Fate/Bankrupt Murder(仮) (三角定規の角)
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Bankrupt Death

直接的な単語は無いからR-15で良いんだよね(震え声)
でも、開幕コレはひどいと思う。

あと、主人公は結構後ろ向き+現実主義です。


人気のない深夜、住宅街の路地に少年が倒れていた。

腹には包丁が突き刺さり、流れ出た血液が赤い水溜りを作り出す。もう生きてはいないだろうと考えた下手人は、道路に倒れ伏す()()を見るとニヤリと薄気味悪い笑みを浮かべその死体の服を脱がし、自身の欲求のまま行為に及んだ。

 

…そして、自らの欲望を全て吐き出しその場から立ち去った。周囲には男性特有の異臭が漂い、その場にはベタついた少年の死体のみが残されていた、、

 

いや、死体という言葉には語弊があるだろう。何故なら――

   ――彼は行為が終わり、男が立ち去った後も生きていたのだから。

 

立ち去る男を凄まじい形相で睨みつけ、少年は誰にも聞こえないようなか細い声で何かを呟くとしばらく壁にもたれていたがやがてひっそりと息絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――俺は何のために生きているのだろうか。

――俺は何のために生きていたのだろうか。

 

 

俺の両親はとても優秀だ。

母は若くして天才と言われる研究者、なんの研究かは知らないが。

父は別名“ワンマンアーミー”と渾名されている社長、素晴らしい経営手腕とカリスマ性、甘いマスクを備えた化物だ。

弟と妹は両親の素晴らしい所を兼ね備えた様な人間に産まれてきた。

弟は父からカリスマ性と類稀なる分析力と観察眼、整った顔を受け継ぎ、母からは探究心と知識欲を受け継いだ。

妹は母の探究心と父の分析力、世渡りの才能、そして天才的な頭脳を持っていた、どれもこれも俺には無い。才能が無いと気付いたのは小学校2年生の頃だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優れた家族の中で自分だけが無能…それは幼かった彼からすればとても受け入れられない出来事だったであろう。

 

 

 

弟のカリスマに憧れた。

妹の知識量に驚愕した。

父の話術を研究した。

母の研究を理解しようと努力した。

 

 

 

しかし、現実は非情である。弟と妹がメキメキと才覚を現すのに対し、彼は特筆すべき能力は開花しなかった。そして両親から見放され始めた頃、彼は悟ってしまった――この親子には敵わない、と。

悟ってしまった彼の心は表現できないほどに荒れた。

 

何故自分には彼等彼女等の才能が無かったのか、何故自分だけ非才なのか、何故家族に出来て自分にできないのか…彼は自分を責め続けた。

 

 

それらができないのは全て己の責任だと、己の努力が足りないのだと

――彼は努力し続けた。

 

 

文字が綺麗に書けないのなら指から血が出るほどノートに文字を書き綴った、妹が料理を上手に作れるなら彼も料理を作り続けた、弟が勉強ができるなら自分も目を血走らせながら勉強した。

 

しかし結果はどれも追いつけなかった。練習により、どれもこれも一般人よりも上手くはできるがそれでも家族に勝てなかった。彼は泣いた、声が枯れるまで泣いた、そして理解した。己の限界(才能)を、努力などでは到底埋められない才能の差を。

 

彼は恨んだ、己を産んだ両親を、才覚溢れる兄妹を、そして才能の無い己を。その頃から彼は次第に家族に対する苦手意識を持ち始めた。弟からは侮蔑の目を向け、彼と会話をしなくなった。

 

しかし妹は彼の味方であり続けた。だが彼が一番距離を取ったのは妹だ、自らに近づく人間には距離を取っていたが妹だけは常人より更に距離を置いた、距離を置いた理由は妹が自分に構い、己の様に家族に見捨てられる事を恐れた…と、建前では言っているが本当は違う。

 

……それは、こんな非才の己を心配し慈しむ事ができる妹。そんな妹をただ恨む事しかできない己…彼女の近くにいればいるほど己がいかに矮小で愚かな存在かをありありと思い知らされるのだ。彼としては、弟の様に侮蔑の目を向けられる方がまだマシなのだ。

 

しばらくすると、妹も話しかけなくなった。心配そうな目を向けてくるのは相変わらずだが。

 

そして彼が小学校4年生になった頃…そこから彼の人生の転落が始まった。

 

彼の母が病気で死に、父が新しい妻を娶ったのだ。それだけならばいい、しかしその継母と彼の折り合いが良くなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

世間では素晴らしい家族と言われているが俺はそうは思えない。確かに傍から見れば素晴らしい親かも知れないが…どいつもこいつも最低だ。継母はもちろん、父も。

 

弟は俺に侮蔑の目を向けてくるし、継母は俺の事はストレス発散の為のサンドバッグと思っている。父も昔は優しかったが、母が死んでからは人が変わったように俺に当たり散らすようになった。

 

唯一妹は俺に優しくしてくれるが…それが逆に俺の心を締め付ける。非凡な才能を持っている妹を俺は恨んでいるのに、優しくされる。つまりは人間的な部分でも負けているのだ、俺は。

 

 

 

 

朝、親が俺の腹を蹴って起床させ飯を作らせる。

その後は学校に遅れるが家の掃除。うるさいと継母に罵られ、暴力を振るわれながらも掃除をする。それを終えると学校へ。

 

学校のクズ(いじめっ子)に毎日遅れて来るせいで目をつけられ、虐めの日々。

休み時間にトイレへ連れて行かれ暴行に耐える。

先生も俺をサボり魔だと決めつけ嫌がらせをしてくるが、今日はただの説教(体罰)で済んだ。周りの先生も俺の事を嫌っているので見て見ぬふりだ。

 

一度先生に「何故嫌われているのか」と聞いたことがある、返答は

「宿題もしない、学校は遅れ続ける、会話の反応がハイかイイエしかしない」などと散々言われた。

 

家に帰れば宿題等をする暇もなく晩飯の準備をし、継母からの暴力を受けてから風呂洗い。

親父が帰って来たらその日一日よ中で最も過酷な時間がやってきた合図、ビール瓶や灰皿で殴られる事は日常茶飯事で腹や腕、足などには青アザが大量にできている。

 

しかし、力加減はわかっているようで俺が骨折した事はあまりない。

…今日は会社で他社の社長から嫌味を言われたらしい、いつもより一段と酷かった。

 

晩飯を作って出したあと、昨日や一昨日の残り(ご馳走)に手を付ける。

虫が飛んでいたりする時もあるが問題ない、何故なら食えるから。

こんな環境で何年も暮らしていたせいか、味を感じる事ができなくなった。味覚だけじゃなく痛覚もほぼ無くなっている、もう既に人間としての機能は死んでいるのかもしれない。髪の色は抜けて白髪になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日もいつもの様に買い物に行かされた、そして気づいたらこのザマだ。腹に包丁を刺されて辱めを受けて…俺らしい最期だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、あの男には感謝すらしている。そりゃあ辱めを受けた事に関してはとても腹が立ったがそれでもこの地獄から抜け出す事ができるのはあの男のおかげだ。

そろそろ、眠くなってきた。もう良いだろう?俺はよく頑張ったと思いたい。努力はしたが才能の差は埋められなかった、ただそれだけの事なんだ。ようやくこのしがらみから開放される、悔いしかないがこんな世界に生き続けるならば死んだほうがマシだ…。俺…が死んで…困る人…間なん、居な…い、。

これで…よう、く、逝ける……………………………。

 

 

 

 

                小泉 龍馬 --享年 15--




こんな感じなの

感想とか批評とか…アドバイス等くれると嬉しいです。


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Debris and Bankrupt

主人公ぶっ壊れ回。
完全にサイコな考えで行動しちゃいます。それと、ビビった理由は急に刀持ったからです。
誰でも刀持ったやつと喧嘩したくないよね?


彼が久しい感覚と共に目を醒ますと、目の前に彼を蹴り飛ばしている奴等が居た。彼の体はくの字に曲がり腹を抱えている。彼がおかしいと感じて思考を巡らそうとした瞬間、恐らく先程彼を蹴り飛ばしたであろう人間が彼に唾を吐き話し始めた。

 

「あー、わかるかなぁ(ロン)?お前みたいな孤児は俺らの派閥じゃ邪魔者なんだわ。その上(カク)と仲良くしちゃってまぁ…俺らが教えないとわからないの?お前と鶴じゃあ釣り合わねぇの。理解したか?」

 

(クウ)さんの手を煩わせる前にさっさと死ね!」

 

怒鳴られているこの状況が彼には理解できなかった。自分は住宅地にいて、腹を刺され死んだはず。なのに今いるのは森の開けた場所。そのうえ目の前の男どもはナイフを持っていたり時代錯誤の服を着ていたり…。

 

()は思考停止状態だった。それは罵倒されたからではなく聞き覚えのない名で呼ばれ、更に知らない名前がどんどん出てくるからである。それに加えて目の前の奴等が言ってる事が理解できないという事も理由の一つである。

 

(…何言ってんだこいつら)

 

コレが、彼がこの世界で生き始めた時の初めての感想である。

 

 

 

 

 

理解不能で彼がボーッとしていると、目の前の空と呼ばれた男の取り巻きの一人が蹴りを放ってきた。彼はそのまま、無意識に今までの経験上最も肉体的被害の少ない箇所で受ける。

 

それでも衝撃までは完全にいなせる訳はなく、大勢を崩してそのまま倒れ込む。まるで自らの体では無いような感覚に彼は戸惑っていたが、ふと目を横に向けるとそこには一振りの打刀。

 

打刀を見た瞬間、頭の中で誰かの記憶がフラッシュバックした。自分が剣を振っている感覚というか、振った経験があるかのような錯覚に陥った。だが肝心のここまでの経緯や自分がどういう状況なのかはわからないままだ。

 

(この刀で…コイツ達を脅せばいいんじゃないか?)

 

 

 

側に落ちていた打刀を拾いあげる。

 

 

 

持ってみて先程の感覚は確信に変わる。やけに柄の部分がしっくりくる、まるで()()()()()()()()ように。本物にしか無いであろうこの重厚感や重みは、コレが斬るだけで人が死んでしまう武器である事を主張していた。

 

その瞬間、何故かは彼もわからないが…今まで受けてきた圧倒的な暴力が酷く弱々しいものに感じた。そして同時に、こいつ等が攻撃を仕掛けてくる悪ならば自分が反撃しても構わないではないか、いっそ殺してしまってもいいではないか…と

 

ある種マトモな人間が考えてはいけない事であった。人は皆ある程度のストレスを受けながら生活している。ストレスは言い換えれば[精神的な暴力]を受けていることと同義。言ってしまえば人は皆暴力を受けて生きている。

 

だが、彼の脳が弾き出した結論は…暴力を振るう人間()が居るならば、ソイツを消してしまえば自分は安全であるという結論。究極的に自らの保身のみを追求した思考であった。

 

そんな考えが浮かんだ瞬間、全身に憎悪が広がった。憎い、憎いという気持ちのみが前に出てくる。しかしそれは、感情を表さない彼の顔には無表情という形でしか現れなかった。

 

「なぁに睨んでんだゴラァ!そんなに殴られてぇのk!?」

 

罵声が突然切れ、目の前の男が吹き飛ぶ。彼が下からアッパーの様に顎を殴り抜けたのだ。先程まで彼を罵っていた男は、口から涎を垂らしながらだらしなく床に伸びていた。

 

「な…テメェ!テメェらやっちm…」

 

仲間が殴られた事に怒り、周りを率いて彼と戦おうとした取り巻きを空が殴りつける。殴られた取り巻きたちは何故?といった表情で空に問いかける。

 

「なっ…何するんですか空さん!?」

 

取り巻きからの問いかけに、彼は何かに気付いたように話しだした。空はここらの不良の大将。人を見る目は長けていた、その彼だからこそ気付いたのだ。目の前の男がいつもの彼とは違うという事に…。

 

「あらぁ?わかんねぇ?コイツ今一番被害の少ない場所で蹴りを止めやがったの、分かる?今まで散々俺らに鳩尾やら頭やら顔やらを殴られてきたコイツがだ」

 

「そ、それがどうしたんですか…?」

 

取り巻きの質問を聞くと、空は額から軽く汗を流しながら一歩下がってこう呟いた。それは、彼の取り巻き達にとっては信じられない言葉だった。

 

「…アレは“ヤバい”ものだぜ、オイ。今までの貧弱クソ雑魚龍クンとは訳が違う。俺の勘が[逃げろ]って警告してやがる、アイツは…人間として俺達とは違うモノだ…だからよ」

 

「俺等の邪魔になる前に…ココで殺すわ」

 

スッ…と空が袖からナイフを取り出す。それに連動するかのように空の体から力が抜け、ゆらゆらと揺れ始めた。傍から見ても、確実に殺すつもりで来ていることは明らかである。

 

「…っし!」

 

空が走りながらナイフを彼の腹めがけて突貫してくる。それを見た彼は左の手の平をナイフに対し垂直に構え、ナイフを手の平にわざと刺させる。それを見た空は顔を引き攣らせながら後に跳び、距離を作る。

 

周りの取り巻きたちはナイフが手に刺さっているにも関わらず、悲鳴どころか表情すら変えずに空を見つめている彼を見て、ジリジリと後ろに下がりだした。そして、一人が逃げ出した瞬間、我先にと逃げ出してしまった。

 

そんな中、彼だけは冷静に傷の具合と記憶や知識の整理をしていた。

 

(痛覚はほぼ無し、意識を失う前に比べ筋肉は減少。体格は…変わらずか。それに)

 

先程の回避行動は彼だけの力ではない。正確には前世の彼だけの(技術)ではない。彼だけならば、素手攻撃への受け身や回避はできたとしても、咄嗟に刃物を素手で受け止めるなどできなかった。だが…

 

(現にできてしまった、か…謎が深まるが今は目の前に集中した方が良さそうだな)

 

彼は後ろに下がった空を見やると左手に突き刺さっている短刀を抜き、静かに構えた。互いの命をかけた戦い(殺し合い)の開始である。




主人公よりも空くんの方がマトモですね…仲間居るし、思いやりあるし。
それに比べて主人公は…もうこれ救えないでしょ(諦め)


ここから真面目な話。

この作品で分からない部分や設定があればどんどん感想で聞いてください。文字数やテンポの関係で書けなかった裏設定や作者の意図程度ならば説明できると思います。

感想、評価、お待ちしとります。


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Awakening of the murderer

空くん…君の事は忘れないよ、そして主人公。
ダメだこいつ…早くなんとかしないと(諦め)


響く金属音、血に染まる服。両者共そんな事などお構い無しに斬りつけ合う。空は短刀、龍は打刀を用いて敵を殺さんと斬りつける。その光景は、見学者がいれば確実に“獣同士の殺し合い”と形容するであろう光景だった。

 

空の方は攻めてはいるものの、あと一歩という所で決め手に欠く状態である。龍の方は打刀のリーチを活かしてカウンター攻撃を繰り出し続け、隙を見て攻撃という堅実な方法で戦っていた。

 

しかし、龍には引っかかっている事が一つ。それもかなり重要な事である。それは“なぜ自分が剣を使えているのか”と言うことだ。勿論彼は、今の今まで刀など触った事もない。

 

(それなのにこうして刀を振り、死合ができている…)

 

これが彼の中の大きな謎であった。他にも知らない場所にいる事や知らない名で呼ばれたりなど…気になる事があったが。

 

 

 

 

 

 

 

息も絶え絶えとなっている二人。空の肩には龍の攻撃で斬られた傷がパックリとできており、右足には少し深い斬り傷。左手は斬り落とされかけている。対して龍も、胸に大きく斜めの傷を入れられております、左手の平には先程短刀を受け止めた時の穴が空きそこから血が垂れ続けていた。

 

「…っは、いい加減に…っ倒れろよ!」

 

流石に疲れが見え始め、両者共に太刀筋が乱雑になり始める。それでも、相手を殺すという闘志だけは死合前と同質を保っていた。それでも、空は短刀なので徐々に押され始めている。それでもなお空が戦えているのは、純粋に彼の技量が高いからである。

 

「おりゃあ!」

 

短刀を構え、突撃体勢に入る空。それを見て迎撃しようと刀を構えた龍だったが、踏ん張ろうとした足が血に滑り踏ん張れずに倒れ込む。それをチャンスと思ったのか、空は更に力を込めて首に向かって短刀を突き刺しに来る。

 

しかし、ふとした瞬間に均衡というものは崩れ去るものである…空が短刀を構え、ナイフを突き刺さんと走り出したときに、傷のせいか丁度バランスを崩したのだ。無論、その隙をわざわざ逃すほど彼はお人好しではない。

 

 

「しまっ!?」

 

体勢を整え一気に攻めに転じ、短刀を持った右手を打刀を振り下ろして切り落とす。立て続けに斬り上げて腹を裂き、致命傷を与える事に成功した。最後に上に斬り上げた刀を右から左へ斬り払いながら下り、距離をおいて居合の様な型を取る。

 

 

「…がぁ、いでぇ…ぐそ、が…」

 

一閃。間髪入れずに放たれた斬撃は、容赦なく空の首に吸い込まれるように綺麗に入った。ボトリと空の頭が落ちる音がすると、彼はドサリとへたり込んだ。これが、彼が初めて殺人を犯した瞬間である。

 

 

 

 

 

 

何なんだよ、訳が分からない…。刀は使えるわ知らない名前で呼ばれるわ、挙句の果てには知らない奴の記憶まであるじゃないか。相手…空とか言うやつは急に短刀取り出して斬りかかってくるわ…何なんだ全く。

 

しかも、よく分からないうちに勝手に刀を振れていた…コレも原因不明だ。ここまで来ると清々しいレベルだよ。でも一番の問題はコレ、自分の中にある()()()だな…。今までの人生でこれ程まで清々しい時間を過ごしたのは久しぶりだ。

 

それこそ…あの忌々しい継母が来る前、いや…母がいた頃でさえこれ程までの清涼感は無かった…。自分で脳内麻薬が分泌されているのがわかるかのようだ、心拍数も上がっている。これが、これが楽しみ。と言うやつなのだろうか?

 

 

 

 

彼は、自分でもわかる程の興奮に戸惑いつつも、その感覚を心地良く向かい入れていた。自分の気に入らないモノを殺す満足感、破壊衝動の侭に力を振るう快感。自らを愚者だと思い、今まで封じ込めていた自己顕示欲。

 

それら全ては、決壊寸前のダムの様にギリギリの所で抑え込まれていた。だが、理解不能な状況で死地に追いやられ、更に“人殺し”という人類最大のタブーを犯したことにより…彼の中の、壊れていたモノが、完全に―――無くなった。

 

 

表情の無い能面の様な顔に、悦びの表情が浮かび上がる。そのケダモノは、まるで産声をあげるかのように嗤っていた。見る者全てが嫌悪感を抱くであろうその嗤い声は、深い森の中へ響き渡る。

 

 

 

 

フフ…フハハ、楽しい、楽しいぞ!こんな気分は生まれて初めてだ…!これが快楽と言うやつか、今まで知らなかったとは何と無駄で悲しい人生を過ごしていたのか!あんな奴らにお伺いを立てる必要なんて何処にも無いじゃないか!

 

今なら解る、頭でなく心で!俺はオレであり俺じゃない。この体は間違いなく()()の体だが、心は俺なんだ!オレと俺は違う。言うなれば『限りなく本人に近いそっくりさん』!

 

剣を振れたのは、この身体に染み込んだ記憶と経験。奴に対して物怖じせず戦えたのは、この崩壊しかかっていた判断力や生存本能!俺は…いや俺達は無敵のコンビだ!これ程までにバランスのいいコンビはそうは居るまい…。

 

俺の才能を認めなかった奴等に、俺達の力を思い知らせてやる…俺を馬鹿にしてきた奴らを、俺達の力で!今は殆どの記憶が無い状態だが…いずれ!少し、また少しと記憶も戻るだろう…。俺の勘がそう告げている!

 

俺には才能が無かった訳じゃない!そりゃあ見つけられない訳だ…現代の日本で“殺しの才覚”なんて見つけられるはずが無い!だが、この世界ならば存分に活かせるはずだ…何せ、刀が落ちているような世界なのだから…。

 

 




戦闘描写が上手く書けないなぁ…何かいい案あれば教えて下さい。


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White Daemon

主人公の同調率20%!
雑魚相手ならまだ戦えるレベルですね。


彼は今猛烈な勢いで森の中を駆け抜けていた。理由は…見れば、いや聞けばわかるだろう。

 

「居たぞアイツだ!よくも空さんを!」

「ブチ殺せぇ!」「このクソカスがぁっ!」

 

彼は今、市街地とは正反対の山奥へと進んでいた…。

 

 

 

 

全く…アイツ一人殺しただけでこうも狙われるとは思わなかったぞ。先程の取り巻

き共が群れを成して襲ってきやがる、面倒くさいことこの上ない。

本来ならば、練習と体のポテンシャル確認のために全員斬り伏せて逃げてもいいのだが、今はヤツと斬りあったせいで傷が多い、万が一の事もあるので逃げに徹するべきだろうよ。

 

それにしても奴らは忍者か?木の上をピョンピョンと…それに手に小型の矢を発射する装置…なんと呼ぶかは知らんが取り敢えず“腕弓”と呼ぼう、それを使って遠距離攻撃してくるなんて面倒くさい攻撃をしてくる。

恐らく空を殺した俺の剣戟を警戒したのと、俺が遠距離攻撃手段を持たない事が理由なんだろう。

 

 

 

 

閑話休題、ここらでわかった事を整理しよう。

 

ここは日本の森の中、もっと掘り下げて言うならば戦国時代のような状態らしい。家族の中で最も知識量が少なかったとはいえ、この時代の主要な人間や歴史の流れくらいは把握している。あくまで大まかな流れしか知らないので何年に何があるかまではわからないがな。

 

何故そんな事が分かるのかというと、俺を探していた取り巻きの一人を捕まえて聞き出した。尼子?だったかが毛利元就を攻撃した…らしい。年号を聞くと【天文九年】だと奴は答えた。

正直、家族に追いつこうと勉強したのは随分と昔なので、この情報に出てきた名前と年号は“どこかで見たような気がする”程度なので確証はない。だが、織田信長が生まれたのが【天文】だったような…尼子?知らん。

 

それと俺の素性も大分とわかってきた。…というより思い出してきた。俺の名前は空の奴が言っていた通り、龍で間違いない。それと何かしらの過酷な訓練を受けていたらしいが…剣術、体術、サバイバル術を教えていた所を鑑みるに…マトモな所ではなかったようだ。

後は俺がどういった身分なのかだな…欲しい情報は。

 

さぁ…情報処理は終わりだ、また地獄の鬼ごっこを始めるとしよう。

 

 

「っ!居た…」

 

木の陰に潜んでいた彼に気づかず、近づいてきた敵の首をへし折る。コレも恐らく訓練でやっていたのだろう。流れるような手裁きで相手を絶命させた。

 

 

こんなことまでやってたのか…?咄嗟にやった行動なんだが、まるで最初から予定していたかのようにうまい具合にできてしまった。やはり…楽しい。だがしかし、自分でもわかっているんだ。この感情は()()()という感情だ。俺が失ってきたモノの中でもこんな感情は無かった。

果てしなき殺し合い、死が隣にいるこの感覚…自分でもびっくりするほどだ。

 

「何があっ…」

 

持ってきた打刀で頭を飛ばす。斬られた取り巻きの一人は、頭部に流れようとしていた真っ赤な鮮血を首の断面から吹き出し倒れ込む。飛ばされた首は下草に紛れてしまった。

 

「何の音だ!?…こっちだ!ここらへんに集まれ!」

 

彼らは木から降りて物音のした大樹の前の空き地に集まり始めた。それが彼らの判断ミスであるとも知らずに…。

 

 

この人生はアタリだ。俺にピッタリだ…フフ。さぁて。奴らそろそろ俺にトドメを刺すつもりだな?少しずつ動きや包囲が荒くなってきているぞ…?痺れを切らしたのか?…ダメダメダメダメ!そんな動きじゃ俺を殺す事はできない!俺は死ぬも生きるも関係ないんだ、お前らと違って生に執着しない俺に分があるぞ?

加えて山は遮蔽物の宝庫だ、オマケに近距離の斬り合いに持ち込めば矢なんぞ味方への誤射を恐れて撃てない、撃てたとしてもそうそう当たらん。

ならば今ここで俺が行う行動は1つ!

 

 

彼は勢いよく大樹の陰から飛び出し、手前の一人を斬り伏せた。

続けざまに腕弓を構えようとした女の腕を、刀を振り下ろして斬り飛ばし、腹に蹴りを入れ吹き飛ばし奥の一人の方に飛ばす。奥にいた男は混乱して助けに抱きかかえる。

 

そして…老人のような白い髪を短く乱雑に切った頭の、血塗れの男が笑いながら彼等に吼えた。

 

「今まで散々俺を馬鹿にしてくれたツケ…今ここで!命で払ってもらおうか…!」

 




前書きで書いた同調率というのは…主人公(前世の性格や心)と主人公(今世の肉体や記憶、経験等)の組み合わさり方です。今のところ主人公がわかっているのは…
格闘技2、3個。剣技の基礎+応用技多数。土地勘ほんの少し。程度です。後は自分がどんな人間だったかも少しだけ思い出してきております。

それと、今の彼の装備は打刀だけです。

最後に…確かFate時空の織田信長って最初英霊化する前は男でしたよね?
いくら調べてもよくわからなくって…確かそんな事をノッブが言っていたような気がしたんです。良ければ教えてくださると嬉しいです。


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Mental disintegration

さぁ、主人公の地味な戦闘が始まります


さて、どうしたもんか。俺は少ない脳みそをフル回転させながらこいつらの料理方法を考えていた。

 

(流石に3vs1は分が悪い。できれば一体ずつ位が丁度いいんだが…ま、なんとかなるだろう)

 

俺は考える事を一度放棄し、敵に狙いを付ける。そう、俺が考えた所で無駄なのだ。《下手の考え休むに似たり》と諺にあるくらいなんだから、考えるよりも動こう。…俺のこの二度目の生になんの意味があるのか、どの敵をどういう順番で殺すのか、この先はどうするのか…考え始めると全てが無意味で無価値な、それでいて『生きるなんてどうでもいい』なんて格好つけて言っていても何処かこの二度目の生に安心している自分が見えてきて…更に自分が嫌になる。

 

(結局、俺も。死ぬのは嫌なんだな)

 

そこまで考えたあと、考えを打ち消すように頭を振る。今は前世の俺じゃない、いじめてきた奴等も、親も『良い大学を出て一流企業に就職』とかいう日本人の理想見たいな、レールのような物が無い。そういう所(過去の世界)に俺は今を生きている。なら、過去を捨ててやり直せるはずだ。その為には、こいつら俺の邪魔をする人間を片っ端から片付けて行かねばならない。

 

「…」

 

改めて敵の配置を見る。近距離に一人と遠距離に二人、うち遠くに居る奴一人が腕を斬られて重症。しかも有り難いことに遠距離の二人はすぐに戦闘に参加はできなさそうなので近距離の奴に集中できそうだ。

 

目の前の奴…女か、男なら搦手で殺すつもりだったが女なら勝てるか。後ろの二人は…まだもたついている、コレなら勝てるか?

 

「…ブッ殺す」

 

おそらく、俺は暗殺者的な職の人間なんだろう。身のこなしや剣術等を考えれば嫌でもわかる。最初は武士かとも思ったが…武士なら首をへし折るような徒手格闘は覚えていないだろう。

 

「…ほざけ、我等が村の恥さらしが」

 

村…?村があるのか!?そうか、それはいい!コレで逃走時の路銀は確保の目処がたった。村ならば食料や水、金目のものがあるはずだ。それを頂かねば…。

 

「…何を笑っている?この私を前にして笑っていられるとは、随分と舐められた物だ。さて、そろそろ貴様のような出来損ないを相手にしている暇は無いのでな。殺させてもらうぞ!」

 

殺す?お前が、俺を殺しに?…コロしに…フフ。自分でも口元が緩んでいるのがわかる、どうも殺し合いとなると少し…その、『ハイ』になるというか、興奮状態になるみたいだ。アドレナリンだとかのせいなのか?

 

「フ、フフハハハ!そうか、俺を殺しにか!だがその覚悟はしてきたのか?殺しに来たと言うことは、逆に殺されても文句は言えないぞ…?フッフお前の腕では俺の血を流す事はできても、俺の命を取ることはできん!ハッハハハハァ!」

 

「…寝言は寝て言え。最も、今から永遠に眠るのだから言えんだろうがなっ!」

 

女が後ろの二人に目配せをした。俺もそちらをチラリとみやると、奥の二人が来た道を戻り逃げ出そうとしていた。咄嗟にそちらに向かおうとすると…目の前の女からの殺気が一気に増幅した。煽りのおかげなのか、少々目が血走っている。さっと奥の二人に目をやると、腕を斬られた奴を背負って逃げた後だった。

 

「フン…本来ならば三人でジワジワと嬲ってやるつもりだったが、気が変わった。お前だけは私が殺してやる!」

 

女は刀を抜刀し、コチラに切っ先を向けている。距離は十分。勝てる!

 

「白鷺!いざ参るっ!」

「かかって来るがいいさ、相手をしてやる」



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