魔法先生ネギま~人間をやめた男~ (EDF)
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プロローグ 石仮面と赤石と息子
初めての方は始めまして。
お久しぶりの方はお久しぶりです。
お恥ずかしながら帰ってきました。
お見苦しい場面もありますでしょうが、ご容赦ください。
――ロンドン郊外のスラム街にある一軒家――
「くそっ! 何もかもうまくいかん!」
男は頭を抱え、酒を呷る。
男の周りには沢山の酒瓶が転がり、暖炉の炎は赤々と燃え盛っている。
灰になった書類や本が、炎の下で積っていた。
「ただいま。 ! 父さんまた酒を!」
帰宅した息子が酒瓶を取り上げようとする。
「うるせぇ! 餓鬼のお前に何が分かる!! それよりも荷物を纏めておけ!」
息子の手を打ち払い、立ち上がる。
「またかよ!? いい加減にしろよ! そもそも父さんが外で揉め事さえ起こさなきゃ……!」
背を向け家から出ようとする男を引きとめ、胸ぐらをつかんだ。
「黙れ黙れ黙れ!!! お前は俺の息子なんだ! 俺の言う事を着いてりゃいいんだ!! 良いか! 俺が帰って来るまでに済ませておけ!!」
男はそう怒鳴って、息子の腕を振り払い、ドアから出て行った。
ふらふらとスラム街を徘徊し、残った酒を呷る。
「ック…。俺の人生、何もかもお終いだ! 真祖の研究も先を越され、罪もこっちに擦り付けられた……。稀代の天才と言われた俺がこんな目に遭うのも、全部マクダウェルの野郎のせいだ!!」
男は苛立たしげに石をけっ飛ばし、道路に座り込む。
「真祖の研究さえ上手くいっていれば……くそったれめ!!」
空の酒瓶を壁に投げつける。
酒瓶は壁に当たり、大きな音を立てて砕け散った。
「もし、そこの人」
「……あぁん?」
男は声のした方を見る。
そこには黒いローブを着た者がいた。
暗がりで顔は見えず、足元もハッキリと見えない。
その声は、男とも女とも判断しにくい声で言う。
「
「何!? 方法があるのか!」
男は、はっとして跳ね起きる。
「勿論。お前さん真祖の研究をしていたなら聞いた事はないか? 太陽の民『アステカ』の部族に伝わる”奇跡”を」
「まさか……『石仮面』の事か?」
ローブから見える口がニヤリと歪んだ気がした。
「ついてきな。この先にある
ローブの者は踵を返して歩き出した。
「ま、待ちやがれ! てめぇは何者だ!? 何故俺にそんな話をする!?」
男はとっさに手を伸ばしたが、それよりも早くローブが翻り掴み損なう。
「ふふ。まぁ細かい事は気にするな。
何故か男はローブの者の名前が、ノイズが入ったかのように聞き取れなかった。
「お、おい名」
「名前は一度しか教えない。聞き逃したらそれでおしまいさ。チャンスと一緒」
そう言って●●は路地裏に入って行った。
「チッ」
男も見失うまいと必死について行く。
(何もんか知らねぇが、これは神が俺に与えたチャンスだ! 絶対に逃さねぇ!)
そしてしばらく歩いて行った先に、古ぼけた美術商が建っていた。
「ここだよ」
●●は店の鍵を開け、中に入る。
男も店に入った。
(うっ、なんて臭いだ!?)
悪臭が、男の鼻を強く刺し顔を
店内のいたる所に蜘蛛の巣が張り巡らされ、悪趣味な展示物には
(お、俺が言うのもなんだが正気の沙汰じゃねぇぞ)
先程の酔いも醒めて、冷や汗が頬を伝って落ちる。
(こ、こいつは一杯食わされたのかもしれねぇ……!!)
本能が鳴らす警鐘に従い、振りかえって逃げだした。
だが逃げようにも扉はビクとも動かない。
「さて先程の話なんだがね……っておいどこえ行くんだ? 此処まで来て逃げようなんて虫がよすぎやしないかい?」
さも愉快そうに●●は
「お、俺を
「さあねぇ? それはあんた次第さ」
カラカラと薄気味悪い笑い声をあげて●●は嗤う。
「んふふ。んで、これがその『石仮面』と『赤石』さ」
●●は、カウンターの下から、大事そうに不気味な仮面と赤い
男は掌サイズの石を見た瞬間、目を見開いた。
「『エイジャの赤石』が何故こんな所に!? こいつは皇帝の持ちモンだろ?」
「ふふ、今は戦乱。盗品として流れていた赤石を買い取ったのさ。値は少々高くついたがねぇ?」
またからかう様な調子で●●は石を指で
(こいつ……ぼったくる気だな。偽物にしろ本物にしろ『赤石』は相当な金持ちじゃねぇと買えねぇ代物だ)
「んふふ。安心しなよ。実は近日中に店じまいしようと思っていてね。特別に銀貨一枚でどうだい? 特別特価だ」
「ぎ、銀貨一枚だとぉ!?」
(しょ、正気かこいつ!? よっぽど頭おかしい奴か、偽物かのどっちかだな)
男は懐を漁って財布を取り出し、逆さに振る。
「……………………」
中から出てきた最後の一枚の銀貨と、カウンターの上に置かれた代物を交互に見る。
「酒代に消えるより、
「如何するったって…」
男の中で葛藤が生まれる。
(この銀貨は、俺にとってなけなしの財産だ。これから逃亡するってのに路銀が無きゃどうしようもねぇ。だが、もしこれが本物なら今の落ちぶれた生活とはおさらばできる。上手くいきゃぁ皇帝にだってなれる……! だがもし偽物だったら? でもこんなチャンスめったにねぇ。いやもう絶対にねぇ! ……だが)
「疑ってるんだね? 仕方のないお客様だ」
●●はやれやれと頭を振って、ナイフを取り出して男の腕を斬りつけた。
「ぐわっ!! な、ななななな何しやがる……!!」
男は切られた個所を抑えて飛び引く。
「まぁ見てな」
●●は慌てず騒がず、血の滴るナイフの切っ先を石仮面に向けた。
ポタポタと石仮面に血が垂れる。
『ピキ パキ パキ』
石仮面が微かな音を立て、震え始める。
(こ、この反応は古文書にあったモノと同じ……!)
そして、骨針が勢いよく飛び出し、仮面が宙を舞った。
ゴトリと重い音を響かせて、床に落ちる。
(ほ、本物だ!)
「へ、ヘヘヘ……仮面と赤石、買わせてもらうぜ!」
「まいど」
男は銀貨をカウンターの上に置き、仮面と石を持って意気揚々と出て行った。
「ハハハハハハ!! これで奴を!! 俺に罪を着せたマクダウェルの野郎を!! ハハハハハハハハ!!」
「おかえり、随分と遅かったね」
男が家に入ると、息子は言われた通り荷物を纏め終えていた。
「…………」
「父さん?」
珍しく返事が無い事に不審がり、振りかえる。
「……お前には悪いが俺の悲願と野望の為に、死んでもらうぜぇぇぇえぇ!!」
男は、ポケットからナイフを取り出し息子に斬りかかる。
「なっ! とうとう気でも狂ったか、バカ親父!」
突然の事に驚きつつ、大きく後ろに飛び引いて、椅子を持ちあげる。
「フヘヘヘヘ……『石仮面』にはなぁ、血がいるんだよ! 喜べ息子よ! お前の血で俺は完全無欠の生物になる! 魔法使いどころか、真祖なんぞ目では無い究極生命体にな!!」
男は気味の悪い笑い声をあげながら、ナイフを持ち直す。
「冗談じゃねぇ!」
「死ぃにやがれぇぇぇぇ!!」
男はナイフを腰の位置に構え、息子に向かって体当たりする。
「くっ! どっせい!!」
体当たりを体を捻って避け、椅子を振り下ろし、頭を強かに殴打した。
「ぐおぉぉぉぉ!!! こ、こここののぐぐ愚息がぁ!!」
頭から血を流し、半狂乱で息子に斬りかかる。
「今楽にしてやる!」
手に持った椅子を男に向かって力強く放り投げ、傍にあった薪割り斧を手に取る。
「ぐぎゃ!」
椅子が顔面に命中し、迫って来た男はもんどり打ち床に沈む。
「ぐ……う…………がっ!」
起き上がろうとする男の背中を踏みつけ、斧を振り被る。
「あの世で神にでも懺悔するんだな!!」
「―――――――――――――――!!!」
声にならない、男の悲鳴がしたのも一瞬。
床一面に、紅い不格好な華が咲いた。
「へっ、ざまぁみやがれ…………」
ふぅ……と息を吐いて、死体を見下す。
口元には笑みが浮かんでいる。
自分の親を殺したにもかかわらず、その瞳には一切の揺らぎが無い。
「やれやれ清々したぜ……」
息子は斧を放り投げ、死体の胴体を蹴り飛ばし、懐から『赤石』を鞄から『石仮面』を取り出した。
「これがアステカの”奇跡”か」
男の持っていたナイフを丁寧に洗い、仮面を被る。
そしてナイフで手首を切り、溢れ出る血を手に取り仮面に塗りたくる。
『ピシ ピキ パキ パキ パキ パキ』
先程と同じく音を立てて震え始め、血は仮面の細かい罅に吸い込まれていく。
石仮面は生き血を吸って動き出した。
数本の骨針が飛び出し、息子の頭に、頭蓋骨を貫通し深々と突き刺さる。
「不思議な感覚だ…。全身から力が湧いてくる…! くく、ふふ、はははははは! 気分もすごくいい! 最高に
そして彼は、『赤石』を仮面の窪みに填める。
外へ出る。
(まさか本物とはな。生まれてきてから此の方、親父には一度たりとも感謝した事は無かった。しかし『アステカの”奇跡”』と『エイジャの赤石』を持って帰った事だけは感謝しなければならないようだな)
昔、彼の父親はフランスで、ある研究者と真祖の吸血鬼についての研究を行っていた。
その過程で、父から教わったのが『アステカの”奇跡”』や『究極の生命体』などの御伽話だった。
まさか自分が御伽話の生物になるとは夢にも思っていなかっただろうが…。
夜が明けて、太陽が昇って来た。
差し込む太陽の光が赤石に吸い込まれていく。
赤石が赤く輝き、石仮面から先程よりも太い骨針が彼の脳に突き刺さっていく。
石仮面は次第に罅が入っていき、音を立てて砕けた。
地面には、砕け散った石仮面の破片と、赤石が落ちた。
「………………素晴らしい」
しばらくの沈黙の後、彼は満足そうに笑み、そう呟いた。
「先程とは比べ物にならん力と、新たな知恵が湧いてくる! これが究極の生命体……!」
赤石を拾い、粉々に粉砕した。
(もはや、この家には未練も用も無い)
彼は家の中から私物を持ちだし、周りに藁を敷き、油や酒を撒いてマッチを擦り火を付けた。
「さて人が来る前に退散するか。早速新しい力を試すとしよう」
そう言って、鞄の中から一冊の本を取り出しペラペラと捲る。
(細胞を分解し、体と骨格を変化させる。何ともまぁ抽象的だな。イメージすればいいのか?)
彼は頭の中で空を飛ぶ鷹をイメージした。
変化は一瞬で現れた。
彼の腕から羽が生え、あっという間に大きく立派な翼となる。
「おお、凄いなこれ」
両腕を羽ばたかせると体が浮いた。
そしてそのまま空へと飛び立った。
この日彼は人間を止め、旅立った。
いかがだったでしょうか?
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第一話 華人小娘
初めての方は始めまして。
初共闘です。
タイトル通り東方のあのキャラが出ます。
*冒頭から中盤の自己紹介の所までの「彼」とは主人公のことです。仕様です。読みづらかったらすいません。
彼が故郷を飛び立ち早数時間、彼の眼下には大きな森が広がっていた。
(この森があるという事は、もうフランス国内か。この辺はまだ戦火が届いていないんだな)
頭の中で、記憶した地図を思い出しつつ飛ぶ。
滑空しながら、目的地を考える。
(行くのなら明か日本だな。”仙人の住む桃源郷”と”妖怪と人が共存する集落”……。人を超越した俺にとって、安息の地はそこしかないな)
彼はにやっと笑い、速度を速める。
幾つもの山越え谷越え、二月の歳月をかけて
身体を元に戻し、広州の街へと進む。
「ついたついた! さて観光だ」
まあまあの賑わいを見せる街中を歩く。
露天で売っている怪しげな商品を眺めつつ、大通りを歩いていると人だかりができている。
「なんだろか? 見世物でもあるのか?」
余程人気がある見世物なのか、人だかりは厚くそして大きかった。
興味を引かれた彼は人だかりに近づく。
そして近くの男に聞いた。
「ちょっと失礼。何かあるのか?」
「ん? 兄ちゃん見かけない顔だね? 旅人かい?」
「ああ、見聞を広めるために旅をしている」
当り触りのない返答を返す。
「なら丁度良かったね! 今、役人達が恐ろしい邪龍の門番を捕まえる所なんだ!」
男は興奮気味にそう言った。
「……ふーん。珍しいモノには変わりないか」
対して彼はどうでもよさそうに返事をして、人込みをかき分ける。
(どんな奴かな? やっぱりごつい怪物みたいな妖怪か?)
「ちょっとお兄さん押さないでよ!」
「あ、これは失礼」
もみくちゃにされ、やっとのことで人込みをかき分け終える。
その人だかりの中心には、紅い髪をした渋めの緑色のチャイナドレスを着た女性と、役人らしき男と武装した数人の衛兵が居た。
(うほっ 美 脚 美 人 !! こいつぁ助太刀しないとな!)
眼前の女性は整った精悍な顔立ちに燃える様な紅の髪、スラリとした無駄のない美脚、そして勤労意欲をそそるボインな女性だった。
「ついに見つけたぞ、邪龍の門番め! 大人しく捕まれ!」
衛兵を引き連れた役人が、剣の切っ先を女性へと向けて叫ぶ。
「冗談じゃありません。なぜ捕まらなければならないんです? 私は何の危害も加えてはいない筈ですが?」
女性は落ち着いた声で言い返す。
「黙れぇ! 邪龍と関係を持つ者は皆ひっ捕らえよとのご命令だ! 大人しく捕まれ! 捕らえろ! 包囲陣形!」
役人がそう叫ぶと、衛兵たちがざっと展開し、女性を取り囲んでいく。
「やれやれ、女性一人に恥ずかしい限りだな?」
彼はそう言って、眼前の役人に歩み寄った。
「何だ、貴様は! 貴様もこの妖怪の仲間か?」
突然現れた彼を睨みつける役人。
「
彼はそう言って、役人を蹴り飛ばした。
役人は数人の衛兵を撒きこんで転がった。
「ぐっ、つ……! な、何をしておる!? さっさと捕えろ! 不可能なら殺せ!!」
役人の合図で、衛兵達が武器を構え、二人ににじり寄る。
彼は女性の真後ろまで来て、背中を向ける。
「誰か知りませんが、足は引っ張らないで下さいね」
女性は首だけ彼の方を向いてそう言った。
「無論。申し訳ないが背中は任せるよ」
「ええ分かりました。そのかわり私の背中をお願いしますね」
背中合わせで互いの隙を庇うようにしながら、衛兵達を睨む。
「死ねぇ!」
目の前に居た衛兵が斬りかかって来る。
「踏み込みが足らんねぇ?」
彼は衛兵の剣の腹を強く打ち払う。
すると甲高い音を立てて、剣は折れてしまった。
「うぇっ!?」
「驚いてる暇があったら逃げた方が良い」
彼は目を丸くして驚いている衛兵の頭をつかんで、力強く他の兵に投げつけた。
「ぐわっ!?」
「かふっ……」
二・三人を巻き込んで、役人と人だかりに突っ込んだ。
「そんな数打ちものの
ニヤニヤしながら挑発する。
「ヒュ~ッ♪ やりますねぇ。では私も」
女性も口笛を吹いて、余裕綽々といった感じだった。
そして、やや腰を落とし兵の顎を掠める様に蹴りを放つ。
「ハアッ!」
風切り音と共に、鋭い蹴りが顎を掠めた。
(直接蹴った方が威力が高いと思うんだが……?)
彼の疑問を余所に、まるで舞を舞う様に続けざまに蹴っていく。
蹴られた兵は、白目を剥いて気絶していった。
(う、美しい……)
彼は、その一連の動作の美しさに、つい戦いの手を緩める。
「よそ見するとは余裕だな!」
衛兵の声でハッと我に返り、突きだされた槍を交わして、そのまま掴んで引っ手繰る。
(いけねぇいけねぇ。つい見とれてしまった)
感心しつつ、襲い掛かってくる衛兵を奪った槍で次々に打ち伏せていく。
「一群の敵を屠るには一槍あればよいってな。こちらは終わったよ。そっちは?」
あらかたの衛兵を打ちのめした彼は槍を地面に突き刺し、女性の方へ振りかえる。
気絶した衛兵達が彼女の前に横たわっていた。
「こちらも片付きました。助太刀ありがとうございます」
「増援が来られても面倒だ。今のうちにお暇しますかね。……よかったら一緒にどうです?」
「良いですね。特に目的もありませんのでご一緒させていただきます。さぁ! 逃げるならこっちです!」
女性はにこっと笑んで、彼の手を取り走りだした。
(随分と
彼は微笑んで手を強く、だが苦痛を与えない程度に握り返した。
二人は広州の街から離れ、近くにあった森で野営をすることにした。
「さてここまで逃げれば大丈夫だろ。自己紹介がまだだったね。俺は
村雅は自己紹介をして右手を差し出した。
「私は
美鈴も自己紹介をし、出された手を握り返す。
「とりあえず二つほど質問です。一つ目はなぜ私を助けたのか、二つ目は貴方の旅の目的はなにかです」
一先ずはといった感じに、腰かけて村雅に問うた。
「二つ目の質問からお答えしよう。”桃源郷”と”妖怪と人が共存している集落”を探している」
「ああ。でしたら無駄足でしたね。もうこの国に桃源郷は存在しませんよ」
美鈴は首を横に振った。
「なんと……」
「各地にあった桃源郷は、今となっては人間の住処です。かくいう私も以前は桃源郷で暮らしていたんですがね。なんでも、良い鉱石が採れるとか何とか言って反妖怪意識の高い連中に追いやられてしまいまして」
「抵抗はしなかったのか?」
「勿論その意見も出ました。ですが龍神様はそれを良しとはせず全面降伏です。それで仲間たちとも散りじりに……」
美鈴は目を伏せ俯きがちに言った。
「そうだったのか……」
村雅は気まずそうに後頭部を掻いた。
「まあ、今となってはどうでもいい事ですが。では一つ目の質問に答えてください」
「答えは、まあ簡単だ。紳士だからだ。紳士たるもの女性には優しくせよ……ってな」
「は、はぁ……」
美鈴は余りにも拍子抜けする答えが返って来たため、半ばポカーンとしている。
「……とんだお人好しさんですね?」
美鈴はやれやれといった感じで、苦笑いを浮かべた。
「それが俺だよ。まぁ、時と場合によりけりだが」
ニッと笑って美鈴を見る。
「あ、そうだ。さっきの時のだけどさ」
村雅は思い出したように美鈴に言う。
「先ほどの体術は見とれるほど素晴らしかった!」
「そう褒められると照れますね。よろしければ教えましょうか?」
美鈴は照れ笑いを浮かべて言う。
「それは是非ともお願いしたい。……明日からは紅師範と呼べばいいか? それとも紅先生か?」
村雅はやや興奮気味に言う。
「分かりました。未熟ながら教授しましょう。う~ん……まぁ、呼びやすい呼び方で呼んで? あまりそう言うの慣れてないので」
「じゃあ普段は美鈴さんで、稽古の時は紅師範と呼ばせてもらうよ」
「じゃあ、それで。では野営の準備、しましょうか」
村雅と美鈴は再度硬く握手をして、野営の準備に取り掛かった。
いかがだったでしょうか?
もう一・二話挟んで村雅の設定を投稿しようかなと思っています。
感想・意見・修正・質問等お待ちしております!
*「投稿が遅いのは書き直しているからです」という言い訳を置いておきますね。
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