ガンバライダーReflection (覇王ライダー)
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1話

-地球-

この場所を男は知っていた。

かつて自身はここで様々な戦士と戦い、いくつもの死線を繰り広げて来た。

掌を握った瞬間、ここにある酸素、そしてその他の大気が身体中に染み渡る。そんな気がした。

「・・・そろそろか。」

彼が空を見上げた瞬間、空には赤い光が一つこちらへと落ちて来た。その光はものすごいスピードで落ちていく。

「貴様が俺を呼んだものか?」

その砂煙の中から出て来たのは一人の少女だった。少女はボロボロの服を手で隠しながら、持っていた石板に語りかけた。

「イリス、あなたが言っていた人ってこの人?」

「えぇ、そうよキリエ。彼は私たちの見方。」

イリスがそう言うと、キリエはふーん。と男を見た。男は何の不思議そうにもせずキリエを見た。

「こんなきれいな星に私たちの星を救う-鍵-が存在するなんて・・・。」

「えぇそうよ。そしてそれに必要なのがこの星の力。」

石版が光ると、イリスは人としてやっと男の目の前に姿を現した。

「キリエ、ちょっとおいで。」

「どうしたのイリス?」

キリエはイリスに近づいていく。イリスは周囲の鉄骨を集めると、その鉄骨は光を浴びてみるみる物質が変化していく。

やがて服へと姿を変えてキリエはそれを纏った。

「こっちじゃこれが普通の人の格好よ。」

ふーん。とキリエは服を不思議そうに眺めた。

男は近くにあった車を蹴飛ばした。その車は大きく歪み、一撃の蹴りは車を壊してしまいそうな程だった。

「で、最初はどうするの?」

キリエはイリスへと問う。イリスは持っていた水晶に光を当て、そこに映像を映し出した。

そこに映っていたのは三人の少女だった。

「まずは、この水晶に映るこの子、夜天の書を持つ八神はやてに接触、夜天の書を借りるの。」

「そう上手くいくとは思えんがな。」

男は吐き捨てるようにそう言った。それに聞く耳を持たぬようにイリスは話を続ける。

「そこからはまたお話しするわ。これがないと次に動くこともできない。」

キリエが頷くと男は近くにあった鉄くずを殴り、それを一撃で粉砕した。

「俺を楽しませてくれるのか?」

イリスは不敵な笑みを浮かべて男へと言った。

「えぇ勿論よ。あなたが受けた怨念を晴らしなさい-アクート-」

アクートはふん。と鼻で笑うと歩き去ろうとした。

「その計画、俺も混ぜてくれないか?」

「っ!!?」

三人が後ろを向くと、月明かりに照らされていたのは一人の男だった。

男は座っていたバイクから降りると、イリスたちへと近づいていく。

「あなたは・・・?」

「お前たちにとってはどうでもいい話。協力者なだけで理由は充分だろ?」

男は少しずつイリスたちへと近づいていく。

アクートはどこかで彼とは何か近い-縁-を感じずにはいられなかった。

-あれから2年の月日が経った-

少女はそっと公園の柵にもたれかかった。

今日は空も晴れており、雲ひとつない快晴とも言える日だった。

2年前に現在のパートナーであるユーノ・スクライア、そして友であるフェイト・テスタロッサに出会い、自らの運命は大きく回り始めた。

その後の闇の書事件では八神はやてやその騎士であるウォルゲンリッターと共に事件の根源であった闇の書の破壊に努めた。

その中で彼女はいくつもの犠牲をこの目で見てきた。

フェイトの母親であるプレシア・テスタロッサの死、そして闇の書の本体とも言えるリィンフォースとの別れ。

思い返せば、自らにもっと強さがあれば守り抜けたのだろうかと考える。

プレシアもリィンフォースも運命を変えられるほど強い力があれば変わっていたのかもしれない。

ふと彼女は空を見上げそう思った。

彼女はそんな別れや死に立ち会い、何度も立ち上がってきた。

「そろそろ時間かな。」

少女がそっと辺りを見渡すと、はやてとフェイトがこちらに走ってくるのが見えた。フェイトの輝くような金髪はこの周辺ではなかなかいないためよく目立つ。

「なのは!遅れてごめんね。」

「んじゃあ、練習場向かおうか。」

高町なのはは二人の言葉にそっと頷いて歩き出した。

なのははふと立ち止まると、少しばかり空を見上げた。

「どうしたの?」

フェイトがそっと近づくとなのははゆっくりフェイトの方を向いた。

「何でもないよ。ただ、綺麗な空だなぁって。」

なのはがそう笑顔で答えるとフェイトたちも少し笑い、三人は再び歩き出した。

だから決めた。悲しい出来事も全て自分の手の届く範囲は繰り返させない。

 

-GRZ社-

GRZ社(ガンバライジング社)では今日も何人もの社員が研究所を行ったり来たりしていた。

「はぁ・・・忙しいこった。」

柳リョウヘイはふと愚痴じみたことを呟くと、彼の背後に悪寒が張り巡った。

「この程度の事案はこなしてもらわねば困るぞクロス。」

「・・・副社長さんが何のご用事で?」

悪寒の正体はガンバライジング社の副社長を務める彼方ヒサキだった。ヒサキはリョウヘイのポケットに小さな紙を突っ込んだ。

「アンタの携帯番号なら俺知ってるからいらねえよ?」

「誰がお前に番号の紙を渡すか。というか考え方古いな。」

そのワンフレーズにリョウヘイは少し血が上り、笑顔で睨みつけるがヒサキはそんな事つゆ知らず無表情で睨んだ目を見つめた。

「・・・はぁ、変わんねえなアンタ。」

リョウヘイから小さなため息が漏れるとヒサキはリョウヘイの横を通り過ぎていく。その際に小さく呟いた。

「地球で魔力反応が検知された。お前にはチームを組んでそこに向かってもらう。」

「地球で魔力反応?」

リョウヘイはそう聞き返すが、ヒサキは聞く耳を持たず歩いていく。

前はそうでもなかったものの、リョウヘイも関わった「アクート事件」以来は魔力反応が起きるのは不思議なことでもなくなった。

そう言い残して、ヒサキは少し早足で去っていく。その姿はリョウヘイには逃げるようにしか見えなかった。

「まーた面倒なもん託されちまったな。」

どうやら以前の事件以来、この魔法というものとは縁があるのかもしれない。

そう縁を感じたリョウヘイはポケットに突っ込まれた紙を手に取った。

時間がないものの、彼は急ぎならばと目を通す。しかし・・・

「・・・なんて書いてあるんだコレ。」

彼は小さく頭に手を置いた。

こんなことがあるか。人類の未来を担う副社長様の字汚すぎだろ!!

 

なのはたちがはやての家へと着くと、そこにいたのはウォルゲンリッターのシグナムとシャマルだった。

「おはようなのはちゃん。」

「おはようございます。シャマルさん!」

お互いに挨拶を交わすと、シグナムが二階を指差した。

「もう準備は整っている。先にアリサとすずかも向かっている。」

「アリサちゃんとすずかちゃん早いなぁ〜。」

はやてが感心していると、二階から少女があくびをしながら降りてきた。

「おはようヴィータ。」

「ん、おはよー。」

ヴィータはボサボサの髪を掻きながら階段を降りていく。

その後ろには同じくウォルゲンリッターのザフィーラもその四つの足を器用に使いながら降りていく。

「これで皆起きてきた。」

「ありがとうな。ザフィーラ。」

はやてはザフィーラの毛をゆっくりと撫でた。彼の毛はそこらの獣よりも柔らかいため、はやてはよく撫でる。

「行って来い。」

「ありがとうございます。シグナム。」

フェイトたちは一礼するとそのまま二階へと上がり、ドアを開けた。

 

そこには綺麗な草木が広がり、海上には大きな建物がいくつも建てられていた。

はやての家の練習場はシャマルが作った結界で出来ているため、空や風、海や大地の再現度も非常によく出来ている

「遅いよー!」

「おはようアリサちゃん、すずかちゃん。」

三人はアリサとすずかの元へと駆け寄っていく。

「ん?そちらの方は?」

アリサとすずかの後ろに立っていたのは茶色いエプロンを着けた男性だった。

男はその装いでコーヒーを淹れてることからカフェなどを営んでいるのはすぐにわかった。

「この人は黒森虎(たいが)さん。行きつけのカフェのマスターなの。」

アリサの説明を受けて皆はふうん。と軽く首を縦に振った。虎は笑顔で三人に笑いかけた。

「おじさんのことは気にせず皆は向こうで練習しておいで。」

「ありがとうございます!」

なのはとフェイトが海上へと向かうと、はやてはモニター越しになのはたちに語りかける。

「んじゃあ、十分間で一ラウンド勝負。ええね?」

「オッケー。ありがとうはやて!」

なのはは自らのデバイスであるレイジングハートを、フェイトはバルディッシュを取り出し、空へ掲げた。

「セーットアップ!!」

二人がそう掛け声をかけると彼女たちは光を纏い、武器を持った「魔法少女」へと姿を変えた。

「では始め!」

ゴングが鳴ると、二人は一気に激突し、武器からは激しい火花が散った。

「懐かしいね!」

「うん!」

二人が最後に全力でぶつかり合った場所もこんなところだった。

二人はそう想いを馳せながら、戦地を駆け巡っていく。

「シュート!」

なのはは魔力の光弾を幾つも作り出し、フェイトへと放った。しかし、フェイトはそれを回避しながら一気になのはへと近づいていく。

「はあああああああああ!!」

フェイトは強い叫び声とともにバルディッシュを振るった。

なのははそれを受け流すように体を横へそらした。

コーヒーを飲みながら見ていたすずか達に虎は声をかけた。

「あの子達ホントに小学生?すごくない?」

二人のスピードが増していくごとに初めて見た虎の驚きも増すばかりだった。

「はやてちゃんの準備運動を手伝ってあげてくれませんか?」

すずかの突然の提案に虎もはやても驚きを隠せなかった。

「あのスペックの子供達の相手はおじさん厳しいなぁ。」

「あの…」

はやてが言い出そうとした瞬間、三人が一気にはやての方向を向いた。はやては小さく笑いながら誤魔化そうとした。

「はやてちゃんが手伝って欲しいそうです!」

そう口を開いたのははやてのデバイスであるリィンフォースツヴァイだった。リィンは虎へ嬉しそうな眼差しを向けた。

「…じゃあ、ちょっとおじさん頑張っちゃおうかなぁ?」

虎は裾を捲ると、そのまま構えてはやてへ手を軽く振った。恐らくかかって来いということなのだろう。

「んじゃあ、よろしくお願いします!」

はやては特徴的な関西弁でそう言うと、一気に走りこみ虎へと拳を振るった。

虎はそれを受け流すように全てを手で跳ね除けていく。

「すごい・・・!!」

はやては驚きを隠せないまま拳を振るっていく。虎はそれに合わせるようにすべて弾いていく。

「おじさん音ゲー得意だからタイミング合うのよねぇ。」

リィンも提案した張本人の筈なのにここまでの達者な受け流しに驚きを隠せなかった。

「すごいでしょ?」

アリサの自慢げな表情は今のリィンにはよく映った。

「戦闘のプロの戦い方です・・・。」

リィンがそう呟くと、はやてもそれに乗っかるように言葉を交わした。

「どこかで戦いに巻き込まれたりしたんですか?」

「おじさん戦いとか好きじゃないからねぇ。あんまりないかな!」

虎はそのまま一回転するも、はやての攻撃を全て読み取ってるかのように防ぎきった。

はやては一発を振るった後疲れるように倒れこんだ。虎はそっと手を取って、モニターを見た。

「さっ、向こうもそろそろ終盤みたいよ?」

なのはたちは自らの魔法陣を大きく描き、その魔法陣の中心には大きな光が集まっていく。

「ディバイン・・・バスター!」

「サンダー・・・スマッシャー!!」

二人の収束した光は光線となってぶつかり合い、周囲に大きな風と飛沫を生み出した。

離れているはずのすずかたちにもその強さは伝わった。

「なのはちゃんたち・・・やっぱ凄いね。」

「大丈夫かな?あの二人。」

すずかとアリサがそんな会話をしていると、二人は煙の中空中へ浮いていた。

少しの傷は入っているものの、二人はまだと武器を相手へ向けた。

「そこまで!」

はやての止めが入ると二人は武器を下ろしてゆっくり近づいていく。

「やっぱフェイトちゃん強いね。」

「・・・なのはこそ。」

フェイトはなのはが差し出した手を取り握手を交わした。

そしてはやてはリィンを連れてゆっくり近づいていく。

「んじゃあ、次は私の番やね。」

「じゃあ、フェイトとはやてで最後なのはとはやてね!」

アリサがそう言うと三人は頷き、なのははそのままアリサたちの方へと戻っていく。

「じゃあ、始めるよー!」

再びゴングが鳴り、三人の練習試合はもう暫く楽しそうに続いていった。

 

-ガンバライダールーム-

ガンバライダールームでは様々な研究が行われており、その中の機能テストの中に彼はいた。

「闘真、オッケーだ。」

研究員の声が聞こえると、ふぅ。と大きく息を吸った。

天城闘真はそのまま笑顔でカプセルの中から出てきた。闘真はそのままパソコンの画面を眺めた。

「なんか出て来た?」

パソコンには異常なしの文字が羅列のように出てくる。闘真もそれを見て正常だと言うことを再び確認した。

「で、あんたは誰だい?」

闘真を待っていたのは一人の男だった。男は眼鏡を少し上げると闘真に近づいていく。

「俺は柳リョウヘイ。君に頼みがあってね。」

闘真は少しほくそ笑むとリョウヘイの肩を掴んだ。

「あんた、余程の物好きと見た。」

「物好きじゃなくても仕事は絡むのが俺の主義だ。」

闘真が掴んだ手をリョウヘイは振り払った。

「いいぜ。内容は何だ?」

そう聞くとリョウヘイは闘真に一つのUSBメモリを渡した。

そしてリョウヘイは歩き去っていく。

「副社長が纏めろって言ったデータだ。あいつの字を解読できる奴も一緒に探しておいてくれ。」

闘真は軽く笑うとリョウヘイの渡したUSBメモリを眺めた。

「こいつは面白いストーリーが始まりそうだ。」

闘真は再び研究員の後ろにくっつき、自らのデータが映った幾つもの数式を一緒に暫く眺めていた。



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2話

-その男は悩んでいた-

男は一杯のコーヒーを天に掲げて悩ましい笑顔を浮かべていた。

幾百ものコーヒーの淹れ方を試してきた。その可能性は自らの可能性を無限に広げてきたに違いない。

しかし、その可能性に求めた答えはなかった。

さらなる進化を求めなければならない。こんなところで止まっているわけにはいかない。その先に答えがあることが見える。だからこそ戦わなければならない、生きなければならないのだ。

「なあ。」

虎が振り返るとそこには男が一人コーヒーを飲んでいた。

男は静かに光る龍のような尖った目で彼を見つめた。

「あんたが俺を呼んだ割には話の一つもくれないんだな?」

「おーっと失礼した。君が「秋津奏夜」くんか。」

秋津は少し笑みをこぼすと、虎の肩を叩いた。

「朱崎から話は聞いているよ。腕利きの傭兵だったと聞く。」

虎は苦笑いしながら、その手にナイフを持った。

「まあ昔の話さ。今は腕利きのマスターってところだな。」

ナイフは静かにホールケーキを切り、そのカットされたケーキは皿へと綺麗に置かれた。

「まあ、マスターとしてはまあまあだな。」

そう言うと、秋津の肩には苦笑いした虎の手がポンと置かれた。

「ほら見ろよ。あのお宅お出かけだぜ?」

秋津がその方向を見ると、車へと人が乗っていくのが見える。

その人たちは彼も世話になっている高町家の家族だった。

「・・・なのはちゃん達に何をするつもりだ?」

その龍の目は鋭く虎を睨みつけた。

「危機が迫ってる。俺たちがそれを救ってやるのさ。」

二人はコーヒーを飲みながら走り去る車を見送った。

「ダゴンが関わっているって言いたいのか?」

さあな。と虎は秋津の質問を受け流した。

「だが、危機が迫っていることに変わりはない。君もあのコーヒーが飲めなくなるのは痛手だろう?」

事態を予期したかのようなその口振りは、まさに獲物へ余裕の目を向ける虎そのものだった。

 

なのは、アリサ、フェイト、すずかの四人は高町家の車に乗せられて高速道路から見える綺麗なビル群を眺めていた。

「今日はアリサちゃんのお父さんの仕事場に行くんだよね?」

「えぇ、ちょっとした社会見学ね。」

なのはとアリサはそう話していると、なのはの携帯の着信音が鳴った。

「はやてちゃんからだ。」

なのはが携帯を開くと、はやてからメールが届いていた。

「はやてちゃんは後で来るってさ。」

「忙しいのねはやても。」

なのはとアリサがそう話していると、フェイトはどこか別の方向をじっと見つめていた。

「どうしたの?」

すずかがそう聞くと、フェイトは少し驚きながらすずかに笑顔を向けた。

「ううん、楽しみだなぁ。と思って。」

そっか。と静かに返したすずかもどこか遠い空へ目を向けた。

車から流れるラジオからは様々なニュースが飛び交っていた。

「ここでニュースです。昨夜、工事現場から大量のトラックがなくなったという情報が入りました。警察は何者かによる盗難とみて捜査を続けています。」

全員がそのニュースに耳を傾けた。

「これって・・・。」

「うん。」

なのはとフェイトは同時に目を合わせた。

何台ものトラックが一晩で盗まれるなどあるはずがない。彼女達が関わる「魔法」に等しい力がない限りは。

「パパが慌ててたのってこれのことか・・・。」

アリサがボソッとそう呟くと三人はアリサの方を向いた。

「アリサちゃんのお父さんの会社のことなの?」

アリサが頷くと、そのまま話を続けた。

「何でか分かんないけど、運搬用にあったトラックが何台か無くなってるって言ってたから多分これだと思う。」

「物騒だね・・・。」

すずかの不安げな言葉になのはとフェイトは言葉を投げかけた。

「大丈夫だよ。」

「私たちが解決するから。」

なのはとフェイトは一転して、先ほどまでは見せなかった少し険しい顔で、またどこか遠くを見つめるのだった。

 

-GRZ社-

ガンバライジング社の社長室には幾つものモニターが付いており、いつどこでも駆けつけられるよう何本もの電話も付いている。

その社長室の座椅子へと腰を掛けるのは「朱崎勇気」その人である。

「あぁ、計画は順調だよ。後でまた連絡する。」

朱崎が受話器を置くと、後ろの影に気付いて声をかける。

「君から頼みがあるなんて珍しく・・・ないか。」

そのドアにもたれ掛かり、如何にも偉そう。という態度を取るのはリョウヘイだった。

リョウヘイと朱崎は、ミッドチルダで起きた「クロス事件」の一件以来こうして連絡を取り、共に行動することも珍しくない仲だった。

「どうだい?俺の派遣した闘真の実力は。」

「俺が聞きたいのはそんなことじゃねえ。」

リョウヘイはバッサリと切り捨てて朱崎へ本当の問いを投げかけた。

「どうして地球で別の魔力反応が起きた?」

リョウヘイの問いに朱崎は俯き黙り込んだ。リョウヘイはさらに言葉を続ける。

「アンタならこの大きな次元の歪みにも気づき、すぐ対応出来た筈だ。」

少しずつ俯く朱崎へと近づき、その座椅子に手を付けた。

「今回ばかりはあんたを疑うよ。何が目的で侵入を許した?」

「・・・君に告げることはないな。」

リョウヘイは強く拳を握りしめた後、ゆっくり座椅子から手を離した。これ以上踏み込めない。そんな自分への弱さがどこか見えるようだった。

「ただし、俺もこれを見逃すことはしない。」

朱崎の言葉にリョウヘイ少し眉を細めた。

コイツは何を言っているんだ?自分で仕掛けた罠を自分で取り外そうというのか?

一抹の疑問と不安が頭に残る中、朱崎は話を続ける。

「虎くんに頼んで何人かのチームを招集してもらってる。君にもそこに参加願いたい。」

リョウヘイは静かに去ろうとした。朱崎は少し声を大きくして彼へ問う。

「君もクロス・オブ・ファイアを得たから知っている筈だ。失ったものは戻ってこないことを。」

リョウヘイは足を止めた。そして自らの持つベルト「ガンバドライバー」を見つめた。

「俺[ クロス]は死ぬべくして死んだガンバライダーだ。俺は記憶を持った者として奴の守ったものを守る義務がある。」

そう、自分は示さなければならない。本来彼らが望んだ平和と自由。自分たちガンバライダーがぶつかっていかなければならない大きな使命なのだ。

「俺はフーカたちに託さなきゃいけない・・・この未来をな。」

そう言い、ドアを開けるとそこには二人の男女が壁にもたれかかっていた。

「ミッションとお呼びがかかってな。参加させてもらうぜ。」

「僕の師範が起こした罪と罰だ。お詫びと言っちゃ何だけど参戦させてもらうよ。」

二人を見てリョウヘイは愕然とした。そして朱崎の方を向いた。

どうやら、彼の罠はとことんまで本気でやるようだ。

 

男は一人、森の中で剣を振るっていた。

その剣は静かに虚空を引き裂き、ただただ鋭く振るうその風を切る音だけが空へ響いていた。

「こんなところにいたのか。」

「・・・デュアルか。」

ガンバライダーデュアル「結城未来」はその男を知っていた。

ガンバライダージー「片桐タケシチロウ」は静かに振るった剣を未来へと向けた。

「俺は向かわぬと言ったはずだ。」

「そこまで拒む理由がどこにある?これには未来がかかってるんだぞ?」

未来は向けられた刀に恐れぬような物言いと態度で片桐へと近づいた。

片桐はそっと刀を下ろすと、未来を強く睨みつけた。

「俺はどちらかの未来を奪うような選択は取りたくない。俺に殺しなど頼むでないわ。」

未来は少しずつ近づき、片桐の腕を掴んだ。

「なら、お前が誰かの未来を守れなくても良いって言うのか?」

「それは・・・。」

言い返せなかった。奪うことから逃げた先には誰かが奪われた未来で暮らすことが見えているからだ。

それを分かって言っていた情けなさからか、片桐は刀を手から離した。

「俺に未来が守れると言うのか?」

未来は刀を拾い片桐に差し伸べた。

「だったら、お前が誰の未来も奪われぬ未来を描いてやれば良い。それが出来るのはお前だけだろ?」

片桐はその刀をそっと持ち、納刀した。

「ならば良いだろう。誰の未来ももう奪わせない・・・!!」

片桐と未来はお互いのバイクへと跨り、そのまま森の中を駆け抜けていった。

 

人々が行き交う街の片隅に大きく建つ雑居ビル。いや、誰も使わぬ廃墟と言うべきか。

中は汚く、来るとするなら眠りを必要とするネズミかゴキブリくらいであろう。

そんな汚い廃墟にアクート、イリス、キリエはいた。

彼らは静かに外を眺めながらその時をじっと待っていた。

「奴らを襲撃するにしても我々が最初から出向くのか?」

「いいえ、私たちが出向くのはもっと後よ。あくまで戦力を確かめないと。」

「でも、相手がわからないようでは戦力の取りようがないわ。」

アクートとイリスの会話へとキリエが斬りかかった。

確かに情報はあるとしても対策と戦術のない彼女たちにとってはこの戦は不利そのものだった。

「攻撃が効かないように細工は出来るけど、それだけではねぇ?」

「ならば俺から手下をくれてやるとしよう。」

そう言うと、アクートの手から幾つもの黒い物質が流れ出て、そこから何体ものモンスターがゾンビのように生まれていく。

「やるじゃない。」

イリスの言葉にアクートはフン。と鼻で笑った。

「これで戦力にはなるだろう。」

キリエは座り込んで外を見つめた。

「地球・・・こんなきれいな星にエルトリアはなるかしら?」

イリスはそっと肩を撫でた。

「大丈夫よ。あなたの望んだ未来へと私が連れてってあげるから。」

「破滅に向かう未来、救う少女と未来へと導く伝道師様。随分と良い話だな。」

三人が一気に声のする方向へ向いた。そこには一人の青年が粉々に砕けたドアの先からそっと見えた。

「貴様・・・何者だ?」

男はアクートへと近づいていく。そしてアクートの胸ぐらをつかんだ。

「自己紹介なんてザラじゃない。」

そう言い、突き放すとイリスとキリエの方へと近づいていく。

「何・・・?」

怯えるキリエの手をそっと握った。

「ただ、安心しろ。俺はあんたを助けに来た。」

イリスがグッと男のシャツを握った。

「だから名乗りなさ・・・」

男のシャツを握った瞬間、彼から微量に流れるそのエネルギーからか、イリスはすぐに手を離し距離をとった。

「しゃあねえ。名乗ってやるか。」

男はガンバドライバーを手に掲げ、腰に装填した。

「変身。」

"DEUS BEGINNING"

変身音と共に男はアクートと似た姿へ変身し、彼の周囲には五芒星を光が描いた。

「俺の名はガンバライダー "デウス"「葵火牙刀」だ。」

火牙刀はそのままキリエを背に剣を持った。

彼の目的は何か。それを知る者は誰もいない。



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3話

-GRZ社社長室-

複数の電話が鳴り社員たちが働く中、青年と少女は肩を並べて椅子に座っていた。

少女の背丈は青年より少し小さくて、頭が少しでも向こうに揺らげば肩にぶつかるくらいである。

「ねぇ?」

少し広い椅子に腰掛ける朱崎は横の少女に問いかける。

「なんですか?朱崎さん。」

横に座る少女「葉月 怜」は朱崎へと問い返した。

朱崎は微妙な表情を浮かべて葉月の眠そうな顔を見た。

いかにもこの状況を「つまんない」と感じていることをこちらに示すようだった。

「怜ちゃんがこのミッション受けるとは意外だったんだけど、そんな興味深いことあった?」

葉月はゆっくりと組んでいた足を降ろして立ち上がった。

柳 リョウヘイたちと共に別空間からの異常反応を調べる。という任務だが、彼からしてみれば何の興味も湧かない話だった。

「僕が今回興味あるのはそこじゃないですよっと!」

「怜ちゃん・・・痛い。」

葉月は朱崎の足を強く踏むと、すぐに離して朱崎に寄り添った。

「今回の計画ばかりは僕もあなたを疑うに決まってるじゃないか。」

朱崎は痛い足を抑えながら首を別方向に向けた。

彼女からしてみれば止められたこの暴走を見て見ぬ振りをして、わざわざ自分たちを派遣してまで止める理由なんて朱崎には無いはずだった。

「朱崎 勇気、君はこの計画で何を企んでる?その真意を僕は知りたい。」

葉月の言葉に沈黙し続ける朱崎は小さく呟いた。

「計画を明かすわけにはいかないんだよ・・・。」

大きくため息をついた葉月は自分の鋭い猫目を隠すように被っていたキャップ帽を深く被り直してその部屋を出て行った。

葉月が出た後、朱崎は大きく深呼吸して社長室の大きなモニターを眺めた。

「自分が悪役に回るなんて考えてもなかったよ・・・。」

葉月には分らなかった。この真意が、この言葉が指す結末への道筋が。

 

-オールストン・シー-

数年前から開演のために開発が進められていたテーマパークで、海に囲まれたその地形は上から見渡せば大きなマシンと綺麗な海が広がっている。

「着いたね〜。」

なのはたちが車から降りると続いてフェイトやアリサ、すずかが降りていく。

「じゃあ、子供たちは子供達で動きましょうか。」

なのはの母である高町桃子がそういうと、子供たちは大きな声で返事をしてそのまま歩いて行った。

「それじゃあわたし達は・・・」

「ママ会をしましょうか。」

三人の母親がそう言い子供達とは別の方向へと歩いて行った。

なのはたちは水族館を歩き回っていた。

水族館はメジャーな魚からなのはたちが見たこともない魚まで多くの種類の生き物が展示されている。

「すごいね!」

「うん!」

すずかとフェイトが明るく皆に話しかけると、アリサは一つ大きな展示物の前に立っていた。

「これ・・・」

「見たこともない石だね。」

なのはがアリサに寄り添うと、フェイトとすずかもそこへと近づいていく。

-海鳴市沖の海中で発見された巨大な石英-

説明にはこう記されているが、その後の成分は難しい単語が羅列しており、四人の知恵で完全な理解をすることは不可能だった。

「これが石英・・・ねぇ。」

「でもこんな綺麗な石英があるの珍しいよ!」

赤く光るその石英はその神秘的な光を発してずっしりとしていた。

「ねえ、ここで写真撮ろうよ!」

フェイトの提案に皆が頷き、自分たちにカメラを向けて写真を撮った。

「ちょっと待っててね。」

なのはは今いないはやてに向けて"楽しい"写真を送るのだった。

 

一方で母親たちは飲食スペースでコーヒーを飲みながらゆっくりしていた。

「高町さんの娘さん大変なのよね。」

「ま、まぁ・・・。」

娘の事情を知る桃子としてはその返答に困るものがあった。

確かになのはは縁あって魔法を使えるようになり、この世界を救う仕事に就こうとしている。

しかし父である士郎やこれまで出会った人たちの背中を見たなのはの意思なんだろうと彼女も考えている。

「でもリンディさんもいるし、わたしが出る幕じゃないかなって思ってるからあの子次第かな。」

「大人ね〜。」

えへへ。と桃子が少し照れると、アリサの母であるジョディの携帯が鳴り、そのまま立ち上がった。

「ごめんね。」

「いえいえ〜。」

二人が心配なく。と笑顔で返すと、ジョディはそのまま携帯を取り出して電話に出た。

「うんうん。えっ!?どういうこと!?」

ジョディは携帯を持ちながら外を見渡す。

彼女の不穏な空気を感じると、そのまま近づいて外を見渡した。

「えっ・・・?」

「何・・・あれ?」

広場にはこの世のものではない「異形」の黒い塊が周囲にバラけていくのが母親たちは見えた。

 

海鳴市へと降り立ったリョウヘイ達はおもむろにタブレットを取り出した。

タブレットには情報が載っており、様々な難しい情報が記されている。

「N地点にバグの反応がある、恐らくここだな。」

ガンバライダー EXE「城島 流」がそう言うと、リョウヘイ、葉月、闘真がタブレットを閉じてそれぞれのガンバドライバーを取り出した。

「怜、変だと思わないか?」

「そもそもあなたが怜って呼ぶのが変なんですが。」

リョウヘイが葉月にそう言われて二回ほど咳き込むと、話を続けた。

「朱崎社長は止められたけど止めなかった。そしてアイザの渡した文章は謎で解明されないままだ・・・。」

「お前なんで解明してないんだよ!」

「つまりこれは何かの罠の可能性?」

ツッコミをスルーして放った葉月の言葉にリョウヘイは首を縦に振った。

「でもまあ・・・なるようになるしかないでしょ、こればっかりは。」

「だな。」

無理矢理切り裂くように流と闘真が終わらせると、それぞれガンバドライバーを装填して叫んだ。

"変身!!"

 

なのはたちが外に出ると、そこは既にモンスターの巣窟であり黒い影が歩き回っていた。

「すずかちゃんたちは離れてて。」

「アリサもだよ。」

「うん。」

なのはとフェイトにそう言われると二人は施設へと戻っていき、なのはたちは外へと出て行った。

「なのはコレ・・・」

「ロストロギアとかじゃなさそうだね。」

なのはたちがデバイスを取り出そうとしたその時だった。

「あんたらの出る幕はないぜ!」

なのはたちが上を向くと四人の戦士が降り立ち、各々四方を向いた。

「あなたたちは・・・?」

フェイトの問いかけに戦士は呼びかけに答える。

「そう!俺たちは・・・」

「仮面ライダー・・・?」

戦士が軽くコケると、もう一人が失笑した。

「流だっせ。」

「闘真は後で処す。」

「いや、さっきの流はダサかったよ。」

青い戦士にそう言われると流はその怒りで黒い塊を殴り飛ばした。

「お前ら後ろ向いてる暇があったら一般人を守れ。いいな?」

「リョウヘイさんもね!」

青い戦士にリョウヘイはそう言われると、リョウヘイは周囲の黒い塊を持っていた斧で殴り飛ばした。

「俺たちはガンバライダー 。アイツがEXE、そしてファング、そしてブラットだ。」

「自分の名前忘れてるよクロスさん!」

「だね!」

流の変身するEXE、そして闘真の変身するファングはそう言って黒い塊を蹴飛ばした。

「まっ、仮面ライダーでもガンバライダーでも変わんないけどねっ!!」

「葉月の言う通りかもね!」

葉月の変身しているブラットにファングはそう答える。

「俺は会ったこと・・・あっ」

「会ったこと」

「ありますか?」

クロスは自分の失言で頭を掻いた。ファングとEXEはそれが気になってクロスに近づく。

「どうしたんすか?」

「元カノに似てるとか?」

二人の煽りを気にせず黒い塊を切り裂いていく。

「そうだった・・・。この時空のあんたらは別人だったな!」

クロスは斧から発した光が一気に闇を切り裂き、爆散させた。

「なにそれ面白そうな話!」

ブラットがクロスへと近づくとクロスはそれから逃げるように走っていく。

「一般人の救助に行くぞ!」

「一般人は無事だぞ。」

クロスがその聞き覚えのある声に後ろを向く。そこには彼らが目を疑う光景が広がっていた。

「アクート・・・!?」

「どうなってる・・・!?」

アクートが高笑いすると剣を召喚して一気にブラットへと近づいていく。

「シンゴウアックス借りるよ!」

「ちょっ!?!?」

リョウヘイの持っていた斧「シンゴウアックス」を借りて剣を防いだ。

「どうしてお前が・・・奏とともに滅んだお前がどうして!?」

「答えは簡単だ。」

アクートを弾き飛ばすと、遠くからの弾丸をそのまま防いだ。

「お前まで裏切るとはな・・・化け狸が。」

そこにいる影は彼のよく知る人物だった。

かつてクロスと共に共闘して戦ったガンバライダー「デウス」だった。

「何が起こってるの!?」

なのはとフェイトがデバイスを取り出すと、なのはとフェイトの周囲にはエネルギーを持った羽根がいくつも飛び散り爆破した。

「フェイト!!」

フェイトとなのはの叫び声の方向にリョウヘイが近づこうとすると、そこには赤いガンバライダーが立ち塞がった。

「やっぱアンタが裏切り者だったか・・・。」

「ガンバライダー・・・セイオウ。」

そこにいたのはガンバライダーセイオウの鎧を纏ったGRZ社の社長「朱崎勇気」その人だった。



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4話

煙の中現れたセイオウは一気にブラットへと接近し武器であるソニックアローの刃をぶつけた。

ブラットはバーニアでそれを避けると自分もまたソニックアローを召喚し、突撃した。

「アンタが裏切ることにメリットはないと思うんだけどな?」

「君に答える義理はないな!」

セイオウの刃を受け流すと、バーニアで上昇し一気にエネルギーの矢を放った。

セイオウもそれに対抗するように弓にエネルギーをチャージして何発もの矢を放つ。

「無茶はするな!」

「余所見をしているとは随分と余裕だな・・・!!」

クロスはアクートが振りかざした大剣を躱してシンゴウアックスで腹へと直撃させた。そのまま押し込まれたアクートはクロスの腹を蹴飛ばして、腹についたダメージを気にするように手で払った。

「んじゃ俺は」

「アンタと・・・ってわけか。」

デウスがガンバブラスターを召喚すると、EXEもガシャコンスパローを召喚する。

「ファングは一般人の安全確保、いいね?」

「合点だEXE!」

EXEの肩を叩いてそのままEXEは去っていく。ファングが後ろを向くとデウスが暇そうに人差し指で銃を回していた。

「ごめん、待たせたな。」

「いいや、人命救助を余った人員に行かせるのは当然の判断。これで邪魔も入らなくなったしな。」

二人は一気に銃撃戦を始め、弾丸のぶつかる激しい鉄の音が響き渡った。

 

ファングは売店の屋根から辺りを見渡していた。

「ここにもいない・・・か。」

ガンバライダーの目には光学迷彩がサーモグラフィ搭載されているため、見ただけである程度は見える。

バーニアで上昇して辺りを見渡すも人の気配は全くなくて、まるで人が消滅したかのようだった。

「どうなってる?」

「おそらく結界が張られてるんです。」

「君たちは・・・高町なのはとフェイト・テスタロッサだっけ?」

ファングが声の方向に体を向けると、そこには先ほどセイオウから攻撃を食らった少女二人が浮いているではないか。

少々驚き気味のファングの言葉に二人は元気に返事をした。

先ほどの服装とは異なり、なのはは白を基調とした服、そしてフェイトは黒を基調としていてマントを纏っていた。

「いやしかし結界ねぇ・・・。」

「何故こんなことをするのか私たちも疑問ですが今は時間がない。早期決着を目指しましょう。」

考え込んでいたファングはフェイトのその言葉に納得するように首を縦に振った。

「それに・・・」

なのはが微妙な声で辺りを見渡すと、周りには黒い塊がいくつも近づいてくる。

「あれは何ですか?」

「あれはバグ。ちょっと厄介な雑魚キャラかな。」

ファングが手から投げた手裏剣はバグの目の前で爆発して、煙が消えた時にはバグが爆発四散していた。

「協力します!」

「だから教えてください。貴方たちのこと、そして今何が起きているか。」

なのはとフェイトの提案に親指を立てて返事をしたファングは一気にバグへと飛びかかる。

「いくよ・・・レイジングハート!」

"Oll iight"

「行くよ・・・バルディッシュ。」

"Yes, sar"

星光と閃光はそれぞれのデバイスへと呼び掛け、バグへと攻撃を始めた。

 

ブラットとセイオウの激しい攻防は続いており、セイオウから放たれる矢を回避しながらブラットは何発もの矢を相手へと放つ。

「アンタにこんな形で裏切られるなんてね!」

「言ったはずだよ?君に話す計画はないってね!」

セイオウが一気に加速してブラットへと近づくと、ブラットもまたセイオウへと突撃していく。

ぶつかり合った赤と青のガンバライダーは螺旋を描きながら空高く上がっていく。

ソニックアローの刃を何発もぶつけて螺旋を描くたびに火花が周囲で散っていく。

互いが離れるとどちらも弓にエネルギーをチャージした。

「俺が教えた空戦の基本をちゃんと守れてる。良い弟子だよ君は。」

「何を今更。」

セイオウの褒め言葉にブラットがそう返すと、ブラットは矢を放ちセイオウへと突撃した。

セイオウも1発の矢を放ったのちに地上へと一気に急降下していく。ブラットはそれに追いつかないまままっすぐ進んだ後に方向転換した。

「それが甘いんだよなぁ。」

降下していくブラットの目の前にはゼンリンシューターを持ったセイオウの姿があった。

セイオウの周囲には青い光が散りばめられてその光は強さを増していく。

「っ!!!

ブラットはメロンディフェンダーを召喚して自分の目の前に向けた。

しかし、放たれる気配はなくそのまま降下した。

「どういう・・・!?」

ブラットがセイオウの方を向くと、そこに彼はおらず周囲にエネルギー弾が散りばめられたまま消えた。

「まさか・・・!?」

空を見上げると、大きな羽を広げたセイオウは散りばめられたエネルギー弾の中心にいるブラット目掛けて爪を立てた。

「プロミネンスドロップ!!」

爪が直撃したと同時にブラットの叫び声が聞こえる。ブラットが倒れ込んだ瞬間、セイオウの手に持っていたゼンリンシューターの引き金を引いた。

「カクサン・・・リベレーション。」

ブラットの叫びと共に散りばめられたエネルギー弾はブラットへと襲いかかった。回避する余地もなかったブラットはそのまま直撃を食らった。

「ブラット!!」

クロスが向かおうとするが、彼の行く手をアクートが阻んだ。

「行かせると思うなよ?」

「邪魔だ!!」

"チューン!ライノ!"

リョウヘイは召喚したブレイクガンナーにライノスーパーバイラルコアを装填し、銃口に手で押さえた。

"スーパー!ブレイク!アップ!"

"BREAK UP GRADE CROSS・JUSTICE"

クロス・ジャスティスへと変身したクロスはアクートに回し蹴りを見舞いした。

「EXE!!」

「かしこまっ!!」

一気に突撃しようとするEXEへとデウスが飛び蹴りを決めた。

「いってぇ!!」

「敵が前にいるのに油断するとは・・・随分と余裕なようだな。」

"Kamen Riper Drive MAR"

クロス・ジャスティスはMARの世界の力"サーティントーテムポール"にドライブのカキマゼールを同時に放ち、アクートとデウスに攻撃を与えた。

「っ!!」

「やるな。」

デウスとアクートは回避しながらぶつかってくる攻撃を切り裂いた。

「・・・まずいな。」

クロスがブラットの方を見ると、彼女のドライバーからは火花が散り、葉月自身も立ち上がれる状態ではなかった。

「余所見をするな!!」

デウスが一気に突撃して剣を振るう。クロスはそれを回避してこちらも剣を振った。

「アクートは兎も角、お前らが裏切ることに何のメリットがある!?」

「お前が知ることじゃない!」

互いの剣はぶつかり合うも、互いの回避能力からか全く攻撃が通じなかった。

立ち上がろうとした葉月にセイオウは銃を向けた。

「君は俺たちの計画に気付きそうだ。だから早めに終わらせておくよ。」

冷たい声で放たれたセイオウの言葉に葉月は震えが止まらなくなった。

自分が死ぬことに対する恐怖で体が震えて動くことすらままならない。

セイオウが引き金を引こうとしたその時だった。

「待て。」

"オメガシャイン"

セイオウは空中から斬りかかるガンバライダーをソニックアローで防いだ。

「タケシチロウ!?」

リョウヘイの驚くような声と共にアクートからの斬撃を避けた。

「へぇ・・・君も敵ってわけ?」

「弟子を死ぬ間際まで追い込むとは・・・あんたも落ちるとこまで落ちたなセイオウさん・・・いや、朱崎勇気。」

リョウヘイの後ろにいたアクートはそのまま斬りかかるも、クロスにあっさりと回避される。

「全く・・・初見のビックマウスぶりはどこへいった?」

アクートが気配を察すると、足にエネルギーを貯めてその方向へと放った。

それを弾き飛ばしてもう一人のガンバライダーはアクートに蹴りを決めた。

「・・・デュアル。」

葉月はゆっくり立ち上がるもそのままふらついて倒れ込む。

「リョウヘイさん!」

EXEの言葉に首を縦に振って走ろうとした瞬間、デウスが行く手を阻み、彼の持っていたガンバブラスターを一気に放った。

「これじゃ・・・」

「その心配は無用だ!」

「しくじるなよ?虎。」

デウスに向けられたガンバライダーの同時攻撃はデウスを退けて攻撃の手を止ませた。

ファングと共にクロスたちの元へと戻ってきたなのはたちはその声に驚きが隠せなかった。

「その声って・・・」

「黒森さん!?」

驚くように黒森の変身していたガンバライダー「ナハト」はフェイトとなのはを見て驚いたように顔の前に手を置いた。

「ほらビックリしてないで行くぞ。」

もうひとりのガンバライダー「テイカー」に頭を叩かれると、そのままデウスに攻撃を加えるテイカーをよそにナハトは頭を掻いた。

「もう・・・これだから若者ってやつは!」

なのはたちにもう一度手を振ったのち、ナハトもそのままデウスに殴りかかった。

タケシチロウの変身するガンバライダー 「ジー」とセイオウは激しい剣戟を繰り返しており、どちらも譲ることなく戦いは平行線を辿っていた。

「君は俺を殺しに来たのかい?」

「俺が引導を渡すのはあんたの命じゃない。」

二人は互いの剣を回避したのち、何歩か後ろへと下がった。

ジーは持っていたサングラスラッシャーの刃を向けた。

「俺が引導を渡すのはあんたのその計画とやらだ。何を隠してるかは知らねえが俺たちはガンバライダーとして見過ごすわけにはいかねえ!」

何度か頷いたのちにセイオウは空を見上げた。

「俺もいい部下を持ったもんだ・・・。」

ジーは眼魂をサングラスラッシャーに装填すると、セイオウに向けてその銃口を向けた。

セイオウは羽を開いて一気に空中へと飛び上がった。

"メガマブシー 闘魂ダイカイガン オメガフラッシュ"

"スキャニングチャージ"

「龍降火炎弾!!」

「プロミネンスドロップ!!」

ぶつかり合う二つの炎は大きな光を生み、爆発を起こした。

吹き飛んだジーとセイオウはそのまま倒れた後すぐ立ち上がった。

「まあいい・・・。想定外も起きたけど今回はここまでにしておこう。」

「良いのか?データは取れてないぞ?」

アクートの言葉にセイオウは頷いた。デウスはアクートの尻を蹴ってセイオウへと近づいた。

「だが俺たちの目的はガンバライダーではない。そのデータは"奴ら"が取っているだろう。」

「奴ら・・・って?」

フェイトの返答に答えぬまま、三人は空高く飛び上がって行く。

結界が解除された後、各々が変身解除していく。だが、それぞれ再会を惜しむ間も無く歩き去っていく。

「大丈夫か?」

リョウヘイが葉月の肩を持って介抱した。そしてタケシチロウと虎が駆け寄った。

「どういうことか説明してもらいますよ?リョウヘイさん。」

二人に相槌を打つと、そのままブラットを背負ったまま四人は歩いていく。

奏夜も変身解除すると、後ろにはすごい悪寒がしたような気がした。

「なのは・・・ちゃん?」

奏夜が後ろを向くとなのはが如何にも驚きを隠せない。という顔で奏夜に指を指していた。

「奏夜さんが・・・仮面ライダー!!?」

なのはの驚く声は海の少し先まで広がっていった



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5話

オールストン・シーでの戦闘が終了したガンバライダー一行と魔法少女たちはホテルの一室で各々の時間を過ごしていた。

今回の計画の筆頭とも言えるリョウヘイは時空管理局の執務官"クロノ・ハラオウン"と連絡を取っていた。

「大概はわかったよ。」

「こちらもです。つまり惑星"エルトリア"から来た少女とそちらの社長"朱崎勇気"が事件の首魁と見てよろしいですね?」

クロノの言葉にリョウヘイは軽く頷く。

「相手は朱崎。つまりはGRZ社を統括する社長だ。並行世界を動けるシステムが向こうに回るのも時間の問題だろう。」

「少しばかり厄介ですね・・・。」

「にしても、エルトリアの科学者"フローリアン"の娘さんねえ。」

リョウヘイとクロノは数秒ほど自分たちの持っている資料とにらめっこした。

リョウヘイの目の前にはガンバライジング社の、クロノの目の前には管理局、並行世界の資料が並べてある。

そうしていると後ろで覗いていた闘真が顔を出した。

「でもこっちに来た情報だと惑星"エルトライア"って書いてなかった?」

余計なことを・・・。リョウヘイはそう思いながら闘真の顔を掴んだ。闘真は突然のことに驚いたのかその場で手を左右に振り回した。

「恐らく誤字雑字だ。悪いが気にしないでくれ。」

「は・・・はぁ。」

半ば呆れたように納得したクロノはそのまま話を続けた。

リョウヘイもまた闘真を投げるように手を離した。闘真は投げられた勢いでそのまま後ろへとふらついた。

「あと、この生命体・・・バグと仰っていましたが」

「あぁ、そいつらをほっとくとミュータントっていうもっと面倒なものになる。」

リョウヘイの説明にクロノはうーん。と少し悩むそぶりを見せた。

「我々の魔法で対抗できるものでしょうか?」

「どうだろうな・・・。」

リョウヘイもまた悩むそぶりを見せた。

「そいつの魔力にもよるが恐らく魔力を武器に纏わせる物理型の魔導師だと厳しい。うまく魔法陣を構築すれば破壊も出来そうではあるが」

「ずいぶんお詳しいんですね?」

クロノの言葉にふと我に返ったリョウヘイは小さく苦笑いした。

「実はミッドチルダに縁があってな。色々話してしまってすまない。」

「いえ、こちらに理解があるのであればそれに越したことはありません。」

クロノは穏やかな声でそう答えると更に資料を見た。

「あとこちらから少し頼みたいことがあるのですが宜しいでしょうか?」

「丁度良かった。」

リョウヘイの言葉にクロノは疑問符を浮かべる。リョウヘイの少し不敵な笑みに彼は一歩足を引いた。

「俺もあんたらに頼みたいことがあったんだ。」

嫌な予感がするね。クロノは隣にいた通信士のエイミィと顔を合わせた。

 

こちらへと着任したリンディ・ハラオウンはバルコニーで一人空を見上げて佇んでいた。

「まさかこんなことになるなんてね・・・。」

そう呟きながら後ろを向くと友人のすずかと仲良く話すフェイトの姿があった。

「どうかされました?」

リンディが自分の横を見るとそこには同じく佇む男がいた。

男は手に持った飲み物を少し口につけた。

「これ抹茶ラテっていうらしいんです。何でも抹茶に砂糖とミルクを入れるんだとか。」

「あら、私がいつも飲んでいるものと一緒だわ。」

少し作ったような笑顔で笑うと男も笑みを返した。

「あぁ、自己紹介まだでしたね。ガンバライダー二番隊隊長"片桐タケシチロウ"と申します。以後お見知り置きを。」

「私は時空管理局アースラ艦長"リンディ・ハラオウン"です。よろしくね。」

お互いに軽く会釈するとタケシチロウはフェイトの方を見た。

「ハラオウン・・・ということは娘さんですか?」

「えぇ、義理なんだけどね。」

リンディもまたフェイトの方を見た。彼女は笑顔見せていた。

「最初はリンディさん。って呼んでたんだけど、最近はそうとも呼んでくれなくなってね。」

「義理・・・ってなると呼びにくいのかもしれませんね。」

うん。と小さくうなずいた。

「私も母親として彼女を見てきたつもりなんだけど・・・、なんだか寂しくてね。」

タケシチロウはふと空を見上げた。そして飲み終わった抹茶ラテのコップを近くのテーブルに置いた。

「それは他人じゃなくて家族って認めてくれた証拠じゃないですか?」

リンディはふとタケシチロウの方を向いた。彼は少し遠いところを見つめていた。

「ふとそうなった時"母さん"って呼びづらいもんなんだと思います。だから少し待ってあげるのも大事なんじゃないですか?」

タケシチロウの少し悲しそうな笑みはどこか遠い誰かを思っているようだった。

それを見たリンディは少し笑いが声に出てしまった。

「俺なんかめちゃめちゃ恥ずかしいこと言ってんな・・・。」

ううん。と照れるタケシチロウに対して首を横に振った。

「ありがとう。少し私を待ってみるわ。」

そう言い残しリンディは室内へと入っていった。

「・・・どっから見てた?」

「全部見てたわ。」

タケシチロウの後ろにいたのはファントム"メデューサ"だった。

メデゥーサとタケシチロウは複雑な関係のため省略するがこれまで共に戦ってきた"パートナー"のようなものだった。

「私に見せない一面も見せるのね。」

「っせぇよ。」

メデゥーサにそう言い捨ててタケシチロウはコップを持ってそのまま部屋へと入っていった。

 

クロノは時空管理局内に存在する様々な書類が積もった"無限書庫"へと通信を回し、司書である"ユーノ・スクライア"と会話していた。

「ということなんだが頼めるか?」

「あぁ、探すには探してみるけど・・・。」

ユーノはクロノに物言いたそうな目で見つめた。

「言いたいことがあるならこの際言ってくれ。」

「あぁ、悪いね。」

ユーノは少し深い呼吸で整えるとクロノへと言葉を飛ばした。

「過去に消滅した、ましてや存在したのかどうか分からない遺産が無限書庫で見つかるとは思わない。あとGRZ社と管理局の関係性ってあまりに私的すぎないか?」

ユーノの言うとおりである。後者はともかく、前者においては存在したかどうか不明ないわば"お伽話"に等しい可能性の書物を探せなど無理も同然である。

「探すだけでいいんだ。あったらあったで報告が欲しい。」

うーん。と頭を抱えるユーノとクロノの間にエイミィから通信が割り込んで入った。

「クロノくん、はやてちゃんたちがもうこっちに合流できそうだって!」

「わかった。すぐ向かう。」

クロノからの通信が切れるとユーノは無限書庫の広い天井を見上げた。

偉い人は本当に口だけでこっちの度量を知らないんだから・・・。そう思いながらユーノはまた無限書庫を飛び回り、上からのお仕事をこなすのだった。

 

一方外でじっと遠くを見つめていたのは葉月だった。

唯一戦えると思っていた能力"ガンバライダー"を師である朱崎に破壊されたショックは彼女も計り知れなかった。

「僕はやっぱり・・・」

「あの」

葉月が弱々しそうに後ろを向くと、そこには椅子に座って同じく遠くを見つめていた高町なのはがいた。

「あぁ、独り言なんだ。」

「・・・」

「気に・・・しないでくれ。」

弱々しく目を背けた葉月の元へとなのはは駆け寄ってそのまま手を握りしめた。

「人は誰だって悩みます。でも大事なのはそれを一人で背負いこむんじゃなくて、誰かと一緒に解決することだと思うんです。」

「・・・そうなのかもしれないな。」

不思議だった。自分は小学生に諭されている筈なのに、不思議と彼女の言葉を受け入れることができた。

少女の目は強く輝いて見えて、その奥底には未来の暗闇さえ変えていけそうな光が見えた気がした。

「おっ、こんなところで密会か?」

そこに現れたのはガンバドライバーを片手に持ったリョウヘイだった。

「・・・揶揄いにきたんですか?」

「んなわけあるか。」

リョウヘイは葉月の噛みつくような冗談を叩き落とすように否定した。そして彼女へと無言でガンバドライバーを投げた。

「えっ」

「リョウヘイさん・・・これは?」

愕然とするなのはと葉月に近寄り、ガンバドライバーを指差した。

「これはとあるガンバライダーが使ってたらしくてな。リストに載ってないわデータだけ残ってるわでどうしようもなかったんだよ。」

「それってまさか・・・」

小さな声でリョウヘイに問うと、リョウヘイは小さく頷く。

「"Lordシステム"。因子はアクートと酷似してるみたいだが詳細は不明。お前が前に名前を出してたガンバライダーと同じ名前だ。」

葉月は強くガンバドライバーを握りしめた。彼が消滅した時のことを少しばかり思い出した。

「でもこれは本来氷菓が」

「だから借りてきたんだろ?」

現在Lordシステムの挿入されたガンバドライバーを使用していたのは彼女の幼馴染でもある"噫蘭 氷菓"だった。でもどうして自分が?彼女の思考回路では到底理解できるものではなかった。

そんな不安げな彼女を見たリョウヘイは葉月の肩を強く叩いた。

「次のミッションでセイオウはお前に任せるから必ず倒してこい。」

葉月が頷いたのを確認するとリョウヘイはそのまま去っていった。

「葉月さん。私たちもお手伝いします!」

「ありがとうなのはちゃん。」

二人が少し落ち着いたのも束の間、クロノからの通信が入った。

「異世界からの転移を確認した。恐らくエルトリアからの者だろう。」

「詳細は?」

リンディの指示が出るとすぐさまモニターへと現地の映像が映された。

「恐らく一人、目的は不明です!」

「恐らく首魁の少女"キリエ・フローリアン"とは別の人物・・・リョウヘイさんどうしますか?」

クロノが指示を仰ぐとリョウヘイは闘真を一度見て一度深呼吸した。

「こちらからガンバライダーファングを送ります。目的はあくまで目的の聴取、相手がその気なら戦闘も許可する。」

「オーケー。んじゃあひと暴れしてきますかなっと!」

闘真はそのまま元気よくエレベーターへと走って行ってそのまま任務へと向かった。

「なぁ、あいつ一人でいいのか?」

そう虎が聞くとリョウヘイは頷く。

「あいつも任務くらいは遂行してくれるって信じてる。」

「でもあいつ事情聴取する気ゼロだったけど」

虎のその一言で場は一瞬にして凍てついた。そーっと、辺りを見渡すと目に入ったのはコーヒーを飲む流と奏夜だった。

「EXE、テイカー。あいつの保護を頼めるか?」

はぁ。と二人は揃ってため息をついた。

「まぁバカをやらかすよりマシか。」

「被害が及んでも良くないしな。」

二人はぐちぐち言いながらそのままエレベーターに乗って下へと降りていった。

珍しく崩れるようなリョウヘイの采配ミスはこの後の配置のグダグダさへと繋がった。



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6話

-東京都-

街にいくつも枝分かれする高速道路を走る一つのバイク。

その速度は車を追い抜き、鮮やかに躱していく。

彼女は"アミティエ・フローリアン "。惑星エルトリアに住む少女であり、この地球に訪れた"キリエ・フローリアン "の姉である。

「キリエ・・・。」

エルトリアで自分を撃ち、家出をした一人の少女。

自分は姉として母親、そして病に侵されている父に心配をかけてはならない。そして何より

「この世界に危機でも訪れたら・・・。」

アミティエはエルトリアでキリエが調べていたデータのことが頭をよぎる。

-永遠結晶-

向こうで見たデータには間違いなくそう書いていた。彼女たちの求めるものはあまりにも危険すぎることを少女は悟っていた。

「あんなものを手に入れたらこの世界もエルトリアも」

「おぉっと止まってもらおうか?」

少女はその赤髪を靡かせてバイクを急停止させた。目の前に止まった男はバイクに跨りながらこちらを呼ぶように口笛を鳴らした。

「急いでいるんです!」

「こっちも急ぎの用事でね・・・、君に用があるんだ。」

「私は失礼します!」

アミティエがバイクを走らせようとした瞬間、アミタの眼前で銃声が鳴る。男は銃を構えてその銃口を少しずつ自分の目の前へと向けた。

「フローリアン 。君の身柄を拘束させてもらう。」

「私は・・・」

アミティエはバイクのアクセルを鳴らして走り出した。男は焦ってそれを追うようにバイクをターンさせた。

「止まれつってんだろ!!」

「止まりません!」

"Ganba driver stand by Ready."

「変身!!」

男は鎧を纏い、一気に加速するとアミティエの横へと迫った。

「私はアミティエ・フローリアン !あなたが追っているのはきっと私の妹です!」

「んなわけあるか!出ていた反応は一つ!このガンバライダーファングが見間違えるわけないだろ!」

二人のバイクチェイスは加速度を増して、更に進んでいった。

 

イリスとキリエはアクート、セイオウ、デウスを連れてビルの屋上へと向かった。そしてイリスが遺跡板からデータを広げた。

「私たちが求めるのはこの-永遠結晶-。これを手に入れるには八神はやての持つ-闇の書-が必要になるわ。」

「そしてアクートとイリスで闇の書の回収。」

「そして俺とセイオウ、キリエで他の魔導師の誘導。でいいな?」

セイオウとデウスの会話にイリスが頷く。

「なるべく傷つけないようにね?迷惑かけちゃダメだから」

「何を甘ったれたことを言っている?」

デウスの厳しい言葉にキリエは俯き、セイオウとイリスは鋭い目を向けた。

「既に魔導師たちとの戦闘は避けられない。俺たちガンバライダーが関わったことによりそれは加速するだろう。」

「デウス!!」

止めようとするセイオウをアクートが制した。キリエは強く拳を握りしめてデウスの手を握った。

「・・・どういうつもりだ?」

「私は確かにエルトリアを救いたい。でも、この星の人たちになるべく迷惑の掛からない方法で行いたいの。だから、 綺麗事でも私はやる。」

握ったその手を離すと、イリスは少し頷いて空を見上げる。

「じゃあ、いきましょう。星を救うために。」

イリスとキリエが先に向かうと、セイオウ、デウス、アクートが残った。

「なあ、アクート。」

「何だ?」

セイオウの言葉にアクートが耳を傾けた。3人を照らす月明かりはそれぞれの複眼を綺麗に光らせた。

「"Lord"システム。お前なら知っているよな?」

アクートが鼻で笑うとそのまま壁にもたついた。

「あぁ知っているとも奴は"俺"だからな?」

「どういうことだ?」

セイオウとデウスが問いかけようとアクートの方を向いた時には彼はいなかった。システムの所在者と同じ存在だと言い残して彼は消えていった。

デウスとセイオウの目の前には大きなテレビモニターがニュースを映していた。

「ここでニュースです。謎の飛行物体が目撃されました。警察はこれを・・・」

二人の目に止まったものは衝撃以上のものだった。政府として秘密裏に動いたGRZ社のガンバライダー "ファング"その人だった。

「やべえ・・・。」

「早く行くぞ!」

二人は翼を広げてそのまま飛翔と共に加速した。

 

-時空管理局-

いくつもの次元世界を渡航する戦艦-アースラ-の一室にリョウヘイとクロノは来ていた。

「ここが時空管理局か。」

「来たことはないんですか?」

クロノの質問にリョウヘイは頷く。

「俺が追っていた事件はミッドチルダの地上の話だったからな。」

クロノは興味深そうにリョウヘイの俯く顔をのぞかせた。

「どんな事件だったのですか?」

「えーと・・・それは。」

リョウヘイは俯き更に神妙な表情へと変えた。

クロノはしまった。と辺りを見渡してリョウヘイへと落ち着いた声で問いかけた。

「しかし何でここに?」

「調べたいことがあってな。」

-無限書庫-これまで次元世界を渡航して来た資料やその他の世界の歴史書など様々な書物がここには置いてあった。

「クロノが呼んでいたお客さんってそちら?」

「ああ、あとはこちらの"ユーノ・スクライア"司書から聞いてくれ。」

リョウヘイは頷くと、そのままユーノの手に引かれて宙を浮いていく。

「で、こちらでどんなものをお探しで?」

「・・・とあるガンバライダーについて調べて欲しくてな。」

「ガンバライダーについて?」

ユーノは不思議そうにリョウヘイの方を向いた。

次元世界を渡航するよりもガンバライジング社の方がガンバライダーについては詳しそうな気もするが・・・。

「あなたたちの方が詳しい・・・ってわけでもないんですか?」

「あぁ、こっちじゃ見つかんない資料みたいでな。」

そんなユーノの微妙な表情をよそにそのまま一人で上に上がっていく。

「待って!!」

「"ロード"っていうらしいんだ。こっちも探してみる。」

まったく・・・。クロノといいこの人といい身勝手な依頼人ばかりがここに来るのか。ユーノは呆れ半分仕方なし半分でリョウヘイのいう資料を探すのだった。

 

ファングとアミティエは暴走車両のごとくスピードを上げて走っていく。その速度は車を追い越し、後輪からは激しい火花を散らした。

「止まってもらえないかな!!?」

「妹を止めるまでは!!」

二人のスピードは加速していき、バイクからは千切れるような激しい音を鳴らした。

ファングは片手に銃を持ってそのままアミティエのバイク目掛けて何発か弾丸を放った。

弾丸は激しい発砲音を鳴らすがアミティエのわずか横に過ぎていく。

「クッソ・・・こちとら止まって欲しいだけなんだけどな!!」

「諦めてください!!妹を止めないと世界が」

"マッハ"

"高速化"

ファングの横を高速で過ぎるバイクが二台通った。ファングはその一瞬で誰か見分けることができた。

「テイカーさんと・・・EXEきゅん?」

「何だその"きゅん"って。」

「今そんな話してる場合か。」

二人をテイカーが小突くと、アミティエの元へとテイカーがバイクを走らせた。

「俺たちが止めなきゃいけないのは"キリエ・フローリアン "。あの人違ったでしょ?」

「違った!!」

「違った!!じゃねーだろーがよおおおおお!!」

EXEからドロップキックを見舞いされるファングをよそにテイカーはアミティエがバイクを止めたことを確認した。

「アミティエ・フローリアン 。あなたの妹のことは聞いている。」

「それがどうかしましたか?まさかうちの妹が誰かに」

「まだ被害は出ていないが止める必要がある。そこまで手を組まないか?」

「はああああああ!!?」

ファングは驚いてEXEを見るがEXEはそのまま首を縦に振った。

「目的の聴取が先って言ったでしょ?それに戦闘はやむを得ないならとも。」

「言ったっけ?」

「しかもお前は秘密裏に動いた俺たちの姿を露わにした。お前はバカか。」

「嘘!?」

「ニュースに出てたよ。」

「ヤバイじゃん!!?俺有名人!?」

やっぱりコイツ聞いてなかったし考えてもなかった。テイカーとEXEは頭を抱えた後にバイクを止めたアミティエへと近づいた。

「俺たちは君と争うつもりはない。少なくともあいつ以外はな。」

「待ってよ俺も戦うって言われてなかったら」

EXEがファングの会話を止めるように首に十字固めを決めた。ファングは痛い痛い!!と言わんばかりにEXEの腕を何度も叩いた。

「分かりました。協力します。」

「感謝します。」

十字固めを外すとファングはアミティエの元へと向かった。

「ごめんねアミティエ。」

「いいえ、気軽にアミタ。とお呼びください。」

EXEはアミティエとファングの肩を叩いて、バイクの元へと向かった。

「さあ、行こうぜ!!」

「あぁ!!」

「アミティエさん。サポートはお任せします!」

「あ・・・アミティエさん?」

テイカーから初めて呼ばれた呼び方に困惑するも、それぞれがバイクに跨って高速道路をそれこそ"光の速さ"で駆け抜けていった。



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7話

-東京の高速道路-

この日は夏休みに入りたてということもあって、大都会の高速道路は夜遅くでも多くの車がその足を走らせている。

八神はやてを乗せた月村俊の車もその数多くの車に紛れて車を走らせていた。

「すずかちゃん達、お風呂入るん待っててくれるみたいです〜。」

「そっかー。それは良かったじゃないか。」

はやては調査もあったためなのはたちに遅れる形で"オールストン・シー"に向かう形となった。そして俊もまた盗難された資材などの調査に向かっていたため遅れて皆と合流する形になったらしい。

はやての携帯が鳴り、それを手に取るとそこにはミッドチルダの文字で書かれた文章が送られていた。

管理局東京支部にいる上司"クロノ・ハラオウン"からのものだった。

今回の事件と俊の資材の事件はどうも関係があるらしく、それに関する情報があればはやても伝えるようにしている。

「容疑者はこの人ってわけやね・・・。」

「そちらで何か分かったのかい?」

運転する手が離せない俊は一瞬そちらを見るが、はやての持つ写真までは確認できなかったようだ。

「はい、まだ手掛かりだけって感じですけど。」

そう話していた時だった。後ろのクレーン車が俊の車に突撃するようにスピードを上げてそのまま直進してくる。

「うわっ!!」

俊はその異変に気付きすぐにハンドルを右に切った。はやてはそのまま振り回されるようにドアに肩をぶつけた。

クレーン車とその後ろに続いた車はそのまま直進して走っていく。

「大丈夫かい?」

「は・・・はい。」

「ったく、危ないなぁ。」

横目を逸らしたその時だった。クレーン車達はそのまま道を遮るように横に旋回して急ブレーキをかけた。

俊の車はそのまま旋回した車たちに突撃していく。

「危ない!!」

はやてがそう言うのも遅かった。そのまま俊の車はクレーン車に直撃した。フロントガラスは割れて衝撃で二人はエアバッグに叩きつけられた。

「大丈夫かい・・・?」

「はい・・・。それより早く!」

心配する俊を急かすように二人は車から降りていく。車の破損部分から漏れるガソリンはそのまま気化して火元へと近づいていく。

「飛べ!!」

どこかからの声に応えるように俊ははやてを抱えて前にジャンプした。その時後ろの車は爆発して大きな炎を燃やした。

「っふう、危なかったね。」

「随分と危険な賭けだったがな。」

二人は倒れこみ声の方へと目を向けると、二人の戦士だった。

「あなたたちは・・・?」

「久しぶりだねはやてちゃん。」

一人の戦士が二人に手を差し伸べる。はやてはその声に覚えがあった。

「黒森さん!?」

「そそ。こんな形の再会とはね・・・」

「話は後だ。さっさと片付けるぞ。」

「ですね。月村さんは先ぃ避難しといてください。」

俊ははやての指示に従うようにそのまま走り出した。

 

-八神とイリスが戦闘を始めた-

その姿を遠くから見つめる影があった。

アクートはそれをビルの遠くから座りながら見つめていた。そこに二人のガンバライダーも戦闘を始めていた。

「さて、そろそろ向かうかな。」

アクートが腰を上げて立ち上がると、そこに一つの回線が入った。イリスたちの回線すらすり抜けて自分のところにハッキングできる相手などそうそうにいない。となれば、管理局でも思いつく人間は一人だった。

「エイミィさんか。」

「名前は知って頂いて光栄に思います。とでも言えばいいかな?」

エイミィはそう返すと、リンディへと回線を開いた。

「ガンバライダーアクート、あなたに聞きたいことがあります。」

どうぞご自由に?とアクートがリンディへと手を向けるとリンディは話を続けた。

「あなたはガンバライダー"ロード"についてご存知?」

「ああ勿論。」

リンディはエイミィやクロノと目を合わせると話を続ける。

「その人についてGRZ社が調べているわ。あなたが知る情報が欲しいのだけど」

「いくら世話になったあんた達とは言えそれは言えないな。」

リンディたちは衝撃が走った。自分たちに覚えはないが彼は面識があるという。思い当たりは?どこで?そんな疑問が走る中アクートはゆっくり歩き出す。

「俺はあなたたちから戦うことの意味を貰った。だが今はそれに逆らわせてもらう。」

そう言い通信を切ると、アクートはゆっくりと体を浮遊させる。

「まったく・・・相変わらずすごい人たちだよ。」

そう言い、敵のいる戦地へと一気に加速していった。

通信を終えたエイミィたちの現場は騒然とした空気となった。

「どういうこと・・・?」

「僕たちが彼らと手を組んでいたと?」

騒然とする中、ドアのノックが鳴る。そこに入ってきたのは二人の男女だった。

「来たか。アルフ、ザフィーラ。」

「あぁ、敵は?」

「現在交戦中だ。すぐに現場に向かって欲しい。」

クロノとアルフ、ザフィーラがそう話すと二人はそのままドアから出て走り出した。

「頼れるでしょ?」

「あぁ、だな。」

クロノと通信士とランディがそう話すとまたモニターへと目を向けた。

 

二人の戦士ははやてを守るように前に立つと、そっと一人の戦士が後ろを向く。

「紹介が先だったな。俺はガンバライダーデュアル」

「そして俺はナハト。よろしくね。」

「あなたたちが報告書にあった・・・。」

はやてたちの前に先ほど炎を上げた車たちが変形して、そのままメカへと姿を変えた。

「これ何ンスフォーマーだよ。」

「いいのか?そんなメタ発言して。」

はやて目掛けてその銃口は向けられる。デュアルとナハトは空中へと飛んで、それぞれの武器を召喚した。

「連携を合わせろ。」

「オーライ!こっちは任せて!」

ナハトはガシャコンスパローを、デュアルはソニックアローを召喚して、機械へと何発もの光弾を飛ばした。

「リインはおらんから不安やけど・・・なんとかしよか。」

はやてはそのまま魔法陣を開くと、射撃を加える二人とともに何発かの射撃を加えた。

「これで・・・」

「どうだ!」

"ギリギリ クリティカルフィニッシュ"

"レモンエナジー"

二人はお互いのアイテムを装填するとそのままメカへとさらにエネルギーの強い射撃を何発も見舞いした。

「やったか!!」

「まだや。」

土煙から何発も放たれた弾丸ははやて目掛けて飛んでいく。

はやてはをそれを回避するように空中へと回避する。

「結界発動!!」

はやての足からは魔法陣が開かれて、そこから広がる結界で空の色から何からが変わっていく。

「これが魔法か・・・。」

「油断してる場合か!!?」

その刹那、感心する彼らの背へと斬撃が飛んだ。その斬撃をデュアルはソニックアローで防いだ。

「アクート・・・!!」

「そんな目で見てくれるなよ・・・同じ多重人格同士だろ!?」

アクートはデュアルの腹を蹴って吹き飛ばすとそのままデュアルはビルへと叩きつけられた。

「アクート、目的は忘れないようにね?」

「分かっているさ、貴様も早急に頼むぞ?イリス。」

そこへと現れたイリスはデータのように自分を投影してアクートへと話しかけた。はやてのデータにもその少女のことは入っていた。

「時空管理局人事部所属、八神はやてです。そちらの居住世界は」

「答える必要はないな!」

アクートは魔法陣を開き、そのまま光弾を放った。デュアルとナハトはそれをはじき返した。

「あんたがこの事件の首魁やね。」

「首魁だなんて人聞きの悪い。あなたのその"闇の書"を借りにきたのよ?」

そう言い、乗っていたクレーンはそのままはやてへとワイヤーを放った。はやてはそれを回避して何発も光弾を放つ。しかし

「効いてない!?」

「あなたたちのことは調べたんだから当然よ。」

クレーンから飛ばされたアームははやて目掛けて飛ばされるがそれは魔法陣によって防がれた。

「っ!!」

「はやてさん!!」

はやてはそのクレーンに押されてそのまま後ろへと退いていく。もう一つのクレーンからはアームが飛ばされた。そしてそれもはやてのもう一つの魔法陣めがけて放たれた。

「っっ!!」

「クソ!!」

向かおうとしたナハトをアクートが剣で防いだ。

「邪魔すんなああああ!!」

「っそ!!」

アクートを蹴飛ばして退かせると、そのままガシャコンスパローをはやてを抑えているアーム目掛けて投げた。その位置はギリギリではやてにあたる距離だった。

「っ!!」

「まったく!!」

アクートは一気に走り出してガシャコンスパローへと近づいた。そのスピードは走るごとに増していく。

「アイツ!?」

「何を!?」

デュアルとイリスが衝撃が走る間を見ず、アクートはガシャコンスパローを蹴飛ばした。蹴飛ばしたガシャコンスパローはクレーンへと突き刺さり、そのまま消滅した。

「ちょっ!!?何してんの!?」

「そこにいたお前が悪い。」

そう言ってる間にはやての魔法陣は砕かれて、そのままアームに突き飛ばされた。

「はやて!!」

「待て!!」

デュアルとナハトが向かおうとした瞬間、アクートがガンガンセイバーを召喚して二人に向けた。

「行かせると思うか?」

倒れ込んだはやてに向かってゆっくりワイヤーが近づき手に持っていた夜天の書へと近づいていく。

「あか・・・ん。」

その瞬間、アクートとイリスの手が止まった。その瞬間、ナハトとデュアルは同時にアクートに攻撃を与えた。

「っ!!どういうことだ・・・。」

「結界内に入って来た・・・?この反応はキリエじゃない。」

そこへと走ってくるのはイリスには最も考えたくない相手だった。

「まさか・・・アミティエ!!?」



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8話

はやて達の元へと向かうアミティエ、ファング、EXE、テイカーはバイクのスピードを一層加速させて夜闇を照らしている高速道路を駆けていく。

「これ間に合うかな!?」

「間に合わせます!!」

ファングとアミティエが並走してそう話すと、テイカーもまたその横を並走した。

「今は結界内で相手の罠の可能性もある。気をつけてかかれ。」

「んなこと言われなくてもわかるっしょ。」

テイカー、EXEがそうやりとりしているとファングはそのままバイクの速度を上げた。

「罠であろうと知ったことじゃないよ!僕らは今やるべきことをやんなきゃいけないんでしょ!?」

その言葉を聞いたアミティエは俯いてファングと目を合わせた。その視線は不安そのものを煽るようだった。

「私の妹が、キリエがこんなに大勢の人を巻き込んで・・・本当にごめんなさ」

「良いってことよ!!」

ファングは更に寄ってアミティエへと手を上に突き上げた。

「うまく言えないけどさ、あんたがそう思ってるのは誰よりも妹さんのことが心配で心が優しいって証拠だ。それは誇りに思って良いことだよ!」

「そうそう。それに俺たちは俺たちで止めなきゃいけない馬鹿が何人かいるから、目的は違ってもその道筋は同じって話さ。」

EXEとファングのその言葉に少し笑みを浮かべると、テイカーはフッと笑ってファングへと寄った。

「別に良いことを言うことはいいんだが曲がるときに気をつけろよ?」

疑問符を浮かべたファングはふと前を見ると数メートル先は高速道路が綺麗なカーブを描いていた。

「ああああああああああ曲がれないいいいいい!!!」

「だから言ったろうに。」

「絶対わざとだろ!!あっ待ってマジでヤバイ!!」

子供のように怒りをぶつけるファングにアミティエが笑みをこぼして近寄る。

「早く手を下ろしてください。ほんとにぶつかります!」

「あっ、そうだったそうだった。」

ファングが急いで手を下ろす様を見て三人は笑いながらその速度を更に早めた。

 

アクートはデュアル、ナハトを相手にたった一本の剣で二人の攻撃をいなし続けた。

「本気で戦う気がないのか?」

「さあな。少なくとも俺たちに劣勢とも言える状況だ。」

デュアルの質問に少し濁した形でアクートは答える。

ただでさえ二人の強豪ガンバライダー 、一人のSSクラス魔導師。彼らにとってはもともと劣勢だったにも拘らずさらに増えるとなると状況は芳しいものではなかった。

「さっさと手を打ってしまわないと」

「なら俺たちの優勢はもらったも同然だな!!」

ナハトがガンバソードを召喚し一気に斬りかかると、アクートはその剣に沿うように剣の腹をナハトに向けた。

「なっ!!」

「優勢なんて誰が言った?」

腹を向けたその剣はナハトへと直撃、間髪問わず地面へと叩きつけられた。

「お前の相手は俺だ!!」

デュアルがガンバブラスターを召喚し何発もの弾丸を加えると、アクートは剣で弾きながらその足を後ろへと進めていく。

「よし!」

「そう思うか?」

アクートがそのまま空中へと飛ぶと、デュアルもまたその銃口の角度を上げていく。

「だから言ったろうに?」

「なっ!!」

弾丸は空気の抵抗で少しずつスピードを緩めていく。アクートはそれを見て武器を投げ捨てた。

「それくらいの戦いも出来ないようではガンバライダーとして認めるわけにはいかんな?」

"ヒッサツ フルスロットル"

「トライドロップ!!」

アクートがデュアルめがけてトライドロップを放つと、デュアルはその銃を投げ捨てたがもう遅い。その蹴りは彼の眼前まできていた。

-終わった-そう悟り抵抗をやめた。呆然とするデュアルへと一撃の蹴りが迫った。

"スキャニングチャージ"

"ヒッサツ フルスロットル チェイサー"

"オレンジ スパーキング"

その時だった。三人の蹴りによってアクートが放ったトライドロップは弾き飛ばされ、そのまま地面に叩きつけられた。

叩きつけられたアクートは小さく舌打ちして立ち上がった。

「少し遅かったか。」

「貴様の遊びが効いたよ。アクート。」

「こっからは五人で相手だ。」

「僕の汚名返上線といこうか?」

デュアルの前にいたのはテイカー、EXE、ファングの三人だった。

 

ワイヤーで括り付けられたはやては力強く夜天の書を握りしめた。

「あか・・・ん。」

ワイヤーの力は強まっていく。締め付けられていくはやてへのダメージは想像を絶するものだった。

「早く抵抗しないで渡してよ?じゃないと」

メカのアームははやてをおさえて、その手の中に入れ込んだ。

「あなたの闇の書以外をバラバラにしないといけないじゃない?」

「渡さ・・・へん。」

イリスは大きくため息ついて、マシンへと指示が飛びアームの力は強まった。

握りつぶそうとしたその瞬間、遠くからはやてに向けて声が聞こえた。

そしてそこに向かってエンジン音が鳴り響く。

「はやてさん!!そのまま動かないで!!」

「えっ?」

先ほどまでびくともしなかったマシンへと少女が剣を振り一刀両断した。

はやてを抑えていたアームをそのまま叩き斬った。

「きゃああああああああああああ!!」

爆炎と爆風の中はやてはそのまま地面へと落ちていく。

すぐさまはやてを拾い上げると少女はそのまま後ろへと下がった。

そして、向きを変えるとファングたちはそちらへと寄った。

「アクートが与えたヒントで俺たちもこれの攻略がわかった。」

"マイティ タドル ギリギリ クリティカルフィニッシュ"

ファングたちから放たれた一閃はマシンを真っ二つに叩き斬った。

「どういうことだ?」

「あれだけのヒントでそこまで解析するととはな・・・。」

マシンは固まっていびつな形で七人の前に立ちはだかった。アミティエは動くマシンの残骸へと目を向けた。

「聞こえてますか!?私の大事な妹を連れ出した人。」

イリスはその声を聞き、冷たく暗い視線を基地から向けた。

「あなたはきっとキリエの願いを聞いてくれていると思います。」

アミティエは近くにあった鉄を拾い上げて片手で持つと、その鉄片は青い大型の銃火器へと変化した。

「それについては感謝します。ですが・・・人様に迷惑をかけるようなことは私は絶対許しませんので!!」

銃火器から放たれた弾丸は動く鉄を薙ぎ払い、はやてたちの眼前を火の海へと変えた。

「これがフォーミュラの力ということか。」

「油断してる場合か!!」

ナハトとファングが一気に斬りかかると、アクートはそれを空中に飛んで回避した。

その瞬間、頭上から何発もの弾丸が降り注ぐ。アクートはそれを弾き返し、フォトンブレイカーを召喚した。

"Buster mode"

機械音とともに一撃の光線がフォトンブレイカーから発射された。それを銃撃していたテイカーとデュアルは回避する。

"ファイナルベント"

「トドメは俺だ!!」

"ファイナルベント"

「面白い。」

EXEは赤い炎を纏い、アクートは漆黒の炎を纏った蹴りがぶつかり合い、その場に衝撃と爆破を生んだ。

「っ・・・。」

その爆破の煙から落ちてきたのはEXEだった。アクートは悠然とドラグブラッカーに乗って降りて来た。

「なんだこいつ・・・」

「強すぎない?幾ら何でもバケモンでしょ!」

テイカーとファングの言葉にアクートは少し笑みをこぼす。

「当たり前だ。対ガンバライダーとして作られた俺にお前たち五人程度が勝てると思うなよ?」

「だったら!!」

アミティエが一気に剣を振るうとアクートはイクサカリバーを召喚してそれを防いだ。

「あなたもキリエの願いを聞いてくれているのですか?」

「当然だ。」

アクートはイクサカリバーのトリガー引いてアミティエへと弾丸を放つ。その弾丸はアミティエの腹の横を通り過ぎた。

「彼女の自らの守りたいものを救いたいという願い。俺にはよくわかる。」

「ふざけるな!!」

ファングが一気に近づいて斬りかかるとアクートはそれを真正面から受け止めた。

「お前みたいに世界を滅ぼす奴がいるから世界に平和が訪れない・・・そんなこともわからないのか!!」

アクートは少し黙り込むと、片手でファングの腕を掴んだ。

「お前は俺と同じ道を歩むな。」

「っ!!」

そのまま投げ飛ばされると、ファングは地面に倒れこんだ。

「撤収よ。アクート。」

「あぁ、キリエの元に向かうとしよう。」

アクートが飛び去ると、五人はその影を見つめた。

アミティエはすぐさまはやての肩を支えた。

「大丈夫ですか?」

「は・・・はい。」

よかった。とボロボロのはやてを両手で抱きかかえるとアミティエは自分のバイクへと近づいた。

「彼女たちの目的はあなたの夜天の書。そしてその首魁はさっきの女の子と私の妹です。」

「は・・・はぁ。」

「ですので!」

はやてを自分の背中に乗せると、バイクのエンジンを鳴らした。

「あなたのご友人、なのはさんとフェイトさんの元までお連れします!!」

「えっ・・・ええええええええ!!?」

そのままガンバライダーたちの目の前を疾走したバイクはすでに遠くまで向かっていた。

「なんか・・・無茶苦茶な奴だな。」

「だね。」

テイカーとナハトがそう話していると、下を向いているファングにEXEが手を差し伸べた。

「負けたのは悔しいだろうが、今はそれどころじゃない。」

「あ・・・あぁ。」

ファングはその手を取ると、すぐバイクに乗った。

-自分と同じ道を歩むな-ファングの耳にはアクートのあの言葉が焼きつくように再生されていた。



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9話

時空管理局の無限書庫内ではリョウヘイとユーノが資料探しに明け暮れていた。

今のところさのガンバライダー"ロード"について書かれた資料は一つも見つかっておらず、二人にも少しずつではあるが焦りが見える。

ユーノはずっと高い層を探し続けるリョウヘイへと言いたくない一言を投げかけた。

「ホントにそのロードってライダー、存在してたんですか?」

「恐らくな。」

確証のない発言、そして根拠のない言葉。だが彼の目にはどこか確信に近いものを感じた。恐らく彼なりに何かを感じてそのガンバライダーについて調べているのだろう。

GRZ社ですら発見できなかった資料、そんな代物が見つかるとしたら無限書庫だけだと考えたのだろう。

だが余程の情報でない限りは揃う無限書庫ですら見つからない情報であることも考えられる。ここまで探しても出てこないと言うことは存在しない。ということも軸に加えなければならないことをユーノ、そして探し続けるリョウヘイはどこかで覚悟する必要があった。

そんな中だった。今回の容疑者を追うなのはとフェイトからの通信が入る。その音にリョウヘイは空かさずモニターを開いた。

薄暗い無限書庫内に小さくモニターの光が灯った。

「リョウヘイさん、そちらはどうですか?」

「ダメだ。今のところなんのヒントも見つからない。」

リョウヘイは話してる最中にあることを思い出した。

「あれ・・・俺。」

「どうしたんですか?」

「そっちに部隊を送ったっけ?」

ずっこける二人をよそにリョウヘイは真っ黒な髪の毛を指に巻きつけた。

先ほどのグダグダ戦術説明から何転もしたからか彼もどこに誰を置いたのかごちゃごちゃになっていたのだ。

「それなら心配ないよ。」

葉月からの通信が入り、リョウヘイはそちらへと耳を傾けた。

「今ジーさんと助っ人を呼んでる。」

「ジーさんと・・・助太刀?」

困惑した表情を見せるリョウヘイへと片方から通信が入る。

「任せてくださいリョウヘイさん!こっちはなんとかします!!」

「ジーさん・・・ジーさん・・・あぁ、そういうことか。」

納得した顔のリョウヘイに全員の頭に疑問符が浮かんだ。そこへと後ろから一つの大きな笑いが聞こえた。

「タケシチロウさんのガンバライダー名となんか間違えられてんのホントおもろいわぁ!!」

高らかに笑う横で男はバカみたい。とため息をついた。

「やめてください。これでは株が下がります。」

そこにいる二人を見てリョウヘイはモニター越しに大きな声で驚いた。煩いと二人は耳元を塞ぐ。

「斬武にザルニス!?お前ら何してんだ!!?」

「不甲斐ないリーダーのサポート役に回れとそこの新人からのご指名を頂きましてね。」

「はぁ!!?」

リョウヘイは怒号を混ぜたような声で叫んだ。葉月を見ると彼女はあくびをしながらリョウヘイを見ていた。

「なんですか?人のあくびをまじまじと・・・そういう性癖?」

「違うわ!!」

リョウヘイの焦りと怒りが混じったような顔を見て更に斬部-水谷 キナミ-の方を向いた。キナミも同じくあくびをしていた。

「やっぱアンタそういう性癖やん!」

「違うつってんだろ!!」

焦ってザルニス-滝川 コウジ-の方を向くと彼は興味なさそうによそを向いていた。そしてアホヅラでリョウヘイの方を向いた。

「お前もあくびしろよ!!」

「はぁ・・・頭悪く見えますよリョウヘイさん。」

滝川の言葉にリョウヘイはコホン。と一つ咳き込んだ。

「今回のミッションの説明を」

「もうしました。」

葉月の言葉にリョウヘイは愕然とする。そしてソファに座り込む葉月へと疑問符が浮かんだ。

「お前何してんの?」

「何って・・・待機ですよ。」

はぁ!?とリョウヘイは驚きを隠せず声を漏らした。コウジとキナミも驚きの表情を見せた。

「何してんねん!!」

「どういうわけですか?」

二人の質問に葉月は自分のガンバドライバーを見せつけた。彼女のガンバドライバーはセイオウによって破壊された為使うことが出来ないのだ。

二人はあぁ。と納得したように頷いた。

「これが破壊されたから今は切り札を調整中だ。だろ?リョウヘイさん。」

「アレを本当に使うのか?」

あぁ。と葉月はソファに置いてあったクッションを撫でた。葉月の目はどんどん静かに悲しそうな目で自分のドライバーを見つめた。

彼のあの時の言葉"計画のために消えてもらう"その計画が何なのか、誰が関わっているのか。彼女には見当がつかない・・・だけど

「僕は彼らを止める義務がある。それは朱崎が自分の師であることもだし、何より・・・僕の馴染みから生まれたアクートを許すわけにはいかない。」

「えっ、お前今なんて」

その瞬間、葉月へとリンディが声をかけた。リンディは奥で何かを作っていたらしい。

「葉月さーんお茶でもいかが?」

「あっ!飲みます飲みます!!」

そう言って彼女はリョウヘイの言葉を遮って通信を閉じた。そこに意味深な言葉を残されて困惑するリョウヘイとその他ガンバライダー陣が呆然としていた。

「あの・・・」

そこへとなのはたちが声をかけた。リョウヘイは少し驚いて後ろを向いた。彼女たちの困った表情がモニター越しでも分かる。

「そうですね。我々も向かいましょうか。」

「じゃあ、俺たちもここで失礼します。」

無言で止めようとしたリョウヘイにキナミが追い打ちをかけた。

「あとアンタの嫁さんが心配しとったさかい、連絡取ったりや。」

「はぁ!!?」

驚くリョウヘイをよそに三人のガンバライダーからの通信が途切れた。リョウヘイは呆れるようにため息をつく。

「どういうことなんだよコレ・・・。」

アクートと葉月の関係性、そして様々に絡まったものが彼をさらに縛るようにも感じた。

通信を切ったなのはたちは三人のバイクに連なるように飛翔した。

「ちょっといいですか?」

「何ですか?」

フェイトの言葉に滝川の変身したガンバライダー "ザルニス"が答える。

「リョウヘイさんってどんな方なんですか?」

その言葉に三人は黙り込み、お互いに目を合わせた。

「アホやんな。」

「そんな直球で言わなくても・・・」

「事実ではありますね。」

三人の言葉に二人は困惑する。だが三人はさらに会話を続ける。

「でもアレがリーダーだからこそ僕らはここにいる。」

「せやね。」

「間違い無いですね。」

三人の言葉にホッとした。あの人の言葉があるから、あの人への信頼があるからこそ彼らは動くのであってそこに不変の意志があることは彼女たちにも伝わった。

「でもアホやんな!」

二人ははぁ・・・。とため息をつく。彼女たちのこの意思も変わることはなさそうだ。

 

戦闘空域へと向かう-二人の獣-アルフとザフィーラは空を滑空しながら主人はやて、そしてフェイトの元へと向かっていた。

「ザッフィー速度は上がらない!?」

「これが限界だ!!」

風のノイズもあってか彼女たちは叫びながら会話を続ける。

その時だった。後ろから忍び寄る影が彼らを追跡する。彼らも後ろも見ずともそれは確認できた。

「ザッフィー!!」

「おう!!」

彼らの滑空するスピードを上げるが、後ろから近づくヘリの影はどんどん近づいていく。そして彼らはとうとうヘリが追いついた。

「ぐっ・・・!!」

「ああああああ!!!」

ザフィーラとアルフは爆破したヘリから出た鎖で繋がれてそのまま地面へと突き落とされた。そこから一人の少女がヘリから降下していく。

「ごめんね。少しの間眠ってて!」

少女はその桃色の髪をなびかせて一気に加速した。そして標的の元へと一直線に飛んで行った。

ザフィーラとアルフはそのまま鎖を外そうと地面でもがいていた。

「この鎖・・・」

「取れない!」

鎖で繋がれた二人は自分たちの拳を振るうこともできず、魔力で引きちぎりうともそれも不可能だった。

「やれやれ・・・、俺の力ではあんたらの主人は預けられないと言ってたんだがなぁ・・・。」

そこへと忍び寄る一つの影。それは人の形をしておらず、青い鎧と赤い複眼、そして黄金のベルトが月夜に照らされてより輝いていた。

「お前は・・・」

影はそのままザフィーラたちへと近づいていく。そして鎖で繋がれた二人は終わりを危惧した。

-俺の使命は滅亡じゃない-

そう言い残して二人を繋いでいた鎖をバラバラに砕いて戦士はまた戦場の光へと戻って行った。

青い鎧の戦士はため息をついてもう一人の自分に笑いかける。

-俺はお前のように残虐な悪を演じれないらしい-



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10話

セイオウとデウスはキリエと別行動でガンバライダー 、そして今回の目的を果たすために動いていた。この二人の場合、別行動というよりは移動した果てに彼女とはぐれてしまった。ということが事実であるわけだが。

広い高速道路には車が一台も通っておらず、二人のガンバライダーが飛ぶには少々広すぎるほどだった。

セイオウとデウスの間には人が二人から三人ほど入れるほどの隙間が空いており、彼らはその距離を維持しながら進んでいく。

二人はここ三十分ほど無言で飛翔しており、耳には通り抜ける風の音だけが響く。デウスはあまり話す性格の人間ではないので、セイオウもまたそれに合わせている感はある。

そんな時に口を開いたのはセイオウだった。

「ねえ、妙だと思わない?」

「妙?」

デウスはそう投げかけたセイオウへと耳を傾けた。

言われてみれば管理局の人間やその他の人員が見当たらない。だが、おそらくこの男が言いたいのはその妙な雰囲気ではないことはデウスもすぐに察することが出来た。

セイオウは顎に掌を被せるように話を続ける。

「イリスはアクートと行動し、キリエちゃんは俺たちと行動する予定だった。よく考えれば不思議な話だ。」

「確かにそれはそうかもしれないな。」

力のないイリスがセイオウやデウス以上に出自もわからなければ現在すら分からないアクートと共に行動するなどリスキーな話だ。尤も、彼女が彼の出自を知るほどの知恵なのであればまた別の話だが。

だが、ここでデウスにも疑問が生まれた。

「俺たちの行動が筒抜けだとでも言いたいのか?」

この話がもしイリスに筒抜けでこの二人がしようとしていることも筒抜けであるなら、彼らがここまで戦ってきた意味はなくなってしまう。

そんな状況の中セイオウはさぁ?と首を横に振った。

セイオウもこうは言ったものの推測の域の話であり、彼女を間違いなく疑えるほどの証拠もアクートに関するヒントを得たわけでもない。犯人だと分かるのであれば彼もこの場ではっきり言ってやりたいだろう。

「これに関しては何とも言えないし次の戦いで確かめる必要があるんだけどね。」

「アンタはまだ"アクートを信じている"。という推測で間違いはないか?」

セイオウは軽く頷いた。葉月が言ったアクートの存在。そしてこれまでの経緯を考えればこの策も容易に動いてくれるだろう。

「あぁ、もちろん信じているし彼には期待している。だがその為にも」

必要なのだ。アクートと同じく謎を秘めたガンバドライバー、そしてそこ秘められた覇を成す"Lord"の力。

その為なら彼は自ら育ててきた弟子とも戦う覚悟など出来ている。

二人は速度を上げて敵地へと一気に乗り込んでいった。

 

とあるホテルの一室。そこに二人はいた。

葉月はリンディの淹れたお茶をゆっくり味を確かめるように飲んでいた。

一方リンディはお茶に大量の角砂糖を入れて飲んでいた。

「角砂糖入れられるんですか?」

「えぇ。こっちではラテっていうらしいの。」

ラテではあるのだがおそらくこのお茶はほとんど砂糖の味しかしないのではないか?少々の疑問符を浮かべて葉月はお茶を嗜んだ。

葉月がもう一口お茶を飲もうとしたそのとき、そこへ一人の少女がホテルへと入ってきた。少女は急いでいたのかどこかで転けたのかメガネが顔から少々ずれていた。

「大丈夫ですか?」

「えっ?あぁごめんなさい。」

少女は少しの照れを隠しながら葉月へと一礼した。

それを見たリンディはフフッ。と笑みをこぼした。

少女の綺麗な緑色の髪は今飲んでいる抹茶のように透き通っていた。

「マリエル・アテンザです。あなたのベルトをしっかり調整しておいたので使えますよ!」

マリエルは満面の笑みで葉月にガンバドライバーを渡した。アハハ。と彼女の笑顔に圧倒されるように葉月は笑みを作った。そして彼女からガンバドライバーを受け取り手に取った。

ガンバドライバーを見た瞬間、彼女は自らに様々な重いものが降り注いだ気がした。

これは本来自分のものではなく与えられた"力"なのだ。葉月にはこの重みを自身でも感じ取ることが出来た。

彼女も知りたい。あの世界消滅の瞬間に何があったのか。そして記憶を周囲が失っているにも拘らず自分だけが何故記憶を得ているのか。

その為にはこの力を使ってセイオウ、そしてアクートを自らの手で討ち取る必要がある。その覚悟など

「葉月さん。」

「はい?」

葉月のすっとぼけたような声にリンディは笑みを浮かべて彼女の肩を叩いた。

「あんまり気負っちゃダメよ?確かにあなたにも背負うものがあってそれを果たさなきゃいけないという使命感も分かるけど、絶対に気負って一人で抱え込んだら負けちゃうから。」

「リンディさん・・・。」

葉月はさっき降りていた重い使命やアクートやセイオウに対する肩の荷が少し軽くなった気がした。彼女もリンディの言う通りだと頷いた。

マリエルも葉月の手を繋いで握りしめた。彼女の小さな手にも重さを感じて、強く握った手から温かいパワーを貰えそうなほどだった。

「大丈夫です!私が調整したんですからパワーは十分ですよ!」

「ありがとう・・・マリエルさん。」

マリエルは頷いて手を離した。そして葉月は手にガンバドライバーを握ってそのままドアへと歩いて行く。

「気をつけてね。」

そう小さく呟いたリンディにピースサインを送り葉月はそのままその部屋を去って行った。

 

なのはとフェイト、そしてジー、ザルニス、斬武の三人のガンバライダーはそのまま飛翔を続ける。今のところ敵の気配はなく、彼女たちが飛翔していても物の怪の一つも出はしない。

「本当にここなのでしょうか?」

「ポイントは間違い無いと思うんですけど・・・。」

そうなのはとザルニスが話していた時だった。彼女たちに突如空から何発もの銃弾が雨のように降り注ぎ、忽ち砂煙へと包まれた。

「奇襲ってのも大変なのね。」

「そうですね。気づいていなければ危ういところでした。」

目が眩むような砂煙から何発もの太いレーザー砲が放たれ、少女の横を通り過ぎた。五つのそれぞれの光は空で綺麗に消えると、砂煙の晴れた先から無傷の五人がいた。

「サイコフレームのポンコツがこんなとこで役立つとは思わんかったわぁ。」

「次その言葉を言ってみなさい。あなたの命はありませんからね?」

「でも助かったのは事実だな。」

空中を舞うメロンディフェンダーは行け。というザルニスの合図とともに少女へと向かってくる。

少女はそれを銃で撃ち落として、そのまま地へと降りた。少女の服は先ほどのレーザーで焼けた服の汚れを払った。

「あーあ、これ気に入ってたのになぁ・・・。」

「キリエ・フローリアンさんですね。」

フェイトへ少し誇らしげにえぇ。と答えると彼女の銃は変形して彼女へとアーマーとして装着されていく。

彼女を包んだ光が消えると、キリエは自分の色である桃色の鎧を纏ってなのはたちへと銃を向けた。

「来るぞ!!」

ジーたちが回避すると、彼らのいた地面から鉄の鎖が突き抜けて生えてきてなのはを縛り付けた。

なのはは全身に魔力を纏って引きちぎろうとするが、その力は強くなのはの魔力ですらちぎることは難しかった。

もがくなのはをよそにフェイトと斬武は一気にキリエに斬りかかった。

キリエは対の剣で見事に二人の剣を受け流してそのまま後ろへ下がった。

なのはは片手でレイジングハートを持ち、キリエへと砲身を向けた。

「ディバイン・・・バスター!!!!」

少女が片手で放った一筋の光は剣で防いだキリエを退けて、彼女の剣に傷を入れた。

「なんちゅうパワーや・・・。」

「あんなの片手で撃てんのかよ。」

衝撃に開いた口が塞がらないジーと斬武へと二つの光が横を通り過ぎた。彼らの視線の先には赤と青のガンバライダーがいた。

「セイオウ・・・。」

「アンタか。デウスっちゅうのは。」

ジーと斬武は一気に斬りかかると、二人は回避してそのまま武器をジーたちに投げつけた。

「二人とも!!」

「お前の相手はこの俺だ!」

戦士は二人の元へと向かおうとしたザルニスへと飛びかかりそのまま倒れ込んだ。そして二人は同時に立ち上がり、ガンバソードを召喚した。

「アクート・・・。」

「そんな怖い顔するなよ?この状況を楽しもうじゃねえか。」

ジーはサングラスラッシャーを召喚すると、そのままセイオウへと斬りかかった。

セイオウはジーの攻撃をいなすと、その剣を蹴り飛ばしてジーを蹴り飛ばした。

"オメガドライブ"

"オメガドライブ ディープスペクター"

ジーはオメガドライブをセイオウはギガオメガドライブを放つと、二人の間には爆風が生まれ、そのまま二人とも倒れ込んだ。

「主役がまだ来てないんじゃパーティは始めらんないね!」

「主役?」

「あぁ、主役さ。この試練の要であり、最大の僕らの武器。」

困惑するジーとは別に斬武は一気にデウスと激しい空中戦を繰り広げていた。

「あんたらの目的を聞かせてもらうで!!」

「お前に答える義務なんてないな。」

「しらこいな・・・。そういうん一番嫌いやねん!!」

斬武が一気にデウスに斬りかかるが、デウスは蹴りで弾きとばし、そのまま側頭を腹へと叩きつけた。

「ぐっ・・・。」

「キナミさん!」

向かおうとしたザルニスの前にはデウスが銃を何発も撃ちつける。ザルニスはそれをマイティキックの炎で撃ち落とすと、そのままデウスへと蹴りを入れた。

「お前がどれほど強いかは知らんがなぁ?」

「っ!?」

デウスはその炎を受け止めてその足を持った。ザルニスはそのまま抜こうともがくが、デウスはそれを許さない。

「お前が強いのかは知らんが相手が悪かったな。お前じゃ俺には勝てない!」

カイザブレイガンを召喚すると、その片手を抑えた状態で銃を突きつけた。

逃げようともがくが、デウスの力は強くそう簡単には抜け出せるほどではなかった。

「じゃあな。」

「ザルニス!!」

デウスが引き金を引こうとしたその時だった。デウスに近づいた影はデウスの腹に拳をぶつけ、そしてザルニスの足が離れたことを確認すると、そのまま脳天に後ろ回し蹴りを見舞いした。

「ヴっ・・・。」

鈍い声を出してそのまま後ろへと引き下がると、ザルニスの前にはもう一人のガンバライダーが存在していた。

その目の緑色の複眼と深い青のアーマーに黒いボディ。

それはセイオウたちがよく知るガンバライダーだった。

「やっとか。」

「そのドライバーは!?」

アクートは驚いてその手を伸ばす。セイオウはほくそ笑んで青い戦士へと視線を向ける。彼らの目の前にいたのは以前セイオウに負けたブラットその人だった。

「ここからは」

そうだ。ここからは-反撃の時間-だ。



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11話

アクートたちの前に現れたブラットはセイオウへと挑発の手招きを加えた。

セイオウはその挑発すると彼女の手招きを見て再びソニックアローを構えた。

「案外早いヒロインの復活だったね?」

ブラットは左手で回していたウィザードソードガンを止めてその剣先を撫でた。

「その女扱いが後々後悔することを教えに来たのさ。」

ブラットはセイオウにそう吐き捨てると倒れていたザルニスと斬武に目を向けた。

「情けない戦い方しないでくれる?僕のせっかくの出番が台無しじゃないか・・・。」

ザルニスと斬武にそう吐き捨てると二人が大きなため息をついて鼻で笑った。

「誰が」

「情けない戦いやって?」

二人が立ち上がるとデウスに向けて銃を向ける。デウスは身構えて拳を胸元に構えた。

「この攻撃を受けてまだ立ってられるとはな。」

当たり前だ。と二人は言う。二人の目は先ほどよりも強く輝いているように見えた。

「後輩ちゃんにああ言われると気が立ちますからね?」

「寧ろ腹立ったわ。不甲斐ない奴に言われると尚更。」

ジーも立ち上がるとセイオウへと剣を向けた。

「さすがは俺の選んだ精鋭だ。ここで立ってもらわにゃ世界が見てらんないからね。」

嬉しそうなセイオウとは裏腹にジーの目は彼の首を落として持ち帰る覚悟の目だった。

ブラットと背中合わせに立つジーはそっとブラットに視線を向けた。

「ブラット、お前には感謝する。だが」

「セイオウは俺が斬るからお前はアクートを。でしょ?」

ジーが頷いたところを見るとブラットアクートへと剣を向けた。

「君に見せたかったんだ。僕が強くなった姿、あの頃の弱かった僕を見た君だからこそ僕を見極められる。」

「・・・。」

アクートは静まりそっと火縄DJ銃を召喚する。そして銃口をブラットへと向けた。

「なるべくならお前に戦って欲しくなかった・・・。お前には笑顔で世界を見て欲しかった。」

二人が激突すると赤と青の光が飛び散り、その場に大きな爆風を生み出した。

 

デウスは二人のガンバライダーに追われながら走り続けていた。

そしてそれを追うようにザルニスと斬武はバイクで追撃を続けていく。

「厄介な奴らを敵に回したもんだ。」

デウスはそう愚痴を吐いた。

二人はガンバライダー史上最大の決戦とも言われるアクートの決戦で生き残った精鋭たち。ガンバライダーに特別なダメージを与えられる彼とはいえ油断出来る相手ではなかった。

「さっきの借りは返させてもらいますよ!」

ザルニスはそう言いギガントを放ち、デウスの前に爆風を生んだ。

「逃さへんで!!」

斬武の腕から放たれたバグヴァイザーの射撃はデウスを射抜き、更に大きな爆風を生み出した。

「やったか!!?」

二人が喜んだのもつかの間、デウスはゆっくりと立ち上がった。

「そうだな・・・逃げるのもやめにしようか。」

デウスは一気に二人へと距離を詰めて反撃へと出た。

 

ジーとセイオウは空中で激しい攻防を繰り広げていた。

セイオウは紅の羽を広げ、そしてジーは漆黒の翼を広げて激しく剣をぶつけ合った。

「ブラットが主役だと?」

「あぁそうとも。俺たちの戦いに彼女はあってはならないものだ。」

自ら彼女のベルトを破壊して奪っておきながらよくまあそんな口が叩ける。そう思いながらブラットの方を見ると確実に蹌踉めき、先ほどまで三人を圧倒していたアクートの姿はなかった。

「どういうことだ・・・!?」

疑問を残しながらも再び斬りかかったセイオウの攻撃を避けてさらに追撃を加えていく。

一方でアクートはブラットの攻撃を回避しながら後ろへ後ろへ下がっていく。彼の戸惑うような動きは敵であるブラットにも伝わってくる。

「相手が僕だと乗り気にならないっていうのか!!?」

ブラットはアクートへと拳を振るうとアクートはその手首を掴んで一気に腕を寄せた。

振り回されるように引っ張られたブラットはその勢いのままアクートへと近づいた。

「そのベルトをなぜお前が持っている?」

「えっ・・・?」

ブラットをそのまま突き飛ばすとアクートはアームドセイバーを召喚しブラットへと近づいていく。

「それはお前が持つべきものじゃない。俺へと渡せ。」

ブラットはガンガンハンドを召喚すると、アクートへと銃口を向けた。

「君がどうであれ僕のやることは変わらない。」

アクートは俯きため息をつくとブラットへと近づいていく。

「俺はお前を殺すつもりはなかった。だがこうなった以上お前はここで死んでもらう!」

二人の武器は激しくぶつかり合い大きな火花を生んだ。

 

フェイトとキリエは街を背景に激しく剣をぶつけ合った。

フェイトの剣を弾きながらキリエは後ろへと後退りする。

「フェイトちゃん。ここは退いてくれないかしら?」

「えっ!?」

フェイトは突然の一言に驚いて一瞬剣が止まった。

攻勢が一瞬にして逆転して、キリエは一気に踏み込んでフェイトへと斬りかかっていく。フェイトはそれを防ぐようにバルディッシュで凌いでいく。

「私にはやることがあるの!今こうしてる間にも大切な人が待ってる!その為には今は退いてもらわないと困るの!!」

「ダメです・・・。」

フェイトは凌ぎ斬ると一気に踏み込んでキリエの斬撃を防いだ。キリエの踏み込んだ足が止まり、その場で凌ぎを削った。

「それは絶対ダメです!!もし私たちに出来ることがあるなら手伝わせてください!どんなことでも力になります。」

キリエの剣が止まるとフェイトは安心するように力を弱めた。

「優しいのね・・・。でも」

「っ!?」

そのままキリエが再び押し返すとフェイトは吹き飛ばされてそのまま背中をコンクリートに打ち付けて転がり込んだ。

「でも私の今やることは変わらない。私は今やることをやるのよ!」

フェイトが立ち上がり剣を再び携えた。

「それでも・・・。」

ザルニスと斬武、そしてジーを跳ね除けたデウスとセイオウがフェイトへと斬りかかった。

フェイトはそれを回避して空中で一回転した。

「そうだ。俺たちも」

「今やることを。」

"Exceed Charge"

"イクサーカリバーライズアップ"

銃撃を食らったフェイトの弾丸が紫色の三角錐に広がった。

それを受けて動けなくなったフェイトは外そうと必死にもがくが動けない為叫ぶことしかできない。

「ルシファーズハンマー!」

「イクサジャッジメント!!」

「っ!!」

その刹那、斬りかかったセイオウと蹴りを加える為に飛んだデウス、そしてその攻撃を食らうフェイトの間に爆風が広がった。

爆風で三人は吹き飛び、そのまま倒れ込んだ。

「アクート・・・!!」

セイオウの視線の先にいたのはアームドセイバーを構えたアクートであり、彼のアームドセイバーからは薄く煙が舞っていた。

「すまん、微妙にズレた。」

後ろから斬りかかるブラットの攻撃を避けるとブラットは追撃を加えるようにアクートを追った。

「あの人・・・私を?」

遠くを見つめるフェイトへとキリエが歩いていく。

「ねえ、退いてくれない?」

なのはへと近づいた機動外殻がなのはを押しつぶした。フェイトが後ろを向くと押し潰されるなのはの瞬間が見えた。

「なのは!!」

フェイトはなのはの元へと走ろうとするとキリエがフェイトの前に立ち権を向けた。

「行かせないわよ。」

押し潰されたなのはは片手で自分の体を支えると、レイジングハートを近づけた。

「レイジングハート!アーマーパージ!!」

"All right"

キリエが後ろを向くと砕けた機動外殻と共に立ち上がる少女の姿があった。

なのははレイジングハートをキリエに向けるとキリエへと光弾を飛ばした。

「無駄よ。あなたたちの攻撃はー」

キリエの眼前で光弾が止まると光が拡散し彼女の視界を一瞬で奪う。

視界を取り戻した瞬間目の前にいたのは砕けた機動外殻から奪ったチェーンを持ったなのはだった。

「でぇぇぇぇい!!!」

なのはは叫んでチェーンを投げ飛ばしてキリエを縛り付けた。そして

「せええええええのおおおおおお!!!!!」

「きゃあああああああああああ!!!!!!」

なのははそのまま力強くチェーンを振り回し、キリエを縛り付けたチェーンは大空を舞い、叫びながらそのまま何回転して振り回される。

「な・・・なんて力技。」

地面に叩きつけられた時にはキリエはそのまま倒れ込んだ。

なのははそのままキリエへとレイジングハートを向けた。

「フェイトちゃんは優しい子なので、意地悪しないでくださいね?」

なのはへと近づこうとしたデウスとセイオウの前にジー、ザルニス、斬武が立ちはだかった。

「あんたらの相手は」

「ガンバライダーがお相手しましょう。」

倒れ込んだキリエはフェイトたちにフッと笑顔を見せた。

「強いのねー。」

キリエの言葉に二人が笑顔を見せた瞬間、キリエは二人に銃を向けてその引き金を引こうとした。

「っ!!」

「なのはちゃん!!」

銃声が鳴り響いた。そしてキリエの手に持っていた銃は手元から離れていた。

驚いた二人の表情と共に彼女たちの上には四人の影が映る。

「お姉ちゃん・・・!?」

「探しましたよ-キリエ-。」

高速道路の光に照らされた三人のガンバライダーと一人の少女。その少女はキリエ・フローリアンの姉-アミティエ・フローリアン-その人だった。



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12話

キリエの銃を撃ち落としたアミティエはそのまま高速道路へと飛び移りそのままキリエへと近づいていく。

キリエは立ち上がりアミタの腕を掴む。その強さはアミティエにも伝わってくる。

「・・・ついてこないでって言ったよね!?」

「さあ、帰りましょう。」

キリエの怒りは増していく。その目つきの強さからアミティエにもそれが伝わってくる。

キリエの口調は姉のアミティエを咎めるように少しずつ強くなっていく。

「お姉ちゃんまでこっちに来たらパパとママはどうするつもりなの!?」

確かにそうだ。アミティエがいなくなっては父と母は身動きが取れない。

「何考えてんの!?」

ーだが今はー

「私は、家出した妹を連れ帰るだけです!」

アミティエは強く握られた手を振り払ってキリエへとそう告げた。

二人の口喧嘩を見ていたなのはとフェイトはどうしたものかと互いに見つめあって首を傾げた。

なのはとフェイトは近づく足音が聞こえると音の方へ目を向けた。

後ろから銃を向けたセイオウとデウスがアミティエへと近づいていく。二人の態度は少し余裕にも見えた。

なのはたちはそれに警戒して構えるが、アミティエは手を横に伸ばして二人を止めた。

「さあ、そこまでにしてもらおうか。」

「これ以上邪魔など」

"スキャニングチャージ"

"ライトニングソニック"

「セイヤー!!ってね!」

「はぁぁ!!」

セイオウへと向かってくるガッシュクロスを防ぎきった。

また同じくデウスも向かってきたライトニングソニックを防ぎきった。

防いだ瞬間に光と爆発が起き、その場所にクレーターを作り出した。

彼らの前にいるのは、ガンバライダーファングとガンバライダーEXEだった。

二人の白いガンバライダーは防ぎ切られた攻撃の勢いでそのまま後ろへと飛んだ。

「応援に駆けつけた!」

「チームテイカー。とでも名乗っておこうか。」

そう言い、二人の後ろから歩いてきたのはガンバライダーテイカーだった。

「わざわざ役まで作ってもらってすまんな。」

「いえ、足止めしていただけるだけでも何よりです。」

謝るテイカーにアミティエはそう告げる。

爆発で後ろへと引き下がったキリエはすぐさま落とした銃を取り戻した。

「この・・・バカアミタ!!」

「っ!!」

爆風はなのはたちを巻き込んで砂塵を起こした。

塵がなくなった時にキリエの前にいたのは彼女と同じ武装"フォーミュラスーツ"を装着したアミティエだった。

「聞き分けてくださいキリエ。」

「っ!!」

キリエの放った銃撃を合図に二人は一気に空へと飛び上がり、剣を構えてアミティエへと突撃していく。

アミティエもまた剣を召喚してキリエの攻撃を防いだ。

「私が全部守るって決めたの!!だから邪魔しないでよ!!」

「私たちだって、エルトリアのこともお父さんのことも何もかも諦めてなんかいないんです!!」

二人の激しい空中戦は微々たるものだが少しずつアミティエへと風向きが向いていく。

キリエが弾き飛ばされた瞬間、なのはとフェイトはキリエの両腕を力一杯抑えた。彼女の抵抗は凄まじく、二人で止めるのがやっとだった。

「キリエさん!」

「まずはお姉さんのお話を・・・。」

「っ!!」

キリエは振り上げた足に装填されたガトリングでアミタへと攻撃する。そして力でフェイトとなのはを振り回した。

「邪魔・・・しないで!!」

そして地面に叩きつけられた二人はそのまま受け身を取って立ち上がった。

煙の中駆け抜けてきたアミティエは大きく縦に剣を振った。キリエはそれを受け止めるが力の差は歴然としている。

それを証明するようにアミティエの攻撃はキリエを押し出し、そのまま後退させていく。

キリエの指示に従うように武装外殻は動き出し、なのはたちへと近づいていく。

「この子達だけ足止めできればいいの!!」

「・・・。」

アクートは黙って武装外殻を眺めた。テイカーとファングは一斉に走り出した。

"マイティクリティカルストライク"

その音声と共に二人の攻撃は武装外殻を貫き、彼らの着地と同時に後ろから爆破が起きた。

「どうして!?」

驚くキリエに対してファングは親指を上に立てた。

「どういうわけか知らんが、お前たちが調べたデータにはゴーストまでしか入っていなかったんだろうな。」

キリエはアクートを睨みつけた。キリエにデータを渡した彼は最初から知っていたのだ。

彼らの武装外殻にはどういうわけかエグゼイドとビルドのデータは入っておらず、彼らの解析が終えていないため、その攻撃の無力化が不可能ということだった。

「・・・よく分かったな。」

小さくそうアクートが呟くと、テイカーが剣を突き立てた。その腹にはアクートの複眼が映っていた。

「お前がガシャコンスパローを投げた時、何故かあのマシンにダメージを与えられた。となればお前のデータ不足を考えるのが妥当だろう?」

テイカーはそう少し誇らしげにアクートに伝えるとアクートは呆れたような声を交えて息を吐いた。

「さすがはガンバライダーだ・・・。」

その刹那、アクートの後ろにいた武装外殻は一発の弾丸に撃ち抜かれた。

「はぁぁぁ!!」

その残骸は落ちていく瞬間に切り裂かれ、そのまま剣士の後ろで爆散した。

「ヴィータちゃん!」

「シグナム!」

ヴィータは大きな銃を構えて声の方向を見た。そこにはボロボロになって戦ったなのはたちの姿があった。

「おう、助けてやったからじっとしてろ!」

頷くなのはとフェイトを見た後、セイオウとデウスは一気に二人に近づいていく。

「邪魔を」

「するな!!」

"ブリザード"

"チョーイイネ サイコー!"

セイオウの動きは止められていく。少しずつ氷がこちらに近づいてくるのが見えた。

「氷の技なんざ趣味じゃないんだが。」

「そう言わないでよ先輩。」

止めたのはジーとブラットの二人だった。

その二人を通り抜けてデウスが駆けていく。

「あいつが止めれずとも俺一人で!!」

「うおおおおお!!」

デウスは突進してくる男に急停止して腕をクロスに構えた。

「っそだろお前!!」

「ザフィーラ!」

ザフィーラはそのままデウスを殴り飛ばした。

そのままデウスは殴り飛ばされてぶつかったセイオウと共に吹き飛んだ。

「お前何してんの!?」

「俺じゃないだろ!」

そう話している二人の足元は凍りつき、身動きが封じられていく。

後ろを見ると武装外殻は魔導によって拘束されており、完全に動きを止められていた。

「八神はやてと夜天の守護騎士、ただいま到着や!」

「アルフたちも無事よー!」

シャマルがフェイトたちにそう告げると、それぞれがキリエの方へ飛ぶ中、シグナムだけは青いガンバライダーの方へと向かった。

 

剣を携えてシグナムはアクートへと刃を向けた。

「うちの局の者を助けたそうじゃないか?」

「だったら何だというのだ?」

シグナムの握る手は強くなっていく。アクートはまるで挑発するようにシグナムに告げる。

「まさかその程度のことで助けたと思ったのではあるまいな?」

「っ!!」

シグナムは剣を振りかざしてアクートを斬ろうとしたその瞬間だった。アクートは強い光を放ってシグナムを眩ませた。

「何っ!?」

「シグナム!!」

フェイトはアクートに斬りかかるが、すぐさまそれを回避してバルディッシュを握った。

「なっ!!」

「しまった!」

アクートは焦るようにすぐにバルディッシュを推し飛ばした。フェイトはそのまま後ろへと後退していく。

「今のは・・・?」

「テスタロッサ?」

アクートは舌打ちするとシグナムとフェイトへと銃口を向ける。その銃口を向けた目はまるで戸惑うように霞み、狙いが定まらない。

フェイトはバルディッシュを構えてアクートへと近づいていく。

「今見せたのはあなたの何かに関わるものですか?」

アクートは黙り込む。その銃口を向けたまま何も喋らなかった。

「あなたの過去に「私たち」が関わっているんですか?」

「・・・テスタロッサ?」

止めようとするシグナムの声を聞かずアクートへと問いかける。しかし彼は依然として言葉を発することはない。

「答えて!!」

アクートは銃を捨てて剣に持ち替えた。心境に変化があったとはとても思えないが。

「答える必要はないな。」

フェイトは一気に踏み込んで青いガンバライダーへと突撃していった。

「テスタロッサ!」

救援に向かおうとするシグナムをフェイトは待って!と制した。フェイトの声は今までよりも強くぶつけるような声だった。

「シグナムはキリエさんたちの保護を!私がこの人の相手をします!」

シグナムはフェイトのその強い声に押されるように守護騎士たちを率いて空へと上がった。

「あなたと真実と目的を聞かせてもらいます・・・!」

面白い!とアクートは鼻で笑った。

「貴様からあの世に送ってやる!!」

彼はもう一枚のICカードを手に取り、黄金のガンバドライバーへと装填した。

「どういうことや!?」

「ガンバドライバーに二つのカードを!?」

ザルニスと斬武はアクートの行動を止めようとするが、彼の巻く風は二人を全く寄せ付けなかった。

"Ganba rider Lord Rerize"

「Lordシステム・リライズ!!」

周囲は光に包まれ、その光はアクートに吸収されていく。

"Rerize open"

光が消えた瞬間、彼らの前には驚愕の光景が広がっていた。

「まさかお前と俺の人格が残るなんてな。」

「まあそう言うな。派手に暴れようではないか"友"よ。」

フェイトたちの眼前にいたのは赤色と緑色の複眼を光らせた"二人のアクート"だった。

 

空に上がった守護騎士たちはキリエとアミティエを囲んだ。

「俺たちも上がるぞ!」

そう言い、テイカーはファングとEXEを連れて空へと飛んだ。

「キリエ、皆さんに謝りましょう。素直に帰してくれるとは思いませんがせめて」

「まだ終わりじゃない。」

キリエのその呟きと不穏な雰囲気にアミティエは一歩後ろへと下がった。

イリスが残してくれた最後の切り札。これがあればー

「システム「オルタ」!バーストドライブ!!」

彼女から出る覇気は全員を退け、徐々に後退させていく。

「キリエ・・・?」

アミティエが手を伸ばそうとした時には遅かった。その瞬間にテイカーとEXEは地面へと叩きつけられ、シグナムとヴィータも所持していた武器を叩き折られた。

「ヴィータ!!」

「っ!!」

庇ったシグナムごと地面へと突き飛ばされ、そのまま海へと落とされた。

「なんだあのトンデモ!!」

「ファングさん!!」

"メタル"

ファングはメタルを使って体を鋼鉄化させるが、キリエの一撃をそれを吹き飛ばし、彼女の回し蹴りでそのままビルへと吹き飛ばされた。

そして向かおうとしたアミティエもそのままキリエのカカト落としを喰らって地面へと落ちていった。

「ファングくん!!」

「シャマル!!」

シャマルの声虚しく、瞬間的に飛び込んだキリエの攻撃にザフィーラごと吹き飛ばされた。

そしてその視線ははやてへと向かう。

ーあの魔導書さえあればエルトリアはー

キリエは一気にはやてへと飛び込む。はやてが逃げようとした時には遅かった。

ー動けー

アミティエは体は浮いてそのまま叫ぶ。

"フォーミュラドライブ・アクセラレイター"



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13話

キリエははやてへと突撃し、その件を振るった。

はやてへとその剣先が当たろうとした瞬間、キリエの剣はアミティエによって防がれていた。

アミティエはキリエの纏っていた青い光と同じように光を纏っていたが、その光はキリエとは違い赤い光を発光していた。

キリエは防がれた剣でそのままアミティエを退けようと押し込むが彼女は全く後退せず、そのまま無言でキリエを押し返した。

キリエは再び斬りかかるがアミティエはそれを回避し、彼女の頭上へと回った。

しかしキリエに防がれて再び鍔迫り合いとなった。

「父さんと母さんが与えてくれたフォーミュラと強い体は人を助けるためのものです!!人を傷つけるためにあるんじゃない!!」

「それでも為すべきことがあるの!!」

キリエがよろめいた瞬間、アミティエはキリエの剣先を弾き、そのまま突き飛ばした。

突き飛ばされたキリエはそのまま鉄塔へと叩きつけられた。

「出力制御が滅茶苦茶です!!皆さんに怪我でもさせたら・・・!!」

押し返されたキリエはそう言ったアミティエへと銃を向ける。

「その本さえあればいいの!!」

夜天の書は膨大な力を持つ魔道書、確かにその力があれば彼女のいうとおり救うことも難しくはないだろう。

「だから・・・」

それでも他人に迷惑をかけることなど許されない。

「邪魔しないで!!」

アミティエへと放った銃弾ははやてたちの前で土煙をあげる。キリエがトドメを刺したと銃をしまおうとした瞬間だった。

「!!?」

「帰りましょう・・・。」

アミティエはキリエの腕を拘束し、そのまま押さえつけた。キリエは拘束したアミティエの腕を外そうともがくが彼女の力は強く、今のキリエで外すことは不可能だった。

それを側から見ていたアクートは軽くため息をついた。

ーアクセラレイター

彼女たちの生まれた星エルトリアで作られたシステムであり、パワーを急上昇させることで爆発的なパワーを得ることが可能である。

本来は戦闘と言うよりは人命救助などに使われるのだが・・・。

「まさか戦闘で使用するとはな・・・。」

赤い眼のガンバライダーは呆れるようにそう言った。そして彼が横目で見た先には斬武とザルニスの二人のガンバライダーが立っていた。

「どういうことですか・・・?」

「アクートが二人て・・・?」

困惑する二人をよそに赤い眼のアクートは自分の手足を慣れない靴を見るように眺めた。

「そっか・・・アクートの体で復活したからこうなってんのか。」

斬武は無双セイバーを、ザルニスはデンガッシャーを召喚して一気に間合いへと踏み込んだ。

二人の戦闘技術は高く、その一撃をアクートへと直撃させた。そのままアクートは吹き飛んで、ビルのガラスを割って叩きつけられた。

「なんや大したことないやん。」

凍りついたセイオウは動こうとするも彼らの氷の力は強く、セイオウたちでは破ることは困難だった。

「クッソ・・・!!」

このままではアクートごと自分たちがやられると思った時だった。

「はええよお前ら・・・。」

「ガンバライダーナハトとデュアル、只今到着した。」

最悪の事態だ・・・。これだけ悪戦苦闘しているこの事態に更に加勢など朱崎の計画にない失態もいいところである。

「・・・いつまで寝ているつもりだ?」

そう緑色の複眼を付けたアクートが聞く。それに呼応するように赤いアクートは立ち上がった。

「急に呼び出しといてウルセェなお前は・・・。」

「何をナメた口・・・!!?」

斬武の会話は途切れた。デュアルたちが彼女たちのいた方を見ると、殴り飛ばされた二人が倒れていた。

「あんなの反則だろうが!!」

ナハトは必死に目を凝らして辺りを見渡すが先ほどまでいたアクートの姿はない。デュアルに背を任せるも、恐らく自分の方が反応速度は早いだろう。ナハトにはそれくらいの自信があった。

「そこか!!」

点でなぞられた線を切り取るようにガンガンハンドの鎌を投げつけた。しかし彼の元に戻ってきたときには血の一つもついていなかった

「遅い。」

ナハトは声を出す間も無くアクートに殴り飛ばされた。そしてアクートの視線はブラットへと向いた。

「本気なのか・・・?」

「・・・俺が本気じゃないと思うか?」

そう言い斬りかかると、ブラットはそれを右に左に回避する。彼女の動きは鈍く、何かに怖気付くようだった。

アクートはそれに当てようとするように右に左に剣を振るう。その剣には一つの迷いさえ見せない。

「本気で斬らないなら俺がお前を」

「待て!!」

アクートが剣を振るおうとした瞬間、彼は横からのキックで吹き飛ばされた。その攻撃は重く、アクートでさえダメージを受けていた。

「お前は・・・?」

「今から死人になるやつに名乗る名はねぇな。」

蹴りを入れたのはガンバライダージーだった。ジーとアクートは数秒にらみ合ったのち、互いの剣先を走らせ火花を生んだ。

 

一方で復活したアクートの秘密を探っていたリョウヘイはその戦闘を見て驚愕する。

「アクートが二人だと!?」

確かにアクートの個体が分裂した事例はこれまでに無かったわけではない。しかし恐らくその事例と今回は違う。

これまでは同じ種類の個体が増えていたのだが、今回の事例はアクートと性格と複眼の色が違うときた。恐らく復活のカギを握っているのも彼だろう。

「ユーノ、そちらの情報は?」

「まだ手掛かりになりそうな情報はないですね。」

このままだと全員がやられるのも時間の問題だろう。しかし情報が見つからない今この場を離れるわけにもいかない。

悩んでいるリョウヘイを見かねてかユーノが近づいていった。

「リョウヘイさんは行って。」

「え?」

リョウヘイはユーノの言葉によろめいた。それに続くようにユーノは言う。

「いま形勢を握るのはあなただ。迷っていたらきっと大切なものを失う。」

ユーノの言葉を聞いてリョウヘイは本を置いた。そしてゆっくりと無限書庫から降りていく。

「俺も出る。」

そう言ってリョウヘイは無限書庫を後にした。そしてリョウヘイが手に取っていた本を丁寧に手元に置いた。

「ここから僕が情報を・・・」

その先からユーノの言葉が止まった。

そこにはーWorld Core ーの文字が書かれた本があった。

 

リョウヘイがゲートへと向かう最中、一本の電話がかかってきた。それは彼のよく知る人物の一人でもあった。

「・・・もしもし。」

「あぁ、俺だ。」

ガンバライダーアイザ"彼方ヒサキ"だった。ヒサキはリョウヘイへと電話をかけたのも意味あってのことだった。

「あのドライバーを渡したのはお前か?」

「だとしたら?」

リョウヘイの口調は強く、少し挑発するようにも聞こえた。

そんなリョウヘイに腹立ちながらもヒサキは話を続ける。

「あのドライバーをセイオウが彼女に付けてくることを望んだ。お前もまた彼らの協力者なのではないのか?」

リョウヘイが唾を飲み込む。少し黙ったのちにリョウヘイは一言

「知らねえな。」

そう言ってヒサキの電話を切った。ヒサキは突然電話を切られたことに困惑する。

「何が起きている・・・?」

リョウヘイが裏切ったこと、そして朱崎が行おうとしてることの全貌、それが今のヒサキに見えることはなかった。

電話を切ったリョウヘイは真っ直ぐに前だけを見てゲートを目指す。

言い出せなかった。自分が彼らと共に"目的を果たす"側であることを。

 

取り押さえられたキリエはアミティエの腕を振り払おうとするがアミティエの力は強く、今のキリエで振り払うことはできなかった。

「お姉ちゃんはそうやっていつもいい子なんだよね。何も出来なくて冴えない私とは違った。」

キリエは涙を流してアミティエへと訴えた。

「キリエ・・・、私は」

「お姉ちゃんには分からない!私が今どんな覚悟でここにいるか!」

キリエの言葉にアミティエは返す言葉を失う。そしてアミティエの腰にはキリエのヴァリアント・ザッパーが押さえつけられた。

「嫌いよ・・・。」

こうするしかなかった。

「お姉ちゃんなんて大っ嫌い!!」

その刹那、アミティエの腹はキリエによって撃ち抜かれ、そのまま彼女は血と共に宙を舞った。

アミティエはその瞬間、銃をなのはたちに放ち、爆風を起こした。なのは、フェイト、はやてはそれから逃げるように一目散に走るが、キリエのシステム・オルタのスピードは凄まじく、一人、また一人と殴り飛ばされていく。

「っ!!」

フェイトが殴り飛ばされた瞬間、なのはの方を向いた。

「キリエさん・・・。」

なのはが立ち止まった瞬間、キリエは一瞬でなのはの懐に飛び込んで殴り飛ばした。

そしてキリエははやてを見つけると、すぐさま飛び込み、腹に重い一撃を加えた。

はやては声を出す間もなく倒れ、一瞬で眠りについた。

「はやて!!」

ジーが向かおうとするが、アクートの追撃から離れることが出来ない。

「お前の相手は俺だ!さっさと犠牲になっちまえよ!」

「うるせえ!!」

"スクラップフィニッシュ"

"ウェイクアップフィーバー"

アクートのエンペラームーンブレイクとジーのスクラップフィニッシュが激突し、周囲に大きな爆発を起こした。

その煙が晴れると、そこには目を疑う光景が広がっていた。

「ジー!?」

ザルニスの声が虚しく響く。そこに倒れていたのはタケシチロウだった。アクートはそのまま倒れたタケシチロウから一歩、二歩と歩き去っていく。

「ま・・・て。」

必死にタケシチロウが手を伸ばすが、その手は届かずアクートはその手から離れていく。

「アイツが夜天の書を奪えば事は解決する。少し借りるぞ。」

そう言ってアクートはボロボロのセイオウたちと共に空へと羽ばたいた。

一方でキリエはその夜天の書へと手を伸ばし、奪おうとした。

「ダメです!これは絶対ダメです!」

リインフォースⅡが必死に止めるが、キリエはその手を退けようとはしない。

「どいて。」

「ダメです・・・!!」

キリエの手をわずかな魔力で凍らせるが、そんなものは今のキリエにとっては少し氷を乗せられた程度にしか感じなかった。

キリエは無言で銃を向けて放った。その発砲音はリインフォースとキリエを繋いだ氷だけを撃ち抜き、そのまま衝撃で飛んでいくリインは倒れた。

その光景を高町なのはは見続けるしかできなかった。彼女を止めず、ただその場所で立ち止まって見続けるしか出来なかったのだ。

キリエがバイクで去ろうとした瞬間、なのはは少しずつキリエへと近づいていく。

「待って・・・。」

一二歩近づいたところでキリエはなのはに向けて銃を放った。そして少しなのはの方を見ると、そのままバイクのエンジンをかけて走り去っていった。

なのはは見ていた。キリエのその額に"涙"が流れていたことを。



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14話

-リョウヘイが着いた頃にはもう遅かった-

戦地は炎に焼かれ、道は砕かれて周囲には倒れるガンバライダー、そして魔導師たちがいた。

彼女たちは傷だらけの状態で倒れ込み、その場で起きたことの深刻さを物語っていた。

炎で燃え盛る戦地の中、そこでただ一人立つ少女がいた。

「高町・・・。」

なのははただ一人その場で立ち尽くしていた。そして彼の言葉に応えることなくただただ遠くを見つめていた。

自分がもっと早く来ていれば。そうリョウヘイ自身の心の声が聞こえる。彼の中の罪悪感は1秒ごとに強くなっていく。

「・・・。」

黙り込む二人はただ立ち尽くした。きっとそれぞれの思うことは違う。しかしその本質は似たように感じた。

「救護班を呼ぶ。少しだけ待っていてくれ。」

リョウヘイはそう言ってその場から立ち去った。

リョウヘイが去って電話をかけようとしたその時だった。

「ん?」

彼の通信のバイブが鳴った。しかも彼の知らない番号だ。

何かの間違いだろうかとリョウヘイは思い、その着信を取った。たとえ間違いでもそれに出るのは礼儀だろうと感じたからだ。

「・・・もしもし。」

「もしもし。」

その声の主はユーノだった。リョウヘイはそのまま話を続けようと声をかけようとした時だった。

「リョウヘイさんにお聞きしたいことがあります。」

リョウヘイはその意図をすぐに汲み取った。自分の資料の中に-アレ-があったことも。

 

なのはは呆然としていてリョウヘイが言った言葉には答えなかった。

彼女の心の中は無力さでいっぱいだった。きっとリョウヘイがどんな言葉をかけても答えなかっただろう。

-助けたい人を助けられなかった-その気持ちだけがなのはを責める。

彼にもきっとその無力さは伝わることはなかったのだろう。

 

ボロボロになったガンバライダーたちは救護班によってホテルまで運ばれた。またそこで共に戦った魔導師たちも然りだ。

先に起きた守護騎士、そしてタケシチロウはクロノ、そしてヒサキと連絡を取っていた。

「悪いな副社長、俺たちの弱さ故にこんなことに」

「気にするな。」

落ち込むタケシチロウをヒサキはそう宥めた。

「敵が敵だ。仕方がないさ。」

クロノも追うようにタケシチロウを慰めた。

タケシチロウは小さく「あぁ。」とだけ返した。

「大事なのはこれからだな。」

クロノと守護騎士はヒサキの言葉に頷く。

夜天の書が奪われた今、それの奪還と首謀者たちの捕獲が優先されるのは明らかだ。

「はやては?」

「主人は・・・。」

シグナムたちは後ろを見た。はやては先程から眼を覚ます様子はなく、ずっと眠ったままだ。しかし

「・・・起きてるよ。」

ゆっくりと体を起こして立ち上がった。シグナムたちが支えようとするが大丈夫と彼女たちを止めた。

「私もとんだ失態や・・・申し訳ない。」

そしてクロノが話そうとした時だった。ドアがゆっくりと開く音がした。

「・・・。」

「リョウヘイさん・・・。」

入ってきたのはリョウヘイだった。リョウヘイとヒサキはバツが悪そうに少し眼をそらした。

「・・・すまない。」

リョウヘイが頭を下げると、ヒサキは後ろを向いて少しずつモニターから離れた。

「リョウヘイ、お前はこのミッションから外れてもらう。」

「!!?」

全員の背筋が凍り、場は静まり返った。ヒサキはそんなことお構いなく話を続ける。

「ちょっと待ってください!それは」

はやてが止めようとしてもヒサキは言葉を続ける。

「そしてお前には査問がある。こちらに戻り次第話を聞かせてもらうぞ。」

「待ってくださいよ!!」

タケシチロウがヒサキへと叫んだ。タケシチロウの拳の力は少しずつ強まっていく。

「リョウヘイさんは何も悪くない!俺たちの力不足でこうなったのであれば外されるのは俺たちの誰かだ!だから」

「お前も外されたいのか?」

その瞬間タケシチロウは黙り込んだ。リョウヘイはタケシチロウの肩を叩いて後ろへと押した。そしてヒサキの映るモニターへと近づく。

「分かった。だからタケシチロウは任務に残してやってくれ。奴にしか指揮は出来ない。」

ヒサキは分かったと頷いた。リョウヘイもそれを見て良しと部屋を出ようとした。

「待て。」

それを止めたのはヴィータだった。ヴィータは物言いたげにリョウヘイへと近づこうとした。

「待てヴィータ。」

止めたのはザフィーラだった。ザフィーラはリョウヘイへと近づいていく。

「俺たちからも聞きたいことがある。それを答えてからにしてもらおうか。」

リョウヘイは少し頷くと開こうとしたドアから手を離した。

 

なのはとアリサはバルコニーで佇んでいた。

「なのは大丈夫?」

「大丈夫。」

なのははアリサの心配そうな声に対してあまりにも淡白で静かに答えた。アリサはでもと話を続ける。

「撃たれたって聞いたよ?」

「大丈夫、ジャケット纏ってたから。」

なのはの頰の傷がその無茶を物語っていた。

少女の頰に着いたガーゼは彼女の悲しそうな表情も相まってこちらまで痛くなってしまう。

「でも・・・悲しそうだよ。」

アリサがそう言うと、なのははアリサに背を向けた。

「助けたい人を助けられなかった。悔しいよ。」

アリサにはその背中はあまりにも弱々しく小さく見えた。彼女を励ませないかと彼女も言葉を選んで話しているつもりなのだ。

「でも次があるんでしょ?」

「うん。次は負けないし絶対に助ける。」

アリサの背を向けたなのははそう答える。

-彼女の背中はどこか遠くに行ってしまって二度と帰ってくることがない-アリサにはそう見えた。

その姿は魔導師となったばかりのなのはを見ているようだった。

もう二度と見ることのないと思っていたその背中、だから

「ほらっ!!」

「っ!!?」

アリサはなのはの尻を思い切り叩いた。なのは驚いて数センチ飛び上がった。

「絶対帰ってくるのよ!夏休みはまだ始まったばっかなんだからね!」

アリサは笑顔でなのはにそう伝えた。なのはは元気よく「うん!」と伝えた。

彼女を見守るのは自分たちなんだ。彼女が-帰る-場所を作るために。

 

そんな光景を後ろで見ていた奏夜はそっとバルコニーから立ち去って部屋に入ろうとした。

「・・・野暮だねぇ。」

「・・・いつからそこにいた。」

そう声をかけたのは虎だった。虎は立ち去ろうとした奏夜と背中合わせに立った。

空を見上げた虎の目の前には無数の星が広がっていた。

「なあ、この世界にもし偽物で弱々しい力に守られているとしたらお前はどう思う?」

奏夜には質問の意味がわからなかった。偽物?弱々しい力?彼の頭の中でいくつもの疑問符が浮かんでいく。

「お前は何か知っているのか・・・?」

さあな。と虎は返す。

「ただ、この世界は妙だ。夜を見れば俺にはわかる。」

奏夜ーもそっと首を空へと向けた。

もし妙だとしたらこの世界に何が起こっているのか。彼らはそれを知る必要があるのかもしれない。

 

フェイトとリンディ、そして闘真はホテルを出て海辺のベンチで座り込んでいた。彼女たちの耳に潮の満ち引きの音が響き、静かにザーッと言う音が耳へ届いてくる。

「キリエさん・・・昔の私にどこか似ているんです。」

大切な人のためと思って動いた結果が沢山の人達を巻き込んで、辛いを思いをさせてしまった。

それは二年前に起きたプレシア事件、そしてそれに関わっていたフェイト自身と重ね合わせてしまうものがあった。

「フェイトさん・・・。」

闘真はフェイトへと少し視線を向けた。闘真の頭の中にはアクートから言われた言葉が響いてくる。

-お前は俺と同じ道を歩むな-彼が言ったこの言葉には何の意味があったのだろうか。もし彼が誤った道を辿り、それと同じ道を辿ろうとしているのなら。

彼の中にはそんな不安が押し寄せてきた。

「それに」

フェイトは話を続ける。

「あのアクートという人、彼に触れた時私の頭の中に自分じゃない記憶が流れてきたように感じたんです。」

「えっ?」

リンディと闘真は驚いてフェイトを見る。

彼女が見たのは幻影などではなく間違いなくどこかで起きた"自分の出来事"だったという。

「もしあの人と私たちになんらかの関係があるならそれも知りたい。」

フェイトは立ち上がってリンディたちの方を向いた。彼女の象徴的な金色のツインテールが潮風で靡いている。

「助けたいです。取り返しのつかないことになる前に。」

リンディはフェイトの手を握る。闘真もそれを見て頷いた。

「えぇ、助けましょう。"みんなで一緒に"。」

フェイトははい。と頷く。

闘真も知る必要がある。この世界、そしてアクートたちにどんな過去があって"何が"起こっていたのか。

 

葉月はベッドからゆっくりと起き上がった。

彼女の中で前の戦闘は鮮明に覚えていた。

自分へと振りかざした相手はアクートであり自分の大切な友である。

助けなくてはならない人を助けられなかった。

彼女がセイオウやリョウヘイ、そしてこのベルトを託してくれた氷菓の期待に応えなくてはならない。そして-彼も-助けねばならない。

葉月が外に出ようとした時だった。

彼女のドアの前に待っていたのはガンバドライバーを巻いた未来、否別人格の-もう一人の未来-である。

「何の用?」

そのまま通りすがろうとした時、葉月の前に蹴りが飛んだ。未来の前蹴りは葉月の腹スレスレに飛んできて、下手をすれば彼女に直撃するところだった。

「危ないだろ!!」

「お前、どこに行くつもりだ?」

未来の言葉に葉月は立ち止まる。未来はやっぱりと足を下ろした。

「お前ほどのバカだったらアクートと話に行くだろうなと思っていた。」

「バカじゃない!!」

葉月が間髪入れて否定する。葉月はそのまま下を向いて言葉をなくした。

自分が救おうとしているもの、それは自分の敵であって世界を滅ぼしかねないものであることも分かっている。それでも

「それでもお前は行くだろうな。」

「っ!!?」

未来は葉月に背を向ける。そしてそのまま立ち去ろうとした。

「待て!」

葉月の言葉に未来の足が止まった。葉月は後ろを向いて未来から離れていく。

「僕は君が嫌いだ。でも今回は感謝する。」

葉月が歩き去ったことがわかると、未来はフッと笑ってしまった。そしてガンバドライバーをそっと外した。

-嫌い-なんて言葉を-もう一人の自分-が聞くとどう思うだろうな?

そんなことを考えながら彼はそっと人格の奥底へと眠った。

 

流は一人で黙々と作業を続けていた。

彼の扱っているPCにはアクートの様々は映像が送られており、もう一つのモニターにはそこで発見された成分などがズラリと羅列している。

たった一人でここまでの情報を見れるのは流たちのように情報を扱うものだからこそ為せる業なのであろう。

先程リンディから貰ったお菓子が今そこにあるわけだが、それにすら一切手をつけずずっとパソコンとにらめっこしていた。

「こんな時に仕事とはお忙しいやっちゃなぁ。」

当たり前だ。と後ろの水谷に返す。

「九重さんが送ってくれたデータを無下に終わらせるわけにはいかないからな。」

-九重 一成-

ガンバライダー研究の第一人者としても知られ、彼自身もかつてガンバライダー"ノヴェム"としてアクートと戦闘、彼の野望を止めたこともあるとされるガンバライダー内のちょっとした有名人である。

勿論彼の後輩にあたる流や水谷もその存在は認知しており、微々たる時間ではあるが話をしたこともある。

「やけど、アクートはあくまで対ガンバライダー専用に作られとる。ウチらがどんだけ強なっても」

「だからあの人が対抗出来た力が必要なんだろ?」

水谷はふーん。となんとなく分かったような分からなかったような雰囲気でそう返した。

辺りを見渡していると水谷があるものを見つけた。流の部屋の端に置いてあったのでちょっとだけ近づいて行く。

「ジャズ好きなん?」

「えっ?」

振り向いた後に何となく意味を要約して"あぁ。"とだけ返した。

「ホントはジャズを聴いていたいんだが、そういう状況でもないからな。」

「んじゃ、ウチが聴いてええかな?」

流がどうぞ。と適当っぽく返すと水谷はプレイヤーにイヤホンを刺してジャズを聴き始めた。

流はそのままPCの方に振り向いてまた作業を再開した。

アクートが何者でどういう因果で復活したのかは知らないし今は関係ない。

ガンバライダーの力、そしてこの星を守る力はここにある。それ故に絶対に諦めてはならないのだ。

そう詰めているとふと横にあったリンディからのお菓子が目に入った。

食べないのも失礼だと一つだけ手元にあったチョコレートを手にとって口に入れた。

「・・・美味い。」

そう一言だけ呟いた。



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15話

-惑星エルトリア-

かつて緑の星として栄えた地球とは離れた遠い星。この広大な大地に緑が広がっていたのは-かつて-の話である。

現在は砂漠化や土壌汚染といった環境問題に苛まれて、人が住む星としては既に「死」に等しかった。

そこに住んでいた生物は変異してそれぞれの進化を遂げた。勿論生物としては正解の道だ。しかしそれは彼らの望まぬ進化であったこともまた事実である。

当然そんな死の星を離れて新たな居住区に住む人々も少なくはなかった。そちらの方が安全で健康面でも最適なのだから無理もないだろう。

政府さえも移民を推奨している。この星を捨てて新たな故郷に居住することを多くの人々が望んだ。

しかしその最適解を選ぶ人ばかりではなく、この星を再生させようという人も存在していた。

-グランツ・フローリアン-彼はエルトリアでも有数の科学者であり、彼の科学力はエルトリアでも随一だった。彼の作り出した植物は花を咲かせて少しずつ死の星に緑を増やしていく。

彼の才能はエルトリア中に知れ渡っていて、彼の開発した-フォーミュラスーツ-はエルトリアのような過酷な環境下でも生きられるのは勿論のこと、無機物に干渉・解析する-ヴァリアント・システム-を応用した武器の開発も行なっていた。

試作機として作られたフォーミュラスーツは彼の二人の娘-アミティエ-と-キリエ-に渡されることとなった。

そんなアミティエが五歳の頃の話だ。

 

アミティエが五歳の頃、キリエが高熱を出したのだ。まだ幼いキリエにとっては高熱も大病と言えただろう。

「母さん!!」

母のエレノアに焦るアミタの声が聞こえふと外を見た。薬を急ぎ持ってくるようには伝えたものの、外は激しい砂嵐に見舞われて砂塵と風でほとんど前が見えない状態だった。これでは町外れにあるこの場所まで来るには相当の時間がかかるだろう。

生憎グランツは研究で外出しており連絡を取ろうにも取れない状態だった。

心配してキリエを看病するアミティエの姿が痛々しく自分に刺さる。こんな時に自分は何も出来ず見ているだけなのか。母親としてせめて薬を街まで取りに行ければ・・・。そう思っていた時だった。

「母さん、薬はないのですか?」

アミティエの言葉に唾を飲む。そしてゆっくり話し出した。

「街の薬屋さんには頼んではいるの。でも、この嵐じゃいつ来るか・・・。」

アミタはそれを、聞くと手元にあったマントを取ってドアを開けようとした。

「アミタ!」

エレノアはアミティエを呼び止める。きっとキリエのために薬を取りに行くと言い出すのだろう。エレノアにはそれがわかっていた。しかし幼い娘をこんな嵐の中外出させるなど親として認めるわけにはいかない。止めようともう一言かけようとしたその時だった。

「大丈夫ですよ母さん。私、強いですから。」

「アミタ!!」

エレノアが止めようとした時にはもう遅かった。アミティエはフォーミュラスーツを身に纏って嵐の中へと加速した。

エレノアはそっとドアを閉じてキリエの手を握りしめた。自分の罪深さが心に重く押し寄せてくる。託して良かったのだろうか、本当にこれで良かったのかと。

 

街まで進んで加速していくアミティエは砂嵐を掻き分けながら右・左と回避する。

アミティエは加速しながらふと後ろを見る。エレノアの制止を振り切って来たことの後ろめたさ、申し訳なさが彼女にはあった。

「それでも・・・。」

アミティエは再度前を向いた。母の為、妹のキリエを助けるためにも自分が動かねばならない。姉である自分しか動けないのならそうするべきだったのだ。そう考えている時だった。

「っ!?」

アミティエは旋回して弾け飛ぶ砂を振り払った。

-サンドワーム-この地に住む変種で元々は虫だったのだが、エルトリアの過酷な環境で生きるために進化・変質した種族だ。

サンドワームは人や虫を喰らい生活しているため人々からも忌み嫌われている存在だった。

アミティエはすぐさまヴァリアント・ザッパーを構えた。その手は震えていてそれに連鎖するように腕、足まで震えてくる。

本当は彼らに罪なんてない。彼らがここで死ぬ意味なんて無いはずなんだ。それでも

そう頭の中を掻き回されていた時だった。

"Ganba rider Lord Rerize"

「Lordシステム・リライズ!!」

"Rerize open"

機械音声とともにサンドワームは風圧と衝撃波で怯んだ。また地に戻ると数秒後に上へと浮上した。

サンドワームが雄叫びを上げると、アミティエの前にいた戦士は怯まずに剣を向けた。

「・・・え?」

アミティエに背を向けた戦士は赤と錆びたようなワインレッドの鎧を纏い、片手には剣を、もう片方には銃を持っていた。

戦士はこちらを向かず襲いかかるサンドワームの攻撃を防いでいく。サンドワームの放った砂を一つ一つ丁寧に弾き飛ばす。

「あ・・・あの」

「君、急いでるんでしょ?」

背を向けた戦士はアミティエへと問いかける。アミティエは小さく頷きゆっくり立ち上がる。

サンドワームへともう一方向から弾丸が放たれる。そこには同じく赤とワインレッドの鎧を纏った戦士が銃を向けていた。

鎧こそ見えるがその顔は砂煙で見えない。爆煙と砂塵が混ざる中、戦士はゆっくり銃を下ろす。

「だったら立ち止まんな。守りたいもの一つくらい、テメエの足で救ってやれ。」

アミティエが頷いてそのまま走り出して去っていく。

あの赤い戦士は誰だったのか。彼らは何故自分を助けてくれたのか。そう考えているとき、アミティエの目は覚めた。

目が覚めた時には彼女は真っ白な天井と見ていた。

周囲を見渡すと、そこには白衣を着たスタッフが何人かいて、自分を映し出すモニターがいくつか設置されていた。

「起きましたか?」

スタッフの言葉にゆっくりと頷く。アミティエはまた天井を見た。

懐かしい夢だ。過去の自分、そしてあの時救ってくれた謎のヒーロー。自分が思い出せないくらい幼い頃の話で自分さえいつの話かあまり覚えていなかったくらいだ。

そしてあれからエルトリアが再興しかけたこと、父が病気になったこともあれから随分先の話だ。

 

-時空管理局 技術開発部-

管理局の武器の整備などを担当する彼らは今日ばかりは大忙しだった。

砕かれた電磁武器、そしてカレドヴルフ・テクニクス社より持ち出された新兵器の設計に大忙しだ。

そんな中、マリエル・アテンザはアミティエから手に入った情報をPCに取り込み一つ一つ丁寧に見ていた。

「すごい体。回復能力と運動能力が通常の人間の倍以上。これなら過酷な環境でも生きていけるわね。それに武器の技術もかなり発展してるし優秀・・・」

資料を読み終わったのか紙の束を横に退けた。

「時間があるならゆっくり研究したいくらいだわ。」

傾いたメガネを直すと、そのドアから入ってくる人を迎えるように笑顔で振り向いた。

「アルフありがとう。」

うん!とアルフは元気よく答えると、アルフと共に歩いてきた男性よりも後ろに下がった。

「あなたが"九重一成"さんですね。」

「えぇ、GRZ社開発部の九重です。以後お見知り置きを。」

二人は握手すると、九重を手で案内した。

「アクートの使うツインバースト、そしてエルトリアの技術に勝るにはこちらも手を打たねばなりませんね。」

アクートの分離能力"ツインバースト"と優秀なエルトリアの技術、それに勝るには個々ではなく合わさり"調和"された能力が必要なことは研究者である二人の意見の合致だ。

「そうですね。だからこの子達には頑張ってもらわないと。」

手元にあるデバイス達を見てマリエルは言った。特にフェイトのバルディッシュは調整が難しいので手伝うと言ってくれたアルフには感謝するべきだろう。

「あれ?レイジングハートは?」

マリエルが辺りを見渡すと、シャリオの手元でそっと乗っているレイジングハートがいた。

「私とレイジングハートはちょっと野暮用で・・・。」

"I'm sorry."

そう言って少し駆け足で二人は研究室を去って行った。

アミティエが起きたとの報告があり、ガンバライダーと魔導師達は一手に集められた。しかし

「あれ?葉月さんと片桐くんは?」

「葉月さんは出掛けると聞いています。よほど重要なことだったらしいのでこちらで許可しています。片桐さんは・・・。」

時空管理局のレティに結城は答えた。結城の声はガンバライダーの時と違い、弱々しく小さな声だった。こんな時にと思いながらもいないことも仕方ないので分かったとレティは返した。

「で、傷の容態はどうなんですか?」

レティはモニターを映す。そこには大量の食事が終わった皿が並べられていた。

「充分な栄養補給を終えたら回復したそうよ。」

「それはまぁ・・・。」

レティの淡々な言葉にシグナムは驚きで唖然とする。秋津はレティへと問いかける。

「ここに呼んだということは重要なことなんだな?」

「えぇ、彼女が目を覚ましたことと少々の面談の報告、そして彼女が尋問の相手を指定しているの。」

「そんなのアリなのか?」

秋津の呆れた聞き方にレティは淡々と頷く。

「で、誰なんだいレティさん?」

虎が尋ねるとレティはフェイトの方を向いた。フェイトは自分を指差す。

「え?私ですか?」

レティは首を縦に振る。そして話を続けた。

「どうする?ここはあなたに一任する。」

フェイトは首を縦に振った。

「誰かがやらなきゃいけないなら私にやらせてください!」

そう話しているとドアが開き、ゆっくり入ってくる影があった。

「あんたが遅刻なんてらしくねえぜ?副隊長さん。」

入ってきたのはタケシチロウだった。すまないと一礼したのち、ゆっくり椅子へと座った。

「・・・何があったんですか?」

シャマルが問いかけるがなんでもない。と軽くあしらった。

「心配してくれてる相手にその態度はいただけませんね?」

「そうやぞ!お前が偉いんか知らんけどな」

コウジとキナミをなのはたちがまあまあと宥めた。

しかしその姿はなのは達も放っておけるほど優しい表情ではなかった。



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16話

イリスとキリエは廃墟に戻ると早速イリスがキリエの腹に包帯を巻いていく。

押さえ込まれていたとはいえ自分ごと撃つなんて無茶な真似をしてくれる・・・。イリスは不安な表情を浮かべながらキリエを丁寧に治療する。

「そんなに深刻そうな顔しなくても大丈夫よイリス。私は全然歩けるから。」

「・・・うん。」

拭えぬ不安の表情。イリスは重たい口をそっと開いてみることにした。

「ねぇ・・・後悔してない?お姉ちゃんと喧嘩して仲悪くしちゃってそれで」

キリエはイリスの頭を撫でた。そっとキリエの方を向くと、彼女の表情はどこか一つ階段を踏んだ大人に見えた。キリエは優しく語りかけた。

「イリス覚えてる?私が小さかった頃のこと。」

イリスは少し嬉しそうにえぇ。返した。

「キリエがまだ癖っ毛でボッサボサだった頃。」

キリエはうなずいて空を見上げた。見上げてみると幾つもの星が一つ一つ綺麗に光を見せている。この星から見る天体はすごく綺麗で、昔の故郷を思い出す。

「あの頃は冴えない子だったから・・・。でもイリスが色んなことを教えてくれたんだよ!?」

イリスもまたキリエにつられるように空を見た。そしてまた話を始めた。

「放っとけなかったからね。私がたった一人であの遺跡版に眠ってたところに来てくれたのがキリエで本当に嬉しかった!」

キリエはうなずいてゆっくり立ち上がる。イリスもそれと同時に立ち上がった。

「じゃあ、封印を解いちゃいましょ!」

そう言っていると部屋のドアの音が鳴る。二人が身構えたがそこにいたのは火牙刀だった。

「なーんだ。管理局かと思ったじゃない!しかも他の二人は?」

火牙刀はさあ?と困り顔でイリスに返した。

これだから身勝手とバカと男は嫌なのよ!イリスは向けられぬ怒りの矛先を無理矢理収めると、そのまま夜天の書へと近づいた。

イリスが夜天の書へと近づくと、周囲には波動が飛ぶと同時に本からページが何枚も飛び去っていく。

「-ウイルスコード起動-眠っているのは構造の奥の奥。」

イリスがそうしていると火牙刀が少しずつ近づこうとする。火牙刀の中で何かが危険を察知しているのかそれとも何か違うことが起きているのか。彼ですらそれを確かめるには情報が不足していた。でもとにかく動かねば。そう走り出そうとした時だった。

「待って。」

そっと声をかけたのはイリスだった。火牙刀の手を握りしめて彼女は訴えるように火牙刀を見つめた。

「・・・わかった。」

数秒見つめると火牙刀は座り込み再びその鍵とやらが開く瞬間を待っていた。

イリスの笑みが増していく。

そうだこの瞬間を待っていた。これこそが自分の求めていたものだ。

-封印の鍵 起動-

生み出された闇は周囲に衝撃波を生んだ後、自らの自我を持って話し出した。黒い葉のような霊体はそのまま不気味に浮いたままだ。

それの周囲を動き回る赤と青の霊体もまた同じように葉のような形をしていた。

「ここはどこだ?」

「あなたは長い間、この本の中に閉じ込められていたの。あなたは王様で周囲を回っているのは臣下よ。」

「臣下?」

イリスは頷いて説明を続ける。

「私たちはあなたたちに力を与えにきた。あなたたちの求めるのは無限の力、その力を手に入れる手段も与えてあげる。」

イリスがそう説明すると、闇の書のページを一枚霊体へと飛ばした。霊体に取り込まれたページは黒い葉の形から姿を変化させ、少女へと変化させた。

「おぉ・・・。」

火牙刀とキリエが驚いていると、イリスは振り向いて二人を手招きした。

「闇の書の主人のデータをインストールさせたわ。キリエ、二人のデータもちょうだい。あと」

「あと?」

イリスは火牙刀へと指をさす。火牙刀は頭にクエスチョンマークを浮かべた。

「男はみるな!!」

火牙刀は数秒フリーズした後に小さくあっ、と呟く。

「うん見ないようにする。これは失礼した。」

霊体から少女になった王は服も着ていない全裸の状態だった。王の気迫に圧巻されてか火牙刀の脳みそからそんなことが飛んでいたのだろう。

しかしデータをインストールするだけでこうも人の形を保てるとはねぇ。火牙刀は王を名乗る少女に驚きを隠せずいた。

キリエは頷いて歩き出す。そして渡したページに赤と黄色のデータ物質をページに与えてそのまま赤と青の霊体へと飛ばした。

赤い霊体はなのは、青い霊体はフェイトに近い形をした少女へと形を変えて目を覚ました。イリスは王へと問いかける。すると王もそれに返す。

「思い出した?」

「あぁ、色々とな。我らが求めるのは無限にして無敵の力。無限にして無敵の王に我はなる!!」

黒い衝撃波は周囲の物質を吹き飛ばし、闇の光を周囲へと放った。

 

オールストン・シーの近くは工業施設となっていて周囲にはコンテナやら機材やらが沢山並んでいる。

そのコンテナを掻き分けながら進んでいたのは葉月だった。彼女がここに来た理由はただ一つだけだった。

コンテナが置かれていない広間のようなところに立ち止まって、そっと後ろを向いた。そこには一人の男が立っていた。

「やっと会えたよロード。いや、水樹奏と呼んだ方がいいか?」

「・・・いや、ロードで構わない。」

-水樹奏-

かつてガンバライダーロードとして戦い、様々な世界を救ったガンバライダーであったが、彼は先の戦いで自らの力であるワールドコアの宿命やアクートと共に消滅・世界の崩壊を生んだ。

葉月は別世界の人間だったため生き残ることが出来たわけだが、彼女には彼に聞きたいことが山ほどある。

「ロード、なぜ君が生きている?」

ワールドコアとして消滅した彼が生きている理由などどこにもありはしない。無限書庫でさえ抹消された歴史がなぜ再び動き出しているのか。彼女には到底理解できない。ロードはゆっくり話し始めた。

「確かにワールドコアは消滅し、世界を崩壊させた。しかし消滅した世界に"バグ"が残り続けているとしたら?」

「バグ・・・?」

ロードの言葉に葉月は何一つとして理解できなかった。その世界のバグとは何なのか。異常を誰が知らせたのか。彼の答えは不明点だらけだ。

ロードはさらに話を続ける。

「ワールドコアの上位階級には統制者のような者が存在する。そいつらはワールドコアが消えた時、世界のバランスを取るために物質や記憶の全てを消し去るのが役目だ。」

「でもそれが成されていないと・・・?いや待って!?」

葉月の頰に汗が滴る。ロードは俯いて帰ろうとした。葉月はロードの元へと走って彼の手を握った。震えがずっと止まらない。ロードにもその振動が伝わる。

「もしかして・・・僕なのか?僕が君を覚えていたばかりにこんなことが起きているのか!?」

「・・・。」

ロードは無言で葉月の手を振り払った。そしてさらに歩き出す。ロードが立ち去ろうとしたその時だった。

「つれないじゃないかロード。」

ロードがそっと振り向いた。そこにいたのは柳リョウヘイだった。

「リョウヘイ・・・。そうかアンタはイレギュラーの存在だったな。」

彼はそっとベルトを腰から取り出してみせた。

"ディサイドドライバー"

彼が持つ仮面ライダーのベルトであり、これを使用することで仮面ライダーディサイドとして戦うことができる。

ディケイドと同じの為、その階級は彼のワールドコアや統制者すら凌駕する。

リョウヘイはベルトを腰元に戻すとロードをへと近づいた。

「お前が望んでいたのは本当にこんな戦いか?フェイトやなのは、葉月みたいな大切な人たちを消してでもお前のその望みは叶えれるべきものなのか?」

「俺はこの世界に残ったバグを取り除く。俺がやることはそれだけだ。」

リョウヘイの言葉にそう答えたロードは立ち尽くす葉月を取り残して去って行った。葉月から遠くへ遠くへ飛び去った。

沈黙の中、コンテナの端から影が動く。呆然とする葉月を庇うようにリョウヘイが前へと出た。

「いやつれないもんだねアイツも。」

そう陰から現れたのは朱崎だった。朱崎は空を見上げてゆっくりとリョウヘイの方へと歩き出した。リョウヘイもまた朱崎の方へと歩いていく。

「ありがとね。怜を守ってもらってしまった。」

「気にするな。アンタからのツケは今度返してもらうことにする。」

そう言って二人とも飛び去った。また二人も葉月から遠く遠くへと飛び去った。

葉月は静かに立ち尽くすしかなかった。何もできない。何もしてやれない。

そう立ち尽くしていた時だった。

空の奥で黒い線が立ち伸びていった。

 

空へと羽ばたいたなのはたちを見守った後、フェイトはモニターの方へと歩き出す。

アミティエから指名された尋問なわけだが、何故自分なのか、他の状況も聞かねばなるまいと少し息継ぎをして椅子へと座った。

「では、これから尋問を始めます。この会話は調査のために録音されますのでご了承ください。」

アミティエが頷くと、フェイトは話を続ける。

「あなたのお名前と出身世界をお願いします。」

「アミティエ・フローリアン。親しい人はアミタと呼んでいますのでよければそう呼んでいただければ。」

アミティエは更に話を続ける。

「そして出身世界は惑星エルトリア。エルトリアは緑豊かな星でしたが近年は環境汚染、砂漠化が進んで人が住むには難しい星となりました。キリエは私の妹でこの星でエルトリアを救う鍵を見つけたと言っていました。星の命すら操る"永遠結晶"、はやてさんやなのはさんたちからその力を無断で借りようとしていました。僭越ながらキリエが見ていたデータを私も閲覧させていただきました。」

クロノははやてへと通信を回した。

「はやて、永遠結晶という言葉に聞き覚えは?」

「無いよ。この二年で夜天の書の解析はしたはずやけどな。」

過去に起きた闇の書事件、その際に闇の書の闇と共に葬られたページがいくつかあったと聞く。もしかしたらその中にあったのかもしれない。シャマルはボソッとつぶやいた。

「あの子なら・・・リインフォースなら何か知っていたかもね。」

かもな。とザフィーラもそっと返した。

「半日遅れで私もこちらに着いてキリエを追っていましたが・・・遅かったようです。」

落ち込むアミティエへとファングが話しかける。

「遅いなんてことはないよ?だって僕たちはアミタさんがいたから助けられたんだからね。」

テイカーとナハトもそれに頷く。

「失敗は取り返せばいい。しょげてても前を見失うだけだ。」

「それにこっからは僕たちのターンだ。こっから超協力プレーでクリアしてやればいいだけでしょ?」

デュアルとファングかけたその言葉にアミティエは頷く。フェイトはそうだ。と思い出したようにアミティエへ話しかける。

「キリエさんが言ってたイリス。って子、あとあの青いガンバライダーは・・・。」

あぁ。とアミティエは問いへと答える。

「遺跡版のことですね。こちらでいうコンピュータのようなものです。キリエは彼女をイリスと呼んでいました。あの青い戦士はこちらの人ではないようです。」

なるほど。とフェイトはうなずいた。

「ところで、尋問の指名が私ということだったのですが、それは何故ですか?」

「あぁ・・・それはフェイトさんは優しそうな方なので穏やかに聞いてもらえるかな。と」

EXEがなのはを方をそっと見てフッと笑った。なのははそれを見逃さずにいた。

「あっ、今流さん笑った!」

「いやごめんごめん、他の人だとどうなってたんだろうなぁって。」

EXEが謝罪するとなのは頬を膨らませてそっぽを向いた。やれやれこれは時間がかかりそうだとEXEもまた困った表情を浮かべた。

それに。とアミティエは会話を進める。

「フェイトさんの過去や触れられたくないことにキリエが触れているようなことがあったら謝罪しておかないといけないと思いまして。」

「お気遣いありがとうございます。大丈夫ですよ。」

影から尋問を見ていたリンディは安堵の表情を浮かべる。フェイトが上手くやっているのを見ると自然と親として嬉しくなるというものだ。

尋問を聞いていたジーの表情が陰る。先ほどのブリーディングからやはり様子がおかしい。恐らく何かがあったのだろう共に飛翔していたはやては彼へと問いかけた。

「あの・・・、何があったか聞かせてもらえませんか?」

「え?いや、大丈夫だ。」

はやては通信を切って一度そのまま歩みを止めた。

「私はあなたと話がしたいんです。共に動く上で私は知る権利があると思います。」

ジーは渋った表情を浮かべたあとあぁ。と陰った表情のまま話し始めた。



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17話

男は一人会議に参加せず、ある者と電話していた。誰にも見られない廊下で静かに、そして澄んだ声で話す。

淡々とした二人の会話は味気なくそしてあっさりとしていた。

「ああ、計画は上手くいっている。心配することはないよ。葉月たちにもバレないように動くからさ、ほんじゃ。」

そう言い男は電源を切ると、後ろからの視線に気づく。タケシチロウだ。男は両手を上げて降参するような態度を取った。

「誰との電話か教えてもらおうか?」

「セイオウたちさ。葉月にベルトを手引きしたのも俺だからな。」

タケシチロウはナイフをさらに近づけた。おそらく動けばリョウヘイの首を掻き切るつもりだろう。

「どういうつもりだ?リョウヘイさん。」

ナイフを突き立てたタケシチロウの眼は本気で彼を殺す目だ。観念してリョウヘイは話を始めた。

「タケシチロウ、お前は"ワールドコア"って知ってるか?」

ワールドコア、噂には聞いたことがある。ある選ばれた人間が世界の核となって世界を統率し、その者がいなくなれば世界は消滅するというまるでゲームの主人公のような物質だ。この御伽噺を解明しようとこれまで様々な研究者が説を出したがそれは全て立証されなかった。まさに御伽噺の世界だ。

「・・・それがどうした?」

惑わされてはいけないとタケシチロウは気をしっかりと持ちリョウヘイへと問いかける。リョウヘイは話を続ける。

「俺はこの一件、何もかもが変だと思っていた。アクートの復活と葉月との因縁、そして何よりミッドにいた俺たちがこれまで知ることもなかったイリスたちの解析機能だ。」

さっぱり話が掴めない。確かに変な話ではあるが、イリスのシステムだって作ろうと思えば作れるはずだ。

「何が言いたい?」

「ここはアクートというワールドコアが生み出した世界なんだよ。」

「何!?」

大声を上げるタケシチロウにリョウヘイは静かにとハンドサインを送り、話を続ける。

「そしてアクートのこと、葉月や氷菓との因縁をここで俺たちは明かさなければならない。ワールドコアのことも二人に何があったのかも。」

タケシチロウはナイフを降ろした。リョウヘイは手を下ろしてその手をポケットに突っ込んだ。タケシチロウは背を向けて帰っていく。その振り向きざまにタケシチロウは少し大きな声でリョウヘイへと伝える。

「目的は分からんが俺たちのやることは変わらない。任務を降りたアンタは好きにしろ。」

その声はどこか冷たく、リョウヘイを突き刺すような言葉だった。

 

事の一連をはやてに話したジーの顔は曇り、どこか申し訳なさそうな顔だった。はやても少し表情が翳り、考え込むような姿勢を取った。

リョウヘイの目的は何なのか。ワールドコアという未知の存在を解明した先には何が残るのか。様々な疑問は飛び交うが、まずはするべきことがある。はやてはジーの手を強く握った。

「リョウヘイさん、何を考えてるか分からへんけど私たちが今出来るんは止めることだけです。やからそんなに重く考えんといてください。」

「そうです!私たちが付いてますので!」

こんな状況でも笑顔で振る舞える彼女は何と強いのだろうか。子供ゆえの純粋さだけじゃない、様々なことを乗り越えるだけの強さをこの歳にして持っているのだ。

はやてとリインフォースⅡの励ましにそうだな。と一言返して空を見る。そこにはこちらに向かってくる光が二つ見えた。二人が臨戦態勢を取るとそこに二つの光が空へと舞い降りた。

「俺の相手はタケシチロウか。」

「コイツがイリスが邪魔と言っていた奴か。構わん、相手になってやろう。」

タケシチロウとはやては驚愕する。そこにいたのはセイオウと一人の少女、その姿ははやての騎士甲冑、顔も背丈も瓜二つの少女だった。

少女はシュベルトクロイツに似た武器を構えてはやてへと向ける。はやてと睨み合う二人。

「我が名はディアーチェ。貴様らが邪魔らしくてな。」

「キリエさん、いやイリスの差し金やね!」

セイオウは銃を構えて戦闘態勢をとる。答えるつもりはないという意思表示だろうか。ジーも持っていたガンバソードを構える。

ディアーチェの後ろからは大きな闇が広がり、その穴からは鉄の鳥が空を舞った。その大きさはジーの何倍もあった。

「この黒影のアメティスタが貴様らを蹂躙してくれよう!」

はやてたちの前に機動外殻は立ち塞がった。

 

現場へと向かうフェイトとシグナム、そしてEXEとファング、テイカーとナハトは現場へと直行する。フェイト、シグナムを筆頭に管理局員、ガンバライダーという順番だった。

ナハトは並走していたテイカーへと少し寄りながら飛んだ。なにかとテイカーも少し寄って飛んだ。

「なあ、もし葉月の嬢ちゃんがアクートと、かつての馴染みと戦わないといけないとしたらお前はどうする。」

「さあ、どうだろうな。」

テイカーは素っ気なく返した。だが彼女に相当の覚悟がない限りアクートを打ち負かすことは不可能だろう。テイカーも神妙な面持ちでそう答えるしかない。ただ一つ言えることはある。

「もし彼女が戦うのなら俺たちは最善のステージを作ってやらなきゃいけない。それが今やるべきことだ。」

ナハトは一つの答えを得たのか少し嬉しそうにそうか。と一言残して少しずつ離れていった。テイカーも少しずつ隊列へと戻る。

少しした時だろうか。全員の耳元からアラートが鳴る。空を見るとこちらに向かって隕石が落ちてきているではないか。慌てふためくファングは前に出ようとしたが、EXEはそれを止めた。

「任せな。たかが石ころ一つぶっ潰してやるよ。」

「私も賛同だな。」

EXEの横に並んだのはシグナムだった。EXEはワイルドスラッシャーを召喚してWildのカードした。

"Wiid"

「駆けよ隼!!!!」

シグナムのシュツルム・ファルケンとEXEのワイルドサイクロンは融合し、炎の竜巻となった攻撃は隕石を撃ち抜いた。破片は海中へと沈み、爆炎はその周囲を包んだ。

再び剣を構える二人の前に現れたのはデウスと青い髪の少女だった。

「あれ?」

「私と瓜二つ?」

困惑するフェイトとファング、シグナムは冷静さを保ちながらフェイトと瓜二つの青い髪の少女に問いかける。

「時空管理局局員のシグナムだ。出身世界と出自を明かしてもらおう。」

青髪の少女はそれどころではないのかデウスの方に何発ものパンチをラッシュしていた。

「僕が運んできた鉄団子壊されたーーー!!!!どーしてくれんのさ!!」

「だからすぐ壊れるって言ったろうが!それより前見ろ前!!」

レヴィはその言葉にハッとしたのかシグナムたちの方を向いて見せしめるように自分へと雷を落とした。

「どこから来たかは知らないが僕の名はレヴィ!雷光のレヴィとは僕のことさ!」

局員たちも含めて全員が茫然とする。良くなかったのかと考える表情をレヴィは浮かべた。

「僕はカッコいいと思ったんだけどなぁ。まあいいか!遊んであげるよ!」

「気の変わり早いなお前。」

デウスのツッコミを無視してレヴィはもう一度海中へと雷を放つ。その瞬間、海中からは大きなマシンが浮上してガンバライダーたちの前にふさがった。

「何だアイツレイヴンか!?」

「分かりにくい元ネタを出してくるな。」

そう話していたテイカーたちに向けてレーザーが照射された。二人は持っていたガンバブラスターの射撃で相殺させ、周囲に衝撃を散らした。

散り散りになるガンバライダーと魔導師たち。レヴィは自信満々にマシンの上に乗った。

「これは王様がくれた僕のしもべ、海塵のトゥルケーゼ!」

トゥルケーゼはもう一撃のレーザーを放つと、ガンバライダーたちを薙ぎ払う。その大きさは彼らの何倍だろうか。稲妻を纏った少女は笑顔で戦士たちへと宣戦布告する。

-さあ、遊んであげるよ-

 

一方で突如として現れたマシンに管理局員とザルニスと斬武。しかし斬武とザルニスの攻撃は徐々にダメージを与える。

「音撃打-灼熱真紅の型-」

"ストライクベント"

灼熱真紅の型とドラググローファイア。二つの炎がマシンの脚部を焼き尽くす。しかし

「ちっ!!」

潰れた脚部は磁力に引き寄せられるように浮いてそのまま破損部へと合体する。巻き込まれまいと二人はその場から離れる。

「そっちにいくんじゃねえ!!!!」

グラーフアイゼンをマシンへとぶつけて退けるが、その動きは数ミリほどで動いたというには疑わしいほどだ。

戦いを繰り広げるその奥には新装備である"パイルスマッシャー"を持つなのはの姿があった。なのははそのトリガーを握りその時を待っていた。

"パイルスマッシャー、発射準備オーケー"

「了解、撃ちます!」

放たれた弾丸は凄まじいスピードでマシンを撃ち抜き、大きな風穴を空けた。もう一撃と動こうとしたその時だ。

"バッテリー切れです。バッテリーを充電してください"

やはり試作品止まりだとここまでか。なのははすぐさまパイルスマッシャーを外してヴィータのもとへと向かおうと準備した。

「・・・?」

その時、なのはの目には空中で構える紅い魔法陣が二つ見えた。そこにいた少女とアクートは同じ武器を構えて二人は目を合わせる。

「いきますよルシフェリオン。」

「いくぞルシフェリオン。」

"ダブルディザスターヒート"

放たれた炎はヴィータに向かって飛んでいく。ヴィータが避けようとしたその時には遅くやられると目を瞑ったその時だ。

「ぐっ・・・。」

ヴィータの前に向かったなのはがすぐさまバリアを展開して防いでみせた。周囲に飛び散る炎、これでは被害が拡大してしまう。

"フレイム・プリーズ"

展開された魔法陣は二人の炎を渦のように飲み込み、魔法陣の中に消し去ってみせた。魔法陣の中心を見ると、そこから飛翔しようと助走をつけるブラットの姿があった。

なのはは少女へと、ブラットはアクートへと一気に駆けていく。

なのはと向き合う少女はなのはの武装であるストライクカノンを跳ね除けて体勢を立て直し、もう一度魔法陣を展開する。

「名乗らせていただきましょう。私の名はシュテル。殲滅のシュテル。」

「そして王から賜った我が兵器、城塞のグラナート。あなたがたに恨みはありませんがここで消えていただきます。」

ザルニスたちのもとにいたマシンはまた再生を始める。斬武たちを過ぎた一人の戦士によってグラナートの足は再び一刀両断される。

その姿はガンバライダーとは違う姿、そして橙色の複眼、紫と黒のボディ。姿はガンバライダークロスだ。しかしどこか違う。

男は名乗る-仮面ライダーディサイド-



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18話

オールストン・シーで繰り広げられる戦い、海塵のトゥルケーゼを止めるべくシグナム、ナハト、テイカー、EXEがその巨体に挑んでいた。

「コイツ・・・!!」

トゥルケーゼから放たれる閃光は周囲の管理局員とガンバライダーを寄せ付けない。ナハトがパッシャーマグナム、EXEがガンガンセイバーを構えて照準を合わせる。

"バッシャーフィーバー"

"ダイカイガン!ナポレオン"

前足に向けて放った二人の一撃は見事直撃して前の右足を破壊する。左足も破壊しようとした時だ。

「ちっ!」

「この再生が鬱陶しすぎないか!?」

EXEとナハトは合体しようとする分離部分から離れて舌打ちを鳴らす。一撃一撃の攻撃は間違いなく届いているのだが、壊滅させられるほどのダメージまでに至っていないのだ。テイカーもシグナムと連携をとりながらライドブッカーを使い斬撃を加えるが、これもまたダメージには至らない。

「キリがないぞ・・・。」

テイカーの額に冷や汗が流れる。今は進攻されていないが、体力の限界が来れば敵がこの場所を破壊することは容易い。

「シグナム、どうする?このままでは相手に抜かれるぞ。」

「敵を動かすコアがあるはずだ。それを破壊すれば奴の動きは止まる!」

恐らく敵のコアを探し出すには一度粉砕することが早いだろう。しかし足を止めることで精一杯のこの状況でどうやって敵のコアを見つけ出すというのか。

一方その頃、シャマルとデュアルは敵のコアを探し出すべく魔力を伝って敵の内部を探していた。

「恐らくここだろうな。」

デュアルはそう呟く。一部分だけ厚い層に囲われ、シャマルのデバイス「グラーフウインド」すら届かない奥底に眠るであろう敵のコア。これを破るには恐らく大きな力が必要だ。それこそシグナムたちを薙ぎ払うほどの大きな力が。

「どうしようかしら・・・?」

シャマルとデュアルは必死に頭を回す。あの層が少しでも砕けてくれれば・・・。デュアルは何か手はないかと戦闘状況を確認する。

その頃シグナムたちは防戦一方を強いられており、シャマルたちから手立てを貰うまでの辛抱となっていた。

拡散する光線を回避しながらダメージを与えていく。

シグナムもレヴァンティンを使い敵を切り裂くが、その再生速度は上がりダメージを寄せ付けない。全員が疲弊したその時だ。

トゥルケーゼは方向を転換してまた進み出した。その方向はオールストン・シーでも一番高い展望台をめがけていた。

「まさかアイツ!!」

「私がいく!!」

シグナムとEXEは同時に動き出した。トゥルケーゼの額は光り、一瞬で先程の何倍もの光を放った。

"リミットブレイク オーケー!"

「メテオストームパニッシャー!!!」

EXEはメテオストームシャフトを召喚し、先端からメテオストームパニッシャーを放つ。エネルギーを吸収していくが、放ったその一撃は砕け、後ろにいたシグナムと同時に壁へと叩きつけられた。

「ぐっ・・・。」

「EXE!!」

ナハトが向かおうとするが、トゥルケーゼの光がそれを阻む。まるで意思を持つように彼らの行手を阻んでいく。

「・・・これだ。」

デュアルはそう呟いて一目散に三人の元へと駆けて行く。

「えっ!?ちょっ!?」

シャマルが止めようとするがそれも遅く、すごいスピードで向かっていく。

「三人とも聞け!先程の攻撃を防いでコアまでの道を開くぞ?」

「は?」

三人とも困惑の色を示す。厚い壁を撃ち抜くほどの力など自分たちにはないはず。どうすればいいか分からず混乱する三人へとデュアルが一枚ずつカードを投げた。

「これは・・・?」

デュアルが投げたのはゴセイジャーが使用したリフレクラウド、リフレクオーツ、リフレクリアである。デュアルは一気に突撃してディエンドライバーを構える。

"カメンライド メイジ"

四体のメイジを召喚して四方へと放った。デュアルは空中へと飛翔してトゥルケーゼの頭上へと立った。

トゥルケーゼが光線を放とうとした。三人は立ち上がりカードをそれぞれのドライバーに装填した。

"in put リフレクリア"

"in put リフレクオーツ"

"in put リフレクラウド"

トゥルケーゼから放たれた一撃はEXEの眼前に貼られた鏡と直撃して大きな光を生む。EXEはその眩い光に目を瞑り目を塞ぐ。

「くっ・・・。」

倒れ込みそうになったその時だ。後ろにいたシグナムを彼を支えるように肩を持った。EXEは驚きを隠せず後ろを見た。

「シグナムさん・・・?」

「目的は同じ。ならば我らはお前たちを守護しよう。」

そうだ、こんなところで負けられない。力を貸したデュアルやフェイトと共に向かったファング、そして協力してくれるナハト、テイカー、シグナムのためにも

「こんなところで・・・倒れるかよ!」

吸収された光は反射してトゥルケーゼへと三方向から放たれた。トゥルケーゼ壁は削れ、中心に大きな傷を与えた。

「今だ!」

"バインド ナウ"

召喚された四体のメイジは魔法陣を開き、破片をチェーンで取り押さえる。しかしその破片は多く四体のメイジでは全く足りない。

「これでは相手の再生力が勝る・・・!」

デュアルが突撃しようとしたその時だ。様々な色のチェーンが八方から放たれて破片を取り押さえた。デュアルが周囲を見ると共に戦った管理局員たちが破片を抑えていた。

「そっちに出番とられちゃあ示しがつかないんでね!」

「良いとこは管理局がいただきますよ!」

デュアルはため息のような笑いをこぼした。GRZ社だけではきっとここまでの連携は取れなかった。味方がここまでありがたいと思える日があっただろうか。

「シャマルさん!」

「分かってるわ!コアは見つけたから後は破壊するだけ!」

シャマルは空間の中に手を突っ込み手を伸ばす。空間の中で肥大化させたその手は青く大きなコアを握った。

「つかまえ・・・たッ!!」

握ったコアを力強く握り潰す。コアは砕けてそれと同時に外部で動いていたトゥルケーゼが動きを止めた。

「シグナム!」

「あぁ!」

シグナムは一気に駆け抜ける。EXEたちもナハトの元へと向かう。

「ナハト!」

「了解した!」

"アドベント"

テイカーはメタルゲラスをEXEはエビルダイバー、ナハトはベノスネーカーを召喚した。

"ユナイト"

召喚した三体のモンスターは融合してジェノサイダーへと姿を変えた。

「紫電一閃!!」

シグナムが振り抜いた烈火の一撃は機動外殻を真っ二つに切り裂き、完全な鉄屑にした。

ナハトは構えてカードを装填した。

"ファイナルベント"

ジェノサイダーの腹は膨らみ、周囲の塵を飲み込んでいく。ナハトは飛翔してシグナムが切り裂いた鉄屑をジェノサイダーへと蹴飛ばした。

「ドゥームズデイ!!!!」

ジェノサイダーへと飛ばされた鉄屑は腹部のブラックホールに飲み込まれて跡形もなく消し去られた。

「・・・ふぅ。」

EXEはふらつきながら壁にもたれる。あれだけ強い一撃を一人で耐え切ったのだ。無理もあるまいとナハトとテイカーが寄り添う。

「お前はよくがんばった。今はゆっくり休め。」

EXEは頷いて壁にゆっくり身を任せた。シグナムも遅れるように彼に寄り添った。

「君がいなければ私も戦えなかった。ありがとう。」

「こちらこそさ。あの時あんたが俺に力をくれた。だから俺も戦えたんだ。」

管理局の救護班がすぐにEXEを担架に乗せて、救護車へと運んで行った。

 

一方で城塞のグラナートと戦うヴィータたちの裏で援護へと来た仮面ライダーディサイド-柳 リョウヘイ-に斬武とザルニスは困惑する。

「何であんたがおるんや・・・?」

「ミッションを外されたはずでは?」

ディサイドはグラナートの進攻を止めるべくカードを手元から取り出す。

"ガンバライド エルス"

ディサイドは姿を変えて黄金の鎧を纏い、翼を広げたガンバライダーへと姿を変えた。

「別のガンバライダーに変身した!?」

「どういうこっちゃ・・・。」

エルスへとガンバライドしたディサイドはガシャコンスパローを召喚してグラナートへと射撃を加える。ザルニスはガシャコンソード、斬武はガシャコンブレイカーを召喚して同じく攻撃を加えていく。

しかし、グラナートの進攻は止まらず前へ前へ進んでいく。進もうとするグラナートの前にヴィータが立ちはだかった。

「ヴィータさん!」

管理局員たちが呼ぶ中、ヴィータはバリアを作りグラナートの進攻を止めた。

「ッッッグ!!!」

その重さはヴィータだけの力でも抑えることができない。グラナートは先ほどよりは遅く、しかしゆっくりと前に進んでくる。

「ヴィータちゃん!」

ヴィータの脳にシャマルが直接声をかけてくる。ヴィータはその言葉に耳を傾ける。

「増援をそっちに向かわせてる!倒し方も教えてるからもう少し耐えて!」

「んなこと言われなくたって・・・!!」

しかし限界がきている。あと数ミリも下がれば後ろの施設が破壊されてしまう故にもう後はない。

ディサイドはすぐヴィータの元へと向かって彼女と共にバリアを張った。

「お前・・・。」

ヴィータと同じくベルカ式の魔法陣を開き、同じようにグラナートを抑えた。

「お前の遠い未来の弟子に世話になったんでな・・・。お前に傷を置いてくわけには行かないんだよ!」

ザルニスと斬武はガシャコンブレイカーとガシャコンソードにガシャットを差し込んで構えた。

"タドルクリティカルフィニッシュ"

"ドラゴナイトクリティカルフィニッシュ"

二人の同時攻撃はグラナートの後ろ足を崩してそのまま地にひっくり返した。倒れ込んだグラナートは再び脚を再生させる。

ディサイドとヴィータがもう一撃加えようとした時だ。

「うおおおおおおおおおお!!!!」

"デッドリーオメガドライブ!"

二つの青い光はグラナートの厚い壁を撃ち抜き、中心部の赤いコアを露出させた。

「ヴィータ!」

「ザフィーラ!」

ヴィータはザフィーラへと、そして青いガンバライダー"アイザ"はディサイドの元へと向かった。

「お前は組織に背くつもりか?」

ディサイドは鼻で笑ってアイザ横を通り過ぎた。

「今組織を背いてでも俺にやるべきことがあるだけだ。」

アイザもほくそ笑むと、ディサイドのベルトを叩いた。

「副社長命令だ。お前の目的を果たせ。」

言われずともとディサイドは構えて一気にグラナートへと駆けていく。

「ザルニス、斬武に告ぐ。ディサイドを援護しろ!失敗するなよ?」

「了解!」

浮き上がろうとする鉄屑は徐々にコアへと寄っていく。

"スキャニングチャージ"

"グラビティ プリーズ"

ザルニスのサゴーゾインパクト、斬武のグラビティは鉄屑を抑えて浮き上がることを許さない。

しかし浮き上がろうとするものもおり、動きを完璧には止められない。

"サイクロン メタル マキシマムドライブ"

「ツインマキシマム!メタルツイスター!!!!」

「鋼の軛!!」

アイザから放たれた突風とザフィーラから放たれた氷の刺によってグラナートの動きが完全に封じられる。

ディサイドとヴィータは目を合わせてコアへと一気に飛びかかる。

「いくぞ!アイゼン!」

「抜剣・飛燕!!!!」

ディサイドの脚部には光が宿り、ヴィータのデバイスであるグラーフアイゼンの先端はドリルへと形を変える。突き進む二人の一撃がコアへと届いた。

「ブチ砕けェェェェェェェェェ!!!!!」

コアを完全にブチ抜いた二人の一撃は城塞を完全に落とし、完全な鉄屑へとその形を戻した。



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19話

グラナートが落とされた一方の空ではなのは、シュテル、アクート、ブラットが激しい攻防を繰り広げていた。光が飛び交い、爆音が周囲に響き渡る。

アクートはハーメルンケインとサタンサーベルを召喚してブラットに斬りかかるが、その僅かな隙間へと体を翻して後ろへと回り込む。アクートはその背へと目線を向けて笑みを溢す。

「やるな。」

「君ほどじゃない。」

"エクスプロージョン ナウ"

"ビート"

アクートの放った炎はブラットのライオンビートの前にかき消されていく。彼女の前には美しい火花が舞い散った。

二人は再び離れて武器を手元から離した。離した武器は粒子となって地面へと消えていった。

「僕が君を苦しめたのか?」

「・・・。」

「僕がいたから君は蘇り、僕を倒さなきゃいけなくなったのか?」

ずっと気になっていた。アクートとして蘇ったのがもし自分のせいだとするなら彼に何としても謝りたかった。自分が死ぬことがことが片付くならとさえ考えていた。次の言葉を発そうとした時アクートが口を開いた。

「・・・お前が死ぬ必要なんてない。」

「えっ・・・?」

訳がわからない。バグを潰すために蘇ったと彼は言っていた。それの意味がない?理解が追いつかない中、アクートは淡々と話を続ける。

「俺が蘇ったのは確かにバグを壊すためだ。しかしそれは世界が求めて蘇った理由に過ぎない。そこに俺自身の感情などどこにもなければ俺の行動理念の一つでもない。」

シュテルはアクートへと弾丸を放つ。アクートはそれを片手で弾き飛ばした。弾丸は吹き飛び、海の中に消えた。

「あなたの意志がないのならあなたが動けばいい。世界などどうでもいい、その中にいる以上あなたはあなたです!」

「俺の意志・・・。」

アクートとしてロードとしてどうすべきか何も考えていなかった。世界のコアとして何をすべきか、それしか考えていなかった。

なのはもアクートへと声を掛ける。

「アクートさんがしたいこと、私にも分からないけど本当に後悔する前にやるべきことをやった方がいいと思います!」

「なのはさん・・・。」

シュテルとなのはの弾丸は空を舞い、光が周囲を明るく照らす。光を掻い潜ってアクートへと向かってくる一筋の光があった。アクートは複眼越しからそれがガンバライダークロスに変身したリョウヘイであることはすぐに分かった。クロスは近づいてアクートへと一枚のカードを渡した。

「これは・・・。」

渡されたガンバライダーカードに写っていたのは赤いガンバライダーとLoadという名前だ。もう存在していないと思っていたが・・・アクートはほくそ笑んでクロスの横を通り過ぎる。

「お前は本当に最高の舞台を用意してくれた。」

「大将戦くらい白黒ハッキリつけてこい。いいな?」

リョウヘイは送り出すようにロードの肩を叩いてまた光の中へ去っていった。

ブラットはICカードを反転させてバーストチェンジする。バーストしたブラットの体は黄金に輝く竜の鎧を纏った。

アクートはガンバライダーカードをベルトへと装填して音と共にその姿を変える。

"ガンバライド ロード"

 

激しい空中戦を繰り広げるなのはとシュテルは爆風と光が吹き荒れる嵐の中デバイスのぶつかり合う火花と金属音が響く。二人の光弾の爆風は二人を引き離すが煙の中二人は再び激しい攻防を繰り広げた。シュテルは飛翔するなのはの横に並走して目線を彼女へと向けた。

「なのは、一つよろしいでしょうか?」

「今!?」

見えているのかそれとも気にも留めないのか驚きを隠せないなのはをよそに一人疑問をぶつけていく。

「なのはが守る施設の中には生体反応がありません。無人の施設を守る理由は何ですか?」

「えーっとそれは・・・。」

飛び交う光をなのはの武器であるストライクカノンとフォートレスを使って防ぎながら頭の中で伝えたいことを紡ぎ繋いでいく。

「あの施設の完成を待ってる人やそれを頑張って作っている人がいる。そんな人達のために壊されたくない・・・壊したくないの!!」

なのはは一気にシュテルを引き離す。なのはが更に追撃を加えようとしたその時だ。

「グランドオブレイジ!!」

「シャイニングライダーキック!」

ロードのグランドオブレイジ、ブラットのシャイニングライダーキック、二人のガンバライダーの起こした爆風はなのはたちを巻き込み攻撃の手が緩む。ブラットは吹き飛ばされてそのまま地面へと突き落とされた。怯んだなのはを逃すまいとシュテルは一気になのはへと突撃する。

「ッ!!」

「それがあなたの覚悟ですか。」

シュテルの腕に装備された武器はなのはの頭を掴んで離さない。なのはの目にはその中心に赤い光が集まっていくのが見えた。シュテルが光を放とうとしたその時だ。なのははすぐさま腕を前に出して光弾を放った。相討ちになった二人はふらつきながら空中で受け身を取った。

「ッ・・・葉月さんは。」

なのはは下を見てブラットの様子を見た。ブラットは立ち上がり、ロードと激しい鍔迫り合いを繰り広げていた。お互いの背に持った翼からは激しい風圧が起きて周囲に砂塵を撒き散らす。

ロードはアークトライデント、ブラットはザンバッドソードを奮い、火花を起こした。

「うおおおおおおおおおおお!!!!」

二人の激しい叫び声は砂塵と共に周囲へと響く。ロードがザンバッドソードを弾くとブラットの後ろに剣先が飛びそのまま地面へと刺さる。アクートは更に猛追を加える。

「こんなものでは終わらない!」

アークトライデントを空に翳すと、雨、雹、雷を同時に起こしてブラットへと降り注いだ。

「こんなもの!!」

"Ready Go スパークリングフィニッシュ"

ブラットが放った気泡は雨と雹を弾き飛ばしてロードまでの道を作った。ハイパーゼクターを持ってロードへと近づき、ぶつかり合いながら空中へと飛んだ。

「やるな・・・だが!!」

ロードはブラットを弾き、なのはとシュテルの対向線へと投げ飛ばした。ブラットは空中で受け身を取りながらハイパーゼクターにゼクターを召集させる。

"オールゼクターコンバイン"

シュテルとなのははお互いに構えをとる。二人の前には先ほどよりも更に大きな光が収束した。

「私にも王に仕える炎という信条がある。あなたには負けられません!!」

二人の光は大きくなっていく一方なのはは施設の方を向いた。このままでは施設に被害が及ぶ。このままではマズいと感じたそんな時だった。

「なのは!こっちの結界は任せて!」

「そういうわけだ!」

なのはへとそう声をかけたのはユーノとアイザだ。そして北には斬武、南には青いもう一人のガンバライダーがいた。

「氷菓!?」

ロードとブラットの驚愕は少女へと向いた。ユーノたちと同じくして結界を張っていたのはガンバライダービート"噫蘭氷菓"、そしてガンバライダーノヴェム "九重一成"だ。

「久しいね、ロード!」

「何でお前が記憶を・・・!?」

ノヴェムの記憶は完全に消えていたはず、しかしなぜ自分のことを覚えているのか。さまざまな疑問が頭をよぎるが今はそれどころではない。

 

結界の光は強まり、次第に全員は砲撃の構えをとる。

「ルシフェリオン」

「スターライト」

「ブレイカー!!!!」

"マキシマムハイパーサイクロン"

"プトティラノヒッサーツ"

「マキシマムハイパーサイクロン!!」

「ストレインドゥーム!!!!」

四人の砲撃は中心で爆発を起こして光を放った。

「押し切れ・・・」

「この攻撃に耐えられる奴など・・・!!」

ロードとシュテルは衝撃を抑えながらも撃ち続けた。耐えられぬほどの光と爆風、彼らの一撃は通るはずだった。

「ストライクカノン!エクセリオンモード!ドライブイグニッション!!!!」

「絶・ガンバライダーキック!!!!」

光を押し切った二人の一撃はシュテル 、ロードへと直撃してシュテルとなのははトドメの一撃を互いに放った。

「ヒート!」

「バースト!」

 

-エンド-

 

戦いが終わり、シュテルはなのはの腕の中で眠るように倒れていた。完全に力を抜いて体を委ねているあたりよほどの力だったのだろう。なのははゆっくりと降りていく。

「今回は私の勝ちだね・・・。帰ったらお話聞かせてね?」

葉月はロードを探すが周囲に姿が見えない。あの一瞬で逃げたというのだろうか。探しに行こうとした時、止めたのは九重だった。

「九重さん?」

「アイツはそういう男だ。勝手に進んで勝手に帰ってくる。」

とはいえ彼自身も心配なのか周囲を見渡した。葉月は九重に疑問を聞いた。

「どうして記憶がもどったんです?無くなったって聞いてたんですが・・・。」

「あー、何でだろ。」

すっとぼけているのか本当なのかは分からないが記憶がもどったということは確からしい。満身創痍の葉月はそのまま救護班に預けられ、ベッドへと身を委ねた。

一方でアクートへと戻ったロードはふらつきながら施設の片隅に蹲った。

「強くなったモンだ・・・。」

あの頃の葉月とは比べものにはならないほど強くなり、彼を超える力となった。嬉しくもあり悔しくもある感情を閉じ込めてゆっくりと立ち上がった。するとこちらへと向かってくる足音が聞こえた。見ると向かってきていたのはリョウヘイだった。

「どうだ?セイオウの弟子は。」

「あぁ、強くなっている。幼い頃から知っていたが予想以上だよ。」

ロードはリョウヘイにガンバライダーカードを返すと、再び変身して歩き出した。リョウヘイは呼び止めようとするが言葉が見つからず諦める。

彼は彼なりの目的がある。再び相対するそのときはきっと敵同士なのだろうと確信に近いものを感じていた。



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20話

オール・ストンシーの水族館内ではデウス、フェイト、レヴィ、ファングの四人が激しい攻防を繰り広げていた。

デウスはメロンディフェンダーを構えてフェイトの斬撃を防ぐ。デウスは後ろに押されながらもその攻撃を受け流して空中でもう一度体制を立て直してフェイトへと迫る。しかしフェイトはその受け流された勢いを前進する力に変えて一気に駆け抜けていく。デウスは攻撃をやめてすぐに彼女の追跡を開始する。

「やるじゃないか。さすが最強格の魔導は伊達じゃない。」

「あなたの目的はなんですか!?」

デウスはジャコードロットを召喚して鞭をフェイトに振るう。フェイトはそれを一つずつ処理するように避けて一気にデウスへと接近する。

「俺の目的だったか?管理局送りにでも出来たら教えてやるよ!」

近寄ってきたフェイトの腹に思い切り蹴りを入れて突き放す。魔力の鎧があるとはいえ常人より強化された一撃のダメージは計り知れない。ダメージを受けながらフェイトはゆっくり立ち上がる。

「それでも・・・ッ!?」

「何だ!?」

その瞬間だった。彼らがいた場所の強化ガラスが全て割れてあらゆるところから水が溢れ出した。デウスとフェイトはすぐに空中へと上がって浸水を回避したのだが奥を見るとガラスが次々と割れていき、水が津波のようにこちらに迫ってきているではないか。あんなものに巻き込まれたらひとたまりもないことを二人は一瞬で察した。

「こんなの」

「聞いてねぇぞォォォォ!!!!」

フェイトとデウスは一目散に迫ってくる水の大群から逃避した。後ろへと逃げるがすごいスピードで追ってきていることを考えるとどう考えても逃げるのは得策ではない。フェイトは立ち止まりロッドを構えて魔法陣を開いた。

「ここはあの水をどうにかしましょう!」

フェイトのその案に得策だなと立ち止まり、デウスは反転して一気に水へと駆けていく。

"スクラップブレイク"

「吹っ飛べェェェ!!!!」

龍と共に放たれた一撃は水圧の波を止めてその圧を押していく。フェイトは魔力を解放して水へと一撃を放つ。

「サンダー・・・スマッシャー!!!!」

放った一撃は水を感電させながら蒸発、真ん中に大きな風穴を開けた。フェイトは閉じないうちにとすぐにその風穴へ走りデウスへ手を伸ばす。

「サンキュー!」

二人は大きく開いた穴を駆け抜けてそのまま走り去った。

穴を抜けるとぐったりした二人はそのまま座って大きなため息をつく。

「ごめんなさい。私が無茶をさせたばかりに。」

「これくらいの無茶は慣れてるからご心配なく。それよりこれをしでかしたバカどものお説教に行かないとな。」

デウスとフェイトは立ち上がって奥底へと進んでいく。誰がやったかなどこちらからすればすぐに分かるのだから。

 

一方、レヴィを追うファングは彼女のスピードに追いつくために最速の力で彼女へと対抗していた。

"ズーットマッハ"

音速の速さは目にも止まらぬ動きで翻弄してレヴィへと攻撃を仕掛ける。それを防ぐレヴィは自慢の力で弾き返してお互いに互角の攻防が続いていた。

「こっちだよー!」

「逃さないっての!!!!」

一気に二人は駆け抜けて奥へ奥へ走っていく。後ろでは鮮やかにガラスが砕け散り、水の光と反射してファングを映す。

奥地まできたところでレヴィは剣を構えて一気にファングへと迫る。

「どぉぉぉっせい!!!!」

「ッ!!!!」

ファングは持っていたライドブッカーで防ぐがその一撃は重く、後退りさせてそのまま倒れそうだ。

「こんなところで・・・死ねるか!!!!」

"アタックライド スラッシュ"

無数の斬撃が飛び交ってレヴィへ猛攻する。しかしそれは鮮やかに回避されて一気に距離を取られる。まるで遊ばれているようにも感じる戦い方にファングに焦りの色が見えた。

「僕は・・・!!」

「おーまーえーらァァァァァ!!!!」

ファングの左横スレスレにまるでその怒りを表したかのような烈火の一撃が通り、目の前で爆風を起こした。後ろを見ると追いついてきたフェイトとデウスがそこにいた。フェイトはともかくデウスはその仮面を付けていても怒りの色が見えて余計に怖く感じる。

「何でフェイトたちが共闘してんの!?」

「僕は遊んでただけで何も悪いことしてないよ!?」

ファングとレヴィの言い訳虚しくデウスは銃を向ける。

「お前らの遊びのせいでこちとらえらい迷惑かかってんだよ!」

「そもそもここは遊ぶための場所じゃないし悪くなくても物を壊していいという理由にはなりません!」

「何で?遊んじゃいけないの?」

「ダメです!」

至極真っ当なお叱りを受けた二人は気まずそうに目を合わせる。レヴィは考えに考え、ある考えを思いついたのかニヤリと笑みを溢す。

「じゃあここで遊ぶのやめる!」

「やっとそうしてもらえて助かる。」

「いいとこ見つけたから付いてきて!」

「・・・は?」

デウスの戸惑いを無視してレヴィは一気に空中へと飛び出した。

「逃さないって言ったろ!」

ファングはその穴を使ってレヴィを追跡する。デウスは大きなため息をついて穴を見つめる。

「子守ってこんなに疲れるのか?」

「でも行くしかありません。」

フェイトは先に駆け出して穴を抜ける。デウスは穴を見つめた後めんどくさいという葛藤を抱えた。

「行かにゃ怒られるよなこれ。」

仕方ないか。という猛烈な虚無感を持ってそれぞれを追うように一気に駆け抜けていった。

 

一方外ではいつでも出撃できるようにとアルフが準備をしていて、その周りにはGRZ社と管理局の職員が合同で職務をこなしている。

アルフもここの指示を任されてはいるがスタッフの優秀さもあり、彼女は準備運動しながら新しい指示を待つ形となっているようだ。

そこに一台の車が到着してリンディと九重が降りてくる。九重も施設内のえらいこっちゃな状況を聞いていたらしく少しばかりのため息をついていた。

「状況は?」

「施設を抜けて別方向へと移動、容疑者はロストしていません。」

それにしてもファングと互角のスピードで渡り合えるような敵がいるとは少し意外である。しかもマッハは音速の仮面ライダーの力となるとその鎧でも負荷は大きいはず。

ミッドチルダにいた期間があるとはいえ分からないことも・・・

「ん?」

九重は何故かミッドチルダにいた頃の記憶が霞んだような気がした。確かアクートを追ってなのはたちと出会ってそれで・・・

「九重さん?」

リンディの言葉に我に返る。今はそんなことを考えてる場合じゃないと息を持ち直す。

「そうですね。フェイトの新装備もありますし僕らで届けに行きます。」

「私も行く!」

アルフがそう言うとリンディはそれを止める。

「相手はフェイトと互角の魔導師よ?あなたに怪我させられないわ。」

アルフはそうか。と少ししょげたように後ろを向く。九重はそんなアルフを気にしてか頭を撫でた。

「大丈夫。僕たちもフェイトと絶対無事で帰ってくるから。」

言ってはみたもののしょげた様子は変わらずだった。リンディは先に飛び立ち、それを追うように九重も変身して後を追った。

「・・・フェイトを頼んだぞ。」

アルフは立ち尽くして空を見る。心配ではあるがフェイトならきっと・・・。

 

オールストン・シーにある広場へと着いたレヴィたち、レヴィはその真ん中で立ち止まりファングと邂逅する。

「ここなら何もないし広くて戦いやすいね!」

「怒られないだけここの方がマシだね。」

そこに次いでフェイト、デウスも到着する。

「うーん・・・でもこれじゃつまんないから!」

レヴィは周囲に雷撃を放った。その雷は一ミリも外さぬ的確な攻撃で電飾へと直撃、周囲の電気はたちまち光り始めた。

「めちゃめちゃ綺麗じゃん!」

「でしょー!僕ってやっぱ天才なんだよ!」

やっぱこういう奴らは波長が合うのだろうかと呆気に取られるデウスをよそにフェイトはレヴィへと問う。

「レヴィ・・・あなた、どこの子なの?」

レヴィはうーん。と悩みながらその問いに答える。

「僕は王様の臣下でしゅてるんとはマブダチ!あの人は知らない!足止めして出来ることならやっつけてこいって言われてるの。」

問いを続けようとするフェイトにファングが割って入る。

「あいつぶっ飛ばしてからそれ聞いた方が早くな」

「おーっとシリアス展開の邪魔はさせんぞ!」

デウスはファングを押し倒して下へと引き摺り込む。ファングはそのパワーに押されてフェイトたちから離れる。気にはなるがそれはさておいてフェイトは話を続ける。

「その王様って言うのはキリエさんたちの関係者?」

「王様は王様だよッッッ!!!!」

レヴィは雷撃を放ち水しぶきが舞う。レヴィは剣を構えて戦闘態勢に入る。

「ねぇもういい?ずっと眠ってて退屈してたんだ。相手してやるからかかってこい!!!!」

レヴィは一気に突撃してフェイトへと剣を振るう。その力に押されて一気に壁へと叩きつけられる。

フェイトは叩きつけられた後すぐに体勢を立て直してすぐにレヴィの攻撃をいなして切り払う。

「今、キリエさんの周辺で事件が起こってて私はそれを止めたいの!」

「しつこいぞ!」

「だけどッッッ!!!!」

フェイトの斬撃を防ぎながらレヴィは光を拡散して弾丸を生み出した。生み出された弾丸はフェイト目掛けて飛んでいくがフそれは鮮やかに回避されてしまい光弾の全てを破壊していった。フェイトはおぉー。と感心の声を上げる。

「今は大切な人じゃなくてもこれから先大切な人になるかもしれない。大切な人が困るのは嫌でしょう?」

「それに!!!」

デウスが体勢を崩して空中で回転する。地上にはドラグランザー、ダークレイダー、マグナギガを召喚していた。

「その誰かにも大切な人がいて僕らはその人たちを守るために戦うんだ!!!!」

"シュートベント"

ドラグランザー、ダークレイダーは同時に散開、デウスに一気に攻撃を放つ。デウスはそれを回避してぶつかった光弾が煙を放つ。

"サイクロン マキシマムドライブ"

爆風と光弾を風が弾き返して周囲に消え去る。デウスは一気にファングへと斬りかかる。レヴィは戦う二人を見ながら考え込む。

「うーん・・・確かに大切な人が困るのは良くないな。」

フェイトは促すようにさらにレヴィに語りかける。

「そう。誰かを困らせるのは良くないことなんだよ?それがたとえ誰かに命令されたことだとしても。」

「・・・ん?ちょっとタンマ。」

レヴィはフェイトに問いを返す。

「それって僕の王様が悪い奴って言ってるの?」

言葉の綾でそういう意味じゃないのだが、何と返せばいいのか分からずフェイトの言葉が詰まってしまう。レヴィは立て続けに言葉を続ける。

「王様はさ、僕をいい子だって言ってくれた。ご飯もおやつもくれたしうんと優しくしてくれた!一緒に眠ってくれた!僕が世界中でたった一人この人について行くって決めた人だ!そんな王様を悪い人だっていう人は・・・僕がこの手でぶちころがす!!!!」

レヴィの武器は形状変化して剣から円形の武器へと姿を変える。突撃したレヴィは力のままにフェイトへと攻撃、その進撃にフェイトは怯み臆する。反撃の隙もないままフェイトは少しずつ追い込まれて行く。

「レヴィ・・・違うの!!!!」

フェイトの問いかけにレヴィは違わない!と一蹴する。

「王様をディスる奴は悪い奴!それくらいシンプルでいいってしゅてるんが言ってくれたもんね!」

フェイトがレヴィに弁明しようとするがレヴィはその言葉を煩いと遮り怒りのままフェイトを地上へと叩き落とす。その一撃の重さにフェイトは怯み痛手を負うこととなる。

「いいから早くやっつけられろォォォ!!!」

レヴィの武器に青い光が集まりそれは一つの大剣となって姿を現す。危機をすぐさま感じたファングは止めに行こうとするが

「言ったろ?シリアスな展開は邪魔させないってな!」

"クラックアップフィニッシュ"

「どけって言ってんだろうが!」

"ボルテックフィニッシュ"

二人の攻撃は火花を散らす。じりじりとぶつかり合っていたとき、レヴィはその剣をフェイトへと振るう。

「双刃・・・極光斬!!!!」

レヴィの雄叫びとともに青い光が大地を切り裂き海を割る。その衝撃は周囲を飲み込み水飛沫と稲妻で包み込む。デウスとファングは水飛沫の中に飲まれて一気に突き放されてしまう。鳴り響いた雷鳴と飛沫の雨は止み、その先には倒れる一人の少女がいた。



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21話

周囲を呑み込むほどの一撃は地と海を割き、そしてそこにいた人をも吹き飛ばした。一撃を放った少女はゆっくりと地へと降りる

レヴィは周りを見ながらやりすぎたという自覚からか辺りの人間に大丈夫かどうかを問いかける。自分を怒らせたということはあれど他の人間まで巻き込むつもりはなかったのだろう不安が募りその感情が表情にも現れる。その声に呼応するようにデウス、ファングは水上へと上がってきて自分についた水を振り払う。デウスは呆れているような表情をしているようにも見えるがどこかそこから怒りのようなものも感じられる。ファングは心配そうに辺りを見渡して必死に叫んでいる

「フェイト!!!!」

力の限り叫んだファングの声に応えない。砂煙の中少女を見つけるがレヴィが与えたダメージは凄まじく、視認するだけでは彼女が生きているかどうかを判断するのすら難しい

「・・・あのバカ」

確かに倒せというお達しはあったが誰がそこまでやれと言ったか。デウスの呆れに似たため息はレヴィにも聞こえていたようで

「誰がバカだよ!王様をバカにした方が悪いだろ!!」

「お前が怒りのままに戦ったからこうなったんだろ!誰が殺せまでと言ったよ!ええ!?」

「・・・黙れよ!」

二人の口喧嘩はファングの一言で一瞬で消え去る

「人が死んでるかもしれないんだぞ。」

普段のファングとは明らかに違うことをデウスはすぐに察して黙り込む。彼の言うとおりだ、人が死んでいるかもしれないのに今こんなことをしてる場合ではない。動き出したのはレヴィだ

「じゃあ、やっつけないとね。」

止めようとする静止を振り切り刃を向ける。彼らのスピードでは明らかに間に合わない距離だ。それでもとデウスとファングは静止に向かい手を伸ばす。だが

「じゃあね、フェイト。」

遅かった。刃は地面に突き立てられて岩ごと砕き潰した。二人はそれを見て動きを止める。まさかそんなことはない、この戦いで死人?そんなことがあっていいのか?レヴィは二人の反応とは違うようだった

「あれ?」

その場にフェイトがいないことに気づき辺りを見渡していたそのときだった。レヴィの体は碧いリングに拘束されて完全に動きを封じ込められる。レヴィは突然のことに焦燥して暴れ回るが彼女の力では砕くことすら敵わない。突然のことにデウスとファングも頭が混乱するが、一人の男の声に振り向く

「間に合った・・・のか?」

「えぇ・・・何とかね。」

後ろにいたのは九重が変身したガンバライダー"ノヴェム"、そしてフェイトを抱きかかえていたのはバリアジャケットも着ていないリンディだった。しかし、リンディの背は赤く流血していて間に合ったとも言えないしそれどころか戦線に立てるような姿ではなかった。間に合ったわけではなさそうだとノヴェムは察してファングとデウスへと近づく

「デウス、これを見てもまだ戦うつもりか?」

デウスは一瞬口を噤んだが切り返すように二人を退けて彼らに背を向ける。

「俺たちには俺たちの成すべき使命がある。たとえお前らと刃を交えることになってもこの道からは退くつもりはない。」

ファングが何か言おうとしたのをノヴェムが止めてそうか、と呟く。止めないと言うよりは止められない、そんな感覚なのかもしれない。ノヴェムもどこか納得したようだ

 

背中を血に染めたリンディはフェイトを強く抱き寄せる。フェイトはそれと同時に背中の血に気付く。突然のことに頭が混乱するが彼女はすぐさまに口を開いた

「リンディさん・・・なんでこんなことを!?」

なぜこう言ったのかは分からない。でも真っ先に言ってしまったのだ。リンディは諭すようにフェイトの質問に応答する

「家族だから、もう目の前で大切な人がいなくなるのを見るのは嫌だもの。」

フェイトの瞼から一粒の涙が流れ、リンディの肩へと当たる。ああ、何故こんなにも近くで見てくれていた大切な人に気付けなかったのだろう。プレシアやアリシア、リニス、アルフたちのような大切な人たちと等しく愛してくれて大切に想ってくれる優しさに何故気づけなかったのだろう。そうだ、今やるべきことは一つ、その気持ちに呼応したのかリンディの持ってきていた箱が光り輝く。フェイトはリンディから託された武器を持ち、光を放ちリンディの傷を癒す。フェイトはリンディに背を向けて言葉を伝える

「あの子を説得してくるから、待ってて"母さん"」

レヴィをふと見ると鎖を砕いて喜んでいた。フェイトはレヴィに話しかける

「ごめんね、待った?」

「全然、それより仲間を呼ぶなんてずるいぞ!!!」

どの口が言うか。デウスがそう言おうとするよりも先にフェイトが切り返す

「レヴィも大きなマシーン使ってたしおあいこ。」

レヴィはリンディの方をふと見る。その瞳はどこか羨ましさや憧れのような眼差しにも見える

「あれ、フェイトのお母さん?」

「そう。私のお母さん。」

デウスはどこか微笑ましそうに彼女たちを見つめる。セイオウから連絡が入ったのはそんな時だ

「朱崎さんか・・・。わかった、すぐ向かう。」

「音速の僕から逃げられると思わないでくれないか!?」

そう言って後ろを向いた時だ。デウスは不意を突かれてファングに殴り飛ばされる。壁へと叩きつけられて、その次の動きを取ろうとしたその時だ

「お前ら・・・!!」

「今回だけだからね?」

「サンキュー九重さん!」

"キック サンダー マッハ"

"ファイアー ドロップ ヒッサツ!フルスロットル!マッハ!"

「これが!」

「新コンビネーションアーツ!N&Fだ!」

音速を超えるスピードで炎と重なり合った雷撃は岩を砕き周囲に散らばった水飛沫ごと標的を吹き飛ばした

 

一方でレヴィは先程の攻勢から一転、フェイトの攻撃に圧倒されて完全に互角以上の力を振われる。斬撃で一気に圧倒しようと試みるがレヴィの一撃は全ていなされてそのまま力でさえ押し負けて吹き飛ばされてしまう

「でもまだ・・・っ!?」

レヴィが剣を振り抜こうとしたその時だ。黄金色に光る個体がレヴィの四肢を包むように現れて彼女の体を拘束する。振り払おうとするが強固なバインドは動くことを許さない。

「レヴィ、受けてみて。私の全力全開」

「え?全力って?え?」

"ホーネットジャベリン!ファイア!"

フェイトのその掛け声はレヴィの疑問に答える間も与えず光が包み込む。その一撃はレヴィを飲み込み、そのまま天へと向かって雲に風穴があいた。光が収まったときにはレヴィは倒れて地に落ちていて、それをそっとフェイトが抱きかかえた。フェイト、リンディが見つめ合い微笑む。その姿はお互いを思いやる家族のようだった



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22話

シュテルとレヴィが倒された

一瞬の反応だったが二人の気配が消えたことから王は察知する。ディアーチェは自分と同じ力を持つはやてを撃ち落そうと何発も黒い弾丸を撃ち続けるがそれを全て回避される。さすがは自分と似て非なる存在、おそらく実力も同等と言ったところだろう

そんなところへ背を合わせに来たのは共に戦っていたガンバライダー"セイオウ"だ。セイオウはディアーチェへとそっと問いかける

「お宅の部下ちゃんやられちゃったみたいだけどどうするんだ?全滅フラグもあり得るよ?」

焦らせるのが作戦かそれともまた別の考えか、ディアーチェは舐められたものだとそっと返答する

「もちろんレヴィもシュテルも回収する・・・。こいつらを倒した後でな!」

ディアーチェははやての元へ、セイオウは合点したとジーの元へと飛び去った

ジーははやてへと近づき一瞬のコンタクトを取る。はやてもそうなのだろうと一瞬でジーに聞き耳を立てる

「どうします??このままじゃ互角でジリ貧です」

「俺があのデカブツとセイオウを引きつける。はやてちゃんはもう一人を頼むよ」

わかりました。とはやてはすぐさま飛び去った。ジーもそれと同時に一気にバーニアを加速させた

 

ジーは巨大な機械とセイオウを引き連れながら空を飛び回る。二種の光弾がジーの肩を通り抜けて遠くで爆発するのが見えた。爆風はジーの空中での速度を歪めて行く

「ちっ・・・」

引きつけるとは言ったものの爆風に押し返されてはまた進むを繰り返していてまるで進んだ気配がない。そうしている間にセイオウは距離を詰めている

「おやおやぁ?前の決着をつけたかったんだけどな」

セイオウからの安易な挑発、これには何か意図があるのだろう。しかしジーはそれもわかった上で分かったよ。と返す

「二人纏めて引きつけるのも飽きてきたんだ、ここで叩かせてもらうぞ!」

ジーはガンガンセイバーを召喚して弾幕をすり抜けセイオウへと近づく。セイオウはネビュラスチームガンを構えてジーの攻撃を凌ぐ。ぶつかり合う二人の間には激しい火花が飛び散り、その横を通るようにアメティスタの光弾が地上へと降り注ぐ

"ダイカイガン ムサシ"

"エレキスチーム"

斬撃は爆発を生み二人を引き離す。光弾が飛び交う中、セイオウはジーへと問いかける

「なあ、何でアクートが蘇ったと思う?」

「そんなのショッカーかどっかが・・・あれ?」

よく考えればおかしな話だ。倒したはずのアクートは蘇り、当時のGRZ社の最高傑作をそう簡単に他の組織が真似できるはずがない

「な?おかしいだろ?」

それが何だってんだ!と言おうとした瞬間ジーは何かを察する。リョウヘイの言っていたワールドコア、そしてアクートと分離したロードとか言ったか?あの赤いガンバライダーの存在、何かが繋がっているようで繋がっていない

「まあ、今そんなこと考えたって仕方ないんだけどな!」

セイオウは再び射撃を開始する。じゃあ何で聞いたんだよとジーは射撃を弾き飛ばしながらセイオウへと突撃していったその時だ

「俺ばっかりに注目しすぎてもう一つの敵、忘れてない?」

「なっ!?」

ジーが横からの気配に気づいた時には遅かった。アメティスタの突進を直に受けてそのまま吹き飛ばされていく。すぐに体勢を立て直すがそこにセイオウは突撃してくる

「まったく、お人形と息ピッタリとは社長らしいよなぁホントに!」

「おうおう皮肉かい?勝ってからいうもんだぜそういうの!」

二人は再び刃をぶつけ合い火花の光を生んだ

 

はやてとディアーチェはお互いのデバイスをぶつけ合いは離れ、そして離れれば光弾の撃ち合いとほぼ互角と言っていい勝負を繰り返していた。しかし二人にも僅かに異変が起こり始めていた

「・・・はぁ。」

二人は合わせたかのように同時に息を吐く。互角の戦いを繰り返していた二人は満身創痍と言っても過言ではないほど疲労していてこれ以上の戦いの継続も難しいものだと薄々は分かっていた。しかし

「ここで退くわけにはいかんのだ!」

「王様と一緒や!私だって退けへん理由がある!」

ディアーチェが漆黒の弾丸をはやてに撃ち込み煙が舞う。しかしディアーチェはすぐに違和感に気付く

「まさか!?」

はやての姿はなく、はやてはセイオウとジーたちに近づいていく。はやてはすぐにリインフォース・ツヴァイと息を合わせる

「はやてちゃん!今です!」

ファイア!その一言共に放たれた一撃はアメティスタを撃ち抜きジーの背後で爆散した。ジーとセイオウはその爆風に巻き込まれてそのままその場でふらつく。ジーはそのまま一回転しながら体勢を取り戻してはやてへと近づく

「はやてちゃんナイスだ!あとはコイツを・・・」

「させるか!!」

セイオウへと攻撃を仕掛けようとした最中、ジーとはやてに闇の弾丸が降り注ぎそのまま二人は叩き落とされる。セイオウはすぐに周りの邪魔な煙やらを振り払いバッシャーマグナムを召喚する

"バッシャーフィーバー"

「高まれ我が魔力!震える程に暗黒!絶望に足掻け・・・"ジャガーノート"」

二つの光は地に落ち着いた時爆風と大きなクレーターを生み出した。渾身の一撃を受けた奴らは経ってもいられまい。ディアーチェがそう見ていると煙の中から二つの人影が見えた

「リインちゃんよく頑張ったよ。俺だけじゃ・・・無理だっただろうしな」

セイオウはなるほどなぁ。と呟く

「融合機を使用した防御とジーのアーマーを組織していたGR粒子を複合して魔力を増幅」

「擬似的に強靭なバリアを作ったというわけか・・・だがその状態では貴様はもう立てまい」

はやてとジーは傷だらけになりながらも軽く笑ってみせる。その表情はどこか余裕すら感じる

「王様こそ限界なんちゃう?」

「俺らは負けねえよ。少なくとも裏切ったアンタとはやてちゃんの力を借りてる君にはな」

そう話しているとディアーチェが異変に気づく。遠くで黒い光が輝き天まで伸びていた。セイオウとディアーチェは一斉に飛び出し各々は心の中で呟く

"遅かったか"

"我はこの光を知っている。何かが目覚める?"



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23話

突如として動き出した現状は周囲を騒然とさせる。天高くどす黒く伸びる一本の光に目がけてディアーチェとセイオウ、はやてとジーは進む。

「王様!あれは何なん!?なんか知ってるん!?」

うるさい!とディアーチェははやてを一蹴して更に加速する。それを見ていたのはガンバライダー二人だ

「タケシチロウ。いやジー、これから先のことは俺たちガンバライジング社を離反してまでやろうとしたことだ。よく見ていろ」

マスクの奥の表情は分からないがどこか神妙かつ今までの陽気さを捨てているように見える。ジーは頷いて赤いガンバライダーの背を追う。この物語の結末を知るために

そしてディアーチェはどこか心の奥底に眠るざわめきに動揺を隠せずにいる。その光など見たことはないがどこか懐かしい香りと忘れ去った記憶の鍵が外れるような音、これは何なのか。あの光は何なのか、確かめる必要があるようだ

 

ダメージを負い救護班の治療を受けていたなのは、シュテル、レヴィ、そして玲。彼女たちが受けたダメージは相当らしくなのはに至っては片腕に包帯を巻いていた。ヴィータたちが出撃する背を見ていた玲となのははどこか遠くを見るように少女たちを見送った。遠くを見ているとそこに一台のバイクが止まり、運転していた者はなのはたちに駆け寄る

「なのはさん!葉月さん!」

「アミティエさん!」

二人はゆっくりと立ち上がりアミティエへと駆け寄る。アミティエも同じく二人へと歩み寄った

「言われたものは用意しましたが・・・お二人にとってこんなの無茶です!」

なのはは真剣な表情でアミティエに問いかける

「アミタさんは無理だと言われて諦められますか?」

アミティエは少し間を置くと首を横に振る。気持ちは同じだ、無理をしてでも救いたい人がいる。もう誰かが傷つくのは見たくないしそんな想いをする人がいるなら手を差し伸べる。それが今自分達に出来ることではないか

「それに成せばなる。成さねばならぬ何事もって言うしね。諦めてる場合じゃないんじゃない?」

アミティエは頷き二人に力を託す。彼女たちが見た御伽噺のような救済は荒唐無稽だと思うだろうか、それとも真なる救済へと向かうのか

なのはたちが向かおうとしたその奥で青い光と赤い光が空へ飛翔する。シュテルとレヴィだ。二人は傷だらけになりながらも王の命を受けて同じく光の元へと向かう。彼女たちもまた王と同じざわめきを感じながら

 

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紫の結晶の前に立つアクート、石板として運ばれたイリス、キリエ。禍々しい光を放つ結晶体を前にキリエはイリスへと問う

「ねえ、本当にこれでパパやママ、エルトリアを救えるの?」

「間に合えば、の話だがな」

キリエが疑問符を浮かべたその瞬間だった。イリス、アクート、キリエの体は氷漬けになり瞬く間に身動きが取れなくなった

「そこまでだ!」

イリスたちの前に立っていたのはデウス、そして後ろに立っていたのは黒髪の少年だ。困惑するイリスとキリエだがアクートだけがその者を知っていた

「やっぱりアンタは止めに来ると思っていたよ-クロノ・ハラオウン-」

なぜ自分の名を?何かで調べられた?いやそんなことはどうでもいい。クロノは右手につがえた武器"デュランダル"の刃をイリスたちに向ける

「君たちは包囲されている!大人しく投降しろ」

デウスはため息をつきながらそういうことか。と呟いてガンバソードを手に取る

「つまり敵は同じくイリスってわけだ。悪いが串刺しになってもらうぞ」

イリスは不敵た笑みをうかべてデウスとクロノに目を向ける

「丁度肉体を得るエネルギーが必要だったの」

「何言って・・・ッ!?」

デウスが次の言葉を発そうとした時、クロノや管理局員、そしてデウスの肉体を結晶が引き裂く。人間の肉体から伸びた棘は人々を串刺しにして一瞬で戦いを終わらせた。そして棘はイリスへと集まり石板から一人の人間を形作った。キリエが近寄ろうとした瞬間イリスはその腹を撃ち抜いた。血反吐を吐きながらイリスへと近寄ろうとするがイリスは遠くへと歩いていく

「エルトリアを救う力って言ったわよね。あれは嘘、この結晶の中に眠る力は星を滅ぼす力。御伽噺を信じるあなたを利用して私はここまできた。そしてようやく得られる・・・復讐への力」

愕然として事実を受けいられずにいるキリエを尻目にアクート、イリスは結晶の中身と共に去る。嘘だと叫ぶキリエへとイリスは呟く

-さようなら、どこかの誰かさん-

 

イリスとアクートが海上へと上がると、そこにはガンバライダーたちと魔導師たちが一斉に包囲していた。セイオウは舌打ちをしてキングラウザーを召喚する

「遅かったか」

「イリスとアクートが目的ってことは最初から俺たちと同じ目的・・・!?じゃあ何で手を組まなかったんだよ!」

胸ぐらを掴むジーに対してセイオウは軽く手を除ける

「俺たちの目的はキリエ・フローリアンの保護とイリス、アクートの討伐。最初から黒幕に近づいて終ら双って魂胆だったんだがなぁ」

まあいいじゃないかと寄ってきたのはファングとテイカーだ

「アイツをぶっ飛ばせば万事解決なら一気に切り込むだけだ!」

二人はイリスへと突貫して攻撃を仕掛ける。イリスはため息をついて結晶を叩き割る

「いつまで寝てるの・・・?起きなさい!!!!」

結晶が割れた瞬間、周囲に眩い光と禍々しい闇が少年少女を包み込む。闇は身体中から伸びる棘となり各々の体を串刺しにした。そして割れた結晶からは金髪の少女が眠りから覚めるように現れた。少女は目を開けるとイリスと目が合う

「イリス!私は・・・ッ!?」

「目覚めたわね。ユーリ」

ユーリはイリスに手を伸ばそうとするが体が思うように動かずにもがき苦しむ。イリスはユーリに近づいた後顔を撫でるように触った

「あなたの意志で動くことはできないウイルスを埋め込んだ。だからあなたは自分の意志で動くことはできない」

そういいイリスはユーリの顔面を殴り飛ばした。抵抗できないユーリはそのまま突き飛ばされてしまう。胸ぐらを掴まれたユーリはそのままもう一発殴られる

「ずっとこの時を待っていた。あなたがいなくなってから何年も何年も待ち続けた。私はあなたを」

「いたいけな少女をいたぶっといてその発言とは外道か何かか?」

イリスたちに降りかかった七色の光をアクートは弾き飛ばして対象へと向かう。そこにいたのはガンバライダークロスだ

「そうか・・・お前も魔導を」

「どうだろうな?"アクセルスマッシュ"」

七色の光を放ったクロスに対してアクートは一本の桃色の光を放つ。回避しながらもその見覚えのある一撃に困惑する

「何でお前がディバインバスターを!?」

「何でだろうな?」

アクートとクロスが激戦を繰り広げる中傷だらけになったはやてたちはイリスへと突撃する。イリスは舌打ちをしてユーリへと指示をする

「復讐の前にあなたが大切にしてきたものも消えてもらいましょうか。やりなさい」

-承知しました-

その一撃はフェイト、はやて、ファング、セイオウたちを翻弄して水中へと叩き落とす。その一撃の重さに皆水中から上がるものはいなかった。イリスがトドメだと動き出そうとした時だけ

「キリエ・・・?」

キリエは銃口をイリスに向ける。イリスはああ、そうだったと鼻で笑う

「そういえばフォーミュラの影響で影響が出にくいんだっけ?で、私を撃ちに来たと」

震える手を握りしめたキリエに対してイリスは話を続ける

「撃てば?でも撃てばあなたの家族にもっと酷い仕打ちを私はする。必ずね」

キリエは握りしめていた銃を落として項垂れる。イリスは冷徹な目でキリエを見つめた

「結局あなたは一人では何もできない。あの頃と何も変わらず幼稚で弱い人間なのよ」

イリスがそう言い終わりキリエに銃口を向けた瞬間、イリスの頬を弾丸が掠る。血が流れてイリスの眼前にはアミティエの姿が見える

「そうやってあなたは何もかも諦めてきたんですね。だとしたら可哀想です"あなたは"とても」

「アミティエ・・・!!」 

ユーリがアミティエを攻撃しようとした時、別方角からの攻撃がユーリを襲う。ユーリが仰け反ると更に攻撃が走る

"Fire"

"マキシマムハイパーサイクロン"

二つの同時攻撃はイリスとユーリを突き飛ばして更に空へと上げる。イリスは防ぎながら気づく

「この出力にこの力・・・まさかフォーミュラ!?」

彼女の目の前に映るのは白い魔法使いと青いガンバライダーだ

もしかしたら御伽噺のようなハッピーエンドはないのかもしれないし助けてくれる不思議な力はないかもしれない。だが誰かのために立ち上がる勇者と魔法使いは存在した

-今度こそ必ず助けます-




何年ぶりですかね…完走するっていうのは
というわけでガンバライダーReflection、いかがだったでしょうか?
色んなフォロワーさんに許諾をいただきながら行われたこの作品、少しずつ書き留めてやっとこさ完走でございます
ロード本編が終わってないさなか本編終了後の話したりしたのはうん…ごめんね(
最後の方に色々ぶっ込んだりとかでしたね。作り手としてはめっちゃ面白いですね
感想などもお待ちしております
ではまた何かでお会いしましょう


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