ソードアート・オンライン 黒の剣士と紅の剣舞士 二人の双剣使い (ソーナ)
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EXストーリー
EX編 〈召集〉


 

 

 

「ここは何処だ?」

 

「う~ん、わからないよ」

 

キリトとレインは急に変わっていた風景と場所に戸惑いと疑問を出していた。

 

「確か俺たちアリスから手紙を貰って・・・・・・」

 

「確か、急に光に包まれたんだよ私たち」

 

キリトとレインはここに来る前のことを思い出した。

キリトとレインは、アリスから受け取ったある手紙を開いてここに来たのだ。

 

「他のみんなは何処だろう?」

 

レインが辺りを見渡して言う。

すると、

 

「キリトくん、お姉ちゃん」

 

「お兄ちゃん、レインさん」

 

キリトとレインの後ろから、声が聞こえてきた。

二人が後ろを向くとそこには、

 

「スグ!」

 

「七色!」

 

キリトこと和人の義妹、直葉ことリーファと、レインこと虹架の妹、七色ことセブンがいた。

 

「二人もやっぱり来ていたんだな」

 

「ええ。他にもアスナちゃんやスメラギくんもいるわよ」

 

セブンがそう言うと、リーファとセブンが通ってきたらしい道から、アスナとユウキを先頭にラン、ラム、リーザ、シノン、シリカ、リズ、エギル、フィリア、クライン、ストレア、ルクス、アルゴ、スメラギ、ユイが入ってきた。

全員、武器は装備してないが服装は何時もと同じくだった。

SAOの服装をしてるのはキリト、レイン、アスナ、ユウキ、ラン、リーザ、ラム、シリカ、リズ、シノン、リーファ、エギル、クライン、フィリア、ストレア、アルゴ、ルクス。

ALOの服装をしてるのはセブン、スメラギだけだ。

ユイは何時もの白いワンピースを着ている。

 

「こうしてみるとほぼSAO生還者ばかりだな」

 

キリトがそう言う。

 

「アハハ、確かに」

 

「すみません、遅くなりました」

 

「ごめんみんな、遅くなったよ」

 

レインが苦笑でキリトの言葉に返すのと同時に、新たに二人の声が聴こえてきた。

 

「ユージオ!」

 

「アリスちゃん!」

 

新たに聴こえた声の主はアンダーワールド、北セントリア修剣学院の青い上級修剣士の制服を着たユージオと整合騎士の鎧を着たアリスだ。

 

「やあ、キリト、レインさん」

 

「よっ。ユージオも呼ばれたのか?」

 

「うん。後、ロニエやティーゼ、ソルティリーナ先輩もね」

 

ユージオがいうと、二人の通ってきた道から3人の女性が出てくる。

 

「「こんにちはキリト先輩!」」

 

「キリト、君も呼ばれていたのだな」

 

「やっ、ロニエ、ティーゼ。リーナ先輩も呼ばれていたんですね」

 

「私らはユージオくんに呼ばれてな」

 

「僕はアリスに手伝ってティーゼたちを呼んだんだよキリト」

 

「なるほどな。ところでユージオ、これ何で呼ばれたかわかるか?」

 

「まあ、アリスから聞いているよ」

 

「アリスから?」

 

「うん。あ、でも僕からは言わないよ」

 

「なんでだ?」

 

「言ったらサプライズにならないでしょ」

 

「サプライズ?」

 

「みたいだよ」

 

キリトはユージオの説明に首をかしげ考える。

そこへ。

 

「久しぶりだなキリト」

 

「スメラギ。お前も来ているとはな」

 

「まあな。俺とセブンのところに同じ手紙が届いてな開けたらいつの間にかここにいた、という感じだ」

 

「俺たちと同じか。違うと言えば俺とレインはアリスから渡されたんだよな」

 

「それでだキリト。これが終わったら俺とデュエルしろ」

 

「いいぜ。もちろん受けてやるよ」

 

「ふっ、ではな」

 

スメラギはキリトにそう言うとエギルとクラインのところへ向かった。

 

「にしても女子が多くない?」

 

「まあ・・・・・・確かに」

 

ユージオの言った通り、この場の男子はキリト、ユージオ、スメラギ、ラム、エギル、クラインのみだ。それ以外は全員女子。

女子は女子で固まって談義を、男子は男子でなにかを話している。

そして15分後。

 

 

"ギィー―――――――ガタン!"

 

 

キリトたちのいる広間にある、黒と紅で色飾った大きな扉が開いた。

 

「進めということか?」

 

「多分そうじゃないかな?」

 

「どうするのキリト?」

 

悩んでいるところに、

 

 

『お集まりの皆様、お待たせいたしました。扉の奥へとお進みください』

 

 

とアナウンスが流れる。

 

「それじゃあ、行きますか」

 

キリトの後に続いて全員が光の溢れる扉の中へと入っていった。



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EX編 〈HAPPY NEW YEAR!〉

新年最初の投稿です。
楽しんで頂けたら嬉しいです。
それではどうぞ!


キリトたちが扉の奥に進むと。

 

「うわぁ~、綺麗な場所だね」

 

「ああ」

 

「キリトくん、かなり広いね」

 

「そうだな」

 

キリトたちがそう呟くと、

 

 

 

「広いホールだね。何人入れるんだろう?」

 

「《星武祭(フェスタ)》のメインステージの観客席ぐらいじゃないかな?」

 

「・・・・・・幻想的な場所ね」

 

 

 

「すごい場所ですね兄様、姉様」

 

「うん。扉の奥がこうなっているなんて・・・・・・」

 

「フフフ。零華ちゃん眼が輝いているよ――――――って、それはことりちゃんたちもだね」

 

 

 

「広い場所ねサトシ・・・・・・」

 

「ああ。前に行ったことのあるオルドラン城の広間ににているな」

 

「ピーカチュー」

 

 

 

ホールの四隅からそんな声がキリトたちの耳にはいる。

キリトたちは声が聞こえてきた場所をみる。

そこには自分達と同年代と思わしき少年少女たちがいた。

キリトたちから左側にいる一団はどこかの学校の白の制服や黒の制服、臼ピンクの制服を着て。

左前側の一団は、同じくどこかの学校の制服を着ていた。だが、その一団の内三人の少女は白い同じ制服を、そして、九人の少女は紺色のブレザーとチェックのスカートを着て、残りの少年少女たちは同じブレザーを着て男子は青のズボンを女子はワインレッドのスカートを着て男子はズボンと、女子はスカートと同じ色の短めのネクタイをしていた。

そして、目の前の一団は私服らしい。そして一番前の少年の肩には黄色い鼠?らしきものがいた。

すると。

 

 

 

「ヤッホー、みんな~!」

 

『『『『『『『『ソーナ(さん)!!?』』』』』』』』

 

「みんな、今日は集まってくれてありがとう!」

 

「いや、それは構わないんだが。いや、まあ、構わなくわないが・・・・・・・・。それよりここは何処なんだソーナ?」

 

「ここは、私の居城≪クランテュネス・アルファニスト≫の中だよ。キリト」

 

「なら、ここは・・・・・・・」

 

「うん。ここは私の住んでいる異空間だよ、明久」

 

「ソーナ、それじゃあ彼らは?」

 

「ここにいるのは私が呼んだ、各小説の登場人物だよ、綾斗」

 

「登場人物、ってことは何組いるんだソーナ?」

 

「私が投稿しているのは―――――《ソードアート・オンライン 黒の剣士と紅の剣舞士 二人の双剣使い》と《バカとテストと召喚獣 奏で繋ぐ物語》、《学戦都市アスタリスク 叢雲と歌姫と孤毒の魔女、3人の物語》そして《ポケットモンスターXY&サン・ムーン 二人の紡ぐ物語》の4作品だよサトシ」

 

「つまりここにいるのはソーナが投稿している小説の登場人物ってことか?」

 

「正解だよ、キリト」

 

「えーと、ソーナはなんで私たちを呼んだの?」

 

「あれ?キリトたちにはアリスとユージオが手伝ってくれたはずだけど・・・・・・そう言えば秘密にしといてって言ったんだったけ」

 

「それで一体・・・・・・」

 

「フッフッフッ。実はみんなを呼んだのは・・・・・・」

 

『『『『『『『『『呼んだのは・・・・・・』』』』』』』』

 

「みんなで、楽しく!仲良く!新年の始まりを過ごすためだよ!!」

 

「あー、そう言えばそろそろ今年も終わりなんだったね」

 

「そうだよ明久!それで、どうせならみんなと過ごしたいなって思ってね。言っとくけどリアルに友達が居ないからって訳じゃないからね。――――――――――まあ、友達なんてもの必要ないし要らないから、いないんだけどさ」

 

『『『『『『『『・・・・・・・・・・・・・・』』』』』』』』

 

「とまあ、そんなことよりみんな楽しくワイワイ過ごそう!」

 

『『『『『『『『オオォーーーーー!』』』』』』』』

 

ソーナの掛け声により楽しいパーティーが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パーティーが始まり、ホール内には様々な食べ物や飲み物が置かれ、各自それぞれ他の登場人物たちと話していた。

ある場所では――――――

 

 

 

 

 

 

 

「凄いわねあなたたち」

 

「うん。学校の廃校を阻止するためにそんなことするなんて、生半可な気持ちじゃできないよ」

 

「ホントだよ~」

 

「えへへ、そんなことないよ」

 

「そうです。私たちは自分達のためだけではなく、音ノ木坂学院全員のためにしているのですから」

 

「やれやれ、海未ちはほんと固いな~」

 

「なっ!?そ、それはどういう意味ですか希」

 

「そのまんまの意味やんよ。なあ、エリチ」

 

「え、ええ。そうね」

 

「まあ、海未が堅いのはいつものことだしね」

 

「まあ、それは確かに言えるわね」

 

「凛もそうおもうにゃ~」

 

「真姫に、にこ、凛もですか!?」

 

「わ、わたしはそんなことないと、思うよ」

 

「かよちんはやさしいにゃ~」

 

「そう言えば絵里ちゃんはロシアに住んでいたんだよね」

 

「ええ。もしかしてレインとセブンもかしら?」

 

「ええ、そうよ。と、いってもお姉ちゃんが7歳、私が1歳の頃に両親が離婚して私はアメリカに、お姉ちゃんは日本に行くことになったのよ」

 

「そうだったの。ごめんなさい、辛いこと言わせてしまって」

 

「気にしないでいいわよ。それに今はこうしてお姉ちゃんと会えるんだから、平気よ」

 

「アハハッ♪。全く、セブンはほんと甘えん坊だな~」

 

「別にいいでしょお姉ちゃん」

 

「はいはい」

 

「セブンちゃんかわいい~♪」

 

「ま、まあ当然よ」

 

「それでなんだけどセブンちゃん」

 

「なにかしら?」

 

「これ着てくれないかな~?」

 

「な、ななな、なにそれ!?」

 

「え?これはことりが作った服だよ~」

 

「あ、あなたが作ったの!?じゃなくてなんで幼稚園の服なのよ!」

 

「似合うかな~って思ったの~♪」

 

「わ、わたしはもう12歳よ!」

 

「まあまあ、早く着替えよう~♪」

 

「いやーーァ!た、助けて、お姉ちゃーん!」

 

「え、ええ・・・・・」

 

「ことりちゃんの悪い癖が出ちゃったね」

 

「全くことりは・・・・・・。可愛いものに眼がないんですから」

 

「へぇー。そうなんだ」

 

「あ、戻ってきたみたいね」

 

「お待たせ~♪セブンちゃんを更に可愛くしてみたよ♪」

 

「せ、セブン?」

 

「ど、どうかな、お姉ちゃん?」

 

「うん!超かわいいよ七色!」

 

「お、お姉ちゃん!?それリアルネームよ!」

 

「ありゃ~、レインちゃんも変なのが出ちゃったよ」

 

「もしかしてレインってエリチと同じでシスコンなのかな?」

 

「う~ん、見た限りそうみたい」

 

「ちょっと希、シルヴィアさん。私は別にシスコンじゃないわよ。それにシスコンならあそこにいるわ」

 

「綾斗くんと話してる明久くん?」

 

「まあ、確かに絵里の言うとおりだと思いますよ」

 

「そうだねぇ。明久くんは昔から零華ちゃんのこと大切にしてたからねぇ~」

 

「アハハ。過保護過ぎってほどだけどね」

 

「それもそうね」

 

「あ、でも綾斗くんもかなりのシスコンだよ」

 

「そうなのかい?」

 

「うん。綾斗、子供の頃なんて遥お姉ちゃんの後ばっかり追いかけていたんだから」

 

「それはかなりのシスコンだな」

 

「でも、ちょっと可愛いかも♪」

 

「やれやれ。英玲奈はともかくあんじゅもことりと似たような慣性の持ち主だったわね」

 

『『『『『『ハハハハハ』』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

アイドル同士、音楽関係などを話していたり。

また、あるところでは―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「遥さん、免許皆伝なんですか!」

 

「ええ。リーファちゃんとラムくんはどうなの?」

 

「私のところは免許皆伝とかはない、ですね。剣道なので」

 

「はい、俺のところもリーファさんと同じですね。もっとも剣道をやっていたのは中学生までなんですけどね」

 

「ラム君、そうだったの?」

 

「はい。一回中学の全国大会で優勝しましたよ」

 

「すごいねラムくん。私のところは剣術だからなぁ。剣道もするはするけど大会とかには出ないんだよね」

 

「じゃあ、今度試合しませんか!」

 

「え、リーファちゃんと?」

 

「はい。あ、でも遥さんがよろしければですけど」

 

「私はもちろんいいよ!ラムくんもどうかな?」

 

「俺もいいんですか?」

 

「もちろん」

 

「もちろんだよ」

 

「では、お言葉に甘えて俺も参加させていただきますね」

 

 

 

 

 

 

 

三人の男女が剣について話していて、

またあるところでは――――――

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、お前さんはかなり料理できるんだな」

 

「まあな。おれのところは兄妹が多くてな、親が不在勝ちなもんでおれが面倒見ているんだ」

 

「ほえー。その年で主夫みたいとはすげぇな」

 

「今はポケモンドクター見習いでな、家庭の方は弟たちが手伝ってくれてるよ」

 

「いい家族だな」

 

「全くだ」

 

「そう言うエギルだって嫁さんがいるだろうが」

 

「まあ、俺がいない間も支えてくれていたからな。自慢の嫁だ」

 

「くぅ~、羨ましいぜ紺畜生!」

 

「それについては同意するぞクライン!」

 

「タケシ!我が同士よ!」

 

「やれやれだな」

 

 

 

 

 

 

 

男三人が盛り上がっていて、

またあるところでは――――――

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあオーフェリアさんは綾斗さんにいつもそうやってもらっているんですか?」

 

「・・・・・・ええ。シルヴィアもだけど。恵衣菜や翔子、セレナは?」

 

「私は明久くんにいつも甘えてるかな。明久くんの膝の上で頭を撫で撫でしてもらうと気持ちよくて眠っちゃうだよ」

 

「・・・・・・私は雄二によく料理を作ってもらってる。家事もだけど雄二は吉井と同じくらい家事レベルが高い」

 

「私はよくサトシにお菓子を作ってるかな?お菓子を食べたときのサトシの嬉しそうな表情がかわいいというか、癒されるんだよね~」

 

「・・・・・・なるほど。私も今度綾斗にやってもらおうかしら?」

 

「膝枕を?」

 

「ええ」

 

「・・・・・・なら私も雄二にやってもらう」

 

「じゃ、じゃあ私もサトシに今度してもらおう、かな?」

 

 

 

 

 

 

 

と、結婚している女子の恋バナ?らしき、情報交換などをして――――――

 

 

 

 

 

 

 

『『『『『まだ、俺(僕)たちは結婚してないぞ(よ)!!!』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

いま、なんか五ヶ所から同時に同じ言葉が聞こえた気がしたのですが・・・・・・・気にしないでおきましょうか。

そして、またあるところでは――――――

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、お前さんは忍者かよ」

 

「・・・・・・そんなことはない。一般」

 

「いやいや、それはさすがのオレっちもヤーちゃんに同意するゾ」

 

「や、ヤーちゃんっておれの事かよ、アルゴの姉さん」

 

「ニャハハ。いいネーミングだロ?」

 

「そ、そうかぁ?なら土屋はなんだ?」

 

「・・・・・・俺は別にいい」

 

「ン?ツッチーだゾ」

 

「プッ・・・・・!つ、ツッチー・・・・・以外にかわいい名前だな」

 

「ダロ?」

 

「・・・・・・あまり嬉しくない」

 

 

 

 

 

 

 

情報屋同士、情報入手についてを語っていたり。

またあるところでは――――――

 

 

 

 

 

 

 

「へぇー、そっちの世界も面白そうだな」

 

「ああ。俺たちの世界も面白いがキリトたちの世界も面白そうだな。VRMMOだったか?是非やってみたいな」

 

「俺もサトシたちの世界でいろんなポケモンと触れ合ってみたいな。ピカチュウみたいなポケモンが沢山いるんだろ」

 

「ああ。それぞれの地方によって出るポケモンも異なるんだぜ」

 

「そりゃ行ってみたいな」

 

「それ、僕も行きたいな」

 

「俺も、かな」

 

「明久と綾斗もか」

 

「あー、でも俺は明久の世界が気になるな」

 

「召喚システム、だっけ?」

 

「うん」

 

「どんなものなんだ?」

 

「え~と、テストの点数がその召喚獣の力になって、操作は自分でやるんだ」

 

「ウゲー、テスト受けないといけないのか」

 

「俺たちのところもテストはあるけど、確か明久のところは違うんだっけ?」

 

「点数の上限がないからね。自分の能力次第ではどんどん点数が増えていくよ」

 

「うわー。大変そうだな」

 

「まあね。あ、でも綾斗のところも大変じゃないかな?」

 

「ん~。まあ、ね」

 

「アハハ、私としてはみんなの世界に行ってみたいけど」

 

「ソーナも?」

 

「それはそうだよ~。面白いじゃん」

 

「「「「アハハハ」」」」

 

「ところでみんなはなんで彼女たちが好きになったの?」

 

「ん~、俺は第一層からずっと一緒にいて、レインがいると何て言うのかな・・・・・・・・こう、安心するんだよ」

 

「僕は恵衣菜と小さい頃から一緒にいて、気心が知れているし一緒にいたいからかな」

 

「俺はシルヴィとオーフェリアと一緒にいると楽しいからかな。二人を俺は必ず守りたいって思うんだ」

 

「俺はセレナから様々なことを教えてもらったりしたし、セレナと一緒にいると安心するからと、夢を持っているからかな」

 

「なるほどね~」

 

「ソーナはいないのか?」

 

「え?なにが?」

 

「好きな人だよ」

 

「ええっ!?」

 

「そう言えばソーナはいないの?」

 

「気になるな」

 

「え、ええ・・・・・・。私は別にいないよ。それに友達とかいないから、そう言うのがわからないんだよね」

 

「「「「・・・・・・・・・・」」」」

 

「あの~、哀れむよいな目で見ないでほしいんだけどな~。ちょっと虚しくなるよ」

 

「アハハ・・・・・・」

 

「なんて返したらいいかな・・・・・・」

 

「ごめん、ソーナ」

 

「聞いちゃいけないことだったかな・・・・・・」

 

「ちょ、ちょっとー!べ、別にこの世界だったら幾らでも友達はいるよ~!」

 

 

 

 

 

 

 

主人公同士で話していたりした。

そして時は進み。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあて、今年も残り時間が少なくなってきたね」

 

ソーナはパーティー会場の時計を見てそう言う。

 

「ホントだな」

 

「ん~。みんなはなにかやりたいことあるかな?」

 

ソーナは会場の全員を見て言う。

 

「ん~。あ、じゃあソーナ、僕と試験召喚バトルしない?」

 

「え?」

 

「あ、明久くん!?」

 

「に、兄様!?」

 

「お、いいなそれ!じゃあ俺もソーナとデュエルしたいな」

 

「き、キリトくんも!?」

 

「じゃあ、俺もソーナと闘ってみたいな」

 

「綾斗くんまで!?」

 

「・・・・・・ハルお姉ちゃんどうにかして」

 

「アハハハ、無理だよオーフェリアちゃん」

 

「はいはい~!なら俺もソーナとバトルしたい!」

 

「サトシ!?」

 

なんと明久、キリト、綾斗、サトシからバトルの申請をソーナは受けた。

 

「って、ちょっと待ってよ!私は明久たちのように召喚獣持ってないし、キリトたちのように剣や防具も無いんだよ!更に言うと綾斗たちのように星脈世代でもないし煌式武装も装備してないよ!サトシのようにポケモンは持ってないんだよ!」

 

ソーナはそう言うが。

 

「その辺りはソーナの力で」

 

「作者の権限だね」

 

「ちょっとーー!!そんなのに使いたくないよ!」

 

ソーナはツッコミに疲れたのか呼吸が荒くなっていた。

他のみんなは苦笑や笑いを堪えているものが多かった。

 

「ハァー。―――――――いいよ。闘ってあげるよ」

 

「「「「よしっ!」」」」

 

「なんでそこで4人は嬉しそうにサムズアップするのさ!」

 

ソーナは更に落胆した。

 

「じゃあ、最初に綾斗、次にサトシ、で明久、キリト。でいい?」

 

「俺は構わないぜ」

 

「僕も」

 

「俺も大丈夫だよ」

 

「俺もだぜ」

 

「じゃあ、移動しようか」

 

『『『『『『『『『『移動?』』』』』』』』』』

 

「うん、移動。ハイッ、と」

 

ソーナが指をならすと次の瞬間、パーティー会場からバトルフィールドに来ていた。

 

「それじゃあ早速闘おうか、綾斗」

 

「そうだね」

 

フィールドにはソーナと綾斗だけ。残りは観客席に座っている。

 

「それじゃあ――――」

 

綾斗はそう言うと自身の純星煌式武装《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》を展開した。

 

「いくよ、セレス」

 

『了解です、綾斗』

 

「はぁ、――――――おいで《虹の銀河(ガラクスィアス=イリス)》」

 

ソーナがそう言うと何もない虚空から、虹色に輝く双剣が出てきた。

 

「じゃあ、いくよ!」

 

綾斗はそう言うと否や凄まじい速さでソーナに《黒炉の魔剣》を振り下ろしてきた。

 

「よっ、と」

 

ソーナはそれを双剣をクロスして受け止める。

 

「せいっ!」

 

そして、《黒炉の魔剣》の軸をずらして綾斗の校章を右手の剣で切りつける。

 

「ん?」

 

ソーナは切りつけた箇所に手応えが感じられず眉を潜めた。

切った場所には青いガラスのようなものがでるが、それはすぐに虚空へと消えた。

 

「そう言えば綾斗の星辰力は膨大だっけ」

 

「まあ、オーフェリアには及ばないけど」

 

「そりゃそうでしょう――――――よっ!」

 

「ふっ!」

 

「セアッ!」

 

「ハアアッ!」

 

気合の入った声が周囲に響響き渡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして8分後。

 

「ゼアッ!」

 

「ッ!」

 

 

戦闘終了(エンド・オブ・デュエル)!Draw!』

 

 

綾斗の攻撃を受け流し、カウンターでソーナの放った斬撃と綾斗の放った斬撃が二人の校章を同時に真っ二つに切り裂き、デュエルが終了した。

 

「引き分けか。強いなソーナは」

 

「綾斗こそ、強すぎるよ」

 

「謙遜しないでよ。ソーナの武器もだけど力量も凄かったよ」

 

「綾斗と比べるとまだまだだけどね」

 

ソーナら自虐的に肩をすくめながら言う。

 

「さて、次はサトシか」

 

「じゃあ俺は観客席にいくよ。頑張ってねソーナ」

 

「ハハ、善処するよ。ありがとう綾斗」

 

綾斗はそう言うと、観客席に向かって歩き去った。

綾斗が立ち去ると、代わりにサトシが来た。

 

「綾斗に勝利おめでとう、ソーナ」

 

「ありがとう、サトシ」

 

「バトルは一対一のシングルでいい?」

 

「いいけどひとつ問題があるんだよ」

 

「問題?」

 

「・・・・・・私がポケモン持ってないこと」

 

「あ」

 

「もしかして今さら?それに私言ったはずだけど・・・・・・」

 

「あー、じゃあ、また今度でいいか」

 

「ごめん、そうしてくれると助かるよ」

 

「じゃあ、この試合はバトルは無しと言うことで。次は明久か」

 

「そうだね」

 

「まあ、頑張れよソーナ」

 

「ありがとうサトシ」

 

サトシとのポケモンバトルはソーナがポケモンを持っていないと言うことで先に見送りで、次は明久とのバトルになった。

 

「早速だけど試合しようソーナ」

 

「うん。科目は日本史でいい?」

 

「僕はいいよ」

 

「オッケー、じゃあセットするね」

 

ソーナはそう言うと、召喚システムのフィールドを張り、明久から距離をとった。

 

「いいよ、明久」

 

「うん、じゃあ――――」

 

「「試獣召喚(サモン)!!」」

 

 

 

 日本史

 

 2年Fクラス 吉井明久 978点

 

 VS

 

        ソーナ  814点

 

 

「ソーナも日本史得意なの?」

 

「まあ、ね。5科目の中で私は国語と社会が得意だから」

 

「なるほどね。それじゃあいくよ!」

 

「参ります!」

 

ソーナの召喚獣は虹色のコートを着ているというなんとも派手な衣装だった。

そして、武器は双剣だ。

 

「ゼアッ!」

 

「ヤアッ!」

 

金属音が二人の召喚獣の武器から響く。

 

「やるね。もっと早くしていくよ!」

 

「それは私もだよ。それじゃあ早速!」

 

ソーナの召喚獣は明久の召喚獣から距離をとると、双剣を前に構えた。

すると、その双剣は一つに合わさった。

 

「!?それは、弓!?」

 

「いくよ!」

 

ソーナは弓を連続で射ち放ち明久の召喚獣を攻撃する。

明久は召喚獣を巧みに操作してかわしたり弾いたりする。

 

「更に!」

 

ソーナは弓を両手に持ち、分割した。すると、それは黒金と白銀の拳銃へと変わっていった。

 

「今度は銃!?」

 

「いっけー!」

 

「ちょ、ちょっとー!」

 

明久は素早くかわすがソーナはどんどん弾を撃つ。

 

「そして!」

 

「今度はスナイパーライフル!?」

 

そして、ソーナは二丁銃を結合し、黒銀のスナイパーライフルを構え、連続で撃つ。

そしてそれを明久は同じように構えた二丁銃で弾を撃ち落としていく。

弾撃ち(ビリヤード撃ち)だ。

 

「でもって今度は!」

 

ソーナはスナイパーライフルを片手で持ち横に構える。

その途端、スナイパーライフルは光輝き細身の剣、細剣に変わった。

 

「今度は細剣!?もしかして腕輪!?」

 

「え?腕輪じゃないよ。というより腕輪持ってないよ」

 

「え?じゃあそれは?」

 

「あ、これ?イメージをすることによって様々な武器に出来るんだ」

 

「うわー、チート?」

 

「いやいや、明久の《事象改変(オーバーライド)》の方が一番のチートだからね」

 

「あ、それは確かに」

 

「ね。それじゃあ、どんどんいくよ明久!」

 

「ええーっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから10分後

 

 

 2年Fクラス 吉井明久 36点

 

 VS

 

        ソーナ  25点

 

 

 

ソーナと明久の点数は、あと一撃で戦闘不能という状態にまでなっていた。

 

「これで決めるよ」

 

「もちろん!」

 

「ハアアァァァァァァァアッ!」

 

「ゼリャァァァァァァァアッ!」

 

ソーナの召喚獣と明久の召喚獣の双剣がそれぞれの召喚獣を切り裂き、互いの位置を交換して背を向けて立つ。

そして、

 

 

 

 

 

 2年Fクラス 吉井明久 0点

 

 VS

 

        ソーナ  0点

 

 

 

同時に召喚獣は虚空へと消えていった。

 

「引き分けかぁ~」

 

「つ、疲れた~」

 

「いやぁ、さすが明久だね」

 

「ソーナこそ、さすがだよ」

 

「アハハ、ありがとう明久」

 

「さてと、最後は―――――」

 

「俺の番だな」

 

明久の言葉を引き継いで、出てきたキリトが答えた。

 

「そうだね、キリト」

 

「じゃあ僕はみんなのところにいるよ。二人ともいい試合をね」

 

明久はそう言うと、キリトが出てきたところから観客席に向かって歩き去った。

 

「さてと―――――」

 

「うん」

 

ソーナはキリトの言葉に頷き、ウインドウを表示させデュエル申請画面を開きデュエルを申請する。

 

「全損決着でいいよなソーナ?」

 

「もちろんだよキリト」

 

モードを全損決着にしてデュエルを双方とも受諾する。

キリトとソーナは互いに距離を取り、向かい合う。

そして、キリトは背中に装備している双剣の柄を握り、抜刀する。

それぞれ剣の色は黒と白だ。

 

「『エリュシデータ』と『ダークリパルサー』、だね」

 

「ああ。俺の最もな愛剣だ」

 

「それじゃあ私も――――」

 

ソーナは目を閉じ集中する。

すると、ソーナの衣装がキリトの防具と似たような感じになった。だが、その色はキリトが黒に対してソーナは虹色のような七色の派手だが落ち着いた装飾だった。

そして、両手を広げ何かを掴むような動作をする。

 

「――――――来て、『ティング・トゥー・テル』、『スターライト・ナイト』」

 

そしてソーナの手元に白銀に輝く剣と虹色に輝く剣が現れ、それを握った。

 

「へぇー、それがソーナの剣か。俺やレインと同じで二刀流なんだな」

 

「まあ、二刀流の方がやり易いんだよ」

 

「じゃあ、始めようぜソーナ」

 

「了解」

 

キリトは左手を前に、右手を後ろに、腰を少し落として構える。

ソーナは右手を前に、左手を少し下げて構える。

そして、両者の中央に浮かぶウインドウが0になりデュエルが始まった。

 

「ふっ!」

 

「はあっ!」

 

キリトは始めに右手の剣を突きだしてきた。それをソーナは左の剣で反らす、そのコンマ一秒後左の剣が迫ってくる。だが、それはそに当たる直前にソーナは右手の剣で防ぐ。

 

「やるな!」

 

「≪二刀流≫ソードスキル《ダブルサーキュラー》だよね」

 

「ああ」

 

「それじゃあ今度はこっちの番だよ!」

 

ソーナはそう言うと否や、キリトの剣を弾き、左の剣でキリトの胴を薙ごうとする。

 

「ッ!?」

 

しかし、それはキリトがバックステップしてコートのボタンが取れただけだった。

だか、ソーナはさらに攻撃をする。右手の剣を振り上げ右斜めから振り下ろした。

 

「くっ!」

 

さらにそれをキリトは防ぐ。が、さらにソーナは左の剣で攻撃する。

 

「セアッ!」

 

「ッ!」

 

「ハアッ!」

 

ソーナは右手の剣にライトエフェクトを纏わせ、キリトを攻撃する。

 

「片手剣ソードスキル《バーチカル・スクエア》か」

 

「どうせなら私も使おうかなって、ね」

 

「なるほどな。じゃあどんどんいこうか」

 

「そうだね!」

 

「「ハアアッ!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソーナとキリトは、幾つものソードスキルを放ち剣戟を与える。

そして、互いのHPがレッドゲージにまで入り、残り一撃で戦闘不能となるところまで削れていた。

 

「これで決めるか」

 

「そうだね」

 

ソーナとキリトはそう言うと、同じ構えをした。

右手を肩の高さまで上げカタパルトのようにし、剣の切っ先を相手に向け、左手を前にし構える。

 

「「ハアアァァァァァァァアッ!!!」」

 

右手の剣にクリムゾンレッドのライトエフェクトが付き、ジェットエンジンのような轟音が響く。

そして、剣を突きだしたような体勢で互いの位置を交換して止まった。

 

 

『Draw』

 

 

空中に浮かぶウインドウにはそう表示された。

どうやら二人のHPが同時に0になったらしい。

 

「はあ、はあ、はあ。さすがキリト」

 

「ソーナこそ。さすがだな」

 

「ありがとうキリト」

 

キリトは剣を背中の鞘に戻し、ソーナは剣を取り出したように虚空の中へとしまった。

 

「さてと、これで終わったし戻ろうか」

 

ソーナはそう言い指をならした。

ソーナが指をならすと、次の瞬間には元のパーティー会場に戻っていた。

 

「おっと、そろそろ新年だね」

 

ソーナは時計を見ていう。

 

「ホントだな」

 

「今年は色々あったけど、みんなのお陰でなんとかいけたよ。ありがとう」

 

ソーナはみんなを見てそう言う。

 

「あ、みんなカウントダウンを始めるよ」

 

 

 

 

『『『『『『『『『『10』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

『『『『『『『『『『9』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

『『『『『『『『『『8』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

『『『『『『『『『『7』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

『『『『『『『『『『6』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

『『『『『『『『『『5』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

『『『『『『『『『『4』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

『『『『『『『『『『3』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

『『『『『『『『『『2』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

『『『『『『『『『『1』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

そして、会場に鐘の音が響き渡った。

 

 

「ハッピー・ニューイヤー!!みんな今年もよろしくね!!」

 

 

『『『『『『『『『『こちらこそよろしく(お願いします)ソーナ(さん)』』』』』』』』』』

 

 

 

 

「みんな!今年も応援をよろしく!」

 

 

 

 




私の投稿作品4作品とのコラボどうでしたか?
少し疲れましたが、新年の初めとしては良かったなと思います。
これからも≪ソードアート・オンライン 黒の剣士と紅の剣舞士 二人の双剣使い≫をよろしくお願い致します!!


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SAO(ソードアート・オンライン)
SAO編 第1話〈始まりの街での出合い〉


はじめましてソーナです
初めての書投稿です
これはキリト×レインの物語
誤字脱字があったらごめんなさい


「そろそろ時間だな。 リンク・スタート!」

 

「ついに戻って来たなこの世界に」

 

俺桐ケ谷和人はこのSAO でキリトと言うキャラでSAO の始まりの街に降り立った。

俺は初期武器の片手剣を背中に装備し町から出ようとした

 

「なぁ、そこの兄ちゃん。 あんた元βテスターだろ」

 

「そうだが・・・・・・」

 

「良かったら少しレクチャーしてくれないか? 恥ずかしいけど俺これがVR 初めてなんだわ」

 

「別に構わないけど」

 

「ほんとかありがと俺はクライン。よろしく」

 

「俺はキリトだ。よろしく」

 

「ねぇ、そこの人達もしかしてレクチャー教えてくれるの?もし良かったら私にも教えてくれないかな?」

 

俺達に話しかけて来たのは大人しそうな、女の子だった

 

「ん いいよ 俺はキリトよろしく。君は?」

 

「私はレインだよ。よろしく え~とそこの人は?」

 

「ん 俺はクラインって言うんだよろしくなレインちゃん」

 

「うん。よろしく」

 

「さて、二人とも武器は何?」

 

「俺は曲刀だぜ」

 

「私は片手剣だよ」

 

「OK それじゃフィールドに行こうか」

 

俺達三人はフィールドに移動した。

 

 

 

フィールド 始まりの町近く

 

 

俺達がいるのは始まりの街近くのフィールド、相手しているのは他のゲームではスライムに該当する〈フレイジー・ボア〉だった

 

「おーい、クライン行ったぞ。」

 

「くっ、えーい おりゃ おととと おわっ」

 

「大丈夫かクライン?」

 

まだ戦い慣れてないのか

 

「うー、いたたたた やっぱ手強いぜどうしたら倒せるんだよ、キリト」

 

「言っただろ、相手の動きをよく見てかわしたらソードスキルをぶつけるって」

 

「んなこと言ったてよ。あいつ動くしよ」 

 

「当たり前だカカシじゃないんだから」

 

「そうだなソードスキルはモーションが必要だから何か必殺技って感じで貯めてみたらどうだ?」

 

「モーションか うーん はぁ~ とりゃ~」

 

クラインの曲刀がオレンジ色に輝きスキル〈リーパー〉が発動されバッシャーンと音とともにモンスターがポリゴンと散った

 

「うお、やったぜキリト」

 

「おめでとう。まぁでもあれ他のゲームだとスライムレベルだぞ」

 

「何~ 嘘俺中ボス位かと思っていたぜ」

 

「んな訳無いだろ。 レインの方はどうだ?」

 

「うん、私の方は問題ないよキリト君。キリト君の教えが上手だったからすぐ出来たよ」

 

「そうか。なら良かった」

 

「もうこんな時間か俺は一回落ちるわ」

 

「ほんとだ 私も一回落ちなきゃ そうだ二人ともフレンド登録しよう」

 

レインからの提案に俺達三人はフレンド登録した

 

「OK、何か合ったらここにおねがいな」

 

「うん、わかったよ~」

 

「おっしゃ、分かったぜ」

 

俺達三人はログアウトしようとしたが

 

「あれ? おいログアウトボタンがないぞ。」

 

「アレ? こっちにもないよ」

 

「何? ほんとだ俺のにもない」

 

その時リンゴ~ン、ガンゴ~ンと鐘が鳴り響いた

そしたら急に体が光に包み込まれ〈始まりの街〉の中央広場にいた

周りを見渡すとクラインやレインだけではなく他にも強制転移されて来た人がいた

 

「ようこそ、プレイヤー諸君私の世界へ。私の名は茅場明彦、今やゆういつこの世界をコントロールする事の出来る者だ。諸君の中にはもうすでにログアウトボタンがメニューから無くなっていると気付いていると思うがこれはソードアート・オンライン本来の使用である。諸君らはこれから自発的ログアウトは不可能となっているまたゲームないでHP が0になった場合このゲームから及び現実世界からも永久に退場となる。ログアウトするための方法はこのアインクラッド第100層にいるボスを倒す事のみだ。ここで私から諸君らにささやかなプレゼントを送ろう。諸君らの奮闘に期待する。以上でソードアート・オンラインチュートリアルを終了する。では健闘を祈る」

 

プレゼントの中身は《手鏡》




どうでしたか?
また今度これでお会いしましょう


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SAO編 第2話〈一層ボス攻略会議〉

第2話です
スマホで投稿しているので誤字脱字はごめんなさい


俺のストレージには茅場からたった今送られたアイテム《手鏡》が入っていた。

《手鏡》を取りだして見ると体が光に包まれていった。光が収まると

 

「んな、こりゃ俺の顔じゃん」

 

と、隣から聞こえた。隣を向くとそこにはバンダナを頭につけた人人がいた。

 

「えっ、お前クラインか?」

 

「お前、キリトか?」

 

俺は手鏡を見るとそこには自分の現実世界での、桐ケ谷和人の顔があった

 

「アレ?これ私の顔だよ」

 

と近くから聞こえた。そこに行ってみると髪が長い女の子がいた。

 

「ねぇ。君もしかしてレインか?」

 

「えっ!何で知っているの?って君もしかしてキリト君?」

 

「そうだけど。あっちにクラインがいるからクラインの方に行こう」

 

俺はレインを連れてクラインのいる方へと来た。

 

「二人とも俺と一緒に来い。茅場の言う通りならばゲームをクリアするためにはとにかくレベルを上げなければならない。俺なら10層までのモンスターの事を知っているから大丈夫だ。どうする?」

 

「俺はムリだ。他の仲間を放り出して行けない。」

 

「そうか。レインはどうする?」

 

「もちろん一緒に行くつもりだよ」

 

「わかった。なら早速行こう。クラインすまない」

 

「良いって事よ。キリトから教えてもらったから大丈夫だぜ。」

 

「レイン行こう」

 

「うん、わかったよキリト君」

 

「二人とも絶対生き延びろよ」

 

クラインからの声を聞き届けて俺とレインは始まりの街から飛び出した。

 

 

 

第1層町〈トール・バーナ〉

このゲームが始まって1ヶ月がたった。その間の死者は2000人に及んだ。だがまだ1層も攻略されていなかった。現在のプレイヤーは3つのグループに分かれていた。始まりの町から一歩も外に出ず外部からの救助を待つグループ、パーティーを組んで攻略するグループ、ソロで攻略するグループとなっているが俺とレインはこの中のどれにも当てはまらないコンビに該当していた。

 

「ねぇ、キリト君。今日攻略会議出るんでしょ?」

 

「ん、あぁ。一応出るつもりだけど」

 

「もぉ、また顔が暗いよ。少し明るくならなくちゃね」

 

「そうだな。ありがとうなレイン」

 

「うん。どういたしまして」

 

俺は今までもレインの明るさに元気をもらっていた。

 

 

会議が始まった。出てきたのはディアベルと言う青年だった。

 

「皆、今日は集まってくれてありがとう。俺の名はディアベル職業は・・・・・、気持ち的にはナイトをやってます!!」

 

「今日俺達のグループが第1層ボス部屋を見つけた」

 

この言葉に辺りにが息を飲んだ。

 

「俺達がボスを倒して〈始まりの町〉にいるプレイヤーに希望を見せるんだ。それがトッププレイヤーの義務だ!」

 

「ちょっとまち~な、ナイトはん」

 

会議に入って来た男が更に話す。

 

「ワイの名前はキバオウや。会議の前にまず最初に詫びる者がこの中に居てはると思うでナイトはん」

 

「詫びると言うのは元βテスターの者かな?」

 

「そうや。元βテスターが情報を独占しなければもっとこの会議に参加していた人がいる筈やで。出てきたらどうや!」

 

俺はその言葉にビクッとなった。

 

「大丈夫だよ。私はどんな事があってもキリト君の味方だからね」

 

とレインが言ってくれて少し落ち着いた

 

「なぁ。少し良いか?俺はエギルだ。キバオウさん、あんたβテスターのせいにしている要だかあんただってこのガイドブックは知っているだろ」

 

「それがなんや‼」

 

「このガイドブックを配布しているのはβテスターだぞ」

 

「うぐっ」

 

「良いかな?会議を続けるよ」

 

俺はエギルの言葉に助かったと思ってしまった。

俺はレイン以外のビギナーを見捨ててしまったからだ。

 

「それじゃ、最大6人でパーティーを組んでくれ」

 

なにっ!!

 

「キリト君今回もよろしくね」

 

「あぁ。こっちこそな」

 

俺はさすがにボスに二人はマズイと思って辺りを見渡した。すると近くの席に一人のローブを来た人を見つけた。

 

「なぁ。あんたももしかしてあぶれか?」

 

「違うわ。あぁして仲良くしているのが気に入らないだけ」

 

それをあぶれって言うんだよ‼と心の中で思ってしまった




こんな物かなアスナと出会った迷宮区はカットでごめんなさい


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SAO編 第3話〈細剣使いと幼なじみの姉妹との再会〉

アスナだけではなくユウキやランも出ますよ

誤字脱字があったらごめんなさい

それではどうぞ


「あの~会議終わりましたよ」

 

会議が終わりプレイヤー解散していく中レインがローブを着たプレイヤーに話しかけた。

 

「そう」

 

「これからパーティーを組むからもし良かったら、あそこにいる人と少しお話しない?」

 

がローブを着たプレイヤーは怒鳴り返して来た。

 

「私は、あなた達とお話するためにここにいるんじゃないわ」

 

レインは少し驚いたがいつものように

 

「なら、あなたは何故ここにいるの?」

 

「負けたくないからよ」

 

ローブを着たプレイヤーはパーティー申請を受諾してどっかに行ってしまった。

 

~キリトside~

 

それを離れたところから俺は見ていた。

すると

 

「ねぇ、お兄さん名前何て言うの?」

 

「ん?俺はキリトだ。よろしくな」

 

「僕はユウキだよ」

 

「私はランです」

 

「ねぇ、キリト。君ってもしかして現実世界での名前って桐ケ谷和人って名前じゃないかな?」

 

と二人の女の子のうちの一人ユウキと言った女の子がそういった。

 

「えっ‼何で俺の名前を知っているんだ?」

 

と俺は疑問に思い聞いた。すると

 

「やっぱり和人だったんだ‼あっ、この世界ではキリトの方が良いかな?」

 

「やっぱり和人さんだったんですね。お久しぶりですね。紺野藍子ですよ。こっちは妹の木綿季ですよ」

 

二人の返答に俺は驚きながらも二人の幼なじみに懐かしさを感じていた。

 

「えっ‼木綿季と藍子久しぶりだな。元気だったか?」

 

「うん。和人が引っ越して行って以来だから3年ぶりだね」

 

「本当そうですね。ところで和人さんじゃなくてキリトさんはここで何やっているんですか?」

 

「俺か?俺はあそこにいるパートナーを待っているんだけど」

 

「あぁ。今ローブの人に話しかけている女の人ですね」

 

「そうだけど。二人は何故ここに?」

 

「僕達もボスの攻略に参加しようとしていたんだけどあぶれちゃってね」

 

「そうなんですよね」

 

と大体予想通りの返答が返ってきた。

 

「なら二人とも俺達のパーティーに入らないか?」

 

「えっ‼いいの僕は良いよ。というか嬉しいよ」

 

「ええ 私の方も問題ありません。大丈夫ですけどキリトさんの方は大丈夫なのですか?」

 

「あぁ大丈夫だ。ローブの人と俺達四人で合計五人だな」

 

その話をしているとローブの人はパーティー申請を受諾してどっか行ってしまったようでレインがこっちに戻って来た。

 

~キリトside out ~

 

~レインside~

 

アレ?キリト君と話している女の子って誰だろうしかも二人も?まさかナンパとかじゃ無いよね‼

 

~レインside out ~

 

「お疲れ様レイン」

 

「ううん。大丈夫だよキリト君。ところでそこにいる女の子二人は誰かな~」

 

「お、落ち着けレイン。ただの幼なじみだよ」

 

「幼なじみ?キリト君の?」

 

「そうだよ~僕ユウキっていうんだよろしくね」

 

「はい。私はユウキの姉のランです。よろしくお願いしますねレインさん」

 

「うん。よろしく。もしかして私達のパーティーに入らないかってキリト君に聞かれた?」

 

「はい。私とユウキ、パーティーに入りましたよ」

 

「そうなんだよろしくね」

 

うう~レインの殺気凄かったナンパじゃなくて幼なじみで良かったよ

そう言えばまだご飯まだだけどユウキとランはどうなんだろう?

 

「なぁ二人ともこれから一緒に食事しないか?」

 

「うん。僕は構わないよ」

 

「ええ。私も良いですよ」

 

「レイン二人も一緒で良いかな?」

 

「私は別に構わないよ~キリト君」

 

「OKなら移動しようぜ」

 

と俺は三人を連れて噴水広場にやってきた。

広場にやって来る途中にあるパン屋でご飯の黒パンを買ってきた。噴水のところにはローブを着たパーティーメンバーの一人がそこで同じ黒パンを食べていた。

 

「ねぇ、キリト君あの人もしかしたら私達と同じ女の子だと思うよ」

 

「えっ?何でわかるんだ?」

 

「だってスペルがAsuna だもん」

 

とそれにユウキとランが

 

「「確かにそうだね(ですね)」」

 

と言って俺も見ると確かにAsuna と書いてあった。

 

「ねぇ、一緒にご飯食べても良いかな?」

 

とレインがAsuna に聞いた。

 

「好きにすれば」

 

「ありがとう」

 

「ねぇ、あなたの呼び方ってアスナであっているかな」

 

とレインが聞くと

 

「!?何で私の名前知っているの?」

 

アスナが驚いたようにしているので俺が説明する

 

「もしかしてパーティー組むのって初めてか?」

 

「ええ。そうよ」

 

「なるほどな。ここ画面の端に自分の他に俺達のも出ているはずだ」

 

「えーと。キリトにレイン、ユウキとランであっているの?」

 

「うん。あっているよ僕がユウキだよ。よろしくねアスナ」

 

「私はユウキの姉のランです。よろしくお願いしますねアスナさん」

 

「で私がレインだよ。よろしくね~」

 

「俺はキリトだ。よろしく」

 

「ええ。よろしく」

 

「そうだ。これその黒パンは付けてみろよ」

 

軽く自己紹介が終わったところで俺はアイテムストレージからアイテムを取り出した。

 

「これ何?」

 

「まぁ食べてみてからのお楽しみでユウキとランも付けなよ」

 

「うん。ありがとうね」

 

「ありがとうございますね」

 

俺とレインも付けたらアイテムがポリゴンとなった。

 

「んじゃ、食べようぜ」

 

「「「「「いただきます」」」」」

 

一口かじるとクリームの濃厚が口に広がった。

全員食べ終わると

 

「そう言えば俺とレインは同じところに止まっているから良いけどユウキとランは今日どうするんだ?」

 

「うーん。決まって無いんだよね僕達もキリトのところでお世話になっても良いかな?」

 

「あぁ。別に構わないぞ。レインも良いか?」

 

「私は別に良いよ」

 

「「ありがとう(ございますね)」」

 

「そうだレイン二人に風呂場とか案内よろしくな」

 

とキリトが言ったとたんにアスナがものすごい速さで聞いて来た。

 

「今お風呂って言った?」

 

「えっ。あぁ言ったけど」

 

「貴女達のところでお風呂貸して」

 

とアスナが言った

 

「俺は別に良いけどレインは?」

 

「私も良いよ。ちょうど良いから明日のボス戦について話そうよ」

 

「わかった」

 

俺達五人は俺とレインの止まっている宿に向かって行った




オリジナルの展開です。
キリトの幼なじみとしてユウキとランを入れました。
感想等お願いします。


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SAO編 第4話〈宿での一夜〉

第4話書きます

誤字脱字があったらごめんなさい。



俺達五人は噴水広場でご飯を食べた後俺とレインの泊まっている宿に向けて移動した。

俺達の泊まっている宿は牧場の隣にあり一回はNPC がいて二階が宿だった。部屋に入って全員が席に着いた。

 

俺は全員分のグラスにミルクを注いで全員の前に置いた。

 

「えーと。それじゃ明日のボスについて説明するぞ」

 

とキリトが言うと全員頷いた。

 

「第1層ボスの名は《イルファング・ザ・コボルドロード》最初は斧と盾を使うが残りHPゲージが一本になると腰に装備しているタルワールを抜き曲刀カテゴリーのスキルを使って来る。取り巻きは《ルインコボルド・センチネル》武器は斧でコボルドロードのHPゲージが一本減るごとに三体ずつ出てくる。俺達の役割はこいつらを潰すことだ。まぁあぶれだから仕方ないがな。何か質問はあるか?」

 

「うん。私は大丈夫だわ」

 

「私も問題ないわ」

 

「僕も大丈夫かな」

 

「はい。私も大丈夫です」

 

上からレイン、アスナ、ユウキ、ランの順番で返って来た。

 

「つまり俺達はスイッチとポットが重要になって来る訳だがアスナやユウキ、ランは大丈夫か?」

 

「僕逹は大丈夫だよ。ね、姉ちゃん」

 

「はい。大丈夫ですよ」

 

ユウキとランは大丈夫な用だが

 

「スイッチ・・・・、ポット・・・・って何?」

 

と予想通りの答えが返って来た。

 

「明日俺達が教えるから大丈夫だ」

 

「ところでお風呂誰が最初に入る?」

 

とレインが聞いた。

 

「私が最初で良いかしら」

 

アスナがそう聞いて来た。

 

「うん。別に良いよ。『お風呂場』は左にある扉から行けるよ」

 

「ありがと。先にいただくわね」

 

とアスナがお風呂場に入って行った。

 

~アスナside~

 

「ここがお風呂場ね。以外に綺麗な場所ね」

 

後ろを確認してから《装備フィギュア》の武器の細剣と防具を解除した。ローブは部屋に入ってきてから解除した。

そして《装備全解除》ボタンをタップした。

解除した為栗色のロングヘアーが露になった。

そしてまた、変化したボタン《衣服全解除》ボタンを押して生まれた時の姿になって「バシャーン」と背中から湯船にダイブする。

 

「キャー。気持ちいい~!!」

 

~アスナside out ~

 

アスナがお風呂場に行ったためリビングには俺とレイン、ユウキ、ランとなった。

すると扉から「コンコン」とノックが聞こえて来た。

 

「ん?誰だろう」

 

「一応警戒しとくね!」

 

とレインが言ったので扉をあけると

 

「何だ、アルゴじゃないか。珍しいな俺達の宿に来るなんて」

 

「ニャハハ!すまんなキー坊にしても"俺達"か、ってアレそこの二人は誰ダ?」

 

「あー、この二人はユウキとランだよろしくな」

 

「うん。僕がユウキだよ。よろしくねアルゴさん」 

 

「私はランです。よろしくお願いしますね。アルゴさん」

 

「なるほどユーちゃんにラーちゃんかレイちゃんだけじゃなく更に二人も追加したんだ。良い情報が手に入ったヨ」

 

「あのな~この二人は俺の幼なじみだからな。別に変な関係じゃないぞ。ところで今日もまた"アレ"か?」

 

「あーそうだった。クライアントが今日中に聞けって言っていてさ3万9800出すってヨ」

 

「3万9800か幾ら積まれても答えはノーだよ」

 

「俺っちもさんざん言っているんだけどな」

 

アルゴの言っている"アレ"とは俺の片手剣の『アニール・ブレード+6』を買い取ろうとしている人が要るらしい。それの代理人として何度か交渉に来ている。

 

「アルゴ、お前のクライアントの名前教えて貰っても良いか?」

 

「別に構わないそうダ。クライアントの名前はキバオウだヨ」

 

「アイツか」

 

「多分キリト君の戦力を落とすのが目的じゃないかな?」

 

「あぁ。多分そうだろう」

 

「大丈夫なのキリト?」

 

とユウキとランが心配そうに見てくる。

 

「あぁ。問題ない」

 

「そんじゃ今回のも不成立って事でいいんダナ」

 

「あぁ」

 

「そうだキー坊『お風呂の脱衣場』借りるヨ。『夜用の装備』に着替えたいからナ」

 

何?今アルゴのヤツ何て言った?

 

「ねぇキリト君今確か『お風呂場』にはアスナちゃんがいるんじゃなかったっけ?」

 

次の瞬間

 

「ウワッ!!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・きゃあああああー・・・・・」

 

という声がこの屋敷全体に響いたとたん『お風呂』の扉が開き直後生まれたままの姿でアスナが飛び出して来た。

 

「「「キリト(君)(さん)見ちゃダメ」」」

 

とレイン、ユウキ、ランから言われた後の記憶が俺にはない。




どうでしたか?
次はボス攻略編です
感想等お願いしますね


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SAO編 第5話〈第1層ボス攻略作戦〉

少し時間がかかってすみません。
プログレッシブと被っているかも知れないです。

誤字脱字があったらごめんなさい。


俺達五人は昨日の騒動から一夜明けて会議が行われた場所に来ていた。

俺達はいつもの服装だがアスナはフードを被っていた。理由は「見られたくないから」らしい。

 

「ねぇ。キリト君昨日起きた事覚えてないの?」

 

とレインがそう聞いて来た。

 

「そうなんだよ、レイン。昨日アルゴが部屋に来たのは覚えているんだけどそこから先が覚えてないんだよ。って、あれアスナさんどうして震えているんですか?」

 

「これは震えじゃないわよキリト君。怒りと恥ずかしさを表しているのよ」

 

「まぁ、アスナちゃん。キリト君覚えてないみたいだから水に流して上げたら?」

 

「うん、そうだね」

 

「ダメよレインちゃん、ユウキちゃん、ランさん絶対後で責任取らせてあげるわ‼」

 

「ん?四人とも何の話をしているんだ?」

 

「「「「何でもない(よ)(わ)(ですよ)」」」」

 

「そうか」

 

と言うとレインがこっちに来て

 

「私は何があってもキリト君の味方だからね」

 

と言って離れて言った。

 

「?一体何だったんだ?」

 

と言う会話をしているとディアベルが壇上に現れた。

 

「皆、今日は誰だれ一人と欠ける事なく参加してくれてありがとう。もう俺から言う事は1つだけだ・・・・・勝とうぜ!!」

 

この言葉によって全体の士気が上がった。

 

この言葉の後俺達全員はボスの待つ迷宮区へと移動した。

俺達は最後尾でアスナにスイッチとポットの意味を教えていた。

 

「なるほど、スイッチとポットの意味は理解したわ」

 

「後《ルインコボルド・センチネル》は頭と身体を金属鎧で覆っているからほとんどの攻撃が届かないから喉元を狙うんだ。俺やレイン、ユウキ、ランがソードスキルで奴の攻撃を跳ね上げたらアスナはスイッチして《リニアー》を喉元に放ってくれ。俺達も最大限のサポートはする。後俺達の装備している武器は現時点では最強クラスだがここはデス・ゲームの中だから気を抜かずに注意してくれ‼ボス攻略では自己判断能力が重要だからな。忘れないでくれ‼いいな!」

 

「わか(ったわ)(ったよ)(りました)」

 

現時点で俺達が装備している武器レイン、ユウキ、ランの片手剣は俺と同じ『アニール・ブレード+6』、アスナは細剣の『ウィンド・フルーレ+4』を装備している。

ボス攻略の話をしているとあっという間にボス部屋前にたどり着いた。

装備の最終確認が終わるとディアベルから「行くぞ!!」と言う号令がかかった。

 

「お前ら、絶対に死ぬなよ」

 

「「「「了解‼」」」」

 

「俺達も行くぞ」

 

こんなに広かっただろうか。俺はβ以来のボス部屋にそう感じていた。部屋は奥に向かって延びている、長方形の空間だ。だがここまで広いと撤退するときが大変だと思った。

扉に背中を向けて行ってしまったら相手からの長射程のソードスキルを喰らってしまいディレイ、スタン、クリティカルヒットを浴びてしまうからだ。瞬間的な転移が可能な転移結晶は高価な物なので最初から使う人はいないと思っていながら前に視線を凝らすと前方の部隊がもうすでに部屋の半分を切っていた。突入隊が半分を伐ったとたん奥の玉座からボスモンスター《イルファング・ザ・コボルドロード》が出現した。それに伴って左右の壁の穴から《ルインコボルド・センチネル》がPOPした。

 

突入隊はこのようになっていた。

鉄板のじみたヒーターシールドを装備した戦槌使いの率いるA隊。その左斜め後方を、斧戦士エギル率いるB隊が後を追う。右にはディアベルとその仲間五人によるC隊と長身の両手剣使いの率いるD隊。更にその後ろをキバオウ率いる遊撃用E隊と長柄武器装備のF隊、G隊の3パーティーが並走する。そして、しんがりに俺達五人のパーティーがいた。

 

「《センチネル》の数は3体だ打ち合わせ通り行くぞ。俺達の相手は《センチネル》だ。レイン、ユウキ、ラン、アスナこっちだ‼」

 

四人は頷いてこっちについてきた。

 

「連携して行くぞ」

 

俺とレインが《スラント》の斜め斬りで《センチネル》の体制を崩し

 

「アスナ今だ。スイッチ!!」

 

アスナとスイッチし《センチネル》の喉元をアスナが細剣スキルの《リニアー》で攻撃する。その後に追撃でユウキとランが攻撃を仕掛ける。

 

「よし!この調子で行くぞ」

 

「「「「了解」」」」

 

闘いは優劣に進んでいた。前方《イルファング・ザ・コボルドロード》を見るとすでにHPゲージは4段の内すでに残り1本と半分になっていた。俺達も順調に《センチネル》を倒していた。

残りの《イルファング・ザ・コボルドロード》のゲージは1本となっていた。

俺は嫌な予感がして《イルファング・ザ・コボルドロード》を見ると嫌な予感は的中してしまった。

腰に装備していた剣がタルワールではなく《野太刀》だった。

 

「よし!俺がでる‼」

 

とディアベルが言い前に出た。

何でディアベルはこんなこと言ったんだ?まさかディアベルも元βテスターだったのか?ディアベルは俺を見て笑った気がした。だが《イルファング・ザ・コボルドロード》はすでにソードスキルを発動しようとしていた。俺は急いで全力で

 

「だ・・・・・ダメだ、下がれ!!全力で後ろに跳べーッ‼」

 

しかし俺の声は《イルファング・ザ・コボルドロード》の始動させたソードスキルのサウンドエフェクトにかき消された。

発動されたソードスキル カタナ専用ソードスキル、重範囲攻撃《旋車》がディアベルに当たった。

だが直ぐにはディアベルは動かなかった。まさかスタンしたのか?

ディアベルが攻撃を受けて動揺したのか攻撃していたプレイヤーは攻撃を停止してしまっている。

ディアベルが倒れた事によってパーティー全体に大きな影響が出ているようだ。

動ける者はディアベルを助けようとしたが間に合わなかった。

ディアベルは《イルファング・ザ・コボルドロード》の放った床すれすれの軌道から高く斬り上げられたソードスキル《浮舟》を喰らい空中に投げ出された。

それでスタンが解けたのか反撃しようしたが《浮舟》はスキルコンボ《緋扇》に繋げる技で最大防御をしなければならないが初見で防ぐ事は不可能だ。ディアベルは目にも止まらない上、下からの溜め突きを喰らってしまいHPゲージはイエローからレッドへどんどん減っていって止まらなかった。

 

「おい‼しっかりしろ!」

 

「く・・・・・キリトさん、後は・・・頼んだ。ボスを・・・倒してくれ」

 

「あぁ‼わかった。まかせろ‼」

 

ディアベルは俺の腕の中でそう言いポリゴンの欠片へと散り消滅した。

 

「何でや。ディアベルはん、何でリーダーのあんたが最初に死んでるんや」

 

俺はラストアタックボーナスをゲットしようとしたからだ、とは言えなかった。

 

「へたっている場合か‼」

 

「なんやと」

 

「ボスはまだ生きている。それに《センチネル》だってまだ湧いてくるかも知れないんだぞ。お前がしっかりしないとみんなが死ぬぞ‼」

 

「・・・・あんたはどうするんや」

 

「決まっているだろ。ボスのLAを取りに行くんだよ」

 

ディアベルの意思は俺が引き継ぐ。ディアベルは逃げろではなく倒せって言った。

 

「私も行くよ。キリト君のパートナーだから」

 

「私も行くわ。パーティーを組んでいるから」

 

「僕ももちろん行くよ」

 

「えぇ。私も行きます」

 

上からレイン、アスナ、ユウキ、ランが言って来た。

 

「・・・あぁ、頼むぞ。手順は《センチネル》と同じだ。行くぞレイン、アスナ、ユウキ、ラン」

 

「「「「了解‼」」」」

 

あの技はまさか居合い切り《辻風》か。

俺は走りながら片手剣基本突進技《レイジスパイク》を発動しボスとの距離を瞬時に積めてボスとのソードスキルを相殺した。

だが完全には相殺出来なかったのかアスナのフード付のケープを僅かに掠めた。それで切れたのかケープがポリゴンとなってアスナの髪がボス部屋の明かりに照らされる。

俺達以外のプレイヤーはアスナを見て静かになってしまった。

俺とレインは縦斬り《バーチカル》を発動させユウキとランは横斬り《ホリゾンタル》を発動させアスナは《リニアー》を繰り出した。

後ろのプレイヤー達にも助けて貰いたかったがHPゲージが回復してないため呼べなかった。今は俺達五人でやるしかないと思った。

どが俺達の連携は16回目で反応が一瞬遅れてしまった。

 

「しまっ・・・・・」

 

反応が遅れたためボスのソードスキル《幻月》を喰らってしまいHPが3割ほど削れた。

アスナとランは動きを止めたがレインとユウキは突っ込んでしまった。

ヤバイ。あのモーションはディアベルを殺した《緋扇》だ。

だがそれはレインとユウキを襲う前に止まった。

「おおおっー‼」と言う声が部屋中に響いた。声の主は斧戦士のエギルだった。エギルの放った両手斧系ソードスキル《ワールウィンド》で相殺されボスは大きくノックバックした。

 

「お前達が、回復するまで支えるぜ‼ダメージディーラーにいつまでも壁役を任せる訳にはいかないからな」

 

「すまん、頼む」

 

「命びろいしたよ。大丈夫キリト君」

 

「あぁ、大丈夫だ」

 

「「「キリト(君)(さん)大丈夫(ですか)」」」

 

「あぁ、すまない心配掛けた」

 

「次の連携で決めるぞ‼」

 

「「「「了解」」」」

 

「行くぞ!」

 

「レインは俺と一緒に《バーチカル・アーク》をユウキとランは《ホリゾンタル・アーク》をアスナは《リニアー》を頼む」

 

《バーチカル・アーク》はVの字に斬る2連撃《ホリゾンタル・アーク》は横に2連撃のソードスキルだ。

 

「「「うおおおおッッッッッ‼‼」」」

 

「「はああああッッッッッ‼‼」」

 

《イルファング・ザ・コボルドロード》はバランスを崩し身体に亀裂が走りポリゴンとなって消えた。

 

こうしてアインクラット第1層は一ヶ月掛かったがクリアされた。




レインはゲームと同じでユウキとランはマザーズ・ロザリオ編と同じです。

感想等お待ちしてます。


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SAO編 第6話〈第1層ボス攻略作戦後〉

さすがに考えるのって大変ですね。

誤字脱字があったらごめんなさい。


ボスが消滅したと同時に後ろの《センチネル》がポリゴンとなって消滅した。

本当に終わったんだな・・・・・・・。

視線を前に凝らすと大きな文字で

 

『Congratulations』

 

と書かれていた。

その文字を見た後後ろから「うおおおッッッッッ‼‼」と言う声が部屋中から聞こえた。

俺は、剣を左右に払って背中の鞘にしまってレイン達の方に向かった。

 

「お疲れさま、みんな」

 

「「「「お疲れさま、キリト(君)(さん)」」」」

 

すると斧戦士のエギルがこっちに来た。

 

「お疲れ。見事な剣技だった。コングラチュレーション。この勝利はあんたがもたらしたものだ」

 

「いや。みんなのおかげだよ」

 

「なんでや。なんでディアベルはんを見殺しにしたんや‼」

 

「見殺し・・・・・・・?」

 

「だってそうやろ。あんたはボスが使う剣技を知っていたやんけ!ディアベルはんは、その情報があれば死んで無かったはずや」

 

そうしている内に残りのメンバーも声を上げてきた。

そのうち一人のプレイヤーがこっちをに来て俺に指を突きつけてきた。

 

「お、俺こいつの事知っているぞ・・・・。こいつは、元βテスターだ。」

 

という声を聞き当たりからいろんな声が聞こえた。

 

(この流れはまずいぞ。)と俺は思った。俺はまだ出たいる《イルファング・ザ・コボルドロード》のLAを見たとき1つの案を思いついた。

 

後ろでずっと我慢していたエギルとアスナ、ランが口を開いた。

 

「おいっ、お前な・・・・」

 

「「あなたね・・・・・」」

 

だが俺は三人が話さないように手で制した。

 

「はははは。元βテスターだって。俺をあんな素人連中と一緒にしないでもらいたいな。良いか、良く思い出せよ。

SAOのCBT (クローズドベータテスト)はとんでもない倍率の抽選だったんだぞ。受かった千人の内本物のMMOゲーマーが何人がいたと思うんだ。そのほとんどが右も左もレベリングのやり方もわからない初心者(ニュービー)だったよ。まだあんたらのほうがマシなくらいさ」

 

「でも俺はあんな奴らとは違う。ボスのカタナスキルを知っていたのはβテスト期間中に誰も到達したことのない階でカタナスキルを使う敵と散々戦っていたからだ。他にも知っているぜ、情報屋なんか問題無いくらいにな」

 

「・・・・なんだよ。それ・・・・・。そんなのもうベータテスターどころじゃないだろ。・・・・そんなのもうチーターだろう。チーターだろうそんなの!」

 

「そうだそうだチーターだ。チーターだ」

 

あちこちからチーターという声が聞こえ「チーターにベータを掛けてビーターだ」と聞こえた。

 

「・・・《ビーター》良いなそれ。ーそうだ俺は《ビーター》だ。これからは元テスターと一緒にしないでくれ。」

 

俺はボスのLAでゲットした《コート・オブ・ミッドナイト》を装備した。コートのためかかなり丈が伸びている。

 

「第2層の転移門は俺が有効化(アクティベート)しといてやる。ついて来るのは構わんが初見のモンスターで殺されないようにしろよ」

 

と言うと俺はボスの玉座の後ろにある階段へ足を向けた。

エギルとアスナ、ラン、ユウキは全てわかっているようだった。

レインもキリトの後を追うとすると後ろから

 

「どこに行くんだ。あいつは《ビーター》なんだぞ」

 

と言って来た。

 

「あんた達は何を見ていたの。キリト君がいなかったら今ここにいるみんな死んでいたのかも知れないんだよ‼」

 

と言ってメニューから装備を《ドレス・オブ・レッドコート》にしてキリトの後を追った。

 

 

迷宮区次層階段

 

キリトには階段で追い付いた。

 

「たく。ついて来るなって行っただろ。」

 

「別にいいでしょ。私はキリト君のパートナーなんだから‼」

 

「ホントにいいのか、これから先は暗い道だぞ」

 

「構わないよ。キリト君といるなら。キリト君、私はね君がいるとこの世界が輝いているように思えるよ」

 

という会話をして第2層の扉を開いた。

すると後ろからアスナ、ユウキ、ランが来た。

 

「ま、間に合った。キリト君、レインちゃんエギルさんからの伝言があるよ。「ボス戦俺達と一緒にやろうぜ」だって」

 

「後はお願いがあるんだけど私、あなた達四人との繋がりを切りたくないないの、だからフレンド登録しない?」

 

「私はもちろんいいよ。キリト君も良いでしょ」

 

「あぁ、勿論」

 

「「僕(私)も良い(よ)(ですよ)」」

 

俺達はフレンド交換をした。その後ユウキ達はどうするのか聞いた。

 

「僕達はしばらくアスナと一緒に行動するよ」

 

「そうか。もし信用できるギルドに誘われたら断るなよ」

 

「うん、わかった」

 

そう言って三人は第1層へと戻って行った。

 

二人きりになった後

 

「それじゃ、これからよろしくな」

 

「うん。こちらこそよろしくね」

 

二人で第2層の転移門をアクティベートしに行った。




レインの装備した《ドレス・オブ・レッドコート》はそのままのドレス型の紅いコートです。

感想等お待ちしてます。

次回は月夜の黒猫です。


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SAO 編 第7話〈月夜の黒猫団との出合い〉

お待たせしました。
今回レインあまり出ません。ごめんなさい

それではどうぞ


第10層迷宮区

 

この層は、主にゴブリン達が根城にしている迷宮区だ。

俺は一人でここで武器の素材集めるため来ていた。

ここのモンスターは、囲まれても俺の全力のソードスキルで一掃でき、ダメージを喰らっても戦闘時回復《バトルヒーリング》スキルのおかげで長時間潜っていられる。

そんな時俺は、ゴブリンの集団一行から逃げているパーティーを見つけた。俺から見てもバランスの悪いパーティーだった。パーティーは五人編成だったが前衛は盾とメイスを装備した男一人で、後は短剣だけのシーフ型、クォータースタッフを持った棍使い、長槍使いが二人という編成だった。

俺は少し迷ったが手助けをする事にした。

 

「よろしければ、前衛支えましょうか?」

 

「すみません。お願いします。もしヤバそうだったらすぐに逃げてもらって構わないので」

 

「分かりました」

 

俺はパーティーの前衛に立ちモンスターが来たら上位ソードスキルは使わずに下位のソードスキルのみで戦った。

トッププレイヤーだとばれないようにするためだ。

俺はゴブリン一行を一掃したがこのまま迷宮区の出口まで送ったらほうが良いのかも知れないと思った。

また襲われたら元も子もないからな。

 

「よろしければ、迷宮区出口まで手伝いましょうか?」

 

「すいません。ありがとうございます。では出口までの護衛、頼んでも良いですか?」

 

「はい。分かりました」

 

それが俺とそのパーティー、《月夜の黒猫団》のギルドリーダー、ケイタとの初めてのだった。

 

 

第11層主街区「タフト」NPCレストラン

 

「ありがとう・・・・本当にありがとう・・・・助かったよ。凄く怖かったんだ。助けてくれて本当にありがとう」

 

この言葉を言ってくれたのはサチというプレイヤーだった。

 

「本当に助かりました。ありがとうございます。あのっ、あなたのお名前を伺ってもよろしいですか」

 

「コンビを組んでいるキリトだ。よろしくな」

 

「すいません。誰とコンビを組んでいるんですか?あと失礼を承知でお訊きしますがレベルは幾つほどですか?」

 

「ケイタ、敬語は無しで頼む。コンビを組んでいる相棒の名前は秘密だ。後レベルも秘密だ。すまない」

 

「そうなんだ。じゃあ、キリト。急にこんなこと言うのは失礼だと思うけど出来たら君達、僕逹のギルドに入ってくれないか?」

 

「・・・・・ちょっと待って欲しい。相棒にメッセージ送るから」

 

「分かった」

 

俺はレインにギルドの事を連絡した。

数分後、レインからメッセージが返って来た。

内容はこうなっていた『ギルドには、入らないけど協力することなら別に構わないよ~。細かいことはキリト君が決めてくれて構わないからね』と書いてあった。俺が《ビーター》であることを気遣ってそう指示されてあった。

本当あいつに何時も助けて貰ってばかりだな。本当あいつとコンビが組めて良かったと俺は思った。

 

「ケイタ、ギルドには入らないが手助けや、協力事ならしばらく構わないよ」

 

「そうか。それは助かるよ。それじゃ、しばらくの間お願いしても良いかな」

 

「あぁ。それじゃこれが俺の連絡先だ、何かあったらここに連絡くれ。それじゃ俺は帰るけど良いか?」

 

「分かった。今日はありがとう。じゃあまたな」

 

「あぁ。またな」

 

 

第30層主街区「ランベルク」

 

俺はレインに今日あった顛末を包み隠さず全て話した。

 

「今日は今話した通り《月夜の黒猫団》を助けたんだよ。

それでレインにも、手助けや協力をして欲しいんだけど良いか」

 

「うん。勿論私が出来る事なら何でもするよ」

 

「じゃあ、よろしくな」

 

第11層「タフト」NPCレストラン

 

俺はケイタに呼ばれて第11層に来ていた。

レインは今日第23層で素材集めをしていた。

 

「キリト。すまない、待たせたて悪いな」

 

「いや、大丈夫だ。それでケイタ今日はどうしたんだ?」

 

「うん。実は僕逹攻略組の仲間入りしたいんだ」

 

「何故?俺に聞くんだ?」

 

「あの迷宮区をソロで攻略出来るから何か知っているんじゃないかと思って」

 

俺はまさかこんなことを聞かれるとは思わなかった。

 

「そうだな、多分情報量の差じゃないかな。彼らは効率の良い狩り場や、レア武器等が手にはいる情報を独占しているしな」

 

まぁ、そこには当然俺も含まれているが。

 

「なるほどな。でも僕にはそれだけじゃない気がするんだよ」

 

「と言うと」

 

「彼らが強いのは意志力が強いからだと思うんだ。仲間を守り、このゲームから全プレイヤーを助けだすという意志の力だと僕は思う。だから攻略組逹は誰も見たことのないモンスターやボスモンスター達に挑戦して勝っているんじゃないかと思うんだ。僕らも今は守ってもらっているけどいつか他の人達を守りたいと思っているんだ。だから彼ららに追い付けると信じているんだ‼」

 

俺はまさかこのSAOでこんな考えを持っている人がいるとは、思ってもみなかった。

 

「そうか・・・・・・そうだよな」

 

俺はこのように答える事しか出来なかった。

 

「それでキリト。サチを槍から盾持ちの片手剣使いにコンバートしようと思うんだけど、どう思う」

 

それは無理な注文だなと思った。

 

「うーん。正直向いてないと思う。俺が助けた時サチは目を瞑ってモンスターと戦っていたんだ。前衛に転向させるのは自殺行為だと俺は思う。出来れば生産職に転向した方が良いと思うんだけど」

 

「なるほど。そうか。それじゃ前衛に入ってくれる人を探さないとな。キリトが入ってくれると助かるんだが」

 

「すまないがそれは出来ない」

 

「大丈夫。分かっているさ。今日はこの事の相談だったんだ。ありがとう、助かったよ」

 

「いや、構わないさ。また何かあったら呼んでくれ」

 

「うん。また頼らせて貰うよ。今日ありがとう。またね」

 

「おう、それじゃまたな」

 

俺はレインと第30層で合流した。

その夜ケイタからメッセージでサチが居なくなったと受け取った。

俺は第11層に移動し索敵スキルの《追跡》でサチを探した。サチがいたのは第11層の水路の脇でおそらく隠蔽スキルの能力付いたマントを着て隠れていた。

 

「サチ、なんだこんなところにいたのか。ギルドのみんな捜しているよ」

 

「キリトは、何でここだって分かったの?」

 

「何となく勘だな」

 

俺は索敵スキルはすでにコンプリートしていた。だがそれは口が裂けても言える筈が無かった。

 

「・・・・・そうなんだ」

 

やっぱりこの世界で捕らえられモンスターと戦うの日々は怖いんだな。と思った。

 

「みんな心配しているよ。みんなの所に帰ろう」

 

「ねぇ、キリト。一緒にどっかに逃げよ」

 

なにっ!?

 

「・・・・それは心中しようと言う意味?」 

 

「それも、良いかも知れない」

 

すまない・・・・・。俺には帰る場所があるから・・・。だから出来ない。

 

「キリト、私ね、死ぬのが怖い。怖くて此所最近よく眠れないの・・・・。ねぇ、何でこんなことになっちゃたの、何でこのゲームから出られないの。私達を閉じ込めて、茅場は一体何がしたいの。あの人の言っているのは本当なの?・・・こんなことして何の意味があるの?」

 

それを俺に言われても何も答える事が出来ないんだ。

だから俺が思っている事を言おう。

 

「多分、意味何て何も無いんだと思う。この世界が出来た時からもう何も無いんだと思う」

 

「・・・・そうか」

 

「さあ、サチみんなの所に戻ろう」

 

「分かった」

 

俺はケイタにサチが見つかったこと知らせケイタ達と合流してサチを届けた後第30層へと戻って行った。

 




どうでしたか?
第30層の名前はオリジナルです

感想等お待ちしてます

次回 月夜の黒猫団壊滅


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SAO編 第8話〈月夜の黒猫団の壊滅〉

現実が大変でなかなかすすまない。
待ってくれた方ごめんなさい。

それではどうぞ


俺とレインは第30層「ランベルク」にあるレストランで今日の予定を相談していた。

 

「レイン確か今の最前線は第34層だっけ」

 

「うん。今の所攻略組に死者はいないみたいだよ」

 

「そうか。レインは今日どうするんだ?」

 

「私?私は今日はちょっと攻略を休んで鍛冶スキルの熟練度を上げようかな」

 

「そう言えばレインは鍛冶スキルを取得していたな。後取得しているスキルは片手剣と索敵、隠蔽、料理、体術とかだったか?」

 

「うん。キリト君は確か片手剣と隠蔽、索敵、体術、投擲とかだっけ」

 

「あぁ、今日はレインの鍛冶スキルの熟練度上げに協力しようか?」

 

「えっ‼いいのキリト君」

 

「ん。あぁ、ちょうどレインの創る武器がどんなのか見てみたいと思っていたんだ」

 

「そうなんだ。いいよキリト君」

 

「んじゃ、今日はレインの熟練度上げかな・・・・・・って、ん?ケイタからメッセージが来ているな。何々、ふむふむ、なるほど。すまん、レイン行くところが出来た、また今度手伝うよ。ごめんな」

 

「う、ううん。大丈夫だよ。気を付けて行って来てね。行ってらっしゃい」

 

「おう。行って来るな」

 

俺はケイタに呼ばれて第11層「タフト」に転移し何時ものNPCレストランに向かった。

 

第11層主街区「タフト」NPCレストラン

 

俺は何時ものレストランに向かったがケイタの姿はなく代わりに残りのメンバーがいた。

 

「あれ?どうしたんだ。俺はケイタに呼ばれて来たんだが」

 

「ごめんね、キリト。今日はちょっとキリトの助けが必要だったんだ」

 

とサチが言ってきた。一応彼女とは、フレンド登録をしていた。

 

「助け?一体何があったんだ」

 

「実は俺達ギルドハウスを買うことになったんだ。それでケイタが帰って来るまでにお金を貯めて家財道具を全部揃えようと思うんだ。それでキリトに助けを求めたんだよ」

 

メンバーの一人のメイサーのテツオがそう言った。

 

「なるほどな~」

 

「キリト。お願い出来るかな」

 

サチが少しおどおどした感じで聞いてきた。

 

「別に俺は構わないよ。それで何層に潜るつもりなんだ?」

 

「あぁ。実は第27層の迷宮区に行こうと思うんだけど、どうかな」

 

俺はその言葉に少し考えてしまった。第27層はレインと一緒に攻略したがこの層の迷宮ではトラップが異様なほど多かったのだ。大半の攻略組は此所でかなり手間取ったに加え死者も出ていると聞いたからだ。だが俺は彼らを見て「良いだろう」と言ってしまった。

 

第27層迷宮区

 

「もう、かなり予定の金額になったな。それじゃそろそろ帰るか。ケイタがレストランで待って入るかも知れないしな」

 

とメイサーのテツオが言った。

俺達は2、3時間ほど迷宮区に潜っていた。全員のレベルがあがっていたおかげで順調に行くことが出来ていた。

 

「そうだな。皆、そろそろ帰ろう」

 

と俺が言い全員で迷宮区を出てケイタの待っているレストランに向かおうとした。その帰り道メンバーの一人のササマルが大きな宝箱を見つけた。俺とサチは開けることを反対したが残りのテツオ、ササマル、ダッカーの三人に押し負けてしまった。ダッカーが宝箱のトラップを解除しようとしたが失敗してしまった。トラップは最悪のアラームトラップだった。アラームに呼ばれ部屋のあちこちの扉からモンスターが出てきた。

 

「皆、今すぐ転移結晶で第11層に戻るんだ‼」

 

俺はそう指示した。だがトラップは二重に仕掛けられていた。

サチ達皆転移結晶で脱出しようとしたが、転移出来なかった。

 

「キ、キリト転移出来ないよ」

 

何、まさか結晶(クリスタル)無効化空間(エリア)か‼これも最悪のトラップの1つだった。結晶無効化空間ではあらゆる結晶アイテムが使用出来ない。つまり転移結晶も機能しないと言う事だ。俺はそう考えている間もアラームはなり続けどんどんモンスターが増えてきた。

 

「皆、こうなったらモンスターを倒すしかない」

 

俺達はモンスターと戦ったが俺以外は為すすべが無かった。まず最初にダッカーがモンスターに殺られポリゴンとなって消えた。俺は今まで隠していた片手剣上位ソードスキルを連発したが、また一人、一人とササマルとテツオまでポリゴンとなって消えて行った。俺はサチだけは助けなければと彼女の方に向かったが後少しの所でモンスターに斬られて俺の方を向いて何かを言った後ポリゴンとなって消えてしまった。その後俺はどうやって抜け出して第11層のレストランに戻ったのか解らなかった。

俺は何時ものレストランで皆を待っていたケイタにこれまでの経緯を全て話した。そして俺は《ビーター》でだと言うことを、話した。

 

「助けてくれたのは、感謝している。・・・・・でも《ビーター》のお前が僕逹と関わる資格何て無かったんだ」

 

彼はそう言った後自分の足で外周部へ行き飛び降りた。俺はケイタの最後言った言葉に心をぼろぼろに打ち砕かれた。その後はレインのいり第30層へと帰って行った。

 

第30層主街区「ランベルク」

 

「あ、お帰りなさい。キリト君」

 

「・・・・・・・」

 

レインは俺の様子がおかしいと思ったのか

 

「キリト君、何かあったの?」

 

「うるさい。何でもない‼」

 

「・・・そう」

 

「あっ、すまない、レイン大きな声を出して」

 

「ううん。キリト君の様子で何かあったのは直ぐに判ったよ。でも今は聞かないでおくよ。話せる時が来たらキリト君から話してね」

 

「分かった」

 

「さて、今日は私の所に来る?」

 

俺はレインからの提案に

 

「良いのか?」

 

「うん。今のキリト君は放っておけないよ」

 

と笑顔で言って来た。

 

「すまん。それじゃ、お世話になるな」

 

「うん」

 

その後俺とレインはレインの部屋へと一緒に行った。

 




レインはもう鍛冶スキルとっていましたね。
次回も楽しみにしてください。

次回クリスマスイベント


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SAO編 第9話〈背教者ニコラスとの戦闘〉

今回はかなり時間がかかってしまってすみません。

誤字脱字があったらごめんなさい。


俺は今一人で第41層にある経験値稼ぎが最も効率良いい《アリ谷》でモンスターのアリ達を連続で何時間も駆逐していた。

俺は最後のアリに先日片手剣の熟練度が950を越えるとソードスキルリスト出現した《ヴォーパルストライク》を放ちポリゴンの欠片に変えた。俺は此所最近この《ヴォーパルストライク》をかなり使用していた。理由は片手剣のソードスキルでありながらやや技後硬直の時間は長いが身の倍以上のリーチにそこに腕を限界まで伸ばすと槍の間合いの2倍以上になるに加え両手用の重槍に匹敵する威力があるからだ。対人ではタイミングを読まれてしまうがモンスター相手にはかなり有効であった。

俺は《アリ谷》での戦闘が終わった後その入り口にいた顔馴染みのギルドに右手でのろのろ「行ってくれ」言ったとするとメンバーの一人が

 

「わりぃ、オリャちょっとお前達とレベルの差が広いち待ったからな、今日は抜けとくわ。何時も通り円陣を組んで両隣の相手をカバーしながら戦えよ。もし女王アリが出てきたら直ぐに逃げろよ。分かったな」

 

その言葉に"彼"のギルドメンバーは、うす、おう、と返事をして《アリ谷》に入って行った。

 

「たくっ、キリト、オメェよ。まーた長時間潜っていたのかよ。ほら」

 

聞いてきた"彼"はクラインだった。あの時、デス・ゲームが始まった時見棄てた彼は自力で努力し誰一人としてメンバーを欠けさせる事なくここまで来たのだ。

 

「・・・・・何か悪いか」

 

俺はよれよれになりながらクラインから受け取ったポーションでHPを回復させながら言った。

 

「いや、そういやレインちゃんはどうしたんだ?」

 

「レインなら今寝ているよ」

 

「なるほどな。オメェ、レインちゃんが寝ている間ずっと此所でレベリングしていたのか。キリト、オメェがそこまでするのは5日後の12月25日のフラグイベントバトルが関係しているんだろ」

 

「・・・・・あぁ、そうだ」

 

俺はクラインの問いに肯定した。

 

「やっぱりか。オメェ、まだ例のギルドの件引きずってんのか。確か《月夜の黒猫団》だったか。だけどそいつらが死んだのはオメェのせいじゃないだろうが。メンバーが宝箱のトラップを解除出来なかったのが原因だろうが」

 

「うるさい。黙れ、俺のせいで俺以外全員死んだんだぞ!」

 

「てことはやっぱり、狙いはアレか。《背教者ニコラス》の袋の中には死んだ者を生き返らせる事が出来る神器があるって言われているアイテムだろ」

 

「あぁ、そうだ」

 

「ただの噂かも知れないんだぞ」

 

「それでも構わない」

 

俺はそう言ってクラインに背を向け現在泊まっている第47層《フローリア》に帰って行った。

 

~レインside~

 

キリト君また出掛けてんだ。もしかしてクラインさんから聞いた、フラグイベントバトルと半年前のギルドが関係しているのかな。今度、アスナやユウキ、ラン、クラインさんと話し合って相談してみよう。

 

~レインside out~

 

第47層主街区「フローリア」

 

俺はレインに気付かれない用に部屋に戻った。今日の戦闘で俺のレベルは68に到達した。レインとの差は10も離れてしまっていた。

昼間はレインとパーティーを組んで現在の最前線である第49層の攻略をしていた。そして夜になるとまた一人で第41層の《アリ谷》で戦闘していた。そして、そのまま5日すぎ12月24日の午後21時、俺は第47層の宿にあるクローゼットからありったけのポーション類や結晶アイテムを取りだし今装備している物からとっておきの剣と防具を引っ張り出し装備した。そしてアルゴから買った情報のもみの木のある第35層の迷いの森に向かった。

 

第35層主街区「ミーシェ」

 

俺は転移して背後に注意しながら地図を見ながら走ってもみの木のある印を付けた場所まで駆けた。

俺は途中途中索敵スキルを使い周辺を確認しながら移動しもみの木に繋がる最後のワープポイントに着いた。

俺が今装備しているのは俺が持っている中でかなり高性能の剣と防具、剣は「ナイト・オブ・レクイエム」、防具は「ダークネス・コート」という名称の装備を着けていた。

俺はもみの木に繋がるワープポイントに行こうとすると背後から複数のプレイヤー反応が出た、背後を視ると

 

「やっと追い付いたぜ」

 

「クライン、やっぱりお前か」

 

「キリト、俺達とパーティーを組め。そしてボスを一緒に討伐しよう。アイテムはドロップした者の物で良いだろ」

 

「なるほどな、だが断る。もしも俺の邪魔するならクライン、お前と言えども斬るぞ」

 

「やっぱりな、俺は、オメェを止められる人達を連れてきた‼」

 

「・・・・俺を止められる人?だと」

 

俺がクラインに問うとクラインは、横にずれて隠れていたプレイヤーを前に出した。

 

「なるほどな、お前達か。レイン、それにアスナ、ユウキ、ラン」

 

クラインが連れてきたのはレインだけではなくアスナやユウキ、ランまでも連れて来ていた。

 

「キリト君、クラインさんのいう通り私達と一緒にボスを倒そうよ」

 

「そうですよ。一人でフラグイベントのボスに挑むなんて無謀過ぎますよ」

 

「キリト君、事情があるのはわかるけどボスを一人で相手はランさんの言う通り無謀だよ」

 

「レインやアスナ、姉ちゃんの言う通りだよ。キリト、僕達とパーティーを組もうよ」

 

上からレイン、ラン、アスナ、ユウキが言って来た。

俺はレインがいるのは少し驚いたがアスナやユウキ、ランまでいるのは流石に予想外だった。

アスナは現在最強ギルドである「knights of blood (KOB )血盟騎士団」の副団長でありユウキとランは副団長としてのアスナの補佐を二人でやっているらしい。レインの装備は何時もの「クリムゾン・コート」にアスナとユウキ、ランは血盟騎士団の装備をアスナは赤、ユウキは黒と紫の基調のコート、ランは青と白を基調のコートを装備していた。

 

「いくら、お前達に言われても断る。もし邪魔するならクラインに言った・・・・ってクラインにレイン、お前達もどうやら尾行されていた様だな」

 

俺はレイン達に言った。

 

「アスナさん、クラインさん、アレ「聖竜連合」ですわね。レアアイテムを得るためならカーソルがオレンジになるのを躊躇わない連中ですね」

 

ランがその場の皆に言った。

 

「くっ、おいキリト、アレは俺達に任せて先に行け‼」

 

「キリト君、アレは私達に任せて先に行ってボスを倒して」

 

レインとクラインは同時に俺に向かって言った。その言葉に俺はもみの木に繋がるワープポイントに移動した。

 

第35層《迷いの森 もみの木前》

 

俺はもみの木の前に日付の変わる5分前に着いた。

ボスが現れるまで俺はアイテムと装備の最終をした。そして日付が12月25日午前零時になるともみの木上空から一つの巨大な影が降りてきた。

降りてきた影は地面に大きな振動を立てて姿を現した。

俺は遂にイベントボス《背教者ニコラス》と対面した。《ニコラス》はシステムに定められた言葉を喋ろうとしたのだろうが、

 

「うるさい。黙れ」と言いながら抜刀し一気に距離を詰め片手剣中位ソードスキル《ホリゾンタル・スクエア》4連撃を放った。《ニコラス》は基本的に斧系のソードスキルを使って来た。俺は神経を張り詰めさせて《ニコラス》の技をパリィやステップで避けるが広範囲の技は僅かにダメージを喰らってしまう。俺はHPがイエローになると下がり結晶やポーションで回復し直ぐに攻撃を開始した。

《ニコラス》のHPゲージは4段の内もう既に半分に減っていった。HPが一段減る事に《ニコラス》の攻撃パターンが変わって行った。俺は、《ホリゾンタル・スクエア》の4連撃の他《バーチカル・スクエア》の4連撃、ノックバックが発生する《サベージ・フルクラム》重攻撃3連撃、《スター・Q・プロミネンス》6連撃、《カーネージ・アライアンス》6連撃、等を繰り出し《ニコラス》のHPゲージを削り取り残り5%まで減らし俺は、《ヴォーパルストライク》からの片手剣上位ソードスキル《ファントム・レイプ》6連撃を放ち《ニコラス》をポリゴンの欠片に変えた。

俺は《ニコラス》を倒した後自信のHPゲージを視ると全てのポーションや結晶アイテムを使用したのにも関わらずレッドの危険域に入っていた。それを確認すると剣を左右に振り背中の鞘に納め《ニコラス》からドロップしたアイテム群をスクロールし目当てのアイテムを捜した。

そしてそれを見つけた。俺は震えながらそのアイテムを選択しアイテムを取り出した。そしてそれをタップしアイテムを確認した。

 

『アイテム名、還魂の聖昌石。このアイテムをメニューから使用を選ぶか、あるいは手に保持し《蘇生対象者のプレイヤー名》を発することで、対象プレイヤーが死亡してからその効果光が完全に消滅するまでの間(約10秒)ならば、対象死亡プレイヤーを蘇生させる事が可能です』

 

たった10秒、それがナーヴギアが人間の脳を破壊する時間か。俺は放心してそれを手に持ったままレインとクライン達がいる場所にワープした。

ワープした先ではクラインや彼のギルドメンバー、レイン、アスナ、ユウキ、ランが全員いた。

其処にいた全員ワープしてきた俺に視線を向けた。

 

「これが噂の蘇生アイテムだ。効果時間は10秒だ。今度はお前の目の前で死んだ者に使え」

 

俺はクラインにアイテムを投げ渡しそう言った。

俺はそのまま森を出た。後ろにはクラインのギルドメンバー以外、レイン達がずっと無言のまま着いてきた。

俺は第35層《ミーシェ》につき後ろにいた皆に声を掛けた。

 

「レイン、アスナ、ユウキそれにラン、今日はすまなかった。特にアスナ達は血盟騎士団の業務があるのに」

 

俺は後ろの4人に謝罪した

 

「ううん。大丈夫だよ、キリト君。私はキリト君が無事なら良かったよ」

 

「そうだね。全くキリト君はまた無茶するんだから」

 

「「そうだね~」」

 

「それじゃ、私達はギルドに戻るね。またね、キリト君、レインちゃん」

 

「うん。また何かあったら連絡するね、そっちも何かあったら連絡してね。それじゃ今日はありがとう」

 

「「「それじゃ、またね」」」

 

そう言ってアスナ達は帰って行った。

其処にいるのは俺とレインの二人きりになった。

 

「レイン、すまなかった。また迷惑を掛けて」

 

「そうだね。でももうすっかり馴れたよ。でも、もう絶対に一人で抱え込まないでね」

 

と言う会話をして俺とレインは第47層の《フローリア》に転移し帰って行った。




キリトの装備した剣と防具、レインの装備した防具はオリジナルです。


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SAO編 第10話〈第50層ボス攻略作戦〉

お気に入りが20件を超えました!ありがとうございます。

今回はオリジナル回です。

誤字脱字があったらごめんなさい。


俺達は、クリスマスイベントの後第49層の迷宮区を攻略しその日にボス部屋を見つけた。

翌日攻略組集団はボス攻略を開始した、ボスの名前は、《ザ・サイレントスカル》と言うアンデットタイプのボスで死者は0と言う結果で攻略完了した。

 

第50層主街区「アルゲード」

 

12月30日攻略組は第50層ボス部屋を5日と言う短期間で発見しその翌日ボス攻略作戦を開始した。そして俺とレインは攻略組として第50層ボス攻略作戦に出席していた。そのなかにはエギルやギルド風林火山のギルドリーダー、クラインも出ていた

 

第50層迷宮区ボス部屋前

 

俺達攻略組はボス部屋前にて最後の確認を行っていた。

 

「攻略組の諸君、これから第50層ボス攻略を始める。ボスの名前は「ザ・エンシェント・ロアー・ドラゴン」だ。調査隊によると防御が高く攻撃が余り通らないらしい。まず基本的に我が血盟騎士団が攻撃を止めるからその隙に攻撃をしてほしい」

 

血盟騎士団ギルドリーダー、ヒースクリフが攻略組に言った。血盟騎士団からはヒースクリフや副団長のアスナ、ユウキ、ランも集っていた。ヒースクリフは現在SAOの中で有一、ユニークスキルを所得していた。彼の持つユニークスキルの名は《神聖剣》剣と盾を自由自在に操りその盾を貫く攻撃はないと言われている。事実、彼のHPゲージがイエローまで落ちた事を誰も見たことが無いそうだ。

そう見ていると、

 

「では、諸君。生きて明日の元旦を無事に迎えよう。それでは、戦闘開始だ‼」

 

ヒースクリフが号令を掛け全員ボス部屋の中に入って行った。

 

「く、流石クォーター・ポイントのフロアボスってだけあって凄い威圧感だな‼」

 

俺は、ボス部屋に入りボスを確認して予想通りの考えを述べた。

 

「キリト君、いくよ‼」

 

「ああ、いくぞ‼コイツを倒して新年を迎えるぞ」

 

俺とレインは互いに声を掛けてボスへ突撃した。

 

ボス部屋前でヒースクリフが言っていた通り攻撃をしているが中々ボスのHPゲージが減らない。その上ボスのHPゲージは5段もあった。

 

「コイツ防御力高すぎないか?」

 

「キリト君、全然攻撃が通らないよ」

 

俺は幾度となく攻撃しているがいまだにボスの、HPは5%も削れて無かった。

俺はボスをもう一度みてある予想が立った。

 

「レイン‼少しの間でいいボスの動き止められないか?」

 

「えっ、わ、わかった。アスナちゃん、ユウキちゃん、ランさん、少し手を貸してくれないかな」

 

「え?レインちゃん?分かった。行くわよ、ユウキ、ランさん」

 

「「了解」」

 

アスナとユウキ、ランはレインと合流して、アスナは細剣ソードスキル《アクセル・スタブ》重攻撃3連撃、レインは片手剣ソードスキル《サベージ・フルクラム》重攻撃3連撃、ユウキは、《ホリゾンタル・スクエア》4連撃、ランは《シャープネイル》3連撃を繰り出しボスの動きを止めた。

 

「おおおッー」

 

俺はボスが止まっている間にボスの身体に上り、目に剣を突き立てた。するとボスのHPゲージが一気に15%ほど減った。それに伴いボスの動きが少し遅くなった。

 

「今よ。攻撃して」

 

ボスの動きが遅くなったに連れてアスナが指示をだし攻撃をした。

 

「よしっ、やっと大きく減ったか」

 

「「「キリト(君)(さん)、大丈夫(ですか)?」」」

 

レインとユウキ、ランが此方にに来て聞いてきた。

 

「あぁ、大丈夫だ。手伝ってくれてありがとうな。後もう一度確認したい事があるんだ。もし俺の予想が正しければ一気にHPゲージを減らすことが出来るかも知れない」

 

俺がそう問うと

 

「それは、本当かね?キリト君」

 

そう聞いてきたのは

 

「ヒースクリフ‼協力してくれるのか?」

 

「あぁ、ボスを倒せるなら勿論協力しよう」

 

「そうか、助かる。ヒースクリフ早速で悪いんだがボスの動きを止めること出来ないか?」

 

「む、可能だ」

 

「そうか、では頼む」

 

「任された。アスナ君、全体の指揮を頼む。ラン君はアスナ君の補佐をしてくれ」

 

「「分かりました」」

 

「ユウキ君は、ボスを牽制してくれ」

 

「了解」

 

「レインもユウキを手伝ってほしい」

 

「オッケー、分かったよ。行くよ、ユウキちゃん」

 

「うん」

 

「では行くぞ。キリト君」

 

「あぁ、勿論だ。頼む」

 

俺はヒースクリフと一緒にボスへと向かった。辺りではアスナとランが指示を出し、レインとユウキはボスへ牽制をしていた。

 

「ハアアアッ‼」

 

ヒースクリフは気合いの声と共に《神聖剣》ソードスキル《ガーディアン・オブ・オナー》重攻撃3連撃を繰り出し敵の攻撃を封じた。

 

「今だ。キリト君」

 

「分かった。ハアアアッ‼」

 

俺はボスのドラゴンならではの急所に《デッドリー・シンズ》7連撃を叩き込んだ。すると其所は弱点でもあったらしく一気にHPゲージが1本半消し飛んだ。

それに加えボスの鱗から光と輝きが消え普通の攻撃でもダメージが通るようになった。

 

「ヒースクリフ、これで攻撃が届くはずだ‼」

 

「了解した。アスナ君、ラン君、ユウキ君」

 

「「「はい」」」

 

「レイン、俺達も行くぞ」

 

「うん!」

 

こうしてボスに攻撃が通るようになったせいがボスの攻撃パターンは変わったが事前にヒースクリフの言っていた通り攻撃は血盟騎士団が防いでくれたから攻撃がかなりしやすかった。

だが俺が放った片手剣ソードスキル《インフィニット・エンプレス》8連撃でボスのHPが残り一段となった時ボスが攻撃パターンを変えて最後の足掻き見たいに攻撃を連発してきた。

流石に死者は出なかったが今の攻撃でほとんどのプレイヤーのHPがレッドゾーンに入っていた。だがボスは止めを刺すように攻撃をしようとしたがそこに入ったヒースクリフによって攻撃は何とか防がれヒースクリフにヘイトが移りプレイヤーの一団とは反対の無事な方へと連れてきた。

その間にレッドゾーンに入ったプレイヤーは回復結晶やポーションでHPを回復した。

 

「キリト君、一気に決めるぞ‼」

 

「あぁ、分かった。レイン達も協力してくれ!」

 

「「「了解‼」」」

 

俺達はヒースクリフと一緒にボスへと攻撃を開始した。

ボスの攻撃は全てヒースクリフが防ぎ俺達はヒースクリフとスイッチしてソードスキルを叩き込んだ。

このパターンを幾度となく繰り返し遂にボスのHPゲージが残り5%を切った。

 

「キリト君、LAは任せる。派手に決めてくれたまえ‼」

 

「それじゃ、遠慮なく殺らせて貰うぜ‼」

 

ヒースクリフが《神聖剣》ソードスキル《ゴスペル・スクエア》をアスナが細剣ソードスキル《オーバーラジェーション》12連撃、ユウキは片手剣ソードスキル《カーネージ・アライアンス》6連撃、ランは《スター・Q ・プロミネンス》6連撃をレインは《エヴァーティング・ストライク》7連撃を出し、

 

「ハアアアッ‼‼」

ラストに俺が片手剣最上位ソードスキル《ノヴァ・アセンション》10連撃を繰り出した。

 

「ギャアアアア‼」

 

ボスは最後に悲鳴を上げてポリゴンの欠片へと変えて行った。

 

『Congratulations 』

 

こうして第50層ボス攻略は死者数は0で完了した。

 

「よし、第50層ボス攻略完了だ」

 

俺はそう言い、辺りを見渡すとあちこちでは勝利に浸っていた。俺はレインと一緒にヒースクリフ達がいる場所に移動した。

 

「ヒースクリフ、ボス攻略お疲れさま」

 

「あぁ、キリト君。お疲れ。最後のソードスキルは見事だった」

 

「いや、レインやヒースクリフ達が協力してくれたおかげだ」

 

「構わぬよ。ボスを攻略出来るのならね」

 

「あぁ、そうだな」

 

俺はヒースクリフと話、レインはアスナ、ユウキ、ランの所に行っていた。

 

「諸君。ボス攻略完了、お疲れさま。ボスを倒したことで次層に続く扉が開いた。それでは第51層に向かおう」

 

ヒースクリフは皆によく通る声で言った。

その間俺はレイン達の所に移動した。

 

「皆、お疲れさま」

 

「あ、キリト君。お疲れさま。LA獲得おめでとう」

 

「サンキューなレイン。アスナ達も協力ありがとうな」

 

「ううん、大丈夫よ。お疲れさまキリト君」

 

「ええ、お疲れさまです。キリトさん」

 

「お疲れ~、キリト。」

 

上からレイン、アスナ、ラン、ユウキが言ってきた。

するとアスナが、

 

「にしても団長が協力してくれる何て驚いたわ」

 

「まぁな、俺も協力してくれる何て思わなかったさ」

 

「まぁ、良いんじゃないかな。ボスも無事倒せたんだし」

 

「そうですね。レインさんの言う通りです」

 

「よし。それじゃ第51層に行こうよ」

 

「「「「そうだ(な)(ね)(ですね)」」」

 

 

第50層迷宮区次層階段

 

次層に続く階段を攻略組全員で登っているとレインが

 

「そうだ‼キリト君、今日の大晦日、アスナちゃんやユウキちゃん、ランさんも呼んで良いかな?」

 

「そうだな。良いんじゃないかな」

 

「ほんと!?やった~♪それじゃ後でアスナちゃん達にメッセージ送ろ~」

 

レインは嬉しそうに言っていた。

 

第51層主街区「レーベル」

 

俺達は第51層主街区「レーベル」に移動し転移門のゲートを有効可(アクティベート)し解散した。

 

その後俺とレインはアスナ達にメッセージを送りホームのある第50層「アルゲード」に転移門を使い戻って来た。

 




今回出てきた二つのソードスキル《インフィニット・エンプレス》、《エヴァーティング・ストライク》はオリジナルのソードスキルです。

次回もお楽しみにお待ち下さい。
感想お待ちしてます。


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SAO編 第11話〈新年明けましておめでとう‼〉

現実雪が大変だよ。

今回もオリジナル回です。
誤字脱字があったらごめんなさい。



俺達は今日第50層のフロアボス攻略作戦に、参加した。

結果は死者0でLAは俺と言う形で完了した。

そして、

 

「二人共、今日は集まってくれてありがとうな」

 

俺は今、第50層にあるレインのホームでアスナ、ユウキ、ラン、クラインそしてエギルと一緒にボス戦後のお疲れさま会と称した。パーティーいわゆる年明けを待っていた。だがしかし、

 

「おうよ、キリト。今日のボス戦お疲れさま」

 

「あぁ、そうだぜキリト。最後ボスに決めたソードスキル見事だったぜ」

 

「ありがとうな、二人共。にしてもクライン、ギルドの方は良いのか?」

 

「あぁ。今日は大晦日だからな、ボス戦後は各自自由に過ごすように言ってあるから、大丈夫だ」

 

 

「なるほど。エギルは店良いのか?」

 

エギルは第50層主街区「アルゲード」の裏路地にある店を経営している。

 

「おう。ボス戦後一回戻ったが今日は元々店を閉めてあるから平気だ」

 

「そうなのか」

 

「そう言えば、キリトよ。レインちゃんやアスナさん達はどこに行っているんだ?」

 

「あぁ、女子達四人は大晦日の食材の準備をしているよ。四人とも料理スキルを取っているからな」

 

そう俺達男三人は大晦日の買い出し等を任されていた。

食材はエギルやレイン、アスナ達が持っていたが材量が足りなくなってこうして買い物に街を歩いていた。

そのついでに全員分の足りなくなっていたポーションや結晶アイテム類を補充し回っていた。

 

「よし、これで必要な物は全部買ったな。それじゃ二人共帰るか」

 

「おうよ」

 

「そうだな」

 

こうして俺達は買い出しに必要な物は終わったので女子達の待っているホームへ帰っていた。

 

 

~女子side~

 

「ねぇ、三人共料理スキルってどのくらい熟練度上がった?私は後少しで熟練度800に到達するよ♪」

 

「ん~とねぇ、私はレインちゃんと同じで後少しで熟練度が800になるかな」

 

「僕はまだ700前後だよ~」

 

「そうですね~、私はユウキより少し高い750くらいですね」

 

私達はキリト君とエギルさん、クラインさんが買い出しに行っている間にテーブル等のセッティングをしたりして待っていた。

 

「にしても三人共ギルドの方は大丈夫だったの?特にアスナ。アスナはギルドの副団長でしょ」

 

「ええ、大丈夫よ。団長にはちゃんと言って来てあるし、それに団長から大晦日はゆっくり休んで疲れを取るようにって言われてるの」

 

「そうなんだ」

 

その後私達はキリト君達が戻って来るまで料理について意見交換したり日常会話をしたりして待っていた。

 

~女子sideout~

 

「皆、ただいま。買い出し終ったよ」

 

「「「「お帰り(なさい)。買い出しご苦労様」」」」

 

俺達は買い出して来たものをレイン達四人に渡した。

 

「それじゃ、すぐ作り始めるからちょっと待っていてね」

 

俺達男三人はレインにそう言われリビングのソファーに腰掛けて話していた。

 

「おお、今日はレインちゃん達の手料理が食べられるのか。く~、ボス戦勝利して良かったぜ」

 

「おい、クライン。鼻の下伸ばしすぎだ」

 

「えっ、いや、そんなことねぇよ」

 

「嘘つけ。エギル、クラインの奴鼻の下伸ばしてたよな」

 

「ああ、見事に延びていたぞ」

 

「べっ、別に良いだろ。オリャ、キリトと違ってレインちゃん達の手料理を食べるのは初めて何だよ」

 

「俺だってレイン以外のアスナやユウキ、ランの料理は食べたことは無いけどさ。流石にクラインは鼻の下伸ばしすぎだ」

 

という下らない会話を男三人はして後は装備やおいしい食べ物屋の情報を意見交換していた。

 

 

~女子side~

 

「ねぇ、何作る?三人共」

 

私達四人はキリト君達から渡された食材アイテムを前に考えていた。

 

「ん~そうだね、大晦日だから年越しそばとかかな?幸いそばに似たアイテムはあるから」

 

「そうですね。後は天ぷらとかかですかね」

 

「うん。僕もそれで良いと思うよ」

 

「それじゃ決まりですね。早速始めましょうか」

 

「「「賛成~」」」

 

私達は作る料理を決め役割分担をして作った。

それから15分後、

 

「出来たよ。そっちはどう?」

 

「こっちも出来たわ」

 

「うん。僕と姉ちゃんも終ったよ」

 

「ええ、出来ましたよ。それにしたもSAOの中では料理が簡単に終わって何か味気ないですね」

 

「そうだね。でもそれがVRMMOの醍醐味の一つじゃないかな~。まぁ此処がデスゲームの中じゃ無かったらもっと良かったんだけどね」

 

「まぁまぁ、リビングで待っている三人の所に早く行こう」

 

私達はそれぞれ料理を手に持ちキリト君達のいるリビングに向かった。

 

~女子side out~

 

「三人共、お待たせ。料理出来たよ。」

 

女子達が台所からレインに続いて料理を持ってこっちに移動して来た。

 

「おお、やっとか。くー、良い臭いがしてくるぜ」

 

「ああ、ほんとだぜ」

 

「お疲れ、四人共。そう言えば食材アイテムは足りたか?」

 

俺はそう聞くとランが、

 

「ええ、結構な量ありましたけど全部使ってしまいました」

 

「そうか、足りて良かったよ。所で何を作ったんだ?」

 

俺が疑問に思い聞くと、

 

「えっとね、大晦日だから年越しそばと天ぷらでしょ。後は人数が多いからそれぞれ作って、私のがカルパッチョでしょ」

 

「私はローストビーフを作って見たよ。初めて作ったから味は保証しかねないけどね」

 

「僕はね、トッポギだよ」

 

「私は、油淋鶏です」

 

「へぇ、どれも美味しそうじゃないか」

 

「「「「えっ、ええと、ありがとう」」」」

 

「それじゃ、ご飯食べようか」

 

レインからご飯を食べようと言われて俺が乾杯の音頭を取った。

 

「それじゃ、いただきます!」

 

「「「「「「いただきます!」」」」」」

 

俺は目の前にある年越しそばを最初に食べた。

 

「おお!?美味しいじゃないかこれ‼」

 

俺はそう言い回りを見ると皆、俺と同じことを思っていたそうで「美味しい」と言っていた。

 

「にしても、今日で今年も終わりだね~」

 

レインが突然そう言い、

 

「そうだな。SAOで年越しをするのは2回目だな」

 

俺がそう言うと、

 

「そうだな。それにしてもよ、やっと半分を超したかでもまだ上に50層もあるんだよなぁ」

 

「そうだね。これから更に敵が強くなると思うと大変よ」

 

「ああ、全くだぜ。トラップも少し多くなるだろうし攻略が大変になること間違いなしだな」

 

クラインの言った言葉にアスナとエギルが同意した。

 

「そうですね。これからも気を引き閉めて行かなければ」

 

「うん」

 

後にランとユウキも同様に答えた。

その後は、攻略に関することをとこれからの事を食べながら皆で話し全員が食べ終わり、どうやらこのあと予定が入っているエギルとクラインはご飯を食べた後名残惜しそうに帰って行った。そして俺達五人になって他わいもない話をして時間を見ると時刻は23時50分になっていた。

 

「後10分で2024年か来年はどんな年になるんだろうね」

 

「多分、今年と同じじゃないかな」

 

レインからの問に俺はそう答えた。俺達は今ホームのテラス席に座ってお茶していた。

 

「ですね。私は出来れば来年の大晦日も皆で過ごしたいなって思います」

 

「ええ、それは私も同じよ。来年も生きて皆と年越しをしたいわ」

 

「僕も同じかな」

 

俺の後にラン、アスナ、ユウキと続いた。

 

「そうだ。これ。さっき食材を買ったときついでにポーションや結晶アイテム補充用に三人で買ったんだよ」

 

俺は買い出ししたときに買ったアイテム類をレイン達に送った。

 

「「「「あ、ありがとう(ございます)」」」」

 

「気にするな、お、後1分だな」

 

「あ、本当だ。10秒前になったら皆でカウントダウンしようよ♪」

 

「「「「良い(よ)(ですね)!」」」」

 

「やった~。あ、後20秒だ」

 

「よし。それじゃ、カウントダウン行くぞ」

 

カウントダウンが始まると俺達だけではなく周りからも聞こえた。

 

「「「「「10」」」」」

 

「「「「「9」」」」」

 

「「「「「8」」」」」

 

「「「「「7」」」」」

 

「「「「「6」」」」」

 

「「「「「5」」」」」

 

「「「「「4」」」」」

 

「「「「「3」」」」」

 

「「「「「2」」」」」

 

「「「「「1」」」」」

 

「「「「「0‼」」」」」

 

「「「「「新年明けましておめでとう(ございます)‼‼今年もよろしく(お願いします)」」」」」

 

「皆、これからもよろしくな」

 

「「「「うん(ええ)。こちらこそよろしくお願いします‼」」」」

 

こうして俺達は、新しい年を無事に迎えた。

 

 

 

その一方第39層主街区アーナイルにある血盟騎士団の本部にあるヒースクリフの執務室ではヒースクリフが一人で年を越していた。

 

「ふむ。ついに階層は50層を突破し残りは後半分か。それにしてもキリト君にレイン君かもしかしたら彼らなら残りのユニークスキルを所得出来るかも知れないな。」

 

そう言いヒースクリフは"左手"でメニューウィンドウを開いた。そこの一つをタップした。そこには全10種類のユニークスキルが表示されていた。

だが全10種あるユニークスキルの内《神聖剣》はヒースクリフが所得しているため白く光ってなくグレーになっていた。残りのユニークスキルは二刀流、多刀流、紫閃剣、神速、射撃、変束剣、抜刀術、暗黒剣、無限槍となっていた。

 

「私、個人的にはキリト君には二刀流をレイン君には多刀流を所得してもらいたいね。さて今年はどんな年になることやら楽しみだよ」

 

ヒースクリフは一人いる執務室で不気味に頬を緩ませ楽しそうに言って、年を越した。

 




今回のお正月回、考えるの大変だった。

今回はアスナやユウキ、ランを登場させました。
ユニークスキルは幾つかオリジナルです。

感想等お待ちしてます。


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SAO編 第12話〈竜使いの少女との会合〉

HF編をやるか原作通り行くか悩んでいます。
読みたい方を教えて下さると嬉しいです。

さて今回はシリカが出ます。

誤字脱字があったらごめんなさい。


「ピナ・・・・。お願いだからあたしを一人にしないでよ」

 

俺とレインは、ある用事で此処第35層の迷いの森に来ていたのだが何故かレインとはぐれてしまい探していたところ、この少女がモンスターに殺られそうになっていたため助けたのだか・・・どうやらその前に何かあったらそうだ。

時は数時間前の現在の最前線第58層「エンリル」の転移門広場に移る。転移門広場では一人の男が泣きながら、

 

「誰かお願いだ・・・・仲間の仇を討ってくれ。頼む。誰か仇を討ってくれ」

 

と言っていたのを俺とレインは気になりその男から事情を聞くことにした。

 

「なあ、あんたどうして仲間の仇を討ってくれ、って言っているんだ?」

 

俺が理由を聞くと、

 

「ああ、実は俺はギルド『シルバーフラグス』のリーダー何だがつい先日俺以外の中間全員死んだんだ」

 

その理由にレインが、

 

「死んだってことはモンスターの殺られたの?」

 

「いや、モンスターに確かに仲間は殺されたんだが、モンスターに殺される原因を作ったのは一緒に狩りをしようと言ってきた女プレイヤーのせいなんだ‼」

 

「「女プレイヤー?」」

 

「ああ、そいつと一緒に狩りをしていた時突然オレンジプレイヤーの団体が襲って来たんだ。その女プレイヤーも襲われるかと思ったがオレンジプレイヤーにその女は指示を出していたんだ。俺以外は全員麻痺毒に掛かって手持ちのアイテムを全て奪われて置き去りにされた所をモンスターになすすべなく殺られた。俺は命からがら逃げてきたんだ。頼む仲間の仇をあの女プレイヤー達にしてくれ。勿論殺してくれとは言わない」

 

そう言うと男はウィンドウから、

 

「これは俺の全財産をはたいて買った回廊結晶だ。行き先は第1層の黒鉄宮の牢獄に設定してある。これであいつらを全員牢獄に送ってほしい」

 

俺とレインはそう言われ互いの顔を見て同時に頷いた。

 

「ああ、勿論良いよ」

 

「本当か!?ありがとう」

 

「うん。それでその女プレイヤーとオレンジプレイヤーについて知る限りの情報を教えてくれないかな」

 

「ああ、女プレイヤーの名前はロザリアって名前だ。オレンジプレイヤー達の方は分からない。けどあいつらは俺達と一緒に狩りをしていた第35層にいるはずだ」

 

俺達はそう聞くと、

 

「分かった」

 

「任せて、仲間の仇を討ってくるよ」

 

と言って男から回廊結晶を受け取り第35層に移動した。

 

第35層迷いの森

 

「引き受けたは良いけど何処にいるんだ、ロザリアって奴は?」

 

「うーん。とにかく辺りを移動する?」

 

「そうだな」

 

こうして俺達は迷いの森の中で探索しPOPしたモンスター

は全て倒した。

 

「にしても全然いないな」

 

「・・・・・・・」

 

「あれ?レイン?レイン何処に行ったんだ」

 

俺はレインからの返答がなく後ろを向くと一緒にいたはずの相棒がいなくなっていた。

 

「まさか迷ったのか?仕方ない捜すか」

 

俺はそう言いレインを捜し回り『索敵』スキルで辺りを検索すると、すぐ近くで一人のプレイヤーと3体のモンスターが戦闘していた。俺は気になりそこに行くことにした。

 

~シリカside~

 

何でこうなったんだろ。あたしは自身にそう言いきかせていた。あたしは今使い魔のピナと一緒にこの森をさ迷っていた。

今日あたしはパーティーを組んでいる人たちと狩りをしていた。その戦利品の分配である女性プレイヤーと口論になり単独行動をしてしまった。単独行動をしたのは良いがこの迷いの森は転移結晶を使っても何処か別の場所に移動してしまったりしてこの場所の地図が無ければ出られなかった。

 

「次でこの森から出られますように」

 

あたしはそう念じたが次の場所に移動した途端、迷いの森の中で最強クラスの《ドラゴンクエイプ》3体と出会ってしまった。

あたしはすぐに腰に装備していた短剣『イーボン・タガー』を抜いて戦闘を開始した。

 

「はぁっ‼」

 

あたしは《ドラゴンクエイプ》の一体に狙いを定め短剣ソードスキル《ラピッドバイト》中距離突進技を命中させ更に《ファッド・エッジ》8連撃を繰り出し《ドラゴンクエイプ》のHPをイエローまで減らしたが他の《ドラゴン・クエイプ》とスイッチしてきた。あたしは直ぐにスイッチしてきた《ドラゴンクエイプ》に新たに狙いを定めHPを削りにかかった。すると最初に相手した《ドラゴンクエイプ》は左手に持っていた壺を煽っていた。

あたしは《ドラゴンクエイプ》のHPゲージを見るとかなりの速さでHPが回復していたのを見てとれた。あたしは瞬時に今相手している《ドラゴンクエイプ》に止めを刺そうとするとまたしても他の《ドラゴンクエイプ》がスイッチしてきた。

あたしは徐々に追い詰められて行き遂に《ドラゴンクエイプ》のクリティカルでHPが一気に残り7割になった。ピナは時々あたしのHPゲージを回復させてくれる回復(ヒール)ブレスを放ってくれるがそれは1割程でそう頻繁に使えるものじゃない。あたしは『死』と言う恐怖に立ち竦みそこに《ドラゴンクエイプ》の攻撃を喰らい残りHPが2割を切った。そこに《ドラゴンクエイプ》が攻撃を加えて来るのを私は見つめることしか出来なかった。あたしは『死』を覚悟したがそこにピナが割って入り変わりに攻撃を受け「きゅる・・・・」と鳴いてポリゴンの欠片になって消えてしまった。

あたしはピナが消えたことで動けなくなってしまった。そこに攻撃を加えようと《ドラゴンクエイプ》が棍棒を振り上げるが背後からの攻撃によって3体まとめてポリゴンとなって消えた。その背後から一人の男性プレイヤーが立っていた。相手は右手に握っていた片手剣を背中の鞘にしまい、こっちに来て口を開いた。

 

「・・・・すまなかった。君の友達を助けられなかった」

 

あたしはその声を聞いた途端次々と涙が出てきた。

あたしは嗚咽を漏らしながら、

 

「ピナ・・・・。お願いだからあたしを一人にしないでよ」

 

~シリカside out~

 

時は今に至る。

俺は泣いている少女に、

 

「なあ、そのアイテム何か名前付いているか?」

 

俺は泣いている少女にそう聞いた。

 

「え、えっとアイテム名『ピナの心』」

 

少女はそれを言ったとたんまたしても泣いてしまった。

 

「ま、待った。『心』が残っているなら蘇生出来る可能性がある」

 

俺がそう言うと、

 

「えっ?」

 

「実は最近になって分かった事なんだけど、第47層の思い出の丘って場所に使い魔を蘇生させることができる花があるらしいんだ」

 

俺は泣いている少女にそう伝えると、 

 

「本当ですか‼。あ、でも第47層ですか。情報ありがとうございます。今はムリでも何時かは・・・」

 

「いや、使い魔を蘇生させることが出来るのは死んでから3日以内何だ。それが過ぎると『心』から『形見』に変わってしまって2度と蘇生出来ないんだ。しかも使い魔を亡くしたビーストテイマー本人が行かないと肝心の花が咲かないらしいんだ」

 

少女はまたしても泣きそうになってしまい俺はどうしたら良いんだと思った。

 

~レインside~

 

「あれ~またしても違う場所だ。早くキリト君と合流しないとな~」

 

私はキリト君と一緒に歩いていたが幾度かの転移ではぐれてしまった。

そしてキリト君を探していたところ《ドラゴンクエイプ》が6体出てきた。

私は片手剣を構え片手剣ソードスキル《ホリゾンタル》を繰り出し全ての《ドラゴンクエイプ》を一撃でポリゴンの欠片にした。

そして辺りを見渡すとキリト君が知らない女の子と話し女の子が突然鳴き始めた。

 

「キ、キリト君?何女の子泣かしてんの」

 

私は少し動揺しながらキリト君の方へ向かった。

 

~レインside out~

 

俺は泣いている少女を見ながらどうしようかと悩んでいると後ろから、

 

「キ~リ~ト君?何女の子を泣かしてんのかな?」

 

「レイン!?いや違うぞ。この子が泣いたのは俺のせいじゃ無いからな」

 

俺はレインからの殺気に怯みながら、レインの方を向いて事情を話した。

 

「そういう訳なんだよ。手伝ってくれないか?」

 

「私は勿論良いよ。最初からそのつもりだったし」

 

「そうか、サンキューな」

 

そうして俺達は少女の方に向いて話した。

 

「初めまして、私は名前はレインだよ。よろしくね。そして此方の人はキリト君だよ」

 

「すまない。自己紹介が遅れたな、俺の名前はキリトだ。よろしくな」

 

「え、あ、はい。あたしの名前はシリカです」

 

「うん♪シリカちゃんかよろしくね。私達が君の友達の使い魔の蘇生に手伝ってあげるよ」

 

レインがそう言うと、

 

「え、いいんですか?」

 

「ああ、勿論」

 

「ありがとうございます」

 

「よし。それじゃこの森を出ようか。シリカ君のホームは何層?」

 

「え、えっと第8層です」

 

「そうなんだ。それじゃシリカちゃんのホームで明日について話そうか」

 

「そうだな。よし、行くか」

 

俺とレイン、シリカは第8層に移動するため行動を開始して森を抜け出た。

 

第8層主街区「フリーベン」

 

「それじゃ、シリカちゃんのホームに行こうか」

 

俺達は第8層に転移して明日の事を話すためシリカのホームに移動した。

すると移動してしばらくすると一人の女性プレイヤーがこっちに来た。

 

「あっれ~シリカじゃない。あの森抜けられたのね。あら、あのトカゲはどうしたのかしら?」

 

「く・・・・ピナは・・・死にました。でも必ず生き返らせて見せます‼」

 

「ふーん。つまり思い出の丘に行くつもりなのね。でも一人で行けるの~」

 

女性プレイヤーはシリカを小馬鹿にするように言ってきた。

 

「別に彼女一人で行くんじゃないよ。俺達も一緒に行くんだよ」

 

「あら。貴方誰かしら?見ない顔だけど本当に強いのかしら?」

 

「うるさいよ、そこのおばさん。貴方には関係無いことだと私は思うけどな?」

 

「レイン落ち着け。二人供行こう」

 

俺はそう言い二人を連れ添って移動してシリカのホームに着いた。

 

「そう言えば、お二人は何時も何処にホームを構えているんですか?」

 

「俺達は何時も第50層だけど、今日はここで良いか。レインもそれで良いか?」

 

俺はシリカの問いに答えレインに確認した。

 

「うん。私は構わないよ。キリト君と一緒なら」

 

「OK。シリカそんな訳で俺達も今日は此処に泊まるよ」

 

「そうですか」

 

「それじゃ、俺達の部屋で明日について話そうか。少ししたら部屋に来てくれ」

 

「分かりました」

 

俺とレインはシリカと一旦別れ部屋に行き入るとレインが、

 

「ねぇ、キリト君。さっきの女性プレイヤーがもしかしたら私達が探しているロザリアって人なんじゃないかな?」

 

「ああ、多分そうだろ。シリカには悪いけど囮になってしまうかもしれないな」

 

「そうだね。でも大丈夫だよ。私がシリカちゃんの護衛に付くから」

 

「悪いが、頼む。所でレイン、鍛冶スキルはどのくらいになった?」

 

「えっとね~後少しで熟練度が950に到達するよ」

 

「そうか。レイン、短剣ってあるか?」

 

「鍛冶スキルで造ったやつがあるよ。それをシリカちゃんにあげとくよ」

 

「流石だな。防具類はこれ等で良いか。一応今シリカが装備しているやつよりは高いはずだ」

 

二人で話していると扉がノックされシリカの声が聞こえ俺はシリカを部屋の中に入れた。

 

「お、お邪魔します」

 

「いらっしゃい、シリカちゃん。それじゃ明日について話そうか。何処か適当な所に腰掛けて」

 

「あ、はい」

 

俺はレインとシリカのやり取りをしている間に話しの準備をしていた。俺はテーブルの上に一つのアイテムを載っけた。

 

「あ、キレイですねこれ。何て言うアイテム何ですか?」

 

「これは『ミラージュ・スフィア』ってアイテムだ。これを使えばフロア全体が見えるんだ」

 

「へー」

 

こうしてしばらくの間明日の説明をしていたとき俺とレインは誰かに聞かれている気配を感じた。

俺とレインは目配せをして、

 

「キリトさん?。レインさん?どうしたんですか?」

 

シリカがそう言った途端に俺達は、

 

「「誰(だ)」」

 

と言い扉を開けたが誰も居なかった。どうやら逃げられたようだった。

 

「く、聞かれていたな。レインこれは多分明日」

 

「うん。多分そうだろうね」

 

俺とレインは明日絶対何かが起こると言うことを予感しシリカに防具と武器を渡し各自それぞれ明日に備えた。




どうでしたか。

次回もお楽しみにしててください。
感想等お待ちしてます。


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SAO編 第13話〈《黒の剣士》と《紅の剣舞士》〉

タイトルを「黒の剣士と紅の剣舞士二人の双剣使い」に変更しました。

誤字脱字があったらごめんなさい。


俺達は昨夜のいざこざがあった後それぞれ部屋に戻り、翌朝宿屋の一階で落ち合うことにした。翌朝俺達は装備を整え下に下りた。そこには既にシリカが座って待っていた。

 

「おはよう、シリカ」

 

「おはよう~シリカちゃん。準備出来てる?」

 

「おはようございます、キリトさん、レインさん。準備はとっくにできてるので大丈夫です‼」

 

「よし、それじゃ朝食を食べたら第47層に行こう」

 

「はい‼」

 

「オッケー♪」

 

俺達は宿屋の一階で落ち合った後近場のNPCレストランに行き朝食にした。その後俺達は転移門広場に行き第47層に転移しようとしたが、

 

「あの、そう言えばあたし第47層の名前知らないんですけど」

 

「大丈夫、俺達が指定するから」

 

「シリカちゃん、私の腕に掴まって」

 

「はい、分かりました」

 

「「転移・フローリア‼」」

 

第47層主街区「フローリア」

 

俺達はシリカを連れて第47層に転移した。

第47層に着くとシリカが興奮したように辺りを見渡し、

 

「わぁ。此処が第47層ですか‼キレイなところですね!」

 

「うん。ここはフロア全体が花に覆われているんだよ。第47層は通称「フラワーガーデン」って呼ばれているんだ♪」

 

「へぇ、そうなんですか」

 

「感動している所悪いが、さっそく『思い出の丘』に行こうか」

 

「あ、はい」

 

俺達は主街区を出て『思い出の丘』を目指し移動を始めた。その時シリカが俺に、

 

「そう言えばキリトさん。何で手伝ってくれるんですか?」

 

「え、え~と、その。シリカ、君が俺の妹に似ているからかな」

 

俺がそう言うと、レインが、

 

「え‼キリト君に妹がいるの‼」

 

「ああ、と言っても義理の妹だけどな」

 

「そうなんだ。今度キリト君の義妹について聞かせてね♪」

 

「分かった。今度な」

 

俺がそう言うとレインがシリカに、

 

「そう言えばシリカちゃん、昨日渡した装備着けているんだ」

 

 

「はい。折角貰った物ですしあたしが前装備していた物よりも高性能だったので」

 

シリカは今昨日着けていた装備ではなく昨夜レインが渡した装備を着けていた。今シリカが装備している短剣はレイン作の「エンシェント・ブレイカー」、防具は上層でドロップした「レッドクロス・アーマー」だ。

 

「シリカ、その装備で一応君のレベルは8くらい上がっているけどもしも俺とレインが逃げろって言ったら何処か適当な層に転移してくれ」

 

俺はシリカに転移結晶を握らせて言った。

      

「わ、分かりました」

 

そう会話をしどんどん奥に行っていった。

途中POPしてきたモンスターは基本的シリカに倒させ俺とレインはシリカがヤバそうになったらフォローに入る形にしていた。シリカがこの層のモンスター達に慣れ始めた頃にモンスターが1体POPしてきた。シリカは危なげなく戦闘をこなし後少しで倒すとした時、

 

「や、やああああ‼ちょと~なにこれ~」

 

モンスターの蔦ががシリカの足に巻き付きシリカを宙吊り状態にした。

 

「キ、キリトさ~ん助けてください~」

 

「え、え~とごめん、ムリ」

 

シリカがそう言って来ているが俺は動けなかった。理由は後ろから物凄い殺気と剣をこっちに向けているレインが原因だった。

 

「キ~リ~トく~ん。絶対に見ちゃ駄目だからね。もしも見たりしたら、どうなるかわかるかな~」

 

レインが俺に殺気を向けているのはシリカの装備がスカートで今にも見えてしまいそうだからだ。

 

「シリカちゃん、両手使って良いよ。私がキリト君に見せないようにしているから」

 

「は、はい。分かりました。この、いい加減にしろ~」

 

シリカは両手を使いモンスターの蔦から抜け出し短剣ソードスキル《インフィニット》5連撃を繰り出しモンスターをポリゴンの欠片にした。

 

「な、なあ終わったなら剣を戻してくれませんか?レインさん」

 

「ああ、忘れてた。いいよ。・・・・・・って、きゃあぁぁぁぁぁぁぁ」

 

俺は後ろを見るとレインがモンスターに捕まり先程のシリカと同じように宙吊りになっていた。

 

「キ、キリトく~ん」

 

俺はモンスターに片手剣ソードスキル《バーチカル・スクエア》4連撃を放ちモンスターをポリゴンへと変え頭上から落ちてくるレインを受けとめた。

 

「あ、ありがとうキリト君」

 

「全く、気を付けろよレイン」

 

「あ、あはははは。ごめんね」

 

そのやり取りを見ていたシリカは、

 

「キリトさんとレインさんって本当に仲が良いですね」

 

「「そうか(な)?」」

 

「ええ」

 

「まぁ、こいつとは第1層からの長い付き合いだからな」

 

「そうだね。最初からずっと一緒にいたからね~」

 

「そ、そうなんですか」

 

シリカはその答えに少し戸惑った。その後はたいして苦労することなく『思い出の丘』にたどり着く事ができた。

 

「ここが『思い出の丘』ですか?」

 

「うん。あそこにある石の祭壇に行くと使い魔を蘇生させる事の出来るアイテムが出るんだよ」

 

「そうなんですか」

 

そうして俺達は『思い出の丘』の頂上にある祭壇にやって来たが、

 

「あれ、キリトさん、レインさん何もないよ」

 

「「え、そんなはずは。あ、シリカ(ちゃん)アレ」」

 

祭壇に着くとしばらくして真ん中から花形のアイテムが出てきた。

 

「さあ、シリカ」

 

「はい」

 

シリカは花形のアイテムに触り採取した。

アイテム名『プネウマの花』

 

「よし。アイテムもゲットしたし早く宿屋に戻ってシリカの友達を蘇生させてあげよう」

 

「はい‼」

 

アイテムを採取した俺達は丘を下りて「フローリア」に向かった。

橋に差し掛かったその途中、

 

「・・・・レイン」

 

「うん。キリト君」

 

「キリトさん?レインさん?どうしたんですか?」

 

俺とレインは目配せをしてレインはシリカの側に俺は前に出た。

 

「おい‼そこに隠れている奴出てこい‼」

 

俺は橋の奥にある木々に向かって声を出した。

すると木々の影から一人のプレイヤーが出てきた。その姿にシリカが、

 

「え、ロザリアさん・・・・!?」

 

「アタシのハイディングを見破るなんて、なかなか高い索敵スキルね、そこの二人の剣士サン。この間見たとき少し侮っていたわ」

 

レインはシリカを守るように少し後退した。

 

「さて、それじゃさっそくその花を渡してちょうだい」

 

その言葉にシリカが、

 

「・・・・な・・・・何を言っているの・・・・」

 

「そうは行かないな、ロザリアさん。いや、犯罪者(オレンジ)ギルド《タイタンズハンド》のリーダーさん、と言ったほうが言いかな」

 

俺の言葉にシリカが、

 

「え、ロザリアさんがオレンジプレイヤー?。でもロザリアさんのカーソルはグリーン・・・・」

 

シリカの言葉にレインが説明した。

 

「シリカちゃん、オレンジギルドと言っても全員がオレンジって訳じゃ無いんだよ。グリーンカーソルのメンバーが街で獲物を探し、パーティーに潜りこんで自分の仲間の所に誘導する。昨夜私達の話を盗み聞きしていたのは彼女の仲間だよ」

 

「正解よ。今回の獲物はあんただったんだけど何かレアアイテムを取りに行こうとしているかららしいからそっちにすることにしたのよ。それにしてもそれが分かっていて一緒にいるなんて馬鹿なの貴方達二人は」

 

「いや、俺達もあんたを探していたんだよ」

 

「どういうことかしら?」

 

「貴方この間《シルバーフラグス》ってギルドを襲ったでしょ。メンバーはリーダー以外死んだ。私達はそのリーダーに頼まれて貴方を捜していたんだよ」

 

「へぇ、何で?」

 

「そのリーダーの男はな、最前線で泣きながら仇討ちをしてくれるやつを探してたんだよ。でもなその男は引き受けた俺達にあんた達を殺してくれではなく、黒鉄宮の牢獄に入れてくれと言っていたよ。あんたに仲間を失った彼の気持ちが解るか?」

 

俺は怒気をはらんだ声でそう言った。

 

「解んないわよ、そんなの。此処で死んだって必ずしも現実で死ぬとは限らないでしょ。別にどうでもいいじゃない。それでその男に頼まれてのこのことやって来た訳だけどあんた達3人でなんとかなると思ってるの」

 

すると橋渡った先の木々から次々とプレイヤーが出てきた。その数全部で十。その中に一人だけカーソルがグリーンのプレイヤーがいた。恐らくそいつが昨日俺達の会話を聞いていたやつだろう。それ以外のプレイヤーはオレンジカーソルだ。

 

「キ、キリトさん、レインさん。人が多すぎますこのままでは・・・・」

 

怯えるシリカにレインは、

 

「ふふ。大丈夫だよ、シリカちゃん。キリト君に任せて置けば大丈夫。私が逃げろ、って言うまでは結晶を用意してそこで見ていて」

 

「キリト・・・・?レイン・・・・?」

 

その言葉を聞いたオレンジプレイヤーの一人が顔をしかめ記憶を探るように視線を前に向けた。

 

「その格好・・・・盾なしの片手剣使い・・・・。そして、同じく盾なしの片手剣使いの女性プレイヤー・・・・。まさか《黒の剣士》と《紅の剣舞士》?や、ヤバイよ、ロザリアさん。こいつ元βテスター上がりの、こ、攻略組だ‼」

 

男の言葉を聞いて残りのメンバーの表情が強張った。シリカも勿論驚愕の顔をしていた。

 

「こ、攻略組がこんな低層にいるわけないじゃない!どうせ名前を騙った偽物に決まっている。それに本当に攻略組だとしても、この人数でかかれば余裕だろ‼」

 

その声にオレンジプレイヤー達は次々と抜剣しこちらに向かって来た。

 

「そ、そうだ。もし攻略組ならレアアイテムとか持っているかも知れないぜ。良い獲物じゃないか」

 

オレンジプレイヤーが次々と俺に剣や槍を叩き込んだ。

その光景にシリカが、

 

「レ、レインさん。このままじゃキリトさんが」

 

「大丈夫。キリト君のHPゲージを見てごらん」

 

レインは余裕でキリトを見ていたのに気付きキリトの方へ視線を向けると、シリカはキリトのHPゲージが減ってもすぐに回復してしまうのに気付いた。

その光景に襲っていた男達も動きを止め戸惑いの表情を浮かべた。

 

「なるほど。10秒間に受けるダメージは約400、これがお前達が俺に与えるダメージだ。そして俺のレベルは78、更に戦闘時回復(バトルヒーリング)により10秒で600回復するから何時までやっても俺は殺せないよ」

 

俺の言葉に襲って来たメンバーの一人が掠れ声で、

 

「そんなのアリかよ。そんなのムチャクチャじゃねぇかよ・・・・・」

 

「ああ、そうだ。たかが数字が増えるだけで、そこまでムチャな差が付くんだ。これがレベル制MMORPGの理不尽と言うものだ‼」

 

俺は怒気を含む冷たい声で言った。

 

「チッ・・・・」

 

ロザリアは舌打ちをし、腰のポーチから転移結晶を取りだし、

 

「転移・・・・」

 

だが俺は瞬時に距離を詰めロザリアの手を掴み転移結晶を奪い取った。

 

「これは、俺達に依頼した男が全財産を使って購入した回廊結晶だ。行き先は黒鉄宮の牢獄に設定されてある。お前達にはこれに入ってもらい牢獄に飛んでもらう。もしも嫌だと言うなら」

 

俺は懐に入れていたナイフを取り出した。そのナイフには薄緑色の粘液で濡れていた。

 

「これを使う。レベル5の毒だから10分は動けないぞ。自分で入るか俺に投げ入れられるか決めな」

 

俺はそう言うと、

 

「コリドー・オープン‼」

 

回廊を開くとロザリアを除くメンバーが次々と中に入って行った。

 

「やれるものならやってみな、もしアタシを攻撃すると言うなら・・・「もう、キリト君さっさと入れちゃいなよ」」

 

レインはロザリアの服の襟を掴みポーンと回廊に投げ入れた。

 

「レ、レインやり過ぎじゃないか」

 

「そんなことないよ~」

 

そう言うやり取りをしてシリカのいる所に向かった。

 

「ごめんな、シリカ。君を囮使うような真似をして。攻略組だと話したら怖がられると思って」

 

「ごめんね、シリカちゃん」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「それじゃ、ホームに戻ってシリカ、君の友達を蘇生させようか」

 

「はい‼」

 

こうして俺達は主街区に戻り第8層に転移した。

 

第8層主街区「フリーベン」宿屋

 

「お二人はもう行くんですか?」

 

「うん。早く最前線に戻らないといけないんだ」

 

「そうですか」

 

「ふふ。大丈夫だよシリカちゃん。また会えるよ。そうだフレンド登録しようよ」

 

「はい‼良いですよ」

 

俺とレインはシリカとフレンド登録した。

 

「それじゃ、シリカ、君の友達を蘇生させよう。アイテムの中にある雫を『羽』に掛けると蘇生するはずだよ」

 

「解りました」

 

シリカはアイテムストレージから『プネウマの花』を選びだしその中身をピナの『羽』にかけた。

俺達はシリカがピナを蘇生させたのを見た後シリカに声をかけて俺達のホームがある第50層「アルゲード」に転移した。

 

第50層主街区「アルゲード」

 

「良かったねキリト君。シリカちゃんの友達のピナちゃんが生き返って」

 

「ああ、そうだな。さて明日からまた最前線の攻略をしようとするか‼」

 

「うん」

 

俺達は翌日予定通り最前線である第58層の攻略に取り掛かった。




次回はオリジナル回の予定です。

感想等お待ちしてます。
HFか原作通り進めるかアンケートを取っていますのでよろしくお願いします。


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SAO編 第14話〈新たなスキル〉

ごめんなさい、今回はかなり短いです。


誤字脱字があったらごめんなさい。


第50層主街区「アルゲード」ホーム

 

「ん?何だこのスキル。聞いたことないスキルだな。レインに相談してみるか」

 

俺は偶然開いたスキルリスト欄に聞いたことがないスキルが追加していたためレインに相談するため、彼女の家に向かった。

 

「レイン、いるか?」

 

「ん?どうしたの、キリト君?」

 

「ああ、実は相談したいことがあってな、部屋に入っても良いか?」

 

「うん。良いよ♪」

 

俺はレインから了承をもらい彼女の部屋に入って椅子に座り早速俺に追加されたスキルについて相談する。

 

「実はたまたまスキルリストを開いたら聞いたことがないスキルが追加されていたんだが、何か知らないか?」

 

「そうなの?あ、そう言えば私もキリト君に聞きたい事があるんだ」

 

「ん?どうしたんだ」

 

「うん。実は私もスキルリストを開いたら聞いたことないスキルが追加されていたんだ」

 

「へぇ。俺と同じか」

 

「うん。私の追加されたスキルは『多刀流』ってやつなんだけど。あり得ないくらい補正があるの」

 

「俺は『二刀流』だ。俺も同じくこのスキル、補正がチートレベル何だよな」

 

俺とレインは互いに顔を見て落胆した。

 

「これってどう考えても、ユニークスキルだよな」

 

「うん。これユニークスキルだね」

 

「でも何で出たんだろう?」

 

「さあ」

 

俺達はその場で考えたがいくら考えても思い浮かぶ事が思い出せなかった。やがて二人は獲得したユニークスキルを周囲を確認して話した。

 

「じゃ、まず俺から話すな。俺の所得した二刀流スキルは片手剣を両手に装備出来て、片手剣と二刀流スキル両方出せて、片手剣スキルの威力は1.5倍、二刀流スキルの威力は2倍になり二刀流上位スキルになるほど技後硬直の時間が長くなる他、武器防御にボーナスが付く、って感じだな」

 

「それじゃ、私の番だね。え~と私の所得した多刀流スキルはキリト君と同じで片手剣を両手に装備出来て、片手剣と多刀流スキル両方出せるね。後は多刀流スキルの威力が1.5倍になる他片手剣スキルとつなげられるみたい。スキルの技後硬直時間が少し短縮になるのとキリト君と同じで武器防御にボーナスが付く、って感じかな」

 

俺達はお互いのスキルについて説明したあとまたしても落胆して、

 

「「完璧にユニークスキルだな(ね)」」

 

「それじゃあ、何処か誰もいない層で試してみない?このスキル」

 

「ああ、そうした方が良いだろうな」

 

俺達は家を出て誰もいない層の迷宮区に行きスキルを試す事にした。

 

第58層迷宮区

 

「さて、どっちから試す?」

 

「それじゃ、私からやるよ」

 

そうレインが言い俺の前に出て腰に装備してある自作の片手剣『グランデュール』と新たに装備した片手剣『ニジェール』を抜き前方にPOPしたモンスターに向けて、多刀流ソードスキル《インセインピアーズ》突進2連撃を繰り出した。

 

「やあああああ‼」

 

レインのソードスキルを喰らったモンスターはポリゴンの欠片へと変えて消えた。

 

「なるほどな~それじゃ次は俺の番だな」

 

次に俺がレインの前に出て背中に装備した50層ボスモンスターのLA『エリュシデータ』と新たに装備した『ミットナイトクロウ』を抜きPOPした2体のモンスターに二刀流ソードスキル《カウントレス・スパイク》範囲技4連撃を繰り出し2体まとめてポリゴンの欠片へと変えた。

 

「とまぁ、こんな感じだな」

 

「うん」

 

俺達はそのまま迷宮区の安全地帯まで行った。

安全地帯に着き誰もいないことを確認して俺はレインに、

 

「これバレたらヤバイよな」

 

「うん。かなりヤバイね。特に聖竜連合に知られたりでもしたら・・・・」

 

「確かにそうだな。どうする?このスキルの事」

 

「う~ん。とにかくこの事は私達だけの秘密にした方が良いかもね」

 

「ああ、それじゃホームに帰るとするか。何時までも此処にいて誰かに聞かれでもしたら大変な事になるからな。話の続きはホームに帰ってからにするとするか」

 

「オッケー」

 

俺達は索敵スキルを全開にしてホームがある第50層に帰った。だが帰りは誰にも会わなかったため俺達は二刀流スキルと多刀流スキルの熟練度上げをするためモンスター相手に遠慮なくスキルを放った。

 

第50層主街区「アルゲード」

 

「さて、帰って来たわけだけどやっぱり凄いな。あの層のモンスターを一撃で倒せるとは」

 

「うん。最前線からたった3層下なのにね」

 

「ああ、そう言えばこのスキルの事アスナ達には話した方が良いのかな?」

 

「う~ん。どうしようか」

 

俺達は少しの間考えた後、

 

「いや、まだ話さないで置こう」

 

「そうだね」

 

俺達は今はまだ話さないことにして今使えるソードスキルについて話した。

 

「今私が多刀流スキルで使えるソードスキルは《インセインピアーズ》2連撃《ディスティニー・ロンド》4連撃、《マティーニディーンズ》3連撃だね」

 

「俺は、《カウントレス・スパイク》4連撃《エンド・リボルバー》2連撃《クロス・ナイト》2連撃か。後このスキルに耐えられる片手剣を探さないといけないな」

 

「私もだね。まぁ、私は鍛冶スキルが後少しでコンプリートするからその時作ろうかな」

 

「そうか」

 

俺達はその後レインと色々と話し合い人目に付く場所では使わないことにして一日を終えた。




今回出てきた『エリュシデータ』、《エンド・リボルバー》、《カウントレス・スパイク》以外の武器やスキルはオリジナルです。

感想等お待ちしてます。
どんどん送って下さい。


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SAO編 第15話〈みんなでお花見〉

今回もオリジナルです。
更に今回はお花見に加えアスナ、ユウキ、ランも出てきます。

誤字脱字があったらごめんなさい。


「う~ん、今日は良い日だね~。暖かくて気持ちいいよ。キリト君もそう思わない?」

 

俺達はホームを出て攻略に行くため現在の最前線である第62層主街区「レイリス」に来ていた。すると一緒にいたレインが横からそう言ってきた。

 

「そうだな。よし今日は攻略を休んで何処かに行かないか?」

 

「賛成~♪そうだ、今4月でしょ」

 

「ん。ああ、確かに今4月だけど」

 

「どうせならアスナちゃん達も誘ってお花見に行こうよ♪」

 

俺は、レインからお花見に行こうと言う提案に少し驚いた。

 

「別にいいけど、どこでお花見するんだ?」

 

俺は疑問に思いレインに聞くと、

 

「んふふふ、実は第47層にお花見にぴったりな場所があるんだよ♪」

 

「ほんとか‼よし早速アスナ達に連絡して来れるか聞いてみよう。レインはご飯の準備を頼む」

 

「んふふふ、実はこんなこともあろうかともうすでに準備していたのでした♪」

 

「おお、流石だな」

 

「えへへ、それほどでも」

 

「よし、俺はユウキとランに送るからレインはアスナにメッセージを送ってくれ」

 

「了解~」

 

俺達はアスナ達3人に『お花見をしよう』とメッセージを送りその5分後3人から『良いよ』と返って来たのを確認して第47層主街区「フローリア」で集合と返信した。

 

「アスナちゃん、来れるって」

 

「こっちもだ、ユウキとランも来れるみたいだから第47層主街区で待ち合わせって送っておいた」

 

「良かった~。それじゃ私達も行こうか」

 

「ああ」

 

俺達は待ち合わせの第47層主街区「フローリア」に転移しアスナ達3人を待った。

俺達が転移してから10分後、

 

「あっ、いた~。キリト君、レインちゃん」

 

アスナ、ユウキ、ランの3人が転移門広場からこっちにやって来た。

 

「おお、3人共来たか」

 

「やっほ~アスナちゃん、ユウキちゃん、ランちゃん」

 

「すまないな、3人共。ギルドの方は大丈夫か?」

 

俺は3人に問うと、

 

「はい、大丈夫ですよ。丁度今日は3人共オフの日でしたので」 

 

「それに丁度こっちもお花見しようとしていたところだったもんね~」

 

ランとユウキが説明してくれた。

 

「良かった。なら早速行こうか。レイン場所までの道案内を頼む」

 

「オッケー、それじゃ皆ついてきてね」

 

俺達はレインの先導の元レインが見つけた場所に移動した。

レインが見つけた場所は転移門から歩いて15分ほどの場所にある桜の沢山ある小高い丘の上だった。

 

「着いた。ここだよ~」

 

とレインが言うと、

 

「わぁ、綺麗な場所だね」

 

「ほんと、こんな場所があったなんて知らなかったわ」

 

「本当そうですね。キリトさんは知っていたんですか?」

 

「いや、俺も知らなかった。今日初めてレインに連れて来られて知ったな」

 

「へぇ、そうなんですか」

 

それぞれ思った事を言った。

 

「それじゃ、お花見を始めようか」

 

俺が丘の上で言うと、

 

「「「「賛成~」」」」

 

それぞれシート等を地面に引きシートに腰をおろした。

 

「綺麗だな」

 

俺がそう言うと、

 

「ほんと、それにアスナちゃん達もいるから更に綺麗に見えるね」

 

「本当、来て良かったわ」

 

「そうですね」

 

「うん」

 

腰を落ち着かせた所でレインがメニューウィンドウを開いた。

 

「はい、これお昼だよ」

 

「あ、ありがとう。レインちゃんお昼作っていたんだね」

 

「うん♪もちろん。はじめからお花見するつもりだったから」

 

「なるほどな~どうりで準備が万端だと思った訳だ」

 

俺がそう言うと、

 

「えへへ~」

 

レインが照れたように笑った。その光景にアスナ達は少し呆れていた。

 

「キリト君とレインちゃんってほんと、何時も一緒にいるわよね~ほんと仲良いわ」

 

「「そうか(な)?」」

 

アスナが少し呆れながら言い俺達が帰すとアスナ、ユウキ、ランは苦笑いを浮かべていた。

 

「そんな事よりもご飯食べようぜ」

 

「そうだね♪」

 

「あ、なら私も作ってきたのも食べて」

 

「なら私のもどうぞ。ユウキと急いで作って来たので余り自信はないんですけど」

 

俺達が食べはじめるとアスナとラン、ユウキがメニューウィンドウから弁当箱を取り出した。

その後は5人で桜を見ながら食べたり談笑したりして過ごした。女子が話している間俺は木に寄りかかり辺りを見渡していたが段々と瞼が落ちてきた。

 

~女子side~

 

私は女子だけで話し合いをしている最中キリト君が反応しない事が気になり横を見ると、

 

「あれ、キリト君寝ちゃっているね」

 

「ほんとですね。疲れていたのでしょうか?」

 

「う~ん、多分日差しが気持ちよくて寝ちゃたって感じだと思うよ」

 

「確かにそうかも知れないわね」

 

私達はキリト君の寝顔に微笑ましさを覚え失笑した。

 

「キリト君が寝ている所でレインちゃんに聞きたい事があるんだけど、良いかな?」

 

「あ、私もレインさんに聞きたい事がありました」

 

「うん。僕もあるんだけど」

 

そう言うとアスナちゃん、ユウキちゃん、ランちゃんがこっちに近寄って来た。

私は恐る恐る、

 

「な、何かな3人共?」

 

「「「ズバリ、キリト(君)(さん)についてどう思っているの(んですか)‼」」」

 

「え、ええええ。いや、その。言わなくちゃダメかな?」

 

「「「ダメ(です)‼」」」

 

私はおどおどしながらキリト君の方を向いて寝ている事を確認して3人に話した。

 

「え~と。ズバリ言うと私は、キリト君の事が好きかな」

 

「「「何故(ですか)‼」」」

 

「えっと、私はキリト君に第1層からずっと一緒にいるしどんなに危なくても必ずキリト君は私を助けてくれる、私自身キリト君と一緒にいると心が落ち着くし安らぐんだ。

だから私はキリト君が好きかな」

 

私が3人に自身の気持ちを話すと3人は戸惑ったような顔になりあたふたしていた。

 

「「「その、ご馳走様(です)後ごめんなさい」」」

 

「え、ええと何で謝るのかな~?」

 

「そ、それはレインちゃんのキリト君を思う気持ちが純粋で軽々しく聞いた私達が何と言うか・・・・その・・・・」

 

「こっちが恥ずかしくなっちゃいましたよ」

 

「うん。僕も少し恥ずかしいかな」

 

「え、そうかな」

 

「「「うん」」」

 

アスナちゃん達は息ぴったりで頷いた。

 

「まぁ、キリト君が私の事好きかどうかはわからないけどね」

 

そう私が言った途端キリト君が寝返り打って起きてきた。

 

「あわわわわわ、アスナちゃん、ユウキちゃん、ランちゃん今の話はキリト君に言わないでね。お願い」

 

私がそう言うと3人は、

 

「良いわよ」

 

「もちろんだよ」

 

「わかっていますよ」

 

と返事をしてくれた。

その時私は心の中で、『何時かこの気持ちキリト君に伝えられたら良いな』と思った。

 

~女子side out~

 

俺はいつの間にか眠ってしまったのか木に寄り掛かっていたのに草地に寝転んでしまっていた。

レイン達の方を向くと何かあったのかレインはあたふたしていてアスナ達は苦笑いを浮かべていた。

 

「ん、どうしたレイン。何かあったのか?」

 

「あ、キ、キリト君。おはよう。よく眠っていたけど疲れは取れた?」

 

「ああ、大丈夫だ。それより何かあったのか?」

 

「え、いや、何にもないよ。ね、アスナちゃん、ユウキちゃん、ランちゃん」

 

「ええ、大丈夫よ」

 

「うん、何でもないよ」

 

「ええ、みんなで色々と話し合いをしていただけです」

 

とアスナ達が言って来るので俺は追求しないでおいた。

 

「そ、そうか。にしてももう夕方か」

 

「そうだね、どうする?」

 

「確か第57層に料理が美味しいNPCレストランがあるんだけどみんなで夕飯食べに行かないか?」

 

「良いですね。私も一度そのNPCレストラン行ってみたかったんです」

 

「私も構わないわよ」

 

「うん。僕も良いよ」

 

「私も構わないよ~♪」

 

「オッケー、それじゃ行こう」

 

こうして俺達5人は桜の丘を後にして転移門から第57層主街区「マーテン」に転移した。

 

第57層主街区「マーテン」

 

俺達はNPCレストランに向かう道中、今日のお花見について話ながら移動した。

俺達は、NPCレストランに着き店内へと入り窓際の席に腰掛けた。

 

「さてと、ここのオススメは肉料理ではなく魚料理だ」

 

俺がそう言うとレインが、

 

「そうなの。それじゃそれにしようかな」

 

「私もそれにするわ」

 

「僕もそれにするよ」

 

「じゃあ、私もそれにしますね」

 

俺はNPC店員を呼び全員の料理を注文した。全員魚料理だったので後はサラダと飲み物を頼んだ。料理を注文して3分後料理をNPCが運んで来た。

 

「なるほどね。確かにこれは美味しいかも」

 

俺達は運ばれて来た料理の味に驚きながらも手を進めていた。 

 

「ほんとね、でもなんか足りないような」

 

「あ、僕もそう思った」

 

「ええ、確かに何か足りませんね」

 

「う~ん、多分マヨネーズや味噌とかが無いからだと思うな、後は」

 

「「「「「醤油」」」」」

 

俺達全員声を揃えて言い、顔を見合せて笑ってしまった。

 

「ふふふ、確かに。今度私醤油作ってみようかな」

 

「ええ、私もお手伝いするわ」

 

「うん、僕も手伝うよ」

 

「私ももちろん手伝いますよ。一緒に成功させましょう」

 

俺は、そう言いながら醤油造りを目指すレイン達に眼を向けていた。

 

「きゃああああああ」

 

突然の悲鳴に俺達は椅子から立ち上がり急いで店の外に出た。




今回の話の終盤は次回に続きます。

感想等お待ちしてます。


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SAO編 第16話〈圏内事件発生〉

遅くなりごめんなさい。
次回はもう少し早くしたいと思います。

誤字脱字があったらごめんなさい。


俺達は悲鳴が聞こえた直後NPCレストランを飛び出し辺りを見渡した。

 

「今の悲鳴は何処から聞こえた‼」

 

「キリト君、あそこ‼」

 

俺達はレインが指差した方へ走っていった。

悲鳴が聞こえた現場は教会があるところだった。その二階から分厚いプレートアーマーを着た男プレイヤーが首をつられてしかも男のプレートアーマーには短槍が貫かれていた。

 

「おい、あんた今すぐそれを抜け‼」

 

俺は貫かれている男に言った。だが男は恐怖でうまく手が動かせないのかゆっくりと短槍の持ち手に手を置き抜こうとする抜けない。

 

「キリト君、私が上からロープを切るから下であの人受け止めてあげて‼」

 

「わかった。アスナはレインが教会の中に入ったらその入口に立っていて、ユウキとランは周りを見ておいて欲しい」

 

「「「了解‼」」」

 

俺がそう言うとアスナ達はすぐにやるべき事をしレインは教会の上に移動した。

だがレインが二階着きロープを切ろうとしたところで男はポリゴンの欠片となって消えてしまった。 

 

「な、圏内なのに死んだだと!?」

 

俺は戸惑うように地面を見ると地面には男を貫き殺したと思われる短槍が落ちていた。

俺はすぐにユウキ達に、

 

「ユウキ、ラン、デュエルの表示が出ている奴はいるか‼」

 

「ごめん、キリトわからない」

 

「私も見えません」

 

「レイン、上から見えるか‼」

 

「キリト君、上から見てもデュエル表示何処にもないよ」

 

俺は、唖然とした。圏内でプレイヤーが死ぬはずがないからだ。考えられる理由は男が完全決着デュエルを承けたと言うことだけだが。

 

「く、タメだ。もう30秒たった」

 

俺はレインを二階から呼びアスナのいる所に周りを見ていたユウキとランと行った。途中男を殺したと思われる凶器を持って行った。

 

「一体どういう事なんだ。レイン、教会の中には誰もいなかったのか?」

 

「うん。索敵スキルを使ったから間違いないよ」

 

「そうか。アスナはどうだ?誰か出てきたか?」

 

「いえ、誰も出てこなかったわ」

 

「そうなると、デュエルじゃなくあのプレイヤーは死んだのか」

 

「ありえないと思いますけど。もしそんな事があったら今頃大変なことになってますよ」

 

「そうだよな」

 

俺は集まっていたプレイヤーに声をかけた。

 

「みんな、すまない。誰か最初から見ていた者はいないか?」

 

俺が集まっていたプレイヤーに呼び掛けると一人の女性プレイヤーが前に出てきた。

 

「は、はい。私です」

 

「もしかして、君が悲鳴をあげた人であっているかな?」

 

「はい。そうです」

 

女性プレイヤーは脅えたように俺の質問に答えてくれた。

すると、後ろからレインがやって来て、

 

「キリト君。そんなに怖そうに言っちゃダメだよ。後は私達に任せてキリト君は、周りの人から話を聞いといて」

 

と言って、女性プレイヤーをアスナ達がいる方に連れていって彼女から話を聞いていた。

その間俺は周囲のプレイヤーから事情を聞いていた。

 

~女子side~

 

私はアスナちゃん達がいる教会の入口まで彼女を連れていき詳しい話を聞いていた。

 

「ごめんね。さっきは彼がいきなり聞いたりして」

 

「い、いえ。大丈夫です」

 

「そう、良かった~。あ、自己紹介がまだだったね。私はレイン、そしてさっき聞いていた人がキリト君だよ。よろしくね」

 

「私は、アスナよろしくね。そして彼女達がユウキとランさん」

 

「「よろしく(ね)(お願いしますね)」」

 

「は、はい。私はヨルコって言います」

 

「それでヨルコさん。詳しい話を聞きたいんだけど、良いかな?」

 

私はヨルコさんにそう訪ねた。

 

「はい。大丈夫です。さっき吊られていた人は『カインズ』って言います。前に私が入っていたギルドの仲間で時々今日みたいにこうして一緒に、ご飯を食べたりしています」

 

「なるほど。カインズさんがいなくなって、いきなりあそこから出てきたのはどのくらいかな」

 

「えっと、この教会を通り過ぎる時にはもういなくて、辺りを見渡していたら彼がいきなりあそこから首を吊られて出てきたんです」

 

「その時、誰かカインズさんの後ろにいなかったかしら?」

 

「え~と、確か誰かいたような気がします。でも男か女かは分からなかったです」

 

ヨルコさんは、これまでの経緯を話してくれた。

私は、アスナちゃん、ユウキちゃん、ランちゃんと相談しキリト君も交えて話すことにした。

 

「ありがとう。それじゃ、キリト君の所に行っても大丈夫かな?」

 

「はい。大丈夫です」

 

私達は他のプレイヤーに話を聞いているキリト君の所に移動した。

 

~女子side out~

 

俺が他のプレイヤーから詳しい話を聞き考えていた所に、レイン達がやって来た。

 

「キリト君。お待たせ」

 

「おお、お帰り。どうだ?詳しい話を聞けたか?」

 

「うん、大丈夫。後で話すよ」

 

俺はレイン達から大まかな説明を受けその場にいたプレイヤーに「この事は口外しないで欲しい」と頼みこんだ。

理由はもしこれがしれ渡ったらパニックが起こるからだ。幸い事情を説明するとその場にいたプレイヤーは了承してくれた。

そのあと俺達は、ヨルコさんを彼女のホームがある第49層「ミュージェン」に移動し彼女を送り届けた。そのあと俺達は、第49層転移門広場で話し合っていた。

 

「さてと、どうする。今回の事件」

 

「う~ん。ヨルコさんの証言が正しいのならカインズさんは、短槍で貫かれ首を吊られるまでヨルコさんと一緒にいたってことになるよね」

 

「そうなると、睡眠デュエルとかではないわね」

 

「ええ、問題はデュエルでもないのにどうしてカインズさんが死亡したのかってことです」

 

「そうだね。圏内で死亡事件何て始めて聞いたよ」

 

俺の言葉の後にレイン、アスナ、ラン、ユウキと続いた。

俺はストレージからカインズ氏を死亡させた凶器を取り出した。

 

「手掛かりとなるのは、この凶器とロープだけか」

 

「そうだね。誰か有能な鑑定家がいればいいんだけど」

 

レインは凶器を見てそう呟いた。 

 

「あれ、レインちゃんは鍛冶スキルを持っていなかった?」

 

アスナは不思議そうにレインに聞いた。

 

「うん。持っているけど余り鑑定スキル高くないんだよね。武器作成スキルは高いけど」

 

「そうなんだ。そうなると私達の知り合いで鑑定スキルが高いのは」

 

「う~ん。リズっちなら鑑定スキル高そうだけど」

 

レインの言葉に俺以外が頷いた。

 

「確かにリズなら大丈夫だろうけど」

 

「リズさん、今の時間帯忙しいんじゃありません?」

 

「確かにね。そうなるとどうしようか?」

 

俺一人分からなかったのでレインに聞いてみた。

 

「なあ、レイン。リズって誰だ?レインの友達か?」

 

「えっ、ああ。そう言えばキリト君は知らなかったね。リズっちは私の鍛冶友達だよ。アスナちゃん達の武器も彼女が作成したんだ。今度紹介するね♪」

 

「へぇ、そうなのか。分かったまた今度頼むな」

 

「うん♪」

 

「さてと、仕方ないからエギルに頼むか」

 

俺がそう言うと、

 

「えっ、エギルさん。でもエギルさんもこの時間帯はかなり大変なんじゃないかな?」

 

レイン達は心配そうに俺を見た。

 

「まぁ、何とかなるだろ。それじゃ、エギルの店に行くか」

 

俺達はエギルの店のある第50層主街区「アルゲード」に転移しエギルの所に向かった。

 

第50層主街区「アルゲード」

 

「エギル。来たぞ」

 

俺は素っ気なく言うと、

 

「ふん。客じゃねぇやつに挨拶はしねぇよ」

 

エギルがそう言うと後ろからレイン達が顔を出してきた。

 

「エギルさん、ごめんなさい。実はお願いしたいことがあって」

 

レインがエギルにそう言うと、

 

「まぁ、レインちゃんの頼みなら仕方ないが。けど何でアスナやユウキちゃん、ランちゃんまでいるんだ?」

 

「詳しい話は後で話す。まずは二階に行っても良いか?」

 

俺がエギルにそう聞くと、

 

「ああ、構わん。俺もすぐ店を閉めたら上にいく」

 

「了解だ。レイン、アスナ、ユウキ、ラン上に行くぞ」

 

「「「「お邪魔します」」」」

 

レイン達はそう言い俺の後に付いてきた。

しばらくして店を閉めたエギルがお茶を持って上に上がってきた。

俺はエギルに先程あったことを話した。

 

「圏内でプレイヤーが死んだだと!」

 

「ああ」

 

「しかも、デュエルでもないんだろ」

 

「ええ」

 

俺とレインがエギルの言葉に肯定した。

 

「それでその凶器とロープなんだが、」

 

俺はストレージからカインズ氏を殺害した短槍とロープを取りだしエギルに見せた。

 

「鑑定出来るか?」

 

「分かった。やってみよう。それにもし圏内で死亡したのが広まったらヤバイ事になりかねんしな」

 

「ああ、頼む」

 

俺はエギルに短槍を渡し、鑑定が終わるのを待った。

 

「鑑定終わったぞ」

 

エギルがそう言うと俺達はエギルの方を見た。

 

「ロープの方は店売りの汎用品だ。耐久度は半分近くまで減っているな」

 

「まぁ、そうだろうな。それで短槍の方はどうだ?」

 

俺かエギルに聞くと、

 

「PCメイドだ」

 

PCメイドつまりプレイヤーが作成した武器だと言うことだ。

 

「誰が作成した武器なの?」

 

ユウキがエギルに聞いた。

 

「え~と、『グリムロック』だな。綴りは『Grimlock 』。聞いたことないな」

 

「そうか。レイン達はどうだ?」

 

「ううん。私も聞いたことないな~。それにその武器少なくとも、一線級の刀匠のものじゃないと思うよ」

 

「私も聞いたことないわ」

 

「うん。僕も聞いたことないよ」

 

「私も聞いたことありませんね」

 

この場にいる全員聞いたことなく少しの間沈黙が満ちた。

しかしアスナが、

 

「でも、探し出すことは出来るはずよ」

 

「うん。私もそう思うな。だってこの武器を作成出来るレベルに上がるまでずっとソロを続けているとは思えないもん」

 

「確かにそうだろうな」

 

レインの言葉にエギルが肯定した。

 

「そうだ、エギル。一応その武器の個有名も教えてくれ」

 

「ああ、分かった。えーっと・・・・《ギルティーソーン》罪のイバラ、ってとこか」

 

「《ギルティーソーン》罪のイバラ・・・・・か」

 

俺が発した声に全員がまた沈黙した。

 

第1層「はじまりの街」黒鉄宮

 

俺達は、エギルに礼を言い店を出た後転移門からアインクラッド第1層「はじまりの街」に来ていた。目的は、黒鉄宮にある《生命の碑》を確認するためだった。俺達は鍛冶屋グリムロック氏と先程亡くなったカインズ氏の欄に横線が引かれているか確めた。

 

「カインズ氏のところは横線が引かれているな」

 

「うん。時間も亡くなった時間と同じだよ」

 

「アスナ、グリムロックの方はどうだった?」

 

俺はアスナ達に訪ねるとユウキが答えてくれた。

 

「キリト、グリムロックさんの所に横線は引かれてなかったよ」

 

「そうか」

 

「ええ、詰まりまだ生きているって事になるわね」

 

「そうですね。後はグリムロックさんを探すだけなんですが・・・・」

 

「手懸かりが無いもんな」

 

俺達は二人を確認し終わった後、俺達は明日の朝第49層の転移門で待ち合わせをした後、アスナ達は第48層に、俺とレインは第50層に帰っていった。

 

第50層主街区「アルゲード」

 

俺とレインは転移門から出るといきなり周囲をプレイヤーで囲まれた。

 

「おいおい、いきなりなんだ」

 

俺達は武器を抜刀しながらプレイヤーに聞くとプレイヤーの集団から一人の男プレイヤーが出てきた。

俺達はその男プレイヤーを見ると武器を鞘に戻した。

何故なら、

 

「こんばんは、シュミットさん、であっているのかな?」

 

彼は聖竜連合に所属しているプレイヤーでよくボス攻略で見かけるからだ。

 

「あっているよ、キリト君。全く人の名前くらい覚えておこうよ。こんばんは、シュミットさん」

 

「ああ。それよりお前達に聞きたい事がある」

 

「何だ」

 

「何かな」

 

「今日の夕方第57層で死んだプレイヤーの名前は『カインズ』で間違いないのか」

 

俺達はシュミットからその名が出ることに驚いた。

 

「ああ、そうだが」

 

「なら、お前達の持っている凶器を渡して貰おう」

 

俺達はいきなり言われて少しイラッとした。

現にレインは頬をピクピクしていた。

 

「随分な横暴だな。何故だ」

 

「ふん、お前達には関係ないことだ」

 

俺は今にも飛び掛かりそうなレインを宥めてからストレージから問題の武器を取りだしシュミットに見せた。そしておもいっきり地面に突き立てた。

 

「これがその凶器だ。ついでに教えておいてやる。この武器の個有名は《ギルティーソーン》そして作成者は『グリムロック』だ!」

 

俺がそう言うと今度こそ、シュミットに明確な反応があった。

 

「ふん、どうも。だがあまりこそこそ動き回らない事だ。行くぞ」

 

シュミットは俺達にそう言うと俺達を囲っていたプレイヤー達と共に転移門へと移動していった。

 

「キリト君。よかったの?」

 

レインは、シュミットに問題の武器を渡してよかったのか

、と聞いた来た。

 

「ああ。それよりも気になるな、シュミットがどうしてあんなにも反応したのか」

 

「うん。明日アスナちゃん達に言っとこうか」

 

「そうするか。さてと、そんじゃ家に帰って寝るとしますか」

 

「そうだね。それじゃまた明日ね、キリト君。おやすみ」

 

「ああ。おやすみ」

 

俺とレインはそのまま分かれ家に戻って行った。




少し原作と同じかも知れませんね、ごめんなさい。

感想等お待ちしてます。
後、HF編か原作通りかアンケート取っています。
メッセージボックスに送ってください。


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SAO編 第17話〈調査と黄金林檎での出来事〉

今回は早く出来ました。

HF(ホロウ・フラグメント)編か原作か迷って今アンケートを取っています。メッセージボックスにどっちが良いか送って下さい。

誤字脱字かあったらごめんなさい。


俺は昨夜のシュミットととの一騒動があった後、レインと分かれ家に戻り寝て、翌日第50層の転移門で落ち合いアスナ達と待ち合わせている第49層に転移した。

俺達が転移してから5分後、アスナ達が転移門から姿を現した。

 

「よう。おはよう。アスナ、ユウキ、ラン」

 

「おはよう、キリト君、レインちゃん」

 

「おはよう~♪アスナちゃん、ユウキちゃん、ランちゃん」

 

「おはよう、二人とも」

 

「おはようございます。キリトさん、レインさん。後遅くなってごめんなさい」

 

上から俺、アスナ、レイン、ユウキ、ランの順に挨拶をした。

 

「いや、俺達も今来たところだ。そう言えば、三人とも朝食は食べたか?」

 

俺がアスナ達三人に聞くと、

 

「いえ、これからですよ」

 

「それなら、一緒に食べない?それに伝えたいことがあるんだ」

 

レインがアスナ達に言った。

 

「それじゃ、行きましょうか」 

 

アスナが俺達に言い、俺達は近くにあるNPCレストランで朝食を摂っていた。

朝食を摂っている最中俺とレインは昨夜の事を話した。

 

「聖竜連合のシュミットさん?その人が今回の件に何か関わっていると、そう思うのキリト君」

 

「ああ、彼は恐らく独断で昨日来たんだと思う。周囲にいたDDAのプレイヤーは事情を知らなそうだったしな」

 

俺が言ったDDAは、ディヴァイン・ドラゴンズ・アライアンスの頭文字だ。

 

「うん。それに、昨日キリト君がシュミットさんに『グリムロック』の名を出した時かなり驚いていたんだよ」

 

「それは気になるわね」

 

「ええ、恐らくシュミットさんは、今回の事に関して何かしらの事を知っているのだと思います」

 

「うん。僕も姉ちゃんの言う通りだと思うな」

 

「ああ、俺もレインもそう思う。今日、この後ヨルコさんに会って話を聞くんだよな?」

 

「そうですね」

 

「そのときシュミットの事を話してみようと思うんだけどどう思う?」

 

俺がレイン達に聞くと、

 

「良いと思うよ。それに今回の事何か引っ掛かるんだよね」

 

レインがそう言った。

 

「よし、それじゃヨルコさんと落ち合って話を聞く前にちょっとやりたい事があるんだけど。そう言えば三人とも二日連続でギルド休んで大丈夫なのか?」

 

俺が疑問に思っていたことを聞くとアスナが、

 

「大丈夫よ。団長から許可ももらっているから」

 

「へぇ~、そうなのか」

 

俺は心の中で「あいつも流石にこれは見逃せないって事なのか」と思った。

 

「ところでキリト君。やりたい事って何?」

 

レインが俺の顔見ながら言った。アスナ達も同様に俺の方を向いていた。

 

「ああ、実はちょっと実験してみたいと思ったんだよ」

 

「実験?何の?」

 

「カインズが殺されたのは《貫通継続ダメージ》だろ。それは圏外で刺された後そのまま圏内に移動したらどうなるのかなって」

 

「確かにそれは分からないわね。毒や火傷の継続ダメージ〈DOT 〉は圏内に入った瞬間に消えるわね」

 

「でもそれは貫通ダメージも同じだと思いますよ」

 

ランがアスナの言葉に続いた。

 

「でも、それなら刺さっている武器はどうなるんだ?」

 

「さあ、自動で抜けるんじゃないかな?」

 

「だろ。だから実験しようと思うんだよ」

 

と、言い俺はレイン達4人を連れてレストランを後にし圏外に移動した。

圏外に出た俺は腰に装備しているピックを取りだし自分の手に突き刺そうとした。のだが、

 

「キ~リ~ト~君?今何しようとしたのかな?」

 

レインが冷え冷えとした声と眼差しで俺を見ていた。

アスナ達も流石に少し戸惑いが見られた。

 

「ちょ、レインさん大丈夫だから。さっき言った事を実験してみようと思うだけだから!?」

 

俺はレインに怯えながら説明した。それほどまでにレインの声と眼差しが怖かったのである。

 

「全く。だからって無理しないでよ。ちなみにキリト君、後でお話があるので」

 

「・・・はい」

 

俺がそう言うとレインはウィンドウから高価な回復結晶を取り出した。

その様子にアスナ達は苦笑いを浮かべていた。

 

「あははは。レインちゃんそこまでにしてあげたら」

 

「そうだね。アスナちゃん」

 

「勿論、キリト君。私達も後でお話をしますからね。レインちゃんと一緒に」

 

アスナ達も俺にそう言うと、俺から少し距離を取った。

俺はまっすぐ伸ばした左手に向けて、投剣スキルの初級ソードスキル《シングルシュート》を発動させた。

俺の左手に突き刺さったピックは、HPゲージを約2%程減らし、その5秒後に再び赤いエフェクトが閃きHPがさらに0.5%程削れた。これがカインズの命を奪った《貫通ダメージ》に他ならない。

しばらくそのままにしているとランが、

 

「キリトさん、早く圏内に入って下さい」

 

と言って来たので俺は街の中に入った。

街の中に入るとレインが

 

「止まったね」

 

「ああ、だが武器は突き刺さったままか」

 

「ええ、こうなると更に今回の事はわからなくなりますね」

 

「うん。圏内に入るとダメージは受けなくなるんだよね。それでもカインズさんはダメージを受けていたってことは・・・」

 

「ああ、恐らく俺達の知らない未知のスキル、もしくはシステムの抜け道って事になるな」

 

俺はユウキの言葉に続きそう言った。

 

「キリト君。そろそろヨルコさんとの待ち合わせの時間だよ」

 

とレインが言ってきた。

 

「もう、そんな時間か」

 

ヨルコさんと待ち合わせている時間は10時に宿屋の前でだった。

俺は左手に突き刺さっているピックを抜くと不快な痺れが全身を走った。

 

「うっ」

 

「大丈夫?キリト君」

 

「ああ、大丈夫だレイン」

 

「そう?なら良いんだけど。・・・・そうだ!」

 

するとレインが俺の左手に両手を合わせて来た。

 

「・・・・ちょ、レイン!?」

 

「良いから、こうしていると痛みが和らぐでしょ♪」

 

「・・・・ああ、・・・・そうだな」

 

「「「はぁ・・・・」」」

 

俺達の光景にアスナ達は遠くから暖かい眼差しで俺達を見てため息を出していた。

俺達はその後ヨルコさんと合流した。

 

「ヨルコさん、昨日の今日で話を聞いてすまない」

 

「いえ・・・・、大丈夫です。早くカインズを殺した人を捕まえて欲しいですから・・・・」

 

「その事で聞きたい事があるんだけど、良いかな?」

 

「はい、何ですか?」

 

「ヨルコさん、シュミットさんとグリムロックさんを知っているかな?」

 

レインがシュミットとグリムロックの名前を出すとヨルコさんは驚いたような反応をした。

 

「・・・・はい。・・・・・知っているもなにもシュミット、グリムロックは前に私とカインズが所属していたギルドメンバーなんです」

 

「前は、って事は今そのギルドは・・・・」

 

「はい、皆さんが想像している通りです」

 

そう言うとヨルコさんは俺達の顔を見て、

 

「お話しします。半年前私達のいたギルドはあることが原因で消滅したんです。ギルドの名前は『黄金林檎』っていいました」

 

「黄金林檎?」

 

「はい、別に攻略目的はなく、楽しむためと日々の食事代と宿代を得るための総勢8人の弱小ギルドだったんです。でも、半年前中間層のダンジョンで見たことないレアなモンスターとエンカウントしたんです。私達は夢中で追いかけ回し、誰かが投げたタガーが偶然モンスターにあたって倒しました。そのモンスターからのドロップアイテムを鑑定してみたらなんと敏捷力が20も上がる指輪だったんです。そんなの今の最前線からでもドロップしませんよね?。そこから先は指輪をオークションに出すか誰かが使うかで分かれました。結局、指輪はオークションに出すことが決まりリーダーは一人で最前線近くの層に泊まりで行くことになりました。でもリーダーはいくら待っても帰ってきませんでした。私達は、不安になり何人かで第1層の黒鉄宮に確認しにいきました。・・・・結果はオークションに出しに行った日の深夜に死んでいました」

 

「・・・・死亡理由はもしかして・・・」

 

アスナが震えるように聞くと、

 

「はい、・・・・カインズと同じ《貫通属性ダメージ》です」

 

 

ヨルコさんは、眼に涙を浮かべて言った。

 

「その後、ギルドはどうなったんだ?」

 

「リーダーが亡くなってそのまま自然と消滅して当時のメンバーは全員散り散りとなってしまいました。でもカインズとは、たまに狩りや食事を取っていました」

 

「ごめんね。辛いことを思い出させちゃって」

 

「いえ、大丈夫です。それに今でも信じられないんです。私が目指していた、とてもカッコよく凛々しかった彼女が死んでしまうなんて」

 

「・・・・・ん?ヨルコさん、リーダーさんって女の人?」

 

ユウキが俺も疑問に思っていたことをヨルコさんに質問した。

 

「はい。名前は『グリセルダ』って言います。グリムロックさんは彼女の旦那さんなんですよ」

 

「へぇ、そうなんだ。でも残念ね、グリムロックさん。好きで結婚までしたのに奥さんが亡くなって」

 

アスナが悲しげに言うと、

 

「ええ。当時グリムロックさんはグリセルダさんを亡くして塞ぎ混んでいたんです」

 

「そうなの、ありがとう。話してくれて」

 

「いえ」

 

「すまないがもう1つだけ聞いても良いか?」

 

「はい、何でしょうか?」

 

「指輪をオークションに出すことに反対したのは誰なのか分かるか?」

 

「えーと、私、カインズ、シュミットです」

 

「そうか、ありがとう」

 

俺達はその後ヨルコさんを部屋まで送り転移門広場に来てヨルコさんから聞いた話を相談していた。

 

「どう思う、キリト君?」

 

「ああ、恐らく今回の圏内事件は半年前の『黄金林檎』の消滅に関係があると思う」

 

「私も、そう思うな」

 

「ええ、まず間違いないでしょう」

 

「僕も姉ちゃんの言う通りだと思うな」

 

「でもそうなるとカインズが圏内で死んだ理由が分からないんだよな。誰かシステムに詳しい人がいれば良いんだけど」

 

俺がそう言うとレイン達も考えた。

俺はしばらくして一人のプレイヤーが思い付いた。レインの方を向くとレインも俺と同じ結論に至ったようだ。

 

「アスナ、ユウキ、ラン。あいつを呼び出せるか?」

 

「あいつ?」

 

「誰の事ですか」

 

ユウキとランが頭に?を浮かべて言った。

 

「ヒースクリフさんだよ」

 

「団長!?」

 

レインが言ったプレイヤーにアスナは驚いていた。

ユウキとランは「ああ、なるほど」って顔をしていた。

 

「ああ、どうだ」

 

「ちょっと待って、団長に聞いてみるから」

 

そう言うと、アスナはヒースクリフにメッセージを送った。

その3分後、

 

「大丈夫、だって」

 

「そうか、それなら第50層に来てほしいって送ってくれ」

 

「わかったわ」

 

俺達はアスナがヒースクリフにメッセージを送った後、第50層に転移してヒースクリフを待っていた。




次回はヒースクリフとの話し合い。

感想等お待ちしてます。


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SAO編 第18話〈ヒースクリフからの助言〉

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誤字脱字があったらごめんなさい。


俺達は第50層の転移門広場でヒースクリフが来るのを待っていた。すでにヒースクリフには、アスナ経由でメッセージを送ってある。

 

「しかし、まさか本当に来るとはな」

 

俺は転移して来たヒースクリフを見るとそう口ばしっていた。ヒースクリフが来たのは、俺達が着いてから約10分後の事だった。周りのプレイヤーは、ヒースクリフを見ると驚きの声が上がっていた。

ヒースクリフが来るとアスナ、ユウキ、ランはギルドの礼をした。

 

「団長、お呼び立てしてすみません」

 

アスナが礼をしながらヒースクリフに言った。

 

「いや、何構わんよ」

 

そうヒースクリフが言うと、俺は前に出て、

 

「悪いな、ヒースクリフ。呼び立てて。お詫びに昼飯奢ってやるよ」

 

「ふむ、《黒の剣士》のキリト君にお昼をご馳走になるとは。ありがたく奢ってもらうよ、キリト君」

 

「それじゃ、行こうか」

 

俺はレイン達とヒースクリフを連れて「アルゲード」の裏路地にある怪しい店に入っていった。店内にNPCが一人いるだけで他のプレイヤーはいなかった。

ここに来たのは単にレインやアスナ、ヒースクリフ達がどういった反応をするのかが気になったからだ。

俺達は料理を注文をするとヒースクリフに事情を話した。

 

「すでに、アスナ達から話は聞いていると思うんだがヒースクリフ、あんたは今回の圏内事件どう見ている」

 

「ふむ。まずキリト君達の見解を聞かせて貰えるかな?」

 

「俺達は3通りあると思う。まず1つ目は正当な圏内デュエルによるもの。2つ目はシステムの抜け道。3つ目は未知のスキルやアイテムだと思う」

 

俺がそう言うと、

 

「3つ目は除外しても構わない」

 

と、ヒースクリフが早々と言った。

 

「断言するね。ヒースクリフさん」

 

「「「断言するね(しますね)。団長、何故です(か)?」」」

 

「考えてもみたまえ。もし君たちがこのゲームの開発者だったらそんなの設定するかね?」

 

ヒースクリフからの言葉に俺は即答で、

 

「・・・・いや、ないな」

 

と否定した。

 

「何故か理由を聞いても良いかね」

 

「それは、フェアじゃないからさ。まぁ、あんたの持つユニークスキル《神聖剣》は除いて、だかな」

 

俺はそう言いヒースクリフを見るとヒースクリフは俺とレインの方を向き無言の微笑を浮かべていた。

俺とレインは同時に「俺(私)達が持つユニークスキルの事がばれたのか」と思った。

 

「え、え~とそれじゃあ未知のスキルやアイテムじゃないって事は・・・・」

 

「ああ、デュエルかシステムの抜け道だろうけど・・・・」

 

「1つ目のデュエルはないと思うよ」

 

「ええ、カインズさんは直前までヨルコさんと一緒にいたみたいですからね」

 

「そうなると、2つ目のシステムの抜け道って事になるけど・・・・」

 

ここまで話すと、NPCの店員が料理を持って来た。

俺達が頼んだのは「アルゲードそば」と言う何とも珍妙なものだった。

 

「・・・・ね、ねぇ、キリト君?これは何?・・・・」

 

レインが運ばれてきた物を一口食べると聞いてきた。

 

「え、え~と、多分ラーメンに似ているものじゃないかな・・・・」

 

俺達はその後無言のまま食べた。

ドンブリの中のスープまで飲んだ俺は、

 

「さて、ヒースクリフはどう思う?」

 

と俺が聞くと、同じくスープまで飲んだヒースクリフは、

 

「・・・・これは、ラーメンではない。断じて違うと言える」

 

「「「私も同じです‼」」」

 

「僕もそう思うかな」

 

レイン達がヒースクリフに続き言った。

 

「では、この偽ラーメンの味の分だけ答えよう。まず第1にこのゲームの中では君らがその目で見たり、その耳で感じたりした一次情報は絶対確実だ。まずは何故今回の圏内事件が起きたのかどうかを調べるべきだ」

 

「・・・・・つまり原因を探れって事か?」

 

ヒースクリフは沈黙で肯定と返し、

 

「そして、君らが直接見聞きしたりしたものはすべて、デジタルデータで幻覚幻聴の入り込む余地はは皆無だ。つまりるところ己の脳がダイレクトに受け取ったデータだけを信じる事だ」

 

と言い俺達を見た。

 

「ああ、後今回の圏内事件は余り口外しない方が良いと思うよ。これが本当だったらレッドプレイヤーにとっては嬉しいものだからね。勿論我々も口外する気はないから安心したまえ」

 

「そうか、そうしてくれると助かる」

 

俺がそう言うとヒースクリフは、

 

「それでは、ご馳走さん。君たちが今回の圏内事件無事解決出来ることを祈っているよ」

 

と言いヒースクリフは店から出た行った。

が俺はヒースクリフが立ち去る前に言っていた「何故こんな店が存在するのだ・・・・・」と言っていたのが気になった。

 

「ん~、レイン達は分かった?」

 

と俺が聞くと、

 

「・・・・・これ何か足りないんだよね。こうなったら絶対お醤油を作ってみせるよ‼」

 

「レインちゃん、私も手伝います‼」

 

「私もですよ」

 

「うん。僕も協力するよ‼」

 

何故か女子達は真剣な眼差しで話し合っていた。

 

「あの~、レインさん達。聞こえてましたか?」

 

「え、うん。聞こえていたよ。キリト君」

 

「何を話していたんだ?」

 

「ううん。何でもないよ。それでアスナちゃん、ヒースクリフさんが言っていた事って」

 

「うん。団長は、恐らく伝言の二次情報を鵜呑みにするな、って言いたいんだと思うよ」

 

「ええ、恐らく今回の件で言うと、ギルド黄金林檎の、レア指輪事件の事でしょう」

 

「うん。恐らくそれが今回の圏内事件の要であり謎を解くカギだと思うな」

 

「それじゃ、もう一人の関係者に話を聞きに行くとするか。指輪の事を話せば何か出すだろうし」

 

俺がそう言うとレインは頭に疑問符を浮かべていた。

 

「もう一人の関係者?」

 

「ほら、俺からあの凶器の槍を持って行った人」 

 

と、俺が言うとレインを含め全員納得したような顔で「ああ~」と言って頷いた。

 

第56層「トゥルーライ」主街区 聖竜連合本部前

 

俺達はあのあと、シュミットから話を聞くため第56層にある聖竜連合の本部前に来ていた。

 

「ほんと、デカイな」

 

「うん。これ城じゃなくて要塞だと思うよ」

 

「だろうな」

 

「ところでキリト君。ここに来たのは良いけど、肝心のシュミットさんがいなかったらどうするの?」

 

とアスナが不安げに聞いたきた。

 

「いや、その心配はないと思う」

 

「どうしてそう思うんです?」

 

「なるほど。アスナ、姉ちゃん多分シュミットさんはここにいるんじゃないかな。だって謎のレッドに狙われているんだよ」

 

とユウキが言うと、

 

「なるほど、安全を確保するために宿屋に籠るか、あるいは・・・・」

 

「・・・・『籠城』するか、って事ね」

 

「そう言うこと」

 

その後シュミットを呼び出すため、アスナが門にいる守衛のプレイヤーにシュミットを呼んでもらいユウキとランは辺りを警戒して見ていた。俺とレインは近くにある木に寄りかかりアスナ達がシュミットを連れてくるのを待っていた。しばらくしてアスナ達がシュミットを連れてこっちにやって来た。

 

「・・・・・誰から、指輪の事を聞いた」

 

「ギルド《黄金林檎》のメンバーの一人からだけど」

 

「・・・・・名前は」

 

「ヨルコさんだよ。シュミットさん」

 

「ヨルコか・・・・」

 

シュミットは放心した顔になりそう呟いた。

そこにアスナが、

 

「シュミットさん、キリト君から持って行った槍の作成者であるグリムロックさんの居場所を知らないかしら?」

 

「・・・・し、知らん。俺はギルド《黄金林檎》を抜け出た後、誰一人として会っていないんだ。勿論グリムロックの居場所もわからない」

 

「なら、よくグリムロックさんがいる場所とか知らない?」

 

とレインが聞くとシュミットは思案顔になり、

 

「1つだけ、心当たりがある」

 

「ほんとか!?」

 

「あ、ああ。だが今も通っているかはわからないが、当時グリムロックが異常に通っていたNPCレストランがある。グリムロックは、当時毎日のように通っていたから、もしくは・・・・」

 

「そこは何層で何処にあるNPCレストラン何だ?」

 

俺がそうシュミットに聞くと、

 

「教えても構わないが、1つだけ条件がある」

 

「条件?」

 

「・・・ヨルコと話をさせて欲しい」

 

俺達はシュミットが出した条件に少し相談した。

 

「どうする、キリト君」

 

「う~ん。まぁ、俺達も一緒に行けば問題ないだろ」

 

「分かった。それじゃ、私はヨルコさんに聞いてみるね」

 

「ああ、頼むぞレイン」

 

俺達はレインがヨルコさんにメッセージを送っている間、アスナ達にシュミットとヨルコさんの護衛を任せることにした。

 

「アスナはシュミットに、ランはヨルコさんに護衛としてついてくれ。ユウキは周囲を確認して怪しいプレイヤーがいないか確認してほしい」

 

「「了解」」

 

「わかりました」

 

「キリト君。ヨルコさんから返信きたよ。大丈夫、だって」

 

俺はレインからそう聞き、

 

「分かった。それじゃヨルコさんの所に行くとするか」

 

その後俺達はシュミットにヨルコさんからのメッセージを伝えシュミットを挟み護衛する感じでヨルコさんのいる第49層「ミュージェン」に転移した。




第56層主街区「トゥルーライ」はオリジナルです。

次回も早く投稿出来るようにします。

アンケート、感想等お待ちしてます。
どんどん送ってください。


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SAO編 第19話〈二つ目の圏内事件の発生〉

遂にソードアートオンライン フェイタル・バレットが発売されました。
けど言いたいことがあります。

何でPSVITAに無いんだよ! です。
PS4持ってないから出来ないのでかなりがっかりです。

投降遅くなりごめんなさい。
次回は早くしますね。
HF(ホロウフラグメント)編か原作通り行くかアンケート取ってます。どちらが良いかメッセージボックスか活動報告に送って下さい。


第49層「ミュージェン」主街区

 

俺達は、シュミットからグリムロックの情報の代わりに「ヨルコと話をさせてくれ」と言われたため俺達は彼女がいる第49層主街区に転移しシュミットを護衛する感じで移動していた。

ヨルコさんのいる宿に着き、レインが扉をノックし、

 

「ヨルコさん。レインです」

 

と、言うと中からヨルコさんから返事が返ってきた。

 

「どうぞ」

 

「お邪魔します」

 

俺達はヨルコさんが泊まっている宿のなかに入り、シュミットが前に出た。

二人の間に沈黙が走った。それからしばらくしてヨルコさんが口を開いた。

 

「・・・・久しぶり、シュミット」

 

「・・・・ああ」

 

「攻略組に入ったんだってね。おめでとう」

 

「っ、そんなことより何でカインズが今更殺されるんだ!?」

 

「それは、レインさん達から聞いているでしょ」

 

「ああ、勿論聞いた。だけど何で今さら、しかも何であの指輪が関係しているんだよ!?」

 

「わからないわ。もしかしたら私たちはあの時間違っていたのかもしれない」

 

「何にだよ!?」

 

「指輪の事よ。私、カインズ、シュミット以外は売却に賛成だったけど私たちは反対だったでしょ」

 

「・・・・そうだが。なら俺達以外のGAのメンバーがカインズを殺ったのか?」

 

GA、というのがGOLDEN ・APPLE、つまりギルド《黄金林檎》の略称なのだろう。

俺達は、二人の会話を少し離れた室内で聞いていた。俺達はシュミットの顔を見て、演技ではなく本気で恐れていることが見てとれた。

 

「そうなのかもしれない、けど私は今でも後悔しているわ」

 

そう言うとヨルコさんは部屋の窓枠に腰掛けた。

 

「あの時、ただ一人だけグリムロックさんだけがリーダーのグリセルダさんに任せると言ったわ。彼だけが欲を捨て、私達と違ってギルド全体のことを考えていたわ。だから、私欲を捨てられなかった私達全員に彼女の復讐する権利が彼にはあるんだわ・・・・」

 

「・・・・冗談じゃないぞ。今更・・・・半年も経ってからこんな・・・。ヨルコ、お前はそれでいいのかよ。今まで頑張ってここまで生き抜いてきたのに、こんな・・・、こんなわけもわからない方法で死んでいいのか!?」

 

シュミットと、俺、レイン、アスナ、ユウキ、ランは窓枠に腰掛けているヨルコさんに視線が行った。

ヨルコさんは、視線を宙に向けしばらく言葉を探すようだった。やがて、何か言おうとしたそのとき、とん、という乾いた音が部屋に響いた。同時にヨルコさんの眼と口が、ぽかんと見開き続いて、ヨルコさんの体が大きく揺れた。

ヨルコさんは、よろめきながら開けられた窓枠に手をついた。その時、一際大きな風が吹きヨルコさんの背中に流れる髪がなびいた。

俺達はその背中に信じがたいモノを見た。

ヨルコさんの背中には投げ短剣(スローイングダガー)が突き刺さっていた。窓の向こうから短剣を飛ばしヨルコさんの背中を貫いたのだ。

前後に揺れていたヨルコさんの体が、大きく窓の奥へと傾いた。

 

「くっ・・・・」

 

俺は急いで手を伸ばしヨルコさんの体を引き戻そうとするが、服の端を僅かに指先がかすっただけで、ヨルコさんは音もなく宿屋の外側に落下し窓枠から身を乗り出す俺の目の前で、ポリゴンの欠片へと変わっていった。

ヨルコさんが死んだ場所には背中に突き刺さっていた短剣が音をたてて転がった。

俺は周囲を見渡すと、ここから2ブロックほど離れた建物の屋根の上に黒いローブを着た人がいた。

 

「くっ、レイン後は頼む!」

 

「え、だ、ダメキリト君!」

 

俺はレインの言葉を無視しその人影を追いかけた。

黒いローブを着た相手とは少し離れているが俺は敏捷力補整を発揮して追いかけた。

 

「・・・・絶対に逃がさねぇ」

 

俺は背中の鞘から剣を抜き相手を見ると、相手はローブの裾から何かを取りだした。相手が取りだしたのは青く輝く結晶、転移結晶だった。俺は追いかけながら左手で腰からピックを3本取りだし人影へと投擲した。

が、相手は憎たらしいまでにも落ち着いていて転移結晶を頭上に掲げた。責めても転移した場所が分かるように俺は耳を澄ませようとした。

その時、街全体に大きな鐘の音が鳴り響き相手の転移詠唱を俺は捉えることができず、後少しのところで俺の前からローブの相手は消えていった。

俺は相手が消えていった後ヨルコさんを殺したスローイングダガーを回収しダガーを見ると、カインズを殺した短槍と同じ意匠で作られていた。

俺は宿屋に着き部屋の前でノックして名乗った後ノブを回しドアを開けて中に入ると、

 

「「「「キリト(君)(さん)‼‼」」」」

 

剣を俺に向けた鬼(女子)がいた。

 

「な、何かな、みんな」

 

「「「「何かなじゃない(ありません)そこに正座(です)」」」」

 

「・・・・はい」

 

俺はおとなしく正座をし女子達からのお説教を受けていた。

その光景を見てシュミットは呆然から立ち直ったようだ。

俺のお説教は約30分くらい続いてVR世界の中なのに足が痺れたような感覚に陥った。

 

「・・・・あの、良いか?」

 

シュミットが俺達に向けて声をかけてきた。

 

「ん、ああ。どうした?」

 

「ああ、あれは恐らくGAのリーダーの亡霊だと思う。リーダーは何時も街に出掛けるときはあんな地味なローブを来ていたしグリムロックにしては背が低かった」

 

シュミットは少し怯えたように話した。

 

「・・・いや。あれはブレイヤーだよ。亡霊何かじゃない、決してな」

 

「そうか。これは返す」

 

シュミットはメニューウィンドウのストレージから俺から持ち去ったカインズの凶器を渡してきた。

 

「・・・・後、すまないが俺をDDAの本部まで送ってくれ」

 

俺はシュミットから凶器を受けとりレイン達を連れてシュミットを第56層「トゥルーライ」にあるDDA本部まで送りその後俺達は主街区にあるNPCレストランで今回のことを協議した。

 

「・・・・悔しいね、ヨルコさんのこと」

 

「ああ」

 

レインの言葉に俺が頷くとアスナが、

 

「キリト君、犯人はどの層に転移していったの」

 

「すまない、ちょうど鐘の音鳴ってわからなかった」

 

「そうなんだ」

 

「にしても今回のことはかなりおかしいんだよな」

 

と言う俺の疑問に、

 

「「確かに」」

 

アスナとランが言った。

 

「まず最初にどうやって宿屋の中までこれを投げヨルコさんの背中を貫いたんだ?」

 

俺はそう言いながらストレージからヨルコさんを殺したスローイングダガーをとりだした。

 

「ええ、基本宿屋の中には入らないはずなんですけど」

 

「確かに、今までそんなこと聞いたこと無いわね」

 

そう話しあっていると、

 

「ねぇ、ちょっと良いかな?」

 

「ん、どうしたレイン?」

 

「実はユウキちゃんと相談していたんだけどカインズさんがポリゴンの欠片になったの時なんだけどアイテムの耐久値が切れるときにでるポリゴンと似ている用な気がするんだ」

 

「アイテムの耐久値?」

 

「うん。前に耐久値が切れちゃったアイテムがポリゴンの欠片になるのを見てねその時のポリゴンが似ているんだよ」

 

俺達はユウキの言葉を聞きある仮説を立てた。

 

「なあ、もしも今回の事件が全部仕組まれていたとしら?それに何でカインズ氏はご飯を食べに来るのにあんな分厚いプレートアーマーを来ていたんだ?」

 

「「「「・・・・・まさか」」」」

 

「ああ、恐らくポリゴンの暴散エフェクトを派手にして自分が転移したのを分からなくさせるためだろう」

 

「え、じゃあもしかして」

 

「ああ、恐らくカインズ氏は生きている」

 

「ちょっと待ってキリト君。君も確認したでしょ生命の碑にカインズさんの死亡が載っていたのが」

 

アスナの問いに、俺はメニューウィンドウを操作しながら、

 

「ああ、勿論見た、けど・・・・・・これは俺がシュミットからさっき別れる前に聞いておいた事だ」

 

一枚の紙を置いたそこにはGAのメンバーの名前が載っていた。そしてカインズ氏のところに止まると、

 

「えっ・・・・このスペル生命の碑で見たスペルと違う!?」

 

「ああ、生命の碑に書かれたカインズ氏は別のカインズ氏だったんだろう。しかも去年に亡くなったな」

 

俺がそこまで言うと、

 

「じゃあ、ヨルコさんはどうなの?」

 

アスナが聞いてきた。

 

「ヨルコさんも勿論生きている。彼女は初めから服の上にこれを刺していたんだよ。そしてタイミングを見計らって宿屋から落ち転移したんだろう」

 

「なら、あの黒いローブの人って、カインズさんだったんですか!?」

 

「だろうな。恐らく今回の事件はカインズ氏とヨルコさんが協力して行ったんだろう。目的はシュミットから指輪の事を聞き出すためだろうな」

 

俺が言うとレイン達女子はヨルコさんとフレンド登録をしていたのを思い出したのか確認していた。

 

「キリト君。ヨルコさん、第19層の外れにある丘にいるみたいだよ」

 

「恐らくそこが、グリセルダさんのお墓なんだろう」

 

俺達はその後、第19層「ラーベルグ」に転移しヨルコさん達がいる場所に移動した。

 

 

俺達が第19層に転移する約15分前DDAのシュミットの自室で、全身プレートアーマーに身を包んだシュミットが、

 

「・・・・もうこうなったら」

 

そう呟き腰のポーチから転移結晶を取りだし、

 

「転移ラーベルグ」

 

第19層に転移していった。

目的地はGAのリーダーであるグリセルダのお墓がある丘にだった。




感想、アンケート等お待ちしてます。
次回もお楽しみにお願いします。


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SAO編 第20話〈全ての真相と笑う棺桶(ラフィン・コフィン)との遭遇〉

早く出来ました。
今回はかなり長いです。

HF(ホロウ・フラグメント)編か原作通りかのアンケートをとっています。どんどん送って下さい。


第19層「ラーベルグ」

 

第19層に転移した俺達はヨルコさんとカインズ氏がいるであろうグリセルダさんのお墓がある丘にに向かった。

丘につくそこには、オレンジブレイヤーに襲われて動けないシュミットとカインズ氏とヨルコさんがいた。

俺とレインがオレンジブレイヤーを見ると、

 

「な、よりにもよって笑う棺桶(ラフィン・コフィン)かよ‼」

 

ここSAOの中で余多あるオレンジギルドの中でも最凶のギルドそれが殺人ギルド、笑う棺桶(ラフィン・コフィン)である。

俺は視線をシュミットに向けると麻痺毒で動けない状態だった。

 

 

後にシュミット達から聞いた話だが俺達が着く15分前、

 

~シュミットside~

 

グリセルダの丘に着いた俺はそこで正座をし、自分が行った事を告げた。

すると何処からか声が聞こえ更に目の前に黒いローブを着た人影が2つ現れた。

 

「・・・まさか、グリセルダだけじゃなく、グリムロックお前も死んでいたのか」

 

「・・・・シュミット、貴方は私に何をしたの?」

 

俺はその言葉に、

 

「俺はあの時、ベルトポーチに入っていた指示にしたがっただけなんだ!指示には「リーダーの後を付け宿屋の中に回廊結晶を設定しろ」とだけかかれていたんだ!

それでまさか本当にリーダーが死ぬとは思わなかったんだ!」

 

俺がそこまで言うと、

 

「・・・・全部録音したわよ。シュミット」

 

と声がして俺がローブの人影を見ると、

 

「・・・・ヨルコ?カインズ?・・・・それに録音って」

 

死んだはずのヨルコとカインズが録音結晶を持ってそこにいた。

 

「今回のことは全てのシュミット、貴方から指輪の事を聞き出すための演技だったのよ」

 

「・・・・演技・・・ははっ、なるほどな。そういう事か」

 

「ええ」

 

「だが、お前もリーダーに死んで欲しかった訳じゃないんだろ」

 

「当たり前だ、カインズ!俺は彼女に憧れていたんだ。それはヨルコもカインズ、お前達も同じだろう!」

 

「その通りよ」

 

「そうだな」

 

俺は正座から立ち上がって二人と話した。

 

「なら、指輪はどこに行ったんだ?俺は指示にしたがっただけなんだから」

 

「ねぇ、シュミット。貴方DDAに入るための装備のお金って何処からか手にいれたの?」

 

ヨルコからの質問に、

 

「え、それは。リーダーが死んでからしばらくしていつの間にか俺のストレージに入っていたんだ」

 

 

俺が言うとヨルコは思案顔で考えると、

 

「ねぇ、二人とも。グリセルダさんとグリムロックさんって結婚していたでしょ」

 

「「ああ」」

 

「二人とも結婚システムの事知っている?」

 

「いや、知らないな。カインズ、お前はどうだ?」

 

「俺は確か、ストレージが共通化するとだけしか知らないんだが」

 

俺とカインズがそう言うと、

 

「その通りよ。結婚すると二人のストレージが共通化するのよ。なら、離婚したらどうなると思う?」

 

ヨルコがそう言うと、

 

「「まさか・・・・」」

 

と、俺とカインズが言ったその時俺から、トン、と音がして俺がブレイヤーアーマーの継ぎ目を見ると、ナイフが着くか刺さっていた。しかも毒が塗ってあったのか俺は地面に倒れた、HPバーを見ると麻痺毒が表示されていた。

すると近くから足音がして、

 

「・・・・ワーン、ダウーン、これは驚いた。まさか本当にDDAの幹部がいるとは」

 

と声が聞こえた。声の主を見ると、

 

「な・・・・お前は‼」

 

そこにいたのは殺人ギルド笑う棺桶(ラフィン・コフィン)のリーダーであるPoHだった。さらにら側には幹部の一人であるジョニー・ブラック、ヨルコとカインズの側には同じく幹部の赤目のザザが武器を突きつけていた。

 

「さて・・・・、イッツ・ショウ・タイム、と行きたいところだが・・・・どうやって遊ぼうかね」

 

「あれ、あれやろうよヘッド」

 

ジョニー・ブラックが甲高い声で叫んだ。

 

「《殺し会って、生き残った奴だけ助けたやる》ゲーム」

 

「それ、前にやって結局生き残った奴も殺したろうがよ」

 

「あーっ!それ言っちゃゲームにならないっすよヘッドぉ‼」

 

その光景に一人ザザがシュウシュウと笑った。

全く緊張感もない、ただ殺すのが楽しいただそれだけの感じだった。

PoHの持つ大型ダガー《友切包丁》(メイトチョッパー)は現時点で手にはいる最高レベルのモンスタードロップ品だ。いわゆる《魔剣》だ。それは恐らく俺のプレートアーマーの装甲さえも容易く貫くはずだ。

俺はここで死ぬことを覚悟すると、別の足音が聞こえた。

 

「そこまでだ!PoH ‼」

 

~シュミットside out~

 

そして今に至る。

俺は走りながら背中の剣《エリュシデータ》を抜きPoHの前に立った。ヨルコさんとカインズ氏のところには同じく片手剣《ブルートガング》を抜いたレインがいた。

 

「よう、久しぶりだなPoH。まだその趣味の悪い格好してんのか」

 

「・・・・貴様にだけは言われたくないな。《黒の剣士》キリト‼」

 

俺とPoHのやり取りにレインが、

 

「ねぇ、キリト君。何でラフコフのリーダーPoHを知ってんの?」

 

「・・・・いや、・・・・それは、また今度話すから」

 

「まぁ、それなら今は聞かないけど。絶対に後で聞かせてよ」

 

「分かったよ」

 

俺は後で説明するとレインに言いPoHの方へと向いた。

すると、

 

「ンの野郎・・・・!余裕かましてんじゃねーぞ!この状況解ってんのか!」

 

「コイツの言う通りだぜ、《黒の剣士》キリト、《紅の剣舞士》レイン。お前達二人だけでどうにか出来るとでも思ってるのか?」

 

「さあな。でも10分ぐらいなら俺達二人でも余裕だぜ」

 

「勿論、私達二人とも対毒potを飲んでいるよ。それに貴方達も後から来る私達と同レベルの人達を3人で相手できるの?」

 

レインに全く同じ言葉を返されたPoHが、フードの奥で軽く舌打ちをしたのが聞こえた。他の二人を見ると、やや不安そうに視線を暗闇に泳がせる。

 

「・・・・・suck 」

 

やがて、短く罵り声を発したPoHが、配下の二人に指示をして構えていた武器を下ろした。

PoHは右手に構えた《友切包丁》(メイトチョッパー)を俺に向け、低く吐き捨てた。

 

「・・・・・《黒の剣士》。貴様だけは、いつか必ず地面に這わせてやる。てめえの大事な仲間を目の前で殺してやってから貴様も殺してやる」

 

そう言うとPoHは《友切包丁》を腰のホルスターに収め配下の二人と共に丘を降りていった。

だが赤目のザザだけは俺の側を通りすぎると、

 

「《黒の剣士》お前は、《紅の剣舞士》の、目の前で殺してやる。絶対にな」

 

そう言うとザザは仲間を追って消えていった。

ラフコフが消えると俺は倒れているシュミットに解毒ポーションを飲ませた。

以前PoHとは言葉を交わし剣を交えたがその配下の二人は情報で聞いただけだった。

俺は視線をローブを着ている二人に声をかけた。

 

「また会えて嬉しいよ、ヨルコさん。そして初めましてと言うべきかな、カインズさん」

 

「・・・・全てが終わったら謝りに行こうとしていたんですけどね。信じては貰えないかも知れませんが」

 

「そんなことないよ、ヨルコさん。私は貴女が生きていてくれて嬉しいよ」

 

「レインさん。・・・・・ありがとうございます」

 

「初めましてじゃないですよ、キリトさん。あの時、僕が転移するとき眼が会いましたね。あの時、貴方には今回のことがバレると思いました」

 

「いや、すっかり騙されたよ。カインズさん」

 

するとシュミットが麻痺毒が抜けたのか立ち上がり俺達に聞いてきた。

 

「キリト、レイン礼を言う。だが何でここにいると?」

 

「レイン達は、ヨルコさんとフレンド登録していたからなそれでたどってここに来た。だがまさか、ラフィン・コフィンがいるとは思わなかったがな」 

 

「そうだね」

 

俺とレインはシュミットに説明すると、

 

「だが何で此処にラフィン・コフィンのトップスリーが此処に?」

 

シュミットがそう聞いてきた。

 

「ラフコフが此処にいたのは偶然じゃない。ヨルコさん、カインズさん貴方達二人は今回のことをグリムロックに全部話したんだろ」

 

俺が言うと、二人は頷き返した。

 

「3人とも結婚システムの事は知っているな?」

 

俺が聞くと、

 

「はい、先程話していました。結婚するとお互いのストレージが共通化するんですよね」

 

ヨルコさんが答えた。

 

「そうだ。なら離婚したらどうなる?」

 

「離婚したら共通化は無くなりますが、死別の場合は異なると・・・・」

 

「その通りだ。死別したら相手のストレージに入っているアイテムは、全て自分のストレージに入るんだよ。ここまでで分かったか?まぁ俺も知ったのはレインから聞いたからなんだかな」

 

俺はレインの方を向き苦笑いを浮かべシュミット達の方を向いた。

 

「さて、詳しいことは・・・・」

 

俺が言うと、

 

「キリト君」

 

レインが丘の西側に視線を向けた。

丘の西側斜面を登ってくる足音が4つ聞こえ、俺達が見ると、

 

「・・・・直接彼に聞こう」

 

一人の男性プレイヤーが3人の女性プレイヤーに連れられて来た。

女性プレイヤーは、アスナ、ユウキ、ランで3人とも男性プレイヤーに視線を釘付け逃さない感じだった。

俺達のところに来ると、男性プレイヤーが、

 

「・・・・久しぶりだね。みんな」

 

ヨルコさん、カインズ氏、シュミットに向けて言った。

 

「グリムロック・・・さん。貴方は、本当に」

 

「誤解だ。私はことの顛末を見守るために此処にいるだけだよ」

 

と、グリムロックが言うと、

 

「嘘つきなさい!貴方ブッシュの中で隠蔽スキル使っていたじゃない私達が看破しなければずっとそこにいたはずだよ」

 

アスナが鋭く反発した。

 

「仕方ないでしょう、私はしがない鍛冶屋だよ。丸腰なのに、あの恐ろしいオレンジブレイヤー達の前にいかなかっただけで何故責められなければならないのかな?」

 

シュミット達は無言でグリムロックの話を聞いていた。

再度何かを言い返そうとするアスナ達を手で制して、

 

「初めまして、グリムロックさん。俺はキリト、こっちはレインだ。あなたが今此処にいたとしてもラフコフの襲撃を結びつける材料はないけど・・・」

 

「半年前にあったギルド《黄金林檎》解散の原因の指輪の

事はあなたが関わっているんじゃないかな?グリムロックさん」

 

俺の言葉にレインが続きグリムロックに言った。

 

「ほう?何故かね」

 

「あんたは、グリセルダさんと結婚状態だった、つまりグリセルダさんが死んだ時点であんたのストレージには問題の指輪が自動的に収納されるか足元に落ちるはずなんだよ」

 

「なるほど、だがもしグリセルダが指輪を装備していたらどうかね」

 

俺の言葉にグリムロックは口角を少しあげ言った。

だがそこに、

 

「そんなことないわ、グリムロックさん。いや、グリムロック‼」 

 

ヨルコさんがグリムロックに投げ掛けた。

 

「あなた今こう言ったわね。リーダーが指輪を装備していたらって、でもね、そんなはずないのよ‼」

 

ヨルコさんはグリムロックに苛烈な声を浴びせた。

 

「どんな根拠でかな?」 

 

「あの時、カインズがリーダーに『《黄金林檎》で一番強い剣士はリーダーだ。だからこれはリーダーが装備したら良い』って。そのあとリーダーが言った言葉を私は今でも一字一句思い返せるわ。あの人は『SAOでは、指輪アイテムは左右の手に一つずつしか装備出来ない。右手にはギルドリーダーの印章、そして左手の結婚指輪は外せないから私には使えない』ってね。いい?その二つのどちらかを解除して、あの指輪をこっそり装備するなんて事、あるはずがないのよ‼」

 

ヨルコさんの鋭い声に俺達は息を飲んだ。

 

「そして、私はここに彼女の剣ともうひとつ誰にも言わなかったけど、遺品を埋めたのよ」

 

そう言うと、ヨルコさんは墓標の裏に膝まずき土を掘り起こした。しばらくして右手に乗る小さな銀色の箱を取り出した。

 

「「「「それは・・・・《永久保存トリンケット》(ですね)」」」」

 

レインとアスナ、ユウキ、ランの言葉にヨルコさんは大きく頷き中から二つの指輪を取り出した。

 

「これはリーダーが死んだ時に装備していたら指輪よ。よく見てみなさい、片方はリーダーが右手に何時も装備していたギルドリーダーの印章、そしてこっちは、いつだって着けていたあなたとの結婚指輪よ、グリムロック‼これでも何か違うと言える?違うなら何か反論して見なさいよ‼」

 

ヨルコさんは涙声にもなりながらグリムロックに指輪を突きつけた。

しばらくしてグリムロックはストレージから大きな袋を取り出した。中身は金貨だった。

 

「これは、あの時の指輪を売却したときのお金だ。勿論金貨一枚だって使っちゃいない」

 

「認めるのね、グリムロック」

 

ヨルコさんの問いに、グリムロックは頷き返した。

俺は、

 

「何故こんなことをしたんだ・・・・」

 

グリムロックに聞いた。

 

「グリセルダとグリムロック、似たような名前なのは偶然ではない。彼女と私は現実世界でも夫婦なのだよ」

 

グリムロックの言葉に俺達は息を飲み、ヨルコさん達は驚きの色が出た。

 

「この世界で私は怯え、恐れ怯んだ、だが彼女《ユウコ》は違った。それを見て私は私が愛したユウコは消えてしまったのだとわかった。私は恐れたんだよ。君達にこの屈辱に耐えられるかね?・・・・私は、そんな屈辱に耐えることは出来ない。だから、彼女がまだ私の妻でいる間にこの世界の中でいっそのこと、と思いやったのだ」

 

俺は、その言葉に激しく怒りを覚えた。レイン達を見ると、レイン達も俺と同じ表情だった。

 

「屈辱・・・・屈辱だと?ふざけるな‼そんな理由であんたは自分の奥さんを殺したのか、冗談じゃない‼」

 

「そんな理由?私には充分過ぎる理由だ。君達にも何時かわかるときが来る。愛情が失われようとしたときににね」

 

「ううん、間違っているのは、あなたの方よグリムロックさん‼」

 

「レインちゃんの言う通りよ。あなたがグリセルダさんに抱いていたのは愛情ではなく、所有欲よ」

 

「そうだね。もしもあなたがまだグリセルダさんの事を思っているのなら・・・」

 

「今ここで、その右手の手袋を脱いで見せなさい。あなたは、グリセルダさんとの結婚指輪をすでに捨ててしまっているでしょう。違いますか?」

 

アスナの言葉にユウキ、ランが続けてグリムロックに言った。グリムロックは押し黙ったまま右手を左手で押さえつけ静寂が走った。

すると、シュミットが、

 

「・・・・キリト、後の事は俺達に任せて貰えないか?この男の罪は必ず償わせる、決して私刑にかけたりはしないから安心して欲しい」

 

「わかった。なら後の事はシュミット、お前に任せた」

 

「ああ、勿論だ」

 

そう言いシュミットは項垂れているグリムロックの右腕をカインズは左手を掴み立ち上がらせ俺達に「世話になったな」と言い丘から降りて行った。

 

「キリトさん。レインさん。アスナさん。ユウキさん。ランさん。今回は本当にありがとうございました。あなた方がいなければ私達はグリムロックの悪事を暴けず殺されていましたから」

 

不意にヨルコさんが俺達にそう言ってきた。

 

「いや、大丈夫だよ」

 

「うん。ヨルコさん達が無事なら私は嬉しいよ。これからも私の友達でいて欲しいな」

 

「「「私(僕)もです(よ)」」」

 

「はい。勿論です」

 

レイン達の言葉にヨルコさんは頷きシュミットとカインズを追いかけて丘から降りて行った。

 

「これで圏内事件も無事解決出来たな」

 

「うん。・・・ねぇ、キリト君。もしもキリト君が誰かと結婚してその人の隠れた一面を見たらどう思う?」

 

「う~ん、その時はラッキーだなって思うかな。そうすればその人の事をより好きになれるから」

 

「・・・・そうなんだ」

 

俺は、アスナ達の方を見るとアスナ達は何故か微笑ましい顔をして俺達の方を向いていた。何故だ?

不意にユウキが、

 

「さっ、帰ろ。明日からまた攻略だよ」

 

「ええ、そうですね。明日からまた頑張りますか」

 

「出来たら今週中に今の最前線を攻略したいね」

 

「あはは、そうだねアスナちゃん」

 

「よし、それじゃ、明日からもまた攻略頑張るとしますか」

 

「「「「オー‼」」」」

 

俺の言葉にレイン達は元気よく言い次の日からまた攻略を開始した。

結果三日後ボス部屋が見つかりボス討伐が行われて死者0で第62層の攻略が完了した。




疲れました。
次回楽しみにお願いいたします。

アンケート、感想お待ちしてます。


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SAO編 第21話〈リスベット武具店へようこそ〉

お気に入りが60件を越えました。
ありがとうございます。
今回はリズとの会合です。

HF(ホロウ・フラグメント)編か原作通りかアンケートをとっていますどちらが良いか送って下さい。

誤字脱字があったらごめんなさい。


第50層主街区「アルゲード」

 

「そろそろ、あのスキルに耐えられる片手剣を探さないといけないな」

 

不意に俺が漏らした言葉にレインが、

 

「そうだね。私のスキルに耐えられる片手剣は自分で作製するから。もう少しで鍛冶スキルがマスタリー出来るからその時に作ろうかな~」

 

と、反応した。

俺達が話している場所はレインの家の中なので誰かに聞かれる心配もなく話せる。俺とレインが話しているスキルとは、半年ほど前に取得した『二刀流』と『多刀流』スキルの事だ。このスキルは所有者が一人しかいない、いわゆるユニークスキルに値する。俺とレインの他にユニークスキルを取得しているのは血盟騎士団、通称KOB、のギルドマスターであるヒースクリフだけと確認されている。

 

「今の最前線は第66層だろ」

 

「そうだね」

 

「俺の気のせいかも知れないが第65層を超えた時点から何かモンスターのアルゴリズムが変わって来ている気がするんだよな」

 

「あ、それは私も思った」

 

「だろ、何時またヤバイ時が来るか分からないかな。・・・・それに65層のボス攻略では5人もの死者が出たからな」

 

「そうだね。あの時はかなりヤバかったね。ヒースクリフさんが支えてくれてなかったら全滅していたかもしれないね」

 

2日前に行われた第65層ボス攻略では5人の死者を出してしまった。ボスの名は『ザ・サンクチュリア・ドール』と言うゴーレム型のボスだった。このボスは25層や50層のクォーター・ポイントに近いレベルのボスだった。ゴーレムの名の通り防御力はかなり高く生半可の攻撃は通らず、攻撃力も高かった。5段ゲージの内4段目までは、苦労せず出来たが最後の1段に入った途端、ボスのパターンが変わり一人、二人と死んでしまった。その戦況をヒースクリフは一人で支えた。ボスの攻撃は全て防ぎボスが動かなくなった所でヒースクリフを含む俺達ののソードスキルをもろに浴びて、第65層のボスはポリゴンの欠片へと変わった。

2日前の出来事を思い出していた俺とレインは、話を戻した。

 

「レイン、俺の片手剣作ってくれないか?」

 

俺がレインに剣の作製をお願いすると、

 

「え、私がキリト君の片手剣を造るの!?」

 

「ああ、出来ないか?」

 

「え~と、その、私なんかより私の知り合いに造ってもらったら?」

 

「レインの知り合い?・・・・・ああ、アスナ達の剣を造った人の事か?」

 

「うん。リズっちに頼んだら良いよ」

 

「う~ん。まあ、レインがそこまで言うならその人に造ってもらおうかな」

 

「オッケー、それじゃ、早速リズっちのところに行こうよ」

 

「ああ、分かった」

 

俺とレインはリズっちと言う人の所に行くことにした。

歩いている最中、不意に俺の隣を歩くレインが、小さな声で何かを言った。

 

『出来れば私がキリト君の剣を造りたいけど恥ずかしいよ』

 

俺は隣を歩くレインに、

 

「ん、何か言ったか?」

 

と聞いた。

 

「う、ううん。何でもないよ、キリト君。さ、行こうよ。リズっちのお店は第48層だよ」

 

「分かった」

 

俺達は転移門広場から第48層に転移した。

 

第48層主街区「リンダース」

 

第47層主街区に転移した俺達はレインの先導のもと水車のある家にやって来た。

看板には『Lisbeth.s Smith Shop 』と書かれていた。

 

店内に入ると、

 

「リズベット武具店へようこそ」

 

赤いドレスみたいな服を着た女性プレイヤーが声を掛けてきた。

 

「ヤッホー、リズっち♪」

 

「あら、レインじゃない。どうしたの?」

 

「今日は、リズっちにお願いがあってきたんだよ」

 

「お願い?」

 

「うん。武器を造って欲しいんだよ」

 

「え?武器を造ってて、レイン、あんた鍛冶スキル取っているでしょ?どうして?」

 

「あ~、ごめんごめん。武器を造って欲しいのは彼のためなんだよ」

 

「彼?」

 

リズがレインに聞いてきた。

 

「あ~、はじめまして、リズベットさん?で会っているのか?」

 

「会っているよ、キリト君♪」

 

「キリト?・・・・・もしかしてレインのパートナーの《黒の剣士》?」

 

リズがそう聞いて来るとレインが答えた。

 

「あってるよ、リズっち♪」

 

「へぇ~、なるほど」

 

「な、何だ?」

 

「ふっふっふ、レイン」

 

「な、何かな、リズっち?」

 

リズは含み笑いをするとレインの方へ近寄ってきた。

 

「彼がレインの好きな人なんでしょ」

 

「ちょ、リズっちてば」

 

何故かレインは顔を赤くして焦っていたのか声が裏返ったいた。

 

「どうしたんだ、二人とも?」

 

「にゃ、にゃんでもにゃいよ、キリト君」

 

レインは驚いたのか噛んで答えた。

 

「そ、そうか」

 

その光景にリズは口を押さえ笑うのをこらえていた。

 

「さて、それで武器を造るとしてもどのくらいのプロパティがいいの?」

 

「え~と、それじゃ、これと同等以上の性能で頼む」

 

俺は背中に装備していた『エリュシデータ』を鞘ごとリズに渡した。

 

「っ、重っ・・・・」

 

俺から渡された剣をリズは落としそうになった。何とか台の上に乗せたリズは、鑑定スキルを使って俺の剣を調べた。

 

『え~と、ロングソード・ワンハンド・固有名『エリュシデータ』製作者銘・無し。といことは、これはあたしとレイン、同業者の造った物じゃないわね』

 

しばらくしてリズが店の奥の壁に掛けてあった片手剣を取り俺に渡してきた。

 

「これが、今うちにある最高の剣よ」

 

俺は剣を鞘から外し数回素振りをして首を傾げた。

 

「少し軽いかな?」

 

「使った金属がスピード型の奴だからかな・・・・」

 

「ちょっと、試してもいいか?」

 

「試す?」

 

「耐久力をさ」

 

と言うと、俺は台の上にある『エリュシデータ』にリズから渡された剣を構え、降り下ろした。

 

「セイッ!」

 

次の瞬間、剣が見事に真ん中からへし折れ、吹き飛んだ。

俺のではなく、"リズから渡された剣が"、

 

「うぎゃああああ‼」

 

リズの悲鳴が店中に響いた。

 

「な・・・・な・・・・・、何すんのよ~ちょっとレイン、この人あたしの最高の傑作の剣折ってくれちゃったんだけど‼」

 

流石にレインも顔を引きつっていた。

 

「キリト君。いくらなんでも、やりすぎだよ。ごめんね、リズっち」

 

「ごめんね、じゃないわよ、レイン‼・・・・・いや、レインが悪いんじゃないんだけどさ」

 

「え~と、リズベットさん、すまん。まさか剣が折れるとは思わなくて」

 

その言葉にリズは更にヒートアップした。

 

「それは、あたしの剣が脆いって事!?」 

 

「いや、そう言う意味じゃないんだけど」

 

するとレインが、

 

「あのさ、リズっち。第55層の北の隅にあるクエストで手に入る鉱石の事知っている?」

 

すると、その言葉にリズは落ち着いたのか答えた。

 

「え、ええ、知っているわよ。確か、北の隅にある村の村長から受けられるクエストでしょ」

 

「うん。その鉱石を手に入れるための条件として、マスタースミス、がいないといけないって言う噂があるんだけど」

 

「そうなの?確かに鍛冶屋で戦闘スキルを鍛えているのって余りいないしね」

 

「それで何だけど、一緒にそれを取りに行かない?」

 

レインからの質問にリズは少し考えて、

 

「いいわよ」

 

「オッケー♪それじゃ行こうよ。キリト君、リズっち」

 

「ああ」 

 

「分かったわ。後、キリト、あたしの事はリズで良いわよ」

 

「そうか?分かった。よろしくな、リズ」

 

第55層に行こうとしたときレインがリズに、

 

「そう言えば、リズっち。片手棍スキルの熟練度ってどのくらい?」

 

「ええっと、確かついこの間マスタリーしたわね」

 

「そうなの!?いつの間に」

 

「まあ、自分で鉱石を採ってきたりするからね」

 

「えっと、じゃあ、レベルは?」

 

「レベル?レベルは62よ」

 

リズの言葉に俺は少し驚いていた。

攻略組程ではなくとも中層ゾーンの中ではかなり高いからだ。ちなみに俺のレベルは88、レインのレベルは87と攻略組の中でもかなり高いレベルだ。

 

「それなら、大丈夫そうだね」

 

「ああ、でも万が一の時のためにリズはレインの側にいてくれ」

 

「わ、分かったわ」

 

俺達はその後、ポーション類を確認しリズは店をNPCに任せて第55層の北の村へと行った。




どうでしたか?次回も早く投稿出来るようにします。

アンケート、感想等お待ちしてます。


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SAO編 第22話〈白竜の巣と二人の想い〉

今回はキリトとレインの関係に変化が!?

HF(ホロウ・フラグメント)編か原作通りかアンケート募集中です。どちらが良いか送ってください。

誤字脱字があったらごめんなさい。


俺とレイン、リズはリズベット武具店を出た後、第55層主街区「グランザム」へと転移しそこから目的地である北の隅にある村に歩いて行った。

 

第55層「グランザム」北の山

 

「びぇっくし‼・・・・・うう、いくら北の山だからって寒すぎないかしら?」

 

「うん。このゲーム、こういった寒さとかまで忠実に再現してるんだよね~」

 

リズのくしゃみにレインは寒そうにして答えた。

俺はその二人に、

 

「・・・・二人ともこれ着たら?」

 

と、言いながらウインドウを操作して二着の大きな黒革のマントをオブジェクト可し二人に渡した。

 

「キリト君。寒くないの?」

 

レインがマントを手に取りながら俺に聞いてきた。

レインの服は紅いコートでリズは店で着ていた服を装備していた、いかにも寒そうって感じの装備だった。

対して俺も、レインと同様の黒いコートなのだが、

 

「・・・・・問題無い」

 

何せ、あのマントは俺とレインの二着のだけなのだ。よって寒くとも俺は我慢するしかない、と言うわけだ。

 

「そう?ありがとう、キリト君」

 

そう言って、レインとリズはウインドウを操作して今の服から俺が渡したマントを羽織った。

俺達はその後、クエストを受注するためクエストを出す、NPCの家に行きNPCからとてつもなく長い話を聞いて家から出てきた頃にはすっかり夕景に包まれていた。

 

「まさかフラグ立てでこんな時間を食うとは思わなかったわ」

 

「そうだね~、どうする?キリト君。このまま、行っちゃう?」

 

「・・・・ドラゴンは夜行性って言うからなあ。それにドラゴンのいる山ってあれだろ?」

 

俺は村からそう遠くない場所にある山に視線を向けた。

 

「そうだね。どうせだから、行っちゃおうか」

 

「そうね。それが良いわ」

 

「それじゃ、行くか」

 

俺達はそのあと雪道を登り山頂を目指した。

途中に出てくるモンスターも対して苦労することなく攻略しあっという間に山頂に着いた。

山頂は上層の低部がすぐそこに見え辺りには巨大なクリスタルの柱が伸びていた。

 

「わあ・・・・!」

 

「綺麗なところだね」

 

「そうだな。二人とも気を付けろよ、リズはそこのクリスタルの陰に隠れていろ。レインはリズの護衛を頼む」

 

「オッケー♪リズっちこっち」

 

「わ、分かったわ」

 

俺はリズとレインに指示を出して二人がクリスタルの陰に移動したのを見て、クリスタルに囲まれた中央に移動した。中央にはぽっかりと、巨大な穴が空いていた。

俺はそのまま、穴に近づいた。その直後、空気を切り裂いて、猛禽を思わせる高い雄叫びが辺りに響き渡った。

俺は、背中から『エリュシデータ』を抜き構えた。その時穴の上空の空間が揺らぎ、滲み出すように巨大なオブジェクトのPOPが始った。ディテールの荒いポリゴンの塊が、表れどんどんと情報量が増していき、巨大な体が完成し、再び雄叫びを放った。 

現れた白竜は俺にブレス攻撃を放った。が、

 

「・・・・・・‼」

 

俺は、『エリュシデータ』を前に高速回転させた。片手剣防御ソードスキル『スピニングシールド』だ。

だが余波を浴び少しHPが減るが戦闘時回復『バトルヒーリング』スキルで直ぐに回復した。俺はそのあと、白竜と同じ高さまでジャンプし攻撃を始めた。

白竜のHPゲージは三段だったが、俺の放った片手剣ソードスキル『バーチカル・スクエア』4連撃、『シャープネイル』3連撃をくらいHPは残り半分になっていた。

だが、白竜は空中で防御がままならない俺に、再びブレスを放とうとしたが、

 

「やぁあああ‼」

 

リズの護衛をしているはずのレインの片手剣ソードスキル『ヴォーパルストライク』単発重攻撃をくらい、HPゲージは残り1割にまで減っていた。が白竜は羽根を羽ばたかせ次の瞬間レインに突風を浴びせた。その結果レインは穴の上空にまで吹き飛ばされ穴のなかに落下していった。

 

「え、き、きゃああああ」

 

「レイン‼」

 

俺は瞬時に穴に落ちていくレインを捕まえレインを抱きしめる様にして二人とも落ちていった。

 

 

「・・・・・うわぁぁぁぁぁ、むぐっ‼」

 

穴に落ちた俺達は、穴のなかに積もっていた雪のお陰で対したダメージは受けなかったが二人ともHPが3割程減っていた。

俺は状況を確認し抱きしめているレインに声をかけた。

 

「無事かレイン?」

 

「う、うん。ありがとうキリト君、助かったよ」

 

俺は腰のポーチから2つのポーションを取り出し1つをレインに渡した。

 

「ほら、ポーション飲んどけよ」

 

「ありがとう」

 

「ところで、リズはどうした?」

 

「ああ。リズっちなら、キリト君が危なさそうだから先に「リンダース」に転移してもらったよ。1日立っても帰らなかったら、アスナちゃん達に知らせてって言っといたよ」

 

「そうか。さてと」

 

俺はぐるりと回りを見渡した。

 

「どうやって、こっから脱出する?」

 

「え、え~と、転移結晶って使えないのかな?」

 

「多分、クリスタル無効化エリアだろうな」

 

「う~ん。キリト君、何かある?」

 

「あるぞ」

 

俺は自信満々に言った。

 

「え、何?」

 

「壁を走って上る‼」

 

俺の提案にレインは飽きれ半分驚き半分の表情をした。

 

「キリト君。まさか、この壁を上るの?」

 

「おう。見てな」

 

俺は数歩下がると助走をつけて壁を走り上った。

が半分まで行ったところで足を滑らせ、

 

「うわぁぁぁぁ」

 

レインの隣に落ちていった。

 

「大丈夫、キリト君?」

 

レインは新たに取り出したポーションを飲んでいる俺に、聞いてきた。

 

「ああ、大丈夫だ。さて、もう暗くなってるし寝るか」

 

俺は、そう言うとストレージから寝袋を取り出した。

 

「え、寝るの?」

 

「おう。ところでレイン、寝袋って持ってる?」

 

「・・・・・・・持ってません」

 

「え、え~と、それじゃレイン寝袋使えよ。俺は、雪の上で寝るから」

 

「え、でもそれじゃ、キリト君が風邪を引くよ」

 

「いや、ここゲームの中なんだから風邪は引かないだろ」

 

「それはそれ、これはこれ‼・・・・・う~ん、なら一緒に寝ようか」

 

「はい!?一緒に寝るって寝袋に!?」

 

俺は、レインからの提案に思わず聞き返してしまった。

 

「うん。あ、でも、寝る前に夜ご飯を食べようよ。余り材料無いから簡単な物しかできないけど」

 

レインはそう言うとストレージから調理器具と食材を取りだしご飯の支度に取りかかった。

夕飯のサンドイッチを食べた俺達は寝袋の中に二人で入った。幸いなことに寝袋は広かったために二人で入っても窮屈にはならなかった。俺達は互いの背を向けて寝ていた。

寝袋に入り微睡んでいた時レインが話してきた。

 

「ねぇ、キリト君」

 

「ん、何だ?」

 

「どうして私が落ちたときたすけてくれたの?」

 

「それは、大事なパートナーだからだよ」

 

「それだけ?」

 

俺は、レインからの質問に答えて良いのか考えていた。

俺は、少しの間沈黙しレインからの質問に答えた。

 

「・・・・・笑うなよ」

 

「笑わないよ」

 

「・・・・・それは、・・・・・・レインは、俺の一番大切な人で好きだからだよ」

 

 

『ああ~‼言ってしまった』

 

俺は、レインへの想いをまさかこんなところで暴露してしまうとは思わなかったため寝袋の中で悶絶していた。

 

~レインside~

 

『一緒に寝るって大胆な事言っちゃったけど・・・・・キリト君が私の事一番大切で好きだって‼』

 

私はキリト君の言葉にゲームの中なので聞こえるはず無いが心臓の音が高鳴っているのが分かった。

 

「・・・・・キリト君。私もキリト君の事が好きだよ」

 

私は前からキリト君に想っていたことを伝えた。

 

~レインside out~

 

俺とレインは寝袋の中で互いの顔を見て笑い会った。

  

「「俺達、(私達)って両思いだったんだな(ね)」」

 

「まあ、その話は此処から出られたら話そうか」

 

「ふふ、そうだねキリト君。それじゃ、おやすみキリト君」

 

「おやすみ、レイン」

 

俺達はそのあと深い眠りに落ち翌日朝日が昇るの頃に目を覚ました。

 

「ふあぁぁ、おはよう~レイン」

 

「お、おはようキリト君」

 

俺達は、昨日の事が合ったせいかまともに互いの顔を見られなかった。

俺は寝袋を片付けその間にレインは朝食の準備をしていたのだが、俺は視界の端にキラリと輝く物を見つけた。

 

「レイン‼ちょっと来てくれ!」

 

俺が呼ぶとレインは直ぐに駆けつけた。

 

「どうしたの、キリト君?」

 

「レイン、これ」

 

俺は、そう言うと埋まっている輝く物を取り出した。

 

「それ鉱石、だよね?」

 

「ああ」

 

「ちょっと、貸してくれる?」

 

俺は、手に持っていた鉱石をレインに手渡した。

 

「・・・・え~と、《クリスタライト・インゴット》これひょっとして、私達が取りに来た鉱石!?」

 

「そうだろうなぁ」

 

「でも、何でこんなところに埋まっているの?」

 

「多分、ここはあのドラゴンの巣なんだよ。つまりそれはドラゴンの・・・・・「そこまでで大丈夫だよ。分かったから」そうか」

 

「さて、どうやって此処からでる?」

 

俺達は埋まっていた2つの《クリスタライト・インゴット》をストレージに入れた。1つは俺の剣にもう1つはレインの剣を造るためだ。

 

「ん~ここがドラゴンの巣なら朝にはここに戻って来るだろうしそれに乗って此処からでるか」

 

「オッケー♪・・・・・それじゃあ」

 

俺とレインは上を見上げた。すると上からドラゴンが此方に向かってきていた。

 

「ああ、行くぞレイン‼」

 

俺達はそのあと、ドラゴンに掴まり巣から出て、リズのいる第48層「リンダース」に向かって転移結晶を使わずに歩いて向かって行った。




次回はキリトの剣作製です。

アンケート、感想等お待ちしてます。


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SAO編 第23〈新たな剣〉

少し遅くなりごめんなさい。
次回は早くしたいと思います。

HF(ホロウ・フラグメント)編か原作通りかアンケート募集中です。どちらが良いか送ってください。

誤字脱字があったらごめんなさい。


俺達は第55層の白竜の巣から出て俺達は第48層「リンダース」に転移した。

第48層に着いた俺とレインはリズの待っている「リズベッド武具店」に互いの手を繋繋いで向かった。幸いにも店にたどり着くまでに誰とも出会さなかったので俺とレインが手を繋いでいるところは見られなかった。

 

「リズベッド武具店へようこそ。・・・・・・ってレイン!?それにキリト!?」

 

店内に入った俺とレインは、リズからの驚きの声を受けた。

 

「ヤッホー、ただいまリズっち♪」

 

「ただいまリズ」

 

「ちょ、ちょっと待ってて‼」

 

そう言うとレインは、奥の工房に慌てて入って行った。

しばらくして奥からリズが戻ってきた。

 

「キリト君‼レインちゃん‼」

 

「て、アスナ!?どうしてここに?それにユウキにランも」

 

リズの出てきた扉からは俺達の親友であるアスナ、ユウキ、ランの3人が出てきた。しかも3人ともリズが作製した武器を装備していた。アスナが装備している細剣は『ランベントライト』ユウキの片手剣は『ネクロティアフィル』ランの片手剣は『フィーアスティンド』とどれも業物の剣だ。

俺がアスナ達に聞くとユウキが答えた。

 

「どうしてここに、じゃないよ二人とも」

 

「そうですよ。心配したんですよ。これから救助に向かおうとしたところです」

 

「「ごめん(なさい)」」

 

「まあ、二人が無事で良かったよ。・・・・・・・・ところで」

 

不意にアスナが言葉を途切れさせ俺とレインの顔を見てきた。よく見るとアスナだけではなくユウキ、ラン、そしてリズまでも俺とレインを見ていた。

 

「「どうした(の)?」」

 

俺達が聞くと。

 

「「「「何で二人とも手を繋いでいるの(んですか)?」」」」

 

「「え?」」

 

俺とレインはアスナ達の言葉に今更ながらに気づいたように手を見た。手を見た俺とレインは顔を赤くしながら互いの手を離した。その光景にアスナ達は顔をにやけながら納得したような顔でレインを見ていた。

 

「そ、それよりリズ、これ」

 

俺は、話題を逸らすため採ってきた《クリスタライト・インゴット》を取りだしリズに渡した。

 

「わぁ、ありがとう。早速作るわね」

 

俺とリズがやり取りをしている間、アスナ達はレインの方へ行きレインと何かを話していた。

 

「さて、色々聞きたいことあるけど先にキリトの剣を造っちゃいましょうか」

 

リズのその言葉に一番強く反応したのはレインだった。

 

「う、うん。そうだね。早くキリト君の剣を作ってあげようよ」

 

そう言うとリズの後ろにある工房に走って行った。

 

「あはははは・・・・・・・それじゃ奥に来て。と、その前に」

 

 

リズは苦笑いをしながら店をopenからcloseにし工房に入って行った。

俺達が中に入るとリズはレインに耳打ちをしていた。レインはリズの言葉に顔を赤くしながら頷いていた。

 

「・・・・分かったよ~。さっき、アスナちゃん達にも言われたから~。後日話すよ」

 

レインの言葉にレインを除く女子達は嬉しそうに首を縦に頷いていた。

 

「さて、キリト。片手用直剣で良いのよね?」

 

「ああ」

 

「オッケー。それじゃ始めましょうか」

 

そう言うとリズは壁のレバー倒した。レバーを倒すとふいごが動き風を送り始めた。すると炉が真っ赤に焼け始めた。リズは俺から受け取った《クリスタライト・インゴット》を炉の中にいれた。俺達は鉱石が炉の中で焼けているのを見とれていた。しばらくして鉱石を取りだし、金床の上に置いた。

壁から愛用している鍛冶ハンマーを取り、メニューを設定し赤く光る金属を叩いた。叩くと、カーン!と澄んだ音がなり、それと同時に明るい火花が盛大に飛び散った。

しばらく音はリズが振るうハンマーが金属に当たる、カーン!カーン!と言う音が鳴り響いた。

リズが叩いてから何度目とも知れない槌音が響いた直後、金属が一際まばゆい白銀光を辺りに放った。

長方形の物体が、輝きながらじわじわと姿を変えていった。物体は前後に薄く延び、次いで鍔と思わしき突起が盛り上がっていった。

 

「おお・・・・・」

 

「「「「うわぁ・・・・・」」」」

 

俺達はその光景に感激の声を洩らしながら、リズの方へと近づいていった。俺達が見守るなか、数秒かけて剣としてのオブジェクト、ジェネレートが完了した。

出来た剣は"美しい"としか言えなかった。それほどまでに美しい剣なのだ。アスナの『ランベントライト』程ではないがワンハンド・ロングソードにしては、やや華奢で刀身は薄く細かった。インゴットの性質を受け継いでいるのか、剣は僅かに透き通っており刃はまばゆいほどの白。柄はやや青味を帯びた銀だ。

出来上がった剣をリズはワンクリックして出た、ポップウインドウを覗きこんだ。

 

「え~と、固有名は『ダークリパルサー』ね。私は聞いたこと無いわね。レインはある?」

 

「ううん。私も、始めて聞いたよ」

 

「てことは、今のところ情報屋の名鑑に載ってない剣ね。キリト試してみて」

 

リズはそう言うと俺に『ダークリパルサー』を渡してきた。俺は、右手を伸ばし剣の柄を握った。重さを感じさせない動作で持ち、左手を振って開いたメインメニューから装備フィギュアを操作して『ダークリパルサー』をターゲットし、メニューを消してから右手から左手に剣を持ち変えた。数回素振りをした俺にリズが聞いてきた。

 

「どう?」

 

「重くていい剣だ」

 

俺がそう言うと、レイン達は歓声を上げた。

 

「良かったね、キリト君、リズっち♪」

 

「良かったわね、キリト君、リズ」

 

「おめでとう、キリト、リズ」

 

「おめでとうございます。キリトさん、リズさん」

 

「ありがとう、みんな」

 

「後、リズすまんがこれの鞘を見繕ってくれないか?」

 

「ちょっと待ってて」

 

俺がそう言うと、リズはメニューから黒塗りの鞘を取りだし、俺に渡した。

剣を鞘に収納した俺は、メニューを操作して今装備している『エリュシデータ』をしまい新たに『ダークリパルサー』〈暗闇を払うもの〉を装備した。

『ダークリパルサー』を装備した俺にリズが、

 

「ねぇ、ところで何で剣が2本必要なの?充分に強い剣を装備してるじゃない」

 

「うっ・・・・」

 

俺は、その質問に動きを止めレインの方を見た。

 

「え~と、それは話さないと駄目かな?」

 

レインがアスナ達に聞くと。

 

「そうね~。キリト君とレインちゃんが隠しておきたいなら私達は無理矢理には聞かないわ」

 

アスナの言葉に俺とレインは顔を見合わせ、

 

「今度また、話すよ」

 

「そうだね。それに話さないと駄目でしょアレに関しては」

 

「それじゃ、明日また此処に集合でいいかしら?」

 

アスナが聞くと。

 

「私は、構わないわよ」

 

「まあ、明日なら俺も良いけど」

 

「私も良いよ」

 

上からリズ、キリト、レインが言った。

 

「それじゃ、決まりね。それじゃ明日午前10時に此処に集合ね」

 

「「「「了解」」」」

 

そうして今日は解散してまた明日集まることになった。俺とレインはホームがある第50層「アルゲード」に転移した。帰りの最中俺とレインは、

 

「あのスキルの事話すのか?」

 

「うん。駄目だったかな?」

 

「いや。アスナ達には何時か言わなくちゃならなかったからな」

 

「そうだね。・・・・・今日、私の家に来る?」

 

「・・・・・そ、そうだな」

 

俺とレインは、レインの家に行き夕飯を食べた後俺は、明日の事について話、今日はレインの家で夜を明かすことにした。




リズが作製したユウキとランの片手剣はオリジナルです。
次回はオリジナル回です。

アンケート、感想等お待ちしてます。


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SAO編 第24話〈ユニークスキルと結婚!?〉

連続投稿疲れます。
文章の数が少ないけどご了承下さい。

HF(ホロウ・フラグメント)編か原作通りかアンケート募集中です。

誤字脱字があったらごめんなさい。


俺達は、昨日リズに俺の新たな剣『ダークリパルサー』を作ってもらった後「何故剣が2本も入るのか?」と聞かれ「後で説明する」と言い、アスナの計らいで今日リズの店で俺達が隠していることを話す事が決まった。

俺とレインはそのあと、第50層「アルゲード」に転移しレインの家で明日の事についてとレインの手料理を食べた後、俺は、リビングにあるソファで、レインは寝室のベッドで寝て夜を明かした。

俺達は、朝目覚めた後それぞれ装備を整えレインの朝食を食べてから第48層「リンダース」にあるリズの店に向かった。

 

第48層「リンダース」リズの店店内

 

「おはよう、リズっち」

 

「おはよう、リズ」

 

「おはよう、二人とも。さあ来て、すでにアスナ達は着いているわよ」

 

そう言うと、リズは俺達を店の奥にある工房に行くように行った。今日、リズの店は定休日としたため誰もお客さんが来ること無い。

奥に行くとすでにアスナ達が椅子に座っていた。

 

「おはよう、キリト君、レインちゃん」

 

「おはよう、二人とも」

 

「おはようございます。キリトさん、レインさん」

 

「おはよう、アスナ、ユウキ、ラン」

 

「おはよう、3人とも」

 

俺達はそれぞれ挨拶をして椅子に腰掛けた。

すると、アスナが口を開いた。

 

「さて、まず最初にキリト君とレインちゃんが隠していることを話してくれない?キリト君、どうして剣が2本も必要なの?」

 

「え~と、誰にも言わないで欲しいんだけど」

 

レインがそう言うと、アスナ達4人は無言で頷いた。

 

「それじゃ、話すと俺とレインはユニークスキルをもっているんだ」

 

「「「「・・・・・・・・ええ~~‼‼」」」」

 

俺が話すと案の定4人から驚きの声が上がった。

 

「ユニークスキル!?キリト君とレインちゃんが!?」

 

「うん。私の持っているユニークスキルは《多刀流》」

 

「俺のは《二刀流》だ」

 

その言葉に4人は開いた口が塞がらないように口をパクパク動かしていた。やがてランが。

 

「それ、どのくらいすごいユニークスキル何ですか?」

 

「え~と、リズ向こうで試しても良いか?」

 

俺がリズに聞くと。

 

「良いわよ。私も見てみたいしね」

 

そう言うと、俺達は店の空いた場所で見せることにした。

 

「それじゃ、私から行くよ」

 

レインそう言うと、レインはメニューからスキルを変更、装備を変えた。

レインの右手には『ブルートガング』左手には『トュールビヨン』を装備した。

 

「やぁぁぁぁ‼‼」

 

レインは《多刀流》スキル上位ソードスキル『ディバイン・エンプレス』15連撃を空撃ちした。

 

「「「「おおぉ・・・・」」」」

 

アスナ達は、驚いたように声を洩らした。

レインが腰の鞘に剣を収納すると俺の方を向き言ってきた。

 

「次は、キリト君の番だよ」

 

「分かった」

 

俺は、レインと場所を変わりメニューからスキルと装備を変更し背中に装備してある2本の剣を引き抜いた。

俺は、右手に『エリュシデータ』左手に昨日リズが作ってくれた『ダークリパルサー』を持った。

 

「はぁぁぁぁ‼‼」

 

俺は《二刀流》上位ソードスキル『ナイトメア・レイン』16連撃を空撃ちした。

空撃ちした俺は、剣を背中に収納しレイン達のところに戻った。

 

「と、まあこんな感じなんだけど」

 

俺がアスナ達に言うと。

 

「・・・・キリト君・・・・レインちゃん」

 

「「どうした(の)アスナ(ちゃん)」」

 

「「「「これ、ゲームバランス崩壊ものでしょう!!!」」」」

 

アスナ達全員絶叫した。

 

「ま、まあね」

 

「そ、そうだな」

 

そう言うと俺達は、元の場所に戻った。

 

「と、まあ、こんなわけだから口外しないで貰えると助かる」

 

「分かったわ、こんなの持っているってバレたらヤバそうだものね」

 

「僕も言わないよ」

 

「私もです」

 

「私も言わないわ」

 

「「ありがとう」」

 

俺とレインが4人に礼を言うと、アスナが話を変えてきた。

 

「さて、ユニークスキルの件は分かったけど」

 

「そうだね。こっちが今回のメインだから」

 

「ですね」

 

「ズバリ、二人に聞くけど」

 

「「な、何?」」

 

「「「「昨日、何で手を繋いでいたんですか?」」」」

 

俺とレインはその質問に顔を赤くした。

 

「そ、それは、その」

 

「え~と、だね」

 

中々言わない俺とレインにリズが。

 

「じゃあ、二人とも好きか嫌いかどっちかで答えて‼まずはレインから、どっち」

 

「え~と、その、好き、です」

 

「じゃあ、次はキリトね。どっち?」

 

「そ、その、好き、だけど」

 

俺とレインが答えると流石女子と言ったところか感激の悲鳴を出していた。

 

「ふふふ、二人ともお互いの事好きなんだ。だから手を繋いでいたんだ」

 

「ちょ、リズっち。恥ずかしいから言わないでよ~」 

 

「あははは、ごめんごめん」

 

「二人ともお互いの事好きなら結婚したらどうですか?」

 

ランが突如そんなこと言ってきた。

 

「「け、結婚!?」」

 

「良いわね、それ」

 

「そうだね。結婚しちゃったらどう二人とも?」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ。結婚って」

 

「大体どうなったら結婚になるんだよ!?」

 

俺とレインはアスナ達が言った「結婚」に顔を赤くしながらも言った。

 

「だって、ねぇ~」

 

「「「そうだね(ですね)」」」

 

何故か納得したような顔で此方をアスナ達は見ていた。

 

「それは、今度レインと相談するから」

 

俺は、今そう言うのが精一杯だった。

俺とレインはその後、リズの店を出てレインの家に向かった。

 

第50層「アルゲード」

 

「全く、アスナちゃん達たら「結婚」何て気が早すぎるよ。ねぇ、キリト君」

 

「あ、ああ。そうだな。・・・・と、忘れるところだった。はい、これ」

 

俺は、もう一つの《クリスタライト・インゴット》をレインに渡した。

 

「あ、ありがとうキリト君。これで私の新しい剣が作れるよ」

 

「そうか、良かった」

 

「それじゃ、明日転移門前で待ち合わせね」

 

「分かった。それじゃ、また明日なレイン」

 

俺は、レインの家を後にした後俺は自分の家に帰る間アスナ達が言ってきた「結婚」と言うワードに考えを働かしていた。

翌日何の問題もなく転移門前でレインと待ち合わせをした俺は、現在の最前線である第66層に転移し攻略を始めた。

結果三日後第66層のボスは死者0で討伐され攻略完了した。




《多刀流》ソードスキル『ディバイン・エンプレス』15連撃はオリジナルです。

アンケート、感想等お待ちしてます。どんどん送ってください。

次回も早めに投稿しようと思います。


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SAO編 第25話〈プロポーズそして・・・・・〉

遅くなりごめんなさい。
次回は早く出来るようにします。

HF(ホロウ・フラグメント)編か原作通りかアンケート募集中です。

誤字脱字があったらごめんなさい。


第50層主街区「アルゲード」

 

現在の最前線第68層の攻略を俺は今日休み第50層の転移門広場で、俺は一人である人物を待っていた。それは・・・・

 

「お待たせキリト君、どうしたの?君が手伝って欲しいって言うなんて」

 

「すまん、アスナ。歩きながら説明するよ」

 

そう、俺が呼び出したのは親友であり血盟騎士団の副団長であるアスナだった。

歩きながら俺は今日アスナを呼び出した訳を説明した。

 

「実はレインにプロポーズをしようかなって思っているんだけど」

 

「え!?キリト君がレインちゃんに!?」

 

「あ、ああ」

 

「てことは、ついにレインちゃんと結婚する気になったのね!」

 

「まあ、そうだけど」

 

「ふふふ、そうか~。・・・・ところで、何で私だけなの?ユウキやランさんは?」

 

「ああ、ユウキとランは何か予定があるみたい」

 

「そうなの!?あ、そう言えば昨日二人とも『予定があるから行けない』って言っていたわね。なるほどね」

 

「と、まあ、そんなわけでアスナに協力して欲しいんだよ」

 

「私は勿論良いわよ。それじゃ行きましょうか。何か良いアクセサリーショップのある場所知らないかしら?」

 

「う、いや。そういうのは俺、無頓着で・・・・・スミマセン」

 

俺がそう言うとアスナは、呆れたように溜め息をついた。

 

「はぁ~、分かったわ。それじゃ、私達がよく行く商業区のアクセサリーショップに行きましょうか」

 

「分かった」

 

俺達は、レインに渡すための物を探しに「アルゲード」の商業区に向かうことにした。

 

「アルゲード」商業区エリア

 

「ねぇ、キリト君こんなのどうかな?」

 

そう言いながらアスナが俺に見せてきたのは赤と蒼の混じったペンダントだった。

 

「う~ん。レインの色って言うと紅と白て感じだからなあ。それだと少し色が濃いかもしれない」

 

「そっかあ~。・・・・・キリト君、レインちゃんにあげるなら指輪とペンダントどっちが良い?」

 

「う~ん。・・・・指輪かな。まあ、一応プロポーズなんだし指輪の方が良いかもしれないし」

 

そう言うと、アスナは手に持っていたペンダントを戻し指輪のあるところに向かった。

 

「キリト君。これなんてどうかしら?」

 

そう言って見せてきたのは黒と紅の交じりあった指輪だった。

 

「え~と、何々『エンゲージリング』か。良いなこれ」

 

「そう、良かった。後は名前を刻んでもらえば大丈夫ね」

 

「そうだな。・・・・・・スミマセン‼」

 

俺は近くにいたNPC店員を呼んだ。

 

「はい。どうかいたしましたか?」

 

「はい。これを2つ指輪に名前を刻んでもらって良いですか?」

 

「かしこまりました。それでは、刻むお名前をこちらにお書きください」

 

そう言うと店員は紙とペンを渡してきた。

 

「わかりました」

 

そう言うと俺は紙に『Kirito』、『Rain』と書き込み店員に渡した。

 

「これで大丈夫ですか?」

 

「はい。それでは少々お待ちください」

 

そう言うと店員は店の奥に向かった。

俺はその間に指輪とは別のプレゼントを見て選んでいた。

 

その頃レイン達は・・・・・・・

 

~レインside~

 

『ピンポーン』

 

玄関のチャイムが鳴り私は玄関の扉を開けた。そこにいたのは・・・・

 

「ヤッホー、レイン」

 

「お邪魔しますね。レインさん」

 

「いらっしゃい、ユウキちゃん、ランちゃん。今日はありがとうね」

 

「大丈夫だよ。元々今日は、姉ちゃんと一緒にお出掛けする予定だったからね」

 

「ええ。だから気にしなくても大丈夫ですよ」

 

「ありがとう、二人とも」

 

私の親友であり血盟騎士団の副団長補佐のユウキちゃんとランちゃんの姉妹だった。

 

「そう言えば、アスナちゃんは?」

 

「アスナなら、今日誰かと約束していたみたいだよ」

 

「へぇ」

 

「ところで、私達を呼んだのはどうしたんですか?」

 

ランが私の方を見ながら言ってきた。

 

「実はね、二人にお願いがあるの」

 

「「お願い(ですか)?」」

 

「うん。実は・・・・・・キリト君の好きな食べ物って何か分かるかな!?」

 

私が言った言葉にユウキちゃんとランちゃんは瞳をパチパチした。

 

「キリトの、好きな食べ物?」

 

「ですか?」

 

「うん。二人はキリト君の幼馴染みなんでしょ。だから、何か知っていることがあったら教えて欲しいなって」

 

私が言うと二人は微笑を浮かばせ言った。

 

「なるほど」

 

「良いですよ」

 

「ほんと!?ありがとう~」

 

「そうですね~。キリトさんの好きな食べ物って言うと・・・・」

 

「・・・・やっぱあれだよね」

 

「あれ?」

 

「うん。キリトはね、辛いものが大好きなんだよ」

 

「か、辛いもの?」

 

私はユウキちゃんの言葉に聞き返してしまった。するとランさんが。

 

「ええ。キリトさんは、ペペロンチーノや激辛カレーなど辛い物が好きなんですよ」

 

「そ、そうなんだ」

 

私は内心驚いていた。現に私はキリト君に作る時は色々と出すが辛いものは出したことが無いからだ。それに、私は辛いものが少し苦手だと言う理由もある。

 

「ほ、他にはあるかな?」

 

私が言うと二人は思案顔になり考えた。

 

「そうですね。キリトさんが好きな食べ物で辛いもの以外と言うと・・・・・・」

 

それから私達は、キリト君の事や世間話などで華を咲かせていた。

しばらくすると玄関のチャイムが『ピンポーン』と鳴った。

 

「あれ?誰だろう?」

 

私は、ユウキちゃんとランちゃんの顔を見ると二人とも首を横に振って『わからない』と返した。私は玄関に行き扉を開けた。

すると、そこにいたのは・・・・・・・

 

「やあ、レイン」

 

「こんにちは、レインちゃん」

 

「キ、キリト君!?それにアスナちゃん!?どうしたの二人とも?それにアスナちゃん今日何か予定あったんじゃ」

 

扉の外にいたのは私の好きな人キリト君に血盟騎士団副団長のアスナちゃんだった。

 

~レインside out~

 

時は遡ること一時間前

 

「お待たせいたしました。こちらでよろしいでしょうか」

 

NPCの店員に指輪に名前を刻んでもらっていた俺は、NPCの店員に出来た指輪の名前刻みを確認していた。

 

「はい。大丈夫です」

 

「わかりました」

 

「あ、後これもお願いします」

 

俺は、手に持っていた物を指輪を持ってきたNPC店員に頼んだ。

 

「かしこまりました。お会計こちらになります」

 

「はい」

 

俺は、指輪等のお金支払った。指輪等を受け取った俺は、外で待っていたアスナのところに向かった。

 

「お待たせ、アスナ」

 

「出来たんだ。良かったねキリト君。レインちゃんも喜ぶよ」

 

「ああ、そうだと嬉しいな」

 

俺とアスナはアクセサリーショップを後にした。

歩いていると不意にアスナが俺に聞いてきた。

 

「そう言えば、キリト君」

 

「ん?」  

 

「何時レインちゃんにプロポーズするの?」

 

「うぐっ。それは・・・・・・この後第47層にある場所でしようと思うんだけど」

 

俺が言った第47層は「フラワーガーデン」として有名で告白やデートスポットとしてはかなり良い場所である。

 

「へぇ」

 

アスナは少し驚きながら俺の方を向いて言った。俺達はそのままレインの家に行くことにした。

レインの家に着いた俺は、家のインターホンを鳴らした。すると、レインが出てきた。

 

「やあ、レイン」

 

「こんにちは、レインちゃん」

 

「キ、キリト君!?それにアスナちゃん!?どうしたの二人とも?それにアスナちゃん今日何か予定あったんじゃ」

 

 

で今に至る。

 

 

レインに聞かれた俺は、アスナと買い物をしていたことを伝えた。

 

「そうなんだ。あ、なかに入って二人とも」

 

俺とアスナは、レインの後に続いて中に入った。中に入った俺は、・・・・

 

「あれ、キリト、それにアスナどうしたの?」

 

「キリトさんにアスナさん?アスナさん、今日予定あったはずでは?」

 

中でソファに座っていたユウキとランの姉妹に声を掛けられた。ユウキとランの姿を見たアスナは。

 

「あれ、ユウキにランさん。どうしてここに?」

 

「実は昨日レインに呼ばれてね」

 

と、ユウキがアスナに今日レインに呼ばれた訳を説明した。

 

「ところで、レイン。今から少し良いか?出来れば二人だけで出掛けたいんだけど・・・・」

 

俺が、レインに聞くと。

 

「え、別に良いけど。どこに行くの?」

 

レインからの問いに俺は。

 

「第47層なんだけど」

 

「良いよ♪ちょっと待ってて」

 

そう言うとレインはアスナ達に何かを話した後こちらに来て。

 

「じゃあ、行こうよ」

 

「ああ」

 

その後、俺とレインは家を後にし第47層「フローリア」に転移した。

 

第47層「フローリア」

 

第47層に転移した俺とレインは。

 

「で、どこに行くの?」

 

「え~と、まあ着いてきて」

 

俺の先導の元俺とレインは主街区の端にある大きな樹のしたに来た。周りは一面花に囲まれていて心が安らぐような場所だ。

 

「キレイなところだね♪」

 

「そうだな」

 

俺はレインの言葉に相槌を打ちストレージからさっき程購入した指輪を取り出した。

 

「その・・・・・だな、レイン。・・・・・これ」

 

俺はレインに指輪を見せた。

 

「え!?キリト君、これって」

 

「レイン、俺と結婚してほしい」

 

~アスナside~

 

私達は、レインちゃんから「ちょっと出掛けてくるね」と言いレインちゃんとキリト君が出掛けた後。

 

「アスナ、何でキリトと一緒にいたの?」

 

ユウキが聞いてきた。

 

「実はね。キリト君からレインちゃんにあげる指輪を選ぶのを手伝っていたの」

 

「「指輪!?」」

 

「それって・・・・」

 

「結婚指輪じゃ」

 

二人の声は驚きに振るえていた。

 

「そうだよ」

 

「じゃあ、今二人が出掛けたのって」

 

「うん。ユウキとランさんの考えている通りだよ」

 

私が言った言葉にユウキとランさんは顔を赤くしていた。

私達は、キリト君とレインちゃんが上手く行く用に願い二人が帰ってくるまで私達は談笑することにした。

 

~アスナside out~

 

「レイン、俺と結婚してほしい」

 

俺がレインに言うと、レインは嬉しそうに笑顔を見せて。

 

「はい!私でよければ」

 

俺のプロポーズにレインは即答で返事を返した。

俺は、その後レインの左手に『Rain 』と刻まれた指輪をはめ、もうひとつ購入したプレゼントを渡した。

 

「これは・・・・・・」

 

レインが取り出したのは紅と薄い白が混じったペンダントだった。取り出したペンダントをレインは、首に着け俺に見せてきた。

 

「どうかな、キリト君」

 

「うん。似合っているよ、レイン」

 

「ありがとう、キリト君♪」

 

そして俺は左手に『Kirito 』と刻まれた指輪を着けた。

 

「さてと、戻ろうか」

 

「うん♪」

 

俺とレインは互いの手を繋ぎ第50層にあるレインの家へと戻った。

家へと戻った俺とレインは案の定アスナから話を聞いていたのであろうユウキとランから祝福の言葉をかけられた。

アスナ達3人は、その後俺達と一緒に夕飯を食べ、帰っていき俺とレインも時間が時間だけに明日の準備をして寝る事にした。




アンケート、感想等お待ちしてます。


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SAO編 第26話〈笑う棺桶(ラフィン・コフィン)攻略作戦〉

遅くなりごめんなさい‼
今回は2話同時投稿です

HF(ホロウ・フラグメント)編か原作かのアンケート募集中です‼

誤字脱字があったらごめんなさい。


第56層『聖竜連合』本部

 

俺とレインは今、ギルド『聖竜連合』の本部にある会議室に来ていた。

理由は、

 

「それでは、これより殺人(レッド)ギルド『笑う棺桶(ラフィン・コフィン)』討伐の会議を始める」

 

そうラフィン・コフィン通称ラフコフの討伐の会議に出席するためだ。壇上には聖竜連合の幹部シュミットが話していた。

 

「今回、遂にラフコフのアジトを見つけた」

 

その言葉に、辺りはざわめきが起こった。

 

「奴等のアジトは、第12層のフィールドにある安全地帯にあることが判明した」

 

俺は、その言葉に内心で、"やっぱりか"と思った。

何故なら今まで散々探したが見つかったのはどれもオレンジギルドだけで肝心のラフコフの居場所は判明しなかったからだ。誰もまさか下位層にあるとは思っても見なかったのだろう。

 

「今回の目的はラフコフの捕縛だ。だがもし奴等が従わなかったらその時は相応の対処をお願いする」

 

"対処"詰まり俺達が奴等を殺すと言うことだ。

俺は、息を飲んだ。すると左にいたレインの右手が俺の左手に触れた。

 

「大丈夫だよ、キリト君。キリト君が何かあっても絶体私はキリト君の隣にいるよ」

 

「ああ、そうだな。心配かけてすまない」

 

「エヘヘ、大丈夫だよ」

 

俺とレインは手を握りしめ前を見た。

 

「奴等で危険なのはリーダーのPoHそして幹部の赤目のザザ、ジョニー・ブラックの3人だ。顔写真を提示するので覚えておいてほしい。他のギルドメンバーは、・・・・・・・・」

 

そう言うと、後ろの盤上に3人の写真が貼り出された。

すると前にいたクラインが、

 

「キリトよ、おめぇはあの黒いのと闘うんじゃねぇぞ。どっちに味方したらいいか分かんないからな」

 

冗談まみれに言った。その言葉に俺達は、苦笑いを浮かべた。だがクラインの言葉で少し緊張感がほぐれたような気がした。

 

「他には何かあるか?・・・・・・無いのなら本日の深夜0時に奴等のアジトに奇襲をかける」

 

壇上にいるシュミットが俺達を見てそう言った。

 

「後、ポーション類の配付を行う」

 

そう言うとポーション類が送られて来た。

送られて来たアイテムには、ハイポーションやグランポーション、結晶アイテム等が入っていた。

 

「それでは、今夜11時にまたここに集まってくれ。ここから奴等のアジトまでコリドーを開く。それでは解散‼」

 

シュミットがそう言うと続々とプレイヤーが出ていった。

俺とレインは、クライン達『風林火山』のメンバーとわかれるとアスナ達に話しかけた。

 

「よ、アスナ、ユウキ、ラン」

 

「キリト君、レインちゃんも」

 

「二人は今回の作戦に参加するんですか?」

 

ランが俺とレインに問いかけてきた。

 

「ああ、奴等を野放しにはしとけないからな」

 

「私も、キリト君と同じかな。もう犠牲者を出したくないしね」

 

俺とレインが言うとアスナ達3人は同じように首を縦に振った。

不意に俺は、疑問に思っていたことをアスナ達に問いかけた。

 

「なあ、アイツは来ないのか?」

 

「アイツ?・・・・・・ああ、団長の事ね」

 

そう俺が言った"アイツ"とは、血盟騎士団団長ヒースクリフの事だ。

 

「ああ」

 

「あのね、団長に聞いたら・・・・・『今回の事は君達に一存する』・・・・・・・って」

 

「なるほどな」

 

俺は、半ば予想通りの言葉で納得した。何故ならアイツはボス攻略以外は全く興味を示さず、それ以外は全て副団長のアスナと副団長補佐のユウキとランに任せているからだ。

 

「さて、作戦開始までまだあるな。どうする?」

 

「ごめん、キリト君。こっちはまだやることがあって」

 

「そうか。すまないな」

 

「別に大丈夫だよ。それじゃあまた後でね、二人共」

 

そう言うとアスナはユウキとランを連れて会議室から出ていった。

 

「俺達は、どうする?」

 

「ん~じゃあ、ちょっとやりたいことがあるんだけど良いかな?」

 

「構わないぞ」

 

俺とレインは聖竜連合を後にしレインの家に向かった。

 

第50層「アルゲード」

 

「で、レイン。やりたいことって何だ?」

 

家に着いた俺は、レインに聞いた。

 

「うん。実はこの間キリト君から貰った鉱石『クリスタライトインゴット』を使って新しい剣を作ろうと思うんだよ」

 

そう言うとレインはストレージから鍛冶用品を取り出した。

 

「なるほどな」

 

「うん。それじゃあ造るね」

 

そう言うとレインは更にストレージから『クリスタライトインゴット』を取りだし作製に取りかかった。

"綺麗"俺は初めてレインが剣を作っているところをみてそう思った。そして俺は、その光景を静かに見守った。

しばらくして鉱石が光輝き片手剣の形状に変化していった。システムに認識されると白銀の剣へと変わっていった。

レインが剣を調べると、

 

「『キャバルリーナイト』だって」

 

と答えた。

 

「へぇ~『騎士の夜』って意味か?」

 

「多分そうだと思うよ」

 

そう言うとレインは今出来た剣を手に取りウインドウを操作して今装備している片手剣と取り替えた。

 

「さてと・・・・・・うわっ、後3時間位しかないな」

 

俺は不意に時計を見ると集合時間の3時間前になっていた。

 

「それじゃ、ご飯にしようか」

 

「そうだな」

 

俺は、レインの言葉に即答で答えた。

 

第56層聖竜連合本部前

 

ご飯を食べた俺達は装備とアイテム類を確認した後ひと休みをして集合場所に来た。

周囲を見渡すと討伐に参加する攻略組が集まってきていた。時間になると聖竜連合の幹部プレイヤーが。

 

「それでは、奴等のアジトまでコリドーを開く。コリドーオープン‼」

 

頭上に掲げた回廊結晶を開けた。開いたコリドーの中に続々とプレイヤーが入って行った。コリドーを抜けるとそこは洞窟の中だった。

先頭のもと俺達は暫く歩を進めていると、

 

「・・・・・ん」

 

静かな殺気を感じ視線をむけると。

 

「・・・・・・・」

 

オレンジカーソルのプレイヤー、ラフコフのメンバーが襲ってきた。俺はすぐさま背中の剣を抜き戦闘を開始した。

 

「くっ・・・・・」

 

「そ、そんなバカな情報が漏れていたと言うのか‼」

 

先頭の聖竜連合の幹部がそう言った。

俺は、襲ってきた奴の武器を剣で受け止め跳ね返し辺りを見回した。流石攻略組と言うべきか不意打ちにも関わらず態勢を立て直した。すると俺の目の前に赤い眼をしたラフコフのメンバーが立ち塞がった。

 

「黒の、剣士、キリト、絶対、に、殺す」

 

「キサマ赤目のザザ‼」

 

レインの方を見ると同じくジョニー・ブラックと戦闘していた。

 

「行く、ぞ」

 

「くっ・・・・・はぁぁぁあ‼」

 

俺は、ザザのエストックに見事に対応した。だがザザのHPがイエローになると奴は他のメンバーとスイッチし奥に引っ込んでしまった。

 

「そこまでだ。後一撃で死ぬぞ。武器を捨て投降しろ」

 

俺は、その声の方向を見ると3人の攻略組が一人のラフコフに投降勧告をしているそうだった。だが、

 

「おい、聞こえないのか!」

 

「おい、武器を捨て投降しろ!」

 

「ひゃっはー」

 

追い詰められたラフコフのメンバーは投降せず逆に3人の攻略組を殺した。"バッシャーン"3つの音がなりポリゴンの破片へと変えた。すると、あちこちでもポリゴンの破砕音が聞こえた。

 

「きゃっはー」

 

すると、一人のラフコフメンバーが俺に剣を当ててきた。

 

「はあーっ‼」

 

俺は、無我夢中になりそのプレイヤーの首を跳ねてポリゴンの欠片へと変えた。

 

そこから先はまさに血みどろの戦闘だった。最終的に俺達攻略組は10人ものの死亡者をだし、ラフコフのメンバーは約7割型の20人が死んだ。その内5人は俺の剣で殺した。

残りのメンバーは全員第1層にある黒鉄宮にある監獄にコリドーで転移させられていった。監獄に送られたメンバーと死亡者の中にはリーダーたるPoHと幹部の二人の姿は無かった。俺達は討伐を完了したあと各自解散した。

俺は、レインと一緒に帰っている途中ラフコフのメンバーを5人殺した事を話した。

 

「そうなんだ」

 

「ああ、だから俺は、・・・・「はい、ストップ」何?」

 

「キリト君、今"一緒にいることが出来ない"って言おうとしたでしょう」

 

「・・・・・何で、分かったんだ?」

 

俺は、言おうとしたことを当てられ驚いた。

 

「あのね~。キリト君の考えていることぐらいお見通しなんだから♪」

 

「そうか?」

 

「そうだよ。それに私言ったでしょ、"何があっても絶対にキリト君の隣にいるよ"って。だから絶対にキリト君から離れないよ」

 

「だけど・・・・」

 

「キリト君が背負いきれないのなら、私も半分背負うよ」

 

「けど・・・・「何か文句ある?」いえ、ありません」

 

レインは少し怒ったように言ってきた。俺は、それに否定できなかった。

 

「よろしい。それじゃ、帰ろうよ。明日から今の最前線攻略しないと」

 

レインは笑顔でそう言った。

 

「・・・・・そうだな」

 

そう言うとレインは駆け足で家へ向かった。俺は、レインの背中に小さな声で、

 

『ありがとうな、レイン』

 

言った。

 

「ん?どうかした、キリト君?」

 

「いや、何でもないよ」

 

俺はそう言うとレインの後を追った。俺達は、その翌日から攻略を開始した。




レインの新たな片手剣『キャバルリーナイト』出ました。

感想やアンケート等お待ちしてます。


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SAO編 第27話〈《ラグー・ラビットの肉》と晩餐〉

今回は《ラグー・ラビット》編です。

次回は早く投稿出来るようにします。

HF(ホロウ・フラグメント)編か原作通りかのアンケート募集中です。

誤字脱字があったらごめんなさい。


第74層迷宮区

 

「はっ・・・・・」

 

「はぁぁ・・・・・」

 

俺とレインは、現在の最前線、第74層の迷宮区でモンスター相手に戦闘をしていた。

今、俺達二人の目の前にいるのは2体のレベル82の『リザードマンロード』。俺は右手に握っている片手剣『エリュシデータ』を体の正中線に構えた。レインも俺と同じように右手に握っている片手剣『キャバルリーナイト』を構えていた。リザードマンも、左手の円盾(バックラー)を掲げ、右手の片刃曲刀(シミター)を引いた。

 

「ぐるあっ‼」

 

凄まじい咆哮とともに、リザードマンが地を蹴った。遠間から、シミターが鋭い円弧を描き俺の懐に入り込んできて空中に鮮やかなオレンジのライトエフェクトが輝いた。曲刀カテゴリの上位ソードスキル《フェル・クレセント》単発重攻撃突進技を繰り出してきた。射程四メートルを0・4秒で詰めてくる技だ。だが俺は、その攻撃を先読みしていた。俺は、密着してきたリザードマンの懐に低い姿勢で。

 

「・・・・・・せあっ」

 

掛け声とともに、右手の『エリュシデータ』を真横に切り払った。真横に切り払った剣には水色ライトエフェクトが付与されていた。切り裂いた俺の剣は更にリザードマンの胸を切り裂いた。合計4回の攻撃、片手剣ソードスキル《ホリゾンタル・スクエア》水平4連撃を放った。

《ホリゾンタル・スクエア》をもろに喰らったリザードマンは、HPを1ドットも残さず消え去りポリゴンの欠片となって爆散した。視界には紫のフォントで加算経験値とドロップアイテムリストが浮かび上がった。フォントを一瞥した俺は、剣を左右に切り払い背中の鞘に収めた。

 

「・・・・ふぅ」

 

詰めていた息を吐き出しレインの方を見ると。

 

「やぁぁ・・・・・」

 

リザードマンに片手剣ソードスキル《バーチカル・スクエア》4連撃を喰らわせポリゴンへと変えていた。リザードマンを倒し、剣を腰の鞘に収めるとこちらにやって来た。

 

「お疲れさま、キリト君」

 

「ああ。お疲れ、レイン」

 

不意にレインが時間を確認するともうすでに16時を下回っていた。

 

「帰ろうか」

 

「そうだな」

 

俺達は、転移結晶を使用せず歩いて主街区まで行きそこから転移して帰ることにした。

俺達は、迷宮区から出て森林を歩いていると俺の『索敵』スキルに何かが反応した。

 

「レイン」

 

俺が呼ぶとレインも何かが反応したのか俺と同じところを見ていた。俺達は、その場所を見ているとモンスター表示が現れた。俺達は、その名前に息を飲んだ。何故ならそれは《ラグー・ラビット》と表示していたからだ。俺とレインは互いの顔を見合わせて、腰に装備してあるピックを取り出した。最初にレインが投擲スキル《シングルシュート》を放ち《ラグー・ラビット》が飛び上がった所で俺が同じく《シングルシュート》を放った。

結果、俺のピックは《ラグー・ラビット》に突き刺さりHPを余すことなく削りとった。ポリゴンの欠片となると俺とレインは浮かび上がっているフォントを見た。見ると《ラグー・ラビットの肉》と表示されていた。

 

「よっし、《ラグー・ラビットの肉》ゲットだ」

 

「キリト君、こっちにも入っていたよ」

 

《ラグー・ラビット》は経験値が高いわけでもないがドロップアイテムは別だ。何故ならそれはこの世界では数少ないS級食材だからだ。だが《ラグー・ラビット》は逃げるのが早く剣の間合いに詰めることが出来ないため非常に困難なのだ。だが今回は違いこうしてゲットすることが出来た。

 

「どうする?」

 

「そうだな、転移結晶を使って帰ろう」

 

俺がそう言うとレインはポーチから転移結晶を取り出した。俺も取り出した転移結晶をレインと同時に掲げあげ。

 

「「転移アルゲード」」

 

転移先を指定して転移した。

 

第50層主街区「アルゲード」

 

アルゲードに着いた俺とレインは、すぐさまエギルの経営している店に向かった。

利用は、今日の戦利品の売買とアイテムの補充が目的だ。

エギルの店に着くと既に他のプレイヤーと交渉をしていた。プレイヤーはアイテムをトレードウインドウを操作し送り代わりにお金を受け取っていた。

 

「まいどあり~」

 

プレイヤーが店を出るとき肩を落としていくのが俺達は見てとれた。

 

「相変わらず悪どい商売しているな、エギル」

 

「よぉ、キリト。それにレインちゃん」

 

「こんにちは、エギルさん。さっきのプレイヤー、肩落として帰っていきましたよ」

 

レインがエギルに言うと。

 

「そうか?互いに承諾した取引だぞ」

 

毎度同じ言葉が返ってきた。

 

「さて、俺達も頼む」

 

「はいよ。キリト、レインちゃんはお得意様だからな」

 

そう言うとエギルはトレードウインドウを操作し《ラグー・ラビットの肉》の所で手が止まった。

 

「おいおい、S級食材かよ!?」

 

「うん。あ、これは、売らないよエギルさん」

 

「わかってるって」

 

俺達はアイテムのトレードとポーション類の補充をしていると不意に後ろから声がした。

 

「キリト君、レインちゃん」

 

後ろを振り向くとそこには。

 

「お、アスナじゃないか。それにユウキとランも」

 

「ヤッホー、アスナちゃん、ユウキちゃん、ランちゃん」

 

血盟騎士団の副団長とその補佐のアスナ、ユウキ、ランがいた。その後ろには護衛役のプレイヤーが3人程いた。

 

「どうしたんだ3人共?」

 

「ううん。もうすぐボス攻略だから顔を見に来たの」

 

「へぇ~。・・・・あ、そうだ。3人共ちょっとこっちに来て」

 

レインがアスナ達3人を呼び自分のウインドウを可視化にして《ラグー・ラビットの肉》見せた。すると。

 

「「「えっ!これ本当(ですか)!?」」」

 

予想通りの反応が返ってきた。

 

「うん。3人共来る?」

 

「勿論行くわ」

 

「僕も行くよ」

 

「私も行きます」

 

「オッケー。キリト君、アスナちゃん達も来るって」

 

「ん、分かった」

 

俺は、エギルとのアイテム取引を終わらせレインの方に行くときエギルが。

 

「なあ、キリトよ。俺にも一口・・・・・」

 

「ああ、感想を800字以内で答えてやるよ」

 

「そりゃあないだろ‼」

 

エギルの反応に俺は、苦笑いをしながら出て行くと。

 

「アスナさま、ユウキさま、ランさまもこんな得たいの知れないプレイヤーと一緒に行くなんて」

 

外でアスナ達が護衛の一人と争っていた。

 

「これは、命令ですクラディール。本日の護衛は此処までで大丈夫です」

 

「ですが!」

 

「まぁまぁ、クラディール。少しは落ち着いてよ」

 

「ユウキさま」

 

「それに、キリトさんとレインさんは貴方よりレベルは10は上ですよ」

 

ランがそう言うと。

 

「キリト・・・・・まさか元βテスター上がりの『ビーター』。それなら尚更です。こんな、ビーターの奴に・・・・・・・」

 

クラディールが声を荒げながら言うと。

 

「ねぇ、クラディールさんだっけ?今何て言ったのかな?今、ビーターって言わなかったかな?」

 

レインが腰の鞘から片手剣『キャバルリーナイト』を抜き出しクラディールに向けていた。しかも物凄い殺気を交じ合わせて。正直俺でも驚くほど凄い殺気を放ちレイン以外の俺を含めたその場にいたプレイヤーは少し後ろに下がった。

 

「レ、レインちゃん、落ち着いて。とにかく今日はもう結構です。ラムさん、リーザちゃん、後お願いしますね」

 

アスナが慌てて残りの護衛に言った。

 

「「はい」」

 

ラムと呼ばれた青年とリーザと呼ばれた少女は苦笑いを浮かべて未だに何かを叫ぼうとしているクラディールを連れて人混みのなかに紛れた。

 

「ごめんなさいね。キリト君、レインちゃん」

 

「あはは。大丈夫だよ」

 

「何かムカつくな、あの人。キリト君の事何も知らないくせに」

 

レインは少し落ち着いたのか握っていた片手剣を腰の鞘に収めた。

 

「まぁ、ともかく俺達の家に行こうぜ」

 

俺達は、家に向かうため歩を進めた。家に着いた俺達はレインの元リビングに向かった。

家に着いたレインは、奥にある寝室に入って行った。その間俺達は武器等を解除しくつろいだ。

しばらくしてレインが私服に着替えて戻ってきた。

 

「さてと・・・・・・」

 

レインはストレージを操作し《ラグー・ラビットの肉》を実体化させた。俺も続けて実体化させレインに渡すと。

 

「どう、料理しようか?」

 

「そうだね~。《ラグー》ってあるからシチューでいいんじゃないかな?」

 

「そうですね」

 

「僕も賛成」

 

「それじゃあキリト君。キリト君はここにいて。直ぐに作っちゃうから」

 

「ああ、分かった」

 

レイン達女子は、レインに連れられてキッチンの方へと向かった。

15分経つと。

 

「お待たせ、キリト君」

 

手に料理を持ってレイン達が戻ってきた。

 

「お、いい匂いがするな」

 

俺達は、それぞれ席に着いた。

 

「それじゃ・・・」

 

「「「「「いただきます」」」」」

 

レインの乾杯の音頭の元食事を始めた。食べている間俺達は、一言も喋ることなくただ食べていた。

喋ったのは食べ終わり食後のお茶を飲んでからだった。

 

「おいしかった~」

 

「ああ。今まで生きてきたかいがあったな」

 

「ほんとね~」

 

「そうですね」

 

「そうだね」

 

俺達は一息つきそう呟いた。お茶を飲んでいる最中アスナが不意に、

 

「ところで、キリト君とレインちゃんはギルドに入らないの?」

 

俺とレインに問いかけてきた。その問いに俺とレインは、

 

「今のところ入る気は無いな。それにギルドって何か馴染めないんだよな」

 

「私もそうかな。ずっとキリト君とコンビ組んでいたから、今更ギルドに入るとなるとね」

 

と、答えた。

 

「まぁ、確かにそうかもしれないですね」

 

「確かに姉ちゃんの言う通りかもしれないな~。それに何となくわかる気がするよ」

 

ランとユウキが納得したように答えた。

 

「なるほどね。・・・・・それじゃあ久し振りに私達5人で攻略しない?」

 

アスナが俺達4人に聞いてきた。

 

「私は構いませよ」

 

「僕も賛成だよ‼」

 

「私も良いよ」

 

「う~ん。俺も構わないけど・・・・」

 

「けど、何?」

 

俺は疑問に思っていたことをアスナに聞くと。

 

「いや、ギルドの方は良いのか」

 

「別に大丈夫よ。ね、二人とも」

 

アスナがユウキとランに聞くと。

 

「はい」

 

「勿論だよ」

 

「そうなのか。なら良いぜ」

 

「やったね。明日はアスナちゃん達と久し振りにパーティーが組めるよ♪」

 

レインは嬉しそうに声を弾ませて言った。

 

「それじゃ、そろそろ私達はおいとまするね」

 

「え、もう帰るの?」

 

「うん。明日第74層「カームデット」の転移門広場で待ち合わせで良いかな?」

 

「構わないぞ」

 

「了解」

 

「それじゃ、また明日ね」

 

そう言うとアスナは帰っていった。暫くしてユウキとランの姉妹も帰っていき家には俺とレインの二人になった。

 

「さてと、そろそろ寝るか」

 

「うん、そうだね。お休みなさいキリト君」

 

「ああ、お休み」

 

俺とレインはそのあとに部屋に戻り目覚ましをセットして眠りに落ちた。




感想、アンケート等お待ちしてます。


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SAO編 第28話〈決闘(デュエル)

早く投稿出来ました。
でもここ何書いたら良いのだろうと思います。

HF(ホロウ・フラグメント)編か原作通りかアンケート募集中です‼

誤字脱字があったらごめんなさい。


翌日、朝9時に起床した俺とレインは手早く装備を整え待ち合わせ場所である第74層「カームデット」の転移門広場に向け転移した。

 

第74層「カームデット」転移門

 

俺とレインが第74層に着いてから3分後ユウキ、ラン姉妹がやって来た。

 

「おはよ、キリト、レイン」

 

「おはようございます。キリトさん、レインさん」

 

「おはよう、二人とも」

 

「おはよう、ユウキちゃん、ランちゃん」

 

挨拶をした俺達はアスナがまだ来ないことに疑問をもっていた。

 

「遅いね、アスナ」

 

「ええ、何かあったんでしょうか?」

 

ユウキとランが心配そうに言った。

 

「そうだな~。・・・・・・メッセージを送ってみるか」

 

俺はウインドウを開きメッセージのタブを開いた。

すると、

 

「きゃああああ!よ、避けて~‼」

 

転移門が青く光りプレイヤーが転移してきたと思いきや、そのプレイヤーは大胆にもジャンプして転移してきたらしく体が宙に浮いていた。

 

「えっ?」

 

俺は、それにすぐには反応できず転移してきたプレイヤーと衝突してしまった。というか、プレイヤーがそのまま俺に吹っ飛んできた。

俺は、衝突したおかけで派手に地面に転がった。石畳で後頭部を少し打った。街中でなければHPをほんの少し減ったであろう。

俺は、自分の上に乗っているプレイヤーをどかそうと右手を伸ばし、掴んだ。

 

「・・・・・・??」

 

すると、俺の右手に、何やら柔らかい不思議な感触が伝わってきた。俺は、二度、三度と力を込めてその正体を探った。

 

「や、やーーっ!!」

 

突然耳元で大音量の悲鳴が上がり、俺は、再度後頭部を地面に叩き付けられた。すると、俺の上にあった重さが消えた。俺は、衝撃の影響で思考が回復し上半身を起こした。

その目の前には、ペタリと座り込んだ女性プレイヤーがいた。ユウキとランに似た騎士服に白地と赤の刺繍が入ったひざ上丈のミニスカート、腰には銀のレイピアを装備していた。ここで俺は、飛び込んできたプレイヤーが待ち合わせていた血盟騎士団の副団長《閃光》アスナだと言うことに気付いた。

 

「お、おはよう、アスナ」

 

俺は、アスナに挨拶をしたのだがアスナは俺を殺気の交じった眼で睨んでいた。更に後ろからはユウキとランまでも同じだった。レインは、なんとも言いがたい事に今までのどんな殺気よりも鋭かった。何故なら口は笑顔なのにその瞳は全く笑ってない以前に焦点が合ってなかった。

俺は、アスナを再度見るとアスナの両手はかたく胸の前で交差されていた。"・・・・・・・・・胸?・・・・・・まさか"俺は、瞬時に自分が先程触った感触を思い出した。

 

「え、あ、いや、これは、その、」

 

俺は、事情を説明仕様としたのだが。

レインが俺に話しかけてきた。

 

「キリト君」

 

話してきたレインは背後に阿修羅がいるみたいに思えた。

 

「・・・・・・・・ハイ」

 

「後でお話しようか。いいよねキリト君。勿論断れないこと分かってるよね」

 

「ハ、ハイ」

 

俺は、瞬時に返答を返すしか無かった。

すると、アスナが飛び出してきた転移門からまた新たなプレイヤーが転移してきた。

幸いにもそのプレイヤーの足はちゃんと地面についていた。"というか普通当たり前なんだが"、と俺は心の中で思った。

転移してきたプレイヤーは、アスナ達と同じ騎士服を着用し腰に両手剣を装備した男性プレイヤーだった。

転移してきたプレイヤーの姿を見るなりアスナは慌てて俺の後ろに回りこんだ。

 

「ア・・・・・アスナ様、勝手なことをされては困ります・・・・」

 

その男性プレイヤーは、昨日合ったアスナ達の護衛プレイヤーだった。確かクラディールとか言う名前の奴だ。

 

「さあ、アスナ様、ギルド本部まで戻りましょう」

 

「嫌よ、今日は元々活動日じゃないわよ!・・・・それに、だいたい、アンタ何で朝から私の家の前に張り込んでるのよ!?」

 

背後からのアスナの言葉に俺は、"コイツ、ストーカーか?"と心の中で思った。

 

「こんなこともあろうと思いまして、一ヶ月ほど前からずっとセルムブルクで早朝より監視の任務に入ってました」

 

クラディールは得意気に話した。アスナを含めた俺達はそれに唖然をせずにはいられなかった。セルムブルクと言うのは第61層にある全面湖に囲まれた街だ。

 

「そ・・・・・それ、団長の指示じゃないわよね・・・・?」

 

アスナが恐る恐る聞いた。俺は、"流石にアイツがこんなのを命じている分けないよな"と思った。

 

「私の任務はアスナ様の護衛です。それには当然ご自宅の監視も・・・・」

 

「ふ・・・・・含まれないわよバカ‼」

 

それにはユウキとランも。

 

「「含まれない(ません)よ‼」」

 

俺とレインは完璧にコイツはストーカーだ、と思った。

 

「さあ、とにかく戻りますよ」

 

クラディールは、半ば強引にアスナを連れていこうとした。

 

「そこまでにしてくれないか。アスナは今日、"俺達"の貸し切りなんでね。それに今日はギルドの活動日じゃないそうじゃないか。悪いがギルド本部にアンタ一人で行ってくれ」

 

俺は、アスナとクラディールの間に入りアスナを後ろに庇った。

 

「キ、キサマ昨日のビーター風情が!キサマ何かにアスナ様の護衛が勤まるか!」

 

ビーターと言う言葉にレインはまたしてもキレそうになったが今は抑えてアスナの隣にいてくれていてくれた。

 

「アンタよりは勤まるよ」

 

「そこまで言うなら、キサマ覚悟は出来てるんだろうな!」

 

クラディールは自分のウインドウを開き操作した。

すると、俺の目の前に『クラディールから1VS1のデュエルを申し込まれました。受諾しますか。YES /NO 』とウインドウが表示された。

俺は、レイン達の方を見ると状況を推測したらしくアスナは無言で肯定を示しユウキとランも同様だった。

 

「キリト君、そんなストーカー野郎こてんぱんにしちゃて」

 

「あははは」

 

レインの言葉には苦笑いしか出来なかったが、俺はウインドウに表示されているデュエルのオプションから『初撃決着モード』を選択しYESのボタンを押した。

デュエルには『初撃決着モード』の他『半減決着モード』、『全損決着モード』の三種類が存在するが基本は初撃か半減だ。初撃は強攻撃をヒットさせるか相手のHPを半減させた方が勝利となる。半減は相手のHPを半減させた方が勝利となる。だが全損は相手のHPを全損させた方の勝利となる。だがデスゲームの中であるここでは『全損決着モード』はやらない。完全をすると負けたプレイヤーは本当に死んでしまうからだ。

メッセージには『クラディールとの1VS1のデュエルを受諾しました』と変化し視界に60秒のカウントダウンが表示された。カウントダウンが0になると同時に俺とクラディールの街でのHP保護が消滅し、勝敗が決定するまで剣を撃ち合うことになる。

 

「ご覧下さいアスナ様。私以外に護衛が勤まるものがいないことを証明しますぞ」

 

クラディールは、そう高々に宣言に腰から豪華な装飾の両手剣を抜いた。

 

「おい、黒の剣士キリトとKoBメンバーがデュエルだとよ‼」

 

回りにいたプレイヤーがデュエルを聞き付けてやって来た。だが俺はその雑音を意識から遠ざけ戦闘モードに移した。背中から『エリュシデータ』を抜き構えクラディールの出方を予測した。

カウントが0になり《DUEL‼》と同時に双方動き始めた。

クラディールは両手剣ソードスキル《アバランシュ》単発重攻撃突進技を繰り出してきた。だが俺は、それを予測していた。俺は、片手剣ソードスキル《ソニックリープ》単発突進技を発動させた。互いの剣が交じりあい俺の剣がクラディールの両手剣の側面に当たり、互いの位置を交換しあってソードスキルが終了した。

すると、パキン、と音がしてクラディールの両手剣が真っ二つに割れた。これが俺の狙った『武器破壊(アームブラスト)』だ。

 

「もういいんじゃないかな。剣を交換してやるなら構わないけど」

 

俺がクラディールにそう言うと。

 

「アイ、リザイン」

 

クラディールは、そう言った。

その瞬間に『Winner ・Kirito 』と表示された。

 

「キサマ・・・・」

 

クラディールが何か言おうとした瞬間アスナが飛び出て、

 

「血盟騎士団副団長権限でクラディールに命じます。本日をもって護衛役を解任。なお、別命があるまでギルド本部にて待機、以上!!」

 

クラディールに命じた。

 

「な・・・・なんだと・・・・この・・・・」

 

クラディールは、未だに何かを言おうとした。だが新たに転移門広場が輝き出てきた二人のプレイヤーがクラディールを捕らえた。

 

「クラディール、貴方なにやってんですか」

 

「ユウキさんとランさんから呼ばれて来てみればどう言うことですか」

 

出てきたプレイヤーは、クラディールと同じく護衛のラムとリーザだった。

 

「ごめんね、ラム、リーザ。呼び出しちゃって」

 

「大丈夫ですよユウキさん」

 

「全くクラディールにも困ったものです」

 

「まぁまぁ二人とも、それじゃラムさん、リーザさん、クラディールをギルドまで連れてって下さいね」

 

「「了解。・・・・・転移グランザム」」

 

ラムとリーザはクラディールを連れて、と言うか連行?して第55層に戻っていった。

 

「ユウキ、ランいつの間に連絡したんだ」

 

俺が疑問に思ったことを聞くと。

 

「クラディールが来た時から何となくめんどくさいことが起きるなって予感がしたから」

 

「そうですね。あの二人に任せれば大丈夫でしょ」

 

と返ってきた。

 

「大丈夫?キリト君」

 

レインが俺に心配そうに聞いてきた。

 

「大丈夫だレイン。心配してくれてありがとうな」

 

「ううん。キリト君が無事ならいいよ」

 

「アスナ、大丈夫か?」

 

俺がアスナに聞くと。

 

「ありがとう、キリト君。大丈夫よ。こうなってしまったのは私たちが原因だから」

 

「アスナちゃん・・・・・」

 

レインは、アスナを心配そうに見た。

 

「アスナ、今日の攻略前衛は俺達に任せてゆっくり休んでくれ」

 

俺がそう言うと。

 

「あら、そう。それじゃ前衛おまかせするわね」

 

と言ってきた。

 

「了解だ。それじゃ、迷宮区に行くか」

 

「「「「了解」」」」

 

俺達は、まだデュエルの余韻が残る「カームデッド」を後にし迷宮区に向けて移動を開始した。




ラムとリーザまた出ました。
度々出していこうかなと思います。

アンケート、感想等お待ちしてます。


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SAO編 第29話〈第74層攻略〉

UAが高くならないし感想が送られてこない。

HF(ホロウ・フラグメント)編か原作かアンケート募集中!

誤字脱字があったらごめんなさい。


俺達は、クラディールとのデュエルの後第74層の迷宮区へと歩を進めていた。

迷宮区に移動中、不意にユウキが。

 

「にしても、ここにいる僕らって全員『二つ名』持ちだよね」

 

「あ~確かに」

 

ユウキの言葉に俺は、何となくそう感じた。

 

「私が『紅の剣舞士』でキリト君が『黒の剣士』でしょ」

 

「私が『剣騎姫』ですよね」

 

「僕が『絶剣』でアスナが『閃光』だよね」

 

レインとラン、ユウキが俺達の『二つ名』を順に言ってきた。

 

「にしても『二つ名』なんて誰が考えたんだろうね」

 

アスナが俺が不思議に思っていたことを言った。

 

「さあ~」

 

「まあ、良いじゃん。私は、この『二つ名』気に入っているけどな~」

 

「「「「あはははは」」」」

 

俺達はレインの言葉に苦笑いを浮かべるしかなかった。

俺達は、そのような会話をしながら道中を歩いていった。

幸いにも迷宮区につくまでモンスターとは一回も出会さなかったので楽だった。

 

第74層迷宮区

 

「はっ・・・・・‼」

 

「やぁあ・・・・・‼」

 

俺達は今、2体のモンスター『デモニッシュ・サーバント』を相手にしていた。

1体は、俺とレインで、もう1体は、ユウキとランが戦闘していた。アスナは、後方からの指示を飛ばしたりユウキとランと共に戦闘を行ったりしていた。

 

「キリト君、スイッチ‼」

 

前方で戦闘していたレインが俺に呼び掛けてきた。 

 

「了解‼スイッチ‼」

 

レインは『デモニッシュ・サーバント』に重い一撃を喰らわせ俺とスイッチしてきた。俺は、レインとスイッチし仰け反っている『デモニッシュ・サーバント』に片手剣ソードスキル《バーチカル・スクエア》4連撃を繰り出した。

《バーチカル・スクエア》を喰らい相手のHPは0へとなりポリゴンの欠片へと変わった。

俺とレインは、アスナ達の方を見ると、

 

「ユウキ、スイッチ行くよ‼」

 

「オーケー、アスナ。スイッチ‼」

 

ユウキがアスナとスイッチし片手剣ソードスキル《シャープネイル》3連撃を喰らわせた。これで、モンスターのHPは残り3割に減った。

 

「姉ちゃん、スイッチ‼」

 

「了解、スイッチ‼」

 

更に、ユウキからランへとスイッチしランが放った片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》単発重攻撃突進技でHPを0にした。ポリゴンの欠片へと変わった後、通路には静けさが戻った。

剣を収めた俺とレインは、アスナ達の方に向かった。

 

「お疲れ」

 

「お疲れ様、二人とも。にしてもほんと息ピッタリよね、HP減ってないし、流石夫婦だわ」

 

「ちょ、アスナちゃん!?」

 

「ま、まあな。それを言うならアスナ達だってHP全く減ってないだろ」

 

「まあ、馴れているからね」

 

俺達は、迷宮区に入りここまで来るのに十数回戦闘したが俺達のHPは1ドットも減っていない。

 

「さて、俺の予想が正しければこの先は多分ボス部屋だと思うんだが」

 

俺達は今、迷宮区の最上階に来ていた。周囲を見るとオブジェクトが《重く》なっているのか段々と辺りの青色が濃くなっていくのが見える。

 

「よし、行こう」

 

俺達は、更に先に進んだ。先に進んで約10分後、特にモンスターと出くわすことなく行くと正面に大きな扉があった。扉にはモンスターのレリーフがびっしりと描かれていた。扉を見てアスナが。

 

「ねぇ・・・・・これって・・・・・」

 

「ああ・・・・恐らくボス部屋だろうな」

 

「・・・・どうします?」

 

「中を覗くだけなら大丈夫じゃないかな?」

 

「よし。一応転移結晶の用意だけはしといてくれ」

 

「了解」」」」

 

俺は、4人に言い腰のポーチから転移結晶を取り出した。レイン達も取り出したのを確認して俺は、扉を開けた。

 

"ゴゴゴ・・・・ガゴン"

 

重い音を響かせながら扉が左右に開き中が見えた。

中は暗く俺達は少し中に入り様子を確認した。すると、

 

"ボッ・・・・ボボボボ"

 

急に周囲の松明に淡い色の炎が灯り中が明るくなった。部屋は巨大な円形で中央には1体の大きなモンスターがいた。視界をモンスターに向けると、『THE Gleam Eyes』とボスの名前が表示された。『輝く眼』と読むのであろうか『グリームアイズ』は巨大な悪魔型のモンスターだった。

俺達に気がついたのか『グリームアイズ』は物凄い速さでこちらにやって来た。その光景に俺達は、

 

「うわぁぁぁぁぁあ‼」

 

「「「「きゃゃゃゃゃゃあ‼」」」」

 

ボスは部屋から出ないのに、悲鳴をあげて元来た道をシステムの許す限りの敏捷力で安全地帯まで駆け抜けた。途中幾つかのモンスターにターゲットされたようだがそれらを全て無視しただ走り抜けた。

安全地帯に逃げ込んだ俺達は落ち着いて互いの顔を見て笑いあった。

 

「「「「「あはははははは」」」」」

 

「いや~逃げた逃げた」

 

「あはは、キリト君物凄い悲鳴だったよ♪」

 

「そう言うレインだって凄かったじゃないか」

 

「そ、それは~・・・・」

 

「はいはい、二人ともそこまでね」

 

「「はーい」」

 

アスナの仲裁で気を引き締めた俺は、4人に先程のボスの情報を確認した。

 

「さて、かなり厄介なボスだな」

 

「うん。見たところ武装は手に持っていた巨大な大剣だと思うけど」

 

「絶対、特殊能力あるね」

 

「ええ、せめて盾持ちのプレイヤーが十人程必要だと思います」

 

「後は、スイッチで少しずつHPを減らすしか無いわね」

 

一通り出し終えた情報に今回は"アレ"を使わざるを得ないかと思いレインに。

 

「レイン、今回は使わないといけないかも知れない」

 

「キリト君、それって"アレ"のこと?」

 

「ああ」

 

俺とレインの持っているユニークスキル《二刀流》と《多刀流》は人気のない場所で使用し、つい先日コンプリートしたため使用には問題はない。たが・・・・・・。するとレインが。

 

「さてと、少し時間過ぎちゃったけどお昼にしようよ。アスナちゃん達の分もあるよ」

 

「わぁ、ありがとうレインちゃん」

 

「ありがとうレイン♪」

 

「ありがとうございます、レインさん」

 

「今日のお昼は何だレイン?」

 

「今日のお昼は・・・・・・・コレだよ♪」

 

そう言うとレインはウインドウを操作して一つのかごを実体化して中から中身を取り出し俺達に渡してきた。

 

「ん?ただのハンバーガーに見えるけど?」

 

「まあまあ、食べてみて」

 

そう言われて俺達は渡されたハンバーガーを一口かじった。俺は、口の中に広がる風味に驚きを感じた。

 

「な、レイン、これ」

 

「お、キリト君鋭いね。その通りだよ♪」

 

「やっぱりか。レイン、醤油造り成功したんだな」

 

「「「え!?醤油(ですか)!?」

 

「うん。実はこの間、料理スキルがコンプリートしたからやってみたんだけどまさか上手く出来るとは思ってなかったよ~」

 

「レインちゃん、今度私達にも醤油の作り方教えてくれない?」

 

「もちろん良いよ♪」

 

「「「ヤッター」」」

 

俺達は、レインの作ったハンバーガーでお昼を過ごしちょうど食べ終わった時、俺達が入ってきた方とは逆の入り口からプレイヤーの集団が安全地帯に入ってきた。プレイヤーの人数は6人ほど先頭を歩いているプレイヤーの顔は知り合いの顔だった。

 

「よぉ、キリのじ」

 

「クライン、まだ生きていたか」

 

「あったりめぇよ、そう簡単に死んでたまるかっつうんだ」

 

入ってきたプレイヤー達は、クラインの率いるギルド風林火山のメンバーだったのだ。

 

「よぉし、ちょっとここで休憩にするぞ」

 

「「「「「おー」」」」」

 

クラインはギルドメンバーにそう言いこちらに来た。

 

「レインちゃんも久しぶりだな」

 

「うん。クライン君もね♪」

 

「ところでキリのじよ、連れがいるのか・・・・・・って、え」

 

クラインは、アスナ達の方を見て動きを止めた。

 

「久しぶりクラインさん」

 

「お久しぶりですね、クラインさん」

 

「久しぶり、クライン」

 

「って、キリトよ何でアスナやユウキちゃんにランさんも今日は一緒にいるんだよ!?」

 

「いや~成り行きで」

 

「成り行き!?ん、ところでキリトにレインちゃん何で指輪してんだ?」

 

そこで俺とレインはクラインに結婚したことを伝えるのを忘れていたことを思い出した。エギルには伝えたがクラインにはすっかり後回しになったと言うことは黙っておいた方が良いだろう。

 

「あ~伝えんの遅くなったが、俺とレイン結婚したんだよ」

 

「結婚!?」

 

クラインの絶叫が辺り一面に響き渡った。

 

「え、マジ?」

 

「うん。遅くなってごめんねクライン君」

 

「キリト」

 

「ん、何だクライン」

 

「お前・・・・・一回死んでこい!」

 

「は、はぁ~!何でだよ」

 

「何でもじゃねぇよ。羨ましすぎるだろ」

 

そう言いクラインは俺の頭をグリグリしてきた。

まあ、ここは安全地帯でダメージは入らないのだが痛い。

 

「い、痛い痛い、クライン痛いってば」

 

「「「「はぁ、やれやれ」」」」」

 

レイン達はその光景に呆れていた。その時、クライン達か入ってきたところからプレイヤーの一団が入ってきた。

 

「キリト君、『軍』だよ」

 

レインの言葉に俺とクラインはすぐに悪ふざけを辞め『軍』の一団を見た。

 

「全員、休め!」

 

『軍』の集団の先頭のプレイヤーが後続隊のプレイヤーにそう言った。言われた途端にプレイヤーは"ダッ"と地面に崩れ落ちた。すると、命令したプレイヤーがこちらに来た。

 

「私は『アインクラッド解放軍』コーバッツ中佐だ」

 

「コンビを組んでいるキリトだ」

 

「君たちはここ先のマップを攻略しているのかね」

 

「ボス部屋まで攻略したあるけど」

 

「では、そのマップデータを提供もらおう」

 

流石にその言葉にはアスナ達が反発した。

 

「なっ、マップデータを提供しろだと」

 

クラインがコーバッツに言うと彼は、

 

「我等は諸君らの解放のために闘っているのだ。諸君らが協力するのは当然の事である」

 

言語道断はこの事だな、と俺は思った。第25層以来『軍』が攻略に入った事はないはずだが。『軍』は第25層のボス戦で多大な損失をし現在は方針をギルド強化になっていると聞いたことがある。

 

「あ、あなたねぇ」

 

「て、てめぇ」

 

「マップデータが欲しいならそれ相応の態度をとったらどうなのよ!」

 

「僕、この人何かやだ」

 

「いい加減にしてください!」

 

アスナ、クライン、レイン、ユウキ、ランの順にコーバッツに文句を言った。だが俺はそれを手で阻止し、

 

「どうせ、街に戻ったら公開するデータだ。構わないさ」

 

レイン達に言った。

 

「そりゃ、人が良すぎるぜキリトよ」

 

「はは、マップデータで商売する気はないよ」

 

「キリト君がそれでいいなら私はいいけど」

 

俺は、ウインドウを操作してマップデータをコーバッツに送った。

 

「協力感謝する」

 

データを確認したコーバッツは俺に思ってもいないことを言った。

 

「ボスにちょっかい出すなら止めといた方がいいぜ。さっき確認したけどあんた達でどうにかなる相手じゃない。それにあんたの仲間全員疲労しているじゃないか」

 

「それは、私が決めることだ。それに、私の部下はこんなことで疲れるような者じゃない!貴様らさっさと立て‼」

 

"部下"の部分を強調してコーバッツは仲間を連れて先に行った。

 

「大丈夫なのかよ、あいつら」

 

「さあ、だがやな予感がする」

 

俺達はクライン達、風林火山のメンバーと一緒にボス部屋に行くことにした。

道中モンスターを幾つか倒したが『軍』の連中には追い付けなかった。ボス部屋の近くに着くと、

 

「うわぁぁぁぁぁぁ」

 

奥から悲鳴が聞こえた。俺達は瞬時に駆け出したがクライン達とは敏捷力の差で振り切ってしまった。

 

「バカ野郎」

 

俺達はシステムに許容範囲のスピードで駆け抜けた。




アスナ達の『2つ名』登場!

次回はボス攻略!

アンケート、感想等待ってます


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SAO編 第30話〈決戦青眼の悪魔VSユニークホルダー、ユニークスキル解放!〉

祝30話記念‼
ここまで読んで下さった方々やアンケート、感想を送ってくださった方に感謝を申し上げます。
これからも「ソードアート・オンライン 黒の剣士と紅の剣舞士二人の双剣使い」をよろしくお願いします。


悲鳴を聞きつけ敏捷力を全開にしてボス部屋に着いた俺達は中の様子を確認した。

 

「おい、大丈夫か‼・・・・・くっ」

 

中は地獄図になっていた。中央にボス《ザ・グリームアイズ》が『軍』の連中を相手にしていた。《グリームアイズ》のHPはまだ3割も減ってなかった。それに最初に見た数より二人足りない。転移結晶で脱出したならいいのだが。

 

「何をしている!早く転移結晶を使え!」

 

俺は奥で闘っているの『軍』の連中に言った。

だが。

 

「だ、ダメだ。結晶が使えない」

 

「なっ!?」

 

俺達は『軍』のプレイヤーからの言葉に声を失った。結晶無効化エリアは迷宮区に稀にあるトラップで今までボス部屋にそんなトラップはなかったからだ。

俺は、転移結晶無効化エリアで前自分のせいで全滅したギルドの事を思い出した。

すると奥で戦っているコーバッツの声が聞こえた。

 

「何を言うか!我々に"撤退"の2文字はない!戦え!戦うんだ‼」

 

「馬鹿野郎・・・・・・!!」

 

俺は、コーバッツの言葉に悪態を突いた。死者を出すことだけはなんとしても防がないとならないのにあの男は何を言っているんだ!

 

「おい、キリト。これは、一体どうなってんだ!」

 

追い付いてきたクラインに俺は事情を説明した。

 

「くっ、どうすりゃいいんだよ」

 

その間にも『軍』のプレイヤーは攻撃をしていたがまともに攻撃が当たることもなく《グリームアイズ》の一息で崩れた。《グリームアイズ》の大剣に一人のプレイヤーが掬い上げられこっちに放られてきた。

放られてきたプレイヤーは、コーバッツだった。彼のHPはすでにレッドゾーンを超えあっという間に0になった。

 

「あ、ありえない」

 

コーバッツは、最後にそう言いポリゴンの欠片へと爆散していった。

 

「そ、そんな」

 

レイン達は、顔を埋めていた。

 

「うわぁぁぁぁ」

 

「だ、ダメよ。もう・・・・・・・」

 

アスナの言葉に俺は振り返りアスナを止めようとしたが。

 

「「・・・・ダメ~~!!」」

 

その声にレインもつられて腰に装備した片手剣『キャバルリーナイト』をアスナは、腰から細剣『ランベントライト』を抜刀しボス部屋に入っていった。

 

「レイン、アスナッ!」

 

俺達はレインとアスナを追いかけるようにして中に入っていった。

アスナは、『グリームアイズ』の背中に細剣ソードスキル《カドラプル・ペイン》4連撃を、レインは片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》単発重攻撃を繰り出した。二人の攻撃はヒットしタゲは二人に移ったが《グリームアイズ》の繰り出した攻撃は微々だが当たってしまった。《グリームアイズ》は更に攻撃をしようとしたところに背中から抜刀した俺の片手剣『エリュシデータ』を刃に滑り込ませ軌道を反らさせた。

 

「二人とも、下がれ!」

 

俺は、《グリームアイズ》からの追撃に備えた。繰り出された技はどれも致死とさえ思える威力で次々に襲い掛かってきた。奥では、クライン達風林火山が『軍』の連中を外に連れ出していたが中々進まなかった。何故なら、俺は真ん中で陣取っているためクライン達は端を通らないとならないのだ。

 

「やぁぁぁあ・・・・・」

 

 

「はぁぁぁあ・・・・・」

 

ユウキとランも《グリームアイズ》相手に攻撃をしているが中々有効打が与えられない。

 

「ぐっ!!」

 

とうとう、相手の攻撃が俺の身体を捉えた。しびれるような感覚が走った。元々、俺の装備とスキル構成はタンク仕様ではないのだ。俺は、残された可能、性攻撃特化仕様(ダメージディーラー)たる俺の全てをもって立ち向かうしかない、と決意した。

 

「アスナ!ユウキ!ラン!クライン!頼む十秒だけ持ちこたえてくれ。レイン!"アレ"を使うぞ!」 

 

「分かったわ!」

 

「「了解!」」

 

「おう!」

 

「わかったよ!」

 

俺は、右手の剣を強振して《グリームアイズ》の攻撃を弾き、間髪入ってきたクライン達とスイッチした。

だが、アスナやクライン達のスキル構成も何時までももたない。アスナは速度重視型、ユウキは攻撃特化型、ランはやや速度重視型、クラインはやや攻撃特化型なのだ。

俺とレインは、下がってウインドウを表示させアイテムリストから一つの剣を空白部分に設定。続いてスキルウインドウを開き、選択している武器スキルを目的のものに変更。全ての操作を完了してOKボタンをタッチしてウインドウを消した。俺は、レインを見ると彼女も終わったようだった。

 

「やるぞ、レイン!」

 

「うん!」

 

「アスナ!クライン!いいぞ!!スイッチ!」

 

アスナ達は、HPをイエローゾーン手前まで減らしていた。本来なら直ちに結晶で回復するところなのだが、この部屋では出来ないためポーションで少しずつ回復するしかない。

 

「イヤァァァァ‼」

 

「ウォォォォオ‼」

 

「「スイッチ‼」」

 

俺とレインは、スイッチして入り込み俺は背中から『ダークリパルサー』をレインは腰から『トワイライト・ラグナロク』を抜いた。

俺とレインは、取り出した片手剣で《グリームアイズ》の腹を切り裂いた。

 

「グォォォォ‼」

 

やっと決定的にHPが減った。だが、そんなもの気にしないかのように《グリームアイズ》は大剣を俺に降り下ろしてきた。だが俺は、それを両手に装備した片手剣をクロスさせて防いだ。これが、《二刀流》武器防御スキルクロス・ブロックだ。防いだ大剣を俺はおもいっきり弾き返した。

 

「今だ、レイン!」

 

「うん」

 

後ろには、2本の剣を構えたレインがいた。だがその距離からは《グリームアイズ》に攻撃することが出来ない。

はずだが。

 

「行くよ!やぁぁぁぁぁぁ・・・・・・《サウザンド・レイン》!!」

 

レインは《多刀流》最上位ソードスキル《サウザンド・レイン》を繰り出した。《サウザンド・レイン》は連撃数不明のソードスキルだ。連撃数不明の原因は遠近両方の攻撃が可能で自身の剣が攻撃するわけでは無いからだ。

レインは、その場で一回転し剣を広げた。すると、ライトエフェクトを纏ったレインの剣の背後の空間が歪み蒼い色をした剣が次々と現れた。レインが右手の剣を降り下ろすと背後の剣が《グリームアイズ》に殺到し貫いていった。《グリームアイズ》は大剣で塞ごうとするが蒼い色をした剣は空中を飛び貫いた。

《グリームアイズ》はそれでノックバック効果が起こりのけ反り状態になった。

 

「キリト君!」

 

「はぁぁぁあ・・・・・・《スターバースト・ストリーム》‼」

 

俺は、それを逃さず両手の剣を振るった。

《二刀流》上位ソードスキル《スターバースト・ストリーム》16連撃だ。両手の剣が恒星から吹き出すプロミネンスの奔流のごとく《グリームアイズ》を切り刻んでいった。《スターバースト・ストリーム》の弱点は攻撃中、自身が無防備になってしまうことだ。

《グリームアイズ》の大剣に攻撃を当てられながらも俺は思考が加速したような感覚で剣を振るい続けた。

 

「グォォォォオ!」

 

「ウォォォォォオ‼」

 

連撃最後の俺の右手の剣が《グリームアイズ》の腹に突き刺さると《グリームアイズ》は動きを止めピクリと動いたあと"バッシャーン"と音がなり響きポリゴンへと爆散した。

 

『Congratulations‼』

 

「終わった、のか・・・・・・」

 

俺は、視界の文字やLAに眼も触れず自身のHPバーを見た。俺のHPは残り5%程だった。

俺は、そこで限界が来たのか両手から剣が床に落ち"カラン"と音が鳴り自身も背中から倒れ気絶してしまった。




キリトの《スターバースト・ストリーム》レインの《サウザンド・レイン》遂に出ました。

アンケート、感想等お待ちしてます。


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SAO編 第31話〈決戦後〉

お気に入りが130件を越えました。ありがとうございます。

アンケートの途中報告
現在HF(ホロウ・フラグメント)編が多いいです。

誤字脱字があったらごめんなさい。


「・・・・・・・・ト、・・・・・・・リト君、・・・・・・・キリト君!」

 

俺は、レインからの言葉に眼を覚まし辺りを見渡した。

辺りを見渡し俺は、ここが第74層ボス部屋だと分かった。辺りにはボスが消えたときに起こるポリゴンが余韻として漂っていた。

 

「大丈夫キリト君!?」

 

「レイン?・・・・・・ああ、大丈夫だ」

 

俺は、そうレインに言い上体を起こした。するとレインは余程心配したのか抱き付いてきた。

 

「ちょ、レイン!?今、ここには他の人もいるんですけど」

 

「キリト君は、黙ってて」

 

そうレインが言い、俺はレイン頭を優しく撫でて聞いた。

 

「レイン、俺どのくらい気絶してた?」

 

「ほんの十数秒程だよ。全く無茶して心配したんだよ」

 

「すまない。レインは大丈夫か?」

 

「わたしは大丈夫だよ。それより、はい、これ」

 

そう言うとレインは俺にグランポーションを渡した。

俺は、渡されたグランポーションを飲んだ。これで数分のうちにHPは全回復するだろうが疲労までは消えなさそうだった。

 

「大丈夫か、キリト」

 

「クライン。アスナ、ユウキ、ランお疲れ」

 

「お疲れ、じゃないよキリト君。また君は無茶をして」

 

「今回は僕も心配したんだよ」

 

「まぁまぁ、二人とも。キリトさんが無事ならいいじゃないですか。それにキリトさんなんですから、無茶は当然だと思いますよ」

 

「あっははは」

 

アスナ達から言葉をかれられた俺は、クラインに今回の犠牲者数を聞いた。

 

「クライン・・・・・・」

 

だが、クラインは俺がその事を聞くことを予想していたかのように答えた。

 

「生き残った『軍』の連中の回復は済ませたが・・・・・・・コーバッツと後二人『軍』のプレイヤーが死んだ」

 

「そうか。・・・・・ボス戦で犠牲者が出たのは第65層のボス戦以来だな」

 

「ちくしょ。コーバッツの野郎死んじまったらもともこもないだろが」

 

クラインは、顔をしかめて言った。

 

「ところで、オメエとレインちゃんが使ったスキル。何だよアレ!?」

 

「「・・・・・ええと、言わなきゃダメか(かな)?」」

 

「ったりめぇだ!見たことないねぇぞあんなの!」

 

「・・・・・・エクストラスキルだよ。《二刀流》」

 

「わたしのは同じくエクストラスキル《多刀流》だよ」

 

俺とレインが言った言葉に既に知っているアスナ、ユウキ、ラン以外は予想通り"おお・・・・・・・"とどよめきの声がクライン達と『軍』の連中から上がった。

 

「しゅ、出現条件は!?」

 

クラインが俺とレインに聞いてきた。

 

「解ってりゃもう公開してる」

 

「だろうな~」

 

クラインは、俺が言った言葉に納得したように首を縦に降った。

 

「ん?なあ、アスナ達はキリトとレインちゃんのスキルの事知っていたのか?」

 

クラインが、先程驚いた表情を浮かべていなかったアスナ達3人に聞いた。

 

「ええ、知っていたわよ。キリト君とレインちゃんから実際に聞かされていたから」

 

「クライン、アスナ達を責めないでやってほしい。口止めをしたのは俺とレインなんだから」

 

「解ってるって。こんなのが露見したらヤバイからな」

 

「ああ」

 

だが、今回の事で俺とレインが新たなユニークスキル持ちとして騒がれることになるだろう。今までは隠していたがこんなおおっぴらに使用しては隠せない。

 

「俺達はこのまま第75層の転移門をアクティベートしてくるけどどうする?今回の立役者はキリトとレインちゃんだからな二人がやるか?」

 

クラインは、一緒に第75層に行き転移門をアクティベートしないか、と聞いているのが分かった。

 

「いや、止めとくよ。もうヘトヘトだ」

 

「わたしも止めとくよ」

 

俺とレインがクラインにそう伝えるとクラインは分かったように首を降り、生き残っている『軍』のプレイヤーのところに向かった。

 

「お前達、本部まで戻れるか?」

 

クラインが聞くと『軍』の一人のプレイヤーが頷いた。

 

「よし。それなら今回起こったことを包み隠さず上に伝えるんだ。もう二度とこういう無謀な真似はしないようにな」

 

「・・・・・はい。・・・・・あの、ありがとうございました」

 

「礼なら、あの二人に言え」

 

クラインは、俺とレインに親指を指して言った。生き残った『軍』のプレイヤーはヨロヨロと立ち上がり俺とレイン達に深々と頭を下げボス部屋から出て次々と転移結晶を使い本部へと帰って行った。『軍』が全員転移したのを見届けるとクラインが。

 

「まあ、二人にはこれから様々な事が有るだろうけど頑張りたまえ」

 

「「??」」

 

クラインは俺とレインに意味不明な事を言い仲間と共に第75層へと移動していった。

ボス部屋に残った俺達は。

 

「アスナ達は、どうするんだ?」

 

「私は、今回の事を団長に報告しに行くわ」

 

「そうだね。色々と対策を建てないといけないかも知れないからね、これからのボス戦は」

 

「そう言うわけなので、私たちは至急ギルド本部に向かいます」

 

「そうか。分かった、気を付けてな」

 

「「「はい」」」

 

そう言うとアスナ達も部屋から出て転移結晶を使用し転移していった。

俺は、先程からずっと抱き付いて黙っているレインに視線を向けた。

 

「レイン?」

 

「なに?キリト君」

 

「俺達も帰ろうか」

 

「うん」

 

俺とレインは、そのまま転移結晶は使わず歩いて第74層の主街区に行き転移門を経由してホームのある第50層に移動した。

道中俺とレインは、PoPしてきたモンスターに対して《二刀流》と《多刀流》スキルを全開にして倒していった。

 

翌日、レインと共に起床した俺は昨日のボス戦等のドロップアイテムを鑑定してもらうためエギルの店に出掛けようとした。だが、俺達はあるひとつの事を忘れていた。それは、

 

「「「「「出てきたぞーーーー!!!!」」」」」

 

「「「「「スキルの習得条件教えろーーーー!!!!」」」」」

 

「「「「「この二人結婚してるらしいぞーーー。この、リア充どもめーー!!!」」」」」

 

攻略プレイヤーや、他のプレイヤーが集まるということだ。案の定どうやって調べたのか俺とレインの家の前に陣取っていた。

 

「な、なんだこれ!?」

 

「キリト君、とにかく逃げよう」

 

俺とレインは、敏捷力を全開にしてエギルの店まで走っていった。

 

「「エギル(さん)匿ってくれ(ください)」」

 

「え、ああ、上に行け」

 

エギルの店に着いた俺とレインは、着いて早々エギルに頼み込んだ。エギルも、俺とレインが来ることを予想していたのかすんなりと上に通してくれた。

 

「ふう~、何とかなったな」

 

「うん。アスナちゃん達に居場所を連絡しないとね」

 

そう言うと、レインはメッセージウインドウを開きアスナ達にメッセージを送信した。俺は、その間机に置いてあったアインクラッドで発行している新聞に眼を通した。

新聞の見出しには大きく『新たなるユニークスキル持ち現れる!『軍』の大部隊を壊滅させた悪魔!それを撃破した《二刀流》使いの50連撃と《多刀流》使いの45連撃!二人は結婚して夫婦だった!?』と書いてあった。

 

「あ、アスナちゃんから返信きたよ・・・・・・えっ!?」

 

「ん?どうしたんだ、レイン」

 

俺は、アスナからのメッセージを読んでいるレインに聞いた。

 

「ええと、今アスナちゃんからのメッセージにヒースクリフさんが一緒に来るみたい」

 

「はい?アイツが?何でだ」

 

「さあ、何かわたしとキリト君に何か用があるみたいだよ」

 

アスナからのメッセージから10分後、ヒースクリフがアスナ達と共に来た。

 

「やあ、キリト君、レイン君。ひさしぶりだね」

 

「ああ」

 

「こんにちは、ヒースクリフさん。あ、そうだ、ヒースクリフさん、これ」

 

レインはヒースクリフに挨拶をするとウインドウを操作し1つのアイテムを取り出してヒースクリフに渡した。

 

「む?レイン君これは?」

 

「これは、わたしが作った醤油だよ」

 

「醤油だと!?」

 

俺とレイン、アスナ達はヒースクリフが取り乱すところを初めて見て驚きを隠せなかった。

 

「ありがとう、レイン君」

 

「イエイエ」

 

「あー、ところでヒースクリフ、何か用があったんじゃないのか」

 

「うむ。では本題に入ろう。キリト君、レイン君、君たち二人は私と同じくユニークスキルの持ち主とアスナ君達から聞いている。それでなのだが君たち二人とも我々のギルドに入る気はないかね?」

 

「いや、ないよ」

 

「理由を聞いても言いかね」

 

「俺は、今までコンビで攻略していたからギルドには馴染めないのに加え、アンタは余り信用できないからだ。まあ、ボス戦の時は助かっているが」

 

「フム、レイン君はどうかね」

 

「わたしも遠慮しとくよ」

 

「そうかね。では、どちらか私とデュエルしないかね?それで君たちが勝てたら何か1つ欲しいものをあげよう。だが負けたら一日我々のギルドに入ってもらいたい。どうかね?」

 

俺とレインは、ヒースクリフの言葉に互いの顔を見合わせ。

 

「良いぜ。そのデュエル俺が承けて立つ」

 

「よかろう。では、2日後第75層コリニアの闘技場で待っている。では失礼するよ。ああ、レイン君、醤油ありがとう」

 

そう言うとヒースクリフはアスナ達を引き連れて帰って行った。

そして、2日後第75層コリニアの闘技場で俺はヒースクリフとデュエルを行うことになった。

 

 

その夜第55層グランザムにある血盟騎士団ヒースクリフの執務室で

 

「これが、レイン君の作った醤油か」

 

私はレイン君から貰った醤油を使い醤油ラーメンを食べていた。

 

「む、上手い。これほどまでに上手いとは。にしても私の予想通りあの2つのスキル保持者がキリト君とレイン君になったな。《二刀流》スキルは全プレイヤー中最高の反応速度を持っているものに《多刀流》スキルは反応速度と反射速度、そして鍛冶スキルを持っているものに与えられるからね。2日後のキリト君とのデュエルが楽しみだな」

 

そう言うと私は"左手を降って"ユニークスキルのウインドウを開いた。画面には私の《神聖剣》キリト君とレイン君の《二刀流》《多刀流》がグレーに埋まっていた。残りのユニークスキルは7つ《神速》《紫閃剣》《変束剣》《射撃》《抜刀術》《無限槍》《暗黒剣》が白く表示されていた。

 

「もしかしたら、アスナ君達もユニークスキルを取得できるかも知れないね」

 

そう言うと私はウインドウを消し食べ掛けのラーメンを食べ始めた。




次回、ヒースクリフとキリトのデュエル。

アンケート、感想等、お待ちしてます。


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SAO編 第32話〈《神聖剣》VS《二刀流》ユニークホルダー同士の決闘(デュエル)

連日投降。
テストがあるのに、投降していて良いのだろうか私は。

アンケート絶賛募集中‼

誤字脱字があったらごめんなさい。


2日後、俺とレインはヒースクリフとのデュエルを行うため新たに開通された第75層主街区コリニアに転移した。

 

第75層主街区「コリニア」

 

コリニアに転移した俺達を待っていたのはお祭り騒ぎだった。コロシアムに移動すると更にお祭り騒ぎは高くなっていた。何故なら、

 

「火噴きコーン十コル!十コル!」

 

「黒エール冷えてるよ~!」

 

コロシアムの入り口には商人プレイヤーが特に多く露店を出していたからだ。特にKoBのプレイヤーが多く、観戦券を販売していた。

 

「ど、どう言うことだこれ?」

 

「さ、さあ?」

 

俺とレインは困惑気味に辺りを見渡した。すると、奥の方にアスナ達が手を振っているのが見えた。

 

「こんにちは、キリト君、レインちゃん」

 

「あ、ああ。じゃなくて、これは一体なんだ!?」

 

「ああ、え~と・・・・・・」

 

「実はあのあと、ギルド本部での会議で団長がキリトさんとデュエルすることを漏らした、と言うか話しちゃったんですよ」

 

ランが苦笑い気味に説明した。

 

「なるほどな」

 

すると観戦券を販売していたKoBのプレイヤーが来た。

 

「あ、ダイゼンさん」 

 

アスナが声をかけるとダイゼンと呼ばれたプレイヤーは陽気に、

 

「いやー、おおきにおおきに。キリトはんのお陰でえろう儲けさせてもろてます!あれですなあ、毎月一回くらいやってくれると助かりますなぁ~」

 

「誰がやるか!!」

 

「ははは、それじゃおおきに」

 

そう言うとダイゼンさんは何処かに行ってしまった。

 

「アスナさん、控え室の用意が出来ました」

 

不意に後ろから声がして見ると、そこにいたのは。

 

「ご苦労様、ラムさん、リーザさん」

 

アスナ達の護衛役のラムとリーザだった。

 

「「いえ」」

 

「全く、もう二人は護衛役じゃないでしょ。もう少し軽くても良いのよ」

 

「「ですが・・・・・・・分かりました。こちらへどうぞ」」

 

俺達は、ラムとリーザの先導のもと控え室に移動した。

控え室に着いた俺達は、早速アスナ達からヒースクリフの《神聖剣》についてレクチャーを受けていた。

 

「キリト君、団長の剣技にはまだ未知数なところがあるから気を付けてね」

 

「ああ、わかってるって。そう易々と負けたりはしないさ」

 

暫くして入場のアナウンスが流れた。

 

「それじゃ、行ってくる」

 

「私達は、観客席で見てるね」

 

アスナ達はそう言うと観客席の方に移動していった。

 

「わたしは、入り口の近くにいるから気を付けてねキリト君」

 

レインは、闘技場の入り口のところで俺を見守るらしい。

 

「おう!」

 

そうレインに言い俺は闘技場の中に入っていった。

闘技場は円形の形をしており周囲には階段状の観客席があった。アスナ達は、見に来ていたクラインとエギルと共に着席していた。

俺は反対側から出てきたヒースクリフに視線を向けた。

ヒースクリフの装備は血盟騎士団の色が白に対して(ユウキとランを除く)逆の赤いサーコートを着用していた。俺と同様最低限の鎧だが左手に持った巨大な純白の十字盾が眼を引く。剣は盾の内側に装備されているらしく、頂点の部分から盾と同じように十字型の柄が飛び出していた。

 

「すまなかったなキリト君。まさかこんなことになっているとは知らなかった」

 

「ギャラは貰いますよ」

 

「・・・・いや、君は試合後から一日だけ我がギルドの一員だ。任務扱いにさせていただこう」

 

ヒースクリフはそう言うと、笑みを消し真鍮色の瞳から圧倒的な気合いを迸らせてきた。

俺は、それに意識を戦闘モードへと切り替え周囲の観客席からの声を遮断し視線をヒースクリフへと向けた。

俺とヒースクリフは十メートル程下がりヒースクリフが俺にデュエル申請をしてきた。

『ヒースクリフから1VS1のデュエルを申し込まれました。受諾しますか。YES / NO』と目の前に表示された。

俺は、デュエルモードを初撃決着モードにしてYESのボタンを押した。

カウントダウンが始まり俺は背中から『エリュシデータ』と『ダークりパルサー』を抜き出し構えた。対してヒースクリフも同様に盾の内側に装備している片手剣を抜き出して構えた。ヒースクリフの片手剣はやや細身の剣だった。

カウントダウンが0になり《DUEL‼》と同時に俺は地を蹴り地面すれすれから攻撃を開始した。

地面すれすれを滑空するように突き進んだ俺は、ヒースクリフの直前で体を捻り、右手の剣を左斜め下から叩きつけた。だがそれは十字盾に防がれ火花を散らした。が俺の攻撃は二段構えだ。右手にコンマ一秒遅れて左手の剣がヒースクリフの胴に吸い込まれた。《二刀流》突進ソードスキル『ダブルサーキュラー』だ。

が、それはヒースクリフの剣に防がれて締まった。

すると今度はヒースクリフが仕掛けてきた。だが、

 

「チッ!」

 

俺の位置からは盾に邪魔されて剣が見えず横に避けようとした。

 

「ぬん!」

 

するとヒースクリフは、盾を水平にし重い声とともに盾の尖った先端で突き技を放ってきた。

俺は両手剣で防いだが遠く吹き飛ばされてしまった。更にあの攻撃にもダメージ判定があったようでほんの少しだけ俺のHPは減っていた。

そこにヒースクリフは《閃光》アスナに迫るほどのスピードで迫ってきて、《神聖剣》中位ソードスキル『リファレイン・エグゼム』8連撃を繰り出してきた。

ヒースクリフの《神聖剣》についてはアスナ達からレクチャーを受けているが付け焼き刃なので俺は意識を全開にして防いだ。

8連撃最後の攻撃を弾くとすぐさま俺は片手剣ソードスキル『ヴォーパル・ストライク』単発重攻撃を繰り出した。

だがそれも、ヒースクリフに盾で防がれたが多少のダメージは《抜けた》感覚があった。

 

「フム。中々素晴らしい反応速度だな」

 

「そっちこそ、堅すぎるぜ‼」

 

俺とヒースクリフは再度距離を積め攻撃の応酬が始まった。強攻撃は防がれたり弾かれたりするが幾分かの弱攻撃は通っている。だがそれは俺も同じだった。俺とヒースクリフは互いにHPを削り続け俺のギアは更に上がっていった。

 

"まだだ、まだ上がれる!ついてこいヒースクリフ‼"

 

俺は、更に攻撃を速くした。すると、ヒースクリフの表情に焦りが生まれた。それにともないヒースクリフの奏でる攻撃のテンポが遅くなってきた。

 

「らああああ‼」

 

その瞬間俺は、防御を捨て去り両手の剣での攻撃を開始した。《二刀流》上位ソードスキル『スターバースト・ストリーム』16連撃、恒星から噴き出すプロミネンスの如くの奔流がヒースクリフに殺到した。

 

「ぬおっ・・・・・・!!」

 

ヒースクリフは、十字盾を掲げて防御するが次第に反応が遅くなった。

 

"抜ける‼"

 

俺は、最後の一撃がヒースクリフのガードを超えることを確信した。最後の左からの攻撃がヒースクリフに吸い込まれていった。

その時、世界がブレた。

 

「っ!?」

 

ヒースクリフ以外のプレイヤーが動きを止めたような感覚に陥りヒースクリフの盾が俺の必殺の一撃を弾き返した。

 

「な‼」

 

大技を防がれた俺は致命的な技後硬直に陥りヒースクリフからの攻撃を防げなかった。

憎たらしいまでにデュエルを終らせる丁度の攻撃を放ってきた。俺は、それを受けその場に無様に倒れた。

視界の端でデュエル終了のシステムメッセージが現れた。

俺は、戦闘モードを解除し周囲の声が聞こえるようになっても動けずにいた。

 

「キリト君‼」

 

駆け寄ってきたレインからポーションを受け取りレインの手を借りて立ち上がった。

 

「すまない。大丈夫だレイン」

 

レインは、心配そうな表情で俺を見ていた。

 

"俺は、負けたのか"

 

俺は、それに信じられなかった。攻防の最後ヒースクリフが見せた動きはプレイヤーの否システムの許容範囲を超えていたのだ。俺は、ヒースクリフの方を見ると、ヒースクリフの表情は険しく無言のまま身を翻して控え室に戻っていった。

 

「キリト君、戻ろう」

 

「ああ、すまないレイン」

 

俺は、ヒースクリフの消えた方を見ながら"あの反応速度は一体なんだった"のか考えていた。




次回も速く投降出来るようにします。
アンケート、感想等待っています。


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SAO編 第33話〈向けられる殺意〉

テスト終了、わーいです。

今回も早く投稿出来ました。

アンケート絶賛募集中!

誤字脱字があったらごめんなさい。


「な、なあ、これ派手すぎないか?地味なのを頼んだ筈なんだけど」

 

「ふ、ふふふふ、そんなことないよ。キリト君」

 

「いや、レイン笑ってるだろ!」

 

「そ、そんなことないよ。ふふふ」

 

俺とレインは今、第55層グランザムにある血盟騎士団の本部にあるアスナ達の執務室にいた。

理由は、今日一日だけ俺が血盟騎士団に入団するからだ。

レインは、その付き添いみたいな感じだ。

ヒースクリフとのデュエルで負けた俺は、その翌日血盟騎士団の本部に来てアスナから渡された服を着ていた。

 

「入るよ、キリト君」 

 

扉がノックされアスナ達が入ってきた。

 

「どう、キリト君」

 

「いや、どうもないんだけど」

 

俺は、血盟騎士団のユニフォームを着てアスナ達の方を向いた。ユニフォームは、アスナ達が着ている感じの男性バージョンで色は純白に染まっていた。

 

「ふ、ふふ、なるほどね」

 

「あははは、キリトにはやっぱ白は似合わないね」

 

「ユウキ、失礼ですよ。ですが、まぁ確かにそうですね」

 

「やっぱ、キリト君には黒が似合っているよ」 

 

と、入ってきて早々アスナ達は服の感想を言ってきた。

 

「はあ~。まあ、今日一日だけだから我慢するよ」

 

「え~と、それじゃキリトさんは、正面入り口には向かってください。そこで詳しく説明されるので」

 

「わかった」

 

俺は、ランに言われた通り正面入り口に向かった。

入り口には4人の、人影があった。

 

「お、やっと来たな」

 

俺が行くと一人の男性プレイヤーが声を掛けてきた。

 

「私は前衛の指揮を務めるゴドフリーだ。よろしく」

 

「よろしく」

 

「それでは、本日は訓練を行う。我々5人で第55層から第56層へと迷宮区を経由して移動する」

 

俺は、ゴドフリーの言葉に疑問符を浮かべた。

 

「あのなぁ、俺は今日一日だけしかギルドに入らないぞ」

 

「む、そうだったのか。それは失礼した」

 

俺は、ゴドフリーから残りの3人に視線を向けた。

 

「よろしくお願いします。キリトさん」

 

「よろしくお願いしますね。キリトさん」

 

最初に挨拶してきた二人はラムとリーザだった。

 

「ああ、よろしく。え~と、ラムさんとリーザさんであっているかな?」

 

「はい、あってます」

 

「俺のことは、キリトと呼び捨てで構わないよ。二人とも」

 

「そうですか?では、改めて。よろしくお願いします、キリト」

 

「よろしくお願いしますね。キリト」

 

「ああ、こちらこそよろしく」

 

俺は、ラムとリーザと挨拶をして残りの一人に視線を向けた。俺は、残り一人の男性プレイヤーを見て驚いた。何故なら、

 

「おい、ゴドフリー。これはどう言うことなんだ?」

 

「ウム。君たちの間に起こったことは十分承知している。だが一日だけとはいえ同じギルドの仲間なのだからこれまでの事は水に流してはどうかと思ってな。ガッハッハッ」

 

その人物は、ついこの間第74層の転移門広場でデュエルしたクラディールだったからだ。

ゴドフリーからの説明が終わり、クラディールが此方にやって来た。

 

「先日は・・・・・ご迷惑をおかけしまして・・・・」

 

俺は、クラディールの言葉に驚き口をポカンと開けた。

 

「二度と無礼な真似はしませんので・・・・・許していただきたい・・・・」

 

クラディールの表情は長髪に隠れて見えなかった。

 

「あ・・・・・ああ・・・・」

 

俺は、クラディールの変わりように不気味にも思いながら首を縦に振った。

ゴドフリーはそれを見て、再び笑った。

 

「よしよし、これで一件落着だな」

 

「あ、ああ」

 

「それでは、出発する。だが、その前に諸君らの結晶アイテムを預かりたい。緊急時の対応を見たいのでな」

 

「結晶アイテム全てか?」

 

俺は、ゴドフリーの言葉に質問した。ゴドフリーの、答えは首を縦に振った。

 

「あー、ちょっと待ってくれるか。俺の相方に確認するから」

 

「ウム、わかった」

 

俺は、レインにメッセージを送りアイテムの補充と俺のモニターを頼んだ。

送ってすぐにレインから『了解。結晶アイテムが無くなったら補充しとくね』と返ってきた。レインからの了承を得た俺は、ゴドフリーの方を向き結晶アイテムを手渡した。

俺達の結晶アイテムをゴドフリーは、ポーチにしまい、

 

「では、行こう」

 

と、言った。

 

第55層フィールド

 

第55層のフィールドは、草木一本もない荒野フィールドだ。俺達は、グランザムを出てから順調に進んでいた。

道中現れるモンスターは、苦労することなく撃破している。

荒野フィールドの中間辺りでゴドフリーが、

 

「よし、一時休憩。食料を配付する」

 

と、言った。

俺は、近場にあった岩場に腰掛け配付された食料を見た。中身は黒パンと水だった。本来ならレインのお昼が食べられるのにと恨みがましく思ったが一応我慢した。

他のメンバーを見るとクラディール一人だけ手を着けていなかった。俺は、飲もうとした水を見た。すると、"ドサッ"と音がした。音の発生場所はゴドフリーだった。俺は、瞬時に手に持っていた水瓶を捨てた。

何故なら、ゴドフリーのHPバーに黄緑色の枠が囲んであったからだ。

 

"麻痺毒‼"

 

「ラム、リーザすぐにそれを捨てるんだ‼」

 

俺は、ラムとリーザに言いゴドフリーに近付こうとした。

すると、高い岩場にいたクラディールが奇妙な笑い声を上げて飛び降りてきた。

 

「ひゃひゃひゃ」

 

「ク、クラディールこれはどう言うことだ。何かの訓練の一環なのか」

 

「うるさい、もう死ね」

 

クラディールは、ゴドフリーに近づき腰の両手剣を持ちゴドフリーに突き刺そうとした。

 

「はあぁぁぁあ‼」

 

俺は、瞬時に二刀を抜き片手剣下位ソードスキル『レイジスパイク』を放った。だがそれは、大きくクラディールに交わされ当たらなかった。

 

「テメエの相手は後でしてやるよ」

 

そう言うとクラディールはゴドフリーの背中に両手剣を突き立てた。その瞬間クラディールのカーソルは緑から犯罪者のオレンジに変わった。ゴドフリーは、悲鳴をあげるがクラディールの手は止まらなかった。

 

「ラム、リーザ急いで街に戻って助けを呼んでくるんだ‼」

 

俺は、瞬時にラムとリーザにそう言い放った。だが、

 

「ですが、キリト、あれ」

 

「なっ‼」

 

通ってきた道には5人のオレンジプレイヤーがいた。

すると、

 

"バッシャーン"

 

ポリゴンの爆散音が聞こえた。

俺は、発生元を見るとゴドフリーはいなくクラディールが両手剣を突き刺したままの姿でいた。

つまり先程の爆散音はゴドフリーのだったのだ。

 

「あーあ、テメエみたいなガキのせいで全く関係無い奴殺しちまったよ」 

 

「どうしてお前みたいな奴が血盟騎士団に入った」

 

「キヒャヒャヒャ。褒めてるんだぜ良い眼してるってな」

 

クラディールはそう言うと両手剣を右手で持ち左手のガントレットを外し袖を捲りあげた。

 

「なっ!?それは!」

 

そこに描かれていたのは棺桶の中から骸骨の手が出てくる模様だった。ここ、アインクラッドでそのエンブレムを使っているのはただひとつ、殺人ギルド笑う棺桶(ラフィン・コフィン)だ。

 

「・・・・まさか、お前あの時の生き残りなのか。これは復讐なのか・・・・」

 

すると、不意に体に力が入らなくなった。HPバーは黄緑色の枠に囲まれている。つまりこれは、ゴドフリーと同じ麻痺毒だ。ラムとリーザも同様な状態だった。

 

「いつ、まで、手間取って、いるんだよ」

 

「わりぃわりぃ」

 

俺は、その声に視線を向けるとラフコフの幹部ジョニー・ブラックと赤目のザザがいた。

 

「なんで、ここに・・・・・」

 

「決まってんだろ、俺らはお前の死ぬところを見にきたのさ」

 

「ジョニー、の、言う、通りだ。無様、だな、黒の剣士。そして、そっちの、二人は、灼眼の剣士、ラム、と、碧雲のリーザだな」

 

「「どうして・・・・」」

 

「そんなのは別に良いんだよ。お前が死んだことをヘッドに伝えるんだからよ」

 

「な、お前らPoHと一緒にいるのか!?」

 

「そりゃそうだぜ。何せあの時、俺らがヘッドを先に逃がしたんだからな・・・・・・おい、さっさと殺せよ」

 

「了解だぜ。・・・・・・・この日を夢に見てたぜテメエが死ぬところをな!」

 

クラディールはそう言うと俺に両手剣を突き刺してきた。

 

「ぐっ・・・・・」

 

「どうなんだよ、死ぬところはよ。答えてくれよ。おい」

 

クラディールが俺に聞いてくる。

その時、

 

「やあぁぁぁぁ‼」

 

気合いの入った声が荒野のフィールドに響いた。今のは《多刀流》下位ソードスキル『ウインド・ストライク』だ。

次の瞬間一陣の風が走った。眼を開くとそこにいたのは、本来なら第55層の血盟騎士団本部で待っているはずのレインだった。ラムとリーザのところにはアスナ、ユウキ、ランがいた。

 

「大丈夫、キリト君!?」

 

「ああ、助かったよレイン」

 

「お礼は後でね。それより今は・・・・」

 

レインは腰のポーチから回復結晶を取りだし俺に、あてた。

 

「ヒール!」

 

俺のHPはすぐに右端まで回復した。ラムとリーザも麻痺毒から回復したようで立っていた。

 

「ちっ。引き上げるぞ!」

 

「逃がさないよ」

 

レインは、逃げようとしたザザ達を回り込み道を防いでいた。

 

「大人しく投降しなさい。この人数を相手出来ると思っているの」

 

ジョニー・ブラックとザザは観念したようで投降した。アスナ達の方も終わっているようでオレンジプレイヤーは全員武器を下ろし拘束されていた。

 

「後は、お前だけだクラディール。投降しろ」

 

「くそっ」

 

武器を横に下ろしたクラディールは、地面に膝をついた。レインがクラディールを拘束しようとした瞬間、

 

「あめぇーんだよ!」

 

レインに両手剣を降り下ろしてきた。

 

「レイン!うおぉぉぉぉお‼」

 

「キリト君!!」

 

俺は、レインを両手剣から庇い左手が欠損した。だが、俺もクラディールの腹部に右手の手刀を突き刺していた。

体術スキル零距離技『エンブレイサー』

突き刺していた俺の手刀は、余さずクラディールのHPを奪っていった。

 

「ふ・・・・・この・・・・・・人殺しが・・・・・」

 

クラディールは、最後にそう俺に言いポリゴンの欠片へと変わっていった。

俺達は、そのあとザザ達を回廊結晶を使い黒鉄宮にある牢獄まで転移させ血盟騎士団本部にて、ヒースクリフに今回の事を話した。

 

「すまなかった、キリト君。それにラム君、リーザ君」

 

「いや、大丈夫だ」

 

「これからギルドの内部調査を行う。その結果を君に報告しようと思うがよいかね」

 

「ああ、頼む」

 

「うむ。ラム君とリーザ君はしばらく休みなさい。こんなことがあったんだ、休暇だと思ってくれてほしい」

 

「「わかりました、ヒースクリフ団長」」

 

「それじゃ、俺達は帰るな」

 

「ああ」

 

俺とレインは血盟騎士団の本部を出た後第50層にある俺達の家に帰り今日の疲れを癒した。




ラムとリーザの二つ名登場。
ちょっとだけオリジナルが入ってます。

アンケート、感想等お待ちしてます!


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SAO編 第34話〈休暇と新居〉

今回は字数が少ないです。
ごめんなさい。

誤字脱字があったらごめんなさい。


ヒースクリフに報告し第50層にある家に戻ってきて俺は、レインに何故早く来れたのか聞いた。

 

「それはね、キリト君達が行ってからアスナちゃん達とずっとモニタリングしていたんだ。それでアスナちゃんのモニタリングしていたギルドメンバーの反応が1つ消えたから急いで行ったんだ」

 

「なるほど」

 

確かにモニターしといてほしいと頼んだが・・・・・・。

ゴドフリーの反応が消失してからあの場所にたどり着くまで10分とかからなかった。とても敏捷力補正だけでは不可能なはずなのだが。

俺は、レインに聞くとレインは照れながら、

 

「えへへ、愛の成せる技だよ~」

 

と誇らしげに言った。

 

「そ、そうですか」

 

俺も少し顔を赤くしてレインに言った。

 

「なあ、レイン提案があるんだけど良いか?」

 

「何?キリト君」

 

「あのさ、引っ越さないか。第22層に良い場所があるんだ」

 

「ほんと!?いいよ!」

 

俺とレインは、その翌日第22層の不動産屋のNPCのところに行き森の中にある小さなログハウスを購入した。

 

第22層 森の家

 

「うわー、綺麗だよキリト君!」

 

「余り外周に近づいて落っこちるなよレイン」

 

「分かってるよ~」

 

俺とレインが購入したログハウスは外周部が間近にあるため、輝く湖面と濃緑の木々の向こうに見える空が一望できる。

ヒースクリフからあの時の事件の調査報告書を送られてきたのと同時に謝礼金としてコルが多く送られてきた。

俺達は、それと手持ちのコルを使って家財道具一式を揃えることが出来た。

俺達が前に住んでいた家は、色々と思いではあるが新しく思い出を作るためにレインと相談して売り払うことにした。

 

"コンコン"

 

不意に扉がノックされ俺とレインは顔を見合わせて心当たりがあるか聞いた。

だがレインも心当たりがないみたいの為俺は、扉を開けることにした。

 

「はーい」

 

扉を開いてそこにいたのは、

 

「こんにちは、キリト君」

 

「ヤッホー、キリト」

 

「こんにちは、キリトさん」

 

「こんにちは、キリト」

 

「こんにちはです、キリト」

 

アスナ、ユウキ、ラン、ラム、リーザの5人だった。

 

「どうしたんだ、5人とも?」

 

「キリト君とレインちゃんの新しい家を見に来たんだよ」

 

アスナが俺にそう言った。

すると、中から。

 

「キリト君、だれ~」

 

「アスナ達だよ」

 

「え?アスナちゃん達?」

 

レインが奥のベランダから玄関までやって来た。

 

「こんにちは、レインちゃん」

 

「アスナちゃん、どうしたの?と言うかギルドの方は?」

 

「レイン、その前に中に上がってもらったら」

 

「あ、そうだね。それじゃどうぞ」

 

「「「「「お邪魔しまーす」」」」」

 

アスナ達はレインの先導のもと家の中に入りそれぞれ腰かけた。

レインは、台所に行きお茶の用意をしていた。

 

「それで、今日はどうしたんだ?」

 

俺は、アスナ達に聞くと。

 

「私たちも休暇をもらえるようになりまして、どうせなら皆でキリトさんとレインさんの新居に行こうと言うことになりました」

 

ランが俺に事情を説明してくれた。

 

「な、なるほど」

 

「お待たせ~」

 

ランから説明が終わるとレインが人数分のお茶菓子を持って戻ってきた。

そのあとお昼過ぎまでレインは女子同士で俺はラムと話していた。

お昼を過ぎるとアスナ達は用事があるようでラムとリーザ。アスナ、ユウキ、ランの二組に別れて帰っていった。

 

「にしてもアスナ達だけじゃなくてラムとリーザまで来るとはね」

 

「だね~。ビックリしたよ」

 

俺とレインは、食器等を片付けながら話していた。

片付けが終わると再度、俺とレイン分のお茶を用意してソファーにくつろいだ。

 

「レインは、アスナ達と何話したんだ?」

 

「アスナちゃん達とは、料理やおすすめの小物とかの話で盛り上がったよ。リーザちゃんも料理スキル習得していてもうマスタリーしているんだって」

 

「へぇ、それはすごいな。にしても何か俺の回りの女子って料理スキル習得している奴多くないか?」

 

「あはは、確かにそうだね。キリト君はラム君と何話したの?」

 

「俺はラムと武器の事とかを話したんだけどそのなかに気になる話があったんだよ」

 

「気になること?」

 

「ああ、ラムが言うにはこの層に出るみたいだよ」

 

「で、出るって?」

 

「幽霊」

 

「へ、へぇ。それって見間違えとかじゃなくて?」

 

「ああ、ラムが言うにはこの層で色んなプレイヤーが見ているらしい。場所も姿もおんなじなんだってさ」

 

「へ、へぇ」

 

「レインもしかして怖いのか?」

 

「へ、いや、そんなわけないでしょ。ははは、だ、大丈夫だよキリト君」

 

絶対怖がっていると俺は見てとれた。目は浮いてるし呂律が回ってないからだ。

だがそこには追及しないでおこうと思った。

 

「それで、その場所が・・・・・・・・ここなんだけど。明日行ってみないか」

 

俺は、マップから幽霊が出る噂の場所を示した。

 

「え、い、いいよ。多分噂だと思うしなんにもでないよ」

 

「それじゃ、決まりだな」

 

俺とレインは、明日の予定を決めた後夕飯にし装備やスキル熟練度の確認、レインに剣を研いでもらったりして時間を潰し、夜10時程になってから2階の寝室で何時もなら別々に寝るのだが。

 

「キリト君、今日は一緒に寝よう」

 

「え、別に構わないが・・・・・どうしたんだ?」

 

「いや、なんでもないよ。ただ今日はキリト君と一緒に寝たいな~って思っただけだから」

 

「ん、別にいいぞ。ほら」

 

「ありがとう、キリト君」

 

と、言うワケで今日はレインと一緒に寝ることになったのだった。




次回ついにユイちゃん出るか?

次回もお楽しみにお待ちください。

アンケート、感想等募集中です!


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SAO編 第35話〈朝露の少女〉

ユイ好きの人お待たせしました。
今回はユイが出ます。

アンケートをそろそろ締め切らせてもらおうかなと思っています。ご了承下さい。

誤字脱字があったらごめんなさい。


~レインside~

 

「ん、ん~」

 

わたしは、起きて目を開け前を見るとすぐ目の前にキリト君の顔があることに驚いた。

 

「え、これってどういう事・・・・・・・あ」

 

わたしは、昨日の事を思い出した。

わたしは、昨日キリト君の言った"幽霊"に怖くなってしまい何時もなら別々で寝るのだが昨日に限っては一緒に寝たのだ。

だけど今にしてみれば少し恥ずかしいかも。

 

「ふわぁ~」

 

時刻を確認すると午前7時半だった。

わたしは、一回欠伸をしてからこっそりとベットから抜け出しキリト君の寝顔を見た。

 

「やっぱり、キリト君の寝顔って可愛いな~。あ、そうだ」

 

わたしはある1つの事を考えた。

 

"アスナちゃん達と相談して今度やってみよ♪"

 

 

だがそれがなんなのかはまた別の話。

 

 

わたしは、朝食を作るため寝巻きから私服に着替え一階に降りキッチンに向かった。

 

「さて、今日は何にしようかな・・・・・・・よし‼」

 

朝食の献立を考え準備をして、20分くらいたった時、2階から物音がした。

 

「あ、キリト君起きたのかな」

 

しばらくして着替えたキリト君が、一階に降りて来た。

 

「おはよう、レイン」

 

~レインside out~

 

朝、起きてみると昨日一緒に寝たはずのレインがいなく不思議に思ったが一階から物音といい匂いが漂って来た。

 

「ん、ああ~。レイン、下にいるのか?」

 

俺は、一回欠伸と伸びをしてからベットから抜け出し着替えてから下に降りた。

下に降りてみると案の定、レインが朝食の準備をしていた。

 

「おはよう、レイン」

 

「おはよう、キリト君」

 

「ん、手伝うよ」

 

「ありがとう、キリト君。それじゃあ、これらをテーブルに持ってってくれる?」

 

「わかった」

 

「ありがとう、こっちももう終わるから先にイスに座っちゃってて」

 

「りょーかい」

 

俺は、レインから受け取った料理をテーブルの上に置きイスに腰掛けた。

しばらくして、コーヒーを持って戻ってきたレインもイスに腰掛けた。

 

「それじゃ、いただきます」

 

「いただきます」

 

「うん、上手く出来てた」

 

「ほんと、美味しいなレインの作ったご飯は」

 

「や、やめてよもう~」

 

レインは、頬を紅くしながら朝食を食べた。

朝食を食べ終わった後、昼は外で食べるため昼食の支度を二人でした。

支度し終わったあと、俺達は。

 

「それじゃ、行こうか」

 

「う、うん」

 

「大丈夫だよレイン、何かあったら守ってあげるから」

 

「キリト君」

 

「あ、でも昼にいなかったら夜にも行こうな」

 

「え、え~」

 

準備をして幽霊が出ると言われる場所に向かった。

道中。

 

「ねぇ、キリト君」

 

「ん?」

 

「肩車して」

 

「え、肩車?」

 

「うん」

 

「わ、わかった」

 

俺は、その場にしゃがみこみその上にレインが乗った。

 

「よいしょ」

 

「キリト君、何かおじさんみたいだよ♪」

 

「う、いいだろ。て言うか見えるんじゃないのか?」

 

「見えるって何が?」

 

「そ、それはその・・・・・・・」

 

「ん?・・・・・・・・はっ!?」

 

レインは、俺が言いたいことに気づいたようでスカートの裾を抑えた。

 

「キ~リ~トく~ん。何処を見ているのかな~」

 

「い、いや、見えてないぞ‼。と言うか見えないからなレイン‼」

 

「見えてないってことは見えてたら見るつもりだったのかな」

 

「違うから‼」

 

「ふ、ふふ。わかってるよ、キリト君がそんな人じゃないってことは。でも、もしもキリト君が見たいなら・・・・・・」

 

「はい!?」

 

「な、なんでもないよ」

 

そんな会話をしながら進んで行くと目的地に近づいていった。

 

「レイン、ここら辺だ」 

 

俺は、肩車から降りたレインに言った。

 

「ねぇ、キリト君。その幽霊ってどんなのなの?」

 

「確か、白い服を着た幼い少女の姿だって言ってたな」

 

「え。ね、ねぇキリト君、それってもしかしてアレかな」  

「え?」

 

俺は、レインが指差す方を見た。

見ると木々の奥に白い服を着た少女の姿が見えた。

 

「う、嘘だろ・・・・・」

 

少女は、動かず此方をジッと見ていた。

俺が少女の方に行こうとすると、少女の体が、ふらり、と揺れ地面に崩れ落ちた。"どさり"と言う音がかすかに耳に届いてきた。

 

「あれは、・・・・・・幽霊なんかじゃないぞ!」

 

叫ぶや否や俺は少女の方に走り出した。

 

「え、キ、キリト君!」

 

置き去りにされたレインは、慌てて俺の後を追いかけてきた。

少女の元に行くと俺はすぐに抱き起こした。まだ意識は戻ってなく長い睫毛に縁どられた瞼は閉じられ、両腕は力なく体の脇に投げ出されている。

近くから見ると白い服はワンピースだった。

よくみてもどこも透けておらずどう見ても幽霊では無かった。

 

「キリト君、その子大丈夫?」

 

「うーん・・・・・わからん。この世界じゃ息とかしないしな~。心臓も動かないし」

 

「でも、消滅していないって事は・・・・生きてる、ってことだよね」

 

「ああ、だけど」

 

俺は違和感を覚えていた。

 

「だけど、どうしたの?」

 

俺は、レインに違和感を話した。

 

「・・・・・・カーソルが出ない」

 

「あ、確かに」

 

「それに、こうして触れらるって事は、幽霊じゃないと思うけど」

 

「ん~。兎に角一旦この子が目を覚ますまでウチで保護しとこうか。放っておけないし」

 

「そうだな」

 

俺は、少女を抱えあげレインは辺りを見渡した。だが周囲には朽ちかけた大きな切り株が1つのあるくらいで、それ以外は特に何もなく、少女がこの場所にいた理由のような物は見つからなかった。

 

急いで家に戻った俺達は、未だに目を覚まさない少女を2階の寝室にあるベットに横たわらせた。

 

「NPCじゃないのは確かだね」

 

「ああ、NPCだったらこうして家の中に入れられないし動かせないからな」

 

「どうする?」

 

「とにかく、目を覚ましたらこの子に事情を聞こう。なぜあの場所にいたのか」

 

「そうだね」

 

俺とレインは、少女をベットの上に残し一階に降りていった。

一階に降りた、俺達は家の中で外で食べるはずの昼食を食べ、午後は新聞や人探しの情報を探ってみたがたいして情報は得られなかった。

度々レインが上に行き少女の様子を確認したがまだ目を覚まさないらしかった。

日が暮れて夕飯を食べた後も調べたが。

 

「どうだ、レイン?」

 

「こっちもダメ。あの子の情報がないよ」

 

「こっちもだ」

 

「「はあ~」」

 

 

互いにため息をつき新聞等をテーブルの上に置いた。

 

「今日はもう寝るか」

 

「そうだね。・・・・・・あ、でもわたしのベットあの子が寝ていた」

 

「それなら、今日も一緒に寝るか?」

 

「え、いいの?」

 

「ああ」

 

「それじゃお願いね」

 

2階に移動した俺達は、昨日と同じようにしてベットに入った。

 

「あの子明日には目が覚めるといいね」

 

「そうだな」

 

「それじゃおやすみなさい」

 

「ああ、おやすみ」

 

俺は、眼を閉じると"何故あんなところに少女がいたのか"と思ったが睡魔がやって来てそのまま眠りに落ちていった。




次回は、ユイが目覚めます。

アンケート、感想があったら送って下さい。


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SAO編 第36話〈目覚めた少女〉

ユイ好きの人お待たせしました。
今回はユイ、ちゃんと目覚めます。

アンケート募集期間残り僅かです!

誤字脱字があったらごめんなさい。


~レインside~

 

「♪♪♪♪♪」

 

"アレこの音楽って確かわたしが何時も目覚ましにセットしているやつじゃ?"

 

わたしは耳に届いてきた音に目が覚めた。

 

「ん、ん~。あれ?」

 

"何で本来ならわたしだけに聞こえるはずの音楽が耳から聞こえるんだろう?何時も耳からじゃなく頭に直接聞こえるのに"

 

わたしは不思議に思い首を傾げてみると何時もわたしが使っている隣のベットからハミング音が聴こえた。

 

"ハミング?"

 

隣のベットを見てみると黒髪の少女が瞼を閉じたまま、わたしの起床アラームを一拍たりともずれずにメロディーを口ずさんでいた。

 

「え、ちょ、き、キリト君、キリト君!」

 

わたしは、急いですぐ横に寝ているキリト君に呼び掛けた。

 

「・・・・・おはよう、レイン。どうかした?」

 

~レインside out~

 

寝ていると何故か慌てた様子のレインが俺を起こしているのが見え、まだ眠かったが慌てているようなので起きることにした。

 

「・・・・・おはよう、レイン。どうかした?」

 

「キリト君、アレ!」

 

「ん?」

 

俺は、レインの視線を追い掛けた。レインの視線の先は隣のベットにいる少女に向けていた。少女を見た俺は、すぐに眼を見張り急いで隣のベットに向かった。

 

「歌ってる・・・・・!?」

 

「う、うん・・・・・」

 

レインは、少女の体を軽く揺すりながら呼び掛けた。

 

「ね、起きて。眼を覚まして・・・・・」

 

すると少女の唇の動きが止まりハミングが鳴りやんだ。

やがて、長い睫毛がかすかに震え、ゆっくりと持ち上がった。濡れたような黒い瞳が、至近距離からまっすぐにレインの眼を見据えた。数度の瞬きに続き色の薄い唇が僅かに開かれた。

 

「あ・・・・う・・・・・・」

 

少女の声は、儚く美しい響きを伴わせた。

 

「よかった。目が覚めたんだね。自分がどうなったか、解るかな?」

 

少女は、しばらくしてからレインの質問に首を横に振って答えた。

 

「そうなんだ・・・・・・。それじゃ、お名前は?言えるかな?」

 

「・・・・な・・・・・・まえ・・・・。わた・・・・・・しの・・・・なまえ・・・・」

 

少女が首をかしげながらそう呟くと、艶やかな黒髪がひとすじ頬にかかった。

 

「ゆ・・・・・い。ゆい。・・・・それが・・・・わたしの・・・・なまえ」

 

「ユイちゃんか。いい名前だね。わたしはレインだよ。こっちの人はキリトだよ」

 

「れ・・・・・・りん。き・・・・・・と」

 

ユイと名乗った少女は、たどたどしく唇を動かし、切れ切れの音を発した。

 

「ユイちゃん。どうして第22層にいたの?お父さんやお母さんはどこかにいるの?」

 

「わかん・・・・ない・・・・。なん・・・・・にも、わかんない・・・・」

 

ユイは、眼を伏せ首を、ふるふると横に動かし言った。

 

俺達は、そのあと二階から一階に降りた。ユイは、イスに座ってレインが入れた温かく甘いミルクを少しずつ飲んでいた。

俺とレインは、それを反対側のイスに腰掛けて見ていた。

 

「・・・・・ねぇ、キリト君。ユイちゃんってやっぱり・・・」

 

「・・・・ああ、記憶喪失だろうな・・・・・くっ!こんなの酷すぎだろ」

 

「キリト君・・・・・」

 

俺は、そのあとユイの隣のイスに移動し明るい声で話しかけた。

 

「やぁ、ユイちゃん。・・・・・君の事、ユイ、って呼んでもいいかな?」

 

カップから顔をあげたユイは、頷いた。

 

「そうか。じゃあ、ユイも俺の事、キリトって呼んでくれ」

 

「き・・・・・と」

 

「キリト、だよ。き、り、と」

 

「・・・・・・・きいと」

 

「ちょっと難しかったかな。ユイが、言いやすい呼び方でいいよ」

 

ユイは、再び考え込んだ。

やがて長時間考えたユイは、俺の顔をみて、おそるおそる、と言うふうに口を開いた。

 

「・・・・・パパ」

 

次いでユイはレインの顔をみて言った。

 

「れりんは・・・・・ママ」

 

「うん。うん。そうだよ・・・・・ママだよ、ユイちゃん」

 

レインは、ユイを抱き締めてそう言った。

 

「ママ!」

 

ユイも嬉しそうにレインを抱き締めた。

俺は、その光景に目に涙を浮かべて"よかった"と思っていた。

しばらくしてユイは、再び眠くなったのか椅子の上で寝はじめてしまった。俺とレインは、それを見ながらこれからの事を相談していた。

 

「とりあえず、出来ることをしよう。ユイが起きたらはじまりの街に行って、この子の親とか兄弟がいないか探しに行こう」

 

「そうだね。でも、キリト君、もし・・・・・・・もしこの子が一人のままだったら・・・・・・」

 

「ああ、その時はもちろんだ」

 

ユイは、お昼前には眼を覚ました。

昼食のときユイはずっと俺の、激辛サンドイッチを興味深そうに眺めていて俺とレインを慌てさせた。

 

「ユイ、これはな、すっごく辛いぞ」

 

「う~・・・・・。パパとおんなじがいい」

 

「そうか。そこまでの覚悟なら俺は止めん。何事も経験だ」

 

「え、ちょ、キリト君!?」

 

レインは、慌てて静止に入るがすでにユイは、俺が渡したサンドイッチをためらわず小さな口でがぶりと噛みついた。

俺とレインが、固唾をのんで見守るなかユイは、難しい顔で口をモグモグさせていた。

 

「ゆ、ユイちゃん。大丈夫?」

 

「おいしい」

 

「おお、中々根性のある奴だ」

 

俺は、笑いながらユイの頭を撫でて言った。

 

「よし。晩飯は激辛フルコースに挑戦しような」

 

「うん♪」

 

「そんなわけで晩飯は激辛フルコースで頼むぞ、レイン」

 

「え、う、うん。・・・・・ってそんなの作るわけないでしょうキリト君!あんまり調子に乗らないでよ、もう。ユイちゃん、こっちの辛くない方を食べようね」

 

結局、残り全てのサンドイッチを平らげてしまい、満足そうにユイは、レインが入れたミルクティーを飲んでいた。

 

「ユイちゃん。午後はちょっとお出かけしようか」

 

「おでかけ?」

 

「ユイの友達を探しに行くんだ」

 

「ともだち・・・・・・って、なに?」

 

「う、う~ん。・・・・・友達ってのはユイの事を助けてくれる人の事だよ」

 

「なるほど~」

 

「さ、準備しよ。ユイちゃん」

 

「うん♪」

 

「あ、ユイ。ウインドウって開けるか?」

 

「?」

 

「こうするんだ」

 

俺は、レインがユイに合う服を見繕っている最中ウインドウが開けるか聞いていた。

だが、わからないと言うふうにユイは首をかしげた。

俺は、それに右手を振ってウインドウを表示する、と言うことを教えていた。

ユイは、俺がやった通り右手を振っていたがウインドウは出ず、やけになって今度は左手を振ると、突如としてウインドウが表示された。

 

「でた♪」

 

「ユイ、ちょっとごめんな」

 

俺は、ユイの手を借りて勘で可視モードのあるボタンあたりをクリックした。

すると、ウインドウが可視モードになり俺にも見ることが出来るようになった。可視化ウインドウを見て俺は、驚いた。

 

「な、こ、これは一体・・・・」

 

「ん、どうしたの、キリト君?」

 

「レイン、これを見てくれ」

 

俺は、やって来たレインにユイのウインドウを見せた。

 

「キリト君、これって!?」

 

本来ならば、他人のウインドウを見ることはマナー違反なのだがこれはそうとも言ってられなかった。

何故なら、そこには本来あるはずのHPバーやEXPバー、レベル表示すらなくあるのは《YuiーMHCP001》という奇怪なネーム表示と装備フィギュア、《アイテム》《オプション》だけだった。

 

「これも、システムのバグ、なのかな?・・・・・」

 

「・・・・・いや、どっちかと言うと始めからこんな感じだと見えるな」

 

「確かにね。う~ん・・・・・・とにかく、ユイちゃんの準備をしちゃおう。これは、あとで考える必要があるね」

 

「ああ、そうだな」

 

レインは、ユイの元に行き手に持っていたセーターをユイのアイテム表示乱に置くと、アイテムはウインドウに収納された。

次いで、セーターの名前をアイテム欄からドラッグし、装備フィギュアへとドロップさせた。直後、鈴のような効果音とともにユイの体に淡いピンク色のセーターがオブジェクト化された。

 

「わあー」

 

ユイは、顔を輝かせながら両手を広げ自分の体を見下ろした。

レインは、そこから更に同系色のスカートに黒いタイツ、紅い靴をユイに表示させ、元々着ていた白いワンピースをアイテム欄に戻しウインドウを消去した。

 

「それじゃ、行こうか。あ、レイン一応武装の準備もしといてくれ。あそこは『軍』のテリトリーだからな」

 

「あ、そう言えばそうだったね。大丈夫だよ」

 

「よし、行こう」

 

俺達は、家をあとにし右に俺、左にレイン、真ん中にユイといった感じで手を繋いで第1層はじまりの街に向かった。




次回は、『軍』が相手!?

アンケート、感想等お待ちしてます!


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SAO編 第37話〈『軍』〉

お待たせしました。
新刊の『デート・ア・ライブ』を読んでいたら遅くなってしまいました。

誤字脱字があったらごめんなさい。


第1層はじまりの街

 

数ヶ月ぶりに、はじまりの街に降り立った俺達は転移門から出て辺りを見渡した。

 

「・・・・・・ここから、全てが始まったんだよな」

 

「うん・・・・・」

 

俺とレインは、デスゲームが開始された2年前のあの日を思い出していた。

転移門の奥には、黒い宮殿のような建物、黒鉄宮がある。それは、本来ならばHPが0になり死んだプレイヤーの蘇生する場所でもあった。だが今そこにあるのは、約一万人のプレイヤーの名前が刻まれた石碑が鎮座している。

俺とレインは、黒鉄宮を一瞥し周りを見た。本来ならばプレイヤーが沢山いて賑わっているのだが、今はアインクラッド最大の街であるはずなのにプレイヤーの姿が全く無かった。

 

「・・・・・・全然プレイヤーがいないな」

 

「うん。たしか今、はじまりの街にいるプレイヤーの数って約二千人くらいだよね」

 

「ああ・・・・・・・そのはずだけど」

 

「・・・・・なんでいないんだろう?」

 

「とりあえず行こう」

 

「そうだね」

 

俺達は、ユイの手を取り事前に調べた東7区にある教会へと向かった。

何故、教会に行くのかと言うと。そこには小さな子供が沢山保護されているらしいからだ。それに、もしかしたらユイの親の情報が手にはいるかも知れないからだ。

教会へ向かっている、道中。

 

「あれ、キリト君、レインちゃん?」

 

「あ、ほんとだ。おーい、キリト~、レイン~」

 

俺達の、名が呼ばれたのでそこに視線を向けると。

 

「え、なんでアスナ達がいるんだ!?」

 

「あれ、ほんとだ。ヤッホー」

 

俺達の親友のアスナ、ユウキ、ラン、ラム、リーザの5人がいた。

 

「こんなところで5人揃ってどうしたんだ?」

 

「実は黒鉄宮に用事があって」

 

「なるほど・・・・・」

 

俺は、ランの返答に何となく分かったような気がした。

恐らく、血盟騎士団の亡くなったプレイヤーの慰霊でもしたのだろう。

そう考えていると、不意にアスナが。

 

「ところで、キリト君とレインちゃんはどうしてここに?それに・・・・・手を繋いでいるその娘は一体?」

 

アスナの言葉にユウキ達も視線を向けてきた。

 

「あー、この娘は俺とレインの娘でユイ名前だ」

 

「こんにちは・・・・・」

 

俺が言いユイが挨拶をするとアスナ達は口を開いたまま驚きの表情を浮かべ。

 

「「「「「む、むすめ~~!?」」」」」

 

同時に叫んだ。 

 

「ちょ、キリト君。どういうことよ!」

 

「キリト、僕も聞きたいよ!」

 

「レインさん、本当にこの娘は・・・・・」

 

「キリト、レインさん、流石に驚きです」

 

「キリトとレインさんが・・・・・」

 

「あー、何か誤解しているようだから言うけど。この娘、ラムの話にあった幽霊の正体だぞ」

 

「「「「「はい!?」」」」」

 

「それに、今ユイちゃん記憶がないみたいなんだよ」

 

「「「記憶・・・・・」」

 

「「・・・・・喪失」」

 

「ああ、だから一応今は俺とレインがユイの親代わりって事だ」

 

「「「「「なるほど~」」」」」

 

アスナ達は、俺とレインの説明に納得したように頷いた。

 

「それなら、私も協力するよ。二人とも」

 

「「え?いいの(か)」」

 

「うん。だって可哀想だもの」

 

「もちろん僕も手伝うよ♪」

 

「私もです」

 

「私もですよ。キリト、レインさん」

 

「微力ながらお手伝いさせていただきます。キリト、レインさん」

 

「ユウキ、ラン、ラム、リーザ・・・・・・ありがとう。助かるよ」

 

俺とレインは、アスナ達の言葉に嬉しくなった。

そして、このあと俺達はアスナ達も連れ添って件の教会へと向かった。

教会に付き扉をノックした。

 

「すみませーん。どなたかいませんか~?」

 

だが、返事が無かった。

 

「あれ、おかしいなここで合っているはずなんだけど」

 

「「キリト(君)」」

 

「ん、どうした?レイン、ユウキ」

 

「うん。中にプレイヤーはいるよ。索敵スキルで調べたから間違いないよ」

 

「レインの言うとおりだよキリト。下に10人・・・・・2階には・・・・・15人くらいいるかな」

 

俺は、レインとユウキの言った通り索敵スキルを使用し調べた。中はユイが言った通りの感じだった。同時に、アスナ達も索敵スキルを使用したようで首を縦に振っていた。

俺は、再度ノックし中の人を呼び掛けた。

 

「あの、すみませーん。人を探してるんですが!」

 

今度は少し大きめの声で呼び掛けた。すると、右の扉が少し開き腰に短剣を装備した一人の女性プレイヤーが顔を覗かせた。

 

「・・・・・本当に『軍』の微税兵じゃ無いんですか?」

 

「ええ、わたし達は上層から来た者です。ここに、伺ったのは人を探しているからです」

 

「そうなんですか。・・・・・どうぞ、中へ」

 

女性はそう言うと扉を大きく開き俺達を中に招き入れた。

中に入ると中は広く幾つもの扉が存在した。

 

「自己紹介が遅れてすみません。私はサーシャです」

 

「あ、俺はキリトです。で、こっちからレイン、アスナ、ユウキ、ラン、ラム、リーザです。そしてこの娘がユイです」

 

俺達は、サーシャさんにペコリと頭を下げ自己紹介をした。

 

「それで、人を探していると伺いましたが」

 

「はい。実は上層でこの娘を保護したんですが、この娘記憶喪失みたいなんです。それでもしかしたら、此所にこの娘の知り合いとかいないかと思いまして」

 

「そうなんですか」

 

サーシャさんは、視線をユイに向けた。

すると、サーシャの背後のドアから。

 

「上から!?ってことは本物の剣士なのかよ!?」

 

甲高い、少年めいいた叫び声と共に数人の子供が飛び出てきた。その直後、2階やそれ以外の扉から子供が駆け出してサーシャさんの、両脇にズラリと並んだ。

 

「こら、あなた達、お客様ですよ!それに、隠れてなさいって言ったじゃない!」

 

だが、サーシャさんの言葉には誰一人と従わなかった。

すると、一人の少年が。

 

「なあなあ、あんた達上から来たんだろ?どんな武器をもってんだよ?」

 

どうやら、俺達が武装してないため上層から来たとはにわかに信じられなかったらしい。

 

「え、え~と、それは・・・・・」

 

「いいんじゃないキリト君。見せてあげたら」

 

「そうですね。こんなに好機の眼を向けられたら見せてあげないわけにはいかないですよ」

 

「そうだな」

 

レインとリーザの提案に頷き俺達は、幾つかの武器をオブジェクト化させ傍らの長机に乗せた。

オブジェクト化した武器を長机に乗せると子供達は、歓声を上げて周囲に群がり、次々と片手剣や細剣、両手剣、槍、刀、等を手に出しては「重ーい」「かっこいい」と言って歓声を上げていた。まあ、街区圏内で武器を振り回してもダメージを受けることはないから大丈夫だとは思うが。

 

「すみません、ほんとに・・・・・・」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「・・・・あの、こちらへどうぞ。今お茶の準備をしますので」

 

俺達は、サーシャさんの案内のもと奥の部屋に通された。

俺達は、サーシャさんに振る舞われたお茶を飲みユイのことを聞いてみた。

 

「ごめんなさい。少なくとも私の知っているなかではこのこの娘のことはなにも・・・・・恐らく、はじまりの街にはいなかったと思います」

 

「そうですか」

 

「はい。お力になれずすみません」

 

「いえ」

 

「ところで、あの子達はサーシャさんが育てているんですか?」

 

アスナが、開いている扉の奥にいる子供達を見て聞いた。

 

「ええ、一応そうですね。ここでは総勢20人程の小中学生がいます。わたし、毎日はじまりの街を回って困っている子がいるか見て回っているんです」

 

「そうなんですか。・・・・・あの、立ち入った話をするんですけどここでの毎日の生活費って?」

 

「あ、それは、私の他にも、ここを守ろうとしてくれている年長の子が何人かいてその子達が街周辺のモンスターを狩ってくれているので食事代くらいはなんとかなるんですけど・・・・・最近目をつけられちゃって・・・・・」

 

「・・・・・目?誰に、です?」

 

ランが、聞こうとしたそのとき"バンッ"と大きな音がして血相を抱えた子供達が数人雪崩れ込んできた。

 

「先生!サーシャ先生!大変だ‼」

 

「こら、お客様に失礼じゃないの!」

 

「それどころじゃないよ‼」

 

サーシャさんは言ってきた少年が目に涙を浮かべ余程の事だとわかり聞いた。

 

「何があったの!」

 

「ギン兄ィとアミ姉ェ達が、『軍』のやつらに捕まっちゃったんだよ‼」

 

「なんですって!場所は!?」

 

サーシャさんは、先程とは別人のように毅然とした態度で立ち上がり少年に聞いた。

 

「東5区の道具屋裏の空き地にギン兄ィ達で東3区の路地裏の空き地にアミ姉ェ達がいる!『軍』がそれぞれ10人くらいで通路をブロックしてる。コッタとヨミだけが逃げられたんだ。今二人は休んでいる」

 

「解った、すぐ行くわ。けど・・・・・」

 

同じ東エリアだとしても5区と3区では距離が離れているためすぐに行けるとしてもどちらか片方だけなのだ。

俺は、レイン達の顔を見て頷いた。

 

「サーシャさん、私達も手伝います」

 

「ありがとう、お気持ちに甘えさせていただきます」

 

「それでは、サーシャさんは東5区の子供達のところに行ってください。東3区のところは私達が相手します。

キリト君、レインちゃんはサーシャさんと一緒に、ラム君とリーザちゃんは私と一緒に3区にユウキとランさんはここで子供達の保護をお願い」

 

俺達は、アスナの役割分担に頷いた。

 

「「「「「「了解!」」」」」」

 

俺達は、教会を出てそれぞれの役割の元走っていった。

後ろから子供達が数人追いかけてきたけど構わずに走った。

俺とレイン、サーシャさんは東5区へ向け裏道を使い駆け抜けて進むうち、前方に細い路地を塞ぐ一団が目に入った。最低でも10人はいるだろう。灰緑と黒鉄色で統一された装備は、『軍』のものだ。

路地に入ると気付いた『軍』のプレイヤーたちが振り向き、にやりと嫌な笑みを浮かべた。

 

「おっ、保母さんの登場だぜ」

 

「・・・・子供達を返してください」

 

「人聞きの悪いこと言うなって。税金さえ払ってくれたら解放してやるよ」

 

「ギン!ケイン!ミナ‼そこにいるの!?」

 

サーシャさんは、奥にいるであろう子供達に呼び掛けると、怯えきった少女の声がすぐに聞こえた。

 

先生!先生!・・・・・助けて!」

 

「お金なんていいから、全部渡してしまいなさい!」

 

「先生・・・・それじゃダメなんだ・・・・!」

 

今度は、絞り出すような少年の声がした。

すると、『軍』のプレイヤー達が下卑たな笑いを浮かべて言った。

 

「あんたら、ずいぶん税金を滞納しているからなぁ・・・・・金だけじゃなく装備もおいていってもらわないとなァー」

 

俺とレインは、その言葉で奥で何が行われているのか咄嗟に察した。

それに、俺とレインは殺意にもにた憤りを感じた。

サーシャさんも同じ推測に至ったらしく、腰に装備してある短剣に手を添えて詰め寄った。

 

「そこを・・・・・そこをどきなさい!!さもないと・・・」

 

「さもないとなんだい、保母先生?あんたが代わりに税金を払うかい?」

 

にやにや笑うプレイヤーたちは、全く動こうとする素振りを見せない。

俺とレインは顔を見合わせて言った。

 

「レイン・・・・」

 

「うん。行こうキリト君」

 

「ああ」

 

ユイをしっかりと抱き抱え敏捷力と筋力補正を全開にして跳躍した俺達は、呆然とする『軍』とサーシャの頭上を軽々と飛び越え空き地に降り立ち子供達の前に立った。

 

「もう大丈夫だよ。装備を元にもどして」

 

レインは、簡素なインナー姿の子供達に微笑みながら言った。

眼を丸くしていた子供達はすぐにコクりと頷くと、ウインドウを操作し始めた。

すると。

 

「おい・・・・・オイオイオイ‼」

 

我に返った『軍』のプレイヤーの一人がわめき声をあげた。

 

「なんだお前らは‼『軍』の任務を妨害すんのか‼」

 

「まあ、待て」

 

他の『軍』の奴とは違い重装備のプレイヤーが進み出てきた。どうやらこの集団のリーダー格らしい

 

「あんたら見ない顔だけど、解放軍に楯突く意味わかってんだろうな?それともなんだ《圏外》行くか《圏外》?」

 

レインは、子供達のこの姿を見て流石に我慢の限界なのだろう。ぎりっ、と歯を食い縛りウインドウを操作して『キャバルリーナイト』『トワイライト・ラグナロク』を装備した。

 

「キリト君、ユイちゃん達をお願い」

 

「解った。・・・・レイン」

 

「なに?」

 

「思いっきりやれ」

 

「うん!」

 

レインは愛剣の二振りを抜き出し構えた。

 

「ん、なんだぁやるって・・・・ぐほっ」

 

レインは、何かを言っているリーダー格のプレイヤーに思いっきり《多刀流》上位ソードスキル《クリア・コンパッション》16連撃を繰り出した。

 

「そんなに戦闘を望むなら今ここでやってあげるよ。それと知っているでしょ。圏内戦闘は相手にダメージを与えないけどその代わり・・・・」

 

レインは更に《多刀流》最上位ソードスキル《サウザンド・レイン》を繰り出した。

だが当たる直前で圏内防止の効果が発動された。

 

「・・・・・圏内戦闘は、相手にダメージではなく恐怖を刻み込むってことを」

 

「お、お前らっ・・・・見てないで・・・・なんとかしろっ・・・・‼」

 

その声に、我に返った『軍』メンバーは、次々と武器を抜き襲いかかってきたが。

レインは、手加減なしで《多刀流》スキルと片手剣スキルを駆使した。

その結果。

 

「あー、レイン」

 

「ん?なにキリト君?」

 

「思いっきりやれ、とは言ったが・・・・・・ちょっと、やり過ぎないか?」

 

俺は、レインの回りを見て言った。

 

「え~、そうかな~」

 

レインの周りには襲いかかってきた『軍』のプレイヤーが気絶していた。

レインは、『軍』の連中の攻撃に一度も当たることなく一方的に攻撃していた。

 

「す、スゲエよ姉ちゃん。あんなの見たことないよ」

 

「あはははっ。それより、あなた達は大丈夫?」

 

レインは、苦笑いを浮かべて聞いた。

 

「大丈夫だよ!・・・・・・サーシャ先生!」

 

子供達はレインに元気よく言うとサーシャさんの元に駆けて行った。

その時。

 

「みんなの・・・・・みんなの、こころが」

 

先程まで俺の腕の中で眠っていたユイが眼を開けて宙に視線を向け、右手を伸ばしていた。

それに気付き俺達は、ユイの顔をみた。

 

「ユイ!どうしたんだ、ユイ!」

 

「ユイちゃん!どうしたの!」

 

「・・・・・あたし・・・・・あたし・・・・」

 

ユイは眉を寄せ、俯いた。

 

「あたし、ここには・・・・・・居なかった・・・・。ずっと、ひとりで、くらいとこに居た・・・・・」

 

ユイは、何かを思い出そうとするかのように顔をしかめ、唇を噛む。

 

「うあ・・・・あ・・・・・あああ‼」

 

突如ユイは顔を仰け反り、細い喉から高い悲鳴が迸った。

それは、SAO内で初めて聞くノイズじみた音。その音が俺とレインの耳に響いた。その直後、ユイの硬直した体のあちこちが、崩壊するかのように激しく振動した。

 

「ゆ・・・・・ユイちゃん・・・・!」

 

「ママ、パパ・・・・・こわい・・・・ママ、パパ・・・・‼」

 

数秒後、怪現象は収まり、硬直したユイの体から力が抜けまた眠りに落ちた。

 

「なんだよ・・・・今の・・・」

 

「なに・・・・・今の・・・」

 

俺とレイン、訳が解らないままユイを抱えてサーシャさんの方に行き子供達と教会に戻っていった。

 

 

キリト達が東5区で『軍』の相手と戦っている頃

 

東3区

 

~アスナside~

 

私は今、子供達がいる東3区路地裏の空き地に向かっていた。

 

「アスナさん!アレじゃありませんか」

 

私は、リーザちゃんの視線の先に視線を向けると確かに『軍』のプレイヤーが十数人いた。

 

「ラムさん、リーザちゃん武器の装備を・・・・」

 

「「了解!」」

 

私はウインドウから細剣『ランベントライト』をラムさんは刀『朧月』をリーザちゃんは槍『フェイタルスピア』を装備した。

 

「行くわよ!」

 

「「はい‼」」

 

私達は、『軍』の連中を飛び越えて子供達の前に立った。

 

「あなた達大丈夫?サーシャさんの代わりに来たからもう安心よ」

 

私は子供達に優しく言った。

 

「は、はい。ありがとうございます。あのサーシャ先生は?」

 

「サーシャさんは、もうひとつの方に向かっているわ。そっちの方も安心して私達の友達が一緒にいるから」 

 

「はい」

 

「さてと」

 

私は目の前にいる『軍』のプレイヤー達をみた。

 

「あなた達!こんな子供相手に一体どういうつもりなの!」

 

「おい、あんた誰だよ。そいつらの保母さんじゃねぇよな。部外者は引っ込んでろよ」

 

「「あなたね!」」

 

ラムさんとリーザちゃんは、私が侮辱されたのと同時に子供達の姿を見てかなり殺気立っていた。

何故なら私達が来るまで子供達は、防具を全て解除し簡素なインナーのみだったからだ。もちろん私とてその姿を目の当たりにして平気でいられるわけがない。

 

「ラムさん、リーザちゃん」

 

「「はい」」

 

「ん、なんだよ。邪魔するなら圏外に行ってやるか?んんー。どうな・・・・ぐっ」

 

『軍』のプレイヤーの言葉が途切れた理由は。

 

「うるさいよ」

 

ラムさんが愛刀『朧月』を抜刀し切りつけたからだ。まあ、ダメージは発生しないが恐怖は味わうことになるが。

 

「なにしやがるてめェ!」

 

「なにしやがる、じゃないですよ。あの子達が受けた屈辱あなた方に返させていただきます」

 

リーザちゃんは愛槍『フェイタルスピア』を突きだして言った。

 

「てめェら解放軍に楯突いたこと思い知らせてやる!」

 

その言葉に周囲にいた『軍』のプレイヤーが私達を囲んだ。

私は細剣『ランベントライト』を抜き出し構えた。

 

「お前らやっちまえ!」

 

その声とともに『軍』の連中が私達に襲いかかってきた。

 

「ラムさん、リーザちゃん」

 

「「はい」」

 

「私達の力見せてあげましょう」

 

「「はい!」」

 

私達は襲いかかってきた『軍』のプレイヤーを一人残さず気絶させた。

 

「ふぅ~。お疲れさまラムさん、リーザちゃん」

 

「大丈夫です」

 

「はい。それよりアスナさん、この子達と一緒に教会に戻りましょう」

 

「そうね。みんないるかな?」

 

私が子供達に聞くと。

 

「はい。みんないます」

 

と返ってきた。

 

「うん。それじゃ戻りましょうか」

 

私達は、子供達を守るような形で教会のある7区に戻っていった。

 

~アスナside out~




ラムとリーザの武器登場!

アンケート、感想、お待ちしてまーす。


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SAO編 第38話〈黒鉄宮地下迷宮〉

お気に入り数140件超えました。ありがとうございます。

それではどうぞ。

誤字脱字があったらごめんなさい。


『軍』の徴税部隊と闘った俺達はそのまま教会に泊まることにした。理由はまた徴税部隊がやって来る可能性と、ユイの昏睡状態にあった。

ユイは、あの後あの奇妙な悲鳴をあげてから一度も目を覚まさず眠っていた。その翌日、ユイは昨日の事など覚えていないかのような元気になって目覚めていた。

そして・・・・・。

 

「ミナ、パンひとつ取って!」

 

「余所見してるとこぼすよ!」

 

「あーっ、先生!ジンが目玉焼き取ったー!」

 

「かわりにニンジンやったろー!」

 

俺達は眼の前で行われる朝食風景に、呆然とした。

 

「これは・・・・・すごいな・・・・・」

 

「うん・・・・・」

 

「そうだね・・・・・」

 

「だね・・・・」

 

「「「ですね・・・・・」」」

 

俺達はそれに、それぞれ感想をのべた。

だけど俺達は、その風景に安堵を浮かべた。

 

「でもみんな元気だよ」

 

「そうですね。昨日あんなことあったと言うのに」

 

「ああ・・・・気にしないって感じだな、これは」

 

「ええ・・・・」

 

すると、一緒に座ってお茶を飲んでいたサーシャさんが。

 

「すみません。お客様なのに朝食の準備まで手伝ってもらっちゃって・・・・」

 

「いえ。昨日は私達も泊めてもらいましたから」

 

「そうですか。ありがとうございます」

 

「あのサーシャさん」

 

「はい。なんでしょう?」

 

「朝食って何時もこんな感じなんですか?」

 

俺は、サーシャさんに朝食の風景について聞いてみた。

するとサーシャさんは、苦笑いを浮かべながら答えてくれた。

 

「・・・・ええ。何時も静かにしなさいって言っているんですけどね・・・・」

 

「まあ、確かに・・・・・聞きそうにありませんものね、あの感じじゃ」

 

アスナは苦笑いを浮かべながら子供達の方を見てそう呟いた。

すると不意にレインが玄関の方を見ながら。

 

「ん?」

 

「どうしたレイン?」

 

「だれか来たみたい」

 

「「「「「「え?」」」」」」

 

レインがそう言うと同時に玄関の方から呼び出し音が聞こえた。

 

「お客様かしら?こんな時間に・・・・・ちょっと失礼しますね」

 

サーシャさんは俺達に断りを入れて玄関の方に向かった。

しばらくするとサーシャさんは一人の女性プレイヤーと共に戻って来た。

子供達は手を止めその女性プレイヤーを警戒しながら見ていた。

何故ならその女性が身に纏う服は濃緑色したものだったからだ。それはすなわち『軍』のプレイヤーだと言うことだ。するとサーシャさんは子供達の方を向き。

 

「みんな、この人は大丈夫よ。食事を続けなさい」

 

そう言った。

そう言うと流石に子供達から信頼を受けていることはあるという風に子供達はすぐに食事に戻った。

俺達のところに戻ってくるとサーシャさんは椅子を1つ追加し座った。

それと同時に女性プレイヤーも追加された椅子に腰かけた。

 

「お待たせしました。この方はユリエールさん、だそうです。何でもキリトさん達に用があるようなんですが」

 

「俺達に?」

 

俺達は訳が解らず首をかしげた。

するとユリエールさん、というかたが自己紹介をした。

 

「はじめまして、ユリエールと申します。ギルドALFに所属しています」

 

「「「「ALF?」」」」

 

レイン達はわからなかったそうでユリエールさんに聞いていた。

 

「ああ、すみません。《アインクラッド解放軍》の略称です。・・・・正式名称はどうも苦手で」

 

「はじめまして、俺はキリト。そしてレイン、この娘はユイです」

 

「はじめまして、私は血盟騎士団副団長アスナです。そしてこっちからユウキ、ランさん、ラムさん、リーザちゃんです」

 

俺達自分の名前をユリエールさんに教えた。

 

「《黒の剣士》に《紅の剣舞士》そしてKoBの・・・・・なるほど道理で連中が軽くあしらわれるわけだ」

 

連中、つまり昨日の徴税部隊の事だろう。

 

「もしかして昨日の事で何か言いに来たんですか?」

 

俺はユリエールさんに聞くと、彼女は眼をパチリとしたあと首を横に振った。

 

「いえそんな、とんでもありません。むしろお礼を言いたいぐらいです」

 

「「「「「お礼?」」」」

 

「何故です?」

 

俺達は、訳が解らずユリエールさんに聞くと。

 

「順を追って説明します。元々ギルドは『アインクラッド解放軍』と言う名前ではなかったんです。最初の名前はMTDという名前です。・・・・・・・・聞いたことありませんか?」

 

レイン達は聞いたことないのか首をかしげていた。

だが俺以外にとラムは知っていたらしく首を縦に振った。  

「『MMOトゥデイ』の略・・・・・・でしたよね」

 

「はい」

 

「確かギルドマスターの名前は・・・・・・シンカー」

 

俺がシンカーの名前を言うとユリエールさんは、悲しげな表情を浮かべた。

 

「ええ・・・・・・ですけど誤解しないでください。シンカーは今のギルドをはじめから作る気は無かったんです。彼の思想はここにいる子供たちや困っている人にアイテムを平等に分配し困っている人を無くす事だったんです」

 

「なるほど・・・・・ユリエールさん、サーシャさん」

 

「はい」

 

「なんでしょう」

 

「俺が知っている『軍』は昨日のような事はしないところでした。むしろ治安維持を積極的に行っていた。けど昨日のような恐喝はまるで・・・・犯罪者みたいでした。一体何時からああなったんですか」

 

俺は『軍』のプレイヤーをみて思っていたことを二人に聞いた。最初に口を開いたのはサーシャさんだった。

 

「確か・・・・・今から半年ほど前です。ああ言うのが始まったのは・・・・」

 

ユリエールさんはサーシャさんの言葉に頷いた。

 

「確かに今から半年ほど前から昨日のようなプレイヤーが出ました。そのようなプレイヤーは今や『軍』のほぼ全てを掌握しているキバオウ、という名のプレイヤーの傘下に所属しています」

 

ユリエールさんの言ったキバオウ、という名にラムとリーザ以外すぐに解ったようだ。

 

「もしかしてあのキバオウ、か?」

 

「そうじゃないかな」

 

キバオウは、第1層ボス攻略戦で起こった件を強く俺を非難して《ビーター》という名を着けさせた張本人だからだ。

 

「彼は、シンカーが放任主義なのをいいことに、同調する幹部プレイヤーたちと共に体制の強化を打ち出して、ギルド名をアインクラッド解放軍に変更させました。彼の傘下プレイヤーは更に調子に乗り昨日のような恐喝紛いの行為すら始めました。ですけどキバオウ派にとて弱みはありました。それは、資材の蓄積だけにうつつを抜かし、ゲーム攻略をないがしろにし続けたことです。そして彼は末端のプレイヤー達の不満を抑えるためつい最近、キバオウは無謀な事をし始めました」

 

「それってもしかして」

 

俺は脳裏にあることが浮かんだ。

 

「はい。予想している通りだと思いますが、彼は配下の中で、最もハイレベルのプレイヤー十数人による攻略パーティを組み、最前線のボスを攻略するという事を行ったんです。ですが、それはあまりにも無謀な事だったんです。

いかにハイレベルと言っても、元々我々は攻略組の方々に比べれば力不足は否めません」

 

「・・・・・・コーバッツのことですね」

 

「はい。結局、パーティは敗退、隊長であるコーバッツは死亡を含め二名が死亡という最悪の結果となりました。

私達は、その無謀さにキバオウを強く糾弾しました。あと少しのところで彼を追放できるところまで行ったのですが・・・・・・」

 

そこでユリエールさんは高い鼻梁に皺を寄せ、唇を噛みお茶を少し飲んだ。

 

「三日前、追い詰められたキバオウはシンカーを罠に嵌めるという強行策に出たんです」

 

「罠・・・・ですか」

 

「はい。出口をダンジョンの奥深くに設定してある回廊結晶を使い、逆にシンカーを放逐したんです」

 

俺達は、その言葉に驚いた。

 

「でも、転移結晶を使えば・・・・・」

 

俺がユリエールさんに言うと。

 

「シンカーはその時転移結晶を持っていなかったんです。キバオウに『丸腰で話し合おう』と言われたみたいで」

 

「それじゃシンカーさんは・・・・・?」

 

「ええ。シンカーいまだにダンジョンにいます。それに加え一人ではダンジョンを突破するのは難しいみたいで・・・・幸いなことに《生命の碑》のシンカーの名前はまだ無事なので、どうやら安全地帯には辿り着けたようです。

それであなた方にお願いがあります」

 

ユリエールさんは頭を下げ言ってきた。

 

「私と一緒にシンカーを助けてくれないでしょうか。このままでは『軍』は完全にキバオウに掌握されてしまいます。どうかお願いします!シンカーを助けてください!」

 

俺達は、ユリエールさんのその言葉にお互いの顔を見て頷いた。

 

「頭を上げてくださいユリエールさん。もちろんシンカーさんを助けることに協力します」

 

俺がユリエールさんにそう言うとユリエールさんは顔を上げ言った。

 

「本当ですか。ありがとうございます!」

 

「わたしも手伝います。一緒にシンカーさんを助けましょう」

 

「私も手伝うわ」

 

「僕も」

 

「私もです」

 

「俺もですよ」

 

「もちろん私も」

 

俺を含めレイン、アスナ、ユウキ、ラン、ラム、リーザ全員手伝うことを決めた。

 

「ありがとうございます」

 

俺は、ユリエールさんにどこのダンジョンなのか聞くことにした。

 

「それでそのダンジョン、てのは・・・・何処に?」

 

「ここです」

 

「「「「「「「ここ?」」」」」」」

 

「はい。シンカーが閉じ込められているダンジョンがあるのはここ・・・・アインクラッド第1層、黒鉄宮の裏にあるところから行けるんです」

 

俺達はその言葉に驚いた。

何故なら今までそんな情報は聞いたことがないからだ。

 

「驚いたな、まさかこことは・・・・・」

 

「うん。βの時はあったの?」

 

「いや、βの時はそんなのは無かった」

 

「恐らく上層の解放と共に解放されるタイプのものなのだと思います」

 

「なるほどな」

 

「それで問題が1つ。そのダンジョンなんですが階層的に60層クラスだそうなんです。そして奥に巨大なボスモンスターを見たと・・・・・失礼ですがみなさんは・・・・」

 

「ん~、ま~、60層ぐらいなら」

 

「あそこのボスってどんなのだったけ?」

 

レインが聞くとアスナが答えた。

 

「確か、石像みたいなボス・・・・・だったはずだけど」

 

60層のボスは防御力が高く余り攻撃が通らなかったと記憶している。

すると今まで静かだったユイが。

 

「パパ」

 

「ん、どうしたユイ」

 

「私も一緒に行く!」

 

「「え?」」

 

「一緒に行く!」

 

「いや、あのなユイこれから俺達が行くところはとっても危険なんだぞ」

 

「いいの!パパとママと一緒に行くの!」

  

俺達がいくら言ってもユイは頑なに拒否した。

俺とレインは顔を見合わせて話した。

 

「どうする?」

 

「ん~。仕方ないから連れていこうか」

 

「いいのか?」

 

「わたしがユイちゃんと一緒にいるから大丈夫だよ」

 

「そうか。それじゃ、頼む」

 

俺は、ユイの顔を再びみて話した。

 

「ユイ・・・・ずっとママと一緒にいられるか?」

 

俺が聞くとユイは元気よく「うん!」と頷いた。

 

「よし、それじゃ一緒に行こうか」

 

「うん‼」

 

ユイは嬉しそうに俺に抱きついた。

その光景に俺とレインを除くもの達の眼が何故か"親馬鹿だ~"という風に語っていた。何故だろう?

 

「え~と。それじゃ今からでもよろしいでしょうか?」

 

ユリエールさんが、俺達に聞いてきた。

 

「ええ、大丈夫です」

 

「それじゃ、ダンジョンまでご案内します」

 

サーシャさんと子供たちに見送られながら教会を出た俺達は、ユリエールさんの先導のもと黒鉄宮裏に向かった。

ユイはきちんとレインの手を繋いでいた。

ダンジョンの手前で俺達は武器を装備した。ダンジョンへと入るとダンジョン特有の気配を皮膚に感じた。

 

「シンカーのいる場所はここから先・・・・・奥にある安全地帯にいます」

 

「わかりました。それじゃ、行きましょう」

 

「「「「「「了解」」」」」」

 

俺達はアスナの号令のもと武器を構え奥へと進んでいった。




次回はダンジョン探索

アンケート、感想お待ちしてます。


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SAO編 第39話〈迷宮に潜む運命〉

遅くなりほんとごめんなさい。
次回はもう少し早くするようにします。

誤字脱字があったらごめんなさい。


「うおおおおお!」

 

「とりゃあああ!」

 

「はあああああ!」

 

俺、ユウキ、ラムは装備している双剣、片手剣、刀で迫ってくるモンスターを駆逐していた。

その光景にユリエールさんは呆然としていた。

 

「・・・・・す、すごいですね」

 

「アハハハ」

 

ユリエールさんの感想にレインは苦笑いを浮かべて答えた。

すると、レインと手を繋いでいる娘のユイが。

 

「パパ、すごーい!」

 

「おう。パパもっと頑張っちゃうからな」

 

「うん!頑張って~」

 

それにレインはニコニコ笑顔を浮かべアスナ達は飽きれ顔を浮かべ顔には"親馬鹿ここに極まり"という風に語っていた。

ユリエールさんはどう反応していいのかわからずおろおろとしていた。

 

「その、すみません。前衛お任せしてしまって・・・・」

 

「いえ、大丈夫ですよ。あれは一種の病気みたいなものだから」

 

俺はレインのその言葉に振り返り反論した。

 

「おい、レイン。病気みたいなものってのは酷くないか」

 

「えーそうかな~。それじゃわたしと前衛替わる?」

 

「・・・・・もうちょっとだけ・・・」

 

「フフフ、わかってるよキリト君」

 

俺とレインの会話にアスナ達は生暖かい眼差しで見、ユリエールは唖然としていた。そしてユイは。

 

「わーい。パパもママ二人とも仲良しです♪」

 

と言っていた。

 

そしてアスナ達は。

 

「ねえ、二人とも交代する?」

 

アスナはユウキとラムに聞いた。

 

「えーまだいいよ~」

 

「俺は構いませんよ」

 

ユウキとラムがアスナ達に言うと。

 

「もう、貴女って娘は・・・・・」

 

ユウキの問いにランが呆れて言った。

 

「ラム君、私と交代する?」

 

「ああ、リーザ頼む」

 

ラムはリーザと替わるようだった。

ユウキの方は・・・・・。

 

「姉ちゃん。姉ちゃん前衛したい?」

 

「え?う~ん。私はどっちでもいいけど・・・・・アスナさんはどうですか?」

 

「私?どっちでもいいよ」

 

「それじゃ、私が出てもいいですか?」

 

「いいよ~」

 

どうやらユウキとランが交代するらしい。 

 

「それじゃあ姉ちゃん前衛よろしくね」

 

「わかったわ」

 

ユウキは潔くランと前衛を交代した。

俺はユウキに近づき。

 

「ユウキ、ランと代わって良かったのか?」

 

聞いてみた。

するとユウキはすぐに頷き。

 

「うん。ちょうどよかったよ、疲れていたしね」

 

「そうか」

 

その後も俺達は順調に進んで行った。

道中何故か《スカベンジトード》が多く出現した。

《スカベンジトード》はカエルみたいなモンスターで正直気持ち悪かった。女子勢も流石にそれとは戦わなかったため俺とラムが片付けた。

 

「大丈夫か?」

 

「う、うん。何とか」

 

「そうか。あ、レイン今度これ料理してくれよ」

 

「ん、どれ?」

 

俺はストレージから《スカベンジトードの肉》をオブジェクト化して見せた。

 

「ほら、これ」

 

俺が《スカベンジトードの肉》を見せると興味深そうに見た。

 

「へぇ。これ何のお肉?」

 

「これか。《スカベンジトードの肉》だ」

 

俺が言うとその瞬間辺りシーンと静かになった。

 

「《スカベンジトードの肉》これ?」

 

「おう!」

 

「・・・・・ニエ!」

 

俺がそう言うとレインは大きな声で何かを言うとウインドウを表示させ操作した。

 

「れ、レイン何やってんの?」

 

「え、何って《スカベンジトードの肉》を消したんだよ」

 

「はい!?」

 

俺はレインの言葉に慌ててウインドウを開きレインとの共通アイテムストレージをタップした。

 

「な、ない。なんで消しちゃうんだレイン!?」

 

「なんでって、嫌だもん。あれ、料理するの」

 

「そ、そんな~」

 

俺はレインの行動に落胆をしてしまった。

 

「あの、キリト。俺《スカベンジトードの肉》もっているけど・・・・・・「ラム君、余計なことしないでね」な、なんでもないです」

 

ラムが俺に言うとレインはラムの顔を見て顔はにこやかに言った。その言葉に流石のラムも怖じ気づいていた。

するとユリエールさんは我慢できないといった風にお腹を押さえ、くっくっと笑いを洩らした。

途端。

 

「お姉ちゃん、はじめて笑った!」

 

ユイは満面の笑みを浮かべて嬉しそうに叫んだ。

俺はユイを見て昨日のことを思い出した。

あのときユイは『軍』の連中を追い払い子供たちが笑顔を見せたところで発作が起きた。どうやらユイには他人の笑顔に人一倍敏感だと思われる。

俺がそう思考に振っていると。

 

「ユリエールさん、シンカーさんのところまで後どれくらいですか?」

 

アスナがユリエールさんに聞くとユリエールさんはマップを見てシンカーさんの場所を確認した。

 

「この奥です。そこに安全地帯があります。ずっとシンカーのマーカーが動いていないので恐らくそこにいるかと・・・・・」

 

「わかりました。さあ、先に進みましょう」

 

俺達は更に深部へと潜って行った。

階層を降りるごとにモンスターがアンデット系やレイス系などの幽霊型になっていったが対して難しくもなく簡単に進めた。

しばらくしていくと奥から白い光が見えた。

 

「あ、安全地帯です!」

 

「中に一人誰かいるぞ!カーソルは・・・・・グリーンだ!」

 

ランからの言葉に俺は索敵スキル使用し確認した。

俺が言うとユリエールさんは。

 

「シンカー!」

 

シンカーさんの名前をいい走って安全地帯に向かっていった。

 

「シンカーー!!」

 

ユリエールさんが走りながら呼ぶと安全地帯の入り口から若い一人の男性プレイヤーが顔を出し叫び返した。

 

「ユリエーーーール!!」

 

「シンカーーーー!!」

 

「ユリエール!来ちゃダメだそこは・・・その通路には!」

 

安全地帯がある十字路の左側に何かが表示された。

俺は走りながら視線を向けると俺の視界にモンスター表示であるイエローカーソルが現れた。

表示には『THE FatalーScythe 』《運命の鎌》と言うのだろう。と表示されていた。

しかも『THE』固有名詞が付いていると言うことはボスモンスターである証だ。

それにレイン達も気が付いたのか慌ててユリエールさんに呼び掛けた。

 

「ユリエールさん急いで戻って!」

 

だが後少しでユリエールさんとボスモンスターは衝突する

レインがユリエールさんに呼び掛けても遅い。

 

「くそっ!」

 

俺は敏捷力を全開にしてユリエールさんに追い付き彼女を右手で抱き抱え左手の『ダークリパルサー』を地面に思いっきり突き刺した。

地面とのすさまじい金属音が鳴り響くがなんとか十字路の目の前で止まれた。

止まった瞬間目の前を黒い影が凄まじいスピードで駆け抜けて行った。

黒い影は右の通路から振り向き再度此方に突進攻撃を仕掛けてきた。

俺は突き刺してあった『ダークリパルサー』を抜き取り左の通路にユリエールさんを抱き抱えて入り込んだ。

追い付いてきたレイン達も武器を構えてボスモンスターと対峙した。

 

「この娘と一緒に安全地帯に入っていて!」

 

レインがユイをユリエールに預けて安全地帯に行くように促し自身の片手剣『キャバルリーナイト』と『トワイライト・ラグナロク』を腰から抜いた。

 

「まずい、みんな急いで安全地帯まで避難して安全地帯にいる三人とクリスタルで脱出するんだ!」

 

「どういう事キリト君?」

 

俺はボスモンスターを見て感じた事を伝えた。

 

「コイツ、俺の識別スキルでもデータが読み取れない。

恐らく階層的には90層クラスだ!」

 

全員俺の言葉に息を飲み込んだ。

この中で一番レベルやスキルが高いのは俺だ。その俺が言うのだから間違いないと踏んだのだろう。

《ザ・フェイタルサイス》は死神のような姿をし手には巨大な鎌を構えていた。

眼球は飛び出るほど見開かれ血が流れ出ているような感じだった。

 

「アスナ!俺が時間を稼ぐその間に脱出してくれ!」

 

俺が言うとアスナはただちに。

 

「みんな、急いで安全地帯に退避!」

 

全員にそう指示をした。

 

「キリト君!わたしも!」

 

「レイン!?お前もみんなと一緒に脱出するんだ」

 

「ダメ、キリト君!全員が安全地帯にまで避難するのに一人で時間を稼ぐなんて無茶だよ」

 

「・・・・・わかった。死ぬなよレイン!」

 

「もちろんだよ。キリト君も死なないでよ!」

 

「ああ、もちろんだ」

 

俺とレインはアスナ達が避難するまでの時間を稼ぐため二人でボスモンスターと対峙した。

ボスは鎌を構え俺達に振りかぶってきた。

 

「くっ!」

 

「きゃゃゃゃゃあ!」

 

とっさにレインと共に防いだが今の一撃で大きく吹き飛ばされHPがイエローまで落ちた。

詰まり後1、2撃でHPが全損する訳だ。

すると。

 

「な、ユイ!?早く戻るんだユイ!」

 

「ユイちゃん!?早く戻って!」

 

俺とレインは安全地帯にいるはずのユイの姿を見て驚いた。安全地帯を見るとアスナ達はユイを戻そうとしているらしかった。

 

「大丈夫だよ。パパ、ママ」

 

ユイは俺とレインの方を振り向いてそう言うとボスモンスターの方に歩いていった。

ボスは手に持っている鎌を構えユイに降り下ろしてきた。

俺達はユイの消える姿を目の当たりになると思っていた。だがユイの目の前でボスの振りかざした鎌は止まっていた、まるで何か見えない壁のようなものにぶち当たったかのように。

ユイの姿を見ると鎌は紫色障壁に阻まれていた。するとユイの頭上に紫色のフォントで『Immortal Object 』と表示された。

不死存在、本来プレイヤーに与えられるはずのない属性。

俺達は驚愕した。何故、本来ならプレイヤーの持つはずのない属性がユイに付与されているのか。だが、そんなことを悠長に考えている暇はなかった。

何故ならばボスは再度鎌を振りかざしてきたからだ。

だが、それもユイの目の前で防がれ届かない。

直後ユイの右手を中心に紅蓮の炎が巻き起こった。

炎は一瞬広く拡散した後すぐに凝縮し、細長い形にまとまり始めた。

それは巨大な剣へと姿を変えていった。焔色に輝く刀身が炎の中から現れた。

ユイの右手に現れた巨剣はユイの身長を上回る長さを備えていた。すると剣の撒き散らす炎にあおられるように、レインが着せた服が一瞬にして消え去った。

そのしたには彼女が最初から着ていた白いワンピースが現れた。だが不思議なことに、そのワンピースも長い黒髪も炎の影響を受ける様子はなかった。

ユイは右手の火焔剣を大きく振りかざしボスに思いっきり降り下ろした。

ボスモンスターもシステムのアルゴリズムに乗っ取り大鎌を前方に掲げ、防御の姿勢をとった。

だが、ユイの火焔剣は死神の大鎌を意図も容易く切り裂いた。やがて、ごう、という爆音とともに死神が真っ二つに頭から断ち割られた。

すると、紅蓮の炎渦が死神を巻き込みながら通路の奥に流れこんでいった。轟音の裏に、微かな断末魔の悲鳴が響き渡った。

俺達が再度見るとそこにはもうボスの姿はなくただ一人ユイが俯いて立ち尽くしていた。

ユイの右手の火焔剣は現れた時と同じように炎を発しながら溶け崩れ、消滅した。

俺とレインは立ち上がりユイに向かって数歩歩み寄った。

 

「ユイ・・・・・ちゃん・・・・・・」

 

「・・・・ユイ・・・・・・・」

 

俺とレインがかすれた声で呼ぶとユイは音もなく振り向いた。小さな唇は微笑んでいたが、漆黒の瞳には涙があふれでそうに溜まっていた。

すると。

 

「パパ・・・ママ・・・。ぜんぶ、思い出したよ・・・・」

 

ユイは、俺とレインを見て静かにそう言った。




アンケートそろそろ締め切ります!

アンケート、感想、お待ちしてます


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SAO編 第40話〈ユイの涙と想い〉

アンケートを締め切らせて貰いました。
アンケートを送ってくださった方ありがとうございます。




俺とレインはボス《ザ・フェイタルサイス》を消し飛ばしたユイと共にアスナ達がいる安全地帯に入っていった。

安全地帯の中は四角い形をしており周りは白一色で統一されていた。目立つものは安全地帯の中央に鎮座してある台座だけだった。

今部屋のなかにいるのは俺とレイン、アスナ、ユウキ、ラン、ラム、リーザの七人だけ。ユイは安全地帯に入ると鎮座してある台座に腰掛け沈黙していた。

シンカーさんとユリエールさんは事情を説明し、先にここから脱出してもらった。

記憶が戻った、とひとこと言い台座に座ってから数分が経った。ユイの表情は何故か悲しそうだった。

 

「ユイちゃん・・・・・思い出したの・・・・・?・・・・・全部」

 

レインは意を決して尋ねた。

すると、ユイはこくりと頷いた。泣き笑いのような表情のまま、小さな唇をひらく。

 

「はい・・・・・。全部、説明します・・・・・キリトさん、レインさん・・・・・アスナさん、ユウキさん、ランさん、ラムさん、リーザさん」

 

ユイは俺達の顔を見て順に名前を言っていった。

俺とレインはユイの丁寧な言葉を聞いた途端、何かが終わってしまったのだという、確信が生まれた。

するとアスナがレインの隣に移動し肩に手を置いた。

 

「レインちゃん・・・・・」

 

「うん・・・・・大丈夫だよ。・・・・・ありがとう、アスナちゃん・・・・・」

 

続けてユイの言葉がゆっくりと流れ始めた。

 

「《ソードアート・オンライン》という名のこの世界は、ひとつの巨大なシステムによって制御されています。システムの名は《カーディナル》、それが、この世界のバランスを自らの判断に基づいて制御しているのです。カーディナルはもともと、人間のメンテナンスを必要としない存在として設計されました。二つのコアプログラムが相互にエラー訂正を行い、更に無数の下位プログラム群によって世界の全てを調整する・・・・・・。モンスターやNPCのAI、アイテムや通貨の出現バランス、何もかもがカーディナルの指揮下のプログラム群に操作されています。ーーーしかし、ひとつだけ人間の手に委ねなければならないものがありました。・・・・それは、プレイヤーの精神性に由来するトラブルです。それだけは同じ人間でないと解決出来ない・・・その為に、数十人規模のスタッフが用意されるはず、でした」

 

「それは・・・・GM・・・・」

 

俺はユイの言葉にぽつりと呟いた。

 

「ユイ、つまり君はゲームマスターなのか・・・・・?アーガスのスタッフ・・・・・・?」

 

俺の問いにユイはゆっくりと首を振って否定と答えた。

 

「・・・・・いえ、わたしはGMではありません・・・・・。・・・・・カーディナルの開発者達は、プレイヤーのケアすらもシステムに委ねようとあるプログラムを試作したのです。それがわたし・・・・・・《メンタルヘルス・カウンセリングプログラム》、MHCP試作一号、コードネーム《Yui》です」

 

レイン達はユイの言葉に驚愕の余り息を呑んだ。

それは俺もそうなのだろう、言われたことを即座に理解は出来ない。

 

「それじゃユイちゃんは・・・・・プログラム・・・・・?AIだって言うの・・・・・?」

 

「はい・・・・・わたしにはプレイヤーに違和感を与えないように、感情模倣機能が与えられています。全部・・・・偽者なんです。・・・・この涙も・・・・すべて・・・・。ごめんなさい、レインさん」

 

ユイは両目から涙をこぼしながらそう言った。

レインはユイの側に行き抱擁しようと手を伸ばしたが、ユイは受け取る資格が無いと、いうかのように首を横に振った。

 

「だが、ユイに記憶がなかったってことはどう言うことなんだ・・・・・・?AIにそんなことが起きるはずないと思うんだが・・・・・」

 

俺はユイに疑問に思っていたことを聞いた。

すると、ユイは首を横に振り話した。

 

「・・・・・二年前・・・・・。このゲームの正式サービスが始まった日、カーディナルはわたしに予定に無いことを下したのです。それは、プレイヤーとの一切の干渉を禁止する、ということです。状況は最悪なものでした。・・・・・プレイヤー達は恐怖に囚われ、悲しみや絶望、自ら命を断つ者までいました。わたしはそれを一切の干渉をすることなくモニタリグをしていました。ですがその中でどんな状況になっても輝いているプレイヤーがいました。ですが、その中でも一際強い輝きを放っているプレイヤーがいたんです」

 

「それって・・・・・」

 

「はい、キリトさんとレインさんです。わたしは二人のモニタリグであそこまでこの世界で輝いているのは見たことがありませんでした。会いたい、あの二人に会ってみたい、わたしはそう思いました。ですが・・・・わたしはプレイヤーの負の感情を見つつけどんどんエラーを蓄積させていきました。もうすでに自意識は無かったのでしょう。・・・・ですが、わたしの中にあの二人に会いたい、というものがありました。そのためわたしはお二人がいる最寄りのシステムコンソールに実体化しました。何度も・・・・何度も・・・・・」

 

「それがあの・・・・第22層の森の中ってことか」

 

俺ははじめてユイにあった場所を思い出した。

 

「はい。わたし、ずっとキリトさんとレインさんにお会いしたかった。わたし、お二人のことを見ていてすごく・・・嬉しかった・・・・プログラムなのにおかしいですよねこんなの」

 

涙をいっぱいに溢れさせ、ユイは口をつぐんだ。

 

「・・・・・・ユイ、君はどうしたい?」

 

「・・・・わたし・・・・・わたしは・・・・・パパとママと・・・・・皆さんとずっと・・・・・ずっと一緒にいたいです!」

 

ユイは俺達の顔を見て、涙を流しながらそう言った。

 

「ユイちゃん、ずっと一緒にいよう」

 

そんなユイにレインは抱き締めながら言った。

だが。

 

「・・・・・・でも、それはムリなんです」

 

ユイは首を横に振りながら言った。

 

「どうして?」

 

ユイは視線を自分が座っていた台座に目を向けて。

 

「わたしが記憶を取り戻したのは"これ"に触れたからなんです」

 

「これ、は・・・・・?」

 

「わたしは安全地帯に入ったときこれ、に触れました。これは、システムコンソールなんです」ふ

 

俺達はユイの言葉に驚愕をうけた。

 

「「「システム・・・・・」」」

 

「「「「・・・・・コンソール」」」」

 

「はい。これは、GMがシステムに緊急アクセスするために配置されたものと思われます。先程のボスモンスターはこのコンソールをプレイヤーに近づけさせないためにカーディナルが配置したんだと思います。わたしはコンソールに触れ、カーディナルのエラー訂正能力により記憶と言語機能を修復しシステムにアクセスして《オプジェクトイレイザー》を召喚してボスを倒し、いえ、消し去りました。

それと同時に今まで、放置されていたわたしにカーディナルが注目してしまったということです。恐らく今、コアプログラムがわたしのプログラムを走査しています。すぐにシステムに異物と認定され消去されてしまうでしょう。・・・もう・・・余り時間は残されていません・・・・」

 

「そんな・・・・・・ユイちゃん・・・・・」

 

「どうにかならないの・・・・・」

 

「こんなの酷すぎるよ・・・・・」

 

「なんとかならないのかよ!この場所から離れれば・・・・・」

 

俺達の言葉に、ユイは微笑するだけだった。

 

「パパ、ママ、皆さんありがとう。これでお別れです。暗闇の中・・・・いつ果てるとも知らない長い苦しみの中で、パパとママと皆さんの存在だけがわたしを繋ぎ止めてくれた・・・・パパとママ、皆さんのそばにいると、みんなが笑顔になれた・・・・わたし、とっても嬉しかった。お願いです、これからも・・・・わたしの代わりに・・・・みんなを助け・・・・喜びを分けあってください・・・・」

 

ユイの黒髪やワンピースが、その先端から朝露のように儚い光の粒子を撒き散らし段々と透き通っていった。

俺とレインはユイの消滅が始まっていることを悟った。

 

「いや!いやだよ‼ユイちゃん、行かないでよ!お願い‼」

 

「行くな、ユイ!」

 

溢れでる光に包まれながら、ユイはにこりと笑い消える寸前レインに。

 

"ママ、わらって・・・・・"

 

そう言うとユイの身体がひときわ眩く光が飛び散った。

光が収まり消えたときにはもうそこには何もなくからっぽになっていた。

 

「うわああああ!!」

 

抑えようもなく声を上げながら、レインは膝を突いた。

アスナ達も目に涙を浮かべ泣いていた。

 

「カーディナル!!そういつもいつも・・・・・思い通りになると思うなよ‼」

 

俺は部屋の天井を見据えて叫んだ。

俺は瞬時にコンソールに飛び付き、ユイが触れ表示されたままのホロキーボードを素早く叩く。

ここから先はこの世界の《黒の剣士》キリトではなく現実の、桐ヶ谷和人の出番だ。現実で培ったスキルを駆使して俺はコンソールわ操作した。

 

「「「「「「キリト(さん)(君)一体何を・・・・・」」」」」」

 

レイン達は驚き、瞠目しながら言った。

 

「今なら・・・・・今ならまだ、GMアカウントでシステムに割り込めるかもしれない・・・・!」

 

俺はキーを乱打し続けながら呟き高速でスクロールする文字列を見ながら更に幾つかのコマンドを立て続けに入力した。すると、不意にコンソール全体が青白くフラッシュし、直後、破裂音と共に俺は後ろに弾き飛ばされた。

 

「っ!」  

 

「き、キリト君大丈夫!」

 

レインは吹き飛ばされた俺の上体を抱き起こしながら言った。

俺はレインに笑みを浮かべると、手に持っている大きな涙の形をしたクリスタルを見せた。

 

「キリト君、これは・・・・・?」

 

レインが俺に聞いてきた。

レインの背後のアスナ達も俺の事を心配そうにしながらクリスタルを見た。

 

「・・・・・ユイが起動した管理者権限が切れる前に、ユイのプログラム本体をシステムから切り離し、オプジェクト化したんだ。・・・・これは、ユイの心だよ、その中にある・・・・」

 

「この中に、ユイちゃんが・・・・・」

 

レインは泣きながら嬉しそうに俺から受け取ったクリスタルを抱いた。

 

「レインちゃん・・・・良かったね」

 

「ユイちゃんの心そこにあるんだね」

 

「レインさん、よかったですね」

 

「レインさん・・・・よかったです」

 

アスナ達は嬉し涙を流しながらレインに言った。

 

「みんな・・・・ありがとう・・・・」

 

ラムは俺の所に来て。

 

「キリト、よかったですね」

 

「ああ。コンソールが閉じるまでに出来てよかったよ」

 

レイン達の姿を見ながらそう言った。

 

 

 

あのあと、俺達は転移結晶を使って教会に戻ると先に脱出したシンカーさんとユリエールさんがサーシャさんと子供達と一緒に俺達の帰りを待っていた。

戻った俺達はシンカーさんとユリエールさんにお礼を言われ『軍』を解散し新しくギルドを発足させると言われた。

今まで『軍』に蓄積されたコルやアイテム類は平等に分配するそうだ。

ユイについて聞かれると。

 

「ユイは・・・・・お家に帰りました」  

 

そう言った。

あそこであったことは俺達7人の秘密とした。

ユイの心は、レインがネックレスとして身に付けている。

シンカーさん達と別れた後、アスナ達は一回ギルド本部に戻り残りの休暇を楽しむそうだ。

俺とレインは、第22層の森の家に戻って来た。

家の中に入りお茶の準備をしレインと寛いでいるとたった1日だけとはいえ一緒に住んでいたユイの事を思い出していた。

不意にレインが。

 

「キリト君。ユイちゃんってこのゲームがクリアされたらどうなるの?」

 

「一応、俺のナーヴギアのローカルメモリに保存されるようになっている。だけど向こうで、ユイを展開させるのは大変だろうけどなんとかやってみるつもりだ」

 

「そうなんだ」

 

「ああ、ユイはずっと俺達の側にいる」

 

「そうだね。ありがとう、キリト君」

 

レインは俺に抱きついて言った。

すると、俺達の耳に。

 

"パパ、ママ、頑張って"

 

と、聞こえた気がした。




多少原作と被ってしまいすみません。

次回は、釣り。

感想等がございましたら気軽に送ってください。


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SAO編 第41話〈釣り師ニシダ〉

「はあ、全然釣れないな・・・・・・」

 

俺は今、家の近くの大きな湖で釣りをしていた。

ここは、第22層にある湖の中ではかなり広い。第61層『セルムブルク』は全面湖というか海みたいな感じなのだがここ、第22層の湖は周りを木々に囲まれておりその場にいても安らぐ感じがするのだ。

三日前、第1層にある黒鉄宮地下迷宮の奥にある安全地帯で別れを遂げた俺とレインの娘ユイは、《メンタルヘルス・カウンセリングプラス》MHCP、AIだった。

その為、この世界を維持しているカーディナルシステムに消されそうになったところをギリギリ、ユイのプログラムをシステムから切り離しオプジェクト化することに成功した。ユイの心は今、レインがネックレスとして肌身離さず身に付けている。

 

と、俺は釣竿を湖に垂らし魚が釣れるまで寝っ転がり三日前の事を思い出していた。

 

「・・・・・全然釣れない・・・・・・やってられるか・・・・・・」

 

30分程しても未だに魚1ぴきも釣れない。

俺は昔スキルホルダーにセットした両手剣スキルを削除し釣りスキルを新たに設定していた。釣りスキルはようやく熟練度が600を越えたので、そろそろまともな魚が釣れる筈なのだが・・・・・・・

俺がそう思っていると不意に頭上に影が差した。

頭上を見てみると釣竿を持った男がいた。

NPCか?、と思っていると。

 

「どうも。釣れますかな?」

 

頭上の男が話しかけてきた。

 

「え、え~と・・・・・」

 

俺はどう答えてよいか思案していると。

 

「NPCじゃありませんよ」

 

男は俺の思考を読んだかのように苦笑いをして言ってきた。

 

「す、すみません。まさかと思ったものですから・・・・・」

 

「いやいや、無理はありません。多分私はここでは突出して最高齢でしょうからな」

 

男は肉付きのいい体を揺らして、わ、は、は、と笑う。

 

「ここ失礼します」

 

男は俺に言って傍らに腰を下ろし、腰のポーチから餌箱を取り出すよ不器用な手つきでポップアップメニューを出し、竿に餌を付けた。

 

「私はニシダと言います。ここでは釣り師。現実では東都高速線という会社の保安部長をしとりました」

 

「俺はキリトと言います。最近上の層から引っ越して来ました・・・・・・・つかぬこと伺いますが、ニシダさんはやはり・・・・・・SAOの回線保守の・・・・・・」

 

「一応責任者ということになっとりました。上からは何もログインまではせんでいいと言われたんですがな、自分の仕事はこの目で見ないと収まらん性分でしてな」

 

「な、なるほど」

 

「いやー、いい川や湖を探してこんなところまで登って来てしまいましたわ」

 

「確かにこの層にはモンスターは出ませんから釣りにはもってこいですね」

 

ニシダさんは、俺の言葉にニヤリと笑った。

 

「どうです、上の方にはいいポイントがありますかな?」

 

俺はニシダさんの問いに少し考えてから。

 

「第61層は全面湖、というか海で、相当な大物が釣れるそうですよ」

 

と、言った。

 

「ほうほう!それは是非とも一度行ってみませんとな」

 

その時、ニシダさんの垂らした糸の先で、ウキが勢いよく沈み込んだ。

ニシダさんは、焦ることなく悠然と竿を操り、水面から青く輝く大きな魚体を一気に抜き出した。魚はしばしニシダさんの手許で跳ねた後、自動でアイテムウインドウに収納され、消滅した。

 

「お見事・・・・・・!」

 

「いやぁ、ここでの釣りはスキルの数値次第ですから」

 

ニシダさんは照れたように笑いながら言った。

 

「ただ、釣れるのはいいんだが料理の方はどうも・・・・・。煮付けや刺身で食べたいもんですが醤油無しではどうにも・・・・」

 

「あー・・・・・・・」

 

俺は少々迷ったが、この人になら別に構わないだろうと判断し話した。

 

「・・・・醤油にごく似ている物に心当たりがありますが・・・・」

 

「なんですと!」

 

ニシダさんは眼鏡の奥の眼を輝かせ、身を乗り出してきた。辺りの水はニシダさんの声に反響し波紋が出来ていた。

 

 

 

「お帰りキリト君。あれ、此方の方は?」

 

ニシダさんを、つれて帰宅した俺は家にいたレインに説明した。

 

「なるほど~」

 

レインは首をたてに降りニシダさんの方を向くと挨拶をした。

 

「はじめまして、キリト君の妻、レインです」

 

レインが挨拶をするとニシダさんはぽかんと口を開けフリーズしていた。

しばらくして数度瞬きをし、我に返った様子のニシダさんは、

 

「い、いや、これは失礼。私はニシダと申します。厚かましくお招きに預かりまして・・・・・」 

 

頭を掻きながら、わははと笑った。

ニシダさんから受け取った魚を、レインは早速料理スキルを発揮し煮付けや刺身等を調理し、食卓に並べた。

 

「はぁ・・・・・、見事な物ですね」 

 

「そんなことないですよ~」

 

「流石だな、レイン」

 

俺達はレインの作った食事に喋らずに食べた。

話始めたのは食後のお茶を飲んでいるときだった。

 

「いやぁ、この世界にまさか醤油があるとは・・・・・」

 

「自家製なんですよ。良かったらどうぞ」

 

レインはそう言うと台所から自家製醤油を持ってきてニシダさんに渡した。

 

「これはこれは、ありがとうございます」

 

「いえ、こちらこそ美味しいお魚をいただきましたから。キリト君、お魚を釣った試しがないんですよ」

 

「そ、そんなことないし。というか難易度が高いんだよ、あそこは・・・・・・・」

 

俺がレインに言い訳をするとニシダさんはニコニコ笑いながら言った。

 

「いえいえ、難易度が高いのはキリトさんが釣っていたあの湖だけですよ。それ以外の湖は難易度が低いですから」

 

「な・・・・・・!?」

 

ニシダさんの言葉に俺は絶句した。隣を見るとレインがお腹を押さえてくっくっと笑っていた。

 

「なんでそんな設定になってるんだ・・・・・」

 

「実は、あの湖にはですね・・・・・」

 

ニシダさんは声をひそめるように言った。

 

「どうやら、主がおるんですわ」

 

「「ヌシ?」」

 

「はい。以前、この村でずいぶんと値をはる釣竿がありましてな不思議に思い、試しにと買ってみたんですが、これがさっぱりに釣れない。試しにあの難易度が高い湖でやってみたらヒットしまして」

 

「それじゃあ、ニシダさんはそのヌシを釣り上げたんですか?」

 

レインが聞くとニシダさんは首を横に振り、

 

「いえ、影は見えたのですが釣り上げるというところまでは・・・・・逆に竿ごと取られてしまいましたわ。ありゃ怪物、そこらにいるのとは違う意味でモンスターですな」

 

両腕をいっぱいに広げて言った。

俺は、まさかこの層にそんなモンスターがいると聞いて驚いた。

 

「見てみたいなぁ!」

 

俺の隣にいたレインが眼を輝かせ俺の顔を見ながらそう言った。

 

「そこで物は相談なんですが、キリトさんは筋力パラメーターの方に自信は・・・・・・」

 

「う、まあ、そこそこには・・・・・・」

 

「なら一緒にやりませんか!合わせるところまでは私がやります。そこから先をお願いしたい」

 

ニシダさんは釣り版のスイッチをやりませんか、と言っているのだ。

俺は、少々首をひねり考えたが、

 

「キリト君、やってみようよ!絶体面白いから」

 

ワクワク、した表情でレインに言われた。

だが、まあ俺もかなり好奇心が刺激させられたため、

 

「・・・・・分かりました。やりましょう」

 

俺が言うと、ニシダさんは満面の笑みを浮かべて、わ、は、は、と笑った。

 

ヌシ釣りの決行は後日知らせると、ニシダさんが言っていたため俺達はニシダさんからの知らせを待つことにした。

そして、ニシダさんからのヌシ釣りの決行の知らせを受け取ったのはそれから三日後の事だった。

 

 

その頃、ユウキとランは二人の自宅でメニューウインドウを表示させて顔をしかめていた。

 

 

~ユウキside~

 

僕と姉ちゃんは自宅のソファに座ってため息をついていた。

 

「姉ちゃん、これって・・・・・・」

 

「・・・・・ええ。恐らくアレに該当するスキルでしょうね」

 

僕のメニューウインドウは今、スキルを表示している。

僕達は今ある1つのスキルを見ていた。

それは。

 

「姉ちゃん、どうしようか」

 

「一応、これを確認してみましょうか」

 

「わかった。それじゃ、僕のほうから言うね」

 

「お願いね、ユウキ」

 

「僕のは、『紫閃剣』スキルだね。このスキルは盾が持てないみたい。だけど僕、元から盾装備しないから関係ないね。それで、『紫閃剣』専用スキルと片手剣スキルの両方が使用できて技後硬直の短縮と『紫閃剣』スキルの威力が1.5倍になるみたい」

 

「それじゃ、今度は私の番ね。私のは『変束剣』スキルね。これもユウキと同様、盾は装備できないみたいだけど私にも関係ないわね。『変束剣』専用のスキルと片手剣スキルの両方がユウキと同様使用できて技後硬直の短縮と、『変束剣』スキルの威力が1.2倍になるみたいわね」

 

僕と姉ちゃんは新たに表示されたスキルの説明を終えるとため息をはいた。

 

「姉ちゃん、これ、ユニークスキルだよね」

 

「ええ、キリトさん達と同じでしょうね」

 

「・・・・・・・誰かに話した方がいいかな?」

 

「そうですね・・・・・・・一応、アスナさんとキリトさん、レインさんには話しておきましょうか」

 

「あれ?ヒースクリフ団長は伝えなくていいの?」

 

「ん~・・・・・・少し話すのは止めておきましょう。これが本当にユニークスキルなのか分かりませんし確認してからでも遅くはないでしょう」

 

「わかった。でも、どうやって伝える?」

 

「う~ん。今度キリトさん達の家に行きましょう。アスナさんには後で直接伝えましょうか」

 

「オッケー」

 

僕と姉ちゃんは一応、キリト達に伝える事にしたが時間も遅いため明日伝えることにした。

 

~ユウキside out~




多少、オリジナルを入れてます。


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SAO編 第42話〈湖のヌシ〉

感想やUAが全く来ない。
つまらないのでしょうか?


ニシダさんから湖のヌシ釣りのお誘いを貰った翌日、家にユウキとランの姉妹が訪ねて来た。

 

「突然お邪魔しますね。キリトさん、レインさん」

 

「大丈夫だよ、二人とも」

 

「それよりどうしたんだ、二人とも。こんな朝早くに?」

 

「二人に相談があるんだ・・・・・・・」

 

ユウキが神妙な表情で俺とレインに言った。

ユウキの隣に座っているランも同様の表情をしていた。

すると、

 

"コンコン"

 

すると扉をノックする音が聞こえた。

 

「あれ?誰かな?」

 

レインは立ち上がり玄関の方に行った。

しばらくして戻ってくるとレインと一緒にアスナが入ってきた。

 

「アスナ?どうしたんだ?」

 

「私はユウキとランさんに呼ばれてきたんだけど・・・・・・」

 

「そうなのか?」

 

俺はユウキとランに視線を向けて訪ねた。

 

「ええ。アスナさんは私達が呼びました。これから話すことをアスナさんにも話した方が良いかと思ったので」

 

ランはそう言うと口を閉ざし二人が座るのを待った。

アスナとレインがそれぞれ座ると。

 

「三人とも《紫閃剣》と《変束剣》って言うスキルって聞いたことある?」

 

ユウキがそう言ってきた。

 

「《紫閃剣》に《変束剣》?聞いたことないな。レインとアスナは何か知ってるか?」

 

俺は聞いたことないスキルを聞き首をかしげレインとアスナに聞いた。

 

「う~ん、聞いたことないな~。アスナちゃんはどう?」

 

「私も聞いたことないよ。二人ともそのスキルがどうかしたの?」

 

「実は昨日、家でスキルリストを見たらそのスキルが表示されていたんだよ。僕には《紫閃剣》姉ちゃんには《変束剣》スキル、がね」

 

「聞いたことないスキルですので、キリトさん達に相談したんですよ」

 

「なるほど・・・・・・・・それで、ユウキとラン。二人はどう思うんだ?そのスキル」

 

俺が二人に問うと二人は。

 

「「ユニークスキルだと思う(います)」」

 

同時に言った。

 

「・・・・・だと思うよな」

 

俺も二人の答えにどう意見だった。

このスキルは俺とレイン、ヒースクリフと同じくユニークスキルなのだと。

レインとアスナもその考えに至ったのか二人とも頷いていた。

 

「で、そのスキルはどうするつもりなんだ?」

 

「・・・・・・しばらくは公表しないつもりです。公になったら何かと面倒なんで」

 

「それがいいだろうな。俺も口外しないでおくよ」

 

「わたしも口外しないでおくね」

 

「私も秘密にしとくけど、団長にはどうするの?」

 

「あー・・・・・・・一応、話しておこうかなとおもってはいるけど・・・・・・」

 

「それなら、私も一緒に行くよ」

 

ユウキとラン、アスナはこのあとヒースクリフにこの事を話に行くらしい。

その後、ユウキとランは交互に新しいスキル、《紫閃剣》と《変束剣》について説明しアスナと共に第55層にある血盟騎士団本部に向かっていった。

3人が帰った後俺はレインと話をしていた。

 

「まさか、あの二人がユニークスキルを取得するとはな」

 

「驚いたね。でもこれでユニークスキル持ちは5人・・・・・ってところかな」

 

「ああ」

 

その時、俺の視界にメッセージウインドウが表示された。

 

「ん?・・・・・・・ニシダさんからだ。・・・・・・えっと、『二日後ヌシ釣りを開催いたしますので当日、ヌシの湖に来てください』だって」

 

俺がそう言うとレインは眼を輝かせて、

 

「ヤッター!二日後か~楽しみだね!」

 

興奮して言った。

 

「そうだな」

 

 

 

二日後、俺とレインはヌシのいる湖に足を運ばせていた。

ニシダさんが呼び掛けたのか、湖岸には見物客と思わしき人が大勢いた。

 

「うわ~。凄い人の数だね」

 

「ああ、予想以上だな」

 

「でも、こんなにいるとわたし達の姿をみられるかもしれないね」

 

「あー、確かに。俺は平気だろうけどレインは目立つからな」

 

「ん~。あ、そうだ」

 

レインはウインドウを表示させ操作した。

すると、レインは服の上から地味なオーバーコートを羽織った。髪は縛りそこからスカーフを巻いて顔を隠した。

 

「お、なんか農家の主婦みたいだぞレイン」

 

「キリト君、それって誉めてるの?」

 

「え、いや、あはは・・・・・・」

 

「キリト君!!」

 

「ごめんなさい」

 

「まったくもう。それで?」

 

「それでって?」

 

「もう、この格好どうなの?」

 

「え、え~と。綺麗だぞ」

 

「ありがとう」

 

「あ、ああ。ところでニシダさんはどこだ?」

 

「う~ん。あ、いた。あそこ、キリト君!」

 

俺はレインの指差した方を向くとニシダさんの姿が見えた。

俺達はやや緊張して人混みのなかを掻き分けてニシダさんのところに向かった。

 

「わ、は、は、晴れてよかったですな」

 

「こんにちはニシダさん」

 

「凄い人の数ですね」

 

「いや、なに私の釣り仲間とかを集めたらこんな人数になってしまいましたわ。それでは、はじめましょう」

 

ニシダさんは長い竿を手に持ち、

 

「それでは、本日のメインイベントを始めさせていただきます!」

 

ギャラリーに聞こえるように大声で宣言した。

ギャラリーはニシダさんの宣言を聞き大いに沸いた。

俺達は視線をニシダさんの持つ釣竿に向けた。

釣竿の先端にぶら下がっているのを見ると俺はぎょっ、とした。釣竿は大きくなんともないのだが先端にぶら下がっているのはトカゲだ。

しかも尋常じゃないほどの大きさだ。

 

"これほどのエサで釣り上げると魚って・・・・・"

 

俺が顔をひきつらせて思っていると、

 

「うわ~、お、大きいね。これで釣る魚ってどんなのだろう・・・・・」

 

隣にいるレインも同様に顔をひきつらせて言っていた。

ニシダさんは湖に身体を向け思いっきり竿を引き、綺麗なフォームで竿の先端を投げ入れた。

派手な水飛沫を上げて着水したところを俺達は固唾を飲んで見守っていた。

しばらくして数回、糸の先がピクピクと震えた。

 

「ニシダさん、来ましたよ!」

 

「なんの、まだまだ・・・・・・!」

 

ニシダさんは細かく震動する糸の先を見据える。

と、一際大きく先端が沈み込んだ。

 

「いまだ!!」

 

張られた糸はピンとなっていた。

 

「掛かりました!後はお任せします!」

 

ニシダさんは傍らにいた俺にそう言うと竿を渡した。

すると、

 

「うわっ!!」

 

猛烈な勢いで水の中に引き込まれた。

俺は慌てて体勢を立て直しながら、

 

「こ、これ、全力で引いても大丈夫ですか!?」

 

ニシダさんに聞いた。

 

「最高級品です!思いっきりやっちゃて下さい!」

 

「わかりました!」

 

俺は竿を構え直し、筋力パラメーター全開で引いた。

 

「あ、何か見えてきたよ」

 

後ろで見ているレインがそう言うとギャラリー達も湖を覗き込んだ。

俺は岸から離れ、身体をそらせているため湖の中を覗きこめないため確認できない。

俺は、好奇心を抑えきれず、全筋力を振り絞って一際強く竿をしゃくり上げた。

すると、突然俺の眼前で湖面に身を乗り出していたギャラリー達の体がビクリと震え揃って二、三歩後退した。

 

「どうしたん・・・・・・」

 

俺が聞こうとする前にギャラリー全員、一斉に振り向くと猛烈な勢いで走り始めた。

更に左右をレインとニシダさんも駆け抜けて行った。

呆気に取られ振り向こうとしたその時、

突然両手から重さが消えると、眼前で銀色に輝く湖水が丸く盛り上がった。

 

「キリトく~ん、にげないの~」

 

後ろからレインの声が聞こえた。

その直後、盛大な水音が響くと背後に、ドシンッ、と音が鳴った。

俺は嫌な予感がし振り向くとそこには。

・・・・・・・・魚が立っていた。地面を。しかも6本の足で草を踏みしめて。

こいつは、魚なんてものじゃない。これは、ある意味モンスターだ。

俺は、数歩後退しクルリと後ろを向き、脱兎のごとくレイン達がいる場所まで駆け出した。

 

「ず、ずずずずるいぞ!自分だけ逃げるなよ‼」

 

レインのところまで行くと俺は最初にそう言った。

 

いや、そんなこといってる場合じゃないんだけど!?」

 

レインは歩く魚を見て慌てていった。

だがその表情は楽しそうだった。

 

「お~、すごいな。陸を歩けるってことは肺魚なのかな」

 

「キリトさん、そんなことよりはよ逃げんと」

 

ニシダさんもめっちゃ慌てていた。

するとレインが近づいてきて、

 

「キリト君、武器って持ってる?」

 

と聞いてきた。

 

「・・・・・・・いや、持ってない」

 

「しょうがないな~、それじゃわたしが殺っちゃてもいいかな」

 

「頼む」

 

「オッケー」

 

レインは素早くウインドウを操作し片手剣『キャバルリー・ナイト』を取り出し剣を構えた。剣を構えると魚の方に走って行った。

 

「ちょ、キリトさん!?奧さんが危ないですよ!」

 

ニシダさんが慌てて俺にそう言った。

 

「大丈夫ですよ。彼女に任せておけば安心です」

 

「何をいってるんですか~!こうなったら私が・・・・・・・」

 

俺はレインを助けに入ろうとしたニシダさんを止め、

 

「まぁ、見ててください」

 

そう言いニシダさんと一緒にレインの戦闘を見た。

俺は内心、

 

"多分、すぐに終わるだろうな"

 

と考えていた。

 

~レインside~

 

「よーし、いっちょ殺っちゃいますか~」

 

わたしはそう言うと巨大魚に素早く接近し片手剣ソードスキル《ホリゾンタル・スクエア》4連撃を放った。

流石イベントボス?(釣りなのに)HPゲージは2段あったが今ので8割ほど削り取れた。

巨大魚はわたしに攻撃をしてくるが全て避けたり、パリィしたりして余裕で防いだ。

 

「やあぁぁぁぁぁあ!」

 

わたしは防いだ後、止めに片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》を繰り出した。

巨大魚はHPを0にしポリゴンとなって四散した。

剣を腰の鞘に納めるとキリト君の方に向かっていった。

 

~レインside out~

 

ほんの1分ほどで巨大魚を倒したレインを俺は"流石だな"と思いながら見ていた。

隣にいるニシダさんは、口を開けてぱくぱくして驚いていた。

 

「お疲れ、レイン。楽しかったか?」

 

「うん!久しぶりの戦闘だったから楽しかったよ!」

 

俺とレインがそうやり取りをしていると正気に戻ったニシダさんが、

 

「はっ・・・・・・・お強いですね、奥さん。失礼ですがレベルは幾つほど・・・・・」

 

と聞いてきた。

俺とレインはこのやり取りは不味いと思った。すると、

 

「あ、それよりこれ。さっきのお魚からドロップしましたよ」

 

レインがウインドウを操作し白銀に輝く釣竿をニシダさんに渡した。

 

「おお!こ、これは!?」

 

ニシダさんは白銀の釣竿を見て歓喜していた。

俺はこの場から早々と立ち去るためニシダさんに。

 

「それじゃ、俺達はこれで」

 

「あ、はい。今日はありがとうございました」

 

ニシダさんは満面の笑みで返した。

 

「それじゃ、失礼します」

 

俺とレインはニシダさんに挨拶をして離れた。

幸いにも追いかけてくるギャラリーはいなかったので安心した。

そのまま、俺とレイン家に帰宅することにした。

 

 

家に着いた俺とレインは突如届いたヒースクリフからのメールに衝撃を受けたのと同時に前線に戻らなくてはならないと感じた。

ヒースクリフからのメールには・・・・

 

『休暇中に大変申し訳なく思っている。だがそうもいってられない事態が発生した。

第75層ボス攻略に出て欲しい。すでに被害が出ている。

詳細は明日、血盟騎士団本部にて話す』

 

と書かれていた。




次回、VSスカルリーパー戦


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SAO編 第43話〈VS骸骨の刈り手〉

あと少しでSAO編完結。
次次回から新たな章が始まります。
アンケートの結果はその時報告致します。


昨日ヒースクリフから第75層ボス攻略戦に出て欲しいと言われた俺とレインは今日血盟騎士団本部にて詳細を聞く予定になっていた。

 

「ほ~ら、キリトくん。いつまでもくよくよしないでよ!」

 

レインがベットの端に腰かけてガックリと項垂れている俺に向かって言った。

 

「だってまだ2週間だけなんだぜ」

 

俺はレインに言い訳をするがレインは苦笑いを浮かべたままだった。

 

「ほら、行こう。ボス攻略が終わったらまたこの家で休もうよ」

 

「・・・・・そうだな」

 

俺は既に装備してある『ブラックナイトコート』と背中にある双剣を一瞥しレインとともに第55層、グランザムに転移した。

 

 

第55層グランザム 血盟騎士団本部

 

「偵察隊が全滅!?」

 

俺達がついてまず最初に聞かされたのはボス偵察隊が全滅したという事だった。

 

「昨日のことだ。第75層迷宮区のマッピングは時間はかかったが一人の犠牲者を出さずに出来たのだが、ボス戦はかなりの苦戦が強いられることを予想した・・・・・」

 

俺もその事は予想していた。

第25層、第50層のボスはそれまでのどのボスよりも強く手強かったのだ。

ゆえに今回のクォータ・ポイントも同様と予測したのだ。

 

「そこで、我々は5ギルド合同で二十人偵察部隊として送り込んだ。偵察は慎重に期して行われた。後衛の十人がボス部屋の扉の前で待機し、前衛の十人が部屋の中央にたどり着きボスが出現すると突如、扉が閉じたそうだ・・・・・・ここからは後衛隊十人からの報告だ。その扉は、5分以上開かなかったそうだ。直接打撃、鍵開けスキル等何をしても開かなかったらしい。ようやく扉が開いたとき・・・・・」

 

ヒースクリフは一瞬目を閉じ、言葉を続けた。

 

「部屋のなかには、何もなかったそうだ。十人の姿もボスも消えていた。更に、転移脱出した形跡すらもなかったそうだ・・・・・念のため、第1層の黒鉄宮の生命の碑を確認したが・・・・・」

 

ヒースクリフはそう言うとその先を言葉にせず、首を横に振って答えた。

 

「そんな・・・・・・十人も、どうして・・・・・・」

 

俺の隣でレインが、絞り出すかのように言った。

 

「結晶無効化空間・・・・・・・か」

 

「恐らくそうだろう。アスナ君達の報告では第74層ボス部屋も無効化空間だとのことだそうだから、恐らく今後全てのボス部屋が無効化空間と考えてもいいだろう」

 

「バカな・・・・・・」

 

結晶が使えないとなると、緊急脱出や回復、解毒まで出来ないと言うことだ。ポーションでHPや毒等は回復できるがHPの回復は微々たる物で、思わぬアクシデントが起こるかもしれないボス部屋では速急に回復出来ないのは大きなデメリットとなるだろう。

更に、死者を出さない、それはこのゲームを攻略する上での大前提だ。だが、無効化空間では緊急脱出出来ないためどのような事が起こるか分からず死亡する確率が飛躍的に高まる。

だが、ボスを倒さなければ次へ勧めない以前にこのゲームをクリアする事すらも有り得ない・・・・・・

 

「いよいよ本格的なデスゲームになったと言うわけだ・・・」

 

「ああ。だが、ここで立ち止まる訳にはいかない」  

 

ヒースクリフはキッパリとした声で続ける。  

 

「結晶による脱出が不可能な上に、今回はボスの出現と同時に背後の退路も絶たれてしまう構造らしい。ならば此方とて統制のとれる範囲で可能な限り大部隊をもって当たるしかない。休暇中の君たちを召喚するのは本意ではなかったのだが、了解してくれたまえ」

 

俺は肩を竦めながら。

 

「わかっている。だが、もし危険な状況なのなったら、俺はパーティー全体よりレインを真っ先に守ります。これは俺にとって最優先事項です」

 

俺の確固たる言葉にヒースクリフは微かな笑みを浮かべた。

 

「何かを守ろうとする人間は強いものだ。君の勇戦に期待するよ。攻略開始は3時間後。予定人数は君たちをいれて32人だ。第75層コリニア、ゲートに午後1時集合だ。では解散」

 

そう言うと、ヒースクリフとともにアスナ達も一斉に立ち上がり、部屋を出ていった。

 

 

「3時間か~、どうしよかキリトくん」

 

鋼鉄の長机に腰掛けて、レインが聞いてきた。

俺は、レインの姿をじっ、と見つめる。

 

「レイン、聞いてくれ」

 

「なに、キリトくん?」

 

「レイン、今回のボ・・・・・「はい、ストップキリトくん」・・・・最後まで言わせてくれよ」

 

俺の言葉を遮りレインは俺に近づき。

 

「キリトくん。キリトくん、今わたしにボス攻略戦に出ないで、って言おうとしたでしょ」

 

「・・・・・ああ」

 

「どうして?」

 

「ヒースクリフにはああ言ったが正直、結晶が使えない場所でキミを守りながら戦うのは無理だと思う。それに、もしもキミの身に何かあると思うと・・・・・・恐いんだ」

 

俺がそう言うと、レインは近づき俺の目の前に立った。

 

「キリトくん。わたしは大丈夫だよ。キリトくんを残して死なないよ。わたしが死ぬときは、キリトくんが死んだとき。だって、キミがいない世界にわたしだけいたってなんの意味もないんだもん。わたしはね、キリトくん。キミがいると、この世界が輝いて見えるんだよ」

 

「・・・・・・ああ。そうだな」

 

「それに、わたしはキミと現実世界でちゃんと会って叶えたい事があるんだ」

 

「叶えたい事?」

 

「うん。でも、今はまだ秘密だよ。何時か話すね」

 

「わかった」

 

俺とレインはそのあと集合時間までずっと話していた。

これが最後になるかも知れないからだ。

だか、俺達は絶対に死なないという決意に道溢れていた。レインがいれば絶対に大丈夫。キリトくんがいれば絶対に負けない、と。

そして時間になり集合場所である第75層コリニアに俺達は転移した。

 

第75層主街区コリニア 転移門広場

 

「よぉ、やっぱりお前達も来たか」

 

第75層コリニアの転移門に降り立つとクラインが声を掛けてきた。隣には驚いたことにエギルが両手斧を装備していた。

 

「クライン、それにエギルも。お前らも参加するのか」

 

「なんだってことはないだろう!」

 

「今回はえらい苦戦しそうだって言うから、商売投げ出して加勢に来たんじゃねえか。この無視無欲の精神を理解できないたぁ・・・」

 

「そうか、無私の精神はよーく解った。じゃあお前は戦利品の分配から除外していいのな」

 

「いや、そ、それはだなぁ・・・・」

 

情けなく口ごもるその語尾に、クラインとレインは朗らかな笑い声が重なった。

その笑いは集まった周囲のプレイヤーたちにも伝わり、皆の緊張感がほぐれていくようだった。

午後1時丁度に、転移ゲートから新たなプレイヤーが数名出現した。真紅の長衣に巨大な十字盾を携えたヒースクリフと、血盟騎士団の精鋭だ。彼らの姿にプレイヤーたちの間に再び緊張が走った。

その中には、副団長のアスナ、補佐のユウキ、ラン、リーザにラムまでいた。

 

「欠員はないようだな。よく集まってくれた。状況はすでに知っていると思う。厳しい戦いになるだろうが、諸君の力なら切り抜けられると信じている」

 

ヒースクリフの力強い叫びに、プレイヤーたちは一斉に声を上げ、答えた。

すると、ヒースクリフは俺とレインの方に来ると。

 

「キリト君、レイン君、今日は頼りにしているよ。《二刀流》、《多刀流》、存分にふるってくれたまえ」

 

俺とレインは無言で頷くと、ヒースクリフは再び集団の方を振り返り、軽く片手を上げた。

 

「では、出発しよう。目標のボス部屋直前の場所までコリドーを開く」

 

そう言うとヒースクリフは回廊結晶を取りだし高く掲げ、

 

「コリドー・オープン」

 

と発生した。

結晶は砕け散り、空間に青く揺らめく光の渦が出現した。

俺達は順次に青い光の渦のなかに足を踏み入れた。

 

 

 

第75層迷宮区ボス部屋前

 

軽い目眩にも似た感覚のあと、目を開くとそこはもうすでにボス部屋前だった。

迷宮区は、僅かに透明感のある黒曜石のような素材で組み上げられていた。辺りは、鏡のように磨き上げられた黒曜石を直線的に敷き詰められている。

空気は冷たく湿り、うすい靄がゆっくりと床の上をたなびいている。

 

「・・・・・なんか・・・・やな感じがするね・・・・」

 

「ああ・・・・・」

 

レインが言った言葉に俺は肯定した。

周囲では、プレイヤーたちがそれぞれ固まってメニューウインドウを開き、装備やアイテムを確認している。

俺はレインを伴って一本の柱の陰によると、レインの手を握った。押さえつけていた不安が一気に噴き出してくる。

 

「・・・・・・・だいじょうぶだよ、キリトくん」

 

「・・・・・レイン」

 

「キリトくんは、わたしが守る。・・・・・だから、キリトくんもわたしを守ってね」

 

「・・・・・・ああ、もちろんだよ」

 

俺は握っている手を少し強く握りしめ、握っている手を放した。

ヒースクリフがボス部屋の扉の前に立ち鎧を鳴らしていった。

「みんな、準備はいいかな。今回は、ボスの攻撃パターンに関する情報がない。基本的に我々、血盟騎士団が前衛で攻撃を食い止めるので、その間出来る限りパターンを身切り、柔軟に反撃をしてほしい」

 

攻略組プレイヤーは、ヒースクリフの言葉に無言で頷いた。

 

「では、行こうか。ーーー解放の日のために!」

 

ヒースクリフは黒曜石の扉の中央に手を掛けた。

俺達全員に緊張が走った。

俺とレインは、隣に並び立つクラインとエギルに声を掛けた。

 

「死ぬなよ」

 

「死んだら駄目だよ、二人とも」

 

「へっ、当たり前だぜ」

 

「今日の戦利品で一儲けするまでくたばる気はないぜ」

 

クラインとエギル、二人の言葉の後大扉がゆっくりと開きだした。

プレイヤーたちは、各々の武器を一斉に抜刀し構えた。

俺は、背中から『エリュシデータ』、『ダークリパルサー』を、隣にいるレインは腰から『キャバルリーナイト』、『トワイライト・ラグナロク』を放剣した。

最後に、十字盾の裏側から長剣を音高く抜いたヒースクリフが、右手を高く掲げ、叫んだ。

 

「ーー戦闘、開始!」

 

ヒースクリフを先頭に全員、完全に開ききった扉の中へと走り出す。

内部は、かなり広くドーム状の部屋だった。

全員が部屋に走り込み、自然な陣形を作って立ち止まると直後、背後の扉が轟音を立てながら閉まった。

これで、もはや開けることは不可能だろう。俺達が全滅するか、ボスが死ぬかまでは。

数秒の間沈黙が続いた。ボスは出現しない。何処かにいるのか。俺は索敵スキルをしようかと思った。

 

「おいーー」

 

誰かが、耐えきれないという風に声を上げた。

その時、カサカサと何かが擦れる音がした。

 

「上だよ!!」

 

隣で、レインが鋭く叫んだ。俺達は、はっとして頭上を見上げた。

ドームの天頂部にそれはいた。正確には、貼りついていた。

巨大だ。とてつもなくでかく、長い。

俺は視線を集中させボスへと向けた。

イエローカーソルとともにモンスターの名前が表示された。

 

「スカルーーーー」

 

「ーーーーリーパー!」

 

クラインの言葉に俺は続いてボスの名前を呟いた。

《The Skullreaper》ーーーー骸骨の刈り手。そう、表示されていた。HPゲージは5段ととんでもない量だった。

スカルリーパは不意にドームの天頂部に貼りついていた脚を全て大きく広げーーーーーパーティーの真上に落下してきた。

 

「固まるな!距離を取れ!」

 

ヒースクリフの鋭い叫び声が、凍りついた空気を切り裂いた。

我に返ったように全員が動き出した。

俺達も落下予測地点から慌てて飛び除く。

だが、丁度真下にいた3人の動きが僅かに遅れた。 

 

「おい!ーーーーーこっちだ!はやく!」

 

俺は慌てて叫んだ。

3人は走り出そうとしたがその直後、地響きをたててスカルリーパが落下した。その瞬間、床全体が大きく震えた。

足をとられ、3人がたたらを踏む。そこに向かって、スカルリーパーの右腕、長大な骨の鎌が横薙ぎに降り下ろされた。 

3人は背後から同時に吹き飛ばされた。

中を吹き飛ぶ間にも、HPは猛烈な勢いで減少していく、徐々に黄色から赤へとーーーーそして、呆気なくHPがゼロになった。まだ空中にある3人の体が、立て続けに無数の結晶を撒き散らしながら破砕した。

3人の消滅音が重なって鳴り響く。

 

「一撃で・・・・死亡・・・・だと!?」

 

俺達は、激しく体を強張らせた。

 

「こんなの・・・・・無茶苦茶だよ」

 

隣でレインがかすれた声で呟いた。

このSAOの中では基本的に数値的なレベルさえ高ければそれだけで死ぬ確率は低くなる。特に今日のパーティーは高レベルプレイヤーだけが集まっているため、たとえボスの攻撃といえど数発の連続技なら持ちこたえられるはずだった。それがたったの一撃でーーー。 

一瞬にして3人の命を刈り取ったスカルリーパーは上体を高く持ち上げてとどろく雄叫びを上げると、猛烈な勢いで新たなプレイヤーに目掛けて突進した。

 

「わあああーーー!!」

 

スカルリーパーにターゲットされたプレイヤーは恐怖の悲鳴を上げる。再び骨鎌が高く振り上げられる。

と、その真下に飛び込んだ影があった。

ヒースクリフだった。ヒースクリフは、巨大な十字盾を掲げ鎌を迎撃する。凄まじい衝撃音が鳴り響く。

だが、鎌は2本あった。左側の腕でヒースクリフを攻撃しつつ、右の鎌を振り上げプレイヤーに降り下ろした。

プレイヤーは、ポリゴンとなり爆散した。

これで犠牲者数は4人になってしまった。

スカルリーパはさらにプレイヤーの集団へと鎌を突き刺そうとした。ヒースクリフは、左の鎌を防いでいるため右の鎌を防ぐことは出来ない。

 

「くそっ・・・・・・!」

 

俺は我知らず突き刺されようとしていたプレイヤーの集団の前に飛び込み、轟音を立てて振ってくる骨鎌を左右の剣を交差させ、鎌を受ける。

 

「・・・・!重すぎるーーーー!!」

 

受け止めた鎌はとんでもなく重く徐々に俺に近づいてくる。

その時、新たな剣が白銀の輝きを纏い、下から鎌に命中した。

新たな剣が命中し勢いが緩んだその隙に、全身の力を振り絞って骨鎌を押し返す。

新たな剣を命中させたのはレインだった。

俺の真横に立ったレインは、俺の方を一瞬みて、言った。

 

「わたしとキリトくん、二人同時に受ければいけるよ!わたしとキリトくんの二人なら出来るよ!」

 

「ああ、そうだな。頼むぞ、レイン!」 

 

俺は頷いた。

再び、今度は横薙ぎに繰り出された骨鎌に向かって、俺とレインは同時に右斜め斬り下ろしを放った。

完璧にシンクロした二人の剣が、光の帯を引いて命中する。

今度は、スカルリーパの鎌が弾かれた。

 

「鎌は俺たちが食い止める!!みんなは側面から攻撃してくれ!アスナ、ユウキ、ラン!みんなに指示を頼む!」

 

「「「了解!」」」

 

俺は声を振り絞って叫びんだ。

その声に、ようやく全員呪縛が解けたようだった。それぞれ、武器を構え雄叫びを上げてスカルリーパーの方に向かって突撃する。数発の攻撃がスカルリーパーの体にあたり、ようやく初めてHPゲージが僅かに減少した。

だが、直後、複数の悲鳴が上がった。

鎌を迎撃する合間を縫って視線を向けると、スカルリーパーの尾の先についた長い槍状の骨に数人が薙ぎ払われ、倒れるのが見えた。

 

「くっ・・・・・」

 

俺は、スカルリーパーのHPゲージを見て呆然とした。

多様な攻撃を与えられながらも未だにHPゲージは5段の内5%しか削られてなかった。

 

「キリトくん!」

 

「ああ・・・・・!」

 

俺とレインはスカルリーパーの鎌を捌きながら攻撃をした。だがこれ以上、同じように単身左の鎌を捌いているヒースクリフも余裕はない。

 

「キリトくんっ・・・・・!」

 

"だめだ!これ以上向こうに気を取られると殺られる!"

 

"わかった・・・・・また、来るよ!"

 

"左斬り上げで受ける!"

 

俺とレインは、不思議な感覚に陥っていた。

視線を返すだけでレインがどうしようとするのか分かる気がするのだ。

 

「はあぁぁぁぁあ・・・・・・!」

 

「やあぁぁぁぁあ・・・・・・!」

 

俺達は、息もつかせぬペースで迫り来る攻撃を、瞬時に同じ技で反応し受け止める。

時折繰り出される敵の強攻撃を受ける余波で、わずかずつHPが減少していくが、俺達はそれすらもすでに意識していなかった。




感想など、ありましたらどんどん送ってください。


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SAO編 第44話〈決着、そして・・・・〉

SAO編は今回で終了です。
次回からはSAO HF(ホロウ・フラグメント)編をやります。
アンケート等を送ってくださった方々ありがとうございます。
原作、と言う声も多数ありましたが、HFをやってほしいと言う声が多くありましたので原作をやってほしいと言ってくれた方々スミマセン。

誤字脱字等がありましたらごめんなさい。
感想や評価、等お願いします。


「やあぁぁぁぁあ」

 

「スイッチ!」

 

「オッケー!」

 

「はあぁぁぁぁあ」

 

俺達は、スカルリーパーを相手に幾度となく攻撃をしていた。

2時間程経ったのだろうかようやくスカルリーパーのHPゲージが残り10%になった。

それによりスカルリーパーの動きが止まった隙を逃さず。

 

「全員、突撃!」

 

ヒースクリフの号令の元、攻略組全員の総攻撃を開始した。ユウキとランはユニークスキル《紫閃剣》と《変束剣》を解放した。

アスナは細剣上位ソードスキル《スター・スプラッシュ》8連撃、ユウキは《紫閃剣》ソードスキル《ブラッディー・エッジ》5連撃、ランは《変束剣》ソードスキル《エルネイト》5連撃、クラインは刀ソードスキル《暁零》4連撃、エギルは斧ソードスキル《グラウンド・フォール》5連撃、ヒースクリフは《神聖剣》ソードスキル《ゴスペル・スクエア》4連撃、レインは《多刀流》上位ソードスキル《ディバイン・エンプレス》15連撃を放った。

そして俺は、《二刀流》最上位ソードスキル《ジ・イクリプス》27連撃を繰り出した。

全員の渾身のソードスキルをまともに受けたスカルリーパーは、体を上体にさせ動きを止めた後ポリゴンとなって消滅した。

無限とも言える戦いが終わったが、誰一人として歓声を上げる余裕のある者はいなかった。

皆、倒れるかのように崩れ落ちある者は床に倒れ付していた。

 

"終わったーーーのかなーーーーー?"

 

"ああーーーー終わったーーーーよーーーーー"

 

どうやら、戦闘が終わると同時にレインとの意識が切れたようだ。

俺とレインは互いの背中を合わせて座っていた。

すると、左側でしゃがみこんでいたクラインが聞いてきた。

 

「何人ーーーーー殺られた・・・・?」

 

俺はメニューウインドウを開き今いるプレイヤー数と戦闘が始まる前のプレイヤー数を数えた。

 

「ーーーー14人・・・・・死んだ・・・・・」

 

「・・・・・うそだろ・・・・」

 

エギルの声に、数えた俺も信じんことが出来なかった。

此処にいるプレイヤーは、皆トップレベルの、歴戦プレイヤーだったのだ。たとえ離脱や瞬間回復不可の状況とは言え、生き残りを優先した戦いかたをしていればおいそれと死ぬような事はないからだ。

 

"ようやく4分の3・・・・・"

 

俺は、まだこの上に25層もあることを考えた。

一層ごとにこれだけの数の犠牲者を出してしまえば、最後にラスボスと対面出来るのはただ一人・・・・

 

"恐らくその場合は、あの男だろうな・・・・・・"

 

俺は視線を部屋の奥に向けた。

そこには、他の者が全員床に伏す中、背筋を伸ばし毅然とたっているヒースクリフの姿があった。

無論、ヒースクリフも無傷ではすまなかった。彼のHPゲージはかなり減っておりギリギリイエローにはなっておらずブルーで止まっていた。

俺とレインが二人でどうにかしたあの鎌を、ヒースクリフはなんとたった一人で捌いてたのだ。  

数値的なダメージではなく、精神も消耗しているはずなのだがヒースクリフからは一切それが見えない。

俺は、ヒースクリフの視線を見た。

彼の視線は倒れている団員たちを見下ろしていた。だが、その瞳に宿るのは暖かい、慈しむような感じだった。

そして、その表情は遥かな高みから慈悲を垂れる。

まさに、神の表情、という感じだった。

俺は、かつてヒースクリフとデュエルしたときの事を、思い出した。あのとき、ヒースクリフの最後の反応は人間の速度の限界を超えていた。いや、この世界。SAO、システムに許された限界速度を、だ

そして、ある1つの仮説がたった。 

だが、それを確かめるすべはない。

いや、1つだけ、今此処で出来ることがある。

 

俺はゆっくりと右手に握る《エリュシデータ》を握り直した。

徐々に右足を引いていく。腰を僅かに下げ、低空ダッシュの準備姿勢をとる。

だが、仮に予想が全くの外れなら、俺はすぐさま犯罪者プレイヤーに転落し、容赦ない制裁を受けるだろう。

 

"そのときは・・・・・ごめんな・・・・"

 

俺は背後にいるレインを見た。

同時にレインも俺の方を見て視線が交錯した。

 

「キリトくん・・・・・どうしたの・・・・?」

 

レインは怪訝そうな表情で俺をみるが、俺は声に出さず口だけを動かし、地面を蹴った。

俺とヒースクリフの距離は約10メートル、床ギリギリの高さを一瞬にして駆け抜け、右手の《エリュシデータ》を突き上げた。

片手剣ソードスキル《レイジスパイク》単発突進技。

威力の低い技故に当たったとしても、ヒースクリフを殺してしまうことはないが。

だが、俺の予想通りならーーーーー。

ペールブルーの閃光を引きながら迫る剣尖に、ヒースクリフは流石の反応速度で気付き、目を見開いて驚愕の表情を浮かべ、咄嗟に左手の盾を掲げ、ガードしようとした。

しかし俺は、その動きのクセを、デュエルの時に何度も見て覚えていた。

俺の剣は空中で鋭角に軌道を変え、盾の縁を掠めて引いていくの胸に突き立つ。

だがその寸前で、目に見えないしょうへきと衝突し、激しい衝撃が俺の腕に伝わってきた。

俺とヒースクリフの間には紫のーーーシステムカラーのメッセージが表示された。

[Immortal Object]。不死存在。

本来、プレイヤーに付けられる筈のない属性。

 

「キリトくん、いったい何を・・・・・それは・・・・」

 

追い掛けてきたレインがヒースクリフを見て頭上に表示されているメッセージを見て言った。

 

「これが伝説の正体だ。この男のHPゲージは、どうやろうと決してイエローにまで落ちることはない。そうシステムに保護されているのさ。不死存在、をもつ者はこのゲームのシステム管理者しかない。だが、このゲームには管理者はいない、ただ一人を除いてな・・・・・。この世界に来てからずっと疑問に思っていたことがあった。・・・・あいつは今、何処から俺達を見てこの世界を調整しているのかとな。だが、俺は単純な真理を忘れていたよ。どんな子供も知っていることさ」

 

俺はヒースクリフの顔を見て綴った。

 

「《他人のやっているゲームを傍から眺めるほど詰まらないことはない》」

 

そして俺は一拍おき。

 

「そうだろ・・・・・ヒースクリフ、いや、茅場明彦」

 

辺りが凍りついたかのように静まった。

やがてヒースクリフ、茅場が口を開いた。

 

「・・・・・何故気が付いたのか参考までに教えてもらえるかな」

 

「・・・・・最初におかしいと思ったのはあのデュエルの時だ。

最後の一瞬、あんたあまりにも速すぎたんだよ。それも、システムの許容範囲内をな」

 

俺が言うと茅場は肩をすくめ。

 

「やはりそうか。あれは私にとっても痛恨事だった。君の動きに圧倒され、ついシステムのオーバーアシストを使ってしまった」

 

そしてヒースクリフは、周りを見て言った。

 

「確かに、私は茅場明彦だ。付け加えるのならば、君たちを待つはずだったこのゲームの最終ボスでもある」

 

周りのプレイヤーは騒然とした。

俺の隣にいるレインは衝撃のあまり寄り掛かってきた。

 

「趣味が良いとは言えないぜ。最強のプレイヤーが一転最悪のラスボスかよ」

 

「中々、良いシナリオだろう?予定では攻略が第95層に着くまで言わないつもりだったのだがな。・・・・まさか、4分の3で看破されるとは。・・・・君はこの世界では特に不確定因子だとは思っていたが、君は私の予想を大きく越えてくれたよ」

 

ヒースクリフは薄い笑みを浮かべ言った。

 

「・・・・最終的に私の前に立つのは君とレイン君だと予想していたよ。全10種存在すらユニークスキルで≪二刀流≫スキルは全プレイヤー中、最大の反応速度を持つ者に与えられ、その者が勇者の役割を担うのだ。≪多刀流≫スキルは全プレイヤー中、最大の反射速度と鍛冶スキルを持つ者に与えられる。まさか、レイン君のようなプレイヤーが現れるとは思いもせんかったがな。そして、ユウキ君とラン君の持つ≪紫閃剣≫スキルと≪変束剣≫スキルは特に習得が難しい筈なのだが・・・・まさか、そのスキルを持つ者が現れるとは。ユウキ君とラン君から聞いたときは驚かされたね。・・・・まあ、これがネットワークRPGの醍醐味と言うべきかな・・・・」

 

ヒースクリフは、俺とレイン、ユウキとランを見てそう言った。

その時、凍りついていた用に動きを止めていた血盟騎士団な幹部プレイヤーの一人がゆっくりと立ち上がった。

 

「貴様・・・・貴様が・・・・。俺達の忠誠を----希望を・・・・よくも・・・・よくも」

 

巨大な斧槍を握り締め、

 

「よくもーーー!!」

 

絶叫しながら地を蹴った。

大きく振りかぶった斧槍が茅場へと迫る。

だが茅場の動きが一瞬速かった。

'左手'を振り、出現したウインドウを素早く操作したかと思うと、幹部プレイヤーの体が空中で停止し床に落下した。

HPバーにはグリーンの枠が点滅していた。

 

「麻痺・・・・・?」

 

茅場はそのままウインドウを操作し続けた。

 

「キリトくん・・・・・」

 

横を見ると、レインが地面に倒れていた。

さらに周囲を見渡すと、俺と茅場の二人以外の全員が不自然な格好で倒れていた。

俺はレインの上体を抱え起こし、茅場に視線を向ける。

 

「 ・・・・・どうするつもりだ。この場で全員殺して隠蔽する気か・・・・?」

 

「まさか。そんな理不尽な真似はしないさ」

 

茅場は微笑を浮かべたまま首を横に振った。

 

「こうなってしまっては致し方ない。私は最上層の≪紅玉宮にて君たちの訪れを待つことにするよ。90層 以上の強力なモンスター群に対抗し得る力として育てて来た血盟騎士団、そして攻略組プレイヤーの諸君を途中で放り出すのは不本意だが、何、君たちの力ならきっとたどり着けるさ。だが・・・・・その前に・・・・」

 

茅場は右手の剣を軽く黒曜石の床に突き立て述べた。

 

「キリト君、君には私の正体を看破した報酬を与えなくてはな。チャンスをあげよう。今この場で私と一対一で戦うチャンスを。無論不死属性は解除する。私に勝てばゲームはクリアされ全プレイヤーがこの世界からログアウト出来る。・・・・・どうかな?」

 

「な・・・・・!?」

 

「ダメだよ、キリトくん・・・・・・。君を消すつもりだよ・・・・・・ 」

 

俺は、顔をうつむかせ今までの事を思い出していた。

ディアベルやサチ、ケイタ、クラディールなど死んでいったプレイヤーの事を思い起こしていた。

 

「ふざけるな・・・・・」

 

俺は、俯かせていた顔を起こし茅場を見据えた。

 

「いいだろう。決着をつけよう」

 

「キリトくん・・・・!」

 

「ごめんな。ここで逃げるわけには行かないんだ・・・・・」

 

「・・・・・わかった。その代わり絶対に死なないでね」

 

「ああ、約束する。勝ってこの世界を終わらせてみせる」

 

俺はレインの手を強く握り手を放した。

レインを黒曜石の床に横たわらせ立ち上がる。

無言で此方をみる茅場にゆっくり歩みながら、両手で音高く双剣を抜き放つ。

 

「やめろ、キリト!」

 

「キリトーッ!」

 

「キリト君!」

 

「キリトーー!」

 

「キリトさん、止めてください」

 

エギルやクライン、アスナ、ユウキ、ランの5人が必死に体を起こそうとしながら必死に叫んでいた。

 

「エギル。今まで、剣士クラスのサポーター、サンキューな。知ってたぜ、お前が儲けのほとんど全部、中層ゾーンのプレイヤーの育成につぎ込んでいたこと」

 

目を見開くエギルに微笑みかけてから、顔を動かしクラインを見た。

 

「クライン。・・・・・あの時、お前を・・・・・置いていって、悪かった。ずっと、後悔していた」

 

クラインは滂沱な涙を溢れさせ、再び起き上がろうと激しくもがき、喉が張り裂けんばかりに絶叫した。

 

「て・・・・てめえ!キリト!謝ってんじゃねぇよ!許さねえぞ!ちゃんと向こうで、メシのひとつでも奢ってからからじゃねぇと、絶対許さねぇからな!!」

 

「解った。向こう側でな」

 

俺は視線をアスナたちに向け。

 

「アスナ、ありがとうな色々と俺を助けてくれて。ほんと助かった。・・・・・・ユウキ、ラン。俺は二人に久しぶりに会えて嬉しかったよ。次は向こうで会おう」

 

「キリト君・・・・・」

 

「キリト・・・・」

 

「キリトさん・・・・・・」

 

俺は最後にレインを見て、くるりと体を翻した。

超然とした表情を保ち続けている茅場に向かって、口を開く。

 

「・・・・悪いが、一つだけ頼みがある」

 

「何かな?」

 

「簡単に負けるつもりはないが、もし俺が死んだら、しばらくでいい、レインが自殺出来ないように計らってほしい」

 

「ほう。良かろう」

 

「キリトくん、そんなのないよ!キリトくんーーーー!!」

 

レインが俺の後で絶叫するが俺は振り返らなかった。

右足を引き、左手の剣を前に、右手の剣を下げて構える。

茅場が左手のウインドウを操作し、俺と茅場のHPゲージが同じ長さに調整された。

次いで、奴の頭上に、[changed into mortal object]ー不死属性を解除したシステムメッセージが表示された。茅場はそこでウインドウを消去すると、床に突き立てた長剣を抜き、十字盾の後ろに構えた。

俺と茅場の間に緊張感が高まっていく。

 

"これはデュエルではない。単純な殺しあいだ。そうだーー俺は、あの男をーー"

 

「殺す・・・・・っ!!」

 

鋭い呼気と共に吐き出しながら、俺は床を蹴った。

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」




次回からはHF編です。


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SAO HF(ホロウ・フラグメント)
HF編 第45話〈オレンジプレイヤーの少女〉


イエーイ。
今回から新章SAO HF編始まります。
多少、内容を改変してますのでそこはご了承下さいませ。

それでは、どうぞ!

誤字脱字等がありましたらごめんなさい。


ホロウエリア

 

「はっ、はっ、はっ、はっ」

 

私は今、森のなかをたまに後ろを振り返りながら走っていた。

すると、前方にいきなり黒ずくめのプレイヤーが現れた。

 

「・・・・!?」

 

私は木の幹に足を引っ掻けてしまいそのプレイヤーとぶつかってしまった。

 

「うわッ・・・・」

 

「っ・・・・・」

 

 

 

 

俺は、第76層を攻略しているとき、いきなり体が蒼い光に包まれ、次に目を開けるとそこは森の中だった。

すると、誰かがこっちにやって来た。

そのプレイヤーは木の幹に足を引っ掛け俺とぶつかってしまい二人とも後ろに倒れてしまった。

 

「うわッ・・・・」

 

「ッ・・・・・」

 

俺とぶつかり倒れてしまったプレイヤーは倒れた反動で立ち上り腰に装備している短剣で攻撃してきた。

 

「んッ・・・・!」

 

俺は攻撃してきた短剣の1、2撃目をかわし背中の片手剣を抜き放ち応戦した。

俺は、短剣プレイヤーのカーソルを見て驚愕した。

 

"オレンジプレイヤーか・・・・・!"

 

俺は、カーソルを見て相手がオレンジだと見ると反撃に転じた。短剣プレイヤーも短剣を持ちかえ背の部分で俺の剣を受け止めた。

ぶつかった衝撃で短剣プレイヤーの被っていたフードが外れた。

顔を見ると、女性プレイヤーだった。

しばらく互いに硬直していると、

 

「・・・・あんた、誰・・・・?」

 

と、聞いてきた。

 

「それは、こっちのセリフだ!」

 

俺は、意味が分からず逆に聞いた。

さらに互いの剣をあわせていると俺と女性短剣プレイヤーの隣に何かが上空から落ちてきた

俺と女性短剣プレイヤーは衝撃音とともに一歩下がり、落ちてきた所に視線を向けた。

どうやら何か大きな物体が落下してきたらしい。

俺は思案顔で見るなか、反対側にいる女性短剣プレイヤーは剣を構え警戒していた。

やがて、土煙が晴れるとそこに落下してきたものが姿を現した。

それは、全身骨だらけの百足みたいなものだった。

俺は、視認したその姿を見て凍りついた。

何故なら、

 

「ス、スカルリーパ ーだと・・・!第75層で俺たち攻略組を苦しめたフロアボスがどうしてここに!?」

 

それは、俺たちが倒した筈のフロアボスだったからだ。

 

「くっ・・・・。やっぱり追い掛けてきたか」

 

「そこのきみ!ここにはこんなモンスターが出現するのか!?」

 

「・・・・・ならず者のあんたたちに話す事なんてないわ」

 

「'あんたたち'?一体何を言ってるんだ」

 

するといきなりスカルリーパに似たモンスターが短剣プレイヤーを襲い掛かった。

 

「危ない!」

 

俺は間一髪のところで右手の剣で攻撃を防いだ。

 

「あんた・・・・・どうして・・・・・?」

 

「くっ、俺一人でも受け止められるって事は、フロアボスの時よりパラメーターが弱く設定されているな・・・・。

そこのきみ!」

 

俺は後ろの短剣プレイヤーに声をかけた。

 

「・・・・・何よ」

 

「きみも少しは戦えるんだろ。俺が正面からの攻撃を防ぐから側面から攻撃してくれ!」

 

「・・・・・なんで、見ず知らずのプレイヤーを助けるのよ。

後ろから斬られるかも知れないのに・・・・・」

 

「っ・・・・!俺としてはきみに恨まれる事はしてないんだけどな・・・・・。それにきみもこんなところで死にたくはないだろ。・・・・正直言うと、俺もまだ死にたくはないんでね。頼む!協力してくれ」

 

「・・・・・解った。今だけ、協力してあげる」

 

「サンキュー・・・・。それじゃ、いくぜ!」

 

俺と女性短剣プレイヤーは一時的な協力を取りスカルリーパに似たモンスターに攻撃を開始した。

 

女性プレイヤーの短剣捌きは、見事で的確にモンスターの弱点を狙っていった。

 

「俺も全力でいくか!」

 

俺は、背中に収納しているもう一本の片手剣を抜き放ち左手に装備した。

 

「はあぁぁぁぁあ!」

 

俺は攻撃をパリィし、がら空きの場所に≪二刀流≫ソードスキル≪デブス・インパクト≫5連撃を放った。

≪デブス・インパクト≫は相手の防御力を低下させる効果あり、モンスターのHPゲージに《防御低下》のアイコンが表示された。

それと同時に女性プレイヤーも短剣ソードスキル≪アクセル・レイド≫12連撃を放った。

防御が下がっているお陰で4段あるHPゲージの1本が消えた。

すると、そのとき。

 

「キリトくん。避けて!」

 

と、声が聴こえ慌ててその場を離れると俺の元いた場所を通り過ぎて何かがモンスターに突き刺さった。

それは剣だった。

しかも、1本や2本ではなく少なくとも十数本はあった。

突き刺さった剣は青いライトエフェクトを纏っておりすぐに虚空へと消えた。

 

"今のソードスキルはレインの≪サウザンド・レイン≫。てことは・・・・・"

 

俺は多数の剣が襲来した背後を見るとそこには。

 

「ヤッホー。やっと見つけたよキリトくん」

 

「レイン、心配したぞ。・・・・・と、その前に取り敢えずこいつを倒そう」

 

「了解」

 

俺は合流したレインと短剣使いとともにモンスターに攻撃した。

 

「キリトくん。スイッチ!」

 

「解った!・・・・・スイッチ!」

 

俺とレインはスイッチをしながら、短剣使いは側面からとモンスターの動きが止まると攻撃した。

レインと合流して約30分ぐらいして残りのHPゲージが残り1本の半分までに落ちていた。

 

「キリトくん。とどめだよ」

 

「ああ!はあぁぁぁぁあ・・・・・・スターバースト・ストリーム!」

 

俺は≪二刀流≫上位ソードスキル≪スターバースト・ストリーム≫16連撃を繰り出した。

この技を放っているあいだは無防備になるのだが、それはレインが援護してくれたお陰で大丈夫だった。

≪スターバースト・ストリーム≫16連撃をまともにくらいモンスターはポリゴンの欠片となって爆散して消え去った。

後には戦闘の余韻が残った。




今回は短くてごめんなさい。

感想 等お待ちしてます。


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HF編 第46話〈ホロウ・エリア〉

ごめんなさい。
今回マジ短いです。
2000文字いかなかった。
区切りをつけると何故かそうなってしまう。

本日、2回目の投稿です。

誤字脱字等がありましたらごめんなさい。


スカルリーパーに似たボスモンスターと戦った俺たち3人は、剣をしまい互いに顔を見ていた。

 

「なんとか、勝てたな。レインが来てくれなかったらヤバかったかも知れないな」

 

俺がそう言うと、短剣使いは、

 

「なんで、フロアボスがこんなところに」

 

と、言っていた。

 

「なあ、きみ。今までここにフロアボスクラスは出現したことないのか?」

 

「・・・・・ないわ。私も初めて遭遇した。・・・・・・あと、ありがとう」

 

「え?何が」

 

「最初の攻撃の時、私を守ってくれて・・・・」

 

「いや、こちらもあいつを倒すのを協力してもらったんだからお互い様さ」

 

「でも、あんたたち見えてるんでしょ。私のカーソルの色・・・・・」

 

「ああ、オレンジ・・・・だな」

 

「オレンジ、だね」

 

「だからもう、私に関わらない方がいい」

 

そう言うと短剣使いは去っていこうとした。

 

「待って、ねぇあなた名前は何て言うの」

 

すると、レインが去っていこうとする短剣使いを引き留めた 。

 

「・・・・・フィリア」

 

「フィリアちゃんか~。わたしの名前はレイン、だよ」

 

「俺は、キリトだ」

 

「そう、キリトにレイン・・・・・。それじゃあね 、多分もう会うことはないでしょうけど」

 

「なんでフィリアちゃんは、オレンジカーソルになっているの?」

 

レインは不意にそうフィリアに聞いた。

フィリアは、俺とレインの方を向き言った。

 

「・・・・・わたし、人を殺したの」

 

「「・・・・・・・!」」

 

俺たちが絶句していると。

すると、いきなりアナウンスが流れた。

 

『〈ホロウ・エリア〉データ、アクセス制限が解除されました』

 

「なんだ、今のは!?」

 

「わからない。今の初めて聞いた・・・・・」

 

フィリアは不意に言葉を止めると俺とレインの手を見ていた。

 

「あなたたちそれ!?」

 

「ん?なんだこれ!?」

 

「え、何これ?」

 

俺とレインの手には輝く紋様が浮かび上がっていた。

二人とも同じ光の紋様だった。

 

「今のアナウンスに何か関係あるのかな」

 

「多分、あるだろうな」

 

「ねぇ、その紋様ちょっと見せてくれない」

 

「え、いいよ」

 

フィリアからのお願いにレインがフィリアに紋様を見せた。

 

「やっぱり、これ」

 

「フィリア、この紋様がなんなのか解るのか!?」

 

「ううん。わからない。けど、これと同じ紋様がある場所を知っている」

 

「フィリア、そこに案内してほしい。頼めるかな?」

 

「・・・・・私は人を殺したって言ったでしょ。そんなわたしをあなたたち二人は信じられるの?」

 

フィリアは俺とレインにそう聞いてきた。

 

「信じられるよ。フィリアはあのボスモンスターを俺たちと一緒に戦ってくれたんだ。それが理由だよ」

 

「わたしもフィリアちゃんを信じるよ。だって、故意にその人を殺した訳じゃないんでしょ。何か理由があるんだよね」

 

レインの答えにフィリアは言葉をなくした、そして、

 

「あなたたち二人って余程の馬鹿なのか、それとも単なるお人好しなのかわからないわ」

 

「あ~、よく言われるよ」

 

「確かによく言われるな」

 

「・・・・・・いいわ、案内したあげる。ついてきて」

 

俺とレインはフィリアの先導のもと紋様のある場所に向かった。

 

道中

 

「なあ、レイン。よく、俺の居場所が解ったな」

 

「うん。いや~、最初は焦ったよ。一緒にいたはずのキリトくんがいないんだからさ。キリトくんを探して歩いていると大きな衝撃音がしてね、その場所に行ったらキリトくんがヤバそうだったから≪サウザンド・レイン≫を打ち出しちゃって今に至るわけだよ」

 

「な、なるほど」

 

「ところで、わたしたちどこに向かっているの?」

 

レインが首を傾げフィリアに聞いた。

すると、フィリアはある一点を指差した。

 

「あれ、見える?」

 

指差した先には何か球体みたいなものが浮かんでいた。

 

「あれは、一体・・・・・」

 

「わからない」

 

「「えっ?」」

 

「あの中には入れないのよ。でも、あなたたち二人たその紋様があればあの中に入れる気がするの」

 

俺は向かっているのであろう球体に視線を向けこのエリアがなんなのか考えた。

フロアボスであるはずのスカルリーパーが出てきたり突然転移によってここに転移されたり、今の情報だけではこのエリアがなんなのか解らなかった。




次回はもう少し長くします。

感想、等があったらどんどん送ってください。


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HF編 第47話〈規定テスト〉

連日投稿。
今回も短いです。ご了承下さい。

誤字脱字等がありましたらごめんなさい。

感想等お待ちしてます。


「なあ、フィリア。このフィールドは一体なんなんだ?アインクラッド・・・・の中であることはわかるが、階層も表示されないし・・・・」

 

「ここは〈ホロウ・エリア〉って、呼ばれているらしいわ」

 

「不思議なところだね~」

 

レインが緊張感なしに言った。

 

「でも、これまでここでいろんなプレイヤーと出会ったけど、あんたたちのような紋様を持っているプレイヤーはいなかったわ」

 

「ここには、他にもプレイヤーがいるのか?」

 

「ええ。でも、なんか変って言うか・・・・・まあ、会ってみればわかると思うわ」

 

 

俺たちはそのまま進んで行き途中でエンカウントしたモンスターはすべて、余裕で倒した。

しばらく進んで行くと、洞窟が目に見えた。

 

「この先に、それと同じ紋様があるわ。そこに行けば何かが起こるかも知れない」

 

俺たちはそのまま、洞窟に入っていった。

洞窟に入り少し歩くと出口の光が見えた。

 

 

'飢えた獣人の闘技場'

 

「あの洞窟、随分と短かったな」

 

「うん」

 

俺とレインがそう思っていると、

 

『規定の時間になりました。これより〈ホロウ・エリア〉適正テストを開始します』

 

システムアナウンスが流れた。

 

「何、今の!?」

 

「わからないよ。でも、適正テスト、とか言っていたよ」

 

「ああ・・・・・うわっ、なんだ!?」

 

いきなり俺たちの目の前にシステムウインドウが表示され、

 

'ホロウ・エリア適正テスト'

 

場所:飢えた獣人の闘技場

 

クエスト名:見極めの試練

 

備考:南西の出口を目指して進み途中で行く手を遮るマッスルボーンを倒し、出口前に到達することで己が実力を示せ。

 

と、書かれてあった。

 

「これは、クエストログか?」

 

「そうみたいだね」

 

「て、事はさっき倒したスカルリーパー・・・・・「キリトくん。さっきのスカルリーパーはデモリッシュ・リーパーって表示されてあったよ」・・・・そ、そうか。デモリッシュ・リーパーは第一の試練だったのか?」

 

俺は、スカルリーパーに似ていることに驚いていたため先程のボス名を詳しく見てなかったのだ。

だが、レインはどうやらしっかりとボス名まで確認していたらしく、俺の間違いを訂正してくれた。

 

「わからないわ。私にはあなたたちのような紋様なんて、浮かび上がらなかったもの」

 

「とにかく、このクエストをやろう。フィリア、出来る限り、モンスターやトラップ、状態異常の傾向やマップなど全部教えてほしい」

 

「わ、わかったわ。だから、そんなに慌てて聞かないで」

 

「キリトくん。少し落ち着こうよ、このエリアが楽しみなのはわかるけどさ」

 

俺が興奮しているところをレインが落ち着いて突っ込んでくれた。

 

「・・・・あんた、楽しみなの?」

 

「そりゃな。だって、このエリア見たところ今まで見たことないモンスターが徘徊してるし、もしかしたら新しいスキルや武具等が手に入るかもしれないだろ」

 

「・・・・そうなんだ」

 

「全く、キリトくんは根っからの廃人ゲーマーだね」

 

「そういうレインも、だろ」

 

「まぁね」

 

俺とレインの会話にフィリアは呆気に取られ硬直していた。

 

「ねぇ、二人ってどういう関係なの?妙に仲がいいし・・・・」

 

硬直が解けたフィリアは俺とレインにそう聞いてきた。

 

「ん。レインは、俺の妻だぞ」

 

「キリトくんは、わたしの旦那さんだよ」

 

と、当たり前に返した。

 

「つ、妻!?それに旦那!?もしかしてあんたたち二人って・・・・・」

 

「ああ、結婚してるぞ」

 

「・・・・・・!?」

 

再びフィリアが硬直したため移動に幾分が必要になったのは言うまでもない。

やがて、硬直から解けたフィリアは俺とレインに今までここで戦ったモンスターや状態異常、トラップ等を教えてくれた。

 

「よし、レイン、フィリア。準備はいいか?」

 

「わたしは何時でもいいよ」

 

「私も・・・・・大丈夫」

 

「それじゃ、マップを見ながら移動しよう」

 

俺たちは、クエストクリアを目指すため移動を開始した。

 

 



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HF編 第48話〈管理区〉

謝辞。
少し遅くなりました。ごめんなさい。

あと少しで50話を突破。




「うわぁぁぁぁぁあ」

 

「キャァァァァァア」

 

「イヤァァァァァア」

 

ここ、〈ホロウ・エリア〉でクエストをしている俺たちは今、走って逃げていた。

何故なら、

 

「ブモォォォォォォオ」

 

背後には巨大な斧を持ったミノタウロスが追いかけてきているからだ。しかも、それに伴って何体かのモンスターもついてきていた。

 

「キリトくん、どうにかして~」

 

「いや、無茶言うな!あれは、無理だろ」

 

「もお、いや~」

 

 

時間は事の始まる数刻前に移る。

 

 

俺とレインは第76層攻略の最中、いきなり体が青い光に包まれたかと思うと次の瞬間には見知らぬこのエリアに転移されていた。

俺は、レインと別々に転移され俺は転移され目を開けるとフィリアと言う、オレンジプレイヤーの少女とぶつかってしまった。

出会った当初、フィリアは俺を誰かと勘違いしていたのかいきなり襲いかかってきたのだが、その突如フィリアを追い掛けてきたらしいスカルリーパーに酷似したモンスター、デモリッシュリーパー、と衝突。成り行きで協力そして、合流したレインとともに撃破した。

撃破してしばらくたった後、システムアナウンスが流れた。アナウンスが流れると俺とレインの手に不思議な紋様が現れた。

フィリアはその紋様を見たことがあるらしく俺たちはフィリアの案内のもとその紋様がある場所を目指すことにした。

そして、戦闘をこなして行くことしばらくして今に至る。

 

 

「と言うよりかレインの蹴った小石に当たってこうなったんだけど!」

 

「ごめん~。こうなるなんて思わなかったんだよ~」

 

「わたし全く関係ないじゃん!」

 

そうして逃げて行くこと数分。

 

「こうなったら殺るしかない。レイン、フィリア、殺るぞ」

 

「わかった!」

 

「了解」

 

俺たちは立ち止まり追ってくるミノタウロス達を迎撃することにした。

幸いなことにミノタウロスについてきていたモンスターたちはタゲが無くなったのかいなかった。

 

「いくぞ!」

 

俺はミノタウロスの斧をパリィで弾き≪二刀流≫ソードスキル≪カウントレス・スパイク≫4連撃を繰り出した。

 

「フィリア、スイッチ!」

 

「任せて!やあぁぁぁぁぁあ!」

 

俺とスイッチしたフィリアは、短剣ソードスキル≪インフィニット≫5連撃で追撃した。

レインは、背後に回り込み≪多刀流≫ソードスキル≪インセイン・ピアーズ≫2連撃を放った。

ミノタウロスはネームドモンスターの為、俺たちより少々レベルは高くカーソルは若干赤く表示されていた。

ミノタウロスHPゲージは2段あり、今の攻防で2段の4分の1辺りまで減っていた。

戦闘している場所は広く辺りは草花だけのため十分に間合いをとれる。

俺たちの攻防は20分かかったが、HPは2割程削れたが難なく終えた。

 

「ふぅ~、終わった」

 

「終わったね」

 

「つ、疲れた」

 

俺たちは、戦闘が終わると少しそこで休憩することにした。俺たちはポーションを取り出し飲みながら話した。

 

「ここにいる、モンスターってあんなのばかりかよ」

 

「いや、どうだろうね」

 

「少なくとも私が来たときにはいなかったモンスターよ」

 

「マジか・・・・・・」

 

「そろそろ、いこう」

 

「「わかった(わ)」」

 

俺たちは、マップを見ながら移動を始め対象モンスターのいる場所に向かった。

 

 

 

「あれか?」

 

「そうじゃない」

 

「さっきの奴よりは弱いかも」

 

俺たちは対象モンスター、『マッスルボーン』を壁の角から覗いていた。

『マッスルボーン』のHPゲージは2段に設定されていた。

 

「さっきと同じ感じで攻撃しよう」

 

「了解」

 

「わかったわ」

 

「よし、いくぞ!」

 

覗いていた角を飛び出し攻撃を仕掛けた。

 

「おぉぉぉぉぉお!」

 

片手剣ソードスキル≪ヴォーパル・ストライク≫単発重攻撃。

これにより『マッスルボーン』はノックバックが発生し仰け反り状態になった。

俺は技後硬直により動けないが、レインとフィリアはその限りではない。

まず最初に、フィリアが接近し短剣ソードスキル≪スラストフォール≫重攻撃3連撃を繰り出した。仰け反り状態が無くなろうとした所に更に、重攻撃の為スタンが発生し動かなくなった。

 

「キリトくん、フィリアちゃん避けて!いくよ!・・・・・・≪サウザンド・レイン≫・・・・・・!」

 

続けて俺たちが飛び退いたところにレインの≪多刀流≫最上位ソードスキル≪サウザンド・レイン≫で追撃。

この連続ソードスキルにより『マッスルボーン』のHPゲージは残り1段の半分になっていた。

 

"相変わらずレインの≪サウザンド・レイン≫って便利だよな・・・・・。遠距離から攻撃もできるし近距離でも有効だからな~・・・・・"

 

俺は、そう思っていると『マッスルボーン』のスタンが無くなり攻撃してきた。

威力は高そうだったがスピードはたいしてなさそうなため余裕でかわせた。

スイッチをしながら『マッスルボーン』を切り刻んでいき残りのHPゲージが1割になったところで、

 

「これで、終わりだ!」

 

俺は≪二刀流≫ソードスキル≪シャイン・サーキュラー≫15連撃を叩き込んだ。

『マッスルボーン』はポリゴンの欠片となって爆散し消滅した。

 

 

 

 

 

『マッスルボーン』を倒した俺たちは奥にある洞窟付近に近づくと視界にクエストログが表示された。

そして、

 

『クリアを確認しました。承認フェイズを終了します』

 

と、アナウンスが流れた。

 

「ん?これで終わりか?」

 

「みたいだね」

 

「フィリア。この先か?」

 

「うん」

 

俺たちは洞窟を進み、

 

「あれよ・・・・・」

 

と、フィリアが指差したところを見た。

そこには、俺とレインの手に浮かんでいる紋様と同じ紋様が描かれている石碑が浮かんでいた。

 

「これは・・・・・転移装置・・・・・・か?」

 

「見たところそうみたいだね」

 

「二人とも、これに触れて見てくれない?」

 

「「わかった」」

 

俺とレインは、石碑の紋様に手のひらを触れさせた。

すると、石碑の紋様が光輝いた。

 

「おお・・・・・」

 

「これで、あの球体の中に行けるはずよ」

 

「行ってみるか」

 

「あのさ・・・・・・私も一緒に行ってもいいかな・・・・・?」

 

「もちろんだ」

 

「もちろんだよ、フィリアちゃん」

 

「それじゃあ・・・・・・転移!」

 

俺は石碑に触れ「転移」と言うと俺とレイン、フィリアの体が光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

管理区

 

シュイーン!

 

転移音とともに俺たちは球体内部に転移していた。

 

「ここが、球体の中」

 

「なんか、すごいところだね」

 

「はじめて来てみたけど・・・・・ここ『圏外』みたいね」

 

「ほんとだ。あれ?でも何でガーディアンが来ないんだろう?」

 

「わからない。とにかく辺りを調べてみよう」

 

球体の中には黒鉄宮の地下迷宮で見たコンソールに似た物体と文字が書かれた不明な石版みたいなものが鎮座していた。

俺はコンソールらしきものを調べ始めた。

 

「ここは、管理区、と言うのか。あとは・・・・・・ん?これは・・・・・・実装・・・・・エレメント・・・・・?」

 

「キリトくん!ちょっとこっちに来て!」

 

レインな呼ばれた俺はもうひとつある文字が書かれた石版を調べているレインとフィリアのところに向かった。

 

「ねぇこれ、転移門、じゃない?形は違うけど」

 

俺はフィリアの問いに、

 

「確かに・・・・・転移門、だな」

 

肯定した。

 

「それじゃ、これを使えば出られるってことかな?」

 

「恐らくそうだろう。それと、ここは管理区、と呼ばれているらしい」

 

「へぇー」

 

「俺たちは一回戻るけど、フィリア。君はどうする?」

 

「私は・・・・・ここに残るわ」

 

「そうなの。それじゃフィリアちゃん、わたしとフレンド登録しよう」

 

レインはウインドウを操作してフィリアとフレンド登録をした。ついでに俺もフィリアと、フレンド登録はした。

 

「わかったわ」

 

「それと、フィリア。さっきの転移碑とここをアクティベートしといた。たがら、何時でも転移できるはずだ」

 

「準備が出来しだい、すぐに戻ってくるからね」

 

「わかった・・・・・待ってるわ」

 

俺とレインは転移門にたち、

 

「「転移!アークソフィア!」」

 

と言った。

俺とレインは光に包まれて転移していった。

 

 

 

~フィリアside~

 

「行っちゃったか。・・・・・面白い二人だな」

 

私はキリトとレインのことを思い出して転移門の上に立った。

 

「転移・・・・アークソフィア」

 

だが、

 

『〈ホロウ・エリア〉から転移できません』

 

システムアナウンスが流れ、私はキリトとレインと同じように転移出来なかった。

 

「・・・・・私って、一体・・・・」

 




次回は彼女たちが登場。

感想、等お待ちしてます


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HF編 第49話〈アークソフィア〉

謝辞。
またしても遅くなってしまいました。
ごめんなさい。

HF編は多少独自解釈しておりますのでご了承下さい
感想等送ってくれたら嬉しいです。


「アークソフィア・・・・・戻ってこれたか・・・・・」

 

「うん・・・・・何か随分と久しぶりな気がするね」

 

俺とレインは、〈ホロウ・エリア〉管理区と呼ばれる場所から転移門を通じて、現在の最上層。第76層主街区〈アークソフィア〉に帰ってきた。

今、俺たちはここを拠点として攻略している。

 

「さて、とりあえず・・・・・・・・・」

 

俺が今後の予定をレインと立てようと話始めたその時、

 

「キリトさん!レインさん!」

 

「お兄ちゃん・・・・じゃなかった。キリトくん!レインさん!」

 

2つの声が聞こえてきた。

それに伴い走ってくる音が聴こえてくる。

声が聞こえてきた方を向くと、そこには、二人の女性プレイヤーがいた。

片方は小竜を連れ短剣を装備しているプレイヤー。もう片方は金色の紙をポニーテールにして縛り背中に小さな羽がある片手剣を装備しているプレイヤー。

それは、俺たちの仲間のシリカとリーファだった。

 

「シリカ、リーファ。どうしたんだ。そんなに慌てたようにして?」

 

「どうしたの二人とも慌てていたけど?」

 

俺とレインは不思議そうに首をかしげ二人に聞いた。

 

「「どうした、じゃないよ(ありませんよ)!!」」

 

「「え、え~と・・・・・」」

 

「昨日からお二人の居場所がロストして、メッセージも送れないって聞いて。私・・・・・」

 

「あ、あたしだって、心配したんだよ」

 

「す、すまん」

 

「ごめんね」

 

俺たちはここまで心配してくれてるとは思わなく正直に謝った。

 

「あたし、アスナさんたち呼んでくるね!」

 

リーファはそう言うと走って何処かに行った。

 

「にしても、俺たちが死んでいないって、黒鉄宮にある生命の石碑を確認すればわかるだろうに」

 

俺は至極普通のことを言ったのだが、

 

「いや、無理でしょキリトくん。今、わたしたちは第76層から下に降りられないんだから」

 

「・・・・・そう言えばそうだった」

 

と、レインが言った。

そうなのだ。第76層に上がった俺たちは第76層より下の層に転移出来なくなっているのだ。

そのため、生命の石碑がある黒鉄宮に移動出来ないためそのプレイヤーの安否が確認できない。

俺とレインがそう話していると、突然

 

「パパ!ママ!」

 

と、声が聞こえた。

俺たちは、声がしたところに視線を向けた。

そこには、

 

「ユイ!」

 

「ユイちゃん!」

 

俺とレインの娘のユイが走って此方に来ていた。

俺たちの近くにきたユイは、走りながらジャンプをし俺たちにしがみついてきた。

 

「パパ、ママ。心配したんですからね」

 

「ごめん、ユイ」

 

「ごめんねユイちゃん、心配かけちゃって」

 

「大丈夫です!パパとママが元気そうで私は安心しました」

 

ユイと話をしていると突如。

 

「あー、家族空間をここで出さないでもらえるとうれしいな~」

 

「仕方ないですよ。ユイちゃん、ずっと二人のこと心配してましたから」

 

「あはは。まあ、確かにね」

 

ユイが来たところから新たに三人の声が聞こえた。

声の出所を見ると、そこには三人の女性プレイヤーが呆れ半分、安心半分の感じの顔で立っていた。後ろにはリーファが立っていた。

 

「アスナ!ユウキにランも!」

 

「アスナちゃん・・・・・ユウキちゃんにランちゃんもごめんね、心配かけて」

 

「全くだよ。僕らがどれだけ心配したか」

 

「そうだね、でも二人とも元気そうで安心したわ」

 

「まあ、二人の無茶ぶりには慣れてますから・・・・・。でも、今度からはメッセージの一つや二つちゃんと送ってくださいね!」

 

「「・・・・・はい」」

 

ランの気迫に俺とレインは素直に返事した。

 

「さてと、何時までもここにいると目立ちますから移動しません?」

 

「そ、そうだな」

 

「パパ、手を繋いでほしいのです」

 

「あ、ああ。ほら」

 

俺はユイの要望に答えユイの右手を握った。

 

「それじゃあ、ママはこっちを・・・・・」

 

レインは俺と反対の左手を握った。

 

「わぁーい。それじゃ行きましょう」

 

ユイの嬉しそうな声とともに俺たちは移動した。

その光景を見ていたアスナたちは、

 

"やれやれ・・・・・"

 

と、呆れていたことに俺とレインは気付かなかった。

 

 

 

 

移動した俺たちは、拠点のエギルの店にやって来た。

 

「「た、ただいまぁー・・・・」」

 

「あー!帰ってきた!」

 

「ほらね、言った通りだったでしょ。二人でまた無茶してるって」

 

エギルの店に入るとテーブルに腰掛けていた二人の女性が言ってきた。

 

「リズ、シノン。た、ただいま」

 

「リズっち、シノンちゃん。ただいま」

 

「ただいま、じゃないわよ二人とも!!ユイちゃんがどれだけ心配していたか!」

 

「す、すまん」

 

「ごめん」

 

「まあ、反省しているようだしそれくらいにしてあげたらリズ。ちゃんとユイちゃんと手を繋いで帰ってきているみたいだし」

 

「それもそうね。後で詳しく話してもらうからね二人とも!」

 

「わ、わかってるって」

 

「わ、わかってるよ、リズっち」

 

リズの気迫に若干引いて俺とレインは答えた。

 

「あはは・・・・わたし、クラインさんたち呼んでくるね」

 

「よ、よろしく・・・・・」

 

アスナがクラインたちを呼んでくる間、俺たちはユイに思いっきり甘えさせていた。

 

「よぉ、キリ・・・・のじ・・・・・?」

 

「こんにちは、キリト・・・・・さん、レイン・・・・・さん?」

 

「探しました・・・・よ。二人とも・・・・・?」

 

そして、甘えさせていた結果ユイだけでなくレインまで甘えてきたので、アスナと一緒に入ってきたクラインたちはその光景に口が塞がらなくなっていた。

ちなみにユウキ、ランたちはユイ、レインの俺に対する甘えに、思いっきり呆れていた。



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HF編 第50話〈事情説明〉

ヤバい、スランプかもしれない・・・・・・です。

祝50話!

これからも〈黒の剣士と紅の剣舞士 二人の双剣使い〉をよろしくお願いいたします。。


今回もかなり短いです。ごめんなさい。
感想等ありましたら聞かせてください。

誤字脱字等ございましたら申し訳ありません。


前回の話

 

「キリの字よ、一回死んでこい!」

 

「何でだよ!?」

 

「なんでもだ!」

 

見物人 "やれやれ・・・・・"

 

 

 

レインとユイが俺に甘えているところをバッチリ目撃したクラインは、エギルの店に入ってくるなり言ってきた。

何故だ?

 

「おい、あまり店で騒ぐんじゃねぇぞ!」

 

エギルに怒られた俺とクラインは黙り椅子に腰かけた。

 

「そんじゃ、聞かせてもらおうか。キリの字とレインちゃんが何処で何していたか」

 

「ああ」

 

こうして俺とレインは第76層攻略の途中におきた転移と〈ホロウ・エリア〉について話した。

全てを説明し終え椅子の背もたれに寄りかかった俺とレインは、テーブルに載ってある飲み物を口に含み喉を潤わせた。

 

「〈ホロウ・エリア〉・・・・ね」

 

「まさか、そんな場所があるなんて思いませんでした・・・・」

 

「うん。キリト君とレインちゃんはどうするつもりなの?」

 

アスナからの問いに俺とレインは、

 

「もちろん、〈ホロウ・エリア〉を探索してみるつもりだ」

 

「そうだね。それに向こうにしかない新スキルや武具とかがあるかもしれないし」

 

そう返した。

 

「それに、向こうで会った人もいるしな・・・・・」

 

俺の放った一言にレイン以外の時間が止まった。

 

「・・・・・ねぇ、キリト。それって、もしかして・・・・・」

 

「女子・・・・じゃ、ないよね」

 

リズとユウキの言葉に俺は、

 

「よくわかったな。フィリア、って言うんだ」

 

肯定を返した。

すると、全員レインの方に視線を送り。

 

「レインちゃん!どういうこと!?」

 

と、アスナが慌てて聞いた。

 

「あー、うん。わたしが合流する前に何か会ったみたいなんだよね~。わたしが合流したときにはもうキリトくんたちが『デモリッシュ・リーパー』と戦闘しているときだったから・・・・」

 

そうレインが言うと一斉に落胆した。

 

「レインちゃん・・・なんか可哀想かも・・・」

 

「?????」

 

アスナの言葉にレインは頭に疑問符を浮かべてた。

実際俺もよくわからない。

 

「とにかく、キリトくんとレインちゃん。今日はもう休みなさい!」

 

「「なんで(だ)?」」

 

「スカルリーパーと3人で戦ったんでしょ。フィリアちゃん、ってプレイヤーと」

 

「そうだけど」

 

「だからよ」

 

「今、団長がいないこのゲームの中で、有力者なのはキリトくんとレインちゃんの二人よ」

 

「ボクと姉ちゃんのユニークスキルはまだ熟練度が低いからね」

 

「別に明日にしてもその〈ホロウ・エリア〉ってところは逃げませんよ」

 

俺とレインは全員に説得され、

 

「パパとママは今日。ずっとユイと一緒に休むのですよ」

 

最終的、ユイの説得に、

 

「・・・・・わかった」

 

「・・・・・わかったよ」

 

挫折して今日はもう休むことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋に戻った俺は同じ部屋で生活しているレインとユイに視線を向けた。

まあ、基本は一緒なのだが、たまに一人で寝ることもある。理由単純に部屋が俺のとレインとユイの部屋の二部屋あるからなのだが・・・・・・

 

「いや~なんか疲れたよ~」

 

部屋に入ってベットに飛び込むなりレインはそう言ってきた。

 

「あはは、確かにな。あそこは色々と興味深いな」

 

「そうだね~」

 

「レイン。顔が楽しそうだぞ」

 

「え!?そ、そんなことないよ。そう言うキリトくんだって、顔がにやけているよ」

 

「そうか?」

 

「そうだよ」

 

俺とレインは互いの顔を暫しの間、見ていたが、

 

「ふっ、あははははは!」

 

「ふふふふふふふふっ!」

 

堪えきれなくなり笑ってしまった。

 

「さてと・・・・・ユイは・・・・・と」

 

「キリトくん。しっ」

 

「?」

 

「ユイちゃん、寝ちゃってるよ」

 

「ほんとだな」

 

俺は、先程から静かなユイを見ると、ユイは疲れてしまったのかもう既に寝てしまっていた。

 

「ユイには、心配かけちゃったみたいだな」

 

俺とレインはユイを起こさないようにそっと離れ近くのソファーに腰かけた。

もちろん、レインは俺の隣に座って肩をくっつけている。

 

「うん。キリトくん、さっきアスナちゃんに聞いたんだけどわたしたち、丸一日いなかったんだって」

 

「そうだったのか?俺はてっきり半日かと思っていたけどな」

 

「そうだね。・・・・・キリトくん、覚えてる?ユイちゃんがわたしたちの前にまた来てくれた時のこと・・・・」

 

「ああ・・・・・・もちろんだよ」

 

俺とレインは第75層のボス部屋で起きた時の事から今までの事を振り返っていた。




次回は第75層。
ヒースクリフとの戦いでの事・・・・


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HF編 第51話〈第75層〉

今回は第75層での出来事です。




俺とレインは、約1ヶ月ほど前。

第75層、ボス部屋でヒースクリフとの事を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いが、一つだけ頼みがある」

 

俺は対峙しているヒースクリフに言葉をかけた。

 

「何かね?」

 

「簡単に負けるつもりはないが、俺が負けたときはしばらくでいい、レインが自殺しないように計らってほしい」

 

「ほう。よかろう」

 

「キリトくん、そんなのないよ!キリトくんーーーー!!」

 

レインの絶叫が背後から聞こえてきた。

だが俺は、後ろを見ずヒースクリフを睨み付けた。

ヒースクリフは、ウインドウを操作し[不死存在]を解除した。

ヒースクリフの頭上には解除したことを知らせるシステムメッセージが現れる。

俺は、両手の片手剣《エリュシデータ》と《ダークリパルサー》を構える。

対峙するヒースクリフも片手剣と長大な十字盾を構える。

 

"これは、デュエルなんかじゃない。・・・・・単純な殺しあいだ。そうだ、俺は、この男を・・・・・"

 

「殺す・・・・・・っ!」

 

鋭い呼気とともに吐き出しながら、俺は床を蹴った

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあぁぁぁあ!!」

 

俺はヒースクリフに接近し二刀を振るった。

右切り上げ、左切り下ろし、右切り下ろしの等の剣劇の応酬。

俺の剣はヒースクリフの盾に防がれかわされる。

ヒースクリフの剣を俺は二刀を使い防いでいく。

 

「・・・・・っ!」

 

俺の攻撃を防いだヒースクリフがお返しにと剣を振ってきた。

俺は咄嗟に顔を逸らしたが頬に剣が掠れた。

 

"もてあそばれているのか・・・・・・っ!"

 

俺は背後に下がり剣を構え突進した。

剣にはソードスキルのライトエフェクトが輝いていた。

そのエフェクトを見たのかヒースクリフの口角が僅かに上がった。

 

「っ!・・・・・・・・うおぉぉぉぉぉぉぉお!!」

 

≪二刀流≫最上位ソードスキル≪ジ・イクリプス≫合計27連撃。

コロナのように迫り来る二刀の斬撃をヒースクリフは余裕の表情で防いでいく。

俺は攻撃を防がれていく。このままでは俺のソードスキルが終了したとたんにヒースクリフの剣が迫ってくる。

最上位ソードスキルの為、技後硬直は通常のソードスキルよりは長い。そしてヒースクリフは、その瞬間を逃すはずがない。

俺は最後の二撃を喰らわせようとし、ヒースクリフは盾を構え剣を正中線に構える。

俺とヒースクリフがぶつかる瞬間、

 

「!?」

 

世界にノイズが走った。

ヒースクリフは、視線を今まさに振り下ろそうとした右手を見た。

その顔には困惑の表情が少々浮かべられていた。

ノイズが走ったのは、一秒程。

ノイズが走り歪みが元に戻ると俺とヒースクリフは大きく後ろに跳び離れた。

ヒースクリフはまだ体勢を戻していなかった。

 

"これが最後のチャンス!"

 

俺はそう思い剣を再び構えヒースクリフに迫った。

ヒースクリフは、俺の攻撃を防ぐが先程とは違い余裕の表情が消え失せ、焦りの表情が出ていた。

俺の攻撃が当たった剣や盾には先程と同じようなノイズが起こる。そのノイズはヒースクリフにも出ていた。

だが俺は、その事には目も触れず次々と斬撃を浴びせていく。最後に俺は剣をVの字に切り上げヒースクリフの体勢を崩した。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!」

 

俺はそれを逃さず左手の剣で突きを放つ。

ヒースクリフは剣で防ごうとするが遅い。

ヒースクリフの剣で防がれるよりも早く俺の剣がヒースクリフの胸に突き刺さった。

 

「ぬっ!!」

 

すると、俺とヒースクリフから先程と同様のノイズが発生し広がって行った。

次に目を開け剣の先を見るとそこには誰もいなかった。

剣を突きだしたままの俺にノイズが走る。

 

「終わった・・・・・のか・・・・・・」

 

俺はそういい姿勢を元に戻した。

すると、トスッ、と音がして背後に別の重みがのしかかった。

背中を見るとレインがいた。

 

「・・・・・・」

 

「キリトくん!」

 

「レイン。・・・・・・ようやく終わったよ」

 

「うん、うん。本当に・・・・・・無茶をして。・・・・・・・後でお説教だからね、キリトくん」

 

「うぇ!?いや、お説教は勘弁してほしいかな・・・・・・」

 

「うふふ。考えとくね。ところで・・・・・茅場さん・・・・・・ヒースクリフさんは・・・・・・?」

 

「わからない・・・・・・」

 

俺がレインにそう言うと背中に衝撃を受けた。

 

「な、なんだ!?」

 

「なんだ、じゃねえよキリの字!お前は勝ったんだよ!あのラスボスに勝ったんだよ!」

 

どうやらクラインが俺の背中を叩いたらしい。

よく見るとクラインだけでなくヒースクリフによってうごけなくされていたプレイヤー全員動けるようになっていた。

全員、喜びの歓声をあちこちで挙げていた。

 

「そうか・・・・・俺が・・・・・・」

 

「やったね、キリトくん」

 

「レイン・・・・・・」

 

「キリトくん・・・・・」

 

俺とレインは互いの顔を見ていると。

 

「ごほんごほん。あー、二人だけの世界に入るの止めてもらえます?」

 

「な!?」

 

「え!?」

 

俺とレインはクラインの声に臘梅したが周りプレイヤーは顔をにやけながら「見せつけてくれるなーご両人~」や「うらやましすぎるぞ二人とも~」など言っていた。

 

「キリト君、レインちゃん。せめて場所を考えていちゃついてほしいかな」

 

「キリト~、こっちが恥ずかしくなるよ。そういうのは二人の時にしてよね~」

 

「見ているこっちが恥ずかしいですね・・・・・」

 

「確かに」

 

「ですね」

 

「ちょ、アスナたちまで!?」

 

俺はアスナたちの言葉に突っ込んだがにやけた顔はそのままだった。

ちなみにレインは、俺の隣で顔を紅くしていた。

 

「ところでキリトよ。・・・・・・俺たちは何時になったら現実に出られるんだ?」

 

クラインが唐突に聞いてきた。

 

「そういえばそうだな」

 

ヒースクリフ・・・・・・茅場明彦が消えてから幾分かたっているが何時まで経っても俺たちはいまだにログアウト出来ていなかった。

他のプレイヤーも不思議そうにしていた。

 

「まさか、ヒースクリフが嘘をついていた。・・・・・・なんてことはないよな」

 

「・・・・・・それはないはずだ。あいつは"自分が負けたら全てのプレイヤーがこの世界からログアウト出来る"と宣言していた。あの言葉に嘘はないはずだ」

 

「じゃあなんでまだ出られないんだよ!?」

 

俺は、

 

"茅場はこんな嘘をつくような奴じゃないはずだ、なのに何故?まだ何か足りないのか?・・・・・そう言えば、茅場と戦っているときに起きたあのノイズはいったい・・・・"

 

頭でそう考えていると。

 

「おい!第76層へと続く扉が開いているぞ!」

 

エギルがそんな事を言ってきた。

その言葉に全員騒然とした。

 

「私たちはまだ、戦わなくちゃならないの・・・・」

 

アスナがそう呟いた。

 

「キリトくん・・・・・」

 

「ああ・・・・・」

 

俺は、攻略組プレイヤーを見て大きな声で、

 

「みんな、聞いてくれ!このまま此処にいてもなにも変わらない!とにかく今は次の層へ行くことだ!」

 

そう言った。

その言葉に周りのプレイヤーたちは、

 

「そうだ・・・・・こんなところで立ち止まってたまるか!」

 

「出口がないなら自分で探すしかない!」

 

と、次々と意気込んでいた。

そして俺は、

 

「・・・・・行こう!第76層へ!」

 

と全員に言った。

そして俺たちは第76層へと続く階段を登っていった。




次回、第76層へ


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HF編 第52話〈第76層〉

謝辞、オリジナル回をお待ちの方もうしばらくお待ちください。

感想等ありましたらお聞かせ下さい。


「ここが、第76層・・・・・」

 

第75層からの階段を通って76層へとやって来た俺たちは、フィールドを見るなりそう言った。

 

「結局、現実に帰れなかったね」

 

「ああ。76層にきたらもしくは、と思ったんだがな・・・・」

 

俺がレインと会話していると、クラインの奇声が聞こえた。

 

「ん?どうした、クライン」

 

「キリト、今すぐ自分のウィンドウを開いてアイテム欄を見てみろ!」

 

俺とレインは懸念しながらウィンドウを開きアイテム欄を見た。

 

「な、なんだこれ!?アイテムが文字化けしてる?」

 

「キリトくん、わたしのも文字化けしてるよ!」

 

そこには文字化けした物が表示されていた。

 

「な、おい、アイテムだけじゃなくてスキルデータまでもおかしくなってるぞ!」

 

更に見るとアイテムだけでなくスキルデータまでもがおかしくなっていた。

 

「キリト、他のプレイヤーにも確認したけど全員おかしくなってるみたいだよ!」

 

ユウキが他のプレイヤーの状態も確認したのかそういいに来てくれた。

クラインは、ウィンドウを表示させながら地面に膝をつき嘆いていた。

すると、

 

「おい、おかしくなってるのはアイテムやスキルデータだけじゃねぇぞ!転移結晶の動きが普通じゃない!」

 

エギルがそう言った。

 

「エギル、どう言うことだ?」

 

「ああ、なんでもこの層から下層に転移ができないらしい」

 

その言葉に俺たちは愕然とするしかなかった。

アイテムの文字化け、スキルデータのロスト、下層への転移不可、この短時間で立て続けに起きたのだ無理もないだろう。

 

「・・・・・・みんな!聞いてくれ!」

 

俺は攻略組プレイヤーに声をかけた。

 

「このままいてもなんにもならない・・・・・・ゲームシステムが不安定、下層への転移が無理・・・・・なら俺たちはこれ以上致命的な不具合が発生する前に先へと進むべきだと思う!」

 

「みんな、わたしたちの目的はこのゲームをクリアして現実に戻ることでしょ、なら行こうよ・・・・」

 

そして

 

「「第100層・・・・・紅玉宮へ(に)!!」」

 

俺とレインは同時に言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第76層に来た俺たちに取ってはなにも全てが悪いことではなかった。思いがけない再開と新たな出会いがあった。

 

第76層主街区〈アークソフィア〉転移門広場

 

「ん?」

 

「どうしたの、キリトくん」

 

「いや、なんか文字化けしたアイテムの1つが光ってるんだよ・・・・・」

 

俺は光っているアイテムをオブジェクト化した。

オブジェクト化したアイテムは光を放ち少女の姿へと変えていった。

 

「ふぃ~っ!やっと外に出られました~」

 

「ユイ!?」

 

「ユイちゃん!?」

 

出てきたのは以前消えてしまった俺とレインの娘、ユイだった。

 

「パパ!ママ!また会えましたね!」

 

ユイが笑顔で言うと、背後の転移門が蒼く光った。

誰かが76層へと転移してきたのだ。

 

「ああ!良かった~二人とも。無事だったのね」

 

転移してきたのはリズベットだった。

 

「リズっち!?どうして来ちゃったの!?」

 

「いや、どうして来ちゃったの、って言われてもね~」

 

「あのねリズっち、落ち着いて聞いてね。リズっちはもう76層から下へは転移出来ないんだよ」

 

リズはレインの説明に眼をパチリと瞬きをし、

 

「え、いや、んなわけないじゃんよ」

 

と、笑った。

 

「いや、事実だリズ」

 

俺のマジな顔で言ったことにリズは慌てて転移門に行き、

 

「転移、リンダース!」

 

と言った。

リズの体が光に包まれ消えたかと思いきや、

 

「ちゃんと、転移出来たじゃない。驚かせ・・・・・・ない・・・・でよ?」

 

戻ってきた。

リズは、辺りをキョロキョロ見渡し、

 

「うそ・・・・」

 

夢ではないかと思ったのか眼をごしごし擦りまばたきをした。

 

「こういうわけなんだよ、リズっち」

 

「そんな、あ、アタシの≪リズベット武具店が・・・・・・・」

 

リズは、そのまま地面に崩れ落ち分かりやすいように落ち込んだ。

更に目に光が灯ってなかった。

表情には、"鬱だ"と言わんばかりの感じだった。

 

「ま、まあ、リズっち元気出してよ。76層から上の層にも良いことはたくさんあるはずだよ」

 

「うぅぅ・・・・・・グスッ・・・・・・良いことって何よ?」

 

「それはほら。此処は最前線だろ。なら、それなりに良い鉱石やアイテム、クエスト報酬があるってことだよ」

 

リズは、俺の言葉に考え込んだ。

 

「そうね、確かに此処は最前線だから、それなりにレアな物もゲット出来るかもしれないわね・・・・・」

 

そうリズが呟くと先程とは打って変わって元気になった。

 

「ありがとう、キリト、レイン。こうなったら、此処でも新しくアタシの店を出してやるわ。早速、≪リズベット武具店2号店≫の候補を探しに行かないと。それじゃ、二人ともまたね」

 

そう言うとリズは、走ってどっかに行ってしまった。

 

「行っちゃった・・・・・・」

 

「ああ。・・・・・・・ところでレイン、スキルデータのこと言わなくて良かったのか?」

 

「え、どうして?」

 

「いや、だって、確かお前の鍛冶スキルも熟練度下がってなかったか?」

 

「あ・・・・・・・・忘れてたよ」

 

俺とレインが会話していると突然、

 

『いやぁ~~!アタシの鍛冶スキルが~~!」

 

と声が響いてきたのはそれから間もないことだった。

俺とレインは互いに顔を見合せ苦笑いを浮かべ、ユイとともにエギルの店へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、一回エギルの店へと向かった俺とレインは、ユイをエギルに任せて76層のフィールドに出ていた。

二人でフィールドを探索していると、

 

「きゅる!きゅるるぅ♪」

 

と鳴き声が聞こえた。

 

「ん?今の鳴き声は・・・・・」

 

俺が鳴き声の出どころを探すと、視界の右端に水色の体毛をした小さな竜がこっちに向かってきていた。

 

「お前・・・・・・ひょっとしてピナか!?どうして此処に?」

 

「え、ピナちゃん!?それじゃあ・・・・・」

 

するとピナが来た方角から足音が聞こえてきた。

 

「ピナーっ!もう、勝手にどこかにいったりしないでよ・・・・・あ!キリトさん!レインさん!」

 

「って、シリカ!?」

 

「シリカちゃん!?どうして此処に!?」

 

「えへへ。お久しぶりです、お二人とも」

 

「あ、ああ。久しぶり・・・・・じゃなくて、どうしてシリカが此処にいるんだ?」

 

「噂で聞いたんです。最前線で異常があったと。キリトさんとレインさんが心配で・・・・・あたし、いても経っても煎られなったんです!」

 

シリカは覚悟を決めた眼で言っていた。

 

「あたし、お二人のお手伝いをします。ご迷惑をかけちゃうかもしれませんが、精一杯頑張ります!」

 

「・・・・・わかった、けど一度街に戻ろう。此処は危ないから、な」

 

「はい!よろしくお願いします。キリトさん!レインさん!」

 

「きゅるるっ!」

 

それから俺とレインは、シリカ、ピナを連れて一度街に戻り情報整理等を行い一日を過ごした。

そして、その会話の中で『妖精がいる』と話題になり明日探してみようとレインと相談した。

 




次回はあの二人の登場。


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HF編 第53話〈妖精と落ちてきた少女〉

今回はリーファとシノンが出ます。
セブンファンの方ごめんなさい。

誤字脱字がありましたらごめんなさい。


この層に『妖精』がいる、と聞いたのは夕飯でのことだった。

俺とレインは娘のユイの事をクラインたちに説明した。

アスナ、ユウキ、ラン、ラム、リーザの5人は知っているのだが、クラインたちには説明していなかったため話した。

説明すると事情を知っている5人は素知らぬ顔でお茶を飲んでいた。

案の定、クラインたちは驚愕の表情を浮かべていた。

そして、

 

「はじめまして、パパとママの娘、ユイです!」

 

とユイが自己紹介すると、リズとシリカはいまだに驚きながらも姉のような表情をし、クラインは顔はだらしなくなっていた。なんと言うかまるで、叔父さんになったような顔つきだった。

今日の夕飯はレインとアスナ、エギルが作った物が食卓に並んだ。

席につき食事にしてほぼ食べ終わった時のこと、クラインが『妖精がいる』と言ったのだ。

俺はカップに入っているコーヒーを一口のみ聞いた。

 

「クライン、妖精がいる、ってのはどういうことなんだ?」

 

「ああ、俺も聞いただけだから確証はないんだけどな、なんでも、北西の森に背中に小さな羽があるNPCがいる、らしい」

 

「らしい?どういうことだ?」

 

「それが、NPCにしては不思議なんだとよ。誰かを探しているみたいでな、声をかけたプレイヤーが言うには、一言も喋らずにどっか行っちまった、ってよ」

 

「なるほどな」

 

「んー。前にやった、エルフクエストのような感じなのかな?」

 

「いや、どうだろうな」

 

俺とレインはダークエルフのキズメルの事を思い出していた。

キズメルは、高度なAIを組み込まれていたのであろう。NPCにも関わらず俺たちと同じだったのだ。

今回もそれの類いなのかも知れない。

 

「一応、明日レインと一緒にその場所に行ってみるよ」

 

俺はクラインにそう言い、妖精について詳しく聞いた。

妖精の特徴は、髪が長く緑色の服を着て、腰に長剣を装備している、そして背中に羽がある、ことらしい。

クラインに特徴を聞いた俺とレインはユイと一緒に部屋に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

部屋に戻った俺たちはソファーやベットに腰掛け休んでいた。

 

「にしてもユイ、どうして出てこられたんだ?」

 

俺はレインに抱きついて甘えているユイに聞いてみた。

 

「それが、わたしにもわからないんです。あのとき・・・・・パパとママとお別れした後のこと自体が。パパがわたしのデータをこの世界から切り離してオブジェクトとして持ち出したのは先程聞きましたが、どうしてわたしが目覚めたのかは・・・・・・」

 

「そうなんだ・・・・・・・。でも良かったよ、またユイちゃんと会えて。ね、キリトくん」

 

「俺もだ、ユイ」

 

「パパ・・・・・ママ・・・・・・嬉しいです!また、あのときと同じように3人で暮らせるんですね!」

 

「ああ、そうだな。22層にある俺たちの家にはもう戻れないけど上層にもきっと良い家があるはずだ」

 

「そのときは、また一緒に3人で暮らそうね♪」

 

「はいっ!!」

 

ユイは、天使のような輝く笑顔で頷いた。

俺は、此処に着て最初に嬉しかったことがユイと再会できたことだな、と思った。

 

「さて、わたしはお風呂入ってこよーと。ユイちゃんも一緒に入ろう♪」

 

「もちろんです。あれ、パパは一緒に入らないんですか?」

 

ユイがちょっとした爆弾を投下した。

ユイの言葉で俺とレインの時間が止まった。

だが、それはほんの10秒ほどの事であった。

 

「い、いや、ユイ、パパは一緒に入れないからな」

 

「そ、そうだよ、ユイちゃん」

 

俺とレインは顔を赤くしながら言った。

 

「えー、ダメですか?」

 

ユイが首を傾げながら聞いてきた。

愛娘のその態度で拒否れる親がいたら是非とも会ってみたいな、と俺は思った。

 

「キリトくんが、いいならわたしは別に一緒に入っても構わないよ」

 

レインが顔をさっきよりよ赤くして言った。

ちょ、レインさん、それはちょっと。

 

「うっ。・・・・・・わ、わかったよ。それじゃ、一緒に入ろうか」

 

俺は二人に挫折して一緒にお風呂に入ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を開けると外はもう明るかった。

時間を見ると朝の7時だとわかった。

 

「ん、んんー、あぁー」

 

俺は一回伸びをしベットから降りようとしたのだが。

 

「ん?」

 

降りれなかった。

よく見るとユイとレインが俺の服を握っていた。

そして昨夜の、お風呂から出た後の事を思い出した。

あのとき、ユイの提案で川の字で寝ることにしたのだ。

真ん中がユイ、左右に俺とレインが寝るかたちになった。

そして、今に至る。

俺は見るとユイを挟んでレインが俺の服の裾を握り締めユイは、俺の腰辺りを掴んでいた。

俺は暫し考えたが二人ともまだ起きそうにないので、

 

「もう一回寝るか」

 

二度寝をすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パパ、起きてください」

 

俺は耳元でする声により目を覚ました。

 

「ん、あぁ、おはようユイ」

 

「おはようございます、パパ」

 

「あれ、レインは?」

 

「ママなら下で朝ごはんの準備をしていますよ」

 

俺は、再度伸びをし時間を確認した。

見ると8時半を差していた。

一時間半ほどまた寝たと言うことだ。

俺は寝間着から着替え、

 

「よし、行くかユイ」

 

「はい!」

 

ユイと一緒に下に降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下に降りるとすでに全員揃っていた。

どうやら俺が最後らしい。

 

「おはよう、キリトくん」

 

「おはよう」

 

下に降りるとちょうどレインが一人の朝ごはんを持ってきていた。

 

「よお、キリの字」

 

「おはよう、キリト」

 

席に着くとクラインとリズが挨拶をして来た。

 

「おはよう」

 

俺たちの席順は以下のようになっていた。

左からユイ、アスナ、ユウキ、ラン、リーザ、ラム、クライン、リズ、シリカ、エギル、レイン、俺となっている。

ユイのとなりに俺が座ると何故かみんなレインに俺の右隣を座らせたのだ。

 

「そんじゃ、いただきます!」

 

俺の合掌に、

 

「「「「「「「「「「「いただきます!」」」」」」」」」」」

 

全員後に続いて合掌した。

朝ごはんは、パンにスープ、目玉焼き等の洋食風になっていた。

相変わらすレインの料理は旨い、と思ったのは秘密だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝食を食べ終わると俺とレインはユイをエギルたちに任せて昨日クラインから聞いた妖精の出る場所に来ていた。

 

「此処に妖精がいるのか?」

 

周りは木々に囲まれており空気が清んでいた。

 

「クラインくんが言うにはそうみたいだけど・・・・・」

 

俺とレインは辺りを見渡してみる。

だが、一人も影も形もない。

 

「もう少し進んでみるか・・・・・」

 

「そうだね・・・・・」

 

俺とレインは森の奥に進んでいった。

 

「あれ?今なにか・・・・・?」

 

「レイン、どうかしたか?」

 

「んー・・・・・・・・・ん?キリトくん、あれ!」

 

俺はレインが見ている所を見た。

視線の先にはこちらに背中を向けている人がいた。

女性だった。

その背中には羽がある。

さらに腰には長剣を装備している。

どうやらクラインが言っていた妖精とは彼女のことらしい。話を聞こうと近づいていく。

と、不意に彼女が振り返って此方を見てきた。

 

「・・・・・!?」

 

彼女はどうやら何かを見て驚いているらしかった。

俺とレインはその場に止まり彼女を見る。

すると、

 

「お兄ちゃん?」

 

と、俺に言ってきた。

 

「お、お兄ちゃん!?」

 

「お兄ちゃん!?キリトくん、彼女と知り合いなの!?」

 

「い、いや、しら・・・・・ないと思うけど・・・・・・」

 

いきなり"お兄ちゃん"と呼ばれて驚いている俺たちのところに走って"お兄ちゃん"と、呼んだ彼女が来た。

来ると、俺の手を取り、

 

「会いたかったよ!お兄ちゃん!」

 

と言った。

 

「え、え~と・・・・・・・!?」

 

不意に背後から寒気がした。

 

"な、なんだ?"

 

俺は眼を背後に向けるとレインがにこやかな表情でいた。

だが、眼はにこやかではない。

 

「ちょ、レイン、落ち着け。俺にだって訳がわからないんだよ!!」

 

「へえ、そうなんだ~」

 

俺は再度手を取っている彼女に視線を向けた。

 

「あのさ、君はだれ?それに、俺の妹は此処にはいないぞ」

 

「え?キリトくん、妹がいるの!?」

 

「ああ、その話は後で話すから」

 

「ちょっと、酷いよお兄ちゃん!あたしだよ、あたし!桐ヶ谷直葉、だよ!」

 

「はい?」

 

俺は彼女の言った名前に驚いた。

 

"今、桐ヶ谷直葉って言わなかったか?"

 

その名前は俺の現実世界にいる俺の妹の名前だからだ。

だが、直接な血の繋がりはないのだが・・・・・・。

 

「スグ?なのか・・・・・?」

 

「ようやくわかった?」

 

「あ、ああ、でもなんで此処にそれにその姿は・・・・?」

 

「わたしにもよくわからないんだ。他のゲームをやっている最中、目の前が暗くなったと思って気がついたらこの場所にいて・・・・・あと、この姿はそのゲームのアバター姿だよ」

 

「へえ、ゲームに全く興味を持たなかったスグがゲームね・・・・・」

 

「「驚くところそこなの(なんだ)!?」」

 

俺が別なところに感心してると、スグとレインの突っ込みが入った。

 

「あと、この姿の時の名前はリーファだからよろしくね」

 

「わかった」

 

「ところで・・・・・・その女性はだれ、お兄ちゃん?」

 

「ああ、俺の妻のレインだよ」

 

「はじめまして、リーファちゃん。キリトくんの妻のレインだよ、よろしくね♪」

 

レインの自己紹介にリーファは固まった。

 

「つ、妻、ってことはお兄ちゃん、まさか・・・・」

 

「ん、ああ、結婚してるぞ」

 

俺が言うとリーファはその場で崩れ落ちてしまった。

 

「お兄ちゃんが結婚・・・・・てことはわたし、叔母さん・・・・・」

 

小さくてよく聞き取れなかったのだが表情は暗かった。

 

「あー、スグ、俺達と一緒に来ないか?」

 

「え?」

 

「いや、まだ此処に来たばかりなんだろ、それに久しぶり妹に会えたんだから」

 

「うん!もちろん行くよ」

 

「オッケー、あと、ここではキリトで頼む」

 

「わかったよ、キリトくん」

 

俺とレインはスグ・・・・・リーファとともに主街区アークソフィアに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アークソフィアに向かう道中リーファはレインと仲良く会話をしていた。

どうやら早速打ち解けたようだ。

アークソフィアについた俺たち3人はエギルの店に行くことにした。

その道中、

 

「キリトくん、アレ!」

 

レインが上空をみて言った。

俺とリーファもつられて見ると、上空の一角がノイズらしきもので覆われておりその中心辺りから何かが落ちてきた。

プレイヤーだとわかると俺は落下地点に駆け出した。

 

「・・・・・・・っ!」

 

落ちてきたプレイヤーは女子だった。

目は閉じており気絶しているらしい。

俺は受け止めたプレイヤーをどうするか考えた。

 

「レイン、この子も一緒に連れていってもいいか?」

 

「うん、どうやら気絶しているみたいだしエギルさんの店で保護しよう」

 

俺は落ちてきたプレイヤーをおんぶしてエギルの店に向かった。

 

"あのノイズ、茅場と戦っている時に発生した物と同じやつか?どうして、この子は落ちてきたんだ?"

 

と、俺は道中考えた。




次回はシノンが目覚めます。

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HF編 第54話〈現在(いま)〉

今回はシノンが目覚めます。
次回からストーリー開始します。


誤字脱字がありましたらごめんなさい。


俺は落ちてきた彼女を担ぎ、エギルの店に入ると案の定みんな揃っていた。

エギルに事情を説明して2階の部屋の一角を使わせてもらった。

俺は部屋のベットに彼女を乗せ一緒にきたレインに『目を覚ましたら呼んでくれ』と頼み1階に降りた。

 

 

 

~レインside~

 

わたしは未だに眠り続けている落ちてきた彼女を視ていた。

 

"この子、何処から来たんだろう。NPCじゃないよね、それになんで空から落ちてきたんだろう?"

 

わたしは彼女を見ながら考えていた。

 

"にしても、キリトくんに妹がいたなんて・・・・・わたしにもいるけど、今何処で何やってんのかな・・・・・・七色・・・・"

 

わたしの本名は枳殻虹架、妹の名前は七色・アルシャービン、本名は枳殻七色なのだが、妹の七色とは名前が違う、何故ならそれは両親が離婚したからだ。

日本人の母とロシア人の父の間に生れたてわたしと七色は七色が小さい頃に離婚が原因でわたしは母方の、七色は父方に引き取られてしまった。

 

"でも、七色はわたしの事忘れてるんだろうな"

 

わたしは、キリトくんとリーファちゃんの兄妹を見て、七色の事を思いだした。

 

"今、七色はアメリカにいて元気にやっているみたいだけど・・・・・・・会いたいな、七色に・・・・・"

 

わたしは、頭でそんな風に思いながら眠っている少女を見た。

 

 

少女が起きたのはそれから一時間後の事だった。

 

 

~レインside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

1階降りるとみんな、リーファの事を見ていた。

 

「すまない、待たせたな」

 

「いや、それは構わねぇが・・・・・あの子は大丈夫なのか?」

 

エギルは心配そうに聞いてきた。

 

「ああ、今はレインが観ていてくれてる」

 

「そうか・・・・・・・ところで、キリト。この子は・・・・?」

 

「ああ、この子がクラインの言っていた妖精だよ」

 

俺がそう言うと俺とリーファを除いた者全員驚いていた。

 

「はじめまして、リーファです。お兄ちゃん・・・・じゃなかった、キリトくんがお世話になっています。訳あってこの姿ですが気にしないでください。これからよろしくお願いします!」

 

リーファは立ちあがり自己紹介した。

すると、

 

「ちょっと待って、今リーファちゃんキリトくんの事、お兄ちゃん、って言わなかった?」

 

バッチリ聞いたのかアスナが質問してきた。

 

「そう言えば・・・・・・そうですね」

 

「聞き間違いじゃなければ・・・・・」

 

シリカとリズが思案顔で言った。

 

「ねぇ、姉ちゃん。キリトの妹ってことは・・・・・・」

 

「ユウキ、それは本人が言うと思いますよ」

 

ユウキとランが小声で何かを話していた。

 

「え、えーと、どうしようキリトくん」

 

リーファが俺に聞いてきた。

 

「ああ・・・・・・リーファは現実にいる俺の妹だ」

 

俺がそう言うとユウキとラン以外の7人が驚愕の表情を浮かべていた。

まあ、ユウキとランの姉妹はスグに会ったことあるから当然なのだが・・・・・・。

 

「キリトさん、妹さんがいたんですね」

 

「なるほどー、だからお兄ちゃん、って言ったんだ」

 

それぞれ納得したようにいった。

 

「そう言うわけだ。それじゃ、これからリーファをよろしくな」

 

「よろしくお願いします!」

 

俺が言うとリーファはお辞儀をした。

お辞儀をすると回りから「よろしく」、「よろしくな」などと歓迎の言葉が出た。

ユウキとランはスグと久しぶりに話したいのかウズウズしている感じだった。

そのあと、それぞれ自己紹介をした。

し終わった直後レインからメッセージが届いた。

内容は、

 

『彼女が起きたよ』

 

と書かれてあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫?あなた、自分の名前言える?」

 

レインはベットにいる彼女に話しかけた。

この場には俺とレインを含めてアスナたちもいる。

あのあとメッセージを受け取った俺は、リーファと話しているみんなに、運んできた彼女が起きたことを知らせた。

そして今に至る。

彼女は意識が朦朧としているのか曖昧だった。

 

「う・・・・・ここは・・・・・どこ?」

 

「ここは、アインクラッドの中だよ」

 

「アイン・・・・・クラッド・・・・・?」

 

「うん。SAO・・・・・ソードアート・オンラインの中って言えば分かるかな?」

 

「わからない・・・・わ」

 

レインと会話している間俺たちは後で静かに聞いていた。

 

「名前は分かるかな?」

 

「名前・・・・・?」

 

「そう、ここではキャラネーム、かな」

 

レインがそう言うと彼女は首を傾げた。

 

「えっとね、右手を真下に降ると、ウィンドウが表示されるからそこに表示される名前を言ってくれる?」

 

レインが説明すると、彼女は右手を真下に降り、ウィンドウを表示させた。

 

「Sinon・・・・・・シノン、って言うのがわたしの名前みたい」

 

「そうか~、よろしくね、シノンちゃん♪わたしの名前はレインだよ♪」

 

「え、ええ、よろしく」

 

シノンと名乗ったプレイヤーは早速レインのペースに引き込まれたようだ。

そのあと、俺たちもそれぞれ自己紹介をし覚えていることを聞いた。

だが、シノンは首を横に振ったりしてわからないようだった。

 

「キリトくん、どういう事だと思う?」

 

レインがこちらに来て聞いてきた。

 

「恐らく何らかの原因で忘れているんだと思う。多分、そのうち思い出すと思うけど・・・・・・」

 

「そうだといいけど・・・・・・」

 

しばらくしてシノンは話疲れたのかまたスヤスヤと眠ってしまった。

翌日には元気になっていたが記憶は思い出していないようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在 76層アークソフィア エギルの店 部屋

 

 

約1ヶ月前の事を思いだしていた俺とレインはテーブルに置いてあるお茶を飲んだ。

 

「ふぅ~、にしてもリーファちゃんがキリトくんの妹って聞いたときは驚いたよ。まさか、このゲームに来るなんて」

 

「そうだな。俺もまさか妹が来るなんて思わなかったさ。・・・・・・・にしても、リーファがゲームね」

 

「ん?どういう事?」

 

「いや、リーファの奴ゲームとかに興味を持たなくてさ、そのアイツがゲーム。それもSAOに来るなんて予想もしなかったんだよ」

 

「へえー」

 

「まあ、俺がアイツを此処に越させた理由なんだろうな」

 

「いいな~、キリトくんは」

 

「なんでだ?」

 

「だって心配してくれる妹がいるでしょ。わたしにもいるけど・・・・・こないから・・・・」

 

レインは悲しげな表情をして天井を見た。

 

「レイン・・・・・」

 

「ごめんね、なんかしんみりしちゃって。さあ、お風呂入って寝よう。明日からまた、忙しくなるよ」

 

「お、おう」

 

俺はレインの悲しげな表情を見て、

 

"いるけど来ないって、どういう意味だろう。まあ、こんなデスゲームの中にくる物好きなんてスグくらいだろうからな"

 

と思った。

 

「ところで、俺は何処で寝ればいいんだ?」

 

「?一緒に寝るんじゃないの?」

 

レインはさも当然、という感じで言ってきた。

 

「わ、わかった」

 

「やったー、それじゃお風呂も一緒に入ろう♪」

 

俺は拒否しようとしたのだがレインの先程の悲しげな表情を思い出して、

 

「了解」

 

と言った。

レインと一緒にお風呂場に行きお風呂に入り終わるとすぐさまユイを真ん中にして俺とレインは眠りに落ちた。

 




次回あの子が出ます。


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HF編 第55話〈紫衣の少女〉

今回はあの子が登場。

誤字脱字がありましたらごめんなさい。


昨日早い時間帯に寝たからか、翌日の朝俺は何時もより少々早い時間帯に目が覚めていた。

 

「ん、あぁー・・・・・っ。6時半か」

 

隣を見るとユイとレインはまだ起きそうになかった。

俺は二度寝するかどうか悩んだ結果。

 

「外の空気でも吸ってくるか・・・・」

 

俺は二人を起こさないようにそっと抜け出し、着替えて外に出た。

 

「・・・・・・っ?」

 

外に出ると俺は何処からか視線を感じた。

 

"なんだ、気の・・・・・せいじゃないよな。様子を見るか"

 

俺は視線を気にせず剣の練習が出来る場所を探した。

場所は圏外だが主街区から少し離れた、野原ですることにした。

だが、そこにはすでに先客が存在していた。

 

「ふっ!はぁあ!やぁあー!」

 

スグだった。

スグは此処に来ていた時に装備していた片手剣《デュア・エルマシス》を使って素振りをしていた。

 

「ふぅー。・・・・・・・あれ、お兄ちゃん?どうしたのこんな朝早くに?」

 

スグは俺に気がついたのか剣を降ろして訪ねてきた。

 

「いや、なんか目が覚めちゃってな」

 

「ふぅうん。現実では遅寝遅起きのお兄ちゃんがねー」

 

「うぐっ」

 

俺はスグの言葉に否定することが出来なかった。

 

「まだ、やっていたんだな。剣道」

 

「うん。これでもあたし女子中学剣道全国大会ベスト8なんだらかね」

 

「へえ、さすがだなスグ」

 

「えへへへ」

 

スグは褒められて嬉しいのか照れていた。

 

「お兄ちゃん、久しぶりに試合しない?」

 

「試合って、剣道のか?」

 

「あたしはそれでもいいけど、ゲームの中なんだからこの世界での試合をしようよ」

 

「いいぜ」

 

「やったー」

 

俺とスグはお互いに離れ剣を構えた。

俺は二刀流ではなく片手剣《エリュシデータ》のみで、スグは先程素振りしていた《デュア・エルマシス》を。

スグは剣を両手で持ち剣道の型に、そして俺は、

 

「お兄ちゃん、その構えで実際にやったら怒られるよ」

 

「いいんだよ。俺流剣術だ」

 

左足を前に腰を少し落として剣の先端を地面すれすれまで下げた、何時もの構えをしていた。

 

「それじゃいくよ、お兄ちゃん!」

 

「何処からでも掛かってこい!」

 

これはデュエルではないためシステムによるカウントダウンはない。

俺とスグは互いに動かなかった。が一陣の風の瞬間にスグが接近してきた。

俺は剣をスグの振りかざしてくる剣とぶつけた。

金属と金属がぶつかる音を奏でながら俺とスグはつばぜり合いした。

 

「さすがだねお兄ちゃん。みんながSAO最強夫婦と言う訳がわかったよ!」

 

「ちょっと待て!なんだそのSAO最強夫婦って!?」

 

「え、ユウキちゃんやランさんが『キリトさんとレインさんはSAO最強夫婦なんですよ』って。それにアスナさんたちも頷いていたよ」

 

「なっ!?」

 

俺は知らぬ間に『SAO最強夫婦』と言うあだ名を付けられショックを受けていた。

 

"これ、レインが聞いたらショックどころじゃないよな"

 

と、俺は思った。

 

「やあぁぁあ!」

 

「はあぁぁあ!」

 

スグは片手剣を両手で振るっているため剣道に似た形の攻撃、俺は何時も通りにしてやっていた。

 

「さすが!現実ならもうとっくに決着がついてるのにね!」

 

「ああ!だが、ここはSAOの中だ。そう簡単に負けるつもりはない!」

 

スグにはソードスキルシステムについては一応、教えてはいるのだが馴れないのか、使っては来るが完璧とは言えなかった。

今スグが繰り出してきたソードスキルは片手剣ソードスキル≪シャープネイル≫3連撃。

獣の爪のような傷を縦に3本つける技だ。

スグの片手剣熟練度は600を少々越えてはいるが未だに下位ソードスキルを使っている。

俺は、スグの剣の軌道を読みステップでかわし反撃しようとした、が。

 

「お、のわぁぁあ!」

 

「うわぁぁぁあ!」

 

石に躓いてしまいスグもろとも倒れ込んでしまった。

 

「う、いててて・・・・・」

 

"ん、なんか柔らかいものが・・・・・"

 

俺は手に感じる柔らかい感覚に疑問を生じていると答えをスグが言った。

何故なら。

 

「お、お兄ちゃん!手、手!」

 

「手?」

 

俺の右手がスグの豊満な胸を鷲掴みしていたからだ。

 

「す、すまん!スグ」

 

「う、ううう」

 

スグは起き上がると恨めしいように睨んできた。

 

「すまん、スグ」

 

俺がスグに謝っていると、

 

「キーリートくーん」

 

背後から凍えるような声が聞こえてきた。

俺は首をギシギシと後ろに向けると、そこには、

 

「何やってんのかな~。ねぇ、キリトくん?」

 

絶対零度の表情を浮かべたレインがいた。

 

「れ、レイン!?どうしてここに!?」

 

「どうしててって。起きたらキリトくんがいなかったからだよ。下にもいなかったから、また無茶な事をしてるんじゃないかなと心配して来てみれば・・・・・・ねぇ」

 

「いや、これはだな!?別にわざとじゃなくて石に躓いて転んだだけなんだって!」

 

「へえーー、ふぅーーん」

 

「あの、レインさん」

 

俺はレインを落ち着かせようとして色々やっているのを今まで静かに見ていたスグが笑いスグの方を見た。

 

「あはははは。ごめんなさい。二人の今の光景を見ていると何と言うか、ほんとお似合いだなって」

 

「す、直葉ちゃん。照れるよ~」

 

レインは本気で照れているようでスグの事をリーファではなく現実の直葉の名前を呼んだ。

 

"ふぅ~、なんとかなったか"

 

俺は安堵したが、

 

「あ、キリトくん。後でお話だからね」

 

「・・・・・はい」

 

レインはちゃっかり覚えているようで、レインのお説教が決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あのあとスグはまだ特訓するようなので俺とレインはエギルの店に戻ることにした。

その道中。

 

「ねぇ、キリトくん」

 

「ああ・・・・・」

 

俺とレインは足を止め。

 

「誰だ!跡をつけてきているのは分かっているぞ!」

 

と、背後の角に向けて言った。

すると、

 

「あ~あ。気づかれちゃったか」

 

カツカツと音をならして一人の女性プレイヤーが出てきた。

 

「こんにちは」

 

俺は警戒心を強めて訊ねた。

 

「今までに会ったことはないよな」

 

「うん。はじめましてだよ。わたしはストレア、よろしくね」

 

ストレア、と名乗ったプレイヤーを俺とレインは見た。

紫のドレスのような服を着ており武装は装備してなかった。

 

"ストレア、初めて会うプレイヤーだな。それに、俺の≪索敵≫スキルにも引っ掛からない≪隠蔽≫スキル。一体なで俺達の跡をつけたんだ"

 

俺は朝から気になることをストレアに聞いた。

 

「なんで俺たちをつけた」

 

「なんでって言われても。気になったから、かな」

 

「気になった?」

 

「うん。キリトとレインは有名だからね。だってあの『最強夫婦』って呼ばれるほどだからね」

 

ストレアは先程スグに言われた俺とレイン。二人の合わせた二つ名を言った。

 

「最強、夫婦?」

 

「うん。だって二人はユニークスキル持ちの上結婚してるでしょ。だから、『最強夫婦』だって」

 

『最強夫婦』と言われたレインは何とも言いがたい、微妙な表情を浮かべていた。

 

「へえ、なるほど」

 

ストレアは俺の方に来て俺をじっと見た。

 

「な、なんだ」

 

「やっぱりキリト、可愛いね」

 

「へ?可愛い?」

 

「えいっ」

 

「・・・・・・・っ!?」

 

俺はストレアに頭を抱きしめられストレアの胸に当てられた。

 

「ちょ、なにやってんのよ!?」

 

正気に戻ったレインが慌てたように言ってきた。

 

「えー、だって、キリト可愛いんだもん。こうしたくなっちゃうよ♪」

 

「確かに、キリトくんは可愛いけど・・・・じゃなくて」

 

今、レインの言ったことは聞かなかったことにしよう。うん、そうしよう。

と俺は心のなかで思った。




次回、情報屋アルゴ登場。


感想などありましたら送ってください。


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HF編 第56話〈情報屋アルゴ〉

内容を独自解釈しているためゲームとは多少違います。
申し訳ありません。

誤字脱字等がありましたらごめんなさい。


「で・・・・・何時までその格好なのよキリトくん!」

 

レインが何か言っているが俺には全く聞こえなかった。

何故なら、

 

「えーい。ほれほれ、ぐりぐり♪」

 

ストレアに頭を抱きしめられストレアの胸に当てられてるからだ。

正直、息苦しい。マジで。

しばらくして、ようやく離れてくれたストレアは満足そうな顔をしていた。

 

「うっ・・・・・・うー・・・・・」

 

俺はまだ目が回っており意識が安定しなかった。

レインは横で心配そうに見ていてくれていた。

 

「だ、大丈夫、キリトくん?」

 

「あ、ああ、なんとか・・・・・」

 

「そう?全然大丈夫じゃ無い気がするんだけど・・・・・・・」

 

「気のせいだ」

 

「ごめん二人とも、わたし行かなきゃ行けない場所があるの。それじゃまたね、キリト、レイン」

 

ストレアはそう言うと嵐のように去っていった。

その場で呆然している俺とレインは呆気にとられていた。

 

「あれ?わたし名前教えたっけ?」

 

「いや、恐らく知っていたんだと思うぞ・・・・・あの、二つ名のせいで・・・・・・」

 

「うーん。正直、『最強夫婦』って言う二つ名を喜んで良いのか迷うな」

 

「それは同感」

 

『最強夫婦』ってなんだ一体?

俺はその名前に疑問を持っていた。

すると、

 

「ところでキリトくん」

 

レインが話し掛けてきた。

 

「なんだ?」

 

「ストレアさんの胸どうだった?」

 

「ぶほっ!!」

 

レインの言葉に俺は吹き出してしまった。

もしも今、何か飲んでいたら吹き出して大変なことになっていたであろう。

 

「ちょ、なんでだ!?」

 

俺は慌ててレインに聞くと。

 

「だってキリトくん。顔がだらしがなかったよ」

 

「そ、そんなことは・・・・・」

 

「そんなこと、無いって言える?」

 

「はい、無理です」

 

俺は今ここで更にレインの機嫌を損ねるのは後々大変だと分かっているため正直に言った。

 

「全く。そんなにしたいなら、わたしに言ってくれてもいいのに」

 

レインが小さな声で何かを言っているが俺には聞き取れなかった。

 

「こうなったらこの間アスナちゃんたちに聞いた事の1つを・・・・・」

 

更に何かを言っているがわからない。

 

「?」

 

「よしっ」

 

「???」

 

何故気合いを入れたのかも不明だった。

が、その理由はすぐに判明した。

 

「キリトくん!」

 

「ん?・・・・・・・・ん、んん!?」

 

レインは俺を呼ぶと、ストレアと同じ様なことをした。

 

「ぷはっ・・・・・・れ、レインなんだいきなり!?」

 

「いいから、キリトくんはじっとしていて!」

 

幸いにも朝早い時間帯のためプレイヤーはいないので、他のプレイヤーに見られる事は無いはずなのだが・・・・

 

「ちょ、レインいきなりどうしたんだ!?」

 

「リズっちに聞いたんだ。こうされるのがキリトくんは喜ぶと」

 

「はいぃ!?」

 

"何言ってんだリズは!?"

 

「レイン、言っとくがそれはリズの冗談、と言うか嘘だからな!?」

 

「え、そうなの?」

 

「いや、そうでしょうが!?なんで気付かないんだよ!?」

 

「いや、あまりにもリズっちの顔が真剣だったからつい・・・・・・」

 

「はあ~」

 

俺はため息を出すのと同時に、頭の片隅にリズへのお説教を決めた。

 

「やるならせめて、部屋でやってくれないか・・・・・」

 

「部屋でならいいんだね♪」

 

「まあ、程ほどにたのむ・・・・・」

 

「了解♪」

 

レインは嬉しそうな表情を浮かべていた。

 

「あー、ごほんごほん。そう言うのは人目につかないところでやってくれないカナ?」

 

何処からか声が聞こえてきた。

しかも聞き覚えのある声と口調だ。

 

「「!?」」

 

俺とレインは周囲を見渡した。

すると、

 

「こっちダヨ♪」

 

と聞こえた方に体を向けると。

 

「ヨォ、久しぶりだなお二人さん」

 

「え?アルゴか!?」

 

「アルゴさん!?」

 

そこにいたのは俺達の知り合いである、情報屋アルゴだった。

 

「どうしてここにいるんだ?」

 

俺は当然の疑問をアルゴに聞いた。

 

「どうしてって、失礼なヤツダナ。噂を聞いたのさ、第75層攻略以来、攻略組の面々が戻ってこないってね」

 

「ああ、なるほどな」

 

「それより、アルゴさん。アルゴさんはもう・・・・・・」

 

「76層からしたには移動できないんだロ」

 

「知ってんならどうして?」

 

「ニャハハ、一つはキー坊やレーちゃんたちが心配だったのと、情報屋としての仕事を全うしようと思ってナ」

 

「そ、そうか」

 

「そ、そうなんだ」

 

アルゴの言葉には俺とレインも呆れると言うか、流石アルゴ、と言う考えが真っ先に浮かび上がってきた。

 

「ところでキー坊とレーちゃんはさっき、何してたのカナ」

 

「え、え~と」

 

「そ、それはその・・・・・・」

 

俺とレインはアルゴの問いに目線を横に向けざるを得なかった。

 

「まぁ、いいヨ。でもキー坊とレーちゃん。そう言うのは人目につかないところでやりなヨ」

 

「「っ~~~」」

 

アルゴの言葉に俺とレインは顔を赤くしてしまった。

 

「ニャハハ、そんじゃまたな、お二人さん♪」

 

そう言うとアルゴは颯爽と去っていってしまった。

 

「い、行っちゃった」

 

「あ、ああ」

 

「大丈夫だよね?」

 

「多分、大丈夫じゃないか?」

 

俺とレインは先程の事をアルゴが他人に言いふらすのでは無いかと危惧していた。

 

「まぁ、取り敢えずこれでアルゴからも色々と情報が買えるな」

 

「そ、そうだね」

 

レインはまだ顔が赤かった。

 

「レイン?」

 

「ひぇ、にゃ、にゃにキリトくん!?」

 

「今噛んだよな・・・・・・」

 

「噛んでない、噛んでにゃいよ」

 

「いや、今絶対噛んだよな」

 

「気のせいだよ」

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 

俺とレインは暫しの間沈黙し互いの顔を見合わせた。

 

「そろそろ帰るか」

 

「そいだね、ちょうどいい時間だし」

 

今の時間は7時45分を指していた。

 

「そんじゃ帰るか」

 

「うん♪あ、さっきの事は内緒だよ」

 

「わ、わかってるって」

 

俺はレインに左手をだした。

 

「ほら」

 

「うん」

 

レインも俺の左手に右手を合わせた。

互いの手を繋いだ俺たちはそのままエギルの店に帰ってった。

まあ、エギルの店に入るとその場にいた全員の視線が俺とレインの手を見ていたのは言うまでもなかったが。

ちなみにクラインは血の涙を流すぐらいだった。(実際は流れていないのだが)




感想などありましたら送ってください。
お待ちしてます。


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HF編 第57話〈実験〉

今回は本文の後にキリトとレインが居ない間に起こっている事をのせました。
もし、何かございましたら遠慮なく言ってください。

誤字脱字等がありましたらごめんなさい。


レインとともに戻った俺は、予想通りの一悶着を軽く流し、今はこれからの予定をたてていた。

 

「さてと、どうしょっかな・・・・・」

 

「ホロウ・エリアに行くか階層攻略をするか、でしょ」

 

「ああ。俺的にはホロウ・エリアに行きたいんだけど、こっちの攻略もしないといけないからな・・・・・」

 

「ん~、わたしはどっちでも良いけど」

 

俺たちが悩んでいると、外から走ってくる足音が聞こえた。

足音の主はクラインだった。

クラインは俺とレインを見つけると素早くこっちに来て、

 

「おい、キリトどうなってんだよ!ホロウ・エリアなんて場所存在しないぞ!」

 

と言ってきた。

 

「なに?」

 

「え?」

 

俺とレインはクラインの言葉に疑問符を浮かべた。

昨日帰ってきた後、俺とレインは転移門に『ホロウ・エリア管理区』を登録したのだから。

だが、クラインが言うにはホロウ・エリアには転移出来ないらしい。

 

「ちょっと待て、すぐ行く」

 

俺とレインは急いでクラインとともに転移門広場に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

転移門広場

 

「転移!ホロウ・エリア管理区!」

 

クラインは転移門に立ち転移先を言った。

すると、クラインの体が光に包まれ消えようとした。

が、

 

「ほらな!」

 

転移せずその場て立っていた。

 

「なんでだ?確かに登録したはずなんだが」

 

俺はクラインの代わりに転移門に立ち、

 

「転移!ホロウ・エリア管理区!」

 

と言った。

すると、俺の体が光に包まれた。

光が消え次に目を開けるとそこは、昨日来た『ホロウ・エリア管理区』だった。

 

「ちゃんと転移出来たぞ・・・・・なのに何でクラインは転移出来なかったんだ?」

 

俺は一回辺りを見渡しフィリアがいるか確認したがいなかった。

その後俺はまた『アークソフィア』に戻るため転移門に立ち、

 

「転移!アークソフィア!」

 

と言った。

目を開けるとレインとクラインたちがいた。

 

「転移出来たぞ」

 

「あ、ああ。みたいだな」

 

「じゃあなんでクラインくんは、転移出来なかったんだろう?」

 

「さあ?」

 

「色々やってみるか」

 

「そうだね」

 

俺たちはその後色々と試し、約1時間後エギルの店に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エギルの店

 

「そんで、結局どうだったんだ?」

 

全員が揃うとエギルが言ってきた。

 

「ああ、まず第一に。ホロウ・エリアに転移出来るのは、俺とレインの二人だけみたいだ」

 

俺が言うと続けてレインが、

 

「後、わたしとキリトくんと一緒にそれぞれ一人づつ連れていけるみたい」

 

そう言った。

 

「て、ことはそのホロウ・エリアに行けるのは最大で4人。ってことですか?」

 

「ああ」

 

ランの質問に肯定を返すと辺りは沈黙に包まれた。

 

「でもまあ、キリトとレインさんがいれば大抵のことは大丈夫、じゃないですか?」

 

「あー、まあ、ラムの言う通りなんだがな・・・・・」

 

「ああ、なるほどそう言うことですか」

 

「察しが早くて助かるよラム」

 

俺とレイン。後二人は一緒に行けるがそれ以外は一緒に行けないと言うことだ。

つまり、残りの二人の人選が大変になると言うことになる。

『向こうに行くときは絶対に誰か声を掛けて言ってよ』と昨日、アスナたちに言われたため連れていかなかった後の対応が面倒なのだ。

 

「取り敢えずホロウ・エリアに行くときはなるべく誰かに声をかける。後、向こうで欲しい鉱石やアイテムがあるなら言ってくれ」

 

俺はそう言うと席を立った。

レインも俺に続き席を立ち俺を追いかけて来た。

 

「二人ともどこ行くの?」

 

リズの問いに、

 

「「ホロウ・エリア(だよ)」」

 

俺とレインは同時に答えた。

 

「はぁー、全く二人は・・・・・・いいわ。今日は二人で行ってらっしゃい」

 

「アスナ!?」

 

「アスナさん!?」

 

アスナの言葉にリズとシリカが声をあげた。

 

「仕方ないわよ、まだそこは未踏領域なんだから。それにラムさんの言う通りあの二人なら余程の事がない限り大丈夫よ」

 

アスナは周囲を落ち着かせるためそう言った。

 

「それじゃ、行ってくるな」

 

「ユイちゃん、お留守番お願いね」

 

「はい、なのです!」

 

俺とレインは装備を整え転移門広場に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~リズside~

 

アタシはキリトとレインの二人を見送った後、席を立ち店から出ていこうとした。

 

「あれ、リズどこ行くの?」

 

「んーとね。それは秘密。後少しで出来るからそのときになったら知らせるわね」

 

アスナの問いにアタシはそう答えた。

エギルを除く、アスナたちは頭に?を浮かべていた。

 

"まあ、エギルが知っているのはエギルに協力してもらっているからなんだけどね"

 

アタシはその後、アークソフィアに構える『リズベット武具店2号』の場所に向かった。

 

「店は見つけたけど・・・・・問題はやっぱり、これよね・・・・」

 

アタシは道中ウインドウを開きスキルデータを表示させた。

そのスキルデータは、ここに来るまで熟練度は高かったのだが、今は熟練度が下がってしまっていた。

 

「はあー・・・・・早くスキル熟練度を戻さないといけないわね・・・・・」

 

わたしの呟きは小声のため誰にも聞かれずに虚空へと消えていった。

 

~リズside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~リーファside~

 

お兄ちゃんとレインさん。更にリズさんまで行ってしまった。

あたしは、何時も通りユウキちゃんとランさんのところに向かった。

ユイちゃんはエギルさんのお手伝いを、シノンさんは自室に戻り、シリカちゃんはピナちゃんとお出かけ、アスナさんはラムさんとリーザさんと話していた。

クラインさんは、ギルド風林火山のメンバーたちのところに向かったのかいつの間にか姿が見えなくなっていた。

 

「ユウキちゃん、ランさん」

 

あたしは椅子に腰かけている姉妹に声をかけた。

 

「リーファちゃん、今日もやります?」

 

ランさんの質問に、

 

「はい!お願いします」

 

即答で返した。

 

「じゃあ、行こうか」

 

ユウキちゃんの、先導のもとあたしたちは移動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アークソフィア郊外

 

あたしはここに来てから幼なじみであるユウキちゃんとランさんの二人に稽古をつけてもらっていた。

流石、攻略組でもトップ5に入るほどの腕前とこの1ヶ月程の稽古で感じていた。

 

「はぁーーーっ!」

 

あたしは勢いよくランさんに向かって攻撃した。

 

「ふっ!」

 

ランさんは剣を構えアタシの剣と打ち合った。

 

「なかなかやるようになったね、スグちゃん」

 

「いえいえ、まだまだですよ。藍子さん」

 

今ここにはアタシたち三人しかいないため現実での呼び名を使って呼んでいる。

 

「せいっ!」

 

「うわっ!」

 

あたしは藍子さんの持つ剣から重みがなくなり体のバランスを崩されたところで脇腹に当てられ負けてしまった。

 

「うー、悔しいー」

 

「はあはあ・・・・・・・今のは危なかったです。流石、剣道全国大会ベスト4ですね」

 

「いやー」

 

あたしと藍子さんが剣をしまったところに、見ていた木綿季ちゃんがやって来た。

 

「お疲れ二人とも。どうだった、姉ちゃん?」

 

「ええ、元からの才能も踏まえてかなり上達してますね。これなら、近い内に攻略組に入れるかも知れないですね」

 

「姉ちゃんがそう言うならそうなのかもね」

 

「でも、剣道をしているかなのか、片手剣ソードスキルはちょっと・・・・・・」

 

「あー、確かに。見ていて僕も思ったよ」

 

「ううっ、ごめんなさい」

 

「いえ、スグちゃんが謝ることじゃないですよ」

 

「そうだよ、直葉ちゃん」

 

「うう。でも、今日の朝お兄ちゃんにも言われたんだよね」

 

あたしの言った言葉に藍子さんと木綿季ちゃんは疑問符を浮かべた。

 

「ええっとね・・・・・」

 

あたしは今朝お兄ちゃんと手合わせをした事を話した。

 

「・・・・・・と言うわけなんだよ」

 

「和人さん、スグちゃんのことよく見ているんですね」

 

「流石、兄妹だね」

 

「そ、そんなことないよ。それを言うなら二人の方がすごいよ」

 

「そうかな?」

 

「うん。そうだよ」

 

あたしたちは近くの大樹に寄りかかり会話をしていた。

辺りは人気がなくそよ風が吹き渡り気持ち良かった。

 

「ところで、二人はまだお兄ちゃんの事好きなの?」

 

あたしは、二人に聞いた。

 

「「ごほっ!?」」

 

あたしの言葉に二人は吹き出してしまった。

 

「す、スグちゃん、ど、どうしてそれを!?」

 

「なんで知ってるの!?」

 

二人は慌てあたしに顔を近づけてきた。

 

「だって、二人とも昔からよく、お兄ちゃんを含めて4人で遊んでいたでしょ。あの時の二人の視線とかでわかっちゃたよ」

 

「「ううっ」」

 

二人はバレていたとは思わなかったのか恥ずかしそうだった。

 

「和人さんの事は、今でも好きですけど・・・・・」

 

「和人にはレインがいるから・・・・・」

 

「確かに・・・・・ね。お兄ちゃんが結婚してることにも驚いたけど、二人にあって更に驚いたよ。まさかここで二人に再会できるだなんて♪」

 

紺野家と桐ヶ谷家は近所付き合いだったのだがあたしたちが引っ越してしまい、それ以来会えなかったのだ。

 

「ええ、それは私もです」

 

「もちろん、ボクもだよ」

 

「ふふ。また、お兄ちゃんを含めてこの4人で遊べる日が来るといいですね」

 

「ええ」

 

「うん」

 

あたしたちはその後この世界での事やソードスキル、等の事を話し合った。

 

~リーファside out~

 

 




どうでしたでしょうか。
感想などありましたら送ってください。


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HF編 第58話〈素材集め〉

お気に入り200件突破、ありがとうございます。
これからも宜しくお願いします。


「「転移!ホロウ・エリア管理区!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホロウ・エリア管理区

 

転移門からホロウ・エリアに転移した俺とレインはフィリアがいるかどうか探した。

すると、

 

「また・・・・・・・会えたね」

 

背後から声が聞こえた。

後ろを向くとそこにはフィリアがいた。

 

「フィリア、いたのか」

 

「ヤッホー、フィリアちゃん♪」

 

「うん。それにしても相変わらずなのねあなたたちは・・・・・・・」

 

「あはは・・・・・それで今日はどうする?」

 

「取り敢えずホロウ・エリアのマップを確認してからだな」

 

俺はそう言うとコンソールへと向かった。

 

「なるほど・・・・・・・ホロウ・エリアはこの管理区、そして5つのエリアに別れているんだな。今行けるのはセルベンディスの樹海エリアだけ・・・・・・だな」

 

俺はコンソールを操作して得た情報を二人に伝えた。

 

「へぇー・・・・・・・ってことは、あと4つもエリアがあるって事なんだ」

 

「すごいわね。わたしは1ヶ月も何がどうなのか分からなかったのに来た二日目で解いちゃうんだもの」

 

レインは驚き半分楽しみ半分の表情で、フィリアは落ち込んだ表情をしていた。

 

「それでなんだが、二人とも何処か行きたい場所あるか?」

 

俺は二人に聞いてみた。

 

「あのさ、二人が良いならわたしの武器を強化するのを手伝って欲しいんだけど・・・・・」

 

フィリアがそう言ってきた。

 

「俺は別にいいぞ。レインはどうだ?」

 

「わたしも勿論いいよ」

 

「ありがとう、それじゃ案内するわ」

 

俺とレインはフィリアの武器を強化する手伝いをすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

樹海エリア セルベンディスの神殿前広場

 

管理区から転移してきた俺たちは神殿前広場に来ていた。

 

「うわー、すごいねこの神殿」

 

「ああ、多分何かしらのイベントがあると思うが今はフィリアの武器を強化するのが優先だ」

 

「そうだね。フィリアちゃん、強化素材は何処で手に入るの?」

 

「ここから『聖剣を望んだ待機所』を通った先にある『遺棄された武具実験場』のモンスターからのドロップで手に入るわ」

 

「んじゃ行くか」

 

俺たちは『遺棄させた武具実験場』へと向かうため歩を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあぁあ!!」

 

俺たちは道中、エンカウントしたモンスター『キラービー・ホーネット』三体を相手に戦闘していた。

 

「キリト、スイッチ!」

 

フィリアが後方からそう言ってきた。

 

「わかった!スイッチ!!」

 

「てえぇぇい!!」

 

フィリアは俺とスイッチをし『キラービー・ホーネット』の二体に短剣ソードスキル≪ラウンド・エッジ≫範囲技2連擊を与えた。

 

「フィリアちゃん、スイッチいくよ!」

 

次にレインがフィリアにいった。

 

「わかった。スイッチ!」

 

「やあぁぁぁあ!!」

 

フィリアとスイッチしたレインは≪多刀流≫中位ソードスキル≪ローディエントルージュ≫範囲技6連擊を繰り出した。

フィリアとレインのソードスキルを受けた『キラービー・ホーネット』二体は一瞬動きを止め次の瞬間、ポリゴンの欠片へと爆散した。

その間に俺は、残りの『キラービー・ホーネット』を片手剣ソードスキル≪バーチカル・スクエア≫4連擊を繰り出し、ポリゴンへと変えた。

 

「レイン、フィリア、お疲れ」

 

「う、あぁ・・・・・お疲れ様キリトくん」

 

「お疲れ」

 

剣をしまった俺は二人に声を掛け、レインは伸びをしてから返答し、フィリアは普通に返した。

 

「フィリア、あとどのくらいだ?」

 

「あと、少し・・・・・・・・あ、あれよ」

 

俺たちは目の前にある遺跡とも言えるような建物。

『遺棄された武具実験場』を見た。

 

「ここか」

 

「ええ、ここにいるモンスターを倒すと手に入るらしいわ」

 

「それじゃ、さっさと殺っときますか」

 

「うん。どんな物がドロップするんだろう♪」

 

「行くよ」

 

俺たちはそう会話をし『遺棄させた武具実験場』の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フィリア、今だ!」

 

「わかった!」

 

フィリアは目の前にいるスライムに短剣ソードスキル≪ファッドエッジ≫4連擊を浴びせる。

 

「レイン、そっちはどうだ!」

 

俺は少し離れた所で同じスライムと戦闘しているレインに聞いた。

 

「こっちは後三体!」

 

「わかった!フィリア、大丈夫か」

 

「平気よ、キリトは?」

 

「俺は問題ない。後は・・・・・・こいつらだけか」

 

俺は目の前にいる三体のスライムに視線を向けた。

レインのHPバーは残り9割。

三体のスライム相手に対して善戦しているようだ。

 

「さっさと片付けよう!」

 

俺はそう言うと近くにいるスライム二体に≪二刀流≫ソードスキル≪ダブルサーキュラー≫2連擊を叩き込んだ。

フィリアは残りの一体に短剣ソードスキル≪アクセル・レイド≫9連擊を与えスライムのHPを残り2割にまで減らし、短剣ソードスキル≪クロス・エッジ≫2連擊でポリゴンへと変えさせた。

 

「ナイスフィリア!」

 

俺はHP残り5割のスライムに向けて片手剣ソードスキル≪デットリー・シンズ≫7連擊を浴びせポリゴンの欠片へと変えた。

こちらの戦闘が終わると同時にレイン側からもポリゴンの爆散音が聞こえた。

どうやらレインの方も終わったようだ。

 

「お疲れ、レイン」

 

「お疲れ様~」

 

「どうだフィリア。素材は集まったか?」

 

俺はフィリアに聞くと、フィリアはストレージを開いた。

 

「十分揃ってるわ」

 

「そうか。レインはどうだ?」

 

「わたしの方も問題ないよ。こんなに素材アイテムが手に入ったよ♪」

 

そう言うとレインは俺に共通ストレージを見せた。

 

「うわっ。確かに沢山入ってる」

 

俺はストレージを見てそう言った。

ストレージには先程ドロップしたらしい物が大量に入っていた。

 

「んじゃ、外の転移碑をアクティベートして管理区に戻ろうか」

 

「いいよ♪」

 

「わたしもいいわ」

 

俺たちは『遺棄された武具実験場』を後にし外にある転移碑をアクティベートし管理区に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでフィリアちゃん。武器を強化するアテってある?」

 

管理区に戻るとレインはフィリア訪ねた。

 

「うーん、此方には鍛冶屋がないから、出来れば二人にお願いしたいんだけど・・・・」

 

「それならレインにやってもらったらどうだ?」

 

俺はフィリアにそう提案した。

 

「レインに?どうして?」

 

「いや、レインも鍛冶スキル持っているから」

 

「そうなの!?それじゃあお願いしようかしら」

 

「わたしはいいよ♪」

 

「それじゃあ、お願いね」

 

フィリアは腰に装備している短剣《ソードブレイカー》とストレージから素材アイテム『鈴音鉱石』をレインに渡した。

 

「オッケー。あ、後これ一応装備しといて」

 

レインはそう言うとウインドウを操作し、アイテムをフィリアに転送した。

 

「これは?」

 

「それはわたしが作った短剣だよ。武器の能力はフィリアちゃんの短剣よりちょっと劣るけど・・・・・」

 

「ありがとう。それじゃ少しの間借りるわね」

 

「うん。あ、後これ食料ね」

 

「何もかもありがとう、レイン」

 

「どういたしまして♪」

 

俺とレインは管理区にある転移門に行き、

 

「それじゃ、フィリアなるべく早く来れるようにするからな」

 

「それじゃあね、フィリアちゃん」

 

そうフィリアに言った。

 

「「転移!アークソフィア!」」

 

俺とレインがそう言うと体が光に包まれその場から消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アークソフィア

 

アークソフィアに戻ってきた俺とレインは時間も遅いためそのままエギルの店に向かった。

 

「「ただいま~」」

 

「お帰りなさい!パパ!ママ!」

 

中に入ると夕飯のお手伝いをしているらしくユイが元気よく言ってきた。

 

「お帰りなさい、二人とも。遅かったね」

 

「ゴメンねアスナちゃん」

 

「すまん」

 

現時刻は19時ちょっとまえ辺りなのだがどうやら俺たちが最後らしい。

 

「ほーら、二人とも。もう夕飯だから部屋で着替えてきたら?」

 

椅子に座ってシリカと話しているリズがそう言ってきた。

 

「そうだな。すぐ戻る」

 

「すぐ戻ってくるからね」

 

俺とレインはそう言うと2階の自室に向かい今着ている服から着替えた。

下に戻ると丁度アスナが座る所だった。

 

「それじゃ、キリトくんとレインちゃんも来たことだし、いただきます!」

 

「「「「「「「「「「「「いただきます!!」」」」」」」」」」」」

 

アスナの号令のもと夕飯を食べ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕飯を食べ終わった後、俺は自室に戻りステータス等を確認していた。

 

「んー、やっぱり武器もノイズ化しているせいか威力が高くないな。まあ、スキルが下がったのにも原因はあると思うんだが・・・・・にしても、レベルが下がらなくて良かった。これでレベルまで下がったらヤバいからな・・・・・それにしても、レベル遂に100を超えたか。まさかレベルの上限が100より上とはな・・・・・」

 

俺は一人で呟いているところ、"コンコン"とノック音がした。

 

「ん?誰だ。どうぞ」

 

俺はノブを回し扉を開けた。

そこにいたのは、

 

「ヤッホー、キリトくん♪」

 

レインだった。

 

「どうしたんだレイン?」

 

俺はレインを中に入れ聞いた。

 

「うん。フィリアちゃんの短剣を強化すると同時にキリトくんの片手剣も強化しようかなと思ってね」

 

「それは助かるな。それじゃお願いするな」

 

「任せて~」

 

俺はノイズ化された片手剣をレインに預けた。

 

「なあ、レイン。レインの片手剣もノイズ化してるのか?」

 

「・・・・・・うん。ここに来てまさか武器がノイズ化しているとは思わなかったよ。あ、でも新しく作った剣はノイズ化、発生してないよ」

 

「そうなのか」

 

「うん。それじゃユイちゃんを待たせているからそろそろ戻るね」

 

「ああ。お休みレイン」

 

「お休みキリトくん」

 

レインは俺の部屋から出てユイと同じ部屋に戻って行った。

まあ、俺もよくレインの部屋で寝るんだが。当然、その逆もしかり。

俺は疲れを取るため風呂に入り出るとさっさとベットで寝てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、

~レインside~

 

「よし、これでフィリアちゃんとキリトくんの武器強化完了、っと。後はわたしのかな」

 

わたしは自室でフィリアちゃんとキリトくんの武器を強化していた。

隣ではユイちゃんが興味深そうに静かに見ていた。

 

「んー、リズっちと同じように本格的な釜戸とか買おうかな。でも持ち運びに不便なんだよね、ストレージの容量が一杯になっちゃうし」

 

わたしはそう言いながらもノイズ化してしまっている自分の片手剣を強化していた。

 

「今度、新しい片手剣造ろうかな。ホロウ・エリアで手に入った鉱石を使って・・・・・・・よし、出来た!」

 

わたしは強化した二本の片手剣を見た。

 

「まあ、まだ大丈夫だから平気かな。今度リズっちに相談してみよ」

 

わたしはその後ユイちゃんとともにお風呂に入り、一緒に寝た。

 

"そう言えばキリトくんと一緒に寝ないのってなんか随分久しぶりかな"

 

わたしはそう思ったがすぐに眠りに落ちていった。

 

~レインside out~




多少内容に独自解釈が入っているのでゲーム版とは少し違います。

感想等あったらお知らせ願います


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HF編 第59話〈リズベット武具店アークソフィア店〉

面白いの詰まらないのかどっちなのだろうと迷います。
感想等が有りましたら送ってください。


~リズside~

 

朝、目を覚ましたアタシは時間を見、着替えて下に降りた。

 

「んんっ・・・・・・」

 

下にはエギルが仕込みの準備をしていた。

 

「おお、リズじゃないか。珍しいな早起きなんて」

 

エギルの言葉にアタシは椅子に座って反論した。

 

「ちょっとエギル、それってどういう意味よ。それじゃ何時もアタシが遅くまで寝ているみたいじゃない」

 

「ははは、すまんすまん。それで、早起きしたってことは遂に開業か?」

 

アタシの朝食を持ってきてエギルはそう言った。

 

「ええ、そうよ」

 

アタシはお皿に乗っているパンを食べながらそう答えた。

 

「そうか。にしても平気なのか?」

 

「何が?」

 

「鍛冶スキルだよ。どうやらレインもスキルが下がっちまってるようだしな」

 

エギルはアタシの気にしていることを言ってきた。

 

「まぁ、なんとかなるわ。ここ数日鍛冶スキルを鍛えてきたんだから」

 

「そうか、ならいいんだがな」

 

アタシはエギルと会話をしながら朝食を食べ、食べ終わると席をたった。

 

「ご馳走さま」

 

「おう、お粗末様だ」

 

アタシはそのまま『リズベット武具店2号店』へと向かうため外に出ようとした。

 

「リズ」

 

「ん、何?」

 

「頑張れよ」

 

「・・・・・・ええ。まっかせといて!」

 

アタシはエギルの声援を背に受け止め外に出た。

 

~リズside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~レインside~

 

「そろそろいいんじゃねぇか」

 

わたしはエギルさんの言葉で姿を見せた。

 

「うん・・・・・」

 

わたしは椅子に座りエギルさんに聞いた。

 

「エギルさん、知っていたの?」

 

「ん?何がだ?」

 

「リズっちがアークソフィアにお店を構えるって事」

 

「ああ、相談されたからな」

 

「そうなんだ。・・・・・・・・水くさいなリズっちは」

 

後半の言葉は小さな声で言ったつもりだったのだがエギルさんには聴こえていたようだ。

 

「そんなこと言うなって。多分、みんなを驚かせたかったんだろうぜ」

 

「うん・・・・・・」

 

「さてと、残りもやっちまわねぇとな」

 

「あ、エギルさん厨房借りるね」

 

「おう」

 

わたしはエギルさんに許可を得て厨房に入り朝ごはんを作った。

途中、アスナちゃんとリーザちゃんが手伝ってくれたお陰で早めに作れたことは言うまでもなかった。

それから、みんなが降りてきたのはそれから約1時間後だった。

 

~レインside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝、一人で目を覚ました俺は顔を洗い着替えた後、朝食のため一階に降りた。

 

「おはようございます!パパ!」

 

「おはよう、ユイ。朝から元気だな」

 

俺はそう言うとユイの隣に座りユイの頭を撫でた。

 

「えへへへ」

 

ユイは小動物みたいに気持ち良さそうでいた。

 

「おはよう、キリトくん、ユイちゃん」

 

「おはようございます、リーファさん」

 

「おはよう、リーファ」

 

俺の次にリーファが上から降りてきた。

リーファはまだ眠そうに目をごしごししていた。

しばらくして俺は二人ほどいないことに気がついた。

 

「あれ、リズとラムは?」

 

俺は未だに姿を見せない二人についてユウキたちに聞いた。

 

「さあ、ラムはまだ寝てるんじゃない?」

 

とユウキが言い、

 

「リズさんが寝坊とは珍しいですね・・・・・・」

 

ついでランが言った。

すると、

 

「あれ、まだラム起きてないんですか?」

 

朝ごはんを持ってきたリーザが聞いた。

 

「ああ・・・・」

 

俺はリーザに肯定を返すとリーザはご飯の乗ったトレーをテーブルに置き、

 

「・・・・・ちょっと、起こしてきます」

 

そう言って2階に上がっていった。

その様子をポカンと見ていた俺たちはリーザと同じようにご飯の乗ったトレーを持ってきたアスナとレインの姿をみて戻った。

 

「あれ、リーザちゃんは?」

 

アスナが俺たちに聞いた。

 

「リーザならラムを起こしに2階に・・・・・」

 

と、俺がそう言うと同時に上から、

 

『おわぁぁぁぁぁぉぁあ!ちょ、やめ、起きてるから・・・・・リーザお願いだからやめ、アァーー・・・・・・』

 

と言うラムの悲鳴が聞こえてきた。

俺たちは上を見ながら、

 

「な、なんだ今の」

 

「さ、さぁ?」

 

「な、何かしらね?」

 

俺たちはしばらく上を見て考えていたが、

 

「よし、今のは聞かなかったことにしよう」

 

と、判断することにした。

 

「そ、そうだね」

 

「そうね」

 

「うん」

 

「はい」

 

「ですね」

 

「了解」

 

「わかったわ」

 

順にレイン、アスナ、ユウキ、シリカ、ラン、リーファ、シノンが返事した。

ラムとリーザが降りてきたのはそれから5分後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~リーザside~

 

 

「全く、何時まで寝てるんですかねラムは」

 

わたしは呆れながらラムの部屋へと向かった。

 

「ラム、何時まで寝てるんですか。もうみんな起きてますよ」

 

わたしは扉の前でそう言うが中からは返事がない。

 

「仕方ありませんね」

 

わたしは扉のの取手を握り回して中に入った。

ラムは案の定まだ寝ていた。

わたしは近づき、ラムに、

 

「ラム、起きてください」

 

と言った。

だが、ラムは余程疲れていたのか寝返りを打っただけで目覚めなかった。

 

「はぁー。仕方ありませんね」

 

わたしはそう言うとウインドウを開きあるアイテムを取り出した。

わたしが取り出したアイテムとは、

 

「よっと、・・・・・せいっ!」

 

槍・・・・『フェイタルスピア』だ。

わたしはそれを逆手に持ちラムの開いている口に突っ込んだ。

まあ、正確には口の中には入らずその手前で障壁が発生して防がれているのだが。

すると次の瞬間、ラムはいきなり目を覚ました。

 

「な!?なんだ!?」

 

そりゃ起きたらいきなり口に槍が突っ込まれているのだから驚くのも当然なのだが。

 

「やっと置きましたね。ラム」

 

「おはよう、リーザ。・・・・・・・じゃない!!?え、何でリーザがいるの!?しかも何で槍突っ込まれてんの!?」

 

「何でってそりゃ、貴方が起きないからですよ」

 

「そ、そう。それで、なんかあった?」

 

「今、何時だと思いますか?」

 

「さあ?」

 

「朝の8時です」

 

「そう」

 

「はい、なので二度寝しないで起きてくださいね」

 

「・・・・・・・」

 

「?ラム?」

 

わたしは返事が無いことに疑問を持ちラムを見ると、

 

「言った側から二度寝ですか!?」

 

寝ていた。

 

「ラ~ム~!」

 

わたしは槍を構え、槍ソードスキル≪ジャジメント・ピアッサー≫7連擊を繰り出した。

ラムはその一撃目に入る前に再び目を覚ましたのだが、わたしは関係なしに放った。

 

「おわぁぁぁぁぁぁぁあ!ちょ、やめ、起きてるから・・・・・・リーザお願いだからやめ、アァーー・・・・・・」

 

わたしの攻撃は障壁に防がれているが、圏内ならではのノックバックをラムは受け倒れた。

 

「これで目が覚めたよね」

 

「う、うん」

 

「よろしい、それじゃ早く着替えて下に来て」

 

「わ、わかった」

 

ラムは返事をし、ウインドウを表示させた。

 

「ちょ、ラム、わたしがいるんだからちょっと待ってよ」

 

わたしは慌ててそう言い、急いでラムの部屋を出て廊下に移動した。

しばらくして部屋から出てきたラムと一緒に下に降りていった。

 

~リーザside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラムの悲鳴?らしきものが聞こえて5分後ラムとリーザの2人が上から降りてきた。

降りてきたのはいいんだが、

 

"何で槍握ってるのリーザ!"

 

と、俺はリーザを見て思った。

レインたちも同様に驚いていた。

 

「あれ、どうかしました?」

 

「う、ううん。何でもないよリーザちゃん」

 

「?そうですか?」

 

リーザはアスナの言葉に何時も通りの返しをしていた。

リーザは椅子に座る前に槍をストレージの中に収納した。

 

「ところで、リズはどこ行ったんだ?」

 

俺はそう聞くとエギルが、

 

「ああ、リズの奴ならもう朝飯食って何処かに出掛けたぞ」

 

言った。

 

「そうなの?リズが早起きなんて珍しいわね」

 

「そうだな・・・・・そんじゃ、朝食にするか」

 

「そうだね♪」

 

俺たちは朝、色々あったが何とか朝ごはんを食べる事が出来た。

後にリズに朝の事を話すとリズはすぐさまラムとリーザの所に行き何があったのか聞いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝食を食べ早速出掛けようとしていた所にメッセージが届いた。

 

「ん?メッセージ?」

 

「どうしたのキリトくん?」

 

「いや、リズからメッセージが来た」

 

「リズっちから?・・・・・あれ、わたしにも届いてる」

 

どうやら俺だけじゃなくレインにもリズからのメッセージが来ているらしい。

内容は

 

『アタシの新しいリズベット武具店がオープンしたわ!早速来てちょうだい!』

 

と、書いてあった。

場所は文の下に書かれてあった。

 

「リズの新しい店、出来たのか」

 

「みたいだね。早速行こうよ、キリトくん」

 

「そうだな」

 

俺とレインは文に記されている場所に向かって移動し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リズベット武具店アークソフィア店は商業区画の一角にあった。

 

「なかなか、言い店構えだなリズ」

 

「いいお店だね、リズっち♪」

 

俺とレインは店を見ているリズに向かって声をかけた。

 

「へっへー」

 

リズは此方に振り向き鼻を擦った。

照れているようだ。

 

「新装開店!リズベット武具店へようこそ!!」

 

 




次回、攻略


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HF編 第60話〈攻略〉

「新装開店!リズベット武具店へようこそ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リズの案内で『リズベット武具店2号店』の店内に入った俺とレインは中の内装を見て驚いた。

 

「リンダースにある店と同じ雰囲気、だな」

 

「ふっふーん。どう、凄いでしょ」

 

「凄いね・・・・・・・リズっち」

 

「ああ、マジ凄い」

 

内装はリンダースにある店とほぼ同じ感じで揃っていたのだ、これは凄いと俺とレインは思った。

 

「次は此方よ」

 

俺とレインはリズの案内に奥に入っていった。

 

「リズっち、ここ工房?」

 

「ええ、そうよ」

 

「凄い。いろんな物が揃ってるね」

 

「そんなに凄いのかレイン?」

 

「うん。ここまで揃っている工房は見たことないよ」

 

俺はレインの言葉に余り理解できなかったが、レインの目の輝きから察するに余程凄いことなのだろう。

 

「リズっち、わたしも此処たまに使ってもいいかな?」

 

「ええ、勿論良いわよ」

 

「やった!ありがとう、リズっち♪」

 

レインは嬉しそうに声を弾ませ、リズに抱き付いていた。

 

「ちょ、苦しいわよレイン」

 

「あ、ゴメンね」

 

「それで、早速使ってみる?」

 

「え!良いの!?」

 

「勿論よ。アタシも鍛冶スキルの熟練度上げないといけないもの」

 

そう言うとリズはレインに近づき、小声で何かを言った。

 

 

 

 

~レインside~

 

 

『それに、レインが新しい剣を作って彼奴に上げたら喜ぶんじゃない♪』

 

『ちょ、リズっち!?』

 

『だってレインもそうしたら嬉しいでしょ』

 

『そ、そりゃ、そうだけど~』

 

『それに、攻略が進むでしょうが』

 

『ううぅ~~』

 

『ほらほら、どうすんのよ』

 

『ん~~』

 

『レインが造らないならアタシが造ってあげようかな~』

 

『え!?ちょ、リズっち!?』

 

「キリト~、あんた新しい剣欲しくない?」

 

リズっちはキリトくんにそう聞いた。

 

「ん。あー、確かに新しい剣欲しいな。今のコレ、ノイズ化しても使えるけど」

 

キリトくんは、わたしが今朝返したノイズ化している剣《エリュシデータ》と《ダークリパルサー》を見て言った。

 

「じゃあ、アタシが造ってあげるわよ」

 

「ほんとか、それは助かるな」

 

「へっへーん。任せなさい」

 

いつの間にかキリトくんの剣をリズっちが造ることになってしまっていた。

わたしは慌てて。

 

「ダメーーーーーー!!」

 

~レインside out~

 

 

 

 

 

 

 

「ダメーーーーーー!!」

 

俺はいきなり響き渡ったレインの声に耳を押さえた。

 

「り、リズっちがキリトくんの剣を造るなら、わ、わたしがキリトくんの剣を造ってあげるよ!!」

 

「へっ!?」

 

俺はレインの言った言葉を理解するのに十数秒程かかった。

 

「た、頼めるかレイン?」

 

「も、勿論だよ!」

 

俺はレインの顔を見て、リズではなくレインに頼むことにした。

 

「す、すまんがリズ、また今度造ってくれないか」

 

「いいわよ、別に」

 

リズの顔はにやけてレインを見ており"引っ掛かったな"と言う感じだった。

レインも感じたのか顔を紅くしてリズに寄った。

 

「リズっち!」

 

「フッフフ。とにかくレイン、さっさと造っちゃいましょ」

 

リズは楽しそうな顔をして言った。

 

「もおー、リズっちのバカー!」

 

「それじゃ、レインよろしくな」

 

「う、うん。任せておいて」

 

「ああ。俺は此処の攻略にでも行ってくるからな」

 

「わかったよ。気を付けてね」

 

「了解」

 

俺はレインをリズの店に残し攻略の為、転移門広場のある門に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

転移門広場

 

転移門広場に着いた俺は丁度よく見知ったかおに出会った。

 

「あ、キリトくん!」

 

「ん?リーファ、どうかしたか」

 

「ううん。それよりキリトくんは何処に行くの?」

 

「俺はこれからこの層の攻略に向かおうと思ってるんだが」

 

「じゃあ、わたしも着いてってもいい?」

 

「んー、まあ、いいか。良いぜ」

 

「やったー。あれ、レインさんは?」

 

リーファはレインがいないことに気がついたのか聞いてきた。

 

「ああ、レインは今リズの所にいるぞ」

 

「リズさんの所?なるほど、リズさんのお店ね」

 

「ああ、そこで俺の剣を造ってもらってるところなんだよ」

 

「なるほど~」

 

「それじゃ行くか?」

 

「うん。行こうよ、キリトくん!」

 

俺はリーファとパーティーを組んでアークソフィアから圏外に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第76層 迷宮区

 

「はあぁぁぁぁあ!・・・・・・・・とりゃぁぁぁぁあ!」

 

「ナイス、リーファ。次来るぞ!」

 

「オッケー、キリトくん!!」

 

俺とリーファは第76層の迷宮区にて『リザードマン・ナイト』2体を相手していた。

『リザードマン・ナイト』の武装は片手剣と盾だ。

 

「決めろ、リーファ!」

 

「うん、任せて!・・・・・ええい、とりゃぁぁぁぁあ!!」

 

リーファの放った片手剣ソードスキル≪スター・Q ・プロミネンス≫6連擊をくらい『リザードマン・ナイト』はポリゴンへと変え消滅した。

視界には経験値とドロップアイテムのフォントが表示されている。

 

「お疲れ、リーファ」

 

「ふぅ~。ここまで疲れるなんて思わなかったな~。キリトくんたちは毎日こんなに大変だったんだね」

 

「まぁな。でも、クリアを目指すためには進んでいくしかないからな」

 

「そうだね、キリトくん」

 

俺とリーファのいる迷宮区の場所は最上階の20階。

俺はマップを見てリーファに言った。

 

「あと、少しでボス部屋に着くかもしれないな」

 

「ボスって、この層の?」

 

「ああ」

 

「ふぅーん」

 

俺とリーファは剣を鞘にしまい先へと歩き出した。

しばらくして、目の前に大きな扉が現れた。

 

「此処が・・・・ ボスの部屋・・・・・・・」

 

リーファは声にならないかのように扉を見た。

 

「なんか、此処からでもわかる具合の威圧感・・・・・だね」

 

「ああ、ボスはそんじょそこらにいるモンスターとは全く違うからな。さてと・・・・」

 

俺はウインドウを開きアイテムストレージを表示した。

 

「何やってんのキリトくん?」

 

隣にいるリーファは不思議そうに聞いてきた。

 

「ん、回廊結晶をセットしてるんだよ」

 

「回廊結晶?」

 

「ああ、これに目的地をセットすればすぐに行けるからな」

 

「ヘエー、なるほど」

 

「よし、セット完了と。あとはアスナたちに知らせ攻略部隊を集って、ボスを討伐するだけだな」

 

「キリトくんは、勿論出るんでしょ。討伐戦に」

 

「ああ、勿論だ」

 

俺は即答で言うとリーファは考えこんだ。

 

「キリトくん。わたしも出ていいかな?」

 

「討伐戦に、か?」

 

「うん。キリトくんたちが戦ってる相手と戦いたいし、わたしも一緒にやりたい!」

 

リーファは真剣な眼差しで俺を見てきた。

 

「ん~、まぁ、リーファのスキルやレベルなら大丈夫だろうが・・・・・・」

 

俺は少し考えたがリーファの目を見て、

 

「・・・・・わかった。一緒に討伐戦に出よう」

 

許可を出した。

 

「ありがとう、キリトくん」

 

「取り敢えず、回廊結晶もセットしたしアークソフィアに戻るか」

 

「りょ~かい」

 

俺とリーファは転移結晶を使用せず徒歩でアークソフィアの街へと帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アークソフィア

 

アークソフィアに着くと丁度夜6時になるところだった。

 

「ふぅ。取り敢えずエギルの店に行くか」

 

「そうだね」

 

俺とリーファはそこままエギルの店に行くことにした。

エギルの店にはまだ全員いなく、今日は個別で夕飯を食べることにした。

俺は2階の自室に行くとメール機能を起動しアスナたちに『第76層のボス部屋を発見した。回廊結晶は設置済み』と記述し転送した。

しばらくするとアスナから返信が来て『明日、ボス討伐戦のメンバーを募集するから、討伐は明後日』と書かれてあった。

 

「明後日か・・・・・ 俺、レイン、アスナ、ユウキ、ラン、リーザ、ラム、クライン、エギルは出るだろうし・・・・・・後はリーファも出るのか。アスナに言っとくか」

 

俺は再びメール機能を起動させ『リーファも今回の討伐戦に参加させてもいいか?』と書き送った。

返ってきたメッセージには『いいわよ』と書かれてあった。

 

「よし。これでリーファも参加だな。・・・・・・・・討伐戦が明後日ってことは明日暇になるのか。どうしよっかな」

 

俺は明日どうしようか悩んだ。

悩んでいると、扉をノックする音が聞こえた。

俺は立ちあがりドアを開けると、そこにいたのは。

 

「こんばんは、キリトくん♪」

 

レインだった。

 

「こんばんはだな、レイン。どうしたんだ?」

 

「えっとね。晩御飯がまだだったら一緒に食べないかな~、って」

 

「いいぜ」

 

「ほんと!?」

 

「ああ」

 

「やったー!それじゃ、先に下に行ってるからねキリトくん♪」

 

「おう、わかった」

 

スキップの、ような足踏みで下に行くレインを見ながら俺は廊下に出てレインの後に続いていった。




皆様の読んだ感想が聞きたいです。
ダメな所や良いところを教えてくだされば助かります。


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HF編 第61話〈夜風に吹かれて・・・・〉

今回はオリジナルストーリーです。
それではどうぞ♪


「キリトくん。はい、あーん♪」

 

「え、いや、レイン、ここは・・・・・・」

 

「いいから♪あーん♪」

 

「あ、あーん」

 

「どう、美味しい?」

 

「あ、ああ。美味しいぞ」

 

「良かった~」

 

レインの作ってくれたご飯を食べていると、俺とレインのご飯の風景を遠く?から見ている視線があった。

 

「ね、ねえ、あれってどう思う?」

 

「どう思う、って言われても」

 

「ねぇ~」

 

「何時見ても、見ている此方がその・・・・・」

 

「恥ずかしい、ですね」

 

「ええ」

 

「だな」

 

上からリズ、アスナ、ユウキ、ラン、シリカ、リーザ、ラムが言った。

 

「おにい・・・・・キリトくんとレインさんって、わたしたちが来る前から、何時もあんな感じなんですか?」

 

すると、リーファがアスナたちに聞いた。

 

「何時も、ですかね。あの二人、第1層からずっと一緒なので」

 

「互いに気心を知れてるからああいう風になるんだと思うよ」

 

リーファの問いにランとユウキの姉妹が答えた。

 

「でもまあ、あれはちょっとね~」

 

「はい。ちょっとうらやましいです」

 

続いてリズとシリカが言った。

すると、

 

「ラム、はい」

 

「ん、ああ」

 

リーザがラムに食べさせている姿が見えた。

 

「「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」」

 

その光景にアスナたち7人は口を開けずにはいられない状態だった。

 

「リーザちゃん。何やってんの?」

 

アスナがリーザに聞いた。

 

「ラムに食べさせてるところですけど?」

 

リーザは不思議そうな顔をして返してきた。

 

「そ、そう」

 

アスナたちは少し離れたところで小声で会話する。

 

『今度はリーザとラムくんまで!?』

 

『なんでかな、僕らの回りに桃色の風景が見えるんだけど。気のせいかな?』

 

『いえ、ユウキ。気のせいではないですよ。実際にあの二人は桃色の空気です』

 

『何時の間にあの二人まで!?』

 

『何時からなんでしょうね?』

 

『なんか、ブラックコーヒーが飲みたい気分ね』

 

『シノンさん、それは多分此処にいる全員が思ってると思いますよ』

 

よく、聞こえなかったがまあ気にすることないだろう。

 

「にしても、リーザとラムの二人何時の間にあんな風になったんだ?」

 

「さあ?今度聞いて見たら」

 

「そうだな」

 

俺は再び手を動かした。

 

「ん、美味しい。これは・・・・・・ボルシチ、か?」

 

「せいかーい。よくわかったね」

 

「ん、何となく、かな」

 

「へえ。わたしの得意料理の1つなんだ♪」

 

「つまり、ロシア料理全般出来るのか?」

 

俺はボルシチからロシアを想像し、レインに聞いた。

 

「ん~、まあ、そうかな。現実では昔、ロシアに住んでいたから」

 

「へえー、そうなのか。・・・・・・・・・・んと、ご馳走さま」

 

「お粗末様でした♪」

 

レインの作ったご飯を食べた俺とレインは食器を片付けた後、二人で外に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜のアークソフィアに出た俺とレインは、星がよく見える場所に移動した。

場所はこの間、俺が見つけた。

 

「凄く良い場所だね」

 

「ああ、この間偶然見つけたんだよ。見張らしもいいし、街からはそんなに離れてないから安心だしな」

 

俺とレインは小高い丘に座って層の天井。夜空を見た。

今日は、さほど寒くなく暗くない。月は満月で夜空に満開の星が散らばっているのだ。

 

「キリトくん」

 

「ん?なんだ?」

 

「さっき、わたしロシアに住んでたって言ったでしょ」

 

「ああ・・・・」

 

「あれね、わたしがまだ小さい頃。・・・・・・・7歳の時までいたんだ」

 

レインの眼は懐かしいのと寂しさげな表情を浮かべていた。

 

「わたしにはね、キリトくん。リーファちゃん・・・・・直葉ちゃんと同じ妹がいるんだ」

 

俺はその事に驚きを浮かべた。

だが、それ以前にレインが現実でのことを話すことなど滅多に無いのだ。

 

「名前は、言えないけどね。わたしと妹は今、離ればなれなんだ。原因は両親の離婚。妹はロシア人の父親に引き取られてわたしは日本人の母親に。つまり、わたしロシア人と日本人の両親の間に生まれたハーフ、なんだ」

 

沈黙が辺りを包む。

俺はレインの右手にそっと自分の左手を重ねた。

 

「だからレインの髪の色は茶髪なんだな。でも、俺的にはその髪、結構好きだな」

 

「キリトくん」

 

「それに、ハーフだからなんだ。俺とレインは今此処にいるだろ、それでいいじゃないか」

 

俺は真剣な眼差しでレインの眼を見て言った。

 

「そうだね。・・・・・・・ありがとう、キリトくん」

 

「いや」

 

「キリトくん、お願いがあるんだけどいい、かな?」

 

「ん、なんでも良いぞ」

 

「現実に戻ったらわたしに会いに来てくれないかな」

 

「もちろん、行くさ。行くに決まってるだろ。レインは俺の妻、なんだからさ」

 

「うん♪」

 

レインは少しは気分が良くなったのか俺の肩に寄りかかってきた。

 

「あ、キリトくん。これ」

 

レインはウインドウを開き2本の片手剣を実体化させた。

 

「これは、もしかして・・・・・」

 

「うん。わたしが今日リズっちの店で作製した剣だよ」

 

レインから受け取った剣は、『エリュシデータ』と『ダークリパルサー』と同じ色をしていた。

受け取った剣をタップしてウインドウを表示させると、剣の銘はそれぞれ、黒い剣が『ブラックローズ・ナイト』白い剣が『ホワイト・ユニヴァース』と書かれてあった。

しかもよく見てみるとパラメーターが今の、ノイズ化してしまってるが使える剣の2本と遥かに凌駕していた。

階層的には85層クラス物だろう。

 

「ありがとうなレイン」

 

「ううん。キリトくんが喜んでくれたなら嬉しいよ」

 

「ところでレイン。この剣なんだが・・・・・異様にパラメーターが高い気がするんだが」

 

「あ~。わたしも思ったんだけどね、わたしの剣も同じなんだよ」

 

そう言うと、レインは自分のステータスウインドウを開き可視化モードにして見せた。

その剣の銘は『スカーレット・プリンセス』と『レイン・オブ・セイント』とあった。

それぞれのパラメーターを表示すると、俺の2本の片手剣と同様の高さだった。

 

「ほんとだな。だけど、なんでこんなパラメーターが高い剣が作製出来たんだ?」

 

「さあ。でも、これがあれば攻略がスムーズに進むと思うよ」

 

「そうだな。早速明後日のボス討伐戦で使ってみるか」

 

「じゃあ、わたしも使おっと」

 

俺はレインから受け取った剣をメインウエポンに設定しウインドウを消した。

 

「なあ、レイン。明日暇か?」

 

「え、一応暇だけど」

 

「それなら、明日デートしないか?」

 

「・・・・・キリトくん」

 

レインは顔を火照らせ、

 

「もちろん良いよ♪」

 

俺とのデートを承諾した。

俺とレインはそのあとしばらく頭上の星空を眺めた。

 

「・・・・・・・・綺麗だね・・・・・・・キリトくん」

 

「・・・・・・ああ・・・・・・そうだな」

 

「キリトくん・・・・・・・・・キス・・・・・しよ」

 

「レイン・・・・・・・」

 

「キリトくん・・・・・・」

 

俺とレインは互いの顔を見つめ、ゆっくりと近付きキスをした。

それは、5秒だったか30秒か、または1分か分からなかった。

離れると俺とレインは顔を赤くし眼を反らした。

暗闇の中でもレインの顔は真っ赤に染まっていた。

 

「・・・・・そろそろ、帰ろっか」

 

「・・・・・そうだな」

 

俺とレインは互いの手を繋いで店に帰ってった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリトとレインが外にいる頃

 

~ラムside~

 

「ラム、わたしと結婚してください」

 

俺は自室でリーザにそう言われていた。

 

「ごめん、もう一回お願いしていいかリーザ」

 

「う~。じゃあ、もう一度言うからね。・・・・・・ラム、わたしと結婚してください」

 

聞き間違いじゃ無かったそうだ。

 

「取り敢えず、理由を聞かせてもらってもいいかリーザ」

 

「はあ~。やっぱりまだ、気がついて無かったんですね、ラム」

 

「?」

 

「わたしですよ、ラム。いえ、ムーくん」

 

「!?」

 

俺はリーザの言ったあだ名に驚いた、何故ならそれを言うのはただ一人だけだからだ。

 

「まさか・・・・・・・アリ・・・・・・サ・・・・?」

 

俺はそのあだ名を言う幼なじみの名前を言った。

するとリーザは頷いた。

 

「やっと気がついたんだねムーくん」

 

「な、なんでアリサが此処に。今まで気がつかなかった」

 

「あんなに一緒にいたの、に?」

 

「あ、ああ」

 

「わたしはすぐに気づいたよムーくんの事。ムーくんがわたしの事思い出すまで言わないつもりだったんだけどね」

 

「そ、そうだったのか」

 

「うん。あのね、わたしはムーくんの事好きなんだ。だから、結婚しよう、ってね」

 

「そうだったのか。・・・・・・アリサ、俺も・・・・・・アリサの事好きだ」

 

俺が顔を赤くしながら言うと、リザは俺より顔を赤くした。

 

「ムーくん//」

 

「アリサ、その、俺で良かったら・・・・その、宜しくお願いします」

 

「うん♪わたしの方もよろしくお願いします」

 

俺とアリサはその場で結婚申請をし、はれてキリトとレインさんと同じく夫婦となった。

 

~ラムside out~




キリトとレインのイチャイチャを増やしてほしいと要望があったので書いてみました。
更に、オリジナルキャラのラムとリーザがついに結婚しました。

また、何か御座いましたらお知らせ願います。

感想など、お待ちしてます。


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HF編 第62話〈デート〉

今回もオリジナルストーリーです。


~レインside~

 

わたしは今ホロウ・エリア管理区に来ていた。

此処に来た目的は探索の為ではない。

その理由は、

 

「お待たせ、レイン」

 

「プリヴィエート、フィリアちゃん♪」

 

フィリアちゃんに強化をお願いされた短剣を返すためだ。

フィリアちゃんは、わたしの言った言葉がわからないのか首を傾げていた。

 

「ぷ、プリヴィエート?」

 

「あ、ごめん。ロシア語での挨拶だよ」

 

「な、なるほど」

 

フィリアちゃんは納得したようで頷いた。

 

「ところでその服装は?」

 

フィリアちゃんはわたしの服装を見て言った。

わたしの今日の服装は、何時もの緋と白が合わさったメイド服みたいな服ではなく、上は清楚でシンプルな白の服。下は紅く少し裾の短いスカートを着用している。

 

「これからキリトくんとお出かけなんだよ~」

 

「へ、へえ。ん?・・・・・・・って、ことは・・・・・・もしかして、デート・・・・・?」

 

「うん。そうだよ♪」

 

「そ、そうなの!?ご、ごめんね、わたしの剣持ってきて貰っちゃって」

 

「気にしないでいいよ~。はい」

 

わたしはストレージからフィリアちゃんの短剣『ソードブレイカー・リノベイト』を渡した。

 

「あ、ありがとう。それじゃ、これは返すね」

 

フィリアちゃんはわたしが『ソードブレイカー・リノベイト』の代わりに渡した短剣『シルヴァリオエッジ』を渡してきた。

 

「あ、それはフィリアちゃんにあげるよ」

 

「え、いいの?」

 

「うん。剣が2本あれば何かあったとき役に立つでしょ♪」

 

「まあ、確かに」

 

「ね♪あとは、これと・・・・・これ・・・・・あとこれかな」

 

わたしは開いたままのストレージから食材アイテムやポーション類をフィリアちゃんに送った。

 

「なにからなにまで、ありがとうレイン」

 

「気にしなくていいよ♪それじゃあ、わたしは戻るね」

 

「うん。此処に来るときはメールして」

 

「オッケー。それじゃあ、ダスヴィダーニャ♪」

 

「う、うん」

 

「転移アークソフィア!」

 

わたしは体が光に包まれ消えていった。

 

~レインside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~フィリアside~

 

わたしはレインが転移して消える姿を見たあと、送られた物を見た。

 

「うわっ、凄い。食材アイテムだけじゃなく回復アイテムやポーションもある。今度、お礼言っておかないと」

 

わたしは送られた物を見たあと受け取った短剣。『ソードブレイカー・リノベイト』を見た。

強化したためか前よりパラメーターが上がっている。

更にレインから貰った『シルヴァリオエッジ』もしばらく使っていたが使い勝手がいいのと、よく手に馴染むためレインから貰えたのは嬉しかった。

 

「さて、兎に角樹海エリアを探索しないとね」

 

わたしは管理区にあるコンソールからセルベンディスの樹海エリアの地図を見たあと、

 

「転移!」

 

転移門を介して根城へと帰っていった。

 

~フィリアside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今転移門広場でレインを待っていた。

待ち合わせ時刻は9時半なのだが今の時間は9時15分。

15分も早く来ていた。

俺は転移門を囲む石柱にもたれレインを待っている。

すると、

 

「あれ、キリトくん?」

 

シャーンと転移の音がするのと同時に背後から声が聞こえた。

俺は後ろを向くとそこにいたのは。

 

「レイン?どうして転移門から?」

 

レインだった。

だが俺には疑念が沸いた。

何故、レインが転移門から出たのかが。

考えられるのはホロウ・エリアに行っていた。という事だけだが・・・・・ 。

 

「プリヴィエート、キリトくん。わたしが此処から出てきた理由はフィリアちゃんに短剣とかを渡しに行ってきたからだよ♪」

 

「なるほど」

 

どうやら、俺の想像が当たったようだ。

 

「ん?プリヴィエート?ロシア語か?」

 

俺は今しがたレインの言った言葉がロシア語かと思った。

 

「正解だよ、キリトくん。プリヴィエートはロシア語で挨拶の意味を持つんだよ♪こんにちはは、ズドラーストヴィチェ、って発音するんだ」

 

「なるほどな。でもなんでいきなりロシア語で挨拶したんだ?」

 

俺は今までレインがロシア語を言ったこと無いため不思議に思ったのだ。

 

「ん、それはキリトくんのお陰かな」

 

「俺の?」

 

「うん。昨日、わたしがハーフだと言ってもキリトくんは蔑んだりしなかったでしょ、だから前みたいなわたしでいようって思ったんだよ」

 

「レイン・・・・・・」

 

「えへへ、ダメ、かな?」

 

「いや、レインが決めた事なら俺は反対しないさ。俺は誰がなんと言おうとレインの味方だからな」

 

「キリトくん・・・・・・//」

 

レインは顔を赤くして俯いた。どうやら照れているようだった。実際に俺も自分で言ってなんだが少々恥ずかしかった。

 

「行こう、レイン」

 

「うん♪今日はキリトくんとのデート、だもんね」

 

俺とレインは互いの手を繋いで移動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

商業区

 

「で、最初にどこ行きたい?」

 

「ん~。新しいお洋服が欲しいからな~服屋に行ってもいい?」

 

「いいぞ。それじゃ、最初は服屋に行くか」

 

「うん♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

服屋

 

「キリトくん、どう?」

 

俺は試着室の前でレインの着ている服の感想を言っていた。

 

「似合ってるぞ」

 

「ありがとう♪」

 

俺が言うとレインは顔を赤くして違う服を見せる。

 

「これはどうかな?」

 

「ん~すこし際どくないか?」

 

「そうかな?」

 

「ああ」

 

「それじゃ、これは止めにして・・・・・・ジャーン!どう、どうかな?」

 

今度レインが着たのはワンピース型だった。

 

「おっ!めっちゃ似合ってるじゃん」

 

「そ、そうかな」

 

レインの着たワンピース型は色を紅と白を合わせた物でレインによく似合っていた。

 

「ああ。俺が保証するよ」

 

「じゃあ、これは買うね♪・・・・・・・よし!あとは大丈夫、かな」

 

レインはプレイヤーの店員を呼びお会計を済ませ外に出た。買ったアイテムはストレージ内に自動的に収納されていった。

 

「次は何処に行こうか?」

 

レインが俺を見て聞いた。

 

「そうだな。アクセサリーとかでも見に行くか」

 

「いいよ~」

 

俺とレインは次の目的地、アクセサリーショップに向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その光景を物陰から見ているプレイヤーがいた。

 

 

 

~リーファside~

 

「お兄ちゃんとレインさん。お出かけでしょうかね?」

 

わたしは一緒にいるユウキちゃんとランさんに聞いた。

 

「多分、デートだと思いますよ。レインさんの服。あれ、アシュレイさんが作った物ですから」

 

「アシュレイさん?誰ですか」

 

「アシュレイさんってのは、此処。SAOの中で一番最初に裁縫スキルをマスターしたプレイヤーのことですよ。

彼女の作った服はどれも一級品ばかりで、最高級の布や糸じゃないと、作ってくれないんです」

 

「へぇー。凄い人なんですね」

 

「まあ、確かにね。僕や姉ちゃんもアシュレイさんが作ってくれた服持ってるけど、結構素材集めるの苦労したよね~」

 

「そうですね。アスナさんも一緒だったので助かりましたけど」

 

ユウキちゃんとランさんは何故か遠い眼をしていた。

 

"わたしもアシュレイさんって人に服作ってもらいたいな~"

 

わたしは頭の中でそう思いながら、お兄ちゃんとレインさんのデートを見ていた。

のだが。

 

「あれ、お兄ちゃんとレインさん何処に行ったんだろう」

 

「ほんとですね、見失っちゃいましたね」

 

「ありゃりゃ。まあ今日は二人っきりにしてあげようよ」

 

「そうですね。邪魔しちゃ悪いですし」

 

「ですね。私たちは私たちでお買い物に行きましょうか」

 

「さんせーい」

 

「行こう、姉ちゃん、リーファ」

 

わたしたちはそのまま3人で明日に備えてポーションの補充など、アクセサリーや服等を見て今日1日を過ごした。

 

~リーファside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アクセサリーショップ

 

「これなんてどうだ?」

 

「うん。良いかも♪」

 

「それじゃ、こっちはどうだ」

 

「ん~、もう少し明るい方がいいかな」

 

「そうか」

 

俺とレインはアクセサリーショップでユイのお土産を探していた。

 

「ん?これは」

 

俺はユイに似合うアクセサリーを探していると、陳列棚に綺麗な花のブローチが置いてあった。

ブローチの花は白薔薇で回りを輝く石で囲んでいた。

しかも、丁度2つある。

俺は1つはユイにもう1つはレインへと決め、白薔薇のブローチを購入した。

 

「レイン、どうだ?」

 

「うん。此方も購入したよ。キリトくんは?」

 

「俺も大丈夫だ」

 

その時、12時を知らせる鐘の音がアークソフィア全体に響き渡った。

 

「もうお昼か・・・・・」

 

「キリトくん、昨日の夜の場所でお昼食べよ」

 

「ん。あ、ああ」

 

俺とレインはアクセサリーショップを後にし、昨日の夜、レインとともに星を見た丘へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん~・・・・・風が気持ちいいね♪」

 

レインは伸びをしながらそう言った。

 

「ああ。昼寝には最適な風だな」

 

「もう、キリトくんは」

 

レインは俺の言葉に苦笑いを浮かべた。

座るとレインは、ウインドウを表示させた。

 

「はい。どうぞ、召し上がれ」

 

「おお!!」

 

レインはストレージからご飯の入ったバスケットを取り出し、中に入っていたサンドイッチを俺に渡した。

 

「ん、上手い」

 

俺の食べたサンドイッチはカツサンドだった。

パンにカツとソース、キャベツが挟まっておりソースが絶妙な味を引き出していた。

 

「まだあるからね」

 

レインはそう言うと、自分の分と食べ終わった俺の分を取り出して俺に渡した。

今度はタマゴサンドだ。

タマゴに黒胡椒が効いており、更にスイートコーンに似たものが入って、食べる度にタマゴと黒胡椒のピリ辛とスイートコーンのプチプチ甘い感触が口の中に伝わっていく。

他には、フルーツサンド、BLTサンド、ハムサンド、フィレサンド等、レパートリーが豊富とあった。

 

「ごちそうさま。美味しかったよレイン」

 

「えへへ。お粗末さまでした」

 

「うっ・・・・・あぁ・・・・・。何か眠くなってきたな」

 

「ふぁーあ、そうだね」

 

「ちょっと寝るとするか・・・・・」

 

「うん。いいよ~・・・・・・」

 

俺は横になりそう言うと瞼が閉じ眠りの世界へと旅立って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、あぁ~」

 

俺は起きて目を覚ますと目の前にレインがいた。

レインの目は閉じておりどうやら眠っているようだ。

時間は寝てから一時間立ってないかどうかと言う位だった。

俺はそのまま横になり空を眺めた。

すると不意に、

 

「キリト・・・・・くん・・・・・大好き・・・・・・だよ。・・・・・・・ずっと・・・・・・一緒・・・・・・に・・・・・・・・いよう・・・・・・ね・・・・・・」

 

レインの寝言が聞こえてきた。

俺はちょっと照れ、左手をレインの頭に乗せ、撫でて言った。

 

「ああ、ずっと一緒だ、レイン」

 

その言葉が聞こえたのかレインの寝顔は笑顔になった。

俺はそのままレインが起きるまで頭を撫で続ける事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レインが起きたのは俺が目を覚ましてから約1時間後の事だった。

 

「おはよう、キリトくん」

 

「おはよう、レイン。よく寝ていたぞ」

 

「えへへ~。何か良い夢を見た気がするよ~」

 

「そうか。良かったな」

 

「うん♪」

 

「まだ、時間あるけど何処に行く?」

 

俺はそのまま横になりながらレインに聞いた。

 

「何処でもいいよ。街をブラブラしよ」

 

「ああ」

 

俺とレインは立ちあがり街への街道を通り街に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キリトくん。これどう?」

 

「え、えっと・・・・・」

 

「あ、これなんかいいんじゃない♪」

 

「そ、その・・・・・・・・」

 

「ん~、わたしに合うの後何があるかな」

 

「・・・・・・・・」

 

俺はレインを遠目に見ながらこう思った。

 

"どうしてこうなったんだ?"

 

と。

時間は今から15分ほど前に遡る。

 

 

 

 

 

街に戻ってきた俺とレインはそのまま街をブラブラして見て回った。

街を歩き回ることしばらくしてレインのウインドウにメッセージが届いた。

 

「えっと・・・・・・・なっ、これは絶対行かないと」

 

メッセージを見るとレインは目の色を変えていた。

 

「ん。何て書いてあったんだ?」

 

俺が訪ねると、

 

「なんでもないよ、キリトくん」

 

と返ってきた。

 

「キリトくん、行きたいところがあるんだけどいい?」

 

「別にいいが」

 

「やった!じゃあ、こっち!」

 

俺はレインに連れられてある場所にいた。

そこは何故か女性プレイヤーが多くいた。

 

「ここで何かあるのか?」

 

「まあ、わたしたちにとっては重要かな」

 

「????」

 

俺はレインの言葉の意味がわからなく疑問符を頭に浮かべた。

 

「ところでキリトくん」

 

「ん?」

 

「キリトくんは紅と青、どっちが好き」

 

「は?」

 

俺は聞かれた意味がわからずレインに聞き返した?

 

「キリトくんは紅と青、どっちが好きかな」

 

「ん~、それなら紅だな。レインの色だし」

 

「オッケー、ならこれと。・・・・・・・白と黒どっちが好き?」

 

「え?白と黒?それなら黒の方が・・・・・・」

 

「く、黒か~。それならこれかな」

 

レインは俺に色を聞くとなんかごそごそとやっていた。

 

「なにやってんだレイン」

 

俺が聞くと、

 

「え。ああ、これだよ♪」

 

手に持っていた物を俺に見せた。

それは上下、紅色と黒で合わせた2着の'下着'だった。

 

「ぶほっ。けっほこほ。な、何で下着!?」

 

俺は驚いてレインに聞くと。

 

「さっきメッセージがわたしに来たでしょ。それ女性プレイヤー全員に送られているみたいで、そのメッセージに今から二時間セールをするって書かれてあったんだよ」

 

「な、なるほど」

 

 

 

 

 

で、今に至る。

 

「あー、レイン。終わったら声かけてくれ。それまで店の外にいるから」

 

「え!あ、うん。わかった」

 

レインは何故かがっかりした声で反応した。

何故がっかりしたのかは俺にもわからない。

 

しばらくすると満足気な雰囲気のレインが此方に来た。

 

「お待たせ、キリトくん」

 

「ああ。いいものは買えたのか?」

 

「うん。なんだったら後で自室で見せてあげようか?」

 

「結構です!!」

 

「ふっふふふふ。冗談だよ♪」

 

レインは笑いながら俺を見た。

 

『もお、キリトくんの意気地無し。キリトくんだったら見せてあげてもいいのに』

 

レインは俯いて何か言ったようだが聞こえなかったため、気にしないことにした。

 

「はあ。やれやれ」

 

「さあ、宿に帰ろうキリトくん」

 

「そうだな」

 

俺はそのままレインの手を繋ぎエギルの店の自室に帰っていった。




どうもソーナです。
私はこれをパソコンではなくスマホで書いているため少々大変です。
さて、今回はキリトとレインのデートでした。
何かありましたら気軽に送ってください。
では、また次回お会いしましょう。


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HF編 第63話〈攻略前夜〉

「「ただいま~」」

 

俺とレインはエギルの店に帰ってきた。

もちろん、手は繋いだままだ。

回りのプレイヤーは通り過ぎる度に俺とレインの手を見てくるが俺たちはお構いなしだ。

何故なら今日はデート、だからだ。まあ、俺たちはデートととわず、よく手を繋いでいるのだがそれは、人目のつかないところの為、公衆の面前で手を繋ぐのは初めて・・・・・・のはずだ。

俺とレインはそのままレインとユイの部屋に向かった。

扉を開けると。

 

「お帰りなさい~!!」

 

ユイが元気よく挨拶してくれた。

 

「ただいま、ユイ」

 

「ただいま、ユイちゃん♪」

 

俺とユイはソファーに座りレインはお茶を持ってやって来た。

ソファーに座ると俺とレインは、早速ユイへのお土産を渡した。

 

「はい、ユイ。お土産だ」

 

「わぁー♪ありがとうございます、パパ♪」

 

「ユイちゃん、こっちはママからだよ」

 

「わぁー♪ママ、ありがとうございます♪」

 

俺とレインのユイへのお土産は、俺は白薔薇のブローチ、レインはピンクの石で囲まれ中央には写真を入れる事が出来るペンダントだった。

 

「わぁー、大事にしますね。パパ♪ママ♪」

 

「うん。喜んでくれてよかったよ」

 

「ああ」

 

俺とレインは紅茶を飲みながら2つのお土産を持って喜ぶユイを眺めた。

しばらくしてユイはペンダントを首に掛け、ブローチを左胸の辺りに着けた。

 

「えへへ。どうですか、似合いますか」

 

ユイは興奮しながら俺とレインに聞いた。

 

「ああ、よく似合ってるぞユイ」

 

「うん。かわいいよ、ユイちゃん♪」

 

「ありがとうございます♪」

 

夕食の時間になったため下で食べる為、俺たち3人は一緒に1階に降りていった。

ユイはペンダントとブローチが気に入ったようで、着けたまま夕食を食べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕食を食べた後、俺は自分の部屋でお風呂に入った後、荷物と明日のためにポーション類の整理をしていた。

スキルやアイテム欄を眺めていると不意に、

 

"コンコン"

 

扉をノックする音が聞こえた。

 

「キリトくん、いいかな?」

 

外からレインの声が聞こえてきた。

 

「ちょうどよかった、レイン。俺もレインの部屋に行こうと思っていた所なんだ」

 

俺は扉を開きレインに言った。

 

「中入ってもいいかな?」

 

「ああ、いいぞ」

 

「ありがとう♪それじゃ、お邪魔しま~す」

 

レインは部屋に入るとソファーに座りウインドウを表示させた。

俺はレインの横に座った。

 

「はい、キリトくん」

 

レインは紙袋を俺に渡した。

手に持つと少し重く、小物が入っている感じだった。

 

「開けてみて♪」

 

俺はレインに言われた通り袋を開けてみた。

中に入っていたのは、ペンダント。

黒を基調に銀の小さな鎖で出来ていた。

 

「これは・・・・・・・ありがとうレイン。大切にするな」

 

「うん♪」

 

「これは俺から」

 

俺は包装してもらった包みをレインに渡した。

 

「開けてみてもいい?」

 

「おう」

 

レインは包みを開け、中身を取り出した。

中身はユイと同じブローチだ。

 

「わぁ、ユイちゃんと同じ」

 

「ああ、ちょうど2つ合ったからユイとレインにそれぞれ、とな」

 

「着けてみるね」

 

「ああ」

 

レインはウインドウを表示させた後、幾つか操作した後ウインドウを消去した。

 

「へへ、どう、似合ってるかな?」

 

レインはブローチを襟の真ん中。服の上の中央にブローチを着けた。

 

「ああ。似合ってるぞ、レイン」

 

「ありがとう、キリトくん♪」

 

「あー、ところでユイはどうした?」

 

俺はユイがいないことに疑問を感じ聞いてみた。

 

「ユイちゃんはもう眠っちゃってるよ。もう11時なんだし」

 

「いつの間にかそんなにたっていたか・・・・・」

 

「うん。あ、キリトくんお風呂借りてもいい?」

 

「はい?え、何で?」

 

「いや~、ちょっと装備を整えたりしていたらお風呂入るの忘れちゃってさ、自室だとユイちゃんの睡眠のお邪魔になるだろうから」

 

「なるほど。いいぜ」

 

「ありがとう。それじゃ、お風呂借りるね♪」

 

レインは立ち上がると浴室の方に向かっていき、

 

「キリトくんも一緒に入る?」

 

振り向いて聞いてきた。

 

「い、いや、いいから。それに俺はもう入ったし・・・・・・」

 

「そうなの。じゃあ入ってくるね。・・・・・・・・・入ってきてもいいからね」

 

「・・・・・・・・・・」

 

俺はもう突っ込むのも疲れ最後の言葉は聞かなかった事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふんふふんふふーん」

 

お風呂場から聞こえてくるレインの声に耳を痛ませながら装備を確認していた。

やがて、

 

「お風呂、ありがとうキリトくん」

 

レインが浴室から出てきた。

 

「ああ」

 

「ん?何見てるの?」

 

レインは先程と同じように俺の隣に座りウインドウを除きこんできた。

 

「っ~!!??」

 

除きこんできたのはいいのだが、俺の腕にレインの肌が接触してきた。

しかも、お風呂に入ったばかりなので髪からはシャンプーの匂いがしてきた。

レインの今の服装は薄着なのでレインの感触が伝わってくる。

 

「あ、あの、レインさん。出来ればもう少し離れてくれると・・・・・」

 

「ええー、やだよ。キリトくんにくっつきたいもんね」

 

「いや、そのだな、レインが薄着だから、その・・・・・」

 

「ん、なに?」

 

「む、胸が当たってるんですけど・・・・・・」

 

俺は少し顔を赤くして言った。

 

「当ててるんだよ、キリトくん♪」

 

レインは得意気な顔でそう言った。

俺は観念しウインドウを可視化にして見せた。

 

「なるほど。≪二刀流≫スキルはまだ800なんだね」

 

「ああ、やっぱり熟練度が下がったのが一番のアドバンテージだよな。・・・・・アイテムのノイズ化、もだけど」

 

「そうだね~。わたしも≪多刀流≫スキルはまだ800ちょっとだから。あー、でも鍛冶スキルが下がったのは残念だったな~」

 

「そのために今、熟練度上げているだろ」

 

「まあね♪・・・・・・・ふわぁーあ、なんか眠くなって来ちゃった」

 

「そんじゃ、そろそろ寝るとするか。レイン、部屋まで戻れるか?」

 

俺は半分寝ているレインに聞いた。

聞くとレインは意識が朦朧としているのか返事がなかった。

 

「しかたない・・・・・・・・よっと」

 

俺はレインをソファーに横にした後、ベットに移し横たわらせた。

 

「ふぅー。俺もそろそろ寝るとするかな」

 

俺はそのままレインを横たわらせたベットに横になり、

 

「お休み、レイン」

 

寝ていてあどけない顔をしているレインに軽くキスをして寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~レインside~

 

「んっ・・・・・・・よっと・・・・・・」

 

わたしは軽く伸びをしたあと現在の状況を確認した。

すぐ目の前にはキリトくんの寝顔がある。

キリトくんの顔は女顔で寝ていると余計にそう思った。

 

「確か昨日、いつの間にか寝ちゃったみたいだね」

 

そして自分がベットにいることを確認した。

 

「キリトくんが運んでくれたのかな?」

 

わたしは朝食の準備をするためベットから抜け出し、何時もの服に着替えた。

 

「ふふ。キリトくんの寝顔可愛いな~」

 

わたしは着替え終わった後しばし、キリトくんの寝顔を見、キリトくんの口にキスをした後こっそり。

キリトくんを起こさないようにそっと部屋から出ていき1階に降りていった。

 

"さてと、今日のボス討伐戦頑張らないとね♪"

 

わたしは気合いの満ちた表情で階段を降りていった。




どうもソーナです。
今回は少々短くてすいません。
前回に引き続きキリトとレインのイチャイチャが多いです。

次回はボス攻略戦。
それではまた次回お会いしましょう。


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HF編 第64話〈対ガストレイゲイズ戦!〉

連日だと疲れるかもです。
今回は第76層ボス攻略戦。


転移門広場

 

「皆さん、お集まり頂きありがとうございます。現在攻略している第76層、迷宮区にて、ボス部屋が発見されました。これより、お集まりいただいたみなさんとボス攻略を行いたいと思います」

 

俺とレインは、転移門広場でボス攻略会議の司会者をしているアスナの話を聞いていた。

アスナの横にはランが補佐をする感じでいた。

現在の時間は丁度正午。午後12時だ。

 

「ついにボス戦か・・・・・」

 

「そうだね。・・・・・・キリトくんは使うの?」

 

レインは、ノイズ化している『エリュシデータ』と『ダークリパルサー』。それかこの前レインが造ってくれた『ブラックローズ・ナイト』と『ホワイト・ユニヴァース』を使うか、と言うことだ。

 

「ブラックとホワイトの方を使うよ。さっき暇潰しに外周区のmobと戦闘してきたらあっという間に全滅させたからな」

 

ブラックは『ブラックローズ・ナイト』。ホワイトは『ホワイト・ユニヴァース』の略だ。

 

「それじゃ、わたしもスカーレットとセイント使おうっと」

 

スカーレットは『スカーレット・プリンセス』。セイントは『レイン・オブ・セイント』の略だ。

俺は視線を回りに向けると、ユウキやラム、リーザ、クライン、エギル、リーファにストレアまでいた。

ストレアとはたまに会っていたがまさかボス攻略戦に参加するとは思ってなかった。

シリカ、リズ、シノン、ユイは見送りで来ていた。

 

「それではみなさん、パーティーを組んでください。複数のパーティーによるレイド形式でボス攻略に挑みます」

 

司会のアスナがそう言うとそれぞれ、パーティーを組んだ。

クライン率いる、ギルド風林火山。

アスナたち血盟騎士団、そして聖竜連合の面々。

残りはソロ、またはコンビのプレイヤーだ。

俺とレインはリーファ、ストレアとパーティーを組んだ。

プレイヤーの人数は7人×6と俺たち4人で合計46人。

結構な数が集まった。

 

「それでは、ボス部屋前までコリドーを開きます」

 

アスナはそう言うと、回廊結晶を取り出して掲げた。

 

「コリドー、オープン!」

 

アスナが言うと、回廊結晶は砕けアスナの前方に青い転移のゲートが現れた。

現れるとアスナに続いて新生攻略組が入っていく。

 

「よし、行こう!」

 

「うん!」

 

「はい!」

 

「了解!」

 

俺、レイン、リーファ、ストレアの順にゲートを通るとそこはもうボス部屋の前だった。

攻略組全員が装備を整え終わると、アスナがボス部屋の前にたった。

 

「私から言えることはただ一つです。・・・・・・・・勝って・・・・・・生きて帰りましょう!」

 

そう言うと、アスナはボス部屋へと続く扉に触れ開けた。

 

"ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・ゴン"

 

石扉の開く音が鳴り響く。

扉が開けきると、俺たち攻略組はボス部屋に入っていった。

全員が入ると背後の扉は再び音を立てて閉じた。

部屋の中央にはすでにボスがいた。

 

「・・・・・ガストレイゲイズ!!」

 

俺はボスに表示された名前を読み上げた。

ガストレイゲイズは、大きな目玉型のボスだ。

HPゲージは3段だ。

俺はボスを見て、正直見ているだけで気持ち悪い、と思った。

 

「・・・・あれが、ボス・・・・」

 

背後のリーファが《ガストレイゲイズ》を見て言った。

 

「気を付けろよ、あの触手に噛み付かれると継続の出血デハフを喰らうからな。さらにダメージもでかいからな」

 

「わかった」

 

「それじゃ、行くぞ!!!」

 

俺の声とともに攻撃を開始した。

同時に《ガストレイゲイズ》も何処から出してるのかわからない声をあげた。

俺はボスに向かって走りながらレインに、

 

「レイン、一発サウザンド頼む」

 

と、言った。

レインも頷きすぐさま。

 

「オッケー、行くよ。・・・・・・・・《サウザンド・レイン》!!!」

 

放った。

戦闘開始早々、後衛からレインの≪多刀流≫最上位ソードスキル《サウザンド・レイン》が《ガストレイゲイズ》に突き刺さる。

 

「よし、うおぉぉぉぉぉぉお!!」

 

俺はそれと同時に≪二刀流≫ソードスキル《デブス・インパクト》5連撃を放った。

《デブス・インパクト》の追加効果で《ガストレイゲイズ》に防御低下のアイコンが表示された。

《デブス・インパクト》による仰け反り効果により《ガストレイゲイズ》はしばらくの間動けない。

その間に。

 

「行くよ、スイッチ!やあぁぁぁぁぁあ!」

 

「せえいっ、とりゃぁぁぁぁあ!」

 

リーファによる片手剣ソードスキル≪《バーチカル・スクエア》4連撃、ストレアによる両手剣ソードスキル《メテオ・フォール》3連撃が当たった。

これにより《ガストレイゲイズ》のHPが2.5割ほど削れた。

 

「俺たちも!」

 

「負けてられないぜ!」

 

クラインの刀ソードスキル《雨月》4連撃、エギルの両手斧ソードスキル《アルティメット・ブレイカー》3連撃を。

 

「私たちも!」

 

次にアスナたちによる攻撃。

 

「はあぁぁぁぁあ!」

 

「てやぁぁぁぁあ!」

 

「やあぁぁぁぁあ!」

 

「そりゃあぁぁぁあ!」

 

「ええぇぇぇぇぇい!」

 

アスナの細剣ソードスキル《ペネトレイト》3連撃、ユウキの≪紫閃剣≫ソードスキル《クリアストーム》6連撃、ランの≪変束剣≫ソードスキル《ルージュアラインズ》5連撃、ラムの刀ソードスキル《暁零》3連撃、リーザの槍ソードスキル《リヴォーブ・アーツ》5連撃を続けて放った。

これで3段ゲージの一番上のゲージが残り1割にまで削れた。

攻略組の多段ソードスキルを喰らって一段削り切れないとは、それほどまでに今までのボスとは違うことがわかる。

 

「ユウキ、ラン、スイッチ!」

 

「「了解!」」

 

「「「スイッチ!」」」

 

俺はソードスキルの技後硬直が終わるとユウキとランとスイッチをした。

 

「はあぁぁぁぁあ!」

 

俺に向かって繰り出される《ガストレイゲイズ》の触手を俺はパリィ、もしくは避けて防ぐ。

 

「アスナ!先に触手を破壊だ!」

 

「わかったわ!私たちはキリトくんに続いて触手を破壊、聖竜連合の人たちは正面をお願いします!クラインさん、エギルさんは側面から攻撃を!」

 

アスナは素早く指示を飛ばす。

 

「わかった!」

 

「おうよ!」

 

「おう!」

 

聖竜連合のプレイヤー、クライン、エギルが返事を返す。

触手を攻撃すると、本体にもダメージが通るらしく《ガストレイゲイズ》のHPが減っていった。

攻撃をするなかで攻撃力が高いのは俺とレインの握る二刀だった。

基本威力が高いため《ガストレイゲイズ》のHPゲージを大きく削り取る。

徐々にHPゲージは互いに削れて行く。

やがて触手を全て破壊すると、《ガストレイゲイズ》は一瞬動きを止め何か溜める動作をした。

次の瞬間、

 

「なにっ!!」

 

「うわっ!!」

 

俺たち全員《ガストレイゲイズ》への攻撃範囲から離さていた。

だが、先程の攻撃を受けても俺たち全員、HPゲージは減ってない。

 

「今のは!?」

 

「俺たちのHPが減っていないところを見ると、俺たちを遠ざけさせる技じゃないか?恐らく、自分のHPがある程度減ると発動するんだろう」

 

「それじゃあ!」

 

「ああ、自ら、弱ってますよ、って言ってるようなもんだ!」

 

「なるほど、それじゃ・・・・・・行くわよ、みんな気を引き閉めて!」

 

「「「「「おう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘開始からすでに一時間半たっている。

《ガストレイゲイズ》のHPゲージは残り一段。

その一段も残り半分までに減っている。

《ガストレイゲイズ》はHPゲージが一段減る毎に攻撃を増やし、今では大きな眼から直線に出るビーム攻撃、範囲90度を凪ぎ払うビーム攻撃、更にせっかく破壊した触手も復活され触手による凪ぎ払いや噛みつき、全触手に連続攻撃とビームによる追撃、等を繰り出してくる。

触手はパリィ、ビーム系は避けるか相手の体制を崩せば対処できる。

更にHPが減る毎に頻繁にあの衝撃波を出してくる。

 

「はあぁぁぁあっ!」

 

「キリトくん、スイッチ」

 

「わかった・・・・・・スイッチ!」

 

「やあぁぁぁぁぁあ!」

 

レインの≪多刀流≫ソードスキル《ディスティニー・ロンド》4連撃を繰り出す。

レインはその後、ストレアとスイッチして俺の隣にきた。

 

「後、少しだ。行けるかレイン?」

 

「もちろんだよ♪」

 

「よし、行くぞ!」

 

「うん!」

 

俺は片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》単発重攻撃を放つ。

それに続いて背後から、

 

「やあぁぁぁぁぁあ!・・・・・・・・《サウザンド・レイン》!!」

 

レインの《サウザンド・レイン》が迫る。

《サウザンド・レイン》は俺を追い越して次々と《ガストレイゲイズ》の体に突き刺さる。

《ガストレイゲイズ》に《サウザンド・レイン》が命中した1秒後俺の《ヴォーパル・ストライク》が《ガストレイゲイズ》を貫く。

俺とレインのコンボにより動きを止めた《ガストレイゲイズ》に俺は追撃で片手剣ソードスキル《エヴァーティング・ストライク》7連撃を撃つ。

 

「今だ!!」

 

俺はソードスキルを放ちながら言う。

 

「みんな、キリトくんに続いて!」

 

「おおぉぉぉぉぉお!!」

 

「ぜりゃぁぁぁぁあ!!」

 

「はあぁぁぁぁぁあ!!」

 

「やあぁぁぁぁぁあ!!」

 

「せえぇぇぇぇぇい!!」

 

「とりゃぁぁぁぁあ!!」

 

アスナの声にそれぞれ、アスナは細剣上位ソードスキル《スター・スプラッシュ》8連撃、ラムは刀上位ソードスキル《羅生門》5連撃を、ユウキは≪紫閃剣≫上位ソードスキル《ノクティス・ラージュ》6連撃を、リーファは片手剣ソードスキル《デットリー・シンズ》7連撃、ランは≪変束剣≫上位ソードスキル《ナイトレス・クラウド》8連撃を、リーザは槍上位ソードスキル《ダンシング・スピア》5連撃を、ストレアは両手剣上位ソードスキル《アストラル・ヘル》7連撃を《ガストレイゲイズ》に向かって放つ。

流石に全方位からの多重ソードスキルは防ぎようがないため《ガストレイゲイズ》のHPは残り1割にまで削り取られた。

次の攻撃を放てば終わるが、アスナたちは技後硬直の為しばらく動けない。

だが、俺とレインは違う。

俺の技後硬直はすでに終わっており次のソードスキルに入る準備をしていた。

レインは俺とは反対のところでスタンバイしている。

 

「これで決める!はあぁぁぁぁぁあ!!」

 

「やあぁぁぁぁぁあ!!」

 

俺の声とともにレインの声も響く。

アスナたち全員がソードスキルを放ち終えると同時に俺は≪二刀流≫上位ソードスキル《ナイトメア・レイン》16連撃。

レインは≪多刀流≫上位ソードスキル《クリア・コンパッション》16連撃を同時に放つ。

 

「グオオオオッ・・・・・・・・」

 

俺とレインのソードスキルを受けた《ガストレイゲイズ》は最後に断末魔を響かせてポリゴンの欠片へと代わり消滅した。

 

『congratulations!』

 

《ガストレイゲイズ》が消えると視界にはラストアタックの表示と獲得経験値が表示された。

 

 

 

 

 

 

 

今回のボス攻略戦は死者数0

ラストアタックボーナスは俺、と言う結果で幕を閉じた。

 




長時間の戦闘描写は久しぶりかも。
次回、攻略戦後。

ではまた次回お会いしましょう。
感想など、お待ちしてます。


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HF編 第65話〈攻略戦後〉

れ、連日投稿です。


《ガストレイゲイズ》を討伐したあと、攻略組の面々はそのまま第77層「トリベリア」に来たあと転移門をアクティベートし、そのまま76層、「アークソフィア」に帰ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

アークソフィア エギルの店

 

「それではご唱和願います。・・・・・・攻略お疲れさま!!」

 

「「「「「「「「「「「「お疲れさま~!!」」」」」」」」」」」」

 

アスナの号令のもと俺たちは手に持ったグラスを掲げた。

 

「お疲れさま、キリトくん」

 

「お疲れ、レイン」

 

俺は飲み物を持ってやって来たレインとともに椅子に座った。

 

「やっと、76層攻略出来たね」

 

「ああ。此処に来てから色んな出来事があったからな」

 

「武器のノイズ化やスキルデータの減少・・・・・・」

 

「リーファやシノンの来訪。そしてホロウ・エリア。だからな」

 

俺とレインは76層に来てからの出来事を思い出していた。

 

「そうだね~。あ、でもユイちゃんにまた出会えたのは嬉しかったね」

 

「ああ」

 

「そう言えばさっきフィリアちゃんからメールが届いたんだけど、キリトくんには来てた?」

 

「あー、そう言えば来てたな」

 

「何て書いてあったの?」

 

「確か『隠し扉を見つけたわ。出来たら明日、協力してくれない』。だったか」

 

俺はフィリアからのメール内容を言った。

 

「わたしも同じだよ♪」

 

「それで、レインはどうする?」

 

「わたし?わたしはもちろんフィリアに協力するよ♪キリトくんも。でしょ」

 

「ああ。もちろんだ」

 

「じゃあ、フィリアちゃんに返信しとくね」

 

「頼む」

 

「うん♪」

 

レインは元気よく言うと離れてた。

どうやら奥の方でフィリアに返信するみたいだ。

 

「ふぅ~。にしてもこの世界のシステムがバグったのか?ボスのHPゲージが3段だったのは。だが、SAOはカーディナルシステムによって制御されているはず。・・・・・・はじめから3段だったのか。くそっ。こんなとき彼奴がいたら真意を聞き出せるのに」

 

俺は一人、小さな声で今はいない茅場に毒づいた。

 

「キリトさん、いいですか?」

 

話し掛けてきたのはランだった。

隣にはユウキが一緒にいる。

 

「ああ、構わんぞ二人とも」

 

俺がそう言うと二人は、それぞれ椅子に座った。

 

「お疲れ様、二人とも」

 

「お疲れ、キリト」

 

「お疲れ様です、キリトさん」

 

「それで、どうしたんだ」

 

「実はユニークスキルについてなんですが」

 

俺が訪ねるとランは口を濁らせた。

 

「ユニークスキルと言うと・・・」

 

「はい。わたしの≪変束剣≫とユウキの≪紫閃剣≫です」

 

「スキルになんかあったか?」

 

「後少しでスキル値がマスタリーするんですけど・・・・・」

 

「問題があるんだ。正確には姉ちゃんのソードスキルにだけど」

 

「問題?ランのソードスキルにか?」

 

「うん。今日使ったソードスキルはまだいいんだけど・・・・・ね」

 

「なんか、変なソードスキルがあるんです」

 

「変なソードスキル?それってレインの《サウザンド・レイン》と同型ってことか?」

 

俺は変なソードスキルと聞いてレインの《サウザンド・レイン》を言った。

≪多刀流≫最上位ソードスキル《サウザンド・レイン》はここSAOの中で唯一遠近両方のソードスキル。

投擲スキルなどあるがそれは基本的にサブスキルみたいなものでモンスターを牽制するときに使う。

つまり、戦闘には余り向かないのだ。

投擲などのカテゴリーにあるソードスキルは威力が低くHPも余り減らない。

だがレインの《サウザンド・レイン》は別だ。

≪多刀流≫最上位ソードスキルなだけであり遠距離から放てるに加え近距離からの攻撃。

魔法が存在しないSAOの中ではかなり有効だ。

更に遠距離から放てばソードスキル後の技後硬直間は相手から遠距離の攻撃をされるか接近されて攻撃されるかしなければ当たらない。

だが、SAOの中では遠距離からの攻撃を持つのはモンスターの弓位なものだけだ。

最初に《サウザンド・レイン》を放てば相手が接近してくるまでには技後硬直時間は終了し続けて攻撃が可能になる。

 

「わからない」

 

「んー。これはレインも交えて話した方がいいかも知れないな」

 

「そうですね」

 

俺はラン、ユウキにレインがメールを返信していることを話し、レインが戻ってくるのを待つことにした。

3分後レインが戻ってきた。

椅子に座ると、

 

「ただいまキリトくん♪フィリアちゃんオッケーだって。あれ、ユウキちゃんにランちゃん。どうしたの?」

 

言ってきた。

 

「ああ、レインに聞きたいことがあるんだけど」

 

「何かな?」

 

「レイン。《サウザンド・レイン》について教えてくれるか?」

 

「《サウザンド・レイン》?別にいいけど、わたしにも正直わかんないんだよね」

 

「どう言うことだ?」

 

「わたしの≪多刀流≫最上位ソードスキルは《サウザンド・レイン》ともうひとつあるの。でももうひとつの最上位ソードスキルは今は使えない。現在使える最上位ソードスキルは《サウザンド・レイン》だけ。≪多刀流≫スキル。そのなかで《サウザンド・レイン》はある意味別物。まず《サウザンド・レイン》の連撃数は不明。更にどうして遠距離からも攻撃出来るのかもわからないんだ」

 

「なるほど」

 

「うん。ごめんね、余り力になれなくて」

 

「いや、大丈夫だ。ところで何でもうひとつの最上位が使えないんだ?」

 

「あー、それはね、此処に来たとき熟練度が下がっちゃったからなんだよ。まあ、後少しでマスタリーするけどね」

 

「なるほどな。だそうだけど」

 

俺は先程から聞いているユウキとランに聞いた。

 

「なるほど、ありがとうございます。レインさん」

 

「ありがとう、レイン」

 

「ううん。どういたしまして、此方こそ余り役に立てなくてごめんね。剣を新丁したいときは言ってね。何時でも協力するよ♪」

 

「そのときはお願いします」

 

「ありがとう♪」

 

そう言うとユウキとランは席を立ちアスナたちのところに向かっていった。

 

「ありがとうなレイン」

 

「ううん。大丈夫だよ」

 

「明日は向こうで攻略か・・・・・・」

 

「そうだね。あ、剣のメンテナンスしといてあげようか?」

 

「すまないが頼めるか」

 

「もちろんだよ♪・・・・・そろそろ部屋に戻ろうかな」

 

「あ、なら俺も戻るわ」

 

俺とレインはグラスをテーブルに置きアスナたちに挨拶したあと2階の部屋に戻った。

 

「今日は一緒に寝ようか」

 

「そ、そうだな」

 

俺はレインのお誘いに今日は一緒に寝ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レインとユイの部屋に入った俺はソファーに座りウインドウを表示させ『ブラックローズ・ナイト』と『ホワイト・ユニヴァース』をレインに渡した。

 

「それじゃ、さっそくやっちゃうね♪」

 

レインはそう言うと簡易鍛治用具をだして剣を研ぎ始めた。

 

"何度もレインの剣研ぎを見ているが・・・・・・何時見ても鮮やか、だな"

 

俺はレインの動作を見てそう思った。

10分後俺とレインの剣は新品同様の輝きを放った。

 

「はい♪」

 

「おお・・・・・ ありがとう、レイン」

 

「どういたしまして♪さてと、お風呂入ってこよっと。キリトくんも一緒に入ろ♪」

 

「へっ?・・・・・ま、まあ、今日はいいか」

 

俺とレインはそのまま洗面所に行かお風呂に入った。

お風呂場での俺の顔は湯中りだけじゃなく別の意味でも赤くなっていたのは言うまでもなかった。

お風呂から出ると時間も時間のためベットでキスしたあと一緒に寝た。




今回もオリジナル回です。
オリ回考えるの大変かも。


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HF編 第66話〈隠し扉の奥にて・・・・・・〉

やっぱり連日投稿は難しいですね。
内容が浮かばないかも・・・・・・


「「転移、ホロウ・エリア管理区!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

76層、ボス攻略が完了した翌日、俺とレインはフィリアに誘われてホロウ・エリアに来ていた。

 

「フィリア、お待たせ」

 

「いや、わたしも今来たところ」

 

俺がフィリアに挨拶すると、

 

「フィリアちゃん。昨日書いてあった隠し扉って?」

 

レインがさっそく聞いた。

フィリアはコンソール画面から樹海エリアの地図をピックアップしある場所を拡大化して見せた。

 

「ここ。・・・・・・・・『二人が邂逅した教会』にあるわ。詳しくは・・・・・・・・見てもらった方が早いわね」

 

「わかった。じゃあ、さっそく行くか」

 

「ええ」

 

「オッケー♪」

 

俺たちは転移門に行き、

 

「「「転移!」」」

 

目的地の近くにある転移碑へと転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『二人が邂逅した教会』隠し扉前

 

「ここよ」

 

フィリアはとある壁の前で立ち止まり言った。

 

「なるほど。パッと見、よくわからないが。確かに不自然な場所があるな」

 

俺は床を見て言った。

 

「ほんとだね」

 

床に引かれた赤いカーペットは壁の前まであるが不自然に途切れていた。

 

「でしょ。壁を調べると・・・・・」

 

フィリアは言いながら不自然に途切れたカーペットのに合わさっている壁を触り、壁の一部分を押した。

すると、ゴンッ、と音がなり壁が上に上がっていった。

 

「奥に扉があったのよ」

 

壁の奥には両扉の扉が存在した。

床に引かれたカーペットはその扉の床にも引かれていた。

 

「なるほど。定番中の定番だな」

 

「定番だね」

 

俺とレインは現れた扉に対して言った。

 

「まあ、トレジャー系なら定番よね」

 

フィリアも同じことを言った。

 

「それで奥にいるモンスターを倒してほしいの」

 

「別にいいぞ」

 

「うん」

 

「ありがとう。モンスターはネームドモンスタークラスでゴーレム型よ」

 

「オッケー」

 

「そんじゃ、そのゴーレムとやらをいっちょ殺っちゃいますか」

 

「うん♪」

 

「了解」

 

俺は扉を開け奥の広間を見た。

そこには雑魚モンスター3体とゴーレム型のNMが1体いた。

NMの名前は・・・・・・『サンクチュリア』

 

「・・・・・・あれか」

 

「ええ・・・・」

 

「取り巻きに死神型・・・・・3体だね」

 

「レインに死神3体任せていいか?」

 

「いいよ♪」

 

「サンキュー。フィリアは俺と一緒にゴーレムを攻撃だ。俺が攻撃を防いだりするからフィリアはその隙に攻撃を頼む」

 

「わかったわ」

 

「そんじゃ、行くぞ!」

 

俺たちは簡単な作戦プランを立てた後攻撃を開始した。

俺とフィリアが《サンクチュリア》に向かって走るなかレインは取り巻きの死神3体を相手に二刀で攻撃を始めた。

 

「やあぁぁぁぁあ!」

 

気合いの入った声とともにレインは3体の死神を相手にしていく。

 

「行くぞ、フィリア!」

 

「わかったわ!」

 

俺は走りながら右手の『ブラックローズ・ナイト』を正中線に構え片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》単発重攻撃を放つ。

 

「うおぉぉぉぉおっ!!」

 

「ゴゴオッ・・・・・!」

 

《サンクチュリア》は近づいてくる俺とフィリアに気が付き左手を振り下ろしてくる。

だが、その攻撃はフィリアによって防がれる。

 

「やあぁぁぁぁあ!」

 

フィリアの短剣ソードスキル《ラピット・エッジ》2連撃により軌道を反らされ大きく俺から外れる。

俺はその間に《ヴォーパル・ストライク》を《サンクチュリア》に叩き込んだ。

 

「グオオッ・・・・・・」

 

《ヴォーパル・ストライク》により《サンクチュリア》は仰け反り効果が現れた。

その間に技後硬直の終わったフィリアが、

 

「やあぁぁぁぁあ!!」

 

短剣ソードスキル《アクセル・レイド》12連撃を放つ。

仰け反り効果によりダメージが与えられ安くなっているためこの連撃で2段ゲージの内、2段目が3割近く減っている。

 

「よし、ファーストアタックはクリアだ!次行くぞ!」

 

「了解!」

 

俺とフィリアは仰け反りから回復した《サンクチュリア》の攻撃をステップでかわし攻撃を与える。

 

 

 

 

~レインside~

 

キリトくんとフィリアちゃんが《サンクチュリア》に攻撃を始める前、わたしは取り巻きの死神3体を相手取っている。

 

「やあぁぁぁぁあ!」

 

わたしは先制攻撃として≪多刀流≫ソードスキル《インセインピアーズ》突進2連撃を死神の1体に放つ。

 

「グオッ」

 

《インセインピアーズ》は下位ソードスキルの為技後硬直も短い。

わたしは死神の凪ぎ払ってきた鎌をよけ体術スキル《幻奏》による蹴りを放つ。

体術スキル《幻奏》はカウンターよりのソードスキル。

敵攻撃をかわし、相手が体勢を崩したところに放つと仰け反り効果を与える技。

 

「せやっ!」

 

《幻奏》を放ち終わるとすぐさま≪多刀流≫ソードスキル《マティーニ・ディーンズ》3連撃で追撃。

 

「グオオッ」

 

これで死神のHPは0になり悲鳴をあげてポリゴンへと変わっていった。

 

「よし!後2体・・・・・・いっくよー」

 

わたしは自分に気合いを入れて残りの死神に向かっていった。

キリトくんとフィリアちゃんの方は順調に《サンクチュリア》の攻撃をかわしダメージを与えている。

 

「早く終わらせないとね」

 

わたしはそのまま残り2体を同時に相手取った。

最初に≪多刀流≫中位ソードスキル《ローディエントルージュ》範囲技6連撃を繰り出す。

 

「「グオオッ・・・・」」

 

わたしは《ローディエントルージュ》の効果で素早さが下がっている死神の攻撃を見切り素早く、死神の1体の背後に周り切り刻んでいく。

もう1体の死神の鎌をステップでかわし、弾き飛ばす。

 

「やあぁぁぁぁあ!」

 

わたしは背後の死神と前の死神、2体に同時に≪多刀流≫ソードスキル《ラウンド・スクエア》4連撃を放ちHPを0に変えた。

 

「「グオオオッ」」

 

「よし、終わった~。キリトくんたちは・・・・・と」

 

キリトくんたちのところを見ると《サンクチュリア》のHPゲージは残り一本でその一本も半分まで下がっていた。

 

「それじゃ、キリトくんを助けますか♪」

 

~レインside out~

 

 

 

 

「せやっ!・・・・・はあぁっ!」

 

現在《サンクチュリア》のHPは残り一本までに減っている。

俺は二刀を手に《サンクチュリア》の攻撃を捌く。

そして

 

「フィリア、スイッチ!」

 

「わかった!スイッチ!」

 

「はあぁぁぁぁあっ!!」

 

フィリアとスイッチした俺は≪二刀流≫ソードスキル《クリムゾン・スプラッシュ》重攻撃8連撃を放つ。

ゴーレム型等の体の大きい重量級なモンスターには、重攻撃が一番有効的だ。

《クリムゾン・スプラッシュ》により《サンクチュリア》のHPは一本の半分までに減少した。

《サンクチュリア》のHPが半分まで減るのと同時に背後。レインがいるところからポリゴンの破裂音が2回響き渡る。

その直後、

 

「やあぁぁぁぁあ!」

 

片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》が《サンクチュリア》を貫いた。

 

「ヤッホー、キリトくん。こっちは終わったよ~」

 

「はは、早いなレイン」

 

俺はレインの言葉に苦笑いを浮かべて返す。

 

「レインも来たことだしさっさと倒すぞ!」

 

「了解!」

 

「オッケー!」

 

《サンクチュリア》のHPはレインの《ヴォーパル・ストライク》を受けてすでにレッドゾーンまで減少している。

攻撃パターンが変わるかと思ったが、対して変わらなく俺は前衛で《サンクチュリア》の攻撃をかわして弾く。

その間にレインの双剣とフィリアの短剣が《サンクチュリア》の足の付け根を切り刻んでいく。

 

「ゴオオッ・・・・」

 

付け根にダメージを与えられ《サンクチュリア》は体勢を崩し、動きが止まる。

 

「二人とも、フルアタック!」

 

「「了解!!」」

 

俺の声とともにフィリアは短剣ソードスキル《インフィニット》5連撃を、レインは片手剣ソードスキル《バーチカル・スクエア》4連撃を、そして俺は片手剣ソードスキル《サベージ・フルクラム》重攻撃3連撃を放つ。

俺たち3人のソードスキルを受け《サンクチュリア》のHPは0になり、

 

「ゴオオオッ・・・・・・!」

 

ポリゴンの欠片へと爆散した。

《サンクチュリア》が消滅したのを確認すると俺は背中の鞘に、レインとフィリアは腰の鞘におさめた。

 

「お疲れ、二人とも」

 

「お疲れ~」

 

「お疲れ様」

 

「フィリアの動き、攻略組に匹敵するものだぞ」

 

「ほんと、フィリアちゃんの動きに無駄が無いもの」

 

「そ、そんなことないよ。それよりキリトとレインの方が凄いよ。流石《黒の剣士》と《紅の剣舞士》。えっと後、《最強夫婦》だったけ?」

 

「「うぐっ!?」」

 

俺とレインはフィリアの言った《最強夫婦》という言葉に苦笑いを浮かべた。

まさかフィリアまでそれを知っているとは思わなかったのだ。

 

「な、なあレイン。あの《最強夫婦》って言う二つ名ってもしかしてSAO全プレイヤーが知ってるんじゃないか?」

 

「ま、まさか~」

 

「今度、アルゴに調べて貰おう」

 

「そ、そうだね」

 

俺とレインは後でアルゴに調べてもらうことにしてフィリアと共に奥に進んだ。

奥には宝箱があった。

 

「見つけた。さぁ~て何が出るかな~」

 

「フィリアなんか性格変わってないか?」

 

「た、多分宝箱を見つけて興奮してるんだとおもうよ」

 

フィリアは宝箱を見て検分した。

 

「うん。ミミックじゃないわね。正真正銘本物の宝箱よ」

 

「そうか。罠を解除出来るか?」

 

「もちろん。ちょっと待ってて」

 

フィリアは再び宝箱をいじった。

どうやら、蓋に仕掛けられた罠を解除しているらしい。

しばらくして、

 

「解除出来たわ。さあ、出ておいでお宝ちゃん♪」

 

「「お、お宝ちゃん?」」

 

フィリアが宝箱から取り出したのは、

 

「じゃーん♪」

 

アクセサリーだった。

 

「おおぉ・・・・・かなりレアなアクセサリーだな」

 

「ほんとだね。なんかペンダントみたいだけど」

 

俺とレインはフィリアが宝箱から取り出したアクセサリーを見て言った。

 

「はい。これはキリトにあげるわ」

 

「え、いいのか!?」

 

「もちろんよ。今日手伝ってもらったお礼だと思って頂戴」

 

「あ、ああ。ありがとうフィリア」

 

俺はフィリアから受け取ったペンダントをタップした。

 

アイテム銘は『「貴重品」虚光の燈る首飾り』

 

俺はそのままペンダントをストレージの中に収納した。

 

「二人はこのあとどうするの?」

 

「そうだなー」

 

俺はこのあとの事を考えていると不意に俺とレイン、両方のメール機能が開いた。

 

「ん?クラインから」

 

「わたしもクラインくんから来てるよ」

 

メールの内容を読んだ俺とレインは、

 

「すまん、フィリア。俺たちは一回戻らないと行けないみたいだ」

 

「そうなの?わかったわ、それじゃ管理区に戻りましょ」

 

俺たちはそのまま最寄りの転移碑に行き管理区へと転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

管理区

 

「それじゃ、またなフィリア」

 

「うん。あ、レインこれ」

 

フィリアはウインドウを表示させるとレインに何かを渡した。

 

「フィリアちゃん、これは?」

 

「この間の強化とアイテム類のお礼よ」

 

「スパスィーバ。ありがとう、フィリアちゃん♪」

 

「どういたしまして」

 

「それじゃ、ダスヴィダーニャフィリアちゃん」

 

「うん。またね二人とも」

 

「「転移、アークソフィア!!」」

 

俺とレインは光に包まれて管理区から転移した。

 

 

 

 

 

~フィリアside~

 

「さてと、レインにお礼は渡したし今日はこのまま帰ろうかしら」

 

私がレインに送ったのはホロウ・エリアで採取出来る鉱石や素材アイテム等だ。

私はしばらく管理区のコンソールを使いホロウ・エリアのマップを見た。

そして、

 

「転移!」

 

根城に帰るため転移門にたち根城近くの転移碑に転移した。

 

~フィリアside out~

 

 




ソーナです。
今回はどうでしたか?
これからも頑張っていきます。

感想等お待ちしてます。


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登場人物レポート

今回は登場人物について説明です。
残りの人物は次回のレポートに記載します。


現実名 桐ヶ谷 和人(きりがや かずと) 16歳

 

キャラネーム Kirito (キリト)

 

原作の主人公にして今作の主人公。

《黒の剣士》《最強夫婦》という二つ名を持つ。

ユニークスキル≪二刀流≫及び≪シンクロ≫を持つプレイヤー。

SAO全プレイヤー中、最大の反応速度を持つものに与えられる≪二刀流≫スキルを持ち、真の絆を深めた者に与えられるスキル≪シンクロ≫スキルを保有する。

レインとは婚姻関係。 娘は元MHCP試作1号コードネーム、ユイ。及び元MHCP試作2号コードネーム、ストレアの二人。

家族構成は義妹の直葉を含めて4人。

幼い頃本当の両親が交通事故で亡くなり母親の妹、翠が結婚した桐ヶ谷家へと養子として引き取られる。

義妹の直葉との中はSAOに入る前はギクシャクしていたが現在は良好。

攻略組トップ5に入り攻略組の要を担うプレイヤー。

幼い頃から幼なじみの木綿季や藍子に好意を抱かれていたが気づかないほどの朴念仁。

レインとはSAO初期、第1層からコンビとして活動。

最初はレインとはコンビの関係だったが徐々にレインを恋愛対象として見ることになる。

片手剣『ダークリパルサー』を作成する際、必要な鉱石『クリスタライトインゴット』を入手する際に白竜の巣に落ちそこで、レインと相思相愛だということに気づき、脱出した2週間後第47層『フローリア』にて告白。そして結婚、夫婦になる。

血盟騎士団副団長のアスナとは親友。

ギルド風林火山のクラインとは第1層からの腐れ縁。

木綿季と藍子とは第1層、ボス攻略の際に再会。

ギルド月夜の黒猫団を壊滅させた過去を持つ。

その際、自分が攻略組だと言うことを隠さなければサチたちは死なずにすんだと激しく自分を責める。

月夜の黒猫団の団長、ケイタに全てを話した際、言われた言葉が心に突き刺さり夜な夜なレインの知らぬ間に無茶なレベリングをした経験を持つ。

「俺が生きている間はパーティーメンバーを殺させはしない!」と言うほどパーティーメンバーを大事にする。

 

 

 

現実名 枳殻 虹架(からたち にじか) 16歳

 

キャラネーム Rain (レイン)

 

ゲーム、ロスト・ソングからの登場人物にして今作のヒロイン。

《紅の剣舞士》《最強夫婦》の二つ名を持つ。

ユニークスキル≪多刀流≫及び≪シンクロ≫を持つプレイヤー。

SAO全プレイヤー中、最大の反射速度と鍛治スキルを持つものに与えられる≪多刀流≫スキルを持ち、真に絆を深めた者に与えられる≪シンクロ≫スキル保有する。

キリトとは婚姻関係。娘は元MHCP試作1号コードネーム、ユイ。及び元MHCP試作2号コードネーム、ストレアの二人。

攻略組トップ5に入り、キリトとともに要を担うプレイヤー。

7歳の時までロシアにて家族4人で生活していた。

だが7歳の際、妹の七色の事で両親が離婚、は母親に引き取られて日本に移住、妹の七色は強引に父親に親権を取られアメリカへと移住となった。

キリトとはSAO初期、第1層からコンビとして活動。

はじまりの街を一緒に出てからキリトの事は気にして恋愛対象として見る。

キリトの片手剣『ダークリパルサー』を作成する際、必要な鉱石『クリスタライトインゴット』を入手する際に白竜の巣に落ちそこでキリトと相思相愛だと言うことに気づく。

白竜の巣から脱出した2週間後、第47層『フローリア』にてキリトから告白を受け承諾。結婚し晴れて夫婦となる。

鍛治スキルを取得しており、鍛治仲間のリズとは旧知の間柄。

鍛治スキルを取得しているため自身の剣を自分で作るほど。またキリトの剣を作製、強化、メンテナンス等を引き受けたりする。

アークソフィアではユイと一緒の部屋で住んでいる。

キリトやユイ、アスナたちを一番に考え困っているプレイヤーがいると助けたくなる性分の持ち主。

キリトと二人の時は通常より大胆な事をたまにしでかす。

 

 

 

現実名 結城 明日奈(ゆうき あすな) 17歳

 

キャラネーム Asuna (アスナ)

 

原作のヒロイン。

今作では親友として描かれている。

ユニークスキル≪神速≫を持つプレイヤー。

血盟騎士団副団長を務め《閃光》の二つ名を持つ。

キリトとレインとは第1層ボス攻略戦の時からの付き合い。

細剣の使い手として有名でその速さはキリトですら視認出来ないほど。

SAO全プレイヤー中、最高の速さを持つものに与えられる≪神速≫を保有する。

血盟騎士団副団長として76層以降のボス攻略戦にて指揮を執る。

攻略組トップ5に入り要を担うプレイヤー。

 

 

 

現実名 紺野 木綿季(こんの ゆうき) 16歳

 

キャラネーム Yuuki (ユウキ)

 

原作、マザーズロザリオのヒロイン。

原作ではAIDSにより死亡するが今作では和人の幼なじみとして双子の姉、藍子と共に生存。

ユニークスキル≪紫閃剣≫を持つプレイヤー。

血盟騎士団副団長補佐を務め《絶剣》の二つ名を持つ。

和人と直葉とは姉の藍子とともに幼なじみ。

SAO全プレイヤー中、最大の攻撃速度を持つものに与えられる≪紫閃剣≫を保有する。

紺野家の引っ越しにより会えなくなっていたがSAOにて再開。第1層ボス攻略戦からの付き合い。

姉の藍子とともに子供の頃から和人に好意を抱いていたが引っ越す直前まで言えずそのままになっていた。

SAOで再開したが和人とレインが結婚したため諦めることを決意。姉共々レインとの結婚を祝福している。

 

 

 

現実名 紺野 藍子(こんの あいこ) 16歳

 

キャラネーム Ran (ラン)

 

原作では妹の木綿季の前に死亡しているが今作では和人の幼なじみとして生存。

ユニークスキル≪変束剣≫を持つプレイヤー。

木綿季と同じく血盟騎士団副団長補佐を務め《剣騎姫》の二つ名を持つ。

SAO全プレイヤー中、的確に弱点を付く者に与えられる≪変束剣≫を保有する。

攻略組トップ5に入り要を担うプレイヤー。

和人と直葉とは妹の木綿季と共に幼なじみ。

子供の頃から和人に好意を抱いていたが、紺野家の引っ越しにより言えずにそのままになっていた。

第1層ボス攻略戦にて再開。

再開し気持ちを伝えようとしたが和人とレインが結婚したため諦めることを決意。今では木綿季とともに和人とレインの結婚を祝福している。

基本的にアスナの指揮の補佐を務め纏め役を担う。

 

 

 

現実名 零乃宮 斑玖(れいのみや むらく) 16歳

 

キャラネーム Ram (ラム)

 

今作のオリジナルキャラクター。

篠宮愛璃沙とは互いが小さな頃からの幼なじみ。

篠宮家とは家族ぐるみの付き合いを持つ。

ユニークスキル≪抜刀術≫を持つプレイヤー。

幼少期より剣道を習っているためSAOの中では刀を用いて戦う。

SAO全プレイヤー中、的確に急所を狙う者に与えられる≪抜刀術≫を保有する。

血盟騎士団ではユウキとランの護衛をリーザとともに務めていたが75層、『コリニア』で同じくアスナの護衛を務めていたクラディールとキリトのデュエルの終了の際、護衛を外れユウキとランの補佐に任命される。

同年代であるキリトとは仲良くたまにデュエルをしたりする仲でもある。

76層『アークソフィア』の自室で愛璃沙に告白され承諾し結婚した。

 

 

 

現実名 篠宮 愛璃沙(しのみや ありさ) 16歳

 

キャラネーム Lirza(リーザ)

 

今作のオリジナルキャラクター。

零乃宮斑玖とは互いが小さな頃からの幼なじみ。

零乃宮家とは家族ぐるみの付き合いを持つ。

ユニークスキル≪無限槍≫を持つプレイヤー。

SAO全プレイヤー中、最高の器用さを有した者に与えられる≪無限槍≫を保有する。

幼少期より斑玖と一緒に入ることが多かったため人一倍斑玖の事を気にしている。

血盟騎士団ではユウキとランの護衛を斑玖とともに務めていたが75層『コリニア』で同じくアスナの護衛を務めていたクラディールとキリトのデュエルの終了の際、護衛を外れユウキとランの補佐に任命される。

76層『アークソフィア』で斑玖の自室で自分の正体を明し告白、斑玖から返事をもらい結婚する。

 

 

 

 




まだ取得してないユニークスキルがあるため分からないと思いますが、それはこれからの話を読んで下さい。
その内ソードスキルも説明しようと思います。


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登場人物レポートⅡ

登場人物レポートⅡです。


 

現実名 |篠崎 里香(しのざき りか) 17歳

 

キャラネーム Lesbeth(リズベット)

 

鍛冶屋『リズベット武具店』を経営するプレイヤー。

メイン武器は盾装備の片手棍。

リズと言う愛称で呼ばれる。

鍛冶スキルを持ち、尚且つ同じ女性プレイヤーの為かレインとは仲がいい。

マスターメイサーの称号を持ち戦闘についても中層ゾーンではトップレベル。

アスナたちとは仲がよく、それぞれ武器を作製してあげている。

キリトについては前々からレインから聞いていたが会ってみるまではどんな人物なのか分からなかった。

キリトの片手剣を作製してもらうために48層『リンダース』にて出会った。

出会っていきなり自身の最高傑作の片手剣を折られ、キリトに激しく詰め寄るがレインの仲介もあり水に流した。

キリトとレインが採ってきた『クリスタライトインゴット』から片手剣『ダークリパルサー』を作製した。

『アークソフィア』では新たに『リズベット武具店2号店』を営んでいる。

 

 

 

現実名 |綾野 珪子(あやの けいこ) 14歳

 

キャラネーム Silica(シリカ)

 

中層ゾーンではアイドル的な存在のプレイヤー。

小竜のピナのサポートともに戦闘を行う。

メイン武器は短剣。

キリトとレインとは35層『迷いの森』でモンスターに襲われているところを助けてもらい出会った。

更にピナを復活させるため手伝ってもらう。

その際、ロザリアを含む10人のオレンジギルドに襲われるがそこでキリトとレインが攻略組であることを知る。

76層に来てからはキリトたちに追い付く為、日々戦闘をしたり市内のクエストを行っている。

日課はピナのお散歩。

 

 

 

現実名 桐ヶ谷 直葉(きりがや すぐは) 15歳

 

キャラネーム Leafa(リーファ)

 

原作、フェアリー・ダンスでのヒロイン。

和人の家族であり妹。だが実際に血の繋がりはなく義妹。

76層の森にて和人と再会。

SAOにログインする前は別のMMORPG『ALO(アルヴヘイム・オンライン)』をプレイしていたらしい。

SAOでの姿はALOで使用しているキャラをそのまま使ったため熟練度が高い。

メイン武器は片手剣。

剣道をやっているためかなりの実力者。

現実では剣道全国大会でベスト8に入るほどの強者。

和人に会いたい一心でSAOにやって来た。

シリカとは仲がよく木綿季と藍子と再会したときは驚きを漏らした。

 

 

 

現実名 朝田 詩乃(あさだ しの) 15歳

 

キャラネーム Sinon(シノン)

 

原作、ファントム・バレットのヒロイン。

ユニークスキル≪射撃≫を持つプレイヤー。

過去に事件に巻き込まれ、それが原因で病院通いをしている。

その際、臨床試験の為導入されたメデュキュボイドを使用しSAOにログインさせられてしまう。

ログイン当時には記憶喪失の状態。

徐々に記憶を思い出していき攻略組へと参戦。

SAO全プレイヤー中、遠距離から的確に敵を攻撃する者に与えられる≪射撃≫を保有する。

メイン武器は弓。サブとして短剣を装備している。

アスナからはシノのんと呼ばれ他の女子とも仲は良好。

 

 

 

現実名 壷井 遼太郎(つぼい りょうたろう) 25歳

 

キャラネーム Klein(クライン)

 

SAOサービス開始時キリトが最初に出会ったプレイヤー。

SAOが初めてのフルダイブの為、素人だったがキリトのレクチャーにより今では攻略組の一翼を担うギルド、風林火山のギルドリーダーを務める。

メイン武器は刀。侍のような装備をしている。

ギルドメンバーは全員で6人だが、誰一人として欠けることが無いようにしている。

キリトのよき理解者としてエギルとともにキリトを気遣っている。

一人でイベントボスを倒そうとしたキリトにレインたちを連れて、一緒に倒そう、と言うほど仲間の事を大事にしている。

女好きだがやるときはやると以外にしっかりとした一面を持つ。

キリトがレインと結婚した際に、キリトに一言文句を言ったが「あいつの事頼む」とレインに言っていることから大人の面を持つ。

 

 

 

現実名 アンドリュー・ギルバート・ミルズ

 

キャラネーム Agil(エギル)

 

キリトたちからは第1層ボス攻略戦からの付き合いで保護者的な存在。

キリトの心を許せる数少ないプレイヤーの1人。

メイン武器は両手斧。

攻略組の1人。

第50層『アルゲード』で故買屋を経営。

第76層『アークソフィア』ではキリトたちに拠点を提供。

ぼったくり商店として有名だが儲けの殆どは中層ゾーンの剣士たちの育成支援に提供。

影ながら剣士たちを支える存在。

クラインとともに大人としてキリトたちを見守っている。

縁の下の力持ちとも言えるプレイヤー。

 

 

 

現実名 竹宮 琴音(たけみや ことね) 16歳

 

キャラネーム Philia(フィリア)

 

キリトとレインに出会うより一ヶ月前、第75層でのヒースクリフとのデュエルの際、システムエラーが発生し本来はプレイヤーに解放されていない『ホロウ・エリア』に強制転移をさせられた。

転移した際、目の前に自分と同じプレイヤーが現れ錯乱してしまい攻撃、その際に『ホロウ・エリア』でエラーとして認識されてしまい『ホロウ・エリア』からの脱出が出来なくなっていた。

メイン武器は短剣。

同じく転移させられてきたキリトとレインと出会い、その仲間たちと出会い親交を深める。

キリトとレインの助けもあって『ホロウ・エリア』から脱出しアインクラッドに帰還。

自称トレジャーハンターと名乗っておりお宝には眼がない。

 

 

 

キャラネーム Argo(アルゴ)

 

情報屋、鼠のアルゴとして有名な女性プレイヤー。

キリトたちとは親友であり観察能力や情報収集能力が高い。

売れる情報は何でも売ると言われるほどで、よくキリトたちに情報を売る。

メイン武器はクロー。

AGIにステータスを振っており身軽。

76層に来てからはキリトたちの攻略をサポートするため行動する。

 

 

 

キャラネーム Strea(ストレア)

 

76層にてキリトたちと会う両手剣プレイヤー。

その正体はMHCP試作2号コードネーム、ストレア。

ユイの妹にあたる存在。

行動が大胆で天真爛漫。よくキリトをからかったりするが誰とでも仲良くなれる。

戦闘スキルは高く攻略組として活躍する。

アインクラッドが攻略された際、ユイとともにキリトのナーヴギアのローカルメモリーにデータを転送、消滅を免れる。

 

 

 

キャラネーム Yui(ユイ)

 

キリトとレインの娘にしてMHCP試作1号コードネーム、ユイ。

誰22層の森で記憶喪失の状態で見つかりキリトとレインが保護し親となる。

第1層『はじまりの街』地下迷宮の最奥にてカーディナルのエラー修正により一度は別れるが第76層に来た際に再会。

キリトとレインをそれぞれパパ、ママと呼び慕う。

GM権限は持たないがキリトたちの攻略のサポートをする。

76層ではレインと一緒の部屋に住む。

レインに似てたまに予想外の事をする。

 

 

 

現実名 茅場 明彦(かやば あきひこ)

 

キャラネーム HeathclIff(ヒースクリフ)

 

デスゲーム、SAOを起こした張本人。

ギルド血盟騎士団のギルドマスターを務めていた。

ギルドを結成した理由は「第90層より上のモンスター群に対抗するため」と話している。

GMに与えられるユニークスキル≪神聖剣≫を保有。

《生ける伝説》や《聖騎士》等の二つ名で呼ばれる。

75層ボス攻略の終了の際にキリトに正体を看破される。

基本的自身に《不死属性》を付与しておりそれによりどんなに攻撃しても絶対にイエローまでHPが落ちないようにシステムに保護されている。

マッドサイエンティストだがSAOに向ける視線は本気。

どんな事でも必ずフェアプレイを心掛ける精神を持つ。

75層でキリトとデュエルしたが同時に発生したシステムエラーによりその場から消えるかたちで管理者モードに以降、キリトたちの前に再び現れたのは第100層ボス攻略終了の際。

GM権限を使わずとも剣と楯の使いに関しては攻略組でもキリトに継ぐ持ち主。




次回から本文に入ります。
リクエストがあったら教えてください。
感想等お待ちしてます。


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HF編 第67話〈クラインの獲た物〉

ストーリーが思い浮かばないかもです。
少し遅くなりスミマセン。


「クラインのやつ、一体何ゲットしたんだ?」

 

「さあ、でもビックリするものを入手した、って書いてあったよ」

 

「まあ、クラインに聞けばすぐ分かるか」

 

「そうだね♪」

 

俺とレインはホロウ・エリアでフィリアと一緒に攻略していたところにクラインからのメッセージでアークソフィアに帰ってきていた。

アークソフィアに帰ってくるなり俺とレインはエギルの店に向かって歩きながら話していた。

 

「戻ったぞ」

 

「ただいまー」

 

俺とレインが言うと。

 

「おう、お帰り二人とも」

 

「お帰りなさい、パパ、ママ」

 

カウンターで作業していたエギルと、その手伝いをしていたユイが返事した。

 

「ただいま、ユイちゃん♪エギルさんのお手伝いしてるの?」

 

レインはユイの頭を撫でながら聞いた。

 

「はい♪」

 

ユイはレインに頭を撫でられて気持ち良さそうにしながら答えた。

 

「それでエギル、クラインは何処にいるんだ?」

 

俺は呼び出しておいて姿の見えないクラインをエギルに聞いた。

 

「ん、ああ、クラインならそろそろ帰ってくるんじゃねぇか」

 

「ん?どういう意味だ?」

 

「あー、まぁ、クラインから聞けばわかるさ」

 

エギルがそう言うと、チャリンと、扉を開ける音がなった。

 

「ふぅー、あって良かったぜ」

 

帰ってきたのはクラインだった。

 

「おい、クライン。いきなり呼び出した理由はなんだ?」

 

俺は帰ってきたクラインに聞いた。

 

「クラインさんがS級食材『フライングバッファローA5肉』をゲットしたんだよ」

 

俺の質問に答えたのは。

 

「リーファ?それにユウキにラン?もしかしてクラインに呼ばれたのか?」

 

「そうだよ。て言うかアスナたちも呼ばれているよ」

 

「マジか」

 

「マジだよ、お兄ちゃん」

 

俺は椅子に座ってウインドウを表示させているクラインを見た。

 

「おお、キリの字。どうでぇー、ついにゲットしたぜ・・・・「S級食材『フライングバッファローA5肉』だろ」・・・・・なんだよ、聞いてたのかよ」

 

クラインの言葉を遮り言った俺の言葉にクラインは残念そうだった。

余程自慢したかったのだろう。

 

「それでその肉どうすんだ」

 

「そりゃ、A5ランクなんて肉なんだ調理してもらうに決まってるだろうが」

 

クラインは当たり前だと言う感じに言った。

 

「じゃあ、レインたちに渡すのか。まあ、あいつらは料理スキルコンプリートしてるから問題ないか」

 

「そういうこった」

 

クラインはそう言うと立ちあがりレインとアスナのところに行き話した。

しばらくしてストレージから『フライングバッファローA5肉』を渡して戻ってきた。

 

「で?」

 

「おうよ。調理してくれるってよ」

 

「そうか。よかったな」

 

「へへ。そうだな」

 

そのあとは何故かクラインの『フライングバッファローA5肉』獲得話に付き合わされたが、今日くらいは聞いてやるかと思い、聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20分後

 

「お待たせ~」

 

「出来たよー」

 

レインとアスナを先頭にリーザ、ラン、エギルが料理の乗っているお皿を持って戻って来た。

レインたちが作っている間にラムやリーザ、ストレア、シリカ、リズ、シノンが帰ってきた。

 

「お、待ってたぜ!」

 

クラインがレインたちに声をかける。

 

「さて、とみんな席に着いたことだし、頂きますをしようか」

 

アスナが料理の乗ったお皿を置き言った。

 

「あー、ちょい待ち。俺は今回入らないからお前らだけでたっぷり食べろよ」

 

クラインは立ち上りそうそう言った。

 

「「「「「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」」」」

 

俺たちはクラインの言葉に目を見開いた。

 

「いいのか、クライン?」

 

「おうともよ。別に何時でも取れるんだからな。ターンと食え」

 

クラインは、男に二言はねぇ、と言う感じで言った。

料理はビュッフェ形式で食べることにした。

アスナの「いただきます」の合図で食事をし始めた。

料理の乗ったお皿のあるテーブルには、パンやシチュー、サラダ、飲み物が置かれている。

 

「お疲れ様レイン♪」

 

「上手く行っていると良いんだけど」

 

「レインが作ったのはなんだ?」

 

「わたしが作ったのはビーフストロガノフだよ♪」

 

「お、ロシア料理か」

 

「うん。出来るかなって思ったから作ってみたんだけど。・・・・・・・・・・どう・・・・・かな?」

 

俺はレインから受け取ったビーフストロガノフを一口食べた。

 

「うん。上手いぞ!肉が柔らかくて味も染み込んでいて美味しいな!」

 

「ほんと♪良かったー」

 

「ああ、めっちゃ上手いってレインも食べてみろよ。はい、あーん」

 

「あーん♪」

 

俺は自分のお皿にあるビーフストロガノフをレインに、あーん、をして食べさせてあげた。

 

「・・・・・・・うん。美味しいね♪」

 

「だろ♪」

 

「うん♪」

 

俺とレインのイチャイチャしている光景にアスナたちは、

 

『ねえ、エギルさん。コーヒーあるかしら?』

 

『ああ、あるぞ』

 

『それじゃコーヒーブラックでお願いしてもいい?』

 

『ああ、構わん。と言うよりか俺も飲もうと思っていたところだったしな』

 

『じゃあボクもお願い』

 

『私もお願いします』

 

『アタシも』

 

『わたしも』

 

『あたしも』

 

『わたしもお願いするわ』

 

『あぁ~、じゃあ、ワタシも~』

 

『エギル、俺にもブラックコーヒー頼むぜ』

 

『ああ、わかった』

 

エギルにブラックコーヒーを頼んでいた。

しかも、アスナ、ユウキ、ラン、リズ、シリカ、リーファ、シノン、ストレア、クライン全員だ。

 

『はい、ラム♪』

 

『ありがとう、リーザ』

 

端ではラムとリーザがイチャイチャしている姿を見つけた。

 

『クーーッ!。とっととリア充爆発しやがれ!!』

 

クラインはその光景にそう口走った。

 

「うん。他の料理も美味しいな」

 

「ほんとだね~。あ、これはアスナちゃんが作ったやつだよ」

 

レインは肉のタタキを食べて言った。

 

「ほへぇー。・・・・・・・・うん、上手い。流石料理スキルコンプリートしてるだけあるな」

 

「ほんとだね~」

 

とまぁ、色々あったが流石S級食材と料理スキルコンプリートの作った料理でレインが作ったビーフストロガノフ、アスナの作った肉のタタキ、エギルの作ったステーキ等絶品の味だった。

 

「ふぅ~。食った食った」

 

「美味しかったね♪」

 

「ああ。ユイはどうだった?」

 

「はい♪とっても美味しかったです」

 

ユイもジュースを飲みながら満足そうに笑顔で答えた。

ちなみに視界の隅で、クラインが崩れ落ちている気がするが無視することにした。

まあ、大体理由の分かるが・・・・・・・。

 

「そろそろ部屋に戻るとするか」

 

「そうだね」

 

俺が言うと隣でアップルティーを飲んでいたレインが頷いて答える。

 

「それじゃエギル、俺たちは上に行くな」

 

「おう、わかった。食器はそこに置いといてもらって構わねぇぞ」

 

「すまないな」

 

「ありがとう、エギルさん」

 

「ありがとうございます、エギルさん」

 

「なあに、良いってことよ。ほんじゃあな」

 

俺たちはエギルに後は任せて2階に上がり自室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日はこんなものかな」

 

自室でアイテムストレージの中身を確認していた俺は、今日獲得したアイテムを整理していた。

 

コンコン

 

「ん、こんな時間に誰だ?」

 

俺は不意に響いた扉の音に疑問を持ちながら扉を開けた。

 

「遅くにごめんね、キリトくん」

 

「いや、別に良いけど・・・・・どうしたんだ、レイン」

 

扉の外にいたのはレインだった。

部屋の中に入れ椅子に座った。

 

「今日、ホロウ・エリアでドロップしたアイテムの中に1つ変なのがあったんだ」

 

「変なアイテム?」

 

「うん・・・・・・・・」

 

そう言うとレインは、1つのアイテムをオブジェクト化させた。

 

「・・・・・これだよ」

 

レインがオブジェクト化させたアイテムは、手の平サイズのメダリオンだった。

 

「これは・・・・・・・」

 

「わからないんだ。アイテム銘は『「貴重品」心星の紀章』だよ」

 

「『心星の紀章』・・・・・・・・聞いたことないな」

 

「うん。わたしも聞いたことないよ」

 

俺とレインはテーブルに置いたアイテム『心星の紀章』を検分した。

メダリオンの表には星を中心に周りを文字で囲まれていた。

裏には何かの紋章と文字が記述されてるがわからない。

 

「これ、何のドロップアイテムだ?」

 

「多分だけどあのゴーレム。《サンクチュリア》を撃破したときのアイテムだと思う」

 

「うーん。俺にはそういうアイテムはドロップしなかったが」

 

「キリトくん、これ持っておいていいのかな?」

 

「いいんじゃないか。『貴重品』って書いてあるし、何かのイベントアイテムだと思うぞ」

 

「それじゃあ、一応持っておくね」

 

「ああ」

 

それを聞くとレインは、お休み、と言うと自室に戻っていった。

レインが自室に戻ると俺は、疲れていたので手早くお風呂を済ませた後ベットに入り、そのまま眠りに落ちていった。

まさか、翌日の朝にあんなことがあるなんて思いもよらないまま・・・・・・・。




感想、等お待ちしてます。


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HF編 第68話〈ポーカー〉

今回はポーカー編です。
人数が多いので書くのが大変でした。
それではどうぞ♪


"誰でもいいからこの状況を説明してほしい!"

 

俺は起きて目の前にある状況に驚いていた。

何故なら、目の前にはレインが添い寝しているからだ。

しかも、服が微妙にはだけている。

何故こうなったのかと言うと、

 

 

 

時は数刻前

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん・・・・・ああ・・・・・・っ」

 

俺はシステムによって目覚めさせられた意識を覚醒させるため伸びをし、眼を開けた。

 

「すぅ~・・・・・・すぅ~・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・!?」

 

眼を開けるとすぐ目の前にレインの寝顔が存在した。

俺は、中途半端だった意識を一気に覚醒させた。

 

"!?なんでレインが此処で寝てるんだ!?昨日部屋に戻った筈だよな!?"

 

俺は昨晩、部屋に訪ねてきたレインが自室に帰るところを確認している。

それに昨晩寝るときには、俺一人だったのだ。

 

"と、とにかくレインを起こすか・・・・・・・・・っ!?"

 

俺はレインの服装にギョッ、とした。

何故なら、レインの服はきわどいぐらいにはだけているからだ。

 

"なんで服がはだけてるんだ!?"

 

俺は視線をレインの服から外し顔を見た。

レインの寝顔は俺でもホッとする位安心している感じの顔だった。

俺は無意識にレインの頭を右手で撫で軽くキスをした。

 

"絶対にキミをこの世界から出してみせる。それまで待っていてくれ"

 

俺はレインにキスをしながら頭の中でそう考えていた。

すると、

 

「ん、んん・・・・・・・」

 

レインが起きたのか少し動いた。

 

「んん~、おはよう、キリトくん」

 

「おはよう、レイン。ところでこの状況を説明してくれるかレイン?」

 

俺は起きたレインに訪ねた。

 

「えっとね。キリトくんを起こそうと思ったんだけど、キリトくんの寝顔を見ている内につい・・・・・・・・」

 

「なるほど。・・・・・・・あー、頼むからレインそれをどうにかしてくれ」

 

俺はレインに服を指差しながら言った。

 

「それ?・・・・・・・・・っ!?な、なんで服がはだけてるの!?」

 

レインは手で隠しながら言った。

 

「いや、それはこっちが知りたい」

 

俺は即答で返した。

 

「・・・・・・っ~!?で、でもキリトくんになら・・・・・」

 

レインはそう言うと手をどけた。

手をどけた所から見えるレインの白い肌が眩しく見える。

 

「っ!?いいから早く服を着替えてくれ!」

 

俺は視線を反らして言った。

 

「ん、わかったよ~。・・・・・・・キリトくんのバカ」

 

最後の方は上手く聞き取れなかったが、ウインドウを開いて着替えてくれた。

 

「ふぅ~、朝から疲れた」

 

俺は小声で呟いた。

 

「着替えたよキリトくん」

 

「ああ、わかった」

 

俺はレインが着替えている間に着替えた為、既に着替え終わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在の時間は12時を少し過ぎた辺りだ。

俺とレインは特に予定も無いため朝食を食べた後、街で消耗品や掘り出し物を探し、エギルの店に帰ってきた。

 

「何か今日は特に賑わっているね」

 

「ああ」

 

店の中に入ると何時も異常に中は賑わっていた。

どうやら何かで盛り上がっているらしい。

 

「エギル、なにで盛り上がってるんだ?」

 

俺はカウンターに座るとエギルに聞いた。

俺の左にユイ、その左にはレインが座っている。

 

「ああ、トランプだよ。確かポーカー、だったか。それで盛り上がっているらしい」

 

「へえ・・・・・・ポーカーか」

 

「パパ、ポーカーってなんですか?」

 

俺が納得してると左に座っているユイが聞いてきた。

 

「トランプゲームの1つだよ。5枚のトランプで組み合わせで役を作って得点を競うゲームのことだよ」

 

俺が簡単にユイに説明すると、

 

「キリトくん、ポーカーやったことあるの?」

 

レインが聞いてきた。

 

「ああ、昔ネットゲームで少し・・・・・」

 

「キリトくん、リーファちゃんがいるんだから一緒に遊びなよ」

 

「うぐっ!」

 

俺がレインの言葉に急所を突かれると、

 

「おっ、なんだキリト?ポーカーをやるってなら付き合ってやってもいいぜ」

 

エギルがカウンターから言ってきた。

するとその言葉に反応して、

 

「何々?こっちでもポーカーやるの?だったらあたしも入れて!」

 

別のテーブルで行われていたポーカーを見物していたストレアがやって来た。

 

「レインはどうする?」

 

「わたしはもちろんやるよ♪」

 

「パパ。わたしもパパがやっているところ見てみたいです♪」

 

レインも参加しユイは楽しみの眼差しを俺に向けていた。

 

「わかった、やろう」

 

これで俺も参加することが決まった。

 

「えっとさ、勝ったら何がもらえるの?賞品は?」

 

「・・・・・そうか考えてなかったな。そうだな・・・・・・・勝ったら店のメニューの中から1品奢るってのは、どうだ?」

 

「ええ~、そんなの全然嬉しくないよ~」

 

「そんなのって、ひどい言われようだな・・・・・」

 

「じゃあどうする?」

 

「普通に考えれば・・・・・・「キリトくん、お金を賭けるのはダメだよ」・・・・わかってるって」

 

「お金を賭けるのは無し、だから・・・・・・」

 

レインはユイの方を向いて、

 

「ユイちゃん。ユイちゃんはご褒美に何がほしい?」

 

と聞いた。

 

「ご褒美ですか?・・・・・わたしは、パパを1日一人占め出来たら嬉しいです♪」

 

「あ、それいいね♪じゃあ賞品は『キリトの1日独占権』ってことで」

 

ユイの言葉にストレアが素早く反応し、俺の1日独占券が優勝賞品として決められてしまった。

 

「話は聞かせてもらったわ。そのポーカー、当然、アタシも参加させてもらうわよ」

 

「はいはーい。あたしも参加します」

 

「あ、あのあたしも参加します」

 

「んー、ポーカーか。姉ちゃんはどうする?」

 

「そうですね。私も参加しようと思います。ユウキはどうします?」

 

「僕もやるよ」

 

「俺もやります」

 

「私も参加します」

 

「じゃあ、わたしも参加するね」

 

リズに続いてリーファ、シリカ、ラン、ユウキ、ラム、リーザ、アスナも参加するようだ。

すると別テーブルで行われていたポーカーを見物していたクラインが此方にやって来た。

 

「ちょーっと待った!この流れでオレが参加しないってのもおかしな話だよな。キリトの独占権を奪って存分にこき使ってやるぜ!」

 

「お前なぁ・・・・・」

 

俺はクラインを呆れて見た。

 

「私も少し興味あるから、参加するわね」

 

シノンも参加するらしい。

 

「よしわかった。優勝商品はキリトの独占権で決まりだ。だが、ポーカーって話だったが人数が多いからな・・・・ちょっと特殊なルールを使おう」

 

「特殊なルール?」

 

「ああ、カジノでよくプレイされている。テキサス・ホールデムを元にしたポーカーだ。人数も多いしこれにするのがいいだろう」

 

"テキサス・ホールデム・・・・・確か自分の手札の2枚と場の5枚で役を作るポーカーだな"

 

俺は頭でエギルが言ったポーカーのやり方を思い出した。

 

「手持ちのチップを使いきったら脱落・・・・・。最終的に一番稼いだやつが優勝だ。これ以上やりたくなかったらFold(フォールド)、受けて立つときはCall(コール)、掛け金を上乗せしたいときはRaise(レイズ)!、と叫ぶんだぞ。ルールは以上だが何か質問はあるか?・・・・・・じゃあ、ゲームを始めよう!」

 

エギルは俺たちを見て質問者がいるか確認したのちゲームを始めた。

今回の参加者は俺、レイン、アスナ、ユウキ、ラン、ラム、リーザ、リズ、リーファ、シリカ、シノン、クライン、ストレアの13人だ。

なお、エギルはディーラー、ユイは見学、という感じになっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダメだ、降りる、フォールド」

 

「私もフォールド」

 

「わたしもダメだよ、フォールド」

 

「えっと、あたしの番ね・・・・・・。これならほぼ間違いなく勝てるわ。勝負するっきゃないでしょ・・・・・・!」

 

俺とシノン、レインは降りたがリズは一人小声でブツブツ言うと覚悟を決めたように、

 

「よーし、あたしは・・・・・全賭けのオールイン!」

 

リズはどうやら一発勝負に出るらしい。

だがリズよ、それは負け確定の台詞だぞ。

 

「これで勝てなかったら、脱落なんだからなんとかなってよー!」

 

リズは神頼みでもするかのような感じだった。

 

「コール!」

 

だが次のストレアがコールを宣言した。

 

「コール!?」

 

「もちろんだよ、ふっふっふ」

 

「Showdown。それじゃあ、手札を見せてくれ」

 

「じゃじゃーん!」

 

ストレアは自信満々に自分の手札を見せた。

 

「ストレート!?」

 

「あはは、残念でした♪キングのスリーカードも強いんだけどね」

 

ストレアの手札はストレート、リズの手札はキングのスリーカード。よってこれはストレアの勝ちだ。

 

「勝ちを確信しちゃダメだよ。何事も失敗の可能性はあるでしょ?」

 

「く、く、くやしーーーー!!」

 

リズ脱落、残り12人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん・・・・・・。ピナ、どうしたらいいと思う?思いきってレイズするべきかな?それとも普通にコール?」

 

シリカはパートナーのピナと相談しながら手札を見て考えていた。

 

「きゅるる・・・・」

 

「うーん、どうしよう、順番が来ちゃうよ」

 

「次、シリカの番だぞ」

 

「は、はいっ。えーと、・・・・・・・レイズで!」

 

シリカは俺の声に慌てて言った。

 

「コール」

 

「・・・・・・よし、全員、終わったな。手札を見せてくれ」

 

俺は手札を見せた。

俺の手札はクイーンのスリーカード、シリカは4と5のツウペア。

 

「ああっ・・・・やっぱりダメだったぁ・・・・・・。負けちゃった・・・・・」

 

「きゅる・・・・・・」

 

「しょんぼりしないでピナ。負けたのは悔しいけどピナのせいじゃないよ。それにわたしは楽しかったよ」

 

「きゅるる!」

 

シリカ脱落、残り11人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーし、僕はコール!」

 

「じゃあ、わたしもコール」

 

ユウキに続いてレインがコールと呼んだ。

 

「Showdown」

 

「うわ~、負けた~」

 

「いや、危なかったよ」

 

ユウキの手札は10のスリーカード、レインはストレートだ。

 

「悔しいな~」

 

「ユウキちゃん、また今度勝負しようよ」

 

「うん。そのときは負けないよ」

 

「わたしだって」

 

ユウキ脱落、残り10人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、チップも減ってきたし今回はみんな消極的だし。・・・・・・・・思いきって勝負に出るかな!」

 

「ベット!」

 

「・・・・・・いいのか、リーファ」

 

「なんのこと?キリト君こそ、無理しないで降りた方がいいんじゃない?」

 

「そうだな・・・・・・。だが、ここはあえて、コールしとくよ」

 

「ええ、キリト君。無理は体によくないよ~」

 

俺がコールするとリーファは動揺しながら俺にコールをやめさせるように言ってきた。

 

「Showdown」

 

「・・・・・・ジャックのスリーカード!?あーん、負けたー!」

 

俺はジャックのスリーカード、リーファは9のスリーカードだ。

 

「リーファが自信のないときの癖なんて簡単に見抜けるって。家族なんだから、知ってて当たり前。だろ?」

 

「ううう、くやしい・・・・・絶対に勝ちたかったのにー」

 

リーファ脱落、残り9人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は全賭けのオールインにするよ」

 

「じゃあ・・・・・・・・わたしはコールするね」

 

ラムはオールイン、レインはコールを宣言した。

 

「Showdown」

 

レインはキングのスリーカード、ラムはクイーンのスリーカード。

 

「よし♪わたしの勝ちだね」

 

「そうみたいですね。残念ながら負けてしまいました」

 

ラム脱落、残り8人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっふっふ・・・・・・来たぜ来たぜ。俺のところにも、運が巡ってきたぜ!勝負だキリト、オールイン!!」

 

クラインは自信満々にオールインと宣言した。

 

「チップ全賭けか。・・・・・・・・・本当にいいのか?」

 

「ああいいとも、俺の手札は最強だ。キリトに 勝ち目はねぇぞ。降りるなら、今のうちだぜ!?」

 

「わかった、レイズだ」

 

「なんで降りねーんだよ!!」

 

俺とクラインの手札を見せる。

結果は、

 

「・・・・・おい、クライン。ブラフにしても、4のワンペアで全賭けとはよくやったな?」

 

クラインは4のワンペア、俺はストレート。

 

「・・・・・くっそーーーーーー!またおいしいところを全部キリトに持ってかれるのかよぉー!!」

 

「持っていかれたくないなら少しは頭を使えって・・・・・・」

 

クライン脱落、残り7人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしましょうか・・・・・・。ここは一気に勝負に出ることにしますか・・・・・・。全賭けのオールインでお願いします」

 

「ラン、全賭けでいいのか?」

 

「はい!」

 

「コール」

 

「Showdown」

 

互いの手札を見せる。

俺はダイヤのフラッシュ、ランはストレート。

 

「負けてしまいましたか」

 

「危なかった、流石だなラン」

 

「いえ、結局負けてしまいましたし」

 

「そう言うなって、ランとは幼馴染みなんだかランの動きとかはわかるって」

 

「そうですね。キリトさん、また今度やりましょう♪」

 

「ああ、もちろんだ!」

 

ラン脱落、残り6人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レインさん勝負です!コール!」

 

「いいよ、受けてあげるよ!コール!」

 

レインとリーザは互いにコールを宣言する。

 

「・・・・・・・負けちゃいましたね」

 

リーザの手札は8のスリーカード、レインの手札はジャックのスリーカードだった。

 

「頑張って下さいレインさん」

 

「うん!ありがとう、リーザちゃん」

 

リーザ脱落、残り5人。

 

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

アスナは真剣な眼差しで自分の手札を見ている。

 

「今残っているのはシノンだけ・・・・・・・。だとしたら・・・・・・。・・・・・・・オールインよ。うん、間違いないわ」

 

「コール」

 

「なっ・・・・・・!?」

 

「クラブのフラッシュ。私の勝ちね」

 

「そ、そんなー!」

 

アスナ脱落、残り4人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やったー!これで残るのはアタシとキリトとシノンにレインの4人!とっとと優勝を決めちゃおう!」

 

「・・・・・・・負けるつもりはないわ」

 

「キリトくんの独占権は誰にも渡さないよ!」

 

「俺も負けるつもりはない!」

 

俺たち4人がそれぞれ意気込んでいる頃、敗者席では。

 

「あーあ、勝ちたかったなー」

 

「こうなったらレインさんとキリトくんを応援するしかないな」

 

「が、頑張って下さい、キリトさん、レインさん」

 

「4人とも頑張ってねー」

 

「レイン~、頑張って~」

 

「キリトさん、頑張って下さい」

 

「みんな頑張れー」

 

「応援してますよー」

 

リズに続いて、リーファ、シリカ、アスナ、ユウキ、ラン、リーザ、ラムが俺たちに声を飛ばす。

 

「カードを配るぞ」

 

エギルはそう言うと俺たち全員にカードを配った。

 

「・・・・・・おおーっ、これは最強のカードと言わざるを得ないよ!えーっと、どうしようかなぁ。・・・・・・うん、そうだな。アタシはここでオールイン!」

 

「コール」

 

「わたしもコール。負けないよ!」

 

「俺はコール。・・・・・・・勝負だ!」

 

「・・・・・・じゃじゃーん!キングのスリーカードだよ!」

 

「・・・・・・キングと10のフルハウスだ。危なかったな」

 

「フルハウス~!?そんな強い手札が、最後の勝負に入るのぉ?・・・・・・はあ、やっぱりキリトはすごいや。負ける気しなかったんだけどなぁ」

 

「あとはレインとシノンのカード次第だが・・・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

レインとシノンは黙ったまま手札のカードを見る。

 

「・・・・・・残念だけど、私の負けよ」

 

先に口を開いたのはシノンだった。

シノンはそのまま自分の負けを口に出した。

 

「残りはレインだが・・・・・・」

 

俺はレインの方に視線を向けた。

 

「・・・・・・・・わたしの手札は~。・・・・・・・・これだよ」

 

レインはそう言うと俺たちに手札のカードを見せた。

レインのカードはロイヤルストレートフラッシュだった。

 

「ロイヤルストレートフラッシュ!?」

 

「うそ、すご~い」

 

「まさか、最後にそんなカードが来るなんて」

 

「へへ~。これで、わたしの優勝だね♪キリトくんの1日独占権は貰ったよ~」

 

レインは嬉しそうに言った。

 

「おめでとう、レイン!」

 

「おめでとうございます、レインさん!」

 

「おめでとう、レインちゃん」

 

「ありがとう、みんな!」

 

「それでレインどうするんだ?」

 

「えへへ~。実はキリトくんに前からやってもらいたい事があったんだ」

 

「や、やってもらいたいこと?」

 

「うん。それはね・・・・・・・」

 

レインはそう言うと俺の耳元に近づきやってもらいたいことを言った。

そして、俺はレインのやってもらいたいことに驚いた。

 

「なっ!?ま、またかー」

 

「え?また?」

 

「い、いや、なんでもない、気にするな。はあー、わかったよ。それでそれは今やるのか?」

 

「もちろんだよ♪エギルさん」

 

レインはトランプの片付けをしていたエギルを呼んだ。

 

「ん。どうしたんだレイン?」

 

「今からこの店貸し切りに出来ないかな?」

 

「今からか?うーむ・・・・・・・・・まあ、出来るは出来るが。一時間はかかるがそれでいいか?」

 

「うん。じゃあ、お願いね」

 

「あ、ああ。わかった」

 

エギルはレインの言った通り店の閉店準備を進めた。

 

「さあ、キリトくん。上に行こう♪」

 

「ああ」

 

「みんなはちょっと待っていてね。とっても驚く事が見れるから♪」

 

「「「「「「「「「「「??」」」」」」」」」」」

 

アスナたちは頭に疑問符を浮かべて首を傾げた。

 

「ユイちゃん、手伝ってくれる?」

 

「はい、ママ!」

 

俺はレインに連れられてレインとユイの部屋に来るとソファーに座らされた。

レインの俺にやってほしいことがなんなのか、それがわかるのは一時間後の事だった。




前半はキリトとレインのイチャイチャシーン。
中盤からはポーカー編です。
レインがキリトに何を頼んだのかは次回のお楽しみです♪

感想やリクエスト等お待ちしてます。


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HF編 第69話〈新しい女の子!?〉

連日投稿です。
前回の話を読んでくれた方は今回のタイトルを予想しているかもしれません。


~アスナside~

 

ポーカーが終わって1時間後私たちはレインちゃんに言われたようにエギルさんの店の閉店準備を手伝って、今はそれぞれ席に着いて飲み物を口に含ませていた。

 

「レインちゃん、キリト君に何をするつもりなんだろう?」

 

「さあ、わかりません」

 

「僕も分からないなー。でもキリトのあの態度、なんかどっかで見た気がするんだよな~」

 

「ユウキもそう思いますか?」

 

「えっ?てことは姉ちゃんも?」

 

「あれ、お二人もキリト君の態度見た気があるんですか?」

 

「その言葉からすると、リーファちゃんもなの?」

 

「はい。昔、キリト君のあの顔見た事があるんですけど。それがなんだったのかまでは・・・・・」

 

私は、ユウキとランさん、リーファちゃんから話を聞いていると、

 

「みんな、お待たせ~」

 

「お待たせしました」

 

レインちゃんとユイちゃんが降りてきた。

 

~アスナside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~レインside~

 

「え~と、キリトくん。だよね・・・・・・」

 

わたしは自室で自分の目の前にいる人に疑問系をぶつけた。

 

「パパ、ですか?」

 

「そうだけど・・・・・」

 

目の前にいるキリトくんはそう言うと、ハァー、っと溜め息を吐いた。

 

「取り敢えず下に行こ!」

 

「パパ、行きますよ」

 

「わ、わかった」

 

わたしはユイちゃんとキリトくんとともにみんなの待っている一階に降りていった。

 

「みんな、お待たせ~」

 

「お待たせしました」

 

下に行くとみんなこっちを見てきた。

 

「あれ、レインちゃん。キリト君は?」

 

アスナちゃんがキリトくんがいないことに気付き聞いてくる。

 

「今からか来るよ」

 

そしてわたしの数十秒後。

 

"カッ、コッ、カッ、コッ"

 

足音をならせて2階から誰かが降りてくる。

降りてきた人を見て、アスナちゃんたちは首を傾げる。

 

「え、え~と、だ、誰?」

 

アスナちゃんが聞いてくる。

 

「この娘は・・・・・・・・キリトくんで~す♪」

 

「パパで~す♪」

 

「「「「「「「「「「「「はいーーーっ!!??」」」」」」」」」」」」」」

 

アスナちゃんたちは、降りてきた娘。

キリトくんを見て驚きの声を轟かせた。

 

~レインside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「「「「「「はいーーー!!??」」」」」」」」」」」」」」

 

俺は降りてきて、レインに紹介されてみんなの声に耳を防ぎたくなった。

 

「き、キリト君なの?」

 

アスナが驚愕から立ち直り聞いてきた。

 

「あ、ああ・・・・・・」

 

俺はアスナの質問に肯定を返す。

 

「みんな、どう?」

 

レインがアスナたちに聞く。

 

「ど、どうって言われても・・・・・・・」

 

「え、え~と・・・・・・・・」

 

「そ、その・・・・・・・・・」

 

「な、何て言うのかな・・・・・・・」

 

「反応に困りますね・・・・・・」

 

「ええ・・・・・・」

 

「た、確かに・・・・・・・」

 

アスナ、リズ、シリカ、ストレア、リーザ、ラム、シノンの順に反応を返した。

リーファとユウキ、ランは昔、俺の女装姿を見た事があるため納得した感じだった。

 

「お兄ちゃん・・・・・・・・お姉ちゃん、って呼んだ方がいいかな?」

 

「キリトのその姿なんか懐かしいな~」

 

「そうですね。あのときもさせましたから」

 

「お、おい。あのときは3人が協力してあの姿にさせたんだろうが!」

 

俺は昔に起きたことを思い出させていた。

あのときは直葉と木綿季、藍子が俺に無理やり女子の服を着させたのだ、俺の黒歴史に刻まれた瞬間でもあった。

あのときは3人に着せ替え人形させられ、今の姿はレインが持っていたハイヒールを履き、黒いワンピースを着ている。

更にレインに化粧までさせられている。

 

「レインちゃんがやりたい事って、キリト君の女装姿だったの?」

 

「うん♪いや~、前にキリトくんの寝顔を見ていたら女装させたくなっちゃて、いつか着させてみようと思っていたんだよ」

 

「なるほど・・・・・・。確かにお兄ちゃ・・・・・・お姉ちゃんは女顔だからね」

 

「リーファ、頼むからお姉ちゃんは止めてくれ!」

 

「アハハ!確かにキリトは小さい頃から女顔で女の子みたいだったから」

 

「私たちもそれでよくキリトさんを遊びましたね」

 

「ハァー・・・・・。勘弁してくれ・・・・・・」

 

俺はその場で落胆した。

 

「キリトさんの女装姿・・・・・・」

 

「キリトの女装・・・・・・」

 

「ん、なんだ?」

 

「なんでしょうか、女子なのになんか負けた気分です」

 

「て言うかキリトもうそのまま女子でいなさいよ!」

 

「ハァー!何でそうなるんだよリズ!」

 

「だってねー」

 

シリカとリズは俺の姿を見て落ち込んでいる。

 

「キリトの女装。ですか・・・・・・ラムも今度させてみましょうか」

 

「はいっ!?リーザ、それ冗談だよね!?」

 

リーザはリーザで俺の姿を見て、ラムの姿を見てから言う。

ラムは慌ててリーザを止めにかかる。

余程慌てているが何かあったのだろうか?

 

「キリト、かわいい~。もとからかわいいって思っていたけど更に可愛くなってるよ~」

 

ストレアはストレアで俺にいきなり抱きついてきてそう言ってきた。

 

「・・・・・・・・・。めっちゃ似合ってるわね」

 

シノンはポツンとそう言った。

正直その言葉だけは言われたくなかった。

 

「いや~、つい本気でやっちゃたよ」

 

「本気でやり過ぎるんだよレイン」

 

「アハハ。でもまあ、わたしもやっている途中からあれ?、って思っていたから」

 

「わたしもパパの姿に驚きました!」

 

「ハァー、ユイまで」

 

俺はユイにまで言われてもその場で膝をついた。

 

「ところでレイン。俺は何時までこの姿をしていればいいんだ?」

 

「う~ん。どうせならずっとしていてもらおうかな」

 

「た、頼むから勘弁してくれ!」

 

「冗談だよ♪今日1日その姿でいてくれればいいよ」

 

「やれやれ」

 

俺はレインの1日女装姿、と言うことに仕方なく承諾した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レインからのやってもらいたいことで女装した俺は、ようやく何時もの姿に戻った。

しかもキリコと言う名前まで与えられた。

 

「ハァー。まさかまた女装させられることになるなんて」

 

「でも、可愛かったよ、キリコちゃん」

 

「その、名前は止めてくれ。・・・・・・・・って、え?」

 

俺はいないはずの声に驚き、声の発生元を見た。

 

「プリヴィエート、キリコちゃん♪」

 

「な、なんで此処にいるんだレイン!?」

 

「え、なんでってキリコちゃんと寝るためだよ♪」

 

「そうじゃなくてどうやって入ってきたんだ!?」

 

「普通にドアからだよ?」

 

「なっ!?」

 

俺はレインの言葉に驚きを隠せてなかった。

それほどまでに落ち込んでいたという証拠なのだろう。

 

「?ユイは?」

 

「ユイちゃんはさっき寝ちゃったよ」

 

「早いな」

 

「いや、もう10時過ぎてるよ」

 

「何?もうそんなに立っていたのか」

 

俺はウインドウを開き時間を見た。

確かにすでに時刻は午後10時を過ぎていた。時間はあと少しで10時半になる辺りを指していた。

 

「さぁ、キリコちゃんお風呂に入ろ」

 

「わ、わかったからそのキリコって言うのは止めてくれ」

 

「ふふふ、わかったよ。じゃあキリトくん、お風呂入ろ」

 

「はいはい」

 

俺とレインはそのまま脱衣場に向かった。

 

「ふふん。キリトくん、どう?」

 

するとレインは着ていた服を脱ぎ下着姿を俺に見せてきた。

 

「い、いや、どって言われても」

 

「これキリトくんが選んでくれたやつだよ」

 

「そ、そうなのか」

 

「うん♪」

 

「///い、いいから早く風呂入るぞ」

 

「はーい」

 

俺は急いで脱衣場をあとにしお風呂場へと入っていった。

お風呂から出た後は、レインの入れてくれた紅茶を飲みながら雑談をした。

 

「さあ、寝よキリトくん」

 

時刻は午前0時を過ぎようとしていた。

扉の鍵は開けられないように設定した。これにより、俺が開けない限り外部から人が入ってくることはない。

さらに、部屋は扉を旋掟すると外部に音が漏れることがない。

 

「わかったよ」

 

俺はレインとともにベットに入り互いの顔を見あった。

 

「キリトくん・・・・・・・。来て」

 

「レイン・・・・」

 

俺とレインは互いに近づいていき唇と唇を重ねた。

キスをした時間は1分ぐらい続いた。

そして、二人の影は1つに重なった。




学生なので何かと書くのが大変。
感想等お願いします。


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ソードスキルリストⅠ

今回はソードスキルを紹介します。



片手剣ソードスキル

 

使用者:キリト、レイン、ユウキ、ラン、リーファ

 

ホリゾンタル

 

単発

片手剣基本ソードスキルの一種。水平に敵を切り裂くソードスキル

 

バーチカル

 

単発

片手剣基本ソードスキルの一種。垂直に敵を切り裂くソードスキル

 

スラント

 

単発

片手剣基本ソードスキルの一種。敵を斜めに切り裂くソードスキル

 

ソニックリープ

 

単発突進

片手剣基本ソードスキルの一種。肩に担いだ剣を勢いをつけて敵を切り裂くソードスキル。

空中に向けて放つことも可能

 

レイジスパイク

 

単発

片手剣基本ソードスキルの一種。一直線に敵を貫くソードスキル

 

スネーク・バイト

 

2連擊範囲技

腰だめに構えた剣を振り抜き様に右から左、左から右へと瞬時に放つソードスキル

 

ホリゾンタル・アーク

 

2連擊

水平に2回攻撃するソードスキル

 

バーチカル・アーク

 

2連擊

垂直に2回、Vの字をつけるかのようにして切り裂くソードスキル

 

シャープネイル

 

3連擊

獣の爪のように切り裂くソードスキル

 

バーチカル・スクエア

 

4連擊

垂直に4回、正方形を描くようなソードスキル

 

ホリゾンタル・スクエア

 

4連擊

水平に4回、敵を内側に正方形を描くようにして切り裂くソードスキル

 

サベージ・フルクラム

 

重攻撃3連擊

右からの攻撃、中心で止まり剣を押し込んだ後、振り向き様に剣を切り上げる。数字の4を描くようにして攻撃する重攻撃ソードスキル。

 

ハウリング・オクターブ

 

8連擊

片手剣上位ソードスキル。突きの5連擊から切り下ろし、切り上げ、切り下ろしの3擊を放つソードスキル。

 

デットリー・シンズ

 

7連擊

敵に対してその場で7回切り刻む攻撃。

最後の2擊はクロスを描くような感じのソードスキル

 

エヴァーティング・ストライク

 

7連擊

片手剣上位ソードスキル。相手との距離を瞬時に詰め、最初に突き2擊、回り込んで三角を刻むようにして切り裂く3擊、止めに十字を描くようにして2擊を叩き込むソードスキル

 

インフィニット・エンプレス

 

8連擊

片手剣上位ソードスキル。素早い速度で相手を翻弄し、その隙に切り裂くソードスキル。

 

メテオ・ブレイク

 

3連擊

片手剣スキルだけではなく、体術スキルも会得していなければ使えない、複合スキル。

切りつけ、打撃、切りつけだが、そこにさらに打撃を加えると連擊数が伸びるソードスキル

 

スター・Q・プロミネンス

 

6連擊

片手剣上位ソードスキル。斬5連擊からの止めの突きを放つソードスキル

 

カーネージ・アライアンス

 

6連擊

片手剣上位ソードスキル。基本攻撃ではなくカウンターをするのに向いているソードスキル

 

ファントム・レイブ

 

6連擊。

片手剣上位ソードスキル。一撃一撃が重いため重攻撃よりのソードスキル

 

ヴォーパル・ストライク

 

単発重攻撃

片手剣上位ソードスキル。片手剣にしては射程距離が長く剣と腕のリーチをも加えれば長槍をも凌駕する。技後硬直がやや長いが使い勝手のいいソードスキル

 

ノヴァ・アセンション

 

10連擊

片手剣最上位ソードスキル。初擊はほとんど視認できないため回避は難しい。攻撃速度が片手剣スキルの中でトップのソードスキル

 

シャドウ・エクスプロージョン

 

7連擊

片手剣秘奥義ソードスキル。一撃一撃の威力が高く攻撃速度も高い。使う前に2秒程溜め時間が必要な為ソロで活用するのは難しい。秘奥義となっているため通常のソードスキルとは一味違う威力を保有する

 

 

 

 

細剣ソードスキル

 

使用者:アスナ

 

リニアー

 

単発

細剣ソードスキル基本技。敵を貫くソードスキル。

 

トライアンギュラー

 

3連擊

瞬時に三ヶ所を穿つソードスキル

 

アヴォーヴ

 

単発

斜めに切り裂くソードスキル

 

パラレル・スティング

 

2連擊

瞬時に2擊を相手に貫くソードスキル。

 

オブリーク

 

単発重攻撃

リニアーを下に放った攻撃。リニアーより体全体をかけて攻撃するため攻撃力が高い。

 

オーバーラジェーション

 

10連擊

細剣中位ソードスキル。細剣ソードスキルの中では連擊数が多いソードスキル。

 

ペネトレイト

 

3連擊

細剣中位ソードスキル。突きの3擊を放つソードスキル

 

アクセル・スタブ

 

重攻撃3連擊

細剣中位ソードスキル。細剣ソードスキルのなかでは数少ない重攻撃の1つ

 

ストリーク

 

単発

細剣ソードスキル。横に細剣を凪ぎ払うソードスキル

 

カドラプル・ペイン

 

4連擊

3回突いたあと右下へと切り裂くソードスキル

 

リップ・ラヴァーネ

 

2連擊

Vの字を描くようにして放つソードスキル

 

ニュートロン

 

5連擊

敵を4回突いたあと、一回回ってから遠心力とともに止めの突きを放つソードスキル

 

デルタ・アタック

 

3連擊範囲技

細剣上位ソードスキル。左切り下ろしから横に凪ぎ払い、最後に左切り上げにてデルタを描くソードスキル。

 

シューティングスター

 

単発突進

細剣中位ソードスキル。一陣の光とともに敵を貫く細剣ソードスキル中2番目に最速のソードスキル

 

スピカ・キャリバー

 

5連擊重攻撃

細剣上位ソードスキル。速度と重さを重視しており攻撃力が細剣ソードスキルの中では高い。

 

ヴァルキュリー・ナイツ

 

9連擊

細剣上位ソードスキル。速度と重さを重視しており自身に速度上昇、クリティカル率アップの効果を得る。攻撃は全て刺突のため貫く事に特化している

 

スター・スプラッシュ

 

8連擊

細剣上位ソードスキル。中段突き3擊、切り払い往復、斜め切り上げ、上段突きの2擊を繰り出す8連擊のソードスキル

 

フラッシング・ペネトレイター

 

単発突進

細剣最上位ソードスキル。一陣の閃光となって敵を貫く攻撃。使用すると彗星の尾が見える。細剣ソードスキルの中では最速のソードスキル

 

トワイライト・リザレクション

 

35連擊

細剣秘奥義ソードスキル。一撃で複数回攻撃をしそれを4回、左突き、右突き、左上突き、右上突きの順に攻撃をする。一撃一撃の威力が高く、攻撃速度が高い。使用する前に2秒溜めを必要としている。秘奥義の為通常のソードスキルとは一味違う威力を保有する。

 

 

 

 

二刀流ソードスキル

 

使用者:キリト

 

エンド・リボルバー

 

2連擊範囲技

二刀流下位ソードスキル。両手の剣を広げて敵を凪ぎ払うソードスキル

 

カウントレス・スパイク

 

4連擊範囲技

二刀流下位ソードスキル。正面の敵に連擊4回攻撃をするソードスキル

 

クロス・ナイト

 

2連擊

敵に十字を描くようにして切り裂くソードスキル

 

ゲイル・スライサー

 

2連擊突進技

両手の剣を構えて敵に突進して貫くソードスキル

 

ダブル・サーキュラー

 

2連擊突進技

右手の剣を相手に貫いたコンマ一秒後、左手の剣が迫るソードスキル

 

スペキュラー・クロス

 

2連擊カウンター技

十字にニ刀を構えて攻撃してきた相手にカウンターを与えるソードスキル

 

ローカス・ヘクセドラ

 

7連擊

二刀流中位ソードスキル。確率で敵を麻痺させる。交互にスクエアを描いた後両手の剣で振り下ろし、相手に衝撃を与えるソードスキル

 

デプス・インパクト

 

5連擊重攻撃

二刀流中位ソードスキル。敵に防御力低下のデバフを付与する。斬擊を3回与えた後突きを2回放つソードスキル

 

デット・インターセクション

 

5連擊

二刀流中位ソードスキル。敵に攻撃力低下のデバフを付与する。防御に適しているソードスキル

 

シャイン・サーキュラー

 

15連擊

二刀流中位ソードスキル。攻撃速度を重視した攻撃で13回切り裂いたあと両の剣で貫くソードスキル

 

インフェルノ・レイド

 

9連擊

二刀流中位ソードスキル。攻撃速度と命中率を重視したソードスキル

 

クリムゾン・スプラッシュ

 

8連擊重攻撃

二刀流中位ソードスキル。敵に突き6連擊を浴びせたあと両の剣で切り裂く攻撃力重視のソードスキル

 

ブラックハウリング・アサルト

 

16連擊

二刀流上位ソードスキル。攻撃より速度と防御を重視したソードスキル

 

ナイトメア・レイン

 

16連擊

二刀流上位ソードスキル。敵に高速で切り裂く攻撃。速度と威力重視のソードスキル

 

スターバースト・ストリーム

 

16連擊

二刀流上位ソードスキル。自身の速度上昇のバフが得られる。高速で敵を合計16回切り裂くソードスキル。

攻撃と速度重視の為防御が手薄になり、相手からの攻撃を受けやすいというデメリットがある。防御を捨て攻撃に全振りしたソードスキル

 

ロストオブ・エンデュミオン

 

22連擊

二刀流最上位ソードスキル。全ステータスが上昇するバフが得られ、敵は逆に全ステータスが低下するデバフを付与する。ものすごい速度で敵を翻弄し切り裂く、貫く、等の攻撃を20回し止めに両の剣で凪ぎ払いを繰り出すソードスキル

 

ジ・イクリプス

 

27連擊

二刀流最上位ソードスキル。まるで太陽のコロナの感じで高速で敵に全方位から攻撃をするソードスキル。

秘奥義を含めなければ最強のソードスキルの一種

 

ネビュライド・エンプレス

 

22連擊

二刀流秘奥義ソードスキル。荒れ狂う暴風の如く敵に殺到する攻撃。一撃一撃の威力が高く秘奥義の中での攻撃力は最上位クラス。使用する前に溜めとして2秒必要とする。普通のソードスキルとは一味違う威力を保有する

 

 

 

 

多刀流ソードスキル

 

使用者:レイン

 

インセイン・ピアーズ

 

2連擊突進技

多刀流下位ソードスキル。敵に素早く突進しすれ違い様に貫くソードスキル

 

ディスティニー・ロンド

 

4連擊

多刀流下位ソードスキル。舞うように4連擊を繰り出すソードスキル

 

マティーニ・ディーンズ

 

3連擊

多刀流下位ソードスキル。十字に切り裂いてから中心点に突きを放つソードスキル

 

ウインド・ストライク

 

2連擊突進技

多刀流下位ソードスキル。一陣の風のように敵に接近し貫くソードスキル

 

ローディエント・ルージュ

 

6連擊範囲技

多刀流中位ソードスキル。敵に素早さを下げるデバフを付与する。両の剣で周りを切り裂き攻撃するソードスキル

 

ラウンド・スクエア

 

4連撃全方位技

多刀流中位ソードスキル。自身の周囲にスクエアを築き敵を斬り裂くソードスキル

 

ディバイン・エンプレス

 

15連擊

多刀流上位ソードスキル。突き4連擊、切り払い往復4連擊、劣化切り3連擊、右切り下ろし、左切り下ろし、凪ぎ払い、中心点からの切り下ろしを繰り出すソードスキル

 

クリア・コンパッション

 

16連擊

多刀流上位ソードスキル。攻撃と速度重視で突きと斬擊を交互に放つソードスキル

 

マテリアル・イグニッション

 

23連擊

多刀流最上位ソードスキル。全ステータスが上昇するバフが得られ、逆に敵は全ステータスが低下のデバフを付与する。

 

サウザンド・レイン

 

連擊数不明

多刀流最上位ソードスキル。異空間から多用の剣を襲来させ、操って敵を貫かせるソードスキル。遠近両方から出せる唯一のソードスキル。秘奥義を含めなければ最強のソードスキルの一種

 

アンリミテッド・オーバーレイ

 

22連擊

多刀流秘奥義ソードスキル。 舞うように敵を切り裂き終わりの見えない斬擊を与えるソードスキル。一撃一撃の威力が高く秘奥義の中での攻撃力は最上位クラス。

使用する前に溜めとして2秒必要とする。普通のソードスキルとは一味違う威力を保有する

 

 

 

 

シンクロソードスキル

 

使用者:キリト、レイン

 

零落白夜(れいらくびゃくや)

 

シンクロのスキルの1つ。使用者はキリトのみ

武器と自身のステータスを上昇させる。

絢爛舞踏と併用して使用すると専用ソードスキル、零爛星双(れいらんせいそう)が使用可能

 

 

絢爛舞踏(けんらんぶとう)

 

シンクロのスキルの1つ。使用者はレインのみ

武器と自身のステータスを上昇させる。

零落白夜と併用して使用すると専用ソードスキル、緋双黒星(ひそうこくしょう)が使用可能

 

共鳴(レゾナンス)

 

シンクロスキルの1つ。互いの力を高め攻撃するスキル。効果時間は約15分。連続使用不可。インターバルとして30分必要。

 

単一共鳴(レゾナンス・ソロ)

 

シンクロスキルの1つ。どちらか片方に自分の力を与え、与えられた者は通常の約2倍の能力を得るスキル。

但し与えられるのはキリトかレインかのどちらかのみ。それ以外のプレイヤーには使えない。効果時間は約10分。連続使用不可、次に発動するには60分のインターバルが必用。

 

神双解放(リミットリリース)

 

シンクロスキルの1つ。武器の能力を大幅に上げ、自身もリミッターを解放するスキル。

使用すると反動でしばらく動けなくなるデメリットがついている。効果時間は15分。連続使用不可。一戦闘につき1回だけ使用可能。

 

クロス・グレイブ

 

2連擊

シンクロ下位ソードスキル。それぞれ一回攻撃する。互いの剣で敵に十字を描くようにして切り裂くソードスキル

 

スターダスト・ロンド

 

10連擊

シンクロソードスキル。舞踊るかのようにして敵を攻撃するソードスキル

 

スカイ・ストライザー

 

12連擊突進範囲技

シンクロソードスキル。一瞬で敵に近づき周囲の敵を切り裂く。突進2擊を叩き込んだあと、二人で周囲の敵を切り裂き殲滅させるソードスキル

 

レディアル・シンズ

 

8連擊範囲技

シンクロソードスキル。それぞれ4回攻撃する。目の前の敵を2回攻撃し、パートナーと敵を交代するソードスキル。2対多等で使用するのが効率的

 

ワールドエンド・オーバーレイ

 

14連擊重攻撃

シンクロ上位ソードスキル。重攻撃で敵の体勢を崩したあと二人で同時にニ刀を振り下ろすソードスキル

 

アブソリュート・デュオ

 

24連擊

シンクロ上位ソードスキル。それぞれ12回攻撃する。互いに息を合わせた剣劇を高速で敵に叩き込むソードスキル

 

インフィニティ・モーメント

 

30連擊

シンクロ最上位ソードスキル。それぞれ15回攻撃する。無限とも言える剣戟の雨の中、刺突、斬擊を繰り出すソードスキル

 

ホロウ・フラグメント

 

44連擊

シンクロ最上位ソードスキル。それぞれ22回攻撃する。視認出来ない超高速で動き敵を切り刻む。斬られた敵は使用者の影の断片しか視認出来ない。パートナーとの信頼関係が高くなければ使えないソードスキル

 

零爛星双

 

17連擊

キリト専用、シンクロソードスキル。敵の防御を気にせずダメージを与えることが出来る。金と黒のライトエフェクトを煌めかせながら攻撃する。それを照らす姿は恒星のように輝いて見えると言われるソードスキル

 

緋双黒星

 

17連擊

レイン専用、シンクロソードスキル。敵の防御を気にせずダメージを与えることが出来る。緋と黒のライトエフェクトを煌めかせながら攻撃する。それを照らす姿は彗星のように輝いて見えると言われるソードスキル

 

トワイライトエデン・デュオクライシス

 

100連擊

シンクロ秘奥義ソードスキル。自身のステータスを最大にまで上げ攻撃する最強のソードスキル。溜めに5秒必要とするため使い勝手が難しいに加え、使用した後は反動でしばらく動けなくなるデメリットが存在する。キリトとレイン。《二刀流》と《多刀流》がなければ放てないソードスキル。自身の思いや願い等によって威力が異なる。防御を捨て、攻撃と速度に特化したソードスキル。使用している姿は黄昏の庭園にいる見たいに思わせる




ソードスキルって考えるの大変です。
他の武器やユニークスキルのソードスキルは後日掲載します。


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HF編 第70話〈秘密のクエスト?〉

お気に入り、240件を越えましたありがとうございます。
キリトの女装姿、キリコの姿はファントム・バレット編のキリトになります。

ごめんなさい、シリカの経験値上げのクエスト探しは割愛します。


「キリトくん、じゃなかった。ご注文はお決まりですかご主人様♪」

 

「・・・・・・・・」

 

「ご主人様、どうかいたしましたか?」

 

「・・・・・・・・なあ、レイン」

 

「なんでしょうかご主人様」

 

「・・・・・・・何故メイド服を着てるんだ?」

 

「それは、この服がここでの正装だからなのですよ♪似合ってる、かな?」

 

「ああ、と言うか全く違和感が感じられないんだが・・・・・」

 

「やった♪・・・・じゃなかった。ありがとうございます、ご主人様」

 

"なんでこうなったんだ・・・・・ "

 

 

 

原因は数刻前に移る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の黒歴史がまた一つ増え、レインと夜交わった次の日、朝目を覚ますとすぐ目の前には同じく起きて俺の方に視線を向けているレインがいた。

 

「ふふ、おはようキリトくん」

 

「おはよう、レイン」

 

「今は・・・・・・・まだ、6時だね」

 

レインがウインドウを表示させて時間を調べた。

 

「少し早く起きたか」

 

「どうしようか。二度寝する?それとも・・・昨夜の続きをする?」

 

俺はレインの言葉に少々フリーズしたが、

 

「そ、それはまた今度な。ちょっと外で体を動かして来るよ」

 

レインにそう答えた。

 

「じゃあ、わたしも一緒に行くよ」

 

「オッケー」

 

俺とレインは服を着たあと静かに、他の人を起こさないように外に出た。

一階ではすでにエギルが準備をしていたが、外に行ってくる、と言うと。おう、気を付けてな、と言ってくれた。

朝6時のアークソフィアは靄がかかっており少し肌寒い感じだった。俺とレインは街から少し外れた丘に向かって歩を進めた。

丘に着くとそよ風に吹かれて草木が靡いた。

 

「ふぅ~、この時間に此処に来るのもなんか良いね」

 

「ああ、昼とは違って涼しいからな」

 

俺とレインは草地に腰を下ろして感じたことを言った。

 

「キリトくん、手合わせしない?」

 

「ん?デュエル、じゃなくてか?」

 

「うん。体をほぐすだけだから」

 

「そう言うことならいいぜ」

 

「やった!じゃあ、やろう」

 

「おう!」

 

俺とレインは互いにウインドウを表示させ、愛剣を取り出した。

 

「じゃあ、行くよ!」

 

「何処からでもこい!」

 

レインは双剣を構えた。

こちらも同様に双剣を構える。

 

「やあぁぁぁぁあっ!!」

 

「はあぁあっ!!」

 

俺はレインの突き攻撃を右手の『ブラックローズ・ナイト』で弾く。弾いたレインの右手の『スカーレット・プリンセス』は大きくそれた。

次の瞬間、レインは左手の『レイン・オブ・セイント』で斬りかかってきた。

 

「ふっ!」

 

俺は左手の『ホワイト・ユニヴァース』でそれを防ぐ。

レインの攻撃を防ぐと俺は右手の『ブラックローズ・ナイト』で攻撃する。しかし、それは弾いたレインの『スカーレット・プリンセス』に受け止められる。

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

剣のぶつかる金属音が鳴り響く中、俺とレインは互いの顔を見る。沈黙が両者の間に走る。

俺とレインは互いに剣に力を込める。

やがて同時に拮抗状態を解き一歩後ろに下がった。

 

「やるね、キリトくん」

 

「レインもな。・・・・・・まだ、やるか?」

 

「もちろん」

 

「オーケー。それじゃあ・・・・・・」

 

「「行くぜ(よ)!」」

 

俺とレインは再び剣を衝突させ攻撃を始めた。

レインの双剣を俺の双剣で防ぎ、弾く。俺の剣はレインの双剣に防がれ、弾かれる。

その剣戟の応酬が高速で奏でる。まるで二人で踊っているように見える。

もし、これを見ていた人がいたらこう思うだろう、プレイヤーが出せる攻撃速度ではない、と。

互いにソードスキルは使わず純粋な剣さばきで手合わせを行った。終わらせたのは手合わせを初めてから15分後。

軽く手合わせをするはずだったのにいつの間にか、軽くの域を越え15分もの間やっていた。

 

「「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・」」

 

俺とレインは手合わせを終えると一緒にその場で横になる。

 

「さ、さすが、だね。キリトくん」

 

「はぁ、はぁ、レイン、こそ」

 

俺たちは互いの息が元に戻るまで待ち、息が元に戻ると。

 

「今日、攻略はどうする?」

 

「77層の攻略をしよう」

 

「オッケー、わかったよ」

 

俺たちは今日の予定を決め暫く横になりながら談笑をした。やがて時間も十分経ったためエギルの店に帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

77層の攻略に行ってきた俺とレインは、今回シリカ、ユウキ、ランと一緒に行動した。

 

「ふぅ~、疲れたー」

 

俺はアークソフィアに戻ってきて最初に言った。

 

「うん。やっぱり上層だからかモンスターのレベルも高いね」

 

「ああ。シリカはどうだ?」

 

「はい、みなさんのお陰で今日だけで2つレベルが上がりました」

 

シリカが小竜のピナを肩に乗せていった。

 

「僕も1つ上がったよ」

 

「私は上がりませんでした」

 

「わたしも上がらなかったよ」

 

「俺もだ」

 

俺たちは五人で今日の戦果を分配などしていると不意に、

 

「あ、ごめんなさい。あたしこのあとクエストがあるんです」

 

シリカがそう言った。

 

「えっ、もうそんな時間シリカちゃん!?」

 

すると、それにレインとユウキが反応した。

 

「はい」

 

「嘘、じゃあ早く行かないと。それじゃあキリト、姉ちゃん、また後でね」

 

「ダスヴィダーニャ、キリトくん、ランちゃん」

 

「お先に失礼します。キリトさん、ランさん」

 

3人はそう言うと急いで何処かに行ってしまった。

その場で事情のわからない俺とレインは、それをただ呆然と見送っていた。

 

「シリカだけじゃなく、レインまで・・・・」

 

「ユウキも行ってしまいました・・・・・」

 

「ラン。ユウキからクエストについて何か聞いてないか?」

 

「聞いてませんね。それ以前にあの子がシリカさんとレインさんと一緒にクエストを承けていること事態初めて聞きました。キリトさんは?」

 

「ああ、俺も初めて聞いた」

 

俺とランはレインたちが行った方を見て、

 

「後を付けてみるか」

 

「後を付けてみましょう」

 

同時に同じことを言った。

俺とランは同時に言うと顔を見合わせて笑った。

 

「ふふ、キリトさん。今は和人さんでいいですか。和人さんもですか」

 

「はは、それは藍子もだろう」

 

俺はランが和人と言ったので俺もランのことを藍子と呼んだ。

 

「じゃあ、後を付けましょう」

 

「そうだな」

 

俺と藍子はレインたちの後を尾行・・・・・・ではなく付いていくことにした。見つからないように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、あれは・・・・・・・ラム?」

 

俺は道中、壁から通りを見ているラムの姿が目に入った。

 

「ほんとですね。何してるんでしょう?」

 

「さあ?」

 

俺と藍子は壁に隠れているラムに声をかけた。

 

「ラム、何してるんだ?」

 

声をかけるとラムは驚いたように瞬時に後ろを向いた。

 

「き、キリトにランさん!。何故此処に!?」

 

「レインたちを付けてきたんだけど、ラムはなんで此処に?」

 

「俺はリーザの後を付けて」

 

「リーザ?」

 

「リーザさん?」

 

「あ、そう言えばさっきリーザがレインさんたちと一緒にあの店の中に入って行きましたよ」

 

「「えっ?」」

 

俺と藍子・・・・・・・今はラムがいるからランとして。俺とランはラムの指差した店を見た。

 

「これは、喫茶店・・・・・か?」

 

「さあ?」

 

「店の名前は・・・・・・・『あい☆くら』?」

 

「「はい?」」

 

俺が店の名前を言うとランとラムは同じ言葉を発した。

 

「キリトさん、もう一度お願いします」

 

「・・・・・・『あい☆くら』」

 

「『あい☆くら』・・・・・ですか」

 

「何か怪しい店ですね」

 

「怪しさ満々の気がするけどな」

 

「中に入ってみます?」

 

「そうだな」

 

「ええ」

 

ラムの問いに俺とランは店の中に3人で入ることにした。

 

ガチャ!

 

俺とラン、ラムは店の中に入ると、

 

「「「「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様・・・・・・??」」」」

 

白と黒で基調したヒラヒラの服。いわゆるメイド服を着たレイン、シリカ、ユウキ、リーザの姿があった。

 

「「「・・・・・・・・・」」」

 

「「「「・・・・・・・・・・・」」」」

 

「やあ・・・・・」

 

「えっと・・・・・・ユウキ?」

 

「り、リーザ・・・・・・?」

 

暫くフリーズしていたが最初に俺たちが口を開いた。

 

「き、キリトくん?」

 

「き、キリトさん?」

 

「ね、姉ちゃん?」

 

「ら、ラム?」

 

「「ちょっと、様子を見に・・・・・・・」」

 

俺とラムがそう言うと。

 

「き、きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 

「いやぁーーーーーーっ!」

 

「やあぁーーーーーーーっ!!」

 

レイン、シリカ、リーザが悲鳴を上げた。

 

「うおっ、ちょ、落ち着け、二人とも」

 

「お、落ち着いてリーザ」

 

「な、なんでキリトくん此処にいるの!?」

 

「いや、レインたちがどんなクエストを承けているのか気になって」

 

「黙っていたのは悪いですけど・・・・・・・後を付けるなんて酷いですよぉー!」

 

レインが聞き、俺が答えるとシリカが答えた。

俺とレイン、シリカの会話を店の中にいるプレイヤーたちが何かを言っているが無視をする。

俺とレイン、シリカの隣でリーザとラムが。

 

『なんでラムがいるの!?』

 

『いや、時々リーザがどっかに行くから気になって』

 

『だからって後を付けないでよ』

 

『そ、それはごめん。でも、言ってくれても良かったんじゃない?』

 

『うっ!そ、それはそれ、これはこれラム、後でお部屋でお話がありますからね!』

 

『えっと、断るってのは』

 

『当然無しですよ!』

 

『はいっ!わかりました!』

 

と、会話していた。

その頃、ランとユウキは。

 

『ね、姉ちゃん』

 

『ユウキ・・・・・』

 

『な、なに?』

 

『なんで此処でクエストをしていることを言わないんですか!』

 

『ご、ごめん』

 

『しかも、メイド服まで着て』

 

『これは此処での正装だから』

 

『私も着てみたいんですよ!』

 

『えっ!姉ちゃんそっち!』

 

『ユウキ、予備のメイド服はないんですか』

 

『た、多分あると思うけど・・・・』

 

『じゃあ、貸して下さい』

 

『えっ、えっと、はい』

 

『では、着替えて着ます!』

 

『う、うん』

 

ランはユウキから何かを受け取った後、何処かに行ってしまった。

それを見ていた俺は、先に席に案内してもらおうと考えた。

 

「あー、取り敢えず席に案内してくれるか?」

 

「「「「あっ」」」」

 

俺の言葉にようやく思い出した四人は俺とラムを席に案内した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあユウキ、ランは何処に行ったんだ?」

 

案内された俺は椅子に座るとユウキにランの行方を聞いた。

 

「あー、え~と・・・・・・」

 

ユウキが口を濁らせていると。

 

「キリトさん」

 

ユウキの後ろから声が掛けられた。

ユウキの後ろにいたのは。

 

「ラン?」

 

「姉ちゃん?」

 

「はい、そうですよ」

 

ユウキたちと同じメイド服を着たランがいた。

 

「ランちゃん?」

 

「どうかしましたレインさん?」

 

「う、ううん。何かメッチャ似合ってるから驚いただけだよ」

 

「そうですか。キリトさん、どうですか?」

 

「・・・・・・なんでランまでメイド服着てるんだ?」

 

「ユウキから借りたんですよ」

 

「そ、そうか。うん、似合ってるぞラン」

 

「ありがとうございます、キリトさん」

 

俺は素直にランに言うと、ランは嬉しそうにその服装のまま俺の目の前に座った。

ラムは何処かというと。

 

『リーザ、なんでキリトと違う席なんだ?』

 

『え、別にいいじゃないですか。それにランさんもいるんですよ』

 

『ま、まあ、いいけど』

 

『ところでラム』

 

『ん?』

 

『私のメイド服姿どうですか?』

 

『その・・・・・・・か、可愛いよ』

 

『///あ、ありがとうラム』

 

『///う、うん』

 

俺たちの席から1つ離れた場所、というか隣だった。

すると、

 

「キリトくん、じゃなかった。ご注文はお決まりですかご主人様?」

 

「・・・・・・・」

 

「ご主人様、どうかいたしましたか?」

 

「・・・・・・なあ、レイン」

 

「なんでしょうかご主人様?」

 

「・・・・・・何故メイド服着てるんだ?」

 

「それは、この服がここでの正装だからなのですよ♪似合ってる、かな?」

 

「ああ・・・・・・と言うか全く違和感が感じられないんだが・・・・」

 

「やった♪・・・・じゃなかった、ありがとうございます、ご主人様」

 

「ああ」

 

俺はレインのメイド服姿に眼を奪われていた。

なぜなら、シリカやユウキ、リーザのメイド服姿は可愛いと表せるが、レインのメイド服姿は可愛いと言うより綺麗、似合ってると言うものだったからだ。

シリカとユウキに可愛いと、言うとシリカはまたフリーズしユウキは照れたようで頬をかいていた

 

「取り敢えず、何か食べて帰るか」

 

「そうしましょう」

 

俺は目の前に座るランとメニューを相談して呼び出した。

 

「ご注文をお伺いいたします」

 

注文を聞きに来たのはシリカだった。

手には伝票とペンらしきものを握っている。

 

「えーと、俺はこの『あい☆くらオムライス』を1つとコーヒーを頼む」

 

「私は『あい☆くらサンドイッチセット』とアイスティーをお願いします」

 

「畏まりました」

 

シリカは手慣れた感じでオーダーを受け取っていくと厨房へオーダーを伝えた。

料理が運ばれてくるまでの間、レインたちの動きを見ていた。

レインは接客と厨房を行き来していて、ユウキとシリカ、リーザは接客や品を運んできたりしていた。

他のプレイヤーからの好評は心配する必要ないくらい良いものだった。

10分後レインとユウキが頼んだ品を持ってきた。

 

「『あい☆くらオムライス』とコーヒーで~す」

 

レインはトレーの品をテーブルに置いた。

 

「『あい☆くらサンドイッチセット」とアイスティーで~す」

 

ユウキも同様にトレーの品をテーブルに置いた。

 

「それじゃご主人様、オムライスにケチャップで愛情を込めさせていただきます」

 

「はい?」

 

俺はレインの言葉の意味が今一分からなかったがレインの行動で理解した。

レインはオムライスの上にケチャップで剣を二本と俺の名前を書いた。

 

「なるほど、オムライスを頼むとそういうサービスがあるんですね」

 

「うん。他にもこう言うサービスのある品があるよ、姉ちゃん」

 

「はい、出来たよ」

 

「サンキュウ、レイン」

 

「ううん。えっと。はい、あーん」

 

「あのレインさん。此処には他のプレイヤーもいるんですけど」

 

「もぉー、いいから。はい、あーん」

 

「あ、あーん」

 

「どう?美味しい?」

 

「・・・・・うん。うまいぞ」

 

「ほんと!良かった」

 

「レインも食べてみろよ。はい」

 

「あ、あーん。・・・・・・・・ほんとだ美味しいね」

 

「だろ」

 

「うん」

 

「「はぁー・・・・・・・・・」」

 

俺とレインの光景を見てランとユウキが呆れたようにため息を吐き出した。

俺とラムはそれぞれ注文した料理を食べ終わるとそのまま『あい☆くら』を後にした。

ちなみにちょうどランが記録結晶を持っていたため、キリト×レイン、キリト×シリカ、キリト×ユウキ・ラン、ラム×リーザ等でそれぞれ写真を撮り、最後に全員で写真を撮った。

その写真データはそれぞれ俺、レイン、ラン、ユウキ、シリカ、リーザ、ラムに渡された。




少し人数を増やしてみました。

感想やリクエスト等ありました送って下さい。


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HF編 第71話〈影に潜む者〉

もう70話を越えていたんですね、驚きました。
これからもよろしくお願いいたします。


「フィリア、お待たせ」

 

「プリヴィエート、フィリアちゃん」

 

俺とレインは管理区に来ると目の前にいたフィリアに挨拶をした。

 

「キリト、レイン。来てくれたんだ」

 

「そりゃ、そうだよ。ところでフィリアちゃん、メールに書いてあった事ってほんと?」

 

「うん。この間手にいれたペンダントと同じ窪みがあったのよ。しかもその窪みがあった場所はどうやら別のエリアに行けるみたい」

 

「なるほど」

 

「それじゃあ、早速そこまで行くか」

 

「そう言うと思ったわその場所へは転移碑から転移出来るわ。この間転移碑をアクティベートしたから」

 

「了解」

 

俺とレイン、フィリアは転移門に立ち、

 

「「「転移!」」」

 

と言った。

次の瞬間、俺たちは光に包まれてその場から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日、俺とレインが此処に来たのはフィリアから昨夜メールが来たからだった。

メールには、

 

『この間手にいれたペンダントと同じ大きさの窪みを見つけたわ。出来たら明日来てくれないかしら』

 

と書かれてあった。

その内容をレインと話した後、フィリアに了解のメールを返信し今にいたる。

 

 

 

樹海エリア バステアゲートへ続く橋梁

 

「ほら、これよ」

 

俺とレインはフィリアに案内されて『バステアゲートへ続く橋梁』に来ていた。

目の前には幾何学的な紋章があり、奥には新たなエリアへと続く橋がある。

フィリアは、その紋章の中心点を指差した。

 

「ほんとだ」

 

「確かにこの前手にいれたペンダントと同じ大きさの窪みだね」

 

「んじゃ、入れてみるな」

 

俺はアイテムストレージから『「貴重品」虚光の燈る首飾り』を取り出し窪みにはめた。

 

「・・・・・・・なにも、起きないな」

 

「ほんとだね」

 

「あれ、おかしいなー」

 

「・・・・・・・・・多分、他に何か条件がいるんだと思う」

 

「でも、その条件ってなんだろ」

 

「なあ、二人ともこの間の神殿覚えてるか?」

 

「神殿?」

 

「神殿って確か転移碑があった場所の目の前にあった建物のことだよね」

 

「ああ、この間管理区で樹海エリアのマップを見たんだがな、神殿の奥にまだ何かあるらしいんだ」

 

「んー、それじゃあ一回管理区に戻って神殿へと向かおうか」

 

「わかったわ」

 

「了解だ」

 

俺たちは『バステアゲートへ続く橋梁』を後にし転移碑で管理区へと戻っていった。

管理区へと戻った俺たちはすぐさま『セルベンディスの神殿前広場』へ転移した。

 

 

 

 

 

樹海エリア セルベンディスの神殿前広場

 

管理区から再び転移した俺たちは目の前に広がる神殿を眺めていた。

 

「改めて見ると凄く大きいな」

 

「うん。なんかイベントが発生しそうかも」

 

そう会話しながら神殿の中に入っていった。

 

 

 

 

 

樹海エリア 供物の神殿

 

『供物の神殿』に入った俺たちは当然中を徘徊しているモンスターをエンカウントする度に相手したが此方はユニークスキル持ちが二人もいるためすべての戦闘をノーダメージで来ていた。

そして今俺たちの目の前には普通とは違う扉があった。

 

「・・・・これ、仕掛け扉みたいね」

 

「フィリア、解除出来るか?」

 

「ちょっと、待ってて」

 

フィリアは扉の前に行き扉を検分した。

 

「ん?・・・・・この窪みは・・・・・キリト!レイン!」

 

「どうした?」

 

「何かあった、フィリアちゃん?」

 

「二人ともこの窪みを見て」

 

「あれ、これさっきの紋章の所にあった窪みと同じだよ」

 

「ってことは・・・・・」

 

俺は再びペンダントを取り出しフィリアに渡した。

フィリアはペンダントを窪みに嵌め込み扉に向かい合いしばらくの間何かをしていた。

しばらくすると。

 

ガチャ!・・・・・・・ガーッ!

 

鍵が開く音をならせて扉が開いた。

 

「おお!」

 

「開いたね」

 

「ヘッヘーン。こんなの私にかかればどんなもんよ。さあ、奥に行きましょう」

 

俺たちはフィリアの開けた扉の奥に行くとそこには何体かのモンスターが徘徊していたが全て倒した。

そして、その奥には。

 

「・・・・・・・ねぇ、キリトくん。この威圧感って・・・・・」

 

大きな石の扉が鎮座していた。

 

「ああ、間違いない。恐らくこのエリアのボスだろう。フィールドボス級が徘徊しているのだから、フロアボス級もいると思っていたが・・・・・・ここまでとは・・・・・」

 

「エリアボス・・・・・・・」

 

「取り敢えず休憩したあと、ボス戦の準備をしよう」

 

「そうだね」

 

「うん」

 

俺たちはそこで簡易休憩をとり、お昼を食べた。お昼を食べ終わるとそれぞれ武器の手入れをした。

30分後

 

「レイン、フィリア。準備はいいか?」

 

「わたしは大丈夫だよ」

 

「私も平気」

 

「それじゃあ行くぞ」

 

俺は二人の前に立ち石の扉を押した。

 

ゴッ!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

 

扉が開き終わると俺たちは奥に進んだ。

 

 

 

 

樹海エリア 民が捧げられた鮮血の祭事場

 

扉の奥に進むと階段があり、階段の上には空から太陽の光が降り注ぐ広場らしきものが存在していた。

広場は苔や緑で周りを覆われており、石柱があちこちに散乱していた。

俺たちは慎重に進んでいった。

俺が階段を登ると。

 

「!キリトくん、下!」

 

後ろのレインが声をあげた。

 

「!?」

 

俺は慌ててその場から離れると俺がいた場所に大きな影があった。

俺は影を見るとその影は大きく膨れ上がるとモンスターへと変化していった。

 

「「キリト(くん)!」」

 

「二人とも、俺の後に続いて来てくれ!」

 

俺は心配して階段のしたから声をかけてくる二人にそう言った。俺は瞬時に背中の双剣を抜き階段の上へとかけ上がった。

俺の後を追いかけ影のモンスターが追ってくる。

影のモンスターは俺が広場に着くと影の中に潜り込み、俺の目の前に現れた。

 

「「キリト(くん)!」」

 

背後からは続いてきたレインとフィリアの声がした。

すると目の前に、

 

 

ホロウ・ミッション 樹海エリアボス討伐

 

場所:民が捧げられた鮮血の祭事場

 

クエスト名:影に住まいし獣

 

討伐ボス:シャドウファンタズム

 

 

と表示された。

 

「これは!?」

 

「まさかあのときの!?」

 

「二人とも考えてる時間はない!とにかく今は目の前のボスに集中するんだ!!」

 

「「了解!」」

 

俺は表示されたシステムウインドウに戸惑うレインとフィリアに声をかけ、二人の集中を目の前のボスへと移した。

俺の声にレインは腰の双剣を、フィリアは腰の短剣を抜刀した。

 

「行くぞ!はああああああああっ!!」

 

「やあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」

 

「てやぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」

 

俺たちはそれぞれ武器を構えて目の前の影のモンスター。シャドウファンタズムへの攻撃を始めた。

 

 




次回、樹海エリアボス シャドウファンタズム戦どうかお楽しみに。
感想や何か書いてほしいリクエストがありましたらお教えください。


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HF編 第72話〈エリアボス、シャドウファンタズム〉

連日投稿です。
今回は樹海エリアボス、シャドウファンタズム戦です。
それではどうぞ!


俺たちの目の前にいる影のボスモンスターの名前は、BOSS "The Shadow Phantasm"とモンスターの上に表示されていた。

シャドウファンタズム、と読むのであろうボスのHPゲージは3段に設定されている。

 

「うおおおおおぉぉぉぉぉお!」

 

俺はシャドウファンタズムとの距離を詰め、双剣で切り裂く。

だが。

 

「グオオオオォ!」

 

シャドウファンタズムは自身の影の中へと潜っていった。

 

「なに!?」

 

俺はからぶった双剣を構え辺りを見渡す。

 

「キリトくん、下!!」

 

「下・・・・・・・はっ!」

 

俺はレインの声に瞬時に横に飛び去り足元の影をかわした。

その影は先ほど、シャドウファンタズムが姿を表した影と酷似していた。

つまりあれはシャドウファンタズムなのだろう。

影をかわすとシャドウファンタズムが飛び出してきた。

そして俺は瞬時にレインに。

 

「レイン、今だ!」

 

「了解!いくよ・・・・・・《サウザンド・レイン》!!」

 

レインはあらかじめ決めていた事を実行した。

それは初端を≪多刀流≫最上位ソードスキル《サウザンド・レイン》で牽制と攻撃、その間に俺とフィリアで接近しタゲと攻撃を得ること。

これがここ最近のボス攻略に対する俺たちの攻撃スタイルだ。

最初にレインの遠近両方のソードスキル《サウザンド・レイン》、そのつぎに俺たちの攻撃、これにより今までより比較的に攻撃戦法がよくなっている。

《サウザンド・レイン》を喰らったシャドウファンタズムは悲鳴をあげ、動きを止める。

 

「ぜあっ!」

 

「やあぁぁ!」

 

その間に俺とフィリアで攻撃をする。

俺は正面から≪二刀流≫ソードスキル《ローカス・ヘクセドラ》7連撃、フィリアは側面から短剣ソードスキル《インフィニット》5連撃。

《サウザンド・レイン》と合わせて今の攻撃で総HPゲージの1割弱を減らしていた。

 

「続けて行くぞ!」

 

俺はソードスキル後の技後硬直が解けた二人に向かって言った。

 

「「了解!」」

 

フィリアは短剣を構え直し、レインは俺たちのところに来ていった。

シャドウファンタズムは吠えると俺たちに攻撃を仕掛けてきた。

俺たちは噛み付き攻撃をかわし側面を切り裂く。

 

「グオオッ!」

 

シャドウファンタズムは攻撃力も少々高いがそれ以前に素早さが高い。

あちこちを移動し攻撃してくるため俺たちはHPを減らす事が難しかった。

俺たちは、シャドウファンタズムが動きを止めている間に攻撃をし、レインの≪多刀流≫ソードスキル《ローディエント・ルージュ》6連撃の追加効果で素早さが低下するデバフを与えたため攻撃が与えやすくなった。

その後も着々とHPを減らし変化が起こったのは総HPゲージが半分になったところだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん!?」

 

「なに!?」

 

「えっ!?」

 

シャドウファンタズムが動きを止めたかと思いきや体のあちこちに突き刺さっていた半透明の杭が音をたてて砕け散ったのだ。

更にそれに伴いシャドウファンタズムの体のあちこちから不気味な禍禍しいオーラが出てきていた。

しかも体が半分に開いた?。

 

「な、なにあれ!?」

 

「恐らくHPゲージが半分になると、体のあちこちに突き刺さっていた杭が砕けああいう風になる仕組みなんだろう」

 

「ってことはあの杭ってもしかして・・・・・」

 

「ああ、恐らく封印杭だろう・・・・・・」

 

「つまりそれって・・・・・・」

 

「ああ・・・・・・・攻撃パターンが変わってくるぞ・・・・・しかもステータスが上がっているだろうな」

 

「ま、まずくないそれ・・・・」

 

「わからない。とにかくアイツの攻撃には気を付けてくれ状態異常やデバフが来るかもしれない!」

 

「了解!」

 

「わかったわ!」

 

俺たちがシャドウファンタズムの変わった姿を見て会話し終わると、シャドウファンタズムが攻撃を仕掛けてきた。

 

「!?二人とも、回避!」

 

「「!」」

 

俺たちは慌ててその場を離れた、するとその場所を大きな口で攻撃をしてきた。

 

「うそっ!」

 

「!フィリアちゃん!」

 

回避したフィリアの足元には影があった。

 

「うっ!」

 

足元の影を踏んでしまったフィリアはダメージを受けてしまっていた。

しかもその影の攻撃でフィリアのHPゲージにスタンと出血アイコンが表示されていた。

スタンによりフィリアはしばらく動けないのに加え、HPは対して減ってはいないのに対して出血デバフによりHPが少しずつ減っていく。

 

「レイン、フィリアを頼む!」

 

「わかったよ!」

 

レインにフィリアを頼み、俺は攻撃を仕掛けてきたシャドウファンタズムをかわし攻撃をする。

 

「はあああはぁぁぁあ!」

 

俺は≪二刀流≫ソードスキル《デブス・インパクト》5連撃を繰り出す。

《デブス・インパクト》の追加効果でシャドウファンタズムに防御力低下のアイコンが表示された。

ソードスキルが終わった俺にシャドウファンタズムは前足で切り裂いて来ようとした。

だが俺は技後硬直終了後、体術スキル《仙衝》による蹴りを放ち後ろに移動した。

後ろに移動した俺のもといた場所をシャドウファンタズムの前足の爪での切り裂きが誰もいない虚空を切り裂いていった。

 

「ぜあああぁぁぁぁあ!」

 

虚空を切り裂いていった後を俺は片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》単発重攻撃で貫く。

 

「グオオオオォ!!」

 

シャドウファンタズムは悲鳴をあげ、影の中に潜り込み奥に再び現れた。

 

「キリトくん、お待たせ!」

 

「レイン。フィリア大丈夫か?」

 

「う、うん。ごめんキリト」

 

「大丈夫だ、今は目の前のボスを討伐することにだけに集中しよう。二人とも、準備はいいか?」

 

「もちろん!」

 

「うん!」

 

俺は状態異常から回復したフィリアと合流し、シャドウファンタズムに攻撃を仕掛けた。

封印の杭が無くなったからなのかシャドウファンタズムの素早さが今まで以上に早くなっていた。

しかもシャドウファンタズムの攻撃はほとんどが出血デバフを与えるため後方に下がり止血結晶等アイテムを使って回復をした。

一人が回復している間は二人で交互にシャドウファンタズムのタゲを取った。

だがアイテムも無限にあるわけではなく徐々に無くなっていった。

ここで問題があるのが俺たちのスキル構成だ。

俺とレインは攻撃特化型、フィリアはやや素早さ特化型。つまり3人ともタンクの仕様じゃないのだ。それ以前にアークソフィアにいる俺の仲間もタンクはエギルとリズだけだ。

いくら互いに回復をサポートしているとはいえ回復がままならないのは確かだ。

その繰り返しが長く続き戦闘を開始してすでに二時間を過ぎていた。

シャドウファンタズムのHPゲージは残り一段の半分になっていた。

 

「あと少しよ!二人とも集中していくよ!」

 

「わかってる!」

 

「了解!」

 

フィリアの掛け声に俺とレインは双剣で切り刻みながら返事をする。

 

「グオオオオオオオオオオオオ!」

 

「っ!?させるか!うおおおおおおおおおっ!!」

 

俺は影に潜ろうとするシャドウファンタズムに片手剣ソードスキル《サベージ・フルクラム》重攻撃3連撃を与えた。

 

「グオオオ!」

 

「キリトくん、スイッチ!」

 

「わかった、スイッチ!」

 

重攻撃によりノックバックが発生しているためシャドウファンタズムは動けないでいる。

そこに俺とスイッチしたレインが攻撃をする。

 

「やあああああああぁぁぁあ!・・・・・・・・《マテリアル・・・・・・・・・イグニッション》!!」

 

レインはソードスキル名を出して両の剣をシャドウファンタズムに向かって切り刻んでいく。

しかもレインのHPバーに全ステータス上昇のバフが表示されている。逆にシャドウファンタズムには全ステータス低下のデハフのアイコンが表示されていた。

 

「グオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

シャドウファンタズムの悲鳴が鳴り響くなかレインは双剣をふるい一撃、二撃、三撃と攻撃を与える。

シャドウファンタズムのHPバーは徐書に減っていく。

 

「俺もやるか。フィリア、レインの攻撃が終わったらスイッチしてブレイクポイントを作ってくれ!」

 

「わかったわ!」

 

俺は今のでは全てのHPゲージが削りきれないと判断しフィリアにレインとスイッチをしてブレイクポイントを作るように頼んだ。

やがて、20数連撃にもおよぶソードスキルを出したレインとフィリアがスイッチをした。

 

「レイン、スイッチ!」

 

「わかった、スイッチ!」

 

「やあぁぁあ!」

 

フィリアはレインとスイッチをし短剣ソードスキル《グラビィティ・マグナム》重攻撃4連撃を放った。

《グラビィティ・マグナム》によりシャドウファンタズムはスタンが発生し動けなくなる。

シャドウファンタズムのHPゲージは残り2割。

 

「キリト、今よ!」

 

「おう、スイッチ!これで決める、はああああああああっ!」

 

フィリアとスイッチし俺は≪二刀流≫最上位ソードスキル《ロストオブ・エンデュミオン》22連撃を放つ。

ソードスキルを放つと同時に俺のHPバーににレインと同じように全ステータス上昇のバフアイコンが輝き、シャドウファンタズムには全ステータス低下のデハフがかかった。

俺の双剣はシャドウファンタズムの体を切り裂き、突き刺していく。

 

「グオオオオオオオオオオオオ!」

 

「ぜあああぁぁぁぁあ!」

 

そして最後の両の剣での凪ぎ払いによりシャドウファンタズムはHPを0にし雄叫びをあげるとポリゴンの欠片へと爆散していった。

シャドウファンタズムが消え去るとそこには、『congratulation!』とかかれたシステムウインドウと戦闘の余韻が漂った。




久しぶりに戦闘シーンを書いて大変でした。
キリトとレインのもうひとつのオリジナル最上位ソードスキルを出しました。
感想や何か書いてほしいリクエスト等ありましたらお教えください。
※R18は難しいので、と言うか書けないのでご了承くださいですわ。


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HF編 第73話〈暗躍する人影〉

まず、最初に。
今作は多少原作とは違いオリジナルがありますのでご了承下さい。
前回の感想で質問が来たので書かせていただきます。

それではどうぞ!


「ふぅ~、終わったか」

 

俺はシャドウファンタズムとの戦闘の余韻が漂う中、両の剣を左右に振るうと背中の鞘にしまった。

 

「お疲れ、キリトくん」

 

「お疲れ、キリト」

 

剣をしまい後ろを向くとレインとフィリアが同じように剣を収めて言った。

 

「お疲れ、二人とも」

 

「それでエリアボスを倒したのは良いけど何か変化あるかな?」

 

「ん~~、特に変わっては・・・・・って、ん?」

 

「どうかしたのキリト?」

 

「いや、ペンダントに光が灯ってる」

 

「ペンダントに?」

 

「ああ」

 

「それってもしかして彼処の紋章を解除するためのやつじゃ・・・・・・」

 

「多分・・・・・・・レインの言葉が正解だと思う」

 

「じゃあそれがあれば次のエリアに行けるのね」

 

「多分な。でも今日は辞めにして管理区に帰ろう。後日解除しに行くとする、でいいか?」

 

「そうだね」

 

「そうね」

 

二人の同意を得た後俺たちはそのまま『民が捧げられた鮮血の祭事場』を後にし神殿を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

樹海エリア セルベンディスの神殿前広場

 

俺たちは『民が捧げられた鮮血の祭事場』を出てから一度もモンスターとエンカウントすることなく『セルベンディスの神殿前広場』にある転移碑の前に来ていた。

 

「ふぅ~、ここまでモンスターとエンカウントすることなくこれたか」

 

「よかったー、流石にあのボスの後に戦闘はしたくないもの」

 

「あー、確かにそうね」

 

レインの言葉にラフィリアが同意した。

 

「ところでレイン、最後に出したソードスキルって・・・・・」

 

俺はレインがシャドウファンタズムに放ったソードスキルについて聞いた。

 

「あのソードスキルは私の≪多刀流≫最上位ソードスキル《マテリアル・イグニッション》だよ。ついこの間使えるようになったんだ」

 

「なるほどな、前に言っていた、もうひとつの最上位ソードスキル、がその《マテリアル・イグニッション》か・・・・・・・・・ん?レイン気のせいかもしれないが、レインがそのソードスキル使ったのって初めてじゃないか?」

 

「あー、うん。確かに。私が使うのって《サウザンド・レイン》が多かったからね。まあ、《サウザンド・レイン》のほうが支援できるし使い勝手がいいから」

 

「なるほど」

 

「ところでキリトくんの使ったソードスキルは何?」

 

レインは聞いたお返しにか俺にも聞いてきた。

 

「あれはもうひとつの最上位ソードスキル《ロストオブ・エンデュミオン》だよ。ちなみに此方もつい最近また使えるようになった。まあ、《ジ・イクリプス》のほうが強力だからそっちを基本使ってるんだが《ロストオブ・エンデュミオン》のほうは技後硬直が少し短いからな」

 

「へぇー」

 

レインは俺の説明に首を縦に降りながら答えた。

 

「何て言うかもうキリトとレインって滅茶苦茶ね」

 

フィリアが振り向き様にそう言ってきた。

 

「何でだ?」

 

「どうして?」

 

俺とレインは意味が解らず首を傾げる。

その様子にフィリアは肩をすくめ、

 

「自覚ないのね」

 

と言った。

俺はフィリアの言った意味がさらに理解できず、何気なく索敵スキルを使用した。

すると。

 

「ん、向こうの方で誰かと誰かが争ってるな。しかも一人に対して大人数で」

 

「一対多?こんなところで?」

 

「まさかまた・・・・・・・・・・どうする?」

 

「・・・・・・・一応確認してみるか」

 

俺はフィリアのまた、と言う言葉が気になったが兎に角今は索敵スキルに反応があった場所の近くまでに行くことにした。

索敵スキルに反応のあった近くの茂みまで来ていた。

 

「・・・・・・・・二人とも伏せて!」

 

俺は背後の二人に言った。

 

「どうしたの?」

 

「え、何で?」

 

「いいから、後これを纏って」

 

俺はストレージから隠蔽効果のあるケープを二人に渡した。

二人はケープを受け取り茂みのなかに伏せた。

 

「キリトくん、何が・・・・・・・・って、あれは」

 

「ああ、索敵スキルに引っ掛かったプレイヤーたち、だろう」

 

「でもあれって・・・・・・」

 

「ああ・・・・・・二人はここにいてくれ、俺は確かめて来る」

 

「き、キリトくん!?危ないよ!」

 

「大丈夫だ、すぐに戻ってくる」

 

俺は心配そうに言うレインにそう言うと茂みから飛び出しプレイヤーたちの所へと走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいあんたら!何やってるんだ!」

 

俺が一人のプレイヤーと争っているフードを被っているプレイヤーたちに声かけた。

その直後、

 

「・・・・・チッ」

 

ガスッ!・・・・・・パリッーン!

 

フードを被ったプレイヤーの一人が手に持っていた短剣で地面に倒れていたプレイヤーに突き刺した。

その一撃で襲われていたプレイヤーのHPゲージは0になりポリゴンへと姿を変え消えていった。

 

「なっ・・・・・・!?あんたら・・・・・!!」

 

「ターゲットは片付いた、とっとと行くぞ!」

 

「くっ、おい待て!」

 

フードを被ったプレイヤーたちは俺から逃げるようにしてその場から立ち去っていった。

 

「くそっ・・・・・・・」

 

俺は今さっき消え去ったプレイヤーがいた場所にたちそう口走った。

 

「キリトくん・・・・・」

 

「キリトが悪いんじゃない。どうやったって間に合わなかったもの」

 

フードを被ったプレイヤーたちがいなくなったからか茂みからレインとフィリアが出てきて俺に労いの言葉をかけた。

 

「レイン、フィリア。・・・・・・さっきの・・・・・・・亡くなったプレイヤーのステータスを見たか?」

 

俺は先ほど見た亡くなったプレイヤーのステータスを見たか二人に確認した。

 

「え、ううん。私は見えなかったけど・・・・・レインは?」

 

「わたしは・・・・・・見えたよ。けど・・・・・キリトくん、あのやり方って」

 

「ああ・・・・・・フィリア、さっきのプレイヤーには出血と麻痺の状態異常が掛かっていた」

 

「そうなの?」

 

「うん。そしてあの止めのやり方・・・・・・でも、そんなはずないよ」

 

「ああ・・・・・・・・まさか、そんなはずない」

 

俺とレインの考えは同じのようだ。

 

"あのやり方をやる所は1つしかない、だがそんなはずはない。あの日、俺とレインはあの場所にいたんだから。いや、待てよ。あの日あのなかにいなかった奴がいる!まさか・・・・・・・・・・・・奴がここにいるのか?"

 

俺は頭のなかで考えていると。

 

「キリト?レイン?どうしたの、二人とも顔が怖いよ」

 

「いや、何でもない」

 

「うん。なんでもないよフィリアちゃん」

 

「そ、そう?二人がそう言うなら良いけど」

 

「兎に角今は管理区に帰ろう」

 

俺たちはその場を後にし再び転移碑にやって来ると、

 

「「「転移!」」」

 

管理区へと転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

管理区

 

俺たちは管理区に戻ってくると次の予定を立てた。

 

「それじゃあ、次はあの紋章の場所から新エリアに行けるんだね」

 

「多分な」

 

「レイン、なんか楽しそうだね」

 

「もちろんだよ♪」

 

「「ははは」」

 

「もお、二人とも笑わないでよ~」

 

俺とレインはそのまま転移門にたち。

 

「フィリア」

 

「ん、何?」

 

「・・・・・・さっきのプレイヤーたちには気を付けろ」

 

「・・・・・わかったわ」

 

俺はフィリアに警告をした。

 

「それじゃあフィリアちゃん、次来るときにまたメッセージ送るね」

 

「ええ、待っているわ」

 

「それじゃあな、フィリア」

 

「ダスヴィダーニャ、フィリアちゃん」

 

「またね、二人とも」

 

「「転移!アークソフィア!」」

 

俺とレインは光に包まれてその場から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アークソフィア

 

「キリトくん。キリトくんはあのフードを被ったプレイヤーたちがあそこのプレイヤー、だと思う?」

 

俺とレインは管理区からアークソフィアへ帰ってくると人気のない場所に来ていた。

理由はあのフードを被ったプレイヤーたちに関してだ。

 

「ああ、だが確証がない」

 

「・・・・・・・この事フィリアちゃんに言わなくて良かったの?」

 

「今は・・・・・言わない方が良いだろう」

 

「キリトくんがそう言うならそうするよ」

 

「頼む」

 

「うん♪」

 

俺とレインは人気のない場所を出てエギルの店へと帰っていった。

もちろん、手は繋いで帰っていった。

 

 

「ただいまー・・・・・・・・・・・はい?」

 

「ただいま~・・・・・・・・・・・え?」

 

エギルの店に着き中に入るとそこには、

 

「もう、勘弁してリーザぁーーー!!」

 

「ラム、逃げないで下さい」

 

混沌が待っていた。

店内ではリーザに追い掛けられてラムが何処かで見たような感じのメイドを着て逃げていた。

 

「まさか、ラムにも負けるなんて」

 

「ラムさんも可愛いですね」

 

「なんか違和感が全く感じられないわね」

 

「キリトくんの他に似合う人がいるなんて」

 

「驚いたね」

 

「ええ、こうもしっくり来るとは」

 

そして見物人たちが感想を口にしていた。

 

「キリトくん」

 

「・・・・・」

 

俺とレインは面倒事に巻き込まれないように出ようとしたが。

 

「き、キリト助けて!」

 

ラムが俺たちに気づいてこっちにやって来たため無理だった。




連日投稿が出来ない。
リアルが大変だ~です。
最後のラムの女装については後日説明致します。

感想等ありましたらお教えください!



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HF編 第74話〈新たなるエリア バステアゲート浮遊遺跡エリア〉

ごめんなさい、今回は短いです。



樹海エリア バステアゲートへ続く橋梁

 

樹海エリアの攻略が終わった5日後、俺はレイン、フィリア、ユウキ、ランとともに『バステアゲートへ続く橋』の紋章の前に来ていた。

 

「ふぅ~、ようやく新エリアか・・・・・・」

 

俺は紋章の奥にある橋の先の大地を見て言った。

 

「そうだね」

 

「新しいエリアか~、どうなモンスターと戦えるのかな」

 

「全く貴女って子は・・・・・」

 

「ついに二つ目のエリア・・・・・か」

 

紋章を前にしてそれぞれ思ったことを口に出す。

本当なら2日前に来る予定だったのだが、樹海エリアのボス討伐の翌日俺はアスナたちと迷宮区攻略へ、レインはリズと一緒に鍛冶スキル上げをして過ごした。

ちなみに5日前何故か女装させられていたラムはこの間のリーザの尾行の罰と言うことでメイド服などを着る、いわゆるリーザの着せ替え人形になっており、その翌日はリーザとともに出掛けていった。

そして、その日迷宮区にてボス部屋が発見され翌日にはボス攻略戦が行われた。

第77層のボスは《クリスタライズクロウ》と名の蠍型のモンスターだった。

《クリスタライズクロウ》は毒や麻痺などのデバフを多用し攻撃してきたが、俺たち攻略組は前回に引き続き死者0、LAはレインという形で終わった。

77層攻略翌日、俺たちは第78層の攻略に取りかかりいつの間にか5日も立っていたのだ。

そして、今に至る。

 

「これを、こうして・・・・・っと」

 

俺はストレージから取り出していたペンダントを紋章の窪みに嵌め込んだ。

嵌め込むとペンダントが輝きその輝きが紋章を包み込んでいった。次の瞬間、紋章が消え封印が解かれていた。

それに伴いペンダントの光も消えていた。

 

「よしっ!」

 

「封印が解除されたよ」

 

「そうだね」

 

「みんな、早く行こうよ」

 

「ユウキ落ち着いて下さい」

 

俺に続いてレイン、フィリア、ユウキ、ランが言う。

 

「よし・・・・・・・・行こう!」

 

「うん♪」

 

「了解!」

 

「オッケー!」

 

「はい!」

 

俺たちはそれぞれ、期待と興奮を胸に募らせて新たなるエリアに足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浮遊遺跡エリア バステアゲート浮遊遺跡前広場

 

「うわ~。スッゴッーイ・・・・・」

 

「落ちないでよユウキ」

 

橋を渡り俺たちが始めに目にしたのは、空中に浮かぶ島々だった。そして奥には十字架の形をした建造物と塔だ。

 

「新たなるエリアの名前は『バステアゲート浮遊遺跡』か。その名のとおりあちこちに浮いてるな」

 

「うん、なんか幻想的だね。ゲームの中なのはわかるけど」

 

「レインそれは言っちゃダメだよ」

 

「ははっ。さてと・・・・・・・どう攻略したものかな」

 

「取り敢えずあの塔に行ってみない?」

 

俺が考えるとレインがそう提案してきた。

 

「そうだな・・・・・・どのみち行かないと分からないしな」

 

「決まりですね」

 

「ああ」

 

ランの言葉に頷き、俺たちは奥の十字架の形をした建造物と塔のある場所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは・・・・・・・・」

 

「あの封印の紋章と・・・・・同じなのかな?」

 

「そうじゃないかな」

 

橋を渡り橋の中程まで来た俺たちは目の前にある障壁に悩んでいた。その障壁の紋章は先程、エリア解除の際に描かれていた紋章と同じだった。

 

「それじゃ何かヒントがあるかもしれませんね」

 

ランはそう言うと紋章に近づいていった。

 

バシッ!

 

「姉ちゃん!?」

 

ユウキが紋章に弾かれたランを後ろから支える。

 

『竜王の許可を持たぬ者は直ちにここから立ち去るがいい』

 

すると何処からかそんな声が聞こえてきた。

 

「今の声は・・・・・」

 

「もしかして、ここを通りたければ何かキーアイテムを見つけてこい、って事なのかな?」

 

「多分そうだと思うよ」

 

「だろうな」

 

「ギャアアアアアア!!!!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

俺たちは突如響いてきたモンスターの声に耳を塞いだ。

 

「今の何処から・・・・」

 

「あ、あれ!」

 

レインが上空の一点を指差した。

俺たちがレインの指差した所を見るとそこにはモンスター、青紫色の大型ドラゴンが滞空し俺たちを見ていた。

 

「あれは・・・・・!」

 

「まさかここのエリアボス!?」

 

「あれが・・・・」

 

「ギャアアアアアア!!!!」

 

ドラゴンはもう一声上げると、俺たちの目の前にそびえる十字架の建造物の塔に向かっていった。

 

「・・・・・・・・どうやらあの塔を住みかにしてるみたいだな」

 

「ええ、にしても・・・・・・・あれがこのエリアのボスですか。凄い迫力ですね」

 

「うん。なんか迷宮区のフロアボスと同じ感じだった」

 

「ああ、だが迷宮区のフロアボスよりは幾分か難易度が低いけどな。流石にフロアボスと同じパラメーターだったら樹海エリアのボスを3人で倒せないよ」

 

「まあ、確かに」

 

「ええ」

 

俺の言葉にレインとフィリアが頷く。

 

「取り敢えずあのボスの元に行くには竜王の許可の何かが必要みたいだな」

 

「うん。でもそれアイテムなのかな?」

 

「多分そうだと思うよ。だって許可、って言っていたもの」

 

「んじゃ、あちこち行ってみますか」

 

俺たちは橋から戻り転移碑をアクティベートして辺りを探索した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

守護者の観戦所

 

俺たちは『浮遊遺跡前広場』から『守護者の観戦所』に足を運んでいた。

 

「はああああっ!」

 

「ぜやああああっ!」

 

「ユウキ、スイッチ!」

 

「オッケー!スイッチ!」

 

「やあああっ!」

 

「キリトくん!」

 

「わかった、スイッチ!」

 

「うん!やああああっ!」

 

ユウキとスイッチしたランと、俺とスイッチしたレインがそれぞれ2体のモンスターを倒した。

 

「ふぅ。お疲れみんな」

 

俺は双剣を背中の鞘にしまいそう言った。

 

「お疲れ様キリトくん」

 

「お疲れ」

 

「お疲れー」

 

「お疲れさまです。にしてもなんでこのエリアはドラゴン型のモンスターが多いんでしょうか」

 

「さあ?多分エリアボスがあのドラゴンだからじゃない」

 

「どうだろうね」

 

俺たちはここに来るまで7回ほど戦闘したがモンスターのタイプはどれも、ドラゴン型だった。

 

「えっと・・・・・・もうこんな時間なんだ」

 

ウインドウを開き時間を確認していたレインがそう言い、俺もウインドウを開いて確認した。

 

「ほんとだな今日はここまでか」

 

俺たちは封印の紋章を解除するため色々な場所を歩き回っていたが今日は特に収穫は得られなかった。

 

「それじゃ転移碑を通って帰りましょう」

 

「そうするか・・・・・・・・・ん?」

 

俺はみんなと一緒に転移碑の場所に戻ろうとしたその時何処からか視線を感じ足を止めた。

 

"なんだ。索敵スキルには何の反応はないし、モンスターの気配でもない・・・・・・気の・・・・せいか?"

 

「どうかしたのキリトくん?」

 

「いや、なんでもない。帰ろう」

 

俺たちはそのまま『浮遊遺跡前広場』の転移碑を通して管理区に戻り、俺たちはアークソフィアへ、フィリアは根城へとそれぞれ帰っていった。

俺があのときの気配の正体をつかんだのはそれから数日後の事だった。




感想等がありましたら送って下さい。


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HF編 第75話〈期間限定メニュー〉

今回のタイトルでなんとなく気付いてる方、原作とは少々違いますのでご了承下さいませ。


新たなるエリア、『バステアゲート浮遊遺跡エリア』を解放した後、俺たちはフィリアとしばらく探索した。

そして管理区に戻りフィリアは自身の根城に、俺たちはアークソフィアに帰ってきていた。

俺たちはアークソフィアのエギルの店に帰ってきた後自室へと戻っていった。

俺も自室でアイテムストレージやスキルを見ていたとき。

 

"コンコン"

 

「どうぞ」

 

「お邪魔するねキリトくん」

 

「どうしたんだレイン?」

 

「今、下の酒場で期間限定メニューが出てるらしいんだ。見に行ってみないかな?」

 

「へえ、そんなものがあるのか。じゃあ、行ってみるか」

 

俺はレインとともに下の酒場に移動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺とレインは一階の酒場に降りると結構な数のプレイヤーが食事をしていた。

俺たちは席に着き注文を頼んだ料理を舌づつんでいた。

 

「へえ~、NPCレストランにしては本格的だね♪・・・・・・・ん!これおいしいね!」

 

「レインがそこまで言うなら相当だな。それ、なんてメニューだっけ?」

 

「『キノコのクリームパスタ』だよ。キリトくん、ひと口食べてみる?」

 

「いいのか?それじゃ遠慮なく・・・・・・」

 

「あ、じゃあわたしもキリトくんのひと口もらうね」

 

「おう。んぐ・・・・・・・・・もぐ・・・・・・うん!これはうまいな!」

 

「うわ~、キリトくんのもおいしいね!どうせなら限定メニューじゃなくてずっと置いといてほしいなぁ・・・・・・・」

 

「ほんとだな。うーん、あとを引くうまさだ・・・・・・。レイン、もうひと口もらっていいか?」

 

「もちろん、いいよ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~outerside~

 

キリトとレインが一緒に夕飯を食べている頃、近くのテーブルで。

 

「・・・・・・あのお二人、仲いいですね・・・・・・・。当然と言えば当然ですけど・・・・・」

 

「ほんと・・・・・随分とまあ。見せつけてくれるわよねぇ」

 

「・・・・・・・見ているこっちが恥ずかしくなるわね」

 

「あははっ。でもまあ何時もの事だからね~」

 

「もう見慣れてしまいましたね」

 

「僕も少し見慣れているけど、ちょっとね」

 

シリカの言葉にリズ、シノン、アスナ、ラン、ユウキが答える。

 

「何時からああなんでしょうね」

 

「多分、一層からじゃないかな」

 

「・・・・・・・レインさんとキリトくんっていつもあんな感じなんですか?」

 

「まあ、あんな感じと言えばあんな感じかなあ」

 

「へ、へぇ・・・・・・夫婦だからって言ってもあんなの見たことないんですが・・・・・・・」

 

リーファがキリトたちの方を見てそう呟く。

 

「まあ・・・・・・確かに」

 

「キリトくんとレインさんが結婚しているってことは聞いたけど、流石にあそこまでとは・・・・・」

 

「あたしも初めてあのお二人が結婚して夫婦になっている時ビックリしましたから」

 

「そう言えばあの二人が結婚してるって、シリカちゃんが知ったのってつい最近なんだよね」

 

「はい、第76層に来たときに。まあ、それ以前からあの二人のことは噂になっていましたから」

 

「あはは。確かに」

 

「あの二人の二つ名って、『黒の剣士』や『紅の剣舞士』だけじゃなくて『最強夫婦』っていうのがあるからねぇ」

 

「実際に二人とも攻略組の1、2を争うプレイヤーですから」

 

「あとあの二人を見てると『バカップル』って言う言葉が何時も頭に浮かぶのよね」

 

「あ。確かにリズさんとアスナさんの言う通りかもしれません」

 

「ところでラムとリーザは?」

 

シノンが何時もいるはずのラムとリーザの二人の姿が見えないため聞く。

 

「えーと・・・・・・」

 

シノンの問いにリーファが目線をずらして口を濁らせる。

 

『はい、ラム』

 

『あ、ありがとうリーザ』

 

リーファが目線をずらす前のところにはラムとリーザがイチャイチャしており桃色空間が現れていた。

 

「「「「「「「・・・・・・・・・・・」」」」」」」

 

「はあ、ここにもいたわ。バカップルが・・・・・」

 

「あははっ。なんか空しく思って来ちゃうわね」

 

「それ以前に甘いです。この料理甘くないのに」

 

「そりゃあんな桃色空間が2つもあったらねぇ」

 

「あはは、はぁー」

 

「・・・・・・・・・・・ほんと、見てるだけで疲れるわね」

 

アスナたちが窶れているとユイが。

 

「みなさん、パパとママは相思相愛ですよ。娘の私が保証します!」

 

そう言った。

 

「うん。ユイちゃんそれはあの二人を見てれば誰でも分かると思いますよ」

 

「でも、パパやラムさんのように唐変木?と言うのがいると思いますが」

 

ユイが首を傾げて聞いてきた。

 

「「うぐっ!」」

 

ユイの言葉にユウキとランが息を詰まらせる。

 

「ユイちゃん、ごめん。余りそれ言わないでなんか悲しくなってきたから」

 

「ユウキ。それ私もです」

 

ユウキとランはユイの言葉に落胆し表情が段々暗くなっていった。

 

「あははは。ユウキちゃんとランさんは苦労しましたからね。しかもあたしなんていつの間にか伯母さんになっちゃってますし」

 

「「「はぁ・・・・・」」」

 

「まあ、確かにその歳で伯母さんはね・・・・・」

 

「女子に取ってみればちょっと、ですね」

 

「はあ・・・・・」

 

「なに、あんたもショック受けちゃった?」

 

「いえ、お兄ちゃ・・・・キリトくんがレインさんと結婚している事は別にいいんですけど・・・・・・・。この歳で伯母さんと言われるのは・・・・・・」

 

「あらら、もうすでに妹として結婚してることはオッケーなのね」

 

「そりゃまあ。キリトくんが決めたことならあたしは構いませんから。でも・・・・・」

 

「でも?」

 

「現実世界ではずっと一緒にいたから・・・・・・」

 

「リーファの言うこと少しわかる気がするな~」

 

「確かに。わたしもユウキが一人でこの世界に来ちゃってたらずっと看病しますから」

 

"ガタッ"

 

突如響いた椅子の音に発生元を見ると。

 

「ん?どうしたのシリカちゃん」

 

「ちょっとキリトさんのところに行ってきます!」

 

「え?・・・・・・・・あーーー!!アンタこれ!」

 

リズはシリカが飲んだものであろうコップをもって言った。

 

「リズそれは?」

 

「バッカスジュースよ!」

 

「「「バッカスジュース!?」」」

 

リズの言葉にアスナ、ユウキ、ランは驚きをあげる。

 

「えーと、バッカスジュースってなんですか?」

 

「この世界の飲み物の一つよ。でもちょっと問題があって」

 

「って、メニューにバッカスジュースが普通に乗ってるよ姉ちゃん!」

 

「多分、システムの不調で載ってしまったんでしょうね。・・・・・ってさっき私達も飲みませんでした!?」

 

「あっ・・・・・」

 

「そ、そう言えば」

 

「なんか適当に頼んだけど、まさかあれ?」

 

「た、多分そうかと」

 

「そんなことより!あたしたちはなんでここにいるんですか!?」

 

「そりゃ、76層より下に戻れなくなったからでしょ」

 

「えーと、あたしとシノンさんは間違ってここに来ちゃったからなんですけど・・・・・・」

 

「違います、全くぜんぜん違います。それだからみなさん甘いって言われるんですよ!」

 

「これ、完璧に酔ってない?」

 

「え、ええ」

 

「こ、この子、手がつけられないわ・・・・・」

 

「受け身の姿勢でいても何も変わりませんもっと攻めなきゃダメですよ!花の命は短・・・・・「せいっ」キュウ・・・・・」

 

「ふぅ~、なんとかなったね」

 

「ゆ、ユウキ貴女って子は・・・・」

 

「あはは。まあ、シリカちゃん気絶しちゃったみたいだし私部屋に寝かせて来るね」

 

「お願いねアスナ」

 

「うん」

 

~outerside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんであそこだけ暗いんだ?」

 

俺はレインの『キノコのクリームパスタ』を食べながら聞いた。

 

「さあ?でも時々会話が聞こえてきた限りじゃお疲れさま会ムードだったよ。途中までは」

 

レインは俺の『ボロネーゼ』を食べて言った。

 

「途中までは、ってことはなんかあったのか?」

 

「わかんない。でも、ユイちゃんがさっき唐変木?って言っていたよ」

 

「と、唐変木?」

 

「うん。ちょうどこのメンバーの中だとキリトくんとラムくんがそうだね」

 

「な、なんでだ!?」

 

俺は何故ラムと同じように唐変木になるのか分からず声を上げた。

 

「それは自分の胸に手を当てて考えてみたらどう?」

 

レインは何を当たり前の事を言っているのかと言うようように言って来た。

俺はレインの言うとおり胸に手を当てて考えてみたがさっぱり分からなかった。

 

「すまん、 さっぱりわからん」

 

「はあ~。もおー、キリトくんは」

 

「?なんでため息吐かれるんだ。しかも何故呆れている眼差しを向ける?」

 

俺は訳が分からず首を傾げた。

するとその時、

 

"ガタッ"

 

椅子の音が聞こえた。

 

「ん?シリカか?」

 

「ほんとだ。どうしたんだろ?」

 

「さあ」

 

「あ、ユウキちゃんに気絶させられたちゃった」

 

「いくら圏内のなかだって言っても流石にあれは痛そうだな」

 

「だね」

 

俺とレインはアスナたちが座っている席を見て起こったことを言っていた。

そのあとユイが向こうのテーブルでみんなになにかを言うとそのままみんな解散したため、俺たちも部屋に戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が自室に戻ると義妹のリーファ。スグが俺の部屋に来てこの世界に来た本当の理由を教えてくれた。

俺はスグに『どうして?』と聞いた。スグは目に涙を浮かべて言った。俺が心配で、眠ったままの姿が耐えられなくて来た、と。

俺はスグの頭を撫で『大丈夫だ』と言った。

その言葉に安心したのかスグは俺のベットで眠ってしまった。

俺は久しぶりに見るスグの寝顔に安堵しそっと毛布をかけた。

するとその時。

 

コンコン!

 

「キリトくん、入るよ~」

 

扉の外からレインの声が聞こえた。

 

「あ、ああ。ってちょっと待てレイン!」

 

俺は慌てて言うが時すでに遅し。

 

「どうしたのキリト・・・・・くん?」

 

案の定レインの視線は俺のベットで寝てしまっているスグに向けられていた。

 

「キリトくん」

 

「な、何かな」

 

「いくら義妹だからってベットに連れ込むのは・・・・」

 

「ってちょっと待て!盛大に勘違いしてるぞレイン!」

 

「え、違うの?」

 

「違うわ!盛大に違ーう!」

 

「・・・・・・・・・キリトくん。直葉ちゃん起きちゃうよ」

 

今ここには直葉の名前を知っている者しかいないためあえてレインはリーファではなく直葉と呼んだ。

 

「あっ!」

 

俺はスグの方を見て寝ているか確認した。

スグは今の声に目を覚まさなかった。

 

"そう言えばスグは一度寝ると中々起きないんだよな。例え地震とか起こっても"

 

俺はその事を思いだしレインの方に振り返った。

 

「大丈夫のようだ。というかスグは一度寝ると中々起きないんだよ」

 

「へえ、そうなんだ。なんかキリトくんに似てるね」

 

「俺に?」

 

「うん。キリトくん一度寝ちゃうと全然起きないもの」

 

「そ、そうか?」

 

「うん♪」

 

「と、ところで何かようか?」

 

「んー、用って程じゃ無いんだけど。強いて言えば直葉ちゃんの事が気になった、かな」

 

「スグの事が?」

 

「うん。どうしてここに来ちゃったんだろうって」

 

「なるほどな」

 

「キリトくん、何か知ってるの?」

 

「ああ、実は・・・・・・」

 

俺はソファーに座るとレインに先程スグと話した事を話した。

 

「なるほど・・・・・色々と納得が行ったよ。どうして現実の姿じゃなくて別のゲーム。確か・・・・・・ALOだっけ。そのアバターの姿をしていたのか」

 

「ああ・・・・・。でも、俺はスグに来てほしくなかったな」

 

「ううん。それは直葉ちゃんが正しいかな」

 

「え、どうしてだ?」

 

「だって、例えば今この状況が逆になったときキリトくんはどうする?わたしだったら例え・・・・・現実世界に戻れなくても来るよ。キリトくんはどう?」

 

「・・・・・・・・・多分、俺もスグと同じ行動を取ると思う」

 

「でしょ♪二人は兄妹・・・・家族なんだから」

 

今の言葉に若干悲しさが入っていたことに俺は気づいた。

 

「レイン?」

 

「ん?なに」

 

「いや、なんでもない」

 

「そう?」

 

「あ、ああ。・・・・家族・・・・か。確かにな。ありがとうレイン」

 

「ううん。キリトくんの役に立ったならお安いご用だよ♪」

 

「助かるよ」

 

「さてと、それじゃわたしは直葉ちゃんを部屋に寝かせて来るね」

 

「あ、ああ。頼む」

 

「お安いご用だよ♪・・・・・・よっと」

 

レインはベットに近づきスグを抱き抱えた。

 

「それじゃ、お休みキリトくん」

 

「ああ、お休みレイン」

 

レインはスグを連れて部屋を後にした。

俺はレインとスグが部屋を後にしたあとお風呂に入るとそのまま眠りに落ちた。

 




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ソードスキルリストⅡ

祝ポケモン映画第21作品目公開記念!
前日の三時間スペシャルは見たかな?
ポケモンファンなら見なくちゃ損だよ♪


槍ソードスキル 

 

使用者:リーザ

 

ツイン・スラスト

 

2連擊

突きを2回繰り出すソードスキル。

 

ヘリカル・トワイス

 

4連擊範囲技

周囲を巻き込み凪ぎ払うソードスキル。

 

ソニック・チャージ

 

単発突進技

槍を構え溜めた後、一気に敵を貫くソードスキル。

 

フェイタル・スラスト

 

5連擊

槍中位ソードスキル。突きを放ち相手に追撃で衝撃波を与えるソードスキル。

 

リヴォーブ・アーツ

 

重攻撃4連擊

槍中位ソードスキル。3回槍で凪ぎ払ったあと上から槍を垂直に振り下ろすソードスキル。

 

ヴェント・フォース

 

4連擊範囲技

槍中位ソードスキル。突きを4回し敵の体勢を崩すソードスキル。

 

ダンシング・スピア

 

5連擊

槍上位ソードスキル。舞い踊るかの用にして槍で攻撃する素早さと攻撃よりソードスキル。

 

トリップ・エクスパンド

 

6連擊

槍上位ソードスキル。槍で敵を切り裂いた後止めに上からの垂直に槍を叩きつける、攻撃よりのソードスキル。

 

ジャジメント・ピアッサー

 

7連擊

槍上位ソードスキル。敵を四方から貫く。防御やカウンターよりのソードスキル。

 

ディメンション・スタンピード

 

6連擊

槍最上位ソードスキル。素早く敵に近づき突きを5回繰り出した後、飛びあがり上空から敵を貫くソードスキル。

 

インペリアル・サザンクロス

 

5連擊

槍秘奥義ソードスキル。一撃一撃の威力が高く攻撃速度も高い。使う前に2秒程溜めが必要とする。4擊目まで一瞬で貫き、5擊目は重い攻撃を与えるソードスキル。秘奥義となっているため通常のソードスキルとは一味違う威力を保有する。

 

 

 

 

 

 

刀ソードスキル

 

使用者:クライン、ラム

 

旋車

 

単発範囲技

周囲を巻き込み刀で敵を凪ぎ払い斬るソードスキル。

 

浮舟

 

単発範囲技

下から敵を切り裂くソードスキル。

 

緋扇

 

3連擊

2回切り裂いた後止めに突きを放つソードスキル。

 

辻風

 

単発

刀中位ソードスキル。刀を瞬時に振り抜き攻撃する。振り抜きに残擊の風が敵を切り裂くソードスキル。

 

幻月

 

2連擊

刀中位ソードスキル。左斜め斬りから一回回って右斜め斬りをし空中にクロスの残擊が残るソードスキル。

 

鷲羽

 

9連擊

刀上位ソードスキル。素早く敵を切り裂くソードスキル。

 

羅刹

 

重攻撃3連擊

刀上位ソードスキル。刀をおもいっきり凪ぎ払い敵を切り裂く攻撃よりのソードスキル。

 

暁零

 

3連擊

刀上位ソードスキル。同じ場所を3回垂直に斬る防御よりのソードスキル。

 

東雲

 

3連擊

刀上位ソードスキル。嵐を巻き起こすかのようにして敵を斬る3連擊のソードスキル。攻撃と防御、両方を兼ね備えているソードスキル。

 

散華

 

5連擊

刀最上位ソードスキル。一撃一撃の威力が重く敵を切り裂くよりは叩き斬るに近い攻撃速度と攻撃重視のソードスキル。

 

天焔

 

12連擊

刀秘奥義ソードスキル。一撃一撃の威力が高く攻撃速度は高い。使用する前に2秒程溜めが必要とする。3擊目までは攻撃よりだが4擊目から攻撃速度が上がり一瞬にて残りの9擊を与え切り裂くソードスキル。秘奥義のため通常のソードスキルとは一味違う威力を保有する。

 

 

 

 

 

 

短剣ソードスキル

 

使用者:シリカ、フィリア、シノン

 

アーマー・ピアス

 

単発

鎧の継ぎ目に突き刺したり出来るソードスキル。

 

ラピット・エッジ

 

2連擊

素早く2擊を与えるソードスキル。

 

サイド・バイト

 

2連擊

素早く同じ場所を斬るソードスキル。

 

クロス・エッジ

 

2連擊

十字を描くようにして切り裂くソードスキル。

 

ラウンド・アクセル

 

2連擊範囲技

周囲を巻き込み切り裂くソードスキル。

 

トライ・ピアース

 

3連擊

短剣中位ソードスキル。三ヵ所同じ場所を素早く突くソードスキル。

 

ラピッド・バイト

 

単発突進技

姿勢を低くし低空から敵を一瞬で近づき貫くソードスキル。

 

インフィニット

 

5連擊

短剣上位ソードスキル。4回切り裂いた後衝撃波で敵を貫くソードスキル。

 

ファッド・エッジ

 

8連擊

短剣中位ソードスキル。素早く敵を切り裂くソードスキル。

 

シャドウ・ステッチ

 

7連擊

短剣上位ソードスキル。防御に片寄ったソードスキル。若干カウンターに向いてる。

 

アクセル・レイド

 

12連擊

短剣上位ソードスキル。素早く敵に近づき切り裂き、貫きを行うソードスキル。

 

スラスト・フォール

 

重攻撃3連擊

短剣中位ソードスキル。重い攻撃を与え敵の体勢を崩すソードスキル。

 

グラヴィティマグナム

 

重攻撃4連擊

短剣上位ソードスキル。敵の体勢を崩し攻撃する防御系のソードスキル。

 

エターナル・サイクロン

 

9連擊

短剣最上位ソードスキル。敵に瞬時に近づき竜巻のごとく敵を斬りつけていく攻撃速度重視のソードスキル。

 

スターライト・スプラッシュ

 

8連擊

短剣秘奥義ソードスキル。一撃一撃の威力が高く攻撃速度重視の秘奥義ソードスキル。使用する前に2秒程溜めが必要とする。6擊目までは高速で敵を貫き最後の2擊はクロスを描くようにして切り裂く。秘奥義のため通常のソードスキルとは一味違う威力を保有する。

 

 

 

 

片手棍

 

使用者:リズベット

 

サイレント・ブロウ

 

単発範囲技

周囲の敵を棍で凪ぎ払うソードスキル。

 

パワー・ストライク

 

単発

敵に思いっきり振り下ろした棍を与え攻撃するソードスキル。

 

アッパー・スイング

 

2連擊

下から2回連続で攻撃するソードスキル。

 

ストライク・ハート

 

3連擊

敵を2回凪ぎ払ったあと棍で突くソードスキル。

 

ダイアストロフィズム

 

重攻撃5連擊

敵に重い攻撃を仕掛け体勢を崩し攻撃するソードスキル。

 

トライス・ブロウ

 

3連擊

低確率でスタンが発生する。下からの攻撃2回に振り下ろし1回のソードスキル。

 

ブルータル・ストライク

 

7連擊

素早く敵に7回攻撃する攻撃速度重視のソードスキル。

 

 

トリニティ・アーツ

 

重攻撃3連擊

敵の体勢を崩し攻撃する攻撃力重視の重攻撃ソードスキル。

 

ミョルニルハンマー

 

重攻撃3連擊範囲技

敵に上からの振り下ろし重攻撃を仕掛ける。振り下ろすと周囲に雷が降り注ぎ追撃、スタンを与える重攻撃範囲ソードスキル。

 

 

ハートビートブレイカー

 

8連擊

敵に棍で凪ぎ払い、突き、振り下ろし等を仕掛け敵に防御低下のデバフを付与するソードスキル。

 

ヴァリアブル・ブロウ

 

8連擊

凪ぎ払い往復2回から下からの攻撃、そして上からの振り下ろし3擊を与える攻撃重視のソードスキル。

 

ホーリークラウン

 

5連擊

片手棍秘奥義ソードスキル。一撃一撃の威力が高く攻撃速度、攻撃、防御の3つを均等に重視する。使用する前に2秒程溜めが必要とする。自身に物理障壁を張り攻撃中に受ける敵からの攻撃を無効かする。往復からの体の軸を使って振り下ろす攻撃をするソードスキル。秘奥義のため通常のソードスキルとは一味違う威力を保有する。

 

 

 




何か書いて欲しいものやリクエストがありましたらお教えくださいませ


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HF編 第76話〈レイン体調を崩す!?〉

連日投稿
ポケモン映画はもう見たかな?
私は今度観に行きまーす。
今から楽しみで仕方無いです。

今回はオリジナル回です。

それではどうぞ


俺たちはそれぞれ〈ホロウ・エリア〉の攻略と階層攻略を交互に行い昨日、俺は階層攻略を、レインはリズと一緒にフィリアから貰った鉱石や素材等を使い熟練度上げに向上していた。

そして今。

 

「レイン、起きてるか?」

 

「ママ、起きてますか?」

 

「・・・・・・・」

 

俺は扉の前でレインに声をかけていた。

理由は少し時を遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう」

 

俺は目覚めると着替え下に降りて朝食に向かった。

 

「おはようございます、パパ」

 

「おはよう、ユイ」

 

「おはよう、キリト君」

 

「おはよう、アスナ。・・・・・あれアスナ、レインは?」

 

「レインちゃん?そう言えばレインちゃんいない気が・・・・」

 

「ママなら部屋でまだ寝てましたよ」

 

「え。そうなの?」

 

「はい。私が起こそうとしても中々起きないので疲れてると思ってそのまま寝ています」

 

「んー・・・・・・珍しいな、レインが起きないなんて」

 

「確かに・・・・何時も早く起きていたのにね」

 

「ちょっと様子を見てくるよ」

 

「パパ、私も行きます」

 

俺とユイはレインとユイの生活している部屋に向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今

 

部屋の前についた俺とユイは廊下から呼び掛けた。

 

「レイン、起きてるか?」

 

「ママ、起きてますか?」

 

「・・・・・・・」

 

だが部屋からは無言が帰ってくる。

 

「レイン、入るぞ」

 

俺は扉のノブを回しユイと一緒に部屋に入った。

 

「あれ、レイン?いないのか?」

 

中には誰もいなかった。

 

「パパ、ママがいません」

 

「あ、ああ。どこ行ったんだ」

 

俺は一応部屋の中を探してみることにしてユイと手分けをして探した。

そしてすぐに見つかった。

 

「れ、レイン!」

 

「ま、ママ!」

 

レインはベットの脇。扉からの死角になっているところに倒れていた。

 

「だ、大丈夫かレイン・・・・・熱っ!」

 

俺はレインに近づきおでこに触れた。

レインの体温は異様に高く熱が出ている感じだった。

 

「まさか熱か!?」

 

「え!?熱ですか」

 

「ああ。ここまで熱いとなると熱以外考えにくいんだが・・・・・・そもそもSAOの中で熱ってなるのか?」

 

「一応プレイヤーには色々な状態異常がありますが熱と言うのは基本なりにくいものなんです」

 

「だよな。兎に角レインをベットに寝かせないと」

 

「お手伝いします、パパ!」

 

「それじゃユイは、タオルと氷水を持ってきてくれ。エギルに事情を話せば大丈夫なはずだ!」

 

「はい!わかりました!」

 

ユイは元気よく返事をすると部屋から出ていき下に向かった。

俺はベットにレインを横たわらせた。

すると。

 

「うっ・・・・・・・うーん・・・・・」

 

「大丈夫かレイン」

 

「うう・・・・・・キリト・・・・くん・・・・?」

 

「ああ。とりあえずレイン、聞くけどどうしてベットの脇で倒れていたんだ?」

 

「ええっと・・・・・たしか・・・私・・・・ベットから降りて下に行こうとしたら目が回って・・・・・・そこから先が思い出せないよ」

 

「なるほどな。レイン取り敢えず今日一日安静にしてろ」

 

「え?どうして?」

 

「今のお前は熱があるみたいなんだよ」

 

「熱?ここで?」

 

「ああ」

 

「そう・・・・なんだ」

 

「大丈夫か」

 

「うん・・・・・・意識がはっきりとしないけど・・・・・なんとか」

 

「そうか」

 

俺がレインと会話していると、

 

「パパ、タオルと氷水を持ってきました!」

 

「ありがとうユイ」

 

ユイはタオルと氷水の入ったボウルをテーブルに置くとこっちにやって来た。

 

「ママは・・・・大丈夫ですか?」

 

「うん。・・・・・・大丈夫だよ・・・・・ユイちゃん。心配かけちゃってごめんね」

 

「大丈夫ですママ。ママは一日でも早く元気になってください!」

 

「うん」

 

俺はユイが持ってきたタオルを氷水の入ったボウルに着け、水を絞ってタオルを額に乗せた。

SAOの中でこれが効くかどうかわからないが取り敢えずやっといて損はないだろうと、俺は考えた。

 

「よし、っと。気分悪くないか?」

 

「うん。大丈夫だよキリトくん」

 

「そうか。・・・・・・・・ユイ、レインの事見といてくれないか?俺は下のアスナたちに話してくる」

 

「はい!わかりました」

 

俺はレインの看病を一旦ユイに任せ、アスナたちに話すため下に降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言う訳で今日レインは1日部屋から出られないんだ」

 

「・・・・・・・レインちゃんが熱なんて・・・・・」

 

下に降りると全員揃っておりレインの熱の事を説明した。

 

「うん。昨日は元気だったのに」

 

「驚きました。キリトさんレインさんは大丈夫なんですか?」

 

「ああ、今のところ大丈夫だ」

 

「そうですか」

 

「て言うかよ、SAOの中で熱なんてかかるのか?」

 

「ああ、ユイに聞いてみたら一応あるみたいだが滅多になることはないらしい」

 

「ふーん。それじゃあよレインちゃんが熱なのはシステムのバグってことか?」

 

「うーん・・・・・・いや、どうなんだろうな。もしそうならレインと同じようなプレイヤーがいるはずだ。だがそんなの聞いたことないってことは・・・・・」

 

「疲れが出たのかも知れませんね」

 

「ああ。ランの言う通りだと俺は思う」

 

「とりあえずレインちゃんのお世話はキリト君お願いできる?」

 

「ああ、初めからそのつもりだ」

 

「必要な物があったらメッセージを送って。ユウキとランさんはリーザちゃん、ラム君、リーファちゃんとシリカちゃんと一緒に迷宮区の攻略に」

 

「オッケー」

 

「はい」

 

「了解」

 

「はい」

 

「お願いします」

 

「が、頑張ります」

 

「シノのんは私とレベリングね」

 

「お願いするわ」

 

「リズは・・・・・」

 

「アタシは店にいるわ」

 

「了解よ。それじゃエギルさん、キリトくんたちのことお願いします」

 

「おう、任しとけ」

 

アスナは今日の予定をてきぱきと指示しみんなそれぞれ店から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エギルから暇潰しの本等を貰った俺はユイとレインのいる部屋に戻った。

 

「ユイ、レインはどうだ?」

 

俺は部屋の中に入ってベットの脇の椅子に座っているユイに声をかけた。

 

「ぐっすりと眠っちゃってます」

 

「そうか」

 

俺はユイとは反対側に椅子を置きそこに腰掛け、ウインドウを表示させアイテムストレージから、ユイと俺の飲み物とエギルから貰った本を取り出した。

眠っているレインの寝顔は安らかで疲れていたのであろうぐっすりと眠っていた。

俺はレインの頭を軽く撫でた。

俺が頭を軽く撫でるとレインの寝顔は笑顔を浮かべ安堵した表情になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レインはお昼を過ぎても眠ったままだった。

俺とユイはエギルが持ってきてくれた昼食を部屋で食べレインの様子を見た。

室内には俺の本のページを捲る音が響く。

 

「ユイ?」

 

俺は真正面の椅子に腰掛けるユイを見た。

ユイは途中途中眠たそうにしていた。

 

「あっ、危な!」

 

俺はユイがそのまま眠りに落ち椅子から落ちるのを未然にギリギリ防ぐことが出来た。

俺はユイをソファーに横たわらせストレージから毛布をだしかけた。

ベットに寝かせても良かったのだが、ユイにまで熱が移ってはいけないため仕方なくソファーで寝かせることにした。

ユイが眠ってしまったため俺は一人でレインの様子を見ることにした。

時々タオルを新しくしたりして、読書をしていた。

やがて。

 

「ううん・・・・」

 

「レイン?」

 

「ん・・・・・キリトくん。今・・・・・・何時かな・・・・?」

 

「今午後3時を過ぎた辺りかな」

 

俺がそう言うとレインは上体を起こした。

 

「そんなに寝てたんだ」

 

「ああ、よく寝ていたぞ」

 

「あれ、ユイちゃんは?」

 

「ユイなら、ほらそこで」

 

俺はソファーの方に視線を向けた。

ソファーではユイが可愛らしい寝顔を浮かべて眠っていた。

 

「ふふ。ぐっすり寝てるね」

 

「ほんとだな。まるでさっきのレインみたいだ」

 

「え、私そんなに寝てた?」

 

「まあな。それよりお昼食べるか?」

 

「う、うん」

 

俺はエギルが昼食た一緒に持ってきてくれたお粥をよそいレインの口元に持っていった。

 

「はいレイン、あーん」

 

「あ、あーん」

 

「どうだ?」

 

「・ ・・うん。美味しいよ」

 

「そりゃよかった。後でエギルにお礼言っとかないとな」

 

「そうだね」

 

俺はそのままレインがお粥を食べる手伝いをした。

レインは朝ごはんも食べてないためかお粥を全て食べきった。

 

「ごちそうさまでした」

 

俺はお粥の入っていた器をテーブルに置きレインを見た。

 

「アスナちゃんたちは?」

 

「アスナはシノンのレベリングでユウキたちが迷宮区の攻略に行ってるよ。そろそろ帰ってくるんじゃないかな?」

 

俺がそう言うとちょうど帰ってきたみたいで下から少し声が聞こえてきた。

 

「ふふっ。ほんとだね」

 

「レインちょっといいか?」

 

「うん、いいよ」

 

俺はレインの顔に自分の顔を近づけキスが出来る程の至近距離にいた。

 

「き、キリトくん」

 

「うーんと・・・・・おっ、熱は少し下がってきたか」

 

俺はおでことおでこを介してレインの体温を測った。

 

「き、キリトくん」

 

「ん?」

 

俺は目の前のレインの顔が赤くなっていることに気がついた。

 

「うわっ、えっと、これは、体温を測るためにだな」

 

「う、うん。分かってるよ」

 

俺は自身の顔がレインと同じように赤くなっていることに気づいた。

 

「え、えーと、その・・・・・」

 

「・・・・・・・・///」

 

沈黙が俺とレインの間を走る。

 

「キリトくん」

 

レインは目をつぶり俺に顔を見せてきた。

 

「レイン」

 

俺も目をつぶりレインの口と自身の口を合わせた。

今回のキスは互いに舌を絡ませた。

キスをした時間は1分程だろう。

互いの唇が離れると唾液の糸が少し垂れた。

 

「え、えっと。もう少し寝るね」

 

「お、おう。ゆっくり休んでくれ」

 

「うん」

 

レインは上体を横たわらせ再び眠りの世界に誘った。

俺はレインとのキスに顔を赤くしながら再び読書をした。

レインとユイは夕飯時に起きた。

エギルとアスナが俺たち3人の夕飯を持ってきてくれてため部屋で夕飯を食べた。

夕飯を食べると一人ずつレインのお見舞いが来た。

一人なのはレインへの配慮だ感じた。

アスナが最後に見舞いに来ると今日の攻略の報告をアスナ経由から送られたメッセージで確認した。

お風呂はレインはユイと一緒に入り俺は一人で入った。

就寝時にはユイはレインのベットで一緒に寝てしまった。俺はユイをまたソファーで寝かせようと思ったが二人の寝顔を見て止めることにした。俺は深夜12時を過ぎると昼、ユイが寝ていたソファーで寝ることにした。寝る前に俺は目覚ましを何時もより早く設定し眠りに入った。




リクエスト等ありましたらお教えください。


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HF編 第77話〈現れた最凶〉

「ん?・・・・・・・なっ、あ、彼奴らは!?」

 

レインとフィリアとともに〈ホロウ・エリア〉『バスティアゲート浮遊遺跡エリア』を探索している最中、俺は1つのプレイヤー集団を見つけた。

 

「キリトくん?」

 

「キリト?」

 

レインとフィリアが俺を見て聞いてくる。

 

「二人ともあの集団」

 

「え・・・・・・・あ、あれは!」

 

「あのときの!」

 

「ああ・・・・・・・・・危険だが跡をつけてみよう」

 

「わかった」

 

「了解」

 

俺たちはフードを被ったプレイヤーたちを尾行した。

気付かれないように距離は保ちながら、時々俺は索敵スキルを活用して跡をつける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浮遊遺跡エリア 思い人の手を引いた隧道

 

「彼奴らこんなとこで何をしてるんだ?」

 

俺たちはフードを被ったプレイヤー集団を追いかけて『思い人の手を引いた隧道』へとやって来ていた。

 

「さあ?」

 

「ん。誰かいる」

 

俺は索敵スキルで確認したことを二人に伝えた。

 

「片付けてきましたぜぇ、ヘッド」

 

俺たちは少し離れた場所からフードを被ったプレイヤーを見た。

 

「ヘッド?・・・・・・・何処かで」

 

「どうしたのキリトくん」

 

「あ、いや、ヘッドって呼ばれているプレイヤー、なんか聞いたことある気がしてな。・・・・・・いや、まさかな」

 

俺たちは再び壁端から覗いた。

奥からは声が聞こえてきた。

 

「遅ぇじゃねぇか。何手間取ってやがったんだぁ?」

 

「いやー、案外手強かったんスよ」

 

「言い訳はいいんだよぉ!」

 

俺とレインは奥から聞こえてきた声と姿に体を強張らせた。

 

"なっ。あ、あれはまさか・・・・・・"

 

"うそ。そ、そんな・・・・・"

 

「次はしっかりやれよぉ?」

 

俺とレインはその声の正体に確信を持った。

 

"間違いない・・・・・アイツは"

 

"もう間違いないよ。・・・・・あの人は"

 

"アイツは・・・・・・Pohだ!"

 

"あの人は・・・・Poh!"

 

俺とレインは互いの顔を見合って頷いた。

 

"Poh・・・・・・オレンジギルド《ラフィン・コフィン》のリーダー・・・・・何故アイツがここにいる!"

 

「それでNEXT・TARGETは・・・・・・んん?」

 

"ま、まずい!気づかれたか・・・・・・・"

 

「・・・・・・ふぅん?」

 

「なんかあったんスか、ヘッド?」

 

「・・・・・いいや、何でもねぇ」

 

"危なかった、気付かれてないみたいだな"

 

「少し場所を変えるぞ。ここは人が来るかもしれん」

 

「ういッス」

 

"・・・・・・・"

 

"・・・・・・・"

 

俺たちはPohたち《ラフィン・コフィン》の面々の足音が聞こえなくなるまで動かずじっとしていた。

足音が聞こえなくなると俺たちは息を吐いた。

 

「行ったか。しかし《ラフィン・コフィン》がどうしてここに」

 

「わからないよ。・・・・・・・でもおかしいよ、《ラフィン・コフィン》はあのとき壊滅したはずだよ」

 

「ああ。だがリーダーのPohは捕まえられなかった。まさか・・・・・・・こちらに潜伏していたのか。あの時からずっと」

 

「そんな・・・・・・。もしあの人たちがこっちで手に入れたアイテムやスキルで戦力を増強でもしていたら・・・・・・」

 

「ああ・・・・・・かなりまずい」

 

「取り敢えず管理区に戻ろう」

 

「ああ、そうした方が良い。フィリアすまないがすぐに管理区に帰るぞ」

 

「え、う、うん」

 

俺たちは今日の攻略を急遽取り止め管理区に戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

管理区

 

俺たちは緊急の為転移結晶を使用して戻った。

以前ホロウ・エリアのあちこちにある転移碑を通らずとも転移結晶を使用すれば管理区に戻れることは既に試しており実証済みだ。

今までは転移碑を使ってきたが今は緊急の為転移結晶を使用して帰ってきた。

管理区に戻ってきた俺とレインはフィリアにさっきの集団の事を説明した。

 

「そんな・・・・・・あれが《ラフィン・コフィン》なの」

 

「ああ。アインクラッドで彼奴らは沢山のプレイヤー・・・・・・人を殺した。理由は単純に快楽を求めるためだけに・・・・・」

 

「彼らの殺したプレイヤーの数は、今まで殺されたプレイヤーの7割に該当するよ。つまり百数十人彼らは殺してるんだ」

 

「そんなに・・・・・」

 

「そのリーダーがPoh・・・・・・さっきフードを被ったプレイヤーに指示を出していた奴だ」

 

「Poh・・・・・・そいつらがここに」

 

「ああ・・・・・・・。もう一年くらい前になるか・・・・・。奴ら《ラフィン・コフィン》は一年前に壊滅した。理由は俺とレイン。攻略組で大規模な討伐隊が組まれたからだ。討伐時間は深夜と決まった。だが・・・・・・・」

 

「でも、討伐当日の情報が何処からか漏れていて私たちは奇襲の筈が逆に不意をつかれた」

 

「その討伐隊には俺やレイン。アスナ、ユウキ、ラン、クラインも参加した。・・・・・戦いは到底戦闘と呼べるものじゃなかった。双方・・・・多大な犠牲者がでた。まさに地獄だよ。俺たちは大きな犠牲を払ってアイツら・・・・《ラフィン・コフィン》を壊滅したんだ。・・・・・なのに、どうしてアイツらがここに・・・・!」

 

 

「・・・・・・・・」

 

フィリアは固唾を呑んで俺とレインの話を聞く。

 

「アイツらは平気でプレイヤーを・・・・・・人を殺す!そんなの許される筈がない・・・・・・!」

 

「キリトくん・・・・・・」

 

レインがそっと俺の右手を優しく包み込んだ。

 

「大丈夫だよキリトくん。一人で抱え込もうとしないで」

 

「ああ、すまないなレイン」

 

「うん♪」

 

「兎に角フィリア。もしまたアイツらを見たらすぐに逃げろ。一対一、ならフィリアでも大丈夫だろう・・・・だがアイツらは姑息な手を多用に使ってくる。集団戦、待ち伏せ、不意討ちなど・・・。気を付けてくれ」

 

「う、うん。わかったわ」

 

フィリアは緊張した趣で頷いた。

その日はそのまま攻略はせず俺とレインはアークソフィアに、フィリアは自分の拠点としているところに帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アークソフィア

 

アークソフィアに帰ってきた俺とレインはすぐさまエギルの店に行き2階の俺の部屋に来ていた。

 

「くそっ・・・・・・・・・なんでPohがいるんだ」

 

俺は部屋に着くとレインが淹れてくれた紅茶を飲み言った。

今この部屋は俺とレインの二人しかいない上に防音も完備されているため外に声が洩れる事はない。

 

「また・・・・あの時と同じことが起こるの?」

 

「わからない・・・・・・だが、幹部のジョニー・ブラックとザザは黒鉄宮にいる。流石のPohもあの二人ほどの実力者を見つけることは無理だろう」

 

Pohを除き殺しに焚けていたのは幹部のジョニー・ブラックと赤目のザザの二人だ。

事実その二人はPohの側近としてかなりの数のプレイヤーを殺している。《ラフィン・コフィン》でもその三人は別格だったのだ。

その二人がいない今、脅威なのはPohただ一人だけだろう。たがレッドプレイヤーは死を恐れない。事実あの討伐戦では殺すことに躊躇した俺たち攻略組はそれにより十数人死んでしまったのだから。

 

「・・・・・・・アスナちゃんたちに話した方がいいよね・・・・」

 

「ああ。一応俺たちと一緒に行くのだから大丈夫だとは思うが・・・・・・問題は」

 

「フィリアちゃん・・・・・・だよね」

 

「ああ、フィリアは何故か此方に来ないし常にホロウ・エリアにいるからな。途中でPohと鉢合せする可能性がある」

 

「大丈夫かなフィリアちゃん」

 

「万が一でも管理区に行けば安全だろう。彼処は今のところ俺とレイン、フィリアしか入れないみたいだし」

 

「そうだね・・・・」

 

「定期的に連絡のやり取りをすれば大丈夫だろう」

 

「うん」

 

俺とレインはその夜アスナたちにホロウ・エリアにいたPohの事を伝えた。

リーファとシノンは頭に疑問符を浮かべていたがレインとラン、アスナの説明で理解したようだ。

ホロウ・エリアに行くには俺とレインと一緒でなければならないがそれでも十分に準備をしておくには構わないだろう。

アスナから『気を付けてね』と言われ俺とレインはすぐさま頷いた。

そのあと、俺は自室に戻りスキルとアイテムを確認し眠りに落ちた。だがそのとき俺はまだこれから起こる事に気付いてなかった。



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HF編 第78話〈エリアボス、刃竜ゾーディアス〉

遅くなりごめんなさい!
前回の投稿から約1週間も立っていました。
次回は早く投稿出来るようにします。


浮遊遺跡エリア バステアゲート遺跡塔・外壁

 

「うわぁ~~。高いねここ」

 

「そうだな。て言うかあまり端っこに行くなよレイン。落ちてもしらないぞ」

 

「大丈夫だよ~」

 

「やれやれ」

 

「もしかして呆れられてる?」

 

 

今、俺たちがいる場所は『バステアゲート遺跡塔・外壁』だ。

約8日前、Poh率いる〈ラフィン・コフィン〉の残党を見つけた後、俺たちは彼らを警戒しながら橋の封印を解くためのアイテムを探していた。

その2日後、『隠れ潜んだ宝物庫』の大部屋にて『飛竜の王玉』を白銀の宝箱から入手出来た。『隠れ潜んだ宝物庫』は何故かミミックが多くフィリアのスキルがなければ無理だったかもしれない。

更にその2日後には第79層のボス攻略戦が行われた。

第78層を攻略したのが5日前なので攻略速度が早いことがわかる。

第79層のフロアボスの名は《ザ・トライテンペスト》3つの首を持つ銀色の蛇が相手だった。

このボスは攻撃範囲が広く攻撃を避けるのが大変だった。何故なら麻痺や毒に一定の確率でなるブレスや、360度全範囲を尻尾で凪ぎ払う攻撃、3つの頭で噛みつく攻撃があったからだ。

特に厄介だったのが状態異常になるブレス攻撃だ。

毒は結晶や解毒POTを使えば回復するが麻痺は時間経過で回復するしかないからだ。

そして今回、新たにユニークスキルが出現した。

ユニークホルダーはアスナ、スキル名は≪神速≫。そのスキルを使用したアスナは、自身の二つ名である《閃光》のように素早くボスを翻弄し刺突、斬撃を繰り出し切り刻んで行った。

最後はアスナの目覚めたばかりのユニークスキル。≪神速≫のソードスキルによって撃破された。

第80層に上がると色々とハプニングがあったがそれはまた後日。

そして昨日、浮遊遺跡エリアの『竜の巣』にて『飛竜の王玉』を使用し奥に進むとそこにはNM《ターミネートドラゴン》がいた。俺、レイン、フィリア、ユウキ、リーザの5人は《ターミネートドラゴン》と戦闘し辛くも勝利した。ドロップアイテムからは『「貴重品」竜王の証』を獲得し、それがあの封印を解くためのキーアイテムだと判明すると俺たちは翌日封印を解除し塔の探索を行うことにした。

そして今日。今日のパーティーは俺、レイン、フィリアの3人だ。

封印を解除した俺たちは『バステアゲート遺跡塔』の探索を開始し3時間後、今に至る。

 

 

 

「この上にあのドラゴンがいるのね」

 

フィリアが塔の外壁を見て言った。

 

「恐らくな」

 

「それじゃあ、少し休憩してあのボスを倒しに行っちゃお」

 

「レインはなんか何時も以上に元気ね」

 

「あははは・・・・・・フィリアも落ちるなよ」

 

「わかってるわ」

 

俺たちはその場で小休憩しあのドラゴンへと対峙しに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バステアゲート遺跡塔・頂上

 

「ついた~」

 

「ちょっと長かったわね。この螺旋階段」

 

「あはは。まあ、景色が良くて良かったじゃないか」

 

「それもそうね」

 

「・・・さてと」

 

俺たちは頂上に着くと階段から円型の屋上に入った。

その時。

 

「ギャアアアアアア!!」

 

上空からドラゴンの声がしてきた。

天を見ると、封印された橋で見たドラゴンがいた。

 

「遂に会えたな・・・・・・レイン、フィリア戦闘準備!」

 

「「了解!」」

 

俺たちはそれぞれ双剣と短剣を抜刀し構えた。

すると宙に樹海エリアの時と同じシステムウインドウが表示された。

 

 

 

 

ホロウ・ミッション 浮遊遺跡エリアボス討伐

 

場所:バステアゲート遺跡塔 外壁

 

クエスト名:空を統べる王者の剣

 

討伐ボス:刃竜ゾーディアス

 

 

 

 

 

今俺たちの目の前にいるボスドラゴンの名前はBOSS"Zordiath Tha Blade Dragon"と表示される。

HPゲージは3段だ。

 

「よし!戦闘開始だ!」

 

「「了解!」」

 

俺たちはホロウ・エリアでの2体目のボスを討伐戦を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギャアアアアアア!」

 

「はあっ!」

 

俺は初手として腰に差してあるピックを3本抜き取り宙にいるゾーディアスの眼と羽を狙って投擲スキル《シングルシュート》を発動させた。

だが。

 

「ギャアアアア!!」

 

俺の放ったピックはゾーディアスの風により当たらず地面に落ちた。

 

「くそっ。やっぱ投擲じゃムリか」

 

「ああも動き回られてたら《サウザンド・レイン》を使っても当たらないかも」

 

俺たちはゾーディアスに迫りながら会話している。

ゾーディアスの速さは樹海エリアボス、シャドウファンタズムより少し劣るが高機動型で空を縦横無尽に駆け巡るため攻撃が与えずらい。

 

「ギャアアアアアア!」

 

「二人とも回避!」

 

「「!」」

 

空に上がり突進してきたゾーディアスの攻撃を俺たちは左右に別れて避ける。

 

「ぜあっ!」

 

俺はすれ違い様に右の剣でゾーディアスの羽を切りつける。

 

「ギャアアアア!」

 

「固い!流石ドラゴンと言うことか」

 

俺の攻撃は羽を掠め鱗の一部分を切りつけた。

 

「・・・・・・手っ取り早くアイツを地に堕とした方がいいか?」

 

「いやいや、キリト。そんなの出来たら苦労しないって」

 

俺の考えを冷静にフィリアが答える。

 

「ギャアアアア!」

 

ゾーディアスは尾の刃で攻撃を仕掛けて来た。

 

「はああっ!」

 

俺はゾーディアスの攻撃を左右の剣でいなし弾く。

 

「今だ!」

 

「やあああああっ!」

 

「せえええええぃ!」

 

左右からレインとフィリアがソードスキルを放つ。

レインは≪多刀流≫ソードスキル《ローディエント・ルージュ》6連撃範囲技をフィリアは短剣ソードスキル《シャドウ・ステッチ》7連撃を放つ。

更にレインの放った《ローディエント・ルージュ》の追加効果でゾーディアスのHPゲージに素早さ低下のデバフアイコンが現れた。

この攻撃によりゾーディアスは全体の1割ほどHPゲージが減った。

 

「ギャアアアア!」

 

ゾーディアスは悲鳴を上げ再び高く舞おうとした。

が。

 

「予想通りだ!ぜあああああっ!」

 

俺は片手剣上位ソードスキル《ハウリング・オクターブ》8連撃を繰り出した。

背中に俺のソードスキルを喰らい、ゾーディアスは地に倒れ付した。

そして、その隙を逃す俺たち3人じゃない。

 

「せりゃああああ!」

 

ゾーディアスが地に倒れ付したところをレインが片手剣上位ソードスキル《エヴァーティング・ストライク》7連撃で攻撃。

それに続いてフィリアが短剣上位ソードスキル《インフィニット》5連撃を放つ。

フィリアの《インフィニット》が終わるとゾーディアスは羽を広げ空に浮こうとする。

 

「はあああああっ!」

 

そしてそこに丁度技後硬直から回復した俺の片手剣上位ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》単発重攻撃が命中する。

 

「ガッアアアア!!」

 

ゾーディアスは苦しい悲鳴を上げ宙に飛んだ。

 

「ふぅ~。今ので全体の3割は削れたか」

 

俺はゾーディアスのHPゲージを見てそう呟いた。

ゾーディアスのHPゲージは3段あるゲージの3段目を残り1割程度までに減らしていた。

 

「やっぱり空を翔んでいる相手ってのはキツいね」

 

隣のレインがそう言ってきた。

 

「ああ。どうにかして落とせたらいいんだが・・・・・・」

 

「ん~。出来るかなアレ?」

 

「アレ?」

 

「うん。まあ~、レインちゃんにおまかせあれ!」

 

「そうか。じゃあ、頼むぞ」

 

「オッケー」

 

俺は繰り出されてきたゾーディアスの攻撃が避ける。

ゾーディアスの尾の刃の攻撃は片手剣ソードスキルと似たような感じの攻撃のため何とか避け、ダメージを与える事が出来た。

戦闘開始から約1時間後、ゾーディアスのHPゲージが全体の半分をきった。

すると。

 

「ギャアアアア!ガッアアアア!!」

 

ゾーディアスは体に紫色の怪しげなオーラをあちこちに纏い雄叫びを上げる。

 

「あれは・・・・・」

 

フィリアが攻撃を止めゾーディアスを見上げる。

 

「恐らく樹海エリアのボスと同じじゃないか?HPゲージが半分になったら封印が解かれるとか」

 

「なるほどね。ってことは攻撃力や素早さが高いと見て良いのかしら?」

 

「そう考えるのが妥当だろうな。・・・・・・・来るぞ!」

 

「ギャアアアア!」

 

ゾーディアスがこちらに向かって突進攻撃を仕掛けてきた。

 

「!?」

 

「は、速い!?」

 

俺たち間一髪でゾーディアスの攻撃を避けた。

ゾーディアスの速さは先程より速くなっていた。

 

「!くっ!」

 

更に追い撃ちをかけるかのように尾の刃で俺を切り裂いてこようとしてきた。

瞬時に俺は双剣を構えてガードした。

 

「今だ!キリトくん、暫く耐えて!」

 

「わかった!!」

 

「キリト手伝うわ!」

 

「頼む!」

 

俺の手伝いにフィリアが短剣を構えてゾーディアスを攻撃する。

その隙にレインはゾーディアスに近よりその背に飛び乗った。

 

「な、なにを!?」

 

「どうするつもりだレイン」

 

俺とフィリアはレインの行動がわからず疑問符を頭に浮かべる。

 

「とりゃあああ!」

 

レインはゾーディアスの背に飛び乗ると更にジャンプをし高く舞い上がった。

そのままレインは双剣を広げ構えた。

 

「あの、モーションは・・・・・なるほど、そう言うことか。フィリア、後ろに下がれ!」

 

俺はレインのやることが分かりすぐに立ち退いた。

 

「わ、わかった!」

 

俺とフィリアが立ち退くと直後、上空から。

 

「行くよ!!やあああああっ!・・・・・・・《サウザンド・レイン》!!」

 

レインの声とともに蒼い輝きを放ちライトエフェクトを纏わせながらゾーディアスの全体に数多の剣が降り注いできた。

 

「ギャアアアア!ギャアアアア!」

 

ゾーディアスは降り注ぐ剣を避けようとするが逃げ場所はなく体に次々と剣が貫かれる。

その光景に俺とフィリアは。

 

「・・・・・・予想していたとは、いえこれは・・・・・・・」

 

「・・・・・・ちょっと無茶しすぎじゃ」

 

唖然とするしかなかった。

剣の雨にゾーディアスは次々と貫かれHPゲージは残り1段にまで減っていく。

だが、HPの減少は微々と減っていく。

しばらくして剣雨が止むとゾーディアスは体を地についていた。

ゾーディアスの羽はボロボロに切り裂かれており浮いてはいるが速くは動けそうにはないようだ。

 

「やった!って、キャアアアアアアアア・・・・・・・・」

 

「よっと」

 

俺は空から攻撃を終え落ちてきたレインをお姫様抱っこで受け止めた。

 

「全く、無茶しすぎだよレイン」

 

「ごめん」

 

「だけど今は目の前の敵に集中するぞ」

 

「わかってるよ♪」

 

「じゃあ、行くぞ!」

 

「うん!」

 

俺たちは剣を構え攻撃を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果的にはレインの攻撃のお陰で攻撃はしやすくなったがゾーディアスは突風攻撃やブレス、刃での攻撃を仕掛けてきた。

特に厄介だったのが突風だった。

ブレスはかわして、刃の攻撃は避けたり、パリィ、ソードスキルによる相殺で対処出来た。

だが、突風はゾーディアスの両翼による攻撃で近づいても弾き飛ばされたりして近づくことが難しかった。

だが途中でこれによる対処も出来たので攻撃出来た。

そして戦闘開始から約2時間も過ぎ、ゾーディアスのHPは残り1割にまで落ちていた。

 

「ガッアアアア!ギャアアアア!」

 

ゾーディアスは突風た刃の攻撃を掛け合わせたりしてくるが隙が大きいため着実にHPを削っていった。

 

「ぜあああああっ!」

 

≪二刀流≫ソードスキル《ローカス・ヘクセドラ》7連撃の追加効果によりゾーディアスのHPゲージに麻痺のアイコンが表示される。

既にゲージには、速度低下、防御低下、攻撃力低下のデバフアイコンが輝いている。

 

「ガッアアアア!!」

 

ゾーディアスは麻痺により動けずにいた。

 

「これで決める!」

 

「行くよ、キリトくん!」

 

「ああ!」

 

俺とレインがそれぞれ言うといきなり視界にシステムウインドウが現れた。

 

「「!!??」」

 

表示されたウインドウには。

 

 

 

ユニークスキル≪シンクロ≫解放

 

 

≪シンクロ≫スキル及びソードスキル解放 使用可能

 

使用可能ソードスキル

 

《クロス・グレイブ》2連撃

 

《スターダスト・ロンド》10連撃

 

使用可能スキル

 

《共鳴(レゾナンス)》

 

 

 

 

 

と書かれてあった。

 

「ユニークスキル・・・・・」

 

「≪シンクロ≫」

 

「「これが」」

 

「俺たちの・・・・・」

 

「私たちの・・・・・」

 

「「新しい能力!」」

 

俺とレインは互いの顔を見て頷きウインドウに表示されている、≪シンクロ≫をスキルスロットにセットした。

 

「フィリア、後は任せろ」

 

「フィリアちゃん、後は任せて」

 

「えっ?う、うん」

 

フィリアは頷くと俺とレインの後ろに移動してきた。

 

「行くぞレイン!」

 

「うん、キリトくん!」

 

そして俺とレインは互いの手握り同時に言う。

 

「「共鳴(レゾナンス)!!!」」

 

俺とレインは双剣を構え直しゾーディアスへと向かって走っていく。

 

「「ハアアアアアアっ!《スターダスト・ロンド》!!」」

 

瞬時に距離を詰めた俺とレインは早速≪シンクロ≫ソードスキル《スターダスト・ロンド》10連撃を放った。

 

「ギャアアアアアア!!」

 

ゾーディアスは俺とレインに攻撃してくるが、狙いが定まらず掠りもしない。

俺とレインは双剣で切り裂き、舞い踊るかのようにしてゾーディアスを斬りつけていった。

ゾーディアスのHPゲージは残り5%ほど俺とレインはもう1つのソードスキルを使った。

 

「「《クロス・・・・・・・・グレイブ》!!」」

 

≪シンクロ≫ソードスキル《クロス・グレイブ》2連撃を放つ。

俺とレインの一撃によりゾーディアスは体に×みたいな傷をつけられ動きを止めた。

ゾーディアスのHPゲージは0へとなり、ポリゴンへと爆散していった。

後にはポリゴンの中に佇む俺とレインの姿があった。




本当は《サウザンド・レイン》を放ったあと《ヴォーパル・ストライク》で貫こうかなと思ったんですがなんか変だなと思い止めました。
感想などお待ちしてます


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HF編 第79話〈迫り来る闇〉

「やった!またボスを撃破したね」

 

ボス、刃竜ゾーディアスが消え去りこの場に仄かに暖かい風が吹き抜けて来た。

俺とレインは双剣を鞘にしまい後ろのフィリアに顔を向けた。

 

「ああ、手強かったな・・・・」

 

「ほんとだよ~流石にもうあれは勘弁してほしいな~」

 

「いや、レイン。お前のあれは流石にヒヤッ、てしたからな。向こうに帰ったらちょっとお説教な」

 

「ええ~。勘弁してキリト君」

 

「あはは。わたしは傷だらけ・・・・・ってこの世界なら傷は残らないか」

 

フィリアは自身を見てそう言った。

 

「まあね。でも疲れるよ~」

 

「そりゃ、そうだろう」

 

「それじゃあ、管理区に戻ろうか」

 

「・・・・・いや、ちょっと待ってくれ」

 

「どうしたの?」

 

「アイツらがいないとも限らないからな、ちょっとを見てくる。レイン、フィリアを頼むぞ」

 

「うん」

 

俺はレインに一旦まかせ少し離れ辺りを見た。

 

「どうだった?」

 

戻ってきた俺にフィリアが聞いてくる。

 

「今回は誰もいないみたいだな。だが・・・・・油断は出来ない。アイツらがここにいるなら尚更な・・・・・」

 

「そうだね・・・・・」

 

「じゃあ、帰ろう」

 

俺たちは近くの転移碑をアクティベートし管理区に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

管理区

 

~フィリアside~

 

「それじゃあ、またな」

 

「ダスヴィダーニャ、フィリアちゃん」

 

「うん。またね」

 

わたしは管理区にある転移門を通じてホロウ・エリアからアインクラッドに戻る二人を見送った。

 

「・・・・・・行っちゃった、か。やっぱりキリトとレインは・・・・・向こうの人なのか」

 

わたしは誰もいない管理区でそう独り言を口にした。

だが。

 

「よくわかってるじゃねぇか」

 

わたししかいないはずの管理区に声がした。

その声はわたしの独り言に答えた。

 

「!!!誰っ!?」

 

わたしは腰の『ソードブレイカー・リノベイト』抜き、声のした方に突きつけた。

 

「おっと、危ねぇ。そんなモン突きつけるなよ。怖くて膝がブルッちまうじゃねぇ」

 

声のしたところには一人の男がいた。

 

「どうやってここに・・・・・」

 

わたしは短剣を突き付けたまま聞いた。

 

「そんな事はどうだっていいだろう?世の中、不思議な事だらけだしなぁ」

 

「お前は・・・・・・キリトとレインが言っていた・・・・・《ラフィン・コフィン》の・・・・・・!」

 

「おーおー、俺らも有名になったな。こっちの世界でも知られているとは」

 

「Poh・・・・・・・。わたしを殺しに来たの?そう簡単にやられると思って・・・・・」

 

「おーいおいおい、まぁ落ち着けよ。別にお前ぇ殺しに来たわけじゃねぇ」

 

わたしはPohが殺しに来た訳じゃないと判断し短剣を腰の鞘にしまった。何故なら、もし本当に殺しに来ているのだとするならばこうして会話をしないだろうからだ。

だが、わたしはもしもの時のため短剣が取りやすいようにした。

 

「・・・・・じゃあ、何の用」

 

「そんな怖ぇ顔するなよ。同じオレンジ同士だろぉ?」

 

「・・・・・・だったらなんだって言うの?」

 

「オレンジ、オレンジ、オレンジ、オレンジ。肩身の狭いオレンジ同士。仲良くやろうぜ」

 

「ハッ、よく言う・・・・・」

 

「知ってるぜ、俺はお前が何をしたか」

 

「それは・・・・・・、どういう意味?」

 

「言えないよなぁ・・・・・・言えないよなぁ・・・・・・あのビーターと紅にはよぉ」

 

「ビーターに紅・・・・・?キリトとレインのこと?キリトとレインに何かしたら・・・・・」

 

「おお怖い怖い。別に何もしねぇよ。・・・・・今はまだな」

 

「・・・・・・」

 

「まあ今日は帰るわ。でも、俺たち話が合うと思うぜ、オレンジ同士。あんな、ヒーロー気取りのヤローたちよりはな」

 

「・・・・・・ようが無いなら消えろ」

 

「OK、わかったわかった」

 

Pohはそのまま素直に転移門に歩いて行った。

だが途中で止まり、背を向けたまま。

 

「・・・・・お前ぇ・・・・・・あの二人と一緒にいたら死ぬぜ・・・・・」

 

「ちょっとそれどういう意味!?」

 

「おお~怖い怖い。じゃあ、帰るぜ。また来るからよぉ」

 

Pohはそのまま何も言わずに転移門から何処かに転移して消えた。

 

「・・・・・・・キリトとレインといると・・・・・わたしが死ぬ・・・・・?」

 

わたしはPohの言った意味が分からずその場に立ち尽くした。

 

~フィリアside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アークソフィア 自室

 

「それでレイン、何か言いたいことはある?」

 

「ごめんなさい」

 

俺は先程のボス戦で危険な事をしたレインに軽くお説教をしていた。

 

「ふぅ~・・・・・・まあ、反省しているならいいよ。それに、レインのお陰で倒せたんだからな」

 

「うん」

 

「でもなレイン。あれ、やるならやるで、今度から教えてくれよ。そうじゃないと心配するから」

 

「うん。分かった」

 

俺はレインが淹れてくれた紅茶を一口のみ喉を潤わせた。

 

「さて。問題はこれなんだが・・・・・」

 

「うん・・・・・」

 

俺とレインは可視化にしたウインドウを表示させスキルメニューを見た。

 

「あの時は無我夢中で使ったが。≪シンクロ≫・・・・・・か」

 

「ユニークスキルって表示されてあったからこの≪シンクロ≫もユニークスキルだと思うよ」

 

「まあ、そうだろうな。て言うかなんだよこのユニークスキル。俺たちの≪二刀流≫や≪多刀流≫も十分チートだが・・・・・」

 

「これは・・・・・・チート、って問題じゃないね」

 

「ああ。これ補正がヤバいだろう」

 

「技後硬直の短縮にステータス上昇補正、経験値補正、≪シンクロ≫ソードスキルの威力2.5倍補正。だって」

 

「しかもなんだよこれ、『互いの思いに比例してスキル値が変動』って」

 

「完全にゲームバランス崩壊してるね」

 

「・・・・・ヒースクリフのこと言えるような状況じゃないなこれは」

 

「うーん。でもヒースクリフさんはGM権限を使用していたから」

 

「あー、うーん、まあ、そうなんだがな」

 

「ははっ・・・・全くもう、キリト君は。・・・・・・ところでこのスキルどうするの?アスナちゃんたちに言う?」

 

「あー、どうするかな。しばらくは言わないでおこう」

 

「そうした方が言いかもね」

 

「すまないな、レイン」

 

「ううん、大丈夫だよ。元々私もまだ言わない方がいいかな、って思ってたから」

 

「そうか。ところでこのアイテムってなんだ?」

 

俺はストレージからゾーディアスを討伐した際にドロップしたアイテムをオブジェクト化させた。

 

「ん~。なんだろう?ゾーディアス戦でのドロップアイテム?」

 

「多分・・・・・そうだと思う」

 

そのアイテムは手の平サイズのメダリオンだった。

 

「あれ?でもこれ、なんか前に見たような・・・・・・・あっ!」

 

レインは何か思い出したかのようにアイテムストレージを表示させしばらくの間操作し一つのアイテムをオブジェクト化した。

 

「キリト君、これ!同じじゃない?」

 

レインが取り出したのは以前《サンクチュリア》と言うNMと戦闘の際にレインが入手したドロップアイテムだ。

 

「ほんとだな、よく見るとこれと同じところが幾つかあるな」

 

二つのメダリオンはほぼ同じだが、大きく違うのは表側でレインが入手したメダリオンには星が描かれているが、俺が今回入手したメダリオンに描かれてあったのは星ではなく交差した双剣が描かれていた。

 

「これもまた「貴重品」みたいだな。えーと、アイテム名は『「貴重品」剣創の星欄』か」

 

「この二つのメダリオンって、向こうに関係するアイテムなのかな?」

 

レインが二つのメダリオンを持って聞いてきた。

 

「どうだろうな。まだなんとも言えないな」

 

「そうだね」

 

俺とレインはそれぞれメダリオンをしまい紅茶のお代わり飲んだ。

その時、俺とレインはホロウ・エリアで起こっている闇に気が付かなかった。

そしてこの闇がフィリアにも迫っていることを・・・・・



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HF編 第80話〈この世界での楽しみ〉

昼、俺が外から戻るとレインを含めた女子全員が集まり話し合いをしているのが見えた。

近付いてみるとどうやらアインクラッドについて話してるらしい。

 

「どうしたんだ、みんな集まって?」

 

「あ、キリトくん。お帰りなさい。買いたいものは買えたの?」

 

「ああ。色々と買えたよ。ところで、レインたちは何話してるんだ?アインクラッドについて話してるのは聞こえたが」

 

「ああ・・・・・。リーファちゃんとシノンちゃんにこの世界の事を話していたんだよ。特に食べ物関係を、ね」

 

「へぇ。なるほどな」

 

「で、アインクラッドで食べたものは脂肪にならないというわけよ」

 

「ふうん・・・・・それでいくら食べても太らないと・・・・」

 

「ダイエットにはもってこいだよね」

 

「そうですね~」

 

「ほんとに食べ物関係だけなんだな・・・・・」

 

「あはは・・・・・・」

 

俺が少々呆れたように言うとレインが苦笑いで応じた。

 

「キリトさん、食べ物もこの世界での楽しみの一つですよ」

 

「そうだよ、キリトくん。食べ物はこの世界数少ない楽しみのひとつなんだから」

 

ランとリーファがそれぞれ言う。

 

「まぁ。確かにな」

 

「キリトくんも美味しい食べ物があると嬉しいでしょ」

 

「まぁな」

 

「それに私も、私が作った料理をキリトくんに食べてもらえると嬉しいしね」

 

レインは頬を赤くし照れながら言った。

 

「うっ。レイン、それは恥ずかしいから止めて」

 

「わ、私も恥ずかしいんだからね・・・・」

 

俺とレインはそのまま顔を赤くして互いを見つめ合う。

 

「はあ~。まーた、始まったわ」

 

リズが呆れたように手を額に当てて嘆いた。

 

「やれやれ」

 

「毎度毎度飽きないわね~」

 

「そうだね~」

 

「あはは・・・・」

 

「見ているこっちが恥ずかしくなるわね」

 

「ですね」

 

リズに同意するようにラン、アスナ、ユウキ、シリカ、シノン、リーファが言った。

 

「あのみなさん。話がずれてますけど」

 

リーザが落ち着いてそう言った。

よく見るとラムも落ち着いているようだった。

まあ、リーザとラムもよく人前でイチャイチャしてからな。と俺は思った。

 

「まあ、下の層に行けばもっと色々な食材が集まったんだけどね」

 

「そうですね。でも、上層にも色々な食材がありますから」

 

レインの言葉にランが引き継ぐ。

 

「へぇー。そうなんですか。それじゃあ上に行く度新しい食べ物が食べれるってことですね」

 

「まあ・・・・・・。リーファちゃんの言うとおりだと思うけど」

 

「あ、でも下の層にも行ってみたかったな~」

 

「仕方無いよ。75層から下には転移できないんだから」

 

「そうですねぇ。あ~あ、下の層を見てみたかったな~」

 

「ん?リーファ、下の層に行ったらどうするつもりだったんだ?」

 

「そりゃキリト君。決まってるじゃん。あちこち風景を見たりするんだよ」

 

「へえ。そうなのか」

 

「ちょっと待って!。それじゃああたしが食べ物だけを楽しみにしているように聞こえるんだけど!?」

 

「違うのか?」

 

「違うの?」

 

リーファの言葉に俺とレインが同時に聞き返した。

 

「ちょっと~。キリトくんとレインさんハモらないで下さいよ。違いますから!」

 

「あははっ。ごめんリーファちゃん」

 

「もお~」

 

リーファは頬を膨らませて軽く怒っているように見せていた。

 

「にしても、下の層か~・・・・・・・・いいところもいっぱいあったわね~」

 

リズが懐かしいように目を細めて言う。

 

「そうですね。キリトさんとレインさんと一緒に行った47層は一面お花だらけのフロアでしたから・・・・・」

 

シリカは膝で体を丸くして寝ているピナの頭を撫でながら言った。

 

「ああ。フローリアか」

 

「あそこは、結構綺麗な場所だったよね~」

 

「そうだったな。あそこでアスナたちとお花見もしたっけ」

 

「そう言えばそうだったね」

 

「また行きたいですね~」

 

「えっ!?ええっ!?そ、それじゃ行きましょうか!!」

 

「いや、姉ちゃん、シリカ。今、行けないでしょうが」

 

「ああ・・・・・そうでした・・・・・・うぅ・・・・・後は第61層何かも綺麗ですよね」

 

「セルムブルクの事ね。私の家があった場所」

 

「第61層は全面湖に囲まれたところでしたからね」

 

「そうそう。夕陽が湖の水に反射して綺麗だったよね!」

 

「俺とレインが住んでいた50層のアルゲードも結構良いところだぞ」

 

「エギルさんの店もあったね」

 

「えー。アルゲードって楽しみが無いじゃん。治安も何か悪そうだし」

 

「まあ、道に迷いそうな場所だったからね」

 

アスナがリズの言葉に肯定して返す。

 

「あとはアタシの店があったところもいい場所よ」

 

リズは腰に手を当て言った。

 

「リンダース、だね」

 

「確かにあそこは自然豊かのフロアだったからな」

 

レインと俺がリズの言葉を引き継ぎ語る。

すると、聞いていたシノンが。

 

「・・・・・・・・気になっていたけど治安が悪いって言っても街の中は安全だって、前に言ってなかった?」

 

思い出したかのように訪ねてきた。

 

「まあ、そうなんだけどね。街の中は『アンチクリミナルコード有効圏内』通称『圏内』って言って……他のプレイヤーを傷つけたりはシステム的には不可能なんだけどね……それでも抜け道があったりするんだよ」

 

「例えばどんなのですか?」

 

「そうねぇ。まずは寝ている人の手を勝手に動かしてアイテムのトレードをしたり・・・・・」

 

「寝ている人に、完全決着デュエルを申し込んで殺す人もいるね」

 

「他には、圏外に回廊結晶をセットして寝ている人を圏内から圏外に出して殺す、って言うのも昔PKの間で行われました」

 

リーファの問いにはアスナ、ユウキ、ランが答えていった。

 

「・・・・なるほどね。人間やることはどれもこれ同じってことね」

 

「でも、まあそんなことするのは一部のプレイヤーだけよ。ここにいる人たちはそんなことするはずないでしょ」

 

「・・・・・まあ、ね」

 

「ですね」

 

シノンとリーファは安堵し納得言ったように、リズの言葉に頷いた。

 

「・・・・・・・・・」

 

「どうしたのキリトくん?」

 

「あ、いや。・・・・・・2年間もSAOの中に閉じ込められてるとさ、ここでの生活になれてしまったな。って感じてさ」

 

「そうだね・・・・・・・でも、私たちはこの世界をクリアして現実世界に帰らないとね」

 

「ああ。クリアしないとレインとの約束も果たせないしな」

 

「そうだね」

 

俺とレインはテーブルの下で手を繋ぎクリアを改めて決意する。

俺とレインが話していると。

 

「それじゃあ、今度二人に料理を教える、ってことで良いわね」

 

アスナがそう言っているのが聞こえてきた。

 

「さんせ~い」

 

「良いですね。幸いにもここには料理スキルをカンストしている人が沢山いますし」

 

「ですね。それに、私も参加したいです」

 

「あ、それじゃあアタシも」

 

「うふふ。いいわよ。レインちゃんもいいかな?」

 

「え。う、うん。私は構わないよ」

 

「それじゃあお願いするわね」

 

こうして後日料理教室が開かれることとなった。

俺はこの光景に、ずっと続けばいいな、と思った。



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HF編 第81話 〈80層到達記念パーティー〉

遅くなりごめんなさい。
今回は80層到達記念パーティーです。
ゲームとは違いストレアとアルゴも参加します。



これは、第79層のボス攻略が終わり、第80層、カーリアナからの記憶。

 

 

 

 

「おう、キリト。この層のアクティベート、済ませてきたぜ」

 

第80層、カーリアナの転移門に行っていたエギルが帰ってきた。

 

「お疲れ、エギル。ふう・・・・・・・ようやく80層に到着か・・・・・」

 

「10の桁が上がると節目って感じがするね」

 

「ああ。これからは更に難易度が上がって・・・・・・」

 

隣にいるレインと会話していると、不意に。

 

ドッゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!

 

「きゃっ!!」

 

「なんだ!?」

 

「なに!?」

 

「こ、この揺れは?」

 

「うわぁ!?」

 

「じ、地震か?」

 

いきなりの揺れに俺たちは驚いたが、しばらくすると揺れは収まった。

 

「・・・・・・ビックリした~。アインクラッドで地震なんて初めてじゃないかな?」

 

レインが驚いたようにそう言う。

 

「確かに記憶にはねえな・・・・・・。昔のMMOじゃあ地殻変動イベントとかあったけどな」

 

「へぇ、そうなんですね」

 

「ああ。こういうイベントを、切っ掛けに新しいマップやエリア等が解放されたりするんだよ」

 

「そうなんだ~」

 

「にしても、いきなりの地震とは・・・・・何か新しいイベントでも始まるのか?」

 

「さぁな。でも、ちょっとら期待しちまうな」

 

「まあな」

 

「ただまあ、底意地の悪い改変じゃなきゃいいが」

 

「そうだな・・・・・」

 

「そうだね・・・・・」

 

俺たちはクラインの言葉に頷く事しか出来なかった。

これ以上、悪く改変されたりするとこちらとしても面倒だからだ。

 

「ところで、二人は何時まで抱き合ってるんだ?」

 

クラインが俺とレインを見てそう言う。

よく見ると、クラインだけでなくアスナたちもこちらを見ていた。

 

「!!・・・・・////」

 

「!!・・・・・////」

 

俺とレインは慌てて少し離れた。

抱き合っていたのはレインを地震の揺れから守るためなのだが、俺は顔を赤くしてそれを言い出せなかった。

 

「はあ~。責めて場所をわきまえてね二人とも」

 

アスナが少々呆れたように、そう俺とレインに言った。

 

「あ、ああ」

 

「う、うん」

 

俺とレインは顔を赤くしながらアスナの言葉に答えた。

その光景にアスナたちは、やれやれと言った感じで、クラインは血涙でもするぐらいの顔をしていた。

唯一、エギルは俺たちの保護者らしく苦笑いを浮かべクラインを宥めていた。

 

「にしても、結局ログアウト出来ねぇままここまで来ちまったな」

 

元に戻ったクラインが第80層の街並みを見渡してそう言った。

 

「ああ・・・・・やっぱりこのまま第100層を目指すしか無いみたいだ」

 

「今のペースから考えたら、第100層到達もそんなに遠くはないと思うよ」

 

「確かに。初めの頃に比べるとすごくハイペースだよ」

 

血盟騎士団副団長のアスナが昔を思い返したかのようにそう言った。

 

「そりゃ、こんだけ攻略をこなしてりゃ要領も良くなってくるってもんだよ」

 

「でも、そうやって慣れた頃が一番危なかったりするんだよ」

 

「そうですね。残り20層も気を付けて攻略していきましょう」

 

「そうだな。機を引き締めて行こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アークソフィア エギルの店

 

第80層についたその日の夜、俺たちはエギルの店でパーティーをすることにしていた。

 

「これで全員揃ったか?」

 

クラインが席に着いた俺たちを見てそう言う。

 

「んじゃ。そろそろ80層到達パーティーを始めたいと思います。思い起こせば二年前……俺はこのゲームで一流のプレイヤーになろうと……」

 

クラインが自分の思いを熱弁に語ろうとする。

だが。

 

「あんたの話なんかどうでもいいからさっさと乾杯しなさいよ」

 

リズがめんどくさそうに言い中断させた。

 

「ひでぇ!まだ話のさわりも語ってないってのによ!まあいいか・・・・・」

 

クラインは語るのを諦めると飲み物の入ったグラスを持ち。

 

「それじゃみんな、かんぱーい!」

 

乾杯の音頭をとった。

 

「「「「「「「「「「「「「かんぱーい!!」」」」」」」」」」」」」

 

クラインの音頭に続いて、俺たちは手に持ったグラスを軽く合わせた。グラスのぶつかる音が周囲を奏でる。

 

「よお、キリト、ラム。80層到達おめでとうさん!」

 

俺はこのメンバーの中で数少ない男プレイヤーであるラムと会話しているとクラインがやって来た。

ちなみにレインとリーザはアスナたちと、料理を食べながら楽しく談笑している。

 

「ああ、おめでとう、クライン」

 

「おめでとうございます、クライン」

 

「キリト。オマエと会ってから二年・・・・・今もこうして一緒にいられるなんて感慨深いじゃねーか!なあ?」

 

「まあ、お互い無事で何よりだよ」

 

「これからもよろしく頼むぜ、相棒!もちろんラムもだぜ!」

 

「ええ、こちらこそよろしくお願いします。クライン」

 

「ああ。残りの20層もさっさとクリアしちまおうぜ!」

 

「おう!」

 

「はい!」

 

ラムとクラインと男同士仲良く会話していると。

 

「キーリト!楽しんでる?」

 

「リズ。ああ、しっかりと楽しんでるよ。料理も旨いしな」

 

「そりゃそうでしょ。なんたってウチの所の女子はほぼ全員料理スキルコンプリート、しちゃってるんだもの」

 

「そう言えばそうだったな」

 

「ち、な、み~に、そこにあるのは一流シェフのレイン様が直々に作っている料理よ」

 

「これレインが作ったのか!そりゃ美味いはずだ!」

 

「当然でしょうが!」

 

「こんなうまいもんをお前は毎日食えてんのか!この幸せモノ!」

 

「で、あれがリーザの作った料理であれはアスナでしょ。そしてあれがユウキで、あそこにあるのがランが作ったものよ」

 

リズはテーブルに置いてある料理を一つずつ誰が作ったのか教えてくれた。

 

「これ、リーザが作ったんだ。毎日食べてますけど美味しいです」

 

ラムがリーザの作った料理を食べそう口に出した。

 

「くそ~っ!ここにもいたぜ!」

 

クラインは悔しそうに言いながらもちゃっかりと料理は食べていた。

 

「まあ、確かに毎日食べてるかな」

 

「確かにほぼ毎日、リーザの手料理を食べてますね」

 

「こうなったら、今日ぐらいは俺が全部平らげてやる!」

 

「おっと!そうはいくか!」

 

「そうはいきません!」

 

俺とラムはクラインと一緒に食い意地を張った勝負を勃発していた。

その様子にリズは。

 

「なにやってんだか・・・・・」

 

呆れたように俺たちを見ていた。

すると、エギルが料理を持ってやって来た。

 

「おいキリト。こっちの料理も食べてみてくれないか?」

 

「ん?なんだエギル、なんか作ったのか?」

 

「ああ、美味いもんを用意したぜ。期待してくれていいぞ」

 

「おお!これはピザか!?」

 

俺はエギルの持ってきた料理、ピザを見て興奮した。

 

「まあ、この世界に存在する素材で作ったものだからな・・・・・ピザの味が再現出来ているかは各自の判断に任せる」

 

「おいおい・・・・・」

 

「だが、まあ、レインやアスナに手伝ってもらったから美味しさにおいては間違いないだろう」

 

「なら、安心かな。よーし、それじゃ早速いただくとするか」

 

俺はピザに向かって手を伸ばした。すると。

 

「おっと待ってくれ」

 

エギルがストップをかけてきた。

 

「ん?」

 

「実はな・・・・・余興も含めてひとつ趣向を凝らしてみた」

 

「どう言うことだ?」

 

「この中の三切れに、激辛が混ぜてある」

 

「・・・・・は?」

 

「・・・・・え?」

 

「なに・・・・?」

 

エギルの言葉に俺、ラム、クラインは動きを止めた。

そして、エギルの言葉の意味を理解すると。

 

「はあ?なんだって!?」

 

ついすっとんきょうな声をあげてしまった。

 

「味見はしてないから、どの程度の辛さかはわからんが、まあ《圏内》だからな。死ぬことはねえだろう」

 

「大丈夫か、それ・・・・・・」

 

エギルの言葉に俺は少し心配してしまった。

 

「へえ、楽しそうじゃねーか。誰が激辛ピザを食べちまうかやってみようぜ!」

 

クラインは興味深そうにそう提案した。

 

「どれだけ辛いんだろう・・・・・」

 

「うん・・・・・・ちょっと怖いかも・・・・・」

 

リーファとシリカが不安げにそう呟く。

 

「作るところ見てたけど、ハンパない量のからみパウダーをまぶしてたわよ・・・・・」

 

「うん・・・・・さすがにあれは、と思うけど・・・・・・」

 

「何で止めなかったのよ・・・・・」

 

「その、すごく楽しそうだったんですよ・・・・・」

 

「確かに楽しそうにまぶしてたね」

 

「運試しと思えばいいのよ!むしろ当たればラッキーくらいの気持ちでね!」

 

「いや、全然ラッキーじゃないだろ、それ・・・・・」

 

「むしろ、ロシアンルーレットかと・・・・・」

 

「ラッキーか・・・・・・それならよ、激辛を食べたやつは、誰でも好きなやつに好きなことを命令していいとか、どうだ?」

 

クラインが思い付いたように提案してきた。

 

「アンタ、いつもそう言う遊びばっか考えてそうね」

 

「おいおい!別にやましいことを考えてるわけじゃねーぜ!誤解すんなよ!」

 

「んなこと、いわれても・・・・・・」

 

「おいしいもん作ってもらうとか、レアアイテム探しを手伝ってもらうとかいろいろあんだろ!」

 

「それなら、一緒に買い物に付き合ってもらうとかも?」

 

クラインの言葉にリーファが目を輝かせて続けて言った。

 

「そうか、そういうのもありか・・・・・・」

 

シリカが1人小声で呟いたが聞こえなかった。

 

「え~と、ピザは15ピースだから・・・・・」

 

「確率は5分の1、ですね」

 

「参加する人は誰ですか?」

 

「当然オレは参加だな!」

 

「あ、あたしもです!」

 

「うーん・・・・・・あたしも!」

 

「んじゃあ、あたしもー」

 

「はいはーい!わたしも参加するよー!」

 

「オレっちも気になるから参加させてもらうゼ」

 

「私もやってみようかな」

 

「気になるので私も参加します」

 

「僕も参加するよ!」

 

「どれ程辛いのか気になるので俺も参加しますよ」

 

「私もやります!」

 

「わたしも挑戦してみるよ」

 

「もちろん私も参加するよ~!」

 

「わたしもやってみます!」

 

「え!?ユイちゃんも参加するの!?」

 

「大丈夫だってレイン。ユイは辛いもの好物だもんな!」

 

「えーと・・・・・・はい!パパの言う通りです!」

 

「で、でも確か前、ユイちゃんがキリトくんと同じように辛いもの食べたときすごく渋い顔をしていたような気がするけど・・・・・」

 

「俺も参加させてもらうぞ。どれ程の辛さか確かめたい」

 

「大盛況で何よりだ。さあ、誰が激辛を食べてぶっ倒れてくれるかな」

 

「うーし、それじゃみんな、自分の食べる分を決めるぞ」

 

今回食べるメンバーは、俺、レイン、ユイ、アスナ、ユウキ、ラン、ラム、リーザ、リーファ、シノン、リズ、シリカ、アルゴ、ストレア、クラインだ。

みんなそれぞれ、自分の食べるピザを選んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「準備はいいみたいだな・・・・・みんな、いっせーので食うぞ。激辛が当たれば誰かに好きなことをしてもらえる・・・・・いいな・・・・・それじゃいくぞ!いっせーの!」

 

「あーんっ!!」

 

「はむ!」

 

「んむ・・・・・」

 

「あむっ!!」

 

「あんっ!」

 

「・・・・・」

 

「ふむふむ・・・・・」

 

「あーんっ!と・・・・・・」

 

「んん・・・・・・」

 

「ふむっ・・・・・・」

 

「ん・・・・・・」

 

「はむ・・・・・もぐもぐ・・・・・」

 

「もぐもぐ・・・・・」

 

「んむ・・・・・もぐもぐ・・・・・・」

 

クラインから順にリーファ、アスナ、シリカ、リズ、ユウキ、ラン、アルゴ、ストレア、リーザ、ラム、シノン、レイン、ユイ、俺がそれぞれ手に持ったピザを食べた。

すると。

 

「む!?ぐ!?んんんん!!」

 

クラインが目を見開いてなにかを我慢しているように見せた。

だが。

 

「か、かれえええええぇぇっ!!」

 

我慢できなかったようだ。

 

「んがあああ!!か、辛すぎる!おい、これ限度ってもんが!ああああ!!」

 

「だ、大丈夫か・・・・・?」

 

「やばい!頭痛がしてきた!!キリト!!水っ、水くれ!」

 

「あ、ああ!ちょっと待っててくれ」

 

俺は慌ててコップに水を注ぎにいった。

 

「ああああ!いってえぇ!舌が痛えよぉ!!」

 

「ははははは!!いいリアクションだぞ、クライン」

 

クラインがのたうち回っている姿にエギルは爆笑していた。

 

「エギル~!お前なんてもの作りやがった!」

 

「クライン、ほら、水だ」

 

俺は水を注いできたコップをクラインに渡した。

 

「す、すまねえ。・・・・・んぐっ、んぐっ、んぐっ!」

 

「ど、どんだけ辛かったんだ・・・・・」

 

俺はクラインが勢いよく水を飲む姿を見て疑問に思った。

 

「ふ、ふうー。はあ、はあ、はあ・・・・・」

 

クラインは水を飲み、疲れたように荒い息をしていた。

 

「ちょ、ちょっと残念って思ったけど、やっぱり当たらなくて良かったかも・・・・・・」

 

「そ、そうだね・・・・・」

 

「うん・・・・・・危なかった・・・・」

 

「うう・・・・・ひでえ目に遭ったぜ・・・・・・・だが、当たりは俺様よ。ここからが本番だからな!ふはははは!さーて、誰に何をしてもらっちゃおうかなー!」

 

クラインの、まるで悪役やどこかの変質者のようなセリフを聞き、女子たちは・・・・。

 

「ひょっとして・・・・・・あたしたち、すごいピンチなんじゃ・・・・・」

 

「だ、大丈夫よ・・・・・人並みの良識はあるはずよ・・・・たぶん」

 

「た、たぶんってアスナちゃん・・・・」

 

ちょっと。というよりはかなり引いていた。

 

「ん~~~~どーすっかなぁ~!!ねえ、お嬢さん方?」

 

クラインの言葉に俺はラムにそっと近づき。

 

「ラム、万が一の時には・・・・・」

 

「分かってます、キリト。万が一の時にはクラインを・・・・・」

 

「ああ・・・・・」

 

そっと作戦会議をした。

すると。

 

「・・・・・何言ってるの?アンタもう、お願い事聞いてもらったじゃない、キリトに」

 

シノンがクラインにそう言った。

 

「・・・・・・・へ?」

 

「だって、アンタ今さっき、水。キリトからもらったでしょ?それでもう終わったじゃない」

 

「お、おいおいおい!!あれは違うだろ!!」

 

「そ、そうですね。確かにあれは、キリトさんに対するお願い事でした!」

 

「そうよね、さっきので終わりよね」

 

「うん、お願い事聞いてもらっていたからね」

 

「え?おい、ちょっと、なんだよ、この流れ・・・・・」

 

「よかったわね。キリトにお願い聞いてもらえて」

 

「そりゃねえだろうよー!激辛食っただけで損じゃねえか。おい、キリト、お前もなんか言えよ」

 

クラインが俺の方をむいてそう言ってきた。

俺とラムは瞬時に目配せし。

 

「いやー、クラインに水を渡す命令がちゃんと遂行できてよかったよ」

 

「おおおあー!お前もか!」

 

「そうですね。よかったです、キリトがクラインに水を渡すことが出来て」

 

「ラムまでかよ!」

 

「下心ありありの態度を見せるからこうなるんだよ・・・・・」

 

「そこまでやましいことしようだなんて別に考えてなかったのによぉ・・・・・」

 

「お前がそう思っても、周りのみんなはそう思ってくれてなかったんだな・・・・まあ、若干二名は違うことに心配だったみたいだかな」

 

エギルが最後の言葉を、俺とラムを見て言う。

 

「可哀想な俺!!」

 

クラインは落胆したようにそう言った。

 

「ん?ところであと二枚はどうした?」

 

俺は気になって周りに聞いた。

 

「そう言えば・・・・・」

 

「一枚はクラインの食べたやつで、残りの二枚は・・・・」

 

「あ、あれ、姉ちゃん?大丈夫?」

 

ユウキが隣で微動だにしないランを見て聞く。

その少し離れたところでは。

 

「リーザ?大丈夫かリーザ?」

 

ラムがランと同じように微動だにしないリーザに聞いていた。

すると。

 

「「・・・・・・・・」」

 

ドサッ!

 

「ね、姉ちゃん!?」

 

「り、リーザ!?」

 

ランとリーザの二人が床に倒れた。

二人の近くのテーブルには食べかけのピザが・・・・・。

 

「ま、まさか、残りの二枚を食べたのって・・・・・」

 

俺の単語にその場が停滞したようにシーンとなった。

そしてリーザとランを抱えているラムとユウキを見た。

 

「い、急いで二人を部屋に運べーーー!!!」

 

「ユウキ、急いでランさんを運ぶよ!」

 

「助かるよアスナ」

 

「ラムくん、急いでリーザちゃんを運ぼう!」

 

「お願いします、レイン」

 

二人がかりでランとリーザをそれぞれ部屋に寝かせた。

残りは、パーティーの後片付けに翻弄した。

やがて、レインとアスナが降りてきた。

 

「レイン、アスナ。ランとリーザは?」

 

「今、ランちゃんはユウキちゃんに、リーザちゃんはラムくんが見てるよ」

 

「二人とも慌ててたけど今は落ち着いているわ」

 

「そうか、よかった」

 

その後パーティーはお開きとなり、俺はランとリーザの部屋に様子を見に、レインはユイを連れて自室に戻っていった。

リーザはラムと一晩一緒にいることで願いは達成し、ランはどうやら昔みたいに俺とユウキに看病してもらいたかったらしくそれを叶え、完了した。

後日ランから聞くと、本当ならリーファも含めた3人に看病してもらいたかったらしい。




感想などありましたら送って下さいませ。


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HF編 第82話 〈新たなるエリア、グレスリーフの入り江エリア〉

後半はタイトルと全く違う内容です。
ご了承下さい。

次回はもっと早くかけるようにします。


「今度は海・・・・か」

 

「海だね」

 

「海ね」

 

「海ですね」

 

「海だ」

 

俺たちは目の前に広がる光景に口を揃えて言う。

今俺たちは新たに開放されたエリア、『グレスリーフの入り江エリア』の最初のエリア。『グレスリーフの砂浜』にいる。『砂浜』とかかれている通りこのエリアは大半が海で占められ白い砂浜が見える。

今回のパーティーメンバーは俺、レイン、フィリア、ラム、リーザの5人だ。

 

「このエリアの名前は『グレスリーフの入り江』か」

 

「まんまなのね・・・・・・」

 

俺の言葉にフィリアが冷静につっこんだ。

 

「んん~。潮風が当たって気持ちいね~」

 

「そうですね、でも髪がベトベトにならないか心配です」

 

レインは楽しそうに言い、リーザは髪の毛を押さえて言う。

 

「さすがにゲームの中だからそれは大丈夫だと思うけどリーザ?」

 

「ラム、そう言う問題じゃないんですよ。気分の問題です。ラムはもう少し女子の気持ちを考えた方が良いかもしれませんね」

 

「え・・・・・?」

 

「ラム、アークソフィアに戻ったらすぐに私の部屋に来てくださいね」

 

「え~と・・・・・・拒否権は・・・・・」

 

「ありませんよ」

 

「・・・・・・」

 

リーザの言葉にラムは言葉を失った感じでフリーズした。するとレインがリーザに声をかけた。

 

「何々リーザちゃん!ラムくんがどうかしたの?」

 

「いえ、ラムは女子の気持ちがわかってないなと思ったんですよ」

 

「なるほどね~・・・・・でも、それを言うならキリトくんもだと思うよ?」

 

レインの言葉に俺は何故か寒気がした。

フィリアが怪訝そうに俺を見て、フリーズしているラムをどうにかしている。

 

「・・・・確かに。キリトさんもラムと同じく女子の気持ちに気づきませんからね」

 

「そうだ!!リーザちゃん」

 

「なんでしょうか?」

 

「今度、私たちとデートしてみない?」

 

「デート・・・・・・なるほど、ダブルデートって事ですね」

 

「うん♪」

 

「良いですね!やりましょう!」

 

「やったー」

 

そう言うとレインとリーザの二人はこっちを見て。

 

「というわけで・・・・・キリトくん」

 

「ラム」

 

「「今度ダブルデートするよ(しますよ)」」

 

と言った。

それには流石にラムのフリーズも解けた。

 

「あ、ラムのフリーズが解けた」

 

と言うフィリアの声を聞きながら。

 

「レイン、それマジで?」

 

「リーザ、それほんとに?」

 

と同時に聞いた。

 

「「もちろん」」

 

二人は同時にうなずくと輝くような笑みをこちらに見せた。

これには流石の俺とラムも諦めるしかなかった。

 

「あの~。わたしを放置しないでくれる?」

 

「ご、ごめんフィリアちゃん。それじゃあ攻略を始めちゃおう!」

 

「「おーう!」」

 

「「了解」」

 

レインの言葉に女子と男子の声の差があったのは気にしないでほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アークソフィア

 

ホロウ・エリアの新しいエリア『グレスリーフの入り江』を探索した俺たちは、魚や両生類の敵が多い中なんなく攻略していったが、途中海水により進めないところや、壊せない岩があり難航したがレベルアップをしたりして今日の攻略は終了した。

こちらに戻る際フィリアがどこか心あらずと言う感じだったが聞かないでおいた。

アークソフィアに戻ってきた俺たちは、ポーション等の補給やアイテム調達をしエギルの店に帰っていった。

エギルの店に戻るとクラインとアスナたちが話し合っている姿が見えた。

 

「お、キリト、いいところに来た」

 

「ん?どうした、何かようか?」

 

「今、シノンについて話をしてたんだけどよ。何か思い出したりはしてないか?なんなら知り合いのギルドに、シノンについての情報を集めるように頼んだりも出来るけどよ」

 

「ああ、シノンについてか。俺もみんなに話そうと思ってて・・・・・いいか、シノン?」

 

「ええ」

 

俺はシノンから了承をもらいこの間の夜聞いたことを話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

~Past side~

 

俺は寝付けなく風に当たりに行こうと思い外にでた。

外を歩いていると人気のないベンチにシノンが座っているのが見えた。

 

「どうしたんだ、こんな夜遅くに?」

 

俺は気になりシノンに近づき聞いた。

 

「ちょっと、ね・・・・・・・アンタ、こそこんな時間に何やってんのよ」

 

「いや、寝付けなくてさ。それで夜風に当たりつつ歩いているとシノンを見つけた訳だ」

 

「そう。なるほどね・・・・・・」

 

「寝付けないのかシノン?」

 

「ちょっと・・・・・悪い夢をね・・・・・・・昔の夢・・・・」

 

「昔の夢?」

 

「そう・・・・・・忘れるなってことなのかしら……とにかく夢のおかげでだいぶ思い出したわ」

 

「・・・・・・・・よければ話してくれないか・・・・・?」

 

「・・・・いいわ・・・・・・・でも、驚かないでね・・・・・・私だって戸惑ってんだから・・・・・・・・」

 

シノンは背もたれに寄りかかりながら話した。

 

「私がこのゲーム、SAO・・・・・・・ソードアート・オンラインの事を知ったのはニュースの映像でよ。たくさんの死人が出ていること、首謀者の茅場明彦が捕まってないこと・・・・・」

 

「そうか・・・・・・・だが・・・・どうやってここの世界にシノンは来たんだ?」

 

「それはメデュキボイドのせいね」

 

「メデュキボイド?」

 

「ええ。医療用の機器よ」

 

「まさか、VRが医療に使われるなんて・・・・・・」

 

「続けるわね。私はカウンセリング系のテストだったんだけど・・・・・・・VRMMOはナントカ療法に良い効果ができそうだとか・・・・・・・それでSAOじゃない、もっと無難なVRMMOでアバター作成してカウンセラーを待ってたら急に足下が揺れて・・・・・あと、知っての通りよ」

 

「なるほどな・・・・・・でも、記憶は戻ったんだろ?」

 

「ええ、少しだけね・・・・・・けど、忘れていたかった記憶も思い出したから」

 

「・・・・・すまん」

 

「え?なんで、謝るの?」

 

「話したくない事も話させちゃったから」

 

「・・・・・そう・・・・・・でも私が、アンタたちと出会ったのも何かの運命だと思うわ」

 

「そう思ってくれるなら嬉しいよ」

 

「ええ」

 

「それに、シノンは絶対に死なせない。俺が守ってやる。だから安心しろ」

 

「・・・・・卑怯ね、アンタ。そうやって何時も女の子を口説いてるのね」

 

「ぶほっ!?く、口説くってあのな~」

 

「ふふ・・・・冗談よ」

 

「たっく・・・・・」

 

「・・・・・・すぅ~・・・・・・すぅ~」

 

「やれやれ・・・・・」

 

俺は俺の肩に寄りかかって眠ってしまったシノンを見てそう小さく呟いた。

 

「レインは寝てるだろうし・・・・・仕方ない」

 

俺はシノンを抱えると起こさないようにしてシノンの部屋に向かった。

だが、忘れていたことがあった。それは、俺ではシノンの部屋を開けられないということだ。

それを部屋の前で思いだし、仕方無くランを頼ることにした。

幸いにもまだランは起きており事情を説明して、シノンをランに任せたあと俺は自室に戻った。

何故ランに任せたかと言うと、この中で落ちついており長年の付き合いがあるからだ。

その代わりに今度昼を奢ることになったのだが・・・・・それはまた別の話。

 

~Pastside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・そう言うわけで、やっぱりシノンはSAOのプレイヤーではなかったことがわかった」

 

「いまだに信じられねぇな。SAOの外から来たって・・・・・」

 

「・・・・・・・すごい登場の仕方だったから、何か事情があるのかな、とは思ってたけど。凄いわね・・・・・・」

 

「空からいきなり落ちてきましたからね」

 

「カーディナルシステムへと負荷によりいくつか発生したエラーのひとつだと思います。ネットワーク上のナーヴギア端末を検出してSAOプレイヤーと誤認して、ここに呼び寄せたんだと思います」

 

「・・・・・な、なんだ?その、カーディナルシステムって?初耳だぞ?」

 

ユイの説明にクラインが困惑した表情をしながら聞く。

よく見ればエギル、シリカ、リズ、シノン、リーファが同じような表情をしていた。

 

「え?あ、そ、それは・・・・・」

 

「ヒースクリフさんがそう言っていたんだよ」

 

俺が口を濁らしているとレインが手助けをしてくれた。

 

「そ、そうそう。SAOの基幹プログラムがそんな名前だって」

 

「しかし、そいつは不運だったな。よりによって、こんなゲームに途中参加させられちまうなんてな」

 

「大丈夫だよ、シノのん!」

 

「そうですね!私たちは、絶対にこのゲームをクリアするつもりですから」

 

「うん!そうだよ!だから安心して」

 

「そうだな。とにかく、アスナたちの言う通りだ。俺たちは一刻も早くこのゲームをクリアしなくちゃならない」

 

「そうだね。もたもたしていると、また変なエラーのせいでシノンちゃんみたいにSAOに取り込まれる人が出るかもしれないしね」

 

「ああ。それに、もっとひどいことが起こらないとも限らないしな」

 

「ですね。だからシノンさんは、安心してこの街で待ってて・・・・・・・」

 

ランがシノンにそう言っていると、途中でシノンが話した。

 

「・・・・・・つまり、この世界をクリアしてしまえば全く問題ないのよね」

 

「え?そりゃ、そうだけど・・・・・どうして?」

 

「なら、私もこのゲームの攻略に加わる・・・・・いいかしら?」

 

「「「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」」

 

シノンの台詞に俺たちは息を飲んだ。

 

「ええっ、ちょ、ちょっと・・・・・!」

 

「おいおい、本気かよ」

 

「本気なのシノンちゃん!?」

 

「それは、幾らなんでも危険だよ」

 

「危険なことはわかってる。でも私、やりたいの。ここで膝を抱えて縮こまっていても何も解決しないもの。なら、私も立ち向かわなきゃ」

 

シノンはその瞳に確固たる決意を込めて言っている。

 

「・・・・・・私は、もっと強くなりたい。この困難なゲームをもクリアできるほどに、強く・・・・・・」

 

「で、でもシノンさんはSAOに来たばかりじゃないですか。アスナさんたちに練習させてもらっているとはいえ、レベルもスキルもこの階層で戦うには、辛くないですか?」

 

「いや・・・・んー。アスナ、そこんとこどうなんだ?」

 

「そうね。確かにステータスはまだ低いけど、シノのんは素質があるから」

 

「それって、更に鍛えたら私たちと同じく攻略組に入れるくらいの技量があるってこと?」

 

「そうなるわね」

 

「アスナがそう言うならなんとかなるだろう。よし!それなら俺も攻略の合間にシノンの訓練を手伝うぜ」

 

「あ、それなら私も手伝うよ」

 

「キリト・・・・」

 

「レインさん・・・・・・」

 

「・・・・・キリト君とレインちゃん、完全にゲーマーの目になってる・・・・・」

 

アスナたちが呆れた眼差しで俺とレインを見てくる。

 

「キリト君とアスナさんたちが言うからには、きっと才能があるんだよね、シノンさん」

 

「・・・・・シノのん、ほんとに大丈夫?」

 

「うん、大丈夫だから。あ・・・・・それに、キリトが私のこと守ってくれるって言ってたし」

 

"ミシッ"

 

シノンの台詞に周囲の温度が下がり時が止まった感じがした。

 

「えっ・・・・・・」

 

「ふううううううん」

 

何故か全員俺の方を見てきた。

 

「な、なんだよ・・・・・」

 

「キリト君って、ほんと、そういうこと、さらっと言っちゃうよね・・・・・」

 

「確かにそうですね」

 

「うんうん」

 

何故か全員納得しているなか俺の隣から寒気がした。

 

「!?」

 

横を見ると冷たい微笑を浮かべた姫・・・・・・もとい、レインがいた。

 

「れ、レイン?」

 

俺は恐る恐る声をかけると。

 

「なにかなキ・リ・ト・く・ん?」

 

焦点の合わない瞳で言ってきた。

周りのアスナたちは金縛りのように動けないみたいだった。

 

「あ、あの、ひょっとして怒ってらっしゃいますか?」

 

「別に怒ってないよ~キリトく~ん」

 

「ひっ!」

 

レインの周りに氷の膜があるように冷たい微笑を浮かべながら言ってきた。

まるで、ある本に出てくる、某魔法使いの〈氷の女王〉と言う感じだった。

正直ここまでレインが怒るのは第50層でクラディールが俺に悪口を言い、それに怒った時だろう・・・・・・・たぶん。

 

「・・・・・ま、まあ、キリトの発言はともかく本当に攻略組が増えるならあたしたちも心強いしね」

 

話題を逸らそうとリズがおどおどしながら言う。

 

「じゃ、じゃあ改めて、シノン。一緒に頑張ろーね」

 

「う、うん、キリトとレインもよろしくお願いね」

 

「お、おう!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

レインはシノンの台詞に無言で小さく頷いた。

 

「さあて、シノンちゃんの話も終わった事だし・・・・・・・キリトくん。ちょっとお話があるからね・・・・・」

 

「れ、レイン取り敢えず落ち着け。なにか変な誤解をしてなかいか?」

 

「え~誤解?そんなことないよ~」

 

「お、お落ち着けレイン、目が全然笑ってないから!」

 

「そんなことないよ~~。それじゃあキリトくん、私の部屋に行こうか~」

 

「・・・・・・・・・はい」

 

俺はおとなしくレインに連れていかれることとなった。

上に連れていかれるときみんなの目が同情のような感じだったのが虚しかった。

そのあとかれこれ三時間ほどお話と言う名のお説教をもらった会話をした俺は、今日はレインと一緒に寝ることを余儀なくされ、レインと交わる事となった。




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HF編 第83話 〈尾行と気持ちそして料理〉

ヤッホー、みんなソーナだよ♪
この間ポケモンの映画 みんなの物語 
観に行って来ました!
感動した!やっぱりポケモンは面白いね♪
来年のポケモンの映画は多分ミュウツーが出てくるんじゃないかな?今から楽しみで仕方無いです!

それでは、本編へどうぞ♪


階層攻略とホロウ・エリア攻略を交互に行っていたある日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

転移門広場

 

"おっと!あれは、ストレアか?"

 

俺は転移門広場で見知った姿を見つけた。

 

"どこに行くつもりだろう・・・・・・ちょっと探りを入れてみるか。・・・・・・・それに、毎回付け回されている仕返しだ"

 

俺はレインと攻略に行くつもりだったのだが、肝心のレインは一回リズの店に行くみたいらしくこの場にはいない。

そのため、レインが来るまで時間を潰していたのだが、ストレアの姿を見つけ、気になったから追いかけることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

"まだ気付かれてないみたいだな"

 

俺は隠蔽スキルを駆使しながらストレアを追い掛けている。

 

「!」

 

"・・・・・・・っと、危ないところだった"

 

いきなり振り返ってきたストレアに驚きながら俺は身を隠す。

 

「・・・・・・・・♪」

 

"ずいぶんと機嫌が良いみたいだけど、どこに行くつもりなんだ?"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

路地裏

 

"・・・・・止まった。あの建物は・・・・・宿屋?"

 

俺は急に止まったストレアの目の前の建物を見て思った。

すると。

 

「ようこそ、アタシの家に!」

 

ストレアが俺の方を見て言った。

 

「えっ!?」

 

「ほらキリト!そんなところに隠れてないで、こっちに来て!お茶、用意するから、上がってってよ!」

 

「なんだ・・・・・・バレてたのか」

 

「始めっからね!そんなことより、早く早く!」

 

「あ、ああ・・・・・・それじゃ、ごちそうになるよ」

 

俺はストレアからのお誘いでストレアの家に入ることにした。

 

"彼女の事を知るチャンスかも知れない。今度こそは有力な話を聞き出すぞ"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ストレアの部屋

 

「ここで宿を借りて生活しているのか・・・・・・って、これは・・・・・・」

 

俺はストレアの部屋に入り、周りに視線を向けると少し驚いた。

何故なら。

 

「ん?この部屋、なんかおかしい?」

 

ストレアの部屋は、いかにも女子ぽっくデコレーションがあちこちにされていたからだ。

 

「い、いや、そんなこともないけど。ちょっと意外と言うか・・・・・・ずいぶんとカワイイ部屋だな・・・・・もっと大人っぽい部屋を想像していたよ」

 

「大人?ふうん、アタシってそういうイメージなんだぁ。まあ、とりあえずベッドにでも座ってて!すぐに、お茶を淹れてくるから」

 

「あ、ああ・・・・・」

 

ストレアはそう言うと、部屋の奥にある台所へと向かっていった。

 

"しかし、ストレアのことを調べるためとは言ったものの、やっぱり女性の部屋って緊張するな・・・・・・レインの部屋でも緊張するからな・・・・・・"

 

俺はベッドに座りながらそう考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ!」

 

少ししてティーポット等を持ってストレアが戻って来た。

そして。

 

「・・・・・あの、なんで俺の隣に座るんだ?」

 

何故か俺の隣にストレアは座った。

 

「『他にも座る場所はあるだろ』って顔ね。でもね。アタシがアタシの部屋でどこに座ろうと、別に自由だと思うんだ」

 

「・・・・・・わかったよ。どこにでも座ってくれ。それよりも、俺はこの間の話の続きがしたい」

 

俺は以前ストレアと話したことの続きをしようと思った。

 

「ストレア。君は第76層より下の層で・・・・・・・攻略組で顔を見なかったけど、君はどこのギルドにも所属してないのか?《血盟騎士団》でもないし《聖竜連合》でもないよな・・・・下の階層の新興ギルドなのか?」

 

「ギルド?うーん、所属してたのかな・・・・?」

 

「もし良かったらで良いんだけど何処でレベリングはしたのか、教えてもらえないか?」

 

「多分、いろんなところで。・・・・・ごめん、よく覚えてないの」

 

「覚えてない?それって、記憶喪失とかか?」

 

「さあ、どうだろう?」

 

ストレアの様子を見る限り惚けているという感じではないと、俺は感じた。

 

「そんなことより、アタシはキリトのこと、もっとよく知りたいな。こんな細い身体なのに、なんであんなに強いのかとかすごく気になるし・・・・・」

 

「!?」

 

「ちょっと身体を触っただけなのにキリト敏感だね!」

 

「び、敏感!?・・・・・って、それ前にもレインに言われたような・・・・・」

 

「あはははっ・・・・・なるほどなるほど、レインにも言われたことあるんだ」

 

ストレアは笑いながら言うと、何故か近づいてきた。俺の方に。

 

「あの・・・・・・ちょっと近づきすぎるかと・・・・・・」

 

「そっかな?近づきすぎってもっとこのくらいのことじゃ・・・・・・」

 

ストレアが更に近づいてくるその時。

 

ピコン、ピコーン

 

メッセージが届いた事を知らせる音がなった。

 

「お、おっと・・・・・」

 

「うん?どうしたの?」

 

「わ、悪い、メッセージが届いたみたいだ」

 

「ふーん・・・・・・」

 

"送り主は・・・・・・・・レイン!?ヤバッ、こんなところをレインに見られたらまたあれが・・・・・・・と、兎に角、早く向かわないと!"

 

「なんだったの?」

 

「すまん。急ぎの用事みたいだ、今日はこれで失礼するよ」

 

「なんだ残念。じゃあ、続きはまた今度ね」

 

「あ、ああ・・・・・お茶、ごちそうさま!」

 

俺はそう言うと素早くストレアの部屋から出て、待ち合わせ場所である転移門広場へと掛けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

転移門広場

 

"くそ・・・・・話を聞き出すはずがなんでこうなったんだ。それに、質問もはぐらかされた感じだし何時になったら正体が分かるんだ・・・・・・"

 

俺は敏捷力補正を発揮しながら待ち合わせ場所へと向かいながらそんな事を考えていた。

少しして待ち合わせ場所に着くと、レインがベンチに座りながらウインドウを開き待っていた。

 

「あっ!キリトく~ん!」

 

「すまん、お待たせ」

 

「ううん。私も今来たところだから大丈夫だよ」

 

「そうか、良かった。・・・・・・・それじゃ、行くか」

 

「うん」

 

俺とレインは転移門へ、移動し。

 

「「転移!カーリアナ!」」

 

第80層カーリアナへと転移していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エギルの店

 

「「ただいまー」」

 

今日の分の攻略を終えた俺とレインは、エギルの店に入るとそう言った。

 

「お帰りなさい、パパ!ママ!」

 

店の中では娘のユイが、エギルの手伝いをしていた。

ユイは、俺とレインの姿を見ると満面の笑みを浮かべて言ってきた。

 

「ただいま、ユイ」

 

「ただいま~、ユイちゃん」

 

「攻略、ご苦労様です!無事に帰ってきてくれてホッとしました。パパたちならこの先の階層もどんどん開放して行けますよ」

 

「ユイにそう言ってもらえると自信がつくな。ありがとう、ユイ」

 

「うん。ありがとう、ユイちゃん。これからも頑張るね」

 

俺とレインは、ユイの頭を撫でながら言った。

 

「えへへ・・・・・・どういたしまして」

 

ユイは気持ち良さそうにしながら返す。

 

「そうだ、レイン。このあとちょっと商店通りの方に行ってみないか?」

 

「え?いいけど、どうして?」

 

「階層もどんどん上がっていってるし、攻略に必要なものが買えるかもしれないだろ。それに掘り出し物とかもあるかも」

 

「ふふふ。いいよ。一緒に行こう」

 

「よし!」

 

「パパ、ママ」

 

「ん?」

 

「何ユイちゃん?」

 

「パパとママたちは、もうすでに、すごく強いんですよ?消耗品のアイテム以外では、パパとママのお役に立てそうなアイテムはないと思われますけど・・・・・」

 

「まあな。でも、念には念を、な」

 

「そうだね。私たちが強いって言っても敵だってどんどん強くなって来ているからね」

 

「ああ。そんなときにちょっとでも、戦力になるアイテムが見つかればいいなって、思っているわけだ」

 

「戦力・・・・・・そうですか・・・・・・」

 

ユイは暗い顔をして小声で何かを呟いたが俺たちは、上手く聞き取れなかった。

 

「・・・・・・うん。そうですよね!」

 

だが、ユイは何時もの明るい笑顔を浮かべ言う。

 

「ん?ユイ、何かを気になることでもあるのか?」

 

「いえ、なんでもありません。パパとママの言う通りだと思います。行ってらっしゃい、パパ!ママ!いい掘り出し物が見つかるといいですね!」

 

「うん!」

 

「あ、ああ・・・・・・じゃあ行ってくるよ」

 

俺は少しユイの事が気になったが、今はそっとしておくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

商店通り

 

「掘り出し物はなし、か・・・・・流石に、今の装備よりいいものが簡単に見つかるとは思っていないけど・・・・・・」

 

「フン、フフン、フーン♪」

 

「なんか、納得行かない・・・・・・」

 

「どうしたの、キリトくん?」

 

「いや、なんでもない。レインはずいぶんとご機嫌だな」

 

「まあね。欲しいものが手に入ったし」

 

「そうか。良かったな」

 

「うん」

 

俺とレインは商店通りを一通り見て歩き宿屋に戻ろうとした。

すると。

 

「・・・・・・・たーっ!」

 

何処からか声が聴こえてきた。

 

「ん?今の声って・・・・」

 

「ユイちゃん、だよね?」

 

俺とレインは立ち止まり周囲を見渡した。

すると、再び声が聞こえてきた。

 

「ん~~~~~~。えーいっ!」

 

「何してるんだ、一体?」

 

「さあ?あそこから聞こえてきたよ」

 

レインが指差したところを二人で見る。

そこは人目のつかない路地裏へと続く道だった。

 

「とーっ!・・・・・ううう~」

 

再びユイの声が聞こえてきた。

 

「行ってみる?」

 

「ああ」

 

俺とレインはユイの声をたどり、路地裏へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

路地裏

 

「ユイは・・・・・いた」

 

「どこ、キリトくん」

 

「あそこ」

 

俺はレインにユイの場所を指差した。

 

「ん~~~~っ、ととと・・・・・」

 

「何やってんだユイは?」

 

「わかんない」

 

「ん~~~っ!んんん~~っ!」

 

視線をユイに向けると、ユイは手に大きなオノを持っていた。

 

「あの、大きなオノを運ぼうとしているのか?」

 

「えっ!?それ、あぶないよ!大丈夫なの?」

 

「今のところ大丈夫みたいだな。大方、誰かが捨てていったものを片付けようとしているのかも」

 

「そうだけど、危ないからやめさせないと!」

 

「そうだな・・・・・・・・おーい、ユイ。そんなの持ったら危ないぞ」

 

「あっ、パパ!!・・・・・あわわっ!」

 

「ユイちゃん!!」

 

「ユイ!危ないっ!!オノが倒れるっ!!」

 

「きゃあっ!!!」

 

「≪サウザンド・レイン≫!!キリトくん!!」

 

「わかった!!」

 

 

オノは≪サウザンド・レイン≫により大きな音を立てながらユイから軌道をずれて倒れた。

レインが《クイック・チェンジ》の上位派生の《高速切替(ラビット・スイッチ)》で双剣を装備し≪多刀流≫ソードスキル《サウザンド・レイン》でオノが倒れるのを防いでくれたお陰で、俺はなんとかユイを助けることが出来た。

 

「パパ!ママ!」

 

「大丈夫ユイちゃん!?どこかケガしてない!?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「ふぅ~。助かったよレイン」

 

「あはは、気にしないで。ユイちゃんが無事なら良かったよー」

 

「そうだな」

 

「はい・・・・・・ごめんなさい、心配かけて」

 

「いや・・・・・まあ、俺も急に声をかけたのが悪かった・・・・・」

 

「ごめんね。私が止めさせないと、ってキリトくんに言ったから・・・・」

 

「そんなことないよレイン。でも、ユイ。今度からは持てないと思ったら誰かを呼んで来るんだぞ」

 

「それにしても、誰だろう?こんなところにオノを捨てていったのは。これ、両手斧クラスの武器だよ 」

 

「何?ほんとか?」

 

「うん」

 

「そうか。ユイ、これはどこに片付ければいいんだ?」

 

「あの・・・・・それは捨ててあったのではなくてわたしが用意したものです」

 

「ユイが?」

 

「ユイちゃんが?」

 

「はい。少しでも、戦力が増えた方が良いってパパとママが言ってたから・・・・」

 

ユイの台詞に俺とレインは顔を見合わせた。

確かにそんなことをさっきユイに言ったのだ。それを聞いたユイがこんなことをしたのは、俺たちにも批がある。

 

「ごめんね、ユイちゃん。もしかして、ユイちゃんも戦闘に参加しようとしていたの?」

 

「はい。まだ、上手く使いこなせないですけど・・・・・」

 

「いや、ユイが戦闘に参加するなら、軽い細剣か短剣じゃないか・・・・・・・じゃなくて。・・・・・・ありがとう、ユイ」

 

「うん。ありがとうユイちゃん。ユイちゃんの気持ちだけでもうれしいよ」

 

俺とレインはユイの頭を軽く撫でた。

 

「あ・・・・・パパ・・・・・ママ・・・・・えへへへ、頭撫でてもらうの気持ちいいです・・・・・・」

 

「でも、ユイちゃん。手助けにも色々な形があるからね。ユイちゃんにはユイちゃんに出来ることで手伝ってくれれば大丈夫だよ」

 

「わたしにできること・・・・・ですか。うん。わかりました。考えてみます」

 

「あ。それからさっきみたいな事は、もう2度としないでくれ。さっきはかなり、ひやっとしたし」

 

「そうだね」

 

「本当にごめんなさい。もうこんなことはしません。約束します!」

 

「うん、約束だ」

 

「約束だよ、ユイちゃん」

 

「はい!」

 

「それじゃあエギルさんの店に戻ろうか」

 

「そうだな」

 

「はい!わかりました!」

 

俺たち3人は俺、ユイ、レインの順で手を繋ぎ、エギルの店へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

道中

 

「あ、リーファちゃん」

 

「ほんとだ」

 

「リーファさ~ん」

 

俺たちはエギルの店へと帰る道中、前にリーファがいるのを発見した。

 

「あ、お兄ちゃん!レインさんにユイちゃんも!ちょっと訊きたいことがあるんだけど・・・・・この《ホーンフロッグの肉》ってアイテムどうやって使うのかな?」

 

リーファはウインドウを開き、可視化にすると1つのアイテムを見せてきた。

 

「えっ!?《ホーンフロッグの肉》!?」

 

「レイン確かこれって・・・・」

 

「はい、S級食材のひとつですね」

 

レインが驚き、俺がレインに聞くと、ユイが答えてくれた。

 

「やっぱりS級食材だよ!」

 

「よく手に入ったな・・・・・・」

 

「珍しいの?」

 

リーファはよく分からないのか首をかしげながら聞いてくる。

 

「珍しいも何も、高級食材のひとつだよ。私も実際に見るのははじめてだよ!」

 

「ああ・・・・俺も見たことないからな、このS級食材は・・・・・」

 

「食べられるってこと?」

 

「もちろん。調理は必要だよ。これはS級食材だから・・・・・煮ても、焼いても大丈夫なんだよ♪」

 

レインは料理人の目をし、輝かせながらリーファに言う。

 

「へえ・・・・・・」

 

「レイン、これ料理出来るか?」

 

「む・・・・・」

 

「出来るよ。出来るけど・・・・・」

 

「けど?」

 

「リーファちゃんは、どうしたい?」

 

「・・・・・・・お兄ちゃんって、いつもレインさんの手料理をご馳走になっているんだよね」

 

「え?あ、ああ、まあな」

 

「まあ料理スキルをコンプリートしてるのって私以外だとアスナちゃん、ユウキちゃん、ランちゃん、リーザちゃんぐらいだからね~」

 

「ふうん・・・・ふうん。そうなんだぁ・・・・ふうん」

 

「え~と、スグ?」

 

「レインさん、ごめんなさい。あたし、今回は自分でやってみます!」

 

「うん♪いいよ、スグちゃん。元々スグちゃんがゲットしたものだしね♪」

 

「そう言うことだからお兄ちゃん、あたしが作るからね」

 

「なななな・・・・なんで!?」

 

「あたしだって、この二年間でお料理勉強したのよ!それによくレインさんから料理を教わってるもの!」

 

「えっ?そうなの?」

 

リーファの台詞に俺はレインの方を向いて聞いた。

 

「うん。スグちゃんが教えてください、って言ってたから。それに、ね。スグちゃん」

 

「はい!」

 

「いや、でもSAOの料理はあくまでスキルで現実の料理とは違うんだけど・・・・・・そもそもスキルを持ってなかったら・・・・」

 

「あ、それは大丈夫だよキリトくん」

 

「なんでだレイン?」

 

「スグちゃん、料理スキル持ってるもん。まだスキル熟練度は低いけどね」

 

「な!?そうだったのか!?」

 

「うん!だから、がんばる!レインさん、見ててくれますか?!」

 

「うん。いいよ。それじゃあ見ててあげるね」

 

「はい!待っててね、お兄ちゃん。すぐおいしいご馳走を食べさせてあげるから!」

 

歩きながら会話していた為、エギルの店に着き、そう言うとスグはレインとともにエギルの店の厨房へと入っていった。

 

「ふ、不安だ・・・・・さすがにレインがいるから大丈夫だとは・・・・・思うけど・・・・・・」

 

ちなみにユイもレインと一緒に厨房へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自室

 

自室に戻って着替えしばらくするとレインとスグがやって来た。ちなみに二人とも着替えている。ユイはすでにレインの部屋で寝ちゃったそうだ。そして、スグは手にお皿を持っていた。

その皿の上には・・・・・・。

 

「あー、その」

 

「・・・・・ごめんなさい」

 

真っ黒焦げの肉らしき物が乗っていた。

 

「わ、私も見てはいたんだけど・・・・・・」

 

「い、、いや。これはこれでなかなか味が・・・・・」

 

「ううん。こんな丸焦げになっちゃったし身体に悪いよ」

 

「いや、現実の身体じゃないんだから健康には問題ないはずさ。それにもしもの事があったとしても街の中ではダメージを受けないんだ。少なくとも死には・・・・・・しないはずだと思う・・・・・・・たぶん」

 

「で、でも・・・・・」

 

「いただきます・・・・・ぱくっ」

 

「あ・・・・・」

 

「キリトくん・・・・・」

 

「うん、いけるいける」

 

「お兄ちゃん・・・・・」

 

「ほら、スグもしょんぼりしてないで一口食べてみろよ・・・・・意外とこれ。うっ・・・・・!」

 

「き、キリトくん?」

 

「ぐぐっ。い、意外と・・・・なかなか・・・・・強烈、で・・・・」

 

「え?お、お兄ちゃんの様子が毒・・・・・?」

 

「え・・・・・S級食材の毒って・・・・・《圏内》でも有効なのか・・・・・?睡眠PK以外にもこんな方法ががあると・・・・・は・・・・・」

 

「あああっ!?お、お兄ちゃん!」

 

「き、キリトくん!」

 

"やばっ・・・・・意識が・・・・"

 

「お兄ちゃんお兄ちゃん・・・・!」

 

「キリトくんキリトくん・・・・!」

 

"霞む・・・・・"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~レインside~

 

「うぅ・・・・・」

 

今ベットにはキリトくんが苦しそうに声を出して横になっている。

 

「どうしよう、あたしのせいだ。あたしの・・・・・」

 

「大丈夫よスグちゃん。スグちゃんのせいじゃないよ」

 

「でも・・・・・」

 

「大丈夫だってスグ。食中毒みたいなもんだよ。それに解毒のポーションも飲んだしあとは寝てるだけでじきに治るさ・・・・・ううっ・・・・・・」

 

「お兄ちゃん身体震えてる・・・・・寒いの?レインさん、どうしたら・・・・」

 

「うう・・・・・スグ・・・・レイン・・・・・・・・」

 

「ど、どうしたら・・・・・う~ん・・・・・こうなったら私たちの身体でキリトくんを暖めるしかないよ、スグちゃん!」

 

「は、はい!わかりました!」

 

私とスグちゃんはキリトくんを前後に挟み身体で暖めることにした。

キリトくんの背中はスグちゃんが前は私が暖めている。

 

「こうしていれば大丈夫かな?」

 

「・・・・・うう・・・・・」

 

「大丈夫だよ、お兄ちゃん。あたしとレインさんがついているから・・・・・」

 

「キリトくん・・・・・」

 

「ううん・・・・・」

 

私は背中を暖めているスグちゃんを見た。

スグちゃんは懸命にキリトくんにくっついて暖めていた。

そして私は見てしまった。スグちゃんのある一部分が形を変えキリトくんの背中にくっついているところを。

 

"ぐっ・・・・・スグちゃんって私より1つ下だよね。なんで年下なのにあんなに大きいの・・・・・どうやったらあんなに成長するのよ・・・・・"

 

私は頭の中でスグちゃんのある一部分を凝視しながらそう思った。

やがて、眠くなってしまったのかスグちゃんは、キリトくんの背中に寄りかかりながら寝てしまった。

 

"スグちゃん寝ちゃった。ふわ・・・・・私も眠く・・・・・なっちゃった・・・・・かも・・・・・・"

 

私はキリトくんを抱き締めたまま眠りに落ちた。

 

~レインside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

"んっ・・・・・まぶしい"

 

窓から降り注ぐ太陽の光に俺は目を覚ました。

まあ、ゲームの中なので厳密には太陽ではないのだが・・・・・・別に気にしない。

 

"朝か・・・・・あ、あれ?なんか背中に柔らかいものが・・・・・・"

 

「すー・・・・・・」

 

「すー・・・・・すー・・・・・」

 

俺が目を開けて視線を送ると背中にスグが目の前にはレインがいた。どちらも熟睡中だ。

 

"えっ!なっ!れ、レイン!?スグ!?なんで二人が一緒に!?"

 

俺は身体を起こそうとしたのだがレインに、抱き締められているため無理だった。

 

"やっ、ヤバい・・・・早く抜け出さないと"

 

俺は今度はスルスルと身体をよじらせながら脱け出そうとしたのだが・・・・・。

 

「んー・・・・・」

 

レインが俺を更に抱き締め、ちょっど手の位置が俺の頭あたりにあったため、それお陰で顔がレインに引き寄せられた。

ズバリ言うと、今目の前にはレインの胸がある。

レインの双胸に抱き締められていると言う感じだ。

 

"や、柔らかい・・・・・じゃなくて!ちょ、レイン!?"

 

正直今の態勢はキツい。何故ならば息苦しいからだ。

しばらくすると。

 

「あ、キリトくん。おはよう」

 

「あー、おはようレイン」

 

レインが起きた。

 

「レインすまんが手を退けてくれないか?ちょっと苦しい」

 

「え?・・・・・・・・!?//////」

 

ようやくレインは今の状況が分かったのか顔を赤くしながら手を退けてくれた。

 

「ふぅ~、助かった」

 

俺が安堵していると。

 

「あ、お兄ちゃん、おはよ・・・・・」

 

背中のスグが起きた。

 

「よかった。すこしはよくなったみたいだね」

 

「あ、ああ・・・・・」

 

「おはようスグちゃん」

 

「あ、レインさん。おはようございます」

 

「あの、二人とも起き抜けに悪いんだけど。これってどういう状況なの?」 

 

「え・・・・・わわっ!?」

 

俺が聞くとスグは慌てたように離れてくれた。

レインは名残惜しそうに少しだけ離れてくれた。

 

「ご、ごめん!お兄ちゃんが震えていたからレインさんと一緒にあっためようと思ったんだけどっ!別に、いやらしい意図があったわけじゃなくてっ!」

 

「お、落ち着ついて、スグ」

 

「ああっ!そうだっ!他のベットからお布団を持ってくれば良かったんだ!」

 

「あ・・・・・・」

 

スグの台詞にレインは忘れていたような顔をした。

 

「ごめんねお兄ちゃん。病人にのしかかっちゃうなんて。重かったでしょ?」

 

「い、いや、重くなんてないよ。それよりも、二人のお陰で元気になれたよ。ありがとう二人とも」

 

「お、お兄ちゃんが元気になってくれたならうれしいよ。き、兄弟なんだら助け合うのは当然でしょ。お兄ちゃんだってあたしが病気の時、看病してくれたでしょ?だからお互い様」

 

「うん。前に私が病気の時には付きっきりで看病してくれたから。お互い様だよキリトくん」

 

「でも、まあ、さすがに人肌で暖めるって言うのはちょっとやり過ぎだったかも知れないけど・・・・・」

 

「うぐっ・・・・・」

 

「あ、あははは・・・・そうだな。そうかもな」

 

「あ、キリトくん。朝ごはん食べられる?」

 

「え?そうだな・・・・・慌てたらなんか、お腹がすいてきたよ」

 

「それじゃあ、スグちゃん」

 

「うん。お兄ちゃん、ちょっと待っててね。レインさん、お兄ちゃんのこと見ててください」

 

「うん♪レインちゃんにお任せあれ♪」

 

「・・・・・?スグ?」

 

スグはレインに俺を任せると部屋から出てどこかへ行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10分後

 

「お待たせお兄ちゃん。はい、朝ごはん・・・・・」

 

「これは・・・・・おかゆ・・・・?」

 

スグが持ってきた土鍋の中身を見て俺はそう口走った。

 

「これくらいならあたしの熟練度でも作れるからさ」

 

「上手に出来てるよスグちゃん」

 

「ありがとうございます、レインさん。ふーふー・・・・・ほら、お兄ちゃん、あーん」

 

「あ、あーん・・・・・・ぱく」

 

「ど、どう?」

 

「うん、おいしい・・・・」

 

「よかったねスグちゃん!」

 

「はい!・・・・・・よかった」

 

「・・・・・・母さんのおかゆを思い出した」

 

俺はスグが作ってきてくれたおかゆを食べ、母さんのおかゆを思い出していた。

 

「お母さん、あたしたちが風邪の時は、いつもこんなおかゆ作ってくれたよね。味付けはシンプルなのに、なんだか、とっても美味しくて・・・・・・」

 

「ああ・・・・そうだな」

 

「お母さんの作ってくれたおかゆ、か・・・・・・私の時もお母さんこんな感じのおかゆ、作ってくれたな~」

 

「ふふ。レインさんの家もそうだったんですね」

 

「うん。味付けはシンプルなんだけど、なんかそれが美味しくて」

 

「母親の味だからかもな」

 

「ふふふ♪そうだね」

 

俺たちは母親の作ったおかゆの味を思いだし軽く笑いあった。

 

「お兄ちゃん、現実に戻ったらちゃんと手料理、食べさせてあげる。リアルだったらレインさんにも負けないんだから!」

 

「お!言ったな~スグちゃん。リアルに戻ったら料理勝負しよ、スグちゃん」

 

「もちろんです!」

 

「楽しみにしてるよ、スグ」

 

「うん!」

 

リアルに戻ったら、料理勝負をいつかすると約束したレインとスグは、互いに負けないぞ、的な感じの雰囲気を出していた。

 

"リアルに帰ったらまず、レインを探して会わないとな。 約束のためにも"

 

俺はレインとスグの姿を見ながらそう1人で頭の中で呟いた。

その後調子が良くなった俺は、何時も通り攻略を進める事が出来た。

ちなみに、スグが作った《ホーンフロッグの肉》は即刻レインがエギルに鑑定を依頼したらしい。エギルが言うには、調理者の熟練度不足らしい。




一万字いきました。
驚き。

感想やリクエスト等お待ちしてます♪


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HF編 第84話 〈ユニークスキル祭り!?〉

タイトル通りの話ですよ。


第80層を攻略しホロウ・エリアの攻略も落ち着いたある日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「暇だ・・・・・・」

 

俺はエギルの店の2階にある自室でそう呟いた。

外の天気は晴れており快晴なのだが、攻略には行かず、俺は今自室にいた。

何故なら、アスナ達から無理やり休息をとられたからだ。ちなみにレインも咬んでいたため拒否権はなかった。

どうやら攻略のし過ぎで疲れているだろうと、ユイとレインに相談されてそうなったみたいだ。

そして今の攻略状況は。この間、第80層を攻略し今の最前線は第81層。ホロウ・エリアな方も壊せない岩はリズの助けもあって攻略済み。現在はその奥で見つかった『「貴重品」錆びた鍵』を使う場所を探してる最中だ。

 

「ふぁ~あ・・・・・・眠い・・・・・・」

 

ウインドウを開きスキルやアイテム欄を見てそう言っていると。

 

コンコン

 

「ん?誰だ?」

 

扉をノックする音が聞こえ俺は扉を開けた。

そこには。

 

「こんにちはキリト」

 

「ラム?どうかしたのか?」

 

「いや、暇なら、良かったら俺と訓練でもしません?」

 

「おっ!いいぜ!たまにはラムと訓練するのもいいな」

 

「それじゃあ決まりですね」

 

「あっ!ラム。シノンも一緒でいいか?」

 

「シノンもですか?シノンは確かもうリーザとレインさんとともに特訓中のはずですよ?」

 

「ふぇ!?い、何時からだ?」

 

「確か・・・・・・小一時間ほど前から」

 

「そ、そうか。オッケー、行こう」

 

「はい」

 

俺はラムとともに、レインとリーザ、シノンがいる場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街の外れの草原

 

店から出て15分程歩き、街外れに出た。3人がいるのはこの辺りらしい。

 

「ぜあっ!」

 

「てりゃ!」

 

近くに来ると金属がぶつかり奏でる金属音が聞こえてくる。それと同時に掛け声も聞こえてきた。

姿が見えると。

 

「セアーッ!」

 

「ていっ!」

 

リーザとレインが戦っていた。

 

「・・・・・・・・なあ、ラム」

 

「・・・・・・・・・はい、なんでしょう」

 

「・・・・・・気のせいか。レインとリーザが戦っているように見えるんだが?」

 

「・・・・・・・俺も同じように見えます」

 

俺とラムは目を擦りながらそう互いに聞いた。

 

「何やってんだあの二人は・・・・」

 

俺はそう呟いてラムと一緒に近くによった。

 

「おーい!レイン!リーザ!シノン!」

 

「あ。キリト、ラム」

 

「えっ!キリトくん !?と、おわっ!」

 

「えっ!ちょ、ラム!?う、うわっ!」

 

シノンが俺とラムに気づいて返事を返すと、レインとリーザは驚いたように言うと互いにバランスを崩して倒れた。

 

「だ、大丈夫か?」

 

「大丈夫二人とも?」

 

「いててて・・・・・・・だ、大丈夫だよ、キリトくん」

 

「いたたた・・・・・・大丈夫ですよ、ラム」

 

二人はそう俺とラムに言いながら立ち上がった。

 

「ところで・・・・・・なんで二人とも戦っていたの?」

 

ラムが不思議そうにレインとリーザに聞いた。

 

「ああ。それは・・・・・」

 

「え、え~と。それは、ほら、あれです、あれ」

 

「う、うん。久しぶりにリーザちゃんと手合わせしてたんだよ!アハハ・・・・・」

 

シノンの言葉を遮り、リーザとレインが口を揃えて言ってきた。

 

「そ、そうなんだ」

 

「そ、そうか」

 

二人の雰囲気に、俺とラムは深くは聞かないでおこう、と互いに思ったのだった。

 

「ところで、シノンの訓練をしてるって聞いたけど?」

 

「あ!うん。シノンちゃん才能はあるんだけど・・・・」

 

「"だけど"?」

 

「どう言うこと?」

 

「えーと、なんかぎこちないって言うか、何と言うか・・・・・」

 

「短剣が合ってないみたいなの」

 

レインとリーザがシノンの事を伝えてくれた。

 

「え?そうなのかシノン」

 

「ええ。なんて言うのかしら、その合ってない。というよりなんかしっくり来ない、のかしら?」

 

「んー。だけど短剣以外となるとな・・・・・・」

 

「ですね。う~ん」

 

俺とラムはシノンの武器について考えた。

今シノンが装備しているのはレイン作の短剣『アファニスト・ルーベルス』を使用している。

この短剣は比較的軽く、SAOに来たばかりのシノンでも十分扱える代物だ。

たがシノン当人は、短剣は合ってないらしい。

そうなると、片手剣や細剣、曲刀辺りになるのだが・・・・・。

 

「まあ、その当たりは私とリーザちゃんで相談してみるよ」

 

「すまんが頼む」

 

「うん♪」

 

「さてと・・・・・・・それじゃあラム。早速やるか?」

 

「ええ」

 

俺はラムとともにレインとリーザの場所を変わり相対した。

 

「デュエルでやるか?」

 

「そうですね・・・・・・・・・デュエルでやりましょう」

 

「了解」

 

俺はウインドウを表示させデュエル画面に移動しラムをクリックした。ラムの視界のウインドウには、俺からのデュエル申請が届いているはずだ。

ラムは、幾つか操作するとウインドウをタップした。

両者がデュエルの参加をすると間に60秒のカウントダウンが表示される。

俺は背中から片手剣『ブラックローズ・ナイト』を抜き出す。

ラムは腰から刀『刻蒼華(こくそうか)』を抜く。

俺とラムのデュエルを離れたところからレインたちが見物している。

カウントダウンが10を切った。

意識を戦闘モードへと切り替えラムを見る。

ラムは『刻蒼華』を両手で握り正中線に構える。

そしてカウントダウンが0になりデュエルが開始された。

 

「ふっ・・・・!」

 

先に俺が仕掛けた。

上段からの切り下げをラムは受け止める。金属音が辺りに響き渡った。

鍔迫り合いが続くとラムが仕掛けてきた。

 

「はあっ!」

 

「!?くっ」

 

ラムは力を緩め俺が体勢を崩すと同時に体術スキル《閃打》を放つ。

俺はとっさに変則ガードでそれを受け止める。

 

「あっぶな~」

 

「今のを防ぐなんて・・・・・流石ですねキリト」

 

「いやいや。今のは危なかったよ」

 

俺とラムは互いに少し離れたところで剣を構えながら会話する。

 

「二刀流は使わないんですか?」

 

「あ~、いや~。まあ~、ラムが使ってもいいなら使うけど」

 

「俺は大丈夫なので使っても構いませんよ」

 

「そうか?」

 

俺は『ブラックローズ・ナイト』を地面に突き刺すとウインドウを開き、装備ウインドウからもう1本の剣を実体化させた。

左手で背中の『ホワイト・ユニヴァース』を取り右手で地面に突き刺している『ブラックローズ・ナイト』を取る。

双剣を構えラムと対峙する。

ラムは刀を持っている手の位置を変え立ち住いを直す。

互いに動かずにいると、不意に吹いてきた一陣の風を浴びラムが動いてきた。

 

「てやーあっ!」

 

「ふっ!」

 

「はあーっ!」

 

「せいっ!」

 

俺の双剣をラムは見事に捌いていく。

動き回っているためあちこちで剣撃の音が響く。

俺とラムのHPゲージは少しずつ減っていく。

 

「ぜあっ!」

 

ラムが刀ソードスキル《幻月》2連撃を放ってきた。

俺はそれを≪二刀流≫カウンターソードスキル《スペキュラー・クロス》2連撃で反撃する。

《幻月》の1撃目を反らし、2撃目で受け流して威力を倍にして跳ね返しカウンターを浴びせた。

 

「うわっ!」

 

ラムは《スペキュラー・クロス》をもろに受け後ろに吹っ飛んだ。

《スペキュラー・クロス》を受けラムのHPゲージが5割を下回り、デュエルが終了した。

 

「ふぅ~・・・・・」

 

「あー・・・・・・また、負けた~」

 

「いや。ラムも中々だったぞ。幾つかヤバいところがあったからな」

 

「そうですか?ありがとうございますキリト」

 

俺はラムに近づきラムの手を取って助けた。

 

「お疲れ二人とも~」

 

「また派手に負けましたねラム」

 

デュエルを見てたレインとリーザがポーションを持ってやって来た。

二人はポーションをそれぞれ俺とラムに渡すと。

 

「でも、キリトくん。最後のあれは大人気なかったんじゃない?」

 

「うぐっ!」

 

「ラム、まだまだ精進が必要ですね」

 

「うっ!うん」

 

今のデュエルの感想を言った。

 

「アンタたちってやっぱ凄いわね・・・・・」

 

一緒に見ていたシノンもそう言ってきた。

 

「攻略組ってこんなのが多いの?」

 

「ううん。キリトくんたちが普通じゃないだけだよ」

 

「「「それをレインが言うか((言いますか))!?」」」

 

「あ、あははは・・・・・・」

 

「へえー・・・・・・」

 

レインの台詞に俺、リーザ、ラムが突っ込みシノンは苦笑いを浮かべながらも理解したようだ。

 

「あ、そう言えば、スキル系統について聞きたいんだけど」

 

「そういえば、シノンちゃんも結構スキルスロット増えてるから、色々習得出来るんだっけ」

 

「ええ。試しに幾つか習得したけど・・・・・見てくれない?」

 

「・・・・・え?」

 

「・・・・・はい?」

 

「・・・・・は?」

 

「見てって・・・・・・え?ステータス画面をか?」

 

シノンの言葉に俺たちは言葉を失った。

 

「何より、問題あるの?」

 

シノンは不思議そうに聞いてくる。

 

「ええと、問題はあるって言えばあるんだけど・・・・・・」

 

「シノン、このゲームじゃ自分のステータスを他人に見せないほうがいい」

 

「ええ。レベルやHP、能力値にスキル、アイテムそれらの情報は、相手に大きなアドバンテージを与えることになるんです」

 

「ああ。そんな状態でデュエルにでもなったらまず勝てないし、PK相手なら文字通り致命的な事態にもなりかねないんだ」

 

「・・・・・でも、アンタたち。私にデュエルやPKなんてしないでしょ?」

 

「それはそうだよ!」

 

「当然ですね!」

 

「もちろん、するわけないよ!」

 

「ああ・・・・・」

 

「なら、いいじゃない、ほら面倒だから、さっさと見て」

 

「・・・・・まあ、いいか。でも俺たち以外には絶対に見せないほうがいいからな」

 

「わかってるわよ・・・・・・ほら、ここ」

 

シノンはそう言うとウインドウを可視化にしてスキルスロットを見せてきた。

 

「≪精密動作≫に≪命中補正≫?」

 

「・・・・・・?それ、取ったらマズかった?」

 

「いや、別にマズくはないが・・・・珍しいスキルが出てるなって」

 

「そうなの?」

 

「うん。普通は、狙ってでもないとこんなスキル取れないよ」

 

「それにかなり熟練度が高いですね」

 

「ほんとだ。短剣スキルより少し高いですね」

 

「・・・・それって何かいいことあるの?」

 

「・・・・・正直わからない。俺たちは、この辺りのスキルは取ってないから詳しくは・・・・・だが、アルゴ辺りなら知ってるかも知れないな・・・・・・・ん?・・・・・・・!?これは・・・・!」

 

「・・・・・まだ、何かあるの?」

 

「どうしたのキリトくん?」

 

「いや、あのさ≪射撃スキル≫って聞いたことあるか?」

 

俺は怪訝そうな顔をしているレインたちに聞いた。

 

「え?≪射撃スキル≫?聞いたことないよ」

 

「私も」

 

「俺も」

 

「どうして?」

 

「これ・・・・・≪射撃スキル≫ってリストに表示されてる」

 

「「「!?」」」

 

俺の台詞にレインたちは息を飲んだ。

 

「これ・・・・・私も知らない。昨日は習得リストになかったし」

 

「じゃあ、今日の訓練で習得可能になったってことか?・・・・・・射撃スキルか・・・・・」

 

「射撃スキルってことは・・・・・銃、とか?」

 

「ううん。それはないと思うよ」

 

「ああ。この世界で遠距離武器だと投擲用のピックやブーメラン、チャクラムの類いだけだからな」

 

「でも、モンスターとかは弓を使いますよね?」

 

「ああ、確かに。でも、プレイヤーが弓を使えるのか?」

 

俺たちは突如現れた≪射撃スキル≫と言う物について協議した。

 

"これはもしかしてユニークスキルの一種か?それともシステムエラー?となるとこれを習得するのは危険・・・・・"

 

「・・・・・・」

 

「「「「!?」」」」

 

「もしかして・・・・・」

 

「習得しちゃった?」

 

「いけなかった?」

 

「いや・・・・・・だけど、もし、システムエラーに関係するのバグスキルだったら、今ので何か異常が起こる可能性がある・・・・・」

 

「シノンちゃん。何か変わったことはない?」

 

俺たちが心配そうに見るなかシノンは。

 

「取り敢えずは、何も、起こらないわね」

 

ウインドウを表示したりして確認を取るとそう言った。

 

「そうか。文字化けやステータス異常もないみたいだし、取り敢えずは問題無さそうだな」

 

「ええ。ですが正規スキルだとなると、あのスキルでありそうなのは投擲系だとなるんですが・・・・・・」

 

「確かに・・・・シノン、試しに短剣を投げてみてくれ」

 

「・・・・・こう?」

 

「特に・・・・・変わった様子はないな」

 

「うん。威力が上がった、と言うことでもなさそうだよ」

 

「と、するとこれはやはり・・・・・・」

 

「ユニークスキルの可能性、あり、だな」

 

俺はその可能性をみんなに言った。

すると。

 

「ん?」

 

「あれ?」

 

ラムとリーザが不意に不思議そうに声を出した。

 

「どうした、二人とも?」

 

「いや、その、俺のスキルスロット欄に変なスキルが」

 

「同じく私にも」

 

「「「えっ?」」」

 

「そのスキルの名前は?」

 

「俺のが≪抜刀術≫です」

 

「私のが≪無限槍≫です」

 

「「・・・・・・・・・・・」」

 

俺とレインは二人のスキルに沈黙をもって返した。

というより声にならなかった。

 

「それ、もしかしてユニークスキルじゃない?」

 

「え!?」

 

「ユニークスキル!?」

 

「ああ・・・・・・どうして今になって現れたのかは分からないが。情報屋のスキル名鑑にも載ってないところを見るとその二つはユニークスキルだな」

 

「・・・・・まじですか」

 

「・・・・・・うそ~」

 

習得した本人たちは驚きで声もでないようだ。

 

「とにかく、シノンの≪射撃スキル≫のことは今度調べるとして、アスナたちにはその二つのユニークスキル。≪抜刀術≫と≪無限槍≫のことは伝えたほうがいいな」

 

「そうだね」

 

俺たちはシノンが習得した≪射撃スキル≫については言わないようにしてエギルの店に帰っていった。

その夜、全員が揃ったところでラムとリーザがユニークスキル≪抜刀術≫と≪無限槍≫を取得したことを伝えた。

その場にアルゴもいたため、アルゴにもこの二つのスキルを聞いたことないか聞くと、オレっちもはじめて聞いたスキルダヨ、と返したためユニークスキルと断定した。

これで、ユニークスキルは俺の≪二刀流≫レインの≪多刀流≫ユウキの≪紫閃剣≫ランの≪変束剣≫アスナの≪神速≫ラムの≪抜刀術≫リーザの≪無限槍≫ヒースクリフを加えると≪神聖剣≫の8種類となった。

俺は、シノンが習得した≪射撃スキル≫もユニークスキルの一種だと思うが断定はないためアスナたちには言わなかった。




ついにユニークスキル3種出ました。
それぞれのユニークスキルがどのような効果なのかはこれからをご期待ください。
質問や感想などがあったらお願いします。


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HF編 第85話 〈シノンの主武器〉

「どうもソーナです。今回からSAOでも様々な問題などをゲストとともに出していきたいと思います。それでは今日のゲストさんどうぞ!」

「どうも、キリトです」

「プリヴィエート、レインだよ」

「ようこそ、キリト、レイン」

「ソーナ、今日は呼んでくれてありがとうな」

「スパシーバ、ソーナさん」

「そんなことないですよ。キリトとレインの活躍は知っていますから当然です。なんと言っても二人は攻略組の要とも言われるNo.1と2なんですから」

「なっ!?そうなのか!?初めて知ったぞ」

「私も。てっきり要は指示を出してくれるアスナちゃんやランちゃんかと思っていたから」

「まあ、確かにキリト、レイン、アスナ、ユウキ、ランは攻略組Top5に入りますからね」

「へぇー」

「そうなんだね」

「では、今回の問題を出します」

問題『キリトが喫茶店で頼んだ物はな~んだ』

Ⅰ:モンブランとコーヒー

Ⅱ:リンゴのチーズケーキとダージリン

Ⅲ:リンゴのシブーストとアールグレイ

Ⅳ:ヘーゼルナッツケーキとカフェモカ

「答えは本文の最後に!」


ラムとリーザにユニークスキルが現れた翌日、俺は街を探索していた。

レインはリズの手伝いで『リズベット武具店2号店』に行ってる。

俺が一人で街を探索しているのは理由があった。その理由は、昨日新たに発見されたユニークスキルは、ラムとリーザだけではなく、シノンにも現れていたからだ。

だがシノンのユニークスキルらしきものは≪射撃スキル≫と書かれていたためアスナたちには伏せていた。

言わなかったのは単純に、これがどのようなスキルなのか分からないからだ。もしバグで現れたスキルならば使用して異常が起こるかもしれない。さらに正規スキルだとしてもそのスキルを使用するための武器がないからだ。昨日、投擲で試させたがどうやら≪射撃スキル≫は投擲系のスキルではないことは確認済みだ。だが≪射撃スキル≫とあるからにはなんらかの遠距離武器があるとにらみ、今日俺は街を探索している。

 

「ん~~・・・・・・・なかなか見つからないな・・・・・・」

 

店を見て歩きながら俺はそう口に出した。

時間はもうお昼になろうとしている。朝から見て回っているがなかなか見つからない。

 

「キリトく~ん」

 

「?あれ?レイン?どうしたんだ?」

 

リズのところで手伝っているはずのレインがこんなところにいることに俺は少し驚き聞いた。

 

「イヤ~、リズっちがねなんか用事が出来ちゃったみたいで今日はもうお店閉めちゃったんだ」

 

「へえー。その用事ってなんだ?」

 

「え~と、確か鉱石がどうのこうのって・・・・・・」

 

「ふむ・・・・・て言うことは鉱石が無くなったから補充しに行ったってことか?」

 

「う~ん・・・・・・一応鉱石って言ったらリズっちに渡してるんだけどな~」

 

「まっ、リズにもなんかあるってことだろう」

 

「うん!そうだね。ところでキリトくんは見つかった?」

 

「いや、それが全然見つからないんだよなぁ」

 

「そうなの?」

 

「ああ・・・・」

 

「ん~・・・・・・・あっ!キリトくん、もしかしたらあるかも」

 

「え?」

 

「確か裏通りの骨董品屋さんに使えない武器が入ったってリズっちから聞いたんだよ」

 

「使えない武器?」

 

「うん。なんでも遠距離武器らしく、確か・・・・・・弓?だったかな?」

 

「弓だと!?」

 

「うん」

 

「・・・・・・・・・レイン。シノンを連れてその骨董品屋に行ってみよう」

 

「え?うん。わかった」

 

俺はレインにそう言うと、レインとともにシノンがいるエギルの店に向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エギルの店 2階 シノンの部屋前

 

俺とレインはエギルの店に着くとシノンを呼びに2階のシノンの自室に向かった。

 

「シノン、いるか?」

 

扉をノックして扉越しに訊ねる。

 

「いるわよ。どうしたのキリト?ってレインも?」

 

部屋から扉が開きシノンが顔を出してきた。

俺は素早く事情を伝えた。

 

「・・・・・・・と、言うわけなんだよ」

 

「ふうん・・・・・使えない武器・・・・・・・そして弓・・・・・ね」

 

「だから、確認してみないか?」

 

「いいわよ。私も気になるし」

 

「よっし!それじゃ、早速行くぞ」

 

「ええ、わかったわ」

 

その後、シノンは身支度を整え俺とレインとともに路地裏にあると言う骨董品屋さんに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

路地裏 骨董品屋

 

「あ、着いたみたいね。骨董品屋」

 

「うん。だけど・・・・・・・」

 

「・・・・・・ここ、本当に営業してるの?」

 

「当たり前だろ、NPCの店主もいるし」

 

「け、けど・・・・・・」

 

骨董品屋は店なんだが、これは誰がどう見ても店ではないと答えるくらいの感じの場所だった。

 

「・・・・・・・らっしゃい」

 

NPCの店主が覇気のない声で言う。

 

「・・・・・私一人だったら絶対入らないわね、この店」

 

「・・・・・私も同じかも」

 

「こういうところにこそ、たまに凄いものが転がっていたりするんだ」

 

「でも・・・・・」

 

「今のところ、本当に使えない物ばかりがあるけど。本当にあるの?」

 

「リズっちから聞いた話だとあるみたいだけど・・・・」

 

「んーー・・・・・・あ、これじゃないか?」

 

俺は置いてあった物を手に取った。

 

「これ・・・・・・・弓よね」

 

「ほんとだ。本当にあったんだ」

 

俺が手に取った弓はシノンの防具と同じ色の緑色でシンプルで特に特徴のない物だった。

 

「ああ。店長、すまない、これなんだが・・・・・・」

 

「・・・・・そいつは数日前に偶然手に入ったんだ。珍しいものだが役に立たん武器だよ」

 

「ふむ。数日前に偶然か・・・・・・レイン、リズはいつからあるって言ってたんだ?」

 

「え~と、確か数日前からだった・・・・・・・かな?遠距離武器があるなんて珍しいみたいだったから覚えていたみたい」

 

「なるほどな・・・・・・」

 

「・・・・・・それ、私に持たせてくれない?」

 

「ああ」

 

俺は弓をシノンに渡した。

シノンは弓を持ち確認した。

 

「どう?シノンちゃん?」

 

「・・・・・・うん。持てる、撃てそう」

 

「なら買おう!」

 

「そうだな。店長、この弓・・・・って、高っ!?」

 

「え~と、どれどれ・・・・うわっ、ほんとだ。役に立たん武器って言っていたのに随分と高いね」

 

「なに?高いの?」

 

シノンが心配と不思議そうな顔を浮かべて聞いてきた。

 

「いや、え~と・・・・・・・」

 

「まあ、なんとかなるか・・・・・・・」

 

俺とレインは頷くと弓を購入した。

弓と同時に使える矢を全て購入した。いつ矢が無くなったりするから分からないのと、他のNPCショップで買えるのかが不明だったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

商業区

 

弓と矢を買った俺たちは骨董品屋をあとにし、商業区に戻ってきていた。

 

「・・・・・・借りはあまり作りたくなかったんだけど」

 

「気にしないでシノンちゃん」

 

「ああ。あの値段は今のシノンに払えないし、まったくとんだぼったくり屋だぜ」

 

「あははは。でも弓だけじゃなくて矢も買えて良かったね」

 

「そうだな」

 

「でも・・・・・・・」

 

「ん~・・・・・・じゃあ、シノンちゃん。これはユニークスキル≪射撃スキル≫習得記念のプレゼントってことでいいかな?」

 

「プレゼント?」

 

「うん。これを使って私たちを手助けしてくれたらうれしいかなって」

 

「・・・・・・・・わかったわ。ありがとう、二人とも」

 

「どういたしまして・・・・・・かな?」

 

「ふっ。ふふふ」

 

「笑わないでよシノンちゃん」

 

「ごめんごめん。そうだ、二人とも。ちょっとお腹空いてきちゃったし、何処かで食べていかない?お礼に私がおごるから」

 

「じゃあ、お言葉に甘えてご馳走になるよシノン」

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

商業区 喫茶店

 

シノンの案内で俺たちはメインストリートから少し外れたところにある喫茶店に来ていた。

 

「こんなところに喫茶店があったなんて・・・・」

 

「こんな場所よく知っていたな」

 

「フィールドのモンスターはまだ私には強すぎるし、街にいてもスキルの特訓以外やることもないしね。だから、色々なお店を見て回っているの」

 

「なるほどね」

 

「にしても静かだね、ここ」

 

「ええ。落ち着ける感じだから好きなのよ」

 

「それにおしゃれだね」

 

「そうね。気に入ったかしら?」

 

「ええ」

 

レインはここが気に入った用だが俺は、少々居心地が悪かった。

 

「取り敢えず注文をしましょ。私はこの期間限定のリンゴのシブーストとアールグレイ」

 

「それじゃ、私はこのリンゴのチーズケーキとダージリン」

 

「俺は、モンブランとコーヒーで」

 

俺たちはそれぞれ注文をすると、品物が来るまで話した。特にレインがシノンと話していた。

女子同士会話が弾むのか話はかなり盛り上っているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、注文の品が届いた。

 

「おっ!来た」

 

「うわー、美味しそうだね」

 

「これを目当てに一人で何度も通っちゃうのよね」

 

「そうなんだ~今度一緒に来ようかキリトくん」

 

「そうだな」

 

「やれやれ。それにしても、なんだか不思議。リアルで会ったこともない二人とこうして喫茶店で一緒にお茶してるなんて。でもこれってゲームの中の出来事なのよね。実態のない、夢みたいなもの」

 

「ゲームの中だからって、生きてる俺たちは夢なんかじゃない」

 

「そうだね。だからこの出来事も、思いでも全て本物なんじゃないかな?」

 

「ふうん。なるほどね」

 

「まっ、こうやって3人でお茶してるのなんか新鮮でいいしな」

 

「ほんとだね。でもキリトくん、わかってるよね。もしシノンちゃんに手を出したら・・・・・・」

 

「わ、分かってるから、その氷のような殺気を出すのは止めて」

 

「分かってるならいいよ」

 

「ふふ。キリト。アンタ絶対将来、尻にしかれるわよ」

 

「そ、そうだな」

 

「とにかく食べよう、二人とも♪」

 

「そうだな」

 

「そうね」

 

「リアルでもまた何時か3人でお茶しようよ」

 

「ああ」

 

「そうだといいわね」

 

俺たちはそれぞれ運ばれてきた物を食べた。

まあ、途中レインがあーんとかしてくるから大変だったが・・・・・・幸いにも店内に人は俺たちだけみたいなため他の人には見られなかったのが幸いだった。

だが、目の前に座っているシノンが何処か呆れているのはなんとなく分かったのは内緒だ。

何時か3人でまたこうした時間がとれるといいな、と思いながら俺はこの一時の時間を過ごした。




「それじゃあ、答えを発表するよ!キリトよろしく!」

「オッケー。今回俺が頼んだのは・・・・・・Ⅰ:モンブランとコーヒー、だ」

「みんな当たっていたかな?」

「それにしてもキリトくん、よくコーヒーとか飲んでるけど好きなの?」

「ん?いや、普通だな」

「へぇー。ソーナさんは?」

「私はコーヒーは好きだし、紅茶やお茶も好きかな。あ、順位をつけるとしたら紅茶、コーヒー、お茶の順だね」

「へぇー。ソーナは紅茶だとなに飲むんだ?」

「え~と、ローズヒップやアールグレイ、ハイビスカスティーにダージリンとか色々かな」

「ハーブティーも飲むんだソーナさん。私ハーブティーは苦手なんだよね」

「それは俺もだな」

「あはは。て言うか、なんか私への質問になってないかな?」

「「気のせいだ(よ)」」

「まあ、いいか。それじゃ、今回はこれで!」

「「「ダスヴィダーニャ~!」」」


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HF編 第86話 〈結婚システムに異常事態!?〉

「プリヴィベート!ソーナです。今回も問題をやりますよ。今回のゲストはあの二人です。それではゲストさんどうぞ!」

「ヤッホー、ユウキだよ!」

「はじめましてユウキの姉ランです。よろしくお願いします」

「ユウキ、ラン、今日はようこそお越しくださいました」

「ヤッホー、ソーナ!今日は呼んでくれてありがとう」

「ソーナさん今日はお呼びいただきありがとうございます」

「そんなことないですよ。にしても二人は双子なのになんでそんなに性格が違うんです?」

「「さあ~?」」

「あはは・・・・それでは問題を出します!」

問題『作中でクライン、アスナ、ユウキ、ラン、リーファ、シノン、リズ、シリカ、アルゴの9人がエギルに同じ飲み物を頼みました。さてこの9人が頼んだ飲み物はな~んだ?』

Ⅰ:ブラックコーヒー

Ⅱ:紅茶

Ⅲ:緑茶

Ⅳ:バッカスジュース

「答えは本文の最後に!」


商業区

 

シノンの主武器、弓を手にいれた俺とレインはシノンのよく行く喫茶店でお茶をした後、ポーションや結晶などのアイテムを購入するため商業区に来ていた。

 

「キリトくん。何か買うの?」

 

「いや、品揃えの確認と・・・・・・あとは、ポーションとかの補充かな」

 

「それじゃあ私も見ておこう~と」

 

「私もポーション補充しておこうかしら」

 

「え~と。ポーションの在庫は・・・・・・・て、あれ?」

 

「どうかしたのか?」

 

ウインドウを開き立ち止まったまま見ているレインに俺とシノンは振り向いて尋ねた。

 

「いや、う~ん・・・・・・」

 

レインは目をごしごしこすり再びウインドウを見た。

 

「やっぱり気のせいじゃなかったーー!!」

 

「「!?」」

 

ウインドウを見たままいきなり絶叫するレインに、俺とシノンは同時にビクッ、となった。

 

「そんなにポーションの数が足りなかったのか?」

 

「そうじゃないよキリトくん!ウインドウを開いて私のステータス画面を見て!」

 

「お、おう。わかった」

 

俺はレインの言った通りウインドウを開きステータス画面を表示させた。

 

「見た?」

 

「ああ。見たけど・・・・・・どうかしたのか?」

 

「いいからちゃんと見て!」

 

「?」

 

シノンが首を傾げながら俺とレインを見るなか、俺はステータス画面を見た。

ステータス画面には、俺のステータスが表示されていた。

 

「?あれ・・・・・?」

 

目をごしごしこすり再びステータス画面を見た。

ステータス画面には俺のステータスが表示されていた。

俺〈キリト〉のステータスだけが。

 

「!?な!?れ、レインのステータスが表示されてない!?」

 

そう画面には本来ならば俺とレインのステータスが表示されているのだが、今表示している画面には俺のステータスだけが出ていた。

 

「やっぱりキリトくんのにもないの?」

 

「ああ。レインとのリンクがない・・・・・ってことはまさか・・・・・!?」

 

俺はステータス画面からアイテムストレージに移動した。

アイテムストレージが表示されていると予想通り・・・・・・。

 

「レインとの共通アイテムストレージが無くなってる・・・・・」

 

「私も無くなってる・・・・・・まさかと思うけど、キリトくん私と、り、りこ・・・・・・・「それはないから!絶対それはない!」・・・・・・だよね。うん。よかった。けど・・・・・・」

 

レインは今目の前に表示されているウインドウを見ながら呆然と呟く。

 

「話がさっぱりわからないのだけど・・・・・・・・」

 

まだSAOに来てそんなに経ってないシノンは、話の内容が分からないようだ。

 

「え~と、だな・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈事情説明中〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどね・・・・・・大体わかったわ」

 

未だに元に戻ってないレインの手当てをしながら俺は簡単にシノンに説明した。

 

「レイン大丈夫かしら?」

 

「い、いや。どうだろう?おーいレイン、戻ってこ~い」

 

「・・・・・・・・・・・ハッ!?」

 

「ようやく戻ったみたいね」

 

「ああ・・・・・・」

 

「キリトくん、これってどういうこと!?」

 

「ん~・・・・・。取り敢えずクラインやアルゴに聞いて調べてみよう」

 

俺は涙目になっているレインをなだめながら俺たちはエギルの店に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エギルの店

 

「・・・・・・・っと、返事が来たぜキリト。俺の知り合いを当たった限りでは今76層以上にいる中で結婚してるヤツはラムとリーザ以外見つからねぇみてえだ」

 

「オレっちの調べたところでもクラインと同じダナ。今第76層より上で結婚してるのは、リーちゃんとラー坊外いないナ」

 

「そうか・・・・・・調べてくれて助かるよクライン、アルゴ」

 

「イヤ。気にしないでくれ。それにレーちゃんの為だからナ」

 

「気にすんなキリト」

 

アルゴとクラインは首を横に振り当然だ、と言う感じに言った。

 

「女性プレイヤーの少ないこのゲームで、結婚してるプレイヤーっていうだけでそもそも希少価値だもんね。まあ、ここにもう一組の婚姻者がいるけど」

 

「その上、今76層に上がってきているヤツなんて、間違ってきちまったヤツ以外全員ガチの攻略組だろ?」

 

クラインの言葉に約4人ほど、体が震えた。

 

「う・・・・・・まあ、アタシは間違えちゃったけどね」

 

「私たち以外にも結構いると思いますけど」

 

「ゲーム外から来ちゃいましたってのはさすがにレアケースだけどね」

 

「頻繁にあったらたまったもんじゃないわよ」

 

「ほんとです・・・・・」

 

「まったくその通りです・・・・・」

 

リズ、シリカ、リーファ、シノンに続いてシノンの言葉にランとユイがまったくだ、と言う感じに首をたてに振り言う。

 

「ま、自分から望んで最上階に来るようなガチの攻略組には恋愛に現を抜かしてるヒマなんざねーってことだ、キリの字よ」

 

「なんか含みのある言い方だな・・・・・・・て言うそれを言うならもう一組いるけど」

 

「「///////」」

 

俺の台詞にもう一組の婚姻者たちが顔を少し赤くしていた。

 

「けど、困ったな。これで調査の手がかりが無くなったことになる」

 

「ねえ、キリト。その結婚解除ってホントにホントなの?キリトって今、フリーなわけ?」

 

「リズっち!キリトくんは私の旦那なんだから!勝手にフリーにしないでよ!」

 

「ですが、システム的にはそうなっちゃっているんですよね?」

 

「うん・・・・・・でも私もキリトくんも、離婚なんてした覚えないないし。それ以前に絶対に私はキリトくんと離婚なんてするき無いもん!」

 

「レインそれはちょっと恥ずかしいからな」

 

「!!////////」

 

「・・・・・・恐らく今回の事もシステムのバグかもしれません」

 

「バグ?」

 

「はい。第76層からシステムにエラーが出たのなら恐らく今回もそのバグのひとつかもしれません」

 

「なるほどな・・・・・・・ん?そういやラムとリーザは結婚状態解除されてないのか?」

 

「え?あ、そう言えば確認してませんでした。ちょっと待ってください」

 

俺の問いにラムが答えるとラムはリーザと一緒にウインドウを開き確認した。

 

「・・・・・・・・・・あ、解除はされてないみたいです」

 

「と言うことは第76層に上がってきた時点で結婚しているプレイヤーにエラーが発生してるのか?」

 

「恐らくそうだと思います。パパとママは76層に来る以前から結婚していましたけどラムさんとリーザさんは76層で結婚したので、それで解除されてないと思われます」

 

「なるほどな・・・・・・」

 

ユイの言葉に俺はなんとなく分かった。

 

「さすがに二人が間違って離婚申請なんてするわけないですよね」

 

「「それはない!!」」

 

ランの言葉に素早く答えた。

その答える早さにはユイとラム、リーザ以外は若干引いていた。

ユイはわかるがラムとリーザが引かなかったのは恐らく考えが、俺とレインと同じだからだろう。

 

「そ、そうなんだ。て言うかもう一度結婚したらいいんじゃない?」

 

「あ、いや、そのだな・・・・・・」

 

「ん?どうしたキリの字」

 

「クライン、もう私たち試したんだよ」

 

「そうなのか?それで結果は・・・・・・・ってなんとなく察したわ」

 

「?どういうこと?」

 

「申請できなくなってるんだよ。俺もレインも・・・・・・・」

 

「ということはこれは単なる手違いではなく・・・・・・」

 

「ユイちゃんの言った通りバグってことね・・・・・・」

 

申請できないと言うことにランとアスナの言葉に俺とレインは首をたてに振り肯定した。

 

「それって、他の相手には、結婚の申し込みができるんでしょうか?」

 

「他の相手・・・・・・?それは試していなかったな、やってみるか」

 

「却下!」

 

「「「「「「「「「「「はやっ!!」」」」」」」」」」」

 

レインの即答に俺とユイ以外が口を揃えて言う。

 

「いや、でも、できるかどうか試してみるだけだから・・・・・・」

 

「それでもダメ!却下だよ!」

 

「わ、わかった」

 

「じゃあレインが他の男性プレイヤーに結婚を申し込んで見たら・・・・・・・」

 

「却下だ!」

 

「「「「「「「「「「「こっちもかよ!!」」」」」」」」」」」

 

「じゃあ他の女性プレイヤーがキリトに申し込むってのは・・・・・・」

 

「絶対にダメ!」

 

「「「「「「「「「「「ホント早いな答えるの!!」」」」」」」」」」」

 

俺はレインのすぐ隣に行くとレインの頭に手を乗せそのまま優しく撫でた。

 

「ふわぁ~~~////////」

 

「あー・・・・・・・すまんエギル。コーヒーくれないか?ブラックで」

 

「クラインさんと同じく私もブラックで」

 

「ボクも同じで」

 

「私も」

 

「アタシもお願いするわ」

 

「私もお願いします」

 

「あたしも」

 

「私もお願い」

 

「オレっちも頼むぜ」

 

何故かユイ、ラム、リーザ3人以外全員コーヒーを頼んでいたが詳しくは聞かないことにした。

 

「レイン、ちょっとやってみるだけだから」

 

「う~~。じゃあ後で甘えさせて」

 

「ああ、わかった」

 

と、俺はレインから許可をもらったので実験してみることにした。

 

「あー、ラン。頼んでもいいか?」

 

「ふぁい!?」

 

「姉ちゃん今噛んだ」

 

「気のせいですユウキ」

 

「あー、ランいいか?」

 

「は、はい。私は別にいいです・・・・・・/////」

 

ランは顔を少々赤くして答えてくれた。

俺は素早くウインドウを開き操作した。

 

『ランちゃんのあの反応・・・・・・もしかして』

 

レインから何か聞こえた気がするがよく分からなかったため聞かないことにした。

 

「じゃあ、はい」

 

俺は画面に出ている結婚申請をランに送った。

 

「・・・・・普通に来ました」

 

「・・・・・・ああ」

 

「こりゃ、どうやらキー坊とレーちゃんは互いに申請は出来ないが他の人なら可能みたいだネ」

 

「だな・・・・・・ハアー」

 

「・・・・・・これを押したら・・・・・・」

 

「ん?ラン何か言ったか?」

 

「い、いえ、何でもないです」

 

ランはそのあとウインドウを操作しウインドウを消した。

それと同時に俺の送った結婚申請も申請前に戻った。

それを確認すると俺はウインドウを消した。

 

「システムエラーだな」

 

「だね。ハアー、早く戻す方法を見つけないとね」

 

「ああ」

 

「パパ、わたしもお手伝いします!」

 

「ユイ・・・・・」

 

「ユイちゃん」

 

「それにわたしも早くパパとママが結婚して戻ってほしいですから」

 

「ありがとうユイちゃん」

 

「ありがとうなユイ」

 

「はい!任せてください」

 

「おっと。オレっちももちろん手伝うヨ」

 

「俺もだぜキリト」

 

「アルゴ・・・・・クライン・・・・・すまん。助かる」

 

アルゴが各方面に行き調べ、クラインは知人やクエストをユイはアインクラッドの情報。特に第76層より上の層の情報を調べてくれる。

他にもアスナたちが色々手伝ってくれるみたいだ。

俺とレインも色々と探すがこんなにも仲間がいてくれると助かると俺は思った。

そのあとは落ち込んでいるレインに思う存分甘えさせたのは・・・・・・・言うまでもないであろう。




「それじゃあ答えを言うよ!ランお願い!」

「わかりました。答えはⅠ:ブラックコーヒー、です」

「みんな当たっていたかな?」

「にしてもみんなここ最近コーヒー飲んでいること多いね」

「それは・・・・」

「そりゃあんだけイチャイチャされていたらコーヒーも飲みたくなりますよ」

「あはは。確かに」

「それにキリトやレインだけじゃなくてラムとリーザも結婚しているんだから」

「あーー・・・・・・ご苦労様です」

「にしても今回は大変なことになりましたね」

「そうですね。まさかキリトとレインの結婚状態が無くなるなんて」

「一刻も早く元に戻す方法を見つけなくては」

「頑張ってねユウキ、ラン」

「うん!」

「もちろんです!」

「それじゃ時間になりましたので今回はこれで」

「「「また次回にお会いしましょう~!」」」


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ソードスキルリストⅢ

今回は問題は無しです。
タイトルのように今回は5人のユニークスキルのソードスキル紹介です


紫閃剣ソードスキル

 

使用者:ユウキ

 

レジステリアス

 

単発突進技

片手剣ソードスキル、レイジスパイクと同じ感じのソードスキル。射程はレイジスパイクより此方の方がやや長い。

 

エルフィニアス

 

3連撃

十字に切り裂き中心に単発の突きを放つ

 

アグレッシブ・スクエア

 

4連撃

敵に4回。垂直2撃、水平2撃を与えスクエアを描くソードスキル。敵に麻痺のデバフを与えることが出来る。

 

ブラッディー・エッジ

 

5連撃

刃を突き立てるかのように切り裂き、敵に出血デバフを与える事の出来るソードスキル。

 

クリア・ストーム

 

6連撃範囲技

4回切り裂き横凪ぎに一撃、そしてその衝撃波で敵を吹き飛ばして攻撃する。

 

シャドウ・ストライク

 

単発重攻撃突進技

紫閃剣上位ソードスキル。片手剣ソードスキル、ヴォーパル・ストライクと同威力のソードスキル。

射程はヴォーパル・ストライクより短いが技後硬直時間が短い。

 

ノクティス・ラージュ

 

6連撃

紫閃剣上位ソードスキル。突き4撃後、背後に回り込み十字に切り裂くソードスキル。

 

インフィニット・ゼロ

 

10連撃

紫閃剣上位ソードスキル。素早い動きで敵を翻弄して切り裂き最後の一撃を横凪ぎに切り裂くソードスキル。自身に攻撃力、防御力上昇のバフがつく。

 

マザーズ・ロザリオ

 

11連撃

紫閃剣最上位ソードスキル。斜めに5撃ずつ高速の突きを放ち止めに十字の中心点に突きを放つ。

超高速で突きを放つため視認することはほぼ不可能。

 

ファントム・メイソリュト

 

10連撃

紫閃剣秘奥義ソードスキル。一撃、一撃の威力が高く攻撃速度が高い。使用前に溜めとして2秒要する。残影が残る程の速さで敵を切り裂き貫く。秘奥義のため通常のソードスキルとは違う威力を保有。

 

 

変束剣ソードスキル

 

使用者:ラン

 

イーヴェリアス

 

2連撃

下からの切り上げから上からの切り下げを繰り出すソードスキル。

 

フォールアウト

 

4連撃

対象の物理防御力を下げる効果を持つソードスキル。

 

エルネイト

 

5連撃

1つの場所を集中的に攻撃し敵を束縛させるソードスキル。

 

ルージュ・ア・ラインズ

 

5連撃

切り裂いた箇所を一定時間動けなくさせることが出来るソードスキル

 

レヴィア・グランキエス

 

7連撃範囲技

敵に一瞬で接近し自身の周囲の敵を凪ぎ払うソードスキル。

 

シュヴァルツィエ・ブレイド

 

11連撃

自身に速度上昇のバフを掛け敵を切り刻むソードスキル。刻まれた敵は麻痺と出血、どちらかのデバフを一定の確率で受ける。

 

アイン・フリューゲル

 

9連撃重攻撃技

変束剣上位ソードスキル。一撃で3撃を叩き込む一撃の速さが速いソードスキル。

 

ナイトレス・クラウド

 

8連撃

変束剣上位ソードスキル。高速の切り裂き4撃と突き4撃を交互に与えるソードスキル。追加効果として鈍足と混乱のデバフを一定の確率で与えることが出来る。

 

ラスティー・ネイル

 

連撃数不明

変束剣最上位ソードスキル。装備している剣を伸ばし敵を切り裂いたり束縛、したり出来るソードスキル。そのため連撃数が不明。

これを受けた対象は束縛、鈍足、スタン、混乱、出血、麻痺のデバフのいずれかを受ける。

 

ライトニング・エンプレス

 

15連撃

変束剣秘奥義ソードスキル。一撃、一撃の威力が高く攻撃が重い。使用前に溜めとして2秒要する。秘奥義のため通常のソードスキルとは違う威力を保有する。

 

 

神速ソードスキル

 

使用者:アスナ

 

エアロ・ストライク

 

単発突進技

射程距離はやや長いがその分、威力が落ちる。突進系のソードスキル。

 

メモリアル・フラッシュ

 

6連撃

突きからの切り裂き3撃、高速の突きを2撃連続で放つソードスキル。攻撃力上昇のバフを得る。

 

マテリアル・ダンス

 

5連撃重攻撃技

スクエアを描くように切り裂き、貫く。敵のバランスを崩すことが出来るソードスキル。

 

トゥルー・オブ・ライト

 

8連撃重攻撃技

一瞬で3撃叩き込み、敵の背後に回り更にもう一度攻撃し敵のバランスが崩れたところにクロスを描くようにして斬るソードスキル

 

エッジ・オブ・テンペスト

 

11連撃

嵐を起こさせるように高速で動き敵を切り刻むソードスキル。速度上昇のバフを得る。

 

スターリー・モーメント

 

7連撃

神速上位ソードスキル。星の記憶のように高速で敵を貫くソードスキル。

 

エンジェル・リバーシリング

 

10連撃範囲技

神速上位ソードスキル。自身の範囲360度。全方位にる敵を攻撃し最後に衝撃波で吹き飛ばすソードスキル。

 

ゴット・ストライク

 

単発突進技

神速上位ソードスキル。射程距離が長く細剣ソードスキル、フラッシング・ペネトレイターの射程を大きく凌駕する。全ソードスキル中トップクラスの速さを持つ。

 

スターリー・ティアー

 

5連撃

神速最上位ソードスキル。五芒星を描くように超高速で神速の突きを放ち攻撃するソードスキル。

 

ミーティア・ライト・レイン

 

12連撃

神速秘奥義ソードスキル。一撃、一撃の威力が高く攻撃速度が早いに加え重い。使用前に溜めとして2秒要する。宇宙からふる流星のように敵を貫くソードスキル。敵を貫く事に特化したソードスキル。通常のソードスキルとは違う威力を保有する。

 

 

無限槍ソードスキル

 

使用者:リーザ

 

ライン・ストライカー

 

単発突進技

槍を構え一瞬で敵に接近し貫くソードスキル。

 

インビシカル・ローレイン

 

5連撃カウンター技

敵の攻撃を受け流しその反動と威力を伴い攻撃する。

 

パラレル・リストレイント

 

4連撃範囲技

自身の範囲360度。全方位に攻撃するソードスキル。一定の確率で相手に拘束のデバフが与えられる。

 

ミスティク・ソーン

 

7連撃範囲技

攻撃を受けた敵は必ず数秒動けない拘束状態になる。但し巨大なモンスターには一定の確率でなる。

 

ファンタズティカル・ティアー

 

9連撃

敵に攻撃を与えるごとに自身の攻撃力が上昇する。攻撃力重視のソードスキル。

 

ファントム・ラヴァース

 

7連撃重攻撃技

敵に接近し一撃で3撃を叩き込んだあと、往復凪ぎ払い、突きの2撃をぶつけるソードスキル。防御力低下のデバフを与えることが出来る。

 

ミスティカル・レインズ

 

8連撃

無限槍上位ソードスキル。幻想のように敵を瞬時に切り刻み屠るソードスキル。

 

キメラ・ディビジョン

 

4連撃重攻撃技

無限槍上位ソードスキル。一ヶ所を集中的に。連続で放ち相手の体勢を崩すソードスキル。一定の確率で拘束か鈍足のどちらかが相手に付与される。

 

エヴァー・レス・ノーツ

 

3連撃

無限槍最上位ソードスキル。槍を構え敵を貫く事に特化したソードスキル。防御、攻撃の両方を兼ね備えている。カウンターは不可能な攻撃。

 

グロリアス・インフィニッション

 

13連撃

無限槍秘奥義ソードスキル。一撃、一撃の威力が高く重い。使用前に溜めとして2秒要する。突きと斬るの連撃をし止めの一撃に上に飛びあがり重力を受けて落ち敵を貫くソードスキル。通常のソードスキルとは違う威力を保有する。

 

 

抜刀術ソードスキル

 

使用者:ラム

 

蓮花

 

単発範囲技

鞘に納めた状態の刀を抜刀し前方の敵を切り裂くソードスキル。

 

斬岩剣

 

単発重攻撃技

岩をも一撃で切り裂くことが出来るソードスキル。敵に防御力低下のデバフを与えることが出来る。

 

真蒼

 

10連撃範囲技

一撃で前方の敵に10連撃を与えるソードスキル。防御力低下のデバフを与えることが出来る。

 

斬魔剣

 

3連撃

アストラル系のモンスターに特効を持つソードスキル。通常のモンスターにも効果はあるが、アストラル系のモンスターでは威力が倍になる。

 

斬魔剣・二の太刀

 

6連撃

抜刀術上位ソードスキル。同上の斬魔剣より威力が倍になりよりアストラル系のモンスターに特効が効くソードスキル。

 

緋吹雪

 

39連撃範囲技

抜刀術上位ソードスキル。防御を捨て速度特化のソードスキル。敵に接近し連続で周囲の敵を攻撃する。攻撃力と速度上昇のバフを得る。

 

百裂桜花斬

 

15連撃範囲技

抜刀術上位ソードスキル。周囲の敵に連撃で攻撃し攻撃の余波で敵を切り刻むソードスキル。

 

雷鳴剣

 

7連撃範囲技

抜刀術上位ソードスキル。雷が鳴り響くように周囲の敵に連続で切り裂くソードスキル。敵に麻痺のデバフを与えることが出来る。

 

決戦奥義・雷光剣

 

17連撃

抜刀術最上位ソードスキル。1を持って2を知るように一撃で数回切り裂きラストに上からの切り下ろしを与えるソードスキル。自身に速度、攻撃力上昇のバフがつく。

 

閃雷神蒼斬

 

20連撃

抜刀術秘奥義ソードスキル。一撃、一撃の威力が高く攻撃と速度が高い。使用前に溜めとして2秒要する。敵を瞬時に切り刻み攻撃する。通常のソードスキルとは違う威力を保有する。



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HF編 第87話 〈二人のクエスト〉

「プリヴィベート!ソーナです。今回も問題をやりますよ。今回のゲストはあの二人です。それではゲストさんどうぞ!」

「ヤッホー!みんな、プリヴィベート!レインだよ♪」

「みなさん、こんにちはアスナです」

「こんにちは、アスナ、レイン。レインは2回目ですね」

「うん♪また呼ばれてうれしいよ」

「私は今回初めてですけど嬉しいです。ありがとうございます、ソーナさん」

「いえ」

「でも、今度はまたキリトくんと来たいかな?」

「それは、また今度考えてみますね」

「お願いねソーナ♪」

「ええ・・・・・・・それでは問題を出します!」

問題:『今回、キリトとレインが受けるクエストでキーアイテムとなるのはな~んだ?』

Ⅰ:指輪

Ⅱ:ペンダント

Ⅲ:イヤリング

Ⅳ:ブローチ

「答えは本文の最後に!」



第81層攻略完了から数日。現在の最上層は第82層。ホロウ・エリアと階層攻略を交互に行ってしばらくたったとき。

 

「パパ、ママ。結婚状態に戻せるかもしれないクエストが見つかりました」

 

ユイが夕飯の席でそう言った。

 

「ほんとかユイ!」

 

「ユイちゃん、見つけたの!」

 

「ちょっと二人とも。少し落ち着いてください」

 

「アハハ。まあ、でも気持ちも分かるけどね」

 

「うっ・・・・ごめん」

 

「スマン。ラン、ユウキ」

 

「それで、そのクエストなんですけど」

 

「あ、ああ」

 

「クエスト名は《祝福の儀式》って言うらしいです」

 

「《祝福の儀式》?」

 

「聞いたことないね。ランちゃんたちはどう?」

 

「私も聞いたことないですね」

 

「ボクも聞いたことないよ」

 

「どうやらつい最近、新しく出たクエスト見たいですね」

 

「へぇー」

 

「ユイ。それはどこで受けられるんだ?」

 

「ごめんなさい。私の権限ではそこまでは・・・・・ですが第76層より上の階層だと言うことは確かです。あと対になる指輪が必要みたいです」

 

「対になる指輪・・・・・・・か」

 

「ありがとう、ユイちゃん」

 

「ああ。ありがとうなユイ。早速明日探してみるよ」

 

「はい!パパ、ママ。頑張ってください」

 

「二人ともしっかりね」

 

「二人とも頑張ってください」

 

俺とレインはユイ、ユウキ、ランから応援してもらい明日からクエスト《祝福の儀式》を探すことにした。

そして翌日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第79層主街区「アイオトル」

 

「へぇ、こんなところに教会なんてあったんだな」

 

「ほんとだ。珍しいね」

 

俺とレインはクエスト《祝福の儀式》を受注するためこのクエストをあちこちで探していた。

そして79層のある一角に珍しいものがあるのを目にしたのだ。

 

「ん?中から何か音が聞こえるよ?」

 

「え?」

 

レインの声に耳を澄ませると、教会から金属音が聞こえてきた。何処かで聞いたことのある音だ。

 

「あれ?この音って」

 

「レイン?」

 

レインは教会の中へと入っていく。俺はそのあとを追い掛けた。

 

「これは・・・・・・・工房?」

 

「やっぱり♪金属を鍛治用ハンマーで叩く音だったね」

 

「さすがだなレイン」

 

「えへへ♪」

 

「おや?お客様がいらっしゃいましたか。申し訳ありません、普段は工房に籠っているので気づきせんでした」

 

中に入ると人がいた。NPCのようだ。

そのNPCは神父さんの格好をしていた。恐らくこの教会の神父さんなのだろう。

 

「いえ、こちらこそお邪魔します」

 

「この教会は工房があるんですね」

 

「ええ。ここで銀や貴金属を加工し色々なものを作りそれを生活費として過ごしています」

 

「へぇー。どんなものを作られるんですか?」

 

「主にアクセサリー、指輪、等の類いですね」

 

「「指輪!?」」

 

「はい」

 

指輪、という言葉に驚いていると新年さんの頭上にオレンジ色の『?』マークが表示された。クエストマークだ。

 

「すみません!指輪を作ってもらいたいんですが」

 

「どのような指輪でしょう?」

 

「え~と、対の指輪、です」

 

「ほう、対の指輪ですか」

 

「はい。作れますか?」

 

「そうですね。お入り用でしたらお作りしますの。普通の指輪でしたらすぐに作れます」

 

「と言うことは普通じゃない指輪もあるんですか?」

 

「ええ。この層で手に入る金属を使えば素晴らしい輝きの指輪ができますよ。ですが、その金属は強いモンスターが守っているため材料がとても手に入りにくいんです。この街の西側に縄張りを持つモンスターなんですが」

 

「そうなんですか」

 

「神父さん、ありがとうございます。その金属が手に入ったら、すぐ持ってきますね」

 

「ええ。お待ちしてます。道中、お気をつけください」

 

神父さんから話を聞き終えると、俺たちは教会から出た。

 

「キリトくん!」

 

「ああ、わかってる。さっそく材料を集めに行くとするか」

 

「うん!キリトくん、準備は?」

 

「いつでも構わない!」

 

「じゃあ、行くよ!」

 

「ああ!」

 

俺とレインは装備を整えるとすぐさま街の西側に出ると言うモンスターを探しに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第79層 西側 草原フィールド

 

街を出て数刻後

 

「見て、キリトくん!」

 

俺たちは西側のフィールドのある一角にいた。

 

「あれが神父さんの言っていた、クエストアイテムか?」

 

「多分ね。そして、その前にいるのが・・・・・・」

 

「クエストボスか?大した迫力だが・・・・・」

 

「うん。ホロウ・エリアのボスや階層主に比べれば簡単だね」

 

「ああ。・・・・・・・・そうだな」

 

「あのスキルを使ってさっさと倒しちゃお♪」

 

「よし、行くぞレイン!」

 

「うん!」

 

俺とレインは双剣を抜刀し、

 

「「共鳴(レゾナンス)!!」」

 

互いの手を取り合い、同時に発言する。

 

「はああぁぁぁぁぁあ!!」

 

「ぜりゃあぁぁぁぁあ!!」

 

俺たちはクエストボスに瞬時に近づくと足の付け根を切り裂いた。

そして、ボスの背後に移動し距離をとる。

ボスはゴーレム型でNMクラスだった。体力ゲージは2段。だが、今の一撃でゴーレムのHPゲージは残り9割まで減っていた。

 

「うわぁ~・・・・・・・」

 

「相変わらず凄いなこのスキルは」

 

「ホントだね。相手はゴーレム型でNMなのに、もうHPゲージが残り9割だよ」

 

「しかもたった一撃でな」

 

「うん」

 

呑気に会話しながら、俺とレインはゴーレムに攻撃を与えていく。

片方が攻撃し、片方が防御する。二人で1つの攻撃だ。

ゴーレムのHPは減っていくに対して、俺とレインのHPゲージは全く減っていない。

 

「よっと・・・・・!」

 

「せいっ・・・・・!」

 

斬って、斬って、避けて、斬って、パリィして斬る。

それの連続。

互いに次、何するかわかっているからこそ出来る芸当だ。これを普通の人がやっても訳が分からず出来ないだろう。

ゴーレムを攻撃し始めて10分後

 

「ぜあっ!」

 

「キリトくん、あと一撃!スイッチ行くよ!」

 

HPゲージが一段減りゴーレムの攻撃パターンが変わり、残り2割まで減らしていた。

 

「あと一撃!?・・・・・・・分かった!スイッチ!」

 

「うん!はあああああっ!!」

 

レインとスイッチし、レインがゴーレムの動きを封じる。

 

「キリトくん!」

 

「ああ!」

 

「「スターダスト・ロンド!!」」

 

俺とレインは、今≪シンクロ≫で使えるソードスキルを放つ。《スターダスト・ロンド》合計10連撃を放つソードスキル。

ゴーレムはなんとか攻撃しているが、俺とレインには掠りもしない。

《スターダスト・ロンド》を喰らいゴーレムはその巨体をポリゴンの欠片へと変えた。

 

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・や、やった~」

 

「ふ~~~~ぅ。ああ。大丈夫かレイン?」

 

「うん。私は大丈夫だよキリトくん。キリトくんは?」

 

「俺も大丈夫だ」

 

「よ、よかった。あ、アイテムを回収しないと」

 

「そうだな」

 

俺とレインはボスの背後にあったアイテムを回収した。

 

「これで、大丈夫か?」

 

「多分ね。ちょっと、多めに取りすぎたかな?」

 

「いや、なんかあったときの為に取っといた方が良いだろう」

 

「それもそうだね。それじゃあ教会の神父さんの所に向かおう」

 

「ああ」

 

"ん?これはドロップアイテムか?特殊クエストのドロップアイテムだし、なにか使えるかもしれない。一応持っておくか"

 

クエストアイテムを回収し、俺たちは街の教会へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第79層「アイオトル」

 

「これは驚いた・・・・・・・もう持ってこられたんですか!?」

 

「はい」

 

「まあ・・・・・・」

 

「いったい、どうしたらこんなにはやく用意できるのですか?」

 

「ええと、頑張った、というか・・・・・・」

 

「なんて言ったらいいのかな・・・・・?」

 

俺とレインは互いの目を見て

 

「「愛のなせる業かな(です)」」

 

と同時に言った。

 

「それは、素晴らしい!そんなお二人に、急いで指輪をお作りしますのでちょっと待っていてください」

 

そう言うと神父さんは工房へと入っていった。

その5分後、

 

「お待たせしました。こちらが指輪になります」

 

神父さんが2つの指輪を持って戻ってきた。

早すぎると思うがここがゲームの中だと言うことを思いだし、考えなかった。

 

「特殊な材料を使っておりますので普通の指輪とは輝きが違いますよ」

 

「うわぁ~・・・・・すごく綺麗・・・・・透明感がすごいよ・・・」

 

「ああ。やっぱりレアアイテムって感じがするな」

 

「もお、キリトくん。そう言う事じゃないよ」

 

「え?どう言うことだ?」

 

「確かにレアアイテムだけど、これは私とキリトくんの二人の愛のなせる業で獲得したものなんだよ」

 

「そう言うことか」

 

「わかった?」

 

「ああ。確かにこれはとんでもないレアアイテムだな。俺とレインのな」

 

「えへへへへ/////」

 

俺とレインは神父さんから指輪を受け取った。

指輪を受け取ると『「貴重品」儀式の指輪(無色)』と視界のフォントに現れた。

 

「やはり、あなた方も例の儀式に挑戦なされるのですか?」

 

「例の儀式?」

 

「神父さん、例の儀式とはなんですか?」

 

「《祝福の儀式》ですよ。この指輪をつけたまま順に《禊の湖》《思い出の地》《絆の神殿》を巡ることを言います。あなた方のようなお若いお二人がよく挑戦されていらっしゃいますよ」

 

「まだ、工程があったんだな・・・・・」

 

「うん。ユイちゃんも指輪を作ったら終わりって言ってなかったから・・・・・」

 

「そう言えばそうだな・・・・・」

 

「ここからが《祝福の儀式》の本番ってことになのかな?」

 

「多分な・・・・・・長くなりそうだな・・・・・でもまあ、大きく前進したか」

 

「そうだね。後は指定の場所を巡るだけだよ」

 

「ああ」

 

「そしたら私たち・・・・・また・・・・・うん。一緒に頑張ろキリトくん」

 

「ああ。もちろんだ。一緒に頑張ろう」

 

こうして俺とレイン、二人のクエストが始まった。

俺たちはそれぞれ同じ事を目標にして、クエストの攻略を目指す。

そして、このクエストで様々なハプニングがあることは、これまた別の話だ。

 




「それじゃあ答えを言うよ!レイン、よろしく!」

「うん!答えはⅠ:指輪です!」

「みんなわかったかな?」

「キリト君とレインちゃんが受けるクエスト《祝福の儀式》には指輪が欠かせないアイテムなんだよね、ソーナさん」

「ええ。一番最初に手に入る指輪がこれから巡る場所で必用となり重要なアイテムですから」

「へぇー」

「ですからこのクエストをやるときは必ず指輪をつけてくださいね」

「うん!」

「レインちゃん。クエスト、頑張ってね。応援してるわ」

「ありがとうアスナちゃん。キリトくんと一緒に頑張るね」

「レイン、キリトと一緒に頑張ってくださいね」

「もちろん!レインちゃんにお任せあれ!」

「ふふ」

「頼もしいですね。それでは時間になりましたので今回はここまで」

「「また次回お会いしましょう!」」

「ダスヴィダーニャ~!」


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HF編 第88話 〈ユイの暴走とハチャメチャハプニング!〉

「みなさんこんにちは、ソーナです!まずは謝罪を、遅くなりごめんなさい!何かと忙しかったり他作品の投稿で遅くなりました。これからはもう少し早く投稿できるようにしますね。さて、新しく[SAO アリシゼーション]が始まりました。第4シリーズ、どうなるのか楽しみです。では、前置きはこれぐらいにして、本日のゲストをお呼びします。今回は[アリシゼーション]編スタートと言うことでスペシャルゲストが2名いらしてます。ではどうぞ!」



「どうも、キリトです」

「プリヴィベート、レインだよ」

「はじめまして、ユージオです」

「整合騎士アリス・シンセシス・サーティです」

「ようこそ、キリト、レイン。それにようこそ、ユージオ、アリス」

「今回は呼んでくれてありがとうソーナ」

「まだ、本作に登場してないので呼ばれるとは思いませんでした」

「ホントだな、まさかユージオとアリスが来てるなんて思わなかったぜ」

「うん」

「今回は[アリシゼーション]編開幕と言うことなので[アリシゼーション]編の登場人物、ユージオとアリスに来ていただきました!」

「ハハハ。でもまだ、始まったばかりだからね。どうなるかは分からないよ」

「ええ。見る限り原作とはどうやら随分違うようですからね」

「あぁ、そう言えば最初、クラインやリズにシリカがGGOの中にいたからね」

「ホントだね。でも、私やフィリアちゃん、ストレアちゃんはいないんだよね」

「大丈夫です、レイン。今作でもアリシゼーション編をやる予定なのでそこにはちゃんと出ます」

「ホント!嬉しいな~」

「でも、何時になるかはわからないけどね」

「うっ、いたいところをついてくるな~」

「アハハ」

「やれやれ」

「では今回の問題を出します!」

問題:『今回、ユイの暴走の原因となったのは誰?』

Ⅰ:クライン

Ⅱ:アルゴ

Ⅲ:ストレア

Ⅳ:リズ

「答えは本文の最後に!」


クエスト『祝福の儀式』を攻略する中、階層攻略は第84層まで、ホロウ・エリアは既に入り江エリアのボス部屋を見つけており明日、攻略に向かう予定だ。

そして今日は久し振りに羽根を延ばせる日。・・・・・・・・・・の、はずだった。

 

 

 

 

 

第76層アークソフィア エギルの店

 

今日、俺はユイのお願いで一緒に商業区に出掛けていた。ほんとはレインも来たがっていたがリズに連れていかれた。リズがレインを連れていくときの光景に俺とユイは呆然とするしかなかった。

そしてエギルの店に帰ると。

 

「ふむ・・・・・・・」

 

いつにもなく真剣な顔をしていたクラインが座っていた。

その近くにはラムが本を開いていた。だが、その顔はクラインを呆れて見ていた

 

「パパ、パパ」

 

「どうした、ユイ?」

 

「あれ・・・・・クラインさんは何をしているんですか?」

 

「さあ?」

 

俺とユイはラムとクラインに近づいた。

 

「・・・・・ラム」

 

「キリト、ユイちゃんお帰りなさい」

 

「ああ。ところでクラインは何をしてるんだ?」

 

「なんと言うか、その・・・・・・」

 

「あー・・・・・・なんとなく察したわ。・・・・・・・クライン」

 

「お、キリトじゃねえか」

 

「なにしてんだクライン」

 

「おう、キリ公!見てみろよ、あの子の胸・・・・・でっかくて、ぽよんぽよんで・・・・・かーっ!たまんねぇなあ!!」

 

「ハアーー・・・・・・と言うわけですキリト」

 

「ハアーー・・・・・・なんとなく良からぬことを企んでいるとは思ったが・・・・」

 

「いいじゃねえか!ちょっとくらい、無慈悲できびしいハラスメントコード様もこうやって、眺めてるだけなら、お咎めなしだぜ」

 

「あのなあ・・・・」

 

「クライン・・・・・」

 

「・・・・・・・?クラインさんは女性の胸部が好きなんですか?」

 

「おう、男なら、みんなそうさ」

 

「男なら・・・・と言うことはパパとラムさんもですか?」

 

「いや、それはないから」

 

「同じく、そんなことは・・・・・・・というか、おいクライン、ユイにヘンな事を教えるな」

 

"カランコロン♪"

 

「た、ただいまー」

 

「レイン、お帰り」

 

「お帰りなさいママ」

 

「うん。ただいま、キリトくん、ユイちゃん」

 

「ず、ずいぶんとお疲れだな?」

 

「リズっちに振り回されたからね」

 

「な、なるほどな」

 

「た、ただいまー、ラム~」

 

「おわっ!?り、リーザ!?大丈夫?」

 

「な、なんとか~」

 

「イヤー、ごめんごめん二人とも」

 

レインに続いてリーザ、その後にリズから順に女子勢が帰ってきた。

 

「リズ、一体何があったんだ?」

 

「え?いや、それは、ほら、え~と・・・・・・」

 

「レイン?」

 

「着せ替え人形・・・・・・」

 

「・・・・・・・ああ。お疲れ様」

 

「いや、他にも商業区を回ったから!」

 

と、そんな会話をしていると。

 

「パパ、パパ」

 

「ん、なんだ?ユイ」

 

「パパはこの中でだれの胸部が一番好きですか?」

 

ユイの放った一言で時間が止まった。

正確には時が止まったように感じた、だが。

 

「ぶっ!?」

 

「けほっ!?」

 

そして、俺とラムは同時に噎せた。

口に飲み物が入ってなくて良かった。

 

「えっ・・・・・・」

 

「きょ・・・・・胸部?」

 

「それって・・・・胸のことよね・・・・・・」

 

「き、キリトこれはまずい気が・・・・・・・」

 

「お、おいユイ、その話は・・・・・・」

 

「そ、その話って・・・・・・キ、キリト君?」

 

「いや、あのな、リーファ・・・・・・・・(ビクッ)」

 

"なんだいきなり物凄い寒気が・・・・・"

 

「キリトくん・・・・・・・?」

 

「れ、レイン・・・・・」

 

「キリトくん、私がいない間にユイちゃんになに教えていたのかな?」

 

「ちょ、話を聞いてくれ!これは、クラインがだなって・・・・・どこ、行ったクライン?」

 

「クラインさんならつい先程慌てて出ていきましたよ」

 

「あんにゃろ」

 

「逃げたなクラインさん」

 

「大体話は・・・・・見えたわ・・・・どうせクラインが男はみんな胸が好き。とかそんな話をしてたんでしょ」

 

「まったくもってその通りだ、すごいな、リズ」

 

「さすがです」

 

「すごく言いそうだもの、しょうがないヤツね・・・・・まったく」

 

「それで、パパは誰のが一番好きなのでしょう」

 

「だから、クラインが言った事はデタラメで、別に誰も男だからってそんな・・・・・・」

 

「いいじゃない、答えてあげなさいよ。ついでにラムも答えたら」

 

「シノンさん!?」

 

「なに言ってんだシノン!?」

 

「誰を選んでも恨んだりしないから」

 

「恨むとかそういうことじゃなくて・・・・・・ってシノン、俺とラムをからかってるだろ!」

 

「別に~、そんなことないわよ」

 

「嘘つけ!」

 

「パパ、迷っているのでしょうか・・・・・」

 

「迷ってるんじゃなくて困っているんだよ、ユイ・・・・・」

 

「どうすればいいんだ・・・・・・」

 

「わたしはクラインさんやパパたちがなぜ胸部に興味を惹かれるのか・・・・・・そして、どんな胸部が好みなのか理解したいんです!」

 

「ユ、ユイ・・・・・お前の探求プログラムはどうしてそこにこだわるんだ・・・・・・」

 

「ユイちゃん、なんか間違っているような・・・・・・」

 

「んー・・・・・・ママ、ちょっと失礼しますね」

 

「えっ?」

 

モミュ!モミュ!

 

「きゃっ!ちょ、ユイちゃん!?」

 

ユイがレインに近寄ると両手でレインの胸を揉んだのだ。

 

「柔らかくて、ぷにぷにです・・・・・!」

 

「ゆ、ユイちゃんってば・・・・・・て言うかなんで二回揉んだの!?」

 

「ぷにぷにって・・・・」

 

「キリトくん、想像しないで!」

 

「してないしてない!」

 

「ラムは見ちゃダメ!」

 

「ちょ、リーザ!」

 

「次はリーザさんです」

 

モミュ!

 

「え?ひゃっ!」

 

「ママと同じくらいぷにぷになのです・・・・・!」

 

「ぷにぷに・・・・・・」

 

「ら、ラムっ!」

 

「キリトくんは見ちゃダメだからね!」

 

「ちょ、れ、レイン!」

 

その時、

 

"カランコロン♪"

 

「おっ邪魔しまーす♪」

 

「オレっちもいるゾ・・・・・・って、ん?なんだこの雰囲気」

 

「ホントだ。ねぇねぇどうしたの?」

 

ストレアとアルゴが同時に入ってきた。

 

「あー、そのー・・・・・」

 

俺がどう説明したものか口を濁していると、

 

「次は・・・・・アスナさんです」

 

「え?ちょ、ユイちゃん!?」

 

モミュ!

 

「うわぁ、とっても柔らかです・・・・!」

 

「ううう・・・・・・・」

 

「や、柔らかって・・・・・」

 

「キリトくん!」

 

「はっ、はいっ!」

 

「なんで、ユイちゃんがアーちゃんの胸を揉んでるんダ?」

 

「じ、実は・・・・・・・」

 

 

 

〈事情説明中〉

 

 

 

「なるほどナ」

 

「ふぅ~ん、なんか楽しそうだね!」

 

「「何処が(ですか)!?」」

 

ストレアの言葉に俺とラムは同時に突っ込んだ。

その間にもユイは。

 

「次は・・・・・リズベットさんです!」

 

モミュ!

 

「へ?ひゃううっ!ちょ、ちょっと……ユイちゃんってば」

 

「なるほどなのです」

 

「な、なるほどって・・・・・・」

 

「・・・・・・・(視線ずらし)」

 

「キリト!ラム!」

 

「考えてない!考えてないって!」

 

「俺は見てないんですけど!」

 

「う~ん、まだ情報が足りません・・・・・」

 

ユイはそう言うと、今度はシリカの方に走っていった。

 

「え・・・・・?わわっ!」

 

モミュ!

 

「ダ、ダメだよっ!!あははっ!くすぐったい!」

 

「シリカさんもちゃんと柔らかです」

 

「ちゃ、ちゃんとってちょっと酷いよっ!」

 

「次は・・・・・リーファさんです!」

 

「え?」

 

「うわぁ、リーファさんはスゴそうです!」

 

モミュ!モミュ!

 

「ひゃあっ!」

 

「思った通り・・・・・・すごい情報量です!」

 

「なんで私と同じで二回揉んだの!?」

 

「ふえぇ・・・・」

 

「なんか楽しくなってきました!」

 

「ま、マズイ。ユイ、なんか変なスイッチ入ったぞ」

 

「ちょっと!こんなヘンな遊びしちゃダメでしょ!」

 

「遊びじゃあないですよ、研究です!」

 

と、言うとすかさずシノンに近づき。

 

モミュ!

 

「ん・・・・・・っ!?」

 

「シノンさんのも触ってて気持ちいいですね!」

 

「き、キリト!アンタ保護者でしょ!何とかしなさいよ!」

 

「次は・・・・・」

 

「え?ぼ、ボク!?」

 

ユイは顔をユウキに向けるとまたまた走っていき。

 

モミュ!

 

「ひゃん!」

 

「なかなかの気持ちよさです!」

 

「なかなかって」

 

「キリト、助けてよ!」

 

「え、え~と・・・・・」

 

「次は・・・・・」

 

「え!?ちょ、きゃあ!」

 

モミュ!

 

「ランさんのも触ってて気持ちいいです!」

 

「き、キリトさん助けてください!」

 

「あー、え~と・・・・・・」

 

「こ、これはヤバそうだな・・・・・・そ、それじゃあオレっちはこれで・・・・・・・」

 

「次はアルゴさんです!」

 

帰ろうとそろりそろり出口に向かうアルゴにユイは走っていき、またしても。

 

モミュ!

 

「んっ・・・・・」

 

「アルゴさんもちゃんとあるんですね」

 

「ゆ、ユイちゃん、それはちょっと酷くないカ!?」

 

「最後は・・・・・」

 

「え?まさか私?」

 

「これは・・・・・・・スゴそうです!」

 

モミュ!モミュ!

 

「あんっ!」

 

「想像以上のスゴさです!」

 

ユイの暴走は女子全員の胸を触ることによりようやく収まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お騒がせしました、研究のご協力、感謝します」

 

「あのなぁ・・・・・」

 

「や、やっと終わった・・・・・」

 

俺とラムは先程までの光景に疲れていた。

 

「胸部にもいろいろあるんですね。パパ、わたしはですね、リーファさんかストレアさんがおすすめです!」

 

「いや、オススメって薦められてもな・・・・・・」

 

「た、確かに・・・・・・」

 

「どうですか?いままでのわたしのレポートから誰が一番か、決まりましたか?」

 

「と、言われてもな・・・・・・・」

 

「もう、ここまできたら、誰が一番か言っちゃいなさいよ」

 

「え!?ちょ、リズ!?」

 

「やっぱりパパは、ママのが一番ですか?」

 

「まあ、普通はそうなるでしょうね~」

 

「や、止めてよリズっち!」

 

「誰ですか誰ですかっ!?」

 

"ど、どうすればいい。素直にレインと答えるか、いや、だがそうなるとリズとアルゴ辺りから、からかわれるのは目に見えてるし・・・・・・とにかく、うまく誤魔化すしかない・・・・・・"

 

「お、俺は、ユイのがいいかな」

 

「え?わたしのですか?」

 

俺の言葉にまたしても時が止まったようになった。

 

「えっ?キリトくん、まさか・・・・・・・」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

「キー坊・・・・・?」

 

「キリトさん、もしかして・・・・・」

 

「あ、あれ?」

 

"うまく誤魔化したつもりだったんだが、何か間違えたか?"

 

俺が思考していると。

 

「キリト、それだと別の意味で解釈されかと・・・・・」

 

「ど、どう言うことだラム?」

 

「なるほど!やわらかいほうがいいと思ったんですが違うんですね!」

 

「いや、違うからなユイ。そう言うことじゃなくて」

 

「それでは、エギルさんのはどうですか!胸板カチンカチンですよ?」

 

「あ、ああ!そうだな!・・・・・・・・うん!エギルだ!」

 

「ええっ!」

 

「キリト・・・・」

 

「こ、これは・・・・・」

 

「こ、これも違うのか!?」

 

「アンタも大変ね・・・・・」

 

「た、助けてくれ・・・・・・シノン!」

 

「黙ってレインって言えば良かったのに。全く」

 

「では、ラムさんはどうですか!」

 

「え!?ここで俺に来る!?」

 

「ラムはやっぱリーザでしょ」

 

「リズさん!」

 

「・・・・・・・・」

 

「あ!逃げた!」

 

「ら、ラム!待ってください!」

 

逃げたラムを追ってリーザも店から飛び出していった。

そして俺は。

 

「結局キリトはどうなのよ?」

 

リズからまだ聞かれていた。

シノンは手助けしてくれないようだ。

 

「か、勘弁してくれ~!」

 

「う~ん・・・・胸部は奥が深いです」

 




「では、答えを発表するよ!今回はアリスお願いね!」

「分かりました。答えはⅠ:クラインです」

「全くクラインのせいで大変な目にあったぜ」

「アハハ、同情するよキリト」

「同じく同情します」

「ありがとう、ユージオ、アリス」

「ユイちゃんがあそこまでするなんて思わなかったよ」

「ああ。ユイの探求プログラムがあそこまでとは・・・・・・」

「もし私がそのクラインとやらに出会ったならば即刻、記憶解放術で消し炭にしてやるのですが」

「アリス、お願いだからここで『金木犀の剣』を出さないで!」

「これは失礼しましたソーナ」

「アハハ・・・」

「ユージオも笑ってないで手伝ってほしかったんですけど」

「ご、ゴメン、ソーナ」

「おっと、時間になってしまいました」

「ホントだね」

「なんかあっという間に時間が過た感じがするよ」

「ええ」

「ユージオとアリスの二人にはたまにこちらにゲストとして登場していただくので安心してください」

「ホント、また呼んでくれるなんてうれしいよ」

「ええ。私もうれしいです」

「二人ともこれから頑張ってください」

「もちろんだよ」

「当然です」

「では、また次回お会いしましょう!」

「ダスヴィダーニャ~!」

「それじゃあまたね!」

「また、お会いしましょう!」

「また、会おう!」

「それではみなさん、Don't miss it.!」


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HF編 第89話 〈エリアボス、デトネイター・ザ・コボルドロード〉

「プリヴィベート!こんにちはソーナです。今回もゲストさんとともに問題を出していきます。今回のゲストはこの方です、どうぞ!」

「ヤッホー、みんな。フィリアです」

「ようこそ、フィリア」

「あ、ソーナ。今日は呼んでくれてありがとう」

「いえいえ。フィリアは何かと災難が続いてるよね」

「ホントよ。訳のわからない場所に飛ばされたり、いきなり人の目の前でイチャイチャするカップルがいたりと」

「アハハ・・・」

「あーーっもお、思いだしたらムカついてきた。ソーナ、早く問題だして!」

「オッケー。今回の問題は此方です」

問題:『今回、出てくるボスの取り巻きとして現れるコボルドの数は合計何体?』

Ⅰ:4体

Ⅱ:8体

Ⅲ:12体

Ⅳ:16体

「答えは本文の最後に!」


ホロウ・エリア 入江エリア ならず者の玉座前

 

 

~キリトside~

 

 

「やっと着いた・・・・」

 

「ああ。やっと着いたな・・・・・」

 

「ホント、目茶苦茶面倒くさかったわね・・・・・」

 

俺、レイン、フィリアは目の前にある、ボスへ続く扉を見て言った。

今回のエリアは特に時間がかかった。

階層攻略もそうだが、こっちの入り江エリアは何故かあちこちにギミックが多くそれに手間取ったりして遅くなったのだ。

 

「開けるわよ」

 

「うん」

 

「ああ」

 

フィリアの鍵開けスキルによって開かれた大きな扉の奥は暗かった。

そして、それぞれ武器やアイテム類を整えると中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ならず者の玉座

 

 

「あれは―――!!」

 

俺は扉を抜けボス部屋を確認するため覗き見て、ボスの姿を捉えると驚愕の表情を出した。

何故なら、そこにいたボスは―――

 

「コボルドロード・・・・・・だね」

 

第1層で戦ったボス。イルファング・ザ・コボルドロードそっくりだったからだ。

そして、第1層での出来事を走馬灯のように思い出した。

 

「キリトくん!しっかりして!」

 

走馬灯に浸っているとレインが俺の手を掴んで呼ぶ。

 

「レイン・・・・・・」

 

「大丈夫だよ。あの時と同じようにはならないから

、ね」

 

「ああ、そうだな。ありがとうレイン」

 

俺は目を閉じ深呼吸をする。

次に目を開けたときには何時もの俺に戻っていた。

 

「まず、最初にレインがコボルドロードを《サウザンド・レイン》で牽制、その隙に俺とフィリアが取り巻きのコボルドを1体倒す。その後、レインは残りのコボルド3体を倒してくれ」

 

「それはいいけど、レイン一人で大丈夫なの?」

 

そして俺は再び視線をボス部屋に向けた。

 

「あの取り巻きのコボルド自体は対して強くないはずだ。今のレインならすぐに倒せると思う」

 

ちなみに今、この中で一番レベルが高いのはレベル119の俺だ。そして次にレベル118のレイン、レベル114のフィリアとなっている。

 

「わかったわ」

 

「うん。任せといて」

 

「それじゃあ頼むぞ。コボルドを倒し終わったらレインは、コボルドロードにもう一度《サウザンド・レイン》を頼む。その間にフィリアは俺とともに追撃する」

 

「ええ」

 

「了解」

 

「その後は何時もと同じようには撃破する。だが、恐らくHPが残り半分になると武器を変えてくるはずだ、気を付けてくれフィリア」

 

「わかったわ」

 

俺は恐らく第1層での時と同じタイプだと感じフィリアに言う。

あそこのボスは武器を隠してはいないが念のためにだ。

 

「よし、それじゃあ行くぞ!」

 

「ええ!」

 

「うん!」

 

俺たちはそれぞれ武器を抜刀するとボス部屋に向けて走っていった。

ボス部屋に入ると視界にホロウ・ミッションのウインドウが現れた。

 

 

 

ホロウ・ミッション 入り江エリアボス討伐

 

場所:ならず者の玉座

 

クエスト名:入り江を統治するもの

 

討伐ボス:デトネイター・ザ・コボルドロード

 

 

 

「グルオォォォオ!」

 

俺たちがボス部屋に入ると、奥の玉座に腰かけていたコボルドロードが立ちあがり雄叫びをあげた。

その雄叫びに準じて取り巻きのコボルド―――レイジ・コボルド・センチネルが武器を構えこちらにやって来た。

奥のコボルドロードにはBOSS"Detonator The Kobold Loadと表示され、HPゲージは他のエリアボスと同じく3段だ。

 

「手はず通りに行くぞ!レイン!」

 

「オッケー!いくよ、《サウザンド・レイン》!!」

 

駆ける俺とフィリアの背後からレインの《サウザンド・レイン》が俺たちを追い越してレイジ・コボルド・センチネルの2体とデトネイター・ザ・コボルドロードに突き刺さる。

 

「グガアアアァァァァア!」

 

「いくぞ、フィリア!」

 

「わかった!」

 

まず先攻としてフィリアが短剣ソードスキル《ラピッド・エッジ》2連撃を近くにいるセンチネルに与え、そのまま走り抜く。

 

「ギギャア!」

 

「はあっ!」

 

そして、フィリアに遅れて2秒後に片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》単発突進重攻撃でセンチネルを貫く。

 

「ギギャアァ!」

 

センチネルはそう断末魔を上げるとポリゴンの欠片となって消えた。

 

「レイン!後は頼むぞ!」

 

「任せて!いくよ!」

 

レインは俺の後ろのセンチネル3体を一人で相手している。

レインのレベルならセンチネル程度すぐに倒せるはずだ。

 

「グルァア!」

 

デトネイター・ザ・コボルドロードは腰に両手剣を装備し今はイルファング・ザ・コボルドロードと同じようには片手斧と盾を装備している。

 

「行くぞ!はあああああぁぁっ!!」

 

俺はフィリアを追い越してコボルドロードに二刀流ソードスキル《ゲイル・スライサー》突進2連撃を喰らわせる。

 

「ガアアア!」

 

コボルドロードは俺に片手斧で攻撃しようとしてくる。その瞬間、フィリアが短剣中位ソードスキル《トライ・ピアース》3連撃をコボルドロードの足の付け根に攻撃した。

それにより、数秒コボルドロードの動きが止まる。

俺はその間にコボルドロードから距離を取り、フィリアの隣に立つ。

 

「ナイス、フィリア」

 

「ええ」

 

「ガアアアアアアアッ!」

 

コボルドロードは再び雄叫びを上げ、片手斧を下から掬い上げるかのようにして俺たちを攻撃してくる。

 

「ふっ!」

 

「はっ!」

 

俺とフィリアは左右に展開してその攻撃を躱す。

 

「横ががら空きだぜ!」

 

そして、俺はコボルドロードの横腹を横凪ぎに斬り裂く。

 

「ガアアアッ!」

 

「こっちも空いてるわよ!」

 

反対側ではフィリアが短剣を横凪ぎに薙ぎ払って攻撃した。

 

「グルァア!」

 

コボルドロードは片手斧を左右に振り回して攻撃するがその間には、俺とフィリアはもうそこにはいない。

その後もスイッチしたり左右さらの同時攻撃等で攻撃していると。

 

「二人とも、お待たせ!」

 

背後からのそんな声が聞こえてくると。

 

「フィリア!」

 

「ええ!」

 

俺とフィリア はその声の主。レインの攻撃線上からずれた。そして、俺とフィリアが横にずれると先程まで俺たちがいた場所を通過してレインの《サウザンド・レイン》が反応できなかったコボルドロードに突き刺さった。

 

~キリトside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~レインside~

 

「さあて私は、さっさと目の前の敵を倒しちゃおう、っと」

 

私は目線の先にいる3体のセンチネルを見てそう口走った。

 

「「「ギギャアア!」」」

 

「いくよ!」

 

私は両手鎚を持ってこっちにやって来るセンチネルを双剣で捌いて弾いたりして隙が出来たところを攻撃した。

 

「「「ギギッ!」」」

 

キリトくんとフィリアちゃんは・・・・・・

私は横目でコボルドロードに攻撃する二人を見た。

ちょうど左右に展開して攻撃している最中だった。

よし、コボルドロードの方はキリトくんとフィリアちゃんに任せて、私はセンチネルを倒さないと。

 

「ハアアアアァァッ!」

 

私は双剣を構え3体のセンチネルを攻撃していく。

センチネルは勿論攻撃してくるが、動きが第1層で戦ったセンチネルと同様遅いため躱し、躱せない場合はパリィをして弾く。

 

「せいっ!」

 

「ギギャッ!」

 

私は近くにいたセンチネルの胴体を斬り裂き真後ろにいたセンチネルを下からの切り上げで攻撃する。

残り一体のセンチネルに体術スキル《若雷》で吹き飛ばし、3体のセンチネルを1つの場所に集めさせた。

 

「これで、決める!」

 

3体共HPゲージは同じく両でイエローのした辺りにまで減っていた。

私は、双剣を構え接近すると多刀流中位ソードスキル《ローディエント・ルージュ》6連撃範囲技を発動させた。

 

「テヤアアアアァァアッ!」

 

「「「ギギャアア!!」」」

 

3体のセンチネルはそのまま斬り裂かれ、HPゲージがレッドゾーンに入りそのまま0になり、ポリゴンの欠片となって消えた。

 

「よし、終わった~。キリトくんたちの方は・・・・・」

 

キリトくんたちを見ると丁度攻撃をいなしている最中だった。

攻撃をいなし終わったのを確認すると私は。

 

「二人とも、お待たせ!」

 

そう言い、《サウザンド・レイン》の発動の準備に入る。

そしね私が、言うと。

 

「フィリア!」

 

「ええ!」

 

キリトくんとフィリアちゃんが私の攻撃射線上から飛び退きコボルドロードが見えた。

 

「いくよ!《サウザンド・レイン》!」

 

私の放った《サウザンド・レイン》は放射線状を築き、キリトくんとフィリアちゃんがいなくなったところを通過し反応できなかったコボルドロードの巨体に突き刺さった。

これにより、コボルドロードのHPは残り2段となった。

 

「キリトくん、フィリアちゃん。お待たせ」

 

私は二人に近づきそう言った。

 

~レインside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~キリトside~

 

「キリトくん、フィリアちゃん。お待たせ」

 

レインの《サウザンド・レイン》によって巨体のあちこちに突き刺されたコボルドロードはそのまま巨体を仰け反らしていた。

その間に俺の横にレインが来た。

 

「お疲れ、レイン」

 

「うん。あ、でも、まだ、戦闘は終わってないよ。労いの言葉とかは全てが終わってからね」

 

「ああ。いくぞ、レイン!」

 

「うん!キリトくん!」

 

俺とレインは双剣を構え仰け反りから戻った、コボルドロードに向かって駆ける。

 

「フィリアはボスの側面を攻撃!レインは俺とフィリアのサポートを!もし、センチネルが出てきたらレイン、対処を頼む!」

 

「わかったわ!」

 

「オッケー!」

 

残りHPが2段になり、コボルドロードは攻撃パターンを幾つか変えたが、コボルドロードのタゲは俺とレインが交互に。側面からはフィリアとレインがサポートに入る形で攻撃していく。コボルドロードは大きな盾を装備しているため余り攻撃が通らなかったが、片方に気を引き付けている間に側面からフィリアとレインの連携攻撃で対処する。

コボルドロードには、弱体効果のある二刀流ソードスキル《デブス・インパクト》5連撃や《デット・インターセクション》5連撃、《ローカス・ヘクセドラ》7連撃。多刀流の《ローディエント・ルージュ》6連撃範囲技などを使用して、コボルドロードにデバフを浴びせる。

 

「グルオォォォオ!」

 

「レイン!スイッチ!」

 

「うん!」

 

俺はコボルドロードの振り下ろしてきた片手斧を双剣で受け止め弾き返す。

 

「グルァア!」

 

「スイッチ!」

 

「オッケー!スイッチ!」

 

スイッチしたレインはがら空きの胴体に多刀流上位ソードスキル《ディバイン・エンプレス》15連撃を繰り出した。

コボルドロードは防御すらできずにその身に15連撃、全攻撃を受けた。

その攻撃を受け、コボルドロードはHPゲージを半分にまで減った。

すると・・・・・

 

「グルァア・・・・・・グルオォォォオ!!」

 

コボルドロードの体から赤い光が迸り、予想したように片手斧と盾を放り投げた。そして、腰に装備していた両手剣を抜き放った。

 

「来るか・・・・・」

 

「予想した通りだったね」

 

「ああ・・・・・」

 

「グルオォォォオオオオオオオ!!」

 

コボルドロードが雄叫びを上げるとその周囲にレイジ・コボルド・センチネルが4体現れた。

 

「くっ・・・・・!」

 

「キリトくん、センチネルは私が何とかするからその間、コボルドロードの対応をお願い!」

 

「わかった!フィリアいくぞ!」

 

「ええ!」

 

俺はフィリアと一緒にコボルドロードに。レインは単身4体のセンチネルへ向かった。

そしてコボルドロードに近づいたかと思うと・・・・

 

「!!フィリア、避けろ!」

 

「!?」

 

目が赤く光ったかと思いきや先程とは比べ物にならないくらいの速さで迫ってきた。

俺とフィリアは間一髪のところで避けた。

コボルドロードは俺とフィリアより少し後ろのところで止まっていた。

 

「さっきより段違いに速くなってる!?」

 

「くっ・・・・・・!」

 

俺とフィリアはコボルドロードの速さに驚いた。

だが、見えないと言うほどではない。

 

「やるぞフィリア。ボスをよく見てその射線上から待避すれば攻撃は喰らわないはずだ!攻撃後の技後硬直時間帯に攻撃を仕掛ける!」

 

「わかった!」

 

俺は再び攻撃してきたコボルドロードの視覚の射線上から飛び退き、技後硬直で動けないコボルドロードに攻撃を仕掛ける。

 

「はあああああっ!」

 

「せやああああっ!」

 

俺は二刀流ソードスキル《デブス・インパクト》5連撃を与え、フィリアとスイッチしフィリアは短剣上位ソードスキル《インフィニット》5連撃を喰らわせる。

 

「グガアアアァァァァ!」

 

コボルドロードのHPバーの防御低下のアイコンが表示される。

これは俺の放った《デブス・インパクト》の追加効果だ。これにより、コボルドロードの防御力は低下しフィリアの放った《インフィニット》でHPゲージは残り1段と3割程まで削られた。

 

「続いていくぞ!」

 

そして、そこから十数分後2段目のHPゲージが消え、残り1段となった。

そして、それと同時に。

 

「ゴメン、キリトくん、フィリアちゃん。遅くなった」

 

センチネル4体を一人で相手していたレインが戻ってきた。

 

 

~キリトside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

~レインside~

 

 

「やあああああっ!」

 

私は4体のセンチネルの内の1体に狙いを定め、多刀流ソードスキル《インセイン・ピアーズ》2連撃突進技を喰らわせ、そこから片手剣ソードスキル《バーチカル・スクエア》4連撃を放ちセンチネルをポリゴンへと変える。

ステータス的にはさっきのセンチネルたちと大差ないようね。これなら・・・・・・

 

「ギギャア!」

 

「うっ・・・・・」

 

横から上から振り下ろしてきた両手鎚を私はギリギリのところで後ろに飛び躱す。

だが、後ろに飛ぶとその横にセンチネルがいた。

 

「くっ・・・・・!」

 

私は右手の片手剣で振り下ろしてきた両手鎚を受け止め左手の片手剣でセンチネルを斬り裂く。

 

「ギギャッ!」

 

私はそのままそのセンチネルを片手剣ソードスキル《シャープネイル》3連撃を放ちHPを0にしてポリゴンの欠片へとする。

 

これで残り2体!

 

「せいっ!」

 

私は残り2体のセンチネルを翻弄し徐々にHPを減らしていく。

 

「「ギギャア!」」

 

「遅いよ!」

 

私は2体を相手に駆け巡り2体同時に片手剣ソードスキル《ホリゾンタル・スクエア》4連撃でポリゴンの欠片へと変えた。

私が4体のセンチネルを倒したのは十数分かかったみたいだ。

 

「ゴメン、キリトくん、フィリアちゃん。遅くなった」

 

私はそのまま残り1段にまで減っているコボルドロードに向かっていった。

 

レインside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~キリトside~

 

俺はレインの声を聞くのと同時に。

 

「フィリア、ブレイクポイント!」

 

「わかった!」

 

フィリアは短剣中位ソードスキル《スラスト・フォール》3連撃重攻撃でコボルドロードの態勢を大きく崩す。

 

「レイン!」

 

「うん!フィリアちゃん、スイッチ!」

 

「ええ!スイッチ!」

 

「やあああああっ!」

 

レインはフィリアとスイッチし多刀流上位ソードスキル《クリア・コンパッション》16連撃を高速で放つ。

そして。

 

「キリトくん!」

 

「ああ!」

 

俺はレインとスイッチし二刀流上位ソードスキル《ナイトメア・レイン》16連撃を高速で繰り出す。

 

「グガアアアァァァァ!」

 

俺たちの攻撃はコボルドロードの胴体に吸い込まれるかのようにして決まった。

それによりコボルドロードの残りHPは7割程にまで落ちていた。

 

「いくよ、キリトくん!」

 

「ああ!」

 

ソードスキルを放ち終えた俺は技後硬直が終わるとレインの横に並び立ち。

 

「「共鳴(レゾナンス)!!」」

 

ユニークスキル≪シンクロ≫を解放する。

共鳴(レゾナンス)の効果で俺とレインに攻撃力上昇、防御力上昇、クリティカル率上昇、素早さ上昇、等々あらゆるバフがかけられた。

一度発動させると、再度発動させるのにインターバルが必要とは言え、これで約15分はいける。

 

「レイン!」

 

「うん!」

 

俺とレインはフィリアの方に向かっているコボルドロードの前に立ち、横凪ぎに薙ぎ払って攻撃してきた両手剣を双剣で受け止める。

 

「フィリア、無事か?」

 

「ええ」

 

「フィリアちゃんは回復して。その間、私たちがボスを引き付けるから」

 

「わかったわ」

 

フィリアはそう言うと俺たちから下がり腰のポーチから回復ポーションを取り出して飲んだ。

 

「さあて、さっさと殺っちゃおうかレイン」

 

「そうだね、キリトくん」

 

「「・・・・・・・・・いくよ(ぞ)!!」」

 

俺とレインはその後はアイコンタクトや簡単な身振りでスイッチを行ったりする。

コボルドロードの攻撃を弾いたりして躱して、がら空きな場所に攻撃する。

 

「すごい・・・・・・・これが《最強夫婦》・・・・・」

 

ポーションでHPを全快にしたフィリアがそう呟いたのが聴こえてきた。

 

「フィリア、いけるか?」

 

「ええ!いけるわ!」

 

コボルドロードのHPゲージは残り3割程。

 

「レイン!」

 

「うん!フィリアちゃん、スイッチいくよ!」

 

「わかった!」

 

「スイッチ!」

 

レインとスイッチしたフィリアは、動きが止まっているコボルドロードに接近し短剣上位ソードスキル《アクセル・レイド》12連撃を放ち斬り裂く。

 

「キリト!」

 

「ああ!スイッチ!」

 

フィリアのソードスキルが終わり、すかさず俺が入り込んで二刀流ソードスキル《ダブル・サーキュラー》2連撃突進技を放つ。

 

「グルオォォォオ!」

 

コボルドロードはそれでも構わないかのように両手剣で俺を攻撃してきたが、《ダブル・サーキュラー》は下位ソードスキルの為技後硬直時間が短い、そのため、ギリギリしゃがんで剣を躱す。

コボルドロードは今のが大技だったのか技後硬直が課せられていた。

それを逃す俺たちではない。

 

「キリトくん!」

 

「ああ!」

 

俺とレインは技後硬直しているコボルドロードに接近する。そして、同時に放つ。それは。

 

「はあああああっ!」

 

「やあああああっ!」

 

「「ワールドエンド・オーバーレイ!!」」

 

シンクロ上位ソードスキル《ワールドエンド・オーバーレイ》14連撃重攻撃技だ。

 

「グガアアアァァァァアアアア!!」

 

コボルドロードは満足に防御も出来ずに12擊を受け態勢を崩した。

 

「「はあああああっあ!」」

 

止めの同時攻撃によりコボルドロードのHPゲージは0へとなった。

HPゲージが0になりコボルドロードは一際大きな爆砕音を響かせてポリゴンの欠片へとなり消えた。

 

「はあ、はあ、はあ・・・・・・」

 

「はあ、はあ、はあ・・・・・・」

 

俺とレインは流石に疲れたのか互いに背中を合わせてボスのいなくなった部屋の地面に座り込んだ。

近くではフィリアも息を整えている姿があった。

俺たち3人とボスと戦った部屋には戦闘の余韻が未だに少しだけ漂っていた。

 




「みんなわかったかな?それじゃあ、答えを発表するよ!フィリア、お願い」

「ええ。答えはⅡ:8体よ」

「いやー、まさかレインが合計7体も一人で倒すなんて思わなかったよ」

「ホント。私とキリトも1体仕留めたけどレインのは驚いたわ。驚いたと言えば、キリトとレイン話さないで攻撃していたのよね。まるで、お互いのことがわかっているみたいだった」

「確かに。でも、あれはスキルじゃなくてキリトとレインだからこそ出来るような物だから」

「なるほどね。でも、余り人前でイチャイチャしないでほしいわ」

「アハハハ・・・・まあね」

「こうなったらストレス発散としてソーナに手伝って貰うわよ!」

「え!?私もやるの!?」

「ええ!さあ、やるわよ」

「わかったから短剣は今出さないで~!で、では、今日はこれで。また、次回お会いしましょう!」

「みんな、またね~」

「では、また次回に、Don't miss it.!」




「さあ、デュエルするわよ!」

「わ、わかったよ~」


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HF編 第90話 〈殺人者(レッドブレイヤー)犯罪者(オレンジプレイヤー)の少女〉

「こんにちはソーナです。またしても更新が遅くなりごめんなさい。今回のゲストさんはこちらです。どうぞ!」

「はじめまして、リーファです。今回はお招きいただきありがとうございます」

「ようこそ、リーファ」

「ソーナさん。今回はありがとうございます」

「リーファは最近悩んでいることがあるみたいですけど、どうしたんですか?」

「いやー、お兄ちゃ―――キリトくんとレインさんを見ているとこれがバカップルなんだなぁーと」

「あはは。でも、リーファにとってレインは将来、義姉になるんじゃないですか?」

「あぁー、確かに。キリトくんとレインさんがそのままゴールインしたらそうなるかもしれないなぁ」

「妹としては嬉しいですか?」

「まぁね。キリトくん、現実だとずっと自室に閉じ籠っていたから」

「なるほど。では、今回の問題を出します」

「今回はどんな問題なんだろ~」

問題:『今回、キリトとレインがボスドロップとしてゲットしたアイテムは何?』

Ⅰ:食材アイテム

Ⅱ:アクセサリー

Ⅲ:メダリオン

Ⅳ:武器

「答えは本文の最後に!」


 

~キリトside~

 

「それで、この後どうする?」

 

俺はボスのいなくなった部屋を抜け、その裏にある一角で休みながらこの後の事を話していた。

 

「キリトくん、どうするって?」

 

「先に進むか、それとも今日はこのまま帰るか。幸いにもそこに転移碑があるしな」

 

俺は視線をすくそばにある転移碑に向けた。

 

「んー、フィリアちゃんはどうする?」

 

「そうね・・・・・・わたしはどちらでもいいよ」

 

「私は今日はこの先に進むのはちょっと遠慮したいかな、アイテムの残りが少ないから」

 

「そうだな。それじゃあ、今日はここまでにして、また明日ここかは始めよう」

 

「うん」

 

「ええ」

 

俺は二人にそう言うと転移碑をアクティベートし起動させた。

 

「「「転移!」」」

 

俺たちは転移碑に触れ言うと光に包まれてその場から消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

管理区

 

「んーー・・・・・・・戻ってこれた~」

 

「アハハ、お疲れレイン」

 

「うん、キリトくんもね」

 

「それで、明日いつもの時間にここね?」

 

「ああ。あ、足りないものがあったら言ってくれ、明日持ってくるから」

 

「そうね・・・・・・回復ポーションをお願いしてもいい?ストックがきれそうだから」

 

「オッケー、じゃあ、明日持ってくるねフィリアちゃん」

 

「お願いね、レイン」

 

「うん」

 

簡単に明日の予定を立てると俺とレインは管理区の転移門に立った。

 

「じゃあ、また明日な」

 

「ダスヴィダーニャ、フィリアちゃん」

 

「ええ、また明日」

 

「「転移!アークソフィア!」」

 

次の瞬間、俺とレインは管理区から消え去りアークソフィアに戻っていた。

 

~キリトside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~フィリアside~

 

「・・・・・・」

 

わたしは、つい今しがた転移した二人の場所を見た

わたしも転移門を使用してみたが何処にも転移出来なかった。つまり、わたしはこの世界から移動することは出来ないと言うことだ。

その時足音が聞こえてきた。だれも、いないはずなのに。

ここは、わたしとキリト、レイン以外はいれない・・・・・・いや、もう一人いる。ここに入ってこれるプレイヤーが。

わたしは短剣『ソードブレイカー・リノベイト』に手を添えて足音のした方―――――――コンソールを見た。

そこには。

 

「・・・・・・・・・」

 

「よぉ、またあったな」

 

そこにはコンソールに背を預けている殺人(レッド)ギルド《ラフィン・コフィン》のリーダー、PoHが立っていた。

 

「だからさ、そう身構えるなって。別にとって食ったりしねぇからよ」

 

「・・・・・・・・・」

 

わたしはそう言う目の前のPoHを油断なしに見る。

 

「・・・・・オレンジギルドが、わたしに一体何の用」

 

「・・・・・お前ぇ、何時まであのビーターと紅と組んでるつもりだ?」

 

「あんたには関係ない」

 

「俺の推測が当たってるとしたら、お前ぇはそろそろ『自分の正体』ってヤツに、気づいているはずだ。違うか?オレンジホロウのフィリアさんよぉ」

 

「・・・・・・だから、この前からなに?ホロウとかよくわからないことをいって」

 

「はぁ~~~~だからさぁ~。お前ぇとあのあいつら二人とじゃ住む世界が違う。別に言葉の綾とかじゃなく、そのまんまの意味・・・・・でな」

 

PoHは腕を組ながら続けた

 

「お前ぇは所詮、影の世界・・・・・・そう・・・・・・《ホロウ・エリア》の住人なんだよ。俺たちは・・・・・・・そう、人じゃぁ・・・・・・・無い」

 

「わ、わたしは・・・・・・」

 

「じゃぁ、なぜお前はあっちに帰れないんだ?」

 

「わたしはお前らとはちがう・・・・・・!わたしは人間だって・・・・・・・」

 

「ただ認めたくねぇだけだろ、自分が人じゃぁないって!俺らとな~~~んも変わらねぇよ・・・・・・お前ぇは」

 

「・・・・・・・・」

 

「WoW!その表情・・・・・・・いいねぇいいねぇ!思わず涎が出ちまうよ」

 

「だから・・・・・・だから何だって言うの!キリトとレインは・・・・・・わたしのために・・・・・・」

 

「お前ぇのため、ねぇ~?本当にそう思ってるのか?だとしたら、これは傑作だぜぇ」

 

「どういう意味!?」

 

「アイツらは、《ホロウ・エリア》にある新アイテムや新スキルに興味を持ってんだ。お前ぇは・・・・・そう便利な案内人ってとこか・・・・・・・わかる?」

 

「嘘・・・・・・嘘よ。そんなこと・・・・・・そんなことない!キリトは・・・・・・レインは・・・・・・・」

 

「会ったばかりのやつに、命を張って助けるってかぁ?ナイナイナイナイ!!自分がしたことを、もう一度振り返ってみな」

 

PoHの言葉に私は、ビクッ、感じた。

 

「・・・・・・・あんた、どこまで知ってるの」

 

「オォォル!ALL、ALL、ALL!!!残念ながら、全部知ってんだ、お前ぇがやったことは!」

 

「だから、どうして・・・・・・・なんであんたが知っている!?」

 

あれを・・・・・・わたしのしたことは誰も・・・・・・わたし以外知らないはずなのに。

 

「はぁ~~~~~~なんで知っているかって?んなこたぁどぉ~でもいい。大事なのは、『俺が知っている』って事実だ。経緯とか理由とか、そんなもんは・・・・・・聞くだけ野暮ってもんだろ?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「で、本題だ。この前も忠告したじゃねぇか・・・・・・お前ぇ、このままだと死ぬぜ」

 

「・・・・・・なんで?」

 

「お前ぇだけじゃねえ。俺も、ここにいるほかの連中も、みんな、み~~んな・・・・・・ゲームオーバー」

 

「意味わかんないし。そんなこと、信じられるわけがないじゃない!」

 

「あの二人・・・・・・キリトとかいうビーターと、レインとかいう紅は、この《ホロウ・エリア》で確実に強くなる。むかっ腹が立つ事実だが、アイツらが100層をクリアする可能性はかなり高い。そうなったら・・・・・・《ホロウ・エリア》にいる俺たちはどうなると思う?」

 

「知らないわ・・・・・・」

 

「少しは考えろよなぁ、その足りない頭でよぉ!SAOの世界がなくなった時、『俺たち』がどうなるか想像くらいつかねぇか?」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

わたしはPoHが言った意味を考えた、そしてなんとなくわかってしまった。わたしが、いや、わたしたちがどうなるのか。

 

「・・・・・・まさか・・・・・・」

 

「そうだ。お前ぇの思った通り。ザッツライト!SAOがクリアされればデータである俺たちは消える。さっきも言った通りの事が起きるじゃねぇか。だからさぁ~俺たちはアイツらに・・・・・・殺されるってことだ」

 

「違う!キリトとレインはそんな・・・・・・二人がわたしたちを殺すなんて・・・・・・」

 

「さっきも言ったろぉ~に?理由や過程はどーでもいいんだ。結果!結果がどうなるかなんだよ!アイツらがやったことで俺たちが死ぬ。俺はそれを止める。だってよぉ・・・・・・死にたくねぇしなぁ。だから・・・・・・お前ぇの力を借りにきたんだぜ」

 

「わたしに・・・・・・キリトとレインを裏切れって言うの?」

 

「NON、NON、NON・・・・・・なぁにちょいと、誘い出してくれればいいのさ。お前ぇはなにもしない。なにも知らない。まぁ~ちょいっと事が終わるまで邪魔しないでもらうって事だけだぜ?別に殺す訳じゃぁない。あとは勝手に物事が進むだけだ」

 

「そんなこと・・・・・・出来るわけないでしょ・・・・・・」

 

「アイツらの強さは知ってるんだろォ?大丈夫、アイツらならきっと生き延びる。死なずに、俺たちと同じ世界の住人になるだけなんだから」

 

「わたしたちと、同じ世界・・・・・・」

 

「そうだぜぇ~。よーく考えてみろよ。このまま、アイツらと別々の世界で誰にも知られずに死ぬか、アイツらと同じ世界の住人になって、永遠に存在し続けるか」

 

そう言うとPoHはわたしに近づき。

 

「次にあった時に、返事をくれ」

 

すれ違い様にそう言うとわたしの後ろの転移門を使って何処かに転移していった。

 

「・・・・・・キリト・・・・・・レイン・・・・・・二人とも・・・・・・わたし、どうすればいいかわからない・・・・・・」

 

わたしの声は誰もいない管理区にぽつんと流れた。

そして、その答えを返してくれる声はなかった。

 

~フィリアside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~キリトside~

 

「・・・・・・」

 

「どうしたの、キリトくん?」

 

「いや、なんか嫌な感じがしてさ・・・・・・気のせいだと思うけど・・・・・・」

 

「そう?気を付けてね、体調を崩したら大変だからね」

 

「わかってるって。あ、でも、もし俺が体調を崩したらその時はレイン頼むな」

 

「もちろんだよ、朝から晩まで全部やってあげるね」

 

「いや、そこまでしなくてもいいんだが・・・・・・」

 

「ウフフ、冗談だよ~あ、でも、もしキリトくんがしてほしいなら・・・・・・」

 

「ちょ、レイン!?」

 

ホロウ・エリアから戻ってきた俺とレインは、商店通りにあるカフェでのんびりしていた。

カフェで俺はコーヒーをレインはダージリンを頼んだ。

 

「・・・・・・・・・・ふぅ~」

 

俺はコーヒーを一口のみカップをソーサーに戻しウィンドウを開いた。

 

「やっぱり、今回もドロップしたな」

 

「メダリオン、でしょ」

 

「ああ。レインにもドロップしてたのか?」

 

「うん。私にも今回はドロップしたよ」

 

そう言うとレインはウィンドウから一つのアイテムをオブジェクト化した。

 

「私のはこれ、だよ。キリトくんのは?」

 

「ああ、俺のはこれだ」

 

俺もレインと同じようにドロップしたメダリオンをオブジェクト化した。

 

「これがキリトくんのドロップしたメダリオン・・・・・・私のと少し似ているけど紋章が違うね」

 

俺がドロップしたメダリオンには樹がレインのドロップしたメダリオンに二人の女神が描かれていた。

 

「え~と、アイテム名は――――『「貴重品」双女神の戦爛』だって」

 

「俺のは――――『「貴重品」黒白の聖樹証』か」

 

「私たちが持っているメダリオンは『心星の紀章』と『剣創の星欄』だね」

 

「星、剣、いや双剣か。それと今回の樹と二人の女神。一体何に使うんだ、このメダリオンは?」

 

「さぁ。でも、ホロウ・エリアでのアイテムだからホロウ・エリアで使うんだと思うんだが・・・・・・」

 

「どれもボスから・・・・・あ、でも、最初の『心星の紀章』だけはボスじゃなかったんだよね」

 

「あー、そう言えばそうだったな」

 

「残りのエリアで使うのかな?」

 

「・・・・・・多分、ホロウ・エリアでのイベントクエストアイテムなんだろうけど、何に使うのやら」

 

「そうだね」

 

俺とレインはメダリオンをそれぞれ二個ずつストレージに収納した。

 

「さてと、アイテム買いに行きますか」

 

「うん」

 

俺が立ち上がるとレインが隣によって、俺の左腕に抱き付いた。

人通りの多い商店通りでこんなことすれば当然注目されるがもう馴れた為気にせずにいく。

そのあと予定通りポーションや結晶アイテムなどを購入しエギルの店に帰った。




「みんな分かったかな?それじゃあ答えを発表するよ。リーファ、お願い」

「はい!答えは、Ⅲ:メダリオン、でした」

「今回はメダリオン2つドロップしたみたいだね」

「ソーナさん、あのメダリオンって何に使うんですか?」

「う~ん、それは分からないかな・・・・・・でも、これからの攻略に必要になると思うよ」

「そうなんですか」

「ええ。それでは時間になりましたので今回はここまで」

「出来ればまた呼んでほしいです」

「そうですね、機会があったら呼びますね」

「やった。ではみなさん、また会おうね」

「それでは、また次回にDon't miss it.!」


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HF編 第91話 〈フィリアの苦悩〉

「こんにちは、ソーナです。今回もゲストとともに問題を出します。今回のゲストはこちら、どうぞ!」

「はじめまして、お招きいただきありがとうございます。リーザです」

「こんにちは、リーザ」

「こんにちは、ソーナさん」

「私のことはソーナで構いませんよ」

「そうですか?では、ソーナ、今日はありがとうございます」

「いえいえ。あれ、ところでラムはどうしたんですか?確か呼んだはずなんですが」

「ごめんなさい、ラムは急用が入ったみたいで来れないそうです。私にごめんなさい、と言っといて、と言って何処かに行ってしまいました」

「そうなんですね。ラムが来れないのは残念ですけど、リーザ、ラムの分まで頑張ってください!」

「はい!お任せです!」

「では、今回の問題を出します」

問題:『今回のストーリーで様子がおかしいのはだれ?』

Ⅰ:クライン

Ⅱ:レイン

Ⅲ:フィリア

Ⅳ:アルゴ

「正解は本文の最後に!」


 

~キリトside~

 

"フィリアの様子がおかしい"

 

俺は歩きながらフィリアを見て思った。

俺たちは今、昨日倒したボスの後ろ。転移碑の隣にある扉からホロウ・エリアの攻略をしていた。

扉の奥には紋章で先が封じられており、いつも通りペンダントを紋章の窪みに嵌め解除した。

フィリアの様子がおかしいと思ったのは管理区で合ったときからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間前

 

 

管理区

 

 

「プリヴィベート、フィリアちゃん」

 

「おはよう、フィリア」

 

管理区に転移して俺とレインは、コンソール前にすでにいたフィリアに挨拶した。

 

「・・・・・・・・・・」

 

「フィリアちゃん?」

 

「あ。ご、ごめん。ボーとしてた。おはよう、キリト、レイン」

 

「うん。おはよう、フィリアちゃん」

 

レインはウインドウを開くと昨日買ったポーション類をフィリアに送った。

 

「ありがとう、レイン」

 

「どういたしまして」

 

「さてと、今日は昨日の攻略の続きだな」

 

「うん!」

 

「・・・・・・ええ」

 

「?フィリア?どうかしたか?」

 

「う、ううん。なんでもない、なんでもない」

 

「そうか」

 

フィリアが何も言わなかったため、俺は特に聞かないことにした。

そして、俺たちはパーティーを組むと。

 

「「「転移!」」」

 

昨日転移した場所。『ならず者の玉座』へと転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入り江エリア ならず者の玉座

 

 

「さすがにボスは現れないね」

 

「そりゃ、そうだろうな。昨日、俺たちが倒したんだし」

 

「そうだね」

 

俺とレインは昨日ボスと闘った部屋を見て言う。

部屋のなかはただ静けさが漂うだけだった。

 

「それじゃあ、行きますか」

 

「うん」

 

「ええ」

 

俺たちは転移碑の横にある扉を開け奥に進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グレスリーフの洞門

 

 

「やっぱりあったね、これ」

 

「ああ」

 

「確か昨日ボスを倒したときにペンダントに光は灯ってるんだったよね?」

 

フィリアの言葉に俺はウインドウを操作し、アイテム『「貴重品」虚光の燈る首飾り』を取り出した。

 

「解除するぞ」

 

俺は二人にそう言うと、ペンダントを紋章の中央にある窪みに嵌めた。

嵌めるとペンダントの光を通じ、紋章が輝いた。

次の瞬間、紋章は消え先に進めるようになっていた。

俺はペンダントをストレージに収納し二人の方に振り向く。

 

「行こう」

 

俺の言葉に二人は頷きで返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

円環の森

 

 

洞窟を抜け出た先には森があった。

だが、樹海エリアの森よりは見通しがいい。

 

「空気が清んでいるな」

 

「ホントだね。見通しもいいし」

 

「なんか安らぐわね」

 

洞窟を抜けた俺たちは、三者三様の答えをだす。

そのまま、しばらく歩いて行くと途中でモンスターとエンカウントし、それを撃破して進んだ。

それを数度やり歩いていき、フィリアの様子が気になり今に至る。

 

「フィリア、大丈夫か?」

 

「大丈夫って?」

 

「いや、なんか心ここにあらず、って感じだったから」

 

「・・・・・・大丈夫よ。少し、考え事をしていたの」

 

「フィリアちゃん、私たちに手伝えることがあったら言ってね」

 

「ええ。わかったわ、レイン」

 

すると突然目の前から、走ってくる斧を持った男プレイヤーが来た。

 

「はあ、はあ、はあ・・・・・・・・」

 

「ごめん、二人とも・・・・・・ちょっと待ってくれ」

 

「えっ!?」

 

「キリトくん!?」

 

「おい、そこのあんた!」

 

「もう少し、もう少し先へ・・・・・・」

 

「ずいぶん消耗してるようだけど、大丈夫なのか?」

 

「ん?ああ・・・・・・大丈夫だとも。とにかく、先に進まなくては」

 

「でも、HPがずいぶん減ってるぞ。もうゲージが黄色いじゃないか」

 

「・・・・・・」

 

「お、おい!人の話を聞けよ!」

 

斧を持った男プレイヤーはそれだけ言うとまた走り去っていった。

 

「キリト!危ないよひとりで・・・・・・」

 

「放っておけないだろう!あのままだと・・・・・・死ぬぞ!」

 

「いいんだよ。どうせわたしたちは・・・・・・」

 

「言い分けないだろう!」

 

「キリトくん。私がフィリアちゃんといるから、キリトくんはあの人を連れ戻してきて」

 

「わかった。頼むぞレイン!」

 

俺はフィリアをレインに任せ、さっきの男プレイヤーを追いかけようとした。

 

「どうしてそこまで頑張れるの!?オレンジギルドの罠かもしれないじゃない!」

 

だが、フィリアは俺にそう問いかけてきた。

 

「その時はその時だ。罠じゃなかったら、あの人は死ぬだろう?見過ごすわけにはいかないんだ」

 

「キリトくん・・・・・・」

 

「何もしなかったら、俺がPKしたのと同じ事になる・・・・・・」

 

「PK・・・・・・」

 

「もう、嫌なんだ。俺の前で誰かが死ぬのは・・・・・・」

 

「キリト・・・・・・?」

 

「とにかく、行ってくる!」

 

俺はそう言うと、さっきの男プレイヤーを追い掛けるため駆け出した。

 

~キリトside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~レインside~

 

「キリトくん、まだ引き摺ってるんだね・・・・・・あの時の事・・・・・・」

 

私は斧を持った男プレイヤーを追い掛けていった、キリトくんの後ろ姿を見てそう口走る。

 

「レイン、さっきのキリトの言ったこと・・・・・・あれってどういう意味」

 

「・・・・・・キリトくんは、前にあるギルドを壊滅させた事があるの。でも、それはキリトくんのせいじゃない」

 

私は近くの樹に背を預け、フィリアちゃんに話す。

キリトくんの言葉の意味を。

 

「どういう事?」

 

「キリトくんは、そのギルドに頼まれてトレーニングをしたりしてあげてたの。もちろん、キリトくんは自分が《ビーター》や攻略組であることを隠して。キリトくんは時間を見つけては彼らと一緒にいて、特訓してあげてたよ。もちろん、私もたまに手伝ったけど。あの時のキリトくん、本当に楽しそうだった。そして、その一ヶ月後、そのギルドのメンバー4人とキリトくんで迷宮区に行った。そして、その途中で宝箱があってそれを開けようとした、ギルドメンバーの1人の解除ミスでトラップに引っ掛かった。それは最悪のアラームトラップだったの。しかも、トラップは2重に仕掛けられていて、そこは結晶無効化エリアだったの」

 

「そ、それじゃあ、そのギルドのメンバーは・・・・・・」

 

「うん。キリトくんを残して全員亡くなった。キリトくんは、そのギルドには隠していた上位ソードスキルでモンスターを蹴散らしたんだけど数が多すぎたみたいで1人2人と亡くなり、最後の女の子も助けられずに、たった1人だけそこから生還した。そして、その事をそのギルドのリーダーに話、そして、自分の事をすべて話した。けど、そのリーダーはキリトくんの心に深い傷を残し、キリトくんの目の前で外周区から飛び降りた。私は後日この話を聞いたの」

 

私は、当時の事を思い出して悲しくなった。

もちろん、彼。ケイタくんが悪気があって言ったんじゃないことは分かる。けど、彼はきっと話してほしかったんだと思う。彼は、キリトくんに憧れているみたいだったから。

そして、その事をキリトくんから聞いた後、私は泣いた。そこの唯一の女の子だった、サチちゃんとは気が合い、仲が良かったから。

 

「だから、キリトは・・・・・・」

 

「うん。キリトくんは、1人でいるときよく悲しげな顔をするの。それは、あの時の事を思い出しているから。そして、キリトくんは今も自分が彼を殺したと思ってる」

 

「そうだったんだ・・・・・・」

 

フィリアちゃんは、さっきのキリトくんの言葉の意味がわかったみたいで、悲痛な顔をしていた。

しばらくすると、キリトくんが戻ってきた。

 

~レインside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~キリトside~

 

斧を持った男プレイヤーに追い付いた俺は、無理矢理ポーションを飲ませ、男のHPが回復するのを見ると、レインとフィリアのいる場所に戻った。

 

「ふう。ただいま。こっちには何もなかったか?」

 

「うん・・・・・・」

 

「大丈夫だったよ。キリトくん、あの人は?」

 

「無理矢理ポーションを飲ませてきた。ダンジョンを出るように行ったけど、全然聞かないんだ」

 

「聞かないって、なんでだろう?」

 

「さあ」

 

「そう・・・・・・やっぱりすごいね、キリトは・・・・・・」

 

「いや、当たり前の事だって。しかし、ここにいるプレイヤーたちは何であんなにも無鉄砲なんだろう」

 

「そういえばそうだね。なんだろう、危険に鈍感過ぎる気がするよ・・・・・・」

 

俺とレインは今まであったプレイヤーを思い浮かべそう言った。

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「フィリアは気にならないか?」

 

「気にならないよ・・・・・・」

 

「フィリアちゃん?」

 

「だって・・・・・・ここにいるプレイヤーはみんな、ホロウ・・・・・・影の存在だから」

 

「フィリア?」

 

「あの人も・・・・・・ここからは出られない。わたしもずっと・・・・・・ずっとこうして、ずっと・・・・・・」

 

「フィリアちゃん、大丈夫?顔が真っ青だよ」

 

「・・・・・・大丈夫、なんでもない」

 

「・・・・・・今日はここを出たら戻るか」

 

「そうだね。管理区で休めば、少しは落ち着くと思うよ」

 

「わかった・・・ごめん・・・・・・キリト・・・レイン」

 

俺たちは手早く、その森を攻略しその先にあった転移碑をアクティベートすると、管理区に戻ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

管理区

 

「ここで、しばらく休もう」

 

管理区に戻ってきた俺たちは、コンソールの後ろに背中を預け座る。

 

「うん・・・・・」

 

「一緒にいた方がいいかな?」

 

「ありがとう2人とも。でも、大丈夫」

 

「そうか」

 

「フィリアちゃんがそう言うなら。でも、何かあったらすぐに呼んでね」

 

「わかった。じゃあ、またねキリト、レイン」

 

「それじゃ」

 

「ダスヴィダーニャ、フィリアちゃん」

 

俺とレインはフィリアにそう言うと、管理区にある転移門に立ち。

 

「「転移、アークソフィア」」

 

管理区からアークソフィアへ転移した。

 

~キリトside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~フィリアside~

 

「・・・・・・・・・・さようなら、キリト、レイン」

 

キリトとレインが転移したのを見たわたしは無意識にそう言っていた。

 

「キリト・・・・・・レイン・・・・・・わたしやっぱり・・・・・・怖いよ・・・・・・」

 

~フィリアside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~キリトside~

 

 

アークソフィア 自室

 

管理区からアークソフィアに戻った俺とレインは、特に買うものも無いため、そのままエギルの店にある俺の自室に戻った。

 

「フィリアちゃんの様子、おかしかったね」

 

俺の横に座るレインがそう言った。

 

「ああ。なんか、思い悩んでいる感じだったな」

 

「フィリアちゃん、大丈夫かな・・・・・・」

 

レインが紅茶の入ったティーカップを持ちながら不安げに言う。

 

「そうだな・・・・・・」

 

俺はレインにそう言うことしか出来なかった。

すると。

 

「・・・・・・」

 

レインが俺の頭を押さえ、自身の膝に乗せてきた。

 

「ちょ、れ、レイン!?」

 

「キリトくん、サチちゃんたちの事思い出していたんでしょ」

 

「っ!!」

 

「やっぱりね」

 

「なんで、わかったんだ・・・・・・」

 

「キリトくん、1人でいる時よく悲しげな顔をするから。それにさっきの言葉を言ったときの顔がそれと同じだったから」

 

「・・・・・・かなわないなレインには・・・・・・」

 

俺は思っていたことを当てられ降参した。

 

「まだ、引き摺ってるん、でしょ」

 

「ああ・・・・・・サチやケイタを殺したのは俺だ。例え、自分で殺してないとは言え、5人を殺したのは間違いなく俺なんだ」

 

「キリトくん・・・・・・キリトくん、あの時言ったでしょ。なんでもかんでも1人で抱え込まないでって。キリトくん1人で背負えないなら、私にも半分背負わせてよ。私はキリトくんの奥さんなんだから」

 

「レイン・・・・・・」

 

俺はレインがいてくれて助かったと、ほんと何度思ったことか。事実、レインがいなかったら、今の俺はいないだろう。

 

「ありがとう、レイン」

 

「うん。どういたしまして」

 

レインは俺の頭を優しく撫で言う。

俺はしばらく、レインに撫でてもらっていた。

正直、疲れていたのかいつの間にか眠っていた。

 

~キリトside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~レインside~

 

私は膝の上で寝るキリトくんの頭を優しく、子供のように撫でる。

 

"多分、今の私はキリトくんのお母さんかお姉さんって言ったところなのかな?"

 

私はそんなこと思いながらキリトくんの頭を優しく撫で続ける。

キリトくんは、第一層からなんでもかんでも背負っている。たった1人で。

 

"私はキリトくんの味方。何があって、キリトくんを裏切らない。私だって、キリトくんがいるから今の私がいるんだから"

 

そう考えると私は、寝ているキリトくんの顔に近づき、唇と唇を合わせる。

優しく、軽いキスをして起こさないようにする。

 

「これからもよろしくね。私の王子様」

 

私は小声で誰にも聴こえないように言った。

そして、私もキリトくんの眠りに導かれるかのようにして、いつの間にか眠ってしまった。

 

~レインside out~

 




「みんな、答えはわかったかな?それじゃあ、リーザ、お願いね!」

「わかりました。今回の問題の答えはⅢ:フィリアです」

「大丈夫かな、フィリア」

「そうですね・・・・少し心配です」

「そうだね。リーザも何か悩みがあったら誰かに相談してみるといいよ」

「ええ。そうします」

「では、今回はこの辺りで」

「みなさん、また今度会いましょう!」

「それでは、また次回にDon't miss it.!」


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HF編 第92話 〈禊ぎの湖〉

「みなさんこんにちは、ソーナです。今回もゲストさんと一緒に問題を出します。それでは、今回のゲストさん、どうぞ!」

「ヤッホー、みんな、リズだよ」

「は、はじめまして、シリカです」

「今回のゲストはリズベットとシリカです。二人ともようこそ」

「ソーナさん、今日はお招きいただきありがとうございます」

「ありがとうね、ソーナ」

「いえいえ。ところで、二人は間違って76層に来てしまったみたいですけど、辛くはないんですか?」

「そうね、まず始めに、鍛治スキルの熟練度が下がったり、スキルが幾つかロストしたり大変だったわよ」

「はい。ですけど、その代わりにキリトさんや、レインさんたちと会うことが出来たので良かったです」

「そうですか。二人は前向きですね」

「そ、そんなことないですよ」

「そうよ。ほ、ほら。それより早く問題を出しなさいよ」

「そうですね。では今回の問題はこちら」

問題:『今回、新たに指輪の色は何色になったでしょうか?』

Ⅰ:紫

Ⅱ:黒

Ⅲ:水色

Ⅳ:朱色

「答えは本文の最後に!」




 

~キリトside~

 

第82層 ラステア

 

俺とレインは今日、《祝福の儀式》のための次の場所を探していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ!見てみて、キリトくん!すごい眺めだよ!」

 

「ああ、綺麗な湖だな」

 

そして、俺たちは第82層のとある湖にいた。

クエストポイントを探してここにたどり着いたのだ。

 

「あっ、キリトくんあそこ。立て札があるよ」

 

「ホントだな」

 

「読んでみるね。え~と・・・・・・《禊ぎの湖》――――――えっ!?禊ぎの湖!?」

 

「なに!?それって確か《祝福の儀式》に必要なために回る場所のひとつだったよな」

 

「うん。クエストには《禊ぎの湖》に行け、って書かれているからね」

 

「ああ」

 

「取り敢えず、指輪をつけてみようよ」

 

「そうだな」

 

俺とレインはウインドウを開き、アイテムストレージから『「貴重品」儀式の指輪(無色)』を取り出し装備した。

 

「・・・・・・・・?」

 

「・・・・・・・・?あれ、なにも起こらない?」

 

「もしかして、他に何か条件が・・・・・・・・・ん?レイン、立て札のここ、何か書いてあるぞ」

 

「ホントだ。注意点が書かれてある」

 

「注意点?」

 

「うん。え~と・・・・・・清めのために衣服を脱いで湖に入らなければならない・・・・・・・って、え?」

 

「・・・・・・・はっ?」

 

俺はレインの読んだ注意点に呆気に取られ、なんとも言えない反応をした。

 

「レイン、今、衣服を脱いで湖に入らなければならない、って言った?」

 

「う、うん」

 

「・・・・・・・マジで?」

 

「どうやら・・・・・そうみたい」

 

「もしかして、それをやらないとクエストが進まないのか?」

 

「え!?そ、そうなの!?」

 

「まあ・・・・・・恐らくは・・・・・・」

 

「うう~~・・・・・・し、仕方ないね」

 

「そ、そうだな」

 

俺とレインは周囲にプレイヤーがいないか索敵スキルを駆使し確認し、いないと分かると互いに背を向けて、再びウインドウを表示させ装備メニューを開き操作した。

幸いにもここは圏内なので、モンスターが来ることは決してない。

 

「ね・・・・・・ねぇキリトくん。これってもしかして、服だけじゃなくて下着も全解除しないといけないのかな・・・・・・」

 

「み、禊ぎってことならそう言うことになるんじゃないかな?」

 

「そ、そうなんだ・・・・・・あんまり、こっち見ないでね」

 

「わ、わかった・・・・・・」

 

"今更って感じがするんだが・・・・・・"

 

と俺が考えていると。

 

「キリトくん。今、今更って思わなかった?」

 

すかさずレインがそんなことを言ってきた。

 

「なっ!?なんで、分かったんだ!?まさか、読心術!?」

 

「いや、私読心術なんて使えないからね。キリトくんの事なんて私にはお見通しだよ」

 

「そ、そうか」

 

まさか、見透かされてるとは思わなかったため正直驚いた。

 

「それに、ここ最近忙しかったり、慌てていたからキリトくんと、そ、そういうことする機会もなかったから・・・・・・」

 

「た、確かに」

 

「それとね。わ、私だって恥ずかしいんだよ。こんな、ところで、は、裸になるなんて・・・・・・」

 

「そ、そうだよな」

 

「よし。キリトくん、こっちあまり見ないでね」

 

「は、はい」

 

俺とレインは指輪を着けて湖の中に入る。

すると。

 

「・・・・・・!?指輪が光り始めたぞ!」

 

「ホントだ・・・・・!私の指輪も光ってる!」

 

「透明だった指輪の色が変わった!?」

 

「わっ!私の指輪も色が透明から薄い水色に変わったよ・・・・・・!」

 

俺とレインのつけている『「貴重品」儀式の指輪(無色)』が光輝き、指輪の色が水色に変わったのだ。

それと同時に視界フォントに『「貴重品」儀式の指輪(水色)』を獲得しました。と表示された。

 

「よしっ!やったなレイン!段階が進んだみたいだ」

 

俺は喜んでつい、レインの方を向いてしまった。

 

「あ・・・・・・」

 

「キリトくん・・・・・・・」

 

しばらく沈黙が続き、やがてレインが耳まで真っ赤にすると。

 

「み、見ないでって言ったでしょー!!キリトくん!」

 

ものすごい早さで俺に近寄ってきた。

 

「ちょ、レイン!?」

 

まあ、幸いにもここは圏内エリアなためなにかされてもダメージは入らないのだが・・・・・。

 

「い、いいから私の方は見ないで!」

 

レインは近寄ると、俺に両手を回し抱きついてきた。

確かにこれで、見えないだろうけど・・・・・・

 

「れ、レイン。こ、これはちょっと・・・・・マズイ!別の意味で!」

 

「い、いいから!わ、私だって嬉しいけど恥ずかしいんだから」

 

互いに裸なのでレインの肌の感触や年相応の双丘の感触が直に伝わる。

そして、更に沈黙が辺りを覆う。

 

「レイン・・・・・・」

 

「な、何かな、キリトくん」

 

「もしかして太った?」

 

場を和ませるために出した話題がレインの怒りに触れたという事を、この時俺は、この話題を出したことを後悔することになることを、まだ知らなかった。

 

「っ・・・・・・・・・・・・・・・・!?」

 

「れ、レイン?」

 

「キリトくん。キリトくんは私が太ったと、そう言いたいの?」

 

「い、いや、そうじゃないから!」

 

「じゃあ、どういう意味なのかな?」

 

「え、えーと、それは・・・・・・・・」

 

「それにね、キリトくん。ここは仮想空間。ゲームの中だよ、太るわけないよね」

 

「ご、ごもとっも」

 

「だよね~。じゃあ、キリトくんはなんで私に聞いたのかな~?」

 

そう言って俺を見るレインの目は光が入ってなかった。

 

"あ、これ詰んだかも"

 

と言うよりレインがここまで怒るのを久し振りに見た俺は、レインの気迫に少し後ずさる。

正直、怖い。マジで怖い。

しかも、レインが更に力強く抱き締めてくるため苦しい。

 

「何か、言いたいことあるかなキリトくん?」

 

「イエ、ベツニアリマセン、レインサン」

 

「なんで片言なの?」

 

「気にしにしないでくれ」

 

「?」

 

レインは疑問符を浮かべながら首を傾げる。

 

「その、すまんレイン」

 

「・・・・・ハァー、もういいよキリトくん」

 

「い、いや、だがな・・・・・・んっ!」

 

俺がレインに更に言おうとすると、突如レインが俺の口を塞いできた。自分の口で。

 

「んっ・・・・・・あっ・・・・・・・んん」

 

レインは舌を俺の舌に絡ませて来た。

何時もより激しいキスだと、俺は感じた。

キスは1分以上すると、レインから離した。

 

「ん・・・・・・・ぷは・・・・・・・」

 

俺とレインの口から唾液が糸のように伸びるのが見えた。

 

「・・・・・・れで、・・・・・・べんして・・・・・げる」

 

「え?」

 

「もぉ!これで、今日は勘弁してあげる、って言ったの!」

 

「そ、そうか。すまん」

 

「は、初めてしてみたけど・・・・・・その、く、癖になっちゃうかも」

 

「へっ?」

 

「な、なんでもないよ!なんでも!」

 

「お、おう」

 

「それで、なんでキリトくんは私にああ言うこと聞いたのかな?」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

「それは?」

 

い、言えない。空の下で見るレインの裸が綺麗すぎて見とれていたなんて、口が裂けても絶対に言えない・・・・・」

 

「き、キリトくん//////」

 

「あ、あれ。もしかして声に出してた?」

 

「うん」

 

レインの頷きに俺は今すぐこの場から逃げたしたいと思った。

頭の中では俺の恥ずかしい悲鳴が鳴り響いてる。

 

「そ、そのありがとうキリトくん。嬉しいよ」

 

「!!//////と、とにかく早く服を着ようぜ」

 

「うん」

 

俺とレインは急いで岸まで上がると、素早く服を着た。

さすがに水の中で服は着ない。

 

「と、とにかくこれでクエストがまた1つ攻略出来たな」

 

「そ、そうだね」

 

「今度は、ここで二人でのんびりしたいな」

 

「そうだね。この辺りはあまり人が来ないみたいだし。景色も良いからね」

 

「・・・・・・ねぇ、キリトくん」

 

「ん?」

 

「さっき言っていた事って本当?」

 

「さっき言っていた事?」

 

「わ、私の裸が綺麗すぎて見とれていたって・・・・・」

 

「そ、それは・・・・・・!」

 

俺はレインの問いに、軽く後退りする。

そして、レインも後退りする俺を追い掛けて近寄ってくる。

 

「キリトくん」

 

「・・・・・・・・・ほ、本当だよ」

 

「!!//////」

 

「こんな昼間に見たことなかったから、その・・・・・・・正直見とれてた」

 

「ありがとうキリトくん。それじゃあ、その・・・・・・また、キスして・・・・・・・」

 

「うっ・・・・・・」

 

レインにキスを頼まれた俺は、索敵スキルを使用し、周囲にプレイヤーがいないことを確認すると、レインを俺に引き寄せ、レインの華奢な両肩に手を置き。

 

「んっ・・・・・・・」

 

レインの唇に自分の唇を合わせる。

そして、さっきと同じように舌を絡ませてキスをする。

後でレインに聞くと、これがディープキスなのだと聞かされた。

これを誰に聞いたか聞くと、リズとアルゴに聞かされたらしい。レインから聞いた二人に俺は軽く頭痛がしたような気がした。

その後、辺りを軽く散歩しながら、主街区ラステアに戻り第76層アークソフィアに戻った。




「それでは、答えを発表します。今回はシリカ。お願いね」

「は、はい!え~と、答えはⅢ:水色です」

「みんな分かったかな?」

「にしても、キリトとレインったら何処に行ってもイチャイチャしてるのね」

「んー、いや。あれはイチャイチャどころのレベルじゃない気がするけど・・・・・」

「確かにそうですね。とにかくあたしは、二人が早く元の状態に戻ることに協力します」

「そうね~。そうじゃないと二人とも可哀想だしね」

「ですね。リズ、シリカ。これからも頑張ってくださいね」

「はい!」

「まっかせといて!」

「それでは時間になりましたので今回はこの辺りで」

「みなさんさようなら。また会いましょうね」

「それじゃあ、また今度」

「それでは、また次回にDon't miss it.!」


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HF編 第93話 〈二人で銭湯〉

「ヤッホー!ソーナだよ。今回もゲストと一緒に問題を出すよ~。今回のゲストはこちら。どうぞ!」

「みなさん、お久しぶりです。ランです」

「ヤッホー、みんな。久しぶり!ユウキだよ」

「今回のゲストはランとユウキの二人です。二人とも久しぶり」

「ソーナさん、お久しぶりです。また、呼んでくださりありがとうございます」

「久しぶりっ、ソーナ!また、呼んでくれてありがとう!」

「今回はキリトとレインが銭湯に行くみたいですけど・・・・・二人は行ったことありますか?」

「昔、キリトさんとリーファちゃんと行きましたね」

「うん!また、4人で行きたいな~。ソーナさんは?」

「私ですか?私は、温泉なら行ったことありますけど銭湯は行ったことないですね」

「へぇー」

「そうなんですね」

「ええ。ですので、機会があったら行ってみたいですね」

「行けるといいですね」

「そうですね。っと。それでは今回の問題を出します」

問題:『銭湯から出るとき、天井から落ちてきたものはなに?』

Ⅰ:タライ

Ⅱ:スライム

Ⅲ:冷水

Ⅳ:熱湯

「答えは本文の最後に!」


 

~キリトside~

 

「「銭湯?」」

 

82層にある、《禊ぎの湖》から戻りエギルの店で少し遅めの昼食を取っていると、エギルから銭湯がある、という情報を聞かされ、その詳細を聞いていた。

 

「温泉、じゃなくてか?」

 

「ああ。まあ、俺も知り合いから聞いただけなんだけどよ。なんでもあるフィールドのダンジョンの近くの入り口の側にあった木にトラップが仕掛けられていたらしいんだが、それを解除すると地下への階段が現れたらしい」

 

「へぇー」

 

「そんで、地下へ続く階段の先へ歩いて行ったら、銭湯のようなものがあったらしいんだとさ」

 

「あまり信憑性のない話だな・・・・・・・」

 

「まあな」

 

「でも行ってみようよキリトくん」

 

「まっ、そうだな。行ってみるか」

 

そんな訳で、俺とレインはエギルから銭湯のある場所を聞くと着替えをストレージに入れ、銭湯へ向かった。

 

「♪♪」

 

道中、隣でレインがものすごく嬉しそうな顔をしていたのを俺は見逃さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンジョン

 

「エギルの話だとこの辺りにあるはずなんだが・・・・・・・」

 

エギルから聞いた話を頼りに、銭湯があるであろう場所の近くに、俺とレインは来ていた。

 

「あ。あれじゃない?」

 

レインの視線の先には地下へと続く階段があった。

 

「降りてみるか」

 

「うん・・・・・・」

 

俺とレインは階段を下っていく。

少しして視界が開けた。

 

「あ!キリトくんあったよ!」

 

「ほんとにあったな」

 

そこには『ここからは入湯料50コル』と書かれた看板があった。

50コル払い、中に入ると。

 

「女湯の入り口ってないのかな?」

 

そこには入り口が1つだけあった。

 

「男湯の入り口もないな」

 

「ね、ねえ、キリトくん。あそこに『混浴』って書かれてない?」

 

「確かに書かれてるな」

 

「もしかして『混浴』しか・・・・・・ないとか?」

 

「入り口がこれだけと言うことはそうなんだろうな」

 

「どうしよう・・・・・・・」

 

「どうしようか・・・・・・・」

 

「あ、あのねキリトくん・・・・・・私は別にキリトくんと一緒に入っても・・・・・・いいよ」

 

「え、けど・・・・・・」

 

「他の人の気配もしないし、キリトくんと私だけみたいだから・・・・・・それに、入湯料払っちゃったし・・・・・」

 

「そう・・・・・だな。それじゃあ、ちょっと中見てくるから待っててくれ」

 

「うん」

 

俺は入り口の扉を開き銭湯の中に入る。

中は男と女と書かれた暖簾がかかっているがさの間の木には混浴とかかれていた。つまりこれは更衣室は別だが、中は同じということらしい。まあ、外に混浴と書かれているから予想はしていたが――――

更衣室を抜け、奥に行くと。

 

「え、ダンジョンなのに露天風呂・・・・・・・?」

 

露天風呂があった。

 

「って、よく見てみるとこれ絵なのか!露天風呂気分が味わえる銭湯ってことだな・・・・・・・ご丁寧に空の絵まで・・・・・・」

 

よく見てみると、周囲の岩に現実の露天風呂と同じように、絵が描かれていた。しかも空の絵まで。

 

「・・・・・見た感じ、誰もいないみたいだし入るなら今の内かな・・・・・・まあ、あまり広まってないからだろうけど・・・・・・」

 

中を見て、誰もいないことを確認すると、俺はレインのところに戻った。

 

「露天風呂みたいな見た目の凄い銭湯だったよ。しかも、まだ誰もいなかった」

 

「うん♪それならいいよ。せっかくのキリトくんと二人で銭湯だしね♪」

 

「よし。決まりだ」

 

銭湯に入ることを決め、俺とレインは中に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腰にタオルを巻き、更衣室から出るとすでにレインがバスタオルを体に巻いて待っていた。

 

「お待たせ。早いなレイン」

 

「うん♪それにしても・・・・・・・・」

 

レインは銭湯の中を見渡す。

 

「うわ・・・・・広いね~・・・・・!しかも貸し切りだよキリトくん!」

 

「そうだな。今回はラッキーだったのかもな」

 

「そうだね・・・・・うわぁ・・・・・・」

 

「ハハ。どうせなら、思いっきり楽しむかレイン」

 

「うん!賛成~!あ、キリトくん。あれ、もしかしてジャグジーじゃないかな?」

 

「ホントだ。しかもその奥には『水風呂』って書いてあるお風呂があるな」

 

「あ!向こうには『薬湯』って書いてあるのもある・・・・・・・『打たせ湯』もあるよ!」

 

「ああ。『寝湯』に『菖蒲湯』『柚子湯』。『サウナ』に『ミストサウナ』まであるな」

 

「スゴいね!こんな銭湯、現実でも見たことないよ!なんでも揃ってる!」

 

「ああ・・・・・・これは驚いた。予想以上の充実っぶりだ・・・・・・現実にもそうないぞこんな設備・・・・・・」

 

「スパみたいなところだね!来て良かった~。ね、キリトくん」

 

「ああ!」

 

「キリトくん、早く入ろう」

 

「そうだな」

 

「あっ。他の人の気配を感じたら、すぐに伝えてね」

 

「わかってるよ」

 

「うん♪それじゃあ入ろうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ~~気持ち良かった」

 

「ああ。疲れが取れた気がするよ。疲労回復の効果でも付与されているのか?」

 

「ん~どうだろう。でも、現実でも疲労回復効果のあるお風呂もあるから似たようなものじゃないかな?」

 

「なるほどな」

 

あちこちのお風呂を周り、俺たちは今普通のお風呂で一緒に入りのんびりしていた。

サウナでは、柔肌に滴る汗で、妖艶のような色っぽさがレインから滲み出ていた。正直、見蕩れるほどだった。

すると

 

「フフ」

 

「ん?どうした?いきなり笑って」

 

「ううん。さっきもこうして湖に裸でキリトくんと入ったのに、お風呂とかではなんか雰囲気が違うなって」

 

「確かにな。まあ、普通湖で裸になることなんてないからな普通」

 

「そうなんだけど・・・・・・何て言うのかな・・・・・・気持ちが違うの、かな?湖より、こうしてお風呂だと落ち着くんだ」

 

「まあ、そりゃそうだろうな。俺も何故かお風呂だと落ち着いた気分になるからな」

 

「フフ。そうだね」

 

周囲の岩に描かれている風景を見ながら会話する。

正直、ここは銭湯ではなく露天風呂でなないかと思うほどだ。

 

「そろそろ出ようか」

 

「そうだな。結構長湯しちゃったな」

 

「うん」

 

俺たちはバスタオルを身に付け更衣室の方へと向かい、扉を開こうとした。が。

 

「ん?」

 

"ガタッ!"

 

「どうしたのキリトくん?」

 

「いや・・・・・扉が開かない」

 

そう何故か扉が開かなかったのだ。

 

"ガタッ!ガタッ!"

 

「ちょっといい?」

 

「ああ」

 

"ガタッ!"

 

「・・・・・・・・・・ホントだ。開かない」

 

「仕方無いから破壊するか?」

 

「却下だよ」

 

「冗談だよ。・・・・・・・二人で開けてみ――――」

 

すると突然。

 

"バシャーーン!!"

 

「え!?な、なに!?」

 

「風呂の上から何か落ちてきた!?」

 

さっきまでいた場所に上から何かが落ちてきた。

振り向いて、落ちてきたものを見た。

落ちてきたものは――――

 

「え!?スライムタイプのモンスター!?」

 

透明なスライムタイプのモンスターだった。

その数6体。

 

「なんで風呂にスライムが上から落ちてくるんだ!?」

 

「さ、さぁ?」

 

「レイン、武器はすぐ装備できるか?」

 

「スロットに入ってるからすぐに装備できるよ」

 

「よし・・・・・・防具は・・・・・・・装備する暇がないからこのまま武器だけで行くぞ!」

 

「ええ!こ、この格好で戦うの!?・・・・・・・もぅ!!」

 

俺とレインは双剣・・・・・・・・・ではなく片手剣を右手に装備すると向かってくるスライムに迎え撃つため向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はああぁぁぁあっ!!」

 

「やああぁぁぁあっ!!」

 

俺とレインは6体のスライムの内2体を倒した。

 

「それほどレベルは高くないみたいだよ。このまま・・・・・・・って、ちょ、いや・・・・・・なにこれ!?」

 

「どうしたレイ・・・・・・ン!?」

 

レインの驚きの声が聞こえ、レインを見ると。

 

「キリトくん、こっちみないで!」

 

「なんで、バスタオルが溶けてるんだ!?」

 

レインのバスタオルがあちこち溶けていた。

 

「スライムの特殊能力か!?」

 

「多分、防具の耐久値を下げる効果があるんだと思う」

 

「マジか!?って・・・・・・・おわっ!」

 

「キリトくん!」

 

目の前のスライムが俺にもレインに攻撃したように何かの液を浴びせてきた。

俺はギリギリでそれをステップで避けたが腰に巻いていたタオルに僅かだが飛び散った。

スライムの液が飛び散った場所は小さく、溶けた感じの穴が出来ていた。

 

「レインは俺の後ろにいてくれ!その格好はマズイ!」

 

「う、うん。ゴメンねキリトくん」

 

「気にするな」

 

俺は少し離れて後ろにいるレインを守りながら4体のスライムと相対する。

 

「レイン、すまんちょっと下がっててくれ。一撃でケリをつける」

 

「う、うん」

 

レインが俺から僅かに離れたのを感じると、俺は右手の片手剣『ブラックローズ・ナイト』を正中線に構え接近する。

 

「はああぁぁぁぁぁあ!!」

 

俺は片手剣ソードスキル《ホリゾンタル・スクエア》4連撃を放った。

《ホリゾンタル・スクエア》4連撃で4体のスライムを切り裂くと、スライムたちはポリゴンの欠片へと変わり消えた。

 

「ふぅ・・・・・・・・終わったぞ」

 

「う、うん。ありがとうキリトくん」

 

「!///////と、とにかくまた何か落ちてきたらヤバイから早く出よう」

 

「う、うん」

 

扉の取っ手を握り、右にスライドさせると今度はちゃんと開いた。

俺とレインは更衣室で手早く着替え、外に出た。

 

「はぁ。せっかく、ゆっくりできたのに最後の最後で疲れたよ」

 

「まったくだな」

 

「でも、SAOの中で銭湯に行けるとは思わなかったから楽しかったよ」

 

「俺もだ。現実では銭湯にもう何年も行ってなかったからな」

 

「あ。それ私もだよ」

 

「はは。今度は現実でもレインと行きたいな」

 

「私はもちろんいいけど。でも、それってもしかしてまた混浴?」

 

「い、いや、それは・・・・・・・って言うよりそもそも現実に混浴できる銭湯なんかあるのか?」

 

「う、う~ん。どうだろう。キリトくんと二人だけなら入ってみたいけど、他の人がいるところでだと嫌かな」

 

「同感だ」

 

「フフフ」

 

「ハハハ」

 

「さてと。それじゃあ帰りますか」

 

「うん」

 

俺とレインは銭湯を後にし、アークソフィアのエギルの店へ帰っていった。




「みんな分かったかな?それでは答えを発表します。今回はユウキ、お願い!」

「うん!答えはⅡ:スライムだよ」

「・・・・・・何故、銭湯にスライムが落ちてくるんですか」

「「さあ?」」

「タライや冷水、熱湯はよくあることだけど、スライムってのはないよね」

「ええ。しかも何故銭湯で戦闘なんてしなければならないんですか?」

「「・・・・・・・・・・」」

「ソーナ?ユウキ?どうかしましたか?」

「ラン、今のそれって狙ったの?」

「姉ちゃん、それは狙ったの?」

「?・・・・・・・・・!!///////////」

「どうやら狙ったわけじゃないようだよ、ユウキ」

「うん。姉ちゃんってたまに微妙に抜けてるんだよね」

「そ、そんなことないです!」

「アハハ。それでは時間になりましたので今回はここまで。また次回お会いしましょう」

「またね、みんな!」

「またお会いしましょう」

「それでは、また次回にDon't miss it.!」


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HF編 第94話 〈ユイちゃんQuestions!?〉

「こんにちはソーナです。今回も問題を出していきます。今回のゲストはこちら、どうぞ!」

「よっ!みんな、キリトだ」

「今回のゲストはキリトです。キリト、久しぶり」

「久しぶりだなソーナ」

「キリトは元気そうですね」

「まあ、色々あるがな」

「あははは・・・・・・それでは問題を出します」

「今回の問題はなんだろうな」

問題:『作中でユイがキリトとレインに聞いたことは何?』

Ⅰ:子供の作り方

Ⅱ:料理

Ⅲ:攻略状況

Ⅳ:デートの予定

「正解は本文の最後に!」


 

~キリトside~

 

ホロウ・エリアの攻略はしばらくお休みということをフィリアにメールで伝えると、フィリアは了解と返信を返してきた。

しばらくお休みの理由は、ここ最近根を詰めすぎているからだ。たまには休憩も必要だろう。

そんなわけでアインクラッドの階層攻略を今日はし、エギルの店に帰ってきた。

 

「ただいま~」

 

「今帰ったぞ」

 

「あ!お帰りなさい、パパ!ママ!」

 

中に入ると丁度、エギルの手伝いをしていたユイが俺とレインを笑顔で出迎えてくれた。

正直、これで少し疲れは取れた気がする。

 

「ただいま、ユイちゃん」

 

「ただいま、ユイ」

 

「二人が今日も無事で何よりです!」

 

「うん。ユイちゃんはエギルさんのお手伝い?」

 

「はい!エギルさんのお手伝いです」

 

「そうか~偉いね、ユイちゃん」

 

レインはユイの頭を優しく撫でる。

ユイも嬉しそうにしている。

以前、ユイに一人で寂しくないかと聞いたとき、寂しいけどパパとママには大事な役割がありますから、とユイが言い、それ以降、俺とレインは出来るだけユイとの時間を取るようにしている。

 

「わぁ・・・・・ママに頭を撫で撫でされるの気持ちいいです」

 

「そう?よかったよ~」

 

レインとユイ。母親と娘のやり取りに、俺はそっと笑みを洩らす。

 

「将来、親バカになりそうだなキリト」

 

「エギル」

 

カウンターの椅子に座ると、エギルが飲み物を持ってやって来た。

 

「どっちかって言うとレインが親バカになりそうじゃないか?」

 

「え~、そんなことないよ。それにキリトくんも充分親バカだと思うよ」

 

「そうか?」

 

「そうだよ~」

 

「俺から見るとお前ら二人とも親バカな気がするぞ・・・・・・」

 

エギルが若干呆れたように俺とレインを見る。

 

「それで、攻略の状況はどうだ?」

 

「モンスターのレベルはあまり高くないから問題ないな。強いて言うなら、先読みがしにくいってところか?」

 

「なるほどな・・・・・上層なだけあってアルゴリズムが違う、ってか」

 

「うん。幸い、そこまで強くはないから問題ないんだけど・・・・・トラップが少し多いいかな」

 

「それだけ難易度が高くなっているってことだろう」

 

「だな」

 

現在の俺たちのレベルは、俺が122、レインが121、アスナたちが118ってとこだ。

攻略組は全員低くてもレベルは110は越えている。

 

「ところでパパたちはもう今日はこのまま休みますか?」

 

「そうだな。今日は疲れたし、このまま休むことにするよ」

 

「そうだね」

 

「わかりました。ゆっくり休んでください」

 

「ああ」

 

「うん」

 

俺とレインは、カウンターの椅子から立つと2階の部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺とレインが上に上がったその頃

 

 

「ったく。あの二人は・・・・・・また、無茶してんじゃねぇのか」

 

「わたしも心配です」

 

「今やあの二人あってこその攻略組だからな・・・・・」

 

「そうなんですか?」

 

「ああ。あの二人の戦闘センスは攻略組1、2を争うほどだ。まあ、戦略面はアスナやランが上だがな」

 

「やっぱりパパとママは凄いです」

 

「だな。あ、そうだユイちゃん」

 

「はい、なんですか?」

 

「これをあの二人に飲ませてあげてくれ」

 

「エギルさん。これは・・・・・・お茶、ですか?」

 

「ああ。疲れが取れる効果の入ったお茶だ。あの二人にはピッタリだろう」

 

「わかりました。届けてきます」

 

「おう。気を付けてな」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自室

 

部屋に戻ってきた俺とレインは装備の防具や武器をストレージにしまうとベットに腰かけた。

 

「んー・・・・・・疲れたぁ~」

 

「お疲れレイン」

 

「キリトくんもね」

 

「ああ。あ、レイン。明日ホロウ・エリアに行って攻略しないか?」

 

「ホロウ・エリアで?フィリアちゃんは?」

 

「フィリアにはしばらくそっちでの攻略は休みと言ったからな、それにちょっと管理区のコンソールに気になる項目があったんだ」

 

「気になる項目?新しい何かが出たのかな?」

 

「それは分からないけど・・・・・・・気にならないか?」

 

「フフッ。それ、分かっていってるでしょキリトくん」

 

「まあな」

 

「もちろん、気になるよ」

 

「よし。それじゃあ明日の予定はそれで決まりな」

 

「うん♪そ、それでね、キリトくん」

 

「ん?」

 

「え、え~と・・・・・・えいっ!」

 

「っ!?んー!んーー!!」

 

俺はいきなりレインに顔を抱き締められた。

その衝撃で、俺とレインの体が倒れ下にレイン、上に俺で抱き締められているという体勢が出来上がってしまった。

それにより、レインの双丘に顔を埋めることになった。

レインの抱擁は1分以上続いた。

 

「ぷはっ・・・・・!な、い、いきなりどうしたんだレイン!?」

 

「え、え~と、その、しばらくキリトくんにこうしてあげられてなかったから・・・・・・」

 

「あ、あのなぁ・・・・・」

 

「う、も、もしかして嫌だった・・・・・・?」

 

「そ、そうじゃないけど・・・・・・」

 

嫌と言うよりいきなりで驚いた、と言うのが現状だ。

まあ、柔らかくて気持ち良かったから良かったが、顔が埋もれていたため息が出来なかった。

 

「そ、それでねキリトくん」

 

「な、なに?」

 

「き、キス、してほしいな」

 

レインからのお願いに、俺は苦笑した。

 

「わ、わかった」

 

俺はゆっくりとレインの唇に顔を近づける。

 

「キリトくん・・・・・・」

 

「レイン・・・・・・」

 

あと、少しで互いの唇が重なる。

が。

 

「わぁ!パパ!ママ!もしかして今子供を作ろうとしていたんですか?」

 

ユイがお茶を持って入ってきてそういった。

と言うよりユイがいつ入ってきたのわからなかった。

 

「ユイ!?」

 

「ユイちゃん!?いつからいたの!?」

 

「今入ってきました。エギルさんが二人に疲れが取れる効果の入ったお茶だそうなので持ってきました」

 

「そ、そうなんだ」

 

「それでパパとママは今子供を作ろうとしていたんですか?」

 

「「うっ・・・・・・!」

 

何故、ユイがキスで子供が出来ると信じているのかというと――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~回想~

 

 

「ママ、子供はどうやったら作れるんですか?」

 

ユイのいきなりの質問に、その場が急に静かになった。

 

「き、急にどうしたユイ?」

 

「ゆ、ユイちゃん?だ、誰から聞いたの、それって?」

 

「クラインさんからです」

 

「「クラインッ(さん)!!」」

 

俺とレインはクラインに視線を向けるが、既に逃げた後だった。

 

「それで、子供はどうやったら出来るんですか?」

 

「え、え~と。そ、それは、その・・・・・・」

 

「な、なんて言ったらいいんだ・・・・・・・」

 

ユイに子供の作り方を聞かれ、俺とレインは戸惑った。

 

「アスナさんは知ってますか?」

 

「え!?わ、私!?」

 

ユイは今度はアスナに聞いた。

 

「え、え~と・・・・・・」

 

「それじゃあ、ランさんはどうですか?」

 

「私ですか!?」

 

「はい!ランさんはどうやったら子供が出来るか知っていますか?」

 

「そ、それは・・・・・・キリトさん!」

 

「お、俺か!?」

 

俺はランに言われ戸惑う。

正確にはこの場の全員戸惑っている。

 

「ど、どうすればいいと思うレイン・・・・・・?」

 

「どうすればいいって、言っても・・・・・・」

 

「ユイには早すぎるだろ、これは」

 

「そうだけど・・・・・・だからって本当に話したらそれはそれで・・・・・・」

 

「パパ?ママ?」

 

「あー、そのだな・・・・・すまん、レイン。あとは頼む」

 

「ええ!?ちょ、キリトくん!」

 

「子供はどうやったら作れるんですかママ?」

 

「ううっ・・・・・え、え~と・・・・・・愛する人との、キスで出来るんだよユイちゃん」

 

レインの嘘にその場の全員が

 

『『『『『それはさすがに無理があると思う(よ)』』』』』

 

同時にそう思った。

 

「なるほど~。キスで出来るんですね」

 

「う、うん」

 

「それでキスをしたらどうやって出来るんですか?」

 

「え、え~と・・・・・・・」

 

「ゆ、ユイ。どうしてそこまで子供が出来ることに興味津々なんだ?」

 

「えっと。妹や弟がいたら1人でも寂しくないかな、と思って」

 

「ユイちゃん・・・・・・」

 

「ユイ・・・・・・」

 

「ごめんねユイちゃん。私も出来るだけユイちゃんと一緒にいられる時間を取るよ」

 

「俺もだ。ごめんなユイ」

 

「い、いえ、パパとママにはアインクラッドを攻略するという大事な役割があるんですから」

 

「ユイちゃん。子供なんだから我慢しちゃダメだよ」

 

「そうだな。ユイ。ユイはまだ、子供なんだから俺やレインにもっと甘えてもいいんだぞ」

 

「パパ・・・・ママ・・・・分かりました」

 

「うん。それじゃあ、明日は3人でピクニックに行こうか」

 

「そうだな。アスナ、明日休むけど大丈夫か?」

 

「もちろんよ。キリト君とレインちゃんはユイちゃんと一緒にピクニックに行ってらっしゃい」

 

「ありがとう、アスナちゃん」

 

「わあーい♪3人でピクニックです」

 

その翌日、俺とレインはユイと3人でピクニックにもちろん行った。

因みに、クラインにはお説教をした。

で、ユイが何故聞いたのか聞くと、クラインが、こう言うのは親の役目だろ、らしい。どうやらクラインにも聞いたらしく、流石のクラインもユイには教えられなかったから俺とレインに聞くように言ったのだろう。

ちなみに、クラインからは、もう少しユイちゃんとの時間を取れよ、と言われた。

さすがにこれには俺とレインも神妙になるしかなかった。

 

 

~回想終了~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――というわけだ。

ユイにキスで子供が出来ると言ってしまい、今に至るわけだ。

 

「ママが前に、キスで子供と言っていました」

 

「そ、そう言えば私そう言ったんだったね・・・・・」

 

「どうするレイン。もし街中でユイがキスしてる人たちをみたら・・・・・・」

 

「た、確かにそれを見たら・・・・・・」

 

「二人は今子供を作ろうとしていたんですか?」

 

「ゆ、ユイちゃん。お願いだから大きな声で子供、子供って言わないで」

 

「今、2階に俺たち以外いたか・・・・・?スグとかに聞かれたらヤバイぞ・・・・・・」

 

「どうなんですかどうなんですか!」

 

「あ、あのねユイちゃん。この前私が言った、キスしたら子供が出来るって話ね・・・・・・」

 

「はい」

 

「あれ、嘘なんだ」

 

「ええっ!!どうしてですかママ!?」

 

「そ、それはね、ユイちゃんにはまだ早いって言うか、その・・・・・」

 

「ママ?」

 

「そ、そう。ユイちゃんにはまだ早いから!」

 

「そ、そうだな!うん!ユイが知るにはまだ早い」

 

「パパもですか・・・・・・そうですね・・・・・・私もまだパパとママの子供でいたいですから」

 

ユイの言葉を聞き、俺とレインは胸を撫で下ろした。

これで終わりかと思いきや、

 

「それじゃあ、子供はどうやったら出来るんですか?」

 

「「まだ、続いていたの(か)!?」」

 

どうやら、まだ終わらないみたいだ。

そのあと、何とかしてユイに誤魔化し、この話を無かったことにした。

が、前に聞かれたのと同様にとてつもなく疲れた。

下手すればボス攻略よりも疲れたかもしれないな。

 




「みんな何かわかったかな?それじゃあ、キリト。解答をお願いするよ!」

「了解だ。今回の問題の正解は、Ⅰ:子供の作り方、だ」

「それにしてもユイちゃんがこんなことを聞くなんてね」

「ああ。レインも俺も驚いたぜ」

「それほど1人で寂しかったってことかな」

「だろうな。今度からはユイとの時間を多く取らないとな」

「そうだね。あ、親バカは程々にね」

「なっ!?べ、別に俺は親バカじゃないぞ」

「そう?」

「ああ」

「まあ、無意識なんだろうな~。それじゃあ、時間になったので今回はこれで」

「もうそんな時間か。意外に早いな」

「そうだね。それじゃあねみんなまた会いましょう」

「また、会おう!」

「それでは、また次回にDon't miss it.!」



「言っとくけど俺は親バカじゃないからな、ソーナ」

「んー・・・・・・レインもキリトも親バカな気がするけどな~」

「こうなったらデュエルで決着つけてやる」

「え!?ちょ、なんでデュエルなの!?」

「いいからやるぞ!」

「ちょ!?もぉー!」


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HF編 第95話〈謎のギルド〉

「こんにちは、ソーナです。今回も問題を出していきます。今回のゲストはこちら!どうぞ!」

「ヤッホー、みんな~!わたしストレアだよ!」

「今回のゲストはストレアです。ストレアようこそ」

「おー、ソーナ。今日は呼んでくれてありがとう♪」

「いえいえ。そういえば最近ストレアの活躍を聞かない気が・・・・・・・」

「そーなんだよ~。もっと出番増やしてくれないかな~(チラッ)」

「あ、ハハハハ・・・・・・・。さて、今回の問題を出します」

「話をそらされたような気がするなぁ~」

「今回の問題はこちら!」

「え!無視なの!?」

問題:『今回、レインが夕飯としてキリトに作るものはなんでしょう?』

Ⅰ:ラグー・ラビットのシチュー

Ⅱ:ビーフストロガノフ

Ⅲ:煮込みハンバーグ

Ⅳ:ムニエル

「正解は本文の最後に!」


 

~キリトside~

 

「で・・・・・・・なんで俺もここに居るわけ?」

 

「いやー、人が多いい方が良いでしょ。それぞれ着眼点が違うと思うし」

 

「だからってなぁ・・・・・・」

 

「諦めてくださいキリトさん。この子がこうなったら引かないこと知ってますよね」

 

「ラン・・・・・・・。まぁ・・・・・・俺も気になるからいいけど」

 

「あははは。まあまあキリトくん。ご褒美に今日の夜ご飯は煮込みハンバーグにするからね」

 

「ほんとかレイン!?」

 

「うん♪」

 

「こんなところでも惚気けないでほしいな~」

 

「今さらですよユウキ」

 

「あははは・・・・・・・・」

 

今、俺たちは転移門広場である人物を待っていた。

まあ、その人物が用があるのは血盟騎士団なのだが。俺とレインはユウキに連れられて付き添いという形でこの場にいた。

なんでも、新たに攻略組に入るため血盟騎士団の副団長のアスナに連絡してきたらしいのだ。今日はその面接――――――もとい、顔合わせという感じだ。

 

「ところで、その待ち合わせのギルドってどんなギルドなんだ?」

 

俺はアスナに疑問に思っていたことを聞いた。

 

「最近、頭角を現したハイレベル集団!かなりの強さなんだって、結構評判になってるよ」

 

「へぇー」

 

「ちょっとは期待できるかな~?」

 

「キリトくんとレインちゃんからしてみたらまだまだなんじゃないかしら?」

 

「え?なんで?」

 

「だって、ねー、二人とも」

 

「うんうん。アスナの言う通りだと思うよ」

 

「そうですね。キリトさんとレインさんに対応出来るのって言ったら、やっぱりヒースクリフ団長くらいなものだと思いますよ」

 

「それもそうね」

 

確かにヒースクリフ――――茅場の実力はゲームマスターとしての強さを逸脱していた。

いくら不死属性が付与されているからとはいえ、それだけではあそこまでの強さは得られないはずだ。

それにアイツはフェアプレイを心掛けている。それは、アイツと共闘したりしてわかっている事だ。

まあ、不死属性がついている時点でフェアプレイなのかは疑問だが。

そして、そのまましばらく談笑して待っていると。

突如転移門が青く発光し、誰かが転移してきたのがわかった。

転移門の方に視線を向けると、転移門の入り口から、派手な白・金・紫のトリコロールの金属防具を身に纏った、金髪の男性プレイヤーがこちらに近付いて来た。

 

「・・・・・・来たみたいね」

 

金髪の男性プレイヤーは俺たちの前に止まると、

 

「お初にお目にかかります。アルベリヒと申します」

 

優雅な丁寧な口調で自己紹介をした。

だが、そんな中俺とレインはこのプレイヤーに違和感を感じ小声で話していた。

 

「(装備はそれなりのものを揃えているようだが。なんだ、この違和感・・・・・・)」

 

「(ねぇ、キリトくん。この人・・・・・・装備の割には強いとは感じられないんだけど・・・・・・本当に強いのかな?)」

 

「(さあ。だが、最近頭角を表してきたハイレベル集団みたいだし・・・・・・だがなあ・・・・・・)」

 

「(ん?)」

 

「(装備は確かにかなりレアなものなんだろうけど、何て言うのかな・・・・・・・こう、圧を感じられない)」

 

「(確かにね・・・・・・・それにしてもまた派手な名前だね・・・・・・『アルベリヒ』って確か・・・・・・『妖精王』の名前だったかな・・・・・・?)」

 

「(『妖精王』?)」

 

「(うん。各国中世伝説にさまざまな姿で現れて、有名な伝承だとドイツの《ニーベルンゲンの歌》かな。英雄ジークフリートが獲得する秘密を守る小人が妖精王、アルベリヒ。スペルは【Alberich】で,意味は〈エルフの王〉・・・・・・・だよ)」

 

「(へぇー。結構詳しいんだな)」

 

「(まあね。あ、でもこういう話題はリーファちゃんの方が詳しいかも)」

 

「(ああ。そういえばそうだった)」

 

小声でそんなことを話していると、アスナも自己紹介をした。

 

「初めまして、私が血盟騎士団副団長のアスナです。本日はよろしくお願いいたします」

 

「お噂はかねがね聞いております。《閃光》のアスナさん」

 

「(さすがにアスナのことは知っているか)」

 

「いやはや、お美しい限りです。もしや現実の世界ではご令嬢だったりするのでは?・・・・・・っと失礼、この世界では現実世界の詮索はタブーでしたね。ふふふふふっ」

 

「は、はあ・・・・・・」

 

アルベリヒの言葉にアスナは眉をひそめ怪訝な表情をした。

そして、俺たちはと言うと。

 

「「「「(な、なにこの人!?)」」」」

 

俺を含め4人とも同時にそんなことを思っていたらしい。

 

「ところでアスナさん、こちらの方たちは?」

 

「あ、こちらの二人は私の補佐の――――」

 

「はじめまして、血盟騎士団副団長補佐のランです」

 

「同じくユウキです」

 

「なるほど・・・・・・《絶剣》と《剣騎姫》のお二人でしたか」

 

「で、こちらは今日のオブザーバーとして同席してもらってる・・・・・・」

 

「キリトだ。主にソロやコンビでやらせてもらっている・・・・・・よろしく」

 

「レインです。キリトくんと同じく主にソロやコンビで攻略してます」

 

「おお、キリト・・・・・・《黒の剣士》様でしたか!そして、レイン・・・・・・《紅の剣舞士》様ですか!いやー、あなた方のご活躍のおかげで僕たちもここまで来れました。攻略組の方々のお力になれますよう、粉骨砕身の覚悟で尽力いたす所存です。どうぞ、よろしくお願いいたします」

 

「あ、ああ・・・・・・」

 

「は、はい・・・・・・」 

 

「(不自然に礼儀正しいな)」

 

「(うん)」

 

俺とレインはアルベリヒの妙に礼儀正しい態度に疑念を持った。

 

「それで採用試験とはどのようなことをするのでしょうか?」

 

「それでは、私とデュエルを――――「ちょっと待った」―――キリト君?」

 

「そのデュエル、俺がやってもいいか?」

 

「「「えっ!?」」」

 

俺の台詞にレインとアルベリヒを除く3人の驚きの声が洩れた。

 

「き、キリト君!?」

 

「ほぅ・・・・・・」

 

「俺も攻略組の端くれだからな、噂の実力が知りたいのさ」

 

「これはこれは光栄ですね。《黒の剣士》様直々に剣を交えていただけるとは」

 

「ちょ、ちょっとすみません」

 

アスナは俺たちを連れてアルベリヒから少し離れた。

 

「どういうことキリト君?」

 

「ちょっとあのアルベリヒってやつの実力が気になってな。自分で確かめることにした」

 

「い、いや、だからって・・・・・・レインちゃんはいいの?」

 

「私も気になっているからなぁ~。それにキリトくんがやらなかったら私が相手してるよ」

 

「えぇ~」

 

アスナは俺とレインの言葉にどこか微妙な感じだった。

 

「まあまあ、アスナも気になってるんでしょ?あのアルベリヒって人のこと」

 

「それは・・・・・・まあ」

 

「なら、キリトに任せようよ」

 

「キリトさんならデュエルを通じて何か分かるかもしれませんね」

 

「うぅ・・・・・・じゃあ、キリト君お願いね」

 

「おうよ」

 

アスナからアルベリヒとのデュエルを貰い、俺たちはアルベリヒのいる場所に戻った。

元の場所に戻ると、アルベリヒはすでに装備を整え終わっていた。

 

「お待たせしました」

 

「いえいえ。それで、決まりましたか?」

 

「ああ。俺がやるよ、アルベリヒさん」

 

「おお・・・・・・・かの《黒の剣士》様が相手とは・・・・・・。これは胸を借りるつもりでお相手します」

 

「ああ」

 

「では、デュエルのルールを説明します。今回は半減決着モードで行っていただきます。相手に初撃でクリティカルヒットをすると勝ちになり、お互いに初撃がクリティカルヒットしなかった場合はそのまま続行となります。相手のHPを半分にしたらその人の勝ちです。何か質問はありますか?」

 

ランが前に出てそう説明する。

俺とアルベリヒは距離を取り、ランの問いに首を横に降って返答する。

俺はウインドウを開き、デュエル、半減決着モードに設定し、アルベリヒに申請した。

アルベリヒ側にもウインドウが開き、幾つかの操作をするとアルベリヒのウインドウが消える。

そして、俺とアルベリヒの間でデュエルのカウントダウンが始まった。

俺はすでに装備していた片手剣『ブラックローズ・ナイト』を背中の鞘から抜き構える。

対するアルベリヒも腰に装備している剣――――アスナと同じ細剣を抜いた。

 

「先行は譲ってやるぜアルベリヒさん」

 

「これはこれは・・・・・・・《黒の剣士》様は随分と余裕があるご様子で・・・・・・・それでは、お言葉に甘えて遠慮なく行かせて貰いますよ・・・・・・」

 

俺は構えながらアルベリヒを検分する。やがて、中央のカウントダウンが0になりデュエルが始まった。

 

「はああっ!」

 

アルベリヒはカウントダウンが0になるのと同時に細剣による突き技を放ってきた。

 

「ぜあっ!」

 

俺はそれを『ブラックローズ・ナイト』で軌道を横にずらして避ける。

 

「(早い!しかも一撃が予想以上に重い!恐らく、俺やレインよりも。だが・・・・・・なんだ、この感じ・・・・・・?)」

 

「どうです!これが僕の力ですよ!」

 

「(やはり違和感を感じる。まるで初心者が最強のアバターを操っている感じだ)」

 

「はあっ!」

 

「っ!」

 

ガキンッ!

 

「(・・・・・・やはり、動きが素人だ。動きが粗末過ぎる。経験もテクニックも無いな・・・・・・。見た限りパラメーターは高いようだが・・・・・・)」

 

「「「「・・・・・・・・・・・・・」」」」

 

「(レインたちも違和感を感じていたみたいだが・・・・・・どうやらレインたちも何か感じたようだな)」

 

ガキンッ!キンッキンッ!

 

「・・・・・・なあ、アルベリヒ。それで全力か?まさか手加減してるってことはないよな?」

 

「なっ、なに?それは僕が弱いとでも言いたいのかっ!?・・・・・・・いいさ、わかったよ。僕が戦いというものを教えてやる」

 

そう言うとアルベリヒはバックステップで距離を取った。

 

「はああああっ・・・・・・!」

 

「(距離を取ったか。なにかソードスキルでも使ってくるか?)」

 

「はあっ!!」

 

「なっ!?ソードスキルじゃないのか!?」

 

「ふっ」

 

「(砂埃エフェクトで目眩ましか・・・・・・)」

 

「キリト君!」

 

「キリト!」

 

「キリトさん!」

 

アスナたちの声が聞こえる。レインの声が聞こえないのは、俺のやることをわかっているからだろう。そして、俺がアルベリヒに負ける訳がないと。

 

「くらえぇっ!!」

 

「(はぁ。こんな使い古された手を今さら・・・・・)」

 

俺は地面を逸るようにしてアルベリヒの細剣をかわす。

 

「おっと、外したか。タイミングよく転んだな」

 

「俺がローリングで攻撃を避けたのを転んだと勘違いしているのか?・・・・・・なにもかにもがビギナーレベル。いや、それ以下だな)」

 

「そらそら!僕の攻撃はまだ終わっていないぞ」

 

キンッ!カンッ!キンッ!

 

「(理由は知らんが・・・・・・・間違いなくこいつは、弱い。レベル的には高いんだろうが、この実力で最前線に出られても周りとの連携を乱すだけだな)」

 

俺はアルベリヒの実力を検分、解析し判断する。

 

「・・・・・・潮時だな」

 

「はっ!」

 

「むっ・・・・・・!」

 

俺は迫ってくるアルベリヒの細剣をパリィし、

 

「はあっ!」

 

「ぐっ・・・・・・!」

 

片手剣ソードスキル《バーチカル・スクエア》4連撃を発動する。

アルベリヒは細剣で防ごうとするが、すでに遅い。

俺の放った4連撃は、アルベリヒの体に吸い込み丁度アルベリヒのHPゲージが半分に減らした。

 

キンッ!

 

「・・・・・・勝負、あったな」

 

 

 『WINNER・キリト』

 

 

「そこまで!このデュエル、キリトさんの勝利です!」

 

デュエルの勝者ウインドウが表示され、ランがそう言う。

 

「う、ぐ・・・・・・。う、嘘だ!僕が負けるはずがない!データがおかしいんじゃないのか?このクソゲーが!」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「あの、アルベリヒさん。残念ですけど・・・・・・もう少し力をつけてから、 またご連絡いただくと言うことで・・・・・」

 

「・・・・・・。能力的には問題ないはずだと思いますが?」

 

「最前線はレベルが高ければ攻略できる、というものではないんです。・・・・・・ですから、今回はごめんなさい」

 

「(性格的にも問題ありそうだしな)」

 

「(性格の問題以前の問題だと思うけどね)」

 

「・・・・・・っ。わ、わかりました・・・・・・。しかしいずれ僕の力を必要とする日が来るでしょう。その際は、ぜひお声をお掛けください」

 

アルベリヒはそう告げると何処かへ立ち去っていった。

 

「なんだか、その・・・・・・おかしな人だったね」

 

アルベリヒが立ち去るとアスナがそう呟いた。

 

「そうだね・・・・・・」

 

「ええ・・・・・・」

 

「あとあと、何かの火種にならなきゃいいんだが・・・・・・」

 

「そう願いたいね・・・・・・」

 

俺たちはアルベリヒが歩いていった方を向き、そう思わずにいられなかった。

 




「それでは答えを発表します!ストレア・・・・・・・・・あれ?ストレア~?」

「ん?なに、ソーナ?」

「いや、答えの発表をお願いしたいんだけど・・・・・・・」

「オッケー!え~っと、答えはⅢ:煮込みハンバーグでした~」

「食べ物で買収されるキリトってのもどうかなと思うけど、それでいいのかなレインは?」

「さあ~?夫婦にしか分からないものなんじゃないかな?」

「あー、確かに。・・・・・・・・で、ストレアは何してるの?」

「え?わたし?わたしの出番を増やすために色々と・・・・・・」

「ちょっとー!何で私の紅茶を飲んでるのよ~」

「あ、ごめんごめん。ちょっと喉乾いちゃって」

「まあ、すぐ補充できるから良いですけど」

「おー。ティーポットの中身が満タンになったよ~」

「はい、ストレア。紅茶。アールグレイでいい?」

「うん。ありがとうソーナ」

「いえいえ」

「よーし!このあとはこのままこれまでのことを話そうよ~」

「いいですよ。っと、その前に」

「あ、そうだね」

「それじゃあみなさん・・・・・・」

「みんな・・・・・・」

「「また次回にお会いしましょう!Don't miss it.!」」









「それで、これが、こうなってね―――――」

「へぇー。面白いね――――」

「でしょ~―――――」

「フフフフフ――――」

「ハハハハハ――――」


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HF編 第96話 〈遺棄エリア〉

「やっ、みんな!ソーナだよ。今回もゲストと一緒に問題を出していくよ。今回のゲストはこちら、どうぞ!」

「ヨォ、オレっちはアルゴだ。みんな、よろしくナ」

「今回のゲストは情報屋、鼠のアルゴです。こんにちはアルゴ」

「今回は呼んでくれてありがとうナ、ソーたん」

「そ、ソーたん・・・・・・??ま、まあ、気にしないでおいて、アルゴさんは元βテスターという情報があるのですが・・・・・・」

「それ以上オレっちの情報がほしいなら―――――」

「い、いや、いいよ。そ、それでは今回の問題を出します!」

問題:『今回新たに行けるようになったエリアの名前は何?』

Ⅰ:遺棄エリア

Ⅱ:消失エリア

Ⅲ:天空エリア

Ⅳ:廃棄エリア

「答えは本文の最後に!」


 

~キリトside~

 

アルベリヒとの会合とデュエルを終えた俺とレインは、ホロウ・エリア管理区に来ていた。

 

「レインから見てあのアルベリヒって人どう思った?」

 

「多分、キリトくんが思っていることと同じだと思うよ」

 

「だろうな・・・・・・。アルベリヒの装備はかなりの高性能な物なんだろう。だが、プレイヤーの能力は・・・・・・」

 

「弱い、ね」

 

「ああ。アルベリヒのステータスは恐らく俺たちを凌いでいると思う。が、あのスタイルは・・・・・・・」

 

管理区に来た俺とレインはアルベリヒについて話し合っていた。

攻略組に参加したいと言うギルドのリーダーであるアルベリヒとデュエルしたのだが装備はかなりレアなものを使用しているのにも関わらず、プレイヤーの腕は素人同然だった。まるで、予め用意されていたキャラにゲーム素人が乗り、操作しているようだ。

あの後、アスナたちにアルベリヒの事を相談し、今日の夜アルゴやクラインたちと相談する事にし分かれた。

アスナたちは商業区に向かい、俺とレインは当初の予定通りホロウ・エリア管理区に来た。

 

「アルベリヒについては夜話すことにして・・・・・・」

 

「うん」

 

俺は管理区にあるコンソールに向かい、コンソールメニューを開きスクロールする。

 

「あった。これだよ」

 

「え~と・・・・・・【グランドクエスト:秘奥義継承】?」

 

俺が開いたコンソールウインドウには新たに追加項目されたのが映し出されていた。

その名前は【グランドクエスト:秘奥義継承】。

今レインがいった言葉だ。

 

「グランドクエスト、って事はキズメルの時と同じようなクエストなのかな?」

 

「多分な。しかもホロウ・エリアのグランドクエスト」

 

「ちょっと面白そうだね」

 

「ハハッ。面白そう、か。確かにな」

 

「どうするのキリトくん?これ、起動させる?」

 

「どうせならやってみようぜ。グランドクエストってことはかなりレアな物がゲットできるかもしれないからな」

 

「そうだね♪」

 

俺はコンソールに向き直り、ウインドウに表示されている『【グランドクエスト:秘奥義継承】を起動させますか?YES/NO』のYESを押した。

 

『アップデートが正常に行われました。遺棄されたクエストデータが復元されました』

 

「な、なに。なにが起きたの・・・・・・?」

 

「わからない。それに遺棄されたクエストの復元っていったい・・・・・・」

 

俺は再びコンソールに向き直った。

 

「これは・・・・・・」

 

「どうしたの?」

 

「これを見てくれ」

 

俺は点滅しているマップをウインドウ化させて表示した。

 

「なにか新しいホロウミッションが発生してるね」

 

「ああ。ミッション名は、封印された剣の女帝・・・・・・。これが隠されていたクエストなのか・・・・・・?」

 

「見てキリトくん!」

 

「ん?」

 

「このホロウミッション、『あらゆる型の剣技を継承』って書いてある」

 

「あらゆる型の剣技を継承、ってことはこれをクリアすれば、様々な武器の新たなソードスキルを習得出来るということか・・・・・・?」

 

「恐らくね・・・・・・」

 

「これは・・・・・・みんなにも話した方が良さそうだね」

 

「そうだな・・・・・・一回みんなに集まってもらって、説明してから攻略するか」

 

「そうだね」

 

俺とレインはすぐさまメッセージウインドウを表示させエギルの店に集まってほしい旨を送った。

 

「俺たちも一回戻ろう」

 

「うん」

 

俺とレインはすぐにエギルの店に向かうため転移門に移動し、

 

「「転移!アークソフィア!」」

 

アークソフィアへと転移していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エギルの店

 

「あ!キリトさ~ん、レインさ~ん」

 

店内にいたシリカが相竜のピナとともに駆け寄ってきた。が、

 

「お帰りなさいパパ、ママ」

 

割り込んできたユイにより軌道がずれこけた。

 

「ただいまユイ」

 

「ただいま~ユイちゃん」

 

レインは抱き付いてきたユイの頭を優しく撫でて言った。

 

「はふぅ、ユイちゃんは本当にキリトさんたちが好きですね」

 

シリカは倒れていた上体を起こし、ユイを見て苦笑ぎみに言った。

それには俺も苦笑で返した。

 

「二人ともこっちこっち」

 

「お帰りキリトくん、レインさん」

 

「呼び出しておいて遅くないキリト、レイン」

 

「ヤッホー、キリト、レイン」

 

「やっと来たなキー坊、レーちゃん」

 

「お疲れ様ですキリトさん、レインさん」

 

「もぉー、遅いよ二人ともー」

 

「大変ね二人とも」

 

上からアスナ、リーファ、リズ、ストレア、アルゴ、ラン、ユウキ、シノンの順だ。

 

「悪い、少し遅れちまった」

 

「ごめんねみんな」

 

「あ、でもまだラムとリーザ、クラインが来てないよ?」

 

ストレアがそう言うのと同時に―――

 

「すまねぇ。風林火山の用事で遅れちまった」

 

「ごめんなさい、買い物に手間取ってしまって」

 

「すいません、遅れました」

 

クラインとラム、リーザが帰ってきた。

みんながいるのを確認すると、俺はみんなに集まってもらったわけを説明する。

 

「突然集まってもらって悪いな。実はさっき《ホロウ・エリア》で気になるのを発見してさ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は管理区のコンソールに表示されていたグランドクエストを説明した。

 

「なるほどねぇ・・・・・・・。強力なソードスキルの継承か」

 

「それも、いろんな武器のソードスキルが手に入る可能性があるんですよね」

 

「確かに、気になるね」

 

「はい。しかも《ホロウ・エリア》ですからね」

 

「もしかしたらとんでもない威力を秘めてるかもしれないね」

 

「私も、そのクエストってやつを試してみる価値はあると思う」

 

「俺もそう思うぜキリの字」

 

「オレっちもクラインに賛成だヨ」

 

「うんうん!なんかワクワクする!」

 

「ボクもだよ!ワクワクしてきた!」

 

「もし、本当にそんなソードスキルが手に入ったら攻略速度が上がるかもしれませんね」

 

「はい!本当に強力なソードスキルが使えるようになればきっと、この先でも役立ちます」

 

「ああ、その通りだ。だから俺は、このクエストの調査を進めてみようと思う」

 

 

 

「アスナちゃんたちはどうかな?」

 

「うん、わたしも調査に賛成だよ二人とも」

 

「もし、本当にそんなソードスキルが手に入ったら攻略速度が上がるかもしれませんね」

 

「ええ。・・・・・・ただ、なんていうか」

 

「「・・・・・・うん?」」

 

「キリト君とレインちゃん、すっごく楽しそう。ゲーマー魂に火が付いちゃったみたいな」

 

「「「「「「「「「「「「「「「確かに」」」」」」」」」」」」」」」

 

「「うっ・・・・・・」

 

「やっぱり言われたね、キリトくん」

 

「ああ、まさかレインの予想通りとは・・・・・・・」

 

俺とレインはちょっとへこんだが気を取り直すようにしてみんなを見る。

 

「ま、まあ、そんなわけでみんなにも協力を頼みたいんだ」

 

「手伝ってくれるかな?」

 

「ふふ、オッケーよ二人とも!必要なときはいつでも声をかけてね」

 

「困ったときは、遠慮なくあたしたちを頼りなさい」

 

「ありがとう!アスナちゃん、リズっち」

 

「ありがとう助かるよみんな」

 

「それじゃ、みんな。協力してこのクエストの調査を進めていこう~!」

 

「「「「「「「「「「「「「「「おーっ!!」」」」」」」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みんなに話終えた俺とレインは再び転移門広場へと向かっていた。

 

「みんな協力してくれるみたいでよかったね」

 

「ああ。攻略を進めつつも、時間を見つけてこのクエストの調査をしよう」

 

「それじゃ、このあとはそのままグランドクエストを攻略でいいのかな?」

 

「ああ」

 

「それじゃあ早く行こうよ」

 

「わかってるよ」

 

レインの駆け足に、俺は苦笑いを浮かべながらもレインについていった。

転移門にたどり着き、

 

「「転移!ホロウ・エリア管理区!」」

 

ホロウ・エリアへ転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホロウ・エリア 管理区

 

 

「それじゃ、グランドクエストの調査を続けよう」

 

「それはいいんだけど・・・・・・・。キリトくん、この対象のホロウミッションが発生していた場所、ちょっと座標がおかしくない?」

 

「ああ、それは俺も思った。座標がちょうど、この管理区の真下にあてる場所なんだよな。うーん・・・・・・」

 

「もう少し、アップデートのログってやつを調べてみる?」

 

「・・・・・・そうした方が良さそうだな」

 

俺とレインは手分けをしてコンソールを調べ手がかりを探した。

そして10分後

 

「あ!キリトくん!もしかしてこれじゃないかな?」

 

レインが見せたウインドウに『復元されたクエストへのアクセス承認 YES/NO』と書かれていた。

 

「『復元されたクエストへのアクセス』・・・・・・これか!」

 

俺は表示されているウインドウのYESボタンをタップする。

すると。

 

『権限者のアクセスを確認。遺棄エリアへのアクセス制限が、解除されました』

 

と、アナウンスされた。

そして、

 

「「!!」」

 

俺たちの後ろ、転移門の少し後ろに先程までなかった転移碑が現れた。

 

「アクセス制限が完全に解除されました』

 

再びアナウンスが流れ出る。

 

「なるほど、あそこからこのクエストが存在するエリアに行けるんだな」

 

「そうみたいだね・・・・・・・」

 

「未知のエリア・・・・・・そして剣技を継承するクエスト・・・・・・」

 

「みんなと協力すれば、必ず攻略できるはずだよキリトくん」

 

「そうだな・・・・・・。よし、行こう!レイン!」

 

「うん!行こう、キリトくん!」

 

俺とレインはコンソールから離れ、新たに現れた転移碑の前に立ち。

 

「これで・・・・・・」

 

『アクセス制限の最終解除を確認。遺棄エリアへの転移システムを起動します』

 

再び流れたアナウンスとともに俺は管理区から転移した。

 

 




「ヤッホー、みんな。答えはわかったかな?それじゃあアルゴ、よろしく!」

「ニャハハ、お姉さんにお任せあれ!答えはⅠ:遺棄エリアだヨ」

「今回から新たに解放された遺棄エリア・・・・・どんなストーリーがあるんでしょうかね」

「オレっちも気になってるヨ」

「これからのキリトとレインの動きに注目ですね」

「そうだナ。キー坊とレーちゃんは頑張ってほしいヨ」

「ですね。おっと、時間になってしまいましたので今回はここまで」

「もう、そんな時間なんだネ。それじゃあオレっちもこれで。出来たらまた呼んでくれるとうれしいヨ、ソーたん」

「アハハ、検討しておくね」

「それじゃあみなさん・・・・・・」

「みんな」

「「また次回にお会いしましょう!Don't miss it.!」」


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HF編 第97話 〈グランドクエスト〉

「みなさんこんにちは、ソーナです。今回もゲストとともに問題を出していきます。今回のゲストはこちらです、どうぞ!」

「どうもお久しぶりですみなさん。整合騎士アリス・シンセシス・サーティです」

「今回のゲストはアリスです!久しぶりですアリス」

「久しぶりですねソーナ。お元気でしたか?」

「う~ん、まあまあかな。ここ最近はなにかと忙しいんだよねぇ~。アリスの方はどう?」

「私の方は特に何もありませんよ。いつも通りです」

「アハハハ、アリスならそう言うと思ったよ」

「そうですか?なぜそう思ったのでしょう?」

「んー、なんとなく、かな」

「な、なんとなくですか」

「うん」

「凄いですねソーナは」

「ん、ありがとうアリス。さて、そろそろ今回の問題を出します」


問題:『新たに行けるようになったエリアの圏内エリアは次の内どれ?』

Ⅰ:遺跡

Ⅱ:宮殿

Ⅲ:庭園

Ⅳ:湖岸


「答えは本文の最後に!」

「本文を読めば答えはすぐにわかりますからね」

「アハハハ、そりゃそうだよ。それじゃあ私たちはここでゆっくりと観ようか」

「そうですね。そうしましょうか」





 

~キリトside~

 

 

遺棄エリア コルディア外苑

 

 

管理区から転移し、次に目を開けるとそこは全く違う場所だった。

 

「ここが、クエスト調査を行うエリアか・・・・・・」

 

「なんだろう・・・・・・幻想的かな・・・・・・」

 

「ここは管理区の真下なのか・・・・・・?今まで見たことない感じだな」

 

頭上に浮かぶ球体――――――管理区を見てそう言う。

 

「そうだね・・・・・・。あ、でも通常のRPGだと、こういった場所たとレア度の高いアイテムが手に入ったりするよね」

 

「あー、確かに」

 

俺とレインは周囲を見渡してそう言う。

 

「ん?」

 

「あ、ここにもコンソールが設置されてるね」

 

俺とレインは目の前の一段高いところに、管理区と同様のコンソールが置かれていることに気づいた。

 

「ひとまず、コンソールから調べてみるか」

 

俺とレインはコンソールに近づき、コンソールを起動させた。

 

「このコンソールからなにか、調べられればいいんだけどね・・・・・・」

 

「ああ・・・・・・。ええと・・・・・・この場所は遺棄エリアって名前だな」

 

「そういえば管理区のシステムアナウンスでもそんなこと言っていたね」

 

「そういえばそうだったな・・・・・・」

 

「えーと、ここからさらに、複数のマップが存在するみたいだね」

 

「おっ、他に庭園っていう《圏内》エリアもあるのか!」

 

「庭園エリア!?」

 

「《圏内》ってことはモンスターもなにもいない休息場みたいな場所なんだろうな」

 

「へぇー。キリトくん、後で行ってみない!」

 

「俺も最初からそのつもりだよ」

 

「ヤッター」

 

レインは笑顔で嬉しそうに言った。

 

「それで、クエストについての情報は・・・・・・」

 

「・・・・・・あっ、これじゃないかな?」

 

「ええと、このコンソールから、クエスト調査の起動が行えるみたいだな」

 

俺はコンソールから出た空間ウインドウに表示されている『クエストの起動を行いますか。YES/NO』のYESを押した。

 

 

『クエストの起動を行います。クエストに連動したホロウミッションが解放されました』

 

 

YESを押すと、ウインドウにそう表示された。

 

「うまくいったみたいだね!」

 

「ああ!今ので、クエスト調査が進められるようになったのだろう」

 

「それじゃ・・・・・」

 

「ああ!さっそく探索開始だ!」

 

「おおー!」

 

「まずは、ここにきてずっと気になっているあの、でかい門を調べてみるかな」

 

「うん♪」

 

俺とレインは装備を整えると、コンソールの奥にある階段を昇った先にある巨大な門に向けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ~~、大きいね・・・・・・・」

 

「ああ。デカすぎないかこの、門?扉?」

 

コンソールの奥にあった階段を昇った俺とレインは、目の前に佇む、巨大な華美な装飾の施された門を見てそう口走る。

 

「秘奥義の継承のホロウミッションの位置を考えるとこの先にそれがありそうなんだが」

 

「この扉、開きそうにないね・・・・・・」

 

「ん?なにか、嵌め込むような窪みがあるな」

 

「ほんとだ。窪みが二つあるから、なにかイベントアイテムが必要なのかも」

 

俺とレインはそこから辺りを見渡す。

マップを表示させると道があった。

 

「まだ道があるから、そこから調べてみる?」

 

「そうするか。もしかしたらその先にイベントアイテムがあるかもしれないしな」

 

俺とレインはコンソールから右側にある道に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホロウエリア 火山エリア 爆炎の霊脈

 

 

「ここは・・・・・・火山の中か?」

 

「一気に風景が変わったね」

 

「ああ。そういえば、遺棄エリアはカルデラ地帯のような形をしていたな」

 

「確かにそうだったね。もしかして一度噴火でもしたのかな?」

 

「わからない。けど、一つ言えることは・・・・・・」

 

「うん・・・・・・」

 

「「とにかく、暑いってことだ(ね)」」

 

「あちこちで火が噴いてるから歩くだけで火傷しちゃいそうだよ」

 

「そうだな、気を付けて進むか」

 

「そうだね」

 

探索を進めようとしたそのとき。

 

 

 

 'ホロウミッション'

 

 場所:爆炎の霊脈

 

 クエスト名:炎爆バグの大量発生調査

 

 備考:溶岩地帯特有の爆発特性を持つバグが大量発生し火山活動に影響を及ぼしている。北西の発生源に向かい、バグの数を減らした後に発生源を調査せよ!

 

 

 

目の前に空間ウインドウでホロウミッションが表示された。

 

「爆発特性を持つ虫か・・・・・・」

 

ウインドウに表示されている文を見て不意にそう言う。

 

「もし火がついたら大変だね。大事になる前に倒しておこうか」

 

「そうだな」

 

行き先を決め、俺とレインはその場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちはマップの北西に表示されている地点まで行くことにし、進んでいった。道中、そんなに敵は強くなかったのだが――――

 

 

 

「キリトくん、スイッチ!」

 

「了解!スイッチ!」

 

「ハアッ!」

 

俺とスイッチしたレインが、対峙しているモンスター。

『NM:トライヘッドボルケーノ』に片手剣ソードスキル《バーチカル・スクエア》4連撃を放った。

 

「グギャァァァア!」

 

トライヘッドボルケーノが悲鳴を上げ、仰け反り効果が出る。

 

「キリトくん!」

 

「ああ!ハアァァァァァア!!」

 

俺はレインと交代し、片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》単発重攻撃を繰り出す。

 

「ギャアァァァア!」

 

トライヘッドボルケーノは俺の放った《ヴォーパル・ストライク》をもろに受け、《ヴォーパル・ストライク》はトライヘッドボルケーノの二割五分残っていたHPを余さず奪い、トライヘッドボルケーノをポリゴンの欠片へと変えた。

 

「ふぅ、終わったか」

 

「うん。それにしてもまさかNMがいるなんてね」

 

「ああ。やはりここは他のエリアとは違うようだな。さっきのモンスター、視たことないタイプだった」

 

「確かに・・・・・・。でも動きは基本単調的だったから殺りやすかったね」

 

「まあな。・・・・・・さて、先に進むか」

 

「うん」

 

俺たちは先程のNMが立ち塞がっていた扉を開け、奥へと進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ついたね」

 

「ああ。ホロウミッションのボルケーノバグも規定数倒したしな」

 

俺とレインはミッションの指示にあった北西の地点まで来ており、その付近にいた10体のボルケーノバグを倒した。

そして、案内の場所に立つと。

 

 

"Hollow Mission Completed!! "

 

 

目の前に現れた空間ウインドウに表示れていた。

 

「レイン、この敵・・・・・・死んだものが石化して地面に埋まっているみたいだ」

 

「ホントだね。視たところ、爆発特性はそのままみたいだから近寄るのは危険だね。注意して先に進もうか」

 

「そうした方がよさそうだな・・・・・・ん?」

 

「どうしたの?」

 

「別のマップでホロウミッションが発生したみたい」

 

「ホントだ」

 

「なにか関連性があるのかもしれないな。調べてみるか」

 

次に現れたホロウミッションの発生場所をマップで確認すると、場所は≪炎尽の隘路≫と呼ばれる場所らしい。

俺たちはその場所に向かってマップを頼りに進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

炎尽の隘路

 

次のホロウミッションを受注するため、≪爆炎の霊脈≫から≪闇騎士の誓約所≫を通り、≪炎尽の隘路≫に来た俺とレインは、さっそくミッションを受ける地点に来ていた。

 

 

 

 'ホロウミッション'

 

 場所:炎尽の隘路

 

 クエスト名:噴火の祈りを妨害せよ!

 

 備考:溶岩地帯を根城にするリザードマン達が、火山を噴火させるための祈りの儀式を行っている。儀式中のリザードマン達を討伐し噴火を阻止せよ!

 

 

 

「今度はリザードマンか・・・・・・」

 

「噴火でもしたら攻略どころじゃなくなるよ。一刻も早く止めないと」

 

「そうだな。索敵スキルで調べたところ、NMが一体とモンスターが十体って感じかな?」

 

「う~ん・・・・・・どうしようか?」

 

「そうだなぁ。取り敢えず、取り巻きのモンスターを倒してNMを撃破するかな?モンスターはそんなにレベルは高くないようだし」

 

「じゃあ、最初に私の《サウザンド・レイン》で牽制してモンスターを各個撃破。そしてNMを撃破、って感じでいいかな?」

 

「そうした方がよさそうだな。それじゃあ、早速・・・・・・」

 

「うん」

 

俺とレインはリザードマン達が徘徊している広場の入り口に立ち、剣を抜刀し構え、

 

「ハアッ!」

 

俺はリザードマン達に向かって走る。

そしてその横を、

 

「ヤアァァァァァァアッ!《サウザンド・レイン》!」

 

レインの≪多刀流≫最上位ソードスキル《サウザンド・レイン》が追い抜いていき、リザードマン達に突き刺さった。

突き刺さったリザードマン達から悲鳴が上がってくる。

 

「ハアッ!!」

 

その隙をついての、俺はリザードマン数体の真ん中に入り≪二刀流≫ソードスキル《エンド・リボルバー 》全方位範囲技2連撃を繰り出して、数体のリザードマンを吹き飛ばす、又はポリゴンの欠片へと変えた。

 

「セリャア!」

 

近くでは、俺と同じように数体のリザードマンを相手取っているレインが闘っていた。

これで残りのモンスターの数は六体。その全てのモンスターのHPはイエローにまで減っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セアッ!」

 

「ヤアッ!」

 

それから4分後、十体全てのモンスターを撃破しポリゴンの欠片へと変え、残ったのは『NM:クレーターリザードマン』だけとなった。

 

「いくぞレイン!」

 

「うん!」

 

俺とレインは左右からクレーターリザードマンに攻撃を仕掛ける。クレーターリザードマンの武器は両手剣だ。一撃一撃が重いが、動きは素早くないため対処は簡単だ。

クレーターリザードマンは左から迫るレインの剣を、両手剣の腹でガードする。が、その為右から迫る俺の剣は防げなかった。

 

「グオオオオオッ!」

 

クレーターリザードマンの脇腹を双剣で横薙ぎに切り裂く。

クレーターリザードマンはレインを吹き飛ばし、俺を両手剣で薙ぎ裂いてきた。

それを俺はバックステップでかわし、振り切り体勢が崩れたクレーターリザードマンに、片手剣ソードスキル《ホリゾンタル・スクエア》4連撃を放つ。

 

「グギャァァァア!」

 

「私もいるよ!」

 

タゲが俺に向き、両手剣を俺に向かって振り下ろそうとしたところに、クレーターリザードマンの背後からレインが片手剣ソードスキル《シャープネイル》3連撃を放ち、クレーターリザードマンの背中に獣の爪で切り裂かれたような縦傷3本を深く残し、その場を離れる。

クレーターリザードマンは、レインの方に両手剣を薙ぎ払って来るが、ただ空振りをするだけだった。

クレーターリザードマンがレインのいた場所を空振りするときには既に、レインはその横にステップで避けていた。

そして、大振りで体勢が崩れているところにレインは連続で交互に斬りつけていった。

 

「グオオオオッ!!」

 

それにより、クレーターリザードマンの残りHPは五割を下回った。

 

「ハッ!」

 

体勢を戻し、上段から来る両手剣をレインは双剣をクロスガードで防ぎ、弾き飛ばす。

 

「ヤアッ!」

 

両手剣を弾き飛ばし、再度ブレイクポイントが出来たところを、強攻撃でスタンさせ、

 

「キリトくん、スイッチ!」

 

「了解!スイッチ!ハアッ!」

 

俺とスイッチし立ち位置を入れ換わらせ、≪二刀流≫ソードスキル《デブス・インパクト》5連撃をクレーターリザードマンの胴体にぶちこみ、仰け反り状態にさせるのと同時に、《デブス・インパクト》の追加効果、防御力低下のデバフがクレーターリザードマンのHPゲージに表示された。

 

「レイン!」

 

「うん!ヤアァァァァァァア!」

 

仰け反り状態のクレーターリザードマンに、技後硬直で動けない俺の代わりに、レインが≪多刀流≫ソードスキル《ラウンド・スクエア》4連撃を放った。レインの放った《ラウンド・スクエア》はクレーターリザードマンのHPゲージをレッドゾーンまで減らし、そこに留まることせずゲージを削り取り、クレーターリザードマンをポリゴンの欠片へと変えた。

クレーターリザードマンを倒し、その場にいた全てのリザードマンを倒した俺たちの目の前に、

 

 

"Hollow Mission Completed!! "

 

 

先程と同じウインドウが表示された。

 

「ふぅ。これでミッションクリアっと」

 

「お疲れ様キリトくん」

 

「レインもお疲れ」

 

「うん♪・・・・・・ん?これは・・・・・・」

 

「ん?どうした?」

 

「キリトくん、これ・・・・・・」

 

「・・・・・・宝石?リザードマン達が祀っていたのか?」

 

レインが見せた宝石をタップすると、

 

『【貴重品】火蜥蜴のジェム』

 

と、表示が現れた。

 

「【貴重品】ってことは攻略に必要なものかもしれないな」

 

「そうかもね・・・・・・。うわっ!?」

 

「どうした?」

 

「これ、こすると火が出るみたいだよ」

 

「え?」

 

俺はレインが言ったように、『火蜥蜴のジェム』を二つ持ち擦りあわせる。

すると、レインが言ったように火が出た。

 

「変わったアイテムで面白いな。まあ、爆発物とかの近くでは気を付けないとな。引火したら大変だし」

 

俺はそう言うと、『【貴重品】火蜥蜴のジェム』をストレージに収納した。どうやらレインも同じように『【貴重品】火蜥蜴のジェム』をストレージに収納したみたいだ。

 

「おっと、またホロウミッションが発生したな」

 

「ホントだね。もしかしてこの赤く色分けされたホロウミッション。クリアすることで次のホロウミッションが起動するみたいだね・・・・・・」

 

「みたいだな。なにか仕掛けがあるのかもしれない。取り敢えず次もクリアしてみるか」

 

「了解。それで次のホロウミッションの場所はどこ?」

 

「え~と、≪沸騰する小道≫って場所みたいだな」

 

「それじゃあ早速行こうよ」

 

「そうだな」

 

俺とレインは次なるホロウミッションをクリアするため、≪炎尽の隘路≫を後にし、≪沸騰する小道≫へと進路を進めた。

 

 




「ふぅ~。さて、みなさん答えはわかったかな?アリス、答え合わせをお願い」

「わかりました。今回の問題の答えはⅢ:庭園です」

「みんな合っていたかな?」

「新たに行けるようになったエリアで何故この場所だけ圏内なのでしょう?」

「さぁ。庭園だからじゃないかな?庭園って休憩所って感じだから」

「確かにそうですね。庭園という安らかな場所での戦闘など言語道断です」

「アハハハ。それじゃあ今度この庭園に行ってみますか?」

「ええ。私は構いません」

「どうせならユージオやキリト、レインも呼んで行きましょうか」

「そうですね。何時になるかはわかりませんが、是非とも行きたいですね」

「ええ。おっと、そろそろ時間になってしまいましたので今回はこの辺で」

「もうそんな時間ですか、早いですね」

「そうだね。それじゃあみなさんまた次回!」

「またお会い出来ることを楽しみにしてます」

「「ではまた!Don't miss it.!」」















「あ、ところで今ある企画をしているんだけど」

「ある企画、ですか?それはどんな?」

「えーとね。各々云々――――――――――――なんだけど」

「――――――――ですか。いいかもしれませんね。それなら――――――の方や――――――の方も呼べますね」

「でしょ。それにらこっちがそろそろ―――――――だからこんな企画もいいかなってね」

「なるほど。では私もお手伝い致します」

「え、ホント?」

「はい」

「ありがとうアリス、助かるよ」

「では次は――――――――――これでですね」

「うん。よろしくね」

「ええ」




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HF編 第98話〈火山エリア〉

「ヤッホー、ソーナです。しばらく投稿できなくてごめんなさい。次は少し早くします。さて、今回のゲストはこちら。どうぞ!」

「やあ、みんな久しぶり、ユージオだよ」

「おひさー、ユージオ!happy new year 以来だね」

「うん。あのときはアリスから手伝ってほしいって言われて驚いたよ。まさか、コラボレーション作品とは思わなかったからね」

「まあ、サプライズだからね」

「はは。それもそうだね」

「さて、今回の問題はこちらだよ!」


問題『キリトが今回岩壁を壊した方法はなに?』

Ⅰ:爆破

Ⅱ:斬撃波

Ⅲ:凍結

Ⅳ:ソードスキル

「答えは本文の最後に!」」


 

~キリトside~

 

 

 

 

沸騰する小道

 

 

 

 

「噴火の次は有毒ガスなの・・・・・・」

 

「しかもそれでモンスターが大量発生って・・・・・・」

 

《沸騰する小道》に来た俺とレインは、早々に現れたホロウミッションの空間ウインドウに表示されてる内容を見てそう言う。

 

 

 

 

 'ホロウミッション'

 

 場所:沸騰する小道

 

 クエスト名:有毒ガスの発生を止めよ!

 

 備考:火山の活性化に伴いモンスターが大量発生し有毒ガスまで発生し始めてる。モンスターの数を減らしつつ、北西にあるガス噴出孔に向かえ!

 

 

 

 

 

「取り敢えず早くクリアしようか」

 

「そうするか」

 

ウインドウを見て、俺とレインは互いにそう発する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヤアァァァア!」

 

レインの攻撃が目の前にいる討伐対象モンスター、ヒートスネークを斬り裂く。

今、俺とレインは指定されたモンスター、ヒートスネーク四体がいる場所にいた。

そして既に二体は討伐していた。

 

「ハアァァァアッ!」

 

俺は目の前にいる同じくヒートスネークを≪二刀流≫ソードスキル《デット・インターセクション》5連撃を繰り出して攻撃した。

 

「ゼアッ!」

 

「セイヤッ!」

 

俺のすぐ近くではレインがもう一体のヒートスネークを相手してる。俺の相手しているヒートスネークのHPゲージは既にレッドゾーンまで入っていた。それはレインが相手しているヒートスネークも同様だ。

 

「ゼリャァァアッ!」

 

俺はヒートスネークをスタンして動けなくさせ片手剣ソードスキル《スラント》単発技を放ち、ヒートスネークのHPゲージを0にまで減らした。

そして、ポリゴンの破砕音とともにヒートスネークは消えた。それと同時にレインの相手していまヒートスネークもポリゴンへと変わって消えた。

 

「お疲れ」

 

「うん。キリトくんもお疲れさま」

 

「サンキュー」

 

「討伐対象は倒したから後は目的地まで行くだけだね」

 

「そうだな」

 

「じゃあ早く行こうよ」

 

「ハハッ。わかってるよレイン」

 

俺とレインは戦闘の余韻が残るその場を後にし、北西にある指定地点に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・ここだな」

 

俺とレインは指定された地点にまで来ていた。

すると。

 

 

 

 

"Hollow Mission Completed!!"

 

 

 

 

と、視界に表示された。

 

「目的地に着いたはいいけど・・・・・・。このガス、どうやって止めるんだろう?」

 

「さあ・・・・・・ん」

 

「どうしたの?」

 

「いや、この岩、あの揮発性の敵が石化した状態で埋まってないか?」

 

「・・・・・・ホントだ。ん・・・・・・?ってことはもしかして・・・・・」

 

「ああ、これが使えるかもしれない」

 

俺はそう言うとアイテムリストから『【貴重品】火蜥蜴のジェム』を取り出した。

 

「これを・・・・・・こうして・・・・・・」

 

俺は『火蜥蜴のジェム』を擦り合わせ、石化した状態で埋まっている敵に火をつけた。

すると。

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

 

 

 

「マズイ!!逃げるぞレイン!」

 

「う、うん!!」

 

地鳴の音を感じ、すぐさまそこから距離とった。

距離をとった途端。

 

 

 

ズガガガガガガガガ!!

 

 

 

爆発が発生し落石がおきた。

 

「ま、まあ・・・・・・割りと上手く塞げたかな」

 

「塞げたかな、じゃないよキリトくん!危なかったよ!」

 

「ご、ごめん!それにしてすごい爆発だったな」

 

「うん。キリトくんのせいで危うく生き埋めになるところだったけど」

 

「うぐっ!そ、それは・・・・・・ごめんなさい」

 

「お詫びにキリトくんは、後で私の言うことなんでも聞いてね♪」

 

「ま、まあ、いいけど」

 

「うん♪」

 

「(まあ、今回は俺が悪いしな)」

 

俺は言葉に出さずそう判断し、甘んじて受けることにした。

 

「そういえばこの敵の化石、あちこちで見かけなかった?」

 

「ん?・・・・・・ああ、そういえば」

 

「ひょっとしたら、爆破することで先に進める場所があるのかもしれないよ」

 

「確かにありそうだな。あちこちに埋まってるんだ、隠しルートがあるかもしれないな」

 

「それに、こうやってボスへの道が開けるのかもしれないね」

 

「そうだな。よし、もう少し探索してみるか」

 

「うん♪」

 

俺とレインはその場を後にし、マップを表示させ先へと進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

琥珀色の深淵

 

 

「ここが火山エリアの南の地点か・・・・・・」

 

俺とレインは≪沸騰する小道≫から≪琥珀色の深淵≫へと来ていた。

 

「キリトくん、なんかさっきより暑くない?」

 

「ああ。それは俺も思った」

 

何故か知らないがここのエリアだけは他のエリアと違い気温が高いため、ものすごく暑い。

 

「もぉー、暑すぎるよ~」

 

「ホントだぜ全く・・・・・・。アークソフィアに戻ったら早く風呂に入りたいな」

 

「そうだね~。・・・・・・というか暑すぎるよ~。もお、いっそのこと脱いじゃおうかな?」

 

「それは危険だがら止めてくれレイン」

 

「冗談だよ~」

 

レインはほんわかに手を振って言うが、俺はレインならやりかねないと考えていた。

 

「キリトくん、今失礼なこと考えなかった?」

 

「そ、そんなことないぞ」

 

「そう?ならいいよ」

 

「(相変わらずレインの勘は鋭いな)」

 

俺は苦笑しながらレインを見てそう思った。

そんなこと思っていると、またしてもレインがじっと見てきたので、なんでもない、と答えた。

そんなこんなでモンスターたちと戦闘したりしてさらに進み、俺とレインの前には――――――

 

「暑い・・・・・・」

 

「暑いね・・・・・・」

 

巨大な穴とその下にマグマがあった。

 

「暑い。火山だからか?あれマグマだろ」

 

「落ちないようにしないとね」

 

「そうだな」

 

「ところでキリトくん、HPが減ってるのってこの暑さの影響かな」

 

レインが言ったとおり、俺とレインのHPゲージは10秒に1000づつ減っていた。まあ、戦闘時回復(バトルヒーリング)スキルで10秒に600回復してるから微少だが。

 

「そうだろうな。取り敢えず早くここから離れよう。暑すぎてたまったもんじゃない」

 

「賛成~」

 

レインの声にもいつもの覇気が無かった。

正直暑すぎる、ここは。

俺とレインは足早に来た道の反対側へと向かい、その場から離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてさらに進み。

 

「行き止まり?」

 

「だが、マップにはこの先に道があるみたいだぞ?」

 

俺とレインはある一角で立ち止まっていた。

 

「だよね。でも・・・・・・」

 

レインは周囲を見渡す。

 

「道なんてないよ?」

 

「なんだよな~」

 

「そしかしてこの奥にあったり・・・・・・」

 

「だがどうやってこの奥に行くんだ?」

 

「う~ん・・・・・・」

 

俺とレインは周囲を見渡した。

周囲には回りと同じような岩壁ばかり。

そして、目の前の岩には幾つかの石化した虫が埋まっていた。

 

「ん?石化した虫・・・・・・?」

 

俺はその石化した虫を見た。

 

「どうしたのキリトくん?」

 

「この石化した虫・・・・・・起爆できるかもしれないな」

 

俺はストレージから『火蜥蜴のジェム』を取り出し、石化して埋まっている虫の一つにセットした。

 

「よし。レイン、危ないから離れよう」

 

「う、うん」

 

俺とレインは物陰になっている場所まで下がった。

すると、爆発が生じ岩壁が吹っ飛んで瓦礫とかした。

岩壁がなくなったそこには―――――

 

「あ!道があるよ!」

 

「どうやら、さっきの岩壁で塞がっていたのが開けたみたいだな」

 

新たに、奥へと続く道が開かれていた。

 

「よし、先に進んでみよう」

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

岩壁の奥から現れた道を進んでしばらくすると―――――

 

「なんか、遺跡みたいな建物があるよ」

 

「ああ。・・・・・・おっと、落ちるなよレイン」

 

「うん」

 

周囲には遺跡のような柱が幾つもあり、半壊している石橋は手摺がなく、下は溶岩があった。

さして、そこを通り抜けると――――――

 

「これは・・・・・・」

 

俺たちの目の前に、巨大な石の扉が現れた。

 

「もしかしてこの先にボスが・・・・・・?」

 

その扉は、今まで倒してきたエリアボスの部屋の前にあった扉と酷似していた。

 

「恐らくそうだろう。見たところ、ロックはされてないみたいだな。普通に開く」

 

「・・・・・・どうする?」

 

「んーーー・・・・・・。一度アークソフィアに戻ってアイテムを調達するか。そのあとに倒せばいいかな」

 

「了解」

 

俺とレインはその場に回廊結晶をセットし、場所を登録させ。

 

「このまま転移結晶で帰ろ」

 

「そうするか」

 

「「転移!」」

 

転移結晶を持ち、その場から転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

管理区

 

視界が開けると、目の前には管理区の光景が広がっていた。

 

「さてと、どうする?今日はこのまま戻る?」

 

「そうしよ~。もう服が汗で張り付いたりしてなんかやだ」

 

「俺もだ」

 

俺とレインは互いに顔を見合せ、くすり、と笑いエギルの店へと帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エギルの店

 

「「ただいま~」」

 

「おう、お帰・・・・・・・・・って、二人ともなんでそんなにやつれてるんだ」

 

店の中に入ると、カウンターでエギルがそう言った。

 

「ちょっとな・・・・・・・」

 

「うんうん。さすがにあそこは疲れた・・・・・・」

 

「な、なんか知らんが大変だったようだな」

 

「ああ。ところで、ユイはどこだ?」

 

「ユイちゃんならシリカたちと街に出掛けてるぞ」

 

「そうなんだ」

 

「それより二人は早く着替えてきた方が良さそうだな。その格好だと風邪引くぞ」

 

俺とレインの服装を見てエギルは苦笑して言う。

実際、俺らの服は汗とかですごいことになってる。

まあ、服はストレージに入れておけば時間経過で乾くんだが。

 

「それと、しばらく部屋で休むといいだろう。アイツらが帰ってくるまで寝てたらどうだ?」

 

「すまんエギル。悪いがそうさせてもらうわ」

 

「うん。そうするよエギルさん」

 

「おうをアイツらが帰ってきたら呼ぶから、それまでゆっくりしてな」

 

エギルのその言葉を聞き、俺とレインは自室へと向かった。その足取りは少し重い。

そして部屋にたどり着いた俺とレインは。

 

「「つ、疲れた~」」

 

部屋に入るなり、ベットに崩れ落ちた。

 

「このまま寝たいかも」

 

「同感」

 

「けど、そのまえにお風呂入りたい」

 

「だな。先にレインが入れよ、俺は後で入るから」

 

「ええ~、キリトくんも入ろうよ」

 

「い、いや、だがな」

 

「お詫びになんでも言うこと聞くんじゃなかった?」

 

「うぐっ・・・・・・」

 

「そう言うわけだからキリトくんも一緒に入るよ!」

 

レインのキラキラと輝く瞳に俺は断れるわけもなく、

 

「了解・・・・・・・」

 

レインの言葉にうなずき返した。

そのあとはレインのお願いに翻弄されたりして、まあ、いろいろあって疲れた。別の意味で。

 

 




「みんな、答えはわかったかな?それじゃあユージオ、答え合わせお願い!」

「了解。答えはⅠ:爆破、だよ」

「いやー、まさかあれで岩壁を破壊するなんてね」

「うん。それにしてもキリトはホント危なかっしいね」

「まあ、キリトはいつも他の人が思い付きそうもないことをするからね~」

「あはは、キリトらしいや」

「おっと、時間になってしまったので今回はここまで」

「ホントだ。早いね時間がすぎるの」

「ホントだね。それではまた次回!」

「また、会おうね」

「ではまた!Don't miss it.!」



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HF編 第99話〈情報交換〉


※今回は問題はありませんのでご了承ください。






「祝!!99話到達!!」

「ついにこの物語も次回で100話到達だね」

「そうだなレイン。ソーナもお疲れ」

「ありがとう二人とも!私も書いた当初はここまで行くなんて思わなかったよ。それと今日は私がここに投稿して一周年なんだ」

「あっ!ホントだ!」

「気づけばもう一年も立つんだな」

「そうだね。他には今日今放送中の『SAO アリシゼーション』がsecondクールに入ったんだ」

「ほへぇー。それはスゴいな」

「私たちも早くアリシゼーションに出たいね」

「ああ。そうだな」

「もちろんだよ、二人とも。二人もこれからよろしくね!」

「ああ、こちらこそよろしくソーナ」

「よろしくねソーナさん」

「うん♪それでは―――――」

「「「下の本編をどうぞ!」」」




~キリトside~

 

「よう、キー坊。待ってタゾ」

 

「アルゴ。もしかして例の情報が手に入ったのか」

 

俺は下に降りると、カウンターに腰かけていたアルゴが声をかけてきた。

 

「もちろんダヨ。ただし、少しばかり値は張るけドナ」

 

「もちろん、それは承知しているさ。このクエストをクリアすれば装備類がだいぶ強化できるからな」

 

「キリトくん、アルゴさんに何を頼んだの?」

 

「ああ。ちょっと装備の強化系クエストをな・・・・・・」

 

俺は隣にいるレインに話す。

 

「強化系アイテム!?」

 

「それって、どこのクエスト?クリアに何が必要なの?」

 

強化系、と聞いてレインとリズが興奮したように聞いてきた。

 

「あ、いや、だからそれを聞いていたんだよ」

 

「あ、そっか」

 

「ニャハハ。相変わらずキー坊とレーちゃんの二人は面白いネ」

 

アルゴは周りを見て言う。

店内には俺とレイン、アルゴ、リズの他にアスナ、ユウキ、ラン、リーザ、ラム、リーファ、ストレア、シリカ、シノン、クライン、ユイがいる。エギルはカウンターにいる。

 

「あ、あのなぁアルゴ」

 

俺は苦笑いを浮かべながらウインドウを表示する。

 

「代金はこれでいいか?」

 

「毎度アリ」

 

俺は代金を支払い、アルゴからクエストの情報をもらった。

 

「キリトくん、明日早速そのクエスト、クリアしに行こうよ」

 

「はじめからそのつもりだよ」

 

「やった!」

 

「どうせなら、みんなも受けに行かないか?」

 

「ボクたちも?」

 

「ああ」

 

「いいかもね。この先に必要だと思うし」

 

「それじゃあ明日はみんなでこのクエストをクリアしに行きましょうか」

 

アスナは両手を軽く叩き合わせそう言う。

すると。

 

「アーちゃんにも渡しておくものがあるンダ」

 

アルゴがアスナにそう言った。

 

「え?あ、アルゴさんもしかして・・・・・・」

 

「?アスナ、何を頼んだんだ」

 

「あの攻略組参加希望のアルベリヒってプレイヤーのことですよキリトさん」

 

「ああ、あいつか」

 

「確かになんか変わった人だったよね」

 

「変わった、というより少し気になるやつだったな」

 

「ええ。だからみんなにも知らせておいた方がいいと思って、アルゴさんにあのアルベリヒって人とギルドについて調べてもらったの」

 

「なるほどな」

 

「なるほど」

 

俺とレインは昼間にあったことを思いだしアスナたちの言葉にうなずく。

 

「キリトさんとレインさんも気になるってことは・・・・・・。やっぱり、なにかありそうですね」

 

「変質者とかなら、気を付けないといけないしね」

 

シリカとリズが不安そうに言う。

 

「キリト君とレインちゃんからも、なにか気になることとかみんなに教えてあげられないかな」

 

「なるほどな・・・・・」

 

「うん・・・・・・。みんなに話すねキリトくん」

 

「ああ、頼む」

 

「私とキリトくんが気になったのは、身に付けている装備品に対しての実力の無さなんだ」

 

「どういうことですか?」

 

「私が見た感じ、あのアルベリヒって人の装備はかなりのレア装備だったの。でも、動きは素人同然だったの」

 

「ええ。完全に宝の持ち腐れだったわね」

 

「ボクもそう思うな。あの人には違和感を感じたし」

 

「ユウキと同じです。私もレベルや装備以前に何て言うのでしょうか・・・・・・」

 

「素人プレイヤーが最強のアバターを使って、それを動かしている、って感じだな」

 

「そうそれです」

 

俺はランの言葉を引き継いでみんなに言う。

 

「ふうん。そんなにすごい装備を持てるならちょっとくらい名前が知られてても、おかしくないはずなのにね」

 

「そうなのよリズ、それも不思議なの。みんな、アルベリヒ何て名前聞いたことないでしょ?」

 

「はい、聞いたことないですね」

 

「あたしもです」

 

「俺もないですね。リーザは?」

 

「私もよ。そもそもアルベリヒ何て名前の人事態知りません」

 

「わたしも聞いたことないな~」

 

「俺もだぜ。風林火山の連中からも聞いたことないな」

 

「・・・・・・アルゴはどうなんだ?」

 

「いや、オレっちも知らないナ。それに、アーちゃんから依頼されるまでアルベリヒ、なんて名前のプレイヤーがいること事態知らなかったヨ」

 

「アルゴさんも知らないなんて・・・・・・」

 

「でも、装備だけっていうなら例えばイカサマなトレードかなんで稼いだとか、そう言う可能性もあるんじゃない?」

 

「その可能性は捨てきれないけど・・・・・・」

 

「あれほどのレア装備を身に付けらるだけの能力値は間違いなくあるはずだよ」

 

「だがまあ、動きがなんともならないから、レベルだけ必死に上げ続けたとか。そういう事なのかもしれないけど」

 

俺とレインは思ったことを伝える。

まず実際あり得ないのだ。何故なら、

 

「ですが実際はそんなことは考えにくいですね・・・・・・」

 

「うん・・・・・・。あの数値まで到達するにはかなりの高レベルになっていないと」

 

「ああ。そんなのは下層の敵だけじゃ無理だ」

 

そう、下層の敵だけであそこまでの数値になることはあり得ないからだ。

 

「とはいえ、上層の敵は思考がかなり賢くなっていて、能力値だけでは倒すことが困難だ。そんな相手に不慣れな動きでレベリングは危険すぎる」

 

「結局、能力の高さは謎のままですね」

 

「だな・・・・・・。もしかしたら、あのレア装備の中に能力値を上げる装備があったのかもな」

 

「確かに。そうなれば、後はレア装備を買うお金だけあればなんとかなるかもしれないから」

 

「それは確かにあり得るけど・・・・・・」

 

「なるほどねー。なんか注意した方がいいやつだってことはわかった」

 

「お金だけ持ってて、実力がない人がやることなんて、ろくなことじゃないですよね」

 

リズとシリカが警戒をする表情で言った。

 

「そうよお。金にものをいわせて、なんか変なことをしてくるかもよお」

 

「や、やめてくださいよ、リズさん」

 

だが、リズはからかうように隣のシリカを弄った。

 

「アハハハ」

 

俺はそれに苦笑して見るしかなかった。

 

「特にレイン。レインは目立つんだから気を付けなさいよ。それはアスナやユウキ、ランとリーザにも言えることね」

 

「り、リズっち」

 

「まあ、確かに。アルベリヒは血盟騎士団宛に連絡してきたからな。気を付けた方がいいだろうな」

 

「う、うん。確かに気を付けた方がいいかも・・・・・・」

 

「ですが、それはみなさんもだと思います。この世界にも変な人はいますから・・・・・・」

 

アスナとランが不安げに言った。

 

「返り討ちにすればいいでしょ?リアルよりも、こっちの世界の方が単純じゃない?」

 

「そうだよ。もし姉ちゃんに手を出すならボクが許さないもん」

 

「俺もリーザに手を出すやつがいたら、シノンさんの言う通り返り討ちにするまでです」

 

すると、シノン、ユウキ、ラムが自信ありげに。と言うか絶対してやる、感じの空気をまとわせていった。

 

「シノンさん・・・・・・頼もしい・・・・・・。あたしもそのきでいかなくちゃ!」

 

「自信満々ダナ三人は」

 

「まあ、いざというときはキリトとラムが助けてくれるわよ」

 

「でも、ここな女性陣だったら、アイツ相手でも勝てると思うんだけどな?」

 

「まあ、確かに・・・・・・」

 

俺とラムは回りの女性陣を見て言う。

 

「ちょっと。そこは任せておけとか言うところでしょ?」

 

「そうですよラム。か弱い女の子を戦わせる気ですか?」

 

「あ、いや、そういうつもりでいった訳じゃないんだが・・・・・・」

 

「そう言う意味じゃないんだけどなリーザ・・・・・」

 

「まあ、何かあったら助けるよ」

 

「ですねキリト」

 

「ああ」

 

俺とラムは肩を軽く竦めて答えた。

 

「とにかくみんな、気をつけようね」

 

アスナのその一言で、アルベリヒについての情報交換は終わった。

そのあとはみんなで夕飯を食べ、軽く話し合いをしてから部屋に戻った。

ちなみに俺とユイの夕飯はレインの作った煮込みハンバーグで、とても美味しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自室

 

 

 

「んー。美味しかったー。レインの煮込みハンバーグ」

 

夜の11時頃、俺はレインとともに今日のことについてと明日からについて話していた。

ユイはすでに同室のレインの部屋で寝ているため、ここにはいない。

 

「喜んでもらえてうれしいよ♪」

 

「にしてもあのアルベリヒってやつ、レインからはどうみえる?」

 

「お昼にもいった通りだと思うよ。まず、アルゴさんが知らないって言っていたから」

 

「なんだよな~。何者なんだ、あのアルベリヒってプレイヤー」

 

「イヤな予感がするな。たぶんで確証はないけど、なんだろう、こう、檻の中に閉じ込められている感じがする」

 

「檻、か・・・・・・・。とにかくアイツには気を付けないとな」

 

「そうだね」

 

「そういえば、フィリアからメッセージが届いていたぞ」

 

「あ、キリトくんにも来てた?」

 

「ああ。また一緒に攻略お願い、だって」

 

「私も同じだよ。それじゃあ明後日からフィリアも交えて攻略しますか」

 

「うん♪フィリアちゃんには私から明後日からって返信しとくね」

 

「頼む」

 

「うん♪レインちゃんにお任せあれ♪」

 

「ハハハ、頼りにしてるよレイン」

 

「任せてキリトくん」

 

俺たちは笑いあって、レインの入れてくれた紅茶を飲む。

 

「ふう~。明日どうする?」

 

「どうするって?」

 

「クエストをクリアしたら、火山エリアのボスを倒しに行く?」

 

「う~ん・・・・・・。昼前に終わったらそうしたいかな」

 

「じゃあ、昼前に終わったらそうしようか」

 

「そうだな。にしても、まさか攻略一日でボス部屋を見つけるとはな」

 

「だね。ホロウミッションに従ってやっていたらいつの間にか見つけちゃっていたし。まあ、幾つか危ないと思ったところはあるけど」

 

「うっ」

 

レインが半眼となって俺を見る。

幾つか危ないと思ったところ、というのは俺が岩壁を破壊したときのことだろう。

 

「それに、エリアが樹海や遺跡エリアとかより小さいからかな?早く見つかったのは」

 

「もしくは俺たちがホロウミッションをクリエするのが早すぎたか」

 

「それなら多分後者じゃないかな?」

 

「アハハ、確かにな」

 

俺は視界左に表示されている俺とレインのレベルを見た。今の俺のレベルは124。レインは123と表示されていた。

なぜ、二つもレベルが上がったのかと言うと。

 

「ていうか今日のアレはキツかったんだけどレイン」

 

「うん。私もそう思った」

 

「NMはいいけど、レベルが上のモンスターと戦ったから疲れたよ。幸いだったのがNMにレベルが上がいなかったことだね」

 

そう、俺たちは火山エリアで自分達よりレベルが上のモンスターと戦闘したり、NMを倒したのだ。

そのため、経験値が大量に入りホロウミッションのクリア報酬経験値と合わせて、2レベルも上がったのだ。

 

「まあ、≪シンクロ≫スキルがなかったら危なかったかも」

 

「だな。だがまあ、≪シンクロ≫スキルの熟練度は900を超えてるからな、経験値稼ぎにはよかったよ」

 

「そうだね」

 

現在の≪シンクロ≫スキルの熟練度は900を少し超えている。そのため、ソードスキルは最上位以外は使える。

 

「さてと、明日も頑張るとしますか」

 

「そうだな」

 

立ちあがり軽く延びをして言うレインに俺も延びをして答える。

 

「キリトくん」

 

「ん?・・・・・・・!!?」

 

レインの方を見ると、俺はレインに不意打ちのようにキスをされた。

レインの舌が俺の舌を絡めとるようにしてくる。

 

「ん・・・・・・んっ・・・・・・・プハッ・・・・・」

 

「フゥ・・・・・・・フゥ・・・・・・」

 

俺とレインのキスは5分を越えたと思う。

 

「いきなりだなレイン」

 

「ええ~。なんかキリトくんにキス、したくなっちゃったから」

 

「まあ、いいけど」

 

「ありがとうキリトくん」

 

レインはカップ類をストレージにしまい。

 

「それじゃまた明日ねキリトくん♪」

 

「ああ。お休みレイン」

 

「キリトくんも、おやすみなさい」

 

レインはそう言うと扉を開け、自室へと戻っていった。

 

「俺も寝るとするか」

 

俺は軽くストレージを整理し、ベットに横になると疲れからかあっという間に眠りの世界へと落ちていった。

 

 

 





「いかがでしたか?これからも≪ソードアート・オンライン 黒の剣士と紅の剣舞士 二人の双剣使い≫をどうぞ――――」




『『『『『『『『『『よろしくお願いします!!!』』』』』』』』』』




「それではみなさん!」



『『『『『『『『『『また次回!!Don't miss it.!!』』』』』』』』』』












この放送は本作の登場人物の協力によりお送りいたしました。


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HF編 第100話〈闇の襲来〉


「どうも~、フィリアでーす!本来ならソーナがやるんだけど、ソーナがいないんだよね。どこ行ったんだろう?」

「それより早く俺を呼んでくれないか?」

「あ、ごめんごめんキリト。今日のゲストはキリトです」

「まあ、今更って感じもするが・・・・・・。よっ、キリトだ。よろしくな」

「ところでキリト、ソーナの行方知らない?」

「ソーナなら忙しくて来れないらしいぞ」

「ええっ!」

「で、今日の司会はフィリアに任せるってさっきメールが来た」

「なんでぇ!?普通キリトかレインじゃないの!?二人とも今作の主人公だよね!」

「それを俺に言われてもな・・・・・・」

「もう。取り敢えず与えられた役割はしますか・・・・・・。さて、今回の問題はこちら!」


問題:『クエストが終了し、エギルの店でパーティーを開催したのは誰?』

Ⅰ:ストレア

Ⅱ:アスナ

Ⅲ:クライン

Ⅳ:フィリア


「答えは本文の最後にだよ!」


 

~キリトside~

 

「なんか疲れてない、キリトくん?」

 

転移門に向かっている道中、俺は隣にいるレインにそんなことを言われた。

 

「ふぁ~あ。まあな、昨日の疲れがまだ抜けてないんだと思う」

 

「そんなんで大丈夫なの?」

 

「まあ、なんとかなると思う。戦闘には問題ないからな」

 

昨日、何があったのかと言うと―――――――

 

「昨日は大変だったね~」

 

「ああ。あのクエストが終わって帰ってきてみれば今度はクラインがパーティーだとかするからなぁ」

 

「フフ。まあ、クライン君なりの慰労会みたいなものなんじゃないかな?」

 

「まぁ、楽しめたから良かったけど」

 

「でも最後のアレはないよね~。というよりクライン君らしいオチだよね」

 

「ホント全くだな」

 

「あ~あ、歌いたかったのにな~」

 

「レインは歌うの好きなのか?」

 

「うん。まあね」

 

「じゃあ、現実に戻ったら聞かせてくれよ」

 

「もちろんだよ♪キリトくんだけに歌ってあげるね♪」

 

「おう!楽しみにしてるよ」

 

「うん!レインちゃんにお任せあれ、ってね♪」

 

話ながら歩いていると、あっという間に目的地の転移門に着いた。

 

「それじゃあ行くか」

 

「うん」

 

「「転移!ホロウ・エリア管理区!」」

 

そして俺たちは第76層『アークソフィア』から転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホロウ・エリア 管理区

 

「キリト、レイン・・・・・・」

 

管理区に転移すると、コンソールの前にいるフィリアが声をかけてきた。

 

「よっ、フィリア」

 

「プリヴィベート、フィリアちゃん」

 

「うん。二人とも、もうわたしは大丈夫・・・・・・。だから、一緒に行こうよ」

 

「・・・・・・わかった」

 

「うん♪一緒に行こうフィリアちゃん」

 

フィリアとパーティを組、転移門の上へ立つ。

 

「行くよ」

 

「うん」

 

「ええ」

 

「「「転移!」」」

 

俺たちは管理区から転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジリオギア大空洞エリア ジリオギア大空洞 展望上部

 

「うわぁ~」

 

「深すぎて底が見えないね・・・・・・」

 

「ああ・・・・・・。一番下へ行くには骨が折れそうだな」

 

「だけど、こういう場所にこそお宝は眠ってるんだよね!ねっ、フィリアちゃん♪」

 

「うん・・・・・・・そうだね」

 

「大丈夫フィリアちゃん?まだ体調が優れないんじゃ・・・・・・」

 

レインがフィリアの様子を心配してフィリアに近づいた。

 

「あっ、ごめん・・・・・・。なんでもないの。ちょっと考え事していただけだから、大丈夫だよレイン」

 

「フィリアちゃんがそう言うなら・・・・・・」

 

「ほら、早く先にいきましょう」

 

そう言うフィリアの後をついていく形で、俺とレインは進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追跡者に捕らえられた祭事場

 

現れるオークやリザードマンなどを撃破しつつ先を進んで行く、するとその道中。

 

「ねえ・・・・・・キリト、レイン」

 

「どうしたんだフィリア」

 

「どうしたのフィリアちゃん?」

 

「ちょっとだけ、行きたいところがあるの・・・・・・。いいかな・・・・・・」

 

「あ、 ああ。わかった。レインもいいか?」

 

「うん」

 

俺とレインはフィリアの行きたいところへと案内された。

そこは特に装飾のない石壁があるルームだった。

ルームの中はモンスターがいなく、閑散としていた。

 

「・・・・・・ここの壁、よく見て」

 

フィリアの指差したところに視線を向けると。

 

「あ!もしかして隠し扉?」

 

「多分そう・・・・・・」

 

「こんなところに隠し扉があるなんて・・・・・・」

 

「全然気づかなかったね~」

 

「ああ。さすがフィリア。凄腕のトレジャーハンターだな」

 

「・・・・・・まぁ・・・ね」

 

フィリアは淡々といつもの覇気がない声で返事をし、隠し扉を開けた。

 

「あ、あそこ」

 

フィリアが開けた扉の奥には宝箱が1つだけあった。

 

「宝箱だよ!」

 

「ああ!こういうのって、やっぱりワクワクするよなあ」

 

「ホントだね」

 

「わたしが開けてくるから、キリトとレインはその入り口で見張っててくれる?モンスターが来たらヤバイから」

 

「了解~」

 

「任せてくれ」

 

フィリアは1人、奥の宝箱に向かい宝箱の前に膝を着いた。

 

「・・・・・・ねえ、キリト、レイン」

 

「ん?」

 

「なにフィリアちゃん?」

 

宝箱を開けたフィリアは、開いた宝箱の前に立ちながら俺とレインを見た。

振り向いたフィリアのその眼は何故か悲しそうだった。

 

「わたしが・・・・・・人を殺した理由。オレンジになった理由を二人は聞いてこなかったね。なんで・・・・・・なのかな?どうして・・・・・・二人は聞かなかったの?」

 

「人にはそれぞれ理由があるだろ?カーソルの色と人格は必ずしも一致するとは限らない」

 

「うん。それにフィリアちゃんは、こうして私たちと攻略してるよ」

 

「言いたくないことだって誰にもある・・・・・・。それは俺にも、レインにも言えることだ。でも、フィリアはこうして一緒に戦ってきた。だから信用しいてる」

 

「信用してなかったら私たちは今ここにいないよ。フィリアちゃんがいたから、私もキリトくんも、ここにいるんだから」

 

「・・・・・・わたしは、二人にそんなことを言ってもらえるような・・・・・・人・・・・・・ううん。性格じゃないよ」

 

「何言ってるのフィリアちゃん。フィリアちゃんはずっと、私たちを助けてくれたよ」

 

「ああ。フィリアがいなかったらヤバいと思ったことは何度もあった」

 

「違う・・・・・・わたしは。わたしは・・・・・・人を殺したの。ううん、それよりひどい。わたしは・・・・・・わたしを殺したんだ」

 

「フィリア・・・・・・ちゃん・・・・・・」

 

「フィリア、一体何を言って・・・・・・」

 

俺とレインはフィリアの言ったことがわからず、フィリアに視線を向ける。

フィリアの目尻には涙が浮かんでいた。

 

「わたしもね。二人と同じように、気がついたらこっちの世界にいて、森の中を彷徨っていた。そうしたら、誰かが目の前に現れたの。・・・・・・その人は、わたしだった」

 

「・・・・・・フィリアちゃんの目の前に・・・・・・もう1人のフィリアちゃん・・・・・・?」

 

「・・・・・・その人と戦ったっていうのか?でも、特殊なクエストとかそう言う可能性だって」

 

「違う!NPCとプレイヤーを間違えたりしない!」

 

「フィリアちゃん・・・・・・」

 

「あれは・・・・・・絶対にわたし。二人は信じられる?その時のこと・・・・・・、無我夢中で・・・・・・、必死だった・・・・・・。我に返ったとき、目の前のわたしは消えていたんだ」

 

「・・・・・・フィリア」

 

「・・・・・・フィリアちゃん」

 

「そのあと、わたしのカーソルはオレンジになっていた。わたしが・・・・・・わたしを殺したからかなって」

 

「フィリア!自分自身が二人いるなんて、そんなことあるわけがない!」

 

「そうだよ!フィリアちゃんはフィリアちゃん!フィリアちゃんはただ1人、でしょ!」

 

「・・・・・・キリト・・・・・・レイン。だからわたしの罪は、カーソルの色を戻しても決して消えない。ずっと・・・・・・ずっとこの影の世界で生き抜かなきゃいけない。わたし・・・二人に出会わなければ良かった・・・・・・。そうしたら・・・・・・わたしはずっと一人でいられたのに・・・」

 

フィリアがそう言うと。

 

 

 

 

パチンッ!!

 

 

 

 

乾いた音が鳴り響いた。

 

「レイン・・・・・・」

 

「出会わなければ良かった・・・・・・?ふざけないでフィリアちゃん!」

 

フィリアに近づいたレインがフィリアの頬を叩いたのだ。幸いにもレインに表示されているカーソルはイエローカーソルにはなってない。

レインは、哀しそうな声で言う。

 

「じゃあなに!私とキリトくんはフィリアちゃんと会ったらいけなかったの!?ずっと一人でいられたのに?それこそないよ!」

 

「お、おいレイン・・・・・・」

 

「キリトくんは黙ってて!フィリアちゃん、私はフィリアちゃんと出会って良かったって思ってるんだよ。それなのに・・・・・・フィリアちゃんはそれを否定するの?なんで否定するのよ!こうして目の前にいて手を差し出せばすぐ手が握れるんだよ!」

 

「レインに何がわかるの!ずっと一人ぼっちだったわたしに・・・・・・。いつもキリトと一緒にいるレインが言わないでよ!」

 

「私だって・・・・・・私だって!今はこうしてキリトくんといるけど、あの時、キリトくんと出会えてなかったら私だってずっと一人ぼっちだった!それに一緒にいたくても、いられない人の気持ちがフィリアちゃんにわかる!?何年も、何年もずっと、会えない人の気持ちが・・・・・・!それを知らないフィリアちゃんが私たちに出会わなければ良かった、なんて言う資格はないよ!!」

 

「レイン・・・・・・」

 

涙声で言うレインに、俺はあの夜レインから聞いたことを脳裏に思い出していた。

今レインが言ったのは、恐らく自分の妹の事なんだろう。小さい頃に別れて、それ以来会ってない。俺だって、レインと同じ立場ならきっとレインと同じことを言う。

俺の横にレインが走ってきて、俺は泣いているレインの肩を優しく叩いた。

 

「キリトくん・・・・・・」

 

涙目で見るレインに俺は優しく頭を撫でる。

 

「キリト・・・・・・わたしは・・・・・・」

 

「フィリア・・・・・・いられるさ。絶対方法はあるはずだ。俺たちがそれを見つける!」

 

「・・・・・・キリト。ありがとう・・・・・・」

 

「フィリア・・・・・・」

 

「――――――でも・・・・・・すこし我慢してて」

 

フィリアは俯きながらそう言うと。

 

「なっ!?」

 

「えっ!?」

 

「うわあああ!!!」

 

「きゃあああ!!!」

 

突如俺とレインは後ろから誰かに押された。

 

「フィリア!フィリア!!!」

 

「フィリアちゃん!フィリアちゃん!!!」

 

俺とレインの声に穴の縁から

 

「ごめん、ごめんキリト・・・・・・レイン・・・・・・」

 

そう言う声が朧気聞こえた。

 

 

「じゃぁな、《黒の剣士》、《紅の剣舞士》」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、俺とレインは穴の底へ落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖剣の誓いをたてた回廊

 

 

「くっ・・・・・・。いてて・・・・・・くそ、何が起きたんだ?」

 

俺はさっきまでのことを思い出した。

 

「(フィリアと話しているときに後ろから誰かに押されて・・・・・・。ふらついたらいきなり床が抜けて、ここへ落ちてきた)」

 

俺はあまり意識がはっきりしない中思考した。

 

「・・・・・・どういうことだ?それに、落ちる直前に聞こえてきた声・・・・・・。あれは、PoHの声だった。フィリアは・・・・・・俺とレインを罠に嵌めたのか?いや、だがそれにしては理解できない点が多い・・・・・・。・・・・・・いや、そんなことより今をどうにかしないと・・・・・・」

 

「んっ、んん・・・・・・」

 

「レイン、大丈夫?」

 

「キリトくん・・・・・・。アイタタタ~・・・・・・。ここは一体・・・・・・。確か、誰かに押されてそのまま穴に・・・・・・っ!!」

 

レインは朧気に思い出したのか目を見開いて周囲を見渡す。

 

「とにかく今はここを脱出することに専念しよう。このダンジョン、相当ヤバいぞ・・・・・・」

 

「了解・・・・・・」

 

俺とレインは索敵スキルを全開にしてこの場所の攻略を進めた。

幸いにも、俺たちが落ちてきたルームにモンスターはいなく助かった。

 

「いくぞ・・・・・・」

 

「うん・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

俺とレインは先に進んで行き、現れたモンスターを撃破していく。

 

「はあぁあ!」

 

「せやあぁあ!」

 

俺とレインは今しがた倒した。モンスターのいた場所に視線をむける。

 

「これで何体目だ・・・・・・」

 

「軽く十体は越えてるよ・・・・・・」

 

俺とレインはポーションを取り出し、それを飲みながら話す。

 

「レベルが他と違うな、やはり・・・・・」

 

「うん・・・≪シンクロ≫スキルが無かったらちょっとやばかったかもしれないね」

 

「ああ・・・・・・」

 

空間ウインドウに表示されているスキルリストには≪シンクロ≫スキルの熟練度が表示されている。表示されている≪シンクロ≫スキルの熟練度は980になっていた。

 

「《共鳴(レゾナンス)》も使っているからなのかな。動きが速く出来たよ」

 

「確かにな・・・・・・・・・・おっと、モンスターがPOPしてきた」

 

話ながら移動していると、突如目の前にモンスターがPOPするエフェクトが現れる。

 

「さっさと倒しちゃおうか・・・・・・・・・・・・って、え・・・・・・?」

 

「マジで・・・・・・?」

 

俺たちのいる部屋のあちこちからモンスターがPOPするエフェクト音と光が現れる。

その数十数体いる。

 

「えーと、どうしようか・・・・・・」

 

「ここは取り敢えず・・・・・・」

 

俺とレインは互いの顔を見合わせ、同時にうなずき、

 

「「さっさと倒して逃げる!」」

 

近くにいるモンスターをレインと同時に攻撃し、HPを減らす。

 

「はあぁあ!」

 

「やあぁあ!」

 

俺たちが双剣を何度も振るうたびにモンスターたちが消えていった。ちなみに、俺とレインは連続で絶え間なく攻撃している。

そして10分後・・・・・・

 

「「お、終わった~・・・・・・!」」

 

現れたモンスターは全て駆逐完了し、俺とレインは最後の部屋に来ていた。

そこには他のモンスターとは違うモンスター・・・・・・・・・・NMがいた。

 

「今度はNMかよ・・・・・・」

 

「さすがに連戦はキツいね・・・・・・・」

 

「だがアイツを倒さないと先へは進めないらしいな。幸いにも敵は一体だけだし、なんとかなるはずだ」

 

「そうだね・・・・・・。どうする?いつもと同じで行く?それとも別パターンで行く?」

 

「そうだなぁ~・・・・・・・・・・《共鳴》って後どのくらいもちそう?」

 

「え~と・・・・・・あと、8分くらいかな?」

 

「なら二人同時に攻めよう。俺が初撃を防ぐからレインはその隙に攻撃してくれ」

 

「了解~」

 

「よし、それじゃあ・・・・・・・」

 

「「いくよ!」」

 

俺とレインは双剣を構えると、目の前のNMに向かって掛けていく。

目の前のNMはミノタウロス型で74層のフロアボス、グリームアイズと似たような両手剣・・・・・・斬馬刀を持っていた。そして視界に表示される名前は『NM:トーラス・ガーディアン』と書かれてあった。

瞬時にトーラス・ガーディアンに近づいた俺に気づいたトーラス・ガーディアンはその手に握る斬馬刀を振り下ろしてきた。

 

「はあっ!」

 

俺はそれを≪二刀流≫防御スキル《クロスガード》で防ぐ。そして思い切り振り上げ、斬馬刀を跳ね上げる。

 

「やあぁぁああ!」

 

斬馬刀が弾かれ、上体が無防備になったところにレインが≪多刀流≫ソードスキル《ディスティニー・ロンド》4連撃を放った。

 

「レイン、スイッチ!」

 

「わかった!スイッチ!」

 

「ぜりゃゃあああ!」

 

ソードスキルを放ったレインとスイッチし、今度は俺が≪二刀流≫ソードスキル《デブス・インパクト》5連撃を繰り出す。

 

「グギャャアアアア!」

 

《デブス・インパクト》は追加効果で防御低下のデバフを相手に与える効果があるため、トーラス・ガーディアンのHPバーの横に、防御低下のデバフアイコンが表示された。

そして、《デブス・インパクト》の攻撃で、トーラス・ガーディアンは背後にその身を押し出される。

 

「続けていくぞ!」

 

「うん!」

 

横薙ぎに払ってきた斬馬刀を、俺たちはバックステップで下がる。

 

「はあぁあ!」

 

そして、≪二刀流≫ソードスキル《ダブル・サーキュラー》突進2連撃を放ち接近する。

放った《ダブル・サーキュラー》はトーラス・ガーディアンの斬馬刀の腹に防がれる。が・・・・・

 

「やあぁあ!」

 

横からのレインのソードスキル。≪多刀流≫ソードスキル《ウインド・ストライク》突進2連撃は防げず、トーラス・ガーディアンの上体に突き刺さった。

 

「せいっ!」

 

そしてその隙を逃さず、俺はトーラス・ガーディアンを横薙ぎに攻撃し、その背後に回る。

 

「よっ・・・と!」

 

レインは振り下ろされた斬馬刀を右手の剣で軌道を横にずらしてかわし、左手の剣で薙ぎ払い、大きく後ろに跳び退る。

この時点で、二段あったトーラス・ガーディアンのHPは残り一段と2割にまで減少していた。

 

「いくよっ!サウザンド・・・・・・レイン!!」

 

離れた位置からレインは≪多刀流≫最上位ソードスキル《サウザンド・レイン》を繰り出した。

レインの放った《サウザンド・レイン》はトーラス・ガーディアンの身体に幾つもの光蒼色の剣が突き刺さる。それと同時に大幅にトーラス・ガーディアンのHPバーが削れていくのが見える。

トーラス・ガーディアンのHPが残り5割にまで減ると、トーラス・ガーディアンは斬馬刀だけの攻撃ではなくブレス攻撃もしてきた。

そのブレス攻撃は《サウザンド・レイン》の技後硬直で動けないレインに剝いた。

 

「レイン!」

 

俺は間一髪その間に入り、片手剣防御ソードスキル《スピニング・シールド》でブレス攻撃を防ぐ。

 

「無事かレイン」

 

「うん。ごめん、キリトくん」

 

「構わないよ。さっ、後半分だしさっさと倒そうぜ」

 

「了解♪」

 

まず、俺が先攻しトーラス・ガーディアンの斬馬刀を受け止める。そして、背後から迫るレインの攻撃が、トーラス・ガーディアンを捕らえ命中する。

その攻撃によりトーラス・ガーディアンに仰け反り効果が発生した。

 

「はあぁぁあああ!!」

 

その隙を逃さず俺は片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》単発重攻撃を繰り出す。

右手の『ブラックローズ・ナイト』に深紅のライトエフェクトが纏い、ジェットエンジンのような轟音が響き渡る。

《ヴォーパル・ストライク》はトーラス・ガーディアンの中心部に命中した。重攻撃のため、更に仰け反り効果が続き、スタンが発生した。

 

「いくよレイン!」

 

「うん!」

 

「「はあぁぁあああ!!――――――アブソリュート・デュオ!」」

 

俺とレインは高速の剣戟。≪シンクロ≫上位ソードスキル《アブソリュート・デュオ》24連撃を放つ。

トーラス・ガーディアンは斬馬刀を振るうが、俺たちの高速の剣戟に掠りもせず、どんどん自身のHPが削られていき、ラストの俺とレインとの同時突きにHPが全て無くなりポリゴンの欠片となって消えていった。

 

「お、終わった~」

 

「つ、疲れた・・・・・・。マジで疲れた」

 

俺とレインは双剣を背中と腰の鞘に収めそう言った。

そして、それと同時に《共鳴》のバフが無くなり、《共鳴》のバフアイコンが消えていった。

 

「さてと。・・・・・・先に進むか」

 

「うん」

 

俺たちはその場をあとにし、その奥にあった扉から上部へと続く階段を昇り、≪激しい戦いを繰り広げた神の間≫を攻略し――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジリオギア大空洞 中部外縁

 

 

「久しぶりの外だ~」

 

「もう暗いな・・・・・・って、もう午後8時!?」

 

「うそっ!?もうそんなに経ってるの!?」

 

俺はウインドウに表示されている時計見て驚愕する。それは隣で同様にしたレインもだった。

 

「フィリアのことが気になる、とにかく管理区に戻ろう」

 

「うん・・・・・・」

 

俺たちは近くにあった転移碑を有効化し。

 

「「転移!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

管理区

 

「フィリア!」

 

「フィリアちゃん!」

 

管理区に転移した俺とレインは、管理区に着くなりフィリアの名を呼びながら、周囲を見渡す。

だが、周囲には俺たち以外の人影は無かった。あるのはコンソールと転移門と俺たち二人だけだった。

 

「いない・・・どこに行ったんだ」

 

「もしかして・・・私がフィリアちゃんに強く言っちゃったから・・・・・・」

 

「大丈夫だよレイン。フィリアは必ず見つける。だから、その後ゆっくり話そう」

 

「・・・・・・うん」

 

「一度『アークソフィア』に戻るか・・・・・・」

 

「そうだね・・・・・・」

 

俺とレインはしばらく辺りを見渡し、コンソールを調べた後そう判断し転移門の上に立ち。

 

「「転移、アークソフィア!」」

 

管理区からアークソフィアへと転移した。

 

 

 

 




「みんな答えはわかった~?それじゃあキリト、答えをお願いね」

「了解だ。答えはⅢ:クラインだ」

「ところでこのパーティーっていったい何をしたのキリト?」

「ん?ただ食事をしただけなんだが・・・・・・」

「?」

「クラインが入手したらしい宴会グッズの中に現実のカラオケと同じカラオケマシンがあったんだがそれが使えなくてさ」

「ああ・・・・・・。クラインらしいオチをしたんだ」

「そういうこと」

「ふぅーん。ところでキリトは歌唄うのって上手いの?」

「い、いや、どうなんだろうな。レインは得意みたいだけど」

「へぇー。今度聞いてみたいなぁ」

「そういうフィリアはどうなんだ?」

「わ、わたしは普通、かな」

「へぇ」

「ムッ!もしかしてわたしが歌えなかったりすると思った」

「えっ!いや、そんなことないぞ!」

「そう?ならいいわ」

「あ、ああ」

「さて、時間となってしまいましたので今日はこれまで」

「結局ソーナ来れなかったな」

「忙しいんだよ、仕方無いよ」

「まあ、次回は来てくれるといいけど」

「そうだな」

「「では、また次回に!!Don't miss it.!!」」



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HF編 第101話〈これから・・・・・〉

「よっ。みんな、キリトだ」

「プリヴィベェートみんな、レインだよ」

「今回は前回に引き続きソーナが来れないみたいだから、代わりに俺とレインが司会を勤めさせてもらうよ」

「ソーナさん、ここ最近忙しいみたいだからね。仕方ないよ」

「そうだな。前回もそうみたいだし―――――って、ん?メッセージ?」

「あ、私にも来たよ」

「送り主は・・・・・・・・・ソーナからだな」

「うん。え~と内容は・・・・・・」

「後少しで行くからそれまでお願い、か」

「うん。それじゃあ私たちはお願いされたことをしようか」

「そうだな。と、これが今回の問題だ」

問題:『ホロウ・エリアについて知るため、一緒につれていくことになったのは誰?』

Ⅰ:ユイ

Ⅱ:アルゴ

Ⅲ:ヒースクリフ

Ⅳ:ストレア

「答えは本文の最後にだよ~♪」


 

~キリトside~

 

「ただいま・・・・・・」

 

「ただいま~・・・・・・」

 

「お帰りなさいパパ、ママ」

 

「遅かったわね二人とも」

 

エギルの店に帰ると、ユイとアスナが声をかけてきた。

時刻は既に午後9時近くになっていた。

 

「何かあったの・・・・・・?」

 

シノンがその場のみんなを代表して聞いてきた。

 

「ああ、あった。それについて話すけどいいか?」

 

「ええ」

 

俺とレインはユイと一緒に座り、エギルが持ってきてくれた飲み物で口を麗せ話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とまあ、これが向こうであったことだ」

 

俺はレインとともに、ざっと今日向こうであったことを話した。

その中で一番反応が大きかったのは攻略組のアスナやクラインたちだ。

 

「なるほどねー」

 

「フィリアさん、無事なんでしょうか」

 

「いやいや、ユウキにラン。何呑気に言ってんのよ」

 

「そうですよ。ごめんって謝っていたとはいえキリトさんとレインさんを危険な場所に突き落としたんですよ」

 

「まあ、確かにそうなんだけど」

 

「でも、キリトさんとレインさんの話を聞いている限りフィリアさんには何らかの訳があったと思うんですよね」

 

「かもしれないけどさ・・・・・・」

 

「キリトくん、フィリアさんがラフコフに協力してる可能性はある?」

 

「いや・・・・・それはないな」

 

「うん。アスナちゃん、私たち突き落とされる前にフィリアちゃんと話したんだけど、フィリアちゃんなんか迷ってる感じだった」

 

「迷ってる?」

 

「うん。多分、自分のことについて、だと思う」

 

俺は突き落とされる前にフィリアが言ったことを思い出した。

 

「でも、とにかく二人が無事で良かったよ」

 

「まったく、キリト君はいっつもトラブルに巻き込まれるんだから」

 

「お、俺のせいなのか!?」

 

「いやあ、これは巻き込まれたって言うより自分で突っ込んでいった。でしょ?レイン?」

 

「え、えーと、それは・・・・・・」

 

「ですが、それに騙されて、罠にはまって・・・・・・・それでも抜けて来れちゃうのがキリトさんですから」

 

「あはは。確かに、姉ちゃんの言う通りだね」

 

「ラン、ユウキ、あのなあ・・・・・・」

 

俺の幼馴染み二人のなんとも言えない台詞に俺は呆れ半ばで答える。

 

「取り敢えずキリトとレインはしばらく《ホロウ・エリア》に行かないほうがいいわ」

 

「あたしもシノンさんに賛成です。以前聞いた〈ラフィン・コフィン〉っていうオレンジギルドの人たちもいるんですよね」

 

「うん」

 

「こちらも大人数で行けるならともかく、行けるのは四人だけなんだから」

 

「・・・・・・そうですよね」

 

「今回の話を聞いたら・・・・・・危なすぎるよ」

 

シノン、リーファ、シリカが不安そうに言う。

 

「パパ・・・・・・おでこにシワが寄っています」

 

「レインちゃんも難しい顔してるよ」

 

そこへ、ユイとアスナが俺たちを見てそう言ってきた。

 

「「・・・・・・・・・・」」

 

「キリトくん」

 

「レイン」

 

「キリトくんはどうしたいかな?」

 

「俺は・・・・・・真相を確かめたい」

 

「うん・・・・・・それは私も同じ」

 

「パパ・・・ママ・・・」

 

「みんなが言うことは、もっともだし心配かけて悪いと思う。でも、俺にはどうしてもフィリアが悪人・・・・・・ラフィン・コフィンに協力してるとは思えない。それにフィリアのあの言葉・・・・・・。だから、俺は《ホロウ・エリア》の真相を突き止めたい」

 

「私もキリトくんと同じだよ。フィリアちゃんを私は助けたい」

 

俺とレインは決意の眼差しでみんなを見渡して言う。

 

「ちょっと二人とも!?何言ってるのよ」

 

「リズ、今さらだと思うよ」

 

「ですね。レインさんはともかく、キリトさんは昔から決めたことは私たちが何言っても行っちゃいますから」

 

「うんうん。だから、ぼくらが二人のサポートをしてあげた方が、二人の安全も確保できると思うよ」

 

「あはは、ユウキ、ランさん」

 

「ユウキ・・・ラン・・・。まったく、あんたら姉妹には負けるわ」

 

「ユウキ・・・ラン・・・。ありがとう」

 

「ありがとう、ユウキちゃん、ランちゃん」

 

「ですが、準備だけはしっかりしてくださいね」

 

「わかってる」

 

「うん」

 

「・・・・・・さすがランさん。キリト君のことよくわかってる」

 

「あはは、リーファだってなんとなくわかってたんじゃない?キリトが行っちゃうってこと」

 

「なんとなくは、ですけどね」

 

「それで、具体的にはどうするの?」

 

「うん、出来れば、ユイの力を借りたい」

 

「わ、わたしですか?でもわたしは、敵と戦ったりは・・・・・・」

 

「ユイちゃんにそんな危険なことさせるわけないよ」

 

「うん。ユイには、《ホロウ・エリア》について調べてほしい。ユイだったら《ホロウ・エリア》のデータやシステムがわかるんじゃないか?」

 

「・・・・・・そうですね。干渉することは難しくても、見たものを判別するくらいならできます」

 

「それと、フィリアのこと以外にも、気になっていることはいくつかあるんだ」

 

「うん。たぶん、その謎がフィリアちゃんの今回の行動に繋がっていると私は思う」

 

「ああ。だからユイ、助けてくれ」

 

「もちろんですよ、パパ!ママ!」

 

「ありがとうユイちゃん」

 

「ありがとうなユイ」

 

俺とレインは間のユイの頭を優しく撫でる。

ユイは気持ち良さそうに笑った。

その後、その場で今後の方針を決め俺たちへの協力とともに階層攻略をしていくことが決まった。

そして・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キリトくん、私が勝ったらキリトくんと一緒に行くからね!」

 

「レイン・・・・・・どうしても闘るのか?」

 

「当然だよ!キリトくん」

 

「・・・・・・わかった。その条件承けてやる」

 

広く月明かりに照らされる遮蔽物のない草原に、俺とレインは双剣を構えて相対する。その草原にいるのは俺とレインだけだ。

 

「いくらキリトくんでも、一人で決着を付けに行くなんて・・・・・・そんなの私が許すと思う!?」

 

「・・・・・・・・・」

 

「キリトくん、答えて!」

 

「・・・・・・仕方無いだろ。俺は、あいつにお前を傷付けさせるわけにはいかない。それにこれは俺とあいつの因縁だ。例えあいつが本物で無かろうと俺が全ての決着をつける。それだけの理由が俺にはある」

 

「また一人で抱え込むの!あのときと同じように!」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「わかったよ・・・キリトくん、剣で決めよう」

 

「こうなるしかないのか・・・・・・」

 

「お互い全力で、出し惜しみは無しで・・・行くよ」

 

俺とレインの間にはデュエルのカウントダウンが刻一刻とゼロに近づいている。

 

「当然だ・・・元からそのつもりだ」

 

「じゃあ・・・・・・」

 

「ああ・・・・・・・」

 

そしてカウントダウンがゼロになり俺とレインの圏内での保護が消えた。

そして―――――

 

 

 

 

「ハアァァアアアアアア!!」

 

 

「セリャァアアアアアアア!!」

 

 

 

 

互いの剣が中央でぶつかった。




「みんなわかったか?それじゃあレイン、答えの発表を頼む」

「了解~。答えはⅠ:ユイちゃんだよ」

「ついにホロウ・エリアについて分かるな」

「そうだね。フィリアちゃんが心配だけど」

「そうだな・・・・・・」

「お、お待たせ、キリト、レイン。代わりにありがとう」

「お疲れ様ソーナ」

「お疲れ~ソーナ」

「ありがとう、二人とも。これからもたぶん頼むと思うけどお願いね」

「了解だ」

「任せて~」

「うん。それじゃあ時間になりましたので今回はここまで」

「んじゃみんなまた会おうな」

「みんな、ダスヴィダーニャ~」

「「「また次回に!!Don't miss it.!!」」」



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HF編 第102話〈夫婦喧嘩〉

「みなさんお久しぶりです。ソーナです。ここ最近忙しく、司会をキリトたちに任せていました、が今回は私が司会を務めさせていただきます。それでは今回のゲストはこの三人です。どうぞ」

「みなさん、はじめまして!ユイです」

「ヤッホー、ユウキだよ~」

「久しぶりです、ランです」

「久しぶり、ユイ、ユウキ、ラン」

「久しぶりだね~ソーナ」

「ええ。久しぶりですねソーナ」

「こんにちはソーナさん」

「今回はキリトとレインが大変なことになったね~」

「はい。早く何時ものパパとママに戻ってほしいです」

「だね~」

「ですね」

「そうだね。それでは今回の問題はこちら!」


問題:『一人黄昏れていたキリトのところに来た人は誰?』

Ⅰ:ユウキ

Ⅱ:ユイ

Ⅲ:ラン

Ⅳ:ストレア


「答えは本文の最後に!」


 

~キリトside~

 

「「行くよ!」」

 

 

「ハアァァアアアアアア!!」

 

 

「セリャァアアアアアアア!!」

 

 

互いの双剣が中央で交差する。

ことの発端は1日前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1日前

 

俺とレインはユイとアスナたちに協力してもらい、ホロウ・エリアの大空洞エリアを攻略し、深部にあった二つ目のコンソールを発見した。

そして、俺とレインはそこでコンソールを調べたユイからホロウ・エリアの真実を知った。もちろん・・・・・・フィリアのことも。

二つ目のコンソールでユイが中層エリアのロックを解除し、翌日フィリアの救出とPoHとの決着をつけに行く、だがそこで俺とレインとで意見が食い違った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エギルの店

 

 

「ちょっと待ってキリトくん。今なんて言ったの」

 

「PoHとの決着は俺一人でつける。だからレインはここで待っていてほしい」

 

「それ・・・・・・本気で言ってるの?」

 

「ああ」

 

アスナたちが見守るなか、俺とレインは対面して話していた。

 

「キリトくんはまた一人で決めるつもりなの?」

 

「そうだ・・・・・・」

 

「そう・・・」

 

 

パンッ!

 

 

俺がただそう言うと、レインは怒ったように俺に平手打ちを繰り出した。

 

『『『『『『!!』』』』』』

 

レインの行動にアスナたちが息を呑むのが伝わった。

 

「酷いよ・・・・・・・酷いよキリトくん!」

 

そう言うとレインは脇目も降らずに2階へとかけ上がっていった。走り去るレインから、目元に涙が浮かんでいるのが俺は見えた。

俺はレインが2階へとかけ上がっていくのをただ呆然と見ているだけだった。

 

「パパ・・・・・・」

 

「ユイ、ごめん。レインのところに行ってくれるか。今のレインにはユイが必要だから」

 

「わかりました・・・・・・」

 

俺は心配そうにみるユイをレインのところへと送った。

今のレインにはユイが必要だと思ったからだ。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「キリトくん・・・」

 

「なに、アスナ?」

 

「どうしてレインちゃんにああ言ったの?」

 

「・・・・・・ああ言う風に言わないとレインは絶対付いてくるからな・・・・・・」

 

「そう・・・・・・・・」

 

アスナはそう言うと、レインと同じように立上がり2階へと上がっていった。

アスナに続いてリズたちも2階へと上がって行き、残ったのはリーファとラン、ユウキだけとなった。

 

「お兄ちゃん・・・・・・」

 

「わかってる・・・・・・だが、これしかないんだ。俺はもうレインが傷つけられる所をみたくないんだよ!」

 

「キリト・・・・・・」

 

「キリトさん・・・・・・」

 

「すまない・・・・・・・」

 

俺はただ、そう三人に言って2階の自室に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日

 

俺は攻略する気に馴れず、今日は一人でアークソフィアをぶらぶらすることにした。

レインはリズの所にいるらしい。

そして、俺は昼間の時間帯ほぼすべてを俺の気に入っている街から外れた場所にある大樹で素振りや日向ぼっこで時間を潰した。

そんなとき。

 

「やっぱり・・・ここにいましたね・・・・・・キリトさん」

 

「ラン・・・・・・」

 

ランがやって来た。

ランは俺に近寄ると、すぐとなりに腰掛けた。

 

「心地よくていいですよね、この場所」

 

「ああ・・・・・・」

 

俺は空を。第77層の底を見上げながら言う。

 

「なんで俺がここにいるって分かったんだ?」

 

「昔、小さい頃、直葉ちゃんと和人さん、木綿季と私で近所にあった大樹によくこうしていたじゃないですか」

 

「そう言えばそんなこともあったな・・・・・・」

 

「それで、この近くにある大樹はここだけなので。後は幼馴染の勘、ですね」

 

「なるほどね・・・」

 

「・・・・・・・・・・レインさんのことですか?」

 

「・・・・・・藍子に隠し事は出来ないか」

 

俺はランの問いに苦笑を浮かべながら答える。

 

「レインにああ言う風に言って悪かったと思ってはいる。けど、昨日も言ったがレインの傷つくところは見たくないんだ」

 

「・・・・・・私はレインさんの気持ちわかります。私もレインさんと同じですから」

 

「どう言うことだ?」

 

「ハァ・・・ほんとにキリトさんは何時になっても朴念仁ですね。レインさんも苦労したでしょうね。これは・・・」

 

「???」

 

「ここまで言われてまだ気づかないですか・・・・・・」

 

俺は意味がわからず、首をかしげた。すると藍子は何処か呆れた感じで言った。なんだろう?

 

「レインさんは和人さんがレインさんを思うのと同じで、レインさんも和人さんが傷つけられるのが嫌なんですよ。そこにはもちろん、私も木綿季も直葉ちゃん、アスナさんたちもです。更に言うのであれば・・・・・・」

 

「言うのであれば?」

 

「和人さんが、あのクリスマスイベントの時と同じ感じは嫌だと言うことです」

 

「っ!」

 

俺は藍子の、あのクリスマスイベント、でわかった。それは、俺がサチやケイタたち・・・ギルド《月夜の黒猫団》を壊滅させた時のことだろう。

確かにここ最近、フィリアと関わっているとサチやケイタたちと過ごしたほんの少しの日々が甦ってくる。それは恐らく俺がフィリアをサチと重ね合わせているからだろう。姿形は違うが、何処と無く似ているのだ。フィリアとサチは。

 

「和人さん」

 

「ん?」

 

「私と今、デュエル、しませんか?」

 

「藍子と?」

 

「ええ。私とです」

 

「・・・・・・・・・・わかった」

 

「じゃあ始めましょう」

 

俺と藍子は立ちあがり、距離を取ってウインドウを開き、装備をセットしてそこからデュエル申請画面に移動し藍子にデュエルを申し込む。

 

「ルールは『半減決着』でいいですか?」

 

「ああ、俺はいいぞ」

 

「ではそのように・・・」

 

デュエルのモードを半減決着にして双方の同意を得て、武器を構える。

俺は背中の鞘から『ブラックローズ・ナイト』と『ホワイト・ユニヴァース』を抜刀し何時もの戦闘スタイルをとる。

そして、藍子は腰の鞘からレイン作『クラウィス・プロミッシ』を抜く。『クラウィス・プロミッシ』は、訳すと『約束の鍵』となる。

藍子の『クラウィス・プロミッシ』は俺の左手に持っている『ホワイト・ユニヴァース』と似て、刀身の色は青みがかかった白、蒼白。そして、刀身はやや細身で細剣と似たような感じだ。

俺と藍子の間にタイムカウトが表示され、数字が0へと近づいていく。

そして。

 

「はあっ!」

 

「やあっ!」

 

0になったと同時に、俺と藍子は片手剣ソードスキル《ソニック・リープ》単発突進技を発動させた。

俺と藍子の放った《ソニック・リープ》は中央で互いの剣が交差し、火花を散らして止まる。

 

「くっ!ぜあっ!」

 

「ふっ!せりゃあ!」

 

互いの《ソニック・リープ》が終了しそこから剣戟の応酬が始まった。

俺は交互に素早く双剣を振るう。対する藍子は極小の動きで双剣をいなし、弾き、かわす。

そして隙を見つけては突き技、袈裟斬りなどを放ってくる。それに対して、俺は当然のごとく双剣で弾き、かわし、いなして攻撃する。

 

「せいっ!」

 

「はあっ!」

 

またしても同時に剣が交差し、大きく俺と藍子は離れ距離をとる。

 

「やるね、藍子。さすが」

 

「和人さんこそ、さすがです」

 

俺と藍子のHPは同じほど削れていた。

 

「では、ここからは本気で行きますよ」

 

「ああ。そうだな」

 

「「―――――――っ!!」」

 

俺は片手剣ソードスキル《バーチカル・スクエア》4連撃を藍子は≪変束剣≫ソードスキル、《フォール・アウト》4連撃を同時に放つ。

互いの4連撃は面白いように交差しライトエフェクトの火花を散らす。

 

「やあっ!」

 

そして、さらに藍子は≪変束剣≫ソードスキル《レヴィア・グランキエス》7連撃を放ってきた。

 

「はあっ!」

 

対する俺は≪二刀流≫ソードスキル《ローカス・ヘクセドラ》7連撃で迎え撃つ。

 

「「はあっああ!!」」

 

この時点でお互いの残りHPは7割まで削れていた。

半減決着のデュエルのため、あと2割ほど削れればこちらの勝ちとなる。

 

「行きますよ、和人さん!やあっ!―――――ラスティー・ネイル!」

 

「なにっ!?」

 

俺は藍子の放った恐らく≪変束剣≫ソードスキルであろう《ラスティー・ネイル》に驚愕した。

 

「くっ!」

 

藍子の繰り出した《ラスティー・ネイル》は藍子が剣を振るうと、しなやかに伸びてきた。まるで鞭のように。

俺はそれをステップで避ける。

 

「甘いですよ!」

 

「なっ!?」

 

ステップで避けると次の瞬間、藍子の『クラウィス・プロミッシ』が俺へと近づいてくるのが見えた。

咄嗟に右手の『ブラックローズ・ナイト』で上に軌道をずらして弾く、だが、それはまたしても上から迫ってきた。

 

「くっ!」

 

俺は瞬時にバックステップで離れる。俺がバックステップで抜けたのと同時に藍子の『クラウィス・プロミッシ』が俺のいた場所に突き刺さった。

 

「うそ・・・なにそのソードスキル」

 

俺は今しがた自分が体験したことに驚愕し、藍子に聞いた。

藍子は剣を元に戻して話した。

 

「和人さん、あれが私のユニークスキル≪変束剣≫の最上位ソードスキル《ラスティー・ネイル》です」

 

「《ラスティー・ネイル》・・・・・・つまり蛇腹剣ってことかな?」

 

「ええ。これは剣の間合いを伸ばして敵を切り裂いたり拘束できたりできます。もちろん、ソードスキルなのでそんなに長くは使えませんけど」

 

「うわぁ、ある意味チートだなそれ」

 

「和人さんにだけは言われたくありません」

 

俺は藍子の説明した《ラスティー・ネイル》に少々畏怖した。あるいみあのソードスキルは恐ろしい。

 

「あ、ちなみに《ラスティー・ネイル》は打撃技にも刺突技にもなりますので」

 

「マジで?」

 

「はい」

 

「ちなみにその《ラスティー・ネイル》って連撃数ある?」

 

「いえ、レインさんの最上位ソードスキルと同じで連撃数不明ですね」

 

「そ、そう・・・」

 

俺は藍子にそう言いながら内心、マジで引いていた。

なんだろう、これ剣じゃなくて鞭になったら藍子がどんどん遠くなっていくような・・・・・・。

 

「和人さん、今私になんか変なこと思いませんでした?」

 

「い、いや、気のせいだと思うぞ」

 

相変わらずの勘の鋭い藍子に俺は首を横に振って答える。

 

「そうですか?まあ、いいですが・・・」

 

「それで、どうするんだ?まだ闘うのか?」

 

「そうですね・・・・・・いえ、今日はここまでにしましょう」

 

「わかった」

 

俺と藍子は同時にウインドウを開き、そこからデュエル画面に移動しデュエルを終了させた。

俺と藍子の間の空間には≪Draw≫と表示された。

 

「それで、なんで急にデュエルすることになったんだ?」

 

俺は双剣を鞘にしまい、ウインドウから剣をストレージにしまった。

 

「なんで、ですか・・・。そうですね、なんでと言われたら和人さんの覇気が全くなかったからですね」

 

「?」

 

「シャキッとしなさい和人!貴方がレインさんに思っていることをちゃんと自分で言いなさい!」

 

「っ!」

 

「そうでなければレインさんが可哀想ですよ」

 

「・・・・・・」

 

「フフ。お膳立てはしてあげますからそこからは和人とレインさんで解決してください」

 

そう言うと藍子はウインドウを開いてなにか操作するとウインドウを閉じた。

 

「なにしたんだ?」

 

「秘密です」

 

「ハハ・・・・・・やっぱり藍子には敵わないな」

 

「フフフ・・・・・・そんなことないですよ」

 

俺はそう言うと、背中から草地にダイブし横になる。

そうなると必然的にスカートの藍子を下から見上げることになるのだが、俺は視線を少しずらして見る。

 

「和人さん?何処を見ていたのですか?」

 

「え、いや、それは・・・・・・」

 

「レインさんには内緒にしてあげます」

 

「い、いや、だからな・・・・・・」

 

俺が藍子にそう言っていると不意に空間ウインドウが開いた。

 

「メッセージ?」

 

どうやらメッセージが届いたらしい。

 

「送り主は・・・・・・レインから!?」

 

俺はレインから送られたメッセージを展開した。

 

『今夜10時、何時もの草原で待っているよ』

 

メッセージにはそう書かれていた。

何時もの草原と言うことは、今俺と藍子がいるここのことだ。

 

「レインさんからメッセージが来た?」

 

「ああ。・・・・・・ありがとうな藍子」

 

「どういたしまして、かな?」

 

藍子はそう言うと再度ウインドウを開き何かを取り出した。

 

「これは?」

 

「ここに来る前にレインさんに渡されたものですよ。和人さんはどうせ今日攻略しないでゴロゴロしてるだろうからって」

 

「アハハハ」

 

藍子が取り出したのはカゴに入ったサンドイッチだった。

 

「それとこれは私からです」

 

藍子はさらにストレージから取り出したのを見せた。

 

「それクッキー?」

 

「ええ。昨日、木綿季と一緒に作ったんですよ」

 

藍子はそう言うと、ラッピングされた袋に入ったクッキーを渡してきた。

 

「ありがとう」

 

「ええ」

 

藍子はそう言うと立ち上った。

 

「私はこれで。後は和人さんとレインさん次第です。頑張ってください」

 

「ああ。いつもありがとうな」

 

「幼馴染ですから」

 

藍子は若干表情を落として答えた。

そう言うと藍子は俺に背を向けて立ち去った。

その藍子の背中を見ながら、俺は藍子から受け取ったクッキーを食べた。

クッキーは、サクッとしていて甘く身体に行き渡るようだ。そして、レインの作ったサンドイッチを食べ、素振りなどをして昼を過ごした。

 

 

 

 

 

 

そして――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 街外れの草原 午後10時

 

 

「――――――来たね・・・・・・・・・・キリトくん」

 

「レイン・・・・・・」

 

俺が昼間いた草原の大樹に行くと、大樹に寄り掛かって満面の星空を見上げているレインがいた。

 

「ランちゃんから聞いたんだよね?」

 

「ああ・・・・・・」

 

「キリトくん、昨日言ったことはやはり変わりないの?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「わかったよ・・・・・・」

 

レインはそう言うと大樹から離れ月明かりに照らされた。

そして、歩きながらウインドウを開いて俺に何かを送ってきた。

 

「デュエル申請・・・・・・」

 

それはデュエル申請だった。

 

「言葉じゃなくて剣で決めよう。それが手っ取り早いでしょ?」

 

俺はレインを見て、その決意の瞳を見てデュエル申請を受諾する。

俺とレインは武器を装備し抜刀する。

 

「キリトくん、私が勝ったらキリトくんと一緒に行くからね!」

 

「レイン・・・・・・どうしても闘るのか?」

 

「当然だよ!キリトくん」

 

「・・・・・・わかった。その条件承けてやる」

 

広く月明かりに照らされる遮蔽物のない草原に、俺とレインは双剣を構えて相対する。

 

「いくらキリトくんでも、一人で決着を付けに行くなんて・・・・・・そんなの私が許すと思う!?」

 

「・・・・・・・・・」

 

「キリトくん、答えて!」

 

「・・・・・・仕方無いだろ。俺は、あいつにお前を傷付けさせるわけにはいかない。それにこれは俺とあいつの因縁だ。例えあいつが本物で無かろうと俺が全ての決着をつける。それだけの理由が俺にはある」 

 

「また一人で抱え込むの!あのときと同じように!」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「わかったよ・・・キリトくん、剣で決めよう」

 

「こうなるしかないのか・・・・・・」

 

「お互い全力で、出し惜しみは無しで・・・行くよ」

 

俺とレインの間にはデュエルのカウントダウンが刻一刻とゼロに近づいている。

 

「当然だ・・・元からそのつもりだ」

 

「じゃあ・・・・・・」

 

「ああ・・・・・・・」

 

そしてカウントダウンがゼロになり俺とレインの圏内での保護が消え、デュエルが始まった。

俺とレインの初めての夫婦喧嘩が。




「みんな答えはわかったかな?それでは答えをユイ、お願い!」

「はいっ!任せてください!答えはⅢ:ランさんです」

「みんなわかりましたか?」

「いやー、さすが姉ちゃんだね」

「ええ。さすがランですね」

「はい。さすがランさんです」

「そ、そんなこと言われても・・・////」

「あ~、姉ちゃん照れてる?」

「そんなことありません!」

「ですが顔赤いですよ?」

「っ!//////」

「アハハハ。キリトとレイン、次回が楽しみだね三人とも」

「は、はいっ!そうですね」

「うん!」

「はい!」

「それでは今回はこれまで!」

「また次回よろしくね~♪」

「それではまたお会いしましょう」

「さようならですみなさん!」

「「「「また次回に!!Don't miss it.!!」」」」


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HF編 第103話〈黒と紅〉

「どうもソーナです。前回に引き続き私が司会を務めるよ♪それじゃあ今回のゲストはこちら!」

「プリヴィベート、みんな。レインだよ」

「キリトだ。よろしくな」

「はい!今回のゲストはキリトとレインです」

「はぁ、あの決闘の後だから疲れるぜ」

「それは自業自得じゃないの?」

「んまぁ、そうなんだけど」

「レインもお疲れ様。大変だったね」

「スパシーバ、ソーナさん」

「それじゃあ今回のクイズを出しますか」

「そうだね。じゃあ今回は私から出すよ?」

「よろしく~」

「うん。今回の問題はこれだよ!」


問題:『キリトがレインからもらった物理的攻撃はなに?』

Ⅰ:カール・ゴッチ式

Ⅱ:平手打ち

Ⅲ:ジャーマンスープレックス

Ⅳ:間接技

「答えは本文の最後に!」




「それじゃあウチらはお茶でも飲みながら見ようか」

「そうだな」

「うん」

「はい、キリトはコーヒーでレインは紅茶で良かったよね?」

「ああ。サンキュー、ソーナ」

「スパシーバ、ソーナさん」

「いえいえ」





 

~キリトside~

 

「はあぁぁあ!」

 

「えぇぇいっ!」

 

既に何度も撃ち合わせた俺とレインの双剣がまたしてもぶつかる。

 

「ぜりゃぁあ!」

 

「せりゃぁあ!」

 

高速の剣戟の打ち合い。

素早く振るわれる双剣がぶつかり、剣と剣がぶつかる音剣音が幾度となく、俺とレインしかいない草原に響き渡る。

 

「くっ!ここまでとはな。―――――っ!」

 

「さすがだねキリトくん。私の予想以上だよ。――――――せいっ!」

 

「もっと上げていくぞ!」

 

「こっちもそのつもりだよっ!」

 

俺とレインは思考をトップギアにまで上げ、更に剣を振るう速度を上げる。

速くなる度に風が舞い、金属音があちこちになり火花が散りわたる。

 

「ふっ!いくよ!――――――サウザンド・レイン!」

 

バク転で距離をとったレインが≪多刀流≫最上位ソードスキル、《サウザンド・レイン》を放ってきた。

レインの周囲に浮かんでいる蒼いライトエフェクトを纏った剣が俺に向かって飛んでくる。

俺は《サウザンド・レイン》が当たるギリギリのところで避け回避する。

 

「くっ!」

 

だが、いかんせん数が多く全ては避けきれず、一本だけ避けきれず俺に向かって飛んできた。

 

「ぜりゃぁあ!」

 

俺はその一本を悪足掻きとして、片手剣ソードスキル《ホリゾンタル》単発技で受けた。

剣にライトエフェクトが輝く《ホリゾンタル》が《サウザンド・レイン》の剣にぶつかった。すると《サウザンド・レイン》の剣は、甲高い剣のぶつかる音を立てて消えた。

 

「うそっ!?」

 

レインが驚きの声を上げた。だが、それは俺も同じだ。

まさか、《サウザンド・レイン》を《ホリゾンタル》で相殺できるとは思わなかったからだ。

一か八かだったがまさかの展開だ。

俺はレインが驚いているところへ接近し左の『ホワイト・ユニヴァース』を振りかぶる。

 

「くっ!」

 

当たる直前にレインの左の剣『レイン・オブ・セイント』で受け止められる。

 

「まだだっ!」

 

俺は右の剣の『ブラックローズ・ナイト』で突きを放つ。

 

「させないよっ!」

 

だがそれはレインの持つ右の剣『スカーレット・プリンセス』の腹で防がれる。

そのまま鍔迫り合いの拮抗状態が続き、同時にバックステップで距離をとる。

そして、同時に同じ構えをとる。

 

「はあぁぁあ!」

 

「やあぁぁあ!」

 

右手の剣を肩と同じ高さにしカタパルトのように正中線に構える。

俺とレインの剣には同じクリムゾンレッドのライトエフェクトが輝いて、ジェットエンジンのような轟音が鳴る。同時に放ったそれは、片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》単発重攻撃だ。

俺とレインの同時に繰り出した《ヴォーパル・ストライク》は剣の先に当たり大きな音を立て、火花が散った。

 

「くっ!うぅぅ!!」

 

「せりゃぁあ!」

 

俺とレインの《ヴォーパル・ストライク》は剣の先からずれ、互いの位置を交換して終了した。

この時点での俺とレインのHP残量は残り7割だ。

 

「さすがだレイン。俺とここまで本気で戦えるのはヒースクリフ・・・・・・いや、茅場以外だとお前だけだ」

 

「それは私もだよ。私とこう対当できるのはキリトくんだけだもん」

 

「アスナやユウキ、ランならギリギリ付いてこられるだろうな」

 

「確かにアスナちゃんたち3人ならね――――――っ!」

 

「ああ、そうだな――――――っと!」

 

俺とレインは会話をしながらまたしても剣戟の打ち合いをし、双剣を交差させ金属音と火花が散るなかで話す。

 

「ねぇキリトくん、もう一度聞かせて。何で私を置いていくの」

 

「俺は、レイン。お前が傷つけられるところが見たくない。あいつは・・・・・・PoHは絶対何かを仕掛けてくる。そんなところにお前を連れていけるはずないだろう!」

 

そう言い終わるのと同時にまた、距離をとった。

 

「それは私が頼りないってこと!?」

 

「そういう意味じゃない!」

 

「じゃあどういう意味なのよ!」

 

「・・・・・・俺はレイン、お前を!ちゃんと守れる自信がない」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「あのときみたいに・・・・・・サチやケイタがいなくなった時と同じように、レインがいなくなったらと思うと怖いんだよ!」

 

「キリトくん・・・・・・」

 

「だから俺が一人で行った方がいいんだ。フィリアを助け、PoHを殺す。例え本物じゃないといえどもな!」

 

「・・・・・・ガッカリだよキリトくん」

 

「なに?」

 

「私が好きになったキリトくんは、そんな自信がないキリトくんじゃない!何時いかなるときも自身に道溢れていて私を優しく包み込んでくれる存在!なのに、守れる自信がないから連れていかないからって、ガッカリ以前の問題だよ!そんなの、私の中で輝いているキリトくんじゃない!」

 

そう言うと否や、レインはものすごい速度で剣を振るってきた。

 

「くうっ!」

 

俺はそれをとっさの判断で受け止める。

 

「私を守ってくれるのがキリトくんなら、キリトくんを守ってくれるのは誰なの!」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

「誰なの!アスナちゃん?ユウキちゃん?ランちゃん?それともクラインくん?エギルさん?キリトくんを守ってくれるのはいったい誰なのよっ!!」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「答えてよ!キリトくん!」

 

「なっ!?」

 

俺はレインの剣の重みに背後に吹き飛ばされた。

 

「確かにアスナちゃんやユウキちゃん、ランちゃんたちを頼ってもいいよ。でも、キリトくんの隣にいるのは私なんだよ!」

 

「ぐっ!」

 

「なんで頼ってくれないの!ねえ!なんでキリトくんは私を頼ってくれないのよ!!」

 

「ぐうっ!」

 

レインの双剣は速いだけでなく、まるでレインの思いを表しているようにとてつもなく重かった。だが、その重みは、悲しみの思いを代言しているようだった。

 

「何時も何時も!サチちゃんやケイタくんが亡くなった時だって私に頼ってくれなくて、一人でイベントボスを倒して。私がその時どんな想いだったか分かる?!」

 

「っ!!」

 

「何でもかんでも一人で抱え込まないでよ!」

 

「なっ!」

 

「キリトくんの大馬鹿者ぉぉぉ!!!」

 

レインが双剣を上空に投げたのに驚いて、レインの動きに予測できなかった俺は、レインの全力の平手打ちを受け、横に大きく吹き飛ばされた。

 

「くっ・・・・・・」

 

俺は吹き飛ばされ、地面をゴロゴロと転がった。

その間にレインは上空に投げた双剣を再度握り締めていた。

 

「バカ・・・・・・バカァ・・・キリトくんのバカァ・・・・・・」

 

「レイン・・・・・・」

 

剣を持ちながら手の甲で涙を拭っているレインに俺は、剣を構えず、ただ立っているだけだった。

 

「レイン・・・・・・俺は・・・・・・・」

 

「なんでよ。なんで私を頼ってくれないの?私は守られるばかりはイヤ。私だってキリトくんを守りたいの!」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「何時も私は助けられてばかり・・・私はキリトくんの隣で支え合いたいの!だから・・・だから・・・・・・!」

 

レインの涙声に俺は、視線を下げただ聞き入った。

レインの言葉には、今まで溜め込んでいたことが入っているのだろう。

 

「レイン・・・・・・」

 

「今度は私が、キリトくんを守るの!」

 

レインはそう言うと双剣を構えを迫ってきた。

 

「これが・・・私の・・・・・・私の想い!はあぁぁああああああああああ!」

 

「っ!」

 

俺はレインの繰り出した攻撃。純白のライトエフェクトを纏わせた双剣から繰り出される、≪多刀流≫ソードスキル《ディバイン・エンプレス》15連撃を俺は双剣を駆使して、反らしたりする。

だが、14撃目で双剣が弾かれ、最後の双剣の攻撃が俺に当たった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで・・・・・・なんで避けなかったの・・・・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、それは俺に当たる直前に止まっていた。

レインが強引にソードスキルをキャンセルしたのだ。

 

「なんで?」

 

「レイン。俺は・・・・・・お前に謝らなくちゃならない。俺は誰かに助けられてばかりと言うことを・・・・・・そして、お前のことを忘れていた。ただ、お前を守りたいばかりに・・・・・・」

 

「キリトくん・・・・・・」

 

「俺はレインを見ていなかった。何時も助けられているのに」

 

「そ、そんなこと!」

 

レインが俺の言葉に反論するが、俺は首を横に振る。

 

「俺はもうレインに助けられているよ。俺はレインがいるからこそ、今ここにいるんだ。アスナでも、ユウキでもランでもない。俺にとって今必要なのはお前だ、レイン」

 

「キリトくん」

 

「それにさっきの《ディバイン・エンプレス》と平手打ちは効いたよ。お前の俺への想いと気持ちが込められていた」

 

「~~っ//////き、キリトくんのバカ!」

 

「ハハ」

 

「笑わないでよ!」

 

「クク・・・・・・。すまん。だが、レインの気持ちは剣を通じて伝わって来たよ」

 

「うぅぅ~~//////」

 

「レイン」

 

「なに?」

 

「俺を・・・・・・俺を助けてくれるか?フィリアを救出してPoHを倒す」

 

「キリトくん」

 

「そして・・・・・・俺の側で、ずっと助けてほしい」

 

「・・・・・・ん・・・・・・うん。・・・うん!もちろんだよ!私はずっとキリトくんの側で、キリトくんを助ける!だから―――」

 

レインはそこで言葉を区切り、目尻に涙を浮かべとびきりの笑顔で。

 

「―――――キリトくんも私をずっと側で助けてね」

 

「ああ。もちろんだ」

 

俺とレインは双剣を無意識に手放し、互いの身体を抱擁し顔を近づけ口と口を合わせる。

その姿を見ているものは、空に浮かんでいる星々と月のみだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、キリトさん」

 

「はい・・・・・・」

 

「何か言いたいことはありますか?」

 

「そ、その・・・・・・」

 

「はい」

 

「すみませんでした」

 

「だそうですよレインさん」

 

「うん。ありがとうランちゃん」

 

「いえ」

 

レインとの夫婦喧嘩。もといデュエルに引き分けで終わらせた(HP総量は俺の負けだった)後、いつの間にか眠ってしまった俺とレインは、翌日の朝探しに来たらしいランとユウキに連れられて、レインと共にエギルの店に帰ってきた。そして、早速俺はランからお説教を受けていたりする。

ちなみに何故お説教を受けているのかと言うと。

 

「全く、朝になっても帰ってこないから心配したんだよ」

 

「そうですよ。なのに二人とも気持ち良さそうに樹に寄りかかって寝ているんですから。少しはこちらの身にもなってください」

 

「「はい・・・・・・」」

 

と言うことだ。

 

「まあまあ、二人とも。レインちゃんとキリト君が無事で良かったじゃない」

 

「まあ、そうだけど・・・・・・」

 

「それとキリト君、レインちゃんにちゃんと謝った?」

 

「は、はい。謝りました」

 

「レインちゃん?」

 

「アハハ。うん、大丈夫だよアスナちゃん」

 

「レインちゃんが良いならいいわ」

 

「えー、それで許しちゃうのアスナ?」

 

「許しちゃうのって言われても・・・・・・」

 

「そうね。レインを泣かせたのだからそれ相応の事は必要だと思うけど?」

 

「さすがの俺も今回はキリトにじゃなくてレインさん側に回ります」

 

「アハハ・・・・・・。私も、リズさんとシノンさんに同意かな?」

 

「キリト君、覚悟決めといた方がいいよ?」

 

「ガハッ!」

 

「パパ、さすがの私も今回は無いです」

 

「グッ!」

 

「キリの字・・・・・・」

 

「な、なんだ、クライン」

 

「お前なぁ。自分の嫁泣かせるって最低なことだぞ?」

 

「グハッ!」

 

リズたちに様々言われた俺はすでに心のHPは0になっていた。

まあ、それだけのことをしたのだから当然と言えば当然なのだが。

だが、特にクラインに言われたことに傷ついた。

 

「おいキリト。今ひでぇ事思わなかったか?」

 

「お前はエスパーか!?」

 

そして何故か勘の鋭いクラインである。

 

「ま、まあ、みんな。私はキリトくんに思いっきり感情ぶつけられたし。キリトくんもキリトくんで反省してるから~、ね」

 

「「「「「「「「「甘い(よ)(です)(わ)!!」」」」」」」」」

 

「えぇ・・・・・・」

 

レインの言葉にアスナたち全員(ユイ除き)がレインにツッコンだ。しかも同時に同じ単語を言った。

結局、俺がレインの言うことをなんでも聞くと言うことで妥協がついたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、この後のことはどうするつもりなの?」

 

俺のお説教が終わり、朝食をとった俺たちはさっそくこれからについて話し合いをしていた。

 

「フィリアは俺とレインが助け出す。だが、PoHと闘うのは俺がやる。レインもそれでいいか?」

 

「うん。私はフィリアちゃんを守ってるから」

 

「頼む」

 

「キリト君とレインちゃんがそれでいいならわたしも反対はしないわ。みんなもそれでいい?」

 

アスナの問いにクラインたちは首を縦に振って肯定を示した。

 

「それじゃあ今日のこと話すわよ。まず、第89層のボス部屋が昨日見つかったわ。明日、ボス攻略を行うつもり」

 

「なら、早くともフィリアの救出は3日後だな」

 

「うん。こっちも色々準備しといた方がいいと思うし」

 

「だな」

 

「それで、みんなには明日の準備を頼むわ。そう言うわけで今日は自由ね」

 

アスナは伸びをして言った。

 

「なら、今日アイツを倒しに行くか」

 

「キリトくんアイツって、もしかしてあれ?」

 

俺の言葉にレインは分かったようだがアスナたちはわからないようで疑問符を浮かべていた。

 

「ああ。ユウキ、ラン」

 

「どうしたの?」

 

「はい?」

 

「二人とも今日パーティお願いしてもいいか?」

 

「僕はいいよ」

 

「私もいいですよ」

 

「じゃあ頼む」

 

俺はランとユウキにパーティ申請をしパーティを組んだ。

 

「キリトくん、何を倒しに行くの?」

 

「ん?ああ、前に話したと思うんだけど火山エリアのボス」

 

「はい・・・・・・?」

 

俺の言葉にアスナは呆気にとられたように返した。

 

「そう言うわけで早速行くかレイン」

 

「うん」

 

俺とレインは席を立ち、ランとユウキとともにエギルの店から出ていった。

そして。

 

 

 

 

 

『『『『『『ええぇぇぇぇぇぇええええええ!!!』』』』』』

 

 

 

 

 

俺たちの出ていった後、そんな声が響き渡った。

 

 

 

 




「みんな答えは分かったかな?答えの発表はキリトにお願いするよ」

「了解。今回の問題の答えはⅡ:平手打ち、だ」

「いやー、見事に決まったねあれは」

「ああ。デュエルだったからかなり痛かったな」

「自業自得でしょ?」

「そうだけどなぁ・・・・・・っ!?」

「キリトくん~?もう一回喰らいたいかな?」

「い、いや、結構ですレインさん、はい」

「アハハ。これは将来キリト、レインの尻に引かれるんじゃない?」

「止めてくれソーナ」

「レインも頑張ってね」

「うん。もちろんだよ」

「さて、夫婦喧嘩も終わったしこのままHF編最後までどんどん行きたいね」

「そうだな。頑張れよソーナ」

「うん。ソーナさんも気を付けてね」

「サンキュー、キリト、レイン」

「おっと、ソーナ。今日はここまでみたいだ」

「あ、ほんとだ。それじゃあ今日はここまでみたいだね」

「そうだね」

「ああ」

「それじゃあキリト、レイン。二人ともご一緒に!」

「「「また次回!!Don't miss it.!!」」」


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HF編 第104話〈火山エリアボス、ガイアルド・ザ・ヴォルケーノ〉

「こんにちは、ソーナです。今回もキリトたちと共に問題を出していくよ!」

「や、キリトだ」

「ブリヴィベート、レインだよ~」

「さて、今回は遺棄エリアの最初のボス討伐だね~」

「ああ!どうなるんだろうな」

「楽しみだね」

「そうだね。さて、今回の問題はこれです」

問題:『今回のボスの特殊属性効果は何?』

Ⅰ:氷

Ⅱ:水

Ⅲ:音

Ⅳ:炎


「答えは本文の最後に!」











「じゃあ私たちはのんびりとティータイムでもして過ごしましょうか」

「そうだな」

「さんせ~い」




 

~キリトside~

 

 

 

炎の住処

 

 

「ここにいるんですか・・・・・・」

 

「うん。でも、どんなボスなのかは知らないんだ」

 

「かなり手こずることになるだろうな」

 

「ねえ、三人ともそれよりさ」

 

アークソフィアからホロウ・エリアに来て遺棄エリアの火山エリア、そしてボス部屋前に来ている。

で、ボス部屋の前で会話しているのだが、

 

「ん?どうしたユウキ?」

 

「どうしたのユウキちゃん?」

 

「何かありましたかユウキ?」

 

「あのね、さっきから思ってたんだけど・・・・・・」

 

「「「はい」」」

 

「このエリア・・・・・・・・・・熱くない?」

 

「私も思っていたことをなんで言っちゃうんですかユウキ!」

 

「だってぇ~、熱いんだもん、ここ」

 

「あー、俺たちも始めそう思った」

 

「うん。熱さで汗が出て服が張り付いて透けちゃいそうだったもん」

 

「だな・・・」

 

俺たちは一応一休憩しながら話しているのだが。

 

「え!?透けて見えるって・・・・・・・・・っ!!/////」

 

「あ」

 

「き、キリトさんこっち見ないでください!」

 

「わ、わかった」

 

ランは今の自分の服の状況を見て、赤面しながらそう言う。

俺はランに言われた通り視線をずらした。

しばらくして、

 

「もう、いいですよ」

 

そう言われたので視線を戻した。

 

「さて、それじゃあこの先にいるであろうボスをさっさと倒しますか」

 

俺はそう言い、ボス部屋へと続く扉を開け中に入った。後ろから、レインたちが付いてくるのがわかった。

そして、ボス部屋を少し歩くと。

 

 

 

 

 'ホロウ・ミッション'

 

 場所:炎の住処

 

 クエスト名:活火山の胎動

 

 討伐ボス:ガイアルド・ザ・ヴォルケーノ

 

 

 

 

 

 

視界にそうウインドウが表示された。

そして更に少し歩くとその先の、目の前には今まで見たことないボスがいた。視界に写るボスの上に表示されている名前は――――

 

「Boss"Gaiard The Volcano"・・・・・・」

 

と表示されていた。

 

「ガイアルド・ザ・ヴォルケーノ・・・・・・」

 

「訳すと"火山の守護者"かな」

 

「デカイな、コイツ・・・・・・」

 

「うん・・・・・・」

 

「大きいですね・・・・・・。これは・・・防御力が高そうですね」

 

「だね・・・。でも素早い動きはできなさそうだよ」

 

目の前にいるボスを見て、俺たちは思ったことを言う。

 

「相手がどんな特殊能力を使ってくるかわからない。気を付けていこう」

 

「「「了解!」」」

 

俺たちは双剣と片手剣を構える。

ランのは昨日と同じ、レイン作の『クラウィス・プロミッシ』をユウキは同じくレイン作の『ウィンクルム・ファートゥム』意味は『運命の絆』だ。

ユウキの持つ『ウィンクルム・ファートゥム』は刀身の幅は、普通の剣よりやや細身で、色は黒紫。そして、黒紫色の刀身は少し透明感がある。

 

「レイン、合図したら《ザウザンド・レイン》を頼む」

 

「オッケー」

 

「行くぞ・・・・・・1・・・2・・・・・・GO!」

 

「やあぁぁああ!《サウザンド・レイン》!」

 

合図と共に俺、ユウキ、ランが飛び出し、ガイアルド・ザ・ヴォルケーノのいる広間に駆け込み、ガイアルド・ザ・ヴォルケーノを目指して走る。

そして、俺たちの後ろからレインの《サウザンド・レイン》が俺たちを追い抜き、ガイアルド・ザ・ヴォルケーノの巨体に突き刺さった。

 

「グオォォオオオオオオオ!」

 

ガイアルド・ザ・ヴォルケーノの巨体の前面に《サウザンド・レイン》の剣が幾数も突き刺さり、悲鳴を声が響き渡る。

 

「はあぁぁああ!」

 

俺は悲鳴が上がり怯んでる隙に、≪二刀流≫ソードスキル《デブス・インパクト》5連撃重攻撃技を放つ。

最後の5擊目のコンマ一秒後に、

 

「やあぁぁああ!」

 

「せえぇぇええええい!」

 

ユウキの≪紫閃剣≫ソードスキル《ブラッディー・エッジ》5連撃と、ランの≪変束剣≫ソードスキル《エルネイト》5連撃を同時に放った。

 

「グオォォオオオオオオオ!!!」

 

「さすがに固いな・・・・・・」

 

俺はガイアルド・ザ・ヴォルケーノの3段のHPバーを見る。HPバーの横には防御力低下と束縛のデバフが点滅していた。

今の多弾ソードスキルで減ったのは3段バーの一番上で8%程だった。

 

「今の攻撃でも全然減ってないよ」

 

「硬すぎます」

 

「どこかウィークポイントさえ分かれば・・・・・・」

 

俺たちは散開して攻撃しながら話す。

幸いにも、ガイアルド・ザ・ヴォルケーノはランの《エルネイト》の追加効果、束縛のデバフを受けているため数十秒は動けない。

 

「今のうちに出来るだけ減らすぞ!」

 

俺はそう叫ぶと手に握る『ブラックローズ・ナイト』と『ホワイト・ユニヴァース』を構えた。

双剣には緋色のライトエフェクトが煌めく。

 

「ぜりゃあぁぁあああ!」

 

≪二刀流≫ソードスキル《クリムゾン・スプラッシュ》8連撃重攻撃技が炸裂した。

《クリムゾン・スプラッシュ》はガイアルド・ザ・ヴォルケーノの腹に命中し、腹に深々と突き刺さった。

そして更にレイン、ユウキ、ランの3方からも。

 

「いやぁぁああああっ!!」

 

「ええぇぇええい!!」

 

「はあぁっ!!」

 

ガイアルド・ザ・ヴォルケーノの側面をレインは≪多刀流≫ソードスキル《クリア・コンパッション》16連撃、ユウキは片手剣ソードスキル《ハウリング・オクターブ》8連撃、ランは片手剣ソードスキル《デットリー・シンズ》7連撃を放つ。

 

「ガアアアアアアアアアアッ!!」

 

俺たちの技後硬直が終了するのとガイアルド・ザ・ヴォルケーノの束縛がきれるのは同時だった。

それと同時に、

 

「!!全員下がれ!」

 

俺たちの足元に突如、赤いサークルが現れたのだ。

 

「「「!!」」」

 

俺の声にレイン、ユウキ、ランは足元を見て、その場からすぐに跳び退った。

そして、俺がその場から離れたのと同時に、俺達の元いた場所を炎のサークルが現れた。

 

「これじゃ近づけない・・・・・・!?」

 

俺がそう言うの同時に今度は俺たちが跳び退って立つ場所にも赤いサークルが現れた。

 

「なっ!今度はこっちかよ!」

 

俺が回りを見ると始めの炎のサークルが弱まっていくのが見えた。

 

「レイン!ユウキ!ラン!あの炎のサークルが終わったらそこへ飛び込め!それと同時に攻撃!」

 

「「「了解!」」」

 

俺の指示が通り五秒後、目の前の炎のサークルが消えた。消えたのを確認すると、俺はすぐにガイアルド・ザ・ヴォルケーノへと肉薄する。

俺たちがガイアルド・ザ・ヴォルケーノに接近したのと同時に俺たちが跳び退った場所を、一撃目の炎のサークルより、広範囲を再び炎のサークルが現れた。

 

「ラン!もう一度バインドお願い!」

 

「わかりました!」

 

俺がランに近づきそう言うと、ガイアルド・ザ・ヴォルケーノにブルーのライトエフェクトを纏った双剣を振るう。

≪二刀流≫ソードスキル《インフェルノ・レイド》9連撃を放ちガイアルド・ザ・ヴォルケーノの動きを止める。

 

「ラン!スイッチ!」

 

「はい!」

 

9擊目でブレイクポイントを作り、ランとスイッチする。

 

「いきますっ!――――ラスティー・ネイル!!」

 

俺が避けた場所を後ろからランが蒼白のライトエフェクトを纏った片手剣、『クラウィス・プロミッシ』で攻撃する。

 

「グオォォオオオオ!!」

 

ランは『クラウィス・プロミッシ』を自在に振るい、ガイアルド・ザ・ヴォルケーノを切り裂いたりする。

それは鞭のようにしなやかに、射程を伸ばして攻撃している。

 

「今だ!レイン!ユウキ!」

 

「うん!」

 

「了解!」

 

ランの≪変束剣≫最上位ソードスキル《ラスティー・ネイル》でガイアルド・ザ・ヴォルケーノに束縛のデバフが出るのを確認すると、すぐさま多弾ソードスキルを叩き込む。

ガイアルド・ザ・ヴォルケーノの巨体に様々なライトエフェクトが散りばめられた。

 

「グオォォオオオオオオオッ!!!」

 

この時点でようやく3段HPバーの1段が半分以下になった。

 

「ようやく半分か」

 

「やっと1段目が半分以下になっただけだけど」

 

「ていうか硬すぎでしょ。重攻撃技技を何度が放ってるのに全然減らないなんて」

 

「今、束縛してるので動けません。後数十秒は大丈夫かと」

 

「わかった。にしても・・・・・・」

 

「なんですキリトさん?」

 

「いや・・・・・・なんでもない」

 

「???」

 

ランがポーションを飲みながら首をかしげるが俺は言えなかった、何故なら。

 

「(《ラスティー・ネイル》をつかっているときのランの顔が笑顔だったのは言えない。絶対に)」

 

だからだ。

 

「それでどうするのキリト」

 

「とにかく攻めるしかない。ツーマンセルで互いをフォローしながら攻める」

 

「では、私はユウキと」

 

「なら、私はキリトくんとだね」

 

「ああ、まあ、基本的にはそうなんだが、あとは、追々説明するわ」

 

「了解」

 

「さて、じゃあいきますか」

 

「うん!」

 

「はい!」

 

「ええ!」

 

ユウキとランが先攻していった。

 

「レイン、使うぞ!」

 

「え!?あれを使うの!?」

 

「ああ。ユウキとランには後で説明するしかないけど」

 

「わかったよ。じゃあ―――」

 

「ああ・・・」

 

俺とレインは手を握り同時に言い紡ぐ。

 

「「――――――共鳴(レゾナンス)!」」

 

俺とレインのステータスたATK上昇、DFF上昇、CRI上昇、SPD上昇、STR上昇、AGI上昇等が次々と表示されていった。

 

「「いくよ!」」

 

俺とレインは双剣を構えて、ガイアルド・ザ・ヴォルケーノに掛ける。

 

「ッ!?」

 

「えっ!?」

 

先行していたユウキとランを追い越して、俺とレインはガイアルド・ザ・ヴォルケーノを切り裂いていく。

 

「は、早いッ!?」

 

「なんですかあのスキル!?」

 

駆け抜けながら切り裂いていく俺達を見ながらユウキとランは驚いた表情をする。

 

「ユウキ!ラン!俺とレインがこいつを受ける!その隙にソードスキルを叩き込め!」

 

「ッ!了解!」

 

「ッ!わかりました!」

 

俺とレインが互いにタゲを取り、ユウキとランが側面から攻撃する。

 

「グオォォオオオオオオオ!」

 

「遅いッ!レイン!」

 

「うん!」

 

ガイアルド・ザ・ヴォルケーノが俺にブレスカノンを放ってくるが俺は余裕をもってかわす。

俺のいた場所を通り過ぎ、ガイアルド・ザ・ヴォルケーノの放ったブレスカノンは岩壁に当たり、岩を崩す。

その間にレインはガイアルド・ザ・ヴォルケーノの背中を掛け登り大きくジャンプする。

 

「ユウキ!ラン!下がれ!」

 

「いくよッ!やあぁぁああ!―――――サウザンド・レイン!!」

 

レインが上空から≪多刀流≫最上位ソードスキル《サウザンド・レイン》を繰り出した。

レインの放った《サウザンド・レイン》は雨のようにガイアルド・ザ・ヴォルケーノの巨体に降り注いだ。

そして、それを俺はギリギリのところで避け、接近する。

 

「はあぁっ!」

 

俺は≪二刀流≫ソードスキル《ナイトメア・レイン》16連撃を繰り出し、ガイアルド・ザ・ヴォルケーノの巨体を切りつけていく。

 

「やあぁぁああ!」

 

でもって上から《サウザンド・レイン》を放ち終えたレインが引き寄せる重力と共に片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》単発重攻撃を放ち、ガイアルド・ザ・ヴォルケーノの巨体の背中にクリムゾンレッドのライトエフェクトを煌めかせた『スカーレット・プリンセス』を貫かせた。

 

「グガアアアアアアアア!」

 

ガイアルド・ザ・ヴォルケーノのHPを見ると見る間にHPバーがどんどん削れていった。

そして、3段HPバーの1段が0になり2段目へと入った。

 

「よし、残り2段。どんどん行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一時間半後

 

 

「やっと残り一ゲージか」

 

「うん・・・・・・」

 

「にしても途中から攻撃力が強くなる上に防御力が上がるって、そんなのアリ!?」

 

「まったくですよ!」

 

俺とレインがガイアルド・ザ・ヴォルケーノを相手し、ユウキとランは手分けしてPOPしてきたモンスター数体を撃破しながら会話している。

 

「くっ!レイン、共鳴、あとどのくらいで使える?」

 

「あと180秒!」

 

「180枚か・・・・・・!レイン、足元!」

 

「っ!!」

 

突然、レインの足元に小型の赤いサークルが現れた。

レインがその場を離れると、あの大きなサークルと同じタイプの炎の円が現出する。

 

「!?今度はこっちかよ!」

 

次に現れたのは俺の足元だった。

いや、よく見てみると俺だけじゃなくて等間隔に円が現れていた。

 

「くっ!やりにくいったらありゃしないぜ」

 

俺はその場から外れ思わず悪態をついた。

ガイアルド・ザ・ヴォルケーノのHPバーが3段目に入った瞬間、他のホロウ・エリアのボスと同じくガイアルド・ザ・ヴォルケーノの巨体に紫色のライトエフェクトが現れ、巨体の至るところに紫色と金色のライトエフェクトが現出した。

それと同時に攻撃パターンが追加したのだ。

 

「くっ!」

 

俺はステップでサークル円を避け続けガイアルド・ザ・ヴォルケーノに接近する。

 

「はあぁっ!」

 

『ブラックローズ・ナイト』に紫白色のライトエフェクトを煌めかせて攻撃する。

片手剣ソードスキル《サベージ・フルクラム》3連撃重攻撃技だ。

 

「グオォォオオオオオッ!!」

 

ガイアルド・ザ・ヴォルケーノの悲鳴が鳴り響いた。

そして。

 

「キリトさん、スイッチです!」

 

「わかった!スイッチ!」

 

後ろから来たランとスイッチして後退する。

 

「やあぁぁああ!!」

 

スイッチしたランは≪変束剣≫ソードスキル《アイン・フリューゲル》9連撃重攻撃技を放った。

俺の《サベージ・フルクラム》に続いて放たれた重攻撃技により、ガイアルド・ザ・ヴォルケーノはスタンが発生した。ガイアルド・ザ・ヴォルケーノはあまりの巨体のためノックバックが発生しないため、スタンやバインドで動きを止めるしかない。だが、スタンも巨体のためかあまり発生しない。

だが、そのスタンが発生し動きを止めた。

 

「ユウキ!」

 

「うん!りゃぁぁあああ!」

 

ランの《アイン・フリューゲル》後にユウキが≪紫閃剣≫ソードスキル《シャドウ・ストライク》単発重攻撃突進技で接近して貫き、そこから続けて≪紫閃剣≫ソードスキル《インフィニット・ゼロ》10連撃を繰り出した。

 

「キリトくん、180秒たったよ!」

 

「わかった!いくぞレイン!」

 

隣にたったレインに言われ、俺とレインは手を握り同時に言い紡ぐ。

 

「「――――――共鳴!!」」

 

共鳴により二度、ステータスに様々なバフが表示された。

 

「いくよキリトくん!」

 

「ああ!」

 

俺とレインは同時にガイアルド・ザ・ヴォルケーノに突っ込んでいく。

 

「はあぁぁああ!!」

 

「やあぁぁああ!!」

 

俺は≪二刀流≫ソードスキル《ブラックハウリング・アサルト》16連撃を、レインは≪多刀流≫ソードスキル《ディバイン・エンプレス》15連撃を同時に繰り出す。

 

「続けていくよ姉ちゃん!」

 

「ええ!」

 

さらに側面からランが≪変束剣≫ソードスキル《シュヴァルツィア・ブレイド》11連撃を、ユウキが≪紫閃剣≫ソードスキル《ノクティス・ラージュ》6連撃を俺たちに数秒遅れて繰り出した。

この時点でガイアルド・ザ・ヴォルケーノのHPバーは残り5割にまで減っていた。

 

「グガアアアアアアアア!!」

 

悲鳴が上げながらブレスカノンや炎のサークルや炎の円、十字に広がる炎攻撃を連発してくるが俺たちはそれをギリギリのところで避ける。

 

「そろそろ決めるぞ!」

 

「うん!」

 

「もちろん!」

 

「はい!」

 

俺が先攻してタゲを取り切り裂いていく、そしてそこに、

 

「いきます!―――――ラスティー・ネイル!」

 

ランの《ラスティー・ネイル》がガイアルド・ザ・ヴォルケーノの巨体を攻撃する。

 

「キリトくん!」

 

「ああ!行くぞ!」

 

俺とレインは同じ蒼銀色のライトエフェクトを双剣に煌めかせて繰り出す。

 

「「はあぁっ!――――――インフィニティ・モーメント!!」」

 

≪シンクロ≫最上位ソードスキル《インフィニティ・モーメント》30連撃だ。

俺とレインは息のあった双剣捌きでガイアルド・ザ・ヴォルケーノの巨体を切り裂き攻撃していく。

これらのソードスキルでガイアルド・ザ・ヴォルケーノのHPバーは残り2.5割。

 

「僕もいくよ!」

 

ユウキはガイアルド・ザ・ヴォルケーノに肉薄し、『ウィンクルム・ファートゥム』を肩の高さに構えて紫のライトエフェクトを煌め纏わせた。

 

「やあぁぁああ!」

 

ユウキの剣はガイアルド・ザ・ヴォルケーノの腹を斜めに五点貫き、さらに逆斜めに五点貫かせ、

 

「――――――マザーズ・ロザリオ!!」

 

3擊目と8擊目で重なった中心点を思いっきり貫いた。

 

「あれがユウキの・・・・・」

 

「≪紫閃剣≫最上位ソードスキル・・・・・《マザーズ・ロザリオ》・・・・・・」

 

ユウキの放ったソードスキルは≪紫閃剣≫最上位ソードスキル《マザーズ・ロザリオ》11連撃だ。

これで残り1割。

 

「これで決める!」

 

「うん!」

 

俺とレインはユウキのソードスキルが終了と共に技後硬直が解け、双剣を構え俺は蒼白の、レインは白銀のライトエフェクトを煌めかせた。

 

「マテリアル・――――――イグニッション!!」

 

「ジ・――――――イクリプス!!」

 

レインの23連撃と俺の27連撃。

≪多刀流≫最上位ソードスキル《マテリアル・イグニッション》と俺の≪二刀流≫最上位ソードスキル《ジ・イクリプス》が次々とガイアルド・ザ・ヴォルケーノの巨体を切り裂いていく。

 

「キリトくん、とどめだよ!」

 

「ああ!」

 

一足先にソードスキルを放ち終えたレインが残り4擊の俺を見て言う。

俺は《ジ・イクリプス》の残り4擊を放つ。

蒼白のライトエフェクトを煌めかせた双剣をガイアルド・ザ・ヴォルケーノに突き刺し、

 

「はあぁぁあああああ!!!」

 

同時に斬り薙ぎ払う。

26連撃目と27連撃目の同時攻撃は、ガイアルド・ザ・ヴォルケーノのHPを余さず奪い尽くした。

 

「グオォォオオオオオオオ!!!」

 

今までの悲鳴より高い絶叫を上げながら、遺棄エリアの1つ目のエリア。火山エリアのボス、ガイアルド・ザ・ヴォルケーノはポリゴンへと爆散して消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「みんな答えはわかったかな?今回の答え発表はレイン、お願いね」

「了解!今回の答えはⅣ:炎だよ」

「いや~、今回のボス大変だったな」

「ホントだね。防御力は高いは攻撃も厄介だったし」

「見ている私もヒヤヒヤしたよ。でも、無事に倒せて良かったね」

「うん」

「ああ」

「次はどんなストーリーなんだろう。楽しみだね」

「だな。次も頼むぜソーナ」

「任せてキリト」

「あ、今回はここまでみたいだよ」

「ホントだ。じゃあ二人ともご一緒に・・・・・・」


「「「また次回!!Don't miss it.!!」」」





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HF編 第105話〈笑う棺桶(ラフィン・コフィン)

「ヤッホーみんな~、みんなのお姉さんストレアだよ~」

「こんにちはみなさん、パパとママの娘ユイです」

「今日は私とユイの二人が問題を出すよ~」

「ストレアさん、ソーナさんからメールは着ました?」

「あ、うん。さっき来たよ。二人とも頑張ってね~だって」

「わかりました。張切っちゃいます!」

「うんうん!私も頑張るよ~」

「それじゃあストレアさん、今回の問題をお願いします!」

「りょ~かいだよ!今回の問題はこれだよ!」


問題:『火山エリアのボス討伐後、キリトたちが休んだ場所はどこ?』

Ⅰ:管理区

Ⅱ:庭園エリア

Ⅲ:アークソフィアのエギルの店

Ⅳ:第76層街の外


「答えは本文の最後に~」

「答えは本文の最後です!」




 

~キリトside~

 

遺棄エリアの一つ目のエリア、火山エリアのボス、ガイアルド・ザ・ヴォルケーノを撃破した俺たちは、遺棄エリアにある、庭園エリアで休んでいた。

 

「疲れたぁ~」

 

「ふふ、お疲れさまキリトくん」

 

「おう。レインもお疲れ」

 

「いや~、かなり手強かったね~」

 

「ええ。さすがホロウ・エリアですね」

 

「ホロウ・エリアって言っても、ここは全く別だと思うけどな」

 

「アハハ。まあ、遺棄エリアだしね」

 

「そうだな」

 

「それにしてもここフィールドなのに圏内なんだね」

 

「ですね」

 

そう、この庭園エリアは街でもないのに圏内のため、モンスターが入ってきたりPOPしたり、HPが減ったりすることはない。つまり、休憩場所なのだ。

 

「だが、まあ、お陰でこうして横になれるんだから良いじゃないか」

 

「そうだよ姉ちゃん、レイン」

 

「アハハ、キリトくんとユウキちゃんはもう」

 

「私はもう見慣れましたね。昔からこうですし」

 

「そうなんだ」

 

「ええ」

 

俺とユウキを見て、ランとレインが笑いながら話した。

俺たちの周囲には辺り一面に広がる草花。噴水などがあり、欧州の豪華な屋敷の庭のような感じだ。

 

「レインとランも横になったら?気持ちいぜ」

 

「うん。姉ちゃんもレインも横になろうよ」

 

「え、え~と、じゃあ、私も・・・・・・」

 

「そ、そうですか?なら失礼して・・・・・・」

 

俺の横にレインが、ユウキの隣にランが横になり、空を見上げる。

空は端が若干、夕陽掛かって、青い空と茜色に染まる空と9:1と言う感じだ。

 

「あ~。確かに気持ちいいかも」

 

「ええ・・・。爽やかに吹く風や太陽の光が気持ちいいです」

 

まあ、それでもまだ時間は午後2時を過ぎたくらいだが。

 

「ふあ~ぁ。なんか眠くなってきた」

 

「ほんとだね~。私も眠くなってきたよ」

 

ほどよい陽光の暖かさと草花がさぁ、と揺れるなか俺たちは訪れる睡魔に抗えるはずなく、眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ~あ。よく寝た~」

 

どのくらい寝たのか空はさっきよりも少し夕陽掛かっていた。

寝っ転がりながら視界端に表示されてる時間を確認すると、午後4時近くだった。どうやら約2時間ほど寝ていたみたいだ。

 

「っと・・・・・・・ん、あ、あれ?」

 

起き上がろうとして、そこで俺は身体が動かないことに気付いた。

 

「(麻痺でもないよな?拘束状態はないし、というよりここは圏内だから状態異常はないか。それにここにプレイヤーは俺たちだけだし・・・・・・・ところでこの暖かい感じは一体・・・・・・・?)」

 

俺はそう思いながら、視線を左にずらして見た。

 

「はは・・・・・・なるほど、レインだったのか」

 

そこにはレインが俺に抱きついてやすらかな表情でぐっすりと眠っている姿があった。

 

「(ん?左がレインなら右は・・・・・・・)」

 

俺は視線を右に移した。

 

「ユウキとランか・・・・・・」

 

そこにはレインと同じように俺に抱きついて寝ている、ユウキとランの姿があった。

道理で身体が動かないわけだ。

三人にこうして抱きつかれているのだからそうなるか。

 

「ユウキとランは昔から変わらないな・・・・・・」

 

俺は幼馴染で、昔よく一緒にスグと共に寝た双子姉妹を見て言った。

俺はそれに少し苦笑が出るが、無理矢理起こすのはどうかと思い、なすままにもう一度寝ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・くん。・・・きて・・・トくん・・・・・・」

 

「ん、んん~」

 

俺は瞼を開け、軽く伸びをして前を見た。

 

「おはようキリトくん。よく眠れた?」

 

「ああ。おはようレイン。ユウキとランは?」

 

「二人ならそこにいるよ」

 

上体を起こし右を見ると、顔を赤らめているユウキとランの姿があった。

 

「レイン、どうしてユウキとランの顔が赤いんだ?」

 

「あー、え~と、まあ、色々あったんだよ」

 

「???」

 

俺はよく分からなかったがこれ以上聞かないことにした。

 

「今何時だ」

 

「午後4時半だよ」

 

どうやら30分程二度寝したみたいだ。

 

「レインは寝れたか?」

 

「うん♪」

 

「そうか」

 

空はすっかり茜色に染まり夕陽が出ていた。

 

「よっと。それじゃ帰るか」

 

「うん」

 

「はい」

 

「了解」

 

俺たちは庭園エリアをあとにし、コンソールから管理区に転移しそこからアークソフィアへと帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして2日後

 

 

第89層のボス討伐の翌日。

俺とレインは部屋で装備を整えていた。

 

 

「装備はこれでよし、と。そっちはどうだレイン」

 

「こっちも終わってるよ。武器もメンテ完了だよ」

 

「サンキュー」

 

俺はレインから2本の片手剣。『ブラックローズ・ナイト』と『ホワイト・ユニヴァース』を受け取り、背中に吊るす。

レインも自分の片手剣。『スカーレット・プリンセス』と『レイン・オブ・セイント』を腰に装備する。

 

「ポーションや結晶も揃ってるよ」

 

「オッケー。それじゃあ・・・・・・・」

 

「うん・・・・・・・」

 

「「行くか(こう)!」」

 

俺とレインは部屋をあとにしアークソフィアの転移門に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

転移門広場

 

 

ユイやアスナたちに見送られながら俺たちは転移門広場に来ていた。

 

「決着をつけに行こうかレイン」

 

「うん。そしてフィリアちゃんを助ける」

 

「ああ」

 

俺とレインは転移門に立ち。

 

「「転移、ホロウ・エリア管理区!」」

 

ホロウ・エリアへと転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホロウ・エリア 

ジリオギア大空洞エリア 情報集積遺跡内部 秘匿エリア

 

 

「この先か」

 

アークソフィアから管理区に転移した俺とレインはそこから、ジリオギア大空洞エリアの情報集積遺跡内部秘匿エリアに転移した。

 

「うん」

 

情報集積遺跡内部秘匿エリアの風景は上層と下層と同じだが色は赤だ。上層と下層は青だったが、ここは赤に染まっていた。

 

「行く先には《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》のメンバーがいるだろうな」

 

「そのときはどうする?」

 

「・・・・・・仕方ない。全員撃破する」

 

「それってHPを0にするってことだよね?」

 

「ああ・・・・・・」

 

「・・・・・・わかったよ」

 

「ごめん・・・・・・」

 

「ううん。キリトくんが気にすることじゃないよ」

 

「だが・・・・・・」

 

「前にも言ったでしょ?キリトくんの罪は私も背負うって。私とキリトくんは一心同体なんだから。そうでしょ♪」

 

「・・・・・・・・・・ああ。・・・・・・そうだな」

 

俺はレインの顔を見て新たに覇気の入った声で言う。

 

「俺も、レインの背負う罪を背負うよ。一緒にな」

 

「ありがとう、キリトくん」

 

俺とレインは軽く手を握り、笑顔を浮かべ手を離し、キッと表情を引き締めて前を見る。

 

「さて、さっきから隠れてる《笑う棺桶》のメンバー。いい加減出てきたらどうだ?」

 

俺はそう周囲に聞こえるように言う。

すると。

 

「出てきたね」

 

「ああ。数はざっと20人ってとこか?」

 

あちこちから、《笑う棺桶》のメンバーがヘラヘラと笑い声をあげて出てきた。

 

「さてと。手っ取り早く済ませるか」

 

「そうだねキリトくん」

 

俺とレインは同時に相剣の柄を握り抜き放つ。

そして。

 

「最初っから使うとするか。レイン!」

 

「うん!」

 

「「―――共鳴(レゾナンス)発動!」」

 

≪シンクロ≫スキルの《共鳴》を発動させた。

 

「「行くぞ(よ)!」」

 

その声と同時に《笑う棺桶》のメンバーがそれぞれ獲物を構えて飛び掛かってきた。それを、俺は近くにいた《笑う棺桶》のメンバーの一人を斬った。

 

『『『『!!?』』』』

 

《笑う棺桶》のメンバーは斬られたメンバーを見て、驚きの声をあげた。

そのとき俺は、幾ら本当のプレイヤーではないとは言え、人を斬るのに俺は罪悪感が生まれた。

だが、そんなことを思ってる暇はない!

 

「掛かってきな。俺たちがお前たちを―――」

 

「掛かってきなさい。私たちがあなたたちを―――」

 

 

 

 

「「―――一人残らず討伐してやる(あげる)!!」」

 

 

 

 

「ハアァァアアアアア!!」

 

「ヤアァァアアアアア!!」

 

俺とレインはその場にいる《笑う棺桶》のメンバーに向かって駆け、手に握る双剣を振るった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

細菌の回廊

 

 

 

道中俺たちに向かってくる《笑う棺桶》のメンバーを戦闘不能にさせ、俺とレインは秘匿エリアの≪細菌の回廊≫にいた。

しばらく進んで大きな広間に出た、そしてその目の前に。

 

「やっぱりお前たちもいたか」

 

「なんとなく予想はしていたけど、本当にいたんだ」

 

 

「ここから、先、には、行かせ、ない、《黒の、剣士》、キリト、《紅の、剣舞士》、レイン」

 

「ザザの言う通りだぜぇ~。ここで、俺らがお前たちを殺してやるよ~。ウヒャッヒャッヒャッ!」

 

 

「―――赤目のザザ、ジョニー・ブラック」

 

目の前に立ち塞がるのは《笑う棺桶》の幹部、赤目のザザとジョニー・ブラックだった。

アインクラッドでは二人は第一層の黒鉄宮の監獄に閉じ込められてる。だが、ホロウ・エリアではいると予想していた。

そして予想は当たり、目の前に立ち塞がった。

 

「ジョニー、キサマは、紅を、殺れ。俺は、黒の剣士、を殺る」

 

「わぁってるぜザザ。元からそのつもりだぜ。紅は俺の獲物だ、ヒャッヒャッヒャッ」

 

俺たちの耳にはザザとジョニー・ブラックがそう言うのが聞こえた。

 

「レイン、ザザは俺が相手する。ジョニー・ブラックを頼めるか」

 

「任せてキリトくん」

 

「相談は終わりかぁ~?なら、始めるぜ。partyの始まりだぜ~」

 

「黒の、剣士、絶対、殺す」

 

「殺れるものならやってみな、赤目のザザ!」

 

「キミの相手は私だよ、ジョニー・ブラック!」

 

そして、黒(俺)と赤(ザザ)、紅(レイン)と黒(ジョニー・ブラック)の戦闘が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザザとジョニー・ブラックとの戦闘が始まってすでに数分が経った。

 

 

「はあぁあっ!」

 

「ぐっ・・・・・・!」

 

俺の双剣をザザは棘剣(エストック)でギリギリ防ぎかわしていくが、徐々にその反応が遅くなっていっていた。

 

「ぜあっ!」

 

「ぐうぅ・・・・・・!」

 

俺の右斜め斬りに、ザザは後退した。

 

「なぜ・・・・・だ。なぜ、俺の、攻撃が、通じ、ない・・・・・・!!」

 

「そんなの決まってるだろ。・・・・・・お前の剣には何も籠ってない。決意や確固たる意思・・・・・・。ただ、人を殺しているお前たちに俺たちは負けない!」

 

「うる、さい・・・・・・っ!!」

 

ザザは棘剣で高速の連撃を放ってきた。

ザザの持つ棘剣は細剣の派生だ。つまりそれは細剣のソードスキルが使えると言うこと。

細剣ソードスキル《スター・スプラッシュ》8連撃だ。

だが、それのソードスキルは《閃光》のアスナの剣速に比べると遅い。

 

「遅いっ!」

 

俺はそれを弾き、いなして、ザザに向かって駆け振り抜き様に一太刀浴びせる。

 

「グウゥゥ・・・・・!おの、れ、黒の、剣士・・・・・・!!」

 

「赤目のザザ。お前はその剣に何を込める」

 

俺は立ち位地を交替してザザに問いた。

 

「しる、か。剣は、剣。ただ、人を殺す、ための、道具に、過ぎない・・・・・・!」

 

「・・・・・・そうか。なら・・・・・・」

 

「ッ!?」

 

俺はザザに近づき手に持つ棘剣を狙って剣を振るった。

 

「グッ・・・・・・!」

 

右手の剣と棘剣がぶつかり火花が散った。

 

「ぜあっ!」

 

「グフッ・・・・・・!」

 

「りゃあああ!」

 

「ガハッ・・・・・・!」

 

左手で体術スキル《閃打》を放ち、ザザの身体がくの字に曲がり、そこから一回転して右の剣を真一文字に振るう。

 

「ごの、やろ・・・・・・!」

 

ザザはそこからバックステップで距離を離れ回復ポーションを使いHPを回復させた。

現にザザは何度もポーションや結晶アイテムを使ってるが、俺は全く使ってない。

 

「キリト・・・・・キサマだけ、は、俺が・・・・・殺す!」

 

「殺れるもんならやってみな!返り討ちにしてやるよ!」

 

「くらえ・・・・・!」

 

ザザは細剣ソードスキル《シューティングスター》単発突進技を放ってきた。

 

「ふっ!」

 

俺はそれを剣の腹を使い、軌道をずらす。

 

「・・・・・・ッ!」

 

ソードスキル終了後、ザザは投擲ピックを俺に投げてくる。

俺はそれを、全て叩き落とし片手剣ソードスキル《ソニック・リープ》単発突進技で迫る。

 

「ハァアッ!」

 

「シッ・・・・・・!」

 

ザザは《ソニック・リープ》を受け止めるが、体勢を崩す。

 

「ゼリャアアアアア!」

 

《ソニック・リープ》の技後硬直は短い。技後硬直終了後、俺は両の剣を交互に振るい、ザザを斬り裂いてく。

 

「グッ・・・・・・!この・・・・・・!」

 

ザザは棘剣で迫りくる剣を防ごうとするが遅い。

 

「グッ・・・・・・!」

 

徐々に剣が抜け、俺の剣はザザの棘剣を捉え、棘剣を粉々に破壊した。

 

「な、なん、だと・・・・・!?」

 

「これで終わりだザザ!ハアァァアアアアア!」

 

棘剣が破壊されたことに動揺するザザを前に、俺は双剣を構えると、双剣は青白いライトエフェクトを纏わせた。

 

「―――スターバースト・―――ストリーム!!」

 

俺は≪二刀流≫上位ソードスキル《スターバースト・ストリーム》16連撃を覇気の入った声とともに繰り出す。

 

「ば、バカ、な・・・・・・。この、俺が、殺られる・・・・・・だと!?」

 

「ゼリャアアアアアッ!!」

 

俺の16連撃目の左突きはザザの心臓の部分に突き刺さった。

 

「・・・・・・っ!ちくしょお"お"お"お"・・・・・・」

 

ザザは断末魔の声を上げ、ポリゴンの欠片となって消えた。

 

「終ったか・・・・・・・」

 

ポリゴンの欠片となり、消えたザザの場所を見てそう呟いた。

 

「レインの方は・・・・・・」

 

 

~キリトside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~レインside~

 

「ヒャッハー!」

 

「せいッ!」

 

ジョニー・ブラックの持つ毒剣。短剣を私は双剣でいなして、弾いたりして避ける。

 

「さっさっと死ねよ、紅~」

 

「そうはいかないよ!」

 

ジョニー・ブラックは甲高い声で話しかけてくる。だけど正直、あまり聞きたくない。

 

「やあぁあッ!」

 

「ハッ!人を殺したことないヤツが俺を殺せると思ってるのかぁ~?」

 

「ええぇいッ!」

 

「甘ぇんだよ、アマぁあ。人を殺す覚悟すらねぇアマが――――」

 

「覚悟ならもうとっくのとうに出来てるよ!」

 

「あぁん?」

 

私はジョニー・ブラックの持つ短剣と片手剣を交差させていい放つ。

覚悟なんてとっくのとうに・・・・・。キリトくんが自分を責めて・・・サチちゃんたちが亡くなったときから出来てる!

 

「私の覚悟は昔から・・・・・・キリトくんと一緒になったときから出来てる!だから私は・・・・・・」

 

私は鍔迫り合いから後退し、右に装備している紅の剣。『スカーレット・プリンセス』の切っ先をジョニー・ブラックに向けて言う。

 

「貴方を倒すよ!」

 

そう言い放つや否や私は全速力で、ジョニー・ブラックに剣を振るった。

 

「何をごちゃごちゃと抜かしてんだよこのアマァァァ!!」

 

「遅いよ!」

 

ジョニー・ブラックの攻撃が当たる直前、私は左手に装備する『レイン・オブ・セイント』で軌道をずらし、『スカーレット・プリンセス』で斬り払う。

 

「ガアッ!クソがぁぁぁぁ!!」

 

「続けていくよ!」

 

「なっ、なにぃ!?」

 

ジョニー・ブラックが短剣を振るった場所に私はもういない。いるのはジョニー・ブラックの背後だ。

一瞬で三撃浴びせてジョニー・ブラックの背後に移動したのだ。

 

「キリトくんの罪は私の罪でもあるの!ただ人を殺したいだけの貴方たちと一緒にしないで!」

 

「このアマァァァァ!!ぜってぇ殺してやるよ!」

 

ジョニー・ブラックは甲高い声でいい放ち短剣ソードスキル《シャドウ・ステッチ》7連撃を放つ。

 

「どこを狙ってるの?私はこっちだよ!」

 

「クソがぁぁぁ!殺す!殺してやるよこのクソアマァァァァ!」

 

「ふっ!今度はこっちから行くよ!」

 

私は双剣を振るい≪多刀流≫ソードスキル《ウインド・ストライク》2連撃突進技を放ちジョニー・ブラックを攻撃する。

 

「やあぁああっ!」

 

そしてそこから片手剣ソードスキル《バーチカル・スクエア》4連撃をジョニー・ブラックの胴体に喰らわせる。

 

「ガアッ!なめんじゃねぇぇええ!!」

 

ジョニー・ブラックは《バーチカル・スクエア》の4撃目で背後に吹き飛ばされるが、地面を転がりそこから短剣ソードスキル《ラピッド・バイト》単発突進技を放ってきた。

 

「せぇええいッ!」

 

私はそれを片手剣ソードスキル《スラント》単発技で受け止める。

するとそこへ。

 

 

 

 

『これで終わりだザザ!ハアァァアアアアア!』

 

 

少し離れたところからキリトくんの声が聞こえてきた。

そして。

 

 

『―――スターバースト・―――ストリーム!!』

 

 

キリトくんの≪二刀流≫ソードスキル《スターバースト・ストリーム》16連撃がザザに命中し

 

 

『・・・・・・っ!ちくしょお"お"お"お"・・・・・・』

 

 

ザザは断末魔の声を上げてポリゴンの欠片となって消えていった。

 

 

 

「なっ!?ザザが殺られただと!?」

 

「いま!」

 

「ッ!?グウゥゥッ!」

 

私は相方のザザが殺られたことに動揺したジョニー・ブラックに近づいた。

 

「ヤアァァアアアアアッ!!」

 

私の左右の双剣に純白のライトエフェクトが煌めいた。

 

「―――ディバイン・―――エンプレス!!」

 

そして≪多刀流≫上位ソードスキル《ディバイン・エンプレス》15連撃を繰り出す。

 

「このアマァァァァ!!調子に・・・のるなぁあああ!!」

 

ジョニー・ブラックは短剣で《ディバイン・エンプレス》を防ごうとするが、

 

「テリャアアアアアア!」

 

双剣はジョニー・ブラックの身体を斬り裂いていき、

 

「ッ!!?」

 

「ハッアアアっ!」

 

最後の15連撃目、中心点からの斬り下ろしで短剣とジョニー・ブラックの身体が左右に分かれた。

 

「この・・・人殺しの・・・アマが・・・・・・」

 

ジョニー・ブラックはそう最後に言うと、短剣と共にポリゴンの欠片となって消えていった。

 

「終わったよ・・・キリトくん」

 

私は自分の手で人を殺したことに震えながらも、両の剣を腰の鞘にしまい、キリトくんの方を向いた。

 

「お疲れさまレイン」

 

 

~レインside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~キリトside~

 

 

「終ったよ・・・キリトくん」

 

剣を鞘にしまい、俺の方を向いたレインに俺は一言、

 

「お疲れさまレイン」

 

そう言った。

 

「うん・・・・・・」

 

「レイン・・・・・・」

 

「あはは、行こキリトくん。フィリアちゃんが待ってるよ」

 

「レイン・・・!」

 

「なに、キリ・・・・・・!?」

 

俺は先に行くレインを呼び止め、抱き締めた。

 

「き、キリトくん!?」

 

「我慢しないでいいから。俺を頼ってくれレイン」

 

「うん・・・・・・わかったよ、キリトくん。・・・・・・・・・・もう少しだけこうしていてくれる?」

 

「ああ・・・もちろんだよ」

 

 

それから約数分俺はレインを抱き締め続けていた。

 

「ありがとうキリトくん。もう大丈夫だよ」

 

「ああ」

 

「それじゃ先に進もう」

 

「そうだな」

 

俺とレインはその広間をあとにし、フィリアとPoHのいるであろう場所を探しに行った。

 

 

 

 

 

 




「みんなお待たせ~答えは分かったかな?それじゃあユイちゃん、お願いね♪」

「はい!今回の問題の答えはⅡ:庭園エリアです」

「いや~、わたしも行ってみたいな~、庭園エリア」

「私も行きたいです♪今度パパとママにお願いしてみようと思います!」

「いいね~。ならわたしも~」

「はい!ストレアさんも一緒に行きましょう!」

「うん♪それじゃあ今回はここまで」

「みなさん、また次回でお会いしましょう」


「「また次回!!Don't miss it.!!」」



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HF編 第106話〈PoH〉

「こんにちはフィリアです。今回はわたしが司会を務めさせていただきます。それでは今回のゲストさんどうぞ!」

「ったく、なんで俺様が呼ばれるんだよ」

「文句を言うな。そもそもここに呼ばれること事態お前には無いんだから言いだろ別に」

「っち!」

「今回のゲストは殺人ギルド《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》のリーダー、PoHとキリトです」

「よっ、みんな。今回はPoHの武器は取り上げてるからそう身構えなくて大丈夫だぜ」

「ソーナからのメッセージによると、敵だが今回の話には必要な人だから呼びました。もしなにかしても私が仕掛けた装置で拘束されるので安心してください。だそうです」

「へぇ、さすがソーナだな」

「んなこといいからさっさと問題とやらを出したらどうだぁ?」

「わかってるって、フィリア」

「うん。今回の問題はこちら」


問題『PoHの主武器である短剣の名前はなに?』

Ⅰ:友切包丁(メイト・チョッパー)

Ⅱ:イーボンダガー

Ⅲ:ソードブレイカー・リノベイト

Ⅳ:シルヴァリオ・エッジ


「正解は本文の最後に!」




 

~フィリアside~

 

 

「・・・・・・」

 

わたしがここに連れてこられから閉じ込められてまで数日が過ぎた。そして今、目の前にそれを指示した張本人がいた。

 

 

「Year!ご苦労だったなぁ、フィリア」

 

「・・・・・・キリトとレインはすぐ助け出すから。あんたが言っていた、すべての事っていうのを、さっさと終わらせなさいよ。これで用はすんだでしょ。もう、わたしたちの前に二度と現れないでちょうだい」

 

「ああ、お前ぇは十分に役割を果たしてくれた」

 

PoHはそう言うと似たみ笑いを浮かべた。

 

「きっと今頃、あの野郎たちもくたばってることだろうからな」

 

「なにいってるの!?」

 

「どうしたんだよぉ? まるでSurpriseなプレゼントもらったような顔して」

 

「話が・・・・・・違う!キリトとレインは、別に死ぬ訳じゃないって!」

 

「あぁ?俺ぁそんなこと言ったけなあ。あ~~~悪い悪い。あのトラップに何人も落としたけどよぉ~、誰ひとり戻ってこなかった事伝え忘れたわ」

 

「この嘘つき野郎!」

 

「だからよぉ~。悪いと思って今ちゃんと伝えたじゃね~か。・・・・・・いいねぇいいねぇいいよ!その泣きそうな顔、最高だぜぇ」

 

「・・・・・・キリト・・・レイン・・・二人とも今行くから!!」

 

わたしはすぐさま扉に向かう。

だが、その前にPoHが立ちはだかった。

 

「あ~~~~~~~~。ちょっと待てって、焦るなよ。どうせ《黒の剣士》様と《紅の剣舞士》様はお強いからねぇ~。大丈夫なんだろ?だから、最高ついでにもうひとつ聞いてけよ」

 

「クッ・・・・・・・・・・」

 

「お前ぇがいてくれたおかげで、邪魔するやつがいなくなって助かったぜぇ~。おかげで、最高のPartyがずいぶんと早く開けるようになったからな」

 

「あんたの目的って・・・なに?」

 

「SAOをクリアされたら《ホロウ》は消える。もうテストは必要ない。でもでもでも~~。お前ぇのおかげで、永遠に殺しを楽しめるようになったんだよなぁ。感謝してるぜぇ」

 

「永遠に・・・・・・殺しを楽しむ?言ってる意味が分からない!」

 

「全部お前ぇと俺で選んだんだ。あのキリト君とレインちゃんを罠にはめて殺したのも、人殺しを永遠に楽しめる世界にするのも!全部!全部!ぜぇぇぇぇんぶ。俺と!・・・・・・お前ぇで選んで決めたんだよ」

 

「違う!違う違う違う違う・・・・・・わたしは、そんな・・・・・・」

 

「歓迎するぜ。ラフィン・コフィンはお前ぇのような性根の腐った腐った・・・・・・。殺人者をよ。さぁ!オレンジ同士、仲良く人殺し続けようじゃねぇか!!」

 

「お前とは違う!・・・・・・違うよ・・・。わたしは・・・・・・わたしは・・・・・・」

 

「あぁ?ど~~~~~~~した?殺すの楽しくないのか?何で楽しそうじゃないんだよ。・・・はぁ~~~~~~~~~~」

 

わたしは地面に膝をつき、手を立てて項垂れて言った。

 

「そんなこと・・・・・・してないよ・・・・・・」

 

「・・・・・・殺すかぁ・・・・・・」

 

PoHはそう言うと手を床についてうなだれているわたしを後ろ回し蹴りで吹き飛ばした。

 

「うっ・・・・・・」

 

「おお、わりぃな・・・・・・思わず蹴っちまったよ。痛かったか?そんなわけないよな、ここはSAOの中だもんなぁ」

 

PoHはそう言いながらコツコツと足音を鳴らして近づいてくる。

 

「ただ・・・・・・二人といたいだけなのに・・・・・・」

 

だがわたしはPoHの言葉など耳に入らず目から涙を溜め、ただ呆然と言う。

 

「よくねぇよ・・・・・・そんなのよくねぇ。てめぇで始めたことを途中で放り出すなんて、自分はもう関係ぇねぇって言うの一番よくねぇ。そういうのよくねぇって親や学校で習ったよな?習わなかったか?・・・・・習ったよな!」

 

「うっ・・・・・・」

 

わたしは再びお腹に蹴りをくらい仰向けに倒れた

 

「・・・・・・ごめん、キリト・・・レイン・・・・・・」

 

「あぁ~~~~あ。つまらねぇなお前ぇ。もっと女の子らしく可愛く泣きわめくとかリアクションを期待したのになぁ、残念。お前ぇ使えねぇから、もういいわぁ・・・・・」

 

PoHはそう言うと左手でわたしの胸元積み上げ、右手を後ろに回すと、中華包丁に似た短剣。『友切包丁(メイトチョッパー)』を取り、わたしの首に当て、斬首のように少しずつ入れてきた。

 

「・・・・・・・ぁぁ・・・・・」

 

わたしは目尻に溜まった涙を落とした。

 

「(ごめんね・・・キリト、レイン・・・・・・)」

 

わたしは迫り来る、自分の首が落ちる時間にキリトとレインに言葉に出さずに謝る。

 

 

 

 

 

 

「ハアアァァッ!!」

 

 

 

 

「フィリアちゃん!」

 

 

 

 

覇気の入った男の声と、わたしを呼ぶ女の子の声が聞こえた。それと同時に自分の体が床に倒れるのを感じた。

だが、その前に。

 

「あっ・・・・・」

 

「大丈夫、フィリアちゃん」

 

わたしは背中から支えられた。

後ろを見るとそこにはメイド服に似たような紅のコートと腰に二振りの双剣を装備したレインがいた。

そして、目の前には黒いコートと両手に黒と白の双剣を携えたキリトがいた。

 

「キ・・・リト・・・・・・レイ・・・ン・・・・・・」

 

「ったく。ずいぶん探したぞ・・・フィリア」

 

 

~フィリアside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~キリトside~

 

 

 

「ハアアァァッ!!」

 

 

 

 

「フィリアちゃん!」

 

 

 

 

フィリアの声がした扉の中に入ると、PoHとフィリアの姿があった。

PoHがフィリアの首に『友切包丁』を当て斬首しているのを見た俺は構えていた右手の黒の剣、『ブラックローズ・ナイト』を構え、フィリアを掴み上げていたPoHの左手首を斬る。

 

 

「あっ・・・・・」

 

「大丈夫、フィリアちゃん」

 

 

倒れたフィリアをレインに任せ、俺はフィリアの前に立ちPoHに双剣を構える。

 

 

「キ・・・リト・・・・・・レイ・・・ン・・・・・・」

 

「ったく。ずいぶん探したぞ・・・フィリア」

 

 

俺はフィリアに顔を振り向かせてそう言った。

そしてPoHを警戒して見る。

 

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・くくっ。やっぱりお前たちはむかつく野郎だなぁ~オイ!」

 

「PoH・・・・・・。お前は相変わらずの外道だな」

 

「ほんとだね」

 

「キリト・・・・・・レイン・・・・・・どうして・・・・・・」

 

「言っただろう?俺たちが力になるって」

 

「私たちはフィリアちゃんを助けるって言ったでしょ?」

 

「キリト・・・・・・レイン・・・・・・でも、わたしは・・・・・・二人を裏切って・・・・・・殺そうとした」

 

「俺とレインはこうして生きている。それに、フィリアが苦しんでいる理由もわかった」

 

「キリト・・・・・・レイン・・・・・キリト!レイン!ごめんなさい・・・・・・ごめんなさい・・・・・・」

 

「うん、もういいから」

 

「もう、大丈夫だよフィリアちゃん」

 

泣き出したフィリアをレインは優しく抱きしめ、背中を優しくポンポンと撫でた。

 

「美しいことだなぁ・・・・・・。あ~~~~~~吐き気がする。もうすぐ死んじまうとは、とてもとても思えない」

 

そこへ場違いなほど不愉快な声が入ってきた。

 

「どういうことだよ、PoH」

 

「ちなみにここに来るまでに向かってきた人たちは全員倒したからね」

 

俺とレインは視線をPoHに向け訪ねる。

 

「ほぉ、ってことは人殺しをしたってことかぁ・・・・・・。いいねぇいいねぇ!《黒の剣士》だけじゃなく《紅の剣舞士》もかよ!」

 

「だからなに?」

 

「なぁにお前ぇたちは俺らと変わんねぇってことだよ」

 

「ほざくなPoH。人殺しを楽しむお前らと俺たちを一緒にするな。それにどういう意味だ、もうすぐ死んじまうとは、とは」

 

「もう間に合わねぇよ。もうすぐPartyが始まるんだぜぇ」

 

「もったいぶらずに早く言えよ・・・・・・。誰かに聞いてもらいたいんだろ?」

 

「まあな。やっぱPartyにはお客様がいないと、つまんねぇだろ?」

 

PoHは当然のように言い、話した。

 

「俺は・・・・・・天啓を受けたんだよぉ・・・・・・そんときビビッときたんだ。な~~~~~~んもなく殺してた《ホロウ》の俺様の心にビビッとな。・・・・・・それからは、そりゃ~そりゃ~、楽しかったぜぇ・・・・・・。あの世界が歪んだ瞬間・・・・・・あの時、わかったんだよ。俺が殺したいのは人間だってなぁ!!・・・・・・人を殺すのって快感だよなぁ。《ホロウ》だって死ぬ間際はちゃんとイイ表情するんだぜぇ。しかもよ、あいつらを狩りまくってたらSurpriseなプレゼントがきたんだよぉ」

 

PoHの見せた右手の甲を見て俺は予想通りだと自問した。

 

「(やはり・・・・・・、俺とレインと同じ紋章。高位者テストプレイヤー権限か・・・・・・)」

 

PoHの右手の甲には俺やレインと同じ、金色に浮かび上がる高位者テストプレイヤーの紋章が出ていた。

 

「でだ、管理区にあったコンソールを調べてたらよぉ、この世界がなんなのか知っちまったわけ。ついでにそこの、フィリアちゃんのこともなぁ~。まぁ~俺が誰で《ホロウ》がどうだとか、正直誰かを殺せれば、どうでもよかったんだけどよぉ。お前たちが来やがった」

 

「悪かったな」

 

「ごめんなさいね」

 

「ゲームクリアなんかしたら俺が消えちまうじゃねえかぁ?だからさぁ・・・・・・永遠の楽園を作ることにしたんだよぉ。この権限を使ってよぉ《ホロウ・データ》でお前らの世界をアップデートしちまえばいいってなぁ!」

 

「キリト・・・・・・あいつ・・・・・・」

 

「キリトくん・・・・・・」

 

「《ホロウ》だけの世界になれば俺は永遠に人殺しを楽しめるじゃねぇかぁ!最高にCoolじゃねぇ?」

 

「・・・・・・そんな事したらお前・・・・・・、どうなるのかわかってんのか?」

 

「そんな事したらアインクラッドがどうなるかわかってるの?」

 

俺とレインはPoHの発言に睨み付けるように視線を鋭くしてそう言う。

 

「わかってねぇなぁ~。本当の俺って、俺のことだろぉ。なんでアインクラッドの俺を生かしてこの俺が消えなきゃいけねぇんだよ。・・・・・・そうだろ?」

 

「・・・・・・アインクラッドのお前も同じこと言うんだろうな」

 

「・・・・・・やっぱりさぁ、重要なことは自分でやるもんだよなぁ、うん。俺がちゃんと殺さないとダメだったよなぁ~。だならさぁ・・・・・・。楽しい叫び声を聞かせてくれよ!《紅の剣舞士》様と《黒の剣士》様よぉ!」

 

「悪いんだけどあなたの相手は私じゃないよ・・・・・・」

 

PoHの声にレインがそう答え、俺がてに携える双剣を鳴らして言う。

 

「・・・・・・お前を楽しませる気はさらさらないが、俺はフィリアを利用した、そしてレインを危険にさらしたPoH・・・・・・お前を・・・・・・」

 

そして、レインの作成した両手の白と黒の双剣。『ブラックローズ・ナイト』と『ホワイト・ユニヴァース』を構え。

 

「・・・・・・・絶対に許さない!」

 

右手の『ブラックローズ・ナイト』の切っ先をPoHに突き付け殺気と怒気を含めて言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「みんな答えは分かったかな?今回の問題の答えはPoHにお願いするよ」

「っち、仕方ねぇ。今回の問題の答えの、俺の主武器の短剣は、Ⅰ:友切包丁(メイト・チョッパー)だ」

「PoHの持つ友切包丁は俺のエリュシデータと同じ魔剣クラスの武器だ」

「へぇ、魔剣って他の武器とは違うのキリト?」

「ん?ああ、魔剣クラスの武器はPCメイドでは手に入らないんだ。入手できるのはモンスタードロップか条件進化だな。俺のエリュシデータは第50層ボスモンスターのラストアタックボーナスだ」

「なるほど~」

「俺様のは条件進化だ。友切包丁はプレイヤーを斬れば斬るほどスペックが低くなる短剣からなった、人を斬る、殺すための魔剣だ」

「んなこといわなくても言いだろが」

「あぁ?別に良いだろうが、別にここでの会話が本編とやらに影響する訳じゃねぇんだからなぁ」

「そりゃそうだが」

「やれやれ。それでは時間になりましたので今回はこれで」

「あぁ?もうそんな時間かよ」

「らしいな」

「では、みなさんまた次回お会いしましょう」


「「また次回!!Don't miss it.!!」」

「くくっ!Don't miss it.!!」





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HF編 第107話〈黒の剣士VS凶気の殺人者〉

「どうも、フィリアです。前回に引き続き今回もわたしが司会を勤めさせていただきます」

「プリヴィベートみんな、レインだよ。今回はフィリアちゃんのサポートとして司会を勤めるよ」

「そして、ゲストも前回に引き続きこの二人です!」

「よっ!みんなキリトだ」

「クック、よぉPoHだ。挨拶しなくてもわかるよなぁ」

「あのなぁPoH。せめてここでくらい挨拶くらいしっかりやれ」

「チッ。前回に引き続き呼ばれたゲストのPoHだ、よろしく」

「アハハ」

「仲がいいのか悪いのか、分からないね・・・・・・」

「だね、レイン」

「おいレイン、フィリア。俺は別にこいつと仲良くないからな」

「ハッ、そんなのこっちから願い下げだな。真っ黒装備のヤツと仲よくするきなんてさらさら俺様にはねぇからな」

「ハアッ!それを言うならPoH、お前のそのレインコートみたいな服装の方がおかしいからな」

「んだと?」

「やるか?」

「ああ、もう!こんなときくらいケンカしないでよ!」

「アハハ・・・・・それでは今回の問題です、どうぞ!」


問題『今回、進化したスキルはなに?』


Ⅰ:二刀流

Ⅱ:片手剣

Ⅲ:多刀流

Ⅳ:シンクロ


「答えは本文の最後に!」









「まずお前ぇ友達いねぇだろ」

「ぐっ!それを言うならお前はどうなんだよ!」

「別に言う必要ねぇだろうが」

「ああ、もう!いい加減にしてよ二人とも!」

「まだしているの・・・・・・」

「フィリアちゃんこの二人止めるの手伝って~」

「アハハ・・・・・・」






 

~キリトside~

 

「・・・・・・お前を楽しませる気はさらさらないが、俺はフィリアを利用した、そしてレインを危険にさらしたPoH・・・・・・お前を・・・・・・」

 

そして、レインの作成した両手の白と黒の双剣。『ブラックローズ・ナイト』と『ホワイト・ユニヴァース』を構え。

 

「・・・・・・・絶対に許さない!」

 

右手の『ブラックローズ・ナイト』の切っ先をPoHに突き付け殺気と怒気を含めて言い放った。

 

 

「ハアアァァァァァァッ!」

 

 

「ハッ!」

 

 

 

PoHは斬り落とした右手に『友切包丁(メイトチョッパー)』を構え迫ってきた。

対して俺も右手の片手剣、『ブラックローズ・ナイト』でPoHに迫る。

俺とPoHがぶつかり、金属音が鳴る。

 

「イァッ!」

 

「ヒャッハッー!」

 

そこからは剣撃の応酬の始まりだ。

右袈裟斬り、左突きからの左斬り上げ。右斬り下ろしからの斬り上げ。左袈裟斬りからの右突き。

俺の攻撃をPoHは『友切包丁』の柄や刀身を使って防ぎ、体を捩ったりして避ける。

PoHはその合間を縫って、的確に俺に『友切包丁』を斬り付けてくる。そしてそれを俺は剣で弾き、反らしたりして防ぐ。

 

「そんなんでよくビーターなんて言えたもんだな」

 

「ハッ!相変わらず口が減らないなPoH」

 

俺とPoHは同時にバックステップで距離を保つ。

 

「さあ、始めようぜ~キリト。俺とお前の殺し合いをよぉ~!イッツ・ショー・ターイム!」

 

PoHは楽しそうに歓喜の。いや、狂気の笑みを浮かべてお決まりの口セリフを言う。

 

「俺はお前と殺し合いをするつもりはない」

 

「あぁん?」

 

「ただ、お前の行動を止めるだけだ!」

 

俺はそういうのと同時に片手剣ソードスキル《ソニックリープ》単発突進技を発動させる。

 

「イヤアッ!」

 

対するPoHも短剣ソードスキル《クロス・エッジ》2連撃で《ソニックリープ》の威力を相殺して受け止める。

 

「いいねぇいいねぇ!もっとだ!もっと楽しもうぜ~!」

 

「ハアッ!」

 

再び双剣を振るいPoHを攻撃する。

 

「もっとだ・・・もっと上げられる!付いてこれるかPoH!」

 

俺はさらに脳のギアを上げ攻撃速度と反応速度、反射速度を上げる。

 

「イエェッ!」

 

PoHはギリギリのところを楽しむように攻撃してくる。

 

「くっ!ゼアッ!」

 

「ハアッ!」

 

「リャァ!」

 

「グゥ!」

 

鍔迫り合いのところを、体術スキル《弦月》でPoHを後ろに蹴り飛ばす。

 

「んのやろっ!」

 

PoHは蹴り飛ばされた反動で壁に足を付けて、俺に『友切包丁』を振りかざしてくる。

 

「チィッ!」

 

振り下ろしてきた『友切包丁』を俺は双剣で受け止める。

 

「ハッ!うれしいぜキリト!」

 

「なにがだ!」

 

再度強攻撃をぶつけ合って、威力に押され後退する。

 

「お前ぇをこうして殺れるんだからなぁ!」

 

ニタニタと笑いながら言うPoHに俺は双剣の柄をさらに強く握る。

 

「そんじゃあ、使わせてもおうかぁ~」

 

「なに?」

 

PoHはそう言うとウインドウを開いた。

そして何かの操作をしたのかと思うとウインドウを消した。

 

「なにをしたんだPoH」

 

「慌てんなよ。すぐにわかる」

 

するとPoHの姿が見えなくなった。

 

「なっ!?」

 

周囲を探す俺の耳にレインの声が響いた。

 

「キリトくん!後ろ!」

 

「!?」

 

俺は反射的に身体を横にずらす。すると、今の今まで俺がいた場所にPoHが『友切包丁』を振り下ろした形で立っていた。

 

「おおぉ、これを避けたか。さすがだぜキリト」

 

「なっ!?い、今のは!?」

 

レインの声が無かったら斬られてた。

俺の反応できない速さで後ろに回るなんて通常のスキルではあり得ない。

 

「次々行くぜぇ!」

 

するとPoHは再び迫ってきた。

 

「グッ!」

 

俺はほぼ無意識的に剣を右横に置く。

すると、剣と剣がぶつかった重みと金属音が伝わる。

 

「くっ!」

 

「キリトくん!」

 

「キリト!」

 

あまりの重さに後退した俺に、すぐ後ろのレインとフィリアが声をかけてくる。

 

「こうなったら・・・・・・《共鳴(レゾナンス)》!」

 

俺は≪シンクロ≫スキル《共鳴》を発動させる。

《共鳴》によりHPバーに様々なバフのアイコンが現れる。

 

「ハアッ!セイヤァッ!」

 

「いいねぇいいねぇ!」

 

「シッ!」

 

「イエェッ!」

 

俺はPoHの速さになんとか追い付いている。

 

「この速さは・・・・・・?」

 

「ハッ、驚いたぜ、まさか俺に付いてこれるとはな」

 

「それは一体なんだPoH」

 

俺は高速で振るう剣の中でPoHに聞く。

少なくともこの速さのスキルはアインクラッドにいたPoHは持ってないはずだ。まさかユニークスキルか?

 

「言っただろ使わせてもおうかぁ~、ってな。これはここでゲットした力だよ」

 

「なに!?」

 

「お前ぇらも見たことあるはずだぜこれをなぁ」

 

俺はそう言うPoHに目を凝らす。

よく見るとPoHの体は赤紫色のオーラが包んでいた。

 

「それは・・・・・・!」

 

「ようやくわかったみたいだな」

 

「キリトくん、もしかしてあれって・・・・・・」

 

レインも気付いたみたいで俺の後ろから言ってくる。

 

「ああ・・・。エリアボスと同じやつだ」

 

PoHから出てるオーラは、今まで倒してきた三つのエリアボスと同じ物だ。

 

「これはなぁ、この権限がpresentされたのと同時に出たんだよ。使ってみたときは驚いたぜぇ~。なんせnamedのやつさえ簡単に殺せたんだからなぁ」

 

PoHは肩をブルッと震わせ歓喜に満ちた表情でいう。

 

「恐らく権限が現れたのと同時にシステムがPoHを一種のボスと判定したんだ。権限が出るほどプレイヤーを殺していたんだ、エラーが現れても当然だ。なんせそれで俺たちもここに来させられたんだからな」

 

俺は後ろのレインとフィリアに伝える。

 

「そ、そんな・・・・・・」

 

「うそ・・・・・・」

 

レインとフィリアは驚愕と脅えを含めた声で言う。

俺自身も驚愕しているのだ無理もない。

 

「続けて殺ろうぜキリト。いい声で泣いてくれよぉ!」

 

「くっ!セリャァ!」

 

「ハッハァ!」

 

「テリャ!」

 

「シッ!」

 

気合いの声とともに俺とPoHは攻撃する。

徐々に俺たちのHPは削れていく。

 

「お返しだぜ」

 

「グゥッ!」

 

PoHの蹴りに俺は後ろに蹴り飛ばされた。

俺は床を転がりながらも反動を利用して立ち上がる。

 

「キリトくん!」

 

「キリト!」

 

「大丈夫だ!レインはフィリアを守っていてくれ」

 

仮想空間の中なのに汗が流れ出る感じが走る。

俺は汗を右手の甲で脱ぐる動作をする。

それほどまでに緊迫するのだ。たった一つの事が自分のミスに繋がる。PoHを相手するのならそれくらいの事があってもおかしくないのだ。

 

「俺はPoH、お前に負けるわけにはいかない」

 

「ならどうするよ《黒の剣士》キリト」

 

「そんなの決まってる!」

 

俺は再び言う。

 

「お前を倒す、ただそれだけだ!」

 

「くくっ・・・・・・いいぜキリト。やっぱり、お前ぇ最高だぜ。殺しちまうのが惜しいくらいだ」

 

「ありがとよ。お前こそこんな殺人者じゃなければよかったのにな」

 

事実俺はPoHの力を認めてる。

もしも殺人者でなく、俺たちと同じ攻略組だったらどれだけ良かったことか。PoHの短剣さばきは攻略組の中でもトップに立つ。それは赤目のザザやジョニー・ブラックにも言えることだ。

 

「ほぉ~、お前ぇが俺様を褒めるとはな」

 

「別に褒めてる訳じゃない。ただ、残念なだけだ。殺人者でなければもしかしたらお前は最高の好敵手になったかもしれないからな」

 

「・・・・・・くくっ・・・!ハハハハッ!確かにそうかもしれないなぁ。けどなぁ~、俺様は人を殺すのが楽しいんだよ。特に最後、恐怖にまみれる表情がな」

 

「そうか・・・・・・」

 

例え目の前のPoHがホロウ。本物でないとはいえさすがPoHのホロウだ、思考回路が本物そっくりだ。

 

「さあ、イッツ・ショー・タイム!楽しいpartyをしようぜキリト!」

 

「何度もいうがお前を楽しませる気は更々ない!」

 

もう何度めかわからない撃ち合いが繰り広げられる。

 

「俺が考えてるこのあとのこと言ってやろうか?まず、お前ぇを殺したあと、そこの紅を殺す」

 

「!」

 

「そしてフィリアを殺す。お前が殺され絶望に満ちた二人の顔が見ものだなぁ」

 

「PoH!キサマ!」

 

「クハハッ!その顔だその顔!お前ぇが憎しみに刈られた表情が俺様は見たかったんだよ!」

 

「させない!お前にレインとフィリアを殺させない!」

 

「なら守ってみな《黒の剣士》様よぉ!」

 

「言われるまでもない!」

 

俺は片手剣ソードスキル《バーチカル・スクエア》4連撃を放つ。

PoHはそれを『友切包丁』で軌道をずらす。そしてすかさずカウンターで短剣ソードスキル《インフィニット》5連撃を繰り出してきた。

 

「セリャッ!」

 

俺はそれをステップで避ける。

 

「ハアアッ!」

 

「イヤアッ!」

 

PoHのソードスキルが終わったのと同時に剣を振り抜き様に横薙ぎに切り払い、互いの位置を交換して立ち止まる。

これで俺とPoHのHPは互いにイエローゾーンにまで入った。

 

「くっ!このままじゃ・・・・・・!」

 

俺がすでに《共鳴》を発動させてすでに10分は経っている。《共鳴》の効果時間は15分。そして次に発動させるためのインターバルで30分必要だ。現状、《共鳴》でなんとか今のPoHに追い付いているのだ。あと5分でPoHを倒すとなるとかなり難しい。

俺がそう思っていると・・・・・・・。

 

「死になキリト!」

 

「くっ!」

 

「ハアアッ!殺す殺す殺す!」

 

PoHはさらに速く動いて攻撃してくる。

俺は捌くのに精一杯で防戦一方だ。

 

「グハッ!」

 

やがて捌ききれなくなり横薙ぎに一撃もらい後ろに跳ばされる。だが、一撃喰らう前に身体を後ろに倒していたためダメージはそんなにない。

 

「そんなもんかキリト?よくそれでビーター何て言えたな」

 

「クソッ!」

 

俺は態勢を整えPoHの攻撃に備える。

すると、その途端。

 

 

 

 

 

 

 ユニークスキル≪シンクロ≫の進化条件を満たしました。進化を開始いたします。

 

 

 

 進化――――――完了。

 

 

 新たなスキルが使用できます。

 

 

 ≪シンクロ≫新使用可能スキル

 

 

 《単一共鳴(レゾナンス・ソロ)》

 

 

 

 

 

 

俺の視界の空間ウインドウにそれが表示された。

 

 

~キリトside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~outer side~

 

キリトたちが戦ってる最中、ある一つの部屋で。

 

「やれやれ、まさか外部からのハッキングでSAOのメインサーバーがここまで損害を受けるとはね。彼にはしてやられたよ」

 

そこには紅と白のサーコートを着た人物がウインドウを操作していた。

その人物は、血盟騎士団の団長にしてこのSAOのゲームマスター、ヒースクリフこと茅場明彦だった。

 

「それによってまさかホロウ・エリアが開かれるとは・・・。まあ、そこにいるのはキリト君とレイン君だから問題はないか。そして彼女は・・・・・・・なるほど、エラーによる重複か・・・」

 

ヒースクリフの周囲には様々な空間ウインドウが表示されていた。ヒースクリフはその中のひとつに視線を向けていた。そこに表示されているのは、今まさにキリトがPoHのホロウと戦闘している映像だ。

 

「にしてもまさかあの二人が≪シンクロ≫スキルを取得するとは・・・これも二人の絆によるものか。まったく、あの二人はイレギュラー要素の塊だな」

 

ヒースクリフは苦笑してもう一つのウインドウに表示されているものを見た。

そこにはキリトとレインの二つ目のユニークスキル≪シンクロ≫について表示されていた。

≪シンクロ≫スキルは元々アインクラッドにあるものではなく、ホロウ・エリアで開発され封印されていた、SAO最強のユニークスキルだ。習得条件は互いの絆が最高値であることと全てにおいて最高であること。

つまり、このスキルは婚姻者による絆によって発現するものということだ。もちろん、戦闘スキルも最高値でなければならない。それこそ、キリトやレイン、アスナやユウキ、ラン、クラス程でなければならないほどに。

そして、≪シンクロ≫スキルには三段階によって隠されたスキルがある。一段階目は≪シンクロ≫スキルが解放されたのと同時に放たれる。二段階目は≪シンクロ≫スキルの熟練度の最高値到達と、互いによる絆の最高値になること、そして一定値の戦闘。最後の三段階目は試練による物だ。もちろんそのためには試練に必要なメダリオンを6つ集めることと、≪シンクロ≫スキル二段階目を一定値を越える必要がある。

 

「む?ほぉ、≪シンクロ≫スキルを二段階目に進化させるとは・・・さすがだなキリト君。君になら彼の企みも防ぐことができるかもしれんな・・・・・・」

 

ヒースクリフは興味深そうに微笑みながら言った。

 

「さあ、キリト君レイン君見せてくれたまえ。君たちの絆を。システムを超越しえる君たちの愛を。君たちならもしかしたらいけるかもしれんな、≪シンクロ≫スキルの三段階目に・・・・・・」

 

ヒースクリフは珍しく楽しそうに笑っていう。

 

「私も速くカーディナルシステムを復旧させなくてはな」

 

そしてウインドウを開きながらヒースクリフはホロキーボードを叩いて複雑な英数文字を並べていった。

 

 

~outer side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~キリトside~

 

 

 

ユニークスキル≪シンクロ≫の進化条件を満たしました。進化を開始いたします。

 

 

 

 進化――――――完了。

 

 

 新たなスキルが使用できます。

 

 

 ≪シンクロ≫新使用可能スキル

 

 

 《単一共鳴(レゾナンス・ソロ)》

 

 

 

俺は突如現れて空間ウインドウに表示されているものを見て驚く。よく見たらレインにも同じようなウインドウが出ていた。俺はウインドウのスキル欄を見て新しく使用できるスキルを見る。

そして口を開きそのスキルを叫ぶ。

 

 

「発動―――《単一共鳴(レゾナンス・ソロ)》!」

 

 

すると俺の視界のHPバーに掛けられていた様々なバフの縁がキラキラと輝きだした。

 

「これで終わりだ!死ね《黒の剣士》ィ!」

 

PoHの振り下ろしてきた『友切包丁』が俺の視界を埋め尽くした。そして、俺に当たる直前。

 

「なにィっ!?」

 

俺は右手に持つ『ブラックローズ・ナイト』で下から上へと『友切包丁』を撥ね飛ばした。

 

「チッ!いってぇなにがおきやがった?」

 

PoHは訝しそうに俺から距離をとって言った。

 

「PoH、始めに言っておく」

 

「あぁ?」

 

「ここから先は俺のターンだ―――!」

 

「なに!?」

 

PoHが驚いたのも問題ない、何故なら俺は話終えるのと同時にPoHの背後に背を向けて立っていたのだから。もちろん、PoHのHPバーは減少してる。振り抜き様に一閃脇腹に浴びせたのだ。

 

「くくっ!いいねぇいいねぇ!さいっ~~~~こうのpartyだぜキリト!」

 

「シッ!」

 

「ハッ!速ぇな」

 

「PoH。俺はこの力でお前を倒す!レインたちには指一本たりとも触れさせない!」

 

俺はそう言うとPoHに攻撃を始めた。

高速での連続斬り。そのほとんどをPoHは視認すら出来ていなかった。

 

「ハハッ!いいぜぇ!さいっこうの殺しあいだ!キリトぉ!」

 

PoHは『友切包丁』を薙ぎ下ろしてくるがすでにそこに俺はいない。

 

「こっちだ」

 

「チッ!チートかよ」

 

「今度はこっちの番だ!」

 

「グオォォォ!?」

 

PoHの身体の至るところから、赤い鮮血のようなエフェクトが飛び散る。

≪シンクロ≫スキルで新たに使用可能になったスキル《単一共鳴》の能力は《共鳴》と同じだ。

たが、単一とかかれている通り《単一共鳴》の能力は俺かレイン、どちらか片方しかスキルを発動できない代わりに相手の分の力も使用できるためバフの効果が《共鳴》の数倍だ。それに併用してスピードも上がったりするのだ。

俺はPoHから距離を取り、≪二刀流≫ソードスキル《ダブルサーキュラー》2連撃突進技を放つ。

右の突き技からコンマ一秒後に左からの剣で攻撃する。

 

「クソッ!」

 

PoHはそれをギリギリのところで避けるが全ては避けられず僅かに掠りダメージを負う。

 

「これならどうだ!」

 

PoHは『友切包丁』を構え、なにかを溜める動作をする。

 

「何をするつもりだ?」

 

「フッフッフッ・・・・・・!」

 

俺はなにかをするまえに攻撃するためPoHに迫る。

だが、PoHの射程範囲に入ったそのとき、

 

「コロス・・・・・・!」

 

「ッ!?」

 

PoHの薄気味悪い、笑った表情を見て俺は瞬時に攻撃から後退に切り替える。しかし、

 

「殺す殺す殺す殺す殺す!!」

 

PoHの『友切包丁』に禍々しい血のような赤のライトエフェクトが煌めき俺の胴体に薙ぎってきた。

 

「グハッ!」

 

俺はとっさに後ろに下がるため身体を後ろに反らしていたが僅かに掠った。

そしてそのまま、後ろの壁に吹き飛ばされる。

 

「カハッ!」

 

肺の中の空気が一気に押し出される感じがした。

 

「コロス《黒の剣士》!」

 

体勢がうまく戻せない中、PoHはさらに禍々しい血のような赤のライトエフェクトを纏わせた『友切包丁』を振り下ろしてきた。

 

「クッ!」

 

PoHの振り下ろしてくる『友切包丁』を俺はとっさに双剣を軌道上におき、『友切包丁』をずらす。だが、余波で少しずつHPが削られていった。そして、攻撃が終わったのと同時に片手剣ソードスキル《メテオ・ブレイク》3連撃重攻撃技でPoHを押し出す。

 

「グオッ!」

 

PoHは床を転がって俺と反対側の壁にぶつかった。

 

「なんだよさっきのソードスキルは!」

 

「さっきのは俺だけのソードスキルだ。この権限と同時にpresentされたんだよぉ」

 

PoHのさっき放ったソードスキルは危険だ。直撃はしてないがHPを一気に二割以上持ってかれた。

俺は瞬時に攻撃するため、

 

「ゼリャアァァァ!」

 

「クソガァッ!」

 

≪二刀流≫ソードスキル《ゲイル・スライサー》2連撃突進技でPoHに迫る。PoHはそれを『友切包丁』の腹で受け止めた。

そしてそこから≪二刀流≫ソードスキル《ナイトメア・レイン》16連撃を繰り出す。

 

「ハアアッ!」

 

「調子にのるんじゃねぇ!」

 

《ナイトメア・レイン》をPoHは『友切包丁』で受け止めるが徐々に押され始めた。

《ナイトメア・レイン》の16擊目で『友切包丁』の刀身にヒビが入ったようなピシリという音が耳に入った。

《ナイトメア・レイン》終了後に俺は距離をとるため瞬時に大きくバックステップをする。

 

「お前ぇだけは俺が殺す!」

 

再度『友切包丁』に血のような赤のライトエフェクトを纏わせたPoHがそう殺気を放っていった。

またあのソードスキルを放つ気だ。

 

「全て、俺様が殺してやるよ!キリト!」

 

「させないと言った!」

 

俺は右手の『ブラックローズ・ナイト』を肩の高さにまで上げ、カタパルトのように正中線に構える。

すると俺の黒の剣にPoHの『友切包丁』とは違う色のライトエフェクトが煌めいた。

『友切包丁』に煌めくライトエフェクトがディープブラッドなら、俺のはクリムゾンレッドだ。色は似てるがPoHのが暗いのに対して俺のは明るい。

そして、クリムゾンレッドのライトエフェクトが煌めくなか、剣からジェットエンジンのような轟音が鳴り響く。

 

「ウオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

「ハアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》単発重突進技を放つ。

俺の《ヴォーパル・ストライク》とPoHのソードスキルがぶつかり人一倍甲高い金属音と轟音が響いた。

俺の『ブラックローズ・ナイト』の切っ先と『友切包丁』の腹がぶつかる。

少しずつ俺の剣がPoHを押していく。『友切包丁』にも亀裂が走り、徐々に広がっていき。

 

 

"パリンッ!"

 

 

一際甲高い音をならして『友切包丁』は粉々に壊れ、ポリゴンへと変わっていった。

 

「ナニィッ!?」

 

「終わりだPoH!」

 

俺はそのまま発動中のソードスキル、《ヴォーパル・ストライク》をPoHの胸に突き刺した。

そのまま《ヴォーパル・ストライク》はPoHのHPを余さず奪いつくしPoHのHPを0にした。

 

「あ~~~~~~あ・・・・・・まぁいいか・・・・・・」

 

PoHはそう最後にいうと後ろに倒れ、ポリゴンの欠片へと爆散した。

 

 

 

 

 

 

 

 




「さて、みんなわかったかな?今回の問題の答えはキリトお願い・・・・・・ってあれ?キリト?おーい、どこ~?」


「これでどうだ!」

「甘ぇよ!」


「・・・・・・なにしてるのよ」

「はぁ。もうわかんないよ」

「えぇぇ・・・・・・」

「もう・・・・・・。いい加減にして!キリトくん!PoHさん!」

「れ、レイン?」

「あ?紅?」

「二人ともこれ以上やるなら私が相手するからね!良い?!!」

「は、はい」

「あ、あぁ」

「アハハ・・・・・・。じゃなくてキリト、答え発表お願い!」

「ん?ああ、わかった。今回の答えはⅣ:シンクロだ」

「さすがに今回は難しくなかった?」

「まあ、確かに誰も予想してないだろうしね」

「ったくなんだよあの力はチートにもほどがあるぜ」

「それをいったらPoH、お前の方がチートだからな。エリアボスと同じようにしやがって」

「んなこと言われてもよぉ。権限と同時に来たんだから仕方ねぇだろうが」

「アハハ、まあまあ二人とも落ち着いて、ね」

「レインがそう言うなら」

「チッ。わあぁったよ」

「レイン、も大変だね~」

「それならフィリアちゃんま手伝ってよ」

「ええぇ・・・・・・」

「おいキリト」

「なんだ」

「お前ぇ、まさか紅の尻に惹かれてんじゃねぇか?」

「んなわけない・・・・・・・・・・:と思う」

「さすがの俺様もお前ぇには呆れるぜ」

「は?何でだ?」

「んなの決まってんだろ、お前ぇが余りにも唐変木や朴念人ってやつだからだよ」

「ハアッ?」

「ったく、今までのストーリー見ていても誰もわかると思うぜ」

「???」

「え~と、それでは時間になってしまったので今回はこれで」

「ほんとだ」

「じゃあみなさんまた次回に!」

「みんな、ダスヴィダーニャ~」

「また次回にな」

「くくっ、機会があればな」


「「「また次回!!Don't miss it.!!」」」

「くくっ!Don't miss it.!!」



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HF編 第108話〈フィリアの涙〉

「お久しぶりですみなさん。ソーナです。今回は私が司会を勤めます!そして補佐は・・・・・・」

「よっ!キリトだ」

「プリヴィベートみんな~!レインだよ」

「補佐はキリトとレインです」

「久しぶりだなソーナ。元気だったか?」

「うん、大丈夫だよ。現実が忙しくて司会にこれなくてごめんね」

「大丈夫だよ~。ソーナさんも現実では気を付けてね」

「ありがとうレイン。さて、今回のゲストはこの二人、どうぞ!」

「ヤッホーみんな!今回はゲストとしてでるねフィリアだよ!」

「くくっ。PoHだ。三回連続呼ばれるとは俺様も驚いてるぜ」

「今回のゲストはフィリアとPoHです!」

「三回連続で同じメンバーってのは珍しいな」

「ホントだね。私も驚いてるよ」

「四人はホロウ・エリアでのキーマンだからね~」

「アハハ、なるほどね」

「ほぉぅ。キーマンとは嬉しいねぇ」

「さて、ゲストも出たところで今回の問題はこちら!」


問題『第1層の地下迷宮はどこの下にあった?』

Ⅰ:黒鉄宮

Ⅱ:教会

Ⅲ:転移門

Ⅳ:時計塔


「答えは本文の最後に!」




 

~キリトside~

 

 

「終わった・・・・・・か」

 

PoHが消滅してポリゴンの欠片となり散ったのを見た俺は、双剣を左右に軽く払い背中の鞘にしまいレインとフィリアに振り向いた。

 

「大丈夫、キリトくん」

 

「ああ、問題ない。そっちの方は?」

 

「私もフィリアちゃんも大丈夫だよ。フィリアちゃんのHPはポーションで回復させといたから」

 

「サンキュー、レイン」

 

俺はレインとフィリアの方に行きながらそう答える。

 

「残りはPoHが残したアップデート、だね・・・・・・」

 

「ああ。こればっかりは何が起こるかわからないな」

 

「そうだね・・・・・・」

 

「とにかく、一旦管理区に戻ろう二人とも」

 

「わかった」

 

「・・・・・・うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

管理区

 

 

管理区に戻った俺たちは、早速管理区のコンソールをレインと手分けして調べていた。

 

「キリトくん、そっちはあった?」

 

「いや。いくら調べてもアップデートの項目がない」

 

「もしかして・・・・・・このコンソールじゃないのかな・・・・・・」

 

「あり得るな・・・・・・。大空洞の地下にあったのと、この管理区。そして、遺棄エリア。今俺たちが見つけてるだけで合計三つはコンソールがあるからな・・・・・・俺たちがまだ見つけてないコンソールがあってもおかしくない」

 

すでに俺たちが見つけてだけでも三つはあるのだ、まだどこかにコンソールがあってもおかしくない。だが、三つ目の遺棄エリアのコンソールは除外だろう。さすがにPoHもあそこには行ってないはずだ。

するとそこへ。

 

「・・・・・・ねぇ・・・・・・二人とも」

 

「どうしたのフィリアちゃん?」

 

「・・・・・・そのコンソールの場所、わたし知ってる」

 

「え!?」

 

「フィリア、ほんとか?もちろん教えてくれるよな?」

 

「こら!ダメだよキリトくん。教えてくれる?って聞かないと」

 

「す、すまん」

 

「ううん・・・・・・いいの、気にしないで・・・・・・。場所はもちろん教える・・・・・・」

 

そう言うとフィリアはコンソールから離れ、転移門とコンソールの間に向かった。

そして、そこでフィリアは床にに手をつき何らかの操作をした。すると。

 

「これは!?」

 

「わっ!?」

 

いきなり俺とレインの手の甲に浮かぶ高位管理者権限と同じ紋様を周囲に囲んだ転移装置のようなものが現れた。

 

「さっき言ったコンソールがあるダンジョンに飛べるワープエリアみたい」

 

「こんなところにあったのか・・・・・・」

 

「あいつが行ったのはここの地下・・・・・・奥にダンジョンがあった。多分その先にある・・・・・・はず」

 

「ここにダンジョンがあるなんて・・・・・・」

 

俺がフィリアの言葉に驚いているなかレインはこめかみに指を当てて難しい顔をしていた。

 

「どうしたレイン?」

 

「ううん、なんか前にもこんなことがあったような~、って。ものすごくデジャビュのような・・・・・・」

 

「そうか?」

 

「う~ん・・・・・・」

 

確かに言われてみればなんか前にもこんな似たようなことがあったような気がする。第一層で。

とまあ、それは置いといて。

 

「よし、すぐにそのダンジョンへ行こう」

 

俺はワープ装置のなかに入り転移しようとしたがフィリアに止められた。

 

「ダメ!キリト・・・・・・ごめんなさい」

 

「え、どう言うことフィリアちゃん?」

 

「ダンジョンへの入り口は封印されているの。全てのエリアを開放しないと開かないの」

 

「なに!そうなのか!?」

 

「うん。わたしも後を追って入ろうとしたけど・・・・・・。入ろうとした瞬間にメッセージが出て無理だった。先に残りのボスを倒さないと・・・・・・」

 

「なるほどね。ていうことはキリトくん・・・・・・」

 

レインはフィリアの声にうなずき俺を見る。

俺も同じ結論に至り言った。

 

「ああ、ボスを倒せばいいんだな」

 

「・・・・・・うん」

 

「ありがとう、フィリア。教えてくれて助かった」

 

「ありがとうフィリアちゃん」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「ん?フィリアどうした?」

 

「フィリアちゃん?」

 

反応しなかったフィリアを不思議に思い、俺とレインはフィリアの顔を見た。

フィリアの表情は辛辣といった感じだった。

 

「・・・・・・ねぇキリト、レイン。二人と、少し・・・・・・話したい」

 

「そうだな・・・・・・」

 

「そうだね・・・・・・」

 

「ありがとう二人とも、こっちに座って・・・・・・」

 

「・・・・・・わかった」

 

「・・・・・・うん」

 

フィリアに促されて俺たちはコンソールの後ろに寄り掛かって、レイン、俺、フィリアの並びで座った。

座ってフィリアが管理区の宙を見て言う。

 

「わたし・・・・・・この世界に来てから自分が自分じゃない気がしてたんだ。わたしの中が空っぽな気がして・・・・・・わたしはどこの誰なんだろうってね。だから生きることに必死だったのかな?」

 

「フィリアちゃん・・・・・・」

 

「そんなとき・・・・・・。わたしはキリトとレイン・・・・・・二人と出会っちゃったんだ。一番初めに出会ったのはキリト、だったよね」

 

「ああ、そうだったな・・・・・・」

 

俺は初めてフィリアと出会ったときのことを思い出した。

 

「キリトに初めて会ったとき・・・・・・わたし、キリトに攻撃しちゃったからびっくりしたよね・・・・・・」

 

「そりゃそうだろ。なにせ初めて出会った女の子がいきなり武器をもって襲い掛かってくるんだから」

 

「ええっ!?そうだったのキリトくん!?」

 

「あ、ああ。そう言えばレインには言ってなかったな」

 

「そうだよ、なんで言ってくれなかったのよ~!」

 

「フフッ・・・・・・。わたし、あの時のごめんなさいもまだ言ってなかった」

 

「いや、別に俺は気にしないんだけど・・・・・・」

 

レインを宥めつつ俺はフィリアに返事を返す。

いきなり目の前に誰かが現れたら警戒するのは当然だし、フィリアの場合は事情が事情だったわけだしな。

 

「そして、次に出会ったのがレイン・・・・・・」

 

「うん、あの時はキリトくんとフィリアちゃんがデモリッシュ・リーパーと戦闘中だったからまともに挨拶もできなかったんだよね・・・・・・」

 

「そうだったね・・・・・・。わたしはレインにもあの時助けてくれてありがとう、って言ってないね」

 

「私はそんなの気にしないよ。困ってる人を見かけたら助けるのが当然だもん」

 

「アハハ。レインらしいな」

 

「でしょ♪」

 

レインは胸を張るように笑顔で言った。

 

「フフッ・・・・・・。二人は本当に仲良しだよね」

 

「え?あ、う~ん、そう・・・・・・かな」

 

「ハハハ。どうだろうね」

 

俺とレインはフィリアの言葉に表情を少し苦虫を噛み潰したような感じになった。なにせ、ここに来る前にレインと喧嘩のようなことをしたのだから。

まあ、それは結局俺たちらしい決闘で決めたけどな。

 

「今さらだけど・・・・・・、キリトあの時はほんと、ごめん・・・・・・。レイン、あの時助けてくれてほんと、ありがとう」

 

「いいよ、出会わなかったらこうやって話すこともなかったし」

 

「うん♪私はフィリアちゃんと出会って良かったよ」

 

「へへっ・・・・・・ありがと」

 

表情に少し笑みを出して言うフィリアは、ありがと、を言うと俺たちに聞いてきた。

 

「・・・・・・二人はさ。そのあとなんでわたしが一緒にそっちへ帰らなかったかわかる?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・」

 

確かに最初、なんでフィリアがアインクラッドに来ないのか分からなかった。

なにか事情があるのかと思ったが、さすがに聞くわけにもいかなかった。まあ、その理由は思わぬ形で知ることになったが。

 

「不安だったんだよね・・・・・・。自分自身のこともよくわからないのに、空っぽなわたしが帰ることはすっごい怖かった。・・・・・・でも、それから二人と一緒に冒険して、いっぱい話をして、わたしの中の不安が少しずつ無くなっていったんだ。すっごい楽しかった~~~」

 

フィリアは無邪気な子供のような笑みを出して言った。

 

「だけど・・・・・・謎のエリア・・・・・・素性不明のオレンジプレイヤー。普通なら怖がられて当たり前なのに、二人はよく付き合ってくれたよね」

 

「俺は楽しかったよ。レインとフィリアの三人で一緒にここを冒険できて」

 

「うん、私も・・・・・・。私もキリトくんとフィリアちゃんと一緒に冒険できてよかったよ」

 

「!!」

 

「二人が・・・・・・いて・・・・・・くれたから・・・・・・。わたしは人だって実感できた。温かさを感じられた」

 

嬉しそうに眼から涙を流すフィリアに俺とレインは無言で見守る。

 

「・・・・・・ねぇ・・・・・・二人は、なんで、わたしのこと信じてくれるの?」

 

「なんでって言われても・・・・・・」

 

「言われてもね・・・・・・」

 

フィリアの唐突な質問に俺とレインはつい、互いの顔を見合わせる。

 

「まあ、俺は人を見る目に自信があるからな」

 

「でも!!・・・・・・でもでも、わたしはそんなキリトとレインを裏切って・・・・・・。しかもオレンジで・・・・・・。二人と一緒にいる資格なんてない・・・・・・。本当なら絶対わたしを・・・・・・嫌いになるよ・・・・・・」

 

「そんなこと思うわけないじゃないか。俺はフィリアが好きだよ」

 

「そうだよ!私もフィリアちゃんのこと好きだよ!」

 

「・・・・・・・・・・す、・・・・・・好き!?」

 

「ああ、フィリアは俺にとって信頼できる・・・・・・大切な仲間だ」

 

「そうだね。私もフィリアちゃんは信頼できる大切な仲間だよ。そうじゃなかったらこうして会話したり冒険してないもん」

 

「・・・・・・卑怯だよ・・・・・・二人は・・・・・・」

 

「え?」

 

「フィリアちゃん?」

 

「ううん・・・・・・なんでもない・・・・・・・」

 

「そう?」

 

「うん・・・・・・。キリトとレイン。二人の言葉は・・・・・・空っぽだったわたしの隙間を埋めてくれる・・・・・・あったかい気持ちのかけら・・・・・・ホロウ・フラグメントなんだね」

 

「ホロウ・フラグメント・・・・・・『影の断片』か」

 

「フィリアちゃんの隙間を影のように断片を埋めるから、ホロウ・フラグメント、なんだね」

 

「うん」

 

俺とレインは顔を見合わせ軽くうなずくと立ち上りフィリアの前に立ち、手を差し伸ばす。

 

「さてと、フィリア。ここまで来たんだから俺たちと一緒に最後まで行こうぜ!」

 

「一緒に行こう、フィリアちゃん!私とキリトくんとフィリアちゃんの三人で!」

 

俺とレインの言葉にフィリアは涙を流しながら、俺たちの手を握り立ち上がった。

 

「キリト・・・・・・レイン・・・・・・。うん!一緒に行こう!最後まで!」

 

「おう!」

 

「うん!」

 

フィリアを前に俺とレインは何時もの感じで返事を返した。

そしてフィリアに告げた。フィリアのオレンジカーソルのことを。

 

「あ、でも、そのまえに・・・・・・フィリア」

 

「なに!?」

 

「―――オレンジの問題なんだけど、わかったんだ」

 

「えっ?」

 

「ほんとだよフィリアちゃん」

 

「・・・・・・ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

フィリアの慌てた声にとっさに俺たちは耳を塞いだ。

そして俺たちはユイに協力してもらって得た情報を伝える。

 

「フィリアは人を殺してないよ」

 

「え!?ど、どどど、どう言うこと!?」

 

「フィリアちゃんが殺したと思っていたフィリアちゃんは、AI・・・・・・。つまり、《ホロウ・データ》だったんだよ」

 

「え!?で、でも!わたしが《ホロウ・データ》で殺した向こうのわたしが本物かもしれないじゃない!もしそうだったら、わたしは・・・・・・」

 

「落ち着け、フィリア」

 

「落ち着いて、フィリアちゃん。順に話すね」

 

「う、うん」

 

「まず、フィリアのカーソルがグリーンではなくオレンジなのはシステムエラーだ」

 

「エラー・・・・・・」

 

「ねぇ、フィリアちゃん。フィリアちゃんがここに来たのって11月7日じゃないかな?」

 

「え?え~と・・・・・・。うん、確か11月・・・・・・日にちもその頃だったと思う・・・・・・・」

 

「やっぱりな・・・・・・」

 

「思った通りだね・・・・・・」

 

「え?」

 

「フィリア、通常《ホロウ・エリア》にはプレイヤーは立ち入ることは出来ないんだ。それともう一つ。プレイヤーと《ホロウ・データ》は同時に存在することが出来ない。万が一、同時に存在してしまった場合は《ホロウ・データ》がシステムによって削除される仕組みになっている」

 

「・・・・・・でも、あたしは自分と・・・・・・」

 

11月7日、俺とレインはそこで何があったのか知っている。なにせ、その場所にいたのだから。

 

「11月7日。75層のボス攻略の際にアインクラッドに大きなエラーが生じたんだ。恐らくフィリアは、そのときの影響で《ホロウ・エリア》に飛ばされたんだよ」

 

「そして、システムが問題を感知して《ホロウ・データ》のフィリアちゃんを削除する前に、フィリアちゃんは混乱して、自分の《ホロウ・データ》を攻撃しちゃった」

 

「つ、つまりそれって・・・・・・・」

 

「ああ。予測外の出来事が重なった結果、システムはフィリアのデータにエラーが生じていると認識したんだ。それが、オレンジカーソルという形で現れたんだよ」

 

「本当・・・・・・なの?でも、わたしがプレイヤーだなんて確証は・・・・・・」

 

「大丈夫だよ、フィリアちゃん。私たちの仲間に手伝ってもらって、ちゃんとこの目でログを確認したんだ。フィリアちゃんが攻撃しちゃったのは《ホロウ・データ》だよ。そして削除したのはシステムだよ」

 

「つまりフィリアは、誰も殺してない。俺やレインと同じプレイヤーだよ」

 

「・・・・・・じゃあ、わたしは・・・・・・」

 

「中央コンソールの場所さえわかれば、エラーを解除できる。そうすればステータスももとに戻る」

 

「そしたら、ここからアインクラッドへの転移も可能だよ。フィリアちゃん、一緒に戻ろう!アインクラッドへ!」

 

「キリト・・・・・・レイン・・・・・・、二人は、本当に・・・・・・。・・・・・・怖かった。わたし・・・・・・このまま一人で死んでいくのかと思った・・・・・・」

 

「もう大丈夫だ」

 

「もう大丈夫だよフィリアちゃん」

 

「キリト・・・・・・レイン・・・・・・・本当に・・・・・・ありがとう」

 

レインが優しく抱き締める中、フィリアはこのエリアに来てから貯まっていたであろう涙を流した。

 

「(アインクラッドも残り十層。絶対に全員生きて現実に帰って見せる!)」

 

俺はレインとフィリアを見て改めてそう自分に言い聞かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「みんな答えはわかったかな?今回の答えの正解発表はフィリアにお願いするよ!」

「任せて!今回の問題の答えは、Ⅰ:黒鉄宮、よ」

「そう言えば第一層の黒鉄宮の地下に地下迷宮が有ったんだったな」

「あ、それだよ。だから管理区のやつでデジャビュだと思ったんだよ」

「へぇ、黒鉄宮の地下にそんなのあったんだ」

「ああ、上層攻略具合で開放されるタイプみたいでな、中のモンスターはそんなに強くはないんだけど奥にいた死神タイプのボスがとんでもなく強かったんだ」

「そんなに!?」

「おい、キリト。お前ぇがそこまで言うのか?」

「うん。あのときはまだ≪シンクロ≫も持ってなかったから。階層的には90層クラスなんだよ」

「まあ、それはユイが消したけどね」

「ああ、あのときはユイのお陰で助かったんだよな」

「そうだったね」

「そんじゃあ今なら倒せるのかよ?」

「あー、どうだろうな。まあ、場合によるな」

「くくっ。お前ぇがそこまで言うとはな。さすが俺の宿敵なだけある」

「何かってに宿敵にしてんだよ」

「んなことべつに構わねぇだろうが。ここでの会話は本編に影響しねぇんだからよ」

「それはそうだが・・・・・・って、ん?なんか今デジャビュな気がするぞ」

「そう?」

「そうかな?」

「気のせいだろ」

「アハハ・・・」

「なんか釈然としないな」

「ハハハ・・・・・・。おっと時間になってしまいましたので今回はここまで」

「もうそんな時間か」

「速いね~」

「うん。これからどうなるのか楽しみ」

「俺様は本編にでねぇがここで楽しませてもらうとするぜ」

「PoHそれメタ発言だよ」

「む?そうか?それはすまねぇな」

「それじゃまた次回お会いしましょう!」

「「「「また次回!!Don't miss it.!!」」」」

「くくっ!Don't miss it.!!」



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HF編 第109話〈エリアボス、ホロウリーパー〉

「こんにちはソーナです。今回もキリトとレインと一緒に問題を出しますよ!」

「さて、今回の問題はなんだろうな」

「気になるね」

「それでは早速。今回の問題はこれです!」

問題:『キリトとレインがホロウ・エリアで一番始めにフィリアと共闘して闘ったモンスターの名前はなに』

Ⅰ:デモリュシュリーパー

Ⅱ:カガチ・ザ・サムライロード

Ⅲ:グリーム・アイズ

Ⅳ:イルファング・ザ・コボルドロード


「答えは本文の最後に!」


 

~キリトside~

 

 

少年が投獄された牢屋

 

 

 

「この先にボスが・・・・・・」

 

俺たちの前には今までのエリアボスの前にあったのと同じ、巨大な石扉があった。それはこの先にボス部屋があるということだ。そしてその扉の先には翠の転移クリスタルが浮かんでいた。

 

「ああ・・・・・・。急ごう、PoHの施したアップデートが完了するまで数日時間があるとはいえ、そんなにないからな」

 

俺はウインドウを開きアイテム類を確めて言う。

 

「そうだね」

 

「うん」

 

レインとフィリアもボス戦に向けて準備をする。

PoHを倒したあと、俺たちは管理区に戻りフィリアに真実を伝えた。そして管理区にあった地下のダンジョンへとつながるワープポイントを見つけた。そのワープポイントから先に行くには全てのエリアボスを倒さなくてはならないらしい。その後、これからの予定を立て、今のエリア、大空洞のボスを倒すことにした。

そのままその日はフィリアと分かれ、俺とレインは第76層アークソフィアへと帰還した。

アークソフィアへと戻った俺とレインはエギルの店でユイやアスナたちにフィリアを助けたこととPoHの施したアインクラッド全体へのアップデートのことを伝えた。

そしてユイからそのホロウ・エリアからアインクラッドへのアップデートでの上書き、について聞きみんなの助けを得られ、その後は料理スキルがカンストしているレインたちの作った夕飯で決起会のようなものをして過ごした。

そしてその翌日、俺とレインは商業区で回復ポーションや結晶アイテム類を揃え、ホロウ・エリアに転移しフィリアと合流してパーティーを組むと、大空洞エリアの『ジリオギア階段遺跡 1層』に行き、そこから以前ユイが解除した紋章の先へと進み『看守達がカードに興じた監視棟』を通って『少年が投獄された牢屋』へ行きボス部屋へと続く扉を見つけた。そして扉の先に翠の転移クリスタルを見つけボス戦へ準備の今に至る。

 

「二人とも準備はいい?」

 

「大丈夫だよ」

 

「ええ」

 

「じゃあ・・・・・・いくぞ」

 

二人に確認した俺は、目の前に浮かぶ翠の転移クリスタルに触れ、俺たちはその場から転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

断罪者たちの魂の狩り場

 

 

 

「ここは・・・・・・」

 

転移クリスタルに触れ、転移した俺たちはボス部屋らしき場所に転移していた。

 

「これは・・・・・・75層のボス部屋・・・・・・?」

 

「だよな・・・・・・。だが・・・・・・」

 

転移したボス部屋と思われる場所は第75層のボス部屋によく酷似していた。

75層のボス部屋と違う点と言えば、今俺たちがいる高台らしき場所と、円形に広がる広間の奥の階段先にある転移装置があることだ。

その転移装置は今いる場所が蒼く輝いているのに対して、奥のは薄紫色のような輝きだった。

 

「ところで・・・・・・ボスはどこ・・・・・・?」

 

「そう言えば・・・・・・」

 

俺たちが転移してきてすでに一分は経っているはずだ、なのに未だにボスが姿は現さない。

俺たちはとにかくその場から移動することにし、今いる高台から階段を伝って降りることにした。

階段の半ば程まで降りた途端、とんでもない重圧が走った。

 

「レイン、これは・・・・・・」

 

「うん、同じ・・・・・・75層の時と・・・・・・」

 

「ってことは・・・・・・」

 

俺とレインは階段の半ばほどの場所から、天井を見上げた。

そして予想していた通り天井にそれはいた。

 

「なっ!」

 

「うそっ!?」

 

「あれがここのボス・・・・・・!」

 

それを見た途端、俺たちの身体に緊張感が走った。

やがてそれは天井から広間の中央に墜ちてきた。

天井から墜ちたそれは凄まじい煙を巻き起こして、姿を見せた。

そして視界には墜ちてきたボスの名前とHPバーが表示された。

墜ちてきたボス名前は・・・・・・。

 

「ザ・ホロウリーパー・・・・・・」

 

「影の刈り手・・・・・・ううん。・・・・・・虚の刈り手・・・・・・」

 

「虚の・・・・・・刈り手・・・・・・」

 

俺とレインはあのときと。第75層のボス、ザ・スカルリーパーと相対したときと同じ感じに陥っていた。

視界には、Boss:The Hollow ReaperとHPバーが三段表示された。

それと同時に今までの薄暗かった部屋が、一気に明るくなった。これもまた75層のボス部屋と同じだ。

 

「二人とも!」

 

「うん!」

 

「ええ!」

 

俺とレイン、フィリアはそれぞれ武器を抜刀して残りの階段を駆け降りて構える。

降りて広間に足が付くと、後ろの階段と奥の階段に、管理者権限と同じ紋章が赤く輝いた。おそらく、ボスを倒すか俺たちが全滅するまで解除できない。全て75層と同じだ。あのときも退路が無くなって結果14人のプレイヤーが消滅。死んだのだ。

今目の前にいるホロウリーパーはスカルリーパーほどパラメーターは高くはないだろうが油断はできない。スカルリーパーの時は人数は約50人ほどだったが、今は俺、レイン、フィリアの3人だけだ。

 

「あいつがスカルリーパーとここに来たときに戦ったあいつと同じなら・・・・・・」

 

「始めに私が《サウザンド・レイン》で攻撃する?」

 

「いや、おそらくあいつはここに来たときに戦ったあいつより少しパラメーターが高いタイプだと思う。なら、俺があいつの攻撃を受け止めるからその間にレインはフィリアとともに側面から攻撃してくれ」

 

「了解」

 

「わかったわ」

 

「・・・・・・よし・・・・・・いくぞ!」

 

「わかったよ!」

 

「ええ!」

 

 

 

 

 

 

 'ホロウ・ミッション'

 

 場所:断罪者たちの魂の狩り場

 

 ミッション名:虚ろなる刈り手

 

 討伐ボス:ザ・ホロウリーパー

 

 

 

 

 

 

 

視界にそうウインドウが表示されるのを一瞥すると、俺は先行してホロウリーパーに迫る。

 

「はあぁぁあああああ!」

 

「キシャァァアアア!」

 

初っぱなから放った≪二刀流≫ソードスキル《ダブル・サーキュラー》2連撃突進技をホロウリーパーに向けて打つ。

だが、それはホロウリーパーの左の鎌で受け止められる。

 

「キシャアアアア!」

 

続けて振り下ろされてきた右の鎌を、俺は技後硬直(ディレイ)が終わって動ける両手の双剣をクロスにして重ねて受け止める。

 

「(やはり・・・・・・。このボス、スカルリーパーほどパラメーターが高くない!これなら・・・・・・俺一人でも受け止められる!)」

 

俺は振り下ろされてきた右の鎌を受け止めながらそう判断した。

 

「レイン!フィリア!」

 

「うん!」

 

「ええ!」

 

「《サウザンド・レイン》!」

 

動けないホロウリーパーへ遠距離からのレインによる《サウザンド・レイン》が突き刺さる。

そしてその合間を縫ってフィリアが素早くホロウリーパーの真下に潜り込んで短剣ソードスキル《ファッド・エッジ》8連撃を放つ。

 

「キシャアアアア!!」

 

「させるか!」

 

もう片方の鎌で攻撃しようとするホロウリーパーを俺は受け止めている鎌を剣に滑らして地面に突き刺せ、もう片方の鎌をパリィして受け止めて弾き返す。

そしてその間にフィリアはホロウリーパーのクロスレンジから離れレインとともにいる。

 

「ぜあっ!」

 

俺はその間に5撃与え、その間合いからバックステップで避ける。俺が避けたところを次の瞬間、ホロウリーパーの右の鎌が薙ぎ払われた。

 

「ふっ!はあっ!」

 

バックステップで避け、足が地面について瞬時に片手剣ソードスキル《ソニックリープ》単発突進技を、鎌を薙ぎ払った状態のホロウリーパーに命中させる。

 

「てりゃぁあ!」

 

「せぇぇえい!」

 

そして両端からレインが片手剣ソードスキル《サベージ・フルクラム》3連撃重攻撃を、フィリアは短剣ソードスキル《グラビティ・マグナム》4連撃重攻撃で攻撃する。

この3連ソードスキルにより、ホロウリーパーのHPが三段目の7割程まで削れた。

 

「キシャァァアアア!」

 

「!フィリア、避けろ!」

 

「っ!」

 

フィリアが避けたところをホロウリーパーの尻尾らしき骨尾が突き刺さり土煙が巻き起こった。

 

「フィリアちゃん!」

 

「大丈夫!ギリギリで避けた!」

 

フィリアは土煙から1センチほど離れたギリギリのところで短剣を逆手に構えていた。

 

「くっ!スカルリーパーと同じ攻撃パターンかよ!」

 

「さすが75層のボスと同じなだけあるね」

 

「ああ。セルベンディスの樹海で闘ったあいつとは攻撃パターンが異なるな」

 

セルベンディスの樹海で闘った、デモリッシュ・リーパーはスカルリーパーやホロウリーパーと攻撃パターンは同じだが、基本的には左右の鎌による攻撃のみだったのだ。

 

「っ!」

 

ホロウリーパーが突如、俺に向かって襲い掛かってきた。

俺は瞬時に双剣を重ねて、クロスブロックで振り下ろされてきた左右両の鎌を受け止める。

 

「キリトくん!」

 

「ぐうっ!」

 

まさかの左右両の鎌振り下ろしは重く、片膝が地面についた。

 

「させないよ!」

 

するとそこへレインが俺と鎌の間に入り込み、鎌を振り上げた。

 

「キリトくん!」

 

「ああ!」

 

鎌を思いっきり振り上げられたホロウリーパーはその上体を大きく仰け反らせた。

そしてその隙を逃す俺とレインではない。

俺の双剣には黒のライトエフェクトが、レインの双剣には白のライトエフェクトが煌め輝く。

 

「はあぁぁあああああ!」

 

「やあぁぁあああああ!」

 

「「ワールドエンド・オーバーレイ!」」

 

≪シンクロ≫ソードスキル《ワールドエンド・オーバーレイ》14連撃重攻撃技を放つ。

 

「ギシャァァアアアアア!」

 

仰け反りでさらにダメージが高上する。

ホロウリーパーの骨体に黒と白のライトエフェクトを纏り煌めいた双剣が次々に斬り裂いて、赤い鮮血のようなライトエフェクトが散る。

 

「わたしも!」

 

そしてそこにフィリアが短剣ソードスキル《アクセル・レイド》12連撃を的確にホロウリーパーの骨体の急所に当たった。

この攻撃によりホロウリーパーのHPゲージが大幅に減り、三段目の3割ほどにまで削れた。

 

「キシャァァアアア!」

 

「ハッ!来るぞ!」

 

「「!!」」

 

ホロウリーパーが両の鎌を振り上げたかと思うと、ホロウリーパーの骨体から衝撃波が繰り出された。

 

「なっ!?」

 

「きゃっ!」

 

「うっ!」

 

衝撃波により後方に押し出され、ホロウリーパーから距離が出た。

 

「キシャアアアア!!」

 

俺が後方に押し出されと、ホロウリーパーの右の鎌に緑のエフェクトが出現した。

 

「まずい!」

 

そう言うのと同時にホロウリーパーはその巨体をジャンプして俺にその鎌を振り薙ぎ払ってきた。

 

「くっ!」

 

咄嗟に双剣を盾にして防ぐがあまりの威力にさらに後ろに飛ばされる。

 

「ちっ!」

 

空中でバランスを取り直し地面に着地する。

自身のHPゲージを確認するとHPゲージは残り7.5割程まで削れていた。さらにHPバーは緑色の枠が囲み点滅していた。

 

「(毒!さらに攻撃力、防御低下だと!!?)」

 

そこには毒状態を表すアイコンと攻撃力、防御力が低下のデバフが表示されていた。

 

「くっ!」

 

俺はすかさず腰のポーチから解毒ポーションを取り出し、一気に飲み干す。

解毒ポーションを飲んだとはいえ消えるまでに少し時間がかかる。一応、解毒結晶はあるはあるがそれは取っておく。

ホロウリーパーを見ると、フィリアとレインが互いにタゲを取って攻撃していた。

俺は再び双剣を握り直し、二人のもとへ向かう。

 

「レイン!フィリア!」

 

「キリトくん!大丈夫?!」

 

「キリト!」

 

「ああ、大丈夫だ」

 

二人のHPを見ると、フィリアはイエローに入ろうとしている5.5割まで、レインは7割ほどまで削れていた。

 

「フィリアは一回下がって回復を!」

 

「了解!」

 

「レイン、やるぞ!」

 

「うん!」

 

フィリアが下がったのを確認した俺とレインは振り下ろしてきたホロウリーパーの鎌を、息のあったタイミングで跳ね返して言い叫ぶ。

 

「「―――共鳴(レゾナンス)!」」

 

≪シンクロ≫スキル《共鳴》を発動させた。

《共鳴》の発動にともない、視界の左上端に表示されてるHPゲージのところに様々なバフが表示される。

 

「いくぞ!」

 

「いくよ!」

 

そこからしばらくは俺とレインの攻撃だった。

ホロウリーパーの振り下ろしてくる鎌は俺が受け止め、その隙にレインがソードスキルを叩き込む。又はその逆でレインが受け止めて俺がソードスキルを繰り出す。

 

「レイン、スイッチ!」

 

「わかったよ!」

 

弾き返したところへスイッチして、レインが攻撃する。そしてその後に技後硬直の短いソードスキルでレインの技後硬直を稼ぐ。

 

「キリト!」

 

後ろからフィリアの声が聞こえてきた。

フィリアのHPは9割程まで回復していた。

 

「フィリア、スイッチ!」

 

「わかった!スイッチ!」

 

スイッチしたフィリアがすかさず短剣ソードスキル《インフィニット》5連撃を繰りだし、ホロウリーパーのHPを削り取る。

 

「レイン、フィリアとスイッチ!」

 

「うん!」

 

「レイン!」

 

「フィリアちゃん!スイッチ!」

 

フィリアの《インフィニット》5撃目でレインとスイッチし、レインは≪多刀流≫ソードスキル《クリア・コンパッション》16連撃を放つ。

これでホロウリーパーのHPは残り半分。二段目の5割を下回った。

ホロウリーパーが両の鎌を上げるとさらにその骨体をも上げた。そして、その巨体は高々とジャンプした。

 

「!?下がれ!二人とも!」

 

「「!!」」

 

俺たちがその場から退避するのと同時に、その場にホロウリーパーが鎌を突き立てた。するとその鎌の周囲を地面と同じ色の鎌のような岩が現出した。

 

「なっ!?」

 

足元に現れた岩の鎌をバックステップで避け距離をとる。フィリアとレインもギリギリのところで避けられたようだ。

ホロウリーパーの骨体が地面に着地して、鎌を地面から抜くと岩の鎌が消えた。そしてそれを同時に俺とレインのHPゲージから《共鳴》のバフが消えた。

これで再度《共鳴》を発動させるのにインターバルとて30分必要となった。

 

「くっ!厄介だなやはり・・・・・・」

 

薙ぎ払ってきた鎌を避けながらそう悪態をつく。

 

「はあっ!」

 

そして≪二刀流≫ソードスキル《デブス・インパクト》5連撃重攻撃技を放つ。ホロウリーパーには《デブス・インパクト》の追加効果で防御低下のデバフアイコンが現れた。

 

「レイン!」

 

「うん!やあぁぁあああああ!―――《サウザンド・レイン》!」

 

《デブス・インパクト》を放って下がったところにレインの追撃がホロウリーパーに全剣?入った。

これでホロウリーパーの残りHPは二段目の3割まで削れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

45分後

 

 

 

「はあ、はあ、はあ・・・・・・」

 

「あと7割・・・・・・」

 

ホロウリーパーのH3段あったHPゲージを残り一段の7割ほどまで削れていた。

 

「レイン、《共鳴》使えるか?」

 

「うん、問題ないよ」

 

「わかった。・・・・・・フィリア、スイッチ!」

 

「了解!・・・・・・スイッチ!」

 

フィリアの作ったブレイクポイントに入り、

 

「ぜりゃああああああ!」

 

≪二刀流≫ソードスキル《ナイトメア・レイン》16連撃をホロウリーパーの骨体に叩き込む。

 

「キシャアアアア!」

 

「(これで残り6割!)」

 

襲い来る左右の鎌を双剣で弾き、身を翻してかわしながら下がり距離をとり、

 

「レイン!」

 

「うん!」

 

「「―――共鳴!!」」

 

再度≪シンクロ≫スキル《共鳴》を発動させる。

《共鳴》の効果で俺とレインに様々なバフが表示される。

 

「速攻で決める!」

 

「わかったよ!」

 

「了解!」

 

俺が先行してホロウリーパーの鎌を受け止め、その端をレインとフィリアがソードスキルで攻撃する。

 

「フィリアちゃん!」

 

「大丈夫!レイン、スイッチ!」

 

「うん!スイッチ!」

 

骨尾の攻撃をフィリアはギリギリのところでかわし、レインとスイッチする。

 

「こっちががら空きだ!」

 

ホロウリーパーの気がレインに向いてる隙に俺は側面から片手剣ソードスキル《エヴァーティング・ストライク》8連撃を放つ。

 

「ギシャァァアアアアア!!」

 

「(これで残り5.5割!)」

 

俺たちから離れたホロウリーパーのHPを確認してそう思考で言う。

 

「キシャアアアア!!」

 

「くっ!」

 

そしてその巨体に似合わない速さで鎌を突き付けてきた。

 

「シッ!」

 

俺はそれを≪二刀流≫カウンターソードスキル《スペキュラー・クロス》2連撃で鎌の軌道を反らし逆に攻撃する。カウンターで当たり、大きくホロウリーパーのHPが減る。

 

「やあぁぁ!」

 

「てりゃぁあ!」

 

カウンターをくらい、動きが止まったその隙にフィリアが短剣ソードスキル《スラスト・フォール》3連撃重攻撃技を。レインが≪多刀流≫ソードスキル《ローディエント・ルージュ》6連撃を繰り出した。

さらにレインの《ローディエント・ルージュ》の追加効果で素早さ低下のデバフアイコンがホロウリーパーに着いた。

 

「(これで5割を下回った!)レイン!」

 

「うん!」

 

「―――スイッチ!」

 

レインと手早くスイッチして≪二刀流≫最上位ソードスキル《ロストオブ・エンデュミオン》22連撃を高速で放つ。《ロストオブ・エンデュミオン》の追加効果で俺には《共鳴》とは別のステータス上昇のバフが。ホロウリーパーにはステータス低下のデバフがついた。

 

「はあぁぁあああああっ!!」

 

双剣を高速で振るい、斬り裂き、突きを繰り返し22撃目で薙ぎ払う。

 

「ギシャァァアアアアア!!!」

 

ホロウリーパーの骨体から鮮血のような赤いエフェクトがあちこちから現れる。

さらにホロウリーパーのHPゲージにスタンが表示された。

 

「二人ともフルアタック!!」

 

「「了解!!」」

 

スタンのため動けないホロウリーパーに俺たちは多段ソードスキルを叩き込む。

 

「はあっ!」

 

フィリアは短剣最上位ソードスキル《エターナル・サイクロン》9連撃を。

 

「やあぁぁあ!」

 

レインは≪多刀流≫ソードスキル《ディバイン・エンプレス》15連撃を。

 

「はあぁぁあああああ!」

 

そして俺は≪二刀流≫ソードスキル《スターバースト・ストリーム》16連撃を放つ。

 

「キシャアアアアッ!!」

 

「これで決める!」

 

「いくよキリトくん!」

 

「ああ!」

 

俺の双剣に蒼と白のライトエフェクトが。レインの双剣には緋と銀のライトエフェクトがそれぞれ煌めいた。

 

「「―――――インフィニティ・―――モーメント!!」」

 

俺とレインは≪シンクロ≫最上位ソードスキル《インフィニティ・モーメント》30連撃を放つ。

 

「キシャアアアアアアアアアアアア!!!」

 

「はあぁぁあああああ!」

 

「やあぁぁあああああ!」

 

どんどんホロウリーパーのHPが減っていく。

ホロウリーパーも左右の鎌で攻撃するが掠りもせず、次々にその骨体に鮮血のエフェクトが現れる。

そしてラストのレインとの同時斬り裂きで、動きを止め、そのままポリゴンの欠片となって爆散して、大空洞エリアボス、ホロウリーパーは消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「それじゃあ答えを発表するよ!レインお願い!」

「了解!今回の問題の答えはⅠ:デモリュシュリーパーだよ。みんな覚えていたかな?」

「俺とレインがホロウ・エリアで最初に闘ったモンスターだったな」

「あのときは75層のボスモンスター!?ってビックリしたよ」

「まったくだな。まあ、その理由もユイのお陰でわかったけどな」

「さて、このHF編も終盤に近づいてきたよ二人とも」

「そうだな」

「うん。これからも楽しみだね」

「任せて。それじゃあみんな!」


「「「「また次回!!Don't miss it.!!」」」」


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HF編 第110話〈新しい思い出の地〉

「こんにちはソーナです。更新が遅くなってごめんなさい。それでは、今回のゲストはこちらどうぞ!」

「よっ!クラインだ、よろしくな」

「俺はエギルだ。よろしく頼むぜ」

「今回のゲストはクラインとエギルのお二人です」

「最近本編に出てねぇからここに出れてうれしいぜ」

「まあ、仕方ねぇだろ」

「ごめんなさい二人とも。出来るだけ出番を増やしたいと思いますので待っててください」

「おうよ」

「ああ」

「それでは、問題を出します。今回の問題はこちら!」


問題『今回、キリトがエギルに頼んで購入したのはなに?』

Ⅰ:アクセサリー

Ⅱ:ログハウス

Ⅲ:ペアルック服

Ⅳ:ユイへのプレゼント


「答えは本文の最後に!」




 

~キリトside~

 

 

ホロウ・エリアの攻略が一段落したある日。

 

 

 

転移門広場

 

 

「レイン、今日ついて来て欲しいところがあるんだが、いいか?」

 

俺は転移門の近くにあるカフェでレインと一緒にいた。

以前エギルに頼んだものが昨日できたのだ。

 

「え?うん、いいよ」

 

「サンキュー」

 

「それで行くところって?」

 

「83層だ」

 

「83層?」

 

疑問符を浮かべるレインに俺は意味深の笑みを浮かべて、カフェをあとにして第83層主街区ドルパへと転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~数日前~

 

 

エギルの店

 

 

「エギル」

 

「どうしたキリト?」

 

「これ買い取って欲しいんだが・・・・・・」

 

俺はアイテムストレージから以前入手した白銀の杯を取り出してエギルに見せる。

 

「・・・・・・!?おいおい・・・・・・これは俺も見たことねえアイテムだぞ。一体どこで手に入れたキリト」

 

「あー、まあある特殊クエストでなんだが、それについては俺たちの秘密ってことで」

 

「特殊クエスト・・・・・・なるほどな。俺たちの、ってことはあれか」

 

「相変わらず察しが早いな」

 

「そんで買い取るのは構わねえが。さすがに今手持ちのじゃ無理だな」

 

「即払いじゃなくて後払いでたのむ。かわりに、これを売る代わりにやって欲しいことがある」

 

「ん?」

 

俺はこれを売る代わりにやって欲しいことを言った。

その内容は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「83層にあるログハウスだぁ!?」

 

そう、第83層にあるログハウスを購入して欲しいことだ。

 

「家を一軒買えってことか?」

 

「ああ、出来るか?」

 

「あぁ、そうだなぁ・・・・・・」

 

エギルは鑑定スキルを使い、杯を見分する。

 

「確かにこれはレア中のレアだろうな。しかも特殊クエストドロップときた。今なら、かなりの値段で売れるだろうが」

 

「足りないか・・・・・・」

 

「んにゃ、まあ、なんとかしてやるさ」

 

「すまんな。それじゃ、頼むわ」

 

「おう、任せとけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エギルに杯を売った数日後、ログハウスの鍵をエギルからもらった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~現在~

 

 

第83層 ドルパ

 

 

第83層の特徴は自然豊かだと言うことだ。

景観も避ることながら辺りは自然に道溢れて、なんとなく第22層に酷似していた。

自然という構成なのでかここのモンスターは植物系統のモンスターが多く存在していた。

そして、主街区から離れた場所にあるモンスターも現れない景色のいい場所に俺とレインはいた。

 

 

「ねえキリトくん」

 

「なんだレイン?」

 

「この辺りのこと思い出さない?」

 

「俺たちの家があった22層のこと、だろ」

 

「うん♪もう22層の家に戻れないけど、あそこでキリトくんと過ごした時間はとっても充実だったよ。この辺りにもログハウスってあるのかな?」

 

レインは辺りをキョロキョロして見渡す。

 

「そう思ってな、実はもう家を買ってあるんだ」

 

「ええっ!?」

 

俺の声にレインは驚いたように振り向いてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さっきいた場所から歩いて数分後

 

「ここだよ」

 

俺はレインとエギルに頼んだログハウスの前に来ていた。

ログハウスの景観は22層の俺たちの家とそっくりだ。

 

「さ、中に入ろ」

 

「う、うん」

 

レインを促して、エギルから渡されたログハウスの鍵をオブジェクト化させログハウスの鍵差し込み口に入れ、左に回してログハウスの中に入る。

 

「・・・・・・・・・・」

 

「どう、かな?」

 

中に入ると辺りを見回すレインに俺は尋ねた。

レインはしばらく辺りを見回していると。

 

「キリトくん」

 

「ん?」

 

「ありがとうキリトくん!とっても嬉しいよ!」

 

そう言いながら抱き付いてきた。

 

「良かった。家具は基本的に同じのを用意したけど・・・・・・・」

 

まあ、実際用意してくれたのはエギルだ。

エギルから家財の配置場所や種類、色などを聞かれたから教えたが全く同じにするとは思ってもいなかった。

 

「(こりゃあとでエギルに礼を言っとかないとな)」

 

中を見てエギルにそう思っていると。

 

「そう言えば22層でキリトくんとここで過ごしたのってたったの2週間なんだよね~」

 

不意に思い出したかのようにレインが言った。

 

「そう言えばそうだったな」

 

「うぅぅ。こんなことならもっと前から来てれば良かったよ」

 

レインは恨みがましく言う。

俺はそれに苦笑いをして答えた。

 

「あはは。なら、新しく思い出を作ればいいと思うぞ」

 

「新しく作るか~・・・・・・。そうだね、そうしよう♪」

 

一気に表情を明るくするレインに俺も表情を柔らかくして浮かべる。

 

「で、なにしようか?」

 

「う~む、いざ言われると悩むな」

 

ソファーに座ったレインは疑問顔で聞いてきた。

急に言われてもさすがに悩むしかない。

しばらく悩み倦ねていると。

 

「う~ん・・・・・・あ!」

 

レインが頭上に豆電球マークを浮かべるような表情になった。

 

「ん?何かあった?」

 

「えっとね、その・・・・・・」

 

「?」

 

顔を赤らめてモジモジとするレインに俺は疑問符を浮かべる。

 

「は・・・・・・裸エプロン・・・・・・ってのはどう・・・かな」

 

「はい?」

 

レインの言った意味が理解できず間の抜けた返事を返してしまった。

 

「は、裸エプロンって、あの裸エプロン?」

 

「う、うん」

 

「あ、あの、だな・・・・・・その・・・・・・」

 

「キリトくんはちょっとだけ眼を閉じてて」

 

「え、あ、いや・・・・・・」

 

「いいから!」

 

「は、はい」

 

顔を赤くなりながら言うレインの剣幕に圧され、俺はレインの言う通りに眼を閉じた。

眼を閉じると。

 

「うぅ。思い切り言っちゃったけどいざ着てみると・・・・・・」

 

ウインドウの操作音と小さくレインの言う声が耳に入ってきた。

それからしばらくして。

 

「め、眼を開けてもいいよキリトくん」

 

そう言うレインの声が聞こえてきた。眼を開けると目の前にレインが頬を赤くして立っていた。

裸エプロンの状態で。

 

「うぅぅ・・・・・・。ど、どうかなキリトくん・・・・・・」

 

紅と白が織り混ざった何時ものエプロンを着て、エプロンの裾を押さえて聞いてきた。

 

「・・・・・・・・・」

 

「な、なにか言ってよ」

 

思わず見とれていた俺にレインがさらに顔を赤くして聞いてきた。

 

「に、似合ってるよレイン」

 

俺はただそれだけしか言えなかった。それだけ今のレインに見惚れていたのだ。

実際今のレインはいつもと違う色香を出していて、正直可愛いというより大人びて見える。

以前メイド服を着ていたレインとはまた違う感じだ。

 

「あ、ありがとうキリトくん」

 

「お、おう」

 

そう俺とレインに再び沈黙が走った。

そしてしばらくして。

 

「そ、それでなんだけど・・・・・・なにしたらいいかな」

 

「そ、そうだな。・・・・・・料理とかか?」

 

「りょ、料理!?」

 

「あ、ああ」

 

「い、いいけど・・・・・・恥ずかしいよ」

 

「じゃ、じゃあ他のにするか」

 

「う、ううん。ちょ、ちょっと待ってて」

 

レインはそう言うと更に顔を赤くして台所にむかった。

 

「(まさかその状態で料理するとか・・・・・・大丈夫かレイン・・・・・・)」

 

俺はカクカクと台所に行くレインにそんなことを思った。というかレインの姿が扇情的でこっちまで恥ずかしくなる。

台所に立ったレインが料理しようとしたその時。

 

「ふにゃぁ~・・・・・・」

 

「れ、レイン!?」

 

レインがそんな声を出して倒れた。

慌てて抱き抱えると目が回っていて気絶していた。

さすがにこれ以上は耐えられなかった、というより羞恥心が許容限界を超えたのだろう。

俺は取り敢えずレインを抱き抱え、寝室にあるベットに運び寝かせるとその上に毛布を掛けリビングに戻った。

 

「・・・・・・コーヒーでも飲むか」

 

そう呟くと台所でコーヒーを用意しストレージから軽食を出して、レインが目覚めるまで待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間後

 

 

「お、おはようキリトくん・・・・・・」

 

起きたらしいレインが寝室から元の服装で戻ってきたが、その顔はまだ赤かった。

 

「お、おう、おはようレイン」

 

「え、えっと、ごめんね」

 

「いや、さすがにあれはレインでもああなるよ」

 

「そ、そうだね」

 

気まずそうに話していると。

 

「ん?」

 

「え?」

 

着けていた儀式の指輪が光始めたのだ。

やがて光が収まると視界のフォントに『「貴重品」儀式の指輪(緑色)』を取得しました、と表示された。

 

「指輪の色が・・・・・・・!」

 

「水色から緑色に変わった・・・・・・!?」

 

「も、もしかしてさっきの裸エプロンで!?」

 

「《思い出の地》が俺とレインの家で、そこで思い出に残るようなことをしたからクエストが進んだ・・・・・・のか!?」

 

「そ、そんなのありなの!?」

 

「さ、さあ」

 

「うぅぅ・・・・・・まさか裸エプロンでクエストが進むなんて思わなかったよ~」

 

「同じく・・・・・・・」

 

俺とレインはなんとも言えない表情で互いの顔を見会う。

 

「でも、キリトくんと新しい思い出になったから良かったかな?私が提案してあれなんだけどね」

 

「そ、そうだな」

 

「言っておくけどキリトくんの前以外であんなことしないからね」

 

「わ、わかってるよ」

 

「ウフフ。さて、それじゃ、軽くお昼作っちゃうね」

 

「ああ」

 

レインは気分を向上して台所に向かい、料理を始めた。

このログハウスを買って良かったなと思ったのと、エギルに礼を言っておかないと、と思った瞬間でもあった。

そのあとはレインの作ったお昼を食べ、周囲の探索した。さすがに22層のような感じじゃなかったが、大きな湖に桟橋など、所々似ているオブジェクトがあった。

 

「んー・・・・・・あぁ・・・気持ちいいな」

 

「そうだね~」

 

俺とレインは人気のない湖の岸辺の芝に寝転がって次層の天井空を見てそう呟く。

風が緩やかになびき吹き、心地よい風だ。

 

「今度ユイも連れてピクニックに来るか」

 

「うん!いいかも!ユイちゃんも喜ぶよ!」

 

「よし!じゃあ明日辺りにでも来るか!」

 

「うん!」

 

明日ここでピクニックをする予定を立て、芝に横になりながら互いの手を握る。

 

「アインクラッドの階層もあと残り10層か」

 

「ホロウ・エリアは大空洞エリアを攻略したから次は異界エリアだね」

 

「ああ。そしてあとは管理区の地下にある迷宮を攻略するだけだ」

 

「早くクリアしないとね」

 

「そうだな。と言ってもまだ、遺棄エリアも攻略終わってないけどな」

 

「アハハ、そうだね。そっちも攻略しないとね」

 

俺とレインはクスッと笑って今の攻略状況を思う。

レインがこっちを向き、それにつられて俺もレインの方に視線を移して見る

 

「それに・・・・・・」

 

「ん?」

 

「この『祝福の儀式』もクリアして早くキリトくんと結婚状態に戻さないと」

 

「そうだな・・・・・・」

 

「そうじゃないとキリトくんが浮気しちゃうかもしれないし」

 

「だ、誰がするか!!」

 

「ウフフ、冗談だよ。でも、キリトくん」

 

「ん?」

 

「ユウキちゃんとランちゃんとはちゃんと話した方がいいよ」

 

「え?ユウキとランと?」

 

「うん。まあ、詳しくは二人から聞いた方がいいよ」

 

「???」

 

レインの言葉の意味が分からず俺は疑問符を浮かべた。

俺の表情を見て分かったのかレインは少し呆れた表情になって俺を見た。

 

「ホント、キリトくんって唐変木だね」

 

「???」

 

「私から言うのは場違いだと思うから、自分で二人に聞いてね」

 

「あ、ああ」

 

戻ったらユウキとランと話した方が良さそうだな、と俺は判断した。

 

「それにしても気持ちいいな・・・・・・眠くなってきたかも」

 

「そうだね~。私も眠くなってきたよ」

 

「そう・・・ふぁ~・・・だな」

 

「ちょっとだけ寝ようかな?」

 

「いいかもな」

 

「うん」

 

俺は索敵スキルを全開にして人が近づいてきたら起きられるようにして、レインの手を握りながら眼を閉じた。

すると直ぐ様睡魔が来て俺を眠りへと誘った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、んん~・・・・・・」

 

起きて眼を開けるとすでに夕陽が登って辺りを茜色に染め始めていた。

上を見るとレインの笑顔が俺の方を向いていた。

 

「おはようキリトくん。よく眠れた?」

 

「あ、ああ。ん?なんでレインが俺の上にいるんだ?」

 

そう言うと同時に俺の頭に芝生の感触ではない温かく柔らかい感触が伝わってきた。

 

「もしかしてレインの膝の上、か?」

 

「正解、私の膝の上だよ。気持ちいい、かな?」

 

「あ、ああ」

 

気持ちいいとかの以前に少し気恥ずかしかったりする俺である。

 

「寝なかったのか?」

 

「ううん、寝たよ。起きたのはキリトくんが起きる15分くらい前、かな?」

 

「そうか。よっ、と」

 

レインの膝枕から上体を上げ芝生の上に座る。

 

「そろそろ帰るか」

 

「うん」

 

俺とレインは立ち上り、その場をあとにしログハウスではなく主街区に向かった。75層のアークソフィアに戻るからだ。

転移門からアークソフィアに転移した俺とレインはそのまま商業区で買い物を済ませ、エギルの店に戻った。

エギルの店に入るとユイがエギルの手伝いをしている姿があった。

 

「ただいまユイ」

 

「ただいまユイちゃん」

 

「お帰りなさいパパ、ママ」

 

「おう、お帰りお二人さん」

 

「ログハウス、サンキューなエギル」

 

「なに、良いってことよ。気にすんな」

 

「すまん」

 

「それより、せっかくログハウス買ったんだユイちゃんと家族3人で向こうにいなくていいのか?」

 

「まあ、時々向こうに行くよ」

 

「そうかい。まっ、攻略もそうだが家族の時間も作れよキリト」

 

「分かってるさ。クラインにもさんざん言われてるからな」

 

「ハハハ、さすがクラインだな」

 

エギルと軽く会話を交わし、俺はレインとユイと部屋に戻った。

 

「ユイ、明日ピクニックに行かないか?」

 

「ピクニック、ですか?」

 

「うん。ユイちゃんに見せたい場所があるの」

 

「本当ですか!やったー!パパとママと三人でピクニックです!」

 

ユイの嬉しそうにはしゃぐ姿に、俺とレインはつい笑顔が漏れ出た。

 

「(あの家はこれからの俺たちの思いでの場所になるな。出来るだけ家族3人で過ごせればいいな)」

 

俺はユイとレインを見ながらそう脳裏に考え思ったのは秘密だ。




「みんな答えは分かったかな?今回の答えの発表はクラインにお願いするよ。クライン、よろしく!」

「おうよ!今回の問題の答えはⅡ:ログハウスだぜ」

「これでキリトのやつも家族3人でいられる時間が増えるといいんだけどな」

「全くだな。もう少しユイちゃんと一緒に居ろっつんだ」

「ハハハ、さすが大人の二人は違うね」

「まあな」

「俺たちにとっちゃあキリの字たちはまだ子供だからな。大人の俺たちが見てあげねぇとな」

「さすがだね。これからもキリトたちを支えて上げてね」

「おうよ!任せとけって!」

「ああ!もちろんだ!」

「それでは時間になりましたので今回はこの辺で。また次回、お会いしましょう」

「そんじゃまたなみんな!」

「また会おうぜ!」


「「「また次回!!Don't miss it.!!」」」



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HF編 第111話〈雪山エリアボス、ヴェイバー・ザ・ヴァイブレイター〉

「ヤッホー、遅くなってごめんなさい!さて、今回も問題を出すよ~!」

「今回の問題はこれだよ!キリトくん!」

「おう!」


問題『今回のボスの特殊攻撃はどんな攻撃?』

Ⅰ:音

Ⅱ:氷

Ⅲ:影

Ⅳ:毒

「答えは本文の最後に!」




 

~キリトside~

 

 

 

雪山エリア 生け贄を捧げた樹霜広場

 

 

「これで周囲にあのボスの超音波みたいな音は響き渡らないね」

 

「そうだな。あのときは鼓膜が破れるかと思ったぜ」

 

「あれ、SAOの中に鼓膜ってあるの?」

 

「そこは言うなよユウキ・・・・・・」

 

「やれやれ・・・・・・」

 

俺たちは今遺棄エリアの雪山エリアにいた。パーティーメンバーは俺、レイン、フィリア、ユウキ、ランの5人だ。目的はここのボスを倒すこと。このエリアは雪山エリアと表示されている通り、辺り一面雪に覆われていて、火山エリアの熱いと比べるとこっちは寒いが付く。

雪山エリアの攻略は二日ほどで終わったがエリアボスが厄介だった。何故なら、ここのエリアボスはコウモリのような超音波を左右の羽らしき翼から発するからだ。そしてそれは当然、雪が舞い散るこの中で反響して、耳を抑えるのが精一杯で、とてもじゃないが戦闘できる余裕がなかったのだ。

だが、それもふたつのアイテム。『氷樹の音叉【煌】』と『氷樹の音叉【輝】』をフィールドの中央にあった祭壇に差し込み、それにより雪が止み、音が反響しなくなり今に至る。

 

「さてと、それじゃあ行くか」

 

「うん!」

 

「ええ!」

 

「オー!」

 

「はい!」

 

俺たちは準備を整え、祭壇の奥にいるエリアボスの場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 'ホロウ・ミッション'

 

 場所:生け贄を捧げた樹霜広場

 

 クエスト名:波動の暴君

 

 討伐ボス:ヴェイパー・ザ・ヴァイブレイター

 

 

 

 

 

 

 

ボスのいる広場に付くと視界にウインドウが現れそう表示された。

そして目の前にいるボスの頭上に表示されているボスの名前は―――

 

「Boss:"Vaber The Vibrator"―――」

 

と表示されていた。

 

「ヴェイパー・ザ・ヴァイブレイター・・・・・・」

 

「高速の振動者・・・ですか・・・」

 

「見た通りだね・・・・・・」

 

「手強そう・・・・・・」

 

順に俺、レイン、ラン、ユウキ、フィリアが目の前のボス。ヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターを見て言う。

 

「そんじゃ・・・・・・行くぞ!」

 

「「「「了解!」」」」

 

俺たちはそれぞれ鞘から剣を抜刀し、ヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターに向けて駆ける。

レインを除いて。

 

「行くよ!―――サウザンド・レイン!」

 

走る俺たちの頭上をレインのサウザンド・レインが駆け抜け、ヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターに迫る。

 

「ギシャアアアア!」

 

ヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターは甲高い声を発して左右の羽らしきものを羽ばたかせて直線上に進むサウザンド・レインを素早く横にかわす。

だが、これは予測通り。

 

「ラン!ユウキ!」

 

「ええ!」

 

「うん!」

 

ヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターが避けた場所には既にランとユウキの姉妹がいる。

そしてその反対側には俺とフィリアがいた。

 

「ヤアアアアアアッ!」

 

「セヤアアアアアッ!」

 

二人の声とともに、二人の握る片手剣がヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターの身体を切り裂いた。

 

「キシャアアアア!」

 

「まだです!ハアアアアッ!」

 

ランは自身の片手剣。『クラウィス・プロミッシ』を上段に構え≪変束剣≫ソードスキル《ナイトレス・クラウド》8連撃を繰り出す。

 

「セリャアアアア!」

 

そしてランのソードスキルと同時にユウキが≪紫閃剣≫ソードスキル《ノクティス・ラージュ》6連撃を放った。

 

「シャアアアアア!」

 

ヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターは甲高い断末魔を上げ二人のソードスキルが終わるとその場から素早く離れ、黒い球体を出して俺たちに向けてきた。

 

「待避!」

 

俺の声に全員その場から大きく避け、ヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターが繰り出した黒い球体を避ける。

 

「今度はこっちの番だ!」

 

両手に持つ双剣を構え、≪二刀流≫ソードスキル《ダブルサーキュラー》突進2連撃を放つ。

だが、《ダブルサーキュラー》が当たる直前ヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターはその身を後ろにバックし下がりながらさっきと同じ球体を飛ばしてきた。だが、今度はさっきのより数が多いが球体は小さい。

 

「くっ!」

 

《ダブルサーキュラー》の技後硬直が解けた俺は直ぐ様その場を離れる。

 

「なっ!?」

 

だが、今度の球体は避けても避けても追い掛けてきた。

 

「くっ!追尾弾かよ!」

 

俺は直ぐ様避けるのを止め地面の雪に足を踏みしめて迫り来る球体を凝視する。

 

「一か八か・・・・・・」

 

迫ってくる球体の数は7。

なら・・・・・・

 

「ハアアアア!」

 

俺は右手の『ブラックローズ・ナイト』を肩に担ぎ、片手剣にペールブルーのライトエフェクトを輝かせる。

 

「キリトくん!?なにを!?」

 

「キリトさん!?」

 

「キリト!?」

 

「キリト、なにを!?」

 

俺の光景にヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターを追い掛けて攻撃してる四人が視てくる。

そして、ヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターの放った球体が俺に当たった。

いや・・・・・・

 

「ハアアアア!」

 

当たる直前に迫ってきた7つの球体、全てを片手剣ソードスキル《デットリー・シンズ》7連撃で斬り裂いた。

 

「「「「え・・・・・・えぇぇぇえええええっ!?」」」」

 

俺の今の光景にレインたちはあまりの絶叫を出した。

よく見てみると気のせいかボスのヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターも動きを止めて唖然としているような感じが取れた。

 

「ふむ。あの時のレインのサウザンド・レインのを参考にして見たがうまくいったな」

 

レインのサウザンド・レインは追尾式ではないが速度が尋常じゃないほどに早い。それに比べたら今の球体なぞ遅く感じられる。

 

「今度はこっちから行くぞ!」

 

俺は動きを止めてるヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターに近づき、片手剣ソードスキル《ハウリング・オクターブ》8連撃を繰り出す。

高速の突き5回、切り下ろしからの切り上げ、そして切り下ろし。この攻撃でヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターの残りHPは一番上の3段目の6割まで減った。

火山エリアのガイアルド・ザ・ヴォルケーノに比べると防御力はそんなに高くない。

 

「キリトくんだけに良いとこばっかりさせないんだから!フィリアちゃん!」

 

「うん!」

 

《ハウリング・オクターブ》が終わると直ぐ様、レインの片手剣ソードスキル《エヴァーティング・ストライク》7連撃が。フィリアは短剣ソードスキル《インフィニット》5連撃を。それぞれ追撃してさらにヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターのHPを減らす。

 

「キシャアアアア!!」

 

甲高い断末魔を上げて、ヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターは左右の羽をばたつかせて俺たちを振り払う。

 

「くっ!」

 

振り払われた俺たちはヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターから離れた場所に跳ばされた。この場所は開けたエリアで、辺りには木々があるだけの見渡しがいい場所だ。

 

「ギシャアアアア!」

 

上空に舞い上がったヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターは俺たちに向けて作り出した幾つもの球体を飛ばしてきた。

俺たちはその球体をギリギリのところで避ける。球体が当たった場所は少し雪が抉られていた。

 

「ラン、あいつを地面に落とせないか?!」

 

俺は隣に避けてきたランに聞く。

 

「多分出来ると思います!」

 

「じゃあ頼む!レインはランの援護を!ユウキとフィリアは墜ちてきたあいつをソードスキルで攻撃するぞ!」

 

「うん!」

 

「わかった!」

 

「了解!」

 

「カウント3でいく。頼むぞラン」

 

「まかせてください!」

 

俺は降り注がれる球体を避けながらカウンダウンする。

 

「3・・・2・・・1・・・今!」

 

「いきます!―――ラスティー・ネイル!」

 

ランは剣の射程を延ばして攻撃する唯一のソードスキル、≪変束剣≫最上位ソードスキル《ラスティー・ネイル》を繰り出した。

ランの《ラスティー・ネイル》は鞭のようにヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターに纏わりつき、動きを止める。そしてそこへ。

 

「ヤアアアアアアッ!―――サウザンド・レイン!」

 

レインの《サウザンド・レイン》がヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターの左右の羽を攻撃する。

 

「キシャアアアア!!」

 

左右の羽を攻撃されヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターが地面に墜ちてきた。

 

「ウオオオオオオ!」

 

「ハアアアアアア!」

 

「セエェェイ!」

 

墜ちてきたヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターに連携でソードスキルを叩き込んでHPを減らしていく。

ヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターのHPが3段目の残り2割にまで減った途端、ヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターが身体を縮込めたかと思うと身体から甲高い音を出して俺、ユウキ、フィリアを離れた場所に飛ばした。

 

「なっ!?今のは・・・・・・!」

 

「うっ・・・・・・!」

 

「くっ・・・・・・!」

 

俺たちは三方に跳ばされるがHPはたいして減っていなかった。

地面に雪が積もっているというのもあるだろうが、あれは攻撃というよりは相手を近づけさせないための攻撃だと思った。

 

「今の音の衝撃波か・・・?」

 

「音?」

 

「ああ、恐らくあの左右の羽の中央が音を出すスピーカーなんだと思う」

 

「音・・・・・・なるほどね」

 

「どうするのキリト?」

 

「戦い方はさっきの戦法がいいと思う。空に飛んだらランの《ラスティー・ネイル》で攻撃してもらいたいけど・・・・・・・」

 

「《ラスティー・ネイル》は≪変束剣≫の最上位ソードスキルなので技後硬直が通常より少し長いです。それにクールタイムも入れないと・・・・・・」

 

「私の《サウザンド・レイン》も同じかな」

 

「ん~・・・・・・・」

 

今一上手くいく攻略法が思い付かない俺たちにヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターは遠距離から攻撃をしてくる。

 

「ふっ!」

 

俺たちは散開してそのショット攻撃をかわす。

 

「ん?」

 

だが、その途中ヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターの動きがさっきより遅くなっているのに気付いた。

ヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターのHPゲージを見てみると、そこには鈍足のデバフアイコンが付いていた。

 

「(あのデバフ・・・もしかしてランの《ラスティー・ネイル》の追加効果でか?ってことは動きさえ止められれば・・・・・・)」

 

迫り来る球体をステップで避け、ランの位置を確認する。ランの位置はヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターの右後方だった。

 

「レイン」

 

「どうしたのキリトくん?」

 

俺はいつの間にか隣にいたレインに声を掛ける。

 

「あいつの攻略法が見えたかもしれない」

 

「えっ!?」

 

「多分その鍵はランだ。リーザがいたらもしかしたら変わるかも知れなかったけど・・・・・・」

 

「もしかしてラムちゃんのソードスキル?」

 

「さすがだなレイン」

 

「じゃあ私がボスを引き付けるからその間にお願い」

 

「頼む」

 

「えへへ、このレインちゃんにお任せあれ♪」

 

そう言うとレインはヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターに向かっていった。

 

「ユウキちゃん!フィリアちゃん!いくよ!」

 

「うん!」

 

「ええ!」

 

レインの左右からフィリアとユウキが駆け抜けていく。

そしてその間に俺はランに近づく。

 

「ラン!」

 

「キリトさん!?どうしたんですか?」

 

「あいつを倒すにはランのソードスキルが必要だ!」

 

「???・・・・・・!・・・なるほど・・・そう言うことですか・・・・・・」

 

ランは当初俺の言った意味に首をかしげていたが、レインたちが相手しているヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターの状態を見てハッと気付いたみたいだ。

 

「出来るか?」

 

「ええ・・・任せてください!」

 

「それじゃ、頼む」

 

「はい!」

 

俺とランは軽くうなずき同時にレインたちが相手しているヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターに近付いていく。

 

「レイン!」

 

「!うん!」

 

「スイッチ!」

 

レインの攻撃でスタンさせその間に俺が≪二刀流≫ソードスキル《デブス・インパクト》重攻撃5連撃を放つ。

 

「ラン!」

 

「はい!」

 

そして反対側からランが≪変束剣≫ソードスキル《エルネイト》5連撃を繰り出す。

 

「キシャアアアア!」

 

甲高い悲鳴を出すヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターのHPゲージには鎖で絡められたようなデバフアイコンが表示される。

 

「よし!全員、ソードスキルで攻撃!」

 

俺はそう言うと≪二刀流≫ソードスキル《ナイトメア・レイン》16連撃を。レインは≪多刀流≫ソードスキル《ディバイン・エンプレス》15連撃を。ユウキは≪紫閃剣≫ソードスキル《インフィニット・ゼロ》10連撃を。ランは≪変束剣≫ソードスキル《シュヴァルツィエ・ブレイド》11連撃を。フィリアは短剣ソードスキル《アクセル・レイド》12連撃を立て続けにヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターに放つ。

 

「ギシャアアアア!!」

 

《デブス・インパクト》の追加効果で防御力低下のデブスが掛けられているに加え、ランの《エルネイト》の追加効果の拘束で動けないヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターは甲高い断末魔を上げながら、次々と俺たち5人の多段ソードスキルを喰らい、HPゲージをみるみる削られていった。

 

「よし!これで残り約6割まで削れた!」

 

ソードスキルの多段攻撃を受けたヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターのHPゲージを見て俺はそう言った。

多段ソードスキルを受けたヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターの残りHPは2段目の半分ぐらいにまで削られていて、ゲージの色がイエローに入っていた。

 

「パターンが変わると思うがボスの動きを見極めれば避けられるはずだ!続けていくよ!」

 

「「「「了解!」」」」

 

俺たちは気合の入った声で会話し拘束が解け空中に浮かぶヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターに向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間後

 

 

「ハア、ハア、ハア・・・」

 

「ヤバいな、状態異常系の攻撃を連発してくる」

 

俺とレインは戦闘中のラン、ユウキ、フィリアを見てそう言った。

俺たちが下がっている理由はポーションでHPの回復と出血状態を回復させるためだ。

ヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターのHPゲージをイエローにまで削った後、幾つか攻撃パターンが変わったり増えたりしたがなんとか対処できた。

だが、ヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターのHPが残り1段にまで削れたときにそれは変わった。何故なら、ヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターは他のエリアボスと同じように身体に紫色のオーラらしきものを纏うと動きや攻撃が速くなったのだ。しかも、繰り出してくる遠距離からの球体は毒や出血など状態異常や鈍足やスタンなどのデバフも追加効果されていたのだ。

さらに厄介なのが大きな球体を近距離から爆発させることだ。音の攻撃なため後方に吹き飛ばされる他スタンや出血、鈍足などのデバフ効果もある。残り1段になったときにいきなりその攻撃を俺とユウキ、ランは喰らい回復するまでレインとフィリアの二人がタゲを取らなくてはならなくなったのだ。そのため、残り3割のHPゲージを見ながらも俺たちは慎重に攻撃しなくてはならないのだ。だが、このままでは不利にしかならない。ボスは空を飛んでいるのだ。ランの《ラスティー・ネイル》やレインの《サウザンド・レイン》で遠距離攻撃や《ソニックリープ》など上空に向けて放てるソードスキルがあるからと言っても基本は地に足を付けての戦闘だ。

前にリーファ(スグ)が言っていた、ALOというゲームなら楽なのだろう。確かそのゲームにはリーファの背中にあるのと同じ羽が全てのプレイヤーに付いているとリーファから聞いたはずだ。だが、ここはSAOの中だ。なら、SAOの世界での攻略のしかたもある筈だ。さっきの《ラスティー・ネイル》と同じように。

 

「あの動きに対応するならあれしかないな」

 

「そうだね・・・・・・使う?」

 

「ああ。やるしかないな。いけるかレイン?」

 

「うん、もちろんだよ。キリトくんは?」

 

「俺も大丈夫だ」

 

「わかった」

 

「ああ、それじゃあ・・・・・・」

 

「うん・・・・・・」

 

俺とレインは同時に声を揃えて言う。

 

「「共鳴(レゾナンス)!」」

 

≪シンクロ≫スキル《共鳴》を発動させると、俺とレインのHPゲージに様々なバフが付けられた。

 

「「―――いくよ!」」

 

そして同時にユウキたちか相手するヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターに掛けていった。

 

「キリト!」

 

「ッ!」

 

ユウキの声と同時にヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターは幾つもの球体を浮かべ、それを俺たちに向けて放ってきた。

《共鳴》を発動する前の俺とレインだったら危なかったかもしれないが、今は《共鳴》を発動している。

そして、それはレインもだ。

俺とレインは素早く目線でうなずき左右に散開する。

追尾式の球体なのか俺とレインに5つずつ付いてくる。俺は途中で立ち止まり、迫り来る球体をその場で動かず待つ。

 

「「キリト!」」

 

「キリトさん!」

 

ユウキ、フィリア、ランの声が聞こえるなか俺はその場で動かず待ち続ける。そして5つの球体が俺に向かってギリギリのところで俺は素早く動き、球体を同士討ちにして相殺させ、ヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターに向かう。

 

「ハアアアアアア!」

 

そして振り抜き様に一閃。いや、ニ閃を浴びせる。

 

「キシャアアアア!」

 

「こっちもいるよ!」

 

声を上げて俺の方を向いたヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターの後ろをレインが一閃して斬り裂く。

 

「ギシャアアアア!」

 

苛立ったように声を上げるヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターは俺とレインを吹き飛ばそうと、音の衝撃波を出してきた。だが、衝撃波を喰らう前に俺とレインは下がってその衝撃波を避ける。

そして、衝撃波を出し終えたのと同時に、

 

「ハアアアアアアッ!」

 

「ヤアアアアアアッ!」

 

≪シンクロ≫ソードスキル《スカイ・ストライザー》突進12連撃を放ちHPを削る。

 

「キシャアアアア!」

 

「いるのはキリトとレインだけじゃないよ!」

 

ユウキの声とともに更に3つのライトエフェクトがヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターを襲う。

これで残りHPは2割以下にまで減った。

ヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターは地面に倒れ付し起き上がるのに精一杯の感じだった。

 

「これで決めるぞ!」

 

「うん!」

 

「わかった!」

 

「はい!」

 

「了解!」

 

「私からいきます!・・・ヤアアアアアアッ!―――ラスティー・ネイル!」

 

まず先行してランが≪変束剣≫最上位ソードスキル《ラスティー・ネイル》でヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターを攻撃する。

 

「次はわたしと!」

 

「僕の、番だよ!」

 

ランが《ラスティー・ネイル》でヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターの動きを止めている隙に、フィリアとユウキの二人がソードスキルで攻撃する。

 

「ハアアアアアアッ!」

 

「ヤアアアアアアッ!」

 

フィリアは短剣ソードスキル《シャドウ・ステッチ》7連撃を、ユウキは≪紫閃剣≫最上位ソードスキル《マザーズ・ロザリオ》11連撃を放つ。

 

「ギシャアアアア!!」

 

これで残りHPは1割以下にまで削れた。

 

「いくぞレイン!」

 

「うん、キリトくん!」

 

《ラスティー・ネイル》から解放されたヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターは衝撃波や球体を飛ばしてくるが俺とレインはステップで避け、接近する。

 

「これで終わらせる!セアアアアアアアアッ!」

 

「ヤアアアアアアッ!」

 

「「―――インフィニティ・モーメント!」」

 

≪シンクロ≫最上位ソードスキル《インフィニティ・モーメント》30連撃を放ち、HPを削る。

 

「キシャアアアアアアアア!!」

 

「「ハアアアアアアッ!」」

 

俺とレインは交互に放ちラスト2擊を同時に放ち十字に斬り裂いた。

 

「キシャアアアア!」

 

甲高い断末魔を上げながら雪山エリアボス、ヴェイパー・ザ・ヴァイブレイターはポリゴンの欠片となって爆散して消え去った。

 

 

 

 

 

 

 





「みんな答えはわかったかな?今回の問題の答えはレインにお願いするよ!」

「うん!今回の問題の答えはⅠ:音だよ」

「いや~、今回のボスは厄介だったな」

「ホントだね。さすがに宙に浮かぶボス相手は大変だったよ」

「お疲れ様二人とも。次回もまた頑張って」

「ああ!」

「もちろん!」

「それじゃあ今回はここまで!」


「「「また次回!!Don't miss it.!!」」」



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HF編 第112話〈ユウキとラン〉

「こんにちはソーナです。今回のゲストはこちら!」

「プリヴィベート、みんな♪レインだよ」

「プリヴィベート、レイン」

「プリヴィベート、ソーナさん。呼んでくれてありがとう」

「今回はキリトとユウキ、ランがメインだからね。レインにも見てもらわないといけなかったんだ」

「そうなんだね」

「それじゃあ今回の問題を出すよ!今回の問題はこちら!」


問題:『キリトとユウキ、ランの関係は何?』

Ⅰ:友達

Ⅱ:恋人

Ⅲ:幼馴染

Ⅳ:パートナー


「答えは本文の最後に!」




 

~キリトside~

 

 

 

「キリトく~ん!」

 

「ん?どうしたレイン?」

 

ある日の昼間。何時ものお気に入りの丘で横になっているところへレインがやって来た。

何故、今日攻略に行かないのかと言うとアスナとクラインから今日はゆっくりと休むこととと言われたからだ。

まあ確かにここ最近朝早くから遅くまで攻略に付きっきりだったからなぁ~。

そんなわけで武器のメンテをリズに任せて、俺はお気に入りのこの場所でのんびりすることにした。

そしてそこへレインがやって来た、と言うわけだ。

 

「どうかしたのか?」

 

「ううん。とくに何かあったと言うわけじゃないよ、これをリズっちから渡されたから届けに来たんだよ」

 

そう言ってレインが送ってきたのは俺が今朝リズにメンテをお願いした双剣だった。

 

「サンキューなレイン」

 

「うん。でも言ってくれれば私がメンテしたのに・・・」

 

俺の横に座るレインは若干膨れ顔で文句を言ってきた。

 

「ご、ごめん。レインも忙しそうだったからさ」

 

「うぅぅ・・・・・・。キリトくんのためなら私は何でもしてあげるんだからね」

 

「な、なんでもって・・・・・・」

 

レインのなんでも、という台詞に俺はつい先日にあった83層のログハウスでのことを思い出した。

あのときのレインの裸エプロン姿を脳裏に思い出していると、

 

「キリトくん、今なに想像したのかな?」

 

ジト目でレインが覗いてきた。

 

「べ、別に、な、なにも想像してないぞ!///」

 

俺は慌ててそう言うが、

 

「顔真っ赤だよ?」

 

「~~っ!///」

 

レインに冷静に指摘されてなにも言えなくなった。

 

「もしかして・・・この間のこと思い出していたり・・・・・・」

 

「うっ・・・!」

 

「や、やっぱり・・・///」

 

レインも思い出したのか顔を赤くして答えた。

 

「わ、私だって勢いで言って着ちゃったけど、恥ずかしかったんだからね」

 

「わ、わかってるって」

 

「ホントに~?」

 

「ホントだって・・・・・・」

 

「・・・・・・私の裸エプロン見た感想は?」

 

「いつもと違った色気があって似合っていて、可愛かったと言うか何て言うか・・・・・・って!ちょっと!?」

 

レインの質問につい答えてしまった俺は慌てて口を閉じるが時遅し。

 

「~~///」

 

レインはさらに顔を真っ赤にして湯気でも出るのではないかと言うほど赤くなっていた。

さすがに言った俺も恥ずかしいと言うかなんとやら。互いに気まずい感じになった。

 

「わ、私のあんな姿見せるのはキリトくんだけなんだからね・・・・・・//////」

 

「あ、ああ・・・・・・//////」

 

さらに気まずい空気が俺とレインを包み込んだ。

とにかく話題を反らすため俺は思い出したかのようにレインに聞いた。

 

「と、ところでどうしたんだ?」

 

「話を反らそうとしている気がするけどそれは置いておくとして。ユウキちゃんとランちゃんがキリトくんのこと探していたよ?」

 

「ユウキとランが?」

 

「うん」

 

ユウキとランが俺を探しているらしいがどうしたんだろう?急ぎならメッセージを送ればいいはずだが。

 

「わかった。それでユウキとランは何処にいるんだ?」

 

「二人ともランちゃんの部屋にいるよ」

 

「わかった、じゃあちょっと行ってくるよ」

 

「うん。・・・・・・・・・・キリトくん」

 

いつもと違ってどこか真剣身を帯びたレインの声に俺は振り返ってレインを見た。

レインの表情は真剣な顔だった。

 

「ん?」

 

「ユウキちゃんとランちゃんの気持ちに答えてあげてね」

 

「???」

 

俺はレインの言った意味が分からず首をかしげる。

するとレインは苦笑をして行くように促した。

 

「はい♪早く行かないとダメだよ。二人が待ってるから」

 

「あ、ああ」

 

俺はそう返事してユウキとランの待つ、ランの部屋に向かった。

 

~キリトside~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~レインside~

 

 

 

「キリトくん・・・ユウキちゃんとランちゃんにちゃんと答えるかな・・・・・・」

 

私は以前、ユウキちゃんとランちゃんと話したことを思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~回想~

 

 

 

「ユウキちゃん、ランちゃん」

 

「どうしたのレイン?」

 

「どうかしましたかレインさん?」

 

ある夜の日、私は2階に上がろうとするユウキちゃんとランちゃんの二人を呼び止めた。

 

「あのね、二人に聞きたいことがあるんだけど・・・・・・」

 

「ボクと姉ちゃんに?」

 

「私とユウキにですか?」

 

「うん。ここじゃ、その、あれだし何時もの場所で話そう?」

 

「うん、わかった」

 

「わかりました」

 

ユウキちゃんとランちゃんを連れて私はエギルさんのお店を出て、私たちがよく来る何時もの丘に来た。

今日の夜空は三日月で77層の底部分には満面の星空と三日月が出ていた。

 

「それでどうしたの?ボクと姉ちゃんに話って?」

 

ユウキちゃんの質問に私は振り向いて答えた。

 

「あのね、ユウキちゃんとランちゃんってキリトくんのこと、好き、でしょ?」

 

「「!!」」

 

ユウキちゃんな質問に私はそう問い返して二人に聞いた。ユウキちゃんとランちゃんの反応を見る限り当たってるみたいだね。

 

「あ、別にそれで何か言いたいって言うわけじゃないからね」

 

私は慌ててユウキちゃんとランちゃんに言う。

 

「・・・・・・何時から気付いていたんですか・・・?」

 

ランちゃんが少し気まずそうに聞いてきた。

 

「何時からかはわからないけど、ユウキちゃんとランちゃんがキリトくんに向ける視線とかそう言うのが私と同じだったから・・・・・・。あとは、恋する乙女の勘、かな?」

 

私は優しく微笑みを浮かべてランちゃんに返す。

実際、ユウキちゃんとランちゃんの視線が私と同じだったから分かったってのもある。たぶん、二人は昔からキリトくんのことが好きだったんだと思う。けどそれを横から私が盗っちゃったんだと思うだ。そう思うと何処か罪悪感が生まれてきた。

 

「・・・ええ・・・・・。私はキリトさん・・・・・・いえ、和人くんのことが大好きです」

 

「うん・・・。ボクもキリトのこと・・・・・・和人のこと大好きだよ」

 

二人は顔を少しだけ赤くして言った。

 

「ごめんなさいレインさん。けど、この気持ちだけは・・・・・・和人くんを好きだと言うことはレインさんにも負けられないんです」

 

「ボクも。和人のこと好きだって気持ちはレインにも負けてないよ」

 

「うん・・・。わかってるよユウキちゃん、ランちゃん・・・。私もキリトくんのこと大好きだから。この世界の誰よりも、一番大好き」

 

私は三日月が浮かぶ夜空を見てユウキちゃんとランちゃんに言う。

私がキリトくんのことを好きだって感じたのは何時からなんだろう。55層の白竜の巣でキリトくんに思いは伝えた。思いを伝える前、私はいつも時間があるとキリトくんのことをつい眼で追っていた。キリトの姿や寝ている顔、動きなど全て。ロシアと日本のハーフでこのベージュ色の髪で現実(リアル)でよくからかわれていた髪を見ても何も言わずに、ただ綺麗だと言ってくれたキリトくんを、ううん、和人くんを私は大好き。

初めてあったのはデスゲームが始まる前、第一層の始まりの町でクライン君と一緒にこの世界について教えてもらったのが切っ掛けだったね。そしてそこから茅場さんからのデスゲーム宣言。クライン君とは別れて私と和人くんの二人で始まりの町を出て攻略を始めた。

第一層迷宮区近くの街、トールバーナでアスナちゃんとユウキちゃん、ランちゃんと出会ってパーティを組んだ。あのあとアスナちゃんでいろいろあったよね。

そして第一層ボス攻略戦。ディアベルさんが亡くなったとき和人くんはディアベルさんからこう言われたってあのあと言ってくれた、『頼む・・・ボスを倒してくれ・・・・・・』と。撤退でも、諦めろでも、止めろでも、なんでもなくただ、ボスを倒してくれ、と。ディアベルさんの思いを引き継いで和人くんは私たち5人で、ううん、エギルさんたちの協力もあって第一層ボス、イルファング・ザ・コボルドロードを倒した。けど、そのあと和人くんのことを悪く言う人が出てきた。私たちはその人たちに何でそんなこと言うのか聞きたかった。ボスを倒せたのは和人くんのお陰なのに。それに和人くんは初心者の私を何時も助けてくれた。励ましてくれた。色々なことを教えてくれた。なのに、ただβテストプレイヤーだからってなんであんなこと言われないといけないの?私は何故かわからないけどとても哀しかった。辛かった。自分に言われていることじゃないのに、和人くんに向けてそう言われているのを聞くと、胸が痛くなった。けど、和人くんは私たちの声を手を上げて遮りすべてのβテスターの非難を自分だけに向けさせた。そしてそこから和人くんのことを《ビーター》と呼ぶ人が出てきた。自分一人にすべての非難を引き付けて。たぶんこのときに思ったんだと思う。私はこの人と一緒にいたいって。一人にしてはダメ、私が側にいてあげたい。彼の支えにならないとって。

この時から、私の恋は。ううん、初恋は始まったんだと思う。前は無自覚だったけど自覚して始まった私の初恋。それがキリトくんで和人くんなんだ。

それから私と和人くんは二人で攻略して、アスナちゃんとユウキちゃん、ランちゃん、エギルさんたちの助けや触れ合いもあって、何時しか私と和人くんは《紅の剣舞士》と《黒の剣士》って呼ばれるようになった。そしてユニークスキル《多刀流》と《二刀流》。私と和人くんだけのユニークスキル。それから互いの思いを伝えあって、結婚。それからなのか新しく《最強夫婦》って二つ名が広まった。茅場さん・・・・・・ヒースクリフさんも《最強夫婦》ってのには苦笑いを浮かべていたっけ。ヒースクリフさんとはよく料理の話題で気があったりした。特に私の自作醤油を渡したときは驚いていたね。

それからヒースクリフさんと和人くんの決闘。笑う棺桶の残党による和人くんたちの危機。ユイちゃんとの出会いと別れ。ヒースクリフさんと和人くんの闘い。けどこれは何故かわからないけど未決着になった。そして、ホロウ・エリアとフィリアちゃんとの出会い。ストレアちゃんやシノンちゃん。和人くんの義妹のリーファちゃんとの遭遇。そしてユイちゃんとの再会。それから私と和人くん二人のユニークスキル《シンクロ》の獲得。全部和人くんがいてくれたから。和人くんが側にいてくれたから出来たことなんだと私は思う。

私の初恋は初めて和人くんと出会ったときから。一目惚れだったんだと思う。

私はユウキちゃんとランちゃんの言葉を聞いて、夜空を見上げながら今までの和人くんと出会ったときから今日までのことを思い返していた。

 

「怒ってますかレインさん」

 

「え、どうして?」

 

「和人くんの結婚相手であるレインさんにこんなこと言って」

 

「ううん。怒ってないよランちゃん。むしろ嬉しいかな?」

 

「嬉しい?」

 

「うん。和人くんのことを二人が好きだってことに」

 

「それは・・・」

 

「うん・・・」

 

「それに謝るのは私の方だよ・・・・・・」

 

「え・・・?」

 

「どうして・・・?」

 

私の言葉にランちゃんとユウキちゃんは疑問符を浮かべて聞いてきた。

 

「私はユウキちゃんとランちゃんの気持ちを知っていて和人くんと一緒にいるから・・・・・・なんか横取りしちゃったみたいだから・・・・・・」

 

「そ、そんなことないです!」

 

「そうだよ!レイン!」

 

「でも・・・・・・」

 

「いいんです。むしろレインさんが和人くんを好きだと言ってくれて私もユウキも嬉しいんです」

 

「うん。和人はボクや姉ちゃん、スグ以外とは昔から遊ばなかったんだ。むしろ、家に引きこもっていたって言った方が良いかな?」

 

「ですから、私は和人くんの意思を尊重したいんです。例え、この気持ちがずっと伝えられなくても・・・」

 

「ボクも姉ちゃんと同じだよ」

 

「ランちゃん・・・ユウキちゃん・・・」

 

私は二人の表情に悲痛を感じた。

伝えたくても伝えられない。伝えられるのに伝えないなんて。そんなのダメ。伝えられるなら伝えないとダメだよ。

 

「ユウキちゃん、ランちゃん。お願い、その気持ち和人くんに伝えて!」

 

「レインさん!?」

 

「レイン!?」

 

「伝えられるのに伝えないなんてダメだよ!そんなの私が許さない!手が届く距離にいるのに掴まないなんてそんなのダメ!」

 

私は二人にじぶんが思ったことを伝えた。

妹の七色に伝えたくても伝えられない。そんな私とユウキちゃんとランちゃんは似ている。けど、二人は手を伸ばせば伝えられる。何故ならすぐ側にいるから。なら、それを無駄にしたくない。

私はそう思って二人に言った。

 

「だから!」

 

「・・・・・・わかりました」

 

「・・・・・・うん」

 

「ありがとう、ユウキちゃん、ランちゃん」

 

~回想 out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして私は二人にキリトくんに伝えられるようにした。私は二人に伝えてほしかったから。多少強引だったかもしれないけど、伝えられないよりはいいから。

 

「ユウキちゃんとランちゃんにあんな偉そうなこと言ったけど、私が一番伝えられないんだよね・・・・・・元気かな・・・・・・・・・・七色・・・・・・」

 

さっきまでキリトくんがいた場所に寝っ転がって私は静かに呟いた。

それに答えてくれるのは優しく吹く風だけだった。

 

~レインside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~キリトside~

 

 

 

 

レインがユウキとランが呼んでいると言われ俺はユウキとランのいるランの部屋の前にいた。

 

「ユウキ?ラン?」

 

俺は扉をノックしながら扉越しに声をかける。

少し待つと。

 

「い、いらっしゃいですキリトさん」

 

頬を赤くしたランが扉の隙間から顔を覗かせてきた。

 

「レインから呼んでいたと聞いたけど・・・・・・なにかあつたか?」

 

「と、取り敢えず部屋の中に入ってください」

 

「ああ」

 

ランに促されて俺はランの部屋に入った。

 

「い、いらっしゃいキリト」

 

中に入るとソファーにユウキがランと同じように頬を赤くして座っていた。部屋の中が暑いのかな?

俺はユウキとランとは対面的に座り、ランが出してくれた飲み物を飲んだ。

 

「それでどうしたんだ?」

 

「あ、あのさキリト。レインから何か聞いてない、の・・・・・・・?」

 

「レインから?う~ん、特に聞いてないな」

 

「そ、そうなんだ・・・・・・」

 

ユウキとランはさらに顔を赤くして何故か視線をずらしていた。

しばらくそのままの空気が続き。

 

「あ、あのねキリト・・・」

 

「ん?」

 

ユウキもじもじしながら言ってきた。

よく見ると隣のランもだった。と言うかこんな二人今まで見たこと無い気がする。少なくとも俺の記憶の限りではない・・・・・・・・・・はずだ。

 

「じ、実は、き、キリトさんにお話があって・・・・・・」

 

「話?」

 

俺は首をかしげながらランの淹れてくれた飲み物を飲んだ。

 

「あ、あのね、ぼ、ボク、か、和人のことがね・・・・・・」

 

「ん?」

 

「ボク、和人のこと好きなんだ!」

 

「はい?」

 

ユウキの台詞に俺は間の抜けた変な声を出した。

ユウキの言った意味が脳内処理できない中隣のランも。

 

「わ、私も和人くんのことが好きです!」

 

そう言ってきた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・へ?」

 

俺は動きを止めたままユウキとランの言った意味を理解しようとする。

 

「(す、好きって・・・え~と、そういう意味だよね)」

 

俺は二人を見て脳内処理を高速で演算処理して考える。

 

「あ、あの、二人に聞くけど、す、好きってもしかして・・・・・・」

 

「は、はい。私は・・・私、紺野藍子は和人くんのことが異性として好きです。レインさんと同じで・・・・・・」

 

「う、うん。ぼ、ボク・・・紺野木綿季は和人のことが異性として好きだよ。レインと姉ちゃんと同じで・・・・・・」

 

予想通り。

その通りで俺は脳がホワイトアウトした。さすがの俺も処理オーバーになったのだ。

 

「あ、あの、そ、その、お、俺は・・・・・・」

 

何か言おうと思うが何て言ったらいいのか分からず口を淀んだ。

 

「あ、あの和人くん。レインさんはもう知ってます」

 

「はい?」

 

「この前レインさんと話したんです。それで、レインさんが今日、お膳立てをしてくれて・・・・・・」

 

「な、なるほど・・・・・・」

 

ランの言葉に納得した俺は未だに何時もの思考が働かない中うなずいた。

 

「お、俺は、た、確かに藍子と木綿季のこと確かに好きだけど、その、俺は・・・・・・」

 

「わかってるよ和人。和人はレインのこと好きなんだよね」

 

「木綿季・・・・・・」

 

「だからねボクらはこの気持ちを伝えられるだけでもいいんだ。和人の幸せはボクや姉ちゃんの幸せなんだから」

 

「ええ。木綿季の言う通りですよ。私たちは和人くんのこと幼馴染としてではなく異性として好きですけど、私たちは和人くんの意見を尊重したいんです」

 

「藍子・・・・・・」

 

「ですから、私は和人くんに和人くんのことが好きだと言うことを伝えられただけでも満足です」

 

「木綿季・・・藍子・・・」

 

「あ、だ、だからって私たちとの関係は変わらないですからね!」

 

「そ、そうだよ!ボクらは幼馴染み。それは決して変わることはない、でしょ?」

 

「二人とも・・・・・・そうだな・・・そうだよな」

 

俺は藍子と木綿季の言葉に思考を回復させた。確かに二人の気持ちは嬉しい、けど俺にはレインがいる。だけど、俺たちの幼馴染みだと言う関係と絆は何人たりとも、誰にも断ち切れない。断ち切らせはしない。

俺はそう脳内で思考して二人を見た。

 

「藍子、木綿季。ありがとう。二人の気持ち確かに嬉しい。けど、俺はレインが好きなんだ。もちろん、二人のことも好きだよ。でも、レインは俺の相棒でパートナーで光なんだ」

 

「うん。和人、レインのこと大切にしてあげて」

 

「わかってますよ和人くん。レインさんのこと大切に、幸せにしてあげてください。和人くんの幸せは私たちの幸せでもあるんですから」

 

「ありがとう、木綿季、藍子。そして、これからもよろしく頼む!」

 

「うん!もちろんだよ!和人!」

 

「はい!もちろんです!和人くん!」

 

俺はレインに感謝の意を思いながら木綿季と藍子とこうして話せて良かったと思った。そうじゃなかったら二人の気持ちを知ることはなかったのだから。

俺は木綿季と藍子を見ながらそう思った。

 

 

 

 

 




「みんなわかったかな?レイン、答え合わせお願いね!」

「うん!今回の問題の答えはⅢ:の幼馴染だよ」

「いや~、今回はキリトとユウキ、ランの恋事情だったね」

「うん。でも、二人がキリトくんに気持ちを伝えられてよかったよ」

「そうだね~。でも、レインとしては複雑なんじゃないかな?」

「う~ん、ちょっとだけね。でも、キリトくんを好きだと言うことは誰にも負けないからね」

「アハハ。一途だねレインは」

「うん♪」

「それでは今回はここまで」


「「また次回!!Don't miss it.!!」」




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HF編 第113話〈みんなでパーティー〉

「プリヴィベートみんな!まずはごめんなさい!投稿まで長くなってしまいました!出来るだけ早く投稿できるようにします!えーと、今回は時間がないのでゲストはいません(ごめんなさい)今回の問題はこちらです!」




問題:『今回ストレアが持ってきた"もの"はなに?』

Ⅰ:『食材』

Ⅱ:『武器』

Ⅲ:『情報』

Ⅳ:『日用品』


「答えは本文の最後に!」


 

~キリトside~

 

 

ある日の夕方、アークソフィアのエギルの店でレインたちと談笑していると。

 

「あっ、キリト~!レイン~!」

 

「ストレア、きてたのか」

 

「ストレアちゃん!」

 

入ってきたストレアが俺とレインに気づくと、一直線にこっちに来た。

 

「うん!キリトとレインに会いに来たの!お土産があるんだ、早くこっちに来て」

 

「お土産?」

 

「なになに?」

 

「い~い?それじゃだすよー!」

 

ウインドウを開き操作してストレアは一つのアイテムを出した。

 

「じゃじゃーん!」

 

「おおっ!これは!」

 

「えーと、なになに?え・・・・・・《ヒドゥンバイソンの肉》!?」

 

ストレアの出したアイテム―――食材をタップしてアイテム名を確認したレインは驚きの声をあげた。

するとそこへレインの隣に座っていたリズが食材を見て驚きを浮かべていた。

 

「ちょっと・・・・・・これってすごいレア食材じゃなかった?」

 

「はい、S級食材ですね」

 

「それが、丸々一頭分・・・・・・」

 

「ふふ~ん。褒めて褒めて!」

 

「いや・・・・・・本当にすごいよ」

 

「うん。私もはじめて見たよ」

 

「今からアタシがキリトとレインにご馳走してあげる!」

 

「ちょっと待て。この量をキリトとレインちゃんだけで食べるのか?」

 

ストレアの言葉にエギルが「え?」、という顔を浮かべてストレアに聞いた。

 

「そうだよ!キリトとレインなら、このくらいの量、ペロッと食べちゃうよね?」

 

「い、いや、それはさすがに無理だと思う」

 

「わ、私も・・・さすがに無理だよ」

 

「ねえ、アンタの料理スキルってどれくらいなの?」

 

リズがストレアに疑問符を浮かべて聞いた。

それに対するストレアの答えは。

 

「料理スキル?持ってないよ」

 

なんとなく予想していた通りだった。

 

「スキルが無いって・・・・・・おいおい、それなら、そこの超級シェフたちに頼んだほうがいいんじゃねえのか?」

 

クラインは視線で超級シェフたちを見た。

超級シェフとは、料理スキル《完全習得》者のことで、この中でそれは。

 

「そうだな。料理ならやっぱりレインたちが適任だろう」

 

「ですね。リーザたちに任せた方がいいです」

 

レイン、アスナ、ユウキ、ラン、リーザ。の五人のことだ。

 

「うーん・・・・・・キリトがそう言うならアタシもそれでいいよ」

 

「私なら二つ返事で引き受けるよ。S級食材なんて、滅多に見れないから」

 

「私もよ」

 

「うん!」

 

「よし!それじゃあ、レイン絶品の料理をよろしく頼むよ」

 

「もちろん!レインちゃんにお任せあれ♪」

 

「リーザ、とびっきり美味しい料理をお願いね」

 

「もちろん!任せてラム」

 

俺とレイン、ラムとリーザのやり取りに周囲にいたリズやアスナたちが苦笑を浮かべていた。

 

「おい、キリト」

 

「どうしたエギル?」

 

「俺は《ラグーラビット》の件を常々恨みに思っていたんだが・・・・・・」

 

「ああ・・・・・・前にS級食材をゲットしたときか」

 

「あの時は私たちで食べちゃったんだよね」

 

以前ゲットした《ラグーラビットの肉》は俺とレイン、アスナ、ユウキ、ランの五人で食べたのだ。

 

「そう言えばそうだったな。今回はエギルにも食べてもらうからそれで勘弁してくれ」

 

「よーし、言ったな!今回は食わせてもらうぞ!」

 

俺の言葉にエギルが気分揚々に言った。

そこへシリカがレインに話しかけた。

 

「あっ、レインさん!もし食材に余裕があるならあたしもお料理してみたいんですけど」

 

「もちろんだよシリカちゃん!一緒に作ろう!」

 

「はいっ!」

 

「それじゃあ・・・・・・。あたしもなにか、作ってみようかな」

 

「え!?リズっちが料理するなんて珍しいね」

 

「ちょっとレイン?!それどういう意味よ。悪かったわね!ちょっとした気まぐれってやつよ」

 

「わたしも、お料理したいです!」

 

「それじゃ、パパにとってもおいしいもの食べさせてあげようかユイちゃん!」

 

「はい!」

 

「じゃあ・・・・・・。あたしも一緒に作ってもいいですか?」

 

「もちろんだよ!リーファちゃん!」

 

「え?リーファも作るのか?」

 

俺は以前リーファが作った料理・・・?なのか?を思い出して聞いた。

 

「だって、みんなでお料理するみたいだし・・・・・・」

 

「そうだよ!みんなでお料理しよう!」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

まあ、レインたちがらいるなら大丈夫・・・・・・だと思うが。

 

「えーっ!みんなが作るならアタシも作るし!」

 

「なんだか、大事になってきたな・・・・・・」

 

「あはは・・・・・・」

 

一気に料理する女子が増えたことに俺は呆気に取られながら呟き、ランは乾いた苦笑いを浮かべていた。

 

「・・・・・・・・・・」

 

「ところでシノンはどうする?」

 

そんな中、静かにしていたシノンに聞いた。

 

「・・・・・・どうするって?」

 

「あ!いや、すまん。何となく流れで、シノンも料理するって言い出すとのかと思って」

 

「食べたいの?私の料理」

 

「え・・・・・・っと、その・・・・・・」

 

「冗談よ・・・・・・で、何を作ろうかしら。相当いい食材なのよね、これ」

 

やはりシノンも他の女子同様、料理好きの女の子みたいだ。

 

「滅多にお目にかかれない、S級食材ってやつだ・・・・・・やってみるのか?」

 

「まあ、勝手はわからないけど。聞きながらやれば、なんとかできるんじゃないかしら」

 

「そのかわり、ちゃんと完食しなさいよ」

 

「は、はい・・・・・・」

 

「わ、わかりました・・・・・・」

 

シノンの言葉に俺とラムは重々しくうなずき返した。

 

「シノンちゃんも一緒に頑張ろ!わかんないところは、教えてあげるね!」

 

「じゃあ、誰が一番美味しい料理を作れるか、競争してみようか」

 

「競争ね・・・・・・それだとレインやリーザたちがトップ争いしそうだけど」

 

「それなら大丈夫だよリズっち!」

 

ストレアの発言にリズがレインたち五人を見て言うと、レインが親指を立ててリズに返した。

 

「私たちがみんなのお料理を完全監修してあげる!」

 

「それよりも何を作りたいか・・・・・・こっちの方が重要になってきますよ」

 

「確かに・・・・・・」

 

「悩むわねこれは・・・・・・」

 

「なるほど・・・・・・味は料理スキルコンプリート者の保証付きって訳ね」

 

「それじゃあ、誰が一番、キリトとラムか気に入る料理を作ったかで勝負しましょうか」

 

「俺が判定するのか!?」

 

「俺が判定するんですか!?」

 

リズの突拍子の言葉に俺とラムはリズに慌てて聞く。

そんな俺たちにリズは片目を瞑って親指を立てた。

 

「うん!審査員よろしくねんお二人さん」

 

「わ、わかったよ・・・・・・」

 

「わ、わかりました・・・・・・」

 

こうして俺とラムは何故か、レインたちの料理の審査員をすることになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後

 

 

 

「お。美味しそうな匂いがしてきたな」

 

「あれから五分も経ってないのにもう出来るなんて・・・・・・・」

 

「さすがSAOの料理は出来上がるのが早いな・・・・・・」

 

席に座って料理が出来るのを対面して座っているラムと話していると。

 

「出来たわよ、キリト!ラム!」

 

リズが大きなお皿に料理を盛ってやってきた。

 

「リズが一番手か。何を作ったんだ?」

 

「リズベット特製チンジャオロースー!一丁あがりっ!」

 

「おおー!これは旨そうだな!」

 

「ですね!この照り具合が食欲をそそります!」

 

「では、さっそく一口・・・・・・」

 

「もぐもぐ・・・・・・」

 

俺とラムは一口食べてみる。

 

「どう?って言っても、味はレインたちの保証付きだけど」

 

「うん、うまいっ!」

 

「はい!ご飯が欲しくなる味です!」

 

リズに感想を言うと、

 

「赤ピーマンの彩りの代わりに、ちょっと人には言えない食材使っちゃったけど・・・・・・」

 

リズが変なこと言った。

 

「でも、問題なく食べられているみたいだし、大丈夫みたいね!」

 

「・・・・・・おい。然り気無く恐ろしいこと言ったな・・・・・・」

 

「リズさん!?一体何を入れたんですか・・・・・・!?」

 

「えーと・・・秘密・・・・・・」

 

「俺とラムは毒味役か!?」

 

「俺とキリトは毒味役ですか!?」

 

ラムと同時にリズに突っ込むとそこにユイの声が聞こえてきた。

 

「パパー!出来ましたよ!」

 

「次はユイの料理か!何が出てくる?」

 

「ハンバーグです!食べてください!」

 

「すごいじゃないか、ユイ!それにしても、かわいいひと口サイズだな」

 

「ええ。ミニハンバーグですね」

 

ユイが作ってくれた料理はハンバーグでユイの掌のように小さく、程よいサイズだった。

 

「それは、手がちっちゃくて・・・・・・。でも数はいっぱいありますよ!」

 

ユイの言った通り、ユイの持ってきてくれた皿には沢山のミニハンバーグが乗っていた。

 

「ユイの手のサイズってことか。食べやすくていいじゃないか。さっそく、いただきまーす!」

 

「いただきます!」

 

「んぐ・・・・・・もぐ・・・・・・うん!文句なしに旨い!」

 

「美味しいよユイちゃん!」

 

「うわあ、良かったです!ママにもたくさん手伝ってもらったんですよー」

 

「ママはお料理が上手いからな」

 

「えへへっ。またお料理作ったら食べてくださいね、パパ!」

 

「もちろんだ」

 

ユイの喜びようにその場が和やかになると、

 

「はい、できたわよ一応」

 

シノンが戻ってきた。

 

「お、次はシノンか」

 

「・・・・・・でも、いくらなんでも出来上がるのが早すぎて・・・・・・不安だわ・・・・・・」

 

シノンの顔には不安げな表情が醸し出されていた。

 

「シノンは、何を作ったんだ?」

 

「ローストビーフよ。最低でも作るのに二時間はかかると思ってたんだけど・・・・・・」

 

「普通の料理ならそうだろうけど、ここはあくまでSAOの中だからな」

 

「確かにそうなんだけど・・・・・・」

 

「それじゃ、いただいていいかな?」

 

「どうぞ、口に合えばいいんだけど」

 

「もぐ・・・・・・」

 

「もぐ・・・・・・もぐ・・・・・・」

 

ラムと一緒にシノンが持ってきた皿に盛られてる、ローストビーフを食す。

 

「ん・・・・・・うまい!!」

 

「そ、そう?」

 

「この柑橘系ソースがローストビーフによく合ってますよ!」

 

「ああ。さっぱりしていて、いくらでも食えるよ」

 

「褒めすぎよ。美味しいのは食材の良さと、リーザが手伝ってくれたおかげ」

 

「ですけど、このソースを考えたのはシノンじゃないんですか?」

 

「まあ、そうだけど」

 

「なら、やっぱりシノンもすごいよ。ほら、もう半分も食っちゃった」

 

「食べ過ぎだよキリト」

 

「・・・・・・まあ、気に入ってもらえたなら、良かったかな」

 

シノンの作ったローストビーフを食べ終わると、丁度いいタイミングでシリカが戻ってきた。

 

「キリトさん、ラムさん、アタシの料理もできました」

 

「シリカは何を作ったんだ?」

 

「その・・・・・・あたし、あまり料理とかしたことないから普通の肉じゃがなんですけど・・・・・・」

 

「肉じゃが!?とっても美味しそうだよシリカさん」

 

「へえ、美味しそうにできてるじゃないか!いただきます!」

 

「うう。緊張します・・・・・・」

 

「・・・・・・ん・・・・・・もぐ・・・・・・うまい!」

 

「ええ!やっぱり、肉じゃがっていいですね!」

 

「ほ、本当ですか?」

 

「ああ、なんだか懐かしい。家庭の味って感じがする」

 

「俺も同じです。何て言うかお母さんの味って言うんですかね」

 

「そんな・・・・・・大袈裟ですよ」

 

「大袈裟なんかじゃないって。シリカって、いいお嫁さんになりそうだな、ラム」

 

「ですね」

 

「お、お嫁さんっ!?なななっ、なに言ってるんですか!キリトさん!ラムさん!」

 

「え?なにって、感想を・・・・・・」

 

「あっ、そうだ!みんなの取り皿を出してこなきゃ!!そ、それじゃあっ!」

 

「あ、うん・・・・・・」

 

「どうしたんでしょうかね・・・・・・」

 

顔を赤くして慌てて厨房に走り去ったシリカに俺とラムは呆然とそれを見ていた。

そして、シリカと入れ替わりにリーファが気落ちしたようにやって来た。

 

「キリト君・・・・・・」

 

「ど、どうした、リーファ?」

 

「う・・・・・・それが・・・・・・。ランさんに手伝ってもらって途中までは上手くいってたんだけど・・・・・・。盛り付けたら、なんか美味しくなさそうになっちゃって」

 

「はい・・・・・・これ・・・・・・」

 

「(なんか、ぐちゃっとしたものがどんぶりに盛ってある・・・・・)」

 

リーファが俺とラムの目の前に出したのは何か、肉の塊?みたいなものだった。

 

「リーファ、これは・・・・・・」

 

「牛丼・・・・・・」

 

「ああ、言われてみれば・・・・・・」

 

「言われてみれば見えますね・・・・・・」

 

リーファが作ったのは牛丼だったらしい。

 

「じゃあ、えっと、食べてみるぞ」

 

「・・・・・・大丈夫?」

 

「そりゃまあ、せっかくリーファが作ってくれたものだし・・・・・・」

 

「お、お兄ちゃん・・・・・・!」

 

「いただきます・・・・・・もぐ・・・・・・もぐ・・・・・・うん!うまいっ!」

 

「ほ、ほんと!?」

 

「味も旨いけど、なによりも牛丼って言うのが、たまらないな。現実世界では、牛丼のチェーン店に食いに行ってたから・・・・・・」

 

「久しぶりです、この感じ」

 

「そ、そんなに急いで食べなくても」

 

掻き込むようにして食べる俺とラムにリーファが少し引いたように言った。

 

「リーファ、牛丼っていうのはかきこんで食べるから旨いんだよ」

 

「同じく」

 

「そうなの?・・・・・・とにかく、普通に食べれるみたいで良かったぁ・・・・・・」

 

「はははっ、ごちそうさま」

 

「ごちそうさまですリーファさん」

 

二人同時に食べ終わったところに。

 

「そっかそっか~。見た目がヘンでも味がおいしいなら、合格だよね」

 

ストレアが戻ってきた。

 

「ストレアはなにを作ってくれたん・・・・・・」

 

「どうしたんですかキリ・・・ト・・・・・・!?」

 

「・・・・・・・・・・!?」

 

「なんか・・・・・・あたしのよりすごい見た目・・・・・・」

 

ストレアの持ってきた料理を見た俺とラムは思わず目を見開いて二度見した。

 

「ストレア・・・・・・これは?」

 

「えっとね・・・・・・わかんない!食べて食べてー!」

 

「(わかんないって・・・・・・そもそも、食べ物なのか・・・・・・)」

 

「(一応食材ですから食べ物なのでは・・・・・・)」

 

「(と、取り敢えず食べるか)」

 

「(そ、そうですね・・・・・・)」

 

ストレアの無邪気な表情を見て俺とラムは静かに回りに聞こえないようにして会話した。

 

「ちょっと見た目は悪いけど味は大丈夫!はい、キリト、あーん」

 

「いや待て、ストレア・・・・・・。・・・・・・む、むぐ・・・・・・」

 

「はい、ラムも、あーん」

 

「ストレアさん!?ちょっと、待って・・・・・・むぐ・・・・・・」

 

「キ、キリト君・・・・・・?ラム君・・・・・・?」

 

ストレアに抵抗空しく口に入れられた俺とラムはとにかく口を動かしてストレアが作ってきた料理?と思わしきものを食べた。

 

「・・・・・・・・・・うまい」

 

「・・・・・・・・・・おいしい」

 

「やった!でしょでしょ?」

 

「見た目のおぞましさとのギャップがすさまじいが、とにかくうまい!」

 

「なんでしょう。とにかく不思議な味ですが、とにかくおいしいです!」

 

「ああ!でも、もっと食べたいのに箸が伸びない!でも食いたい!なんていう食い物なんだこれは!食文化に一石を投じる一品だ!一種の革命だな!」

 

「まさに革命料理ですね!」

 

「すごい褒められてる!」

 

「褒めてるのかな・・・・・・それ・・・・・・」

 

俺とラムの褒めてるようで褒めてない言葉に喜ぶストレアと疑問顔のリーファのところに。

 

「はい、キリト君!ラム君!おまたせー!」

 

アスナが料理を盛った皿を持ってやって来た。

 

「次はアスナか。何が出てくるのかな?」

 

「コトレッタ・・・・・・ミラノ風カツレツだよ。付け合わせのサラダとトマトソースを作ってたら遅くなっちゃったけどね」

 

「こ、これは・・・・・・!黄金色のカツレツに緑のサラダ。赤いトマトソースと、目にも鮮やかだ」

 

「赤、黄、緑と三色揃っていて見た目も綺麗です」

 

「よし、いただきます!」

 

「いただきますアスナさん」

 

「はい、どうぞ」

 

「・・・・・・うん!うまい!カリッとした衣の食感に肉汁の旨味、付け合わせの爽やかさも加わって・・・・・・」

 

「これが料理スキル《完全習得》者の実力・・・・・・」

 

「ありがとう二人とも」

 

アスナのコトレッタを食べ終わると。

 

「次はボクと姉ちゃんの料理だよ!」

 

ユウキとランが皿を持ってやって来た。

 

「次はユウキとランか。二人は何を作ったんだ?」

 

「ボクはしょうが焼きだよ!」

 

「私はビーフシチューです」

 

ユウキの持ってる皿には沢山のしょうが焼きとキャベツが。ランの持ってる鍋からはビーフシチューが覗いていた。

 

「お、どれも美味しそう」

 

「ですね。では、いただきます」

 

「いただきます!」

 

ラムと一緒にユウキとランの料理を食す。

 

「ど、どうかな?」

 

「どうですか?」

 

「美味しい!このしょうが焼き美味しいですユウキさん!」

 

「ありがとうラム!」

 

「うん、味が染み込んでいて肉も柔らかくて口にいれた瞬間トロけた。旨いぞラン」

 

「ありがとうございますキリトさん!」

 

ユウキとランにそれぞれ感想を言うと。

 

「お待たせしましたラム」

 

「お待たせキリトくん!」

 

残り二人。レインとリーザが戻ってきた。

 

「待ってたよリーザ」

 

「お、最後はレインのか」

 

「私のは唐揚げです。バリエーションが沢山あるので、飽きないと思いますよ」

 

リーザの言った通り、唐揚げにもそれぞれ油淋鶏や塩胡椒、醤油、レモン、ポン酢など、様々あった。

 

「そして私のはビーフストロガノフだよ~」

 

レインもランと同じように鍋を置いて、お皿によそった。レインのビーフストロガノフは肉の量もさることながらキノコ類や野菜類も入っていてとてもボリュームがあった。

 

「それじゃいただきます」

 

「俺もいただきます」

 

「ど、どうですかラム」

 

「ど、どうかなキリトくん」

 

俺とラムはレインとリーザの料理をなにも言わずにただ食べ続けた。

そして食べ終わると。

 

「レイン」

 

「リーザ」

 

「な、なにかな?」

 

「ど、どうかしました?」

 

「「とっても、美味しかった!」」

 

俺とラムは同時に親指をあげてサムズアップをとって見せた。

 

「ありがとうキリトくん///」

 

「ありがとうラム///」

 

「さあ。それじゃキリト、ラム。そろそろ決めてもらいましょうか」

 

「キリトとラムは誰の料理が一番だった?」

 

「うーん・・・・・・非常に難しい選択だけど・・・・・・」

 

「ですね・・・・・・」

 

「けど・・・・・・」

 

「はい・・・・・・」

 

「「やっぱりレイン(リーザ)の料理が一番だな(です)!」」

 

俺とラムは同時に一位を言った。

 

「さ、さすがキリトとラム・・・。予想通りの答えだわ」

 

「まさか同時に言うなんて・・・」

 

「レインとリーザが赤くなってるわよ」

 

「やっぱり、一番は自分のお嫁さんなんですね」

 

「あはは・・・」

 

「なにも言えないですね・・・」

 

俺とラムの言葉にリズとアスナをはじめ、シリカ、シノン、ユウキ、ランが苦笑して答えた。

そんなわけで俺とラムの一位も決まりそれぞれ椅子につくとクラインとエギルが。

 

「よし!そんじゃキリトとラムの選んだ一位も決まったことだし、さっそくみんなで食おうぜ!こっちは早く食べたくてさっきからうずうずしてるんだからよ!」

 

「俺もだ、二人とも!早く食べようぜ」

 

「ああ、悪い悪い!それじゃ改めて、いただきますっ!」

 

俺の合図でクラインは閃光のような速さで料理を取り、食べた。

 

「いただきまーす!!よっしゃーっ!一生分の肉を食うぜー!」

 

「がっつくんじゃねーぞ!しっかり味わえよ!」

 

「そうは言っても・・・・・・んぐ・・・・・・むしゃ・・・・・・高級食材なんだから、もぐ・・・・・・もぐ・・・・・・止まらねぇよ」

 

「そんなに焦らなくてもまだ、たくさんあるのに・・・・・・」

 

「も、ものすごい食欲です・・・・・・」

 

「でも、こうやって自分の作ったものを食べてもらうのは、悪くないわね」

 

「そうそう、あたしが鍛冶屋をやっているのも相手に喜んでもらいたいからだしね」

 

「み、みなさーん。お代わりもありますからね」

 

「わたしたちも早く食べないと自分の分が無くなってしまいそうです!」

 

「アタシのも、どんどん食べてねー!」

 

「あはは!楽しいね姉ちゃん」

 

「そうね。こんな食事風景もいいですね」

 

「はい、ラム」

 

「ありがとうリーザ」

 

「どういたしまして♪」

 

「はい、キリトくん、ユイちゃん。食べよう」

 

「ああ!」

 

「はい!」

 

レインたちの作った料理を俺たちは和気藹々とパーティーをしている雰囲気だった。

そしてすべてが食べ終わると。

 

「いやあ、堪能したぜえ。オレ、生きてて良かったよ!」

 

「まったくだ。三日に一度は、こんな日があるといいな」

 

クラインとエギルは満足そうに言った。

 

「もう、大袈裟ね。でも、本当にどの料理も美味しかった。思い出すだけで幸せになれそう」

 

「全員で食べても結構な量になったな」

 

「ふふふ」

 

「お粗末様でした。あれだけの食べっぷりを見せられると作って良かったーって思っちゃうよ」

 

「みんなでこうやって、わいわいやるのってすごく楽しいね!そうだ!ねえねえ、キリト!アタシ、今日はここの宿屋に泊まっていくね!」

 

突如言ったストレアの言葉に少し驚くが。

 

「アタシ、もっとみんなとこうしていたいな」

 

「大歓迎ですよ!夜はいっぱいお喋りしましょう」

 

「うん!賛成だよ!私もストレアさんのこといろいろ聞かせてほしいな」

 

「ということだ。みんな、ストレアの気が済むまで付き合うよ」

 

「ありがとう!」

 

俺たちとしても賛成のため特に拒否することはなかった。

こうして、今日はストレアがここに泊まることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"コンコン"

 

 

「・・・・・・はーい?」

 

レインと話していたところに扉のノック音が聞こえてきた。

扉を開けるとそこには

 

「アタシ・・・・・・」

 

何時もの無邪気な表情を出していなく、なにか思い詰めた表情をしたストレアだった。

 

「ストレアちゃん?」

 

「ストレア?こんな時間にどうしたんだ?」

 

「ごめん・・・なんか苦しくて眠れないの・・・・・・」

 

「苦しいってまた頭痛か?」

 

俺は以前階層攻略の際、ストレアと出会ったときのことを思い出した。

 

「ううん、ちょっと違う・・・・・・」

 

「キリトくん、ストレアちゃんを中に入れたら・・・」

 

「そうだな・・・・・・ストレア、とりあえず中に」

 

俺はストレアを中に入れ、ソファーに座らせた。

 

「どうストレアちゃん・・・具合は?」

 

「うん、まあまあ」

 

「まさか、食べた料理が悪かったってこともないよな」

 

「それはないと思うよキリトくん」

 

「だよな」

 

「ごめんね、心配かけて・・・・・・。たぶんアタシ自身の問題だから・・・・・・」

 

「もしかしてストレアちゃんの頭痛に関係していることなの?」

 

「うーん、関係しているのかな・・・・・・?」

 

「どう言うことだ?」

 

「えっとね・・・。アタシ・・・・・・時々、頭の中に自分でない誰かがいる気がするの。その誰かの頭が痛くなると、アタシも一緒に痛くなって・・・・・・。いろいろなものが、アタシの頭の中に流れ込んでくるの」

 

「いろいろなもの?」

 

「うん。なんかいろんなもの・・・・・・。でも、それがなんなのかはよくわからない。なにかすごく大事なことなんだけど、忘れちゃってるみたいな・・・・・・。でも、それを思い出しちゃうとアタシがアタシじゃ、無くなっちゃう気もするの。それが、とっても不安・・・・・・」

「ストレアちゃん・・・・・・」

 

「・・・・・・大丈夫だ。ストレアにどんなことがあっても俺たちとの関係は変わらない。約束する」

 

「キリト・・・・・・レイン・・・・・・」

 

「そうだよストレアちゃん」

 

「みんなストレアのことを大切な仲間だと思っている。無邪気でいつも楽しそうなストレアに、みんな惹かれたんだ。まあ、最初はあまりに無邪気過ぎるからみんな驚いていたけどな」

 

「あはは。一番初めに合ったときの行動がキリトくんを胸に抱き締めるってやつだったからね」

 

レインは苦笑いを浮かべて思い出したかのように言った。

 

「えへへ・・・・・・」

 

「だから、なにも不安がることはない」

 

「うん。大丈夫だよストレアちゃん」

 

「キリト・・・・・・レイン・・・・・・みんな・・・・・・ふふ、ありがとうね」

 

そのあと、ストレアと軽く会話をしてストレアとレインは部屋から出ていきそれぞれ自分の部屋へと帰っていった。




「みんなわかったかな?今回の問題の答えはこちら、Ⅰ:『食材』だよ。このHF編もあと少し、これからも頑張っていきますので、応援よろしくお願い致します!それではまた次回!Don't miss it.!!」


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HF編 第114話〈ペアルック〉

「プリヴィベート!みんな!ソーナです。今回も問題をだすよ。今回の問題はこちら!」


問題:『今回キリトがレインにプレゼントしたのはなに?』


Ⅰ:ペアルックの服

Ⅱ:S級食材

Ⅲ:アクセサリー

Ⅳ:アイテム


「答えは本文の最後に!」





 

~キリトside~

 

 

「おう、キリトじゃねえか。ちょうどいいところに来たな」

 

ある日の昼間、ちょうど立ち寄ったエギル店で、エギルがとてもいい笑顔で俺を呼んで来るのが耳に入った。

あのときの顔はなんとなく嫌な予感がするからすぐに立ち去ろうとしたのだが。

 

「・・・・・・すまないが急用を思い出した。今日はこれで―――」

 

「おい、待て待て!悪い話じゃねえって!」

 

エギルに止められた。

 

「いい装備品が入荷してるんだよ。それもワケありで格安ときた」

 

「・・・・・・話だけは聞こう」

 

「そう来なくっちゃ!装備品ってのは・・・・・・この服だ」

 

エギルが取り出したのは男女の服一式だ。

服の色は鮮やかな黄緑という感じだ。若干派手な気もするが、服の性能は以外によかった。

 

「へえ・・・・・・。ちょっと派手めな服だが性能は悪くなさそうだな。これなら、76層以降でも充分に実用に耐えられるんじゃないか?」

 

俺がそう言うと、エギルは何故かにやけた顔つきになり、

 

「それがな、この服。ペアルックなんだ」

 

そう言った。

 

「ペアルック・・・・・・?そんなものがこの世界に実在したのか」

 

「ああ。しかも、男女ペアで身につけないと本来の性能を発揮できないらしい」

 

「それはハードルが高いな・・・・・・」

 

「そう思うだろ?この女性の少ないSAOで、この服を男女ペアで着用できるようなヤツはそりゃもう大変な果報者ってことだ」

 

「・・・・・・なんだが棘のある言い方だな」

 

「キリト。おめえ、せっかくこの服を有効活用できる境遇にあるんだ。ありがたくもらっとけよ、安くしとくぜ」

 

「いや、いいよ。レインも困るだろうし」

 

というかレインも困るというかなんとも言えない感じがする。

丁重に断ろうとすると。

 

「ああ、そういえばログハウスの内装は気に入ってもらえたか?」

 

「そ、その節は大変お世話になりました・・・・・・」

 

「そうだろうそうだろう。出・血・大サービスだったからな」

 

出血大サービスのところを強調して言った。

 

「俺とおめえの仲だ。恩なんて感じなくていいんだからよ」

 

「ええと・・・・・・すみません。その服、おいくらでしょうか」

 

ログハウスの件もあるので、このペアルックの服を俺はエギルに買わされ・・・・・・ではなく、普通にレインへのプレゼントにすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第83層 ログハウス

 

 

「え!?私にプレゼント?」

 

エギルの店でペアルックの服を買った俺は、レインにメッセージを送り何処にいるのか聞いたところ、ログハウスにいるとのことだったので、エギル店から直接向かい、中にいたレインにペアルックの女性の方を送った。

 

「ま、まあ」

 

「キリトくんが私にプレゼント・・・一体なんだろ!?」

 

「いや・・・・・・。そんなに目をキラキラさせるものじゃないかもしれないけど・・・・・・。まあ、パッケージをタップしてみてよ」

 

「うん♪」

 

レインはウインドウを操作して、俺が送ったパッケージをタップし中身を確認した。

 

「わぁ!素敵な服だね~!って・・・・・・えっ・・・・・・こ、これってもしかしてペアルック!?」

 

何故か一瞬でペアルックだとわかったらしい。さすがレインだというかなんというか。

 

「へぇ~~~~~~♪ふ~~~~~~ん♪キリトくん・・・・・・こういうのが好きなんだね。私知らなかったよ~。言ってくれれば何時でもお揃いの服着たのに~」

 

「あっ、いや、これはエギ・・・・・・えーっと、ごめん。困るかなーとは思ったんだけど・・・・・・」

 

「え、逆だよキリトくん。困るというか、とっても嬉しいよ。キリトくんがペアルックの服をプレゼントしてくれるなんて・・・・・・うん・・・・・・ありがとう」

 

「あ、ああ・・・・・・まあ・・・・・・喜んでくれたのなら、よかった・・・・・・かな」

 

「(こりゃエギルに感謝だな・・・・・・)」

 

予想外のレインの反応に内心でエギルに礼を言う。

というかこれを予測して俺に買わせたのならある意味すごい。さすがというかなんというか。

 

「それじゃ早速着替えてくるね♪それで、この服を着てさっそくデートに行こうよ!」

 

「え、今からか?」

 

「うん!もちろん、今からに決まってるよ。すぐに着替えてくるから待っててね」

 

そう言うとレインは寝室に入って行った。

1分後。

 

「お待たせキリトくん!って、キリトくん、どうして着てないの?」

 

ペアルック服を着たレインが戻ってきた。

 

「はは・・・・・・ちょっと・・・・・・俺には似合いそうにないから普段のこの服じゃダメかな?」

 

「えぇぇぇぇ~~~~っ!そんなぁぁぁぁ~~~~~っ!」

 

俺の言葉に目に見えるように落胆するレイン。

 

「・・・・・・そ、そうだよね。ペアルックでデートなんて恥ずかしいよね。ごめんねキリトくん、私一人で喜んじゃって・・・・・・」

 

どんどん影がレインを包み込んでいってる気がする。

 

「あ・・・・・・いや・・・・・・」

 

「(エギルに買わされたとはいえ俺が買ってきたんだよな、このペアルックの服・・・・・・。それを俺が着ないっていうのは・・・・・・。というか着ないならなんでプレゼントしたんだよ、俺!)」

 

レインの反応をみて、瞬時に己の過ちを判断した。

 

「・・・・・・ごめん、レイン・・・・・・。ちょっとだけ俺が恥ずかしがっていただけなんだよ」

 

「・・・・・・うん、大丈夫だよ、キリトくん。無理しなくても」

 

まずい、どんどん暗くなってる。

レインの反応に俺はかなり焦った。

 

「いやいや、無理なんかじゃないよ。レインの喜ぶ姿がみたくてプレゼントしたんだから」

 

「キリトくん・・・・・・///もう・・・・・・最初からそう言ってよ!」

 

俺がそう言うと、さっきまでの様子とは180度変わって明るくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第76層 アークソフィア

 

 

 

『あれってもしかして・・・・・・』

 

『《紅の剣舞士》のレインと《黒の剣士》キリトだよね?結婚しているって聞いたけどあんなにラブラブなんだぁ・・・・・・』

 

『しかもあの服ってペアルックじゃない!?』

 

あのあと俺もエギルから買ったレインとお揃いのペアルックを着て、アークソフィアにデートに来ていた。

来ているのはいいのだが。

 

「こ、こほん・・・・・・」

 

「キリトくん、そ、その、サンドイッチ、もうひとつ、ど、どう?」

 

「あ、ああ。いただこうかな」

 

「・・・・・・でもなんか、ここで食べても味とかよくわかんないよね」

 

「ああ、同じく。というか、いまいち居心地が良くない」

 

何故か周囲にいる人から知らなかったよ注目を浴びていた。

 

「私とキリトくん、目立ちすぎてない?」

 

「そう思う。さすがにこの服を着てのデート場所を間違えたかもしれない。街中でペアルックはやっぱり恥ずかしいな・・・・・・」

 

「う、うん・・・・・・。わ、私もちょっと・・・・・・どころかかなり恥ずかしいかも。勢いで言っちゃったけど」

 

俺とレインがいるのはアークソフィアのメインストリートにある原っぱの木の下だ。街外れにある大樹より小さいが、それでも十分大きな木の下でレインが作ってくれたサンドイッチを食べていた。のだが、大勢の人・・・・・・プレイヤーが俺たちの方みてきていた。

 

「で~も」

 

「ん?」

 

「ちょっと新鮮かも。今までSAOいろんなデートしたけど、こんな感じのデートは初めてだから」

 

確かに言われてみればこんなお揃いの服を着てのデートは今までしたことなかった、と脳裏に今までのデートを思い出して言った。

 

「そう言えばそうだな。まぁ、俺はレインが嬉しいなら満足だよ」

 

「・・・・・・ホント♪じゃあ・・・・・・」

 

眼を閉じて俺に近寄ってきたレインは、そのまま俺の頬にキスをした。

 

「・・・・・・・・・!!?」

 

あまりのことに俺は脳内処理が処理落ちする寸前だった。

すると、今の光景を見た周囲のプレイヤーたちから。

 

 

『うわあっ、だ、大胆な!』

 

『見せつけてくれるよね・・・・・・さすが夫婦!いや、《最強夫婦》だね!』

 

『《最強夫婦》なだけあって全部が大胆だね!』

 

『クソッ!爆発しろ、このリア充どもめっ!』

 

『・・・・・・いやいや、ここはリアルじゃないからな?』

 

 

そんな声が聞こえてきた。

 

「な、ななな、何?」

 

「え~と、サンドイッチソースが口元についていたから」

 

「そっ、そうなんだ」

 

「ふふ。冗談だよ♪食べ滓なんてつくわけないでしょ♪」

 

イタズラ成功という顔で言ってきたレインに、俺はかなりドキッとした。

 

「飲み物買ってくるから、ちょっと待っててね」

 

「・・・・・・・・・・。(行ってしまった・・・・・・)」

 

「(ソースがついていたってのが冗談ってことは見せつけたかってことか・・・・・・?まずい、レインがいつもより可愛く見えてきた。というか・・・・・・)」

 

軽く視線を周囲を一別し。

 

「(この衆人環視の中に俺一人でいるのは結構つらい。精神的に・・・・・・。かと言って、レインが戻ってきたらますます目立つことまず間違いないし・・・・・・)」

 

そう瞬時に判断した。

 

「(今日は一日、注目の的確定だな・・・・・・)」

 

俺が諦めたように思っていると。

 

「あれキリト?」

 

「ラム?」

 

後ろから声がかけられた。

後ろを振り向くと、そこには水色の服を着たラムがいた。服装が何時もの防具でないことからどうやら私服らしいが・・・・・・。

 

「ラム、そんな服持っていたっけ?」

 

「あー、えっと、実はこれリーザとの―――「ラム~!」―――てなワケです」

 

ラムの視線の先にはラムと同じ服を着たリーザがレインと一緒にこっちに歩いてくる姿があった。

それを見た俺は瞬時に理解した。

 

「まさかそれって・・・・・・」

 

「ペアルックです」

 

「やっぱりか」

 

「キリトもですよね」

 

「まあな」

 

どうやらラムも俺と同じようで、リーザとのペアルック服でのようだ。

 

「このペアルックの服、エギルさんから買ったんですけど」

 

「あ、それ俺もだ」

 

「さすがにこんな街中でのペアルックの服でのデートって」

 

「ああ。恥ずかしいというかなんというか」

 

「周囲の視線が・・・・・・」

 

俺とラムは同時に息を吐いた。

疲れたというより、周囲の視線がとにかくキツいのだ。精神的に。

 

「ただいまキリトくん。さっきそこでリーザちゃんとあったんだ。リーザちゃん、ラムくんと一緒にデートしてるみたいだよ」

 

「あ、ああ」

 

「それにしても私たちの他にもペアルックの服を着てデートする人がいるなんてね」

 

「そうだな」

 

レインは飲み物を渡すと、俺の横に座りラムとリーザのことを教えてくれた。

俺の少し離れたところではリーザとラムが座っていた。

するとまたしても周囲から。

 

 

『ねえねえ、あれって碧雲の幻槍のリーザと灼眼の刀使のラムじゃない?』

 

『ほんとだ。あの二人も結婚したって聞いていたけど本当だったのね』

 

『クッソー!マジで、リア充爆発しろー!』

 

『いや、だからここリアルじゃないし、そもそもどうやって爆発させるんだ!?』

 

 

そんな声が聞こえてきた。

 

「ところでリーザとラムの新しい二つ名?あれ?」

 

「さあ?でも、なんとなくあってる気がするよ」

 

「確かに」

 

ラムとリーザは今までのユウキとランの護衛であまり注目されてなかったが、第76層以降に発現したユニークスキル、≪無限槍≫と≪抜刀術≫で大きく広まった。広まった当初、二人は慣れないなか過ごしていたが、そこからさらに二組目のユニークスキル持ち同士の結婚と、今話題の二人なのだ。まあ、ラムの《灼眼の刀使≫とリーザの《碧雲の幻槍》って二つ名ははじめて聞いたが。

ラムとリーザを見るとラムは苦笑ぎみで、リーザは顔を真っ赤にしてうつ向いていた。

 

「そう言えば俺とレインの時も大変だったな」

 

俺は遠い目をして思い出した。

 

「うん。どこ行っても情報屋や剣士が来るから参っちゃったよ」

 

「それもあるんだが・・・。俺はレインを見られないようにするのが大変だった」

 

「??どういうことですか?」

 

俺の気疲れしたような感じにリーザが疑問符を浮かべて聞いてきた。

 

「いや、あのとき何故かレインの後を付けてるストーカーが多くてな、影からこっそり排除するのが大変だったんだよ」

 

「ええっ!?私それはじめて知ったよ!?」

 

レインは驚きの表情を出して、なんで教えてくれなかったの?と目で言ってきた。

 

「まあ、レインに心配かけさせたくなかったから」

 

「キリトくん///」

 

眼を逸らして言うと、レインは顔を赤くした。

 

「そう言えば俺も大変でしたよ。特にギルド内で」

 

「ギルドで?」

 

ラムも遠い目をして言った。

ラムとリーザがいるギルドは血盟騎士団。今はアスナ、ユウキ、ラン。そしてラム、リーザを中心に攻略活動している。

 

「はい」

 

「私はなにも言われてないよ?なに言われたの?」

 

「そ、それが・・・・・・」

 

「「「それが?」」」

 

「やっとリーザと結婚したかと」

 

「「「・・・・・・はい?」」」

 

ラムの言った意味がわからず俺たちは間の抜けた答えを返してしまった。

 

「えっと・・・どういうこと?」

 

「リーザと結婚したあと、血盟騎士団のメンバーほぼ全員から祝福して貰ったんですが、その際やっと結婚したか、この朴念仁。と」

 

「「ああ・・・・・・」」

 

「???」

 

俺は理解できなかったがレインとリーザは納得したように答えた。

 

「他にも色々と・・・正直あのとき疲れました。主に精神が・・・・・・」

 

「あー・・・・・・お疲れさま」

 

「ありがとうキリト」

 

そのあとなんとも言えない空気が辺りを支配し、気分転換にショッピングに出掛けることになった。

ちなみに何故か俺とレイン、ラムとリーザのペアというダブルデートになったのだった。

四人で色んなお店を周ったのだが、何故か周囲のプレイヤーが大量のブラックコーヒーを飲んでいたり、デュエルをしていたり壁を叩いたりしていた。ちなみに女性プレイヤーのほとんどは奇声を上げたりしていたのが印象的だった。

とまあ、後日エギルに今回の礼をいいに言ったのだが。

 

「なんか・・・すまねえ」

 

と謝罪された。

何故だ?

 

 

 

 

 

 

 

 




「みんな答えはわかったかな?答えを発表するよ。今回の答えはⅠ:のペアルックの服、だよ。当たってたかな?感想や評価お願いします!それじゃまた次回、Don't miss it.!!」





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HF編 第115話〈家族で温泉〉

「ヤッホー!みんな、ソーナだよ。今回も問題を出すよ!今回のゲストはこちら!」

「みなさんこんにちは、パパとママの娘のユイです!」

「今回のゲストはキリトとレインの可愛い娘!ユイちゃんです!ユイちゃん、こんにちは!」

「こんにちはソーナさん!いつもお世話になってます」

「いえいえ、こちらこそ。それではさっそく問題をだしますよ」

「はーい!」


問題:『今回、キリトたちが訪れた温泉のある階層はどこ?』

Ⅰ:『84層』

Ⅱ:『83層』

Ⅲ:『76層』

Ⅳ:『88層』

「答えは本文の最後に!」




 

~キリトside~

 

 

ある日の昼頃。

俺はユイとレインを探して、レインの部屋に来ていた。

 

「ユイ、レインと一緒だったのか」

 

部屋の中には、ユイとレインが仲良く話していた。

 

「はい!今度、パパとママとわたしの三人で、どこかピクニックに行ったりしたいねって話をしてました」

 

どうやらピクニックの話をしていたらしい。

 

「下の階層に降りられないのが残念だよね。上層だと、ポップするモンスターが強くて、とてもピクニックどころじゃないもん」

 

レインが少し残念そうな表情で言った。

確かに上層にも綺麗な景色の場所は多数あるが、どこもモンスターがポップしてくるため、とてもじゃないがユイを連れてのピクニックには行けない。

 

「いくつか良さそうな場所に心当たりはあるので、最新の情報と合わせてもう少し検討してみます」

 

「俺も一応攻略中に、いくつか絶景な場所とかは見付けたんだけど、どこも危険なんだよな」

 

「私もー。あ、そう言えばユウキちゃんとランちゃんから聞いたんだけど、第84層に温泉があるんだって」

 

「へえ。84層にそんなところがあったんだな」

 

「うん。露天風呂で、なかなか広くて気持ちいいんだって」

 

ユウキとランがなぜそこを知っているのかは少し疑問だが、そんなこと思っているとユイが。

 

「その地形データでしたら、私が記憶している情報にも確かにあります。お湯の温度も、お風呂として使用するのに丁度いい設定になっているようです」

 

情報を調べたのかすぐに言ってくれた。

 

「ユイちゃんがそう言うならあるみたいだね」

 

「ああ。ただ、温泉だとピクニックって感じはしないな」

 

「う~ん、確かに・・・・・・あ!なら、日帰り温泉旅行って感じはどうかな?」

 

「日帰り温泉旅行か・・・・・・。いいかもな。さすがにこの世界に旅館はないけど・・・・・・。ユイもそれでいいか?」

 

「はい!もちろんです!」

 

「それじゃ決まりだ。ちなみにユイ、その温泉の効能とかそういうのってわかるか?」

 

「効能、ですか?ええと、ヒットポイント回復とかのボーナスがあるかってことですよね。とりあえず、そういうのは特にないみたいです」

 

「とすると・・・・・・純粋に気持ちいいだけ、なのか」

 

「でも、その方がいいんじゃない?下手にメリットとかあると人が押し寄せてきそうだし」

 

「確かにな。あと、問題はその場所がどのぐらい危険なのか、だな・・・・・・」

 

もし危険な場所なら少し考えなくてはならない。

まあ、俺とレインがいれば大抵のモンスターは瞬時に片付けられるが・・・・・・。

 

「どのくらいの人が、そこを訪れているかはわからないんですけど・・・・・・。ただ、安全性については、温泉のある辺りは丁度、安全地帯に指定されています」

 

「そのマップ設定したヤツはよくわかってるじゃないか。茅場なのかもしれないけど」

 

そんなこと言う俺の脳裏にドヤ顔で、さも当然だとも、と言いそうな若干憎たらしいヒースクリフこと茅場が出てきた。

 

「あはは。確かに、茅場さんもその辺りのことは考えてそうだね」

 

茅場とよく料理について話していたレインが言うのならたぶんそうなのだろう。

茅場はあれでもかなりのラーメンマニアらしい。

しかもスキルに料理スキルも入れていたらしく、熟練度がマスタリー近くだったらしい。それを聞いた俺は、あまりのイメージの違いに唖然としてしまったほどだ。

そんなことを思い出しながら俺は苦笑いを浮かべて返した。

 

「まあな」

 

「えっと、とりあえずこの温泉に行く、ということで良いのかな?」

 

確かめるように言うレインに。

 

「もちろん!親子水入らずで温泉を満喫しよう!」

 

「おーっ!」

 

俺とユイは瞬時に返した。

 

「それじゃ、さっそく準備してくるからね」

 

「えっ?」

 

楽しそうに言うレインの言葉に俺は首をかしげた。

 

「えっ?温泉にいく準備をして来るつもりだけど・・・・・・なにか問題あったかな?」

 

「あ、いや。今から行くって話だったの?」

 

「ええっ!?違うの!?」

 

どうやら今から行く算段だったらしい。

 

「わたしも今から行くのかと思ってました・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・。よ、よし!それじゃ全員、大至急で温泉に行く準備だ!」

 

ユイの残念そうな表情に、今から行かないと言えるわけもなく、今から行くことに決定した。

 

「おーっ!」

 

「わぁ~!温泉、楽しみです~!」

 

こうして俺たち家族は第84層にある温泉へと、日帰り温泉旅行に行くことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第84層  温泉

 

 

第76層、アークソフィアから転移して第84層にやって来た俺たち三人は、主街区から徒歩十数分ほどの目的の温泉があるという岩場地帯に来ていた。

そして、目の前には温泉が広がっていた。

 

「おおー!温泉だ!湯気がすごいな」

 

「まさか、SAOの中で温泉が楽しめるなんて思わなかったよ」

 

「前は温泉じゃなくて銭湯、だったからな」

 

「そういえばそうだったね」

 

俺とレインは以前訪れた銭湯のことを思い出した。

あのときは銭湯なのに何故か戦闘もせねばならなかったという、もう理解できない銭湯だったので、最後の最後で疲れてしまった。

 

「どうやら、わたしたち以外には誰もいないようですね」

 

「貸切状態だな。たっぷり楽しめそうだぞ!」

 

「ところで、露天風呂になると湯船って自分で作るのかな」

 

「いえ、ここは穴場なので、自分で穴を掘ったりはしないみたいです。ママの右側あたりに、丁度いい窪みがあるようですね。お湯の温度もお風呂ぐらいになってます」

 

「ええと・・・・・・あ、これかな?わぁ~、キリトくん!けっこう広いよ!」

 

「ほんとだな。10人ぐらいは軽くは入れるんじゃないか」

 

「あれ?でも、これってキリトくんも一緒に入るってこと・・・・・・かな・・・・・・?」

 

レインが疑問符を頭に浮かべて首をかしげながら聞いてきた。

 

「うーん、他に入れそうなところは・・・・・・見た限りなさそうだな。交替で入るか?」

 

「えーっ。パパもママも一緒に入ればいいじゃないですか!」

 

「いや、そうは言ってもな・・・・・・。レイン、やっぱり交替で・・・・・・」

 

ユイの言葉に少しだけ顔をしかめて言う俺の言葉を遮りレインが。

 

「う~ん・・・・・・濁り湯みたいだし、温泉の中に入っちゃうとお互いよく見えないんじゃないかな?」

 

頬に人差し指を当てて思い付いたように言った。

 

「あー・・・・・・いいのか?」

 

一応確認を取ると。

 

「いいも悪いも、家族なんだから別に恥ずかしがる必要ないと思うよ?・・・・・・それにキリトくんはもう私の全てを知ってるじゃない」

 

最後の最後でレインが爆弾を落とした。

 

「ゲホッ!コホッ!ケホッ!れ、レイン!?」

 

息が詰まって噎せる俺をよそに、レインは片目を瞑ってニコッとしていた。

 

「わーい!みんなでお風呂ですね!」

 

「(ま、まあ、前にも部屋で一緒に入ったこともあるしいい・・・・・・のか・・・・・・?)」

 

「ちなみに~」

 

「ん?」

 

「キリトくんは、私とユイちゃんがお風呂の中に入るまでこっち、見ちゃダメだからね」

 

「・・・・・・はいはい」

 

レインの念を推す言葉に苦笑して返事を返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後

 

 

「パパとママと一緒にお風呂、楽しいです!・・・・・・あ、これだけ広いと泳げちゃいますよ?」

 

バスタオルを巻いたユイが楽しそうに言い、泳いで反対側まで行った。

 

「ゆ、ユイちゃん!?こんなところで泳いじゃダメだよ~。それに女の子なんだからはしたないよ~・・・・・・・」

 

そんなユイをたしなめるレイン。

そんな母、娘の姿に俺は笑みを浮かべた。

 

「まあまあ。他に誰もいないんだから、これぐらい、いいんじゃないか?俺も、もう少し広かったら泳いでたとこだし」

 

「まあ・・・・・・そうなんだけど」

 

「レインは泳いでみたくなかったのか?」

 

「え、え~と・・・・・・実は私もちょっとだけ泳いでみたいな~、って思ってたりして」

 

「なら、泳いでみたらどうだ?俺は別に気にしないし」

 

「や、やらないよ!」

 

顔を真っ赤にしてレインは俺のとなりに、バスタオルを身体に巻いて座った。

 

「そういえばレインって、現実でも温泉って行ったことあるのか?」

 

「う~ん・・・・・・昔、小さい頃に行ったような気もするんだけど覚えてないかな?キリトくんは?」

 

「俺もだ。銭湯なら何回か行ったことあるんだけどな」

 

「じゃあ、現実世界に戻ったら一緒に温泉に行こうよ」

 

「そうだな。そうなると、レインとの約束がまた一つ増えたな」

 

「ふふ、そうだね」

 

楽しそうに笑うレインに、俺も笑みを浮かべ返した。

 

「あ、でも、そのときはどうしよう」

 

「なにが?」

 

「SAOでは一緒に入ったでしょ?だから、現実ではどうしようかなーって。また・・・・・・混浴にする?」

 

「ゲホッ!コホッ!ケホッ!ちょっ、レインさん!?」

 

「ウフフ。可愛いな~、キリトくん」

 

そんな会話をしていると。

 

「あ・・・・・・すぐ、はしっこに着いちゃいました」

 

ユイのそんな声が聞こえてきた。

 

「どうせ泳ぐなら、もっと広いところに行った方がいい。そうだな、湖とか・・・・・・。よさそうな場所があったら今度はみんなでそこに泳ぎに行こう」

 

確か、第83に湖があったはずだ。

そんなこと考えていると。

 

「ほんとですか!?やったー!」

 

ユイが嬉しそうにバンザイをした。

したのはいいんだが、その弾みでユイが巻き付けていたバスタオルがはだけた。

 

「ゆ、ユイちゃん、あ、危ないよ、バスタオルが・・・・・・!」

 

とっさにユイにバスタオルを巻くレインは訝しげな視線で俺を見た。

 

「・・・・・・キリトくん、見てないよね?」

 

「え?いや、景色に見とれてたから別になにも見てないけど。いやー、いい景色だな・・・・・・」

 

「・・・・・・怪しいなあ~。まあ、そういうことにしておくね。で~も!」

 

「ん?」

 

「もし次見たら、私の《ディバイン・エンプレス》や《マテリアル・イグニッション》、《サウザンド・レイン》の的になってもらうからね」

 

「えっ!?ちょっ!それだけは勘弁して!」

 

レインの言葉からは冗談が感じられなかった。

 

「(ていうか、《ディバイン・エンプレス》や《マテリアル・イグニッション》は未だしも《サウザンド・レイン》は下手したらトラウマになるぞ)」

 

翔んでくる剣を思い出しながら、温泉に浸かっているのに寒気がした俺は、少し温泉の中に深く入った。

そこへレインが。

 

「じゃあキリトくんは私だけを見てね。あ、ユイちゃんの裸を見ちゃダメ、ってことだからね」

 

笑っているのに眼が笑ってない表情で言った。

 

「は、はい・・・・・・」

 

「(ユイのはってことは、レインのは見てもいいってことなのか?)」

 

そんなこと考えていると。

 

「キリトくん?」

 

レインがジト目で見てきた。

 

「な、なんでもないです」

 

「はぁ~~。温泉ってすっごい気持ちいいです~!」

 

「本当、来て良かったね~」

 

「だな。それに、なんだかさ、肌がいつもより艶々してないか?」

 

「あ、キリトくんもそう思う?もしかして温泉の効能なのかも?」

 

「そのあたりのデータはちょっと見当たりませんね」

 

「じゃあ、温泉の効能ってことでいいよ。その方が温泉に入ったって、気持ちになるし」

 

「あ・・・・・・そうだ。パパ、ママ!いらない布って、ありませんか?」

 

「布?そういえば、そんなドロップアイテムがあったような・・・・・・」

 

「あー、集めるとレア装備かレアな布になるのかなって思ってたんだけだけど、なにもならなかったんだよね」

 

「今も持ってるから、渡すよ」

 

ストレージから目的の布類をユイに送る。

 

「これだけあれば充分そうです。ありがとうございます、パパ!」

 

「でも、そんなもの、なんにに使うんだ?」

 

不思議に思いながらユイに訪ねると。

 

「ええと・・・・・・パパたちには内緒です!」

 

ユイがそう答えた。

 

「えー。そうなの?」

 

「ごめんなさいママ。いつか、ちゃんと説明します」

 

「まあ、そういうことならしょうがない」

 

「そうだね。それじゃ、そろそろ帰りましょうか。湯冷めしちゃったりするとあまり良くないと思うし」

 

「ん?レイン、湯冷めなんてステータス、あったっけ? 」

 

「ないですよ!」

 

「もう、キリトくんそうじゃないよ!雰囲気だよ、雰囲気!せっかくの温泉気分なんだから、最後までちゃんと楽しまないと」

 

「それもそうだな」

 

温泉を楽しんでいるレインを見ながら、

 

「(しかし、ユイはあの布切れをどうするつもりなんだろうな・・・・・・。教えてくれなかったのが気になるが。・・・・・・こんな風に娘が隠し事するのを世の中の父親たちはきっと寂しく思ったりするんだろうな・・・・・・)」

 

脳裏にそんなことを考えていた。

もしこれをクラインやエギル辺りに話して相談したら、親バカになりすぎだ、といわれそうな気がするな。

そんなことを思いながら俺たちは温泉をあとにして、76層、アークソフィアに帰った。

 

 




「みんな答えはわかったかな?答えをそれじゃ答えを発表するよ!ユイちゃん、お願いね!」

「はい!今回の答えはⅠ:『84層』です!」

「今回は日帰り温泉旅行、ってことみたいだったけど楽しかったユイちゃん?」

「はい!とっても楽しかったです!いつかまたパパとママと一緒にいきたいです!」

「そっか~。よかったね」

「はい!」

「さて、それではそろそろ時間となってしまいましたので今回はここまでとなります」

「あ、もう時間なんですね」

「早いね~。それではみなさん、また次回!」

「またお会いしましょう!」

「「Don't miss it.!!」」



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HF編 第116話〈祝福の儀式〉

「プリヴィベート、みんな!今日も問題を出すよ!今回のゲストはこちら!」

「まさかわたしが呼ばれるなんて思わなかったよ、ソーナくん」

「いえ、こちらこそ来てくださりありがとうございます!」

「ふ。なに今回はあの二人の大事な場面だからね。わたしとしても観てみたいのさ」

「なるほど。おっと失礼しました。今回のゲストはSAOの開発者にしてゲームマスター。ヒースクリフこと、茅場さんです!」

「どうも。それと、今のわたしはヒースクリフと呼んでくれたまえ」

「わかりました。ところでヒースクリフさん、今回のクエストはヒースクリフさんが設計したものなんですか?」

「ふむ。確かにSAOのクエストの大半はわたしが考案したものだ。中にはカーディナルシステムが作成したクエストもあるがね」

「へぇー。では、ここで今回の問題を出します!」


問題:『今回のクエスト、《祝福の儀式》の別名はなんでしょう?』

Ⅰ:『成婚クエスト』

Ⅱ:『結婚クエスト』

Ⅲ:『祝願クエスト』

Ⅳ:『儀式クエスト』


「答えは本文の最後に!」




 

~キリトside~

 

攻略が進んだとある昼間。第76層アーソフィアのカフェで。

 

 

「キリトくん、ちょっといいかな・・・・・・?」

 

「ん?どうしたんだ?」

 

俺は目の前にいるレインにそう言われた。

 

「あのね、86層のマップを確認してみてくれるかな」

 

「86層?」

 

レインに言われてウインドウを開き、第86層のフィールドマップを開いた。

 

「・・・・・・おっ、クエスト情報が更新させれてる。場所は・・・・・・迷宮区の北の方だな」

 

フィールドマップの一ヶ所に『!』のマークが表情されていた。

 

「キリトくんのも更新されてるんだね。それじゃあやっぱりこれって・・・・・・」

 

「ああ。これが《祝福の儀式》だな」

 

「うん。確か、神父さんの言葉によればこのクエストで最後・・・・・・のはずだよね?」

 

「ああ」

 

「それじゃあ今すぐ86層に行ってクエストを攻略しよう!」

 

「だな。準備は?」

 

「バッチリだよ。キリトくんは?」

 

「問題ない。俺も大丈夫だ」

 

「うん♪それじゃあクエスト攻略目指して頑張ろー」

 

即日実行。俺とレインはテーブルの上にあった飲み物を飲むと、駆け足のような速度で転移門広場に行き、第86層へと、転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第86層 迷宮区北側

 

 

第86層に転移した俺とレインはそのまますぐに、クエストポイントへと向かっていた。

 

「いよいよここが、《祝福の儀式》の最終地点だな」

 

クエストポイント付近に到達し、俺はそう声を漏らす。

 

「うん!このクエストをクリアできたら私たち・・・・・・」

 

「よし。行こう、レイン」

 

「うん!キリトくん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クエストポイントに着くと、辺りの府陰気が変わった。

どうやらクエスト専用のインスタンスエリアに入ったようだ。

そのまま歩くと開けた場所があった。

 

「うわぁ・・・・・・キリトくん、上見て!スッゴく綺麗だよ」

 

隣にいるレインが上を向いてそういうのが聞こえ、俺も上を見上げると、そこには満天の星空があった。

おそらくインスタンスエリアで、他のエリアと隔絶されているから時間の進みが違うのだろう。

 

「すごい眺めだな。ゲームの中でこその光景だよな。リアルでこんな風景、見たことない」

 

「そうだね。あ、でも都会とかじゃなかったらなかったら綺麗に見えるんじゃないかな?」

 

「あー、確かに。リアルの家の窓からも綺麗な星空は見えるからな」

 

俺は昔、子供の頃に自室の窓から見た流星を思い出して言った。

 

「へぇー。今度リアルで連れていってね♪」

 

「あ、ああ。機会があればな」

 

「それにしても・・・・・・」

 

「ああ・・・・・・」

 

近くにあった草地に座り込み、俺とレインは滅多に見たことない満天の星空を眺めた。

その光景に、俺とレインは言葉を失った。

やがて、レインが。

 

「・・・・・・リアルでもキリトくんとこうしてみたいな」

 

「そうだな・・・・・・俺も向こうでレインとこうして見てみたいな」

 

「うん。あ、見て!流れ星」

 

レインの視線の先にはレインが言ったように流星が流れていた。

 

「ホントだ。アインクラッドで流星なんて初めてみた・・・・・・」

 

「私も・・・・・・」

 

俺とレインの視線の先では満天の星空を切り裂くように流れ落ちる流星がいくつも流れていた。

 

「・・・・・・現実の家の近くに星が綺麗に見える場所があるんだ」

 

「そうなんだ。じゃあ、向こうの世界に戻ったら一緒に行こうよ」

 

「そうだな」

 

「約束だからねキリトくん?帰ったら一緒に、いろんな場所に行って、いろんな風景を見に行こうね」

 

「ああ、約束だ」

 

レインと右手の小指をあわせて指切りをして約束する。

その約束は俺にとってもレインにとっても大切な目標になったと俺は、星空を見上げて感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

流星を眺めた場所で休んでさらに進んでいくと、洞窟があった。ほかに道もないため洞窟に入りしばらくすると。

 

「あれ?なんだろうここ。雰囲気が教会みたい」

 

扉があり、その中にはいるとレインがそういった。

 

「レインもそう思うか?」

 

「うん。あ、そうだ!お祈りをしようかな、キリトくんが浮気をしないように、って」

 

「えっ!う、浮気なんか絶対しないよ!」

 

「アハハ♪冗談だよ冗談♪キリトくんが浮気をするわけ無いもんね♪」

 

「あ、あたりまえだろ」

 

「あ・・・・・・ね、ねぇ!キリトくんあれ見て・・・・・・」

 

レインの指差す先には一段上がった台座のようなものがあった。

 

「ん?あれは・・・・・・祭壇か?・・・・・・とすると、ここで儀式を行うのか?」

 

祭壇に近づき、石でできている祭壇を見ていると。

 

 

『・・・・・・絆の神殿を訪れし者たちよ・・・・・・』

 

 

どこからかそんな声が聞こえてきた。

 

「「・・・・・・・・・・!(きた・・・・・・!)」」

 

 

『・・・・・・汝、健やかなるときも病めるときも喜びのときも悲しみのときも・・・・・・これを愛し、これを救い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?』

 

 

「・・・・・・え?」

 

「・・・・・・は?」

 

俺は続いて聞こえてきた謎の声の言葉に声を漏らした。何故なら、この言葉はどう考えても。

 

「これって・・・・・・どう考えても・・・・・・」

 

「結婚式・・・・・・だよね?」

 

結婚式での誓いの言葉そのまんま・・・・・・なのか?だからだ。

 

 

『・・・・・・誓いますか?』

 

 

急かしてくるように再び聞いてくる声に

 

「「は、はい!誓います!この命に変えても!」」

 

俺とレインは同時に。同じ言葉を発した。

 

 

『よろしい。ならば、その絆を示せ・・・・・・』

 

 

「絆を・・・・・」

 

「示せ・・・・・?」

 

俺とレインは謎の声の言葉に嫌な予感が芽生えた。

そしてそれはすぐさま当たった。

何故なら―――。

 

 

 

『NM"Knight Of Dath"』

 

『NM"Knight Of Living"』

 

 

 

と表示された二体の騎士モンスターがポップしたからだ。しかも二体ともNM(ネームド)と表記されている。

そして嫌な予感は的中し。

 

 

『汝らの力を・・・・・・絆を、その騎士に伝わらせよ』

 

 

と謎の声が言った。

 

「な、なんでいきなりこうなるのよー!」

 

「いろいろつっこみたいが今はとりあえず目の前のモンスターを倒すのが先だ。行けるかレイン」

 

「もちろん!」

 

「よし。戦闘開始だ!」

 

俺の開始の言葉を合図に俺とレインは鞘から双剣を。目の前にいる二体の騎士モンスターは両手剣を構えた。

 

「最初からやるぞ!」

 

「うん!」

 

俺とレインは同時に同じスキルを言う。

 

「「―――共鳴(レゾナンス)!」」

 

≪シンクロ≫スキル《共鳴》を発動させた。

俺とレインのHPバーには《共鳴》による様々なバフが表示された。

 

「はあああっ!」

 

「やあああっ!」

 

気合の入った声と共に、俺はNM"Knight Of Dath"へ。レインはNM"Knight Of Living"へと迫る。

 

「ぜあっ!」

 

接近した俺はそこから片手剣ソードスキル《バーチカル・アーク》2連撃を放つ。放たれた《バーチカル・アーク》の一撃目はモンスターの両手剣により防がれる。そして二撃目はモンスターの籠手部分に当たり、僅かにHPを減らした。

 

「まだだ!」

 

そこから追撃で体術スキル《幻月》による蹴りを放ち距離を取る。

 

「やっぱりNMだからかそんじょそこらのモンスターとは違うな」

 

今の攻防で俺はそう声に出して言う。

騎士モンスターはそんなことを言う俺を無視し両手剣ソードスキル《アバランシュ》単発突進技を仕掛けてきた。

 

「はあっ!」

 

放たれたソードスキルを俺は双剣をクロスさせて受け止める。受け止めた威力を受け流して、両手剣を弾きあげがら空きの胴体に連続で攻撃する。

両手剣は小回りが効かないぶん威力は高い。その点に関して俺やレインの双剣は小回りが効き、威力も十分ある。まあ、他のプレイヤーが聞いたら、一緒にするなって!言いそうだが。

 

「キリトくん!」

 

そう思っているとレインから声が聞こえた。

チラリとレインの方を見て、同時にうなずく。

騎士モンスターと攻防をしながら少しずつレインに近寄る。やがて、十分に距離が縮まったところで。

 

「「・・・・・・!」」

 

同時に斬りかかってきた騎士モンスターを背中合わせのレインと位置を交換して防ぐ。

そしてそのまま。

 

「「―――レディアル・シンズ!」」

 

≪シンクロ≫ソードスキル《レディアル・シンズ》範囲技8連撃を放つ。《共鳴》の効果で威力が上昇(ブースト)されてるソードスキルに騎士モンスター二体は防ぐこともできず、もろに俺とレインの攻撃を受けた。

このソードスキルの最大の特徴はソードスキル中にパートナーとスイッチ出来ることだ。通常のソードスキルの発動中はスイッチ出来ず、ソードスキル終了後にスイッチできる。だが、このソードスキルは二対二のとき、ソードスキル発動中にスイッチが出来るのだ。いや、正確にはスイッチしてもソードスキルが発動中だから、スイッチではないかと思うが。

そんなこと考えながらソードスキルで騎士モンスターを攻撃しHPを減らす。

 

「やっぱりNMモンスター相手だとキツいね」

 

「確かに・・・・・・な」

 

背中合わせに会話する。

視線の先の騎士モンスターのHPは二段のうち一段目の半分にまで減っている。

 

「《共鳴》の終了まであと10分、それまでには終わるか?」

 

「終わるか?じゃなくて終わらせるんだよキリトくん♪」

 

「はは、だな」

 

「だから、この先は私たち二人で闘おう」

 

「奇遇だな。俺もそう言おうと思ってたところだ」

 

俺は意地の悪い笑みを浮かべて答える。

そんな俺を見てレインは苦笑しながら双剣を握り直す。

 

「さて・・・・・・行こう!」

 

「うん!」

 

俺とレインは背中合わせに騎士モンスターに双剣を突き出して言う。

 

「ぜりゃっ!」

 

まずは俺が先に攻撃を仕掛ける。

接近した俺に騎士モンスター二体は俺に両手剣を振り下ろしてくる。だが―――。

 

「遅いッ!」

 

振り下ろしてくる前に俺は騎士モンスターの懐に入り込み≪二刀流≫ソードスキル《エンドリボルバー》範囲技2連撃を発動させていた。

《エンドリボルバー》が胴体に直撃し、騎士モンスターの動きが止まる。そしてその隙を逃す俺とレインではない。

 

「やあっ!」

 

後ろからレインの≪多刀流≫最上位ソードスキル《サウザンド・レイン》が飛翔し騎士モンスターの甲冑姿を次々と斬りつけていく。その隙に俺は騎士モンスターの横に移動してソードスキルを放つ。

 

「りゃあ!」

 

放たれた≪二刀流≫ソードスキル《ローカス・ヘクセドラ》7連撃を受けた二体は七撃目の衝撃波で吹き飛ばされ、揉みくちゃになって倒れた。

《ローカス・ヘクセドラ》は範囲技ではなく単体技だが、こうして敵に衝撃波を与えることができ、後ろにいるモンスターにも衝撃波が飛び、攻撃できる。まあ、《共鳴》とレインの《サウザンド・レイン》で動きを止めているからできる芸当だが。

吹き飛ばされ倒れた騎士モンスターは立ち上がろうとするが、動きがぎこちなく遅い。

騎士モンスター二体のHPバーには《ローカス・ヘクセドラ》の追加効果で麻痺が与えられていた。

 

「決めるぞレイン!」

 

「うん!」

 

「「はあああっ!―――インフィニティ・モーメント!」」

 

≪シンクロ≫最上位ソードスキル《インフィニティ・モーメント》30連撃を受け、二体の騎士モンスターは見る見るうちに甲冑とHPが削られていき、ラスト二撃目で同時にHPをゼロにした。

 

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・。終わった・・・・・・のかな・・・・・・キリトくん!」

 

騎士モンスターがポリゴンの欠片となって爆散したのを確認すると、レインがそう聞いてきた。

 

「ああ・・・・・・。というか、結婚式を挙げるのになんでモンスターを倒すんだよ。しかもNM(ネームド)クラス」

 

「同じく・・・・・・」

 

「さて・・・・・・ボスは倒したが」

 

息を整え、剣を鞘にしまいそう訊ねる。

 

「うーん・・・・・・。儀式ってどうしたら変化が起きるのかな。指輪にも変化はないみたいだし・・・・・・」

 

「これまでのところ、イベントに展開があるたびに指輪が光っていたから、今度も指輪を光らせないといけないんだろうけど・・・・・・」

 

今までの展開を思い出してそう言うと、レインが恐る恐る声をかけてきた。声をかけてきたレインの顔は真っ赤になっていた。

 

「・・・・・・あ、あのね、キリトくん。これが結婚式だということは、さっきのが誓いの言葉・・・・・・ってことになるから、次にやることって・・・・・・」

 

レインの言いたいことがわかった俺は、レインと同様にこのあとのことを理解し、気恥ずかしさに顔を赤くする。

 

「な、なるほど・・・・・・。それじゃレイン・・・・・・こっちを向いて」

 

「・・・・・・はい」

 

祭壇の前で向かい合い、俺とレインは顔を近づけてキスをする。

今までの何度もしてきたはずだが、今回のは少し・・・・・・違うような感じがした。

 

 

『・・・・・・汝ら、神の前において夫婦たる誓約をなせり』

 

 

キスをすると、どこからか謎の声が聞こえた。

 

「おおっ」

 

「合ってたんだね!」

 

会っていたことに喜ぶ俺たちに。

 

 

『故に我、神の名において、汝らの夫婦たることを宣言す。神の合わせ賜いし者は人これを離すべからず』

 

 

謎の声(神?)がそう宣言した。

謎の声が宣言したその瞬間、俺とレインの指輪が光だした。

 

「あ、指輪が・・・・・銀色に変わったよ・・・・・・」

 

レインがそう言うと、目の前にウインドウが開き。

 

 

『アクセサリー:マリッジリング』

 

 

と、新しいアイテム名が表記された。

 

「終わった・・・・・・のか?」

 

「たぶん、ね。あ・・・・・・!キリトくん、システムウインドウ。急いで見てみよう!」

 

「おう」

 

急いでシステムウインドウを開き確認すると。

 

「・・・・・・アイテムストレージがひとつになってる・・・・・・」

 

「キリトくんのステータス画面も見れるよ・・・・・・!」

 

「俺もだ。レインのステータス画面が見れるようになってる・・・・・・!」

 

俺とレイン、両方のステータス画面が見れ、アイテムストレージが一つになっていた。

 

「キリトくん、私たち・・・・・・」

 

「無事、元に戻れたみたいだな」

 

「や・・・・・・やったぁーー!よかったよーー!」

 

「やっぱりこの方が落ち着くな(レインも喜んでくれているし)」

 

「それにしても、このクエストって結婚式クエストだったんだね」

 

「最初のトリガーが、神父の前で指輪の話をする、だったけど・・・・・・。結婚や婚約指輪の話をしてクエストを発生させるって流れが想定されていたんだろうな」

 

「でも、こんな神聖な場所で私たち二人だけで結婚式を挙げられるなんて・・・・・・私とキリトくん二人の秘密だね」

 

「だな。俺とレイン二人の秘密だ」

 

「うん♪ところでさっき聞こえてきた声。神の名においてって言ってたけど、神って・・・・・・」

 

「ヒースクリフ?あ、いや、茅場か?」

 

「・・・・・・ふっ、あはははっ!ヒースクリフさんが仲人かぁ。確かにヒースクリフさん仲人にピッタリかも」

 

茅場が仲人している姿を想像し、少し苦笑いを浮かべた。

 

「ヒースクリフ。いや、茅場のことは許したつもりはないけど・・・・・・ある意味、SAOがなかったらレインと出会えなかったわけだしな」

 

「そうかも。キリトくん、私ね・・・・・・キリトくんと会えてよかったよ」

 

「俺もだよ」

 

「うん・・・・・・♪」

 

「・・・・・・さ~てと。そろそろ帰ろうか。みんなのところに」

 

「そうだな」

 

「(・・・・・・ふう。これで結婚の件も一件落着か?かなり凝ったイベントだったな・・・・・・)」

 

俺はそう思いながら、レインとともにアーソフィアへと帰っていった。

アーソフィアに着き、みんなにクエストクリアの報告と、レインと結婚状態に戻ったことを伝えると、俺とレインはみんなから祝福されたのだった。

その際ユイがとても嬉しそうにレインに抱き付いていたのが印象だった。

 

 




「みんな答えはわかったかな?それではヒースクリフさん、答えをお願いします」

「うむ。今回の問題の答えはⅡ:『結婚クエスト』だ」

「いやー、キリトとレインが結婚状態に戻って良かったですね」

「うむ。やはり、あの二人は結婚していてこそだな」

「ところでキリトとレインの二つ名の『最強夫婦』って誰が着けたんですか?」

「む?ああ、その二つ名はわたしが着けたのだよ」

「へぇー・・・・・・え?」

「ユニークスキル保持にして、攻略組トップの二人が結婚しているのだから『最強夫婦』の名に相応しいと思ってね。まさか、ここまで広まるとは・・・・・。さすがのわたしも予想できなかったよ」

「そ、そうなんですね・・・・・・」

「うむ。おっと、ソーナくん、そろそろ時間ではないかね?」

「あ!ほんとですね。ヒースクリフさん、今回はありがとうございました」

「なに、かまわんさ。またよければ呼んでくれたまえ」

「わかりました。では、また次回!」

「「Don't miss it.!!」」




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HF編 第117話〈おままごとINユイママ!?〉

「プリヴィベートみんな!ソーナだよ!今回もゲストと一緒に問題を出すよ!今回のゲストはこちら!」

「こんにちは、パパとママの娘、ユイです!」

「いらっしゃいユイちゃん!はい!今回はユイちゃんに来てもらいました!」

「こんにちはソーナさん!」

「うん、ユイちゃんは元気そうだね」

「はい!パパとママから元気をもらってますから!」

「あはは、さすがキリトとレイン。親バカがすごい・・・・・・」

「?」

「あ、なんでもないよ。それじゃあ今回の問題を出すね、ユイちゃん、お願い」

「はい!今回の問題はこちらです!」


問題『今回の話でユウキ、ラン、アスナの役割はなに?』

Ⅰ:妹

Ⅱ:娘

Ⅲ:親戚

Ⅳ:従姉妹


「答えは本文の最後にです!」





 

~キリトside~

 

アインクラッドの階層攻略がある程度進んだある日。

 

「(ん・・・・・・あれは・・・・・・)」

 

「それでね・・・・・・。お母さん役になった人は・・・・・・」

 

「ふんふん・・・・・・」

 

奥のテーブルでシリカとユイがなにか話しているのを見つけた。

 

「シリカ、ユイ。二人して、なにしてるんだ」

 

気になった俺は、シリカとユイのいるテーブルに近寄り、訊ねた。

 

「あ、キリトさん。ええっとですね・・・・・・」

 

「『おままごと』という遊びを教わってました」

 

「おままごと・・・・・・?」

 

「ええ、ユイちゃんが『おままごと』を知らないっていうものですから」

 

「とっても面白いんですよ。みんなでパパ役とママ役をろーるぷれいするんです。パパは『おままごと』ってやったことありますか?」

 

「ああ。昔、スグやユウキ、ランに付き合わされて何度かやったかな?」

 

俺はどこか遠い目をして昔やった(強制的に付き合わされた)おままごとを思い出した。

 

「(あの、おままごとは俺の黒歴史の一つだからな・・・・・・)」

 

どこか窶れた感じの府陰気でそう思った。

 

「パパは経験者なんですね!わたし『おままごと』やってみたいです」

 

「『おままごと』をか?・・・・・・そうだな、ユイにはいつも留守番させてばかりだし。よし、付き合うよ」

 

娘のユイがやってみたいなら、それに付き合うのが親の役目でもあると判断し、俺はユイのおままごとに付き合うことにした。

 

「(さすがにあの時みたいなことはおきないだろ)」

 

そう淡い想いも込めながら。

 

「わーい!ありがとうございます!」

 

「あ、あたしも付き合います!」

 

「本当ですか!じゃあじゃあ、パパがパパ役で、わたしがママ役!」

 

「それじゃあ、あたしが子ども役?」

 

ユイの言葉にシリカが首をかしげて聞いた。

 

「だめですか?」

 

「う、ううん!いいよ!でも・・・・・・キリトさんと夫婦っていうのも味わってみたかったなー、なんて・・・・・・」

 

「それなら次はシリカさんがママ役をお願いします!」

 

「ううー、ありがとうユイちゃん!」

 

なにか小声でユイとシリカがこそこそ話しているが全く聞こえない。

 

「どうした、シリカ?」

 

「な、なんでもないです!」

 

「シリカ、すまないな。ユイに付き合わせる形になっちゃって」

 

「い、いえ!いいんです。あたし、立派にキリトさんの娘さんになりきってみせますから」

 

「あ、ああ・・・・・・よろしく頼む」

 

どこか張り切った様子のシリカに、少し戸惑いながらそう言った。

 

「それじゃあ、始めましょう!」

 

こうしてユイ主催?のおままごとが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パパ、ママ・・・・・・その・・・・・・おはよう、ございます」

 

「お・・・・・・・おはよう、シリカ」

 

朝起きてきた子どものように緊張しながら挨拶するシリカに、俺も同じ様に若干戸惑いながらも返す。

その点ユイは・・・・・・。

 

「は~い、ちょっと待っててくださいね。今、朝ごはんをつくりますから。目玉焼きとスクランブルエッグ、どっちがいいですか?」

 

全くもって普段通り?だった。

 

「え、えっと・・・・・・。パパと同じのがいい・・・・・・です」

 

「それじゃあ目玉焼きですね。は~い、ちょっと待っててくださいね」

 

「・・・・・・なるほど、キリトさんは目玉焼き派・・・・・・なんですね」

 

「ん?ああ、まあな」

 

「シリカちゃん、朝ごはんはパンにしますか?それともご飯ですか?」

 

「パ、パパと同じのがいいです!」

 

「それじゃあ、パンにしますね。今日は黒パンですよ」

 

「キリトさんも朝はパン派・・・・・・」

 

「もしかしてシリカも朝はパン派なのか?」

 

「え、えっと、はい」

 

ユイの質問に答えるシリカと軽く会話をする。

 

「シリカちゃん?パパ?どうしました」

 

「い、いえ!なんでもないですよ、ママ!」

 

「なんでもないぞ」

 

俺がそう言ったそのとき、

 

「ただいま~」

 

「あ、ママ!」

 

レインが帰ってきた。

 

「あれ~?キリトくんとシリカちゃん?ユイちゃんと一緒にいたの?」

 

「今、三人で『おままごと』をやっていたんです。わたしがママで、パパがパパで・・・・・・」

 

「あたしが、子ども役です」

 

「そうなんだぁ。それじゃあ、私は・・・・・・シリカちゃんのお祖母ちゃん、になるのかな?」

 

「あはは!そうなるな」

 

「わ、笑わないでよキリトくん」

 

「ママも子ども役で一緒にどうですか?子どもはたくさんいたほうが楽しいです!」

 

「おままごとかぁ・・・・・・。なんだが懐かしいかも。それじゃあ、ユイちゃん、お言葉に甘えてお邪魔しまするね♪」

 

ユイ一家妹増員。

ユイに言われ、レインがおままごとに参戦した。

 

「シリカお姉ちゃん、これからよろしくね!」

 

「え?レインさん妹なんですか!?」

 

「え?うん。あとから入ってきたからてっきり私がシリカちゃんの妹なのかと思ったのだけど・・・・・・」

 

「なるほど・・・・・・それじゃよろしくおねがいします!」

 

どうやら長女がシリカ、その下の妹の二女がレインらしい。

その光景にどこか違和感を覚えるのは気のせいではないはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん、今日はたくさん遊んだね」

 

「かくれんぼしてり、砂場でお城をつくったり楽しかったねー!」

 

「あ、でも、もう日も暮れてきたしそろそらお家に帰らないと・・・・・・。ママ、ただいまー!」

 

「おかえりなさい、シリカちゃん、レインちゃん。お外は楽しかった?」

 

「うん!もちろん!」

 

「外から帰ってきたら、ちゃんと手を洗って、うがいをするんですよ」

 

「は~い!」

 

「(な、なんかいつもの関係が逆転してる・・・・・・。違和感というかなんというか、なんだか、不思議な光景だな)」

 

声には出さずそう思ったのは正しいとどこか脳裏で想いながら、ユイたちを見る。

するとそこに。

 

「なにやってるの?アンタたち」

 

「あ、リズか」

 

リズがどこか疑問符を浮かべた呆れた眼差しで聞いてきた。そこに。

 

「あ、三女が帰ってきたよ」

 

「三女?」

 

レインがリズにそう言った。

 

「あはは。実はいま、ユイと一緒に『おままごと』をしてるんだよ」

 

「なるほど、そういうことか・・・・・・」

 

「リズっちは三女だよ」

 

どうやらリズが参加するのは確定事項らしい。

対するリズは苦笑をしながらおままごとに参加することを言った。

 

「もう役まで決まっているわけね。はいはい、付き合いますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パパー!だっこー」

 

「お、おい・・・・・・リズ!?」

 

わざとらしく抱き付いてくるリズに戸惑っていると。

 

「リズっち~・・・・・・?キリトくんにくっつきすぎじゃないかな?!」

 

レインがリズにジト目で言った。

 

「のんのん、わかってないわねレイン。末っ子が甘えん坊なのは基本中の基本よ」

 

「(末っ子って・・・・・・。まあ、確かに今はリズが末っ子らしいが・・・・・・)」

 

リズの言葉にそう思っていると。

 

「パパぁ・・・・・・あのねぇ、取引屋で取引されてる8万コルのレア鉱石がほしいなぁ」

 

「それ、本気でほしい物だろ!」

 

「バレたか・・・・・・」

 

「リズっち・・・・・・?」

 

リズに若干目が怖いレインが静かに聞いた。

そこにユイが。

 

「リズちゃんは本当に甘えん坊さんですねー。ほら、こっちに来なさい。ママが膝枕してあげますよー」

 

「あ・・・・・・う、うん・・・・・・」

 

「よしよし・・・・・・。ふふ・・・・・・リズちゃんはいい子ですね。甘えたくなったらいつでもこうしてあげますからね」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「(こんなふうにしおらしいリズは、初めて見るな・・・・・・)」

 

普段のリズからは見ることできないレアな光景にふとそう感じた。

そしてそこに。

 

「リズさん・・・・・・みんな・・・・・・なにしてるの?」

 

リーファが帰ってきた。

 

「お、リーファか。いまみんなで『おままごと』をしてるんだよ」

 

「おままごと・・・・・・?」

 

「四女がきたわよー」

 

「さあさあ、こっちこっち!」

 

「ええっ!?あたしもやるの?」

 

どうやらリーファも強制参加らしい。しかも四女ときた。いったい何人に増えることやら。

 

「問答無用の強制参加よ。いまならキリトパパとユイママに甘えたい放題の特典つき!」

 

「あ、甘えたい放題・・・・・・?」

 

リズの言葉にリーファの雰囲気が変わったような気がするが気にしないことにした。というか、嫌な予感しかしない。

 

「ほら、リーファちゃん。そんなところにいないで、ママのところにいらっしゃい?」

 

「そういうことだ。ちょっとだけ、ユイの遊びに付き合ってやってくれ」

 

「う、うん・・・・・・。そういうことなら、あたしも・・・・・・」

 

こうしてリーファは四女となってユイのおままごとに参加することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな~?晩御飯ができましたよ~!」

 

「わ、わーい!今日のごはんなにかなー・・・・・・?」

 

「うふふ。今日はリーファちゃんの大好きなラグー・ラビットのシチューですよ」

 

「やったあ。ママのつくるシチュー、あたし、大好き!」

 

「えへへ・・・・・・でも、ママはこの料理をつくる前からパパのハートを射止めてたんですよ」

 

「ぶっ!!」

 

ユイの唐突の言葉に俺は思わず飲んでいたコーヒーを噴き出してしまった。よく見るとレインも顔を真っ赤にしていた。

 

「え・・・・・・キリト君?」

 

「(た、確かに何時からか忘れたが、レインのつくった料理が当たり前のようになっていたからな・・・・・・)」

 

俺はいつしかレインの料理が日常になっていることを思いだした。

そこにレインが、

 

「ユ、ユイちゃん~・・・・・・。じゃなかったね。ママ・・・・・・その話はちょっとどころか・・・・・・かなり恥ずかしいから・・・・・・」

 

顔を真っ赤にしてユイに言った。

 

「あ、それは本当のパパとママの話でした」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・」

 

ユイの言葉で俺とレインは気恥ずかしくなりさらに顔を赤くして視線を逸らした。

 

「あ、あはは・・・・・・。ママはパパとラブラブで羨ましいなあ・・・・・・」

 

「あたし、パパの隣の席がいいです!」

 

「それじゃあ、私がパパの左隣もらうね♪」

 

リーファの引き笑いを聞きながらシリカと顔を赤くしながら言うレインにリーファがさらにツッコむ。

 

「もう、みんな。真面目におままごとしてください!」

 

「なるほどなるほど。それならあたしは、パパの膝の上に・・・・・・」

 

「そ、それはさすがに認められません!」

 

でもってリズの行動に瞬時に返す。

 

「・・・・・・っ?!」

 

その瞬間ものすごい寒気に襲われた。よくみるとリズも動きを止めていた。

寒気の発生源は・・・・・・・

 

「リズっち・・・・・・ちょっとおはなし(O☆HA☆NA☆SHI)しよう・・・・・・かな・・・・・・?」

 

ハイライトの無くしたレインだった。

 

「レ、レイン!?お、落ち着いてレイン?!」

 

「うん、大丈夫。落ち着いてるよ」

 

「目が笑ってないのにそう言われても安心できないわよ!」

 

「大丈夫だよ~リズっち。ただ、私のソードスキルを受けてもらうだけだから。もちろん、圏内でだけど」

 

「それはそれでノックバックが発生して怖いわよ!」

 

リズがレインに必死に説得するなか俺はあまりのレインの迫力に動けなかった。

そこへ。

 

「あれ、なにしてるのみんな?」

 

「ホント、なにか楽しそうね」

 

「あっちの方は・・・・・・・気にしないでおきましょうか」

 

「ユウキ、アスナ、ラン」

 

ユウキとラン、アスナが帰ってきた。

 

「なにしてるのキリト?」

 

「ああ、おままごとだよ。ユイがやりたいって言ってな」

 

「なるほど。それで、あれはいったいどういう状況なんですか」

 

「あれ?」

 

ランの視線の先には。

 

「リズっち、どっちがいい?私のソードスキルを受けるのと私のソードスキルを受けるの。どっち?」

 

「どっちも同じじゃないの!?」

 

「違うよリズっち。最初の方は≪多刀流≫だけで、最後の方は≪多刀流≫と片手剣ソードスキルも入れてるよ」

 

「どっちもいやあぁ!!」

 

ハイライトの無くした瞳でリズに二択を聞くレインの姿があった。

ていうかあの質問だとどっちも同じのような・・・・・・。

 

「今のレインちゃん、ボスモンスターより怖いんだけど・・・・・・」

 

アスナの言葉に同意するようにその場の全員がうなずいたのは間違ってない・・・・・・・・・・はずだ。うん。だって今のレイン、絶対零度、永久凍土のような冷たい瞳だしマジで怖い。

 

「と、ところでランたちも参加するか?」

 

「お、おままごとにですか?」

 

「そうそう」

 

レインの放つ冷たい殺菌ににたようなものに怯えながら話す。

 

「そ、そうですね・・・・・・」

 

「じゃあ、ボクらはキリトの家族の従姉妹ってことにしない?」

 

「それって私も入ってるのユウキ?」

 

「アスナはどっちでもいいけど」

 

「じゃあ、ユウキたちのところに入るわね」

 

「ってことみたいです」

 

「あはは・・・・・・」

 

ユウキ、ラン、アスナはユイ一家の従姉妹に収まった。

のはいいんだけど・・・・・・・。

 

「まだやってるの・・・・・・?」

 

レインとリズのやり取りがまだ続いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとかレインとリズのやり取りを終わらせると、ユイが声をかける。

 

「はいはい、みんな喧嘩しちゃダメですよ~。パパとママの言うこと聞いて、いい子にしてくださいね。はい、それじゃあ、みんなで『いただきます』しましょう。せーの」

 

『『『『いただきまーす』』』』

 

「すっかり大所帯になったな・・・・・・しかも従姉妹まで出来てるし・・・・・・」

 

「えへへ、子だくさんでとっても幸せです!」

 

ユイが嬉しそうに言うと。

 

「・・・・・・これはいったいどういう状況?」

 

最後のシノンがやって来た。

 

「ああ、シノン。『おままごと』だよ、ユイ一家と従姉妹のラン一家だ」

 

ちなみにユウキたちのところはランがパパでアスナがママ、ユウキが娘という設定らしい。

 

「シノンちゃんも一緒にどうかな?」

 

「とっても楽しいですよ!シノンさん!」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「楽しいですよ!」

 

「・・・・・・・・・・うん。それじゃ、入れてもらってもいいかしら」

 

「はい!どうぞどうぞ!」

 

「(ま、また、増えたぞ・・・・・・)」

 

「シノンさんは一番下の妹ですか・・・・・・。気が付いたら、あたしずいぶんとお姉ちゃんになっちゃいました」

 

「そもそも、あたしたち何歳の設定よ」

 

増えた様子を見ているとシリカの言った言葉にリズが今更ながらの質問を聞いた。

 

「あ、あたし7歳くらいのつもりでした」

 

「そうなると・・・・・・あたしは4歳とか?」

 

「じゃあ、シノンさんは赤ちゃん役ですね!」

 

「え・・・・・・」

 

「(あ、シノンが凍った・・・・・・)」

 

「は~い、シノンちゃん。ママが抱っこしてあげまちゅね~」

 

「そ・・・・・・それはさすがに・・・・・・」

 

「お~。よしよし。いいこ、いいこ・・・・・・」

 

「んん・・・・・・レ、レイン・・・・・・」

 

「シノンちゃん、頑張って!赤ちゃんになりきるんだよ!」

 

「そ、そんな・・・・・・」

 

「(すまないシノン。俺には救えそうにない・・・・・・)」

 

理由。とばっちりというか巻き込まれたくないからである。

 

「はい、シノンちゃんもそろそろごはんの時間でちゅよ。おっぱい、ほしいでちゅか~?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「ば」

 

「ば・・・・・・?」

 

「ばぶー・・・・・・」

 

「やったねシノンちゃん!すごく可愛かったよ!」

 

「マ・・・・・・ママ。次、あたしにシノンちゃんを抱っこさせてください!」

 

「死ぬほど恥ずかしいわ・・・・・・」

 

「(シノン・・・・・・巻き込んでマジですまん)」

 

クールなシノンにものすごく恥ずかしい役を任せてしまった俺は、心のなかでそう謝罪した。視界の端ではランが同情するような苦笑いを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一応食事が終わり、のんびりしていると。

 

「はい、それじゃあ、そろそろ、おやすみしましょう。最後にママから子どもたちにおやすみのチューですよ~。ちゅっ・・・・・・」

 

「ひゃっ・・・・・・」

 

「く、くすぐったいです・・・・・・」

 

「・・・・・・でも、なんかこういうのもいいかもね」

 

「あーあ。キリトとレインが羨ましくなっちゃった」

 

「や、やめてよ、リズっちたら・・・・・・」

 

「よし、それじゃあ、寝ようか」

 

そう言い立ち上がると、ユイが。

 

「え?パパも子供たちにチューですよ?」

 

爆弾を落とした。

 

「え・・・・・・?」

 

「え・・・・・・?えっ・・・・・・?ええっ!?」

 

「チューって・・・・・・」

 

「そんな・・・・・・そんなそんなそんな!」

 

「パパ?どうしたんですか。子どもたちが待ってますよ」

 

ユイの言葉にフリーズしていると、疑問符を浮かべたユイが聞いてきた。

 

「あ、あのね、ユ・・・・・・ユイちゃん!パパはねチューをしなくても大丈夫なんだよ?」

 

「あれ?そうなんですか?」

 

「そ、そうなんだよ!それは母親だけがすることなんだ」

 

「そうなんですか・・・・・・。わたし、知りませんでした」

 

「えー、パパのチューがなきゃ眠れないよー!」

 

「リズっち・・・・・・?」

 

「ひっ・・・・・・!じょ、冗談よ、冗談・・・・・・!」

 

リズはレインに異常なほどの怯えていた。

 

「(レイン・・・いったい何をしたんだ・・・・・・?)」

 

リズの怯えように俺は思わずそう思ってしまった。

 

「それじゃここでおしまいですね。『おままごと』すごく楽しかったです!みなさん、ありがとうございました」

 

「みんな、付き合ってもらってありがとう」

 

「まあ、こんなことでよければいつでも付き合うわよ」

 

「ですね。また遊ぼうね、ユイちゃん」

 

「あたしも楽しかったよ」

 

「今度はもう少し別の普通の役をさせてよね」

 

「今度はシリカさんがママ役なのは決まっています!」

 

「決まってる?」

 

「はい。シリカさんがパパと夫婦をやりたいと・・・・・・」

 

「あああああーーー!!!なんでもないですよ!なんでも!!」

 

「なんでもないような反応には見えないんだけどね・・・・・・」

 

「またみんなで遊ぼうね、ユイちゃん」

 

「はい!」

 

「(ユイがこんなによろこんでくれてよかったな。出来る限り時間を作って、一緒にいてあげられるようにしよう)」

 

そうユイを見ながら、限られた時間ではあるがそうしようと想いながらユイの頭を撫でた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、エギルの店の裏からリズの悲鳴が聞こえてきたが、そのすぐあとにレインがスッキリしたような表情で戻ってきたため誰もそこにいけなかったが、たまたま通りかかったリーザとラムがリズを見付けた。

そのリズの姿を見たラムによると、白眼を剥いて泡を出して気絶していたらしい。

その事を聞いた俺たちは、決してこの事に触れないと無言誓いを立てたのであった。

ちなみに、リズに恐る恐る聞いてみると、覚えてないと返ってきたことに俺は背筋に寒気が走り、レインを怒らせてはならないと改めて想ったのであった。

 




「みんな答えはわかったかな?それじゃあユイちゃん、お願いね」

「わかりました!今回の答えはⅣ:従姉妹、です」

「イヤー、まさか従姉妹になるとは」

「はい!ですがとても面白かったです!」

「そっか~。よかったねユイちゃん」

「はい!そうだ!今度ソーナさんも一緒にやりましょう!」

「え、え~と、ま、また機会があったらね」

「はい!」

「え~と、それでは時間となってしまいましたので今日はここまで!」

「みなさん、夏バテしないように気を付けてくださいね!」

「そうだね、ユイちゃん。では、また次回」

「「Don't miss it.!!」」


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HF編 第118話〈家族でピクニック〉

「ヤッホー、みんな!ソーナだよ!今回も問題を出すよ!今回のゲストはこちら!」

「こんにちは、ラムです。よろしくお願いします」

「今回はユニークスキル≪抜刀術≫の保持者にして同じくユニークスキル≪無限槍≫の保持者、リーザの結婚相手、ラムです!いらっしゃいラム」

「呼んでくれてありがとうございますソーナ。それと、この自己紹介の長いです」

「あ、ごめん」

「いえ、まあ、事実なので慣れました」

「あはは・・・・・・。さ、さて、今回の問題はこちら!」

問題:『今回ユイがキリトとレインにプレゼントしたものはなに?』

Ⅰ:ネックレス

Ⅱ:ブローチ

Ⅲ:水着

Ⅳ:剣


「答えは本文の最後に!」




 

~キリトside~

 

 

「ユイ、今日も留守番、ありがとうな」

 

エギルの店に帰ってきた俺は、エギルの手伝いをしているユイに声をかけた。

 

「いえ、これぐらい、どうってことありません。パパこそ、いつも攻略お疲れ様です!」

 

「でも、たまには息抜きしたいな~」

 

「あ、ママ!今、帰ってきたんですね。おかえりなさい!」

 

「ただいま、ユイちゃん」

 

どうやらリズのところに行っていたレインも帰ってきたみたいだ。

疲れ気味のレインにユイが。

 

「ママは息抜きしたいんですか?」

 

そう訪ねた。

 

「あはは・・・・・・ちょっとね。けど、攻略もあるし息抜きなんて言ってられないんだよね」

 

「でもやっぱり、たまには息抜きしないと。レインは息抜きに、やってみたいこととかなんかないのか?」

 

「う~ん・・・・・・急に聞かれてもなー。特にこれってのは浮かんでこないよ・・・・・・」

 

苦笑を浮かべて返してくるレイン。そこにユイが。

 

「あっ!わたし行きたい場所があるんです!」

 

「行きたい場所っていっても、上層階ともなると、だいたいどこに行ってもモンスターが強いのがな・・・・・・」

 

ユイの言葉に俺は少し顔をしかめて言った。

 

「その心配はいりませんです。わたしが行きたい場所には強いモンスターはポップしませんから!」

 

「えーと・・・・・・つまり・・・・・・ピクニック気分で大丈夫ってことなのかな?」

 

「はい!今のパパとママの実力ならそう言っても問題ないと思います!」

 

「そうなのか。それじゃ、さっそく今から行って、みんなで息抜きするか!」

 

「はーい!」

 

俺の声にユイが元気よく返事を返してきた。

 

「あ、じゃあ、私、お弁当用意してくるね」

 

「おおっ!レインの弁当!これは楽しみだ」

 

「ママ、いっぱい作ってくださいね!」

 

「もちろんだよ!レインちゃんにお任せあれ!」

 

そう言うとレインは厨房の方に歩き去っていった。

俺は視線をユイに戻して行き場所を聞いた。

 

「それじゃ、ユイは行き先について教えてくれ。これだけの上層なんだ。一応、情報は把握しておきたいからさ」

 

「わかりました、パパ。ええと、ゲートを出てからですね・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わあ!!!」

 

「おお!!!」

 

ユイの案内のもと、俺とレインは目的地に着いた。着くなり驚きの声を上げた理由は。

 

「パパ、ママ、どうですか?この景色・・・・・・」

 

「綺麗・・・・・・!こんな綺麗な場所があるなんて・・・・・・」

 

「ああ、すごい景色だ ・・・・・・。絶景ってのはこういうのを言うんだろうな」

 

目の前に広がる景色がとても綺麗な場所だったからだ。

 

「良かったです!パパもママも喜んでくれて・・・・・・」

 

「ありがとうユイちゃん!この景色の中でなら、お弁当も、美味しく食べられそうだよ!頑張って作った甲斐があったってものだよ~」

 

辺りの景色を見てそう言うレインにユイが。

 

「でも、実はここ、見るだけじゃないんですよ?」

 

「ん?見るだけじゃないってどういうことだ?」

 

「ふふふふ。ここって、友好的な生き物しかポップしないんです。つまり・・・・・・じゃーんっ!!」

 

ウインドウを開いたユイは、ストレージからなにかを取り出した。

 

「えっ!?ユイちゃん、これって水着!?こんなアイテム、いったいどうしたの!?」

 

ユイが取り出したアイテムは水着だった。

水着に驚く俺とレインに、ユイは手に持っている女性用水着をレインに渡すと。

 

「えへへ・・・・・・。もちろん、パパとわたしの分もありますよ!」

 

「おお!ありがとう、ユイ」

 

ユイから渡された水着を見た俺は、水着の布を見て首をかしげた。

 

「・・・・・・ん?この布地・・・・・・見覚えがある気が・・・・・・」

 

「え?・・・・・・あ、ほんとだ。この布ってたしか前にユイちゃんにあげた・・・・・・」

 

「・・・・・・そうか。この間、いらない布をユイがもらっていったのは、この水着を作るためだったのか」

 

「はい!大正解です!」

 

以前、家族三人で温泉に行ったときにユイにあげた布がまさか水着になっていることに驚くなか、俺とレインには嬉しさもあった。

 

「ユイちゃんからのプレゼントだなんね本当に嬉しいよ!ありがとう、ユイちゃん!」

 

可愛い愛娘からのプレゼントなのだ。嬉しくないはずがない。

 

「さあ、ママもパパも着てみてください!」

 

「うん。じゃあさっそく、着替えさせてもらうね!」

 

レインは嬉しそうにユイから渡された水着を見て、周囲を見渡した。

 

「えっと・・・・・・私とユイちゃんはそこの木の陰で着替えるから、キリトくんはあそこで着替えてくれるかな」

 

「はいはい、了解」

 

「・・・・・・覗かないでね?」

 

「覗くか!」

 

木の陰から言うレインに俺はすぐさま言い返した。

 

「ふふふっ。冗談だよキリトくん♪」

 

「あ、あのなあ・・・・・・」

 

楽しそうに笑いながら木の影に戻るレインに脱力しながら俺も、レインとユイのいる方とは反対の木の陰でユイからプレゼントされた水着に着替えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

着替え終わって湖の前で待っていると。

 

「お待たせ~」

 

「パパ~!」

 

レインとユイが手を繋いで水着を着てやって来た。

 

「おおっ!!二人とも水着、似合ってるじゃないか」

 

ユイのはピンクのワンピースタイプで、レインは薄紅と白の混じったビキニタイプの水着だ。

ちなみに俺のは普通のボクサーパンツタイプの水着だったりする。

 

「キリトくんも似合ってるよ!ユイちゃん、センスいいじゃない」

 

「パパ、ママ、ありがとうございます!」

 

「ここまで作れるなら、もしかしたら他にも衣装を作って販売したらかなり売れるんじゃないかな?」

 

「どうでしょう?・・・・・・わたし、パパとママのためだったから作ることができた気がするんです」

 

「ありがとうユイちゃん。とっても嬉しいよ・・・・・・!」

 

「おーい、ひたってないで泳がないか?すごいぞ、この湖・・・・・・。水は透明で底まで見通せる上に、カラフルな魚がたくさんいて、それだけでも万華鏡みたいだ」

 

ちなみにユイとレインが仲良く話してるなか、俺は先に湖の中に入っていたりする。

 

「あー!キリトくんだけずるいよ~!自分だけ先に湖の中に入るなんて!」

 

「そうですよ、パパ。ずるいです!」

 

「そんなこと言われてもな・・・・・・。二人がのんびりしてるのが悪いじゃないか」

 

ずるいと言われても困る俺はそう答えるしかなかった。

すると。

 

「へぇー・・・・・・。そんなこと言うんだ~・・・・・・」

 

「レ、レイン?」

 

レインが静かにゆっくりと湖の中に入ってきた。

レインの雰囲気にわずかに寒気が走り、後ずさる。

 

「そんなこと言うキリトくんには・・・・・・えいっ!」

 

「うわっ!」

 

キランと目を光らせたレインは思いっきり湖の水をぶっかけてきた。しかも不意打ち。

 

「・・・・・・不意打ちとは、やってくれたな!お返しだ!」

 

水に濡れながらレインにそう言いながらレインに反撃する。

 

「ふっふーん。そんな見え見えの攻撃が私に通用するわけないでしょ。ユイちゃんはそっちに回って!キリトくんを挟み撃ちにするよ~!」

 

「わかりました、ママ!パパ、覚悟してくださいっ!!」

 

右にレイン、左にユイと囲まれてしまった。

 

「なにっ、二対一・・・・・・だと・・・・・・?こうなったら、俺も本気を出すしかなさそうだ・・・・・・」

 

俺は二刀流の構えを取り、レインとユイを見る。

 

「ええっ!?その構え・・・・・・もしかして二刀流!?」

 

すぐさま構えに気づいたレインは驚きの声を漏らした。

 

「なら私も・・・・・・」

 

「なっ!?その構えは・・・・・・多刀流!?」

 

「せいか~い!」

 

対するレインも多刀流の構えをとってきた。

 

「こうなったら同時に攻撃するしか・・・・・・・」

 

左のユイと多刀流の構えを取る右のレインを見て、そう呟くと。

 

「ユイちゃん、気をつけてね!キリトくんは私とユイちゃんをいっぺんに攻撃するみたいだよ!」

 

「パパ・・・・・・あんまりです!わたしを攻撃しようとするなんて・・・・・・」

 

「う・・・・・・やめろ、ユイ。そんな目で俺を見るな・・・・・・」

 

ユイのうるうるとした瞳を見せられては攻撃したくても攻撃できず。というか出来るわけがない。そんな動きを止めてる俺に。

 

「スキありです、パパ!」

 

「今がチャンスだね!いくよ、ユイちゃん!キリトくんを一斉攻撃だ~!」

 

「おー!」

 

ユイが水を掛けてきた。そして、それに続いてレインも多刀流の構えで水を俺に掛けてくる。

 

「おいっ!ユイまでそんな姑息な手・・・・・・うぉっぷ。ちょっ、レイン、ま、待てっ、鼻に水が・・・・・・・・・・」

 

二人の絶え間なく掛けてくる水が鼻に入り苦しくなるがそんなことお構いなしに掛けてくる二人だった。

そんな二人を見ながら、

 

「(ここがゲームの中で良かった・・・・・・)」

 

俺はそんなことを思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・ユイ、ありがとうな。こんな綺麗なところを教えてくれて」

 

思いっきり湖で遊び、俺とレイン、ユイは湖の端に座って足を湖に浸けながら俺は真ん中に座るユイにそう言った。

 

「いえ、パパとママが喜んでくれたのなら、それだけでわたしも嬉しいです!わたし、ここがアインクラッドの中で一番綺麗な場所だと思うんです。だから、是非パパとママに見てほしくて・・・・・・」

 

「22層の私たちの家があったところも綺麗な場所だったけど・・・・・・。そうだね、景色の美しさなら圧倒的にここがすごいかも」

 

「そうだな。なんか、あの家にいた時と同じように、気持ちが安らぐっていうか・・・・・・そんな感じがする」

 

「あ、それは私もそうかも。リフレッシュできた気がするよ」

 

「76層に来てから下の層に戻れなくなって、前のお家には行けなくなっちゃいましたよね。だから、あのお家とは違いますけど。でも、少しでもあのお家にいた時みたいな気持ちになれればって思ったので・・・・・・。パパとママがそんな風に感じてくれたなら、大成功です!」

 

「ユイ・・・・・・」

 

「ユイちゃん・・・・・・」

 

「あれ、パパ、ママ。どうしたんですか・・・・・・?」

 

ユイの言葉にグッと来た俺とレインは思わずユイを抱き締めた。

 

「・・・・・・わわっ。そんな、二人でわたしのこと抱き締めてくれるなんて・・・・・・」

 

「ユイちゃん、窮屈だったらごめんね。でも、今はこうしたいの」

 

「窮屈だなんて、そんなこと絶対にありません!ただ・・・・・・なんか、あったかくって。その、くすぐったいです・・・・・・」

 

「(その感覚って、なんとなくわかる。家族のあたたかさ、だよな・・・・・・。AIのユイがそれを感じられたっていうのは・・・・・・。・・・・・・そうか、俺たちがちゃんと家族だってことなんだ・・・・・・)」

 

ユイとレインを見ながら俺はふとユイにそう感じてしまった。それと同時に、家族、ということに実感を得た感じだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無事、宿に帰還・・・・・・・です!パパ、ママ、お疲れ様でした!」

 

「ユイちゃんも案内ありがとう。お疲れさま」

 

存分に湖で遊び、ポップした小動物と触れあい楽しい家族でのピクニックを過ごした俺たち三人は宿屋のレインとユイの部屋に戻って来ていた。

 

「あれだけ外で水着になってたのに、日焼けの心配がないなんて、女の子としては嬉しいかも」

 

自分の肌を見てレインは嬉しそうに言った。

確かにレインの白い肌は、日焼けのあともなく白い。

 

「はぁ・・・・・・・俺はさすがに泳ぎすぎたな。疲れた・・・・・・・」

 

部屋に戻って来るなり俺はソファに座って楽な姿勢をとっていた。そんな俺を見て、レインが呆れた口調で。

 

「もう。湖を反対側まで見てくる、って言って無茶なことするからだよキリトくん」

 

「それでも結局、大きすぎて、行けなかったんだけどな。それに、ユイが連れて来てくれた景色の場所が、やっぱり一番景色が良さそうだった」

 

「はい!なので、自信を持ってオススメしました!」

 

「ユイちゃん、何度目かわからないけど・・・・・・・本当に、ありがとう」

 

「どういたしまして、です!」

 

ユイは笑顔で嬉しそうに返してきた。

だが、ユイはその笑みを崩し、悲しげな表情で。

 

「ただ・・・・・・実際に行ってみてまた、22層のパパとママのおうちに帰りたいってことも思いました。あの場所は綺麗な場所だけじゃない。そんな気がします」

 

そう言った。

ユイの言葉を聞きレインも少し悲しそうな表情をした。

 

「そうだな・・・・・・・。それはきっと、あそこが俺たちの『家』だから、じゃないかな」

 

「だね。私たちの帰る場所があそこだったから・・・・・・・。でも、もう戻ることができないと思うのが残念だね」

 

「はい・・・・・・・」

 

「確かに・・・・・・・この先で下の階層に行けるようになるとは思えない。かといって、クリアしたら現実の世界に戻ってしまうから、あの家にはいけない・・・・・・・。でも・・・・・・・俺たちにとって一番重要なのは俺たち三人が一緒にいられることだと思うんだ。それに、帰る場所が家だって言うなら、今の俺たちの家は、この宿屋・・・・・・それに、新しく買ったあの家もそうだとも言えるし」

 

「わたしはこの宿屋さん、好きですよ!他の人たちもいるから、いつも賑やかですし。それに83層のお家も大好きです」

 

「住めば都って言うしな。22層の家にはあそこの。ここにはここの、83層の家にはあそこの良さがあるってことさ」

 

「そうだね。私たち三人がいる場所が家・・・・・・。うん、それでいいと思うな」

 

「(・・・・・・できれば、これからもずっと家族三人、俺たちの家で一緒に暮らしていければいいのにとも思う・・・・・・。でも、現実世界に戻らなきゃいけないってことは、いつか必ず終わりを迎えることになる・・・・・・。・・・・・・いや、俺たち三人が揃っていることが重要なら、現実世界でも・・・・・・可能って言っていいのか・・・・・・?またユイをデータの形で残すことができるか、それ次第だけど・・・・・・。頭の中にとどめておこう)」

 

ユイの頭を撫でながらそう脳裏に思考した。

そう思いながら、俺はレインとユイとこれからも家族三人で過ごしていければいいなと思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、83層の家で。

 

 

「キリトく~ん♪」

 

「どうしたレイ・・・・・ン!!?」

 

リビングのソファで座ってウインドウを開いて熟練度を確認しているなか、レインに呼ばれレインの声がした方を向いた俺は、目を見開いて言葉をつまらせた。

何故なら―――

 

「ゲホッ!コホッ!な、ななな、なんで裸エプロンなんだ!?」

 

レインが何時しかの裸エプロンをしていたからだ。

 

「フッフーン。どうかな?」

 

「いや、どうかな?じゃないからな!なんでいきなり裸エプロンなんだ!?」

 

「え?裸エプロンじゃないよ?」

 

「へ?」

 

俺の素っ頓狂な声にレインはおもむろにエプロンの裾をたくしあげた。

 

「ちょっ!レインさん!?」

 

「ほら♪」

 

「ほら♪じゃなくてだな・・・・・・って、ん?」

 

たくしあげたエプロンの奥を見て俺は動きを止めた。

 

「あのー、レインさん」

 

「なあに?」

 

「何故、水着を着ているのでしょうか?」

 

そう、そこにあったのはレインの裸ではなく、以前ユイからもらった薄紅と白の水着だったのだ。

 

「裸エプロンの方が良かった?」

 

「いや、そうじゃなくてだな。なんで、水着エプロンしてるんだ?」

 

「前にリズっちが私とリーザちゃんに、男の子は裸エプロンも好きだけど、水着エプロンも好きらしいよ、って言っていたからだよ?」

 

どうやら原因はリズらしい。

なんか前にもこんなことあったような気がするのは気のせいだろうか?

そんなことをレインの水着エプロンを見て思っていると。

 

「ど、どうかな。似合ってる・・・・・・かな・・・・・・?」

 

レインが不安げに聞いてきた。

 

「あ、ああ。うん。似合ってる」

 

「そ、そう。よ、良かった♪」

 

「ちなみにそのままの格好でなにするんだ?」

 

「う~ん・・・・・・なにしたらいいんだろうキリトくん」

 

「いや、俺に聞くなよ・・・・・・」

 

ユイとピクニックに行った後日、そんなやり取りがあったのだった。

その後日、ラムと話し合いというなのお茶会をしたのだが、どうやらラムもリーザが水着エプロンをしてなにかとあったらしい。ちなみに、ラムとリーザも家は買ってあるそうだ。とまあ、そんなこんなでいろんな意味で大変な日々なのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




「みんなこたえはわかったかな?それじゃラムお願い!」

「はい!今回の答えはⅢ:水着です」

「いやー、ユイちゃん手製の水着。さすがゲームの中だね」

「ですね。それにしてもユイちゃん裁縫していたなんて気づきませんでしたよ」

「そうなの?」

「ええ」

「一人で作ったのかな。でも、キリトとレインが喜んでいるからユイちゃん的には嬉しかったんじゃないかな?」

「ですね。そういえば前にリーザがキリトとレインさんを見て、私も子供が欲しいって言っていたような・・・・・・」

「あはは・・・・・・ま、まあ、頑張ってラム」

「頑張ります・・・・・・」

「それでは今回はここまで」

「体調崩さないようにしてくださいね」

「ありがとう、ラム。それではまた次回!」

「「Don't miss it.!!」」


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HF編 第119話〈相性占いで一波乱!?〉

「ヤッホーみんな~!ソーナだよ!今回のゲストは時間の都合上、いません。ごめんなさい!それではさっそく、問題を出します!」


問題『今回の相性占いでユウキとランがキリトと一緒にもらったのはなに?』

Ⅰ:武器

Ⅱ:鉱石

Ⅲ:進化素材

Ⅳ:食材


「答えは本文の最後に!」


 

~キリトside~

 

攻略を終え、エギルの店に帰ると店内にクラインたちがいて、なにか話していた。

気になり、近づいてみるとクラインが声をかけてきた。

 

「よお、キリト。いいところに来た。ちょうど今、新しいイベントの情報が入ってきたところだぜ」

 

「すっごく変なイベントなんだよ」

 

「変?」

 

クラインの前に座っていたリーファの言葉に首をかしげる。

 

「二人一組でNPCに将来のことを占ってもらうだけでアイテムがもらえるんだって。しかも、その相性によってもらえるアイテムの種類が違うらしいの」

 

「へえ、いろんなイベントがあるんだな。それで、どんなアイテムがもらえるんだ?」

 

俺の疑問にピナを肩に乗せたシリカが答えた。

 

「相性のいいカップルには、すごくレアなアイテムが出るって話です」

 

「ぜひ、パパもママと行ってみてください。必ずレアアイテムが出るはずです!」

 

ユイに期待の込められた眼差しで見つめられながら言われた俺は苦笑した。

 

「レインと相談してからだな・・・・・・・」

 

レインは今、ユウキとランとともに商業区を見て回っているためここにいない。

 

「じゃあ、キリト君、あたしとやってみない?」

 

「リーファとか?」

 

「うん」

 

リーファの提案に少し考えた俺は、リーファにうなずき返した。

 

「まあ、いいか」

 

「やった!」

 

「確か場所は中央広場の裏手、だったよな?」

 

「うん!」

 

「てな訳でちょっと行ってくる」

 

俺とリーファはそう言うと店から出て、占い師がいるといわれる中央広場の裏手へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれが噂の占い師」

 

中央広場の裏手にやって来た俺とリーファは噴水の近くにいる占い師の姿を見つけた。

 

「そうみたい・・・・・・」

 

リーファは占い師の姿を見てそう呟き、俺を引き連れて占い師の前に立った。

 

「すみません!将来のこと、占ってほしいんですけど・・・・・・」

 

「ふむ・・・・・・」

 

恐らくNPCであるであろう占い師は、リーファの言葉にしばらく目の前の水晶玉を見ると、俺たちを見て言った。

 

「・・・・・・・・・・。確かな未来を感じます・・・・・・。しかし、望まなければ叶うこともないでしょう。そんなあなた方にはこれを差し上げましょう。確かな幸福を手にできますように・・・・・・」

 

嬉しそうにしているリーファに代わり、占い師から渡されたアイテムを見る。

 

「ねえ、聞いた、お兄ちゃん!?望めば叶うんだって!しかも確かな未来だって・・・・・・!」

 

「これは・・・・・・」

 

「ねえ、お兄ちゃんってば!」

 

「ただの転移結晶だ。レアアイテムではないな・・・・・・」

 

渡されたのはただの転移結晶だった。

 

「って、ええー、ウソ!?」

 

「まあ、大事なアイテムではあるけどな」

 

「そんなあ・・・・・・」

 

その場に膝を着きそうなほど落胆したリーファは暗い表情をして俺とともに店へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「転移結晶ね・・・・・・・」

 

「ま、まあ、リーファちゃんとキリトくんの相性が悪いって訳じゃないんだから」

 

帰ってくるなり、占い結果を報告するとリズとアスナが影落ちしかけてるリーファに労いの言葉をかけた。

 

「兄弟だから相性バツグンだと思ったのに・・・・・・」

 

「だ、大丈夫よリーファちゃん。ねぇ、キリト君・・・・・・!」

 

「あ、ああ。そうだぞリーファ。俺とお前には確かな兄弟の絆があるんだから。そう落ち込むなって」

 

「うん・・・・・・」

 

俺とアスナの声にリーファは弱々しくもうなずいた。

そこへシリカが。

 

「あたしは、占い師に話しかける前から相性の良さをアピールしておかなきゃいけないんだと思います」

 

占いのことについて話していた。

 

「なるほどね。・・・・・・それで、どうやってアピールするのよ」

 

「そ、それは、その、だから・・・・・・腕を組んでいくとか・・・・・・」

 

シリカの言葉に唸りながらも考える。

 

「う、腕を組む・・・・・・。でも、たしかにそういった判定もあるかもしれない・・・・・・」

 

「そ、そうですよね!あたしは、ぜんっぜん問題ないですから!ですからキリトさん!」

 

「な、なんだシリカ・・・・・・?」

 

「あたしとの相性占いお願いします!」

 

「お、おう・・・・・・」

 

シリカの剣幕に若干押されながら俺はシリカにうなずき返した。

 

「じゃあ、俺もお供させてもらうぜ。どのくらいのイチャイチャでレアアイテムが出るのか見定めねえとな」

 

「それではみなさんで行きましょう!」

 

そんなわけでその場にいる全員で占い師のところに向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び占い師のいる、中央広場の裏手にやって来た俺たちは、さっそくシリカが俺を引き連れて占い師のところへ向かい声をかける。

 

「すみません。二人の将来を占って欲しいんですが・・・・・・!」

 

「ふむ・・・・・・。・・・・・・・・・・」

 

「ちょ、ちょっと待ってください」

 

シリカは占い師の声を遮ると。

 

「キリトさん、もっと近くに寄ってください。私の背中から覗き込む感じで、体を近くに、親しい感じで・・・・・・」

 

「こ、これでいいか?」

 

「ひゃあああああ」

 

「ど、どうしたんだ、急に!?」

 

「す、すみません!首筋に息がかかって、すごくくすぐったくて・・・・・・」

 

「ごめん、気づかなかった。それじゃあ、もう少し離れた方が・・・・・・」

 

「いいえ!もっともっと近づいてください!」

 

「わ、わかった」

 

シリカの迫力に俺は素直に従った。

すると、再度シリカが占い師に声をかけた。

 

「えっと、将来のことを占って欲しいんですが」

 

「ふむ・・・・・・」

 

占い師はさっきと同じように目の前の水晶玉を見て、しばらくして俺とシリカを見ていった。

 

「ふむふむ・・・・・・。これは期待できますね。光り輝く未来が見えました・・・・・・。たやすい道のりではありませんが、必ずや乗り越えることができるでしょう。そんなあなた方にはこれを差し上げましょう。輝く未来が訪れますように・・・・・・」

 

占い師から渡されたアイテムを受け取り、アイテムを確認する。

 

「これは、ブロードソードだな」

 

渡されたアイテム。片手剣を調べシリカに言う。

 

「しかも固有名がある。データ的にも、それなりに優秀だ」

 

「じゃ、じゃあ」

 

「レアアイテムと言っても問題ないと思う」

 

「やったあ!あたしとキリトさんは相性抜群なんですよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、なるほど。イチャイチャするのが重要か」

 

シリカの占い結果を聞いたクラインは顎に手を当ててうなずいた。

 

「今回の結果を考えると、確かにそういった要素も考慮したほうがいいのかもしれないな」

 

クラインの言葉にそう推測していると。

 

「なら、あたし、もう一度挑戦するっ、リベンジしたいっ!今のままじゃ負けっぱなしみたいで嫌だし」

 

「いや、勝ち負けじゃないとは思うけど・・・・・・」

 

リーファの声に引きつり笑いを浮かべながらそう答えた。

 

「それじゃあ行くよキリト君!」

 

「あ、ああ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、お兄ちゃん、後ろから抱きついて!」

 

占い師の前にやって来るなりリーファはそうすごい気迫を出して言ってきた。

 

「はい・・・・・・?」

 

「いいから!」

 

「は、はい・・・・・・」

 

「これで・・・・・・。将来のことを占って欲しいんだけど・・・・・・」

 

リーファが期待を込めて占い師に言うと。

 

「もう告げるべきことはありませんよ。最善と思うことを、行ってください」

 

占い師はそう淡々と答えた。

 

「フラグ落ちか・・・・・・。同じ組み合わせだとダメみたいだ」

 

「ええぇぇ・・・・・そんなぁ・・・・・・」

 

リーファはがっかりしたように肩を落とした。

そこにクラインが。

 

「じゃあ、俺と試してみるってのは、どうだ?」

 

「なるほど」

 

「違う違う、お前じゃない。女子だ、女子!」

 

「ごめんなさい。あたし、なんだか疲れちゃって・・・・・・」

 

「おい!俺すごく傷ついてるからな、それ!」

 

リーファの返しにクラインはいつも通りの反応を返した。

するとそこに。

 

「あれ?みんな、こんなところでなにしてるの?」

 

「お、ストレア!」

 

たまたま寄ったのか、ストレアが歩いてきた。

訪ねてくるストレアにユイが説明した。

 

「実はですね・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おもしろそう!あたしも入れて入れて!!」

 

ユイから話を聞いたストレアは、テンション高そうに言った。まあ、これがいつものストレアなのだが。

 

「まあまあ、ここは順番で、あたしにいかせてもらうわよ」

 

「(順番なんかあったんだ・・・・・・・)」

 

リズの声にそんなことを思っていると、ストレアがリズに聞いた。

 

「うん!どんな風にイチャイチャするの?」

 

「うーん・・・・・・そうねぇ」

 

リズに嫌な予感しかしない俺は、念のためリズに言う。

 

「あのな・・・・・・あまりに無茶なのは出来ないからな・・・・・・」

 

「あ、そーだ!ちょっと待ってて」

 

「え?なに?」

 

「それにしても、どんどんオオゴトになってきたな・・・・・・」

 

始めはリーファから始まったこの占いがどんどん大きくなってきていた。

 

「まあ無茶はしないから安心しなさい」

 

「(安心どころか不安しかないのは気のせいか・・・・・・?)」

 

リズの言葉に脳裏にそんなことを思い浮かべたのは間違ってないはずだ。

そんなこと思っていると。

 

「お待たせ」

 

「・・・・・・・手に持ってるのは、串焼きか?」

 

ストレアがどこからか買ってきた串焼きを手にして戻ってきた。

 

「そうだよ。じゃあ、これをキリトに食べさせてみて」

 

「どういうこと?」

 

「『あーん』って、やってみるの」

 

「あ、そういうことか・・・・・・」

 

「これぐらいなら、まあいいわよね」

 

「た、たぶん・・・・・・」

 

正直、レインにこれを見られたら後が怖いというかなんというか・・・・・・。冷や汗を流しながらそんなことを思った。

 

「はい・・・・・・あーん」

 

「今だ・・・・・・!」

 

ストレアの声にリズが占い師に声をかけ、尋ねる。

 

「将来のことを占ってほしいんだけど・・・・・・」

 

「ふむ・・・・・・。これは、とても珍しい運勢ですね・・・・・・・。珍しい道がゆえに人とのたすけあいが大切になってくるでしょう。そんなあなた方にはこれを差し上げましょう。幸多き人生でありますように・・・・・・・」

 

占い師が渡してきたアイテムは金属素材だった。

 

「これって、金属素材・・・・・・?」

 

「うん。でも価値は高くないかな。そんなに珍しくもないし・・・・・・。嬉しいけど、さほどじゃない感じ」

 

「なかなかにこれってものが出ないね」

 

「・・・・・・いえ、出たら出たで複雑なんですが」

 

金属素材を見て落胆するリズに、アスナとリーファが続いた。するとそこに。

 

「あれ、みんな?なにしてるの?」

 

「ユウキ?」

 

声がした方を向くと、そこにはユウキとラン、ラムとリーザが歩いてくる姿が見えた。

 

「なにしてるんですか、みんな揃って?」

 

「えーと、だな・・・・・・って、あれ、レインは?」

 

一緒に行動していたはずのレインの姿が見えなく俺はランに聞いた。

 

「え~と、レインさんなら・・・・・・」

 

「?」

 

ランが苦笑した感じて指を指す方を見ようとすると。

 

「なに、していたのかな?キ~リ~ト~く~ん♪」

 

「―――っ?!」

 

突然、レインの冷たい声が後ろから聞こえてきた。

 

「(こ、この声、レイン絶対怒ってる・・・・・・)」

 

冷や汗を掻きながら判断していると。

 

「キ・リ・ト・く・ん♪」

 

絶対零度、永久凍土を彷彿させるようなレインの声が響く。

ランたちを見ると、ユウキ、ラン、ラム、リーザは苦笑していて、アスナたちは少しずつだが退いていた。

 

「な、なんでしょうかレインさん・・・・・・」

 

恐る恐る声を後ろにいると思うレインにかけると。

 

「ね、キリトくん♪私、聞きたいことがあるんだけど」

 

「は、はい・・・・・・」

 

「今キリトくん、リズっちに『あーん』、されてなかったかな~?」

 

「え、え~と、ですね・・・・・・」

 

「キ~リ~ト~く~ん?」

 

「は、はい。『あーん』をされました・・・・・・」

 

「へえ・・・・・・そうなんだあ・・・・・・。なるほどねえ~・・・・・・・」

 

声に笑い気味の感じが含まれているが不気味すぎて怖い。

 

「あ、あの、レインさん?」

 

「なあに、キリトくん♪」

 

「いえ、なんでもありません・・・・・・・」

 

正直に言って、今のレイン怖すぎる。

そうレインの声を聞きながら思っていると。

 

「ママもパパとやってみたらどうですか?」

 

ユイがレインに聞いた。

 

「私とキリトくん?」

 

「はい!パパとママなら絶対、レアアイテムが出ること間違いないです!」

 

「う~ん・・・・・・じゃあ、最後にやってみようかな」

 

「やったぁ!あ、ママ、わたしもパパとやってみたいんですけどいいですか?」

 

「うん♪ユイちゃんならもちろんいいよ」

 

「ありがとうございますママ!」

 

取りあえずはユイのお陰でなんとかなったみたいだ。

そう安堵していると。

 

「あ、キリトくん、これが終わったら83層の森の家で二人だけでゆ~っくり、お話し、しようね♪」

 

そう小声で言ってきた。

 

「お、おう・・・・・・」

 

レインの声に俺はただそう返すしかなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

占い師の前まで来ると、ユイが。

 

「パパ、わたしをお姫様抱っこしてださい」

 

「あ、ああ、いいぞ・・・・・・よっと」

 

「もっとギューッとしてください」

 

「こうか?」

 

「はい、そうです!えっと、将来のことを占ってください」

 

「ふむ・・・・・・。変わった運勢ですね・・・・・・。ううむ・・・・・・。なにか大きく立ちはだかる障害があります。それを乗り越えれば、永遠の絆が築かれることでしょう・・・・・・。そんなあなた方にはこれを差し上げましょう。実り多い生涯が送れますように・・・・・・・」

 

「おお。ちゃんともらえたな」

 

ユイ相手でも貰えたことに驚きながら、渡されたアイテムを確認する。

 

「これは回廊結晶ですね」

 

「これはこれでありがたいけどな。レアアイテムではないけど」

 

「残念です・・・・・・・」

 

「だ、大丈夫だよ、ユイちゃん。たぶんパパに問題があると思うから。そうじゃないと説明がつかないよ。ね、キリトくん?」

 

「そう言われてもな・・・・・・・」

 

ユイに向かって言うレインの言葉になんとも言えない表情をしながらそう返す。

 

「じゃあ、次はシノン!」

 

「あらかじめ断っておくけど、イチャイチャとかそういうのはいらないから」

 

「お、おう・・・・・・」

 

「・・・・・・手くらい繋ぐのは問題ないわよ」

 

「そ、それじゃ、繋いでみようか。いいか、レイン?」

 

「シノンちゃんならいいよ♪あ、リズっちはちょっとお話ね」

 

「レ、レイン!?眼が笑ってないわよ!?」

 

「そんなことないよ~♪ふふふふふふふふ♪」

 

「ヒィッ・・・・・・!」

 

後ろではリズがレインからお話を受けていた。

 

「(すまんリズ。今の俺は助けられそうにない)」

 

後ろから聞こえてくる二人の声に俺は心の中でそう言った。

 

「ん・・・・・・」

 

シノンと手を繋ぎ占い師の前に立ち。

 

「・・・・・・将来のことを占ってほしいんだけど」

 

「ふむ・・・・・・。様々なことが、心の持ちようで変わっていくようです。しかし逆に、気持ち次第で悪いほうに転がる可能性もあるということで・・・・・・。そんなあなた方にはこれを差し上げましょう。光差す未来を迎えられますように」

 

「クロスダガーか・・・・・・」

 

占い師から渡されたアイテムは短剣だった。

しかし。

 

「でもそれ、この間NPC武器屋の棚で見かけたわね。みんなと同じで、さほどでもない感じ」

 

「だな・・・・・・」

 

シノンの言葉に、渡された短剣を見ながら同意する。

そこへストレアが。

 

「じゃあ、次はアスナ!」

 

「えっ!?わたし?!」

 

「うん!だってアスナも気になるでしょ?」

 

「ま、まあ、気になるは気になるけど・・・・・・」

 

ストレアの言い分にアスナは戸惑ったようにレインを見た。

 

「私はあとでやるから、アスナちゃんいいよ?ユウキちゃんとランちゃんもキリトくんと占ってみたいでしょ♪」

 

「「うっ・・・・・・!」」

 

片目を瞑ってそう言うレインにユウキとランがそう声を漏らした。

 

「じゃ、じゃあ・・・・・・。キリト君、お願いね」

 

「ああ」

 

特になんもなくアスナとともに占い師の前に立ち、アスナが占い師に訪ねる。

 

「あの、将来のことを聞きたいんですけど」

 

「ふむ・・・・・・。なかなか変わった運勢をお持ちのようですね。しかし、明るい未来というわけではなく・・・・・・。前途多難なようです。そんなあなた方にはこれを差し上げましょう。明るい未来を切り拓けますように」

 

そう言う占い師から渡されたアイテムは一振りの片手剣だった。それも俺とレイン、ユウキ、ランにとってはとても馴染みのある剣だ。

 

「これって、アニールブレードだよね?」

 

「だな」

 

「アニールブレードって、確か私やキリトくん、ユウキちゃんとランちゃんが下の層で使っていた剣だよね?」

 

「うん」

 

「あのときはクエスト報酬で獲得するの大変でしたね」

 

「そういえばそうだったな」

 

一層で『森の秘薬』のクエストを受けたことのある俺とレイン、ユウキ、ランは懐かしむよう物思いに更けて語った。

 

「えっと、じゃあ、次はユウキちゃんね!」

 

「えっ!?ぼ、ボク!?」

 

レインの指名にユウキは驚いた声をあげてこっちを見た。

 

「うん。で、その次はランちゃんだよ」

 

「わ、私もですか!?」

 

レインの声に意表を突かれたような声を出すランに、レインは小悪魔のような笑みを浮かべてうなずいた。

にこにこと笑うレインと、俺を見るユウキとランは顔を真っ赤にしていた。実のところ俺も少々・・・・・・ではなく、かなり気恥ずかしいのだが。

 

「じゃ、じゃあ、キリト・・・・・・お願い」

 

「お、おう・・・・・・」

 

顔を真っ赤にしながら言うユウキに少し視線をそらして返事をし、ユウキと手を繋いで占い師の前に向かい声をかける。

 

「すみません、ボクたちの将来のこと占ってもらってもいいですか」

 

「ふむ・・・・・・」

 

ユウキが占い師にそう言うと、占い師は水晶玉に視線を向け答えた。

 

「なるほど・・・・・・。なかなか面白い運勢をお持ちのようですね。明るくもあり暗くもある・・・・・・。ですが、希望となる人を思えば、それは限りない輝きを放つことでしょう。そんなあなた方にはこれを差し上げましょう。終わりなき輝きを放てますように」

 

「え~と、これは・・・・・・」

 

「これって片手剣か?」

 

占い師から渡されたアイテムは、アスナと同じ片手剣だった。だが、アスナとは違い、刀身の色は薄紫に輝き、細身の幅。細剣と似たような両刃の片手剣だ。

 

「レイン、リズ、これ見たことある?」

 

「えーと・・・・・・」

 

「・・・・・・見たことない剣だよ」

 

ユウキは渡された片手剣をレインとリズに見せていた。

 

「ちょっといい・・・・・・?」

 

「うん」

 

ユウキから片手剣を受け取り、レインは鑑定スキルで調べた。

 

「え?!リ、リズっち、これ・・・・・・!」

 

「え、嘘でしょ・・・・・・!?」

 

「どうしたんだ二人とも?」

 

「こ、これ、進化素材だよ!」

 

「進化素材?」

 

俺とユウキははじめて聞いた言葉に首をかしげた。それはランやアスナたちもだった。

 

「素材の中でもレア中のレアなの」

 

「これ単体でももちろん強力なんだけど・・・・・・」

 

「なんだけど?」

 

「これと、もう一つ同種の武器を合わせることで、新しくさらに強くなる剣が出来るんだよ!」

 

「ってことは・・・・・・」

 

「かなりのレアアイテムってこと?」

 

「うん」

 

『『『『『ええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!?』』』』』

 

ユウキの獲得したレアアイテムに俺たちはレインとリズを除いて驚愕の声をあげた。

 

「まさか本当にレアアイテムがあるなんて・・・・・・」

 

「で、では、次は私ですね・・・・・・」

 

驚きの声を漏らしていると、ランがもじもじとしながら言ってきた。

 

「あ、ああ」

 

「よ、よろしくお願いしますキリトさん」

 

ユウキと同じように手を繋いで、占い師の前に立ちランが占い師に訪ねる。

 

「すみません。私たちの将来のことを占ってくれますか」

 

「ふむ・・・・・・。期待のある未来が見えます。期待のある道のゆえ、さまざまな困難が立ち向かうでしょう。ですが、助け合うことで乗り越えられるはずです。そんなあなた方にはこれを差し上げましょう。さまざまな困難が乗り越えられますように」

 

「これは・・・・・・」

 

「さっきユウキと一緒にもらったのと同じ片手剣か?」

 

占い師から渡されたアイテムは、さっきユウキと一緒にもらったのと同じ片手剣だった。違うとすれば、刀身の色がユウキは薄紫だったのに対して、ランがもらったのは蒼銀だということだ。幅はユウキと一緒にもらった片手剣と同じ幅だ。

 

「ということはこれも進化素材、ということでしょうか?」

 

ランは受け取った蒼銀の片手剣を見て呟いた。

そこにレインが蒼銀の片手剣を鑑定して言った。

 

「みたいだよ?ユウキちゃんが受け取った進化素材とは違う進化素材みたいだけど、基本は同じみたいだね」

 

「へえ」

 

さすがに二回立て続けてレアアイテムが出たことに驚いている。

するとそこに。

 

「じゃあ、次はあたしねー。イチャイチャだよね!まかせてキリト!」

 

ストレアが楽しそうに言ってきた。

 

「お前が一番怖いんだけど・・・・・・。具体的にはどうイチャイチャするつもりだ?」

 

俺の問いに、ストレアは考える素振りを見せるとすぐさま言ってきた。

 

「んっとね、ギューッと抱きついて、あとはキスかな?」

 

「キスッ!?」

 

「え・・・・・・・・・・?」

 

ストレアの言葉に俺はすっとんきょうな声をあげ、後ろからレインの小さな声が聞こえてきた。周りを見ると、ユウキとランたちは驚いた表情と、なにかに脅えてるような表情をしていた。

 

「あれ~、レインどうしたのそんな怖い顔して?」

 

唯一ストレアは疑問符を浮かべながらレインに聞いていた。

 

「ストレアちゃん」

 

「な、なにレイン?」

 

「キスはダメ。絶対にダメ。キリトくんにキスするのは私だけだから。わかった、ストレアちゃん?」

 

「は、はい・・・・・・」

 

「ならいいよ」

 

ハイライトを失くした瞳で淡々と呟いたレインに、さすがのストレアも引いていた。

ストレアもレインの反応を見て察したのか引きながら言った。

 

「・・・・・・じゃあ、抱きつくだけにする」

 

「まあ・・・・・・それくらいならいいかな・・・・・・?あ、だけど今回だけ!今回だけだからねストレアちゃん!」

 

「ふふ、じゃあキリト・・・・・・。ギューッ!!」

 

「うわっ」

 

「キリト、もうちょっとこっちに来てよ」

 

ストレアが強引に引っ張ってくるためか。

 

「(胸が腕に当たって・・・・・・というか埋もれてっ!)」

 

そう思うのと同時に、背後のレインの視線が怖かった。

何故なら背後から。

 

「レ、レインちゃん、落ち着いて・・・・・・!」

 

「キリトくん、あとでお話確定だね。うん、何時もより長めにしようかな」

 

「レインッ!?」

 

「レインさんのハイライトさん仕事してくださいー!」

 

「うふふふ。キリトくん、覚悟していてね」

 

そんなレインとアスナたちの声が耳に入ってきたからだ。

ストレアは聞こえてないのか、そのまま俺の腕を掴んで占い師の前に来た。

 

「よーし。将来のことを占って!」

 

「ふむ・・・・・・。不思議な運勢をお持ちです。暗雲が漂う未来が見えます。・・・・・・前途多難なようですね」

 

「えー・・・・・・」

 

「そんなあなた方にはこれを差し上げましょう。明るい未来を切り拓けますように」

 

「えっと、これは・・・・・・」

 

「アニールブレード・・・・・・。アスナと一緒だな」

 

ストレアが受け取ったのはアスナと同じアニールブレードだった。

 

「アスナと同じ?ってことは仲が良いってことなのかな?」

 

「いや、これはもうただのランダムだろうな・・・・・・。クライン、試しに、俺とやってみないか?」

 

「なんでヤロウと・・・・・・って、まあいいか。これでレアアイテムがてりゃ、それはそれで笑い話にもなるしな。しかしこんだけ女子がいておめえととはなあ・・・・・・。えっと・・・・・・イチャイチャする必要はねえんだよな」

 

「当然だ・・・・・・」

 

「将来のことを占ってくれ」

 

「ふむ・・・・・・。こ、これは・・・・・・すごいです。向かうところ敵なし。望めば全て叶うでしょう。そんなあなた方にはこれをお受け取りください」

 

「これは・・・・・・」

 

「S級食材・・・・・・」

 

「驚きだな」

 

「やっぱり完全ランダムみたいだな」

 

「だな・・・・・・。ちょっとつまんねえ結果だが、謎は解決したってことだ」

 

俺とクラインは落胆したように言った。

そこに。

 

「キリトさん・・・・・・」

 

「クラインさんと・・・・・・」

 

「ん?」

 

「仲がいいとは思ってたけどねぇ」

 

「ラ、ランダムだよ!・・・・・・そうよね?」

 

「キ、キリト・・・・・・?」

 

「キリトさん、クラインさんとどれだけ仲がいいんですか・・・・・・」

 

「あ、当たり前だろ!何を疑ってるんだよ!」

 

「そっかな?キリトとクラインは相性バツグンなんじゃない?」

 

「おい!誤解受けるようなこと言うなって!オレ様は、そういう趣味はねぇからな!」

 

「なにが笑い話になるだよ・・・・・・。全然笑えないじゃないか」

 

「冗談でも男同士でこのイベントはやるなって周りに伝えておかねえとな・・・・・・・」

 

「まっくだな・・・・・・ん!?」

 

クラインの声に同意していると、後ろからとんでもない寒気が襲ってきた。

 

「キリトくん、私とまだしてないよ?さあ、やろうよキリトくん」

 

寒気の発生源はレインだった。

 

「そ、そうだなレイン」

 

俺は顔を青くしながらレインの手を繋いで占い師の前に立つ。

 

「私とキリトくんの将来を占ってほしいんだけど」

 

「ふ、ふむ・・・・・・」

 

心なしか目の前の占い師が顔を真っ青にしているのが見える。というかこの占い師、NPCだよね?

 

「・・・・・・運命という絆で繋がっていますね。どんな障害もあなた方なら踏破できるでしょう。あなた方が望めばどんなことも叶うはずです。そんなあなた方にはこれを差し上げましょう。確かな運命と未来が叶えられますように」

 

「こ、これって・・・・・・」

 

「指輪・・・・・・か?」

 

占い師から渡されたアイテムは対になる指輪だった。

 

「え~と、アイテム名は『ウィンクルムリング』だね」

 

「ウィンクルム・・・・・・絆の指輪か?うわっ!」

 

「どうしたの?」

 

「いや、この指輪の効果がなんていうか・・・・・・」

 

「え?・・・・・・うわ、ほんとだ」

 

受け取った指輪の効果は、正直今の階層より遥か上の階層クラスのものだった。なにせ、状態異常耐性上昇、CT率上昇、SPD上昇、ATK上昇、DEF上昇、STR上昇、ソードスキル威力上昇、クールタイム減少、獲得経験値上昇、ボス特攻、などと指輪の効果欄に書かれてあったのだ。

 

「正直、こんな指輪今まで見たことないよ」

 

「同じく」

 

これをアスナたちに話すと、また絶叫が響き渡った。まあ、確かにこんな指輪の効果を聞いたらそうなるわな。

アスナたちの反応を見ながら俺はそう思ったのだった。

俺とレインのあと、ラムとリーザがやったが、もらったアイテムはネックレスだった。効果はそれなりに高く、レア装備だということだ。

クラインがもらったS級食材は後ほど、レインたちに調理してもらい美味しくいただきました。

そのあと、俺はレインに言われていたとおり第83層にある家で長々とお話を受け、そのあと、レインの気のすむまま搾り取られたと言っておくことにしよう。

 

 

 

 

 




「みんな答えはわかったかな?それじゃあ答えを発表するよ!今回の答えはⅢ:進化素材、だよ。当たっていたかな?それじゃあ今回はここまで、また次回お会いしましょう!次回は出来るだけ早く投稿しますね」


「ではまた次回、Don't miss it.!!」


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HF編 第120話〈アレバストの異界エリア〉

 

~キリトside~

 

俺、レイン、フィリアの三人は大空洞エリアボス、ホロウリーパーを討伐して先に進み遺跡のような建物から出て次のエリアに足を踏み入れていた。

 

「うわあ、まるで絵本の中みたいだね」

 

「薄暗いね・・・・・・ちょっと不気味かも」

 

周囲を見渡してフィリアとレインがそう呟いた。

辺りは薄暗く、見通しが良くない。

 

「魔女の住んでる森ってところか」

 

「ちょっとキリト!怖いこと言わないでよ」

 

「そうだよ!もし本当に魔女に会っちゃったらどうするのよキリトくん」

 

「あー・・・・・・ごめん」

 

俺の言葉に瞬時に返してきたフィリアとレインの剣幕に若干引きながらも謝り、再び辺りを見回す。

 

「だけどさ、魔女とは言わないまでもなにか潜んでそうな気配がするんだ」

 

「キリトくんの勘ってよく当たるんだよね~・・・・・・」

 

「ほんと、キリトの勘はよく当たるからなあ・・・・・・」

 

「取り敢えず、気を付けて進もうか」

 

「そうだね」

 

すぐ近くにあった転移碑を有効化(アクティベート)して警戒を怠らずに先に進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し進み広場のような場所に出た途端、索敵スキルに反応があったのと同時に上空からなにかが降ってきた。

 

「な、なんだコイツは!?」

 

驚きながら降り落ちてきた巨大なモンスターを警戒すると、モンスターの上に【BOSS】Amedister The Queenと表示され、その下に三段のHPバーが表れた。

 

「うそでしょ!?」

 

「いきなりエリアボス!?」

 

「どうせいつかは戦う相手だ。いくぞレイン、フィリア」

 

驚き戸惑うレインとフィリアに背中の双剣の柄を握りながら瞬時に意識を戦闘意識に切り替え、武器を握りしめたフィリアとレインとともに目の前のボスモンスター、アメディスター・ザ・クイーンに迫る。

 

「いくよ!サウザンド・レイン!」

 

いつもの手はず通り、先攻する俺とフィリアの後ろからレインが≪多刀流≫最上位ソードスキル《サウザンド・レイン》で攻撃する。

 

「フィリア、横からいくぞ!」

 

「了解!」

 

《サウザンド・レイン》が上を翔け抜けながら俺とフィリアは散開して横から攻撃する。

 

「はあっ!」

 

「やあっ!」

 

《サウザンド・レイン》がアメディスター・ザ・クイーンに命中し、その二秒後ほぼ同時に俺とフィリアはアメディスター・ザ・クイーンの巨体の腕部分を斬りつけた。

 

「シャアアアアアアア!」

 

「「!」」

 

アメディスター・ザ・クイーンの攻撃をバックステップで下がってかわす。アメディスター・ザ・クイーンのHPバーは三段目が僅かにだが削られていた。

そして、アメディスター・ザ・クイーンを斬りつけたときに感じた違和感があった。それは―――

 

「コイツ、防御が高い!」

 

「私のサウザンド・レインが直撃したのに全然HPが減ってないよ!」

 

そう、このアメディスター・ザ・クイーンが固いと言うことだ。

さすがに火山エリアのボスモンスターよりは固くはないが、今までのボスと比べると僅かだが固い。

 

「ハッ!さがれフィリア!」

 

「!?」

 

フィリアが大きく下がったのと同時に、フィリアのいた場所にアメディスター・ザ・クイーンが口から酸のような緑色の液体を出した。

 

「毒酸!?」

 

液体を浴びた地面が小さな煙をあげて溶けているのをみて声をあげる。

 

「ちっ!」

 

フィリアの方にヘイトが向いているところに、アメディスター・ザ・クイーンの背中に向けて≪二刀流≫ソードスキル《デブス・インパクト》重攻撃5連撃を放つ。

 

「シャアアアアアアア!」

 

「レイン、フィリア!俺がタゲを取る、その間にできる限り攻撃してくれ!」

 

「まかせて!」

 

「わかった!」

 

フィリアからヘイトが俺に移ったのを確認して、レインとフィリアにそう指示を出す。

 

「くっ・・・・・・はあっ!」

 

迫ってくるアメディスター・ザ・クイーンの両の腕を捌きながら斬りつける。

斬りつけたあと、なにかを溜めるかのようなモーションを取ったアメディスター・ザ・クイーンは急に上にジャンプして飛び上がった。

 

「!二人とも下がれ!」

 

「「!?」」

 

俺たちが下がったのと同時に、アメディスター・ザ・クイーンが堕ちてきた。

 

「うっ・・・・・・」

 

落下の衝撃波が襲ってくるのを耐えながらアメディスター・ザ・クイーンを見る。

 

「攻撃力も高くて防御も高いって・・・・・・」

 

悪態を吐きながらアメディスター・ザ・クイーンの弱点を探る。

 

「レイン、同時にいくぞ!」

 

「うん!」

 

アメディスター・ザ・クイーンの奥にいるレインと、同時にソードスキルを繰り出す。

 

「せあぁっ!」

 

「やあぁっ!」

 

俺とレインは≪二刀流≫ソードスキル《ナイトメア・レイン》と≪多刀流≫ソードスキル《ディバイン・エンプレス》を高速で放つ。

高速の連続攻撃をアメディスター・ザ・クイーンは腕で防いできたりするが徐々に抜けていった。

HPバーがどんどん減っていき、三段目の半分ほどにまで減っていく。

そのまま立て続けに攻撃を行っていき、アメディスター・ザ・クイーンのHPバーの三段目が消えたのと同時に、アメディスター・ザ・クイーンは咆哮を上げた。

 

「?!」

 

咆哮の衝撃でアメディスター・ザ・クイーンから距離を取られた。

そのままアメディスター・ザ・クイーンは溜めるかのような動作を取ったと思いきや高々と飛び上がり、森の奥にへと消えていってしまった。

 

「くそ!逃げられたか!」

 

「いきなりでびっくりした・・・・・・」

 

「ほんとビックリしたよ。でも、エリアボスなだけあって手強いねキリトくん」

 

「ああ。とにかくあのボスを追い掛けるぞ!」

 

ポーションで減ったHPを回復して、アメディスター・ザ・クイーンが飛び去っていった方角へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこからさらに進み俺たちは、『品定めする謁見所』に来ていた。

 

「さすがにこうも視界が悪いと移動しにくいな・・・・・・」

 

「いくら索敵スキルで周囲を警戒しているとはいえ隠蔽が高いモンスターだと効かないからね」

 

「これ夜になったらもっと暗くなるのかな」

 

「ちょっと不気味・・・・・・」

 

多々あった戦闘をこなして、レベルも上がりながら俺たちは周囲を警戒しながら先に進んでいた。

その最中、ちょっとした視界に広がる広間みたいなところで、俺たちは小休止をしていた。

 

「この先・・・・・・『女王の寝所』って場所があるな」

 

ホロウエリアのマップを見て、行く先にあるエリア地名を見て呟いた。

 

「『女王の寝所』?」

 

「女王ってもしかしてあのボスモンスターのこと?」

 

「名前にクイーン(女王)って表示されてあったからな、恐らくここがヤツの住処なんだろう」

 

「じゃあそこに行く?」

 

「確証はないがそうするか・・・・・・それにPoHのヤツがやったアップデートもいつ起きるかわからないからな。早めにクリアして、遺棄エリアの宮殿エリアをクリアしないと」

 

「だね」

 

「そうだね」

 

「そろそろ行くか・・・・・・!」

 

そう言った途端、索敵スキルの範囲内にモンスターの反応が表れた。

 

「レイン、フィリア、戦闘態勢!なにか来る!」

 

双剣を抜き、辺りを警戒すると。

 

「ハッ!」

 

上空からなにかが降ってきた。

 

「くっ!」

 

土煙を遮るため両腕で顔を覆い、土煙が晴れるのを待つ。

土煙が晴れると、そこにはさっき戦ったこのエリアのボスモンスター、アメディスター・ザ・クイーンが顕現していた。

 

「見つけた!」

 

「もう逃がさないよ!」

 

「よし、行くぞ!」

 

アメディスター・ザ・クイーンのHPは折角三段目を削り取ったのに、何故か全快していた。

 

「よりにもよって、また始めからかよ」

 

悪態を吐きながらアメディスター・ザ・クイーンに向かって駆けていく。

瞬時に近寄り、連続攻撃をする。

 

「キシャアアアアアアア!」

 

アメディスター・ザ・クイーンの吐き出す毒酸をステップで避けながら、両腕での攻撃、そして触角での連続攻撃を逸らしたりしてスイッチをしてダメージを与える。

 

「触角の連続攻撃・・・・・・あれを受けたらヤバイな」

 

「うん。スタン状態になるね・・・・・・」

 

一度避けきれずダメージを受けたあと、すぐに下がろうとしたがスタンが発生して動けず、ヤバかったのだ。

正直、レインがそこでタゲを取ってくれたお陰で助かった。

 

「フィリアちゃんは出血状態になっちゃってるし・・・・・・」

 

アメディスター・ザ・クイーンの攻撃を受けて、フィリアは今出血状態をポーションで回復している最中だった。

今のアメディスター・ザ・クイーンのHPバーは残り二段目の6割ほど。

三段目は難なく削り取れたが、二段目に入ってから攻撃パターンが増えたり、デバフ攻撃をして来たりで中々有効打を与えられないのだ。

 

「正面は固いから後ろから攻撃するのがベストなんだろうけど・・・・・・」

 

「少なくともスカルリーパーよりは楽だと思うよ」

 

交互にヘイト管理をしながら微々足りとアメディスター・ザ・クイーンのHPを減らしていく。

 

「こういうときにランかユウキがいてくれたらなあ・・・・・・」

 

悪態をつきながら片手剣ソードスキル《バーチカル・スクエア》4連撃を放つ。

 

「シャアアアアアアア!」

 

アメディスター・ザ・クイーンが吐いてくる毒酸をステップで避け、がら空きの胴体に≪二刀流≫ソードスキル《クリムゾン・スプラッシュ》重攻撃8連撃を放つ。巨大なモンスターに重攻撃は有効的な攻撃だ。

 

「レイン!」

 

「うん!」

 

がら空きの胴体に重攻撃8連撃を受けたアメディスター・ザ・クイーンはしばらくスタン状態が発生して動けない。そこにレインが立て続けにソードスキルを放つ。

 

「やあぁっ!」

 

純白のライトエフェクトを煌めかせながら、双剣でアメディスター・ザ・クイーンの巨体を斬り刻んでいく。≪多刀流≫ソードスキル《クリア・コンパッション》16連撃だ。高速の連撃がスタン状態で動けない、防御することもままならないアメディスター・ザ・クイーンのHPをどんどん削り取っていく。

 

「キッシャアアアアアアア!」

 

アメディスター・ザ・クイーンの断末魔の奇声が響き渡るなか、回復していたフィリアが戻ってきた。

 

「フィリア、レインとスイッチ頼む!」

 

「まかせて!レイン!」

 

「うん!フィリアちゃん!」

 

「「スイッチ!」」

 

16連撃の16連撃目が放ち終えるのと同時にフィリアがレインとアメディスター・ザ・クイーンの間に入り込み、短剣ソードスキル《アクセル・レイド》12連撃を瞬時に放つ。これでアメディスター・ザ・クイーンのHPは残り二段目の2割程にまで削りきった。

 

「させるかっ!」

 

スタン状態から回復し、ソードスキルを放ち終えたフィリアを頭部の触角で攻撃しようとして来るアメディスター・ザ・クイーンの間に入り込み、頭部の触角部の先を武器破壊(アームブラスト)の要領で、ソードスキルを使って切り落とす。

 

「ギシャアアアアアアアッ!」

 

触角の先を切り落とされたアメディスター・ザ・クイーンは断末魔を上げて後ろに飛び退った。

そして、なにかを溜めてる動作を見て警戒していると、アメディスター・ザ・クイーンは飛び上がり、またしても森の奥にへと消え去っていった。

 

「また・・・・・・逃げたのか・・・・・・?」

 

「あと少しのところまで追い詰めたんだけどね・・・・・・」

 

「次こそ絶対倒そう!いくぞレイン、フィリア」

 

「そうだね!」

 

「うん!」

 

HPを回復アイテムで全快にして、俺たちはアメディスター・ザ・クイーンが飛び消え去っていった方向。『女王の寝所』を目指して行った。

 

 



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HF編 第121話〈エリアボス、アメディスター・ザ・クイーン〉

 

~キリトside~

 

 

晩餐の広間

 

 

 

「はあっ!」

 

「やあっ!」

 

「キリトくん後ろ!」

 

「くっ!フィリア、横!」

 

「わかった!」

 

このエリアのボス、アメディスター・ザ・クイーンと二回目の戦闘を、アメディスター・ザ・クイーンが逃走したことにより終わって数十分後。俺たちはその先のエリア『晩餐の広間』にいた。

 

「これで・・・・・・ラスト!」

 

レインの斬撃がイノセント型モンスターを切り裂きポリゴンに返した。

 

「・・・・・・モンスターの反応はないな」

 

辺りを警戒しながら索敵スキルで探査した結果を言った。

 

「今時間どのくらい?」

 

「えっと、もう少しで17時になるころだね」

 

フィリアの問いに、レインがウインドウを開いて時間を確認した。

 

「マップを見る限りもう少しで最奥なんだけど・・・・・・」

 

今俺たちがいる場所はマップの北側だ。

本来なら次のエリアに入っているはずなのだが、今回はそうはいかなかった。何故なら。

 

「にしてもこのエリア視界悪すぎないか?」

 

「うん。索敵スキルを使っていても、モンスターに隠蔽スキルがあったらとてもじゃないけど太刀打ちできないよ」

 

「ほんと、一応私たち三人とも索敵スキル発動しっぱなしだけど」

 

「不意打ちで来られたら厄介だな」

 

そう、このエリア、『晩餐の広間』は視界が悪く、日が上っていても暗いのだ。さらに薄暗く靄がかかっていて、索敵スキルを使っていたとしてもモンスターの発見が困難なのだ。一応ここまで無事にこられたがヒヤッとするときが多々あった。お互いをカバー仕合ながら戦いつつようやく来たのだ。

 

「女王の寝所、ってエリアを見つけたら今日は転移結晶で帰ろうよ。なんか気味が悪いよ」

 

「そ、そうね。レインに賛成するわ」

 

「そうだな。夜になったらさらに探索が困難になるし・・・・・・よし、さっさと行くか」

 

「うん」

 

「ええ」

 

俺たちはHPを回復して、辺りを警戒しながらマップの最奥へと目指していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

女王の寝所

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

「ねえキリトくん」

 

「ねえキリト」

 

「なにレイン、フィリア」

 

「私たちこの扉を抜けて来たんだよね?」

 

「ああ。そうだな」

 

「だよね。でさ、さっきのところってかなり暗かったよね」

 

「ああ、暗かったな。かなり」

 

「だよね。なのにさ・・・・・・」

 

「「扉を抜けた先が明るいってどういうことなの(よ)!!」」

 

扉を抜けた俺たちはまず最初にそうツッコミから始まった。

 

「まあ、あっちのエリアよりはいいじゃないか。戦いやすいしさ」

 

「そうなんだけどさ」

 

「なんか釈然としないよ」

 

「まあ・・・・・・それは確かに・・・・・・」

 

扉を抜けて目に入ってきたのが明るいエリアなのだから、さっきまで暗いエリアにいた俺たちとしてはそう思うのも無理はない。

 

「恐らく一番奥にあのボスがいるはずだ」

 

「索敵スキルには引っ掛からないの?」

 

「ああ」

 

装備を見直して準備を整えながらレインの問いに返す。

 

「二人とも準備はいいか?」

 

「大丈夫」

 

「平気」

 

俺の問いにレインとフィリアがウインドウを閉じて答える。

 

「レイン、あれ装備してるか?」

 

「うん。キリトくんは?」

 

「もちろん装備してる」

 

「オッケー」

 

俺とレインが装備してるあれとは、この間、占いで貰った装備品だ。昨日は着けてなかったから苦戦したが、恐らく今回は大丈夫なはずだ。さらにこの指輪にはある特殊効果があった。それは―――

 

「二人で一つの指輪なんてな」

 

「うん。それで効果が上がるんだもん。凄すぎるよ」

 

俺とレインが装備してる指輪、『ウィンクルムリング』には<互いが装備していると効果上昇>と書かれてあったのだ。

そのまま話して、目的地の森の最深部に辿り着いた。

目の前に広がるのは広い広間でモンスターもなにもいなかった。

 

「いない?」

 

警戒しながら広間に足を踏み入れると。

 

「「「!?」」」

 

「キシャアアアアアアア!」

 

広間の奥の森からこの異界エリアのボス。アメディスター・ザ・クイーンが現れた。

そしてそれと同時に、視界にフォントが現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 'ホロウ・ミッション'

 

 場所:女王の寝所

 

 クエスト名:災いの紫水晶

 

 討伐ボス:アメディスター・ザ・クイーン

 

 

 

 

 

 

 

 

「キシャアアアアアアア!!」

 

「行くぞ!」

 

「うん!」

 

「ええ!」

 

アメディスター・ザ・クイーンの奇声と同時に、俺とフィリアは前へと抜剣しながら走り出していた。そして後ろから。

 

「サウザンド・レイン!」

 

レインの《サウザンド・レイン》がアメディスター・ザ・クイーンに向かって飛んでいく。

 

「ギシャアアアアアアアアッ!」

 

「ふっ!ハアアッ!」

 

アメディスター・ザ・クイーンの吐き出した毒酸をかわして横からフィリアと同時に斬りつける。

 

「はあっ!」

 

「ぜりゃあ!」

 

「シャアアアアアア!」

 

レインの《サウザンド・レイン》がアメディスター・ザ・クイーンの胴体に突き刺さり、虚空に消えていく。アメディスター・ザ・クイーンの三段あるHPバーを見ると、HPバーの三段目が一割ほど削れていた。

 

「なるほどね。これがこの指輪の効果か」

 

前回までの二戦ではあまりHPバーが削れてなかったが、今回は削れていた。

 

「続けていくぞフィリア!」

 

「了解!合わせるよ!」

 

「ハアアッ!」

 

「ヤアアッ!」

 

立て続けに≪二刀流≫ソードスキル《デブス・インパクト》5連撃重攻撃と短剣ソードスキル《グラビティ・マグナム》4連撃重攻撃で攻撃する。

 

「キシャアアアアアアア!!」

 

「遅いよ!」

 

奇声を上げながら両腕を振り回してくるアメディスター・ザ・クイーンの攻撃をフィリアはステップでかわし。

 

「てりゃああっ!」

 

「キシャアアアアアアア!」

 

レインが攻撃の隙間を縫って片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》単発重攻撃を放つ。

 

「ハアアッ!」

 

レインの《ヴォーパル・ストライク》で動きが止まったアメディスター・ザ・クイーンに≪二刀流≫ソードスキル《ナイトメア・レイン》で追撃を仕掛ける。

これでHPは二割ほど削り取れた。こっちは今のところノーダメージだ。

 

「二人とも下がれ!」

 

「了解!」

 

「うん!」

 

アメディスター・ザ・クイーンの攻撃予備動作を見て、俺は直ぐ様フィリアとレインに指示を出す。

俺たちが下がったのとほぼ同時に、飛び上がったアメディスター・ザ・クイーンが墜ちてきた。

 

「くっ!」

 

余波が襲ってくるがそれを耐え凌ぎアメディスター・ザ・クイーンを見る。

 

「レイン!フィリア!俺がタゲを取る!側面から攻撃しろ!」

 

「わかったよ!」

 

「任せて!」

 

二人に指示を出しながら≪二刀流≫ソードスキル《ダブル・サーキュラー》2連撃突進技を仕掛ける。

 

「キシャアアアアアアア!」

 

奇声を上げながら頭の触覚部分で攻撃してくるが、それを双剣で受け止めてから、滑らせるように横にずらす。ずらして懐に肉薄して片手剣ソードスキル《ハウリング・オクターブ》8連撃。高速の突き5連からなる切り下ろし、切り上げ、止めの切り下ろしを放つ。

 

「ギシャアアアアアアアアッ!」

 

アメディスター・ザ・クイーンが悲鳴を上げながら、下げていた頭部を元に戻す。側面からはソードスキルのライトエフェクト光が散りばめられていた。

 

「はあっ!」

 

攻撃する暇も与えずに左右交互に攻撃を仕掛ける。

毒酸はステップでかわして両腕による攻撃は受け止める。時たま余波でHPが削れていくが、レインはフィリアと交互にスイッチを取って回復していく。まあ、俺もレインとフィリアとスイッチして回復していくが。

そのまま戦闘が続き30分後、アメディスター・ザ・クイーンの三段あるHPバーの内一段目が消え、二段目に入った。それと同時に、アメディスター・ザ・クイーンの巨体から禍々しい光が煌めいた。

 

「ギシャアアアアアアアアッ!」

 

「おいおい。前までのエリアのボスと違くないか?!」

 

「まだ二段目なのになんで!?」

 

今までのボスは少なくともHPバーが黄色くなったら身体中から禍々しい光を溢れ出していたが、目の前のアメディスター・ザ・クイーンはまだ二段目に入ったばかりなのに、その巨体から禍々しい光を溢れ出していた。二戦目のときはこの光は出してなかったはずだが。

そうアメディスター・ザ・クイーンを見ながらそう思っていると。

 

「ギシャアアアアアアアアッ!」

 

「っ!」

 

アメディスター・ザ・クイーンの巨体が白く光り、巨体の後ろ部分から何かを発射した。

 

「なんだ?」

 

「なに?」

 

「これは?」

 

アメディスター・ザ・クイーンから発射した物は、周囲の地面に突き刺さった。

警戒しながら地面に突き刺さった6つの物体を見る。

その物体は繭のような形をしていて、白く光り脈打っていた。まるで何かの卵のように。

 

「これってこのエリアのあちこちにあったのと同じやつ?」

 

「もしかしてこれってモンスターの卵なんじゃ・・・・・・!」

 

「取り巻きを産むことが出来るのかよ!」

 

悪態を吐きながらアメディスター・ザ・クイーンの毒酸を俺とレイン、フィリアで左右に避ける。

その瞬間。

 

『『『ギシャアアア!』』』

 

地面に突き刺さっていた6つのモンスターの卵らしきものが白く光り、内側から食い破られたかのように破裂し中から6体のイノセント型モンスターが現れた。

 

「くっ!」

 

「キリトくん、私が取り巻きを相手する!」

 

「わかった!フィリア!」

 

「了解!やああっ!」

 

レインに向いていたヘイトをフィリアが取り、アメディスター・ザ・クイーンと俺とフィリア。取り巻きのイノセント型モンスターとレインとで分断する。

 

「ぜりゃあ!」

 

フィリアと交互にヘイト管理をしてレインが取り巻きを倒すのを待つ。俺とフィリアのステータス構成はタンク指向ではなくアタッカー。攻撃仕様だ。基本的に俺とレインのスキル構成は同じでレインは鍛冶スキルにも注いでるが、どっちも攻撃力速度重視タイプだ。一応レベルは攻略組の中でもトップだが、スキル構成的に防御はタンクに比べると低い。その点、フィリアはやや速度重視だ。こっちも俺とレイン同様防御力は低い。

 

「くっ!」

 

「ギシャアアアアアアアアッ!」

 

「キリト!」

 

フィリアの声と同時にアメディスター・ザ・クイーンが俺に横薙ぎに腕を振りきってきた。

 

「ちっ!」

 

咄嗟に双剣で防ぐが威力が高くレインの場所にまで吹き飛ばされた。

 

「キリトくん!?」

 

「すまんミスった!」

 

空中でバランスを立て直し、レインと背中合わせでイノセント型モンスターを一閃してポリゴンに変える。

 

「フィリア、2分持ちこたえてくれ!」

 

「わかったわ!」

 

イノセント型のモンスターに囲まれた俺はフィリアに早急ぎにそう伝える。

 

「レイン、さっさと片付けるぞ!」

 

「了解キリトくん!いくよ!」

 

「ああ!」

 

残り4体いるイノセント型モンスターに四方を囲まれ、レインと背中合わせで対処する。4体同時に吐いてきた毒酸を素早くかわして、範囲技で攻撃する。

合図を出さなくても、レインが次になにをしようとするのか手に取るようにわかる。

 

「!」

 

4体のイノセント型モンスターのHPをどんどん削り取っていき、俺とレインの真ん中にモンスターを集結させ、一気に仕留める。

 

「キリトくん!」

 

「ああ!」

 

4体全てのイノセント型モンスターのHPをイエローにまで落とし、レインと同時に一気に畳み掛ける。

 

「「―――スカイ・ストライザー!」」

 

≪シンクロ≫ソードスキル《スカイ・ストライザー》12連撃突進範囲技を放つ。同時に突進技を仕掛け、一瞬で間合いを積めてからイノセント型モンスター4体を切り裂いて殲滅する。

 

「「「「ギシャアアア!」」」」

 

《スカイ・ストライザー》は4体のイノセント型モンスターのHPを余さず奪い、同時にポリゴンへと変えた。

 

「レイン、一気に行くぞ!」

 

「もちろん!いくよ、キリトくん!」

 

ポリゴンに変えたのと同時に、フィリアが一人で相手しているアメディスター・ザ・クイーンの元へと駆ける。

 

「「ハアアッ!」」

 

「っ!」

 

バランスを崩し、アメディスター・ザ・クイーンの攻撃を受けようしていたフィリアの前にギリギリで立ち、アメディスター・ザ・クイーンの頭部の触覚による攻撃を防ぐ。

 

「フィリアまたせた!」

 

「お待たせフィリアちゃん!」

 

「キリト!レイン!」

 

「フィリアは一度下がって回復してくれ!」

 

「了解!」

 

フィリアとスイッチしてアメディスター・ザ・クイーンを大きく下がらせる。

そして。

 

「「―――共鳴(レゾナンス)!」」

 

≪シンクロ≫スキル《共鳴》を発動させる。

俺とレインのHPバーの上に様々なバフのアイコンが現れたのを視て、レインとうなずき合う。

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

「ギシャアアアアアアアアッ!」

 

「「!」」

 

上から墜ちてきたアメディスター・ザ・クイーンの攻撃を下がってかわし、アメディスター・ザ・クイーンが動きを止めた瞬間に、一気に攻勢に出る。

 

「ハアアッ!」

 

「ヤアアッ!」

 

ほぼ同時に≪二刀流≫ソードスキルと≪多刀流≫ソードスキルの最上位ソードスキルを放つ。《ロストオブ・エンデュミオン》22連撃と《マテリアル・イグニッション》23連撃を放ち、アメディスター・ザ・クイーンの二段目のHPバーをすべて削る。それと同時にアメディスター・ザ・クイーンのHPバーの上に様々なデバフアイコンが表示される。逆に俺とレインのHPバーの上には《共鳴》とは別のバフアイコンが表示された。

 

「ギシャアアアアアアアアッ!!」

 

金切り声の悲鳴と共にアメディスター・ザ・クイーンは両腕を振り回して、毒酸を吐いてくるが俺とレインはすでにその場にはいない。

 

「ぜりゃあ!」

 

「てりゃああっ!」

 

アメディスター・ザ・クイーンの背後から≪シンクロ≫ソードスキル《アブソリュート・デュオ》24連撃を繰り出す。

みるみる内にアメディスター・ザ・クイーンのHPバーが削れていき、残りは一段目の5割にまで減っていた。

 

「ギシャアアアアアアアアッ!ギシャアアアアアアアアッ!」

 

立て続けに絶叫を上げながらアメディスター・ザ・クイーンは自身の巨体を白く光らせると、尾の部分からさっきと同じイノセント型モンスターを産み出すための卵を放った。そして、その卵が地面に突き刺さったその瞬間に。

 

「「・・・・・・!!」」

 

「ギシャアアア?!」

 

すべての卵を破壊してポリゴンに変えた。

アメディスター・ザ・クイーンはなにが起こったのか分からないようで戸惑いの金切り声を上げた。

そんなアメディスター・ザ・クイーンを無視して、俺はフィリアに声をかける。

 

「フィリア、そろそろ大丈夫か?」

 

「ええ!行けるわ!」

 

「オッケー。レイン?」

 

「問題ないよ♪」

 

「じゃあ、さっさと倒しますか!」

 

「「ええ!」」

 

そのあとの戦闘は完全に俺たちの独壇場だった。

アメディスター・ザ・クイーンのヘイトを俺とレインが交互に保ち、フィリアにヘイトが往かないようにする。

フィリアは側面から、素早く攻撃してアメディスター・ザ・クイーンの動きを阻害する。俺とレインはソードスキルを連発してアメディスター・ザ・クイーンのHPを削る。ソードスキルの技後硬直時間は≪シンクロ≫スキルと『ウィンクルムリング』の効果のお陰でほぼ無い。最上位ソードスキルに関しても技後硬直は0.5秒。つまり、1秒以下。正直、これはチート過ぎる気もするが気にしないことにした。

アメディスター・ザ・クイーンは無駄な足掻きをするようにイノセント型モンスターの卵を産み出すが、それは瞬時に俺とレインの範囲ソードスキルで一網打尽。毒酸も特定されない動きでかわし、触覚や腕による攻撃はいなしたりして防ぐ。やがて、触覚を二つとも切り落し、アメディスター・ザ・クイーンは金切り声の絶叫を辺りに響かせた。

 

「ギシャアアアアアアアアッ!!!」

 

「これで!」

 

「ラスト!」

 

アメディスター・ザ・クイーンが動きを止めて瞬間に、俺たちは総攻撃を仕掛ける。

 

「ハアアッ!」

 

「ヤアアッ!」

 

「ウオオッ!」

 

フィリアは短剣最上位ソードスキル《ダークネス・カーニバル》9連撃を放ち、フィリアの《ダークネス・カーニバル》が終わったのと同時に。

 

「「―――ホロウ・――――――フラグメント!!」」

 

≪シンクロ≫最上位ソードスキル《ホロウ・フラグメント》44連撃が放たれ、アメディスター・ザ・クイーンを斬り裂いていった。

 

「「ハアアアアアアッ!」」

 

瞬く間にアメディスター・ザ・クイーンのHPは減っていき、ラスト2撃の斬り薙ぎで俺とレインの間にいるアメディスター・ザ・クイーンのHPはゼロになり、甲高い金切り声の絶叫を上げて爆散して虚空へと消えた。

 

 

 



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HF編 第122話〈宮殿エリア〉

 

~キリトside~

 

遺棄エリア

 

 

異界エリアのボス、アメディスター・ザ・クイーンを討伐した翌日、俺、レイン、フィリア、ユウキ、ランの五人は管理区の真下にある遺棄エリアの封印され閉ざされている巨大な扉の前にいた。

 

「よし、火山と雪のエリアで手に入れたメダルを使って門を開けるぞ」

 

「次はどんなエリアが用意されているのかな・・・・・・楽しみだね」

 

「そうだな。取りあえず、気合いを入れていこう!」

 

扉にある窪みに火山と雪のエリアで手に入れたメダルを入れると、メダルが光り、扉が大きな音を立てて開いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宮殿エリア オディウム宮殿エントランス

 

 

開いた扉の中に入り、俺たちを待ち受けたのは宮殿のようなエリアだった。

辺りを見渡していると。

 

 

『我が名は《剣の女帝》挑戦者よ、よくぞ封印を解き、我を解放してくれた』

 

 

何処からか声が聞こえてきた。

 

「この声は・・・・・・」

 

「ついに、クエストの最終段階か」

 

辺りを警戒しながら周囲を探っているとまたしても声が聞こえてきた。

 

 

『お主の前には3つの試練が立ち塞がる。見事その試練を乗り越え、実力を証明した暁には我に挑戦する機会を与えよう』

 

 

そう告げると声は聞こえなくなった。

 

「3つの試練・・・・・・」

 

「試練、ですか・・・・・・」

 

「一体どんな試練の内容なんだろう?」

 

「まだ分からないけど、いずれにせよかなりの難易度だろうな。気を引き締めていこう」

 

意気込みを入れていると、目の前にウインドウが現れそこにホロウ・ミッションが書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 'ホロウ・ミッション'

 

 場所:オディウム宮殿 エントランス

 

 クエスト名:一の試練 守護騎士の罠

 

 備考:トラップと共に扉を守護しているガーディアンを突破し、フロアの最奥で待つ『ビッグパレスガーディアン』を撃破せよ!

 

 討伐モンスター:ビッグパレスガーディアン

 

 

 

 

 

 

 

 

「最初の試練ってやつか」

 

ウインドウに書かれたホロウ・ミッションの内容に俺はそう言った。

 

「そうみたい」

 

「要は、ガーディアンを倒して扉の先に進んでいってそこにいるボスを倒せばいいんだよな」

 

「みたいですね。しかし、気になるのはトラップと共に扉を守護しているというところですね」

 

「だね。ガーディアンがいる場所はトラップが仕掛けられていないか注意しながら戦う必要がありそうだね」

 

ランの指摘したようにトラップと言う単語に俺たちは緊張が走った。

 

「とにかく気を付けて進もう」

 

俺はレインたちにそう言うと、装備を確認してホロウ・ミッションに記されたモンスターを討伐するために先に進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく進み、一つ目の扉を開け中に入り、中にいるモンスターを見た。

モンスターの頭上にはモンスターの英名とHPバーが表示されていた。英名はそれぞれ、Hammer Of Gate GardianとBloody Masterと表示されていた。

 

「どうする?」

 

「さっさと片付けちゃいましょうか」

 

「だね」

 

「うん」

 

そう言うと俺とレインは『ハンマーオブゲートガーディアン』の方に、ラン、ユウキ、フィリアは『ブラッディマスター』2体の方に向かっていった。

結果を言うとすぐに終わった。

『ハンマーオブゲートガーディアン』は俺とレインの≪シンクロ≫ソードスキル《ワールドエンド・オーバーレイ》によって一瞬でHPが右から左端にまで減り、呆気なくゼロになった。『ブラッディマスター』に関しては、ランが『ブラッディマスター』の動きを≪変束剣≫最上位ソードスキル《ラスティー・ネイル》で止めて、その間にフィリアとユウキが接近してそれぞれ、上位ソードスキルを叩き込んで一撃でHPをゼロにした。

はっきり言うと手応えがなかった。

 

「・・・・・・・・」

 

「弱い?」

 

「いえ、たぶんキリトさんとレインさんが強すぎるのだと」

 

「あはは」

 

「確かに」

 

俺とレインの言葉にランたちから苦笑いと呆れの混じった声が返ってきた。

そんなこんなで次の部屋にいた、Sord Of Gate GardianとポップしたBloody Master2体もほぼ瞬殺の勢いで倒したのだった。

それから少しして。

 

「あれかな?」

 

目の前には恐らく討伐モンスターであるNM"Big Palace Gardian"が佇んでいた。

 

「ねえ、あの四角にある魔法陣みたいな紋章ってさっきのモンスターが出てたやつに似てない?」

 

ユウキの視線の先には、魔法陣のような紋章が怪しく青く光輝いていた。

そしてそれは、さっきの部屋でモンスター2体が現れたものと同じ紋章だった。

 

「と言うことは何らかの条件であそこからモンスターがポップするということですね」

 

「考えられることとしては時間経過か、モンスターのHPが減ってポップするかだな」

 

「どういう風にいく、キリト、ラン?」

 

フィリアが俺とランに訪ねた。

俺とランは少しの間考え、答えた。

 

「すぐに討伐出きればいいんだけど相手はNMだからな。そこら辺にいるモンスターとは違って一筋縄でいかない。ってことは、だ」

 

「モンスターが出現し次第、私とユウキ、フィリアさんとレインさんで排除。キリトさんはその間一人でモンスターの相手をしてもらってもいいですか?」

 

「ああ。見る限りそんなに強くはないみたいだからな。少しの間なら俺一人で対処できる」

 

「じゃあそのように・・・・・・」

 

ランのその言葉で締め括られ、俺たちはそれぞれ武器を抜刀し部屋の中に入った。

 

「先手必勝!―――サウザンド・レイン!」

 

俺とラン、ユウキ、フィリアが先行するところに、後ろからレインの≪多刀流≫最上位ソードスキル《サウザンド・レイン》による攻撃。目の前の『ビッグパレスガーディアン』に《サウザンド・レイン》が突き刺さり、その一秒後に俺たちによる攻撃で『ビッグパレスガーディアン』のHPは大きく削り取られていた。

HPが二段目の7割ほどにまで削り取られたその瞬間。

 

「「「「「!?」」」」」

 

部屋の四角に浮かぶ紋章から、『ハンマーオブゲートガーディアン』と『ソードオブゲートガーディアン』が2体ずつ現れた。

 

「どうやらHPを減らすと護衛のモンスターを召喚するらしいな」

 

俺は戦闘前に言った予想が当たったと護衛のモンスターを見て言った。

 

「みたいだね。護衛のモンスター4体はあの青い魔方陣みたいな紋様の上に出現するみたい・・・・・・」

 

「ボスと護衛のモンスターを引き離しての、戦闘開始はMMOの常套手段。・・・・・・・普通ならそうなんだけど」

 

「私たちにかかれば」

 

「問題ないわ!」

 

俺たちはそれぞれの武器を握り直して、自信に満ち溢れた言葉を紡いだ。

 

「ユウキ!レインさん!フィリアさん!」

 

「うん!」

 

「ええ!」

 

「まかせて!」

 

「キリトさん!」

 

「ああ!そっちは任せたぞラン!」

 

「はい!」

 

俺は一人で目の前のNM『ビッグパレスガーディアン』を。レイン、ユウキ、ラン、フィリアは四角の『ソードオブゲートガーディアン』と『ハンマーオブゲートガーディアン』に向かっていった。

 

「んじゃ、やるか!」

 

そう一言呟くと、俺は再度『ビッグパレスガーディアン』と対峙する。動き出したのはほぼ同時だった。

『ビッグパレスガーディアン』の攻撃をステップで避け、懐に潜り込んで片手剣ソードスキル《シャープネイル》3連撃を放つ。淡い赤色のライトエフェクトを輝かせ、縦に三本。獣が爪で攻撃した痕のような傷を付ける。そこから、横から迫ってくる腕を宙返りで後ろに下がり、地面に着地したと同時に片手剣ソードスキル《ソニックリープ》単発突進技を仕掛ける。身体の捻りと腕の動き、そして加速による3ブーストを同時に行って瞬時に『ビッグパレスガーディアン』との間の間合いに入り、《シャープネイル》の傷跡が僅かに残るその場所に、右斜めからの切り下ろしをペールグリーンのライトエフェクトを煌めかせながら実行する。『ビッグパレスガーディアン』は《ソニックリープ》による《シャープネイル》の上から付けられた斜めの斬り痕を刻まれながらも一瞬動きを鈍らせただけで、両腕を上から振り下ろしてきた。

 

「はあっ!」

 

両腕による攻撃を双剣のクロスブロックで受け止め、そのまま勢いに乗せて、両腕を跳ね返上げさせる。そしてそのがら空きの胴体に向かって、≪二刀流≫ソードスキル《クリムゾン・スプラッシュ》重攻撃8連撃をすべて叩き込む。クリムゾンのライトエフェクトをチラつかせながら『ビッグパレスガーディアン』の巨体を貫いていき、HPを削る。

HPが削れていき、残りHPが一段目の半分にまで落ち、レッドゾーンになったその瞬間、レインたちのいる四角の紋章から蒼白い光が同時に立ち上ぼり、そこからまたしても護衛のモンスターが4体ポップしてきた。

 

「ラン!」

 

「こっちは私たちで対処します!キリトさんは目の前のボスを!」

 

「頼む!」

 

現れた4体のモンスターをレインとラン、ユウキ、フィリアが瞬時に相対して対応した。

 

「ぜぁあっ!」

 

『ビッグパレスガーディアン』の単調的な動きを見切り、ステップで左右に避けて残りのHPを少しずつ削る。

 

「はあっ!」

 

横薙ぎに切り払いと同時に、四角からポリゴンの破砕音が盛大に響き渡った。

 

「キリトくん!」

 

「ああ!」

 

レインの呼び声と同時に『ビッグパレスガーディアン』との距離を取り、右手の黒い剣『ブラックローズ・ナイト』を肩の高さまでに持ち上げ、腕を引き絞りクリムゾンレッドのライトエフェクトを輝かせ宮殿の床を蹴って思いっきり突き穿つ。

 

「うおおっ!」

 

片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》単発重攻撃の輝かせるクリムゾンレッドのライトエフェクトを煌めかせながら『ビッグパレスガーディアン』の巨体に剣が突き刺さり、残ったHPを余さず奪い尽くした。

『ビッグパレスガーディアン』の動きが止まったかと思うと、一瞬ぶれポリゴンへと爆散して散った。

 

「終わったか・・・・・・」

 

目の前に浮かぶCongratulationsの文字を見ながら剣を背中の鞘にしまいながら呟く。

 

「お疲れさまキリトくん」

 

「ああ。そっちもお疲れレイン」

 

レインの渡してきたポーションを飲んでそう言う。

 

「ふぅ。それじゃ、次のエリアに行くか」

 

「うん」

 

「おお~」

 

「そうですね」

 

「りょ~かい」

 

先にあった扉を開き俺たち五人は、次のエリアへと進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オディウム宮殿 中央回廊

 

 

 

 

 

 

 'ホロウ・ミッション'

 

 場所:オディウム宮殿 中央回廊

 

 クエスト名:二の試練 四門に閉ざされし部屋

 

 備考:通路を塞ぐ強力な四体の門番を倒し、閉ざされている中央の扉を開いてその奥で待つ『フォースオブエンプレス』を撃破せよ!

 

 討伐モンスター:フォースオブエンプレス

 

 

 

 

 

 

「入るなりいきなりホロウ・ミッションですか・・・・・・」

 

「たぶん、エリア全体がミッション領域なんだろうね」

 

次のエリア、オディウム宮殿の中央回廊に進んだ俺たちは、部屋に入るなりいきなり表示されたホロウ・ミッションのウインドウを見やった。

 

「四体の門番すべてを倒して中央の部屋にいるボスを倒すのが二つ目の試練って訳だな」

 

「強力なってことは《NM(ネームドモンスター)》じゃないかな?」

 

「《NM》だと通常のモンスターに比べてはるかに強敵です。一体ずつ、慎重に確実に戦って進みましょう」

 

「だな」

 

要警戒と言うことで、俺たちはまず手始めに4体の門番を倒しに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれが1つ目の門番か・・・・・・」

 

ある部屋に入った俺たちは、部屋の中で徘徊しているモンスター、Flesh CollecterとNM"Ax Of Quartet"と表示されてるモンスターを見る。

 

「取り巻きのモンスターは私とユウキで対処するわ」

 

「姉ちゃんとキリト、レインはNMをお願いね」

 

「わかった。それじゃ―――」

 

俺の言葉にそれぞれの武器を抜刀し。

 

「―――戦闘開始だ!」

 

俺とレイン、ランはNMの『アックスオブカルテット』をユウキとフィリアは『フレッシュコレクター』2体を相手に行った。

結果的に言うと、さすがNMだけあって他とはけた違いだったが、今までの戦闘経験が発揮され、ほぼノーダメージで討伐することができた。

それは他の3体の門番のNMもしかり。

『アックスオブカルテット』を倒した次の部屋の2番目の門番はNM"Scythe Of Quartet"と表示されたモンスターだった。『サイスオブカルテット』はその名の通り死神のような姿をしていた。素早さが高く、『アックスオブカルテット』ほどの攻撃力は無かったが出血デバフを与えてきたため『サイスオブカルテット』の攻撃には注意して攻略した。最後はフィリアの《ダークネス・カーニバル》で止めをさし討伐した。

『サイスオブカルテット』を倒した俺たちの次の撃破対象は、NM"Blade Of Quartet"だった。

反対側の部屋にいたNM『ブレードオブカルテット』は巨大な両手剣を携えた騎士型モンスターだった。両手剣によるソードスキルを放ち攻撃範囲が広く、距離を取りつつ、無防備な背面に回ったりして少しずつHPを削り、最後はユウキの《インフィニット・ゼロ》で撃破した。

そして最後の4番目の門番は『ブレードオブカルテット』の上の部屋にいたNM"Club Of Quartet"とFlesh Collecterだ。

NMの『クラブオブカルテット』の取り巻きのモンスターである『フレッシュコレクター』2体は最初に倒したNMの『アックスオブカルテット』のところで倒したモンスターだった。今回は『アックスオブカルテット』の時と同じようにして『フレッシュコレクター』2体をフィリアとユウキが相手をし、『クラブオブカルテット』を俺とレイン、ランが相手をした。『クラブオブカルテット』はその名の通り両手棍を持った、ゴブリンキングのようなモンスターだった。『クラブオブカルテット』は他の3体の門番と比べると微妙に倒しやすかった。『フレッシュコレクター』を同時に倒したユウキとフィリアも入れて、次々とスイッチしていき攻撃をさせるを与えず、HPを削り最後はランの《シュヴァルツィエ・ブレイド》で切り刻まれてポリゴンの欠片へとなって散った。

4体の門番すべてを倒し、撃破した俺たちは最後の討伐指令のモンスター、NM"Force Of Empress"。NM『フォースオブエンプレス』と対面していた。

 

「あれがフォースオブエンプレスか」

 

俺は目の前にいる『フォースオブエンプレス』を見てそう呟いた。さすがに今はまだ戦闘に入ってない。

俺たちのいる場所は部屋の入り口付近で『フォースオブエンプレス』の陣取っている場所は、部屋の中央だ。どうやらこの辺りは『フォースオブエンプレス』の攻撃範囲外(アグロレンジ)らしい。

 

「剣を二本持ってるね」

 

「二刀流・・・・・・キリトさんとレインさんみたいですね」

 

「ああ。恐らくだがかなり攻撃力が高いだろうな・・・・・・」

 

「見た目からは移動速度が遅いように見えるけど・・・・・・」

 

「油断できないね」

 

俺たちは最大限の警戒をして、視界の先の『フォースオブエンプレス』を見据える。

 

「とにかく、ここに居たってなんも変わらないし闘わないと」

 

「ですね。タゲ取りはキリトさんとユウキに任せます」

 

「わかった」

 

「オッケー姉ちゃん」

 

「レインさんは先制にいつもの《サウザンド・レイン》をお願いします」

 

「うん」

 

「私とフィリアさんは、側面から攻撃します」

 

「まかせて」

 

ランの指示が終わり、俺たちは無言でそれぞれの武器を抜刀し構える。

 

「それじゃ、戦闘開始だ!」

 

俺の声と同時に、レインを除く俺たち4人が前に駆け出す。

 

「いくよ!―――サウザンド・レイン!」

 

後ろからの《サウザンド・レイン》が一直線に『フォースオブエンプレス』へと翔んでいく。

 

「ユウキ!」

 

「うん!」

 

《サウザンド・レイン》が俺たちを追い越して行くのと同時に、フィリアとランは左右に散開して、俺とユウキは同時にソードスキルを放つ。

 

「はああっ!」

 

「やああっ!」

 

俺は≪二刀流≫ソードスキル《ダブルサーキュラー》突進2連撃を。ユウキは≪紫閃剣≫ソードスキル《レジステリアス》単発突進技を放つ。

俺たちのソードスキルが当たるその直前にレインの《サウザンド・レイン》が当たるはずだった。しかし。

 

「なっ!」

 

「グオォォォオオオオオ!」

 

レインの《サウザンド・レイン》は『フォースオブエンプレス』の握る巨大な二本の剣にほとんど防がれ、無傷とはいかないが、少ししか二段あるHPを削れられなかった。俺とユウキはそれに面食いながらもソードスキルを発動する。

放たれた二つのソードスキルは『フォースオブエンプレス』の巨体の胴に辺りわずかにHPを減らす。

その瞬間。

 

「くっ!」

 

「うわっ!」

 

巨大な二本ある剣の片方に薙ぎ払われた。

とっさに剣で防御したが後ろに吹き飛ばされた。

 

「キリトくん!ユウキちゃん!」

 

「大丈夫だ!」

 

吹き飛ばされながら身体に捻りを入れてバランスをとり、地面に脚が着いたのと同時に勢いよく踏み出す。

 

「うおおおっ!」

 

片手剣ソードスキル《ソニックリープ》を3ブーストを掛けて繰り出す。

《ソニックリープ》は『フォースオブエンプレス』の剣で受け止められたが、側面からはフィリアとランによるソードスキルのライトエフェクトが見える。

 

「ぜりゃああ!」

 

《ソニックリープ》のシステムアシストが終了し、地面に脚が着く。それと同時に頭上から『フォースオブエンプレス』の剣が振り下ろされてくる。

俺はそれをクロスブロックで受け止め。

 

「ユウキ!レイン!」

 

後ろの二人に声をかける。

 

「うん!レイン!」

 

「オッケーユウキちゃん!」

 

ユウキが素早く接近して、俺と『フォースオブエンプレス』との間に入り至近距離の胴体に片手剣ソードスキル《ファントム・レイブ》6連撃を放つ。

《ファントム・レイブ》は重攻撃では無いが、威力が高くやや重攻撃に似ているためノックバックが確率で発生する。

そして《ファントム・レイブ》で発生したノックバックにより『フォースオブエンプレス』の振り下ろしてくる剣の重みが緩和になりそれを思いっきり跳ね上げ。

 

「レイン!」

 

「うん!いくよ―――サウザンド・レイン!」

 

俺とユウキが左右に避け、レインの《サウザンド・レイン》が車線上にいる胴体ががら空きの『フォースオブエンプレス』に突き刺さる。

 

「グギャアアアアアアアアア!」

 

どこからこんな声を出しているのか分からない甲高い絶叫が周囲に響く。

そしてそんな『フォースオブエンプレス』に。

 

「ハアアアッ!」

 

「やあああっ!」

 

「テイヤアァァッ!」

 

ユウキの≪紫閃剣≫ソードスキル《インフィニット・ゼロ》10連撃とランの≪変束剣≫ソードスキル《シュヴァルツィエ・ブレイド》11連撃、そしてフィリアの短剣ソードスキル《アクセル・レイド》12連撃と、それぞれの上位ソードスキルが命中し、瞬く間にHPが削られていく。

 

「レイン!」

 

「うんキリトくん!」

 

俺とレインは素早く『フォースオブエンプレス』に近づき、ノックバックが解除され迫り来る二本の巨大な剣を巧みに避け≪シンクロ≫ソードスキル《ワールドエンド・オーバーレイ》重攻撃14連撃を仕掛ける。

これで『フォースオブエンプレス』の二段あるHPの二段目が消し飛び一段目の6割弱で止まり一気にレッドゾーンにまで入った。

その後も、左右の剣による連続攻撃や薙ぎ払いなど剣による攻撃も多かったがそのすべてを見切り、余波でわずかにHPは減ったがスイッチをしていき15分後、『フォースオブエンプレス』のHPがすべて消えゼロになり、『フォースオブエンプレス』はその巨体をポリゴンの欠片へと変え、爆散して虚空へと消えた。

 

 

 

 

 



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HF編 第123話〈宮殿エリアボス、ヴァルナギア・ジ・エンプレス〉

 

~キリトside~

 

オディウム宮殿 剣の王宮

 

 

「―――この先にこのグランドクエストのボスがいるのか」

 

俺は目の前にそびえ立つ、ホロウエリアで見慣れたボス部屋へと続く扉を見て言った。

 

「長かったね」

 

「ようやくここまで来れたよ~」

 

「ここに来るまでの試練は大変でしたからね」

 

「特に三つ目試練のNMを倒すのには苦労したわね」

 

「思い出させないでよフィリア」

 

「転移して逃げるなんて卑怯・・・・・・」

 

「あはは、まあ、どのみち倒せたから良かったではないですか」

 

「それもそうだな」

 

目の前の石の扉を前にして、ここにたどり着くまでのことを思い返した。

ウインドウを開き、アイテムを整理して準備をする。

準備を終えた俺は、同じく準備を終えたレインたちに視線を向ける。

 

「レイン、フィリア、ユウキ、ラン。この先にいるのはおそらく今までののどのボスよりも強いだろう。だが・・・・・・俺たちは負けない」

 

「「「「・・・・・・・・・・」」」」

 

俺の声にレインたちは強くうなずき返した。

 

「勝とう。勝って、グランドクエストの報酬をゲットしようぜ!」

 

「うん!」

 

「もちろん!」

 

「ええ!」

 

「そうだね!」

 

「それじゃ・・・・・・」

 

石の扉を開放し、ボスの待つ部屋が視線に入る。

 

「―――戦闘開始だ!」

 

同時にそれぞれの武装を抜刀して、開いた石の扉の奥、ボスの待つ部屋に侵入した。

 

 

 

 

 

 'ホロウ・ミッション'

 

 場所:剣の王宮

 

 クエスト名:神を越えし剣技

 

 討伐ボス:ヴァルナギア・ジ・エンプレス

 

 

 

 

 

「ァァァァァァァッ!!!」

 

ボス部屋に入ると、視界にホロウ・ミッションのウインドウが現れ、ウインドウが消えると、目の前にいるボス。頭上に【BOSS】Varunagia The Empressと表示されたボスが甲高い声をあげた。それと同時に、自身の周囲に浮かんでいる巨大な剣。宮殿の至るところに、そしてこのボス部屋の壁側に飾られている神々しい装飾の白金の剣と同種の剣をドレスのように振り回した。

 

「ヴァルナギア・ジ・エンプレス・・・・・・」

 

「―――剣の女帝・・・・・・」

 

「強そうだね」

 

「ええ。ですが、私たちは様々な経験をしています」

 

「そう簡単にやられるわけにはいかないよ!」

 

フィリアの声を皮切りに、俺とユウキが駆け出した。

 

「行くぞユウキ!」

 

「オッケーキリト!」

 

駆け出した後ろから、レインが。

 

「―――サウザンド・レイン!」

 

《サウザンド・レイン》を放った。

 

「ァァァァァァァッ!!!」

 

しかし、レインの《サウザンド・レイン》は当たる直前に、ヴァルナギア・ジ・エンプレスの周囲に浮かぶ剣によって防がれた。

 

「!」

 

防がれたことに驚きながらも、俺とユウキは同時に仕掛ける。

 

「ハアッ!」

 

「ヤアッ!」

 

俺とユウキに向かって突き出されたヴァルナギア・ジ・エンプレスの剣を左右に避けてかわし、同時に同じ場所を攻撃する。

 

「ァァァァァァァッ!!!」

 

「「なっ!?」」

 

だが、その攻撃は当たらなかった。いや、正確には、俺とユウキの剣と、ヴァルナギア・ジ・エンプレスの巨体との間にヴァルナギア・ジ・エンプレスの剣が盾のように置かれ防がれたのだ。

まさかの防ぎように俺とユウキは驚いた。今までのいろんな、剣を、使うモンスターやボスと戦ってきたが、こういう風に防御するやつはいなかったのだ。

 

「キリトさん!ユウキ!」

 

ランの危険を告げる声が耳に入るのとほぼ同時に俺とユウキはバックステップでヴァルナギア・ジ・エンプレスから距離をとっていた。

そして、俺とユウキがいた場所には帯のようにならんだ剣が横薙ぎに切り払われていた。剣に赤いライトエフェクト煌めいていることからあれは剣技の一つなのだろう。さらにその赤いライトエフェクトはヴァルナギア・ジ・エンプレスにもうっすらと、衣のようにたなびいていた。

 

「危なかった・・・・・・」

 

「危なかったぁ~」

 

「まさか剣をあんな風に使うなんてな」

 

「うん。今までのモンスターとは違うね」

 

「どうする。やっぱり剣を破壊した方がいいか?」

 

「う~ん。見る限り破壊できると思うけど、確証がないからなぁ~」

 

下がって話しているところに、ヴァルナギア・ジ・エンプレスの剣が俺とユウキに向かって飛んでくる。それを俺とユウキはステップで避け、会話を続ける。

 

「このままじゃじり貧だな・・・・・・」

 

ヴァルナギア・ジ・エンプレスの三段あるHPゲージを凝視して、ほんの僅かだけ削られてるゲージを見る。

 

「ユウキ、援護を頼む!」

 

「わかった!」

 

隙を見て、ヴァルナギア・ジ・エンプレスに向かって駆け出す。

 

「ラン、ボスに拘束(バインド)を頼む!」

 

「わかりました!―――往きます!ラスティー・ネイル!」

 

ランの鞭のように伸びた剣がヴァルナギア・ジ・エンプレスの巨体を攻撃する。そしてその攻撃は蛇のように撓り、周囲に浮かぶ剣にもダメージを与えた。

 

「ハアアァ!」

 

ヴァルナギア・ジ・エンプレスのHPゲージの横に拘束のデバフアイコンが表示され、動きが止まったところに一瞬で距離を積め、片手剣ソードスキル《ファントム・レイブ》6連撃を放つ。

 

「ボクも往くよ!ヤアアッ!」

 

そしてユウキも≪紫閃剣≫ソードスキル《インフィニット・ゼロ》10連撃を繰り出す。

 

「ァァァァァァァッ!!!」

 

俺とユウキのソードスキルでヴァルナギア・ジ・エンプレスの三段あるHPゲージは三段目が3割ほど削り取られていた。

どうやら防御力はそんなに高くないようだ。

 

「―――っ!キリト!ユウキ!離れて!」

 

フィリアの声が響くと同時に、ヴァルナギア・ジ・エンプレスのHPゲージに表示されていた拘束のデバフアイコンがスゥと消えた。そして、消えるのと同時に、頭上から剣を振り下ろしてきた。

 

「ぐっ!」

 

「うわっ!」

 

左右に散開して避けようとしたが、離れた瞬間に剣が床に突き刺さりそこから衝撃波が襲ってきた。

俺とユウキは衝撃波で吹き飛ばされながらも身体をひねってバランスを取りながら床に着地する。

 

「キリトくん!」

 

床に着地すると、レインが心配したふうに声を掛けて近寄ってきた。

 

「大丈夫だ!」

 

衝撃波だけでもわずかにHPが減っていた。幸いにも減ったのはほんの僅かなため、戦闘時自動回復(バトルヒーリング)スキルで回復できる。

 

「キリトくん、共鳴(レゾナンス)使う?」

 

「いや、共鳴を使うなら最後の方がいい。いくら何度も使えると入っても、30分のインターバルはキツイ」

 

「そうだね・・・・・・。なら、私とキリトくんがヘイトを取って、ユウキちゃんたちがその隙に攻撃をするってことかな」

 

「だな。―――いけるか?」

 

「もちろん♪」

 

「よし、いくぞ!」

 

そう言うと、俺はヴァルナギア・ジ・エンプレスと相対してタゲを取っているランのところへと駆け出した。そしてギリギリのところで、ランに振り下ろされた剣を双剣防御(クロスブロック)で受け止める。

 

「キリトさん!」

 

「ハアアァ!」

 

受け止めた剣を思いっきり跳ね返して、ヴァルナギア・ジ・エンプレスの巨体に≪二刀流≫ソードスキル《クロス・ナイト》2連撃を放つ。

 

「ラン、俺とレインがあいつのタゲを取るから攻撃を頼む」

 

「わかりました!」

 

そう言うや否や、ランは横から来た剣を受け止めて跳ね返した。

跳ね返された剣は自動で、俺とランから少し距離を取っているヴァルナギア・ジ・エンプレスの周囲に戻った。

 

「ハアアァ!」

 

「イャアアッ!」

 

レインと同時に、ヴァルナギア・ジ・エンプレスの巨体の横腹を双剣で切り裂く。

 

「ァァァァァァァッ!!!」

 

「遅い!」

 

奇声を上げたヴァルナギア・ジ・エンプレスは、俺とレインに上から剣を振り下ろしてきたが、すでにその場にいなく俺はヴァルナギア・ジ・エンプレスの背後に、レインは正面にいた。

そしてそれぞれ同時に片手剣ソードスキル《ホリゾンタル・スクエア》4連撃と《バーチカル・スクエア》4連撃を一寸の狂いもなく放つ。

 

「―――まだだ!レイン!」

 

「うん!いくよキリトくん!」

 

「「―――ワールドエンド・オーバーレイ!」」

 

装備している指輪、『ウィンクルムリング』の特殊効果で、俺とレインの技後硬直時間は大幅に減少している。《バーチカル・スクエア》や《ホリゾンタル・スクエア》などの中位クラスならば時間は0.1秒だ。正直、ゲームバランス崩壊の代物だと思うがそれは置いとく。

アイコンタクトで意思疏通をし、≪シンクロ≫ソードスキル《ワールドエンド・オーバーレイ》14連撃重攻撃を繰り出した。交互に剣戟を放ち、ラスト2撃の振り下ろしを同時に、ブーストも重ねて放つ。

 

「ハアアァ!」

 

「ヤアアッ!」

 

「ァァァァァァァッ!!」

 

甲高い声を上げながら、ヴァルナギア・ジ・エンプレスは《ワールドエンド・オーバーレイ》のラスト2撃を周囲に舞う2本の剣で受け止める。

 

「「―――くだ・・・・・・け、ろぉぉ!!」」

 

気合いの入った声で、競り合う剣を押し込む。

濃紅(クリムゾン)のライトエフェクトを煌めかせながら、俺とレインの剣とヴァルナギア・ジ・エンプレスの剣が鍔迫合う。やがて、その亀甲にも終わりが見えた。ヴァルナギア・ジ・エンプレスの剣に罅が入ったからだ。その罅は小さく、しかし確実に周囲に広がるようにしてクモの巣のように広がりやがて、2本の剣がパキン、と割れ俺とレインの剣がヴァルナギア・ジ・エンプレスの巨体を切り裂いた。

 

「ァァァァァァァッ!!!」

 

この攻防で、ヴァルナギア・ジ・エンプレスのHPゲージは三段目の3割ほどにまで落ちていた。まあ、俺らが攻撃してる間にもユウキとラン、フィリアが攻撃していたからだが。

 

「ァァァァァァァッ!!!」

 

奇声を発するヴァルナギア・ジ・エンプレスは荒れ狂うかのように剣を振り回してくる。

俺たちはその場を離れ、剣の届かない場所でHPをポーションで回復する。

 

「ァァァァァァァッ!!」

 

甲高い奇声を発しながら繰り出される、ヴァルナギア・ジ・エンプレスの攻撃をステップで避ける。しかし幾ら立っても当たらない攻撃に嫌気が指したのか、ヴァルナギア・ジ・エンプレスは剣を舞わせ、障壁のように近付いたらダメージが通るようにした。

 

「くっ・・・・・・!これじゃ近づけない・・・・・・!」

 

「接近してソードスキルを放ってもこっちにもダメージが来ると思うよ」

 

「・・・・・・レイン、サウザンド・レインであれをどうにか出来るか?」

 

「う、う~ん・・・・・・できなくもないとは思うけど・・・・・・」

 

「よし、レインがサウザンド・レインを撃ったら俺がその隙に強攻撃をする。少しの間でも怯ませればランたちが攻撃出来るはずだ」

 

「うん。気をつけてねキリトくん」

 

「ああ!」

 

レインと分かれ、腰に差したピックを二本取り、ヴァルナギア・ジ・エンプレスの顔に向かって投擲ソードスキル《シングルシュート》を発動する。

 

「ァァァァァァァッ!!!」

 

舞う剣の隙間を縫って飛んだ二本のピックは見事・・・・・・とは言わないが、少し軌道はずれたがヴァルナギア・ジ・エンプレスの顔部分に当たりヘイトをこっちに意識させることに成功した。

ヴァルナギア・ジ・エンプレスの意識がこっちに向いた瞬間。

 

「―――サウザンド・レイン!」

 

背後に移動していたレインが《サウザンド・レイン》を放った。

 

「ァァァァァァッ!!?」

 

不意を付かれたヴァルナギア・ジ・エンプレスは驚きの声のようなものを上げてレインの方に視線を向けるがすでに遅く、レインの放った《サウザンド・レイン》の剣雨はヴァルナギア・ジ・エンプレスの周囲を舞う剣に当たり、剣の舞う速度を減速させ、幾つかの剣を連鎖崩壊のようにして動きを止めた。

その隙に。

 

「ラン!ユウキ!フィリア!」

 

ランたちに呼び掛ける声とともに俺は動きを止めたヴァルナギア・ジ・エンプレスに接近してソードスキルを叩き込む。

 

「デリャァァァア!!」

 

連鎖崩壊で剣が絡み合ってるところに≪二刀流≫ソードスキル《ナイトメア・レイン》16連撃を繰り出す。

 

「ァァァァァァァッ!!!」

 

周囲からはランたちのソードスキルによるライトエフェクトの散らばりが煌めいて見える。俺たちの多重ソードスキルにヴァルナギア・ジ・エンプレスのHPゲージはどんどん減っていき、三段あるHPゲージは残り二段へと減った。

 

「ァァァァァァァッ!!!!」

 

二段目に入った瞬間、ヴァルナギア・ジ・エンプレスから甲高い奇声と衝撃波で吹き飛ばされた俺たちはとっさにバランスを取りながら床に着地する。

ヴァルナギア・ジ・エンプレスを見ると、ヴァルナギア・ジ・エンプレスから淡い紫色のオーラが立ち上っていた。それは今までのボスと同じ現象だ。そう認識したその時。

 

「!」

 

「キリト!」

 

俺の頭上からヴァルナギア・ジ・エンプレスの周囲を舞っている剣と同じ大剣が降ってきた。

ギリギリのところで避けて大剣が俺のいた場所を突き刺す。

 

「大丈夫だ!」

 

警告してくれたフィリアにそう言い大剣へと視線を戻す。降ってきた大剣はそのまま地面に突き刺さったままだった。そして、その大剣にはHPゲージがあった。

 

「(なぜ剣にHPゲージが・・・・・・)」

 

大剣は地面に刺さったまま、紫色のオーラのようなものを発していた。

 

「(あのオーラみたいなやつまるでなにかを計っているような・・・・・・・)」

 

そう思っていると、ヴァルナギア・ジ・エンプレスが剣をこっちに振り下ろしてきた。それをステップで横に避けると、俺のいた場所を、一直線に緑の斬撃波が貫いた。それと同時に、ヴァルナギア・ジ・エンプレスは後方に下がった。恐らく攻撃と同時に後ろに下がる技なのだろう。そう思考しながら突き刺さったままの大剣を見やる。

 

「(あれまるでタイムカウントのような・・・・・・っ!まさか・・・・・・!)」

 

ある程度予測した俺は突き刺さったままの大剣に急いで近寄った。

 

「(まずい!急いで破壊しないと・・・・・・!)」

 

大剣を破壊しようとしたその瞬間、大剣の紫の輝きが高くなり甲高い音が聞こえ、剣が爆散するのと同時にとてつもない衝撃波が襲ってきた。

 

「うっ!」

 

「きゃっ!」

 

俺と、ヴァルナギア・ジ・エンプレスに攻撃していたランがその衝撃波を受け、俺は壁際に、ランは柱の方に吹き飛ばされた。

そして俺とラン二人とも出血のデバフアイコンが付いていた。

 

「キリトくん!ランちゃん!」

 

「レイン、上!」

 

「きゃあっ!」

 

「レイン!」

 

さらに俺とランに気をとられたレインが爆散したのと同じ大剣が地面に突き刺さった衝撃波で吹き飛ばされた。

とっさに俺がレインに声をかけたから直撃はせず防御と受け身は取ったが大きく吹き飛ばされた。

 

「くっ!(早く回復しないと!)」

 

ポーチから止血結晶を取り出し、掲げ上げ出血デバフを消す。そしてハイポーションを取り出して一気に呷る。

 

「よし!」

 

ハイポーションで回復してるとはいえ結晶で回復してないため回復速度は微々たるものだ。だが、HPは安全マージンの8割ほどにまで回復してる。

 

「フィリア下がれ!」

 

ヴァルナギア・ジ・エンプレスを相手してHPが減っているフィリアにそう言って、フィリアとスイッチする。

 

「了解キリト!スイッチ!」

 

「スイッチ!―――ハアアァ!」

 

フィリアとスイッチして≪二刀流≫ソードスキル《デブス・インパクト》5連撃重攻撃を放つ。

 

「ァァァァァァッ!」

 

《デブス・インパクト》の追加効果でヴァルナギア・ジ・エンプレスのHPゲージに防御低下のデバフが付与された。

ヴァルナギア・ジ・エンプレスは下がって退避しようとするが。

 

「予想通りです!ユウキ!」

 

「オッケー姉ちゃん!」

 

ヴァルナギア・ジ・エンプレスの退避しようとする場所にはランとユウキが構えて待ち構えていた。

 

「ヤアアッ!」

 

「ハアアァ!」

 

ランとユウキはさすが双子の姉妹で俺とレインのような相互理解(シンクロ)でソードスキルをダンスのように、舞うように放った。それぞれ≪変束剣≫ソードスキル《ナイトレス・クラウド》8連撃と≪紫閃剣≫ソードスキル《ノクティス・ラージュ》6連撃を繰り出す。

 

「ァァァァァァァッ!!!」

 

二人のソードスキルはヴァルナギア・ジ・エンプレスの巨体に吸い込まれていき、瞬く間にHPゲージを削った。

 

「ァァァァァァァッ!!!」

 

奇声を発しながらヴァルナギア・ジ・エンプレスは舞う剣を束ねてユウキとランを薙ぎ払おうとするが、その剣はユウキとランがいない場所を薙ぎ払った。どうやらランの《ナイトレス・クラウド》の追加効果で混乱のデバフに掛かっているみたいだ。

無作為に攻撃するヴァルナギア・ジ・エンプレスの剣を避けるのは容易かった。

 

「レイン!」

 

「うん!」

 

回復してヴァルナギア・ジ・エンプレスに駆け走っているレインに声をかけて同じ淡い蒼色の色のライトエフェクトを輝かせる。

 

「「―――アブソリュート・デュオ!」」

 

≪シンクロ≫ソードスキル《アブソリュート・デュオ》24連撃。

舞うように、踊っているようにソードスキルを繰り出し、淡い蒼色のライトエフェクトを散らばかせる。

 

「――――――ッ!!」

 

《アブソリュート・デュオ》を放ち終えると、ヴァルナギア・ジ・エンプレスは先程とは比べ物にならないくらいの甲高い奇声を上げた。思わず耳を塞ぐほどの声量だった。

 

「なんつー声だ」

 

「耳がキーン、ってするよ」

 

「残り半分・・・・・・」

 

ヴァルナギア・ジ・エンプレスのHPゲージを見て、残りHPを確認する。

 

「とにかく、あの大剣が現れたら即効破壊だな」

 

あの爆発の威力を思い返し即座にそう判断する。

 

「だね。それにあの剣・・・・・・」

 

レインの視線はヴァルナギア・ジ・エンプレスの周囲を舞う剣を見ていた。

 

「いつの間にか剣がもとに戻ってる」

 

最初、10本あったヴァルナギア・ジ・エンプレスの剣は俺とレインが破壊して8本に減っていたのだが、今はもとの10本に戻っていた。

 

「くっ・・・・・・このまま言いあぐねていても仕方ないやるぞ!」

 

「了解だよ!」

 

互いにうなずきあい、同時に床を蹴って駆け出した。

そこから先は五分五分の戦闘だった。ヴァルナギア・ジ・エンプレスの繰り出してくる剣技を、受け止めたり、いなしたり、ステップでかわしたりとヘイトを交互にとりながら気を引き締めて、意識を集中させてやった。あの爆発する大剣に関しては、連続で降ってきたり、複数床に突き刺さったりとして困難だったが、大剣じたいの耐久力がそこまで高くないことに抗してなんとか爆発する前に破壊することができた。少しばかりあわやと思ったところもあったがどうにか対処できた。さらに困難だったのが、10本の剣を砲のように束ね舞わしながら攻撃してきたことだ。予想外にその攻撃の射程距離範囲が長く、さらに出血のデバフを与えてきてヤバかったがレインとどうにか対処できた。それからしばらくして。

 

「ァァァァァァァッ!!!」

 

「レイン、スイッチ!」

 

「うん!」

 

ヴァルナギア・ジ・エンプレスの振り下ろしてきた剣を左の剣で弾き、右の剣で片手剣ソードスキル《ソニックリープ》単発重攻撃を放つ。

 

「――――ァァァァァァァッ!!!」

 

《ソニックリープ》の反動でヴァルナギア・ジ・エンプレスは後ろの方に下がり、三段あったHPゲージは残り一段の半分へと減っていた。さらにその周囲を舞う剣も所々罅が入っていたりして満身創痍のようだった。

 

「いくぞレイン」

 

「うん」

 

「「共鳴(レゾナンス)!」」

 

すぐさま共鳴を発動し、共鳴のバフ効果で得たスピードでヴァルナギア・ジ・エンプレスに迫る。

 

「――――――ッ!!」

 

振り下ろしてきた剣を左右に避け、突き出された剣をかわして、その剣の刃部分をレインがかけ上がる。

 

「ヤアアァァァァアッ!」

 

鍔部分を踏み台にしてジャンプしヴァルナギア・ジ・エンプレスの上を取る。

 

「いくよ!―――サウザンド・レイン!」

 

上から降ってくる青いライトエフェクトを輝かせた無数の剣が雨のように降り注いできた。俺はレインの《サウザンド・レイン》を巧みにかわしてヴァルナギア・ジ・エンプレスの懐に潜り込み。

 

「ハアアァァァァアッ!」

 

≪二刀流≫ソードスキル《ジ・イクリプス》27連撃を打ち出す。

コロナを彷彿させる27連撃は抉るようにヴァルナギア・ジ・エンプレスを切り裂いていきHPを奪う。

 

「ァァァァァァァッ!!!」

 

《ジ・イクリプス》を放ち終えた俺は0.5秒の技後硬直時間を終え後ろに宙返りで下がり、上から降りてくるレインと並び立つ。

 

「これで終わらせるぞ!」

 

「うん!」

 

「わかった!」

 

「ええ!」

 

「はい!」

 

「私からいきます!喰らいなさい!―――ラスティー・ネイル!」

 

ランが鞭のように伸びしならせたまるで蛇腹剣みたいな剣でヴァルナギア・ジ・エンプレスを切り裂き。

 

「いくよユウキ!」

 

「うんフィリア!」

 

「ヤアアァァァァアッ!―――マザーズ・ロザリオ!」

 

「ハアアァァァァアッ!―――ダークネス・カーニバル!」

 

ユウキの光速の刺突11連撃とフィリアの舞うように切り裂く9連撃のソードスキルが嵐のようにランの《ラスティー・ネイル》で拘束されて動けないヴァルナギア・ジ・エンプレスを襲う。

 

「――――――ァァァァァァァッ!!!」

 

甲高い音発するが、その声には先程まで聞こえていた奇声は無かった。

 

「レイン!」

 

「うんキリトくん!」

 

「ァァァァァァァッ!!!」

 

迫る俺とレインに最後の足掻きのように放つ剣をすべて武器破壊(アームブラスト)で破壊していき。

 

「「―――ホロウ・―――フラグメント!」」

 

≪シンクロ≫最上位ソードスキル《ホロウ・フラグメント》44連撃を放つ。バフの効果でさらにスピードが上がり、身を守るようにして盾にする剣も耐久値がどんどん減っていき、一本一本破砕音が響く。

 

「ァァァァァァァッ!!!」

 

残り二本となったヴァルナギア・ジ・エンプレスの剣はヴァルナギア・ジ・エンプレスが交差して受け止めるように身構えた。

 

「「ハアアァァァァァァァァアッ!!!」」

 

4本の剣がぶつかり合い、金属音が鳴り響く。

やがてその亀甲に、ヴァルナギア・ジ・エンプレスの剣からピシリと音が聞こえたことで決着が着いた。

ピシリとなった剣は真ん中から広がるように罅が入り、俺とレインが押し込むとキンッ!と金属の音がなり粉々に砕け散った。そのまま、俺とレインの剣はヴァルナギア・ジ・エンプレスの巨体を切り薙ぎし、ヴァルナギア・ジ・エンプレスの巨体にクロスを描いた。

やがてヴァルナギア・ジ・エンプレスのHPは0になり、一瞬ブレたかと思いきや、ポリゴンの欠片へと爆散して虚空へと散り消え去った。

 

 



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HF編 第124話〈秘奥義〉

「みんなお久しぶり!覚えてるかな?ソーナだよ!しばらくここにいなくてごめんなさい!それじゃさっそく今回の問題をだすよ!―――――の前に本日のゲストはこちら!」

「こんにちはアリス・シンセシス・サーティです」

「はじめまして!アリス姉さまの妹のセルカ・ツーベルクです」

「今回は、アニメ【ソードアート・オンライン アリシゼーション Warof Underworld】の放送開始を記念してアリスとセルカの姉妹二人に来てもらいました!今日は来てくれてありがとう二人とも」

「いえ」

「こちらこそ呼んでくださりありがとうございます」

「あはは、セルカそう緊張しなくても大丈夫だよ」

「そうですよセルカ。普段通りでいいと思います」

「そ、そう?ならそうするわね」

「セルカの緊張も解れたところで今回の問題はこちら!」


問題:『キリトが≪二刀流≫で獲得した秘奥義の名はなに?』

Ⅰ:トワイライト・リザレクション

Ⅱ:ネビュライド・エンプレス

Ⅲ:サウザンド・レイン

Ⅳ:シャドウ・エクスプロージョン


「答えは本文の最後に!」




 

~キリトside~

 

「倒した・・・・・・」

 

「うん・・・・・・倒したよね」

 

剣を振り切ったままの姿勢で、俺とレインはたった今HPが0になり消えた、ここ、宮殿エリアのボスにしてこのグランドクエストのボス、ヴァルナギア・ジ・エンプレスのいた場所を見る。

目の前の空間に金色のフォントでcongratulations!!と浮かび上がった。

 

「よし!」

 

「やったぁ!」

 

「やったよ姉ちゃん!」

 

「ええ!やりましたねユウキ!」

 

「やったねキリト!」

 

フォントが浮かび上がりクリアしたことに、俺たちは武器を鞘にしまって歓声を上げた。

するとそこに。

 

 

『お主の力はこの我を凌駕した。その力に応じて、我が剣技を授けよう。神の力をも凌駕する、剣技を!』

 

 

何処からかそんな声が聞こえてきた。

その声がそう言うと、突然目の前の視界に空間ウインドウが開き。

 

 

 

【各武器種の秘奥義がアップデートされました。秘奥義の使用が可能となります。使用条件:秘奥義使用各武器種の熟練度をマスタリーにまで達成していること】

 

 

 

と表示された。

 

「秘奥義・・・・・・」

 

「秘奥義ってことは最上位ソードスキルよりも強いのかな」

 

「恐らくな。取り敢えずアスナたちに連絡して報告した方がいいな」

 

「そうだね」

 

そう言って、俺たちは部屋の主が倒された場所を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

管理区

 

 

遺棄エリアから管理区に戻ってきた俺、レイン、ラン、ユウキはそのまま管理区にあるアークソフィアへと繋がる転移門の上に立っていた。

 

「じゃあまたなフィリア」

 

「ダスヴィダーニャ、フィリアちゃん」

 

「またねフィリア」

 

「ではまた、フィリアさん」

 

「うん。またねキリト、レイン、ユウキ、ラン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アークソフィア 

 

管理区からアークソフィアに帰ってきた俺たちは、アークソフィアにあるエギルの店にいた。

 

「それでキリト君、秘奥義ってどういうのなの?」

 

全員揃い、アスナが聞いてきた。

 

「いや、まだ試してないんだよな」

 

「じゃあ今試してみたらどうかな?」

 

俺の言葉にレインが面白そうに言った。

するとそこに。

 

「試すならここでしたらどうだ?」

 

エギルがそう言ってきた。

 

「どれほどの威力なのかわかんねぇが、秘奥義ってつくほどだからな。破壊不能(イモータル)オブジェクトのここなら問題ねぇだろ」

 

「・・・・・・エギルがいいなかまわないが・・・・・・・」

 

俺はそう言って立ち上がり、二刀流を装備してレインたちが片付けた壁際の方に壁に向かってたつ。

 

「それじゃさっそく・・・・・・・」

 

俺は抜刀し握りしめているレインが作製した愛剣の二振り『ブラックローズ・ナイト』と『ホワイト・ユニヴァース』を構える。

左手と左足を前に右手を少しあげて右足を下げ腰を下ろす。秘奥義の発動準備に入ると、俺から虹色のオーラが溢れ出て円錐状に徐々に中央に集まっていき、3秒ほど溜め、一気に放った。

右振り下ろしからの左下ろし、目にも止まらない速さで左右の剣を振る。十数撃放ち、左右の剣を左に薙ぎ払い膝をつき、さらに少し溜めて、右にクロスを描いて払い続けて下からの切り上げ、ラストに切り上げた右手の剣で縦に二分割するように思いっきり切り下ろした。その瞬間、とんでもない威力の衝撃と音が鳴り響いた。

 

「―――これが秘奥義、らしい」

 

≪二刀流≫秘奥義ソードスキル《ネビュライド・エンプレス》22連撃を放ち終えた俺は剣を背中の鞘にしまって、見ていたレインたちに言った。

 

「おいおい・・・・・・今の本当にソードスキルなのか・・・・・・」

 

「ありえねぇだろ今のは・・・・・・」

 

「秘奥義・・・・・・最上位ソードスキルを大きく凌駕してるわね」

 

「すごいソードスキルね。お店がビリビリ震えていたわ」

 

「はい。今のにピナが驚いちゃってます」

 

「あたし、今の目で捉えきれなかったです・・・・・・。アスナさんはどうでした?」

 

「私も・・・・・・初速は辛うじて見れたんだけど、だんだん速くなって最終的には見えなかったわ」

 

「ボクもアスナよりは見えてたと思うけど・・・・・・速すぎて何連撃までかは分からなかったよ」

 

「今の秘奥義、振り切った剣の軌跡が見えましたね・・・・・・。20連撃は往ってると思いますけど・・・・・・ユウキはどう?」

 

「ボクも姉ちゃんと同じかな。20連撃は往ってると思うよ」

 

「どうラム。キリトさんの放った秘奥義」

 

「正直に言うと、ゲームバランスが崩壊するかも。リーザはどう思ったの?」

 

「私も同じよ。破壊不能なのに壊れないか心配したもの」

 

俺が放った秘奥義に、エギルたちはそれぞれ感想を言った。

 

「パパ、スゴいです!」

 

ユイがスゴいとはしゃいでいるレインが少し考えるようにして言ってきた。

 

「キリトくん、今の秘奥義の連撃数って22連撃・・・・・だよね?」

 

『『『え!?』』』

 

「よくわかったなレイン。その通りだ」

 

連撃数を当てたレインにそう言うと。

 

「ちょっ、ちょっと待ってレインちゃん。レインちゃん、今の秘奥義見えたの!?」

 

「え?うん。初剣から最後の方まで速かったけど見えなくもなかったよ。ユウキちゃんとランちゃんも見えてたよね?」

 

「ええ。見えなくもありませんでしたけど、私やユウキでは何連撃かまでは分からなかったです」

 

「20連撃は往ってるのは見えたけどね」

 

レインとユウキ、ランの言葉にアスナたちは目を見開いて驚愕の眼差しをした。

 

「にしても今のソードスキル、秘奥義ってだけあって威力が半端ねぇな。店が壊れるかと思ったぜ」

 

「その秘奥義を俺たちも使えんだろ?つうことはこれ攻略速度が上がるんじゃねぇか?」

 

「そうね・・・・・・特にユニークスキルが8つもあるし残り少しだけど速くなりそう」

 

「ですが今の秘奥義、見たところ発動するまで3秒ほど溜め(チャージ)時間が必要みたいですね」

 

「そこが弱点なんだよなぁ・・・・・・」

 

ランの言葉に店内の家具をもとに戻して武器をストレージにしまい椅子に座った俺は同意した。

 

「あの3秒くらいの時間に攻撃を受けるとキャンセルされるんだよな」

 

「それって、メリットもあるけどデメリットもあるってこと?」

 

「ああ。強力な反面、防御は弱いんだよ」

 

ウインドウを開き、秘奥義のスキル欄を見る。

そこには俺がマスタリーしている片手剣、二刀流、そしてシンクロの秘奥義の名が表示されていた。

 

「あの威力なら一度当たればノックバックが発生するからあとはシステムが自動でモーションをするってことかな」

 

「ところでキリトくん、武器の耐久値はどう?」

 

レインが思い出したかのように聞いてきた。

 

「それについては俺のは問題ないよ。でも、武器によっては一度放っただけで耐久値が一気に減る可能性もある」

 

「やっぱりね。あれほどの威力なら武器の耐久値が減るのは目に見えてるわ」

 

リズが予測していたと言わんばかりに言った。

 

「さすがだなリズ」

 

「これくらいマスタースミスなら当然よ。それより、この秘奥義って習得条件ってなんなの?」

 

「秘奥義の習得条件は秘奥義を使用する武器種のスキル熟練度をMAX。マスタリーしていることだよリズっち」

 

「ってことは攻略組は全員この秘奥義が使えるってことなのかしら?」

 

「いや、それはどうなんだろうな・・・・・・アスナたちは秘奥義、習得してるか?」

 

「ええっと・・・・・・ちょっと待ってて・・・・・・」

 

俺の言葉にアスナがウインドウを開くとエギルたちも立て続けにウインドウを開いた。

 

「ユウキとランは秘奥義使えるんだったよな」

 

「ええ」

 

「うん!これでどんなモンスターだって倒しちゃうから!」

 

「そう上手くいくわけないでしょユウキ」

 

「うぐっ・・・・・・。け、けど姉ちゃんとボクにかかったら大抵の相手じゃ意味ないじゃん」

 

「それはそうですけど、ヒースクリフ団長。・・・・・・いえ、茅場さんの言っていたこと忘れたんですか?元々血盟騎士団は95層以上のモンスター群に対抗するために茅場さんが集めたギルドですよ。つまり、モンスターのアルゴリズムが95層からは巧く読み取れないと言うことです。油断大敵ですよユウキ。あなたは昔からそうですけど、もう少し体より頭を使ってください。そもそもですね、いつもいつもあなたに振り回されてる私の身にもなってください。だいたいあなたはですね・・・・・・・・・・」

 

「ううっ・・・・・・」

 

突如始まったランによるユウキへのお説教にレインたちは呆気にとられているが、俺とリーファは懐かしい光景に苦笑を浮かべた。

 

「おーいラン。ユウキへのお説教はあとにしたらどうだ。レインたち退いてるぞ」

 

「ッ!」

 

いつもの落ち着いた彼女と今の彼女は比べ物にならないと言う感じなのか、この光景を見たことないレインたちはランのユウキへのお説教にかなり退いていた。アスナに限っては眼をパチクリさせていた。

 

「ランのお説教は一度始まると長いからな」

 

「そう言えば昔はキリト君とユウキちゃんがしょっちゅうランちゃんに怒られていたね」

 

「あ、いや、それはだな・・・・・・」

 

リーファの言葉に口を濁す。

 

「そ、それよりアスナ秘奥義の方はどうだった?」

 

「あ、話題ずらしてる」

 

リーファの声が聞こえたが聞こえない振りをする。

 

「あはは・・・・・・。秘奥義よね。秘奥義ならあったわ」

 

「あたしのところにもあったよ」

 

「オレのところにもあったぜキリの字」

 

アスナ、リーファ、クラインの言葉にみんなが頷いたことからどうやら全員に秘奥義がいっているみたいだ。

 

「みんなにもいっているんだね」

 

「一応他のプレイヤーは知らないけどボクたちは使えるってことがわかったね」

 

「ええ」

 

「それじゃ秘奥義についてはこれで終わりでいいかしら?」

 

「ああ」

 

アスナの言葉に俺はうなずいて返した。

 

「それじゃあ階層攻略についてね。今92層を攻略してる最中なのだけど、みんな神隠しって知ってる?」

 

「神隠し?」

 

「あ、聞いたことあります。ここ最近プレイヤーがどこかに消えてしまうんですよね」

 

「それって亡くなったってことじゃなくてかラム?」

 

「はい。亡くなったのではなく本当にどこかに消えてしまってるらしいんです」

 

「始まりの街の黒鉄宮にある生命の碑を下の層の人に確認してもらったんですけど横線は引かれてなかったそうです」

 

「つまり亡くなったわけじゃない・・・・・・なのにどこかに消えた、か」

 

「確かに、神隠しね」

 

「不気味ですね・・・・・・」

 

ラムの言葉にリズとシリカが不安がるように言う。

 

「それとあのアルベリヒって人の事なんだけど」

 

「アルベリヒがどうかしたのか?」

 

「どうも怪しいのよね・・・・・・」

 

「怪しい?」

 

「ええ。アルゴさんに調べてもらってるんだけど全く情報がないの。まるで急に現れたみたいで・・・・・・」

 

「オレも聞いてみたけどアルベリヒって名前下層でも聞いたことねぇらしいぜ」

 

「それにアルベリヒってやつの仲間の連中について良くない噂ばかり耳にはいるな」

 

「取り敢えずみんな気を付けてね」

 

アスナのその言葉に俺たちは重々しく頷いた。

 

「(アルベリヒ・・・・・・あいつの装備とステータスは俺たちより恐らく上だと思うがどうもおかしい。装備とステータスがプレイヤーの経験値と比例してる・・・・・・。初心者が扱ってるみたいだったが・・・・・・こういうときにヒースクリフがいたら助かったんだがな)」

 

ゲームマスターの茅場ならアルベリヒを見て何かわかったと思うがいないものは仕方ない。

アルベリヒへの懸念が残りながら俺はレインと店の外に出た。

 

 

 

 

 




「みんな答えは分かったかな?今回の答えの発表はセルカにお願いするね」

「はい。今回の問題の答えはⅡ:ネビュライド・エンプレスです」

「みんなあってたかな?」

「それにしても秘奥義とは・・・・・・我らの世界の秘奥義とは違うんですね」

「まあね。そっちの秘奥義はソードスキルで言うところの下位ソードスキルだから。こっちの秘奥義はそっちだと記憶解放術や武装解放術に匹敵するのかな?」

「なるほど」

「それにしてもキリトってスゴいのね」

「あはは、セルカは初めてだからそう思うよね」

「ええ」

「あ、もうこんな時間」

「時間が進むのは早いですね」

「そうだね。アリス、セルカ、今日は来てくれてありがとう」

「いえ、こちらこそ」

「うん。また呼んでくれるとうれしいな」

「了解♪それではまた次回!」


「「「Don't miss it.!!」」」




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HF編 第125話〈試練〉

 

~キリトside~

 

ホロウエリアの遺棄エリアでのグランドクエストを攻略し、クエスト達成報酬のソードスキル。秘奥義を獲得した二日後俺とレインはホロウエリアの管理区に来ていた。

 

「―――キリトくんこれって・・・・・・」

 

「ああ。間違いない・・・・・・」

 

俺とレインは、管理区にあるコンソールを操作してとある項目を開いていた。

事の発端は今から一時間ほど前。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間前

 

 

アークソフィア 商店通り

 

 

「はぁ・・・・・・なんか久しぶりにゆっくりできるよ~」

 

「はは。まあ、ここ最近向こうとこっちで攻略ばかりだったからな」

 

俺とレインの二人は商店通りにあるカフェでゆっくりとお茶していた。

 

「って言っても、まだホロウエリアの攻略は終わってないんだよね。管理区の地下にある中央コンソールルームに行かないと行けないからね」

 

「まあな。先に秘奥義を獲得して正解だったかもな」

 

「攻略速度が上がるから?」

 

「ああ」

 

カップに入ってるコーヒーを飲んで俺はウインドウを表示する。

 

「それにアルベリヒのことや神隠しのこともあるからな」

 

「そうだね・・・・・・・。実際に戦ったキリトくんから視てアルベリヒって人、どう思った?」

 

「スキルやレベル、武装のランクが高いのは感じたけど戦闘についてはからっきし初心者だな。2年前のレインより酷い感じだった」

 

「あはは。それってキリトくんにクラインくんと一緒に教えてもらったときのこと?」

 

「ああ。たぶんあの頃のクラインより酷いんじゃないか?ソードスキルの使い方についても知らないみたいだったし、正直のところゲーム自体も初心者だと思う」

 

「やっぱり、キリトくんもそう思うよね」

 

「ああ」

 

「前にアルベリヒって意味、エルフの王だっていったでしょ」

 

「そう言えばそう言っていたな。リーファも疑問だったみたいだけどなんでその名前にしたんだろな?」

 

「う~ん。ほんと気味が悪いって言うか何て言うか不気味だよ」

 

「だな」

 

そのまま俺とレインは同時に飲み物を飲んで喉を潤す。

 

「―――ん?」

 

ウインドウのスキル欄を見ていると、俺は不意にそんな声を出した。

 

「どうしたの?」

 

「いや、スキル欄の≪シンクロ≫のところに変な文章がでているんだ」

 

「文章?」

 

俺の言葉に、レインもウインドウを開きスキル欄を開く。

 

「ホントだ。え~と、『汝らの絆が真のものであるか、管理区にある試練を承け、その絆を証明せよ』だって」

 

「試練?それに管理区ってホロウエリアか?」

 

「たぶん・・・・・・どうする?」

 

「取りあえず管理区に行ってコンソールを調べよう。なにかヒントが見つかるかもしれない」

 

「そうだね」

 

俺とレインは飲み物を飲み終えると、すぐさま転移門広場の方に行き、転移門からホロウエリアの管理区に転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホロウエリア 管理区

 

 

管理区に転移した俺とレインはさっそくコンソールを操作して調べた。コンソールを調べて数分後、俺とレインは欄の一番下に新たに追加されていた項目をタップした。

 

「―――『六つの証を証明せよ』・・・・・・か」

 

「―――キリトくんこれって・・・・・・」

 

「ああ。間違いない・・・・・・」

 

目の前の空間ウインドウに表示されている文章の下にある六つの丸い窪みを見て言った。

 

「今までドロップしたあのメダリオンはおそらくここで使うものだ」

 

俺はそう言うとウインドウを開いてアイテムストレージから3つのメダリオンを取り出した。レインも俺と同様に3つのメダリオンをアイテムストレージからオブジェクト化した。

 

「『心星(しんしょう)紀章(きしょう)』、『剣創(けんそう)星欄(せいらん)』、『双女神(そうめがみ)戦爛(せんらん)』、『黒白(こくびゃく)聖樹証(せいじゅしょう)』、『紅玉(こうぎょく)華燐(かりん)』、『双人(ふたびと)記憶(きおく)』」

 

「星、双剣、二人の女神、樹、華、そして二人の人間」

 

俺とレインは今までホロウ・エリアのボス戦などからドロップした六つのメダリオンをそれぞれ嵌め込んだ。窪みにはそれぞれどこに嵌めるべきなのかメダリオンと同じ図形が刻まれていた。

六つのメダリオンを上から、二人の女神、星、樹、二人の人間、双剣、華と右から嵌めていった。

 

「これでいいんだよね」

 

「ああ・・・・・・」

 

六つのメダリオンを嵌め込んでしばらくすると、六つのメダリオンから白い光が出てきた。そして、円形に囲んだメダリオンの嵌め込んだウインドウの中央に光が集まっていき。

 

「な、なんだ!?」

 

「きゃあっ!」

 

その光は俺とレインを包み込んでいった。

しばらくして光が収まり、眼を開けてみると。

 

「ここは!?」

 

その場所は管理区ではなかった。

 

「もしかして強制転移!?」

 

「レイン大丈夫か?」

 

「うん」

 

周囲はなにもなく、空は星空が満天だった。そして足下は透明なアクリル版の上に立っているのか透明で広く丸い足場の上だった。

 

「ここは一体・・・・・・」

 

「ホロウエリアの中だとは思うが・・・・・・」

 

装備を確認しながら辺りを見渡していると。

 

 

『六つの証を示しものよ。今ここに、汝らの絆が真のものであるか証明せよ。さすれば、新たなる力が目覚めるだろう』

 

 

突然どこからかそんな声が聞こえてきた。

そして。

 

「「!?」」

 

突如、目の前が光そこから二つの影が出てきた。

 

「なんだ?!」

 

「なに?!」

 

光から出てきた二つの影を見て警戒して後ろに飛び退る。

二つの影の姿がはっきりと見え、改めて見るとその姿は騎士甲冑を纏った黒と紅の騎士モンスターだった。

それぞれ騎士モンスターの頭上には。

 

 

 

 

『SNM"Knight Of Veritassword"』

 

 

『SNM"Knight Of Perfectussword"』

 

 

 

 

と表示された。

 

SNM(スーパーネームドモンスター)だと!?」

 

「うそ!なんでこんなところに!?」

 

「(SNM―――アルゴから聞いたことのある、NM(ネームドモンスター)よりはるかに強く、その能力はボスクラスをも凌ぐとも言われている。何故こんなところにSNMが・・・・・・!)」

 

突如現れた二体のSNMの騎士モンスターに俺とレインは驚愕した。

しかし、二体の騎士モンスターは未だにその場から動こうとはしなかった。

 

「まさか、あの二体を倒せと言うことか・・・・・・」

 

先程の謎の声が告げた言葉の意味を、二体の騎士モンスターを見て理解する。

 

「嘘でしょ?!あのモンスターたちのHPゲージ三段あるよ!」

 

視界の先の二体のSNMのHPゲージはレインが言った通り三段あった。そして紅色の甲冑の『Knight Of Veritassword』と表示された騎士モンスターと、黒色の甲冑の『Knight Of Perfectussword』と表示された騎士モンスターは片手剣を二本。俺とレインと同じ、両手に持った二刀流の状態だった。

 

「とにかくやるしかない。ここを出る道もないようだしな」

 

「そうだね」

 

そう言うと、俺とレインは背中と腰の鞘からそれぞれの愛剣を抜刀して背中を会わせるようにして両隣に並び立った。

それに連れてて、二体の騎士モンスターも構えを取った。

 

「俺が黒い方とやるよ」

 

「それじゃ私はあの紅色のモンスターとやるね」

 

それぞれの相手を決めた俺たちは構えを取り、意識を戦闘モードに切り換える。

 

「「・・・・・・・・・・ッ!!」」

 

呼吸を整え、同時にその場を駆け出してそれぞれの相手のもとに向かう。

 

「うおおおっ!」

 

「はあああっ!」

 

俺は右上段からの袈裟斬りを、レインは左からの薙ぎ払いを同時に仕掛ける。

 

「「!」」

 

その攻撃は当たる直前に、俺は黒い騎士モンスターの左の剣に受け止められ、レインは紅い騎士モンスターの右の剣に受け止められた。

 

「くっ!」

 

「うっ!」

 

そのまま後ろに吹き飛ばされた俺とレインは上手く床に着地して構え直した。今の俺とレインの居場所は、二体の騎士モンスターを挟んで反対側だ。そう思っているところに、黒と紅い騎士モンスターが俺とレインに向かって剣を振りかざしてやって来た。

とっさに剣を交差して頭上に掲げて受け止める。

 

「(っ!重い・・・・・・!)」

 

受け止めた剣の重さに、俺は思わず息を飲んだ。

 

「(この重さ、75層のボス。スカルリーパーと同等かそれ以上だぞ!)」

 

レベルが上がり、今ならスカルリーパーの鎌をも受け止められると思うが、目の前の騎士モンスターの剣は75層でスカルリーパーと戦ったときと同じで、重く感じられた。

 

「くっ!はあっ!」

 

剣をなんとか跳ね返して、振りかぶったままの騎士モンスターの胴体に片手剣ソードスキル《ホリゾンタル・アーク》2連撃を放つ。

 

「グルオオ!」

 

黒い騎士モンスター。黒騎士は低く重い声をあげて後ろに下がる。

 

「ぜりゃああ!」

 

そのまま追撃で片手剣ソードスキル《ハウリング・オクターブ》8連撃を高速で放つ。突き5連からの切り下ろし、切り上げ、切り下ろしの3連撃でさらにHPを減らす。さらに体術スキル《弦月》で蹴りを放ち、後方に宙返りをして距離を保つ。

 

「ちっ・・・・・・固い!」

 

思わず舌打ちをするほど、目の前の黒騎士は固かった。HPは三段ある内の、三段目のほんの1割ほどしか削れてなかった。

 

「ぐっ・・・・・・!」

 

宙返りをして距離を取ると、すぐさま黒騎士が剣を振り上げて迫ってきた。

とっさに右の剣を掲げ黒騎士の振りかぶってきた左の剣を受け止める。

 

「っ!」

 

そこに、黒騎士が右の剣を横薙ぎに払ってきた。すぐさま左の剣を縦にして受け止める。

 

「(剣速まで速いのかよ!?)」

 

ギリギリ反応できたことに安堵しながら、俺は黒騎士のステータスの高さに驚く。

 

「(どう考えても今までのモンスターとは遥かに次元が違う!今のところはなんとか今までの経験とコイツのアルゴリズムを読んで対処してるが・・・・・・)」

 

鍔迫り合いを行いながら、弾いて、剣戟の応酬に俺は声に出さずにそう思う。正直、このままではマズイ。

 

「ぐっ・・・・・・!」

 

途中で放ってくるソードスキルを、ソードスキルで相殺して隙があれば攻撃を放つが、致命的な強攻撃は当てられずにいた。逆に余波のような軽い、弱攻撃は度々俺と黒騎士も食らっていた。

そのまま剣戟の嵐でやりあってしばらくして。

 

「しまっ・・・・・・!」」

 

俺は黒騎士のフェイントを受けてしまい、とっさに剣を盾のようにして黒騎士の剣を受けたが、黒騎士の放ったソードスキルを完全に受け止めることはできず後ろに吹き飛ばされてしまった。

 

「っ・・・・・・!」

 

どうにかして体勢を立て直そうとしたその瞬間。

 

「きゃあ!」

 

「うっ・・・・・・!」

 

背中越しの後ろから悲鳴が聞こえ、その1秒後に背中にドシンと何かがぶつかった。

 

「キリトくん!」

 

「レイン!」

 

ぶつかってきたのはレインだった。どうやらレインも吹き飛ばされたらしい。

 

「大丈夫かレイン!」

 

「うん、なんとか。キリトくんは」

 

「こっちもなんとかだ。にしてもあの騎士モンスター、パラメーターが高すぎる」

 

背中合わせで会話をしながら減ったHPを回復する。

幸いにも俺とレインの相手していた黒騎士と紅騎士は余裕なのか、一切攻撃してこずゆっくりと周囲を剣を構えて歩いていた。

 

「私の方も、何度も攻撃してるのに全然HPが減らないよ!」

 

「このままじゃじり貧だぞ。なにか策は・・・・・・」

 

黒騎士と紅騎士の動きを注意しながら見つつそう言う。

 

「(恐らく有効なのは共鳴(レゾナンス)だろうが、共鳴は使って30分はインターバルがかかる・・・・・・。単一共鳴(レゾナンス・ソロ)は俺かレインどっちかしかバフが得られない。どっちかしかバフが得られないその分、効果は絶大だがこっちは60分のインターバルが必要だ。それにバフを得られる時間は、共鳴は15分で、単一共鳴は10分だけだ。その間に倒せるとは思えない。一体どうすれば・・・・・・)」

 

警戒しながら、対策案を模索していると。

 

「キリトくん、こうなったら共鳴をやるしかないよ」

 

「レイン!?」

 

「確かに30分のインターバルはキツいけど、今は目の前の騎士モンスターの対策を考えないと!」

 

「それはそうだけど・・・・・・」

 

レインの言葉に口を濁していると。

 

「「グルオオ!」」

 

低い声を発しながら、黒騎士と紅騎士が同時に突っ込んできた。

 

「(―――っ!迷ってる場合じゃない!)レイン!」

 

「うん!」

 

「「共鳴(レゾナンス)!!」」

 

すぐさまレインと意思疏通を交わし、共鳴を発動する。

 

「「―――レディアル・シンズ!」」

 

迫り来る騎士モンスターの剣をレインと同時に受け流して、≪シンクロ≫ソードスキル《レディアル・シンズ》8連撃範囲技を放つ。

目の前の黒い騎士に2撃をたたみ込み、レインと背中合わせにスイッチをするように紅騎士に残り2撃を繰り出す。防御もままならないままソードスキルを食らった黒騎士と紅騎士の二体の騎士モンスターのHPゲージは一気に、とは行かないが目に見えるように減少していた。

 

「「グルオオ!?」」

 

まさか反撃されるとは思ってなかったのか、驚きに似た声をあげる二体の騎士モンスターに俺とレインは続けて攻撃を仕掛ける。

 

「はあああっ!」

 

「やあああっ!」

 

俺は目の前の紅騎士に≪二刀流≫ソードスキル《ナイトメア・レイン》16連撃を。レインは≪多刀流≫ソードスキル《ディバイン・エンプレス》15連撃を同じタイミングで放つ。技後硬直時間がゼロに等しいため出来る芸当だ。そうでなかったら恐らく続けてソードスキルを放つことはできなかっただろう。このソードスキルを別のソードスキルに繋げる連撃ソードスキルはこの技後硬直時間がゼロと言うことに気づき練習している技術だ。今はまだ、ソードスキルからソードスキルへと繋げることは難しく、相手が動きを止めているときならば出来、動いている相手には難しいのだ。正直、タイミングさえ分かれば出来るとは思うのだが、ソードスキルとソードスキルを繋げるにはコンマ1秒というほんの僅かな時間に次のソードスキルを、前のソードスキル終了のタイミングに合わせて連続で放たなければならない。今はまだ、一息ついてからの別のソードスキルを放つ、ということしか出来ない。だがこれではソードスキルを繋げて放つソードスキル。剣技連携(スキルコネクト)は未完成だ。

そう考えながら《ナイトメア・レイン》を紅騎士に放ちHPを削る。

16連撃のソードスキルに紅騎士のHPゲージはみるみるうちに削り取られていった。そのまま減少は三段目を削り取るとまではいかず、三段目の一割ほどの位置で止まった。さっきまでダメージが通らなかったにしては異常とも言えるほどの減りようだった。

 

「(まさか共鳴を発動したことでなにかしらのギミックや条件に達したのか?それにこのモンスターの剣技、まるで俺やレインみたいだ)」

 

剣の重さは別として、モンスターにしては攻撃のタイミングやアルゴリズムの読みにくいところなど、似て非なるところが幾つもあった。恐らくはシステムが俺やレインと似た動きをこの二体の騎士モンスターにインプットしたのだろう。

そしてこのことが出来るのはこのSAO(ソードアート・オンライン)の機関プログラムであるカーディナルシステムか、もしくはゲームマスターであるヒースクリフ、茅場だけだろう。どちらがやったのかはともかく、今は目の前のことに集中する。

 

「(共鳴の持続時間終了まであと11分。それまでに倒せるとは思えないが、出来るだけ削りとる!)」

 

俺はそう判断しながら、連続で剣を振るう。

 

「うおおおっ!」

 

「グルオオ!」

 

立ち直りが直った紅騎士は左右の剣を交互に、舞うかのように振るってきた。だが、そのパターンもなんとなく読み取れた。

左下からの切り上げを小さなバックステップで避け、右の剣で突きを放つ。紅騎士の右の剣で防がれたその突きを軸として、右回転で背後に回り込んで左の剣で滑らかに横薙ぎに切り裂く。そのまま右の剣で斜めに切り上げる。さらに切り上げた右の剣を下ろして、左剣で切り上げクロスを描くようにして紅騎士の背中を攻撃する。

そのまま幾度となく、何合とも続いた剣の攻防。やがて共鳴の効果時間である15分になった頃には、三段あった二体の騎士モンスターのHPゲージは揃って二段目の6、7割ほどにまで削り取られていた。

 

「はあ、はあ、はあ・・・・・・時間までに倒せなかったね」

 

「ああ」

 

HPゲージが残り4割ほどにまで落ち、イエローゾーンに入った俺とレインは背中合わせで目下の敵を警戒しながら話す。

 

「まだ結晶やポーションはあるがキツいな・・・・・・」

 

「そうだね・・・・・・」

 

背中合わせでそう会話していたその瞬間。

 

「「!?」」

 

突如俺とレインの目の前にウインドウが現れた。

そして俺のウインドウにはこう表示されていた。

 

 

 

 

 

  ユニークスキル≪シンクロ≫のスキル値が一定に達しました。

 

 

 

 

  固有スキルの封印を解除――――――封印解除、完了

 

 

 

 

  固有スキル、及び固有ソードスキルの使用が可能となります。

 

 

 

  使用可能固有スキル

 

 

  《零落白夜(れいらくびゃくや)

 

 

  使用可能固有ソードスキル

 

 

  《零爛星双(れいらんせいそう)

 

 

 

 

 

そしてレインのウインドウには。

 

 

 

 

 

  ユニークスキル≪シンクロ≫のスキル値が一定に達しました。

 

 

 

 

  固有スキルの封印を解除――――――封印解除、完了

 

 

 

 

  固有スキル、及び固有ソードスキルの使用が可能となります。

 

 

 

  使用可能固有スキル

 

 

  《絢爛舞踏(けんらんぶとう)

 

 

  使用可能固有ソードスキル

 

 

  《緋双黒星(ひそうこくしょう)

 

 

 

 

 

と、表示されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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HF編 第126話〈シンクロ〉

「ヤッホー!ソーナだよ!今回も問題を出題するよ!そして今回のゲストはこちら!」

「久しぶりだねソーナ君。元気そうだね」

「今回のゲストはヒースクリフさんです!お久しぶりですねヒースクリフさん」

「まあね」

「それにしてもヒースクリフさんは目の熊がスゴいですけど・・・・・・ちゃんと寝てます?」

「なあに。ほんの数日寝てないだけさ」

「ちなみにどのくらい寝てないのでしょう・・・・・・」

「ふむ・・・・・・ざっと10日かね」

「と、10日!?」

「うむ」

「いやいやいや!ほんの数日ってレベルじゃないですから!」

「そうかね?アーガスでは1ヶ月徹夜も当然だったが」

「なんですかそのブラック企業!?」

「いや、他の者は寝ていたよ。熱中して私が寝てないだけさ」

「更に質が悪い!?誰か寝るように言わなかったんですか!?」

「さあ・・・・・・言っていたような気もするが・・・・・・・」

「な、なんちゅう驚異の集中力・・・・・・・」

「それよりそろそろ問題を出した方がいいのではないかね」

「そ、そうですね・・・・・・・。今回の問題はこちらです」


問題:『スキルの他に、キリトとレインが得たものは何?』


Ⅰ:剣

Ⅱ:防具

Ⅲ:アクセサリー

Ⅳ:食材



「答えは本文の最後に!」








「では、我々はゆっくりと見ようか」

「ですね。それとヒースクリフさんはこれを見たら寝るように!」

「む。どうしてもかね」

「当たり前ですよ!少しは寝てください!」

「む、むう、ソーナ君がまるで凛子君みたいなんだが・・・・・・・」







 

~Outer side~

 

 

どことも知れない一つの部屋の中。そこにただ一人いた人物。

血盟騎士団団長にしてSAOのゲームマスターでもあるヒースクリフこと、茅場明彦は目の前のモニターを凝視していた。

 

「―――固有スキルと固有ソードスキルまで解放されるとは・・・・・・」

 

試練の空間で起きている戦闘を見て、ヒースクリフは信じられないと言うかのように言った。

 

「二人が≪シンクロ≫を取っているということは、いずれこのスキルも習得できるとは思っていたが・・・・・・。いやはや、彼らは私の予想を大きく越えるな」

 

ヒースクリフの予想ではこの固有スキルと固有ソードスキルを習得できるのはもう少しあとだと思っていたのだ。だが、そんなヒースクリフの予想を大きく覆し、キリトとレインは今習得していた。

 

「ふむ・・・・・・。基本あまり干渉はしないのだが、まあキリト君とレイン君には毎回苦労させてるからね。試練のクリア報酬にこれを付け加えるとしよう」

 

そう言うとヒースクリフは別のウインドウを表示させて素早く手元のホロキーボードをタップする。

 

「なるほど。76層に上がった際、カーディナルシステムの不具合でスキル値や武装にエラーが生じたのか。さらに76層より下の階層に行けないようだね。さすがにこれは私でも無理だが、キリト君とレイン君の武装を直すことは可能だね。いや、これは直すというより、新しく作り替えられるというのかな」

 

少し楽しそうな表情をしながらキーボードをタップするヒースクリフは視線を横に移動させた、試練の空間の映像を見た。そこにはキリトとレインの周囲に黒金色と紅白色のオーラが(ベール)のようにたゆたい煌めき、二人の持つ剣もそれぞれ黒と白、紅と白銀のオーラが出ていた。

 

「ふふ。キリト君とレイン君なら恐らく辿り着けるだろう。この歪んだSAO(ソードアート・オンライン)の頂きに。そして彼の事も何とかしてくれるはずだ」

 

そう言うヒースクリフの表情は先程の楽しそうな表情ではなく、真剣で険しい表情だった。

 

「まったく、ゲームマスターであるわたしを差し置いてこんなことをするとはね。さすがにこれは許容できないね」

 

そう言うヒースクリフの目の前にはキリトとレインではなく、一人のプレイヤーが映し出されていた。その一人のプレイヤーの表情はニタニタと気持ち悪い表情をして、近くにいた意識のない数人のプレイヤーを観察していた。

 

「さて。予想よりもカーディナルシステムの被害が広いからね。あと少しだが出来るだけ速く復旧させなければな」

 

ヒースクリフはそう呟くと再び、ウインドウに複雑な英数字を入力していった。

 

~Outer side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~キリトside~

 

 

突如目の前に現れたウインドウに表示されている文に俺とレインは困惑していた。

 

「キリトくんこれってもしかして・・・・・・」

 

「≪シンクロ≫の、って書いてあるから恐らくそうなんだろう」

 

正直、いきなりすぎて戸惑ってはいるが二体のSNMの騎士モンスターは待ってくれないみたいだ。

 

「仕方ない!やるぞレイン!」

 

「了解キリトくん!」

 

レインにそう言うと、俺とレインはウインドウを消去したった今現れた固有スキルを唱える。

 

「「発動―――」」

 

「―――零落白夜!」

 

「―――絢爛舞踏!」

 

固有スキルを発動させると、俺とレインの身体の周囲を黒金と紅白色のオーラのようなものを纏っていた。そしてそれは両手に握る双剣にもだった。さらにイエローにまで落ちていたHPゲージが一瞬で右端にまで移動し、HPゲージが満タンにまでなった。そしてHPゲージ横には二本の剣。双剣の絵柄が付いたバフらしきものが表示された。

けど、今の俺たちにそんなことはどうでもいい。

 

「レイン」

 

「うん、キリトくん」

 

うなずきあい、少しの間だけ眼を閉じ意識を集中させる。そして眼を見開き、その場を思いっきり踏み締めて一瞬で黒騎士の懐に入り込んだ。

 

「グルォ!?」

 

「はあああっ!」

 

驚きの声を出す黒騎士に、右手の剣を黒騎士の腹に右横から薙ぎ入れ、中心点で止まり奥に突き刺し、背中を向けて思いっきり振り上げた。片手剣ソードスキル《サベージ・フルクラム》3連撃重攻撃技を放つ。数字の4、もしくはAを描くようにしたソードスキルの紫の軌跡が黒騎士を包み込む。

 

「まだだ!」

 

さらにそこから、片手剣ソードスキル《ホリゾンタル・スクエア》4連撃を放った。クリアブルーのライトエフェクトを煌めかせた右手の剣が《サベージ・フルクラム》の副自効果で発生したノックバックにより動けない黒騎士に、吸い込まれるようにして切り裂いた。

 

「グルオォ!!」

 

「ぜりゃああああ!」

 

《ホリゾンタル・スクエア》が放ち終えるのと同時に、ノックバックから回復した黒騎士が両手に握る剣を暴風の如く振り回してきた。無茶苦茶なその剣舞は通常だったら成すすべはないだろう。しかし俺はその暴風剣舞を、すべて的確に捌いた。

 

「(すごいな。全部がスローモーションのように見える。システム的にあり得ないだろうこれ)」

 

そう思いながらも、次々に迫り来る剣を防ぐ。

 

「今度はこっちの番だ!」

 

すべてを防ぎきり、動きが止まったその瞬間に攻防が入れ替わり、今度は俺が暴風剣舞のような剣技を繰り出した。ソードスキルではない、純粋な技術。嵐風剣舞とでもいうのか、暴風を越える、嵐のような剣舞。切り裂き、突きを目にも止まらぬ速度で放つ。黒騎士は最初の何合かはギリギリのところで防いだりしていたが、徐々に俺の剣速が速くなるにつれ、リズムが狂ったかのように遅くなり、今はもう既に所々に赤い、血のようなライトエフェクトをあちこちに出した斬面が黒騎士を覆い尽くしていた。

 

「(まだだ・・・・・・もっと早く・・・・・・!)」

 

思考を速くさせて、さらに両手の剣を振るうのを速くする。

 

「グルオォ!!」

 

黒騎士にラッシュを仕掛けていると、レインの相手していた紅騎士がこっちにソードスキルを仕掛けてきた。

そのまま当たるかと思いきや、しかし。

 

「キリトくんの邪魔はさせないよ!あなたの今の相手は私だから!」

 

レインがかなりの余裕をもって紅騎士と俺との間に入り込んで、紅騎士の剣をパリィしてカウンターを叩き込んだ。

 

「やああああっ!」

 

視線をレインに向けなくても、意識だけでレインが今、何をしたのか、どこにいるのか、何をやっているのか、が視れる。一層からずっと背中を預けてきたパートナーだからわかる。

 

「グルオォ!」

 

「はあっ!」

 

防ぐのをやめ、後ろに飛び退って距離をとって高速の一撃を繰り出してくる黒騎士の右の剣を最小の動きで、軌道を反らして、続けて上から来る左の剣を同じく左の『ホワイト・ユニヴァース』で受け止める。

 

「ぜりゃああああ!!」

 

一連の攻撃を防ぎ、がら空きの胴体に片手剣ソードスキル《バーチカル・スクエア》4連撃を撃つ。薄オレンジのライトエフェクトを輝かせた4撃目の横薙ぎで黒騎士は後ろに吹き飛ばれる。

 

「グルオォオ!!」

 

吹き飛ばされながらも雄叫びを上げる黒騎士。吹き飛ばされた黒騎士は、剣を杖代わりにして立ち上がる。そして黒騎士のHPは残り一段となった。

黒騎士が立ち上がった瞬間。

 

「やああああっ!」

 

「グルオォォォ!!」

 

凄まじい金属音と、レインの声と紅騎士の雄叫びが聞こえた。その一秒後、金属と金属が激しくぶつかる音が聞こえた。

意識を少しだけそっちに向けると、紅騎士が目の前の黒騎士と同じように吹っ飛ばされて、揉みくちゃになって倒れている姿があった。そして黒騎士と同様、紅騎士のHPは残り一段にまで減っていた。

特に目を引くのが、紅騎士が杖代わりに床に突き立てている両手の片手剣だ。

 

「(ど、どうやったらあんなに剣が刃こぼれするんだ・・・・・・?)」

 

紅騎士の両刃の双剣は、所々、至るところが刃こぼれしていた。正直、一体どうやったらああなるのか不思議でしかたがないのだが。さらに、紅騎士の紅色の鎧はボロボロと言うかなんと言うか・・・・・・、あちらこちらに赤い斬断面が血のように光っていた。

少しだけ、レインの双剣捌きに冷や汗をかきながらレインと背中合せになるように動きをとる。

 

「―――どうキリトくん」

 

「―――ああ。力が溢れてくるようだ」

 

「私もだよ」

 

無意識にそう会話し、構えを取り直す。

そのまま、俺はレインにある提案をした。

 

「なあレイン」

 

「なに?」

 

二人(デュエット)でやらないか?」

 

「―――奇遇だねキリトくん。私もそう提案しようとしていたところなんだ」

 

「じゃあ・・・・・・」

 

「うん」

 

視線を交わして頷き合うと、一息ついてその場から消え去った。

正確には脚力を全開にして、一瞬で俺は黒騎士の、レインは紅騎士の背後に回り込んだのだ。

 

「はあっ!」

 

「やあっ!」

 

「「グルオォオ!?」」

 

一瞬の出来事に反応できていなかった黒騎士と紅騎士は全力で振り払った俺とレインの双剣にまたしても吹き飛ばされ、今まで俺とレインがいた場所に飛んだ。

 

「レイン!」

 

「うん!」

 

紅騎士を吹き飛ばしたレインは、それを追いかけるように紅騎士の後を追う。そして、倒れ付している紅騎士とそれに重なるようにして倒れている黒騎士を通り越し俺に近寄ってくる。

レインが近寄ってくるのと同時に、右足を一番上にまで上げ靴底にジャンプしたレインが軽く着地して、さらに高く飛んだ。

 

「やああああっ!―――サウザンド・レイン!」

 

紅騎士と黒騎士の遥か頭上を取り、そこから剣が雨のように降り注いだ。

 

「「グルオォォォオオオ!!」」

 

起き上がっているところに不意打ちのような形で、頭上からの剣の雨を黒騎士と紅騎士は防ぐまもなく、その鎧の所々にレインの《サウザンド・レイン》の剣が突き刺さった。

 

「よっ、と」

 

《サウザンド・レイン》を撃ち終えたレインは華麗に着地して、俺の真横に並び立った。

 

「決めるぞレイン!」

 

「うん!」

 

そう言うや否や、俺とレイン、そして立ち上がった黒騎士と紅騎士は同時に動いた。

黒騎士の突きをレインが受け止め、そのすぐ後に来る紅騎士の横薙ぎを俺が防ぐ。あちこちで剣と剣が撃ち合わさる剣戟の音が鳴り響く。少しずつ、徐々に俺とレインのHPは削れていくが、その減少量は微々たるものだった。それに対して黒騎士と紅騎士のHPはレッドゾーンに突入し、残り3割ほどにまで減少していた。

 

「「グルオォォォ・・・・・・」」

 

黒騎士と紅騎士、それぞれ両方とも二本の剣はすでにボロボロとなり、最初は神々しかった鎧もボロボロになっていた。

二体が膝をついたところに。

 

「はあああああっ!」

 

「ぜりゃああああっ!」

 

俺とレインはそれぞれソードスキルを発動させる。

 

「―――零爛星双(れいらんせいそう)!!」

 

「―――緋双黒星(ひそうこくしょう)!!」

 

両の剣に、黒と金、緋と黒のライトエフェクトを目映く煌めかせて俺とレインはまるで互いのソードスキルを鏡に写しているかのように、シンクロしてソードスキルを打ち出した。

 

「「グルオォォォ!」」

 

最後の悪足掻きなのか、今までよりも人一倍高い雄叫びを上げた黒騎士と紅騎士は俺とレインの固有ソードスキルの5撃目で立ち上がり、何時壊れてもおかしくない双剣で反撃をした。

 

「なっ・・・・・・!」

 

「えっ・・・・・・!」

 

17撃ある固有ソードスキルの残り6撃となる12撃目で、黒騎士と紅騎士の剣が片方ずつ儚く砕け散るのと同時に、俺とレインの左の剣がその砕け散った剣により吹き飛ばされ、手から離れてしまった。まさか剣が手から離れるとは思っても見なく、一瞬驚きながらも、俺とレインは目線も、声も何も話してないのに、何時意思疏通をしているのかと言う程の行動をとった。

吹き飛ばされた左手の剣。俺の『ホワイト・ユニヴァース』とレインの『レイン・オブ・セイント』をそれぞれ吹き飛ばされた左の剣の代わりに掴んだのだ。幸いにも、それぞれの剣が吹き飛ばされた所は手の届く範囲だったため、空中に浮かんでいる剣を素早く掴んで残りの6撃を撃つ。

左からの逆袈裟斬りに右突きからの垂直切り上げ、一回転してクロスに切り払い―――。

 

「うおおおおおおおおおっ!」

 

「やあああああああああっ!」

 

ラスト17撃目の右突きを俺とレインは同時に打ち出し、それぞれ黒騎士と紅騎士の丁度心臓部分に突き刺さった。

二体のHPがそのままゼロへと減っていき、やがて黒騎士と紅騎士は一瞬ぶれるような動作をした後、音高い爆散音出して虚空へと散っていった。

 

「・・・・・・終わった・・・のか・・・・・・」

 

「・・・・・・うん・・・終わった・・・みたい・・・・・・」

 

もう何も起きないことを確認した俺とレインはその場に崩れ落ちるかのように、背中合わせでその場に座り込んだ。それと同時に、固有スキルの効果で付いていたバフが消え去り、俺とレインを包み込んでいたオーラのようなものも消え去っていった。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。つ、疲れたぁ~」

 

「う、うん・・・。本当に・・・疲れた・・・よ・・・・・・」

 

息を整えながらゆっくりと話す。

そんな俺たちのところに。

 

 

『汝らの、確かなる真の絆は証明された。今ここに、我、神の名において汝らの絆を認めよう』

 

 

そう告げる声が響き渡った。

 

「キリトくん、この神の名ってもしかして・・・・・・」

 

「ヒースクリフか、また・・・・・・?」

 

以前の結婚クエストで訪れた、絆の神殿で聞いた声が名乗った名と、今聞こえた神の名、と言うのに対して俺とレインは唖然して呟いた。

そう呆然と呟いていると、目の前に突然ウインドウが表示された。

 

「えっと・・・・・・『≪シンクロ≫スキルの最終制限(リミッター)が解除されました。以下のスキルが発動可能となります』・・・・・・だって」

 

ウインドウに表示されてる文をレインが読み上げると、別のウインドウが開き、そこに新たに使えるスキルが表示されていた。

 

 

 

 

 

 

  使用可能スキル

 

 

  《神双解放(リミットリリース)

 

 

 

 

 

 

 

と。そしてそのスキルの説明が。

さらにその下には、≪シンクロ≫スキルの補正パラメーターが変化して、幾つかの数値が上昇した≪シンクロ≫スキルの補正リストが表示されていた。

 

「うわっ。これまたチートクラスの補正がかかってる」

 

「というかこんなにチートクラスのパラメーター補正していいのかよ・・・・・・」

 

俺とレインは表示されているパラメーター補正とスキルを凝視して何とも言えない呆気に取られた感じだった。

そんな呆気に取られているところに。

 

 

『真の絆を持ちし者よ。汝らに神より授けられし武装を与えよう。汝らの力の糧となることに願おう』

 

 

再びそんな声が聞こえてきた。

 

「え、武装?」

 

「まだ何かあるのか?」

 

聞こえてきた神の名と名乗る声の主の声に俺とレインは首をかしげた。首をかしげていると、上からキラキラと光何かがゆっくりと落ちてきたのが見えた。

 

「あれは・・・・・・」

 

「剣・・・かな・・・・・・・?」

 

ゆっくりと目の前に落ちてくる4本の剣を視て立ち上がる。

そのまま切っ先が床に突き刺さる一歩手前で4本の剣は止まり、その場に浮遊した。

 

「こ、この剣は・・・・・・!」

 

「う、うそでしょ・・・・・・!」

 

目の前に浮かんでいる剣を視て俺とレインは驚愕した。

俺の目の前に浮いているのは2本の片手剣だ。片手剣の片方は刀身も束も全て漆黒の片手剣。もう片方は純白の少し透けている刀身に青みがかった碧の束を持った片手剣。そしてレインの目の前に浮いている2本の片手剣は、片方は白銀の刀身に覆われ黒い束の片手剣。もう片方は緋色と白の混じりあった刀身に赤い束を飾った片手剣だった。その4本の剣たちは俺とレインにとって忘れられない、大切な剣で、今は76層に来た影響でノイズ化してしまった剣だったのだ。

 

「―――『エリュシデータ』に『ダークリパルサー』・・・・・・」

 

「―――『トワイライトラグナロク』と『キャバルリーナイト』・・・・・・」

 

「どうしてこの剣がここに・・・・・・」

 

「76層に来たときにノイズ化して、戦いがキツくなって今の剣に変えたはずなのに・・・・・・」

 

ノイズ化したとはいえ使えることは使えるため、今もストレージに収納されているはずの剣が目の前にあり俺とレインは驚きを隠せなかった。

 

「・・・・・・まさかヒースクリフが・・・・・・・」

 

ふと、脳裏に茅場のことがよぎった。

 

「(あの戦いの以降行方が分からないヒースクリフ(茅場)がこの剣を創ったのか・・・・・・?システムに干渉できるのはゲームマスターであるあいつ以外ないが・・・・・・。いや、そもそもこのSAOはカーディナルシステムによって統治されているはず。ならカーディナルシステムがこのクエスト報酬に俺とレインのかつての相棒(愛剣)を作成したのか?だが、76層に来てからのシステムの不具合といい、このホロウ・エリア。カーディナルシステムに何かあったとしか思えない。まてよ・・・・・・・カーディナルシステムに何かあったと仮設して、と言うことはつまりカーディナルシステムに何らかの異変があってそれをヒースクリフが対処してるってことか?それでこの剣がここに・・・・・・。つまりこの剣はヒースクリフのやつが・・・・・・・)」

 

今までの異変を思いだし、俺はあるひとつの仮説を立てた。

それは。

 

「(この仮説が正しいとするとやつは何処かで俺たちのことを見ている。そして現れないのはそのトラブルに対応しているからってことか・・・・・・)」

 

そう思考していると。

 

「ん?(メッセージ?)」

 

俺にメッセージが届いた。

届いたメッセージには。

 

 

『キリト君。この剣を使って今起こっている出来事をわたしの代わりに対処してほしい。そして招かるざる者よりこのSAO(世界)を守ってほしい。H』

 

と添付されていた。

 

「("H"ってまさかヒースクリフのHか!?)」

 

突如送られてきたメッセージに目を見開いた。

 

「(このメッセージの"今起こっている出来事"ってこのホロウ・エリアやアインクラッドのことか?それに"招かるざる者"って一体・・・・・・)」

 

ヒースクリフが送ってきたのであろうメッセージに疑問符を抱きながら考える。

 

「(あいつの代わりにやるってのは癪だが、どこの馬の骨とも知れないやつに俺たちのSAOを滅茶苦茶にさせてなるものか)」

 

メッセージウインドウを消し、未だに浮いている2本の片手剣の束を握りしめる。

握りしめたその時、どこか懐かしい感じの雰囲気を感じた。

横のレインもまた、自分が握っている双剣を視てどこか感じているようだった。

 

「(取り敢えずこのメッセージのことはレインにも伝えて方が良さそうだな)」

 

両手の剣を見ているレインを視てそう考え、レインに声をかける。

 

「レイン」

 

「なに、キリトくん?」

 

「ちょっと話があるんだ」

 

「???」

 

可愛らしく首をかしげたレインに、俺はさっき送られてきたメッセージの内容を伝えた。

 

「つまりこの剣はヒースクリフさんが・・・・・・」

 

「恐らくあいつが俺たちの馴染みのある、使い勝手のいい最適な剣を選んで創ったんだろうな。その証拠に、剣の銘は一緒だが、パラメーターは以前のものより数倍上がってる」

 

「ホントだ」

 

ヒースクリフから送られたらしい双剣のパラメーターリストを表示させると、そこには以前のものよりはるか数倍。今使っている剣の倍以上の数値が書かれていた。

 

「それでキリトくんはヒースクリフさんからのメッセージどう思ってるの?」

 

「・・・・・・たぶんヒースクリフの言っていることは事実なんだろうな。あいつはこんなことで冗談を言うようなやつじゃない」

 

「うん。私もそう思う」

 

ヒースクリフ、いや茅場は見る限りこの世界に本気で取り組んでいた。デスゲームを作った張本人だが、あいつは訳の分からない冗談を言うようなやつじゃないと言うことは、幾つものボス攻略を共にした俺達にもわかる。

 

「恐らく何らかの事情で自分で対処できないから俺たちに頼むんだろうな」

 

「たぶんね・・・・・・」

 

「癪だが、あいつの代わりにやるか」

 

「ふふ。そうだね」

 

ヒースクリフから送られてきた双剣をストレージに収納し、軽く伸びをして言った。

 

「さてと。それじゃ、取り敢えず帰るか」

 

「うん」

 

いつの間にか現れていたフィールドの中央に浮かぶ転移石に触れ、俺とレインはその場から転移して消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「それでは答えを発表します!ヒースクリフさんお願いします!」

「うむ。答えはⅠ:剣だ」

「みんな分かったかな~?それにしてもヒースクリフさんなんで新たに剣を、しかも『エリュシデータ』たちを送ったんですか?」

「うむ。キリト君とレイン君の剣は76層以降、76層に来たときのエラーによりノイズ化が発生したことは覚えているかね」

「はい」

「武器としては使えるがノイズ化していては十分なパフォーマンスを発揮できなくてね、エラーによっておかしくなってしまった76層より上層では今キリト君とレイン君が使っている剣のようではないと難しくなってしまったのだ。わたしが今回2人にあの剣を送ったのは・・・・・・・・・このまま言ってしまうと本編のネタバレになってしまうのだが・・・・・・・。ふむ、ソーナ君、にだけ教えるとしよう」

「――――――――――なるほど。そう言うことだったんですね」

「うむ。まあ、いずれ彼らとは相対するのだろうがね」

「避けては通れぬ道、ですか・・・・・・・。おっと!時間になってしまいましたので今回はここまで!」

「うむ。ではまた次回も読んでくれたまえ」

「ては!また次回お会いしましょう!」

「「Don't miss it.!!」」



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HF編 第127話〈秘匿領域〉

 

~キリトside~

 

 

〈シンクロ〉の試練をクリアした数日後。俺とレインはエギルの店でアスナたちに話をしていた。

 

「みんな、俺とレインは明日、管理区の地下にあるエリアに行こうと思う」

 

「確か中央コンソールがある場所・・・・・・でしたったけ?」

 

俺の声に同じ席に座るランが言う。

 

「うん。その場所からPoHが計画したアップデートを止められるはずだよ。そうだよねユイちゃん」

 

「はい。それとフィリアさんのオレンジカーソルに関する問題もその中央コンソールで解除できるはずです。ただし、そのコンソールで本人を認証させる必要があるので、フィリアさんも一緒に行く必要になります」

 

「そんなわけで、明日さっそくフィリアと一緒に俺とレインはそこに行こうと思う」

 

「でもキリト。その管理区の地下って場所、危険はないの?」

 

「エリアボスをすべて倒さないと入れない場所だ・・・・・・。かなり危険な可能性がある」

 

ユウキの不安げな声に思案顔になりながら答える。

正直、俺自身もなにがあるのかわからない、未踏破領域だ。

 

「そもそもホロウ・エリアってアインクラッドに実装される前に試験運用するエリアなんですよね?」

 

「はい。ランさんの言うように、元々アインクラッドに実装されてる装備やソードスキルなどはすべて開発エリアで適正を調べてから実装されてます。その中の一つがホロウ・エリアです。ホロウ・エリアはアインクラッドに比べるとかなりレベルが違いますので、その最後のエリアとなるとかなりの危険が存在します」

 

「かなり危険って・・・・・・大丈夫なの二人とも」

 

「ユイちゃんの話を聞く限りかなり危険みたいね」

 

ユイの説明にリーファとリズも心配そうに言ってくる。

 

「だけど、アップデートを止めるためにはなんとしても管理区の地下にある中央コンソールにまで行くしかないんだ」

 

「それに、あのPoHがたどり着けたんだから、私とキリトくんもたどり着けるはずだよ」

 

「まあ、用心に越したことはないからしっかり準備していきなさいよ」

 

「ああ、それは大丈夫だよ」

 

「もちろんだよシノンちゃん。万全の調子で行くから!」

 

「ああ。ちゃんとすべて片付けてフィリアと一緒に帰ってくるよ」

 

俺はレインとともに心配そうに言ってくるみんなにそう言った。

 

「(言ったからには必ずフィリアをこっちに連れて帰ってこないとな)」

 

そう思いも乗せて。

 

~キリトside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~レインside~

 

 

「―――うん!これでメンテナンスはバッチリ!」

 

「終わったの?」

 

「うん」

 

私の声に、この工房の主であるリズっちがカップを2つ持って戻ってきた。

キリトくんとともに明日のことを伝えたあのあと、私はリズっちに協力してもらい、リズっちのお店の工房を使ってキリトくんと私の剣のメンテナンスをしていた。

 

「ありがとうリズっち。工房貸してくれて」

 

「いいわよ別に。レインには昔からお世話になってるしね」

 

「あはは。そうだったけ?」

 

「そうよ~。それこそ、私が鍛冶師として始めた頃からの付き合いじゃない。まっ、キリトとは結構あとになってから知り合ったけどね」

 

「そ、それは~・・・・・・」

 

「はいはい、分かってるわよ。あんたがキリト一筋だってことはね」

 

「ちょっ!リズっち!?」

 

「事実でしょ?」

 

「う、うぅぅ~・・・・・・」

 

リズっちの言葉に反論できない私は顔を真っ赤にしてリズっちから渡されたカップを手に持つ。

 

「まったく。あんたのことはアスナたちと同じくらい知ってるつもりなんだけど・・・・・・」

 

「なんだけど?」

 

「ここに来てからあたしが知らないことばかり見るわね」

 

「そうかな~?」

 

「そうよ。まったく、どこでもイチャイチャするわ、あたしたちへの嫌味かって言いたいわよ。こっちの気が持たないわ」

 

「あはは・・・・・・それは・・・ごめん?」

 

「なんで疑問系なのよ」

 

リズっちは呆れたように溜め息を吐いて持ってきてくれたカップのお茶を飲んだ。

 

「それはそうと、明日どっちの剣で行くつもり?」

 

「う~ん・・・・・・明日はこっちにしようかな」

 

リズっちの声に、私は目の前にある、たった今研摩しメンテナンスした二振りの・・・・・・いや、私とキリトくん二人の剣。四振りの剣を見る。

 

「どれどれ・・・・・・。―――うん、良くできてるわ」

 

「でしょ?」

 

「ええ」

 

本業鍛冶師のリズっちにも四振りの剣を診てもらいお墨付きをもらった。

 

「そう言えばレインって、自分のかキリトの剣しか作成しないわよね」

 

「え?あ、うん。そうだよ」

 

「なんで自分かキリトの剣しか作らないの?」

 

「え~と・・・・・・何て言ったら良いかな・・・・・・。私って攻略組でしょ?」

 

「ええ。そうね」

 

「だからかな」

 

「?どういう意味?」

 

「ほら、私やキリトくんたちの本業は攻略組でリズっちは鍛冶師。スキル熟練度が高くても何回も剣を作った鍛冶師には敵わないから」

 

「・・・・・・なるほどね。確かに、剣を作るときはスキル熟練度も重要だけど長年の勘や動作も重要ね」

 

「でしょ?それに私が鍛冶スキル持ってるのって自分で剣のメンテナンスや作成をしたかったからなんだよね」

 

「―――本音は?」

 

「キリトくんの剣を作ってあげたい・・・・・って、あ・・・・・・!」

 

リズっちに乗せられてつい本音を話してしまった私は顔を真っ赤に、耳までも赤くした。

 

「(ニヤニヤ)」

 

そんななかリズっちはニヤニヤと笑みを浮かべていた。

 

「~~!!///」

 

「いや~、ほんとレインって乙女よね~」

 

「リ、リ、リズっちのバカ~!」

 

リズっちに知られいてもたってもいられなくなり、リズっちをポカポカと叩く。まあ、叩く直前に圏内の障壁で防がれるんだけどね。

 

「痛い痛い、痛いわよレイン。ゴメンってば~」

 

「うぅぅ~~!」

 

痛くないはずなのだけど、そこはお約束。

 

「まあ、いいじゃない。女に秘密は付き物よ」

 

「かっこよく言ったつもりなんだと思うけど全然かっこよくないからねリズっち」

 

「ちょっ!それ酷くない~!?」

 

「フ、フフフ」

 

「ハハハハハ」

 

私とリズっちはつい笑ってしまった。

昔からリズっちとやっていた動作だ。リズっちといると笑いが絶えない。

 

「さてと・・・・・・」

 

私とキリトくんの剣、合計八振りの剣をストレージに収納し磨ぎ台から立ち上がる。

 

「さきに宿の方に戻ってるね」

 

「ええ。あたしもすぐ行くわ」

 

リズっちとそう言って分かれ、私はリズベット武具店2号店を後にした。

 

「ふぅ~。・・・・・・・寒いなぁ~。もうすぐ春だけど、まだ冬みたいの寒さだね」

 

はぁ~、と掌に息を吹き掛けてそう呟いた。

 

「現実だと今は2月後半だよね・・・・・・。3月末までにはここから出られるのかな・・・・・・」

 

今のアインクラッドの階層攻略を思い浮かばせそう言う。

現在のアインクラッドの最前線は第94層。

 

「ボス部屋まではあと少しってアスナちゃんたちが言ってたっけ?」

 

思い返しながら転移門広場を突っ切って行く。

そのまま転移門広場を過ぎ去ろうとしたそのとき。

 

「え?メール?」

 

ウインドウが開き、メッセージが届いたのを知らせた。

 

「差出人は―――フィリアちゃん?」

 

メッセージの差出人はフィリアちゃんからだった。

 

「えっと―――二人だけで話せない?」

 

メッセージにはそう一文だけ書かれていた。

私はすぐにメッセージウインドウを開き、フィリアちゃんにメッセージを返信する。

 

「え~と・・・・・・わかったよ。すぐ向かうね・・・っと」

 

メッセージをフィリアちゃんに返信し、キリトくんにフィリアちゃんに呼ばれたと言うことをメールし、そのまま転移門に立ち。

 

「転移!―――ホロウ・エリア管理区!」

 

ホロウ・エリア管理区へと転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホロウ・エリア 管理区

 

 

 

「こんばんはレイン」

 

管理区に転移すると、コンソールの近くにフィリアちゃんが立っていた。

 

「こんばんはフィリアちゃん」

 

「急に呼び出してごめん。・・・・・・レインと少し話がしたくて」

 

「私は別に構わないよ」

 

「ありがとう・・・・・・そこでいい?」

 

「うん」

 

フィリアちゃんと一緒に、コンソールの後ろを背凭れにして座り込む。

 

「それで、話って?」

 

軽く飲み物や茶菓子をストレージから出してフィリアちゃんに訊ねる。

 

「あのね、今さらだけど一緒に攻略してくれてありがとう」

 

「今さらだけど・・・・・・急にどうしたの?」

 

「明日、ここの地下エリアに行くでしょ。わたし一人だったら絶対にここまで来れなかったし、この管理区に入ることすらも出来なかった。だから・・・・・・ありがとう」

 

「そんな、別にお礼なんていいよ。私がフィリアちゃんに協力したいってだけなんだから・・・・・・たぶん、キリトくんも同じだと思うけど」

 

フィリアちゃんの言葉に私はそう言い返す。

 

「わたしね、あの時キリトとレインから伝えられるまで自分は人間じゃなくて、この世界のフィリアというホロウなんだって思ってたの」

 

「フィリアちゃん・・・・・・」

 

「わたしとこの二人の世界は違う。決して交えることは無いんだって・・・・・・。そんな、暗い気持ちでいっぱいだった」

 

「そうだったんだ・・・・・・」

 

「だけど今は、わたしもキリトとレインと同じ人間なんだって、そう思えるようになったんだ。でもね、そしたら今度は別の気持ちが沸いてきたんだ」

 

「別の気持ち・・・・・・?」

 

「うん。わたしとキリトとレイン。同じ人間なのに、どうしてキリトやレイン。ユウキやラン、アスナにラム、リーザたちはどうしてそんなに強いんだろうって・・・・・・・。どうしてわたしはこんなにも弱いんだろうって気持ち」

 

「そんなこと・・・・・・!フィリアちゃんは弱くなんてないよ!むしろ、私たち攻略組と同じくらい強いよ!」

 

フィリアちゃんの言葉に私はとっさにそう返す。

実際、フィリアちゃんの強さは攻略組の中でもトップクラスに入るほどの実力だ。フィリアちゃんに言い返しながらそう思っていると、フィリアちゃんは苦笑を浮かべて。

 

「う~ん・・・・・・レインの言ってる強さは戦闘面での強さ、でしょ」

 

「え?うん」

 

「えっとね、わたしが想ってる強さは戦闘面とかじゃなくて・・・・・・心の強さ。意思や精神・・・・・・とかかな」

 

「ええ!?私そんなに心の強さなんて強くないよ?」

 

フィリアちゃんの言う"強さ"に私はとっさに反論する。

 

「そうなの?」

 

「うん。キリトくんがいないと何も出来ないよ。今の私がここに居られるのは全部キリトくんのお陰なんだ」

 

「わたしは・・・・・・そんなことないと思う」

 

「え・・・・・・」

 

「だってレインは、ホロウ・エリアに迷い混んできても、わたしのように怖くて怯えたりしないでキリトと一緒にワクワクしていたでしょ?」

 

「そ、それはキリトくんが傍に居てくれたから・・・・・・」

 

「オレンジカーソルのエラーの事だってわたしが諦めかけていたのに二人は諦めないで、解決する方法を探し続けてくれたでしょ?」

 

 

「えっと・・・・・・それはフィリアちゃんを助けたかったからで・・・・・・」

 

「それに・・・・・・二人のこと裏切ったのにキリトとレインはわたしのことを許してくれた。PoHから殺されかけてたところを助けてくれた」

 

「ううぅ~~・・・・・・・」

 

私の反論を次々と論破していくフィリアちゃんに、私は気恥ずかしくなって顔を少し赤くした。

 

「で、でも、結局のところフィリアちゃんをPoHから助けてくれたのはキリトくんだよ。私はなにもしてない・・・・・・ただ、フィリアちゃんを守っていただけだし・・・・・・私はキリトくんほど強くは・・・・・・」

 

「そんなことない!」

 

「フィリアちゃん?」

 

「レインもキリトに劣らないほど強いよ!だって、あの時のレインの言葉、私の心に残ってるもの!」

 

「あの時の?」

 

「・・・・・・わたしが二人を裏切る前」

 

「裏切る前・・・・・・あ」

 

「思い出した?」

 

「うん・・・・・・」

 

フィリアちゃんの言葉に、私はPoHから押されて穴に落ちる前のフィリアちゃんとの会話を思い出した。

 

「心が強くなかったらあんな風に真っ向から言わないと思う。まあ、さすがに叩かれたのは驚いたけど」

 

「うっ・・・・・・ごめんなさい。叩いたところ大丈夫・・・・・・?」

 

「大丈夫。それに、あの痛みは二人を裏切ったわたしのバツだから」

 

「そんなこと・・・・・・だってフィリアちゃんはPoHに騙されて」

 

私がそう言うと、フィリアちゃんは首を横に振って。

 

「それでも、キリトとレインを騙して、危ない目に遇わせたのは事実。ほんとなら今わたしがここにいることなんて許されない・・・・・・だから、あの痛みはその代償」

 

「フィリアちゃん・・・・・・」

 

「まあ、そういうことだからわたしはレインもキリトと同じくらい"強い"と思うんだ」

 

さっきまでの暗い話から一転して、フィリアちゃんは元の話題に戻した。

 

「キリトくんが"強い"のはわかるけど、私が"強い"、なんて自分じゃ理解できないよ」

 

「けど、レインは実際に"強い"」

 

「う~ん、私的にはフィリアちゃんも "強い"と思うよ?」

 

「え、わたしが?」

 

「うん」

 

間の抜けた、以外だと言うようかのような表情を浮かべるフィリアちゃんに、私は私がフィリアが強いと思う根拠を述べた。

 

「だって"強かった"からフィリアちゃんは今ここにいるんでしょ?この右も左も何も分からないホロウ・エリアに放り込まれて、たった一人で生き延びてきた。生半可な意思じゃここまで来れなかったと、私はそう思うな」

 

私は素直に、自分が想い感じたことをフィリアちゃんに伝えた。

事実、私とキリトくんがやって来るまでの1ヶ月間を一人で生き延びて来られたのは強い信念と意思があったからだと私は思う。

 

「―――さてと。私はそろそろ帰って明日に備えるね」

 

「あ、うん」

 

ウインドウに表示された時計はここに来てからすでに小一時間経っていた。

 

「レイン」

 

「ん?」

 

「―――ありがとう」

 

「どういたしまして・・・かな?」

 

少しだけ朗らかに笑って転移門の上に立つ。

 

「それじゃ、また明日ね」

 

「うん。また明日。待ってるから、ぜったい。ぜ~ったい待ってるから!キリトとレインが来るの待ってる!」

 

「うん!フィリアちゃん、ダスヴィダーニャ」

 

「ダスヴィダーニャ、レイン」

 

挨拶を交わして、私は管理区から転移してアークソフィアへと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

「はあっ!」

 

「やあっ!」

 

朝早く起きた私は、同じタイミングで起きたらしいキリトくんと何時もの丘の広場で体を馴らしていた。

 

「ぜりゃあ!」

 

「せえぇい!」

 

剣同士がぶつかり合う金属音が鳴り響き、剣風が巻き起こる。

もはや体を馴らすというよりかはデュエルに近い形になっていた。

それから5分後。

 

「ふぅ~」

 

「ん~」

 

剣をしまい私とキリトくんは伸びをして体を伸ばした。

 

「さて、そろそろ戻って行くか」

 

「うん」

 

その場を後にし、私とキリトくんはエギルさんの店に戻り、朝食を食べ、アスナちゃんたちに見送られ、ユイちゃんのエールをもらって転移門からホロウ・エリア管理区へと転移した。

 

~レインside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~キリトside~

 

 

「準備はいいか、フィリア、レイン」

 

ホロウ・エリア管理区に転移した俺とレインはすでに来ていたフィリアと合流し、管理区内にある地下エリアへの転送ポートを前にした。

 

「大丈夫、問題ないよキリトくん」

 

「ええ。わたしも行けるわ」

 

「よし、行くぞ!」

 

「うん!」

 

「ええ!」

 

転送ポートに入った俺たちは、そのまま管理区の地下へと転移された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

管理区 地下エリア

 

 

「ここが管理区の地下・・・・・・」

 

管理区から転移し、目を開けるとそこは管理区から一転して周囲は細い光の格子に覆われ、部屋のような場所にいた。

 

「上が見えないね・・・・・・」

 

「下も・・・・・・自分の影もないし反射してない・・・・・・」

 

「ほんとだ~。どういう素材でできてるんだろ」

 

「そこ!?」

 

レインの場違いな疑問にフィリアはツッコミを入れた。

レインの言葉に少し苦笑を浮かべて視線を前へと向ける。そこには各地にあった、次エリアへと続く門の前にあった紋章が存在した。ただ、違うとすれば中央の紋章事態が金色ではなく赤色だと言うことだ。

 

「あれは・・・・・・」

 

紋章の前に行き、それに反応した右手の紋章を翳す。

 

 

 

『システム権限を感知しました。オールグリーン解除します』

 

 

 

紋章に右手の紋章を翳すとどこからかそんな声が聞こえ、それと同時に封印の紋章がすぅ、っと消えていった。

 

「この先がラストダンジョン・・・・・・」

 

「あいつがどうやってこんな場所を攻略できたかは分からない・・・・・・」

 

「PoHも高位のテストプレイヤーだったみたいだからな。それも、犯罪者としての」

 

「そうだね・・・・・・テストプレイヤーとして高位のスキルを持っていてもおかしくないよ」

 

「そうだな。現にあいつはエリアボスと同じスキルを所持していたからな・・・・・・十分に考えられる」

 

「でも、あいつが行けたならわたしたちだって・・・・・・」

 

「ああ。中央管理コンソールまで、絶対に辿り着けるさ」

 

「そうだよね・・・・・・うん!」

 

「絶対に阻止しようね!!キリトくん!フィリアちゃん!」

 

「ああ!」

 

「うん!」

 

声を掛け合い、意気を高揚させ俺たちは通路の奥へと進んだ。

一本道をそのまま進んでいくと、開けた広間に着いた。そして、その奥には各地に置かれていた転移碑が鎮座していた。

 

「この先が・・・・・・」

 

「うん。きっとこの奥に中央管理コンソールがあるんだね」

 

「そうだな」

 

「早くフィリアちゃんのエラーを直して、アインクラッドへのアップデートも阻止してみんなでユイちゃんやアスナちゃんたちみんなが待ってるアインクラッドに戻ろう」

 

「ええ!」

 

「ああ!よし、行くぞ!」

 

転移碑を起動させて、俺たちは中央管理コンソールを目指して管理区地下のラストダンジョンに入っていった。

 

 

 

 

 



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HF編 第128話 〈管理区ボス、オクルディオン・ジ・イクリプス〉

「こほん!―――新年!」

「「「明けましておめでとうございます!!」」」

「こんにちは!ソーナです!」

「どうもキリトです」

「プリヴィベート!レインだよ!」

「いやー、ついに新しい年になったね」

「そうだな~」

「あっという間だね~」

「この話もあと少しで完結するよ~!」

「予定では?」

「3月までには次章!LS(ロスト・ソング)編に入れるように頑張るよ!」

「その意気だソーナ」

「頑張って!」

「ありがとうキリト、レイン!」

「それじゃ、前置きはこのくらいにして」

「そうだね。それじゃ、キリト、レイン、お願い!」

「ああ!」

「それでは、今年最初の物語(ストーリー)を」

「「どうぞ!!」」





 

~キリトside~

 

 

 

「ここが此処の最深部なのか・・・・・・?」

 

秘匿領域に入って2時間後。俺とレイン、フィリアは広間らしき部屋にいた。

 

「どうやら違うみたいだよ・・・・・・」

 

レインの言葉の通り、視線の先には上で見たのと同じ封印の紋章が通路を塞いでいた。

封印の紋章に近づくと。

 

「!?キリト、レイン、手が」

 

俺とレインの右掌に金色の紋章が浮かび上がった。

 

「もしかして・・・・・・レイン」

 

「うん」

 

上で解除したのと同じように、掌をレインと一緒に赤い封印の紋章に触れると。

 

「「「!」」」

 

閉ざされていた封印の紋章が光、すうっ、と手前から奥へと封印の紋章が消えていった。

そして、通路の奥の部屋の中央には紫のベールらしき物に包まれた転移装置があった。

 

「ここは・・・・・・」

 

「いかにもという場所だな」

 

「それじゃ、あれがが中央管理コンソールに通じる道・・・・・・」

 

「恐らく、この先には今までよりも比べ物にならない強敵がいるはずだ」

 

「最終ダンジョンだからね・・・・・・」

 

「ああ。レイン、フィリア、準備はいいか?」

 

「うん。もちろん!」

 

「ええ。これはわたしの・・・・・・自分自身を取り戻すための戦いなんだから」

 

「それに早くアップデートも止めないとね」

 

「そうだな・・・・・・」

 

「大丈夫だよキリトくん」

 

「レイン・・・・・・」

 

「私とフィリアちゃんが一緒に居るから」

 

「そうだよキリト。今までだって3人で戦ってきたんだから。だから、わたしたち3人なら絶対止められるよ」

 

「レイン・・・・・・フィリア・・・・・・そうだな。よし、これがホロウ・エリアでのラストバトルだ!」

 

「うん!」

 

「ええ!」

 

「行くぞ!」

 

同時に紫のベールに包まれた転移装置に触れ、俺たち3人はその場から転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バランサー・システムエントランス

 

 

転移して目を開けると、その場所はなにもない空間だった。俺たちが立っている場所は丸い巨大な透明なアクリル板のような場所だった。

 

「(これは、あのときと同じ・・・・・・)」

 

自分が立っている透明なアクリル板のような踏み台に目をやり、この間の≪シンクロ≫スキルの試練の場所を思い出した。

そのまま上を見やるとそこは星々や星屑が散りばめられたような、管理区と酷似した空間だった。

 

「ここは・・・・・・」

 

「コンソールもなにもないよ・・・・・・?」

 

俺とレインがそう呟くように言うと、鐘が鳴ったような衝撃と音が鳴り響いた。

 

「キリト、レイン、気を付けて!」

 

フィリアがそう言い終えるのと同時に。

 

「っ!レイン、フィリア、上だ!」

 

「「!?」」

 

なにもない、暗く星明かりのような輝きがあるなかに上からなにかが降りてきた。それは俺たち3人が立っているアクリル板の端部分に降り、その下を1回周って、再び下から姿を表した。

それは、巨大な、身体の上部はドラゴンのようで、下部は蜂のような鋭い剣のような尾があり、鉤爪と二本の真っ赤な大剣を持ち、背中の後ろには二つの魔方陣が重なりあったかのような紋章を浮かび出しているモンスターだった。

そして、そのモンスターの頭上には、【BOSS】Occuldion The Eclipse、と表示され三本のHPゲージが現れた。

 

「こいつがラスボスか」

 

ボスの頭上に表記された名前。恐らく、オクルディオン・ジ・イクリプスと読むのだろうボスを見て言う。

 

「こいつ・・・・・・と戦うの?」

 

「みたいだね」

 

「ああ。俺たちは入ってはならない場所に紛れ込んだ侵入者だからな。システム側としてはなんとしても排除したいんだろうな」

 

「そうだろうね・・・・・・。あのボスみたことないからどんな攻撃してくるかわからないよ。キリトくん、フィリアちゃん、気を付けてね」

 

「うん!」

 

「ああ!」

 

俺たちはそれぞれ剣の持ち手を握り、一気に抜刀する。

 

「よし、いくぞ!―――戦闘開始だ!」

 

俺はそう言うと、足に力を入れ円形状の地形の端。視線の奥にいるオクルディオン・ジ・イクリプスへと一気に距離を積めた。

 

「はあああっ!」

 

システムアシストによって、今出せる全快の速度でオクルディオン・ジ・イクリプスに近づいた俺は、両手に握っている二本の片手剣。『エリュシデータ』と『ダークリパルサー』を横薙ぎに切り払った。

 

「グオオオオオオ!!」

 

最速で剣を振るった俺の攻撃を、オクルディオン・ジ・イクリプスは、その巨体に似合わないほどの速度で鉤爪でブロックした。

 

「―――っ!?」

 

「キリトくん、避けて!―――サウザンド・レイン!」

 

レインの声に瞬時に横に飛び退る。すると、俺が今までいたところを通って、蒼白い幾多の剣。レインの《サウザンド・レイン》がオクルディオン・ジ・イクリプスに突き刺さる。

 

「グルオオオオオ!!」

 

「っ!レイン!」

 

フィリアの声に《サウザンド・レイン》を撃ち終え、技後硬直時間が終わると同時にレインはすぐさた横に飛んだ。そしてそこに。

 

「グオオオオオオ!」

 

オクルディオン・ジ・イクリプスの口部分から白銀のブレスが放たれた。

 

「くっ!」

 

「わっ!」

 

しかもそのブレスは三方向に口元から分かれ、左右にいた俺とフィリアにも襲い掛かってきた。

 

「キリトくんっ!フィリアちゃんっ!」

 

「大丈夫だ!」

 

「わたしも大丈夫!」

 

直線に、レインの方に向かっていったブレスが巨大に対して、俺とフィリアの方に来たブレスはそこまで大きくなかったからギリギリのところで避けることができた。

レインに大丈夫だと言うと、俺はすぐさまオクルディオン・ジ・イクリプスへと駆ける。

 

「うおおお!」

 

片手剣ソードスキル《レイジスパイク》単発突進技を放つが。

 

「なにっ!?」

 

《レイジスパイク》はオクルディオン・ジ・イクリプスに当たらず、オクルディオン・ジ・イクリプスが先程までいた場所を貫くだけだった。

 

「レイン!フィリア!」

 

「うん!」

 

「まかせて!」

 

俺の声に、レインとフィリアがすぐに俺のいる場所から90度ずれた場所にいるオクルディオン・ジ・イクリプスに向かう。

 

「やあああっ!」

 

「はあああっ!」

 

レインとフィリアの斬撃がオクルディオン・ジ・イクリプスを斬り先、三段あるオクルディオン・ジ・イクリプスのHPをほんの僅かだが減らす。

 

「グルオオオオオ!」

 

「させるかっ!」

 

無いに等しい技後硬直から回復した俺はオクルディオン・ジ・イクリプスの振り下ろした真っ赤な大剣を受け止める。

 

「(っ!?―――重い!)」

 

受け止めた大剣にそう感じながら、俺は受け止めた位置から少し後ろに下がった。

 

「キリトくんっ!」

 

そこにレインが声とともに片手剣ソードスキル《ソニックリープ》単発重攻撃を大剣に当て軌道をずらした。

 

「サンキューレイン!」

 

「うん!」

 

レインのお陰で軌道がずれた大剣は、そのままもとの位置に戻っていった。

 

「キリト大丈夫!」

 

「なんとかな」

 

フィリアと合流し、視線の先にいるオクルディオン・ジ・イクリプスを見る。

 

「それにしてもあのボス強さが異常だぞ!?」

 

「キリトくん。キリトくんの識別スキルだとあのボス、どのくらいの強さ?」

 

「たぶん・・・・・・・・・・100層クラス」

 

「ひゃっ・・・・・!?!?」

 

「100層!?」

 

識別スキルで見た結果をレインとフィリアに伝える。

今のアインクラッドの最前線は第95層だ。その5層も上。しかも100層クラスとなると強さが違ってくる。

遺棄エリアにある、宮殿エリアボス、ヴァルナギア・ジ・エンプレスでさえ、強さは90層ほどだったのだ。まさか、ここで100層クラスと相対するとは完全に予想外だった。

 

「まだ、あいつの攻撃パターンに対する情報が少なすぎる」

 

「スイッチしながら少しずつダメージを与えていくしかないってことね」

 

「ああ」

 

「キリトくん、"あれ"使うしかないよ」

 

「"あれ"?」

 

「固有スキル」

 

「!」

 

レインの言いたいことを理解できた俺は昨日見た固有スキルの詳細を思い出す。

 

「(確かに、あの固有スキルは時間制限とか無かったはずだ。なら、往けるか・・・・・・?奥の手の神双解放(リミットリリース)は最後の最後だし・・・・・・)」

 

ほんの一瞬だけ考え込み、すぐさま答えを出す。

 

「やろう、レイン」

 

「うん」

 

レインとともに、手に握る双剣を構え。

 

「―――零落白夜!」

 

「―――絢爛舞踏!」

 

先日獲得した固有スキルを発動させた。スキルを発動させると、俺とレインのHPゲージにさまざまなバフが表示された。

 

「いくぞ!」

 

バフが発現すると同時に俺はその場から前に駆け出した。

 

「うおおお!」

 

「グルオオオオオ!」

 

突き出されたオクルディオン・ジ・イクリプスの右の鉤爪を左手の『ダークリパルサー』で軌道をずらし、右手の『エリュシデータ』で片手剣ソードスキル《ハウリング・オクターブ》8連撃を放つ。

 

「グルオオオオオ!!」

 

「させない!」

 

ソードスキルを放つ俺に、上から右の赤い大剣が振り下ろされるがフィリアが間に入り、大剣の刃を短剣の峰で受け止める。

 

「レイン!」

 

「まかせて!―――はあああっ!」

 

フィリアの後ろからレインが≪多刀流≫ソードスキル《ディバイン・エンプレス》15連撃を赤い大剣に向けて放った。

 

「やあああっ!」

 

《ディバイン・エンプレス》の一点集中攻撃により、オクルディオン・ジ・イクリプスの振り下ろした赤い大剣は放射状にヒビが入り。

 

「フィリアちゃん!」

 

「うん!」

 

《ディバイン・エンプレス》の15連撃目の終わりと同時に追撃してきたフィリアの短剣ソードスキル《インフィニット》5連撃で破壊された。

 

「グルオオオオオ!!?」

 

「まだだ!」

 

大剣が破壊され、怯んだオクルディオン・ジ・イクリプスに俺はすかさず防御から攻撃に転じ、≪二刀流≫ソードスキル《スターバースト・ストリーム》16連撃をブーストさせて放つ。

 

「うおおおおおお!」

 

防御を捨てた攻撃の一点特化の攻撃をオクルディオン・ジ・イクリプスは鉤爪で防御しようとするが、遅い。

 

「グルオオオオオ!」

 

三段あるHPが少しずつ削れていき16連撃目には一段すべてを消し飛ばせなかったが半分ほどにまで削り取れた。

 

「グルオオオオオ!!」

 

HPが半分ほどにまで削られるとオクルディオン・ジ・イクリプスは高い雄叫びのような声を上げ、縁から後ろのなにもない空間に移動した。

 

「っ!」

 

またブレス攻撃や赤い大剣、鉤爪で攻撃してくるのかと警戒していると、オクルディオン・ジ・イクリプスは予想外の行動をとった。

 

「下!?」

 

「何をする気!?」

 

俺たち三人がいる円盤上の透明な台の下に潜り込み。

 

「はっ!レイン、フィリア!避けろ!」

 

俺の声と同時にオクルディオン・ジ・イクリプスは尾部分にある蜂のような尾の鋭い剣を透明な台の中央から下から突き上げ、ライトグリーンのライトエフェクトを煌めかせながら突き上げた剣から四方に向けて衝撃刃を床を伝って飛ばしてきた。

滑ってきた衝撃刃を横にかわしてやり過ごしオクルディオン・ジ・イクリプスの位置を探す。

 

「グルオオオオオ!」

 

「なにっ!?」

 

いつの間にか背後にいたオクルディオン・ジ・イクリプスに驚くと、オクルディオン・ジ・イクリプスは鉤爪を交差させてクロスに振り払ってきた。

 

「うぐっ!」

 

対する俺もギリギリのところで『エリュシデータ』と『ダークリパルサー』を交差させて、剣の腹部分でクロスブロックして受け止める。が、完全には受け止められず、後ろに飛ばされた。

 

「キリトくん!」

 

「大丈夫だ!」

 

脚が床を擦りながら後ろに飛ばされ、剣を突き立てて止める。

 

「このぉ!」

 

フィリアが短剣を逆手にもって、短剣ソードスキル《ラピットバイト》単発突進技を仕掛ける。しかし、それは軌道上に盾のようにして置かれたもう一つの赤い大剣で防がれる。

 

「レイン、スイッチ!」

 

「うん!」

 

そこに《ラピットバイト》の技後硬直後、体術スキル《弦月》で赤い大剣を蹴って後方に宙返りしたフィリアとスイッチしたレインが≪多刀流≫ソードスキル《クリア・コンパッション》16連撃を放つ。

 

「グルオオオオオ!!」

 

「キリト!」

 

「ああ!」

 

レインがオクルディオン・ジ・イクリプスの動きを止めている間に、フィリアと共にがら空きの胴体を薙ぎ払い。

 

「フィリアちゃん!」

 

「まかせて!」

 

《クリア・コンパッション》で破壊された赤い大剣を持っていた腕を伝って登っていき。

 

「やああああっ!」

 

オクルディオン・ジ・イクリプスの面部分で短剣ソードスキル《アクセル・レイド》12連撃を放った。

 

「グルオオオオオ!」

 

これでオクルディオン・ジ・イクリプスのHPは残り二段と一割程にまで削り取られた。赤い大剣を破壊したためか、防御力がかなり落ちてるらしい。

だが、俺たちもHPは6割ほどにまで削り取られた。

ポーションを使ってローテーションで回復してるが攻撃力が高い。

それからどのくらいの時間が過ぎたのか、約一時間後オクルディオン・ジ・イクリプスのHPゲージは残り一段にまで削り取られていた。

あのあと、二段目に突入するとオクルディオン・ジ・イクリプスの身体から闇色に近い、濃い紫の禍々しいオーラが出た。そして、それを気に、攻撃をする度に明るい緑の光(ライトグリーン)明るい黄色い光(ライトイエロー)濃い赤の光(クリムゾンレッド)純白の光(ホワイト)やらを出し威力を高めて攻撃してきた。巨大な鉤爪による薙ぎ払いや、破壊したがまた復活した赤い大剣による突き刺しや切り払い、ブレス攻撃や、尾の刃による四方状への斬撃刃、そして攻撃の中で一番厄介だったのが、遠距離からによる黒い球体の攻撃だ。正直、魔法がないこのSAO(ソードアートオンライン)の世界の中で遠距離からの攻撃は投擲やシノンの保有するユニークスキル≪射撃≫による弓とモンスターの弓やブレスによる攻撃、そしてレインの≪多刀流≫最上位ソードスキル《サウザンド・レイン》とランの≪変束剣≫最上位ソードスキル《ラスティー・ネイル》だけだ。しかし、今目の前にいるボス、オクルディオン・ジ・イクリプスは魔法に近い攻撃をしてきた。過去にこれに酷似した攻撃をしてきたボスはただ一体だけ。遺棄エリアの雪原エリアボス、ヴェイバー・ザ・ヴァイブレイターの固有能力、音を使った球体の振動攻撃のみだ。だが、あれは音という特性を使った物であり、今オクルディオン・ジ・イクリプスが放った黒い球体とはまったく違うものだ。あの黒球はブラックホールのようでもあり、日蝕(イクリプス)のようでもあった。複数の黒球を生み出して、攻撃してきたそれは所見の時はヤバかった。何故なら、二つほど発動せずに追尾機能が付いた待機形態で、接触した瞬間に発動する遅延魔法のようだったからだ。しかもデバフとして目隠し(ブラインド)や出血、遅効性の麻痺(パラライズ)やスタンらを確率で与えてきたのだ。デバフのときはポーションや浄化結晶で回復した。

さらにもう一つ厄介だったのがあった。それはこっちの攻撃がまったく通らず、オクルディオン・ジ・イクリプスが障壁を張って防いだことだ。さすがにこれは俺とレインの≪シンクロ≫スキルでも破れなかった。だが、永久的ではないようで短時間だけ、それこそ30秒だけとかという短時間のみで連続使用は出来ないようだった。

オクルディオン・ジ・イクリプスの円の縁をぐるぐると不規則に動くのもなんとか対処し少しずつHPを削っていき一段にまで減らした。

 

「ぜりゃあ!」

 

「はああっ!」

 

俺とレインの同時斬りが命中し、オクルディオン・ジ・イクリプスが雄叫びを上げる。

俺とレインのHPゲージ上には固有スキルでのバフに加え、《ロストオブ・エンデュミオン》と《マテリアル・イグニッション》でのバフやら《共鳴(レゾナンス)》のバフが重複しあってものすごい数のバフが表示されていた。

 

「グルオオオオオ!!」

 

「ブレス攻撃が来るよ!」

 

フィリアの声でそれぞれ分かれ、ブレス攻撃を避ける。

 

「今度は下か。フィリア、レイン!同時のソードスキルであの尾の剣を破壊するぞ!」

 

「うん!」

 

「わかった!」

 

「カウント(スリー)で往くぞ!」

 

オクルディオン・ジ・イクリプスが床下に潜り込んだのを視てタイミングを見計らう。

 

(スリー)・・・(ツー)・・・(ワン)―――ゴー!」

 

オクルディオン・ジ・イクリプスの尾の剣が床下から中央に競り上がり、四方に衝撃刃を飛ばすと同時に衝撃刃の攻撃範囲外から尾の剣に接近し、それぞれソードスキルを放つ。

 

「はああああっ!」

 

「やああああっ!」

 

「せぇええいっ!」

 

フィリアの短剣ソードスキル《ファッド・エッジ》8連撃を放ち、フィリアの8連撃目が放ち終えると同時に俺とレインの≪シンクロ≫ソードスキル《アブソリュート・ゼロ》24連撃を放ち、オクルディオン・ジ・イクリプスの尾の剣を破壊する。

 

「グルオオオオオオオオオ!!!!」

 

尾の剣を破壊されたオクルディオン・ジ・イクリプスが甲高い悲鳴をあげた。甲高い悲鳴をあげたオクルディオン・ジ・イクリプスはそのままフィリアのいる方に姿を表した。

 

「逃がさない!」

 

そのままフィリアがオクルディオン・ジ・イクリプスへと駆けて行き短剣で攻撃するがその直前に障壁が張られフィリアの攻撃は届かなかった。

 

「くっ!」

 

バックステップで下がり俺とレインと合流し、ポーションで回復する。

 

「あと少しだが・・・・・」

 

「まずいよキリトくん、ポーションの数が・・・・・」

 

「わたしもあとグランポーション2本とハイポーションが1本しかない」

 

「俺も同じぐらいだ」

 

ありったけの数を用意してきたはずの回復アイテム類はそろそろ数が心許なくなってきていた。

 

「―――レイン、"あれ"を使うぞ」

 

「!――――うん、わかった!」

 

俺の"あれ"でわかったレインはすぐに返事を返し。

 

「「―――神双解放(リミットリリース)!」」

 

同時に、最後の≪シンクロ≫スキルを発動させた。

神双解放を行うと、固有スキルで付いた双剣のバフの横に、神々しい輝きを放つアインクラッドの紋章のバフが表示された。

 

「いくよ!」

 

「うん!」

 

「ええ!」

 

オクルディオン・ジ・イクリプスとの距離を一瞬で詰め、片手剣ソードスキル《ファントム・レイブ》6連撃を放つ。

 

「グルオオオオオ!」

 

オクルディオン・ジ・イクリプスは当たらないと思っているのか、容易に次の攻撃の準備をしていた。オクルディオン・ジ・イクリプスの前にはさっき張られた障壁が展開している。障壁が無くなるのはあと10秒後だろう。本来ならそのまま弾かれるはずだが―――。

 

「――――――!?」

 

右手の『エリュシデータ』は障壁をガラスのように破壊してダメージを与えた。予想外のことなのかオクルディオン・ジ・イクリプスは先程のものとは比べ物にならないほどの奇声を上げた。

 

「はああああっ!」

 

少しずつだが、確実に削り取られていくHPを見ながら後ろから来るレインとフィリアとスイッチする。

 

「スイッチ!」

 

「まかせて!」

 

「ええ!」

 

「フィリアちゃん!」

 

「オッケーレイン!」

 

「「やああああっ!」」

 

スイッチしたフィリアとレインは交互にカバーし合うようにして攻撃する。

 

「フィリアしゃがんで!」

 

「うん!」

 

フィリアがしゃがんだ頭上をオクルディオン・ジ・イクリプスの鉤爪と俺の剣がぶつかり、鍔迫り合いを引き起こす。

そこに下からフィリアがソードスキルを放ち、鉤爪の付け根部分を攻撃する。

 

「ぜりゃあ!」

 

「グルオオオオオ!」

 

フィリアのソードスキルで鉤爪にダメージが入り、オクルディオン・ジ・イクリプスはその巨体を後ろに移動させると、背後の魔方陣を赤く不気味に輝かせ両の鉤爪を上に持ち上げ、その中央に黒い球体を作り出した。

 

「っ!」

 

その球体が現れると、俺たちの周りに黒い球体が数個現れる。

とっさにその黒い球体を避ける。避けると、黒い球体は波打つように脈打ち、やがて小さくなって消えていった。

 

「あとは・・・・・・」

 

発動しなかった黒い球体を探すと、それはレインの後ろにあった。

 

「レイン!」

 

レインに声をかけると。

 

「キリトくん、後ろ!」

 

「っ!」

 

レインの声で後ろを振り向くと、そこには俺に追尾しているもう一つの発動しなかった黒い球体があった。

 

「っの!」

 

接触し、発動しようとしたその瞬間に俺は片手剣ソードスキル《ホリゾンタル・アーク》2連撃を破れかぶれで放った。

放たれた《ホリゾンタル・アーク》は黒い球体の核といわれる場所らしきところに命中し、黒い球体はパリンッ!と音を立てて消えた。

 

「えっ!?」

 

さすがの俺もこれは予想していなかったため驚きが出た。

 

「(そういえば雪原エリアのボスのときも出来たな・・・・・・。これもシステムのバグなのか・・・・・・?)」

 

俺は今の行動にそんな疑問を抱いたが、すぐにそれを後回しにした。まずは。

 

「レイン!」

 

「っ!うん!」

 

目を逢わせて意思疏通し、レインは上げた俺の脚の裏を踏み台にして高くジャンプした。レインをジャンプさせると、俺はすぐにレインの後ろを追尾していた黒い球体に向けてソードスキルを放った。

なぜか知らないが、また出来ると感じたのだ。

 

「はあっ!」

 

片手剣ソードスキル《スネーク・バイト》2連撃を放つとさっきと同じようにパリンッ!と音を立てて消えた。

そしてそれと同時に頭上から。

 

「はああああっ!―――貫いて!―――サウザンド・レインッ!」

 

オクルディオン・ジ・イクリプスに向かって、幾多の蒼いライトエフェクトを輝かせた剣が飛んでいった。

 

「グルオオオオオ!」

 

幾多の剣に貫かれ、オクルディオン・ジ・イクリプスのHPは残り半分にまで削られていた。

 

「このまま一気に畳み掛けるぞ!」

 

そう言うや否や俺はオクルディオン・ジ・イクリプスの懐に潜り込んでソードスキルを発動させる。

 

「うおおおおっ!」

 

「グオオオオオ!!」

 

≪二刀流≫ソードスキル《デブス・インパクト》重攻撃5連撃を放ち、追加効果でオクルディオン・ジ・イクリプスに防御低下のデバフを与える。さらに《デブス・インパクト》により、ノックバックが発生し少しの間だけ動きが止まる。そこに。

 

「キリト、スイッチ!」

 

「ああ!―――スイッチ!」

 

フィリアとスイッチし、スイッチしたフィリアは右手に持つ短剣『ソードブレイカー・リノベイト』を肩の高さにまで上げるとフィリアを覆うように虹色のオーラが円錐状に現れた。そのまま2秒ほど溜め、円錐状から一つに集束し。

 

「やああああっ!」

 

一気に解き放った。

短剣秘奥義ソードスキル《スターライト・スプラッシュ》8連撃を繰り出した。

フィリアの秘奥義でオクルディオン・ジ・イクリプスのHPはみるみるうちに削られていき、瞬く間に半分から3割ほどにまで削られた。

 

「グルオオオオオ!!」

 

「キリト!レイン!最後頼むわよ!」

 

「おう!」

 

「まかせて!」

 

秘奥義《スターライト・スプラッシュ》を放ち終えたフィリアはそう言うと、俺とレインの後ろに下がった。その間には既に秘奥義の準備が出来ていた。

 

「往くぞレイン!」

 

「うん、キリトくん!」

 

俺とレインもフィリアと同じように秘奥義を。俺は≪二刀流≫秘奥義ソードスキル《ネビュライド・エンプレス》22連撃を。レインは≪多刀流≫秘奥義ソードスキル《アンリミテッド・オーバーレイ》22連撃を同時に繰り出す。

 

「はああああっ!!!」

 

「やああああっ!!!」

 

《神双解放》でさらにブーストさせた秘奥義をシステムアシストに沿って放つ。

俺とレインの秘奥義は瞬く間にオクルディオン・ジ・イクリプスのHPを削り取っていき。

 

「「これで終わりだぁぁーーーーっ!!」」

 

ラスト2擊。俺の上からの振り下ろしと、レインのクロスの切り裂きで、オクルディオン・ジ・イクリプスの三段あった膨大なHPはゼロになった。

 

「グギャオオオオオオオ!」

 

最後にひときわ甲高い絶叫を上げて、ホロウ・エリア管理区地下のボス、オクルディオン・ジ・イクリプスはその巨体をポリゴンへと変え、虚空の中へと消えた。

 

「―――やったか?」

 

剣を鞘にしまいそう呟くと。

 

 

 

『《システムガーディアン》が討伐を確認。最終シークエンスに移行します』

 

 

 

何処からかそんな無機質なシステムアナウンスが聞こえてきた。

 

「最終・・・・・・シークエンス・・・・・・?」

 

システムアナウンスの言葉を呟くように言う。

その時。

 

「なに!?」

 

鐘のような音が鳴り響き渡り、フィリアの身体が麻痺したように固まった。

 

「!?フィリア!?どうしたっ!?」

 

「フィリアちゃん!?」

 

「身体が・・・・・・動かない・・・・・・!」

 

「もしかして麻痺!?どうして!?」

 

「恐らく・・・・・・システム側からフィリア強制的にを麻痺状態にしたんだ」

 

「それって75層のときの・・・・・・!」

 

レインがそう言うと。

 

「「!!?」」

 

再び鐘のような音が鳴り響き、俺たちとは反対側の場所にオクルディオン・ジ・イクリプスの攻撃と同じ黒い球体が二つ現れた。

黒い球体が消え去ると、そこから二人の男女が両手にそれぞれ片手剣を持って、顔を少し下に俯かせて現れた。

 

「「・・・・・・・・・・」」

 

「なんっ・・・・・・だと・・・・・・!?」

 

「うそっ・・・・・・でしょ・・・・・・!?」

 

二人の男女を視た俺とレインは言葉に出なかった。

そこに。

 

 

 

『《ホロウ・エリア》実装テスト。最終シークエンスを開始します』

 

 

 

無機質なシステムアナウンスの声がそこに響き渡った。

 

 

 

 

 

 




「―――どうだった?」

「いやー、次回が楽しみだな」

「うん。次回はついに最後の戦いだね」

「だね。今から楽しみで仕方ないよ」

「だな」

「うん」

「さて、それじゃ、今回はここまでにして」

「みんな、これからも俺たちの活躍を!」

「楽しみにして待っていてね!」

「感想などもどんどん送ってきてくれよ!」

「みんなの声を待ってるよ!」

「「「今年も【ソードアート・オンライン 黒の剣士と紅の剣舞士 二人の双剣使い】をどうぞよろしくお願いいたします!!」」」



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HF編 第129話〈極光の双剣使い(キリトとレイン)VS虚像の双剣使い(ホロウキリトとホロウレイン)

 

~キリトside~

 

 

『《ホロウ・エリア》実装テスト。最終シークエンスを開始します』

 

 

「「・・・・・・・・・・」」

 

「コイツらは・・・・・・」

 

システムアナウンスの後に現れた二人の男女を見て俺は驚愕する。何故なら現れたのは。

 

「どうして・・・・・・キリトとレインが・・・・・・」

 

「「・・・・・・・・・・」」

 

「ふたりいるの・・・・・・」

 

俺とレインだったからだ。しかし、その目は光が点っていなく暗い。丸で虚像の影のようだ。

現れた俺とレインを見て、俺は先程のシステムアナウンスの最終シークエンスがどういうものか理解した。

 

「ここにきてそういう趣向かよ・・・・・・」

 

「ど、どういうことキリトくん!?なんで私とキリトくんが二人もいるの!?」

 

「簡単なことだレイン」

 

「もしかして・・・・・・!」

 

「ああ・・・・・・・最後は俺とレインの・・・・・・いや、《ホロウ》の俺とレインがテストするってわけだ」

 

「そんな・・・・・・コイツらの強さも・・・・・・キリトとレインと同じってことなの!?」

 

動けないフィリアが驚愕した表情で言う。

そこに。

 

 

『なお、テスト完了後《ホロウ・データ》のアップデートが開始されます』

 

 

無機質にシステムアナウンスが流れた。

 

「《ホロウ》か俺たち・・・・・・勝ったほうが生き残る・・・・・・そう言うことだよな」

 

「「・・・・・・・・・・」」

 

俺の問い掛けに答えない《ホロウ》の俺とレインはまるで生気を感じなかった。

 

「いけるかレイン」

 

「もちろん」

 

背中と腰の鞘から同時に剣を抜刀し、背中合わせに構えを取り確認する。俺とレインに合わせるように、《ホロウ》の俺とレインも全く同じ動作を取った。

 

「いくぞ!」

 

「いくよ!」

 

俺とレインの声に合わせるかのように、《ホロウ》の俺とレインはその身にPoHが纏っていたのと同種のオーラを出した。《ホロウ》の俺は青で、《ホロウ》のレインは白のオーラだ。

そして、俺とレインは瞬時に。

 

「―――零落白夜!」

 

「―――絢爛舞踏!」

 

≪シンクロ≫スキルの固有スキルを発動させた。

固有スキルを発動させると俺とレインのHPが一気に全快し、HPの上に双剣の紋章のバフをはじめ様々なバフが表示された。

 

「はあっ!」

 

「やあっ!」

 

俺とレインが動いたのとと同時に《ホロウ》の俺たちも動いた。

俺たちは一瞬で相対する中央の位置でぶつかり合う。それぞれの《ホロウ》を相手にし剣戟の応酬を始める。

 

「はああっ!」

 

「・・・・・・!」

 

俺の声にたいして目の前の、《ホロウ》の俺は無言で、ただ機械のように剣を振るう。

 

「(自分の《ホロウ》と闘る事になるとはな。やりにくい・・・・・・)」

 

自分の《ホロウ》ということはつまり、俺自身の戦闘経験(データ)を目の前の俺に知ら(インプット)されているということだ。悪質克つ最悪だ。目の前にいる俺は、俺であって俺でない。光と闇。極光(リアル)虚像(ホロウ)。相反する二人の俺。恐らく≪シンクロ≫スキルも使ってくるだろうが、俺とレインは絶対に負けないし、負けてやる気も微塵もない。今俺の中にあるのはレインと一緒に目の前の《ホロウ》を倒し、アップデートを阻止し、フィリアとともにアインクラッドに帰還するという想いだけだ。

 

「うおおおおっ!」

 

想いを強くさせて、両手に握りしめる片手剣。『エリュシデータ』と『ダークリパルサー』を交互に、バフで増幅(ブースト)した速度で振う。

 

「(もっとだ・・・・・・まだ、上がれる!付いてこられるか《ホロウ》の俺!)」

 

『ダークリパルサー』による左薙ぎから『エリュシデータ』での突き、さらに足払いをして体制を崩し、片手剣・体術複合ソードスキル《メテオ・ブレイク》重攻撃を放つ。《メテオ・ブレイク》は連撃数は基本3連だが、繋げることによって連撃数を増やすことができる、剣技連携(スキルコネクト)に似たソードスキルなのだ。

その俺の攻撃を、《ホロウ》の俺は『ダークリパルサー』の左薙ぎを屈んで避け、『エリュシデータ』による突きを左手に持つ『ダークリパルサー』で軌道をずらして避け、足払いをバックステップでかわした。俺の《メテオ・ブレイク》は空を切り、『エリュシデータ』は《ホロウ》の俺の着ているコートのボタンを飛ばすだけで終わった。

 

「くっ!」

 

ほぼ0に等しい技後硬直を終え、《ホロウ》の俺の追撃をかわすため後ろに飛び退った。案の定、先程まで俺がいた場所に《ホロウ》の俺の剣が空を薙ぎった。

 

「・・・・・・・・・・」

 

《ホロウ》の俺は無表情で、そもそも感情すらあるのか分からないが、ただ機械のように、与えられた命令を忠実に実行する機械人形(アンドロイド)のように動く。

 

「(この俺、もしかして過去の戦闘データから構成されてるのか?なら、ここ最近の戦闘データは無いはず。勝機があるとした≪シンクロ≫スキルのみだが、《ホロウ》のコイツらが使ってこないとは限らない・・・・・・。まったく、こんなところで自分と戦えるとはな・・・・・・・やりにくいったらありゃしないな。いや、寧ろ自分自身だからやりにくいのかもな・・・・・・ヒースクリフのやつこれを見越して俺とレインにこの剣を送ったのか?なら、アイツはホント策士だな)」

 

高速の剣戟の応酬の最中、俺は頭の片隅でそう思考する。

そのまま剣戟の応酬が何合したのか分からないほど撃ち合った後、俺と《ホロウ》の俺は同時に床を滑るようにして下がった。

下がった俺の隣に。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」

 

「大丈夫、キリトくん!?」

 

レインが紅色と白銀の双剣を携えて聞いてきた。

 

「大丈夫か大丈夫じゃないかって言ったら大丈夫じゃないな」

 

「私の方もだよ。自分と闘うのがこんなにキツいなんて」

 

「俺もだ。だが、最後のボスとしては相応しい」

 

「はぁ・・・・・・まったくもうキリトくんは~」

 

「な、なんだよ」

 

「ううん。ホントキリトくんはいつも楽しそうだなって」

 

「まあな。自分自身と闘うのもそうだが、このデスゲームの世界を俺はもう楽しんでいるんだ。レインもだろ?」

 

「ふふ。うん、私もだよ。それに―――」

 

「それに?」

 

「キリトくんと一緒ならどんな場所だって楽しいし、どんな相手にも――――――例え自分の《ホロウ》が相手でも負ける気がしないよ♪!!」

 

レインはそう言うと双剣を構え直して切っ先を視界の先にいる《ホロウ》の俺たちに向けた。

 

「ああ――――――そうだな。俺もだ。俺も、レインがいるならどんな相手にだって負ける気はまったく無い!」

 

「うん!」

 

レインと背中合わせになり。

 

「いくよキリトくん!」

 

「ああ!」

 

「「――――――神双解放(リミットリリース)っ!!」」

 

同時に≪シンクロ≫スキル《神双解放》を発動する。

《神双解放》を発動させると、HPゲージの上のバフに神々しい輝きを放つアインクラッドの紋章が表示される。

表示されたバフに視線を向けず、俺とレインはその場を蹴り、一瞬で《ホロウ》の俺たちの懐に潜り込む。

 

「「はあああああっ!」」

 

「「・・・・・・・・・・!」」

 

懐に潜り込んでからの数擊の斬りを《ホロウ》の俺たちは視認すら出来ずに、ただ呆然としていた。《ホロウ》の俺たちが気付いたのは俺とレインが《ホロウ》の俺たちの後ろに移動し終わったときだった。

 

「はああっ!」

 

「やああっ!」

 

俺は《ホロウ》のレインに、レインは《ホロウ》の俺に向かっていく。

 

「!」

 

「でりゃあああああ!!」

 

片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》単発重攻撃をバフで増幅させて勢いよく放つ。

 

「!!?」

 

《ホロウ》のレインは咄嗟に右手の『トワイライトラグナロク』の腹で《ヴォーパル・ストライク》の軌道を滑らせるようにしてずらす。

 

「まだだ!」

 

《ヴォーパル・ストライク》を放ち終えると、《ヴォーパル・ストライク》の技後硬直を無視して、いや、意識を《ヴォーパル・ストライク》から新しいソードスキルに繋げた。

 

「うおおおおっ!」

 

「!?」

 

《ホロウ》レインの眼に驚愕の雰囲気が観れる。俺は《ヴォーパル・ストライク》から、二刀流ソードスキル《エンド・リボルバー》範囲2連擊技を放った。《ホロウ》レインもさすがレインの《ホロウ》なだけあって反応速度が速い。《エンド・リボルバー》が当たるギリギリのところで、『トワイライト・ラグナロク』と『キャバルリーナイト』で盾にし受け止めたのだ。

本来なら不可能なソードスキルの連携をしたのだ、ここで技後硬直が発生するはずだが。

 

「ハァァアアアアア!!」

 

《エンド・リボルバー》の振り切った体勢から強引に次のソードスキルへと繋げた。片手剣ソードスキル《ハウリング・オクターブ》8連擊を突き撃つ。

5連の突きから3連の切り下げ切り上げ、切り下げを《ホロウ》のレインは同じ片手剣ソードスキル《ハウリング・オクターブ》で相殺してくる。

相殺した8連のソードスキルを終えた俺と《ホロウ》のレインは後ろに滑ず去った。後ろに下がると今度こそ1.5秒ほどの技後硬直が発生した。

 

「(今の剣技連携(スキルコネクト)か・・・・・・?一か八かだったけど、どうやら出来たみたいだな)」

 

未だに未完成だった、ソードスキルとソードスキルを繋げて繰り出すシステム外スキル、《剣技連携》をこんなところで、しかも2回も出せたことに俺は正直驚いていた。

そう感じていると、《ホロウ》レインは≪多刀流≫ソードスキル《ディバイン・エンプレス》を繰り出してきた。

 

「・・・・・・・・・!」

 

「そのソードスキルはレインの傍で何度も見てる!」

 

《ホロウ》レインの《ディバイン・エンプレス》を≪二刀流≫ソードスキル《ナイトメア・レイン》16連擊で迎え撃つ。

《ディバイン・エンプレス》の連擊数は15。対して《ナイトメア・レイン》は16連擊、ラスト一撃こっちの手数はある。同じ15連擊なら《シャイン・サーキュラー》があるがあれだと《ディバイン・エンプレス》を受け止められない。なにせ《シャイン・サーキュラー》は速度特化タイプのソードスキルだからだ。攻撃力重視の《ディバイン・エンプレス》には同じく攻撃力と速度重視タイプの《ナイトメア・レイン》が有効だ。あとは同じく16連擊の《ブラックハウリング・アサルト》がやや防御重視の速度タイプだ。

一撃、二撃と互いのソードスキルが相殺していき、《ホロウ》レインの15撃目が終わり、ラスト一撃、俺の《ナイトメア・レイン》が《ホロウ》レインのHPを削る。

 

「・・・・・・・・・・!」

 

《ホロウ》レインのHPは5割以下にまで削られ、そのまま後ろに下がった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」

 

《ホロウ》レインが下がり、俺は息を整えた。ゲームの世界なのに汗が滲み出る感覚や、疲れをなんとかし、呼吸を整える。

 

「(《神双解放》が使えるのはあと7分・・・・・・それまでに決着を着けないと・・・・・・!)」

 

そう脳裏によぎらせていると。

 

「キリトくん」

 

俺と同じようにHPを5割ほどにまで減少したレインが構えをとったままやって来た。

 

「レイン」

 

「さすがキリトくんだね。私の《ホロウ》を相手しても負けてない」

 

「レインもだろ?」

 

「ふふ。キリトくんの動きや癖は一番私が知ってるもん。ずっと、キリトくんの傍で・・・・・・隣で見てきたんだから!」

 

「ああ。俺もだレイン」

 

互いの動きや癖を熟知しているからこそ分かる。本物(俺とレイン)と《ホロウ》の俺たちの違いは意気のあったコンビネーションだ。《ホロウ》の俺たちも動きや癖はコピーされていて同じなのだが、一つ一つの動作が違う。敢えて無くしているのか、もしくは消したのか分からないが、《ホロウ》の俺たちの剣には感情や、意思そして思い。剣に込める想いを感じない。剣に何を込めるのか、それ次第によって剣の重みは違ってくる。その重みは実在するようなものではないが、感じ・・・・・・意思の重みとでも言うのか覚悟を感じられる。それは俺やレイン、アスナたちも勿論のこと、それはPoHにもあり、PoHの場合は人を殺すという意思の重みがある。そしてヒースクリフ。ヒースクリフ・・・・・・茅場には絶対的な強者、ゲームマスターであるという重みがある。この世界に生きるプレイヤーすべてが持つ意思の力。現実に帰る、生き残ってみせる、誰かと一緒にいたい、死にたくない、目の前の敵を倒す・・・・・・など、それこそがプレイヤー全員が持っている己の信念(ユニークスキル)。意思の力だ。

すべてのプレイヤーが持つ、意思の力を目の前の《ホロウ》の俺たちからは感じ取れない。ただ、システムによって定められた動作を行うだけ。そんなの最早ただの人間ではなく、人形。もしくは・・・・・・仮初めの器。

 

「アイツら≪シンクロ≫を使ってこないな。まさか使えないのか?」

 

「私とキリトくんの《ホロウ》なのに?」

 

「いや、《ホロウ》だからこそなのかもしれない」

 

「どういうこと?」

 

「≪シンクロ≫スキルは俺とレイン、二人の想いと願いで発現したものだ。例え、俺とレインの姿形や剣技、スキル、戦闘技術、動作がアイツらにインストールされていても、俺とレインの想いや願い、絆までは絶対にコピー出来ない!」

 

断言するかのように言う俺の言葉に、レインは。

 

「そう・・・だね!」

 

頬を少し赤らめて嬉しそうに返した。

正直俺も少し恥ずかしいのだが・・・・・・。

 

「やるぞレイン!俺たちの絆を《ホロウ》の俺たちに!」

 

「うん!私とキリトくんの絆の力は真似できないと言うことを教えてあげよう!」

 

再び背中合わせに立ち、剣を構える。

 

「シッ!」

 

俺と《ホロウ》の俺が動いたのは同時だ。

 

「はああっ!」

 

「・・・・・・・・・」

 

右振り下ろしからの左切り上げ、足払いからの右突きの攻撃を素早く行う。対する《ホロウ》の俺は見切ったように的確に、最小の動きで軌道を反らし、避けたりするがその動きは徐々に遅くなっていた。そして後ろからは。

 

「サウザンド・レインッ!!」

 

レインが《サウザンド・レイン》を放った。

対する《ホロウ》レインも《サウザンド・レイン》を放ち、《サウザンド・レイン》同士がぶつかり合い対消滅を引き起こした。

 

「やああっ!」

 

レインは素早い速度で《ホロウ》レインを攻撃範囲(レンジ)内に捉え、舞い踊るかのような剣舞を行う。

その動作は緩やかに、しかし激しく。最小の動きで行う攻防一体の剣戟。俺の速度と攻撃に特化した剣嵐暴風に対し、レインのは攻防一体の剣舞舞踏。そんなレインの攻撃がただコピーしただけの意思を持たない《ホロウ》のレインに防がれるはずがない。その証拠に、ギリギリのところで焦るかのように体を反らしたり受け止めたりしているがその動きも少しずつ遅くなっていき、《ホロウ》レインの身体には赤い、斬られたエフェクトがあちこちに切り傷のように存在していた。

 

「・・・・・・・・・!?」

 

「やああああっ!!」

 

レインの強攻撃で後ろに吹き飛ばされた《ホロウ》レインはそのまま俺と対峙していた《ホロウ》の俺の背中にぶつかった。

 

「!?」

 

《ホロウ》の俺は驚いたかのような表情を光のない眼の顔で表す。

 

「決めるよキリトくん!」

 

「ああ!」

 

《ホロウ》レインを追い掛けてきたレインとともに、互いのHPがほぼレッドゾーンに入りかけてる《ホロウ》の俺たちに向かって攻撃を仕掛ける。

 

「デリャアアアアアア!!」

 

『エリュシデータ』を肩の高さにまで上げ、腕を限界まで引き絞り、クリムゾンレッドのライトエフェクトが輝く『エリュシデータ』で鋭い突きを放つ。

 

「!」

 

『エリュシデータ』の攻撃。片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》単発重攻撃を《ホロウ》の俺は両手に握る片手剣、『エリュシデータ』と『ダークリパルサー』を交差して受け止める。

 

「スイッチ!」

 

「うん!」

 

予測していた動作を、緩やかにレインとスイッチし。

 

「ヤアアアアッ!」

 

レインが重ねて片手剣ソードスキル《デッドリー・シンズ》7連撃で追撃する。そして俺は。

 

「ゼリャアアッ!」

 

《ホロウ》レインに≪二刀流≫ソードスキル《ローカス・ヘクサドラ》7連撃を放つ。

《ホロウ》の俺たちが動きを止めた瞬間を逃さず。

 

「キリトくん!」

 

「ああ!」

 

「「―――ホロウ・フラグメント!!」」

 

≪シンクロ≫最上位ソードスキル《ホロウ・フラグメント》44連撃を繰り出す。

神速を彷彿させる超高速の速度で《ホロウ》の俺たちを斬り着ける。息が詰まるなか、限界まで引き絞って放つ。

《ホロウ》の俺たちも防御(ガード)するが、≪シンクロ≫の最上位ソードスキルの威力に押され、HPが残り2割ほどにまで削り取られる。これでHPがすべて削り取られないのに軽く驚嘆するが、《ホロウ》の俺たちの刀身はすでにボロボロだった。

本来ならここで一秒ほどの技後硬直に入るのだが。

 

「これで――――!!」

 

「終わらせる――――!!」

 

そんな技後硬直時間を無視して、最後のソードスキルを放つ体勢を取る。

 

「キリトとレインの眼が・・・・・・金色になってる・・・・・・?」

 

そんなフィリアの声が僅かに聞こえるが、俺とレインは意識を集中し、背中合わせに俺の右手の『エリュシデータ』とレインの左手の『キャバルリーナイト』をクロスするようにして重ね合わせる。そこへ俺とレインを包み込むように黒金と虹色の交じりあったオーラがベールのように円錐上に包む。約5秒ほど溜め込み。

 

「「――――――!!!」」

 

《ホロウ》の俺たちが動けるようになったのとほぼ同時に、俺とレインのソードスキルが発動した。発動したソードスキルは俺の双剣には黒金の、レインの双剣には虹色のライトエフェクトを輝かせる。

《ホロウ》の俺たちはなんとか防御しているが俺たちのソードスキル――――――≪シンクロ≫ソードスキルの秘奥義には意味を成さず。何撃目かの攻撃で《ホロウ》の俺とレインの双剣が真っ二つに折れポリゴンの欠片へと変わり―――。

 

「「―――トワイライトエデン・・・・・・・」」

 

幾数の斬撃をレインと意気のあったコンビネーションで与え、≪シンクロ≫スキルと自分のステータスを限界にまで引き上げた秘奥義を放つ。ラスト2撃、俺の『エリュシデータ』による横凪ぎ払いとレインの『トワイライトラグナロク』の横凪ぎが交差するように《ホロウ》の俺たちを捉え、

 

「「―――デュオクライシスッ!!!!」」

 

そのHPを1ドットも残さず奪い尽くした。

HPゲージがゼロになり、≪シンクロ≫ソードスキル秘奥義《トワイライトエデン・デュオクライシス》100連撃の余波で風が吹き荒れるなか、《ホロウ》の俺たちはポリゴンが一瞬ぶれたかと思うと次の瞬間には爆散して辺りの虚空に溶け去った。

それと同時に俺とレインの《神双解放》のバフが解除され、神々しい輝きを放つアインクラッドの紋章が消え去った。

HPを見ると、俺とレイン二人のHPはどちらもレッドゾーンに突入しており、残りは約2割ほどだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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HF編 第130話〈帰還〉

「ヤッホーみんな!ソーナだよ!ついに今回で《ホロウ・エリア》が終わるんだ!長かったよ~。とまあ、それはおいといて今回のゲストはこの三人!」

「よっ!キリトだ」

「プリヴィベートみんな!レインだよ!」

「久しぶり、フィリアだよ!」

「久しぶりキリト、レイン、フィリア!」

「ソーナ、ついに《ホロウ・エリア》編終了だな!」

「長かったね~」

「うん。一年ぐらい?」

「予定だともう少し早く終わらせるつもりだったんだけど、他作品とか書いたりしていたら遅くなっちゃったんだ。ごめんね」

「まあ、こうやって《ホロウ・エリア》編が終わったからいいさ」

「《ホロウ・エリア》は終わっても、アインクラッド攻略はまだあるよ」

「うん!」

「ええ!」

「ああ!」

「それでは、《ホロウ・エリア》の終幕。〈帰還〉をどうぞ!」





 

~キリトside~

 

 

『高位プレイヤー以外のロックを解除します』

 

 

《ホロウ》の俺たちを倒すと何処からかシステムアナウンスが聞こえてきた。そしてそのアナウンスと同時に。

 

「動・・・・・・ける?」

 

システム側で麻痺・・・・・・いや、ロックが解除されたフィリアから声が聞こえてきた。

 

「大丈夫か?フィリア?」

 

「フィリアちゃん、大丈夫?!」

 

剣を鞘に戻してレインと一緒にフィリアに駆け寄る。

 

「うん、大丈夫みたい」

 

ちゃんと立ち上がり何事もなかったかのように言うフィリア。そこに。

 

 

『《ホロウ・データ》のアップデートが、高位ユーザー権限により停止されました』

 

 

再びシステムアナウンスが響いた。

 

「・・・・・これで、アップデートは阻止された・・・・・・はずだよな」

 

システムアナウンスのアップデート停止に俺はそう問う。

 

「うん・・・・・・そうみたい」

 

なにも起きないためレインがそう答える。

 

「・・・・・・正直、何度も危ないとおもったよ」

 

「私も・・・・・・」

 

実際、あの《ホロウ》の俺とレインのレベルやスキルに差は全くなかった。差があるとすれば俺とレイン、二人の絆と≪シンクロ≫スキル、そして―――――

 

「そうだね。さすが《最強夫婦》・・・・・・。二人の《ホロウ》ヤバイくらい強かったし」

 

「それでも勝てたのはフィリアが応援してくれたお陰かな」

 

フィリアが居たからだ。

 

「そ、そんな・・・・・・わたしなんか・・・・・・それに二人の方の力の方が・・・・・・」

 

「ううん。私とキリトくんの《ホロウ》の力は互角だったよ。もちろん、私とキリトくんの絆の力もあるのかも知れないけど、やっぱり・・・・・・一番の勝因はフィリアちゃんのお陰だよ」

 

「だな。絆やスキル、レベルとかそんなことより、フィリアという仲間が居たからこそ勝てたんだ」

 

「・・・・・・ありがとう。そう言ってもらえるのが、一番嬉しい」

 

レインと俺の台詞をフィリアは少し照れたようにして答える。

 

「でも・・・・・・二人ともわたしと同じオレンジカーソルになっちゃったね・・・・・・」

 

「あ、ホントだ」

 

「う~む、これは参ったな」

 

「オレンジカーソルになったのに呑気ねキリトとレインは」

 

もう諦めた感じで言うフィリアに俺とレインは首をかしげた。

 

「いや、まあ、自分を倒してオレンジになるって言うのは・・・・・・」

 

「なんて言うのかな・・・・・・心情的に複雑だよ~」

 

「同じく」

 

「あはは・・・・・・」

 

俺とレインの言葉にフィリアはひきつり笑いを浮かべる。

 

「・・・・・・よし、最後の仕上げだな、奥に進もう。恐らくそこに、コンソールがあるはずだ」

 

「うん」

 

「・・・・・・だね」

 

俺たちは《ホロウ》の俺たちが消え、そのあとに現れた管理区から秘匿領域に転移するのに使った同じ転移陣を使ってボスのいなくなった空間をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最下層 中央管理コンソールルーム

 

 

あの場所から転移した俺たちを待っていたのはだだっ広い空間だった。俺たちは辺りを見渡しつつ、通路の奥へと進んでいく。

通路の奥には先程の場所よりも広い場所に出た。そして中央には4本の柱があり、真ん中には管理区や遺棄エリアにあったのと同じシステムコンソールが鎮座していた。

コンソールに近寄り、コンソールを操作して俺たちのオレンジを解除する。

 

 

『エラーが解除されました。エラーの種類はデータの重複。原因は――――――』

 

 

解除するとシステムアナウンスが響いた。

システムアナウンスが響くと俺たちの頭上のカーソルがオレンジからグリーンに戻った。

 

「あっ・・・・・・・」

 

「よし・・・・・・!これで俺たち全員、オレンジ解消だ」

 

「やったねキリトくん!」

 

「ああ!」

 

「ありがとう・・・・・・二人とも・・・・・・」

 

頭上のカーソルがオレンジからグリーンに解消されたのを見て何故か畏まったように言うフィリアにレインが。

 

「ていうか、そもそもフィリアちゃんなにも悪いことしてないでしょ?」

 

首をかしげて頭に疑問符を浮かばせて、不思議そうに聞いた。

 

「それは・・・・・・そうだけど・・・・・・・」

 

「ならいいじゃんフィリアちゃん。それにしても・・・・・・こうなったことについて文句言いたいよ」

 

これてこの話は終わりとでも言うように両手を一回叩き、思い出したかのように疲れた表情で言った。

 

「え、文句?」

 

「まったくだ。本当、あいつに文句を言ってやりたいぜ」

 

意味がわからないフィリアは疑問符を浮かべるが、意味を理解している俺は同意するように言う。正直、こうなったことについてあいつに文句の一言二言言いたい。まあ、一応あいつには色々と感謝はしてはいるがそれとこれとは話は別だ。

 

「・・・・・・あいつ?」

 

「あ~、まあ、気にしないでくれ」

 

「そうそう!こっちの話だから大丈夫だよ!」

 

フィリアの台詞に俺とレインははぐらかすようにして言う。

 

「???まあ、レインがそう言うなら・・・・・・わかった・・・・・・」

 

渋々と言った感じで納得するフィリア。

 

「さてと、やることも終わったし・・・・・・」

 

「そうだね・・・・・・・帰ろうか、キリトくん、フィリアちゃん」

 

「うん。管理区に戻るんだね」

 

「いや、俺たちが帰るのはアインクラッドだよ」

 

「そうそう♪」

 

「アインクラッド・・・・・・そうか。わたしももともとは、アインクラッドにいたんだよね」

 

「いやいや、フィリアちゃん。アインクラッド以外にどこにから来るのよ・・・・・・・」

 

呆れるように話すレインに。

 

「いや、レイン。リーファは・・・・・・キャラデータの移植として。シノンはまったくの予想外・・・・・・・というか、外部からの不慮な事故じゃないか?」

 

「あ~~・・・・・・・・それはそれとして」

 

「あ、話逸らした」

 

「言ってやるなフィリア」

 

リーファとシノンのことを忘れてたレインは気まずそうに視線を游がせた。レインの話逸らしに苦笑しながらフィリアは。

 

「うん。・・・・・・でも、わたしがアインクラッドに行ってもいいのかな?」

 

と言った。

 

「まだ言ってるのかよ、そんなこと。いい加減にしないと、怒るからな」

 

ため息をついてそう言うと。

 

「そうだよフィリアちゃん。さすがの私も本気の本気。超本気で怒るよ?」

 

レインがプンスカとでも言うように言った。

 

「うぅぇ!?」

 

レインの、超本気で怒るよ?と言う台詞に俺は思わず変な声を出した。何故なら、レインを怒らせるとかなり怖いと身を持って経験しているからだ(自業自得である)

 

「(レインが怒ると後始末が大変というか・・・・・・俺の身が持たないんだよな~・・・・・・)」

 

レインを見ながらそう脳裏に呟かせる。

何故かと言うと・・・・・・・。

 

「(レイン、怒ると剣舞士(ソードダンサー)じゃなくて剣嵐士(ベルセルク)になるんだよな。しかも、機嫌が直るまで時間かかるし)」

 

以前、というかついこの間?・・・・・・でいいのか?

そのとき怒ったレインはアスナたちをも怯ませたのだ。原因はアルベリヒの部下というかアルベリヒの仲間のプレイヤーがちょっかい出したからだ。ちなみにコイツらはしょっちゅう、特に女性プレイヤーに手を出してるらしい。何故、ハラスメントコードが発生しなかったのかは不明だが、システムの不具合とかではないらしい。

とまあ、そんなわけで。さらに言うとレインは独占欲が強いというか何て言うか、周りに人がいなくて俺と二人の時はメチャクチャ甘えてくるのだ。夜は・・・・・・・・・・・・まあ、想像に任せるが何かと大変である。

というわけであまりレインを怒らせたくないのだ。

 

「レインさすがに本気で怒るのは勘弁して・・・・・・・」

 

「冗談だよキリトくん?」

 

「(冗談に聞こえなかったってのは言わない方が良さそうだな)」

 

レインの台詞に俺は言わぬが花で黙っていることにした。

 

「なんか今キリトくんの心の声が聞こえた気がするけど、まあそれはあとにして。フィリアちゃんはもともとアインクラッドに居たんだから。システムの不具合でここに飛ばされちゃったんだから、アインクラッドに帰るのは当然というか、元いた場所に戻るのは当たり前でしょ?」

 

「うん・・・・・・そうだよね、ごめん」

 

レインの言葉にフィリアはうなずいて返す。

 

「よし・・・・・・そろそろ行こうかレイン、フィリア」

 

「うん」

 

「っとその前に・・・・・・最後に少しだけ」

 

「キリトくん?」

 

「どうしたのキリト?」

 

「ちょっとだけな・・・・・・」

 

コンソールに再び触れ、コンソールのキーボードをタップしていくつか操作しコンソールのホロウインドウを消す。

 

「よし、これで大丈夫だ。それじゃ、帰るぞ!」

 

「うん」

 

「そうだね!」

 

俺たちはコンソールのある空間を後にして、近くにあった地上の管理区へと繋がる転移碑を使って、管理区に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

管理区

 

 

「いよいよアインクラッドだなフィリア」

 

管理区に戻った俺たちはそのままアインクラッドに繋がる転移門の上に立った。

 

「うん・・・・・・でも・・・・・・なんか変な感じがする」

 

「変な感じ?」

 

フィリアの戸惑いの台詞にレインが訪ねる。

 

「うん。引っ越す前の家に戻るって言うか・・・・・・そんな感じ」

 

「なるほど~」

 

「またすぐ慣れるさ。あそこは俺たちの家なんだから。まあ、それもSAOの中だけどな」

 

「それでも、私たち家族の家もあるからね」

 

俺はすぐに83層の家の事を言っていると分かった。

アークソフィアにある宿もそうだが、22層の代わりにある83層の俺とレイン、ユイ。家族3人の家も大切な思い出の場所だ。それは現実世界の家となんら変わらないものだ。

 

「そうだね・・・・・・現実のことなんてここしばらく考えてなかった。絶望の中から引っ張りあげて支えてくれたのはキリトとレインだよ」

 

「俺はなにもしてないって。全部フィリアの意思が解決したんだ」

 

「そうそう。私とキリトくんは少し手を貸しただけだよ。ほとんどフィリアちゃんが、自分でやったことだよ」

 

「それに《ホロウ・エリア》で手に入れたアイテムやスキルがあればクリアも近いはず」

 

「確か今最前線って94層だっけ?」

 

「ああ。あと6層・・・・・・・あと6層でアインクラッドの頂き、第100層だ。100層のボスを倒したら、俺たちの本当の家に帰れる。それまでは、アインクラッドが仮の住まいということにしておこう」

 

「うん!」

 

「そうだね!」

 

俺の言葉にフィリアとレインが勢いよく答える。

 

「向こうに行ったら、みんなを紹介しないとな」

 

「二人が来たばかりの頃に紹介してくれた人たちだよね」

 

「うん。あ、もちろん他にも仲間は何人もいるよ」

 

「個性的なヤツばかりだけどな」

 

「え~、それをキリトくんが言う?」

 

「えっ!?いや、俺はあいつらより個性的じゃないだろ!?」

 

「いや、キリトも充分個性的だと思う」

 

「なっ・・・・・・・!?」

 

フィリアの言葉に呆気に取られていると、レインとフィリアは声に出して笑った。

 

「個性的だけど、みんないい人だから、すぐ馴染めると思うよ。フィリアちゃんさえ迷惑じゃなければだけど・・・・・・」

 

「うん。・・・・・・大丈夫レイン。キリトは人を見る目はあるし、レインもキリトと同じくらい見る目あるから、二人の仲間なら、たぶん仲良くなれると思う」

 

若干不安げに言うフィリアにレインが。

 

「大丈夫だよ。フィリアちゃんなら」

 

「うん・・・・・・・」

 

「それじゃ、帰るとするか」

 

「うん。向こうに行ったらまたキリトとレイン。二人と一緒に冒険したいなぁ~~~」

 

「私も~!」

 

「よし、三人でまた、新しいクエスト行くかぁ!!」

 

「「いえーい!!」」

 

「「「転移!アークソフィア!」」」

 

俺たちの身体を蒼い光が包み、俺たちは管理区からアインクラッドのアークソフィアへと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第76層 主街区アークソフィア

 

 

 

「・・・・・・・・・・ここが・・・・・・」

 

「76層の街、アークソフィア。紛れもなく、アインクラッドだよ」

 

「よかった。フィリアちゃんも一緒に来れて」

 

「アインクラッド・・・・・・。ホントに戻ってこれたんだ・・・・・・」

 

俺とレインの台詞にフィリアが感慨深して周りを見渡していると。

 

「こ~ら~。な~にキョロキョロしてんの?」

 

「え?」

 

何処からか声が聞こえた。というかその声は俺たちの仲間の声だった。そして。

 

「こっちですよ、フィリアさん」

 

「ようやく、アインクラッドで会えたわね」

 

「フィリアさん、お帰りなさい!」

 

「ホントによかった。あなたが無事に戻ってこられて」

 

「くぅ~・・・・・・・向こうでずっと大変な思いをしてきたんだもんな!よくぞ帰ってきてくれたぜ!」

 

「クラインに同感です!フィリアさんが無事でよかった」

 

「ほんと・・・・・・元気そうで何よりだよフィリアちゃん」

 

「パパとママ、そしてフィリアさんなら必ず帰ってくると、信じていました」

 

「あはは、ユイちゃんずっとここに居たもんね」

 

「それを言ったら私とユウキ、あなたもでしょう?」

 

「姉ちゃん!それは言わないでよ!」

 

「これからはみんなと一緒にいることが出来るね。お帰りなさいフィリアさん」

 

出迎えてくれたのは俺とレインの仲間だった。しかも勢揃いだ。

ユウキのランの会話を聞く限り、ユイとユウキ、ランは俺たちが行ってから帰ってくるまでずっと待っていたらしい。少しだけ気恥ずかしくもあるが、嬉しい気持ちで一杯だった。

肝心のフィリアはと言うと。

 

「あ・・・・・・・えっと・・・・・・・?」

 

いきなりでかなり戸惑っていた。

 

「ほら、フィリア」

 

「フィリアちゃん」

 

俺とレインがフィリアの背中を押し

 

「・・・・・・うん・・・・・・あの・・・・・・・。・・・・・・た・・・・・・ただいまっ!」

 

フィリアがみんなにそう言う。

 

『『『『おかえり!』』』』

 

対するユイたちも歓迎するように返した。

フィリアをユイたちが囲んでいるのを見ながら。

 

「ようやく終わったね、キリトくん」

 

「ああ。ようやく、《ホロウ・エリア》でのことが終わった」

 

「長かったようで・・・・・・短かったような気がするよ」

 

「だな。あとは・・・・・・・」

 

「うん。このアインクラッドを攻略するだけだね」

 

「ああ。絶対に生きて現実世界に帰ろうレイン」

 

「うん!キリトくん♪!」

 

軽く手を握って、俺とレインはみんなの方に歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在の最前線 第94層

 

 

 

残り       6層

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「どうだったかな?今回はここまで!」

「次回が少し気になるんだが予告編はないのか?」

「う~ん・・・・・・・じゃあ、ヒントを少しだけ!次回は神隠しの真相が分かるよ」

「神隠し?」

「うん。キリトとレインは知ってるよね」

「ああ」

「うん。けど神隠しの真相ってなんだろう?」

「それは次回のお楽しみだよ」

「了解。それじゃ、次回もよろしく頼むぜソーナ」

「任せて。あ、そろそろ時間だね」

「ホントだ」

「みんな《ホロウ・エリア》編はこれで終わりだけど、《ホロウ・フラグメント》はまだ少し続くからよろしくね!」

「よろしく頼むぜ!」

「お願いね!」

「よろしくお願いするよ!」

「ではまた次回!」

「「「「Don't miss it.!!」」」」


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HF編 第131話〈神隠しの真実〉

 

~キリトside~

 

 

 

第76層 主街区アークソフィア外れ

 

 

「・・・・・・・・・・・」

 

第96層のボスの討伐が完了し、新たに第97層が開放された翌日、俺はアークソフィアの外れにある草原の丘で横になって昨日のボス戦のことを思い返していた。

 

「(あの時、あそこにいたのは間違いなくストレアだった。やはり、ストレアがボスを強化したのか・・・・・・。それにストレアのあの不自然な言動・・・・・・それに一体なんだ、この嫌な胸騒ぎは)」

 

そう思い返しているところに。

 

「もう、やっぱりここにいたよ~」

 

「レイン」

 

武器は装備してないが、戦闘服姿のレインがやや呆れた表情で俺を見下ろしていた。

 

「捜したんだよキリトくん。何処にもいないからここかな、って思ってきてみたけど、案の定そうだったね」

 

「悪い」

 

上から見下ろすレインにそう言うと、俺は少し視線を逸らした。

 

「キリトくん、どうして視線を逸らすの?」

 

「あ、いや、レイン、今のおまえの服装を考えてくれ」

 

「服装?」

 

俺の言葉に首をかしげたレインは自分の服装を見て、瞬時に理解したのか顔が赤くなった。

何故俺が視線を少し逸らしたのかというと、今のレインの戦闘服は。

 

「・・・・・・見た?」

 

「・・・・・・・・・・・見てない」

 

「ほんとうに?」

 

「う・・・・・・・すまん・・・・・・見えた。」

 

「////!!」

 

下がスカートだからだ。

レインが上にいる関係上、俺がレインを見るとどうしても下から覗き込むような形になってしまうのだ。

 

「キ、キリトくんのエッチ!!」

 

「今のは不可抗力だろ!!?」

 

スカートを押さえて、俺のすぐ傍に座り込むレインに俺は思いっきりツッコむ。どう考えても今のは仕方がないと思う!

 

「ぅぅ・・・・・・・キリトくんのエッチ」

 

「いや、あのな・・・・・・・・・ゴメン」

 

赤面して泣きそうな顔で見てくるレインに折れる俺。

 

「ところでキリトくん、なんで97層の攻略しに行かないの」

 

まだ少し顔が赤いなか、俺のすく横に寝っ転がって聞くレインに昨日の96層ボス戦のことを話す。

 

「やっぱり・・・・・・キリトくんもストレアちゃんが関係してるって思ってたんだ」

 

「やっぱり、ってことは」

 

「私も、キリトくんと同じこと思ってたよ」

 

「なあ、レイン。どうしてストレアはあそこにいたんだろう」

 

「わからないよ。それに、ストレアちゃんがボス部屋から転移できた理由が分からないよ」

 

「確かに・・・・・・」

 

76層以降、ボス部屋では結晶無効化空間ではなく転移無効化空間になっていた。ボス部屋に入ると、入り口が閉じるのは75層と同じだが回復結晶が使えるか使えないかでは別だった。ヒースクリフは75層より上の層のボス部屋すべてを結晶無効化空間ではないかと指摘していたが、(恐らく事実だったのだろうが)現状では転移結晶以外の結晶アイテムは問題なく使えていた。原因は俺たちが76層より下層に移動できなくなったことと関係あるはずだ。そしてそれはこのアインクラッドを制御しているカーディナルシステムに俺たちに起こっているのとは別の、何らかの不具合が発生したと言うことだ。そうならばとストレアがシステムが作り出したボスを強化したこととその場から結晶も使わずに転移出来たと言うことに納得がいくが、問題はストレアに関してだ。彼女はプレイヤーなのだがらシステムに介入できるはずがないのだが。

 

「(まてよ・・・・・・システムにプレイヤーが普通介入できるはずがないのは当然だよな。以前俺がカーディナルシステムに介入してユイをシステムから切り離せたのは黒鉄宮地下迷宮にあったシステムコンソールを介してだし。普通、ハラスメントコードとかは解除出来ないはずだ。・・・・・・・なら、なんでアイツらはハラスメントコードらが発動しないんだ?なんらかのチートツールを使ってるからか・・・・・・・?いや、この世界はカーディナルシステムが制御しているからチートツールは不可能だ。それにこの世界でチートツールを行使するのは出来ない以前に不可能。なら、外部からか?いや・・・・・・まてよ。アイツらの名前今のいままで誰も知らなかった。普通、あそこまで目立つ奴等なら誰かしらが知っているはずだ。それこそ、アルゴが見逃すはずがない。なのに知らなかった。それはつまり、アイツらはリーファとシノンと同じってことだ。そして、アイツらにコードが発動しなかったのは・・・・・・!)」

 

俺の頭でそんな仮説が出来上がったそんなところに。

 

「ん?」

 

「メッセージ?クラインさんから?」

 

クラインから緊急とタイトルが書かれたメッセージが来た。

 

「――――なに!?」

 

「――――これは!?」

 

クラインから送られたメッセージを読んだ俺とレインは瞬時に立ち上がった。

 

「レイン、今すぐ97層に行くぞ!」

 

「うん!」

 

急いでその場から走り転移門に向かった。

メッセージにはこう書かれていた。

 

 

 

 

 

 

『アルベリヒの野郎が変な武器でプレイヤーを何処かに転移させやがった!今アルベリヒのヤツをフィリアとともに追い掛けてる!』

 

 

 

 

 

 

と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第97層 主街区フィルキア

 

 

「アスナ!」

 

アークソフィアから急いで97層主街区のフィルキアに転移した俺とレインはフィールドに向かう途中でアスナたちに出会った。

 

「キリト君!レインちゃん!」

 

「キリトたちもクラインからメッセージを受け取って?」

 

「ああ。ユウキたちもだろ」

 

「うん」

 

「急ぎましょう。今クラインさんとフィリアさんが追い掛けています」

 

「わかった!ラン、先に行く!」

 

「わかりました!」

 

「レイン!」

 

「うん!」

 

俺とレインはシステムが許容する敏捷を限界まで使用して目的地に向かった。後ろからはアスナたちが追い掛けてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第97層 フィールド

 

 

 

「て、てめぇ!いったい、なにしやがった!」

 

フィールドに出てそのまま走っていくと、奥からクラインの怒鳴り声が聞こえてきた。

そしてさらに。

 

「あなた!その人をどうするつもり!」

 

フィリアの切羽詰まった声も聞こえてくる。

 

「あそこだ!」

 

声が聞こえてきた方へさらに足を早め、クラインとフィリアのいる場所に行くと、そこには腰に細剣を装備し右手には不気味な禍々しい短剣を握り空いている左手で男プレイヤーを捕まえ、その首もとに禍々しい短剣を当てているアルベリヒとその取り巻き数人がいた。

 

「静かにしてくれ。そんなに、大騒ぎするとこいつも同じ目に合わせるよ?」

 

「は、放せっ!放してくれ!」

 

捕まってるプレイヤーは恐怖で顔が青ざめている。

クライン率いる風林火山のメンバーとフィリアは迂闊に近寄れないのか少し距離を取ってアルベリヒたちと対峙していた。

 

「やめろっ!!そいつを放して、その変な武器を捨てろ!」

 

「これのことか?なかなかいいデザインだと思っているんだけどね?この尖っている部分なんて芸術的だと思うけどなあ、クックックッ」

 

「ひ、ひいい!」

 

「あなたねえ!」

 

「て、てめぇ!いいから捨てろって言ってんだろうが!」

 

「そうはいかないよ。僕にはやらなければならない、とても重要な事があるんだ。さあ、健康そうな君も喜んで協力してくれるよな?」

 

「その人になにをするつもり!」

 

「ふ。すぐにわかるさ」

 

フィリアの言葉にアルベリヒは抵抗するプレイヤーに右手に持つ禍々しい短剣を無慈悲に突き刺した。

 

「や、やめろ、やめてくれー!うわあああああああああ!」

 

捕まっていたプレイヤーは悲鳴をあげて、その場から消え去った。

 

「くっそ!なにが起きてんだよ、いったい!」

 

意味が分からないとでもいうかのように声を荒げるクラインに俺とレインが走りよる。

 

「クラインっ!」

 

「フィリアちゃん!」

 

「キ、キリトか!」

 

「レイン!」

 

「ああ!大丈夫か!?」

 

「みんな大丈夫!?」

 

「わたしたちは大丈夫。けど・・・・・・」

 

「あの野郎、変な武器を持っていやがる・・・・・・気を付けろよ二人とも」

 

「見ていたよ・・・・・・人が消える瞬間を・・・・・・。最近噂になっていた神隠しの正体はこいつの仕業だったのか」

 

「ああ。あの武器の攻撃が当たると、理屈はわからねぇが、否応なしにどっかに転送されちまうみてぇなんだ」

 

「それに転送されたのはさっきの人たちだけじゃないの!」

 

「もしかして!」

 

「ああ。あのプレイヤーの前にもやりやがったんだ!」

 

あのメッセージのことを指してると分かった俺とレインは警戒体制を取って、クラインたちの前に出る。

 

「おや、《黒の剣士》様と《紅の剣舞士》様ではないですか?そんなに血相を変えて、いかがいたしました?」

 

今自分がなにをしたのか気にならないとでもいうように表情ひとつ変えずに聞いてくるアルベリヒ。

 

「おまえらがオレンジにならない理由は分からないが・・・・・・やはり野放しにしておくわけにはいかない!」

 

「うん。あなたは危険過ぎる!」

 

「アハハハハハ。じゃあ、どうするっていうのかな?僕に勝利できるとでも思っているのか?」

 

俺とレインの台詞にアルベリヒは高笑いをして自信満々の表情で言う。

 

「ああ、思ってるさ」

 

「私も思ってるよ。それに、それはこの前の攻略組テストでキリトくんがあなたを倒したことでわかっていることじゃないの?」

 

「ふん。あれはなにか、卑怯な手でも使ったんだろう」

 

「卑怯な手?なんのことだ?」

 

アルベリヒの台詞に俺たちは理解出来ずにいた。

 

「僕のステータスをもってしても勝てなかったなんて、なにか仕込んだとしか思えない」

 

「あり得ないわ。キリトがあなたみたいな人に卑怯な手を使うはずがない」

 

「ああ。そもそも、キリトが卑怯な手を使うわけがねぇ!」

 

「フィリアちゃんとクライン君の言う通りだよ。キリトくんが卑怯な手を使ってあなたに勝った?そんなこと万が一にもあり得ない!」

 

アルベリヒの言葉にレインたちが次々に反論する。

 

「ふん。この僕に勝つだなんて万が一にもあり得ないのさ。そんなの卑怯な手を使った以外はね。だが今度はそんな手は使わせないよ。この僕の、圧倒的なステータスの前に君は打ちひしがれるんだ」

 

レインたちの言葉にアルベリヒはまるで自分に酔っているかのように埒があかない。

 

「・・・・・・まともに取り合っても埒があかないな」

 

「ほんとう・・・・・・どうするキリトくん」

 

「・・・・・・力づくでやるしかない」

 

「わかったよ」

 

「やるのかよ、キリト?」

 

「大丈夫なのキリト?」

 

「大丈夫、あの武器には十分注意するさ」

 

「なら、私たちは取り巻きの人を拘束するね」

 

「頼む」

 

レインたちにそう言って、両手の双剣。『エリュシデータ』と『ダークリパルサー』を構える。

 

「さあ、今度こそ本当の勝負だ!」

 

「ああ、今度こそしっかりと分からせてやる!戦いはステータスだけじゃないって事をな!!」

 

腰の鞘から細剣を抜き、右手で持ち。左手にあの禍々しい短剣を持ってアルベリヒは俺に一直線に向かってきた。

 

「はあっ!」

 

「ぜりゃ!」

 

なんもない。ただ愚直に飛び込んできた細剣の突きを左手の『ダークリパルサー』で跳ね上げて、右手の『エリュシデータ』で、アルベリヒの左手に持つ禍々しい短剣を攻撃する。

 

「ちっ!」

 

忌々しげにと舌打ちして下がるアルベリヒ。

 

「アルベリヒ、あんた元からこの世界にいた人間じゃないな」

 

「・・・・・・・・・・なにを言っているんだい?」

 

俺の言葉に、アルベリヒは一瞬眉を潜めすぐに何を言っているのかというように言った。

 

「あんたのステータスが高いのは認めてやる。恐らく攻略組の俺たちの誰よりも・・・・・・。だが、それに比例してプレイヤースキルが低すぎるんだよ」

 

「っ!この僕が・・・おまえたちよりも劣るだと・・・・・・!」

 

「実際そうだ。この世界での戦闘なんて、第1層にいる人だって多少は知っている。なのに、あんたはその高レベルと高ステータスに対してプレイヤースキルが圧倒的に低い!これらを踏まえて考えられることは一つ。あんたは現実世界から来た人間。そして、そのアバターはスーパーアカウントと呼ばれるアバターだ!そうならあんたたちの異様な高レベルとステータスと比例して低すぎるプレイヤースキル。そして、ハラスメントコードらが発動しなかったのにも説明がつく!あんたは茅場明彦とは違う管理者。―――いや、管理者ですらないな・・・・・・あんたは偽りの支配者だ!そして、この世界にとっての異物!予期せない人間だと言うことだ!」

 

「こ・・・・・・・っの、ガキ!」

 

忌々しいとでもいうかのように憤怒の表情をするアルベリヒ。アルベリヒはそのまま無茶苦茶とでもいうかのように細剣を振り回し、短剣を俺に突き刺そうとする。異色の二刀流だが、俺やレインに比べると赤子のようだ。

 

「はっ!どうした《黒の剣士》、さっきから防いでばかりじゃないか!」

 

「そういうあんただってどこを狙ってるんだ?さっきから一回も当たらないが?」

 

「っの、ガキが!調子に乗るなあ!」

 

「ふっ!」

 

少しは学習したのかアルベリヒは細剣のソードスキル《リニアー》を放ってくる。だが。

 

「アスナに比べたら遅い!」

 

アルベリヒの細剣を受け流して、カウンターで片手剣ソードスキル《シャープネイル》3連撃を繰り出す。

 

「ぐっ!このっ!」

 

《シャープネイル》で鉤爪のような痕を付けられ、HPが8割ほどにまで削られたアルベリヒは下がって忌々しげに睨み付けてくる。

正直検討外れだ。これならヒースクリフの方が一億万倍マシだ。

そう思っているところに。

 

「ぐはっ!」

 

「うわっ!」

 

「うごっ!」

 

変な声が後ろから聞こえてきた。

そして。

 

「キリトくん、取り巻きの人たちは片付け終わったよ」

 

「おうよ。そっちは平気かキリト」

 

「歯応えが全然ないわ」

 

「レインたちの方は終わったみたいだな」

 

「うん。アスナちゃんたちも来たからかなり簡単に制圧できたよ」

 

レインの言葉の通り、アルベリヒの取り巻きのプレイヤーは全員がその場に膝ま付いて、投降していた。

 

「ちっ!この無能共が!」

 

取り巻きが捕縛されアルベリヒは悪態つきながら左手に握る短剣を突き出してくるが、俺はその攻撃をしゃがんで避け、右手の掌の付け根に『エリュシデータ』の柄部分で殴り感覚を麻痺させ、アルベリヒに向かって片手剣・体術複合ソードスキル《メテオ・ブレイク》重攻撃を放つ。

 

「ぐはっ!」

 

肺の中の空気を一瞬で吐き出したアルベリヒは後ろに吹き飛ばされ地面を転げ回る。

やがて、よろよろになって立ち上がったアルベリヒは。

 

「く、くそっ!どういうことだ!?」

 

左手の短剣を睨み付けて言った。

 

「肝心なときにうまく動作しないなんて使えないなっ、このっ!!」

 

「うおっ!あぶねえな!変な物投げつけんじゃねぇ!」

 

クライン目掛けて投げ付けられた短剣を咄嗟にクラインは刀で受け止め、受け止められた短剣は地面に落ちた。

 

「認めない!僕は認めない!馬鹿にしやがって!おぼえておけよ、いずれ僕が世界を掌握するんだ!」

 

「おいっ!待てっ!!」

 

「待ちなさい!」

 

俺たちの制止を聞かずにアルベリヒは取り巻きのプレイヤーを放って何処かに走り去っていった。

 

「あの野郎、逃げやがった!」

 

「ボ、ボスっ!!待ってください!」

 

「おっと!待て待て。お前たちは逃がさねぇぞ」

 

「あなたたちには話を聞く必要があります。その場から動かないでください!」

 

アルベリヒの取り巻きのプレイヤーに剣を突き付けて言うクラインとラン、そしてユウキやアスナたちに怖じ気付いてかすぐにその場から動かなくなり。

 

「ひっ!す、すみません!すみません!オレはボスの指示に従っていただけでっ!」

 

言い訳じみたことを言い始めた。

 

「言い訳はいい。それよりも・・・・・・」

 

取り巻きの言葉を遮ったところに。

 

「地震っ!?またかっ!?」

 

またしても地震が訪れた。

 

「うおっとと・・・・・・」

 

「うわっ・・・・・・・」

 

「きゃ・・・・・・」

 

「わっ・・・・・・」

 

いきなりの地震に驚きつつもなんとかその場に踏み締める。

 

「長い地震だったな・・・・・・」

 

「なんかここ最近地震の頻度が多くなってない?」

 

「ええ・・・・・・」

 

「いったいなにが起ころうとしてんだよ・・・・・・・」

 

「あ、キリト。この人たちどうする?」

 

「ああ、話の途中だった。それじゃ、お前らのやっていたことを洗いざらい話してもらおうか・・・・・・・」

 

俺たちはその場で取り巻きのプレイヤーから話を聞き、そのあと取り巻きたちを76層に連れていき、聖竜連合の団長であるリンド率いるシュミットたちに引き渡し俺たちは取り巻きから聞いた場所に向かった。

 

「ひいいいいいい。す、すみません、降参です。投稿します!」

 

「なんだよ、これでおしまいか?歯応えのない連中ばかりだったな」

 

「キリトさん、捕まっていたと思われる人たちは全員救出した。今はうちのところと血盟騎士団のとこが護衛して街に帰ってもらってる」

 

「そうか・・・・・・すまんなリンドさん」

 

「いや、こっちも神隠しのことは調査していたんだが・・・・・・まさか、アルベリヒってやつが関与していたとはな」

 

「そっちでも調べてたのか?」

 

「ああ。うちの団員が以前神隠しの現場を目撃していてな、転移したのかと思ったそうなんだが、その前にアルベリヒってやつが接触したと言っていた」

 

「そうか・・・・・・」

 

「すまん、団員が呼んでるんでなちょっと外させてもらう」

 

「ああ、わかった」

 

リンドが聖竜連合の団員と話していると入れ替わりにレインがやった来た。

 

「キリトくん、ちょっとこっちに来てくれる?」

 

「どうした?」

 

レインのあとに続いておかしな機械がある部屋を抜け、次の部屋に行くとそこには。

 

「これは・・・・・・」

 

黒い、黒曜石の台座が置かれていた。

 

「黒鉄宮地下迷宮にあったシステムコンソールと同じやつか?」

 

そういうと俺はコンソールに触れ、コンソールの課目を操作し始めた。

 

「どう、キリトくん」

 

「・・・・・・ダメだ。あちこちにアクセスしてるがいろんな貼付や暗号があって内容がさっぱり理解できない」

 

「それって、余程見られたくない資料があるってこと?」

 

「たぶんな。恐らくこの施設と関連あるはずだ」

 

そのまま他にも探っていくと。

 

「キリトくん、これ」

 

「ん。これは・・・・・・『プレイヤーの感情に関するデータ』?拐ってきたプレイヤーにこんな実験をしていたのか」

 

「もしかしてこの施設にあるカプセルとかって・・・・・・」

 

「だろうな。・・・・・・ん、この日付け」

 

「この日付けって、確かストレアちゃんが体調悪くなった日だよね?」

 

「ああ。この日付けはダンジョンでストレアにあった日だし、こっちのはストレアがS級食材を持ってきた日だ。そしてこっちはストレアと一緒にボスを討伐しに行った日・・・・・・」

 

「プレイヤーの感情とストレアちゃんの体調不良・・・・・・どれも同じ日に起こってるね」

 

「ああ。これって偶然なのか?」

 

「・・・・・・ね、ねえ、キリトくん。私これに共通すること知ってるよ・・・・・・」

 

「ああ。俺もだ。感情と体調不良・・・・・・これに共通するのは」

 

「ユイだ」

 

「ユイちゃん」

 

「ユイは元々プレイヤーの感情をカウンセリングするメンタルヘルスカウンセリングだ。その負の感情が処理できなくなってユイのプログラムが崩壊しかけた・・・・・・まさか・・・・・・」

 

ある一つの予想が思い浮かんだがまだ確たる確証がないため言葉に出さなかった。

 

「取りあえずここにあるデータはすべて消去しよう。強制的に拐ってきた人体実験のデータなんてロクなもんじゃないはずだ」

 

そう言うと俺はすべてのデータ、バックアップも含むデータをデリートしコンソールの画面を消去した。

 

「よお、キリト、レイン。捕まえた奴らに聞いてるんだが全然口を割らねぇんだ。どうする?」

 

「捕まっていたプレイヤーは全員解放したし、別にいいだろう。そいつらが割らないならアルベリヒ自身から問いただして聞くだけだ」

 

「そうか。どうする、ここに見張りとかいるか?」

 

「いや、ここにあったデータはすべて削除した。もうここに利用価値はないはずだ」

 

「わかった。一応、あいつらは簡易牢獄でも作って見張るとするか」

 

「そうだな」

 

俺たちは捕らえたアルベリヒの仲間を連れて街に帰っていった。

100層まで残りあと4層。色々問題はあるが、今の目的は100層をクリアすることだけだ。

あのデータを見て俺がストレアに思い浮かんだ予想は――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ストレアはユイと同じくメンタルヘルスカウンセリングプログラム。MHCPではないかということだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在の最前線  第97層

 

 

 

残り      4層

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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HF編 第132話〈偽りの支配者(フェイカー)

 

~キリトside~

 

 

第97層のフィールドでアルベリヒの行っていたであろう事を止め、囚われていた人々を解放してから数日が経っていた。

あれからアルゴをはじめとし、血盟騎士団と聖竜連合の二大ギルドがあの場から逃げ去ったアルベリヒの行方を探していた。今のアルベリヒは殺人(レッド)ギルドと同じ扱いで、最重要人物になっている。そのため、見掛けたら即攻略組プレイヤー、牽いては俺たちに情報が行き渡るようになっていた。あの場で行われていた非人道的な実験についてはアスナたちにも伝えてある。それはもちろん、アルゴや聖竜連合団長のリンドやその幹部にもだ。話し合いの結果、捕らえたアルベリヒの部下は血盟騎士団と聖竜連合のメンバーが交互に見張りを担当し、攻略と同じようにアルベリヒの捜索を行うこととなった。

そんなこんなで、攻略は進んでいき第97層をその五日後にクリアし、ボスを犠牲者数0として攻略していった。

そして第98層。第98層のフィールドを見た俺たち攻略組は驚愕した。何故なら、第98層は主街区ハインシュト以外、全てがダンジョンだったからだ。幸いにもアインクラッドの構造は円錐のため、在ったダンジョンは左右の塔と、その奥にある迷宮区のみだった。しかし、そのダンジョンがまた困難を極めた。第98層と、アインクラッドの最上層だからか今までと比べ物にならないくらいのモンスターが現れたのだ。更に、迷宮区に入るためには左右の塔を攻略しないとならないため左右の塔にいるフィールドボス系のモンスターを倒さなければならなかった。そしてトラップも多数あり、幸いにも攻略で犠牲者は現れなかったが危ういと思ったところはあったそうだ。もっとも戦闘に関して俺とレイン、フィリアはホロウ・エリアで慣れていたため問題なく、トラップ系はフィリアに解除してもらった。

そうして左右の塔の攻略に四日掛かり、迷宮区の攻略にこれまた五日掛かった。迷宮区内部は今までの無機質な岩の素材ではなく、紅の上品なタイルや壁に張り巡らされ、今までとレベルが違っていた。そんな日々が過ぎ、第98層に到達してから十一日後、俺たちは、第98層のボス部屋にいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第98層 ボス部屋

 

 

 

「決めちゃってキリトくん!!」

 

「ああ!」

 

レインとスイッチし、バフのブーストも得た威力で目の前のボスに双剣を振りかざす。

 

「ハアアアアアアアッ!!」

 

「グルオォォォォ!!」

 

俺の≪二刀流≫奥義、《ネビュライド・エンプレス》22連撃を食らい、第98層ボス、カイザードラゴンはその巨体をポリゴンの欠片へと変えボス部屋の虚空へと消えていった。そして、目の前には金色のフォントで【Congratulations!!】と表示された。

 

『『『『『うおおおおおおおおおっ!!』』』』』

 

ボス、カイザードラゴンが討伐され辺り一面から攻略組の歓喜の歓声が響き渡った。

 

「やったよキリトくん!」

 

「やったねキリト!」

 

両手に握ってる双剣、『エリュシデータ』と『ダークリパルサー』を背中の鞘に仕舞うと、レインとフィリアから声をかけられた。

 

「お疲れレイン、フィリア」

 

「キリトくんも♪」

 

「お疲れ~」

 

「ついに98層のボスを倒せたな」

 

「うん」

 

「ホロウ・エリアのボスよりも強かったわね」

 

「まあ、もう後2層で、第100層だからな。ボスの力が桁違いなのは仕方ないだろう」

 

「そうかもね」

 

俺とレイン、フィリアが話している間も周りではアスナたち全員クリアしたことを喜んでいた。

 

「そんじゃ、あとは99層の転移門を有効化(アクティベート)したらこの層はクリアだな」

 

俺がレインとフィリアにそう言うと。

 

「いやいや、まだクリアではないよ」

 

何処からかそんな声が聞こえてきた。

 

「っ!?誰だ!」

 

その声に歓喜の声がシンと静まり、辺りは警戒体制を取った。

そこへ、第99層へと繋がる扉が開き、そこから一人の男プレイヤーが現れた。しかも、その格好に顔はよく知っている者だった。

 

「あなたは・・・・・・!」

 

「アルベリヒ!何故ここに!?」

 

そう、現れたのは今アインクラッド全域で指名手配されてるアルベリヒだった。

 

「やあ、キリト君ごきげんよう。そしてよくも僕の偉大なる研究の邪魔をしてくれたね」

 

「あれの何処が研究だ!」

 

アルベリヒの研究という言葉に俺は声を荒げて言う。

隣にいるレインとフィリアをはじめとして、アスナたちも殺気を高めていた。何故なら、あの場で行われていた研究やらに激しく激怒しているからだ。そんな、俺たちを気にせずアルベリヒは言葉を紡いだ。

 

「やれやれ、これだから低脳は困る。君が荒らしに荒らしてくれたこの僕の研究結果がどれだけ偉大で、素晴らしい物か分からないのかい?」

 

「勝手に人を拐った挙げ句に非人道的な実験を繰り返す・・・・・・それのどこに偉大さがあるんだ」

 

「あなたには偉大という言葉より、卑小という言葉がお似合いだよ」

 

俺とレインの言葉に周りから激しく同意の声が上がる。

 

「まさか僕の世界的快挙がこんか低脳共に邪魔されるなんて・・・・・・。まったく、腹立たしい限りだ。この僕の研究がどれだけ偉大で素晴らしいものか、君たちにも分かりやすく説明してあげよう」

 

そう言うとアルベリヒは如何に自分の研究が偉大か喋り出した。

 

「人は楽しいと思ったり、悲しいと思ったり、色々な感情があるだろう?例えば戦争・・・・・・戦争は怖いよね・・・・・・。どんなに訓練した兵士も死を前にすると、恐怖で思考が鈍ったり動けなくなったりしてしまう。では、恐怖で塗り潰された兵士の感情を喜びで満たしてやると、どうなると思う?飛び交う銃弾の中に身をおくことを、何よりの喜びと感じ、進んで危険な任務を果たそうとするようになる。軍にとって、これほど使える兵士はないだろう」

 

「つまり・・・・・・お前の言っている研究というのは、人間の感情を操作するということか?」

 

「そ、そんな!?そんなの!」

 

「なんてこと・・・・・・・!」

 

アルベリヒの言葉に俺たちは絶句した。

もしアルベリヒの研究が完成したら、アルベリヒの言ったとおりの感情を持つ兵士。いや、人間がごまんと溢れ返るだろう。

 

「どうかな?僕の研究の偉大さに気がついたかい?実際そういった実用に向けて、接触してきてる国が複数あるんだ。しかし、向こうでは人体実験などそうそう行えるはずがなくてね。研究が思うようにいかずヤキモキしているときに、ちょうどいい環境を見つけたんだよ」

 

「それが・・・・・・このSAOの世界か・・・・・・」

 

SAO(ここ)で?なんで・・・・・・・あ、そういうこと・・・・・・」

 

俺の言葉にレインも気が付いたようだ。それから少し遅れてアスナたちもどういう意味か理解したようだ。

アルベリヒの言葉にこの世界だとわかった理由は。

 

「確かに、ここで起きていることは外の人間・・・・・・。警察や国の人間には知り得ない。知ったところで、この世界で起きた不幸はすべて茅場明彦の責任になる」

 

そう。如何に悪逆非道な人体実験だろうが、すべての責任は茅場に取らされる。つまり、コイツがここで何をしようが現実ではすべて丸ごと茅場のせいとなる。例え向こう側で茅場でないと言ったところで確実足る証拠がないため逮捕はおろか、事情聴取すらも行わないだろう。

 

「そのうえ全員が、脳を操作するための電子パルスを発生させるナーヴギアを被っているんだ。つまりこの世界は、僕の研究にとって最高の実験場なんだよ。だが、実のところ、この世界に来てしまったのは事故でね」

 

「事故・・・・・・?」

 

アルベリヒの事故という単語に眉を潜める。

 

「(どういうことだ?事故でここに来たというのは)」

 

俺がそう思っていると。

 

「このゲームと他のシステムをネットワークで接続させるテストを行っていたら急に知らない場所に転移させられてね・・・・・・。そこがニュースで騒がれてるSAOの中と知ったときには、さすがに焦ったよ。事故でもなければ、こんな訳のわからないデスゲームに、誰が好き好んで入ってくるものか」

 

「ネットワークの接続やら、感情操作の実験やら明らかに普通のプレイヤーじゃないな・・・・・・。これらのことから考えられるのはただ一つ、以前言ったようにお前のアカウントはスーパーアカウントと呼ばれるものだな。そして、そのスーパーアカウントが使えるということはSAO世界を外部から観ていた人間・・・・・・お前は一体何者なんだ!何故スーパーアカウントが使える!?」

 

俺の問いかけにアルベリヒはニタニタとしながら言い出した。

 

「僕かい?僕はこのSAOの統括者だよ」

 

「なに?」

 

「SAOの統括者って・・・・・・この世界の管理者は茅場さんでしょ!?」

 

このSAOを管理しているのはプログラムであるカーディナルシステムだが、それを実際に調整しているのはこの世界で唯一つの支配者にして観測者、ゲームマスターであるヒースクリフこと、茅場明彦だ。

 

「んっふふふふ。茅場なんて、この事件が発生したときから失踪中だよ。そして、SAOを開発したアーガスはすでに解散・・・・・・。現在は、我々レクト社のフルダイブ技術研究部門がこの世界の維持を請け負ってる」

 

「レクト・・・・・・!?」

 

アルベリヒの口からレクトという単語が出た途端、アスナの表情に驚きが出た。

俺の記憶では、レクトとは大手企業の会社だったはずだ。そう思い出していると。

 

「そう、君のお父さんが経営している会社だよ・・・・・・明日奈」

 

「(明日奈?ニュアンスが少し違うが明日奈ってまさか・・・・・!)」

 

そう思っているとアスナの口から。

 

「ひょっとして・・・・・・あなたは・・・・・・須郷伸之!!?」

 

アルベリヒに向かってそう言った。

 

「ようやく気がついたかい?」

 

「アスナ、知っている奴なのか!?」

 

まさかのアスナの知人だということに驚きが隠しきれず、俺はアスナに問う。

 

「ええ・・・・・・。何回か会ったことがあるの・・・・・・。フルダイブ技術の権威ある研究者の一人で、茅場明彦に次ぐ実力を持っているとか言われてるわ・・・・・・」

 

「まったく・・・・・・茅場明彦に次ぐ・・・・・・か・・・・・・。確かに今まで幾度も茅場と僕は技術研究において、比べられることがあった。そのたびにヤツは、僕の一歩先を行っていた。だけど、それはもう終わりだ。茅場は失踪して、現在は生きているかどうかもわからない。築き上げた名誉も、この事件ですべて失った。今や、フルダイブ技術研究者で僕の右に出る者は、いないんだよ。さらに、僕は茅場の作ったこの世界を支配し、名実とともにヤツの上に立つんだ!」

 

「この世界を支配するって、いったい、どういうこと!?」

 

アスナの言葉に俺の頭の中ですべてのピースが繋がった。

 

「・・・・・・コイツが開発側の人間であること、そして今まで起きていた不可解な出来事それらのことから考えられるのは・・・・・・。やはりコイツのアカウントがスーパーアカウントと呼ばれるアカウントだからだろう。恐らく普通のプレイヤーが持つことができない権限を持っているはずだ・・・・・・」

 

「ふふふふふ・・・・・・さすが、その通りだよ、キリト君。これはスーパーアカウントと呼ばれるものでね、開発者のみが使用できるアカウントなんだよ。事故でこの世界に引きずり込まれたものの、スーパーアカウントがそのまま継承されたのは幸運だった」

 

「もしかして犯罪防止コードが発生しなかったのも、人を強制的に転移させるアイテムを持っていたっていうのもすべて・・・・・・」

 

「ああ・・・・・・コイツの、恐らく別の世界のスーパーアカウントがあったからこそ出来たものだ・・・・・・。上級装備も、妙に数値の高いステータスにも納得がいった。そして、コイツの名前を誰も知らなかったことがな」

 

すべてが繋がったことに、俺は目付きを鋭くしてアルベリヒを、見る。

 

「これだけのステータスがあれば、このゲームを終わらすことも余裕だろ?この世界にいるプレイヤーたちで一通り実験を済ませたら、僕自身がこのゲームを終わらせる。そうすれば、自らデスゲームに飛び込み、人々を救った英雄として、さらに僕は注目されることだろう」

 

アルベリヒの言葉に俺は、は?という台詞が思い浮かんだ。

 

「アルベリヒ、お前は本当に自分がこのデスゲームを終わらせることができると・・・・・・本当に思っているのか?」

 

「当たり前じゃないか。このスーパーアカウントの前に、敵うはずがないのさ」

 

「・・・・・・ゲーム初心者がいきなりこんな最上階のボスを一人で倒す・・・・・・?言っとくぞ、あんたには絶対無理だ」

 

「なに?」

 

「この世界は装備やステータス、そして数値だけじゃない。積み重なった経験がものをいうんだ。俺に勝てないようでボスを倒そうなんて、一生無理だ」

 

「クソガキが・・・・・・・っ!!」

 

「あんたが俺たち攻略組に近づいたのも英雄になる、その為か・・・・・・」

 

「そうとも。その中に明日奈がいるのを知ったときは驚いたけどね」

 

「悪いが・・・・・・お前が英雄になることはない。一生、未来永劫な。向こうに戻ったら、俺たちは警察にお前の悪事をすべてを話す」

 

これだけの人数がいるんだ、ここにいる全員が向こう側でこの事を話せばアルベリヒ・・・・・・いや、須郷伸之は捕まる。

そう思っていると、須郷は。

 

「それは無理な話だよ。何故なら、君たちはここで死んでしまうのだからね」

 

余裕綽々風に言った。

 

「・・・・・・ステータスが高いだけで俺たち攻略組に勝てると思っているのか?」

 

「それに私とキリトくん、アスナちゃんたちはユニークスキルも持ってるんだよ。・・・・・たった一人で私たち攻略組全員、総勢49人を相手できると思ってるの?」

 

ここにいる攻略組全員は、今までの困難を乗り越えてきた猛者だ。

例えスーパーアカウントを使っている須郷といえども、この人数を一人で相手にするのは不可能だ。

俺は背中から双剣を抜き放ってそう脳裏に浮かばせながら須郷を見る。俺に続けてレインたちもそれぞれの武器を抜剣する。

 

「・・・・・・君もつくづくバカだね。出来ると思っているからこうして君たちの前に現れたんじゃないか。さあ、攻略組のみなさんにプレゼントだ!受け取ってくれたまえ!」

 

呆れたように須郷はいい、ウインドウを開き何かの操作をすると。

 

「きゃあっ!」

 

「うっ!ぐっ!?こ・・・・・・これは!?」

 

突然俺たちの体にとんでもない負荷がかかった。

あまりの負荷に俺たちは耐えられずボス部屋の床に倒れた。

 

「な、なに・・・・・・・これ・・・・・・!」

 

「な、なんだ・・・・・・!か、身体が・・・・・・しびれて・・・・・・」

 

「ぐっ・・・・・・動けない・・・・・・・」

 

「ぐうっ!?なにを・・・・・・しやがった・・・・・・」

 

俺たちに何かをした張本人である須郷はそんな光景に愉快だとでもいうように高らかに笑って話す。

 

「アハハハハハハハハッ!!やあ、気に入ってくれたかな?スーパーアカウントを使ってここにいる全員に麻痺属性を発生させたんだ。君たちは一定時間、まともに体を動かすことは出来ないよ。どうだい、これがこの世界の支配者の力だよ!」

 

「き、貴様!」

 

「あ、あなたね!」

 

「キリトくん・・・・・・レインちゃん・・・・・・・」

 

キッと睨み付けるような眼差しで須郷を見る俺とレインにアスナが弱々しく喋る。

 

「ああ、そうそう・・・・・・明日奈。君は殺したりしないから安心してくれ。まあ、実験が終わるまでは何処かに閉じ込めておくことになるけどね。現実の世界では、君が眠り続けている間に、僕と君とが結婚するように話が進んでいる」

 

「な、なにを言っているの!?」

 

「結婚が成立すれば、君のお父さんの会社であるレクト社は僕のものになる。もちろん、そんなことになったら君は拒絶するだろう。でも、僕の研究が完成して君の感情を操ることが出来れば、君は拒絶するどころか喜んで僕を受け入れてくれるだろう」

 

「・・・・・・っ!?」

 

「ひっひっ!!心も身体も僕の物というわけだよ」

 

「き・・・・・・さま・・・・・・っ!!」

 

「ゆる・・・・・・・さない・・・・・・・っ!!アスナちゃんに・・・・・・・あなたは・・・・・・・!!」

 

あまりにも下衆な話に俺とレインは怒りを表し、必死に須郷がかけた麻痺に足掻く。

 

「・・・・・・気に入らないな、レイン君のその眼」

 

そういうと須郷はレインの傍にまでやって来た。

 

「君は殺さずに生かしておくとしよう。僕の研究が完成して君に施せば、君は僕に忠実な女になるだろう。ああ、それとも明日奈と同じ様にしようか?」

 

「き・・・・・・さま・・・・・・っ!レインに・・・・・・手を出すな・・・・・・!」

 

「ああ、そういえばキリト君とレイン君は結婚していたかな?なら、キリト君の目の前で僕に従属を誓わせるレイン君を見せるってのもいいなあ」

 

「・・・・・・っ!?い、いや・・・・・・っ!触らないで・・・・・・っ!!」

 

レインは目を瞑って、恐怖を奮わせて言う。

倒れるレインに近づいた須郷は愉快そうにいいながら、レインの髪を触った。

 

「須郷・・・・・・っ!キサマァ・・・・・・っ!!!」

 

「ひっひっ!!アハハハハハハハハッ!!」

 

高らかに、甲高い声で笑う須郷に俺は怒気を飛ばしながら声を荒げた。

そんな面白そうに一通り笑うと、須郷は立ち上がりウインドウを再び開いた。

 

「さて、長話はここまでだ。それでは、君たちの最後の相手はコイツにやらせるとしようかな」

 

ウインドウを幾つか操作しウインドウを閉じると、モンスターが出現するポップ音が目の前から聞こえた。

見ると、そこには赤いローブを着た、魔導師のような姿をしたボスが出現していた。そして、それはとても見覚えがあった。俺たち全員が。

 

「そ・・・・・・そいつは!?」

 

「あ・・・・・・あの時・・・・・・。デスゲームが・・・・・・はじまったときに・・・・・・私たち全員の前に・・・・・・現れた・・・・・・!」

 

現れたボスは、あの時。このデスゲームがはじまったときに茅場が使っていたアバターだったのだ。

 

「ん?コイツを知っているのか?どうもこのゲームのラストのボスとして用意されていたものらしいんだが・・・・・・・。まあ、君たちにとってはこれが本当にラストバトルなわけだし、ちょうどいいじゃないか」

 

須郷がそういうと、赤いローブを着たボスの眼と思われる部分の空洞に二つの光が灯り、須郷には近寄らず倒れ伏す俺たちに向かってきた。

 

「さあ、なにもすることができない中で、にじり寄る死の恐怖に怯えながらゆっくりとおやすみ・・・・・・アハハハハハハ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれからなす統べなくボスの攻撃を受け続けて俺たち全員のHPはすでにイエローにまで入っていた。幸いにもまだ誰も死んでいないが、それもこのままでは時間の問題だろう。

 

「ぐっ・・・・・・っっ・・・・・・・!!」

 

「キリト・・・・・くん・・・・・・!」

 

ボスの攻撃を受け、痛みに耐えていると。

 

「どうだい。死が迫る恐怖は?全身が恐怖で震え上がっているのかな?それとも絶望で埋め尽くされているのかな?ああ、どうせなら今のキリト君の感情データも記録しておくべきだった」

 

「くっ・・・・・・!」

 

「わかっただろう?これが、この世界の支配者の力というものだ。君たちは長い年月をかけて、必死にレベルを上げたんだろうけど、スーパーアカウントの前では無力だったね。どんなにリアルに作り込まれていても、所詮この世界は、ただのデータの集まりだ。どれだけ時間をかけようが、犠牲をかけようが管理者・・・・・・つまり神にはどんなにあがいても敵うはずがないんだよ、アハハハハハハ!」

 

「き、貴様・・・・・・!」

 

須郷の言葉に俺は怒りをさらに高まらせた。

 

「(このアインクラッドに生きる人たち・・・・・・。そして死んでいったサチやケイタ、ディアベル、色んな人たち・・・・・・。俺や彼らの過ごした時間が・・・・・・。そこで確かに生きていたすべてがただのデータだと・・・・・・!ふざけるな・・・・・・!)」

 

「二年以上もの間、無駄な努力をしたようだねごくろうさま」

 

須郷のそんな言葉に俺は四肢に力を込め、須郷の施した麻痺に、いや、システムに抗う。

 

「ふ・・・ざ・・・け・・・・・・な・・・・・・!」

 

「ゆる・・・・・・せない・・・・・・!」

 

俺とレインは声に出して少しずつ声を上げていき。

 

「ん?」

 

「ふざけるな!」

 

「絶対にゆるさない!」

 

瞳に、体全体に意思を込めシステムに抗い。

 

「な!?」

 

「う・・・・・・お・・・・・・・」

 

「あ・・・・・・ああ・・・・・・」

 

「なに?」

 

「う・・・・・・ぐおおお・・・・・・・!」

 

「あ・・・・・・ああぁぁ・・・・・・!」

 

「おおおおおおおおお!!」

 

「あああああああああ!!」

 

双剣を手に携えて、立ち上がり背中合わせに何時もの構えを取る。

 

「ば、馬鹿な!麻痺を解除しただと!?それになんだその瞳は!?」

 

動揺する須郷を他所に、俺とレインは目の前のボスを視線にとらえる。

 

「よし、動ける」

 

「私も動けるよ」

 

「まずはアルベリヒの前にコイツを片付けるぞ!」

 

「うん!いくよ、キリトくん!」

 

「ああ!」

 

意識を集中させ、俺とレインは同時に言い放つ。

 

「「―――――共鳴(レゾナンス)!!」」

 

 

 



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HF編 第133話〈反撃〉

 

~キリトside~

 

 

「「――――――共鳴(レゾナンス)!!」」

 

 

須郷の施した麻痺を解除し、両手に剣を持って立ち上がった俺とレインは同時に≪シンクロ≫スキルの《共鳴》を発動させた。

そしてさらに。

 

「零落白夜!」

 

「絢爛舞踏!」

 

俺とレインの固有スキルを発動させる。

共鳴の効果もプラスされて、俺とレインのHPバーの上には幾つものバフが掛けられていた。

 

「いくよ、キリトくん!」

 

「ああ!最速でアイツを倒す!」

 

そう言うや否や、俺とレインは残像が残るかのような速度でボスをに接近する。

 

「はあああぁぁっ!」

 

「やあああぁぁっ!」

 

端から二手に分かれて回り込むように接近し、ボスの巨体を横一文字に切り裂く。ボスの着ている紅いローブには、前後に赤い斬られた痕とエフェクトが残る。

 

「―――――――!!」

 

「バ、バカな!この僕でも捉えられないだと!?あり得ないだろ!!」

 

ボスと驚いている様子と、自分一人だけ安全地帯にいる須郷は耳障りな声であり得ないと、声を荒げた。

 

「す、すごい・・・・・・」

 

「あれが・・・・・・」

 

「キリトとレインの・・・・・・」

 

「二人の本気ってことか・・・・・・」

 

「けど、いくらバフが掛けられてるからって言っても、あの反応速度と攻撃速度はシステムを越えているわ」

 

そして麻痺に足掻いてるアスナたちのそんな声も聞こえてきた。

 

「キリトとレインのあの瞳・・・・・・・あのときと同じ・・・・・・・」

 

そしてフィリアのそう言う呟き声が耳に入った。

今の俺には時間が停まっているかのような体感が感じ取れていた。ボスの攻撃は、さすがラスボスなだけあって速くて重い。固有スキルでHPが全快しているとはいえ、スカルリーパーみたいに一撃で殺されたりはしないだろうがHPがごぞっと削り取られるのは眼に見えているだろう。ギリギリなところでボスの攻撃の軌道を逸らしたり、大きく距離を取ってかわす。

 

「レイン、先にヤツの腕を破壊する!」

 

「了解だよ!」

 

このボスの攻撃は今のところ、両腕による薙ぎ払いや叩き付けなどの近接攻撃と、ボスの体から扇状に放たれるビームによる遠距離攻撃、そして全方位に放たれる衝撃波だ。

現状、倒れてるアスナたちの方に攻撃の余波やヘイトがいかないようにレインと交互にタゲを取りつつ立ち回っているが。

 

「―――っ!」

 

ギリギリでボスの両手を組んでの振り下ろしを避け、ボスの背後に回る。

 

「っのぉ!」

 

背後に回り込んだ俺は片手剣ソードスキル《ハウリング・オクターブ》8連撃を繰り出す。

 

「――――――!!」

 

「レイン!」

 

「うん!」

 

ソードスキルの技後硬直を無視して、俺はレインとスイッチする。

 

「やああっ!」

 

「――――――!!」

 

スイッチしたレインは、俺の《ハウリング・オクターブ》によって動きが止められたボスに、≪多刀流≫ソードスキル《ディバイン・エンプレス》15連撃を追撃で放った。

 

「まだまだぁ~!」

 

「!?」

 

レインは驚くことに、そこから≪多刀流≫ソードスキル《ローディエント・ルージュ》6連撃を繰り出した。

そう、それは俺があの時使ったソードスキルを次のソードスキルへと技後硬直を無視して繋げるスキル。

 

剣技連携(スキルコネクト)!?レイン、使えるようになったのか!?」

 

「え、あ、うん!」

 

《ローディエント・ルージュ》を放ち終えたレインはボスから大きく距離を取って、俺の横に並び立った。

 

「まあ、出来るようになったのはこの間だけどね」

 

「なんでさっきのボス戦で使わなかったんだ?」

 

「あ~・・・・・・私の剣技連携、できる確率が50%あるかどうかなんだ。だからあの時は使わなかったの」

 

「今は?」

 

「えっとね、今は出来る、ということしか思い浮かばないよ!」

 

「そ、そうか」

 

レインの自身に少しだけ退きながらそう答えた。

 

「・・・・・・ヤツのHPは残り二段か」

 

ボスとやり始めて時間は5分経過していた。

 

「キリトくん、もう速攻で片付けようよ」

 

「奇遇だなレイン。俺もそう思っていたところだ」

 

「それじゃあ」

 

「うん」

 

「――――――!!」

 

「「発動(アクティブ)神双解放(リミットリリース)!!」」

 

振り下ろされたボスの両手を左右に避け同時にスキルを発動する。

地面に着地すると、HPゲージの上のバフに神々しい輝きを放つアインクラッドの紋章が表示される。

 

「いくぞ!」

 

「いくよ!」

 

着地すると同時に俺とレインはボスに向かって、地を蹴って駆け出す。

 

「――――――!!」

 

「はあああぁぁ!」

 

無造作に突き出されたボスの手を避けて、その巨大な腕の上を駆け上り、頭から一刀両断するように切り裂く。

 

「――――――!!」

 

「やあああぁぁ!」

 

そして、続けてレインが背後からソードスキルで追撃を掛ける。

 

「――――――!!」

 

ボスは両腕を振り回してレインを攻撃しようとするが、その場に既にレインはいなく、誰もいない虚空を振り払っただけだった。

そこからは圧倒的な俺とレインの剣戟にボスはただ振り回されているだけだった。

ほぼ会話なしの、俺とレインの息の合ったコンビネーションにボスは無茶苦茶に攻撃を仕掛けるが、そのどれも今の俺たちには掠りもせず、二段目のHPは神双解放を発動して5分で消し飛び、残り一本のゲージも3分で半分のイエローゾーンにまで減少していた。

 

「――――――!!」

 

満身創痍の巨体のボスはスタン効果のあるビームを放ってくるがそれを左右に避けて、同時にクロスに切り裂く。

 

「これで終わらせるぞ!」

 

「そうだね!」

 

ボスの背後に回った俺とレインは意識を集中させ、背中合わせに俺の右手の『エリュシデータ』とレインの左手の『キャバルリーナイト』をクロスするようにして重ね合わせた。そこへ俺とレインを包み込むように黒金と虹色の交じりあったオーラがベールのように円錐上に包みこんだ。それから約5秒ほど溜め込み。

 

「――――――!!!」

 

「「ッ!!」」

 

ボスが俺たちに攻撃してくるのと同時に俺たちも溜め込み(チャージ)が終わり。

 

「――――――!!?」

 

俺とレイン、二人で放つ最強の剣技が放たれた。

発動したソードスキルは俺の双剣には黒金の、レインの双剣には虹色のライトエフェクトを輝かせた。

システムの限界を越えた、最強にして最凶のソードスキル。一撃にて数擊行い、幾重にも切り刻む。

 

「「―――トワイライトエデン・・・・・・・」」

 

幾数の斬撃を会話すらせずに、レインと意気のあったコンビネーションで繰り出し、≪シンクロ≫スキルのバフと自分のステータスをシステムの限界を越えるまでに引き上げた秘奥義を放つ。ラスト2撃、俺の『エリュシデータ』による横凪ぎ払いとレインの『トワイライトラグナロク』の横凪ぎが交差するようにボスの巨体を捉え。

 

「「―――デュオクライシスッ!!!!」」

 

そのHPを1ドットも残さず奪い尽くした。

半分近くあったHPゲージが一気にゼロになり、≪シンクロ≫ソードスキル秘奥義《トワイライトエデン・デュオクライシス》100連撃の余波で風がボス部屋の中を吹き荒れるなか、目の前のボスはポリゴンが一瞬ぶれたかと思うと次の瞬間には爆散して辺りの虚空に溶け消え去った。

 

「これでボスは倒した」

 

「そうだね。あとは――――!」

 

ボスを倒し、剣を再度握り直し俺とレインは須郷を睨み付ける。

その須郷はというと。

 

「バ、バカな・・・・・・!?あり得ない!たったの15分足らずであのボスを二人で倒しただと!?」

 

眼を見開いてあり得ないと何度も言っていた。

そしてそれと同時に。

 

「ようやく麻痺が解除されたぜ」

 

「ええ」

 

クラインとランの声が聞こえ、周囲から続々と須郷のした麻痺で動けなくなっていた攻略組の面々が立ち上がった。

 

「みんな!」

 

「―――そろそろ観念するんだな須郷!」

 

みんなが立ち上がりそれぞれの武器を手に取るなか、俺は須郷にそう言った。

 

「くっ!観念しろだと?ふざけるなっ!」

 

「この多勢に無勢の中、貴様に勝ち目があるとは思えないぞ」

 

「いい加減、大人しく投降したら」

 

須郷の声に俺とレインは殺気をかなり出して返す。

 

「さっきはどうしてお前たちの麻痺が解除されたのか知らないが、今度はそうはいかない!」

 

「また性懲りもなく卑怯な手を!」

 

「そうはさせないよ!」

 

ウインドウを開いた須郷に向けて、レインはなんの躊躇もなくサウザンド・レインを放った。

 

「ちっ!邪魔をするな、この女!」

 

しかし、レインのサウザンド・レインは須郷に当たる直前に、不可視の障壁で阻まれ、あと少しのところで当たらなかった。

 

「!?今のは・・・・・・・!」

 

レインのサウザンド・レインが阻まれた障壁は、何度も見たものだった。

 

「――――不死存在(イモータル・オブジェクト)だと!?」

 

そう、破壊不能オブジェクトの障壁だった。

 

「ちっ!スーパーアカウントで自身に不死存在をしたのかよ・・・・・・!」

 

「どれだけ卑怯な事をすれば気がするの!」

 

俺とレインが忌々しげに睨み付けると。

 

「どうとでも言え!一度ここにいる僕以外の連中の状態をリセット・・・・・・。それから再度、状態を麻痺に設定・・・・・・これでどうだっ!?」

 

ウインドウを操作した須郷がそう言う。

すると、立ち上がったばかりのアスナたちはその場に膝を着いた。

 

「ま、また・・・・・・っ!」

 

「こっ・・・・・・のぉ・・・・・・!」

 

「これしきで・・・・・・・っ!」

 

ユウキたちは麻痺に抗うように、顔を歪めて気合いを入れていた。

ユウキたちが倒れ伏すなか、俺とレインは麻痺を、システムを拒絶して麻痺と意思で対抗していた。

 

「なんだよ・・・・・・!なんなんだよお前らは!」

 

須郷の絶叫が俺たちの耳に入った。

 

「なんで麻痺に設定してるのに倒れないんだよ!なんなんだその瞳は!僕はこの世界の神だぞ!ガキ風情がっ・・・・・・この僕に・・・・・・っ!逆らうなぁっ!!」

 

そう声を荒げて言うと再びウインドウを表示させ。

 

「システムコマンド!ペインアブソーバをレベル0に!!そして、すべての状態異常を二人に指定!!」

 

「ぐっ・・・・・・!」

 

「きゃっ・・・・・・・!」

 

さすがに須郷の設定した状態異常に、今度は対抗できなかった。須郷が設定した状態異常は麻痺の他、毒、出血、スタンなどこのアインクラッドにおけるデバフ全てだった。抵抗はしてはいるが、身体がいうことを聞かないのだ。須郷の設定した状態異常のせいか、身体がいきなりとてつもなく重くなり、まるで背中に鉛鉄をたくさん背負っているような感じで、ボス部屋の床に片膝を着いた。

 

「あはははははははは!!今度は効いたようだね!」

 

「す・・・・・・ごう・・・・・・っ!貴様・・・・・・っ!!」

 

「さて、まず最初にキリト君から殺そうかな?いや、それともキリト君の目の前で、大切な人がこの世から消える姿を見せてから殺そうかな。どれがいいかいキリト君」

 

「そうは・・・・・・させない・・・・・・っ!!」

 

「あー、うっさいな。君は僕の質問に答えればいいんだよ、っ!!」

 

「ぐあっ!」

 

「キリトくん!」

 

須郷に顔を蹴られ、膝立ちから倒れ伏した俺に、とんでもない痛みが襲い掛かってきた。

 

「どうだい?今はペインアブソーバを0にしてるからねえ、痛いだろう?ものすごく痛いだろう?・・・・・・なんとか言えっ!!」

 

「ぐはっ!」

 

あまりの痛さに喋ることがままならない俺に、須郷はさらに俺に向かって蹴ったりしてきた。

 

「あっはははははは!!これが神の・・・・・・!僕の力なんだよ!君たちはそうやって地べたに這いつくばっているのがお似合いさ」

 

「キリト・・・・・・くん・・・・・・・!」

 

「キリト・・・・・・・!」

 

「キリト・・・・・・さん・・・・・・・!」

 

「やれやれ。どいつもこいつも・・・・・・」

 

俺に向かってレインたちは倒れ伏しながらも声をかけてくるが、それが気に入らないのか、須郷は溜め息を吐くと。

 

「なにを・・・・・・!」

 

俺の大切な双剣。『エリュシデータ』と『ダークリパルサー』の柄を握り締めた。

 

「さて、質問だよキリト君。今ペインアブソーバが0の君に、この剣を突き刺したらどうなると思う?」

 

「・・・・・・・っ!?」

 

須郷の台詞の意味がわかった俺は顔を強張らせる。

その俺の表情に満足したのか須郷は。

 

「ヒッヒッヒッ!答えは、自分の身で感じるといい!!」

 

「や、やめ・・・・・・やめて・・・・・・・やめてぇぇ!!」

 

レインの悲鳴とともに須郷は俺の双剣の切っ先を俺に向け、双剣を俺の身体に思いっきり突き刺した。

 

「ガアアアッ!!」

 

焼けるような痛みに、声にならない悲鳴を上げた俺は、あまりの痛みに気を失いそうになった。

 

「キリトくん!!」

 

「キリト!」

 

「キリトさん!」

 

「あはははははははは!!かの≪黒の剣士≫もこれでおしまいさ!あとは、この武器で止めを刺すだけさ」

 

朧気に見える少し離れた所にいる須郷の右手には、見たことない、禍々しい黒紫の短剣が握られていた。

 

「冥土の土産に教えて上げるよ。この武器はね、スーパーアカウントのみが使える数ある武器のなかでも中々面白いものでね。なんと、刺した相手のHPを必ず0にする。しかも、一瞬ではなくて、ジワジワとだ」

 

「!?」

 

「どうだい?今目の前に死があるという光景は?ああ、こんなことならキリト君の感情データは録っておくんだったなあ。僕にだけ教えてくれないかい?目の前に死があるという恐怖の感情をさあ!ヒッヒッヒッ!」

 

「・・・・・・・!!」

 

迫り来る須郷の短剣に、動けない俺は成す術がなかった。どれだけ意思を込めても身体がいうことを聞かないのだ。恐らく、あまりの痛さに、反応が伝わってないのだ。

そう思いながら、俺は最後の足掻きとして身体全体に意思を込める。HPは少しずつ減っていっているが、まだ少しだけある。HPがあるなら俺はまだ動けるはずだ。そう固い意思を込めて。

 

「さあ・・・・・・これでお別れだキリト君。精々安らかに、あの世に逝くと良いさ!」

 

「ぐっ・・・・・・!」

 

動け!、と意思を込めるがビクともしない俺に、須郷の持つ、死の短剣が少しずつ迫る。

 

「キリト!」

 

「キリトさん!」

 

「キリトくん!」

 

ユウキたちの声が耳に入る。

スローモーションのように目先の短剣の切っ先が迫るのを見る。すると、突然目の前に影が出来た。

 

「キリトくんは、私が・・・・・・絶対に守る!!」

 

「レイ・・・・・・ン・・・・・・・っ!!」

 

俺と同じく須郷の設定した状態異常で動けずにいたはずのレインが俺の目の前に両手を広げて盾のように俺と須郷の間に入ったのだ。

 

「・・・・・・・!!」

 

俺の目の前に立ちふさがるレインへと切っ先が1メートル弱を切ったその瞬間。

 

「ダメェ!!」

 

そんな声が聞こえてきた。

 

「え・・・・・・っ?!」

 

その声の持ち主は立ちふさがるレインの身代わりになるように、須郷の短剣の目の前に立ち、須郷の短剣をその身に受けた。

あまりの一瞬の出来事に、反応できずにいるが、やがて思考が回復し、レインの目の前を見るとそこには一人の紫色の髪と服を着た女性が立っていた。そして、その女性のお腹には須郷の短剣が突き刺さっていた。その女性は、俺たちのよく知っている人物だった。

その人物は――――――。

 

「キリト・・・・・・レイン・・・・・・大、丈夫?」

 

「ストレア!」

 

「ストレアちゃん!」

 

俺たちの仲間の一人、ストレアだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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HF編 第134話〈ストレアの正体〉

 

~キリトside~

 

 

「キリト・・・・・・レイン・・・・・・大、丈夫?」

 

「ストレア!」

 

「ストレアちゃん!」

 

レインを庇ったストレアの腹部からは須郷の握っている短剣の切っ先が出ていた。

 

「な、なんだお前は!邪魔をするな!」

 

「もう、あなたの企みは終わりだよ」

 

「終わりだと?ふざけるな!この・・・・・・っ!」

 

須郷はストレアに掴まれてない右手でウインドウを出そうとするが。

 

「なっ!?で、出ない!?何故だ・・・・・・!何故、僕のウインドウが出ないんだ!」

 

「ふふふっ。・・・・・・残念だったね・・・・・・もらっちゃった・・・・・・」

 

「もらった?!お、お前が何かしたのか!?」

 

「ふふ・・・・・・・。システムコマンド、みんなに掛かってる状態異常を解除。そしてペインアブソーバを10に。さらにID、アルベリヒのレベルを1、ステータスをオールリセット」

 

「な、なんだと!?」

 

「大丈夫だよ、キリト、レイン。キリトたちのことは私が・・・・・・守るから」

 

「ストレア!」

 

「ストレアちゃん!」

 

痛みがなくなった俺は、剣が背中から抜き落ちるのを無視して崩れ落ちたストレアに近寄る。

ストレアが崩れ落ちたことにより、動けるようになった須郷はその場から後ずさる。が。

 

「よくもやってくれたな」

 

ストレアのお陰で動けるようになったクラインたちが、須郷の逃げ道を塞ぐ。

 

「お、お前ら、近寄るんじゃない!」

 

「何が近寄るなだ!さんざん好き勝手にしやがって・・・・・・」

 

「麻痺させられた礼と・・・・・・・」

 

「キリトに剣を刺した礼をしないとな!」

 

「っの・・・・・・・!」

 

須郷は99層の方に逃げていこうとするが。

 

「逃がさないわよ須郷伸之!」

 

「ボクらにしたことの礼と!」

 

「キリトさんとレインさん。アスナさんやストレアさんにしたことの報復は受けてもらいます!」

 

その行く手をアスナとユウキ、ランが剣を突きつけて塞いだ。

 

「須郷伸之、あなたにはこのゲームが終わるまで大人しくしてもらいます。決して逃げられるとは思わないことね」

 

「こ、この低脳どもがぁ!放せ!放せぇぇ!」

 

クラインたちに追い詰められ、多勢に無勢声を荒げながら抵抗するアルベリヒに一瞬視線を向け、すぐにストレアに移した。

 

「ストレア!しっかりしろ!」

 

「なんで!?ポーションや回復結晶を使ってるのにHPが減るのが止まらない!」

 

抱き抱えるストレアの顔色はかなり悪く、HPはレインが回復してくれるがすぐにHPは減少する。

 

「くそっ!あの武器に付けられた状態異常のせいかよ!」

 

ストレアの様子に、俺はすぐ傍に落ちている短剣を見ていった。

 

「たぶんそうだよ!あれに付与されていたデバフがなんなのか判らないと解毒の手の内ようがないよ!」

 

「どうすればいいんだ!?」

 

もう何本目かわからないほど、ポーションをストレアに飲ませるレインが、俺にもポーションを渡して言った。

レインから受け取ったポーションを飲むと、レッドゾーンに入っていた俺のHPがレッドゾーンからイエロー、グリーンへと回復し始めた。

 

「フィリア、頼む!残ってる回復アイテム全部だしてくれ!」

 

「わかった!」

 

「キリトさん、私たちのも使ってください!」

 

「助かる!」

 

俺の声にフィリアだけじゃなく、ランも。ユウキやアスナ、シノン、リーファなどすべてのプレイヤーが各々の回復アイテムを渡してくれた。

HPを回復させていると、ストレアが息苦しそうに話した。

 

「う・・・・・・・うぅ・・・・・・キリト・・・・・・レイン・・・・・・アイツ・・・・・・やっつけた?」

 

「ああ!捕まえた!ストレアのおかげだ!」

 

「やったね・・・・・・アイツが持っていたアカウント権限奪ってやったんだ・・・・・・・」

 

「権限を奪った?」

 

「うん・・・・・・でも、そんなことしなくてもキリトとレインなら勝てたかな・・・・・・」

 

「そんなことないよストレアちゃん!ストレアちゃんのお陰であの人を捕まえられたんだよ!」

 

「ありがとう・・・・・・レイン・・・・・・。あのね・・・・・・アタシ・・・・・・キリトたちに言ってないことがあるの・・・・・・聞いてくれる?」

 

「ああ・・・・・・」

 

「うん。聞かせてストレアちゃん」

 

「アタシね・・・・・・アタシ・・・・・・」

 

そう区切りを入れたストレアは語った。

 

「・・・・・・人間じゃないんだ・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・っ!?」

 

「ストレア・・・・・・・やはり君は・・・・・・・」

 

俺とレインが息を飲み、ストレアは語り続ける。

 

「うん・・・・・・アタシは・・・・・・・《メンタルヘルスカウンセリングプログラム》・・・・・・この世界のプログラムの一つなんだ・・・・・・」

 

「それってユイちゃんと同じ・・・・・・・!」

 

「やっぱり・・・・・・そうだったんだな・・・・・・」

 

「あれ・・・・・・キリトとレイン・・・・・・二人ともアタシのこと気付いていたの?」

 

「いや、ただの予想だった・・・・・・」

 

「うん・・・・・・あの人の研究の日とストレアちゃんの頭痛が同じ日に起きたこと・・・・・・それと似たようなことが前。・・・・・・ユイちゃんにあったから」

 

「そうなんだね・・・・・・」

 

ストレアは苦笑するかのように軽く笑い続けた。

 

「アタシはね・・・・・・・ずっと、観ているだけだったんだ」

 

「このゲームが始まった頃からか・・・・・・・」

 

「うん・・・・・・・ずっと、暗いところで・・・・・・・一人で観てた・・・・・・・いろんな人の感情・・・・・・・喜びや怒り・・・・・・絶望や悲しみを・・・・・・たくさん」

 

「ストレア・・・・・・」

 

「キリトたちが75層で戦っていたときもずっと観てたんだ・・・・・・」

 

「あの場にいなかったのに観ていたというのは、そういうことか・・・・・・・」

 

以前。初めてあったときにストレアが言っていた意味を俺は初めて理解した。俺たちのことをずっとモニタリングしていたのなら75層でのことを知っていてもおかしくない。

 

「うん。だけど、そのとき突然目の前が真っ暗になって、気がついたら、この世界の中にひとりで立っていたの・・・・・・。それからしばらくは記憶もおかしくて・・・・・・アタシ本来の目的も忘れてしまっていて・・・・・・。でもね、唯一憶えていたことがあった」

 

「それが俺とレイン・・・・・・か・・・・・・」

 

「私と、キリトくん?」

 

レインが少し不思議そうに首をかしげると、ストレアは小さく笑い。

 

「はは・・・・・・さすがキリト・・・・・・うん、アタシは唯一憶えていたキリトとレインのことを捜したんだ。そのあと、次第に記憶が戻ってきて、アタシはこの世界のプログラムとしての役割を思い出したの」

 

「プログラムとしての役割・・・・・・・?」

 

「うん・・・・・・それは、この世界の崩壊を阻止しなくちゃならないこと・・・・・・」

 

「世界の崩壊というのは・・・・・・つまり俺たちがSAOをクリアするということか?」

 

ストレアの言う、世界の崩壊という言葉を俺は、俺たちが100層に到達しボスを倒してこの世界をクリアするということだと分かった。確かに、プログラムとしてはなんとしても俺たちにこの世界をクリアさせたくないはずだ。世界の崩壊がクリアだとすると、クリアしない、世界の停滞がカーディナルシステムがストレアに与えたプログラムとしての役割なのだろう。

 

「そう・・・・・・でも・・・・・・アタシには阻止することができなかった・・・・・・。でもね・・・・・・出来なくてよかった・・・・・・。キリト・・・・・・レイン・・・・・・みんな・・・・・・今までありがとうね・・・・・・」

 

「おいっ!ストレア!ヘンなこと言うな!」

 

「ストレアちゃん!しっかりして!」

 

何時もの元気な声ではなく、弱々しい声と言葉に俺とレインは声をかけ続ける。

そんなところに。

 

「ううっ!!」

 

突然ストレアが苦しみだした。

 

「ストレア!ストレア!」

 

「待ってくださいキリトさん!ストレアさんの全身からなにか黒いオーラみたいなものが出ています・・・・・・!」

 

ランの言うとおり、ストレアの全身からなにか黒いものが現れた。それはストレアを侵食しようとしているかのようだった。

 

「なにあれ!?」

 

「な、なんだこれは!?」

 

「これは・・・・・・・一体・・・・・・!?」

 

いきなりストレアの全身を包み込もうとする黒いオーラに俺たちが驚いてる最中も、ストレアは苦痛の表情を浮かべた。

 

「う、ううっ!!」

 

「ストレア!」

 

「ストレアちゃん!」

 

ストレアを呑み込もうとするオーラを無視して、俺とレインはストレアを放さないというかのように抱き締める。

 

「キリト!レイン!離なれて!二人まで呑み込まれちゃうよ!」

 

「キリト!レイン!」

 

「キリト君!レインさん!」

 

ユウキやフィリアたちが次々に言ってくるが、俺とレインは頑なにストレアを放そうとはしなかった。

 

「くっ!!離さない!絶対にこの手は離さないぞストレア!」

 

「そうだよ!この手は絶対に・・・・・・離さない!」

 

抱き締めていても、黒いオーラはストレアを呑み込もうとし。

 

「うわっ!!」

 

「きゃあっ!」

 

ストレアの身体が浮き上がったたかと思うと、いきなり衝撃波が俺とレインを襲い、俺たちを後ろに吹き飛ばした。

 

「キリトさん!」

 

「レインちゃん、大丈夫!」

 

吹き飛ばされた俺の身体をランが、レインの身体をアスナが受け止めてくれた。

 

「すまん、助かったラン」

 

「いえ・・・・・・ストレアさんは・・・・・・・」

 

「ああ・・・・・・・・・・・なっ!?」

 

ランに礼を言い、ストレアの方を見る

ストレアを見た俺たちは驚愕のあまり息を飲んだ。

ストレアが宙に浮かび上がったかと思うと、ストレアを呑み込もうとしたオーラが広がったのだ。そして、その不気味な黒いオーラは何かの形を作り始めた。やがて、そのオーラの端から、それ(・・)が現れ始めた。白い手袋に丈の長く魔法使いの着るような赤いローブ。フードを被った顔は暗くて見えない。それ(・・)は眼に光の灯ってないストレアを、コアとするかのように中心部に取り込み、黒より少し緑っぽい、黒緑の不気味なオーラを出して俺たちの前に現れた。いや、再び(・・)と言うべきかもしれない。何故ならそれは・・・・・・・・・・。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「ううぅ・・・・・・どうなっているんだ・・・・・・さっき倒したばかりなはずなのに!」

 

そう、ストレアを取り込んだそれ(・・)は先程、須郷が呼び出したこの世界の第100層のボスと思わしき、ボス。俺とレインが撃破したばかりのボスだったのだ。

 

「そんな・・・・・・ストレアちゃん!」

 

「っ!?まさか、コイツに取り込まれた!?」

 

「うそっ!」

 

「そんな!」

 

動揺する俺たちなど眼中に無いかのように、目の前に再び現れた、ストレアを取り込んだボスはフードで隠れて顔が見えない、目の部分を青白く光らせて。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

蜃気楼のように揺らぐと、どこかに消えていった。

 

「くそっ!待てっ!ストレアを返せ!」

 

「ストレアちゃん!!」

 

俺たちの声はストレアを取り込んだボスに届くことなく、ボス部屋に響き渡るだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第76層 アークソフィア

 

 

 

ストレアがボスに取り込まれて消え去ってから数時間後、俺はアークソフィアにあるエギルの店の2階にある自室にいた。

 

「・・・・・・・・・・」

 

「キリトくん・・・・・・」

 

「パパ・・・・・・」

 

自室に戻ってからずっと項垂れている俺に、入ってきたレインが心配そうに声をかけてきた。その後ろにはユイもいた。

 

「レイン・・・・・・ユイ・・・・・・」

 

「パパ、大丈夫ですか?」

 

「ああ・・・・・・」

 

「キリトくん、アスナちゃんがね須郷伸之は簡易牢獄に閉じ込めたって」

 

「そうか・・・・・・」

 

「うん。武器やアイテムもすべて取り上げたし、血盟騎士団と聖竜連合が協力して見張ってるから問題ないみたい」

 

「わかった」

 

レインからの情報に、俺は気迫のあまりない声で返した。

そこに、俺の隣に座ったユイが話した。

 

「パパ、ストレアさんのことですが・・・・・・。あの方はやはり、私と同じでカウンセリング用のAIプログラム・・・・・・・《メンタルヘルスカウンセリングプログラム》のようです」

 

「《メンタルヘルスカウンセリングプログラム》・・・・・・プレイヤーの精神的なケアをコンピューターで出来ないか、考えられて作られた存在・・・・・・だよね」

 

ユイとは反対側に、俺の隣に座ったレインがそう言う。

 

「はい・・・・・・このSAOが始まってから人の感情をモニターし続け、わたしと同様にエラーを蓄積してしまっていたようです」

 

「そうか・・・・・・だからあんなに不安定だったのか・・・・・・」

 

ユイの言葉に、俺は今までのストレアのことを思い返した。

頭痛や記憶喪失、どれも不安定だった。だが、ストレアはそれを表に出さないで、ずっと俺たちに元気を振るまいていた。

 

「わたしよりも酷かったんだと思います」

 

「ユイちゃんよりも・・・・・・?」

 

「はい。わたしには、パパやママがいてくれたから、眠りにつくことが出来ました。でもストレアさんは、ずっとエラーを蓄積し続けていたんです」

 

「そんな・・・・・・!」

 

「そして、トリガーは分かりませんが、ついにストレアさんの中に蓄積させた負の感情が決壊・・・・・・。自分の身を守るために、不完全な形で、記憶を封印してしまったようです」

 

ユイの言った、ストレアの中に蓄積された負の感情が決壊した理由は恐らく、須郷による外部からこの世界へのアクセスだと思った。75層での出来事がすべての始まりだからだ。そしてそれは、フィリアがホロウ・エリアに跳ばされた事も関与しているはずだ。

 

「ストレアさんという、安全機構を失ったカーディナルシステムは、膨大なエラーの処理に追われます。その処理による負荷のため、今の異常が起き、継続しているみたいです」

 

「地震も、データの欠損も、俺たち人間の感情が原因で・・・・・・」

 

「はい・・・・・・もちろん、それだけじゃなくて外部からによる干渉が最もな原因だと思われます」

 

「外部干渉という、予期しなかった出来事にカーディナルシステムが急遽そっちに対処し始めたからか」

 

「恐らくは・・・・・・。そしてAIの本能とでもいうべき、カーディナルシステムを保持しようとする感情。世界を守るという使命、つまり自分自身を生きながらえさせようとする、『消えたくない』という気持ち・・・・・・。それと、パパたちにも消えてほしくないと言う、相反する気持ちを制御しきれずに、苦しんでいたみたいです。アルベリヒ・・・・・・須郷伸之の実験による、被験者の苦しみもカーディナルシステムに過度の負荷を与えた可能性があります。そして、さらにそれはストレアさんにも影響を与えて・・・・・・」

 

「この世界を維持させるために・・・・・・ストレアちゃんは、たった一人でずっと苦しんでいたんだね・・・・・・」

 

「ああ・・・・・・」

 

「・・・・・・でも、それならなんで私やキリトくん、みんなをストレアちゃんは助けてくれたんだろう」

 

「・・・・・・それは・・・・・・」

 

「・・・・・・仲間だからだ」

 

レインの言葉に俺は躊躇うこと無く告げた。仲間だからこそ、ストレアは苦しみながらも俺たちをいつも助けてくれたんだと思う。

 

「仲間だから・・・・・・うん、そうかもしれないね」

 

「それで、今のわたしのシステム権限でできる限りの調べたことなのですが・・・・・・。現在、ストレアさんはパパたちの言う最終ボスのアバターに取り込まれている状態です」

 

「つまり、まだストレアは消えてない・・・・・・」

 

「はい。須郷から奪ったアカウントの権限・・・・・・。それが、ストレアさんの抱える負の感情によって暴走・・・・・・・。それにより、パパとママが倒したはずの、ボスのアバターが再び再構築され、そこにストレアさんが引きずり込まれた形になります」

 

「ストレアはあの時、須郷が使った武器によってHPを奪われていったが・・・・・・」

 

回復アイテムを使っても消すことができなかった状態異常について、ユイに聞く。

 

「不幸中の幸いでしょうか・・・・・・。取り込まれたことによって、特殊な状態異常はキャンセルされたみたいです。ストレアさんのIDは、間違いなく現在でも生きているというステータスになっています。ボスアバターを倒す事が出来れば、アカウント権限の暴走も収まり、ストレアさんを解放できるはずです」

 

「そうか・・・・・・よかった・・・・・・もう一度会うことができる・・・・・・」

 

須郷によって付けられた、ストレアの状態異常がキャンセルされたと聞いて俺は安堵した。

 

「はい!必ず!」

 

「キリトくん、よかったね!」

 

「ひとまずこれで最悪な事態は免れた、と言うわけだが・・・・・・。ユイ、今ストレアのIDと言ったが、そもそもなんでストレアは俺たちと同じ、普通のプレイヤーと同じに見えていたんだ?カーソルだって、フレンド登録だって、俺たちプレイヤーのそれと何ら変わらなかったぞ」

 

本来、プログラムには無いはずのID。ユイはともかく、NPCやこの世界を制御するカーディナルシステムに直結しているシステムはすべて俺たちプレイヤーとはちがう。しかし、ストレアは《メンタルヘルスカウンセリングプログラム》であるにも関わらず俺たちプレイヤーと同じIDを持ち、カーソルやフレンド登録も同様だった。

 

「恐らくですが、登録だけされていた未使用のIDに上書きする形で、この世界に構築されたのではないかと思われます。ストレアさんの持つ、IDの登録日と、初めてログインした日が二年も空いているので」

 

「なるほどな・・・・・・IDを作っておいて、プレイしなかったヤツのデータに乗っかった形になったのか」

 

ユイの言葉に、ストレアの謎がわかった。

 

「それで・・・・・・ストレアちゃんはどうしたら助けられるのかな?」

 

「可能性があるのは、ストレアを取り込んだラスボスのアバターを倒すことだ。ストレアのIDが無事という事は、まだ完全にストレアはラスボスに取り込まれた訳じゃない。なら、ストレアを取り込んだ大本を叩いて、ストレアを切り離せば助けられると思うんだ」

 

「ユイちゃんはどうかな?」

 

「はい、わたしも現状考え得る方法のなかでは、パパの案が最も可能性が高いと思われます」

 

「そっか・・・・・・なら、キリトくんの案に掛けるしかないね」

 

「はい・・・・・・。今回はイレギュラー中のイレギュラーなため、なにが起こるかわかりません。わたしも引き続き、ストレアさんを助けられる方法がないか調べてみます」

 

「わかった。頼むぞユイ」

 

「はい!」

 

ストレアを救出する。そしてまた会う、ということを決意して俺たちはみんなのいる1階に降りた。みんなにストレアのことを説明するためだ。

集めたアスナたちにストレアのことを説明したそのあと、俺たちはストレアを助け出すという確固たる思いを胸に、翌日からの攻略に思いを震わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在の最前線 第99層

 

 

 

 

 

残り     2層

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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HF編 第135話〈紅玉宮〉

 

~キリトside~

 

 

第98層ボス部屋での出来事から約一週間余りがたったある日。俺たちは、第99層ボス戦に挑んでいた。

この第99層は主街区である、おわりの街以外は迷宮区と、フィールドもなにもない層だった。そして、この迷宮区は攻略するべき迷宮区内のフィールドはなく、あるのはボス部屋へと続く紅玉色の道と大扉のみだった。さらに、99層のボス戦は一戦だけでなく、全部で五戦。五体のボスを倒す連戦のボス戦だったのだ。

そのため、俺たちはボス戦へ向けてのレベル上げやスキル上げなど、ボス戦当日まで色々と過ごした。

ある日はユイからユイの手作りのブローチをレインとペアで貰い、ある日はシノンのユニークスキル≪射撃≫のスキル獲得へと向かい。またある日はフィリアに付き合って育てた木の様子を見たり、クエストのパーティーに誘われ。またまたある日は、レインとデートに行ったり、またまたまたある日はシステム障害で俺やレインたちの服が無くなり、バスタオルのみの状態となってしまったり、などとかなり多忙な毎日だった・・・・・・・・・・・・?いや、多忙な毎日だったのかこれは?

まあ、そんなこんなでこの日、俺たち攻略組は第99層攻略のための五体のボス。一階層目のボス、レイディアンス・リバース。二階層目のボス、ブレイジング・リバース。三階層目のボス、デス・リバース。四階層目のボス、カオス・リバース。そして、最上階、五階層目の最後のボス、ザ・ディエティースルーラーをかなりの時間を掛けたが、死者数0で無事第99層を攻略し、ついにアインクラッド最上層第100層、紅玉宮にたどり着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第100層 紅玉宮前

 

 

 

 

「ついにたどり着いた・・・・・・」

 

「ここが・・・・・・アインクラッド第100層紅玉宮・・・・・・」

 

99層の最後のボス、ディエティースルーラーを討滅し奥の扉を通り抜け、しばらくして俺たちの目の前に現れたのは、このSAOの頂きと茜色の夕焼けのような空模様だった。

 

「二年掛かって、ようやくたどり着いた」

 

「ほんと・・・・・・・夢を見てるみたいだよ・・・・・・」

 

唖然というか感慨深く目の前に聳え立つSAOの頂きである、紅玉宮と呼ばれるに相応しい、巨大な紅玉の城。

その紅玉宮に見惚れているのは俺とレインだけでなく、攻略組全員だった。それぞれ、思うところがあるのだろう。

現に――――

 

「まだ、信じられないわね。アタシたちがここにいることが・・・・・・」

 

「はい・・・・・・」

 

「キュ~」

 

「ここが・・・・・・第100層・・・・・・」

 

「ついにたどり着いたんですね、私たち」

 

「うん・・・・・・。長かったような、短かったような・・・・・・そんな感じがするよ」

 

「ああ。あの日からかなり時間が経ってるからな」

 

「ここに着くまでに色々な事があった・・・・・・ここにいると、その事が遠い昔のように感じられるぜ」

 

ともにボス戦をしたリズたちは、次々に思ったことを声に出した。攻略組には新たにリズやシリカも入ってる。76層に来てからの二人の熟練度は攻略組の中でも中の半ばほどに位置するまで成長していた。リーファとシノンはもちろんのこと、ホロウ・エリアでの経験を得たフィリアは攻略組でもトップクラスにまでなっている。

 

「この先に、最後のボスが待ち構えているんだよね」

 

「ああ・・・・・・。そして、ストレアもそこにいるはずだ」

 

「絶対にストレアちゃんを助けようね、キリトくん!」

 

「ああ!必ず助ける・・・・・・そして、俺たちは絶対にこの世界から抜け出してみせる!」

 

俺の声に周りからも、それぞれ気合の入った声が上がる。

それから俺たちは、念のためその場から先へと進み紅玉の輝く大扉までマッピングをしてアークソフィアへと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後

 

 

 

紅玉宮からアークソフィアに帰ってきた俺たち攻略組は、そのあとぐっすりと休み翌日から、各々の武器のメンテや消耗品の補充や鍛練などに明け暮れた。

すでに俺たちが第100層に到達したのはアインクラッド全階層にアルゴを通じて伝わっている。75層より下層はアルゴからの言伝で伝わっているらしい。そのため、76層より下に戻れないと分かっていながらも上に来て観光をしたりするプレイヤーがたくさんいた。その中でもっとも助かったのが鍛冶プレイヤーだ。アークソフィアにもリズを含め何人かの鍛冶プレイヤーがいるが、さすがにリズたちだけでは武器のメンテや強化は大変らしく下層からの助っ人や素材でリズを筆頭になんとかやってるらしい。レインも鍛冶スキルを持っているため手伝うと言ったのだが、それはリズに一蹴された。なんでもリズから、『あんたはアタシたち、全プレイヤーの希望なんだからこんなところにいないで、キリト(旦那)ユイちゃん()と一緒にどこか行って身体を休めときなさい!』と言われたらしい。ちなみにあの後アスナたちと相談し最後の戦いは五日後になった。一刻も早くラスボスを倒したかったが、英気を養うのとそれぞれの思いで作り、装備のメンテや強化などをかんがみて五日後にしたらしい。

そんなわけで、俺たちは残された時間を有意義に活用して過ごしていた。相棒である双剣・・・・・・いや、『エリュシデータ』、『ダークリパルサー』、『ブラックローズ・ナイト』、『ホワイト・ユニヴァース』の四振りの剣はレインと相談して、レインにあることをお願いしてもらってる。いや、正確にはレインも俺と同じことを考えていたみたいで自分の相棒である四振りの剣、『トワイライトラグナロク』、『キャバルリーナイト』、『レイン・オブ・セイント』、『スカーレット・プリンセス』を俺のと合わせてやってくれている。ユウキとランは以前の占い騒動で手に入れた、進化素材の剣をリズにお願いしている。進化素材に関してはリズ一人だけでは手に余るらしく、レインにも助けを入れていた。その際かなり申し訳なさそうにしていたが。

そんなこんなで俺たちの、このSAOで過ごす最後の五日間は少しずつ過ぎていき、ついに明後日が最後の戦いとなる四日目の夜、俺とレインは娘のユイと一緒にアークソフィアではなく、第83層の外れにある、22層にある俺たちの家と同じ家で過ごしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第83層 森の家

 

 

 

「すぅ~・・・・・・・すぅ~・・・・・・・」

 

「ふふ。ユイちゃんたら」

 

安らかな寝息をたてて寝ているユイの黒髪を優しく撫でながら母親のような眼差しでレインは見つめていた

 

「はしゃいでたもんな今日のピクニック」

 

今日は家の近くにある湖岸にピクニックをしに行ったのだ。その際、再びユイの作ってくれた水着を着ることになったが楽しい一日だった。

 

「うん。明日の夜はみんなで決戦前夜のパーティーだもんね」

 

「そうだな」

 

レインの言った通り、明日の夜は決起会のような決戦前夜のパーティーなのだ。そのため、ここで寝るのも今日が最後になる。

 

「ねえ、キリトくん」

 

「ん?」

 

「少し・・・・・・外に出ない」

 

レインにそう言われ俺はうなずき、ぐっすりと眠っているユイを起こさないように静かに部屋から出て、1階のリビングのすぐ側にあるテラスに俺は出た。

テラスに出た俺は、テラスにある揺り椅子に座り、84層の底部分を見上げた。見上げると満面の星の輝きが辺りを照らした。明かりを灯してないからか何時もより綺麗に見えた。

 

「はい、キリトくん」

 

「ありがとうなレイン」

 

温かい飲み物を淹れてくれたレインからマグカップを受け取り、軽く一口飲む。飲むと体が暖かくなっていくような感じがした。

レインはそのまま俺のすぐ横に腰掛ける。

 

「ついに明後日だね」

 

「ああ」

 

「ちょっと不安・・・・・・かな」

 

「俺も同じだ・・・・・・」

 

レインの言葉に俺も同じ気持ちだった。

不安がないかと言われると嘘になる。

 

「キリトくん、あの時私が言った言葉・・・・・・覚えてる?」

 

「あの時?」

 

「うん。第一層ボス攻略のあと・・・・・・二層に着いたときに言ったこと」

 

レインに聞かれ、俺は記憶をスクロールする。

一秒で記憶を甦らせ俺は。

 

「覚えてるよ」

 

そう懐かしむように言った。

 

「『キリトくん、私はね君がいるとこの世界が輝いているように思えるよ』・・・・・・あの時からね、私はずっと変わってないよ」

 

レインはあの時の言葉を紡ぎ、懐かしむように微笑んだ。

 

「今も昔も、私の隣には君がいる。君がいると、この世界は何倍にも、何万倍も輝いて見えるよ」

 

「ああ。俺も同じだ。レインがいると、この世界は輝いて見える」

 

「あの時から、ずいぶんと経ったね」

 

「二年・・・・・・だからな」

 

「そうだね」

 

今までの思い出を懐かしむように、思い出すようにして言う。

 

「ね、キリトくん、明日デートしない?」

 

「デート?」

 

「うん。この世界で最後のデート」

 

「はは。奇遇だな、俺もレインと同じこと考えてた」

 

「ふふ、そっか~」

 

朗らかに、だが声は大きく出さず小さく出して笑う。

 

「明日のパーティーのあと、あの広場で渡すものがあるんだ」

 

あれ(・・)か?」

 

「うん」

 

「了解だ」

 

それから、俺とレインは静かに時が過ぎるのを、星空を眺めていた。

 

「そろそろ、入ろうか」

 

「だな」

 

揺り椅子から立ち上がり、俺とレインテラスを後にしマグカップを洗うと2階の寝室に向かった。

ユイが寝ているとは違うもう一つの寝室に入ると。

 

「・・・・・・・・・」

 

「レ、レイン?!」

 

いきなりレインが俺のことを押し倒してベットの上に横にならせた。

 

「キリトくん」

 

「ん」

 

「今日は・・・・・・最高の夜にしてほしいな」

 

「そ、それって・・・・・・」

 

「うん。この世界での生きていた・・・・・・私とキリトくんが一緒にいた証を、私に刻んでほしいな」

 

「レイン・・・・・・」

 

「キリトくん・・・・・・」

 

レインの言った言葉に、俺は呆然としてレインを見る。栗色のレインの髪と、髪と同じ栗色の瞳に吸い込まれそうになるほどだった。そして、レインの気持ちは俺も一緒だった。

俺はレインに言葉ではなく。

 

「ん・・・・・・」

 

行動で示した。

 

「キリトくん・・・・・・」

 

レインを抱き締めてレインにキスをした。レインも舌を絡ませて濃厚なキスをしてきた。

 

「ふふ・・・・・・」

 

「はは・・・・・・」

 

濃密なキスを終えた俺とレインはクスッと笑い。

 

「レイン」

 

「うん、キリトくん・・・・・・。私に、君がいたという証をたくさん、忘れられないようにしてね」

 

「ああ」

 

俺とレインは一つとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在の最前線 第100層

 

 

残り     0層

 

 

 

最終決戦まであと     2日

 

 

 

 

 

 

 



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HF編 第136話〈決戦前日〉

 

~キリトside~

 

 

アークソフィア 転移門広場

 

 

昨晩家族3人で83層にある森の家で寝泊まりした翌日、朝食を食べた俺たちはアークソフィアに帰ってきて、ユイはシリカのところに。おそらくピナの散歩に付き合っていると思う。レインは部屋に戻ってから一度リズのところに行き、俺は着替えて待ち合わせ場所の転移門広場にいた。なぜ俺がここにいるのかと言うと、このあとレインとのこのSAOの中での最後のデートだからだ。

と言うわけでただいま俺は一人・・・・・・・・・・・・ではなく。

 

「聞いてるキリト?」

 

「あ、ああ、すまん、聞いてなかった」

 

「もう・・・・・・お兄ちゃん、そんなことじゃお義姉ちゃん(レインさん)に逃げられちゃうよ?」

 

「あはは、さすがにレインさんがキリトさんから逃げることはないかと・・・・・・・・・・・・・・浮気をしなければですけど」

 

「確かにそうかも!」

 

今、俺は(リーファ)幼馴染み(ランとユウキ)と一緒に転移門広場にあるカフェにいた。

なぜ一緒に居るのかというと、たまたま会ったからだ。ちなみにレインには言ってある。理由は待ち合わせ場所から少しだけ離れてしまっているからだ。

 

「それで、3人は明日の決戦の準備は大丈夫なのか?」

 

カップのコーヒーを飲みながらユウキたちに尋ねる。

 

「うん。あとは剣を受け取るだけだよ」

 

「あたしも大丈夫だよキリト君」

「私も大丈夫ですよ。キリトさんはどうですか?」

 

「俺の方もあとは剣を受け取るだけだな」

 

剣をレインから受け取るのは夜なので大丈夫だ。ポーションや結晶アイテム類もこの間補充している。

 

「それにしてもついに明日が決戦か~」

 

「長かったですね」

 

「ああ」

 

ユウキとランの言葉に俺はこの2年間を思い返して返す。

 

「キリト君たちは2年前のあの日からずっと戦ってたんだよねこの世界で・・・・・・」

 

「ああ」

 

2年を懐かしんでいると。

 

「キリトく~ん!」

 

商店通りの方からレインが走ってくるのが見えた。

 

「レイン!」

 

「お待たせキリトくん」

 

「いや、そんなに待ってないよ」

レインにそう言いながら、飲み物を渡した。

 

「ありがとう」

 

レインが飲み物を飲んでいると。

 

「いまキリト、レインとさり気なく間接キスをしたよね? 」

 

「ええ。というか今のはほぼ無意識だった気がします」

 

「うわぁ~。相変わらず甘々しい」

 

「リーファちゃんは将来が大変ですね」

 

「うん。毎日これを見ないといけないんだからね」

 

「いやあ、なんていうか・・・・・・家でもお母さんとお父さんがこんな感じだから」

 

「ああ・・・・・・そう言えば二人のご両親は私たちのところと同じくらいそうでしたね」

 

「そう言えばそうだった」

 

ラン達のそんな会話が聞こえてきた。

するとそこに。

 

「こ、これ、もしかしてキリトくんのだったの?」

 

顔を赤くしてレインが聞いてきた。

 

「ああ、すまん」

 

「ううん。私はいいよ」

 

レインとそんな会話をしていると。

 

「すみませーん、コーヒー三つ、ブラックで」

 

ユウキのそんな声が聞こえきた。 さらに。

「キリト君、少しは自重してね」

 

「レインさんも、お願いします」

 

リーファとランが俺とレインにそうお願いしてきた。

 

「「はい・・・・・・」」

 

二人の言葉に俺とレインは肩を縮こませて答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数十分後

 

 

「キリトくん、次はこっちに行こ!」

 

「ああ」

 

カフェを出て、ユウキたちとわかれた俺とレインはSAOでの最後のデートをしていた。今日のデートは76層主街区アークソフィアだけでなく、76層より上の層に移動したりしている。

まず最初に俺とレインが訪れた階層は、第79層の主街区アイオトルだ。アイオトルは湖を囲む街並みで、俺とレインの結婚状態を戻すために教会で指輪を作ってもらった場所だ。

 

「久しぶりに来たけどホント綺麗な街並みだよね~」

 

ウットリとした眼差しで湖とそれを囲む白亜の建造物を見てレインは言った。

 

「だな。この街のテーマは湖の街並み、なのかもな」

 

「そうかも」

 

そのまま手を繋いで歩き続けて数分後。

 

「あ・・・・・・」

 

「どうした?」

 

「えっとね。あの教会で受けたクエストのお陰で、また私とキリトくんのステータスが共有・・・・・・結婚状態になったんだな~、って」

 

「ああ、なるほどな」

 

俺とレインの目の前には【祝福の儀式】クエストを受けた教会があった。

その教会からはカンッ!カンッ!と金属を叩く音がリズムよく響き渡る。

 

「少し寄って行くか?」

 

「う~ん・・・・・・大丈夫だよ」

 

俺の問いに、レインは少し悩んで答えた。

 

「例えNPCとはいえ、あの神父さんのお仕事の邪魔をしちゃったら悪いから」

 

「そうだな」

 

そう言うと、俺とレインは軽く教会周りを見て、そこから79層の街を見てまわって行った。

79層の次に俺とレインが行った層は、第84層主街区ダヒオスだ。84層の主街区ダヒオスに転移した俺とレインは、ダヒオスの街並みを見て。

 

「久しぶりに来てみると、なんか綺麗だよね」

 

「だな」

 

84層のダヒオスの空気は軽く硫黄の臭いが漂っている。現実世界で言う温泉街のような感じだ。

実際、このダヒオスには温泉宿が多数存在する。しかも足湯もあるのだ。

 

「うわぁ~、気持ちいい~」

 

「ああ。足の疲れが取れていくな」

 

転移門近くにあった足湯に入っている俺とレインはゆっくりとくつろいでいた。

 

「この後は温泉に行こうよ!」

 

「はは。はじめからそのつもりだよ」

 

「やった!」

 

レインの子供のようなはしゃぎ様に俺は少し表情を崩した。

その後足湯を満喫した俺とレインは、日帰り温泉の出来る宿を探して、温泉にゆっくりと浸かり温泉街を見て回って次の層へと転移門を経由して向かっていった。あ、温泉は残念ながら混浴では無かったぞ。混浴じゃなかったことにレインが少しガッカリしていたのはまた別の話。

ダヒオスの次に訪れた階層は第88層だ。88層主街区セベラシヴの街並みは、今訪れてみると。

 

「今、改めて観るとこの主街区って異界エリアに似ていないかな?」

 

どうやらレインも俺と同じことを思っていたらしい。

 

「ああ、アレバストの異界エリアか・・・・・・確かに、薄暗いし、如何にもなんか出そうって感じがするな」

 

俺も思っていたことをそう声に出した。

 

「あ、でも、雰囲気はここの方がいい、かな?なんか幻想的っていうか、なんていうのかな・・・・・・」

 

「神秘的な感じがする、か?」

 

「うん」

 

セベラシヴのテーマは幻想的な森なのかもしれない。

木々に覆われていて陽の光が入らないが、辺りからの明るい明かりで十分明るい。

この層は特に、これと言った物や場所はないが層全体が幻想的なため、76層より上に来たカップルのデートスポット層にもなっている。もちろん、治安維持は万全だ。暗いといっても少し薄暗いだけで、あちこちに街灯などの光があるのだ。

俺とレインはそんな幻想的な主街区を見て回り、次に訪れた階層は、第90層主街区コヨルノスだ。

 

「うわぁ~。いい景色だよキリトくん!」

 

「だな」

 

コヨルノスに来た俺とレインはコヨルノスの中心部にある転移門のタワーの最上階にある展望台にいた。

コヨルノスの最大の特徴はこの転移門のあるタワーだ。まあ、現実世界にあるようなエレベーターはなく階段移動だが。しかし、タワーの最上階にある展望台は第90層の主街区であるコヨルノスの街並みが一望できる。そのため、カップルのデートスポットで、一、二を争う場所なのだ。

 

「それにしてもこのタワーって、パリのエッフェル塔みたいだよね?」

 

「そう言えば確かに・・・・・・」

 

レインの言葉にエッフェル塔と俺とレインのいるタワーを比較した。言われてみれば確かにこのタワーとエッフェル塔はかなり似ている。

 

「もしかしたらコヨルノスのテーマってパリの街並みなのかな?」

 

「なるほど。誰が設計したのか分からないけどな」

 

「ヒースクリフさんじゃないかな?」

 

「・・・・・・・・・・いや、さすがにアイツがこんな街並み考えるか?」

 

ヒースクリフがこれを考えたか考え、さすがにアイツじゃないと判断した。

 

「あはは・・・・・・」

 

俺の言葉にレインは苦笑いを浮かべた。

レインもちょっとは思ったのか口角がピクピクしていた。

コヨルノスの街並みを一望し、街を見物して再び転移門のあるタワーに戻ってくると。

 

「あ、そろそろお昼にしようか」

 

レインが視界下の時刻を見て言った。

時間はすでに12時を過ぎ、13時を少し過ぎていた。

 

「ああ」

 

「お昼は次の層でね。とってもいい場所があるんだ♪」

 

コヨルノスのタワーにある転移門から俺とレインは次の層。第93層主街区チグアニに転移した。

93層主街区チグアニは、47層主街区フローリアと似て明るいエリアだ。主街区の外れには草原がありフローリア程ではないが花が咲いており、風車もあるのだ。初めて来た時はレインたち女子がかなりはしゃいでいた。まあ、街並みがオランダの田舎みたいだからだと思うけど。

 

「ん~、気持ちいい~。やっぱりここの空気は美味しいよ」

 

「76層より上、唯一のフラワーエリアだからか?」

 

「フローリア程じゃないけどね」

 

「まあな。それで、とってもいい場所って?」

 

「あ、こっちだよキリトくん」

 

少し駆け足気味のレインに手を引かれて俺もレインの後に続いていく。しばらくして俺とレインは主街区の外れにいた。

 

「じゃあ~ん!ここだよ!」

 

レインに連れられてやって来た場所は、辺り一面に花畑が広がり、近くには風に吹かれて回る風車がある草原だった。

 

「へぇー、こんなところがあったんだな」

 

近くにあった大樹を観ながら周りを見渡す。俺もここまでは把握してなく驚いていた。

 

「えへへ。ここって余り人が来ないからたまに来てるんだ」

 

レインの言葉に俺もなんとなくここに足が向く理由がわかった気がした。太陽の光は春の訪れを予感させる日差しを降り注ぎ、辺りにはそよ風が吹き、花々の良い香りが巻き散る。こんなリラックスできる場所アインクラッド全100層の層の中、そうそうないだろう。

 

「さ、キリトくん。お昼食べちゃおう」

 

「ああ」

 

そう言うとレインはウインドウを開き、そこからバスケットと飲み物の淹れてあるポットを出した。

 

「今日のお昼はなんだ?」

 

「ふふーん、今日のお昼はね~・・・・・・」

 

「?」

 

「じゃあ~ん!これだよ!」

 

レインの出した物それは―――。

 

「これは・・・・・・黒パンか?」

 

「うん!まずはこれだよ」

 

「"まずは"ということは他にもあるのか?」

 

「うん。でも、まずはこれを食べてほしいな」

 

「?ああ・・・・・・」

 

レインから受け取った黒パンはなんの変哲もない、ただの黒パンだ。いただきます、と言って食べようとすると。

 

「あ、キリトくん。黒パンにこれをつけて食べてみて」

 

レインが小さな壺のような瓶を見せてきた。

 

「ん?ああ、わかった」

 

不思議に思いながらもレインに言われたように、黒パンに瓶の中身をつけた。黒パンについたのは少し黄色い、クリームのようなものだった。俺はそのまま黒パンに齧り付くと。

 

「ん!?こ、これは・・・・・・・!」

 

とても懐かしい味を感じた。

 

「思い出した?」

 

「ああ、忘れるもんか。これは、第1層で食べた"クリーム乗せパン"じゃないか!」

 

そう、それは昔・・・・・・第1層にいた頃によく――――――というよりほぼ毎日食べていたクリーム乗せ黒パンだったのだ。しかし。

 

「いや、まて。あのクリームは1層のクエスト報酬だったはず・・・・・・・まだ残っていたのか?」

 

クリーム乗せ黒パンに必要なクリームは第1層にある、あるクエストのクエスト報酬なのだ。さすがにもう無かったはずだったはずだが・・・・・・俺がそう思っていると。

 

「ふっふーん。いや~、ここまで苦労したよ」

 

「まさか、これレインの手作りか?!」

 

「そうだよ♪」

 

「マジか!」

 

あのクリームまんまの味の再現に俺は目を見開いた。

まさかレインの料理スキルがここまでとは思わなかったのだ。

 

「色々試行錯誤して出来たんだ~。どう、かな・・・・・・?」

 

「うまい!うまいぞレイン!まさかまた食べられるなんてな」

 

「えへへ。よかった。ユイちゃんも食べたんだよ」

 

「なっ?!いつの間に・・・・・・」

 

知らぬ間にユイもこの思いでのクリーム乗せ黒パンを食べていたことに驚く。

 

「他にも、サンドイッチや唐揚げとかいろんな物がたくさんあるからね」

 

「おう」

 

俺とレインはそのままそこでお昼を食べ。

 

「んん~っ!美味しかった~。ごちそうさまレイン」

 

「えへへ、お粗末様でした」

 

「それにしても、今日でレインのご飯が食べられなくなるのか・・・・・・。少し・・・・・・いや、かなりショックだな」

 

「もう、キリトくんったら」

 

バスケットやポットを片付けたレインがクスッと微笑み。

 

「明日の戦いが終わって、現実世界に帰ったらまたキリトくんに食べさせてあげるよ」

 

「ホントか?!」

 

「うん。もちろん♪」

 

「約束だぞ」

 

「うん、約束」

 

俺はレインと小指同士を合わせて指切りをした。

また、俺とレインの間に約束が出来た。

 

「あ、キリトくん」

 

「ん?」

 

「はい。これ」

 

ウインドウを開いたレインは、そのままウインドウを操作し二振りの片手長剣を渡してきた。

 

「ホントは夜に渡そうかなって思ってたんだけど、夜はそんな時間無さそうだから今渡しちゃうね」

 

そう言うレインから、俺は黒革の鞘に納められた剣を受け取り鞘から抜き放った。

 

「これは・・・・・・!」

 

抜き放った二振りの長剣は陽の光に照らされてキラリと輝く。

剣はそれぞれ黒い刀身と、白い刀身だ。

 

「私のもの、ほら」

 

レインが見せてきた双剣も、それぞれ紅色の刀身と、虹色の刀身だ。

 

「剣の銘は・・・・・・・・・・」

 

俺はレインから受け取った双剣をタップし剣銘とパラメーターを確認する。

 

「―――エリュシデータ・ナイトローズ(夜薔薇の解明者)。そして、ダークリパルサー・ユニヴァース(蒼空の闇を振り払いし者)

 

「私のは―――トワイライト・プリンセス(黄昏の紅姫)。そして、ナイトオブ・レインズ(虹の煌騎姫)

 

俺とレインの新たな相棒は、俺たちの前の四振りの相棒をそれぞれ一つに合わせた剣だ。

 

「それにしても、ずいぶんと大袈裟な名前だな」

 

剣銘を見た俺はつい苦笑いが出てしまった。

 

「まあ、そこはシステムが決めるからね」

 

同様にレインも苦笑していた。

 

「パラメーターはかなり高いな」

 

「うん。私の渾身の出来だよ」

 

それぞれの剣のパラメーターは、合成する前の剣に比べて数倍のパラメーターを有していた。正直、ここまでのパラメーターとは思ってなかった。

 

「・・・・・・・・・・」

 

「ねえ、キリトくん」

 

「ん?」

 

「私とデュエルしない?」

 

「え!?」

 

唐突にかけられた言葉にさすがの俺も面食らった。

何故なら俺自身もデュエルしたいと思っていたからだ。

 

「キリトくんの顔、今すぐその剣を振りたいって顔してるよ」

 

「なっ?!」

 

レインの指摘に驚いた。というより、思っていたことを見抜かれてビックリした。

 

「それで、やらない?」

 

「やろうか、レイン」

 

「うん!私とキリトくん、ここでの最後のデュエル!」

 

そう言うや否や、俺とレインはすぐに装備を整え距離を取って相対しあう。デュエルを半減決着モードにし起動させると、俺とレインを守っていた圏内障壁が解除された。

 

「ふふ、久しぶりだねキリトくんとデュエルなんて」

 

「ああ。手加減はしないぞレイン」

 

「私もだよ。最初から―――」

 

「ああ―――」

 

「「全力全開、手加減なし(だ)!!」」

 

新たな双剣(相棒)を構え、デュエル開始のカウントダウンがゼロになったとの同時に。

 

「ハアアアアアア!!」

 

「ヤアアアアアア!!」

 

俺とレインは同時に地を蹴り互いに向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第100層 紅玉宮

 

 

 

あのデュエルのあと、俺とレインは一休みして第97層主街区フィルキアと第99層主街区おわりの街に行き、最後に100層の紅玉宮の前にいた。

 

「・・・・・・・・・・」

 

「いよいよ明日だね、キリトくん」

 

「ああ」

 

黄昏時の、夜空に染まりつつある空の下、俺とレインはそこで静かに言う。

 

「ついに明日・・・・・・俺たちの長かった戦いに終止符を打つ」

 

「2年・・・・・・だね」

 

「ああ。2年だ」

 

俺とレインは手を繋いで、紅玉宮を見る。

 

「・・・・・・・・・・行こうか」

 

「うん・・・・・・」

 

紅玉宮に背を向け転移門のある方に誰もいない、俺とレイン以外誰もいない道を歩く。

転移門の近くに立った俺とレインは、装備したままの双剣を同時に抜き放ち紅玉宮に向かって切っ先を向ける。

 

「明日は絶対に―――」

 

「明日は必ず―――」

 

「「勝って、俺(私)たちは現実世界に帰る!!」」

 

そう、宣戦布告に言葉に答えるものはなく、紅玉宮を夜が包み込んだ。

決戦は明日、俺たちの集大成の最後の戦いだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅玉宮 最終戦まで、残り   15時間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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HF編 第137話〈最後の戦い〉

「みんな久しぶりです!ソーナです!この大変な時期みなさんは何をしていますか?良ければ私の投稿小説を読んでくださると嬉しいです。そして、ぜひ感想をお願いします。些細なことでも構いませんので、待ってます!」


 

~キリトside~

 

 

 

紅玉宮前

 

 

 

決起会を行った翌日。ついに今日が決戦の日だ。

俺たち攻略組の面々は街のみんなに見送られて、決戦の地であるアインクラッド第100層紅玉宮にいた。

 

「ついに、この日が来たんだね」

 

最後尾で紅玉宮を見上げながらレインは今までのことを思い返すように呟く。

 

「ああ」

 

俺も同じく今までの事を思い返していた。

そんなところに。

 

「パパ!ママ!」

 

後ろから俺とレインを呼ぶ声が聞こえてきた。

聞こえた声に驚きながら後ろを振り向くと、そこには。

 

「ユイ!?」

 

「えっ?!ユイちゃん!?」

 

76層で俺たちを見送ってくれた、娘のユイの姿があった。そしてその隣にはアルゴの姿が。

 

「アルゴ、どうしてユイをここに連れてきたんだ?」

 

「イヤー、オレっちも止めたんだけどナ。ユイちゃんがどうしてもって言うからサ」

 

俺の質問にアルゴはニャハハと笑って答えた。

 

「ユイちゃん、どうしてここに?!」

 

レインがユイと同じ目線の高さになって聞くと。

 

「ママ、お願いします!わたしも連れていってください!」

 

ユイは必死の頼み込みで言ってきた。

ユイの頼み込みに俺とレインは思わず顔を見合わせて戸惑う。そこに。

 

「キー坊、レーちゃん。オレっちからも頼む」

 

アルゴからも頼まれた。

 

「いや、しかしだなアルゴ・・・・・・」

 

「お願いしますパパ!わたし、二人の側に最後までいたいんです!」

 

「ユイ、このボス戦は今までに無いほど激しい戦いになるはずだ。そうなると、ユイを助けてやれる余地があるとは思えない。だから・・・・・・」

 

「わかっています。けど、恐らくボスを倒したらパパとママたちは、この世界からログアウト・・・・・・現実世界に帰ることになると思います。だから、最後の一瞬までパパとママといたいんです!それに・・・・・・見ておきたいんです。パパとママたちがこの世界を解放する瞬間を!」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「キリトくん・・・・・・」

 

ユイの声に、俺はレインと少しだけ顔を見合わせて。

 

「わかった」

 

ユイにそう言った。

 

「ユイちゃん、絶対にこっちの方に来ちゃダメだからね」

 

レインの言ったこっちの方とは、戦闘領域の事だ。

 

「はい!ありがとうございますパパ、ママ!」

 

「キー坊、レーちゃん安心しナ。ユイちゃんのことはオレっちが守ってやるからヨ」

 

「あ、アルゴも行くのか!?」

 

「当たり前だ。ユイちゃんをここに連れてきた責任もあるしナ。それに、キー坊たちの最後の戦いをこの目に焼き付けたいのサ」

 

「それじゃ、アルゴさんユイちゃんのことお願いします」

 

「おう。任せとけってレーちゃん」

 

「一応シリカとリズにも頼んでおくか」

 

俺はそう言い、ユイとアルゴを引き連れてレインとともに紅玉宮の中にへと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅玉宮 最奥部扉前

 

 

 

「―――みなさん、これが最後の戦いです」

 

紅玉宮の最奥部に繋がる、真紅の輝きを放つ紅玉の扉の前で俺達は最後の準備をしていた。

扉の前にはアスナが立ちいつもの激励を掛けていた。ユイのことはアルゴとシリカ、リズに任せ、部屋の隅の方で見るように言った。

 

「いよいよだね」

 

「ああ」

 

隣には何時もの紅の戦闘服と、新しい相剣の二振りを腰に下げたレインがいた。そしてレインの左手をユイが握っている。その反対側は俺が握ってる。

 

「みなさん、絶対に、生きて現実世界に帰りましょう!」

 

激励を飛ばすアスナのその言葉にあちこちから奮起の声が上がる。

アスナは扉の方を向―――――――――いたかと思うと。

 

「キリト君、レインちゃん。二人がこの扉を開けて」

 

振り向いて俺とレインにそう言った。

いきなりのことにポカンとしていると。

 

「私たち攻略組がここに来れたのはあなたたち二人のおかげでもあるの。だから、最後は私たちを引っ張ったあなたたち二人で開けて欲しい」

 

アスナがそう言うと、俺とレインを後押しするように周りから賛同の声が上がった。

 

「パパ、ママ」

 

「ユイちゃん」

 

ユイは笑顔で頷いて。

俺とレインはその意図を読み取り、その場から紅玉の扉の前に歩いた。

 

「・・・・・・・・・・」

 

アスナは俺とレインにその場を譲り脇に逸れた。

 

「レイン」

 

「うん」

 

扉に触れ、俺とレインは同時に力を込めて扉を押す。扉はゴゴゴゴゴッ!!と音を立てて開いた。

後ろから攻略組全員のそれぞれ武器を抜剣する音が響き。

 

「「全員、突撃!!」」

 

俺とレインも続けるように抜剣し、アスナからの目配せで気合いのこもった声で言うと同時に紅玉宮の最奥部に突入して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅玉宮 最奥部

 

 

 

それぞれの剣を抜剣し中に突入した俺たち攻略組は、広大な大広間の半ば程にまで来ていた。

そしてその目の前にはあのボスが佇んでいた。

 

「お、おい、あれ・・・・・・」

 

「やはり、ここにいたか・・・・・・」

 

クラインの震えた声に、俺はやはりと静かに殺気を立てて言った。なにせ、アイツはストレアを拐った張本人?ていうか、ボスだからだ。

 

「おいおい・・・・・・。ヤツから感じる威圧感、前回の時より上がってるぞ・・・・・・!」

 

冷や汗を流しながら言うエギルに続いて。

 

「ストレアさんを取り込んでパワーアップしたのかな?」

 

「もしそうだとしたら厄介ですね・・・・・・」

 

「ええ。攻撃パターンは変わらないと思うけど・・・・・・」

 

「けど、それも分からないわ。もしかしたら・・・・・・」

 

「変わっている可能性があるわね・・・・・・」

 

「そんなぁ・・・・・・」

 

リーファ、ラン、アスナ、シノン、リズ、シリカが言う。

そこに。

 

「けど、私たちなら勝てる・・・・・・そうでしょ、キリト?」

 

フィリアが自信満々に、負けないという気持ちを全開にして聞いてきた。

 

「ああ、もちろんだ」

 

俺もフィリアに答えるようにして返す。

 

「俺たちは負けません・・・・・・絶対に生きて帰るんですから!」

 

「そうねラム。私も、絶対に負けないわ」

 

「うん!ボクも負ける気はしないよ!」

 

チャキ、と音が小さくなりラムとリーザ、ユウキがそれぞれの武器を構え直す。

 

「パパ!ママ!絶対に勝つって信じてます!」

 

「ありがとうユイちゃん。ユイちゃんに応援されてるんだから、私たちは負けないよ!ね、キリトくん」

 

「ああ、そうだな」

 

後ろからのユイの声に答え、小さく深呼吸をして気持ちを落ち着かせ。

 

「よし・・・・・・!いくぞ、みんな!!」

 

『『『『『おおっ!!』』』』』

 

俺たちは一斉に、奥にいるボスに向かって走り出した。

 

「おおおおおっ!」

 

まず最初にボス―――ホロウアバターに初撃を与えたのは、俺のフルスピードからの突進だ。

 

「―――――――――!!」

 

初撃を食らったホロウアバターは声にならない雄叫びを上げる。

 

「キリトくん!」

 

「ああ!」

 

初撃を与えた俺は、すぐさまレインとスイッチして後ろに下がる。

 

「やぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

スイッチしたレインはシステムの許容範囲の速度でホロウアバターに駆け、双剣を振るう。その速度は閃光のアスナをも上回る速度だ。

 

「レインちゃんスイッチ!」

 

「うん、アスナちゃん!」

 

ホロウアバターの腕の振り下ろしを双剣で滑らせて、レインはアスナとスイッチする。

レインとスイッチしたアスナは細剣をホロウアバターの胴体に叩き込み、その直後にユウキとランの二人がアスナと入れ替わるようにして攻撃し、ホロウアバターの側面をエギルとラム、リーザとクライン率いるギルド風林火山のメンバーが畳み掛ける。

 

「―――――――――!」

 

初撃から全力の俺たちの攻撃に、ホロウアバターの五段あるHPゲージがほんの僅かだが削れる。

 

「っ!」

 

今の攻撃でほんの僅かしか削れてないことに俺は驚愕に息を呑む。

予想していたとはいえ、前回の98層で戦ったときはホロウアバターのHPは三段で、防御力も攻撃力も普通だったのだ。が、今のコイツはその時よりも圧倒的に強くなっていた。

 

「―――俺たちも負けてられない!聖竜連合諸君、彼らに続け!!」

 

『『『『おおぉぉっ!!』』』

 

「私たちも行くわよ!!」

 

『『『おぉぉ!!』』』

 

周りの攻略組全員の士気が上がり、みんなの動きがよくなった。正確には活発になったのだ。

 

「――――――――!!」

 

俺たちの士気向上に比例するように、ボス。ホロウアバターの怒りが溜まっていくようだ。現にローブの暗闇の部分からビームが出た。

 

「タンク!」

 

しかしビームが出た瞬間に、盾持ちのタンクプレイヤーがそれを防ぐ。

 

「ナイス!シノン!レイン!」

 

「ええ!」

 

「うん!」

 

ビームを防いですぐに後方から弓を構えたシノンと遠距離ソードスキルを持つレインが攻撃を仕掛ける。

 

「食らいなさいっ!」

 

「サウザンド・レイン!」

 

シノンとレインの遠距離ソードスキルは吸い込まれるようにホロウアバターの巨体に突き刺さる。

 

「―――――――――!!」

 

「クライン!エギル!」

 

「おう!」

 

「ああ!」

 

動きを止めたホロウアバターにすぐさま俺とクライン、エギルがソードスキルを叩き込む。

 

「はあぁぁぁぁぁぁっ!」

 

「うおぉぉぉぉぉぉっ!」

 

「おぉぉぉぉぉぉっ!」

 

≪二刀流≫ソードスキル《ナイトメア・レイン》と刀ソードスキル《鷲羽》、両手斧ソードスキル《ディザスター・ホロウ》の多重ソードスキルがホロウアバターに襲い掛かる。そこに追撃として。

 

「いくよ、リーザ!」

 

「ええ!」

 

ラムとリーザがそれぞれソードスキルを繰り出す。

 

「―――――――――!!!」

 

「遅いよ!―――姉ちゃん!」

 

「ええ!行くわよ、ユウ!」

 

ホロウアバターの左右腕の攻撃を颯爽と避けて、ランとユウキがホロウアバターの脇腹を切り裂く。

 

「―――――――――!!」

 

「っ!」

 

「させないっ!」

 

ホロウアバターの腕の薙ぎ払いを受けるところだったユウキをアスナがギリギリのところで受け止め。

 

「フィリアちゃん!」

 

「まかせて!はぁぁぁぁぁぁっ!」

 

動きを止めた腕をフィリアが駆け上がっていく。

 

「アタシたちも!」

 

「いくよ、ピナ!」

 

「キュウ~!」

 

駆け上がってホロウアバターを攻撃するフィリアに続いて、ホロウアバターの巨体を左右からリズの片手棍とシリカの短剣とピナが攻撃する。

 

「―――――――――!!」

 

「させるか!」

 

3人の攻撃を無視して攻撃してくるホロウアバターに、俺は片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》単発重攻撃を放つ。

 

「ぬおぉぉぉぉぁぉぉぉっ!」

 

「―――――――――!!」

 

「っ!全員、フル攻撃!!」

 

俺の《ヴォーパル・ストライク》でスタンして動きを止めたホロウアバターの隙を逃さず、攻略組の面々がアスナの指示で次々にソードスキルを放ち、ホロウアバターの五段あるHPを奪い去っていく。やがて、五段あるHPの内一番上の段のHPゲージが消え去り残りはあと四段となった。

 

「―――――――――!!」

 

「よし!あと四本だ!」

 

「みんな!このまま行くわよ!」

 

『『『『『おおっ!!』』』』』

 

そんな声を上げながら、俺たちはホロウアバターに向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間半後

 

 

四段目に突入してから俺たちはスイッチを繰り返しながら、ホロウアバターと戦っていた。ホロウアバターの両腕の薙ぎ払いやビーム、衝撃波のパターンを見極め、誰も死なせずに四段目、三段目とHPを削っていき、ホロウアバターとの戦いで、変化があったのはホロウアバターのHPゲージが残り二段に突入する寸前だった。

 

「―――――――――!!」

 

「っ!?下がれ!」

 

声にならない声を上げたホロウアバターの右手には、いつの間にか巨大な剣が握られていたのだ。とっさに反応した俺は、攻略組プレイヤーの一人に振り下ろされようとする剣とプレイヤーの間に入り込み、剣をクロスブロックして受け止めた。

 

「ぐっ・・・・・・!」

 

受け止めた剣は途轍もなく重かった。

剣を受け止めつつも徐々に減っていく俺のHPを見やると。

 

「キリトくん!」

 

後ろからそんな声とともに、俺の双剣に重なるようにして目の前の剣を受け止めた剣が現れた。

 

「レイン!」

 

「イチ、ニのサンッで跳ね上げるよ!」

 

「わかった!」

 

「イチ・・・ニの・・・サンッ!」

 

レインとともに、タイミングを合わせてホロウアバターの剣を跳ね上げて、瞬時に俺とレインはその場から退避してポーションでHPを回復する。後方に下がった俺とレインはホロウアバターの右手に握られてる剣・・・・・・紅紫の両刃の大剣を観る。

 

「キリトくん、あの剣って・・・・・・!」

 

「ああ・・・・・・ストレアの両手剣と似ている・・・・・・!」

 

ホロウアバターが握っている大剣は、ストレアの両手剣と酷似していたのだ。ストレアの両手剣は薄紫色だったのに対して、ホロウアバターのは紅紫色だ。

 

「まさか、ストレアを取り込んだことで強化されたのか・・・・・・!?」

 

98層での戦いでホロウアバターがあの大剣を出さなかったことから俺はそう推測した。今はアスナたちが引き付けているが、あの大剣を使用してからのホロウアバターの動きに翻弄されて、うまく指示が行き届かないらしい。そこに。

 

「パパ!ママ!あのボスはストレアさんを取り込んだことで、ストレアさんの能力値を自身に上乗せしていると思われます!」

 

アルゴと一緒にいるユイからそんな声が聞こえた。

 

「気を付けてください!ストレアさんの能力値を上乗せしているということは、ストレアさんのスキルが使えると思われます!」

 

「!?わかった!サンキューユイ!」

 

「ありがとうユイちゃん!」

 

ユイにそう返して、目先のホロウアバターを見やる。

すでに俺とレインのHPは八割ほどにまで回復している。

 

「レイン、行けるか?」

 

「もちろん!」

 

俺とレインは顔を見合わせて頷き。

 

「零落白夜!」

 

「絢爛舞踏!」

 

同時に≪シンクロ≫スキルの固有スキルを発動させる。

固有スキルを発動させると、自身のHPゲージの上に様々なバフが表示され、ゲージ横には双剣の紋章が現れる。

それらが現れると同時に、俺とレインはその場から戦場へと駆ける。

 

「あれは・・・・・・!」

 

駆け、ホロウアバターとの攻撃範囲内に入ると、ホロウアバターの握られてる大剣に緑色のライトエフェクトが煌めいたのが目に入った。

 

「全員防御!」

 

アスナたちも気づいたらしくすぐさま防御の指示を飛ばす。

それぞれ防御体制をとった瞬間、ホロウアバターの大剣が攻略組の面々に襲い掛かった。

緑色のライトエフェクトを輝かせながら放たれたそれはソードスキル―――両手剣ソードスキル《サイクロン》だ。

 

『『『ぐうぅぅっ!』』』

 

放たれた《サイクロン》をそれぞれ盾や剣で防御するが、威力が高いのか後ずさるプレイヤーがちらほらいた。

ホロウアバターは《サイクロン》を放ち終えると、そのまま剣を乱雑に振り下ろしてくる。振り下ろされた大剣が、プレイヤーに当たる瞬間。

 

「はあぁぁぁぁぁぁっ!」

 

≪二刀流≫ソードスキル《デブス・インパクト》でその大剣を跳ね返した。

 

「下がって回復を!」

 

「すまん!助かった!」

 

今しがた守ったプレイヤーにそう言うや否や、俺は追撃としてホロウアバターに片手剣ソードスキル《ハウリング・オクターブ》を放った。五連の突きから三連の切り下ろし、切り上げ、切り下ろしを受け、ホロウアバターはその巨体を後ろの方に捩らせた。そしてそこに。

 

「レイン!」

 

「うん!サウザンド・レイン!!」

 

至近距離からの《サウザンド・レイン》を食らい、ホロウアバターはHPを大きく削られた。

至近距離の《サウザンド・レイン》を食らいホロウアバターはノックバックが発生したようで、その巨体を反らせたままだった。そして、さらに、そこに。

 

「やぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

「せりゃぁぁぁぁぁあっ!」

 

いつの間にかホロウアバターの後ろに回り込んでいたユウキとラムがそれぞれ、≪紫閃剣≫ソードスキル《マザーズ・ロザリオ》と≪抜刀術≫ソードスキル《決戦奥義・雷光剣》を繰り出した。そして、畳み掛けるように俺たちも次々に上位ソードスキルを放つ。

俺は≪二刀流≫ソードスキル《ロストオブ・エンデュミオン》を。レインは≪多刀流≫ソードスキル《マテリアル・イグニッション》を。リーファは片手剣ソードスキル《ファントム・レイブ》を。クラインは刀ソードスキル《散華》を。シノンは≪射撃≫ソードスキル《ブランディッシュ・ファイア》を。リズは片手棍ソードスキル《ヴァリアブル・ブロウ》を。シリカとフィリアはそれぞれ短剣ソードスキル《エターナル・サイクロン》と《ダークネス・カーニバル》を。エギルは両手斧ソードスキル《ダイナミック・ヴァイオレンス》を。アスナは≪神速≫ソードスキル《スターリィー・ティアー》を。リーザは≪無限槍≫ソードスキル《エヴァー・レス・ノーツ》を。ランは≪変束剣≫ソードスキル《ラスティー・ネイル》を。他のプレイヤーも俺たちに続くようにそれぞれソードスキルを繰り出す。

俺たちの多重ソードスキルを食らい、ホロウアバターのHPゲージはみるみる内に削られていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

40分後

 

 

 

すでにホロウアバターとの戦闘開始から二時間が経過し、ホロウアバターのHPゲージは残り一段の半分となっていた。

あのあと、特に変わったことはなくホロウアバターの攻撃パターンは両腕の薙ぎ払いとビーム、衝撃波、右手の大剣によるソードスキルだけだった。

俺たちは交互にヘイトを取りながらいつも通りの攻撃をする。

 

「はあああっ!」

 

「―――――――――!!」

 

「アスナ!」

 

「ええ!」

 

大剣をパリィして、アスナと即座にスイッチする。

 

「やあああぁっ!」

 

アスナの神速の突きによるソードスキルがホロウアバターの胴体に突き刺さる。

 

「アスナさん、スイッチ!」

 

「わかったわ!スイッチ!」

 

アスナがソードスキルを放ち終える同時に、今度はリーファが入り。

 

「ラム君!リーザちゃん!」

 

「はい!」

 

「任せて!」

 

ラムとリーザとの連続攻撃を放つ。

 

「―――――――――!」

 

しかし、ホロウアバターはそんなの無視するように大剣をリーファたちに突き刺そうとする。そこに。

 

「させるかよっ!」

 

「うおおおおおっ!!」

 

エギルの斧とクラインの刀が割り込み、大剣を大きく吹き飛ばす。

 

「行け!二人とも!」

 

「キリト!レインちゃん!ヤッちまいな!」

 

エギルとクラインが大剣を吹き飛ばし、できた道を俺とレインは全速力で駆け、走りながらスキルを発動させる。

 

「「―――共鳴(レゾナンス)!」

 

≪シンクロ≫スキルの共鳴を発動させ、さらに。

 

「―――神双解放(リミットリリース)!!」

 

最後の奥の手である神双解放を発動させた。

HPゲージの右上に、神々しいアインクラッドの紋章が光輝き、身体に力が満ち溢れてくる感じがした。

 

「ここで畳み掛けます!シノンさん、二人の援護を!」

 

「任せて!はあああっ!」

 

後ろからはシノンの弓による援護が。

 

「リズさん、シリカちゃん!」

 

「ええ!」

 

「はい!いくよ、ピナ!」

 

「キュウウッ!」

 

リズとシリカがホロウアバターを攻撃してピナがスキルでホロウアバターをほんの少しだけスタンさせ。

 

「ユウ、いくよ!」

 

「うん!姉ちゃん!」

 

その間にチャージを終わらせたユウキとランの秘奥義が発動する。

 

「―――ファントム・メイソリュト!」

 

「―――ライトニング・エンプレス!」

 

放たれた秘奥義は紫のライトエフェクトと蒼銀のライトエフェクトを煌めきながらホロウアバターを切り裂く。

 

「―――――――――!!」

 

ホロウアバターは仰け反り状態になりそこを。

 

「やあああぁっ!―――ミーティア・ライト・レイン」

 

アスナが追撃の秘奥義を放つ。

放たれた秘奥義はクリアブルーのライトエフェクトを輝かせながらホロウアバターの巨体を穿つ。

 

「これで終わらせる!」

 

「いくよキリトくん!」

 

「ああ!」

 

俺とレインは同じ構えを取り、意識を集中させていく。

俺とレインを中心に、包み込むように黒金と虹色の交じりあったオーラがベールのように円錐上に包みこんだ。それから約5秒ほど溜め込み。

 

「「はあぁぁぁぁぁぁっ!!!」」

 

俺とレイン、二人で放つ最強の剣技が放たれる。

発動したソードスキル―――秘奥義は俺の双剣には黒金の、レインの双剣には虹色のライトエフェクトを輝かせる。システムの限界を越えた、俺たちの最強にして相手にとっては最恐の―――俺たちプレイヤーの希望とも言えるソードスキル。一撃にて数擊行い、幾重にも切り刻む。

 

「「―――トワイライトエデン・・・・・・・」」

 

幾数の斬撃を会話すらせずに、レインと意気のあったコンビネーションで繰り出し、≪シンクロ≫スキルと固有スキルのバフと自分のステータスをシステムの限界を越えるまでに引き上げた秘奥義を放つ。ラスト2撃、俺の『エリュシデータ』による横凪ぎ払いとレインの『トワイライトラグナロク』の横凪ぎが交差するようにホロウアバターの巨体を捉え。

 

「「―――デュオ、クライシスッ!!!!」」

 

そのHPを1ドットも残さず奪い尽くした。

HPがゼロとなったホロウアバターは一瞬ぶれたかと思うと、ポリゴンの欠片となって爆散し紅玉宮の虚空に消えた。

 

 

 

 

 

 



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HF編 第138話〈MHCP(メンタルヘルスカウンセリングプログラム)


「みんな、ヤッホー!ソーナです!ついにアインクラッドの終焉へのカウントダウンが始まったよ!あと少しで幕引き・・・・・・このまま突き進んでいくからね!みんな応援よろしくお願いね!それと、感想を送ってくれてありがとう!とっても嬉しいです!これからもお願いします!」


 

~キリトside~

 

「・・・・・・た、倒したの・・・・・かな」

 

「ああ・・・・・・ようやくこれで・・・・・・」

 

最後のラスボス、ホロウアバターを倒した状態から剣を下に降ろしてそう呟く。

その瞬間、俺は違和感を覚えた。

 

「待てっ!なにか様子がおかしい!?」

 

俺の言葉を裏付けるように、突如つい先程までホロウアバターがいた場所に衝撃音が走った。しかし、その音はピシリと何かが無理やり現れてくるような感じだった。

やがて一際大きな音が鳴ると、そこには一人の少女が現れた。

しかし、その少女がプレイヤーでは無いことはすぐに分かった。何故なら、その少女の姿は人型だが、頭には二本の角があり、脚は機械仕掛け、黒いワンピースを着て、右手には同じく黒く血のように赤黒い細長の片手剣・・・・・・いや、あれはアスナと同じ細剣だろう。細剣を握っていた。髪はユイと同じくらいあるが、色は艶のある黒ではなく薄紫色だった。

 

「何が起こった!?あれはいったい・・・・・・」

 

突如目の前に現れた少女らしき存在に、俺たちに同様が走る。

さらに続けてその少女の左右に三人ずつ、同じ格好の少女が現出した。

 

「パパ、ママ。あれはわたしやストレアさんと同じ、カウンセリングプログラムです!」

 

「なっ!」

 

「ユイちゃんとストレアちゃんと同じ!」

 

ユイの言葉に俺たちは驚く。

つまりあの少女たち七人はみんな、ユイとストレアと同じMHCP(メンタルヘルスカウンセリングプログラム)だと言うことだ。

 

「ストレアさん同様、障害を多く引き起こしているこの世界を守るために実体化したようです。防衛機能を停止させるためには・・・・・・」

 

「・・・・・・戦うしかないようだな」

 

彼女たちを停めるためには、戦って勝つしかないようだ。

 

「実体化したばかりで悪いが!もう一度眠っていてくれ。いくぞ、レイン!アスナ、全体の指揮を頼む!」

 

「うん!」

 

「任せて!リンドさんたち聖竜連合は右側を!私たち血盟騎士団は左側を担当します!」

 

『『『『『了解!』』』』』

 

「他の方はそれぞれ各自にフォローをお願いします!」

 

『『『『『了解!』』』』』

 

アスナの言葉にすぐさま攻略組の面々が返し、次々に少女たちに向かっていく。俺とレインは一番始めに実体化した、MHCP Type003と表示された少女に向かっていく。

 

「!キリトくん、彼女たちのHPゲージ三段あるよ!」

 

「まさかのボス扱いかよ!」

 

彼女たちそれぞれにHPがあり、しかも全員三段ときた。

まさかのボスクラスに舌打ちしたくなった。ボスクラスが七人もいるとなると、さすがにヤバいだろう。

 

「レイン、最初から飛ばしていくぞ!」

 

「っ!うん、わかった!」

 

レインにそう言うとすぐさま≪シンクロ≫スキルを発動させる。

 

「「共鳴(レゾナンス)!」」

 

走りながらスキルを発動し、スキル発動のアイコンを見ずに双剣を振るう。

 

「はあああっ!」

 

初撃から≪二刀流≫ソードスキル《ダブルサーキュラー》突進2連撃を繰り出す。

 

「―――」

 

MHCPType003と表示された少女はまったく表情を変えずに、ただ与えられた役割をこなす人形とでも言うかのように赤黒い細剣を横にして盾の代わりにする。

 

「!?」

 

避けるでも、逸らすでもなく受け止める行動に思わず眼を見開いたまま俺はそのまま《ダブルサーキュラー》を放つ。

放たれた《ダブルサーキュラー》の一撃目はそのままMHCPType003の赤黒い細剣の腹に当たり、二撃目はMHCPType003の小柄な体を後ろに吹き飛ばした。

 

「え!?」

 

《ダブルサーキュラー》を放ち終えた姿勢で、吹き飛ばしたMHCPType003のHPを見ると、今ので三段目のHPゲージの二割半、減少していることに気づいた。

 

「(まさか、レベルは低いのか?)」

 

攻撃が抜けた感触があった俺は、そう思わずにはいられなかった。

 

「キリトくん!」

 

「!あ、ああ!」

 

すぐにレインとスイッチして後方に下がる。

後方に下がった俺は周囲のみんなの戦況を素早く把握する。

 

「(右側のMHCPType004、005はリンドたち聖竜連合が。006はクラインとエギルたちが相手してるな。左の007と008、009はアスナたちか。今のところ苦戦してる様子はないな)」

 

彼女たちはどうやらそこまでレベルが高いと言うわけでもなく、階層クラスで言うなら90層クラスだろう。90層クラスでも十分強敵だが、彼女たちの防御力は低く、かわりに速度は速いとアスナと似たスキル構成のようだ。

 

「キリトくん、お願い!」

 

「まかせろ!」

 

003の少女と斬り結んでいたレインと交代し、彼女の速度を上回る速度で攻撃をする。

 

「―――!」

 

「っ!」

 

彼女の細剣を跳ね上げて、左の剣で横薙ぎに切り払う。例えシステムに動かされる存在とはいえ、彼女たちはユイやストレアと同じMHCPだ。つまり、二人の妹ということになる。

 

「(ユイの妹たちを斬るのは心苦しいが・・・・・・!)」

 

彼女を切り払いながらそう思いつつ、攻撃を重ねていく。

 

「ぜりゃあ!」

 

彼女のバランスが崩れたところに、片手剣ソードスキル《ホリゾンタル・スクエア》4連撃を放つ。しかし。

 

「―――」

 

「なに!?」

 

彼女は《ホリゾンタル・スクエア》を細剣でいなして避けた。しかも4擊すべてだ。

そして。

 

「―――!」

 

「―――っ!」

 

彼女の繰り出した細剣ソードスキル《カドラプル・ペイン》4連撃を繰り出してきた。とっさに彼女の細剣の軌道をずらして避けるが、最後の一撃に反応できず食らってしまった。

 

「キリトくん!」

 

すぐにバックステップで下がり追撃をかわす。

俺が下がると同時にレインが入る。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」

 

息を整えながらポーションでHPを回復し、今の彼女の攻撃を模索した。

 

「まさか・・・・・・」

 

模索し、俺はすぐにある事が思い浮かんだ。

 

「(彼女たちは、ユイとストレアと同じMHCP。ということは彼女たちにもユイやストレアと同じく人工知能(AI)が組み込まれてる。そして、彼女たちはこの世界を守るために実体化した。つまり、ユイやストレアとは違う・・・・・・自己進化機能搭載型。それも俺たちとの戦闘を学習して最適化している!まずいぞ、このまま戦闘が長引けば・・・・・・!)」

 

俺がそう思考すると。

 

「な、なんだ!?急に動きが良くなった、だと!?」

 

「一体どうなってやがる!」

 

「HPがイエローゾーンに入る前に回復するんだ!タンクは出来る限り彼女たちの攻撃を止めるんだ!」

 

「ランちゃん、リーザちゃん、あの子達の動きを止めて!」

 

「ええ!ユウ!」

 

「うん!」

 

「リーザ、俺が食い止めてる間に拘束(バインド)を!」

 

「わかった!」

 

他のところからも動揺の声が上がった。

どうやら他のMHCPの彼女たちも、003の彼女と同様自己進化し始めたみたいだ。幸いにも彼女全員、三段あるHPゲージは二段の半分にまで減っている。だが、このままでは恐らく―――。そう思ってると。

 

「パパ!彼女たちは恐らく、高度な自己進化プログラムが搭載されています!このまま戦闘が長引くと・・・・・・!」

 

後ろのユイからそんな声が聞こえてきた。

 

「くっ!レイン、速攻で倒すぞ!」

 

「っ!う、うん、わかった!」

 

ユイの言葉に嫌な予感が的中した俺はすぐさまレインに良い、システムの許容する速度で003の彼女に向かい双剣を振るう。

 

「はあああっ!」

 

「―――!」

 

彼女の細長による連続の刺突をパリィや軌道を逸らしたりして避け、こっちも連撃を繰り出す。

 

「レイン!」

 

「まかせて!てぇやあぁぁっ!」

 

スイッチを繰り返して、交互にヘイトを取り連撃を出す。

彼女の方も俺とレインに対抗するように高速の刺突やソードスキルを放つが徐々に反応が遅れていった。どうやら自己進化の情報処理が追い付いてないみたいだ。

 

「―――!」

 

「遅いっ!」

 

彼女の細長ソードスキルを同じくソードスキルで相殺し、剣技連携(スキルコネクト)を無意識に使う。右手の『エリュシデータ・ナイトローズ』で繰り出す片手剣ソードスキル《デットリー・シンズ》7連撃から、左手の『ダークリパルサー・ユニヴァース』で《ヴォーパル・ストライク》単発重攻撃を撃つ。

 

「うおおおぉぉぉぉぉっ!」

 

「―――!」

 

彼女は細剣をとっさに盾にするが、俺のソードスキルはそれを突き破って彼女の体を貫いた。

 

「―――」

 

HPゲージが右から左に削られていき、やがてMHCPType003のHPはゼロになった。

ゼロになった彼女は今まで無表情だった表情を、ほんの少しだけ柔らかくして目を閉じ、ポリゴンの欠片となって消えた。

 

「・・・・・・」

 

「キリトくん」

 

「分かってる。レインはアスナたちの方を頼む。俺はリンドたちの方を!」

 

「うん!」

 

ユイの妹を仕方がないとはいえ討ったことに心を痛めるも、俺とレインはすぐに二手に分かれる。

 

「リンドさん!」

 

「!そっちは終わったのかキリトさん!」

 

「ああ!こっちはどうだ」

 

「彼女たちの動きが急に良くなってから手を焼いている状態だ」

 

「そうか。こっちは戦闘が長引けば長引くほど手の内が読まれる。速攻で倒すしかない」

 

「だがどうやるんだ?」

 

リンドさんの言葉に思考を回す。

 

「彼女たちは想定外の動きには遅くなる。そこを衝く」

 

「想定外の動きだと?」

 

「ああ」

 

「・・・・・・なるほどな。よし、わかった」

 

「頼む。俺はクラインたちの方に向かう」

 

「ああ」

 

リンドと話、俺はクラインたちと合流する。

 

「くそっ・・・・・・!なんだよこの動き!」

 

「ボヤいてる場合じゃねえぞクライン!次が来る!」

 

「っ!」

 

バランスを崩したクラインに今まさにMHCPType005の細長が突き刺さるところだ。そこに。

 

「させるかっ!」

 

「―――!」

 

俺が割り込み細長をパリィして、片手剣ソードスキル《ソニックリープ》を放つ。

 

「―――!」

 

《ソニックリープ》が直撃した005の彼女は後ろに下がり距離を取る。

 

「無事かクライン」

 

「あ、ああ。助かったぜキリト」

 

「そうか。クラインは一度下がって回復しろ。エギル、俺と一緒に畳み掛けるぞ!」

 

「ああ!」

 

俺の指示に一度クラインは下がり、減少したHPを回復しはじめる。

逆にエギルは両手斧で005の彼女を攻撃する。

 

「うおおおっ!」

 

「―――!」

 

エギルの両手斧での攻撃は、一撃一撃が両手剣と同等かそれ以上の攻撃力を持つ。そして、重攻撃ならではの利点があるそれは。

 

「―――!」

 

「その動きは読んでいた!」

 

両手斧や両手剣の攻撃を避けるとなると回避行動は読みやすいと言うことだ。両手斧や両手剣の横薙ぎは攻撃範囲が広く、後ろに下がる。そして振り下ろしや斜めからの攻撃は左右何方かに避ける。後ろに避けるとなると余波を食らいやすいからだ。つまり―――。

 

「はあああっ!」

 

「おおおおっ!」

 

今のようにエギルの振り下ろしを避ける場所は限られるということだ。そして、片方にはクラインのギルド風林火山のメンバーが追撃を放とうとしていた。よって、こっちに誘導することが可能となる。

 

「リンドさん!」

 

「ああ!はあああっ!」

 

リンドさんとともに005の彼女を切り裂き。

 

「今だクライン!」

 

「おうよ!うおおおおお!」

 

クラインの刀ソードスキルによる斬りでHPをゼロにした。

 

「よし、次だ!」

 

005の彼女がポリゴンになり消え去るのを見てそう言い、俺たちは聖竜連合が抑えている残りのMHCPType004と006に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 30分後

 

 

 

 

 

「これで終わりよ!」

 

「ユウキ!」

 

「うん!」

 

シノンの弓で動きを止めた最後のMHCPType009をユウキとともに切り裂いて、彼女のHPをゼロにした。

 

「はぁ・・・・・はぁ・・・・・・」

 

彼女がポリゴンの欠片となって消えたのを、見た俺は息を整え周りを確認する。

 

「こ、これで全部倒したんだよね・・・・・・」

 

「え・・・ええ・・・・・・。そう・・・願いたいです」

 

「ランちゃんに・・・・・・はぁ・・・・・・ん・・・・・・同意・・・・・・だよ・・・・・・」

 

「同じく、そう願いたい・・・・・・」

 

辺りでもみんな息を整えて、ポーションを飲んでいた。一応念のため、HPを回復しているのだ。まあ、飲み物を飲みたいという思惑もあるのだろうが。

 

「パパ!ママ!プログラムたちは機能を停止したようです」

 

そんなところに、ユイからそんな声が聞こえてきた。

どうやら彼女たちは停まったみたいだ。

 

「パパとママたちが、暴走した防衛機能から解放してくれたんです!」

 

「そうか・・・・・・」

 

「よかった・・・・・・。解放されたんだね・・・・・・・」

 

「ああ・・・・・・。少しの間だけ待っていてくれ。必ずキミたちを迎えに来るから・・・・・・」

 

そう、彼女たちに聞こえているか分からないが言ったその瞬間。

 

「な、なんだっ!?」

 

「なにっ!?」

 

突如、目の前の空間にバチバチと何かがぶつかり合う。無理矢理出ようとするみたいな現象が起きた。それは、先ほど暴走した防衛機能によって実体化したMHCPたちが出現した現象と酷似していた。いや、もしかしたらそれ以上かもしれない。

 

「まだ何か起こるのかっ!?」

 

連戦だらけの今回の戦闘に疲れた足に鞭を打って、踏み上がり目の前の空間に視線を向ける。

やがて爆発でもしたかのような衝撃音が鳴り響き、目を開けてそこを見るとそこには、一つの巨大な。いや、異様な姿のモノがいた。

その異様な姿のモノ・・・・・・いや、者を見て俺たちは驚愕した。

 

「そ、そんな・・・・・・あれは・・・・・・まさか・・・・・・」

 

「うそ・・・・・・でしょ・・・・・」

 

「おいおい・・・・・・あれはまさか・・・・・・」

 

「そんな・・・・・・」

 

それは、この紅玉宮の床に巨大な薄紅の宝玉ごと鎮座し、宝玉の左右には紫のアーマースカートのような物が。手は白い人間の両腕とその両腕より遥かに大きい紫の鉤爪のような両腕の四本。後ろにはホロウ・エリアで見たような魔方陣とは違う、異質な真っ赤なリングが二つ回って。女であろう豊かな胸部があり、頭部は硬質なフードのようなもので被っている。そして、そこから見える薄紫の髪。それはどこからどう見ても、彼女だとしか思い浮かばなかった。

それを、見てレインが。

 

「あれって・・・・・・ストレアちゃん・・・・・・だよね?」

 

恐る恐ると言った。

そう、あれは。いや、彼女は間違いなく、俺たちの仲間であり、ユイの妹であるストレアだ。

 

「くっ!!一体どういう事だ!?」

 

何故ストレアがここに現れたのか、あの姿は一体なんなのか理解できない俺にユイが。

 

「パパ、あれは恐らくストレアさんの暴走です!」

 

「暴走だと!?」

 

「はい。膨大なエラーを抱えたストレアさんが、先ほどのボス。ホロウアバターに吸収されたことによって、さらに暴走を拡大させたのだと思われます!パパ!ママ!このままではストレアさんが危険です!ストレアさんの暴走を止めてください!」

 

「キリトくん・・・・・・」

 

「ああ。ストレアを暴走させる原因になったのは俺たちプレイヤーの・・・・・・。人間の感情のせいだ。一人で全プレイヤーの感情を抱え続けてきて・・・・・・。ストレアが苦しみに怯えていたのを、俺は知っていたのになにも出来なかった・・・・・・。だから・・・・・・だから俺はあいつを。ストレアを助け出す!」

 

そう言い終えると同時に双剣の『エリュシデータ・ナイトローズ』と『ダークリパルサー・ユニヴァース』の柄を握り直す。

 

「キリトくん、私も・・・・・・私もストレアちゃんを助けるよ!」

 

「レイン」

 

「二人だけではないですよ」

 

「そうそう」

 

「ラン。ユウキ」

 

「私たち全員、今までストレアさんに助けてもらっていたわ。だから、今度は私たちがストレアさんを助ける番よ!」

 

「もちろん!」

 

「当たり前でしょ」

 

「当然よ!」

 

「はい!」

 

「キュウ~!」

 

「ええ!」

 

アスナの言葉にあちこちから声が上がる。

 

「キリトくん。私たち全員で、ストレアちゃんを助けてあげよう」

 

「レイン・・・・・・。ああ、そうだな!」

 

そう言うと俺たちは三度それぞれの剣を握り締め。

 

「行くぞ!」

 

『『『『『おおっ!!!』』』』』

 

 

 



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HF編 第139話〈The LastBattle(終焉への戦い)

 

~キリトside~

 

ユイとストレアの妹たちを防御プログラムから解放した俺たちの次の目下の敵は、目の前にいる暴走し、異様な姿となって現れたストレアだった。

相棒(双剣)を握りしめて、俺は・・・・・・いや、俺たちはストレアを助けるために、俺たちの前に現れたストレア―――ホロウストレアに向かって行った。

 

「はぁあぁぁぁぁ!!」

 

ホロウストレアとの距離を一瞬で詰めた俺は、初撃から最速の斬撃を振るう。対するホロウストレアはなにも動作(アクション)を起こさずにいた。そのまま俺の双剣による斬撃が当たるかと思われた。しかし。

 

「―――!」

 

「なっ!?」

 

紫の鎧籠手の鉤爪にそれは防がれた。

 

「ちっ!」

 

カウンターを受けないためすぐに後ろに下がった俺はホロウストレアから距離をとる。

距離を取った俺は、ホロウストレアのHPゲージを見上げる。

 

「っ?!」

 

HPゲージを見た俺は目を見開いた。レインたち、他のプレイヤーも足を止める程だ。何故なら、ホロウストレアのHPゲージは全部で―――

 

「は、八段だと・・・・・・!?」

 

今までのボスの、それこそMHCPの彼女たちの前に戦ったホロウアバター、そして75層のボス、スカルリーパーと同じ五段HPゲージを遥かに超えた八段だったからだ。

 

「おいおい、嘘だろ。八段なんて・・・・・・」

 

「今まで見た事ありませんよ・・・・・・」

 

八段という膨大な量のHPゲージに辺りから動揺のざわめきが広がる。そこに。

 

「―――!」

 

「っ!全員今すぐその場から離れろ!」

 

『『『『『!!』』』』』

 

俺の声にすぐさま全員がその場から退避する。退避し終わると同時に、そこにホロウストレアから直線上に白金のビーム・・・・・・ブレスを放った。

とっさに俺が気づいたから良かったものの、あんなのが直撃したら一溜りも無い。

 

「くそっ!」

 

「キリトくん!」

 

俺はホロウストレアが攻撃し終わると同時にその場を蹴り、ホロウストレアの巨体に肉薄する。

 

「うおおおおおお!!」

 

片手剣ソードスキル《ノヴァ・アセンション》10連撃を高速で放つ。

 

「―――!」

 

ようやく初撃(ファーストヒット)が当たり、ホロウストレアの膨大なHPが僅かに減る。ホロウストレアは声にならない甲高い声を上げ、鎧籠手の右手を振り下ろしてくる。

 

「させるかっての!」

 

「キリト、こっちは任せろ!」

 

それをクラインの刀とエギルの両手斧が弾いた。

 

「クライン!エギル!」

 

驚いている俺を他所に。

 

「独断先行ってのは無しだキリトさん!全員、各々の力を振り絞れ!我々は、必ず勝つぞ!」

 

『『『『『おおおおーーーっ!!』』』』』

 

リンドさん率いる聖竜連合とソロ、またはパーティーを組んでいる攻略組の面々がホロウストレアに攻撃を仕掛ける。

 

「リンドさん!」

 

「スイッチを活用して攻撃してください!それぞれ最後まで全力で戦いましょう!」

 

『『『『『おおおおーーーっ!!』』』』』

 

その反対側ではアスナが血盟騎士団のメンバーに激励を飛ばしていた。

 

「いくよ姉ちゃん!」

 

「ええ!援護するわユウ!」

 

「リーザ行くよ!」

 

「分かってるわラム!」

 

「シリカ!」

 

「はい!リズさん!お願いピナ!」

 

「キュウ~!」

 

「いっくよ~っ!」

「そうはさせないわ!」

 

「フィリアちゃん、お願い!」

 

「まかせてアスナ!」

 

辺りでは一瞬で攻略組の全員が各々の力を最後まで振り絞ってホロウストレアと戦っていた。そこに。

 

「キリトくん、いくよ」

 

レインが隣に立って言った。

 

「レイン」

 

レインの顔を見て言うと。

 

「パパ!ママ!頑張って下さい!」

 

「回復が足りないヤツはオレっちたちに言えヨ!」

 

後ろからユイと、ユイを守っているアルゴの声が聞こえてきた。

俺はそれに気持ちを一旦落ち着かせて。

 

「いくぞレイン!」

 

「うん!」

 

「「共鳴(レゾナンス)!」」

 

「零落白夜!」

 

「絢爛舞踏!」

 

《シンクロ》スキルを同時に発動させ。

 

「はああああああああああ!!」

 

「やああああああああああ!!」

 

思いっきりホロウストレアに接近してソードスキルを繰り出す。

 

「―――!!」

 

「二人に続けぇ!」

 

『『『『『おおおおーーーっ!!』』』』』

 

俺とレインの攻撃に当たりから声が上がった。

 

「―――!」

 

対するホロウストレアは声にならない、そもそも声を上げてるのか分からないが、気配から高い雄叫びを上げてると感じ取れた。

 

「―――!」

 

「っ!タンク!」

 

ホロウストレアの攻撃動作を見たランがすぐに声を上げ、すぐさまタンク隊のプレイヤーが防御の姿勢をとる。

そのすぐあと、ホロウストレアを中心に衝撃波が放たれた。

 

『『『ぐぅぅっ!』』』

 

衝撃波はホロウストレアを中心に全方位に向かって放たれた。

 

「(くっ・・・・・・!HPは膨大な上に攻撃力も防御力も高いのかよ!)」

 

双剣をクロスして衝撃波を受け流した俺は自身のHPゲージを見る。見るとHPは今ので1割ほど削られていた。

これで速度も速かったらふざけんなって言いたいところだが、どういう訳かホロウストレアはその場から動かない。正確には、その巨体が動かないのだ。恐らく、紅玉宮の床に接着してのだと思われる。もっとも、この巨体で動かれたら手の施しようがないが。

 

「うおおおおおおお!」

 

防御から一転して攻撃に先んじる俺は、容赦無く《二刀流》ソードスキル《デブス・インパクト》重攻撃5連撃を繰り出す。

 

「――――――!!」

 

《デブス・インパクト》の追加効果で、ホロウストレアのHPゲージ上に防御低下のデバフアイコンが現れる。これで少しはダメージが通りやすくなったはずだ。

 

「これでもくらぇぇ!!」

 

「やあぁぁぁぁっ!!」

 

ホロウストレアが怯んだところに、リズの片手棍とシリカの短剣がホロウストレアを襲う。シリカの作った道を駆け抜けたリズは、片手棍でホロウストレアの頭部を狙う。

 

「――――――!」

 

頭部に片手棍を叩き込まれたホロウストレアはスタンしたのか動きを止める。

 

「今よ!全員攻撃!」

 

すぐさまアスナが指示をだし、攻略組全員の多重ソードスキルがホロウストレアに襲い掛かる。

 

「――――――!!」

 

俺たちの多重ソードスキルを食らい、ホロウストレアのHPゲージは八段ある内の、八段目の半分にまで減った。

俺たちのソードスキルが終わると同時にスタンが解除されたホロウストレアは右の鉤爪で、そこにいる一団を狙う。しかし。

 

「させない!」

 

「うおおおおおおおおっ!!」

 

「でりゃあぁぁぁぁぁっ!!」

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

後ろからシノンの弓による援護とエギルとクライン、聖竜連合のシュミットさんがそれを防ぐ。それに続いて。

 

「いくよ!―――サウザンド・レイン!」

 

レインが近距離からホロウストレアに向けて《サウザンド・レイン》を射った。

 

「――――――!」

 

近距離から《サウザンド・レイン》を受けたホロウストレアの巨体のあちこちには、《サウザンド・レイン》の蒼色の剣が突き刺さっていた。

 

「キリトくん!アスナちゃん!」

 

「ああ!」

 

「ええ!」

 

俺とアスナは《サウザンド・レイン》に続いてホロウストレアに接近する。

 

「やあぁぁぁぁっ!!」

 

「おおぉぉぉぉっ!!」

 

アスナは細剣ソードスキル《ヴァルキュリー・ナイツ》9連撃を、俺は《二刀流》ソードスキル《クリムゾン・スプラッシュ》重攻撃8連撃を繰り出す。《サウザンド・レイン》の追い撃ちを掛けるように、休む暇もなくソードスキルを受けたホロウストレアのHPは少しずつだが徐々に削れていく。さらに左右でも、ソードスキルのライトエフェクトが煌めく。

 

「――――――!」

 

「させません!」

 

「そうはいかないわ!」

 

ブレス攻撃を放とうとするホロウストレアに、ラムとリーザの二人がブレスを撃とうとする直前に、ホロウストレアの頭部を攻撃しブレス攻撃を中断(キャンセル)させる。

頭部を攻撃され、またしても動きが止まったホロウストレアに俺とレインが秘奥義を放つ。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

溜め(チャージ)を終えた俺とレインは、秘奥義である《ネビュライド・エンプレス》と《アンリミテッド・オーバーレイ》を同時に繰り出す。さすが秘奥義なのか、通常のソードスキルで攻撃するよりもホロウストレアのHPゲージが減る速度が早い。俺とレインの秘奥義を受けて、ホロウストレアの八段あるHPゲージは、八段目が無くなり、七段目にまで突入した。このまま秘奥義を打ち続ければ倒せるんじゃないかと思うが、実際にはそうはいかない。いや、いかないのではなく、いけない(・・・・)。なにせ、今日秘奥義を放ったのはこれで二回目だ。さすがに連続で繰り出すと剣の耐久値が無くなって砕け散ってしまう。秘奥義はその威力に比例して、剣の耐久値をかなり奪うのだ。恐らく、俺とレインが秘奥義を放てるのはあと二回だろう。多くて三回、だがそれまでに持てばいいが、みんなこの連戦で疲労が溜まってる。長時間の戦闘は無理だ。それはもちろん俺たちもだ。それが分かっているのかアスナがそれぞれ指示を出していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間半後

 

 

「はああああああああああ!!」

 

「――――――!!」

 

「負けられるかぁぁぁっ!」

 

「私たちは―――!」

 

「―――絶対に、負けない!」

 

ホロウストレアの残存HPは四段半となっていた。堅すぎる防御は並大抵の攻撃では歯が立たなく、ホロウストレアの攻撃はどれも強力と苦戦を強いられた。

あれから特に攻撃パターンが変わることはなく、ホロウストレアの攻撃は直射ブレスと全方位への衝撃波、両腕の鉤爪による攻撃、それと全方位への衝撃波を一区画だけから放つ小規模の衝撃波だ。

俺たちは交互にスイッチを取りながらホロウストレアにダメージを与えていった。変化があったのは――――――。

 

「――――――!!!」

 

「な、なんだ?!」

 

「な、なに?!」

 

ホロウストレアの残りHPが四段目に突入したその直後、ホロウストレアの巨体を包むように薄紫と紅玉色を混ぜ合わせたようなオーラが現れた。そして、ホロウストレアの鎧籠手を着けてない白い手に、一本の薄紫の大剣が顕現した。しかも、両手にだ。

その大剣を視た俺たちは目を見開く。

 

「あれは―――!」

 

「ストレアちゃんの両手剣!」

 

その大剣―――両手剣はストレアの剣である、インヴィリアだったのだ。それも二本。

 

「まさかストレアの剣を出してくるなんて・・・・・・!」

 

MHCPたちと戦う前に戦ったホロウアバターの使った両手剣もだが、目の前のホロウストレアの握る剣は、何処か禍々しいというか不気味な感じだった。

そう感じているや否や。

 

「っ!危ない!」

 

右手の剣を攻撃している攻略組の一団を狙って振り下ろしてきた。

とっさにそこに入り込み双剣をクロスブロックしてホロウストレアの振り下ろした両手剣を受け止める。

 

「(ぐうっ・・・・・・!)」

 

ガンッ!と剣と剣がぶつかり合う金属の音を盛大に響かせながら、俺の双剣(相棒)とホロウストレアの両手剣がぶつかった。

 

「(っ!お、重すぎる!?)」

 

両手剣を受け止めた俺は、その両手剣の重さに驚愕した。この重さは、かつて75層でスカルリーパーと戦ったときと同じ感じだ。もちろん、その頃よりかなりレベルアップしているから今なら、スカルリーパーの鎌を一人で受け止められると思う。しかし、このホロウストレアの振り下ろしてきた両手剣の重さは、その時に匹敵するほどの重さだった。

もちろん、一人で受け止められるがこれ以上重くなったらさすがの俺でも受け止めきれない。そう思っていると、ホロウストレアがさらに両手剣に力を要れて押し込んできた。

 

「ぐ・・・・・・っ!」

 

双剣で受け止めながら膝をつく。幸いにも、俺が受け止めている間に、そこにいた攻略組のプレイヤーは放れ、その腕に攻撃している。

 

『おおおおおおおっ!』

 

『はああああああっ!』

 

腕に攻撃しているプレイヤーのダメージが蓄積したのか、ホロウストレアが両手剣に力を要れるところが弱まったところに。

 

「キリト!」

 

「キリトさん!」

 

「フィリア!ラン!」

 

フィリアの短剣とランの片手剣が同時に両手剣の刃に当たった。そしてその隙を逃さず。

 

「うっ・・・・・・ああああああっ!!」

 

思い切り両手剣を跳ね上げた。

 

「――――――!」

 

両手剣を跳ね上げ、がら空きの胴体に向けて。

 

「スターバースト・―――ストリーム!!」

 

《二刀流》ソードスキルの中で最も修練したであろうソードスキル、《スターバースト・ストリーム》16連撃を打ち込む。

更に続けて。

 

「ダークネス・カーニバル!」

 

「ラスティー・ネイル!」

 

フィリアとランのソードスキルが叩き込まれる。

 

「――――――!!」

 

俺たち三人の強力なソードスキルを食らったホロウストレアは苦悶の表情らしきものを浮かべる。

 

「ボクたちもいるよ!」

 

「いくよユウちゃん!」

 

俺たち三人のソードスキルが終わると同時にユウキとリーファのソードスキルがホロウストレアの巨体を捉える。

 

「シノンちゃん!」

 

「ええ、まかせて!」

 

後ろからはレインとシノンの援護射撃のソードスキルが放たれた。

 

「いくぜエギル!」

 

「おお!」

 

「いくわよ!」

 

反対側ではエギルとクライン、アスナのソードスキルが命中する。

辺りはすでに混戦のような感じだ。ホロウストレアの両手剣を盾持ちのプレイヤーが受け止めたり、かわしたりして少しずつダメージを与えていく。HPがイエローゾーンに入ったプレイヤーは後方に下がり回復する。アルゴとユイも補給部隊のような立ち位置になっている。幸いにも、ホロウストレアはソードスキルを使わなかった―――いや、使えないと言うべきか。巨体が紅玉宮の床に張りついてるみたいでその場から動けないホロウストレアは、両手の剣を振るうだけだった。ソードスキルじゃない分、やり易かったがホロウストレアの攻撃の幅が広がり、俺たちは相変わらずかなりの苦戦を強いられていった。少しずつHPを削りっていき。

 

「―――っ!しまっ―――!」

 

初動作無しで放たれた衝撃波に吹き飛ばされた。吹き飛ばされ、わずかにスタンした俺にホロウストレアは右手の剣を振り下ろしてきた。

 

「くっ!」

 

「キリトくん!」

 

動こうとするがスタンした影響でうまく動かない俺に、ホロウストレアは躊躇なく剣を振り下ろしてくる。そのまま俺に当たるかと思われた薄紫の両手剣は―――。

 

 

 

 

「ふんっ!」

 

 

 

 

 

「なっ―――!?」

 

突如として目の前に現れた一人のプレイヤーの巨大な盾に阻まれた。さらに、そのプレイヤーはホロウストレアの剣を難なく跳ね返したのだ。そのプレイヤーの姿を見た俺は目を見開いた。

 

「キリトくん、大丈夫?!」

 

「あ、ああ」

 

レインの手を借りて、立ち上がり目の前にいるプレイヤーに視線を向ける。

 

「何であんたがここに・・・・・・!」

 

そのプレイヤーを見た俺は思わずそう声に出した。

何故なら、そのプレイヤーはここにいないはず―――いや、いなかったはずなのだ。あの時から。

 

「―――ふむ。ギリギリのところだったみたいだね」

 

「そ、そんな、なんでここに・・・・・・」

 

そのプレイヤーの声にレインも驚く。そのプレイヤーの姿は紅と白のサーコートを着た最低限の鎧に、右手に細長い細剣と同じくらいの十字剣、そして左手に持った巨大な純白の十字盾。そのプレイヤー・・・・・・いや、ソイツは。

 

「久しぶりだね、キリト君にレイン君」

 

この世界の管理者にして支配者、ゲームマスター。そして、血盟騎士団団長。

 

 

 

 

 

 

「―――ヒースクリフ!」

 

 

 

 

 

 

茅場晶彦(ヒースクリフ)だった。

 

 

 

 



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HF編 第140話〈The LastEnd(最後の決着)


「プリヴィベートみんな!ソーナだよ!ついに、このHF編も終焉が近づいてきたね!今日はこの二人がゲスト!」

「よっ、みんな久しぶり、キリトだ」

「ヤッホー。プリヴィベート、レインだよ」

「今日のゲストはキリトとレイン!二人とも、今の気持ちはどう?」

「いやー、長かったな」

「ホントだよ~。ついにあと少しでアインクラッドも終わりなんだね」

「そうだね~。まさかここまで二年も経つなんて思わなかったよ」

「ま、あと少しあるからな。頑張れよソーナ」

「頑張ってねソーナ」

「もちろん!二人も頑張ってね!」

「ああ!」

「もちろん!」

「それでは、HF編のカウントダウン始まり!そして、HFの次はなんと彼女たちとの出会いが・・・・・・」

「これからもよろしく頼むぜみんな!」

「感想も待ってるよ!」

「それでは、第141話〈The LastEnd(最後の決着)〉を」

「「「とうぞ!!」」」




 

~キリトside~

 

突如として目の前に現れたこの世界の管理者にして支配者、ゲームマスターであり、血盟騎士団団長である男。ヒースクリフに俺たちは驚きを隠せずにいた。

 

「やはり生きていたのか」

 

ヒースクリフを睨み付けるように言う俺は、両手の剣を強く握り締める。

 

「うむ。つもる話は君たちにも、もちろん私にもあるがまずは―――」

 

そう言ってヒースクリフは鋭い視線を、ホロウストレアに向けた。

 

「彼女を倒すことではないかな?」

 

ヒースクリフの言葉に、俺とレインは目を見開いて驚く。この男がそんなことを言うとは思わなかったのだ。

 

「何が目的だ」

 

「いや、なに。彼女を倒さねば、カーディナルシステムを元に戻すことが出来ないのでね」

 

「そういうことか・・・・・・」

 

ヒースクリフの言葉に、相変わらず食えない男だと俺は思った。

 

「では、いこうか」

 

「ああ。・・・・・・腕は落ちてないだろうなヒースクリフ?」

 

「ふっ。無論だ」

 

「そんじゃ、いくぞレイン!ヒースクリフ!」

 

「うん!」

 

「よかろう!」

 

そう言い終えると同時に、俺とレイン、ヒースクリフは駆け出しホロウストレアへと向かった。

ヒースクリフが向かうとあちこちから動揺が生まれるが、俺はすぐに。

 

「みんな!今はヒースクリフのことを考えるのは置いておくんだ!俺たちは、俺たちのやることをすればいい!今、考えるべきことは目の前のボスを倒すことだけだ!」

 

声を響かせて伝える。

その間にも、ヒースクリフはさすがのゲームセンスでホロウストレアの攻撃をすべて受け止めるか捌ききって攻撃を与えていた。

その姿に、他のプレイヤーも一旦考えるのを止め、再びホロウストレアへと向かっていった。

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「やあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「――――――!!」

 

ホロウストレアの鎧籠手の鉤爪の攻撃を捌いて、ホロウストレアの巨体に肉薄し切り裂いていく。

すぐ近くでも。

 

「うおぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

「せりゃあぁぁぁぁっ!!」

 

「てぇぇぇぇぇぇいっ!!」

 

ラムたちがソードスキルを次々に放ってホロウストレアのHPを削っていった。

 

「――――――!」

 

「せいっ!」

 

別のところでは、ヒースクリフが盾を構えてホロウストレアの剣を受け止め、そのまま跳ね返してユニークスキル《神聖剣》ソードスキルを繰り出していった。そこに。

 

「――――――!!」

 

「・・・・・・っ!」

 

ホロウストレアが反対の剣でヒースクリフに攻撃を仕掛けてきた。

さすがの反応速度で盾を戻そうとするヒースクリフと、迫り来るホロウストレアの剣の間に。

 

「させません!」

 

「させないよ!」

 

「そうはいかない!」

 

ラン、ユウキ、アスナの三人が入り込み。

 

「せりゃあぁぁぁぁっ!!」

 

「やあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「はあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

三人係でホロウストレアの剣を受け止め、そのまま軌道を逸らした。軌道が逸れたホロウストレアの剣は、ランたちの横に突き刺さる。

 

「アスナ君!ユウキ君!ラン君!」

 

「無事ですか団長」

 

「う、うむ」

 

「なら、どんどんいきますよ!」

 

「姉ちゃんの言う通りだね。さあ、いくよ!」

 

ユウキの声に、アスナとランは勢いよくその場から駆け連続の突きや斬撃をホロウストレアに与えていった。

 

「姉ちゃん、アスナ、どいて!」

 

「「了解!」」

 

二人が避けたところに、ユウキのソードスキルが命中した。

 

「――――――!!!」

 

「今だよ!ラム!リーザ!」

 

「はい!」

 

「ええ!」

 

ユウキのソードスキルでスタンし動きが止まったホロウストレアに、すぐさまラムとリーザが接近してそれぞれ《抜刀術》ソードスキル《緋吹雪》、《無限槍》ソードスキル《ミスティカル・レインズ》を繰り出した。

しかし―――。

 

「――――――!!」

 

「「なっ・・・・・・!?」」

 

ホロウストレアは衝撃波で俺たちを吹き飛ばした。

 

「うわぁ!」

 

「きゃあっ!」

 

「むぅぅ!」

 

「ぐっ!」

 

俺たちは、全員その場から吹き飛ばされホロウストレアから距離を取ってしまった。そしてそこに。

 

「む、まずい!」

 

ホロウストレアが広範囲に向かって白金のブレスを飛ばしてきた。

 

「レイン!」

 

「うん!」

 

俺とレインはすぐにユイとアルゴの前に立ち。

 

「パパ!ママ!」

 

ユイが後ろで心配する声が聞こえる。

 

「キー坊!」

 

アルゴに呼ばれ後ろを向くと。

 

「使えキー坊!」

 

アルゴが盾を投げ渡してきた。

アルゴが投げ渡してきた盾を捕まえた俺は、すぐに盾を前に構えてホロウストレアのブレス攻撃を受け止めた。本来なら、装備スロットにセットしなければ十全ではないが、実体化してあるなら一時的に装備スロットにセットしてなくても使えるのだ。

ホロウストレアのブレスを受け止めた盾は、レアリティが高いのか、ホロウストレアの攻撃を受けても壊れてはいなかった。もっとも、距離や位置も関係しているのだろうが。

 

「サンキューアルゴ!」

 

「ありがとうアルゴさん!」

 

「それより二人とも、オレっちたちの回復アイテムも無くなってきるから早々に決着を頼むゼ」

 

「わかった!」

 

「おう!」

 

アルゴに盾を返し。

 

「パパ、ママ、頑張って下さい!!」

 

ユイの応援する声を後ろに、俺とレインは全力を振り絞る。

 

「ヒースクリフ!」

 

「っ!」

 

ヒースクリフに視線を送った俺に、ヒースクリフはすぐに意図がわかったのか。

 

「うむ!」

 

盾を垂直に構えた。俺とレインはヒースクリフの盾を利用して上に上がり。

 

「いくよ!舞い貫いて!――――サウザンド・―――レイン!!」

 

上から、今までの《サウザンド・レイン》の中でもっとも数の多く、鋭い蒼い剣をホロウストレアに降り注がせた。

 

「キリトくん!」

 

「ああ!」

 

レインの《サウザンド・レイン》を追い掛けるように、ホロウストレアに向かっていき。

 

「うおおおおおおおおおっ!!!」

 

限界まで引き絞った右手を思いっきり前に突きだした。

右手の剣、『エリュシデータ・ナイトローズ』には深紅のライトエフェクトが輝き、ジェット機のような轟音を轟かせる。一直線に、深紅の軌跡をあとに残しながら、俺はホロウストレアに向かって剣を貫く。

 

「――――――!!」

 

声にならない奇声を上げたホロウストレアは無茶苦茶に左右の剣や鎧籠手の鉤爪で攻撃してくるが。

 

「せりゃあぁぁぁぁっ!!」

 

床に着地と同時にフルスピードで肉薄し、俺と合流したレインとともに捌く。この時点でホロウストレアの残りHPは三段を下回っていた。

さらにホロウストレアのHPは徐々に減少していく。

辺りには再び接近した攻略組のプレイヤーが攻撃を仕掛けていた。

それから――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 約一時間後

 

 

 

 

「はあああああっ!」

 

「うおりゃぁぁっ!」

 

「せえぇぇぇいっ!」

 

「――――――!!」

 

ヒースクリフが加わったことで、火力が増し、手数が増えたことによりホロウストレアへの攻略が、よりやり易くなった。ホロウストレアの八段あった膨大なHPは残り一段―――いや、一段目の七割程にまで削られていた。

 

「――――――!!」

 

ホロウストレアが声にならない奇声を上げるのと同時に。

 

「一気に畳み掛けるぞレイン!」

 

「うん!」

 

「「―――発動(アクティブ)神双解放(リミットリリース)!!」」

 

俺とレインは《シンクロ》スキル《神双解放(リミットリリース)》を発動させた。スキルを発動させると、自身のHPバーの上に神々しい、アインクラッドの紋章が表示される。

 

「アスナ、左側を頼む!」

 

「まかせて!」

 

「リンドさんは右側をお願いします!」

 

「了解だ!総員!全力を振り絞ってキリトさんとレインさんの道を作るんだ!」

 

『『『『おおおーーっ!!』』』』

 

辺りからは指揮を高める声が巻き上がり、よりいっそう攻撃が鋭くなっていった。

 

「――――――!!」

 

「させるかよ!」

 

「させねぇ!」

 

攻撃の動作に入ったホロウストレアをクラインたち風林火山とエギルが攻撃してホロウストレアの攻撃をキャンセルさせる。

 

「いくよ、リーザ!」

 

「ええ、ラム!」

 

リーザとラムは器用に動き回り、リーザは槍、銘『雪月花』で。ラムは刀、銘『胡蝶蘭月』でホロウストレアを斬りつける。

 

「シリカ!」

 

「はい、リズさん!ピナ、お願い!」

 

「キュウ~!」

 

ホロウストレアの顔近くにまで飛んだピナのバブル攻撃でスタンし、そこにシリカが短剣、『イノセントレイ』で斬りつけ。

 

「今ですリズさん!」

 

「オッケー、シリカ!どっせぇぇーいっ!!」

 

リズが片手棍、『イジェクティブブレイカー』で叩き付ける。

そしてそこに。

 

「っ!」

 

「させないわ!」

 

後ろからシノンが弓、『スターライトルミナス』で弓ソードスキルを放ち、リズたちを狙ったホロウストレアの動きを阻害する。さらに。

 

「やあぁぁぁぁっ!!」

 

いつの間にか接近していたフィリアが短剣、『スターティングレインズ』で短剣ソードスキルを放ちホロウストレアの鎧籠手の左腕を破壊する。それとほぼ同時に反対側の、リンドさんたちがいる方でも鎧籠手の右腕を破壊した。これでホロウストレアの攻撃は半減した。しかし、ホロウストレアは少し仰け反っただけで、そのままブレスを放とうとしてきた。

 

「うおおおおおおおおおっ!!」

 

「やあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「「―――ワールドエンド・オーバーレイ!!」」

 

その直前に、《シンクロ》ソードスキル《ワールドエンド・オーバーレイ》重攻撃14連撃を撃ち不発にさせる。

これでホロウストレアの残りHPは半分以下に下回った。

 

「みんな!一気に決めるわよ!」

 

『『『『『おおおーーっ!!』』』』』

 

アスナのその声と同時に、ここが踏ん張り時だと分かった攻略組のプレイヤー面々はホロウストレアが攻撃をする余地のないほどの怒濤の勢いで畳み掛けていった。

 

「アスナさん!」

 

「リーファちゃん!」

 

アスナとリーファ、二人係でホロウストレアの無茶苦茶に振り下ろしてきた剣を、自身の剣で滑らせて。

 

「やあぁぁぁぁっ!!」

 

「てぇぇぇぇぇぇいっ!!」

 

アスナは細剣、『ラディアントルクス』で《神速》ソードスキル、《スターリィー・ティアー》を。リーファは片手剣、『エンシェントスカイ』で片手剣ソードスキル《ノヴァ・アセンション》を繰り出す。

 

「――――――!!!!」

 

「いくわよユウ!」

 

「うん!姉ちゃん!」

 

追撃を仕掛けるように、ランとユウキがホロウストレアに迫りそれぞれの蒼銀の片手剣、『インフィニティストライカー』で《変束剣》ソードスキル《ラスティー・ネイル》を。薄紫の片手剣、『エタニティレクイエム』で《紫閃剣》ソードスキル《マザーズ・ロザリオ》を放つ。

 

「はあぁぁぁぁっ!!」

 

「やあぁぁぁぁっ!!」

 

紫と蒼のライトエフェクトが目映く輝き、ホロウストレアのHPを奪い取っていく。二人のソードスキルはホロウストレアのHPを残り二割以下にまで奪い尽くした。

 

「キリトさん!レインさん!」

 

「キリト!レイン!」

 

「ああ!」

 

「うん!」

 

二人とスイッチして入れ替わり、俺とレインはホロウストレアに接近する。

 

「――――――!!!!!」

 

ホロウストレアは俺とレインを脅威大と判定したのか、俺とレインに攻撃をすべて仕掛けてきた。

 

「はぁっ!」

 

「やあっ!」

 

迫ってきたホロウストレアの左の剣を軌道を逸らし。

 

「させん!」

 

「ヒースクリフ!」

 

右の剣をヒースクリフが一瞬で割って入って巨大な十字盾で受け止め、そのまま《神聖剣》ソードスキルを放った。

 

「行け、キリト君!レイン君!」

 

「わかってる!」

 

「うん!」

 

ヒースクリフやアスナたちみんなが作った道を通り、俺とレインは最後のソードスキルを打ち出す。

 

「これが俺たちの―――!」

 

「これが私たちの―――!」

 

「「全力!!」」

 

「いくよ、ストレアちゃん!―――貫いて!―――サウザンド・―――レインッッ!!!」

 

レインの放った《サウザンド・レイン》は勢いよく、鋭くなってホロウストレアを貫いていき。

 

「キリト君!」

 

「キリトさん!」

 

「キリト!」

 

「キリトくん!」

 

「キリト!」

 

「キリト!」

 

「キリトさん!」

 

「キュウ~!」

 

「キリト!」

 

「キリト!」

 

「キリトさん」

 

「キリト!」

 

「キリト!」

 

「キー坊!」

 

アスナ、ラン、ユウキ、リーファ、シノン、フィリア、シリカ、ピナ、リズ、ラム、リーザ、エギル、クライン、アルゴの声を、いや、この場にいるみんなの声援を背中に受けて、俺は双剣を振るった。

 

「うおおおおおおおおおっ!!―――ジ・」

 

「キリトくん!!!」

 

「パパァ!!!」

 

レインとユイの声を受け、全力でホロウストレアに―――ストレアを助けるために一撃ずつ意思を込めていく。

《二刀流》の中で秘奥義を除いて最強のソードスキル。スターバースト・ストリーム以外で最も修練した《二刀流》の最上位ソードスキル。

 

「これで終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!――――イクリプスッッ!!!!!!」

 

《二刀流》ソードスキル《ジ・イクリプス》27連撃。

ラスト、27撃目の左突きをストレアの巨体の中心部に穿つ。

 

「―――――――――!!!!」

 

俺の最後のソードスキルはストレアのHPを余さず、すべて奪いストレアの八段あった膨大なHPをゼロにした。

 

 

 

 



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HF編 第141話〈ヒースクリフ〉

 

~キリトside~

 

 

《二刀流》ソードスキル、《ジ・イクリプス》27連撃を放ち、膨大な量のHPが無くなった最後のボス。ホロウストレアが消えてのを見て、俺は《ジ・イクリプス》の27連撃目の左突きのままだった姿勢を解き、その場に静かに座り込んだ。

 

「・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・。・・・・・・た・・・・・・倒したか?」

 

「・・・・・・うん。倒したよ、キリトくん」

 

息も絶え絶えにして言う声に、俺に背中を預けるようにして後ろに座るレインも同じように息を整えて言った。

この紅玉宮最奥部の部屋のあちこちに、この最後の戦いに挑んだ猛者たちが座り込んでいた。

 

「ぜぇ・・・・・・ぜぇ・・・・・・もう駄目だぁ!へとへとで・・・・・・立っているのもやっとだぜ。今は第一層のザコイノシシにだって、勝てる気がしねぇ・・・・・・」

 

クラインは刀を支えにして、床に膝をつき。

 

「情けないわね。ここまで来たんだから、最後までしゃきっとしなさい!」

 

「それは、無理だよリズ・・・・・・もう・・・・・・疲労困憊・・・・・・。それにリズだって座ってるじゃない・・・・・・」

 

「あはは・・・・・・。アスナの言う通り・・・・・・あたしも実のところ、もうぐったりよ・・・・・・」

 

アスナとリズはヘナヘナと、その場に崩れる。

 

「ふぅ~・・・・・・。ピナ、おつかれさま」

 

「くるるるぅ」

 

「今はあたしがピナの肩に乗って休みたいかも・・・・・・」

 

ピナは息を整えているシリカの肩に止まって、シリカの頬に頬擦りをしていた。

 

「さすがに・・・・・・疲れたわね・・・・・・」

 

「ホ、ホントだよ・・・・・・。剣道の試合よりも、ぜんっぜんキツイ・・・・・・」

 

シノンとリーファは弓と片手剣を収納し、ポーションでHPと喉を潤していた。ちらほらと、二人と同じことをしている人の姿が見える。

 

「ラム・・・・・・おつかれ・・・・・・」

 

「リーザも・・・・・・おつかれさま・・・・・・」

 

ラムとリーザは壁に背を預けて、互いを労っている。

 

「お疲れ、姉ちゃん、フィリア」

 

「あなたもお疲れさまですよ、ユウ・・・・・・」

 

「うん。おつかれユウキ・・・・・・」

 

ユウキ、ラン、フィリアはハイタッチをして喜びを分かち合っていた。まあ、声に覇気が無かったのは疲れていたからだけど。

そこで俺はあいつがいないのに気付いた。

 

「(何処行ったんだあいつ?)」

 

まさか逃げたわけでもない―――というより、あいつが逃げるとは思えない。そう考えながらホロウストレアが消えた場所を見る。やがて。

 

「お、おい!ストレアはどうなる!?解放されるんじゃないのか!?」

 

俺はふとそう声に出した。

ユイの言葉通りなら、ストレアはボスから解放されているはずなのだ。まさか、何かが足りないのかと予感が過るその時。

 

「あ・・・・・・!キリトくん、見てよあそこ!なにか光ってる!」

 

レインが今まで、ボスのホロウストレアがいた場所に指を指した。

レインの指の差す先を見ると、そこには人一人分くらいの光る球体があった。

 

「あの光の中・・・・・・。誰かいるように見えませんか!?」

 

「ストレア!?」

 

「ストレアちゃん!?」

 

シリカの声に、徐々に明確になった光る球体の中を見て俺とレインは立ち上がり光る球体へと向かう。

 

「おい!ストレア!」

 

「ストレアちゃん!」

 

「ん・・・・・・うう・・・・・・。キ・・・・・・リト?レ・・・・・・イン?」

 

「手を伸ばして!ストレアちゃん!」

 

「う・・・・・・ん」

 

レインの伸ばした手に、球体の中から掴んだストレアの手を俺とレインはがっしり掴み、球体から引っ張って球体から引き離す。

ストレアが球体から出ると、球体は小さくなって消えていった。

 

「ストレア!よかった!元に戻れたんだな」

 

「・・・・・・ここは?」

 

「アインクラッド第100層。紅玉宮だよ」

 

「100層・・・・・・?」

 

「ああ。最後のボスを倒したよ・・・・・・」

 

目覚めたばかりでなのか、意識は一応あるみたいだけど処理が追いついてないストレアはゆっくりと周りを見て状況を把握した。

 

「そうなんだ・・・・・・。よかったね、おめでとう」

 

笑みを浮かべて言ったストレアに、俺は。

 

「ストレア・・・・・・。君に謝らなければならないことがある・・・・・・。今まで俺たちの、プレイヤーたちの感情を押し付けて、ごめん」

 

すべてのプレイヤーを代表して、ストレアに謝った。ストレアがこうなってしまったのは、元はと言えば俺たちプレイヤーのせいなのだから。

 

「ふふ・・・・・・。謝ったりしないでキリト・・・・・・。レインも、そんな顔しないで・・・・・・。それでも、二人はアタシを助けてくれた」

 

「そんな・・・・・・。助けたなんて・・・・・・そんなの私たちは・・・・・・」

 

「助けた・・・・・・。俺はそんなことは出来ていない」

 

ストレアの言葉に俺とレインは否定した。俺たちはストレアを助けられてないからだ。そんな俺たちの感情を察したのか、ストレアは。

 

「違うよ、キリト、レイン・・・・・・。ちゃんと助けられているよ・・・・・・。・・・・・・アタシ、このゲームがクリアされてアインクラッドと一緒に消えちゃうことが、すごく怖かった、でも、みんなといると、すごく楽しくて・・・・・・。アタシが消えないために、キリトやレインたちを阻止しないといけないのに・・・・・・。みんなを傷つけたくもない・・・・・・。どうしたらいいか、わからなくて・・・・・・」

 

「ストレア・・・・・・」

 

「ストレアちゃん・・・・・・」

 

「だけど、アタシは自分が消えるよりも、キリトやレインたち、みんなが消えちゃうほうが嫌だったみたい。結局、最後はキリトを助けちゃったもんね」

 

「すまない・・・・・・」

 

あの時、ストレアが俺を助けてくれなかったら、恐らく俺はここにいないだろう。あの、須郷が持っていた最凶の武器に刺され、この世界からも現実世界からもいなくなっていたはずだ。そして、レインやリーファ(直葉)ユウキ(木綿季)ラン(藍子)もやられていたかもしれない。今、俺達がここにいるのはすべて、ストレアのお陰なのだ。

 

「ううん・・・・・・後悔はしてないよ。キリトが生きててくれて、アタシはすごく嬉しい。胸の奥がね、とても温かいの・・・・・・。プログラムとしては失敗作だけどね・・・・・・。えへへ・・・・・・」

 

「そんなことないよ!」

 

「レイン・・・・・・?」

 

ストレアの言葉を否定するように、レインはストレアの身体を抱きしめて言う。

 

「ストレアちゃんが失敗作なわけない!だって、ストレアちゃんは私たちみんなの精神を・・・・・・心を癒すプログラム(存在)なんでしょ?!私たちは何時も、どんな時も、ストレアちゃんの存在に助けられてきた・・・・・。ストレアちゃんのその笑顔に何度も癒されてきたんだよ・・・・・!だから、ストレアちゃんが失敗作だなんて、そんなの・・・・・・私は絶対に認めない!」

 

「レイン・・・・・・」

 

「ああ。ストレア・・・・・・」

 

「キリト・・・・・・」

 

「君は失敗作なんかじゃない・・・・・・。ストレアは俺たちの、最高の仲間だ」

 

ストレアを抱き締めるレインの言葉に続くように、俺もストレアの手を握って断言するように答える。

 

「・・・・・・えへへ。嬉しいな・・・・・・キリト、レイン。あ・・・・・・」

 

「どうした?」

 

「ストレアちゃん?」

 

唐突に顔を曇らせ、言葉をとぎらせたストレアに俺とレインは声をかける。

 

「もう限界みたい」

 

「限界・・・・・・?」

 

「うん。アタシのデータがメモリから消去され始めてる。・・・・・・そろそろ、お別れね」

 

「うそ・・・・・・っ!」

 

「消去!?消去ってなんだ!?」

 

ストレアの弱々しい言葉に、俺たちは驚愕する。

そんな俺たちに。

 

「あっ!まさか!?」

 

「ユイ!?何か知ってるのか!?」

 

ユイが声を上げた。

 

「おそらくですが・・・・・・100層のボスと一体化したことによる弊害です。100層ボスの消去中に、カーディナルシステムがストレアさんの存在を発見・認識し。異物として削除しようとしているんだと思います・・・・・・」

 

ユイの言葉通りなら、つまりストレアは存在を無に・・・・・・いや、無かったことにされてるということだ。プログラムを削除するということは、そのプログラムにとっては死も同然。そして、何も無かったかのようにされるという事だ。

 

「そんなっ!?ストレア!ストレア!!」

 

「ストレアちゃん!ユイちゃん、何か手はないの?!」

 

ストレアの言葉に、レインはユイに聞く。

ユイもどうすればいいのか分からないようだった。

 

「キリト・・・・・・レイン・・・・・・二人ともそんな顔しないで・・・・・・。アタシはメンタルヘルス・カウンセリングのプログラムなんだよ・・・・・・。二人にそんな顔させちゃったら、カウンセリング失敗になっちゃうよ・・・・・・」

 

「けど!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・そうだな・・・・・・笑わないとな・・・・・・」

 

「キリトくん!」

 

諦めたように言う俺にレインは非難するように呼ぶ。

俺はレインの顔を見て目を合わせる。

 

「・・・・・・!」

 

俺の言いたいことが分かったのか、レインは歯を噛み締めるような表情をし。

 

「ストレアちゃん・・・・・・これで・・・・・・いい?」

 

「どうだ?これでいいか・・・・・」

 

ストレアに無理やり作ったような笑みを見せる。それを見たストレアは、満足したような表情を見せ。

 

「うん・・・・・・ありがと・・・・・・キリト・・・・・・レイン・・・・・・。これで・・・・・・アタシの・・・・・・最後のカウンセリング・・・・・・完了だね・・・・・・」

 

「ストレア!おい!ちょっと待ってくれ!!」

 

「待って!ストレアちゃん!!」

 

「さよなら・・・・・・キリト・・・・・・レイン・・・・・・」

 

そう言うと、ストレアは小さな光の粒子となって消えていった。

俺たちが何もできない中、ただ一人行動に移した人がいた。それは―――。

 

「ストレアさんっ!!消させないっ!!一人になんか、絶対にさせない!!ストレアさんは・・・・・・。ううん、ストレアはわたしの妹なんだからぁ!!」

 

「ユイ・・・・・・」

 

「ユイちゃん・・・・・・?」

 

ユイだ。ユイは涙を浮かべて目を閉じた。

 

「・・・・・・・・・・」

 

ユイが目を閉じて数秒後、目を開けたユイは俺たちの方を見てニッコリと、やり切ったような笑みを浮かべた。

 

「へへへ・・・・・・大丈夫です。ストレアは、ちゃんとわたしと一緒にいます。今は《わたしたち》が有るべき姿に戻っただけです」

 

「ユイちゃん、それって・・・・・・」

 

「また・・・・・・ストレアに会えるのか?」

 

「もちろんです!わたしが保証しますよ!」

 

どうやら、ユイはストレアがこの世界から完全に消される前にストレアのデータを自分に移植したようだ。あの時、黒鉄宮地下迷宮のコンソールでユイが消えそうになったとき俺がしたような事をしたみたいだ。

 

「ありがとう・・・・・・ユイ・・・・・・」

 

「さあ、パパ!あとはクリアを待つだけですよ!」

 

「クリア・・・・・・そうか・・・・・・」

 

「最後のボスを倒して、ストレアを救ったんです。これはもう大団円ですよ!」

 

「キリトくん・・・・・・これで終わりなんだよね」

 

「ああ・・・・・・」

 

レインにそう声を発しようとして、俺は目の前の主のいない玉座に視線を向けた。

 

「―――いや、まだだ」

 

「え?」

 

辺りのみんなが疑問に思っている中、俺は一人のプレイヤーの名を呼んだ。

 

「そこにいるんだろ、ヒースクリフ」

 

『『『『『っ!』』』』』

 

俺がそう呼ぶと、辺りから息を呑む空気が感じられた。そして。

 

「さすがだなキリト君」

 

玉座から一人のプレイヤー。ヒースクリフが現れ、そこから下りてきた。

 

「カーディナルシステムは直ったのか?」

 

「うむ。無事、元に戻った」

 

「そうか」

 

ヒースクリフがいなかった理由は、ボスが倒されると同時にカーディナルシステムを復旧させに向かったからだろう。そう考えながらヒースクリフを見る。

玉座のところから下りてきたヒースクリフは、俺たちと間を空けて言葉を話す。

 

「さて、まずはこう言おうか。―――クリアおめでとう、実に見事な勝利だったね」

 

そう、一プレイヤーとしてでは無く、この世界の管理者として言った。そこに俺は。

 

「さっきの戦いにはあんたもいただろうが」

 

と、皮肉を混じえて返す。

 

「ふ。途中からではあったがね」

 

ヒースクリフも皮肉を混じえて言ってくる。

 

「それで・・・・・・話してもらえんだよな?あんたが生きてる理由・・・・・そして、何故この戦いに現れたのか・・・・・・これまでの事を洗いざらいすべて話してもらうぞ、ヒースクリフ!」

 

「もちろんだとも」

 

俺の言葉に、ヒースクリフは重々しく頷き返した。

 

「さて、まずは君たちにお詫びをしなくてはならない」

 

「詫びだと?」

 

俺の問いにヒースクリフは頷いて返す。

 

「ここまで何の説明もしないでいたこと・・・・・・。本当に申し訳なく思ってる。何故そんなことになったのか。そして私が生きている理由を、すべて君たちに説明しなければならないだろう」

 

そう、言ったヒースクリフはここまでの顛末のことを話した。

 

「発端は、75層でキリト君と戦っていた時に発生したシステム障害が原因だ。あの時、この世界を管理しているカーディナルシステムに予想外の負荷がかかってしまった。負荷の要因のひとつは、プレイヤーの負の感情によって引き起こされたエラーの蓄積・・・・・・。君たちがよく知っているであろう、メンタルヘルス・カウンセリングプログラム。MHCP試作二号・・・・・・コードネーム《ストレア》。彼女はこの世界のプレイヤーたちがかかえる、負の感情に対処できず、次々とエラーを蓄積していき・・・・・・。やがて抑えきれなくなった、膨大な量のエラーがカーディナルシステムのコアプログラムに流れ込んできてしまった」

 

「ユイの言っていたとおりか・・・・・・」

 

ヒースクリフの言葉に、俺はユイが言っていたとおりだったと声に出した。ユイも、ストレアと同じだったからだ。

 

「そして、負荷の要因のもうひとつが須郷君たちによる、外部からの干渉だ。外部干渉という例外的状況の対応に、カーディナルシステムの処理能力の多くを割かなくてはいけなかった。このふたつの出来事が想定外の負荷を引き起こし、カーディナルシステムの一部が暴走するという結果になってしまった。その結果・・・・・・」

 

「いまの状態、ということか・・・・・・」

 

俺の予測した通り、カーディナルシステムの暴走したため俺たちの武器や防具、スキルのエラーが起こり、さらに76層より下層にも転移できなくなったわけだ。

 

「うむ。さらに、キリト君とレイン君、そしてフィリア君が飛ばされた《ホロウ・エリア》もそれでアクセス制限が解除されてしまったのだ」

 

「っ!」

 

予想していたとはいえ、まさか《ホロウ・エリア》の解放もカーディナルシステムの暴走による弊害とは、俺も驚いていた。

そして、俺は―――いや、俺とレインはヒースクリフの発した言葉に息を飲んだ。

 

「さらに、キリト君とレイン君の二つ目のユニークスキル《シンクロ》。あれは、全十種あるユニークスキルの番外のユニークスキル。本来であれば、プレイヤーには入手出来ないはずのユニークスキル。いや、全スキルをはるかに凌駕するスキル。ならばユニークスキルを超えたスキル、アルティメットスキルと言うべきかな」

 

ヒースクリフの言葉に俺は。

 

「アルティメットスキルって・・・・・・随分と安直な名前だな」

 

そうツッコんだ。レインは微妙な表情をし、アスナたちは苦笑いをしていた。

 

「それで、なんで俺とレインにその本来入手出来ないアルティメットスキルが現れたんだ?」

 

「アルティメットスキル《シンクロ》は《ホロウ・エリア》に封印されたスキルでね。《ホロウ・エリア》の解放とともにその封印も解かれたのだろう。《シンクロ》の取得条件は『互いの絆が最高値であることと、全てにおいて最高であること』だ」

 

「えっと・・・・・・つまり?」

 

「ふむ、簡単に言い換えると、『結婚していてお互いのことを最も信用・信頼しており、すべてのプレイヤーを超えたスキルを保持している』ということになる」

 

「それが俺とレインだと・・・・・・?」

 

「そういうことになる」

 

『『『『『なるほど~』』』』』

 

「って!なんで、みんなも同意してるの!?」

 

ヒースクリフの言葉に唖然とする俺とレイン以外のみんなが納得といった感じに頷いていた。

 

「それにしても、まさか《シンクロ》の制限(リミッター)をすべて解放するとは・・・・・・流石の私も予想外だった」

 

ヒースクリフも珍しく驚いたというような表情を浮かべて見せる。

 

「よって、システムの暴走という非常事態により、私は自動的に管理者モードに移行・・・・・・。キリト君との戦いの最中に、あの場から消える形となってしまったんだ。一刻も早く、このことを伝えたかったのだが、その後も不具合の対応に追われてしまってね。こうして君たちの前に出てくるのに、かなりの時間を費やしてしまったというわけだ」

 

「つまり・・・・・・あのとき勝負はついてなかった・・・・・・」

 

「そういうことになる・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

ヒースクリフの言葉に、俺は声がでなかった。

 

「それにしても、君たちには本当に驚かされた。須郷君の予測外の動きに対しても、君たちはみごとに対応した。やはり、ゲームの運営には想定外の事態がつきまとうものだな。それが面白いとも言えるのだが」

 

「当たり前だ!これだけ人間が深く関わる世界ですべてが思い通りになると思うなよ」

 

ヒースクリフの言葉に、俺はこの二年間の日々を思い返して言う。

 

「もちろん、その通りだ。しかし・・・・・・私の思い通りになることもある。例えば、ゲームクリアの可否」

 

「・・・・・・この期に及んで、もしかしてクリアさせないとか言わないよね・・・・・・」

 

レインのその問いに、ヒースクリフは首を横に振って。

 

「それは無い」

 

と断言した。

 

「これでもフェアプレイを心がけているつもりなんだがね」

 

「いやいや、自身を不死属性にしてどこがフェアプレイを心がけてるんだよ」

 

「少なくとも、須郷君のしたような、高位アカウントからの干渉はしてないつもだ。もっとも、私がそのようなことをするとでも思うかね?」

 

「ないな・・・・・」

 

ヒースクリフの言葉に、俺はヒースクリフと須郷を比べた。管理者に近いアカウントを使い、自身の野望のためにプレイヤーに虐げた須郷と、俺たちと同じように一からやってきたヒースクリフ。どちらがフェアプレイかと言うと、断然的にヒースクリフだ。

 

「君たちは間違いなく、100層のボスを倒した。本来の想定とは違う、イレギュラーなボスではあったがね。もちろん、イレギュラーだからといって、君たちの勝利を取り消そうなんてつもりは、まったくない。そもそも、最後のボス戦に途中からとはいえ、遅れたのは私のほうなのだから。あらためて、賞賛を送ろう。クリアおめでとう、勇敢なる者たちよ」

 

ヒースクリフの賞賛の言葉に俺はクリアした気分にはなれなかった。

 

「・・・・・・・・・・気に入らないな」

 

「数々の非礼はわびよう。約束を違えたのは、こちらの責任だ」

 

「そうじゃない。あんたはさっき、100層のボスをイレギュラーだったと言ったよな」

 

そう、ヒースクリフはさっき100層のボスはイレギュラーだと言った。ヒースクリフの言う、イレギュラーなボスとは、あのホロウアバターとホロウストレアであろう。ホロウアバターに吸収されたストレアが実体化したのがホロウストレアなのだから、あのボス二体は同一と考えるべきだろう。けど、俺が気に入らないのは、そんなことじゃない。

 

「100層のボスは私が受け持とうとしていたからな・・・・・・」

 

「・・・・・・俺たちはこのゲームを───SAOを二年以上プレイし続けてきた。文字通り、命をかけてな。そのゲームのラスボスが、イレギュラーな存在だった、だと?それはプレイヤーに対する、裏切りってもんなんじゃないのか」

 

俺個人、一プレイヤーとしてゲームクリアは目標であり夢だ。それが、本来のボスとは違う、イレギュラーなボスとなると、俺としてはどうやってもクリアしたとは言えなかった。

 

「───つまり君は、無謀にもこう言おうというのか?本来のボスと決着をつけさせろ、と」

 

「・・・・・・いま、思っていることを言えと言われたら、そうなるな。とはいえ、もちろん、みんなを巻き込むつもりは無い。100層のボスを倒したことは間違いないんだ。俺以外の全員をログアウトさせてくれ。その後・・・・・・俺と勝負してほしい」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

俺の言葉にヒースクリフは眉根を寄せた。

そこに。

 

「ちょ、ちょっと、お兄ちゃん!?なに言ってるの!?クリア出来たんだから一緒に現実世界に帰ろうよ!」

 

スグがそう言ってきた。

 

「スグ・・・・・・すまない。けど、これは、俺の・・・・・・俺なりのけじめの付け方なんだ。いまここでヒースクリフを倒さずに、ゲームをクリアしてしまったら。俺は現実世界に戻っても、きっとこのままSAOに縛られたままだろう。心をアインクラッドに残したまま現実世界に帰っても、むなしいだけだ」

 

「ええっ、そんな!?」

 

「大丈夫。スグより、ほんの少し帰るのが遅れるだけだ。先に帰って、夕飯でも作って待っててくれよ」

 

そうスグに朗らかにいつも通りに言う。

これは俺のやりたい事だから。ヒースクリフという本来のボスを倒したいから、みんなを巻き込む訳にはいかないと。そう思って言うと。

 

「・・・・・・・・・イヤ」

 

「スグ?」

 

「お兄ちゃんとまた離れ離れになるなんて、ぜったいにイヤ!お兄ちゃんが残って戦うなら、あたしだってそうする!!」

 

「なに言ってんだ!」

 

突然のスグの否定の言葉に俺は驚愕する。さらにそこに乗るようにクラインとシノンが。

 

「俺も乗るぜ、キリ公。本当のラスボス倒してアインクラッドに、ケリつけよーや!」

 

「私も乗るわ、この決着。ケリをつけなきゃならないのは私も同じなの」

 

「クライン!シノン!みんなの命まで危険にさらす必要はない」

 

振り返って二人に向かって言う。そこにさらに。

 

「あたしだって、このゲームにはアンタと同じだけのプレイ時間を費やしてきているんだからね。ここでしっかり終わらせないと、費やした時間が無駄になるような気がする。一緒にケリつけようよ」

 

「あ、あたしも残りますっ!キリトさんを残して、自分だけ帰るなんて出来ませんから!!キリトさんと一緒に現実に帰るんです!」

 

「リズ・・・・・・シリカ・・・・・・」

 

「わたしも一緒に戦うよ!他の人と比べて、キリトたちと過した月日は短いかもしれないけど・・・・・・わたしはキリトとレインから色んなことを学んだの。その中でも一番大切なことが・・・・・・困難に立ち向かうための強い心なんだから!」

 

「フィリアまで・・・・・・」

 

「わたしも残るわキリト君。みんなを置いて、一人だけログアウトするって言うのは嫌だもの。最後まで、みんなと一緒に戦うわ」

 

「アスナさんの言う通りですね。私も残ることに賛成ですよキリトさん」

 

「ええ。俺たちだって、キリトと同じ思いですから。一緒にこの世界のケリ、つけましょうよ」

 

「アスナ・・・・・・リーザ・・・・・・ラム・・・・・・」

 

「やれやれ、保護者としてオレも付き合う必要がありそうだな」

 

「オレっちも残るぜキー坊」

 

「エギル・・・・・・アルゴ・・・・・・」

 

次々と上がる声に戸惑っていると。

 

「まったく・・・・・・何時もそうですよキリトさん。自分勝手で、周りのことなんて気にしないで、私たちが思っていることを無視して進めるんですから」

 

「ホントだよキリト。ボクたちもさ、この世界に蟠りを残したくないんだ。だから、ボクたちも残って戦うよ」

 

「ラン・・・・・ユウキ・・・・・二人まで・・・・・・」

 

俺の行動は全てお見通しだ、と言うような目で幼馴染みの姉妹が言ってきた。適わないな、と二人に思っていると。

 

「キリトくん」

 

「レイン・・・・・・」

 

レインが俺の目の前に立った。

 

「キリトくん、私も残るからね。この世界に虚しさを残したくないし、本来のボスを倒したいんだ。私も・・・・・・ううん、ここにいるみんな、キリトくんと同じ気持ちなんだよ」

 

レインの言葉に、ここまで戦ってきた攻略組のみんなを見る。

リンドさんをはじめとしたすべてのプレイヤーが、その言葉に頷いて、その目にはみんな同じ感情が篭っていた。

 

「みんな・・・・・・」

 

「それに、キリトくんは負ける気なんて微塵もないんでしょ?」

 

「ああ」

 

「なら、大丈夫。私たちはキリトくん、君に全てを託すよ!」

 

つまり俺にヒースクリフとの戦いを全て任せるという事だ。

レインの言葉に俺は、目を閉じて、意識を集中させて。

 

「ありがとう、みんな」

 

決意の篭もった目でみんなを見る。

そして、俺はヒースクリフの方に向き直り、背中の双剣。『エリュシデータ・ナイトローズ』と『ダークリパルサー・ユニヴァース』を抜き放つ。

 

「ふ・・・・・・人の意思というものは本当に面白い。私は、この光景が見たくて、SAOを作り上げたのかもしれないな」

 

「その、あんたの作ったこの世界を、今ここで俺が・・・・・・いや、俺たちが終わらせる!」

 

「―――よろしい。ではかかってきたまえキリト君。正真正銘のラストバトルを始めよう!」

 

「ああ!いくぞ、ヒースクリフ!」

 

いまここに、あのときの戦いの決着の―――正真正銘、この世界のラストバトルの戦いの火蓋が切られた。

 

 



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HF編 第142話〈英雄(キリト)VS創造者(ヒースクリフ)

 

~キリトside~

 

 

 

「―――いくぞ、ヒースクリフ!」

 

そう言うと同時に、俺はその場を蹴り一直線にヒースクリフに向かっていった。

 

「オオオオオーーーッ!!」

 

「はああっ!」

 

初撃の、右の『エリュシデータ・ナイトローズ』の切り下ろしはヒースクリフの巨大な十字盾に阻まれ、ヒースクリフからの攻撃を左の『ダークリパルサー・ユニヴァース』で受け止める。

 

「ふっ!」

 

「はあっ!」

 

拮抗状態から同時に後ろに下がり距離を取る。

 

「・・・・・・こうして最後のボスとして君と合間見えることが嬉しいよ。望み通り、決着をつけようキリト君」

 

「ああ、そうだなヒースクリフ。あの時の勝負の決着をつけよう!」

 

そういい終えると、俺とヒースクリフはほぼ同時に床を蹴り、相手に向かって突っ込んでいく。

俺の剣戟をヒースクリフは盾を見事に使い防いでいき、ヒースクリフの攻撃を俺は双剣で巧みに捌いていく。

 

「ぜりゃあっ!」

 

「ふっ!」

 

剣と剣。剣と盾が幾度となくぶつかっていき、高速の剣戟の応酬が始まる。

 

「りゃあっ!」

 

「はっ!」

 

こっちがソードスキルを発動すれば、ヒースクリフも同様にソードスキルを発動し相殺、または盾を使って受け流していき、ヒースクリフがソードスキルを使えば、俺も同様にソードスキルで相殺、またはソードスキルの剣の軌道を逸らしていく。

 

「はあっ!」

 

「せいっ!」

 

完全に回復していた俺とヒースクリフの、互いのHPは少しずつ減っていき、今はイエローゾーンの近くにまで減っていた。

 

「せやあっ!」

 

「はああっ!」

 

甲高い金属音が鳴り響き、俺とヒースクリフはまたしても鍔迫り合いになる。

 

「ふむ。まさか、ここまでは・・・・・・私の予想以上だ」

 

「そっちこそ・・・・・・。相変わらず硬すぎるぜ」

 

距離を互いに大きく取った俺とヒースクリフはそれぞれ嫌味を言う。

 

「あの時よりもさらに強くなったようだなキリト君」

 

「まあな」

 

まあ、76層に来てからここまで色々あったからな、と思い返しつつヒースクリフに返す。

 

「さすがここまで彼らを率いてきただけのことはある」

 

「別に俺は率いてきたわけじゃない。ただ、ここに来れたのはすべてのプレイヤーのお陰だってことだ」

 

「なるほど・・・・・・実に君らしい言葉だな」

 

「ふっ。そう言えば、まだ礼を言ってなかったな」

 

「礼?なんのかね」

 

「俺とレインの双剣についてだ」

 

そう、俺とレインの双剣はヒースクリフが送ってきたものだ。あの試練のクリア後に上から落ちてきた。そして、それと同時にヒースクリフからのメッセージも添付されていた。あの剣があったから、俺たちは須郷の企みも阻止出来、ストレアを助け出すことも出来たのだ。まあ、コイツに礼を言うというのは気が滅入るが。

 

「別に気にする必要は無い。あれは私からの餞別だとでも思ってくれたまえ」

 

「そうか、なら・・・・・・っ!!」

 

「っ!」

 

「遠慮なく行かせてもらうぞ!」

 

「こちらも行くぞ!」

 

再び高速の剣戟の応酬が始まる。

キンッ!、キンッ!と金属がぶつかり合い、奏でる戦慄(メロディー)を響かせて俺とヒースクリフは、これが最後の戦闘だということすら忘れて、ただ楽しくぶつかりあった。

 

「ははっ!」

 

「ふっ!」

 

連続して行われる剣戟の雨に、俺とヒースクリフのHPは少しずつ減っていく。

 

「ふんっ!」

 

「せあっ!」

 

ヒースクリフの十字盾による突きをクロスガードで受け止め、滑るようにして剣を振り払う。だが、それは直撃する前にヒースクリフの持つ十字剣の腹によって防がれる。

すぐに下がり、ヒースクリフの背後を取る。背後に回り込んだ俺は片手剣ソードスキル《ソニックリープ》を発動させる。

 

「りゃあっ!」

 

しかし、そのソードスキルをヒースクリフは流石の反応速度で盾を構えて受け止めた。

 

「はああっ!」

 

ヒースクリフはそのままカウンターで《神聖剣》のソードスキルを放ってくる。

 

「うおおっ!」

 

俺はすぐにそのソードスキルに向けて相殺するように片手剣ソードスキル《デッドリー・シンズ》を繰り出す。濃い赤のライトエフェクトと、クリアブルーのライトエフェクトがぶつかり合い衝撃波が放たれる。

 

「っ!」

 

「ぬっ!」

 

「はああっ!!」

 

「ふんっ!!」

 

数えきれないほどぶつかり合い、俺とヒースクリフのHPがついにイエローゾーンに突入した。

 

「くっ・・・・・・!」

 

「っ・・・・・・!私にここまでさせるとは!」

 

「それはこっちの台詞だ!」

 

ヒースクリフの剣が速くなる度に、俺も剣速を速める。

 

「(もっとだ・・・・・・もっと、速く・・・・・・!!)」

 

自身の限界まで速く振るう。システムの許容する速度を越え五感をフル活動させ、倒すべき相手―――ヒースクリフに向かって全力で相手をする。

 

「なっ!?まだ上がれると言うのかっ?!」

 

「―――まだだ・・・・・・まだ・・・・・・まだ、上がれる!着いてこられるかヒースクリフ!」

 

「よかろう!」

 

戦闘の意識のギアをもう一段階上げ、意識を高め集中させる。

すでに俺の眼にはヒースクリフしか写ってなく、すべてがスローモーションに見えた。

ヒースクリフの剣による右切り下ろしを『ダークリパルサー・ユニヴァース』で弾き、『エリュシデータ・ナイトローズ』で片手剣ソードスキル《ハウリング・オクターブ》を発動させる。

 

「ぬうっ!!」

 

「ああああああーーーっ!!!」

 

《ハウリング・オクターブ》の8連撃目の上段切り下ろしのラストから俺は、本来ある技後硬直を無視して俺はさらにソードスキルを発動させた。

 

「なにっ!?」

 

片手剣ソードスキル《エヴァーティング・ストライク》7連撃をシステムを無視して発動させたことにヒースクリフも驚愕の表情を隠せずにいた。ヒースクリフはギリギリで盾で7連撃を防ぐ。

 

「くっ!ここまでとは!」

 

システムアシストによってヒースクリフの背後に回り込んで放つ《エヴァーティング・ストライク》の6、7撃目をヒースクリフは《神聖剣》ソードスキルで反撃して受け止める。

 

「はああっ!!」

 

「ぜああぁっ!!」

 

《エヴァーティング・ストライク》を放ち終わり、技後硬直が発生するのをシステムに反してキャンセルさせ強引に三度目のソードスキルを繰り出す。

 

「はあああああああーーーっ!!!」

 

「っ!!」

 

片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》単発重攻撃を撃ち放つ。ジェットエンジンのような、剣の雄叫びを轟かせながらクリムゾンレッドのライトエフェクトを煌めかせて弓から放たれた矢のように、勢いよく一直線にヒースクリフへと突き進む。

《ヴォーパル・ストライク》を盾で受け止めたヒースクリフは、さすがにその勢いまでは殺せなかったのか、盾を構えたまま後ろに滑って下がった。そして―――。

 

「なっ!」

 

ヒースクリフの巨大な十字盾の中央部に、ピシリッ!と小さな罅が入った。

動揺したヒースクリフの隙を見逃さず、俺は追撃を仕掛ける。

 

「うおおおおっ!!」

 

「っぐ・・・・・・!」

 

左右の剣による攻撃を、ヒースクリフは盾になるべくダメージが貯まらないように受け止めるのではなく、受け流すか剣による逸らしを軸として防戦に入る。

 

「せやあっ!!」

 

「ぬう・・・・・・っ!!」

 

ヒースクリフに攻撃する暇を与えない速度で双剣を振るっていく。右切り下ろしからの左突き。右切り上げから左薙ぎ、右薙ぎ、逆袈裟懸けからの連続突き、と絶え間なく攻撃を続ける。ヒースクリフはそれを焦るように防ぐ。

 

「まだだ!」

 

絶え間無い連続の剣技。正直、今この戦闘にすべてを掛けてると言っても過言ではない。それは恐らく、ヒースクリフも同じだろう。

 

「させんっ!」

 

「くっ!!」

 

一瞬の隙を着いて、カウンターで攻撃を跳ね返してきたヒースクリフ。俺は反動を受け、ヒースクリフから距離を取らされ紅玉宮の壁に足をつけて下がる勢いを殺し、床に着地する。さすがの俺も息が絶え絶えになっていた。対するヒースクリフも珍しく息を絶え絶えになっていた。そして、その巨大な十字盾にはさらに大きな罅が走る。息を調える俺とヒースクリフはニヤリと笑い。

 

「―――もはや、私がラスボスだろうが、そんなことどうでも良くなってきた」

 

「奇遇だな・・・・・・俺もだ。おまえがラスボスだろうが、なんだろうがもうどうだっていい」

 

「ふっ・・・・・・。そうだ、私は―――」

 

「ああ。そうだ、俺は―――」

 

 

 

「「一人のプレイヤーとして、おまえを(君を)倒して乗り越えたい!!」」

 

 

 

同時にそう告げる。

もはや、コイツがラスボスだろうがどうだっていい。俺は、ラスボスのヒースクリフではなく。一人のプレイヤーとして、同じく一人のプレイヤー、ヒースクリフ(・・・・・・)を打ち倒したいのだ!それは、あの75層でのことや、それより前にした決闘(デュエル)のことを含めてだ。今の俺のヒースクリフとの戦闘の結果は、0勝1敗1分け。対してヒースクリフは1勝0敗1分けだ。知らなかったとはいえ、俺は一度もヒースクリフというこの世界に存在するプレイヤーに勝ってないのだ。だから、俺は―――。

 

「俺は・・・・・・ヒースクリフ、おまえに・・・・・・勝つ!勝って、この世界を終わらせる!」

 

「ふっ。よかろうキリト君!この魔王である私に勝って、この世界を終わらせてみたまえ、英雄キリト君!!」

 

「挑むところだっ!!」

 

俺は意思を込め。

 

「はあアアアアアアアアっ!!」

 

「こいっ!キリト君!」

 

レインや、ユイ。アスナ、ユウキ、ランたちみんなの思いを込めて俺の相棒(双剣)を、魔王ヒースクリフにぶつける。

 

「―――ジ・―――」

 

一瞬で肉薄し、双剣にシルバーブルー(蒼銀)の光目映く輝くライトエフェクトを纏わせて《二刀流》最上位のソードスキルを放つ。

 

「―――イクリプスッッ!!!!」

 

《二刀流》最上位ソードスキル《ジ・イクリプス》27連撃。太陽のコロナを彷彿させる《二刀流》最強のソードスキルがヒースクリフに襲い掛かる。

 

「はああっ!!」

 

一撃、一撃がヒースクリフの巨大な十字盾に受け流されていく。あのときも、ヒースクリフは俺の《ジ・イクリプス》を受け流していった。そして、あれが起こった。もし、あれが起こらなかったら、負けていたのは俺だ。だが、ここではそんなことはさせない。俺はさらに意思を込めレインが創ってくれた双剣。黒く、闇をも呑み込むほどの漆黒の剣、『エリュシデータ・ナイトローズ』と、白く、光を目映く照らし闇をも受け付けない純白の剣、『ダークリパルサー・ユニヴァース』。俺は、すべてを込めて、体にも、そして剣にも意思を込めていく。

《ジ・イクリプス》の連撃が24撃目、25撃目、26撃目となっていき。

 

「うおおおおおおーーっ!!!」

 

ラスト27撃目の左突きがヒースクリフの十字盾に突き刺さる。

それを見たヒースクリフは笑みを浮かべ。

 

「―――私の勝ちだ。さらばだキリト君!」

 

そう勝ち誇ったかのように言う。

しかし。

 

「いや・・・・・まだだぁぁーーっ!!」

 

「なんだとっ!?」

 

俺はそこから、新しいソードスキルに繋げた。

剣技連携(スキルコネクト)。《二刀流》同士を繋げたことは始めてだったが、剣技連携は俺の意思に答えてくれた。

新たなソードスキルのライトエフェクトは、《ジ・イクリプス》のシルバーブルーのライトエフェクトよりも青く、純白に光輝く、クリアホワイトブルーのライトエフェクトを双剣に照らした。

 

「ぬおおっ!!」

 

「はああああッ!!―――スターバースト・―――」

 

新しい《二刀流》ソードスキルは、俺が最も修練した《二刀流》ソードスキル。星屑溢れる銀河の煌めきを彷彿させる、流星の嵐のようなソードスキルがヒースクリフへと再び襲い掛かる。

 

「―――ストリームッッ!!!!!」

 

《二刀流》ソードスキル《スターバースト・ストリーム》16連撃。俺が最も修練した、《二刀流》ソードスキル。そして、あの時の決闘でヒースクリフの盾を抜かしたソードスキル。

 

「うおおおおおおっ!!!」

 

「はああああああっ!!!」

 

ヒースクリフの放つ《神聖剣》のソードスキルを《スターバースト・ストリーム》で迎撃し、十字盾に攻撃し罅を広がらせる。

《スターバースト・ストリーム》は16連撃、強力だが今、この状況に置いては決定打に欠ける。ラスト16連撃目へと迫るなか、俺はすべての一撃をこれに託すことにした。

やがて、ヒースクリフへの《スターバースト・ストリーム》16連撃がラスト16撃目に到達し、16撃目の左突きがヒースクリフの持つ十字剣に阻まれる。

 

「くっ・・・・・・!だが、これで―――っ!」

 

ヒースクリフの言葉が途中で途切れた理由は、俺の右手の『エリュシデータ・ナイトローズ』が原因だ。本来ならあるはずの技後硬直を完全無視、システムの理に反する行動を取った。

『エリュシデータ・ナイトローズ』には深紅のライトエフェクトが光輝き、それはもはや深紅というより、紅玉に近い輝きを放っていた。

 

「これで―――終わりだあああああーーーーッ!!!

 

カタパルトのように折り畳まれた右手から一直線に、勢いよくヒースクリフ目掛けて貫いていく。

 

「っ!」

 

片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》。俺が長く活用した、単発重攻撃のソードスキル。

ヒースクリフは車線上に十字盾を構えるが。

 

「うおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」

 

「なっ・・・・・!!?」

 

十字盾は『エリュシデータ・ナイトローズ』の勢いを止めることすら出来ず、中央部から罅が全体に走り渡り、やがてヒースクリフの持つ、十字盾を破壊した。紅玉のライトエフェクトを輝かせた『エリュシデータ・ナイトローズ』はそのままヒースクリフの胴体に突き進み。

 

「ふ・・・・・・」

 

ヒースクリフが眼を閉じ笑みを浮かべたと同時に、ヒースクリフの体に突き刺さった。そして、数秒と経たずにヒースクリフの残り僅かなHPを余すことなくすべて奪い尽くして、ヒースクリフのHPを0にした。

 

「・・・・・・見事だ、キリト君」

 

 

 



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HF編 第143話〈世界の終焉〉

 

〜キリトside〜

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」

 

紅玉のライトエフェクトを煌めかせて、片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》の『エリュシデータ・ナイトローズ』を全力で撃ち放つ。今まで誰も破ったことない、ヒースクリフの十字盾を突き破り、一直線にヒースクリフ目掛けて伸びて行く。やがて。

 

「・・・・・・見事だ、キリト君」

 

ヒースクリフのHPは0になった。

そう、ヒースクリフが静かに告げると、ヒースクリフの身体は白く光、やがてその身体をポリゴンの欠片となって消えていった。

それと同時に。

 

 

 

『ただいまより、プレイヤーのみなさまに緊急のお知らせを行います。現在、ゲームは強制管理モードで、稼働しております。全ての、モンスター及びアイテムスパンは停止します』

 

 

 

ゴーン、ゴーン、と重い鐘の音が鳴り響きシステムアナウンスが流れ。

 

 

 

『3月7日、14時45分、ゲームはクリアされました。ゲームはクリアされました』

 

 

 

俺たちの、長かった約2年半のアインクラッドでの日々に今、終止符が打たれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん・・・・・・ココは・・・・・・」

 

ヒースクリフを倒し、システムアナウンスが聞こえそれと同時に俺たちの身体が光り、次に目を開けるとそこは黄昏時の、雲が覆い夕陽を照らすどこかだった。

身体は、紅玉宮にいたのと同じ黒いコートの装備を着て、背中には二本の剣が鞘に収められていた。

 

「まだアインクラッドの中なのか・・・・・・?」

 

そう思って右手を軽く振るが、出てきたウインドウにはたった一文、『最終フェイズ実行中 37%』とだけ書かれていた。それを見て、特にほかに何も無いことがわかるとウインドウを消し辺りを見渡す。そんなとき。

 

「───キリトくん」

 

「っ!」

 

後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた。その声は、俺の最も大切な、最愛な人のものだった。声のした後ろを振り向くと、そこには先程までと全く変わらずに、赤いドレスのような紅のコートを着て、腰に俺と同じ二本の剣を鞘に収めてる女の人。レインが立っていた。

 

「レイン・・・・・・」

 

「キリトくん・・・・・・っ!」

 

レインはそのまま俺に向かって飛び込んで、抱きついてきた。

 

「もう!ホント、キリトくんはバカなんだから!」

 

「ば、バカって、あのな・・・・・・」

 

「一歩間違えたらキリトくん、死んでいたのかもしれないんだよ?!」

 

「そ、それはそうだが・・・・・・」

 

レインの言葉に、俺は視線を泳がせる。なにせ、さっきの戦いでかなりの無茶をしたのは自覚してるからだ。

 

「───でも、キリトくんが無事なら、私は嬉しいよ」

 

「レイン・・・・・・」

 

「ところでここは・・・・・・あ」

 

辺りを見渡すレインの視線の先には、ひとつの浮遊している大きな鋼鉄の城があった。しかし、それは下の方から崩壊していた。その城は。

 

「───アインクラッド」

 

俺たちが約2年半の間過ごしてきた浮遊城アインクラッドその物だった。

 

「中々に絶景だな」

 

突如聞こえてきた声の方を向くと、そこには一人の白衣を着た男性が崩壊していくアインクラッドを見て佇んでいた。

 

「茅場晶彦・・・・・・」

 

その人物は紛れもなく、SAOを開発しこの世界をデスゲームにした茅場晶彦本人だった。

 

「現在、アーガス本社地下5階に設置されたSAOのメインフレームの記憶装置で、データの完全消去を行っている。あと10分ほどで、この世界の何もかもが、消滅するだろう」

 

「アインクラッドにいた人たちは・・・・・・?」

 

「心配には及ばない。さきほど、あの場にいたプレイヤーを含め、生き残った全プレイヤー6089名のログアウトが完了した」

 

「・・・・・・死んでいった4000人はどうなる」

 

「どこの世界でも死の定義は変わらない。彼らの意識は永遠に戻ってこないよ」

 

「・・・・・・なんで・・・・・・こんなことしたんだ?」

 

「それは、何故このデスゲームを始めたのか、ということかね?」

 

「ああ・・・・・・」

 

「何故だろうね。私も長い間忘れていたよ。今となっては、何故こんなことしたのかわからないな。フルダイブ環境システムの開発を始めた時、いや、そのはるか以前から私はあの城を・・・・・・現実世界のあらゆる枠の法則を超越した世界を作り出すことにだけ欲してきた」

 

思い返すように、今まさにこの世界から消え行こうとする鋼鉄の城を茅場晶彦はみる。その表情は、小さな子供が夢を描いているようだった。

 

「そして私は・・・・・・私の世界の法則すらも超える者を見ることが出来た。キリト君とレイン君。君たちは私の予想を大きく超え、その結果を見せてくれた」

 

茅場の言葉に少し驚きつつも、レインと共に茅場を見る。

 

「空に浮かぶ鋼鉄の城の空想に私が取り憑かれたのは、何歳の頃だったかな。この地上から飛び立って、あの城に行きたい。長い間、それが私の唯一の欲求だった・・・・・・。私はね、キリト君。まだ信じているのだよ。何処か別の世界にはあの城が本当に実在するのだと」

 

「ああ・・・・・・。そうだといいな・・・・・・」

 

「うん・・・・・・。そうだといいね・・・・・・」

 

俺とレインの言葉に茅場は口角を少しだけ上げ。

 

「君たちがこの世界に来てくれて本当に良かった。私の夢想の中で、君たちは真剣に生きてくれた・・・・・・」

 

「・・・・・・。確かに、この世界はゲームの中だ。だが、それと同時に、俺はこの世界はゲームの中ではなく、もうひとつの現実だと思っているよ」

 

「私も・・・・・・辛いことや悲しいことが色々あったけど、ここは私たちにとって現実世界とかけがえのない、もうひとつの現実世界だと思うな」

 

茅場の言葉に俺とレインはそう返す。俺たちにとってこの世界。SAO───浮遊城アインクラッドはもうひとつの現実世界だと、そう思うから。

 

「・・・・・・そう言ってくれるのか・・・・・・やはり、キリト君、君と最後に戦えて良かった」

 

「ああ・・・・・・俺もだ、茅場晶彦」

 

茅場の言葉に、俺は一人のゲームプレイヤーとして、最強のプレイヤー。管理者としてのヒースクリフこと茅場晶彦ではなく、一人のプレイヤーである茅場晶彦と戦えて本当に良かったと、そう思ってる。

 

「MHCPであるユイ君とストレア君は、君たちの娘だ。創造主として君たちに、彼女たちのことを頼む」

 

「ああ、わかってるさ」

 

「もちろん、そのつもりだよ」

 

「そうか・・・・・・。言い忘れていたな。 ゲーム、完全クリアおめでとう。キリト君、レイン君」

 

茅場のクリアおめでとうに、俺とレインは無言で返す。

 

「さて、私はそろそろ行くよ。また、君たちに逢えることを願ってるよ」

 

そう言って、茅場は白衣を翻してサアッと風に乗って消えた。恐らくこの世界ではない、本当にあの城がある場所に向かって行ったのだろう。やがて、浮遊城アインクラッドは100層紅玉宮もすべて消えていった。残ったのは、この場にいる俺とレインだけだ。

 

「・・・・・・終わったな」

 

「うん・・・・・・」

 

透明な天板の縁に俺とレインは寄り添って座る。恐らく俺たちがここにいられる時間もあと僅かだろう。

 

「そう言えばユイたちは・・・・・・」

 

「アスナちゃんたちも、あの鐘の音が鳴り響いたら私と同じで光ったんだ。その後は分からないよ・・・・・・気がついたらここにいたから」

 

「そうか・・・・・・」

 

「ユイちゃんも、同じだったよ。でも、茅場さんの言葉通りなら、みんな現実世界に帰って行ったんだよね」

 

「ああ・・・・・・。ユイのデータは俺のナーヴギアのメモリーに保存されてるから大丈夫だろう。おそらくストレアも・・・・・・」

 

ユイが言った、『私たち』が元の形に戻ったということは、恐らくユイのデータと同じくストレアのデータも俺のナーヴギアのメモリーに保存されているはずだ。

 

「また・・・・・・会えるかな。ユイちゃんと、ストレアちゃん・・・・・・私とキリトくんの娘に」

 

「会えるさ・・・・・・必ず・・・・・・」

 

「そうだよね・・・・・・」

 

「ああ・・・・・・」

 

そう言いながら、俺は現実世界に帰ったらまずはユイとストレアをどうにかする事にした。ユイとストレアにまた会いたいし、それは俺もレインも、みんなも望んでいるから。

 

「あ、そう言えばキリトくんの名前、聞いてないよ!」

 

「名前?」

 

「うん!現実世界での本当の名前」

 

「はは。そう言えば教えたこと無かったっけ?」

 

「そうだよ!」

 

「すまん。えっと、俺の名前は───」

 

「うん」

 

「───桐ヶ谷・・・・・・桐々谷和人。確か歳は16歳だったはず」

 

俺はレインに現実世界での本当の名前を教えた。歳は確かもう誕生日が過ぎているから16歳のはずだ。

 

「桐ヶ谷、和人くん・・・・・・あ、それでキリトなんだ♪!」

 

「ま、まあな」

 

俺のキリトとという名前を一瞬で見抜かれ俺は視線を軽く逸らした。なにせ、俺の名前は『桐ヶ谷和人』の『桐』と『人』を繋げてキリトとという我ながら安直すぎる名前だからだ。

俺の反応に、レインはクスッと笑って。

 

「私の名前は───枳殻虹架。歳は和人くんと同じ16歳だよ」

 

「枳殻、虹架・・・・・・枳殻、虹架・・・・・・」

 

レインいや、虹架の名前を忘れないために声に出して覚える。

 

「レインの───」

 

「虹架でいいよ、和人くん」

 

「あ、ああ。虹架の名前も、『虹』からレインなんだな」

 

「うん♪」

 

俺の言葉に、虹架はえへへ、と笑って頷く。

 

「現実世界に帰ったら・・・・・・真っ先に、君に逢いに行くよ」

 

「私も・・・・・・絶対、和人くんに逢いに行くね」

 

「ああ」

 

「約束だよ」

 

そう言って出してくる小指を俺も小指を返して繋ぐ。

 

「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲~ます♪指きった♪!」

 

虹架の徹底した約束に苦笑が生まれるが、俺は約束を破るようなことはしない。もちろん、それは虹架も知っていると思うけど。

そう思った瞬間。

 

「あ・・・・・」

 

時間が来たのか、俺とレインの身体を白い光が包み込んだ。

 

「そろそろ時間みたいだな」

 

「そうみたいだね」

 

そう言う最中も光は強くなりはじめている。

 

「和人くん」

 

「ん?」

 

虹架に呼ばれ、虹架の顔を見ると。

 

「私、枳殻虹架はキリトくん。ううん、桐ヶ谷和人くんのことを愛しています。今も、これから先も、ずっと・・・・・・」

 

虹架は満面の笑みを浮かべて俺に言ってきた。

 

「俺も、桐ヶ谷和人は、枳殻虹架を永遠に愛しています」

 

そして俺も、答えるようにそう言い返した。

 

「うん♪」

 

最後に俺は虹架と、抱き合ってキスをして───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺と虹架は白い光に包まれてその場から消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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HF編最終話 第144話〈現実世界への帰還〉


「ヤッホー、みんな!ソーナだよ!ついに・・・・・・ついに、アインクラッド編から続いたHF(ホロウ・フラグメント)編が終わりを迎えたよ!」

「おめでとうソーナ!やったな!」

「おめでとうソーナさん!お疲れ様だよ!」

「あ!キリト!レイン!二人とも来てくれてありがとう!」

「いやー、にしてもここまで来るのに2年近く掛かったな」

「ホントだね。キリトたちがSAOで過ごした年月と同じだよ」

「あ、ホントだ」

「それじゃ、早速、HF編の最終話、〈現実世界への帰還〉を───」

「「「どうぞっ!!」」」





 

~キリトside~

 

 

 

 

こうして、生き残ったおよそ6000人のSAOプレイヤーたちは、現実の世界へと帰ってくることが出来た。現実に戻ってから、まず俺たちを待っていたのはリハビリの日々だ。低下してしまった筋力を、元の生活ができるまで戻すのはかなりの苦労があった。それでも・・・・・・直接会いに行きたい仲間たちや最愛の人のことを思うと、リハビリをがんばり続けることが出来た。退院して久しぶりに帰ってきた我が家は、俺が現実に帰ってきたことを強く思わせるものだった。やっと帰ってきた・・・・・・と思う安堵感ともう向こうの世界には行けないという、虚無感が複雑に俺の心に絡み合う・・・・・・。

《ソードアート・オンライン》このゲームで死んだプレイヤーは現実でも命を落とすデスゲーム・・・・・・。このゲームを作った茅場晶彦は、凶悪な犯罪者として世の中の人達の記憶に忘れることなく残るだろう・・・・・・。事件解決後に俺を訪ねてきた対策チームの人間から聞いた話では、茅場晶彦は長野県の山荘で見つかったらしい。しかし、見つかった時にはすでに死んでいた。《ナーヴギア》に残されたログから、自ら大脳に超高出力スキャニングを行い、脳を焼き切って死んだとのことだ。しかし、不思議なのは茅場晶彦が死んだとされる日にち・・・・・・。死亡推定時刻とゲームクリアをした日から逆算すると、100層での戦いよりも、もっと前・・・・・・。11月7日、75層で俺と戦った前後に茅場は死んだことになる・・・・・・。そうすると100層で戦い、あの場所で出会ったあいつは本当に茅場本人だったのだろうか・・・・・・。茅場は別れ際にSAOの世界を自身の唯一の現実であると言っていた・・・・・・。もしかすると茅場はネットワーク上に、自分自身を残す方法をすでに持っていて不要になった肉体を捨てたのではないか・・・・・・。あのSAOを作った茅場なら、それくらいの事はやってしまいそうな。そんな気がした・・・・・・。

・・・・・・アルベリヒ。・・・・・・須郷伸之は、現在警察で取り調べを受けている。俺やレイン、アスナたちの証言と、須郷や他国の人間とが接触した記録・・・・・・。そして、何処からかリークされた人体実験などのデータ。これらの証拠から、VRMMO内での出来事としては異例の本格的な捜査が始まった。もちろん須郷はレクト社から席を外すこととなり、アスナとの結婚などという話も無くなったらしい。このリークされたデータの出処は不明らしいが、俺は大体の検討がついていた。おそらく、茅場がネットワークにリークしたのだろう。

しかし・・・・・・茅場が作ったこのゲームは、本当にただのデスゲームだったのだろうか。茅場はコンピュータの中に現実とは違う、もうひとつの現実を作りたかったのではないだろうか。そうすると、このゲームの本当の遊び方はクリアすることではなかったのかも知れないと考えさせられてしまう。もちろん、茅場のやった事は、到底許されることではない。それでも、茅場の作った世界での出会いや別れ・・・・・・仲間と共に過ごした、かけがえのない日々は本当に大切な思い出であり経験だ。その大切な思い出の続きを、この先、現実世界でも作り上げていこう・・・・・・。かつての戦友とともに・・・・・・。そして、俺の愛する人とともに・・・・・・。

 

さようなら・・・・・・ソードアート・オンライン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな~、グラスは持ったかな~!」

 

「大丈夫ですよ、レインさん」

 

「ええ。みんな持ったわ」

 

「了解!それじゃあ、みんな・・・・・・せーの!───」

 

 

 

『『『『『SAO、クリアおめでとう!!』』』』』

 

 

 

虹架の音頭に続いてそれぞれ、手に持ったグラスを掲げる。

今俺たちがいるのはエギルの店・・・・・・。第76層、アークソフィアの・・・・・・ではなく、東京都台東区御徒町にある喫茶店『ダイシーカフェ』だ。

季節はもう春を過ぎ、俺たちが現実世界に帰ってきて───SAOをクリアしてもう2ヶ月近く経っていた。全国のSAOプレイヤーが一斉に覚醒したことについての大混乱は・・・・・・まあ、語るまでもないだろう。

目覚めた俺たちを待っていたのは、検査とリハビリの日々だった。とまあ、そんなわけで、みんなが一堂に会するのはSAOをクリアしてから、今日が初めてだ。《アインクラッド攻略記念パーティ》・・・・・・大層な名前だけど、要するにSAOプレイヤーたちの打ち上げだ。

パーティが開始してしばらくして、俺とラムはみんなから少し離れ、カウンターに腰掛けた。

 

「ふぅ・・・・・・」

 

「はぁ・・・・・・

 

「・・・・・・お疲れのご様子だな」

 

カウンターに腰掛ける俺とラムにエギルが声を掛けてきた。

 

「まだリバビリの疲れが抜け切らないんだよ。2ヶ月前まで寝たきりだったのに、あんなに元気なあいつらがおかしいんだ・・・・・・」

 

「女子が三人よれば姦しい、っていいますけど、あれはそれ以上です・・・・・・」

 

「ここ2ヶ月はみんな検査ばかりで、ゆっくり話せなかったからな。ひさしぶりに、羽目を外したんだろう」

 

俺とラムの言葉にエギルは苦笑しながらレインやリーザたちのところを見る。そこはパーティに来た女子勢が喋っていた。

 

「それにしても、あいかわらず不景気な店だな・・・・・・」

 

「うるせえ。夜は繁盛してんだ」

 

俺の皮肉に、エギルは気にせず返す。実際、この店は夜はバーとして経営している。もっとも、今日は俺達の貸し切りだが。

 

「それにしても2年以上も守れるなんて・・・・・・すごいですねエギルのお嫁さんは」

 

「ははは。うちの嫁さんはしっかり者でな、俺がいない間も、この店を立派に守り通してくれた。おかげで俺はまたこうして、カウンターに立てるってわけだ。まあ、アインクラッドと違って、リアルの客商売にはいろいろしがらみもあるが・・・・・・。それでも店を経営するってのは楽しいもんだ」

 

「それに引き替え、こっちの社会人は・・・・・・」

 

「あはは・・・・・・」

 

俺とラム、エギルが視線をカウンターの横に向けるとそこには。

 

「ちくしょう・・・・・・明日も残業だよ。ああ、飲まなきゃやってられん。2年以上も寝たきりだったってのに、こんなに働かせるなんて鬼かっての・・・・・・なあ?」

 

グラスに入れた酒を飲むクラインがいた。

 

「・・・・・・ま、こういう奴もいる。人生は人それぞれってことだ」

 

クラインを見ながら言うエギルに俺とラムはうなずく。そこに。

 

「キリト!そんなむさ苦しい集団の相手なんかしてないで、アンタもこっち来なさいよ」

 

「そうです!せっかくリアルでキリトさんと出会えたんですから!今夜は離しませんよー」

 

「お、おい、引っ張るなよ」

 

斑玖(むらく)~!斑玖も来てくださいよ!」

 

「あ、愛璃沙(ありさ)、引っ張らないで───って、うわぁ!」

 

俺はリズとシリカに。ラムはリーザに、女子陣の中へと連れて行かれた。

 

「あーあー!キリト先生とラム先生はソッチ側ですよね・・・・・・。ったく、エギルには美人の嫁さん。キリトとラムは青春。俺は残業。・・・・・・こんなの、不公平だぜ」

 

「行ってこい、キリト。みんな、アインクラッドの英雄を肴にしたくて、うずうずしてるんだ」

 

「やれやれ・・・・・・それじゃあ、覚悟を決めて、いじられてくるよ」

 

「ちくしょーぅ!エギル、おかわりだ!もっと強いのをくれ!」

 

悔しげに酒を飲むクラインに、やれやれと言った感じで酒を注ぐエギルに見送られて俺は、先にラムが行った女子陣の中へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つ、疲れた・・・・・・」

 

あの後、シリカから始まりリズ、シノン、アスナ、フィリアと話を続けていき、元アインクラッド解放軍、通称『軍』の最高責任者であるシンカーさんとユリエールさん。第1層、はじまりの街の教会で子供たちを保護してたサーシャさん。元黄金林檎のメンバーであるカインズさんとヨルコさん、等といろんな人と話して周り、すでに俺はくたくた状態だった。少し離れた場所では、ラムがぐったりとした様子でリーザから飲み物を貰っていた。

そんなゆっくり休んでいるところに。

 

「大丈夫和人?」

 

「だ、大丈夫ですか和人さん」

 

「ああ、木綿季、藍子・・・・・・」

 

幼馴染である、ユウキこと、紺野木綿季と木綿季の姉のランこと、紺野藍子が心配したように聞いてきた。

 

「いやー、すごいよね和人は」

 

「それ褒めてるのか木綿季?」

 

「褒めてるよ~。ね、姉ちゃん」

 

「ははは。ま、まあ、和人さんは英雄ですから」

 

「・・・・・・好きで英雄って名乗ってるわけじゃないんだけどなあ」

 

あの戦いの時、ヒースクリフは自身のことを魔王と呼び、俺のことを英雄と言った。そのことにより、魔王であるヒースクリフを打ち倒した俺がアインクラッドの英雄となっているのだ。決して好きで名乗ってるわけじゃない。

そう想いながら返していると。

 

「お兄ちゃん、木綿季、藍子さん、はいどうぞ」

 

リーファこと義妹と直葉が料理をお皿に入れて持ってきてくれた。

 

「さんきゅ、スグ」

 

「ありがとう直葉」

 

「ありがとうございます直葉ちゃん」

 

「いえいえ~」

 

スグが持ってきてくれたお皿にあるポテトを摘みながら4人で話す。

 

「それにしても、まさかこっちに帰ってきたら驚くことがあったなんてね」

 

「ん?ああ、あれか」

 

木綿季と俺がいう、あれ、とは。

 

「また、二人の隣の家に住めるなんて思いませんでしたよ」

 

「ほんとですね。あたしも気づかなかったです」

 

いつの間にか木綿季と藍子───紺野家が俺とスグの家、桐ヶ谷家の隣に越してきていたことだ。そのことを知った時は俺たち四人分の絶叫が響き渡ったほどだ。

そして、俺たちの親はニヤリとしていた。まあ、俺は母さんは分かるが、あの親父がしてかなり驚いたのは秘密だ。

と、その時のことを思いかえしていると。

 

「───キリトくん♪」

 

「虹架」

 

飲み物の入ったグラスを持って、虹架(レイン)がやって来た。

 

「えへへ。えっと、久しぶり・・・・・・?だね、キリトくん。あ、和人くんの方がいいかな」

 

「虹架の呼びやすい方でいいんじゃないか?」

 

真剣に迷う虹架に、苦笑しながらそう言った。

現に木綿季と藍子は俺の事を和人と言ってるし、アスナやフィリアたちはキリトと呼んでいる。

 

「えーと、じゃあ・・・・・・キリトくん」

 

「ああ」

 

「キリトくんもどっちでもいいからね」

 

「おう」

 

虹架とレイン、どっちでも呼んでもいいということだろう。仮想世界ならばレインと堂々呼べるが、現実世界となるとどっちがいいのかと悩む。俺にとっては虹架もレインも同じだからだ。

 

「お兄ちゃん、あたしたちは向こうの方に行ってるからね」

 

「え?」

 

突然スグにそう言われ驚いている間に、スグと木綿季、藍子の3人はそそくさと離れて行った。

 

「え、えー・・・・・・」

 

さすがの手早さに虹架も呆気に取られていた。

 

「ったく、三人とも・・・・・・」

 

対する俺は三人の魂胆に苦笑いを浮かべるしか無かった。

別にスグたちが居ても問題ないのだが。やがて、虹架も三人の魂胆に気付いたのか。

 

「あはは。も、もう、リーファちゃんたちは・・・・・・」

 

苦笑を浮かべていた。

 

「やれやれ・・・・・・。あー、久しぶりだなレイン」

 

「うん」

 

俺と虹架が現実世界で出会うのは今回が始めてだ。虹架に関して、あの総務省の役人、確か、菊岡だとかいう人に聞いていたが実際に会うのは始めてだ。まあ、この2ヶ月近くは各自病院でリハビリの日々だったからしかたないが。

 

「こうして話すのはあの時以来・・・・・・だね」

 

「だな」

 

最後、茅場と話したあの黄昏の場でのことを言っているのだとすぐに分かった俺は、思い返すように返す。

 

「私ね、今日を楽しみにしてたんだ。また、みんなでこうして集まるれるなんてね」

 

「それも、エギルの店でな。まるで、今夜だけアインクラッドに戻ってきたみたいだな」

 

「ほんと・・・・・・。こうしてると、また明日から攻略に出かけるとか、街で過ごしたりするような・・・・・・そんな気がするよ」

 

「俺もだ」

 

「ユイちゃんとストレアちゃんも一緒にいられれば良かったのに・・・・・・」

 

「ああ・・・・・・ほんと、ユイとストレアが一緒だったら全員揃ってたのにな・・・・・・」

 

アインクラッドのアークソフィアでは、ほぼ毎日俺達は一緒にいたため、俺はどこか虚しさがあった。

 

「今でも夢に見るんだ。21層と83層にある、森の家で、私とキリトくん、ユイちゃん、三人一緒に暮らしていたあの時のこと」

 

「レイン・・・・・・」

 

「あっ。別に、今が嫌ってわけじゃないんだよ。でも、もう二度とあそこには戻れないんだなあ、って思っちゃうと・・・・・・ちょっとだけ、さびしいな」

 

「確かに、SAOに戻るのは難しいかもしれないけど、三人一緒に───いや、ストレアも入れた、四人一緒に暮らすって夢は、これから叶えられるさ。ユイとストレアのデータはあるし、俺とレインはこうして、今も一緒にいる。俺たちが本当に幸せになるのはこれからだよ。そうだろ?」

 

「ふふっ。キリトくん、それって何だかプロポーズみたい」

 

「なっ・・・・・・!そ、そうかな・・・・・・?でも、まあ俺達は一度夫婦になったんだ、これくらい格好つけたっていいじゃない・・・・・・か?」

 

「なんで最後疑問形なの」

 

「あ。いや・・・・・・。俺は、その・・・・・・今でもレインとはその・・・・・・夫婦のつもりだよ」

 

「わ、私もだよキリトくん」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「す、すまん。俺なんか変な事言ったかな?」

 

「う、ううん。そうじゃないよキリトくん。私たち、もう普通の男の子と女の子に戻っちゃったけど、また一から・・・・・・。あの時と同じように、ゼロから始めようよキリトくん」

 

「レイン・・・・・・」

 

「ふふ。あらためて、よろしくお願いしますキリトくん」

 

「ああ、こちらこそレイン」

 

俺とレインは、再び現実世界でそう誓いあったのだった。その後も宴は延々と続いていった。

俺達は過去の思い出や、未来の夢・・・・・・。そんないろんなあれこれを語り明かした。それを話すみんなの顔はどれも底抜けの笑顔だ。もちろん、死んでいった4000人のプレイヤーたちを忘れたわけじゃない。それでも、ここにいるみんなが笑顔なのは、SAOでかけがえのないものを手に入れたからだと、俺は思う。それは、冒険の中で得られた経験や絆・・・・・・アインクラッドで出会った仲間たち・・・・・・。そして、大切な人・・・・・・。人によってそれは違うだろうが、それでも必ず、みんなひとつは得られたと思う。

SAO───ソードアート・オンラインの世界。アインクラッドで過ごした2年半を知らない人は、きっと俺たちが得たものは分からないだろう。

・・・・・・茅場晶彦が、なぜソードアート・オンラインという世界を作ったのかは、未だわからない。おそらく茅場本人以外、誰もわかないだろうが。それでも、何故か不思議と、茅場への憎しみや怒りは沸かなかった。なぜなら・・・・・・俺はたぶん・・・・・・SAOが・・・・・・。

そう思い感じていたところに

 

「ねえ、みんな!もし、嫌じゃなかったら、これから・・・・・・アルブヘイム・オンラインはじめない」

 

スグが俺たちに向かってそう提案してきた。

 

「それって直葉が元々やっていたゲームだよね?」

 

「うん、そうだよ」

 

木綿季の問いに答えたスグ。

 

「妖精になるゲームですか。なんだかロマンチックで素敵かも・・・・・・」

 

「空を飛ぶのって夢があっていいよね。どんな感覚なのかな?」

 

「そうねぇ~気持ちよさそうだけど、歩くのとは違うからイメージしにくいかも。・・・うう・・・なんか飛ぶの難しそう」

 

シリカやリズ、アスナたちからいろんな声が上がる。が、その声は楽しそう、や、面白そうなどと言ったものだった。

 

「飛び方だったら、あたしがみんなに教えてあげる。ALOの世界だったらお兄ちゃんにだって負けないんだから!」

 

「ほう・・・・・・言ったなスグ」

 

「へっへーん。空を飛ぶスピードならお兄ちゃんたちに負けないもん」

 

ニヤリとした表情を浮かべて言うと、スグは胸を張って自信満々に言う。

 

「ふふ。みんな、根っからねゲーマーだね」

 

「ここにいる全員あの世界を体験したからな、他のMMORPGが気になるんだろうな。それはレインもだろ?」

 

「もちろんだよ。キリトくんもでしょ?」

 

「ああ」

 

みんなを見てレインと話していると。

 

「キリト~!レイン~!」

 

「二人とも早く来てください!第一回ALO攻略会議始めますよ~!」

 

「キリト、レイン、早く早く!」

 

木綿季、藍子、フィリアが呼んできた。見てみると、カフェの一角にパーティの参加者が集まっていた。

 

「い、今からやるのか!?」

 

「き、気が早すぎるよみんな~」

 

俺とレインはそう言いつつも、心を震わせてみんなのところに向かっていった。

俺は・・・・・・俺たちはもう一度旅に出る。世界樹のそびえ立つ、ALOの世界へと・・・・・・。

 

「さあ、冒険に行こう!!」

 

「みんな、冒険に行くよ!!」

 

『『『『『おお!!』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後

 

エギルの店でパーティを終えた俺たちは、上野にある上野公園に来ていた。

 

「見て見て、キリトくん」

 

「ん」

 

レインに言われてレインの視線の先を見ると、そこは東京の街並みを夕焼けが包み込んで、今まさに夜になろうとしている逢魔が時の景色が見れた。

 

「うわぁ・・・・・・きれいだね」

 

「ああ」

 

仮想世界で見るのとは違い、幻想差も無いが、その光景は俺たちがちゃんとここにいるということを示してくれた。

まだ春を過ぎたばかりで夜は少しだけ肌寒いが、今この時に吹く風は心地よかった。

 

「ユイとストレアにも見せてあげたいな」

 

「うん」

 

「10年・・・・・・20年・・・・・・どのくらいの年月が経とうが、俺は必ずユイとストレアが俺たちと一緒に、過ごせるようにするよ」

 

「キリトくん・・・・・・」

 

「だから・・・・・・」

 

俺はそこで言葉をと切らせて傍らにいるレインに視線を送り。

 

「レイン、俺とずっと一緒にいてほしい」

 

と、言った。

 

「もちろんだよキリトくん!私は、ずっとキリトくんの隣に・・・・・・傍にいるからね」

 

「ああ」

 

そう言う俺たちを、頭上に浮かぶ月と、今まさに沈もうとする夕陽が照らした。俺とレイン。俺たちのこれからを祝うようにして。

 

 

 

 

 

 

 

 





「───どうだったかな?みんな楽しめたかな?」

「いやー、次回からの新章が楽しみだなソーナ」

「ほんと、私たちがどう活躍するのか気になるね」

「そうだね、って、うわっ!!」

「な、なんだ!?」

「い、いきなり槍が飛んできたよ!」


「ついに次回から私の出番ってことね!」


「きみは!」

「うそっ!?」

「いきなりなにするのさー!」

「ふふ。それじゃあ、みんな、次回会いましょう!ダスヴィダーニャー」

「え!って!ちょっ!勝手に閉めないでよ!で、ではまた次回から始まる新章、〈LS(ロスト・ソング)編〉でお会いしましょう!」

「みんな、次回も読んでくれよ!」

「あ、感想もどんどん送ってね!」

「では、これで───HF編、完結です!また次回!」



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ALO LS(ロスト・ソング)
LS編 第145話〈新たなる大地〉



「やっほー、みんな!ソーナだよ!ついに、今回から新章、LS編が始まるよ!これからどんな冒険が始まるのか。そしてキリトたちがどう活躍するのか楽しみだね!それじゃ、記念すべきLS編第一話!〈新たなる大地〉をどうぞ!」




 

~キリトside~

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

目を開けた俺は両手を開け閉めし、その場から飛び立ち近くに浮いていた小さな浮き場へと移動した。

 

「・・・・・・よし」

 

俺の背後には、空まで上る巨大な大樹。世界樹があり、その根元には央都アルンの街並みが広がっていた。

そこに。

 

「キリトくーん!」

 

「キリト~!」

 

「キリトさーん!」

 

「リーファ・・・ユウキとランも」

 

空を飛んで、俺のところに義妹のリーファと幼馴染姉妹のユウキとランがやって来た。

 

「まったくもお。先にログインしちゃうなんて。どれだけ待ちきれないのよ」

 

「ほんとだよ!ボクたちを置いていっちゃうんだから!」

 

「まあまあ、二人とも。あのキリトさんなんですから仕方ありませんよ」

 

「あはは、すまん」

 

リーファたちの言葉になんの反論も出来ないため、苦笑しながら謝る。

 

「しょうがないんだから」

 

「やれやれ」

 

「あはは」

 

俺の言葉に、三人は諦めたようにため息を吐く。

 

「でも、ついにこの時が来たんだね」

 

「うん」

 

「ええ」

 

「あれが、新しく実装されたエリア」

 

リーファの言葉に、俺たちは視線を先に向ける。そこには巨大な大陸が五つ浮遊していた。遠くから見えるそれは、それぞれ街、草原、雪山、砂漠、岩盤となっていた。

 

「光と闇の神々が住まう、伝説の浮島大陸───『スヴァルトアールヴヘイム』か」

 

「うん、そうだよキリト君。・・・・・・って、今はお兄ちゃんでいいか。新エリアの実装楽しみにしてたもんね」

 

「ああ。ALO、アルブヘイム・オンラインを遊ぶようになって数ヶ月、この大型アップロードを数多くのプレイヤーたちが、本当に心待ちにしてたんだ」

 

「早く遊びたくてうずうずして顔だね」

 

リーファの言葉に、俺とユウキ、ランは苦笑を漏らした。なにせ、俺たち全員、あの浮島大陸の実装を心待ちにしていたからだ。そんな俺たちの心情を察したのか。

 

「ふふ。さあ、いつまでもこんな遠くから見てないで早くあそこまで飛んでいこうよ!」

 

背中から羽根を出して飛び上がった。

 

「ああ!行こうリーファ!ユウキ!ラン!」

 

「うん!」

 

「はい!」

 

リーファに続くように、俺とユウキ、ランもその浮き場から飛び上がり、背中から羽根を出してリーファとともに、伝説の浮島大陸───『スヴァルトアールヴヘイム』へと飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スヴァルトアールヴヘイム 浮遊草原ヴォークリンデ

 

 

「着いたな。ここがスヴァルトアールヴヘイム・・・・・・」

 

央都アルンから飛んできた俺たちは、一番最初の島に降り立った。

降り立った島は、辺り一面草原が広がり長閑なエリアだ。

 

「そうだね」

 

「うわぁ・・・・・・・結構いい景色だね!」

 

「ですね~」

 

リーファたちも辺りを見ていると。

 

「ぷはーっ!ようやく出てこられましたよ、パパ!今日は四人だけなんですか?」

 

俺の胸元のポケットから、小さな妖精───ピクシー姿の、娘のユイが出てきた。

 

「いいえ、後で落ち合うことになってるですよ」

 

「そうなんですね」

 

ユイの言葉に返したランの言葉にユイは納得したように言う。

 

「ユイ、ここは新エリアの・・・・・・」

 

「はい、ここはまだ新エリアの入り口。浮島大陸の最初の島《浮遊草原ヴォークリンデ》です。ここから一つずつ島を攻略していき移動範囲を拡大していく・・・・・・。つまり次の島に行けるようになるという仕組みです」

 

「なるほどな・・・・・・。ありがとう、ユイ」

 

「ここが最初の島で、ここから広がっていくんだよね」

 

「他にどんな島があるのでしょうか・・・・・・」

 

「楽しみだね~」

 

ユイの説明に、ユウキたちは興奮したように楽しげに話す。

 

「それじゃあ、そろそろ街に行こうよ」

 

「ああ、そうだな。《転移門》はどこだろう?」

 

「えっと・・・・・・あ、あそこですね」

 

ランの指の先には、石造りの門がありその奥にある少しだけ高い場所に円形の青い光が見えた。

 

「そんじゃ、行くか」

 

俺たちは降り立った場所から草原エリアの転移門へと向かっていった。道中、モンスターがPOPしたが俺たちはすぐに倒し、問題なく転移門にたどり着いた。

 

「よし、転移門にたどり着いたぞ」

 

「あれ、この転移門起動してるね」

 

「ほんとですね」

 

ユウキの言ったとおり転移門は起動して、青白い光を放っていた。

 

「もしかして誰かもう行ってるのかな?」

 

「かもな。俺たちも行くか」

 

「うん!」

 

「もちろん!」

 

「はい!」

 

「「「「転移!!」」」」

 

俺たちはその場からスヴァルトアールヴヘイムの街へと転移して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スヴァルトアールヴヘイム 空都ライン

 

 

「おお・・・・・・!これがスヴァルトアールヴヘイムの街か!」

 

転移した俺たちの視界に入ったのはスヴァルトアールヴヘイムにある街並みだ。様式はどこか中世のヨーロッパを感じる。ALO本土とは少しだけ違った感じがした。

 

「やっぱり初めての街に降り立つとワクワクするよね~!」

 

「うん!このワクワクは昔から変わらないよ!」

 

「ですね。まあ、それもゲーマーならではの感覚ですね」

 

続けてリーファたちも、街並みを見て感想を述べる。

 

「宿屋や商店などの基本的な施設はもちろん、酒場や闘技場などもあるようですね」

 

「へぇ・・・・・・そうなんだ。後で回ってみるか」

 

ユイの言葉を聞いて辺りを見渡す。確かに闘技場のような建物が見えるし、転移門の近くには様々な施設があった。中でも、一際大きく目立つのが他の建物とは違い、石造りの高いタワーのような建物だ。

 

「あっ、パパ、少しいいですか?」

 

「ん?どうしたユイ」

 

「実はシステムが一部アップデートされています」

 

「システムが一部アップデート、ですか?」

 

「もしかして本土と何か違うのユイちゃん」

 

「はい。この新エリアの街───空都ラインでは、既存のALOの街中と違い、街中での飛行が出来ません」

 

「そうか。新エリアの街はそもそもALO本土とシステムの仕組みが違うみたいだな」

 

「はい。ですが、今回のバージョンアップではシステムのアップデートはもちろん、新しいダンジョンやクエストも多数追加されています。高難度クエストもあるみたいですよ」

 

「それだけ遊び応えがある、攻略しがいがあるって事だな。はははっ!」

 

ユイの説明に意気揚々と心震わせていると。

 

「うわぁ・・・・・・お兄ちゃんのゲーマー魂に火が付いちゃったよ」

 

「うーん、さすがに消化はできないかな?」

 

「無理ですね。一度ああなった和人さんは止まりませんから」

 

「だよね~」

 

すぐ近くから義妹と幼馴染姉妹のひそひそ話が耳に入った。

それからしばらくして。

 

「おーい!四人とも~!」

 

「おお、アスナ達が到着したな」

 

俺たちに遅れて、アスナたちがやって来た。

そして、やって来て会うなりリズが呆れたように。

 

「やっぱりあんた達、待ち合わせ時間より先に来てる」

 

と、予想していたと言った。さらに続けてシリカが。

 

「仕方ないですよ、リズさん。キリトさんが待ちきれるわけないじゃないですか~」

 

と、シリカも苦笑しながら当然と言う風に話す。そしてそれを聞いたリーファたちは、うんうん、とうなずいていた。

 

「ホント、あんたって欲望に忠実というか・・・・・・。団体行動を乱すわよね。まあ、それがあんたらしいっちゃ、あんたらしいけど」

 

「ま、まあ、キリトのその行動は今に始まった事じゃありませんからね」

 

「ラム、それは少し言い過ぎよ。まあ、事実だけど」

 

シノンの言葉に引き笑いを浮かべて言うラムに、そのラムの言葉を援護するように言うリーザの言葉に、俺はうっ・・・・・・!となった。

 

「ふふ・・・・・・ここ数日キリト、ずっとそわそわしてたもんね」

 

「はい。それだけ楽しみだったってことですね」

 

ユウキとランがクスリと笑っていう。

 

「そわそわしてたのは俺だけじゃない気がするんだが?」

 

その二人に、俺は返すようにして言う。現に、ユウキとランもそわそわしていたのだ。そこにさらに。

 

「やっほー、キリト!相変わらず元気そうだね!」

 

「キリトーっ、相変わらず早いねー♪アタシ達を置いて行かないでよー」

 

フィリアと、娘のストレアがやって来た。ストレアは、ユイと一緒にこの世界に俺が持ち込んだ───と言うより、連れてきた。まあ、その時の話はまた今度にして。

 

「ははは、すまんすまん」

 

フィリアとストレアにそう返して、残りの大人二人が声を掛けてくる。

 

「おいおい、さっきからオレ達のこと、忘れてないか!」

 

「クライン、エギルも来てくれたんだな」

 

クラインは兎も角、現実世界で店を経営しているエギルはログイン出来ないかと思ったのだが・・・・・・。そう思っていると。

 

「ネットでも話題になっていた、前代未聞の大型アップデートだぞ。ゲーマーなら公開直後のログインは基本だろ。それに、うちの嫁さんが行って来いって言ってくれてな」

 

と、答えた。

どうやらエギルの奥さんのお陰みたいだ。

 

「しかしオレ達も酔狂なもんだよなぁ。あれだけの目に遭っておきながら、こうしてまたこの世界に来ちまってる・・・・・・」

 

「そうですね・・・・・・。SAO───アインクラッドで二年以上も戦い続けて・・・・・・。またみなさんでこうやって集まるだなんて、何だか不思議な気分ですね・・・・・・」

 

「ああ」

 

クラインとランの言葉に、俺たちはあの二年以上のことを思い返す。

俺達はあの場所で、色々な事を経験し、様々なことを教わった。あの時生まれた絆があるからこそ、またみんな一緒にここに立っていられるんだと思う。

そう、考え込んでいると。

 

「どうしたよ、キリト?なんだかたそがれてるじゃねぇか」

 

クラインが茶化してきた。

 

「ははは・・・・・・クライン、茶化すなよ」

 

その言葉に辺りは笑いが生まれた。

そして、そこに最後の一人の声が聞こえてきた。

 

「キリトく~ん!みんな~!」

 

「やっと来たか、レイン」

 

声の主は俺の大切な最愛な人、レインだった。

SAOの時に装備していたコートに似た、メイド服のような装備を着て腰に二本の長剣を携えている。

 

「ごめん!遅れちゃったよ」

 

「いや、俺たちも今来たところだ」

 

「そうだよレインちゃん。だから大丈夫」

 

「そ、そう・・・よかったぁ~」

 

急いできたのかレインの息は上がっていた。

全員揃ったところで、俺は改めてみんなを見渡す。

みんなSAOの時とあまり変わってないが、ALOでの種族は違っていた。シルフはリーファとラム。ノームはエギルとストレア。インプはユウキとリーザ。サラマンダーはクライン。レプラコーンはリズとレイン。ケットシーはシノンとシリカ。ウンディーネはアスナとラン。スプリガンは俺とフィリアだ。装備もそれぞれ変わってなく、みんなSAOと同じ武器を保持していた。もちろん、俺も背中に二本の剣を背負っている。剣は二振りともレインの造ってくれたオーダーメイド品だ。

 

「さぁ、そろそろ行こう!もう沢山のプレイヤー達がこの新エリアに挑戦しているはずだ!」

 

「腕が鳴るわね・・・・・・」

 

「ふふふ、どんな新しいお宝が眠っているのかな?楽しみだよ!」

 

「さぁ、新しい素材を見つけるわよ!」

 

「俺も新商品をどんどん仕入れるぜ!」

 

「ピナ、頑張ろうね!」

 

「きゅるうっ!」

 

「おうよ、オレも格好良いところ見せてやるぜ!」

 

「データの分析は任せてください!」

 

「アタシも頑張っちゃうよー♪」

 

「俺も頑張っていきますよ!」

 

「私も負けないようにしないと!」

 

「おお、みんな気合入ってる。あたしも負けてられないな!」

 

「ふふ、みんな気合十分ね!もちろん、私もだけど!」

 

「ボクだって!負けられないよ~!」

 

「私も気合を入れていきます!」

 

俺の言葉に、みんな意気込みを入れて気合十分だった。

 

「さあ、行こうよ、キリトくん!」

 

「ああ!」

 

俺とレインも気合を入れ。

 

「それじゃあ、スヴァルトアールヴヘイム!!攻略開始!!」

 

『『『『『おうっ!!』』』』』

 

俺たちの新たな世界での、新たな冒険が、今、始まった。

 

 





「みんな、どうだったかな?これからもどんどん投稿していくよ!みんな、感想や評価、些細なことでも構わないから送ってね!それじゃあ、また次回に!これからも『ソードアート・オンライン 黒の剣士と紅の剣舞士 二人の双剣使い』をよろしくお願いします!!」



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LS編 第146話〈浮遊草原ヴォークリンデ〉

 

~キリトside~

 

 

「新エリアに上陸したわけだけど、さて、これからどうしようか?」

 

新エリア、スヴァルトアールヴヘイムに降り立ち意気込みを入れていたものの、俺たちはまず初めになにをするか悩んでいた。

 

「うーん、まずは小手調べとして定番のクエストがいいんじゃないですかね」

 

「いろんなのがあるみたいですけど、なにかいいクエストはありますかね?」

 

リーファとシリカがそう言うと。

 

「クエストか~。なんか強い相手と戦えるのないかなぁ~」

 

ユウキが意気揚々とワクワクした表情で言った。

 

「はぁー。考え無しに行動するのは止めなさいと何度言ったらわかるんですかユウキ?」

 

「まぁまぁランちゃん。リズっち、なにかいいのあるかな?」

 

「ふっふっふっ・・・・・・それなら持って来いのやつがあるわよ!」

 

そう言ってリズが見せたクエストをみんなで見る。

 

「うん、手軽に出来そうだから、初クエストにはちょうどいいんじゃないかな」

 

「ですね。実力を測るのにはちょうどいい感じです」

 

リズの見せたクエストに、アスナとランが良さそうに言う。クエストは二つあるが、どちらも手始めのクエスト難度としてはよさそうだ。

 

「キリト~。その小手調べクエストはどこに行けば受けられるんだ?」

 

「フィールドに出て、転移門から北東にあるダンジョンと、もう一つあるみたいだ」

 

クラインの質問に、クエスト受注場所欄を見て答える。

 

「それほど強い敵もいないだろうし、様子見としてはよさそうね」

 

「素材になるアイテムがあるらしいから、装備強化に使えるし、食材になる敵もいるらしいわ」

 

「えっ!ほんとリズっち!?」

 

リズの言葉を聞いた途端、レインは目をキランッ!と輝かせた。どうやら、素材アイテムと食材アイテムに目を光らせたらしい。

 

「ええ!どんな素材アイテムなのか、興味あるわ~!」

 

「私も!素材アイテムがあれば装備強化出来るし、食材アイテムはキリトくんとユイちゃん、ストレアちゃんに振る舞えるから!」

 

「レ、レイン、少し落ち着いて」

 

燃えているレインをリズが宥める。

 

「装備が鍛えられる素材は魅力的ですね!」

 

「私も欲しい食材がありますから楽しみです」

 

「あ、それわたしも!」

 

「ボクもかな。姉ちゃんに食べてもらえるし」

 

ドロップ報酬などにみんな興味津々みたいだ。

 

「それじゃあ決まりだな。二手に分かれてさっそくそのクエストをやってみるか!」

 

二手に分かれてクエストを行うことにし、パーティ分けをした。

それぞれのパーティは。

 

「さて、こっちのパーティの目的は転移門から北東にあるダンジョン。メンバーは俺とレイン、リーファ、シノン、ラム、ユウキか」

 

俺のパーティがこうなり。

 

「私たちのパーティは私と、アスナさん、リーザさん、フィリアさん、ストレアさん、クラインさん、エギルさん、シリカちゃん、リズさんですね」

 

ランたちのパーティがこうなった。

 

「今回はこのメンバーでパーティを組むんですね」

 

「ああ。ユイ、俺たちのアシスト頼んだ!」

 

「はい!分かりました!」

 

「それでは行きましょうか」

 

「だな。それぞゃあ、クエスト攻略、開始!!」

 

『『『『『おう!!』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浮遊草原ヴォークリンデ

 

 

「さて、俺たちの目的地はここから北東にあるダンジョンだな」

 

「私たちはここから北西にあるダンジョンですね」

 

空都ラインから浮遊草原ヴォークリンデに転移した俺たちはそれぞれの目的地を確認しあう。

 

「それじゃあ行きましょうか!」

 

「ですね。それじゃあお先に失礼します」

 

そう言って、ランたちは羽を広げて目的地まで飛んで行った。

 

「俺たちも行くか」

 

「そうだね!」

 

「さんせーい!」

 

「了解!」

 

「はい!」

 

「うん!」

 

そして、俺たちも武器を確認して、羽を広げて飛んで行った。

 

「ん~!やっぱり空を飛ぶのって気持ちいな~!」

 

「でしょ〜!」

 

ウォークリンデの空を翔んでいるとレインがそう言った。

レインの言葉に、リーファが自慢気に返す。

 

「それにしてもキリト君たちみんな、ホント飛ぶの上手いよね〜」

 

「いきなりどうしたリーファ?」

 

「どうしたのリーファ?」

 

「いやー、始めた頃はあたしが一から教えたのにあっという間に覚えて、普通の人じゃ怖がるような速度を平気で出すんだもん。言いたくもなるよ」

 

ALOを始めた時、元々ALOをプレイしているリーファがこの世界のことを一から教えてくれたのだが、俺たち全員あの世界での経験が活かされてるのか、飛行をコントローラ無しの随意飛行で飛び、普通の人じゃ出さない速度も出せるようになっていた。

 

「あーあ。スピードだけは自信あったのに」

 

この世界でスピードホリックと呼ばれてるリーファは、飛ぶことに関しては他の追随を許さないほどだったみたいなのだが、それを俺たちが簡単に許してしまったみたいなのだ。ちなみに、高速飛行の早い順は俺、レイン、ユウキ、ラン、リーファ、アスナ、ラム、リーザとなっている。

そんな会話をしながら、俺たちはクエストの目的地に辿り着いた。

しかし、ダンジョンがあるはずの所は大きな石の扉で塞がれており、とても入れるような感じではなかった。

 

「この扉は・・・・・・」

 

「魔法で封印されてるみたいだね」

 

扉を見聞したリーファがそう言い。

 

「という事は、物理攻撃では破壊できないかしら?」

 

「うーん・・・・・・やってみる?」

 

「いや、止めといた方がいいかと思いますよ」

 

シノン、ユウキ、ラムが次々に言う。

 

「だな」

 

「でも、これじゃあ先に進めないよ?」

 

「となると、恐らくこの扉の封印を解除する仕掛けがあると思うんだけど・・・・・・」

 

そう言って再び石の扉をこまなく検分する。やがて、石や扉の真ん中に不自然な穴が空いているのを見つけた。

 

「ここに不自然に穴が空いてるぞ」

 

「ほんとだ。この穴の大きさは・・・・・・石版かな?」

 

不自然な穴の形は長方形で、石版のような物がすっぽり収まる大きさだった。

 

「石版か何かを収めるのかしら。怪しいわね・・・・・・」

 

「他にも何か手がかりがあるのかもしれないな・・・・・・」

 

そう呟くと。

 

「ねえキリトくん、ちょっとこれを見てくれる?」

 

リーファが声をかけてきた。

 

「どうした?」

 

「ほらここ。何か書いてあるよ?」

 

「え?」

 

リーファの指先には、石の扉に小さな文字で何かが書かれてあった。幸い、書かれている文字は日本語の為なんとか読めた。というか、英語とかだったら読めないやつ多数いるだろ。

そう思いつつ、書かれてる文字を読む。

 

「・・・・・・トールの耕地?」

 

「耕地ってことは農場とかですかね?」

 

書かれていた文字について考えていると。

 

「あっ、そういえばさっき移動してる時にこの先に農場みたいな場所があったよ!」

 

思い出したかのようにレインが言った。

 

「きっとその農場の事を言ってるんですよ!」

 

「扉を開けるヒントがあるかもしれないわね」

 

「そうかも!行ってみる価値はあると思うよ!」

 

「ああ。それじゃあ、トールの耕地に行ってみようぜ!」

 

「おっけー!」

 

俺たちは扉を開ける手懸かりを探すため、この先の農場に行くことにした。

目的地の農場は飛んで行ったためすぐに着いた。

 

「確かに農場だな」

 

「牛さんとかはいないけどね」

 

目的地である農場―――トールの耕地は現実世界の農場に似て、広大に広がっていた。近くには小屋と思わしき小さな建物が存在していた。まあ、ここにいるのは現実世界にいる動物などではなく・・・・・・。

 

「うわっ!」

 

「急にモンスターがPOPしてきたよ!」

 

ゲームの世界ならではの、モンスターが現れた。

 

「しかも数が多いわね・・・・・・」

 

「クアジット系の通常種だからそんなに強くはないと思うけど・・・・・・」

 

「軽く30体はいるね」

 

「どうします?」

 

俺たちの視線の先にいるモンスターはどれも同じ種類で、宙に浮かんでいた。

 

「取りあえず全部倒すしかないな。シノンは後ろから援護を頼む!」

 

「任せて!」

 

「リーファとラムは左側の。ユウキとレインは俺と一緒に残りのモンスターを倒すぞ!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

「それじゃあ、戦闘開始だ!」

 

俺は背中に吊るしてるレイン作の片手剣、右手に『ユナイティウォークス』。左手に『フェイトリレイター』を装備し構える。

レインたちもそれぞれの武器を―――レインは自身で作成した片手剣、右手に『ソード・オブ・ホグニ』。左手に『ダーインスレイヴ』を。リーファは片手剣『ジョワイユーズ』を。シノンは弓『アッキヌフォート』。ユウキは片手剣『マクアフィテル』。ラムは刀

『ドウジギリ』をそれぞれ抜刀し抜き構え、それそれPOPしたモンスターを殲滅しにかかる。

 

『『『『『キシャアアーーッ!』』』』』

 

「はああっ!」

 

「せいやっ!」

 

「やあーっ!」

 

「てりゃあーっ!」

 

「はあっ!」

 

俺たちの接近に気づいたモンスター・・・・・・クアジットが奇声を上げて襲い掛かってくる。俺たちも、空での戦闘を始める。

 

「せりゃあっ!」

 

クアジットの一体一体は大して強くなく、

 

「やああっ!」

 

「はああっ!」

 

「せえぇいっ!」

 

「はっ!」

 

「ふっ・・・!」

 

俺たちは一体一体を瞬時に片付けて行った。

俺とレインの二刀で大群を斬り、素早い動きでクアジットを翻弄して切り裂くユウキとリーファ。遠距離から的確にクアジットの急所を狙い撃つシノン。一刀ごとにクアジットを屠るラム。

あの世界で培った戦闘スキルが、この世界でも十全に発揮されていた。途中から参加したリーファとシノンは勿論のこと、元からいた俺、レイン、ユウキ、ラムの実力は他のALOプレイヤーより抜きん出ている。それはもちろん、アスナ、ラン、リーザ、クライン、エギルら元攻略組の面々もだ。リズとシリカは戦闘値は低いが、その分リズなら鍛冶、シリカならピナとの連携、とそれぞれ個性がある。空中での三次元戦闘や魔法を相手にするため、俺たちSAOサバイバーにとっては苦戦を強いられるが、慣れればどうってことない。そう思考している間も。

 

「リーファ!」

 

「ありがとうございますシノンさん!」

 

リーファの背後から攻撃しようとしたクアジットをシノンが連続で射抜き消滅させ、

 

「ラム!」

 

「はい!」

 

ラムがクアジットの動きを鈍らせ、ユウキがとどめを刺す。

そして俺たちも。

 

「レイン!」

 

「うん!」

 

リズムよく。あそこと同じ戦闘リズムでクアジット共を掃討していた。

やがて。

 

「ふう・・・・・・全部倒したな」

 

最後の一体を倒した俺は剣を背中の鞘に収納して言った。

 

「やったね!」

 

「数のわりにはたいしたことなかったね」

 

「ええ。一体一体が強かったらやばかったかもしれませんね」

 

「ん?そうか?あんまり歯応えを感じなかったけど」

 

「うーん、私的にはもうちょっと強い敵が欲しいかな〜」

 

「あー、それボクもかな」

 

俺、レイン、ユウキはどこか不完全燃焼で、物足りなかった。

ぇぇー、と呆れるリーファとシノンに。確かに、と呟くとラム。アインクラッド最前線で戦っていた俺たちには、今の戦闘では微妙な感じなのだ。

 

「はぁー。でも、この調子なら先に進めばかなり手強くなっていきそうじゃない?ALO、面白いじゃない」

 

「ああ、たしかに。今回はザコ敵だったけど、これからどんどん強敵が出現するんだろうな」

 

シノンの呆れながらも燃えてる言葉に返すと。

 

「あははっ、二人とも目がギラついてるよー!って!レインさんたちもギラついてる!?」

 

リーファが驚きの表情で言った。

 

「別にいいだろ!純粋にゲームを楽しめる空間なんだからさ!」

 

「そうそう!」

 

「だよね!」

 

「はい!」

 

目をギラつかせて答える俺らにリーファは微妙に引きながら。

 

「さすが、生粋のゲーマーたちは違うね~。しかも、キリトくんってば、私が提案する相当前からこのゲームに目を付けてたもんね」

 

「ああ、そうだったな」

 

俺はリーファの言葉に、このゲーム。ALOを始めるきっかけの事を思い出した。

 

 



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LS編 第147話〈ALO(アルヴヘイム・オンライン)


「プリヴィベートみんな!今日はこの作品のヒロイン、レインの記念すべき誕生日!レイン、誕生日おめでとう!これからもよろしくね!では、LS編の第三話をどうぞ!」




 

〜キリトside〜

 

 

ー回想ー

 

 

 

無事に家に戻り、《アインクラッド攻略記念パーティー》も終わり、ようやく現実の世界に慣れつつあった頃・・・・・・。

 

「お兄ちゃん、ちょっといい?」

 

妹のスグが声をかけてきた。

 

「あたしが前に遊んでた別のVRMMOがあるってこの前紹介したよね!」

 

「ああ。《アルヴヘイム・オンライン》だよな。通称ALO。空を自由に飛べるゲームで、種族間の争いが一つの要素なんだよな。俺たちもやるつもりだけど」

 

「そうそう。そして、あのSAOのサーバーをコピーしたゲームが、そのALOなんだよね」

 

俺の恋人の虹架(レイン)が俺の言葉に続いて言う。

俺たちがいるのは家ではなく、東京のとあるレストランだ。今日は俺とスグ、虹架で出かけに来ていたのだ。隣に越して来た幼馴染の木綿季と藍子も誘ったのだが、あの二人は別の用事があるらしい。

 

「で、お兄ちゃん!ちょっとこの記事を見て」

 

「えーと・・・・・・『ネットワーク世界で人気の歌姫セブンは、実は天才科学者だった』・・・・・・へーえ」

 

スグがスマホで見せてきた記事は、マニアックな人が読む記事ではなく、テレビのニュースで流れるような大衆に向けて用意された、ごく普通の記事だった。内容は、今ネットワーク世界で人気絶頂の歌姫セブンというプレイヤーについてだった。

 

「えーと、『歌姫セブンは十二歳ながらその天才的な頭脳で様々な学位を飛び級で取得し、アメリカのMITを首席で卒業したという・・・・・・天才科学者である。本名《七色・アルシャービン》女史』・・・・・・だって」

 

俺は記事に目を通して文を言うレインの表情がどこか妙だったのに気づいた。が、すぐに元の表情に戻ったため気のせいかと思い続ける。

 

「ああ、それ知ってるぞ。日本人とロシア人のハーフの子なんだろ?仮装ネットワーク社会を研究してるんだって。ネットにもVRやフルダイブについて考察した論文がいくつも掲載されてたぞ」

 

「和人くん、よく知ってるね?調べたの?」

 

「あ、ああ、まあな・・・・・・」

 

俺はまだ誰にも言ってなかったが、将来は留学してVR技術の研究をしたいと思ってた。だから、この幼い研究者のことは多少気になっていたのだ。

 

「そう言えば、虹架も日本人とロシア人のハーフ、だったよな?」

 

「え?!あ、うん!そうだよ!」

 

「?どうかしたのか?」

 

「ううん!なんでもないよ和人くん!」

 

どこか様子が変なレインが気になりながら話す。

 

「それでね、VRMMOの中でアイドル活動してるんだって!SAOで戦ってきたあたし達としては、ビックリだよね?」

 

「う、うん、そう・・・だね」

 

スグの言葉にも、魂ここに在らずとは言わないが、どこか様子がおかしかった。

 

「でもこういうお祭り的な感じが本来のオンラインゲームなんだよ」

 

「確かに。オンラインゲームって一種のお祭りみたいだもの」

 

「でも、科学者がアイドルなんてすごいよね。あたしだったら恥ずかしくて絶対ムリ!って思っちゃうけど。十二歳で天才で、しかも歌だけじゃなくて自分で作詞・作曲・アレンジもしてるなんて・・・・・・」

 

「この記事『歌姫の七色に透き通るような歌声が、世界を照らし、種族同士の争いを止め、和平の道へと誘う』って書かれてる。ALOってプレイヤーキルが有り・・・・・・。というか種族同士の競い合いが前提なのに攻略のある意味、足枷にならないか?」

 

「うーん、やっぱり外国の人のゲームの楽しみ方はスケールが違うなぁー!」

 

「どうかな。たぶん、ALOを研究者としての眼でしか捉えてないんじゃないかな・・・・・・」

 

「虹架?」

 

スグの言葉に、小さな声でボソッと呟いたレインの言葉を聞いた俺は不安になった。いつものレインなら、「人それぞれじゃないかな?」とか言うはずなのに、今の発言は七色・アルシャービンの言葉をまるっきり否定しているように感じた。

そう不安になっていると。

 

「なんてね♪まあ、私たちと外国のプレイヤーの思っていることはそれぞれ違うんだろうね」

 

いつもの雰囲気でレインが言った。

レインの様子が気になる中、俺はVRMMO研究で注目を浴びている少女に、ちょっと興味が湧いてきていた。そんなことを考えて・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

POPしたクアジットのすべてを倒した俺たちは農場の傍にある小屋へと向かっていた。そこに。

 

「あ、プレイヤーがいるぞ」

 

俺たちが向かっている小屋の前に二人のプレイヤーがいた。

両方とも男プレイヤーで、種族はシルフとサラマンダーだった。そして両プレイヤーとも髪に、羽のような飾りを付けていた。

 

「よし、ここのモンスターの討伐は完了した。次に進むぞ!」

 

「ああ、他のプレイヤーに先を越されるわけにはいかないからな。早く行こう」

 

そんな会話をして両プレイヤーは俺たちに気づかないまま、羽を広げてどこかに飛んで行った。

 

「行っちゃったね・・・・・・」

 

「ええ・・・・・・」

 

リーファとラムが両プレイヤーが飛んで行った方を見て呟く。

 

「あいつら、あの様子だと結構上級者みたいだな・・・・・・」

 

「うん・・・・・・」

 

「そうだね。武器のレアリティもさながら、気配が上級者並の感じだったよ」

 

俺とレイン、ユウキはさっきのプレイヤーの装備品や佇まいからそう判断した。アインクラッドでは一つ一つが命懸けのため、こういうプレイヤーを観察する目が俺たち元攻略組には身についていた。

 

「ここのフィールドに来ているパーティだもの。腕に覚えがあるやつらだと思う」

 

「もしかすると、ボクたちのライバルになるかもしれないね・・・・・・」

 

「だな・・・・・・。しかし、一体どこのギルドだったんだ・・・・・・」

 

俺がさっきのプレイヤーの所属ギルドについて考えてると。

 

「・・・・・・さっきの羽の飾り・・・もしかして・・・・・・」

 

ボソッと、耳を良くすまさないと聞こえないほどの声量でレインが何かを言った。

 

「レイン、さっきのプレイヤーたちの所属してるギルド知ってるのか?」

 

「え!?ううん!しらないよ。でも、あんなプレイヤーがいるってことは、そのギルド、かなり強いかも・・・・・・」

 

「うーん。規模にもよるけど、もしかしたら聖竜連合なみのギルドかも」

 

レインの言葉に続いて、血盟騎士団副団長補佐だったユウキが言う。

 

「さて、あたし達もクエスト進めようよ!」

 

「ああ、そうだな」

 

俺たちは気を取り直して、小屋に向かった。

小屋は大きいとはいえないが、立派な木造建築で倉庫のようだった。

 

「ここで何かヒントが見つかるといいよね」

 

「ああ、片っ端から調べてみるか」

 

小屋の周辺を、手分けして探し───。

 

「おっ、鍵があったぞ!」

 

小屋の隣の貯水槽のような物の下にあった鍵を発見した。

鍵をタップしアイテム名を見る。現れたアイテム名ウインドウには『ビルスキルニルの鍵』と表示されていた。『ビルスキルニル』とはおそらくこの小屋の事を指してるのだろう。

 

「これで建物の中に入れるわね」

 

「キリトくん、早く開けてみてよ!」

 

「ああ、わかった!」

 

小屋の扉の前に立ち、手に入れた『ビルスキルニルの鍵』をドアの鍵穴に差し込んで回し、扉を開ける。

 

「・・・・・・どうやら、建物の中にモンスターはいないようだな」

 

扉を開け中を見ると、そこには簡易な書籍やデスクなど、農場関連のものが置かれていた。そしてその奥のデスクの上に、ひとつの石の板が置かれていた。

 

「あ!あそこにあるのって石版じゃない?」

 

「おお、早速見つけたか!」

 

中に入り、見つけた石板を手に取る。が。

 

「ん・・・・・・?でもこれ、岩の扉にあった穴より随分小さくないか?」

 

その石版は岩の扉にあった穴の半分ほどの大きさしかなかった。石版に描かれているレリーフは竜で、なにか割られたような感じだった。

 

「うん、この石版。元の大きさの半分くらいの大きさだと思うよ」

 

「もしかして、もう半分必要なのかな?」

 

半分に欠けた石版について悩んでいると。

 

「ねぇねぇキリトくん、向こうに日記が置いてあったよ!」

 

リーファが一冊の本。日記を持ってきた。

 

「でかした!何かヒントが隠されてるかもしれないな。・・・・・・かなり古びてるけど、どうにか読めそうだ」

 

「それじゃ、読んてみるわね」

 

メガネを掛けたシノンに日記を渡し、日記の内容を読んでもらう。

 

「『【XX年XX月XX日】代々伝わる石板を割ってしまった!どうしよう・・・・・・。』『【YY年YY月YY日】ワイバーンに一枚奪われてしまった。この事は誰にも言えない・・・・・・。一生秘密のまま生きるんだ!』『【ZZ年ZZ月ZZ日】秘密を守ったまま生涯を終えることが出来そうだ。でも本心では、誰かに見つけてほしいんだ・・・・・・』。・・・・・・これで終わりみたいね。この日記を読む限り、誰かがこの石版を半分に割ってしまったみたいね」

 

「ワイバーンって、モンスターの名前だよね?」

 

「ああ。そいつのいる所に石版の片割れがあるってことだな。ユイ、どこにいるかわかるか?」

 

「はい!ワイバーンはここから北にある浮島に生息していますパパ」

 

「これで次の目的地が決まったな」

 

「うん、次はその浮島に行ってみよう!」

 

俺たちは石版のもう半分を奪った、ワイバーンのいる浮島に向かうことにした。一応、小屋の中にあった日記と石版をストレージにしまう。日記のアイテム名は『古びた日記』と見たまんまで、石版は『シアルフィの石版』と書かれていた。

小屋を出て五分ほどして、ワイバーンの生息している浮島についた俺たちは浮島の周囲を飛行していた。

 

「パパ、あの辺が目的地の浮島です」

 

「ここが日記に書いてあった浮島が。さて、ワイバーンはどこにいるのやら・・・・・・」

 

そう言って辺りを見渡していると。

 

「キリトくん、あそこ!」

 

レインが頭上を指さした。

レインの指さしたところを見ると、そこには一体の飛竜・・・・・・ワイバーンがいた。

 

「Graaaaaa!!」

 

「うおっ!?いきなりボスのお出ましか・・・・・・」

 

雄叫びをあげるワイバーンに少し驚きつつ背中の剣の柄に手を伸ばす。

 

「このモンスターを倒せば、もう一つの石版の欠片をゲットできるんだね!」

 

「よし。みんな、行くぞ!」

 

「「「「「おう!」」」」」

 

次々と武器を抜刀し、シノンは後方から、俺たちはワイバーンに向かって行った。

 

「はああっ!」

 

「やああっ!」

 

まず最初にダメージを与えたのは俺とレインだった。俺とレインの初撃を受け、ワイバーンは甲高い雄叫びを上げ鉤爪で攻撃してくる。しかし、ワイバーンのその攻撃は俺たちに掠りもせず、空を切った。

 

「遅いよっ!」

 

「はああーっ!」

 

「ふっ!」

 

ワイバーンの鉤爪攻撃が空を切ると、すかさずユウキ、ラムの二人がワイバーンの胴を薙ぎ払う。シノンは遠距離で、ワイバーンの翼に矢を穿つ。

 

「Gaaaaaaa!」

 

「させないっ!」

 

ワイバーンが突進してシノンに突っ込もうとする寸前に、リーファの風魔法がワイバーンの動きを阻害する。

 

「ぜりゃっ!」

 

リーファの風魔法で動きを阻害されてるワイバーンに向かって、上空から二刀を突き刺す。

 

「Gyaaaaaa!!!」

 

「シノンちゃん!」

 

「任せて!───狙い撃つわ」

 

絶叫を上げるワイバーンの目に向かってシノンが矢を放つ。

 

「──────!!!」

 

シノンの矢は吸い込まれるようにワイバーンの目に突き刺さり、ワイバーンは奇声を叫ぶ。

ワイバーンのHPはボスのため二段と設定されているが、俺たちの攻撃によりそのHPはみるみると減って行っていた。

そのまま大したダメージも負うことなく、戦闘を始めて八分後。

 

「Gyaaaa!!」

 

今までで一際高い声を上げてワイバーンはポリゴンへと姿を変えた。

 

「やったー!!」

 

「やった!みんな、お疲れさま!」

 

「みなさん、やりましたね!」

 

ワイバーンを倒し、ドロップした残りの石版の欠片をゲットした俺たちは歓声を上げた。

 

「ああ、これで石版の欠片が揃ったな」

 

「この石版をはめれば封印されていた扉が開くんだよね」

 

「やっとダンジョンの中に入れるわね」

 

「早速行ってみようよ!」

 

「ああ、そうだな!」

 

俺は入手した石版の片割れ、アイテム名『レスクヴァの石版』をアイテムストレージに収納し、岩の扉で塞がれていたダンジョンの入口に向かって飛んで行ったのだった。

 

 

 





「感想や評価お願いします!些細なことでも構わないので送ってください!待ってます!読んでくれたみんなの言葉が力になります。これからもよろしくお願いします!」


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LS編 第148話〈初クエスト〉

 

〜キリトside〜

 

 

トールの耕地で、欠けた石版の一つを入手したあと、もうひとつの石版の欠片を入手するため持ち去ったワイバーンのいる浮島へと向かった俺達。ワイバーンを無事撃破し、持ち去ったと思われるもう片方の石版の欠片を入手した俺達は再び、あの岩の扉によって塞がれてるダンジョンに向かっていた。

 

「あ、あそこにプレイヤーがいるよ。別のパーティもいたんだね」

 

リーファの見る先には、二人のプレイヤーがダンジョンの近くに佇んでいた。

 

「あれ・・・・・・あのプレイヤーの人達、どこかで見たと思ったら、さっき農場にいた人達だよね?」

 

レインの言う通り、その二人組のプレイヤーの種族はシルフとサラマンダーで、さっき農場で見たプレイヤーだった。

俺達の接近に近づいた二人のプレイヤーのうちの片方、サラマンダーのプレイヤーが俺達に視線を向けてきた。

 

「ん?」

 

「お疲れ様。俺達も同じクエストをやってるんだ。そっちは順調か?」

 

「ああ、順調さ。ワイバーンもお前達より先に倒したぞ。このクエストは先にクリアさせてもらうぜ」

 

「俺達だって負けないぜ」

 

どうやらこの二人はもう既にクエストの終盤みたいだ。

 

「お前達も精々がんばれよ。俺達に追いつけるとは思えないがな」

 

「随分自信があるんだね。どこか有力ギルドにでも所属してるの?」

 

シルフのプレイヤーの言葉にユウキが問いかける。

ユウキの問い掛けにサラマンダーのプレイヤーが答えようとするが。

 

「ああ、俺達は・・・・・・」

 

「おい、先を急ぐぞ」

 

シルフのプレイヤーが遮るように、サラマンダーのプレイヤーに言った。

 

「あ、ああ・・・・・・。お前達、またな」

 

「ああ」

 

離れて行く二人のプレイヤーを見送りながらレインたちと話す。

 

「自信に見合った実力がありそうだったわね」

 

「ああ、さっき農場であいつらの戦闘を見かけたけど、実力は本物だった」

 

「うん・・・油断出来ないね」

 

「別に敵対する気はないけど、負けるのはやっぱり悔しいわね」

 

「そうだな!ゲームはプレイするだけが楽しいが、一番楽しいのは一番になることだからな」

 

「当然だよ!さ、気を取り直してダンジョンに向かおうよ!」

 

「ああ!」

 

レインの言葉に返事して俺達はダンジョンへと向かって行った。

他のプレイヤー達との競い合い・・・・・・。これもVRMMOならではの楽しみだ。

再びこの興奮する感覚を味わえるようになったのは、このALOに入ると決めたから。あの日、俺はALOのログインを決意した・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー回想ー

 

 

 

「いやいや、お三名様。お待たせしちゃってごめんよ。上司のくだに捕まっちゃってさぁ」

 

俺達が歌姫セブンについて書かれた記事を読んでいると、俺達を呼び出した張本人が遅れてやってきた。その人物は、スーツ姿眼鏡をかけた如何にもエリート、という感じの男性だ。彼の名は菊岡誠二郎。総務省の役人でSAO事件の被害者達、つめり俺達のケアをする機関のリーダーだ。そして、元、SAO対策本部の人間でもある。対策本部とは名ばかりの、ただ見ることしか出来なかった窓際部署だと当人は言うが、SAOに参加したおよそ一万人を、この二年半の間に無事病院に移したりとした行動を行ったのは菊岡の手腕なのだろう。つまるところ、何も出来なかったわけではないということである。菊岡は、俺が目を覚まして一番最初にやって来た人物だ。SAOをモニタリングして俺が攻略組の中でもトップクラスのプレイヤーだと分かり話を聞きに来たとの事だ。俺は条件を出して菊岡の問いに出来る限り答えた。その条件とは虹架達の安否と入院先の情報だ。それ以来、俺と菊岡は個人的な付き合いが出来、そして今日も呼び出されたのだが、その日は俺だけでなく、虹架やスグも呼び出された。木綿季と藍子もだったが、生憎この二人は予定がありここはいない。その事は既に菊岡には伝え済みだ。

 

「ったく。遅れるならメールぐらいしてくれよな」

 

「あはは、ごめんごめん。何せいきなりだったからね」

 

俺の皮肉気に言う言葉に、菊岡はいつもと同じ感じで返してくる。

 

「おやおや、面白そうな記事を読んでるね。歌姫セブン、僕も気になってたんだよ」

 

「そうなのか?」

 

「まあね」

 

「て言うか、今日はSAOの話じゃないのか?」

 

唐突に歌姫セブンの事を言い出した菊岡に半眼を向けて訪ねる。

 

「まぁまぁ、少し話を聞いてくれよ。この子の歌がまた可愛らしく、それでいて結構レベルの高い楽曲でねぇ。一般人からも、かなり評判なんだ」

 

「・・・・・・全てを兼ね備えた少女アイドル。確かに俺も色々と調べたけど、話題性には十分だよな。あの残酷な事件に相対するみたいな、平和提唱のメッセージを持つ歌を歌い、その上ルックスまで備わってる」

 

菊岡の言葉に、俺も調べた事を言うと。

 

「へぇ・・・・・・お兄ちゃんもこういう子が好みなんだぁ」

 

「和人くん、私よりこういう幼い子が好きなの?もしかしてロリコン?」

 

スグとレインが怪しげな眼差しで見て言ってきた。

つうか!

 

「ち、違う!俺はあくまで一般的な話をしただけでだな!ってか虹架!俺は決してロリコンじゃないからな?!!」

 

スグはまあ良いとして、レインの言葉には全力で反論した。誰がロリコンか!

 

「ははは!やっぱりキリト君たちは面白いな」

 

「面白くないわ!」

 

面白気に言う菊岡にすぐにツッコミ返す。

 

「まあ、歌姫セブンについては君達も興味を持っていたんだね」

 

「・・・・・・・・・・」

 

菊岡の言葉に俺はジッと歌姫セブンの記事を見て黙る。やがて。

 

「俺・・・・・・ALOにログインしようと思ってるんだ」

 

と言った。

 

「「えっ!?」」

 

俺の言葉にレインはともかく、スグまでも驚いていた。

 

「虹架はともかく、最初にALOに誘ってきたのはスグだぞ?」

 

「あ、いや・・・・・・それはそうなんだけど・・・・・・」

 

「まあ、その反応をされるのは予想ついてたよ。でもさ。SAOのサーバーをコピーした新たなVRMMOの世界・・・・・・。さらにSAOではなかった飛行を実現させている。今、一番熱いゲームであることは間違いない・・・・・・!」

 

「う、うん・・・・・・そうだね。あたしもそう思うよ。あたしもやってるし」

 

困惑気味のスグ。そのスグに俺はさらに話を続ける。

 

「この世界に俺が興味を持つなって言うのは無理な話だろ」

 

「あはは。確かに、キリトくんには無理な話かも」

 

「だろ?それに虹架だって興味があるんだろ?この前だいぶ詳しく教えてくれたよな?」

 

「あ、えと・・・・・・。あはは・・・・・・。バレちゃった。うん、この間直葉ちゃんから教えてもらってから自分で調べてるんだ」

 

「えへへ・・・・・・実はあたしもお兄ちゃん達にはALOに来て欲しいって思ってたんだ」

 

俺の言葉に続くように語るレインとスグ。スグはALOの来て欲しいって眼をしてたし、俺とレインはALOをプレイしたいっていう目を浮かべていた。

 

「・・・・・・なんだ、わざわざ呼び出すこともなかったかな」

 

「何か言ったか?」

 

菊岡が何か言ったと思うが、よく聞き取れなかったため聞き返すが。

 

「いや?何も言ってないよ」

 

と、惚けられた。まあ、どうせALOに行ってみてくれとかなんだろうけど。

 

「それよりキリト君、またVR世界に行くのは怖くないのかい?」

 

「・・・・・・ああ」

 

心配して訪ねてくる菊岡に、俺は少しだけ目を閉じ首を横に振って否定を返した。確かに、俺達の経験は辛いことが多かった。でも・・・・・・だからこそ意味のあるものだと信じていた。これからVR世界がどうなって行くのか。あのSAOを・・・・・・茅場晶彦が生涯をかけて作り出した世界を継承した、ALOという世界で。いや、このVRMMOの世界の行く末を見てみたいと思うのは・・・・・・。

 

「もちろん、私も行くからね和人くん」

 

「虹架・・・・・・」

 

「ならあたしが先輩だからね!二人のナビもちゃんとしてあげなきゃ、ダメでしょ?」

 

「よし、そうだな、行こう。二人とも!」

 

「「うん!」」

 

こうして俺達は新たなVRMMOの世界、ALOの世界へと旅立つ事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁああああ!!」

 

突如聞こえた悲鳴に驚きながら声の主を探すと。

目的地のダンジョンの入り口付近で、リザードマン系のモンスターに襲われてるシルフとノームの二人のプレイヤーがいた。

 

「あっ、あの人達モンスターに襲われてる!助けてあげようよ!」

 

「ああ、そうだな!」

 

「た、助けてくれええ!!」

 

悲鳴を上げて助けを求めるプレイヤーの前にすぐさま移動し『ユナイティウォークス』と『フェイトリレイター』を頭上に構えて、今まさに倒れているプレイヤーに向かって振り下ろされようとしたリザードマンの剣を受け止める。

 

「うおおおー!」

 

リザードマンの剣を受け止め、そのまま剣を跳ね上げてリザードマンの胴体に向かって攻撃する。

 

「よし、敵がスタンした!あんたたちはこの隙に下がれ!」

 

「お、おう!」

 

「す、すまない!」

 

俺の声に二人のプレイヤーは礼を言って後ろに下がる。

 

「リーファ、その二人に回復魔法を頼む!」

 

「うん!」

 

「シノンは俺達の援護を頼む!」

 

「まかせて!」

 

下がったシルフとノームの二人をリーファの任せ、シノンに俺達の援護を頼む。

 

「ユウキ!」

 

「うん!」

 

素早い速度でリザードマンを翻弄してユウキがダメージを与えていく。

 

「ラム!」

 

「おう!」

 

ユウキの連続剣技で下がったリザードマンに、ラムが刀で切り裂く。

 

「──────!」

 

「やああーっ!」

 

振り下ろされたリザードマンの剣を今度はレインが受け止め、

 

「ふっ!」

 

「ナイスだシノン!」

 

的確に剣の腹を狙って撃ったシノンの矢がリザードマンの剣を折る。

 

「─────!」

 

「決めるぞ!」

 

動揺するリザードマンに畳み掛けるように剣を浴びせていき、リザードマンのHPをゼロにし、ポリゴンへと姿を変えさせた。

 

「ふぅー。討伐完了、っと」

 

背中の鞘に剣を仕舞い、襲われていた二人に回復魔法をかけてるリーファの元に向かった。

 

「キリトくん。この人たちには回復魔法を掛けて回復させといたよ」

 

「そうか。サンキューなリーファ。大丈夫だったかあんた達?」

 

「助けてくれてありがとう!君達は強いなぁ。あの中ボスクラスのモンスターに圧倒的余裕で勝ったんだからな」

 

「いや、少し慣れてるだけだよ」

 

嘘は言ってない。

SAOで二年半掛けて戦った戦闘経験が身体に身についているため、あの程度のモンスターなら余裕で勝てるのだ。

 

「あ、これは大したものじゃないけど、お礼として受け取ってくれ」

 

シルフのプレイヤーからお礼として受け取った回復アイテムをアイテムストレージに仕舞う。

 

「それじゃ、俺達は一度街に戻って準備をしてからダンジョンに挑むことにするよ。またな!」

 

「ああ!」

 

遠ざかって行く二人を見送って、俺達は目的地のダンジョンの岩の扉の前に向かった。

 

「やっとダンジョンまで戻ってきたね」

 

「ああ、あとは手に入れた石版の欠片をはめれば・・・・・・」

 

アイテムストレージから『シアルフィの石版』と『レスクヴァの石版』を出して、岩の扉にある穴に二つの石版を嵌め込む。

石版を嵌め込むと、ダンジョンを塞いでいた岩の扉が崩れ落ち、ダンジョンが姿を現した。

 

「やった、扉が開いた!これで中に入れるね!」

 

「どんなレアアイテムが眠っているのか楽しみだね!」

 

「武器かなー!それとも食材かな!」

 

「もしかしたら素材アイテムかも知れませんよ!」

 

「うわぁ〜!早く行こうよ!」

 

「そうだな。それじゃあ、探索開始だ!」

 

そう言って俺達はダンジョンの中に入っていった。

ダンジョンの中に入ってしばらくして、俺達はダンジョンの奥にある扉の前に来ていた。

 

「この先に進むとボスがいるな」

 

「みんな、準備は大丈夫?」

 

レインの問いにユウキたちは頷いて返し、それぞれ握る武器の拳を締める。

 

「よし。行くぞ」

 

ダンジョンの中で入手した鍵アイテム、『海の鍵』を使用して扉を開け中に入る。

中に入ると、そこは広間で三体のリザードマン系モンスターがいた。

 

「シノン援護頼む!」

 

「わかったわ!」

 

「リーファは魔法で頼む!」

 

「うん!」

 

指示を出して、後衛にシノンとリーファ。前衛に俺、レイン、ユウキ、ラムを配置してモンスターに迫る。三体いる内の真ん中のボスのリザードマンに俺とレインが向かい、両端の二体の普通のリザードマンにはユウキとラムがそれぞれ向かって行った。

 

「はああー!」

 

「やああー!」

 

ボスリザードマンのHPは二段。両端のリザードマンのHPは一段となっていた。ボスリザードマンのヘイトを取りながら、シノンとリーファに向かないようにする。

ボスリザードマンの動きは単調で、大して強くも無いため俺達には余裕をもって動けた。

戦闘を初めて約十分後。

 

「はぁ・・・・・・な、なんとか倒せたぁ・・・・・・!」

 

ボスリザードマンと取り巻きのリザードマン二体を倒し、クエストをクリアした。

 

「やりましたね!」

 

「うん!」

 

「これでクエストクリアだね!」

 

「ねぇ、モンスターがドロップしたのって・・・・・・」

 

俺達のウインドウには今のボス戦でドロップした物が表示されていた。

 

「おお・・・・・・これが噂のレアアイテムか!」

 

俺のウインドウには噂のレアアイテム名が表示されていた。

 

「わぁ・・・・・・頑張った甲斐があったね!」

 

「後でみんなに自慢したらいいんじゃない?」

 

「お姉ちゃんたち驚くかも」

 

「ふふっ。みんな羨ましがるかも」

 

「さてクエストも無事に終わったことだし、帰って休もうぜ」

 

「うん、そうだね。さすがにちょっと疲れちゃったよ」

 

「それじゃあダンジョンから出よっか」

 

クエストをクリアした俺達はそのままダンジョンをあとにし、スヴァルトアールヴヘイムの街、空都ラインに帰って行った。

 

 



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LS編 第149話〈黒い妖精の世界(スヴァルトアールヴヘイム)

 

〜キリトside〜

 

 

俺達のアバターは、あの世界───SAO、アインクラッドの中で育て上げたステータスだ。ALOではSAOのアバターを使える仕様ではなかったが、幸い、完全という形ではないが、ほとんどのパラメーターを引き継ぐことが出来た。引き継げなかったのは、この世界に無く、あの世界だけのスキル、ユニークスキルだ。

俺の《二刀流》やレインの《多刀流》。ユウキの《紫閃剣》にランの《変束剣》。アスナの《神速》、リーザの《無限槍》、ラムの《抜刀術》。そして、それはアインクラッド最強のスキルであるらしい、俺とレインだけのスキル、《シンクロ》も例外ではない。だが、剣士として培ってきた俺の力は、このALOの世界で復活を果たした。リーファの的確な指導もあり、俺たちは次第にゲームに慣れ、楽しめるようになった。

そして馴染み深い仲間たちも一人二人と集待っていき、SAOの時と同じようにみんなで時間を共有出来るようになっていった。

また俺のナーヴギアの中のローカルメモリーに避難していたユイと、ユイが保存したストレアのデータも残されていた。二人をこの世界に出して、二人との再会に、俺達は涙ながらに喜び合った。

こうしてALOにログインしてからしばらくすると、歌姫セブンの記事はますます増えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『セブンをリーダーとする高位ギルド《シャムロック》のメンバーがついに五百人を突破!しかしシャムロックのメンバーですら、セブンに会える者は限られている。セブン効果のおかげか、ALOのプレイヤー数が急激に上昇!ALO内でのセブンが行うバーチャルライブツアーついに開催決定!科学者との兼業は可能?渡米してアルシャービン博士に単独インタビューを敢行!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

七色博士・・・・・・セブン。確かに面白そうなプレイヤーだ。一度会って話をしてみたい。

・・・・・・そしてそれから数ヶ月後の今日。待ちに待ったバージョンアップの日。新エリアが導入されたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、外へ戻ってこれたことだしいったん街へ戻ろうぜ」

 

ダンジョンから出た俺は、みんなにそう提案する。

 

「そうだね。街で一息入れようか」

 

「エギルさん達のパーティもクエストが終わった頃かもしれないわ」

 

「時間的にそうですね」

 

「じゃあ、街へ戻ってエギルさん達と合流しようよ!」

 

「さんせ〜い!」

 

俺達はダンジョンを後にし、空都ラインへと帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空都ライン

 

 

ウォークリンデの転移門からラインに戻ると、待ち合わせの場所にはすでにエギルたちが帰ってきていた。

 

「キリトじゃねぇか、今戻ってきたのか?」

 

「ああ、エギル達の方が早かったみたいだな」

 

「いや、俺達もさっき戻ってきたばかりだ。・・・・・それで、待ち望んだ新エリアの初クエストは楽しめたのか?」

 

「ああ、かなり面白かったよ。解きがいのあるクエストだったぜ」

 

エギルの問いにニヤリと笑みを浮かべて返すと。

 

「あっ、キリトー!帰ってきてたんだ!」

 

ストレアが飛び込んできた。

 

「うおっ!ストレア!?」

 

飛び込んできたストレアを受け止めると。

 

「クエストお疲れ様。相変わらず、ご活躍のようね」

 

リズがそう聞いてくる。

 

「今のはスルーなんですね・・・・・・」

 

「そっちのクエストはどうだったの?」

 

ラムがツッコミ、シノンが逆に訊ねる。

 

「ふふっ、ちゃーんとクリアしてレアアイテムゲットしたよ♪」

 

シノンの問いにストレアが指をVの字にして言う。

 

「エギルさんがすっごく頼もしかったんですよー!」

 

「バトルの時前衛で構えてくれたから攻撃しやすかったな」

 

「盾役が私たちのメンバーにはあまりいませんからね」

 

「まあね」

 

「ははっ、悪ぃなクライン。俺ばっかり目立っちまったみたいだな」

 

「くっそー!まさかエギルにいいところを持ってかれるとは・・・・・・」

 

アスナたちの言葉にエギルは笑ってクラインに言う。そのクラインはというと、悔しそうな表情をしていた。

 

「クラインの活躍はさておき、───「おいキリト、それはねぇだろ!?」───滑り出しは順調って感じだな。この調子で攻略も進めて行こうぜ」

 

「無視かよ!?」

 

クラインのツッコミはさておき、みんなもクラインのツッコミをスルーする。

 

「あ、そう言えば鍛冶屋っどこにあるの?ここにはリズの店もないし・・・・・・。武器を強化できないと困るわよね」

 

思い出したようにアスナがリズに聞く。

 

「私は一応簡易的な装備があるけど」

 

リズと同じ鍛冶妖精(レプラコーン)のレインが言うと。

 

「それについては俺にちょっと心当たりがあるんだ。しばらくしたは、工房によってくれ」

 

エギルがそう言った。

来たばかりなのだが、何かツテでも有るのだろうか?そう思っていると。

 

「それじゃあ今日はこれで失礼するぜ」

 

エギルはそそくさと放れて、どこかに行ってしまった。

 

「おいおい。しばらくってどれくらい待てばいいんだよ・・・・・・」

 

「あはは。たぶん後でメッセージが来るんじゃないかな・・・・・・」

 

「エギルさん、あたし達を工房に集めて何をするんだろう?」

 

「まぁ・・・・・・行ってみればわかるんじゃないか?」

 

「楽しみにしとこーっと!」

 

エギルが何をしようとしてるのか謎だが、一応楽しみに待っておくとしよう。

 

「なぁみんな、まだ時間あるけどどうする?」

 

どこかに行ってしまったエギルを除く、みんなに訊ねる。

 

「悪い、オレはちょっと風林火山の連中と約束があるんで、しばらく別行動させてもらうぜ」

 

「そうか、またなクライン」

 

「おう。またなキリト」

 

挨拶をすると、クラインはエギルの向かった方向とは反対の方向に向かって行った。どうやら予め風林火山のメンバーの人達と待ち合わせ場所を決めといたらしい。

これで残ったのはエギルとクラインを除いたメンバーとなった。

 

「それじゃあ、とりあえず情報収集しつつ・・・・・・」

 

「サブクエストとか受けてみたらいいんじゃないでしょうか?」

 

ラムとランがそう提案する。

 

「うん、それいいね!」

 

特に否定がと起こるわけでもなく、俺達はサブクエストを受けることにした。

 

「酒場にあるクエストカウンターに行くとサブクエストを受けられるんでしたよね」

 

「うん。キリトくん、早速行ってみようよ!」

 

「ああ!」

 

俺達はサブクエストを受けるため、空都ラインにある酒場のクエストカウンターに向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十数分後

 

 

浮遊草原ヴォークリンデ

 

 

「えーと、サブクエスト内容はスライム討伐と、オーク討伐の二種類あるけど・・・・・・」

 

「手分けした方が早いですね」

 

「だな。それじゃあ、パーティメンバーは・・・・・・」

 

少し相談して。

 

「俺のところはレイン、ユウキ、ラン、シリカ、フィリア、だな」

 

「こっちは俺とリーザ、アスナさん、リズさん、リーファさん、シノンさん、ストレアさんですね」

 

となった。

 

「それじゃあどっちが早く片付けるか競走しようぜ」

 

「ええ!負けませんよキリト」

 

「それじゃ、いくぞ!」

 

俺達は二組に別れて、それぞれサブクエストを攻略しに向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間後

 

 

「「くっ。引き分けか!」」

 

「「こぉの!おバカさん!!」」

 

サブクエストが終わり、空都ラインに戻って来た俺とラムはレインとリーザにハリセンで頭を引っ叩かれていた。

 

「「二人ともいつの間にハリセンなんかゲットしたの!?」」

 

頭を押さえながらそれぞれの恋人にツッコミを入れる。

何故頭を叩かれたのかと言うと、俺とラムの二人がさっきのサブクエストで競い、クエスト報告が同時だったからだ。

ちなみにであるが、俺もラムも負けず嫌いである。

というわけで俺とラムはレインとリーザにお仕置き?を受けさせられたのだった。

 

「あ、これ?これはね、私が造ったんだよ」

 

「「はい?」」

 

「私とレインがラムたちの暴走を止めるための物です」

 

「いやー、リーザちゃんからこういうの造れないかなって言ってたから造ってみたんだ」

 

「「なんつう無駄な創作!!」」

 

ハリセンを持つレインとリーザにツッコむ俺ら。

アスナ達は引きつり笑いを浮かべつつ、レインたちを止めることもなく見ていた。

 

「ここは?」

 

場所を移動し、俺達は空都ラインの中で一番高い塔へと来ていた。

 

「えっと、普段はギルドマスターや領主の会合などで使用する場所みたいだよ。今は確か、それぞれ妖精族の領主が会合中って聞いたけど・・・・・・」

 

「ということは・・・・・・あっ」

 

レインの言葉にリーファが塔のほうを見ると、奥のほうから三人のプレイヤーがやって来た。やって来たプレイヤーの一人、シルフの女性がリーファを視ると。

 

「やぁ、リーファ。久しぶりだね。元気そうで何よりだ」

 

気さくに声をかけてきた。

 

「サクヤ!久しぶり!」

 

どうやらリーファの知り合いみたいだが・・・・・・。

そう思っていると。

 

「さすがにアップデート直後を狙ってきたプレイヤー達は多いネ」

 

「ふん。実力がない者ほど、出し抜こうとするものだ」

 

さらに二人のプレイヤー。ケットシーの女性プレイヤーとサラマンダーの男プレイヤーが言ってきた。

そこに、リーファと話していたシルフのプレイヤーが声をかけてきた。

 

「君が噂のリーファの兄君・・・・・・キリト君だね。話には聞いていたよ、会いたかった。自己紹介は私からさせてもらおう。私はサクヤ。シルフの領主をしている」

 

「あたし達の種族シルフのリーダーなんだよ」

 

どうやらこのプレイヤーはシルフの領主らしい。ということは、残り二人も領主となる。

 

「そしてこの猫娘がアリシャ・ルー。ケットシーの領主だ」

 

「よろしくネ!黒の速攻剣士サマ~!」

 

「黒の速攻剣士・・・・・・?」

 

何か新たな名前が付けられてるが気にしないことにした。

 

「騒がしいのが玉に瑕だが、まぁ私の茶飲み友達なのでな。仲良くしてやってくれ。そしてこの男が・・・・・・」

 

「・・・・・・!」

 

最後の男プレイヤーを見た俺は息を飲んだ。

そのプレイヤーの雰囲気や佇まいが他のプレイヤーより上だったからだ。気配で言うなら、俺達に近い感じがする。

 

「ユージーンだ。貴様が噂のキリトか・・・・・・。一度手合わせ願いたいものだな」

 

「確か、サラマンダー部隊を指揮する将軍で、あんたの兄が領主を務めているんだよな」

 

「実力はこいつの方が上だぞ。ALO内では最強プレイヤーと呼ばれていた事もあった・・・・・・」

 

「最強・・・・・・」

 

ALO最強という言葉に俺たちは警戒というより、好奇心が勝った。最強という強さに興味があるのだ。しかし、呼ばれていた事もあった、ということは今は最強ではないのだろう。

 

「今は違うんですか?」

 

「ふふふっ・・・・・・この話、今は止そう。これ以上この男を不機嫌にしても仕方がないからな」

 

「ふん・・・・・・」

 

「こ、こわ~・・・・・・」

 

何処か不機嫌そうなユージーンにリーファが怯える。

 

「ははっ、この館はバトル不可設定だから安心したまえ」

 

それはこの館から出たらバトルするということだろうか?

サクヤの言葉に俺はそう感じざるを得なかった。

 

「さぁ・・・・・・それではお互いに新エリア攻略を楽しむとするか」

 

「みんな、健闘を祈るネ~!」

 

出ていく三人を見ながら俺達も。

 

「さて、じゃあ俺達も行くか」

 

と言って時間も時間なため、宿屋に戻った。

 

 



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LS編 第150話〈ギルド・シャムロック〉

 

〜キリトside〜

 

新エリア、スヴァルトアールヴヘイムに降り立った翌日、俺達はエギルがこそこそして準備していた喫茶店兼武具店兼買取屋のエギル出張店舗に招かれた。

エギル曰く、本土にある店にわざわざ戻るのは面倒だということでここに店を出店したとの事だ。店内は様々な店が合わさった複合店で、ここにはリズの工房も備え付けられていた。どうやらリズもエギルのこれに一枚噛んでいたみたいだ。レインは知らなかったみたいだし。そして、俺達のもう一人の仲間、鼠のアルゴこと情報屋アルゴがここに来たのだ。彼女にも声をかけたのだが来れるとは思わず少し驚いていたりする。

とまあ、そんなこんなで驚きがありつつもスヴァルトアールヴヘイムの浮遊草原ヴォークリンデの攻略をして、ラインに戻りエギルの店の喫茶店で一息しているところにリーファが。

 

「みんな、OSSは知ってるよね?」

 

と、訊ねてきた

 

「ああ。《オリジナルソードスキル》の事だよな」

 

「うん。あたしが前にログインしてた頃は無かった遊び方なんだ」

 

オリジナルソードスキル、通称OSSはこのALOに新たに追加されたプログラムだ。SAOの基幹プログラムを引き継いだ、このALOはあの世界のスキルであるソードスキルを発動できる。中でもこのOSSはSAOにも無かった新たなスキルだ。

OSSはその名の通り、自分で作成した新たなソードスキルのことだ。

 

「OSSが実装された時はかなりのプレイヤーが作成しようとしたみたいだけどな」

 

「今は、作ろうとしてるプレイヤーすら余りいないんだよね」

 

「まあ、当然でしょうね」

 

「だね」

 

OSSは既存するソードスキル。《バーチカル》や《リニアー》、《ヴォーパル・ストライク》などと同一ではなく、一から作らなければならないのだ。それも、ソードスキルと同じ速度で。そのため、難易度が高いOSSは殆どのプレイヤーが作成を諦めているのだ。しかし、一部のプレイヤーはこのOSSの作成に成功している。

それはもちろん俺達もで───。

 

「OSSを一つ作るだけでも凄いのにキリト君達は十個以上作っちゃうんだから」

 

呆れた眼差しで俺とレイン、ラン、ユウキを見てくる。

俺達はなんとも言えない表情で引き攣り笑いを浮かべる。

そう、俺達、俺、レイン、ユウキ、ランはOSSの作成が出来ているのだ。ちなみにアスナ、リーザ、ラムも作成してある。

 

「いや、試しに二刀流ソードスキルをやってみたら出来ちゃった、的なやつなんだけど」

 

俺達のOSSは大半がSAOの世界でのユニークスキル、《二刀流》や《多刀流》のソードスキルだ。まあ、俺だけのOSSという物もあるが。

 

「むー」

 

「まぁまぁ。リーファちゃんも一つ出来てるんですよね」

 

ムクれるリーファをランが宥めながら聞く。

 

「うん。片手剣のOSSだけどね」

 

一応リーファ自身もOSSを一つ保持している。他に持っているのはフィリアとストレア、シノンぐらいだ。シリカとリズはほぼ断念しており、エギルとクラインは今も作成の努力をしている。

 

「それにこのOSSは人に渡せるんだよね」

 

「はい。別のアバター1人に限定して、育てたOSSを渡せますね」

 

「といっても、あくまでそれは作成者が作りだしたソードスキルを使えると言うだけで熟練度までは引き継げないんだよね」

 

「ああ。結局そのソードスキルを貰った側もゼロから育てていかなきゃダメなんだよな」

 

テーブルに置いてあるそれぞれの飲み物を飲みながら会話をする。

結局のところ、一からやらなければならないという事だ。

 

「あ。ユウキは確かアスナさんのOSS《スターリィ・ティアー》を貰ってましたよね」

 

「うん。ボクもアスナにOSS《マザーズ・ロザリオ》を渡してるよ」

 

アスナとユウキはいつの間にか、それぞれのOSSを交換していたのだ。その事を知った時のランの様子は呆れが大半だった。

 

「私のOSS《サウザンド・レイン》は多分私以外使えないと思うしなあ〜」

 

「私の《ラスティー・ネイル》もそうですね」

 

レインとランのOSSのそれは多分当人しか使えないと思う。そう思いながら珈琲を飲んでいると。

 

 

「やっぱりセブンちゃん、すげぇよなぁ・・・・・・。こんなに良い歌を何曲も作り続けながら、MITを主席で卒業だろ」

 

「しかもあの可愛さったら尋常じゃないわよ。ああ〜ん、セブンに近づけないかしら?」

 

「おいおい、止めておけよ。お前には、セブンちゃんをお守りするギルド、シャムロックに入るのは無理だぜ。あいつら護衛隊みたいなもんだし、一人一人がとんでもない力を持ったプレイヤーらしいぜ」

 

「俺、シャムロックの入隊試験落ちたけど、ずっとセブンちゃんを応援し続けるんだ!」

 

「俺なんてこの間、七色博士の実物を見ちゃったもんね〜!」

 

「えっ!?どうやったの!?」

 

「この間来日した時にテレビでインタビュー受けてたろ?その情報を先にリークしてもらってさ、スタジオの前で出待ちしてたんだよ!セブンちゃん、手を振ってくれたぜ〜!ああ〜超かわいかった〜!」

 

「くっ・・・・・・羨ましい・・・・・・!」

 

 

そんな会話が耳に入ってきた。

声のしたところを見ると、他種族のパーティが話しているみたいだった。まあ、それはそれとして、俺の視線はそのパーティプレイヤーの髪に付けられてる羽飾りに注目した。

 

「ん?あの羽飾り、どこかで見たような・・・・・・」

 

「あ!あの時の人達が付けていたのと同じやつだよ」

 

「ああ」

 

リーファの言葉でどこで見たのか思い出した。最初のクエストを受けた時に、同じクエストを受けていたプレイヤーの頭部に付けられていたものだ。

 

「だが、あれは音楽妖精プーカの装飾のはずだ。なんで付けている奴らの種族はバラバラなんだ・・・・・・?」

 

プーカの装飾という事は、プーカには意味があるが、他種族は付けても対しても意味が無いはずだ。俺のそんな疑問に答えたのは。

 

「あれは、シャムロック信奉者・・・・・・歌姫セブンのファンである証だよ」

 

能面のような顔で彼ら、いや、羽飾りを見るレインだった。

 

「ファンである証ですか?」

 

「つまり歌姫セブンの歌が好きってことレイン?」

 

ランとユウキもよく分からないみたいでレインに問う。

 

「ううん。それは大前提で、最近、セブンという一プレイヤーだけじゃなくて・・・・・・七色・アルシャービン博士。七色博士に対しても心酔している証みたいなものみたい。たまにALO内で、リアルで自身が研究してる仮想現実理論の講義をやってて、大人気みたいだよ」

 

「・・・・・・その講義を聞きに来ているプレイヤーは、理論が気になるというより、セブンというプレイヤーを見に来てるのでは・・・・・・」

 

「あはは。たぶん、大半のプレイヤーはそうじゃないかな」

 

ランのドンピシャな疑問にさすがのレインも苦笑いで言う。

 

「なるほどな・・・・・・!なんでもできりゃ、そのプレイヤーにとっては神々しく見えてくるわけだ」

 

「うーん。ただのアイドルを追っ掛ける人みたいに見えるけど」

 

「ははは。あたしもユウキに同意です」

 

さっきのパーティの話を聞いて呆れた表情をしていうユウキに同意するリーファ。よく見たらランとレインも同じだった。かく言う俺も同意だが。

 

「・・・・・・・・・・キリトくん、もしかして七色博士に興味を持ってる?」

 

ジト目で問いてくるレイン。

 

「い、いや・・・・・・それ以上は何もないからな」

 

「ふふっ、わかってるよキリトくん。キリトくんがロリコンじゃないことは」

 

「レインさんっ?!!?」

 

「「えっ?」」

 

レインの言葉にユウキとランが驚いた顔で俺を見てきた。リーファは笑っていたけど。

 

「キリト。キリトってロリコンなの?」

 

「キリトさんってロリコンだったんですか・・・・・・?」

 

「いやいやいや!!違うから!レインも冗談でも言わないでくれ!」

 

「うふふっ。ゴメンねキリトくん。二人とも大丈夫だよ。キリトくんはロリコンじゃないから」

 

「だよね、良かった〜」

 

「はぁ〜。安心しました〜」

 

「なんで二人は俺がロリコンだと思ってんだよ・・・・・・」

 

ホッと胸を撫で下ろす二人に俺は半目で見て言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後

 

 

 

 

「なんだあれ?」

 

「なんだかすごい人だかりだね・・・・・・」

 

順調にスヴァルトアールヴヘイムを攻略している最中、空都ラインの噴水広場でかなりのプレイヤーが集まっているのを目にした俺達は不思議に思いその人だかりに近づいた。

すると。

 

『『『おおおっーー!!!』』』

 

一際大きな歓声が上がった。

 

「わっ!どうしたんだろう?」

 

「なにかあったのでしょうか?」

 

彼らの視線の先を見ると、そこには数名のプレイヤーに囲まれながら、周囲のプレイヤーに笑顔で手を振っている音楽妖精プーカの少女がいた。

 

「あいつらは・・・・・・!」

 

「ああ、あれが・・・・・・例の子ですか」

 

「・・・・・・歌姫セブン・・・・・・」

 

その少女は、今巷で有名の歌姫セブンその人だった。どうやらここにいるプレイヤーは彼女を見に来たらしい。

 

「みんな〜!元気〜〜!?セブンはとっても元気だよ〜!!」

 

『『『おおおおっ!!!』』』

 

「うわっ・・・・・・!」

 

セブンの声にさらにボルテージが上がった周囲のプレイヤーの気迫に、さすがの俺も驚いた。

 

「セブンちゃんもついに新エリアに来たんだねー!!」

 

「今日もかわいいーー!!!」

 

「新曲聴いたよ〜〜!!!最高だったーー!!!」

 

「俺、レア素材ゲットしたんだー!!だからシャムロックに入れて〜〜!!」

 

「バーカ!お前の実力じゃシャムロックに入れてもらえねーよ!」

 

辺りからはそんな声が聞こえてくる。

 

「す・・・・・・すごい人気だな」

 

「はい・・・・・・。彼女の信奉者がこんなに多かったなんて思いませんでした」

 

「私も・・・・・・これ、結構な人数よ」

 

俺、ラン、アスナは彼女への人気に唖然ともいえる驚きを出していた。正直、ここまでとは思わなかったのだ。

 

「まさにアイドルって感じね」

 

「そうだね。かわいいし、歌も歌えて、それでいてリアル世界の超天才・・・・・・色んな要素が複合的に話題性を呼んで、これだけのファンを作ってるんだろうね。音楽妖精プーカっていうのもなんかしっくり来ちゃうよね」

 

「そうだね。あの種族を選ぶ人って、かなり少ないって聞いてるし」

 

リーザ、ストレア、フィリアも次々に言う。

フィリアの言う通り、ALOにある九つの妖精の中で音楽妖精であるプーカはあまり選ばれない。理由は単純に人気がないのと、スキルが戦闘ではなくサポートに特化・・・・・・しているとは言えないが、能力的に他八種族に比べて低いのだ。そういうわけで、音楽妖精プーカのプレイヤーは滅多に居ないのである。ちなみに、シルフ、サラマンダー、ウンディーネは人数が多く人気である。

 

「それはそれとして・・・・・・キリト」

 

「ああ」

 

ラムの言葉に、俺は視線をセブンの隣にいるウンディーネの男に向けた。

 

「あの隣にいる男・・・・・・あいつ・・・・・・。かなり手練だな。凄い気迫を感じるぜ・・・・・・」

 

「ええ。佇まいからも他のプレイヤーより上だとわかりますね」

 

元攻略組である俺達はそのプレイヤーからとんでもない気迫を感じていた。もしSAOにいたら俺達と同じ攻略組に所属していたかもしれない。できることなら───

 

「・・・・・・一度手合わせ願いたいな・・・・・・」

 

と思う。

 

「・・・・・・・・・・」

 

当のそのプレイヤーは無言で、セブンの傍から離れずに腕を組んでいた。

 

「なるほど。あれが・・・・・・セブンちゃんか」

 

「なんだクライン、お前も見ていたのか。どうした?お前の好みは確か大人の女性だっただろ?」

 

「ま。まぁな。セブンちゃんはちょっとかわいいな〜って思うけどよ」

 

「クラインさん、お願いですから犯罪者にはならないでくださいね」

 

「ならねぇよ!」

 

本気で心配するラムにツッコむクライン。ほんと、知り合いから犯罪者ってのは勘弁してほしい。

 

「それにしても凄い取り巻きの数ね。この人達みんなあの子のギルド・・・・・・えーと、シャムロックの一員なの?」

 

シノンの言う通り、辺りは結構な人がいた。シノンの疑問に答えたのは。

 

「きっと違うと思うなー。ほとんどがただの見物客か熱心なファンか・・・・・・。シャムロックはあの子の周りにいるほんの一握りの人達だけだね」

 

「へぇ・・・・・・フィリア、詳しいじゃない」

 

「まぁね〜。情報収集はトレジャーハンターにとって欠かせないから。・・・・・・って、あれ?キリトは驚かないの?」

 

「ああ、実は俺もシャムロックについて調べてたんだよ」

 

「へぇ」

 

フィリアに聞かれた俺は普通に返す。シャムロックについては調べていたためあまり驚かない。隣にいるレインも知っていたみたいであまり驚いてる様子はない。が、レインの様子がおかしいのが気になった。レインの視線は真っ直ぐ、セブンへと向けられていた。

 

「レイン?」

 

「え?あ、なに、キリトくん?」

 

「いや、熱心にセブンを見ていたからどうしたのかなって」

 

「ううん!なんでもないよ。・・・・・・なんでも」

 

ここ最近レインの様子がおかしい事に心配になりながら、シャムロックを見る。

 

「なるほどね・・・・・・。まあ。つまりシャムロックは選りすぐりの精鋭部隊って事ね」

 

「そうみたいー。それにねー、あのセブンって子、すんごく弱いの。ステータスだってアタシ達の誰よりも貧弱だしー」

 

「そうなの・・・・・・?でもシャムロックってギルドはALOの中じゃ、かなり高ランクなんでしょう?」

 

「うん、そう。シャムロックに所属するプレイヤー達は相当な手練ばかりだよ・・・・・・つまり・・・・・・」

 

「あの子は自分で戦わずに、周囲に戦わせてギルドとしての戦績を上げているという事だ」

 

「自分で戦わずにそういう風に攻略していくスタイルもあるのね・・・・・・」

 

「でも、そのやり方私はあまり好きじゃありませんね」

 

「ボクもかな。なんか面白くない」

 

「私もそうかも。リーザちゃんとラム君はどう?」

 

「私も同じですよ」

 

「俺もですね。団長もそんな感じでしたけど、ボス戦とか大切な戦闘には必ず出てましたから」

 

ギルド血盟騎士団だったアスナたちはシャムロックの有り様に批判的だった。まあ、それは俺も同意する。確かにそれはひとつのスタイルなのだろうが、正直、面白くない。

 

「クエストランキング上位百人の中にシャムロックのメンバーがなんと三十人もいるんだよー!そしてその中でも最強なのが・・・・・・」

 

ストレアがそう言った時、俺は視線の隅に見覚えのある人物がいるのに気付いた。

 

「・・・・・・・・・・」

 

「あ、あんた・・・・・・。サラマンダーの将軍の・・・・・・」

 

それはALOで最強だと言われていたらしいサラマンダーの将軍。ユージーンだった。ユージーンの視線は忌々しいとでも言うような感じで、その視線は真っ直ぐセブンの隣に立つ男に向けられていた。

 

「クッ・・・・・・!」

 

「えっ?」

 

「ふん・・・・・・」

 

「な・・・・・・なんだったんだ?今の・・・・・・」

 

踵を返して立ち去るユージーンを見ながら俺はそう口走る。

彼の性格からしてセブンには興味が無いだろう。そう思っていると。

 

「今ユージーンが睨みつけていたイケメン、スメラギがシャムロック最強と言われてるの!」

 

フィリアが言ってくれた。

 

「あの刀を持ったウンディーネの男だな」

 

「ユージーンは先日のデュエルであのスメラギに敗れたらしいよ」

 

「あのユージーン将軍を!?そんな・・・・・・」

 

リーファの驚きから、ユージーンが敗れたことに実感がわかないのだろう。

 

「あっ、そういえばそのスメラギって人はね。あのセブンちゃんが最も信頼を置いてる人物らしいよ」

 

「ユージーン将軍にスメラギか・・・・・・。でも俺もいつか戦ってみたいな。正々堂々と・・・・・・」

 

そう思いつつ呟く。

その時俺は気づかなかった、レインがセブンを見て呟いたことに。

 

 

「・・・・・・気に入らないな・・・・・・七色のやり方・・・・・・」

 

 

 

 

 

 



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LS編 第151話〈攻略への道導〉

 

~キリトside~

 

歌姫セブンの人気について、改めて実感した俺達は、セブン率いるギルドシャムロックに注意しつつスヴァルトアールヴヘイムの浮遊草原ヴォークリンデの攻略を進ませていた。

その途中、スメラギが率いていると思われるシャムロックの攻略パーティと会合した。特に話はしなかったが、攻略パーティの一人、サラマンダーのプレイヤーに攻略のヒントをもらい俺達は攻略に必要なアイテムを得に教えて貰った洞窟遺跡に来ていた。

のだが―――

 

「この扉開かないよ~」

 

洞窟遺跡の扉の前で扉が開かず俺達は立ち往生していたのだった。

 

「どこかで鍵を手に入れないといけないな」

 

そう言いなにか情報がないか悩んでいると・・・・・・

 

「よお!キリト達もこの遺跡にたどり着いてたか。だが、その調子だとまだ手に入れてないみたいだな」

 

クラインがやって来てそう言った。

クラインのその言葉にハッ!と感じ、

 

「クライン、もしかして!」

 

と、聞いた。するとクラインは。

 

「おうよ!ほら、たぶんここの鍵だぜ」

 

ストレージから一本の鍵アイテムをオブジェクト化して、目の前の扉の鍵の差込口に入れた。

クラインの鍵は扉の鍵穴にスっ、と入り、

 

「やった!開いたよ!」

 

扉が上に上がり開いた。

 

「よくここの鍵を持ってたなクライン」

 

「実はNPCから情報を集めててな。お前達に伝えようとしたんだが、ちょうどオレがここの鍵を持っていたからな。助かっただろ」

 

「ああ。ありがとうなクライン」

 

「へへ。どうってことよ。それじゃ、オレはここで失礼するぜ!」

 

「ん?一緒に行かないのか?」

 

「すまん、今受けてるサブクエストが終わったら合流させてくれ。あとで街で会おうぜ!」

 

「おう、また後でなクライン」

 

立ち去っていくクラインを見送って、俺達はクラインが開けてくれた扉の先へと進んだ。

扉の先に進むと、開けた十字路に出た。が、

 

「扉の前を像が塞いでいるね。このままじゃ開けられないよ」

 

右の通路以外、扉が閉まっていたのだ。

特に、正面の扉は二体の石像によって阻まれていた。

 

「正面のは・・・・・・この像をなんとかしてどかす必要があるな」

 

「ですね。こういうのは大抵のダンジョンですと・・・・・・」

 

「どこかに石像を移動させるための仕掛けがあるのかもしれないね」

 

俺の言葉に続いてランとリーファリーファが言う。

 

「このいかにもって感じからして、この遺跡は重要な役目をもってそうね」

 

「そうね・・・・・・」

 

「さっきの人もこのダンジョンであの装置を動かすアイテムが手に入るって言ってたしね」

 

「だな。とにかく気をつけていこう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

約三十分後

 

 

「この先にボスがいるのか・・・・・・」

 

俺達は特に問題もなく順調にダンジョンを攻略して行った。道中モンスターがPOPするトラップやギミックがあったが難なく攻略した。

 

「みんな、準備はいい?」

 

レインがアスナ達に問う。アスナ達はレインの問いに無言でうなずき返事を返す。

 

「―――よし。それじゃ行くぞ」

 

俺達はそれぞれの剣を抜刀し、ボス部屋へと入っていった。

ボス部屋に入って十分後―――

 

「やったー!アイテムゲットしたよー!」

 

俺達は特に苦戦することもなく、目的のアイテムを入手した。

奥の部屋にあった宝箱には古い書物と、錆びた鍵が入っていた。

 

「古い書物と鍵ねぇ・・・・・・。一体何に使うのかしら?」

 

「でもこの鍵、錆がひどすぎてこのままじゃ使えないんじゃないかな?」

 

「そうね・・・・・・。でも、錆をとるような素材はみたことないし。レインは知ってる?」

 

「うーん・・・・・・確かそんな鍛治用の道具があるって聞いたこともあるような・・・・・・」

 

リズの言葉に、思い出すようにして言うレイン。

リズとレインの種族は鍛治妖精であるレプラコーンだ。そのため、二人はよく鍛治関連の情報を集めている。

 

「何か特殊なアイテムが必要かもしれないね」

 

「せっかく手に入れたの鍵なのにすぐには使えないんだよね」

 

「こっちの書物のほうは、さっきの装置を動かすヒントが隠されてるのかもしれないね」

 

「ああ、早速見てみよう」

 

フィリアに同意するように、俺達は錆びた鍵と一緒に入っていた古い書物を開いた。

書物には何らかの文字と図が描かれていた。

 

「・・・・・・この文字、何かの暗号ですかね?読めないです・・・・・・」

 

「これって古代文字じゃないかな。さすがに書いてある内容まではわからないけど・・・・・・」

 

「こっちの図は平らな板の上に人が浮いてるわ」

 

「もしかしこれ、さっきの装置なのでは・・・・・・」

 

「確かにそうかもしれません。あの装置に描かれていた幾何学文様が、この図にも書かれてます」

 

「この図に書かれてる人・・・・・・もしかして浮いてるんじゃない?」

 

「つまり、あの装置は人の浮かせる為のものってことか?だとすると、こっちにあるのはそれを動かす動力になるアイテム・・・・・・?」

 

開いているページには装置の図の他にもう一つ、オーブのような物が書かれてあった。そして、そのオーブにも装置と同じ幾何学文様が描かれてあった。

 

「うーん・・・・・・これじゃあ、具体的に何をすればいいのかわかんないよー!」

 

「もう少し情報収集した方がいいんじゃないかなー?」

 

「そうだね、街に戻って情報を集めよう!」

 

街で情報収集をすることにした俺達は、宝箱から入手した『古い書物』と『古びた鍵』をアイテムストレージに収納してダンジョンをあとにし、空都ラインへと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空都ライン

 

 

街に戻った俺達は宿屋の近くにクラインがいるのを発見した。

 

「おっ、クライン」

 

「・・・・・・・・・・」

 

なにか集中しているのか、クラインの耳には俺の声が届いていないみたいだった。

 

「クライン?どうしたんだ?」

 

不思議に思い再び声を掛けると、

 

「おわわっ!!な、なんだ。キリトかよ・・・・・・驚かすんじゃねーよ」

 

今度は聞こえたのか、クラインはビックリした表情で俺を見た。

 

「お前こそボーっとしてどうしたんだ?また失恋でもしたのか?」

 

クラインがボーっとしている時の大半は失恋をした時だと知っている俺はまたそうかと思い訪ねた。が、

 

「ち、ちげーよ!ちょっとあの子の情報見てただけだよ」

 

どうやら違ったみたいだ。

 

「あの子?」

 

「ああ、あのセブンって子だよ。歌がすごく流行ってるだろ?」

 

どうやらクラインは歌姫セブンについての情報を見ていたらしい。

 

「ああ、俺もちょっと気になってるんだ。あんな小さいのに歌上手いよな」

 

「だよなぁ!それでいてリアルでは博士でもあるんだぜ。現実世界の天才博士、かつVR世界の大人気歌姫か。ホントたいしたもんだぜ!」

 

「あの子はリアルではネットワーク社会の研究をしてるんだ」

 

「ん?」

 

「それで、セブンとしての歌詞には共存とか平和を謳っている。つまりこの二つは別軸の活動って訳じゃないんだよ」

 

セブンが歌う歌詞には『共存』や『平和』という言葉がよく入っている。そして彼女は、現実世界での研究でネットワーク社会について研究している。このALOでは種族間抗争があるのが話題となっている。だが、もしこのALOで、彼女の提唱する共存と共存と争いのない平和なVRMMO世界だとして、それは本来のALOと言えるのだろうか?確かに、俺たちのように種族間に囚われることなくプレイしているプレイヤーは沢山いる。だが、その中でも種族といった、ひとつの輪の中にいるプレイヤーもいる。まんに、セブン―――七色博士の提唱が実現して、本当に平和になるのだろうか?恐らく、彼女の提唱に反対するプレイヤーが多数現れるだろう。特に、サラマンダーの将軍であるユージーン将軍は言うはずだ。今まで敵対していた種族といきなり仲良く、争いをしないように、と言われて「はい、わかりました」で理解するわけがない。もし、そうなったらこの世界ALOはどんどんプレイヤーがいなくなり、いずれ死に絶えたVRMMOとなるだろう。

そう思っていると。

 

「なるほどな。しかしキリト・・・・・・お前相当調べてるんだな」

 

クラインが以外だな、という風に言ってきた。

 

「べ、別にそんなことないって」

 

「そうだキリト、そろそろパーティ組んで攻略しようぜ!」

 

「あ、ああ、いいけど・・・・・・。どこか行きたいところでもあるのか?」

 

「実はな、この前とあるダンジョンの鍵を手に入れたんだよ。ちょうどいいからそこ行かねぇか?」

 

「わかった、準備してくるからちょっと待っててくれ」

 

「おうよ!オレはここにいるから早く来いよ!」

 

クラインと分かれて数分後、準備の出来た俺達はクラインと共に転移門にいた。

 

「おうキリト!準備できたみたいだな」

 

「ああ。クラインが言ってたダンジョンはどこにあるんだ?」

 

「草原の島の転移門から北の方だ。さっそく攻略に行こうぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラインとともに浮遊草原ヴォークリンデにある転移門から北の方にあるダンジョンに来ていた。

―――のはいいんだが・・・・・・。

 

「クラインのやつ、異様にやる気が凄いな」

 

「うん」

 

クラインのモンスターへの対応がいつも以上に凄いのだ。

現に―――

 

「うおおおっー!」

 

今も二体のモンスターを瞬時に殲滅していた。

それからさらに攻略して行き、ダンジョンのギミックを動かし、俺達はとある一角にいた。

目の前にはすごい勢いで風が吹き出している装置があった。

 

「すごい勢いで空気が噴出しているね」

 

「さっき動かしたスイッチはこれを動かすものだったのね」

 

「あの装置の小さい番だねこれ」

 

「ですね」

 

「これを使えばあそこの通路まで進めそうだな」

 

普通では行けない場所も、この風を使えば行けるみたいだ。

しかし―――

 

「これって・・・・・・女の子にとってあまりうれしくない移動方法だね・・・・・・」

 

「うん・・・・・・」

 

アスナとリーファの言葉に女子勢が同時にうなずいた。

理由が分かる俺やラムは苦笑を浮かべ、何も言えなかった。

 

「ところでクライン・・・・・・。お前本当に歌姫セブンのことが好きになちゃたのか?」

 

装置から吹き上げる風を使って上の通路に着いた俺はクラインにセブンについて聞いた。

 

「えっ・・・・・・。ええとまあぁ・・・・・・。歌を聞いてるうちにちょっといいなぁって思い始めちゃって・・・・・・」

 

「ファンになったのか?」

 

まさかと思い聞く。

 

「ち、違げぇよ!ファンみたいなミーハーなもんじゃないんだよ、オレは!」

 

「じゃあどういうものなの?」

 

全員を代表してレインがクラインに問う。

 

「もっと崇高な気持ちで彼女のことを尊敬・・・・・・崇拝してるっていうか・・・・・・」

 

クラインの言葉を聞いた俺達は。

 

「完全にハマっちゃってるね・・・・・・」

 

「完全にハマってるな・・・・・・」

 

「ハマってますね・・・・・・」

 

「ハマってるね・・・・・・」

 

と異口同音の言葉を次々に発したのだった。

それから数十分後。

 

「うおおっ!噂通りあったぜ・・・・・・《トントゥの花》!」

 

ボスを倒し、奥の部屋に置かれていた宝箱の中身を見たクラインが歓声を上げた。

 

「へぇ・・・・・・こんなのがALOにあったんだ。面白いところを突いてくるじゃない」

 

「シノンさんは知ってるんですか?」

 

どうやらシノンは宝箱の中に入っていた花について知っている見たいだが・・・・・・

 

「ええ、トントゥは北欧の森の妖精なの」

 

「元々ALO自体がケルト・・・・・・北欧神話をモチーフにしてるわけだよな」

 

「そうね。でもその中でもこのスヴァルトエリアはテーマ性を色濃く表現している気がするわ。モンスターデザインとか設定とか」

 

「ああ・・・・・・どうりでモンスターに妙な法則性がある気がしてたんだよなぁ」

 

このエリア―――スヴァルトエリアのモンスターはどれも北欧神話やケルト神話などの数多の神話をモチーフにしたモンスターが生息している。もともとALOは北欧神話がモデルのためたいして気にしなかたっが。

 

「そうね。これからは北欧神話の神々をモチーフとした、ボスとか出てくるかも。アース神族とか、霜の巨人とか・・・・・・。色々と想像が膨らむわね。ふふっ、ちょっと楽しみかも」

 

「そうだな!そう考えると、なんかワクワクするな。それにしてもシノン・・・・・・。お前そういう伝承とかに詳しいのか?」

 

「えっ・・・・・・ええと。読書とか好きなだけ・・・・・・それだけよ!」

 

「そ、そうか・・・・・・」

 

「と、とにかく、トントゥは北欧では幸せを運ぶ妖精と言われているのよ言われているのよ」

 

「へぇ・・・・・・なんか素敵ですね!クラインさんはこの花が目当てだったんですか?」

 

「そういえばそうだな。そうなのかクライン?」

 

「おうよ!この花は幻の花って言われてる超レアアイテムなんだよ!ふっふっふっ・・・・・・これをセブンちゃんにプレゼントするぜ!」

 

『『『は?』』』

 

クラインの言葉に俺達は唖然とした。

 

「まさか・・・・・」

 

「そのため ・・・・・・?」

 

「おうよ!」

 

いい笑顔で言うクライン。そのクラインに、

 

「目的はそれかよ!」

 

俺は思いっきりツッコんだ。

その俺に続けてレイン達も。

 

「ええー」

 

「ないわー」

 

「うん、それはないね」

 

「あーあ、最後の最後でシラケたわね〜。ファンなのね〜」

 

呆れ百%の表情でクラインを見て言った。

 

「ファンじゃねえって!そう、オレは・・・・・・オレ達は《クラスタ》なんだ!」

 

「クラスタ・・・・・・?もしかしてネット用語の?」

 

「確かネット用語のクラスタって、「房」って意味だよね」

 

「セブンを花として集まる沢山の房・・・・・・か。愛でる対象と心の繋がりがあるって言いたいのか?なるほどな・・・・・・」

 

「キリトくん?」

 

レインの冷たい声に慌てて反論する。

 

「いや、あはは・・・・・・俺はあくまでクラインの気持ちを代弁してみただけで・・・・・・」

 

「そうだ!セブンちゃんを普通のアイドルとかと一緒にしてもらっちゃ困るんだ!!うおおおっー!!セブンちゃんー!!これからも愛し続けるぜ!!」

 

俺の言葉に続けるように言うクラインに、俺達は。

 

「ああ、ダメね・・・・・・。完全にはまっちゃってる・・・・・・」

 

「もう手遅れだな・・・・・・」

 

「直せるでしょうか・・・・・・」

 

「たぶんもう遅いかも姉ちゃん・・・・・・」

 

「どっと疲れたわね。さっさと街に帰ろうよ」

 

「ああ、撤収だな」

 

「だな。よし、帰るぞー」

 

『『『はーい』』』

 

「お、おい!みんな待ってくれよ〜!!」

 

さっさと街に帰る俺たちを慌てて追いかけてくるクラインを無視して俺達は街に帰って行った。

正直、今回のクラインの行動は残念としか言えなかった。

 

 

 



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LS編 第152話〈ボスへの鍵〉


「プリヴィベートみんな!ついに家庭用ゲーム【ソードアート・オンライン アリシゼーションリコリス】が発売!そして、【ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld 2ndクール】が放送!どちらの音楽最高だった!感動したよ!みんなはどうかな?これからどうなるのか楽しみだね!こっちも負けてられないね。みんな、これからもよろしくね〜!」



 

〜キリトside〜

 

 

浮遊草原の攻略に必要とされる『古びた鍵』と『古びた書物』をダンジョンで入手したあと、空都ラインに戻った俺達。街に戻った俺達はクラインの手伝いでとあるダンジョンに向かったのだが・・・・・・。

まあ、それについてはクラインに呆れただけと言っておこう。

とまあ、そんな訳で攻略について悩んでいる中、シルフの領主サクヤさんとケットシーの領主であるアリシャ・ルーの助けもあり、『古びた書物』を解読し解読でき、アルゴから貰った『シンドリの木槌』を使って、リズが『古びた鍵』を『グリダヴォルの鍵』へと変化させ俺達は先に進めるようになった。

 

「―――さて、これで先に進めるようになったな」

 

「うん。ユイちゃん、確か未攻略のダンジョンがあとふたつあったよね?」

 

「はい。転移門から北の方にある飛行到達限界ギリギリのダンジョンと、北西の方にあるダンジョンですね」

 

「おそらく、残りのダンジョンにあの気流装置を起動させるアイテムがあるんでしょう」

 

「だね」

 

「じゃあ、さっそく手分けしてダンジョン攻略をしましょうか

 

ポーションなどを揃え、俺達は残りふたつのダンジョンへ向けて転移門から浮遊草原へと転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浮遊草原ヴォークリンデ

 

 

「―――それじゃ、まずは北の方にあるダンジョンへ向かうか」

 

鍵は一本しかないため、順に回って鍵を開けなくてはならない。

やや、面倒だが俺達はユイの言った、北にあるダンジョンへと向かい。

 

「―――これで・・・・・・!」

 

『グリダヴォルの鍵』を使用し扉を開け、

 

「私たちのダンジョンがここね」

 

「気をつけてね、姉ちゃん、アスナ」

 

「ええ」

 

「ユウも気をつけてくださいね」

 

アスナとランが率いるパーティ。メンバーは、アスナ、ラン、シリカ、フィリア、リーザ、ラム、クラインの七人だ。

アスナ達は俺達、残りのメンバーに声を掛けて、みんなと共にダンジョンの中へと入っていった。

アスナ達がダンジョンに入ってから、俺達残りのメンバーは、ふたつめのダンジョンへと向かっていった。

ふたつめのダンジョンも、やはり扉に鍵が掛かっていたが『グリダヴォルの鍵』を使用し、扉のロックを解除し、ダンジョンへと入っていった。

ちなみにこっちの。俺達のパーティメンバーは、俺、レイン、ユウキ、リーファ、リズ、ストレア、シノン、エギルの八人だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンジョンに入ってから約一時間後―――

 

 

「やっと戻って来られたわねー!」

 

ダンジョンからようやく、俺達は気流装置の場所へと戻ってこれた。気流装置のある地上の、はるか頭上には島の中央に浮かぶ浮遊島があった。

アスナ達のダンジョンでは『風の魔力結晶』。俺達のダンジョンでは『風の紋章』を入手した。

 

「あとはアイテムをセットするだけですね!」

 

「ああ」

 

ランから『風の魔力結晶』を受け取り、『風の紋章』と一緒に、気流装置にふたつのアイテムをセットする。

アイテムをセットすると―――。

 

「きゃああっ!?」

 

「いきなりモンスターがポップしたわ!」

 

気流装置を囲むように飛竜型のモンスターが数体ポップした。

 

「さしずめ装置の番人ってところね!」

 

「しかも六体も・・・・・・!」

 

現れたモンスター・・・・・・ムシュフシュを見て、それぞれの武器を抜刀する。

 

「強いのかなあ〜」

 

「それじゃ、各個撃破ですかね?」

 

ユウキやラム、リーザはうずうずとしていた。

まあ、それは俺もだが。

そんな俺達を見て、アスナ達は苦笑して。

 

「あはは。それじゃあ、各自やりますか」

 

『『『了解!』』』

 

アスナの言葉に俺達は勢いよく返事をして、それぞれムシュフシュへと向かっていった。

ムシュフシュの数は六体。俺達の数は十五。となると、俺達は二人ペア三組、三人組が三組となる。俺達は自然にそれぞれ分かれ、俺とラム。ストレアとリーザ。ユウキとリーファ。アスナとクライン、シリカ。ランとリズ、シノン。レインとフィリア、エギルで分かれる。

 

「いけるなラム!」

 

「もちろん!」

 

まず最初に、俺が先行しムシュフシュの胴体をすれ違いざまに切り裂く。

 

「グルァァァァァァ!!」

 

「ラム!」

 

「ええ!」

 

俺にタゲ入ったところで、ムシュフシュの視覚外からラムが神速の一撃を見舞う。

 

「グギァァァァァ!」

 

「今度はこっちだ!」

 

ラムに視線が行ったところに、今度は俺がムシュフシュを攻撃する。

俺の剣は、回避しようとしたムシュフシュの羽を切りつけ、ムシュフシュの動きを遅くした。羽翼型のモンスターには、まず羽を攻撃し、移動能力を損なわせるが基本だ。でなければこちら側の攻撃は当たらず、相手の攻撃を逆に喰らってしまうからだ。だが、相手の移動能力を損なえさえすれば、戦況は一気に変わってくる。相手の攻撃の命中率は低下し、かわしやすくなり、こちらの攻撃は当たりやすくなる。

つまり―――

 

「キリト!」

 

「ああ!はあああー!」

 

「グギャァァァァァ!!」

 

ラムと同時に動きを止めたムシュフシュにソードスキルを放ち、HPをゼロにする。

 

「ふぅ」

 

「あまり歯ごたえがありませんでしたね」

 

「だな」

 

ムシュフシュを倒した俺とラムはあまり強くなかったことに不完全燃焼な感じだった。そう思っているところに。

 

「なぁ〜んか物足りないなあー」

 

「ほんとだよー!」

 

「戦闘した感じがしないわね」

 

「うんうん」

 

残ったムシュフシュを倒したレイン達が飛んできた。

 

「さてと、門番も倒したことだし・・・・・・ん?」

 

気流装置の所に降り、起動させようとした所に複数のプレイヤーの集団―――パーティがやってきた。

 

「今の戦闘、なかなか見事なものだったな」

 

「あんた達は・・・・・・」

 

「シャムロック!」

 

「ほお、俺達を知っているのか」

 

やって来たパーティはシャムロックの攻略パーティだった。

 

「ああ。セブンが率いてるギルドだよな」

 

「ああ、そうだ。お前も興味があるのか?」

 

「まあな」

 

シャムロックのプレイヤーの言葉にうなずいて答える。

実際、セブンというプレイヤーにも、セブンが率いるシャムロックにも興味はある。もっとも、それは俺を含む俺達全員が思っていることだが。

 

「それで、あんたちは何しに来たんだ?」

 

「それはあの中央の島に行くためだ」

 

「なるほど・・・・・・」

 

シャムロックのプレイヤーの言葉に納得していると。

 

「む?」

 

シャムロックのプレイヤーがウインドウを開いた。どうやら、メッセージが届いたようだ。

 

「なにっ!?セブンのイベント準備の為緊急招集だと・・・・・・?俺達は一度ギルド本部に戻らねばならなくなった。先に中央の島に上陸する上陸する権利はお前達に譲ってやる」

 

「そう」

 

「シャムロックとしてはそれでいいの?」

 

上から目線な言葉に俺とユウキが聞く。

 

「この程度、我々シャムロックの攻略において支障はないからな。よし、撤退だ!」

 

どこか自信満々な様子でシャムロックのパーティはこの場を大急ぎで去っていった。

その去っていく後ろ姿を見て、

 

「・・・・・・行っちゃいましたね。本当に、いいんでしょうか?」

 

シリカが不安げに言った。

シリカの言葉にランが、

 

「いいも何も、彼らは私たちより先に中央の島に上陸する権利はありません」

 

と、憤慨したような感じで言った。

 

「まあ、そうね。あとからやってわたし達より来て先に行くだなんて、あまりにも図々しわ」

 

「そうね。しかも、あの上から目線・・・・・・気に入らないわね」

 

「あ、それアタシも思った」

 

ランに続いて、アスナ達も次々言う。

俺自信、あのシャムロックのプレイヤーの言動はどこか気に入らなかった。

 

「とにかく、あたし達がシャムロックより先に攻略するとしたら今がチャンスよ!」

 

「はい。シャムロックはどうやら、攻略そっちのけでセブンのイベントの準備をギルドメンバー総出で総出で行っているみたいですしね」

 

リーザの言う通り、今シャムロックはギルドメンバー総出でセブンのイベントの準備にかかっているらしい。空都ラインでも、あちこちでシャムロックのメンバーをみかけるのだ。

 

「そんじゃ、シャムロックに先越される前に、中央の島に行こうぜ!」

 

『『『おおー!!』』』

 

アイテムをセットした気流装置を起動させ、俺達は順に、地上よりはるか上空にある中央島に向かって気流装置を使って吹き上がって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「中央の島に到達したな!」

 

「うん、あっという間だったね!」

 

地上の気流装置の吹上場から到着場に降り、螺旋回廊を通って最上階に着いた俺達の前に、巨大な神殿のような遺跡ダンジョンが姿を見せた。

 

「それにしてもすごい装置だったな!」

 

「ぶわーって一気に上がって、すっごく面白かったー!」

 

アトラクション感覚の人もいれば、

 

「ううっ・・・・・・。怖かったです・・・・・・」

 

怖かったと言う人もいる。

 

「あはは、シリカちゃんは絶叫系苦手なんだよね」

 

「ユイちゃんはだいじょうぶだった?」

 

「はい!大丈夫ですママ!」

 

「ジェットコースターみたいに落ちるわけじゃないのにダメなの?」

 

「はい・・・・・・」

 

「俺達もいるし、大丈夫だよ。怖かったら支えるからさ」

 

「は、はい!ありがとうございます!」

 

「あんた、キリトに励まされていきなり元気になったわね」

 

「もう、リズさん!からかわないでください!」

 

「はは・・・・・・それじゃあ、この浮島の攻略に取りかかろうか」

 

「はいっ!」

 

勢いにさらに意気込みをつけて、俺達は攻略に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンジョンに入った瞬間、俺はどこか雰囲気が違う気が感じた。そして、なぜか感じたような空気を想った。

 

「このダンジョン・・・・・・。気流装置を起動するためのアイテム集めで入った所とは違う雰囲気がするな」

 

「そう?見た感じそんなに変わらないような気がするけど。索敵スキルが高くないとわからないのかな?」

 

リーファと同じ感じなのか、シノンやリズ達も同じ様子だった。

が、

 

「いや、キリトの言った通りだぜこれは」

 

「はい・・・・・・」

 

クラインやラン達、元攻略組は俺と同じ雰囲気を感じたみたいだった。

 

「旧アインクラッドの迷宮区と似た感じがするわね」

 

「うん。ホロウ・エリアで何度も感じた空気と同じ感じがこのダンジョンから感じるね」

 

「キリト君だけじゃなくて、アスナさん達も!?」

 

「ああ。といっても、これはスキルというか、ゲーマーとしての勘だけどな」

 

「えー」

 

「いや、これが結構当たるんだって!」

 

「うーん・・・・・・キリト君だけじゃなくてアスナさんやランさんたちもなら・・・・・・」

 

「とにかく、いつも以上に慎重に攻略していこうよ」

 

「ああ。そうだな」

 

俺達は、気を引き締めて警戒を怠らないようにしてダンジョンの攻略を始めた。

 



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LS編 第153話〈浮遊草原ボス、VSファフニール〉

 

〜キリトside〜

 

 

遺跡内部を順調に攻略し、俺達は遺跡の最奥部にたどり着いた。

目の前には、竜や草原のレリーフが彫られた石扉が鎮座していた。その石扉の奥から感じる空気に、俺達に緊張感が走る。

 

「・・・・・・この先に手強い敵がいるって、雰囲気で嫌でも分かるね」

 

「わたしも感じるわ。今までの敵とは違う・・・・・・」

 

雰囲気でいうなら、SAOのフロアボスと同じような感じだ。得体の知れない寒気や緊張が石扉越しでも伝わってくる。

 

「みんな、準備はいいか?」

 

背中の鞘から双剣───『ユナイティウォークス』と『フェイトリレイター』を抜刀して聞く。

 

「何時でもいいよキリトくん」

 

「よし。それじゃ・・・・・・いくぞ!」

 

俺は恐る恐るといった感じで扉に近づき、固く閉ざされている扉を開ける。

扉を開けた途端───。

 

「きゃあっ!」

 

「す、すごい風・・・・・・!吹き飛ばされちゃうよ!」

 

扉の奥から猛烈な風が、暴風のごとく吹き荒れ俺たちを襲ってきた。

 

「これは・・・・・・みなさん、別の場所に強制転移されます!」

 

「強制転移!?」

 

妖精姿のユイの言葉にわずかな驚きが入る。

 

「ボス戦は場所を移動してやるのか・・・・・・。ユイ、しっかり捕まってろ!」

 

「はい、パパ!」

 

肩にいるユイを胸ポケットに入れて、風を乗り切る。

やがて───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───っ!?ここは・・・・・・!」

 

強制転移の暴風から解放され、目を見開くと俺達はさっきまでいた遺跡の内部ではなく、ヴォークリンデの空に浮かんでいた。

 

「一瞬で遺跡の外に転移させられた!?」

 

「ってことはもしかして・・・・・・!」

 

驚きながら話していると、突如何処からか凄まじい雄叫びが響いてきた。

 

「グオオオオオォッ!!」

 

『『『っ!』』』

 

「今の声は・・・・・・!」

 

「パパ、あそこです!」

 

『『『!』』』

 

ユイの指さした所には、一頭の黒い巨大な竜がいた。そして、その竜の頭上には『The Fafnir』と表記され。それには、ボスの証である『The』の固有名詞が付いていた。

 

「あれが、ここのボス・・・・・・!」

 

「デッカイわね・・・・・・!」

 

「ファフニール・・・・・・北欧神話や『ニーベルングの指輪』に登場する怪物・・・・・・ドラゴンね」

 

「予想はしていたけど、北欧神話系のボスだね」

 

現れたボス───ファフニールを、神話系統の書物を読むシノンとリーファが見てそう言う。

 

「ボスがなんだろうと関係ない。倒さないと先に進めないんだからな」

 

「そうだね・・・・・・!」

 

「それじゃ、戦闘開始だ!」

 

『『『おう!』』』

 

俺の声に、レイン達が返すのと同時に、ファフニールがよく響く雄叫びを上げて俺達に向かって突っ込んできた。

 

「散開っ!」

 

愚直に真正面から突っ込んで来たファフニールを俺達はすぐにその場から離れて回避する。

 

「グルオオオオォ!」

 

「はああああーー!」

 

「やああああーー!」

 

俺達が元いた場所で動きを止めたファフニールに、俺とユウキが背後から突進する。

 

「グギャアアアッ!」

 

不意打ちに近い、背後からの攻撃に反応できなかったファフニールは甲高い絶叫を上げる。

今ので、ファフニールの三段ある膨大なHPがほんの僅かだが削れた。が、さすが竜種系なのか、防御もHPも高い。恐らく、攻撃も高いだろう。

 

「ちっ、さすがにボスなだけあって硬いな・・・・・・」

 

「うん。生半可な攻撃は通らないかも・・・・・・」

 

一撃を入れ、すぐにその場から離脱した俺とユウキは今の一撃で感じたことを口にする。

 

「うおおおーっ!」

 

「ぜりゃああーっ!」

 

立て続けにエギルとクラインがそれぞれの武器でファフニールを攻撃する。しかし、二人の攻撃を食らっても尚、ファフニールの膨大なHPはあまり減っていなかった。

 

「くっそー!硬ぇ!」

 

「ボヤいてる暇なんかねぇぞクライン!」

 

「わぁってるよ!」

 

「なら、これはどう!」

 

クラインとエギルの攻撃の後に、ストレアが遠心力を利用して思い切り、両手剣『フォールクヴァング』を振り払う。

 

「グギャアアア!」

 

ストレアの両手剣はファフニールの羽の付け根部分に当たり、ファフニールは悲鳴を上げた。悲鳴を上げたファフニールはそのまま、ストレアへ鋭い鉤爪で切り裂き攻撃をする。

 

「なんの!」

 

ストレアは、ファフニールの攻撃をクルっと回って上手く回避し、攻撃範囲(レンジ)内から離れる。

 

「うーん、やっぱりまだ慣れないなあ〜」

 

「飛行戦闘ですか?」

 

「うん」

 

「まあ、私達元々陸戦しかやってなかったからね」

 

ストレアの言葉に、ランとアスナが返す。

まあ、確かに、元SAOプレイヤーである俺達にとってこのALOの醍醐味である、空を飛ぶということは慣れるのに多少の時間を要した。それは空中戦闘も同じく、地上戦とは違い空を飛んで戦うため、SAOで地上戦しかやってなかった俺達には苦難を強いた。

もっとも、それも時間と経験の末に何とかなったが。

 

「まずは、敵の視界を奪うのが定石よね」

 

そう言うシノンの声と同時に、シノンの弓。『アッキヌフォート』から放たれた鋭い一矢がファフニールの目元に向かって放たれた。

 

「グギャアアアッ!」

 

しかし、放たれた矢はファフニールの起した風───暴風ともいえる風の障壁に阻まれ、勢いを失った矢は下に向かって落ちていった。

 

「ちっ・・・」

 

舌打ちを打つシノンは次矢を構える。

そこに。

 

「なら、私のこれはどうかな!」

 

「っ!レイン!」

 

声のした上空では、ファフニールの上を取ったレインが両手の剣を広げていた。

レインのやろうとしていることを瞬時に理解した俺達はファフニールから十分に距離を取る。距離を取ると───

 

「穿いて!───サウザンド・レイン!」

 

レインの周囲に現れた剣が、蒼白のライトエフェクトを輝かせてファフニールの巨体に雨のように降り注いだ。

 

「グギャアアアアアッ!!」

 

雨のように降り注いだ蒼白の剣は、ファフニールの巨体に次々と突き刺さりファフニールのHPを削っていく。

ファフニールも避けようとするが、さすがにその巨体では避けられるはずも無く、至る所に蒼白の剣が刺さる。やがて、数十は超す剣の雨が降り止むとファフニールは大きな声で雄叫びを上げた。それと同時に、ファフニールの背後に赤銅色の巨大な魔法陣が描かれ、展開された。

 

「あれは火属性の魔法!?」

 

リーファが驚く中、ファフニールの背後の魔法陣の前に数十は軽く超える火球が現れた。

 

「アスナさん!」

 

「ええ!」

 

すぐさまアスナとランが炎熱耐性のバフを掛けてくれる。

 

「パパ!火球攻撃来ます!2・・・1・・・0!」

 

ユイのカウントダウンが0と言うのと同時に、ファフニールの背後の魔法陣から幾つものの火球が放たれた。俺達はその火球を巧みに避けて行く。

 

「ぜりゃあ!」

 

火球攻撃を避けて、俺は動きを止めているファフニールに突っ込んで斬撃を食らわす。

 

「グルオオオオォ!」

 

「遅い!」

 

ファフニールが鉤爪で俺に攻撃してこようとするが、そこにラムとリーザがファフニールに攻撃し、ファフニールの攻撃をキャンセルさせる。

 

「ギシャアアアアッ!」

 

「させねぇよ!」

 

「うおおおおぉーっ!」

 

「やああああぁーっ!」

 

「せいやあああぁー!」

 

ブレスを放とうとするファフニールに、頭上からエギルの斧とリズの片手棍がファフニールの頭部にヒットする。ボスモンスターとはいえ、頭蓋骨が陥没してないだろうかと思わざるを得ないほどの一撃だった。エギルとリズに続いて、シリカが愛竜のピナとともにファフニールを攻撃する。

 

「リーファ!」

 

「はい!」

 

さらにシノンの矢とリーファの風魔法がファフニールを襲う。

リーファの風魔法で速度が上昇したシノンの矢は、吸い込まれるようにファフニールの羽を穿つ。

 

「グガアアアァァーーッ!」

 

絶叫をあげるファフニールに、

 

「やアアァァーーっ!」

 

「はああああーーっ!」

 

ユウキとアスナのソードスキル、《マザーズ・ロザリオ》と《スターリィー・ティアー》がファフニールの胴体を貫く。

さすが二人のOSS───元《紫閃剣》と《神速》の最上位ソードスキル。防ぐ事すらままならなく、ファフニールのHPは大きく減少する。この時点で、ファフニールのHPは全体の半分───二段目の半分近くにまで減っていた。恐らく、レインのOSS《サウザンド・レイン》もだが、さっきの二人のOSSの当たりどころが弱点だろう。二人のOSSはファフニールの腹部に命中していた。たぶん、ファフニールの腹部までは硬くないのだろう。

 

「っ!みなさん、ボスの攻撃パターンが変わります!注意して下さい!」

 

『『『了解!』』』

 

ユイの言葉に俺達は気を緩めずにいく。

幾ら、この世界はSAOではなくALO───死んでも生き返れる世界とはいえ(死んでもそれ相応のペナルティがあるが)、俺達にとって、この世界VRMMO、ALOは俺達が生きている第二の世界だ。現実世界(リアル)仮想世界(バーチャル)。例え、ゲームの世界だろうと、俺達は今ここに、生きている。あの世界と比べ、この世界は死に戻り(リブァイブリターン)が出来る。あのデスゲームの世界を経験した俺にしてみれば、「死んでもいいゲームだなんて、ぬる過ぎるぜ」と言っても過言ではない。恐らくそれはレインやアスナ、ここにいるあの世界───SAOを経験した者にしか判り得ない事だろう。

この世界はデスゲームではない・・・・・・・。この世界では実際に死ぬ事なんてない普通のゲーム。だが、俺達にとってこのゲームは、ただのゲームではない。一分、一秒とその時間が俺達がいま此処にいる証にして、証拠。生きている、という確かなデータ(結晶)なのだ。

それは、何物にも代えられない。俺達の大切なモノ。

故に、俺達はこの世界を全力で楽しみ、この一瞬を生きて過ごしているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三十分後

 

 

 

「グルオオオオォ!!」

 

「ブレス攻撃来ます!3・・・2・・・1・・・0!」

 

ユイのカウントダウンが0になると同時に放たれた、ファフニールの風のブレスを大きく避けて範囲から逃れる。

 

「そこっ!」

 

ブレスを放ち終えたファフニールに、シノンが矢を放つ。

放たれた矢は、一直線に風を突き切るように飛翔しファフニールの左目に突き刺さった。

 

「グルァァァァァっ!!」

 

一際高い絶叫を迸らせてファフニールは身悶えする。

さすがにえげつないとしか言いようがない。しかも、さっきの矢はソードスキルなので、さらに激痛がファフニールには走ってるだろう。だが、ここで攻撃を止める俺たちではない。

 

「いまよ!」

 

アスナのその声とほぼ同タイミングで、俺達はファフニールにフルアタックを仕掛けた。

 

「はああああーーっ!!」

 

「せいやぁぁぁーーっ!!」

 

次々に上位ソードスキルがファフニールの体に叩き込まれ、みるみる内にファフニールの残り一段を下回るHPが削られていく。

 

「ガアアアアアアアアアッ!!!」

 

『『『っ!』』』

 

無作為に攻撃したファフニールに目を見開く。 ファフニールは自身に風の障壁を張り、俺達を近づけないする。さらに、ファフニールはその風の障壁で俺達を吹き飛ばした。

 

「ぐっ!」

 

「大丈夫ですかパパ!」

 

「ああ。さすが、このスヴァルトエリアのボスだな・・・・・・。アインクラッドの階層ボスと同じくらいだ」

 

胸ポケットから顔を出して心配するユイにそう返すと。

 

「感心してる場合じゃないと思うよ、キリトくん?」

 

俺と同じ、双剣を携えたレインが呆れたように言ってきた。

 

「はは。すまんすまん」

 

「まったく。キリトったら」

 

呆れながらも、声に笑いが含まれているレインの声を聴きながら、

 

「───ファフニールの残りHPはあと三.五割ほど・・・・・・か」

 

「うん。どうしようか?」

 

「ふっ。決まってるだろレイン」

 

「ふふ。だね」

 

「ああ」

 

言葉を一旦区切り、同時に言う。

 

「「───今出せる全力を持ってボスを倒す!」」

 

レインが入れば、出来ないことは無い。

あの世界でずっと隣にいた、最高の相棒(パートナー)にして最愛な人。俺一人では出来ないことも、レインと一緒なら。俺たちに、出来ないことは無い!

 

「ラン!アスナ!ヤツの動きを止めてくれ!」

 

「「了解!」」

 

俺の声に、元攻略組の司令塔であるアスナとランが指示を飛ばす。

 

「エギルさんとストレアちゃん、ボスのヘイトをお願いします!」

 

「まかせろ!」

 

「オッケー!まかせて!」

 

「ラムさん、リーザさんは私と一緒に!」

 

「はい!」

 

「ええ!」

 

「シノのんはそのまま遠距離からの支援を!」

 

「了解よ!」

 

「リーファちゃんとユウキは畳み掛けて!」

 

「うん!」

 

「わかった!」

 

「フィリアちゃんとシリカちゃん、リズはボスの羽根を!」

 

「まかせて!」

 

「は、はい!行くよピナ!」

 

「キュル〜!」

 

「まっかせなさい!」

 

二人の指示により、より的確にみんなが動く。ファフニールの爪がエギルとストレアを襲うが、二人はそれを斧と両手剣で受け止めるか、逸らし、ファフニールを惹き付ける。ファフニールのブレスなどはシノンが矢でキャンセルさせ、リーファとユウキが素早く動き、ファフニールのHPを削る。フィリア、シリカ、ピナ、リズはファフニールの羽根を斬りつけ、機動力を落とす。

そして。

 

「ラムさん!リーザさん!」

 

「はい!いくよリーザ!」

 

「ええ!」

 

動きが止まった所に、ラムの刀とリーザの槍が迫る。

 

「はああああああっ!」

 

「やああああああっ!」

 

二人の武器にはそれぞれライトエフェクトが輝いてる。二人のOSS───元《抜刀術》と《無限槍》のソードスキル。《真蒼》と《ミスティカル・レインズ》がファフニールを襲う。

 

「グルオオオオォォォッ!」

 

「させませんよ!」

 

攻撃を食らいながら、ラムとリーザに攻撃しようとするファフニールに、ランが二人を支援する。

 

「せやあああああーっ!!」

 

ランの振るう剣───いや、鞭のようにしなる剣はファフニールを攻撃する。

あれが、ランのOSS───元《変束剣》最上位ソードスキル《ラスティー・ネイル》だ。ランは、自身の剣《リルエスパーダ》を振るい、ラムとリーザに当たらないように攻撃する。ランの技量もだろうが、ラムとリーザの二人もランの剣が次どこに来るのか、分かっているかのように避ける。

 

「今です!キリトさん!レインさん!」

 

「ああ!」

 

「うん!」

 

ランたちとスイッチし、俺とレインは剣を構える。

ラン達のお陰でファフニールの動きは止まっており、今は格好の的になっている。だが、ファフニールの残りHPは一割とまだある。俺とレインのソードスキルでも倒せるかどうかは分からないだろう。確率は二分の一。少しでも、確率を上げるなら、どうするべきか?それは、簡単だ。二つを一つにしてしまえばいい。

 

「いくぞレイン!」

 

「うん!キリトくん!」

 

「「はああああああーーっ!」」

 

動きを取り戻したファフニールは俺とレインの攻撃を逃れようとするが、遅い。

一瞬で距離を詰め、ファフニールの懐に潜り込み、ソードスキルを放つ。そのソードスキルは、俺とレインの確かな絆を表したモノだ。

 

「うおおおおおぉぉぉぉっ!!」

 

「やあああああぁぁぁぁっ!」

 

一撃一撃と重い攻撃が、ファフニールの肉を抉る。

 

「ギシャアアアアッ!!」

 

瞬く間にファフニールの残りHPは削り取られ、やがて。

 

「「───ワールドエンド・オーバーレイ!」」

 

俺とレインのソードスキルの終撃と同時に、三段あった膨大な量のHPは0になり、スヴァルトエリア浮遊草原エリアのボス、ファフニールはその巨体をポリゴンへと変え、虚空の彼方へと消えていった。

 

 

 



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LS編 第154話〈次の島へ〉

 

〜キリトside〜

 

 

レインとの合体OSS、《ワールドエンド・オーバーレイ》を放ち浮遊草原のボス、ファフニールを討伐した俺達の目の前には、たった一文。『Congratulation』、と金色のフォントで浮かび上がっていた。その一文を見た俺達は。

 

「これで草原の島はクリアだな!」

 

「みんなすごかったよー!」

 

どこの世界でも、ボスを倒した時の快感は同じでみんな歓声を上げていた。

 

「やったねキリトくん!」

 

「ああ!お疲れさまレイン」

 

「うん。お疲れさま、キリトくん」

 

背中の鞘に双剣を仕舞った俺とレインはハイタッチをする。

辺りではラムやリーザが同じく拳を軽く打ち合ったり、クラインが。

 

「お前ら、オレ様の勇姿をちゃんと見てたかー?」

 

と言っていたりしていた。

そのクラインの言葉にシノン達は。

 

「えっ?」

 

「あ・・・・・・」

 

「えーっと・・・・・・」

 

目を逸らして言い淀んでいた。

 

「ええっ!?ちょ・・・・・・なんだよみんなしてオレから目を逸らすなよ!」

 

嘘だろぉー!?と言うような声を出すクライン。そのクラインの動作にシノン達はクスっ、と笑い。

 

「ふふ、冗談よ。仲間の動きくらいちゃんと把握してるわ」

 

「日頃の行いがあるから、プラマイゼロってところね」

 

「特に最近のお前の動向から考えれば、十分評価されてるだろ」

 

とクラインに言った。

まあ、確かにエギルの言う通り最近のクラインの動向から考えたら十分評価されているのかもしれない。例としてあげるなら《トントゥの花》を入手したときとかだ。

 

「そんなぁ・・・・・・」

 

「まぁまぁ、無事に大ボスを倒せたんだしよかったじゃない」

 

嘆くクラインを半ば無視してフィリアが言う。

 

「うん、初のフィールド攻略だもんね!」

 

「そうだね。すっごく楽しかったよー!」

 

「パパ、次の島が開放されたようです」

 

「よし!みんな、行こう!」

 

ユイか次の島が開放されたのを聞いた俺達は、次の島に向けて島の中央から更に北の方へ飛んで行った。

しばらくして俺たちの視界に、遠くからだが新しい島が見えた。

 

「わぁ・・・・・・!やったねキリトくん!次の島が開放されたよ!」

 

「おおっ、島が見えてきたな!」

 

「今度は砂漠の島ね。この草原の島とは地形が全然違うみたい」

 

遠目から見ても、次の島は砂漠の島だとわかった。

 

「あれが次の島なんだね、キリトくん」

 

「ああ。砂漠の島にはどんな冒険が待っているのか楽しみだなレイン」

 

「ふふっ、そうだね!私も楽しみでしょうがないよ!」

 

「ああ!みんな、この調子で次の島の攻略も頑張って行こう!」

 

『『『おう!!』』』

 

「パパ、次の島に行くにはあの転移門を経由して行けるみたいです」

 

ユイの指差す所には、前はウンともスンとも動いてなかった転移門が起動していた。

 

「前は使えなかった転移門が起動してるな」

 

「次の島にはこれを使って行けるんだね」

 

「ああ、早速行ってみるか!」

 

俺達はさっそく、その転移門を有効化(アクティベート)して次の砂漠の島へと転移して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砂丘峡谷ヴェルグンデ

 

 

浮遊草原ヴォークリンデにあった、新たな転移門から転移した俺達の目に写ったのは広大な砂丘峡谷だった。

 

「ここが新しい島・・・・・・」

 

「はい。ここが《砂丘峡谷ヴェルグンデ》ですね!」

 

「砂漠の島か・・・・・・」

 

見渡す限りでは、周囲は峡谷に囲まれ岩などが多数あった。

この雰囲気は、アインクラッドでも感じたことない感じだった。

 

「いままでにない雰囲気のフィールドよね。レアな素材が眠ってそうだわ」

 

「もお、リズっちは本当に素材に眼がないんだね」

 

「なによぉー。素材に眼がないのはレインもでしょうが」

 

「あははは!まあね。それもだけど、新しいクエスト攻略が気になるかな」

 

「ま、それもそうね」

 

「ねえねえ、まずはどこから攻略していけばいいのかな?」

 

「ヴォークリンデの時みたいにフィールドを一周してみるのはどうでしょうか」

 

「そうですね。とりあえず、このフィールドを回って見ましょうか」

 

「それじゃそうするか」

 

この島―――砂丘峡谷ヴェルグンデを一周してみる事にし、俺達は転移門から飛びだち、奥へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空都ライン

 

 

「よし、それじゃあ砂漠の島の攻略作戦会議、始めるぜ!」

 

砂漠の島―――砂丘峡谷ヴェルグンデを一周した後、俺達は空都ラインに戻り、エギルの店のカフェでヴェルグンデの攻略作戦会議をしていた。

クラインの声に続いて話す。

 

「砂漠の島での最終目的はフィールドの大ボスを倒すことでいいよな」

 

「まあ、それが一番ですよね」

 

俺に続きランが当然、と言うように言う。レイン達も首を縦に頷き返す。

 

「ダンジョンがいくつかあったから、その中のどこかにフィールド攻略に関連したアイテムがあるんじゃねぇか?」

 

「確かに、かなりの数のダンジョンがあったわね」

 

「ええ。未確認のもあるかもしれませんが、地形からしてまだかなりのダンジョンがあるはずです」

 

「でも、それをひとつずつとなると・・・・・・」

 

「かなりの時間がかかりますね」

 

ラムとリーザの言う通り、砂丘峡谷にあるダンジョンは数が多い。それをひとつずつとなるとかなりの時間がかかること間違いない。

 

「そうね。・・・・・・キリトはどう思う?」

 

「ああ。パーティを二、三に分けたほうがいいだろうな」

 

シノンに訊ねられた俺は腕を組みながら返す。

そこにマップを見ていたフィリアが。

 

「どんな強さの敵がいるかわからないし、転移門近くのダンジョンから攻略するのがいいと思うんだけど・・・・・・」

 

と言った。

 

「そうだな」

 

転移門の近くにあるダンジョンはふたつだ。

 

「転移門の近くダンジョンはふたつだけど、どちらから攻略する?」

 

ユウキがそう言うと、エギルが口を挟む。

 

「いや、もう少し情報を集めてから攻略だな」

 

「なんでですかエギルさん?」

 

「あ、そっか!専用のアイテムとかが必要かもしれないからだね!」

 

「そうですね。では、情報を集めつつ、準備が出来たら近くのダンジョンで探索開始ですね!」

 

「それじゃあ、砂丘峡谷ヴェルグンデ。攻略開始!」

 

『『『おお!!』』』

 

俺達は腕を振り上げヴェルグンデへの攻略に勢いを付けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宿屋 金冠の雄鶏亭(グリムガンビ)

 

 

エギルの店で作戦会議を終えた後、俺とレインはユイとストレアと共に宿屋の金冠の雄鶏亭にいた。

 

「ふう〜。草原エリアのボス倒せて良かったぁー」

 

「ホントだよぉ〜。なかなか手強かったねあのボス」

 

「強さ的には、アインクラッドの五十層くらいですね」

 

「うわぁー。さすが高難度エリア。ボスのレベルも尋常じゃないな」

 

レインの淹れたコーヒーを飲みながらユイたちと今日のボス戦について話していた。

 

「それにしてもさすが竜種だったな。攻撃力も防御力も半端なかったぜ」

 

「あははは。それはそうだよキリトくん」

 

俺の言葉に、レインは紅茶を飲みながら言う。

 

「やっぱりパパとママはすごいです!」

 

「ユ〜イ、そりゃそうだよぉ。だって、私たちのキリト(パパ)レイン(ママ)だもん」

 

「ふふ。ありがとうユイちゃん。ストレアちゃん」

 

自身の膝の上に座ってるユイの頭を撫でるレイン。

ユイは気持ちよさそうに笑みをうかべる。

そこにストレアが思い出したように言った。

 

「そういえばさ、今日のボス戦でキリトとレインが最後に使ったソードスキルって確か・・・・・・」

 

「はい。SAOでユニークスキルの上位スキル、アルティメットスキル《シンクロ》のソードスキル、《ワールドエンド・オーバーレイ》ですね」

 

「だよね。って、あれ?《シンクロ》スキルって確か【二人で放つソードスキル】だったよね?なんで二人とも使えるの?」

 

「あ、ああ、それはだな・・・・・・」

 

ストレアの問いにさすがの俺も言い淀む。

 

「あれ、ただのソードスキルじゃなくて OSS(オリジナルソードスキル)なんだよね」

 

「OSS!?」

 

俺の言葉に驚くストレア。

 

「もしかして、ふたり同時に放ったソードスキルをひとつとして登録してるの!?」

 

「そうだよ」

 

「ホント、パパとママは仮想世界のあらゆる法則を超えますね」

 

「ユイ、それは褒めてるのか・・・・・・?」

 

ユイの言葉にひきつり笑いを浮かばせて言う。まあ、俺自身もおかしいなぁー、とは思ってるけど。

 

「いやあ、さすがにこれは骨が折れたよ」

 

「だなー」

 

さすがの俺たちでも《シンクロ》ソードスキルの全てをOSSとして登録するのには骨が折れた。正直、《二刀流》や《多刀流》をOSSに登録した方が簡単だった。なにせ、アインクラッドではシステムアシストで発動していたソードスキルを、アシストなしで再現しなければならないのだ。いったい何度、失敗したことか・・・・・・。

 

「まあ、この世界、ALOの機関プログラムがSAOと同じだから出来たんだろうな」

 

「いやいや、普通ふたりでひとつのソードスキルなんか出来ないからキリト」

 

「まま、ストレア。そこは、パパとママですから」

 

「それもそっか。今更って感じだね」

 

「もう!ユイちゃん、ストレアちゃん、私とキリトくんを化け物扱いしないでよ!」

 

「「はーい」」

 

「もお」

 

「ははは」

 

家族の団欒を眺めつつ、俺は今ここに生きている幸せを感じた。茅場から託された、俺とレインの娘であるユイとストレアとともにいる時間。みんなと一緒に居られるこの時間が、俺にとってとても心地よかった。

 

「キリトくんも笑ってないでよー」

 

「はは、すまんすまん」

 

家族との、この幸せな時間を、俺は楽しんで、思い出に刻むようにして過ごして行った。

 

 

 

 

 

 



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LS編 第155話〈ストレアからのプレゼント〉

 

〜キリトside〜

 

砂丘峡谷ヴェルグンデの攻略を始めて数日たったある日、宿屋で俺とレインでいた所に突然、娘であるストレアが笑顔で部屋に入ってきた。

 

「レインー。アタシね、レインにプレゼントを作ったの!」

 

部屋に入ってくるなり、唐突にレインにそう言うストレア。ストレアの言葉に、目を見開いて驚きながらレインは返す。

 

「ええっ?!私に?!」

 

「うん。いつもお世話になってるから」

 

「そ、そんなことないよストレアちゃん」

 

少し照れたように言うレイン。その顔には笑みが浮かんでいた。

 

「でも私のために作ってくれるなんて、すごく嬉しいよ。ありがとうストレアちゃん」

 

「えへへ、どういたしまして」

 

さり気なく、ユイと同じようにストレアの頭を撫でるレイン。

 

「はい、これプレゼント!」

 

「わぁーー・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ストレアから送られたプレゼントを受け取ったレインの声がだんだん萎んでいった。まあ、それもそのはずで。なにせ、ストレアからレインにプレゼントされた物は───

 

「え、えっと、ストレアちゃん、これってもしかして・・・・・・」

 

「下着だよ♪」

 

薄紅と白を基調とした女性用の下着だったのだ。

さすがの俺も引き攣り笑いを浮かべるしかなく。

 

「ま、またこれは・・・・・・すごいな」

 

と、引き攣り笑いを浮かべながら言った。

まさかプレゼントが女性用の下着だとは微塵も思わなかったのだ。いや、プレゼントをしたのがストレアからの時点で普通のプレゼントではないということを頭に入れて置かなかった俺のミスなのかもしれない。

 

「どう?かわいいでしょ?レインに似合いそうなのを一生懸命一生懸命考えて作ったんだー」

 

「ん?作った?」

 

「うん。細かい刺繍にもこだわっててね、結構苦労したんだー」

 

「へ、へぇ・・・・・・。じゃなくて!これストレアが作ったのか!?」

 

「そうだよ」

 

「マジか・・・・・・」

 

まさかのストレアの手作りに仰天する俺は、レインの手にあるプレゼントされた下着を見る。

 

「ちょ、ちょっとキリトくん!そんなに見ないでっ!」

 

「あ、す、すまん。見事な刺繍だなーって感心してたんだよ」

 

「そ、それでもだよ!」

 

「レイン、気に入らないかな?」

 

「う、ううん!そんなことないよストレアちゃん!すっごくかわいいと思うよ!た、ただ、下着を作ってくれるなんて思ってなかったからびっくりしちゃった」

 

「そっか!喜んでくれてよかったぁ♪」

 

レインの言葉に喜ぶストレア。

 

「・・・・・・そうだっ!レイン、今着けてみてよ!」

 

笑顔を浮かべて、無邪気な笑顔のままレインに言った。

突然のストレアの言葉に、さすがのレインも面を食らったような表情を見せる。

 

「ええっ!?い、今!?」

 

「うん!折角だから、レインがその下着を着けてるところをみたいな♪」

 

「で、でも、その、キリトくんがいるから・・・・・・」

 

レインのオドオドと、ストレアからプレゼントされた薄紅と白を基調とした下着を握りしめながらこっちを見てきた。

 

「あー。俺外に出てようか?」

 

歯切れのが悪い感じに俺はそう提案する。

 

「ほらっ、キリトもこう言ってることだし」

 

「え、ええっと、その。キリトくんを外に追い出すなんて、そんなの悪いよ」

 

あたふたと言うレインにストレアは、

 

「じゃあ目の前で着替えようか♪」

 

と、いつもの悪気のない笑みを浮かべて言った。

 

「えっ・・・」

 

ストレアの言葉にイマイチ理解できなかった俺を他所に、レインは。

 

「なっ、なんでっ!?ストレアちゃんそれだけはダメだよ!」

 

テンパったように慌てた。

やがて諦めたように、レインはストレアに。

 

「わ、わかったよぉ・・・・・・。ちょっとそこの陰で着替えてくるからね」

 

と、言った。

 

「あ。キリトくん」

 

「な、なんだ」

 

「絶っっー対、覗かないでね!!」

 

「あ、ああ・・・・・・もちろん」

 

レインの念押しに苦笑いを浮かべて返す。

 

「それじゃあ決まりね♪さぁさぁ、レッツゴー!」

 

「わっ!ス、ストレアちゃん、押さないでよー!」

 

レインの背中を押して部屋の影に向かうレインに、俺は頭の中で。

 

「(レイン、うまくストレアに乗せられたな・・・・・・)」

 

と、呟いたのだった。

まあ、レインは押しに弱い所があるから仕方が無いといえば仕方ないのだが・・・・・・。

そう思っていると、俺の耳に着替えていると思うレインとストレアの声が聴こえてきた。

 

 

 

『よし、それじゃあ装備を全解除しようか』

 

『う、うん・・・・・・。あ、あのねストレアちゃん・・・・・・。ちょ、ちょっとだけ後ろ向いててもいいかなぁ?』

 

『え?なんで?』

 

『え、えっと、着替えてるところをそんなにじっくり見られると恥ずかしいっていうか、その・・・・・・』

 

『えー、女の子同士なんだから、別に恥ずかしがる事ないじゃん♪ほらっ、脱いだ脱いだ!自分で脱がないんならあたしが脱がしちゃうよーっ』

 

『ひゃあっ!?きゃっ!ス、ストレアちゃん、自分で脱ぐからーっ!っていうか、装備全部解除出来るの私だけだよー!』

 

『うふふ、遠慮しないでよー』

 

『遠慮なんてしてないよー!キ、キリトくん、助けてぇぇぇーーー!!』

 

『良いではないか〜、良いではないか〜〜♪』

 

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

二人の、なんというかその、百合百合しい会話にさすがの俺も困惑した。

 

「(こっちまで丸聞こえなんだけど・・・・・。それとレイン、スマン。助けに行けられそうにない・・・・・・)」

 

レインからの救援要請(?)に俺は無言で、頭の中で声に出さずに謝ったのだった。さすがにあの中に飛び込んで行く勇気は、さすがに俺は持ち合わせていない。

それからしばらく待つこと数分後───

 

「キリト、お待たせー!」

 

陰の方に背を向けて椅子に座っているところに、後ろからストレアの声が聞こえた。

 

「ああ、やっと終わっ――」

 

ストレアの声を聞き、後ろを振り向いてストレアの方を見た瞬間、俺は目をパチクリとし、五秒後。

 

「・・・・・・ってええええええ!?」

 

部屋全体に響き渡るほどの絶叫を上げた。

何故なら、そこにいたのは───

 

「どーお?似合う?」

 

「ぅぅ・・・・・・」

 

セクシーポーズで立っているストレアと、顔が真っ赤に染っているレインが立っていた。それも───なぜか二人とも下着姿で。

 

「な。なんで下着のまま・・・・・・?」

 

驚きを隠せずに俺がそう訪ねると。

 

「キリトだけ見せてあげないのはかわいそうだなーって思ってそのまま出てきちゃった♪」

 

「そ、そうか・・・・・・」

 

なんというか、相変わらずのマイペースなストレアの返答だった。

 

「っていやいやいやいや、おかしいだろ!それになんでストレアまで!」

 

「レイン見てたらあたしも着たくなっちゃったの。自分用も作ったんだよー」

 

「へ、へぇ・・・・・・」

 

若干引き気味に自作であろう、黒紫の下着を着けたストレアの言葉に返す。

そこに。

 

「ストレアちゃん、やっぱりこの格好・・・・・・恥ずかしいよー・・・・・・」

 

「手で隠したらもったいないよ。もっと堂々としてなきゃ!」

 

「ひゃあっ!!なんでストレアは堂々としていられるのぉ!?」

 

「(いやいや、ストレアは堂々としすぎだろ!?)」

 

ストレアとレインのやり取りを見て、ストレアにそう思った俺は決して間違ってないはずだ。そう自分に言い聞かせていると。

 

「ねぇキリト、レインの下着どう思う?」

 

ストレアがレインの着けてる下着について聞いていた。

改めてレインの着けてる薄紅と白の下着を見る。

 

「うん。やっぱり装備すると細かい装飾までよく分かっていいな。このレースの形状なんて・・・・・・」

 

「え、ちょ、ちょっとキリトくん!なんで急に真面目に語り出してるのっ!?」

 

「ご、ごめん!つい・・・・・・」

 

どうやら無意識の内にレインの下着の評価をしてしまったらしい。そんな俺を見てストレアはフフん♪と笑みを浮かべ。

 

「ふふーん、やっぱりキリトも下着に興味あるんだね〜!」

 

と、俺の方を向いて言ってきた。

 

「へっ!?」

 

「そしたら今度はどういうのを作ろうかなー。かわいい系と言ったらフリルとレース、あとリボンもいいよね。あ、清楚感を残したいから色はパステルカラーかな。例えば・・・・・・薄いピンク色の上下で、フチにはアイボリーのレース。パンツの両サイドにはリボンがあって・・・・・・ううん、この際紐にしちゃおうかな。どう?あと何かリクエストある?」

 

「リ、リクエスト!?」

 

突然のストレアの質問に驚愕して、声を上げる。

 

「うん。もっと、こう、透け感を出した方がいいとか、布の面積を少なくした方がいいとか」

 

「え、えーっと・・・・・・」

 

ストレアの言葉に、思わずそれを着けているレインの姿を想像する。

 

「キ、キリトくん!想像しないでよお!!」

 

「え、いや、してない!してないからな!?」

 

「嘘だよっ!私にはキリトくんの考えていることが全部分かるんだから!」

 

レインは怒ったように、縮地でも使ったのかと言わんほどの速さで俺の懐に潜り込んできた

潜り込んできたのは良いのだが───。

 

「レ、レイン、近い・・・・・・。自分が今下着姿だって事忘れてないか?」

 

そう。レインは今、上下ともお揃いの下着姿なのだ。

レインの紅い髪に、スラリとした手足。肉付きのいい腰に年相応の豊かな胸。そして、その容姿に似合う薄紅と白の下着。正直、今ここにストレアがいなかったら押し倒していたかもしれないほどに、扇情的で、魅力的な光景だった。

俺の言葉に、今自分がどんな恰好なのか思い出したレインは、視線を自身の身体に向けて、

 

「あっ・・・・・・」

 

顔をリンゴのように真っ赤にした。

 

「//////ーーっ!も、もうっ・・・・・・!キリトくんのエッチぃっー!わ、私着替えてくるからぁっ!」

 

そう言ってレインは部屋の陰に走り去って行った。

 

「・・・・・・はぁ」

 

「ふふ、次回作も期待しといてね!」

 

「か、勘弁してくれ・・・・・・」

 

恥じらう様子のないストレアの言う次回作に、今から俺は頭が痛くなったような感じがしたのだった。

その後、戻ってきたレインによりストレアも着替え、着替え終わった後ストレアは何処かに行ってしまったのだが、俺とレインはなんとも気まづい空気の中を、ユイたちが帰ってくるまで過ごしたのだった。

 

 

 



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LS編 第156話〈家族写真〉

 

〜キリトside〜

 

スヴァルトエリアの砂丘峡谷ヴェルグンデの攻略が順調に行っているある日。

 

『もしも〜し。キリトくーん、いるかな〜?』

 

『パパ、わたしです!』

 

『キリト〜、開けて〜!』

 

宿に一人でいる所、レイン達がやって来た。

 

「レインとユイ、ストレアか。今ドアを開けるからな」

 

ソファから立ち上がり、ドアを開ける。

 

「パパーっ!」

 

ドアを開けると、勢いよくユイが抱きついてきた。上手く受け止めきれず、肺の中の空気が一気に吐き出されたが。

 

「うおっ。ユイ、いきなり抱きついてきてどうしたんだ?」

 

「ふふ。突然押しかけてゴメンねキリトくん」

 

「ああーっ!ユイずるい〜!」

 

俺の腰に抱きつくユイを見ながらレインとストレアが入ってくる。

ストレアのは少し違う気もするけど。

 

「あはは。いや、かまわないよ」

 

抱きついたままのユイの頭を撫でながらそう答えると。

 

「あのっ、実はパパにお願いがあるんです」

 

「ん?なんだユイ。なんでも言ってみろ」

 

ユイがお願いするのは珍しいと、少し驚きながらも俺はレインとの愛娘であるユイのお願いについて訊ねる。

 

「パパとママとわたし、ストレアの四人で写真を撮りたいんです!」

 

「四人で写真・・・・・・ああ、そうか、家族写真か!」

 

ユイの写真という言葉を理解した俺はああ、と声を出す。

 

「うん。私とキリトくん、ユイちゃん、ストレアちゃん。私たち四人だけの家族写真。確か、まだ一枚も撮ってなかったよね?」

 

「そう言えばそうだったな」

 

ユイとストレアがこの世界。 ALO(アルヴヘイム・オンライン)に来て、早数ヶ月。俺のナーヴギアのローカルメモリーに保存されていたユイとストレアのデータを、それぞれコンバートという形でこの世界に顕現させた。二人と再び会えた時、アスナたちはもちろんのこと、俺たち四人だけの時のレインの歓喜の様子と言ったらそれまた凄いものだった。

あの時。SAO(ソードアート・オンライン)の終焉を、茅場晶彦とともに見届けた際、茅場から直接ユイとストレアの事を頼まれたのだ。生まれは違い、ヒトじゃなかろうとも俺とレインにとって、ユイとストレアは俺達の大切な娘。家族だ。親として、またこうして二人と会えたことが何より嬉しかった。それはレインだけではなく俺もだ。

本来なら、その時撮れれば良かったのだが、生憎その時写真を撮る記録結晶らが無かったため撮れず、今に至る。

 

「ところで、どこで撮るんだ?」

 

「折角だから、景色のいい場所がいいかも」

 

「あたしもレインのにさんせーい!せっかく家族写真撮るなら、やっぱり綺麗で景色がいい場所がいいもん!」

 

「綺麗で景色のいい場所か・・・・・・」

 

レインとストレアの提案に頭を巡らせる。

 

「となると、街中じゃなくてフィールドの方がたくさんありそうだな」

 

綺麗で、景色のいい場所となると、どうしても街中よりフィールドの方が多くなってしまうのだ。SAOでも、全面花畑通称フラワーゾーンで有名な第47層フローリア。他に47層に似てる第93層チグアニや、第4層ローピアなど圏内で綺麗な場所はあるが、やはりどうしても景色のいい場所となると圏外が多くなってしまう。

それはもちろん、このALOの中でもで。リーファとラムが種族のシルフの首都スイルベーンや、ランとアスナが種族のウンディーネの領地エリアの湖畔地帯など綺麗で景色のいい場所はあるにはあるが、やはりそれは限定的で大半はフィールドに存在する。

 

「ユイは候補とかあるか?」

 

発案者であるユイにも聞いてみると。

 

「いえ、特には・・・・・・。四人で決めようかな〜って思っていたので」

 

と。少し控えめな答えが帰ってきた。

 

「そっか。それじゃ、まずは撮影場所を探しに行くか」

 

「わぁい!四人で空のお散歩ですね!」

 

「ふふっ、ユイちゃんすごく楽しそう」

 

「あたしも楽しいよー!」

 

「早速出発です!」

 

こうして俺たち家族は家族写真を撮るための場所を探しに行くことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浮遊草原ヴォークリンデ

 

 

家族写真を撮る場所を探し始めて数時間が経ち、俺たちはスヴァルトアールヴヘイムの浮遊草原ヴォークリンデにやって来ていた

 

「うーん、なかなかピンとくる場所がないなぁ」

 

「ホントだよ〜」

 

「中々いい場所が見つかりませんね」

 

「そうだね」

 

最初俺たちはスヴァルトエリアからALO本土に行き、様々なエリアを回った。サラマンダーの領地である砂漠地帯やスプリガンの領地である遺跡地帯などそういうのは予め除外し、シルフやウンディーネ、ケットシーの領地や央都アルンといった景色の良さげな場所を廻った。のだが、中々見つからず、フィールドに出てもそれは同様でウンディーネの首都近くの三日月湾の島の海浜で撮る、ってのもどうかと思い色々探してるのだが・・・・・・。

 

「あれ?この辺りのフィールド、なんか閑散してない?」

 

「ほんとだー。何にもない」

 

レインとストレアの言葉通り、この辺りは何も無く、ただ閑散としていた。

 

「別の場所を探すか・・・・・・」

 

そう言って辺りを見回すと。

 

「あっ!」

 

「どうしたのキリトくん?」

 

「あれ見てみろよ」

 

閑散とした場所の。人気のない場所に、一人のNPCのお爺さんがポツンと立っているのが目に入った。さらにそのNPCの頭上には金色の?マークが浮かんでいた。

 

「クエストが発生してますね」

 

「なんでこんな人気のない所にNPCが立ってるんだろう?・・・・・・ちょっと様子見てくる!」

 

俺はそう言うと、走ってNPCの所に向かって行った。

 

〜キリトside out〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜レインside〜

 

 

「えっ!ちょっ、ちょっとキリトくん!?・・・・・・あ〜ぁ、行っちゃった」

 

一人で走ってNPCの所に行くキリトくんに声を掛けるけど、キリトくんは聞く耳を持たずに行ってしまい、私の口から呆れた溜め息が出た。

 

「パパはこういうめずらしいクエストに目がないですからね」

 

「うんうん。これでキリトが行かなかったらキリトのニセモノ!?って思うよ」

 

「うぅぅ。否定したくても否定出来ないよ・・・・・・」

 

愛娘であるユイちゃんとストレアちゃんの言葉に否定出来ない私。まあ、確かに私もキリトくんと同じで、めずらしいクエストには目がないけど。

キリトくんとずっと一緒にいて、私もキリトくんと同じようになってきているのかも・・・・・・。

それはそれとして───。

 

「もおっ!キリトくんってば・・・・・・!ゴメンねユイちゃん」

 

今ユイちゃんとストレアちゃんがいるのにクエスト受けに行くかなぁ!?

ユイちゃんに謝りながら同時にキリトくんに恨み言を声に出さずに言う。

 

「いえ!みんなで冒険するのも楽しいです!わたしはパパとママとまたこの世界で一緒に居られるだけで、とっても嬉しいんです。あ、もちろんストレアもですよ」

 

「わかってるよ〜ユイ〜」

 

ユイちゃんの言葉に笑顔のまま、ユイちゃんに抱きつくストレアちゃん。

 

「うん・・・・・・私も同じだよユイちゃん」

 

「写真はいつだって撮れます。だから今はパパのところに行ってあげましょうっ!」

 

「あっ!もうキリトあのNPCの所に着いてるよ!」

 

「ふふふっ。そうだね。それじゃあ勝手に先に行っちゃったキリトくんのところに行こうか」

 

「はい!」

 

「はーい!」

 

私たちは先に行っちゃったキリトくんを追いかけるため、羽を広げてキリトくんの所に飛んで行った。

 

〜レインside out〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜キリトside〜

 

閑散とした場所にポツンと立っていたNPCに近づくと。

 

「キ〜リ〜トく〜ん?私たちを置いていかないでくれないかなぁー?」

 

上から羽を広げて顔は笑顔だが、目はまったく笑ってないレインがユイとストレアとともにやって来た。

 

「ご、ごめん、つい・・・・・・」

 

目がまったく笑ってないレインに、表情が引き攣りながら即座に謝る。

レインたちを放って来てしまったのだから、これは完全に俺に非がある。

というか俺、レインの尻に敷かれてないか?そう思ってると。

 

「もうー。・・・・・・それで?」

 

「そ、それで?」

 

「クエスト。・・・・・・このクエスト、やるんでしょキリトくん?」

 

「え、いいのか?」

 

レインの言葉に驚いてる俺にユイが。

 

「はい、みんなで挑戦しましょう!」

 

と言って、続けてストレアが。

 

「あたしももちろんやるよー!」

 

腕を上げて言う。

それを見てレインが。

 

「ユイちゃんの方が、キリトくんよりずっと大人だね」

 

片目を瞑って意味有りげに言ってきた。

 

「うグッ・・・・・・。そ、それじゃあお言葉に甘えて」

 

「NPCが困っているみたいですね。パパ、話しかけてみてください」

 

「わかった」

 

ユイの言葉に従い、俺はNPCのお爺さんに話しかけた。

 

「あの・・・・・・どうしたんですか?」

 

「ああ、若者よ・・・・・・。話を聞いてくれるか?」

 

「はい」

 

「以前はな・・・・・・。ここら一帯は美しい自然に囲まれた村だったのじゃ。しかし今ではこのありさま。水が干上がって大地は痩せ、村人もいなくなってしまった。それもこれも、みんなあの怪物らのせいじゃ・・・・・・。あの怪物たちが現れてから川の水がせき止められてしまった。若者よ、どうか怪物たちを倒して村を救ってはくれないか?」

 

お爺さんがそう言い終えると、頭上の?マークが!のマークに変わった。

 

「なるほど・・・・・・討伐系クエストみたいだな。わかりました、任せてください」

 

「おお・・・・・・!ありがとう!」

 

「その怪物たちはどこにいるんですかお爺さん?」

 

レインの質問にお爺さんは。

 

「ああ、もともと川の上流だったところに居座っておる。気をつけるんじゃぞ・・・・・・」

 

と言った。

言い終えたお爺さんは、それ以降何も喋らなかった。

 

「・・・・・・会話が終了したみたいだな。次は川の上流に向かえばいいのか」

 

「川の上流ってどこかなー?」

 

「地面の傾斜的にあっちの方ですね」

 

「よし、行ってみよう!」

 

俺たちは羽を広げて、川の上流であろう場所に向かって飛んで行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛んでからしばらくすると。

 

「あそこにいるのが例の怪物たちか・・・・・・」

 

俺たちは、目標地点らしき場所で討伐モンスターらを見ていた。

周囲を徘徊しているモンスター・・・・・・スライム型モンスターの数は少なくても二十はいた。そして、中でも一際大きなスライム型が四体ほどいた。

 

「川をせき止められるだけあって、結構大きいね」

 

「あんなおっきなスライム型モンスター見たのはじめてかも」

 

「あのモンスターは身体が大きいので敏捷性は高くないようですね。一撃一撃をちゃんと見極めてステップで避ければ大丈夫だと思います」

 

「ありがとうユイちゃん」

 

「えへへ、パパとママ、ストレアの事を全力でサポートします!」

 

「ユイがいると心強いな。さて、行くか!」

 

「そうだね!」

 

「はい!!」

 

「おーう!」

 

俺、レイン、ストレアはそれぞれ武器を抜刀して、討伐モンスターへと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘をはじめて約二十分後

 

 

「これで、ラストォ!」

 

「せいやあぁー!」

 

「やああぁぁーっ!」

 

俺とレインの双剣とストレアの大剣がそれぞれスライム型モンスターを切り裂き、残っていたモンスターのHPをゼロにした。

 

「ふぅ〜」

 

「やっと終わったぁ〜!」

 

「やりました!!」

 

「討伐完了〜っ!!」

 

「ああ、これでクエストクリアだな!」

 

剣を仕舞い喜びながらそう言う。

一体一体の強さは大して強く無かったが、途中でモンスターが増えたりしたため、かなりと言うほどでは無いが疲れた。大型なスライム型はNM級では無かったため、苦することなく討伐が出来た。

減ったHPを、ポーションを飲んで回復していると。

 

「・・・・・・あれ?何も起こらないよ?」

 

レインが首をかしげて言った。

 

「おかしいな・・・・・・。他にも怪物がいてそいつらも討伐しなきゃいけないとか?」

 

俺も続けてそう言うと。

 

「いえ、その必要はないみたいですよ?」

 

「そろそろかな?」

 

ユイとストレアが俺とレインに言った。すると。

 

「うおっ!?なっ、なんだ!?いきなり地面が揺れ始めたぞ!」

 

「えっ!?もしかして地震!?」

 

突如地面が揺れ始めた。

驚く俺とレインに比べ、ユイとストレアは落ち着いていた。

 

「来るよ〜!」

 

「来ます!3・2・1!」

 

ストレアとユイがそれぞれ言い終えると。

 

「きゃあっ!!」

 

「わああっ!」

 

「わあ・・・・・・!」

 

「すっごーいっ!」

 

地面からいきなり水が吹き上がってきた。

 

「い、いきなり地面から水が吹き上げたぞ!」

 

「びっくりしたぁ・・・・・・。何かが爆発したのかと思ったよ」

 

「これで川は元に戻ってクエストクリアですね!」

 

「まさか最後にこんな仕掛けがあるとは思わなかったな」

 

「ほんとだよー。まさかこんな風に水が吹き上がるなんて、思ってもいなかったよー」

 

最後の最後にこんな仕掛けがあるとは思わなかった俺とレインは驚嘆の声を漏らす。

まさか水が地面の下から吹き上がってこようと、誰が思い付くだろうか。

そう思っていると。

 

「パパっ、ママっ!あれ見てください!」

 

ユイが水が吹き上がっている頭上を指さした。

そこには。

 

「あっ、虹だ!」

 

「おお、すごい!吹き上げた水のおかげで出来たんだな」

 

仮想世界ではじめて見る、綺麗な虹が出ていた。

 

「わぁ・・・・・・。わたし、初めて虹を見ました!すっごくきれいですね!」

 

「あたしもー。虹って、あんなに綺麗なんだね!」

 

虹をはじめて見るユイとストレアは目をキラキラと光らせて、虹を見る。

 

「 VR世界とは思えないくらいだよ。・・・・・・あ、そうだ!」

 

「どうしたの?」

 

「ここで家族写真撮らないか?」

 

「ここで?」

 

「ああ。もうこんなきれいな虹は見れないかもしれないしさ。俺たち家族の記念にちょうどいいだろ」

 

この場所で写真を撮ることを提案すると。

 

「はい、賛成です!」

 

「あたしもさんせーい!」

 

すぐさま、ユイとストレアが賛成してくれた。

 

「もうっ、さっきまでクエストの事しか考えてなかったのに・・・・・・。調子がいいんだから、キリトくんは・・・・・・」

 

やや呆れながら言うレインに苦笑しながら、ストレージから記録結晶を取り出す。

 

「そ、そうと決まれば虹が消える前に撮るぞ。ユイとストレアはそこに。レインはそこに立って」

 

「うん。ユイちゃんとストレアちゃんは私とキリトくんの間だね」

 

「はーい!」

 

「うん!」

 

俺とレインの間にユイ。そしてその後ろにストレアが立ち、撮る準備が出来た。

 

「それじゃあ行くぞ、はいチーズ!」

 

パシャリ!と音が記録結晶から響く。

 

「ちゃんと撮れたかな?」

 

「ああ、ばっちりだよ」

 

記録結晶を回収して、撮れた写真を見で言う。

 

「わぁ・・・・・・!パパ、ママ、ありがとうございます!!」

 

「やったねユイ!!みんなで写真が撮れたよ!」

 

「ユイとストレアが喜んでくれてよかったよ」

 

「ユイちゃん、ストレアちゃん。これからも、私たち家族四人でいっぱい写真を撮ろうね」

 

「はい!!」

 

「もちろんだよ!!」

 

この時のユイとストレアの笑顔を俺とレインは忘れることは無いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

後日、俺はレインにこの時撮った写真を現実世界でプリントアウトし、それぞれの部屋に飾った。

仮想世界の中だとはいえ、ユイとストレアは俺とレインの本当の娘だから。そう想い感じつつ、俺は部屋に飾った家族四人の写真を眺めた。

 

 

 



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LS編 第157話〈猫耳騒動〉


「プリヴィベートみんな!まずは遅くなってごめんなさい!あまり執筆速度が上がらなかったり、他のやつを執筆していたりして遅くなってしまったんだ!本当にごめん!もう少し早く出来るように頑張るので、応援よろしくお願いね!あ、それと、ついこの間SAOアリブレにレイン参戦したけどみんなはもう入手したかな?私は十一連ガチャ一発で二回出たよ!これからも本作や私の他作品をよろしくお願いします!!」




 

〜キリトside〜

 

 

スヴァルトアールヴヘイムの第三の島。砂丘峡谷ヴェルグンデの攻略を初めて数日。俺は珍しくラムと二人、同年代の男コンビでクエストやらをこなしていた。

 

「ようやく終わったー」

 

「ええ」

 

クエストが終わった俺たちは空都ラインに転移し、エギルの店に向かっていた。

 

「たまには男二人ってのもいいもんだな」

 

「ですね〜。男だけだと気兼ねなく行けますからね」

 

「だな」

 

軽く会話しながらエギルの店の扉を開ける。

するとそこには。

 

 

 

「んひゃあっ!!」

 

「ちょ、ちょっとリズさんっ・・・・・・。やめてくださいよ〜」

 

「ふふっ、いいじゃない、減るもんじゃないんだから」

 

 

 

シリカの耳を触ってるリズの姿があった。

傍から見るとセクハラオジサンにしか見えない。

 

「・・・・・・何してるんだ?」

 

「・・・・・・何してるんですか?」

 

俺とラムは呆然としながら未だにシリカの耳を触ってるリズに聞く。

 

「あ、お帰りー。今ねぇ、シリカの耳と尻尾の触り心地を確かめてたの。この耳、すごくふさふさしてて気持ちいのよ」

 

「ひゃあっ!?もう、つままないでください〜!」

 

言いながらもシリカの耳を摘むリズ。シリカはくすぐったそうな感じだ。そこにアスナが。

 

「ちょっとリズ〜、おじさんがセクハラしてるようにしか見えないよ?」

 

と呆れたように言う。

 

「というかただのセクハラですよ!いいんですか、こんな事して!!」

 

シリカもプンスカといった感じで言うが。

 

「はい、女性プレイヤー同士ではハラスメント防止コードに抵触しません」

 

お店のお手伝いをしていたユイがシリカの言葉にそう返した。

ユイは時たま、こうしてエギルの店のお手伝いをしているのだ。

ユイの言葉を聞いたシリカはまさに絶望といった感じで。

 

「そんなぁ〜・・・・・・」

 

目尻に微妙に涙を浮かべていた。

そして、シリカにセクハラ紛いなことをしているリズはというと。

 

「アスナも触ってみなさいよ。そうすればあたしの気持ちがわかると思うわ」

 

何故か店内にいるアスナにも触るように言っていた。

 

「ええっ、確かに気にはなるけど・・・・・・」

 

「この毛並みを堪能しないなんてもったいないなぁ〜」

 

「・・・・・・えへへ、じゃあちょっとだけ」

 

好奇心に負けたのかアスナはリズに言われた通り、シリカの耳を触る。

 

「うわぁ・・・・・・リズさんそれは無いわ〜」

 

横からボソッとラムの声が聞こえてくるがそれには同意しかない。

シリカの猫耳を触ってるアスナはというと。

 

「・・・・・・あ!猫の耳を触ってるみたい」

 

と、気持ちよさそうに触っていた。

そこに、リーファとフィリアも。

 

「へぇ・・・・・・実はあたしもケットシーの耳って触った事ないんですよね〜」

 

「わ、わたしも触ってみていい?」

 

「なぁんだ、みんな触りたかったんじゃない。さぁさぁ、順番にねー!」

 

「なんでリズさんが仕切ってるんですか!」

 

何故かリズが仕切って、シリカの猫耳触り順番をしていた。

 

「やれやれ」

 

「はぁー」

 

その光景に、俺とラムは溜め息が出たのだった。

で。

 

「わぁ・・・・・・ほんと、ふさふさだ!」

 

「ふふっ、これはやみつきになりそう・・・・・・」

 

「ひええっ、フィリアさん勘弁してください〜」

 

リーファとフィリアの二人に猫耳を触られているシリカがいたのだった。

そしてそれをジッと見る俺とラム。

 

「「・・・・・・・・・・」」

 

リーファたちの視て、あの猫耳がどうなってるのか気になっていると。

 

「ねぇキリト、ラム、実はあんたたちも気になってるでしょ?」

 

リズが俺とラムを見ながらそう言ってきた。

 

「えっ!そ、そんな事はないぞ?」

 

「そうですそうです!べ、別に気にはしては・・・・・・!」

 

突然のリズの言葉に、俺とラムはあたふたとしながら返す。

 

「というか、俺やラムが触ったらハラスメント防止コードが発動するだろ」

 

「ですです」

 

「はい、シリカさんがボタンを一つ押せばパパとラムさんは牢獄送りですね」

 

「ユイちゃんや、なんで俺もなのかな・・・・・・?」

 

ユイにひきつり笑いを浮かべながらラムが返すと。

 

「あ、あたし、キリトさんなら触っても構いません!」

 

シリカが顔を真っ赤にしてそう叫んだ。

 

「えっ!?」

 

「はいっ!?」

 

俺とラムはバッとシリカを驚いた顔で見る。

 

「まーたこのコは大胆な事を・・・・・・。でもシリカがいいって言ってるんだから、キリト触らせてもらえばいいじゃない」

 

「ほ、ほんとにいいのか・・・・・・?」

 

「はい、どうぞ!」

 

何故か決意を固めた表情をするシリカ。

その剣幕に断る訳にもいかず。

 

「じゃあ、お言葉に甘えて・・・・・・」

 

俺は一言そう言って、シリカの猫耳に触った。

触った瞬間、俺はどこかリラックス出来たような感じがあった。

 

「おお・・・・・・これは確かに・・・・・・。毛並みがすごく柔らかくて、なんだか癒される・・・・・・」

 

「あの、キリトさん・・・・・・。そこはくすぐったいです・・・・・・」

 

「あ、ごめん!つい・・・・・・」

 

どうやら敏感なところを触ってしまったようだ。

慌ててそこから手を外そうとしたその時。

 

「ただいまー」

 

「ただいま帰りました」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「あっ、ユウちゃん、ランさん、シノンさん。お帰りなさい!」

 

「これは、どういう状況なのかしら」

 

「シ、シノン!?」

 

丁度出かけていたユウキとラン、シノンが帰ってきた。

俺は慌てて説明しようとするが───。

 

「キリトさん?」

 

「いやラン、これは、別にやましいことをしている訳じゃなくてだな・・・・・・」

 

「うわ、あっやし〜!キリト、目が泳いでいるよ!」

 

「ユウキまでなんだよ!」

 

「私には年下の少女を弄ぶ変態にしか見えないんだけど」

 

「シノン!?」

 

ランは能面のような表情をし、ユウキは目を細めてジトーっと見る。シノンは表情を全く変えずに早口でそう言った。

それを聞いたリズが。

 

「そう言われると・・・・・・確かにそうね」

 

「おい!元はと言えばリズが・・・・・・」

 

「リズさん、そんな他人事みたいに言わないでください」

 

リズの言葉に俺とラムはリズに非難の目を向けて言う。

その瞬間。

 

「キ〜リ〜ト〜く〜ん?」

 

「っ!?」

 

俺の背後からとてつもない寒気と殺気のような物が襲って来た。

 

「(こ、この声まさか・・・・・・!)」

 

ギギギ、っと壊れた人形のように首を後ろに向けると、そこには。

 

「あ、お帰りなさいママ!」

 

「ただいま、ユイちゃん」

 

彼女兼嫁(レイン)がリーザとともに立っていた。

そしてリーザも。

 

「ラム、なにしてるの?」

 

「り、リーザ!?い、いや、これはだな!」

 

「言い訳は後でじっくり、ざっくり聞くからね」

 

「お願いだから話を聞いてくれませんかね!」

 

ラムに一瞬で詰め寄って問い詰めていた。

 

「それで、キリトくんはシリカちゃんに何してるのかなぁ〜〜?」

 

「こ、これはだな」

 

「うん?」

 

レインの目が笑ってない圧力が怖く、あたふたとしながら説明する。

 

 

 

 

 

─閑話休題─

 

 

 

 

 

 

「───というわけです」

 

「なるほどね」

 

ラムとともにレインとリーザの二人に説明し、そこにアスナとリーファもしてくれてなんとか二人に分かってもらえた。

 

「猫耳・・・・・・まあ、納得ね」

 

「うん」

 

リーザとレインが納得したそこに。

 

「なんか面白そうな事やってるね!アタシも混ぜてよ〜♪」

 

「ストレアさん!」

 

戻ってきたストレアが面白そうに言ってきた。

 

「余計にややこしくなってきたぞ・・・・・・」

 

「同じく・・・・・・」

 

ストレアが来たことにより、さらにややこしくなったことに俺とラムは溜息が出たのだった。

ちなみに、俺とラムから事の天幕を聞いたレインは。

 

『あ、リズっち。あとでお話ね♪』

 

『えっ!?』

 

『逃げないでくださいねリズさん』

 

リーザとともに顔面蒼白のリズにそう言っていた。

ご愁傷さまリズ。

視線をシノンたちに戻し。

 

「・・・・・・ということで、シリカの同意の元やったことなんだ」

 

と、言う。

俺とラムのレインとリーザへの説明を聞いていたシノンは。

 

「ふぅん、シリカも物好きね」

 

少し呆れた物言いで言った。

 

「そういえばシノンもケットシーだよね。キリト、ラム、あの耳も触らせてもらえば?」

 

「嫌よ。キリトとラムが触った瞬間にボタンを押すから。私の耳に触りたいなら、投獄される覚悟を決めることね」

 

「シノン、本気だ・・・・・・」

 

「ストレアさん、冗談でもそれは言わないでください・・・・・・」

 

シノンの本気(マジ)な目を視た俺とラム。

シノンに提案したストレアはというと。

 

「ふふっ、キリト、ラム残念だね♪じゃあ〜、代わりにアタシがシノンの耳の触り心地を確かめてあげるよ!!」

 

「えっ!?」

 

猫のような速さでシノンの背後に回り込み。

 

「シノン、覚悟してね♪」

 

「ちょっと、やめっ・・・・・・ひゃああっ!?」

 

「わぁ〜、すごく毛並みがいいね!ずっと触っていたくなるなぁ♪」

 

「もう、離しなさい!」

 

「えー、もうちょっといいじゃない♪まだまだ堪能し足りないよ〜」

 

「あんたどんだけ触るつもり・・・・・・。なっ・・・・・・裏返さないでよ!」

 

「へぇ・・・・・・猫の耳の中ってこんな風になってるんだ〜」

 

「やっ、くすぐった・・・・・・いい加減にしてーっ!」

 

「ふ〜ん。なるほど〜」

 

「キリト、この子あんたの娘でしょ!?なんとかしなさい!」

 

助けを求めてシノンは俺に言ってくるが。

 

「あー。すまんシノン。無理」

 

あの状態になったストレアは手が付けられないので、なんとかしようにもどうにも出来ないのである。

正直言うとお手上げ状態なのである。

つまり、シノンにはストレアが満足するまで頑張ってもらう他ない、ということだ。

 

「やんっ!・・・・・・ちょっとキリトーーっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後

 

「あ〜楽しかった♪」

 

シノンの猫耳のあちこちを触ったストレアは満足したように言ってシノンから離れた。その顔はとてもいい笑顔だった。

そしてシノンはというと。

 

「はぁ・・・・・・やっと解放されたわ」

 

地面に手と膝を付き、やつれた顔をしていた。

そんなシノンを他所に。

 

「でも、猫耳ってすごくかわいいですよね!ケットシーのアバターも作りたくなっちゃた」

 

「うん、見てるだけでも癒されるけど、実際に触ってみたらなんだか羨ましくなっちゃったわ」

 

「触られてる方からしたら溜まったものじゃないけどね」

 

「あははは。私は家に猫がいるのでいいですかね」

 

「そう言えばリーザ、家に猫がいたよね」

 

リーファたちはそれぞれ猫耳について話していた。

そこに。

 

「そういうことなら、いいアイテムがあるぞ?」

 

「エギル!聞いてたのか」

 

エギルが店の方からこっちにやってきた。

 

「あれだけ騒がれれば、嫌でも耳に入るさ」

 

どうやらかなり騒いでいたみたいだ。

まあ、思い返してみれば確かに騒ぎすぎてたような気がする。

 

「それで、いいアイテムっていうのは?」

 

「ああ、これだ」

 

俺の問いにエギルはウインドウを操作してひとつのアイテムを実体化させた。

 

「な、なんだこれ!?」

 

エギルが取り出したアイテムを見て俺は驚いた声を出す。何せそれはどう見ても───

 

「猫耳、だよね・・・・・・」

 

「猫耳だね・・・・・・」

 

「へぇ・・・・・・エギルってばこんな趣味があったんだね♪人は見かけによらないね」

 

「いや、さすがにそれは違うでしょ・・・・・・」

 

「もしエギルさんにそんな趣味があったら驚愕ものですよ」

 

猫耳カチューシャのようなアクセサリーだったからだ。

 

「これは・・・・・・頭部に装備するアクセサリーってとこか?」

 

「ああ。最近買い取りしたもんでな。着けると敏捷性が飛躍的に上がるんだよ」

 

「買い取りしたって・・・・・・これプレイヤーメイドなのか・・・・・・?」

 

「いや。確か何かのクエスト報酬だとか言ってたな」

 

俺の疑問に答えるエギル。クエスト報酬ということはそれなりに性能は良いだろう。外見を除けばだが。

 

「素早さが上がるなんて、ほんとに猫みたいだね」

 

「猫耳が欲しいって言うなら、試しに装備してみればいいんじゃねぇか?」

 

「えっ、いいんですか?」

 

「ああ、試着ならタダでいいぞ。もちろんそのまま買い取ってもいいけどな」

 

エギルの言葉に俺とラムは微妙な表情を同時に浮かべた。さすがにこれを買い取るのは・・・・・・。

 

「じゃあ着けてみましょうよ!キリトとラムもみんなの猫耳、見てみたいでしょ?」

 

「ま、まぁ・・・・・・」

 

「見たいかと言われたら、見たいですけど・・・・・・」

 

リズの言葉に俺とラムは答える。

みんなの猫耳見たいかと見たくないかと言われたら見たい。というより、興味がある。

 

「ふふっ、じゃあ早く着けてみよ♪」

 

「一人ずつ順番に装備しよっか」

 

「そうですね!誰からにしますか?」

 

「それじゃああたしから行くわ!猫耳を一旦アイテム欄に入れて、装備っと・・・・・・」

 

どうやらトップバッターは提案者であるリズみたいだ。

リズはエギルから受け取った猫耳アクセサリーを自身のアイテム欄に入れ───。

 

「どーよ!」

 

「リズさん、とってもかわいいです!」

 

「へぇ・・・・・・意外としっくりくるな」

 

「ええ。とても意外です」

 

「ちょっと、二人とも!意外ってどういう事よ!」

 

「い、いや・・・・・・まぁ似合ってるからいいじゃないか」

 

「ですです!!そ、それじゃあ次は───」

 

「じゃあ次はアタシが着けてみるねー!」

 

次はこの中で一番興味心身だったストレアが着けた。

 

「じゃーん!」

 

「に、似合いすぎてて、逆に怖いです・・・・・・」

 

猫耳を着けたストレアはシリカの言う通り、物凄く似合っていた。逆に似合いすぎて怖いという程でもある。

そう思いながら、俺は記録結晶で娘であるストレアの姿を写真に残す。

よく見たらレインも素早く記録結晶を取り出して写真を撮っていた。どうやら、レインも考える事は同じらしい。

 

「あはは、破壊力抜群だね!」

 

「わーい、ありがとう♪」

 

「キリトさんとレインさん、いつの間に記録結晶を取り出したんですか・・・・・・」

 

「親バカここに極まりね」

 

シノンの失礼な言葉を聴きながら、俺とレインは(ストレア)の写真を取り続けた。

 

「つ、次はあたしが着けてみます!」

 

次はリーファが着けるようだ。

リズとストレアと同じように着けたリーファは。

 

「ど、どうかな・・・・・・?」

 

「すっごくかわいいよ!!ね、姉ちゃん!キリト!」

 

「はい!とっても可愛いですよリーファちゃん!」

 

「ああ。我が妹ながら自慢したくなるな」

 

リーファの猫耳姿にユウキ、ラン、俺はお世辞抜きでそのままの感想を言った。うむ。我ながら可愛い妹だ。

 

「えへへー、ありがとう!」

 

「うわ、シスコン・・・・・・」

 

「ええっ!?感想を求められたから答えただけだぞ・・・・・・」

 

俺の言葉に鋭い言葉を突く回復したシノン。

 

「それじゃ、次はボクがつけてみるよ!」

 

次はユウキが着けるらしい。

結果は。

 

「うんうん、いいじゃないユウちゃん!」

 

「ええ!さすが私の妹です!ですよねキリトさん!」

 

「おてんばネコちゃんって感じだね〜!」

 

「えへへ、ありがとう姉ちゃん!どうかなキリト、似合ってるかニャー?!」

 

語尾にニャーと入れてきた幼馴染に俺は。

 

「ああ。似合ってるぞ。ストレアの言う通りおてんば猫って感じで可愛いな」

 

リーファとストレアと同じように記録結晶で写真を撮る。

 

「えへへ、やったニャー!」

 

「では、次は私が着けますね」

 

ユウキの次は姉のランだ。

 

「ど、どうですか・・・・・・?似合って、いますか?」

 

少しオドオドとした感じで言うラン。

そのランにリーファたちが。

 

「うわぁ。とても似合ってますランさん!」

 

「うん!貴賓がある猫、って感じだよ姉ちゃん」

 

「ランちゃん可愛いよ!」

 

「あ、ありがとうございます。キリトさん、どうですか?」

 

「あ、ああ。よく似合ってる。姉妹揃って可愛いぞ」

 

「っ!///あ、あり、ありがとうございましゅ!!///」

 

素直に返すと、ランは顔をリンゴのように真っ赤に染めて言った。語尾を噛んだことは・・・・・・気にしないことにした。

 

「じゃあ次は・・・・・・フィリア!ほらほら、早く〜!」

 

「えっ、わ、わかった!」

 

ストレアに急かされて、猫耳を着けるフィリア。

 

「に、似合う・・・・・・?」

 

「すごく似合ってますよ!」

 

「そうだよ〜!もっと自信持てばいいのに!」

 

自信なさげなフィリアにリーファとストレアが言うが、確かにその通りだと思った。実際、フィリアの猫耳姿は似合っていて、黒猫、という感じだ。

レインたちも似合っていると褒めるが。

 

「うう・・・・・・も、もういいよね!」

 

フィリアは顔を真っ赤にし、恥ずかしそうにしてウインドウを操作し猫耳を外した。

 

「ええ〜、もっと見たかったのに」

 

「やっぱりわたしは人のを触っている方がいいよ」

 

「えー、残念だなぁ」

 

フィリアが猫耳を外したことに本気で残念がっているストレア。

 

「じゃあ、次はアスナ!」

 

「えっ!?わたし!?」

 

「ほれほれ〜」

 

「うぅぅ。わ、わかったよ・・・・・・」

 

ストレアのノリで次はアスナが着けることになった。

 

「いざ着けてみると恥ずかしいな・・・・・・」

 

「ふふっ。いいじゃないアスナ」

 

「うん!似合ってるよアスナ!」

 

少し恥ずかしそうに言うアスナをリズたちが褒める。

 

「じゃあ次は私が着けますね」

 

「え!?リーザもやるの!?」

 

「はい」

 

そう言うと否や、リーザはウインドウを操作して猫耳を着けた。

 

「えっと・・・・・・どうですか?似合ってます?」

 

照れたような反応をして聞いてくるリーザ。

 

「わぁー!リーザちゃん、とってもかわいいよ!」

 

「へぇ。似合ってるじゃない」

 

「はい!とてもかわいいです!」

 

リーザにアスナたちが次々感想を言う。

 

「ほ〜れ、カレシさんは愛しのカノジョさんになんか言うことないのかな?」

 

「り、リズさん!?」

 

強引とも言えるようなリズにラムが少し甲高い声を上げる。

 

「え、えっと・・・・・・その・・・・・・リーザ」

 

「うん・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・///」

 

「ほら。さっさと言っちゃいなさいよー!」

 

「リズっちは少し静かにしてようね」

 

「は、ハイッ!!」

 

静かに肩に置かれたレインの手にビクリとしたリズは顔を真っ青にして口を閉じた。一体レインはリズになにをしたんだろうか。

 

「えっと・・・・・・似合ってます。その・・・・・・とっても可愛いよ///」

 

「あ、ありがとうラム///」

 

「///」

 

茹でダコのように顔を真っ赤に染めたリーザとラム。

 

「ねえ、なんか部屋が暑くない?」

 

「部屋が暑いんじゃなくて、二人からのが熱いんじゃない?」

 

フィリアとシノンの小さな声で話す声が聞こえた俺は、未だに顔を真っ赤にして照れてるリーザとラムに苦笑した。

 

「えーっと、次はユイちゃんの番・・・・・・かな?」

 

「はい!ちょっと待ってくださいね・・・・・・」

 

ユイも他のみんなと同じように操作し、猫耳を着ける。

 

「できました!!」

 

「うわぁ・・・・・・ユイちゃん!すっごく、かわいいよ!!」

 

「ああ、ほんとに。ユイはなんでも似合うな!」

 

「えへへ、ありがとうございます」

 

猫耳を着けたユイに俺とレインは興奮したように言いながら、レインとともに記録結晶を連続でユイに向けて撮す。

そんな俺たち向けて。

 

「はは・・・・・・ただの親バカね・・・・・・」

 

「ただの、ではなく、極めつけな親バカなのでは・・・・・・」

 

「二人の将来が少し心配になってきたわね」

 

みんな呆れた眼差しで見て言ってきた。

 

「では、最後はママですね!」

 

「トリなんだから、期待してるわよーレイン!」

 

「もう、プレッシャー掛けないでよリズっち・・・・・・」

 

気恥しそうに言いながらレインはウインドウを操作し。

 

「えへへ。ど、どうかな・・・・・・?似合ってる・・・・・・?」

 

猫耳を着けてレインは首を傾げて聞いてきた。

 

「ふふっ、いいじゃない。ほらほら〜。キリト、愛しのカノジョの猫耳姿の感想は?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「パパ?」

 

「あ、うん。えっと、その・・・・・・かわいいと思う・・・・・・」

 

「そ、そうかな?その、キリトくんが喜んでくれるんだったら、えっと・・・・・・ずっとこのままでもいいかなぁ〜・・・・・・なんて」

 

「レイン・・・・・・」

 

「キリトくん・・・・・・」

 

そのまま俺とレインの世界に入りかけようとしたその時。

 

「はいそこ、ストーップ!二人の世界に入らない!」

 

「ええっ!?リズっち、別にそんなんじゃないよ!?」

 

「自覚がないみたいね・・・・・・」

 

これで俺とラム、エギル以外。女子全員の猫耳姿を見終わった。

 

「さ、キリト、ラム。誰の猫耳が一番似合ってたかしら?」

 

「えっ、俺が選ぶのか!?」

 

「お、俺もなんですか!?」

 

突然の。不意打ちとも言えるリズの言葉に俺とラムは驚愕の声を出す。そこに。

 

「ちょっと待ってください!猫耳装備に参戦してないあたし達は不公平ですよ!ね、シノンさん!」

 

「別に私はどうでもいいんだけど・・・・・・」

 

シリカとシノンが・・・・・・というより、シリカが異議を唱えてきた。

 

「じゃあ猫耳が一番似合う人を選んでもらおうよ♪」

 

「はいっ、それなら元から猫耳が付いてるケットシーも選択肢に入りますよね」

 

シリカの異議に、ストレアとユイが提案しシリカも「それなら・・・・・・」と妥協した。

 

「じゃあキリト、ラム、一人選んでよ」

 

「そ、そんな事言われても・・・・・・みんな似合ってると思うんだけど・・・・・・」

 

「はい。みんな似合っていたからそれでいいと思いますけど・・・・・・」

 

「お兄ちゃん、はぐらかして事を穏便に済ませようとしてるでしょ」

 

「ラム、はぐらかすのは無しですよ」

 

「ぐっ、バレたか・・・・・・」

 

「い、いや、別にはぐらかしてるつもりは・・・・・・」

 

「こういう時は、ちゃんと一人ずつ選ばなきゃダメだよ!」

 

「ということですので、キリトさんとラムさんはそれぞれ、一人、選んでください」

 

「わ、わかった・・・・・・」

 

「わ、分かりました・・・・・・」

 

女子勢の威圧とも言える空気に、俺とラムは目だけで会話する。

 

「(ど、どうするラム・・・・・・これ、誰の名前を出しても微妙な空気になるんじゃないか?)」

 

「(はい・・・・・・。一番手っ取り早いのは俺とキリトがそれぞれの彼女の名前を出すことですが・・・・・・)」

 

「(そうなると、リズ辺りが何か言ってくる・・・・・・よな?)」

 

「(ですよね・・・・・・高確率で・・・・・・)」

 

目だけでやり取りをし。

 

「・・・・・・エ・・・・・・」

 

「え・・・・・・?」

 

「エギルなんか・・・・・・似合うと思うぞ」

 

「えぇっ!?エギルさん!?」

 

「はいっ!?」

 

俺の言葉に、レインとラムが目を大きく見開いて見てきた。

 

「さっきからそのスキンヘッドに猫耳がぴったりだと思ってたんだよ」

 

「えぇ〜、そうかなぁ?」

 

「そんなに絶賛するなら・・・・・・エギル、ちょっと装備してみてよ」

 

「んまぁ、構わんが・・・・・・」

 

しぶしぶといった様子でエギルは猫耳を頭部に着ける。

 

「どうだ?」

 

「これは・・・・・・」

 

エギルの猫耳姿に誰もが声を無くした。

それは提案した俺もで───。

 

「(ぜ、絶望的に似合ってない・・・・・・)」

 

そう思った俺に。

 

「お兄ちゃん・・・・・・これは、いくらなんでも・・・・・・」

 

いくらなんでもこれはないよ、というリーファに。

 

「・・・・・・えーっとこれ、セーブポイントからやり直せる?」

 

「それはできませんよ、パパ」

 

「無理ですキリト」

 

「はは・・・・・・ですよね・・・・・・」

 

辛辣なユイとラムの言葉に俺は乾いた笑いを出す。

 

「なんだお前ら、このアイテムは誰も買わねぇのか?」

 

「エギルが一番似合うって言ってるんだから装備したまま商売すればいいんじゃない?」

 

「シノン、それはないよ」

 

「え、ええ。こう言ってはなんですが、いかつい顔をした店主が猫耳着けてるお店なんて行きたくありませんね」

 

「ひでぇ言い草だな・・・・・・せっかく売れると思ったんだが・・・・・・」

 

「ご、ごめんなさいエギルさん!悪気があって言ったわけでは・・・・・・!」

 

「わあってるよ」

 

「キリトが馬鹿な事を言ったお陰で一気にテンション下がったわね」

 

「ああ。これはもう営業妨害だな。罰として、この猫耳はキリトに買ってもらおうか」

 

「わあ!それ絶対にかわいいと思います!」

 

「(なぬっ!?)」

 

エギルの言葉に俺はマジな驚きを隠せなかった。

そしてそれに同意するシリカに続いて。

 

「キリトさんの猫耳・・・・・・いいかもしれませんね!」

 

「だよねランさん!お兄ちゃんの猫耳かぁ・・・・・・見てみたいかも!」

 

「あはは!ほら〜キリト。猫耳着けて着けて〜!」

 

「ほらほら〜、みんな期待してるわよ?」

 

いつも真面目なランも混じり。

 

「キリトくんの猫耳姿・・・・・・見てみたいかなぁ〜」

 

「レインさんっ!?」

 

レインまでも賛成的だった。

俺は助けを求めるためラムに視線をむけるが。

 

「リーザちゃん。ラム君にも猫耳着けてあげたらどう?」

 

「えっ!?」

 

「いい案ですアスナさん!さあ、ラム!大人しくこの猫耳を着けなさい!」

 

「り、リーザァァ!?」

 

ラムはラムでアスナとリーザに詰め寄られていた。

そしてこっちにも。

 

「さあ、さあ、キリトくん。早くこの猫耳着けて♪絶対、似合うから♪!」

 

「か、勘弁してくれ・・・・・・」

 

 

 

 

 



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LS編 第158話〈お料理教室は一波乱〉


「新年!明けましておめでとうございます!みなさんの応援のお陰でついに【ソードアート・オンライン 黒の剣士と紅の剣舞士 二人の双剣使い】も間も無く三周年を迎えます!投稿が遅くなったりとして待っていてくれたみんな本当にごめんなさい。
これからも【ソードアート・オンライン 黒の剣士と紅の剣舞士 二人の双剣使い】の応援をよろしくお願いします!
また、他の投稿小説も読んでくれたら嬉しいです!みなさん、色々大変だけど今年も頑張って行きましょう!!



それでは、【ソードアート・オンライン 黒の剣士と紅の剣舞士 二人の双剣使い】の世界へ、リンクスタート!!」





 

〜キリトside〜

 

 

スヴァルトアールヴヘイムの砂漠の島ヴェルグンデの攻略が順調に進んでいる中のとある日、俺はフィリアやラムたちと共に、武器の強化素材の採取やクエストを行っていた。

空都ラインに戻ってきた俺はフィリアたちと分かれ、レインとともにこの場所で借りている自宅へと戻った。

自宅の前に来ると。

 

 

『うんうん、いいよリーファちゃん!それじゃあもう一回やってみようか!』

 

『はい!おねがいします!』

 

『何度も繰り返すことで上達していきますからね。根気よくやるのが大事ですよ!』

 

『なるほど。わかりました!』

 

 

家の中から大きなスパルタ声が聞こえてきた。

 

「(・・・・・・この声、レインとスグか?ランの声も聞こえてくるが・・・・・・。家の中で何やってるんだ?)」

 

そう疑問に思いながら、俺は家の中に入った。

家の中に入ると。

 

「惜しいですね。あともうちょっとですよ」

 

「うう・・・・・・難しい・・・・・・」

 

キッチンのレインとスグ、ランがいた。

反対側のリビングのソファにはユウキがレインたちを見ている姿がある。

 

「やっぱり、レインたちだったか」

 

「お、お兄ちゃん?」

 

「あ、キリトさんお帰りなさい」

 

「おかえりー、キリトー」

 

「キリトくんお帰りなさい。やっぱりって、どうしたの?」

 

「いや、レインたちの声が聞こえたから何やってるのか思ったんだよ」

 

「え、そ、そんなに響いてたのかな?」

 

どうやら全く気づかなかったらしい。

 

「ああ、スパルタ練習の声が聞こえたよ」

 

「ほんとですか!?」

 

俺の応えにランは顔を恥ずかしげに赤く染める。

 

「あはは。姉ちゃん達気合い入ってたもんね」

 

「うう・・・・・・気合い入れすぎました・・・・・・」

 

「そうだね・・・・・・」

 

「ですね・・・・・・」

 

ユウキの言葉に萎縮するランと気恥しそうにするレインとスグ。

スグたちの手元を見ると、そこには鍋や包丁、食材類が置かれていた。それを見てなんのスパルタ練習かわかった俺は。

 

「何をしてるのかと思ったら・・・・・・みんなで料理してたんだな」

 

と言った。

 

「うん、レインさんとランさんに料理を教えてもらってたんだ」

 

「なるほど。熟練度MAXのレインとランに教えてもらえば間違いないな。ユウキは参加しないのか?」

 

「ボクよりレインと姉ちゃんが教える方がいいから」

 

「そっか」

 

ユウキの言葉に俺は苦笑する。

ユウキの教えはなんというか、少し俺と似ているのだ。というか、俺やユウキは感覚で掴んで行くのに対して、レインやランは反復によって掴んで行く。感覚で掴む俺やユウキより、レインやランの方が教えるのは良いだろう。

 

「教えるって言っても、大したことはしてないんだ」

 

「そうなのか?」

 

「はい。料理スキルを上げるのはすごく根気がいりますから。結局は自分で頑張るしかないんです」

 

「あ、でも応援する人がいるだけでもモチベーションがあがるかな〜って」

 

「そうだったのか・・・・・・二人とも、ありがとな」

 

「いいよ〜。それに、リーファちゃんはどんどん上手くなるから見てて楽しいんだよ。ね、ランちゃん」

 

「はい」

 

「えへへ。レインさんとランさんのおかげです。でもまだまだ頑張らないと」

 

と言って腕を上げてやる気ポーズを取るスグ。

 

「うん!その意気だよリーファちゃん」

 

「それではもう一度作ってみましょうか」

 

「はい!そうだ、お兄ちゃんも作ってみれば?」

 

「えっ、俺か!?料理スキルなんて全然あげてないからできないと思うぞ」

 

スグの言葉に俺はそう応える。

実際、俺の料理スキルの熟練度など二割にも満たない。それはSAO時代もそうで、取得していたスキルは片手剣や体術、索敵、隠蔽などといった戦闘系が主であり、日常系では釣りとかそんなものだったのだ。

なんせレインとずっとパーティを組んでいたため、料理はレインに任せっぱなしだったのだ。いや、まあ、俺も料理はするが───。

 

「お兄ちゃんはVRMMOの中で料理したことないの?」

 

「あるにはあるけど・・・・・・」

 

「キリトくんのあれは料理に入るのかなぁ〜」

 

「え?」

 

「へぇ、なに作ったのキリト?」

 

「干し肉・・・・・・とか?」

 

「それは・・・・・・料理なの?」

 

「それ、加工したって感じじゃない・・・・・・?」

 

「料理・・・・・・とは言えないような・・・・・・いや、一応料理の内に入る・・・・・・のでしょうか・・・・・・?」

 

俺の応えにスグは微妙な表情を浮かべ、ユウキはえ?と言うような表情をし、ランは苦笑する。

 

「お、おいっ!今心の中で馬鹿にしただろ!例え干し肉でもレア食材で作れば上手いんだからな!耐久度も高いし、ダンジョンに潜る俺やレインの空腹を何度救ったことか・・・・・・!」

 

「まあ、確かに何度も救ってくれたよね」

 

「その・・・・・・干し肉に思い入れがあるのはわかったよ・・・・・・。まぁ、とにかく一回試してみたら?」

 

「わかった。そんなに言うならやってみるよ」

 

「ふふっ、それじゃあ一緒に作ろうかキリトくん」

 

というわけで俺はスグと一緒に料理を作ることになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、今回はシチューを作りますよ」

 

台所にスグとともに立った俺に、ランが何を作るのか告げる。

 

「はーい!ほらっ、お兄ちゃんも返事して!」

 

「ええっ?は・・・・・・はーい」

 

スグに促されて俺も返事をすると、ランは満足そうに頷き。

 

「はい。それではレインさん」

 

「うん。シチューの作り方はとっても簡単だよ。まずは、包丁で野菜を一口大に切ってね」

 

「(まあ、このくらいは大丈夫だな)」

 

レインに言われた通り、包丁で野菜をカットする。

といっても、包丁を野菜に当てるだけで切れるからすぐに終わってしまうが。

 

「次に、肉を切ってね」

 

「うん、切れた」

 

「よし、こんなもんでしょ」

 

続けて肉もスグと同様に切る。

 

「そして、鍋に今切った野菜とお肉を全部入れて火にかけてね」

 

「あとは水と調味料、赤ワインとトマトを入れてください。入れたらふたをして煮込むだけです」

 

目の前にある鍋にカットした野菜と肉を入れ、水と調味料、赤ワイントマトを入れ、ウインドウをタップし火を点ける。

 

「もう終わりか?意外と簡単だったな」

 

ここまで掛かった時間は5分も掛かってない。

現実世界だったらこの倍以上は掛かっているのだが。

 

「現実の料理と違ってシステムが勝手にやってくれるからすっごく楽だよね」

 

「私としてはもう少し手間のかかる方が楽しいのですが・・・・・・」

 

「あ、それは私もかなぁー」

 

料理好きのランとレインが少し不服そうに言う。

 

「ユウキはどうですか?」

 

「ボク?ボクはそうだなぁー。やっぱり、現実世界と同じで手間のかかる方がいいかな?だってその方が、作ったって感じになるし」

 

「あ、それ私も」

 

「私も同じです。まあ、システムが勝手にやってくれるのもいいんですが・・・・・・」

 

料理をまったくしない俺には分からないものがあるのだろう。

 

「キリトくんは現実世界で何か作ったりするの?」

 

「え。俺か?」

 

「うん」

 

唐突のレインの質問に俺は不意をつかれた。

レインの質問にランたちはは微妙な表情を浮かべ。

 

「キリトさんの料理って・・・・・・」

 

「確か・・・・・・」

 

「お兄ちゃん、作るっていったら具無しのペペロンチーノばかりだよね」

 

と言った。

 

「え。具無しのペペロンチーノ?」

 

「はい」

 

「・・・・・・キリトくん?」

 

「いや、手早く出来ていいじゃないか」

 

「それはそうかもしれないけど、もう少し・・・・・・」

 

なんとも言えない表情のレイン。

手早く出来ていいんだがな。

 

「やっぱり、私が作りに行こうか?」

 

「え」

 

レインの料理が現実世界でも食べれるというのはとても魅力的で、嬉しすぎるほどなのだが。

そう思っていると。

 

「あ、出来たみたいだよ。二人とも、ふたを開けてみて」

 

セットしといたタイマーが鳴り、作っていたシチューが出来上がった。

 

「じゃあ、あたしから・・・・・・」

 

「おおっ、うまそうだ!」

 

スグが自身の目の前にある鍋のふたを開けると、そこにはちゃんとしたシチュー。ビーフシチューがあった。

 

「よかった、成功したみたい」

 

「よく出来ていますよ。さっそく味見してみましょうか」

 

ランがそう言うと、スグはお皿にそれぞれシチューを入れ俺たちはそれを食べてみる。

 

「いただきまーす」

 

「いただきます」

 

「どう?」

 

スグは恐る恐ると俺たちに聞いてくる。

 

「うん、うまい!」

 

「美味しいよリーファちゃん!」

 

「ほんと?よかった!」

 

「ああ、肉の柔らかさもちょうどいいし、味も深みがあって凄いおいしいよ」

 

「お肉がホロホロと口の中で解けていくのがいいよね」

 

「ええ。野菜にもしっかりと味が付いててとても美味しいですよ」

 

俺に続いてユウキとランも感想を言う。

 

「それじゃあ、次はキリトくんのをお願いね」

 

「お、おう!行くぞ・・・・・・」

 

レインに言われ俺も目の前にある自身の鍋のふたを開ける。

ふたを開けるとそこには。

 

「・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・」

 

思わず無言になってしまうほどの物体があった。

不思議に思ったユウキが近づいてくると。

 

「どうしたの姉ちゃん。キリトのシチューになにか・・・・・・・・・・え」

 

パチクリと瞬きを素早くし目元を擦る。

 

「えっと。これは・・・・・・なに?とてもじゃないけど、この世の物とは思えない色をしてない?」

 

「ユウちゃんにもそう見えるよね。これ」

 

「・・・・・・レインさん、料理の手順は確かシチュー・・・・・・でしたよね?」

 

「う、うん。リーファちゃんと同じなはずなんだけど・・・・・・」

 

「スグと同じように作ったはずなんだが・・・・・・どうしてこうなった・・・・・・?」

 

ナゼに。どうしたら同じ食材、同じ調味料、同じ手順でこうなるのか俺自身疑問に思わざるを得なかった。

 

「私、こんな料理はじめて見たよ・・・・・・」

 

「同じく・・・・・・」

 

「ボクも同じ・・・・・・」

 

「ねぇ、これって味見しても大丈夫なの?」

 

「食べられないものは入れてないんだから大丈夫じゃないか?」

 

「そ、そうかなぁ・・・・・・?あ、キリト!味見。してみたらどう?」

 

「そっ、そうだよ!お兄ちゃんが作ったんだからまずは自分で食べるといいよ!」

 

「そ、そうだな・・・・・・・それじゃあいただきます」

 

お皿によそったシチューらしきなにかをスプーンで掬い、口元に運び食べる。

 

「・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・キリト・・・・・・くん?」

 

「・・・・・・お兄ちゃん、大丈夫?」

 

「・・・・・・キリトさん、だ、大丈夫・・・・・・ですか?」

 

「・・・・・・キリト?」

 

「・・・・・・悪くない」

 

「え?」

 

「というか、うまいぞこれ!」

 

「えぇーっ!!?」

 

「え!?ほ、ほんと!?」

 

「えぇー!?」

 

「ほ、ほんとですか!?」

 

俺のうまいという言葉に仰天するレインたち。

 

「ああ!レインたちも食べてみろよ!」

 

「これを・・・・・・?」

 

「シチューとは少し違うかもしれないけど、見た目に反して意外とイケるぞ」

 

「う、うーん。キリトくんがそんなに言うならぁ・・・・・・」

 

「食べてみようかな・・・・・・」

 

「そ、そうだね・・・・・・」

 

「で、では・・・・・・」

 

ランがそれぞれのお皿に俺の作ったシチューらしきものをよそりレインたちに渡す。

 

「いただきます」

 

「いただきまーす・・・・・・」

 

「いただきます」

 

「い、いただきます・・・・・・」

 

「はむ」

 

「あむ」

 

「んむ」

 

「はむ」

 

上からレイン、スグ、ユウキ、ランがそれぞれ口にスプーンに乗ったそれを食べる。

 

「どうだ?」

 

自信満々に聞くと。

 

「・・・・・・ん?んん!?」

 

「んんー!!」

 

「んんん!?」

 

スグ、ラン、ユウキの顔が歪み。目を大きく開いた。

 

「どうしたんだ?!」

 

「かっ・・・・・・辛っ!!水!水!!」

 

「なんですかこれ!?の、喉がヒリヒリします!!」

 

「か、辛いっ!辛いよ!!」

 

「スグこれ飲め!ランとユウキも!」

 

三人尋常じゃない感じに俺は慌ててコップに水を淹れ手渡す。

水を受け取った三人はゴクゴクと一気に飲み干して行った。

 

「んぐっ、んぐっ・・・・・・。はぁ・・・・・・死ぬかと思った・・・・・・」

 

「はぁ・・・・・・。なんでこんなにこれ辛いんですか・・・・・・!?」

 

「そんなに辛いか?確かにシチューというよりは、カレーっぽいと思ったけど」

 

三人の様子に俺は首を傾げてんだ聞く。

そんなに辛いとは思えないんだが。

 

「お兄ちゃんの味覚再生エンジン壊れてるんじゃないの!?」

 

「辛いもの好きにも程があります!!」

 

「キリトのバカ!辛いもの好き!!」

 

「そこまで辛いかなぁ・・・・・・。っておい。辛いもの好きは悪口じゃないだろ!?」

 

「うっ、うう!お水、キリトさんお水もう一杯!」

 

「あたしも!」

 

「ボクも!」

 

「あはは・・・・・・」

 

なんとも言えない笑いを作っていると。

 

「はい、リーファちゃん、ランちゃん、ユウキちゃん」

 

「助かります!」

 

「ありがとうございます!」

 

「ありがとう〜!」

 

「どういたしまして」

 

レインがいつの間にかコップに水ではなく牛乳を入れて三人に渡していた。

 

「辛いものにはお水より牛乳の方が辛さが和らぐから良いんだよ」

 

「んぐっ、んぐっ・・・・・・はぁ。そういえばそうでしたね」

 

「うん。牛乳には『カゼイン』という成分があって、このカゼインが辛味成分の働きをブロックしてくれるから、辛味を感じにくくなるどころか、お腹も壊しにくくなるらしいんだ」

 

「へぇー。牛乳にはそんな成分があるんですね・・・・・・って、え!?レインさん!?」

 

「あれ、レインもボク達と一緒にキリトの激辛シチュー食べなかった!?」

 

「そう言えば・・・・・・なんでレインさん平気なんですか?」

 

レインが全く辛さを感じていないのに驚くランたち。

 

「うーん、まあ辛いっていえば辛いけど、ボルシチに似てる感じだからかな?私はあまり辛いものが好きというわけじゃないけどね」

 

「さ、さすがお兄ちゃんのお嫁さん」

 

「旦那さんの好みは把握済みということですね」

 

「あはは・・・・・・」

 

スグとランの言葉に苦笑するレイン。

結果、スグの作ったシチューはスグとラン、ユウキ、レインが。俺は自分の作ったカレー擬きシチューを食べたのだった。

 

 

 

 



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LS編 第159話〈彼女はメイドさん〉

 

〜和人side〜

 

 

「相変わらずここは人が多いな」

 

「うん」

 

「ええ。さすが、秋葉原ですね」

 

「ほんとだよ〜」

 

よっ、主人公のキリトこと桐々谷和人だ。ん?逆じゃないかって?まあ、キリトも桐々谷和人もどちらも俺だからな。どっちでも構わないさ。

今日は、俺と義妹のスグ、幼馴染みの木綿季と藍子と一緒に東京の電気街である秋葉原に来ている。

ここまでは電車で一時間弱で来れる。今日ここに来た目的はというと───。

 

「えへへ。久しぶりに和人たちと出掛けられるね」

 

「ええ。昔は四人でよく出掛けてたんですけどね」

 

「懐かしいなぁ〜」

 

昔を懐かしむように言うスグたち。

俺も、少し昔を懐かしくも思い返す。

 

「それじゃあお兄ちゃん。今日は荷物持ちよろしくね」

 

「はいはい」

 

そう。今日はスグたちの買い物に付き合ってきているのだ。まあ、俺も欲しいPCパーツがあったから丁度よかったが。

 

「ごめんなさい和人さん。私と木綿季の分まで」

 

「あはは。まあ、スグの頼みとあっちゃな」

 

今日のことは前々から予定していたのだ。

そして、スグからの頼みとあれば中々断れない。理由は、まあ、色々あるが。

 

「ふふ。相変わらずのシスコンで」

 

「藍子もだろ?」

 

隣を歩く藍子の言葉に、俺も反論する。

 

「はい。木綿季は、私の大切な・・・・・・双子の妹ですからね」

 

藍子は木綿季に対して甘いところがある。もちろん、厳しいところもあるが・・・・・・。

木綿季に関してなにかある際には、自分を顧みずに行動する。まさにシスコンとでも言うべきものなのだ。

とまあ、それはさておき。

 

「おーい!姉ちゃーん!和人ー!」

 

「二人とも〜、早く来ないと置いてっちゃうよー!」

 

先に行く、手を挙げて言う木綿季とスグの姿に俺と藍子は顔を見合わせクスッと笑う。

 

「行きましょうか。二人に置いて行かれちゃいますし」

 

「だな」

 

俺と藍子は少し早く歩いて、先を行くスグと木綿季を追い掛けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後

 

 

「ふぅ〜。結構買ったねー」

 

「うん!」

 

「私もかなり買ってしまいました・・・・・・」

 

「・・・・・・買いすぎじゃないか・・・・・・?」

 

お昼を過ぎた頃、俺たちはお昼をとるためとある喫茶店にいた。

スグたちの横には服や本などの入った袋が置かれている。

 

「ところでこんなところ、よく知ってたね直葉」

 

「いやー、仲のいいクラスメイトがここを推してて・・・・・・。値段も手頃だし、料理も美味しいから一度行ってみたらって言ってたから」

 

「へぇー」

 

「確かに、値段お手頃ですね。それに・・・・・・」

 

藍子が視線をメニュー表から店内に移す。

店内のあちこちには───

 

 

『いらっしゃいませ、ご主人様!お嬢様!』

 

『お待たせいたしました、お嬢様』

 

『行ってらっしゃいませ、ご主人様!』

 

 

メイド服を着た店員さんがあちこちにいた。

そうここは喫茶店だが、メイドがいるメイド喫茶なのだ。

俺もこういう所に来るのは初めてだが。

 

「三人は決めたか?」

 

「うん。藍子ちゃんと木綿季ちゃんは?」

 

「私も決めました」

 

「ボクも決めたよ」

 

「了解。んじゃ・・・・・・すみません、注文いいですか?」

 

俺は注文を言うため、近くにいた店員さんに声を掛けた。

 

「はーい」

 

店員さんがそう声を返す中、俺は今の声に聞き覚えがある感じがした。

 

「(あれ、今の声って・・・・・・)」

 

そう思っている中、店員さんがやって来た。

 

「ご注文はお決まりです・・・か・・・・・・え」

 

徐々に語尾が小さくなっていった店員さんは、驚いた表情をしていた。俺たちも気になり店員さんを見ると。

 

「え」

 

「えっ」

 

「あれ」

 

「あら」

 

俺たちも驚いた声を出した。

何故ならそこに居たのは───

 

「か、和人・・・・・・くん?直葉ちゃんとユウキちゃん、ランちゃんも・・・・・・」

 

「に、虹架?」

 

「レインさん?」

 

「レイン?」

 

「レインさん何故ここに?」

 

俺の彼女であるレインこと枳殻虹架が、メイド服を着てそこに立っていたのだ。

予想外の事に俺たちは呆然とする。

 

「え、えっと、取り敢えず、ご注文をお伺いしても宜しいですか?」

 

「あ、ああ」

 

俺たちは未だに思考が回らない中、虹架に注文をお願いする。

 

「で、では少々お待ち下さいませ」

 

立ち去っていくメイド服を着た虹架を見ていると。

 

「ね、ねえお兄ちゃん。今のってレインさんだったよね」

 

「ああ。虹架だった」

 

「もしかしてレインさん、ここでアルバイトしてるんでしょうか」

 

「多分そうじゃないかな」

 

「・・・・・・似合ってましたね」

 

「うん。とっても似合ってた」

 

そんな会話をしながら料理が来るのを待っていると。

 

「え、えっと、みんな。私のあと少しで上がりだからちょっとだけここで待ってて」

 

虹架がそう言ってきた。

それからしばらくして。

 

「お、お待たせ〜」

 

料理が全て来終わった所に、私服姿の虹架がやって来た。

 

「お、お疲れさま虹架」

 

「うん」

 

さり気なく俺の横に座る虹架。

もう見慣れた光景にスグたちは何も言わない。

少しの沈黙の後、口を開いたのは藍子だった。

 

「えっと、レインさん。レインさんはここでアルバイトを?」

 

「あはは・・・・・・。実は前にスカウトされてね。それからここでアルバイトしてるんだ」

 

「スカウト、ですか」

 

虹架のスカウトと言う言葉に俺たちは驚いていた。

驚きながらも内心俺はどこか納得していた。

 

「(まあ、虹架ってアインクラッドでもALOでも服が少しメイド服みたいな格好だったしな。それに、似合いすぎてるし)」

 

と。

伊達にアインクラッドの一層からずっとコンビを組んでいた訳では無い。(途中から同棲していたから)

 

「和人、今レインのメイド服思い出していたでしょ」

 

「なぁっ?!」

 

突然の木綿季の声に俺は裏返った声を出してしまった。

いや実際思い出していたんだが・・・・・・。

 

「か、和人くん」

 

「い、いや、違うぞ虹架!?」

 

ジト目で、少し頬が紅い虹架に慌てて反論するが。

 

「お兄ちゃん、顔に出ていたよ?」

 

「分かりやすかったですね」

 

対面に座っているスグと藍子が俺を見て真顔で言った。

その言葉にあたふたしていると。

 

「あ、あのさ和人くん。そんなに私のメイド服姿が見たいなら今度見せてあげるよ?ふ、二人っきりのとき・・・・・・」

 

モジモジと恥ずかしげに虹架が言った。

 

「え」

 

「へ?」

 

「え?」

 

「はい?」

 

虹架の言葉に俺たちは瞬きを早くして一言声に出した。

いきなりの唐突の言葉に驚いている中、言った張本人たる虹架は顔を真っ赤にしていた。

 

「〜〜///」

 

それを見た俺は、俺も恥ずかしくなり照れたように赤くなった。

 

「〜〜〜」

 

そんな俺と虹架を他所にスグたちは。

 

「ねえ、姉ちゃん。ブラックコーヒー頼もうよ」

 

「ええ。そうですね木綿季。直葉ちゃんもどうですか?」

 

「あ、お願いします」

 

疲れたような表情でブラックコーヒーを追加注文していた。

そしてそれは周りにも伝化していき。

 

『すみません。ブラックコーヒー二つ』

 

『こっちもブラックコーヒーお願いします』

 

『あ、すみません!こちらもブラックコーヒーお願いします!』

 

と次々にブラックコーヒーが注文されていった。

そんなところに。

 

「あー、レインちゃん、ちょっといいかしら?」

 

「あ、店長さん」

 

この店の店長らしい人物が虹架に声をかけてきた。

 

「どうせなら、彼氏さんと写真撮ったらどうかしら?」

 

「え?」

 

「いやね。その、二人の空気が物凄く甘くて・・・・・・。初々しいというかなんていうのかしら・・・・・・」

 

「「???」」

 

口を濁らせて視線を泳がせる店長さん。その店長さんの言葉に、他のメイドやお客が同意するように首を縦に振って頷いた。

いや、意味がわからないんだけど。俺と虹架は疑問符を浮かべて首を傾げた。

 

「えっと、じゃあ、お言葉に甘えて」

 

「ええ。あ、どうせなら、二人とも着替えたらどうかしら?レインちゃんはメイド服で、そっちの彼氏さんは執事服なんて」

 

「っ!」

 

「し、執事服・・・・・・?」

 

店長さんの言葉に虹架は衝撃を受けたような表情をする。が、俺は何故執事服なのかと首を傾げる。

 

「お兄ちゃんの執事服・・・・・・ゴクリ・・・・・・」

 

「か、和人の執事服姿・・・・・・ゴクッ・・・・・・」

 

「和人さんの執事服姿ですか・・・・・・ングっ・・・・・・見てみたいですね」

 

スグたちが何か言ってる気がするが・・・・・・。何を言ってるんだろう。

 

「店長さん・・・・・・」

 

「虹架?」

 

ゆらゆらと立ち上がる虹架。そのまま虹架は店長さんの手を握り。

 

「ぜひお願いします!!和人くんの執事服姿、見てみたいです!」

 

「虹架!?」

 

「ふふ。いいわレインちゃん」パンッ!パンッ!

 

「!?」

 

店長さんが手を叩くと、俺の両脇にメイド服の店員が突如あらわれた。

え、どこから現れたんだこの人たち!?

 

「あなた達。その彼氏さんのコーディネート、任せたわよ」

 

「「はい!」」

 

「え?えっ?!」

 

未だに状況が理解出来てない俺を他所に話が進んでいく。

理解出来てないまま、俺は両脇を二人の店員に連れられて行ったのだった。

 

〜和人side out〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜虹架side〜

 

 

職場の同僚に連れられて行く和人くんの後ろ姿を見ながら、私は和人くんの執事服姿を想像した。

 

 

『おかえりなさいませ、お嬢様』

 

 

「〜〜〜〜///」

 

「ええっ!?」

 

「れ、レインさん!?」

 

「だ、大丈夫レイン!?」

 

「う、うん。和人くんの執事服姿を想像しただけだよ」

 

顔が茹でダコのように真っ赤に染まった。

鼻血を噴き出さなかっただけでも凄いと思う。

 

「せっかくだから、あなた達もメイド服どうかしら?着てみない?」

 

「「「え?」」」

 

店長さんは直葉ちゃんたちにそう提案した。

 

「三人とも十分似合うと思うわよ?」

 

店長さん、歳は二十代半ばなんだけど未だに子ども心を忘れてないというかなんていうか、少し・・・・・・かなりイタズラ癖があるのだ。まあ、それが周りの人には好評で色んな人から親しまれているんだけど。さらに店長さんは料理が上手だ。私たちも賄いとして料理を店長さんに作ってもらうことがあるんだけど・・・・・・料理では多分、店長さんには適わないと思う。

 

「ボクは着てみたいなメイド服。姉ちゃんと直葉はどう?」

 

「う、うーん・・・・・・じゃ、じゃああたしも」

 

「では私も」

 

「決まりね♪それじゃあレインちゃん。三人の着付け、お願いね」

 

「あ、はい!わかりました店長さん!」

 

店長さんにそう言って、私は直葉ちゃんたちを連れて従業員控え室に案内したのだった。

 

〜虹架side out〜

 

 

 

 



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LS編 第160話〈剣士達はメイドと執事です〉

 

〜和人side〜

 

 

「・・・・・・・・・・(何故こうなった?)」

 

思わず今の状況に問い掛けた俺はため息を吐いて、自分の格好を姿見で再び見る。

 

「・・・・・・動きにくいな」

 

今の俺の格好は、白いシャツに黒のタイとウェストコート。前を開けてる漆黒のジャケット。純白の手袋を着けて、靴も普通のスニーカーからローファーに履き替えられている。

正直言って、かなり動きにくい。

そう思いながら見ていると。

 

「うわぁ♪似合ってますね彼氏さん!」

 

「ええ。よく似合ってますわ」

 

「は、はぁ・・・・・・」

 

着付けをしてくれた店員二人が興奮したように褒めてきた。

二人の言葉に、どう反応していいのか困った俺は空笑いな言葉を返した。

 

「それにしても、レインちゃんに彼氏がいたなんてね」

 

「ええ。驚いたわ」

 

「いいなぁ〜。私も彼みたいな彼氏がほしいよ」

 

「そう?私はいいけど」

 

「そう言っていられるのも今のうちだよ〜。絶対後で後悔することになるんだから」

 

「そういうものなのかしら?まあ、それは置いといて」

 

「ちょっと!?」

 

「ウチでも結構人気のあるレインさんに彼氏がいたなんて、ファンに知られたら荒れるわね」

 

「え?!」

 

店員二人の会話に俺は驚いた声を出した。

というか、そのこと自体初耳なのだが!?

そんな俺に気づいた二人は首を傾げて。

 

「あら、彼氏さんは知らなかったの?」

 

と聞いてきた。

 

「あ、ああ」

 

正直、虹架がここで働いているのも今日初めて知ったことだ。

 

「レインちゃんはねぇ、このお店で大人気なメイドさんなんだよ♪この間だって、店内の人気投票で一位を獲得していたもん!」

 

「一位!?」

 

何故か自分の彼女兼嫁がどこか遠くに行ってしまったような感覚だ。

 

「レインさんは歌も上手で、よく路上や店内で歌ってくれるんです。しかも、あのスタイルに容姿ですからね。ファンのお客様が多くて、巷では『雨虹の歌姫(レインディーヴァ)』って二つ名が付いていたりするのですよ」

 

「はァっ!?」

 

『雨虹の歌姫』とはなんぞや!?

変な言葉出そうになったがなんとか抑え、驚愕する。

いや、確かに虹架はロシアと日本のハーフだから髪はクリーム色で珍しいし、容姿も中々だ。細い手足に、肉付きのいい身体。声も綺麗だが、まさかこんなことになっているとは・・・・・・。

 

「ね、ね!」

 

「はい?」

 

「レインちゃんとはどこまでヤったの?」

 

「ぶほっ!」

 

突然この人は何を言い出すんだ!?

思いがけない質問に不意をつかれた俺は息を思いっきり噴き出してしまった。口の中に何か入ってなくてよかった。

じゃなくて!!

 

「な、ななな、突然何を言い出すんですか?!」

 

「えー、だって気になるじゃん」

 

どうやらこの人の性格はクラインに似ているらしい。(クラインに失礼だけど!)

 

「はぁ・・・・・・。そんな野暮なこと聞くんじゃないわよ。人には人の、色んなことがあるでしょう?」

 

「え、気にならないの?」

 

「別に」

 

嘆息してるなぁ、ともう一人の人を見ながら思っていると。

 

「そろそろいいかしら」

 

「あ、店長。はい、終わりましたわ」

 

店長さんがやってきた。

 

「こっちも終わってるからいいわよ」

 

「はーい。それじゃあ彼氏さんのご登場〜!!」

 

「お、おいおい」

 

背中を押されながら、虹架たちの所に戻った。

戻ると、そこには―――

 

「どうかな姉ちゃん」

 

「似合ってますよユウ。直葉ちゃんもよく似合ってます」

 

「えへへ。ありがとうございます!」

 

「・・・・・・・・・・」

 

義妹のスグと幼なじみの木綿季と藍子がメイド服を着ている姿があった。

三人のその姿に俺は呆気に取られていた。

理由は───。

 

「あ!和人!」

 

「お兄ちゃん!」

 

「和人さん、戻ってきていたんですね。どう・・・・・・ですか?私たちの・・・その・・・・・・メイド服姿・・・・・・」

 

「あ、ああ。三人ともよく似合ってるよ」

 

言葉に表せないほど、三人のメイド服姿が似合っていたからだ。

もしここにクラインがいたら血の涙を流すほどかもしれない。これは、俺の特権なのかもしれない。そう思っていると。

 

「えへへ。みんな、よく似合ってるよ♪もちろん、和人くんもね♪!」

 

「虹架」

 

後ろの方から虹架の声が聞こえてきた。

振り返ってみるとそこにはさっきと同じくメイド服を着た虹架が立っていた。

 

「・・・・・・・・・」

 

「え、えっと・・・・・・和人くん?」

 

「ハッ!す、すまん!見蕩れてた」

 

「〜〜〜///」

 

顔を赤くして俯く虹架。その虹架の姿に俺も恥ずかしくなり。

 

「///」

 

「はぁ。お二人とも、そこまでですよ。また二人だけの空気に入ってます」

 

「「うグッ・・・・・・///」」

 

赤面してる中、呆れた声で言う藍子の声に俺と虹架は息を飲み、さらに顔を赤くし湯気でも出てるのではないかと思うほどだ。

 

「はいはい。ごちそうさまー」

 

「もう満腹だよー」

 

「ほっほぉー。彼氏さんと一緒の時はこんな感じなのねレインちゃん」

 

木綿季とスグ、店長さんがそれぞれ口にし、他の店員さんもそれぞれ顔を赤くしたり、他のところを向いたりと、俺たちを見ないようにしていた。

 

「さて!それじゃあ、写真を撮っちゃいましょうか」

 

店長さんのその一言で俺たちは店内のブースに移動し写真を撮り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後

 

 

「───ふぅ。疲れた・・・・・・」

 

「同じくです」

 

「えぇー。二人とも大丈夫?」

 

「楽しかったじゃん」

 

「あ、あははは・・・・・・」

 

俺たちは喫茶店から出てほど近い神社、神田明神に来ていた。

ちなみに疲れているのは俺と藍子で、木綿季とスグは元気で、虹架は苦笑をしている。何故俺と藍子が疲れているのかというと───。

 

「えーと。ごめんね、和人くん、ランちゃん」

 

「レインさんが謝ることはないですよ」

 

「ああ。あそこまで盛り上がるとは思わなかったからな・・・・・・」

 

「あ、あははは。うん、私も想定外だったよ」

 

「「はぁー。まさかあんなに写真を撮られるなんて・・・・・・」」

 

そう、俺と藍子が疲れているのは、肉体的にもなのだが、精神的・・・・・・所謂、気疲れからだ。

スグと木綿季はノリ気であったが。

元々、あまり写真を撮られるのを好きではない俺と藍子は、あそこまでの気迫というかなんというか、視線?周囲の反応?とかそんなのでとにかく疲れていた。

 

「しかも終いには店内に飾るとまで言われたぞ」

 

「まあ、記念にってことでしたし、私たちもその写真を貰いましたからね」

 

「はぁー。知り合いに見られたらなんて言われるか」

 

「・・・・・・想像したくないです」

 

恐らくリズやアルゴ辺りが知ったら絶対いじってくる事間違いない。まあ、娘のユイとストレアに今日のお土産が出来たと思えばいいか。

 

「そう言えばみんなは何を御願いごとしたの?」

 

虹架がふとそう訪ねてきた。

虹架の質問に、最初にスグが応えた。

 

「あたしは、今度の剣道の大会で優勝できますように!」

 

「へぇー。直葉ちゃんらしいね」

 

「うん!直葉なら大丈夫だよ!」

 

「はい。当日は私たちも応援に行きますから、絶対に優勝出来ますよ」

 

「ああ。努力は裏切らないからな」

 

「えへへ。ありがとうみんな。お兄ちゃんたちはなにを御願いしたの?」

 

「ボクは姉ちゃんたちとずっといられますようにだよ」

 

「私も同じですね。みんなと一緒にいられますようにとお願いしました」

 

「和人とレインは?」

 

「俺?俺は・・・・・・秘密だ」

 

「えー。教えてよ〜」

 

「そうだよお兄ちゃん。自分だけ言わないのは反則だよ〜?」

 

「いや、反則って・・・・・・」

 

スグの言葉に苦笑いを浮かべながら、俺はしぶしぶと。

 

「・・・・・・いつまでもこんな日常が続くように、だよ」

 

と言った。

本当はあともう一つ。虹架やユイ、ストレアの、俺のもうひとつの世界での家族の事についてなのだが・・・・・・恥ずかしい気もするから言わないでおこう。

 

「ふふ、和人さんらしいですね」

 

「和人のことだから、てっきり新作PCパーツかユイちゃんとストレアちゃんのことだと思ったんだけどなあ」

 

「あたしも〜」

 

カンの鋭い木綿季の言葉に驚きながら、俺はあはは、と乾いた笑みを浮かべた。

 

「虹架はなにを御願いしたんだ?」

 

「私?私はね〜・・・・・・。和人くんやユイちゃん、ストレアちゃんとずっと一緒に居られるようにと、みんなが笑顔で仲良く過ごして行けるようにだよ♪」

 

「「「おおーー」」」

 

虹架の御願いごとに、スグたちは小さく感嘆の声を漏らし予想していたというような表情を浮かべた。

 

「それに・・・・・・(七色のことも)

 

「?」

 

最後何か言ったような気がしたが・・・・・・気の所為だろうか?

虹架の方を見ながらそう思っていると。

 

「ん?どうかしたの和人くん?」

 

「あ、いや。なんでもないよ」

 

不思議そうな顔で見てきた虹架に訊ねられ、俺ははぐらかすようにして応えた。

その後、俺たちは正月ではないが折角ということでお御籤を引き、お御籤の結果はスグと木綿季は中吉。藍子と虹架は大吉。俺は小吉となった。

お御籤を引いたあと、俺たちは虹架も一緒に買い物をした。

・・・・・・していたのだが──────。

 

「・・・・・・・・・・」

 

「あ、あははは・・・・・・」

 

自身の携帯の画面に表情されてる文章を見た俺は無言になり、虹架は乾いた苦笑いをしていた。

俺の携帯の画面には。

 

 

『お兄ちゃん。あたしたち先に帰ってるね♪お兄ちゃんは虹架さんとデートして来たらどうかな?あ、朝帰りしてもイイからねお兄ちゃん』

 

 

と書かれていた。

 

「(いらんお世話だぞスグ!!)」

 

思わずスグにそうツッコンでしまったが悪くないはずだ。うん。

そもそも朝帰りってなんだ!?いや、今確かにウチは親父は出張で海外だし、母さんも勤めてる出版社が締め切りマジかとかで、例如く帰りは遅い。場合によっては泊まりになる事もある。というわけで、ウチは今俺とスグだけなのだ。あと、木綿季と藍子がよく泊りに来る。

 

「え、えーと・・・・・・どうしようか」

 

虹架が苦笑いをしながら聞いてきた。

虹架も俺と同様何も聞いてなかったらしく、いきなり居なくなっていてなんとも言えない感じなのだ。

取り敢えず。

 

「スグたちには後でお説教だな」

 

である。

 

「お手柔らかにね?」

 

「まあ善処するさ」

 

虹架の言葉に俺は真顔で応えた。

さて、現実でお説教かALOでの決闘どちらにしようか。

スグたちへのお説教を何にしようか悩んでいると。

 

「取り敢えず、何処かに行く?」

 

虹架が首を傾げて聞いてきた。

 

「そうだなあ・・・・・・」

 

時刻は午後十七時半過ぎでもう少しで十八時になる。

今日はバイクでは無いので、帰る時間も考えると二十時頃までに川越行きの電車に乗らなければならない。となると、残りは約二時間だ。さてどうするか。

 

「虹架は行きたいところあるか?」

 

「うーん・・・・・・」

 

腕を組んで悩む虹架。少しして。

 

「あ、じゃあ───」

 

 

 

───場所を移動して───

 

 

 

「うわぁ〜!見てよ和人くん!綺麗な眺めだよ」

 

「ああ。絶景だな」

 

俺と虹架は移動してスカイツリーの展望台にいた。

秋葉から電車で三十分もかからずに着いたスカイツリーで、今俺と虹架は展望台から夕方から夜へと変わる黄昏時を眺めていた。

季節はもう夏を過ぎ冬へと入ろうとする秋。秋空の空と窓から見える眼下の街並み。その光景は絶景といえるほどだ。

冬であったら雪で、春は花、夏は星空と、季節事に見える景色は違う。時間の問題もなのだろうが、この景色は絶景だった。

 

「夕焼けの明かりに照らされる街並み、綺麗だね〜」

 

「ああ」

 

夕焼けの光に少し眩しくもあるが、夜へと入っていく逢魔が時のこの光景の前では、少しの眩しさなど気にもとめなかった。

 

「んー。この光景を見ていたら今度日光とかに行きたくなっちゃったよ」

 

「ああ、確かに今この季節は紅葉が綺麗だからな」

 

他にも沢山、京都など紅葉が綺麗なところはあるだろう。今度行ってみたい。

 

「で〜も〜」

 

「うおっ・・・!」

 

急に左腕に抱き着いてきた虹架に少し驚いて声を出しつつ、虹架を支え、虹架から伝わってくる感触や匂いにドキマギしながら表情に出さないようにする。

虹架から伝わってくる柔らかい感触やいい匂いに対する反応を表情に出さないように、自制心を高めていると。

 

「和人くんと一緒ならどこでもいいけどね♪」

 

満面の笑みで言ってくる虹架の言葉に、俺はクリティカルを受けた(精神的に)。

 

「あれ、和人くん顔赤いよ?」

 

「!?き、気の所為だ」

 

「ウソだー。気の所為じゃないよ」

 

「ゆ、夕陽のせいだよ」

 

なんかどこかで聞いたような台詞を咄嗟に言ってしまったが。

 

「ふふ。じゃあそういうことにしといてあげるね」

 

離れてクルッと一回転し手を後ろに組んで虹架は言った。

のはいいんだが。

 

「虹架、自分が今日何を着ているか分かってる?」

 

「え?」

 

虹架の服装は白いブラウスにベージュのジャンパースカート。首にストールを巻いている。

そう、虹架は今日スカートなのだ。

まあ、スカート丈は膝下ぐらいまであるけど。

そこでようやく気づいたらしい虹架は「はわっ!」と言ってスカートの裾を直した。顔を赤くして。

 

「・・・・・・和人くんのエッチ」

 

「なぁっ!?なんでだ!?」

 

唐突の虹架の発言に俺は息を詰まらせた。

あ、周囲に迷惑にならないようにしているぞ。

唖然とした表情を出していると。

 

「ふふっ」

 

ふいに虹架が小さく笑った。

 

「冗談だよ♪和人くんになら見られてもいいしね♪・・・・・・他の人は嫌だけど」

 

「・・・・・・・・・・」

 

虹架の言葉に俺はパクパクと目を点にしていた。

あれ、虹架ってこんな性格だったか!?

逢魔が時の中、俺と虹架は窓から見える景色を見つつ笑いあったのだった。

 

 

 



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LS編 第161話〈砂丘峡谷ボス、ヒルディスヴィーニ〉

 

〜キリトside〜

 

「───さて。みんな、準備はいいか?」

 

色々あって、俺達は無事スヴァルトアールヴヘイムの二つ目の島、砂丘峡谷のボスがいるであろう扉の前に来ていた。

仲間は全員揃っていて、久しぶりのフルメンバーだ。(それぞれみんな予定とか有って)

扉の前に立ち確認すると全員頷き、最後の確認をする。

 

「それにしてもさ、なんでボスの情報とか無いんだろうね」

 

唐突に呟いたのはユウキだ。

愛剣の『マクアフィテル』を腰に挿して何時ものバトルコートを装備している。

ユウキの呟きに応えたのは。

 

「さぁネ。それはオレっちが知りたいサ」

 

今回のボス戦に参加するアルゴだ。

情報屋とSAOの頃から変わらず、このALOの中でも言われている彼女は肩を竦めて返す。

 

「SAOだったら断片的な情報があったんですけどね・・・・・・」

 

「だよな。なのにALO(ここ)じゃNPCからも何にも得られねぇし」

 

ランとクラインも続くように言う。

 

「もしかしたら、それはここがSAOとは違うからじゃないかな?」

 

「どういう事ですかアスナさん?」

 

「みんなも知ってる通り、この世界【ALO】は【SAO】のサーバーをコピーしたVRMMOでしょ?だから、完全に同じという訳じゃなくて・・・・・・あぁ、なんて言ったらいいのかしら」

 

アスナが戸惑った様子で口を濁す。

 

「つまりだ。ALOは魔法有り飛行戦闘有りのSAOなわけだろ?もし、SAOと同じだったら簡単にクリアされるから、ボスの情報は無いんだろうな」

 

アスナの言葉を引き継いで言うと、シリカたちはなるほどと頷いた。

 

「パパ」

 

「ん?」

 

「恐らくですが、前回と同じくボス戦は場所を移動して行うと思われます。気を付けてください」

 

「わかった。ありがとうなユイ」

 

「いえ!頑張ってください!」

 

俺の胸元のポケットに入り俺らに激励を掛けてくれたユイに返事をして、俺はみんなを見る。

みんな、準備万端の様子だ。

 

「よし───いくぞ」

 

両手を目の前に聳え立つ扉に着き、扉を押していく。

そして、扉を開けると───

 

「くっ・・・・・・!」

 

「やっぱりだと思ったけど、またこれぇぇ〜!?」

 

浮遊草原(ヴォークリンデ)の時と同じく、扉の奥から凄まじい暴風が俺たちを襲って来た。

 

「もしかして、これからのボス戦って全部これがあるんじゃ・・・・・・」

 

「うぅぅ。転移するのはいいけど、せめてやり方を変えて欲しいよ」

 

「それには同意するわ」

 

フィリアの言葉にリーファとシノンが返す。

そのまま風に耐えていると───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───!」

 

次に目を開けると、俺たちはヴェルグンデの空にいた。

そしてそこに───

 

「グオオオオオォォ!!」

 

地を鳴る雄叫びが辺り一面に響き渡った。

 

「今の声どこから・・・・・・!」

 

周囲を見渡すが、何も無く。

 

「ハッ!上だ!」

 

ハッ!と上を見上げると、俺たちから少し上に行ったところに、巨大な空を飛ぶゴーレムのような、岩で出来た巨大な顔に岩の両腕。そして後頭部の周囲に八つのクリスタルらしきオブジェ。そのクリスタルらしきものは顔の下、身体部分にも一際大きいのが存在していた。

 

「なにあれ!?」

 

「空を飛ぶゴーレム・・・・・・?」

 

「いやいや、あれはゴーレムじゃないでしょ!?」

 

うん。リズの言う通りあれは空を飛ぶゴーレムでは無い。(確信)何せ胴体がないから。

 

「キリトくん、それだけで確信ってのは・・・・・・」

 

「あれ、声に出してた?」

 

レインの声に俺は驚き半分の顔を出した。なんか最近レインに思考を読まれることが多い気がするな。

そう思いながら、ボスを視る。

ボスの頭上には『The Hildisvíni』と表記されていた。

 

「ヒルディスヴィーニ。戦いの家猪。戦いの猪。北欧神話の愛の女神フレイヤが持っているといわれるイノシシの名前ね」

 

ボスの名前にシノンがそうコメントする。

俺たちはそれを聴きながらそれぞれ剣を抜刀する。

ボス───ヒルディスヴィーニも俺たちに気づいたらしく、地鳴りのような雄叫びを上げて接近してきた。

 

「みなさん!あのボスの攻撃には気を付けてください!」

 

俺の胸ポケットから顔を出して言うユイ。

 

「わかった!よし、それじゃあ行くぞ!」

 

『『『おおっ!!』』』

 

俺たちは気合を入れてボスへと向かって行った。

 

「はああああっ!!」

 

初撃としてヒルディスヴィーニ本体を斬り付ける。しかし。

 

「なっ・・・!?硬っ!」

 

ヒルディスヴィーニにはキンッ!と音が鳴るだけでHPは全く削られてなかった。

 

「退いてキリト!」

 

俺と代わりにリズがヒルディスヴィーニに自身の片手棍を振るう。

 

「やああっ!」

 

「グオオッ!」

 

「───って、硬ったぁぁい!!なによこの硬さ?!岩を殴ってる感じなんだけど!?」

 

一撃を見舞ったリズは打撃を与え、すぐに離脱し右手を痺れたように振って眼を丸くして言う。

リズの武器である片手棍は、俺達の中で唯一打撃系の武器だ。一応エギルの両手斧やストレアの両手剣も打撃系のソードスキルはあるが、基本は『斬撃』の属性に入る。その打撃かあまり効果無いとなるとアスナやシノンの『刺突』は全く効果ないとみるべきだろう。

何処かに弱点(ウィークポイント)があると思うが・・・・・・。

ボス、ヒルディスヴィーニを観察しつつ攻防を行う。

現状、ヒルディスヴィーニの攻撃は両腕によるなぎ払いや叩きつけなどだ。少しずつではあるがヒルディスヴィーニの三段あるHPは減ってきてはいる。が大きく減らすことは出来てない。

 

「っ!キリト!」

 

「ああ!」

 

クラインとともに、迫ってきたヒルディスヴィーニの突進を下に降りて避けその下のクリスタルを斬りつける。

すると。

 

「グオオオオッ!!!!」

 

ヒルディスヴィーニ悲鳴を上げるかのような雄叫びをあげた。

 

「!もしかして・・・・・・」

 

ヒルディスヴィーニのその様子に俺はある仮説が頭に出た。

俺はその仮説を確かめるために再度クリスタルをに攻撃を仕掛ける。

 

「はぁっ!!」

 

片手剣ソードスキル《ソニックリープ》をブースト込みで放つ。

雄叫びを上げ動きを止めていたヒルディスヴィーニの、胴体部分にあたる下のクリスタルに《ソニックリープ》は当たり。

 

「グオオオオオオ!!!」

 

再び悲鳴のような声とともに、表示されているHPゲージが多く削れた。

 

「よしっ!やはりクリスタルが弱点なんだ」

 

クリスタルに赤い斬られたエフェクトが消える中、俺はみんなに伝える。

 

「みんな!このクリスタルがコイツの弱点だ!恐らく周囲に浮かんでる小さなクリスタルも同じだ。そこを重点的に攻撃していくぞ!」

 

『『『『『了解』』』』』

 

全員声を上げ、それぞれの武器を構えてヒルディスヴィーニへと向かい、クリスタルへと攻撃していく。

 

「はあぁっ!!」

 

「うおおぉっ!」

 

「とぉりゃっ!!」

 

「やあぁぁっ!」

 

「せやっ!」

 

「ぜぇぇあっ!」

 

次々とクリスタルに攻撃がヒットして行き、ヒルディスヴィーニの三段あるHPゲージは三段目の半分程にまで削られた。

 

「グオオオオオオッッッ!!!」

 

「っ!散開して!」

 

『『『っ!』』』

 

アスナの忠告に全員瞬時に反応し、動き出したヒルディスヴィーニの両腕回転攻撃を避ける。が。

 

「きゃアッ!」

 

「くっ!」

 

「シリカちゃん!」

 

「フィリアさん!」

 

ヒルディスヴィーニの両腕による攻撃の風を受けシリカとフィリアはバランスを崩した。とっさにリーファとランが助けに入り離脱する。

 

「おいおい。なんつー攻撃力だよ・・・・・・。風がすんげぇぞ」

 

「あ、ああ!クライン大丈夫か」

 

「おうよ。問題ねぇ!」

 

隣でヒルディスヴィーニの両腕による風を耐えつつクラインと話す。まあ、ウォークリンデのボスであったファフニールの起こす風よりはマシだが。

少ししてヒルディスヴィーニの両腕回転攻撃が終わり。

 

「クライン!」

 

「おうよ!」

 

すかさず近くのクリスタルにクラインが刀を一閃。そして俺は二刀流ソードスキル《デブス・インパクト》五連撃を撃つ。

 

「グオオオオオオォォォォ!!!」

 

「チェストォォー!」

 

悲鳴をあげるヒルディスヴィーニの額に、リズが遠心力も加えた片手棍の攻撃。片手棍ソードスキル《ミョルニルハンマー》を叩き込む。《ミョルニルハンマー》の副次効果で、ヒルディスヴィーニの額にバチッ!と雷が走る。

 

「グオオオオッッッ!!!」

 

さらにスタンの効果も入ったことにより、ヒルディスヴィーニはその巨体?いや・・・巨顔岩?を横に倒れ伏した。

 

「いまよ!全員総攻撃!クリスタルを重点的に狙って!」

 

アスナの指示声に俺たちは全員それぞれソードスキルのライトエフェクトを煌めかせて、武器をクリスタルへと叩き込む。

 

「うおおおおぉぉぉっ!」

 

「ぜりゃあぁぁっ!」

 

「やあぁぁっ!」

 

「はあぁぁっ!」

 

「せやああぁぁっ!」

 

色とりどりのソードスキルのライトエフェクトがあちこちで輝き、ヒルディスヴィーニの三段ある膨大なHPを削っていく。

 

「キリトくん!」

 

「ああ!」

 

レインと合流し、

 

「「───アブソリュート・デュオ!」」

 

24連撃のソードスキルを放ち、更にHPを削る。

ソードスキルの技後硬直が終わると同時にヒルディスヴィーニもその巨顔岩を元に戻し、一際大きな雄叫びのような声を発した。

 

「グルオオオオオオッッ!!」

 

「パパ、ママ!気をつけてください!行動パターンが変わります!」

 

「ああ!」

 

「ありがとうユイちゃん!」

 

ユイの忠告に返事をし、ヒルディスヴィーニの攻撃範囲(レンジ)から離れる。

 

「グオオオオオオ!!!」

 

「っ!気をつけてください!なにか来ます!」

 

ヒルディスヴィーニの雄叫びにランが警告を促す。

それと同時にヒルディスヴィーニは大きな口を開き、そこから砂の息吹(サンドブレス)を繰り出した。

 

「「「っ!!」」」

 

「ラム!リーファ!ストレア!」

 

ヒルディスヴィーニの砂の息吹の直射状にいたラムたちは咄嗟にそれぞれの武器でガードする。

 

「アスナさん!」

 

「ええ!」

 

種族がウンディーネであるランとアスナはすぐに三人に回復魔法を施す。

 

「グオオオオオオ!!!」

 

しかし、それを阻むようにヒルディスヴィーニが再び口を開き、アスナとランに向けて砂の息吹を放とうとする。

 

「っ!また!?」

 

そこに。

 

「うおおおおおおっ!!」

 

「させるかよっ!」

 

「ピナ、バブルブレス!」

 

「キュウゥーーっ!」

 

「アルゴ!」

 

「あいヨ!」

 

エギルとクラインがヒルディスヴィーニに向けて強力な一撃を頭上から叩き込み、シリカの指示にピナがヒルディスヴィーニの目に向けて泡を吹き出し動きを止める。そして、フィリアとアルゴが巨顔岩の下の大きなクリスタルを攻撃した。

 

「グオオオオオオ!!!」

 

ヒルディスヴィーニは悲鳴を上げ、後ろへと巨顔岩を移動して距離を取る。

 

「フッ!」

 

そこにシノンが追撃を仕掛けるように、矢を数本ヒルディスヴィーニの眼に向かって放つ。

えげつない、と思ったのは気のせいじゃないと思う。うん。

 

「キリト、今えげつないって思ったでしょ」

 

「なんでわかった!?まさかシノン、エスパーが使えるのか!?」

 

「そんなわけないでしょ!顔見ればわかるわよ!」

 

矢を放ちながら言うシノンの言葉に、レインは苦笑いを浮かべながら。

 

「───サウザンド・レイン!」

 

自身の最強のソードスキルを放った。

レインの象徴とも言えるソードスキル。SAO時代から愛用しているレインの十八番ソードスキル。

レインの周囲に現れた蒼色のライトエフェクトを纏った幾多の剣が、雨のようにヒルディスヴィーニへと殺到する。さすが、身体が岩だからか、防御力は高く、蒼色の剣はヒルディスヴィーニの硬皮を貫きはしなかったが、幾多の切り傷を負わせた。

 

「グオオオオオオ!!!」

 

雄々しい雄叫びを上げ、ヒルディスヴィーニは両の岩拳を突き出しパンチを撃つ。

 

「くっ!」

 

ヒルディスヴィーニのパンチは直撃こそしなかったが、拳風で大きく退けられた。

 

「直撃したらヤバいな・・・・・・・」

 

ヒルディスヴィーニの速度(スピード)は幸いにもそこまで高くないため、躱せることはかわせるが如何せん攻撃力と防御力が高い。しかも身体が岩なため重みもありそれはさらに高い。

 

「アスナさん!」

 

「ええ!」

 

ヒルディスヴィーニの頭上から、アスナとランが魔法で氷の槍を降らせ攻撃する。

 

「グオオオオオオ!!!」

 

「これでようやく一段を削り切ったか」

 

アスナとランの魔法攻撃により、ヒルディスヴィーニのHPは三段目がスゥ、と右に消え二段目へと入った。

 

「パパ、次が来ます!」

 

「ああ!」

 

ユイの警告を聴きながら俺たちはヒルディスヴィーニへと接近していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三十分後

 

 

 

「パパ!ラムさん!ランさん!ユウキさん!頭上から岩魔法の攻撃が来ます!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

ユイの声に俺、ラム、ラン、ユウキはそれぞれソードスキルの発動準備をする。

 

「2・・・1・・・0!」

 

俺たちの頭上に展開された魔法陣から拳10個程の大きさの岩が降ってくる。

俺たちはタイミングを合わせ、

 

「「はあぁぁっ!」」

 

「「せやああぁぁっ!」」

 

それぞれソードスキルでその岩を破壊した。

魔法攻撃ならば恐らくユウキたちは微妙だっただろうが、岩は物理だ。ならば、その岩を斬ってしまえばいい。というわけで、ヒルディスヴィーニのこの魔法攻撃は簡単に対処出来た。まあ、こんなのできるのは俺たちくらいなもんだろうけど。あ、エギルやクラインも出来るぞ。というか、俺たちのメンバーの大半は可能だ。が、魔法破壊(スペルブラスト)は今のところ俺とレインしか出来ないけど。

現在、ヒルディスヴィーニの残りHPは一段を切り、イエローゾーンに入ろうとしていた。

二段目の半ばから、岩落としの魔法攻撃や叩きつけ等攻撃パターンが増えたが、そこは最強のアシストである愛娘のユイによって最初は手間取ったが、今になっては楽々・・・・・とは言えないが、タイミングが分かるようになった。

 

「次、ブレスが来ます!」

 

「オッケー!エギル!!───やあぁぁっ!!」

 

「うおおぉぉぉぉっ!!」

 

ユイの声にリズとエギルがヒルディスヴィーニの脳天に棍と両手斧を振り下ろす。

 

「グオオオオオオ!!!」

 

二人の重攻撃により、ヒルディスヴィーニのブレスは不発となり重攻撃を脳天部分に喰らいスタンが発生して動きが止まる。

 

「いまだ!」

 

そしてその隙を逃さず、俺たちはそれぞれ上位ソードスキルを繰り出す。

上位のソードスキルのため威力は高く、弱点であるクリスタルにヒットしているのでヒルディスヴィーニの残り一段のHPは徐々に減り、ついにイエローゾーンからレッドゾーンへと減って行った。

 

「グオオオオオオ!!!」

 

レッドゾーンに入ると、ヒルディスヴィーニはすぐさま雄叫びを上げ両腕による連続攻撃を繰り出してきた。

 

「うぐっ!」

 

「きゃアッ!」

 

「うぅ・・・っ!」

 

リズは左手の盾で、リーファは剣で、ストレアは両手剣の面でそれぞれヒルディスヴィーニの攻撃を受け止める。そして次の狙いはユウキだった。しかし、そこに。

 

「グオッ!?!」

 

ランの魔法による氷結の槍がヒルディスヴィーニの眼球部に突き刺さり、ヒルディスヴィーニの怯ませた。

 

「グルオオオオオオッッ!!」

 

「サンキュー姉ちゃん!」

 

悲鳴をあげるヒルディスヴィーニに、ランに感謝をするユウキ。

 

「みなさん!これが最後です!」

 

『『『『『おう!!』』』』』

 

ランの激励に俺たちは最後の力を振り絞る。

 

「いくよー!───サウザンド・レイン!」

 

「合わせるわレイン!───フッ!」

 

ランの氷結の槍で動きを止めるヒルディスヴィーニに、レインとシノンが牽制としてそれぞれ遠距離攻撃を放つ。

 

「グオオオオオオ!!!」

 

「させませんよ!───ラスティー・ネイル」

 

ヒルディスヴィーニの瞳が光り、攻撃しようとした所にランが自身のOSS(オリジナルソードスキル)。旧、ユニークスキル《変束剣》最上位ソードスキル《ラスティー・ネイル》を放ちヒルディスヴィーニを攻撃する。

 

「ハアあぁぁぁぁっ!」

 

鞭のようにしなって攻撃するラン。ランの剣は蛇のようにヒルディスヴィーニを切り裂く。

その間にも俺たちはそれぞれヒルディスヴィーニのクリスタルを攻撃しHPを削る。

やがて、ヒルディスヴィーニのHPは後二割となり。

 

「グルオオオオオオッッ!!!!」

 

その巨岩を回転させ近づけさせないようにし、頭上から今まだの比にならない数の魔法による岩落としを仕掛けてきた。

 

「ちょっ!なに!?何で急にこんなに俊敏なわけ!まさか暴走状態(バーサーク)になった!?」

 

「というよりもう我武者羅?」

 

「いやいやいや!冷静にツッコミ入れてる場合じゃないでしょ!?」

 

ヒルディスヴィーニのその絶え間ない、もう暴走状態ともいえる攻撃に俺たちはそんな会話をした。いや、だってもう、ね。

 

「ね、姉ちゃん、顔が女子のしちゃいけないような顔になってるよ・・・・・・・!?」

 

「そんなことありませんよユウ?」

 

そんな傍らで本気で心配しているユウキの声とランの真面目な声が聞こえてきたが・・・・・・。うん、将来ランが心配だ。色々と。

 

「キリトさん、ボスが動きを止めてる間に!」

 

ヒルディスヴィーニは暴走状態の反動か、丁度動きを止めていた。

 

「よし!一気に畳み掛けるぞ!」

 

俺の声と同時に全員ソードスキルを発動させる。

色とりどりのライトエフェクトがヒルディスヴィーニに当たり、残り僅かなヒルディスヴィーニのHPを削る。

やがてヒルディスヴィーニのHPは一割を切り───

 

「決めろキリト!」

 

「ああ!」

 

クラインとスイッチし俺は両手を広げ双剣にライトエフェクトの輝きを纏わせ放つ。

 

「うおおおぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

クリアホワイトブルーのライトエフェクトを輝かせ二刀を振るう。

 

「───スターバースト・・・・・・ストリームッ!!」

 

『ジ・イクリプス』より多用した、俺の代名詞とも言えるソードスキル。

二刀流上位ソードスキル、十六連撃の剣の放流が残り僅かなヒルディスヴィーニのHPを襲う。

 

「グルオオオオオオッッ!!」

 

「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

悲鳴を上げるヒルディスヴィーニの声を耳にしながら一撃一撃と双剣を振るう。

 

「ぜっりゃあああぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ラスト十六連撃目。右斬り下しを全力で振り下ろす。

 

「グオオオオオオ・・・・・・・!!!」

 

ヒルディスヴィーニのHPが少しずつ左へと流れ。やがて、三段あったヒルディスヴィーニの膨大なHPが0になった。

最後、小さな雄叫びを上げ砂丘峡谷ヴェルグンデのエリアボス《ヒルディスヴィーニ》はその巨体をポリゴンの欠片へと爆散させた。

 

 

 



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LS編 第162話〈薄紫髪の鎌使い〉


「―――えー、コホン。みなさんお久しぶりです。ソーナです。まずは謝罪を。一年近く投稿できず申し訳ありませんでした―――ぁぁぁっ!!??」

「「ソーナぁぁぁぁっ!!!」」

「き、キリト、レイン!?いきなりソードスキルで攻撃しないでくれるかな!?」

「なんで一年近く投稿しなかったのか説明願おうか!?」

「ことと次第によっては。ね?」

「ま、まって!落ち着いて!話を聞いて!!ね!?」

「で?」

「いや。その。・・・・・・スランプや書く時間とか、イメージ構想が浮かばなかったりとかデータが消えちゃったりとか色々とあったんですぅぅぅ!!」

「ほう?そのわりにはリリカルの方は投稿してるが?」

「これはどういう事なのかな?」

「え、いや、だってリリカルの方はもうほとんどオリジナルだし・・・・・・・」

「「―――有罪(ギルティ)」」

「え、ちょっ!ふ、二人ともストップストーーーップ!!!!」

「「知るかぁぁあ!!!《トワイライトエデン・デュオクライシス》!!!!!」」

「そ、それはダメ!!ああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ・・・・・・・・・・・!!!」













只今画面が乱れておりますもう少々お待ち下さいませ













「と、とりあえずSwitchのアリシゼーションリコリス発売おめでとうございます!!リコリス買ったのでプレイしながら投稿していこうと思います。これからもよろしくお願いします!」


「次また一年近く投稿しなかったらもっと酷い目に合わせるからな?」

「は、はいっ!善処します!!」

「善処しますじゃなくて絶対。ね?」

「イエスサー!!!」

「とまあこんな感じだが一年近く待たせて悪かったなみんな」

「これからも私たちの活躍を期待してね」

「あ、それと俺たち以外のヤツらもな」

「それと、Switchのアリシゼーションリコリス発売おめでとう〜!!」

「ついにリコリスもSwitchに登場だな。さらにもう少ししたら映画も公開されるし楽しみだ」

「そうだねキリトくん!」

「ああ!」

「それじゃあみんな本編をどうぞ!」

「今回はあの娘が出てくるよ!」

「「これからも『ソードアート・オンライン 黒の剣士と紅の剣舞士 二人の双剣使い』をよろしくお願いします!!」」





 

~キリトside~

 

砂丘峡谷ヴェルグンデのボスを討伐し、スヴァルトアールヴヘイム第三の島、環状氷山フロスヒルデへと足を進めた俺たち。

フロスヒルデはその名の通り氷山の島で、ゲームの中なのにリアルの身体にも寒さが感じるかと思うほどの寒さだった。

そんなこんなで、寒さに耐えながら攻略を開始したある日、俺、レイン、アスナの三人は強化素材の収集とクエスト攻略をしてとある洞窟にいた。

 

「アスナ、そっちに三体行ったぞ!」

 

「わかったわ!はあぁぁぁぁっ!」

 

すぐさまモンスターに向かって駆け攻撃を仕掛ける。

今この広間にいるモンスターはリザードマン系とプーカ系の二種だ。

レベルはそこまで高くはないが、如何せん数がやや多い。

 

「せあああっ!」

 

リザードマン二体を二刀流ソードスキル《エンド・リボルバー》範囲技でHPを削り、接近してきたプーカを斬り付ける。

 

「キリトくん、また何体かPOPしてきたよ!」

 

少し離れたところでプーカをポリゴンに変えたレインがそう言ってくる。

 

「わかった!にしても、一体何体いるんだよ。もう十体以上倒してるぞ?!」

 

思わずそう愚痴るのも無理はない。

なんせもう俺たち三人で三十体近く撃破しているのだ。いくら、SAOの攻略組でトッププレイヤーだった俺たち三人だとしても、この連戦はキツイ。いや、まあ、SAO第99層でのボス五連戦よりかはかなりマシなのだろうが。

 

「はあぁぁぁぁっ!」

 

連続で刺突を叩き込むアスナ。その背後に迫り来るリザードマン二体。

 

「っ!アスナちゃん、後ろ!」

 

「えっ!?」

 

レインの声でようやく気づいたようだが、既にリザードマン二体は手に持つ無骨な剣をアスナに振り下ろそうとしていた。

そのままアスナのHPを削るのかと思ったその瞬間。

 

「アスナには触れさせない!」

 

ガキンッ!と音がなり、瞬く間にリザードマン二体をポリゴンの欠片へと変えた女性プレイヤーが現れた。

そのプレイヤーの髪は薄紫色で長くアスナと同じような髪型をしていた。そして、その手には似つかわしく無い大きな鎌が握られていた。

 

「あ、あなた!」

 

そのプレイヤーを見たアスナは驚いたように眼を見開いていた。

 

「気を抜かないでアスナ!まだ来る!」

 

「え、ええ!」

 

プレイヤーの声に返事をしアスナはすぐに動きを開始する。

女性はアスナと息を合わせ瞬く間にリザードマンとプーカを倒していく。

その光景に俺とレインは目の前のモンスターを倒しつつ眼を見開いていた。なにせ、アスナの動きが全てわかっているかのように先読みし、スイッチを的確にしているのだ。

やがて、すべてのモンスターを倒しもうPOPしないことを確認し俺たちは武器を鞘に収めた。

どう会話したものかと思い悩んでいると。

 

「さて。久しぶりねアスナ。元気そうでよかった」

 

「や、やっぱり深澄!?」

 

「ああぁぁぁぁっ!!!だから、名前で呼ばないでって言ってるでしょ!?あの時にさんざん言ったよね!!?まさか忘れたの?!!」

 

「ご、ごめんなさい。ええっと、ミト・・・・・・であってる?」

 

「ええ。まったく・・・・・・」

 

な、なんかアスナの知り合いらしいが・・・・・・

俺とレインは眼をパチクリさせて二人のやり取りを見ていた。

 

「え、ええと、アスナちゃんそろそろ紹介いいかな?」

 

苦笑しながらレインがアスナに訪ねる。

 

「あ、ごめん!えっと、彼女はミト。私の友達なの」

 

「はじめましてアスナの友達よ。プレイヤーネームはミト。種族はインプよ。あ、でも、はじめましてじゃないかな?特にそっちの黒の剣士には」

 

「え?そうなのキリトくん?」

 

プレイヤー。ミトの言葉にレインは驚き俺に聞いてくる。

 

「ああ。久しぶりだなミト」

 

ミトの問いかけに俺はそう返す。

 

「紅の剣舞士さんは知らなかったわね。私も元SAOサバイバーの一人よ。そして、元βテスターでもある」

 

「βテスター・・・・・・ってことはキリトくんと同じ?」

 

「ええ。まあ、でもSAO初期の頃はβテスターの時と同じ格好だったけど」

 

「あの時のミト、誰かわかんなかったわよ。いきなり両肩を掴んだ筋骨隆々の男性が至近距離で言ってくるんだもの。結構怖かったわよ」

 

「それはあの時何回も謝ったでしょ。ていうか、ゲームで人の本名を叫んでるアスナの方に問題があるんだけど?」

 

「そ、それを言われると・・・・・・」

 

「あはは。アスナちゃんって昔からおっちょこちょいだったんだね」

 

「も、もぉ!しょうがないでしょ!私SAOが初めてのゲームだったんだから!」

 

「あははは!」

 

「ふふふ」

 

アスナの様子に笑うレインとミト。対して俺はあははと苦笑を浮かべるだけにした。

 

「それにしてもミト。あんたもALOに来てたんだな」

 

「あ、そうだよ!こっちに来てたんなら連絡ぐらいしてよ」

 

「ごめんアスナ。まあ、私も元SAOサバイバーだからね。SAOをコピーしたゲーム。ALOはゲーマーとして見逃すはずがないから」

 

「ああ。ミトはかなりのヘビーゲーマーだったわね」

 

思い出したように感慨深く頷くアスナ。

 

「つまりキリトくん並のゲーマーってことだね」

 

「レインさんや?それはあなたにも言えることなのでは?」

 

レインの言葉に俺はそう返す。いや、レインもはっきり言ってかなりのゲーマーだと思うが。

 

「ミトとはβテスターの時に一度とだけとあるクエストを協力したんだよ。まあ、当時はミトがあのプレイヤーとはしらなかったけどな」

 

「そうね。基本私は男キャラを使ってるし」

 

「あ、そっか。SAOであの時手鏡で現実世界の自分の体になっちゃったんだっけ」

 

「ええそう。それに今となってはこっちの現実世界の私に似てる姿、嫌いじゃないわ」

 

「あれ、じゃあキリトくんとはどこで知り合ったの?」

 

「んああ。それはだな」

 

「キリトとはSAOのとあるクエストで知り合ったんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー回想ー

 

 

二年前 SAO第43層 東の森

 

 

「はあああっ!」

 

ズバッ!と横薙ぎに切り裂き、ウルフ系モンスター二体を倒す。

HPが0になりポリゴンの欠片へとなる姿を見ると、視界に獲得経験値やドロップアイテムなどを記したウインドウが現れる。

軽く振り、自分の相剣を背中の鞘に納める。

時刻はまだお昼前だと言うのにこの辺りは木々が覆い茂り少し薄暗い。

 

「・・・・・・そろそろ帰るか。クエストアイテムもこれで十分集まったし」

 

今日は珍しく相方であるレインとは別行動を取っている。

なんでも鍛冶仲間の所に助けに行くのだとか。

そんなわけで俺は手頃なクエストを受注してレベル上げをしようと思ったのだが、ふとアルゴから聞いた隠しクエストがありそれを受け今に至る。

 

「にしても隠しクエストなだけあってクリア条件がかなりキツかったな」

 

このクエストのクリア条件は指定モンスターの討伐とそれの落とすドロップアイテムの規定数収集なのだ。一見、簡単そうに見えるがそうではなく、これまたかなり難しい。パーティーならもっと楽なのかもしれないがソロだとキツい。なにせ、指定モンスターは複数いて、収集アイテムも量が量だからだ(まあ、それをこなしてしまうソロプレイヤーが此処や他にもいるのだが《By作者》)

徒歩で森を抜けようと歩いていると。

 

 

 

 

『はあぁぁぁっ!』

 

 

 

 

すぐ近くからそんな声とともにズバッと何かを切り裂く音とモンスターの悲鳴が聞こえた。

 

「近いな・・・・・・見てみるか」

 

索敵スキルを使ってみると、すぐ近くに一人のプレイヤー反応があった。俺以外にもソロで潜ってるプレイヤーに気になり俺は様子を見てみることにした。

近づいて見てみると、そこには数体のウルフ系モンスターを相手取って戦っている紫の髪の少女がいた。そしてその少女の武装は女子にしては珍しい(サイス)を使っていた。

基本女子が選ぶ武装と言ったら片手剣や細剣、短剣と言ったものだ。両手剣や斧といった重武装系を使う女子はあまり見た事ない。まあ、女子にも槍を使うプレイヤーやフルプレートアーマー装備の片手剣と盾使いもいるが、少なくても鎌使いと言うのは珍しい。

そもそも、鎌を装備しているプレイヤーはあまりいない。俺自身も見たことない。両手斧で俺が最初に浮かぶのはぼったくり商店の店主にして俺の友人であるエギルがまず頭に浮かぶ。

現在の最前線は第51層であり、これまでかなりのプレイヤーを見てきた。が、やはり鎌使いは見たことない。しかし逆にモンスターで鎌を使うのは見たことがある。主にファントム系が使用する。

鎌の最大の特徴はその長さによるリーチと遠心力が効きトリッキーな動きが出来ることだ。さすがに槍の様までとはいかないが。

鎌の属性は斬だ。突属性のソードスキルはあまりなく、斧や棍のように打属性もない。斬る、ということに特化した武装なのだ。

鎌使いといって思い返すのは、SAOクローズドβテストで初めて共闘した彼だろう。いや、本当に性別が男なのかはわからないが。

彼の鎌の扱いは凄かった。今でも印象に覚えてる。遠心力を利用した回転で正面のみ為らず、周りのモンスター相手にもダメージを与えていた。

そんなことを思い返しながらその少女の戦闘を見る。

少女が相手取っているモンスターの数は四体。ウルフ系モンスターの攻撃パターンは爪による引っ掻きやプレイヤーに飛び掛って噛み付き、引っ掻きと噛み付きの連続攻撃といったものだ。ウルフ系モンスターで注意するべきなのはその素早さと攻撃を受け出血デバフを喰らう可能性があるという事だ。出血デバフは一時的なHP減少(スリップ)系のデバフであり、徐々にHPが減る他一時的な行動阻害にもなる。その為対出血ポーションやクリスタルで回復が必須だ。しかし今戦闘している少女はモンスターの攻撃を上手に捌き、逆に攻撃を当てていく。

その動きはまるで踊っているよう。と、もしここに相方のレインがいたら、口に出していただろう。それほどまでに卓越した戦闘だった。

それからしばらくして少女とウルフ系モンスターの戦闘は終わった。少女のHPゲージを見ると、約7割程度まで削られてるが特に大きな消耗とかはないようだ。むしろあの数のウルフ系モンスターをソロで討伐してHPが7割も残っていることから少女の戦闘スキルは俺たち攻略組・・・・・・。いや、攻略組の中でも上位に位置する俺たちに匹敵するとわかる。

ただ、何処と無く知り合いであるアスナの戦闘スタイルに似ているような気はする。

少女見てそう思っていると。

 

「───何時までそこに隠れてるつもり?」

 

隠蔽(ハイディング)している俺の方を見て少女が言ってきた。

俺の隠蔽スキルはかなりの練度だ。それを見破れるということは少女の索敵(サーチ)スキルは俺と同等だという事だ。

俺は隠蔽スキルを解除し少女に話しかける。

 

「わるい。覗き見するつもりじゃなかったんだ」

 

「・・・盾無しの片手剣に黒ずくめの格好・・・・・・あなた黒の剣士キリト?」

 

「ああ」

 

少女の問いに肯定する。

 

「キミは?」

 

「ミト」

 

「ミトか。よろしく頼むミト」

 

「ええ。よろしくキリト」

 

鎌を背中に吊す少女───ミト。

 

「ミト。キミは・・・・・・ソロなのか?」

 

周囲に誰もいない感じから俺はミトに聞く。

 

「ええ」

 

淡白に返すミト。

 

「パーティーやギルドには入ってないのか?」

 

「基本、私は特定のパーティーやギルドには入らないから。まあ、以前友達からギルドに誘われたことがあるけど」

 

「友達のギルド?」

 

「ええ。確か、血盟騎士団・・・・・・だったかしら?」

 

ミトから出たギルド名に俺は目をピクっと動かし驚いた。

まさか聖竜連合と並ぶトップギルド、血盟騎士団とは思わなかったのだ。

血盟騎士団には幼馴染みであるユウキとランも所属し、副団長は知り合いであるアスナにして、団長はあの生ける伝説とも言われる男、ヒースクリフだ。

そんな所に所属して、声が掛かるということは彼女は俺たちと同じレベルと戦闘技能を持っていることになる。それはさっきの戦闘で一目瞭然だが。

 

「逆にあなたはどうなの?相方の紅の剣舞士といつも居るみたいだけど、ギルドには入らないの?」

 

「っ!」

 

ミトの言葉に俺は息を詰まらせた。

ギルドに入らないの?と言う言葉に俺は心臓が痛くなった。

原因はわかってる。

月夜の黒猫団のことを、俺はまだ引き摺ってる。いや、後悔しているからだ。

それ以来、俺はギルドにも入らないようにしている。それは相方であるレインもで。レインは俺の意見を尊重して一緒に居てくれてる。

俺もレインも以前血盟騎士団からスカウトのオファーが来たことがあった。けど、月夜の黒猫団のことがありスカウトを断った。それ以降俺とレインはコンビで最前線にいる。

 

「・・・・・・・ゴメンなさい。言いたくないことだったみたいね」

 

「いや・・・・・・大丈夫だ」

 

俺の様子を見てミトが謝罪してくる。

 

「それと、あなたには別のことで謝らないといけないわね」

 

「え?」

 

ミトの言葉に首を傾げる。

 

「私も・・・・・・あなたと同じなの」

 

「同じ?」

 

どういう意味なのかと、疑問をうかべる。

 

「ええ。私も・・・・・・あなたと同じβテスターだから」

 

「なっ!?」

 

ミトの発言に俺は目を見開いた。

いや、むしろこれで驚かない方がおかしい。

基本元βテスターは自分から、自分は元βテスターだと名乗りをしない。何故なら、デスゲームとなった今このゲームでは、βテスターは卑怯者だと言われているからだ。

そしてその一番が俺だ。元βテスター(ベータ)卑怯者(チーター)を掛け合わせた、ビーター。俺はそう呼ばれている。もっとも、最近では《黒の剣士》の方が一般的だが。

 

「だから、謝らせて」

 

「・・・・・・別に構わないよ。今更だしな。・・・・・・それより、なんで俺に自分が元βテスターだって言ったんだ?」

 

謝罪してくるミトに少々困惑しつつ問う。

俺の問いにミトはただ一言だけ言った。

 

「・・・・・・贖罪よ」

 

と。

 

「私たち元テスターがデスゲーム初期の頃他のプレイヤーを置き去りにしたのは事実。その事実をあなたは自分一人で背負った。βテスター1000人の業を」

 

「・・・・・・元テスターなら。いや、誰でも分かるだろ。このゲームはリソースの奪い合いだって」

 

「ええ」

 

「他のプレイヤーもそうだったんだろうな。それに元テスターだからといって全員が無事だったわけじゃない」

 

「しってる・・・・・・今残ってる元βテスターなんて半分以下でしょ」

 

「ああ」

 

この情報は情報屋アルゴから聞かされたものだ。

テスターだったからと言って、必ずしも有利になるとは限らない。

それはデスゲーム初期からわかっている事だ。

デスゲームが始まってから1ヶ月経った、記念すべき最初のフロアボス攻略会議の際にも言われた。経った1ヶ月で約300。それだけの元βテスターが死んだ、と。

それは、βで知っているが故の慢心。

この世界はβの時とは違う。現に一層のボスであった『イルファング・ザ・コボルドロード』はβの時とは違い、曲刀カテゴリーのタルワールから、刀カテゴリーの野太刀を使用していた。

それにより、元テスターであったディアベルは・・・・・・亡くなった。

結果としてディアベルの死が、DKBやアインクラッド解放軍といったギルドの切っ掛けとなったのだが・・・・・・皮肉なものだと今でも思っている。

DKBを率いてるディアベルの後継者と言っていいプレイヤー、リンドとは今でも友好だ。が、もう一人アインクラッド解放軍のキバオウとは友好とは言い難い。それに現在アインクラッド解放軍は二十五層ボス討伐の際に多大な被害があり、それからは組織強化に取り入り最前線には出てこなくなった。逆にDKBは今では血盟騎士団と並ぶ最強ギルドになっている。

 

「・・・・・・ディアベルの事は今でも引きずってる」

 

「っ!」

 

「ディアベルとはパーティーを組んだことがあったから」

 

ミトの言葉にハッとする。

 

「多分、ディアベルは元テスターの中でもNo.2の実力者だったわ。私と並んで」

 

「・・・・・・」

 

ミトの言葉に俺は沈黙をもって返す。

 

「それ以来、私は他のプレイヤーの助っ人をしてここに居るわ」

 

ミトの他のプレイヤーを助けるのは自分の罪滅ぼしでもあるのだろう。

 

「ボスの討伐には出ないのか?」

 

「階層が下のときは出てたけど、今は出てないわ」

 

肩を竦めて告げるミト。そこに。

 

「「っ!!」」

 

「モンスター!?しかもPOP数が多い!」

 

蒼白い光とシュンっという音ともにモンスターがPOPした。だが、その数は多い。数える限り15近く居る。

 

「っ・・・・・・!まさかこんな所で大量発生に逢うなんて」

 

「ミト、取り敢えず話は後だ。今はコイツらを倒す!」

 

「わかったわ!そっちは任せたわよキリト!」

 

「ああ!」

 

それぞれの武装を構え、POPしたウルフ系モンスターと戦闘を開始したのだった。

全てを討伐し終えたのはそれから数十分後のことである。

 

 

ー回想 ENDー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜今〜

 

 

「―――とまあ、そんな事があってな。それ以来偶にあったりしてβテスターのこととかクエスト攻略や情報交換をして話してたんだよ」

 

ミトとの邂逅を歩きながら話す。

目的のものを入手して、洞窟を後にした俺達はそのまま空都ラインへの帰還する道を歩いていた。

ちなみにだが、途中遭遇(エンカウント)したモンスターは『瞬殺!』で討伐した。

まあ、俺たち全員。ミトも含めて高レベルプレイヤーなので当然である。(というか、俺らのパーティーは元SAOサバイバーで構成されてるから当然といえば当然であるのだが。単純に戦闘経験に差があるのである)

話を聞いたアスナは何処か不満そうにミトを見る。

 

「ふうん。ミトも教えてくれたらよかったのに」

 

「いや、アスナに聞かれなかったからさ」

 

「そりゃそうだけどさぁ・・・・・・」

 

「あははは・・・・・・。ところでミトちゃん」

 

「み、ミトちゃん?」

 

ビックリした表情でレインを見るミト。

ちゃん付けで呼ばれたことないのかかなり戸惑っているのが目に見えて分かる。現にアスナはクスッと笑っている。

 

「うん。ミトちゃんは今、何処かのパーティーやギルドに所属してるの?」

 

「いえ。ソロでプレイしてるわ。ここに来たのも多分アスナ達とおなじクエストね」

 

「なるほどな」

 

同じタイミングで来たというのはとんでもない確率だ。それが知り合いだとなるのなら尚更、天文学的な確率に近い。

 

「んー。なら、ミトちゃん。私たちのパーティーに入らない?」

 

「え?」

 

「あ、それいいわね!ミトそうしたら?」

 

「え、いや、えっと・・・・・・・いいの?私なんか入って」

 

「うん。私たちのパーティー、全員元SAOサバイバーだから気軽に話しやすいと思うし」

 

「そうね。ミトが入ってくれたら私も助かるんだけど」

 

「あ、アスナまで・・・・・・」

 

レインとアスナの二人に言い寄られてるミトに俺は口を挟むまでの余地も無いまま進んでいく。いや、女子の会話に入るのは無粋か?

暫しの後に考えたミトはやがて。

 

「えっと・・・・・・・その。それじゃあ、これからよろしくお願いするわね」

 

「うん!」

 

「ええ!これから、またよろしくねミト!」

 

「ええ」

 

どうやらミトは俺たちのパーティーに加わることになったらしい。まあ、俺としてもミト(クラス)の腕前のプレイヤーはいくら居ても助かる。

 

「これから一緒のパーティーとしてよろしく。キリト」

 

「ああ。こちらこそよろしく。ミト」

 

こうして新たに俺たちのパーティーに元SAOサバイバーにしてβテスターの紫髪の鎌使いのミトが新たに加わった。

残す未開放エリアは一つのみ。

この大型アップデート、スヴァルトアールヴヘイムの攻略が見えてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしこの時、誰も知らなかった。

この世界でたった一組の姉妹による思惑が交差していることを。

そしてそれが、一番身近にいる人だということを。この時、俺はまったく予想だにしていなかったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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LS編 第163話〈キリト、ラムまさかの絶体絶命!?・・・ていうか原因はクライン(アンタ)でしょ!?〉


2022年11月6日13時、SAO正式サービス開始おめでとうございます!!
映画、『宵闇のスケルツォ』見て来ましたけど凄かった!!
これからもよろしくお願いします!!

それでは、リンクスタート!!



 

〜キリトside〜

 

俺たちのパーティーに、新たにインプの鎌使い。ミトが加わり、スヴァルトアールヴヘイムの第三の島、環状氷山フロスヒルデの攻略に泊が進むある日。俺とラム、そしてクラインの珍しく男三人でパーティーを組み、俺たちはクラインの依頼をこなしていた。

 

「ふぅ・・・・・・」

 

「お疲れさんキリト、ラム」

 

「お疲れさまです」

 

「ああ。お疲れクライン、ラム」

 

とある遺跡の奥にあるルームにいた飛竜型モンスターを討伐した俺たちはそれぞれの武器を鞘にしまい互いを労った。

 

「かぁ〜〜っ!久しぶりに野郎三人でやるクエストってのもいいな!」

 

「エギルさんはお店がありますからね」

 

「だな。だがまあ・・・・・・クラインには同意するな。たまにはいいかもしれん」

 

「だよな!いっつもお前らは誰かしら女の子が一緒だもんなぁ〜」

 

嫌味ったらしくこっちを向いて言うクライン。そのクラインに俺とラムは苦笑を浮かべるしかない。

 

「クラインさんも以外に話題には上がってるんですよ?」

 

「おいっ!以外にってなんだよ、以外って!」

 

「そりゃあ、普段の行いがだろ?」

 

「失礼だなぁ!そんなに悪いかよ」

 

「悪いかっていうかなぁ・・・・・・・」

 

「あははは・・・・・・・」

 

クラインの普段の行いについて思い返す俺とラム。

確かにクラインはギルド『風林火山』のギルマスとして仲間を率いている。そして、誰一人として仲間を見捨てずにここまで来た漢だ。

だが、まあ・・・・・・たまぁに変な所もあるが(この間のトントゥの花の件や、アインクラッドでのエギル作の激辛ピザのロシアンルーレットでのことなど)

だがしかし、それでもクラインはいつも俺たちのことを気にかけてくれている。エギルと同じ保護者。いや、保護者というより、兄貴と言うところだろう。

今しがた倒した飛龍型のドロップアイテムを流して見ていると、クラインから声が上がった。

 

「おおっ!やったぜ!こりゃ鍵じゃねぇか!やっぱりモンスターが持っていたんだな。助かったぜキリト、ラム」

 

「いえ、これであの宝箱が開けられますね」

 

「だな」

 

あの宝箱とは、ここに来る要因となった、クラインがストレージに収納している宝箱のことである。

本来宝箱がアイテムストレージに入ることは無いのだが、何故かクラインが持ってきた宝箱はストレージに入ったらしいのだ。

それをエギルのところに持ってきたクラインと、偶然居た俺とラムが宝箱の鍵探しをすることになったのが今ここにいる理由だ。

そして今その宝箱の鍵らしきものが、クラインにドロップしたらしい。

 

「いやー。やっぱおめぇらは頼りになるわ!」

 

「それはクラインもだろ」

 

「ええ。 SAOの時もギルドのリーダーとしてメンバーを支えてましたし」

 

「ああ。明日死ぬかもしれない中の世界で、みんなを鼓舞するクラインの存在は俺たちには大きく、励まされたな」

 

俺とラムの言葉を聞くやクラインは歓喜の涙を流した。

 

「キリト・・・・・・!ラム・・・・・・!そう言ってくれるのはお前達だけだぜ!!お前らが女の子だったらぜってぇ嫁にしてるな!」

 

「気持ち悪いこと言うなよ。仮に女だったとしても、俺はレインを選ぶな」

 

「あはは・・・・・・。ごめんなさい。俺もリーザを選んでると思います」

 

さすがに冗談だとは思うがさすがにクラインはない。

クラインとレイン。どっちかと聞かれたら即答でレインと答える。それはラムもだろう。ラムもリーザと即答する筈だ。

 

「へいへい、相思相愛のベタ惚れコンビですか。ったく、エギルも嫁がいるし、一人身の俺に対する嫌味かよ!?」

 

クラインの自虐に苦笑を出る。

現にエギルも、アインクラッドに囚われていた約三年間女手一つで店を守ってきたしっかり者の嫁さんがいる。エギルから聞いた時は結構驚いた。

いや、だってまさかの妻帯者とは誰も思わないだろう。

 

「はは・・・・・・。そ、それじゃあそろそろ街に戻るか!」

 

「で、ですね。せっかくですから、エギルさんにも自慢しましょうか!」

 

「おい二人とも!話をはぐらかすんじゃねぇよ!」

 

「ぼーっとしてると置いてくぞクライン?」

 

「そうですよクラインさん?」

 

「っておい!先に行くなよ!」

 

クラインが後ろからついてくる中、俺とラムは空都ラインへと帰る道を進んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空都ライン エギルの店

 

 

「おお、キリトにラム、クラインじゃねぇか。どうしたんだ?もしかしてお目当てのモンが手に入ったのか?」

 

俺たちが戻ると丁度、カフェの方にいたエギルが俺たちに問い掛けてきた。

店内には客は居らず、俺たちの貸切のような状態だった。

いつもはカフェの方を手伝ってる娘のユイも今日はレインとストレアとともに出掛けてる。

 

「当然だぜ!オレたちの手にかかれば、できないことはねぇからな!」

 

「あははは。できない事はないとは過剰ですけど、ね」

 

胸を張って自信満々に告げるクラインにラムは苦笑する。

エギルはそのやり取りに肩を軽くすくめ。

 

「それで、もう宝箱は開けたのか?」

 

と聞いてきた。

 

「いや、まだだ。店で開けようと思ってそのまま持って帰って来たんだよ」

 

「エギルさんも宝箱の中身・・・・・・気になりますよね?」

 

「へへっ、まぁな」

 

ラムの問いにエギルはニヒルな笑みを浮かべて返す。

ストレージに入った宝箱だ。当然結構なお宝なはずだ。もしここにトレジャーハンターのフィリアがいたら、ホロウエリアでの時みたいな『待っててねお宝ちゃん』とか言いそうだ。てか絶対言う。実際、フィリアに付き添ってトレジャーハントするときフィリアの眼がいつも以上に輝いているのだから。

 

「よし!それじゃあ早速宝箱と鍵をオブジェクト化として・・・・・・」

 

クラインは自身のストレージから鍵のかかった宝箱に、さっき手に入れた鍵をオブジェクト化してテーブルの上に置く。

 

「いくぞ。心の準備はいいな?」

 

「あ、ああ・・・・・・」

 

「はい・・・・・・」

 

「いいぜ」

 

俺たちが息を呑む中、クラインは慎重に鍵を宝箱の鍵穴へと差し込み回した。

 

「鍵が回った!開けるぞ・・・・・・!」

 

ゆっくりと鍵の開いた宝箱を開ける。

やがて宝箱が全開になり、宝箱の中身が現れた。

 

「これは・・・・・・!!」

 

「何だこれ・・・・・・?」

 

「本・・・・・・でしょう、か?」

 

「いや、これは・・・・・・写真集みたいだな」

 

俺の眼にはただの本にしか見えないのだが、どうやらエギルの視界には目の前の本は写真集らしい。

その写真集を見てクラインは何故か興奮していた。

 

「おいおいおいおいおい!ここ、よく見てみろよ!妖精達のお宝秘蔵フォトだってよ!」

 

「袋とじのタイトルみたいだな」

 

「ははっ!ったくこのゲーム、レーティングいくつだっての!お子様には刺激が強すぎるんじゃねぇのか?入手困難とはいえ、こんなアイテム作ってもいいのかよ!」

 

口ではそう言いつつも手はその写真集を開けようとしているクライン。

 

「・・・・・・といいつつ開けようとしてますよねクラインさん?」

 

そのクラインにラムがツッコミを入れる。

 

「ったりめぇよ!必死こいてやって手に入れたんだからな!さて、早速中身を拝見して・・・・・・・・うおおおおおおっ!!?」

 

「うるせーよ、もっと静かに見ろ」

 

写真集の中を見て声を高らかに上げたクラインをエギルが非難した。

もし他のお客がいたら絶対目立ってたであろう声音に俺とラムは眉を顰める。

 

「これが黙ってられるかよ!ハンパべねーぞこれ!NPCなんだよな、これ!?」

 

「そりゃあそうだろう。運営側が用意したんだろうし」

 

「こんな装備あるのかよ・・・・・・!露出多くねぇかこれ!!あっ、この姉ちゃんすげぇタイプだぜ!」

 

「はは・・・・・・よかったな」

 

「はははは・・・・・・」

 

何時にもなくはしゃいでいる目の前の大人(クライン)子供(俺たちは)は呆れた眼差しを向ける。

 

「次は水着か・・・・・・いやー、やっぱりいいよな。生で拝んでみたいもんだぜ」

 

水着と言われて思い出すのは、アインクラッドでユイが作ってくれた水着だ。最近ユイはまた裁縫スキルを上げているらしく、妹のストレアとともによく一緒にスキル上げをしているのが目に入る。

 

「随分楽しんでるみてぇだな・・・・・・」

 

「おう!気の利いた運営様に感謝だぜ!つーか、キリトとラムは見ねぇのか?」

 

今更自分だけ楽しんでいたことに気付いたのか、クラインは不思議そうに聞いてきた。

というか、俺は見ないのかではなく―――

 

「あ、いや、その見ないんじゃなくて・・・・・・」

 

「見えないんだよ。その本を見るとフォーカスが合わなくなる」

 

である。

何故か俺と。どうやらラムも同じみたいだが、クラインの持っている写真集に視線を合わせるとピントが合わないような、ボヤけた感じになって見えるのだ。

 

「キリトに同じく」

 

「なんだ、未成年フォルダでもあんのか?」

 

「うーん。クラインさんとエギルさんが普通に見れるならそうなのかもしれませんね」

 

「ああ。俺とラムはまだ未成年だしな」

 

恐らくあの写真集には俺たち未成年には見えないように設定されているのだろう。エギルに見えているのがその証拠だ。

 

「こ、こんな絶品が見えねぇなんて・・・・・・!キリト・・・・・・ラム・・・・・・二人ともよぅ!!」

 

「なんだよその同情の眼差しは・・・・・・」

 

「なんですかその同情的な眼差しは・・・・・・」

 

何故か涙を流すクラインに俺とラムは微妙な表情を出す。

 

「いつもなら、コイツらはまるっと頂戴しちまうところだが・・・・・・・・・仕方ねぇ。これらはお前ら二人にやるよ!」

 

そう言ってクラインは宝箱の中に入っていた本を俺たちに渡してきた。そう、宝箱の中に入っていた本は二つあったのだ。クラインが見ていたのはその片方だ。

クラインに写真集らしき本を渡され俺とラムは戸惑う。何せ貰っても見れないのだ。

 

「別にいらないよ。見られないって言ってるだろ?」

 

「ええ。俺たちが持っていても意味が無いというか、仕方ないというか・・・・・・」

 

俺とラムのなんとも言えない言葉クラインはり

 

「あきらめるな少年たちよ!」

 

俺とラムの肩をそれぞれ掴み熱い眼差しで言ってきた。

その眼差しに思わず変な声が出る。

 

「は?」

 

「え?」

 

「ラムはともかく、キリト。お前のプログラミングの腕なら、コイツらの防止フィルタ。かいくぐるぐらい出来るかもしれないだろ?」

 

「クラインさん・・・・・・確かに俺はキリトほどプログラムの腕はありませんけどなんか失礼です・・・・・・」

 

ラムの言葉を無視してさらに熱く言うクライン。

 

「男に必要なのはなぁ、熱意なんだよ!熱意!」

 

「なんで今そんなに熱くなるんですか・・・・・・」

 

全くもってラムと同意見である。

エギルはエギルでやれやれと言った風貌だ。

 

「 ・・・・・・・・・・い、一応、苦労して手に入れた中身だし貰っておくよ・・・・・・一応な!!」

 

「キリト・・・・・・」

 

「キリトはこう言ってるがラムはどうするんだ?」

 

「・・・・・・俺も一応・・・・・・貰っておきます。苦労して手に入れたものには違いありませんし・・・・・・!」

 

「ニシシシ、頑張れよ若者たちよー!」

 

なんかイラつくような笑いを出すクライン。

 

「ラムはともかく、キリトは違う方向に精を出そうとしているな・・・・・・。これ、あの二人が知ったら永久氷塊凍土(ニブルヘイム)でも起こるんじゃないか・・・・・・」

 

エギルがなにか不穏なことを発したような気がするが。

そこに来客を知らせる鐘の音が告げた。

 

「お、誰か来たみたいだ」

 

入口を視ると・・・・・・。

 

「こんにちはー!エギルさん、ここにキリトくんが―――あっ、キリトくんここにいたんだ!」

 

「パパ発見ですー!」

 

「キリトはっけーん!」

 

「レっ、レイン!?ユイにストレアも!?」

 

まさかの彼女兼嫁(レイン)娘達(ユイとストレア)がいた。

そしてさらに。

 

「ラム〜?エギルさん、ここにラムは―――あ、ここに居たんですねラム!」

 

「リっ、リーザ!?」

 

ラムの彼女であるリーザまでやって来た。

 

「えっ!?」

 

「レイン、ユイちゃん、ストレア、リーザ、いらっしゃい」

 

「「(なんでまだこのタイミングで・・・・・・!)」」

 

正直今このタイミングはヤバい!ヤバいというより、ヤヴァイ。

何せ俺とラムの手にはクラインから渡されたアレな本があるのだから。

 

「あれ、四人で何してるの?」

 

「あっ、いや、大した事じゃないんだ!だよなラム!」

 

「え、ええ!そうです!大したことじゃありませんよ!」

 

俺とラムはすぐさま背中に隠す。

 

「?キリトさん今何か隠しませんでしたか?―――ってラム、背中になに隠してるんです?」

 

「へっ!?な、なんも隠してないぞリーザ?」

 

「んんー?」

 

「なんか怪しいなぁ・・・・・・キリトくん。ラムくんと一緒に何を隠してるのかなぁ?」

 

リーザとともにレインは俺とラムを視てくる。

 

「い、いや、だから別に何もっ・・・・・・!」

 

「で、ですです!何も隠してませっ・・・・・・!」

 

じわりじわりとにじり寄ってくる二人から下がるが。

 

「リーザちゃん」

 

「はい」

 

一瞬の内に背後に周りこまれ。

 

「「えいっ!!」

 

「「あっ!!」」

 

後ろに隠していたアレを奪われた。

さ、さすが二人ともAGIが高い。

 

「ふふっ、隙アリです!」

 

「さぁて、隠していたのは何かなぁ・・・・・・?」

 

「・・・・・・なにこれ?」

 

「写真集かなにかですか・・・・・・?」

 

レインとリーザにもフィルタが掛かっているからか、詳しくは分からないみたいだ。

このまま誤魔化せるかと思った矢先。

 

「ああ、それはエッチなお姉ちゃんの写真が詰まった本だぜ」

 

「ええっ!!?」

 

「はいぃっ!!?」

 

「おおっ!!」

 

「?」

 

クラインの奴のせいでおじゃんになった。

レインとリーザは驚き、ストレアは意外そうに声を上げ、ユイは首をかしげていた。

 

「終わったな・・・・・・」

 

「(最悪だ・・・・・・)」

 

「(や、やヴァイ・・・・・・)」

 

エギルの言葉が頭の中から抜けて行くのを感じながら俺とラムはガクガク震えていた。

だって―――

 

「ふぅん・・・・・・そういうことかぁ」

 

「へぇ・・・・・・なるほどぉ」

 

「レ・・・・・・レインさん?」

 

「リ・・・・・・リーザ、さん?」

 

「まさかこういうのがALOにあるとは思わなかったなぁー。ねぇリーザちゃん」

 

「ええ〜。まさか、この世界にこんなのがあるとは、思いもよりませんでしたね、レインさん」

 

顔を俯かせてじっくりゆっくりとにじり寄ってくるのだから。

正直言って、怖い。怖すぎる。ボス戦なんて目じゃない程だ。

 

「確かにこんなの持ってたら」

 

「隠さない訳にはいきませんよねぇ?二人とも?」

 

「「ヒイィィィ!!」」

 

背筋が凍るような、冷たさに俺たちは堪らず高い声を出す。

 

「ママ、それはなんですか?」

 

「ユイちゃんは見ちゃダメだよー?」

 

「は、はい・・・・・・。ストレア。ママとリーザさん、顔は笑っているのに怖いです・・・・・・」

 

「う、うん・・・・・・。ユイ、あたしと一緒にあっち行ってようか」

 

「は、はい・・・・・・」

 

「大丈夫か二人とも」

 

「う、うん・・・・・・でも・・・・・・」

 

「ママたちがとっても怖いです・・・・・・!」

 

助けてくれそうなユイとストレアはエギルの方に行ってしまった。

ま、まあ、さすがにユイみたいな純情な娘にこれは見せられない!ストレアはまあ、知ってそう。

いや、そんなこと考えてる場合じゃなくて!

 

「それで、キリトくん、これはどういう事なのかなぁ?」

 

「ラム、私にも詳しく教えてくれますよね?」

 

「ち、違うんだレイン!きっと・・・・・・いや、絶対誤解してるよ!!」

 

「そ、そうです!リーザも勘違いしてるよ!」

 

大慌てて弁明を二人でするが。

 

「ま、キリト君とラム君も男の子ってことだぁーなー」

 

「クライン、余計なこと言うなよ!」

 

「元はと言えばクラインさんのせいですよね!」

 

他人事みたいにクラインは顎に手をやって見ていた。

クライン、絶対に許すまじ!!

 

「んー?」

 

「レ、レイン、あのな、俺は別に中身に興味があったわけじゃなくて・・・・・・」

 

「そうですそうです!!キリトと一緒に、システムの抜け道を探すための・・・・・・純粋な研究材料としてこれは貰っただけです!!」

 

「「ふふふ」」

 

弁明を二人でするが、レインとリーザの纏う気配はますます冷たくなっていき、まるでこの場に冬が。いや、俺たち自身が氷に包まれているような感じだった。

 

「あ、あの、レインさん・・・・・・?」

 

「リ、リーザ・・・・・・?」

 

「ここで話すのも、他の人の迷惑になるから」

 

「二人とも、私たちそれぞれの部屋に行きましょうかぁー?」

 

「いいよね、キ・リ・トく〜ん?」

 

「構いませんよね、ラァ〜ム?」

 

「「は、はい・・・・・・」」

 

二人の気迫に俺たちは互いを抱きしめながら空返事を返した。

というか、この二人に逆らえなかった。

 

「(クラインの奴、後で覚えてろよ・・・・・・!!)」

 

「(クラインさん、後で覚えていてくださいね・・・・・・!!)」

 

レインとリーザにそれぞれ連れられるなら俺とラムはクラインを睨めつけながら目線で言った。

 

「あ、エギルさん」

 

「お、おう、なんだレイン?」

 

「しばらく、ユイちゃんとストレアちゃんのことお願いしますぅ」

 

「あ、ああ、任せとけ。二人とも何か食べるか」

 

「は、はい・・・・・・」

 

「う、うん、あたしも・・・・・・」

 

「それじゃあリーザちゃん、行こうか」

 

「ええ、レインさん」

 

「「た、たすけてくれぇ・・・・・・」」

 

俺たちのそんな声は虚しく響き、俺とラムはそれぞれレインとリーザに長時間に渡るお話し・・・・・・いや、OHANASHI☆を受け、疲労困憊のうえ。さらにこってりと色々な意味で搾られたのであった。

ちなみに、余談であるが、ラムはALOだけでなく現実世界でもリーザに色々搾られたらしい。

 

 

 

後日、俺とラムはクラインに恨みまがしく、素材集めやクエスト協力などでこき使った。さらに、現実世界でエギルが経営するダイシーカフェで結構な量を奢らせたのは、また別の話である。

 

 

 

 

 



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LS編 第164話〈歌姫セブンとの邂逅〉

 

〜キリトside〜

 

「ふう・・・・・・今日もいっぱい冒険したねー!」

 

環状氷山フロスヒルデのエリア攻略を着実に進めてるある日。俺たちはフロスヒルデから空都ラインへと帰って来ていた。

今ログインしているのは、俺、リーファ、アスナ、クライン、ユウキ、ラン、フィリア。そこに娘のユイとストレアを加えて九人だ。

レインたちは生憎それぞれ予定があり今はログインしていない。

そんなわけで今回はこの九人で進めたのだ。

 

「あっ、もうこんな時間だ!そろそろ今日は落ちようか」

 

リーファの言う通り、時刻はもう既に午後の七時を超えていた。

 

「ここで解散しよう。じゃあまた明日いつもと同じ場所に集合だな」

 

「ええ」

 

「分かったわ!それじゃあねみんな!」

 

アスナとフィリアは返事をしてその場でログアウトする。。

 

「おう!俺はちょっと風林火山の連中の所に行ってから落ちるぜ。またなキリト」

 

そう言うとクラインは商業エリアの方に歩いていき。

 

「今日はあたしが夕飯作る番だから先に落ちてるね。キリトくんもあまり遅くならないようにね」

 

「ああ」

 

リーファは晩飯を作るために先にログアウトする。

 

「私もリーファを手伝うので先に落ちますね。ユウキ、あまり遅くならないようにしてくださいね」

 

「うん!」

 

ランもユウキに言付けするとログアウトする。

互いの両親が家に居ないため、今日は現実世界で木綿季と藍子と一緒に夕飯を食べるのだ。

 

「ユウキはどうする?俺はもう少し街を見ていくけど。新しい武器や防具が入荷しているかもしれないしな」

 

「うーん。ちょっと、買い物したら落ちるよ」

 

「了解だ。ユイとストレアは・・・・・・」

 

「あたしとユイは宿屋で裁縫スキルのスキル上げをするよ〜」

 

「はい!」

 

「そうか。気を付けてな」

 

「うん!」

 

「はいパパ!」

 

それぞれその場から離れ、俺も今装備している防具や双剣より高レベルの装備はないとは思うが、掘り出し物があるかもしれないため商業エリアへと足を向けた。

商業エリアへと向かい、掘り出し物が無いかどうか確認したが特になくアイテム補充をした後、宿屋の方へ向かっていると広場の方から騒がしい声が聞こえてきた。

 

「?なんだか向こう側が騒がしいな・・・・・・」

 

声のする方へ身体を向けようとする。

その時。

 

「あっ!!」

 

「おおっと!大丈夫か?」

 

声のした方から走ってきた少女がぶつかって来た。

ぶつかり体勢を崩しそうになる少女を慌てて支え声を掛ける。

少女は何か焦っているのか。

 

「あの・・・・・・えっと・・・・・・あたしを隠して!」

 

あたふたしながらものすごい剣幕で言ってきた。

その言葉に思わず変な声が出る。

 

「はぁっ!?」

 

「いいから!あたしは後ろに隠れるからね!―――えぃ!」

 

「・・・・・・・・・・」

 

後ろにあった、からの樽に飛び込むようにして入る少女に唖然としていると、またしても声を掛けられた。今度は女性ではなく男性だ。

 

「おい、キサマ」

 

「?」

 

振り返ると、俺より10センチほど身長の高い、ウンディーネ種族特有の青を基調とした、青い服装を見に纏い、腰に刀を挿した男がこっちを見下ろしていた。

 

「この辺りで少女を見なかったか見なかったか?」

 

「あ・・・・・・え、えっと・・・・・・ぁあ、あっち側の方に走っていったけど・・・・・・あははは・・・・・・」

 

「・・・・・・そうか」

 

「・・・・・・・・・」

 

男の質問に引き攣り笑いを浮かべながら、当てずっぽうに指を指した。さすがに苦し紛れだとは思うがなんとか誤魔化せたのか、男は礼を言うわけでもなく俺が指を指した方へ歩いていった。

男が歩いて行ったのを見てしばらくしてから樽の中の少女へ問い掛ける。

 

「・・・・・これで良かったのか?」

 

「うんっ!助かったわ!うふふっ!」

 

樽の中から勢いよく上半身を出し、少女は可愛らしい笑みを浮かべた。

 

「そういえば今探していたあの男・・・・・・君は・・・・・・もしかして!?」

 

樽から出た少女を改めて見るのと同時に、さっきの男を思い出す。

さっきの男はつい先日遠目からだが見たプレイヤーだ。

そしてこの少女もその時男の隣にいたプレイヤーと同じだ。ということは。

 

「かばってくれてありがとう。あたしの名前はセブン。シャムロックのギルドリーダーよ」

 

「やっぱり!!俺、君と会いたかったんだ!」

 

やはり、目の前の少女は今このALOだけでなく、世界が注目している歌姫セブンだった。

ということはさっきの男はスメラギと呼ばれてるプレイヤーだろう。

まさかこんな所でその有名人に出会すとは思わなかった。

 

「あら?あなた、あたしのファンだったの?じゃあ、お礼にサインでもどうかしら?」

 

「いや、ファンとかじゃなくて七色博士としての君に話を聞きたかったんだよ」

 

「シャムロックに入隊したい・・・・・・とかでもないのよね?」

 

「ああ」

 

セブンの問いに答えていると、またしても騒がしい声が聞こえてきた。そして今度はその声がハッキリと聞こえてきた。結構近くにいるみたいだ。声からは『セブンちゃんどこに居るの〜?』だの、『こっちにはいなかったわ!』や『今度は向こうを探そう』と、様々だった。

その声を聞き、目の前にいるセブンは呆れ半分疲れ半分のように肩をすかした。

 

「まだ探してる・・・・・・しつこいわねえ」

 

「まだ探してるって・・・・・・君のギルドの奴らってお付きの人みたいなもんだろう?なんでセブンは逃げてるんだ?」

 

「このセブンちゃんにだって、ひとりでのんびりしたい時くらいあるわ」

 

憤慨したかのように言うセブン。

まあ実際、あんなに人が沢山いたら休める時も休まらないだろう。

 

「そうなんだ。しっかし、学者と歌手の掛け持ちなんでよく務まるな」

 

「まぁね。ただこっちの活動だって考えがあってやってるわけだし。面白がられてる事は承知よ。そう言えば、日本ではこんな様子をミコシにかつがれるって言うんだっけ」

 

「ははは・・・・・・アイドル様は意外と冷静なんだな」

 

「研究ってお金と時間が掛かるのよね。今は幸いパトロンがいるからお金の心配は無いんだけどね。研究費がいつ打ち切られてもいいように稼げる時に稼げる算段を整えてるだけ。アイドルって弾けると色々と儲かるからね」

 

なんともないように言う現実状況(リアル)に苦笑を浮かべながらも感心する。

セブンの歳は俺たちのパーティの中で一番年下のシリカより下だ。現実世界でなら中学生になる前だろう。

なのにそんな大人対応に驚きを隠せない。

そう思っている所に、またしてもセブンを探す声が響く。

 

「しつこいわねえ・・・・・・。今日はもうログアウトしようかしら」

 

「キリト。スプリガンのキリトだ」

 

「いい名前ね。じゃあまた、どこかで会いましょう!」

 

「そうだな、俺もログアウトするか」

 

特にすることもないので、俺もログアウトすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ログアウトして目を開けると部屋の中は暗く、時計を見ると時刻は19時近くを指していた。

アミュスフィアを外し、ベットから降りるとノックの音がした。

 

『お兄ちゃんいる?』

 

部屋の外からスグの声が聞こえてきた。

 

「ああ、いるよ」

 

返事を返すと、扉が開きそこからスグが顔を覗かせてきた。

 

「よかった、ログアウトしてたんだ。もう、夜ご飯出来てるよ」

 

「分かった。今行くよ」

 

部屋のカーテンを閉めスグとともに一階のリビングに向かう。

リビングに降りると丁度テレビの画面に、さっきあったセブンの現実世界での姿が映っていた。

 

「あっ!またセブン・・・・・・じゃないや。七色のインタビューをやってるな」

 

最近セブンこと、七色博士の特集が多くこれもそのひとつなのだろう。

アナウンサーがセブンに幾つかの質問をし、セブンはその質問を答える。

 

 

『それでは最後に・・・・・・。日本のセブンファンのみなさん、並びに七色博士に注目する人たちにメッセージをお願いします』

 

『歌を歌うセブンも。博士として研究を続けるあたしも、どちらも真実のあたしなの。だから、どちらか一方だけじゃなくて、両方あたしだと思って、日本のみんなも温かい目で見守ってくれると嬉しいな。うん・・・・・・。どちらも本当の・・・・・・自分だから・・・・・・』

 

 

「どっちも、ねぇ・・・・・・。さっきと言ってる事が全然違うなぁ。本音と本音と建前を使い分けて大したもんだな」

 

恐らく、今テレビで流れた質問の答えは建前。さっき本人が言った言葉が本音なのだろう。

10歳なのに大人な対応に正直感嘆する。

 

「お兄ちゃんが・・・・・・テレビ見ながらニヤニヤ笑ってる・・・・・・。もしかしてセブンちゃんにハマっちゃったんじゃ・・・・・・?」

 

スグがキッチンの方から何か言っているが・・・・・・気にしないでおこう。夕飯を食べてる最中、ずっと滅茶苦茶、疑心暗鬼な瞳でスグに見られていたが・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

空都ラインの泊まってる宿から出ると、すぐ近くの看板の裏にコソコソ隠れてる怪しいプレイヤーを見つけた。

というかそのプレイヤー、昨日であったばかりのプレイヤーである。

 

「(看板の裏にいるのは・・・・・・セブンじゃないか?)」

 

そう、何か隠れているようにしているプレイヤーはセブンだった。

さすがに何してるのか好奇心ができ、当人に聞いてみることにした。

 

「おーい、セブン!そんな所でなにやってるんだ!?」

 

「うわぁっ!?って、しーーっ!!大きな声で呼ばないでよ!」

 

合わふためいてコッチを見るセブン。

そこに、一人の男プレイヤーがやって来た。

 

「セブン、ここにいたのか」

 

「うひゃぁ!あ、スメラギ君に見つかっちゃった・・・・・・」

 

どうやら、セブンはあのプレイヤーから隠れていたらしい。

で、俺のせいで見つかったと思う。

スメラギと呼ばれた腰に刀を装備したウンディーネの男プレイヤーは、俺を一瞥し視線をセブンに合わせ話す。

 

「さぁ、早くこちらへ。今日はミニライブがあると言っただろう」

 

「でもそれってみんなが勝手に決めたことでしょ?あたしは新エリアの攻略を進めたいの!今はシャムロックがクエスト攻略のトップを走ってるけど。他の有力ギルドが追いついて来てるって聞いてるよ。噂だと、今頭角を現している凄腕のプレイヤーが・・・・・・」

 

「セブン、今は時間が無い。話は後で聞こう」

 

セブンの話を聞かずに我を通すスメラギ。

それを見た俺はさすがに放っておけず、セブンとスメラギの間に入る。

 

「おい、アンタ。あんまり無理強いするなよ」

 

「なんだ、貴様か。一介のプレイヤー風情が口を挟むな」

 

興味すらないのか、スメラギは一瞥しただけで鋭い目付きで俺を見る。

 

「シャムロックのギルドマスターが歌う歌は共存と平和がテーマなんだろ?なら一介のプレイヤーにも発言させろよ」

 

「何だと・・・・・・!?」

 

俺の発言に気が触ったのか、スメラギは腰の刀の柄に手を置き今にも抜刀しそうな空気を出す。

 

「それともなんだ。お前らのギルドマスターの定義する共存と平和は一介のプレイヤー風情には入らないってか?」

 

「貴様・・・・・・っ!!」

 

「・・・・・・今ここで、決闘(デュエル)でもするっていうなら受けて立つぞ」

 

スメラギの殺気ともいえる迫力に、俺も背中の『ユナイティウォークス』の柄に手をやり意識を戦闘時の者へと切り替える。

そのまま一種即発になろうかと言う俺とスメラギの間に―――

 

「ああ、もう止めてよ、スメラギ君。わかったから。もう行くから!お願いだからこんなところで決闘なんかしないで!」

 

セブンが待ったを掛けた。

セブンの言葉にスメラギは殺気を収め、刀の柄にやっていた手を離した。俺もそれに続いて意識を元に戻し、剣から手を離す。

その俺にセブンは呆れ驚いたように言った。

 

「君も恐れ知らずだなぁ。スメラギ君にそんな口を利いたのは、あのユージーン将軍くらいよ」

 

「それは・・・・・・。お褒めに預かり光栄だな」

 

「ふん・・・・・・。さぁ、セブン、行くぞ。急いでくれ」

 

「うん・・・・・・あっ!あわわ、君!この間の話、誰にも言っちゃあダメだからね!」

 

「ああ、わかってるさ」

 

「じゃあまたね、キリト君」

 

「ああ!」

 

スメラギとともに去っていくセブンを見送りながら、

 

「―――セブンも大変だな・・・・・・」

 

と思った。

彼女はまだ歳では俺たちの中で一番年下のシリカより幼いのに、あんな大人びた感じなのだ。

現実では開発研究。この世界では歌姫とギルドマスターとして。

多忙な日々にさすがの俺もぐうの音もでない。

 

「俺も行くか」

 

セブンたちとは反対側の方へと俺も歩みを進め、レインたちと合流したのだった。

 

 

 

 



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