聖帝の奇妙な冒険~十字陵は崩れない~ (Pazz bet)
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エンカウント聖帝


 思いつきで書いた作品です。

 暖かい目でどうぞ。


 僕の名前は広瀬康一。

 

 今年から晴れて高校生になる、ごく普通の少年だ。

 

 今日は待ちに待った入学式。

 

 楽しみだなあ。どんな輝かしい高校生活がまっているんだろう。

 

 期待に胸をふくらませ、校門を潜るとそこには...

 

 

 

 

 

 「フハハハハ!俺の天下はここにあるぞぉー!」

 

 「えっ...」

 

 10メートルはありそうな派手すぎるバイク。

 

 え?何なのこのカオス的状況。

 

 ほら、生徒達なんか見てはいけないものを見てしまったみたいな感じで逃げていってるし。

 

 しかもなんか上にのってる人の服装も色々つっこみどころだらけだし。

 

 その側にモヒカン頭のいかにもヤバそうな人達が集まってるし。

 

 そう思っていると、すごい速さで校門から出ていった。

 

 なんだったんだろう...。

 

 自分は何も見ていなかったことにし、会場に駆け込んだ。

 

 

 

 

 式は無事終わり、くわしい説明をうけるため、皆各々の教室へ向かう。

 

 僕は...1年B組か。

 

 中に入ると、一人見知った顔があった。

 

 「仗助君!」

 

 「お、お前は!」

 

 相手もすぐにわかったようで、こちらに向かってきた。

 

 ちょっと髪型のおかしな彼の名前は、東方仗助。

 

 今日の朝、不運にも不良に絡まれていたら、さっそうと現れて助けてくれたんだ。

 

 あっ、言っとくけど仗助君は校門でいたようなごりごりマッチョのモヒカン大男みたいなんじゃなくて、イケメンでリーゼントのイカした男だよ?

 

 最初は怖かったけど、話してみると案外気さくでいい人だった。

 

 仗助君と一緒のクラスかー。これは楽しくなりそうだなあ。

 

 

 「広瀬康一、だったっけな。これからよろしくな!」

 

 「こちらこそよろしく!」

 

 握手を交わし、ニヤリと笑い合う。

 

 

 

 

 

 「えー、皆さん席についてください。」

 

 新担任の先生がはいってきた。

 

 僕は、仗助君に、じゃ、といって別れ、席についた。

 

 「これから新しくここで生活をしていくにあたって詳しい説明をとりおこないたいところだが、」

 

 「急遽入学が決まった者がいる。このクラスに入るそうだ。」

 

 教室がどっとわく。

 

 今から入ってくる生徒は、ここにいるどの生徒よりも注目を浴びることになる。

 

 どんな人がくるのかなあ。

 

 僕もちょっと楽しみだ。

 

 「それでは紹介しよう。さあ、入ってきてくれたまえ。」

 

 「フハハハ!この俺の姿を皆さんの目にやきつける時がきたようだな!」

 

 ん?

 

 んん?

 

 ちょっと待って。なんか嫌な予感が。

 

 自分の中の期待が、ちょっとだけざわついたが...。

 

 ギュピ。

 

 金属音をたてて、教室に足が踏み入れられた。

 

 いや、おかしい。金属音って。

 

 ギュピ、ギュピ、ギュピ。

 

 そして、一歩すすむごとに、その姿は明らかになっていく。

 

 そして全貌が明らかになったとき、僕は頭の中が真っ白になった。

 

 とてつもない筋肉。

 

 高い身長。

 

 えらくにやついた面長の顔。

 

 そして、宝飾きらめく紫色のタンクトップ。

 

 そう。

 

 これが、すべての元凶。

 

 僕らの、奴との出会いだった。

 

 「さあ、自己紹介してくれ。」

 

 「うむ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「下郎の皆さんこんにちは!元聖帝軍十字陵学園所属、聖帝のサウザーです!」

 

 

 

  





 こいつが異常に大暴れします。

 きっとサウザー尽くしになると思うので、一応注意だけは。


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聖帝・ザ・スタートライフ

 後半台本形式です。


 「聖、帝?」

 

 「なんじゃそりゃあ...。」

 

 あまりにも予想外過ぎる展開に、皆は騒然となる。

 

 仗助君も、訝しむような目で壇上の男を見ている。

 

 突如現れたサウザーという男。

 

 先生が紹介しているのだから、新入生、なんだよね?

 

 けれど、どう見ても成人男性にしかみえない。しかも制服すら着てないし。

 

 「フハハハハ!どうぞよろしくゥ!」

 

 で、この瞬間全員が思っただろう。

 

 これは絶対に人違いだと。

 

 

 

 

 そのまま解散となり、サウザー、さん?はそそくさと「カレー、カレー」といいながら教室から出ていった。

 

 その様子を見届け、完全に姿がみえなくなった後、

 

 皆は先生のところに集まった。

 

 

 

 

 「あのー、先生...?」

 

 「ん?何だ?」

 

 「これ、誰かと間違えたんじゃないですか?」

 

 

 

 

 「ああ、そのことか。」

 

 「まあ確かに、驚くにも無理はないかもしれないな。本当は彼は新高1生だというわけではないんだ。」

 

 先生はこう答えた。

 

 それを聞いて周りが騒がしくなる。  

 

 どういう意味だろう?

 

 「どういう意味なんすか?」

 

 「彼の通っていた聖帝軍十字陵学園が、経営困難で潰れちゃったんだよ。だから一番近かったこの学校へ転入することになったんだ。」

 

 あ、なるほど。そういうことか。

 

 皆も納得したようだ。

 

 じゃない!

 

 それを聞いてもちっとも納得しないよ!

 

 

 「制服に関しては特注の物を頼んであるんだが、まだ届いていないということで、前の学校の制服を着用させている。」

 

 「え?あれ学校の制服なんすか!?」

 

 仗助君が驚いたように口に出した。

 

 そりゃあそうだよね。どう見ても私服にも置けないような代物だもの。

 

 「ま、そうみたいだな。」

 

 え!?やっぱりそうなの?

 

 「なにはともあれ、ここの生徒になることにはかわりない。間違いはないよ。」

 

 そういいきる先生に、僕らは何も言えなくなった。

 

 「うーん...」

 

 そして、彼との奇妙な生活はこんな形で始まったのである。

 

 

 

 

 

 -サウザー家(聖帝十字陵)にて-

 

 

 

 

 サウザー「フハハハハ!カレーが進む進む!」

 

 側近「いやはや、よかったですな、サウザー様」

 

 サウザー「当然であろう!悔しかったらお前も入ってみるか?」

 

 側近「それは遠慮しておきます...しかし、」

 

 側近「なぜいきなり高校へ入ろうとなさったのですか?」

 

 サウザー「フッ、何を聞くかと思えば...。愚問だな。」

 

 サウザー「この聖帝、理由などただひとつのみだ!」

 

 側近「そ、それは...?」

 

 サウザー「無論、楽しそうだったから!」

 

 側近「へ?」

 

 サウザー「ん?何その顔?」

 

 側近「いえ、聖帝たるもの、新たな拠点とするとか、軍事拡張するとか、そういうこともあるのでは?」

 

 サウザー「ない!!」

 

 側近「完璧に言い切った!!」

 

 サウザー「やっぱり学園生活というのは楽しくなければ意味がないであろう?」

 

 側近「正論!いや、正論だけれども!」

 

 側近「仮にもサウザー様はレジスタンスを始め、様々な方から命を狙われている身なのですぞ?そんなことをしている場合ではないのでは...」

 

 サウザー「フッ、安心するが良い。それについての手立ては大方ついておるわ。」

 

 側近「えっ?」

 

 サウザー「自らの目的を達成することには、この聖帝にぬかりなし、という訳だ。任せておけ!フハハハハ!」

 

 側近「...」

 

 側近「まあ、サウザー様がそこまでいうなら...」

 

 サウザー「フハハハハ!」

 

 側近(大丈夫かなあ...)

 




 サウザーの側近の名前誰か知ってる人いたら教えてくれないませんか?


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聖帝ウイゴコロ

 どうも。

 愛などいらぬ!


 入学式から、一週間がたった。

 

 皆そろそろクラスには慣れてきているようで、見ず知らずの生徒だったというのに、もう友達を作っている人もいる。

 

 僕?僕は、仗助君と一緒にいるよ?

 

 まあ、一番最初に知り合った人だから何も不思議じゃないと思うけど。

 

 ただ。

 

 ただね。

 

 もう一人いるんだ。

 

 つまり、僕達は三人グループってことだけど、

 

 誰だと思う?

 

 

 

 

 

 「フハハハハ!二人とも何ボケッとしておるのだ!」

 

 

 

 

 

 もうわかるよね。

 

 サウザー君だよ。

 

 

 

 

 あれは昨日のことだった。

 

 ーーー

 

 ーーーー

 

 ーーーーー

 

 僕と仗助君が一緒に帰っていると、

 

 

 何やら後ろから視線を感じた。

 

 

 それは仗助君もわかったようで、

 

 

 「おい、何か変な感じがするんだが気のせいか?」

 

 

 僕らが後ろを見るたび何かが隠れているような気がする。

 

 と、いうことで僕たちは待ち伏せをすることにした。

 

 

 曲がり角を曲がったところで、壁際で待機する。

 

 

 これで何があるかわかるはずだった。

 

 

 でも、いつまでたっても姿が見えない。

 

 「?」

 

 二人して顔を見合わせると、何かの気配をまた感じる。

 

 しかし、

 

 「...上?」

 

 おそるおそるみてみると、

 

 塀の上でサウザー君が仁王立ちをしていた。

 

 「嘘だろ!?」

 

 「フハハハハ!やっと気づいたか下郎のお二人!」

 

 いつの間にあんなところに上ったんだ?

 

 しかもなんでサウザー君がよりにもよって僕達なんかのところに!?

 

 「、てめえ、なにしに来やがった?」

 

 仗助君が少し警戒する。

 

 「そう構えるでないわ。おれは貴様達に用があってきたのだ。」

 

 すると、バシッと指を差して、入学式の時に見せたにやけ顔で、

 

 

 

 

 

 「ズバリ!おれのともd、」

 

・・・

 

 ・・・・・

 

 ・・・・・・

 

 「ん?」

 

 

 サウザー君がフリーズした。

 

 どうしたんだろう。

 

 よくみると、顔がひきつっており、にやけ面を張り付けたままひくひくと震えていた。

 

 「コ、コホン、だから、いや、つまりだな、おれとともd...」

 

 「おい、はっきりいえよ...」

 

 仗助君の顔から緊張は消えて、逆に呆れている様子だった。

 

 「とも...何だって?あ!」

 

 え、何?仗助君もどうしたの?

 

 すると、みるみるイタズラ好きの子供のような表情にかわっていく。

 

 「なんだ、そういうことか。分かったぜ。」

 

 

 

 

 

 「オメー、もしかして俺たちと友達になりてえのか?」

 

 

 

 「んぐう!?」

 

 

 

 あ、そういうことか!

 

 そういえばもうそういう時期だよね。

 

 入学式から一週間近くたっているのだから、友達作りにも勤しむ時だ。

 

 

 サウザー君は、一瞬すごい梅干しを噛んだときのような顔をして、

 

 

 「フ、フハハハハ!ご名答!よ、よくわかったな下郎!」

 

 

 「ご名答、じゃねーよ...それくらい普通に言えって。足もガタガタ震えてるしよ。」

 

 本当だ。

 

 滅茶苦茶震えてるし。

 

 やっぱり、馴れてないのかな...?

 

 「てか、そんな調子でせーてーなんとか学園ではどうしてたんだよ...」

 

 

 

 

 「ギクゥッ!!」

 

 

 あ、察した。

 

 

 ーーーーー

 

 ーーーー

 

 ーーー

    

 

 まあ、そういうわけで、僕の仲間の輪に、サウザー君が加わることになったんだ。

 

 なんというか、高笑いがものすごくうるさいけど、友達が増えるのは悪いことではないからな...。

 

 

 

 

 ~サウザー家(聖帝十字陵)にて~(時系列は昨日の夜)

 

 

 サウザー「...」

 

 ブル(側近)「まあ、結果としてはよかったんじゃないですか?あの時、」

 

 

 ーーーー

 

 ーーー

 

 ーー

 

 サウザー「フハハハハ!まあ、お前には教えてやらんこともないぞ?」

 

 ブル「...一応お聞きしますが。」

 

 サウザー「よかろう。学園生活には友達というものが必要不可欠であるらしいな。というわけで」

 

 サウザー「強いやつと友達になっちゃおう作戦!」

 

 

 ーーーー

 

 ーーー

 

 ーー

 

 ブル「あれには耳を疑いましたぞ?あの一普通の高校にサウザー様が認めるような強い者がいるのかと。」

 

 サウザー「...」

 

 ブル「よくよく聞いてみれば、東方、という男子生徒がそれらしいと。しかし、それは拳で語り合う強さではなく、もっと他の何かだと。」

 

 サウザー「...」

 

 ブル「正体はわかりかねますが、サウザー様がいうことを信じよう、と不思議にもすぐ思いましたな。」

 

 サウザー「...」

 

 ブル「こうして友達にすることができるなど、限りなく安心ですぞ?しかも、サウザー様にも友達ができたということ自体が感涙物です。」

 

 サウザー「...」

 

 ブル「何か言いましょうよ...。」

 

 

 




 この二人は聖帝さんをどう扱うんでしょうか。


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スニーキング聖帝 上

 投稿遅くなってすみませんでした。

 どうぞ。


 いつも通り、なんの変哲もない一日が始まろうとしていた。

 

 しかし、だ。

 

 最近仗助君の様子がおかしい。

 

 じゃあサウザー君はどうなのかって?

 

 言わずもがなだろ?

 

 まあそれはおいといて、仗助君は事あるごとにキョロキョロ周りを見回しては、苦虫を噛み潰したような顔になる。

 

 それでどうしたのかと話しかけても答えをはぐらかして、はっきりと答えない。

 

 まあ...仕方ないっちゃあ仕方ないけど。

 

 一緒にいるとはいえ、まだ出会ってほとんど間もない間柄。 

 

 包み隠さず互いを話し合える存在には程遠いからな...。

 

 

 

 

 仗助君は放課後になると、いつもとはうって変わったように慌てて教室から出ていった。

 

 仕方ない、今日は一人で帰るか。

 

 そう思って鞄に手をかけたその時、

 

 

 

 バシッ!

 

 

 

 

 「?」

 

 僕の手を思いっきりつかんだやつがいた。

 

 このごつごつとした大きな手は、

 

 「サウザー君!?」

 

 

 「フハハハハ!呼ばれて飛び出てサウザーです!」

 

 

 

 

 高笑いをしながら現れた彼は、僕の前に立ちはだかった。

 

 

 「いや、誰も呼んでないし...。一体何の用かな?」

 

 「そんなことはもう決まっているであろう?」

 

 すると、ズビシ、と僕を指さし、

 

 

 「無論、東方仗助の尾行!」

 

 あー、

 

 あーあー。

 

 何となく予想はできたけどね...。

 

 「僕はそんなことに興味はないけど....。何か事情があるのかもしれないじゃん。」

 

 「フン、未熟者めが。」

 

 「そういうことに首を突っ込んでこそ青春というものだろう?」

 

 ...。

 

 「いや知らないよ!というかサウザー君本当にそういう年齢なの!?」

 

 「フハハハハ!外見に囚われてはならんぞ広瀬康一!」

 

 「おれはお師さんの元で幾多にも渡る修行を耐え抜いてきた男だ!並大抵の下郎共とは1つも2つも違うわ!炭酸にびっくりしたのも20歳、いや、10歳...」

 

 「今20っていっちゃったよね...」

 

 完全にアウトだよね今の発言!?

 

 「とにかく、僕は仗助君のプライベートを侵害する気はないからね!やりたいのならひとりでやってよ。」

 

 あーあ、もう付き合ってらんないや。

 

 そしてサウザー君を無視して教室から出ようとすると、

 

 「フハハハハー!」

 

 何と、僕の前を高速移動で先回りし、ドアの前で高速反復横飛びを始めた。

 

 まずい、こいつ、

 

 どうしても帰す気がないらしい...!

 

 

 

 

 

 

 

 「ったく...、何かあったらサウザー君の責任だからね?全部サウザー君に押し付けるからね?」

 

 「心配しなくともよいわ!この聖帝のストーキング能力をなめるでないぞ?」

 

 あの後結局、サウザー君の押しに負けて付き合わされてしまった。

 

 仗助くん、ごめんね。悪いのは僕じゃないんだ。

 

 そう心の中で思いながら、一応ついていってたけれど、

 

 こいつヤバイやつにしか見えないよね?うん、まあ予想はしてたけど。

 

 だって、超薄着の筋骨隆々の大男が街中で笑いながら蛙みたいに壁から壁に、電柱から電柱にピョンピョン飛んでるんだよ?

 

 ほら、周りのおばさん達がなんか僕達を指差しながらこそこそ噂してるよ!一緒にいるこっちが恥ずかしいから!

 

 

 

 ん?僕達?え、ちょっと待って、僕もはいってんのこれ!?

 

 あ、目の前の人、携帯電話を取り出して番号おしてる...。

 

 どこにかけようとしてるのか分かっちゃった。

 

 って、呑気に考えてる場合じゃないや。僕まで警察に連行されちゃうー!

 

 そこの人、僕だけは通報しないでー!

 

 

 

 

 

 

 そういや、中々結構な騒ぎになってるのに、仗助君全く気づいてないね?

 

 一体どれだけ重要な用事なんだろ?ちょっと気になり始めている僕がいた。

 

 

 




 


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スニーキング聖帝 下

 スニーキング聖帝上からの続きです。

 どうぞ。


 あれからなんとかかんとか騒ぎをおさめたけど、そのせいで仗助君を見失ってしまった。

 

 ついでにサウザー君も見失ってしまった。

 

 ま、最初からその気がなかったから、別にいいんだけどね...。もうあいつのことほっといて帰ろっか。

 

 あーあ全く、時間としては短かったはずなのにどっぷり疲れたよ。

 

 早くかえって寝ようっと。

 

 そう思って僕は帰路についた。

 

 

 

 

 十分後。

 

 再びエンカウントしました。

 

 誰かって?もちろんあの聖帝様と。 

 

 「えーと、サウザー君?」

 

 今度は今度で僕の家の近くの茂みでなんか覗いてた。

 

 僕の存在に気づくと、彼はばっとふりかえって、

 

 「おそいぞ広瀬康一!何をやっていたのだ!」

 

 「うん。人の苦労も知らないでよくそんなことが言えたね。」

 

 「フハハハ!おれは聖帝!あのような有象無象の目など感じぬ!動じぬ!」

 

 「いや少しは感じようよ!僕に迷惑がかかっちゃってるから!」

 

 全く傍若無人というか...。

 

 

 もう怒りを通り越して尊敬できるよ...。

 

 

 「まあそんなことよりだ、奴、東方仗助の目的を突き止めたぞ!」

 

 いや、興味ないと何度もいうに...。

 

 ん?でも、こんなところにいるのか?

 

 「こんなところに仗助君がいるっていうの?」

 

 

 「フハハハ!そうだ!ここを覗いてみるがいい!」

 

 

 

 まあ、出くわしてしまった以上、見ないわけにもいかないか。

 

 「...。」

 

 僕は茂みの穴を覗いた。

 

 そこにいたのは、誰かと話をしている仗助君だった。

 

 誰と話をしているんだ?

 

 その人物の方を見た。

 

 !あれは、

 

 「空条承太郎さんじゃないか!」 

 

 「ぬ?」

 

 そこにいたのは、白い服装に身を包んだ、空条承太郎さんだった。

 

 彼は仗助君が僕を助けてくれたあと、通学途中に会って知り合いになった人物だ。

 

 サウザーとひけをとらないか、それよりガタイがいいかもしれないくらいかの体型だが、彼はスポーツ選手などではなく、海洋学者さんらしい。

 

 仗助君に用事があって杜王町に来ていたみたいだけど...。まだ滞在していたのかな?

 

 「あれは知り合いか?」

 

 「うん、まあね...。」

 

 「フッフ、なるほどな...」

 

 すると、サウザー君がどこかへ行こうとした。

 

 「ちょっと待って。サウザー君」

 

 僕はなんか嫌な予感がしたので、呼び止めた。

 

 「何だ?」

 

 不思議そうな顔でサウザー君が振り向く。

 

 「一体何をする気なの?」

 

 「フハハハ!ちょっと、な。」

 

 高笑いをすると、シュパッという効果音が似合うポーズで、

 

 消えた!?

 

 「ねえ!?ちょっと、ねえ!?」

 

 どこにもいない...。これはまずい。

 

 頼むからあの承太郎さんには、余計なことしないでくれよー!

 

 

 

 サウザーは、後ろから回り込み、

 

 

 ーボゴアッー

 

 「聖帝ボディプレス!」

 

 なぜかそこにあった巨大岩を粉砕し、インパクトを与えた上での登場を果たした。

 

 「ん?」

 

 「ん?」

 

 フハハハ、下郎共が戸惑っておるわ、とご満悦な彼である。

 

 「「あ」」

 

 だが、何かに気づいたように声を発した二人の違和感には気づくことはなかった。

 

 「サウザー登場!」

 

 

 

 「...。」

 

 「...。」

 

 俺と承太郎さんはいきなりの展開に言葉を失った。

 

 「誰だ?この変態野郎は?」

 

 承太郎さんがこう聞く。

 

 「あー、えっと、サウザー、です。一応、俺の友達ってことになってるんすけど...。」

 

 「お前の友人?」

 

 なんだそれは、と眉間にしわをよせた。そりゃそうだ。

 

 

 

 

 「おいそこの巨漢の下郎!」

 

 サウザーが承太郎さんをズビシと指さした。

 

 「下郎って、てめえ俺のことをいってんのか...!」

 

 「フハハハ、その通りだ!」

 

 これを聞いて少し警戒体勢をとる彼。

 

 「一体何の用だ...。」

 

 すると、サウザーはさらに見下したような目で、

 

 「フン、そう構えるでない。」

 

 いや、構えるのは当たり前だ。

 

 すると、次の瞬間、サウザーは衝撃の言葉を口にした。

 

  

 

 「友達の知り合いは友達!よって、貴様にご挨拶しに参ったのだ!」

 

 

 

 

 「...は?」

 

 数秒の静寂とともに思わずこう返した。自分の耳がイカれているではないだろうか。

 

 「どうも、元聖帝軍十字陵高校現ぶどうが丘高校生徒、聖帝のサウザーです!」

 

 しかし、相手は勝手に自己紹介をしだした。どう考えても現実だ。あいつの頭がおかしいんだ。

 

 だって承太郎さん、いっちゃあ悪いが見た目巨漢ヤクザにしか見えないぞ?それ相手に初対面で友達になりましょうって...。

 

 そもそも初対面で友達友達言う自体もあれだろうが。

 

 

 

 「...」

 

 なんだろう、承太郎さんの表情を見たくない。

 

 「なあ、仗助。こいつ一発殴っていいか?」

 

 やはり案の定だ。

 

 「いや、こういうやつなんすよ!抑えて抑えて!」

 

 「というか、どう見ても高校生じゃねえだろうが...。」

 

 意味のわからないことがあるとすぐに手が出る彼の習性...いや、一般人でもこういうときこんな風に思うのかな?

 

 

 「気のせいだ!」

 

 サウザーもサウザーでなんか開き直ってやがるが。

 

 「チッ、まあいい。俺達に危害を加えるつもりがないようなら許してやる。俺の名前は空条承太郎だ。」

 

 え!?承太郎さんが名前を教えた??嘘だろ、今の流れで!?

 

 「よろしくゥ!フハハハハ!」

 

 サウザーは無邪気に喜んでいるが、少しこの人にしてはチョロすぎはしないだろうか。

 

 「こいつの言う通り本当にお前の友人だというなら、これから関わることがあるかもしれんからな。」

 

 なるほど。いや、なるほどじゃない!あんたは保護者気取りかよ!

 

 しかし、なんかさっきから違和感があるんだよな?

 

 あ、そうだ!

 

 「あ!というか、テメー!こんなとこにいるってことは、さては俺の後をつけてきやがったな!?」

 

 ギクゥ!!

 

 「い、いやぁー、なんのことかな、かな?」

 

 この期に及んで逃げの言い訳かよ...。

 

 「取り繕わんでもいいわそんなこと。」

 

 「まったく...。この頃の俺ってそんなに怪しく見えたんだろうか...。でも残念だったな、これはテメー達には興味のわかねーようなことだ。しょーもないっつーかなんつーか。」

 

 本当のことを言えばこの逆。こいつにとっちゃあ興味ありありの物件なんだけどな。

 

 ところでもう一人完全に茂みから特徴的なケツが出てるやつが見えるが。

 

 

 

 「なあ、康一。」

 

 「えっ!?」

 

 ガサガサと音を立てて出てきたやつがいる。やっぱり康一か。

 

 

 

 お前もお前でバレバレすぎんだよ。

 

 

 

 「仗助の言う通りだ。」

 

 「もうたった今話は終わった。そろそろ日がくれる...。お袋が心配するぜ?早く帰るんだ。」

 

 

 ナイスフォロー承太郎さん。

 

 

 「あ、ああ。分かりました。」

 

 素直に康一は返事してくれた。あ、サウザーがあいつに引かれていく。力とかはどう見てもサウザーの方が上なのにな。頭の上がらない何かがあるんだろうか。

 

 「ま、サウザーは知らんがな。仗助。俺達はとっとと行くぞ。」

 

 すると、承太郎さんはこっそり何かが書かれた小さい紙を俺に見せてきた。なるほど、ここから先の話は承太郎さんの泊まっている杜王町グランドホテルでをするようだ。

 

 「うぃーっす。」

 

 俺は適当に返事をする振りをした。

 

 この案件に関しては、本当にあいつら二人は無関係だ。そして、これからもそうであってもらいたい。

 

 いや、そうでないと困るんだ。腕っぷしの強いサウザーでも、結局はただの一般人だ。

 

 決して一般人が好奇心で首を突っ込んでいいものなんかじゃない。もし俺のせいで巻き込んじまってあいつらの人生を狂わせることになったなら、

 

 俺はどう責任をとればいいのかわからなくなっちまう。

 

 頼む、俺のためにもお前らのためにも、あまり詮索しないでくれ...。

 

 

 

 

  

 ふう、大事にならなくてよかった。

 

 こいつは体は大人、頭脳は子供的なやつだから何をしでかしてもおかしくなかったんだけど...。いや、すでにやらかしてはいたんだけど。

 

 「ねえサウザー?」

 

 僕はそういってタンクトップのえりを引っ張った。

 

 しかし、妙に軽い。

 

 

 

 ん?あれ?

 

 これは!

 

 「等身大のめちゃくちゃ細部にまでこだわった異常な出来の人形だ!!」

 

 要するに、リボルテック等身大サウザー像!いつの間に?

 

 てことは、本物のサウザーは!?

 

 

 「もうこれ何度目だよ...。」

 

 

 

 ~50メートル先~

 

 「フハハハ!この聖帝の目はあざむけんぞ!何かを隠していることは分かっておるのだ!このままついていって...」

 

 

 その瞬間、サウザーに見えない拳がとんだ!!

 

 「へぶしっ!!!」

 

 ードサッー

 

 「...。」

 

 

 

 「マジっすか...。承太郎さん。」

 

 「やっぱりな。それにしても、あれどうする?ほら、サウザーが砕いちまったやつだが...。」

 

 「あれは...。いや、俺はもう知りませんよ。」

 

 「そうだな。俺たちはなにも見なかった。知らんふりをしておこう。」

 

 




 アンジェロ?そんなもん知らない知らない。


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バトラーオブ聖帝

 長らくお待たせしてしまいました。

 続きどうぞ!


 気持ちのいい朝だ。

 

 本来ならそのはずなんだけど。

 

 

 

 

 

 僕は今、めっちゃくちゃ目覚めがわるい。

 

 

 

 

 

 うーん、なんでだろうな....。

 

 昨日夜更かししたっけ。

 

 いや、そもそも何時に何をしたかすらおぼえてないや。

 

 まあ今日が日曜日だから別にいいんだけど、もう一度寝る気にもならないんだよなぁ....。もう着替えとくか。

 

 そう思ってベッドから起き、僕は衣服棚をあけようとした。

 

 その時、

 

 「ん?」

 

 棚の隙間から小さな何かがはらりと落ちた。

 

 「なんだこれ。」

 

 

 僕はそれを拾い上げてみたが、完全に「?」、となるようなものだった。

 

 それは、写真だ。

 

 しかも、白黒のである。

 

 そこには部屋がうつっているが、自分には全く見覚えがないところだった。

 

 見た感じ、洋風で、必要最低限のものしかおかれていないような質素な部屋だ。

 

 自分の部屋とタイプは多少似ている。似てはいるが、どう見ても自分の部屋ではない。

 

 そもそもだ。この二十世紀が終わろうとしている時に、白黒写真だって?

 

 逆に昔の写真だとしても綺麗すぎるというか....。

 

 いろいろ考えられて少し気味が悪かったけど、こういうのって無暗に捨てない方がいいのかなあ....。そう思って僕は自分の机の中にしまうことにした。

 

 

 

 

 

 僕の日曜日の日課として、ランニングがある。

 

 僕はチビだから、体力ぐらいはつけておかなくちゃいけないと思って高校から始めたことだ。

 

 どうせなら背ものびてほしかったが、無いものは無いんだから仕方ない。今でも努力はしてるけどね。

 

 高校生活を満喫するためにはいじめられないようにすることが大事だし、これはそのことに役立つかなあって思ってる。

 

 最初は公園を2周しただけで息が乱れてしまっていたが、最近はそれの2倍くらいの距離を走れるようになった。

 

 我ながら運動不足だったと思う。

 

 そして、今日もいつものルートを走って、日課を終えたが、

 

 

 帰ってきてみると家の前に、なにやら場違いの服装をした人がいる。

 

 

 

 あれは...。サウザー君ではなさそうだな。

 

 同じような格好をしてたから一瞬そうかと思ったけど、よく見たら髭と角ついてるね。ってあれ、サウザー君よりやばい?

 

 明らかに関係者なんだろうけど、どうしよっかな...。無視しようかな?

 

 そう考えていると、向こうが僕に気づいたようだ。

 

 すると、相手は顔を綻ばせて、こちらに近づいてきた。

 

 いや、僕この人しらないんだけど?

 

 

 「もしかして、貴方はサウザー様のご友人の広瀬康一様でございますか?」

 

 

 

 「あー...一応そうですが。」

 

 「そうでしたか、ちょうどいいところに。」

 

 すっごい表情怖い...。でも、こんな人が僕になんのようだろう?

 

 「私はサウザー様の執事のブルと申します。あの方からこれをあなたに渡すように、と。」

 

 すると、相手は懐から箱を取りだし、僕に差し出した。

 

 やっぱりサウザー君がらみか。ていうかあなた執事なのかい!

 

 でもなんだろうこれ?サウザー君の顔柄がついてるけど。もった感じ軽いな。

 

 嫌な予感がするけど、開けてみればいいのかな?

 

 「はあ、わざわざありがとうございます。では。」

 

 「あのー...。」

 

 僕が立ち去ろうとすると、後ろから声がかかった。

 

 

 「つかぬことをお聞きしますがサウザー様は学校ではどのようなご様子で?」

 

 執事だから、やっぱり見てないところは気になるのかな。

 

 えと、この場合なんて答えたらいいのかな...。

 

 悪いことは言えないよね。差し障りのない答えを返しておくか。

 

 「別になにもしてませんよ?普通です。」

 

 「そうですか?それなら良いのですが、あのお方のことだからところ構わず高笑いしたり、あの豪奢なバイクをぶっぱなしたりしてハッスルしまくっているのではないかと。」

 

 うん。完璧にあたってるね。

 

 

 

 「何もないならそれに越したことはないのですが、何しろこういう場は初めてですからな...。いや、元々家でもあんな...ごほんごほん。」

 

 いま、家でもそうだっていいかけたぞ?

 

 この人、なんか色々苦労してそうだな...。

 

 ん?でも今気になることをいったね。こういうのが「初めて」?

 

 「そうなんですか...。あれ?聖帝十字稜高校は?」

 

 「あれは自宅ですぞ?」

 

 今なんていった?自宅?

 

 「じ、自宅?」

 

 「はい。子供達に教育を施すため自宅を学校に改造したものです。サウザー様が冷やかし半分で教育委員会に申請したら、なんと本当にとれてしまいまして...。」

 

 「えー...。」

 

 うそだろ...。

 

 どうなってんだ杜王町...。

 

 

 

 「ええ、私としてもそれはさすがに茶を吹きましたがね。」

 

 だろうね。僕もそうなるわ。

 

 「でしょうね、僕もそうなりますよ...。」

 

 「まあ、サウザー様が楽しそうならそれでいいのですがね...。」

 

 すると、ブルさんは少し疲れたような表情でハハハッと笑った。

 

 「しかし友人が出来たことも素晴らしいことですし、そのことで貴方に私共はとても感謝しております。康一殿なら、私共の家にいらしてくださればいつでも歓迎いたしますぞ。」

 

 「えっ」

 

 え、いいよいいよ、というかあの時は僕だって一人でも友達が欲しかったし。

 

 確かにすごい面倒くさい奴ではあるけれど...、そして、まだちょっとしか一緒にいないんだからわからないけど、何か嫌な気分になる奴でもない...かな?

 

 それにしてもどんな家なのか気になるけど、きっと家も普通じゃないんだろうな。

 

 ピラミッドでも上に乗っかってたりして。いやいやそれはさすがにないか。

 

 「感謝なんていいですよそんな...。お互い様ですしね。」

 

 

 

 「貴方は優しいのですな...。」

 

 「貴重なお時間をとっていただき、ありがとうございました。」

 

 すると、ブルさんはペコリとお辞儀をした。

 

 なんだこの人。こんななりで普通に常識人じゃないか。 

 

 ぼくもいえいえ、とお辞儀を返すと、彼は去っていった。

 

 サウザー君の関係者って全員世も末なんじゃないかと思ったけど意外とちがうんだな。いや、この人だけかもしれないけどね。

 

 

 

 

 

 今からこの箱を開帳しなければならないわけだけど、

なんか怖いな...。

 

 

 僕は、深呼吸をして、気持ちを落ち着かせた。

 

 きっと何が入っていても驚きませんように、と。

 

 ......よし。

 

 さあ、決心のとき!それ!

 

 僕は一思いに箱を開けた。

 

 すると、なかに入っていたのは、

 

 「...あれ?」

 

 

 普通のクッキーだった。

 

 あれ?逆に凄い拍子抜けするな。サウザー君がクッキー?

 

 よく見ると横に手紙が入っていた。

 

 どれどれ。

 

 

 「ひろせこういちへ

 

 前の集会でクッキーをつくったんだけど

 

 余ったのであげます。

 

         サウザーより」

 

 そういうことか。

 

 匂いは....普通だ。

 

 でも、どうかんがえてもこれはやばそうな気がする。

 

 これ、他の人にもふるまったってことだよね?

 

 だってサウザー君がお菓子?絶対すごい化学反応起こしそうだって。

 

 けれど、食べないと後で感想聞いてきそうで怖いんだよな...。

 

 ええい、一口、一口だけ!

 

 

 ーパリッー

 

 ....。

 

 

 あれ?

 

 普通にうまい。

 

 

 

 

 




 まさかのギャップエンド。


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ブラザーズアンド聖帝 上

時間軸は前の話のときです。


 「フハハハ!中々の立地ではないか!聖帝軍の駐屯地にするにはイイ!イイぞ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 俺は、作戦の実行のために件の場所へと向かっていた。

 

 承太郎さんも用意周到なことで、そこへの道順を書いた紙を俺に渡していた。

 

 まあ、とんでもなく重要な物件だからな...。慎重になるのも仕方がない。

 

 絶対にやりとげなきゃあの人にも示しがつかねーな...。

 

 

 

 

 場所だとこの辺りか。

 

 あの豪邸か?一つだけ目立っている家がある。

 

 これは間違いないな。

 

 うん?一人誰か前に立っている。

 

 ...うわっ、見慣れた顔だ。

 

 

 「あれはサウザー....」

 

 なんであいつもこんな所にきてんだ?

 

 いつもそうだが行動原理がよくわかんねえな。

 

 

 いや、ちょっと待て、何か一つ忘れてるような。

 

 窓に...。

 

 !! そうだ!

 

 「まずいっ!」

 

 ヤバイっ、このままだと!

 

 

 

 あいつが死んでしまう!

 

 「んん?東方仗助ではないか。どうし...?」

 

 サウザーが俺に気づいた。

 

 しかし、気にもとめることなく俺は叫んだ。

 

 

 「避けろ、サウザー!」

 

 頼む!

 

 「ぬう!?」

 

 サウザーが異常に気づいた。

 

 くそ、これは遅...

 

 

 

 ービィィーンー

 

 

 えっ、

 

 何が起きた?

 

 サウザーは、無傷だ。

 

 !おいおい、嘘だろ!

 

 「これは、矢!?」

 

 

 なんと、サウザーは窓から飛んできた矢を素手でキャッチしていた。

 

 

 「すっ、すげえ!?じゃない!」

 

 あいつの動体視力と反射神経どうなってんだ!?

 

 

 

 「なるほどなぁ...。」

 

 サウザーは矢を見て何か呟いている。

 

 さっきのはすげえ!すげえけどそれ以前に!

 

 

 「なんでこんなところにいるんだよ!?よりにもよって!」

 

 なんでこんなところにいるんだってことだ!

 

 用もなしに立ち寄るはずもない...。

 

 まさか、あのことを知っているとか?

 

 それだけはマジで勘弁なんだが。

 

 「無論、軍の新たな駐屯地の模索!」

 

 いつものどや顔で言われた。

 

 っ、ち、違かったのか。

 

 ちょっと安心したぜ。確かにこいつならやりそうなことだな。

 

 この家かなりでかいし、無人に見えるし、でも、こんなところにいてもらうわけにはいかねえ!

 

 「無論とか言われたってしらねえから!とにかく、ああー、もうなんていうか!」

 

 「帰れといいたいのであろう?」

 

 そういうことだサウザー!さあ、おとなしく帰ってくれ。

 

 「残念だがそれはできぬなあ?どうやら矢の送り主は、このおれに用があるようだからな!」

 

 なんでだぁ!

 

 絶対用なんてねえから!

 

 「こそこそしていないで出てくるがいい!おれは逃げも隠れもせぬぞ!!」

 

 ちょ、今度は何してんだよ!

 

 なに余計なことしでかしてんだあー!

 

 「おいっ、サウザー!やめろ!」

 

 

 

 「そいつぁー、もう手遅れだと思うぜ?」

 

 

 

 えっ...。

 

 ゆっくりと振り向くと、

 

 三白眼で派手な制服来た明らかに悪そうな男が立っていた。

 

 

 

 

 「クックック...。オメーのいった通り出てきてやったぜ?」

 

 あっこれやっぱり敵だった。終わった。

 

 いやいやいやいやいや!

 

 「さては貴様、レジスタンスであろう!?」

 

 なんか言ってるよこの大男。そもそもレジスタンスってなんだよ!

 

 てか、そんなこと気にしてる場合じゃなかった!

 

 どどどどどうしよう!?どうしたらいいんだァ!!

 

 

 

 

 

 「レジ....?なんだそりゃあ。オレの名前は虹村億泰。そんなふざけた名前じゃねえ。」

 

 ご丁寧に名前までいってくれちまって!明らかにやる気だよなぁ!?

 

 「フハハハ!わざわざ自己紹介ご苦労!おれは聖帝サウザー!」

 

 テメーもそれで返すなって!

 

 もういい、俺がどうにかフォローしねえと!

 

 「ちょちょちょちょっと待ったあ!」

 

 「あぁん?」

 

 「こいつを倒すならよ、俺を倒してからにしろ!!」

 

 いけるか?

 

 そうしてもらわねえと困るんだ!

 

 「なぁにいってんだこの野郎。俺に出てこいっつったのはよォー、そこのデカブツだ!」

 

 やっぱりダメだったかー!

 

 このままあいつらを戦わせてしまったら、確実に異常にきづいちまう。

 

 「いや、だからこいつはつええんだ!俺を倒せるくらいじゃないと、こいつには叶わねえよ!な!?」

 

 「ダボかこのリーゼント野郎!!先にオメーと戦っちまったら消耗してまともにこいつとやりあえねえかもしれねえじゃねーか!」

 

 至極ごもっともな発言だ!

 

 アホそうな見た目しているくせに、くそー!

 

 どうにか考えないと!

 

 

 

 「フハハハハ!たかが下郎の分際でこのおれと渡り合おうなど笑止千万!叩き潰してくれる!」

 

 ....。

 

 

 

 

 

 こいつ、今すげえ爆弾発言やっちまった

 

 

 

 あの不良の顔

 

 

 

 「あ"あ!?なかなかでけぇ口叩くじゃねえかオッサン!」

 

 すっげえ額に青筋たててる。

 

 

 

 もういやだ。どうみてもサウザー対虹村億泰戦闘フラグじゃん叩きおれねえじゃん!

 

 承太郎さんごめん、俺もう...守れそうにないわ。

 

 

 「あんたは確かに腕っぷしがつよそーだ。」

 

 「だけどよぉ、そんなもん俺にとっちゃあ取るにたんねえことなんだよォ...。なぜなら!」

 

 「俺はただの一般人とはちげぇからだ。」

 

 まあ、そうだな。

 

 それにしても、虹村億泰という男、右手をあからさまに開いたり閉じたりしている。

 

 ブラフかもしれねえが、一応要注意だ。

 

 もうこうなったらバレちまう覚悟でたすけなけりゃならねえだろう。

 

 相手を観察しておかなければ。

 

 

 「ほぅ?」

 

 「もちろんオメーもそうなんだろうけどよ。それでも!俺は誰にも負けねえって胸を張って言えるぜェーーー!」

 

 「フハハハハ!ぬかせ!」

 

 「貴様のその体躯で何ができるというのだ!」

 

 だからそういうことをいって煽るなってェー!サウザー!

 

 そもそもお前と虹村そこまで体格違わねえじゃん!

 

 「じゃあ試してみようぜェ!これを受けてもそんな口を叩けるなら...」

 

 !!!!、こいつ、やっぱり!

 

 違いねえ!右手に異様な自信を持っている!

 

 戦闘体勢ONだ!

 

 

「大したもんだぜェーーー!」

 

 

 

 「『ザ・ハンド』!!」

 

 

 

 

 今だ!

 

 「ウォォー!!」

 

 二人の間に向かって駆け出す。

 

 ギリギリ届け!

 

 -スカッ-

 

 何っ!?

 

 は、速すぎる!

 

 わずかに間に合わねえー!

 

 またおれは...。

 

 あれが一撃必殺じゃないことを願うぜ。

 

 耐えてくれ!

 

 俺はとっさに目をつぶった。

 

 

 ...。

 

 

 .....。

 

 

 

 「...?」

 

 

 あれ?なんの騒ぎもおきねえ。

 

 一体どうなった?

 

 俺は、自分の目をうっすらと開けた。

 

 

 そこには、なんと、

 

 無傷のサウザーと、

 

 

 

 

 

 

 

 「な、何ぃ!?」

 

 

 技を明らかにスカぶった虹村だった。

 

 

 い、今のは、

 

 運が良かったのか?

 

 いや、違う。

 

 はずすような距離じゃねえ。

 

 「へ、へへへ少しはやるようだな。もう一発!」

 

 虹村は腕を振り上げ、もう一撃ふりこもうとした。

 

 しかし、

 

 -スカッ-

 

 

 

 「っ!?」

 

 ど、どういうことだ?

 

 まさか...。

 

 

 「な、何が起きてんだ...?」

 

 おれがこう呟いたとき、サウザーは怪訝な顔をしていた。

 

 「えっ、もう終わりなの...?」

 

 「ヒィィッ!」

 

 虹村は恐怖を隠しきれないようだった。

 

 ズン、ズンと一歩ずつ詰め寄るサウザー。

 

 

 

 

 「えっ、ちょ、謝るから!」

 

 そんな声もむなしく、腕をふりあげ、

 

 

 「ぬん。」

 

 -ボゴッ-

 

 「ヘデェーー!!」

 

 

 

 

 「仗助よ。終わったぞ。」

 

 

 

 「あ、ああ、おう。」

 

 

 一体、なんだったんだ?やつは変な目で虹村をみているが...。

 

 てことは、まさか、効いてないのか?

 

 なにも感じなかったのか?

 

 「変なヤツもいるものだな。....」

 

 ゴキリゴキリと首をならして、あくびをしている。

 

 まぁ、セ、セーフ。

 

 なんとか、一件落着だぜ。

 

 「だが、中にもう一人いるようだ。いくぞ。」

 

 

 いや、終わってなかった。

 

 なんでわかるんだ?

 

 次もいちいちあれか、まあいいや。

 

 どうにでもなれ。

 

 

 



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ブラザーズアンド聖帝 下

 どうも、久しぶり。

 


 家の中は割と整理されていた。

 

 空き家だと思っていたが、やっぱり誰か住んでいるのかなぁ...。

 

 

 俺は今サウザーと一緒に家の中に侵入している。

 

 サウザーはもう一人窓から見えたと言っていたから、目的地までは一直線だ。

 

 でけぇ家だなー。一体何千万つぎ込んだらこんなもんができるんだろうな。

 

 2LDK、いやもっとあるんじゃねえか?

 

 

 

 「フン、おれが目をつけただけはある!全て整理されておるわ。」

 

 

 サウザーが満足気に言う。

 

 俺もこんな家にすみてぇなー。

 

 

 

 

 そして、二階に着いた。

 

 ここの何処かだ。そう思ってある扉の前を通りすぎたとき、

 

 

 「ここだ!」

 

 サウザーが立ち止まった。

 

 そして、扉を

 

 「扉バーン!!」

 

 -バカァン!!-

 

 

 普通に開けろ!

 

 わざわざ鍵もかかってねえのに扉を壊す必要ねえだろ!

 

 「フハハハ!こちらから出向いてやったぞ!!」

 

 ...

 

 

 

 中にいたのは、

 

 虹村億泰と同じような服装をした、角刈り風の男だった。

 

 

 「サウザー、こいつか?」

 

 

 

 

 ...しかし、何か違和感がある。

 

 ...こいつ、俺たちが入ってきたっていうのに微動だしていないぞ。

 

 「おい?」

 

 「いいや、こやつではないな..。よく見ろ。」

 

 よく見ろ?

 

 俺はその男に近づいてみた。

 

 ちょっと待て!瞼すら動いてねえぞ!

 

 

 あっ、これ、

 

 

 人形だ!

 

 「人形じゃねーか!」

 

 「そうだ!」

 

 !?今の声は誰だ?

 

 サウザーではない!

 

 まさか...?

 

 「もう遅い!貴様らは射程距離に入っているぞ!」

 

 -ダダダダ-

 

 「うわっ!」

 

 足元にするどい衝撃が来た。

 

 今のは何だ?怪我してねえだろうか?

 

 そう思って足元を見た。

 

 !!床に穴が?

 

 「何だ!?」

 

 しかも、蜂の巣みたいになってやがる!

 

 これは...。

 

 くそ、間違いねぇ、またあれだ!

 

 だが、肝心の本体はどこに...。

 

 「ちっ、外したか...。」

 

 「!!上か!」

 

 上だと!

 

 恐る恐る見上げると、

 

 天井に大男がぴっとりと張り付いていた!

 

 「気づくのが遅いのだよ。だが、幸運だったな...。」

 

 そう言うと、男はひらりと天井から床に舞い降りた。

 

 図体がでけえのに身軽だな...!

 

 「ぬぅ!?」

 

 サウザーも気づいたようだ。

 

 いきなり現れた男に対して、少し動揺していた。

 

 「ククク...。」

 

 それを見て、目の前の男は不敵に笑う。

 

 すると、サウザーがズビシッと相手を指差した。

 

 「貴様がレジスタンスの残党か!?」

 

 いや、さっきから言ってるけどレジスタンスってなんなんだよ...。

 

 案の定相手も少し呆けた表情をした。

 

 「レジスタンス...?訳の分からんことを言う馬鹿がいたものだな。」

 

 「フハハハ!とぼけるでないわ!」

 

 絶対に違うと思うが...。

 

 「一体なんのことだ?まあいい。私の名前は虹村形兆。貴様が先程倒した億泰の...兄だ。」

 

 結局それの意味はわからずじまいか...。

 

 だが、今聞いた話では、こいつは億泰の兄だと...?

 

 「兄だと?あの訳のわからんことを喚くやつのか?フハハハ!弟があのざまだと、貴様の実力も知れていようぞ!」

 

 あぁ、またあおってやがるよ。

 

 学習しないのかな...。全く、こいつには敵が多そうだぜ...。

 

 「オイコラ、調子に乗るなよ...!あのような愚弟など、倒されて当然。私を奴と一緒にするんじゃあねえ...。」

 

 弟のことを愚弟だと...。あまり仲がよくなかったんだな。

 

 自分自身、矢を持つ男、という情報は聞いていたが、二人組の兄弟だということは知らされてはいなかった。

 

 こいつとあいつ、全く似てねぇようにおもえたんだがな?

 

 

 

 じゃなかった!

 

 また戦闘フラグを立てやがったサウザーをどうにかしないといけねえっ!

 

 お前は俺に任せておきゃあいいっつーの!けれど全然うまくいかねーよおああちくしょう!

 

 「いや、サウザー!オメーはやっぱり引っ込んでろ!」

 

 

 サウザーの肩を握り、強引に前に出ようとした。

 

 すると、反対にガシッと俺の手を握りかえされ、後ろに放り投げられた。

 

 身長180の俺を!?

 

 「ぐはっ!?サウザー!俺の言うことを聞いてくれ!」

 

 「何を言う東方仗助...?」

 

 何を言うって、くそっ、説明できねぇ!

 

 

 「何って...。もともとそれは俺の案件だ!これ以上首を突っ込まれたら色々困るんだよ...!」

 

 「フッ...。何を言うかと思えば...。こやつはおれをおびやかす存在!害虫は駆除しておかねばならぬわ!」

 

 「ば、馬鹿いうんじゃあねぇ!お前は本来関係のないやつだったんだ!それに、お前じゃぜってー死なねぇだろ!」

 

 

 「あのなぁ東方仗助よ...。」

 

 すると、ため息をつき、こういった。

 

 「死ぬか死なぬかは問題ではないのだ...。おれは、おれの平穏無事で自由な生活の邪魔をされるのをこの上なく嫌う。

 よいか、おれは毎日楽しく面白おかしく暮らすのだ!」

 

 そして、俺にズビシ、と指差した。

 

 な、何だよ。

 

 「その為に、この不届き者は許してはおけん!仗助よ!大船に乗った気持ちで待っているのだな!」

 

 ちっがーう!

 

 体格もなにもかも上だけど違うんだって!

 

 おい、ちょっと待て待て!

 

 外に連れ出すな!この野郎!

 

 「助け合うのが友情というものであろう?」

 

 

 正論!正論だが!

 

 そんなことを言えるような状況じゃねえんだよ!

 

 

 サウザーは、扉に鍵をかけて、俺を完全に外につまみ出した。

 

 だが俺にはそんなことは通じない。

 

 ぶち破れこんなもん...!

 

 

 

 

 

 五秒後。

 

 

 扉を壊して入ってきたはいいものの、

 

 

 

 もう既に決着がついていました。

 

 

 うっそ...。なにこれ。

 

 「なあ、東方仗助よ...。」

 

 形兆が人形ごと壁にめり込み、サウザーは変わりなくそこにたっていた。

 

 部屋のなかは何一つ荒れていない。

 

 まさかまたパンチング一発?

 

 そして、背を向けたまま俺に話しかける。

 

 「えっと...なんなの?兄弟二人揃って手がどうだの軍隊がどうだの?」

 

 ゆっくりと顔を俺の方に向ける。

 

 ...。滅茶苦茶怪訝な顔してるわ...。

 

 「なに?もしかしてこやつら、最近世の中に増えてるっていう...頭の危ない人達...?」

 

 ...。

 

 確かに、サウザーから見ればそう思うか...。

 

 「なあ、サウザー。もしかして、パンチング一発?」

 

 「うむ、そうだがな...。」

 

 こいつら相手にそれって...。

 

 一体どうなってんの?

 

 確か、相当な実力者だって聞いていたはずなんだが...?

 

 「こやつらを倒したら家ごと略奪して聖帝軍基地にしてやろうと思っていたのだが...。もうそんな気も失せたわ。」

 

 すると、サウザーは再びくるりと背を向けた。

 

 てか、そんなこと考えてたのかよ...。

 

 まあ、やりそうなことだけど。

 

 「帰るぞ。」

 

 ずんずんと廊下を進んでいく。

 

 

 ...もう知らん。考えるのをやめた。

 

 

 俺は、弓と残りの矢をちゃっかり見つけ出して、承太郎さんに渡して帰った。

 

 一応、二人は救急車を呼んでおいた。

 




 サウザーさん初っぱなから飛ばしぎみ。


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