天才物理学者が人理修復の為に呼ばれたようで (戦兎)
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Prolog

初めて書きました。
暖かい目で読んでくれたら嬉しいです


人理継続保障機関「カルデア」。
四十八人目のマスター候補で事故により人類最後のマスターとなってしまった私こと藤丸立香はマシュと共に最初の英霊召喚に挑んでいた。
因みに、最初のレイシフトはまだ行われていない。ロマニが言うには特定が難しい場所にあるとの事。大丈夫なのかと内心思ってしまう。

「誰が来るのか楽しみですね、先輩」

「うん」

金色の札を投げ入れ、誰が来るのかワクワクしている最中、召喚陣の中から出てくるカードの絵柄は無地。人の絵柄すら描かれていない。
普通であればセイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカーの七つの絵柄が出る筈なのだが、どういう訳か何も描かれていない。

「故障?」

私は思わずそう呟く。英霊としてカルデアに喚ばれる以上、必ず何処かのクラスには当てはめられるからだ。守護英霊召喚システム「フェイト」自体謎が多い為、一様に故障でまとめられないが。
そうこうしている内にその無地のカードから誰かが現れた。黒髪に長めのコートを羽織り、若者が着そうな灰色のシャツとジーパン、左右非対称の色のスニーカーを履いた青年。どこからどう見ても異界の来訪者としか思えない。じっと眺めていると、その青年が口を開いた。

「…ん?何処だここ?」

どうやら呼ばれた理由が分かってないらしい。
青年は不思議そうに辺りを見回し、やっと私とマシュに気づいた。意外と鈍感なのかもしれない。

「もしかして…事情知ってる?」

「まぁ、はい。一応」

私は彼に事情を説明した。それと同時に彼の真名(本名)を知った。桐生戦兎と言うらしい。自己紹介の際に《天っ才物理学者》と天才を誇張した言い方が妙に腹が立つ言い方だったけど。でも、すぐに理解した辺り天才なのだろう。

「なるほど。事情は分かった。それで、俺はサーヴァントとして此処へ喚ばれたと」

「まぁ、はい。そうなります」

私の説明を聞いている間、戦兎の髪の毛の一部が跳ね上がっていた。彼曰くくせっ毛らしい。それはどうでもいいけど。

「という訳なので、私に力を貸してください」

「嗚呼、勿論。俺に任せとけ」

差し出された手を握る。右手の令呪がほんのり赤みを帯び、契約が無事に終了した事を告げる。
クラスが不明である彼。何の因果か分からないけど、彼を呼び寄せたのは紛れもなくカルデアであり、私でもある。
だったら、頑張るしかないだろう。そして、近い内に彼の本来の姿を知る事になる。






真の姿、○○○○○○○○○を。



こんな感じでいいんですかね…
不安ばかりですが、よろしくお願いします
(間違いなどがありましたら遠慮なく御指摘くださいませ)

尚、ボトルに関してはオリジナルは無しの方向で行こうと思っております。


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序章 特異点Fの戦い其ノ壱

早速感想いただけて舞い上がっている作者です
それではどうぞ


私が桐生戦兎をカルデアに召喚して数分後。
ロマニから通信が入った。どうやら特異点を特定出来たらしい。それを聞いてすぐに戦兎とマシュを連れて管制室へと向かった。戦兎は学者としての血が騒ぐのか終始落ち着きがなかったが。

「マスター、藤丸立香以下二名。到着しました」

「やぁ、立香ちゃんにマシュと……誰?」

ロマニは想像通りの反応を示す。一応彼から話した方がいいかと思って自己紹介をするように勧めた。

「桐生戦兎です。宜しく、Dr.ロマン」

「(あ、今回は天っ才物理学者☆って言わないんだ)」

内心ツッコミを入れつつ、ロマニの話を聞く。
今回私達が向かう特異点は「冬木市」。どうやらそこを中心にいくつか発生したらしく、他は依然として調査中みたい。ひとまずそこへ向かい、原因を解決して欲しいとの事。了承し、レイシフトの準備へ入る。

「立香ちゃん。初めてのレイシフトだけど、大丈夫かい?」

「大丈夫です。頑張って来ます」

実を言うと大丈夫では無い。人類最後のマスターとなってしまった責任もあり、私の肩に全人類の運命が乗っかっているとなると身体が震えてくる。だけど、そんな私を支えてくれる仲間が居るからなんとか持ちこたえられそうだ。コフィンに入り、その時を待つ。

〈システム、オールクリア。レイシフトを実行します〉

機械的なガイダンスが流れた後、私の身体は質量を失ったように軽くなり、意識は一旦途切れる。















暫らくして目が覚める。周りを見れば倒壊したビルが立ち並んでいた。どうやら成功はしたようだ。ホッとしたのも束の間、上空から何かが飛来してくる。身を守るものは何も無く、その場にうずくまった。だけど、飛来してきたものは何かに防がれる音を響かせて私に当たらない。恐る恐る顔を上げると、そこに立っていたのは鎧を纏った私の後輩に何処から取り出したのかは分からないけど不思議な形状の武器を持った戦兎だった。

「マシュ…?それに、戦兎?」

「無事か、立香ちゃん。マシュはそのまま守っておいてあげて」

「はいっ」

そう言うや否や、戦兎は懐からある物を取り出した。
よくよく見たら小型の機械に見える。その片側にはベルトらしきものが取り付けてあった。戦兎はそれを腰に巻く。すると、起動音が機械から出る。それを確認した後に前方を見据える戦兎。
彼の目線の先に立っていたのは黒い衣装に身を包んだ女性。紫色の長い髪とその手に持つ大振りの鎌が目に入った。マシュが身構える。という事は、彼女は英霊。それも、敵という事か。

「大丈夫です。私は先輩をお守りしますから」

「って、戦兎に任せて大丈夫かな…?」

「おそらくは」

ひそひそと話す私達を余所目に、戦兎も戦闘準備を開始した。ベルトに続いて彼が取り出したのは小さなボトルのようなもの。遠目で見るとそれらには赤と青の色がついていた。戦兎はそれを振る。すると、何処からともなく見た事が無い数式が戦兎と敵の英霊の周りを囲む。見ていて頭が痛くなりそうだ……

「さぁ、実験を始めようか」

私にも聞こえる声でそう言った後、ひとしきり振ったボトルの蓋を正面に向け、ベルトにある二つの窪みに入れる戦兎。

〈ラビット!タンク!ベストマッチ!〉

機械からテンションが高い男性の声が聞こえ、続いて待機音声らしき音も辺りに鳴り響く。そして、レバーを回し始めた。すると、装甲らしきものがベルトから形成されていく。

〈Are you READY?〉

「変身!」

ベルトが叫んだ後、それに続いて叫ぶ戦兎。その瞬間、彼の前後に形成されていた装甲が彼を挟むように装着された。

〈鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!!〉

再びベルトから音声が流れる。そして、そこに立っていたのは戦兎ではなかった。赤と青の二色を基本とした仮面の戦士が戦兎の代わりに佇んでいる。顔の赤い方は兎で、青い方は戦車を象っているのだろうか?

「……誰?!」

「誰ですか?!」

私とマシュは思わずツッコミを入れていた。
異世界の来訪者で(自称)天才物理学者としか思えない戦兎が、まさか変身するとは。敵も急に現れた仮面の戦士に驚いているようだ。

「勝利の法則は決まった!」

そう呟く仮面の戦士。声は戦兎のままだ。
ベルトがさっき戦兎が使っていた不思議な形状の武器を作り、それを手に取る。

〈ドリルクラッシャー!〉

その武器も又、起動音を響かせる。
仮面の戦士はそれを構え、敵に斬りかかっていった。そこから先の戦いは仮面の戦士が敵を終始圧倒。あの武器は銃にもなるらしく、遠近両方に対応しているようだ。

「小癪な真似を…っ!」

仮面の戦士に圧倒され続けていた敵が呻き声を上げて距離をとり、集中し始める。それと同時に魔力の高まりを肌で感じた。どうやら敵は宝具を使う気だ。

「宝具来るよ!気をつけて!」

私は仮面の戦士にそう忠告する。
それを待ってましたと言わんばかりにレバーを再び回し始めた。ベルトから又派手な音声が響く。

〈READY……GO!!〉

ベルトの音声と同時に後ろへ走り始めた仮面の戦士。
退却かと思った次の瞬間、地面へ姿を消した。それと同時に現れる方程式っぽいもの。それは宝具を使おうとした敵を両端から挟み込み、強引に中断させるだけでなく身動きも封じた。
肝心の仮面の戦士はと言うと、地面の中から自分で踏み付けた地面の一部ごと上に出た。

〈ボルテック・フィニッシュ!イェーイ!!〉

ベルトの音声と共にさっき出現した方程式っぽいものを辿るように急降下して敵にキックをかます。そして、爆発が起きた。敵が消滅するのを確認してからベルトに挿さっているボトルを引き抜き、変身を解除した仮面の戦士。代わりに立っているのは紛れもなく戦兎だ。
私は彼に駆け寄り、さっきの説明を求める。この数分で有り得ない事が多く出すぎたからだ。

「さっきのは何?!」

「あ、見せるのは初めて…だったか。さっき見せたのは仮面ライダービルド、俺のもう一つの姿だ」

「仮面ライダー、ビルド…?」

「あ。作る、形成する方のビルドね?」

今はそういう細かい事は要らないと内心思った。
兎に角、彼…桐生戦兎の本来の姿が分かった所で本格的に調査を始める。これはまだ序盤に過ぎない。






















「ほう…面白い奴が来たな」
戦兎達三人を遠くから見ていた人物。水色の服を着て、同じ色のフードを目が隠れるくらいまで被り、特徴的な杖を持ったその人物は誰にもバレる事無くその姿を消した……
果たして、敵か味方か。それが分かるのはまだ先の事。



サーヴァント・???
真名 桐生戦兎(仮面ライダービルド)
ステータス 姿によって変わる模様
宝具 ボルテック・フィニッシュ!(複数あると思われる)

戦兎のサーヴァントとしての紹介ってこんな感じですかね…?
それでは次回に続きます
(感想、ご意見お待ちしております)

1/12 ステータス表記を変更いたしました。ぴんころさん、ありがとうございます


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特異点Fの戦い其ノ二

投稿したてなのにお気に入りにしてくれてる人が沢山居て驚いている作者です
これからもよろしくお願いします。ではどうぞ


戦兎がビルドになり、最初の敵英霊を倒した直後。
何処から湧いて出たのか骸骨達が私達を囲むように現れた。マシュは盾で、戦兎はドリルクラッシャー?っていう武器で蹴散らしながら強引に進んでいった。でも、流石にジリ貧になってくる。

「だったら、コレだ」

戦兎は又あのベルトを取り出した。再び腰に巻き、例のアレ《フルボトル》を取り出す。今回は白と青のボトルだった。それをベルトに装填する。

〈ハリネズミ!タンク!〉

先の戦いで鳴った〈ベストマッチ!〉という音声は流れなかったが、戦兎は構わずにレバーを回す。

「変身!」

軽快な音楽と共に変身する戦兎。仮面の戦士もといビルドは白と青を基本とした姿に変わる。白い方は、ハリネズミだろうか?目に当たる部分もトゲトゲしており、右手も丸くなったハリネズミを思わせる感じに変化していた。青い方は戦車だとすると、今の姿はハリネズミタンクと見ていいだろう。

「はぁ!!」

ビルドが右手を突き出す。その右手から生えている棘が辺りに長く伸び、骸骨達を貫いていく。それを何度か繰り返した後、辺りを見れば骸骨達の残骸で溢れていた。
復活してこない所を見る限り、不死身では無いらしい。端から段々と虚空へと消えていく。

「暫くこのままで行くか…?」

悩むビルド。そうこうしている内に第二波がやってきた。今度はさっきより数が多い。ビルドは手馴れた手つきでベルトのレバーを回す。あの音声が辺りに響く。でも、今回は少し違った。

〈READY……GO!!ボルテック・アタック!!〉

音声が鳴り響くと同時に戦車のキャタピラを模した左足だけで素早く動き、ハリネズミの右手で骸骨達を刺しては投げる。ビルドはボトルによって戦闘方法が変わる臨機応変型なのがこれで分かった。
暫くして、又山積みになる骸骨達の残骸。それらも又虚空へと消えていった。それを見届けた後、ビルドは変身を解除して戦兎に戻る。そして、残骸が消える数秒前に何やら透明なボトルで何かを回収していた。

「ほぇぇ…凄いや」

「先輩先輩。言葉づかいが…」

「あっ…」

マシュに指摘され、癖になっている言葉づかいの間違いを訂正するかのように咳払いをする。
私は英霊というのをあまり見た事が無いが、仮面ライダーだけは知っていた。ここまで凄いとは想像もしていなかったが。

「よし、終わり。そっちは大丈夫?」

「あ、はい。大丈夫です、戦兎さん」

第三波は無いらしい。
ひとまずホッとし、先へ急ぐ途中。唐突に通信が入った。ロマニからだ。ひとまず繋げてコンタクトを取る。

『よかった、やっと繋がった!』

「ドクター?一体どうしてそんなに慌ててるんですか?」

『そりゃ慌てるさ!急に連絡が取れなくなったから僕もスタッフも気が気じゃなかったよ』

「あー、なるほど…」

ドクターと特異点の情報を共有し、目的が定まった。
此処にある《聖杯》を回収、又は破壊する事。そうすれば冬木市は本来の歴史に修復されるらしい。でも、そう簡単には行かないだろう。聖杯があるという事は英霊、サーヴァントが居る。そして、その英霊達はさっきのを含めて七人居ると考えられる。

「Dr.ロマニ。先程英霊と思われる人と戦闘を行いました」

『ええっ?!だ、大丈夫だったのかい?』

「はい。彼、桐生戦兎の力によって撃破した所です」

『君が…?戦兎くん、一体何者なんだい?生身の人間が英霊に勝つなどそうそう有り得ない事だ』

「Dr.には明かしてもいいでしょう。俺、桐生戦兎の力を」

そうするとあのベルトを腰に巻き、フルボトルを取り出す戦兎。あの時と同じ赤と青のフルボトルだ。それをベルトに装填し、レバーを回す。〈ラビット!タンク!ベストマッチ!〉という音声が流れ、ベルトから赤と青の装甲が出来始める。戦兎はそれを装着した。

〈Are you READY?〉

「変身!」

〈鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!!〉

すると、そこに立っていたのは戦兎ではなく仮面ライダービルドだ。一部始終を見ていたロマニは目が点になっている。それもそうだろう。何せ、人理が焼却された今の世界では到底なし得ない技術の塊だ。
これで三回目となる私とマシュでさえ、未だ驚きを隠せていない。

『えぇぇぇぇ?!へ、変身しただとぅ?!』

「この姿で居る時は《仮面ライダービルド》と呼んでください、Dr.」

『……立香ちゃん。物凄い人を呼んだんじゃないか?』

「私に聞かれても困ります、Dr.」

一旦変身を解除する戦兎。
彼曰く、長時間の変身は負担が大きいとの事。それもそうだ。仮面ライダーに変身し、多種多様な力を操るだけでもクラスに当てはめられているサーヴァントとは一線を画するレベル。その上魔力が必要無い大技《ボルテック・フィニッシュ!!》や《ボルテック・アタック!!》を普通に使う。その分身体に負担をかけているのだろう。
彼は表面上私と契約しているサーヴァントという扱いだが、実際は私と変わらない人間だ。当然、傷も負うし血も流れている。彼ばかりに無茶をさせては駄目だと悟る私だった。

『さて、早速で悪い。近くに魔力反応…コレは……英霊?!』

「はい?!知らせるのが遅いですよDr.!!」

ロマニが画面越しに叫んだ直後。
遠くから飛んでくる大量の弓矢。その先には弓を担いだ白髪褐色肌の男性がこちらを見据えていた。弓を持っているという事は、おそらくアーチャーと考えられる。
私はマシュが盾で守ってくれたから無傷。戦兎は〈ドリルクラッシャー〉を盾にして防いでいた。

「ほう、見た事が無いサーヴァントが二人か」

「という事は、此奴も敵って事でOK?」

「多分。さっきの矢は私達を狙って放たれた奴だし」

「……よし。ならこれで行こう」

既に戦闘準備を完了していた戦兎。
その手に持つフルボトルは茶色と水色。さっきは気づかなかったけど、よく見たら絵柄が刻まれている。茶色のボトルにはゴリラ、水色のボトルには鉱石らしい絵柄だ。それをベルトに装填すると、ベルトが喋る。

〈ゴリラ!ダイヤモンド!ベストマッチ!〉

アレはダイヤモンドの絵柄だったのか。
いつものように茶色と水色の装甲がベルトを介して形成される。そして、あの掛け声だ。

〈Are you READY?〉

「変身!」

装甲を装着する戦兎。
今回のビルドは赤と青の戦士ではなく茶色と水色。ゴリラの腕を模した右腕、ダイヤモンドの輝きを放つ左腕。どう見てもパワータイプだろう。

〈輝きのデストロイヤー!ゴリラモンド!イェーイ!!〉

なるほど、ベストマッチだと特別な音声が流れるのか。
それはいいとして、ビルドを見た目で判断したのかアーチャーが弓矢を放つ。だけど、硬い物に弾かれる音を響かせてビルドの周囲に散らばった。ダイヤモンドはこの世界で一番硬いとされている鉱石。ビルドの左腕もそれを反映しているようだ。

「悪いね。それは通用しないよ」

そう言うビルドは左手の人差し指を上空へ向ける。
すると、小さいダイヤモンドが螺旋を描くように空へ散らばる。そして、右手でベルトのレバーを回す。あの派手な音声が流れ始めた。

〈READY……GO!!ボルテック・フィニッシュ!イェーイ!!〉

小さいダイヤモンドがビルドの正面に集まり、空中で大きなダイヤモンドを形作る。それを右腕で叩き、前方へ飛ばす。あの数式と共にアーチャーへ襲いかかり、身動きを封じた所でビルドは急接近して右腕で渾身の一撃を叩き込んだ。

「はぁぁぁ!!」

「ぐぅっ…!」

大爆発を起こし、地面を軽く抉る程の威力。
アーチャーも無事で済まない筈だと思われたが、そこにアーチャーの姿は無い。どうやら土壇場で脱出したらしい。奴が立っていた場所には黒く焦げた弓が打ち捨てられていた。

「あちゃー……逃げたね」

追いかける事はしないらしく、変身を解除した戦兎。
それにしても、彼が放つ大技《ボルテック・フィニッシュ!!》は下手したら並の英霊の宝具を容易く打ち破るだろう。一体何処にその力があるのか気になる所ではある。なんて感心していた時だ、ロマニが又もや叫ぶ。

『待った!まだ近くに魔力反応がある。油断しないでくれ!』

「了解です、Dr.」

そうだ、此処は既に戦場だ。いつどこで誰に襲いかかられるか分からない。辺りを警戒していると、その人物は現れた。水色のフードを目が隠れるくらいまで被り、魔術を扱う者が着そうな服、特徴的な杖。そこから推測出来るクラスはキャスターだろう。私達が身構えていると、その人物は待った待ったと声を出した。敵対の意思は無いようだ。とりあえず警戒を解く。

「さっきの戦い、見せてもらったぜ。見たところ、この聖杯戦争を終わらしに来たと見ていいか?」

「まぁ、そうなります。ところで、貴方は?」

私がそう問いかけると、キャスターと思われる人物は自らの真名を明かした。

「サーヴァント・キャスター、真名をクーフーリン。いきなりで悪いが、俺に力を貸して欲しい。この腐った戦争を終わらす為に」



ゴリラモンドとハリネズミタンクを登場させてみました。ハリネズミタンクのボルテック・アタックは作者の妄想です。ゴリラモンドの方は仮面ライダーバトルラッシュの技を採用させて頂きました。

さて、次回は本命のボス戦になるかと思います。それで特異点Fの戦いは一区切りと。

それでは次回をお楽しみに…
(感想、ご意見、誤字脱字の報告等お待ちしております)


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特異点Fの戦い其ノ三

お気に入りにしてくださる人が沢山居て、正直目を疑っている作者です。
皆様には本当に感謝しています。ではどうぞ


アーチャーを退けた私達の前に現れた一人のサーヴァント。クーフーリンと言えば槍の名手だった気がするけど、今回はルーンを扱うキャスターとして現界したらしい。

「それで、残るサーヴァントは?」

「バーサーカーとアサシンとライダーは俺が倒した。ランサーは、どうやらお前さん達が倒したみてぇだな。残りはセイバーとアーチャーになる」

「ふむ。アーチャーはさっき取り逃したからな…」

「にしても、戦兎っていったか?此処らじゃ見ない力を扱うときた。アレは一体何だ?」

「まぁ、味方と思っていいのなら見せるつもり」

「おう。俺とお前さん達の目的は一致している筈だぜ?」

クーフーリンがニカッと白い歯を見せて笑う。
それだけで納得したのか、戦兎は説明を始めた。今回はベルトを巻かずにボトルだけ見せる。
彼が取り出したボトルはそれぞれ色がついていて、赤いボトルはラビットフルボトル、青いボトルはタンクフルボトルと、その全てに名前がついていた。戦兎はそれらのボトルから有機物と無機物のボトルの組み合わせをベルトに装填して変身、仮面ライダービルドとなるらしい。頑張って説明を聞いていた私とマシュだったけど、頭がショートしかけた為、途中からは聞いていない。でも、まだほんの一部だという一言だけは聞こえた。

「……という訳」

「大体は分かった。ところで、戦兎のクラスはなんだ?嬢ちゃん」

「それが…」

私は戦兎をカルデアに呼んだ時の出来事を話す。
戦兎は私と同じ生身の人間で、此処とは違う世界から呼んでしまった存在だという事を。
それを聞いたクーフーリンは目を点にして驚きを隠せていない表情を見せていた。それもそうだ、英霊召喚というのは過去の偉人や英雄達を七つのクラスの何れかに当てはめて現界させるというもの。生身の人間を召喚したという事例は無い。それを私はやってしまった訳だ。

「偶然に偶然が重なって、戦兎がカルデアとやらに来たって訳か」

「そーゆー事。いきなりだったから驚いたな…」

「まぁ、それはそれとしてだ。残る二騎をどうするかについてだが…俺はアーチャーをやる。嬢ちゃん達にセイバーを任せてもいいか?」

セイバー。聖杯戦争に於いて最強と分類されるクラス。今回呼ばれたセイバーは聖杯の泥を被ってから水を得た魚のように他の英霊達を倒していった。それだけじゃなく、倒された英霊達はセイバーの支配下におかれ、ゾンビのように復活したらしい。彼等も又、セイバーと同じく黒くなっていたようだ。キャスターであるクーフーリンだけがセイバーの凶刃から逃れ、もはや聖杯戦争では無くなったこの舞台を終わらす為に暗躍していた。だが、それも今日で終わりにするとの事。

「セイバーの詳しい情報は?」

「まぁ、それは見たら分かる。奴の宝具、そいつを目の当たりにすればな」

「宝具、ね」

戦兎は何か考えがあるらしい。流石天才物理学者って所なのかは分からない。というか今の状況では物理学者は関係ない気がする。キャスターとの話し合いは終わり、それぞれ目的を果たすべく、別行動に。
セイバーが居ると思われる洞窟を目指し、私とマシュ、戦兎は走る。道中の骸骨達は戦兎の〈ドリルクラッシャー〉で蹴散らしていった。
というか戦兎は生身でも十分強い。マシュも戦兎を見習って積極的に前へ出てくれている。私はガンドで二人をサポートする役目に徹した。

「数が多いな、コレは…」

「何処から来ているのでしょう…?」

「やっぱり、セイバーの居る所じゃないかな?敵が増えたって事は薄々勘づいていると思う」

「流石マスターです。戦兎さん!」

「アレだな?」

既にフルボトルとベルトを巻いていた戦兎はビルドに変身する準備をする。
その間は無防備になる為、私とマシュでその隙をカバーし、時間を稼ぐ。少しして、〈鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!!〉という音声が辺りに響く。戦兎の変身が完了した合図だ。ビルドは私とマシュを抱え、跳ぶ準備をする。えっ、ちょっと待って。跳ぶの?ここから?

「舌噛むとアレだから気をつけて」

それだけ言い、ビルドは左足に力を込めた。
左足の兎の力、跳躍力を活かした長距離のジャンプ。骸骨達を足蹴にどんどん跳ぶ光景を見た私は、なんとなくいたたまれない気持ちになった。

「うわぁ、凄いですね!」

「だろ?流石俺!」

マシュの喜ぶ顔を見て、得意気にするビルド。仮面の下、戦兎は絶対ドヤ顔をしているに違いない。もし見えていたらデコピンでも喰らわしてやろうと思っていた。
ビルドに変身する為のベルトも、多分戦兎が開発したものなんだろうけど。少しして、如何にも怪しい洞窟が見えた。洞窟の前に着地し、私とマシュを降ろした後に変身を解除する戦兎。改めて中を覗こうとしたが、暗闇で全く見えない。

「この先に、セイバーが…」

そう呟き、中へ踏み入れようとした時だ。戦兎が〈ドリルクラッシャー〉をガンモードに切り替えて後ろへ発砲した。"キィン!"という甲高い音がした後、私の足元に突き刺さる二対の剣。投げた張本人は、キャスターと共に現れた。キャスターは上半身裸だったが、切り傷が痛々しく残っている。相当苦戦していたようだ。そして、そのキャスターをズタボロにしたサーヴァント、アーチャーは平気な顔をして次の矢を構えていた。

「悪ぃ、抑えきれんかったわ…」

それだけ言い、消滅するキャスター。
アーチャーはキャスターの最期を見届けた後に私達の方を向く。次はお前らだと目で訴えかけている。

「アーチャー…」

「悪いが、その先へは行かせんよ。貴様等は此処で終わりにする」

『いいや、終わるのはお前だ。アーチャー』

何処からともなく声が響く。
その声の主は…さっき消滅した筈のキャスターだった。彼は地面に自分の杖を刺し、ルーンの魔法陣を展開。
アーチャーごと何処かへ消えた。移動の魔法だったのだろうか?兎に角、邪魔者は消えた。後はセイバーを討ち取るだけだ。

「行くよ、二人とも」

「嗚呼!」

「行きましょう、先輩!」

キャスターが作ってくれた時間を無駄にしないように、洞窟の内部へ踏み入れる。特に罠とかは無いようだ。
セイバーも私達が来るのを分かっているという事なのか?だったら好都合。このまま進む、それだけだ。





あの三人なら、必ずセイバーを倒すだろ。
思う存分戦え。そして勝ってこの戦争を終わらしてくれ。その為ならこの命、散らしても構わねぇ。それにはまず、この性根が腐った此奴を倒さねばな。

「よぉ、再戦と行こうか?アーチャー」

「小細工ばかりするお前に負ける筋合いは無いな」

「小細工じゃねぇ。魔術だっつーの。さぁ、行くぜっ!!」

俺は杖を両手で持ち、ドルイドの癖に接近戦を仕掛けた。勿論、杖には硬化のルーンを付与してある。
奴も弓ではなく二対の剣を手に持ち、接近戦に備えていた。そして、お互いの武器がぶつかり合う。










暫く進み、最奥部に到達した。
その空間だけ何故か広く、奥には禍々しいオーラを放つ何かがある。そして、それを守るかのように仁王立ちする一つの影。セイバーだ。私達が来た事を感知したセイバーはその口を開く。

「待ちくたびれたぞ」

「アンタが勝手に待ってただけじゃないか…」

セイバーの一言に対しやれやれといった様子でぼやく戦兎。確かにその通りだ。来るかどうか分からない人物を勝手に待った挙句、やってきた人に対し待ちくたびれたは無い。だが、そんな常識は通用しないと見ていい。
何せ相手は聖杯の泥を被って黒化したサーヴァントだ。理性が残っている方が珍しい。

「見慣れないサーヴァントが、二人か。盾を持つ奴と…誰だ?私はお前を知らない」

そりゃそうだ。戦兎はサーヴァントじゃない。特殊能力(変身するから多分特殊能力という解釈で合ってる筈)がある人間だ。

「待ってくれるなら、準備させてもらうよ」

既にフルボトルを装填済みだった戦兎。
セイバーが戦兎に注目する中、レバーを回し、「変身!」というお決まりの台詞と共に形成された装甲を装着した。

〈鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!!〉

仮面ライダービルド、ラビットタンクフォーム。
突如現れた赤青二色の仮面の戦士を目の当たりにしても尚、セイバーは表情一つ変えない。寧ろ興味があるといった様子でビルドを見ていた。

「さぁ、行こうか!」

愛用の武器を構えたビルドの一言で戦いの火蓋は切って落とされた。



次はセイバーとの戦いになります。
それで特異点Fの戦いは一区切りとなりますね。

それでは次回をお楽しみに…

(誤字報告、ありがとうございます。訂正いたしました)


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特異点Fの戦い 決着

こんなにも至れり尽くせりでよいのでしょうか…
正直驚きを隠せてないです、はい

それではどうぞ


ビルドとマシュがセイバーに向かって走る。
対するセイバーはその手に握った黒く禍々しい剣を構え、二人に向かって走った。そして、お互いの得物がぶつかり合う。甲高い金属音が洞窟内に響く。私は思わず耳を塞いでしまった。

「ほう…やるじゃないか、盾の少女に見慣れない戦士よ」

「お褒めに預かり光栄ですってか?」

「っうぅ…!!」

ビルドは余裕がありそうだが、対するマシュは余裕がなさそうだ。盾でセイバーを吹っ飛ばし、又突進していく。ビルドも同様だった。幾度となく続く鍔迫り合いの末、キリがないと判断したセイバー。魔力を解放し、二人を吹っ飛ばした。

「きゃっ…!」

「おっと…大丈夫?」

「は、はいっ」

吹き飛ばされたマシュを片手で支えるビルド。
そのわずかな時間がセイバーにアレを使わせる時間となってしまった。二人が体制を立て直すと同時に洞窟全体が揺れる。揺れの発生源は紛れもなくセイバー。構えた黒剣が黒い魔力を纏い始め、巨大な剣と化した。それを見た私は直感で二人にセイバーの真名を叫ぶ。

「ビルド、マシュ!!セイバーの真名が分かった!」

「本当ですか、先輩?!」

「……まぁ、コレを見たら分かると言っていたな。クーフーリンも」

「うん。セイバー…彼女の真名は、アルトリア・ペンドラゴン。かのブリテンの王だよ」

「……本気?」

アルトリア・ペンドラゴン。伝説ではアーサー王とされる。
選定の剣を抜き、円卓の騎士達をまとめた王。その手に持つ聖剣エクスカリバーは湖の乙女が選定の剣を鍛え直した剣。その剣を収める鞘は魔法の鞘と呼ばれ、身につけている間は傷を負ってもすぐ癒えるという現代では考えられないものだった。(聖剣に関しては諸説あり)
そのアーサー王が時を経て私達の前に立ち塞がっている。そして、彼女が放とうとしている宝具もその伝説の剣になぞらえた名称だった筈。

「約束された勝利の剣、エクスカリバー…」

「……そう。それがアルトリアの宝具」

「そうこうしている内に使おうとしているけど。宝具」

「ちょっ…戦兎、それ先に言って?!」

ビルドが何気なく言った直後。
アルトリアが「エクスカリバー・モルガーン!!」と叫び、魔力の塊と化した巨大な剣を振り下ろす。咄嗟に前へ出たのはマシュ。盾を前面に出し、身体全体で支えていた。ビルドもマシュの後ろから盾を支えてくれている。それでも段々後ろへ押しやられていく。

「マシュ、頑張れ!」

「っ…はい!戦兎さん!!」

「「負けてたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

二人が叫んだ後、私も二人の支えになる。
マシュの右手に触れた途端、私の右手にあった令呪の一画だけ消滅し、魔力となってマシュへ流れ込む。それと同時にマシュの盾が防壁を形成し始めた。それはまるで城壁の一部。格段に向上した防御範囲を見たアルトリアは驚愕の表情を浮かべていた。そして、宝具は終わりを告げる。魔力は霧散し、剣の大きさも元に戻る。

「はぁっ…はぁっ…」

「……よし。後は俺が」

息を荒らげるマシュを後ろへ下がらせ、ビルドは茶色と水色のフルボトル、ゴリラとダイヤモンドをベルトに装填。レバーを回し、ベルトを介して形成される装甲を纏う。

「ビルドアップ!」

〈輝きのデストロイヤー!ゴリラモンド!イェーイ!!〉

仮面ライダービルド、ゴリラモンドフォーム。
姿が変わったビルドを見たアルトリアは終始固まっていたがすぐに剣を構えて突進してきた。

「所詮虚仮威しだっ!!」

「それはどうかな?」

「何っ…?!」

ダイヤモンドの左腕を盾にし、アルトリアの剣を防いでいくビルド。防戦一方になっていると思っていたが、急に攻勢に出るビルド。左腕で剣を防ぎつつ、右腕のラッシュを叩き込んでいく。ゴリラのパワーがアルトリアの体力を確実に削っていった。

「こんな、巫山戯た奴に…っ!!」

「それは心外。こう見えて平和主義なんだよ、俺。ただまぁ……仲間を傷つける奴には容赦しないけどさっ!」

渾身の右ストレートを叩き込んで、アルトリアを洞窟の壁に叩きつけた。すぐにボトルを入れ替え、フォームチェンジをする。

「ビルドアップ!」

〈鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!!〉

「さぁ、行くぜ!」

〈READY……GO!ボルテック・フィニッシュ!!〉

今回はあの方程式っぽいのは出現しなかった。
代わりにビルドの右脚、戦車のキャタピラを模した右脚にエネルギーが集まっていく。それが最高潮に達した時、左脚の兎の力で高く跳躍。空中でキックポーズをとってアルトリアに突撃。仮面ライダーの十八番、ライダーキックだ。

〈イェーイ!!〉

「はぁぁぁぁ!!」

「ぐうぅっ…!!」

ビルドとアルトリアの力がせめぎ合い、辺りに亀裂をもたらす。マシュは私の近くに退避させたけど、亀裂は私達の足元にまで到達していた。
やはり戦兎は凄い。変身も凄いけど、英霊と互角に…多分それ以上に渡り合えている。戦い慣れしているとかそんな問題じゃない。戦兎には何かがある、そんな気がする。そして、二人を中心に大爆発が起きた。
戦兎はビルドの変身を強制的に解かれ、血だらけで地面に転がっていた。対するアルトリアも又、額やこめかみ等に血の跡を残す。それでも尚、剣を持つ力はまだあるようだ。

「いってぇ…」

「戦兎?!大丈夫…?」

「なんとか。それより奴は…?」

私とマシュがアルトリアの方に視線を送る。
アルトリアの足元から光が漏れ、段々と登っていく。どうやらギリギリで戦兎が勝ったようだ。あのせめぎ合いの中、英霊の核を破壊していたらしい。
すると戦兎は空のボトルをアルトリアに向けた。その途端、アルトリアから出る光が粒子となってそのボトルへ吸い込まれていく。助けるつもりかと思ったら違うみたい。光の粒子を吸い込んだボトルはその形状を変え、色がつく。それを見た戦兎は子供のようにはしゃいでいた。何事かと思ったら、その手に収まるボトルの絵柄が獅子の絵柄に変わっている。

「戦兎、それは…?」

「まさかと思ったら、ビンゴだった。ライオン、獅子の成分がアルトリアから採れるとはね」

「成分…?」

「そ。俺が使ってるフルボトルの中身って言った方がいいかな?」

「そ、そう…」

凡人の私には到底分からない領域だった。
サーヴァントだって有機物、要するに生きている。という事は成分もあるという事にもなる(本当かどうかは怪しい部分ではあるけど)。ビルドの力の源がそれらの成分を封じたボトルというのは前もって説明された。
その製造方法は明かされてなかったけど、今目の前で実践してくれた。戦兎曰く、「本当なら浄化が必須なんだけどね」との事。どうやら成分を一旦浄化しなければ使用不可みたい。だけど今回はそれを必要としなかった。何故なのかは戦兎が研究を進める事だろう。少なくとも、私が関わる事じゃないのは分かった。

「ふっ、私の力すらものにするか。流石と言うべきか?桐生戦兎」

「おま…なんで俺の名前を?」

「何、誰かの入れ知恵という奴だ。つい先程まで私はお前の事を知らなかったのは確かだからな。全く、座に還る奴に何を吹き込むかと思えばこんなくだらん事か…」

アルトリアを侵食している光は既に首元まで到達しており、あとすこしで座に還るだろう。
私達は最期まで見届けた。そして、金色の光が消えると同時に小さい欠片を見つける。それが聖杯だと分かった時、急いで回収しようとした。だけど、それは誰かの手に収まる。見上げると、帽子を被った男性が見えたが、顔を確認する暇はなかった。洞窟全体が激しい揺れに襲われたからだ。

「何事?!」

「崩れるんじゃ…?」

『立香ちゃん、マシュ、戦兎君!そこはもう崩れる!急いで退避してくれ!』

ロマニが叫ぶと同時に洞窟の唯一の入口が瓦礫で埋まってしまった。揺れは段々と激しくなり、遂に私達が居る場所も崩れ始めた。

「Dr.?!どうにかならないんですか?!」

『こちらから強制的にレイシフトを行う!少しの辛抱だ、耐えてくれ!』

既に私達は宙に浮いていた。離れないようにお互いの手を握る。それと同時に意識は闇へ沈んだ……



















……どれくらい経ったのだろうか。
目が覚めるとそこは見馴れた天井がある。どうやらギリギリ帰ってこれたようだ。ひと安心し、戦兎とマシュを探しに行く。暫く探したら、頭に包帯を巻いた戦兎が私に手を振っていた。

「……よかった、気がついたみたいだ」

「戦兎?」

「マシュが心配してたよ。行ってあげて」

「うん」

戦兎に促され、マシュの元へ向かう。
廊下で一人、消滅間際のアルトリアから採取した成分により完成したライオンフルボトルを手にしたまま外を眺める戦兎。彼が考えている事は多くあるが、その中で一際強く考えている事は……

「万丈、マスター、美空、紗羽さん。俺は必ず東都に戻る。それまで待っていてくれ…」

自分がお世話になっている人達の事だった。
だが、彼はまだ知らない。この戦いはまだ始まったばかりであり、自分はそのスタート地点に立っただけだという事を。そして、これからの戦いはより激しくなるという事も。



特異点Fの戦いはこれで一区切りとなります。
アルトリアに戦兎の名前を教えた人物。それが誰なのかは今後の展開で明らかになるでしょう。

そして、最後に立香達より先に聖杯を回収した男性。彼の正体は話が進むにつれて分かるかと思います。

それでは次回をお楽しみに…


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間話其ノ壱

お気に入りにしてくれる方が多くてボトルが出来た事を喜ぶ戦兎のテンションになっている作者です。

今回は間話という事で、万丈達が出ます。
それではどうぞ


東都にあるこじんまりとした喫茶店「nascita」。
そこを経営している「石動惣一」と娘である「石動美空」、戦兎によって助けられ、自分の冤罪を払拭する為に奮闘する「万丈龍我」、難波重工の元スパイで今は戦兎達に協力しているフリージャーナリストの「滝川紗羽」の四人は突如姿を消した桐生戦兎の行方を探す為にあちこちを走り回っていた。

万丈の話によれば、戦兎はビルドドライバーと何本かのフルボトル、空のフルボトルを持って突然消えたとの事。近くに落ちていた戦兎が愛用しているスマホには消える直前の万丈と戦兎の会話の録音と一つのアプリがインストールされていたようだ。それが…

「Fate/Grand Order、ね。コレが姿を消した戦兎と何の関係があるんだ?万丈。それに、戦兎と何を話していたんだ?」

「俺に聞くなよ。戦兎が居た場所にそれが落ちていた。それだけだ。後、会話の内容が知りたきゃ録音した奴再生してろよ」

「これだけだと何が原因か分からないわね…」

万丈と惣一、紗羽の三人は頭を抱えた。
今は戦兎だけじゃなく万丈も「仮面ライダー」に変身出来るからスマッシュにも対抗出来る。
だが、万丈が覚醒するその時までずっとスマッシュと戦い続けたのが戦兎である。冤罪だと言い張る脱獄犯だった万丈と共に逃げたり、記憶を失い、雨の中自分を拾ってくれた石動宗一を親のように慕い、ファウストにネビュラガスを入れられスマッシュ化した紗羽さんを助けた(実際倒したのはクローズに変身した万丈だったが、成分を採取したのは戦兎である)戦兎が何も言わずに消える訳が無いのだ。戦兎の事をよく知っている三人だからこそ、そこまで非情な奴ではないと分かっている。

「これは、何か大変な事が起きてるかもな」

「いや、それは今だろ。現に居ねぇんだからよ、戦兎の奴」

「神隠し…な訳ないわよね?」

「今どきそんなのありえねぇよ、紗羽さん」

「だよねぇ…」

三人が集まって話し合っている頃、美空はというと…
地下で生放送を行っていた。ネットアイドルみーたんとして、消えた戦兎の情報を集めている。キーワードは勿論〈Fate/Grand Order〉。天っ才物理学者☆の戦兎がゲームなどやる暇が無い筈なのに、戦兎のスマホにはそれがインストールされていた。だとしたら関係している筈だと惣一が言い張った為、それらに関連する情報を集めているという訳だ。

「駄目だぁ…全っ然集まらない…」

生放送を開始しても、それを終えても、依然として集まらない消えた戦兎に関する情報、若しくは過去に何らかの形で消えた人達の情報。
本来ならすぐに集まるのがみーたんだ。だが、それを以てしても有力な情報は一つも無かった。

「もー…何処行ったの?」

ふてくされ、お気に入りのぬいぐるみを抱えてベッドに寝転がる美空。戦兎が居たから賑やかだった喫茶店の地下も、今は本人が居ない。代わりに万丈とその相棒のクローズドラゴンが広い空間を使っている。
武器を開発する度に子供のようにはしゃぎ、それを振り回す戦兎。ボトルが出来た事を喜び、変なテンションになる戦兎。万丈と殴り合いをした戦兎。その戦兎は今、此処に居ない。
それだけでも閑古鳥が鳴くくらい静かだった。それは喫茶店のフロアもそう。中心人物たる戦兎が居ないだけでここまで静かになるのだ。

その頃の万丈達。消えた戦兎が最後まで持っていたと思われる戦兎愛用のスマホにインストールされていたアプリ、Fate/Grand Orderについて話していた。

「話すと長くなるから手短に話すぞ」

「如何にも知ってます的な感じだな?」

「いいから聞けよ…まずは聖杯についてだ」

惣一が手短に且つ馬鹿な万丈でもわかりやすく解説をする。紗羽は理解したようだが、万丈は未だにはてなマークを浮かべていた。そんな万丈を惣一は無視をし、ある仮説を立てる。

「戦兎はそのアプリを介して異世界に行ってしまった。そう考えるのが妥当だろう」

「只のアプリが異世界と繋がっていた、という事か?それこそありえねぇよ」

「万丈の意見は最もね。私も色々探ってみたけれど、そういう事例は無いわ。というより、残されていないと考えた方がよさそうね。そもそも、異世界が本当にあるのかどうかすら疑わしいもの」

「だよなぁ…ったく、戦兎の奴、何処をほっつき歩いてんだか」

三人揃ってため息をつく。
ここまで来て収穫はゼロ。手掛かりすら見つけられていない。打つ手なし、という事になってしまった。
美空も地下のベッドで一人、ため息をつく。
だが、目を離していた隙にパンドラパネルにセットされていたライオンフルボトルが何処かへ消えた。消えた戦兎の手掛かりとなる決定的瞬間を、誰も見ていない。






















その頃、最初の特異点から帰ってきて、ロマニからつかの間の休息をもらってカルデアで過ごす戦兎。
立香達と話している最中、くしゃみを何回かしていた。
心配する立香だが、何でもないと言い、話を続ける。

「(誰かが噂でもしてるのか…?考えられるのは数人くらいだけど)」

内心そう考えながら。
尤も、戦兎を話題に取り上げる人達などそう多くはない。あるとすれば、東都に居る万丈達くらいだ。
戦兎が向こうに帰れる目処は未だ立っていない。彼が無事東都に帰れる日はいつになるのか。それはまだ誰にも分からない。



はい。間話なのに伏線を張りました。
それは後に回収する事になります。

さて、次はオルレアンに向かいます。勿論、あの英霊とも戦いますよ。

それでは次回をお楽しみに…


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一章 第一特異点の戦い其ノ壱

通算UA5000突破、お気に入り数も50を超えてて目が点になっている作者です。
皆様には本当に感謝しております。

それではどうぞ


短めの睡眠を取り、再び起きる。
そろそろ立香が起きる頃だ。起こしにいくのはマシュがやるだろう。なら、先にDr.ロマンの元へ向こうとしよう。例のごとく管制室に居る筈だ。そう思い、歩き始めたがすぐに止まる。

「(そういや、俺はまだ此処の所長に会ってないな。立香ちゃんは会った事あるかもだけど)」

あの時はDr.ロマンが所長かと思っていた。
だが、後で聞いてみると代理らしい。カルデア所長、オルガマリー・アニムスフィアは俺が来る前から行方をくらましてしまったようだ。
もしかしたら、ロマンやスタッフが見つけた七つの特異点のいずれかに居るかもしれないという仮説を立てた。だが、発見と同時にそこに居るというのもおかしい。レイシフトが出来なければその特異点に行けない筈だ。その仮説はすぐに捨てた。

「(謎は多い。まずは目の前の問題から片付けるとしようか)」

所長の事はひとまず置いておく。
とりあえずロマンの元へ急ぐとしよう。

戦兎saidout



立香said

いつの間にか寝ていた。
跳ね起きて時間を確認する。寝てから二時間くらいしか経っていない事に安堵し、一旦廊下に出る。すると、丁度マシュとすれ違った。マシュは私を起こしに来てくれたらしい。お礼を言い、二人で管制室へ。

「あれ、戦兎は?」

「多分先に向かったと思います。そんなに寝てない筈なんですが…」

「少しの睡眠で物足りるんだね…凄いや。私はまだ眠いよ」

「先輩は魔力の消耗が激しかったので、仕方ないかと思います」

大丈夫ですよ、とマシュが微笑む。
それだけで私は癒された。流石私の頼れる後輩だな、と頭の中で考えながらロマンの元へ。

その時、召喚室から物音が聞こえてきた。私は気になってマシュに先に行くよう促す。
召喚陣は金色の札か虹色の石を投入しない限りは動かない筈だ。それが勝手に動いたという事は外的要因が関わった可能性がある。恐る恐る中へ入るものの、誰も居ない上に召喚陣も動いていなかった。

「(あれ?さっき確かに物音が聞こえた気がするんだけど…気の所為だったかな?)」

気の所為ならいいや、と部屋を後にする。
だけど、召喚陣は確実に起動していた。一瞬の出来事だった為立香は確認する事が出来なかったが。
果たして、今回呼ばれた人物は敵か味方か?それが分かるのはまだ先になる。

立香sideout



???side

気づいたら見知らぬ部屋に居た。
真っ暗で何も見えないが、相棒は近くに居る事は分かる。現に炎を吐いてきてる。熱い。火傷する程じゃないが、顔の近くに炎を吐くのはやめて欲しい所だ。
とりあえず、手に持っている物を確認する。例のアレはちゃんと握られていた為、紛失していない事に安堵した。失くしでもしたらうるさい奴が来る。

「さてと、どーすっか…」

誰も居ない部屋(相棒は別として)で一人、見えない天井を見上げながら胡座をかく。無策だった。
そもそも、俺は何で此処に来たのかすら分からない。確か、あいつがやってたと思うアプリを俺も開いた時から先の記憶がない。どうなってるんだ?
無駄に動いてもキリがない為、俺は此処に居座る。それが一番手っ取り早い。最終手段はあるから大丈夫な筈だ。

???sideout



立香、戦兎side

Dr.ロマンの話を聞き、今回行く特異点の情報をまとめる。今回は「オルレアン」。後にフランスになる場所であり、有名な「百年戦争」の地でもある。
特異点化したという事は何かしら違う点があるという事で、それは実際に見ないと分からない。

「じゃあ、レイシフトの準備をしようか」

「はい」

再びコフィンに入り、目を閉じる。機械的なガイダンスが流れた後、最初と同じ浮遊感に襲われ、意識は闇へ沈んだ。












飛び起きる。青空が広がっていた。
Dr.から通信が入り、無事成功した事が分かった所で戦兎が身構える。マシュも同様に盾を構えていた。

「どうしたの?二人とも」

「来る。何かが」

「はい。足音が聞こえてきます」

「足音…って、えぇ?!」

私の目線の先。鎧と兜をつけ、槍や剣などを手に持った兵士達がこちらへやってくる。その数約五千。大軍だった。五千対二人の戦いになるのか。すると、戦兎はあのベルトを巻いていた。取り出したボトルは橙色と灰色。それぞれ鳥と機関銃の絵柄が刻まれている。それをベルトへ装填する。

〈タカ!ガトリング!ベストマッチ!!〉

「大軍にはコレだ」

〈Are you READY ?〉

「変身!」

〈天空の暴れん坊〜!ホークガトリング!イェーイ!!〉

今回のビルドは今までと打って変わって背中に羽根が生えていた。右目は鷹、左目はガトリングの銃口を模している。そして、ドリルクラッシャーとは又違う武器をベルトから取り出した。

〈ホークガトリンガー!〉

起動音を発し、片手に収まる銃のバレルと思われる部分を回し始めたビルド。

「マシュ。立香ちゃんをお願い」

「は、はいっ」

回す度にホークガトリンガーから音声が流れる。どうやら弾を装填中らしいが…回すだけでいいんだ。普通は一つずつ込めるのだが、戦兎が使う武器は私が見た奴とは違う点が多すぎる。

〈サーティ!フォーティ!フィフティ!シックスティ!〉

そうしている間にもどんどん増えていく弾数。それと同時に兵士の大軍の周りを頭が痛くなる数式が球状に囲っていき、上に持ち上げていった。勿論、兵士達は何が起きているのか分からずにギャーギャー騒いでいる。

〈ナインティ!ワンハンドレッド!〉

「行っけー!」

〈フルバレット!〉

ホークガトリングフォームのビルドが数式で球状に囲っている大軍の中へ突入し、兵士一人一人へ乱射する。ひとしきり終わると、またもや大爆発を起こす。そこから落ちていく兵士達。結構な高さから落ちたにも関わらず、全員ちゃんと息があった。あれだけいた人数を全て峰打ちで終わらせる辺り、凄いと思う。

「命は取らなかったんだね」

「こう見えて平和主義なんでね。無益な殺生は好まないんだよ、俺」

「そ、そう」

平和主義と殺生は関係ない気がする。
変身を解除した戦兎をよそ目にあの兵士達の方を向けば次々と退却していた。おそらく戦兎の戦闘力に適わないと見たのだろう。一人、また一人と遠くへ行く。数分もかからずに皆遠くへ行ってしまった。
悪い気はするけど、ひとまずこれで危機は去ったと見ていいだろう。ホッとしたのもつかの間、Dr.から通信が入った。

「はい、どうしました?Dr.」

『嗚呼よかった、繋がったね。早速で悪いんだけど、近くに魔力反応。この地で初めて会うサーヴァントだ、何があるか分からない。気をつけて』

「了解です」

私がそう返事した時だ。誰かがやってくる気配を感じた。戦兎とマシュは私を守るように前へ出てくれていた為、私が身構える必要が無くなった。万が一の場合を考えてガンドは放てるようにしていたが。
目の前に現れた一人の女性。変わった額当てを付け、長い金髪は後ろで編んでいる。女性物の鎧に薔薇の装飾が付いた剣を腰に提げて、右手には大きな旗を持っている。それだけで分かる人は分かるだろう。

「ジャンヌ・ダルク…?」

「あ、私の事をご存知なんですか?」

「まぁ、はい」

ジャンヌ・ダルク。オルレアンを救った救国の聖女。
只の村娘だった彼女は神の啓示を受け、国を救う為に旗を持って立ち上がった。
百年戦争に勝利という終止符を打った彼女はその後、異端審問にて異端の判決を受けて十九という若さで火刑に処され、その生涯を閉じる事となる。

「で、その聖女様が俺達に何の用があるんだ?」

「それは今からお話しします」

私とマシュ、戦兎はジャンヌの話を聞いた。
それによると、今のオルレアンを支配しているのは国王では無い。突如現れた聖女、ジャンヌ・ダルクが支配しているとの事。だが、当の本人は目の前に居る。そうなれば、そのジャンヌ・ダルクは偽物という訳だ。しかも、龍を連れているらしい。そんな彼女を見た人達は皆してこう言う。〈魔女の再来〉と。

「なるほどね。そりゃ厄介だ」

「そんな事思ってない癖に」

「……バレたか」

戦兎は何か考えがあるみたい。龍と聞いてからはなんとなく落ち着きがない。それはさておき、私はジャンヌに向き直る。

「私達でいいなら、力をお貸しします」

そう言ったらジャンヌはありがとうございますと連続して言いながら頭を下げていた。こうして、即席だが魔女討伐隊が出来た。

立香、戦兎sideout



???side

じっとしているのも飽きてきた。相棒も疲れたのか首と尻尾を折り畳んで寝ている。というか、そうやって寝るのか?!気づかなかった…

「やっぱ動くっきゃねぇか…」

とはいえ宛は皆無。此処に奴が居ると仮定して探すか…
ひとまずこの部屋から出る。勝手ながらも人探しが始まった。

???sideout



はい。今回からオルレアン編突入です。
そしてホークガトリングフォームも出ました。初めて見たあの技が印象的でしたね。

そして、今回から謎の人物がカルデアにやって来ました。火を吐く相棒を連れているという事は…?

それでは次回をお楽しみに…


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第一特異点の戦い其ノ二

作者です

カルデアに現れた謎の人物が気になる所ではありますが、戦兎達と邂逅するのはまだ先になると思います

それではどうぞ


ジャンヌと共に行動する事になった。
この時バイクがあったら非常にありがたいと思い、懐をまさぐったが愛用のスマホが無い事に気づく。
ライオンフルボトルをスマホに装填すればバイクに早変わりする俺の発明品。もしかして向こうに置き去りになったのかと落胆した。

「どうしたの?戦兎」

「……忘れ物」

「えっ」

立香には大丈夫と伝え、歩を進める。
もしかしたら何かしらの手掛かりが残っていたかもしれない。そう思うとショックを隠せない。それはさておき、先行していたジャンヌが旗を構えて立ち止まる。何かあるのかと思ってたら、辺りを震撼させる咆哮がこだました。
思わず耳を塞ぐ。凄まじい大きさだ、鼓膜が破けてしまうかと思うくらいに。少なくとも、これ程大きい咆哮は聞いた事が無い。
少しすると、その正体が明らかになった。今回の標的も同時に。

「ファブニール…!」

「ファブニール?それって、アレか。ジークフリートが討ち取った邪龍…」

「それです。そして、その龍を従えているのが…」

ジャンヌはファブニールの頭の上に立っている人物を見る。見た目はジャンヌそっくりだ。違う点は鎧などが黒い事と短髪だという事。それだけでは今隣に居るジャンヌとあの黒ジャンヌ(仮)を見間違えても仕方ないだろう。
その黒ジャンヌ(仮)は俺達を見下ろし、蔑んだ。

「あら、無様に倒されに来たのかしら?聖女様」

「いいえ、私は貴女を倒しに来ました」

「いきがるのは見苦しいわよ?現に足が震えてるじゃない」

「くっ…!」

黒ジャンヌ(仮)が言った事が本当かどうか、ジャンヌを見てみる。目は相手を睨んでいるものの、足は小刻みに震えていた。やはり怖いのだろうか?

「まぁいいわ。今ここで貴女を倒してもつまらないもの。ここは貴方に任せるわ、バーサーカー」

そう言い残し、黒ジャンヌ(仮)はファブニールと共に飛び去っていく。代わりに俺達の前に立っているのは長髪に貴族風の服を着て、不思議な形状の槍を持った男性。
あのジャンヌの手下と見ていいだろう。その男性は俺達を見据えるなり口を開く。

「ほう、貴様達が私の獲物か」

「立香ちゃん、マシュの後ろに。あいつは…サーヴァントとかじゃない。化物に近い奴だと思う。ジャンヌ!」

「はい、分かっています。行きましょう、戦兎さん!」

マシュは立香ちゃんを守らせる為に後ろへ。
俺とジャンヌは目の前の男性と戦う為に各々得物を構える。それを合図と見たか、男性が臨戦態勢に。

「さて、実験を始めようか」

「行きます!」

「来い。私を楽しませよ!」

とりあえず変身は後回しにしておく。
相手の力量が分からない以上、無策に突っ込むのは危険すぎる。ホークガトリンガーを手に、ジャンヌのサポートへ回った。
対する長髪男は槍を器用に扱い、ジャンヌだけじゃなく俺の間合いまで自分の間合いにしてくる。このままじゃ拉致があかない。

「ジャンヌ、奴の足止め頼めるか?」

「えっ、はい。大丈夫です」

正直英霊とはいえ女性を戦わせるのは気が引ける。
ビルドに変身し、俺が奴の相手をする方がいいだろう。ビルドドライバーを巻き、ゴリラとダイヤモンドのフルボトルを振ってからベルトに装填、レバーを回す。

〈Are you READY ?〉

「変身!」

〈輝きのデストロイヤー!ゴリラモンド!イェーイ!!〉

仮面ライダービルド、ゴリラモンドフォーム。
奴はパワー型と見た。なら、コレが最適だろう。力対力の勝負といこうじゃないか。
勿論、ジャンヌは目が点になっている。それもそうか、立香とマシュ、Dr.は見慣れてる。ジャンヌはコレが初めてだろう。驚いても仕方ない。

「え、えぇ?!変身、ですか…?」

「勝利の法則は決まった!ジャンヌ、後は俺に任せて」

「え、あ、はいっ」

ジャンヌをマシュの元へ下がらせ、俺は長髪男の前に出る。長髪男は歪んだ笑顔を見せた。ようやく自分と渡り合える相手が来たからだと思う。

「さて、アンタの名前を聞かせて欲しいんだよね」

「名乗るならまず己からであろう」

「おっと、これは失礼。では名乗ろう。俺は桐生戦兎。又の名を仮面ライダービルド。以後、お見知りおきを」

「余はヴラド三世。さぁ、存分に殺りあおうではないか、仮面ライダー!」

長髪男もといヴラド三世と俺の一騎討ちが始まる。
黒ジャンヌ(仮)がバーサーカーと呼んでいた事もあってか、一発一発が重い。ダイヤモンドの成分で出来た左腕を以てしてもダメージをゼロには出来ないようだ。
だが、俺の攻撃は一発一発がちゃんと入る。防御を代償に攻撃力を上げているという事か?長期戦はこちらが不利だ、短期決戦で決める他無いだろう。

「なかなかやるではないか?仮面ライダーよ」

「そりゃどうもっ!」

「だが、そろそろ終わりにしよう」

「嗚呼、それは俺も同意見だ」

何度目か忘れたが拳がぶつかり、その後お互いに距離を取る。俺はベルトのレバーを回し、ヴラド三世は自身の魔力を高める。辺りの空気が一変し、張り詰めた雰囲気に変わる。

「(流石ヴラド三世。魔力の高まりによる力の増幅、それがプレッシャーになって襲ってきているな…気合い入れねぇとこっちが膝をつきそうだ)」

〈READY……GO!ボルテック・フィニッシュ!イェーイ!!〉

「カズィクル・ベイ!」

俺が放ったボルテック・フィニッシュ、ヴラド三世のカズィクル・ベイが真正面からぶつかり合い、大爆発を起こす。

「はぁぁぁぁ!」

「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

お互いの叫び声しか聞こえない中、ヴラド三世の顔がふっと笑顔を浮かべる。何事かと思った矢先、爆発の第二波によって俺は遠くへ吹き飛ばされ、変身も解除された。幸いにも怪我は頬の切り傷だけで済んだ。
すぐさま立ち上がってヴラド三世を見る。アルトリアが座という場所に還る時と同じようにヴラド三世にも光が灯っていた。という事は、俺が勝ったのか?

「見事なり、仮面ライダー。いや、桐生戦兎よ」

「ヴラド三世。アンタも強かった。次があれば又戦いたい」

「ふっ、次があればの話だ」

そう言い残し、ヴラド三世は消滅。
これで黒ジャンヌ(仮)の手下の一人を倒した。後何人いるのかは知らないが、多少はこちらが有利になっただろう。変身を解除し、立香の元へ。

「お疲れ様、戦兎」

「嗚呼」

「戦兎さん、さっきのは…」

「俺の力。そう思ってくれていい」

「わ、分かりました」

一から説明するのも、掻い摘んで説明するのも面倒になってきた。ジャンヌには悪いが、ひとまず休憩出来る場所を探してからゆっくりと説明した方がいい。
込み入った話になるし、それは立ち話で済ませる事じゃない。ロマンに通信を繋げ、休める場所が無いかサーチしてもらった。

『此処からそう遠くない森に龍脈がある。そこなら結界も張れるし、こちらからの物資も届けられる。まずはそこを目指してくれ』

「了解。立香ちゃん」

「分かってる。行こう」

ロマンの言う通りにし、龍脈とやらが流れている森へ向かった。道中の敵は勿論俺が倒し、マシュやジャンヌを極力休ませる。二人は立香ちゃんを守る要だ。戦うのは俺だけでいい。


















戦兎達がオルレアンに行ってる頃のカルデア。
誰も居ない廊下を見知らぬ男が歩いていた。カルデアは機密情報が多い為、各所に監視カメラが設置されているのだが、そうとは知らずに堂々と歩いている。

「何処だよ此処。外は吹雪いてて見えねぇし、あいつは見つからないしよ…」

青いスカジャンに色々な色が入ったシャツ、腰に巻いた赤と黒のチェック柄の服にジーパンとスニーカーを履いた男。その手に持つベルトは、戦兎がビルドへ変身する際に使うベルトと同じ形だった。その男の近くを機械で出来た龍に似た生き物が飛んでいる。

「ったく、戦兎の奴は此処に居たりすんのか…?」

ぼやきながら歩く男。彼が戦兎達と遭遇するのはまだ先の話。



段々戦兎がチートじみている気がしないでもない…

そして、最後に現れた戦兎を知っている男。正体は、もうお分かりですよね。

活動報告にレジェンドライダーフルボトルについて質問を掲載いたしました。お時間があればコメントを残してくれるとありがたいです。

それでは次回をお楽しみに…


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第一特異点の戦い其ノ参

ルーキーランキングに載っていて驚いている作者です
それではどうぞ


Dr.ロマンが指定した森へ入り、色々設定した後。
此処に来てまともな休憩を取れた。到着してすぐに兵士の大軍と戦い、その後黒ジャンヌ(仮)とファブニールという邪龍に出会い、彼女の手下と思われるヴラド三世と刃を交えて勝利。森にたどり着く前に何度か飛龍と戦った。最初っから今まで戦い続けた。スマッシュと戦っている時より遥かに疲れる。

「あの、戦兎さん」

「…ん?どうした、ジャンヌ」

「ちょっとお話しがありまして…」

「俺に?まぁいいけど」

ジャンヌに呼び出されて向かった先は小川が流れる場所だった。立香ちゃん達とはそれなりに離れている。
わざわざ離れるという事は、立香やマシュに聞かれると面倒な事を聞くだろうと内心考えていた。

「それで、話とは?」

「戦兎さんのその力について、詳しく教えてください」

「嗚呼、なるほどね…」

森に来る前にジャンヌにはビルドの力に関しては誤魔化していたが、やっぱり知りたいようだ。だが、立香達が居る手前、聞くに聞けなかったらしい。それでわざわざ離れる必要があったという訳か。
とりあえず掻い摘んで説明する。成分云々の話になると色々ややこしくなると思う。

「なるほど…」

「ま、変身しなくても強いんだけどね」

「確かにそうですね。見た目重そうな武器を軽々と扱ってますし」

「案外軽いんだよ?アレ」

なんて、くだらない話にもつれ込んでいた時だ。
目玉の化物が辺りを徘徊し始め、数がどんどん増えていく。この森はこいつ等の住処だったのか。
だとしたら不味い。マシュと立香から離れている。もしあの化物が立香達に気づいたとしたら容赦なく攻撃するだろう。それは避けねばならない。咄嗟にベルトを巻き、タカとガトリングのフルボトルを振ってから装填し、レバーを回す。

〈Are you READY ?〉

「変身!」

〈天空の暴れん坊〜!ホークガトリング!イェーイ!!〉

仮面ライダービルド、ホークガトリングフォーム。
一対多にはコレだ。ホークガトリンガーを手に、空中を舞いながら目玉の化物一体一体に的確に銃弾を当てていく。というか、目玉そのものが弱点って狙ってくださいと言ってるようなものだ。コレならフルバレットを使うまでも無い。ひと通り倒した所で立香の元へ急ぐ。
ジャンヌを抱えて。この方が早い為、咄嗟にやったのだが、肝心のジャンヌは固まっていた。それを見た時、やってしまったかと内心でため息をつく。

「あの、ジャンヌさん?」

「は、はい?なんでしょう…」

「突然で悪いとは思ってる。だけど暫く我慢してくれ…」

「えっ?!」

加速して先を急ぐ。勿論、安全最優先で。
ジャンヌの叫び声が直接響くけど、四の五の言ってる暇は無い。木々の間をすり抜け、道中の敵はヘッドショットで素早く倒す。後で謝っておこうと内心考えながら。
そう。仕方ない事とはいえ、女性の身体に無断で触っているのだ。謝罪だけでは足りないだろう。
少しして、立香とマシュの姿を捉えた。よく見たら人狼達と交戦中らしく、金属音が鳴り響き、火花が散っている。ジャンヌを降ろしてから地面に着地。変身を解除してドリルクラッシャーを持って突撃する。

「戦兎さん!」

「悪い、遅くなった!」

「マシュ、反撃に出よう!」

「はい!」

マシュに群がる人狼達を倒し、気づく。もしかしたら成分が採れる筈だと。最後の一体を倒してすぐに空のボトルを向ける。予想通り、成分の採取に成功した。コレは後で使う事にしようと思い、懐に仕舞う。
予想が当たれば、さっきのボトルはウルフフルボトルになる筈だ。となると、ベストマッチになる方も探す必要もある。それはさておき行動を開始するべく森から出たと同時に誰かがやってくるのを気配で感じた。

「マシュ、ジャンヌ。後ろへ下がっておいてくれるか」

「戦兎さん?」

「立香ちゃん、多分サーヴァントが来る。マシュ達と共に後ろへ。Dr.、魔力反応は?」

『戦兎くんが言う通り、立香ちゃん達に近づく魔力反応が一つある。おそらく、セイバークラスだ』

セイバー。アルトリアを思い出し、苦笑いを浮かべる。
聖杯戦争に於いて最強と位置付けられるクラス。騎士王と謳われるアルトリア(黒化していたが)をマシュの協力の元、討ち取った。今回のセイバークラスの英霊は誰だろうか。そう考えながらドリルクラッシャーを片手に持ち、その時を待つ。
目の前にやってくる一人の騎士。レイピアに分類される細身の剣を片手に、昔の貴族が被っているような派手な装飾が付いた帽子にこれまた貴族風の服装。それから判断出来るのは、女性という事のみ。又女性を相手にしなきゃならないのかとため息をついた。

「やぁ。盾の少女とそのマスター。見た事が無い武器を持つ人に…聖女。遠方からはるばるご苦労様、と言えばいいかな?」

「……嗚呼。やっぱ敵だよな、アンタも」

「それはすぐに分かる筈だよ?桐生戦兎。ヴラドを倒した貴方にはね」

「お前もか。俺の名前を"誰が教えたのかは知らないが"知っている奴は」

「まぁね。これからやってくる奴等の中に"異世界の来訪者が紛れている"という事はあの魔女から教えてもらったから」

プライバシーもへったくれも無い。俺の名前筒抜けって、あの魔女…黒ジャンヌ(仮)もか。一部の敵には知られていると考えていいだろう。いちいち名乗る必要が省かれたのは嬉しいが。

「さて、挨拶して終わりって訳じゃないだろ?」

「話が早くて助かる。魔女から"いけ好かない聖女様ごと殺ってきなさい"と言われたからね。喚ばれたからには従うのがサーヴァントというものだろう?」

「(ん?今喚ばれたって言ったよな。魔女にか?)」

「戦兎!ぼさっとしない!」

「あ、嗚呼。分かってる」

考え事をしていたら立香に怒られ、改めて向き直る。
ここはホークガトリンガーも取り出して二丁拳銃スタイルでいくか。ベルトを巻いてラビットとガトリングのフルボトルを取り出して振り、装填してレバーを回す。

〈Are you READY ?〉

「変身!」

今回はベストマッチフォームではない。トライアルフォームだ。能力は劣るが武器を二つ持てる為、まずは様子見と行こう。トライアルで苦戦するならベストマッチだ。

「それが君の力。仮面ライダーだね」

「そこまで知っているのか。情報回るの早くない?」

「どうやって知ったのかは教えないよっ」

仕掛けてきたのは向こう。その細い剣で鋭い突きを放ってくる。次々くる剣を避けながらガンモードのドリルクラッシャーとホークガトリンガーの銃弾を浴びせる。
だが、流石英霊なだけありことごとく避けられる。やはりトライアルだと駄目か。

「なら、コイツで行こうか」

新たに取り出したのは紫と黄色のボトル。絵柄は見なくても分かる筈だ。それを振ってからベルトへ装填する。

〈忍者!コミック!ベストマッチ!〉

「忍者にコミック…?」

不思議がる相手や立香達を余所目にレバーを回す。
ベルトを介して形成される紫と黄色の装甲をラビットとガトリングの代わりに装着する。

〈Are you READY ?〉

「ビルドアップ!」

〈忍びのエンターテイナー!ニンニンコミック!イェーイ!!〉

仮面ライダービルド、ニンニンコミックフォーム。
専用武器〈四コマ忍法刀〉を逆手に持ち、こっちの番だと言わんばかりに突撃する。スピードで翻弄し、忍法刀で連撃を加えていく。はたから見たら一方的かもしれないが、戦いに卑怯とかは通用しない。勝てばいいだけだ。

「っ…!」

「悪いが、倒させてもらう」

忍法刀のトリガーをまずは一回押す。〈分身の術!〉と音声が流れた後、剣先を相手の周りに向けて丸を描くように空間に幾つか書いた後にトリガーをもう一度押す。
すると、ビルドが一人から六人に増え、惑わすように相手を攻撃しつつ周りをぐるぐると回る。

「ど、どれが本物だ…?」

「これで終わりだ」

忍法刀のトリガーを二回押す。〈火遁の術!〉と音声が流れ、炎を纏いながら翻弄していく。トリガーをもう一度押す。〈火炎斬り!〉という音声と共に頭上から盾一直線に斬った。
だが、決定打にはならなかった。ふらつきながらも立ち上がる相手を見て思わず「本気?」と呟いてしまった。

「くっ…今回はここまでにしておくよっ!」

「あっ、おい待てっ!」

英霊の特権「霊体化」をして逃げられた。
ロマンに確かめてもらっても、周りに魔力反応は無いと言われた。ひとまず変身を解除し、一息つく。
何故か手元にあった忍者フルボトルとコミックフルボトルを眺めながら。



今回はニンニンコミックを出してみました。
戦闘描写、もうちょっと派手な方がいいかもしれない…

それでは次回お楽しみに…


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第一特異点の戦い其ノ四

作者です

着々と手元に現れるフルボトル。それが何を意味するかは今後の展開で分かるかと思います。

それではどうぞ(UAが着々と増えてる、だと……?!)


セイバークラスの英霊と戦ったのはいいが、逃した。
黒ジャンヌ(仮)もとい魔女の情報源だった。捕まえれば聞き出せたかもしれないが、自害するという事も否定出来ない。とりあえず、ジャンヌに聞いてみる。

「ジャンヌ。さっきの英霊の真名、分かる?」

「はい。彼の者の名はシュヴァリエ・デオン。フランス王家に忠誠を誓う白百合の騎士とされています」

「デオン、ね…」

さっきのヴラド三世といい、今回のデオンといい…
何かが"狂っている"。本質が違うというかなんというか、バーサーカーとして現界したヴラドは兎も角セイバークラスのデオンがあんなに好戦的な性格だったとは思えない。

「立香、マシュ。さっきのデオン。何かがおかしいと思った筈だ」

「え、はい。なんとなくですけど…」

「私もマシュと同意見だな。デオン、"セイバーなのにバーサーカーみたいな動き"だったし」

「それを聞いて、改めてジャンヌに問いたい。仮説に過ぎないが…"最初っから何かを付与されて現界した"と俺は考えている。それについて、どう?」

単なる仮説だったのだが、ジャンヌは俺の考えが合っている事を頷いて教えてくれた。
ジャンヌが言うには、"狂化"というスキルを召喚時に付与させたとしか考えられないとの事。それを可能にしたのも、聖杯の力だという事も。

「何にせよデオンを逃した以上、本隊が来るかもしれないな…」

不吉な事をサラリと言う俺だった。

カルデアメンバー+ジャンヌsaidout



黒ジャンヌ(仮)said

オルレアンの中心にある城。私はそこを根城にしていた。何故かというと、私こそ此処の城主に相応しいと考えたからだ。因みに元城主は斬首の刑にした。私なんかに逆らうのが運の尽きってもの。
とはいえやる事はあまり無かった為、外を眺めていると急に扉が激しい音を立てて開いた。そちらに目をやれば先に送り出したバーサーク・セイバーが血だらけのまま帰還していた。あまり驚かなかったけど。

「酷い有様ねぇ?火傷も負ってるじゃない」

「ふふっ、僕とした事が油断したよ。貴女が言っていた"異世界の来訪者"の力が強大すぎた」

「……嗚呼。桐生戦兎、だったわね。それと、仮面ライダー。ここまでやるとは思わなかったわ」

「因みに彼はヴラド三世との一騎討ちで勝利を収めているよ」

「あら。それは意外だったわ?バーサーカーとして呼び出した彼すら打ち倒す力…興味深いわね」

「それで、貴女はどうするつもりだい?龍の魔女…いや、"ジャンヌ・オルタ"」

バーサーク・セイバーに私の真名を言われ、私は感嘆の表情を浮かべた。私の真名は"私を崇拝する人"にしか教えていないのに、この子は一発で当てた。考えられるとすれば話を盗み聞きして知ったのだろう。それはいい。

「アーチャーとライダーを向かわせなさい。桐生戦兎さえ倒せば私達の勝利は絶対なものになる」

「了解したよ。この事は彼女達にすぐ伝えよう。ただ、"もしもの事"を考えておいた方が良さそうだ。貴女や私達が見つけていない"この地に喚ばれた英霊達"が彼等に協力するかもしれないからね」

そう言い残し、セイバーは姿を消す。
意味深な台詞を残して。確かに私にも感知出来ないが、この地には"既に何騎か召喚されている"。勿論、私が召喚した訳じゃないから理性はある。
桐生戦兎は最重要排除対象だ。それよりも重要なのが、カルデアから来たマスター。そいつさえ倒せば私の勝利は確定したも同然。それにはまず仮面ライダーになる桐生戦兎を倒さねばならない。

「……」

暫し考えた後、破壊していない街を思い出す。
そこを破壊すれば間違いなく奴等は来る。そこを一網打尽にすればいい。ファブニールを向かわせるとしましょうか。私は此処で待てばいい。城主たる者、簡単に外へ出る訳にもいかない。

「さぁ、まだまだこれからよ?せいぜい足掻きなさい、桐生戦兎」

ファブニールを向かわせた後、誰も居ない広間で高笑いをした。

黒ジャンヌ(仮)saidout



カルデアメンバー+ジャンヌsaid

ひとまずオルレアンの中心の城を目指す。
だけど障害があるのが旅というものであり、今回も厄介な障害が待ち受けていた。それはもう、スルーしたい程に。

「戦兎ー!ビルドに変身してー!」

「無茶言うなって!そんな早着替えっぽく言われても困る!」

「あの、何故こんな事に…?」

「それは…」

四人は今、全速力で逃げている。何からだと思う所だろう。巨大な龍からだ。それも、ファブニールじゃない奴に。事の発端は立香にあった。

─回想─

街に入る前に俺達の近くを龍が飛んでいった。
邪龍とかじゃなく純粋な龍が。気になった立香はその後を追いかけていってしまい、渋々追いかける。
そこまではいい。問題はその先である。疲れていたのか巨大な体躯を地面に寝かせ、静かに寝ていた龍を何を勘違いしたのか好機とみた立香。まともな肉を食べていないというのも相まってその龍の尻尾を斬ろうとした。
勿論龍はまだ生きている為、絶叫の雄叫びを上げた後に俺達に狙いを定めて怒りをぶつけてきた。当然と言えば当然だが。

─回想終了─

「元はと言えば先輩が悪いんですよ?!」

「仕方ないじゃん!携帯食糧、パサついてるんだもん… 肉食べたかったし」

「だからと言って龍の尻尾斬ろうとするか?!」

「どうしますか…?」

一か八か、やるしかないだろう。走りながらベルトを巻き、ゴリラとダイヤモンドのフルボトルを振ってすぐに装填、レバーを回して「変身!」と叫ぶ。

〈ゴリラモンド!イェーイ!!〉

今回は色々省略した。すぐさま龍の右脚を殴る。
だが、微動だにせず。少なくとも止まりはした為、時間稼ぎにはなった。すぐにレバーを回し、必殺技待機状態にもっていく。

〈ボルテック・フィニッシュ!!〉

ダイヤモンドをゴリラの右腕に纏わせ、渾身の一撃を叩き込む。倒すまではいかなかったが、転倒させる事には成功した。だが、これからどうするか考えていない。
今持っているフルボトルでは奴を仕留める事は不可能だ。そうこうしている内に復帰する龍を目の前に、万事休すかと思ったその時。

「はぁぁぁぁ!!」

何処からともなく他の人の声が聞こえ、次いで龍の首が切り落とされた。あの龍を一撃で仕留めた事に驚きを隠せていないでいると、ジャンヌがはっと声を上げる。

「貴方は…もしかして?」

「ん…?俺か?」

先程龍を一撃で倒した人物。
長めの白髪に胸元の傷、バスターブレードに分類される長大な剣を持ち、黒いマントを羽織るその人物をジャンヌは知っているようだ。斯く言う俺も、見た時既に分かったが。

「ジークフリート、か?」

「……如何にも。こんな俺が奴を倒してしまい、すまない」

「「……え?」」

開口一番謝られて目が点になる俺とジャンヌだった。

カルデアメンバー+ジャンヌsaidout









???said

あれから暫く此処を歩いたが、なんの手がかりも見つけられずにいる。そもそも、此処がなんなのかすら分からない。歩き疲れて腹も減ってきた。

「飯…ねぇかな…」

自分の腹が"何でもいいから入れろ"と直に訴えてきている。俺だって何か食べたい所だ。だが、今手元には何も無い。座っていると余計空く為、歩いて誤魔化しているという事だ。然し、それももう限界である。

「……ちくしょう」

それを最後に、俺の意識は途切れて地面に倒れる。
そんな中、誰かに運ばれる夢を見ていた気がしていた…
だが、そんな事を確認出来る状態でも無い。果たして、コレは本当に夢なのだろうか。それは気がついた時に分かる事だ…



……第一特異点だけで長くなりそう

さて、件の戦兎を知る人物はどうなるか。見ものでもありますね。

それでは次回をお楽しみに…


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第一特異点の戦い其ノ伍

戦兎「なんか俺ばかり戦ってる気がする」
作者「気の所為」

それではどうぞ
(通算UA一万突破!コレを読んでくださった皆様、ありがとうございます)


ジークフリート。邪龍ファブニールを倒し、返り血を浴びて不老不死となった竜殺しの英雄。
歴史にあまり詳しくない自分でもすぐに分かった。

「謝られても困るというか、助けてもらったから謝る必要無い気が…」

「そ、そうですよっ」

「そうか。こんな俺でも役に立てた事、嬉しく思う」

イマイチ調子が狂う。物腰が低すぎるというかなんというか。初対面でもジャンヌはこんなんじゃなかった。
失礼かもしれないけど、正に正反対。

「ジークフリートさん。よかったら私達に協力してくれない…かな?」

「何故だ?貴女には頼れる人達が居るだろう。俺の力を借りなくても十分な筈だ」

「邪龍が此処に居る、と言ったらどうだ?伝承通りであればアンタ以外にアイツは倒せない筈だ」

俺が邪龍という単語を出した途端にジークフリートの表情が一変した。やはり憎き相手なのだろう。
もしかしたら、"邪龍を倒す為だけにこの地が彼を呼び寄せた"のかもしれない。
世界というのは悪影響を与える物に対しては敏感だ。ある世界では膨大な悪に対抗すべく抗体を作り出したという一例もある。世界がそうするのは滅多に無い。

「分かった。そこの仮面の男が言うのが本当ならば俺は力を貸そう」

「それならば、実物を見てもらった方が──」

ジャンヌがそう言いかけた時だ。俺達が向かう筈だった街から人々が逃げる足音と悲鳴、耳を劈くような龍の雄叫びが聞こえてきた。あの雄叫びは間違いない、邪龍だ。

「立香(先輩)!」

「うん、行こう!」

立香の合図で一斉にそこへ向かう。間に合うと思いたかった。だが、俺達の行く手を阻むかのように見慣れない二人が立ち塞がる。立香に頼み、すぐさまDr.に調べてもらった。

『魔力反応、間違いない。英霊だ。気をつけて!』

「クラスは分かるの?Dr.」

『推測でしかないけど、おそらくアーチャーとライダーだと思う』

「アーチャー。遠距離か…」

「なら、アーチャーは戦兎に任せる。私とマシュ、ジャンヌとジークフリートはライダーをやろう」

「了解。さぁ、実験を始めようか」

腰に提げているタカとガトリングのフルボトルを取り出す。ゴリラとダイヤモンドのフルボトルを抜き取り、タカとガトリングを振ってから装填、レバーを回す。

〈Are you READY ?〉

「ビルドアップ!」

〈天空の暴れん坊〜!ホークガトリング!イェーイ!!〉

仮面ライダービルド、ホークガトリングフォーム。
このフォームの時のみ展開する橙色の翼で大空を飛び、アーチャーと思われる英霊の気を引く。

「アンタの相手は俺だ。撃ち落とせるなら撃ち落としてみろよ!」

「貴様っ…!」

挑発に乗りやすいのだろうか。安直だったのにすぐに俺に向けて矢を放ってきた。Dr.の言う通りこの英霊はアーチャーで合っていた。ただまぁ…服装諸々が気になる。猫耳に緑を中心とした狩人が着そうな服、猫の尻尾まである。猫又なのかと思ったが、違うなと思い直す。猫又ならまず弓は使わないだろう。

「その羽、撃ち落とす!」

「悪いけど、そうはいかないんだよ」

ホークガトリンガーのバレルを回し、弾数を増やす。
今回はフルバレットまで貯めなくても大丈夫な筈だ。とりあえずフィフティまで貯め、発射する。
流石アーチャーの英霊だけあって立て続けに矢を放ってくる。それはいいんだが、ホークガトリンガーの弾数には勝てなかったみたいだ。最初は防いでいたが対処しきれなくなり、大半が被弾する。

「くうっ…!」

「大人げないかもしれないけど、これも戦いなんでね」

「……ふっ。流石は仮面ライダー、か」

「って、アンタもか…」

やはり筒抜けらしい。初見の英霊にさえ知られているとは。それはそれとして、理性はあるとはいえ、黒ジャンヌ(仮)の手下(だと思う)というだけで倒さねばならないとは。ヴラドは別としてだが、やはり気が引ける。
とりあえず変身は解除し、ドリルクラッシャーだけを持つ。相手は戦意喪失している筈だ。これ以上傷つける意味など無い。

「……どうした?」

「どうしたも何も、これ以上傷つける意味は無いと思っただけ。こう見えて平和主義なんでね」

「ふっ、おかしな奴だ。戦場ではそれが命取りとなる!」

矢を放ってくるが、素早くモード変更したドリルクラッシャーで難なく撃ち落とす。
その後も何発か飛んでくるが、全て撃ち落とした。弾切れの心配など無い為気兼ねなく撃てる。

「人の気持ちに気づけよな、本当に…」

ぼやきながらガンモードのドリルクラッシャーに忍者フルボトルを装填する。

〈READY……GO!ボルテック・ブレイク!!〉

ドリルクラッシャーの銃口に手裏剣型のエネルギーが蓄積されていき、最大まで貯まった時にトリガーを引く。
貯まったエネルギーは目の前に居る英霊に向かって飛び、着弾して爆発を起こした。
多分無事じゃない筈だ。手加減など一切していない。煙が晴れた時に見やれば跡形も無く消えていた。

「……コレだから戦うのは嫌なんだよ」

心を痛めながらも立香達の元へ急ぐ。向こうはまだ戦っている筈だ。

















ライダーの攻撃をなんとか捌きながら攻撃を加える。
それでもなかなか倒れてくれない。耐久には自信があるようだ。ジークフリートとジャンヌが押しているように見えるが、そうでもなかった。マシュも息切れし始めている為、速攻で片付けないと…

「流石ね、カルデアのマスター」

「…えっ?」

油断していた。目の前に現れたライダーに気づく事が出来ずに杖の一撃を貰ってしまった。溝落が強く押され、呻き声を上げながら後ろへ吹っ飛ばされる。だけどすぐにその勢いは止まった。

「大丈夫か、カルデアのマスター」

「え、あ、はい。大丈夫です」

「ならいい。奴は俺達でなんとかする。自分の身を守る事だけに集中していてくれ」

いつの間にか後ろへ回っていたジークフリートに抱きとめられていた。突然だったからびっくりしたけど、英霊でも男なんだなと内心思う。
優しいというより紳士的なのかな。竜殺しの英雄とは思えないけど、先の龍を一撃で沈めた所を見たからなんとも言えない。
後から戦兎も合流し、戦線はこちらが有利になってきたが…何故か戦兎の動きが鈍いというか私を守る事に集中しているように見える。どうしたのか小声で聞いてみると、なんとか教えてくれた。

「……今更かもしれない。でも、人に似ているのを倒さねばならない事に罪悪感を覚えてしまったんだよ、俺。平和主義だからさ…」

「そ、そう。でも…そんな気にしなくてもいいんじゃないかな?彼等を倒すんじゃない、彼等を救ってるんだって思えば」

「救う?」

「そう。人類を滅ぼす為だけに歴史は焼却されて、その歪んだ歴史を守る為だけに歴史に名を残す英霊が喚ばれているとしたら、私はそんな事許せない。英霊は道具じゃないんだから」

「そうか、そうだよな…」

どうやら吹っ切れたようだ。ひとまず今回は守りに徹すると言っていたが、次からはまた前線に戻るだろう。
でも、戦兎もやっぱり人間なんだなと思った。英霊でも人と同じ感情はあるし、血も流す。それを見て尚理性を保ったまま討ち滅ぼすならただの殺戮者だ。

「……頑張るしかないんだよ、私達にはね」

そう小声で呟く。誰にも聞こえないように。



























その頃のカルデア。
カルデアを彷徨っていた謎の人物は医療室に運ばれ、手当てを受けていた。その場にはDr.ロマンも居る。

「見た所、戦兎くんに関係がありそうだね」

流石Dr.。この人物を一目見ただけで戦兎と関係があると分かったようだ。それもその筈、謎の人物はあのベルトを肌身離さず持っていた。それが決定的な証拠になったのだろう。戦兎という名前を聞いたその人物は顔を上げた。

「アンタ、戦兎を知ってるのか?!」

「嗚呼、知ってるよ。今は確か…オルレアンに行ってるかな?」

「オルレアンだぁ?何処だよ、そこ」

ロマンは彼に教えてあげたのだが…さっぱり分からないと言った様子だった。仕方なく、名前だけでも聞いてみる。自分の名前を教えてから。

「僕はロマニ・アーキマン。皆からはDr.ロマンと呼ばれているかな。君の名前、教えて欲しい」

「俺か?俺は万丈、万丈龍我だ」

その男、万丈龍我が戦兎に会えるのはそう遠くないだろう。



多少強引だったけど万丈龍我登場です
さて、この先どうなるでしょうか…

次はいよいよ決着になるかと思います。

それでは次回をお楽しみに…


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第一特異点の戦い 決着

ネタが纏った…
これでオルレアン編は一区切りとなります。
それではどうぞ

(お気に入り100件突破、誠にありがとうございます!)


ライダーの猛攻撃をなんとか退けた。
問題はその後であり、先程逃したセイバーもといデオンがライダーのサポートに回るべくやって来ていた。頭数で言えばこちらが有利。だけど油断は出来ない。

「ちょっとヤバいかも…?」

「諦めるのかい?ライダー」

「な訳ないでしょう?トコトンやるまでよ。戦力を少しでもいいから削ぐのが私達の役目だもの」

どうやら目的はこちらの戦力を削ぐ事らしい。当たり前っちゃ当たり前だが。だからこそ、こっちには起死回生の一手を持つ人が居る。

「そろそろ行くか…」

私を守っていた戦兎がベルトを巻く。懐から取り出したのは紫と黄色のボトル。良く見ると紫の方は手裏剣のような絵柄が、黄色の方は漫画の一ページらしき絵柄が描かれている。既に振った後みたいで、すぐに装填していた。

〈忍者!コミック!ベストマッチ!!〉

「忍者とコミック…?」

「まぁ見てなって」

私が抱いた疑問はすぐに解消された。戦兎がベルトのレバーを回し、ベルトを介して前後に形成される装甲。
それをベルトの〈Are you READY ?〉という声と共に「変身!」と言って装着した戦兎。

〈忍びのエンターテイナー!ニンニンコミック!イェーイ!!〉

そこに立つビルドは紫と黄色の二色の装甲を纏っていた。片方は忍者っぽく、もう片方は漫画っぽい。右手には今まで見た事が無い形の剣を持つ。その剣をよく見ると、四コマ漫画のようにイラストが書かれている。

「さてと…先ずはコレだ」

そう言いながらビルドが手に持つ剣のトリガーを引く。すると、〈シャキン〉という音が響く。その後に〈分身の術!〉という音声が流れる。何かを描いてる音声が流れる中、ビルドがトリガーをもう一度押し、空中に何かを描く。すると、さっきまで一人だったビルドが一気に六人に増えた。ライダーとデオンの周りを翻弄しながら攻撃を加えていく。

「小癪な…!」

「悪いけど、勝負に卑怯も何も無いんでね」

デオンは確か一回喰らっている筈なのに、対策をしなかったのだろうか。まぁ、分かっても無理な気はする。
分身達はそれぞれ独立した思考を持っているらしく、本物と同じように、または全然違う動きで攻撃したりと変幻自在だった。見分け方は本物以外は武器を持っていないという事。それだけ分かればすぐ打ち破られる。
それでも、ビルドの戦闘力は並の英霊より上だが。何がそこまで強いのかは戦兎のみ知る事だろう。

「さて、そろそろ終わりにするか」

ビルドが剣のトリガーを三回押す。〈風遁の術!〉という音声が流れ、又何かを描く音声も流れる中、トリガーを再び押し、ライダー達に向けて斬撃を放った。風を纏った斬撃は二人に襲いかかり、竜巻を引き起こす。〈竜巻斬り!〉という音声も流れ、ライダー達が切り刻まれる。だが、決定打にはならなかったようだ。相当なダメージは与えた筈なのだが。

「…やっぱ駄目か」

そう呟く戦兎。今度は四回押し、〈隠れ身の術!〉という音声が流れた。隠れ身というくらいだ、姿を消すだろう。相手も察知したのか、ビルドに特攻をかける。
だが、〈ドロン!〉という音声と共にビルドの姿は消え、遥か遠くに姿を現した。すぐにボトルを入れ替え、フォームを切り替えるビルド。

〈Are you READY ?〉

「ビルドアップ!」

音声はあの軽快な音楽だった。という事はベストマッチじゃないフォームという事だろう。よく見れば、赤と灰色の二色の装甲を纏ったビルドが立っている。
赤は確かラビット、兎だ。灰色の方は機関銃らしいバレルが。とすると、ラビットガトリングといった所だろうか?ビルドが構えているのはガンモードのドリルクラッシャーと橙色と灰色の二色が目立つ銃。確か、ホークガトリンガーっていってた気が。

「悪いけど、速攻で終わらす。本命が待っているからさ」

そう言いながら、ビルドは二つの銃を乱射し始めた。
大量且つ不規則な軌道の弾道で翻弄しつつ確実にヒットさせていった。どうやったらあんな風になるのか不思議だが、戦兎が開発したものと考えれば謎は解ける。追尾機能くらい付ける事は可能だろう。
着実に相手の体力を削っていく中、ビルドがベルトからラビットボトルだけを取り出す。それを数回振った次の瞬間、ビルドが凄いスピードでライダー達に急接近した。ボトルにはそういう使い方もあるのか。相手が驚く暇もなく、そのボトルをブレードモードにしたドリルクラッシャーに装填するビルド。

「「なっ…?!」」

〈READY……GO!ボルテック・ブレイク!!〉

「終わりだ…」

赤いオーラを纏い、高速で回転するドリルクラッシャーを横に振り抜き、ライダー達を一閃した。それと同時に変身を解除するビルド。二色の装甲が消え、戦兎がそこに立つ。ライダー達は核となるものをさっきの一撃で破壊されたのか、既に退去が始まっていた。

「……またな」

戦兎はそれだけ言い、私の元へ戻ってくる。
ひとまずこれで一段落したと思ったが、肝心な事を忘れていた。街に轟く邪龍と思われる咆哮。それを確かめるべく向かっていた時に邪魔されていたのだ。

「急がないと…!」

「それは不要みたいです、先輩」

「えっ?」

マシュがそう言ったと同時に目の前に降り立つ龍。
その龍のうえには黒ジャンヌが立っている。本人自らやって来て地面に降り立ったという事はようやく本気になったという事だろう。とりあえず龍はジークフリートに任せた方が良さそうだ。ダメージは与えられても倒すのは彼しか出来ない筈。

「ラストバトル、かな」

「気を引き締めて行きましょう、先輩」

そう誓い合い、目の前に居る一人と一匹に向かって走る。戦兎はジークフリートと共に邪龍を、私達は黒ジャンヌを担当する事になった。とはいえ主力がこちらに居ないのは心細いが、それは仕方ないだろう。戦兎も何か考えがあるらしい。早々に終わらせてくれる筈。

立香saidout



戦兎said

邪龍を前にしたのはいいとして、どうやって足止めするかだ。邪龍じゃないが巨大な龍を相手に俺が出来たのはゴリラモンドのボルテック・フィニッシュでかろうじて転倒させただけだ。かといってジークフリートにだけ無理をさせる訳にも行かない。

「俺は奴の気を引く。ジークフリート、アンタはその隙に止めを頼む」

「分かった。危ないと思ったらすぐに下がれ」

「分かってますよっと」

変身する暇はない。とりあえずホークガトリンガーで牽制しつつこちらに気を引く。鱗に当たっても大したダメージにはならない為、積極的に眼を狙い、怒りの矛先を俺に向けさせる他ない。

「向こうでもこんなデカい敵相手にしてたなぁ…」

なんてボヤきながらジークフリートの様子を伺う。
集中している為か、周りが見えていないようだ。時折放たれる火球はホークガトリンガーでなんとか撃ち落とす。目くらましに煙幕を張り、ニンニンコミックに変身しておきたい所だ。分身の術で何人かに分かれれば立香達に戦力を回せる。そんな事を考えている内にジークフリートの魔力がオーラとなって剣に宿るのが見えた。

「戦兎。こちらは大丈夫だ!」

「よっしゃ!」

俺が離れると同時に邪龍を襲う光の束。
それは邪龍を真っ二つにし、中身が見えた。思わず顔を背けるものの、空のボトルを向ける。邪龍の成分の一部が吸い込まれ、空のボトルが満たされると、瞬時に変化を起こした。何も描かれていなかったボトルに龍の絵柄が浮き出る。ドラゴンフルボトルの完成だ。

「よっし、立香達を助けよう」

出来たばかりのドラゴンフルボトルを手に、立香達の元へ向かう。

戦兎saidout



立香said

黒ジャンヌの攻撃は一発が重い。ジャンヌも彼女の攻撃に手酷くやられ、今は後ろに下がっている。
マシュだけにやらせる訳にも行かない。私もガンドとかでサポートする。

「こんなものね。弱い事」

「くぅっ…!」

私がやられたら元も子もない為、眺めている他なく、時々放つガンドもあっさり跳ね返される。
そんな時、戦兎の声が私の耳に届いた。それと同時にドリルクラッシャーが手元に投げ渡される。それを扱えとの事だった。初めて持つそれを見様見真似でモード変更し、黒ジャンヌに向けて撃つ。

「なっ…?!」

「痛いわね…!」

効いたようだ。怒りの矛先を私に向け、炎を放つ黒ジャンヌ。だけど、その炎が私に届く筈もない。
何故なら、目の前にビルドが立っているからだ。まだ誰も知らない新しい力をその身に宿して。

「お疲れ様、立香ちゃん。後は任せて下がって」

「うん」

この背中を見ただけで落ち着く私が居た。

立香saidout



戦兎said

走りながらドラゴンフルボトルとタンクフルボトルを振ってからベルトに装填、レバーを回して装甲を装着する。

「よっと…」

ドラゴンの右手で立香に放たれた炎を吸収し、自らの力に変える。万丈の持つフルボトルとは違い、邪龍製のフルボトルは暴走するどころか自分に馴染むようになっていた。コレなら大丈夫だと確信し、黒ジャンヌに向かって走る。

「来たわね…!」

「嗚呼、来てやった」

振り下ろされる旗をタンクの左腕で防ぎ、ドラゴンの右手で炎を纏った拳を叩き込む。よろめいた隙を狙い、タンクをガトリングに入れ替え、ホークガトリンガーを手にする。ドラゴンの力を弾丸に纏わせ、簡単に防げない弾幕を張った。

「ちっ、やるわね…」

「当たり前だよっと。寧ろ対策とかしなかったのが不思議だね、俺は」

「はっ、私がそんな事する訳ないじゃない。私が勝つんだから!」

黒ジャンヌから高熱の炎が吹き出る。そんな使い方があるのかと数歩だけ距離を取る。その隙を狙われたのか、横薙ぎに旗が迫っていた。右手で掴み、逆に振り回す。

「きゃああああ?!」

「悪いね、我慢しろよ!」

そのまま地面に叩きつけ、動きを鈍らせたところで気づく。黒ジャンヌの後ろに誰かが居る事を。ホークガトリンガーで弾丸を放ち、近くの柱に命中させると、引き攣った悲鳴が聞こえ、誰かが飛び出てきた。青白い肌に奇妙な衣装、手に持つ本を見た限りだとキャスターだろうか?

「おお、ジャンヌよ…なんという姿に…」

「うっさいわね、ジル…引っ込んでなさい!」

ジル。もしかしたらジル・ド・レだろうか?
コイツが黒幕といっても十分有り得る。ひとまず黒ジャンヌの元へ行き、無理矢理立たせる。どうやら抵抗の意志はさっきので薄れてしまったようだ。これ以上傷つける訳にも行かない。とりあえず端っこまで連れていって座らせた。

「何してるのよ、アンタ。止めを刺す絶好のチャンスじゃない」

「こう見えて平和主義なんだよ、俺。無抵抗の人をいたぶる程、落ちぶれちゃいないんでね」

それだけ言い残し、ジルと呼ばれた人物の元へ。
幾つか質問し、返答次第では殴り飛ばす思いでいた。それはないと思いたいが。

「さて、アンタには質問したい。"この事件の黒幕はアンタだな?"」

「もうお分かりになられたんですか。流石は天才物理学者ですね?」

「そこの黒ジャンヌの様子で一目瞭然だよ。重ねて質問だ。"彼女を造ったのはお前だな?ジル・ド・レ"」

確信をついたのだろう。ジル・ド・レは歪んだ笑みを浮かべながら高笑いを繰り返す。一段落したところで話し始めた。既に殴り飛ばす準備はしてある。

「そうですよ。私が彼女を造りました!聖杯に願っ─「黙れ。このクズが」ぐはぁ?!」

言い終わる前に渾身の右ストレートを溝落に叩き込む。
そのまま遥か遠くまで吹っ飛ばした。勿論、核は砕いてある。途中で消滅している事だろう。

「──命を弄ぶんじゃねぇよ」

吐き捨てるように言い捨て、変身を解除する。何はともあれ元凶だった奴をぶっ飛ばした。後は聖杯を回収するだけだ。すると、黒ジャンヌが俺に聖杯を差し出す。彼女の身体は透けていた。消滅間近、と言った所だろう。

「……いいのか?」

「いいの。私は所詮聖女様の贋作。でも、貴方はちゃんと私と向き合ってくれた。コレはそのお礼よ。ありがとう」

「お礼なんかいいんだよ。俺は只の平和主義な天才物理学者だ。お礼を言うなら立香ちゃんに言った方がいい」

そう言い、遠くで見守っていた立香達に手を振る。
足元から光が漏れだしているという事は、カルデアに戻る頃合、という事だろう。黒ジャンヌに手を振り、退去の準備に入った。

『お疲れ様、立香ちゃん、マシュ、戦兎くん。コレでオルレアンは元の歴史に戻るだろう。最初のグランドオーダーは無事完了、だね』

その言葉を最後に、身体が宙に舞う感覚を覚えて、次に意識は闇に沈む……
































次に目を覚ますと、見馴れた天井が見える。
どうやら帰ってこれたようだ。上半身を起こし、辺りを見回したと同時に目が点になる。人影があり、その人物が俺に衝撃を与えたからだ。

「……なんで、居るんだよ?!」

「不思議な事もあるものね?戦兎」

そこにいたのは、あの時消滅したと思われた彼女だった。そう、黒ジャンヌが。彼女曰く、契約を結んだから此処に居るとの事。一体誰と、と思ったその時だ。恐る恐る右手を見やれば、立香と同じようなもの、令呪が刻まれていた。それを見た時、又もや目が点になる。

「もしかして、俺と…なのか?」

「そうみたいね?」

「最っ悪だ…」

その呟きは、誰にも聞こえずに消えていった。



ネタ詰め込み過ぎた…
という訳でオルレアン編。完結となります

さて、次はローマ、セプテム編です。
それでは次回をお楽しみに…


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