神様転生なんて糞だろう ~ハイスクールA×M (グレン×グレン)
しおりを挟む

プロローグ1 英雄を目指すものはその時点で英雄失格って平成ライダーのセリフらしいよ?

連載とはしていますが、あくまで実験作です。


 神様転生。そんな言葉を聞いたものはいくらでもいるだろう。

 

 ある人物が、トラックにはねられる。

 

 そしてよくわからない空間で、トラックにはねられる。

 

 話を聞いてみると、その時女の子を助けたのに感動したとか、実はそれは間違った運命だったとかいう話になる。

 

 んでもってお詫びとして、創作物の世界に何らかの特典付きで転生させてくれるという。

 

 ……まさか全部当てはまるとか、この李白の目をもってしてもうんたらかんたら。

 

 とにかく、俺はある作品の世界に転生することになった。

 

 その作品は、ハイスクールD×D。ちなみに俺はアニメを第三期まで視聴したことがある程度の知識だ。

 

 そして、俺は速攻で特典として求めた物がある。

 

 ……英雄になれるようにしてください。具体的には超強い神器(セイクリッド・ギア)とか。

 

 まあ定番といえば定番の展開だが、しかし考えても見てほしい。

 

 ハイスクールD×Dは、インフレが激しい。

 

 ちょっと強い方なだけの下っ端の堕天使とその使いっパシリとの小競り合いから始まるが、半年もたたずに北欧神話の神の一人であるロキと戦うことになるのだ。それもフェンリルと一緒に出てくるという展開。

 

 北欧神話のロキとかフェンリルってのは、そういうのに詳しくない俺でも名前を聞いたことがある有名どころだ。なにより神だ。マジモンの神様だ。

 

 細かすぎる時系列は説明されてないが、確か四月の最初の方から始まり、八月の最期の方で神様だ。

 

 ……インフレ何てものじゃねえ!!

 

 そして神様転生には一つのテンプレがある。

 

 たいてい、主人公たちに深くかかわることになる。

 

 そう、そんなことになれば俺は間違いなく神と戦争することになるのだ。

 

 自慢じゃないが俺は普通の高校生だった。

 

 趣味は登山で部活も登山部というわかりやすいもの。できればいい生活が送りたいので授業は真面目に聞いていたが予習復習は一日平均三十分。成績は中の上でバレンタインのチョコレートは家族以外にもらったことがない。喧嘩もしたことはあるが勝率は五割程度。あと捨てられてたエロ本を持って帰ってお袋に説教されたことがある。

 

 成績がちょっといいだけの普通の高校生だろ? じぶんでいうのもなんだけど、顔も地味だったと自負している。

 

 そんな俺がそんなインフレ世界に巻き込まれて、生き残れるわけがない。

 

 何ていったっけ、神滅具(ロンギヌス)? あれぐらいはないと不安で衰弱死してしまう。

 

「OK! それならちょうどいいタイミングで余ってるのがあるから、それにしてあげるよ!! ある程度の説明と使い方も頭に叩き込んであげるからね?」

 

 そう、気前よく神様はOKを出してくれた。

 

 よっしゃ!! 主人公が使う赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)もいいけど、あれは主人公である兵藤一誠が使うからあそこまでできた気もするしな。デメリットもあるし別物がいい。

 

「使いこなせば汎用性は抜群だから、できればぜひ使いこなしてくれ!! そう、最初っから使って練習するんだよ? 生まれ持った知識も最大限に使ってね?」

 

「はい!! ありがとう神さま!!」

 

 アドバイスまでくれるなんて、この神様はすごいいい人だ!! 俺はマジで感謝した。

 

 ああ、俺は最初っから頑張って見せる!! そしてイッセー達とともに生き残るんだ!!

 

 インフレ業界も乗り越えて見せる。そして、最上級悪魔になってハーレム作るってのもいいかもなぁ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………………………そう、考えてた時もありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ」

 

 俺は目を覚ますと、伸びをする。

 

 ……割と強めに雨が降っている。そのせいで体が濡れていた。

 

 しまった。こんなことなら木の下のベンチで寝ればよかった。うかつだったな。

 

 そんなことを思いながら、俺はベンチから起き上がる。

 

 そこは、ただの公園だった。

 

 そして、俺は昨日のうちに買っておいた菓子パンを食べて朝飯にすると、立ち上がった。

 

「さて、今日は何処で芸をするかな」

 

 ……神様の言う通り、俺は記憶を取り戻した直後から神器の練習を始めた。

 

 さすがに人間世界には知られていないのが神器なので、それは親に隠れてだったが、それ以外は普通にやっていた。

 

 毎日走り込みをして、図書館に行って勉強も行った。

 

 幸い生まれた国は日本。両親は外国出身だったが日本が気に入って帰化した外国人だ。

 

 なんというか、この絶妙な特殊っぷりがかえって主人公っぽいからうれしかった。

 

 だから、さらに頑張って練習した。

 

 小学校では常に百点を取り、毎日運動していたから運動会でも一位を連発。

 

 しかし、そこから少し変だった。

 

 机を落書きされることがいっぱいあったんだ。

 

 まあ、そこは中身はすでに大学卒業レベル。ビデオカメラを親にプレゼントとして購入してもらって、それをこっそり仕掛けて犯人を突き止めてホームルームで盛大にばらして懲らしめてからはなくなった。

 

 そして、中学を卒業したその日の夜。

 

 俺は、家族に呼び出されると泣いて土下座された。

 

 ……俺が怖くてたまらない。生活費は出すから家を出て過ごしてほしい、と。

 

 今冷静に考えれば、よくわかることではある。

 

 反抗期なんてとっくに過ぎた俺は、親の言うことをよく聞いたし、間違っているところはきちんと反論した。

 

 あほなことやっても意味がないとわかっていたので、模範生徒の基本といってもいい完璧超人だった。

 

 それもこれも、来るべきD×D本編が始まったときに備えてだ。

 

 ……それが、周りの人たちには恐ろしくてたまらなかったようだ。

 

 そして、俺は家を出ると放浪の旅を始めた。

 

 なんというか、思い知ったよ。

 

 俺は英雄になろうと思ったけれど、それは間違いだった。

 

 ……どっかの特撮でこんなセリフがあった。英雄を目指すものはその時点で英雄失格。

 

 調子に乗って英雄になることも心のどこかで考えていた俺は、人間に迫害された。

 

 思えば、教師も俺のことを褒めてはいるけど、踏み込んだりはしなかった。

 

 それで俺は心が折れた。

 

 どうせラノベ原作のアニメなんて、主人公が勝利してハッピーエンドと相場が決まってるんだ。だから俺がいなくても何の問題もないだろう。

 

 ちょっと調べたところだと、神滅具は全部ハイスクールD×Dで詳細が出るわけではないらしい。神様もそんなところから拝借したんだろう。

 

 神様はちゃんと俺にアドバイスしてくれたんだろうけど、神様だから人間の心の機微に疎かったんだろう。

 

 いや、英雄になるような人間は、産まれからして特別なんだ。

 

 特別な親の元生まれ、特別な環境ではぐくまれ、特別な精神を持つ。そんな奴でなければ英雄にはなれないんだろう。

 

 ……俺は、兵藤一誠の仲間たちになる資格はない。

 

 気づけばもう夜だった。

 

 俺は、生活費をもらいながら流浪の旅をしている。

 

 これ以上家族に迷惑をかけたくないから、俺は自力で日銭も稼いでいる。全部断るとそれこそ怖がられそうだったからだ。

 

 幸いもらった神滅具はそういうのに使えるので、旅の手品師として目立ちすぎないようにしながらこうして旅を続けていた。

 

 ……次の寝床を探さないとな。俺はまだ高校二年生の年齢だから、こういう時ネットカフェが使えないのが残念だ。

 

 そんな風に思いながら歩いていると、交番の掲示板が目に入る。

 

 警察に職務質問を受けると面倒だ。また両親に迷惑がかかる。

 

 だから引き返そうとした瞬間、ある文字と写真が写った。

 

 ……行方不明の少年を探す掲示板だった。

 

 そして、そこに書かれていた名前を俺は見た。

 

「ひょうどう、いっせい?」

 

 その瞬間、俺はようやく当たり前の現実を思い知った。

 

 そう、俺が神滅具を宿したことで、当然この神滅具を持つはずだった継承者も変わっている。

 

 いわゆるバタフライエフェクトというやつだ。

 

 そう。あまりに単純なことだった。

 

 俺という異物がいる時点で、この世界は本来のハイスクールD×Dじゃない。

 

 俺は、速攻でスマートフォンを取り出すと、駒王学園の位置を調べた。

 

 もう夏服のシーズンに入って何日もたつ。

 

 このままだと、駒王町は滅ぶかもしれない!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あたし、シェリージュ・バエルは今、人生で二番目に最悪な事態に陥っていた。

 

 そして、その事態は人生で一番の最悪の事態に陥りかねないことも分かっていた。

 

 一度目は、家族と眷属を一斉に失った時だ。

 

 そして、こんども新しい家族が全滅するかもしれない。それどころか、自分の命も消え失せるかもしれないのだ。

 

「お、俺が……フェニックス家三男の、この俺が……っ」

 

 全身のところどころから小さな火を漏らしながら、私の主の夫であるライザー・フェニックスが倒れ伏す。

 

 すでに彼の眷属は全員が死にかけており、このままでは私たちは全員死ぬだろう。それほどまでに緊急事態だった。

 

「コカビエル……っ!! させないわよ、この駒王町を、あなたの思い通りには決してさせないわ!!」

 

 全身から血を流しながら、私の主であるリアス・グレモリーは吠える。

 

 現四大魔王、サーゼクス・ルシファーの妹。72柱が一つ、グレモリー家の次期当主。そしてライザー・フェニックスと婚姻した既婚者。

 

 それらすべてを支えとして、あたしの主は立ち上がる。

 

 ……きっかけは数日前、教会から二人の聖剣使いが来た時だ。

 

 大戦期に七つに分割された聖剣エクスカリバー。教会が保管しているそのうち六本のそのまた三つが、堕天使の最高幹部であるコカビエルに奪われた。

 

 そして、そのコカビエルがここにきているが手を出すなというのが彼女たちの要求だった。

 

 姫様は割と切れかけたけどそれを了承した。そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()私達はそのまま見送った。

 

 姫様は兄たちを困らせたくないとこの件を黙っておくつもりだったけど、とりあえずゲンコツを入れてことが大きく動く前に対策出来なかったらそれこそ困ると言い聞かせて連絡を入れさせた。

 

 そして部隊が編成されてあと二時間で到着するという時に、コカビエルは()()のエクスカリバーを持ったフリードとかいうやつを引き連れて宣戦布告をしに来た。

 

 悪魔、堕天使、天使と教会。その三つの勢力の冷戦状態を、堕天使の幹部である自分が教会の至宝であるエクスカリバーを使って魔王の妹である姫様を殺すという大イベントで行おうと考えたのだ。

 

 そして私たちは、実はデュランダルを持っていた教会の戦士の一人であるゼノヴィアと協力して戦ったが、その際コカビエルが聖書の神の死を暴露したのだ。

 

 そのせいで、この中で唯一対抗できそうなデュランダルの使い手が戦闘不能。婚約早々別居しているとはいえ妻であり姫様のようすを見るために先に派遣されていたライザーも、眷属もろとも遊び半分で戦闘不能にされている。

 

 ……だめだ。このままじゃ、全員全滅する。

 

「吠えるのはいいが、貴様では無理だ。サーゼクスに手土産として、お前の首を用意しないといけないんでな。さあ……死ね」

 

 その言葉とともに、コカビエルは光の剣を振りかぶる。

 

 もうあたしたちも動けるものは誰もおらず、このまま姫様の首が堕ちるのを待つのみ。

 

 その時、足音が響いた。

 

「……嫌な予感は正解か」

 

 その言葉とともに、あたしの頭上を飛び越えて、いくつもの魚みたいなものが飛んでいった。

 

 そして、それがコカビエルに触れた瞬間、爆発した。

 

「ぬぅ!? 伏兵か!!」

 

 コカビエルはとっさに後退し、そしてその瞬間に割って入る影があった。

 

 それは黒い衣をまとった人だった。

 

 そして、魚のようなものを射出して迎撃しながら、コカビエルに鋭い視線を向ける。

 

「……覚悟はいいか、コカビエル。俺はできてるぞ」

 

 その声色からして、声の主は少年だろう。

 

 なんというか、劇的な言葉をするならば―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―その日、私は運命に出会った。

 




ある意味アンチ・神様転生。

自分の神様転生があるハイスクールD×D作品に対する不満を爆発させるために、この作品はあります。

其のため、普通の神様転生だと思っていると痛い目を見ますよ?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

いきなり殺し合いに巻き込まれてかっこよく決めるとか普通は無理。

 危ねぇええええええええ!!! マジでアブねぇええええええ!!!

 

 兵藤一誠が中学生の時点で行方不明とか、バタフライエフェクトにもほどがあるだろうが!!

 

 これ、俺が転生したことで生まれる影響はすごいことになってるぞ!?

 

 考えただけで上げられる影響。

 

1 アーシア・アルジェントが助からないので、グレモリー眷属デスモード確定

 

2 赤龍帝がいないので、リアス・グレモリーとライザーの結婚が確定。

 

 ……うん、これだけでもどんどん変わっていきそうな展開だよ!!

 

 そ、そのくせコカビエルのせいでリアス・グレモリーが死んだなんてことになったら、三大勢力の戦争が本当に勃発しかねない!!

 

 危ない!! 本当に危なかった!!

 

「コカビエルこのクソ野郎!! お前ただでさえこの世界はどんどん戦いが起きるのに、なんでこんなタイミングで戦争起こそうとしてんだよクソッタレが!!」

 

 俺は指を突き付けて怒鳴り散らす。

 

「何を言っている? どこもかしこもにらみ合いと小競り合い。そんなつまらん者が戦いだとでも本気で思っているのか?」

 

 コカビエルはあきれ果てて俺を見る。

 

 ……あ、これヴァンパイア編からの展開だった。いけね!!

 

「そ、そそそそれはともかく!! お前の好きにはさせないぞ、コカビエル!!」

 

 俺はそういってごまかすと、一気に殴り掛かる。

 

 それをコカビエルは翼を展開して迎撃するが、衝撃が鳴り響いて轟音とともに弾き飛ばした。

 

 ……ちょっと前まで一生懸命練習した、神滅具の名前は魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)

 

 ぼくのかんがえたさいきょうのもんすたーを生み出す能力。しかも、()()なら自分の意志で動いてくれるという優れモノだ。

 

 しかし、神は俺に魔獣創造を与えてくれてもそれを使いこなす才能は与えてくれなかった。

 

 イメージに合わせて魔獣を生み出すことそのものはそこそこできているのだ。しかしそこに自意識を与えることが困難だった。

 

 そのせいで、手品と称した人形型の魔獣を動かすのも結構大変だったのだ。おかげで日銭を稼ぐのが普通で、一日に何万円も稼ぐなんてまねはできない。

 

 だが、だからこそ戦闘用の魔獣の開発は急務だった。

 

 いつ襲われるかわからない以上、戦闘技術を習得することは必要不可欠だ。なにせこの世界、強力な神器を使いこなせない場合、殺されたりするからね!!

 

 うん、自分が持ってない場合は仕方ないけど当然だよねって流せるけど、いざ自分がそうなる立場になるとマジでキツイ!!

 

 だから、発想を逆転させた。

 

 自立意識を与えて操作するのが困難ならば、単純な機能を行使する程度の意識で済ませればいい。

 

 その回答の一つが、このスライム型魔獣マークメイル。

 

 俺の前身にまとわりつかせることによって、俺が戦うための強化外骨格として運用するための魔獣だ。

 

 自立意識を持たせられないのを逆手にとって、大量生産する余剰を切り詰めた結果、半端な神器の禁手なんて相手にもならない性能を発揮する。

 

 さあ、相手をしてもらおうか、コカビエル!!

 

 初めての実戦だからもう何が何だかわからないが、それでもわかることは一つだけある。

 

 ここでこいつをのさばらせてたら、誰か一人ぐらい死んでもおかしくない。

 

 なぜか知らないけどヴァーリ・ルシファーはまだ動かないし、こうなったら俺がやるしかない!!

 

「うぉおおおおお!!!」

 

「ほぅ?」

 

 フルパワーで殴り掛かり、コカビエルはそれを受け止める。

 

 そして、自分でも驚くぐらいの爆発音が響き渡り、周囲の地面が陥没した。

 

 おお、なんだこのドラゴン〇ール

 

「実戦経験はゼロ。鍛錬は外見年齢相応よりはるかに上。そして膂力は俺以上。……貴様、神滅具の使い手だな?」

 

 まずいな、今ので勘付かれた。

 

 そう、俺はたぶんコカビエルには勝てない。

 

 まず人を殺す覚悟何てできてない。コカビエルは人間じゃなくて堕天使だが、人間そっくりだからここでまず躓く。

 

 次に戦闘経験が全く足りてない。格闘技の訓練もしっかり詰んでるけど、だからといって歴戦の戦士を返り討ちにできるような実戦経験何て積んでない。

 

 そしてコカビエルは経験が豊富。原作ではヴァーリに返り討ちになったけど、あれはたぶん相手が悪いだろう。

 

 何よりも、今の不意打ちでそれらすべてに気づかれた節がある。

 

 このままでは負ける。確実に負ける。

 

 ………仕方がないから最終手段だ!!

 

「………コカビエル。ここだけの話がある」

 

「あ? なんだ?」

 

 俺は小声でこっそりと、コカビエルの耳にだけ聞こえるように告げる。

 

「……白龍皇達が来てる。お前を連れ戻すようにアザゼルに言われてな」

 

「っ!」

 

 よし、反応したな。

 

「バカげたことを。貴様がなぜそのことを―」

 

「現白龍皇の名前はヴァーリ・ルシファー。それは知っているな」

 

 これに関してはかなり重要な機密事項なはずだ。少なくとも、アニメではサーゼクス・ルシファーや熾天使ミカエルも驚いていたレベルだったから間違いないだろう。

 

 それを切れば、もしかしたら信じてくれるかもしれない。

 

「………アザゼルの奴、そこまでして戦争がしたくないか!!」

 

 コカビエルは激昂するけど、すぐに冷静さを取り戻したのかため息をつくと飛び上がる。

 

「撤収するぞ、バルパー。この作戦は失敗だ」

 

「な、ふざけるな!! それでは教会に対する復讐はどうなる!!」

 

「ここで白龍皇の奴に介入されれば、堕天使の問題を堕天使が解決しただけになる!! どちらにしてもこの方法では戦争は起こせん!!」

 

 狼狽するバルパーらしき男を一喝して、コカビエルは歯ぎしりする。

 

 ああ、ここで堕天使側が積極的に事態を解決しようとすれば、きっと多分おそらく戦争は避けれるはず。実際さけれたし。

 

 だからお願いだからそろそろ帰ってくれないでしょうか! このままだと殺されかねないからぁああああああ!!!

 

「安心しろ、バルパー。こうなればもう一つの手段を使うだけだ。………アザゼルめ。まさか俺だけだとは思ってないだろうが、ここまでは果たして予想できているかな?」

 

 そういうと、バルパーは倒れてる白髪の……フリットだったっけ? とバルパーを抱えると飛び上がる。

 

「運がよかったなグレモリー。その男の情報網に感謝しろ。もっとも、一時の幸運でしかないだろうがなぁ!!!」

 

 その言葉とともに、バルパーは飛び去って行った。

 

 と、とりあえず……あとはヴァーリ・ルシファーが発見してとっつ構えてくれることを祈るとしようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、これからどうしたもんかね。

 

「とりあえず、あんたら大丈夫?」

 

「ああ、あたしは大丈夫さ。助かったよ」

 

 そういって返答するのは、金髪に赤のメッシュを入れた女性。

 

 こんな人、アニメにはいなかったけどたぶんこれもバタフライエフェクトだろう。気にしない気にしない。

 

「ああ、そりゃよかったよ。それで、アンタは?」

 

「ああ、あたしはシェリージュ・バエル。リアス・グレモリーの兵士(ポーン)をやってる」

 

 ああ、やっぱり原作とかなり変わってる。なんだこのバタフライエフェクト。

 

 っていうかイッセー生きてるのか? この調子だと、どこかの勢力の誘拐されたっていう線が濃いんだけど。

 

「……そして、私が彼女の主のリアス・グレモリーよ」

 

 多少ふらつきながら、リアス・グレモリーが立ち上がると俺に右手を差し出す。

 

「ありがとう。おかげでコカビエルを追い払えたわ。あなたがいなければ何人死んでいたことか」

 

「ハヤルト・ジークンダルです。こんな名前ですけど日本生まれの日本育ちなんで、以後よろしく」

 

 俺はさらりとそういうけど、しかし結構呼吸が大変だったりする。

 

 色んな意味でイレギュラーだらけの状況に、心臓がバクバクで息が詰まりそうだ。

 

 っていうか、俺の近くでライザー・フェニックスが死にかけているんだけどどうしたもんか。

 

 とりあえず違和感があるので周囲を確認。

 

 兵藤一誠とアーシア・アルジェントがいないのはわかりきっていた。そして、さらに問題が一つ。

 

 ……木場祐斗がいない。おそらくは―

 

「あの、貴方の眷属悪魔って、これで全員ですか?」

 

「……? ええ、女王の姫島朱乃に戦車の塔城小猫、そして兵士六駒のシェリージュ・バエル、そしてここにいない僧侶の子で全員よ?」

 

 なんでそんなことを聞くんだろうといった顔で、リアスは首をかしげる。

 

 そしてさらに口を開こうとしたが、それより早くシェリージュが、割って入る。

 

「ちょっと待った。助けてもらってこんなこと聞くのもなんだけど、そもそもあんたは何者?」

 

「………以前悪魔を興味本位で召喚して、特に願いを決めてなかったから業界についての話を聞いたことがあるんだ。今はちょっと根無し草だけど、なんか明らかにヤバイのが出てきたから様子を見に来たらあれだったんで、義憤に駆られて介入を」

 

 自分でも無理があるけど「この世界が創作物の世界の記憶があります」だなんて言っても信じてもらえるわけがない。

 

 いや、この世界の二次創作物でも定番の一つだけど、それでも……ねえ?

 

「……姫様、どうしますか? 仮にも恩人である以上、むげに扱うのもどうかとは思うんですが、彼、怪しすぎますよ?」

 

 シェリージュとか言った人が、割と本気で警戒心を見せてくる。

 

 ま、街ごと吹き飛ぶ可能性とかリアス・グレモリーが死ぬ可能性とかを考慮すると介入するしかなかったけど、やっぱこれまずかったか?

 

 場合によっては全力逃走も考えた方がいいかもしれない。っていうかあのまま逃げた方がよかったか?

 

 いや、でもこの街の人たち全員を見捨てるのはさすがに後味が悪すぎたしなぁ。

 

 俺がなんか嫌な予感を感じて逃げ腰になる中、リアス・グレモリーは少し考えたがやがて小さくうなづいた。

 

「……朱乃、とりあえずもてなしのお茶の用意をして頂戴。ハヤルト君だったかしら? 疲れたでしょうし休んでいきなさい」

 

 ………へ?

 

「姫様、いいんですか? 彼、はっきり言って怪しすぎますよ?」

 

「別に構わないわ。確かに警戒するべき点は多いけれど、コカビエルをわざわざ敵に回してまで私達を助けた以上、今積極的に敵対したいわけでもないでしょうしね。……それに、これを餌に魔王様に取り入ろうとしても限度があるもの」

 

 い、意外と冷静だなこの人。やっぱり優秀だよリアス・グレモリー。

 

 と、俺が内心でほっとしたその時、鋭い視線が突き刺さった。

 

「もっとも、ここで増援の魔王さまたちに逃げるようなら私たちは命がけで足止めする必要があるでしょうけどね」

 

「肝に命じときます!!」

 

 怖いよぉおおおおお!!!

 




冷静に考えれば怪しい以外の何物でもないハヤルト君。当然感謝はされても警戒もされます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。