからだろう、もう痛み止めなど関係ないような激痛が走る

血はゴボゴボと溢れ出ているが大丈夫、死ぬレベルではない

それよりも今の衝撃で骨が何本かイかれていないか心配だ、受け身は取ったつもりなんだが

しかし結局、今のおかげである程度の正気は取り戻せたのは幸いと言ってもいい、同じ技量の敵と戦う以上、正気を失ったままで戦い続ければあるのは破滅のみだ

 

「痛ぇ、まさかあんなになるなんて誰も思わねぇよ」

 

向こうも向こうで立ち上がる、どうやら左腕が使えなかった分こっちの方が負傷してそうだ

あちらは、戦いを通して平常を常に保っている、だったら何か聞ける事もあるはずだ

結果的に倒すにしろ逃げるにしろこの現象を、存在を、恐怖の根本を知らなければ始まらない

 

「さっきお前は俺の事を『偽物』と言った、それはどこから来ている結果なんだ?ハッキリ言わせてもらうと俺としてはポッと出のお前が偽物なんだが」

 

「おっ、正気に戻ってる」

 

相変わらずニヤニヤしている俺、こうやって対自しているだけでも息苦しい

 

「そうだな、確かに、この世界で『ケント・コルテット』と言えばお前を指すかもな、その前にお前も俺も『ケント・コルテット』じゃないんだから」

 

「何言ってんだ?」

 

話の内容が理解できない

 

「そもそも俺という存在は『ケント・コルテット』という殻の中に入り込んだ魂に他ならない、俺が偽物本物言ってるのは『中身』だよ」

 

「中身?」

 

『魂』、その単語は前に何度も聞いた、ロクな思い出は無いのだが

 

「お前の中では自分は平凡な元高校生、特に取り柄もない、平凡に生活して、平凡に生きてた存在だって、でも違うんだよ」

 

 

 

 

 

「平凡な人間が、転生なんて出来るはずないじゃん」

 

 

 

……ああ、その通り

たかが一つの小さな命、神が殺したからと言って保証に転生させて貰える筈がない

だが、だったら何だ?

 

「俺の記憶には別段変わった物は無いけどな」

 

「そこがミソだ」

 

こちらに指をさしてくる

目を細める、何だこの違和感

 

「転生の理由は『封印』、それを踏まえてお前に聞く」

 

 

 

「お前、名前は何だ?」

 

 

「あっ」

 

口から声が漏れる

……何だ?

 

今まで考えた事など無かった、ケント・コルテットになってから一度も

 

『分からない』

 

長い時間を過ごして来て忘れた、などないだろう

少なくとも名前に関しては、生まれた時に貰い、死ぬまで側にある物だ

違和感が頭によぎる、そもそも俺は前世でどんな生活をしていた?

ただ一つしか分からない、『平凡な高校生だった』

ぼんやりとした風景はあるのに、具体的な情景は浮かばない

殆どが、霧に包まれている感覚

何故今までこの違和感に気づかなかったのかさえも分からない

 

「あのジジイが封印したかったのは俺、俺の一部で作られたのがお前、消える事の無い『呪い』を、お前の中に封じ込めた」

 

何かが聞こえる

 

「お前の魂で蓋をして、まぁ鮫島の野郎が壊したお陰で俺が表にも出て来た。俺の一部であるお前を残した、不完全な形でな」

 

なんだろうか

 

「お前も呪いの一部なんだよ」

 

ああ、これは

 

「お前は俺だ、同じ物を見てくれば、必ず『答え』は同じになる」

 

人々の、叫び

 

「んじゃまぁ……いってらっしゃい」

 

「!?」

 

目の前に現れる『俺』

唐突の出来事であった為に体が反応出来ない、動けない

左肩から右脇腹へと斜めに振るわれた剣線、それにより与えられる激痛

体が熱い、意識が途切れそうになる

それでも血しぶきは、飛んでいなかった

代わりに俺の体からは無数のポリゴンがバラバラになり、消えていく

まるで鮫島の時の様に、血を一切あげず、体が持っていかれる

ようやく体が反応する、痛みから逃げる様にデュランダルを振るう

距離が開く、それでも……思考が止まっていたせいか

大きすぎる、隙

 

「破壊」

 

「あっ、ギッ」

 

体を捻じる、最低限の回避

ゴロゴロと地面を転がる、追尾に備えて体を思いっきり引く

体制を立て直す、デュランダルを持ち直そうとして

 

左肩から下が、なくなっている事に気づく

 

「あ、ギ、ガアァァァァァアァァァ!!」

 

人間とは、ある一定量の痛みを超えると脳がシャットダウンすると聞いた事がある

まさにそれだった、そしてそれを理解した瞬間、蛇口が一気に開かれる

今まさにその状態、相変わらず血は出ていないのに、痛覚だけはしっかりしている

目眩がする、動けない、余りの痛みに脳がついていけない

 

俺の叫びと同時に、彼女の絶叫も微かに聞こえてくる

俺に追撃を与えようとする俺との間に割って入る、相手がどんな表情をしているかなど見る事も出来ない

ただ、分かった事は

 

 

『彼女だけは、守らなければならない』

 

 

「フェイトォォォォォォ!!」

 

声を出す事でギリギリの意識を保つ、彼女を弾き飛ばした瞬間に訪れる

 

生暖かい、激痛

 

……第三者からの攻撃、彼女が再度悲鳴をあげているのが分かる

右目が潰れたらしい、今度はちゃんと血が飛ぶ

目だけで無い、体の至る所から、同じ様に鮮血が飛ぶ

良かった、彼女には当たっていない

視線の先にいるのは、先程戦った栗色の髪をした少女

ったく、女の子が物騒なもん持つなよ

 

消えていく意識の中で

 

心臓を潰されたのを感じた

 

 

 

 




次回はフェイト視点でいきたいと思います


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白い少年

フェイト視点

 

 

バリンッ、というガラスが砕ける音と共に、二人のケントが壁を突き破る

意味が分からない、確かにあのケントは誰なのかは分からないが少なくとも彼が自分から仕掛けるなんて

少し隣にいただけだが彼の様子は終始可笑しかった、私を助けてくれた後、落ち着きのない表情をして

体からは汗をながしていて、目は終点に合っていなかったかのようにも思えた

 

なんらかが原因で理性を無くしているなら落ち着かせなければいけない、少なくとも私には二人のケントの違いが分かる

どこがというと分からないのだけれども、感覚で分かるのだ

 

二人が突き破った場所へと飛ぶ、外からは剣撃の音

無理に介入すれば邪魔になる恐れがあるので自分がするのは後方支援になる、片腕があんな状態なのだ、見ているだけで痛々しい

 

と、外に出る直前の所で

 

 

黒い『何か』に、道を遮られた

 

 

 

体がゾクリとする、あのケントと出会った時とはまた違う恐怖

まるで、テレビの砂嵐の様な、ノイズを物質科したらこんな感じなのかもしれない

それでも、道を遮った『それ』に触れてはいけないとは理解して

後退した瞬間に……一気に襲い掛かられる

 

「っぐ、早い!!」

 

避けきれないと判断し、バルディッシュのサポートを借り、ギリギリの所でバリアを張る

 

黒い物体に原型はないらしく、バリアの周りに浮かぶ事はするのだが抜けてくる事は出来ないらしい、抜けられたら一巻の終わりなのだけど

 

黒は少しずつ、少しずつ増殖し始める

初めは成人男性くらいの大きさだったのだが、この数秒の間で部屋全体にまで

 

積極的に襲いかかってこない事を見るとこれは恐らく時間稼ぎ、あのケントの味方と考えていい

ケント自身が操っているのか、どこかに術者がいるのか、これそのものに意思があるのか分からない

ただ……

 

「どうしようか、バルディッシュ」

 

悪いが今はこの黒い物体と遊んでいる暇はない、向こうが時間稼ぎをしようにもこちらはケントを助けないといけないのだ

 

黒は何時の間にか部屋の全部を覆い尽くす、白い壁も、立派な壺も全て飲まれてしまった。一面黒一色

 

それでもケントがいる方向は分かるし、どちらに進むべきかも見えている

 

「……いくよ」

 

少し部屋を壊してしまうだろうが今更だ、手に魔力を込め、体の芯で発電する

いつもより多めに設定した性質変化、魔力を食う事にはなるだろうけど仕方が無い

この黒が何なのかは分からない、だけれども、やってみないと分からない

 

「サンダー  スマッシャー!!」

 

爆音と共に破壊される壁の音、聞き慣れた雷撃の音が部屋中に響き渡る

中を走った雷撃は拡散し

 

黒が、燃えた

 

「ハアァァァァ!!」

 

バルディッシュを振るう、黒が一斉に襲いかかってくるが数がしれている

空ならまだしも今ある黒は部屋一つ分、それならば全て焼き払ってケントの方に迎える

 

炎が弱点なのか、黒がどんどん激減していく、それでもまだまだ底知れずに増殖しているのだけれども

 

ここまでくれば一種の魔法ではなくロストロギアの仕業と考えた方がいい、そしてその術者は守らなければいけない主

だからこそ

 

「そこっ!!」

 

黒が一番密集している部分へと砲撃

やはりというか、砲撃は奥まで届かずに途中で相殺される、本体がいるならばそれを捕まえてあのケントの事をはかせた方がいい、どちらにしろロストロギアの不法所持、執務官として捕まえなければいけない

……なのに

 

「えっ?」

 

黒の中心にいたのは、『白』

真っ白の服を着た、真っ白の髪を持つ、真っ白の少年

年は二桁もいかない、ただ少年からは何かが抜けていて

ただ一つ、真っ黒な目玉が、こちらをただ某然と見つめてくる

あれは、生物なのだろうか?

いや、そもそもあれは、生きているのだろうか?

 

黒か一斉に主の体を包み、消えていく

黒が部屋から全くいなくなった時には、少年も消えていて

 

……怖い

 

引き取った時のエリオと同じくらいの子どもにたいして初めて抱いた感情

 

でも確かに、あの子の事は気になるが、今大切なのはケントであって

 

 

何時の間にか、剣撃の音は止んでいた

 

 

 

 

 

 

今思い出してみれば、最初彼に対して向けたのは同情の意思があったからなのかもしれない

 

隣にいたいと思いながらも、どこかで彼の境遇を『可哀想』と思い

 

どこかで私と照らし合わせていた

 

だからあれだけ強く惹かれて、隣にいて支えたいという思いが、何時の間にか恋心になって

 

実際恋心に変わったのは何時なのだろうか、明確な時なんて覚えていない

 

ただ、ずっと想い続けて来た

 

彼が血を流しているのは辛かったし、どうして私は何も出来なかったのだとも責めた時もある

 

笑顔で、優しくて

 

そんな彼から嫌われてしまうかもしれないと、ずっと自分の事を黙ってて

勇気を持って全てを話した

 

結局、彼から返って来たのは『どうでもいい』の一言

この一言でどれだけ救われたか

 

下手な同情の言葉や、変な慰めなどよりもずっと嬉しくて、私の事を思ってくれていて

 

ずっと一方的だったのに、彼の方から告白されて

 

ビックリして、嬉しくて

 

だから私も伝えた、自分の気持ちを

あがってしまっていてよく覚えていないのだが、絶対に伝えられた

 

それからは手を繋いで帰って、ご飯食べて

いつも通りの時間

 

ただ寝る時は、ケントのベッドに二人で寝た

 

初日から抱いてくれる事は無かったけれど、手を握って、お互いの顔を見ながら

 

ホントは少し期待してたとかは言えない

 

それでも、こんな日が、ずっと続くといいなと思って

 

 

 

 

…………私達が何をしたのだろうか?

ただ、普通に幸せを求めただけなのだ

好きな人と、一緒にいれるだけで良かったのに

やっとケントの隣に立てたのに

 

外に出て見た風景は、よく覚えていない

 

それでも、彼からは私の手を握ってくれる手が、無くなっていた

 

それがどういう事なのか理解出来なくて

 

叫ぶ彼を見て、現実から逃げ出そうとして

 

あれが偽物だと考えても、私の心は、あの人が私の好きな彼だと肯定していて

 

気付けば声をあげていた、魔法を使っていた、涙を流していた

 

二人の間に割って入る、追撃しようとしていた奴に刃を向ける

 

ただ、それも一瞬で

 

「フェイトォォォォォォ!!」

 

「え?」

 

ドンッ、という音と共に、私は吹っ飛ばされていて

 

銃声が聞こえたと思ったら、赤い何かが見えて

 

……生暖かい、赤い何かが、彼から飛んでいて

 

頬に赤が当たる、バリアジャケットに降り注ぐ

 

突然の出来事と、現実に頭がそれを拒絶していて

 

ただ、小さくやめてと言うだけで

 

世界がスローで動く、まだわたしの身体は吹っ飛ばされたまま

 

早く動け、動いてくれと懇願しても、時間は全く進まない

 

そんな横目に、奴の持つデュランダルがケントの胸に突き立てられて

 

そのまま、串刺しにした

 

 

 

 



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殺意


パソコン潰れてました、復旧して久々の投稿

遅れた事をお詫びします


 

「う、いくら抜け出すのは厳禁とはいえ……ここまでのハードスケジュールは初めてだよ」

 

身体的にも精神的にもヘトヘトになった体を引きづりながら住宅街を歩く

比較的早く会議が全て終わったので日が落ちる前に帰路につけたのだが足は重い、実際家は本家なのでわざわざ戻る事は無いのだが昨日の事やら何やらでいち早く知りたいという願望が足を動かす

まぁ、家の前まで送ってもらっているので実際動くのは門から玄関までなのだが

 

いつも通りドアを開けようとして……閉まっている

はてさて、どこかに出かけているのだろうか

自分の中ではホテルとかホテルとかホテルなら物凄く嬉しいのだが自分の兄と姉では一日でそこまでは到底不可能、となると買い物か何かだろうか?

 

持っている鍵でドアを開けて……

 

「……あれ?」

 

台所で、地震でも起こったのか、コップが一つ割れている

別段高い物でもないのだが……一つだけというのが怖い

 

「…………。」

 

何故だろうか、とても……怖い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ赤だ

 

赤く、赤く塗りつぶされる視界

 

その行動は無意識だったのだろう、気づいた時には彼を抱え、気づいた時にはその場を離脱していた

 

目の前の光景を信じたくなくて、信じられなくて

明かりが灯っていないその目を見つめながら、某然と自分が知る初歩的な治癒魔法をかける

 

左腕は無く、右の眼球は潰れ、体の至る所に生々しい傷口が開き直り、血が飛び、ポリゴンが舞っている

 

言葉などもう出なかった、声は出し尽くした

涙さえも出ない、だってこれは現実だと思っていないから

目を見開いたまま、まるで人形のように、意味もない魔法使いを使う

それでも、徐々に消えていく体

 

頭の中は空っぽだった、何も考えないように頑張った

それでも、現実は残酷で

 

「…………ぁ」

 

やっと出た掠れた声

何時の間にか、腕の中にあった重りは無くなっていた

暖かみも、存在も

まるで初めからそこに無かったかのように

 

自分の手のひらを見つめる、なんで無いのだろう

 

彼はどこへ行ったのだろう、どこに消えたのだろう

脳の処理が追いつかない、どうしてかなんかは分かっているのに

目の前で、ガラスみたいに壊れちゃったんだから

 

それを理解した後、脳内に流れてくる様々な感情

 

叫びたい、泣きたい、名前を呼びたい、助けを請いたい

 

ただ、どれをしても彼は戻ってこない

 

『何故だろう?』

 

どうして彼はもう戻ってこないのだろう?

どうして彼は消えちゃったんだろう?

どうして彼はいなくなっちゃったんだろう?

 

カツン、と音がした

 

音の先には『誰か』がいた

知らない人だ、少なくとも私には

だけど、その知らない人が彼を奪った

あれは誰だろう?

彼とは真逆の存在

大切な人を奪った犯人

私の居場所を奪った存在

 

悲しみとか、そんなのじゃない

今必要なのはそんなのじゃ無いはずだ

 

今の私には何が必要だ?

 

何があればいい?

 

何があれば……

 

「あは」

 

「……はぁ?」

 

再び漏れた声、私は狂ったのだろうか?

母さんを失った時とは違う、そう、本当に大事な存在を失った時、人ってこんな感情になるんだ

それを奪われた時、こんな感情になるんだ

これを狂ったと言わずになんと言う

胸の中に広がるドス黒い何か、大嫌いな筈なのに、今の私には何故か、とても愛おしく思えた

こんな物を持ってしまった以上、私は元には戻れないかもしれない

ずっと狂ったままなのかもしれない

でも、それでいいんだ

今必要なのはそれだけなんだから

 

バルディッシュを握り締める

フラフラとその場から立ち上がる

ニヤニヤとしているあいつ

 

気持ち悪い

 

だから、だからこそ

 

 

 

 

 

 

「シネ」

 

 

殺す

 

 

 

 

 

 

 

ゾクリと、周りの温度が下がった気がした

久々な感じがする、ここまでの殺気を向けられたのは

気付けば目の前に彼女がいた、巨大な大刀を振り上げて、瞬きしているうちに真っ二つにされとうだ

刃にはもう安全装置なんてついていない、あれが俺のに当たれば肉を抉り、擦れば焼くだろう

もちろん、それをただ見ているというわけにはいかないので

 

「よっ」

 

デュランダルで軽く流す

大振りのモーション、そこらの相手ならば大丈夫かもしれないが生憎自分は『一流だ』

 

「くっ、ああぁぁあぁあああぁぁああぁ!!」

 

決められなかった事で連続で振り下ろされる狂気

相変わらず大振りで大雑把、形も何もない

俺から見たらスキだらけ

ただ強く伝わってくる殺意

記憶ではフェイトという人間はそんな殺意を持つような人間では無い筈だ、いや、殺意そのものを受け入れられる存在ではない

だからこそ、彼女が殺意を向けてくる程、俺という存在は特別だったのだろう

彼女にとって特別な存在で、特別な人間だったのだろう

ああ……

 

 

 

くだらない

 

 

 

そもそも俺なんていう存在はそんな大層な人間じゃない

そんな想いを受けてはいけない

だから彼女が向けてくる殺意もどうでもいいし、俺が彼女にとってどういう存在だったのかもどうでもいい

だから……

 

「邪魔なんだよ」

 

「がっ!?」

 

頭を地面に叩きつける、攻撃の手が止まる

元々最初に騙されてくれて、裏で俺を取り込めたらよかった

そんでもって利用できたら利用する、ただそれだけの存在

 

俺が『ケント・コルテット』としているためには目撃者はいない方がいい、どうでもいい存在なのだから

 

剣先をフェイトに向ける、なんとか立ち上がろうとしているが腕力はこちらの方が上

なのに

 

「うっ!?」

 

思わず手を外す、フェイトの真下に現れる魔法陣

あれは俺のだ

 

発信元はフェイトのデバイスから、恐らくはあらかじめ組み込まれていたプログラム

発動条件は見れば分かるだろう

 

『転移魔法』

 

どこに飛ぶかなんて分からない、ただ高度だ、こちらと彼女の空間が『隔離』されている

もしかするとあのまま押さえつけていたら腕の一本持っていかれていたかもしれない

フェイトは某然としていたが、次の瞬間には目から涙を流して、名前を何度も呼んでいた

 

手を前に出す、隔離されていようが何だろうが問題ない、ただ壊せばいいだけだ

ただ次の瞬間には、そこにはなにもいなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

落ちている

 

そんな感覚だろうか?

 

ただ落ちているというには実感が少ないというのが本音だったりする

真っ暗闇の中、ただそういう感覚があるだけ

 

どちらが上なのか、下なのかなんて分からないし

どちらが左なのか右なのかも分からない

 

そもそも自分がどんな存在なのかも分からないし

肉体があるのかさえ定かではない

 

この暗闇は本当に世界そのものなのかもしれないし、まぶたの裏なのかもしれないし、元から目なんてないのかもしれない

 

ただ、そこにいる

 

なんの感情もない、そもそも何故ここにいるのだろうか

 

その前に俺は誰なのだろうか

 

名前は何なのだろうか

 

ただ、そんな事もどうでも良くなってくる

 

『無』という存在が

 

少しばかりの意思を持っただけなのだ

 

声を出そうにも口はあるのかさえ分からないし

 

音を拾おうにも耳があるのかさえ分からない

 

そもそも何で意思があるのだろう

 

ああ、もうどうでもいい

 

考えたって分かる物ではないのだ、だったら初めから考えなければいい

 

もうどうでもいいから眠っていたい、眠るという概念を持っているかも分からないが

 

けれど何か、何か大切なもの「……き」失っている気がして

 

こんなところで「……お…………ろ」

 

………………………………。

 

 

 

 

「起きなさい、遅刻するよ」

 

「……ん、眠い」

 

鳥が鳴き、窓から差し込む朝日

 

まだ少し肌寒いこの季節、あぁ

 

「おはよう母さん」

 

「おはよう」

 

 

平凡な、日常

 

 

 

 

 



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存在意義


EXTRA CCC『ニ周』クリアしました~
いや~長かった、何故ニ周なのかは持ってる人はわかりますよね?

ちなみにセイバーです、可愛すぎて萌え死にしそうになった
一周目のエンディングは涙がでそうになりましたね、良かったな~主人公、良かったな~セイバー
三周目はようやくギル様に挑戦です、説明から『チート』と書かれている英雄王、公式チートって……
ネタバレはしないですが……男性マスター陣、みんなかっこよすぎてビックリだ



 

車が欲しいと女は言った

宝石が欲しいと女は言った

 

買って欲しいと父にせがむ

 

「前に違うの買っただろ」と父は言う

 

「お父さんなんて大嫌い」と女は泣く

 

『悲しい』

 

娘に嫌われるのは嫌だから

 

父は慌てて財布を取り出す

 

女はようやく笑顔になる

 

『嬉しい』

 

 

 

 

今日は食べるものがない

生きていく為のお金がない

 

腹は鳴り空腹で倒れそうだ

 

『悲しい』

 

死にかけている所に一切れのパン

 

他の国からの保護団体

 

久々にする人並みの食事

 

『嬉しい』

 

 

同じ言葉、同じ意味

 

なのにどうしてこうなった?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨が降り出した

 

ガラス越しに見える景色

 

はて、今日は雨なんて予報だっただろうか

まぁそんな事はどうでもいいと割り切る、晴れとか雨とか関係ない事だ

 

何人ぐらいの人間が集まっただろう

この大きな部屋にいるのは自分合わせて二十人くらい

どいつもこいつもどこかで見た事がある顔ばかり、局の上層部の人間やら、大物の政治家やら

みんながみんな汚い大人達、自分がのし上がる事しか考えない、腐った闇

ただ、権力は持っている

 

「しかしまさか貴方からお声をかけて下さるとは思いませんでしたよ、当主の件然り局内での行動然り、権力や地位には無関心な方だと……」

 

「気の迷いだよ、納得出来ないのか?」

 

「いえいえ滅相も御座いません、私共も後ろ盾に大きな組織がいるというのは嬉しい限りでございますから」

 

ニヤニヤしているオヤジに対して「そうか」とだけ返答する

 

「約束通り私達は貴方を本局の中将に推薦しましょう。後はある程度の実績があれば文句なしなのですが」

 

「俺には皆無だからな、一週間あればそれも大丈夫だ。今も部下にテロ組織やら何やらを潰させて回ってる」

 

作用で御座いますか、などという声を無視してデスクに置かれていたコーヒーを飲む

 

「では、そちらのお約束は……」

 

「コルテットの後ろ盾ね、

俺が中将に上がり次第付けてやるよ、昇格やら何やらも俺が後ろ盾になってやる」

 

おお、と声が上がる

 

やる事は簡単だ、俺はこいつらから中将への昇格の推薦を貰い、俺はこいつらのバックアップをする

大企業コルテットの長男であり中将ともなれば局での権利も一位二位を争う、そんな人間の後ろ盾があるというのはこいつらにとっては魅力的なのだろう

どっちにしろ、俺にとっては『上がる』事が目的であって他は『もう無くなってるかもしれないが』

 

ガチャリと部屋のドアが開く

入ってきた少女を見て多くの人間が「ヒィ」と悲鳴をあげる

……また随分と血を浴びたものだ

 

「俺は拘束しろと言った筈だが?」

 

「しゃーねーじゃん、銃口向けられたんだぜ?殺される前に殺せが私の流儀だ」

 

そう言って担いでいた男を無造作に投げてくる……あぁ、生存者ね

 

「殺しちまったもんはしゃーねーしそいつの記憶改竄して局に引き渡せばいいだろ、ほら、仲間割れとか色々あるじゃん?」

 

「その前に結果報告はしろと言ったがその格好でこの場に入ってくる時点でおかしい事に気づけ」

 

「んなもん知らねぇよ、あ~、でもそうだな、改竄とか聞かれちゃいけない単語とかもあったし」

 

かチャリと、ここに集まった人間に対して銃口を向ける

…………。

 

「殺しとく?」

 

「やめろ」

 

冗談冗談と言って拳銃をしまう彼女

……ったく、まぁどうせこいつらの記憶を改竄しちまえばいい事なんだからな

 

「な、なぁ、ケント少将殿」

 

「なんだ?」

 

小太りの将官が震えた声でこちらを見つめてくる

……こういう実践経験の無い人間はただのコネで成り上がった成金だろう

 

「貴方は、一体何が目的なのですか?」

 

…………そう、だな

午前中に自分を殺して、周りが動くまえにこんな事をしている俺

世界が異変に気づく前に、『ケント・コルテット』として溶け込もうとしている俺

何が目的か、などと、最初から決まり切っている

 

「君も一端の局員だろ?じゃあ求める物は簡単だ」

 

ゆっくりと詰め寄る、俺の目的なんか簡単だ、一言で終わる

 

 

 

 

「世界平和」

 

声は、無意識に冷たくなっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

息が荒い、心拍が激しい

土砂降りの雨の中、ただ一点を目指して走る

歩いている人は誰もいない、雨が目に入って前が見えない

ガラディーンに送られて来たログを頼りに……それでも前に前に

 

公園に入った所で足が止まった

 

見慣れた後ろ姿、金色の髪

 

大好きな人、大切な姉

 

ただ彼女は地面に崩れ落ち下を向いている

その長い髪は地面に落ちて泥が付き、なんの抵抗も見せない彼女には雨が延々と叩きつけられる

 

それでも……良かった

 

本格的に前が見えなくなって来た、雨が目に入ったのだろう。きっとそうだ

 

気付けば彼女を後ろから抱きしめていた、今姉の顔を見るのが怖いから、立ち直れない気がするから

 

ただ、それでも

 

「よかったよぉ、よかったよぉ」

 

これ以上失ってしまうのが怖くて、無くしてしまうのが怖くて

 

一番傷ついているのは姉のはずなのに、姉に頼ってしまう自分がいて

 

 

 

 

 

 

ガラディーンに兄からの連絡が入ったのは、雲行きが怪しくなり始めてすぐだった

 

題名も文章も無い全くの無題、入っていたのは映像データ

 

特にする事も無かったのでとりあえず再生して、後悔した

 

映像は簡略化してしまうと簡単だ、お兄様が死んだ

 

私達と全く同じ顔をした奴に、胸を刺されて死んだ

 

その事実さえも受け入れられなかったが、それと同等に自分を攻めた事がある

 

『分からなかった』

 

分からなかったのだ、確かにこのデータを送って来たのは私のお兄様、やられているのはお兄様

だから映像に映っているあいつが偽物なのだとも分かる

それでも、分からなかった

 

映像の中のお姉様は声を荒げている

お兄様は血を流している

 

分からなかったのだ、あいつと兄との違いが

 

外見も雰囲気も全く同じ、仕草も動きも声も

 

何が違うのか何処が違うのか、私には分からなかった

 

フラフラとその場に崩れ落ちた、あぁ

 

『自分はなんの為にここにいるのか』

 

あれだけの事をして貰いながら

 

あれだけの好きと公言しておきながら

 

あれだけ守ると言っておきながら

 

結局結果はこれだ

 

なにも守れてない

 

敵との違いさえも分からない

 

その事実がとてつもなく、途方もなくショックで

 

自分の存在意義を見失いかけた

 

結局その程度だったのだと、自分の覚悟は

 

お兄様が死んだ所で、映像は途切れていた

 

全部失ったかと思った、兄も、姉も

 

ならば自分がこの世界にいる必要もない、生きている価値もない

 

自分の命よりも大切な人だ、代わりというならばいくらでも命を差し出そう

 

ただその言葉にも力はない、だって覚悟はその程度だったのだから

 

死のうと思った消えようと思った、二人がいない世界に興味は無いしこの世界がどうなろうとも構わない

 

しかし、次に映し出されたのはクラナガンの地図

 

そこにある黄色のマーカー

 

それがなんなのか理解できたし、考えるよりも足が動いていた

 

もうこれ以上失いたくないから、こんな私でも何か出来る事があるかもしれないから

 

雨が降り出した中、力無い足を前へと向けた

 

 

 



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「眠い……」

 

一時間目が終わるチャイムが鳴り十分間のトイレ休憩へと突入する

なんとか睡魔に打ち勝ったこの時間、当然今の自分に次の時間まで起きていられる気力も無く机に顔を伏せる

それにしてもどうして授業中はあれだけ眠いのにチャイムが鳴ると目が覚め、授業を始めるチャイムでまた眠くなるのだろうか

さっきまではカックンカックンと揺れていた頭だが今となっては眠気はあるのに眠れない、いや、本気で寝たら二時間目の始めに注意されることになるのだが……

 

「お~、トイレ行こうぜ~」

 

「一人で行ってこい、ウサギかお前は」

 

「いいじゃねぇか別に」

 

クラスの友達が連れションに誘って来る

本当に、一人でトイレくらい行けない物なのだろうか

 

「ほら、廊下に出ると風に当たって目が覚めるかもよ?」

 

「そだな~」

 

軽い返事、まぁトイレくらいならいい、歩いたり風に当たることで少しでも目を覚ます事が出来れば二時間目も楽になるかもしれない

 

二人で教室を出て廊下を歩く、女子の笑い声、男子のふざけ声

走って来る奴とぶつかりそうになるのをギリギリ避ける、まだ高校生、こんな事は当たり前

 

「にしてもさ~、どうなんだろうな『あれ』」

 

「あれってなんだよ」

 

「ほら、この頃ずっとニュースでやってるじゃねーか、外交問題の」

 

「……あ~、関係悪化の」

 

この頃毎日している隣国間での関係悪化

内容は確か……領土問題だったか、それとも経済問題だったか……

まぁそれにしても、すごく有名な話なのに上手く思い出せない

 

ただ……

 

「別に俺等には関係ないだろ」

 

「まぁそうなんだけどな~」

 

そう、そんな事俺たちみたいなただの学生には関係無い事

 

そう、関係無い事なんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

流れる空気は重い

 

だれも口を開けないし開けようともしない、それが当たり前なのかもしれないが

 

「……取り敢えず、先ずはケント・コルテットという人物と接触するのが先やね」

 

そんな誰も口を開けようとしない静寂を切り裂いたのは奇跡の部隊の部隊長

いつもの軽い性格から一転したその表情は硬く、必死にその感情を殺しているのが見て取れる

 

ミッドの高町家に集まったメンバーは一人を除いた元六課隊長陣

姉を助けてからの行動は簡単だ、自分が本当に信頼出来る存在、信頼してもらえる存在に事実を知らせる事

悔しい事だが二人は全くの同一人物、そして映像の内容からある程度自分達が知るケントの辿って来た道、友人関係も理解している

自分がこの事実を知らせる前に彼女達と接触されればこれ程面倒な事は無い、奴の事を皆が『ケント』だと理解し、信用してしまう

そうなればいくら映像を見せた所で自分と奴、どちらを信じればいいのかさえも分からなくなる

 

「まぁそれでも近いうちに接触はして来ると思うけどな、フェイトちゃんは生きてるしこのケント君はネリアちゃんの所に証拠映像なんかあるなんて思ってないやろ」

 

「そうだね」

 

今何処でどうしているのかはわからないが必ず近い内に誰かと接触して来るのは確実だろう。

これから『ケント・コルテット』としている以上、周りは固めて置いたほうがいい

 

「はぁ、本当はフェイトちゃんにもっと詳しく聞きたいんやけどな」

 

「自室に入ったまま出てこないからね、今はそっとしておいたあげてほしいの」

 

彼女はネリアに連れられて帰って来たはいいが自室にこもりそれから全く反応を返さない

自分は何も出来ず、一瞬の間に思い人を殺され、そんな事が起これば当然だろう

 

「で、どうするんだ、この映像を証拠に逮捕状を出すか?」

 

「それは、難しいよ、お兄様は少将、どうやったって揉み消されるし」

 

「だったら拘束か?いくらあいつでもあたしら全員でいけば何とかなる」

 

「それは、絶対駄目だよ」

 

ムッとした表情になるヴィータ

確かにケントは強い、それでもここにいるのは元六課の隊長陣、エースオブエース達である

気に食わないが数で叩けば直ぐに終わる

 

「だから無理なんだよ、人間じゃお兄様の力には到底かなわない」

 

「それはどういう事だ?」

 

人間じゃ無理?

 

「どれだけの数がいようが、どれだけの実力があったって、全てが『一流』の人間には勝てないよ、お兄様は例えるなら知識と技量の財宝庫、それを本当に使いこなしているんだったら、それは戦いじゃなく、ただの殲滅になるだけだよ」

 

「えっと?」

 

「そうだね、言っちゃうなら『絶対勝てない』」

 

過大評価、ではない

ここにいる全員がケントの能力を知り、その凶悪さも知っている

 

「だからもし接触してきたら出来るだけいつも通りに接してほしいんだ、油断させておく事が一番いい」

 

「油断、な」

 

取り敢えずいつも通りに過ごし様子を見る

あいての目的が分からない以上迂闊には動けないし『ポリゴンとなって消えた』という不自然な死に方からまだ希望だってあるかもしれない

 

「私はコルテットの本家にいるね、変な行動を起こされれば止めないといけないし……まぁネリアとお兄様じゃ力量の差であっという間にやられちゃうかもしれないけど」

 

「了解や、こっちもこっちでやれるだけやってみる、ケント君がまだ『死んだ』って確定したわけじゃないし……もし夢の中におるんやったら覚まさせてあげなあかんしな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

助けて

 

 

その言葉を発したのはいつだっただろうか

 

手足を拘束され、周りには大きな大人達

恐怖の中での激痛、奪われる唇

 

助けなんてない筈なのに、あの時はそう叫ばずにはいられなかった

まだ弱かった頃の私、なすがままだった私

 

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も

 

何度も、犯された

 

あの時はあの行為がどういう意味合いを持っていたのかが分からなかった

ただ怖かったのだ、全てが

 

自分が『おもちゃ』だった期間はどれだけだっただろうか

 

一年だったか、二年だったか

 

目の前で親を殺されて、逃げていた所を捕まって…………

 

 

 

 

眠っていたようだ、なんとも情けない

披露が溜まっていたのだろう、こちらの事を全く考えないあいつに軽く悪態をつく

 

それにしてもまた嫌な夢を見た、おかげで寝覚めがすごく悪い

 

ふと、午前中の事を思い出す

しかたがなかった事だ、どんな事情があれ、一人二人殺したぐらいで今更動揺する自分じゃない

それでも、あの金髪の女性

あれから向けられた殺気だけは尋常では無かった、幾つもの死地を超えてきたがあそこまでのは久々だ

彼女にとって『ケント』とはなんだったのか、自分にとってはただの……なんだろうか、仲間というには違う気がする、言うなれば支配者か?それとも命の恩人か?

 

まぁ、そんな小さな事はどうでもいい、気にしても無駄だ

 

この手は赤く染まっている、栗色の髪は血を吸った

不公平で、どうしよもないこの世界、私が泣いている時に世界の誰かは笑っていた

それを変えてくれる、本当の『平等』がやってくる

 

 

 

 

 

 

 

 

本当は泣きたかった

 

迫ってくるのは後悔と悲しみ、どうして、なんで?

 

ああやっていれたのは六課時代のお陰だろうか、それでも口は震えていた

 

何が私が守るだ、隣にいたいだ、結局何も成しえていない

 

みんなは気を使ってくれたのかバラバラだ、だから一人で帰路につく

 

何がいけなかったのだろうか、どこで間違えたのだろうか

 

なぜ、こんな事になったのだろうか

いくら考えても分からない、誰か助けてほしい、そう思う程に追い詰められる

 

だから、ギリギリまで気づかなかった

 

 

 

「よう」

 

 

「………え?」

 

思わず素っ頓狂な声が出る

目の前での事が信じられない

 

気付けばもう家の前、そこに……彼がいた

 

いつもと変わらない様子で、いつもと変わらない格好で

 

そこに、当たり前のように立っていた

 

そう、それが、あまりにも当たり前過ぎた

 

さっきまでの時間が、本物の夢の様に感じて

 

今起きている現象こそが、事実だと感じて

 

ただ無意識に、手を伸ばす

 

 

 

 

 



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私の幸せ

日常が続く

 

代わり映えの無い、本物の日常

 

朝起きて、学校行って、部活して、ゲーセン寄って、金使って、晩飯食って、勉強して

 

それの繰り返し、退屈すぎるこの世界

 

生まれてこの方十六年、別段何か特別な事など無かった

 

そんなある日の、昼休みに

 

「はぁ、もしも……ねぇ」

 

「いや~なんというかさ、俺ってあの時勉強してれば数学平均点行けたと思うんだよな、うん」

 

うんうんと勝手に頷きながら飯を食う友人

なんでも返って来たテストが赤点だったとかなんだとか……いや、お前が勉強してる姿見たことねーから、授業も殆ど寝てね?

ちなみに俺はギリギリ平均点

 

「こういう時にドラ○もんがいたらタイムマシンとかで過去に戻れるのによ~、解答持って」

 

「どうせ空いた時間に遊びまくるだけだろ、テスト期間で部活休みだし」

 

俺でもそうする

 

「じゃあもし○ボックスとかか?俺が天才だったらという設定で」

 

「あれは自分を変えるんじゃなくて周りを変える道具だからな、てかどちらかというと望んだ並行世界を作り出す……とかじゃなかったか?」

 

「は?」

 

「つまりお前が賢くなるんじゃなくて周りがお前以上に馬鹿になんだ、社会機能大混乱だな」

 

「い~や~だ~」

 

電気水道ガス全てストップだな、うん

 

「はぁ、並行世界なぁ……あんのかな、そんなの」

 

「知らんがな、てかそんなもんに頼るなよ」

 

「え~、でも本当に天才の俺がいるかもしれねぇじゃんか」

 

「そうですね~」

 

棒読みで軽く受け流す

並行世界なんてどうせ人間の空想だろ?それにアニメみたいに自由に行き来するなんて事も不可能だからあったとしても俺らには関係の無い事だ

 

「でもあったら楽しそうだよな、『地球』の並行世界」

 

「そうですね~」

 

「科学が異常に発展してたり、魔法使いがいて魔王がいて勇者がいて」

 

「それはまた別世界じゃないか?」

 

少なくともアニメだろ、それ

……でも

 

「並行世界……ねぇ」

 

もしあったとすれば……別次元の地球というのはどうなっているのだろう

例えば……

 

 

今勃発直前の戦争なんて……可能性さえ無い世界とか?

 

 

 

 

 

 

 

伸ばしていた手が……止まる

 

何を考えたわけでもなく、無意識に

何が違うのかも分からない、本能は向かっているのに、それを押しとどめたのは残った理性

違うと聞いたから、映像を見たから、止められた

 

それでも、その不自然な動きは彼にとって理解するには十分で

 

「……まぁ、しゃあないか」

 

静かに、残念そうに呟いた

 

その顔はどこも変わりなく

それでも少し残念そうに、小さく笑ってみせる

 

「そうだな、ちょっとお話したいし……中入っていいか?」

 

ビクリと肩が震える

家に入れる、それは……どうなのだろう

今のところ彼から敵意は感じられない、その前に話がしたいとも言っている

だが……今は自分だけ、守護騎士のみんなはいない

でも……

 

「……うん、歓迎するな」

 

「ありがと」

 

彼を、私は招き入れた

 

 

 

 

 

 

 

自分が出したお茶に口をつける

毒が入ってるとか、そういう警戒心は無いらしい、まぁ自分が入れる筈もないしケント君ならそれくらい見分けられるだろうが

私はそんな彼の前に真っ直ぐと座る、鏡があったなら自分の顔は酷く険しい物になっているだろう

カツンという音とともにカップが机に置かれる、それと共にゆっくりと視線を向けて来る彼

 

「そんじゃ、何から聞きたい?」

 

意外な事に単刀直入、一瞬ビクリとした

目の前のケント君は回りくどい事をするのは嫌らしい

 

「……じゃあ聞くな、ケント君は何処におるん?」

 

「はやての目の前にいるよ?」

 

「貴方じゃない、私達が知ってるケント君の事や」

 

「ふぅん」

 

やや面白くないという表情

殆ど希望的推測だったが、もしかしたらと思い聞いて見たが……

 

「何故殺ったのか、じゃなくて何処にいる……か、実際体験したはやてならではだな」

 

「それじゃあやっぱり」

 

「ああ、あいつは『死んでない』よ」

 

呆気なく放たれた言葉に自分の体から力が抜けていく……まだ希望はあった

 

「にしてもよく気づいたな、『夢』の中にいることを」

 

「そうやな、女の勘、ってやつなのかもしれへん」

 

なんども映像を見て気づいた違和感、それはケント君の死ぬ間際

実際にリインフォースとなり、フェイトちゃんを取り込んだことがあるからなのだろう、崩れたケント君の残骸が、目の前の彼に流れていくのが分かった

どちらかというと吸収、だろうか、少なくとも違和感というだけだったので確信は無かったが……

 

「流石と言うべきか何と言うべきか」

 

「じゃあ次や、起こしてって言ったら?」

 

これも単刀直入、無駄口は挟まない

少しでも気を許せば、本当に彼に呑まれてしまいそうだから

 

「まぁ待ってくれよ、一つ聞いたんだから俺も一つ、等価交換だろ?」

 

「…………どうぞ」

 

焦り過ぎもよくないかもしれない

 

「そうだな……俺の事を知ってるって事は映像とか音声とかでだと思うけど……俺が本物であいつが偽物って言ったら信じる?」

 

それは音声で流れていたので聞いた

二人少しの問答、『偽物』という言葉にケントは過剰反応した

これにどんな意味があるのかは分からないが少なくとも

 

「私達にとってケント君は一人で、貴方は人殺しや」

 

そうか、という彼を見つめる

その瞳は虚無で、何を考えているのかは読めない

ただ、何も変わっていない

 

「にしても俺も随分と嫌われたもんだ、明日にら中将昇格なんだからパーと祝ってくれてもいいのに」

 

「え?」

 

中将昇格?

 

「そうそう、大変だったんだぜ?最低でも中将の位は必要だからさ」

 

「え、ちょっ、あの」

 

話についていけない、というか先程までの問答など無かったかのように明るくなる彼

一体全体どうしたと言うのだ

 

「俺さ、あいつが俺の中にいるから空白の三年間の記憶も少しだけ取り戻してんだ、JS事件から知らなかったからさ、みんなの事」

 

「JS事件?」

 

何故今更その名前が

 

「鮫島の能力で俺があいつと分離してからなんかマイホーム買ってるし家ではハーレム状態だし中学生の武道指導とかさ、合宿とか羨ましいよ……それに」

 

 

「可愛い彼女ゲットしてたりして」

 

「え?」

 

今、なんと言った?

 

「はやては知らなかっただろ?抜け駆けされてたんだぜ、親友にさ、何時の間にか告白して何時の間にか愛し合っちゃってるんだからな……羨ましい限りだよ全く」

 

「え、あ」

 

「周りにはこんなに好きだとアピールしてくれてる人がいるのに酷いよな、自分だけ愛に一直線、ホントに」

 

言葉が出ない

何故がこんな状態なのに、襲って来たのは虚無感だけ

 

「だからさ、はやて」

 

 

 

「俺は君の為に言ってるんだよ?」

 

「え?」

 

それは、甘い言葉だ

 

「俺とあいつは同じなんだ、いや、どちらかというとあいつは俺の模造品、俺を閉じ込め、我が物顔」

 

「俺が外に出たと思ったらもう一度押さえつける為に殺そうとしてきて、俺は自分を取り戻す為に戦って」

 

「なぁはやて」

 

 

 

 

「あいつは君を抱けないんだよ」

 

「う、あ」

 

 

「俺は君を愛してる」

 

「どれだけ憎まれようとも、閉じ込められながらも君がずっと好きだった」

 

「君と一緒にいたい」

 

「君に隣にいてほしい」

 

「俺とついて来てほしい」

 

「俺が世界を作る所を」

 

 

 

ぐるぐると世界が回る感覚

意識が飛びそうになる、何が起こっているのか分からない

 

心を委ねる、身体を委ねる

 

彼は彼だ、全く変わらない

 

一体全体みなどうしたというのだろう、何故本物偽物こだわるのだろう

 

そもそも本物も偽物も分からないのに

 

私の初恋、私の十年

 

心が休まっていく、治っていく

 

身体に力が入らない、まるで自分の物じゃないかのように

 

嫌じゃない、だって好きだから

 

理性が飛ぶ、繋がっていた心が崩れる

 

甘い甘い、そんな奔流に呑まれる

 

まるでお腹の中にいる赤ん坊のように、優しく抱きしめられるように

 

気付けば彼が覆い被さっていた、身体は相変わらず動かない

 

顔が熱い、目がトロンと垂れる

 

何故だろう、なんでだろう

 

なんでこんな事になったのだろう、どうしてこうなったのだろう

 

何も分からない、ここを超えたら戻ってこれない事は分かっているのに

 

それでも、これでもいいかなと思ってしまう

 

何も変わらない、私と彼が結ばれてそれで終わり

私にとってのHAPPY END

 

そう、それでいいじゃないか

 

幸せの中にいていいじゃないか

 

唇が迫る

 

だから…………

 

 

 

 

 

「駄目やで?」

 

「…………。」

 

押し倒された状態のまま、静かに自分の言葉を口にする

気付けば上はカッター一枚、しかも胸元までボタンは外れてチロチロと下着が見え隠れしている

 

「時たまおるで、そういう風に話術を使って来る人、ケント君の場合は催眠術になるんやろか……それでも本気で落ちかけたのは初めてや」

 

「……なぁはやて、俺は」

 

「うん、ホンマ、私ってアホや」

 

悲しそうな顔をする彼を尻目に、私は上体を起こす

彼の言うとおり今ここで彼に抱かれていれば……それは私にとっての幸せだろう

私が彼が好きな事は当たり前だし、私には二人のケント君の何が違うのかが全く分からない

それでも……

 

「それでもな、私が愛したのはケント君であって、貴方じゃないねん」

 

結局、この初恋、十年も愛し続けた相手は……たった一人の男の子

それが変わる事はないのだ

 

「ごめんな、だから貴方には、答えられへん、私は全力で大好きな彼を助ける……それだけや」

 

「そうか……」

 

彼がフゥ、息を吐いて離れる

 

「そうだな、残念だ」

 

 

 

 

 

「使い潰すには丁度いいと思ったのに」

 

声のトーンが下がる

それを気にせず、私はベッドから離れてデバイスを持つ

 

「はやての立場ってさ、丁度良かったんだよね……ほら、俺の事結構理解してくれそうだし、側に置いといて損は無し……みたいな?」

 

「そりゃ残念やわ、期待に答えられんくて」

 

「本当に残念だ」

 

ハハハと笑う

その顔はさっきとは違い……狂気に満ちている

 

「助ける、助けるな~、助ける助けないの前にあいつが自分を知るのはもうすぐだぜ?それに未来も決まってる、更にはやては」

 

指を向けられる、自分はバリアジャケットになる

魔力を溜める、杖を前に向ける

ただ……それよりも

 

 

 

「ここで死ぬし」

 

 

黒い何かが……襲いかかった

 

 

 



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平和のカタチ


久々の投稿、遅れてすみません

理由としては……小説って楽しい
いや、たまたま『なろう』覗いてたら夢中になっちゃって、ランキング上位の人たちが書く小説は次元が違う……
最後まで読み終わり我に返ってこの有様、今度はキチンと頑張ります



 

『ん、久しぶり~、そっちから連絡くれるなんて天変地異の前触れか何かですか?それとも間違え電話の類だったり?』

 

「いや、私だよ」

 

誰もいないだだっ広い部屋、デスクがあり、電話があり、後ろには巨大なガラスと背景

コルテット本家にある当主室、兼社長室

電話越しに聞こえてくるのは自分にとっては吐き気がしそうなほど通った女の声

 

『あら、改めましてお久しぶりですね『当主様』、えらく暗いですけど何かありましたか~、前までは連絡も通信も一切くれるなとか言ってたくせに』

 

「言ったね」

 

『お見合いの話を出せばお兄様に近づくな~とか関わるな~とかも言ってましたよね~』

 

「言ったね」

 

『それを踏まえた上でどんなご要ですか~』

 

相手もこちらも双方にいい感情は抱いていないだろう、いや、抱いてないと断言出来る

ただ、それでも……

 

「貴方の力を貸してほしい、本家のピンチに力を使うのが『分家』の役目でしょ」

 

『大切なのは本家の血だけどね~、で~、今回の問題に関与する気はさらさらないよと言ってみる』

 

「なっ!?」

 

発せられた言葉に思わず声が裏返る

まだこちらの要件は話していない、ということは

 

「なら、もうそっちでは」

 

『うん、理解してるよ、ケント君とケント君が戦ってモノホンケント君が負けちゃったっていうのでしょ?』

 

あっさりした声、どんな方法で入手したのかは分からないが向こうはこっちの状況を知っている。ならなおさら

 

『でもさっき言ったよね、大切なのは血だって』

 

「っ、あれは偽物であって!!」

 

『いや、あれは正真正銘のモノホンの血が流れてるよ?ちゃんと確認したし』

 

「っ!?」

 

意味がわからない

 

『私にとってはどっちでもいいんだよ、それに私に貴方の言うことを理解して従う気もさらさらないし、所詮は培養器で作られた模造品だもんね~』

 

「…………。」

 

『それに私もあんな化け物性能の人と戦って勝てるなんて思ってないよ、せいぜい足止め程度だって、無理な物は無理なんだよ』

 

「……でも、貴方以外は」

 

『うんうん、いないよね~、私も分かるよ、でも私も怠いし~、めんどいし~』

 

「……もういい!!」

 

バンッ、という音とともに受話器を押し付ける

力が入り過ぎて壊れてしまったが関係ない……私としては賭けに負けたのだから

 

「糞っ!!」

 

頭を掻き毟る、唯一兄と戦える人間、それがあの様

 

一体、奴は何がしたいのだろうか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴウッ!!

 

そんな音が聞こえたと同時に、襲いかかってきていた黒は全て焼き消される

 

空間自体が変わるのを感じる、そこから一気に離脱する

 

彼の表情は変わらない、部屋が炎に包まれていく中で、彼の周りに鋼の柱が乱立し逃げ場を消す

壁を破壊、脱出、瞬間

 

「轟天爆砕!!」

 

衝撃

 

爆発点を中心に巻き上がる砂嵐、襲う衝撃波

その衝撃だけで道路が崩壊、軽い地震が起こったのではないか?

 

ただそれでも、油断はしない

 

自分を中心に固まる騎士達、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、リイン、アギト

大切な、私の家族

 

「ヴィータ、どうだ?」

 

「わかんねぇよ、ただ手応えはあった」

 

アイゼンが元の大きさに戻る、砂埃はまだ俟っている

結界の中だったから良いものの実物の家でやられたら失神物である

 

「あ~、うん、流石はヴォルケンズ、咄嗟の連携にしては凄い」

 

「ふむ、無傷か」

 

関心した声を上げるのはシグナム、瓦礫を退かして現れた彼は砂によって汚れた事を除けば全くの無傷であった

 

「てかヴォルケンズ大集合って……こりゃ骨が折れそうだ」

 

「そうだな、私達はお前の骨を全て折ってでも助け出すと決めている」

 

「うえっ」

 

思わず声を上げる

結界の中でヴォルケンズ勢ぞろい、普通の犯罪者集団とかならその時点で詰、いくら足掻こうが関係なく潰される

そんな状況であっても彼の顔は……涼しそうだった

 

「まぁ色々とこっちからも聞きたい事はあるけどな、途中で介入してこなかった理由とか俺をそこまでして助けたいと思う理由とか、何だかんだ言って俺ってそんなに特別な存在だったか?」

 

「ふむ、それがただ記憶だけでしか知らない限界というところだ」

 

「ん~、なんか難しい」

 

シグナムの言葉をそう言って割り切る

言ってしまえば彼が持っている守護騎士達に関する記憶など取り込んだケントの記憶でしかない、自分が直接的に関係していたわけではない

 

「で、俺のここでの目的は終わったわけなんだが……帰っていい?」

 

「ぶっ潰すぞテメェ」

 

ドスの聞いた声、ヴィータが今にも掴みかかりそうな気迫で魔力をぶつける

 

 

 

 

「あなたは、何がしたいん?」

 

透き通るような声

声の主は夜天の主

 

それは素直な疑問

 

ケントを取り込み

自分を利用しようとし

皆を悲しませてまでしたいこと

それは何なのか

 

「……そ~だな、強いていうなら世界平和」

 

あっさりと口を開いて放ったのは、この世全ての人類の悲願であろう

望んでいるのに叶えられない、そんな理想

 

「みんなを平等に、公平に、人は人の上に人を作らず、その言葉通りの世界、誰かが特別なわけでもない、誰かだけが笑う事のない、悲しむ事がない、生まれつき、人として生まれた時点で平等、そんな世界を俺は作りたい」

 

「平等?」

 

それは素晴らしいことだ

今の話を聞く限りでは、そこに住む人間の全てが何も心配しなくてもいい理想郷

 

「俺はさ、ずっと疑問を抱いてた……生まれた時から金持ち貧乏が決まってる、平和な国と争いの国」

 

「言葉の価値だって違う、パンの欠片を家族全員で分け合った後の笑顔と駄々をこねて親に買ってもらった宝石を見てもれた笑顔、同じ『幸せ』なのにこうも違う、少なくとも後者にパンの欠片をやっても悪態をつくだけだろうな」

 

軽くこちらに笑って来る

……違和感

 

「俺はさ、許せないんだよな、上目っ面だけの平等なんて、誰かが笑っている中で泣いている人間、悲しんでいる中で喜んでいる人間、こんなのは腐ってるんだよ、生物としてさ」

 

だから……と、彼は拳を握る

 

「俺が変えるんだよ、この力でさ、世界を……それが、願いだから」

 

目を閉じる、それか彼の願い

 

理想郷

 

それを、彼は本気で作ろうとしている

だけど……それは

 

「なるほど、話はわかった」

 

違和感を探っている中でシグナムが口を開く

 

「なら先程お前は『言葉の価値が違う』と言ったな、なら聞くが」

 

 

「お前の中での『平和』とはなんだ?」

 

ピクリと、彼の身体が動く

 

「少なくとも私達はいくつもの世界を回ってきた、何百年もかけてな……お前は全ての人間を平等にすると言ったな?」

 

「そうだが?」

 

「人は無限の欲望の塊、喜びを与えるとそれ以上の喜びを欲する、楽しみを与えるとそれ以上の楽しみを欲する。その中で平等など出来ると思うか?

平等の世界の中で人は思うだろう、『もっと欲しい』と、誰かと同じ、全員同じ、これを納得出来る人間ばかりではない、スカリエッティの事ではないが、お前の世界に人が作り出す『無限の欲望』は収まりきらん、もし、それでも平等を目指すとするならば……恐らく、お前が目指す世界の形というのは……」

 

人の欲望は無限

 

最初は与えられた物だけでいいかもしれない

みんな一緒でいいかもしれない

 

ただ、最初だけだ

 

与えられた物以上を欲する

 

それが人間だ、平等な世界などいつかは破綻する

 

なら人にとって平等とは何を指す?

 

どこぞの漫画では人類全員に幻術をかけてやら何やら言っていた気もするがそんな虚無を望んでいるわけではない

 

現実の中での平等

 

「オカルトとか無しにしてさ、この世界に生きる全ての生命の果て、底なしの幸福の真逆の感情、生物としての存在意義」

 

そして彼は、会話の中で一言も『幸せにする』などの言葉は使っていない、ただ平等と言っただけだ

 

「人って凄いよな、最初は生きるために戦ってたのに、何時の間にか権力争いになり、土地争いになり、はたまた金だよ……どんな生物なんだか……」

 

 

 

 

「幸福には底がない、だが絶望は心が壊れればみんな同じ、貧富の差、権力の差、殺し合えば平等だ、自らが生きるために戦って平等な『死』を迎える。誰かが得をするのではない、みんな平等で、みんな絶望する。」

 

 

 

「俺が起こすのは戦争だ」

 

 

「別に悪の組織やら世界征服やらじゃない、そもそも悪か善かなんて作者が決める事だ、俺にとってはこれが善であり平和、今の世界が悪であり腐敗」

 

 

「それこそが本来ある姿、生物としての姿、不平等なんて何もない、みんな泣いてみんな一人、誰も得なんてしない」

 

 

「いつしかどうしてこんな事になっているのか分からなくなる、これが当たり前だと感じ始める」

 

淡々と語る理想、それは狂気

 

絶望、心が壊れれば平等、確かにそうだ

 

死、みな平等、確かにそうだ

 

その世界には救いはない、ただそんな世界で人はそれが当たり前だと感じ始める

 

その世界が

 

 

 

「俺の平和だよ」

 

 

 

 

 

 



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あなたのこと

 

「あ、ソース切れた、補充頼む!!」

 

「ちょっ、焦げた!!」

 

「買い出し誰か行って来てくれ!!」

 

忙しく動くテント、風船やらダンボールで作った看板、看板にはデカデカとタコの絵が書かれている

 

「全然間に合って無いって、まだ完成しないのか!?」

 

「そもそもこんな効率悪いのをしようとするのが悪かったんだろ、他のクラスみたいに冷凍食品にしときゃよかったんだよ!!」

 

今更そんな事を言っても遅い、決まってしまったのは仕方のない事なのだから、そしてもう始まってしまっているのだから

俺は忙しなく目の前の玉を転がす、まだ初夏といえど暑い物は暑い、熱せられた鉄板があるのだから余計に

出来上がった物を使い捨ての皿に入れて運ばせる、鉄板が空になったのを確認すればまた素を入れ……タコを入れる、その単純作業をどれ程続けただろうか?

 

文化祭、日本の中高生なら絶対経験するであろう一大イベント、その中で俺たちのクラスは必死に『タコ焼き』を焼いている

いや、何故タコ焼きなのかは知らないがクラスのアンケートでの結果なのでしょうがない、混みまくる文化祭でそんな時間のかかる物を作る事に不安はあったが結局これだ、需要と供給が全く噛み合っていない、ずっと列が出来て余裕がない状態が続いている状況だ

 

いやもうしんどい、暑い、怠いの三拍子が見事に噛み合ってるね、クラス対抗とか何か言ってたけど正直どうでも良くね?

 

早く自分の出番が終わって欲しいと思いながらタコ焼きを回し続ける、自分も色々な売店を回りたいものだ

 

そんな事を考えても文化祭はまだまだ序盤、嘆いたって始まらない

それにグダグダ言っていても純粋にこの時間を楽しんでいる自分だっている

 

ただ、それでも……何なんだろうか?

 

あり得ないのに、意味が分からないのに、何故か頭をよぎる事がある、確かにある違和感

 

 

 

俺は、この日を何度繰り返しただろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱ強えわ、特に砲撃適性ゼロでこれは酷い、うん、無い」

 

傷ついたバリアジャケットを見ながら独り言をつぶやく

体がヒリヒリする、よく見ると右肩から血が流れている

 

「にしても連携すげーな、これが家族っていうのの力ってか?奥の手まで使わされるんじゃな」

 

周りを見渡す、場所は先ほどまでの結界ではなく一つのれっきとした『世界』

赤と黄金によって彩られたそこは始めて見る物なら圧巻、そうでなくてもあまりものプレッシャーで押しつぶされそうになる

そして、そんな華やかな劇場の中心には……

 

「そういえば見せるのは始めてだったっけな、すげー事なんだぞ?生まれてからまだ二回、これで三回目だ……綺麗だろ、はやて?」

 

劇場の中心にいるのは、バインドで手足を縛られた八神はやて

その体に目立った外傷は無い、バリアジャケットが所々破れているくらいだろうか?

 

「君たちは強かった、それと同時に俺の支えにもなってくれた、だから殺すとかそういった野蛮な事はやめとく、明日には全部終わってるからさ、だから見守っててよ、俺が世界を変えるのを、全部終わらせるからさ、君達は……そこから頑張ればいい、うん」

 

彼女に意識はなく、だらんと下げた頭を顎を支えにして触れる

仕事を終えた劇場が崩れていく、周りに転がっていた守護騎士達を集めて固める、気を失っている内に管理局の獄内にでも押し込んでおけばいい、所詮明日まで、今の自分ならそれくらい出来る権力がある

 

「明日になれば、あいつが見ている夢も終わる、その時に全部変わるんだ、だから見ていてくれよ」

 

 

 

「魔法の原初を、コルテットの遺産をさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一足遅かった、というべきですね」

 

要約された自分の予言書を見て息を吐く

内容と言えばいつも通りの分かりづらく、遠回りな内容

ただ、それでも、もっと早く伝えられなかったのかと

 

「それでも、私は信じていますよ、何だって私が一番、あなたとの付き合いが長いのですから」

 

一筋の涙が流れる、自分の無力さからか、それとも……

 

「それと、帰って来たらちゃんと聞かせて下さい」

 

 

 

 

「あなたの、前世を」

 

 

 

 

 

 

 

 

闇の中

 

右も左も何もない

そんな世界に彼はいた

 

暗闇、夜

いや、夜ではなく『埋め尽くしている』と言うべきか?

 

体も服も真っ白な子供

 

遊びたがりの年である子供

 

ただその目はどこか遠い場所を見つめていて

 

「……どうかしたの?」

 

闇に向かって問いかける

反応はない、ただそれでも少年は異変に気づく

 

『友達』が忙しく動いている、どうしたのだろう……と

 

首を傾げる、どうしたのかともう一度問いかける

返って来たのは……閃光

 

「……………え?」

 

ドンッ、という爆発音

闇に包まれていた世界に光が差し込み、それと同時に熱が暴れ出す

 

一瞬炎が立ち上がり己の世界を包み込み……闇が再び支配していく

 

ゆっくりと爆発が起きた方向へと向き直る、そこの闇だけが取り払われていく

 

先にいたのは、見た事のあるお姉さん

 

「三人いた中で、あなたが一番つけ入りやすそうだったから、どう見ても自分の意思の様には見えないし、ただそのロストロギアに振り回されているだけ」

 

「?」

 

首を傾げる

金髪のお姉さんはそれと同時に再度刀を振るう、振動する世界、暴走する熱と光

……雷、なのかな?

 

「お姉さん?」

 

頭の処理が追いつかない、今の自分が『暴力を振るわれている』という事は理解できるのに何故そうなっているのかの過程が全くわからない

 

「私だって本当は嫌だよ、見た限り、貴方は最初に会ったときのエリオやキャロと同じ位の年だと思う」

 

再度、刀が振るわれる

その度に闇が盾になって攻撃を防ぐ……『友達』が守ってくれる

 

「私が聞きたい事は一つだけ」

 

足が止まる、危険だという事を察知したのだろうか?

結局それは正解でそれ以上近づけば『友達』は本気で彼女を潰しにかかっていたかもしれない、だって『友達』だから、僕の為に戦ってくれる

だけどそれは駄目なんだ、だって

 

「あいつは、どこだ」

 

「お姉さんは」

 

 

 

 

「僕の友達になってくれる?」

 

 

友達を作るのだから、まずはお話しないと

 

 

 

 

 



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偽りの世界

 

ミッドチルダの、辺境の地

 

実際彼を見つけられたのは運が良かったとしか言いようがない、聖王教会で襲われた時、彼に対して底知れぬ危険性を察知したことは確かだったけれどあの時はケントと合流することしか頭になかった

だから彼を追いかける事とかはしなかったのだが……動いてくれていたのはバルディッシュだ

 

簡単な追跡魔法、局の魔導師なら簡単に見つけ、解除できるような初歩の初歩、ただそんな魔法でも彼は解除しなかった、いや、出来なかったと言った方がいいかもしれない

 

見た目は五六歳の白い服を着た少年、どんな人間もそうだが、この年から魔法の心得がある子は早々いない、いたとしてもヴィヴィオが通っているSt.ヒルデのような魔法に力を入れている環境の中にいなければあり得ない事

この少年にはありえない、見たところロストロギアの強大な力に振り回されていると考えた方がいい

ロストロギア『病気』、詳しいところまでは分からないが名前からして大方の推測はつく、あの黒い物体に触れれば終わりという事ぐらい

後は……

 

(意思を持つ、ロストロギア)

 

少年の先ほどの言動、不意打ちを防いだ黒い物体

それらを合わせるとあのロストロギアは意思を持っている可能性がある

まだ幻覚を見ている、二重人格、様々な推測は出来るがどちらにせよ厄介な事この上ない

どちらにしろ危険すぎるロストロギアには代わりがないのだ

 

「お姉さん?」

 

「…………。」

 

首を傾げて見つめてくる少年、その表情からは自分が敵意を向けられている事すら理解していないだろう

ただ、それでもエリオやキャロとはまた違う……決定的に何かが

不気味なのだ、理解出来ないのだ、何故彼があの様に立っているのか、何故彼があそこにいるのか、それが何となく引っかかる

当たり前の事なのに普通の行動が普通ではない、生き物として理解が及ばない

ただそれでも……

 

「もう一度聞くよ、あの……ケントはどこにいる」

 

「お兄ちゃん?」

 

また首を傾げる

その一つ一つの動作が怖い、これまで出会った犯罪者の誰よりも

何だこれは、何なんだろうか、この人が出せない様な粘りつく声は

 

「僕はここで待っててって言われたんだ、後ですごいのを見せてくれるって言うから僕ね、友達とおしゃべりして待ってたんだ」

 

「…………。」

 

「お姉さんもお兄ちゃんに呼ばれて来たの?もしかしてお姉さんが僕の友達になってくれるの?」

 

「…………ここで待ってたら、ケントは来るの?」

 

「うん、そうだよ」

 

疑いもなく無邪気に答える彼

……いや、無邪気とは程遠い、凍りつきそうな笑顔

 

「お兄ちゃんがね、もう少ししたらすっごいお祭りをするんだって、お友達ができる?って聞いて見たら一杯できるって、僕ね、お祭り初めてだからすごく楽しみなんだ、お姉さんもお祭り?」

 

「……お祭り?」

 

何のことだろうか、少なくとも彼が目の前の少年に伝わりやすい様に何か別の事を言い換えたのだという事は理解できる

何をする気だろうか、よくも悪くもここは何もないただの荒野、少年のいうお祭りには程遠い

 

「お祭りだよお祭り、えっと、何だったかな~、確か……はじまりの

 

「っ!?」

 

 

彼の言葉を聞き終わる前にその場から離脱する

障壁を展開、スフィア展開

自身の周りにサークルプロテクションを張り……スフィアを地面に向かって一斉掃射

荒れ狂う爆風、暴風……そして黒

 

「くっ……」

 

あれに触れてはいけない事は容易に想像できる、だからこそ自身を全て覆うサークルプロテクションを展開した

しかしこれだってどれだけの効力を持つかは未知数、少なくともあまり期待はしない方がいい

 

「だ、だめだよ、お姉さんは悪い人じゃないかもしれないよ?」

 

少年は少年で必死に宥めようとはしているがそんな物は関係ないだろう

自我はあるので心配はしなくてもよいとは思うが簡単な追跡魔法さえ気づけない少年である事には変わりはない、あの子はロストロギアにとって都合のよい器でしかないのだ

そんな彼が何を言ったところで、敵であると認識した相手への攻撃の手を止める事はない

 

「プラズマ」

 

距離をとって魔力を溜める

本当はこんな事はしたく無いのだが……彼がロストロギアの器であるならばそれを行動不能にさえしてしまえばこちらの物だ

非殺傷設定で彼の中にあるロストロギアを破壊してしまえばいい、なのはと同じ様な荒っぽいやり方にはなってしまうのだがしょうがない、もとより手加減が出来る可愛いものではないのだ

 

「スマッシャー!!」

 

魔力砲、少年が目を見開く

黒によって相殺される砲撃、そんな事は理解していたので追撃とばかりにスフィアでの追撃をかける

火が弱点なのは見て分かる、シグナムがいれば彼女の火力でどうにかなったのだろうがない物を強請っても意味がない事を知っている

 

「トライデント」

 

カードリッジを二つ消費、スフィアの追撃は止めない

少なくとも少年に機動力がない事は確信できる、あの子の足では歩く事さえままならないのかもしれない

ロストロギアに関しては防御に徹しているために器を移動するだけの事は出来ないはず、見たところ集団殺戮用のロストロギアであって戦闘に特別特化しているわけでもないのだろう

黒の壁も先ほどの砲撃でどれほどの物かも知れた、後は、大出力で押し込むだけ

 

「スマッシャー!!」

 

雷撃が飛び散る、電撃の槍が地面を抉る

高出力の砲撃によって先ほどまで弾幕を防いでいた壁が吹き飛ぶ、少年の姿が露わになる

爆風と共に、槍が全てを貫いた

 

 

 

 

 

お父さんも、お母さんも、毎日来てくれたのを覚えている

真っ白な部屋に、僕はいた

実際には真っ白というか、カーテンとか壁とかが白かっただけで、テレビもあったしゲームもあった

毎日ピンク色の服を着た女のお姉さんがご飯を持って来てくれたし、不自由なんて何もなかった

僕は生まれつき足が動かなかった、何でかはわからない

僕は生まれつき体が弱かった、何でかはわからない

 

生まれた時からずっとここ、もう五歳になるのに、幼稚園だって保育園だって行った事ない

この建物の中で、僕はずっと一人

 

お母さんは時々泣いてる、何日かに一回は「ごめんね」とずっと言っている

お父さんはそんなお母さんを抱きしめて慰めてる、何でかはわからない

 

なんでだろう、最近は指がよく動かなくなってきた

 

なんでだろう、最近は口も動かなくなってきた

 

建物はこの頃ずっとドタバタしてる、せんそうってなんだろう

 

へいきってなんだろう、びょうきってなんだろう

 

その日からご飯が少なくなった、なんでだろう

 

お父さんが僕のとろこにこなくなった、なんでだろう

 

お母さんもこなくなった、ナンデダロウ

 

 

 

もう光もなくなった

もう鼓動もなくなった

 

 

だれもいない建物、この前おっきな音がして、みんなの悲鳴がきこえた

 

そのときからだれもこない、ごはんもない

 

だれのこえもしない

 

なにもない、なにもうごかない

 

ナンデダロウ?

 

 

全部無くなってから、声が聞こえた

 

初めて聞いた声、僕と同じ位の、無邪気な声

 

初めての友達、初めて会った本当の他人

 

うれしくて、うれしくて

 

友達が僕の中に入って来るのを感じた

 

足にかかる重み、手を自由に動かせる感覚

 

初めての体験、初めての経験

 

友達が言った、目を開けてご覧……と

 

初めて自分の目で見た、外の景色は

 

 

ただの……死だった

 

 

 

 

 

 

 

なんだこれは?

 

 

汗が流れるのを感じる、肌が危険だと伝えて来る

 

身の毛がよだつとはこういう事でなはないか、これが本当なら、なのはの収束並みにたちが悪い

 

抉れた地面が、砂が……一人でに直っていく

 

あり得ない現象が起きている、おかしな現象が起きている

 

ただ、それは事実で……

 

「くっ!!」

 

一気に急上昇、己が立っていた地面が……崩れる

 

それだけではない、この世界、そのものが

 

「……一世界を、滅ぼしたロストロギア」

 

ああ、これは……規格外過ぎる

 

自分が荒野だと、何もない場所だと信じて疑わなかったこの場所

 

違った、認識そのものが外れていた、これは作り出された世界、見せていた世界

 

 

ただの擬体

 

 

 

表すなら波、世界

 

目に見える全てをかたどっていた物が壊れ、『黒』となる

 

私がいた場所は、彼が見せていた世界に他ならなかった

 

 

「お姉さん」

 

暗闇の中からその一言

 

唇が震える、力が入らない

 

そんな私に、彼は明確な殺意を向けながら

 

 

「しんで」

 

死刑宣告をした

 

 

 



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見つけた答え


久々の投稿です。

試験がある為に今年の投稿が難しくなっています。本当に申し訳ありません。


 

「はぁ、はぁ……くっ」

 

バルディッシュを握り直す、体からはじんわりと汗が滲む

目眩がする、熱っぽい、感覚がおかしい……だがその程度で済んでいる

 

ソニックにしてからのフルドライブモード、それをもう十分近く、体にはガタがきているし、肉は悲鳴をあげている。

それでも、死ぬよりはマシだ、死んだらそこで終わり、やり直しなど効かない

 

世界が黒に覆われて十分、今は何とか生き延びているという状況、それでも何度か接触して、体は体調不良を訴えている

少年の姿なんてもうとっくに確認出来なくなっている。分かるのはこの黒の何処かにいるという事くらい

 

「絶体絶命って、ヤツなのかな?」

 

ここまでのピンチに陥ったのはいつ以来だろうか、少なくともスカルエッティのアジトに乗り込んで捉えられた時、それくらいか?

 

さてどうするか、こんな時、私達はどう突破してきたか……思い出すのは昔の光景、ボロボロの状態の私を容赦なく叩き潰してきた元気m……もといピンクの魔弾、いや、魔砲

違う、もっと他のイメージ……あの古代の遺産である、聖王のゆりかごを壁抜きした……デスビーm……いや、ピンクの破壊光線、かのドラゴン使いもビックリな破壊光線、お土産屋さんで撃ったら間違いなく町ごと吹っ飛びそうな破壊光線

 

自分の記憶が怖い、あんな物、人生で一度見ればトラウマ物なのに二度も見て、それも一度食らっているのだ、思い出したら鳥肌が立ってきた

多分こんな、世界が黒く覆われているならこう言うだろう。

「全部まとめて吹っ飛ばせばいいの」

……そうだよね、うん

 

結局はこれでいいんだ、話が通じない相手なら、無理にでも話を聞いてもらう、それが実際にお話じゃなくて物理だろうと、殴ってでもお話するのが彼女の男前な考え方

やる、やってやる、魔力全部使い切ろうと、あの男、ケントの喉元に噛み付いて、絶対に取り戻す

 

「ブラスター3、いくよ、バルディッシュ」

 

もう一度バルディッシュを握り直す、これに全てをかける、余分な魔法は使えない

自分の周りに展開しておいたシールドを消す、準備が整うまで……逃げ切る!!

 

「ーーフッ」

 

跳躍、旋回、回避

 

襲い来るのは世界、黒、波

 

その間を高速で駆け抜ける、ひたすらに回避し続ける。

 

黒が体に掠れる、関係ない

 

息が上手く出来ない、関係ない

 

体が上手く動かない、関係ない!!

 

死んでしまえばそこで終わり、だから逃げる、逃げ回る

 

変化を悟らせないように、気づかせないように、私に注意が行くように

 

バリアジャケットが所々破ける、ただでさえ露出している肌が、どんどん晒されていく

 

手の感覚が無くなって来た、両手でバルディッシュを握る、襲いかかる世界を否定し続ける。

 

「クッ、あっ」

 

もう本能に近い、危機回避能力、準備が整う時を待つ、体を限界にまで使いながら、ただ、愛する人を取り戻す、その本能の元に

 

「……終わり、だよ」

 

体が止まる、自分が今どんな姿なのかなんて分からない、そんな物は関係ないのだ

襲いかかる黒、だがそれも……光速には及ばない

 

 

「Thunder Rage Occurs of DimensionJumped」

 

 

世界が弾け飛ぶ、ひっくり返る

 

多くの世界で発生している雷、それをまとめて次元跳躍させた大魔法

 

茶色の地面が、そこに立つ少年が露わになる

 

見えた、見つけた、雷鳴轟く中、バルディッシュを構え

 

 

 

 

サクリと、胸を貫かれた

 

 

 

 

……黒は、物理としても使えたらしい

槍状となった黒が、深々と私を貫いている

 

……終わったのだ、何もかも

 

あっけなさすぎる終わり、唐突な終わり

 

恥ずかしながらほぼ全裸になった私、これで終わりだ

 

 

 

 

「…………え?」

 

 

 

 

少年が不思議そうに自分の胸を見つめる、そこには金色の刃があった

 

何故、どうして、そんな思いが彼の中には存在しているだろう

 

彼の弱点は未熟だった事、大きなロストロギアに、振り回されていただけ

 

だから……ティアナに習ってまだ五秒くらいしか作り出せない幻術、私の偽物に引っかかった

 

上空で胸を貫かれていた私が消える、五秒、たったそれだけの時間が勝敗を分けた、高速で動き回る事が出来る私なら、五秒というのは途轍もなく長い時間

 

体内に潜んでいたロストロギアが、まるで断末魔の様な悲鳴をあげながら壊れていく

世界を覆っていた黒も、少年を束縛していた力も

 

「クッ…………は」

 

膝をつく、体を犯していた気だるさ、病気が一気に消えていく、それと同時に襲って来るのは疲労感、S+ランクの魔法を湯水のように使った後遺症

バリアジャケットを展開し直す魔力も、体力も残っていない、ほぼ全裸の状態で、少年を見つめる

 

非殺傷での、ロストロギアの破壊のみを目的をした攻撃、少年が死ぬ事はない、この子だって何か事情があった筈、苦しい思いをしてきたなら、絶対に助け出したい、ヨレヨレの手を伸ばす……だけど

 

「………え?」

 

少年の手が、落ちた

 

例えではない、簡単にいえば『急速に腐って落ちた』

 

そうしているうちにみるみる腐っていくその体、ボロボロと、骨の欠片が地に落ちる

 

病気のロストロギア、目に生気を宿していない少年

痩せ細った体、不可解な言動

なによりも、あの目

 

理解する、理解してしまう、それと同時に、涙が溢れ出す。

 

世界は、なんて残酷なんだろう

 

少年は死んでいた、死してなお病気だった、病気によって生かされていた

だからこそ、ロストロギアを破壊すれば、病気の源を破壊すれば、彼は治療され、死ぬ、いや、死に直す

 

体に力が入らない、前のめりに倒れる

 

最後に少年が口にしたのは、母の名前

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界では二度の大戦があった……らしい

 

らしいというのは俺がまだ生まれていなかったからで、現物を見た事が無いからだ。

本や漫画、体験者達の話からそれを予想する事はできるがあくまでもそれは予想、どんな苦しさがあり、どんな悲しみがあり、どのような地獄が広がっていたのかなんて自分には理解出来ない、知識と経験は真逆に位置するものだから

 

だが、こんな事を言っては不謹慎だと言われるかもしれないが、あの頃の人類は幼かった、いや、あの頃の地球人は……か

 

戦いは陸地で行われ、一次で多く使われていたのは機関銃、二次では大砲や爆弾、そりゃあもっと色々あったかもしれないがあの頃はまだ『引き返せた』

 

日本に落とされた原子爆弾、多くの人が犠牲になった、しかしまだ『引き返せた』

 

無知は罪、弱さは罪、などと言われるがそれは捉え方を変えればやり直しが効くという事、あの頃の地球人は……やり直す事が出来たのだ。

 

未熟な事が、知識が出来上がっていない事が、彼らの未来に繋がった。

 

多くの人が死んだ、憎しみあった、殺しあった

 

その中で何度引き返し、やり直しただろうか、革命によって、言論によって

 

だが、その引き返しが出来る期限は、永遠じゃない

 

人は成長しすぎた、赤子が子供になるように、子供が大人になるように、失敗すれば叱られて、嫌な思い、痛い思いをするだけでやり直せた事が、大人になれば通らない

 

失敗すれば戻れない、それは自己責任、自分の失敗は自分で被る、自業自得

 

人はその次元に足を踏み入れた、猿の時代から何万年もの時を超えて、様々な失敗を経験しながら、大人になった。

 

だが……それは図体だけだった。

 

子供のままの大人が社会で失敗するように、甘い考えを持った大人が見放されるように

 

人はそのまま大人になった、子供の心を持ちながら、失敗なんて考えもしないまま

 

人は結局、地球上どんな生物よりも馬鹿だったのかもしれない

 

人は結局、どんな生物よりも進化していなかったのかもしれない

 

争いは生物の本能だと誰かが言った

争いを無くす事は人を捨てる事だと誰かが言った

 

祖国を守るために戦った人がいた

自分の利益のために戦った人がいた

大切なものを守るために戦った人がいた

 

助けを求める人を救うために、戦い続けた正義の味方もいた

 

 

それはアニメの事なのかもしれない、本当にそんな人がいるのかもしれない

 

だけど何も守れなかった、結局、人は自分さえも守る事は出来ない

 

人としての逃走本能が人を殺し、防衛本能が自分を殺す

 

なんて無様な物なのだろう。私達は

いや、もう『私達』もない、自分という生物、学問的に『人間』と名付けられた生き物は

 

たった一つの失敗が人の人生を狂わせるように、たった一つの失敗が人間を狂わせた

 

やり直しなんて効く筈がない、だって大人なのだから、人間は知りすぎた、考えすぎた、貪欲過ぎた

大人へとなった私達は、いつもと同じ失敗をやらかした

 

果てがこれだ、人間がもっと成長していたら……本当の大人になっていたら、こんな事態にはならなかったかもしれない

 

ifなんていくらでも考えられる、もしかするとifの世界があるのかもしれない、この世の何処かに

 

だけど最終地点は同じだ、人は何度だって失敗を繰り返す、同じ間違いを繰り返す、どれだけ成長しようとも、失敗しない事はない、どんな人も失敗はする、だが人間は出来ない

 

だれもいなくなった世界で考える、じゃあどうすれば良かったのだろう……と

 

悪を滅し、正義を執行する

より多くを救う為に、少数を犠牲にする……そんな物は正義でも何でもない、ただの偽善だ

助けを求める人を救う、そんな物も偽善だ、個人で、この両手で救える物には限りがある。救われた者と救われなかった者、それは不平等であり、自分自身が、助けを求める者に入っていない。

 

だれもいなくなった世界、手遅れとなった世界で、出しても意味がない答えを、ただ呆然と考える。

 

意味がない答えを、それを出す事が俺の義務だから、『この世の全ての死』を受け止めた。俺自身の義務だから

 

答えは、案外簡単に見つかった……と思う。

 

思うというのは正確な時間が分からなかったから、時間という物が大勢の人を回す為に作られた定義で、自分には必要なかったから

 

体が重い、頭がクラクラする、それでも自分は答えを得た

 

人は失敗し、やり直すことで成長する。

いつしか大人になり、今までの失敗を活かし生きていく。

 

なら、簡単な事だ……同じ失敗を同じ時期に無限に行い、やり直してやり直して……成長しなければいい、学習しなければいい

前に進まなければいい、変わらなければいい

狂人だ、バーサーカーだ、だけどそれでよかったんだと

 

成長しなければ、学習しなければ、人はいつまでも子供でいられる。

 

いや、違う、そもそも失敗や成功よ概念そのものを変えてしまえばいい、失敗をいつしか失敗とも思えないように、それが普通だと思わせればいい

 

狂っていた、それでも辿り着いた。

 

成長しない、学習しない、それで本当に生きているのかなんて関係ない、それこそが人が人を保つ為の答えだった。

 

死を受け止める、音が聞こえない世界で、この世に存在した、この地球に存在した、全ての人間の死を、全て受け止める

 

心が、体が、隅々まで変わっていくのが感じる、人間という生物がこの星から消えた今、自分は何という存在なのだろうか?

 

人の形をした何かだろう、だがこれ程までに人を愛し、人を救いたいと思う存在はいないだろう。

 

俺は人が好きだ、愚かで、馬鹿な人が好きだ、だから救いたいと思った。

この本当に破滅する運命を迎える前の、全ての世界で、人を救いたいと思った。

 

呪いだ、アニメの中で、正義の味方を志した少年と同じ、だが正反対のベクトルを向いた、これを呪いと言わないでなんという

 

好きだ、好きだ、愛している。

 

この星で滅んでしまった人間、彼らの事も、他の世界で生きとし生きる全ての人間も愛している

 

「あはっ」

 

口元が緩む、もうこれ以上笑えない、そんな力はどこにも残されていない

だけど、言わなくてはいけない、この星で生きていた、全ての人間に対して

 

 

「ありがとう」

 

 

 

 

 

 

ifの世界の地球、無限に存在する、並行世界の一つ

 

小さな国が発端となって起きた、第三次世界大戦、別名第一次核戦争は、この瞬間をもって終結

 

 

死傷者 測定不能

 

生存者 0

 

 

 

 



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