烏森の魔女ゲーム〈第3ゲーム〉 (海神アクアマリン)
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第1話

2006年に起きた「烏森大量殺人事件」は魔女のゲームとして2度繰り返された。そして今回3度目が行われる。ゲームマスターを変えた第3ゲームは今までと違う。これまでとは違う物語をたどるだろう。

「きしゃははは!よく逃げませんでしたね!薫さん!」
「ここで逃げるようじゃ。クロノエルに勝てるわけがない。だから、絶対に莉亜を倒してみせる。」
「第2ゲームの途中で姿を消した芽琉と、第2ゲームで屈辱を与えてくれた薫さんとバアルには、私と同じくらいの屈辱を味わわせてやる!」
この場で対戦相手が揃った。僕達の側は、僕とバアルとイポスとアイムの4人だ。魔女側は黒月の魔女見習いの莉亜1人だ。
「新しく薫さんと契約したお二人も私の復讐に付き合ってもらうわ!」

2006年9月7日10時南野邸到着。
「うふふ。4年ぶりにここに来たけど、お屋敷は変わりないですね。」
「そりゃそうだ。四年でそんなにも変わったらヤベェだろ。」
みんなで談笑しながらお屋敷に向かった。途中で使用人の神威君、美紅利ちゃん、弥勒ちゃん、業君に会った。そして、お屋敷に到着するとお祖父様と長男一家と隼人さんと清美さんと剛座さんが出迎えてくれた。
僕達はそのまま食堂に向かい昼食を食べた。その後、大人は客間で体調を崩して自室に戻ったお祖父様以外で話し合うらしいから、子供達は若い使用人4人と一緒に花畑に遊びに行き、風が強くなってきたところで中に戻った。
「そろそろ夕食の時間だね。」
「お夕食楽しみだね。」
南野家のお食事はいつも豪華だった。でも、今日は特に豪華だった。4年ぶりにやってきた優妃をもてなすならこれくらいは当然だろう。

「きしし、ここまではいつも通りだよ。そして、今時が進み魔女の手紙が読まれた。お祖父様は自室で休んでいるから話を聞けない。この手紙について話し合いが始まるよ。きしし。」

「お父様。私達は席を外してゲストハウスに行きますね。」
「おう。今日はいとこ同士で楽しみな。」
そうして、食堂から子供は出て行った。
「優妃お姉さん。莉亜と芽琉はちょっと薔薇庭園に行ってくるね。ちょっと薔薇を見たいんだ。」
「風も雨も強いから気を付けて行ってらっしゃい。」
「はい。気をつけて行ってきます。」
こうして莉亜と芽琉以外はゲストハウスに向かった。莉亜と芽琉は薔薇庭園に行った。
「莉亜。薔薇庭園に来てどうしたの?」
「どうして薔薇庭園に来たか。少しは理由に気づいてるんじゃないの?」
「駒の私も魔女であるから不満なの?黒月の魔女見習いさん。」
「黒月と白金と屈辱の魔女見習いの私があなたに不満?何を言ってるの?不満だからここに呼んだのではなく、屈辱を与えるために呼んだんだよ。今すぐここで叩き潰してあげる!」
「あなたが祝福されることはあり得ない。私が全力で倒す!」

2人が魔力ぶつけた時に爆発した。爆煙の中から莉亜が芽琉に至近距離で迫った。
「これでもくらえ!」
そう言って莉亜は魔力の爆弾を投げつけた。芽琉はその爆発により少し吹っ飛ばされた。
「その程度だ私が負けるわけがないでしょ!次はこっちからだ。我に祝福を、我に祝福の炎を与え給え。」
その瞬間、金色の炎が莉亜に向かっていった。
「偉大なる神々よ。我に守護の結界を与え給え。」
莉亜も魔法を使用して結界で炎を防ぎきった。と思ったら炎の中から芽琉が剣を持って突っ込んできた。
「神の結界なら魔神の剣で切ってやる!」
「出来るものならやってみろぉ!」
莉亜と芽琉は互いに力をぶつけ合った。この攻防はしばらく続いた。すると、莉亜の結界にヒビが入り割れた。芽琉の剣は莉亜の目の前で静止した。
「莉亜、残念だったね。やっぱり祝福されたのは私だったわね。この戦いの後処理は私がするわ。認められないなら第1の生贄になる?それとも第2の生贄?」
「好きにしなさい。第1の生贄はもう決まってるから後は大丈夫。」
「それなら第2の生贄に決定ね。good night!」
そう言って芽琉は銃を作り出して莉亜の頭を貫いた。
「アマイモン、出てきなさい。」
「破滅の七姉妹、四女のアマイモン。ここに。」
「アマイモン、遺体の処理と現場の修復を任せたわ。私は戦闘開始と同時に張った防音結界を解くわ。」
「かしこまりました。」

「これは一体?」
「なぜゲームマスターが先に死んだの?」
「薫様。これは何かの作戦に違いありません。気をつけてください。」
「バアルの言う通り。何かを仕掛けてくるに決まってる。注意をし続けないと。」
莉亜は突然大笑いを始めた。狂ったようなその笑い声にイポスとアイムは少し驚いた。
「きしゃーはっはっ!さすがにやり過ぎたわね。今回は私のゲームだから駒の芽琉に細工をして現在の祝福の魔女にしたのよ。その結果がこれ。私には分が悪いくらいに強かったわ。」
よく分からないがいつのまにか芽琉は姿を消して魔女になっていた。莉亜はそれが原因で怒っていたのにゲーム盤上で負けて見せた。意味がわからない展開だ。
「きしし、私が負けて死んだのが意味がわからないでしょ。その上魔法戦が行われた。もう思考がめちゃくちゃだろうけど、これは真実よ。魔法戦は実際に行われた。さぁ、これをどう否定してみせる?」

莉亜の攻撃が始まった。波乱になる可能性のある第3ゲーム。3つ目の悪夢の始まりだ。


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第2話

魔法戦は実際に起きたという莉亜の主張。しかし、現場が修復されたのならもう1つの仮説が立てられる。
「莉亜、残念だけど君の主張を否定するよ。僕は魔法戦が行われなかったと言わせてもらうよ。」
「どういう意味?なぜそんな主張がまかり通るの?」
莉亜は驚きを隠せなかった。
「薫様が使ったのはシュレディンガーの猫箱です。箱を開けるまではどちらの説も真実となります。」
「めんどくさい。どちらも真実なら赤でどちらも宣言できるということか。」
莉亜はさらにおぞましいオーラを出し始めた。そして莉亜は立ち上がって叫んだ。
「ヘルケイズ卿、アルクレア卿、ご覧になっていますか?私はヘルケイズ卿と友人になりたい!だからこそ今ここでクロノエル卿を切り捨てます!私の覚悟もご覧ください!」
アルクレアという名を聞いて驚いた。他にも魔女がこのゲームに関わっているのがよく分かった。その瞬間、クロノエルが入室してきた。
「莉亜!今なんて言ったの?アルクレア卿?ヘルケイズ卿?まさか大魔女のお二人までこのゲームに手を出したと言うの!」
「クロノエル卿の後見人は確か、希望の魔女シャンベリア卿でしたよね。どうやらこのゲームの傍観者は4人のようですね。きしし、私は今からヘルケイズ卿を楽しませるためにこのゲームを紡ぎます。」
その時、莉亜の姿が変わり、ドス黒いドレスに大きな赤いリボンに変わった。
「屈辱の魔女リアボリスは第3ゲームのゲームマスターとして復讐してやる!」
「くっ、裏にあの魔女がいるなんて、私に手出しが出来ないなら今回は私も大人しく観劇させてもらうとするか。うふふ。黒月の魔女を裏切ることは許すわ。でも、魔女になったのなら負けは許されないことを知るがいいわ。きゃーはっはっ!」
そうしてクロノエルは退出した。自信満々に莉亜は言った。

「薫さん、今度からは私のことを屈辱の魔女リアボリスと呼んでください。そして、ここに宣言します。あなた達は私に屈辱を与えられるだろう。」
「なかなか面白い展開になってきたね。バアル、イポス、アイム、新しい魔女のリアボリス卿に失礼がないようにしよう。」
「かしこまりました。」
「主人の仰せのままに。」
「承知いたしました。」
リアボリスは言った。
「今ゲームの進行を中断しました。それと傍観者にも見られないようにしました。」
「なぜそんなことを?」
リアボリスは振り返って涙を浮かべた笑顔で言いました。
「この私のゲームに付き合ってくれてありがとう。『私は全てを生まれた時から嫌って恨んで妬んできました』だから双子の妹もいつか恨む時が来たでしょう。いつもそれを嘘偽りで隠してきました。だから、屈辱と復讐と憎悪の魔女になるのは必然的なことです。それでも、これであらゆる苦しみを背負ってきた私は魔女として解放される。元お師匠様のゲームに付き合ってくれてありがとう。」
そこで話は途切れ、再びドス黒いオーラを放ち始めた。
「でもこれじゃあ、私らしくないね!復讐の魔女として復讐する!屈辱の魔女として屈辱を味わわせてやる!さぁ、ゲームの再開だ!私の第1の殺人をとくと見よ!」
僕達はとんでもない奴らを相手にしてることに今気がついた。魔女側も大きな思いを胸に、苦しみながら戦っているのを知って少し同情の気持ちが芽生えた。しかし、手を抜く気は無かった。

「おっ、芽琉か。遅かったな。どうしたんだぜ?」
「莉亜が疲れたと言って寝ました。」
優妃は立ち上がっていった。
「そうなのね。どんな寝顔なのか見せてもらうわね。」
「どうぞ、莉亜と芽琉の部屋についてきてください。」
そして優妃は莉亜の様子を見に行った。莉亜は客室のベッドの上にいた。気持ちよさそうに寝ているように見えたのを確認して優妃はいとこ部屋に戻った。すでに9時をまわっていたので芽琉も寝ることにした。
その後、24時までに全員が眠りについた。

「あれ?もう6時だ。朝だね。莉亜も起きたかな?」
芽琉が莉亜を確認すると寝ているように見えたが、近づいてみると異変に気づいた。布団が赤くなっていた。めくってみると胸に穴が開いていた。さらに頭をずらすと枕も赤なっていて、頭に穴が開いているのを確認できた。
その瞬間、芽琉は叫ぶよりも他のいとこの元に行くのが最優先だと思った。
「誰か起きてませんか!大変です!莉亜が死んでいます!」
芽琉がそう言うと中から叫び声が聞こえた。そして奏太によって扉が開けられた。中から出てきた奏太は恐怖で顔がこわばっていた。
「芽琉ちゃん、優妃も死んでるよ。」
そう奏太に言われて芽琉は中に入り優妃の様子を確認した。優妃は胸を切り開かれて心臓を取り出されていた。取り出された心臓は枕元で皿の上に置かれた状態で燃やされていた。どちらの部屋も鍵は閉められていて密室だった。
それから薫が使用人と大人を呼びにいった。彩芽の検死によると2人とも死後3時間以上経っていた。しかし、ここでは死後何時間経過したのか。正確な時間は分からない。どうして2人が死ぬことになったのだろうか?

魔女達が牙を剥き始めた。動き出す魔女はゲームをどう変えてしまうのだろうか?


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第3話

「まさか、今まで犯人だと思っていた優妃と莉亜が死ぬなんてね。」
「リアボリス卿は自分の駒を消して犯人から除外されるようにするのが目的ですか?」
「そんなつもりは無いですよ。それに、『優妃、莉亜の2人は死亡している』こうやって赤で言える私なら無駄なことよ。」
確かに無駄だ。赤で死亡を確定できるなら犯人にはなれない。それなら他に犯人がいるだろう。
「リアボリス卿。あなた、何を考えいるんですか?この未来が実現すれば危険ですよ。」
イポスはどうやら未来を見たようだ。それもイポスがものすごく怒るような未来を見たようだ。
「私は屈辱を晴らすためなら何でもしますよ。それがもしも魔女の命を奪うことだとしてもね。」
リアボリスは一瞬悲しい表情した。もしかしたらクロノエルとリアボリスの知る真実は彼女にとって悲しいものなのかもしれない。

「リアボリスに質問だよ。このゲームのルールはクロノエルのゲームと同じと考えていいかな。」
「クロノエル卿のゲーム盤を借りてますので、ルールはそのままです。さぁ、どこからでもかかってきなさい!」
ルールが一緒なら助かる。第1ゲームと第2ゲームで少し鍛えられている僕にはやりやすい。
「それなら始めよう。バアル、第1の殺人を再構築してくれ。」
「かしこまりました。第1の殺人現場はゲストハウスの客室201号室と203号室です。優妃の遺体を201号室で発見。遺体は胸を開かれ心臓を取られて焼かれてました。莉亜の遺体を203号室で発見。胸と頭に穴が開いてました。そして当時犯行現場は密室でした。」
密室なのはいつも通りだ。しかし、アリバイトリックを得意とするリアボリスは何をしてくるか分からない。
「まずは復唱要求だ。芽琉、薫、奏太、芽亜里は犯人では無い。」
「復唱を拒否。理由は明かさない。」
「それならもう一つ復唱要求。源蔵、秋楽、相馬、紫音、優香、春香、彩芽、蓮司、城助は犯人では無い。」
「それも拒否するわ。理由は明かさない。」
これで一族の誰かが犯人の可能性が高くなった。後は使用人だ。
「さらに復唱要求。隼人、神威、美紅利、弥勒、業、剛座、清美、美代子は犯人では無い。」
「それは受けるわ。『隼人、神威、美紅利、弥勒、業、剛座、清美、美代子は犯人では無い』」
これはマズイ、マスターキーを持つ人間が犯人では無いのが確定してしまった。これだと密室トリックが出来てしまう。クロノエルなら使用人の可能性を残して密室では無い可能性を作るのに、リアボリスは密室トリックがあることを示してきた。これは厄介だ。

「優妃を殺した犯人はその後に莉亜を殺した。この順番に間違いはないかい?」
「その順番で間違い無いよ。儀式通りの順番で殺されるんだからね。」
それなら優妃を殺してから莉亜を殺すトリックを考えないといけない。検死が完璧だとは赤で言われてない以上、正確な時間は分からない。だから、いくつか方法が思いつく。
「それなら、優妃は犯人に指定の時間になったら扉を開けるように言ったんだ。秘密の話があるとか言って開けさせて、犯人は中に入り優妃の口を抑えるか睡眠薬を使ったりして黙らせて胸を開き心臓を取って殺したんだ。その後内側から扉の鍵を閉めて閉じたんだ。あの扉は開いている状態で鍵を閉めてから扉を閉じれば鍵がかかるような仕組みになってるからこのトリックが使える。」
これで優妃のトリックは完成だ。次に考えるのは莉亜のトリックだ。
「次に莉亜だ。莉亜は完全に眠っていたから芽琉が何かしたのかもしれない。」
「ちょっと待ってください。カオル卿、アイムが発言します。復唱要求です。莉亜の遺体は死亡時刻を偽装されていない。」
「うっ。その復唱は拒否するわ。理由は言わないわ。」
「つまり、死亡時刻は偽装されてるわけですね。芽琉が犯人なら時間操作トリックを使うでしょう。客室の冷房を使って死亡時刻を優妃の後にしたのでしょう。どうですか。アイムは時間操作トリックならこれくらいの推理ができます。」
すごい、アイムは僕と違う答えに至った。それにアイムの推理は赤で肯定も否定もどちらさせずに、復唱拒否で封じてしまった。これは僕の出る幕じゃないみたいだ。
「よくやったよ。アイム、褒めてあげるよ。」
「お褒め頂きありがとうございます。」
その時、リアボリスが大声で言った。
「まだだ!時間操作をしたというならどのタイミングで殺したというの!」
「芽琉がいとこ達に顔を見せた時には死んでいたのでしょう。それに芽琉が遺体を発見した時に、叫び声をあげなかったのも気になります。自作自演だからこそ叫び声をあげなかったのでは?」
「きしし、『芽琉は優妃死亡時刻には眠っていた』これで莉亜は可能だとしても優妃は不可能になったわ。」
リアボリスはとても焦っていた。現状はピンチな状態だろう。クロノエルならとっくにリザインしてるだろう。だが、リアボリスは出来る限り逃げようとするようだ。
「莉亜を第2の生贄にするなら対になるものが選ぶ必要がある。莉亜と芽琉が選んだ相手が莉亜なら第2の生贄に選ばれた理由が分かる。それに第1ゲームでは犯人に協力者がいた。それなら今回も犯人は2以上の可能性がある。」
「きしし、『莉亜は第2の生贄である』『優妃は第1の生贄である』それと『犯人は1人では無い』これで推理を訂正できる?」
それなら簡単にできるが、何か妙だ。なんか罠っぽい。
「あぁ、もう一つ赤で言うね。『真犯人は1人である』これは真実であり、共犯を含めて2人以上、真犯人だけで1人である。きしし。」
意味がわからない。なぜそんなことになるのか。決まった共犯はいないということなのか?全くわからない。

リアボリスに突きつけられた犯人と真犯人の人数。おかしな点をいくつも抱えるこの真実を掴み取れるのだろうか?


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第4話

リアボリスに突きつけられた犯人と真犯人の人数に混乱させられている。一体誰が真犯人で誰が共犯者なのだろうか。
「リアボリス卿、これでよかったのですか?共犯を暴けなくても真犯人を見つけて、動機を探して人間が犯人であることを証明してしまえばこのゲームは終わりますよ。」
「あなたにあんな風に言われたから最悪な未来は避けたつもりだよ。これでもダメだった?」
「いえ、それが最善の策でしょう。現にカオル卿が混乱してしまっているのですから。」
「きしし、そうだね。」
リアボリスは頭を抱える僕をあざ笑うかのように見つめていた。そして言った。
「きしし、いつまでも一つのことで悩ませてやらないよ。もうゲームは進んでいるんだからね。先に進むよ!」

僕達には意味がわからなかった。僕達はいつから死んだ優妃と共にいたのだろうか?それに芽琉もいつから死んだ莉亜と一緒にいたのだろうか。こんな状況じゃ正確な検死は期待できない。だから死亡時刻も違うのかもしれない。
「あの2人が死んだのなら全員ゲストハウスから出ない方がいいだろう。」
「秋楽お兄様に賛成だけど、いつまでお父様は泣いてるつもりなのかしら?」
「まぁ、そう言ってやるなって、紫音だって少しはその気持ちがわかるだろ。」
ゲストハウスの客間の隅のソファに座ってお祖父様はずっと泣いていた。大好きな孫が死んだのだから泣いていても仕方ないが、壁際で泣いていて酷い顔になってしまっている芽琉と比べればまだマシだ。今は泣いていないが暗い顔で壁に寄りかかって窓を見つめていた。
「芽琉ちゃんも可愛そうね。私の娘はまだ顔が無事だからいいけど、莉亜ちゃんは胸に穴が開いただけじゃなくて頭もやられてるからね。二カ所なんて可哀想だし、それを見つけてしまったのが芽琉ちゃんだもんね。しばらくは忘れることが出来ないわね。」
「いや、一生忘れられないだろうね。僕の娘たちはとても仲が良かった。毎日ずっと一緒にいて同じことをしてきた双子だ。その片方がいなくなることは残された方にとって自分の人生を失うのと同じことなのだろうよ。」
そんな大人の話を聞いてたのか芽琉が突然叫んだ。
「どうして莉亜が死なないといけないの!私にとってかけがえのない双子の姉なのにどうして!どうして私の夢も憧れも失わないといけないの!」
叫び終えた芽琉は再び壁に寄りかかって窓の外の景色を見始めた。
「あそこまで苦しんでるとは、思わなかった。場所を変えよう。お屋敷の客間に行こう。お父さんと子供達と若い使用人はここに残っていなさい。」
「かしこまりました。」
そうして親たちはみんな姿を消した。

「親達がいなくなると静かだね。」
「そうでも無いだろ。お祖父様が泣きまくってうるさいままだぜ。」
「芽亜里の言う通りだ。さすがにうるさくてウザいぜ。」
親達がいなくなってからお祖父様を泣き止ませる役として弥勒がそばにつくことになった。
「あれ?芽琉様はどこに行ったのかしら?」
「僕は知らないよ。業は知ってる?」
「俺も知らないよ。」
ちょっと待て、もしかして莉亜を殺した犯人に気づいて芽琉が殺しに行ったんじゃ。
「何かあったらいけないから、僕と芽亜里と奏太で探してくるよ。」
そう言って僕達はゲストハウスの客間を飛び出した。玄関に向かう廊下の途中で芽琉が歩いているのを発見した。
「芽琉、どこに行ってたんだい?」
「莉亜の遺体が無事か確かめるために2階に行ってただけですよ。」
「そうか。まったく、心配かけやがって。」
「本気で心配してたんだぜ。」
「まぁ、何もなくて良かったよ。」
僕達が廊下で会話していると、玄関から焦った様子の清美さんが入ってきた。
「た、大変です。旦那様と奥様が二階の貴賓室で亡くなっています。」
「なんだって!」
その話を聞いてすぐに僕達はお屋敷の二階にある貴賓室に向かった。
「どうして、母さんと父さんが。」
貴賓室には腹を大きく切られた秋楽おじさんと手足を切り落とされた春香おばさんの遺体があった。清美さんと剛座さんが第1発見者らしい。その2人の話によると貴賓室は鍵が閉められていて密室だったらしい。そして、みんなにはアリバイがある。
そんな状況の中、芽亜里は大泣きした。それからしばらくして大人達がやってきた。遺体があの状態だから彩芽おばさんも検死の必要はないと判断した。

「さぁ、第2の殺人が起こりました!この密室のトリックを暴いてみなさい!」
「バアル、現場の再構築を頼むよ。」
「かしこまりました。第2の殺人、現場はお屋敷の二階貴賓室です。貴賓室にて秋楽と春香の遺体を発見。当時現場は密室です。」
「きしし、早速赤を使うね。『隼人、清美、剛座、美代子は犯人では無い』ついでに『お屋敷の扉は内鍵か部屋の鍵かマスターキー以外で閉める方法は無い』『扉は鍵がかかった時点で後から閉めることは出来ない』これであのトリックは使えないよ。」
一気に赤を使ってきた。その上、一つの手失った。それならどうやって鍵の開閉をしたと言うのだろうか?
「それなら、神威、美紅利、弥勒、業ならどうだ。このうちの誰からならゲストハウスを抜け出して犯行に及ぶことは可能だ。」
「『神威、美紅利、弥勒、業の4人は犯人では無い』ゲストハウスから出ることは出来ても、戻るまでにバレる可能性がある。」
「それなら、優妃と莉亜のどちらかが生きていて殺したんだ。」
「すでに赤で『優妃は第1の生贄である』『莉亜は第2の生贄である』と言っているわ。言い直すなら『優妃と莉亜は死亡している』これで優妃犯人説も莉亜犯人説も使えないよ。」
貴賓室にたどり着ける人間が減っていく。とても難しい。今回は十分なアリバイトリックを用意して来たのかもしれない。

第2の殺人のトリックは強固だ。簡単には解けない。屈辱の魔女は厄介な戦い方をする。アリバイトリックと死亡時刻操作トリックを混ぜた密室トリックを暴けるのだろうか?


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