転生したら悪魔!?〜〜平和に暮らすために頑張ります〜〜 (転スラ最高)
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原初の銀

ーーーーーーーーーーーー竜種

それは、この世界における頂点である。精神生命体だが、自力で物質体を造り出し、受肉を果たせるだけの力を持つ。様々な生き物の中でも、魔力、体内魔素の量、物理的パワー、強靭さ、あらゆる面において突き抜けた力を有する最上位種族である。この竜種の最初の一体とされる“星王竜”ヴェルダナーヴァは、その身を分散させて、ドラゴンなどの竜族の始祖となり消え、現在この世に現存する竜種は三体のみとなっている。

 

そして今、ある王国が滅亡の危機にある。天災ともいえる竜種の一体、“暴風竜”ヴェルドラが突如現れ暴れ出したのだ。王都から離れた場所に現れたためいまだに滅びずにいるがそれも時間の問題であろう。

 

そんな危機に対応すべく王都の城では、悪魔召喚の儀式が始められようとしていた。その部屋では何百人もの宮廷魔導士たちが苦悶の表情を浮かべ、中には既に魔力切れで倒れているものもいた。この召喚が成功したとしても、果たして彼らの何人が立っていられるか。なにせ、彼は悪魔の中でも太古の時代を生きる最上級の悪魔の召喚を試みているのだから。

 

確かに、彼らはエリートだ。魔法を学び、魔導士として幼少期から修行を積み、魔物を倒し、戦争でも大いに活躍した。そんな彼らでも成功の確率はごく僅かだ。魔導士たちはそれを理解し、少しでも成功の確率を上げるために己が命を代償に、魔力を数倍に引き上げる薬を服用し悪魔を召喚しようとしているのだ。

 

そして今、彼らの希望が降り立った。それが、さらなる災厄をもたらすとも知らず。

 

現れたのは、白銀の美少年だった。銀色の短髪に整った容姿。銀の鎧を纏い、その手には持ち主の背丈を越える巨大な槍。そして閉じられた目が開かれ辺りを見回す。しかし、魔導士たちは召喚による疲労で半分以上はその場に倒れ、意識あるものもあまりの妖気に満身創痍の身体では声すら出せない。

 

しばらくの間、部屋は沈黙が支配していたが、引き絞った声が部屋に響く、

 

「貴方様が私たちの召喚に応え呼び出された太古の悪魔の一柱、原初の銀《シルバー》様ですか」

 

召喚された悪魔に声をかけるのは、魔導士たちではなく王様だった。あまりの妖気に声を出さずにいたが国の存亡の危機、恐怖に打ち勝ち決死の覚悟で問いかける。

 

「ーーーーーーーーーーーー俺になにを望む」

 

しかしその悪魔は質問に答えず、逆に問いかける。

 

期待していた返事とは違うがその膨大な妖気からただの悪魔ではないと断じ、願いを言う。

 

「今、我らは存亡の危機に瀕している。どうか貴方様の力でかの邪竜からアーストリア王国を守って欲しい。代価は、我らに払えるものならば全てを支払う。どうか!どうか我らを!」

 

言葉には徐々に熱を帯び、最後には頭を地面につけ、悪魔に願う。

 

「契約はここに成立した。その言葉、後悔するではないぞ」

 

その言葉を最後に悪魔は部屋から飛び出していった。

 

 

この出来事は後世に伝わった。呼び出された悪魔は、契約どうりにかの邪竜と相対した。正に天災、暴風竜ヴェルドラが暴れるたびに辺り一帯に竜巻が発生し、戦闘の中心地は草木生えぬ更地となった。悪魔も己の持つスキルで暴風竜と対等に渡り合う。太陽のごとき灼熱を纏い、その槍さばきは見る者を魅了する。永遠とも思われた戦いは突如終わりを告げる。拮抗していたパワーバランスが悪魔に傾いた。進化、悪魔は上位魔将から悪魔公になり、スキル光輝者(カガヤクモノ)は、日輪之王(スーリヤ)へと至った。その力は、邪竜を退け契約は成立した。

 

しかし、そこで物語は終わらない。緊急進化で戦闘中は意識を保っていたが、戦いが終わるとしばらくの間意識がなくなる。無事に進化をすませ王都に戻った悪魔は契約の対価として王国の民全ての魂を要求し、王国を滅ぼした。その後、集めた魂から自身のはいかを呼び出し、悪魔は山の山頂に行き生活の場を作った。原初の銀(シルバー)は、キーヴェと名乗り自身の配下の中でも古くからの付き合いである2体の悪魔に名を与えた。

 

この出来事から、キーヴェは“白銀の悪魔(シルバーデビル)”と恐れられ、その山に近づくものはいなくなり辺りは人の手がつかない大森林となった。後の、ジュラの大森林である。

 

しかし、その後大きな行動はなく再びかの悪魔が歴史に出てくるのは何千年も後となる。

 




名前:キーヴェ
種族:上位魔将→悪魔公→悪魔王
称号:白銀の悪魔、原初の銀
アルティメットスキル
・日輪之王《スーリヤ》
思考加速、魔力解放灼熱、神格化、光熱支配、一切焼却
・不屈之王《ヴィシュヌ》
完全適応、運命改変、不屈之魂、戦神鼓舞
固有スキル
魔王覇気、万能感知
耐性
痛覚無効、物理攻撃無効、状態異常無効、精神攻撃耐性、聖魔攻撃耐性、自然影響耐性


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2話

俺は爺ちゃんと二人、誰も寄り付かないような深い森の奥で暮らしていた。

 

と言っても、血は繋がっていない。人の手のつかない獣道で赤子が泣いていたのを、爺ちゃんが拾って育ててくれたのだ。

 

俺が数えて5歳ぐらいになった時、爺ちゃんとの稽古が始まった。

 

幼い俺にも容赦なく、指導は行われた。

 

早朝の型の稽古から、昼までの森を自由に駆け回る走り込み。走り込みは、後ろに爺ちゃんが追いかけてきて、背中を触られたらダメ。

 

昼食を食べた後は、爺ちゃんとの組手。互いに木槍を手に持ちやるのだが、爺ちゃんは滅法強い。俺が一突かする間に、五回は突かれる。

 

夜は、身体の柔軟と瞑想。柔軟は、爺ちゃんに身体を引っ張ってもらうのだが、それはもう堪らなく痛い。身体が引き裂かれると何度も思った。瞑想も、精神集中を言われるが眠気が襲ってくる。寝ようものなら、叩き起こされる。しかし、子供なのだから仕方ないではないかと、理不尽を恨んだ。

 

ーーーーーーーーーー

 

稽古が始まってから、七年が経った。

 

「足腰が甘い。腰をもっと低くし構えろ」

 

「はい」

 

12歳くらいになり、身体能力も上がった。

 

朝は、型の確認から始まり、昼までの走り込みは、木の上なども使うようになった。

 

昼の爺ちゃんとの組手は、激しさを増し、顔や体に傷なども目立つようになった。

 

しかし、未だ爺ちゃんから1本を取れたことはない、それどころか、擦りもしない。

 

化け物すぎるだろ、と心の中で愚痴ると、何故か察知され拳骨される。

 

ーーーーーーーーーー

 

稽古が始まってから十五年の月日が流れた。

 

「儂はここまでじゃな」

 

「爺ちゃん…」

 

「お前と過ごした二十年は、今までにないほど充実していた。儂は、覚悟していた。五十と三十ほどに道を窮めた槍術を、誰に教えることなく、孤独に死ぬことを…。しかし、そんな時にお前は現れた、現れてくれた」

 

ゆっくりと、ゆっくりと、自らに聞かせるように語る。

 

「幼い頃から、一日たりとも修練を欠かさず、ひたすら前へと進み、儂の期待に応えてくれた。いや、期待以上だった。まさか、十年にして儂が窮めた地点まで到達するとはな…」

 

俺も、覚えている。

 

十年が経ち、少し寒かなってきた時に、俺は爺ちゃんから1本を取り、免許皆伝を言い渡された。

 

「お前の才能は、天賦のものだ。しかし、器とは磨き続けなければならない。己の力に満足せず、日々努力せよ」

 

「わかったよ、爺ちゃん。俺、これからも頑張るから。満足なんてしない。遥かなる先、頂の彼方へ届いてみせる」

 

「そうか…。ならば、安心じゃな」

 

そして、静か息をひきとった。

 

ーーーーーーーーーー

 

 

それから、さらに九十年の歳月が流れた。

 

俺は、もう百を超えた。

 

爺ちゃんとの約束を守り、日々努力を重ねた。

 

一度に繰り出せる突きは百を超え、一里ほどならば一瞬で距離を詰められるようになった。

 

しかし、寄る年波には勝てない。

 

「我が道、此処に尽きるか…」

 

こうして、男の生涯は幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

かと、思われた。

 

人の身にして、道を窮め、頂の彼方へと至った男の魂は、異世界に渡っても、自我を保ち、さらにそこから精神世界へと行き着いた。

 

そこは、修羅の世界、強さこそが絶対のルールで、戦いに楽しみを見出す、悪魔たちの国。

 

槍聖は、悪魔へと転生した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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召喚
3話


暴風竜ヴェルドラ、転スラの世界において欠かせない超重要キャラ。

ただ存在するだけで環境を変えるほどの魔素量を誇り、リムルと会う前までは暴れ回り邪竜と言われ恐れられた災害。

 

光輝者(カガヤクモノ)で炎の翼を広げ空を飛びながら、薄れつつある原作知識を元に倒し方を考える。現状、速さ、力、魔素量この三つでは手も足も出ない、優っているものといったら技量くらいだろう。リムルとあってからは、異世界の書物(マンガや小説)を参考に技を覚えるが今のヴェルドラならば暴れまわるだけだろう。

 

などと、頭の中で思考を巡らせていたその瞬間、風を切る音とともに巨体が空から迫ってくる。間一髪で避け、物質創造で槍をつくり構える。

 

「ワッハッハハッハッハッ!!!!!東の方で面白そう気配がして待っていたぞ!」

 

その迫力、威圧、力、想定を上回る規格外の存在。魔力を円状に広げ数キロ先まで探知したいのにその範囲外から一瞬で前に現れたその速さ、

 

「大陸を離れ、島国に来たものの、ロクなやつがいなくてな随分退屈してたとこよ!」

 

先ほどまでの自分の考え、原作知識を捨てる。暴れ回るだけなら勝てる?

否!数キロ先からの突撃さえ直前まで気づかないほどの圧倒的な身体能力の差だ、気を抜いたその瞬間に死は待っている。

 

「足掻きもがき、我を楽しませてくれ!」

僅かな予備動作のあと、その巨体が再び迫り、爪を振り下ろす。槍で側面叩き方向を変えることでいなす。しかしすぐさまもう片方の爪が風の斬撃をつくりシルバーを襲う。すぐさま槍を降った勢いのまま一回転し、斬撃を真正面から受け止め、そのまま吹き飛ばされることで距離を置く。

 

しかし、それは悪手だ。距離を置き一旦仕切り直そうとするが、ヴェルドラは竜の代名詞である息吹を放つ、

 

破滅の咆哮(ストームブラスト)!!!!!」

 

死ぬ!迫り来る恐怖に後先考えずに全力で対抗する、

 

梵天よ、我を呪え(ブラフマーストラ・クンダーラ)!!!!!」

 

風と炎が衝突する。しかし、徐々に炎は押され始め、数秒で均衡は崩れダメージを負う。

 

「くっ………………!!」

 

今までにない強敵。原初の奴らと戦う時は技量の差はあっても身体能力という面ではそれほど差がなく、戦えば長期戦となりシルバーは不倒者(クジケヌモノ)で相手の技を模倣し、最適な行動と底上げされた身体能力で今まで勝ち続けてきた。

 

しかし、今回の相手はヴェルドラだ。身体面では不屈之魂で底上げされても届かず、模倣しようにも模倣する技はなく、常にに全力でなければ防ぎきれない攻撃の数々。

 

「ほう………。我が攻撃を凌ぐか!しかし、既に満身創痍のその体でいつまでもつか、楽しみよな!」

 

立ちはだかる壁。その上限は計り知れず今もなお上がり続けているようにも感じる。考えれば考えるほど、勝ち方がわからない。たったの数分で、周り環境を更地にし、今ので魔力の半分以上が消費された。勝ちの目は絶望的、奇跡起きなければ勝てぬだろう。

 

ならば、奇跡を起こしてみようではないか!今までもそう乗り越えてきた。赤や黒、白、青、緑、紫、黄の奴らやそれ以外の奴らの戦いでも常に最初は耐えて、耐えて、耐えて、耐えたその先で最後には勝利を手にしてきた。(まあ、黒と赤には勝ち越せなかったが……)

 

「今までもそうだった、そしてこれからも……。」

 

決意と共に、穴から再び空へと舞い戻る。

 

「覚悟しろ、邪竜ヴェルドラ!たしかに、今はお前の方が強く、俺ではかなわないだろう。されど闘いにおいて絶対は存在しない!」

 

その目には怯えはなく、常に上を向き続ける。

 

「せいぜい油断していろ、俺が追いつく時までな!」

 

再び、邪竜と悪魔の戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜一日後〜

 

「フハハハハハハハ!!!!!楽しいなあ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜二日後〜

 

「くっ、今のは痛かったぞ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜三日後〜

 

「くっ、なぜだ!なぜ倒れない!そして、なぜ力が上がり続けているのだ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜五日後〜

 

「なあ、おい!いつになったら貴様は倒れるのだ!本当に悪魔か!ゾンビとか不死鳥の方が納得するほどの復帰能力だぞ!いや、マジで!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして7日後、永遠に思われた戦いにようやく終わりが訪れようとしていた。

 

 

緑豊かな自然は失われ、山も頂上が削り取られもはや丘となった。

 

シルバーの体には口鼻耳以外にも数カ所穴が空き、両足も無くなり地を這っていた。

 

「よもやここまで来るのにこれほど時間が経つとは思わなかったぞ!足をやってから三日も我が攻撃を凌ぐとはな……。だがそれもここまでだ!この戦いに終止符をうつ。誇るが良い、我とここまで渡り合ったものは姉上たちと兄上を除けば貴様だけよ!」

 

七日経っても尽きぬ膨大なな魔素を集め、トドメを刺しにかかる。

 

破滅の咆哮(ストームブラスト)!!!!!!!!!!」

 

初日のものとは別次元の息吹(ブレス)が襲う。

 

不倒者(クジケヌモノ)の不屈之魂の強化も五日目に限界があることを知り、敵の慢心もあってここまで耐えてきた。しかし、それでもヴェルドラの壁は超えられない。

 

死に直面し、走馬灯の如く思い出すのは遥か昔の、人として生きていた時代。優しかった母、厳しかった父、毎日起こしに来てくれた幼馴染、どんどん蘇ってくる過去の記憶。そして最後に、死んだ時のことを思い出す。

 

工事現場の近くを歩き高校へと登校していた時、鉄骨が落ちてきて、頭は半分潰れ、胸と足も手も動かせない、頭の中では必死になって生きようと痛みに耐えていた。徐々にに失われる熱と光を求め、一度も死を受け入れず諦めなかった。そして、俺は悪魔として転生し生を勝ち取った。

 

(嗚呼、そうだ俺は諦めない!もし、スキルが俺の死に際しての望みを叶えたものならなぜ俺の思いに応えない!!!俺はまだ、終わっていない!!!!!)

 

「死んでたまるか!!!!!」

 

本来、死を恐れず闘い続ける悪魔ならば芽生えない死への恐怖。その心からの叫びが世界に届く、

 

『告。一定以上の意志(おもい)と条件を満たしました。ユニークスキル不倒者(クジケヌモノ)が、究極能力(アルティメットスキル)不屈之王(ヴィシュヌ)へと進化しました。続けて、究極能力(アルティメットスキル)不屈之王の完全適応により、ユニークスキル光輝者(カガヤクモノ)究極能力(アルティメットスキル)日輪之王(スーリヤ)へと進化しました。』

 

『不屈之王の完全適応により上位魔将から悪魔公へ進化しました。』

 

 

溢れるように湧いてくる力を感じながら再生した体で立ち上がり、初日と同じように迎え撃つ、

 

梵天よ、我を呪え(ブラフマーストラ・クンダーラ)!!!!!」

 

ぶつかる風と炎、しかし今度は押されることなく逆に押し返す。

 

「なんだと!!!!!」

 

暴風竜の体に襲いかかり、その身にはじめてのキズをつける。あまりの熱量にたまらず声を上げる

 

「かはっ!おのれ、一体何があったというのだ!!!!!」

 

暴風竜がこう言うのも無理はない、なんせほんの数秒前までは本当死にかけていた者が急に覚醒したのだから。

 

覚醒したシルバーは、物質創造によって槍を手に持つ。その槍の形状は、金色の持ち手に黒く染まった自身の身体の倍はある光槍。

 

「邪竜、いやヴェルドラ、お前のおかげで俺はまた一つ壁を乗り越えれた。」

 

「たったの一撃で我に勝ったつもりか!」

 

怒りと共に"黒き稲妻"、"死を呼ぶ嵐"を放つ。片方だけでも国が滅ぶ一撃を同時に放つ。

 

最初からやられていたら何もできずに瞬殺されいただろう、と思うと同時に日輪之王の神格化を使用し、言の葉を紡ぐ、

 

「   神々の王の慈悲を知れ、インドラよ刮目しろ!

 

 

 

 

 

      ──絶滅とは是、この一刺し! 

 

 

 

 

 

          焼き尽くせ!」

 

絶対破壊の一撃を放つ、

 

日輪よ、死に随え(ヴァサヴィ・シャクティ)

 

均衡など存在しない、触れたその瞬間に二つの暴風を焼き尽くす。星を穿つかのようにヴェルドラと共に大地をも焼き尽くした。

 

「是非もなし」

 

その言葉を最後にシルバーも緊急進化の眠気も相まって地に倒れる。

 

こうして、召喚されてから初の闘いは、シルバーが究極能力に目覚めたことによるパワーバランスの逆転により、七日と半日ほどで幕をおろした

 

 

 

 



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4話

シルバーは、進化による眠りから覚め、これからの行動を考える。

 

不倒者(クジケヌモノ)から不屈之王(ヴィシュヌ)に進化したことで強化された完全適応により、受肉してない状態でも悪魔公になれた。そのため、上限がなくなり今まで溜まっていた不屈之魂のバフが暴風竜ヴェルドラを倒せた大きな要因だろう。

 

こうして、振り返っていても今回の戦いは綱渡りの連続だった。相手の慢心、初手の攻撃を回避、前世の死際の記憶、そして究極能力の獲得、どれか一つでも欠けていては勝てない、そんな戦いだった。

 

「まずは、契約の報酬を貰うとするか」

 

いつまでも感傷には浸っていられない、言葉にしてこれからの行動を決め、空を飛んでゆく。行き先は、召喚された場所である王城だ…

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「なんだ、これは……」

 

シルバーが召喚された場所に戻ってくると、その城下町は多くの人であふれていた。召喚されたときに出たときはこんなに人はいなかった。

 

よく見れば、そのほとんどは鎧やら武器などを装備しており、それらの武器は悪魔が苦手とする特別な金属をを使った物だということもわかった。

 

これではまるで悪魔と戦うみたいだな、と考えていたとき横から矢が飛んできた。

 

その矢を難なく手で掴み、撃たれた方へ投げ返す。返された矢は、音を超えた速度で進み、建物を破壊する。

 

その音で、シルバーの下にある多くの者達がさらに騒ぎ出した。そして、上にシルバーがいることに気づきだし、徐々に上を向く者が現れ始めたとき、城の門が開き中から白い鎧を着た数百名の騎士と、その最後尾にシルバーが見た覚えのある顔が現れた。そして手には、マイクの様なマジックアイテムを持っていた。

 

「よくも、やってくれたなこの悪魔風情が!我ら暴風竜と戦っている間に、東の町の民達を虐殺するとはな!だがしかし、その凶行もここまでだ!見よ、この地に集まりし勇士達、悪魔退治に特化した武器、そして暴風竜との戦いを生き残った一騎当千の騎士達を!もう貴様に明日はない!」

 

息を切らさず宣言した言葉に、集められた者たちは声を上げる。

 

困惑したシルバーは、王へと問いただす。

 

「どういうことだ?我は、貴様との契約通りに暴風竜を倒し、その代償をいただきに来たのだが」

 

「暴風竜を倒しただと?暴風竜は、我らが騎士達と魔道士達の尊い犠牲のもとに討伐したのだ、断じて貴様などではない!さらに、我が悪魔などと契約したなど、戯言を!貴様との間に契約など存在せぬは、戯けが!」

 

帰ってきた返事に、シルバーは悟った。相手がこちらとの契約を破棄し、自分を倒すつもりなのだと。

 

実際、王は呼び出した時から契約を守るつもりなどなかった。伝え聞いた話でも、悪魔は契約で多くの場合、召喚者の命、もしくは身体を代価とすると。それは、悪魔の格が高ければ高いほどに、その傾向がある。故に、原初の悪魔の召喚を決めた際に、交渉で動かせる可能性の高いを銀を呼び、暴風竜の撃退を依頼し、帰ってきた消耗した状態の悪魔を滅ぼし、再び平穏を取り戻す。

そのために呼び出してからの8日間、武器や傭兵を集めていたのだ。その数は、数万にものぼる。

 

結局、ギィみたいに国を滅ぼすことになるのか、と思いながら口を開ける、

 

「悪魔との契約は絶対だ。何を言おうと破棄は認めない」

 

「我らのいない間に暴れ回っただけで調子にのるとは、盗人猛々しいとはまさにこのこと!受肉も済ましていない悪魔程度、恐れるに足らず!行け、ゆうかんなる者達よ!」

 

オォォーーーーーーーーーーーー

 

大地を震わせるかの様な声とともに、先程飛んできた矢が一斉に放たれた。

 

シルバーは、人間だった前世の記憶もあり、何億年も呼び出されず悪魔達と戦う日々だった悪魔界から、物質界に呼び出した召喚者に少しばかり感謝の気持ちもあった。そのため、暴風竜を相手にしてくれ、という願いも聞き入れ、代償も受肉するための依代を求めるだけのつもりだった。

 

そんなシルバーの考えなど知らず、契約破棄という決断を下してしまった。それが、この国の滅びる原因にも関わらず。

 

槍を創り飛んできた矢を払うと同時に、シルバーはさらに上へと飛んで行く。もはや、矢など届かぬ場所から己の魔力を操作し、進化によって獲得した究極能力の力を使い、今までにない規模の焔を圧縮する。

 

神格化(スーリヤ)

 

究極能力日輪之王(スーリヤ)になったことで得た、神格化はドラゴンボールでいうスーパーサイヤ人に近い。全体的な能力の強化と、自身の身体が燃え盛る太陽の如く高温となり、髪も逆立つ。

 

そして、収束された焔が下へと放たれた。

 

世界よ、燃え尽きろ(カリ・ユガ)

 

地に触れたか瞬間、収束されていた力は解き放たれ大地を包む。

 

地上にいた者たちも建物も、そして島をも覆った焔は、一切の区別なく消滅させた。

 

シルバーの眼下には、もはや島はない。島があった場所には大きな空洞にがありその形跡は最早、存在しない。しばらくして空洞を埋める様に海が流れ出し大きな渦を作る。

 

これで覚醒条件を満たしたシルバーは、世界の声を聞き己が真の魔王へとなったことを理解する。

 

 

 

 

 

 

 

 



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