ドラゴンボール ギニュー親子の物語 (残月)
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プロローグ

これは本来無かった出会い。

それはフリーザが惑星ベジータを滅ぼしてから数年後の物語。

 

 

 

 

 

 

フリーザ軍の幹部ギニュー特戦隊の隊長ギニュー。

ギニューは攻め行った惑星の中で眠る赤ん坊を見詰めていた。

コールドスリープで眠らされる赤ん坊の尻からは猿の尻尾が生えていた。

 

 

 

「この赤子は……この娘はサイヤ人なのか」

「あー……うー……」

 

 

コールドスリープを解いて赤ん坊をカプセルから取り出して抱き上げる。惑星ベジータが無くなってから数年が経過しているのでサイヤ人の赤ん坊はありえないのだがコールドスリープで眠らされていたので歳は取らなかったのだろう。

ギニューは自身に手を伸ばす赤ん坊に何処か思うことがあったのか、このままフリーザと面会する事を考えていた。

 

 

「サイヤ人の生き残り……まだ居たんですねぇ」

「お願いしますフリーザ様!私に、この娘を育てさせてください!」

 

 

ギニューは赤ん坊を抱きながらフリーザに嘆願していた。フリーザは赤ん坊を眺めながら呟いた。

 

 

「私はサイヤ人が目障りで惑星諸共に滅ぼしました。生き残りはベジータ、ナッパ、ラディッツのみ。それに歯向かうのですか?」

「わ、私が育てます!フリーザ様に逆らわぬ様に躾もさせます!どうか、どうか!」

 

 

ギニューはフリーザに土下座をしながら嘆願し、フリーザはギニューのその姿を見て溜め息を溢した。

 

 

「普段から私に忠義を尽くすアナタがそこまで言うのならば許可しましょう。ただし、そのサイヤ人が私に歯向かうようになった時は……」

「はい……私が直接、手を下します」

 

 

フリーザの言いたい事を察したギニューは顔を上げ、フリーザの瞳を見つめた。それは約束を違えないと言うギニューの誓いだった。

 

 

「なら結構。精々、私の役に立つ様に育てなさい」

「ハハーッ!」

 

 

ギニューの説得に折れたフリーザはギニューがサイヤ人の赤ん坊を育てる事を許可した。

 

 

「よーし、お前は今日から俺の娘だ!」

「あうっ!あうっ!」

「………母性に目覚めましたか」

 

 

赤ん坊を抱き上げて喜ぶギニュー。赤ん坊にもそれが伝わったのか赤ん坊も笑い、フリーザはギニューが子育てを始め、母性に目覚めた事にタラリと汗を流した。

 

 

「ようし、お前の名前はスーナだ!ハーハッハッハッ!」

「既に親バカですか」

 

 

気まぐれに女サイヤ人の赤ん坊を生かし、ギニューに育てさせる事に一抹の不安を感じたフリーザだが、その不安は良い意味で裏切られた。

 

 

 

 

 

これより十年後。

 

 

フリーザの宇宙船でOLの様なスーツを身に纏い眼鏡を掛け、髪を三つ編みにしている少女が報告をしていた。

 

 

「フリーザ様、今回の特戦隊の報告書です」

「御苦労様です。貴女がギニュー特戦隊のマネージャーになってから報告書がマトモに出来て助かってますよ」

 

 

スーナがギニューに拾われてから十年後。スーナはギニュー特戦隊に付いて回り、報告書を作成したり、スケジュールを確認する役割となっていた。

戦闘力は1500程だが戦闘そのものには、あまり参加せずに事務仕事をメインにしていた。

この事に異を唱えるものは少なかった。

 

何故ならばギニュー特戦隊は戦闘力は凄まじいが性格に難がある者達ばかりだった。強さはあるが他の部分のネジが緩いのか頭を使う事に弱く報告書の作成やスケジュール確認を怠る事が多かった。

しかも戦闘力が高く、フリーザ軍の幹部だから部下がその事を指摘できる筈もなく毎度、フリーザの頭痛の種となっていたのだがスーナがそれを管理する様になってから他の部隊との連携も良くなってフリーザ軍内部の書類がマトモに回るようになっていたのだ。

この事はフリーザのみならずザーボンやドドリアからも評価されていたりする。

 

更にスーナはベジータ達と違ってフリーザに反発する事無く働いているのでフリーザからの評価も高かったりする。

しかし実はフリーザの中でスーナの評価がもっとも高い所はそこではなく…….

 

 

「うぉぉぉぉぉぉっ!リクーム!」

「ケーケッケッケッ!バータ!」

「はぁぁぁぁぁぁっ!ジース!」

「ふぉぉぉぉぉぉっ!グルド!」

「はぁぁぁぁぁぁっ!あ、ギニュー!」

 

 

ギニューを始めとするギニュー特戦隊のメンバーは独特のポーズを好む。それをフリーザとスーナは冷めた目で見ていた。

 

 

「み」「ん」「な」「そろっ」「て」

「「「「「ギニュー特戦隊!!!」」」」」

 

 

そして五人組は息ピッタリと最後に決めポーズをした。

 

 

「お父さん、恥ずかしいから止めてって言ってるでしょう」

「何を言うスーナ!このスペシャルファイティングポーズの美しさがわからんのか!?」

 

 

フリーザの前で喧嘩を始めるギニュー親子。

こんな親でよくぞマトモに育ったとフリーザはスーナの評価を上げていた。

 

 

 

 




『スーナ』
ギニューが立ち寄った惑星でコールドスリープさせられていた所をギニューに拾われる。
サイヤ人でありながら戦闘本能は低くどちらかと言えば学者より。
戦闘力は低いがギニュー特戦隊のマネージャーの様な立ち位置でフリーザ軍に重宝される存在。
ギニューの奇行を間近で見ていた性なのか冷静沈着な性格となった。かと言ってギニューを嫌っている訳ではなく寧ろ親子仲は良好。

髪は黒く、三つ編みにしており、目が少し悪いため眼鏡をしているが実はこの眼鏡も試作型のスカウターだったりする。
事務仕事が多いために戦闘服を着ないが着ているスーツも最新の素材で作られた繊維で普通の戦闘服並みの防御力を誇る。


名前の由来は茄子から来ていて『茄子→ナス→ナース→スーナ』となっている。
サイヤ人だから野菜関連の名前を付けてみました。


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スーナ五歳の頃

短編から連載に切り替えました。


 

 

 

 

ギニューに拾われてからのスーナはフリーザ軍に様々な影響を与えた。

まず滅んだ筈のサイヤ人に生き残りが居たとナッパ、ラディッツは喜び、ベジータは興味無さそうにしていたが一応、スーナの事を見に来ていた。

 

しかし、サイヤ人とは言ってもまだ赤ん坊である為に戦闘などは到底無理だ。まずは子育てとフリーザ軍の数少ない女兵士にスーナを任せる事にした。

それから数年間、ギニューは仕事が終わるとスーナに会いに来ていた。フリーザへの報告が終わるとギニューは早足にスーナを預けた兵士の居る惑星へと赴き、顔を見せる。

この事にはフリーザも呆れた様子だったがその分、真面目に働くギニューを見て不満はなさそうだった。

 

そして、それから五年の月日が流れスーナが五歳になる頃、ギニューは本格的にスーナを鍛え始める為に他の惑星に攻め入る際にスーナを連れて行くようになった。

普段はフリーザ軍の施設でトレーニングを施されていたスーナ。『実践を学ばねば意味がない』とギニューがスーナを連れて行く事を決めたのだが……

 

 

「危ないぞスーナ!」

「あ、ありがとうございます」

 

 

スーナに迫った敵を蹴り飛ばすバータ。

 

 

「なんのなんの、お兄さん達に任せなさいってーの!」

「頼りになります」

 

 

スーナの頭を乱暴に撫でるリクーム。

 

 

「あ、ズルいぞリクーム!よーし、俺のクラッシャーボールを見せてやる!」

「勉強になります」

 

 

スーナに技を見せつけるジース。

 

 

「スーナ!うろちょろ動くと俺がスカートの中を覗くぞ!」

「見ないでよグルド」

 

 

スーナのスカートの中を見ようとして四つある目玉をギョロギョロと動かすグルド。スーナはサッとスカートの裾を手で押さえる。

 

 

「貴様等、スーナを鍛える為に連れてきてるのに構いすぎてはそれでは意味が無いだろう!グルド、死にたくなかったらスーナのスカートを覗き見るのは止めろ!」

 

 

そんなバータ、リクーム、ジース、グルドにギニューの怒号が飛んできた。

スーナの教育と実践を学ばせる為にわざわざ連れてきたのに他の特戦隊のメンバーが構いまくっている為にスーナの実践教育にはなっていなかった。

それと言うのも意外な事にリクームは子供好きでスーナと遊ぶ姿が良く見られ、バータは背が高い事と速さを誉められて気を良くし、ジースは他の二人に構うスーナを見て羨ましくなり技を披露する事が多くなった。

 

唯一、グルドはスーナと仲が良い訳ではない。

実はスーナとグルドが初めて会った際にグルドが余計な事をした為に因縁が生まれたのだ。

 

 

「俺は戦闘力は低いが超能力を使う……お前が俺を下に見るなら超能力で金縛りにしてからパンツを脱がせちまうぞ!」

 

 

グルドはベジータと仲が悪い。ベジータばかりフリーザに重宝されているのが気に食わないグルドはスーナをベジータの様にはさせまいと超能力の自慢と同時に己の力を見せ付けて脅そうとしたのだ。しかしチョイスした言葉が悪かった。

 

 

「そんな事をしたら俺が貴様を殺すぞグルド」

「は、はい……申し訳あり……ません……でした……」

 

 

グルドの発言を聞いたギニューは即座にグルドを殴り飛ばして壁に叩き付ける。壁に叩きつけられたグルドに追い討ちをかける様にミルキーキャノンをチャージした状態でグルドに凄みを効かせたギニュー。

それら一連の流れを見た部下はこう語る。『ギニュー隊長がフリーザ様以外の事であそこまで怒ったのは初めて見た』と。

そんな事もあり、グルドはスーナに突っ掛かる事が多く、スーナはグルドの態度を少々嫌がっていた。しかし険悪な訳ではないのでベジータみたいに殺し会う仲ではない。

 

そして当のギニューはスーナの事を溺愛していた。ハッキリと言えば親バカでギニューの中での優先順位はフリーザの次にスーナが来る程で、今回の件も実はギニューは自身がスーナを守ろうと思っていたのだが隊員達が思った以上にスーナを可愛がるのでギニューは面白くないのである。そしてこの日々はスーナが成人しても続くのだが今のギニューにそれを知る術はない。

 

 

「お父さん。私は大丈夫だから」

「おお……そうか」

 

 

そんなギニューを見てスーナは気を使ってギニューに寄り添うようになる。これもギニュー親子の日常となる。

 

 

「よぅし!ならばスーナもスペシャルファイティングポーズを!」

「それは嫌」

「何故だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

ギニューの思いとは裏腹にスーナはスペシャルファイティングポーズがあまり好きではなかった。普段の父親としてのギニューは好きだがスペシャルファイティングポーズを取る時などのテンションにスーナは付いて行けず、寧ろギニューとは逆の冷めた性格になっていく事となる。

 

 

 

 

因みにこの後だがギニュー特戦隊はスーナにスケジュールの管理や報告書を任せきりになる為にスーナに頭が上がらないようになってしまうのだが……それはまた別のお話。

 




スーナのギニュー特戦隊の呼び方
ギニュー→お父さん
リクーム→リクームさん
バータ→バータさん
ジース→ジースさん
グルド→グルド


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スーナ八歳の頃

スーナが八歳になる頃。

スーナはギニュー特戦隊から離れてフリーザの船に乗っていた。ギニューの娘とは言えど何故フリーザの船に乗っているか。その理由は簡単なものだった。

 

 

「ほら、そこを間違えてるぞ」

「は、はい。すいません」

 

 

スーナはザーボンから書類の書き方を学んでいた。何故、ザーボンかと言うとフリーザ側近で書類仕事が一番上手いのがザーボンだったからである。

因みにギニュー特戦隊は書類仕事が壊滅的で正直、ギニュー以外の書類は読めた物じゃなかった。

スーナは最近になり、フリーザがその事に溜め息を吐いているとギニューから聞き、自身が書類仕事を覚えればギニューの役に立てる。更にフリーザへの評価にも繋がるし、ギニュー特戦隊の恩返しになると考えたのだ。

この考えに至ったのも普段からギニュー特戦隊の奇行を見ているスーナだからこそである。

その日より、スーナはギニュー特戦隊から一時的に離れてフリーザ側近のザーボンと行動を共にして任務と書類仕事を学んでいた。

 

 

対するザーボンはスーナの評価を改めていた。ザーボンは元々スーナに対する興味は低く、普段からフリーザと行動を共にしている彼はスーナとの接点は少なかった。ギニューがフリーザと面会する時に一緒に来るスーナが挨拶する。その程度の接点だった。

さらにザーボンはスーナがサイヤ人と聞いてから「どうせ野蛮なサイヤ人」と思っていた。美しいもの好きを自称するザーボンからしてみれば『サイヤ人=野蛮』の方程式が成り立っていたのだが、今回の件でその評価を改めていた。

 

フリーザの命令でスーナに書類の書き方を教えていたザーボンだがスーナは兎に角素直だった。間違えた部分は認めるし、謝る。スーナにはザーボンが抱いていたサイヤ人のイメージが当てはまらなかったのだ。ザーボンにとってのサイヤ人の代表格はベジータやナッパの野蛮第一の人種だった。更に言うなら、弱いくせに粋がる存在(ラディッツ)も含んでいた。

自身と向かいの席に座り、真面目に書類仕事を覚えようとする少女にザーボンは自分の考えが浅はかだったと思っていた。

そしてザーボンはふとスーナの前髪に手を伸ばした。

 

 

「ザーボンさん?」

「スーナ……トリートメントは使っているのか?髪が少々痛んでいる様だが?」

 

 

指先でスーナの髪を触るザーボンだがスーナの髪が少し痛んでいる様に思えた。

 

 

「シャンプーは適切なのを使っているのか?」

「適当に選んでます。シャンプーを使うの私だけですし」

 

 

ザーボンの問いに答えたスーナにザーボンは口を押さえながらブフッと笑いを堪えた。

思えばギニューはシャンプーが必要な頭をしていない。

他にもギニュー特戦隊のメンバーの大半はシャンプーやトリートメントを必要とする頭をしていない。

スーナが自身の事に無頓着になるのも無理はなかった。

 

 

「やれやれ……女がそれではイカンな。書類仕事も結構だがお前には他にも教える事が増えたなスーナ」

 

 

この日よりザーボンは書類仕事を教える傍ら、髪の手入れの仕方や肌に使う化粧水等の美容に関する事をスーナに教えた。今までお洒落等に無頓着だったスーナは少しずつだがお洒落をする様になる。

そしてスーナとザーボンは会う度に美容等の話で盛り上がる様になる。

 

 

「スーナ、新作のシャンプーだ。私も試してみたが中々良いものだぞ」

「ありがとうございます、ザーボンさん。私もこの化粧水を試したんですけど、どうですか?」

「うぅむ……俺は口が挟めん……」

 

 

楽しそうに話をするスーナとザーボン。それを見てギニューが少し、悔しそうにしていたりする。

 



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スーナの眼鏡

スーナがザーボンから書類仕事を学んだ後。ギニュー特戦隊の書類仕事をチェックしていたがやはり酷いものだった。

 

ギニュー→割りと普通。何故かフリーザを称える歌詞付。

リクーム→普通に字が下手。

バータ→提出は早い。ただし肝心の内容が書かれていない。

ジース→蛇足ばかり。余計な事が多く書かれてる。

グルド→誇張する表現が多い。また手直し箇所も多い。

 

と、この様に基本的に書類の書き方を間違っているギニュー特戦隊。スーナが書類仕事を自発的にやろうと思うのも無理はなかった。

書類仕事をする様になったスーナは一つの悩みを抱えていた。

 

 

「この部分が……」

「いや、しかし……」

「使いやすさを優先させると……」

「頼むぞ!スーナの為だ!」

 

 

スーナは何故、自分が此処に居るのだろうと首を傾げていた。スーナが今現在居るのはフリーザ軍の開発部の部屋だった。

スーナはギニューに最近、視界が少しボヤけると話した所、ギニューはスーナを連れて開発部へと駆け込んだ。

そしてギニューは開発部の者を集めてスーナの為に眼鏡を作ってくれと頼んだのだ。

実際検査した結果、スーナは近眼である事が判明したがギニューの行動は親バカ故のものだった。

 

 

「スーナ様、最新型のスカウターなら近眼でも使えますぞ」

「お父さんの子供だからって私に『様』を付けなくても大丈夫ですよ。スカウターでも良いんですけど、もう少し情報処理が出来そうな物のほうが良いです」

 

 

スーナは最新型のスカウターを手に取るが少々不満だった。スカウターは相手の戦闘力を測る事と通信機能が付いているがスーナはもっと情報処理に優れている物が欲しかった。何故ならば、これからはギニュー特戦隊全員分の書類の管理をするのだ。戦闘力を測るよりも情報処理の方がスーナの求める物だったりする。

 

 

「ふーむ……それならばスカウター型よりも普通の眼鏡の様にして情報処理用のデバイスにしますか」

「ふむ……ならば、その仕様で作ってくれ。金なら惜しまん」

「あ、あの……そんな大それた物じゃなくても……」

 

 

開発部のやる気に押され気味のスーナ。しかし開発部の学者達はやる気に満ち溢れていた。しかもギニューはギニューで金に糸目をつけないつもりらしい。

 

 

「任せてくださいスーナさん。最高の物を用意させますから!」

「あ……はい」

 

 

こうしてスーナが望まぬままにフリーザ軍の開発部総出でスーナの眼鏡作りが始まった。

そして数日後、スーナ専用の眼鏡型の情報解析ツールが完成した。見た目は普通の眼鏡だがスカウターの様にレンズに文字が浮かび上がり、スーナの求める情報が浮かび上がる。

 

 

「スゴい見やすい。文字の処理速度も早い」

「そうか、良かったなスーナ!」

 

 

出来上がった眼鏡型の情報解析ツールに満足したスーナ。これによりスーナの事務仕事の効率が更に上がる事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

「スーナさん、貴女のお陰でスカウターの精度が更に上がりましたよ。素晴らしいですね」

「あ、ありがとうございます。フリーザ様」

 

 

眼鏡型の情報解析ツールの開発の影響でスカウターの精度が更に上がったらしい。スーナは知らない内にフリーザ軍に貢献していた。

 

 

 



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スーナ九歳の頃

 

 

 

本格的にギニュー特戦隊の書類仕事を担当する様になって一年。スーナが九歳になる頃、彼女はフリーザ軍の中でかなり有名になっていた。

曰く『ギニュー特戦隊の良心』『ギニュー特戦隊のブレーキ役』『最高の事務員』などetc.

ギニューの義娘と言うことも相まって知名度は抜群に上がっていた。しかもスカウターの精度向上に貢献したとして噂となり、開発部の人間もスーナの意見を聞きたいと開発部へ招き入れる姿勢も見せていた。

そして現在……スーナはフリーザ軍のトレーニング室に居た。

 

 

「やあっ!はあっ!」

「ちっ……鈍いな。パンチってのは、こう打つんだ!」

 

 

スーナは普段の事務用のスーツではなくTシャツにスパッツの動きやすい姿でドドリアとトレーニングをしていた。ドドリアはスーナのパンチをわざと避けずに食らうとお返しとばかりにスーナを殴り飛ばした。

 

何故、ドドリアがスーナのコーチをしているかと言うとギニュー特戦隊ではスーナを甘やかしてしまう為に戦闘訓練には向かないとフリーザから却下された。

ザーボンはスーナがトレーニングをしている間の書類仕事として欠席。

ならば同族のサイヤ人を選ぶかと言われればベジータやナッパは別の星に行っており不在。ラディッツは弱い為にコーチには向かないと言われ論外とされた(これを聞いた本人は隠れてトレーニングを開始していた)。

ならば乱暴だが部下の面倒見が良く、強いドドリアが抜擢されたのだ。

 

トレーニングを始めて数時間が経過した。ドドリアはスーナの戦闘力を測った。スーナの戦闘力はなんと50だった。

サイヤ人の子供にしては低すぎる数値である。

フリーザ軍の戦闘力格差として最下級兵が100~350。下級戦士の平均戦闘力が400。上級兵が1500前後。数少ないエリート兵が4000~18000と幅が広く。側近ともなれば20000以上となる。ギニュー特戦隊は平均40000と高い数値。

その中でスーナは50と最下級兵よりも低い数値なのだ。これはスーナの潜在能力が低いのではなくギニュー達のスーナ甘やかしの結果だったりする。

しかしスーナも何もしていない訳ではなくトレーニングはしているが、やはり実戦を知っているか知らないかの差はデカい。

そこでドドリアはトレーニング室でスーナとタイマンで戦っていた。スーナを殺さないように手加減しながら確実にダメージを与えていく。

 

 

「く……あぅ……」

「ん……ちっ、気絶しやがったか」

 

 

壁に叩き付けられたスーナは気を失い、そのまま動かなくなった。ドドリアはそんなスーナに舌打ちをすると軽々と彼女を持ち上げて肩に担ぐ。

 

 

「まったく……サイヤ人の癖に弱すぎなんだよ」

 

 

ブツブツと文句を言いながらもスーナを肩に担いだままドドリアはメディカルルームへと向かった。メディカルルームにはメディカルマシーンがある。これは治療カプセルのようなもので、この中に怪我人を入れて装置を作動させると、中が特殊溶液で満たされ、その成分によりわずかな時間で怪我が治り体力が回復する。ドドリアはサイヤ人の特性である『瀕死状態から回復することにより戦闘力が大幅に上昇する』を利用していた。

 

因みにその特性を利用する事をフリーザやギニューに話した所、フリーザから『絶対に死なせるな』ギニューからは『くれぐれも注意してくれ』とそれぞれキツく言われていた。

ギニューはスーナを溺愛しているし、フリーザはやっとマトモに回り始めたギニュー特戦隊の書類仕事がまた滞るのを恐れた判断だった。

 

ドドリアは上手くダメージを調整出来たなと思いながらスーナをメディカルマシーンの中に放り込むとマシーンを起動させる。

 

 

「手の掛かるガキだぜ……ったく」

 

 

メディカルマシーンの中で眠るスーナに悪態をつくドドリア。しかし口は悪いがドドリアは面倒見が良い。

スーナをメディカルマシーンに入れてから回復するまでドドリアは待っていた。

そして時間が経過し、スーナは目を覚ましてメディカルマシーンから出てきた。

 

 

「ドドリアさん……あ、あの……ありがとうございました。メディカルマシーンに運んでもらって……」

「ま、フリーザ様の命令だからな。どれ、戦闘力は……」

 

 

メディカルマシーンから出たスーナは真っ先にドドリアに礼を言った。メディカルマシーンの中で目を覚ましたスーナはメディカルマシーンへ運んでくれたのがドドリアだと思ったからだ。

ドドリアは礼は構わんと言った態度をすると同時にスカウターでスーナの戦闘力を測る。計測された数値は戦闘力250だった。

 

 

「やっぱサイヤ人だな。戦闘力が増してやがる」

「なんとなくですけど……力が漲ってる気がします」

 

 

ドドリアはスーナの戦闘力が上がった事に戦う度に強くなるサイヤ人らしさを見た。スーナは自身の戦闘力を上がった事を実感していた。

 

 

「ま、今日はこんなもんだろ。飯に行くぞ」

「きゃっ、ドドリアさん!?」

 

 

ドドリアはスーナの頭を乱暴に撫で、スーナは突然の事態に悲鳴を上げた。

 

 

「共に戦った奴や部下達と同じ釜の飯を食う。それが俺流だ」

「ドドリアさん……はい」

 

 

スーナはドドリアの気遣いに笑みを浮かべて食堂へと共に向かう。乱暴だが部下思いの人柄にスーナも嬉しそうにしていた。

 



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スーナ、ベジータとナッパと遭遇する

アドバイスを頂いて前話を少し修正しました。


 

 

スーナがドドリアに鍛えて貰うようになってから二ヶ月。スーナの戦闘力は向上し、今は戦闘力350まで来ていた。

スーナ自身の努力とドドリアのコーチが思った以上に上手く行ったらしい。実力は着々と付いていたのだが、ここで問題発生した。

 

 

「ほーう、お前が生き残りの一人か?」

「へっ、低い戦闘力だな」

 

 

スーナはベジータとナッパと対面していた。今までは簡単な挨拶程度しかしていなかったのだが、ギニュー特戦隊の書類仕事を纏めていたスーナの下に二人揃って集まったのだ。

しかも間の悪い事に現在はドドリアもザーボンも居なかった。

スーナには知らされていない事だが、実はフリーザの指示でスーナを一人でベジータやナッパ、ラディッツとの接触をさせないようにと命令が出ていた。

ベジータ達がスーナに何かを吹き込ませない為の処置で、スーナにサイヤ人としての反抗心を持たせない為である。

 

そんな事は知らないスーナは、書類仕事をしていた際に事務室に似合わない二人が入ってきた事に驚き、ベジータとナッパはスーナを品定めする様にジロジロと見ていた。

 

 

「あ、あの……」

「ふん、不完全な戦闘力にサイヤ人の誇りも無いとはな」

「まだガキなんだぜ、ベジータ。その辺りはこれから教えてきゃいいんじゃねーか?」

 

 

怯えた様子でベジータやナッパに話しかけようとしたスーナだが、ベジータ達はスーナを無視して会話を続ける。

そしてナッパの手がスーナに伸ばされた。スーナは怯えて思わず目を瞑った。

 

 

「何をしている貴様等!」

「お父さん!」

 

 

その直後、事務室にギニューが駆け込んできた。ギニューが現れた事でナッパはスーナに伸ばした手を引っ込める。

 

 

「おやおや、ギニュー隊長のお出ましか」

「能書きはいい。スーナに何をしようとした?」

 

 

挑発的なベジータの態度にギニューは怒りを露にしたまま睨み付ける。

 

 

「……なんて事はない。スーナはサイヤ人の僅かな生き残りだ。今までは任務でろくに話も出来なかったが直接会って確かめたかったんでな」

「ほぅ……そうか」

 

 

睨み合うベジータとギニュー。一触即発の雰囲気に冷や汗を流すナッパ。その二人をオロオロと見詰めるスーナ。

そんな中、スーナが動いた。

 

 

「あ、あの……本来なら若輩の私から挨拶に行かねばならないのに足を運んでいただいて、ありがとうございます。ベジータ王子、ナッパさん。サイヤ人の生き残りのスーナです」

 

 

スーナはスッとベジータの前に立つとベジータに頭を下げた。言葉使いも丁寧でベジータをサイヤ人の王子と呼んだのも礼儀正しかった。

 

 

「お、おう!まあ、俺達も任務で星を離れてたからな。お互いサイヤ人の生き残りなんだ、仲良くしようや!な、ベジータ?」

「…………ふん、そうだな」

 

 

ナッパは場の雰囲気を変えるチャンスとスーナの挨拶に乗った。そしてベジータにも助け船を出して、話を終えようとする。

 

 

「他にもサイヤ人の生き残りにラディッツって言う奴もいるからよ、今度会ってやってくれや」

「はい、ありがとうございますナッパさん」

 

 

ナッパの助言にスーナは素直に返した。スーナ自身も他のサイヤ人の存在が気になっていた様だ。

 

 

「そ、それじゃ俺達はこれで。行こうぜベジータ」

「…………ふん。サイヤ人ならもっと強くなっておけ」

 

 

ナッパは囃し立て、その場を後にした。ベジータはスーナをチラリと見てから最後に一言残して去っていく。

 

 

「はぁぁぁ……緊張した」

「スーナ!?」

 

 

ベジータとナッパが去った後、スーナはその場にペタンと座り込んでしまう。その様子を見たギニューは慌ててスーナを支えた。

 

 

「大丈夫……少し緊張しただけだから」

 

 

スーナはベジータと相対して緊張していたのだ。既に滅んだとは言っても相手はサイヤ人の王族。前から存在は知っていたが、話をした事も無い為の緊張とベジータとナッパの高圧的な態度に話が終わると同時に気が抜けたらしい。

 

 

「無理をするな全く……しかしベジータめ!スーナを怯えさせるとは許さん!」

「お父さんは少し落ち着いて。本当に何も無かったんだから」

 

 

ギリギリと怒りを露にするギニューをスーナが落ち着かせていた。

 



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スーナ、戦闘訓練でダウンする

 

 

トレーニングルームでスーナとリクームが戦っていた。

 

 

「せいっ、やあっ!」

「甘い、甘いぞスーナちゃん!」

 

 

スーナの繰り出す拳や蹴りをリクームは笑いながら捌く。

 

 

「はあっ!」

「効かないねぇ!」

 

 

リクームの顔面にスーナの蹴りが命中するがノーダメージだった。

 

 

「あらよっと!」

「え……きゃあ!?」

 

 

リクームはスーナの脚を掴むと乱暴に振り回し始めた。

 

 

「ほぅら、メリーゴーランドだぞぅ!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

リクームはスーナの脚を掴んだまま回転を始める。リクームは回転する速度を少しずつ上げていく。

 

 

「楽しいねぇ、そらそら!」

「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

スーナが目を回してダウンしそうになってもリクームはその速度を落とさなかった。と言うよりは調子に乗ってスーナの異常に気付いていないだけなのだが。

 

 

「止めんか馬鹿者!」

「痛っ!?」

「きゃう!?」

 

 

そんなスーナの異常を感じ取ったギニューがリクームの頭を殴りスーナを受け止める。

 

 

「おい、スーナ!大丈夫かスーナ!?」

「はぁ……ふ……」

 

 

ギニューはスーナの体を揺すり、安否を確認するがスーナは目を回して意識が定まっていなかった。

 

 

「ありゃー。やり過ぎちまったかな?」

「だから貴様等に戦闘訓練は任せられんのだ。やはり当面はドドリアやザーボンに任せるしかないか……」

 

 

殴られた頭を撫でながらリクームが呑気に話し掛けてくる。手加減が苦手なリクームがスーナの戦闘訓練をやってみたいと言うので、ギニューは自身の監視の下、戦闘訓練を見る事にした。結果は先程までのやり取り通りで、とても訓練にならず、寧ろリクームがスーナをいたぶっている様にしか見えなかった。

 

 

「スーナよぉ、パワーが無いんだよパワーが。肉食え肉」

「それ以前の問題だ馬鹿者!」

 

 

反省の色が無いリクームをギニューは蹴り飛ばした。スーナを両腕で抱いているのでギニューは蹴りを選択したのだ。

 

 

「それよりも隊長、スーナにも技を教えた方が良いんじゃないッスか?俺のクラッシャーボールを教えますよ」

「いやいや、やっぱスピードでしょう」

「へ、やっぱスーナはギニュー特戦隊に相応しくなさそうだな」

「貴様等、減給だ!」

 

 

ギニューと同じく戦闘訓練を見学しに来ていたジース、バータ、グルドが口出しをしてくる。だが、その態度は真面目な戦闘訓練を推すと言うよりもスーナを構いたいだけの様な感じである。

 

 

「やはりリクーム達にはスーナは任せられんな……だがドドリアやザーボンはフリーザ様の側近。あまり長く任せてはフリーザ様の迷惑になってしまうな」

 

 

スーナを任せる事よりもギニューのスペシャルファイティングポーズの方が迷惑なのだが、ギニュー本人が知るよしもない。

 

 



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スーナ、ベジータとグルドの確執を見る

今回の話はアニメオリジナルの話を使っています


 

 

 

 

とある惑星で溜まっていた書類を処理していたスーナは、フリーザに書類のチェックをしてもらう為に城の中を歩き回っていた。その最中、スーナは何やら言い争う声を聞いて、その方へと向かった。

 

 

「あれは……ベジータ王子とグルド?」

 

 

二人は廊下で言い争いをして居た。と言うよりかはグルドが一方的にベジータに突っ掛かっている様だ。

 

 

「本来なら貴様等サイヤ人は我等に支配されている種族なんだ……フリーザ様に気に入られているからって調子に乗るなよ!」

「聡明なフリーザ様だが一つだけ間違いをしておられる。それは貴様の様な無能をギニュー特戦隊の一人としてお認めになられた事だ」

 

 

会話から明らかに友好的な内容じゃないと察したスーナは、その場を後にしようとしたが、次の台詞を聞いて足を止めた。

 

 

「ギニューの義娘のスーナの方が見所がある。聞けば、お前等はスーナに書類仕事を任せきりだそうじゃないか」

「な、舐めるな!その気になれば書類仕事くらい簡単だ!」

 

 

ベジータがスーナを誉めた事にも驚いたが、グルドの発言にスーナはタラリと汗を流した。何故なら先程、手直しした書類の中でグルドの物が一番直す箇所が多かったからだ。

 

 

「ふざけやがって……殺すぞベジータ!」

「俺の近くに寄るな。口が臭くて敵わん」

 

 

怒りに身を任せ、ジリジリとベジータに近付こうとしたグルドだが、ベジータは手をパタパタと振ってグルドが近づくのを拒んだ。

 

 

「いいだろう……ならば!」

 

 

明らかに戦闘態勢に入ったグルドにスーナは慌てて止めに入ろうとした次の瞬間だった。

 

 

「避けなさい、スーナさん」

「え………ひゃあ!?」

 

 

スーナのすぐ後ろからエネルギー波が飛んできたのだ。スーナは素早くしゃがんでエネルギー波から身を守った。

 

 

「死……ぎゃひ!?」

「っ!?」

「遊んでる場合じゃありませんよ」

 

 

そして、そのエネルギー波はベジータと戦おうとしていたグルドの背中に命中する。そのままゴロゴロと転がっていくグルドを呆然と眺めたベジータは、エネルギー波を放った主が誰なのか理解すると身を正した。

 

 

「ベジータさん、高く売れそうな星を見つけました。一緒に行きましょうか」

「ハッ、お供させていただきます」

 

 

フリーザはグルドの事を無視するとベジータに話し掛けてそのまま行こうとしてしまう。ベジータはフリーザに姿勢を正したまま頭を下げた。

 

 

「ああ……それとスーナさん。その書類は後でチェックします。貴女が事務仕事をしてくれて本当に助かってますよ」

「はい、ありがとうございます」

 

 

スーナは書類を入れたファイルを胸に抱いたまま頭を下げた。

 

 

「では行ってきます。2日程で戻りますからザーボンさんやドドリアさんにも言っておいて下さい」

「畏まりました。行ってらっしゃいませフリーザ様」

 

 

フリーザはいつもの乗り物に乗ってその場を後にした。そしてフリーザの姿が見えなくなってから、ベジータは床に這いつくばるグルドを見て笑った。

 

 

「命拾いしたな。ハーハッハッハッ!」

「ぐ……ちくしょう!」

「……無駄に偉そうにするからだよグルド」

 

 

グルドをバカにしたベジータは笑った後にフリーザの後を追って居なくなってしまう。グルドは悔しそうにしているがスーナには自業自得に見えていた。そもそもグルドがサイヤ人の事をバカにしなければベジータにバカにされなかったし、フリーザからの評価も下がらなかっただろう。

 

 

「う、うるさいやい!」

「はぁ……後でメディカルルームに行ってね。フリーザ様のエネルギー波を食らったんだから」

 

 

グルドは懲りずにスーナに悪態を吐くがスーナは溜め息を溢しながらもグルドを気遣い、その場を後にした。

 

 

「ぐ……ちくしょう……」

 

 

 

後に残されたグルドは惨めな気持ちになったと同時に、今まで誰にもフォローされなかった自分がスーナに気遣ってもらえたと少し認識を改めていた。

 



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スーナ、尻尾を鍛える

 

 

 

スーナはギニューに付いて宇宙を回り、仕事をする。その傍ら、トレーニングをしたり星の管理をしている城にいたりと忙しくしていた。

そしてトレーニングをする傍ら自身の弱点を鍛えていた。その弱点はサイヤ人特有の弱点……即ち。

 

 

「ふ……う……くぅぅ……」

 

 

スーナは自分の尻尾を力強く握っていた。サイヤ人特有の弱点とは尻尾だった。サイヤ人は尻尾を強く握られると全身の力が抜けるという弱点を持つ。大人の戦士はその弱点を鍛えて尻尾を握られても平気だが、幼いスーナはまだその弱点を克服出来ていなかった。

 

 

「ぷあ………もうダメ……」

 

 

スーナは自分の尻尾を離すとペタンと座り込んでしまう。息も途絶えながらスーナは自分の尻尾を揺らす。

 

 

「もう……まだダメだなぁ」

 

 

スーナは以前から尻尾を鍛えようとしていたのだが未だに進展は見えず。

 

 

「ベジータ王子やナッパさんは平気だって言ってたし……頑張らなきゃ」

 

 

そう言いながらアドバイスをしてくれたサイヤ人を思い出す。一流を目指すなら尻尾を鍛えようとスーナが決心したのも、その時だった。

※スーナはラディッツが尻尾を鍛えていないのを知らない。

 

 

「おーい、スーナ?そろそろオヤツの時間……何やってんだ?」

「あ、バータさん。その……尻尾を鍛えようかと思いまして」

 

 

そんな中、トレーニング室にバータが入ってくる。どうやら三時のオヤツに誘いに来たらしいのだが、スーナが自身の尻尾を握っている様子を見て疑問を持ったようだ。

 

 

「尻尾を鍛える?……ああ、サイヤ人は尻尾を握られると力が出ないんだったか。不便だねぇ」

「ええ、ですから鍛えようと思って……あ、そうだ」

 

 

良い事を思い付いた様にスーナはポンと手を叩いた。

 

 

「バータさん、私の尻尾を握って貰えませんか?」

「な、なんだって?」

 

 

スーナの突然の提案にバータは慌てた。

 

 

「その……自分で握るから鍛えられないんじゃないかと思って……お願いします」

「あ、ああ……まあ、俺で良ければ」

 

 

スーナの態度に思わず了承してしまったバータ。しかもスーナはお願いしますと言って四つん這いになって、お尻を向けてきている。

ここで再確認だがスーナはトレーニングの為にTシャツにスパッツという姿である。そして幼いながらにもスーナの体つきは女性特有の物に成長し始めた頃。そんな光景を目の前にしたバータは意を決してスーナの前に片膝を突いた。

バータはギニュー隊長に知られたら殺されるかもしれんな……と思いながら突き出された尻尾に手を伸ばす。

 

 

「よし……握るぞスーナ」

「は、はい……お願いします」

 

 

頼まれたバータはそっとスーナの尻尾を握る。最初は力を入れないように軽く握った。

 

 

「ふ……ん……」

「だ、大丈夫か?」

 

 

尻尾を握られたスーナは小さく息を漏らす。バータは心配になり声を掛けるがスーナは首をフルフルと横に振る。

 

 

「だ、大丈夫です……も、もう少し……」

「お、おう……任せろ」

 

 

頬を赤くして続きを促すスーナ。バータは恐る恐る握る力を強めた。

 

 

「はひゃん!?……も、もっと優しく……ん……」

「わ、わかった……力加減が難しいな……」

 

 

力を入れ過ぎたのかスーナが悲鳴を上げた。バータは慌てながらも力を調節する。

 

 

「はふぅ……はぁ……これなら……なんとか……」

「お、おぅ……これくらいの力なら大丈夫なんだな」

 

 

スーナの様子を見ながら手に込める力を調節するバータ。しかし、ここで不運な事が起きた。突如、城が大きく揺れたのだ。

 

 

「な、なんだ!?」

「ひきゃあん!?」

 

 

突然の事態に、バータは思わず握っていたスーナの尻尾を強く握ってしまう。尻尾を強く握られたスーナは悲鳴を上げた。

 

 

「な、なんだ今の揺れは……」

「ふ……く……うぅぅ……」

 

 

スーナはこれ以上声を出さないように手で口を押さえるが声が漏れていた。しかもバータはその事に気づいていない。

 

 

「もしかして敵襲か!?スーナ、お前は……スーナ?」

「ら、らめぇ……尻尾はらめぇぇぇぇぇぇっ!」

「何をしてるか貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

遂に我慢できなくなり、声を上げたスーナ。この直後、スーナの様子を見に来たギニューがスーナとバータを見て誤解し、バータをミルキーキャノンで吹っ飛ばした。

因みに城が揺れたのはリクームがトレーニングとして放った技が思いの外、威力を発揮して城全体が揺れたとの事だった。またバータはミルキーキャノンの直撃は食らったが、スーナが近くに居た事もあり、ギニューが手加減したのか軽傷だった。

 

この後、誤解は解けたがスーナとバータは互いに暫く顔もマトモに見れなくなった。

 



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スーナ、仲裁役となる

 

 

 

「ん、んぅぅぅぅぅぅ……っと」

 

 

スーナは事務室で椅子に座りながら体を伸ばす。やっていた事務仕事が一段落したので体をほぐしていた。

スーナの事務仕事は一年前とは比べ物に成らない程に増えていた。というのも、フリーザ軍内部でスーナ程の情報処理を出来る者が数少ないからである。

頭の良いものは基本的に開発部へ。戦闘力の高い者は兵士へと配属が決まるのだが、兵士側に行くものはお世辞にも頭が良いとは言えない者が多く、碌に報告書も書けない者も居たりする。そこでスーナが間に入り、報告書をチェックした後に手直ししてフリーザに提出するのが当たり前となっていた。

しかし、これは一時的な処理であり今現在は兵士達にも最低限の事務仕事はさせているのだが長期に戦闘に出る者はそうはいかない。

主だった例で言えばギニュー特戦隊やベジータの一派だろう。彼等は戦闘力の高さから星の制圧に向かう事が多く、事務仕事をしている暇などない。ギニュー特戦隊は兎も角、ベジータ一派は書類仕事など、やる気がないと言わんばかりに口頭での報告ばかりだった。

しかし、フリーザ軍も『組織』である以上、報告書も必要であり、ある種の義務でもある。組織の運営はどんぶり勘定では成り立たないのは宇宙でも同様なのである。

 

 

「はぁ……肩凝るなぁ……」

 

 

トントンと自身の肩を叩くスーナ。事務仕事は嫌いではないどころかむしろ好きな部類だが、流石にこの状況も続けば体が鈍る。

 

 

「ご苦労だなスーナ」

「あ、ザーボンさん。お疲れ様です」

 

 

ふと、気が付けば上司に当たるザーボンが事務室に来ていた。手にはドリンクが入ったグラスが二つあり、片方はスーナに手渡された。

 

 

「あ、ありがとうございます」

「礼には及ばん。寧ろ礼を言うなら私の方だろう。スーナが事務に入ってくれて随分と助かっている」

 

 

スーナの礼に対して、ドリンクを飲むザーボンは薄く笑みを浮かべながら答えた。と言うのもスーナが事務仕事を始めてからザーボンの負担が減ったからである。ザーボンはフリーザの側近であるが、事務仕事を一手に任されていた。これは同じく側近のドドリアには任せられない仕事としてフリーザから一任されていたのだが、側近の仕事と事務仕事を両立させるのは並大抵の事ではなくザーボンの負担は増える一方だった。スーナが事務に就任してからザーボンは側近の仕事に専念できる様になったのだ。

 

 

「そんな私なんてまだまだですよ」

「謙遜するな。そうだな……礼も兼ねて食事でもどうだ?」

 

 

パタパタと両手を振って否定するスーナにザーボンは笑みを浮かべながら食事に誘う。その時だった。

 

 

「おおぅいスーナ。飯に行くぞ!」

「あ、ドドリアさん」

「………ドドリア。事務室には静かに入ってこい」

 

 

見計らったタイミングの様にドドリアもスーナを食事を誘いに来たのだ。ドカドカと事務室に入ってくるドドリアにザーボンは溜め息混じりの注意をする。

 

 

「あんだよ、これくらいで。細かいんだよザーボン」

「お前が乱暴なのだドドリア」

 

 

バチバチと火花を散らすドドリアとザーボン。実はこの二人、普段はそうでもないのだが互いの主張を通すときは非常に仲が悪い。それは戦い方から食事で極端なほどに正反対なのだ。

ドドリアは力で押すパワータイプなのに対して、ザーボンは技を駆使するテクニックタイプ。

食事は大勢で騒ぐのが好きなドドリアだが、ザーボンは静かにテーブルマナーも守る食べ方。

言わば猪突猛進と冷静沈着。対極に位置する二人が側近として上手くやれているのはフリーザに対する忠誠があるからであり、逆にそれが無ければ二人は反目する。

 

 

「あ、あの……喧嘩しないでください。今日はお父さんがいないので食事も一人で済ませるつもりでしたけど、お二人が良ければご一緒させてください」

 

 

ここで慌てたのはスーナだ。自分が切っ掛けでフリーザ側近の二人が喧嘩など洒落にもならない。スーナは頭を下げて仲裁に入った。

 

 

「ちっ……スーナに感謝しろよザーボン」

「今回はスーナの顔を立ててやるがお前も、もう少し気を使うんだなドドリア」

 

 

スーナが頭を下げた事で争う事を止めたドドリアとザーボンだが、直後に互いを罵る台詞を同時に吐いた。

 

 

「あん?」

「なんだ?」

「で、ですからぁ…….」

 

 

この後、スーナは幾度となく仲裁に入りながら食事をする事となる。

因に、ドドリアとザーボンにはそれぞれフリーザの側近としての派閥があり、やはり互いに仲が悪いのだがスーナが間に入る事で多少の関係改善になっていたりする。

 

 

しかし、それが切っ掛けでスーナがドドリア派閥かザーボン派閥かで大騒動が起きるのだがそれはまだ先のお話。

 



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スーナの役職

 

 

 

 

スーナはフリーザに呼び出され、フリーザの宇宙船に足を運んでいた。

 

 

「フリーザ様、スーナお呼びにより参上しました」

「呼び出してすいませんねスーナ」

 

 

フリーザの部屋に入ったスーナは礼儀正しく頭を下げ、フリーザはスーナの礼儀正しさに満足しているのかニコニコと笑みを浮かべていた。

 

 

「さて……さっそくですが貴女を呼び出した件です」

「はい」

 

 

フリーザは前置きを抜きにして本題に入る事にした。

 

 

「実はですね、貴女にフリーザ軍の人事を任せようかと思っているのですよ」

「わ、私をですか?」

 

 

フリーザから突然、役職を振られたスーナは驚いた。今まではフリーザ自らが人事を見ていたのだが、急にスーナに任せるとは思ってもみない事だったのだ。

 

 

「何も今日明日でやれとは言いませんよ。しかし、貴女が私の為に働き始めてから……本当に助かってますからね」

 

 

フリーザはスーナに背を向けながら宇宙船の窓から宇宙を見ていた。その背中には哀愁が漂っている。

 

 

「それにこれは貴女の為でもあるんですよ。聞きましたがスーナ……貴女、各部署から誘いの声が出ているそうですね」

「……はい」

 

 

フリーザの言葉にスーナは少し言葉を詰まらせた。それと言うのも、スーナがフリーザ軍で働き初めてから研究部署や事務等からスーナを専属で置いて欲しいと、嘆願書が大量に届くようになったのだ。

スーナはどの部署に行っても様々な事をしてきた。研究部署に行けばスカウターの性能向上の切っ掛けとなり、事務の仕事を始めればザーボン以下、事務仕事を任されていた者達の希望となった。そしてスーナが間に入る事でザーボン派閥とドドリア派閥との争いも多少軽減され、潤滑に回るようになったのだ。

これにより、子供ながらに各部署の影響力が高いスーナを誰もが引き抜きたいと思い始め……取り合いが発生し始めていた。

 

 

「因みにですが……ギニュー特戦隊は専属マネージャーは渡さないと各部署に殴り込みに行こうとしたみたいですね」

「父とその部下が本当にすいません」

 

 

フリーザの苦笑いにスーナは本当に申し訳なさそうに頭を下げた。

 

 

「ホッホッホッ……良いんですよスーナさん。貴女が求められるのは貴女が優秀だからです。私も鼻が高いですよ。ですが、まだ子供の貴女にそれらを選ぶのは酷と言うものです」

 

 

フリーザは笑みを浮かべた後にスーナに歩み寄る。

 

 

「各部署が争って火種になるのは困りもの……ならば全てのところに顔が利く人事を任せようと思ったのです。私の言葉なら反論する者はいませんからね」

「なるほど……流石はフリーザ様です」

 

 

フリーザの言葉にスーナは納得する。人事ならば、各部署へ顔を出す事になるから今の争いを納める手段となると、フリーザの手腕に改めて驚かされていた。

 

 

「ですが……子供の貴女が人事の仕事をするには、まだ早い。そこでこれからは他の部署の仕事を学んでもらいます。そしてそれらが終わったら改めて人事の役職を与えましょう。精々、私の為に励みなさい」

「畏まりましたフリーザ様」

 

 

フリーザの考えを理解したスーナは、頭を下げて今回の話を飲んだ。そもそもフリーザに逆らう気は毛頭ないので、スーナはただ受け入れるだけだ。

 

 

「ホーホッホッ良い返事です。ならギニューさんにまずは報告をしてきなさい。私に呼び出されたと随分と気にしていましたから」

「はい。では失礼させていただきます」

 

 

フリーザの気遣いにスーナはパァと笑顔になる。退室してギニューの下へと向かった。

 

 

「…………ふむ。ベジータ達と違って私への忠誠心は高いようですね。スーナ、貴女には存分に働いてもらいますよ」

 

 

 

フリーザは一人、静かな笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スーナァァァァァァァ!頼むから俺達の専属のマネージャーでいてくれぇぇぇぇ!」

「だからフリーザ様の命令だから覆せないの。まだ暫くは特戦隊の書類は面倒をみるけど今後は自分でやって」

 

 

フリーザの下から特戦隊の待機室へ向かったスーナは、先程の話をギニュー達に話すとギニューはすぐに納得し、スーナが更にフリーザに認められた事を喜んだ。が、リクーム、バータ、ジース、グルドは自分達の代わりに書類仕事をしてくれていたスーナが居なくなる事を非常に恐れていた。特にバータはスーナに抱きつく勢いで頼み込んでいたりする。

 

 

「そうだぞ、それにスーナが居なくなったら誰が俺達のオヤツを作るんだ」

「私の価値ってそこ?」

 

 

リクームはスーナの作る菓子が食べられなくなる方が重要なようだ。

 

 

「それに六人体制でのスペシャルファイティングポーズがやっと決まったのに!」

「私は絶対にしないから」

 

 

ジースは密かに考案していたスーナも交ぜたスペシャルファイティングポーズが出来ないことを嘆いていたが、スーナ本人にその気が無かった。

 

 

「へん、ベソかいて戻ってくるんじゃねーの?」

「私はグルドと違って上手く立ち回るよ」

 

 

スーナをビビらせようとしたグルドだが、スーナはサラッと流した。実際、スーナの方がグルドよりも社交的である。

 

 

「スーナ……俺は……俺はお前が何処に行っても上手くやると……信じて……」

「お父さんは気が早すぎ。それとまだ暫くは事務とマネージャーの仕事するから」

 

 

ギニューは娘の結婚を見送る父親のように泣きそうになっていた。なんやかんやで親バカである。

特戦隊はスーナがすぐに居なくなると勘違いをしているが、スーナは各部署へ顔を出す機会が増えるだけで実際は特戦隊のマネージャーの位置は当分変わらないのだが、その説明も忘れている……と言うかスーナが今後、自分達の専属じゃなくなる事に頭からその説明が抜け落ちたのかも知れない。

 



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スーナ、フリーザ一族の話を聞く

 

 

 

「フリーザ様の……お父様とお兄様ですか?」

「ああ、コルド大王様とクウラ様だ」

 

 

スーナは事務仕事をする傍らでザーボンからフリーザの一族の話を聞いていた。

 

 

「コルド大王様とクウラ様はフリーザ軍の活動地域には滅多に姿を現さんが時折、フリーザ様にお会いになられる事がある。覚えておくんだな」

「なんでフリーザ軍の活動地域には姿を現さないんですか?」

 

 

ザーボンの教えにスーナは小首を傾げた。

 

 

「コルド大王様はフリーザ様とクウラ様に後を譲られたのだ。そしてより優れた者を宇宙の支配者とするとしてな。故にフリーザ様とクウラ様は常に対立されているのだ」

「な、仲がよろしくないんですね……」

 

 

対立するフリーザとクウラの兄弟にスーナは冷汗を流した。

 

 

「ああ……だが表立って争ってはいないだけで冷戦状態でな。スーナも今後、会うこともあるだろうから気を付けるんだな」

「あはは……肝に命じときます」

 

 

スーナはザーボンの忠告に、いつか出会うだろうコルド大王とクウラに身を震わせた。

 

 

「ついでを言うならフリーザ軍とクウラ軍も仲が悪いぞ。フリーザ軍は兵を常に増やしているがクウラ軍は徹底した少数精鋭でな」

「軍の方針も真逆なんですね」

 

 

ザーボンの説明にふむふむと頷くスーナ。

 

 

「そしてギニュー特戦隊とクウラ機甲戦隊でライバル同士だな」

「クウラ軍にもお父さん達みたいな人も居るんですね」

 

 

スーナはギニュー特戦隊同様にスペシャルファイティングポーズを決めているクウラ機甲戦隊を思い浮かべた。会った事は無いが、実はその想像が間違っていなかったりする。

 

 

「まあな……ん、んぅゴホン!兎に角だ……クウラ様やクウラ機甲戦隊と会う時は細心の注意を払え」

「はい、気を付けます。あ、飲み物持ってきますね」

 

 

ギニュー特戦隊とクウラ機甲戦隊のスペシャルファイティングポーズを同様に思い出していたザーボンは、咳払いをしてからスーナに注意を促し、スーナは頷いた後に飲み物を取りに部屋を出て行った。

 

 

「ふむ……スーナには話さなかったがクウラ様はご自身が認めた者は他勢力でもスカウトされる」

 

 

ザーボンは椅子に座ったまま思案顔になる。

 

 

「スーナの優秀さを考えるとスカウトされかねんな」

 

 

ザーボンはスーナがクウラにスカウトされる事を想像し、その未来が現実になりかねないと思っていた。

 

 

「お待たせしましたザーボンさん」

「ザーボン、スーナがいつも世話になっている様だな」

「……いや、気にしないで結構だ」

 

 

飲み物を取りに行ったスーナは何故か父であるギニューも共に帰ってきた。クウラ軍からスカウトされるだろうが、この親バカが簡単にスーナを手放す訳がないなとザーボンは思った。

 

 



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スーナ、他の星域へ

今回はオリジナルキャラが登場します。


 

 

 

スーナはフリーザの命令で各部署を回る仕事をしていた。今までフリーザの周辺で事務仕事をしていたスーナだが今は違う星域で事務の仕事をしていた。

 

 

「スーナ殿、これで全部になります」

「ありがとうございますソルベさん」

 

 

スーナは第3星域で参謀をしているソルベの下で、その星域のフリーザ軍の活動報告や処理された事務仕事のチェックを行っていた。これはフリーザからの指示でもあり、気付いた所があればスーナはそれを訂正する権利も与えられていた。

 

 

「これは……この支出はどこから?」

「あ、その支出は惑星ブームを侵略した時に……」

 

 

スーナは眼鏡にモニターの映像を大量に映しながら、気になった箇所を傍に控えていた新兵のタゴマに尋ね、聞かれたタゴマは丁寧に説明をしていた。

 

 

「よろしいのですかソルベ様。あの様なサイヤ人の小娘になんかに……」

「フリーザ様からのご命令だ。無下には出来んだろう」

 

 

それに異をを唱えたのはソルベの側近シャーベだった。シャーベはサイヤ人の子供に好き勝手されている現状に苛立ちを感じてソルベに話すが、ソルベはフリーザやギニューからスーナの事を任されている為にこの状況を見ているだけだったりする。

 

 

「しかし……」

「黙れ。スーナ殿は他の星域でも仕事をされて、フリーザ様の信頼も厚いのだ。迂闊な発言で機嫌を損ねると我等の身も危ないのだ」

 

 

ソルベはフリーザから事務仕事を全面に任されているスーナの機嫌を損ねる事を恐れていた。

 

 

「ふぅ……一先ず休憩にしましょうか」

「凄いですねスーナ様。まさかもう三割ほどの書類をチェックされてしまうとは」

 

 

ある程度の書類に目を通したスーナは一先ず休憩にする事にした。スーナは他の星域で事務仕事をする事で今までよりも書類を処理する速度が上がっていた。タゴマはそんなスーナの事務処理能力に驚いていた。

 

 

「この星域のフリーザ軍の書類処理が良く出来ているからですよ。今までで二番目に綺麗に処理されてます」

「二番目に……ですか」

「ほほぅ……では一番はどちらですかな?」

 

 

スーナの言葉にシャーベは更なる苛立ちを感じた。尊敬するソルベに対して二番目などと上から目線だったからだ。

ソルベは褒められた事とは別に、スーナの言う一番が何処か気になったのだ。

 

 

「一番はフリーザ軍本体ですよ。私の事務仕事はザーボンさんから学んだものですし」

「そう言えばそうでしたな」

 

 

スーナの言葉にソルベは納得した。ギニュー特戦隊等の困った集団は居るが、フリーザの膝元で事務仕事が滞るのは冗談抜きで命に関わる事だ。そしてその事務仕事はザーボンが多くを担当していて、そのザーボンから仕事を学んだスーナの目は確かなものであり、更にその書類をチェックするのはフリーザなのだ。これで事務仕事が分かってないとすれば余程のアホとなる。

 

 

「他の兵士の皆さんの書類も割りと綺麗に纏められています。ソルベさんの部隊は素晴らしいですね」

「はは……フリーザ様直轄のスーナ殿のお墨付きなら私も自信が持てそうですな。本日の書類仕事はこれくらいにして、この第3星域のお話をしましょうか」

 

 

掛け値なしの本音のスーナの発言に、ソルベは少しの照れを感じながらスーナとこれからの話をする為に部屋を出ていく。

 

 

「サイヤ人の猿ごときがフリーザ様の直轄でソルベ様と同等以上の地位だと……」

 

 

シャーベはそんなスーナを面白くなさそうに見詰めていた。




『シャーベ』
ソルベの側近で高い戦闘力を持つエリート兵。ソルベの事を尊敬しており、プライドも高い。
人間の体に山羊のような顔をした宇宙人。

名前の由来はシャーベット。



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スーナ、兵士の査察に出る。

 

 

 

第3星域の事務仕事をこなすスーナはソルベの部下から多大な信頼を得始めていた。当初はサイヤ人の小娘と侮られていたスーナだが、仕事ぶりを見た兵士達はタダ者ではないと噂が出ていた。

 

 

「スーナ様、こちらが本日の資料となります」

「ありがとうございますタゴマさん」

 

 

中でもタゴマはスーナの側近のように事務仕事の補佐をしていた。

 

 

「スーナ殿、フリーザ様に報告などは……」

「ええ、書類のチェックもしましたが問題は無さそうですね」

 

 

第三星域の参謀であり、責任者のソルベもスーナの仕事を見て、たかがサイヤ人と見下すことは止めて、対等に接していた。

実は他の星域でも同じような事が起きていた。当初はフリーザの権威を笠に好き勝手をしているサイヤ人の小娘と思われていたが、実際の仕事ぶりを見ると考えを改めるのだ。

しかし、中にはスーナを認めない者も居る。

 

 

「おのれ……フリーザ様のお力で此処に来ているくせに調子にのりおって……」

 

 

こそこそとシャーベはスーナ達の話を盗み聞きしていた。それと言うのもシャーベはスーナを目の敵にしているからだ。スーナの仕事を見ていたが、所詮はフリーザの権威を笠に着ていると未だに思っていた。

しかし表立ってスーナを害すれば、上司であるソルベの面目は潰れるし後輩のタゴマにも示しはつかない。

 

 

「どうでしょうスーナ殿。事務の仕事も結構ですが兵士達の仕事を見てみては?」

「そうですね……他の星域では兵士の皆さんの戦闘は見てなかったので視察をするのも良いかもしれません」

 

「ほほぅ……こりゃ好都合だ」

 

 

 

ソルベとスーナの会話をスカウターで盗み聞きしていたシャーベはニヤリと笑みを浮かべた。これはチャンスだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソルベとスーナの話し合いから二日後。スーナはソルベ達に同伴して侵略する惑星に降り立った。

 

 

「スーナ様、この惑星には強い戦士はいません。強くても戦闘力500が良いところでしょう」

「それでも私よりも強い人達が多いですね。私の戦闘力は250程ですから」

 

 

タゴマは大した惑星ではないとスーナに説明するが、スーナの戦闘力は250程であり、実際に戦うとなれば危ないであろう。

 

 

「ご心配なく。我等が護衛します故、スーナ殿は心置き無く査察されるが良いでしょう」

「おお、シャーベ。お前が護衛を買って出てくれるか」

 

 

説明に加わったのはシャーベだった。にこやかに笑みを浮かべながら護衛を申し出て、ソルベも自身の陣営で一番強いシャーベが護衛に付くなら問題は無い筈だと喜んだ。

 

そんなソルベに見られないようにシャーベはニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

一方、第三星域に向かうフリーザ軍の中型宇宙船が居た。

 

 

「ギニュー隊長……流石にスーナ様を迎えに行くのは親バカが過ぎるのでは?」

「何を言うか馬鹿者!娘を迎えに行くのは親の特権だ!」

 

 

スーナの迎えに付き合わされている兵士のアプールは、中型宇宙船を操縦しながらギニューの行動に呆れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

「ターレス様、此処はフリーザ軍の居る宙域。あまり近付きすぎると我等の存在がバレてしまいますぞ」

「かもな……だが噂のサイヤ人の生き残りを見てみたいのさ」

 

 

時を同じくして第三星域に近付くクラッシャー軍団の宇宙船。その宇宙船の中で色黒の肌をしたサイヤ人ターレスがモニターに映る惑星を見て呟いた。

 



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スーナ、調査中に襲われる

 

 

 

 

惑星調査と侵略に降り立ったスーナ達。ソルベ達はいつも通りの侵略行為を行い、スーナは兵士達の査察と惑星調査を行っていた。

 

 

「良い惑星の様ですね……土壌もしっかりしているから作物の育成にはもってこいです」

「スーナ殿は……侵略行為をどう思っておいでですか?正直、スーナ殿の気質では良く思っていなさそうですが」

 

 

スーナは兵士達の働きぶりをある程度見てから惑星調査を優先していた。そんなスーナにシャーベは思った疑問を投げ掛ける。

 

 

「確かに……侵略にはあまり良い印象は持っていません。ですが私は父に拾われ、フリーザ様の為に生きています。その為になら私はなんでもします。それにフリーザ軍の存在は宇宙の脅威となっていますが、逆にそれは他の者達への抑止力となり、結果としては平和の均衡へと繋がると思っています」

「……なるほど」

 

 

シャーベの問いに答えるスーナ。その背中は僅かな

哀愁が漂っていた。

 

 

「私はその為に視察にも来ました……そして私がフリーザ様に人事を任された時には……いえ、まだ早いですね」

「スーナ殿はサイヤ人らしからぬ考え方ですな。サイヤ人は戦闘民族で乱暴な輩が多いと言うに……」

 

 

苦笑いをしながら話すスーナに、シャーベはスーナのサイヤ人らしくない発言を聞いた後にスッと右手を上げた。

 

 

「私がサイヤ人らしくないのは重々承知してますよ。さて、そろそろソルベさん達と合流しましょうか」

「そうですな……」

 

 

土壌の調査を終えたスーナが立ち上がり、シャーベに振り返った。その時だった。

 

 

「死ねぇ!」

「きゃぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

突如、背後からスーナの背に向けてエネルギー波が撃ち込まれた。その痛みに苦しみながらもエネルギー波の放たれた方角を見るとそこには、この惑星の住人らしき宇宙人が6人が戦闘態勢で佇んでいた。

 

 

「……スーナ殿、下がっていてください」

「シャーベさん、お願いしま……あうっ!?」

 

 

スーナの側に控えていたシャーベがスーナを守るように前に出たが、その直後スーナは再びエネルギー波の直撃を食らって気を失った。その衝撃で掛けていた眼鏡が外れ、着ていたスーツはボロボロになり、スーナの白い肌が所々から見えていた。

 

 

「お前らご苦労だったな」

「へへっ……旦那の希望通りですか?」

 

 

スーナにエネルギー波を放った一団はスーナが気絶した事を確認すると、シャーベに媚を売るように歩み寄る。

 

 

「ああ……これで目障りな小娘を始末できる。良くやってくれた」

「ありがとうございます旦那。これで俺達をフリーザ軍に入れてもらえるんですね?」

 

 

シャーベはスーナの掛けていた眼鏡を踏み割るとニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

「ああ……俺が口利きをしてやるさ。スーナは惑星の調査中に現地の荒くれ者に襲われ殺された。それを助けようとしたのは俺やお前等の様な正義感溢れた現地の者が荒くれ者を退治した……ってな」

「完璧ですな。へへっ……働かせてもらいますぜ」

 

 

この惑星に早めに来たシャーベは、タイミングを測ってスーナを襲うようにと現地の荒くれ者に話を持ちかけていた。報酬は身の安全とフリーザ軍への口利き入隊である。

 

 

「旦那……まだ殺さないんですかい?」

「死体が残らないと困るんでな。そうだ……お前等、楽しむか?」

 

 

荒くれ者の言葉に何かを思い付いたシャーベは、スーナのスーツの胸元に手を掛けるとビリビリと破いた。破かれたスーツからは未だ未成熟だが女性特有の物となった膨らみが見えていた。それを見た荒くれ者達は声を上げる。

 

 

「好きにしろ。だが時間はあまり無いからな」

「へへっ……ありがてぇ!」

「楽しませてもらいますぜ!」

 

 

シャーベは荒くれ者達の方にスーナを投げ飛ばす。投げ飛ばされたスーナは気絶したままだった為に受け身もとれず投げ出された。そして荒くれ者達が息を飲む。

破かれたスーツからは胸元が見え、履いていたスカートからは白い下着が見えていたからだ。

 

 

「くくっ……戦闘民族もこうなりゃ可愛いもんだ」

 

 

気絶しているスーナに群がり、荒くれ者達に今まさに乱暴されようとしている光景にシャーベは本当に楽しそうに笑みを浮かべた。その時だった。

 

 

「確かに可愛い面だ。テメエ等にくれてやるのが勿体ないくらいにな」

「な、なんだテメ……ぶぎゃ!?」

 

 

それは突如、現れた男によって遮られ荒くれ者の一人は殴り飛ばされ近くの岩山に叩き付けられた。

 

 

「き、貴様っ!」

「汚れた手で……ソイツに触るな!」

 

 

男は叫ぶと同時にエネルギー波を放ち、スーナに群がっていた荒くれ者は全員がエネルギー波に吹き飛ばされ、その姿はこの世から消え去った。

 

 

「な、何者だ貴様!」

「何者でもない。ただ、この娘に興味がある……ってだけさ」

 

 

突然の事態に焦るシャーベに男は笑みを浮かべた。

 

 

「チィ……スーナから離れろ!ソイツはここで始末しなきゃならんのだ!」

「丁重にお断りするぜ」

 

 

シャーベは手の中にエネルギー波を溜めて男を威嚇するが、男はニヤリと笑みを浮かべて断った。怒りを覚えたシャーベは男にエネルギー波を放つが、男はそれに合わせる様にエネルギー波を放つ。かち合ったエネルギー波はシャーベの物が負け、押し返されたエネルギー波はシャーベを飲み込み、彼の体をこの世から消し去った。

 

 

シャーベは気づかなかった。目の前の男は自分よりも遥かに強い存在だった事に。その肌は浅黒く、その腰はベルトではなく茶色の尻尾だった事を。



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スーナ、助けられる

 

 

 

 

浅黒い肌に尻尾のある男、ターレスは倒れているスーナを抱き起こす。

 

 

「戦闘力は低いが純粋なサイヤ人の生き残りだ。丁重にしなきゃな」

 

 

ターレスはスーナを横抱きに抱くと、その顔を見つめた。

 

 

「……可愛いもんだな」

「ターレス様」

 

 

ボソリと呟いたターレスの背後から声が掛かる。ターレスが振り返ると長髪を後ろで束ねた大男が立っていた。

 

 

「アモンドか……どうした?」

「もう少しでフリーザ軍がこの惑星を制圧してしまいそうですぜ」

 

 

ターレスの副官であるアモンドから告げられた言葉はもう時間が無いと言う事だった。

 

 

「その娘は連れていくんですかい?」

「いや、コイツを連れていけばフリーザやギニューの反感を買う。今は置いていくさ」

 

 

アモンドの問いにターレスは残念そうな声を出す。

 

 

「では直ぐに離れた方が良いでしょう。ソヤツ等を始末した事でスカウターに感知されたでしょうから」

「ふっ……まあ、そう慌てるな」

 

 

アモンドは早くこの惑星を離れるべきだと告げるが、ターレスは落ち着いた様子で懐からある物を取り出した。

 

 

「ターレス様、それは最後の神精樹の実では?」

「惜しいとは思わないさ。コイツは僅かに生き残ったサイヤ人なんだ」

 

 

ターレスはそのまま神精樹の実を噛ると、その噛り取った実の一部をスーナの口に押し込んだ。そしてそのままスーナの顔を上に向けて実を喉に通す。スーナが神精樹の実を飲み込んだ事を確認したターレスは満足気に笑みを浮かべた。

 

 

「じぁあな……今度はお前が起きてる時に会いたいもんだ」

 

 

ターレスは岩場にスーナを寝かせるとアモンドと共にその場を離れた。

それと入れ替わるようにソルベ達がスーナの倒れている場所へと現れる。その惨状に誰もが驚愕した。

 

 

「こ、これは!?」

「な、何があったんだ!?」

 

 

ソルベやタゴマは砕かれた岩や地面に目を奪われ、兵士達も何があったのかと慌てるばかりだ。

 

 

「スーナ!スーナァァァァァァァァッ!!」

「ギ、ギニュー隊長!あまり揺らしてはスーナ様が苦しいのでは!?」

 

 

更に途中で合流したギニューは近くの岩場で寝かされていたスーナに素早く駆け寄り、ガクガクと体を揺らす。それを見たアプールは慌ててギニューの行動を止めようと必死になっていた。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

「ターレス様……いずれはスーナを仲間に迎え入れるんですかい?」

「ああ、そのつもりだが……あの娘を俺の花嫁に迎えるのも良いかもな」

 

 

ターレスは先程の惑星から離れた宙域でアモンドの問いに笑みを浮かべながら答えた。

 

 

「本気ですかい?」

「……さぁな」

 

 

アモンドはターレスの態度から本気かどうかが計れなかった。だがターレスは悪戯な笑みを浮かべるだけだった。

 

 

 

 

 



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スーナ、目を覚ます。

 

侵略した惑星から引き上げたフリーザ軍は、スーナを宇宙船のメディカルポッドへと移送した。スーナがメディカルポッドに入れられてから数時間経過した頃、ギニューはソルベを指揮官室に呼び出していた。

 

 

「ソルベッ!貴様が指揮していながらスーナをあの様な目に遭わせるとはなんたる体たらくだ!」

「も、申し訳ありませんギニュー隊長!」

 

 

そんな中、ギニューはスーナが瀕死の状態になっていた事に激昂し、ソルベに怒鳴っていた。ソルベはスーナに土下座をしながら謝罪をしていた。

 

 

「しかしギニュー隊長。シャーベを倒すほどの者が居たとなれば我々にはどうする事も……」

 

 

シャーベの戦闘力は約一万程。その彼を倒したとなれば余程の戦闘力の持ち主となる。そしてシャーベはソルベ配下の中で一番強いのだ。それがスーナに付いていて真っ先にやられたのだ。ともなれば他の者が居たとしても結果は同じだったであろう。

 

 

「まさかシャーベ様がやられるとは……」

「我々はこれからどうするんだ……」

 

 

そしてソルベの配下達も意気消沈していた。シャーベはエリート意識が高い戦士だったが、戦闘力は確かなものだった。そのシャーベを失うという事はソルベ配下の者は一般兵士のみとなってしまう。それは軍全体の士気にも関わる事だ。

 

 

「だとしてもだ!スーナはいまやフリーザ軍の必要な存在だ!それが失われようとした事はどういう事か、分かっているのか!」

「ギ、ギニュー隊長!」

 

 

シャーベの事があったとしてもギニューの怒りは収まらなかった。怒りのままソルベを怒鳴っていたギニューだが、慌てた様子で部屋に入ってきたアプールによって怒鳴りは止まる。

 

 

「なんだ!」

「スーナ様が目を覚まされました」

「スーナァァァァァァッ!!!」

 

 

怒り心頭のままギニューは叫ぶが、アプールの一言に今までの怒りは何処へやら。ギニューは部屋の扉を破壊しかねない勢いでメディカルルームへと走っていった。

 

 

「わ、私たちも行くぞ!」

「はい!」

 

 

呆気に取られていたアプール達だったが、いち早く正気に戻ったソルベが声をかけると、その場に居た者達はギニューの後に続いた。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

「スーナッ!」

 

 

スーナの事が心配でならなかったギニューはメディカルルームに駆け込んだ。

 

 

 

「ギ、ギニュー隊長……」

「あ、あ……う……あ……」

 

 

そこには医務官に診察されているスーナが。ただし、その姿は下着姿一枚で今まさにシャツを着ようとしているところだった。スーナはギニュー、そしてギニューに追い付いたソルベ達に裸を見られ顔が真っ赤になっていく。

 

 

「き、き……」

「ま、待てスーナ!落ち着いて……」

 

 

顔が真っ赤になったスーナはシャツを素早く着ると、右手を振り上げた。その手にはエネルギー弾がチャージされており、それに気付いたギニューはスーナを落ち着かせようとしたが間に合わなかった。

 

 

「キャァァァァァァァァァァァッ!!」

「ぐおぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「ス、スーナ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

スーナの放ったエネルギー弾はギニューとギニューの後ろに居たソルベ達をも巻き込んだ。

因みにその時、測定されたスーナの戦闘力は1050。元々のスーナの戦闘力を遥かに上回る戦闘力だった。



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スーナ、新兵二人を見極める

 

 

 

 

『ほぅ……それでスーナの戦闘力がハネ上がったと』

「はい。恐らくはサイヤ人特有の戦闘力の上がり方かと」

 

 

ギニューは宇宙船の通信でフリーザに事の顛末を話していた。ギニューの言うサイヤ人特有の戦闘力の上がり方とは、サイヤ人は戦い続け、そして死の淵から甦る度に、戦闘力を増していく特性がある。

 

 

『なるほど……確かにサイヤ人特有の戦闘力増しですが……スーナの元の数値を考えると妙な上がり方ですね』

「はい。私もその事が気にかかっていたのですがスーナからはその事を聞き出せなかったので……」

 

 

フリーザは、いきなり四倍近くまでハネ上がったスーナの戦闘力を不審に思っていた。

 

 

『ところで……何故、ギニューさん達は黒コゲなのですか?ソルベも』

「そ、それは……」

「色々ありまして……」

 

 

フリーザの問いに口ごもるギニューとソルベ。先程のスーナのエネルギー弾でダメージは受けなかったものの、流石に黒コゲになってしまったギニューとソルベ。他の部下達は余波で傷付いた宇宙船の修理や掃除をしていた。

 

 

『ま、良いでしょう。細かい報告は後程スーナにさせます。ギニューさん、後処理を済ませたらアナタはスーナを連れて此方に戻ってきなさい』

「は、畏まりました」

 

 

フリーザはギニューにスーナを連れて戻るようにと指示を出すと、ギニューは敬礼しながら応えた。そして通信が切れると同時に、ギニューとソルベはドッと冷や汗と溜め息を出した。

 

 

「危ないところでしたね」

「うむ……危うく我らがスーナの着替えを覗いた事をフリーザ様に知られるところだった」

 

 

ソルベの呟きにギニューは同意する。スーナの事が心配だったと言っても、ノックも無しに医務室に駆け込んでスーナの裸を見たのも事実だが、この事がフリーザや周囲に知られると二人の評価は確実に下がるだろう。そしてギニューとしてはこれ以上スーナの怒りを買う事を避けたいのだろう。

 

 

「そ、それでスーナの様子はどうだ?」

「今はタゴマやシサミが見ている筈です。なまじベテランの兵が見るよりも新兵の方がスーナ殿も話しやすいかと」

 

 

ギニューがスーナの様子を尋ねると、ソルベは気を回していた様で新兵のタゴマやシサミにスーナの事を頼んでいたらしい。

 

 

「で、では様子を見に行くか……」

「そうですな」

 

 

ギニューはゴホンと咳払いをすると、スーナが居る医務室へ向かう。ソルベはそんなギニューの背を見ながら、思春期の娘に嫌われたくない親の姿そのものだと思うのだった。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

一方その頃、スーナはタゴマやシサミと上がった戦闘力の話をして居た。

 

 

「流石はサイヤ人ですね。圧倒的に戦闘力が上がるとは」

「私としては不思議な感覚です。急に内側からパワーが溢れてくる感じです」

 

 

タゴマの発言に、スーナは医務室のベッドに腰を掛けながら自身の掌を見詰めながら呟いた。

 

 

「今までの戦闘力から上がりすぎた為にスーナ様の中でパワーが滾っておられるのでしょう」

「落ち着かない感じです」

 

 

シサミの言葉にスーナは自身の手を握り開く行為を何度も繰り返す。

 

 

「しかしスーナ様。この調子で強くなり続ければ幹部も夢ではないですぞ」

「シサミ、スーナ様は自身のあり方を悩んでおいでなんだぞ」

 

 

シサミは調子良くスーナを誉めるが、タゴマはスーナが力に悩んでいる事に気付いており、シサミを叱った。

 

 

「んだと?強くなる事は良いことじゃねーか」

「スーナ様は事務職で管理職となられる御方だ。強ければ良いと言う訳じゃない。貴様には分からんだろうなシサミ」

 

 

スーナをそっちのけで喧嘩を始めたタゴマとシサミ。そんな二人を見てスーナは笑みを溢していた。

 

 

「そっか……似てるんですね」

 

 

スーナはタゴマとシサミに聞こえない程度の小さな声で呟いた。タゴマとシサミはスーナが普段から世話になっているザーボンとドドリアに似ているのだ。力関係から考え方まで。だとすれば場を納める方法はスーナにとってはお手のものだ。

 

 

「今回の一件でシャーベさんを失った事でソルベさんの軍は弱体化してしまったでしょう。ですがタゴマさんやシサミさんが強くなってくれれば安心ですね。お二人はザーボンさんやドドリアさんに似ていますから」

「ザーボン様やドドリア様に……」

「ス、スーナ様……我々がそれほどまで強くなれると言うのですか?」

 

 

スーナの発言にタゴマとシサミは言い争いを止めてスーナに向かい合う。

 

 

「はい。私が保証します」

「おお……俺達がそれほどまでに……」

「スーナ様!我等、より一層の努力をします!」

 

 

ニッコリと笑みを浮かべたスーナ、にタゴマとシサミは膝をついて歓喜に震えた。

 

 

「俺達の杞憂だったか」

「スーナ殿も慣れておられる様ですな」

 

 

医務室の扉から中の様子を窺っていたギニューとソルベだが、スーナの様子を見て安心した様だ。

 

 

「スーナ、もう大丈夫の様だ……」

「お父さんのエッチ……」

「ぐっはぁっ!?」

「ギ、ギニュー隊長!?」

 

 

ギニューは安心して医務室に入ったのだが、スーナから距離を置かれた上にジト目で睨まれ、その一言に撃沈した。

 



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スーナ、帰還しフリーザに報告する。

スーナはフリーザ軍の本隊へと戻ってから頭を悩ましていた。

スーナが本隊から他の星域へと行っていた期間は約半年ほど。そう……たった半年ほどなのだ。

 

 

「なんで……こんな事になってるの?」

 

 

スーナの目の前には山と積まれている未処理の書類の束。その大半が、今までスーナが面倒を見ていたギニュー特戦隊やベジータやナッパの様な実働部隊の者達の書類。手付かずのままスーナのデスクに放置されていた。

 

 

「驚いた様ですねスーナ」

「フリーザ様!」

 

 

呆然としていたスーナだが、背後から声を掛けられてハッとなる。声からフリーザだと即座に気づいたスーナはサッと頭を下げた。

 

 

「貴女が第三星域で倒れたと聞いて心配しましたよ」

「私の実力の不徳が致すところです」

 

 

フリーザはニコニコと笑みを浮かべながらスーナが心配だったと言う。対するスーナはフリーザの言葉を信じた訳ではないが、自身の実力不足を自覚していたので素直に頭を下げた。

 

 

「いいんですよ。これから私の為に働きなさい」

「はい。精一杯働かせてもらいます」

 

 

フリーザはスーナの下げた頭を撫でた。その手つきはフリーザとは思えない程に優しいものだった。

 

 

「さて……その書類の束ですが貴女が他の星域に行ってから業務が滞ってましてね。私が行っても良かったんですが、これから貴女に人事を任せるのですから慣れておいた方が良いでしょう」

「それで放置してたんですね……」

 

 

スーナの今後の為にわざと未処理の書類を溜めるという恐ろしい事をするフリーザに、スーナは恐怖を覚えたと同時に、フリーザに未処理の書類を溜め込むという行為をしたギニュー特戦隊やベジータ達にも違った意味での脅威を感じていた。

 

 

「まあ、その書類の束は後でも良いですよ。今は貴女の身に起きた事を聞きたいのでね」

「あ、はい!」

 

 

フリーザに促されてスーナは第三星域での出来事を話した。

ソルベの軍に一時身を任せた際に侵略する惑星に降り立った事。その最中で護衛のシャーベと行動をしていたが

現地の住人に襲われた事。その時に住人に攻撃され、気を失ってしまい一時意識不明になった事。気がついた時には父であるギニューに連れられてソルベの宇宙船に乗せられていた。そして何故か戦闘力が異常増大した事の不思議も全てを話した。

 

 

「ふむ……聞けば不思議なものですね。戦闘力の増大は恐らくサイヤ人特有のものでしょうが、いきなり四倍近い増大は初めて聞きました」

「私も不思議です。私は戦闘の才能は無いと思っていたので」

 

 

フリーザは顎に指を這わせて考える素振りを見せ、スーナは自身に起こった事を未だに信じられない様子だった。

 

 

「まあ、その辺りは追々調べていきましょう。私にはね……貴女が無事に帰ってきた事の方が重要なのですよ」

「あ……フリーザ様……」

 

 

フリーザは指でクイッとスーナの顎に手を添えてスーナの顔を上げさせた。スーナは突然の事態に驚くばかりだ。

 

 

「ふふ……他の皆さんへの挨拶もまだなのでしょう?まずは行ってきなさい」

「は、はい。失礼しますフリーザ様」

 

 

スッとスーナから手を離すフリーザにスーナは少し名残惜しそうな顔になるが、フリーザの命令に従う事にした。スーナはフリーザに頭を下げると退室する。

 

 

 

「ふむ……やはりベジータと違ってスーナはギニューさんとの事もあり私への忠誠心は高いようですね。貴女は私の物ですよスーナ」

 

 

フリーザは、スーナが退室した後に宇宙船の窓から星々を見ながら呟いた。

 



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スーナ、戻るなり説教をする。

 

 

 

 

「おおーっ!待ってたぞスーナ!」

「ちょっ、バータさん!」

 

 

ギニュー特戦隊が居る部屋に足を踏み入れたスーナを出迎えたのはバータだった。バータはスーナを高い高いする様に抱き上げる。

 

 

「ギニュー隊長に聞いたぞ。一段と強くなったそうじゃないか」

「私にその実感は少ないんですよジースさん」

 

 

バータに抱き締められたままのスーナに話し掛けるジース。

 

 

「それよりもよぉ。スーナが戻ってきたんだ、ケーキでも食べようぜ。というわけだ作ってくれよスーナ」

「そうだな、お前が作れよスーナ」

「私の快気祝いなのに私が作るんですか?」

 

 

リクームとグルドはスーナが戻ってきた事を祝うつもりらしいが、その提案はスーナの負担を増やすだけのものだった。

 

 

「スーナも戻ってきたし我等、ギニュー特戦隊も通常になるな」

「……それなんですけどね」

 

 

何処か満足そうなギニューだがスーナは先程の書類を思い出して声のトーンを落とした。

 

 

「なんで私の居なかった半年間にこんなに書類が溜まってたのかな?」

「あ、いや……あのスーナ。いや、スーナさん?」

 

 

スーナから放たれるプレッシャーに抱き上げていたバータだがスッと下ろした。何気に敬語にもなっていた。

 

 

「とりあえず……皆、正座!」

 

 

スーナがビシッと床を指差しながら叫ぶ。その迫力にギニュー達は思わず正座した。

 

 

「さっきね……フリーザ様から直接溜まった書類の事を聞いたんです。不思議ですね、たった半年で未処理の書類が溜まるなんて」

 

 

スーナの言葉にダラダラと冷や汗を流すギニュー特戦隊一同。

 

 

「今後……私はフリーザ様にギニュー特戦隊のマネージャーと人事を任されるから言っておきますけど今後は許しませんからね」

「わかった。わかったから落ち着こうかスーナ」

 

 

ゴゴゴと威圧感のある態度でギニュー特戦隊に説教をするスーナ。その光景を見た一般兵士達は改めてスーナの恐ろしさを感じていた。

 

 

「大体フリーザ様相手に書類を溜め込むなんて何考えてるんですか!ザーボンさんやドドリアさんにも迷惑かけて!」

 

 

ガミガミと叱る、その姿は既にフリーザ軍の幹部の貫禄を出していた。因みに説教は様子を見に来たフリーザが来るまで続き、その様子を見たフリーザは実に満足そうだった。

 

 

 

 

 

◆◇因みにその頃◆◇

 

 

 

「ん?」

「どうしたナッパ?」

 

 

偶々フリーザ軍の星へ来ていたベジータとナッパ。突如ナッパが立ち止まり、ある方向を見始めベジータはナッパを見上げながら質問する。

 

 

「いや……スーナもこの星に来てるから後で会おうかと思ってスカウターをセットしてたんだが奴の戦闘力が1250まで上がってやがる」

「ほう……半年で随分と腕を上げたもんだ」

 

 

ナッパのスカウターに表示されたスーナの戦闘力は1250。スーナは怒りにより更に戦闘力を上げていた。

 

 

「そう言えばラディッツの戦闘力はいくつだった?」

「………この間、計測した時は1300だったな」

 

 

ベジータは生き残った僅かなサイヤ人の一人であるラディッツを思い出す。ナッパは少し前に計測したラディッツの戦闘力を思い出し苦い顔をした。

 

 

「近い内にスーナに戦闘力を追い越されるなラディッツは」

「弱虫ラディッツらしいじゃねぇか。むしろ、その事を教えてやればトレーニングにも身が入るんじゃねーか」

 

 

ラディッツの事は思い出したけど、どうでもいいとベジータとナッパは会話を打ち切った。

 



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惑星ブロッサム

 

 

 

 

スーナがフリーザから人事とギニュー特戦隊のマネージャーを任されてから数日。まず最初にスーナは溜まりに溜まった書類の処理をしていた。

部屋を埋め尽くさんばかりの未処理の書類を確認作業込みで数日で終わらせられたのは、スーナの手腕とザーボンや事務仕事が得意な者が数名手伝ったからだろう。

 

 

「ふ……あああぁぁぁぁぁぁっ……」

「随分、大きな欠伸だなスーナ。まあ、気持ちは分かるが」

 

 

スーナの眠そうな顔を見ながらザーボンは呆れた様な感心した様な表情を浮かべた。なぜなら、ザーボンも書類仕事を手伝ったがそれは数割程度のもので、全体量を考えればスーナが何日徹夜したか推して知るべしである。

 

 

「ごめんなさい、ザーボンさん」

「いや、むしろ休めと言いたいんだがな。明日からの任務もあるんだろう?」

 

 

スーナの発言に、やれやれと溜め息を吐くザーボン。

 

 

「そうもいきません。明日はフリーザ様とギニュー特戦隊の視察に行かなければならないので」

「ああ……惑星ブロッサムだったか」

 

 

スーナの言葉にザーボンは納得した。フリーザとギニュー特戦隊が向かう惑星ブロッサムとは、サクラと呼ばれる美しい花が咲く惑星で他の惑星からその花を見に来る者もいる程である。

その星は今まで銀河パトロールが管理していた惑星だが、その花の美しさを気に入り、惑星そのものが欲しくなったフリーザは銀河パトロールを排除して、その惑星を手に入れようと考えたのだ。だが下級兵士や中級兵士では、銀河パトロールを排除する際にサクラの花まで傷つけてしまうかもしれない。故にフリーザは側近のザーボンとドドリア。そしてギニュー特戦隊の少数で侵略しようと考えたのだ。

スーナはそれに同伴しフリーザ監視の下、査察をする事になったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇惑星ブロッサム◆◇

 

 

 

「うおりゃあ!」

「バカ、バータ!エネルギー波なんか撃ったら星が傷つくだろ!」

 

 

バータの放ったエネルギー波が銀河パトロールもろとも地面を抉る。それを見たジースが叫んだ。

 

 

「気を付けろ馬鹿者!この惑星はフリーザ様の物になるのだぞ!」

「でも隊長、面倒くさいッスよ。星を傷つけない様に戦うのとか」

「確かに手加減とか俺達向きじゃねーよな」

 

 

ギニューの叱咤にバータが頭を掻きながらボヤき、リクームが同意した。

 

 

「そんな事を言わずに頑張って下さい。フリーザ様は幹部の皆さんやギニュー特戦隊の力を認めた上で、この任務を任せているんですから」

 

 

そんなバータにフワリとスーナが飛びながら近付く。スーナは惑星ブロッサムに降り立った時から各所を見て回っていた。

 

 

「お前も来るのかスーナ?」

「勿論ですよ。それに現場を見るのは大切な事です」

 

 

ジースの疑問にスーナはメモ帳に何かを書き加えながら答えた。

 

 

「ボーナス査定の参考にもなりますし」

「あああ……マイナスの棒が……」

 

 

メモ帳を上から覗き見たバータは書き加えられていく評価に声を震わせていた。



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宇宙最強兄弟の対峙

 

 

 

 

惑星ブロッサムを制圧していくフリーザ軍。この惑星に駐留していた銀河パトロールもアッサリと倒して、後は星全体の常態や土壌調査を済ませれば終わり……という所まできていたのだが……

 

突如、フリーザ軍と同型の宇宙船が惑星ブロッサムに降り立ったのだ。中から四人の宇宙人が出てきた。そしてフリーザの前に立つと中の一人が一歩前に出た。後ろの三人はフリーザを前に膝を突く。

 

 

「久しぶりだな、フリーザ」

「お久しぶりですね、兄さん」

 

 

二人から発せられた発言はスーナを大いに驚かせた。ザーボンからフリーザの父兄の話は聞いていたが、まさかこんな所で会うとは思わなかったからだ。

 

 

「あ、あの方がクウラ様なんですか?」

「はい、フリーザ様のお兄様のクウラ様です」

 

 

側近のザーボン、ドドリア。特戦隊等の幹部がフリーザの側に控えていた為、スーナは兵士達と共にフリーザ達から離れた位置でボソボソと事実確認をしていた。

 

 

「惑星ブロッサムを制圧するとはな。この惑星の価値は貴様も知っていた訳か」

「ええ、兄さんも知っての通り惑星ブロッサムは美しい惑星ですからね。僕にピッタリなんですよ」

 

 

バチバチと睨み合うクウラとフリーザ。表面的には笑ってはいるが目は笑っていなかった。

 

 

「美しい惑星が貴様にピッタリとはな。自分は軟弱と言いたいのか?」

「兄さんこそ……ただ戦いだけの為だなんてサイヤ人みたいじゃないですか」

 

「然り気無い会話の中に鋭いトゲがありますね」

「あの会話を然り気無いと言えるスーナ様もよっぽどですよ」

 

 

フリーザとクウラの会話の裏でスーナは兵士達と話をしていた。会話の中から兵士はスーナも大物になってきていると冷や汗を流した。

 

 

「サイヤ人か……そう言えば貴様はサイヤ人を数匹、飼っていたか」

「彼等も仕事が出来るのでね。中でもフリーザ軍の人事を任せているスーナは優秀でしてね。スーナ、此方に来て、兄さんに挨拶なさい」

「は、はい!」

 

 

クウラの発言にフリーザはスーナを呼び寄せた。対して呼ばれたスーナはビクンと体を震わせた。

スーナは離れた位置に居たのでフリーザとクウラの下へと走った。

 

 

「スーナ……そもそも、貴女はフリーザ軍の幹部なんですから、こういう時は私の側にいなさい」

「は、はい……申し訳ありません」

 

 

フリーザはニコニコと笑みを浮かべながらスーナの肩に手を置くがスーナは冷や汗を流していた。

フリーザとクウラ。二人の宇宙最強一族に挟まれたスーナは恐縮していた。

 

 

「ほう……サイヤ人の様な猿ごときに人事を任せるとはフリーザ軍は人手不足か?」

「……あぅ」

 

 

クウラの言葉に萎縮するスーナ。しかし、フリーザがスーナの隣に立つ。

 

 

「兄さん、スーナは優秀ですよ。確かに戦闘力は低いですが他が優れてますから。彼女は我が軍に必要な存在です」

「フ、フリーザ様……」

 

 

スーナはフリーザが自身を庇ってくれた事に感動していた。

 

 

「ふふふ……フリーザ軍も質が落ちたな。やはりクウラ様の軍が……ギニュー?」

「まさか……フリーザ様にそこまで言っていただけるとは……このギニュー感激の極み!」

 

 

フリーザ軍の事を笑おうとしたのはクウラ軍のクウラ機甲戦隊のサウザーだった。しかし、話し掛けられたギニューはフリーザのスーナに対する期待の高さに涙を流して崩れ落ちていた。



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スーナとクウラ

 

 

「スーナ様、土壌の調査が完了しました」

「スーナ様、殺していない銀河パトロールはどうしますか?」

「私の端末に送っておいて下さい。兵士の皆さんは銀河パトロールを本部に送り返しますから一纏めに。それから荒れた大地の地ならしをしてください」

 

 

バタバタと働く兵士達にスーナは指示を出し続ける。兵士達はスーナの指示を仰ぎ、忠実に動いていた。

一部の兵士は大量のデータを纏めながらスーナの端末に送り、一部の兵士は捕らえた銀河パトロールを縄でグルグル巻きに拘束し、一部の兵士はギニュー特戦隊や側近が戦った際に荒れた大地を手直しする為に奔走していた。因みにギニュー特戦隊は明日に行われる、お花見の為にダンス訓練をしていた。

 

 

「その……スーナ様」

「なんですか?」

 

 

そんな中で一人の兵士がスーナに話し掛けづらそうに歩み寄る。

 

 

「非常に仕事しづらいのですが……」

「気持ちはわかりますが、お願いします」

 

 

スーナや兵士の後ろには、仕事を監督するようにフリーザとクウラが居た。二人は表面上はにこやかに仕事を観察している様に見えるが、軍のトップが見ている最中で働く兵士達の心境は穏やかではないだろう。スーナもそんな兵士達の気持ちは察していたが、フリーザやクウラに意義の申し立てなんか出来る訳もなく黙々と仕事に徹していた。

 

 

「ふん、銀河パトロールを始末しないとは、やはり甘いなフリーザよ」

「今回の件はスーナに任せています。それよりも兄さんも殺してばかりとは野蛮ですね」

 

 

そんなスーナや兵士達の意思など関係なく、フリーザとクウラは言葉の端々に刺を感じさせながら会話を続けていく。

 

 

「そうか、ならば敵を生かす甘い考えを聞かせてもらおうか……おい、猿!」

「猿……はい、クウラ様」

 

 

クウラに呼ばれたスーナは、猿呼ばわりされた事は流石に嫌だった。が、顔には出さずにクウラの前に立つ。

 

 

「貴様が兵士達に命じて銀河パトロールを殺さずに生かす理由を教えて見せろ」

「フリーザ軍の力と恐怖を語り継がせるため、あえて殺さずに銀河パトロールの本部に送りつける策を取らせていただきました。生かさず殺さず状態で銀河パトロールに送り返す事で捕らえた銀河パトロールの口からフリーザ軍の脅威を語ってもらいます。そして脅威を語らなかったとしても、その体に刻まれた傷は周囲に恐怖を与えるでしょう」

 

 

クウラの質問に答えたスーナ。それはフリーザ軍が難なく銀河パトロールを壊滅を済ませた事を知らしめる為にも、語り部となる存在を作る策だった。

 

 

「直接的な恐怖ではなく、敢えて生かして恐怖を刻み込むと言う事か」

「はい、捕らえた銀河パトロールが仮に『フリーザ軍は大した事がなかった』と主張しても半殺しにされた銀河パトロールの兵士を見れば嘘だとすぐに分かるでしょう。その事は周囲に伝わり、結果的にフリーザ軍に対する恐怖や脅威を伝える事となるでしょう」

 

 

クウラは少し理解したという風に口を開くと、スーナは補足で説明をいれた。

 

 

「ただ殺すだけではなく、使えない銀河パトロールの屑を再利用するとはスーナは優しいですね。そしてそれが私の為になるとは素晴らしい忠誠心です」

「ありがとうございます、フリーザ様」

「ふん……回りくどいな」

 

 

ニコニコとフリーザは満足そうにしながらスーナを誉めるが、クウラはフンと鼻を鳴らした。

 

 

「フリーザ様、クウラ様。本日までは土地の制圧や地ならしをしましたが明日までには整えます。明日はお花見をお楽しみください」

「楽しみにさせてもらいますよ、スーナ。兵士達の指示は任せます」

「猿、精々働くんだな」

 

 

頭を下げたスーナにフリーザはニコリと笑みを浮かべてから宇宙船に戻り、クウラは最後までスーナを猿と呼んで同じく宇宙船に戻っていった。

フリーザとクウラを見送ったスーナは素早く、兵士達に指示を出した。万が一にも間に合わなかったなんて事態を招かない為だった。

 

 

「アレがサイヤ人の生き残りか……けけ、苛めてやろうじゃないか」

「面白そうだな、俺にもやらせろ」

「何をする気だネイズ、ドーレ。だが、フリーザ軍の奴等が目立つのは気に入らんな」

 

 

甲斐甲斐しくも働くスーナを観察していたのはギニュー特戦隊と対をなす存在のクウラ機甲戦隊のネイズ、ドーレ、サウザーだった。



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スーナとネイズ

 

 

 

 

 

クウラの少数精鋭を基準としているクウラ軍はサウザー、ネイズ、ドーレの三人のみである。

徹底した少数精鋭システムはフリーザ軍と違い、星の殲滅等では多大な功績を残していた。その戦闘力はクウラを含めた四人で星を七つ一日で制圧してしまう程だ。

ギニュー特戦隊が、独立して行動し特別任務に当てられているのに対し、こちらは常にクウラに付き従う親衛隊のような存在であり、フリーザ軍で言えば特戦隊よりもザーボンやドドリアのポジションに近い。

 

だが、その強さ故にクウラ機甲戦隊は増長していた。クウラ軍とフリーザ軍で違う軍とは言っても同格のギニュー特戦隊と常に対立し、邪魔をしていた。

この事がフリーザ軍とクウラ軍の対立を更に深めていた。

 

 

そして今回、クウラの関心を引いたスーナを苛めてやろうと、クウラ機甲戦隊の一人ネイズは深夜になってからフリーザの宇宙船を彷徨いていた。

 

 

「ケッケッケッ……あの猿に何してやろうかねぇ……」

 

 

ネイズは廊下を歩きながら悪戯な笑みを浮かべていた。因みにフリーザ軍の宇宙船にクウラ軍のネイズが歩いているのはあまり良い顔をされなかったが、ネイズに口出しできる兵士はいないし、ギニュー特戦隊はダンスレッスンで宇宙船から離れている為に不在だった為に、尚更誰も何も言えなくなってしまっていた。

 

 

「お、居た居……」

 

 

宇宙船を歩き回ったネイズは目当てのスーナを見付けて声を失った。スーナは眼鏡型のデバイスにデータを映しながらカタカタと仕事をして居た。

現在の時刻を考えればとっくにスーナは寝ていると思っていたのだ。しかし、スーナは事務室で未だに仕事をしているではないか。その事に驚いているとスーナがネイズに気付いた。

 

 

「クウラ機甲戦隊のネイズさんでしたよね?どうかなさいましたか?」

「ん、ああ……ちょっと寝れなくてな」

 

 

まさか悪戯しようと思っていた本人が起きているとは思わず、ネイズは咄嗟に嘘をついた。

 

 

「クスッ……クウラ機甲戦隊の方でも寝れない事ってあるんですね」

「ちっ……からかうな」

 

 

 

サイヤ人みたいな猿に笑われたとネイズは舌打ちした。その間にスーナは席を立つと事務室に備え付けのポットから紙コップに何かを注ぐ。

 

 

「どうぞ」

「ん、なんだこりゃ?」

 

 

スーナから差し出された紙コップを反射的に受け取ってしまうネイズ。その液体がなんなのか問うネイズ。

 

 

「ホットミルクですよ、眠れない時には最適です」

「そ、そうかい……」

 

 

スーナの笑みにネイズは毒気を抜かれた気分になった。ネイズの嘘をアッサリと信じ、気を使ってホットミルクを差し出すスーナはネイズの知るサイヤ人とはかけ離れていた。

 

 

「あ、そうだ。ネイズさん、クウラ様の好きなお酒って分かりますか?」

「あ、なんだよ急に?」

 

 

ネイズがサイヤ人の事を考えていると、スーナからの質問にネイズの思考は引き戻される。

 

 

「明日のお花見にクウラ様にお飲み物をお出ししたいのですが、クウラ様の好きなお酒が分からないものでしたから……」

「………クウラ様の好きな酒はブランデーみたいな酒だ。クウラ様のお飲み物は俺達が準備するから問題はねーよ」

 

 

 

アハハと自分の失敗を苦笑いで告げるスーナ。その笑みは年相応の子供だった。

 

 

「ありがとうございます、ネイズさん。えーっと後は……朝にフリーザ様とクウラ様のお席を用意して……」

「お前……一人で仕事をしてるのか?」

 

 

再び、パソコンと向かい合うスーナにネイズは呆れた様に話しかけた。

 

 

「兵士の皆さんに指示を残しておく為の作業です。フリーザ様に人事を任された以上、責任をもってやらなければなりません」

「そうかい。ま、精々、頑張るんだな」

 

 

そう言ったスーナの顔つきは、先程までの年相応の顔つきから仕事中毒のOLみたいな表情になっていた。

その顔を見てネイズは思うところがあったのか、ホットミルクを飲み干して紙コップをスーナのデスクに置いて事務室から出ていった。

 

 

 

「ちっ……くそ……」

 

 

 

真面目に仕事をし、更に自分達が本来気を回さねばならない部分をフォローしていたスーナ。それに対して、自分は何をしていた? ギニュー特戦隊の対抗心から自分は何をしようとしていた?

その事を考えていたらネイズは先程までの自分がえらく小さく感じて、スーナの事が大きく見えて、その事がネイズを苛立たせていた。



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お花見中断。

 

ネイズがスーナの所を訪れてから数時間後、惑星ブロッサムでの花見が始まろうとしていた。

 

 

「おい……本当に寝たのか、お前」

「寝ましたよ……二時間程……」

 

 

フラフラと仕事をしているスーナを見付けたネイズはスーナに話し掛けると、返ってきた答えは大丈夫とは程遠いものだった。

 

 

「そんなフラフラでどうするんだ……休めよ」

「大じょぶ……らいじょー……」

 

 

スーナの体がフラりと倒れそうになったのをネイズが咄嗟に支えた。その際、スーナの持っていたファイルがバサリと地面に落ちる。

そしてスーナを抱き止めたネイズは軽い、と感じた。スーナは子供だが、それを差し引いても軽すぎるとネイズは感じとった。

 

 

「スーナ!?貴様、スーナに何をした!」

「ギニュー隊長!?いや、違う、俺がやったんじゃねぇ!」

 

 

ネイズに抱き抱えられているスーナを見て、ギニューは叫びを上げる。そしてネイズの腕の中でスーナがモゾモゾと動き始める。

 

 

「ご、ごめんなさいネイズさん……私、大丈夫ですから」

「あ、おい!」

 

 

スーナはネイズの腕の中から飛び出すと、落としたファイルを拾い走って行ってしまう。

 

 

「こら、待つんだスーナ!」

「ごめんなさい、お父さん!まだ確認する事があるの!」

 

 

ギニューの制止を振り切ってスーナは行ってしまう。

 

 

「スーナ!……まったく……何故、親の言う事を聞かんのだ」

「あ、あの……ギニュー隊長。何があったんだ?」

 

 

スーナが自分の言う事を聞かない事にギニューが腕を組みながら怒っていると、遠慮がちにネイズが話し掛ける。

 

 

「……フリーザ様に人事を任されてから、あの様子なのだ。特戦隊が書類を溜めてしまったのも原因の一つだが最近のスーナは無理をしすぎている」

「………昨日、ちっと用事があってフリーザ様の宇宙船にお邪魔したんだが、昨夜も実質徹夜してたみたいだな」

 

 

ギニューは最近の悩みを口にする。因みに特戦隊が書類を溜めてしまったとは言うが、ギニューはちゃんと書類を提出しており、リクーム、ジース、バータ、グルドが出していなかったのである。他にもベジータや他の部署の者も勝手に書類を持ち込んでいたりもする。

 

 

「休めと……何度も言っているのだが、あの様子でな……俺もスーナが心配で本日、フリーザ様にお見せするダンス(お花見ver)の練習にも身が入らなかった……」

 

 

そんな心配ならダンスの練習しないでスーナ様の事をもっと気に掛けて下さい……と、近くで作業をしていた下級兵士達は心の中でツッコミを入れた。

 

 

「ギニュー隊長……我等、兵士達もスーナ様が心配で何度も進言しているのですが、聞き入れて頂けないのです」

 

 

そんな中、一人の下級兵士が前に出る。以前、ギニューと共にスーナを迎えに行ったアプールだった。

 

 

「ううむ……何故、スーナは彼処まで働こうとするのだ!それはフリーザ様の為にはなるが、お前自身の為にならん。何よりも見ていて俺が辛い!」

「表向きの理由と本音が見事に別れましたね。まあ、我々も同じ意見ですが」

 

 

ギニューの叫びにアプールがツッコミを入れ、周囲の兵士達がうんうんと頷く。その光景を見て、ネイズはスーナの奴、兵士達にも慕われているんだな、と思っていた。

 

 

「おおぃ、ネイズ。あの猿の小娘を苛める算段は着いたのか?」

「ドーレ……いや、今はその話は止めておけ」

 

 

そんな空気を全く読まずにクウラ機甲戦隊のドーレがドスドスと歩きながらネイズに歩み寄る。ネイズはこの場でスーナの話題を出すのはマズいと思い、口止めをしようとするがドーレは止まらない。

 

 

「ああん?あんな猿に何をビビってるんだ?」

「止めろドーレ!マジでフリーザ軍と戦争になりかねん!」

 

 

ドーレはサイヤ人の子供なんかに何をビビってると言うが、実際には親であるギニューにその話を聞かれるのがマズいと思っていた。何故ならネイズの背後でギニューは明らかに怒っている雰囲気を露にし、周囲の下級兵士達も今にも襲い掛からんと言う程に目をギラつかせていた。

 

 

「た、隊長!ギニュー隊長!」

「なんだ、ジース?俺は今からコイツを……」

 

 

今にもドーレにミルキーキャノンを叩き込もうとしているギニューの下に、ジースが慌てた様子で飛んできた。

 

 

「それどころじゃありません!スーナが倒れました!」

「な、なんだと!?」

 

 

ジースから告げられた言葉にギニューは目を見開いて驚愕する。周囲の兵士達にも緊張が走った。

 

 

「今はクウラ様の宇宙船に……」

「スゥゥゥゥナァァァァァッ!!」

 

 

ジースの説明を途中まで聞いたギニューはクウラの宇宙船に飛び立った。その速度は普段のギニューの最高速度を遥かに上回っていた。

 

 

「ギニュー隊長、俺も行きます!」

「俺も行くぜ!」

「お、おいネイズ!?」

 

 

その後をジース、ネイズ、ドーレが追う。

そして最高速度を叩き出したギニューはクウラの宇宙船の中に飛び込んだ。フリーザの宇宙船とクウラの宇宙船は型が同じでメディカルルームは同じ部屋配置である。

ギニューは迷わず、メディカルルームへと足を踏み入れた。そしてその先で見た光景にギニューは言葉を失う。

 

 

 

 

 

 

ベッドで眠るスーナの脇で椅子に腰掛けながら脚を組み、スーナが先程まで手にしていたファイルを眺めているクウラの姿があったからだ。

 



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スーナ、クウラから評価される

 

 

 

 

ギニュー達がスーナが眠る医務室に入ってくる少し前。

 

クウラはベッドで眠るスーナとスーナが落としたファイルを眺めていた。その中にはフリーザ軍の強化プランと運営方法。各部署の配置と予算の配分等が草案として書かれていた。

その内容は少数精鋭のクウラ軍とは違い、複雑な物となっていた。兵士が増えるという事はやらねばならない事が増えるという事であり、その運営を目の前で眠る少女が行っているかと思うと、クウラは何とも言えない気持ちになっていた。

 

フリーザ軍とクウラ軍で合同で行われる予定の花見で、場を取り仕切っていたスーナが指示を出している途中で倒れてしまうのをクウラは偶々目撃してしまう。その際に慌てていた兵士達だったが、クウラはスーナが手にしていたファイルを少し気になって目を通す。その内容は先程述べた通りの内容が目次になっており、恐らくフリーザに提出する予定なのだろうが、それはクウラの気を引くには十分な内容だった。

 

クウラは兵士達にスーナをクウラ軍の宇宙船の医務室に運ぶように指示を出すとファイルを眺めながら、スーナの価値を見出だしていた。

ただ星を制圧するのではなく、生体や管理をするプランは今までのフリーザやクウラには無い特殊な内容だった。中には現地の住人を説得し、他の星へと送り込んで労働力の確保と他の惑星を手に入れる等のプランも書いてあり、回りくどいが普通に制圧するよりも星が傷付かないやり方は画期的だった。

 

 

「サイヤ人らしからぬ奴だ」

 

 

サイヤ人は戦闘民族の名の通り、戦う事に特化した種族。そのサイヤ人が此処まで頭を使ったプランを練っている事はクウラの興味を引いていた。

 

 

「あの赤子のサイヤ人以外にも生き残りがいたか……ククク。フリーザの甘さが意外な人材の発掘を見出だしたか」

 

 

クウラは過去にフリーザが見落としたサイヤ人の赤子の事を思い出していた。フリーザが惑星ベジータを破壊した際に丸型宇宙船で地球という辺境の星に飛ばされているのを見ていた。しかし、フリーザの尻拭いをする気がなかったクウラはそれを放置した。自分で撒いた種は自分で刈らせる。それはクウラ成りに弟を思っての事だったのかもしれない。本人の真意はどうであれ……

 

 

「スーナ!な、クウラ様っ!?」

「ようやく来たか」

 

 

クウラがある事を思案していると時同じくして、ギニューが医務室に駆け込んできた。スーナの側で座るクウラを見てギニューは驚愕するが、クウラは視線を少し動かした後に再びファイルに視線を落とした。

 

 

「こ、これはクウラ様……」

「この小娘が倒れたのなら花見は明日にしろ。フリーザには俺から伝えてやる」

 

 

クウラは椅子から立ち上がると手にしていたファイルをギニューに投げ渡した。ギニューは反射的にファイルをキャッチすると医務室を出ていくクウラを見送った。

医務室を出たクウラは廊下を埋め尽くさん程に揃っている兵士達を見た。先頭にはアプールが居た。

 

 

「あの小娘が心配だったと言う事で見逃すが……今すぐ持ち場に戻れ」

「は、はいっ!」

「し、失礼します!」

 

 

クウラの睨みにアプールを筆頭に兵士達はバタバタと逃げる様に、その場を後にした。

 

 

「兵士達にも慕われている……か」

「その様ですな。見ている限りじゃフリーザ軍の幹部で一番兵士達に慕われているみたいですぜ」

 

 

その場にクウラしか残らないかと思われたが、同じくスーナの様子を見に来ていたネイズが居た。

 

 

「ネイズ……貴様はあの小娘をどう思う?」

「フリーザ軍の中でも希少な存在かと。少なくとも我々の陣営にはいない人材です。それにサイヤ人なら今後は戦闘力も化ける可能性があるやもしれませんな」

 

 

クウラはネイズにスーナの事を聞くと、ネイズから返ってきた答えはスーナの好評価だった。

 

 

「そうか、あの小娘……フリーザには勿体ないかもしれんな」

「もしもスーナが我が軍に来るとなれば華やかになりますな」

 

 

フリーザの宇宙船に歩きだしたクウラの後を追うネイズ。その会話はスーナの今後を巡るものだった。

 

 



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スーナ、スカウトされる。

 

 

 

スーナが倒れた次の日。花見は順調に行われていた。スーナは現場の仕切りよりもフリーザやクウラの近くで酌をする役目を拝命し、本来スーナがやる筈だった仕切りはスーナを慕う部下達の尽力により滞りなく進められた。

 

そして花見も終盤に差し掛かり、クウラが一足先に帰ると言い始め、宇宙船に戻ろうとする際に騒動が起きた。

クウラを見送ろうとフリーザ、スーナ、ギニュー特戦隊が揃った所で、クウラはスーナに歩み寄り目の前に立つと口を開いた。

 

 

 

「スーナ、俺に仕える気はないか?」

 

 

クウラの発言に、その場の全員が息を飲んだ。

 

 

「ク、クウラ様……何をおっしゃられて……」

「貴様は黙っていろサウザー。答えを聞かせろスーナ」

 

 

クウラの発言にいち早く回復したのはサウザーだった。サウザーはクウラが冗談を言っているのかと思ったがクウラはサウザーを威圧して黙らせ、スーナに返答を急かした。

 

 

「クウラ様、私などをお誘い頂き身に余る光栄です。ですが私はフリーザ様にお仕えしている身。そして私は父と離れる気もありません」

「ほぅ……俺に逆らうか?」

 

 

スーナが頭を下げ、クウラの誘いを断るとクウラは指先をスーナに差し向けエネルギーをチャージしていた。

 

 

「クウラ様は仕える主をすぐに鞍替えする部下をお望みですか?」

「クックックッ……ハーハッハッハッ!」

 

 

スーナが頭を上げ、クウラから視線を反らさずに真っ直ぐに見据えた。その仕草にクウラは堪えきれなくなったのか大笑いを始めた。

 

「本当にフリーザに仕えさせるのが惜しいな。フリーザに仕える気がなくなったら俺の所に来い」

 

 

クウラはスーナの頭にポンと手を乗せた後にその場を離れて自身の宇宙船へと入っていった。

 

 

「ク、クウラ様お待ち下さい!」

「ちっ……なんであんな猿ガキなんかをクウラ様は……」

「じゃーな、スーナ。また今度な」

 

「はい、皆様もお元気で」

 

 

サウザー、ドーレ、ネイズは慌ててクウラの後を追って宇宙船に飛んでいった。スーナは三人を頭を下げて見送った。

 

 

「よくやりましたよスーナ。兄さんからのスカウトをよくぞ断ってくれました。これで兄さんの面目は丸潰れですね」

「よかったぞスーナ!お前がクウラ様の所に行くんじゃないかと俺は……俺は……」

 

 

クウラ達が居なくなった後にフリーザとギニューがスーナに歩み寄る。フリーザはスーナの行動がクウラの面目を潰した事と自身を裏切らなかった事を誉め、ギニューはスーナがクウラ軍に行かなかった事を喜んだ。尤もギニューは花嫁を送り出す父親みたいな雰囲気ではあったが。

 

 

「おや、スーナさん?」

「スーナ、どうした?」

 

 

しかし、フリーザとギニューが話し掛けてもスーナはピクリとも動かなかった。それを怪訝に思ったギニューがスーナに手を伸ばそうとすると、スーナは膝から崩れ落ちた。

 

 

「ス、スーナ!?」

「ビ……ビックリしました……まさかクウラ様が私をスカウトするなんて……」

 

 

ギニューは座り込んでしまったスーナの肩を支える。その体はカタカタと震えていた。

 

 

「ア、ハハ……腰が抜けちゃいました……」

「怖かったのか無理もない」

 

 

眼鏡がズレたまま力なく笑うスーナにギニューは仕方ないと呟いた。宇宙の最強兄弟に挟まれ、しかも片方から殺される一歩手前まで行ったにも関わらず、スーナは気丈に振る舞った上にクウラの誘いを断ったのだ。それで平静でいられる方がどうにかしている。

 

 

「ホッホッホッ……ですが貴女の私に対する忠誠心は改めて拝見させて貰いましたよ。今後は仕事のしすぎで倒れないようにしなさいスーナ。貴女の命は……私の為にあるのですから」

「はい……申し訳ありませんでしたフリーザ様」

 

 

クウラの面目を潰した上に自身に対する忠誠心を見せたスーナにフリーザの評価はうなぎ登りの様だった。然り気無く体調管理を言い渡す辺り、フリーザは本当にスーナを重宝しているのだろう。

 

 

「うむ、やはりスーナは体力がないのが問題……よし、今日からダンスの特訓だ!」

「それは別の機会にしなさい」

 

 

スーナに体力をつけさせる為に何故かダンスの特訓を考え付いたギニューだが、フリーザに即座に止められていた。

 

 

「それよりも、このブロッサムは過ごしやすい惑星ですね。もう一日此処で骨休めをする事にしましょう。スーナ、貴女もしっかり休むのですよ」

「はい、畏まりましたフリーザ様」

 

 

フリーザは惑星ブロッサムが骨休めに丁度いいと発言し、滞在日時を一日増やす事にした。スーナにもしっかりと休むように伝えたフリーザ。彼女には今後もまだまだ働いてもらうというメッセージなのだろう。その言葉にギニューや他の部下も感涙し、フリーザに対する忠誠心を更に高める結果となった。

 

 

しかし、これより一年半後にフリーザ軍を大きく変動させる事件が起こる事を、この時はまだ誰も知らなかった。

 



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スーナ、十二歳の頃

 

 

 

 

 

惑星ブロッサムの花見から一年半後、スーナは十二歳になりフリーザ軍の人事として働いていた。今まで滞っていた書類関係の仕事を円滑に進め、兵士達の働きの見直し、ギニュー特戦隊のマネージャーと多忙な日々を送っていた。惑星ブロッサムで体調不良で倒れた時のような事はなく、忙しく過ごしながらも無茶はしない日々だった。

 

 

 

「あ、また勝手な事をして、あの人達は……」

 

 

スーナは自身に届けられた書類に目を通して頭が痛くなり始めていた。その書類はギニュー特戦隊に対するモノで、スーナがマネージャーをするようになってから多少はマシになってきたギニュー特戦隊だが、未だにトラブルの種である。

 

 

「スーナ様、先日滅ぼしたスラッグとかいう宇宙人の件ですが……」

「ああ……フリーザ軍の領地に攻め込んできた方々ですね」

 

 

スーナは書類仕事を進めながらアプールの話を聞き、先日の騒動を思い出した。

スラッグと名乗る武装宇宙人達がフリーザ軍の領地を侵略しようと攻め込んできたのだ。しかし、運が悪かったのはスラッグ達である。その日、視察という事でフリーザ、ザーボン、ドドリア、スーナがその惑星に居たのだ。

フリーザの怒りを買ったスラッグは軍を滅ぼされた挙げ句、自身も宇宙の塵となった。

 

 

「あのスラッグとやらも恐らくは若い頃は強い存在だったのでしょう。いやはや、老いとは恐ろしいものですね」とはフリーザの言である。妙に実感が籠った一言だったとスーナは感じていた。

 

 

「奴等の戦闘力は高かったのでフリーザ軍へのスカウトも考えた方が良かったのかと……」

「フリーザ様に牙を向いた段階で却下でしょうね。それに後で調べて判明したのですがスラッグ星の方々は日光に弱いみたいで他の惑星に行くのには向かない種族だった様です」

 

 

スラッグ星出身の彼らは全員、日光に弱いという弱点を持つ。それは他の惑星を侵略する上で最大級の足枷となるだろうとスーナは考えていた。

それにリーダーであったスラッグという年老いた宇宙人は、誰かに従うよりも支配する側の人格だったから、フリーザに忠誠を誓うとは思えなかったスーナはその可能性を最初から除外していた。

 

 

「スーナ様!」

「どうしました?」

 

 

そんな話を進めるスーナとアプールの元に部下が慌ただしく部屋に入ってきた。

 

 

「ご報告します。ベジータ様とナッパさんが担当していた惑星から離れて別の惑星へとポッドを飛ばした様です!」

「ベジータ王子とナッパさんが?詳しい報告をお願いします」

 

 

部下の報告に嫌な予感がしたスーナは詳しい報告を部下に求めた。内容はこうである。

 

とある惑星侵略をフリーザから命じられていたベジータとナッパだが、命令を途中で放棄して違う惑星に向けてポッドで飛んでいってしまったのだという。それに兵士が気付いたのはポッドが飛んでから数日後で、ベジータとナッパが惑星侵略の報告をしない事から気付いたのだと言う。何度も帰還する様に連絡をしたのだが、いつもなら『高値の星を見つけた』『フリーザ様の為だ』と短い返答が来る。だが、今回はそれすらもないから不審に思った為にスーナに報告となったのだ。

 

 

「なるほど……ベジータ王子が向かった惑星は予想は出来ますか?」

「いえ、それが……ベジータ様とナッパさんが侵略をしていた惑星からは逆方向なのです。しかも大した文明の無い惑星ばかりの宙域です。おおよその方角は算出出来ますが行き先までは……」

 

 

その報告を聞いてスーナは益々妙だと感じた。ベジータとナッパは戦闘を求めて常に最前線に身を投じていた。そんなベジータとナッパが大した文明の無い惑星ばかりの宙域に向かうなど今までなかったからだ。

 

 

「私はフリーザ様にご報告します。皆さんは通常業務へ戻ってください」

「ハッ!」

「了解しました!」

 

 

アプールと他の部下に指示を出したスーナは書類を持つとフリーザの元へと足を運んだ。

 

余談だが、スーナの手元にある書類にはギニュー特戦隊が無断で経費を使い、チョコパフェを食べていた事に対する始末書も含まれていたりする。

 



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報告と指示

 

書類を片手にスーナはフリーザの執務室に訪れた。ベジータの件とギニュー特戦隊の仕出かした事の報告の為である。

 

 

「おや、どうかしましたかスーナさん」

「ご報告します。ベジータ王子とナッパさんが命令を無視して他の惑星に向かった様です」

 

 

連絡も無しに急に現れたスーナにフリーザは首を傾げ、スーナは物事を簡潔に報告した。

 

 

「ベジータさんと……ナッパ……ふむ、ナッパ……」

「ナッパさんは生き残ったサイヤ人の方です」

 

 

ベジータの事は覚えていたがナッパの事はうろ覚えだった様子のフリーザ。

 

 

「ああ、思い出しましたが……彼等が任務を放棄したと?」

「はい。侵略予定だった惑星から離れて別の惑星を目指している様です。他の兵士が連絡を取ろうと通信したのですが無視しているようです」

 

 

スーナの説明にフリーザはフムと顎に手を沿わせる。

 

 

「ふむ……いつもなら最低限の連絡は寄越す様ですが、それも無しですか」

「如何致しましょう。ベジータ王子を連れ戻すとなるとギニュー特戦隊やザーボンさんやドドリアさんでないと不可能ですが」

 

 

ベジータの行動に何を考えているのか悩んでいるフリーザ。ベジータを連れ戻すならば、ギニュー特戦隊やフリーザ側近の二人でないと戦闘力の関係上、不可能である。

フリーザは考える。ベジータはベジータ王や他のサイヤ人とは違ってバカではない。今まで目に見えた反逆は行わずナッパやラディッツを嗜める様に行動をしていた。そんなベジータが此方の指示を無視したという事は何かしらの要因があると考えた。

 

一つ目に考えたのは、高値で売れそうな惑星を見付けたから点数稼ぎの為に動き始めた。

二つ目に考えたのは、惑星を侵略する以上に重要な物を見付けたから。

三つ目に、自身に反逆する為に他の宇宙人と徒党を組んで力を蓄えているか。

 

様々な憶測や推察をフリーザは頭の中で行うが、どれもベジータなら可能性があると考えたフリーザは一つの決断を下す。

 

「いえ……放っておきましょう。ベジータさんの事ですから私の為に行動しているのかも知れません。ただし、監視はする様にしてください。彼等が向かっている惑星も調べなさい。それとスカウターで回収できそうな会話は逐一録音をしなさい」

「畏まりました。兵士の皆さんにベジータ王子とナッパさんの行き先を調べて頂きます。スカウターの方は会話ログを残すように指示します」

 

 

フリーザがベジータを放置すると決めたのは、万が一にも反逆されたとしてもベジータの戦闘力では自身を倒すどころか側近のザーボンやドドリアにも敵わないと思っているからである。

フリーザの発言にベジータの周囲を調べさせる事を指示に出すスーナ。即座に端末に情報を打ち込んで準備している仕草は仕事が早いとフリーザを感心させていた。

 

 

「それとギニュー特戦隊が経費を勝手に使ったようなので給料から差っ引いておきます」

「本当に貴女がギニュー特戦隊のマネージャーで助かってます」

 

 

更にギニュー特戦隊の行動を怒ると同時に制裁を加える姿勢に、フリーザは本当に助かっていると隠す様子もなく伝えた。スーナが居なければフリーザの頭痛の種はズッと続いていただろう。

 



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スーナとラディッツ

今回の話の一部にアニメオリジナルの話を使っています


 

 

 

「うーん……」

「どうした、何を唸っているのだスーナ」

 

 

事務室でデータ整理をしていたスーナだが先程からウンウンと唸ってばかりいた。それを不審に思ったザーボンはスーナに話し掛けた。

 

 

「いえ……ベジータ王子とナッパさんが向かった先を予測しようと向かった星域を調べていたのですが、やはり文明が進んだ惑星が無さそうなんです。少なくとも自力で宇宙船を作って宇宙に出れる程の科学力を持った惑星は数える程でして」

「ふむ……ならばベジータとナッパは何を目的に動いているか不明か……」

 

 

スーナは勝手な行動を取り始めたベジータとナッパのこれからを予想しようとしていた。まず手始めに高値の星が見つかったのかと思い、宇宙ポッドの進行方向を調べたのだが成果無しだった。

 

 

「そう言えば……もう一人生き残りのサイヤ人が居たんじゃなかったか?最近、見ないがな」

「そうだ……ラディッツさん……」

 

 

ザーボンの発言に少し前に会ったサイヤ人の生き残りのラディッツを思い出したスーナ。ザーボンは生き残りのサイヤ人として覚えていたが、名前までは覚えていなかった。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

「おい、スーナ!俺に有給をくれ!」

「いきなり、人事部に殴り込みを掛けてなんですかラディッツさん。しかも有給をくれだんて」

 

 

突如、人事部のデスクに来たのはサイヤ人の生き残りのラディッツだった。

スーナとラディッツの出会いはフリーザ監視下の中でベジータ、ナッパ、ラディッツが惑星侵略から帰って来た報告の時に会ったのだ。

 

 

『フリーザ様、只今シャープ星より帰って参りました。少し手間取りましたが、3日間で奴等を降伏させました』

『……そうですか。あんな星に3日もね。スーナさん、後で兵達にシャープ星の土壌調査をさせる様に命じなさい』

『畏まりました。向かう人数や時間などをリストアップしておきます』

 

 

ベジータの報告に少し呆れた様子のフリーザ。フリーザはそんなベジータを尻目にスーナに話し掛ける。そんな態度にベジータは兎も角、ナッパ、ラディッツは苛立ちを隠せない様子だった。

 

 

『頼みましたよスーナさん。ベジータさん、アナタ方も下がってよろしいですよ』

『なっ!?おいっ!ちょっと待てよ!』

 

 

そしてフリーザの口から出たのは下がってよろしいという言葉のみ。褒美が何もないと分かったナッパが、バッと立ち上がって抗議する。ナッパが立ち上がると同時にザーボンとドドリアがフリーザの前に立った。因みに、スーナはザーボンが前に出るなと手で制した為に変わらずフリーザの後ろに控えている。

 

 

『俺達は体ボロボロにして帰って来たんだぞ!それをっ!』

『……ザーボンさん、あの星を征服するのに何日かかりますか?』

『はい、1日あれば充分かと』

 

 

ナッパの苛立ちにフリーザはザーボンにシャープ星を征服に何日かかるかと問えば、ザーボンは一日で充分だと告げる。

 

 

『そうでしょうね、あんなちっぽけな星程度…ホーホッホッホッ』

『こ、この野郎っ!』

『やめろナッパ!』

 

 

何も言い返せなくなったナッパがフリーザに突撃しようとしたが、それをベジータが制止した。

そしてベジータはナッパに止めろと言わんばかりに睨むとフリーザに頭を下げた。

 

 

『…フリーザ様、失礼致します』

『ええ、次の働きも期待していますよベジータさん。それと……ラディッツ』

 

 

フリーザから咎めが無かった事に安堵したベジータはその場を離れようとしたが、フリーザがラディッツだけを呼び止めた。

 

 

『な、なんでしょうかフリーザ様?』

『アナタにはスーナの事を紹介していませんでしたね。同じサイヤ人同士、自己紹介くらいしときなさい』

 

 

そう告げるとフリーザはスーナに目配せをした。それを合図にスーナは前に出てラディッツに頭を下げた。

 

 

『初めまして、スーナです。若輩ながらフリーザ様に仕えさせて頂いています』

『あ、ああ……俺はラディッツだ。サイヤ人の生き残りが居たとは嬉しいぞ』

 

 

互いに会釈しながら自己紹介をしたスーナとラディッツ。普段ならもう少し横柄な態度を取るであろうラディッツだったが、フリーザの前でそんな態度が取れる筈もなく普通に会話をしただけだった。

その後、同じサイヤ人としてラディッツとは雑談を交わす間柄となったスーナだった。

 

 

「それで急に休暇をと言われても難しいですよ。そもそも有給申請ならちゃんと……」

「フフフ……ただの休暇じゃない。ちゃんと理由があるのだよ。俺が休暇から帰ったら驚くだろうな、ハーハッハッハッ!」

 

 

因みにこの後、スーナはラディッツに有給申請の書類をちゃんと書かせた。

 

 

◇◆◇◆

 

 

そんな、やり取りをした数日後にラディッツは宇宙ポッドで飛んでいってしまった。行き先は聞かなかったが、もしかしたらラディッツが行った星域とベジータやナッパが向かっている星域は同じなのかも知れないと考え始めていた。

 

 

「兵士達にもベジータの行方は探させている。お前がそんな顔をするな」

「はい……スミマセン、ザーボンさん」

 

 

根を詰めすぎているスーナの頭を撫でたザーボン。

 

 

「しかし、本当にギニュー隊長に似なくて良かったなスーナ。やはりおまえの髪は美しい」

「アハハ……ありがとうございますザーボンさん」

 

 

そしてザーボンはスーナのサラサラとしている黒髪がお気に入りだった。もしもスーナがギニューと本当の親子で、この髪が失われていたらと思うとザーボンは悔やんだだろう。対するスーナは髪だけでも誉められているのは嬉しいのか頬を少し赤く染めていた。

 

 

「そりゃあ良かったな、ザーボン」

「お、親バカ隊長!?」

「違うぞザーボン、それは本音だ!」

 

 

いつの間にか事務室に入ってきていたギニューは、先程のザーボンの発言を聞いていたのか青筋を頭に走らせていた。対するザーボンはギニューを『親バカ隊長』と呼んでしまう。それに対してジースはザーボンに建前ではなく本音が出ているとツッコミを入れた。

 

因みに『親バカ隊長』とはフリーザ軍におけるギニューの裏のあだ名である。

 



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ベジータとナッパの行方・各所への影響

 

 

 

 

「まだベジータは見付からないのか?」

「兵士の皆さんにも行き先の算出やスカウターの会話ログを調べてもらってますが手懸かりはなさそうですね」

 

 

通信室にスーナとドドリアは顔を出していた。その目的は勿論、ベジータとナッパの事である。ベジータとナッパが侵略する予定の惑星から離れて既に半年。未だにその行方は知れないままだった。常日頃、チェックは欠かさずにしているものの分かっているのはベジータが向かった宙域のみ。オマケにベジータとナッパはスリープモードと呼ばれるポッドの機能を使っているのか、通信にも出なかった。

スリープモードとは、ポッドに搭載された機能で移動距離が長い場合、搭乗者を冬眠するかの様に眠らせてしまい、目的地周辺となると自動的に目を覚まさせる機能で眠っている間は、機械が作動しない限りは眠り続ける機能である。フリーザ軍の通信に出ないという事は、外部からの通信を切っているという事になる。

 

 

「ベジータなんざフリーザ様の敵じゃねぇが、フリーザ様はご自身に逆らう奴は容赦しない……今回の件も笑ってはいるが内心怒ってらっしゃる筈だ」

「各部署からもベジータさんやナッパさんの行動に苦情が出てますね。私も同様の意見ですが」

 

 

今回の件はフリーザのみならず関係者一同に影響を及ぼしていた。侵略する惑星から離れたとなれば、他の人材を回さなければならないのに、ベジータは連絡も無しに離れた為に、代わりの人材を送るのが非常に遅れてしまっていた。更に今までベジータとナッパはその強さに下級兵や他の部署に迷惑を掛けていて、正直下からの評価がすこぶる悪いのだ。今回の件はその不満を爆発させる切っ掛けとなっている。

 

 

「ベジータの代わりは誰を送ったんだ?」

「アボさんとカドさんの兄弟が向かった様です。ベジータさんとナッパさんの代わりとなると極めて上位の方々じゃないと無理なので」

 

 

ドドリアの疑問にスーナは答えた。アボとカドは兄弟の兵士で個人の強さはリクームやバータに匹敵し、合体して一人の戦士となるとその強さはギニューに匹敵する強さとなる特殊な力を持った兵士で、ベジータの代わりに派遣されたのは、この二人だった。

スーナの言葉通り、ベジータはフリーザ軍でも強さで言えば上から数えた方が早く、代わりに派遣できる人材は限られている。

 

 

「そうかい。なら、早くベジータを見つけねぇと……俺とザーボンはフリーザ様の前で腹を掻っ捌らなきゃならねーんだ」

 

 

直接ではないものの、上司としての責任を取らされようとしているドドリアの顔は強張っていた。

 

 

「そうしてください」

「待てやオイ」

 

 

妙に真面目な顔付きでドドリアとザーボンの切腹を推奨したスーナにドドリアはツッコミを入れた。

 

 

「冗談ですよ」

「フリーザ軍の人事のトップのお前が言うと洒落にならねーんだよ!」

 

 

クスクスと笑うスーナだが、人事のトップで責任者のスーナにそれを言われると冗談には聞こえなかった。

 

 

この後の数ヶ月、ベジータの行方は知れないままだったが、遂に手掛かりが見付かる。それはベジータとナッパの使用しているスカウターが起動したとの連絡だった。




『アボ』『カド』『合体アカ』

『DRAGONBALL オッス!帰ってきた孫悟空と仲間たち!!』に登場したフリーザ軍の残党で、フリーザとは別の星に派遣されていた二人組の兄弟兵士。アボが青色、カドが赤色のずんぐりとした体形。
当時はギニュー特戦隊と肩を並べるほどの実力者で、現在ではターブルいわくフリーザに匹敵する強さを身につけている。

本作ではギニュー特戦隊と同様に兵士として活動中。


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スカウターの会話で判明する事態

 

 

ベジータとナッパが行方が知れなくなってから十一ヶ月。未だにベジータとナッパの手懸かりは得られず、フリーザ軍では半ば彼等は居ない扱いとなっていた。

 

任務中に居なくなった者は、基本的に半年間の捜索で見付からなければ殉職扱いとなる。これは侵略をするに辺り、敵わないと思った兵士が逃げ出してしまう。又は銀河パトロールに捕まってしまったケースが希に起こるからである。

エリート兵士なら侵略する惑星のレベルを推し量れるが、下級兵のみの構成だと、その星に強い者が居た場合、返り討ちにあってしまうからだ。ただし、このケースは基本的に下級兵のみに適用されていた。何故ならばエリート兵士くらいとなればフリーザの恐ろしさに逃げ出す事すらしないからである。今回のベジータとナッパの件は非常に珍しいのだ。

 

そして、その下級兵の枠に入っているラディッツは当然の様に殉職扱いとされていた。当初は有給を使っていたから帰ってこないと思われていたラディッツだが、長らく帰って来ない上にポッドの通信にも応じない。

 

 

「ベジータ王子やナッパさんは兎も角、ラディッツさんは何かの目的があって行動していた。つまり、その先で何かが起きた……と考えるべきですね」

「しかし、スーナ様。ベジータ様もナッパさんもラディッツもフリーザ軍の索敵範囲を越えた宙域を飛んでいる様です。スカウターの会話を録音する指示は受けていますが通話範囲ギリギリです」

 

 

執務室で通常の仕事をこなしながらスーナはアプールから報告を受けていた。未だに行方不明のサイヤ人達の事を話していたが進展はなかった。

 

 

「そろそろ捜索も打ち切りませんと人員が割かれるばかりです」

「そうですね……結果が出ないとフリーザ様に物理的に割かれかねませんから、そろそろ何かの情報が欲しい所です」

 

 

スーナの笑えない冗談にアプールの顔がひきつった。その時だった。執務室のスーナ専用の回線に通信が入った。スーナはすぐに回線を開くと慌てた様子の兵士の顔が映る。

 

 

『失礼しますスーナ様!ベジータ様とナッパさんのスカウターに反応がありました!』

「宙域の確認とスカウターの会話ログの録音を!私もすぐに向かいます!」

 

 

報告を聞いたスーナは即座に立ち上がり、執務室から通信室へと急ぎ、アプールも後を追った。

通信室に到着したスーナ。そこでは既に会話ログや現在位置の確認作業が進められていた。

 

 

「状況はどうなっていますか?」

「ハッ、ベジータ様とナッパさんのスカウターに反応がありました。現在位置は遥か辺境の宙域です。ろくに繁栄もしていない惑星ばかりの宙域ですね」

 

 

スーナが兵士に確認するとベジータとナッパは思ってた以上に遠くに行っていたらしく、フリーザ軍の索敵範囲ギリギリの地点だった。

 

 

「この惑星は……?」

「はい。この青い星は現地名称で地球と言うらしいです。未だに宇宙に出る宇宙船の開発すら遅れている文明レベルの低い星です。人口はそれなりにいる様ですが……少なくとも軍の侵略対象にはなっていませんね」

 

 

スーナがベジータとナッパが居る惑星の情報を求めると兵士は短時間で集めた情報を提示した。兵士の言うように文明レベルは低く、フリーザ軍の侵略対象にすらなっていない様な惑星だった。

 

 

「確かに技術水準は低そうですね……だったらなんでベジータ王子とナッパさんはこの惑星に……」

「スーナ様、スカウターの会話ログを確認します」

 

 

スーナには地球がベジータとナッパが進んで侵略に行く様な惑星には見えなかった。そのスーナの思考を遮る様に兵士の一人がベジータとナッパのスカウターの会話ログをモニターに映した。

 

 

[念の為に聞くが……貴様ら地球に何しに来やがった?]

『その声……ラディッツを殺った奴だな?』

 

 

会話ログを見て、スーナはサッと血の気が引いた。ラディッツが殺された?……その事実に驚愕していたスーナだが会話ログが更に映し出される。

 

 

『アイツ、ナメック星人だぜ』

『なるほど、ナメック星人ならラディッツが始末されても不思議は無いって事か。なら、お目当ての物を持っている可能性が高いな』

 

 

会話ログを見ながらスーナは首を傾げた。この会話からベジータとナッパが何かを求めて地球に行ったのは理解したが、ベジータの言うお目当ての物が何かは分からなかったのだ。

 

 

『ナメック星人には、並外れた戦闘力の他に不思議な力を待つと聞く。眉唾物の話だと思っていたが本当らしいな。ドラゴンボールを作ったのも貴様だろう?』

『へへっ……なんでも願いが叶うってのも本当か』

 

 

此処までの会話ログを見てスーナは思い出した。過去にナメック星人が不思議な魔法みたいな力を持っていると噂話を聞いたのだ。宇宙人の中には戦闘力が低い代わりに不思議な力を持つ種族が存在する。ナメック星人もその中の一つなのだろう。

その後の会話ログは、通信に影響が出たのか上手く聞き取れない物ばかりで、録音も会話ログも上手く作動しなかった。

 

 

「地球が遠すぎるのと通信状況が悪いようですね」

「肝心な部分の会話が聞けただけ充分でしょう……ラディッツさんの死も確認……出来ましたから……」

 

 

確認ログを確認していた兵士の言葉になんとか返事を返したスーナ。同じサイヤ人が死んだ事に心を痛めていた。そしてスーナが顔を背け辛そうな表情になっていると最後の会話ログが映し出された。

 

 

『戦闘力……7000、7500……馬鹿な、ま……』

『おい……カカ……の戦闘……は!?』

『8000以上だ……[バキャ!]』

 

 

ベジータとナッパの会話。ベジータの忌々しそうな声とナッパの焦る声。最後の音はスカウターの破壊音だった。飛び飛びのログだったが見逃せない部分があった。

 

 

「戦闘力が8000以上!?」

「地球にはそんなに強い戦士が居るってのか!?」

 

 

騒然とする通信室。フリーザ軍の兵士の中でも戦闘力が2000以上(私個人の見解であるので、無視してくださっても構いません)の存在は貴重であり、中々存在しない。だが、地球には戦闘力が8000を超える者が存在する会話があったのだ。驚くのも無理はなかった。

 

 

「落ち着きなさい。この会話ログを私の端末に送っておいてください。私はフリーザ様にこの事を報告してきます」

「ハッ、了解しました!」

 

 

スーナは慌てる兵士達に声を掛け、通信室を後にした。

 

 

「ラディッツ……さん……」

 

 

毅然とした態度を保っていたスーナだったが通信室を後にした直後、その瞳から涙が溢れていた。



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ドラゴンボールの価値とスーナの可能性

 

 

 

ベジータとナッパの会話ログをフリーザに報告したスーナ。フリーザと共に居た為に同じく報告を聞いていたドドリアとザーボンは笑っていた。

 

 

「笑わせんなよスーナ」

「そうだな、なんでも願いが叶うなどあり得ないぞ」

 

 

スーナからの報告を笑っていたドドリアとザーボンだが、フリーザは思案する様に口を閉ざしていた。

 

 

「スーナさん……ベジータさんはなんでも願いが叶うドラゴンボールを求めて地球に行った……そうですね?」

「は、はい。少なくともスカウターからの通信からはその意思を感じられました」

 

 

口を閉ざしていたフリーザが確認する様にスーナに問い掛ける。スーナはフリーザの重苦しい雰囲気に少し押されながらも答えた。

 

 

「ふむ……ならば本当に願いが叶うのかも知れませんね」

「な、まさかっ!?」

「本当ですかい、フリーザ様!?」

 

 

フリーザの発言にザーボンとドドリアは驚愕した。まさかフリーザがこんな眉唾な話を信じるとは思わなかったからだ。

 

 

「ベジータさんはあれで計算高い……そんなベジータさんが私の命令を無視してドラゴンボールを探しに行ったと言う事は願いが叶う事に確証を持ったからでしょう。そして恐らく、願ったのは永遠の命」

 

 

フリーザの推理にスーナ、ザーボン、ドドリアは息を飲む。

 

 

「恐らく、永遠の命が有れば何れは私の強さに追い付けると思っているのでしょう」

「負けたとしても永遠の命があれば何度でもフリーザ様に戦いを挑む……という事でしょうか?そして死の淵から甦れば戦闘力を上げられる事も見越して……」

 

 

フリーザの説明を引き継いでスーナが口を開いた。その発言にフリーザはニコリと微笑む。

 

 

「流石、聡明ですねスーナ。私も同意見です」

「ならば急ぎ、ベジータを止めに行かねば……」

「その件なんですが……」

 

 

フリーザの言葉にベジータが表だって反逆を試みようとしているのは明らかな上に、ベジータに永遠の命があってはいつかは脅威となると考えたザーボンは慌てた様子。と同時に、スーナが口を開いた。

 

 

「先ほど、ベジータ王子のポッドが飛び立ったと報告が私の端末に送られてきました。恐らく、地球を飛び立ったと思われます。行き先は惑星フリーザの様です」

「まさか、永遠の命を得て早くもフリーザ様に挑みに来やがったのか!?」

「いえ……違うでしょうね」

 

スーナの報告にドドリアは叫びを上げたがフリーザは即座に否定した。

 

 

「もしもベジータさんが本当に永遠の命を得たとするならば一先ず何処かへ身を隠す筈。それに飛んだのはベジータさんのポッドだけですか?」

「………はい、ベジータさんのポッドだけでナッパさんの物は確認されませんでした」

 

 

フリーザの問い掛けに答えたスーナ。その言葉を聞いてフリーザは確信を得たように頷いた。

 

 

「スカウターの会話ログ通りだとすれば地球に戦闘力8000以上の者が居たという事。つまりナッパは死に、ベジータさんは何らかの理由で返り討ちになってしまったのでしょう」

「なるほど……だからベジータは一人で行動して傷を癒す為に惑星フリーザに戻ろうとしている……と言う事ですね」

「へ、馬鹿な野郎だぜ。帰ってきたら処刑してやる」

 

 

フリーザの言葉からベジータは願いは叶えられず逃げ帰ったと分かったザーボンとドドリアは、ベジータの処刑を考えていた。

 

 

「それには及びません。ベジータさんはやはり素晴らしい部下ですよ。マヌケにも願いを叶えるチャンスを潰した上に私に願いを叶える機会を渡したのですから」

 

 

上機嫌なフリーザはベジータの処刑を取り止める様にと発言する。その事にザーボンやドドリアは勿論、スーナも驚いていた。フリーザは間違いなくベジータを処刑すると思っていたからだ。

 

 

「ザーボンさん、ドドリアさん。一度、惑星フリーザに戻ってからナメック星へ行きますよ。ドラゴンボール探しです」

「そうか、ナメック星に行けば本場のドラゴンボールが手に入る!」

「それでフリーザ様は永遠の命と若さが手に入りますね!」

 

 

フリーザの発言にザーボンとドドリアは賛同し、歓喜に震えていた。

 

 

「ご自身が叶えたかった願いを私が成就した時……ベジータさんはどんな顔をしてくれますかねぇ」

「ふふ……なるほど、それは見物ですね」

「フリーザ様はお優しいですなぁ。ベジータなんぞの命を生かしてやるなんて」

 

 

フリーザはベジータよりも先に永遠の命を得ようと考えていた。更にベジータの眼前で永遠の命を得るということはベジータには最大級の屈辱となるだろう。ザーボンもドドリアもそれを察して笑みを浮かべていた。

 

 

「承知致しました。では、私は……」

「ああ、スーナは惑星フリーザに残って私が居ない間の仕事をお願いします。それが済んだら貴女もナメック星に来なさい。不老不死となった私のお披露目です。ギニューさん達も呼びましょう」

 

 

スーナはフリーザに自分はどうするべきかと問おうとしたが、フリーザはスーナに自分の仕事の代わりを命じた。それが済み次第、ギニュー特戦隊を連れてフリーザの不老不死のお披露目をすると宣言する。

 

 

「では……失礼します」

「スーナ……貴女が優しいのは周知の事ですがキチンと切り替えなさい。組織の上に立つ以上、部下の死をいつまでも嘆くのは私への忠義に反すると知りなさい」

 

 

頭を下げ、退室しようとしたスーナにフリーザは背後から声を掛けた。スーナは静かに頭を下げ、そのまま退室した。

 

 

「よろしいのですか、フリーザ様?スーナは……」

「あの娘は同族意識……というよりは自身と親しい者の死に怯えている節があります。臆病と言ってもいい……ですが、毎回そうでは困ります。今の内に臆病で繊細な部分を矯正し、自制心や冷静沈着になってもらわねば後のフリーザ軍への影響も大きいでしょう」

 

 

スーナが退室した後、ザーボンはフリーザに意見を述べていた。フリーザはスーナがラディッツやナッパの死に傷付いている事に気付き、敢えて自身が不在の間の仕事を任せたのだ。スーナが自分自身の中での決着をつけさせる為に。

 

 

「フリーザ様の寛大なるお心にスーナも喜ぶでしょう」

「こりゃあギニュー隊長も喜ぶんじゃねーですかい?」

「……あの親に似なかった事がスーナの一番の功績ですよ」

 

 

 

ザーボンもドドリアもスーナの成長を望んでいたが、フリーザはスーナがギニューの性格に似なかった事が一番の功績であると称えた。もしもスーナがギニューの性格に寄ってしまった場合、フリーザ軍は今よりも劣悪な環境だったのは言うまでもなかったりする。

 

 

 



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ベジータの帰還

 

 

 

フリーザが一度、惑星フリーザに戻り準備を整えた後にナメック星へと出発した。フリーザの指示で惑星フリーザに残ったスーナは、何時も通り事務仕事をこなしつつ今後のプランを立てていた。

 

 

「ナッパさんとラディッツさんが殉職となると上級兵に空きが出ますね……穴埋めは下級兵士の皆さんの増員で賄って……」

 

 

不評は買っていたもののナッパやラディッツのサイヤ人の働きぶりは素晴らしく、同じ地位にいる宇宙人の中では働き率はトップクラス。そのサイヤ人が二人もいなくなったとなれば業務にも支障が出る。そういった調整もスーナの仕事の一つだった。

 

 

「おい、スーナ。聞いたぜ、ラディッツが死んだんだってな。噂じゃナッパも殺られたらしいじゃねーか」

「……キュイさん」

 

 

ニヤニヤと笑みを浮かべながらスーナに話し掛けてきたのは、エリート兵士の一人のキュイだった。キュイはベジータをライバル視しており、同族のスーナやナッパにもちょっかいを掛けに来るスーナには苦手な相手だった。

 

 

「サイヤ人を倒すほどの戦闘力を持った者が居たようです……失礼します」

「おっと、待てよ」

 

 

 

キュイの脇を素早く通ろうとしたスーナだが、キュイによって壁ドン体勢に追いやられる。

 

 

「ベジータは命令違反をしたんだろ?処刑するべきだな。トドメは俺にやらせてくれよ」

「確かに私はフリーザ様から兵士の皆さんの裁量を任されてはいますが、処罰する気はありません。フリーザ様もベジータ王子を許すと仰いました」

 

 

ニヤニヤと笑いながらベジータの今後を話すキュイだが、フリーザも言っていた通り、ベジータの件は不問にすると言っていたのだ。それをスーナが覆すなど無理な話なのだ。

 

 

「ちっ……つまらねぇな。だったらスーナが俺を楽しませてくれるか?」

「お断りします。それとそろそろベジータ王子がこの惑星フリーザに戻られる頃です。今後の予定を考えなければならないので失礼します」

 

 

スーナはキュイの手をパシッと払うと、その場を後にする。

 

 

「へっ、いつまでその虚勢が持つか見ものだぜ」

 

 

スーナに拒絶されたキュイの苦し紛れの一言を背に受けながら、スーナは人事部へと足を運ぶのだった。

 

 

◇◆◇◆

 

 

ベジータが地球を離れてから18日が程が経過した頃。

人事部でスーナは様々な事に頭を悩ませていた。

 

 

「…………ふぅ」

「スーナ様、溜め息の数が増えてますね」

 

 

人事部で普段からスーナの手伝いをしていたアプールは、今回フリーザのドラゴンボール探しに同伴しているので不在だった。現在は代理で他の下級兵士が手伝いをしていたが、スーナの溜め息の数に少々へこんでいた。

 

 

「アプールさんの事ではなくて……フリーザ様の事です。普段でしたら私が現地住民の方と交渉するんですが……」

 

 

 

スーナの心配はフリーザの行動にあった。普段、重要な事柄だった場合、スーナが現地住民との交渉で事を穏便に運ぼうとするのだが、今回スーナは留守番を言い渡された為にナメック星での行動はフリーザの気分次第となる。最近の話だがドドリアが「最近、暴れてねぇな」とぼやいていたし、ザーボンは「部下に実戦を学ばせねばな」と言っていた。極め付きはフリーザの「そろそろ……花火が見たいですね」の一言である。フリーザの言う『花火』とは星の爆発を示す。つまり下手をすればドラゴンボールを得た後にフリーザはナメック星を花火にしてしまう可能性が高い。

 

 

「スーナ様はナメック星の破壊は反対ですか?」

「出来ることなら穏便に済ませたかったんですが……フリーザ様の決定には逆らえませんから」

 

 

下級兵士の疑問にスーナは悲しそうな笑みを浮かべて答えた。その時だった。

 

 

『緊急報告!当惑星に近付く宇宙ポッドが接近中!』

「ベジータ王子かもしれません。出迎えに行ってきますから、この書類をお願いします」

「かしこまりました」

 

 

緊急報告が鳴り響く中、スーナは時期的にベジータが帰ってくる頃合いだと思い、ポッドの着陸場へと向かった。

 

 

「スーナ様、やはりポッドは一つだけの様ですが……」

「恐らく、ベジータ王子の物でしょう」

 

 

歩きながら部下と合流したスーナは、本来なら二つ飛んで来る筈のポッドが一つだった事にやはりナッパは地球で返り討ちにあったのだろうと判断していた。そしてポッドの着陸場へと到着すると部下数名を引き連れ、出迎えに並んでいた。

ポッドが着陸場へと着地したが、ベジータはポッドから出てこなかった。

 

 

「ベジータ王子……?」

「何か……あったのでしょうか?」

 

 

スーナが首を傾げ、部下の一人もベジータがポッドから自ら出てこない事に疑問を感じていた。

 

 

「お、おい!生命反応がやけに小さいぞ!?」

「いかん、生命維持装置を使っておられる!」

 

 

ポッドに近付いた部下達が慌て始める。スーナもポッドの窓を覗く。中ではベジータが意識不明のまま生命維持装置を使用していた。

 

 

「皆さんはベジータ王子をポッドから救出!私はメディカルルームに連絡を入れます!」

「了解しました!」

 

 

事態を重く見たスーナは部下に指示を出し、自身はメディカルルームに連絡を取った。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

ベジータをメディカルルームに運び、治療を開始した頃、スーナはフリーザに連絡を取っていた。フリーザはスカウターを所持していないので側近のザーボンに通信を繋いでいた。

 

 

「ベジータ王子が帰還されました。現在はメディカルルームで治療中です」

『そうかフリーザ様はベジータを許すと仰ったのだ。命令違反を咎める事はしなくても良い』

 

 

スーナはベジータの治療中の報告を済ませ、今後の話もしていたのだが、ザーボンからベジータの処遇を聞いていた。その内容にスーナは内心、ホッとしていた。

 

 

『フッ……安心している様だな。フリーザ様のお心にベジータも……』

「スーナ様!ベジータ様が治療を終えた後に宇宙ポッドで飛んでいってしまいました!キュイ様も後を追って行ってしまわれました!行き先はナメック星かと思われます!」

 

 

ザーボンの言葉を遮る様に部下が通信室に駆け込んでくる。

 

 

「あ、あの……ザーボンさん……今のは……」

『残念だがバッチリ聞こえていたからな?一度はフリーザ様のお心で命令違反を許してもらえただろうが今度は私が許さん。ベジータの後を追ったキュイに追撃を命じさせろ』

 

 

ベジータの救いのない行動に焦ったスーナにザーボンは無慈悲な命令を下した。

 

 

「はい……キュイさんのポッドに通信を入れます」

『それと……お前もナメック星に来い。どうも不測の事態が起きそうなのでな。スーナの知識が必要になるかも知れん』

 

 

こればかりは仕方無いと命令を受けたスーナにザーボンは更なる指示を出す。なんとスーナもナメック星に来いと言うのだ。

 

 

「畏まりましたが……何かあったのですか?」

『フリーザ様が不老不死を得る際にフリーザ様の片腕の貴様が居ないのではな。それにナメック星にナメック星人以外の異星人が居るようなのだ。上級兵を数名連れて来い』

 

 

ザーボンの発言にスーナは普通に驚いていた。今回、フリーザがナメック星遠征に連れていった兵は側近二人と戦闘力が平均1500の兵士を大量に連れていった。にも関わらず手が足りないとの発言があったのだ。

 

 

『詳細は分からんが……クラッシャー軍団とかいう連中がナメック星に攻め込んできてな。我々が所持している以外のドラゴンボールを奪いに来ている様なのだ』

「他の異星人の皆さんもナメック星に居らっしゃるんですね。了解しました、メンバーをリストアップしてから私もナメック星に向かいます」

 

 

ザーボンから詳細を聞いたスーナは、少々の頭痛がしながらもナメック星へと向かう事にした。

 

 

 



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ターレスとの遭遇

 

 

 

 

スーナは焦っていた。ナメック星に向かう最中でザーボンから再び通信が入り、ナメック星に到着次第スカウターをフリーザに届けろと言われたのだ。その理由は現地住民のナメック星人にスカウターを全て破壊された上にベジータの謀反でキュイ、ドドリアの死亡が確認され、フリーザの指示でギニュー特戦隊までナメック星に向かっているらしい。

自分がナメック星に向かっている間に事態が最悪の方向に向かっていると感じたスーナは頭痛がしてきた気がする。スーナの中型宇宙船には上級兵士が数人乗っているが、いずれも戦闘力1500前後だ。仮にベジータに遭遇したら一溜まりもないだろう。どうかベジータ王子に会いません様に……そんな考えをしていたスーナの思いは別の形で訪れた。

 

 

「よう……お姫さま」

「大人しく着いてきてもらおうか」

「悪いようにしないからよ」

「ンダ」

「「ターレス様に逆らうなんざ考えない方がいいぜ」」

 

 

中型宇宙船から降りたスーナの目の前には数人の戦士が立ちはだかっていた。

ターレスは浅黒い肌をしたサイヤ人、アモンドはガタイが良く屈強な戦士、ダイーズはイヤリングやネックレスを付けたキザな雰囲気を持つ戦士、カカオは全身サイボーグで『ンダ』としか言わない、レズン、ラカセイは小柄な双子の戦士である。

 

 

「どちら様でしょうか?初めてお会いする筈ですが……」

「おっと、名乗らないのは失礼だったな。俺の名はターレス。サイヤ人の生き残りだ」

 

 

ターレスの挨拶と説明にスーナは驚愕する。

 

 

「そんな……サイヤ人は私を含めてベジータ王子、ナッパさん、ラディッツさんの四人だけじゃ……」

「そりゃフリーザ軍で把握してるサイヤ人だろう?他にもまだ生き残りは居る筈だ。俺は生き残りのサイヤ人を集めて、フリーザを打ち倒し、再びサイヤ人の天下を知らしめるつもりだ。その為にもスーナ……お前は俺の仲間になってほしいんだ」

 

 

驚くスーナにターレスはニヤニヤしながら手を差しのべる。それは仲間になれとの意味である。

 

 

「ターレスさんと仰いましたね。私はフリーザ様の配下であり、ギニューの娘です。私がフリーザ軍から離れる事はないと思ってください」

「くくくっ……気丈なもんだな。だが、お前や後ろの兵士共の戦闘力で俺達に逆らう気か?」

 

 

ターレス、アモンド、ダイーズ、カカオ、レズン、ラカセイに囲まれたスーナと上級兵士数名は絶体絶命となっていたが一人の上級兵士が声を上げた。

 

 

「スーナ様、先日開発した迷彩ホログラムを試すのは如何でしょうか!?」

「なるほど……この状況なら撹乱になるかもしれませんね。許可します」

 

 

スーナの言葉を聞いた上級兵士達は戦闘服に備え付けていたスイッチを手に取り、装置を起動させる。

すると上級兵士達の姿はターレスへと変貌を遂げた。

 

 

「な、なんだと!?」

「ターレス様の姿に!?」

「ンダ!?」

 

これには流石のターレスやアモンド達も戸惑いを隠せなかった。

 

 

「これぞスーナ様が開発した高性能迷彩ホログラム!我々はお前達のリーダーの姿となった!」

「これで俺達に攻撃を仕掛けるのを躊躇うだろう!」

 

 

スーナが開発した高性能迷彩ホログラムとは投影した相手の姿を自身に覆わせるホログラムであり、これを纏うことで撹乱や相手の戦闘意欲を削ぐ狙いで開発したされた物である。

これで攻撃される心配は無いと上級兵士はたかをくくっていたが、アモンド達は迷うことなくエネルギー波を放ち、上級兵士達をぶっ飛ばしていった。

スーナの眼鏡型スカウターには『戦闘力30%UP』と表示が映されていた。

 

 

「ふーっ、やる気出てきたぜ」

「うーん……忠義心ゼロですね」

 

 

ターレスの姿になった事で逆にやる気を煽ってしまったらしくダイーズは気合いが入っていた。

スーナはこの窮地をどう脱するか悩み、ターレスは偽物とわかっていても迷わず自身の姿に攻撃を加えた部下をどうシメようか考えていた。

 

 

 

 



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伝説の……

 

 

「ったく……お前ら、給料減額だ!」

「減額もクソも俺達の給料なんか振り込まれていないでしょうが!」

『ンダッ!』

「粉う事なきブラックですね。因みになんで給料が振り込まれないのですか?」

 

 

自身の姿をアッサリと攻撃したアモンド達に怒りを露にするターレスだがアモンド達に逆にツッコまれていた。スーナは給料が無いと叫んだアモンド達に何故なのか問う。

 

 

「ターレス様が俺達の給料の全てを宇宙競馬につぎ込んだ!」

「これですか、単勝一点買い。しかも見事に外れたみたいですね」

 

 

ダイーズが不満と共に紙切れを地面に叩きつける。それは馬券の束だった。その内の一枚を拾い上げて見るとスーナは呆れの声が出た。

 

 

「うるせーな。俺はロマンを金で買ったんだよ」

「ロマンなら部下の給料に手を出さずに、ご自分のお金で買ってください」

 

 

スーナは人事部のトップとしては他の組織ながら部下の給料に手を出したターレスの行動は看過出来なかった。

 

 

「絶対に来ると思ったのに……ケンタウロスホイミ!」

「そんな神話と呪文がごっちゃになった馬に部下の給料全額賭けたんですか」

 

 

頭を抱えるターレスにスーナはターレスが賭けた馬の姿を想像して、とんでもない馬に賭けたものだと逆に感心していた。

 

 

「貴方達もそんなブラック企業に勤めるならフリーザ軍に来ませんか?働き次第で給料は弾みますし、保障も付けますよ?」

「「「「よろしくお願いいたします」」」」

『ンダッ!』

 

 

スーナの提案にアモンド、ダイーズ、カカオ、レズン、ラカセイは膝を着いてスーナに忠誠を誓おうとした。即決である辺り、普段のターレスの行動が如何にダメなのか示している様だ。

その直後、アモンド達の背後からエネルギー波が迫り、アモンド達を飲み込んでいく。スーナは咄嗟に避けたので直撃は免れたが、余波で吹き飛ばされて近くの大岩に叩き付けられてしまう。

 

 

「迷わず、部下を消すとは……やってくれますね」

「忠誠心の無い部下などいらん。それもスーナ……お前が居れば問題ではない」

 

 

痛みに耐えながらも立ち上がるスーナ。そんなスーナにターレスは忠誠心の無い部下は要らないと言い放つが、忠誠心を馬券に変えたのは貴方でしょうとツッコミを入れたくなった。

 

 

「私なんか居た所で……何も変わらないでしょう」

「お前は自分の評価が低いな……貴重な女のサイヤ人であり、フリーザの腹心。こんな人材他には居ないだろうよ。強い奴なら代わりは居るが……スーナ、お前の様な奴は代わりが居ないからな」

 

 

自己評価の低いスーナだがターレスの指摘は当たっていた。単純に戦闘力を求めるなら代わりはいくらでも居るがスーナの様に人事であり、全体に顔が利く様な人材はスーナくらいであり、代わりは居ない。

今回のナメック星侵略はフリーザ主体で組まれているが、仮にスーナが担当していたらもっとスムーズに進んだのは間違いない。

 

 

「く……うっ……」

「お前は知らないだろうが俺はずっと前からお前を知っていた。俺はお前が欲しい」

 

 

ターレスはスーナの腕を取ると無理矢理抱き寄せる。体に痛みが走るスーナは苦悶の表情を浮かべた。

 

 

「わた……しはフリーザ様の……」

「虚勢を張るなよ。強い者に従え……出来ないってんなら……」

 

 

抱き寄せたスーナをメキメキと力を入れて抱くターレス。その痛みと肺が潰されていく事でスーナの意識は薄れていく。

 

 

「それに……フリーザ軍も終わりだ。ドドリアやザーボンは王子様に殺されてたぜ。フリーザも俺が不老不死になり、神精樹の実を食べつつければ、いつか奴を倒す事が出来る」

「あ……う……」

 

 

クックックッと悪い笑みを浮かべるターレスだが、笑みを浮かべながらスーナを抱くターレスの姿は犯罪者のそれである。普段なら辛辣なツッコミを入れるスーナだが意識が朦朧として呻き声しか出なかった。

 

 

「それに……ドドリアやザーボンごときを幹部に据えているフリーザもたかが知れているな。あんな屑どもは俺の部下だった連中にも劣るだろうよ」

「なん……ですって……」

 

 

その言葉にスーナは朦朧としていた意識が戻り始める。スーナにとってもドドリアやザーボンは自分を鍛えてくれて仕事を教えてくれた恩人。その意識混濁の中、スーナは恩人を侮辱し、ターレスに対して深い怒りがフツフツと沸いてくる。その感覚はスーナにとって未知の物だった。

 

そして……その時は訪れる。ターレスのスカウターは一瞬でボンと音を立てて壊れた。

 

 

「ちっ……なんだ?」

 

 

スカウターの爆発に思わずスーナを離してしまったターレスは顔に付着しているスカウターの破片を取ろうとしてピタリと手が止まる。

思わず離してしまったスーナが目の前に立っているのだが、その姿に動揺してしまったのだ。

スーナの長い髪は半分程がサイヤ人特有の黒髪では無く、半分が金髪に染まっていた。

 

 

スーナがスッと右手をターレスの方に差し向けるとターレスは直感的にマズイと感じたのか即座にエネルギー波を放った。その直後、スーナの右手から同じ様にエネルギー波が放たれターレスのエネルギー波を飲み込み、ターレスに迫る。

 

 

「なっ!?くっ……くそっ!」

 

 

スーナのエネルギー波を受け止めたターレスだがその密度の濃いエネルギー波に飲まれ始めて手がブスブスと焦げていく。その最中、ターレスはスーナの姿を見て驚愕した。スーナの黒髪は完全に金髪に染まり、瞳は緑色になっていたのだから。

 

 

「ま、まさか……伝説の、スーパーサイヤ……ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

その姿にターレスは一つの仮説を打ち立てたが、その直後にスーナのエネルギー波に耐えきれなくなり、飲み込まれていく。

 

姿がこの世から消えたターレスを見て、スーナはフッと意識を失い、その場に倒れてしまう。それと同時に金髪は黒髪に戻り、瞳も元の色に戻っていた。

 

 

 

その後、意識を取り戻したスーナは何故、自分が倒れていたのか。何故、ターレスが居ないのか。その全てを忘れていた。

分かるのは自分が引き連れてきた部下を殺された事とターレスの部下は全て内輪の問題で殺された事と……ドドリアとザーボンがベジータに殺されたと言う情報くらいだった。

そして目の前の抉られた地面にはターレスが着ていた戦闘服の破片が落ちていた。

 

 

「何が……あったんでしょうか。ターレスさんに気絶させられる前後の記憶が定かではありませんが……兎に角、フリーザ様の下へ行かなくては……」

 

 

未だ納得はしていないが何らかの理由でターレスは居なくなり、自分は助かったと判断したスーナはフワリと身を浮かせるとフリーザの宇宙船の方へと飛んでいった。

 

 

 

 

自分が一瞬とは言えど伝説の存在になれたとは知らずに。



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スーナ、ターレスの事をフリーザに報告する

 

スーナはフラフラと飛びながら漸く、フリーザの宇宙船に辿り着いた。スーナを出迎えたフリーザはスーナの姿に驚いていた。

 

 

「待っていましたよスーナ……何故、ボロボロになっているのですか?」

「申し訳ありませんフリーザ様。上級兵を数名連れてきたのですが、ターレスと名乗るサイヤ人に襲撃されて部隊は私を残して全滅。スカウターも失ってしまいました」

 

 

スーナはフリーザの前で膝を突きながら経緯を説明する。その最中、残った数少ない兵士はスーナを気づかって毛布を掛けたりメディカルポッドの準備に走ったりと忙しそうに動いていた。

 

 

「ふむ……サイヤ人の生き残りは貴女とベジータ、ナッパ、ラディッツの四名だけかと思いましたが……まだ生き残りが居たんですね……」

「その者が言うにはサイヤ人の生き残りはまだ存在するとの事です。そして彼等の言動からフリーザ軍の装備を強奪していた連中はクラッシャー軍団と判明しました」

 

 

フリーザはまだ他にもサイヤ人の生き残りが居た事に意外そうな表情を浮かべた後に、スーナの説明を聞いてギリッと表情を歪ませる。

 

 

「貴女は兎も角……本当にサイヤ人は私をピンポイントで怒らせる天才ですね……ベジータさんにはドドリアさんを殺されてしまった様ですし……」

「………先程、報告したターレスが言うにはザーボンさんもベジータ王子に殺された……と」

 

 

忌々しそうにベジータの話題を出すフリーザに、スーナは顔を俯かせながらターレスから聞き出した情報をフリーザに報告した。

 

 

「そうですか……ベジータを探す様に命じましたが返り討ちにあったようですね。貴女と懇意にしていたアプールもベジータに殺されてしまいました」

「そ、そんな……アプールさんまで……」

 

 

フリーザはスーナからザーボンの事を聞いたが、スーナの知らないであろう情報を伝えるとスーナはガクンと崩れ落ちそうになる。

 

 

「スーナさん。明日にはギニュー特戦隊がナメック星に到着します。それまでに傷を癒して明日からの任務に対応出来るようにしておきなさい」

「……畏まりました、フリーザ様」

「スーナ様、此方へどうぞ。メディカルポッドの準備は済んでいます」

 

 

フリーザの言葉に虚ろな表情で返事をしたスーナ。スーナは兵士に支えられながらメディカルポッドのある部屋へと案内されていく。

 

 

「ふむ……ドドリアさんに続いてザーボンさんも。これはベジータの事を甘く見すぎていましたか」

 

 

フリーザは支えられながらフラフラと歩いていくスーナを見て呟いた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

兵士に支えられていたスーナはメディカルルームへと辿り着くと、メディカルポッドに入ろうと勧められるが、破壊された最新型のメディカルポッドに目が行く。

 

 

「あのメディカルポッドは……?」

「ベジータが破壊したメディカルポッドです……アプールは此処で殺されてしまいました……」

 

 

スーナの質問に兵士の一人が答えづらそうに口を開いた。

 

 

「そう……ですか……」

「スーナ様、我々は席を外しますが治療に専念してください。ギニュー隊長がいらっしゃるまで時間がありますから……」

 

 

スーナの気配を察した兵士は頭を下げると、スーナがメディカルポッドに入る為にその場を足早に後にした。本来ならもう少し、手助けしたりフォローするべきだが万が一にもスーナの着替えを覗いてしまった場合、間違いなくギニューの怒りを買うからだ。

兵士が出ていったのを確認するとスーナは着ていたスーツを脱いでメディカルポッドに入る。タイマーをセットしていたのでスーナが中に入ると培養液がメディカルポッドに満たされていき、スーナの体を包んでいった。

 

 

(ドドリアさん、ザーボンさん、アプールさん……)

 

 

 

瞳を閉じるとスーナはベジータに殺された上司や部下を想った。それと同時にスーナの髪が僅かに金髪に染まったが……兵士達は席を外していた為にそれを見た者は誰も居なかった。

 

 

 

 



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ギニュー特戦隊、ナメック星へ

 

 

 

スーナがメディカルポッドに入った次の日。傷と体力を完全に回復したスーナは、メディカルポッドから出ると着替えて早くも書類を纏めていた。題目は『サイヤ人の生き残りの可能性』

 

スーナはターレスの残した『サイヤ人の生き残りはまだいる』の発言から、宇宙の何処かにまだサイヤ人の生き残りが存在するであろう事を推測し、ナメック星の件が終わったらフリーザに進言して調査を行おうと考えていた。ある程度、案を纏めた書類を制作し一休みしようかと考えていた所で、執務室に下級兵の一人がノックした後に入ってきた。

 

 

「失礼します、スーナ様。間もなくギニュー特戦隊が到着いたします」

「わかりました。私も出迎えに行きましょう」

 

 

下級兵はスーナの表情を見た後にギョッとしたが上司であるスーナの前もあり、すぐに姿勢を正してスーナを見送った。スーナの姿が見えなくなるまで頭を下げていた下級兵だが、スーナが完全に見えなくなると大きく息を吐いた。

 

 

「ぶっはぁぁぁぁぁ……緊張したぁ……」

「おいおい、他の幹部方じゃないんだからスーナ様にそこまで緊張感しなくても……」

 

 

スーナを見送った兵士をたまたま通り掛かりの兵士が声を掛ける。だが、スーナを見送った兵士はガバッと顔を上げて抗議した。

 

 

「バカ野郎!今のスーナ様のお顔を見てないのか!」

 

 

その兵士の一言に怒鳴られた兵士は、スーナの顔を見ていないので頭の上に?マークを上げるだけである。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

「うぉぉぉぉぉぉっ!リクーム!」

「ケーケッケッケッ!バータ!」

「はぁぁぁぁぁぁっ!ジース!」

「ふぉぉぉぉぉぉっ!グルド!」

「はぁぁぁぁぁぁっ!あ、ギニュー!」

 

 

ギニューを始めとするギニュー特戦隊のメンバーは独特のポーズを好む。それをフリーザとスーナは冷めた目で見ていた。

 

 

 

「み」「ん」「な」「そろっ」「て」

 

「「「「「ギニュー特戦隊!!!」」」」」

 

 

 

そして五人組は息ピッタリと最後に決めポーズをした。その場には冷たい空気と沈黙が流れる。

 

 

「ま、待っていました……よ」

 

 

フリーザは色々と言いたいことがあったが、なんとか労いの言葉を絞り出した。しかし、ギニュー特戦隊にはそれ以上の事があった。

 

 

「おい、スーナどうした!?」

「いつもなら冷めたコメントの一つが出てるぞ!」

 

 

ギニュー特戦隊はポーズを解くとスーナに駆け寄る。いつもならツッコミの一つが入るのに今回は何もない。ギニュー特戦隊が慌てるのも無理もなかった。

 

 

「スーナ……何があったんだ?」

「……お父……さん……」

 

 

ギニューがスーナに歩み寄るとスーナは俯いていた顔を上げる。そこには涙を目の端に溜めたスーナの泣きそうな表情だった。今まで見たことのないスーナの顔にギニュー特戦隊の誰もがギョッとした。

 

 

「その件については私から説明しましょう」

「は、畏まりました。お前等、整列!」

 

 

フリーザの一言にギニューは特戦隊を並ばせた。スーナもギニューの隣に立つ。

 

 

「このナメック星にはドラゴンボールと呼ばれる何でも願いの叶う玉があるそうです。私はそれを集めていましたが裏切り者のベジータが私からドラゴンボールを奪いました。その過程でドドリアさんとザーボンさんはベジータに襲われて殉職と相成りました。一度はベジータを捕らえましたが脱走され、アプールも殺されました」

「な……ザーボンとドドリアが……アプールまで……」

 

 

フリーザの発言にギニューは驚きを隠せなかった。ベジータがザーボンとドドリアを倒した事もそうだが長年、スーナの上司と教育係となっていた二人が死亡したのだ。更に長年スーナの部下として共に居たアプールまでもがベジータに殺されたのだ。スーナの胸中を考えれば泣くのも無理はないとギニューは思う。

 

 

「更に連れてきていた兵士の八割がナメック星人の抵抗で使い物にならなくなりましてね……スーナにも連れてきて貰ったんですが、そちらも他のサイヤ人に襲われて全滅……」

「他のサイヤ人に?フリーザ様、生き残ったサイヤ人はスーナ、ベジータ、ナッパ、ラディッツの四名だけかと……」

 

 

「それが違った様ですね。スーナを襲ったターレスというサイヤ人によればサイヤ人の生き残りはまだ居るとの事でしてね。ま、そのターレスとやらも意識を失ったスーナに倒された様ですが」

「スーナに?いや、しかし……」

「隊長、スーナの戦闘力が4000にまで上がってますぜ」

 

 

フリーザの説明を受けていたギニューだが、信じれないと言い掛けた所でスカウターでスーナの戦闘力を測ったバータが口を挟んだ。

 

 

 



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ギニュー特戦隊、飛び立つ

 

 

 

 

「戦闘力4000!?」

「まさか、スーナの戦闘力がそんなに上がっているとは……」

 

 

スーナは自分自身の戦闘力を改めて計測していなかった為に驚き、ギニューは愛娘の成長に驚きつつも喜んでいた。

 

 

「スーナの戦闘力向上は喜ばしい結果ですね。それはさておき……ギニュー特戦隊はベジータさんを半殺しにして私のところに連れてきなさい」

「は、畏まりました。ベジータと共にいる二人組は如何いたしましょう?高い戦闘力の持ち主の様ですが」

 

 

フリーザの発言にギニューはベジータ以外の二人の事をどうするか問う。

 

 

「二人……ああ、以前ドラゴンボール探しを邪魔しに来た連中ですね。大した戦闘力の持ち主ではないようですし殺してしまいなさい」

「は、畏まりました!」

 

 

フリーザは少し思案するが、自分になんの得もないと考えると切り捨てる考えをする。

 

 

「お待ち下さいフリーザ様。ベジータ王子と共にいる以上、彼等も何か有力な情報を持っているかもしれません」

「ふむ……なるほど、スーナの言うとおりかもしれませんね」

 

 

スーナの発言に、フリーザは失敗続きのナメック星での事を考えると、スーナの意見も聞くべきかと考え始めていた。

 

 

「ふ……戦闘力の成長は見えたが戦士としては成長していないなスーナ。フリーザ様のお考えに逆らうなんて、これではギニュー特戦隊のマネージャーは務まらんぞ」

 

 

ジースがドヤ顔でスーナの甘さを指摘すると、スーナはスッと顔を上げた。

 

 

「ジースさん……以前の任務の前に貸した四万キャッシュ。返してもらえませんか?」

「流石はスーナだな。サイヤ人でありながら、その優しさを持つとは素晴らしい考えだ。奴等も有力な情報を持っているかも知れないという慧眼はフリーザ様に匹敵する」

 

 

スーナの一言にジースはスーナに媚を売り始めた。戦闘力の差はあれど立場的には弱いギニュー特戦隊である。

 

 

「おふざけもそのくらいにしなさい。確かにスーナの言うとおりかもしれませんね。ならば、その二人も半殺しにして連れてきなさい。ただし抵抗したら殺してしまいなさい」

「は、ではその通りに致します」

 

 

『殺す』から『半殺し』になったのはフリーザがスーナの意見を聞き入れたからであるが、自身に反発する者を許さないのがフリーザだ。抵抗したら殺すのは変わらない事だった。

 

 

「では、行くぞ貴様等!ギニュー!」

「「「「ファイトォォォォォッ!!」」」」

 

 

ギニュー特戦隊はスペシャルファイティングポーズとは別のポーズを取りながら、体育会系の学生のように声を張ると次々に飛び立っていく。

 

 

「貴女も一緒に行きなさいスーナ。貴女がベジータ達を尋問すれば有力な情報を引き出せるでしょう」

「はい、承知しましたフリーザさ……きゃあっ!?」

「ようし、一緒に行くぞスーナ!」

 

 

飛び立つ寸前に話を聞いていたバータはスーナを背後から抱き締めると、そのまま飛び立っていった。

 

 

「頼みましたよギニューさん、スーナ」

 

 

フリーザはギニュー特戦隊のノリにタラリと汗を流しながら、ギニュー特戦隊を御せるのはスーナだけだと再認識していた。

 

 

「それはそうと……スーナに抱きつくとは……バータさんには後でオシオキですね……」

 

 

フリーザはギニュー特戦隊とスーナが飛んでいった方角を眺めながら呟いた。



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スーナと悟飯とクリリン

 

 

ドラゴンボールを必死に集め、死んだ仲間を生き返らせようとしていた悟飯とクリリンは、利害の一致から仲間を殺したベジータと共同戦線を張る事となり、隠したドラゴンボールを回収しようとしていた……その最中の出来事だった。

 

 

「バータ!貴様、スーナを抱き抱えて飛ぶとはなんて羨まし……じゃなかった、羨ましい事を!!」

「隊長、言い直せていません!」

「お父さん、私はそんなに速く飛べないからバータさんが気を回してくれたの!だから落ち着いて!」

「そ、そうッスよ隊長!ほら、スーナだけ遅れたら可哀想じゃないッスか!」

 

 

隠したドラゴンボールの前に突如、五つの光が舞い降りて悟飯達の行く手を阻んだのだが、速攻で仲間割れを起こしていた。

キレ気味のギニューをジースとスーナが宥めて、ギニューにミルキーキャノンを喰らいそうになって慌てているバータ。リクームはそれを笑って見ていて、グルドはベジータを睨んでいた。

 

 

「ちっ……相変わらずふざけた連中だ」

「おい……アレがフリーザの精鋭なのか?確かに凄まじい気を感じるけど大したこと無い奴や女の子まで居るじゃないか」

 

 

敵を前にして緊張感の無いギニュー特戦隊を見て舌打ちするベジータにクリリンが話し掛ける。

 

 

「見た目で判断するな……あの女はサイヤ人の生き残りの一人で戦闘力は低いがフリーザ軍の頭脳と言っても過言じゃない奴だ」

 

 

早くも敵を侮っていたクリリンに注意を促すベジータ。そこで漸く落ち着いたギニューが一歩前に出る。

 

 

「久し振りだなベジータ。フリーザ様から今回の件は聞いている。貴様はスーナと生まれを同じくするサイヤ人だから大目に見ていたが今回の件は到底許される事じゃないな。ドドリアやザーボンを殺めた罪も重いぞ」

「ふん、俺達サイヤ人がいつまでも大人しくしていると思ったか?」

 

 

睨みを利かせるギニューにベジータは鼻で笑う。そこでスーナがギニューの横に並び立ち、ベジータに頭を下げた。

 

 

「お久しぶりですベジータ王子。再会がこの様な形になったのは非常に残念です」

「随分と腕を上げたなスーナ。以前とは比べ物にならん程に強くなったようだ」

 

 

ベジータの一言にスーナは疑問を感じた。スカウターも無いのに何故、自分の戦闘力の向上を感じ取ったのか。しかし、スーナにはそれ以上の疑問があった。

 

 

「ベジータ王子に伺いたいのですがサイヤ人の生き残りはベジータ王子、ナッパさん、ラディッツさん、私の四名と聞いていましたが他にも存在するのでしょうか?」

「ふん、貴様等に素直に答えると思ったか?」

 

 

スーナの問いにベジータは意地の悪い笑みを浮かべた。

 

 

「そちらの少年もサイヤ人では無いのですか?私は先日、ターレスと名乗るサイヤ人に会いました。その者が言うにはサイヤ人の生き残りはまだ存在する……と」

「ターレスだと?知らんな。確かにサイヤ人の生き残りは存在するが俺の知らん事だ」

「あ、貴女もサイヤ人なんですか?」

 

 

スーナとベジータの会話にサイヤ人の事で関心を得た悟飯は会話に参加する。

 

 

「はい、私の名はスーナと申します。アナタ達は?」

「あ……孫悟飯です」

「あ、ああ……クリリンだ」

 

 

スーナの優しい声音の笑みに女の子とろくに会話した事がない悟飯は少々顔を赤らめ、クリリンもスーナの容姿に頬が緩む。

 

 

「アナタ達は地球から来たと聞いています。ベジータ王子やナッパさんが返り討ちにあったのも地球……あの二人を倒せる程の戦闘力を持った地球人がいるとは思えません。更にラディッツさんは有給を使ってまで地球へと向かっていました。悟飯君、アナタがサイヤ人であるということはアナタのお父さんかお母さんがサイヤ人であるということになります。つまり地球にはフリーザ軍が把握していなかったサイヤ人が居るという事になりますね」

 

 

僅かな情報から悟飯達の動向を推理したスーナ。その殆どが正解だった事に悟飯もクリリンも動揺を隠せなかった。

 

 

「奴に情報を与えるな!スーナは一挙一動でこっちの状態を探ってくるんだぞ!」

「痛っ!」

 

 

ベジータは迂闊に此方の情報を与えようとした悟飯の頭に拳骨を落とす。

 

 

「ベジータ王子、子供をあまり手荒に扱わないでください」

「ちっ、相変わらず甘い奴だ……反吐が出るぜ」

 

 

子供の扱いが悪いと嗜めるスーナにベジータはぺっと唾を吐く。

 

 

「止めておけスーナ。お前の優しさは野蛮なベジータには理解できんさ。さて、俺達の後ろに五つのドラゴンボールがある。貴様等の持っている二つのドラゴンボールを貰おうか。ま、大人しく渡したからと言って大目に見ようって気はないがな」

「お前達、スカウターで人間は探せてもコイツは探せないだろ?」

 

 

ギニューの問い掛けにベジータはニヤリと笑みを浮かべるとドラゴンボールを後方へと勢いよく投げた。だが、それを見たバータは飛び立つ。その動きは素早くドラゴンボールを投げたベジータや悟飯、クリリンにも察知されずベジータの投げたドラゴンボールをキャッチした。そしてすぐさま元の位置へと戻って来た。

 

 

「ただいまっと。ほら、ドラゴンボールだぞスーナ」

「おかえりなさい、バータさん」

 

 

バータは戻るとドラゴンボールをスーナに見せ付ける様に目の前に突き出し笑みを浮かべた。スーナに良い所を見せようという魂胆が丸見えだった。

 

 

「遠くに捨てようとしたらしいが生憎とバータのスピードは宇宙一なんでな。さて、もう一つ」

「破壊しろ!」

「ち、ちくしょー!……あ、あれ?」

 

 

ギニューの解説に遠くに捨てるのは不可能と判断したベジータは取られるくらいならと、クリリンにドラゴンボールを破壊しろと叫ぶ。咄嗟にドラゴンボールを破壊しようとしたクリリンだが、手の中にあったドラゴンボールは消えてしまった。

 

 

「ふー……危ない、危ない」

「な、なんで……?」

 

 

クリリンの手の中にあったドラゴンボールはグルドが持っていた。その事実にクリリンは唖然としていた。

 

 

「噂は本当だったのか……グルドは僅かな時間だが時間をコントロール出来ると」

「そ、そんな……マジかよ……」

 

 

ベジータから発せられた事実に驚きを隠せないクリリン。

 

 

「これで七つ全てのドラゴンボールが揃ったな。これでフリーザ様は不老不死を得られる。さてドラゴンボールも揃った事だし……少し可愛がってやろう」

 

 

ドラゴンボールが揃った事に喜ぶギニューはニヤリとベジータ達を見詰めた。

 

 

「可愛がると言っても頭を撫でたり、高い高いしてやるんじゃないぞ。痛め付けてやるという意味だ!」

「説明せんでいい!それに頭を撫でるならスーナのが最高だ。それ以外は認めん!」

「相変わらず親バカか」

 

 

態々説明するジースにギニューはスーナの頭を撫でながら叫ぶ。その様子を見たベジータは舌打ちをした。

 

 

「さて、俺はフリーザ様にドラゴンボールをお届けするが……スーナ、お前は俺と共に帰るぞ」

「え、お父さん?」

 

 

普段ならスーナに良い所を見せようとするギニューだが珍しく、雑用を買って出た。更にスーナを連れ出そうとする行動にスーナは思わずギニューを見上げた。

 

 

「親しい仲だったベジータや子供が死ぬところは見たくないだろう」

「お父さん……」

「ちっ……舐めやがって……」

 

 

 

長年の付き合いであるベジータや子供が特戦隊に殺されるのは辛いだろうとスーナをこの場から離そうとするギニュー。ベジータは自分達が殺される事が確定しているかのような口振りのギニューに苛立ちを隠せなかった。

 

 

「行くぞ、スーナ」

「はい。ベジータ王子……これが別れとなるでしょう。長年お世話になりました」

 

 

ドラゴンボールを超能力で浮かせたギニューは飛び立とうとし、スーナはベジータに最後の別れを告げた。

 

 

「悟飯君、クリリンさん。彼等の卑劣な戦いぶりは参考になりますよ。戦士として最後に学んでくださいね」

 

 

悟飯やクリリンにも別れを告げたスーナ。然り気無くディスられたジースは『スーナ、四万キャッシュは絶対に返さんぞ』と心の中で呟いた。



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ドラゴンボールの使用方法

 

 

 

 

ベジータ達から奪ったドラゴンボールを持ってフリーザの下へと戻ったスーナとギニュー。持ち帰ったドラゴンボールを見て、フリーザは笑みを溢す。

 

 

「ホッホッホッ……流石はギニュー特戦隊。見事な働きぶりです」

「はっ、お褒めに預り光栄です!」

 

 

 

揃った七つのドラゴンボールを前にご満悦のフリーザとギニュー。しかし、スーナの表情は晴れないままだった。

 

 

「スーナ……気持ちはわかるがフリーザ様の喜ばしい瞬間だ」

「ホッホッホッ……良いのですよ。貴女は心優しいのですから」

 

 

スーナの心情は理解するものの、フリーザを前にしてはいけない態度にギニューはそれを咎めようとするが、逆にフリーザが止めた。

 

 

「さて、スーナ。ベジータ達からは有力な情報を得られましたか?」

「恐らくですが……私やベジータ王子、ナッパさん、ラディッツさん以外のサイヤ人が複数存在しています。先日、私が遭遇したターレスも同様でしょう」

 

 

フリーザの問いにスーナは先程、推測したサイヤ人の生き残りに関する事を報告する。

 

 

「ふむ……やはりサイヤ人は他にも生き残りがいましたか……ま、今はそんな事は問題ではないでしょう。」

「おお……では遂にフリーザ様が不老不死になられる!」

 

 

フリーザはどうでもいいと言うと、地面に転がっているドラゴンボールを見詰めた。

 

 

「さあ、ドラゴンボールよ!私を不老不死にしなさい!」

「おおっ!」

 

 

フリーザの叫びにギニューはオーバーリアクションをする……が、何も起こらなかった。

 

 

「何も……起きませんね。もう不老不死になられたのでしょうか?」

「いえ……そんな感じはしませんね」

 

 

フリーザとギニューはドラゴンボールを揃えたのに、何も起こらない事を不思議に思っていた。

スーナはドラゴンボールを見ながら指を唇に這わせながら考える様な仕草を見せていた。

 

 

「フリーザ様……ナメック星人達からは願いの叶え方を問いただしましたか?恐らくですが願いを叶える為に条件があるのでは?例えば、『合言葉』『時間』『ボールの並べ方』などが予想されますが」

「いえ……ですが、二つ目の村を襲った際にナメック星人が言っていました。『貴様らには願いは叶えられないだろう』と……あの時は負け惜しみを言っているのだと思っていましたが……」

「なるほど特別な暗号が必要と言う訳ですね」

 

 

スーナの推測に、フリーザはドラゴンボールを奪った際にナメック星人に言われた事を思い出し、ギニューはドラゴンボールの使用にも条件があるのだと理解した。

 

 

「ナメック星人達は殆ど始末してしまいましたからね……生き残りがいれば良いのですが……」

「はっ……もしやベジータ達が知っているのでは……すぐに部下達に中断させなければ……」

「暗号……ナメック星人特有の物が必要と……」

 

 

慌てるフリーザとギニューに対してスーナは冷静に思考を巡らせていた。

 

 

「おや……ふむ。ギニューさん、ベジータ達はそのままで結構。私のスカウターに生き残りのナメック星人を捕らえました。こんな場所は攻めていませんからね。生き残りが居たのでしょう」

「ならば私が願いは叶え方を吐かせてみせましょう!」

 

 

フリーザはスカウターで生き残りのナメック星人を見つけてニヤリと笑みを浮かべた。ギニューは自ら今すぐそこに出向いて願いの叶え方を聞き出そうと飛び立とうとしたがフリーザが手で制する。

 

 

「いえ、私が行きます。此処の連中の扱いは私の方が慣れていますからね。アナタとスーナは此処でドラゴンボールを見ていなさい」

「はっ、畏まりました!」

 

 

フリーザの指示にギニューはビシッと姿勢を正して拝命するが、スーナは不安そうな表情でフリーザを見詰めた。

 

 

「フリーザ様……」

「大丈夫ですよ、スーナ。今回の件は確かに私の短慮が原因でした。願いの叶え方を聞き出すまでは殺しはしませんよ」

 

 

フリーザはスーナにニコリと笑みを浮かべると、普段から乗っているポッドに乗ってスカウターが示した地点へと飛んでいってしまう。

 

 

「フリーザ様が戻られるまで俺は兵士達にファイティングポーズの指導をするが、スーナお前はどうする?」

「私は宇宙船の修理指示や土壌調査を進めてくるね」

 

 

ギニューとスーナはフリーザが居なくなった後にやるべき事をやる為に行動に移すが、スーナは兎も角、ギニューは完全に私事なのだが最早、スーナもツッコミを入れなくなっていた。

 

スーナがフリーザやギニューを除くギニュー特戦隊の事を待ちながらも仕事を進める。それはフリーザやギニュー特戦隊達の事を信じているからである……しかし、スーナは知らなかった。こうしている間にもグルドは倒されてしまい、現在はリクームとベジータが激しい戦いを繰り広げている事に。



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スーナの思い・ギニューの決意

 

 

 

宇宙船に戻ったスーナは修理指示や土壌調査を始めていた。

宇宙船はスーナが思っていた以上に損壊が激しく、通信機が無事なのでいっそ惑星フリーザから迎えを頼んだ方が早いかも知れないと考えていた。

土壌調査は既にフリーザの指示である程度進んでいた。しかし、今からこの星を開拓するのではコストが掛かりすぎる為に、住む星を失った宇宙人用の移住惑星にした方が良いかもしれないとスーナは考えていたが、フリーザはドラゴンボールで願いを叶えたらナメック星は花火にする予定なのをスーナは知らなかったりする。

 

 

「宇宙船の修理状況はどうですか?」

「フロートは無事ですが船体の方がボロボロですね。応急修理で飛ばす事は可能ですが惑星フリーザまで保つかどうか……」

 

 

スーナは部下から宇宙船の修理状況を聞きながら、やはり通信機で惑星フリーザに迎えを頼んだ方が良いだろうと考えていた。その時だった。

 

 

「「ギニュー特戦隊、出動!!」」

 

 

宇宙船の窓からギニューとジースが数名の部下をバックにスペシャルファイティングポーズを取っていた。いつもなら全員揃ってポーズを決めているのに何故、二人でしているのか疑問に思ったスーナは宇宙船の外に出る。

 

 

「何をしてるんですか。お父さん、ジースさん」「……………」

「ス、スーナ……」

 

 

 

宇宙船の外に出たスーナはギニュー達に問いかけるがギニューは口を閉じ、ジースはあからさまに動揺していた。

 

 

「スーナ……良く聞け。グルド、リクーム、バータがベジータとその仲間達に殺された」

「た、隊長!?」

「え……お、お父さん、冗談にしては笑えない……」

 

 

ギニューは意を決して今の状況を説明した。スーナには黙っているのだろうと思っていたジースは驚きを隠せず、スーナは驚愕のあまり思考が上手く回らなかった。

 

 

「本当の事だ。リクーム達はベジータ達を後一歩の所まで追い詰めていたが新たに現れたサイヤ人に敗北した」

「そ、そんな……」

 

 

ギニューの説明にスーナは信じられなかった。いつも敵を軽く見て慢心しているギニュー特戦隊だが、それは強さの裏返しでもある。事実、今までギニュー特戦隊を倒せる者は居なかったのだから。

 

 

「俺はこれから奴等の敵討ちに向かう。スーナ、お前は此処で待っていろ」

「そ、そんな……私は!」

 

 

食って掛かろうとするスーナの肩に手を置いて落ち着かせるギニュー。

 

 

「いいから聞け。こんな失態をフリーザ様に報告するなど現段階では出来ん。俺自ら出動し、部下の失態を消してくる。その上でフリーザ様に報告する……それしかない」

 

 

普段からふざけている事の多いギニューが真面目に話をしている。それだけでもスーナを驚かせる要因なのだが、ギニュー特戦隊がやられた事もあり、スーナはギニューが追い詰められているのだと改めて感じた。

 

 

「………わかった。でも、お父さんも気を付けて」

「ああ……必ず戻るから心配するな」

 

 

ギニューは泣きそうになっているスーナの頭にポンと手を重ねると、素早い速度で飛び立っていく。

 

 

「スーナ、そこの足元にドラゴンボールを隠したから後は頼む」

「はい、此方は私が引き継ぎます」

 

 

ジースも一言残してから飛び立っていく。ジースがスーナにドラゴンボールの話をしたのはドラゴンボールの警備を預かっていたギニューからの引き継ぎと言う事だ。

スーナは涙目になっていた目の端を指で掬い上げ涙を拭う。

フリーザとギニューから仕事を任されたのだ、まだ泣くわけにはいけないとスーナは涙を堪えた。

 

しかし、悲劇は続く。ギニューを見送ってから宇宙船に戻り、仕事を再開したスーナの前に驚くべき人物が現れたのだ。

 

 

「ベ、ベジータ王子……」

「ほう……これは好都合だ。ギニューの奴をカカロットに押し付けていれば宇宙船が手薄になっているだろうと思っていたが、まさかお前が居るとはなスーナ」

 

 

ボロボロの戦闘ジャケットを身に纏ったベジータがフリーザの宇宙船に侵入してきた。恐らく、ギニュー特戦隊との戦いで傷付いたのだろう。そしてその口ぶりから先程、ギニューが言っていた新たに現れたサイヤ人にギニューを任せて、自身はフリーザの宇宙船に来たのだろうとスーナは推測していた。

 

 

「さっきはお前に別れを告げられたが……今度は俺から言ってやるぞ。じゃあな、スーナ」

「くっ!」

 

 

ベジータはニヤリと笑みを浮かべるとエネルギー波を手にチャージしており、スーナに向けて放とうとする。スーナは咄嗟にガードしようとした。ベジータとスーナの戦闘力の差を考えれば意味は無いかもしれないが、何もしないよりはマシだろう。

 

 

「皆、スーナ様を守れ!」

「「「オオオオォォォォォォォォッ!!」」」

「み、皆さん……」

「ふん、ご苦労な事だ!」

 

 

ベジータがエネルギー波を放つ瞬間、宇宙船に残っていた兵士達がスーナの盾になる様にベジータの前に立ちはだかる。それを見たスーナは驚き、ベジータは関係無いとばかりにエネルギー波を放つ。放たれたエネルギー波はスーナと部下達を飲み込み、宇宙船の一室を完全に吹き飛ばした。

 

 

 

 

◆◇sideギニュー◆◇

 

 

 

ギニューはリクーム、グルド、バータを倒された敵討ちに向かい、ベジータと見覚えの無いサイヤ人と対峙していた。ギニューは新たに現れたサイヤ人『孫悟空』の戦闘力が相当に高いと直感的に感じていた。二人とも倒そうかと思っていたがベジータは即座に戦線離脱をした。

 

 

「ベ、ベジータの野郎逃げやがった!」

「馬鹿者!すぐに奴を追え!フリーザ様の宇宙船にはスーナが居るんだぞ!」

 

 

ベジータが逃げた事にジースは叫んだ後にギニューからの怒声を浴び、慌ててベジータの後を追う。

それを皮切りにギニューと悟空との戦いが始まった。素早い動きに数度合わせた拳と蹴りの応酬。数度の接触の後に二人は距離を開ける。

 

 

「オメェ達でも仲間を思う気持ちってのがあるんだな。さっきの戦いでもフェアな戦いぶりだしよ」

「俺を他の奴等と同格に思わない事だな。だが……貴様の力は俺よりも強そうだ」

 

 

ギニューは先程の戦いから悟空の戦闘力が高いと感じ取っていた。対する悟空はギニューがフェアな戦士だと感じていた。先程、戦ったリクームやバータ、ジースは油断していた上に自身との力の差も感じ取れない連中だったが、目の前の男は違うと考えていた。

 

 

「力の差を感じたのなら、自分の中の星に帰ぇれ。オラは無駄な殺生はしたくねぇ。特にフェアな戦士であるオメェは死なせたくねぇ」

「………フッ」

 

 

悟空の発言にギニューは何処か諦めた様子でスカウターを外し、笑みを浮かべた。そして昔の事を思い出していた。

 

 

◆◇◆◇

 

 

『ボディチェンジ?』

『そう!それこそ俺の最大の奥義にして究極の技なのだ!俺は自分の体と相手の体を入れ換える特殊能力があるのだ!だから万が一、敵が俺よりも強くても相手の体を奪い俺は更なる力を手に入れられるのだ!』

 

 

ギニューはスーナに自分の特殊能力の話をしていた。その能力とは『ボディチェンジ』その特殊能力は相手の体と自分の体を入れ換える能力である。

 

 

『お父さん……その能力は普段から使ってるんですか?今まで見たことありませんけど』

『自分より弱い者と体を入れ換える意味は無いからな。もう20年以上は変えていないぞ』

 

 

スーナの疑問に答えたギニュー。今の体になってから既に20年以上は経過しており、惑星ベジータでコルド大王がフリーザに軍を譲る発言をした際にも今現在の姿だった。

 

 

『俺の能力は無敵。仮に俺よりも強い奴が現れても俺自身の体を傷付けてから体を入れ換えれば済むからな』

『確かにその戦法は有効かも知れませんけど……その力に頼りすぎると痛い目を見るかも……』

 

 

ギニューは自分の力を完璧な物だと確信していたがスーナは不安そうにしていた。

 

 

『案ずるなスーナ。俺よりも強い存在とはフリーザ様の一族以外には存在しない。事実、俺は今の体になってから20年はそのままなんだからな』

『そっか……でも私はお父さんがボディチェンジをするのはやっぱり嫌かも。だってお父さんは今の姿が私にとってのお父さんなんだから』

 

 

ギニューはスーナを安心させる様に頭を撫でてスーナは自分の思いをギニューに告げた。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

「スーナに嫌われようが……戦士としての誇りを失おうが……俺の命はフリーザ様の為に……あるのだ!」

「なっ……オメェ何を!?」

 

 

ギニューはスカウターを地面に落とすと自分の胸を右手で貫く。突然の事態に驚く悟空。そしてその隙は致命的なものとなった。

 

 

「チェーンジ!!」

「なっ!?」

 

 

ギニューは両腕を広げて叫び、向かい合った悟空はギニューから放たれた光を避ける事が出来ずに直撃した。



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フリーザの失敗・意識朦朧のスーナ

 

 

 

ベジータがフリーザの宇宙船を襲撃する少し前。

フリーザはナメック星人の生き残りである最長老の所へドラゴンボールの使用方法を聞き出す為に向かっていた。

 

 

「スーナ、そちらの様子はどうですか?」

『宇宙船の状況を確認次第、修理に取りかかる予定です。土壌調査も並行して進めています』

 

 

やはり、この娘は良く仕事が出来る。フリーザ軍は力が全てと言っても、スーナの様な人材は代えが利かないとフリーザは感じる。

 

 

「それで、ギニューさんは……」

『どうした!貴様等そんな様でフリーザ様のお役に立てると思っているのか!?もっと気合いを入れろ!』

『………この様に兵士達に指導をしています』

 

 

ギニューの様子を聞こうとしたフリーザだったが、スカウターから聞こえるギニューの叫びとスーナの説明に兵士達の指導をしているのだと理解する。

 

 

『そうだ!気力を高めろ!そしてスペシャルファイティングポーズを決めるんだ!』

『『はいっ!』』

「………」

 

 

更に聞こえたギニューの叫びと兵士の叫び。フリーザは頭痛が始まっていた。

 

 

「スーナ……しばらくスカウターの通信は切りますから何かあったら連絡しなさい」

『畏まりました』

 

 

フリーザは独特な趣味と個性を持った親にして子がマトモである事に感謝をしながら通信を切った。それが大きな過ちになるとは今のフリーザには知る術はない。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

あれからどれほどの時間が経過したのか分からないがスーナはベジータの攻撃で気絶していた。

 

 

 

「う……あ……?」

 

 

ベジータのエネルギー波を部下もろ共に食らったスーナは瓦礫の中で目を覚ました。身体中の節々が痛く立ち上がる事もままならない。

 

 

「み、皆さん……痛っ」

 

 

ベジータからの攻撃からスーナを守る為に壁となった兵士達は全滅していた。ベジータと兵士の戦闘力の差を考えれば当然でもあるが。兵士達はスーナを庇いそのまま死亡した為、スーナに覆い被さったままだった。命は助かったものの、兵士達と瓦礫に潰されそうになっているスーナは自力での脱出は難しいそうだと考えていた。

 

 

「スカウターは……ダメですね……」

 

 

スーナは動かせる左手で眼鏡型スカウターを使おうとしたが先程の余波で壊れたのか反応が無かった。その証拠にレンズもヒビが入り、液晶が表示されなかった。

今の状況はどうなっているのか。それを確認しようにも体は動かせないし、自身は瓦礫の山に埋もれたままなのだ。周囲の状況確認もままならない。

 

 

「俺は怒ったぞー!フリーザー!!」

「怒ったのは此方も同じだ!俺はナメック星で腹心の部下すら失ったんだぞ!」

 

 

動けないスーナは外の状況は確認できないがフリーザの叫び声と……ターレスと似たような声を聞いた後にスーナは再び、意識を手放した。

 

 



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崩壊するナメック星・崩壊するスーナの……

 

 

 

「このフリーザを不老不死にしろー!!」

 

 

フリーザは限界まで張り上げた声でドラゴンボールによって呼び出された願いを叶える龍『ポルンガ』に叫ぶ。

既にドラゴンボールが効力を失ったと聞いたフリーザはそれを切っ掛けにベジータ達との戦闘を開始した。しかし、どういう事かは分からないがドラゴンボールの効力は再び発揮されていたのだとフリーザは確信し、願いを叶えようと必死になっていた……なっていたのだが、ポルンガの口からはフリーザの望み以外の言葉が出てきた。フリーザは気付くのが遅れた。ポルンガを呼び出しているドラゴンボールの近くにナメック星人の子供『デンデ』が居た事に。デンデが何かを叫ぶとポルンガは頷いた。

 

 

『良かろう……このナメック星に居る孫悟空とフリーザ以外の者を地球へと送る』

「なっ!?」

 

 

自身の望んだ願いは叶えられず、ドラゴンボールは空に浮き、何処かへと飛んでいってしまった。呆然とするフリーザの背後で悟空は安堵の声を出す。

 

 

「お前の願いは叶わなかったな」

「あのガキは俺が殺した筈だ……何故生きている!それに何故俺の願いが叶わなかった!」

 

 

フリーザは苛立ちを隠せずに叫ぶ。

 

 

「あのナメック星人の子供が生き返ったのは地球のドラゴンボールの力だ。そしてこの星のドラゴンボールはこの星の言葉で喋らないと意味がないらしい……焦ったぜ」

「お、おのれ……」

 

 

悟空からの説明にギリッと歯軋りをさせるフリーザ。

 

 

「星が縮み始めた……おそらく爆発まで後僅かだろう。俺に殺されるのが先か、星の爆発が先か……どちらにしても、宇宙空間で生存できない貴様には死しかない……」

「かもな……」

 

 

 

自身の言葉を聞いても、焦り一つ見せない悟空に、フリーザは一つの答えに辿り着く。忘れた訳ではないがサイヤ人は戦闘民族なのだ。目の前の伝説の戦士とて、それは例外ではない。

 

 

「死を覚悟してまで、どうやらこのフリーザと決着をつけたいらしいな!」

「………ふ」

 

 

フリーザの言葉に肯定の意を返す様に、不敵な笑みを向ける悟空。そして、ゆっくりと地上へ降りていく。その光景を見て、フリーザも愉快そうに笑みを浮かべた。

 

 

「肉弾戦か……そこまでとことん決めたいか、いいだろう」

 

 

悟空同様、地上へ降り立つフリーザ。星が崩れ落ちる中見つめ合う両者。最期の戦いが今始まろうとしていたが、その前に悟空が口を開く。

 

 

「さっき貴様が部下の命を惜しんだ事は意外だった。幾つもの星を壊して、人を殺しておいて、貴様は腹心の部下を失ったと叫んだな」

「あの親子は特別だよ。ギニュー隊長はその強さを、娘のスーナは頭脳を。甘さはあるが、彼女の知謀は僕をも上回っていたかも知れないからね。彼女の存在は価値の無い貴様の仲間のゴミ共の命やその辺の惑星なんかよりも遥かにあったよ」

 

 

 

その言葉を聞いて悟空は更に怒りを燃やす。

 

 

「貴様にも慈悲が僅かにあったかと思ったが……やはり貴様は許せない」

「それは……こっちのセリフだ!」

 

 

その言葉を皮切りに悟空とフリーザの最後の戦いが勃発した。

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

一方その頃、地球ではポルンガの願いで生き返ったナメック星人や悟飯、ピッコロ、ベジータ、ブルマが三つ目の願いで地球へと瞬間移動されていた。

 

 

「さ、最長老様……此所は?」

「どうやら地球と言う星に来たらしいですね……ゴホッゴホッ」

 

 

崩壊していくナメック星からの脱出が叶ったナメック星人は嬉しさ半分、困惑半分といった様子だった。最長老がナメック星人達に何が起きたかを説明している最中、事件は起きる。

 

 

「あ、ねえちょっと!大丈夫なの!?」

 

 

何かに気付いたブルマが声を上げ、地面に転がっていた人物に声をかける。声を掛けられた人物は重傷だった上に意識もなく返事も出来ない状態だった。

 

 

「あ、この人……!」

「なっ……生きていたのか!?」

「………誰だ?」

 

 

ブルマの声に気付いた悟飯、ベジータ、ピッコロがブルマの傍で倒れている人物に視線を移した。それを見た悟飯達は三者三様のリアクションをする。

そこに倒れていたのはフリーザの宇宙船で辛うじて生きていたスーナだったのだ。

 

 

「悟飯君、知り合いなの?見た感じナメック星人じゃなさそうだけど……」

「この人、フリーザ軍の幹部……でしたよね?」

「ああ、俺が殺した筈だが……あの時、兵士共が庇いやがったからギリギリ死ななかったらしいな」

 

 

ブルマの問いに悟飯がチラリとベジータを見ながら確認する。ベジータは殺したと思っていたスーナが生きている事を不思議に思っていたが、エネルギー波を放つ直前に兵士達はスーナを庇った。諸共に始末したつもりだったが、ギリギリ生きていたスーナは死にかけだった事もあり、その僅かな気を悟飯やベジータ達にも感知されなかったらしい。

 

 

「ちっ……手間が増えやがったな」

「や、止めてくださいベジータさん!」

 

 

ベジータがスーナにトドメを刺そうと一歩踏み出した段階で悟飯がそれを阻んだ。

 

 

「コイツはフリーザ軍の幹部だ!ギニュー特戦隊のマネージャーであるのを貴様も見ただろう、忘れたか!?」

「そ、それでも……無抵抗の人を……まして怪我人を痛め付けるのは見過ごせません!」

 

 

ベジータが用心の為にスーナを殺そうとしているのを悟飯が食い止める。騒ぎに最長老の話を聞いていたナメック星人達もざわつき始めていた。

 

 

「デンデや……その娘さんを治してあげなさい」

「ええっ!?でも最長老様……」

 

 

そんな中、騒動を見ていた最長老がデンデにスーナを治すようにと指示を出す。

 

 

「彼女から悪しき心は感じられません……それに少々気にかかる事があります」

「わ、わかりました」

 

 

最長老の願いにデンデはスーナの傷を治す。そして傷が癒えたスーナの閉じていた瞳が開き始める。傷を治した事で意識を取り戻した様だ。

 

 

「此所は……?」

「此所は地球だ。ナメック星からドラゴンボールの願いでこの惑星まで飛ばされたそうだ」

 

 

この面子の中で唯一、スーナの事をちゃんと知っているベジータが率先して答えた。するとスーナは考える様な仕草を見せた後……口を開く。

 

 

「あの……私は誰なんでしょうか?あなた方は私をご存じなんですか?」

 

 

スーナの発した言葉に、その場に居た全員が凍り付いた。

 



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スーナの今後

 

 

 

 

スーナの発した言葉に、その場の全員が凍り付いた。当の本人はキョトンとした顔で周囲を見ている。

 

 

「おい!どういう事だ!」

「わ、わかりませんよ!」

「完全に記憶が失われた様だな。あの娘に何があった」

 

 

一先ず、ブルマにスーナを任せ、スーナと離れた位置に移動したベジータ、悟飯、ピッコロ。コソコソと話をしていた。

 

因みに何があったかと言われれば、スーナはベジータに自分の世話をしてくれていた上司のドドリアとザーボンを殺され、ギニュー特戦隊も殺され、自身もターレスに襲われ、最終的にはベジータに部下諸共に殺されかけた、とショックな事が満載だった。

悟飯は自分が伝えられる範囲内でスーナの事情をピッコロに伝えた。

 

 

「なるほどな……精神的な物と肉体的な物のショックが両方あった為に記憶喪失となったか……」

 

 

悟飯からの説明にピッコロは納得した様子となる。以前のピッコロなら理解できなかったかも知れないが、ネイルと同化している事で心情を多少なり理解していたのかもしれない。

 

 

「どうしましょう……記憶がない上に頼れる人が居ないんじゃ……」

「その事なんだけどね、悟飯君」

 

 

悟飯がスーナの身を案じた際にスーナと話をしていたブルマが悟飯に声をかける。

 

 

「あの娘の事なんだけど、悟飯君の家で面倒見てくれない?」

「ええっ!?」

 

 

ブルマの突然の発言に驚く、悟飯。

 

 

「少し話したんだけどね、あの娘は本当に記憶喪失みたいなの。最長老様にも見てもらったんだけど邪悪な気は感じないって言ってたし。それでね本当は私の所で他のナメック星人やベジータみたいに面倒を見ようと思ってたんだけど、あの娘、ベジータを見ると体が震え始めて怖がっちゃうのよ」

 

 

ブルマの発言に納得した悟飯。ベジータの話が本当だとするならスーナは世話になった人達や自分自身を殺そうとした人物だ。心の奥底で、または体がそれを覚えているのかもしれない。

 

 

「それで、あの娘もサイヤ人なんでしょ?孫君の事もあるけど悟飯君やチチさんならサイヤ人の扱いも分かってるだろうし。それにベジータ曰くだけど、戦闘力は悟飯君の方が上らしいし、万が一記憶が戻っても対処出来るだろう、だってさ」

「そ、それはそうかも知れませんけど……」

 

 

実際、今のスーナと争う事は悟飯は躊躇いを感じていた。最長老が言っていた様にスーナからはフリーザやギニュー特戦隊から感じたような邪悪な気を感じなかった。それはナメック星で初めて会った時も同じ様に思っていた。

強さの件に関してもスーナの戦闘力は未だ、一万に到達しないが悟飯はその上を行く。万が一、記憶が戻っても取り押さえる事は可能だろう。

 

 

「チチさんには私から孫君の事も含めて説明するから、お願い出来ないかしら?」

「僕は大丈夫ですけど……お母さん次第ですね」

 

 

事情説明を全てしてくれると言うブルマに悟飯は頷いた。家庭内では母親は絶対だし、当の父は現在、ナメック星でフリーザとの決闘の最中だ。悟飯はブルマの説明にチチが納得するなら、それに従うと考えていた。

 

この後、最長老が寿命で亡くなり、長老のムーリが最長老に任命された。そしてあの世の界王を通じてヤムチャから悟空がフリーザを倒した事をブルマに伝えられた。ナメック星人をカプセルコーポレーションに匿う事にしたブルマは、ナメック星のドラゴンボールでナメック星で殺されたクリリンやナメック星の崩壊に巻き込まれた悟空を生き返らせる事にした。

 

そしてスーナはブルマからチチに連絡が行き、悟空と同族のサイヤ人である事や記憶を失っている事、身寄りが無い事、元々が頭が良いので悟飯の家庭教師になりうる存在である事が伝えられ(ブルマはスーナの頭の良さを知らないので情報元はベジータ)スーナは孫家で預かる事が決まり、記憶の無いスーナはそれに従う事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマケ

 

 

 

カプセルコーポレーションでボロボロの服を着替える為に一先ず、体を綺麗にする為にシャワーを浴びているスーナ。そしてスーナの服のサイズを調べる為に着ていた服や下着の採寸を図っていたブルマはスーナの下着に何らかの文字が書いてある事に気が付いた。

 

 

「なんて書いてあるのかしら……宇宙の公用語かしら?」

 

 

ブルマは見覚えの無い文字に首を傾げた。ブルマは知らない事だがスーナの下着にはギニューが手書きで名前を書いていた。

 

 

「ま、いっか……後でベジータにでも聞いてみよ」

 

 

その後、ブルマがベジータにそれを聞いた後にベジータが『娘の下着に名前を書いたのか、あの親父……』と呆れと嘆きを溢していた。



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新たな名前を

 

 

翌日、ブルマから連絡を貰ったチチが父親である牛魔王と共にカプセルコーポレーションを訪ねてきていた。

 

 

「悟飯ちゃん、良かっただ!無事だっただな!」

「お、お母さん……」

 

 

チチは悟飯を見るなり、駆け寄り強く抱き締めた。その姿に悟飯の事をどれだけ心配していたか、分かるものだろう。

 

 

「あの方が悟飯君のお母様なんですね」

「ええ、ちょっと……ううん、凄い過保護なんだけどね」

 

 

その光景を見ていたスーナは隣に立つブルマに問いかけ、ブルマは苦笑いをしながら、それに答える。

 

 

「ブルマさん、悟飯ちゃんを預かってくれて本当に助かっただ」

「良いのよ、一晩くらい……それよりも孫君だけど……」

 

 

チチはブルマに悟飯を無事にナメック星から帰らせた事に礼を言っていたが、ブルマは言い辛そうに悟空の話を切り出す。

悟空はクリリンの敵としてナメック星に残り、フリーザとの激闘を繰り広げ、最終的にはフリーザを倒したもののナメック星の崩壊に巻き込まれ、死亡してしまった。その事は昨晩の段階で話をしていた。その際、電話口から崩れ落ちる様な音が聞こえたから流石のチチも堪えたのだろうとブルマは考えていた。

 

 

「ええんだ……そのナメック星のドラゴンボールで悟空さが生き返られるって分かってるなら、それで……」

「チチさん……」

 

 

気丈に振る舞っているがチチは再び、悟空が死んだ事にショックを受けているとブルマは感じていた。その上で更にスーナの事を頼むのは少々心苦しかった。

 

 

「それでブルマさん、その娘が……」

「ええ、ほら挨拶して」

「初めまして……」

 

 

ブルマに促され、自己紹介をするスーナ。もっともスーナは記憶が戻った訳ではなく、スーナ本人にも名前を隠したままなので何処の誰でも無い状態ではあるのだが。

因みに名を隠せと言ったのはベジータであり、名を告げればスーナの記憶が戻る可能性がある事を考慮しての判断だが。更にを言うならスーナの名前入りの下着は処分され、新しい下着はブルマが用意した。

 

 

「ブルマさんから話は聞いてるだ。記憶喪失なんて可哀想になぁ」

「………今の私には何を失ったかも覚えていません」

 

 

チチはスーナを優しく抱き締めた。スーナ自身には記憶が無い……だからこそ悲しむ気持ちも薄れているのだが。

 

 

「だったら、ゆっくりと思い出せば良いだ。きっと記憶を失ったのも辛い事があったからだ。心も体も癒す時間が必要だ」

「そうですよ、スー……えっと……まずは体を治しましょうよ!」

 

 

優しくスーナの髪を撫でるチチ。実際にスーナは父と上司と部下を失い、自身も殺されかけたのでチチの言った事はほぼ間違っていない。悟飯は思わずスーナの名を言い掛けたがベジータの言い付けを思い出して口を閉ざし、名前を言わないように気を付けながら会話に参加する。

 

 

「そうだな。ブルマさん、この娘を引き取る話は受けさせてもらうだ……」

「そうして貰えると私としても助かるけど……良いの?」

 

 

チチがスーナを引き取る事を快く了承した事にブルマは疑問を口にする。以前ならまだしも教育ママと化しているチチがそれを受け入れた事に驚いていた。

 

 

「それなんだがな、チチはおっ母……母親を幼い頃に失っている。昨夜の電話であの娘が天涯孤独ってのを聞いて情が移ったみてーでな。ほんで悪い娘だったら断るつもりだったが礼儀正しい娘みたいでチチも気に入ったみてーだ」

 

 

チチの心情を同伴して来ていた牛魔王がコソッとブルマに説明する。スーナは悪い娘どころか悪の帝王の腹心であり、その配下の娘だから悪い娘と言われればある意味では正解なのだが、ベジータからスーナの事を聞いていたブルマは苦笑いである。

 

 

「んだども、記憶喪失じゃ名前がねーんだべ?」

「はい……私も思い出せないままなので……」

 

 

チチと話をしていたスーナは自身の名前すら思い出せない事をチチに話していた。そしてその事を聞いたチチは、ある事を思い出しスーナの両肩に手を添えた。

 

 

「だったら……今は仮にでも名前を付けねばならねぇだな。おめさの名前は桃香……孫桃香だべ」

「孫……桃香……」

 

 

チチから告げられた名を反復するスーナ改め桃香。地球でのスーナの仮の名は桃香と名付けられ、桃香は孫家に引き取られる事が決定された。

 

 




話の繋ぎ回でした。次回からスーナ(桃香)の本領発揮。


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桃香、孫家で4ヶ月過ごす

 

 

 

 

スーナ改め、桃香が孫家に引き取られて既に一ヶ月。桃香は記憶は無いものの以前の生活とは、かけ離れた生活に四苦八苦していた。

今までクリーニングしていた服等は手洗いとなり、食事も自ら作らなければならない。

桃香はチチから家事の基本から学ぶこととなる。そして、もう一つは文字である。今までは宇宙の公用語を用いていたが、当然の事ながら地球は宇宙の公用語は使われていない。桃香は一から文字を覚えなければならなかった。幸いにも悟飯が使用していた参考書があったので、桃香はそれを参考にチチや悟飯から地球の文字を学ぶ日々を過ごしていた。

 

チチは娘が出来たみたいと、悟飯は姉が出来たみたいと桃香の存在を受け入れていた。

 

 

 

しかし、二ヶ月が経過した頃に、その生活に変化が訪れる。なんと桃香は地球の言語と常識を二月程で完璧に修得してしまったのだ。現在では悟飯から勉強を教わるのではなく、教える側になっていた。

 

そして事態はそれだけに収まらなかった。家事もテキパキとこなすようになって時間が余るようになった桃香は、ブルマに頼んで孫家にパソコンを導入し、更に家の増築までしてしまったのだ。その資金はどこから出たのかと言えば、桃香はパソコンを導入後に株を始めて元手の資金を数日で家を一軒は建てられるであろう金額まで稼いでいた。

この話をブルマ経由で聞いたベジータは「記憶は失っても、やはりスーナだな……」と呟いたという。

 

 

三ヶ月が過ぎた頃、桃香はチチを「お母さん」悟飯を「悟飯」と呼ぶようになり、チチは「桃香ちゃん」悟飯は「姉さん」と呼ぶようになっていた。

当初は互いに遠慮がちな関係だったが三ヶ月という期間、共に生活して本当の家族のようになっていた。

 

記憶がない桃香には当然の事だが、フリーザ軍に居た頃もスーナの面倒はザーボンやドドリア、女性兵士が見ていたし、ギニューはスーナを可愛がっていて親子としても良好だったが、一般の親子としては成立していなかっただろう。

更に言うなら、どちらかと言えばスーナがギニューの面倒(特戦隊含む)を見ていたので立場は逆だった。

 

現在は悟空が居ないが、桃香(スーナ)にとっては普通の家族として過ごしたのは初めてと言えよう。

 

 

「桃香ちゃんは悟飯ちゃんを鍛えるのに賛成だべか?鍛えてばっかりいると悟空さみたいに働きもしねぇで戦ってばかりになりそうだべ」

「勉強ばかりでも駄目だと思います。地球には文武両道という言葉がある様ですが……」

 

 

リビングでお茶をして居た桃香とチチは悟飯の此れからについて話をしていた。チチはもう地球の脅威も去ったし、悟空も生き返ると言うなら悟飯の勉強を最優先に考えていたが、桃香はそれを否定した。

 

 

「文武両道……片寄りが無いようにするって事だか?」

「本来の意味は違うようですけどね。『武』を極めるには『文』で培った知識を。『文』を極めるには『武』で培った肉体を……これが文武両道の元となった話らしいです。それを考えるなら亀仙流は理想的な流派となりますね」

 

 

チチの疑問に桃香は調べていた事を教えた。亀仙流は「よく動き よく学び よく遊び よく食べて よく休む 人生を面白おかしく張り切って過ごせ」と言う教えであり、それは先程、桃香が話した『文武両道』に通ずる話である。

 

 

「それに……お話を聞く限り悟空さんは『武』を追求しすぎて『文』が足りないと思われます」

「んだなぁ……悟空さ、武天老師様に武術を学んだのにおっ父やクリリンさんみたいに文学は身に付かなかったみてぇでな」

 

 

桃香はクリリンやブルマから悟空の人柄を聞いていた。その上で悟空は『武』に特化しており、『文』はサッパリとだという印象だった。

 

そして4ヶ月が過ぎる頃……ナメック星のドラゴンボールで悟空やクリリンを生き返らせる日がやって来た。

 

 



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帰らぬ悟空・桃香の日常・フリーザ様の地球訪問

 

 

 

 

桃香やナメック星人達が地球に来てから130日後、ナメック星のドラゴンボールが使用可能になり、悟空、クリリンを生き返らせる日がやって来た。

悟空が生き返る事にチチ、悟飯が向かうので桃香もカプセルコーポレーションに顔を出していた。

 

ナメック星のドラゴンボールは願いが三つ叶うので、一つ目の願いで悟空とクリリンの魂を地球に呼び寄せる。二つ目の願いで悟空を、三つ目の願いでクリリンを生き返らせる。この予定だったのだが、一つ目の願いを叶えた段階で予定が狂った。悟空とクリリンの魂を呼び寄せる予定だったのだが、クリリンの魂は呼べたが悟空の魂は呼べないと言う。生きた者の魂を呼び寄せる事は出来ないとポルンガは告げる。つまり悟空はナメック星でフリーザと共に死亡した訳ではないと言う事だ。

どうやってナメック星から脱出したのかと疑問が湧き出たが一先ず置いておき、二つ目の願いでクリリンを生き返らせ、三つ目の願いで悟空を地球に呼び寄せようとしたが、悟空はポルンガに『その内、自分で帰る』と断ったのだ。

その事にチチが一瞬だが淋しそうな顔をしているのを桃香は見逃さなかった。

 

悟飯がクリリンと再会し、喜んでる最中。桃香はチチを気遣っていた。

 

 

「お母さん、大丈夫ですか?」

「ああ……大丈夫だ。悟空さが気儘に生きてるのは、いつもの事だべ」

 

 

桃香がチチに寄り添うとチチは力無く笑った。悟飯や他の皆の前では気丈に振る舞っていたが少なからずショックだった様だ。

 

 

「おい、悟飯……あの娘、確かスーナってフリーザ軍の幹部だろ?なんで地球に居るんだ?それにチチさんをお母さんって……」

「その辺りは後でちゃんと話します。スーナさん……今は姉さんとして僕の家に……」

 

 

その光景を見ていた悟飯とクリリンは桃香が孫家に居る経由を桃香に聞かれないように説明をしていた。

その後、三つ目の願いでヤムチャが生き返った。

 

その際、カプセルコーポレーションにベジータが居る事で一悶着あったが、ヤムチャにベジータがどうこう出来るわけないので納得せざるを得なかった。

 

更に130日後、天津飯とチャオズが生き返り、ナメック星人達は別の惑星へと移住していった。

 

更に一年が過ぎた……しかし、悟空は未だに地球帰って来ていなかった。桃香はカプセルコーポレーションに出向き、ブルマの仕事をサポートしながら相変わらず、株で儲けていた。

 

 

「桃香ちゃん、お仕事頑張ってるだな」

「仕事と言ってもブルマさんのお手伝い程度ですよ」

 

 

チチが煎れてくれたお茶を飲みながら桃香は謙虚な言葉を出すが、記憶は失っていても頭の回転の早さは変わらず、ブルマの研究に多いに貢献していた。

 

 

「それに……カプセルコーポレーションに居るカエルが懐いていますから、つい行ってしまうんですよ」

「ああ、あのカエルだべか。妙に桃香ちゃんにくっついてただな」

 

 

チチが思い出したのはカプセルコーポレーションの温室で飼われている見た事がないカエルだった。以前、桃香と共にカプセルコーポレーションに行った際に妙に桃香に付いて回っていたカエル。桃香がブルマの仕事を手伝っている時も、お茶している時も、桃香に寄り添うように側に居た。あんなにもカエルに好かれるとは不思議なものだ、とチチは思っていたが実はこのカエルこそ悟空と戦っていたギニューであり、悟空の機転でギニューがボディチェンジを使用した際に投げ込んだナメック星のカエルだった。

ナメック星で『孫悟空とフリーザ除く全ての者を地球に飛ばしてほしい』の願いでカエルとなったギニューも地球へ来ていたのだ。

 

 

「カエルでも慕われるのは嫌ではありませんよ」

 

 

もっとも桃香は記憶を無くしている上に、仮に戻ったとしてもナメック星で死亡したと思われているのでスーナだったとしても気付けた可能性は低いだろう。等と話をしていた最中だった。

 

悟飯がバタバタと自分の部屋からリビングを駆け抜けて玄関へと向かって行ったのだ。しかもナメック星で着ていたフリーザ軍の戦闘服を身に纏ってだ。その戦闘服はスーナとしての記憶を呼び覚ます切っ掛けになるかも知れないからとベジータから着ないように言われていたのだが、悟飯は緊急事態だったので、それを身に纏い飛び立って行ってしまったのだ。

 

 

「なんなんだ!?悟飯ちゃんが行ってしまっただ!?」

「さっき、クリリンさんから電話があったみたいですけど……あんなに慌てていたという事は何かあったんでしょうか……っ痛」

 

 

チチは悟飯が何も告げずに飛び立って行った事に驚き、桃香は冷静に何があったかを考えていたが悟飯が着ていた戦闘服を見てズキリと頭が痛んだ。この痛みは以前、自分が掛けていたひび割れたメガネを見ると起きていた頭痛と同じ痛みだったと桃香は思う。

 

 

「兎に角……後を追いましょう。お母さんは飛べないから私が抱えていきます」

「んだな……もしかしたら悟空さが帰ってきたのかもしれないだ」

 

 

頭痛はするが今は悟飯が心配だからと桃香はチチを抱えて空を飛び、悟飯の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ナメック星で悟空に倒されたと思われていたフリーザは生きていた。半死半生状態だったが体に機械を埋め込み、メカフリーザとして蘇り、悟空に復讐すべく地球が目視で確認出来るほどの距離に宇宙船で来ていた。

 

 

「あれが地球だよ、パパ」

「ふん……小さな星だな。一発で消してしまえば良かろう」

 

 

その宇宙船の窓から地球を眺めているのはフリーザとフリーザの父であるコルド大王だった。

 

 

「それじゃ僕の気が納まらないよ……それとパパ、話は真面目に聞いてほしいかな」

 

 

コルド大王はフリーザの後ろで椅子に座り、手には競馬新聞が握られ、片耳にはイヤホンが付けられていた。

 

 



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偉い人程、駄目人間の確率が高い

 

 

 

 

チチを抱えながら飛行する桃香は頭痛がドンドン酷くなっていた。体勢も安定せずフラフラと飛ぶ様子にチチも不安そうになっていく。

 

 

「と、桃香ちゃん……大丈夫だべか?」

「大丈夫……と言いたいですけど、すみません……」

「ちょっと大丈夫なのっ!?」

 

 

フラフラと飛んでいた桃香は遂に落下しそうになるが、それを救うように後方から飛んで来たブルマの飛行機が桃香とチチを拾い上げた。拾われた桃香とチチは狭いブルマの飛行機に乗り込み、フリーザの宇宙船が来るであろう場所へと飛んでいく。

 

 

「ちょっと桃香、どうしたのよ?」

「わかりません……頭痛が酷くなって……」

「桃香ちゃん、無理は良くねぇだ」

「大丈夫ですか?」

 

 

ブルマは桃香の様子を窺い、桃香は額を押さえながら体調不良を訴え、チチとプーアルは桃香を心配していた。

そして悟飯、クリリン、ピッコロ、ベジータ、天津飯、ヤムチャが揃っている場所へと降り立つ。

 

 

「お、お母さん、姉さん!なんで此処に!?」

「悟飯ちゃんだけ行かせられねぇだ」

「それに行き先も目的も聞いてなかったですからね」

 

 

悟飯がチチと桃香に何故、此処に来たのかと叫ぶがチチと桃香は純粋に悟飯が心配だったからだ。

 

 

「お、おい……フリーザってのは、こんなに大きな気を持っているのか!?」

「こんなもんじゃありません。もっともっと大きくなっていきます!」

 

 

フリーザの持つ戦闘力に恐れるヤムチャに悟飯がこんなものじゃないと叫ぶ。

 

 

「じょ……冗談じゃないぞ!そんな奴相手に出来ないぞ!」

「だったら、どうする……逃げ場なんて、何処にもないなんて分かっているだろう」

「ハッキリと言ってやろうか……地球はおしまいだ」

 

 

ヤムチャが叫び、ピッコロがどうしようもないと告げ、ベジータがこれで地球は終わりだと告げた。

 

 

「来たぞ!」

「フリーザの宇宙船だ!」

「う、うう……」

「桃香ちゃん、どうしただ!?」

「姉さん!」

 

 

飛来したフリーザの宇宙船を見て、桃香は膝を突く。その桃香を心配してチチや悟飯が寄り添うが悟飯やベジータには嫌な予感が浮かんでいた。フリーザの宇宙船を見た事で桃香のスーナとしての記憶が甦って来ているのだと。

 

 

「はぁ……はぁ……私……は……」

 

 

桃香は頭の中に流れ込んでくる雪崩の様なそれに堪えていた。

 

 

「ちっ……厄介な事になる前に……」

「ベジータさん!」

 

 

ベジータは桃香の記憶が戻る前に始末しようと拳を握るが、悟飯がそうはさせないと桃香を庇うように立ちはだかる。

 

 

「桃香ちゃ……」

「ごめんなさい……お母さん!」

 

 

チチが桃香に触れようとした瞬間、桃香は顔を上げてフリーザの宇宙船が飛んで行った方角へ素早く飛んで行った。

 

 

「ちっ!記憶が戻ったか!」

「そんな……姉さん……」

 

 

ベジータは桃香がスーナとしての記憶が甦った事を確信して舌打ちし、悟飯は桃香が再び敵になるのかと絶望をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フリーザ様!」

「おお、スーナさん。生きていたんですね、これは嬉しい」

「ほう……貴様がフリーザの言っていたスーナか」

 

 

記憶が戻ったスーナはフリーザと再会を果たしていたが、その光景に首を傾げた。

フリーザの宇宙船の周囲に何故か倒されたフリーザ軍の兵士が倒れており、フリーザとコルド大王に対峙する様に紫色の髪をした青年が立っていた。

 

 

「貴女は……」

「フリーザ様、彼は?」

「ああ……貴女が来る前に突如現れて兵士達を倒してしまったのですよ。お陰で私が働かねばなりません」

 

 

紫色の髪の青年はスーナを見て、何かを察した様なリアクションをし、スーナはフリーザに紫色の髪の青年が何者なのかと問う。フリーザから返って来た答えは兵士達を倒した者だと言う。

 

 

「全く……わざわざ、こんな辺境の惑星に来たと言うのに兵を全滅させられるとはな。ワシはこんな下らぬ前座よりも本命のスーパーサイヤ人を倒す事に専念したいのだがな」

「コルド大王様……兵士達を全滅させられて、言う事はそれだけですか?」

 

 

くだらないと吐き捨てるコルド大王にスーナは咎める様な視線を送るが、コルド大王は鼻を鳴らす。

 

 

「ふん、ワシは不甲斐ない兵士共の安否よりもレースの結果の方が気になる」

 

 

ラジオが入らないのかコルド大王は耳に付けていたイヤホンを外した。地球は宇宙から見れば辺境の惑星であり、競馬放送が聞こえなかったのだろう。

 

 

「次のレースこそ絶対に来るぞ、ケンタウロスホイミ!」

「まだ現役だったんですね、ホイミ」

 

 

意気揚々と拳を握るコルド大王に、スーナは過去にターレスが単勝一点買いをしていた神話と呪文が混ざった馬を思い出していた。



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もう一人のスーパーサイヤ人VSサイボーグフリーザ

 

 

 

 

コルド大王のケンタウロスホイミ推し発言の後、地球を滅ぼすと告げたフリーザに紫髪の青年は笑う。すると紫髪の青年は突如、髪の色が紫から金髪に変貌し逆立ち、瞳も緑へと変わっていた。

 

 

「終わりだ、フリーザ!」

「ほう……これがスーパーサイヤ人か」

「あの目……あの目だ……」

「フリーザ様?」

 

 

叫びながら睨む青年にコルド大王は興味深そうに眺め、フリーザは何処か怯えた様な表情になっていた。その様子にスーナは疑問を感じた。フリーザは常日頃、帝王としての態度を崩さない。そのフリーザが怯えと焦りを帯びた表情をしているのだ。見たこともないフリーザの表情にスーナは戸惑いを感じる。

 

 

「くたばるのは……貴様だ!」

「え、フリーザさ……きゃあっ!?」

 

 

フリーザは青年にエネルギー波を放ち、直撃を受けた青年の周囲に爆発が起きる。その余波でスーナは吹き飛ばされ悲鳴を上げた。

 

 

 

「やりすぎるなよ、フリーザ。星を破壊しては元も子もないぞ」

「手加減はしたさ。大丈夫だったかい、スーナ?」

「は、はい……っ!?フリーザ様!」

 

 

 

吹き飛ばされ尻餅を突いたスーナは立ち上がる最中、信じられない物を見た。先程の青年はフリーザのエネルギー波の直撃を浴びたにも関わらず、悠然とそこに立っているのだから。

 

 

「な、貴様……」

「愚かなりフリーザ。やはり、お前の奢り高ぶりが、その強さを鈍らせていたな。勝負と言うのは一気に決めてしまうものだ」

 

 

その光景にフリーザもスーナ同様に信じられなかった。自身のエネルギー波をマトモに浴びて死ななかったのは、孫悟空のみ。それを地球に居たサイヤ人が事なげもなく耐えたのだから。

 

 

「ならば、一気に勝負を決めてやろう!」

「フリーザ、この星もろともに消してしまう気か?」

「フリーザ様!?」

 

 

フリーザは怒りが頂点に達したのか上空に飛び上がると指先にエネルギーを集中させ、巨大な球体状の破壊を秘めた技『スーパーノヴァ』を形成する。流石のフリーザもこの技を使うには時間がかかるのか数秒のチャージの後に技を完成させた。

 

 

「孫悟空は宇宙で倒せばいい!」

「お止めください、フリーザ様!」

 

 

フリーザがスーパーノヴァを放つと同時にスーナは叫んでいた。地球で一年も過ごした日々はスーナにはかけ換えのない物となっていて記憶が戻ったとしても大切な事に違いはない。それをフリーザは消してしまおうとしている。家族として共に過ごしたチチや悟飯が死んでしまうとスーナは焦燥に刈られるが、既にスーパーノヴァは放たれてしまった。もうスーナにはどうする事も出来ない。スーパーノヴァが地球に着弾し、砂埃が舞い上がるとフリーザとコルド大王は乗ってきた宇宙船に乗り込もうとする。

 

 

「星が爆発する、行くぞフリーザ」

「そうだね、パパ。さ、待たせたね行こうかスーナ」

 

 

コルド大王は星が爆発する前に地球から離脱しようと急ぎ、フリーザはにこやかにスーナを向かえようと手を差し伸べた。その瞬間だった。地球の中心へと押し進んでいたスーパーノヴァが押し戻され始めたのだ。

 

 

「な、なんだ!?」

「ま、まさか……」

「フリーザ様のスーパーノヴァを……担いでる……」

「この程度か?」

 

 

コルド大王とフリーザの困惑した発言にスーナは開いた口が閉じなくなっていた。青年はフリーザの放ったスーパーノヴァを持ち上げ歩いてきたのだ。しかも青年は余裕そうに笑みすら浮かべている。

 

 

「ちぃ……そのまま死ね!」

 

 

フリーザは青年が担いでいるスーパーノヴァに指先からエネルギー波を放ち、スーパーノヴァを破壊し、その爆発に青年を巻き込んだ。再び、その爆発の余波で吹き飛ばされそうになったスーナをフリーザが手を掴み、飛ばされるのを防いだ。

 

 

「やったな、フリーザ!所詮、我が一族に敵は無いのだ!」

「これでスーパーサイヤ人が一人、消えたね。良い運動になったよ、パパ。スーナ、また僕の片腕として、働いてくれるね?」

「フリーザ様……私は……」

 

 

スーパーサイヤ人の青年を倒したとしてコルド大王は喜び、フリーザは再び、スーナに会えた事を喜んでいた。対するスーナの表情は曇っていた。スーナは一年という時間を地球で過ごしていた。その日々はフリーザ軍で働いていた頃には得られなかった時間であり、フリーザと共に行くという事はその日々を手放す事であり、フリーザは地球を破壊するつもりである。それはチチや悟飯を殺されてしまうという事だ。

その行為を止めて欲しいとスーナが願ってもフリーザは聞き入れないだろう。どうしようとスーナが悩んでいた時だった。

 

 

「フリーザ!」

「な、何!?」

 

 

突如、先程の攻撃で倒した筈の青年が離れた崖の上から此方を狙ったエネルギー波を放ったのだ。倒したと思っていた青年が生きていた上に不意討ちをしたとあって、フリーザは驚愕する。放たれたエネルギー波を避けたフリーザとコルド大王。スーナはフリーザが抱き上げていた。

 

 

「この程度で、俺が殺られるか……なっ!?」

「ハァァァァァァァッ!」

 

 

フリーザは再び、驚愕した。先程の青年がエネルギー波を放った後に一瞬で間合いを詰めて、目の前に迫ってきていた。

 

 

「チィ……離れてろ、スーナ」

「フ、フリーザ様!?」

 

 

危険を感じたフリーザはスーナを突き飛ばすように離した。その直後、青年の剣がフリーザを縦に切り裂いた。

 

 

「か……あ、が………」

「ハァァァァァァァッ!ハッ!」

「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

フリーザを縦に切り裂いた青年は更にフリーザを細かく切り刻むと最後にエネルギー波で、その細かくした体を消し飛ばした。その光景を目の前で見せ付けられたスーナは悲鳴を上げた。

 

スーナは気を失いそうになり、なんとか意識を保ち地面に着地したが膝から崩れ落ちた。

 

 

「中々やるな。フリーザを倒すとは予想外だぞスーパーサイヤ人。どうだ、フリーザの代わりに我が子にならんか?フリーザを倒したお前こそ、最強の我が一族に相応しい」

「………興味がない」

 

 

コルド大王は青年をスカウトするが、青年は興味ないと返答する。実際に青年の視線は、膝から崩れ落ち絶望した表情で目が虚ろになっているスーナに注がれているのだから。

 

 

「そうか……残念だ。所で、その剣……フリーザの体を切り裂くとは良い剣の様だな。見せてはくれんか?」

「…………」

 

 

コルド大王の発言に青年は漸く、コルド大王と向き合い、無言で剣を投げ渡した。

 

 

「良い剣だ………良く磨き込んである。貴様がフリーザに勝てたのはこの剣のお陰だとは思わないか?」

「何が言いたいんだ?」

 

 

投げ渡された剣を受け取り、眺めていたコルド大王なニヤリと笑みを浮かべた。青年は下らない物を見るような目でコルド大王に問い掛ける。

 

 

「なぁに……簡単な事だ。つまり、この剣が無ければ貴様はワシに勝てんのだ!」

「そうでもないみたいだぜ?」

 

 

コルド大王は握った剣で青年を切り裂こうとするが、振り下ろされた剣を青年は事なきもなく片手で受け止めた。

 

 

「な、バカな……ま、待て……グオァァァァァァッ!?」

 

 

剣を受け止めた青年はコルド大王の胸に手を添える。何をされるか察したコルド大王は青年を止めようとするが無慈悲にも青年の手からエネルギー波が放たれ、コルド大王の胸を貫く。胸をエネルギー波で貫かれたコルド大王は大岩に体を打ち付けられ、動けなくなった。コルド大王が顔を上げるとそこには冷たい目で此方を見下ろすスーパーサイヤ人の瞳と目が合った。

 

 

「た、助けてくれ……お前に当たった万馬券を……いや、星をやろう!いや、この銀河の系の惑星全てを……ギャァァァァァァァァァァッ!!」

 

 

命乞いをするコルド大王に青年はエネルギー波を浴びせてトドメを刺した。青年は更にフリーザが乗ってきた宇宙船を破壊するとスーナに視線を向ける。

 

 

「未来を変える為とは云えど……貴女にとても辛い思いをさせてしまいました。スミマセン、桃香さん」

 

 

青年はスーナの事を知っている様な口振りで謝罪をした。



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悟空の帰還。未来から来た青年トランクス

前話のラストの会話を少し修正しました。

スーナ/桃香の名前ですが、地の文での名前はスーナと記し、呼び名はそれぞれ別となります。


 

 

フリーザとコルド大王を倒した青年は、悟空が3時間後に地球に帰還する事を告げると悟飯達を連れて悟空が帰ってくる場所へと移動した。スーナはチチやブルマに支えられながら移動したが、目は虚ろな物となっていた。

 

悟空が帰還するまでの3時間もの間、青年はカプセルコーポレーションの冷蔵庫から飲み物を出したり、自身の事を少々話したりと時間を潰したがスーナの事もあり、気まずい時間が長かった。

 

 

「桃香ちゃん、大丈夫だべか?」

「…………はい」

 

 

チチやブルマ、悟飯がスーナを気遣うがスーナの表情は曇っていた。失われていた記憶や今、目の前で起きた事態に思考が追い付いていないのだ。

その原因を作ってしまった青年はベジータとスーナをチラチラと窺っていたが、それ以上は踏み込めずにいた。

 

そして3時間後、青年が言っていたとおり、悟空が地球に帰還した。ブルマやクリリン達は悟空が帰って来た事を喜んだが悟空は青年の事を知らず、スーナの事にも首を傾げていた。

青年は悟空と話がしたいとクリリン達から離れた位置へと移動して会話を始める。

 

 

「………チチさん。私に気を使わずに悟空さんの所へどうぞ。私は……大丈夫ですから」

「そんな訳にはいかねぇだ。悟空さは、あの人と話があるみたいだし、今の桃香ちゃんを放っておけねぇだよ」

 

 

スーナはチチに悟空の所へ行くように促すが、チチはそれを拒みスーナを抱き締めた。今のスーナは憔悴しきっているし、冷静ではないのだろう。その証拠にスーナは先程まで『お母さん』と呼んでいたチチの呼び名が、『チチさん』に変わっているのが何よりもの証拠である。

 

 

一方の悟空と青年は二人きりで話を始めていた。

 

 

青年の名はトランクス。彼は自分が約20年後の未来からタイムマシンに乗って来た事。

父ベジータの血を引いているためスーパーサイヤ人になれる事。

3年後に訪れる人造人間の強さ。

その時の戦いで戦士のほぼ全員が亡くなってしまい、ピッコロが死んだ為にドラゴンボールも使えなくなった事。

悟飯が自身に戦いを教えてくれたが、4年前に人造人間に敗れ、悟飯も亡くなった事。

悟空自身は戦えず心臓病で亡くなってしまった事。

 

 

掻い摘んで短く纏めた話を悟空に話したトランクスだったが、悟空は「そんな強い奴らと闘えなくて悔しい」と言ったのだ。トランクスは今まで純粋なサイヤ人に会った事が無いので、その志に驚きながらも希望を抱いていた。

 

 

「そういや、スーナはどうなんだ?アイツはギニューの娘って言ってたけどフリーザの部下でサイヤ人だから、結構強くなったんじゃねーのか?」

「桃香さ、スーナさんは……僕に勉強や生きる術を教えてくれました……スパルタでしたけど……」

 

 

スーナの話題になるとトランクスは少々目が泳いだ。その仕草に悟空は首を傾げる。

 

 

「厳しかったんか?」

「以前、料理の手伝いをした時に僕が鍋を焦がしてしまって……罰としてタワシで背中を引っ掛かれました……いつも優しくて……時に厳しい人でした」

 

 

その時の事を思い出しているのかトランクスは苦笑いになっていた。未来でのスーナは悟飯やトランクスにとっては姉の様な存在だったという。



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絶望の未来から

 

 

 

 

「桃香さんは未来で悟飯さんや俺の師匠の様な存在でした。未来でも桃香さんは悟空さんの家に家族として居たと聞いています。フリーザを倒したアナタを一時期恨んでいたと聞いていましたが、関係改善はされていたと……そして悟空さんが心臓病でこの世を去った後、人造人間が現れ、ピッコロさん達が死んだ後、桃香さんが悟飯さんを支えていました。戦闘力では劣るけど年上で悟飯さんを叱咤する役割をピッコロさんから受け継いだと悟飯さんから聞かされました」

「そうか……オラやピッコロ達が死んで悟飯が師事する人間がいなくなったんか」

 

 

トランクスの説明に悟空は何処か納得する。悟飯はキレた時は凄まじいパワーを発揮するが普段は心優しく穏やかな人格だ。それを修正するかの様にピッコロやベジータの様な厳しい人間が悟飯を叱る事があったが、未来においてはスーナがその役割を担っていたらしい。

 

 

「俺の母さんやチチさんでは悟飯さんに甘くなってしまった様です。特にチチさんは悟空さんがこの世を去ってから茫然自失となって、より悟飯さんに対して過保護になってしまったと聞いています。それで誰も悟飯さんを叱咤する事がなくなったから自分が怒らねばならないと……その流れで俺も叱られてましたけど」

 

 

ハハッと苦笑いで頬を掻くトランクス。スパルタではあったがスーナの存在は悟飯やトランクスにはかけ換えのない存在だったのだろう。

 

 

「ですが桃香さんは悟飯さんを人造人間の攻撃から庇って……亡くなりました……それで悟飯さんはスーパーサイヤ人に覚醒したと言っていました。俺は、その時はまだ悟飯さんと一緒には戦えなかったので……」

「オラがスーパーサイヤ人に目覚めた時と同じ感じだったちゅーことか」

 

 

スーパーサイヤ人への覚醒の切っ掛けは『怒り』。

悟空はクリリンをフリーザに殺された事でスーパーサイヤ人に目覚めたが、未来で悟飯はスーナを殺された事を切っ掛けに目覚めたらしい。

 

 

「桃香さんはスーパーサイヤ人にはなれなかったんですが、素での戦闘力の高さと日常での事で俺達に色々なことを教えてくれました。特に家事の事に関しては鬼姑と呼べる位に……」

 

 

これは悟空もトランクスも知らない事だがスーナは元々、身内に対して容赦ない部分がある。長年においてギニュー特戦隊の面倒を見ていたスーナの下地は、身内に容赦しないスタイルで言いたいことはハッキリと言うし、時には体罰すら与えていたのだ。それが地球に来てから対象が悟飯やトランクスにシフトしただけである。

 

 

「悟飯さんはいつも言っていました。桃香さん……姉さんはもっと幸せに生きても良かった筈だと……俺が未来から来た理由は三つ。人造人間の倒し方を探る事。悟空さんを死なさない事。そして……桃香さんに幸せに生きてもらう事……ですが、三つ目は叶わないかもしれません。さっきフリーザを倒した事で桃香さんは確実に傷付いてしまった」

「そっか……でもよ、未来のオラも桃香と仲良くなってたんだろ?きっと大丈夫だ」

 

 

トランクスは悟飯からスーナとフリーザの関係性も聞いていたが自身が考えていた以上に繋がりが深かった。それ故にトランクスはスーナの絶望した表情に自分の考えが甘かったと思っていたが悟空の一言に救われていた。

 

そしてトランクスから心臓病の薬や自身の母親がブルマである事を告げられ、驚きを隠せない悟空。一頻り驚いた後、人造人間が最初に現れた島の位置なども教えられ、トランクスは未来のブルマに早く、今回の結果を教えたいと帰る事を告げた。

 

 

「変わるといいな……未来」

「はい。未来は変わる……変えられると確信できましたから」

 

 

悟空の言った言葉にトランクスは再び、希望を抱く事が出来た。絶望の未来を変えられるのだと……しかし……

 

 

「この時代の桃香さんには……嫌われちゃったかな……」

 

 

トランクスの心にも少なからず傷が刻まれていた。

 

 

 

 



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過去と未来で語られるスーナの事

前話で『トランクスがフリーザを惨殺した件で何で態々スーナの目の前で殺したのか?』と言ったコメントを感想やメッセージで頂いたので本来なら、もっと後にする予定だった話を前倒しで出します。


 

 

トランクスとの会話を終えた悟空は、先ほどの話をどう伝えるか非常に悩んでいた。

 

 

「どーすっかなぁ……結構複雑な話だし、トランクスの事を上手く説明しねぇと……」

 

 

正直、頭のよろしくない悟空は先程の話を皆にどう説明するか悩んでいた。下手な事を言ってしまえばトランクスの存在は危ぶまれるし、何よりも皆に信じてもらえるかの方が心配なのだ。

 

 

「あ、悟空!なんの話だったんだ?」

「あ、いや……てぇした話じゃねーんだけどさ」

「ちゃんと話すんだな。俺達にとっても重大な話だ」

 

 

話を終えたとクリリンが悟空にトランクスの話はなんだったのかと問うと悟空は口を濁そうとするが、ピッコロがそれを遮る。

 

 

「ピッコロ……聞こえてたんか?」

「俺の耳は他の奴等とは出来が違うんだ……安心しろ、奴の存在を消すようなマネはしない。ろくに修行もせずに殺されたんじゃ堪らないからな」

「……殺される?」

 

 

悟空はピッコロがトランクスとの会話が聞こえていた事に驚き、ピッコロの発言にクリリン達は驚きを隠せなかった。

ピッコロはトランクスの事を上手く隠しながら、未来での事を話した。その内容に誰もが苦笑いになっていたが、段段真実味を帯びた話に苦笑いすら消えていった。

 

そして空を見上げた際にトランクスが乗るタイムマシンが宙に浮いて中にトランクスが微笑みながら手を振っていた。その直後、タイムマシンは瞬時に姿を消し、それを見たクリリン達は修行をすると気持ちを新たにするのだった。

その後、悟空がナメック星から脱出したのか、何故帰って来なかったのかを皆から問い質され、悟空は説明を始める。

崩壊するナメック星でフリーザの大型宇宙船が飛べなかった悟空だが、大型宇宙船の近くにポッド型の宇宙船が落ちている事に気づいた悟空はそれに乗り込みナメック星から脱出を果たした。

そしてポッド型の宇宙船はヤードラット星に向かい、悟空は現地の星の人間と仲良くなり、修行をしてから帰って来たとの事だった。

悟空はヤードラット星で学んだ『瞬間移動』を披露した。ベジータは単なる超スピードで誤魔化しただけだと言うが悟空は亀仙人のサングラスを持っていた。この場所から亀仙人が住んでいる亀ハウスまでは数百キロは離れている為、悟空の瞬間移動は本物であると実証された。

 

そして、それぞれが修行をすると張り切っている最中、悟空はチチに抱き締められていたスーナの所へと歩み寄る。

 

 

「ごめんなさい……チチさんを独占してしまいました。……チチさん、旦那さんが帰ってきたんですから……」

「桃香ちゃん……」

「オメェの事はナメック星でフリーザやギニューから聞いてた」

 

 

 

スーナは虚ろな瞳のまま自分を抱き締めていたチチを引き離そうとするが、チチは逆に力を入れてスーナを抱き締めていた。悟空はそんなスーナの様子を見て、ナメック星の事を思い出していた。

 

 

「お父さんやフリーザ様が私の事を……」

「ああ……フリーザは腹心の部下って言ってたし……ギニューは愛娘だって言ってたぞ」

 

 

そこでスーナは初めて顔を上げて悟空と目を合わせた。悟空は真面目な顔付きで口を開く。

 

 

「オメェの父ちゃんはフェアな戦士で凄く強かった……オラの方が強いって分かったらボディチェンジって技でオラの体を奪いに来たけど……この技は使いたく無かったって言ってた。スーナに嫌われたくねぇって」

「それでも父は負けたんですね……」

 

 

悟空からナメック星でのギニューの戦いぶりを聞かされたスーナは、ギニューが思ってた以上にマトモに戦っていたのだと知らされる。

 

 

「ああ……オメェの父ちゃんは最後までスーナの事を心配してたぞ」

「そう……ですか……」

 

 

スーナは悟空がギニューの事をフェアな戦士であると認めてくれていると感じているが、その真意までは察していなかった。

 

 

「それと……ポッドの宇宙船なんだけど……多分、ギニューのだと思う」

「………え」

 

 

悟空の言葉にスーナは悟空が乗っていたポッド型の宇宙船に走った。先程、悟空が降りた際に開きっぱなしだった入口から中を覗いた。中を見たスーナはピシッと固まった。

 

中にはスーナをデフォルメした様なぬいぐるみやスーナの写真が飾られていたのだ。

 

 

「あの……バカ親父……」

「………大層な溺愛ぶりだな」

 

 

スーナが手を掛けていたポッドの入口が握力でグニャリと曲がり、同じくポッドの中を見たベジータが呟いた。ベジータは以前、惑星フリーザでギニューが鼻血を垂らしながら、ぬいぐるみを縫っていた事を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

一方、未来へと帰って来たトランクスは悟空に心臓病の薬を渡した事とフリーザを倒した事を話していた。

 

 

「そっか。孫君に薬が渡ればなんとかなるかも知れないわね」

「その……母さん、桃香さんの目の前でフリーザを倒す必要が本当にあったんでしょうか?」

 

 

過去の悟空に心臓病の薬を渡せた事に安堵するブルマにトランクスは先程、全身バラバラにして消し飛ばしたフリーザの事を思い出していた。フリーザを倒した際に近くでそれを見ていたスーナは絶望しきっていた。

 

 

「アンタが過去に行く前にも話したでしょ?必要な事だったのよ……桃香、スーナはフリーザが生きていたと知れば間違いなくフリーザの下に戻ろうとするわ。ベジータや悟飯君も言ってたけど、ナメック星の侵略も仮に桃香が指揮を執っていたら確実に負けていたってね」

「僕も地球に来てからの桃香さんを知ってるから、それは分かりますけど……」

 

 

ブルマは自分自身がスーナの有能さを知っている事と、フリーザ軍に居た頃のスーナを知っているベジータや孫家での生活を知る悟飯から聞いた話から、スーナはフリーザが生きていたら間違いなくフリーザ軍に戻るだろうと確信していた。

 

 

「だからって……」

「一番の問題はね……桃香が地球での生活で本来の優しい人格が前に出ている事なの。そのままフリーザ軍に戻ってみなさい。侵略行為と優しい人格の板挟みで心が壊れるわよ」

 

 

ブルマがトランクスにフリーザをスーナの目の前で倒すようにと言った一番の理由はこれである。

地球で一年も平和に過ごしたスーナがフリーザ軍に戻れば元の生活に戻ると言う事であり、平和の味と有り難みを知ったスーナが侵略行為や破壊行為を再び、行えるとは思えない。仮にやったとしても、それはスーナが心を殺して行うであろうから結果としてスーナは確実に傷付くだろう。

だからブルマはスーナの心からフリーザを排除する為にトランクスにスーナの目の前でフリーザを倒させたのだ。

 

 

「フリーザを倒して、孫君が生きて、人造人間を倒して、桃香は地球で暮らす……それが一番なのよ」

「……そう、願います」

 

ブルマは桃香の事を思って辛い目に合わせたとしてもスーナを思っての提案であり、ブルマの言葉に頷くトランクス。仮に恨まれたとしても大恩あるスーナには生きていてもらいたいとトランクスは願うしかなかった。

 

 

そんなスーナは過去でトランクスへの恨みを一時的に忘れて、父であるギニューの親バカ振りに怒りを沸かせているとは露にも思ってもいなかった。

 

 



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スーナのこれから

繋ぎ回です。次回からオリジナル回を数回混ぜて人造人間編を本格的にスタートします。


 

 

 

一通り話は終わり一同はそれぞれの家へと帰る事となった。

 

天津飯とチャオズは元の修行場所へ。クリリンは亀ハウスへ。ヤムチャとベジータはカプセルコーポレーションへ。

ピッコロは悟空との特訓の為に孫家へ同行する事となった。

 

そんな中、スーナは孫家へ帰るか悩んでいた。

そもそもスーナはフリーザ軍側の人間だが、この一年は孫家で過ごしていた。フリーザが死んだ直後で気が動転しているスーナだったが、先程のギニューの宇宙ポッドショックの影響で少しは冷静さを取り戻していた。

 

 

「………私が此処に居る訳にはいきませんね」

 

 

その冷静になった頭でスーナはこれ以上は孫家に居てはいけないと考え、その場を後にしようとした。

 

 

「こーら、何処に行くだ桃香ちゃん」

「姉さん、一緒に帰りましょう」

 

 

その場を離れようとしたスーナの肩をチチが捕まえ、悟飯がその手を握った。

 

 

「あ、その……私は……」

「桃香ちゃんが帰るのは孫家だ。宇宙じゃねーんだぞ」

「姉さん、僕はもっと姉さんと居たいです」

 

 

何とか離れようとしたスーナをチチと悟飯は真っ直ぐに見詰めた。それは純粋にスーナを家族として引き留めようとする瞳だった。

 

 

「それに桃香ちゃんが居なくなったら誰が稼ぐだ?悟空さは結婚してから一銭だって稼いでねぇだ」

「それを言われっと……」

 

 

チチの発言に悟空は気まずそうに頬を掻く。稼ぎがない事を少しは気にしていたらしい。

 

 

「貴様は贖罪の為に地球を離れようとしたらしいが贖罪ならフリーザ軍にこれ以上、肩入れするのは止すんだな。悟飯もそれを望んでいる」

「ピッコロさん」

 

 

更に意外な事にピッコロがスーナの説得に加わり、悟飯がピッコロを見上げていた。

 

 

「放っておいてもフリーザ軍は瓦解していくと思います。フリーザ様とコルド大王様が居なくなった軍は恐怖で従っていた兵士達の離脱と管理運営する幹部が居なくなった事で経営が成り立たないでしょうから」

 

 

それにクウラ様は大軍を率いるタイプじゃないですし、とスーナは心の中で思う。

 

 

「私が戻ればフリーザ軍の経営を建て直すのは訳ないですが……スーパーサイヤ人の彼を倒す程の戦士がこれから地球に現れるとなれば、第二の故郷である地球の危機を見逃す訳にはいきませんね。事が済んだらフリーザ軍の解体作業は私が務めますが……今は目の前の問題をクリアせねばなりませんね」

 

 

スーナはフリーザ軍の建て直しよりも未来に現れるスーパーサイヤ人を超える人造人間を見過ごせないと告げる。

 

 

「だから……孫家にもう少し、居候させて貰ってもいいですか?」

「駄目だ……居候じゃなくて桃香ちゃんは孫家の子だべ」

 

 

 

スーナの発言にチチは即座に異論を唱えた。居候ではなく、ちゃんと家族として帰ってきなさいと言ってチチはスーナを抱き締めた。

 

 

 

「はい……お母さん」

 

 

スーナはチチから抱き締められる力が弱いものの振りほどけない絆が生まれているのだと感じていた。

こうしてスーナの地球での生活が続く事が決まったのである。

 

 

 

 



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スーナの考察と来客

 

スーナが孫家に戻り、新たな生活が始まった。

悟空とピッコロ、悟飯は3年後に迫り来る人造人間の脅威に備えた修行を。チチは悟空を含め増えた家族を養う為に耕していた畑を広げていた。

ピッコロは食事をしないが悟空の胃袋は異常なまでに凄まじい。彼一人で軽く20人前は食べる。しかも修行した後ならより食べるだろう。最近では悟飯も食事量が増えてきている。スーナが稼いでいた資産が無かったら孫家の財政は大変な事になっただろう。

 

そんな生活が、数ヶ月続いた頃。スーナは今まで通りカプセルコーポレーションで働いたり、株で儲けたりしていた。そして悟空が乗ってきたギニューのポッド型宇宙船の解析をしたりと毎日を忙しく過ごしていた。

 

 

「なぁ、桃香。オメェは修行しねぇんか?」

「私が働かないと悟空さんと悟飯が確実に飢えますよ」

 

 

修行を終えて一休みしていた悟空は、ポッドから吸い出したデータを纏めた書類を見ていたスーナに話し掛ける。スーナはサラリと悟空に返事をしながらも視線は書類に向いていた。その書類の中には、ギニューがこれから侵略する予定だった星の名前や計画が練られた計画書が記載されていた。

 

 

「ヤードラット星に銀河パトロールの駐屯星……ギニュー特戦隊や幹部の皆さんじゃなきゃ制圧は不可能の惑星ばかりですね。残った兵士の皆さんでは返り討ちは確実ですし……このまま放っておけばフリーザ軍は自然に崩壊していくでしょうね」

 

 

ふぅ……と溜め息を吐くとスーナは書類をテーブルの上に落とす。そんなスーナを見て悟空は少し考えた素振りを見せてから口を開いた。

 

 

「やっぱオラがフリーザを倒した事を恨んでるんか?」

「悟空さんって、何も考えて無いように見えて、結構見てますよね。妙に鋭いですし」

 

 

悟空の妙な勘の良さに驚くスーナは複雑そうな顔をする。

 

 

「恨んでいると言われたら……そうなのかも知れません。極悪人の集いだったフリーザ軍でも私にとっては家族の集まりみたいな場所でしたから」

 

 

悟空の発言に過去を思い出すスーナ。侵略者の集団で心の底から悪人ばかりだったが割りと良い人も居たし、仕事も惑星間の地上げ屋だったが感謝される事もあり、苦労はしていたが充実したものだった。

 

 

「ですが、フリーザ様の言い分を通すなら『弱いから悪い。強い者が弱い者を支配する』と言った様子でしたから。その言葉通りなら敗北したフリーザ様やお父さん達が悪い事になります」

「姉さん、それは……」

 

 

スーナの言葉に悟飯は否定しようとしたが、相手がフリーザなだけに庇う気にはなれなかった。

 

 

「まだ気持ちの整理が付いていませんが……折り合いが付いたらまた話をしましょう」

 

 

等と話をしていると、悟空の腹がグゥゥゥゥゥゥと豪快に鳴った。

 

 

「アハハ……腹減っちまった」

「全く悟空さんったら……待っててください。夕食にしましょう」

 

 

シリアスな雰囲気で話をしていたのに一瞬で場を和ませる様に笑う悟空にスーナも笑みを溢す。仕方ないですね、と言いながらスーナは夕食の準備をする為にエプロンを着る。

すると玄関から荒々しいノックが聞こえてスーナは玄関の方に歩く。

 

 

「あれ?今日は来客の予定は無い筈ですが……はーい、どなたですか?」

「………よう」

 

 

スーナが玄関を開けると其処にはフリーザの兄、クウラが立っていた。

 

 

「キャァァァァァァァァァァァァァッ!?」

 

 

突如、現れたクウラの姿を見てスーナは悲鳴を上げるとキッチンへと逃げ込んだ。

素早い手付きで包丁で食材を刻み、鍋で煮物を煮ながら、魚をグリルで焼く。

 

 

「こ、こんな時間に何のご用ですか!」

「おお、あっちゅーまに晩メシが出来たぞ」

「家事に逃避するタイプですよね、姉さん」

 

 

エプロンを脱ぎながら叫ぶスーナに悟空と悟飯はあっという間に出来た夕食に驚いていた。

 

 

「邪魔するぞ」

「お口に合いますか、どうか……」

「ちゃんとお客様の分も用意してるだな」

 

 

テーブルに備え付けられた椅子に座るクウラにスーナは土下座をしながらクウラに食事を勧める。チチはスーナが怯えながらもクウラの分の食事もキッチリと用意していた事に感心していた。

 

 

 

 



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クウラが地球に来た経緯

 

 

クウラの孫家訪問は一応は静かなものだった。孫家のテーブルに悟空、チチ、悟飯、スーナ。そしてクウラが座り食事をする。この異常空間が暫し続き、食事が終わった後、スーナが人数分のお茶を入れた。因にだが、ピッコロもこの場に同伴しているが食事を必要としない為に席には着かず、クウラを警戒していた。

 

 

「えっと……ご紹介します。この方はクウラ様……フリーザ様の兄君になります」

「似てっとは思ってたけど、やっぱフリーザの兄貴だったんか」

「似てますもんね」

 

 

クウラの事を知らない孫家の面々に紹介するスーナ。悟空と悟飯はフリーザの兄だと薄々感づいていた様である。

 

 

「だが、フリーザの兄と言う割には気が小さい……フリーザが地球に来た時、俺達は真っ先に気付いたがコイツが此処に来るまで俺達は気付かなかった……」

「ふん……俺の戦闘力のコントロールの扱いはフリーザよりも上手い。貴様等に気付かれずに来る事なんぞ造作もない」

 

 

ピッコロが疑問を口にするとクウラは鼻で笑う。その仕草にピッコロはグッと拳を握った。

 

 

「ま、まあまあ……落ち着いてくださいピッコロさん。そう言えばクウラ様、機甲戦隊の皆さんはいらっしゃらないのですか?」

「……死んだ」

 

 

スーナは今にもクウラに仕掛けようとするピッコロを落ち着かせ、クウラに何故、地球に来たのかを聞くとクウラからはスーナが聞きたくないであろう返答が返って来た。

 

 

「え、ちょ……ま、待ってくださいクウラ様!」

「スーナ……俺が此処に来たのは、お前に会う為。そして弟を倒したサイヤ人に会う事だ」

「あの……クウラ機甲戦隊ってなんですか?」

 

 

動揺するスーナにクウラは淡々と告げ、事情が分からない悟飯が口を挟む。

 

 

「クウラ機甲戦隊はギニュー特戦隊に対を為す部隊です。それよりもクウラ様……」

「一年程前の話だ……俺と機甲戦隊はある星を侵略する為に惑星に降り立った。其処では既に他の者が侵略を開始していたのだ。その者の名は……スラッグ」

 

 

悟飯の疑問に答えたスーナはクウラに続きを促した。するとクウラの口から出たのはスーナには聞き覚えのある名前だった。

 

 

「スラッグ……以前、フリーザ様に倒された異星人ですね」

「ソイツが生きていた様でな。奴は機械惑星ビッグゲテスターと同化していたのだ」

「ビッグゲテスター?」

「星と同化とは、どういう事だ?」

 

 

スーナがスラッグの事を思い出すと、クウラはスラッグがどの様な人物か話す為に機械惑星ビッグゲテスターの名を口にし、悟空とピッコロは疑問を投げ掛けた。

 

 

「その昔、捨てられた宇宙船や人工衛星が漂う宇宙の墓場に、一つのコンピュータチップがあった。奴はその自らの能力で、長い時間をかけ増殖していった。それは宇宙空間のあらゆる物を取り込み、そのエネルギーを吸収することによって成長していった。今では惑星をも食い尽くすほどになった巨大マシン星が、ビッグゲテスターなのだ。フリーザとの戦いに破れたスラッグは脳が運よくこの星に流れ着き、奴はメインコンピュータと融合しコアとなって、その星を支配した……とは言っていたがな。俺と機甲戦隊は惑星の侵略の事もあり、奴との戦闘になった」

「機械惑星ビッグゲテスター……私も知らなかったです」

 

 

クウラから機械惑星ビッグゲテスターの事を聞かされたスーナは、フリーザ軍に居た頃でも聞き覚えがないと思っていた。

 

 

「そして奴は失った肉体を自分に似せたアンドロイドを生み出し俺達に戦いを挑んできた。一体一体が凄まじく強く……機甲戦隊は其処で全滅した」

「そ、そんな……」

 

 

クウラから機甲戦隊の末路を聞いたスーナは信じられなかった。クウラ機甲戦隊は少数のエリートで形成された部隊でその強さはギニュー特戦隊に匹敵する。そのクウラ機甲戦隊が全滅するとは、あり得ない事だと思っていたからだ。

 

 

「生み出されたスラッグのアンドロイドは一体一体が機甲戦隊並みの強さだった……最初は良い勝負だったが段々数に押された機甲戦隊は敗北した。その姿も異様でな……銀色のメタリックな奴等だった」

「一体一体が機甲戦隊並みの強さのアンドロイド……脅威ですね」

 

 

クウラの話を聞いたスーナはその脅威に身を震わせた。一体一体が戦闘力10万以上のアンドロイドが量産されているのだ。恐るべき事態だったと想像するのは難しくない。

 

 

「正にメタルスラッ……」

「畳み掛けないでください、クウラ様」

 

 

危なげな発言をしそうになったクウラを止めたスーナ。

 

 

「俺はアンドロイドを倒した後、地上にスーパーノヴァを放ち、惑星もろともビッグゲテスターを宇宙の塵に変えてやった」

「あの……現地住民の方は?」

「ビッグゲテスターの内部で生命エネルギーにされていたらしい」

 

 

クウラの説明にスーナが口を挟むとビッグゲテスターの恐ろしい機能があったらしく、その惑星には人が残っていなかったらしい。

 

 

「ビッグゲテスターを宇宙の塵にした後、俺は惑星フリーザに向かおうとしたが……宇宙船も塵にしてしまったのでな。戻るまでに時間が掛かってな」

「クウラ様は宇宙空間でも生きていられますからね」

 

 

クウラが宇宙船もろともに惑星を消してしまった事で自力で戻るしかない状態になっていた事に苦笑いを浮かべる。

 

 

「時間を掛け、惑星フリーザに戻った俺はフリーザがサイヤ人に倒された事を知った。ついでを言うなら親父が軍の経費を使って宇宙競馬につぎ込んでいた事も発覚してな」

「……私が居ない間にコルド大王様は色々とやってくれたみたいですね」

 

 

 

クウラの口から告げられたコルド大王の不正に、スーナは自分がフリーザ軍から離れていた間に好き勝手されていた事実に頭を痛めていた。

 

 



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現在のフリーザ軍とクウラの今後

 

 

 

 

「そんな訳でな……フリーザ軍は事実上の壊滅。俺は船と部下を無くし……俺は何処か虚しくなってな。後の事は知った事ではないが貴様に知らせないのは筋が通らないと思ったんでな。これが今のフリーザ軍の資料だ」

「……拝見します」

 

 

フリーザの復讐とコルドの横領でガタガタになったフリーザ軍と船と部下を失い、軍を率いる気が失われたクウラは後の事は知った事ではないと言う。クウラは最低限、資料と話くらいの筋を通すつもりだとスーナに告げる。

 

 

「オメェはフリーザみてぇに侵略はもうしねぇんか?」

「今更、侵略するのもバカらしくなってな。これからは気儘に宇宙を旅しながら強い奴と戦うのも悪くない」

 

 

悟空が気軽にクウラに話し掛けると、クウラは何処か疲れた様な達観した様な顔をしながら悟空の疑問に答える。

 

 

「なんか……根っからの悪い人じゃなさそうですね?」

「ああ、それに奴からは邪悪な気を感じない。どちらかと言えば奴が纏っているのは武人としての威圧感だ」

 

 

悟飯とピッコロはクウラがフリーザの兄と知ると警戒していたのだが、先程からの話とクウラの言動から純粋に戦士として生きようとしているのを感じていた。

 

 

「クウラさんは……桃香ちゃんが心配だったべな……」

「俺はそんなお人好しではない」

 

 

チチは今までのクウラの話を聞いて同情100%の視線をクウラに向けている。

そしてチチの言葉を否定するクウラだが、スーナの様子を見に来たのは明白である。因みにクウラにはスーナが孫家では桃香と呼ばれている事は既に説明済みである。

 

 

「宇宙競馬に経費を三億……コルド大王様が横領したから兵士達の給料の未払いが……それに離反する兵士が増加して……思えばフリーザ様が不在になり、コルド大王様が横領。主だった幹部がナメック星で殉職。それで給料未払いにもなれば当然ですね……それに残った部署の方々では建て直しに翻弄されて……アボさんとカドさんが行方知らず?第三星域だけが唯一安定してますね……」

 

 

そしてスーナは鬼気迫る表情でクウラから渡された資料に目を通していた。自分が想定していた以上にフリーザ軍の内部が荒れている事に驚いていた。

 

 

「鬼気迫る感じですね」

「元の就職先が荒れてれば気になるだな」

 

 

悲しき中間管理職に戻りつつあるスーナに悟飯とチチは引き気味である。悟空とピッコロは就職に無縁だった為にピンと来ていない様である。

 

 

「今のフリーザ軍は勝手に崩壊している状態だ。そんな沈み欠けの船になんぞ誰が乗るものか」

「だったらよ。オラと戦ってくんねーか?」

 

 

クウラがもう侵略行為をする気がないと分かった悟空はクウラに戦いを挑もうとしていた。

 

 

「なんだと?」

「フリーザの兄貴ってんなら強いだろうし、オラ達は修行中だ。何処まで強くなったか知りてぇんだ!」

 

 

クウラの声が若干低くなったのも気にせず、悟空は強い者と戦える事にワクワクしていた。

 

 

「……まあ、いいだろう。そこのナメック星人もそれなりに出来そうだしな……だが」

 

 

悟空やピッコロが実力者だとクウラは見抜くが悟飯に視線を移すと呆れたような顔になる。

 

 

「そこの小僧はまだ未熟だな。戦士ごっこには早いんじゃないか?」

「なんだとっ!?」

 

 

悟空が地球に戻ってから厳しい修行をしてきた悟飯はクウラの挑発に乗ってしまう。今にも飛び掛かりそうな雰囲気になっている。

 

 

「クウラ様……悟飯は強いですよ。聞いた話ではフリーザ様も手を焼いたそうです」

「フン……フリーザの甘さが原因だろう。まあ、いい……スーナのお墨付きならば相手をしてやるぞ小僧。表に出ろ」

 

 

 

資料にある程度目を通し終えたスーナが会話に加わる。スーナは後ろから悟飯の両肩に手を添えてクウラに悟飯の強さを語った。クウラは鼻を鳴らすと、ならば確かめてやろうとばかりに玄関から外へと出る。

こうして悟飯VSクウラの戦いが決定されてしまった。

 

 

 

 



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クウラVS悟飯・クウラVSピッコロ

 

 

外へ出たクウラと悟飯は向かい合って対峙していた。悟飯はクウラを睨み、拳に力を込める。フリーザとクウラが似ている事もあり、怒りが込み上げている様だ。

 

 

「どうした、掛かってかないのか?それとも、フリーザと戦ったのは間違いか……それとも震えているのか?どちらにせよ、貴様のようなガキに本気は出さん。死なない程度に終わらせてやるから安心しろ」

「大きな……お世話だーっ!」

 

 

 

クウラの挑発にキレた悟飯は気を爆発させる。クウラとの間合いを一瞬で詰めた悟飯はクウラの鳩尾に拳を叩き込む。そして流れる様にラッシュを叩き込む。

 

 

「す、凄い……クウラ様を相手にあそこまでの猛攻を……」

「そうか……お前は悟飯が戦っている所を見たことがないんだったな。アイツは怒ると凄まじい底力を発揮する」

 

 

悟飯の戦いを初めて見たスーナはクウラを圧倒する悟飯に驚いていた。幼い頃の悟飯を鍛えていたピッコロはスーナに悟飯の潜在的な力を説明する。

 

 

「魔閃光!」

「……ちっ」

 

 

クウラに猛烈なラッシュを浴びせていた悟飯はクウラから距離をとると魔閃光を放つ。クウラは迫り来る魔閃光を舌打ちをした後に避ける。

 

 

「でぁりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

魔閃光を避けたクウラの背後を取った悟飯はクウラの背に強烈な蹴りを放つ。そのままクウラは地面に叩き付けられ、地面はクレーターが出来てクウラはその中に埋もれてしまう。

 

 

「はぁ……はぁ……」

「す、凄い……」

「さっき悟飯の力を説明したが……悟飯の成長には俺も驚かされている」

 

 

一気にパワーを使いきった悟飯は肩で息をしていた。スーナは予想以上の悟飯の戦闘力に驚きを隠せなかった。ピッコロは悟飯の成長速度に師でありながらも驚かされていた。

 

 

「悟飯、まだだぞ」

「予想以上の戦闘力だな、小僧……だが、甘い」

 

 

戦いを見守っていた悟空は悟飯に忠告する。それと同時にクレーターの中からクウラの声が聞こえ、中からクウラが出てくる。

その姿は擦り傷が僅かにあるが、致命傷になる傷は一つも無かった。

 

 

「……行くぞ、小僧!」

「なっ!?……ぐうっ!」

 

 

クウラは先程までと違い、凄まじいスピードで悟飯に迫る。そのスピードに驚愕していた悟飯は反応できずマトモにエルボーを食らってしまう。そして、その衝撃で動きを止めてしまった悟飯はクウラに捕まり、アイアンクローに固められる。

 

 

「ぐ……あ……」

「わかったか、小僧?本当に強い者は一刺しで相手を倒すものだ。貴様は持ち前のパワーとスピードに頼りすぎで無駄な動きが多すぎる」

 

 

クウラにメキメキと力を込められながら自身の戦い方を指摘される悟飯。

 

 

「ク、クウラ様……あまり手荒な事は……」

「貴様も甘いな、スーナ。安心しろと言ったろ……殺さない程度に済ませてやるとな」

 

 

スーナの発言に少々飽きれながらも、悟飯から手を離すクウラ。離された悟飯はドサリと地面に落とされる。

 

 

「次は俺だ」

「ふん……この小僧とは違い、楽しませてくれよ?」

 

 

そんな悟飯を見たピッコロはマントとターバンを脱ぐとクウラと対峙する。クウラは悟飯以上の実力者のピッコロを悟飯よりも期待した目で見ていた。

 

 

「抜かせっ!」

「来いっ!」

 

 

同時に空中に飛んだピッコロとクウラ。即座に凄まじい空中戦が繰り広げられていく。

 

 

「大丈夫ですか、悟飯?」

「悟飯ちゃん!」

「悟飯……クウラの忠告は尤もだぞ」

 

 

地面に落とされた悟飯を気遣うスーナとチチ。スーナは悟飯の頭を支えながら自身に抱き寄せながら寝かせる。悟空はピッコロとクウラの戦いを見上げながら、クウラの指摘が間違っていない事を告げる。

悟飯は元々パワーとスピードに長けている。その実力を生かせば先程よりも良い戦いが出来ただろう。しかし、悟飯はそれを生かさずにパワーにのみ頼った戦いをしてしまった。ちゃんとスピードを生かしてテクニックを磨いていれば、クウラを倒せなくても致命傷を与えていただろう。

 

 

「なんなんだ、この凄まじい気は!?」

「な、フリーザっ!?」

「ピッコロが戦ってるのか!?」

 

 

そんな中、クウラとピッコロの戦いに気付いたヤムチャ、クリリン、天津飯が駆け付ける。三人はクウラをフリーザと勘違いし、ピッコロが戦っている事に驚愕する。

 

 

「あの方はクウラ様……フリーザ様の兄君です。今はフリーザ軍を抜けて一介の戦士としての地球に来訪されました。今は悟空さん達と腕試し中です」

「腕試しって次元の戦いじゃねーと思うんだけどな……」

「ああ……俺達とは格が違う……」

 

 

スーナの説明にクリリンが空中で繰り広げられている戦いを見上げながら呟く。天津飯もそれに同意し……ヤムチャはスーナに膝枕されている悟飯を少し羨ましそうに見ていた。

 

 

そして、クウラとピッコロの戦いをスーナ達とは離れた位置から見ていたベジータは、フリーザ以上の実力者のクウラに気圧されながらも戦いを見逃さない様に見ていた。

 

 

「ちっ……どいつもこいつも戦闘民族サイヤ人を舐めやがって……」

 

 

ベジータは悟飯がクウラに敗北した事とある程度、良い勝負をしているピッコロ。そして自分ではクウラに勝てないと悟った事に苛立ちを感じていた。



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クウラVS悟空

 

 

空中で戦いを繰り広げていたピッコロとクウラだが徐々にピッコロが押され始めていた。と言うよりはクウラが手加減をしていて少しずつ手加減を止めているだけなのだが。

 

 

「くそったれが!」

「貴様は小綺麗に纏まりすぎだな。いざという時の判断が遅い」

 

 

クウラの指先から放たれるエネルギー波に体を複数箇所貫かれ落下していく。

 

 

「ピッコロ!」

「奴は……フリーザ以上の化物だ……」

 

 

落下していくピッコロを悟空が受け止め、受け止められたピッコロは悟空にクウラがフリーザ以上の実力者である事を告げる。

 

 

「当然だ……俺を弟と同じに見るな」

「よしっ……だったら次はオラが相手だ!」

 

 

ピッコロを悟飯と同じくスーナに預けた悟空はクウラと対峙する。

 

 

「貴様……そうか、あの時の赤子か……」

 

 

悟空と対峙したクウラは悟空を見て、何かを呟いたが、その呟きは誰にも聞こえなかった。

 

 

「行くぞ!」

「ほぅ……ぐおっ!?」

 

 

悟空の特攻に中々速いなと思ったクウラだったが、その加速が予想以上だったのか顔面に拳が叩き込まれる。

 

 

「だららららららっ!せりゃぁ!!」

「ぬぐっ!?」

 

 

更に腹部にラッシュを加えられ、トドメばかりに回し蹴りを見舞う叩き込まれる。蹴り飛ばされたクウラが宙を舞い、悟空が更なる追撃をしようとするが、その拳はクウラに防がれる。

 

 

「俺を弟と同じに思うなよ!」

「うわぁ!?」

 

 

悟空の拳を受け止めたクウラは悟空の腹部に蹴りを見舞う。その蹴りが悟空の腹部に突き刺さり、悟空が吹き飛ばされる。

 

 

「ずあっ!」

「なっ!?くっ!」

 

 

クウラは吹き飛ばされた悟空目掛けて両手からエネルギー波を放ち、悟空はそれを両手で受け止めるが勢いは止まらず、悟空は岩山に叩き付けられる。

 

 

「ぐぅ……りゃあ!」

 

 

悟空は受け止めたエネルギー波を上空へと投げ飛ばし、投げ飛ばされたエネルギー波は岩山を破壊し、その瓦礫が悟空とクウラに降り注ぐ。

 

 

「ふん!せやっ!」

「くっ!」

 

 

瓦礫が降り注ぐ中、クウラと悟空の戦いは続く。クウラの拳や尻尾の攻撃を避けた悟空はクウラの胸に一撃を食らわせる。

 

 

「うりゃあっ!」

「な、ぬぅっ!?」

 

 

その一撃に怯んだクウラの尻尾を掴むと悟空は回転を加えて投げ飛ばす。投げ飛ばされたクウラは身を翻しながら川辺に着地する。

 

 

「中々やるな……我が弟を倒しただけの事はある」

「オラ……結構修行して強くなったけど……まだまだ修行不足って実感してっぞ……」

 

 

互いに睨み合うクウラと悟空。そして互いに知らない事だがまだまだ実力を隠している。クウラは更なる変身を。悟空は超サイヤ人を。

そして二人は隠した実力を解放しようとした時だった。

 

 

「はい、そこまで!そこまでです!」

「なんだ、スーナ?」

「止めんなよ、桃香」

 

 

更なる激闘を繰り広げようとしたクウラと悟空を止めたスーナ。

 

 

「回りを見てください!伐採用の材木や畑までめちゃくちゃなんですよ!悟飯やピッコロさんの時みたいな手合わせだと思ったら本格的な戦いになったから周囲への被害が凄まじいんです!」

「お、おお……悪りぃ悪りぃ……」

 

 

スーナの指摘に周囲を見渡した悟空は荒れ果てた山々や畑を見て、あちゃー……と頬を掻いた。

 

 

「俺達が戦うには少々手狭だったらしいな」

「もう……フリーザ軍に居た頃もギニュー特戦隊もこうでした……私の忠告を無視して資源惑星を半壊させたり……」

 

 

クウラの一言にスーナはズーンと過去を思い出して沈んでいた。

 

 

「あ、あれが今の悟空の実力か……」

「くっ……まだ孫との差が激しすぎる……」

「悟空の奴……ナメック星で戦った時よりも強くなってる……」

 

 

そして戦いを見ていたヤムチャ、天津飯、クリリン達は次元の違う戦いに呆然としており、ベジータに至っては戦いの途中で観戦を止めて自身の修行へと旅立っていた。

 

 

「ちっ……フリーザ以上の実力の兄に……本来は最下級戦士のカカロットが伝説の超サイヤ人……ふざけやがって……俺は……俺がナンバーワンだぁーっ!!」

 

 

飛びながら叫ぶベジータ。ベジータは気付いていなかった。怒りに震える、その体が僅かに金色を帯びた光を纏っている事に。

 

 

 

 

 

「はぁ……山の資材とかは明日以降、私が見ておきます。仕事が増えました」

「その事だが……スーナよ」

 

 

ベジータが叫びを上げていた頃、スーナはめちゃくちゃになった山や畑の損害を軽く確認しようとしているとクウラが話し掛ける。

 

 

「貴様も孫悟空達と共に修行に参加しろ。貴様はフリーザ達に甘やかされ、戦いに参加していなかったが貴様には武の才能がある」

「……………え、私にですか?」

 

 

クウラの発言に目を丸くして自分自身を指差すとスーナ。それほどまでにクウラの言った事が信じられなかったからである。

 

 

 

 



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スーナの過去と胴着

今回は短め次回から修行に入ります。


 

 

 

 

 

 

クウラの孫家訪問の次の日。

 

 

「これで、よし……っと」

 

 

スーナは長い髪を後ろ手一本に結ぶとチチと共同で家事の大半を済ませる。

 

 

「今日から桃香ちゃんも修行に参加するだな」

「クウラ様からの指示ですから……」

 

 

チチの発言にスーナは深い溜め息を吐いた。単なるトレーニングなら兎も角、クウラの言い分ではスーナの眠っている潜在能力を目覚めさせれば悟空にも匹敵する力を持っていると言う。

そんな事はないとスーナはクウラに抗議しようとしたのだが……

 

 

「貴様はフリーザ達に甘やかされて戦闘に参加しなかったから潜在能力が眠ったままだ。貴様は他者の事には目を向けているが自分自身の事が分かっていない」

 

 

との事だった。元上司の兄にして実力的にも絶対に逆らえない人物に言われたら逆らえないスーナ。そんな訳で本日から家事を一通り済ませた後に修行に参加する運びになったのだ。

 

 

「桃香ちゃんは気乗りしないみたいだけんどもオラは少し安心しただ。桃香ちゃんはこの家に来てから働きすぎだべ。もっと他の事にも目を向けるべきだべ」

「………お母さん」

 

 

チチの言うとおり、スーナは孫家に居候を始めてから働きづめだった。チチの家事を手伝った後、悟飯の勉強会を見て、カプセルコーポレーションに赴いてブルマの手伝い、合間を見て株をして、時にはチチの畑仕事を手伝い、山の伐採作業の指示を出したりと凄まじい仕事の日々を過ごしていた。

そんなスーナに普段から悟空には仕事しろ、悟飯には勉強しろと言っているチチですら引いていた。明らかに仕事のし過ぎである。

 

 

「その……フリーザ軍でもそんな感じだっただべか?」

「主に仕事が6割、ギニュー特戦隊の尻拭い3割、トレーニングが1割ですね」

 

 

ブラック企業もビックリなスーナのかつての日常に、チチは孫家に居る間は優しくしようと決意を新たにしていた。

そんな仕事中毒のスーナに少しでも違うことをさせようと悩んでいたチチには渡りに船だった。

 

 

「でも、トレーニングウェアはどうしましょう?私がフリーザ軍の頃に着ていた物は無いし、私には亀仙流の胴着を着る訳にはいきませんし」

「それならオラが胴着を用意しておいただ。」

 

 

トレーニングウェアが無い事にどうしようかと悩んだスーナだがチチは胴着を用意していた。その胴着は上が空色、下が黄色のズボンに白い帯。ピンクのリストバンド

にカンフーシューズといったデザインの胴着だった。

 

 

「昨日、クウラさんから今日から桃香ちゃんが修行に参加するって聞いてから用意してただよ」

「お母さん……ありがとうございます」

 

 

スーナはチチから手渡された胴着を胸の中でもギュッと抱き締める。スーナは胴着に手早く着替えると悟空達が修行している場所へと向かった。

 

 




スーナが着ている胴着はGT悟空の衣装です。


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修行の始まり、スーナの蟠り

今回は早めに仕上がったので。


 

 

 

「はっ!やっ!たあっ!」

「スピードは中々のものだが、パワーが足りん!パワーが足りんのなら手数を増やせ!」

 

 

次々に放たれるスーナの拳や蹴りを捌いていくピッコロ。悟空達の修行に交ざったスーナだが、クウラや悟空ではなくピッコロが相手をしているのには理由があった。

 

まず悟空やクウラでは実力差が有りすぎる上にどちらも実戦タイプで指導者には不向きであり、悟飯は姉に攻撃できるかと言えば無理だろう。互いに甘えが出そうであり、結果ピッコロが相手をするしかないと言った状況である。

 

 

「うーん……じっちゃんに人に教える時の修行とか聞いてみっかな……」

「貴様の師か。どんな奴だ?」

 

 

悟空とクウラはスーナの修行を見ながら会話をしている。普通に考えれば敵対関係にありそうな二人だがスーナの修行、そして武人としての本能からか、戦いたいという欲求はあっても敵対関係に発展していないのが現状であった。

 

 

「頑張って下さい、姉さん!」

「桃香ちゃん……結構強かっただなぁ」

 

 

同じくスーナの修行を観戦しているのは悟飯とチチである。本来ならチチは修行には付き合わないのだが、スーナの始めての修行日。流石に母親として心配だったのか今日だけでも、と見学に来ていた。

 

 

 

「貴様もギニューと変わらんな……過保護だ」

「クウラさんにはわからねぇべな。桃香ちゃんは女の子だし……それにいつも桃香ちゃんは働きすぎだべ。根を詰めすぎで、いつか倒れちまうべさ……」

 

 

過保護にスーナの事を気にかけるチチにクウラは甘いと言うが、チチはスーナがズッと無理をしているのではと心配していた。

 

 

「働きすぎ……か。そうかも知れんな。もしも奴が昔計画していた通りならスーナは今ほどワーカホリックにはなっていなかっただろう」

「え……どういう事ですか?」

 

 

クウラの発言に思わず質問をする悟飯。

 

 

「数年前の話だ……俺はスーナと初めて会った時に奴が計画していたファイルを見た。その計画通りならフリーザ軍は既に宇宙の覇権を得ていただろう。だが、その計画は頓挫した。そもそもスーナが忙しくしていたのはベジータが地球に来た為だ。ベジータが抜けた穴を埋める為にスーナは奔走し、更にフリーザ軍の制圧下にあった惑星をクラッシャー軍団を名乗る連中が侵略、壊滅。その後処理に終われたと同時に幹部としての仕事もあった。上にも下にも問題を抱えれば仕事浸けになるのも無理はあるまい」

「姉さん……頼まれたら断れない性格ですし……」

 

 

クウラの事を敵視していた悟飯だが、それもここ数日の修行で解消されていた。そしてクウラからスーナが地球に来る前の話を聞いてスーナの性格なら断れないだろうと実感していた。

スーナは頼まれたら断れない性格をしているし、それを実行してしまうだけの知識と力を持っていた。それがスーナをワーカホリックにしてしまった由縁とも言える。

 

フリーザは使える部下として、ドドリア・ザーボンは同僚として頼みにし、部下は頼れる上司として、ギニュー特戦隊は甘えられる存在としてスーナを求めていた。そして、それら全てを受け入れていたのがスーナである。

 

 

「だが、ナメック星でフリーザ以下、幹部連中が死んだんだ……今さら、奴が仕事をする必要は無いんだがな」

「きっと……仕事してないと、そのフリーザやギニューの事を思いだしちまうんだべさ」

 

 

クウラの呟きに答えたのはチチだった。

 

 

「クウラさんから話を聞いて納得しただ。きっと桃香ちゃんは仕事をする事でフリーザやギニューの事を考えない様にしてるだ。考える時間を増やしたら思いだしちまうから……」

「お母さん……」

 

 

 

チチはスーナが何故、仕事に没頭するか答えに辿り着いていた。仕事に集中していればフリーザやギニュー、死んだ同僚や部下の事を考えずに済むとスーナは考えていた。事実、スーナは孫家でフリーザやギニューの話題は出すが直ぐに話を逸らす。その考えから逃げる様に。

 

 

「つまりスーナは逃げてると言う事か……」

「だべな……頭ん中を空っぽにする為だべ。でも、頭ん中を空っぽにするのは泣くのが一番だべ。でも、オラじゃ桃香ちゃんは泣いてくれないべさ」

 

 

クウラの呟きにチチは俯いた。スーナとチチの関係は極めて良好だが、スーナは母親としてチチを頼りに泣いた事はない。そもそもスーナが地球に来てから1度も泣いた事がないのだ。それはスーナがチチを母親として甘えていないのではないかとチチに考えさせるには充分なものだった。

 

 

「………泣くのが良い……か。ならば泣かせてやろう」

「…………え?」

「おい、オメェ……」

「姉さんに何をする気ですか?」

 

 

そんなチチの思考を遮ったのはクウラだった。クウラはチチの話に何かを感じ取ったのかチチを一瞥した後にピッコロと修行をしているスーナに視線を戻した。その仕草にチチは勿論、悟空や悟飯ですら嫌な予感を感じていた。

 

 

 

「言っただろう……泣かせて、頭の中を空っぽにしてやるんだ!」

「え、きゃあっ!?」

「おい、クウラ!?」

 

 

そう言ったクウラは飛び立ち、スーナ目掛けて蹴りを見舞う。突然の事態に反応出来なかったスーナは蹴り飛ばされ、ピッコロも動揺し蹴り飛ばされたスーナを呆然と見た後にクウラを睨んだ。

 

 

「奴は修行以前の問題だった……だから先ずやるべき事があった……それだけだ。貴様等は手を出すな」

「おい、待て!」

 

 

ピッコロに手出し無用と念を押したクウラは蹴り飛ばしたスーナの元へと飛んでいった。



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スーナの心の叫び

 

 

 

「な、何をするんですかクウラ様!?」

「フリーザもそうだが……貴様も相当、甘いな。先程の戦闘で貴様には才能が無いとわかった。邪魔になるくらいなら此処で消してやる」

 

 

蹴り飛ばされたスーナは体勢を整えて空中で制止するが、クウラは更なる猛攻を仕掛けてきた。

 

 

「や、やめてください!」

「フリーザやギニューなら此処でやめるだろうが、俺は止まらん!」

 

 

スーナはクウラの拳を避けようとするが、その避けられず殴られ、その直後足首を掴まれると猛スピードで地面に叩きつけられる。

 

 

「く……あ……」

「……立て」

 

 

クウラはスーナの縛った髪を掴み上げ、無理矢理立たせる。

 

 

「その甘さが……貴様の弱さの最大の原因だ」

「やめ……て……」

 

 

スーナを無理矢理立たせたクウラは更にスーナを痛め付けようと掌にエネルギー波を溜めていた。

 

 

「何してるだ、クウラさん!」

「貴様は黙っていろ!」

 

 

 

突然の事態に呆然としていたチチだが、正気に戻りクウラを叱りつける。その事に苛立った様にクウラはスーナに放とうとしていたエネルギー波の目標をスーナからチチに変えた。

エネルギー波が着弾し、周囲に爆発と砂塵が舞い上がる。

 

 

「お母さん!」

「これも貴様の甘さが招いた結果だ。フリーザの様な所でぬるま湯に浸かっていたからこうなる」

 

 

その所業に悲鳴を上げたスーナにクウラは更にスーナを生い立てる。

 

 

「私の事はいくらでも言っても構いません……ですが、フリーザ様の事やお母さんを傷付けた事は……」

「許さない……か?死んだ連中に義理立てして何になる?時間の無駄だ。貴様の父ギニューもそれ故に死んだのだろう?」

 

 

怒りに震えるスーナにクウラは決定的な一言を告げる。それが皮切りだった。

 

 

「あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「ほぅ、戦闘力がハネ上がったな」

 

 

スーナは叫びと共に戦闘力がハネ上がる。その姿は以前、ターレスと戦った際の擬似的なスーパーサイヤ人の状態だった。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「先程、ナメック星人の時よりもパワーもスピードも上がったが、まだまだだな」

 

 

怒りに任せて拳を振るうスーナだがクウラはいとも簡単に受け止める。スーナの腹に膝を叩き込み、動きが止まったと同時にエネルギー波を浴びせた。

 

 

「くぅ……ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「こんなエネルギー波など……こうしてくれる!」

 

 

スーナはボロボロになりながらもクウラにエネルギー波を放つが、クウラは尻尾でスーナのエネルギー波を弾き返した。

 

 

「貴様は自分自身で才能に蓋をしている。実力を晒せば既に貴様はギニューよりも強い」

「そ、それは……」

 

 

クウラの発言に少し正気に戻るスーナ。クウラの指摘は事実だった。擬似的なスーパーサイヤ人になったスーナはギニューを遥かに凌ぐ力を持っていた。

 

 

「貴様はギニュー達に義理立てして力を隠した……いや、力の出し方が分かっていなかった。だが、地球に住み、記憶が戻った貴様は力を出せるようになり、ギニュー達を助けられなかった事を悔やんだ……フリーザやギニューの仇である孫悟空やベジータが傍にいながらにして何も出来なかった」

「う、ううぅぅぅぅぅ……」

 

 

クウラの発言にスーナの気が乱れていく。金色に輝いていた気が揺らぎ始めていた。

 

 

「貴様は地球で過ごした日々とフリーザ軍での日々の狭間で悩み苦しんだ。だが……いい加減、その胸中に抱いた思いを解放したらどうだ?」

「出来るわけ……無いじゃないですか……フリーザ軍での事も地球での事も……私には大事な……」

「ならば……次は貴様の弟を殺してやろうか?そうすれば貴様の甘さも消えるだろう」

 

 

クウラの発言に頑なに心情を明かさないスーナにクウラが更なる発言を重ねて、スーナは再び擬似的なスーパーサイヤ人になる。

 

 

「私は……フリーザ様を尊敬していました!悪人であっても宇宙の帝王であったフリーザ様を!お父さんはいつも親バカで!でも、一番に私を見てくれていて!特戦隊の皆もバカで、いつも私に仕事を押し付けるけど優しくて!ザーボンさんもドドリアさんも私に仕事を教えてくれて!アプールさんは私の仕事を支えてくれて!皆……皆、私にとっては家族だったんです!」

「ならば何故、仇を取らん!」

 

 

スーナは叫んだ。叫びながらクウラに殴りかかり、クウラは指先からデスビームを放つ。スーナはそれを両手で弾くとクウラの懐に飛び込んだ。

 

 

「それと同じ位に……お母さんも悟飯もブルマさんもクリリンさんも……地球の皆さんを好きになってしまったんです!悟空さんも困った人だけどお父さんみたいに優しくて!ベジータ王子は相変わらずだけど戦士としての誇りが誰よりも高くて!」

 

 

スーナは涙を流しながら今まで誰にも漏らさなかった自分自身の胸の内を叫んだ。

フリーザ軍での思いを持ちながら、地球で過ごした日々もスーナにとって忘れ難いものとなっていた。その心情の狭間で揺れていたスーナはズッと苦しんでいた。誰にも話せず、自問自答を繰り返し、悩み続けた。

 

 

「それを打ち明けず……貴様は表で泣かずに心で泣いていたって訳だ」

「それが何だって言うんですか!私はフリーザ様やお父さんの事は忘れられない!でも、地球の皆さんを恨むなんて出来ない!」

 

 

いくら話した所で解決しない問題を抱えていたスーナは叫びと共にクウラを蹴ろうとしたが、クウラはそれを避けるとスーナの尻尾を握った。

 

 

「ひゃうっ!?」

 

 

尻尾を握れたスーナは力が抜けると同時に悲鳴を上げた。そのままクウラは尻尾を掴んだまま腕を振り上げる。

 

 

「だったら……忘れなければ良かろう。中途半端にするから苦しむ……忘れずに糧にしろ。今の貴様をフリーザやギニューが望むとは思えん」

「え……クウラ様?」

 

 

クウラとは思えぬ優しい声音にスーナは思わず、視線がクウラの顔に向けられる。そこには慈愛と言うべき……フリーザやギニューが自身を褒めてくれていた時のような優しくて力強い笑み。

 

 

「ヌゥン!……あ」

「い……いったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!?」

 

 

その直後、スーナの尻尾を掴んだまま地面に叩き付けようと腕を振り下ろしたクウラだが、掴んでいた尻尾から重石が抜けた様な感覚が手に伝わる。クウラが自身の手の中を見るとそこにはダランと重力に負けた茶色い物があった。それはスーナの尻尾だった。

地面に叩き付けられたスーナは、地面に叩き付けられた事と尻尾が千切れた痛みで叫びを上げる。

 

 

「ひぐぅぅぅぅぅぅぅ……」

 

 

スーナは千切れた尻尾の付け根の部分を手で押さえながら地面をのたうつ。

 

 

「桃香ちゃん、大丈夫だべか!?」

「ふぇっ!お母さん!?」

 

 

その痛みを気遣う様に寄り添った女性の声にスーナが顔を上げると、其処にはクウラのエネルギー波を浴びて死んだと思っていたチチの姿があったのだ。

 スーナが視線を移すと苦笑いをしている悟空、気まずそうにしている悟飯、我関せずといった様子のピッコロがそっぽを向いていた。

 



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クウラの見送り

 

 

 

 

尻尾を千切られたスーナを連れて悟空達は家へと戻った。

 

 

「うぅ……痛いです」

「昔の悟空さも悟飯ちゃんも尻尾が千切れた時は痛かったそうだべ」

 

 

悟空達はリビングで待機し、チチは子供部屋でスーナの様子を見ていた。スーナはベッドでうつ伏せの状態でズボンを下ろし、チチは尻尾の千切れた付け根の部分の傷に薬を付けていた。

因みにチチがクウラの攻撃を受けて無事なのは悟空が攻撃を受け止めたからである。クウラは攻撃を仕掛ける前に悟空にテレパシーを送り、スーナを怒らせる為に攻撃をするとだけ伝えた。その後、スーナはクウラの予想通り、キレて自身が抱えていた心情を全て口にしたのだ。突然の事態に驚いていた悟空だが、スーナの事を思い、クウラの考えに乗ったのだ。

 

 

「痛いし……恥ずかしいです」

「桃香ちゃんがズッと言えなかった事を言えたんだべ。恥ずかしがる事ねぇだよ」

 

 

スーナが枕に顔を埋めて恥ずかしがっているとチチは嬉しそうにしていた。スーナが長年話さなかった心情を話してくれたのだから。

 

 

「はい、もう大丈夫だ」

「ありがとうございます……っと」

 

 

チチからの治療を受け負えたスーナが立ち上がろうとすると、上手く立ち上がれずフラついた。

 

 

「ううぅぅぅぅぅ……落ち着きません」

「ほら、支えるから」

 

 

スーナはチチに支えられながら悟空達が待つリビングへと歩く。

リビングに行くと「そんなに重傷なのか!?」と全員から心配されたが、上手く歩けないだけだと説明したスーナ。

 

 

「兎に角、バランスが悪い感じです……体の一部を失くしたからですかね?」

「俺に尻尾を千切られた事をしっかりと恨んでいるな、スーナ」

 

 

クウラから視線を逸らした上でスーナが呟く。そんなスーナを見ながらクウラがツッコミを入れた。

 

 

「そういや、オラも子供ん時に尻尾が切れた時は上手く歩けなかったぞ」

「僕は……割りと平気でした」

「悟飯の場合は幼い頃だったからだろう。悟空や桃香の様にある程度成長した体だとバランスが崩れてしまうのだろうな」

 

 

尻尾の有無は幼い頃から有るのか、幼い頃に失うのかでは意味合いも変わってくる。

悟飯は本当に幼い頃に尻尾を切られたから、それが当たり前になっていたが、悟空や桃香の様にある程度、成長してからだと体幹が崩れるらしい。

 

 

「サイヤ人の尾はいずれ再生する。その内、また生えてくるだろう」

「クウラ様……私が長年溜め込んでいた物を受け止めてくださって、ありがとうございました。尻尾の事は恨みますが」

 

 

ボソッと呟いたクウラにスーナは感謝するべき事は伝えて、恨む部分はしっかり恨んでいた。

 

 

「いーじゃねーか、尻尾はまた生えてくるんだからよ」

「悟空さんも知っての通り、サイヤ人にとって尻尾はデリケートな部分なんです!女の子なら尚更ですよ!」

「悟飯ちゃん、女の子のデリケートな部分を指摘する時は気を付けるだぞ。じゃねえと悟空さみたいになるべ」

「……気を付けます」

 

 

悟空がデリカシーの無い発言をするとスーナに叱られていた。

チチは悟空を反面教師にすべしと悟飯に教育し、悟飯は姉に叱られる父を見て、気を付けようと胸に誓っていた。

 

 

「もう、心配は無用な様だな。俺は行く」

「クウラ様……行ってしまうのですか?」

 

 

先程のやり取りを見ていたクウラは立ち上がり、孫家を後にしようとする。そんなクウラをスーナが呼び止めた。

 

 

「俺は元々、貴様の様子を見に来ただけだ。これ以上は馴れ合うつもりはない」

「行っちまうんか?オラ、もっと戦いたかったぞ」

 

 

スーナの様子を見に地球に立ち寄っただけだと告げるクウラに悟空が残念そうに口を開く。

 

 

「その件に関しては同意見だな。負けたまま終わらせる気はないぜ」

「貴様等はもっと腕を上げておけ。今の貴様達では俺に勝てないのは理解しているだろう?」

 

 

先程の手合わせでクウラに敗北したピッコロも悟空に同意していた。クウラはそんなピッコロや悟空を一瞥すると事実を告げる。

 

 

「俺は暫く他の惑星を巡るつもりだ。調べたい事もあるしな。それが済んだら地球に戻るつもりだ。それまでに強くなっておけ。それとスーナ」

「はい」

 

 

旅立ちはするが再び地球に戻るつもりであると告げたクウラはスーナに話し掛け、スーナは背筋を伸ばした。

 

 

「先程、貴様が見せた変化だが……あれがスーパーサイヤ人なのだろう。だが、貴様はまだコントロールが出来ていない。あの状態を自身の力で引き出せる様になっておけ。闘志は必要だが表に出さず、内に秘めそれを常にキープ出来るようになっておくんだな」

「はい、ご指導ありがとうございます」

 

 

クウラにトンと額を指で突かれるスーナ。これはクウラなりにスーナに対して優しい指導だった。本人も気づいているかは微妙な所ではあるが。

 

 

「クウラさん、地球に来た時は家に寄ってくんれ。クウラさんは桃香ちゃんにとって身内みたいなもんなんだべ」

「………覚えておこう。さらばだ」

 

 

そして孫家から出た際にチチがクウラに話し掛ける。見た目や風貌からクウラに良い印象を持っていなかったチチだが、クウラと会ってからのスーナが心が和らいでいる事やスーナの心情を話す切っ掛けを作ってくれたクウラをチチは好意的に受け止めていた。

チチの見送りを受けたクウラは一言だけ残すと、そのまま空へと飛んでいってしまった。

 

 

「行ってしまいましたね……それよりも悟飯、何を膨れているんですか?」

「わかりません……でも、少し胸がモヤモヤします」

 

 

クウラの事を名残惜しそうに見送ったスーナだが、少し前から悟飯が膨れっ面をしている事が気になっていた。悟飯自身、その事にモヤモヤしていたのだが、その感情が何なのかまだ理解していなかった。

 

 

 

 



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閑話 カエルのギニューの物語

 

 

 

 

「もう……すっかり春だな」

 

 

 

その人物は窓から見える光景に目を細め、季節を感じていた。その仕草から懐かしさと哀愁を漂わせる人物は思いを馳せていた。

 

 

「俺は……いつまでカエルのままなんだ……」

 

 

口に出した言葉は虚しくも『ゲコォ』としか出なかった。

 

『※ギニューの言葉は翻訳して日本語でお届けします』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の名はギニュー。宇宙の帝王フリーザ様の右腕として戦っていた戦士だ。宇宙中のエリートを集めたギニュー特戦隊の隊長として誇りある戦士としてフリーザ様にお仕えしていたのだが、ナメック星での戦いで俺以上の戦士との戦いで苦戦した俺は特殊能力チェンジを使用し、敵のサイヤ人の体を奪った。だが、裏切り者のベジータのせいで再び劣勢に立たされ、今度はベジータの体を奪おうとしたのだが、先程まで体を奪ったサイヤ人に邪魔をされ俺はカエルとチェンジしてしまった。

それからは苦難の日々だった。カエルになった俺は喋る事も叶わず、再びチェンジする事を封じられ何も出来なくなってしまった。最大戦闘力が12万を誇っていた俺が単なるカエルに成り下がってしまうとは……

 

何も出来ない事を嘆いていた俺だが気が付けば何故か、見知らぬ星に降り立っていた。周囲を見渡すと裏切り者のベジータやナメック星人達が会話をしていた。

彼等の会話を盗み聞きしていると、ナメック星のドラゴンボールでソンゴクウとフリーザ様を除いた生き物を地球と呼ばれる辺境の惑星に転移させたらしい。

 

あのソンゴクウと言うサイヤ人はフリーザ様と互角な戦いをしていたらしいが、まさかそこまで強い戦士だったとは……そんな事を思っているとベジータやナメック星人が騒ぎ始めている。何事かと思えば、其処に居たのはスーナだった。無事だったのかっ!?ベジータがスーナを殺したと聞いていたから心配したんだぞ!駆け寄ろうと思ったのだが、カエルの体では上手く走れない。なんとも、もどかしい気分だ。

 

しかし、俺に更なる悲劇が見舞われる。なんとスーナは記憶を失っていたのだ!そんな今までの……俺と親子として過ごした過去が……戦士として指導した記憶が……共にスペシャルファイティングポーズをした微笑ましい思い出が……

 

『※最期のはギニューの妄想です』

 

なんて、なんて悲劇なんだっ!今すぐにでもスーナを抱き締めてやりたい!記憶を取り戻させたいのだ!

しかし、スーナはベジータやソンゴクウの子供のゴハンとやらに連れられて行った。記憶を失ったスーナは言われるがままに共に行動をしている。ダメだ、知った仲とは言っても男にヒョイヒョイ付いていくな!男は狼なんだぞ!

注意したがったが俺の口から出た言葉は『ゲコッ』だった。その声に俺は初めてナメック星人達の注目を浴びる事となる。

 

その後、俺は地球産のカエルではなくナメック星のカエルだと思われ、保護される事になった。俺の思惑とは違ったが俺もスーナやナメック星人達が保護される所へと連れて行かれる様だ。

連れて行かれた施設は、この惑星にしては発展した科学がある様だ。くそっ……カエルの姿じゃなかったら見学したいくらいなのに……しかし、俺の思いとは裏腹に俺は小動物を放し飼いにしている温室に放り込まれた。

 

そこで俺は数ヶ月、生活する事となる。適度な室温に危険の無い生活。更に働かなくとも得られる食事……いかん、このぬるま湯の生活は俺をダメにする!……とは思いつつも今の俺では温室から抜け出す事すら叶わない……

そんな俺の最近の日課はブルマの仕事の手伝いでカプセルコーポレーションに来ているスーナに寄り添う事だ。本来なら今、スーナがお世話になっている家に親として挨拶に行かねばならぬのだがカエルの身ではそれも叶わない。

 

しかし……スーナは本当に明るく笑うようになった。記憶喪失なのも影響しているのだろうが、スーナは元々、心優しい性格だ。フリーザ軍の仕事も心を押さえ付けて実行していた節があるから、今のスーナを見ていると今までの俺の教育が間違っていたのではないかと思ってしまう。

 

『※教育をしたのは主にフリーザとザーボンである』

 

そんな事を思いつつもカエルの姿の日々は続くのだが、ある日……ベジータが荒ぶった様子でカプセルコーポレーションに帰って来た。

 

 

「ちっ……カカロットと未来から来たサイヤ人がスーパーサイヤ人だと……ふざけやがって。俺がナンバーワンだ!」

 

 

普段からイラついた様子の多いベジータがやたらと苛立っていた。カカロットとはソンゴクウの事だったな。それに未来のサイヤ人とはなんだ?

 

何があったか知りたいがカエルの身では調べる事も出来ん……いったい何が起きているんだ……チェンジさえ……チェンジさえ出来れば人の姿に成れると言うのに……

 

 

しかし、俺のこの願いが叶うのは数年後となった事を今の俺は知るよしも無かった。



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