司馬日記 (hujisai)
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司馬日記1

その後の、とある文官の日記です。


4月6日

北郷様の御世となって早や数ヶ月。

 

曹操様より本日付で異動、北郷様の御生活指導及び管理係に任命された。

月様のような常勤ではないため今までの魏での業務も兼任だ。

今後一層、北郷様の御為に身命を尽くす所存だ。

弟子の士季は喜んでくれるのはいいが『これまで一刀様命なのをひた隠しにしてきた甲斐がありましたね!』

などと言っている。他所で余計なことを言わぬよう、

文字通り釘を刺しておこうとしたが泣いて謝るので許すこととした。

 

4月8日

月様と買駆殿に御挨拶に伺うと、月様より制服として『めいど服』を拝領した。

北郷様直属の者は呂布殿を除いて勤務中はこの服を着て勤務するとのことだ。

ただ私は上背があるというのもあるが丈が長く黒地に白の上掛け、腰帯も細く黒であり月様、買駆殿とはかなり意匠が異なっている。

月様によると『仲達さんは美人さんなのでこっちの方が似合うかなと思って』とのことだ。

買駆殿からも『仲達、美人ねぇ…』とお褒め頂いたが、何か諦めたような表情をされていたのは何故だろうか。

 

明日からの勤務を思うと落ち着かず、自室に帰ってから鏡の前で北郷様への挨拶の練習を百度程行うとようやく少し落ち着いたので寝ることとした。

 

4月9日

初めて一刀様にお目通りする。

私のような者にも一刀様とお呼びすることをお許し下さった。

今まで遠くから拝見していた通り御優しい方だ。

感動の余り涙をこらえるのに必死で、御指導概要について御説明したつもりだがうまく説明出来ていただろうか。

 

しかし士季は私が御寵愛を賜って帰ってくると誤解していたようで、半刻足らずで戻ってきたところ目を点にしていた。

一刀様の愛は広くとも無軌道でない事を説教し、それにそもそも私のような可愛くも美人でもない女をお召しになるはずがないと言ったら、心底呆れた顔をされた。何故だ。

 

4月15日

本来の業務である一刀様に無駄なお時間を過ごさせないご指導の他、曹操様、劉備様、孫権様より一刀様の閨房の日程調整を仰せつかった。

一刀様の御徳の高さ、慕う者の多さを考えれば当然の事だ。

 

4月18日

御寵愛を賜ろうとする者が多すぎてまるで調整がつかない、今までどのようにされていたのだろうか。

予定表案がどこから漏れたのか、士季が、『どこかで見た武将が「なぁ…あたしってそこまで影薄いか?桃香や華琳がそれなりの回数なのは分かるけどあたしの名前が予定表に一回も出て来ないほど影薄いか?」

って絡んで来たんで追っ払いました』と報告してきた。

文若様、仲徳様もご不満があるようだ。あの方々は分かりづらいので困る。

 

思うに一刀様は一般政務などに関わっている余裕は無いのではないか。

御三方に相談してみよう。

 

4月20日

一刀様の日常政務は原則として立法・予算・出兵の最終決裁のみとし、それ以外は昼夜とも臣下に御寵愛を賜る事に専念して頂くということで御三方の御了解を得られた。これである程度改善出来そうだ。

また一刀様はほぼ終日閨房に居られる事になるので御屋敷の大改築の計画書を提出したが御三方とも微妙な表情をされ、必ずしも閨房内とは限らずに『雰囲気のある空間作り』の計画を立てるよう指示された。

御意図が今ひとつ掴み切れず男女の機微に詳しいところがある士季に意見を聞いてみたところ実績として風呂、川辺、厨房、山小屋等が一刀様の重要拠点らしい。

 

風呂は衣服を纏わぬ所なので分からなくもないが、厨房については理解し難い。

典葦殿に伺ってみるべきか。

 

4月22日

一刀様に今後の御政務について説明したところ、御諒解頂けたが若干御顔が引き攣っておられたような気がする。

お呟きになった「まるでひも」とはどういう意味だろうか。

誰かに聞いてみよう。

 

4月23日

典葦殿に厨房にて御寵愛を賜るために必要な設備について伺おうとしたところ逃げられてしまった。

『今後の貴殿と一刀様の為』と予め説明したのだが。

ところで屋外で御寵愛頂く事を『あおかん』と言うらしい。士季は口さがないのは困るが世俗の知識が豊かなのは便利ではある。

 

それにしてもそれでも一刀様のお時間の遣り繰りがつかない。

寵姫が多すぎるのだが、一刀様の御人徳なので致し方ない。

 

4月25日

一刀様に『あおかん』のお好みについて伺おうとしたところ

『仲達さんみたいな美人さんがそんな単語言っちゃだめだぁー!』と泣きそうな御顔で叱責を賜ってしまった。

大いに反省し今後の一刀様への言葉遣いは改め、また直に伺わずお察ししてこその臣下との想いを強くした。

しかし文若様や時に仲徳様もあのように可憐でありながら上品でないお言葉を使われることがあるが一刀様は御叱責なさらないのはなぜだろうか。

 

関係ないが一刀様のお部屋を辞した後、特に理由はなかったが鏡を見ていたら夜になっていた。顔が紅潮し心拍数が高く、動悸が治まらない。風邪の様だ、早く寝なくては。

 

ところで士季に不適切な言葉を私に教えぬよう厳しく指導するのを忘れた。明日は一日かけて指導しよう。



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司馬日記2

その後の、とある文官の日記です。


5月1日

『姉妹制』の導入を三国事務官会議で提案してみたところ、好感触であった。

一刀様の御寵愛を賜る日について複数の者―――仮想的な『姉妹』で一日占有する制度だ。

『姉妹』はその日全員で御寵愛を賜っても良いし、『姉妹』内の話し合いで『姉妹』のうちの誰か一人としても良い。

一人当たりの時間は減ってしまうが、枠の確保さえ出来なくなる恐れを考慮すれば妥協出来る条件となったようだ。

これでかなり回転を速める事が出来る。

 

士季が『一刀様死んじゃいませんか』等と言ってきたが、一刀様は三名程度であれば同時に御寵愛下さることは既に調査済みだ。

しかも、

『一人なら一人、三人なら三人なりに密度を薄めずにいてこますのがたいちょの恐ろしい所や』

『月と一緒でも好き放題やられてるのに、あいつが本気になったらボク一人じゃ死んじゃうわよ(赤面)』

と李典殿や買駆殿が仰っている、問題は無いだろう。

御優しい一刀様が寵姫たる買駆様を害することは無い筈と思ったが確認の為、買駆様に『死んじゃう』というのは死ぬと思えてしまうほどの快楽を賜っているということですねと聞いたところ、顔を紅くし良く聞き取れない言葉を怒鳴って去られてしまった。

何がいけなかったのだろうか。

 

5月10日

伯達姉様が半日枠を確保なさった。姉様も寵姫の一人なのでそれ自体は良いのだが、『司馬姉妹枠』として登録していたのが気になる。

妹の叔達、季達は一刀様にお目通りしただけのはずだったが、妹たちに聞いてみたところいずれは(御寵愛賜りたい)と言う。

姉様に叔達達は美貌、才気とも優れてはおりますがまだ時期尚早ではと申し上げたら何も仰らずに溜息をつかれた。

 

更に下の妹の顕達、恵達たちの事まで考えよということだろう。

思いやり深い姉様に比べ、私は駄目な姉だ。妹達よ、すまない。

 

5月16日

地方の文官達から地方枠の確保、一刀様巡幸、中央と地方の交代勤務の嘆願書が届けられた。

各々の国王に出せばよいものを魏の事務方でしかない私に提出するあたり目的がはっきりしている。

代表して提出に来た張松殿は噂の通り醜女を装ってやって来た。

彼女の帰り際に、なぜその美貌を偽るのですかと問うたら、

『…一刀様だけに知って頂ければよいですから。それに司馬懿さん、貴女ほどじゃありませんよ』

と返された。

 

忠なる心は何一つ偽っては無いつもりだ。士季が

『チューしたい心を偽ってるからじゃありませんかぁ?あっ今私上手い事言いましたよ!』

などと言うので元常様に士季の一日指導をお願いした。

元常様の御指導の後はガタガタ震えながら私の部屋に飛び込んできて、一週間くらいは従順になるので有難い。やはり親の躾というものは必要だ。

 

5月29日

一刀様から筆を授かった。私の事務量が多いと聞いたとの事で、しかも御手ずから私の真名をお彫り頂いた、大陸に一つしかない筆だ。

感動の余り言葉が出ず、お礼を申し上げるはずが一刀様を困らせてしまった。

家宝にしますと申し上げるととんでもない使ってくれ、駄目になったらまたあげるからと仰られて喜びを突き抜けてその後どうやって御部屋を辞したか記憶が無い。

 

5月30日

拝領の筆について一刀様の『使うように』との御言葉と勿体無いとの思いに挟まれ自室で呻吟していると、士季が

『一刀様はどう使えとは仰らなかったんですよね、ならひとりえっちに使』

 

書くのも馬鹿らしい。

士季を屋敷の高台に『私は下品な娘なので反省中です』と札をつけて吊るしておいたら元常様が通りがかられ、事情をお尋ねになったのでかくかくしかじかで反省を促していると申し上げた。

すると元常様はあらあらうふふちょっと入らせてもらっていいかしら、と仰って高台に上ったかと思うとお帰りになった。

高台を見てみると士季が今度は逆さに吊るされ、反省札の文言が日記に書くにしても憚られる内容に修正されていた。



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司馬日記3

その後の、とある文官の日記です。


6月5日

仕事で子丹お嬢様と夜までご一緒になったので飲むこととした。

一刀様の筆について使うべきか相談したところ、使わねば不敬ではとの御意見であった。

ただ、『でも、もし私が頂いたら・・・』と言いさしてお嬢様が顔を赤らめられたときに何か嫌な予感を感じたためお開きにした。

 

結局お嬢様の御意見に従い使うこととした。ただ私の真名をお彫りいただいた部分は保護のため布を当てる様にした。

あくまで保護の為だ。

 

6月9日

文遠殿に

『自分もうちらの仲間入りしたんやて?よろしゅうな!』

と肩をバンバンと叩かれた。

何のことかわからずいたところ、張郃と郭淮がお祝いを持って口々におめでとう、仲達なら当然よねなどと言ってきた。

意味が分からなかった為二人に質したところ、一刀様が私をお召しになったと聞いたと言う。

残念ながらそのような事実はないので正しておいたが、大体この手の話の出元は決まっているので私の一番弟子を締め上げ・・・もとい尋問したところ今回は本当に知らないと言う。

私如きをお召しになったと風評が立っては一刀様の沽券に関わる。

出元を調べて訂正しておかねば。

 

6月12日

 

呉で大規模怠業が起こった。天の国の言葉では『すとらいき』と言うらしい。

魯粛、太史慈、張姉妹、諸葛謹、徐盛他有力重臣がそろって休暇願い又は王都への移住を申し出たとの報告だ。

国王代行の孫尚香様の文によると一刀様でなくては説得は不可能な為至急寿春に行幸願いたいとなっているそうだが、曹操様によると首謀者は孫尚香様とのことだ。

理由は『説得は昼夜に及ぶと思われ、十分に体調を整え精をつけた上御行幸願いたい』と書かれていたからだという。

 

孫権様と一刀様は既に出立なさった。

三国事務連絡会議で、一刀様の日程管理の確立と姉妹制の施行を急ぐことが決まった。

 

6月22日

魏及び蜀でも同様の動きがあることが判明した。

三国会議で地方と中央の交替勤務制についても検討するよう曹操様が提案したところ、陳宮殿、楊修殿より各国王が常時王都に在して本国を空けている事に異議が出された。

会議が紛糾したため流会となった。

 

6月25日

地方文官向け勉強会での一刀様の御講義『貨幣経済について』の実施について文若様と公達様が大喧嘩された。

公達様が強硬に実施を主張なさり、文若様が強硬に御反対なさった為だ。

勉強会の終了時刻、及びその後の懇親会(一刀様を囲んで。希望者のみ)の終了時刻の記載が無かったのが文若様は特に気に入らなかったらしい。

途中、一刀様について文若様が不穏当な表現を為さった為その時だけ御注意を申し上げた。

公達様が『自分ひとりだけいじめてもらいたいっての丸見えですよおば様!伯母様!おーばーさーまー!』

と叫んだところで取っ組み合いになった為ご帰還なさったばかりの一刀様に御二方を連れ出して頂いた。

 

公達様は文若様と部下には厳しいが、それでいて一刀様の雌犬を自称して憚らないという落差に戸惑わされることがある。

 

会議は流会となったが、一刀様の御講義の要望は高い。

おそらく実施となるだろうが、ここのところ会議が滞って困る。

 

6月26日

午前中の再会議は文若様と公達様は御欠席なさった。

一刀様より『条件付だが出席者だけで決定してよい』との御二方の御伝言をお預かりした。

条件とはなんなのかと一刀様に伺ったところ困ったようなお顔をなさって私的なことだから気にしなくていい、好きに決めていいよとの御言葉だった。

 

6月28日

士季から元譲様、文若様、文和殿、公台殿について朝内の風当たりが強くなっているとの報告だ。

わからないでもない。一刀様への態度には私もたまに腹に据えかねることがある。

実は曹操様についても反発する者が多い、なんらか対策が必要な可能性がある。

 

ところで一刀様に自由に甘えているように見受けられる呂布殿については何故かどこからも文句を聞かない。

天下一の武人というだけではない何かが彼女にはあると思われる。

 

6月29日

一刀様の御指導の中で、部下とのあり方についてお話させて頂いた。

その中で元譲様、文若様、公台殿、甘寧殿との接し方を引き合いに出させて頂いた。

聡明な一刀様は私の申し上げたいことはご理解戴いたが、多くは彼女らなりの照れ隠しでありその愛情は疑いなく、一刀様の立場としては多くの臣下のあり方を尊重することで皆が幸福に暮らし各々の能力を遺憾なく発揮できるようにしたいとのことだった。

改めて一刀様のお心の広さに感激した。

 

ただ一刀様に一般的には不敬ととられる言動を好ましく思わない者達もいる事はご理解を戴き、なるべくは公式の場等多くの者が居る場では言動を慎ませるよう彼女等に御指導下さるようお願い申し上げて了解戴いた。

一方、公達様の熱烈な好意は有難いがあの言動をどうにかする方法は無いかと御相談頂いたが、公達様の、それこそ文若様の情念を一刀様向けにし更に悪化させて露出させたような御性格は如何ともしがたいと思った。部分的には公達様に同意できる面もあるのだが。

 

6月30日

政務の後、子丹お嬢様に酒に誘われた。

遂に一刀様の御寵愛を賜ったとのことだ。

とても幸せそうに一刀様を語る子丹お嬢様を見ていて私もとても幸せな気持ちになった。

心からお祝いを申し上げた。

 

ところが何故か私の話になり、子丹お嬢様は既に一刀様が私をお召しになったという風評をお信じになっていたので訂正したところお酒が進まれていたせいかお怒りになり、今から一刀様にお願いしに行くと言って聞かないのをなんとかして宥めたところ今度は泣きだされて寝てしまわれたので士季に手伝わせて屋敷までお運びした。

 

子丹お嬢様は御幼少のころに比べ私生活では感情の御表現が豊かになられたと思う。

時折困らされることもあるが、お嬢様の幸福から見れば良い事だろう。



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司馬日記4

その後の、とある文官の日記です。


7月1日

今日は典韋殿と一刀様の食事の御指導を行った。

隣席で御指導をさせて頂いたが、一刀様はどことなく挙動不審であった。

何か心配事でもおありなのだろうか。

 

7月2日

先般からの謎が解けた。

『一刀様より御筆を賜った』ということが曲解されてそういうことになったらしい。

しかも出元はなんと子丹お嬢様だった。

平謝りされるのにも閉口したが、『この詫びは仲達を一刀様にお召し頂くことで必ずする』とお誓いになるのをどうしても止めてくれなかった。

しかし、つい先日まで生娘であったお嬢様が筆についてそういった解釈に至ったことに疑問を呈したところ、士季が意図を解説したらしい。

 

家に帰って、とりあえず士季を元譲様、魏延殿、文醜殿の剣術の稽古に『稽古中の事故は止むを得ない』とことわり付きで放り込んできた。

全身痣だらけになってはいたが、骨折ひとつせず帰ってきた。末頼もしいことだ。

 

7月9日

あれから頻繁に子丹お嬢様から飲みに誘われる。

最近のお嬢様は酔うと御言葉が大胆になられるので外で飲みにくくなった。

先日は子丹お嬢様の屋敷で飲んだところお嬢様に同調する子孝様、子廉様に囲まれて大変な目に遭ったので今日は私の屋敷としたがそれも無意味だった。

どうもここのところお嬢様が私の知らない天の国の言葉―――それも房事に関わる―――を使うことがあるので不審に思っていたが、知らぬ間に士季と仲良くなっていたようだ。

二人して一刀様の筆の件を蒸し返され

『あれはやっぱり一刀様の御誘いであって、それを推し量れない仲達が悪い』

と理不尽な説教を受け、手に負えないので張郃と郭淮を呼んで連れ帰ってもらおうとしたところ説教側が四人に増えただけだった。

お嬢様が持ってくるようにとの御指示なので已む無く一刀様御拝領の御筆を見せると、酔っ払い達は

『一刀様のはこんなもんじゃない』

『いやこの穂先の膨れ具合は必ずしも』

などと言い出す始末だ。

翌日からなんとなく御筆を使いにくくなってしまった。

 

もう一つお嬢様によると、一刀様が『仲達さんは俺とサシの時はすごく優しいお姉さんみたいなのに、みんなの前ではキリッとしていて驚いた』と仰っていたとのことだ。

私としては特に区別をしていないつもりなのだが、郭淮に言わせると普段の仕事中の私は容姿は異なるが奉孝様のような感じらしい。

では一刀様の前での私はどうかと聞くと、全員に無言で生温かく微笑まれた。

 

兎も角、粗相は無いよう気をつけよう。

 

7月10日

御筆の私の真名をお彫り戴いた部分に口付けてみた。

民想い、部下想いの一刀様のお心に触れるようで胸が熱くなった。

激務が続くがこれでまた頑張れる。一刀様の為に。

 

これは不敬ではないと思う。

 

7月11日

噂には聞いていたが張勲殿は優秀だ。

法令条文の精査をしてもらっているが、奉孝様でも気づかない抜け穴を発見し修正してくれる。

一刀様の御提案で袁術殿が子丹お嬢様に師事し、その間張勲殿に勤務してもらっているが有益であったようだ。

張勲殿は雰囲気こそ似つかないが底知れぬところが仲徳様に似ている気がする。

子丹お嬢様によると袁術殿は心身ともに成長目覚しいとのことだ。

優しくも厳しく、根気のある子丹お嬢様の教えに合ったようだ、流石は一刀様の御慧眼だ。

袁術殿をしばらく見ていないので次回子丹お嬢様との酒席があれば御邪魔させて頂き拝見してみよう。

 

7月12日

仕事が忙しい。

 

7月14日

…死にたい。

一時の気の迷いと思いたいが私のような淫売は不敬罪で死ぬべきだ。

士季に見つからないよう柱に縛り付けた後でよく洗ったが当分筆としては使えない。

 

7月15日

一刀様に御筆を使っていない事を御指摘されてしまった。

『もったいなくてたまに休めております』と言い訳をした。

一刀様は残念そうに『使い難かったならいいけど、勿体ないなんてことはないからね』と仰られた。

類似の筆を用意しなくては。

 

…もう私は職を辞して田舎に帰るべきだろうか。

 

7月16日

元直殿、王都勤務となった子敬殿と久しぶりに飲んだ。

二方とも優秀でありながら温厚な、事務会議で知り合って以来の気の置けない親友だ。

ここのところ鬱屈としていたせいもあって酒を過ごしてしまい、子敬殿の『すとらいき』の話を聞いていたあたりから記憶がいまいち定かでない。

伯達姉様が私を連れ帰ってくれたらしいが迷惑をかけてなかっただろうか。

彼女等もまだ当分王都のはずだ。いずれお詫びしよう。

 

7月17日

元直殿も子敬殿も先日の夜私が何か無礼がなかったか聞くと、生暖かく微笑まれるだけで教えてくれない。

かわりに子敬殿より、呂蒙という者が呉から赴任してきており私と非常に仲良くなれると思うので一度お誘い頂きたいとのことだ。呂蒙殿の名は呉の新進気鋭としてその名は知ってはいるが人となりまでは知らない。

 

それにしてもあの晩、不快な思いはさせなかったようだが何があったのかは気になる。

伯達姉様も『仲達はいいお友達を持ったわねぇ』とにこにこ微笑むばかりでやはり教えてくれない。

呂蒙殿の話をしたところ文謙殿とも仲良くなれると思うのでいずれ私が引き合わせるようにとのことだった。

 

7月19日

公達様より、三国大規模人事異動の内意を曹操様より頂いたとの御連絡を頂いた。

先般の呉の『すとらいき』に端を発する政局―――というよりは閨局による造反に近いものらしい。

今回人事の魏担当は妙才様ではなく私だ、と語る公達様は誇らしげであった。

私に御連絡を頂いた理由は地方に飛ばされたくない優秀な実務担当者がいれば早めに囲っておくように、またなるべく一刀様への忠心篤い者を残すようにとの御指示だ。

 

7月23日

今回の異動で地方勤務の者が概ね決まった。

成程閨局に関する造反と謂われるに相応しい人事だ。

魏では許緒殿、文則殿、そして元譲様他数名が王都を離れる。

しかし曼成殿は工房長として朝廟を離れるが、彼女の業績の如何は三国経済に絶大な影響を与える。

今回の異動で『一刀様から離れると歌えなくなる』として巡業から帰京してくる数え役満☆姉妹と同じく、私的な面に関しては非常に強い権限を持つようになるのではないだろうか。

 

呉では孫策様、周瑜殿、周泰殿、

蜀では張飛殿、諸葛亮殿、龐統殿あたりが帰国、

公台殿も青州勤務となるらしい。

 

また今回の大規模な人事異動に伴い張勲殿、公孫瓚殿、顔良殿を引き取りたいとの依頼が方々の部署から来ている。

張勲殿、顔良殿は有能だが御守り役兼任であるところが足枷になっている。

顔良殿についてはちょっと考えてみよう。

ところで公孫瓚殿の現在の所属はどこなのだろうか、どこの事務方に聞いてもはっきりしない。

 

本来の仕事が進まない。

 

7月25日

一刀様に、御自ら袁紹殿を今までよりも厳しく御指導頂くようお願い申し上げた。

現状、袁紹殿が一刀様以外の方の言う事を聞くとは思えなかったためだ。

暫くお考えのご様子だったが、麗羽の為にもなるかもしれないし斗詩の為になるなら誰かに相談しながらやってみる、と御諒解頂けた。

 

そんなことはさておき、なんと一刀様に明後日飲みに誘われた!

ここ最近の私の業務繁多を見かねて子丹お嬢様、伯達姉様、元常様らに分担を指示なさったところ、お三方とも交換条件として一刀様御自ら私を慰労頂く事を挙げたとのことだ。

しかもその翌日は非番として頂けるらしい。

明日はなんとしてでも定時で業務を片付けよう。



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司馬日記5

その後の、とある文官の日記です。


7月26日

自分など死んでしまえと思うのは二度目だ。

折角の一刀様のお誘いなのに、御供に着ていけるような服を何一つ持っていないことに今朝箪笥を開けて漸く気がついた。

 

下着のまま箪笥の前で打ちひしがれていたら伯達姉様が淡い桃色の、可愛らしい刺繍のついた衣装を貸してくれた。

姉様の御年としてはやや可愛らし過ぎる服なようにも思ったが、本能的にそれは言ってはいけない気がしたので御礼のみ申し上げていざ着ようとしたら姉様から

『まさかその下着の上に着るつもりなの!?』

と驚かれたことに驚いた。

特別に露出の高い服ではなく、みっともなく下着が見えてしまう訳ではない事は確認していたのでそうですがと申し上げると深く深く溜息をついて叔達と季達を呼び、かくかくしかじかと経緯を説明した上で

『というように仲達が間違っているのは判るわね?』と二人へ問うた。

すると二人の妹は呆れた様に当然です、と答え、あまつさえ姉様からは仲達みたいになっちゃだめよ、と念押しをされるとともに私は叔達から下着を借りて着用するよう厳命された。

 

非常に釈然としなかったが、後ろがつかえてるんですしあんまり司馬の娘の恥を晒さないで下さいねなどと叔達に小言を言われながら下着を受け取って着用してみた。

ところが、非常にその、何なものであったので

『叔達はこのような下着を着て何処へ行く心算だ!』

と怒鳴ってしまったが、しれっと

『一刀様のお召しがあれば着ていくはずだったものですよ、尤ももうそれは着ませんが』

と返された。

 

そこでようやくはたと気がついた。

下着の趣味はあまりに扇情的で褒められたものではないと思ったが、一刀様に初御目見えの際には喩え見えぬ下着とても全て新品の衣で参じたいとの叔達の心根は見上げたものだ。

私が誤っていた、今後心がけを改めると誓うとこの出来た妹もようやく仲達姉様も判ってくれたんですね、頑張ってきて下さいと励ましてくれた。

 

尚下着は伯達姉様から借りなかったのは体型が一部合わなかった為だ。

私は女性としては平均以上の抑揚を持っている筈で、伯達姉様と淑達が非凡過ぎるだけだ。

 

7月27日

目が覚めたら自室で、昨晩どのようにして帰宅したか記憶が無く青ざめた。

必死に記憶を辿ってみたが、酒店の席で既に待たれていた一刀様に緊張のまま御挨拶し、しばらく私の家族のことや仕事のお話をしていたあたりまでは覚えていたがその後がどうしても思い出せない。

酒に弱い方ではないと思うし今まで酒で前後不覚になった事は滅多に無い、しかし緊張のあまり酒盃に何度も手を伸ばした記憶があるのでおそらく酔い潰れてしまったのではないかと思った。

 

恐らく姉様なら何かご存知なのではと思い二日酔いで痛む頭を押さえてお部屋に伺うと、笑顔で開口一番

『あら、一刀様をほったらかして勝手に酔い潰れた駄目な娘はもう起きたのね?』

と死刑宣告を受けて床に崩折れた。

 

姉様のお話によると、月が沖天に昇るころ私をおぶった一刀様が来訪された。

一刀様いわく、疲れているようで飲んでる最中に私が寝てしまったとのこと。

姉様が『そのような駄目な妹は引き取れません、お持ち帰り頂き目を覚ましたらおかけした御迷惑をその体でねっちりと償わせて下さい』とお願いしたが固辞された為止むを得ず引き取った。

 

引き取る間際に、『よく見てみると私の口から一刀様の背中にかけて粗相の跡があったので一刀様の御遠慮もさもありなんと思った』との姉様の言葉を聞いて失神した。

 

主人の御厚意で酒席を設けて頂きながら先に寝こける無礼。

それを自宅までお運び頂きながらも背中から吐瀉を浴びせかける等、臣として、なにより女として有り得ない所業だ。

 

退官を決意した。

司馬の名も捨てよう。

その後、自決するかゆっくり考えよう。

姉様、妹達、あまりにも不出来な私を許

 

7月28日

涙を流すと吹っ切れるものだ。

一刀様にまずはお詫び申し上げよう。

そしてもう既に遅いかもしれないがお汚しした御料衣を洗わせて頂けないかお願い申し上げ、それが済んだ後に辞職することとした。

自決はしないことにした。一刀様の御性格では私如きであってもお心を痛められる可能性がある。

一刀様の御目につかない地で、おかけした御迷惑と賜った御恩を生涯忘れず、ほそぼそと一刀様の御世の為に尽くして暮らすこそ私に与えられた罰と贖罪と思うことにした。

 

7月29日

一刀様の御元に伏して昨晩前後不覚となってお運び頂いたご迷惑のお詫びと感謝を申し上げると、気にしないでいい、連日の残業で疲れていただろうに無理に誘ってしまったようで悪かったと寧ろ詫びられるような御言葉を頂き、改めて御寛仁の広さ、そしてもうこの御心に直接触れることは出来ないのだと思うと涙が溢れそうになった。

 

また平伏をやめるよう御言葉を頂いたが、これから申し上げることを思うととても面を上げることは出来ない。

 

そして恐る恐る、私の吐瀉物で汚してしまった御料衣を洗わせて頂けないかお願い申し上げたところ、ぽかんとされた。

 

いわく、何のことかわからない、そんな覚えはないし跡もないけれどもと仰りながら御料衣の背中の部分をお見せ頂いた。

確かに無い、手に取らせて戴いて匂いを嗅いでみてもそれらしい臭いがしない。

呆然としていると、一刀様が『ひょっとして、涎でもちょこっとついたかな?』と仰られるのでよく目を凝らしてみてみると、一分(3mm)程の水が乾いたらしき跡が見つかった。

慌てて清掃させて頂くと『これで解決かな?』と一刀様が仰ったが、女としての最低限の矜持が保たれた(のか?)だけであり御迷惑をおかけした事には変わりなく、やはり退官を申し出た。

一刀様は驚かれた御様子でお引止めの言葉を戴いたが、後日事務整理に参りますとのみ申し上げて逃げるように退出してきてしまった。

 

…引き際さえ全う出来ない私は、やはり最低だ。

7月30日

寝台より起き上がる気力が沸かない。

公達様へ辞職致したい旨を士季に連絡させた。

 

…このままでは姉様や妹達に迷惑がかかる。

せめて早く出て行かねば。

 

7月31日

昼頃突然妹達が全員外出し、午後には士季に無理やり湯浴みさせられ寝所の換えと厨房仕事をすると士季も子丹お嬢様の元へ出かけていった。

 

その後一刀様が食事を持って私の寝室にいらした時は、ああ私は床に就いたままもう死んでしまっていたのかとまず思い、そして死者の夢にさえも一刀様がいらして下さったと涙した。

その後のことは色々なお話をした筈だが覚えていない部分が多い。

一刀様が、『私に戻ってきてほしい』と仰って、私の頬に(以下黒塗り)

 

今夜は眠れる気がしないが、明朝一番で公達様に辞職願の撤回のお願いに行こう。

もし既に首であっても、一から試験を受けていこう。魏で仕官出来なければ蜀、呉でも一刀様のお役に立つことは出来るかもしれない。

 

8月1日

公達様の下へ伺ったところ、『ああ休暇願いね?預かってるけど出勤が一日早いわね』と言われた。

士季の機転だろう。主命に反するのは良くはないが礼を言わねばならない。



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司馬日記6

その後の、とある文官の日記です。


8月4日

ここ数日困ったことがあり、誰に相談したものかと思ったが子丹お嬢様に相談することにした。

 

私の相談を聞くや否やお嬢様は顔を引き攣らせて私を一刀様の下へ引き摺って行き、

『一刀様!この!馬鹿娘がっ、「一刀様に御口付け頂いた頬を洗いたくないのですがそれも不衛生でどうすれば宜しいでしょうか」等と聞いて来るのでどうにか御指導下さい!』

といきなりぶちまけた。

 

私と一刀様は赤面頻りだったが、一刀様の御提案で一刀様の御指導日毎に頬に頂く事とし私はきちんと顔を洗うこととなった。

子丹お嬢様はなぜか御不満気で一刀様と何かお話をされていたが、最後には『まだこんな事でうろうろしているなんて、まあお二人のことですけども』と言いながら不承不承お帰りになった。

 

御指導日毎、というお言葉が頭の中で反響し、足元が覚束なかったがなんとか帰宅出来た。

 

8月6日

会議に向かう途中で、一刀様と御一緒であった袁紹殿の御挨拶を受けた。

あまりにも今までの態度と違いにこやかで淑女、大人の風のある御挨拶であった為驚いた。

袁紹殿と別れてから一刀様にどのような御指導をなさったのか伺ったところ決まり悪げな御表情で、桐花(公達様)が自分と同じ匂いがする、絶対の自信有りというので桐花の言うとおりにしてみたとのことだった。

公達様が文若様と並び特殊な御性癖の持ち主であることは夙に有名であったので一抹の不安は感じたが、元が驕慢な性格であったので裏返るとこういったことになることもあるだろうと納得もした。

一刀様がこれはこれでかわいいと思える自分に少し不安を覚える、とのお言葉だったので以前よりは格段に良い態度なので当然と思われますとお答えしたが苦笑いされた。

私の回答が何かずれているらしい。

 

しかしこれで顔良殿を政務に使える。

袁紹殿自身も式典出席など実務的でない方面であれば政務をお願いできるかもしれない。

 

8月7日

早速顔良殿と業務について打ち合わせを行った。

南皮方面の太守を打診したがやはり拒否されたので、同方面の物資管理、人事補助をお願いすることにした。

華北は人口・都市ともに多く、人材不足が否めないという話の中で顔良殿より旧袁紹軍で野に下った遺賢を推挙してはどうかという意見を受けた。

私の方からは貴方と現在の袁紹殿が赴いて登用を行ったら仕官してもらえないだろうかと聞いてみると、顔良殿はしばらく考えて一刀さんと麗羽様で親しく説けば芋づるのようにごっそり釣れると思います、とのことだった。

今度の会議で議題に出そう。

 

8月10日

華北の人材登用で一刀様と袁紹殿に御巡幸頂く件について魏の会議に出してみた。

曹操様は『麗羽のとこの田豊とか沮授とかって確か…』と呟かれ、顔良殿を呼んで小声で話をされると眉間に少し皺を寄せてそりゃ一刀ならきっと残らず釣って来るわね、でも背に腹は代えられないしと溜息をつきながら御了承頂いた。

顔良殿も少し困ったような表情をされていたが何か問題があるのだろうか。

 

8月11日

士季に先日の礼として、かねてからせがまれていた一刀様へのお目通りをさせることとした。

秋には仕官試験を受ける予定であり、士季の実力からみてまず受かるであろうからちょうど良いだろう。

無礼のないようにと口を酸っぱくして言ったが、分かってますって正装なんで一旦家に帰りますねー、と軽く返すのに非常な不安を覚えた。

8月12日

待ち合わせ場所に元常様と現れたのは楚々とした見知らぬ美少女だった。

鍾会で御座います、と聞くまでこれが士季かと信じられなかった。

元々顔立ちは整っていると思っていたが普段の言動と飾らぬ姿から士季のこの姿は想像がつかず、ひょっとして女としては私よりも上手なのではと一抹の不安を覚えた。

 

というか一刀様の前での士季は、挙措、声の調子、一刀様に向ける熱く潤んだ瞳まで、人生の、女としての先輩であるはずの私が感心するほどに一刀様に恋する乙女のそれだった。

一刀様が時折『話と違う』と言いたげに私の方をちらちらと顧みられて私も困惑した。

 

さて引き上げる時間となり皆が卓から立ち上がった瞬間に一刀様が突如士季の方へ転倒され、士季を押し倒す形となってしまった。

その後は士季と元常様の劇を見ているかのようだった、

「母様どうしましょう偶然とは言え一刀様と口づけをしてしまいました、一刀様の御唇に付きました紅こそ動かぬ証拠」

「まあなんということかしら、鍾家の掟では」

「唇を捧げた殿方には輿入れしなくてはならない定め」

「掟を破れば死あるのみ」

「しかし母様、一刀様に輿入れなど大それた御迷惑はかけられませぬ」

なれば士季、せめてもの情けにこの母がと目元を拭っていつから用意していたのか小刀を抜いたところで、そこまで私と同じくあっけにとられていた一刀様が止めに入られ、常識的な御説得をなさった。

 

…一刀様が倒れる瞬間に元常様が私と一刀様の間に入られ、視界が塞がれたのは偶然だと思いたい。

 

百戦錬磨の商人がはじめにふっかけてその後に値を落として高値でも納得させるかのように、母娘は何故か私をお召しになった後に士季をお召し頂く事で折り合ってしまった。

しかも私はその場の証人にもさせられた。

 

しかし私を御召し戴く事が規定路線になっているのは何故だ。

それにしても初対面で一刀様にここまでのお約束を取り付ける鍾家には慄然とせざるを得ない。

 

8月14日

久々の一刀様の生活御指導は非常に緊張した。

というのも授業後の、その、お約束戴いた件があまりに気になってしまった為だ。

あまつさえ御指導後、気まずげにその件について一刀様から切り出されたが思わず畏れ多くて辞退してしまった。

午後の政務に取り掛かるときに子丹御嬢様が私の部署に飛び込んでこられ、胸倉を掴まれて貴女逃げたそうね、と仰った笑顔は最近記憶に無い位恐ろしい笑顔だった。

その日の午後は『この娘は駄目な子です(女的な意味で) 子丹』

と書かれた札を背中に下げられて仕事をさせられた。更に元常様と姉様もいらして

『娘が嫁き遅れたらどうしてくれるの 元常』

『淑達たちの事も考えなさい 伯達』

まで書き足された。

 

後生畏るべしという言葉もあるが、自分は後輩はいじめたりせずに優しく指導しようと改めて思った。

別に諸先輩方の御指導に不満があるわけではない。

不満があるわけではない。



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司馬日記7

その後の、とある文官の日記です。


8月16日

子敬殿より呂蒙殿を御紹介戴いた。

魏では猛将との呼び声が高かったが、知的な印象の大人しい少女であった。

しかし一刀様の話題となると話が弾み、非常に共感した。

伯達姉様に文謙将軍を紹介するよう言われていたのを思い出し、引き合わせる約束をした。

 

8月18日

三国事務会議があり、その中でかねてから整備予定の後宮―――河川そばの東屋や厨房なども含むのだが―――の施工着手の報告があった。

報告後に諸葛瑾殿より、一刀様ご自身は一体どのようになさるのがお好みなのか、それによって整備計画が修正されるべきではと提議があったが、会議ではそれについての明快な解答が得られなかった。

 

或る者曰く、処女を手ほどきするのがお好みである。

また或る者曰く、年上に甘えるのがお好みである。

また或る者曰く、巨乳を弄ぶのがお好みである。

また或る者曰く、小柄な者を妹のように可愛がるのがお好みである。

また或る者曰く、屋外で荒々しくなさるのがお好みである。

また或る者曰く、複数の者を同時に御寵愛なさるのがお好みである。

また或る者曰く、ここでは言えない程の特殊な御性癖をお持ちである。

 

等々、まるで意見の一致を見ない。

議論が過熱し口論になりかけたところで元直が各々の上司に伺ってみてはどうか、と提案し一応散会となったが…。

自分の上司を思い浮かべたところで多少頭痛がした。

仕方なく伺ってみたが、公達様曰く、

『愛情いっぱいに苛めて辱めるのが御趣味に決まってるじゃないのそんなの!

あたしの悦ぶことを知り尽くしているかのように弱いとこを突いてくるのよねぇ…それに事後の御優しい語らいといったら…』

この後も長々と何か仰っていたはずだが右から左であったので覚えていない。

思い切って一刀様に伺ってみたところ、菩薩の如き微笑とともに『みんなちがってみんないい』とのみ仰られた。

寵姫各々を思いやって頂いた御発言だろう。

 

しかし諸葛瑾殿の御指摘通りこれは実は重要な課題と思われる。各国の事務方で協力して詳しく研究しよう。

 

8月21日

一刀様に御口付けを戴いてしまった。しかも唇にだ!

本日の御指導の終わりに、例によって挙動不審となっていた私に、

俺のこと嫌い?と聞かれて、全力で否定させて頂いたところ、御唇、御尊口、ああなんと呼べばよいのだろう!?が、私のそれを塞いだのだ!

午後休暇を取った私を誰が責められるだろうかいや何人たりとも不可能だ、そのまま平然と仕事など出来るわけがないだろう!

 

生きていてよかった。もう死んでもいい。

しかし一刀様に今一度御口付けを賜れるなら生きていたい。

ああ、私は女だ。

司馬の娘でもなく、魏の臣でもなく、只の女だ。

ようやく、私は女になったのだ。

 

8月22日

久々に良い気分で酒が飲めると思ったのに、

『「女になった」とか一刀様に処女破ってもらってから言いなさいよ。ずぶっと』

と薄ら笑いで仰る子廉様は余りに手厳しいのではないだろうかと思ったが、

子丹御嬢様も『葵(子廉様の真名だ)様も下品な手つきはおやめになった方が』と仰るだけで、子孝様も否定してくれなかった。

癪ではあったのでそう言う子廉様は一刀様とどうなんですかと返すと、あ、私?ふふんと得意げに鼻を鳴らしたところで子孝様が『曹洪の洪の字は洪水の洪~』と呟き、満面朱に染めた子廉様が馬超とは違うのよあたしのはぁ!と叫んで暴れだされた。

 

何がどう違うのか、誰に聞いても教えてくれないのは何故なのだろうか。

 

8月24日

地方文官向け勉強会が無事行われ、事務局としてはなによりだ。

一刀様の御講義も行われ、今回、幸いにも一刀様の薫陶を受けた者達は今後一層民と一刀様の為に尽くしてほしい。

 

ところで今回公達様から御指示頂いた御講義会場は部屋に布団を敷き詰め、特に席を定めないという見たこともない形式であった。

一刀様に教えて頂いた、天の国の『寝間着宴会』というものを参考にしたとの事だ。

今回の勉強会の出席者達からの感想・意見を纏めて公達様に報告しなくてはならないが一刀様の御講義・懇親会についてのものばかりだ。

一刀様をお慕い申し上げるのはよい事だが仕事もしろと言いたくなってしまう。

 

御講義の所感を一刀様にお伺いした所、一人非常に優秀な娘が居た、質問内容があたかも天の国を見たことがあるかのようだったとのことだ。

姓名は不明で懇親会は辞退しており、士季と年のころが近いようだったが身なりは貧しくまたどもりがちで、典農の部署の冠をつけていたと言う。

容姿に惑わされず人物を見抜く一刀様の慧眼に改めて感服した。

またこのような効用は想定しておらず、予め一刀様に受講者名簿をお渡ししておけば良かったと後悔した。

 

8月28日

子丹御嬢様のご紹介で、久方ぶりに袁術殿とお会いした。

呉では急成長することを『呉下の阿蒙』というらしいが、あまりの変貌ぶりに非常に驚かされた。

以前お会いしたときは駄々をこねる童のようだったが言葉遣いや立ち居振る舞いがすっかり淑女のそれになり、背も伸び体つきもふっくらとしていた。

 

両袁家はいずれも英雄の器量でないと思っていたが、元々の素質はあったのではと思わせられる。

それに士季の時も思ったが後生畏るべしだ、私も精進に励まねば容易に抜き去られてしまうだろう。

官吏としても女としても。



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司馬日記8

その後の、とある文官の日記です。


8月29日

元常様より、次回の一刀様の御指導は夕食後からとなったとの連絡を頂いた。

また翌日の三国流通会議は何故か私に代わって子孝様に御出席頂き、休暇を取るよう指示された。

直属の上司は公達様なのだが。

 

9月2日

昨晩は人生最高の夜だった。

この感動をどう表せばよいかわからない。

一刀様、貴方の為に生きて死ぬ事を誓います。

 

9月3日

昨日は終日物思いに耽ってしまった、本日から又しっかり働かなくては。一刀様の為に。

そう思い登庁したところ一昨晩の事をどこから聞きつけたのか、同僚達の生暖かい視線が気恥ずかしかった。

 

更に退庁しようとしたところ門で子丹御嬢様、子孝様、子廉様や元常様らが待ち構えており、酒楼へ連行された。

直属の上司でもないのにこんな時だけ役職を持ち出して酒を飲ませて一刀様との事を根掘り葉掘り聞きだそうとする交友関係を私は見直すべきのではと思った。

 

事後、感動で涙が止まらず一刀様を困らせてしまったというのは大人の女としては減点らしい。

しかし『だめねえ仲達は』と仰る子丹御嬢様の瞳は優しかったように思う。

 

9月5日

元直が愚痴りにやって来た。

劉封殿、関平殿がじゃじゃ馬で一向に説教を聞かないという。

彼女らは魏や呉にさえ『近親上等☆姉妹』としてその名が聞こえており、二人で御寵愛を賜るのはもちろん義理とは言え母親と一緒に御寵愛を賜ろうとした剛の者だと聞いている。

劉備様や関羽殿も御指導しているのだが義母とは言え年は殆ど変わらない為かあまり効き目が無いのだそうだ。

一刀様の魅力の前では致し方ないが順番は守るよう指導せざるを得ないだろうと助言した。

 

9月7日

三国共同の塾(天の国の言葉で学校と言うらしい)の建設が始まった、運営計画も詰めなくてはならない。

私塾は孫権様の御発案とのことだが、劉備様と公孫瓚殿が通われた蘆植殿の塾と一刀様の通われた学校の双方を模した形にしたいらしい。

事務会議では『我が王はかつての劉備殿のような、庶人としての一刀様との出会いと言うか、雰囲気に憧れがあるのだそうだ。

あと楽進殿がお持ちの制服とやらも参考に貸与願いたい』

と疲れた表情で周喩殿が言っていた。

三国の教育予算から費用は捻出されることになっていたが、呉からは総務費(閨房に関わる予算はここから出ている)

からも出資を要望したところ、教育以外の目的での利用状況によっては魏・蜀からも応分の出資をすることを条件に承諾された。

 

…これも行政の合理化といえるのだろうか。

 

9月8日

子敬、元直と飲んだがまた元直が荒れていた。

曰く、荊州馬家の家督争いに巻き込まれかかっているという。

家督を継ぐと必然地元勤務となり一刀様との時間が減るので押し付け合っているとのことだ。

馬良殿とは面識があり温和な方だったと思うがというと、あの顔に騙されるのよねと半眼で吐き捨てた。

子敬が物凄く元直に感情移入をしていた、呉はよりによって王位を激しく押し付け合ったと聞いているのでとても他人事と思えなかったのだろう。

 

この二人がこんなに酒を過ごして高揚しているのを見たのは初めてだった。

この境遇は納得行かない、今から揃って一刀様に慰めてもらおうと元直が言い出し、止めると思った子敬が同調したのには驚いた。

あまつさえ貴女も日ごろの激務で疲れているでしょうから一緒にと強く誘われ、なんとか断りぬくと彼女らは酔歩もあやしく一刀様のお屋敷に向かっていった。

一刀様にあまり迷惑をかけないようにと忠告はしたが不安はぬぐえない。

 

9月9日

ふと気になって伯達姉様に司馬家の家督は姉様が継いで下さるのですよねと聞くと、姉様は笑顔で私は優秀な妹達を持って幸せよ、と答えられた。

どう考えても答えになっていないと思ったが背中を滝のように汗が流れ、私も姉様のような姉を持って幸せですと返すのがやっとだった。

 

あとなぜか末の妹の幼達が夕食時に一刀お兄ちゃん、一刀お兄ちゃんと言いながら泣きべそをかいていた。

何故泣いているのか叔達に聞くと、幼達は一刀様に何度か遊んでもらったことがありますけれど己の運命と言いますか、長幼の序を悟ってしまったためでしょう、という。

何がなんだかわからない。

 

9月10日

夕方に、二人が一昨夕は迷惑をかけたと謝りにきた。

私は気にしていないが、一刀様に御迷惑をかけてお叱りはなかったかと聞くと、かたや御優しくして頂いたと答え、かたや激しくして頂いたと答えるさまは幸せそのものであった。

二人とも生気に溢れた顔をしており、お陰で元気になったと言う。

呆れもしたが、羨ましくなどない。後悔もしていない。

羨ましくなどない。

 

9月13日

色々忙しく伸び伸びになってしまっていたが子明殿を文謙殿に引き合わせることができた。

この二人とは大変気が合う、仕事を抜きにして共通の会話が楽しめる友人は有難い。

真名を二人から預かり、私も一刀様と家族にのみ許している真名を預けた。

司馬家の娘の真名は字と同一であることは魏でもあまり知られておらず、二人にも驚かれた。

 

子丹お嬢様や元直、子敬などとも一刀様のお話は出来るが、子明殿・文謙殿とはなんというか素直に思うところを語り合える気安さがある。

子明殿が一刀様を主題として詩作をしているそうで、次回見せてもらう約束をした。

文謙殿は出来れば将軍職は辞して警護職に専念したいそうだ。

 

ところで一刀様から王都内の警邏の御希望を頂いたので、日程調整しなくてはならない。

警護は文謙殿、甘寧殿にお願いするべきか。周泰殿は近くまた上京するらしいから彼女でも良いだろう。

 

9月17日

珍しく呂布殿に子廉様と共に呼ばれた。

曰く、明後日の晩の一刀様の警護を子廉様に代わって頂きたいとのことだ。

その晩の寵姫は予定では子孝様のはずと思ったところ、子廉様が満面朱に染めて『解ったわよ!』と叫ぶと一目散にどこかへ駆けていってしまわれた。

残された呂布殿に事情を聞こうとしたが『私的な事情。葵(子廉様の真名だ)は解っているから大丈夫』と言われるのみだった。

 

9月18日

なんとなく気になったので退庁後に子廉様を飲みに誘い、程よく酒が回ったところで聞いてみたところ

『あいつ多感症な上にあの声がでかいのよ、それで恋が嫌がったの!

他人の事は洪水娘とか言うくせに、私のは粗相じゃなくて潮吹きだってーの!』

とのことだった。

以前に子廉様が御寵愛を賜った翌朝、足腰立たずに眠っている子廉様に代わって子孝様が月様から頼まれて寝台の御片付けの手伝いを渋々おやりになっていたのは言うべきか言わないべきか迷ったが言わないこととした。

 

最近外で飲むと連れの放言に危険を感じることが多く、今日も自宅にお招きして良かったと思った。

我等官吏には職務倫理規定はあるが、閨房倫理規定も明文化が必要かもしれない。



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司馬日記9

その後の、とある文官の日記です。


9月21日

士季が中央官僚試験を受け、なんと警護部に大抜擢された。

呂布殿、周泰殿のような一刀様の傍近くで務める警護ではなくその外郭となる歩哨担当だが、呂布殿に察知能力及び回避能力を高く評価されたとのことだ。

文官試験を受けろと言っておいたはずなのにどうなっているのか。

妹の叔達は見込み通り文官試験に合格した。天の知識の文書化に携わりたいと言っていたが、おそらく希望通り文書局に配属されるだろう。

 

9月25日

各国の事務方と如何にして一刀様のお好みに合わせて後宮整備が出来るか再協議した。

私からは一刀様の御回答と、それが各寵姫をお気遣いになってのものだろうと思われると意見を添えて報告した。

しかし相変わらず傾向さえ掴めない、特に重臣の方々のご寵愛の賜り方の情報が得られない。

多方面の情報源を駆使して情報収集を行うことを確認した。

 

10月14日

一刀様より直々のお呼び出しを受けてお部屋に参上したところ一人の娘を紹介され、この娘を預かってくれないかと御依頼頂いた。

庁外で泣いていた所を警邏中の一刀様がお見かけになり事情を聞いたところ、今回の試験を受けて汝南の典農部から王都の典農局へ転勤したのだが、急には馴れぬ仕事と生来の吃音の為上司に厳しい言葉を浴びせられ田舎に帰ろうかと思っていたという。

吃音と聞いてピンと来た、この娘は先の地方文官向け勉強会で一刀様の御目にとまった娘だったのだ。

一刀様もこの娘を覚えており、君のような俊才が退官しては勿体無い、良い先輩を紹介するので是非思いとどまって欲しいと御説得され今此処に至ったとのことだ。

 

一刀様の御信任に応えないという選択肢等当然私には無い、当面士季と同じく住み込みの弟子として預かる事とした。

それに一刀様の御目にかなう娘であればいずれひとかどとなることに間違いは無いだろう。

娘の年のころは士季とほぼ同じで名は鄧艾、字は士載と名乗った。

 

10月18日

士載は知識こそ少ないが理解力と考察力は非常に良い、流石は一刀様の御慧眼だ。末は良い官吏になるだろう。

御指導の日に一刀様に何故私に彼女を預けようと思われたのかを伺ってみたところ、なるべく優しそうな人と思って秋蘭か稟か仲達さんかと考えたけど先の二人は忙しそうだし

仲達さんが一番優しそうだったからとお答えになった。

仲達さんが一番優しそうだったからとお答えになった。

一番優しそうだったからとお答えになった。

 

夏侯淵様や郭嘉様にそんな暇ある訳無いじゃないですか消去法って御存知ですかとのたまった士季は久々に吊るした。

 

11月1日

公達様より、袁紹殿の旧配下の多くを登用出来たので配属を検討するようにとの指示があった。

そのうちの多くは袁紹殿と一刀様が親しくご説得なさったとのことだ、一刀様の御骨折りの賜物だ。

また高覧の説得には張郃が協力したらしい。

田豊と沮授はいずれ太守か州牧も視野に入れた幹部候補として考えている、また審配は優秀だが何を考えているのか分からない所があるので顔良・文醜殿付きとするようにとのことだ。

 

田豊殿・沮授殿らとは近く面談を行おう。

 

11月4日

袁紹殿の旧配下の面々との面談の前に張郃、顔良殿、文醜殿らと情報収集を兼ねて飲んだ。

張郃にどのように高覧殿を説得したのかと聞いたところ、

『始めは一刀様と普通に飲みながら王都とか最近のあたしの仕事とか今後の冀州の話とかしてたんだけど、なんとなく済し崩して三人で雑魚寝で寝酒しながらもっとお話しましょうって感じに持ち込んだのよ。で、あいつ押しに弱いし一刀様のことも満更でもなさそうだったし一刀様も雰囲気作る天才だから、あとは酔いにかこつけて添い寝だけ、抱っこだけ、口付けだけって感じで煽ればあら不思議』

翌朝にはもう身も心も完璧よ、あたしにも遂に義妹が出来たわと親指を立てる彼女の話には開いた口がふさがらなかった。

 

同じように呆れている様に見えた文醜殿らが

『でもお前、あたいらじゃないんだから初めてが三人でってのはちょっと可哀そうじゃねぇか?』

『大丈夫、事が始まる寸前にあたしは抜けてあげたから。勿論事後はあたしの番だったけど』

『あ、それなら安心しました』

とやり取りしているのを見て、おかしいのは私の方だろうかと不安になった。

あるいは冀州は怖い所なのかもしれない。

 

11月7日

月末に『もでる』の仕事が入れられてしまった。

厳密には王や重臣の方々の私財で手当てが出されているものではあるがまあ仕事のようなものだ。

一刀様は高位あるいは草莽の頃からの寵姫の衣服や下着の意匠もなさっており、季節に一度くらいの頻度で茶会も兼ねて素案を展示され、寵姫の方々はそれらを見て気に入ったものを一刀様に報告する(要は強請る)。

御素案の試作品は公孫瓚殿以外は凡そ新人から中堅の文・武官達が『もでる』となって着用することで展示されるのだが、今回は伯達姉様の指示で私もやらされることになってしまった。しかも今回は下着の回だ。

姉様には辞退したい旨を申し上げたのだが、

『試作品は「もでる」がそのまま貰えるのよ?碌な下着も持っていないんだからこれを機会に感性を磨いてもう少しましな物を持つようになさい』

とお叱りを受けてしまった。

 

元直と子敬にこの話を愚痴ったところ、姉様と全く同じように怒られてしまった。

『要は仲達ってまだ頭でしか理解してないのよ。ためしに目を閉じて今から私が言う二つの言葉を一刀様が言ったと思って聞いてみて』

と元直が言うので言うとおり目を閉じ、

『「仲達さんの下着…、野暮った過ぎて正直ちょっと萎えるわ」』

『……次。「仲達さんの下着…凄く魅力的だ!今すぐ抱きたい」』

と一刀様に似せた抑揚で言われると、前者は絶望で死にたくなり後者は高揚で血が沸き立つように感じ、大変よく理解出来たので今後改める、と話した。すると彼女らは

『仲達…和むわぁ…』

『あー癒される…表情大して変わらないくせになんなのこの落差…』

などと言っていた。

 

11月9日

田豊殿、沮授殿と面談した。

二方とも軍事・経済ともに期待以上の見識を見せ、また人格も問題ないように思われた。

こちらからは凡その業務内容、いずれは幹部級を期待されている旨を説明し、当面は王都勤務を依頼した。

 

待遇その他概ねの質疑は速やかに終了し、打ち合わせを終わろうとしたところ両名より一点確認したいとの申し出があり何かと尋ねた所、勤務には一刀様の夜伽も含まれるのかという問いであり、

『麗羽様は「当然に含まれ光栄なことである、常に端下女の自覚を持ち御側近くでの業務がある場合は少なくとも下着は瀟洒なものを身に付け、その身は常に隈なく清めておくことが肝要である」と仰ったが一刀様はそのようなことはないと強く御否定されたが実際はどうなのか』

というものであった。

 

業務は政務・事務又は軍務であり御夜伽は含まれず、御寵愛を賜れるかどうかは貴殿らの御心掛けと一刀様のお気持ち次第である、但し一刀様のお近くで勤務する場合は当然に(一般常識として)隈なく身を清めて置くことは必要であろうと回答した。

また重臣の方々で、御寵愛を賜っていない方はいるでしょうかと聞かれ、少なくとも魏には結果的にいないと思われたのでいないだろうと回答した。

 

さらに田豊殿が『そ、その…隈なく、とは、不浄なところは一穴とても無きように、という意味でしょうか』

と頬を赤らめて再度問い直して来たので、その通りである、私も常にそのように(頭髪や皮膚の一穴とても不衛生でないように)努めていると回答した。

 

二人は顔赤くしたまま少し悩ませて下さいと言って帰っていったが帰宅後、士季にその話をしたところ

『はい仲達様変態確定ー!』

と言って呼吸困難に陥る程に笑い転げるので警護部見習いの為に稽古をつけてやったところ、泣きながら

『私が言っても信じないでしょうから子丹様とかに聞いて下さい、急がないとマジでやばいです、ってあだだだだだだ!折れます折れます折れますってば!見てないで助けて士載!』

などと言っている。

何かまずい説明があったのだろうか。今度お嬢様に会う機会があったら聞いてみよう。



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司馬日記10

その後の、とある文官の日記です。


11月13日

下着展示会の打ち合わせに出席した。

展示会全体の計画は曹操様が行うが、『もでる』側の段取り担当は公孫瓚殿だった。

彼女自身も毎回『もでる』をやっており、今回は4着も着替えるのだそうだ。

何故貴女は毎回やらされているのかと伺うと

『さあなんでだろうな、一刀がいつもあたしに「今回もよろしくな」って頼んで来るんだよ』

と彼女自身も判っていない様だった。

『きっと貴女が一番この服たちを映えさせると一刀様はお考えになったのでしょう』

と申し上げると

『そ、そうかな…一刀が、うん、うふふふふ…えへへ…』と嬉しげに微笑まれていた。

何故か周囲の『もでる』役で集まった者達が生温かく、とりわけ蜀の者は涙を零して微笑んでいた。

 

11月15日

宮中で事件が起こった、新人の審配が一刀様に斬りかかったという。

当然近くで侍していた呂布殿が割って入り事無きを得たが、その直後に近くに侍していた顔良殿が激怒のあまり即座に審配を金光鉄槌で殴り殺そうとした。再び割って入った呂布殿の方天画戟を顔良殿はへし折り、趙雲殿が顔良殿を後ろから羽交い絞めにし、華雄殿が審配を拘束してようやく収まったとのことだ。

審配は事情聴取を行ったところ、『一刀様が亡き者となれば誑かされた袁紹殿が正気に返るだろうと思った』という愚にもつかないものだった。

 

その場に居合わせた子丹お嬢様によると、推挙にあたって直接御面談された一刀様は袁紹殿を思う気持ちとその才を惜しんで助命と説得を御希望されたが、瞳の虹彩を無くした顔良殿が強硬に処刑を主張しておりまた実際問題一刀様の暗殺を企てた者をあっさり許してはこの件を内密にしたとしても今後の治安維持や量刑基準上問題がある。

そこで袁紹殿が『凌遅刑』にかけてはどうかと提案し、顔良殿がその上で一刀様の靴を喜んで舐められるようになれば良いでしょう、これが最大の譲歩ですと述べそのようにすることとなったとのことだ。

 

お嬢様に、凌遅刑ということは結局死罪ではないのですかと問うたところ、現在ではそうではなく後宮の隠語で、一晩中一刀様の愛撫を受け、泣き叫んで絶頂を強請らせるまで(或いは強請っても)生殺しにし続けることを指すのだという。

羨ま恐ろしい仕打ちね、と子孝様が付け加えて肩を竦めると子廉様があんたじゃ一刻持たないでしょうがと突っ込んでまた喧嘩が始まりかけたが、私が

『顔良殿のような温和な方があの呂布殿の戟を叩き折るとは、普段真面目な方を怒らせると恐ろしいですね。まあ尤も、私が顔良殿でもやはり殴り殺してしまうとも思いますが』

と感想を申し上げると何故かお三方が揃って私の顔を見て『そうねぇ。気をつけるわ』と真顔で仰った。

 

11月17日

結果として審配殿は一刀様直々の罰の執行(顔良殿と袁紹殿が補助をされたそうだ)の結果、公達様並みの性癖を得たのと引き換えにその命を永らえ、今後は思慮純忠の臣として勤務することとなったそうだ。

一刀様は、『彼女の命が懸かっていたから俺としても本気でやらざるを得なかった』と苦々しい表情で仰っていた。

彼女程の才媛であっても旧主への情に目が眩み一刀様の素晴らしさに気づけなかった事には哀れとも思うが、ある意味今後の幸福が約束されたとも言える。今後は彼女にも頑張って貰おう。

 

この一連の事件の結果、身辺警護は呂布殿、趙雲殿、周泰殿、甘寧殿、凪、典韋殿他、呂布殿以外は常時二人体制に戻すこととなった。

しかし兼任とはいえ趙雲殿は蜀の重鎮のはずだが本国の業務は問題ないのだろうか。

元直が『あの人はなんでも出来るのに普段はやってくれない』とぼやいていたが…

 

11月19日

どたどたと騒がしい足音と共に私達の職場へ劉封殿、関平殿がやって来て、公達様の下へ一直線に走っていくと

『荀攸様ですね!?私達は蜀の劉封と関平と申します!荀攸様は余人には真似の出来ない方法で一刀様の御寵愛を賜っていると伺いまして、勉強させて頂きたく参上させて頂きました!つきましては四、五点程質問させて頂いて宜しいでしょうか!』

とまくし立てた。

他国の金枝玉葉と言えど通常であれば今は仕事中よとっとと出て行きなさいと一喝する公達様だが、こと一刀様に関わる煽てにはめっぽう弱い。

『まあ確かにあんなに激しく愛して頂けるのは三国広しと言えど私だけだけど何が知りたいの、ちょっとその椅子座りなさいよああ仲達お茶出して』

と言うだろうことは私にも郭淮にも予想出来た事だった。

それにしても仕事中に色事というか猥談、それも公達様の御嗜好について聞かされるのは正直きつい。瞳を輝かせて聞き入る劉封殿と関平殿は流石『近親上等☆姉妹』の二つ名に恥じぬ(というか恥じるべきではないかと思うが)方々だと思った。

義理とはいえ蜀王の娘と姪であり、なかなかこちらからは荒っぽい扱いはしづらく郭淮や張郃らと

『彼女達追い出してよ』

『いや貴女にお願いする』

と目線でやりとりしていた。しばらくしてだだだだだ、と廊下を響かせながら元直がやってきて

『藤香様っ玲紗様(劉封殿と関平殿の真名のようだ)っ!他所のお仕事の邪魔をしてはいけませんって前にも申し上げたでしょう!』と怒鳴ると、劉封殿と関平殿は『やばっ、見つかった!』『桐花(公達様の真名だ)様有難う御座いましたっ、それではー!』と言いながらつむじ風のように窓から出て行った。

あとに残されて、仕事の邪魔をしたお詫びをして疲れた様子で引き上げる元直が少し可哀想だったのでまた飲みに行く約束をした。

彼女らは所謂「残念な美少女」というものなのだろう。それにしても公達様も真名があまりにも安くはないだろうか。

 

11月22日

一刀様が息せき切った御様子で職場まで私をお呼びに来られた。

何事かと驚きながらも、もしかしたらの甘い期待に心臓を高鳴らせながら一刀様の後に従った自分を殴ってやりたい。

人払いされた一刀様のお部屋に着くと田豊殿と沮授殿に仕事について一体どのように説明したのかと御下問され、斯く斯く云々で御座いますと申し上げた。すると一刀様が首を捻りながら沈痛な面持ちで、

『純と静(田豊殿と沮授殿の真名だ)が王都にて御勤めさせて頂きます、その為にお望み頂きましたらこの身も御捧げ致しますって言うんだ』

と仰るのを聞き呆然としてしまっていると、でもそれはまだいいんだたまにそういう誤解は受けてて訂正してるから、と続けられ、

『でも「わ、我等両名とも恥ずかしながら生娘なれば、もしその、う…後ろの方を御所望で御座いましたら、出来ましたら御優しくして頂けますと有難く、何卒御配慮を賜れますよう」って言い出されたのには、ホントびっくりして。

で、そんなの誰から聞いたのって聞いたら仲達さんからだっていうからまたびっくりしてって、あの、聞いてる?仲達さん?』

といった事を仰っていたかと思うが頭が真っ白になってしまっていたので細部は違っていたかもしれない。

兎も角全力で否定させて頂き、その後全速力で田豊殿と沮授殿のもとへ赴いて事情を確認したところ、確かに私がそういった旨の事を言ったと言う。

必死にその時の事を思い出そうと呻吟していると、沮授殿がひょっとして…と一穴云々のくだりを質されたのでそれは全く他意は無く一般常識として清潔であって頂きたいという旨だったと必死に説明したところ、漸く誤解であったと得心してもらえた。

私としてはまさかそんな解釈となるとは夢にも思わなかったが、結果的に彼女らに一刀様の前で恥をかかせてしまった事を詫びると

『いえ、一度は覚悟を決めたことなので…いっそ、そのままでも差し支えありませんが…』

と二人して頬を染めていた。

 

…冀州人の剛胆ぶりには感心するべきなのか呆れるべきなのか少し悩んだ。

ともあれ、今後言葉には気をつけよう。



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司馬日記11

その後の、とある文官の日記です。


11月23日

今度こそ誤解の無きよう、私と袁紹殿らと立会いのもとあらためて田豊殿と沮授殿より一刀様へ仕官の申し出を行った。

しかし、一刀様が朗らかに微笑まれたまま思いもよらぬことを仰った。

『うん、二人とも有難う、俺の方からも是非お願いしたいよ。あ、でも、仕事はホントに仕事だけだからね?その…昨日言われたような事は絶対無いから!ほんとに、君らに夜来いとか、そんなの絶っっっっ対無いから!仕事でしか呼ばないから!プライベ―…えっと、個人的な、私的な事では一切接触したりしないから!だから、安心してね』

これを聞いて田豊殿と沮授殿は凍りついたかのように固まってしまった。一刀様と共に登用に尽力された袁紹殿も顔面蒼白になっており、おそらく私も青い顔をしていただろう。

彼女らは肩を震わせながら平伏して『あ…有難き幸せ…』と言いながら嗚咽を漏らし、そのまま泣き出してしまった。

何が起きたのか分からず呆然とされる一刀様に袁紹殿が耳打ちし、一刀様と両名を残して私達は退室することにした。

私はこの後彼女らと業務についての打ち合わせをしなくてはならないので扉の外で待機しようとしていると、文醜殿が『アニキ、自分がどうやってあいつら釣ってきたのか忘れちゃってんのかねぇ…たまにああいう信じられない事するよなぁ』

と言いながら顔良殿と帰っていかれた。

 

半刻ほどすると涙の跡をつけたままの二人がそれぞれ自身の右頬、左頬を押えながら、雨後の陽光のような笑顔で退室して来たので仕事の打ち合わせをした。

聡明な彼女らだが偶に色っぽく溜息をつきながらぼうっとされてしまうのでいまいち捗らず、後日細部の打ち合わせを行うこととした。

…約束の日を覚えていてくれているだろうか。

 

11月24日

職場の休憩時間中に子廉様らが一昨日のひどい誤解をさせてしまった件について話せ話せと仰るのでやむなく話すとやはり笑われてしまった。変な風評が立ってしまっても困るのでそれについてはあまり他言しないで下さいね、と言った所で廊下から誰かがどたどたと此方へ走ってきた、それもつい最近聞いたような足音で。

その足音は私達の職場の前で止まり、

『蜀の劉封と!』

『関平です!こちらの司馬懿さんが、初夜でいきなり後ろまでこなした剛のぐふっ!?』

『れ、玲紗?うぐっ!?…きゅぅ』

彼女らがそんな事を言いかけようとした所で反射的に絞め落してしまった。

 

すぐに我に返り、外傷はつけなかったとは言え蜀の王女とその義妹を気絶させたことを元直に丁重に詫びながら彼女らを引き渡そうとしたところ、逆に『迷惑をかけて申し訳ないわ』と謝られ劉封殿と関平殿を王室とは思えない掴み方でずるずると引きずっていった。

謝る相手を間違えたのだろうかと後で関羽殿に直接謝罪したところ、深いため息と共に『蜀ではよくある事なので気遣い無用だ』と言われやはり逆に謝られた。どうやら彼女らは筋金入りの問題児のようだ。

こうしてみると我が上司は他人に迷惑はかけていないあたり、彼女らよりは大分ましなのではと思えた。むしろ

『真っ赤な顔で瞬殺する仲達、面白かったわぁ。ひょっとして図星だったのかしらね?』

『まさか、この娘じゃそんなお強請り無理無理、がちがちに緊張して人形みたいに転がってただけに決まってるじゃないの』

などとにやつく子廉様や子孝様達の方が困った方々なのだろう。

 

11月28日

今日は下着展示会の日だ。

私の担当は先日集められた者達と一緒で、「乙」の広間で午前中のみだった。

一刀様以外の男子禁制ではあっても下着姿での給仕はやはり恥ずかしかった。

秋蘭様、文遠殿などの重臣の方々の他、子廉様と子丹お嬢様、それに元直がやって来た、私を見にきたとの事だ。二人してにやついて

『仲達が着てるの見ちゃったら、これは買いたくないわぁ』

『比べられたくないわよねぇ、それにあの白いお尻に黒い刺繍の下着、あれに一刀様もやられたのねぇ』

『なに言ってるんですか、一刀様はやられる側じゃなくてやる側じゃないですか』

『あら、そうだったわねぇ』

等と言っていたが、そろそろこの方々も御自分の身分を弁えて下品な言動はお控え願いたいものだ。

それぞれ子孝様と子敬はどうしたのかと聞くと「丙」の間に行っているとの事だった。

ちなみに私の担当の間には一刀様はいらっしゃらなかった、粗末なものをお見せできず決して残念ではなかった。

 

午後は目を肥やす為他の展示を見学することとしたが、「甲」の間は事前審査付きの許可制らしく私は入れなかった為「丙」の間に行ってみた。

席について暫く給仕を受けて気づいた、どうやら「丙」の間は特別に胸が豊かな『もでる』を集めているようだ。

呉の陸遜殿などは溢れてというか、こぼれてしまわないか見ていて不安になるようなものを着用していたが、そのようなあやうさがあった方が一刀様のお好みに適うのだろうかと考えた。

また何故か劉備様まで下着姿で楽しげに厳顔殿、黄忠殿、黄蓋殿、元常様らの卓に給仕をされていた。

 

12月1日

士載が三国合同新人研修で友人が出来たと報告してきた。

名を姜維、字を伯約というそうで知勇に優れ、蜀の諸葛亮の秘蔵っ子らしくさもありなんと思われる。

姜維は女子と見まごう美しい顔立ちをしていたが長身であり、自身の事は男だと言ったという。

一刀様を深く敬愛しており、それを切欠に仲良くなったとのことだ。

良き友人は大事にし、また学ぶべきところがあったら同輩と言えども敬して学ぶようにと士載に言ったところ士載は深く頷いていたが、傍で見ていた士季は生温かげな笑みを浮かべて

『…まぁそのうちあいつの尻尾つかんでやりますから。あんなんで誤魔化せるとか思ってたら大間違いですよ、何考えてんでしょうね蜀は』

とにやついていた。

士季に良い友人が出来るか多少心配だ。



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司馬日記外伝 コメントで仲達様に悪戯する

拙作「司馬日記」の外伝で、仲達さんの弟子の士季(鍾会)ちゃんが悪戯をします。
元々R-18に掛かると思ってHPの方で作成して見ましたが、
「…これならTINAMI的にセウト?」かと思い転載致しました。
運営様から御指導や強制削除があれば従います…。


はいはいこんにちは!皆さんの『あいどる』、仲達様のとこの士季ちゃんですよ!

このSSでは皆さんのコメントでダメっ娘にして私の師匠、仲達様に悪戯を仕掛けちゃいます。

ところでお初に訪れて頂いて、私や仲達様の事をご存じない方は『司馬日記』というSSなんか読んで頂けちゃうと有難くって、状況としては司馬日記10のあたりになります。

 

さて、仲達様にどんな悪戯を仕掛けましょうか?一週間以内に戴いたコメントの多数決で決めさせて下さいね。

質問もお受付致しますよ!

とりあえず私の方で思いついたものを挙げちゃいます。

1.仲達様のぱんつ全部洗濯しちゃって一刀様の元へ出勤させる

2.偉い人とか熟女の方々とかに気づかずに暴言を吐かせる(うちのBBAとか)

3.なんらかの変態プレイを常識と誤解させる

4.その他(具体案戴けると有難いです)

それではお願い致します!

 

(戴いたコメント)

 

→3.なんらかの変態プレイを常識と誤解させる

「むむむ」

簡単そうで意外と難しいことに気がつきました。

ってのは大体のことは誰かしら既におやりだったりするんで(星さん情報)。

あと実はそのプレイは普通じゃないってばれた時の私の命の保証とか。

 

となると…うーんそうですね、ちょっとずれるかもしれませんが自己責任で自滅してもらいましょう。

そうと決まれば早速一刀様の控え室、通称月様のお部屋へ。

 

「こんにちはー月様、警備部の鍾会です」

「あ、士季ちゃんこんにちは。どうしたの?」

「いえちょっと、夜の当番表ちょっと見せてもらって宜しいですか?」

「ええ、いいですよ。これですからどうぞ」

「有難う御座います」

にっこり笑顔の月様やさしーなー。うちの仲達様とはえらい違い…だけど、

裏で『回数こそ少ないけど後宮で一番偉い人』って言われてるらしいから無礼の無い様注意注意。

 

さーて、次の私の洗濯当番の日はー…っと。明後日か。で、その日一刀様と同衾されるのは…曹操様か。うん、これはイケる。

 

「あのー月様、次の私の洗濯当番ですがちょっと家庭の事情で都合悪くて、仲達様が代わって下さるとの事なので仲達様にやらさせて下さいませんか?」

「え?いいですけど…士載ちゃんでもいいんじゃないかしら?まあ仲達さんが宜しければ私は構いませんけれど」

「あー、それも考えたんですがほら、うちの仲達様って一刀様にお熱ハンパ無いじゃないですか?

前々からやりたそうな顔はしてたんですがあの性格ですんで、まあいい機会でもありますので」

「…ああ、そういうことでしたら」

曲がりなりにも中堅官僚の仲達様に洗濯させるの?と小首を傾げる月様に説明すると

生温かく微笑まれて了承してもらえた。

 

さーて次は仲達様の方へっ、と。

「あ、仲達様仲達様」

「ん、士季か」

「明後日洗濯の当番になったんですって?」

「…洗濯?」

「あれ?聞いてないですか?」

月様と同じく首を傾げる仲達様。ってそりゃそうです私がついさっき月様にお願いしてきたんですからねー。

 

「聞いていないぞ、そもそも洗濯当番とは何だ」

「洗濯当番って一刀様のお部屋の手拭いと、寝 台 の 敷 き 布 の 洗濯の当番ですよ。

基本的には私ら新人や下級官吏の仕事なんですけど、明後日だけどうにも都合つかなくて仲達様にお願いするって」

 

「…なんだって?もう一回言え」

はい目の色変わりました。

 

「明後日だけどうにも皆都合が」

「そこじゃない、何を洗うと言ったんだ!」

「一刀様の寝台の敷き布です敷き布!御使用後の!」

 

怖ぇ!前から知ってましたけどマジ怖いです仲達様、胸倉掴まないで下さい。

半端ないじり方は命取りですよ!

 

 

「そう、か………まあ、うん、やり手がいないのであれば仕方ないな。総務部の私が責任を取ってやらねばなるまい」

うわもうなんかこの人嬉しそうだ。きっと『一刀様のお使いになった敷き布にさわれる…』ってだけで喜んじゃってんでしょうね。

しかし今日はここからなのですよ!

 

「そーですか、それは良かったです。仲達様なら良からぬ事にはお使いにはならないでしょうしね」

「…良からぬ事?」

よっしゃ食いついた!こっから先笑うな、絶対笑うな私。

 

「…ほら、その晩に一刀様が寵姫の方をお招きしてたら敷き布に付くじゃないですか、何かと」

「………!」

何のことだかわかった様で頬を染める仲達様可愛いです仲達様。

 

「要は洗濯の為にそれを持ち帰ってですね、特に一刀様をお慕いしててもご寵愛の機会に恵まれない中級・下級官吏はそれを孤閨の友にしているのですよ」

「………な、なぁっ…!」

耳まで真っ赤な仲達様、たまんねー!たまんねーですよ!何このいじってオーラ!?

 

「夜な夜な、一刀様のが付着した部分をくんかくんかと」

「く、くんかくんか!?」

「す―――――っ………(タメ3秒)はぁ―――――、とか、それこそぎゅっと挟み込んですりすりとか」

「★×○※!?」

口をぱくぱくとさせる仲達様、チョロ過ぎです。これからは心の中でチョロ達様と呼ばせて頂きます。

 

「まあ、品行方正な仲達様には関係の無いお話かとは思いますが」

「う………うむ。それで…お預かりした御洗濯物は何時までに返却すれば良いのだ?」

「お預かりしてから三日後です。結構皆自分の仕事も忙しいですから」

「そうか……三日か…それと、その…」

仲達様がごほん、と視線を外して咳払い。

 

「その、…し、士季は、あー、御洗濯当番をしたことは、あるのか?」

「ありますよ」

「そ…そうか。………で、その……士季はだな」

赤い顔をしたまま、ちらちらとこちらを見ながらごにょごにょと言っている仲達様に

『なんですか?聞こえないので大きな声で仰って下さい♪』といじめても良いんですがここはひとつ察してあげましょう。

「しましたよ」

「…………その…………どうだ?」

「凄かったですよ、指とかふやけちゃって。気がついたら半裸で朝になってました。一刀様をお慕いしてる処女には麻薬みたいなもんですね。…それはともかく明後日、宜しくお願いしますね」

あくまで洗濯の感想を聞くふりをする仲達様にご期待通りの感想でとどめの煽り。

ごくり、と喉を鳴らした仲達様を尻目に私は自分のお仕事に戻りました。

 

 

 

さてそれから二日後の夜な訳ですが。

「…縛られました」

他に誰も居ない自室の寝台で寝っころがりながら呟いてみます。当然誰も来ませんが。

赤い顔して『士季の警備部見習いとしての訓練の為』とか言いながら縛った先を柱に括りつけられても到底信じられませんが、

折角の現場をおさえられないのは残念です。

まあ私を縛る時点でもう今頃ナニしてるかは決まったも同然ではありますけれど。

 

しかし翌朝、腫れぼったい目をした仲達様に縄を解いてもらって朝食に行くとちょっと面白いことがありまして。

司馬家の三女の淑達様、今年の同期入庁で年は上ですが仲よくしてもらってるんですけども、がですね。

「ねぇ、士季」

「?はい、淑達様」

「夕べ、猫が屋敷の中に出たみたいなのよ」

「?…はぁ」

「一匹だけで一刀様一刀様あんあん、って鳴く頭が銀色な猫が。私はそんな寂しい猫じゃなくて、幸せな飼い猫になって見せるわ。二人で頑張りましょうね」

とか仰るもんでハイって言うに言えないし、仲達様は『か、一刀様をお慕いしていれば誰でもするものだろう!』と真っ赤な顔で箸をへし折って怒り出すしで大変でした、っていうか楽しませて頂きました。

 

 

 

 

結果:ちょっとずれた気もしますが…成功?(一刀様の使用済み敷き布でひとり上手な仲達様)

 

さぁて、次は何をしましょうかね!?



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司馬日記12

その後の、とある文官の日記です。


12月7日

先般の下着展示会で会計を務めた子丹お嬢様が、仲達が着用した意匠は一人として注文がなかったわよ、とにやにやしながら仰った。

薄々そうではないかと思ってはいたことではあるが、私では折角一刀様が御提案下さった下着の素晴らしさを引き立たせられなかったのだ。

かたや公孫瓚殿は4着も着たとは言え中堅官吏を中心に数十件の注文があるそうだ、多少の付き合いでしかないが彼女の人を落ち着かせる容姿や無難な人柄、また痩躯でもなく弛んでもいない整った肢体を思い返せば納得がいく。

女としての魅力の磨き方は彼女に学ぶべきかもしれませんねと私が言うと子丹お嬢様は何故か微妙な表情をされ、外でその話は余りしないようにね、貴女が本気な分聞いた人傷つくわよと言われた。

 

12月10日

夜になってしまったが一刀様に冀州組の人事について御報告に伺おうと廊下を歩いていたところ前方に奉孝様が書類を片手に一刀様の御部屋に入られるところを見かけた為、奉孝様の御用が済んだ後にしようと室外で待機することとした。

しかし中々郭嘉様が退出されない為、長引きそうなら出直そうと思い失礼ながら扉の外から中の声を伺ったところ、

『一刀殿っ、まだ報告の途中ですっ…』

『稟…今はこんな報告書なんかより、君が欲しいんだ』

という声が聞こえ、慌てて逃げ出した。

 

今思い返してもあの一刀様の御声は私の知る一刀様のものとは明らかに違い、力強く、余人であれば強引とも言える御様子だった。

 

だが私にしてくれた時はどこまでも御優しかった。

御情けで何もわからぬ生娘であった私に合わせて御優しくして下さったのだろうか。

私は、私の勝手な想いを一刀様に押し付けてただお疲れになる事をさせてしまったのだろうか。

お望みでしたらどのように激しくされても構いませんのに。

私が一刀様のお好みに合わなければいっそ抱かれなくても構いませんのに。

 

一刀様。貴方のお気持ちが知りたいのです。

 

12月11日

悩んだが、やや目の腫れぼったい奉孝様を夕食にお誘いした。

故意ではなく房事を伺ってしまった事をまず詫び、その後事務会議で一刀様の御性癖を調査することになっている事を説明し、一刀様は昨晩のようになさるのがお好みなのかと伺ってみた。

奉孝様は初めは顔を朱に染めてあんぐり口を開けておられたが、仕方のないという表情をされて一刀殿はいつもはああではありませんよ、と言われた。

では何故昨晩はあのようだったのでしょうか、と重ねて伺うと決まり悪げにあちこちに視線を彷徨わせた末、そういう『ぷれい』だったのです、と目線を逸らせて言われたが意味が今ひとつわからず『ぷれい』とは、とさらに聞こうとしたところ、酒盃をくいっと空けて息をすうと吸い

『私が一刀殿にお願いしたのですよ、「今日は報告する振りをするからそれを遮って強引にして欲しい」と!なんか文句がありますか、人の性癖に!私だって疲れているのです、桂花と桐花は喧嘩してばかりだし風は面倒な調整はしてくれないし皆私と秋蘭にばっかり話を持って来て!だいたい…』

と怒り出された。

これが士季の言っていた天の国の言葉で言う『逆切れ』と言うものかと思いながらしばらく奉孝様の愚痴を聞き、ようやく冷静になられて『…というわけで、ええ、まあ…一刀殿も、か…可愛かった、よかったよと言ってくれたことでしたし、まあ、そういうことなのです』

と酒のせいか赤い顔で指を弄りながら仰った。

 

更に、では一刀様御自身はどのようになさるのが最もお好みなのでしょうかと聞いたところ、顎に指を当てて考え込まれた末に

『恐らくなんでもありなのでしょう、よっぽど極端なこと以外は。桐花が「髪を掴んで無理やり喉を突いてとお願いしたら痛そうなことは駄目と拒否された」と言っていましたから』

と仰った。指で咽喉を突く等単に痛いだけとしか思えずまるで理解出来なかったが、

では先程仰っていた『詠や秋蘭なんて私なんかよりよっぽど変なぷれいをしてるじゃないですか』

とは具体的にはどのようなことでしょうかと聞くと、

『あ』

と仰られた後、まあ…彼女らも苦労が多いですから、察してあげて下さい、この事は他言無用ですよとのみ言われてお開きにすることにした。また、

『貴女は頭脳明晰でありながら、悪い友人等に容易に騙されてしまう節があります。付き合う者は選ぶように』

と御忠告頂いたので気をつけます、と答えた。

奉孝様の帰りしな、最後にどうしても気になってしまったので、

昨晩の『ぷれい』はそんなに素晴らしかったのでしょうか、と伺うとややご機嫌を損ねたような表情をされたが直ぐに微笑を浮かべ、

『…そうですね、こう考えてみればわかるでしょう。…貴女が日々の御指導を終えて部屋を出て行こうとします。すると一刀殿に後ろから抱きすくめられ、耳元で「仲達さん…今日は帰したくないんだ」と囁かれたと考えてみて下さい。その程度には素晴らしいですよ。ではお休みなさい』

と言って帰られていった。

 

12月12日

昨晩は一睡も出来なかった。

真面目に仕事をしようとしたが、職場で居眠りをして机に頭を打ちつけてしまったところ公達様から疲れているなら帰りなさいと言われ、このままでは周りの士気も下げてしまうので帰らせて頂くことにした。

 

最近、自分がふしだらな娘になってしまったような気がする。

筆は明日洗おう。

 

12月15日

亞莎、凪と休暇の都合を合わせて茶会をした。

凪が『制服』の呉への貸し出しの決裁を上げたところ曹操様が目に留められ、一刀様監修のもと凪のものを『後輩用』として胸元の帯飾りの色が違う同輩用・先輩用、そして教師用の『制服』を曹操様が意匠されたとのことだ。

希望者には販売されるらしく亞莎が凪と同じ後輩用を買いたいと言い、私も同じものを購入したいというと、二人に『いや、仲達さんは教師用でしょう?』と言われた。

気落ちした顔を見せてしまっていたのか、亞莎には頑張れば先輩用が着れると思いますよと付け加えられた。

 

そんなに二人と年は離れているわけではないのだが。…きっと上背があるからだろう。

 

12月17日

夜に飲みながら子丹御嬢様、子廉様、子孝様にこれは真面目な話なのですがと前置きして、後宮整備の為一刀様の御性癖について調査しており、お名前は伏せますがこれこれ斯様な『ぷれい』をなさる方がいらっしゃるがそういったものが一刀様の御好みなのでしょうかと伺うと、

「それは稟様でしょうけれども、個人教師と教え娘という『ぷれい』も御好みのはずよ」

「稟はそういうのが好きだろうけど、潮を吹かせるのもお好みよ」

「稟の好みも分からないではないけど、卑猥な言葉でお強請りさせる方が好きなはずだけど?」

と三者三様の、それでいて全員が先の『ぷれい』の寵姫が奉孝様だとあっさり看破された御回答をされて思わず顔が引き攣った。

 

ひょっとして奉孝様の御性癖は有名なのでしょうかと伺うと

「ん~?仲達が当てやすい言い方をしちゃったからじゃないのぉ?あーあ、稟、仲達には内密にと言ったんでしょうけどきっと怒るわねぇ、ばらされて?」

と子廉様様が言い、

「でも大丈夫よ、これからも仲達が私達と『仲良く』してくれれば誰にも喋らないわ。もちろん稟にもね?」

と子孝様が付け加えられた。

 

…ひょっとして私は今脅迫されているのではなかろうかと思いながら、今後とも宜しく御願い致しますと申し上げてお暇させて頂いた。

 

しかし奉孝様の御言葉を考察してみたが、何らかの状況を設定して御寵愛を賜るという事は変たい、もとい大変刺激的なのではないかということに思い至った。



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司馬日記外伝 コメントで仲達様に悪戯する2

拙作「司馬日記」の外伝で、仲達さんの弟子の士季(鍾会)ちゃんが悪戯をします。


多くのご希望有難う御座いました!

 

→1.仲達様のぱんつ全部洗濯しちゃって一刀様の元へ出勤させる

 

 

「体張りました」

この悪戯を仕掛けるには仲達様の朝の沐浴のすきに全てを済ます必要があります。

士載には特に何も教えずに未洗いの下着を洗わせて、未使用の残りの下着はこっちの箪笥からあっちの箪笥に移すふりして甕の中にぼっちゃーんと。

 

沐浴から上がられた仲達様から御褒美にたんこぶ一つ頂きました、桐花様と違って我々の業界では拷問です。

仕方ない水を絞っただけの下着でも付けて行くか、と仰られたので御風邪を引きますよ、それにスカートに染みて恐ろしく恥ずかしい事になりますが、と申し上げると顔を赤くして暫く呻かれた挙句のーぱんで出勤されました。やったね!

 

 

…勿論これで終わりなはずはないですよ?

普通だったら仲達様の長いスカートの中に誰一人気づく事無く、単に仲達様が落ち着かずに一日が過ぎるだけですがそれじゃつまらないじゃないですか?つまらないですよね?ってことで今回は二人の方に御協力頂きました!

まずお一方目は、くだらない事をする時といざという時だけ頼れる、警備部の先輩にしてメンマ色に輝く暇魔人こと星さん!

そしてお二方目は仲達様の御親友にして魏の金枝玉葉の御嬢様、曹真字は子丹様!

星さんには姜維をいじりたおす時には全面的に御協力する事を条件に御承知頂き、子丹様は日頃から仲達様の駄目っ娘振りには心を痛めて(?)いらしたので『それに今日は元々私の番ですしね』と二つ返事でした。

 

ここから先は私は歩哨という重要にして神聖な仕事をしながら一刀様のお部屋を見てるだけです。

さぁて、仲達様が一刀様のお部屋に入りますよー。

 

 

-----------------------

 

コンコン。

「一刀様、仲達で御座います」

「はぁーい、どうぞ」

柔らかいノックの音と共に、穏やかで優しい声。

 

仲達さんの生活指導――――最近は生活習慣が確立してきたのでちょっとした問診だけで済んでしまい、その後は他の仕事のお話か仲達さんと少しお茶をして終わりになる事が多くなってきたが――――の時間だ。

 

「む、もう司馬懿殿が来られるような時間でしたか。では私は交代の時間ですので」

最近は警備を強化してもらっているのでほぼ常に誰かしら部屋の中か外にいてもらうようになっており、この時間までは星に居て貰ったけれど交代の時間みたいだ。

「警備御苦労様です。…一刀様、御茶を御淹れ致しますね。趙雲殿も如何でしょうか?」

「いや、もう出るのでお気遣い無用。折角の司馬懿殿の御時間を邪魔しては申し訳ござらんしな」

「まあ、そんな…」

薄紅色に頬を染めてはにかみながら、仲達さんが星に背を向けてお茶の用意を始める。

月の淹れてくれるお茶も美味しいけど、仲達さんのも美味しいんだよな。

 

「では主殿、失礼する…おっと」

「うん、お疲れ?」

扉の方へ歩きだす星の手からカラン、と音を立てて得物の槍が滑り落ち、その穂先が地に落ちる。

すると反対側の柄が、落ちる寸前に槍を掴み直した星の手を支点に跳ね上がる。

 

その柄に、ふわりと捲りあげられる。

仲達さんのロングスカート。

「あ」

その中には。

その中には、お茶の用意のため後ろへこころもち突き出した格好の、仲達さんの肌色の。

肌色の――――――?

そのなめらかな曲線に魅入っていたのは一瞬か、数秒か。

 

ばさっ!!!!!!

「!!!」

一瞬で振り向く仲達さんの真っ赤な顔と、部屋中に響き渡るスカートを押さえた音で我に返る。

 

今確か。でも仲達さんのお尻が見えたような。生の。普通は下着が見えるもので。

…なんで?

 

「それでは」

何事も無かったかのように部屋から去っていった星。こちらを一度も見なかったから気づかなかったのだろうか。

残された、仲達さんと俺の二人。

 

「「……………」」

気 ま ず い。

て言うか仲達さんやばい泣きそうだよ!

どうすりゃいい、綺麗だったよ?とか言う所?しかしのーぱんだったとしたら仲達さんマジ泣くだろ!?ベージュ?ベージュだったのか?とりあえず見なかったことにするのが大人の皇帝だよな穿いてるか穿いてないかも分かんなかった振り、これ一択ヒアゥイゴー。

 

「あの、仲達さん、」

…コンコン。

 

そんな事を考えていると、再び扉をノックされた。

「一刀様、子丹ですが仲達来ていませんか?あ、いたわね仲達!貴女今日その…ちょっと忘れ物しちゃったんですって?言ってくれれば私のを貸したのにってあら、何で泣くの!?」

 

それは楓(子丹の真名だ)が空気読めてないからだろと心の中で突っ込んだ。悪意はないんだろうが…

 

「まぁ…そんなことが…」

 

スカートを押さえたまま赤い顔をしている仲達さんの代わりに事故の経緯を簡単に楓に説明した。

「士季ちゃんに聞いたわ、穿いてなかったのは本当に不運な偶然ですもの、」

そうだったのか…やっぱはいてなかったのか、ってか言わなくてもいいんじゃないか?

 

「『お粗末なものをお見せして申し訳ありません』と謝れば、一刀様もお許し下さるわ。ね、一刀様?」

「いやその表現は待て」

仲達さんが『やっぱりお粗末だった…見たくもないものを見せてしまった…』って考えてるのが丸わかりな表情になって顔色も悪くなってきてるぞオイ。

「一刀様?何か問題が?」

「いや、お粗末なんてことは勿論無いって」

「一刀様…!」

仲達さんの表情が見る間にぱあぁぁ、と明るくなる。普段落ち着いてるのに、こういうとこ可愛いよな。

「仲達、一刀様は貴女を気遣って口ではそう言ってくれてるけれど本心では正直微妙な尻だったとお思いなのですから、ね、早くお詫びしなさい?」

「なんでそっちに煽るんだよ!?」

楓、こないだ『仲達の尻は良い、あれは呉王など物の数でない美尻だ』って自分で言ってたじゃんかよ!?

「はっ……はい…そ…粗末な、ぐすっ…」

「待った待って仲達さん!泣かないで!ホントに仲達さんのはその…素敵だから!」

「………!ほ、…本当でしょうか…」

胸の前で指を組んで目尻に涙を溜めたまま、再びぱあぁぁ以下略な瞳で俺を見つめる仲達さん。可愛いよ、可愛いのになぁ…。

「…三国の数多の美尻を御覧になった一刀様よ、仲達?」

「………………そう、ですね…」

「待てーい!」

何で今日の仲達さんの表情が再び絶望色に染まる。

「あんま大声で言うことじゃないけど!仲達さんのお尻、本当に綺麗で魅力的だって!どーやったら信じてくれんの?」

 

すると楓が澄まし顔でしれっと言うんだ。

「大陸の王たるお方ならば、口先などではなく行動でお示し下さいましたら」

 

いや、楓に聞いたんじゃないんだけど?ていうか今日の楓はおかしい、と思ったのはずっと後になってからだった。

 

 

----------------------

 

皆さんお久しぶりです、士季です。

突然ですが、只今絶賛拷問中です。

 

どんな拷問かって、ハラ抱えて笑い転げたいのに歩哨の振りをしなくてはならないっていう拷問中。

仲達様の死角の方から御部屋をチラ見したんですけどね、一刀様が微妙な表情でスカートの上から仲達様の尻を揉み続けて、其れを子丹様が生温かく見つめてて、一体どうやったらそうなるんだよっていう…。

その仲達様は立ったまま一刀様の方へ少しお尻を突き出した格好で、うなじまで赤い顔をっていうか口を両手で隠しています。

多分あれ喘ぎ声出そうなの必死に堪えてるんでしょうね、ちょっとも羨ましくないですよ?

 

あ、一刀様が子丹様の方を向いてなんか言いました。

子丹様は違うって感じで横に首を振って、これまたなんか一刀様に言ったみたいですね。

「……」

「…!」

一刀様がちょっと大きな声で何か言うと、仲達様が振り向きました。あ、仲達様泣きそう。マジ泣きそうだ、あれ。

「…!」

「…!?」

「…(コクリ)」

また子丹様が何か言ってそれに一刀様が何か言うと、少し間が空いたあと仲達様が恥ずかしそうに頷いてまた後ろを向きました。

 

まだ尻揉み?それとも捲るの?って、おおー!

「………!」

一刀様やりました、尻に顔埋めましたよ!さすが処女の手ほどきから変態プレイまで変幻自在、夜も帝王一刀様!そこに痺れる憧れる!

「………………!!……………………!」

そして尻に頬ずり。嬉しいのか嫌なのか、こっち向きで微妙な表情の一刀様。

それも皇帝の御仕事(ホントかよ)ですから頑張って下さいね、あとあまり遠くない未来に私の事も一つ宜しくお願いします!

片や仲達様、もぉ膝がカクカク震えて腰なんか痙攣してますよ?

 

「………………!!!」

うわぁ…。

遠目で見てもはっきりわかる位、仲達様がびくんびくんと震えて多分恥ずかしい事になったっぽいです。ちょっとやり過ぎちゃいましたかねぇ…でも多分本人恥ずかしながらも嬉しいでしょうからオッケーですかねきっと。

失神して崩折れかかった仲達様を一刀様が慌てて支えると、子丹様と何か二、三言お話して仲達様を抱っこでお控えの間に連れて行き、お一人で戻ってこられました。多分控えの間の寝台に寝かされたんでしょうね。

 

これで悪戯はこんどこそ完了です、ってあら、子丹様が何か仰りながら部屋のカーテンを次々に閉めていってますよ?

あ、ここから先は以前仰っていた『すーぱー楓たいむ』ですか、張り切って下さいね。

私のいる方のカーテンを閉め切る前の一瞬に、一刀様に分からないように私に向けて親指を立てられた子丹様素敵です本当に有難う御座いました。

 

 

「あ、仲達様。起きられましたか」

仲達様が目を覚ましました。あのままほっとくと控え室の寝台が仲達様ので凄い事になってしまうのと、火照った身体のまま目を覚ましたりすると一刀様のお部屋を覗いて一人で凄く寂しい事を始めかねないと思ったので、近くにある警備部の仮眠室におぶってきましたが仲達様背高いんで重いです。その二つの脂肪の塊のせいかも知れませんが。

「…ああ、士季か…私は……?」

「一刀様の控え室でお休みになっていて、子丹様が『疲れている様なので休ませるように』と私をお呼びになったのでお運びさせて頂きました。ちなみにここは警備部の宿直室です」

そうか、と仰ってしばらくすると記憶が戻ってきたようで、突然顔を朱に染めると顔を背けるように寝返りをうちました。

 

どうやら恥ずかしながらも嬉しかったらしいです、この駄目な人。

仲達様、激怒している時と幸福な時の『気』は外にダダ漏れで、その表情は見えなくても弟子歴ウン年の私の見立てに間違いはないでしょう。

 

(尻、自信持てました?)

(良い事あったじゃないですか、のーぱんで!)

煽りたい。超煽りたいですが命が惜しい。死亡遊戯始めそうな自分が怖いので私は引き上げることにしました、これで今度こそおしまいです。

強いて言うなら、後日仲達様がお部屋で姿見に向かって両手首を腰に当てて御尻を振ってニコニコしていたところを司馬家六女の恵達ちゃんに見られ、

真っ赤になって『下着のほつれを確認していただけだ』と弁解していたのを見て笑い死にするかと思った程度です。

 

いい事をすると気分がすっきりしますね!では次行ってみましょー!

 

1.『今の仲達じゃ一刀の好みに合わない』と騙してキャラを変える練習をさせる

2.偉い人とか熟女の方々とかに気づかずに暴言を吐かせる(うちのBBAとか)

3.なんらかの変態プレイを常識と誤解させる(その2)

4.一刀+仲良し数人でイカサマ王様ゲーム

5.その他(具体案戴けると有難いです)

 

前回3.も多くご意見戴いたんで考えてはいますが他もオッケーです。

それではお願い致します!



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司馬日記13

その後の、とある文官の日記です。


12月19日

今夜は伯達姉様が御当番の日だが、昼に「仲達、貴方も来るかしら?」と聞かれて反射的に固辞してしまった。

それを隣で見ていた妹の叔達がそれならばわたくしがと言い出したので、未だ仕事も碌に出来ていないのに伽をしたいなど何事かと窘めた。

それでも叔達が不満を言い募っていたところ伯達姉様が「もし一刀様が叔達を御所望されたら、次の私の番は叔達に譲りますよ」と言うと叔達は満面の笑みで有難う御座います、その時には必ずやこの胸で一刀様に御満足頂けるよう頑張りますと答えていた。

 

先程伯達姉様がいそいそと身支度を整えていた、そろそろお時間なのだろう。

後世畏るべしの心構えは常に持ち続けようと思ってはいるが、女の価値は乳の大きさなどではない。

寵姫の方々の身体的特徴はまちまちだ、一刀様はその心根をこそご覧なのだ。

 

…伯達姉様だって若干とは言え垂(血痕で判読不明)

 

 

12月20日

日記をつけたまま額から血を流したまま寝てしまったようだ、何故だろう?

伯達姉様がつやつやな顔をして昼頃に帰ってきた。

 

 

………どうして私はあそこでお断りしてしまったのだろう……いやしかし……

とりあえず飲んで寝よう…。

 

 

12月26日

三国合同研修塾の落成式が行われた。

本来研修対象の中堅・下級官吏ではなく何故か重臣の方々ばかりが教師側・生徒側両方に着席しており、しかも各国王などは三人とも生徒側というのは如何なものか。

最終的に建設および運営予算の出資元が教育費よりも後宮整備費の方が上回ってしまっており、主客転倒なのではないだろうか。

後輩用の制服を着たかったのに教師用を無理矢理着せられたのが不満なのでは決してない。

 

式の終わりにやっぱりどこかで聞いたドタバタと駆けてくる足音とともに、

『申し訳ありません、関平と!』

『劉封です!ゆうべの「一刀お兄ちゃん」との「制服ぷれい」の余韻に浸るあまり遅刻してしまいました!このお詫びは教卓で一刀様と性教育の実習でうべっ!?』

と招かれざる客が言いかけたが張飛殿、典韋殿、許褚殿に後ろから蹴り倒され、

『鈴々達に無断でお兄ちゃん呼ばわりはさせないのだ』

『無駄に大きいくせにボクたちの立ち位置奪おうとかばかなの?死ぬの?』

『兄様って呼ばなかっただけ誉めてあげますが入塾もしてないのにその汚れた制服は何なんですか?折りますよ?いいですよね?』

等と言われながら引きずられていった。

 

魏や呉の高官の方々は唖然としていたが、蜀の人々は慣れたもので全く動じていなかった。

しかし、孫権様に涙目で

『こ…この制服での一番はじめは私に譲ってくれるって、言ったじゃない…』

と言われていた劉備様は必死に謝りながら宥めていた。

外交問題に発展しないと良いが。

 

1月5日

三国会議により、数え役満☆姉妹の新曲が風紀上好ましくないという理由で発表中止を決定したそうだ。

彼女等の楽曲は個人的に非常に良いものと思っていたので残念ではある。

今回は初めて天和殿が作詞され、一刀様と自分達について歌い上げる曲と伝え聞いていたのだが、それで風紀上の問題など起こりえるのだろうか?

天和殿、地和殿および試聴会に参加していた一部の重臣の方々が歌詞無しででも発表出来ないかと交渉しているというが、一刀様と人和殿は反対らしい。

私も聞いてみたいものだが。

 

1月8日

ついぞ知らなかったが、朝廟には多数の派閥があると士季が言っていた。

これらの派閥には三国の垣根が無いものが多く、その中でも最も攻撃的、排他的であるのが『貧乳党』なるものだという。

職場で身体的特徴についての話題はなるべく慎もうと思う。

しかし古来より派閥は政治を腐敗させると言うが国の別なく交流が持てるという事は良い事だろう。

他の派閥についても調べてみて、行政に有効なものがあれば私も属させてもらおう。

 

1月11日

公達様より、最近呉の寵姫の方々が御寵愛を賜る回数が増えているらしいので調査するようにとの指示を受けた。出元は曹操様で、『最近呉の娘の翌日は少し薄味になった、流琉と意見が一致したので確信を持った』との事だ。

薄味とはどういうことでしょうかと公達様に伺ってみたが『あたしは顔派だから』とこれまた要を得ない回答だった。

今度典韋殿に伺ってみよう。

 

1月12日

公達様にいずれかの派閥に属しているか、なんとなく思い当たる節はあるもののあえて伺ってみた。

「まあそれなりのとこには入ってるわよ、大体あんたの想像通りにね。でも他の面子聞いたら吃驚するわよ?」

意外と世界って広いんだからね、と言ってきししししと笑われた。公達様の御性癖はかなり特殊な部類に属すると思っていたが、考えを改める必要があるだろうか。

先般の件を思い出した、奉孝様にも伺ってみよう。

 

1月15日

元譲様が浮かぬ顔をして役所の廊下に佇まれていたので何かお有りでしょうかと聞いてみたところ、

「華琳様が何か楽しげに鼻歌をされていたので、それはなんと言う曲でしょうかと伺ったが顔を真っ赤にされて『鼻歌などしていない、余計なことは気にせず仕事をしろ』とお叱りを受けてしまった」との事だった。お願いしてもいなかったがこんな曲だった、と鼻歌を聞かせて頂いたが陽気な曲調でよい曲のように思われた。

子丹御嬢様も音楽の嗜みがある、今度聞いてみよう。



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司馬日記外伝 コメントで仲達様に悪戯する3

拙作「司馬日記」の外伝で、仲達さんの弟子の士季(鍾会)ちゃんが悪戯をします。


→4.一刀+仲良し数人でイカサマ王様ゲーム

 

「…なんか私の出番が少ないですよ?」

何が悪いって、一刀様と私の接点が少なすぎて直接仕掛けにくいんですよね。

とっとと閨房に御呼び頂ければ良いんですけど…

というわけで今回も子丹様に御献策で、いじりやすい方と、その人をいじってくれる方を集めて頂きました。

いやぁ仕事が忙しくて、だいぶ間が開いてしまいましたがそれでは皆様、退庁時刻後をお楽しみにー!

 

--------------------------------

 

子丹御嬢様のお呼びにより、業務終了時刻後に急いで一刀様の御部屋へ伺うと既に数名の方々が一刀と車座になって座っており、子丹御嬢様がこれで全員揃ったわねと仰った。

どうやら私が一番最後だったようだ、急いで来た筈だが他の皆はどうやってきたのだろうか?

見てみれば凪も居り、目が合ったので会釈をして子丹御嬢様の御指示に従って車座に腰を降ろすと、おもむろに子丹御嬢様から切りだされた。

「さて皆様あらためましてお集まり頂き有難う御座います。本日お集まり頂きましたのは先に一刀様がお話になった『王様げーむ』というものを一度実際に試してみまして、その概要を各国首脳の方々にお話して次回の三国懇親会の余興に実施頂くかの御判断頂く為です」

初耳だ。

しかし一刀様も特にお変わりがないのでおそらく子丹御嬢様のお話の通りなのだろう。

集められているのは一刀様、子丹御嬢様、孫策様、周瑜殿、馬超殿、馬岱殿、李典殿、そして凪。呉だけ格が違う方々なのに少し違和感を覚える。

とりわけ呉の御二方は業務御繁多の中厚くお礼申し上げます、と子丹御嬢様が挨拶をされるとそれにあわせて孫策様が会釈をされた。直接お話したことは無く伝え聞いた風評ではもっと奔放な方とされていたが、にこやかでありながら英雄の風のある姿だ。

伝聞等当てにならぬもの、己の耳目で直接確かめることが肝要であるとあらためて思う。

しかし隣に座られた周瑜殿は『忙しいのに…』と孫策殿を軽く睨まれていた。

 

それでは一刀様より方法を御紹介頂きます、と子丹御嬢様の御案内を受けて一刀様が『王様げーむ』の方法の御説明をして下さった。

・各々他の者に見られぬようにくじを引く。

・『王様』のくじを引いたものが番号の者に向かって命令を下し、該当の番号の者はその命令を絶対に実施する。但し王様も他の者のくじの番号は分からない。

言ってしまえばこれだけの簡易なものだ。

注意事項としてその場で短時間でできる事にし、また金銭に関わったりケガをするような命令は禁止との事だ。

 

「それでは皆様御理解は宜しいでしょうか、異議無ければ真名にかけて10回ほど、命令を受けた者は忠実に御実施下さるものとみなさせて頂きます」

「…、ぁ…」

「一点いいかしら」

「どうぞ孫策様」

「実際の宴会を想定して1回毎に全員お猪口を一杯空けるという事を加えてはどうかしら」

「左様で御座いますねこちらに酒と猪口を御用意しておりますのでそのように」

「流石飲兵衛やなぁ孫策はんは」

「ほほほほほそれでは始めましょう」

 

子丹御嬢様と孫策様と李典殿の妙に流れるようなやりとりの中に一部重大な内容が含まれていたような気がしたが、孫策殿が籤の木札を伏せ始めたのでなんとなく言い出しそびれてしまった。どうやら周瑜殿も何か言いたげに見える。

 

さて札を引く。3番だ。

全員が札を持っており、馬岱殿が『王様だーれだっ?』というと、一刀様が

「あ、いきなり俺だった」

とお答えになった。流石は一刀様、王の下へ王の札は来るのだろう。

「さて命令ねぇ…いかん、いきなりは考えてなかったけど…じゃあ、3番が7番にお酌」

私の札が3だ。その旨を申告すると、孫策様がにこにことして7番の札をお見せになった。つまり私が孫策様にお酌をすれば良いという事だ。

「孫策様、お注ぎ致します」

「悪いわねぇ…私も私の真名、そして前呉王の名にかけて命令に従うわね♪…んく、御馳走様。ねえ一刀、もう一回王様引いて同じ命令やってよ?」

「そんな上手く引けるか!でも皆、大体こういう感じ。分かった?」

 

一刀様の御言葉に、皆が一様に頷く。子丹御嬢様が、では第2回を始めましょうと言った。

札を引く。今度は2番だ。一刀様が王様だーれだ、というと今度は孫策様が高々と王様と書かれた札を掲げた。そして前呉王の艶やかな唇から紡がれた言葉は。

 

「4番が8番の前で30秒間逆立ち。8番は目を逸らしちゃだめ」

 

「…8番、俺。っていうかいきなりレート上がり過ぎなんだけど?」

「!?な、何考えてんのっ!雪蓮っ!!!」

「あっら~♪冥琳だったのぉ、4番が。でも王様の命令は『真名にかけて絶対』ですもんねぇ、呉の丞相がまさか一刀や他国の方の前で真名にかけた約束を破るなんて事は、そんな恥っ晒しな事をするはずが、無いわよね?」

「なぁっ………!」

 

ようやく気がついた、逆立ち等ここにいる者なら誰でも簡単だろうと思ったが周瑜殿の服では、逆立ちするとその、裾が凄い事になってしまう。

「あ、あの冥琳?やっぱ無理しなく」

「一刀っ!よ、よく見ておけっ!」

顔を真っ赤にしたまま暫く俯いて震えていた周瑜殿に一刀様が話しかけられたのを制して、周瑜殿は一刀様の前で後ろ向きに立ち、一刀様を蹴り上げんばかりにその長い足を片足づつ振り上げた。

 

「……くっ…」

綺麗に伸ばされた、長くしなやかな褐色の両脚。その付け根を覆う真紅の絹様の下着、そして腰のくびれまでもが露わになる。

めくれ返った服はそのたわわに実った胸乳に引っかかることでそれ以上落ちる事が抑えられている。

にーじゅさんにーじゅしっ、と嬉しげに数える孫策様を除いて全員がその肢体に息を呑む。

呉の丞相は才色兼備の呼び声の通り我等女性でさえため息が漏れてしまう程に魅力的なその体だ、況や男性たる一刀様をも魅了して当然だろう。

孫策様の三十の呼び声とともに周瑜殿の足が降ろされ、頬を染めたままこれで満足かっ次行くぞ次!

と叫ぶと、まんぞくーと孫策様が返された。しかしどうもその御表情は士季が言っていた『どや顔』というもののように思える。

 

 

薄々自分はかなりまずい事に巻き込まれかかっているのではと思えてきた。今回は…7番だ。

「次はうちが王様や!2番が窓から外に向かって『愛してるー!』って叫ぶ」

「ええーっ!?」

2番は凪だったようだ。しかしこの命令はまだましなのではないか?

「そ、その…隊長…、宜しいでしょうか…?」

「いや、うん、叫ぶだけだから、なんつーか気にしないでやっちゃえばいいんじゃ…?」

凪が一刀様を慕う事一通りでないことは私も知っている、その相手を目の前にして叫ぶというのはその赤い顔が示すとおり照れがあるのだろう。

 

「は、はい!…それでは…『隊長ーっ!!愛してますーーーーっ!!!』」

「誰をとは言えって言われてないだろ!」

「あっ!?そ、そうでした!」

愛する相手が一刀様しか思いつかず思わず出てしまったのだろう、凪らしい。

しかし一拍の間のあと外から、そんなん知っとるわーー!という返事と笑い声が聞こえて凪の顔が更に赤くなった。あの声は張遼殿だろう。

「ほな正しく言われへんかったからもう一回な」

と李典殿に言われてやり直し、再び外から二度言わんでええねーん!と遠くから張遼殿に笑われていた。

 

一回毎の杯を空けながら考える。…この遊戯…いやむしろ誇りをかけた戦いは、とどのつまり自分が王様を引いてしまえばとんでもない事をさせられる事は無い。

願わくば王の札を。それが駄目ならばおそらくは無理を言わないであろう一刀様。もしくは子丹様。

 

…無念、1番だ。

「っ、ぷはー。さぁて王様、だーれやっ?」

「私です、では命令を。5番は1番を抱っこして髪を手櫛で30回梳いて下さい」

子丹御嬢様の声に手元の札を今一度見る。1と書いてある。顔を上げてみる。一刀様が「ひょっとして、お前ら…」と言いながら「5」と書かれた札を振っている。

落ち着いて考えよう。5番の一刀様は1番の私を抱っこして私の髪を梳く。いや、梳いて下さる。

いや待てその前に抱っこをして下さって何だって?そう言えば黄忠殿の娘さんが一刀様に抱っこされているのを見て生まれてくる時代が違ったらと羨ましく思ったことがあると亞莎達に話したことがあった。

彼女も将来は母御に似て美人になるだろう。しかしその時には彼女もおそらくいるであろう一刀様のお子様が抱っこされているのを見て羨ましく思ったりもするのだろうか。

 

「……達?仲達、聞いてるの?」

「…あっ、はい」

「一刀様に抱っこしてもらいなさい」

「はい!?」

現実だった!一刀様を見ると困ったように笑いながら、おいでと仰っている。一刀様がお呼びならば、行かなくては。

ふらふらと一刀様の方へ歩いていくと、不意に膝の裏と背中に優しく暖かい手が廻されてかくんと背中から倒れてしまう。

小さく悲鳴を上げてしまって落ちたその先は、愛しい御方の胡坐の上。

「それじゃ、いい?……えっと、髪なんだけど」

「あ、は、はい、御願い致します」

一瞬何の事かわからずに居たが私の髪を梳いて下さるのだ、その手で。

胸の前で手を組んで目を閉じる。すると、額に触れる暖かい指。

「いーち」

私の額から頭を、そして耳の後ろへと流れる優しい感触。思わず口からあぁ、と声が漏れてしまう。

知らなかった、髪を梳いてもらう事がこんなに心地良いなんて。一刀様。貴方の腕に抱かれてこうしていると、天上に居るようです。

璃々嬢が羨ましい等とんでもない。この身に過ぎた幸せに、一刀様に、感謝してもし足りない。

この感動は、この感動はあの夜初めて御情けを賜った時に決して劣らない。

ああ。一刀様。仲達は、貴方様の為に生きます。

 

「にーじゅに……にーじゅさ、って仲達さん!泣かないで!泣くほど!?」

「は…はい、…も、申し訳…」

一刀様にお詫び申し上げるが、この閉じた瞳を押し上げて流れる涙は止まらない。

しかし一刀様の御料衣を濡らす訳にはいかない、手持ちの布で目元を拭っているとその間に命令の30回が終わって我ながらふわふわした足取りで自席に戻った。

 

まだぼうっとしながら杯を空けるが、なんだか場が妙な雰囲気になっている。

「初め見たときは冥琳そっくりって思ったけど、すごい落差ね」

「あー…あたしは稟ぽいと思ってたけど」

孫策様と馬超殿の言葉に、眼鏡は有りませんがこれが売りですからと胸を張って答えた子丹御嬢様は一体誰のお話をされているのだろうか。

 

「ふーん。…そう来るなら、蒲公英そろそろ本気見せちゃうよ?」

「空気読んで止めないけど、ほどほどにな…」

4杯目の杯を空けながら馬岱殿が呟くのに一刀様が御返しになり、第五回が始まった。

 

 

「んー…では。『王様はどちらにいらっしゃいますか?』」

『ここにいるぞ!』

「お前ら露骨過ぎだろ!」

子丹御嬢様の呼びかけに、王様の札を掲げて応えたのは馬岱殿だった。その後の一刀様の御言葉はどういう意味なのだろう?

 

「じゃ、命令。おね…3番は髪留めを外して6番に座位で中出し固め1分間。服は着たままでいいよ?」

「いきなりえげつねぇ!?」

「※○×△■!?」

私は馬岱殿の命令の意味が分からなかったが一刀様は叫び声を上げ、馬超殿が真っ赤になって頭から湯気を噴いている。おそらくは御二方のどちらかが3番と6番なのだろう。

そのまわりでは孫策様と李典殿がおお、とかそう来たか、等と感心した様子だが、凪は頬を染めている。

反応はまちまちだが、皆意図は理解しているようだ。隣席の子丹御嬢様に中出し固めとはなんでしょうかと小声で聞くとこれこれ斯様と教えて下さったが、聞くだけでも羞恥で頭の螺子がはずれるかと思った。

馬超殿は当然に寵姫の一人なのでこの場合ある意味問題無いが、女同士でそんな事をする事になったらどうするつもりだったのか。

 

「ひ、人前で出来るかよそんな事!!!!」

「へぇ?出来ないって言うんだ?」

吼える馬超殿に間髪入れずに答えたのは孫策様だった。

「呉の前王のあたしが従って、現丞相の冥琳がぱんつ丸見えにしてまで守った約束だけど蜀の一武将の翠が守れないんだってさ、曹真さんどう思う?」

「まぁそうなんですか、仮にも魏の事務局の長を務める仲達が泣きながら従った約束ですが蜀の一武将の馬超さんが守れないんですか、これはちょっと曹操様に御相談しなくてはいけませんね孫策様」

「そうねぇ、ちょっと桃香に蜀の配分減らしてもらうように申し入れしないとねぇ?」

「そうですね孫策様。あ、仲達、次の三国会議の議題に『人材交流における誠実な対応を蜀に求める』というのを加えておいてね。呉と共同で」

「は、はい…」

「ちょ、ちょっとマジかよ!?」

矢継ぎ早の孫策様と子丹お嬢様の御言葉に馬超殿が慌てているが、言葉は穏やかだが長年の付き合いで子丹御嬢様が本気だと言う事がわかってしまう私も少なからず動揺した。こんな議題は事務方で綿密な打ち合わせをしておき、予め各王に了解を取らなくては会議が紛糾してしまうが事務方の意見調整だけでもかなりの労力が必要になってしまう。

また問題なの?と苦虫を噛み潰したような徐庶の顔が思い浮かび、無意識に眉根が寄ってしまう。

 

「お前らみんな、身内いじるのも程々に…」

「どうしようお姉様、蒲公英たち首になっちゃうよ?それどころか蜀の皆に怒られて今後ご主人様の夜の順番が無しにされちゃうよ!」

「く…、わ、わかったよっ!」

一刀様が何か言いさしたが、馬岱殿が深刻げな表情で馬超殿を説得すると馬超殿も漸く折れて立ち上がり、一刀様の方へと向かった。

 

これが閨房で二人きりでだったら羨ましいかも知れないが、この様な場では恥ずかしいというよりも羨ましい格好で馬超殿は一分間一刀様に抱きついた。その最中も馬岱殿から『お姉さま、ちゃんと両足を腰に回して。ご主人様もしっかり抱きしめてね!』

等と煽られながらではちっとも羨ましい。

比較的上背のある馬超殿であのような感じなのだから私でも可能かもしれないなどと考えていたら、

子丹御嬢様が本来は女性が仰向けに寝ているので身長は余り気にする必要はないわよと仰った。

私が何を考えていたかお分かりだったかのようだ、子丹御嬢様は方士の修行でもなさったのだろうか?

 

その後いくつか恥ずかしい命令を受け、周瑜殿が『判らない、一体どうやって…、絶対間違いないのに…』と何度も呻いていたり、孫策様と子丹御嬢様が『なかなかやるわね』『そちらこそ』等と握手したりしてようやくこの余興らしきものは終わった。

しかし本日一刀様に梳いて頂いた髪の感触と、別の命令で指につけた酒を一刀様に舐めて頂いた事は

偶然とは言え今後暫く激務に耐えられるほどの役得ではあった、思い返して何度も指を舐めてしまう。

 

 

後日、この『王様げーむ』は王や重臣の極親しい方々と一刀様で閨房にてなさり、徐々に命令を過激化させて最終的には行き着くところに行き着いた命令にするのが流行りになったと聞いた。

 

食事中に伯達姉様に『うち(の姉妹)なら「げーむ」が成り立つだけの人数がいるわね…』と言われ思わず箸を取り落としたのはさらにその後日の事である。

 

 

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お戻りになった子丹様から凡そ伺った限りではまずまず成功ですかね、ただ下手すると生殺しになっちゃうのがちょっとかわいそうではありますが。でも未だお呼ばれしない私の方がよっぽどかわいそうですよね!

 

さぁて次は何をしましょうかね?

 

1.『今の仲達じゃ一刀の好みに合わない』と騙してキャラを変える練習をさせる

2.エロトークさせる

3.一刀と密室or山中二人きりサバイバル

4.その他(具体案戴けると有難いです)



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司馬日記14

その後の、とある文官の日記です。


1月17日

今日は早く帰れたので士季、士載と夕食を摂った。

士載に職場での研修状況について聞いてみたところ、自身は順調であるが、姜維が武技で主席となり一刀様から直々に褒賞を受けたがその後元気がなく心配だと答えた。

大事な友人であれば相談に乗るように助言すると、士季が「不治の病じゃないですかねぇ…」等と言いながら例の生温かい笑みを浮かべていたが、士載は彼は持病はないと言っていたという。

 

1月18日

お忙しい奉孝様の僅かの余暇を見つけて飲みにお誘いしたところ、奉孝様が買駆様もお誘いになって三人で飲むこととなった。

奉孝様、買駆様御両方から今後の私に期待しているので業務に励むようにとのお言葉を頂いた。奉孝様のお言葉によればこれからは事務屋の時代だという。

その後暫く何処其処の誰某は良い、此処のあいつは使えない等のお話や仕事の愚痴をされているのを聞いていたが、

酒が大分回ってきたころに買駆様が『で、仲達もうあの馬鹿ち○ことは寝たの?』と仰っられてどきりとした。買駆様が酔眼になっているように見えたのがやや不安だったが正直に御答えしたところ、

これも目が据わった奉孝様が『私達のような「ぷれい」に興味があるんだそうですよ』と割って入られた。

それを聞いた買駆様が、『あはははは、あらそうなの!?仲達あんた清純そうな顔して意外と見かけによらないのね、じゃあ今度集会に来なさいよ!決まりね!』

と仰りながら背中をばんばんと叩かれた。その後も暫く飲み続け、明らかに酔っているお二人から業務命令と迫られて真名を交換し、お開きとなった。

しかしあれだけ御機嫌な御二方は初めて見たかもしれない、上に立つ者は常日頃から精神的負担が大きいのだろう。

更にその頂点に立たれる一刀様の御心労はいかばかりか。我等下々の者がしっかりお支えしなくては。

 

1月20日

最近、呉の寵姫達の回数が増えている理由がおおよそ判明した、御寵愛を賜る際に『ろーしょん』という薬らしきものを使用しているためだという。その原料は呉の海岸で獲れる海藻で人体に無害なものらしい。

どのように使用するのかは判らないが、劉備様が孫権様より若干量譲渡され、使用したところ大変良かったという事を劉備様が曹操様に御話した為にこの薬?のことが判った。

近々、曹操様自ら孫権様に輸入の交渉をなさることが決まったので日程調整をしなくてはならない。

また併せて曹操様の命により、仲徳様指揮のもと『(仮称)お兄さんとの夜の性活を十倍楽しくする計画』事業が至急立てられることとなった。まだ内容も予算規模も事業期間も伺っていないがどうすればよいのだろうか。

 

1月23日

庁内を歩いていたところ詠様に呼び止められ、例の集会は明後日退庁後だと連絡を受けた。

一瞬何の事だったか判らなかったが思い出し、参加させて頂く旨御回答した。

仕事のやりくりはつくだろうか。

 

1月25日

今日は詠様の仰っていた集会の日だ。

詠様の下へ伺ったところ目のところだけ穴が開いた黒い頭巾と外套を渡され、これを着けて部屋に入るようにとの指示を受けた。個人情報保護の為とのことだ。

蝋燭を数本灯しただけの部屋に入ると既に数名の女性らしき人が座っており、「汜水関」、「錦帆賊」、「奸雄」、稟様が「戯志才」、詠様は「秘書」等それぞれ暗号と思しき名前で呼ばれていた。

新顔の私は「次女」と名乗ることにし、詠様に紹介して頂いた。

 

その後稟様の司会の下、各自報告をとの言葉を皮切りに各々が順次報告をしていったがその内容に心底驚いた、一刀様に如何に御寵愛を賜ったかというものを極めて生々しく語るものであったからだ。

そして詠様の報告のあたりで気づいた、ここの方々はは一刀様にやや強引になさって頂くのが好みである方々の集まりであるようだ。

覆面をしているとは言え全員面映げに報告というか情事を語っていたが、一人「奸雄」と名乗った方だけは堂々とされていた。

私の番も来てしまい、残念ながら一度普通に御優しく御寵愛賜ったのみである事をごく簡単に報告したが、それだけで羞恥で顔から火が出そうであった。

 

それぞれの話に色々意見が出ていたが、「錦帆賊」殿と稟様の方法は色々応用が利いて良いのではないかと言う話になり、散会となった。

帰り道詠様に「奸雄」様とはひょっとしてと申し上げたところ、会員間に身分の上下は無くまた正体を詮索してはならない、また彼女は大変な努力家で他の多くの派閥にも属し研究を重ねている、流石よねと言われた。

想像通りの方であれば私などよりも遥かに激務に追われているはずだが、決して女としての努力を緩めない。格の違いを感じてしまう。

 

1月28日

比較的早く帰宅出来たので私の分も夕食の用意をするよう言い付けに士載の部屋に行き戸を叩いたところ、がちゃがちゃと音がした後に士載があわてた様子で戸を開けた。

用事を伝えて部屋を見ると姜維が来ており、口元を押さえてぎこちなげに挨拶をされた。

また部屋に士載の化粧道具が一つ落ちていたので来客時は特に整理整頓しておくよう注意した。

 

部屋を離れてふと思ったが彼らは恋仲になったのだろうか、常日頃から士載は一刀様をお慕いしていると言ってはいたが。

士季にそれとなく聞いてみたが、「そんなわけないじゃないですか…」と溜息とともに返された。

まだそのように色気づくような年ではないということだろう、晩生な彼女らに安心するべきか心配するべきか保護者としては難しいところだ。



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司馬日記外伝 コメントで仲達様に悪戯する4

拙作「司馬日記」の外伝で、仲達さんの弟子の士季(鍾会)ちゃんが悪戯をします。


→3.一刀と密室or山中二人きりサバイバル

 

「毎日サーッバイーバルー♪」

いやぁ中々仕込が大変で遅くなってすみません、しかし来ましたよ私の時代が!

もともと山中演習は警備部が仕切ってやってまして、星さんの指揮のもと警備部のお偉いさん達が日替わりで一刀様とひなびた温泉つきの山荘でしっぽりやる利権的行事だったんです。

が、こないだの審配の一件で城内外での警備が重視されるようになって、結構大規模にやるように変更になったのでいろいろやるちゃんすなのですよ!

仲達さまをいじるとか!むしろ私の成人式とか!

 

さてこういうとき星さんと仲良くしておくと便利ですね。

本当の警備部長は恋さんなんですがまぁああいう方ですし、星さんとか恋さんとかの一刀様との時間を確保してメンマも付届けしておけば大体の小細工はやらしてくれるのですよ。

いやぁ、組織の私物化って良くないですねぇ。

 

ってなわけで今回の私の計画ですよ!ひあうぃごー!

 

 

 

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警備部長名で山中演習参加指示の書簡が届いたのが一週間前。

業務繁多なところに演習参加は厳しいので別の者に代わってもらえないか警備部に行ってみたところ、趙雲殿に演習の意義を諭され止むを得ず参加することとした。

複数班での演習となるが、演習先の山小屋によっては一刀様が激励に見えられ直々に傷病者役をやって下さるとのお話に惹かれた訳ではない。

 

なんとか業務を調整し、指定の山小屋(何故か山荘と言える程大きかったが)に辿り着くと凪が待っていた、演習の指導員を担当しているとのことだった。

早速演習の説明を受けようとしたところ、一抹の期待は抱いてはいたがこの山小屋には一刀様がお見えになると凪から聞かされ、頭の中が真っ白になってしまった。

その後一通り山小屋の設備や資材等について説明を受け、山小屋にしては妙に立派な設備なような気もしたが一刀様がお見えになると聞いてからはそれどころではなく、生返事を繰り返していたようで凪に「外は真冬ですが仲達さんには春が来たみたいですね」と笑われてしまった。

 

またこの山小屋の指導員は凪一人ではなく新人指導も兼ねて士季も一緒だと言っていたが、士季の姿が見えないのでどこかへ行っているのかと聞いたところ何故か顔を紅くして言い淀んでいたが別棟で休んでいるという。

この山小屋は二棟に分かれており、指導員は別棟の方で演習中の事故に備え待機しているのだそうだ。

指導員見習いとして此処へ来ていると言うのに先輩の指導中に休んでいるとは不届きだ、説教をしようと思い別棟へ行こうとすると

「士季は初めてのその、あの、お勤めで疲れているのです!先輩お先にどうぞと言って私を先にして頂きましたし、あ、あうあう…と、とにかく決して不届きではありませんから!警備部としての士季の指導はお任せ下さい!」

等といまひとつ要を得ない事を言われて凪に止められたので、ここは凪の顔を立ててお任せすることとした。

その後凪は「その他の要領はこちらに置いておきますので読んでおいて下さいね。ただその…これを書かれたのは私ではなく星さんですから」と申し訳なさそうな顔をして出て行った。

 

さて、演習はここで一晩を過ごす事であるが事前の研修では特別な指導は無かったので、凪の置いていった要領書を読んでみる事とした。

巻頭では演習者心得等が書かれており実際の実施要領の部分を読み始めた、なになに…

「此の要領書を貴殿が読まれたとき、主殿は此の山小屋より半径五十米以内のとある地点で右手右足首を捻挫した状態で横臥しているので至急救援に向かわれたし」

 

(何だと!雪山だぞ此処は!?)

 

その行を読んだ瞬間に山小屋を飛び出して声を限りに一刀様の名を叫ぶと一刀様の応える声が聞こえ、容易に発見することが出来た。

一刀様は右手右足を縛られており、自力では起き上がれない状態であったので短戟で縛めを切り飛ばし、経緯を伺ったところ今さっき星に縛られて此処に放り出された、特に体に異常は無いが右手右足を挫いている設定なのでそのように振舞うようにと言われているとの事で大事は無くほっとした。

しかし御体は雪で濡れて震えていらした、速やかに山小屋までお運びしなくてはならない。一刀様は歩けない事になっている為止むを得ず、止むを得ず前にお抱えしてお運びしようとしたところ一刀様より「お姫様抱っこはちょっと漢的になんとなく切ない」との御言葉を受け、背に負うてお運びすることとした。

剛勇で鳴らす将らには及ばないが人一人負う位であれば私でも問題なく出来る。

しかし一刀様を背に負うという事を私は甘く見ていた、この密着度は大変何というかけしからん邪念を湧かせてしまうし「忙しいのに、演習お疲れ様」

と耳元で囁かれてしまうと膝がかくりと落ちてしまいそうになってしまう。

山小屋までの道のりが無限であれば良いのにと一瞬願ってしまったせいか、一刀様がここじゃないのとお声をかけて下さらなかったら山小屋の前を通り過ぎてしまうところであった。

 

山小屋に入ったが一刀様の濡れた御料衣をなんとかしなくてはならない、流石に一刀様の分の着替えは用意が無かったので私の着替えをお使い頂こうと思い荷物のほうへ向かったところ、読みさしであった要領書がふと目に入った。

「主殿を確保し山小屋へ戻ったら、冷えた体を温める為温泉に入って頂く事。尚主殿は手足が不自由な為当然に更衣を手伝い、湯の中までお供し介助を行う事」

 

(……………!!)

この後の事は忘れたい。いや忘れられない、忘れたくないがでも忘れたい、一刀様にも忘れて頂きたいが忘れて頂きたくない。

 

頭に血が上ったまま一刀様に御入浴をお願いし、湯殿へ向かおうとするのを押し止めて御料衣を解かれるお手伝いを申し出たところはじめは固辞なさっていたが、「わかった!わかったからそんな泣きそうな顔しないで!大丈夫嫌じゃないから!」と御了承頂いた。

震える手でなんとか御料衣を解き、自身の服も脱ぎはじめたがやはり恥ずかしい。

御寵愛を賜ったときは記憶が定かでないが一刀様にいつの間にか脱がして頂いたはずだが、一刀様の前で自らというのは介助が目的とは言え羞恥が勝ってしまう。

仲達さんも入るのと驚かれたが、しどろもどろながら趙雲殿の演習要領に湯の中までお供をするとありますのでと御説明すると「星ねぇ…」と言いながら困ったような得心されたような御表情をされ、御了解を頂き湯の中までお手伝いさせて頂いた。

 

湯の中でははじめは一刀様の右手右足首に負担がかからぬよう御体を支えるように寄り添っていたはずだった。

しかし固まってしまっていた私の緊張を解す為にしばらく仕事や私事の四方山話を一刀様がして下さっている内にお縋がりするというか、抱きつくというか、その、なんというかそういうお強請りをするかのような体勢になっており、太腿に一刀様の方天画戟、いや七星宝刀と言うべきか、の感触を感じると視界が全て桃色に染まってしまい、気づけばお情けを頂いてしまっていた。

淑達が書棚に隠し持っていた怪しげな書物では、生娘だった者はそれなりの回数をこなすまでは痛みばかりであると書かれていたが、可愛がって頂いた回数はまだ片手にも足りないというのに惑乱の極み、天の彼方に飛ばされるような感覚を味わった。

子廉様、子孝様が「大丈夫!一刀様そういうのの天才だから!下手すりゃ一回目からよ」と仰っていた通りだ。

 

しかしその後、湯あたりをしてしまい逆に一刀様に介抱して頂いてしまった事は正直忘れたい。

一刀様は「たまにあることなので気にしないように」と仰ってくださったが汗顔の極みだ、後日子丹御嬢様に「一刀様にぱんつ脱がして頂いた娘は多いだろうけど、履かせて貰った娘はひょっとしたら貴女が初めてかもしれないわね」と言われてしまった。

ようやく動けるようになり再び演習要領を読んでみると、「夕食を調理し主殿に御賞味頂く事。極力酒と相性の良い料理を選択し、必ず一品は甕の中のメンマを用いる事。尚毒見の為調理後一食分別棟にて待機の指導員に提出する事。また主殿は利き手を負傷している為食事の介助も行う事」とあった。

そう言えば蜀の将でどんなに美味の食材を用いても毒物同然の料理を作ってしまう者がいると聞いたことがある、先に毒見頂くのは当然だろう。

しかし嗜好品のメンマを食材指定されるのは演習として如何なのだろうかとも思ったが、宴会等で劉備様や孫権様が一刀様に「あ~ん」と言いながら食べて頂いているのを見て羨ましく思っていた事が叶ってしまう喜びの前では如何でもよいことではあった。

 

日頃典韋殿らの料理を召し上がり舌が肥えていらっしゃる一刀様に素人料理をお出しするのは緊張したが、お世辞とは思うが『美味しいよ』と仰って頂いた。御寵愛を賜るのとはまた違った幸福であり、一時期典韋殿が軍務を辞めて一刀様の料理に専念したいと言っていた気持ちも分かろうというものだ。

なお翌朝凪から『星さんが「八十点、見所有り」と言っていました』と聞いたので素人としては及第点のものではあったのだろう。

またその時凪の後ろにどこかで見たような美少女が居り会釈をされたのでこちらも返したが、後からそれが士季だと気づいた。

 

さて夜になり寝る段となったので防寒要領等が書かれているだろうかと演習要領を読んでみた。

「布団が一組用意してあるのでそれに二人で入り就寝する事。尚体温の低下を防ぐ為、二人共衣服は脱ぎ人肌で温め合う事」

とあった。

『いや…防寒だったら二人共服を着たままの方がいいよね?』との一刀様の御言葉に「あっ」と声を上げてしまったのは、体の奥から熱くなる程に温めて頂いた後の夜半、一刀様の腕の中での事だった。

 

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いやぁ、噂には聞いていましたが一刀様マジ処女殺しです。本当に三国の王なのってくらい丁寧にして頂いちゃいまして…

もっとがっついて頂いても良かったんですよ?まぁともかく私幸せです、士載とか姜維にもそのうちおすそ分けしないとですね。もう乾いちゃいましたが残り汁ちょっとくらい舐めさせてやれば喜ぶでしょう。

 

あっ、そういえば仲達様超にこにこして帰って来ましたよ、それになんか最近料理とか始めました。

あと『凪に仕事を任せてしまったと聞いたが体調管理はしっかりするように』とか注意を受けましたがあんなしまりの無い顔で言われましてもねぇ、それにその頃私が誰とナニした後か位察して欲しいもんですけどそこは仲達様って事で。

 

さぁて次回は『コメントで一刀様とシチュ設定して大人の悪戯する』ですー…って、違いましたっけ?

あ、仲達様の悪戯ですね、それではー…

 

1.各国王や重臣達のプレイの一環で三国合同研修塾の教師をやらせる

2.えっちな話と分からせずにえっちな事を語らせる(要領は『司馬日記9-10』の田豊、沮授とのやり取りで)

3.匿名相談室の回答役をやらせる。一部身内もサクラで駄目っ娘仲達の事について相談

4.華陀開発中の薬の誤飲で一日〇仲達になる(〇は黒とかえろとか無双とかお好みで)

5.その他(具体案戴けると有難いです)

 

※先にコメントで案頂きました『「閨事語録・天の国版」の編纂をやらせる』は小ネタでやらさせて頂く予定です



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司馬日記15

その後の、とある文官の日記です。


2月1日

亞莎と凪と三人でお茶をしたところ、亞莎が魏の庁内でとある小説が流行っているらしいので入手してもらえないだろうかと頼まれた。

小説の名は聞いたことがないものだったが、著者は文書局の王粲だという。おぼろげな記憶では彼女は小柄で大人しく、こう言っては失礼だが比較的地味な娘で余り印象も親交も無い。幸い今年文書局に妹の叔達が入庁しているので妹づてに頼んでみると亞莎に答えた。

どのような内容なのかと聞いてみたところ、一刀様を題材にしたものだと聞いていますと答えて頬を染めていた。

 

2月2日

妹の叔達に亞莎の依頼の話をしたところ、その小説は既に持っているというので借り受ける事にした。

借りるにあたって陳琳様の方ではなくてこちらですねと叔達に言われ何のことだか判らなかったが、亞莎の要望はこの通りなのでそうだと答えてそのまま借りた。

どのようなものかふと気になって読んでみたが、一刀様が天の国より降臨されてから大陸を統一されるまでの英雄譚にして三国の王や重臣達との恋愛譚であった。

王粲の文才は噂には聞いていたがあっという間に物語に惹きこまれ三巻から成るこの小説を徹夜で読んでしまった。

前文にこの小説は架空のものとの但し書きはあったが亞莎や凪も登場し、実物に違わぬ純朴可憐な少女として描かれ一刀様との馴れ初めも凡そ彼女等から聞いたものと同じであったので、相当詳細な取材の下に書かれたのだろう。

文章は秀逸で、特に一刀様が曹操様と結ばれるまでのくだりは思わずもらい泣きをしてしまった。

 

亞莎には大変素晴らしい小説なので是非凪にも読ませてあげて欲しいと伝えて渡した。

叔達には一言断りを入れてあるので問題無いだろう。

 

2月4日

朝、政務の御連絡で一刀様のお部屋へ伺ったところ既に一刀様は御不在で、一刀様の寝所の敷き布に顔を埋めていた姜維に出くわしてしまった。

目が合った途端、「せ、洗濯当番です、失礼します」と言いながら敷き布を抱えてそそくさと退室していった。

頬が高潮して胸元の袷が乱れていた、余程慌てていたのだろう。

 

2月6日

子丹御嬢様、子廉様、子孝様が久しぶりに飲みにいらした。

お嬢様は袁術殿の教育方針について張勲殿と細かいところでいまいち合わないのだという。

「私は昼は貞淑に夜は大胆にお誘いするように育てたいんだけど、七乃さんは『大きくなっても美羽様は受け専です』って言って譲らないのよねぇ」

と仰っていたが、一体何の教育方針ですかと聞きたくなってしまう。

元譲様が言っていた曹操様の鼻歌をふと思い出し、こんな曲なのですが御嬢様は御存知でしょうかと伺ったところ、御三方が揃って「知ってる!」と答えられ、酔った勢いのまま放歌をなさり始めた。

以前も思ったが最近本当に外で飲むのを辞めて良かった、軽快な曲調でとんでもなく下品に御寵愛をねだる歌だった。

士載に聞こえてしまわないか不安に思う大声だったが、給仕に来た士季には大丈夫ですよと言われた。

曹操様はこの歌詞を歌うにしのびず、曲のみを惜しまれたのだろう。

 

子廉様、子孝様は一刀様の御当番の時間までの時間潰しであったらしく、御機嫌のまま切り上げて一刀様の御屋敷の方へ向かわれようとしたところ子丹御嬢様が混ぜてもらえませんかと言い出した。

「私達が終わって寝てる間だったら一刀様をお連れ出ししてもいいわ、但し一刀様には御戻り頂いて腕の中で目を覚ますのは私達って事でも良ければね」との子廉様と子孝様の条件に首肯され、子丹御嬢様も向かわれていった。

 

「私も連れて行って下さい」と言いだせなかった私は負け犬ではない。

 

2月8日

年に一度の三国競技会が近づいてきたので、各国の事務方と方針会議を行った。

中堅層の底上げの為、個人戦は新人戦のみとし団体戦を主とすることとした。

各部門優勝商品は例年通り一刀様と一日過ごせる券(金品、武器・図書との引き換えも可)で合意した。

およその予算も問題無い為、次回の打ち合わせで詳細をつめることとした。

 

2月10日

姜維が定時間際に人払いと相談を願い出てきたので、先般の件を思い出し自宅の一室に招いて聞いてみた。

「先般の件ですが、私が秘密にしていた(自分が女であるという)事を見られてしまったでしょうか」

と聞いてきた。誠実に答えるべきと思ったので

「覗くつもりは無かったが(一刀様の敷き布に顔を埋めていたのを)見てしまった」

と答えると暫く面を伏せていたが、

「司馬懿様は一刀様の御寵愛の日程を管理される方と伺って御相談に来ました、真剣に一刀様をお慕い申し上げるようになってしまったのですがどうすれば御寵愛を賜れるでしょうか」

と聞かれて思わず絶句してしまった。

 

美女と見まごう容姿をしているが士載の話では姜維は男のはずだ。数十の寵姫を愛でられる一刀様とは言え流石に男は範囲外なのではないか。いやこれだけの美貌であれば、私でさえ受け入れて下さる一刀様の広大なる愛であれば…?いやいや、これを機に一刀様がそちらに御関心を持たれて寵姫の方々を蔑ろにするようなことでもあれば外交問題どころか天下の大問題、私の首如きでは贖い切れない罪だ…

 

田豊殿らには「貴殿らの御心掛けと一刀様の御心次第」と言ったが、これにはおいそれと答えられぬと悩みこんでいたところ、

「失礼ですが御話は伺わせて頂きました!」と言いながら士載の口を抑えた士季がすぱーんと扉を開けて部屋に入ってきた。

立ち聞きは不躾であると叱責しようとしたが友人の姜伯約の為に意見を具申させて下さいませ、と何時に無く礼儀正しいので発言を許したところ、

「姜伯約殿は口戯の鍛錬をして一刀様への御奉仕の道を開くがよろしかろう!また一刀様は美人の後ろをお責めになることも吝かでない、そちらを一刀様にお捧げしてはどうか?これでしたら貴殿の御寵愛を賜る道も開け、御寵姫の方々の御不興を買う事もありますまい!」

という。大分に姜維に好意的な意見とは思ったが姜維の美貌と相対していてつい感覚が狂ってしまっていたのかもしれない、

「左様でしょうか?」と姜維に聞かれて「一刀様の御心次第では」と答えてしまった。

すると嬉しそうに礼を言い、屋敷を辞していった。

 

士季が何か言いたげに手足をばたつかせる士載の口を抑えてひきずりながら、厭らしい笑いを浮かべて

「あいつ、今度の新人戦の剣技部門で間違いなく優勝しますよ。私市街戦に出場だし」と言って部屋へ帰っていった。

一抹の不安がよぎる。

ついでに士季も一刀様の前と私の前とのその落差はどうにかならないのか。

 

2月11日

退庁後、元直を捕まえて飲みながら姜維の件を相談してみた。

「一刀様は(姜維が男だということを)御存じないと思うのだが…」と言うと、

「え?まだ知られてなかったの、じゃあ(女だって事を)ばらしちゃえば?」

とあっさり返された。釈然とせずそれで良いのだろうかと思い巡らせ、私も酔っていたのだろう、

「姜維に服を着たまま、後ろから御寵愛を賜るように指導してやってもらえないだろうか…」

と呟くと仲達はそういうのが好きなのねぇ!と爆笑された。

(姜維の為を思えば)仕方が無いだろうと怒ると(それが貴女の性癖なんだから)仕方無いわねぇ、と尚も笑われた。

元直の生温かい微笑が妙に腹立たしい。



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司馬日記外伝 コメントで仲達様に悪戯する5

拙作「司馬日記」の外伝で、仲達さんの弟子の士季(鍾会)ちゃんが悪戯をします。


→3.匿名相談室の回答役をやらせる

 

今回も長々お待たせしてすみません!

伯達様が難しい顔をなさってお屋敷を歩かれてたのでちょっと伺ってみたらなんか面白そうなネタが転がってましたよ!

色々と経験が必要な仲達様にやってみて戴いてはと進言したらうまくいっちゃって、ついでに子丹様に注進に行ったりなんてしてませんよ!?

絶対してませんからね!?

 

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難しい仕事を引き受けてしまった。

 

仲達ちょっといいかしらと伯達姉様に呼ばれてお部屋に伺うと、役人及び後宮の方々の心身の健康の為書面による「匿名相談」を行うのでその回答を行うようにとのことだ。

三国の王の方々の直々の御指示だと言い、なるべく中堅程度の官職で後宮経験があり人格的に偏りの少ない者に担当させるようにと指示を受けたという。

私のような人生経験の浅い者ではその任に耐えません、それこそ姉様の様な熟練のと言い掛けて顔を上げたところ姉様の笑顔の背後に尋常でない『気』を感じ、慌てて裏返った声でお受け致しますと言い直した。

しかし実際に私では力不足と思っていたところ、後で姉様や子丹お嬢様、子廉様達で校閲するので安心するようにと言われた。

 

手配等は姉様の方でやって下さり相談はそれなりの数が集まっていた。「一般の部」「後宮の部」とあるが一般の方から回答していこう。

 

 

 

 

問:『しゃねる』の碁盤が欲しいなの

名:阿蘇阿蘇

 

これは相談ではなくただの希望では…?

 

答:普通の碁盤でも碁は打てると思います。どうしても欲しいのでしたら業務に精を出し、給与で購入して下さい。

 

問:最近特に忙しくなってしまい心身の疲労が激しい。姉者ほどではないが体は丈夫なほうだと思うのだが精神的な疲労が回復しづらい。以前から姉者とともに可愛がっていた者と居るとある程度すっきりするのだが、いまいち疲れが抜けきれない。何か良い方法はないか。

名:秋妹

 

難しいな。私の場合は友人と飲むことが多いが…。あまり参考にしたくはないが、公達様は仕事では厳しいが一刀様の御伽では例の通りなのは『すとれす発散』も兼ねているのよ、と言っていた。そういう方法もありなのだろうか?

 

答:秋妹殿は日頃真面目に公務をされているのだろうと思いますが、私生活において普段見せない自分ですごしてみては如何でしょうか?

 

問:安くておいしいものをいっぱい食べたいな。

名:春巻きじゃないもん

答:庁内食堂の乙定食が安くて量も多くお勧めです。材料を持ち込めば安価に料理もしてくれますので牛など捕らえてきても良いでしょう。

 

問:安くておいしいものをいっぱい食べたいのだ。

名:長坂橋

上記回答を御参照下さい。

 

この辺は簡単だ。

 

問:みんなに私の名前覚えてもらうにはどうすればいいんだろうな?

名:北方のうまのしっぽ

 

難しい問いだが、自己を磨き活躍を重ねるという王道しかあるまい。

 

答:中々難しい問題ですが、基本的には北方のうまのしっぽ殿の努力かと思います。強力で有名な軍を抱えたり地方であっても太守になったり等政治軍事等で活躍するか、あるいは個人的な魅力として料理大会で優勝したり『もでる』になったりすれば覚えて貰えるのではないでしょうか?

 

問:国立劇場の楽屋のお風呂を4人で入れるように大きくして欲しいんだけど。

名:地公将軍

 

国立劇場の図面を調べてみた。

 

答:既に浴槽に二人、洗い場に二人は使用出来る仕様になっております。また楽屋は演者及び一刀様用であり、劇場事務員用には一人用の水浴び室を別に用意していますので基本的には事務員の方はそちらをご利用下さい。

 

…さて、後宮の部に取り掛かろう。こちらは私ははっきり経験不足だと思うのだが…

 

問:でかいだけの乳なんて死ねばいいのに。死ねばいいのですぞ!死ねばいいと思うのですよ~。死ねばいいと思うのでしゅ、たわわ!

名:貧乳党

 

…いきなり死ね死ねとなんなのだ、一体。

 

答:乳房に罪はありません。各々の個性を磨かれてはいかがでしょうか。

 

問:いくつになったらごしゅじんさまとけっこんできるの?

名:りり

答:只今婚姻に関する法令を三国にて検討中ですので法の成立まで今しばらくお待ち下さい。

また一般ではなく後宮の部への御投稿は確信犯と思いますが、御母堂様におかれましては法施行前の駆け込み的な脱法行為は自重下さい。

 

 

問:仕事の出来る女ってやっぱり可愛気無いのかしら…

名:治世の能臣

 

自分の思いつく『仕事の出来る方々』を思い浮かべてみた。…いや、十分可愛らしいと言える。国で一番となると曹操様だろうが、あの方は別格過ぎるしこの様な相談をなさるはずが無いから別に考えてよいだろう。あとは私が思う『可愛い』条件を述べればよいか?

 

答:魏王様程でしたら可愛いと言うよりもむしろ凛々しいといえるでしょうが、一般的に優秀である程度であればそのような事は無いでしょう。一刀様や周囲に対して上から目線のような物言いはせずに柔らかく接し、甘えられる時には素直に甘え、服飾や髪型等も大人しめにされたるとなお可愛らしく映るのではないでしょうか。

 

 

問:親友と共に旦那様に公私共にお仕えするようになってから私的な面でも可愛がって頂いており、閨にも呼んで頂き幸せに暮らしているのですが一つ気になってしまっていることがあります。

複数の方から旦那様は後ろをお責めになるのもお好みだと聞いており、いつでもお応え出来るよう用意はしているのですが中々旦那様はお求めになりません。

私達よりもほんの少し前に後宮入りしたかつての同僚は自ら旦那様に罰として強請り、お捧げしたと言っていました。特別な方だけがそちらで御寵愛を受けるのでしょうか?私達はお情けで御伽をさせて頂いているだけなのでしょうか?気になってしまい仕事が手につきません。

名:渤海の田舎娘

 

…深刻なようなそうでないような、そしてどこかで聞いたような話だ。

 

答:あまり気にされなくとも宜しいのではないですか?むしろ貴女が御希望でしたら、一刀様の御迷惑にならない範囲でお願いしてみては如何でしょうか。

 

問:一刀様と背徳感溢れたえっちがしたいのですが義母様が「さんぴー」をしてくれません。親子丼も姉妹丼も変わらないと思うのですが。

名:(匿名様)

答:しないのが普通です。尚こちらで消させて頂きましたが実名での相談はおやめ下さい。

問:桃香伯母様と愛紗義母様が「ごぴー」をしてくれません。

名:関平

答:上記回答を御参照しやがって下さい。面倒なので御相談名もそのままにさせていただきます。

問:胸元が強調されにくい下着を探しているのですが、展示会発表作品の販売窓口を教えて下さい。また対面での購入は恥ずかしいのですが通信販売は可能でしょうか。

名:天水娘

答:前回展示のものについては魏の曹真様が窓口で、それ以前のもの全てについては先月から諸般の事情により魏の曹洪様から蜀の黄忠様に窓口が変わりました。お値段もお求め安くなりましたので是非ご利用下さい。通信販売は致しておりませんが、代理受け取りは可能です。

 

問:私には姉と妹がおり、どちらも見目麗しく積極的でまた甘え上手です。それに比べて私は引っ込み思案で地味な上、男の人から見たらたぶん少し鬱陶しい女なんじゃないかと思うのです。それに外でよく仕事を一緒にする人たちはすごく美人で頭が良かったり、すごく優しくておっぱいが大きかったりして、どうしても引け目を感じてしまいます。

親友はいるのですがあまり一刀に甘えたりしてなさそうだし房事にも疎そうで、相談できる相手もいません。どうすれば良いでしょうか。

名:駄目な次女

 

私も次女の所為か、この駄目な次女殿には親近感を覚える。姉妹で寵姫とは、西涼馬家か荊州馬家、諸葛家あたりだろうか。

 

答:どうしても目に付く周囲と比べ勝ちですが、あまり気にせずよりよい自分を一刀様にお見せする事を考えたほうが良いのでは?どうしても気になるようでしたら、その周囲の方々よりも何か一つ抜きん出る事を目指しては如何でしょうか。

例えば武芸や政治であったり、あるいは一刀様は元々天の国の庶民の出との事ですので料理や子供の世話、筵織り等家庭的、庶民的な面での特技を目指す方法もあると思います。努力に勝る天才は無いと云います、頑張って下さい。

 

問:旦那様は儂の乳が好きでむしゃぶりついてくるのは致し方無い、それに夜通し儂を抱きたいのも止むを得んが、ちと翌朝あちこち痛いんでな、誰か一刀になんとか言ってくれんか。

名:呉の美女

答:御自身にて一刀様にお申し出頂ければ抑えて頂けると思います。

 

…これは自慢をしたいんだろうか。

 

 

 

問:あやつと接吻をするのが好きなのだが出来ん。どうすればいいか教えろ。

名:錦帆賊

 

…後宮側への相談なので寵姫の方なのだろうが、この物言いはないのではないか?

 

答:一刀様にお願いして下さい。いやしくも寵姫のお一人であれば、一刀様も拒んだりはなさらないと思います。

 

問:私には姉がいます。

一刀様の事となるととたんに話が通じなくなります。うざいです。

姉の背後で一刀様のお話をしていると真後ろでも振り向きます。きもいです。

一刀様の前とそれ以外の人の前では別人かと思うほど態度が違います。うざいです。

「一刀様…」とか鏡の前で呟きながらしなをつくります。きもいです。

そんな姉も中堅管理職となってしばらくして御夜伽に呼ばれたらしいのですが自分は何も御奉仕出来なかったらしいです。信じられません。

そのくせ目下の者には厳しいです。こんな姉をどうすればよいでしょうか。

名:三女

 

三女殿の姉というのも困った方のようだ。私も御夜伽の時の記憶は定かではないが、何も出来ない女では無かったはずだと思う。

 

答:三女殿の姉の方も一刀様をお慕いするのは良いですが、公私の区別をつけ良識を持って行動するよう助言しては如何でしょうか。また寵姫のお一人と思いますが、立場を弁え御奉仕の心を持って閨へ向かうよう、目下からは難しければ近しい目上の方から指導戴く様お願いすると良いでしょう。

 

 

問:最近、一刀様は魏にて二匹目の犬をお飼いになられました。

犬は賢く可愛らしく、また一刀様に大変従順でもあるのですが引っ込み思案な性質であまり可愛がって貰えていません。一刀様の前では無言でぶんぶんと千切れるほどに尻尾を振る一面、じゃれついて舐めたり咥えたりはせず甘え方が分からないようなのです。

以前から一刀様が魏と呉でお飼いになっている別の二匹の犬さん達は最近に甘え上手になったと評判で羨ましいです。どうすれば可愛がって貰えるでしょうか?

名:犬の親友

 

一刀様は犬など飼っておられただろうか?先日見た犬は呂布殿の飼い犬であるはずだし…

 

答:一刀様は多忙な為、犬の相手までは手が回らないのではと思われます。どうしてもということであれば、躾をお願いしたり、また性質は悪くないとの事ですので芸など仕込んでお見せしては如何でしょうか?

 

 

 

 

こんなところだろうか。伯達姉様に提出しに行こう。

 

 

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最近、曹操様、孫権様の元気がないという噂を聞いた。先日役人の匿名相談の仕事をしたが王にこそ十分な心身の手当てが必要なのではないだろうか?

また士季によると警備部で甘寧殿が荒れ気味だという、何かあったのだろうか。

それとここのところ叔達が就職したせいか私に向かって公私の区別をつけよ等説教を垂れ、伯達姉様に『仲達姉様の御相手などして頂かずとも私が御奉仕致しますから閨房にお呼び下さい』と一刀様にお伝え下さい等と言っていた、困ったものだ。

 

そんな話を子丹御嬢様としていた所、私の話をお聞きだったのか聞かれていなかったのか『どんな芸を仕込めばいいかしらねぇ…』等と言っていた。子丹御嬢様もお疲れなのだろうか?

私も心身を保ち、今後とも一刀様にお尽くししなくては。

 

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つまんないところはつまんない回答しますが、大事な所や自分の事はホント見えてない回答してくれますね仲達様!

 

 

さーて、次回の仲達様は!?

1.催眠術にかかった演技(ど下手)で一刀様に甘えようとして以下お察し下さい

2.続・生協の仲達さん(質問も頂けると有難いです)

3.華陀開発中の薬の誤飲で一日〇仲達になる(〇は黒とかえろとか無双とかお好みで)

4.一刀様を司馬家へ会食御招待~逆襲の妹達~

5.その他(具体案戴けると有難いです)



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司馬日記16

その後の、とある文官の日記です。


2月15日

魏の事務次官会議で仲徳様より、仲徳様と華陀殿、そして一刀様共同で「馬鹿には利かない向精神薬」の開発に成功したとの発表があった。

なんでも精神疲労を軽減又は解消する薬であるが、不可思議なことに馬鹿には効かないという。

但し一時的に人格が変化しその最中の記憶を失ってしまう為一刀様の立会いの下服用されたい、曹操様にお勧めする前に被験者を募集するとの事だ。

「馬鹿には利かない」という但し書きに皆一様に首を捻っていたが、妙才様が成る程と呟いて被験者を申し出た。妙才様が『最近仕事の疲れが抜けなくてな。服用は一般に沐浴、夕食後が良いのだろう?』と聞いて仲徳様が『そうですね~、秋蘭ちゃんは理解が早くて助かります~』と答えると、『あ、そういうっ…』という声が上がった。

その方は詠様で、顔を紅くしてらしたが暫く逡巡した後『ボ、ボクも被験者になるわ!秋蘭の次の日でいいから!』とこれまた申し出られた。

その後稟様も立候補されたあと、妙才様が『流琉、飲んでみたらどうだ』と仰り、典韋殿も何故か頬を染めて迷っていたようだが『わ、わたし、馬鹿かもしれませんけど』と言いながら被験者となることを承諾された。

 

会議後、私も被験者となったほうが良かったでしょうかと子丹御嬢様に伺ったところ、

『何いってるの、仲達は馬鹿だから駄目に決まってるじゃない』と真顔で言われた。

 

少しだけ傷ついた。

少しだけ、傷ついた。

 

2月16日

最近始めた料理でいまいちこつが掴めないところを教授して貰う為、厨房へ典韋殿を訪ねた。

快く教えて頂いた後に、厨房の隅に置いてあった甕は何かとふと気になったので聞くと、『味噌』というものらしい。曰く、これを湯で溶き出汁を加えて具を煮たものを天の国で一刀様が日常的に食していらしたという。もう一刀様へお出しされたのですかと聞くと、華琳様のあとにお出ししたいのでまだ出していないとのことだ。

これは内緒なんですけどと前置きをされて伺った話では、以前曹操様は料理大会で一刀様の故郷の料理である『ぷりん』を一刀様の為に作ったところ、南蛮娘達に食べられてしまった。その場では一刀様が南蛮娘を許された為曹操様も怒るに怒れず、大会終了後に密かに一人で泣かれていたのだという。でもようやく再び作れるだけの材料がそろいそうなので、今度こそ華琳様がお作りになって兄様がお食べになったら、私も『味噌汁』を作って兄様にお出ししたいと典韋殿は語った。

 

いたく感心し、『ぷりん』も『味噌汁』も一刀様が喜んで下さると良いですね、と言ったところで最近妙に聞き慣れたどたどたという足音に二人揃って眉間に皺が寄る。

 

「蜀の劉封と!」

「関平です!典韋様!典韋様がしばしばしゃぶっておられるという一刀様の使用後のお箸を一膳で良いので私共にもぐえっ!?」

と言い掛けた二人の阿呆娘に、真っ赤な顔をした典韋殿が投げつけた中華鍋が乾いたいい音を立てて命中した。昏倒した蜀の金枝玉葉を引きずって此奴等は蜀に引き渡しておきますが、と言い掛けると

「してません!してませんよ!?本当に、極稀にちょっと残って勿体無いなって時だけですから!」

と言いながら押し出されてしまった。

 

私も欲しいという考えが頭を掠めたが言えなかった自分に安心もし不安にもなった。

 

2月19日

天の語録の参考書を借りに叔達の書斎に訪れたが不在のため勝手に探させてもらっていたところ、『三国志 魏志』という書物がふと目についた。著者の欄を見ると陳琳とある。

そういえば叔達が亞莎の依頼の小説を陳琳のものかと言っていたのを思い出し、なんとなく手に取ってみると初頁に『これに書かれた曹操という人物に私自身も嫉妬と羨望と心身の高揚を覚える 曹操孟徳』とある。

読んでみると物語は大分に脚色されているようで、一刀様が御降臨当初は曹操に出会われ部下となり、戦に政治に御活躍なさっていき諸将との信頼を深めてゆく。次第に現重臣の方々との愛情が育まれてゆき、初めに凪との愛を確かめあう描写が妙に妖艶なと思ったところでこれは官能小説だと気づいた。

以降は物凄い、寵姫の方々との濃密な愛の交歓を中心に物語は進む。警備隊の部下や軍師達と心身共に深く通じ合ってくなかで、後ろで初めて致したのは曼成殿ということになっており、文若様に至ってはその内心を見透かし半ば犯すようにして愛を注ぎ、その結果文若様は二人きりの時のみ被虐趣味を一刀様の前で露わにするようになったとしている。

 

そして董卓軍を壊滅させ袁紹と険悪になりかかっていくくだりで、後ろから『仲達姉様?』と声をかけられて口から心臓が飛び出すほど驚いた。

 

にやにやしながら『ちょっとは勉強して頂きたいですし、現在三巻までありますからお貸ししてもいいですよ?汚しさえしないで頂ければ』と言う叔達の表情は腹立たしいものだった。

 

2月21日

来年度予算の原案が集まった。一刀様の御意向を受けて上下水道、治水、街道整備の予算が今年度も増えている。

そう言えば軍が工事部隊に流用されているせいもあるのか工事に詳しい武官が増えたようだ。

子敬が『うちから治水技術指導で派遣されてきた連中が一刀様のお部屋に入り浸りで困ってるのよ、貴女達は指導に来たんであって一刀様にあんたの谷を治水して貰いに来たんじゃ無いってのに…』とぼやいていた。建業、寿春付近は比較的平地が多いと聞いていたが、与えられる土地には山岳部も多いのだろうか?

 

3月1日

三国競技会の新人戦が開催された。

士季の言うとおり、剣技部門では姜維が優勝した。決勝では御嬢様と子孝様が目をかけていた王双が善戦したが、その美貌を羅刹の如き凄愴なものにして攻め寄せる姜維に押し切られたようだ。

試合後に、御嬢様と子孝様が憮然とした表情で

「やっぱあれですか、持つものと持たざるものの気迫の違いっていうんでしょうか?」

「見所あると思ってちょっと夜のお供させるの早すぎたかしらね。姜維みたいに乾く暇もないほど飢えさせないとやっぱここぞでね?」

とお話されていて、王双が顔を真っ赤にして面目無げにしていた。

 

一方市街戦部門では士季が優勝していた。

「あの女、本当に王族なんですかね!?あんな汚ねー手何でも使ってくる女私以外で初めてみましたよ、あの女やばい、知る限り一番やばい。今後、今の鼎立をひっくり返して自分ひとりヤれればいいみたいな事をするとしたらあの女ですね!本当、要注意ですよ!」

と事後に決勝で当たった孫尚香様の事を毒づいており、他国の王族をあの女呼ばわりはしないよう嗜めたが士季が他の者に対してこのような言い方をするのは初めて見た。

彼女なりの最大限の評価なのかもしれないと思い、いずれ私を超えて彼女と渡り合えと言ったところ『仲達様を超えて?プッ』と口の端を歪めて無性に腹立たしい表情を浮かべた為久々に吊るした。

『近々一刀様に御褒美を授かるんですからぁー!痕がつくのはやめて下さい、仲達様の変態趣味に付き合わされたって喋りますよー!?』

等と喚くので夕方には降ろした。



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司馬日記外伝 コメントで仲達様に悪戯する5.1

拙作「司馬日記」の外伝で、仲達さんの弟子の士季(鍾会)ちゃんが悪戯をします。…の小ネタです。


大分遅くなってしまいましたが、ITUKI様コメントにて戴きました

「閨房の建設と調整を担当している事にかこつけて「閨事語録・天の国版」の編纂」

の小ネタで御座います。ITUKI様の御趣旨とは、多分残念ながら大分…ごめんなさい。

 

--------------------------

 

文書局でもないのに「天の言葉辞典」作成の手伝いを仲徳様から仰せつかってしまった。

風ではついついお兄さんで遊んでしまってなかなか進まないのですよ~、とのことだ。

つい先日入庁した妹にやらせてはと申し上げたところ、叔達ちゃんは分からないふりをして実地で教わろうとしてしまうので一人では任せられないのですー、と言われた。

まだまだ新人ではあるが司馬家の娘であればなるべく同僚に迷惑をかけずに仕事はこなして欲しいものだが。

 

特別の意図は無いが沐浴髪梳き制服新調の上、「一刀様にこれらの意味を伺うように」と仲徳様にお預かりした天の語集を片手に一刀様に一項目づつ伺っていこうとした。

しかし一項目めの「あわおどり」とはどういった鳥でしょうかと伺ったところいきなり一刀様が椅子からひっくり返られた。

 

幸い大事には至らなかったがこの仕事を誰から指示を受けたのかと御下問あったので仲徳様からですと答えると、一刀様はお加減が悪いのか脂汗を流されながら「これなんて罰ゲーム…?」とつぶやかれていた。

しかし、理解の悪い私のためにしばしば苦吟なさりながらも優しくご説明頂き、私に割り当てられた語録については全て解説頂いたので御部屋を辞し、報告書を仲徳様に提出して帰宅した。

 

折角仕事も兼ねて勉強させて頂いたので機会があればあの時お教え頂いた天の語を使ってみたいと思っていたある日、御嬢様が御来宅になり私の姉妹らと夕食を摂っていたときに「士季と士載は本当に仲が良いのね」と仰った。

あの仕事の時に伺った天の言葉の一つで『…大体、義理の姉妹みたいな…って意味、かな…』と一刀様が仰っていたのをふと思い出したので、

 

 

「ええ、まるで竿姉妹のようです」

 

 

 

と申し上げた。

 

 

 

 

御嬢様が噴き出された酒の片付けをさせられた後、十数年以上振りに伯達姉様に吊るされた。

士季が『人は笑いすぎで失神出来る』という事を証明したらしい。

 

一刀様の御言葉だと言っても誰も聞く耳を持ってくれないというのは、どういうことなのだろうか。

 

 

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はぁい士季ちゃんですよ!

いや、もうすぐその通りですけどね!私何も身に覚えの無い不意打ちで、ほんとに笑い死ぬかと思いましたよ。

 

ま、仲達様その日は凹んでましたけど、後日一刀様が謝りに来られて抱っこだのいい子いい子だのしてもらってにこにこしてましたよ!皆さん安心して下さいね、では!



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司馬日記外伝 コメントで仲達様に悪戯する6

拙作「司馬日記」の外伝で、仲達さんの弟子の士季(鍾会)ちゃんが悪戯をします。…が今回は司馬家のターン?


→4.一刀様を司馬家へ会食御招待~逆襲の妹達~

 

※仲達さんの姉妹は以下の通りです。いっぱいいらっしゃいますねぇ…

1.司馬朗(伯達)

2.司馬懿(仲達)    

3.司馬孚(叔達)

4.司馬馗(季達)

5.司馬恂(顕達)

6.司馬進(恵達)

7.司馬通(雅達)

8.司馬敏(幼達)

 

『仲達&叔達』

「叔達。なんだそのいかがわしい下着は」

「先の展示会で購入したものですが?いかがわしいというのは仲達姉様の主観で御座いましょう、これくらいの透けは普通ですし私や伯達姉様位の大きさになりますと中々種類が無いのです。

それより仲達姉様も沐浴でしょうか、御丁寧に手鏡と剃刀まで御用意なさって。今日は伯達姉様が居らず仲達姉様が家長代理なのですから遅れないで下さい」

「…一刀様の御来宅にあたって不潔でないよう努めるだけだ、他意は無い。それに御来宅にはまだ十分時間はある」

「沐浴も結構ですが、早く上がられませんと季達と顕達が料理を終えてしまいますよ。一品は作りたいと仰ったのは仲達姉様ですよ?」

「判っている、叔達も一刀様の御休憩室の用意を怠るな」

「はい」

 

『叔達&季達(&顕達)』

髪を結うのを季達に手伝ってもらっていたところ季達から叔達 姉様、と切り出された。

「叔達姉様は、今晩一刀様の御寵愛を賜るのでしょうか?」

「そうであればよいと願っていますが、それは一刀様の御心と状況次第です。できる限りの手は打っておきたいとは思っておりこうして季達に髪を結って貰っているのもその一環ではありますが。季達はまだ望まないのですか?」

「私や顕達は未だ入職もしておらず一刀様に拝謁しましたのは二回だけですので、あれだけの寵姫がいながらも倫理観の固い一刀様は御伽をお許ししては下さらないと考えます。さしあたっては顕達と共に御会食用の調理に精を出したいと思います」

「そうですか、望むのを止めたという訳ではないのですね。ところで少し聞きたいのですが」

「なんでしょうか、叔達姉様」

「今朝ほどより最近見たことの無い白色の粉が二包、調味料の棚にあったのですがあれは季達のものではありませんか?」

「…さあ、私は知りません。顕達の物ではないでしょうか」

「そうかもしれませんね、季達は顕達と仲が良いのですから聞いてみて下さい。あとこれから先は独り言ですが」

 

「一包が滋養強壮の薬、もう一包が睡眠薬だとしても全く問題は無いでしょう。仲達姉様はお休み中の一刀様の御寝顔を眺められればそれだけで満足でしょうし、まだ冷える時期なのでそのあと湯たんぽ代わりに若く体温の高い娘が二人程御寝所のお供をしても良いでしょう。ただ、一刀様が深夜お目覚めになった時にお若く滾るものをお鎮めする役目は私が務めますが」

 

季達の髪を結う手は止まらないが、考えているようだ。

 

「…もし叔達姉様でお鎮めきれなかった場合は私達でお手伝いさせて頂こうと思いますが宜しいでしょうか?」

「勿論です、むしろお願いしたいところです」

口ではそう言ったが仲達姉様ではあるまいし、千載一遇の御夜伽の機会だというのに処女とは言え二度や三度程度で白旗を揚げる等あるはずが無い、そんな女は私に言わせればやる気が足りない。夜も皇帝と名高い一刀様のお相手とは言え、伯達姉様並みに育ったこの胸と三寸不爛の舌とをも駆使して必ずや御満足頂くのだ。

 

「…そのお言葉が「失神ふらぐ」とならなければ良いですね。結い終わりましたので顕達を手伝って参ります」

頭の高いところで幅広の髪飾りを結んでもらった所で、季達が離れていった。

「ふらぐ」とはなんだったろうか、いつか風様が「何々ふらぐ」という言葉を使っていたような気がするが。

ああ、そんなことより御来宅が待ち遠しい。

 

『恵達&雅達&幼達』

「さて雅達、幼達。近日一刀様が司馬家へいらっしゃると言う事は既に聞き及んでいるかと思います。我等姉妹皆一刀様をお慕い申し上げていますが、未だまともな役職に就く事もままならぬ年齢の我等にとっては此度の御光臨は一刀様と御近づきになる又と無き機会である事は言うまでもないでしょう。これを活かす方案について雅達らに考えがあれば聞きたいと思います」

「聞けば、一刀様は童顔小躯の寵姫をお召しになる事はあっても孫尚香様を下限としてそれ以下の女児と言えるような娘をお抱きになったことは無いと言うではありませんか。となれば私達が如何に寝床で一刀様に迫ったとても門前払いならぬ床前払いとなってしまう恐れは高く、あえてここでお手つきとなることを目指して淫乱女児の謗りを受ける危険を冒すのは下策でありましょう。むしろここは『今すぐのお召しは望みませぬ、一刀様色に染めて成長させて下さいませ』と申し上げ、例えば月様の下働き等を申し出ては如何でしょうか?一刀様の周りには多種多様な魅力を持った美人貴人が綺羅星の如くひしめき、ともすれば天の言葉で云う『きゃら被り』となり寵姫達の間に埋没してしまいかねませんが、お若き一刀様がまったき無垢な娘をお好みに沿うようお育てになられたことはありますまい。私達の採るべき道は斯様ではないかと考えます」

「雅達の言は卓見と考えます、私もそのように振舞いましょう。幼達は何か意見はありますか?」

「私はしょくのりりさまよりは上ですが、年わかすぎるでしょう。長きせんでのぞみたいと思います。でも、家とくについてはいずれ姉さま方ときょうぎをお願いしたいです」

「…誰が家督を継ぐかについてはまた後日論じることとしましょう。幼達は幼達なりに一刀様にお仕えする道を目指しなさい。では、それぞれ掃除等任せられた御招待の準備に取り掛かりましょう」

「「はい」」

『士季&士載』

「やめときなって」

言下に却下しちゃいましたよ。まぁ気の弱い士載には珍しい、しかも控えめな自己主張なんですけどねぇ。

 

「か、一刀様と、おお会い出来る、ことっ、あっあんまり、無い…」

「今回伯達様いらっしゃらないし、叔達様本気だから。この家居たかったら今回は見逃し見逃し」

「で、でも…」

「うーん…士載可愛いし頭良いし、いずれヤれると思うんだけどねぇ…まあ今回は普通にご挨拶とか、夜は覗き位は出来るでしょうけど。やる?」

「叔達様、お、御夜伽、するの…!?」

「十中八九。ひょっとしたら季達様と顕達様も。なんか怪しい仕込みしてたっぽいし」

「え…、顕達様、わ、私よりふたつも下なのに、す、すごい…」

「いやあんた私よりも上だし。でどう?見学すんのしないの?」

「え、え、えっと…」

 

その年上にタメ口な私もどうかと言えばどうかではあるんですが、これはこれでなんか仲達様とまた一味違ったいじり甲斐があるのです。まあ体もエロいですが大人しいくせに頭の中も意外とエロい士載の返事なんて聞いてやるだけ私も優しいですよね!?

 

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いい朝だ。ようやく寒さがぬるみ始めて、朝の日差しが心地よい。

昨晩は緊張もしたが楽しい会食であった。最近は急に大人びてきていた幼達が久々に童心に返ったように

「ねぇねぇかずとお兄ちゃん、かずとお兄ちゃん!幼たつかずとおにいちゃんのおよめさんになりたいなぁ~」と一刀様に甘えだし、

「うーん、幼達ちゃんが大きくなったらね」

「大きくなったらって、どれくらい?」

「そうだねぇ…入庁試験に受かってお仕事始めて、それでも俺のこと好きでいてくれたらねぇ」

という一刀様の御言葉を頂いた瞬間に豹変して

「姉さま方、今のかずとさまのおことばを聞かれましたね?今三国の王たるかずとさまは『科きょに合格し、かつかずとさまをおしたいしていればよめ入りをうけ入れる』とおっしゃいました。

この大りくのちつじょの長たるかずとさまがおことばをたがえるはずはありませんが、かくにんのため姉さま方には本日のしょう人になっていただきます」

と言い出した時には全員が絶句した。妹ながら、女は恐ろしい。

 

その後恵達と雅達が月様の下で暫くお手伝いをする事となったり、挨拶が上手く出来なかった士載の吃音を改善する方法を考えて頂くこととなったりしながら会食を進めていたが一刀様が眠くなったと仰って御休みになられてしまったので拙宅にお泊めすることになった。離れに一刀様をお運びしたところ、つい端正な寝顔に魅入ってしまった。…正確には御寝顔の頬に、その…勝手にお休みなさいませの御挨拶をさせて頂いてしまったが。

一刀様の寝顔を見ていたらなにやら体が熱く火照り、不埒な事をしでかしそうな自分に不安を感じて自室に戻った。

ただ自室で以前一刀様から拝領した筆をつい見てしまったのは良くなかった。最近自分の心身が「女」としての面が強くなってきたような気がする。

 

ところで朝食も作ると言っていた筈の季達と顕達、それに叔達も起きて来ないので起こしにいこうとすると士季が士載と起こして来る、また一刀様も後で御起こしするので一刀様の為に腕によりをかけて御朝食を用意下さいというので任せて朝食を作る事とした。

 

末の妹達に手伝ってもらい用意が出来た頃、士季が季達と顕達、士載と共に一刀様をお連れしてきた。何故か季達と顕達が一刀様の両脇でお袖を取るようにしていて馴れ馴れしい。叔達は体調不良で寝ているという。

「『大丈夫なのでもう一回』って何度も言うからそうなのかと思っちゃったけど、初めてなのに無理させちゃったかなぁ」と一刀様が仰ると顕達が自業自得です、むしろ叔達姉様も天の国に幾度も行ったようなものですからある意味本望でしょうと言い季達も頷いていた。

 

はて叔達は酒を飲むのは初めてではないはずだし、夕べの会食でももう一杯と一刀様にねだるような事はしていなかったはずだが、私が見ていない時にそういうことがあったのだろうか。

席に着こうとすると季達と顕達がごく自然に一刀様の両隣に寄り添うように座ったので何処に座っている、と窘めたところ『叔達姉様がいらっしゃらないので』と当然の様に返された。ならばそこは叔達よりも年長の私の席だろうと叫びそうになったが恵達がまあ良いではありませんかと言い、嫉妬がましいところを一刀様にお見せするのもみっともないので不問とした。

 

何故か一刀様が苦笑いをされその他の皆から空気の読めないものを見るような目で見られているような気がしたが、あまり気にせず朝食を取り分けることとした。

普段は良く食べる士季が少なめだったのでどうしたのかと聞くと「私は朝一でほろ苦薬膳七分粥を頂きましたので元気いっぱい胸いっぱいなのです」と何故か胸を張って言い、士載は顔を赤らめ、季達と顕達は「士季は本当に良いお手本ですね、勉強になります」と感心している。

苦い粥とは聞いたことが無いが薬膳ということは薬草粥だろうか?早起きして朝食を作ることは良い事だがそれならば皆の分も用意するようにと言うと、一刀様が何故かいや無理それは無理とお答えになった。

 

さて出立の段となり季達と顕達は春の科挙に合格することを誓い、一刀様はお帰りになった。

 

その後最近は妹達に任せきりだった洗濯をした。

叔達が起きて来たのは夕方だった。元々豊かな肢体が妙に艶かしく見えたのが気になったが、

「体調管理はしっかり行いお見送り位しなくては一刀様に失礼だろう」と叱ったところ、

「確かに一刀様に失礼でした、何度も死ぬかと思うほどの幸福は頂きましたが。反省しましたのでこれからは少なくとも姉妹二人以上でお尽くしします」

と答え、風呂の方へふらふらと歩いていった。御会食だけでも幸福で死にそうな程お慕いする気持ちはわかるが、今後は家事も姉妹で分担して体調管理を行っていくべきだろう。

今夜はこの枕でよい夢が見れるかもしれない。明日も一刀様の為に頑張ろう。

 

------------------------------

 

うっかり一服盛られて生殺しでもほっぺにちゅーと使用済み枕くらいで大満足とはさすが仲達様です、そこに痺れますけど憧れない!

叔達様はお初であんなに開発されまくっちゃって大丈夫でしょうか。

涙と涎まみれで痙攣しながらまだ出来ます、したいですとか言わなきゃ良いのに…。

そして処女三人コマシてなおあの濃さ、ああん一刀様御立派です次は満貫全席お願いしますね!

 

さて次は何しましょう?ちょっと最近ネタが枯れ気味なんで宜しくお願いします!

 

1.催眠術にかかった演技(ど下手)で一刀様に甘えようとして以下お察し下さい

2.「大変です仲達様、この書に書き込んだ事は本当になっちゃうみたいですよ!」

3.天の国の習慣の「四月馬鹿」で一刀様が仲達様に向かって嘘をつきます

4.その他(具体案戴けると有難いです)

 

※先般ミドリガメ様から頂きましたリク「華陀の薬で身も心も少年になった一刀の面倒を見る」は少なくとも小ネタでは必ずやります



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司馬日記17

その後の、とある文官の日記です。


3月7日

士季に入庁を機に実家に帰らないのかと聞いたところ、

「やですよあんな妖怪色惚け後家ババアの家なんて」とにべもない。

 

一刀様より、新規入庁者の後宮入りを禁ずる法案のご提案があった、女性入庁試験者に後宮入りが採用と出世の条件と誤解されている節がある為との事だ。

一部の重臣の方々からは強い支持があったそうだが、各国王は思案投げ首となり一旦持ち帰り検討することとなった。

 

3月11日

一刀様が御風邪を召された、少し熱があり食欲が無いとのことだ。

華陀殿の見立てでは静養して消化の良い物を食していれば快癒するという。

定期的な問診はさせて頂いていたが、兼任不定期とは言え御生活指導係としては失格だ。

一刀様の寝台廻りの御用意をしている間に月様に見舞い客の整理をして頂いたがおもむろにお部屋を出て行かれようとした。どちらへ行かれますかと伺うと、『料理の作り手の方々に、各々少量にして貰えるようお願いをしてきます』とのことだった。確かに最近は各国王はじめ料理の作り手は多い。

ふと気になって厨房へ行ってみたところ、凪もやってきたが凪の料理は今日の一刀様の体調に合わない為遠慮をお願いした。

また何故か関羽殿が外からちらちらと厨房の方を伺っており、それを劉備様にお伝えしたところ困ったように眉根を下げられて関羽殿の方へ行かれた。そこで何事かお話をされると関羽殿は肩を落として帰っていったが何かあったのだろうか。

月様の判断で今日の見舞いは各国の王のみとしてもらい、それが済むと暫く静寂が訪れた。

と思っていたらもう足音だけでわかる招かれざる娘二人――――近親上等☆姉妹が部屋までやって来たので静かにするよう窘め、また面会謝絶である旨を伝えたところ、

「一刀様に私共の愛情たっぷりのこの薬湯をぜひ御飲み頂きたい、一発平癒間違い無しです」

と言って一つの湯飲みを差し出してきた。

あまり胡散臭いものを一刀様に飲ませるわけにはいかないが直ちに快癒されるならと思い、同じく控え室に詰めていた詠様に相談した。

怪訝な顔をされてボク自身で聞いてみるからと関平・劉封の元へ行かれて「あんたたち愛情って言うけどこれ何入ってんのよ」と聞かれたところ、

「主に下半身から溢れ出る愛情ですが、ってああっ!窓から投げ捨てるなんてひどいです!」

「一刀様だって御飲みにと言うかむしろ直にお舐めになった事だってありますのに!」

「そりゃ元気な時の夜の話でしょうがっ!!愛情じゃなくて欲情飲まそうとか何考えてんのよあんた達!」

というやり取りを聞かされて頭を抱えてしまった。呂布殿を呼んでつまみ出してもらう間も

「言いだしっぺの癖にすみませんあの時酔ってましたとか言って実行しない斗詩さんとは違うんですよ私達は、行動できる女なのです!」

「突っ込みにくいとこを四の五の言わずにとっとと出てけ!」

等と詠様と言い合いをしていた。

 

次世代と言うほど年は離れていないが、下は末恐ろしい人材ばかりのような気がする。

 

3月24日

件の新規入庁者後宮入り禁止法について緊急会議が開かれ、『就労・向上意欲が著しく殺がれる上、世代間の対立を招く』として一刀様に廃案の御提案をすることとなったという。

各国の子女からの反発が凄まじく、蜀の諸葛家では末の妹御が自殺未遂を図り、呉では凌操殿と娘の凌統殿が斬り合いとなり、恥ずかしながら我が家では妹達から吊るし上げを食った他、方々で混乱が起こったそうだ。

 

後宮入りした者は昇進に制限をかけるという代案も出されたが、寵姫となった有能な若手の官位の頭打ちにより中央官僚の人材枯渇を招きかねない危惧があるという見方が強い。

むしろ寵姫となる、あるいは一刀様の側近く仕える条件として一定の官位又は勤務成績とする方向で検討するそうだ。

 

4月1日

庁内でちょっとしたと言うか、あるいは大事件が起こった。

魏の草莽の頃からの重臣の方々が一斉に恐慌をきたしたのだ。

原因は、『今まで皆有難う 天の国に帰ります 一刀』という一筆を残して一刀様が行方不明になった為だ。

程なくして、先日一刀様が話されていた『四月馬鹿』という嘘をついてもよい日という天の国の慣習により一刀様が周泰殿に依頼して呉の屋敷の一室に隠れていただけだったということが判明して一堂皆胸を撫で下ろしたのだが、それまでの魏の庁内は酷かった。

曹操様は人事不省になり寝込まれてしまい、元譲様は涙を流して「一刀ぉぉぉ!」と叫びながら抜刀した七星餓狼を床に叩きつけようとした所で妙才様が当身で気を失わせて『当分二人で寝る、華琳様が起きるまで起こさなくていい』と私室に引き篭もられ、典韋殿は「兄様!兄様!兄様あああああ!」と慟哭をやめず、凪は城門の上でぼんやり下を眺めていたところを危険な状態と見て趙雲殿が保護し、張遼殿は失踪され、普段飄々とされ、個人的には最も強靭な精神をお持ちなのではと思っていた仲徳様は一時的に失語症となってしまっていた。

 

ここまで大事となるとお考えになっていなかった一刀様は皆に平謝りをされていたが、それまで気丈に振舞っていた文若様が

「つ、吐いていい嘘と、吐いちゃいけない嘘ってものがあ、あるでしょうがぁ!この馬鹿ぁぁぁぁ!!うぇぇぇぇぇん!」

と一刀様を叩きながら泣かれていた。

 

その後、心的外傷を負われた曹操様はじめ魏の十二人の譜代の寵姫の方々は精神の回復の為三日間一刀様から離れず暮らされた。

失踪されてしまった為事実を知るのが遅れた張遼殿は重症で、呂布殿に連れ帰られてからすっかり気弱になられてしまい、

「なぁ一刀、うち羅馬なんか行かんでもええからずっとそばに居てな?な、居てな?」と繰り返し、回復に更に二日程要した。

また手引きをされた周泰殿もあまりの大騒ぎに顔面蒼白になって泣きながら謝り、孫権様からも謝罪の申し出があったが一刀様含め関係者全員から『全て一刀(様)が悪いので不要』との回答だったという。

 

この間決裁が完全に止まってしまったのはかなり困った。数日前に「4月1日は誰がどんな嘘をつくのかなぁ」と一刀様が会議でおっしゃっていたにも拘らず、これだけの混乱になってしまう事にあらためて一刀様の存在の大きさを思い知った。

 

4月6日

今日は特に問診の日ではなかったが、一刀様からのお召しを受けて午後にお部屋へ伺ったところ、小さな包みを渡され開けてみるよう御指示を頂いた。

開いてみた所中身は白金に青い小さな造花をあしらった髪留めであり、開いてしまって良かったのだろうかと思いながらこれをどなたへお持ちすればと伺うと

『仲達さんにお世話してもらい始めて一年経ったのでそのお礼、仲達さんの銀髪に似合うかと思って』

と仰った。

雷に撃たれる思いでそういえばそうだったと思い出し、私のような末席の者の、そんな瑣末な事までお気にかけて頂いているという感動のあまり絶句し涙が止まらなくなってしまい、またしても一刀様を困らせてしまった。

そうこうする間に書類を抱えた詠様が一刀様の御部屋へお見えになって「あ、また仲達泣かしてんの?」と言われ、一刀様が此れ此れ斯様と御説明になった。すると詠様は呆れた様にため息を吐かれ、

「このコマシ、そういうところは恐ろしくまめよねぇ…。で?仲達そのまま帰らせられないんだったら仕事は夜やって?夕飯前には又書類持ってくるから」

と言い捨てて踵を返して出てゆかれてしまった。

 

その後はまあ、その、そういうことだ。

とっぷり日も暮れて詠様がお部屋の入り口で中華鍋をお玉で叩きながら「はいはい仕事の時間よー」と仰るのを聞いて、慌てて目を覚まして服を着始めるまで一刀様の腕の中ですっかり眠ってしまっていた。

 

しかしもう初めてというわけでも無いのにその最中自分が何を叫び散らし、どのような振る舞いであったのかさっぱり覚えておらず、ともかく一刀様と密着したまま幸福の彼方へ吹き飛ばされるような―――絶頂とは古人は上手い事を言ったものだと思うが―――記憶だけが残る。

記憶が朧げになってしまう事にはいつも不安になるのだが、常に一刀様は「可愛かった」と仰って下さっている。

だがいつまで経ってもお伽を『する』というよりは御寵愛を、或いは御情けを『賜る』ような状態というのは余り宜しくないのではないか。

今度どなたか経験豊富な方に伺ってみよう。



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司馬日記外伝 コメントで仲達様に悪戯する7

拙作「司馬日記」の外伝で、仲達さんの弟子の士季(鍾会)ちゃんが悪戯をします。


→2.「大変です仲達様、この書に書き込んだ事は本当になっちゃうみたいですよ!」

 

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「…何を言っているのだお前は」

執務室に駆け込んできた士季に思わず鼻白む。

 

「それに、その本は張角殿のものではないのか、何故お前が持っている」

士季の手にある書の表紙には『太平要術 五』と書かれている。

一~三巻は張姉妹の仙術の書であるが、四巻は張角殿が一刀様の寵姫となられてからそのおおらかで陽気な振る舞いからは想像できぬ天性の才で編み出した房中術を記したものだと聞く。しかし五巻というものは聞いた事が無い。

 

「ほらあの方たち元々仙術使えたじゃないですか、で四巻は御存知の通りですけど中身が白紙の巻があったんだそうです。それがこれで、これに書かれた事は実際に起こってしまうということが最近分かってとりあえず五巻にしたんですけど、自分が持っているとうっかり無くしそうなので悪用されないよう曹操様にお預けするんですって」

 

「ふん…」

胡散臭い。そのようなものが有ったら普通気づくだろうが、あの張角殿ならほったらかしかねないという気もする。

「あー、信じてませんね?」

「それはそうだろう、そのような書の存在なんて今まで誰も知らなかったはずだ」

「でも見てみてくださいよ、ここに書かれてることは実際に張角様に起こった事なんですよ!」

初頁をみてみた。

[夜は点心食べたいなぁ]

[まだ大雨だけど、明日はらいぶだから晴れてね!]

[枝毛よなくなれー]

…なんというか、そんなとんでもない書とは思えないとても私的な内容だ。次頁を見る。

 

[一刀とでーとしたかったのに!一刀漢中に出張に行っちゃだめ!!]

 

「…」

思わず固まってしまった。

「どうです?信じました?」

「…ただの偶然と、失礼ながら張角殿の思い込みだろう」

「あ、じゃぁ試してみましょうか?じゃあ当たっても外れても当たり障りのないところで、『曹真様がお菓子を持ってここへいらっしゃる』」

「御嬢様は徐州出張中だ。それに人の物なのだろう、勝手に書き込むのは」

「あ、張角殿の許可は頂いてますから…あ、ほら!!仲達様!!」

士季の指差す方を見ると、果たして子丹御嬢様が小さな箱を持って立っていた。

「あ、仲達。今出張から帰ってきておみやげなんだけど、どうしたの鳩が豆鉄砲食らったような顔をして?」

「は、いえ…お、お帰りなさいませ、御嬢様…」

「ほらほら!これで信じましたか仲達様!これ本物ですよ本物!」

 

信じがたい。

しかし御嬢様も何もご存じない様子だが…士季が御嬢様がお帰りなのを見つけて、それで書いたのかもしれない。

「知っていたのか、士季…」

「なんでぺーぺーの私がよその管理職の曹真様の出張予定を知ってるんですか…まだ信じられないならもういっちょ行きましょう。…んー、じゃあ。『姜維の性別が女になって一刀様に抱いてもらう』っと」

 

姜維には悪いが、それは決定的だろう。

「…流石にそれが真実となったら私も信じよう」

頷くと、子丹御嬢様が何の話をしているの?と聞かれたので斯く斯く然々と答えたところ、

「あらそうなの、ところであれは姜維じゃない?」

と仰るので外を見た。

 

そこには非常に姜維によく似た、似すぎたと言っていい美少女が歩いていた。

気づけば私は駆け出し、彼女の前に立っていた。

顔は間違いなく姜維。服は今まで見た男性のものでなく優美な曲線を隠さない艶やかな女性のもので、髪も可愛らしく結い上げている。

 

「失礼だが、姜維殿、か」

「はい…?仲達様ではありませんか、御機嫌麗しゅう御座います」

「…突然、大変不躾で申し訳ないが姜維殿、あなたは…女になられたのか」

「!?…は、はい。(一刀様に)女にして頂きました…仲達様や士季のお陰で御座います」

はにかみながら答える姜維に対して、言葉が続かない。

 

「そ、そうか。それは…良かった」

「はい。あ、あと仲達様と士季に助言頂いた件ですが…一刀様には前の方も御所望頂けまして…それに、御奉仕も鍛錬の甲斐有って御満足のしるしを頂けました、本当に有難う御座いました」

「いや…礼には及ばない、今後とも士季と仲良くしてもらいたい」

「はい、こちらこそ」

 

では失礼致します、と言って去っていく姜維は非の打ち所の無い美少女だった。

事、此処に至った。

 

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しかし私の天地は、変わらなかった。

 

「一刀様が手を握って下さる」と書いても。

「一刀様が頭を撫でて下さる」と書いても。

「一刀様が淹れたお茶を飲んで下さる」と書いても。

「一刀様の御料理を作るよう指示を頂く」と書いても。

「一刀様と庁内ですれ違って御挨拶出来る」と書いても。

「一刀様に頬に接吻を頂く」と書いても。『ちゅー』と書くのが恥ずかしくて書き直したのがいけなかったのだろうか。

「一刀様が抱っこして下さる」なんて、私のような大女がしてもらえる訳が無いのに。

 

何も、変わらなかった。

時折、どこからか『プークスクス』といった笑い声が聞こえたり、御嬢様が私とお話する時に口の端を痙攣させている位で、何も変わらなかった。

 

自らの欲に溺れた私に、神の助けなどあるはずが無かったのだ。

自分で書き込んだ頁は丁寧に破り取って机の引き出しに仕舞い、五巻は決裁に廻した。

仕事後、張郃と郭淮を強引に誘って飲んだ。久々に酷く酔った。

 

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翌朝時差出勤にさせてもらって出勤すると一刀様と廊下でお会いしたので御挨拶をしたところ、後で御部屋へ来る様にお申し付けになった。今日は一刀様にお会い出来た。いい日になるかもしれない。

 

雑務を片付けて伺ったところお茶を淹れるよう御指示されたので淹れて差し上げると、美味しいよと言いながら御席の方へ来るようにと仰った。御指示のままにお寄りすると、お座りのままの一刀様の手に引かれ一刀様の上に崩折れるように倒れこんでしまう。

 

まだ日も高いというのに、なんだこの天国は?なんでもない日に一刀様にこのようにされるのは初めてだ。混乱してしまいながらも「か、一刀様?」と伺うと、

「えーと、『ちょっとやりすぎちゃった』っていう人達のお詫びと、俺からはいつもお世話してくれるお礼的な何かということで」

と今一つ良く分からない事を仰り、私を膝の上に抱き抱えるようにして頭を撫でて下さりながら、「いつも有難う、こんなんで御礼になるか分からないけど」と言われた。

いえ、臣の務めで御座いますからと返事をしたものの、されるがままに幸せの感触に酔い痴れる。

 

ああ、私は猫になる。

一刀様に抱かれて、頭を撫でられ、このまま猫になれればどれほど幸せか。

 

どれくらい経ったのか?気づけば一刀様が私の顔を覗き込まれていた。

「今日は月も居ないし、職場の方には言っとくから仲達さんお昼作ってくれる?」

「喜んで御作り致します」

そう答えると、じゃあ昼食代…って本当にこんなんでいいのかなぁと言われながら、私の頬にちょん、本当に僅かな優しい感触なのに、顔に体中に炎が走る程の昼食代を御支払い下さった。

 

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午後の業務を終えて帰る間際。

ふと思い出して引き出しをあけてみると私の破りとった一枚が残っていた。

 

行末に、『という仲達さんの希望がすべて叶う』と一文が書き加えられて。

 

 

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仲達様は良い御友人を御持ちですね、私は『このままほっときましょう』って言ったんですけど郭淮さん達が書いた内容のショボさとマジ凹みがかわいそうだと仰って一刀様にお願いに行って下さいました。良かったですね、仲達様!

そして一刀様マジ諸葛格、そこに濡れる溢れる憧れるぅ!

 

さて次は

1.催眠術にかかった演技(ど下手)で一刀様に甘えようとして以下お察し下さい

※先般ミドリガメ様から頂きましたリク「華陀の薬で身も心も少年になった一刀の面倒を見る」

をやりたいと思います。

3.天の国の習慣の「四月馬鹿」で一刀様が仲達様に向かって嘘をつきます

も多くリクを頂いたのですが、四月馬鹿ネタを本編でやってしまったので小ネタでやらさせて下さいね!

 

宿題が多いので悪戯リストは休憩ですが、オリジナルリクは随時受付中ですので宜しくお願い致します!



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司馬日記外伝 コメントで仲達様に悪戯する8

拙作「司馬日記」の外伝で、仲達さんの弟子の士季(鍾会)ちゃんが悪戯をします。


→ミドリガメ様から頂きましたリク「華陀の薬で身も心も少年になった一刀の面倒を見る」

ですよ!お待たせしましたミドリガメ様!

 

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落ち着かない。

どうにも、落ち着かない。

一刀様の前では凡そ落ち着いていた事は少ないが、とりわけ今日は落ち着かない。それは何故か。

 

「ねー仲達さーん」

「はい、何で御座いましょうか一刀様」

「ひまー」

「…申し訳御座いません。今一番将棋など如何でしょうか」

「もう飽きたー、それに仲達さん強すぎ。なんか他の事しよーよ」

 

ごろんと毛氈の上に寝っころがった一刀様の手足は私の知るものより一回り短く、そのお顔は少年のものである為だ。

 

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昼一に詠様の悲鳴を聞きつけて一刀様のお部屋に行くと、そこには少年になられてしまった一刀様がいらっしゃった。

直ぐに華陀殿が呼ばれ診て頂いたところ、別の方々の依頼で開発していた若返り薬の試作品を誤飲されてしまっているという。

なんと迷惑なと、その若返り薬の開発を依頼した者達は誰かと尋ねたが医師の守秘義務であるとして華陀殿は教えてくれず、詠様と月様が追及はしないようにと強く止められた。

華陀殿の見込みではこの薬の効果は半日から一日だと言い、別の病人を診る為さっさと退庁されてしまった。

 

兎も角三国の王と重臣の方々に詠様とともに御報告をしたところ、曹操様が『自分が保護し、秋蘭に警備にあたらせる』と御提案された。

しかしすぐに孫策様と黄蓋殿が今回このような事故を起こした魏ではなく呉で比較的時間の余裕がある自分達が預かるべきと異論を出され、それを見て関羽殿が『呉に任せては何をされるのか判ったものではないので自分で警護する』と申し出た。

すると華雄殿が『関羽こそ欲求不満を持て余してると聞く、大方いかがわしい行為に及ぶ気だろうから自分が』と言いさしたところで関羽殿が激昂し、会議が紛糾した。

 

侃々諤々とし埒が明かないと見た趙雲殿、元譲様、顔良殿、張遼殿らが実力行使で一刀様の身柄確保に及ぼうとし、それを見た詠様が機転を利かせて呂布殿に一刀様の身柄を確保させつつ今日一日呂布殿に保護させる事を御提案され、渋々ながら皆が文字通り矛を引いた。

しかし現実問題として呂布殿だけでは一刀様の身の回りの世話は出来ない上、不埒な輩を後宮に侵入させない事は困難という結論に至った。そこで三国で協議が成され、これも中々決まらなかったが比較的邪な企てを起こしにくいと考えられた者を身の回りの世話として月様、詠様、私がつけられ、警護に呂布殿のほか、許褚殿、典韋殿、公孫瓚殿、張飛殿、亞莎、周泰殿、凪、文醜殿を付ける特別警備体制が採られる事となった。

警護者が逆に襲撃者となってしまう可能性について非常に議論がなされたが、身辺においては月様・詠様と私で相互監視し、警護担当は『さんぴー』に及びにくいよう仲の良い者同士は遠ざけて配置することで回避することとなった。

 

-----------------------

 

「…一緒にお昼寝、する?」

「いーよ、眠くねーもん。詠姉ちゃんもどっか行っちゃったのかなぁ」

縁側で丸くなっている呂布殿の誘いにもにべもない。思わず月様と顔を見合わせて苦笑いしてしまう。

詠様は先程、『やばい。ボク、やばいわ。ちょっと顔を洗って冷静になってくる』と言って出て行かれてしまった。何がですかと聞くと『そんなの判ってるでしょうが、今ボクを止める奴が誰もいないようにボクには見えてるの!つまり主に理性!いいわねぇチョロ達は単純で、まあ色々判ってないからかもしれないけど』と言い捨てて行ってしまった。若干馬鹿にされていたのではと思ったが深く考えないこととした。

 

「じゃぁ、歌とかどうでしょう?」

「歌?」

月様が小さく手を叩いて御提案された。

「あの、仲達さんは歌が上手だって曹真さんが…」

「そうなの?」

なんという無茶振りだ。

 

「いえ、とんでもございません」

「え、でも私曹真さんの歌聞いて上手だなぁって思いましたから、その曹真さんが褒めるなら、多分…」

特別の音痴だとは思わないが、普段数え役満☆姉妹や袁術殿の歌を聞かれている一刀様の前で歌えるような程度の高さではない。

「あー、仲達お姉ちゃんの歌聞いてみたいな。上手そうだし、音痴ならそれはそれで面白いし」

 

仲達お姉ちゃん。

仲達お姉ちゃん。

仲達お姉ちゃん。

薬で一刀様が正常な状態でない事は判ってはいるが、一刀様の口からその言葉を聞くと背筋から指先まで喩えようのないむず痒さと手が勝手に動き出してしまいそうな正体不明の衝動が走ってしまう。

「…一刀様が御所望でしたら」

 

♪~

私の声は女性としては高い方ではなく、あまり可愛らしい声ではないと思う。

数え役満☆姉妹の曲の好きな一節を歌い終わると、月様がわーぱちぱちぱちぱちー、と手を叩かれ、一刀様が目を丸くして「仲達お姉ちゃん、すげー上手…」と仰って下さった。

お粗末様でした、と申し上げると一刀様が「あとなんか、歌が仲達お姉ちゃんのイメージに合わなくてちょっと驚いた。そういう歌、歌うんだね」

「は…」

貴方様を御慕いする詩なのですとも言えず、赤面してしまう。

 

しかし、私達は数え役満☆姉妹ではないので歌だけで一日をあるいは半日を過ごすのは困難だ。月様の点心も十分に摂られ、再び気だるい雰囲気となったところで、では中庭で弓などおやりになってみますかと伺うと一も二もなく御賛成された。

 

上手さで言えば呂布殿の方がはるかに上に決まっているが、朴訥な話し方であるのと相変わらず縁側でまどろまれているので私が教える事となった。

「上手く出来なーい!教えて!」

「はい。では後ろから失礼致します」

とりあえず一人でやってみたいとおっしゃるのでお任せしていたが、体格もあり思うように射れないようだ。一刀様の後ろから両手を添えるようにして御指導する。

「的に対して真っ直ぐに立ち、弓の高さをある程度決めます」

「うん」

「胸を張るように弓を引きます…頭が前に倒れないように。失礼します」

「…」

一刀様の顎と額を軽く起こす。

「照準を合わせて…離します」

 

ヒュン、と音がして的の手前で矢が落ちる。しかし、一刀様だけで射られたときよりも弓勢は強い。

「ではもう一回」

「う、うん…」

再び一刀様の背後にぴったりとつき弓を引き絞るが、今一つ姿勢が宜しくない。

「一刀様、少し姿勢が前屈みになっておられますので胸を張るようになさって下さい」

一刀様の両脇の下から腕を入れ、私の方へ引くように肩の辺りを押さえて抱き起こす。

「ちゅ、仲達お姉ちゃん」

「はい?」

「その…当たってる…」

「?当てるのはこれからで御座いますが…あ、いま少し体を起こす感じで、」

「…!」

あわてた様に射られた矢は力無く方向も逸れてしまった。私の教え方が悪かったらしく、多少お怒りなのか耳朶が赤く、弓はやめようと仰られた。

 

かわりにご関心を持たれたのは竹刀だった。

これも私がお相手をしていたが、受けるだけでなく打ち返して欲しいと仰るので空いた胴や面に寸止めで添えるようにしていた。しかし途中から倒されるまでやめないと叫ばれ、懸命に打ち込まれて来たため、ある程度受け流したところで足を払って抱きとめるようにしたが、顔を赤くされて再び打ちかかってこられ、打ちかかって来ては体を崩して御体を地に付けぬように抱き締…抱きとめるという事を繰り返した。

一刀様はもう息が上がっており、そのお体なりの打ち込みの速度も遅くなって来ていたが一向にお止めになられないのでつい役得、もといお付き合いしてしまっていたが十何度目かで一刀様を御起こしする際、その反動を利用されて私の足を払って縺れる様に倒された。

決して態と倒された訳ではなく不意を衝いた一刀様の見事な作戦の結果で、荒い息でやったー、と一言呟かれてそのまま私の胸の中でお休みになられてしまった。

ずっとそのままで居たかったということは決してないが其の侭でいる訳には行かず、お部屋にお運びしてお休み頂いた。

お部屋では既に詠様が戻っておられ、私の事を不思議そうに見られていたので何か御用でしょうかと伺うと、あんたホント不思議ねぇ、と仰られた。

何がでしょうかと答えると、『弓にかこつけておっぱい押し付けたり稽古とか言ってイチャイチャベタベタしてたくせに、そのままヤりたいって思わなかったの?外の連中なんかあの通りよ?』

と言いながら親指で指差す方向からは剣戟の響きと

「恋どいて!一刀ぉ、私とイケナイことしましょー!」

と言う孫策様の声と、

「いーや、うちとイイ事しよなー!」

という張遼殿の声が聞こえた。

 

成る程、そういう事か。

 

つまり少年の一刀様と、…一刀様を…一刀様と!?

あのような事を!むしろ私がお姉さんなのだから優しく手解きして!?

穢れ無き一刀様に女を教えて差し上げるなど、なんと素敵、いや不埒な!

 

(一刀様…万事この仲達に、お任せ下さい)

(仲達お姉ちゃん…)

これくらいの大人の女の余裕は必要だろう。

 

「仲達?」

 

(…如何ですか?これが、女で御座います)

(や、柔らかい…ね…それに、すごく、綺麗だ…)

言えるほど立派なものではないが、一刀様が初めてであればこれ位の事を言っても笑われないのではないか?

 

「仲達どうしたの?ちょっと聞いてる!?」

 

(そうです、そのまま、中へ…あぁ…!)

(仲達お姉ちゃん、仲達お姉ちゃんっ!!)

一刀様の少年らしい懸命さを優しく包んで差し上げなくては。

 

「仲達ー!ちょ顔赤っ、今頃思い出して照れてんの!?っていうか聞いてる!?」

 

(あぁ一刀様、一刀様っ、どうぞお心のままに、いかに激しくして頂いても構いません、仲達は、仲達は…!)

(仲達お姉ちゃん、お、俺、もうっ!)

(ああああっ…!)

いとけなくも熱い一刀様の情熱を、全身、全霊をもって受け止め―――――

なくてはならないと思ったところで視界が明滅し、倒れていく自分を理解した。

遠くで詠様が下手に聞くんじゃなかったわ、白蓮呼んで、と言っている気がした。

 

 

-----------------

 

目が覚めると、そこは宿直休憩室だった。

近くの机で事務仕事をしていた元直が私に気づいて一刀様が元に戻られたと教えてくれ、なんか色々いい思いしたらしいじゃないのとからかわれた。

若干顔に血が上るのを覚えながら倒れた事を思い出し、その後はどうなったのかと聞いたところ主に公孫瓚殿が一刀様の面倒を見たらしい。元直が「白蓮さんってあらためてすごいわねぇ、常に普通でいられるって…一刀様もすごく自然に彼女と遊んでたらしいしねぇ」と妙な感心の仕方をしていた。下着展示会の時も思ったが彼女には何か非凡なものがあるのだろう。

今度機会があれば公孫瓚殿に、どうしたら貴女の様に普通でいられるのかと聞いてみたいと私が言うと、元直が貴女そんなに白蓮さんのこと嫌いなの?いじめは感心しないわよと真顔で窘められた。

 

…何故だ?

 

 

------------------

 

あああああ!

今回は私も肝が冷えましたよ!うまく行って良かったですが!

本来はあの人達用だったはずの薬を一刀様に誤飲してもらっちゃうんですからねぇ、それにうちのババァも一枚噛んでたらしいですし…

あれ?こんな時間に誰か来客みたいなんで今日はこれで失礼しますね!



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司馬日記18

その後の、とある文官の日記です。


4月18日

総務部にも人事異動と新人の配属が行われ、士載が転属してきた。

退庁時間後に歓迎会を一席設けたところ、恒例として転入新人は抱負を述べる事になっていたが、士載は周りに煽られて『今年度中に一刀様のお手つきになる』と言わされていた。しかし士載によると、士季は警備部配属時に『今年度中に口と前と後ろで計三回は少なくとも一刀様に御満足頂く』と自主的に宣言していたらしい、なんという娘だ。

 

4月21日

公達様が曹操様の御部屋から退出されて溜息を吐かれていた所にお会いした。

何か問題でしょうかと伺うと、『いや問題って訳じゃないんだけど…明日の夜、稟と詠、あと桂花集めて一席用意しといて』と仰って事務室に戻られた。

 

4月22日

公達様が稟様たちに『華琳様悩まれてるみたいなのよね』とご相談された。今日は私は給仕係なので特に口を挟まなかったが、主に夜の事らしい。

文若様も曹操様より御相談を受けていたらしく、『そうみたいね。前に華琳様にあたしとしてるときの一刀はどうかって結構詳しく聞かれたわ』と答え、公達様は昨日曹操様に『一刀にも征服欲ってものはあるかしら』とか『魏で、いえ大陸で一番高位で高慢で理知的な女を無理やり犯すのと、従順で淫乱な奴隷にして奉仕させるのとどちらが好きそうかしら』と聞かれたという。

でどう答えたのと詠様に聞かれ公達様は従順で淫乱な(略)と答え、それに対して文若様がそんなはずはないあいつは無理矢理(略)と反駁しひとしきり議論をしていたが詠様がまあそこは多分話の本線じゃないからおいといて、華琳って多分自分の事をいまいち可愛げの無い女だと思ってるからそういう事を言うんだと思うのよね、と述べられた。

稟様がそれはあるかもしれません、以前国王会議の後で『可愛くていいわね…桃香も蓮華も』と溜息を吐かれていたことがありましたと仰り、羨ましいのよねきっと、と公達様が答えると皆がうーんと嘆息した。

何が羨ましいのでしょうか、とつい差し出がましく伺ったところ、

『わっかんないかしらねぇ…ほら、劉備って軸がぶれないじゃない?自分の一刀様への接し方に悩みが無いっていうか。それに孫権は本当に言動からして少女っぽいし、なんていうか未だに態度が処女っぽいでしょ?この二人の方向はちょっと違うけど要は女の子っぽさよ』

『桃香は一刀と同じ庶民上がりというのもあると思うわよ』

『ま、あとボクも言いたかないけどおっぱいも二人とも大きいしね』

『今までの行きがかり上堂々とは甘えにくい、又昼と同じ態度では嫌われてしまいそうで怖いともお思いかと』

と皆様が答えられた。

 

さらに一口酒盃を呷って『結局、華琳が「自分が思う自然な姿」でやれば良いんだと思うんだけどね。それにまだどうしても「自分に特別に惚れされたい」ってところも割り切れないんでしょうね。…この世で一番出来る女だけに、そのへんが難しいのね』と詠様が引き取り、散会となった。

 

皆様と別れてからの帰り道に思う。幸せに浸るばかりではなく、私は一刀様への接し方についてもう少し考えるべきなのではないだろうか。凪、亞莎にも聞いてみたい。

 

4月30日

昨日行われた一刀様の三国巡視行程会議で一悶着あったという。

護衛の人員について打ち合わせていた際、厳顔殿が蜀から呉への行程において、『蜀の誇る、三国一の狗をつけよう』と魏延殿の方へ顎を杓って発言された所、呉の孫策様が『ふうん?三国一と二の犬は呉にいるからその犬はきっと三番目ね』と応じ、それを聞いた子丹御嬢様と李典殿が『三国一とは片腹痛い、魏の二匹の犬こそが最も犬』と何かちょっとずれたような割り込みをした為だと言う。

何故か呼ばれた一刀様がその場をとりなしたが、後日いずれの犬が最も犬かをはっきりさせることで四方の合意が得られたそうだ。

しかし御嬢様は何故そのような報告を私にするのだろうか。

 

5月2日

文醜殿と研修で御一緒した。体調不良の為逃げ出そうとしたが捕まったとの事だ。

 

研修の合間の休憩時間で多少雑談をしたが、袁紹殿が一刀様と居る時間が例の件以降増えたらしい。また、最近御夜伽に三人で一刀様の元へ行く機会が減ったそうだ。曰く、「なんか姫さまと斗詩のノリについていけない」との事だ。貴女御自身は一刀様と疎遠になってしまわれたのかと聞くとそうではなく一人でだったり、最近仲の良い華雄殿や公孫瓚殿とだったりで、又昼は昼で袁紹殿らとも勿論仲良くしているという。

「昼と夜でなんか違うって言うかなんか違いがあるんだよなぁ、あたいにはうまく言えないけどさぁ」と言っていたのが印象に残った。

 

5月5日

事業進捗会議で仲徳様と文若様が口論された、先の「お兄さんとの夜の性活を十倍(略)」の件だ。仲徳様は言葉を荒げる事は無いが、珍しく一刀様以外に棘のある物言いをされていた。

会議後、文若様と血縁ながらあまり仲の宜しくない公達様に仲徳様のあの御様子は珍しいですね、と申し上げると

「二人とも自分が一刀様の一番の理解者だって言う自負が滅茶苦茶強いとこ持ってきて、お互いがそう思ってるってのが分かってるからね…これに張勲とか周瑜とか趙雲とか、おんなじ様なの連れて来たりしたらもぉしっちゃかめっちゃかよ」

と溜息をついていた。

 

月様は日頃温和だが、詠様が「下(部下)の子達に、月の前であんまあの馬鹿ちんこの事を判ったようなクチ利かさないように言っといてね。ああ見えて月、内心たまに怒ってることがあるから」

と注意されていたのを思い出した。

なににせよ私自身は関係ないだろう、一刀様の事を未だどれほども理解で居ていないのだから。



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司馬日記19

その後の、とある文官の日記です。
わんこ選手権ってこうですか?わかりません>


5月7日

夕食後に子丹御嬢様に呼ばれて一刀様の離れに行ってみると凪、亞莎、李典殿と孫策様が待っていた。

御嬢様に御用向を伺ったところ、新酒を開発しており酒利きをして欲しいという。三つの酒盃のうち一つにだけ隠し味を加えており、それが判るか私と凪と亞莎で判断するようにとの事だ。

凪、亞莎の順に試飲したところ、二人とも同じようにある酒盃を空けたところで顔を赤くして小声で李典殿と孫策様に報告し、正解と言われていた。

私は酒は嗜むが酒利きが出来る程ではないと思いながら試飲したが、二番目の盃に口をつけた瞬間、頭の中で桃色の爆発が起きたような感覚がして卒倒してしまった。

子丹御嬢様が倒れた私の胸倉を揺さぶって「分かる!?分かったわよね!?」と言われていたが、(何が起きたのか分からなかったので)分かりません、と答えた。

『何?曹真んところの犬は主人の味も匂いも知らないのかしら、これはたいした忠犬ねぇ』『こりゃえろうすんまへんなぁ孫策はん、楓(子丹御嬢様の真名だ)んとことは違てうちのわんこは百倍希釈どころか三番絞りの千倍希釈でもわかりまっせ?』

『違うのよ!どう見たってこれ反応してるじゃない、この娘飲んだこと無かったから分からないって言っただけなのよ!』

などと話されているのが聞こえるが体の高揚と動悸が収まらず、無性に一刀様にお会いしたくて堪らない。

 

『あー居た、雪蓮!あんなもんお猪口に入れてってどうする気…あれ、あの仲達さんちょっ力強っ!?凪、待った凪待った!?亞莎も何、何があったの!?脱げる脱げちゃうってば!』

『ああもう一刀様っ、どうしてこの娘飲んだ事も無いんですか!ちゃんと御責任持って飲ませてぶっかけて、匂いと味とを体に染み込ませて下さいねっ!もう凪も呂蒙さんも一緒でいいですから!』

『意味わかんねぇ!?』

そんな事を一刀様と子丹御嬢様が話されているようだったが、その後の事はよく覚えていない。

 

5月8日

昨日の日記の最後は嘘だ、忘れようがない。

 

全裸に上掛けを被ったままの状態で目が覚めた、既に一刀様はいらっしゃらなかったが程なく凪と亞莎が似たような状態で目を覚ました。

足腰が立たず、間が持たなかったのでおはようと言ってみた。

『これで(味とか匂いとか)、分かりました…?』と凪に聞かれたので、分かったが恥ずかしくて死にそうだと答えた。

凪は(味も匂いも)慣れますからと言い、亞莎は(他の人と一緒というのは)私も誰とでもとかは無理です、と言った。

まだ突っ伏している私に『「かけて下さい」くらいは、普通…?ですから…』という凪の慰めが余計に痛かった。

 

5月11日

仲徳様に呼ばれ、先の『お兄さんとの夜の(略)』の件について、参考の為各国の事務方になるべく極端な『ぷれい』の例を聴取してくるように言いつかった。又予算は三国共同事業であった後宮整備計画の魏の負担追加で対応するとの事だ。

元直、子敬に聞いてみよう。

 

5月13日

珍しくと言っては失礼だが元直の機嫌が良かった、夕べが御伽番だったらしい。

仲徳様御指示の件を相談したところ、趙雲殿か厳顔殿が詳しくてしかも教えてくれるのではないかと言う。

余り友人の生々しい話を聞くのもどうかと思ったが、ふと気になって元直はどのようにしているのかと聞いたところ、『ん~…あまえんぼプレイ?主に仕事に疲れたお姉さんが甘えるんだけど』という回答だった。

それはいったいどんなだ。

 

5月15日

事業経費で酒とメンマを購入し、趙雲殿に面会の約束を取り付けて伺ってみた。

曰く、(警備部という仕事柄)割と詳しい方だと思うが割と普通の者が多いと思うとの事だ。

むしろ、あんなところやこんなところでも見境無くそれがしの体を求められいやはや主殿にも困ったもので云々と自慢話の方が多かった。あとは「華蝶仮面」なる謎の美女に御執心であるという。

気になる点としては諸葛亮殿や龐統殿が自身の年を考えず容姿だけを恃んだ「似非幼児ぷれい」が痛々しいだとか、黄忠殿の娘御が昨年から非常に発育が良くなっている上にいずれやる気が満々過ぎる位で、旧蜀の者については厳顔殿に聞く方が良いと言う。

後は有名どころで言えばと趙雲殿が言いさしたところで酒楼の襖がすぱーんと開けられ、『失礼ですが話は全て聞かせて頂きました!』

『司馬懿様を、蜀の誇る変態ぷれいの女王の元へお連れ致します!』

と例の近親上等☆姉妹が現れた。

正直げんなりしたが、趙雲殿が折角なのでついて行かれるがいいと言われたのでついて行った先は馬超殿の御屋敷だった。しかし、

『ん?玲紗と藤香(関平殿と劉封殿の真名)じゃねーか、どうしたんだ?』

『さあ司馬懿様!この翠様こそ三国一の変態ぷれい、一刀様もドン引きのお漏らしぷれ『いいきなり何言い出すんだお前らはぁ!!??』

『斯く斯く然々で司馬懿様が変態ぷれいの使い手をお探しと聞いて』

『あああああっあたしのは好き好んでじゃねー体質だぁ!!!当たり前に親子丼やるおまえらに言われたくねぇよ!!!』

『翠様だって姉妹丼やってるじゃないですか、何が違うと言うんですか!!』

『それに璃々ちゃんだってやる気満々ですよ!いずれあの子やりますよ!』

『よその人の前で洒落にならなくて突っ込みにくい話はやめろぉ!!』

と喧嘩を始められてしまったので帰る事とした。



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司馬日記外伝 コメントで仲達様に悪戯する9

拙作「司馬日記」の外伝で、仲達さんの弟子の士季(鍾会)ちゃんが悪戯をします。


→1.催眠術にかかった演技(ど下手)で一刀様に甘えようとして以下お察し下さいをちょっと改変

 

※司馬日記16 の2月15日「馬鹿には利かない向精神薬」

http://www.tinami.com/view/449496

後のお話となります

 

皆様こんばんは、私は曹真字を子丹、真名を楓と申します。

幼少より親しくしております仲達を、一人前の女に仕立てたいと思っておりますがなかなかにこれが駄目娘。

催眠術というわけには参りませんでしたが仲徳様の御企画に乗って、少しでも彼女の殻を破れればと思い被験者として名乗りを挙げさせたのですが…

 

--------------------

 

私も被験者になりますが、と申し上げると仲徳様は暫く私の顔を見ていた後に稟様の方を向き、稟様は残念なものを見る目つきで私を見ていた。

 

(どーですかー?稟ちゃん)

(仲達はまあ仕事はかなりきつい量頑張っていますからやらせてあげても良いと思うんですが、兎に角この娘そういう方面に機転が利かないんですよね…)

(まあそれならそれで面白いですしー。そうだとしてもお兄さんならきっと何とかしてくれるのではー?)

(…まあそれもそうですね)

 

稟様はこほん、と一つ咳払いをしそれでは仲達にも被験者になって頂きましょうと言われ、んーと少し考え込まれた後に再度御説明をされた。

「いいですか仲達?この薬は精神疲労を軽減又は解消してくれるもので、肉体的には逆に疲れる事もありますがまあそこはいいでしょう。重要なのは一時的に人格が変わってしまっても何らおかしくないという事、更にその最中の記憶を失ってしまう事、そして一刀殿に立会い頂くつまり二人きりとなると言う事なのです。判りましたか?

加えてこの薬の開発者の一人は一刀殿です、一刀殿は仲達の事は馬鹿ではないと言っていましたからこの薬が仲達に効かなければ一刀殿の見込み違い証明してしまう事となり即ち一刀殿を愚弄する事に他なりません、つまり言い換えればこの薬は必ず効かなくてはならないと言う事なのです。更に言うならばこれはあくまでも噂ですが、一時的に変わってしまうという人格は凡そ本人が日頃なりたいと思いながらもなれない、ですが一刀殿に甘えるには都合の良い人格らしいです」

「例えばそういう稟ちゃんははだえぷ新婚ぷれ「余計なことは言わない!…まあ、そういうことなのです。流石に判りましたよね?」

 

そう念を押す稟様に大変良く判りました、つきましては薬の服用前の飲食等の制限はあるでしょうかと伺うと「い、今まで何を聞いていたのですか!!馬鹿ですか!?馬鹿ですね仲達は!?」と怒り出されてしまった。

それを仲徳様がどうどうと宥めつつ、直前の食事で大蒜やら韮やらはやめた方がいいですよー、あと少量の酒で飲まれた方が良いかもしれませんねーでははいこれ薬ですー、と言いながら去って行かれた。

 

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正直不安だ。

 

この設定、風から提案された時は日頃ストレス溜めてる人の為にはいいかもねぇとか言って乗ってみたけど結構しんどい。

だってみんなテンション高いんだもん、秋蘭とか詠とか稟とか華琳とか。

それにそのテンションと裏腹に『これでドン引きしたりしたら泣いてやる』オーラが物凄いからこっちもノるのに緊張するんだよなぁ…嫌いとかイヤとか言う訳じゃないんだけど。

というか秋蘭が超ニコニコで「ほら一刀、秋姉ぇがご飯食べさせてあげような!その後はお風呂で綺麗に洗ってやるからなっ☆ミ」とかはっちゃける程にみんなストレス溜め込んでる事を思うとこっちもノリノリで応えないとって真面目に思う。

 

しかしだ。

大体この設定ノる人ってみんなその、『とぼけて役に乗る』事が出来る人たちなんだが

真面目が服着て歩いてるような仲達さんって、そんなこと出来るのか…?

おっと来客だ、約束の時間からして仲達さんか?

 

 

「し、失礼致します…」

困ったような表情。

額に浮かぶ汗。

どう見ても素。

 

 

(やっぱだめだったー!!)

 

 

沈黙約30秒。耐え切れん。

「あの、えーっと仲達さん?あの無理しないでも」

「か、一刀さんっ?」

「はいっ?」

聞き慣れない呼ばれ方に素っ頓狂な声で返事をしてしまった。

そこには微妙に笑顔を作ろうとして作りきれない仲達さん。

 

「きょっ今日は!お姉ちゃんが好きなだけ甘えさせてあげますよっ…?」

「………………(は?)」

 

な ん で す か そ れ 。

 

仲達さんは腰に拳を当てて胸を張りながら。でも顔は口元がひくつきながら微妙に泣きそうな笑顔で、ってちょっとまったマジ泣き二秒前!?

 

「わ、わーい!嬉しいなぁ!?」

 

危なかった!今マジ危なかった!!

子供のように両手を挙げて喜びを表現すると仲達さんの表情がぱぁあああと明るくなる。でも目尻にちょびっと涙の跡。

 

「わ、わーい…」

さてどうする、仲達さんの顔にはどう見ても『どうしようこの先何にも考えてなかった』と書いてある。

「そ、それじゃお姉ちゃん!俺、お姉ちゃんの淹れたお茶が飲みたいな!」

「!…は、はい、一刀様」

いそいそとお茶の用意をしてくれる仲達さん、貴女素に戻ってますよ素に。

 

「御用意出来ました、一刀さ…出来ましたよ、一刀さん」

「うん、有難う」

気づいたらしい。

しかしここまでのやりとりから察するにつまりアレか、仲達さんはお姉ちゃんキャラになりたいのか。むしろ素のままで優しいお姉ちゃんじゃないのか?

 

居心地悪そうな笑顔を向けて、特に何も話さない仲達さん。

『お姉ちゃん』と言うテーマだけ与えられてネタ無し無茶振りとな…謀ったな風め。

とりあえず、会話を切らさないようにして…

「そういえば…お姉ちゃんらしい人って、仲達お姉ちゃんくらいだよなぁ」

「…そうで…そうかしら」

もーいっそフランクな話し方難しいなら普段通りでもいいのに。

「うん、意外と居ない。強いて言うなら秋蘭と冥琳くらいだけど、どっちも優しくも厳しい姉って感じだし」

「…目上の方という事でしたら、」

「オーケーその先の名前は挙げなくていい。今仲達さんが言おうとした人たちはお姉『ちゃん』って感じじゃないんだよなぁ。『嫌いとか頼りにならないとかではないんだけど』『むしろ好きなんだけど』」

「はあ…あの、一刀さ…さんはどちらに向かって言っているのかしら?」

「弓矢が降ってくる方向。まあ気にしないで」

 

おっとまずい、つい仲達さんって呼んじゃった。あとは…なるべく得意そうな分野から攻めてみるか。

「そうだお姉ちゃん、ちょっと勉強教えてよ」

「勉強…ですか?」

「うん、とりあえずこの上下水整備計画答申書から。上水を引いてくるのは分かるんだけど、下水はやめて浄化槽の方がいいっていうのはなんで?」

「あ、それはですね…」

食いついた。沙和とか桃香みたいな女の子っぽい引き出し少なめかなとは思っていたけどこれで正解だったらしい。

 

「そんなわけで、こちらの方が経済的な訳なのですよ」

「へーそうなんだ。仲達お姉ちゃん、物知りなんだね!」

うふふと微笑む仲達さん、だいぶ余裕が出てきたみたいだ。しかしこれでまあ、だいたい御満足頂けたか?多分仲達さんは暗に『ヤッていいんだ』っていう風の意図もわかってないようだし、正直俺少し疲れたし。

 

「ふぁ…俺、なんだかちょっと眠くなっちゃったよ」

「そうですか、それでは臥所の方へ行きましょうね」

「うぁ!?」

「ふふふ、怖かったらお姉ちゃんに掴まってて下さいね」

お姫様抱っことはこの仲達さん、いつの間にやらノリノリである。まあ何メートルもない距離を抱えられて、寝台にそっと降ろされた。

 

「ではゆっくり休んで下さいね。お水を飲みますか?」

「ううん」

なんだかホントに少し眠たい。

「…お姉ちゃんが子守唄を歌ってあげましょうか?」

「あはは、いいや」

瞼が重くなってきたし。

「…い、いつもみたいに添い寝、した方がいいですよね…?」

いや、いーよと言いかけてはっと目を開けるとさっきまでの仲達さんはどこへやら、捨てられた仔犬ばりにもう涙目かよ!

 

「う、うん、お姉ちゃんに添い寝して欲しいなー。お姉ちゃんが居ないと眠れないよー」

「!…し、仕方がありませんね、寝るまでですからね」

「うんありがとう」

…仲達さんが嬉しそうで何よりです。まあその為のこの企画ですからby風。

 

「…一刀さん…。よく眠れるように、ぎゅっとしてあげますね…?」

「…うん、お願い」

語尾が「してもいいですか」にしか聞こえないんだが…

メイド服の上からでも荒ぶるお胸に頬が押されるのが心地良い。なんか良い匂いするし。

 

(…………)

(…………)

頭の上から、規則正しく仲達さんの息が聞こえる。

 

(…………)

(…………)

規則正しい仲達さんの……嗅がれてる!?髪の匂い嗅がれてるっ!寝息にしちゃ長い絶対長いよこの呼吸!

 

(…………)

(…………)

これ恥ずいぞ…!しかし風呂入ってきてよかった、これ風呂前だったらマジ死ねる。

いままでいい匂いだし褒めてるんだからいいじゃないかとかいって嗅いだ皆御免、あの時ビンタくれた翠、君は正しかった!これからは風呂後かを聞いてからにするよ!

 

(…………)

(どうする…寝たふりばれたら絶対泣かれる…しかしこのままも精神的にしんどい…)

 

(…………)

(…………)

ふう…と仲達さんが一際長く色っぽく息を吐いたのが聞こえた。御満足…なさった?

 

(…………)

しばらくすると、唇にちょんと何かが当たる感触がした。

間をおいてちょん、ちょん。

そして唇の隙間に柔らかい何かが、申し訳なさげにちろちろと侵入しては戻っていく。

 

いや何されてるのか大体分かってますけど!起きろってこと?起きろってことかな!?でもここまでやっといて起きたらきっと泣くんだよねこのお姉さん!

 

ようやく唇への攻撃が止むと、静まり返った寝台でかすかに衣擦れの音が聞こえた。仲達さんが寝返りをうったのかと思ったが、依然近くにいる気配がする。

 

ん…くふ…ふうっ、と押し殺した吐息と、くちゅくちゅと水っぽい音。

(お姉さん一人で始めちゃったー!)

 

難儀だ。普段真面目で恥ずかしがり屋なだけにこのお姉さん本当に難儀だ。このまま寝た振りでもいい気もするけど…

 

(ま た 生 殺 し で す か ? 飼 い 犬 に は 餌 を や ら な い 主 義 で す か ?)

楓(子丹の真名だ)のジト目が脳裏に浮かぶ。

それにこの、優しくて「可哀相可愛い」お姉さんを、嬉し泣きさせるまでかわいがりたい。

 

隣で絶頂を極めて脱力した彼女に、『俺…、仲達お姉ちゃんの事が』と覆いかぶさった俺はきっと風と楓の思う壺なんだろう。

 

--------------------------

 

「零点です」

「零点以下ね」

「これはひどい」

「…………はぁ…」

子廉様、子孝様を呼んで仲達を肴に、もとい『反省会』をやりましたが…今回は一刀様におんぶに抱っことしか申しようがありません。

 

「楓、これが仲達なりの誘い方だったのかもよ?」

「本人目の前にして、髪の匂いで一人上手とかがですか?」

「斬新ね。しかしこの娘、処女の頃なら家に帰ってから一人でしてた事を思えば長足の進歩とも」

「………(…帰りたい)」

皆で頭を悩ませていますが、何故かお酒ばかりが進んでしまいます。

 

「…いっそもう大人の女は諦めて、チョロ子として売り出していくべきかしら」

「そうね、その方がチョロ達的には芽があるかもしれないわね」

「でもただの狗としては楽進がいるから、どうしてもお姉さん属性は私は欲しいと思うのよ」

「…………(…チョロ子とかチョロ達とは誰のことだろうか…)」

 

なんだか仲達の元気がありませんので、『馬鹿にしか効かない向精神薬』を使いましょう。

「でも仲達、抱いてもらって幸せだったんでしょ?一刀様、仲達お姉ちゃん可愛いよって言って下さったんでしょ?」

「…は、はい!私、幸せです…。一刀様も、可愛いって…仰って下さいました」

頬に手を当ててぽうっとする彼女を見て、おそらく三人とも同じことを考えたと思います。

 

「「「(………チョロ達)」」」

好い女への道は険しそうです。

 

------------------------------

 

今回は子丹様にお願いしました、まあ実質仲達様の自爆なんですけどね!

さて、次は小ネタ『天の国の習慣の「四月馬鹿」で一刀様が仲達様に向かって嘘をつきます』と頂きましたオリジナルリクのうちのどれかをやりたいと思います。

 

宿題が多いので悪戯リストは休憩ですが、相変わらずオリジナルリクは随時受付中ですので宜しくお願い致します!



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司馬日記20

その後の、とある文官の日記です。


5月17日

再び酒を手配し、厳顔殿を訪問して蜀の面々で特異な『ぷれい』をされている方はいないかを伺ってみたところ、真面目くさった顔でそんな事を聞かれるとはのうと目をまるくされながらも御教示頂いた。

『そうじゃなあ、王累という娘がおるんじゃがあれは大概じゃの。魏にも縛られて興奮するという輩がいるとは聞いているが、あの娘は宙吊りにされたままするのが好きな変態じゃと黄権が言うていたな。

あとは鄧芝かの。あやつは至極に口戯が好きなようで御館様のものなら一晩中でもしゃぶっていられます、それだけで何度でも絶頂出来ますとか豪語しておった。それにその舌技に余程の自信を持っておって、孫権の前で御館様のを絶妙にアレして感心させたと聞くぞ。まあ実演を依頼する孫権も孫権であるし押し切られる御館様も御館様だがの』

とのことだ。しかしそれとは別に

『張任という娘がおるんじゃがこれがどうしても桃香様と合わないらしくてな、「私は御嬢様(劉璋)の臣であり劉備の臣ではありません」と言って聞かんのじゃ。旧蜀ではとびきり優秀な娘なんじゃが季玉よりも下の官位にしかできんから使い道が無くてなあ。本人に聴いてみたら「御嬢様の旦那様でしたら私にとっても主人です、如何様にでもお仕え致しましょう」と言うんで、こっち(中央)で何ぞ御館様直轄の仕事を用意してやれんか?』

と依頼を受けた。劉備様の御了解を頂いた上で御本人の資質を確認させて頂き、検討させて頂きたいと回答して辞した。

 

次は呉だ、子敬に聞いてみよう。

 

5月20日

子敬と飲みに行きがてら例の件を聞いてみた。

『えー…それやっぱあの人じゃないの?ちょっとあたしの口からは言い難いんだけど』と思い当たる人物は居るようだが教えてくれず、ちょっと考えてから周泰殿に聞いてみるように言われた。またそういえばと言いながら、

『幼平と言えば、ローションプレイが一番上手いのは幼平と公奕(蒋欽)みたいよ。あと子布(張昭)さんはムッツリ、超ムッツリ!なんか昼間は一刀様の前じゃ殊更自分は真面目ですやらしい事なんか嫌いですみたいな態度のくせに「一緒に御伽したけど乱れっぷりは凄かった」

って子綱(張紘)さんが言ってたわ』

と付け加えてくれた。

 

張昭殿は一度お会いした記憶では謹厳実直を絵に描いたような方だったはずだが、そういった方でもそのようになるものなのか。

ふと思い出して元直と同じように、貴女はどうなのかと聞いてみたところ、

『私?んー…深夜の職場で声を殺してするのがドキドキするわねぇ。一回目はそうゆう所でこっそりして、二回目は寝所でゆっくりしてもらうのが好きかな』

という。呉の職場の面々も迷惑なことだろう。

 

5月22日

周泰殿に面会し、先の子敬の件を伺ってみた。言いよどんでいるようなので子敬に言われた通りに「詰まらない物ですが」と経費で購入した猫の縫い包みを差し出したところ、

『それは思春殿のことだと思います!最近の思春殿は必ず一回目は一刀様を死角から押し倒し、一刀様を押さえつけて馬乗りになってなさいます!それで、二回目は「ふん悪かったなかわりに次は私を好きにすればいいだろう」というようなことを言って今度は自分の手足を一刀様に縛らせて後ろからされるのがお好きです!そして三回目は正面から一刀様にしがみついて、接吻したまま「一刀、好き!好き!」と何度も言いながらされます!思春さんは何と言っているか聞かれていないと思われているようで、うっかり一度口が離れてしまってもろに「好き」と一刀様に聞かれてしまった時は「違うからな!違うからな!?蓮華様の御体の負担を減らすためにしてるだけだ!」と言って一刀様を殴っていました!加虐趣味と被虐趣味と歪んだ愛情表現を兼ね備え、さすがにこれは私から見ても弁護のしようも無く異常なぷれべっ!?』

と笑顔でまくし立てていたが疾風のように現れた甘寧殿に背後から殴り倒された。

甘寧殿は真っ赤な顔で今明命が言ったことは全て嘘だ、忘れてくれと言いながら昏倒した周泰殿を引きずっていかれた。

 

あっけに取られてしまったが、一刀様に力づくで行為に及ぶことや殴る等の乱暴を働く事は三国の申し合わせで禁止されているはずだ。

夜の影響が大きいとの噂もあるがあの元譲殿でさえ一刀様に手をあげることは無くなったと聞いているし、うっかり反射的に手を出してしまったという馬超殿もその時に御伽番一回飛ばしの罰を受けている。

真偽の確認が必要と思われる旨を公達様に御報告しておこう。これは私的に許せないと言うことではなく安全管理上重要な問題であるためだ。

 

5月24日

今日は賞与の支給日だった。経済の参考書でも購入しようかと思い退庁しようとしたところ、子丹御嬢様らに拉致され連れて行かれた先は衣料店だった。

いや、正しく言えば特殊な衣料店で品揃えの半分以上が下着なうえ、透けている、胸が隠れない、とんでもないところに切れ込みが入っている等どうみても普通でないものばかりだ。郭淮と張郃が、「さぁ仲達、どれがいい?」などと言うがどうしろというのか。

仕方がないので下着以外の衣料を見ていたがどれもこれも日常的に着るとは思われない服ばかりで、三国合同塾の制服まであった。よく見ると値札に紹介文らしきものが書いてある。

『合同塾 教師用(大中) あの眼鏡軍師様も御愛用!貴女は魏派?呉派?』

『合同塾 学生用水着(中小)●様仕様 ”一刀が離してくれないの” 王様みずから威力を証明済み!』

『華蝶仮面(赤) ”愛と性技の使者、嗜好の一品” 妖しい魅力で一刀様を翻弄するも、捕まっていけないお仕置きを受けるも貴女次第!?系列商品の連者も御座います

『ごすろり(中)馬岱様仕様 ”すごく良かったよ!背中の留め金で半脱ぎにするのも簡単で、これだけで三回もしてもらっちゃった!”←試供品を御提供致しました馬岱様より御感想を頂きました!』

『作業服(中)李典様仕様 ”脱がんでも手やらアレやら色々入るから寒い時期は便利やで”

←試供品を御提供致しました李典様より御感想を頂きました!技術系の貴女に!※胸元寸法は調整致します』

『璃々様服(小) ”ねえご主人さま、もうこの服小さくて着れないよ” あれは違法ですがこれは合法!貴女の魅力を際立てます』

 

…最後のは問題無いのか?

 

特に買えるものが無いというと御嬢様らは非常に不満げであったが、店員が李典様より開発試作品を預かっており、『寸法の合う方に、展示会での着用と感想の報告を条件として無償提供したい』と言付かっていますが如何でしょうかと白い水着を提案してきた。

極端に布地が少ないわけではなく透けもせず、私の体型と凡そ合っていた為提供を受けることとした。

御嬢様が店員となにやら話し合った後に生温かく微笑みながら、展示会の後、一刀様に温泉等二人きりの時に再度御披露目する事と指示を受けた。



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司馬日記外伝 コメントで仲達様に悪戯する9.5

拙作「司馬日記」の外伝で、仲達さんの弟子の士季(鍾会)ちゃんが悪戯をします。


小ネタ『天の国の習慣の「四月馬鹿」で一刀様が仲達様に向かって嘘をつきます』ですよ!

 

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「難しいんじゃないかなぁ」

「そうでしょうか…」

曹真子丹こと楓が可愛らしく小首を傾げるが、 それが俺の率直な感想だ。

 

「だって多分仲達さん、俺が何言っても全力で信じて全力で喜んで全力で泣くでしょ?かわいそうだよ」

「それはまあ、そうですが…」

「 特にこの第二案とか、『あ、仲達さん?申し訳ないんだけどさぁ、もう御伽番から外れてくれない?俺、鮪女は面倒臭いからイヤなんだ。あと無駄にでかいところも』…ってこんなの仲達さん聞いたら自殺しちゃうだろ!君ら本当に仲良しなんだよな!?」

「一旦絶望してから嘘だったと聞いて嬉し涙を流して抱きついてくる仲達、見たくありませんか?」

「可愛いかもしれないけどその前にかわいそうだろ、却下です」

なんか仲達さんの友達って、皆仕事以外だと彼女をネタにしたがるんだよな。

 

「はあ、判りました…。ですが折角の天界の行事ですので、何かしら仲達で遊…もとい仲達を構って上げて頂けないでしょうか?」

「何か今本音を垣間見たような気がするけど、そうだねぇ…」

真面目な仲達さんが信じて、後で嘘だったって判っても死ぬほど泣かれたりがっかりしたりしないようなのっていったら難しい。

「……じゃあ、こんなのは?」

 

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「失礼します、仲達です」

扉を二度軽く叩き、お部屋へと伺う。

「ああ、仲達さんいらっしゃい」

急ぎのお呼びと伺いましたがと申し上げると普段の柔和な御顔を引き締められ、隣へ座るよう御指示を受けたので御傍に急いだ。

 

「実は、折り入って話があってさ。真面目な」

「はい」

一刀様のお顔が近く、胸が高鳴ってしまう。

「仲達さんにだけは、話しておこうと思って…実は、仲達さんとこの士季ちゃんと士載ちゃん…いや士季と士載は、俺の生き別れの妹なんだ」

「は………」

あまりの事に、思考停止してしまう。

「こちらの世界に来たときにはぐれてしまって、士季は元常さんに保護されていたことが割りと早くに分かってたんだけど…士載が汝南に居るって分かったのは最近で、仲達さんの所に居るのは何かの縁だと思う。二人とも俺の妹だって事は世に明かさないで欲しいって言うので、出来れば仲達さんにもそれはお願いしたいな。まだもう暫く、二人がお世話になるけど宜しくお願い頼むよ」

 

………なんということだ。

 

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「………一刀お兄様がお話なさったのであれば、最早誤魔化す理由はありません」

「し、し、士季ちゃん!?」

自室に士季と士載―――いや、士季様と士載様をお呼びし、貴女達は一刀様の妹御なのかと尋ねたところ、二人とも、特に士季は「頭湧きました?」といらっと来る顔で否定していたが、一刀様に伺ったのだがと言うと士季様がしおらしく佇まいを正して認められた。

 

「…知らなかった事とは言えお二方に一刀様の臣として御成長頂けるようにと思い厳しく接させて頂き、時には厳しきに過ぎた点も多々あったと思いますが平に御容赦下さい」

「あっ、あっ、あのっ、わ、わたし、違むぐ」

「ええ、本来でしたら今までのお礼に私とお兄様がギシギシアンアンらぶらぶちゅっちゅやってる目の前に手足縛って転がして一晩放置プレイ位したいところではありますが、お兄様の意向がありますのでこれからも変わらぬ御指導御鞭撻を御願い致します。その代わりといってはなんですが、このじたばたうるさい姉についてですが」

「むぐ?」

「はい」

なにか怖ろしい事をさらっと言われたような気がするが、士季様が口を押さえて抱えている士載様の方を見やった。

 

「妹の私は無事にお兄様のお手つきになり、前に後ろに、口に顔に体中と幸せまみれにして頂いていますがこの姉は、未だ御夜伽に呼ばれずエロく熟れはじめた体を持て余し、お兄様をオカズに毎晩欠かさず手淫に耽る寂しい日々はまるでかつての誰かのよう」

「むっ!?むぐーっ!?むぐーっ!!」

士載様が顔を真っ赤にして暴れようとするのを士季様は器用に押さえつけて続ける。…士載様が夜な夜なそのような事をしていたとは…士載様も、その誰かという方も可哀想に。

「つきましては仲達様、仲達様からもお兄様に姉をお召し頂く様にお願いして頂けないでしょうか?」

 

「………………!」

 

 

 

「…という士季様の御希望も御座いますので、何卒士載様にも、肉親であればこそ士季様と変わらぬ深き御愛情を…」

「ごめん楓、この展開は読んでなかった」

「近親な時点で気づくんじゃないかと思いますが、このへんの盲目っぷりは流石仲達ですねぇ…」

 

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いやぁ一刀様美味しいマジ美味しい!でも事前に教えて下さってたらもっと色々仕込んでおきましたのにああんもう!

 

さて次は今まで頂いたリクから行きますが、その次の候補です!

1.絶対にデレてはいけない24時

2.各国子女の体験学習受け入れ~ですから夜伽は業務ではありませんと何度(略)~

3.陳琳さんが『三国志 魏志』第五巻の為の取材をしたいそうですよ(嘘)

4.もちろんその他リク頂けると有難いです



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司馬日記21

その後の、とある文官の日記です。


6月1日

仲徳様に呉蜀の特異なぷれいについて御報告した。

流石種馬のお兄さん大概のプレイは実施済みですねー、まぁ風とキャラ被りしてる人さえいなければどーでもいーですがと呟かれながら報告書に目を通されていた。

おおよその設備は合同塾の増築棟に盛り込み済みだが、ぷれい用に部屋の鍵を追加するようにとの指示を受けた。竣工までに変更が間に合うだろうか。

 

6月4日

士季が、警備部に周泰殿に代えて蒋欽殿が配属されたと言っていた。周泰殿が全治一ヵ月ほどの急病となり、その間の代理だという。ついこないだまで明命さんピンピンしてたんですがねぇ、と士季が首をかしげていた。

周泰殿と言えば先日の件を公達様に報告しなくては。

 

6月7日

夏季の服飾展示会の下打ち合わせが終わり、帰ろうとしたところ展示室が一室増えて四室になっている事に気がついた。 室の案内板を見ると甲乙丙に加えて璃という室が出来ていた。

 

はてと思い、中はきゃあきゃあと妙に騒がしい室の入り口近くで談笑されている人々を見たところ、馬騰殿、劉表殿、向朗殿、陳桂殿、朱治殿、凌操殿、全琮殿に黄忠殿であった。所属もばらばらで特に親しいと言う事も聞いた事が無い人々が集っている事に違和感を覚え、暫く考えたところまさかという思いと共にある共通点に気づき、背筋を冷たい汗が流れた。

 

呆然とその方々を見ていると、「紫苑さま、璃々ちゃんが胸の寸法が合わない様なので見て頂けませんか」と言いながら室から出てきた人物が伯達姉様だったのを見て眩暈した。

姉様その部屋で一体何をと声をかけようとすると後ろから子孝様に肩を掴まれ、いいからほっときなさいと耳打ちされた。更に中から

「やだやだ私も!ごすろり透け透けぱんつじゃなきゃやだー、ねーお母さーん!」

と言う声にしようが無いなあの馬鹿娘はと言いながら室内へと消えていく馬騰殿を見ながら、自分でも分かる掠れかかった声でしかし、と申し上げたが「あれ貧乳党どころか王様達だって介入出来なかったのよ、ヘタに関わると最悪首まであるから手ェ出さないでよね」と言われながら引きずられるようにして会場を後にした。

 

その日の自宅での夕食では六女、七女の恵達と雅達が機嫌良く伯達姉様と談笑しており、八女の幼達が不貞腐れきった表情をしていたのを見て私は何を言えば良いのか判らなかった。

 

…悪い想像が当たらない事を切に望む。

 

6月11日

上司である公達様に先の周泰殿の証言について報告し、三国事務会議で真偽の確認が必要ではとの意見を具申したところ、三国会議で変態プレイを公開処刑とかあんたホント一刀様絡むと鬼ねと半眼で言われた。

加えて、「子敬さん呼んで、孫権様経由で今後やめさすのと一回飛ばしで話しつけとくからそれで勘弁してやんなさいよ」と言われ、一刀様への粗暴な行為が無くなるようでしたらそれで宜しいかと思いますと答えた。

 

また元直に厳顔殿から依頼された張任殿の件について相談したところ、彼女は有能であるがどうしても桃香様の下では無理そうなので王都直轄に出向は良い案だと思う、との事だ。近々に劉備様に御相談することとした。

 

6月15日

元直と共に劉備様に張任殿の異動について打診したところ、残念そうであったが御諒解頂いた。あわせて、張任殿と親しい劉璋殿らも蜀所属のままでも王都に異動させてはどうかという御意見を頂き、元直は楊懐殿と高沛を候補に挙げ検討するという。

この件は元直に引き継ぐ事とした。

 

6月20日

夏季の服飾展示会が行われた。

今季は特段の種別は無く、多様な展示が行われた。倶楽部活動という合同塾の課外活動用制服が多く展示されていた他、姜維は少し歩けば下着が見えてしまうような警備部の制服もどきを着せられており、叔達は『丙』の間でそんないかがわしい服の看護師が居てたまるかというような出で立ちだった。

私は例の白い水着を着た。下着では無いので前回ほど恥ずかしくはない…と思いたかったが、今回は妙に視線と『ほらあれがお風呂で』『川に入ると』等とひそひそ話す声を感じた。一応姿見の前で確認してから出てきては居たので、特段おかしい所は無い筈だが。

 

先日気になった『璃』の間は閉められており、『酉の刻より。一刀様及び関係者以外立ち入り禁止』の札が掛けられていた。酉の刻(18:00)以降と言うことは甲乙丙の展示が終わった後だ。

…………気になる。

 

6月29日

合同塾の増築棟が落成した。

元々は下級・中堅官吏の研修を主目的とした建設であったが、武芸鍛錬や、各国子女の教育の為の教室や会議室、工廠分室等が追加され、山岳を含んだ極めて広大な校庭も整備された。

財政規模、行政の事務量共にうなぎ登りではあったので事務室・会議室の増加は有難い。

 

7月1日

本日付で一刀様直轄の御生活指導及び管理係の任を解かれ、同じく直轄総務室付きとなった。一刀様の御生活が安定し、また王都に関わる事務量が増加した為と辞令にはあったが、御生活の生の字が『性』と誤記されていた。皆業務繁多ではあるが辞令の文字くらいは正しく書いて欲しいものだ。

室長は月様、副室長が詠様で、蜀からは元直ら、呉からは子敬らが配属された。

魏の総務部との兼任を外して頂けないか公達様にお願いしてみたが、馬鹿言わないでと一蹴されてしまった。

総務部に異動されて来た子丹御嬢様と、同僚や士載の頑張りに期待したい。



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司馬日記外伝 誰得?秋得!

秋蘭さんです。頂いたコメントについむらむらして書きました。


司馬日記16 の2月15日「馬鹿には利かない向精神薬」

http://www.tinami.com/view/449496

を秋蘭が服用したお話。なおごはんは省略した模様

 

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「ただいま一刀!お姉ちゃんが帰ってきたぞー!」

「うわぁ!?」

部屋の扉を開けるなりロケットダイブしてくる秋蘭をなんとか抱きとめる。

「んー一刀、お姉ちゃんが居なくて寂しかったか?寂しかったな?!」

「う、うん」

「もうこの部屋で二人きりだからな、いつもみたいに『秋姉ぇ』って呼んでいいんだぞ?」

「そうだね、秋姉ぇ」

設定の呼称は秋姉ぇですか、超ニコニコで頬擦りしてくる秋蘭は可愛くもあるが圧倒される。

「でも塾では先生と生徒だからな、公私の区別はしっかりつけろよ?お姉ちゃんがいくら好きでも抱きついたりしちゃ駄目だぞ!ああそういえば都市計画の講義の時間、一刀お前私のおっぱいばかりみていただろう!?もう本当にお前はお姉ちゃんのおっぱいが好きだな、でも塾では駄目だからな、休憩時間に私の準備室に来たりするのも駄目だからな?放課後なら時間があるから絶対来ちゃ駄目だからな!代わりに今なら好きなだけお姉ちゃんのおっぱいを堪能して好いぞ、ほらぎゅ~~~っ」

「(むぎゅーーー、って息出来ねえ!)」

マシンガンのように喋っておっぱい絞めをかけてくる秋蘭テンション高っ!あとそういうシチュですか、正直秋蘭の溜め込んでたストレスの大きさに驚愕した!驚愕したよ!

 

「…ぷは、し、死ぬかと思ったよ秋姉ぇ」

「ん?死ぬほど堪能したのか」

「いやそーじゃないけど」

「なんだまだ足りないのか、じゃあ残りはいつも通りお姉ちゃんと一緒にお風呂で堪能しような!」

「うわっ!?」

ひょいと抱えられて脱衣場まで運ばれてしまったが、される方は分かるがなんでお姫様抱っこをするのも皆好きなんだろう?

 

「とりあえず、私の髪を洗ってくれ」

「うん」

(~~♪~~♪)

目を閉じてご機嫌そうだ。あえて言わんが髪の毛洗ってあげると喜ぶ子多いんだよな。絶対に嫌だ綺麗に洗うまで触るなっていう娘もいるけど。

 

「かゆいところはございませんかー」

なんとなく聞いてみる。

「痒くはないが後で思いきり掻いて貰うところならあるなあ」

「いつになく下品だ!」

「んー?一刀は何を想像したのかな?」

「そこでその返しかよ…」

 

よく濯いで綺麗に洗い流して終わったよ秋姉ぇ、と言うと

「そうか、じゃあ次はお姉ちゃんが洗ってあげような!」

と言いながら何時用意していたのか小鉢を引き寄せ、中から透明なとろりとした粘液をたっぷりと手に取ってその豊かな胸に塗りだした。

「しゅ…あ、秋姉ぇそれは…」

「お姉ちゃんと一刀がもっともっともーっと仲良くなれる仙薬だぞ♪」

言いながら、にゅるりと抱きついてきた。

 

持っていたのか、秋蘭…

 

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「ふふふ、薬が切れると流石に多少気恥ずかしいものだな」

「…一応そのときの事は覚えていないという設定でここはひとつ」

ローションを得た秋姉ぇ恐るべし、二連発から抜かずに湯船で対面抱っこ余裕でした。

 

「…痛くない?」

湯船の中じゃ全部流れちゃうからな。

「…落ち着いてきたから動かれたら痛いかもしれないな。このままゆったりとしててもいいが、溢れて止まらなくなるような何か気の利いたことでも言ってみろ、一刀」

うーん、そういうのっていざ言われると難しいんだよな。最近、桂花とか桐花(荀攸、字は公達の真名)が最中に言って欲しい台詞は大体掴めてきたんだけど。

 

「思ってるとおり言うんでグッとこなくても勘弁」

「構わんよ」

では、と秋蘭の耳朶に唇をつけて囁いてみた。

「今の俺があるのは秋姉ぇのおかげだよ。ずっと大事にさせて欲しい」

 

耳から顔を離してまあこんなところでと言ったとたん、唇を秋蘭のそれで塞がれた。

あまりに力いっぱいやられて歯同士がかちん、と音を立てたがまるで気にせず秋蘭の舌が進入してくる。

 

息が続かずに秋蘭の肩を何度もタップするとようやく放してくれたが、その瞳は紅く爛々と光っている。

「だめだなぁ一刀は、そんなんじゃ駄目だ全然、ぬるりともしないぞ!駄目な一刀はお姉ちゃんが全部、全っっっ部搾り取ってあげような!」

「うわ、おおお!?」

妖艶な笑顔と共に臍から下をくねらせて湯面を波立て始める秋蘭に、動きを合わせていく。

 

 

いつも有難う、秋蘭。

たまには、壊れるくらい…ね。

 

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一刀×秋蘭らぶえろなんかで得する奴はいるか!



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司馬日記外伝 コメントで仲達様に悪戯する10

拙作「司馬日記」の外伝で、仲達さんの御友人の曹真さんが悪戯をします。


「…曹真はん、これ桂花とかにやらしたほうが面白いんちゃいますか?」

「そうねえ、それならうちからは思春を出すわよ」

「蜀なら…このまま焔耶か、愛紗か翠かの」

「まあまあとりあえずは簡単に呼べる狗達でやってみようということになったんですから、予定通り参りましょう。それでは計画に従いまして進行してきますね」

 

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元々は一刀様が『天の国では年末にはこういう余興がある』と笑い話としてお話頂いた行事(?)を参考に計画致しました、その名も『絶対にデレてはいけない警備部24時』。

 

集めましたのは仲達、凪さん、呂蒙さん、魏延さん、そして別室待機の一刀様。

この方々には「来年度の警備部研修の参考の為」ということで研修案(勿論嘘です)を実地体験、一刀様にはその補助役をしていただくという説明をしています。

 

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「この研修中、警備部の職務に悖る様な私情に流された行動をとった方はその度に減点されます。一番減点された方は御伽番が一ヶ月飛ばしとなります」

御嬢様の説明に私を含めた全員がぎょっとする、そのような話は聞いていない。

 

「それでは、研修用の制服に着替えて頂きますのでこちらの更衣室で着替えて下さい。但し予算の関係上ちょうど一着分くらい制服が足りず、皆さんでご相談して誰がどれを着るか決めて着替えて下さいね」

…何だそれは。研修用制服代くらいどうとでもなりそうなものだが、子丹御嬢様らしくない御手配だ。しかしそれを今言っても仕方あるまい。

 

「下着の代わりに上下別の水着…?みたいですね」

「この制服は胸元の釦(ボタン)が無いのだが」

「裙子(スカート)が一着足りないです…」

「水着の上も一着無いぞ」

「下も…です」

 

四人で何が足りないかを確認しあっていたところ、背後から子丹御嬢様から

「なお着替えた後は一刀様と御対面です」

と声をかけられ、全員がぴくりと反応して手が止まった。

…わ、ワタシは釦の足りない上着を着てもいいぞ…?と魏延殿が切り出したのを切欠に、四人ともが顔を赤らめてひそひそと相談して着替えを決めた。

 

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「一番手は焔耶じゃの、そうじゃ御館様の前なんじゃから堂々見せれば良いのに、普段は無駄に隠しよるからいかんのじゃ」

「縮こまって更に谷間を強調するあたりがあざといわね」

 

「仲達は水着の上無しですね、どうですかあの恥じらいながらのゆっさゆっさ!」

「あの表情が最近流通してへんからええんやろなぁ」

 

「亞莎がはいてない子その1ね。ところであの水着、思春とかの程じゃないけど…警備部なのにはんけつを下すとはこれ如何に」

「下品じゃな孫策殿…しかし綺麗な脚をしておるじゃないか」

 

「そして凪がはいてない子その2やな」

「これは外から見ると一番普通よね」

「しかし見てみ、やっぱたいちょが『なんで凪だけ普通や』突っ込んだやろ」

「それに答えるのは確かに恥ずかしいですね。ああ凪さん顔真っ赤」

 

------------------

 

「それでは研修開始じゃ、まずは苦情処理・不当要求対応の練習を行うぞ。御館様に苦情申し立て人役をやってもらうので適切に対処するようにな」

 

(亞莎の場合)

「えーとなになに…『ああ警備部か?無免許露店くらいで罰金高すぎだろ!』」

「す、すみません…でもあの、決まりなので…」

「『いや納得できなきゃ払えないね。それともなにかい、お嬢ちゃんが身体で取り立ててくれんのかい』(…なんだこの台本)」

「……わ、私でよければ…(赤面)」

 

[銅鑼の音]

「「「「亞莎、あうとー。」」」」

「あう!?」

 

(凪の場合)

「『こないだの審配事件、あれは何なんだ!警備部の癖にまるで安全管理がなってないじゃないか!』」

「た、隊長…ほ、本当に申し訳ありませ…(涙目)」

「凪ごめんそんな事絶対思ってないから、あれは不可抗力!いつも凪頑張ってるから、ね!?ちょっと真桜、誰これ書いたの!凪泣かないでー!」

 

「当時の警備担当者にこれは可哀そうじゃない?」

「ちょっとやりすぎてもーたな」

 

(焔耶の場合)

「『警備部だかなんだか知らないが、なんでここから先に入れないんだ!』」

「予め御連絡の無い方の宮城への入場はお断りしている」

「『俺は牙門将軍様だぞ!』」

「身分は関係ない、業務なのでお断りする」

「『じゃあ代わりにお前の一番大事な所へ突っ込ませてもらおうか?』…はっ?」

「えっ…お、御館様…い、今は仕事中だ…から…(赤面)」

 

[銅鑼の音]

「「「「焔耶、あうとー。」」」」

「ちゃ、ちゃんと公私の区別はつけただろう!?」

「いや焔耶そこじゃないから。…しかしこの苦情役の台本おかしい上におやじくさいぞ?」

 

(仲達の場合)

「『休日とはいえ夜の数え役満☆姉妹の公演はうるさすぎだろう、なんとかしてくれ』」

「はい、防音性の良い新劇場を建設致しますのでそれまで公演は中止致します」

「オイオイオイオイ」

 

[銅鑼の音]

「「「「仲達、あうとー。」」」」

「…何かまずかったでしょうか?」

「いやまずいっていうか…え?もう一回?…もう一回だってさ、仲達さん」

「はい」

 

「『人の話を聞くのにその態度は何だ、まず三つ指ついて旦那様からだろうが!』(…この台本ホントかよ…)」

「…旦那様…旦那様、旦那様、わたくしの、旦那様…ああ…!」

 

[銅鑼の音 連打]

「「「「仲達、あうとあうとあうとー」」」」

「何故ですか!?」

「仲達さんこの研修の趣旨理解してるんだよね?」

 

「これは凄いのう」

「言いなりにも程があるわね」

「長い付き合いで大体理解したつもりでいましたが、あらためて目の当たりにするとキツイですね」

「でも凪もたいちょが『わんって言え』言うたら多分言うで」

 

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「それじゃ次は、平常心を鍛える練習ね。大丈夫痛い事なんて全然無くて、一刀が優ぁーしく身体に平常心を失わせようとするのに耐えるだけよ!その前にお風呂に行ってきてね、個人用でも大浴場でも構わないわ。あ、関係ないけど個人用には手鏡と毛抜きと剃刀と綿棒が備え付けてあるから、関係ないけどね!」

 

「「「!……………………はい」」」

何故私以外の人は顔を赤くしているのだろうか?それに皆個人風呂の方へ行くようだが…。

 

一人大浴場をあがって随分待っていると、ようやく皆戻ってきた。

長湯だった所為か皆顔が赤く言葉少なだ。

 

-----------------

 

[銅鑼の音]

「「「亞莎、焔耶、凪、あうとー」」」

 

「なあっ!?」

「何故ですか!?」

「な、何かしちゃったでしょうか…?」

「個人風呂の排水口を調べさせてもらったわ。ヤる気満々過ぎなのであうとー♪」

 

三人は赤い顔を更に赤くして絶句していた。何故あうとなのだろう?

 

-----------------

 

「まさかの仲達はん勝利やな」

「意味が理解出来ないって強いわね…全く羨ましくないけど」

「あの娘、毎日いつでも良い様に準備してるから関係無かったというのも実はあります」

「毎日常在戦場とはそれも大概じゃな」

 

「さて平常心を養う訓練方法だけど、一刀にほっぺた撫でて貰って、そっちの向きに首がへにょって傾かなかったら合格よ!」

「…俺が突っ込むのも何だけどその訓練意味あんの?」

 

「「「………(ちょっとがっかり)」」」

「…はい(どきどき)」

 

(訓練省略)

 

「無理だ」

「無理です」

「無理ですっ」

「無理だろう…」

 

「当然の全員あうとね」

「いわゆる無理げーやな」

「これの最長記録、風様だそうですよ」

 

-------------------

 

「次は逃走訓練や、諜報担当は敵地でバレても必ず逃げ戻って来なあかんからな。借り切ったこの複合訓練棟内でたいちょと追っかけっこして10分間たいちょから逃げ切れば合格や」

李典殿の説明に、こう言っては失礼だが簡単に逃げ切れるだろうと思い全員が首を傾げる。

 

「せやけどな、捕まった時の罰は凄いで。実はたいちょには捕まえた娘は好き放題やってええって言ってあるんや。この建物内じゃ二人きりやし、ああ見えてたいちょ二日間禁欲中やからそらもうえらい事になるで?体中○○○されてぐっちょんぐっちょんに△△△の挙句、もう□という□×××されるっちゅう、天国みたいな地獄みたいな目に遭わされる久々のケダモノたいちょが体験出来るちゅうわけや。凪、あんときのたいちょ覚えとるやろ?」

「う、ああ……」

李典殿が離れた所にいる一刀様を親指で指さすが、一刀様には聞こえていないようだ。

 

(け、ケダモノの一刀(御館)様……)

無意識なのか内腿を擦り合わせ、頬を赤らめて頷く凪を見て私を含めた三人が一様に唾を呑む。

 

「ちゅー訳で訓練開始や、ヤられてもーたら時間延長したるさかいな!じゃあ魏延はんからとっとと行ったり!」

「ワタシからなのか!?ま、まだ心の準備が…」

「焔耶!早く行かんか!」

「は、はい桔梗様!」

 

---------------------

 

(焔耶の場合)

…焔耶は一体何をやっているんだ?

 

「お、御館様は一体どこにいるのだろうなぁ」

目立つ四つ角で立ち止まったまま、なんか妙にしおらしい風情で周りを見ながら呟いてるんだが…顔も赤いし。

 

「こ、こうやって、どの方向から来てもすぐに逃げられる場所に立っていれば捕まることはないなぁ!」

声でかいし。

 

…これは後ろに隠れてる俺を誘い出そうとしてるのか?しかし反撃禁止だから安心して追っかけろって真桜からは言われてるから…とりあえず仕掛けてみるか。

(行けっ…!)

後ろの物陰から極力足音を抑えて駆け出す。相変わらず焔耶はこちらを振り向かずに突っ立ったままだ。

 

(ひょっとしたらこのまま捕まえちまうぞ!)

足音を殺すのをやめて全力疾走に切り替え、焔耶まであと二歩。

その瞬間、困ったような表情で頬を紅潮させた焔耶が振り向いたが、彼女の足は止まったままだ。行ける!

 

「っしゃ!捕ったぁ!」

「………っ!」

焔耶を捕え―――『抱きしめ』ると、倒れこみながら、何故か、背中に焔耶の手が廻された。

 

「お、御館様ぁ……」

「…焔耶?」

弱弱しく潤んだ瞳で見上げてくる焔耶を可愛いと思ったけど、なんか…スイッチ入ってない?

 

「焔耶、あうとじゃ!御館様は御苦労様でしたぞ!」

はーいお疲れさん、と言いながら焔耶の上から立ち上がって手を差し出すと、狐につままれたような表情で「け、ケダモノは…?」と彼女は言った。

 

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(亞莎の場合)

「迷いなく合格したわねぇ」

「わ…私は、優しい一刀様がいいです…」

 

「(と言いつつ曹真はん、呂蒙はんの水着の下…見ました?)」

「(気の弱い子だっていうじゃない、指摘しちゃかわいそうよ)えっと、汗かいたでしょうからお風呂浴びてきて下さいね」

 

(凪の場合)

「もうちょっとで捕まえられそうだったんだけどなぁ、やっぱ凪は無理だったか。ところでさ、合格なのになんで凪落ち込んでんの?」

「性春の悩みやからほっといてやり」

「……あああ…どうして私は…でも…あああああ」

 

(仲達の場合)

「仲達さん?仲達さん!?」

「はい…如何様な事でも、一刀様のお心のままに…全てを、受け止めさせて下さいませ」

「ちょっと誰か来てくれ、仲達さんがどっか具合悪いみたいでベッドで寝てるんだけどー!」

 

「主に頭の具合が悪いようですね、知ってはいましたが」

「ウチの話の後半しか覚えてへんな」

「これが噂に聞くチョロ達というやつじゃな」

 

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「最後は裁判練習じゃ、被告人の前でも冷静に告訴文を読み上げる精神力を鍛える訓練じゃな。それぞれ与えられた告訴文を被告人役の御館様と二人きりで、相手の目を見ながら正確に読み上げられれば合格じゃが、告訴文がいかなものであったとしても動じてはならんぞ?なお特段の配慮として御館様には耳栓をして頂くことにしておる」

 

「皆そんなの簡単みたいな顔をしてますねぇ、うちの二人のは陳琳さん特製ですよ?ネタ提供は私と李典さんですけど」

「焔耶のは鄧芝に書かせたぞ」

「亞莎のは穏よ」

 

(凪の場合)

「右、被告北郷一刀は、○月×日に被害者の、が…!?楽進文謙…を、定時退庁後言葉巧みに誘い出し、某飯店にて共に食事を摂った。同飯店において、個室席であることをいいことに店員が付近に居ない隙を見計らってく…く、口移しにてっ!?被害者に酒を飲ませ、な、なんでそれを!?…ふ、太腿や尻などを撫で回し…被害者のっ、感情が高ぶった頃を見計らって自室へと誘った!被告は被害者を自室に連れ込むと、被害者を抱きすくめて舌を絡める濃厚な接吻を行いながら、執拗なあっ、ああ…愛…を繰り返し…、被害者のせいよっ……、を極限まで高め…っ、被害者自ら…を…して、…を被告に要求するように仕向け、あたかも自身の主体的犯行でないかのようによ、装った、そ、そして、被告は被害者の…へ、た…猛々しく!(中略)しかもそれだけでは飽き足らずっ…んんっ、脱力している被害者の両腿を抱え上げ、(中略)そして、ああっ…、被害者のっ、被害者の、んんんんんっ…!!!…くふぅ…ん…」

 

「凪!?凪!大丈夫!?ちょっと誰か―!」

 

「期待通り過ぎて…なんか却って拍子抜けねえ」

「あの座布団、洗えるやつにしとってよかったなあ。あと段々凪の膝頭が開いてったんで、終わるまでに観音様がばぁてせんか不安やったんやけど」

「えーと…当時その現場、覗いてらしたんですか?」

「いや、たいちょと凪やったらこーやろで大体当たるからなあ」

 

(亞莎の場合)

「…背後から、め、めいど服の中に手を差し入れっ、周囲からゆるゆると揉、揉みしだき…次第にっ、遂に、頂の、…をつまんでんんっ…!被害者を酩酊状態にすると、か、鏡の前でぇっ、鏡のっ、両脚を、抱えて、熱い、熱くて、ああああっ…!」

 

「亞莎ー!?ちょっと誰か、それとその告訴状マジで何が書いてあんのよ!?」

 

 

「こう言ってはアレですが、気が弱そうな方なので一行であうとかと思いましたが…」

「いくとこまでいけたわねぇ、なんだかんだ言っても戦乱の頃から一刀好き好き娘だからそれなりに鍛えられたのかしらね」

「ところで呂蒙はんの水着が言い訳不能な状況なんやけど」

「御館様が気づかなかったからまあ良いのではないかの、水着の換えと手拭を貸してやれ」

 

(焔耶の場合)

「はぁはぁ…蜀王共々存分に蹂躙した後っ…、蜀王が眠った後を見計らって被害者に首輪を付け、更に四つん這いにさせっ…、背後から、し、尻尾…尻尾をっ………も、もうワタシには無理だ!勘弁してくれ…」

 

「なんか生煮えやなぁ」

「ところで桃香も寝たふりして部下のプレイを暴露とか酷いわね」

「桃香様御自身には悪意は無いんじゃが、いまひとつ人情の機微を察するところがの…」

 

 

(仲達の場合)

「そして御優しくもいたずらなその御唇と御指先を私の四肢から離すと、耳元で『痛かったら言ってね』と囁かれ、力強く抱きしめて下さりながら一刀様の、一刀様の熱く逞しい御自身が、私の、私にっ、はぁンっ、ああっ……!」

 

「三行目位から既に『被告』と『被害者』が『一刀様』と『私』になっとるんじゃが」

「ちゅーか明らかに元の告訴文が仲達はん主観に改変されとるよな」

「胸元強調しながら一刀ににじり寄るのはあれ素なの?」

「どれもこれも無意識なんです、それはもう呼吸をするようにデレるのが仲達でして」

 

-----------------

 

「ところでさ」

「はい『待て』よ、もうちょっとだからね、『待て』よ『待て』」

「なんで四人とも目が潤んでて息が荒いのか」

「『待て』、『待て』やでー」

「多分俺の部屋に向かって引き摺られてるのかとか」

「亞莎、あとちょっとだから泣かないのよ」

「うん、誰か一人くらい俺の疑問に答えてみないかな?」

「ほれ着いたぞまとめて放り込め…そりゃっ」

 

「うわ!」

ぼすん、と寝台に放り投げられた。

 

「はい『よし』!」

起き上がる間も無く楓こと曹真子丹の掛け声と共にバタン、と扉が閉められた。

「よしって一体なんだよ…なぁ、…あれ?」

起き上がろうとしても起き上がれない。

なんで?

なんで四人がかりで押さえつけられてんの?

 

「あぁ…一刀様…」

「隊長…」

「一刀様っ…」

「御館様ぁ…」

 

「………えっ?」

なんか、こんなこと前にもあったよなと思う暇もなく、視界が桃色に染まっていった。

 

-----------------------

 

「半日遊んで、残り半日は一刀様に遊んで(?)頂いて都合24時ということで。しかし御伽番飛ばしとかの脅し全く効きませんでしたね、やっぱり目の前に餌ぶら下げられては無理と言う事かも知れませんね」

「まあそれなりに楽しめたの」

「次、思春とかでやってみたいわねぇ」

「桂花とか釣り出すんがちょっと骨やけどなぁ」

 

最後には帳尻を合わせましたので、仲達や他の御三方も特に不満は無いでしょう。

今回は士季ちゃんに代わって楓がお送り致しました!



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司馬日記2X (仲達さんたちのクリスマス)

その後の、とある文官のクリスマスの日記です。
外伝でリクを頂いたのですが、日記になってしまったので一応本編とさせて頂きました。


明日は天の国の行事で「くりすます」、という日で、今夜は聖夜というらしい。

元は羅馬の宗教行事で寺院等で祈りを捧げる日であったが、一刀様の国へ伝来するに転じて「さんたくろーす」なる白髪白髯赤服の老仙が童達に玩具等の贈り物を配り歩く、仲の良い者達で宴会を行う、恋人達が共に過ごす夜となっているそうだ。

 

寵姫達にとっては三点目が重要でありいずれも一刀様と共に過ごさんとしたが当然に折り合いがつくはずもなく、結局不可侵協定により第二義に沿って深夜までは宴会、その後第一義の「さんたくろーす」に一刀様が扮して見知りの子女に贈り物等を下賜戴き、その夜は夜伽は無しとして夜這い防止の為に配置された警備部の警備の下お休み戴くこととなった。

 

王都の子女は璃々嬢、幼達他数名とのことだった。六女、七女の恵達と雅達は『(年齢上限で)足切りされました』と憮然としており、夏の展示会の『璃』の室の少女達は殆ど同様の取り扱いとなっていたらしい。

恵達ら曰くは『ここ一連の年少の者の動きは璃々殿に主導権を執られているように思います、今回も璃々殿が足切りの線を引かれた節があります』と言うが、私の記憶の中の璃々嬢は正に子供そのものでとてもそのような策謀をめぐらすとは思われなかった。

また予め所望するものを申告する事となっていたが、伯達姉様によると『戴きたい物は御座いません、枕元靴下内に御用意致しました手紙をお読み、お持ち帰り頂ければ結構です』と幼達は言ったという。

未だ年も年であるし、値の張るもので無ければお願いしても良いのではと思ったが、一刀様に御負担をかけない心がけは殊勝であるので特に意見はしなかった。

 

「くりすます」当日は幼達の手配もある為、伯達姉様と叔達、季達、顕達に宴会に出席してもらい、私は辞退させて頂いた。

一刀様の御来宅予定のおよそ半刻前となったので屋敷の入り口でお待ちしたところ、雪が降ってきた。一刀様のお話では聖夜の雪は風雅とするという、厚着もしているので特に苦も無くお待ちし始めたところ大分時間が早いにも拘らず直ぐに門を叩く音がしたので慌てて閂を開け門を開いたところ、『うわ、本当に仲達さんいた!半刻前行動って本当なんだね』と言いながら一刀様が御姿を見せた。

屋敷内に請じ入れると仲達さん頭積もってるよと言いながら頭の雪を払い落として下さり、御案内しようとしたところ背後からすみませんが私達も警備の為ついて行かせて下さい、と凪の声がした。士季が一刀様に聞こえぬように

「一刀様だけだと思いました?残念、警備の士季ちゃんと凪さんでした!

ひょっとしたらお泊りされるかもとか思いました?ねえ思いました?下着とか替えちゃいました?」

と冷やかしてきた為凪には茶を、士季には冷水を馳走した。

 

一刀様を幼達の寝室に静かにご案内し、幼達の手紙を御読み戴いた所暫くお考えになりながら御顔を顰められ、『これ…どういう意味だと思う?』と手紙を見せられながら聞かれた。

 

『然るべき時に一刀様の誠意を所望致します』

 

また手紙の下方は妙に空けられており、正直なところ私も意図が読めなったが幼達は予め『戴きたい物は無い』と申しておったはずなので、このお手紙を御受け取り頂くだけで宜しいのではないでしょうかと意見させて頂いた。

一刀様は御諒解され、『よくわかんないけど、意外とこんなのがすごく高くついたりしてね』と冗談を仰りながら手紙を懐に寝室を出られた。

 

宴会の御様子を伺ったところ、宮中では例の近親☆上等姉妹が宴会終盤に乱入し

『我等も子供です!「ぷれぜんと」に一刀様の熱々濃厚こってりなやつを所望します!』

『いやいやいつも御仕事でお疲れの一刀様に私自身をこの性夜に「ぷれぜんと」致します、この帯を寝台で解いて下さいませ!』

等と言って一刀様に抱きつこうとしたが関羽殿その他に笑顔のまま簀巻きにされてあっさり放り出されたという。

 

屋敷を出られる間際に一刀様が『ああそうだ、市販のものだけど。仲達さんの綺麗な銀髪がいつまでも綺麗でいますように』と仰いながら竹細工の櫛を下さった、またしても私の名が彫られている!

みんなにも何かしらあげてるから気にしないで受け取ってとの事で有難く頂戴することとし、お見送りしようとしたところ士季が

『一刀様の御手が外回りで冷たくなってますから暖めて差し上げて下さいよ、仲達様は気が利かないですね!

行きがけは凪さんが自分のおっぱいに挟んでちゃんと暖めてましたよ?ほら私達外で待ってますからちゃちゃっとやって下さいよ、

あ、一刀様に伺ったりしたら絶対御遠慮されるから有無を言わさずとっととやって下さいね、それが気が利く臣ってもんですよ!』

と言い出し、凪とさっさと外に出てしまった。

まあ、何と言うか…人並みよりは大きい方だとは思ってはいたが、無駄な飾りとかでなく、一刀様の為になる使い道があって良かった、と思う。

びっくりしたけど暖かくなった、有難うと仰って出て行かれる一刀様をお見送りした。御手は冷たかった筈なのになぜか体は熱くなってしまった。

 

この次は黄忠殿の屋敷を訪問し御帰宅なさるとのことだった。とても良い年の瀬、『くりすます』だ。

 

 

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翌日夕食の時に士季が

「璃々ちゃんてあの娘、幾つでしたっけ?昨夜黄忠さんに凪さんと部屋の前で締め出されちゃいまして、一刀様が部屋から出てきたらなんか女の匂いがしてまして、ヤッちゃいなさそうだったのですがちょっと気になったんで彼女を今日見てみたんですが…あのエロ心を擽りそうな童顔と身長であのおっぱいやばいですね、来年は私も追いつかれるかもしんないですよ。

まあ一刀様はでかきゃいいって方でもないからいいですけど。しかしあれですよ、孫尚香だけ押さえておきゃいいだろうとか思ってましたがちょっと甘かったかもしれませんね、今の人たちが引退した後は下手すりゃあの娘に腰の上独り占めされかねないですね」

と呟くと六女、七女、八女の恵達、雅達、幼達が箸を取り落とした。

 

「…いえ、私達の方が年は上なわけですから。当然に先と決まっております」

「あ、あの透かしは李典様特製で、浮き上がる時を待って証文を示すだけでなんら問題は」

などと言いながら箸を拾っていたが、なぜかその後の食事は妙に殺伐とした雰囲気であった。

 

尚後日、凪に一刀様の御手を暖めた件を流石凪です私は士季に言われて漸く気づいて御暖めした、忠臣とは貴女のような方を指す言葉だと褒めたところ、赤くなってそのようなことはしていないという。

経緯を理解し士季を吊るそうとしたが私だって体が暖かけりゃ私のでやりましたよ、一刀様だって有難うって言ってたんだからいいじゃないですかあの日乳揉みしてもらったの仲達様だけですよなどと言う。

今回は特別に説教にとどめることとした。

 

また最近鏡台に向かって髪を梳く時間が増え妹達に早く退く様急かされる事が増えてしまった。

気持ちの引き締めが必要と思い、食事のときに他の姉妹達にも

『一刀様をお慕いする事は良いがそれにかまけて他への注意を散漫にすることの無いように』

と指導すると士載のみが深く頷き、他は一様に無言で私の顔を見ていた。

何故だろうか。



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司馬日記22

その後の、とある文官の日記です。


7月3日

三国会議にて一刀様より『青少年保護育成法』の制定の御提案があった。

およその趣旨の御説明のあと、「前回の展示会はマジでやばかった…次は自信無いんだよ、頼むから俺を助けると思って!」と切羽詰った御声で制定をお求めになられた。

各国王はあまり乗り気でない御様子であったが、最終的には「そうねぇ、私達としても別に嫌っていう訳じゃないんだけど…まあ出来る範囲でね、制定に向けて前向きに善処するわ」と御承諾なさった。

 

7月5日

子丹御嬢様が、総務部に来て以来親しくなった士載の吃音が以前よりも悪化しているように思ったので華陀殿に診せてみたところ、心因性のものであり彼女の場合精神環境の改善により良くなる可能性があると聞いたという。

彼女の症状の改善に出来ることがあれば私もしたいと申し出たが、士季と相談して一度「偽薬効果」というものを試す事としたとのことだ。

士載は優秀だ。吃音を克服していま少し自信を持てば良い官吏、あるいは良い政治家となれるかもしれない。

…士季も負けず劣らず優秀なのだが、何故か『良い』官吏や『良い』政治家という表現がしっくりこない。

 

7月8日

士載に折り入って相談がと頼まれ、個室で話を聞くことにしたところ暫く恥ずかしげに躊躇っていたが、『吃音を直す方法が見つかったかも知れない』と言う。それは非常に喜ばしい事なのでどのような方法なのかと聞いたところ、一刀様のその…玉露を飲む事だと聞かされ仰天した。

そもそもの発案はなんと子丹御嬢様で、一刀様の天の国の御力で効果があるかも知れないので自身の御伽の日に一滴取り分けて(一体どうやってなのかとは思ったが)与えるので服用してみてはどうか、元よりお慕いしているとは聞いており嫌ではないだろうから駄目元で試しては、と士載に提案したそうだ。

士載としては恥ずかしくはあるが否やはなく、一滴頂いてみた所それ以降は心の持ちようが変わり、なんと以前より若干滑らかに言葉が出るようになった。そこで御嬢様にお礼を申し上げたところ、

「それならもう一刀様に呼んで頂いて、直飲みさせてもらうしかありませんね…貴女さえ良ければ一刀様に私からも頼みますが、それで良いですか?」

と言われ、動揺のあまり少し考えさせて下さいと言って辞してきたのだと言う。更に私に相談する前に親しい友人である士季と姜維に話したところ、いずれもお願いするべきと答えた上、加えて士季は『効果を確実にする為には本来頂くべきところにも注いで頂き、かつ世の中には座薬と言うものもあるわけなのでそれ相応の箇所にも頂くべき』と付け加えたとの事だ。

暫く考えて、一刀様の御迷惑でなければお願いしてみてはどうか、加えて華陀殿の御意見も伺ってみてはと助言し、士載も得心したようだった。

 

7月10日

末の妹の幼達が、間もなく月様の下での体験学習期限を迎える恵達と雅達に代わり、自分も体験学習に行きたいと言い出した。秋季から合同塾の年少学級に入学する事を思えば未だ時期尚早であろうと答えたが、幼達にしては珍しく暫く食い下がってきた。

恵達と雅達に幼達の話をしたところ、「先日の展示会で璃々殿に大きく水をあけられている事を聞き、焦りがあるのでしょう」という。かなりの間璃々嬢とはお会いしていないが、今はどれくらいの姿になられたかと聞くと二人とも黙ってしまった。重ねて聞くと、恵達が「彼女は進境著しく、破竹の勢いで成長されています。身長こそ我等よりも一段低いですが胸囲は流石に血筋と言うべきか既に顕達姉様に匹敵し、髪も下ろしいまや童女などではなく少女の風で、正に膨らみかけた蕾と言うべきでしょう。

しかも幼少の頃より大人達に混じって暮らしていた所為か精神年齢が我等並みに高く、状況を瞬時に判断して己の年齢を使い分ける賢さをも持ち合わせております。呉の呂蒙殿の成長躍進がいかばかりであったかは存じませんが、蜀下の阿璃に非ずと言う言葉こそ彼女に相応しいものと思います。風の噂によりますれば、孫尚香様は既に彼女を強く警戒しており『私と一刀がいずれ造る愛の巣を壊す者があるとすれば、それはきっと黄忠の娘ね』と語ったと聞き及んでおります」と答えた。

士季らを見て後世畏るべしと思っていたが、それどころでない下からの攻勢に総毛立つ

思いだ。謙虚に分析の出来る恵達は良い官吏となれるだろう、運が良ければ一刀様の御目にもとまることだろうと助言した。

 

7月11日

一刀様の御入浴にあたって御背中を流させて頂いた。

 

…例の水着を着てだ。

裸よりも恥ずかしい気がするのは何故だろうか。しかし一刀様は可愛いといって下さった。

…お言葉のみでなく態度でも強く深く、何度もお示しして下さった、身体の奥底から一刀様の御愛情が染み渡るようで幸せすぎて死にそうだ。

 

湯の中で抱かれたまま、どんな(下着を着けた)なら御喜び頂けるでしょうかと伺ったところ、仲達さんは美人さんだからなんでも似合うと思うけどと仰って下さった後少し考えられ、仲達さんが『ちょっと恥ずかしいけど見られて嬉しいって思うもの』かなと言われた。

陶然としてしまって頭の螺子が外れてしまっていたせいか、『はい、これからは一刀様に見られて恥ずかしくて嬉しいものを着けるように致します』と答えた自分が正気に返った今は悶絶するほど恥ずかしい。

どうしたものか…

 

7月17日

『青少年保護育成法』の法令草案が作成され、張勲殿の法令精査結果の報告が回ってきた。

「法施行前に後宮入りしてる娘は適用外とする必要があると思います。主に美羽様とか。ただ施行前の駆け込みの嵐を一刀さんがどうさばくか要覚悟ですね」

「最終条の『第十七条 但し、本法適用の例外については各国の施行令にて定める』ってありますけどこれってつまりザル法じゃないですか?」

とあった。稟様に御報告したところ、

「…各国毎に適正に運用されれば良いのではないですか。この件はあまり深く突き詰める必要はありません、政治の世界には色々あるので」

と疲れた表情で仰った。

 

7月20日

一刀様の至急のお召しの為にお部屋に伺うと、一刀様と子丹御嬢様が既にいらしていた。どのような御用向きか伺うと、士載の件だという。

「今、華陀に確認とったけどさ…方法がアレっていうのはどうにかならない?華陀の話じゃ、ある意味それじゃなくたって薬だって言えばなんだっていい訳でしょ?」

と一刀様が仰り、

「既に『それ』が薬であると彼女に伝えてしまっておりますから、今更それ以外というのは難しいかと…それに士載は一刀様をお慕いすること一通りでない事は一刀様だってご存知でしょう?汝南から中央に抜擢される原因を作ったのも、また退官を引き止めたのも一刀様なのですからここは一つ責任を取って下さいませ」

「…ちょっと変態ぽいけど、例えば唾液とかで…」

「士載は士季とは対照的に気弱な娘ですので、一刀様に『飲ます価値無し』と評価されたと彼女は判断すると思います。退官くらいで済めば良いですが自暴自棄になって娼婦に身を落としたり人生に絶望して最悪、自殺してしまうかもしれませんね…蜀の諸葛均さん、今はお元気ですか?」

等と子丹御嬢様とやり取りをされていたが、

「仲達さん、どう思う…?」

と聞かれ、既に効果は明白と思いますし本人も望んでおりますので何卒御慈悲、御情けを士載に賜りたくと申し上げると、仲達さんはそうだよねぇ…と仰り、暫くして

「分かった、日取りの調整とかは楓(子丹御嬢様の真名だ)と仲達さんに任せるから、ただ『ヤれば絶対治る』みたいな過剰な期待は彼女にさせないで」

と仰った。御嬢様は満面の笑みとともに有難う御座いますと述べ、二人でお部屋を辞した。

 

お部屋を離れたところで、

「仲達知ってた?一刀様のあれ、滋養強壮にも良いのよ」

と御嬢様に言われ、

「ああ、やはり…実は私も御伽の翌日は妙に元気が出るので不思議には思っていました、ではこれからは風邪の者は一刀様に戴きにあがる様皆に伝えるように致しましょうか」

と答えると、

「…本当に、仲達につける薬は無いわねぇ。本当は士載と貴女以外には効かないから、皆には言わなくて良いわよ」

と生温かく微笑まれた。



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司馬日記 人物録

本編更新では無く申し訳ありません。だらだらと長く連載してしまっており私自身「この娘の真名何だっけ…」となってしまっていた為、拙作で登場する人物をまとめておきます。(司馬日記22時点)
こんな時、挿絵が描ければ良いのになぁと思いますね…
と思っていたらイラストを書いて下さる方(飯坂様)が現れました!
有難う御座います!


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(主な登場人物)

司馬懿 仲達(真名 仲達):

主人公にして魏の中堅官僚。現在では魏の総務局と一刀直轄総務室付きを兼任。一刀の事が好き過ぎて生きているのが辛いレベル。真面目で仕事は出来るが一刀絡みになると思考が常軌を逸してしまい、あまりにチョロく騙されたり陶酔してしまったりする為最近ではチョロ達と呼ばれることも。

 

銀髪にえろい体をしているが爆乳というほどではない。女性にしては長身である事と一刀よりも年上なのを密かに気にしている。

諸々の勘違いの末に白蓮を尊敬している。わんこ友達で凪、亞莎と仲がいい。

 

鍾会 士季:

仲達の住み込みの弟子その1で警備部所属に。TPOに応じて態度や身なりをきっちり使い分け、巧妙に後宮入りし仲達を唖然とさせる。仲達をいじるのが趣味だったが最近は士載もターゲットに。次世代最強候補の一角だが天敵は母親(鍾繇)。

 

曹真 子丹(真名 楓):

仲達の幼少のころからの親友。御嬢様育ちだったが文武に優れ、魏の出世頭。おっとりした性格だったが就職・後宮入り後は押しの強いキャラに。最近は士季と共に仲達をいじるのが好き。

 

鄧艾 士載:

仲達の住み込みの弟子その2で魏の総務部に異動。気が弱いが、ついに後宮入りを果たし吃音も克服。羞恥心は強いが一旦リミッターが外れれば何でもする。陳琳の三国志(エロ小説)全巻を自室の書棚の奥に隠し持つ気弱なムッツリ娘。

入職や吃音克服の経緯もあり立派な一刀教信者見習い。

 

司馬家八姉妹:

1.司馬朗(伯達)

2.司馬懿(仲達)    

3.司馬孚(叔達)

4.司馬馗(季達)

5.司馬恂(顕達)

6.司馬進(恵達)

7.司馬通(雅達)

8.司馬敏(幼達)

司馬姉妹は全員字が真名。姉の伯達と叔達は仲達以上の大おっぱい。叔達は文書局に就職しており、季達・顕達は来年就職予定。恵達以下は後宮入りもしておらず、目下のライバルは年下ながら蜀の璃々ちゃん。…と思われたが、幼達はその後彼我の差を悟り璃々ちゃんに師事する。

 

姜維 伯約(真名 藍):

諸葛孔明の策略か、男装して就職し警備部に所属。後宮入りをきっかけに女性の姿に戻した。仲達からは太平要術の書により男性から女性に性転換したと思われている。

 

劉封 (真名 藤香)

関平 (真名 玲紗):

それぞれ桃香と愛紗の義理の娘。義母と年はほとんど変わらず、義理の父となる一刀をいてこます事に全力を注いでおり近親上等☆姉妹の二つ名で三国から恐れられていた。三国合同塾竣工時に念願の後宮入りを果たすが、一刀との変態プレイへの情熱は止む事は無く今日も大人達を引っ掻き回す。

その後蜀ではあまりの奔放振りに手を焼き、仲達の部下へと修行に出されたところ仕事はそれなりに真面目にやるようになったが性癖は相変わらずで、真っ赤になった仲達に絞め落とされる日々を送る。

 

徐庶 元直(真名 汐里):

蜀の官僚のエースで、子敬と共に仲達と仕事を通じた友人。近親上等☆姉妹の教育係も押し付けられていたが、そちらはもう投げ気味。一刀直轄総務室付きも兼任。

 

魯粛 子敬(真名 夕):

呉の部長級の官僚。徐庶、仲達とは仕事を通じた友人。一刀直轄総務室付きも兼任。

 

曹仁 子孝(真名 茜):

仲達の先輩。所属不明。房中での声が大きい事を曹洪によくからかわれる。

 

曹洪 子廉(真名 葵):

仲達の先輩。所属不明。潮吹き体質を曹仁によくからかわれる。

 

荀攸 公達(真名 桐花):

魏での仲達の上司。一刀の雌犬を公言するドMデレ。年下の伯母である桂花とは公私共に犬猿の仲。

 

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(その他の登場人物)

鍾繇 元常:

士季の母親。たまに士季を〆に来る。士季の口ぶりから後宮入りしている模様?

 

張郃 儁乂(真名 彩):

高覧   (真名 恵):

郭淮 伯済      :

魏の総務部で仲達の同僚。張郃は高覧の登用で一刀を手伝う。

 

審配 正南(真名 椿):

一刀暗殺を企て、麗羽の進言で一刀の調教を受けて麗羽と同じくドMデレに。

 

田豊 元皓(真名 純):

沮授   (真名 静):

一刀と麗羽の説得で登用される。仲達・麗羽との会話の行き違いで就職と共に体も(ついでに特殊性愛も)求められていると勘違いしたが、求められる事に飢えていた所為かなんだかんだで積極的。

桐花の影響で、羞恥プレイが好きになってしまったらしい。一刀教信者見習い。

 

陳琳:

文人にしてSMから純愛までなんでもござれの官能小説作家。

華琳をして「この(官能小説に出てくる)華琳という少女に嫉妬と羨望を覚える」と言わしめる名文家。美羽や士載ら後進の文章指導も行う一方、気がつくとエロい言葉を教えていたりすることも。

 

張松 永年(真名 海):

法正 孝直(真名 空):

陳情活動の甲斐あって二人とも地方勤務から期限付きの中央勤務となったが、期限が来たら蜀に戻らず退職するつもりで密かに就職活動中。

一刀至上主義者。ただし仲達(形容詞)ではないのが大きな違い。

以前に一刀に対して上から目線で喋っていたのを目撃していた為に華琳や春蘭のことが嫌いな一方、桃香のように分かりやすく一刀を立てる人物は好き。(その為仲達には好意的)

 

逢紀(三国一の店員ちゃん、真名 杏):

「三国一の看板娘、杏ちゃんだよーっ!」ジャーンジャーンジャーン

元麗羽配下で酒楼「三国一」の店員、生協の店員にして総務室付きの新米メイド。

半端な能力と善意に加えて後宮の常識の無さから抹殺されかねない言動を繰り返すが、天性の回避運でかわしまくった末に魔王月様にまさかの大金星。遂に斗詩の地雷を踏んでも健在の豪運で無事後宮入りを果たした地雷原の踊り子。

※飯坂様作 武将列伝(杏)への寄贈文より引用

 

曹休 文烈(三国一の給仕長さん、真名 菫):

魏の関係者で色々分かってる出来る人。真面目だが、軍務を休職し三国一の給仕長に。

 

太史慈 子義(真名 陽):

元「東呉の毒殴(どくおう)」のリーダー。地元勤務だったのが雪蓮に連れられて王都へ来るやあっさり種馬氏にめろめろになり、主に亞莎をお手本にしてキャラチェンジ。

大柄で華雄よりちょっと低い程度ででかちち、地元に居た頃はヤンキー頭だったが黒に戻している。

基本ヤンキーあがりの世間知らずなので暇を持て余した雪蓮に騙されっぱなし。

なお思春と明命はオレっ娘のままの方が一刀に好かれるだろうと思っているが黙っている。

 

張昭 子布(真名 薫):

呉の重臣で建業勤務も、何かにつけて上京しては一刀にデレ説教。

桂花のようなツンデレとは一味違っためんどくさいお姉さん。

 

王双 子全:

緑のショートボブにツリ眼で三白眼気味。割と真面目で姜維戦前にお手つきになっておりまたツンデレでもないが、どSだったり子供には優しかったりするかもしれない。

当面、くらげ様作「司馬日記 支援の十二」

http://www.tinami.com/view/614578

のゆうかり…王双が(司馬日記的に)公式。

 

荀諶 友若(真名 柳花):

桂花の妹で最近入庁し今では音々音の部下。姉と伯母の変態ぶりに呆れていたが血は争えない素質を備えている。

 

許攸 子遠(真名 燕):

色々やらかして斗詩さんの調きょ…制裁を寸前で一刀さんに救われ杏の部下に。

斗詩さんのかませ犬のはずが意外と可愛い子に。

 

郝昭 伯道(真名 泉):

仲達の同期で凄腕の武人。常識人なのだが田舎者の悲しさゆえに例によって悪意の無い仲達に騙され、当然の如く一刀さんの夜の軍門に下る。

 

張任(真名 晶):

大人しく桃香とすぐに昼も夜も打ち解けた劉璋とは対照的に、入蜀組とそりが合わず劉璋と共に上京して総務見習いに。太史慈や龐徳と共に仲達を尊敬している。朱里、雛里の天敵。

 

龐徳(真名 碧):

統一後の一刀教信者その3。

 

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(原作からの改変が大きい方々)

一刀:平常運転。しかし政治的事情により前よりも方々に気を使うようになった。

 

思春、桂花:

ツンデレをこじらせ過ぎ、昼間はSで夜は認めないが隠れMという難儀な子。

 

愛紗:とある会合を切欠にくっ殺系ドMになってしまった残念美人。髀肉之嘆事件で昼間は大分改善されたが一度体が覚えた性癖はなかなか変わらないらしい。

 

麗羽:

桐花の進言により、一刀の調教でドMデレに。併せて昼間も穏やかになったため、密かに一刀のお気に入りとなり各国王が焦っているとかいないとか。

 

焔耶:

わんこ体質に目覚めはじめる。…えっ?公式でしたっけ?

 

美羽:

曹真が家庭教師を勤めた結果、体の成長もあり痛くない本物の御嬢様に。

 

斗詩:

平常時は表に出ないがヤンデ…あれっ?こんな時間に誰か来たみたいだ

 

璃々ちゃん:(検閲により削除されました)

 

華琳:あの手この手のプレイで一刀とよろしくやるも自身の可愛げの無さに悩んでいたが、幼児プレイに安息の地を見出して今では幸せに。

 

七乃:女力がとにかくチート。圧倒的な誘い受けパワーを誇る。

 

 

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(以下、司馬日記30時点で具体的に記載されていない容姿の特徴などです。お読み頂いている方の御想像に合わない可能性も多々有りますので、お差し支えない方のみ御覧下さいませ)

ああ、絵師様が居れば分かりやすいのに…(チラッチラッ

 

(主な登場人物)

 

司馬懿 仲達(真名 仲達):

ウェーブのかかった臍上くらいまでの銀髪で、切れ長の瞳。

肌は色白、顔立ちは面長ではなく真ん丸と言うほどでもなくある意味普通。

長身を気にしてはいるが、実は自身で思っているほどではなく夏候姉妹や雪蓮とほぼ同じ。露出の多い服は似合わないと考えており、メイド服の丈も長くそれ以外では管理職には着用義務が無い制服を着ている。

基本的に寡黙で無駄口を叩かないが必要と思う時はそれなりに喋る。一刀と話す時も表情は僅かに緩む程度だが、声のトーンが入国審査官からキャビンアテンダントに変わる為べた惚れなのが丸分かり。

 

鍾会 士季:

小柄ながらもおっぱいは詠よりも大きいミニチュアセクシー。

普段は頭の上の方で適当にひっつめて作業着っぽい上着に長ズボンである意味季衣よりも(うわなにをする)だが、一刀の前では髪を降ろして碧色のリボンに似た髪飾りを着けており、子丹と姉妹に見えなくもない。

兎に角天性の床上手。努力も知識も豊富で事前には計算づくでやろうと思ってはいるが床に入れば勝手に口と身体が動く天才タイプ。

 

曹真 子丹(真名 楓):

仲達より若干背は低く、女性としては中肉中背。

露出は少なく和装を好み、前髪ぱっつんの腰まであるストレートロングの黒髪にいつも後頭部に大きな赤いリボンをつけている。

実際に就職直前頃に一刀に家庭教師をしてもらっていた経緯からそういうプレイが好き。

 

鄧艾 士載:

士季よりも少しだけ背が高いがやや小柄の部類。しかし挟める程度にはある(何がだ)。

茶髪のショートヘアで、お手つきになる頃から前髪を上げてヘアバンドで留めている。ややタレ目。

 

司馬家八姉妹:

1.司馬朗(伯達)

2.司馬懿(仲達)    

3.司馬孚(叔達)

4.司馬馗(季達)

5.司馬恂(顕達)

6.司馬進(恵達)

7.司馬通(雅達)

8.司馬敏(幼達)

 

伯達さんはややタレ目でほぼ常に微笑を絶やさず、竿姉妹発言をした仲達を吊るした時も微笑を浮かべたままだった。身長は仲達とほぼ同じ位で髪は顔の脇で縛って胸元に垂らしており、姉妹一の大おっぱい。

 

叔達は童顔ながらもややツリ目で髪はセミロング。背は仲達よりも低く、おっぱいは司馬日記22時点で仲達を上回る。勝気な性格だが人前で無礼や下品な言動は司馬家の恥となると思っており礼儀正しい。一刀が司馬家訪問した晩に一刀に開発されまくったせいで年の割りに熟れた身体を持て余し気味。

 

姜維 伯約(真名 藍):

男装とか言ってどうやって隠していたのかわからない御立派おっぱい。背は高めで赤い長髪。

士季と士載は始まっちゃえばスゴイのに対し、いざ始まっても羞恥心が勝って動きが止まってしまう晩生娘。士季からは近々一刀にえげつない羞恥責めをしてもらおうと思われている総受け体質。

一刀に好かれるにはどうすればいいかよくわからず、とりあえず展示会で出た可愛いのからエロいのまで山ほど下着を買い込んでいる。

一刀教信者見習い。

 

劉封 (真名 藤香)

関平 (真名 玲紗):

藤香は金髪、玲紗は茶髪を盛り気味にしたギャル系容姿。養子縁組前にはしていた指輪やイヤリング等の装飾具類は愛紗の指導で髪留め以外全て外しており、玲紗は短髪だったが愛紗を真似して伸ばしている。身長は義母たちより僅かに低く、胸ははっきり及ばず中程度。

基本的にお互いと両親の事は大好きで、義姉妹丼&親子姉妹丼の夢が叶って幸せ。

そっち方面にも貪欲で、二番煎じとか一切気にせず一刀としたら楽しそうと思ったらどんなプレイでもやろうとする。

朱里と雛里の弱みを握っており、二人がまるで言う事をきかせられなくなってしまった為に徐庶に教育係が変更されたが結果は見ての通り。

髀肉之嘆事件で一旦は大人しくなった。

 

徐庶 元直(真名 汐里):

中背で、髪型は背中までの長い三つ編みと顔の脇にもみ上げを垂らしている。ブラウスに臙脂のネクタイ、長めのタイトスカートが普段の仕事着。胸はやや大きいくらいだが細身なので目立つ。御伽の日はきつめのブラウスに微妙な透けブラ、お尻の形が出る薄手のスカートになるのですぐわかる。

 

魯粛 子敬(真名 夕):

青みがかった肩までのショートヘアで、背は中くらい。

おっぱいもやや大きめだが全般的にむちましい。徐庶とほぼ同じ意匠の服を着ているがネクタイが青でスカートが若干短め。御伽の日は更にスカートが短くなりむちむち感が増すのですぐわかる。

 

曹仁 子孝(真名 茜):

(未設定)

 

曹洪 子廉(真名 葵):

(未設定)

 

荀攸 公達(真名 桐花):

顔立ちは桂花と似ているがツリ目ではなく多少童顔で、桂花よりは少し背が高い。桂花と同じ茶髪で、ストレートロングを背中の方でバレッタでまとめている。一刀絡みの会話さえしなければむしろ清純派美少女。

巨乳と言うほどではないが、縛ればちゃんと絞られる乳に桂花に対する優越感がある。

伽の翌日は腕や首などの緊縛痕をむしろ誇って露出するような服を着るのを一刀に窘められている。

 

-----------------

 

(その他の登場人物)

 

鍾繇 元常:

糸目。爆乳で背はやや高め。紫苑以上に年齢不詳な為、娘の士季からは妖怪呼ばわりされている。

 

張郃 儁乂(真名 彩):

(未設定)

 

郭淮 伯済:

(未設定)

 

審配 正南(真名 椿):

(未設定)

 

田豊 元皓(真名 純):

沮授   (真名 静):

二人ともだが特に田豊はおっぱいが田豊。

 

龐徳(真名 碧):

(未設定)

 

陳琳:

銀髪長身で胸元が開いた服を好み、飄々としており普段の雰囲気は星に近い。

…が、自分が事に及ぶときに『抱かせる女』ぶろうとするが多感気味で羞恥心も強く、一方的にいてこまされてからは一刀の前では羞恥心から無意識に胸元も隠すように。

手っ取り早く言ってしまえば、くらげ様の「司馬日記 支援の九」を参照のこと。

 

張松 永年(真名 海):

幼少時は美人の姉(張粛)にコンプレックスを抱いていたが、長じて自分も美人なのだと気づいてからは美醜で態度を変える男に幻滅しており、ぼさぼさの頭にだらしない身なり、ビン底伊達眼鏡に化粧でタラコ唇とシミソバカスを作りとぼそぼそとした喋りで通していた。

が、そのような容姿でも甘く接する種馬にコロリとイカれ、後宮入りをきっかけに一刀と二人きりの時だけ美少女バージョンに変化する。容姿は黒のソバージュ気味のショートヘアでツリ目、背は低め。巨乳ではないが貧乳党からは敵と看做される程度。

旧蜀で勤務が長い者以外には美少女バージョンの存在は余り知られていない。

 

法正 孝直(真名 空):

張松の幼いころからの親友で、張松の喪女バージョンの原因を知る数少ない人物。鬱屈とした性格になってしまった張松に心を痛めていたが、後宮入りしてそれが解消された張松に強く勧められ3Pで後宮入り。張松の性格を前向きにしてくれた事と特に難が無い種馬の人格にほだされて張松と共に傾倒。背はやや高めながらも微乳で黒髪ロングのメカクレ、自身が美人である認識が薄い。夏場には入浴後等に上半身裸でうろうろしがちの一刀を諌める為、目の前で上だけまっぱになって見せ「一刀様が裸を晒しているのですから、私の貧相な身体ならなお問題ないでしょう」と言ってからは一刀も暑くても人前では上も着るようになった。

張松が直情的なのに比べ穏和だが、思い込みが強い。桃香に遠慮して後宮入りしようとしない劉璋を説得したのも彼女。

 

曹休 文烈(三国一の給仕長さん、真名 菫):

黒髪の秋蘭にかなり近いが、退官の経緯からやや翳りのある雰囲気であまり笑わない。実質店長なので店員とはちょっと違う制服にしてある。細身だが結構ある(杏さん談)

 

張昭 子布(真名 薫):

呉の人にしては露出が低めで張紘(未出)とワンポイント色違いの陰陽師風。年の割に童顔で、感情の起伏に乏しいが小言が多い所為もあり普段は多少険がある表情が多い(デレると険がとれて照れる)。雪蓮、冥琳に比べると若干背は低いが結構おっきい(何が)。黒髪のショートだが一刀と会う時だけ自分なりのおしゃれでサイドテールにする。

 

-----------------

 

(原作からの改変が大きい方々)

 

美羽:

身長は七乃より僅かに低いくらいまで成長。髪型などは特に変えていないが、曹真の教育の為言葉遣いや態度は丁寧になり、表情も落ち着いた。原作時代は本人の中では黒歴史。

ただ七乃のことも曹真のことも好き。

 

璃々ちゃん:髪を下ろし、当時を知る人からは少女時代の紫苑さながらと言われる容姿になったが状況判断次第で原作通りの縛り方にすることも。年齢に不釣合いな胸元、そしてわざとやめないミニスカートからにじみ出る危険なエロス。



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司馬日記外伝 誰得?稟得!

稟さんです。秋蘭をハブらない馬岱の大軍に感動してつい書きました。
尚申し訳ありませんが、悪戯シリーズはスランプの為ちょっと休憩させて下さい。本編は続けますしこの誰得もどきも少し書いてみたいと思いますので今後も御笑覧頂けると嬉しいです。


司馬日記16 の2月15日「馬鹿には利かない向精神薬」

http://www.tinami.com/view/449496

を稟が服用したお話。

 

------------------

 

『昼過ぎに合同塾校庭の長腰掛でお待ちします』

そんな稟の指示通りに合同塾の校舎の裏手を抜けて校庭へ向かう。

 

休日の合同塾は構内外共に静かだ。

『華琳様とネタ被りしたので練り直しになって悩んで悶えて悩みまくった末に、割りと稟ちゃんらしい選択でしたよー』

具体性に欠ける事前の風情報を思い返し、緊張をほぐすために大きめに息を吐きながら歩く。校舎裏を抜けると、待ち合わせのベンチだ。大丈夫、何見ても引かぬ笑わぬ絶句せぬ。

 

人影を見て稟お待たせ、と声をかける。

「はい」

そう言いながら振り向いた女性は。

 

下ろしたセミロングの黒髪に、眼鏡の無い穏やかな笑顔。

白い半袖で丈の長いワンピースをまとい、頭には服と揃いの白いリボンの巻かれたつば広の麦藁帽子。

 

この可愛い子誰?という思いを強制的に稟だ稟のはずだと理性で切り替える。それに絶句は駄目だ、

(どうせ私にはこんな可愛らしい服は似合わないなんて知っていましたよ)

(年甲斐も無くとか思ったのでしょう?

もう火を見るよりも明らかにネガティブに捉えられる。

 

「…可愛いね。似合ってるよ、驚いた」

「有難う御座います、でも誰だろうという顔をしていましたよ」

軍師様の慧眼を誤魔化すのは無理か。でも笑顔だし拗ねたような言い方じゃないので怒ってはいないようだ。

「ごめん、正直可愛すぎた。あと眼鏡外してるし」

人の心が読める人達と接する方法として身につけた、『とにかく嘘つかない』で対処する。

彼女は『まあ普段の私は可愛くありませんからね』等といじける事も無く、微笑を浮かべてでは行きましょうか、と言いながら肩の高さに差し出された手を取ると彼女は立ち上がった。その手をなんとなく離し難く、そっと握ったままでいると

「今日は、このままで良いですか?」

と再び微笑まれ、当然に頷いた。

 

それからは、何をするでもなく校内の散歩だった。

グランドの脇を歩き、池というには大き過ぎる池を廻り、校舎内の廊下をぶらつく。細かい設定が判らないので会話の選び方は恐る恐るだけれど、眼鏡は無くてもいいのかと聞くと歩けないほどではないのでと答えた。それから風がどうした、美羽とのバンドがこうしたというような話をして、仕事の話は避けたし彼女からもしなかった。

 

開校式を行った教室に入り、窓に手を添えて彼女が外を見る。

「私は、この塾こそ今の象徴だと思うのですよ」

ちょっと踏み込んだ話題に、少し緊張しながらどうして、と聞いた。

「水鏡女学院はさておき、戦乱の時代にいくら人材確保が重要だと知っていたとしても実際に予算と時間をかけることは不可能で、諸侯はそれぞれ耳目を頼りに遺賢を求めるほかありませんでした。それが今では人材を探すのではなく育てる、しかも大陸共同で行えるというのは平和と進歩、そして経済の発展を示すものだと私は思います」

そう思うと感慨深いものがありませんか、と問う彼女に首肯し、会議でも言った様にいつかはこれが全国に造られるといいと思うと返す間も、彼女は瞳を逸らさない。

 

…瞳を逸らさない。

 

その間のおかしさに、はっと彼女のお誘いだと気づいた。

動揺を気づかれぬようゆっくりと歩み寄り、背後から緩く抱きしめるとごく自然に胸元へ倒れこんでくる。麦藁帽子を外し、誰が見ている訳でもないが彼女の顔を窓の外からの視線から隠すように掲げながら頤に指を沿え、瞳を合わせる。

すると二人の唇が重なる直前に、彼女は待ってと言い、流れを止めて瞳で彼女に何かと問うた。

 

今だけで良いのです…『あなた』と呼んでいいですか。

 

愛した女に涙目でそんな事を言われて、駄目だと言う奴が居れば見てみたい。

頼むから呼んでくれよと囁くと彼女は瞳を閉じ、珠の涙が目尻から溢れて落ちた。それを合図に熱く舌を絡め、強く抱きしめ合う。息継ぎの合間に、瞳を閉じたままの彼女から貴方、貴方、と呼ばれる度に愛しさが増していく。

激情のままに指を這わすと、再び待って下さい、これ以上は私も止まれなくなってしまいますと胸に手を当てられた。

「この部屋は鍵が掛からないので…私の部屋へ」

胸の中で喘ぐ様に呟く彼女に、鍵など無くともこのままという衝動にも駆られたがその気持ちを思うことで欲望を捻じ伏せた。

 

夕焼けの中を、ごく自然に彼女に腕を取られた状態で歩く。

言葉は少ない。あまりこうして歩いた事無かったね、なんだかちょっと気恥ずかしいですね、と言った他は無言で彼女の部屋へと辿り着いた。

ものも言わずに唇を重ねてもつれるように寝台へと倒れこむと、愛して下さい、と耳元で囁かれた。

 

 

「あまりに少女趣味で、笑われるかと思いました」

腕枕で余韻に浸りながら、胸元まで掛け布を引き上げて彼女は言った。

「いや…会うまでは思いもつかなかったけど、今考えてみれば稟に良く似合ってるよ。可愛い」

ふふ、流石にそういうところは外しませんね一刀殿はと彼女は笑い、あの呼び方はもういいの?と聞くと、ええ満足しましたからと答えた表情は不満を覗かせなかった。

 

「ホントはですね、全く別の路線も考えていて料理とかもあったのですよ。折角なので後で温めて食べて行かれませんか?」

ああ是非と答えると、少し照れたようないたずらな表情で暫く俺の方を見ていたが、

ちょっと用意しますから向こうを向いていて下さい、いいと言うまでこっちを見てはいけませんよと言うので背を向けると寝台から出て行き、暫くして衣擦れの音と共にもういいですよと稟の声がして振り向いた。

 

そこには裸にエプロン一つ、細身の体に比して豊かな胸がそれを押し上げながら、小悪魔を気取ろうとしながらも照れが隠し切れない表情で寝台に座る稟が居た。

「お、お帰りなさい貴方、お風呂になさいます?夕食にします?それt

「稟にする」

「きゃ、ちょっ!もう一刀殿、最後まで言わせて下さいよ!」

無理、可愛すぎだしエロ過ぎ。

 

「一刀殿じゃなくて呼んでよもう一回。俺は呼べるよ?なあ、『おまえ』」

彼女の耳を甘噛みしながらエプロンの中をいろいろふにふにすると、弱弱しく怨ずるような顔と共に呼んでくれたが、どうにもこうにもS心を刺激される。

色々体中可愛がりながら『聞こえない、もう一度聞かせて』と繰り返させると、回を追う毎に彼女が俺を呼ぶ声が甘く蕩けたものになっていくのが堪らなく幸せだ。

 

何度も何度も互いを呼んで、甘く夜は更けていく。



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司馬日記23

その後の、とある文官の日記です。


7月22日

今日はちょっとした事件があった、典韋殿が元譲様を殴ったというものだ。

経緯としては、御優しい一刀様が日頃のお礼にと典韋殿に焼き菓子を御作りになるというので、素人ながら調理の御指導をさせて頂き、調理完了したところで私は政務に戻った。しかし一刀様の調理姿を見かけた元譲様と許褚殿が、一刀様が典韋殿を呼びに行く為に目を放した隙に典韋殿向けと知らずに殆どを食べてしまった。呼ばれて一刀様御手ずからの御菓子に期待して来た典韋殿は愕然として泣き出されてしまい、一刀様はもう一度作るからと宥め、元譲様と許褚殿も青くなって謝った。しかし元譲様の「そんなに旨い物でもなかった、流琉の(作った菓子の)方がずっと旨かったから」という余計な一言に典韋殿が激怒し、「だ、だったら食べなければいいじゃないですかぁ!」と言いながら元譲様を張り飛ばし、もうやだ辞めますと叫んで泣きながら宮城を出て行かれてしまった。

 

その後典韋殿を手分けして探すのを私も手伝い、見つかったところを一刀様がお連れ帰りになって御自室で一晩かけて思い留まる様『御説得』なさったところ、「兄様のそばからは離れません、居させて下さい」と落ち着かれた。

翌朝には元譲様、許褚殿と謝りあって和解出来、一刀様の御菓子も今一度作られるそうだ。ただ、妙才様を目標としていたが今後軍務は務まるか不安だと訴え、それについては一刀様、妙才様預かりとすることとなった。

 

7月24日

管理職定期試験の後、庁内食堂にて凪と亞莎とで点心を楽しんだ。

すると一刀様が通りかかり、今典韋殿と菓子と合わせて珈琲というものを振舞ったのだが残っているので飲んでみないかとお声を掛けて頂いたので頂く事とした。

土のような茶色に亞莎は尻込みしていたが、とある豆を挽いて湯にといたもので甘い菓子に合うと聞いて皆で頂いた。苦味もあるが、香りがとても良いものであった。

 

 

7月25日

張任殿と劉璋殿が私と同じく一刀様直轄総務室付きとなり、張任殿は私と同じく詠様の部下、劉璋殿は月様付きとなった。張任殿もやる気を見せており、詠様は『専任で貴方みたいな出来る娘が欲しかったのよ』と大変喜ばれていた。

 

7月25日

陳琳殿が職場へ訪ねて来て、多少伺いたいことがあり定時後に酒楼へと誘われた。彼女とは特別親しいわけではなかったが、拒む理由も無かったので応じた。

酒楼の個室でしばらく四方山話をしていたが、執筆中の『魏志』の五巻に私を登場させたく、またこの本は後宮だけで冊数管理された状態で流通するので一般人に見られる恐れは無いので一刀様との馴れ初めから夜の様子を教えて欲しいと言う。

人に語れる程のものでない為お断りしたいと言うとあっさり了解されたが、代わりに私の知る一刀様について教えて欲しいと言われたのでこれは喜んで応じた。

初めて一刀様をお見かけしたところから御生活指導や、如何に一刀様が素晴らしいか、抱きしめて頂いた時の温かさを語ったあたりまでは覚えているが、彼女が酒の勧め上手聞き上手であった為かその後の事をよく覚えていない。

翌朝、叔達に陳琳殿が家まで送ってくれ、また「飲み代は頂きました」との伝言があったことを聞いたが財布から金は減った様子がなかった。

かなり飲んだ気がするが非常に安い店だったのだろうか?

 

7月29日

文書局の王粲が職場へ訪ねて来た、例の小説の題材としたいとの事だった。

彼女のものは全年齢向けであり、取材内容もそういった意味で当たり障りの無いものであった為こちらも応じた。

多少なりとも一刀様の素晴らしさが伝わるものになると良いが。

 

8月1日

三国事務会議にて、元直の発議で交換留学枠拡大の提案がなされた。今後の互いの他国への理解の深化と良好な関係維持の為との事だ。

個人的には良い提案と思ったが一旦国内へ持ち帰る事とした。

 

8月2日

詠様が困った顔をして(曹仁)子孝さん居る?と魏の執務室へやって来た。

城外演習中のはずだと言うと、終わったら相談したい事があるので私の部屋に来てくれるように言ってくれと言われた。

どのような用向きかと伺うと、舌打ちをしながら『お子ちゃまの悩み相談室よ。今蜀から魏に留学してる龐徳の上司が子孝さんだって言うじゃない、翠の話じゃ龐徳も大概なお子ちゃまみたいだから子孝さんがどう料理して(あしらって)るのか教えて欲しいのよ』という。

どういった悩みだろうか、彼女が中央に来る事となった切欠を作ったのは私でもあるのでもし彼女の力になれることがあれば協力したい。

 

8月5日

姜維と士載が聞きたい事があるので飲まないかとの誘いがあり応じたところ、田豊殿と沮授殿も一緒で良いかと聞かれたが特段否やは無いので応諾した。

珍しく個室席を士載が予約しており飲み始めたが、姜維と士載が話を譲り合うようにしており、その後漸く姜維が顔を紅く染めながら「例のあの(陳琳の)小説の最新刊の草稿を田豊殿の伝手で仲達様の部分を読んだのですが」と切り出した。

何の事だか一瞬判らなかったが先に王粲の取材を受けた事を思い出し、あああの(王粲の)小説か、先に草稿は見せてもらっていたがいざ他人に見られると多少照れると答えると、既に内容を知っていたのですか、と驚かれた。

それでその…内容が本当だったのかというところなんですが、と士載が聞くので草稿を思い出し特に事実に誤りは無かったと思うと答えると更に驚かれ、姜維から

「例えば…一刀様の所へ行った時にあの…、(ぱんつを)履かなかったとか…?」

と聞かれどのくだりかと思い返し、ああ、あの御会食へ行って酔ってしまい一刀様におぶって頂いて帰った時の事かと合点したので

「確かに(一刀様の御背中に)吐いていなかった」

と答えると全員からえええええ!と驚かれた。

「恥ずかしくなかったんですか!?」と続いたが

「正直、(酔っておんぶして頂くなど)少し恥ずかしかった」

と答えると、おお…、となんとも言えないため息をつかれた。すると田豊殿が頬を染めて失礼ですがと前置きして、

「あの…濡れたり、したでしょうか」と聞くのでその時の事を思い出し

「ああ…、(涎で襟元を)少し濡らしてしまいました」と答えると、全員が紅い顔をしてきゃあああと叫んだ。

「それは、一刀様に見られ…たんですか!?」

「勿論です、一刀様に見て頂いて濡れていたのが判った訳ですから」

と沮授殿に答えると、本日二度目の黄色い叫び声が上がり、やって来た店員に声を抑えるように注意されてしまった。

「しかし何故…(ぱんつ)履かなかったのでしょうか?」

「?むしろ一刀様と御一緒で吐く(ほど飲む)方がおかしいだろう」

姜維の問の後はまた私以外の四人で微妙なため息をつきながらひそひそと「見て頂くなんて私無理です、恥ずかしくて死んじゃいます」「でも麗羽様のお話でははきなさいって」「濡れたら透けるものにしなさいって意味だったのかしら」等と言っていたようだったが、次いで

「あと、書かれてたみたいに(酒利きの)試験の後に文謙将軍、呂蒙殿とと一緒にその…御褒美といいますか、一刀様の(玉露)を飲まれたというのも?」

と聞かれ、確かに(管理職定期)試験後にそのようなことがあったので

「その通りです、凪と亞莎と一緒に(珈琲を)堪能させて頂きました」

「た、堪能ですか!?」

「?はい。苦味のあるものではありますが私はあの味、あの香りは好みです、何よりも一刀様の(御作りになった)ものですから。貴女達も一刀様にお願いして飲ませて頂いては?」

そう提案すると田豊殿と沮授殿は頬を染めて実は私達も飲ませて頂いた事はあります、味も一刀様のものなので決して嫌いではないですと言い、姜維も実は私もと続いた。すると士載がおずおずと、「わ、私は近々の備えの為に教えて頂きたく、あの…どの位の量だったのでしょうか」と聞いてきたので、

「凪と亞莎と私とそれぞれ杯(カップ)一杯分だ、ただその前に典韋殿に振舞われていた筈なので全部合わせて(元々の量が)どれくらいだったのかは判らない」と答えたところ

「無理ですそんなに入りません!壊れますっ、壊れちゃいますよ!」と赤い顔を振り、田豊殿と沮授殿、姜維は本気の一刀様はそんなに、やっぱり私達手加減してもらってたのね、等と呟き青い顔をしていた。

士載は「そんなには要らない」と言うが慣れれば一杯位はどうという事は無いと諭してやると絶句し少し考えた後、士季ちゃんと(姜維)伯約ちゃんに手伝ってもらって頑張りますと言っていた。

 

なんというか、四人とも熱に浮かされたような赤い顔をしていたが、そろって仲達さんは凄いです、大変参考になりましたが又ご相談させて下さいと言って帰っていった。

特段凄い話はしたつもりは無いのだが。

 

8月7日

昼食休憩時にたまたま士季と行き会ったが、何故か薄ら笑いで私の方を見ていたので何か用かと聞いたが

「いえ…笑いの為にあえて役得を手放す気もありませんので。まあ、二番絞りをご馳走様ですとだけお礼申し上げますね」

と生温かい笑顔で礼をして仕事へ戻っていった。



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司馬日記外伝 誰得?詠得!

悠なるかな様他、コメント下さった皆様に捧ぐ、詠です。と言いながら予めお詫びしておきますと詠が壊れてますごめんなさい。
次は〇琳でしょうか…


「一刀好き。大好き。もうどうしたらいいかわかんないくらい好き」

彼女の部屋に行ったらいきなりクライマックスでした。

部屋に入った途端に抱きつかれるとかもう初めっから尋常じゃない。

 

「詠ちゃん……ここんとこ仕事中も仕事後も荒れてて、しょっちゅう『ってどうすればいいのよー!』って言ってゴロゴロ転げまわってたんですけど、今日になって突然静かになって、安心していいのかそうじゃないのか良くわからなくて…御主人様、今日は出来ればなるべく優しく接してあげて下さいね」

と事前に月が言っていたけど、普段ツンが基本の詠にものも言わずに真顔で抱きつかれてデレ台詞吐かれたら誰だって動揺する。俺だって動揺したが、ここは経験でそっと抱き返して

「詠。俺もだよ」

「ウソつけこのち〇こ皇帝が」

訂正、彼女はデレてたのではなくテンパり過ぎて一周してしまっていたようだ。

 

 

「いいからちょっとそこ座んなさいよ」

「うん」

目が据わっている、酔っ払いだ。多分これ酔っ払いだ。酔っ払いには逆らってはいけない。

 

「ま…あれよ。ボクもツン子ツン子言われても仕方が無いかなって所があるのは認めるわ」

「…うん」

「でもね、だからっつってじゃあ一日自分の性格忘れて好きなようにしていいって一ヶ月前にいきなり言われても困るのよ」

「…はあ」

一ヶ月前はいきなりじゃないと思うが決して突っ込んではいけない。

「それにね、あんたは大体の変態ぷれいは経験済みのち〇こ皇帝でしょ?ネタかぶりして『あ、これ誰々の時と同じだな』とか思われたら泣けるわよ?しかもその娘の方がよかったなみたいな態度をちらっとでも見せられたら死ねるわよ?何この御褒美に見せかけた悪質な嫌がらせ」

「いや…そういうつもりは無いんだけど」

「あんたはそうでもこっちはこうなのよ」

女の子の観察眼怖い!極力そういうことが無いように気をつけてはいるけど!

 

「まね、それでボクも色々考えたわけよ。もうどうせ月みたいに可愛くはならないし、今更デレてみても稟がもうやっちゃってるだろうし。ならもうボクは言いたいこと言ってやりたいことやらせてもらおうと思うわけ」

「うん、なんなりと」

いや、稟と同じようにって言っても詠と稟は違うから似てようが別にいいんだけどとは思ったけれど、こういうのは本人の気持ちが一番だ。何でも俺にぶつけて欲しい、何言われても驚かないから。

 

「じゃまず『詠ちゃんぺろぺろ』」

「えっ?」

「『詠ちゃんぺろぺろ』よ」

「」

ごめん無理驚いた。

っていうかぺろぺろって何?胡坐の上に詠が座って、これどうすればいいの?

いや考えてる時間無いってタイムオーバーなら普通にブチ切れるんでしょ?

ぺろぺろ。でもいきなりエロい事じゃないよな、ぺろぺろって言うんだから…

 

「えっ、詠ちゃんぺろぺろ…」

抱っこしながらほっぺやらおでこやらにキスしてみました。

「詠ちゃん、ぺろぺろー」

「………………」

 

「ぺろぺろ…」

「違うでしょ」

「え…」

「それじゃ『詠ちゃんちゅっちゅ』でしょ、ちゃんとぺろぺろしなさいよ。もっとこう…あんたらしく。変態らしく!」

「わかったごめん。でも出来れば後半は訂正希望」

すいません逃げ出してもいいですか風さん。そんな気持ちは胸の奥深くに仕舞い込んでほおらにっこり。泣いてないよ、泣いてないよ?

 

「詠ちゃんぺろぺろ」

「………………」

真顔で無言の女の子のほっぺたをぺろぺろ。

俺がそんな奴見かけたら間違いなく警備部呼ぶ。誰だって呼ぶ。

「…………ま、こんなもんね」

真顔のままの詠さん、一応御納得下さったようです。

 

「…ところでね」

「うん」

「あんたボクにべた惚れなんでしょ?ぺろぺろちゅっちゅなんでしょ?」

「うん」

一瞬も返事を躊躇ってはいけないし突っ込んでもいけない。

 

「ならもう少し好きそうにしなさいよ」

「いや…日頃からなるべくわかり易く伝えるようにはしてるつもりなんだけど、出来てないかな?」

「全然ね。昼間ちょっと優しくしたり笑顔見せたり夜は夜で寝床に連れ込んで甘いこと囁いてしこたまブチ撒けるなんざ当たり前過ぎて数にも入らないわよ」

はい駄目出し入りました。後半は置いといたにしても、という気持ちが伝わったらしく詠が続ける。

「(っち)…なんて言うのかしらね、駄目男っぷりっていうか女々しさって言うか、情けないヘタレらしさが足んないのよ。『詠ちゃん好き好き離れないでー』っていう」

舌打ちされたし情け(容赦が)無いのは貴女ですよね?というか詠が何を言ってるのかわからない件。

「わかんないの!?例えば部屋を出てこうとしたら手を掴んで引き止めるとか!」

「…俺も本当はいつも引き止めたかったんだ、次からは」

「それをボクはあやして振りほどくけど!」

「振りほどくのかよ!?」

「自分のお茶を飲み終わったらボクの飲みかけのに手を伸ばすとか!」

「変態だ!」

「書類持ってったらお尻触ろうとしてみるとか!」

「セクハラじゃないのか!?」

「七乃にはするくせに!」

「見られてた!?」

 

うんわかった、詠が本格的に壊れてる。あとどうして知られてるんだ?

 

「どうせち〇こ皇帝だからまあそれはしょうがないにしても。ボクばっかり…色々考えていろいろしてんのに不公平じゃない、脱がせやすいかと思って紐ぱん買ったり!何色のタイツが好きなのかわからなかったから全種類買ったり!あんたが変態みたいに髪をくんかくんかするから朝もお風呂入ったり!凪が三つ編みやって貰ったって言うのにボクにはしないのは三つ編みが細すぎるからかと思って太くしてみたのにやっぱりやりゃしないし!

ねえ好きなの?そんなに金髪くるくるがぺろぺろなの?素材そのまま下手すりゃ寝癖立ってる猪々子が俺の嫁なの?真桜が『ホンマ隊長はおっぱい好きやなぁ』ってしみじみ言うくらいでかい乳が好きなの?姉妹丼とか最高なの?ポニテ巻きつけて扱くのが堪らないの?わんこ共侍らしてワンワン言わすのがハァハァなの?それとも年m「そこはやめ」

 

屋根にガツッ、と何かがぶち当たったような音がしてぱらぱらと天井から塵が落ちるのを二人で抱き合いながら見た。

 

「…最後のは取り消すわ」

「そうしてくれると有難いよ」

「まあつまり、ボクが何を言いたかったかって言うと」

「うん」

 

「もっと好きって言って。知ってても聞きたいの。わかってるけど聞きたいの。言ってくれたら嬉しいの」

少し頬を膨らませながらおでこをコツンとあわせてくる彼女に、大好きだよと答えながら口づけた。

 

「ん…ダメ。そんなんじゃ足りるわけ無いじゃない」

優しく意地悪げな瞳で、駄目出しする詠。

「足んないから。あんたの一番得意な方法で好きって示しなさいよ。そのどさくさまぎれに、数え切れない位言ってよこのばかち○こ」

言いながら両足を俺の背中に絡めて引き倒そうとする彼女の方へ自然と倒れこむ。

分かったよ、と囁くと、彼女は喉の奥で小さく笑いながら、俺の頭を自身の胸へと埋めさせた。

 

詠は明日になったら今日の彼女自身の諸々の発言を許せるんだろうかと一瞬心配が過ぎったけれど、今はそれは忘れて。

彼女に、詠に、溢れるほど伝えよう。

『好き』な気持ちを。

 

----------------

 

「いい!?ゆうべのは忘れなさいよ全部まるっとありったけ!『すとれす』発散のための遊びだから全部って言うか薬の所為だからねなにもかも!!ボクは覚えてないあんたも覚えてないはい決定ね!」

「…詠ちゃんペロペロ」

「何すんのよ!ちょっ、やめっ、離しなさいよんふっ、誰か来たらどうすん、こらっ」

「俺の為に履いてくれたタイツすりすりー」

「馬鹿もう朝、ふあっ、だ、駄目だって…ばぁ…ん、月来ちゃうってばぁ」

「月は今朝は起こさなくていいって言ってあるから来ないよ詠ちゃんprpr」

「(…………)……はぁン……もうっ、馬鹿ぁ…」

 

 

(……へぅ、詠ちゃんもう一回なんだ…もう少ししてから出直して来よ…)



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司馬日記24

その後の、とある文官の日記です。


8月10日

昼食時に張任殿と庁内食堂の卓が一緒になった。先に詠様が張任殿に何か悩みがあるらしい事を言っていたのを思い出し、それとなく近況を伺いながらもし悩み事があれば相談に乗る旨を申し出た。すると近々に飲みながらでもお話したく時間を取って頂きたい、出来れば太史慈殿、龐徳殿も同席をと依頼された為調整する事とした。

 

8月11日

田豊殿と沮授殿、審配殿を連れて袁紹殿が職場へ公達様を訪ねて来た。

公達様と別室で暫く打ち合わせをされた後帰って行かれたが、審配殿は初対面の頃の険がとれ、憑き物が落ちたように温和な表情だった。

公達様にどのような御用向きだったのでしょうかと伺うと、

「あーあれよ、こないだ私と麗羽と審配で一刀様としたって話をしたら田豊と沮授がそういうのをしてみたいって言い出したらしくって。どれくらいのプレイがしたいのか聞いてたのよ」

とのことだ。職務中にそういった話をするのはどうかと思ったが公達様と袁紹殿、審配殿の共通点を思い出し、田豊殿と沮授殿にもそういった御趣味があったのですかと聞いたところ

「あんた失礼ね、桂花や甘寧みたいな本物の変態はともかくあたしくらいは普通よ、ほかにも結構居るんだからね」と怒られた。先のお二方と公達様は何が違うのでしょうかと申し上げると、「桂花達は、脅迫とか力づくとかで無理矢理ヤられるプレイが好きでしかもそれを認めない変態女。あたしたちは一刀様の従順な雌になって好き放題辱めてもらうのがちょっぴり好きな普通の女、わかった!?」

違いについてはよくわかりましたと答え、最後の一文については同意致しかねますがとは言わなかった私は一応社会人だと思う。

ふと張郃と目が合うと「冀州はみんなそうなのかみたいな目で見ないでよ、あたしと高覧と猪々子は違うんだからね」と半眼で言われた。

そこに顔良殿の名が無かったのは偶然であり特に意図があった訳ではないと信じたい。

 

8月12日

子敬と会議で一緒になった。

帰り際、「今度(太史慈)子義と飲んでくれるらしいじゃない、宜しくね!」と珍しい程に爽やかな笑顔で言われた。子敬は太史慈殿と仕事で一緒になる事が多いと言っていたので親しいのだろう、ただ今までは彼女が話題に上る時はいつも頭が痛いような表情としていたと思ったが。

 

8月16日

一刀様に本日の御公務の説明をしていると、曹操様が凄愴な笑顔でこめかみに青筋を立てて一刀居るわよねと仰って一刀様の御部屋へやって来られた。何事でしょうかと伺う間も無く、首根っこを掴まれた一人の目つきの悪い娘を一刀様に突き出し、

「この娘凌遅(刑に)かけてくれる?っていうかかけなさい」

という。一刀様はその娘の事を御承知の様子で頭を抱えられて経緯を聞かれたところ、

「荀攸は一刀の子種の墓守、程昱は御伽部屋の門番、郭嘉はエロ小説の読み上げ、張遼は荀彧の尻叩き、許褚は種馬の番人、楽進は一刀の好きな体位の読み上げ、李典は御伽番の伝令が適任よ。于禁は顔の左官屋、夏侯惇は床の中じゃ五体満足に動かせない将軍、曹洪は銭で一刀を買う潮吹き太守、残りはただ服を脱いで一刀の体を貪るだけの淫乱雌犬共じゃないの」

等と聞いているだけで青ざめる程の暴言を吐いたという。

一刀様はその娘と「だから大人しくしなきゃだめだって言っただろ」「だって本当のことだもん」等と言い合っていたが焦れた曹操様が割って入るや娘を縛り上げ、『いいからやりなさい、私の前で股開いて「皆様ごめんなさい淫乱雌犬は私でした」って泣いて謝るなら許してやるわ、さもなきゃその娘は殺す。これは魏の総意よ』と一刀様にすごまれると、困った御様子で一刀様は私に退室を御命じになった。

 

成り行きに緊張して部屋の外で待機していると、暫くは一刀様と娘が口論する声がしていたが次第に娘の悩ましい声が聞こえだし、その後曹操様の艶めいた声と娘の弱弱しい涙声が混じっていたが、あまりの事に圧倒されてどれくらい立ったのかも判らずにいると妙に肌艶の良い曹操様が御部屋から出てこられ、ああいい気味だったわあら仲達まだ居たの、もう入ってもいいわよと言われた。

恐る恐る御部屋に入ってみると、涙の跡があるが険が取れた寝顔で先の娘が寝台で眠っており、一刀様が『一応殺されることは無くなったけど、魏には居辛いだろうから詠に相談してどこか転職先を探してあげてくれないかな、頭は良い子だと思うから』と仰った。

娘の名は禰衡というらしい。

 

8月17日

就寝前に禰衡の事件を思い出したら眠れなくなり、また御筆を汚してしまった。

御寵愛を賜るようになってから、体を持て余したりふしだらな妄想をしてしまう事が増えてしまったような気がする。私は淫乱の素質があったのだろうか…落ち込んでしまう。

 

8月19日

退庁後に子孝様、子丹お嬢様らと飲む事となった、子廉様は後から来るらしい。

暫く四方山話をしながら飲んでいると『やっほーみんな飲んでるぅっ?』と子廉様が御機嫌な様子で見えられ、子丹お嬢様らが今日の主役が来たわよ、いらっしゃい首尾はどうだったの、等と声をかけられた。

聞くと、今日の午後は御伽番で一刀様と『水泳部の倶楽部活動』をしていたとのことだ。自慢げに紐か細帯のような赤い布を掲げられて水着最強、と『どや顔』で仰ってからは独壇場だった。

「あっもちろん一刀様が先生であたしが生徒ね?着替えて出てったらもういきなりやる気見せてくれちゃって!準備運動しててもずれちゃうし脇からちらちら見えるのも良かったみたいで一刀様目の色違うのよ、碌に泳ぎもせずに色々えろえろされちゃって、直ぐにぎゅーっであっはーんでうっふーんよ!!」

 

最近、本当にうっかり外で飲めないようになってしまった。

こういう需要を意図しているのか、店員が女性のみで必ず個室席を用意してくれるこの店は贔屓にせざるを得ない。

 

8月20日

凪、亞莎と飲みに行く約束をした。昨日、御嬢様達から仲達はあの透け透け白水着で一刀様とお風呂に入ったらしいがどうだったのかと聞かれたが、『実は正直なところ毎回よく覚えていない』と答えたら文字通りカミナリを落とされた為だ。

実際には何一つ覚えていないという訳ではなく、一刀様のお傍へ行ったあたりまでは覚えているのだがその後が非常に抽象的になり、一刀様の御顔と、幸福過ぎる爆発が胎内であったという記憶が残るがその後一刀様の腕の中で目を覚ますというか正気に返るという感じなのだが、

「仲達…貴女刺されるわよ、望んでても機会が無い地方勤務の女に知られたら」

「一刀様、なんという無駄撃ち…」

と言われ、無駄とまで言われると少し傷つくが、御嬢様からは一度一緒に伽をした凪と亞莎に詳しく聞いておくようにと厳命されてしまった。

 

8月22日

庁内でちょっとした事件があった、突如女性の泣き声が聞こえてきたと思ったら趙雲殿と一刀様がおり、大泣きされていたのは趙雲殿であった。

「ああああ主はぁ!も、もう私の事は嫌いになったのですか、あああぁぁあ”あ”!う”ぅうえぇぇぇえええ…!」

と普段の飄々とした彼女からは想像もつかぬ、童女のように泣かれる趙雲殿を一刀様が必死に宥めながら御部屋へと連れて行かれた。

蜀の面々も驚いていたようだったが公孫瓚殿は経緯を御存知だったようで、趙雲殿があまりにも一刀様をからかいすぎて怒らせてしまい無視を決め込まれていた為らしい。

まあ可哀相だが星にはちょっといい薬かもなと言われていたが、それを見ていた張勲殿と顔良殿が

「このあときっと甘え放題なんでしょうねー」

「泣けばいいとか少しあざと過ぎですよねぇ」

となんとはなしに底冷えする笑顔で呟かれ周囲に目を丸くされていた。

 

8月24日

御嬢様と共に詠様、稟様と事業計画の打ち合わせ後に久しぶりに一席お供させて頂いた、仲徳様や珍しく文若様と公達様も御一緒で多少気後れのする面子だった。しかし人間関係の円滑化も仕事のうちとは言え、最近私は夜は飲み歩いてばかりのような気がする。

仕事の話や四方山話をしていたが、最近の一刀様の話から馴れ初めについて話が移り、私の番となり酒席で記憶を失ってしまった話をした。その時、一刀様と御会食後に前後不覚となりうっかり一刀様のお背中で吐いてしまったかと思って青くなったという話をしたところ、詠様、文若様が爆笑され普段は喜怒哀楽を顕著には面に表さない仲徳様までが珍しく酒を噴き出された。そこまで面白い話とは思わなかったが、実際には涎一滴だったので御容赦頂きました、若し本当に吐いてたら生きては居られませんでしたと付け加えると更に爆笑され、その中で一人だけ妙に素面のような稟様が

「そうですか…では、もし一刀殿と事の最中に吐いたりした者が居たら…仲達はどう思いますか?」と仰ったが、あまりの仮定に

『あり得ません、そんな事をする女はまず女ではありません、いえ人ですらありません。私なら死にます、寧ろ生まれてきた事を謝りたいです。よりによってその最中にとは…一刀様は吐き気を催すようなお相手だと言う事でしょうか?それならばそれこそ万死に値しますしではそもそも伽に伺うなと言いたいです。いや、あるいはそういった変態嗜好を持つ女なのかも知れませんが流石にそのような変態女は一刀様から遠ざけるべきです』

と答えたところ、文若様らが卓をばんばんと叩きながら「し、死ぬしかない、死ぬしかないって!あっははははは!」「お、嘔吐プレイは流石に変態過ぎよね、引くわー!きゃははははははは!」と声も出なくなる程に涙を流して笑われてしまった。

その後、何故か稟様は涙目で

「体調不良等もあったのかも知れません、事情を斟酌してあげては」等と寛容な御意見を仰っていたが余りに酷過ぎる仮定なので「ならば辞退すれば良いだけの筈、例えばつい友人に煽られて飲み酔ったまま(御伽に)行ってしまいました等では何の言い訳にもなりません、もしそんな女性が居たら魏の恥いえ後宮全体の恥、あの近親上等☆姉妹の方が余程ましと思います」

「…最中でなく事後であれば、多少の同情の余地が」

「何処にあるのか判りません」

等とやりとりをしていたが、御嬢様や公達様が

「や、やめて!もう死ぬ!私笑い死んじゃうから!くっふふふふふっ!!」

「あ、あんた本当は知ってんでしょ!?いじめ良くない!いじめ良くないわっ、あっははははは!!」

と仰っていたが、今のお話のどこに笑う要素があったのか判らなかった。

 

その後、ですよねぇ…やっぱそれはないですよね…ドン引きですよね普通、等と言いながら言葉少なになってしまった稟様を、普段はからかっている姿の方が多い仲徳様が懸命に元気付けており、それを詠様達がにやにやと生温かく眺めながら飲まれていた。



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司馬日記外伝 誰得?冥得!

遅くなりましたが冥琳です、短めです。華琳も冥琳も難産で…助けてめーりん!


すーはー、と扉の前で息を整える。

大丈夫緊張してない。頭の中でもう一度シミュレーション。うん、大丈夫。

「夏候淵が呉の特産の『ろーしょん』をなぜ持っていたのか不思議に思わなかったのか?所謂等価交換というものだ、この立場になると下から突っつかれるばかりで誰かを振りまわすと言う事が中々無いのでね、良い気晴らしだ」

そんな彼女の言葉を思い出しながら彼女の私室の扉を開ける。

 

「ただいま、冥琳」

「遅いではないですか、兄さん」

「ああ、ごめんごめん」

…すいません、違和感パねぇっす。

 

「まったく。兄さんはこの周家の長男なのですから、もう少し自覚を持って頂かなくては困ります」

「ははは、そうだね」

いつもの臙脂色の服に似た割りと正統なチャイナドレスだけど当然に胸元はぱっつんぱっつんだ、これはこれでエロい。

しかし妹が冥琳。冥琳が妹。こんな妹がいたらたまらん、性的にじゃなくて兄の威厳的に。ただひょっとしたら十代の頃の冥琳ってこんな感じだったんじゃないかとふと思わせるものがある。

 

「早く今日の分の宿題をやって、そうしたら昼食にしましょう」

「うん」

って冥琳の出してくる宿題ってこれ本物の決裁書類じゃんよ!

「冥琳、これ…」

「難しいところは私が教えてあげますから、兄さん自身でもよく考えて決裁するか意見をつけて差し戻して下さいね」

 

どうして美女の笑顔って迫力あるんだろう?にしてもこのプレイ中に仕事持ち込んできたのは冥琳さん貴女が初めてです。

「それではこちらの案件から始めますよ。寿春ー建業線の建設は水路が使えない時期の代替交通手段として、って兄さん一体どこを見ているんですか」

「…ごめんごめん、冥琳があんまり魅力的でさ」

机の上に組んだ腕の上に、これ見よがしにどたぷーんと乗せられたスイカを見せつけられて見るなというのも酷じゃないか、って言うか冥琳はこのポーズ普段絶対やんないくせに!雪蓮と祭はわざと、穏は素でやるけど!冥琳これわざとだよね!?

 

「まあ兄さんったらいやらしい、妹の!私の胸をそのようにじろじろと眺めるなんて!学問に集中して下さい」

「…………はい」

隠す振りしてむしろ溢れさせるとはあざとい、さすが冥琳あざといっていうかそのニヤニヤ振りから察するに御満足らしい。くやしいでもつい見ちゃう!

 

「こちらは米の二期作試行の為、休耕田を…」

「うんうん」

「造船の技術開発にかかる費用が…」

「むむむむ」

「地方出先機関の組織改正で…」

「ふむふむ」

「…で以上ですが、どう思いますか?

「うん、すごく揉みたい」

 

「……!」

べしっと頭を叩かれました。

「ぷっ…ぷふっ、馬鹿だな、あ、いえ馬鹿ですね兄さんは!あははははは!あっはははははは!」

もう素で笑ってはります、このお姉さん。いや…うん、俺も余りにも思い通り過ぎかもしれないけどね?

 

「ちょろい!ちょろ過ぎですよ兄さん、貴方の頭の中にはそれしかないんですか、あははははは!」

「いやそれは反則でしょ、冥琳に目の前でそんなことされたら真面目に仕事してたって見ちゃうってば…いやでも良かったよ」

「何がですか?」

思わず本音が出てしまう。

「冥琳が楽しそうで。いつも忙しそうで眉間に皺寄せてる冥琳よく見てたから、有難うって思ってたけど申し訳ないなぁとも思っててさ。大笑いしてる冥琳は可愛いよ。なんか俺も嬉しくなる」

「………は…」

笑顔のまま止まった冥琳に、兄さん風(のつもりだったんだよ俺なりに)でなく素で喋ってしまったことにはっと気がついた。…けどひょっとして遅かった?

 

「あの…冥琳?」

「ふふふ……」

含み笑いを漏らしながら、向かいの席を立って俺の隣に座って来た。

 

「また上手い事を言うじゃないですか、兄さん?」

呼び名こそ兄さんとか言ってるけど口調はいつもの冥琳のもの。

「いや大笑いの冥琳って久々だなぁって、うん、真面目な顔は綺麗って感じなんだけど笑ってると可愛いよね」

「またそんなことばかり…そうぺらぺらと口説き文句が出て来るのはこの口か?この口か!」

「ひたたたた!」

言いながら口を抓る冥琳の笑顔は少女のようだと重ねて思う。それなのに、

 

「この口か」

そう言って抓る指を離して唇を重てくる彼女には途方も無く女を感じて、雄の本能をこれでもかと刺激される。

彼女の背を撫でるように抱き寄せると俺の膝の上に乗り上がった。互いに次第に強く抱きしめ合い、舌を深く、何度も絡め合いながら彼女の艶やかな黒髪を愛おしさのままに何度も撫でる。

名残惜しげな唾液の橋が途切れると、蠱惑的な笑みと共に情欲に濡れた唇を焦らすようにゆっくりと開いた。

「……兄さん」

「何?冥琳」

「貴方が孫家に婿に行く前に、私が女を教えてあげますね。駄目な兄さんのために」

「うん。冥琳に教えて貰いたいね」

 

彼女の腰と膝の裏を抱えて立ち上がる。

「ふふふ…わたしの指導は厳しいですよ?」

「望むところ過ぎる」

そう言って二人でくすくすと笑い合いながら寝台へ向かうと、彼女は首筋に口づけを一つくれた。

 

 

 

 

 

 

--------------------------

 

某執務室 (山のように積まれた没原稿に囲まれて)

「駄目ね、いくら書きなおしても納得いく脚本にならないわ…せっかく幼馴染で生徒会長の同級生っていう設定を稟に譲ってもらったのに…。誰か私の琳得のネタ出しをするやつはいるか!なんてね…はぁ…」

 

王様の苦悩は深い。割と駄目な方向に。



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司馬日記25 暑気払いにて。あるいは呉と蜀の惨劇

その後の、とある文官が暑気払いに出席した時の事です。


8月26日

三国各局の管理職級の親睦を兼ねた暑気払いが行われた。

 

珍しくかなり酔われた公達様が、やおら立ち上がるや郭淮を連れて宴席の前方へふらふらと出て行かれると、

「今日は無礼講だからね!一番荀攸公達、物真似するわよ!」

と宣言された。するといつ用意していたのか猫耳を頭に取り付け、両手を腰にあてて郭淮を睨みつける様にした。あれはきっと文若様の真似なのだろう、伯母だけあって面影があると思って見ていると、にやにやしながら

「この色情魔!何他の女の尻ばかり見てんのよ!」と郭淮を怒鳴りつけた。すると

「ああごめんごめん」と郭淮もにやにやしながら謝る真似をするが、あれは一刀様の真似なのだろうか?

「変態、全身精液男!あんたも万年発情男なら私にだけ発情しなさいよ!いい?他の連中にはわからない様に愛情表現してるだけなんだからっ、勘違いするんじゃないわよ!これは後でいっぱい虐めて欲しいって前振りなんだからね!恥ずかしいから他人から見たら絶対好きなようには見えないようにしてるだけなのよっ!」

「ああ分かってるさでもそんなににじり寄らないでくれ、あばら骨が突き刺さってちょっと痛いんだ」

「何ですって!あんたが痛がってないで私に痛くしなさいよ、この馬鹿ぁ!」

そんな掛け合いに宴席がどっと沸いたが、御本人が見られたらきっと烈火の如く怒られるだろう。

 

一頻りの笑いが収まると、今度は明らかに酔っている子敬が「それアリなら呉もやります、呉も!脚本、魯粛!女優、周泰と蒋欽!」と声を上げると同じく顔の赤い二人がとてとてと前方へと出てきた。

周泰殿が器用に団子型の髪飾りを着け、豊かな黒髪を服の中に入れて隠すと首に手ぬぐいを巻いた。そして蒋欽殿の背後へ廻ると目じりを吊り上げ、小刀を抜いて腕を廻し蒋欽殿の首元に突きつけた、あれはおそらく甘寧殿の真似ではないか?

「おい」

「な、なんだよぉ」

周泰殿が脅すような声色をし、蒋欽殿が怯える真似をする。

「私はやりたい」

「いきなり過ぎだよ!」

呉を中心に宴席がどっと湧く。

「お前の希望の通り、私は今日履いてない」

「履かないでくれなんて言ってないよ!」

「うるさい、お前のいやらしい目がそう言って居たんだ」

「人のせいにするなよ!」

げらげら笑う声に混じってこれ言いそー、とかやばいよー、という声の方を見ると徐盛殿と諸葛瑾殿が涙を流して笑っていた。

「明日は蓮華様の日だろう」

「そ、そうだけど」

「じゃあ蓮華様の御負担を減らすため、今日のうちにすべて出しておくんだ」

「それ自分の欲望だよね!?」

「幸い私がお前にらぶらぶちゅっちゅなのは誰にもばれていない」

「絶対みんな知ってるよ!」

「うるさい黙れ。特に蓮華様には完膚なきまでに知られていないはずだ」

「むしろその性癖心配されてるよ!」

 

あまりに調子のよい掛け合いにこれは本当に即興なのだろうかと感心する。

「いいか一刀」

「な、なんだよぅ」

「女は胸じゃない」

「分かってるよ、って明命ちょっと首食い込んでる!ちくってするんだけど!」

「最近成長してきた小蓮様の胸に嫉妬などしていない」

「わかった!わかったから、明命血!血出た!」

見てみると、彼女らは髪の長短は違うものの容姿は似ている。しかし蒋欽殿の方が確かに胸元がややふっくらしているようだ。

「それと一刀」

「いいからこの刀どけてくれよ!」

「メイドは好きか」

「す…好きだけど」

「お前が好きなのはつるぺたへぅメイドか?ツンツンメガネメイドか?それとも本当は普段との落差が萌え萌えな青色エプロンの素敵なお姉さんメイドが一番好きなんだろう?」

「聞き方に悪意を感じるよ!とあと一番初めのはやばいよあとで土下座しに行こうよ!」

「いいからどれが好きなんだ!」

「み…みんな好きだけど…」

「そうか多少むかつくが正直者のお前にはツンデレな青色エプロンのお姉さんを縛って犯る権利をやろう、もう縄なら用意してあるというか装着済みだ」

「はじめっからその落ちが狙いかよ!」

 

どうも有り難う御座いましたー、という二人には宴会場から惜しみない拍手が送られた。

 

すると御嬢様と子孝様、子廉様が宴席の前の方へ出られて、

「はいはーい、もう一つやります!」

と仰ったので見ていると、

子孝様が目を細めて真面目な表情を作り、

『張郃、頼んでいたあの仕事はどうなっている』

と鋭げな声色で言うと子廉様が

『出来ているわ、書類はここよ』

と言って渡す真似をし、それをしかつめらしい顔をして頷きながら受け取った。きっと子廉様が張郃役なのだろうが、特段似ている風でもない。

すると子孝様は今度は御嬢様の方へ向き直って急に満面の笑顔を浮かべるとで膝をついて胸の前で指を組み、

「ああん一刀様今日も素敵ですぅ、わんわん!」

と甘ったるい声で言うと会場から爆笑が起こった。子孝様は一体誰の物真似をしているのだろう?

一刀様役らしい御嬢様が

「有難う、今日も可愛いね」

と言うと

「はぁうぅ~ん!褒められちゃいました、私、幸せです~!」

と言いながら頬に両手を当ててくねくねと体を捩じらせる子孝様。さらに御嬢様と

「お茶淹れてくれるかな」

「はいっただいま!わんわん!」

「太陽、西から昇らせてくれるかな」

「はいっただいま!わんわん!」

「稟をいじっといてくれるかな」

「はいっ容赦無く!わんわん!」

等とやり取りをして一礼すると会場からは爆笑が止まらず、周囲から『本人の前でそれってアリなの』『さすがに誇張し過ぎだけど雰囲気出てるわ』等と聞こえていたが、それにしても子孝様は一体誰の物真似をしているのだろう?

笑いと拍手が止むと今度はまた別の一角から『はいはい!これだけの芸を見せられて蜀だけ黙っている訳には参りません!』と声が上がったと思うと例の近親上等☆姉妹こと劉封殿と関平殿が、嫌がる風の魏延殿の腕を掴んで立っていた。

関平殿は右の前髪を垂らして後ろ髪を縛り、裙子(スカート)を下着が見えてしまうぎりぎりまで詰め上げた上、胸元に宴会で出された肉饅を詰めている、これは間違いなく彼女の義母の関羽殿の真似だろう。

劉封殿はいつの間にか紫色の衣装に着替えており、よく見ると左足の切れ込みを態々手で破いたのか腰上まで切り込んでおり、この席には女性しか居ないから良いようなものの下着が見えてしまっている。しかも胸元にはこれでもかというほどの肉饅が詰め込まれており、しかもそれをこれ見よがしにしなを作りながらぶるんぶるんと振りたてている。ひょっとしてあれは黄忠殿の真似だろうか?

二人は困惑顔で『藤香様も玲紗様もお止め下さい』という魏延殿を両側から挟んで腕を取り、

 

 

 

 

「うっふ~ん一刀様ぁ…わたs

「藤香お姉ちゃんと玲紗お姉ちゃん、誰の真似をしてるのかな?」

 

 

 

 

 

宴会場の入り口でにこにこと笑っている璃々嬢の声に会場が静まり返った。

 

誰の真似をしてるのかな、という璃々嬢の重ねての問いに誰も答えられずにいると

「璃々分かんないから、お母さんと愛紗お姉ちゃんに見てもらおっか?」と言いながら姉妹の元へ行って手を引くと三人は涙目で首を横に振り、がくがくと震える姉妹の胸からは肉饅がぼとぼとと落下した。

姉妹はとても力を入れているように見えない璃々嬢に引かれながら、

「璃々、可愛いぱんつ欲しいんだぁ、刺繍があってお尻が透けてるやつ。藤香お姉ちゃん達買ってくれるかな?」

「かっかかか買いますよ買います!買わせて下さいね璃々ちゃん!」

「あとあさっての午後、ごしゅじんさまと遊ぶって言ってたよね?いいなぁ、璃々もごしゅじんさまと遊びたいなぁ」

「あっ私達その時間急用が出来ちゃいました!だから璃々ちゃん代わりに一刀様と遊んで下さいね、それはもう好き放題!夜遊ぶ予定だった焔耶も用事が出来ちゃったって言ってますからずっと遊べますし一緒にねんねも出来るんじゃないですか!?」

「ワ、ワタシを巻き込まないで下さい!?あと藤香様も玲紗様も手を離して下さいっ、ワタシは止めてたじゃないですかぁ!」

等と言いながら四人は宴会場を出ていった。

 

静まり返ってしまった宴会場に公達様が、

「まあ、うん、他人事だし?あの姉妹が体を張ってオチをつけてくれたところで切りも良いので、ここでお開きにしましょ」

と声をかけ、『皆様の益々の御活躍と近親上等☆姉妹の冥福を祈って』とひどい掛け声で乾杯を行い、閉会とした。

 

三日後、伯達姉様と黄忠殿、馬騰殿が立ち話をしているところへ通りがかり『璃々もあと一息でしたんですけど』『実力主義は分かりますけれど順番は守って頂きませんと』『うちの馬鹿娘達は本当にそういう頭が回らんで』などという声が聞こえたが、なんとなく聞いてはいけないような気がして素通りした。

 

またその後日、周泰殿と蒋欽殿が大怪我を負い当分の間甘寧殿が二人の担当日も一刀様の警備を担当することとなった。士季よると、例の近親上等☆姉妹が腹いせに先の周泰殿と蒋欽殿の宴会芸を甘寧殿に密告し、激怒した彼女が二人を闇討ちにしたというのが警備部内の専らの噂であるという。

その件でふと思い出し、士季に子丹御嬢様方が物真似されていたのは誰の事なのか知らないか、これこれ斯様という感じだったが誰も教えてくれないのだがと聞いてみたところ、

「…一応先輩の名誉の為に言っときますけど凪さんじゃないですよ。なんなら一刀様に聞いてみたらどうです、多分御本人連れてきてくれるんじゃないですか?」

と口元を歪めて笑われた。

 

管理職級でそんなほいほい連れて来れるような暇そうな官吏は居るのだろうか、居たとしたら今少し業務に励んで頂きたいものだ。



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司馬日記外伝 誰得?華得!

難産の末でしたが、電波を受信しまして…。
私はとてもしっくり来ちゃったんです…華琳様ごめんなさい。
華琳様ファンの方にもごめんなさい。
(でも思春ファンには謝らない キリッ )


「……なによ」

朝食後、華琳を起こそうと思って部屋に入って名を呼ぶと、不機嫌そうに机から顔を上げた彼女の目元は赤かった。

 

「…仕事を頑張ってくれるのも有難いけど、あんまり無理しないでくれよ」

「…うるさいわね。仕事じゃないわよ」

再び机に突っ伏してしまうテンション最低の華琳と、その周りに積みあがった反故紙の山。

「私もう眠いから寝るわ。会議は夕方からだから稟に直前に起こしてって言っといて」

「寝ちゃうのか、華琳」

今日は日中ずっと華琳と一緒に居る予定になっていたはずだったけれど、眠いのなら仕方が無い。

しかし、だいぶ前に華琳が例の薬をこの日に使うからと言っていたが、その後の連絡は無かった。そして寝ておらず不機嫌な華琳、反故紙の山。

悪い想像に思い当たって声を掛けかねていると、机に突っ伏したままの華琳の方が「見なさいよ、そのごみの山」と呟いた。

 

一枚を手にとってみる。

『幼馴染。合同塾の生徒会長、一刀は私を追って生徒会に入った書記見習いの庶務。一刀は昔から私の事が好きで好きで割りと所構わずべたべたしようとして来る性格。(実際の一刀よりちょっと軽い位を指示)まだ恋人同士ではなくここから結ばれる場面』

その文末にこれも華琳の字で『ありきたり ×』と書かれており、次々に丸められた紙を披いてみる。

 

『清純箱入り娘 稟がやったのに近い ×』

『小悪魔風 蒲公英、小蓮とかぶる ×』

『気弱系 季衣流琉凪呂蒙月はわわあわわのどれかとかぶる ×』

『妖艶姉 居過ぎる ×』

『つんでれ もう何度もやった ×』

『やんでれ 一刀がひく ×』

『上司(私)と部下(一刀) ある意味やりつくした ×』

『不倫 張勲の十八番 ×』

『実は私も天の御遣いだった 一刀がひく ×』

 

……例の薬を使ったプレイを考えたけれど、目新しさが欲しい、しかし誰かと被るのは嫌、あと俺の対応力の限界を超えそうなのも駄目ってことか。先が読める天才って難儀だ。

 

「………見た?笑えば?馬鹿みたいでしょ」

「そんなことないよ」

「いいからもうほっといて、私寝るから」

「そんな所で寝てたら風邪引くだろ。……あと華琳が寝るまで添い寝させてくれよ」

「いいわよそんな気を遣わなくて。貴方暇になったんだから他の待ってる娘の所へ行ったら?それも貴方の仕事のうちよ」

「華琳」

「いいの!」

寝台へ連れて行こうと彼女の手を取ろうとした手が、小気味いい音を立てて撥ね付けられる。その音に一瞬だけ華琳のはっとした顔が上げられるが、直ぐにまた伏せられてしまう。

 

取り付く島がない。

しかしこういう華琳を放っておいてはいけない事を経験的に知っているし放っておきたくもないので、彼女の隣に椅子を持ってきて座って、彼女が落ち着くのを待つ。

部屋に流れる沈黙は、彼女の気持ちを考えたら不謹慎だけれどこの二人きりの時間は心地いい。

その時間を少しだけ堪能してから、「華琳、寝台に行って寝よう」と声をかけると彼女の背がびくりと震えた。するとその震えは次第に大きくなり、しゃくりあげる息は嗚咽となった。

 

「華琳……」

「…どおして、凪とか…稟とか蓮華とかは、あんなに可愛いのよ…、ど、どぉして!わたしはこんなにかわいくないのよぉぉ…!いくら考えても可愛くなれないの、可愛い子達の真似しようとしても違うのが分かるの!あ、あの子達は本物なのに自分だけ偽物なのが分かるの、でもこのままじゃ全然可愛くないのも分かるのよ!もうどうしたらいいのか分かんない、教えてよ一刀、ねぇぇ…!」

泣きじゃくる彼女を抱き寄せて背中を撫でる。気の利いた表現じゃないんだろうけれど、思うままを彼女に伝える。

「ありきたりな言い回しで申し訳ないんだけどさ、華琳はそのままで凄く可愛いよ、大好きだよ。華琳は自分が可愛げが無いって思ってるんだろうけどそんな事無いんだよ」

「う、嘘吐き」

「嘘じゃないと思うんだけどな」

「あ、貴方垂らしだけど結構皆に気を使うからね、いいのよ私にそんな気を遣わなくて、魏王舐めないで。ほらっ…早く帰んなさいよぉ!」

 

やばい。

腕の中から出て行こうと胸を押してくる華琳はやばいかもしれないと本能が察知して、ほぼ無意識に華琳の唇を奪っていた。

逃れようとする華琳を無理矢理抑え込んでひたすら彼女の口内を蹂躙し続けたのはそういうプレイの時以来だ。

 

呼吸困難寸前になって唇を離し、脱力して頬が紅潮し先程の涙とは違う潤んだ瞳の華琳を見た瞬間、天啓が閃いた。それを彼女に伝えたら人として、男として常識と倫理を持っているという誇りをも失う可能性が頭をよぎったが俺には迷いはなかった。

 

「もう一回言う、俺はどうにもこうにも華琳が大好きだ。そんで、華琳だけに対して変態的な劣情を抱いている」

「……へ、変態的ってどんなよ…。貴方元々大概に変態じゃないの…」

それをボソボソと「……という感じで」と華琳に伝えると、流石に「頭は大丈夫この種馬」という目つきで見られたがそれは織り込み済みだ、迷いは無い。

「…その枠は小蓮とか璃々が居るんじゃないの?」

「いや違うはっきり違う。小蓮は端的過ぎるし、最近の璃々ちゃんは大分大人っぽくなった上に母親譲りに直線的に来てる。というか璃々ちゃんはそういう間柄じゃないから引き合いに出さないでくれ、色々自信が無くなる。それはさておき華琳には『あざとく』、その枠としては主に太ももがエロ過ぎ熟れ熟れボディと幼ないながらもませた口調で俺をケダモノにしてくれるはずだ。頼む、これは華琳にしかしない、華琳にしか出来ないお願いなんだ」

 

「………しょ、しょうがないわね…、服とかはこのままでいいの?」

よし通った。

「スカートはぱつぱつな雰囲気を出すためにもう少し丈を詰めて。あと小柄感を強調しつつ胸元を危うくする為に市販の華琳の服(大-中)があるからこれに着替えて」

「よ、用意がいいのね」

「常々着て欲しいと思ってたので」

「馬鹿…じゃあ着替えたら呼ぶから、少し外に出ていて」

「了解」

 

なお入っていいと呼ばれて部屋に入ると、椅子の上でくりくり瞳で上目遣いと明らかに見せる為の体育座りでパンチラかましてくれながら舌っ足らずな声で名前を呼ばれたら理性が赤壁的大敗を喫したとだけ言っておく。

 

---------------------

 

「すっごい、変態…………貴方、改めて思うけど底無しね」

「いや…華琳が可愛過ぎるからだ…、予想以上、だった」

腕枕で荒い息をつく彼女が御満足そうでなによりだ。いや俺も俺でへろへろになったくらいだけど。

「それは喜んで良いのかしら…?ああもう…服も何もかもどろどろじゃないの」

「半分近くは華琳の、あてっ」

「馬鹿。…それにしても私は貴方の危ない扉を開けてしまったのかしら」

「いや華琳限定のプレイだから大丈夫…だと思いたい。華琳もちょっとくらいは新しい世界の扉が」

 

髪を撫でながら彼女の顔を覗き込むと照れ笑いの表情を浮かべて胸を軽く叩かれた。

「…開いちゃったじゃないの、どうしてくれるのよ!…もぉっ、かりんかずととおふろいくの!ねえだっこぉ、だっこして!」

「はいはい」

甘ったるい声でしがみついて来る彼女を抱き上げながら、彼女の笑顔に幸せを覚える。

…多少失ってしまった人として大切な何かの事はとりあえず忘れて。

 

 

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…とは言っても。

 

 

「…………華琳。流石にこのプレイの事は」

「……そうね、曲がりなりにも皇帝と魏王でコレっていうのを人に知られるのはちょっとね…。でもちっちゃいかりんにむらむらしてあーんなにえっちことしたのはかずとよ?かりんはされちゃっただけだもん、ねぇ?」

「ちょっ、やめ!元気になっちゃうから華琳ちゃん!降りなさいって!」

「ほらほらぁー、うふふふふ…ふ、んっ…はああぁ…ん………もぉかずとったらぁ…、またこんな深くぅ…」

 

 

 

 

 

「ああ、姉者ちょうど良いところへ。悪いんだがこれを医務室まで持って行ってくれないか」

「なんだこれは…って稟か、また鼻血まみれじゃないか。構わんが、秋蘭はこんなところで何をしているのだ?」

「ん…まあ門番のようなものだ」

「?華琳様がお部屋に居るのか?」

「いや?我々の良く知る華琳様なら居ないぞ。ただ、この部屋の中には国家機密があるからな、警備はしておくに越した事は無い」

「そうか!では門番は頼んだぞ秋蘭」

「任されたよ姉者、稟を宜しく頼む。あと予算会議は明日に延期だと風に伝えておいてくれ」

「分かった」

 

 

 

「…ああ、稟の鼻血は医者が止めてくれるだろうが、後で口も止めておかなくてはな…」



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司馬日記26

その後の、とある文官の日記です。


8月28日

帰宅後自室で財政書を読んでいると、士載が士季と姜維を引き連れて訪ねて来た。

何事かと聞くと暫く顔を赤らめていたが一刀様に御情けを賜ったと言い、また一刀様の仙薬の効果覿面であったようで言葉も滑らかであった。

吃音の快癒と合わせて祝いの言葉を返すと、脇にいた士季が隠していたのか酒瓶を見せ、折角なのでお祝いをしてやって頂けませんかと言い出した。何も私の部屋でなくてもとも思ったが、一刀様からの直々の御指名で預かった士載の事であるので付き合うこととした。

士季が士載を煽ってその時の事を語らすによると三人がかりで御情けを賜ったらしい、また初めてであるにも拘らず多少の痛みはあったが女の喜びを授けて下さったと言う、流石は一刀様だ。その後は士季と姜維とで代わる代わるお尽くしし、二周したところで一刀様が士載らの体をお気遣い頂いたらしくもう十分と言われた。しかし(誰が言ったのか?)まだまだ一刀様御自身は御満足でない筈であるので、御心遣いには深く感謝したが御遠慮は無用ですと申し上げて全員全力で御奉仕を続けたところ、やはり御遠慮なさっていたようで何度も雄雄しくなられていたが何回目頃かにいつしか眠られてしまった。しかし(どうやってか?)事前に予想していた合計量と比べると半分以下のはずであった為これで終わってよいものか三人で相談した末、眠ったままでも御奉仕によって雄渾になられる一刀様に更にお尽くしし、完全に涸れた事を確認して皆で一刀様に寄り添って寝たという。

 

…回数が非常に多いように思われ、初めてでそこまでしなくともと私が言うと、士載と姜維がそうでしょうか、でも前のお話ではと戸惑った様子でいたが士季は『いや士載と伯約がどうしてもって言うので』と何故かまたにやにやと笑っていた。

…私は閨房の記憶があやふやだが、そんなにもしていただろうか…?

 

8月29日

夕方に子丹お嬢様に珍しく関羽殿が面会に来た。会議室で暫く打ち合わせると帰ってゆかれたが、どのような用件だったのか御嬢様に伺ったところ、

「なんか昨日士載ちゃん達が搾り取りすぎちゃったみたいなんですって。夕べから今日劉備様と関羽さんが一刀様と一緒だったんだけど、劉備様が薄くて残念そうにしてて姜維さんに聞いて分かったみたい。でも初めてなのになんでそこまでしたのかしらねぇ…若い子は底無しって言うけど、あの子達そこまで好き者だったのかしら…?」

と首を傾げていた。

 

士載達の行動は謎だが、やはりあの回数は普通でない事が分かって少しほっとした。

 

8月31日

張任殿、太史慈殿、龐徳殿といきつけの店で夕食を兼ねて飲んだ、頃合を見て張任殿が話された話は以下のようなものであった。

ある晩御嬢様(劉璋殿)の元へ旦那様(一刀様)が来られ、御嬢様からは警備は不要であるので自室へ帰るようにと言われていたが自主的に室外で警備をしていたところ、室内より御嬢様の普段とは異なる声が聞こえた。退室を命じられていた為隠れて中の様子を伺ってみると二人は寝台で裸で抱き合っており、御嬢様は苦悶のようでそうともつかぬ声を上げていた。旦那様は御嬢様を優しく扱う御立派な方だと思っていたが御嬢様に危害を加えているようであれば踏み込んで止めようと思ったが、最後は静かになり二人で何事かお話されながら幸せそうに眠られたので御納得ずくの行為だったのだと解釈し立ち去った。

 

「そこで、あの時御嬢様と旦那様が何をされていたのかを教えて欲しいのです」

大真面目にそう語る張任殿に頭を抱えてしまった、頭と顔に血が上るのが分かったが酔いのせいばかりではないだろう。

助けを求めるべく太史慈殿と龐徳殿の方を見ると二人とも不思議そうな顔をしており、それを見た瞬間にいつか詠様が仰っていた『お子ちゃまの悩み』云々と今思えば『後は宜しく』と言わんばかりであった子敬の笑顔が頭の中で繋がった、つまりは彼女らはそちら方面の知識が致命的に欠けているということなのだろう。

いっそ逃げてしまいたいとも思ったが張任殿は旧蜀随一の人材、太史慈殿は孫策殿が一線を退いた今甘寧殿と並ぶ主力中の主力、龐徳殿も錦馬超と並ぶ涼州屈指の人材と聞いている、門前払いのような取り扱いは魏の利益にも一刀様の御為にもならない。

困った挙句、それは夫婦の間で行う儀式のようなものである、危害を加えるようなものではないので安心してよく、覗き見のような真似は劉璋殿も御望みでないと思うので止めて頂きたいと説明すると、張任殿は訝しげに首を捻っていたが一応は納得したようだった。

今日を切欠に張任殿、太史慈殿、龐徳殿と懇意になる事が出来た、ただ若干私の事は買い被られてしまっている様だ。

 

…とは言え、最低限の性教育くらいは各々地元でやっておいて頂きたいものだ。

 

9月2日

蜀や呉、他の部局とも相談し、管理職で寄付を募って店員がすべて女性である行きつけの酒楼の個室席年間予約権を共同購入した。いっそ庁内食堂の一部を間仕切ってという案もあったが防音の都合もありそういう話をするには一応職場をでてからにしたいという意見が多かった為だ。

 

9月3日

後宮の全面新築移転計画が予算化され、予算及び工程管理を任されることとなった。

基本計画書において給湯・浴室設備の充実、防音仕様及び安全管理の強化、個々の個性の尊重がうたわれている。現在の後宮は慢性的に不足している事務諸室として転用される計画だ。

機能ごとに部会が設立されそれぞれ仕様の検討は既に進んでいるらしく、特に公達様が部長を担当されている部会は物凄い量の資料が作成されていた。

 

9月5日

休暇だが残務の為出勤していたところ、同じく出勤されていた詠様と御嬢様がにやにやして職場に来られ、ちょっと来なさいと言われ一刀様のお部屋に連れていかれた。

お部屋に入ってみると一刀様と月様がにこにことしており、何事かと思っていると詠様が

「仲達、月はねぇ『ばば抜き』で一刀が持っている札なら何回やっても完璧に当てるのよ、凄いでしょ!それを楓(御嬢様の真名だ)に言ったら多分仲達も出来るって言うのよ、ちょっとやって見なさいよ」

と言われた。

『ばば抜き』とは何なのか知らなかった為教えて頂き、一刀様が十枚の札を持ち『ばば』がどれかを当てるようにと御指示された為この札ですと当てて見せたところ、真顔になられた月様がもう二回同様にやって見せるようにと御指示された為今二度当ててみせた。

驚かれた一刀様がどうやって当ててるのかと言われた為、一刀様の目と指先の動き、呼吸の御様子から推定しております、一刀様が『ばば』を一回でも見て下さったらおよそ当てられると思いますと申し上げた。

詠様が札持ってるのが一刀以外でも当てられるのと重ねて聞かれたが、何故か他の人ではそこまで細かい動きが見えず、集中すれば見えるかもしれないが非常に疲れる為当たっても一回くらいでしょうと答えると、月様が私と同じですねと言われていたが何故か瞳が笑っていないような気がした。

一刀様が「この二人には俺の考えてる事ひょっとして全部筒抜けなの…?」と呟かれたが、詠様が「いや…肝心な事はろくすっぽ伝わってないし、どっちもほんのちょっと妨害してやるだけで全く(心を)読めなくなるから心配する事無いんじゃない、ねえ月?」と仰り、御嬢様はそれに頷き月様は何故か頬を赤く染められていた。

 

9月7日

後宮移転計画の各部会から要求仕様がまとめられた、非常に仕事が速く各職員の熱意が感じられる。

各国王寝室、各国共用寝室は特に違和感が無いが、執務空間や合同塾の教室は別に設けているのに会議室(大・小)、執務室(小)、教室(大・小)は何の為に必要なのだろうか?

また特別室(三)は壁と天井が全面鏡張り、同(四)は一面が鏡張りで鏡面の反対側に小部屋が設けられているがこれも理由が分からない。また同(六)では粗い石面仕上げの床・壁に格子状の間仕切りとまるで牢のような仕上げの上に用途の分からない金具が多数取り付ける不可思議な計画となっている。

さらに高台に露天風呂と広大な庭も計画されている上、備品として寝台や家具・用途のいまいちよく分からない大量の小物類も計上されており予算は大幅に足りない見通しとなった。

詠様にご相談したところ、なんとも言えない笑顔をされて

「うん、それぞれやりたい奴に自腹切らせるから大丈夫よ。…あんたの上司もきっとたんまり出してくれるわよ」

と仰り、部屋・場所毎の予算明細を作成提出するよう指示された。

9月9日

また張任殿に誘われ、太史慈殿、龐徳殿と共に飲んだ。亞莎、凪とお茶などをするのも落ち着くが、彼女らもまた純朴な風があり心を洗われる様で一緒にいて心地よい。

 

そう思っていたのだが、「先日の話の続きなのですが、先日張任殿が仰っていた劉璋殿と一刀様がしていた事は気持ち良い事なのでしょうか」

と太史慈殿に切り出され又しても困ってしまった。太史慈殿曰く、孫策様にその話をしたところ非常に気持ち良い事である、なぜならば自分と一刀は深く愛し合っているからだと言っていた。ただ、通りがかった孫権様にそのようなはしたない話はしないようにと(主に孫策様が)注意されてしまったという。

張任殿は密かに覗いてしまった事なので御嬢様(劉璋殿)に聞くわけにもいかず、自分は甘寧殿、龐徳殿は馬超殿にそれぞれ聞いてみたがいずれも碌に取り合わず逃げられてしまったという。自国の同僚であれば好悪はさておき取り合いもしないとは冷淡なとは思ったが、

『およそ孫策様のお言葉の通りであるが、軽々にするべき事でもない』

と答えると、なおも『貴女の場合はどうであったのか、そんなに気持ちの良いものなのだろうか』と聞かれ、経験の浅い私では御参考にならないと思われるので御容赦頂きたいと答えても

「他の誰に聞いても答えて頂けず、仲達殿だけが頼りなのです」と真摯な表情で問い詰められてしまっては是非も無い。酒を瓶ごと呷り、思うところを自分なりに極力冷静に述べたはずだが良く覚えていない、翌朝妹の叔達に聞くと閉店まで飲んでおり自力で帰れる状況に無く張任殿らが私を送ってくれたらしい。

夕べの様子では龐徳殿達は姉様を物凄く尊敬されているようですけど、一体何をしたのですかと叔達に聞かれたが思い当たる節が無い。

友人を減らさぬよう、たまにの事とは言え深酒で前後不覚になって周囲に迷惑を掛けるのは控えよう。



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司馬日記26.1 例の酒楼にて

司馬日記26の、9月9日の事です。



「まあ結論から申し上げてしまいますと筆舌に尽くしがたい程に甘美な一時である事は間違いありません。というよりもそうでなければ抱いて頂く資格など無いと思います、私は認めません。そもそも冷静に考えて頂きたいのですが、一刀様と互いに一糸纏わず抱き合うのですよ、これだけで気を失ってもおかしくは無い筈です。しかし一刀様をお慕いする者であれば自身の快楽、満足に浸るばかりではいけないと私は思うのです、むしろ一刀様に御満足頂く事こそ後宮に籍を置く者の責務ではないでしょうか?ですが一刀様の抱擁は困った事に極めて甘美なのです、しかも御口付けも下さる!そう、これで大体私の思考はどこかへ消し飛んでしまうのです、もう気づけば身体に全く力が入らなくなり、差し入れられる一刀様の舌は熱いのに暖かい。お分かり頂けるでしょうかこの矛盾した表現が?

 …空になってしまいましたか、もう一本頼んで下さい。私は会食や接待でたまに美食珍味の類を口にする事もありますが、一刀様の唾液程美味なものを味わった事はありません、今後もきっと、いえ絶対に無いでしょう。…ああありました、同等に美味なものが…くふ…。…それまでは私はたまに武道の稽古をされている一刀様の額に流れる汗を見て、もし飲めるものであるならばそれが一刀様の唾液に次ぐ美味なものであろうかと思ったことがありましたが実際にそれを飲ませて下さい等という変態的な申し出は出来かねます。ああ、話が逸れましたが上には上があるものです、それは…ふふふ、ちょっとこれは言葉で伝えるのは難しいものかもしれませんね。まあ、なんと言いますか…象徴的な表現をさせて頂くならば、一刀様に御満足頂いたしるし、とでも申し上げれば宜しいでしょうか。それに比べてしまえばいかな銘酒とても水も同然です。具体的にそれが何か…と言うのは処女たる貴女達にはまだ早いと思われますので言えませんが、兎も角、最も重要であるのはそれが一刀様が私で、私如きの奉仕に御満足頂いたということなのです!…これは先ほど申し上げたでしょうか?まあ良いです、大事な事なので二度でも三度でも言いましょう。これはもう、その…あれです。女としての誇り…達成感、御奉仕が成ったという喜びが満たされるものなのです。女に生まれて本当に良かったと。ただですね、一刀様はこの行為をそれほどお好みにならないのだそうです、その理由が凄いのです聞いて驚いて下さい、一刀様は『俺ばかりじゃ悪いし、苦くて粘いだろうから』と仰るのです!天から遣わされたこの大陸一の王が、私達を気遣いたいという理由でご自身の欲求を御枉げになる!…ああ、誤解の無いように申し上げておくと私は一刀様が天の御使いであるから、王であるからお慕い申し上げているのではありません。そのような御立場であるにも拘らずお優しい一刀様だからこそお慕いして…いや、一刀様が一刀様であるからお慕いしているのです。

もう空になってしまいましたか、もう一本と合わせて杯の代わりに桝を頼みましょう。…ええ、どこまでお話したでしょうか…ああ、気持ち良いかというお話でしたね。気持ち良いに決まっているではありませんか、愚問にも程があります!当然です。当然以外の何物でもありません。一刀様の指が、胸板が、声が、息が、鼓動が、舌が、御言葉が、そして、熱く雄雄しい…一刀様の御情熱が、私の全身を抱きしめ、身体の奥深くを貫き、爆発なさるのです!…ああ、この素晴らしさを表現する方法を私は知りません。女の生理現象等と言う無味乾燥な言葉では到底言い表す事の出来ない、極限を超えた快楽と幸福に死にそうになるものなのです、あれは。入職してからその日まで、今まで一体私は一人で何と虚しい行為をしていたのだろうかと、あの甘美なる衝撃を味わってからは思うようになりました。正直、あの…もう端的に言ってしまえば絶の頂を極めて、なぜ生きていられるのかも不思議なくらいでいつか後宮から死人が出るのではないかと密かに危惧しています。まあそのような死に方は本望といえば本望ではありますが、一刀様の御迷惑になるのでやはりそれは避けたいです。ところで私が多少引っかかりましたのは、貴女方が『気持ちの良い事であるのか』と聞いてきた事です。もし、もしです貴女達が一刀様に抱かれたいと、もし思っているのでしたら『御抱き頂けたら一刀様に御満足頂けるでしょうか』とそう聞いて欲しいのです。まあ今回は…貴女達が劉璋殿と孫策様を御心配されたのでそういう聞き方となったと解釈しますが。それで私が何が言いたいか…何が言いたいかと言いますと、一刀様が御優しいのです!私はその最中泣いてしまっているようなのですが、事の後は必ず一刀様が涙を拭いて下さっています、それもまず目尻に御口付け下さるのです!これは本当に…常々反省しており改めなくてはならないと思ってはいるのですが、どうにも御寵愛賜る感動に慣れる事が出来ず涙が溢れてしまい一刀様に御心配と御迷惑をかけてしまっています、これは改めたいです。…ああ、ちょっと逸れました、一刀様が御優しいという話。つまりです、後宮にこれだけの数の女が居て、しかもその末席も末席、端女も同然の私のような女にさえお気遣い下さる!

 …空ですね、もう一本、いや二本頼んで下さい。…だのにです、重臣の方々の中には長い御付き合いに甘えてなのか一刀様が御優しいのを良い事にあまりな暴言を吐かれる方も居る、あれは私は宜しくないと思います。もし、もしです貴女達が…貴女達は見目も麗しく、心根も良く一刀様に相応しい素質を持っていると私は思っていますが、もし貴女達が一刀様をお慕いし一刀様の側女になりたいと思うならば、無礼な言動は無い様に願います。…なんの話でしたでしょうか…?ああ、気持ち良いかと。最高に決まっているではありませんか。あとは貴女達の心掛けと一刀様の御心次第ですが、私如きでさえ御見初め下さったのですからきっと問題無いでしょう。ただ一刀様は御多忙であらせられるので、三人纏めて御面倒を見て頂く位はあるものと考えて下さい。結論としましては何しろ最高です。…これは先程申しましたでしょうか。女に生まれて一刀様をお慕いしているなら一度は抱かれた方が幸せです、これまでの人生は何だったのかと思う筈です。…ああそれは大丈夫です、確かに一刀様は熱く硬く御立派ですが、女の体の扱いには慣れていらっしゃるので初めてであっても問題無く入るようにして頂けます。御覧なさい、孫尚香様は年少小躯であるにも拘らず一刀様とそういった事をされる事が大変好みであることを公言されているではありませんか。それに一刀様は大変御上手で、何と言うか、自分の身体であるのにまるで操られているかのように…拓かれていくと申しますか変えられていくと申しますか…ああ、誰が上手い事を言っていたか、開発して下さいますから。ただちょっと副作用と言いますか、心身共にそういった事への感度が上がってしまって、女として熟れてくる…つまりそういった欲求が以前より多少強くなり持て余してしまう事もと言う所もありますが。…は?ああ、それは色々な方法がありますが…まあ、初めてならば貴女が仰向けに寝て、一刀様が上から抱きしめて致して下さるでしょう。私はこれが一番愛して頂いていると実感させて頂ける姿勢なので好みではありますが、正直こればかりではいけないと省みるところもあります、というのはこれはほぼ一方的に一刀様に御負担頂いてしまっているではありませんか、処女の貴女達に具体的に理解頂けるか判りませんが。そこで女性が上でという事でも出来るのですが…これが私は全く駄目で、一度一刀様に申し出てそのようにさせて頂いたところその…何ですか、まるで動けなくなってしまったのです、結局下になった一刀様に全てお願いする形になってしまった上に全く身体を支えられないので全体重を一刀様にかけてしまい、気持ち良いやら情けないやらで私が唯一はっきりと覚えている回です。あとは後ろからというのもあります、これは一刀様の端女としてはその立場には相応しい姿勢であろうとは思いますがその…なにもかも丸見えではありませんか!それにその、け、獣の雌の姿勢にも酷似しておりあまりに恥ずかしく、顔を布団で隠してから先は兎に角物凄い目に遭わせて頂いたという記憶以外良く覚えていません、刺激が強すぎるので初めてではお勧めしかねます。あとは…凪によりますと立ったままでと云うのもあるようですが私は分かりません、私では絶対に立っていられませんので御願いした事も無いです。まあなににせよ、初めてでは一刀様にお任せすれば良い様にして頂けますから大丈夫です、もし好みがあれば申し出ても良いでしょうが。…そうそう好みと言えばですが、余り特殊な性癖を一刀様に無理強いするのは止めて頂きたいです。こう言われても未だ貴女方にはピンと来ないかもしれませんが、例えば私の上…いえ、仮に阿攸様とさせて頂きますがその女性は一刀様に虐めて頂く事で興奮すると言う特異な性癖をお持ちなのですが、御優しい一刀様は寵姫の方々を虐待する御趣味はお持ちではありません。公た…その、阿攸様は『過激気味のプレイをお願いした時のちょっと困ってる一刀様の顔が可愛いし、「桐花の可愛い顔を汚したくない」とか「桐花の綺麗な肌に痕がついたら嫌だ」とか仰るのが愛されてる感満載で堪んないわよ?それに幾ら一刀様が優しくたってオスなんだから、たまには女に気を使わないで本能のままに虐めて犯して滅茶苦茶にして気分転換しないと疲れちゃうでしょ。でその挙句、事後に我に返って殊更優しくして下さるのとかもうニヤニヤが止まんないわよ、雌犬冥利に尽きると思わない?』と仰りますが正直余り理解できませんし貴女達にも真似して欲しくありません。ああ、また貴女達自身は年代からして全く問題ありませんが、将来についても御意識の高い一刀様は少女の健全育成にも御関心が強く、御自身が少女性愛に陥る事を非常に注意しておられそういった年代の少女との過度な接触を避けておいでですので、貴女方におかれましても不用意な子女の紹介は遠慮願います。

…もう空とは、酒瓶がさっきよりも細くなっていませんか?もう二本頼みましょう。…はて、何の話の途中でしたか。ああそうです、一刀様が如何に素晴らしいかと。何度でも申し上げますが抱かれるならば一刀様に限ります。殿方と言えばそれは一刀様の事です。又こういう言い方をしては一刀様に失礼かも知れませんが、慕う者に対して空の如く広いお心で接して下さいます。何しろ三国の王から重臣の多くまでもを受け入れる御懐の広さ、それに何と言っても私のような下賎で大して仕事も出来ず可愛らしくも無い大女ですらもお召し下さる!況や貴女達のように性情健やかで才も高く美貌麗しく豊かな肢体であれば、一刀様にお願いすればきっとお受け入れ下さるでしょう。…いや違いました、一刀様のお心は広いだけではありません、海のように深いのです!一刀様は我らのような下々の者の忠勤をさえもよくご覧になっており、私がまだ後宮の末席を汚すよりも前にさえ繁多な業務ご苦労であると私の真名を御手ずから御彫り頂いた筆を下賜下さり、更には私如きが御側勤務となって一年の記念日を覚えておいでで、この髪留めをも下さったのです。これはもう私にとっては功臣に与えられる九錫にも勝る宝、常に身に帯びるようにしており私が屍となれば共に焼くよう家の者には頼んでおります。…つまり大事な事は、これも何度か言った様な気がしますが一刀様は素晴しいと言う事なのです。…そう、ええ、そうです。もし、貴女達が、その、何ですか、一刀様に夜もお仕えしたいと願うのであれば、速やかに申し出るべきなのです。その時には私もお口添えしましょう。そして昼は政務事務軍務で一刀様を御支えし、夜は身を持って一刀様の心身を御慰めする。これこそ私の、いえ女の、幸せと言うものではありませんか!?

 

…もうそんな時間ですか、ではこれでお開きと言う事で。ああ、大丈夫ですこの店は私はツケが利きますから。…私は多少酒を過ごしてしまいましたので少し休んで行きます、帰りは店員に士季を呼んでもらいますので。いえお構いなく…申し訳ありません、ではお願いします。…いえ今日は楽しい酒で…張任殿達が聞き上手なものですから柄にも無くべらべらと。…ええ。御参考になりましたら私としましても」

 

 

--------------------

 

「はい、どちら様でしょうか?…はい此方で間違いありません、私が妹の叔達ですが。…ああこれは申し訳ありません、有難う御座います。全く仕方の無い姉で、昼間はそれなりに真面目だとは聞いているのですが偶に飲み過ぎてしまうようでして。ああ士季、仲達姉様を自室までお願いします、寝台に放り込んで上掛けをかけてやれば十分ですから」

「張任様方本当に有難う御座いました、いずれ改めて姉より御礼に参らせますので。…はあ、左様で御座いますか…身内の所為でしょうかそこまでお褒め戴く程の姉でもないと思いますし、どちらかと言うと寡黙な方で情熱的にと仰る程喋っている姿も見た事が有りませんが…。まあ姉も、詳しくは存じませんが皆様の御決断?ですか、お役に立てたと知ればきっと喜ぶことで御座いましょう。ええ、では。お休みなさいませ」



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司馬日記27

その後の、とある文官の日記です。


9月11日

久しぶりに姉妹揃った夕食の折、伯達姉様が六女・七女・八女の恵達、雅達、幼達に今日朝廟でこんな事がありましたとお話されたことには、三国予算会議の終わりに蜀の黄忠殿が一刀様に質問され、以下のやりとりがあったという。

「あの一刀さん、璃々についてですけれども」

「ん、何?紫苑さん」

「璃々は最近本当に成長したと思いますの」

「うん、そうだねぇ。何か急に大きくなっちゃって、嬉しい様な寂しいようなだね」

「例えば、陳宮さんと比べて体格はどうですか?」

「あー…もう璃々ちゃんの方が大きいんじゃない?」

「具体的には、胸元などは」

「あははは、音々音に伝わったら悪いから言えないよ」

「精神面でもずいぶんしっかりしたと思いますわ、たとえば許褚さんと比べて如何でしょうか」

「ああ…そうだね、下手すりゃ璃々ちゃんの方がお姉ちゃんに見え」

とまで言いかけて絶句なさったと言う。

ここで伯達姉様が、恵達に『黄忠殿の意図と一刀様が絶句された理由は判りますか』と問いかけると、恵達は青い顔をして判りますと答えた。更に

「小蓮さんと美羽さんがお手つきになったのは御幾つのときでしたでしょうか」

「さて色々踏まえまして、女は年齢でしょうか?私と桔梗と祭さんの前で今一度御確認させて下さいませ」

と黄忠殿がたたみかけ、その場は私と馬騰さん、劉表さんで長幼の序について述べさせて頂き後日協議としましたが一刀様は『(仮称)青少年保護育成法』の施行を急ぐように御要望されました、状況は流動的ですが日々心身ともに自己の研鑽に励んだ方が良いですよと姉様が仰り、三人は深く頷いていた。

 

9月12日

詠様より一刀様の地方巡幸計画の立案を指示された。

地方勤務の寵姫の慰労をしつつ中央在住の閨房の回転を落とさない事が必要であり、移動時間を極力短くするか多人数の寵姫を高速輸送する必要がある。難題だ。

 

9月14日

後宮移転の予算が大幅に増額された。匿名の寄付簿を見ると端的に言って信じ難い額の寄付が行われており、殊にある三口の寄付は桁が外れており私財でこんな額を出せるのは口に出すのは憚られるがあの方々しか居ないのではと思われた。

詠様に、三口物凄い額があるようですがと申し上げると

「いいんじゃない、彼女達もそれくらいしか財産の使い道なんて無いでしょうし」

と仰った。ふと詠様も御寄付なさったのでしょうかと口に出してしまったところ

「ボ、ボクは割りとどっちでも良かったのよ!?でも稟があの集会で寄付しませんかしませんかってしつこいし!ボク以外なんかみんなするって言うし一応役職的な立場もあるからそれに合う程度はしょうがないのよ、立場上!

と怒られてしまった。

立場上という意味では建設に携わる以上私も寄付したいと思い、寄付簿の方々とは金額の桁が(小さい方へ)違うが文字通り微志を捧げた。対象室の記入欄があったが特に思いつかなかったので空欄とした。

 

また石牢風の特別室(六)は(七)とに二室に増えていた、仕様と使い方を巡って意見がまとまらず、(六)は公達様、(七)は文若様の決裁がなされた分厚い仕様書が提出された。

更に小物備品倉庫、衣裳部屋も拡張されていた。主にはそれぞれの通常寸法の衣装は見込まれていたが、水着を中心に何故かまるでご自身の体格に合わない小さい衣装も必要であるのに見込み忘れていた為だという。…何故必要なのだろうか?

あわせて、李典殿より特別室(四)設置の特大の特殊鏡の製作技術が未確立である事と、都の衣料店組合より注文過多の為衣装の納期が約束出来ないとの回答書が回ってきた。

工程調整は私の仕事だ、何とかしなくてはならない。

 

9月16日

御嬢様が張勲殿と共に教え子の袁術殿と会食するがどうかと誘われた、袁術殿の成長振りは夙に有名であったので妹達の参考も兼ねて御相伴に預かる事とした。

袁術殿は最早ひとかどの美少女となっており、成長過程について伺おうとしたが過去の自身については余り触れられたくないようであった。

酔われた御嬢様と張勲殿が

「かわいい!美羽様かわいいです!」

「美羽ちゃん、なのじゃかわいい!」

「美羽様かわいい!今日は蜂蜜水はいいんですか!?」

「ねえ美羽ちゃん、もう『うははー』って言わないの?かわいいのに!」

「美羽様、『わらわの歌を聞けー!』やって下さいよ!かわいいですから!」

と笑顔で話しかけられていたが赤面して俯き、ぷるぷると震えていた。

 

9月17日

典韋殿が明日から軍務に戻ることとなった、妙才様が御説得なさったらしい。

妙才様と同じ意匠の服を着て元気に活動されているのを見かけて安心したが、ある時妙才様にどのように御説得されたのですかと伺うと、「『姉弟プレイには妹も居た方が楽しいと思わないか?』と言ってみたのさ」と言ってと笑われた。

 

9月18日

詠様が溜め息を吐かれながら執務室へ来られたので、何か問題が御有りでしょうかと伺うと、月様と業務調整について話をしたのだが不調であった為だという。

「ほら、月は普通の表(政治)の仕事は何も無いんだけど。裏って言うか、後ろ(後宮)向きの色々決め事関係を今よりもうちょっとやって欲しかったからお願いしたのよね、ボクと華琳、桃香、蓮華たちで色々調整して決めても方々から文句出る事があるけど月が『こう決めます』って言えば丸く収まる事もあるからね。で、忙しくなっちゃうからちょっとメイドの仕事減らさないかって話して。まあ、お茶汲み辞めてってのは嫌だって言うだろうとは思ってたんだけど、一刀の服の洗濯も、下の子達と交代でたまにやってる寝台整備(ベッドメイク)と洗濯も辞められないって言うとはねぇ…」

との事だ。月様は一刀様を深くお慕いの事と伺っておりますので御尤もな事かとと申し上げると、まぁあんたはそうよね、他の女のがどれだけべっとり付いてようとあの馬鹿のが一滴でも付いてりゃ大喜びでやるでしょうねと仰った上で、

「月とか、恋とか…月程じゃないけど桃香とか最近の麗羽とか…ブレない連中見てると、ボクってちっちゃいなあって思うわ」と愚痴るように呟かれた。

僭越ながら元気付けて差し上げようと思い、「一刀様は大小で区別されるような方ではいらっしゃいません、詠様の事も月様の事も心から愛しておいでと思います」と申し上げると

「そういう話じゃないのよこの馬鹿娘っ、ちょっとおっきいからって調子に乗ってんじゃないわよ今の月に聞かれたら殺されるわよ!?あとあいつがボクの事す好き好きだなんて事はもう知っ知ってるからっ!」

と怒られてしまった。何がいけなかったのだろうか。

 

9月20日

昇進試験と今期の目標管理の件で公達様と面談を行った。

公達様は勤務成績と思われる書類と私の顔を見比べて溜息を吐かれながら、

「あんたもせめてあたしと同じ程度に昼と夜って言うか、公と私を使い分けれればねぇ…。幹部上がってもいい位頭は切れるし真面目で地味な仕事も出来るのに、勿体無いわ」

と仰った。どういったことか今一つ掴めなかったので伺うと、

「いい?あんたが上(の役職)にあがるでしょ?そうすると一刀様と直に関わる仕事が増えるでしょ?そんとき、一刀様絡みの事案でのあんたの判断力が危惧されてんのよ!人事会議で!全員一致で!っとにもう少し理性持ちなさいよね、そんだけ真面目そうな顔して突然ネジ飛ぶんだから…」

と小言を頂いたが思い当たる節が無く、公達様に言われるのもと思ったが今のお言葉から「では地方勤務でしょうか」と重ねて伺うと

「それも無いからそんな泣きそうなな顔しないでよ…人事会議でも精神面に不安があるので当分出せないってなったから」

と仰っていた。どうであれ、私は一刀様の御為に悪い点は改めるよう心がけてお尽くしするだけだ。

 

…後宮の末席を拝する者としても。

と言ってもこちらの方がまるで自信が持てない、なんらか精進する術を持たなくては…。

 

9月21日

田豊殿、沮授殿と残業後の庁内食堂でたまたま会った、近況を聞いたところ仕事は順調との事だ。あまり突っ込んだ事を聞くのもどうかと思ったが、先日公達様の処へいらしていたようだがと小声で伺うと、恥ずかしげに『御相談をさせて頂いておりました、仲達さんのお陰で私達もその…(羞恥プレイの)良さがわかるようになりました、有難う御座います』と言う。なんの話なのかいまいち掴めなかったが、(一刀様の)良さが理解頂ければ幸いである、今後とも(忠勤に)励んで頂きたいと答えると、「不束者ですが、(御奉仕も)励ませて頂きます」と少し照れた様子で言っていた。

 

9月23日

一刀様の地方巡幸計画の件で、呂布殿、文遠殿、馬超殿、公孫瓚殿に騎馬同乗で一刀様を中継して三国を輸送して頂くという案が張任殿より出された。

巡幸経路のうち最長となる建業ー成都間を三日で走破出来る可能性があると試算されたが、文遠殿、馬超殿が故意に、また公孫瓚殿も不作為により遅延するおそれについて指摘があり、またおよそ十日程度と言えど閨房の回転が完全に停止する事についても不満が出る可能性があるとされた。

李典殿開発中の輸送車での輸送についても検討することとなり、搭乗可能人数及び乗り心地、操作性について確認し、必要に応じて仕様変更や予算の追加を検討することとした。

 

9月24日

凪、亞莎と飲みに行った。

先の御嬢様の命令の為、前に一緒に一刀様の御伽をしたときの自分の様子について自分では覚えていない為教えて欲しいと言ったところ、本当に覚えていないのですかと驚かれた後に、照れながらぽつぽつと教えてくれた事には、

「初めはその…涙目で隊長に縋りついてるだけという感じだったのですが」

「はいそうです、大丈夫ですかって聞いたら一刀様が仲達さんのこれはいつもだから大丈夫って仰って」

「で隊長とその、色々してもらってるうちにあの、なんていうんでしょう…」

「あの…すごくあの、えっちに…」

「わ、私もそう思います…、泣かれたままでも言ってる事は凄くて、仲達さんは本当に隊長の事が好きなのですねと思いました」

「一刀様は綺麗な顔にそれはちょっとって言ってたんですけど、仲達さんが泣きながらどうしてもって…」

「でもその後本当に幸せそうにその…舐められてて『ああこれで良かったんだ』ってちょっとほっとしました」

「その後も一番初めに仲達さんが寝ちゃったはずだったんですが、夜中私が目を覚ますと、あの…」

この後も色々教えてくれたが割愛する。記憶から消したい。

 

私は淫乱で変態なのだろうかと落ち込んでいたが、二人はそんな事はない、可愛いお姉さんという感じで一刀様がお召しになるのが良く分かる、自分達にも気を使って譲ってくれたりしておりまた一刀様も可愛いと言っていたと言ってくれた。

しかしあまりに恥ずかしかったので「昼はこんなにも清楚なのに夜はあんなにも淫らで可愛らしい、傾城とも言うべき貴女達とは比較にならない」と八つ当たりをしてしまった。

 

これを本当に御嬢様達に御報告しなくてはならないのだろうか…憂鬱だ。

 

9月26日

田豊殿と沮授殿がまた公達様を訪ねて来られて会議室へと入って行った、例の件なのだろう。

打ち合わせで私の事務室へ来ていた子廉様と子孝様に、つい

「彼女達のように可愛らしく貞淑そうであるのに公達様のような趣味に関心があるとは、人はわからぬものです」と申し上げたところ、

「いやそんなに馬鹿にしたものじゃないわよ、正直私も興味無い訳じゃないし?」

「うん私も体質的には素質あると思うしね」

と比較的肯定的なお返事に驚いた。ただ、

「でもハマるの怖いから手ェださないけどね、あの世界」

「そーそーなんか嵌ったら帰ってこれなさそう、あんたなんかいかにも危ないんじゃない?」

「そうね仲達はやばいかも、止めた方が良いわよ!」

とも続けられ、御二方はすぐにそういった「ぷれい」に及ばれるおつもりはないようだ。

私は一刀様らしく、お優しく御寵愛頂く方が嬉しいものだろうと思いますがと申し上げると、

「ホントにー?じゃあ例えばさ、一刀様に裸に剥かれて首輪つけられて『しゃぶりなよ、仲達さん』って顔の前に突きつけられても本当にこれっぽっちも嬉しくない?

鏡の前で四つん這いにさせられて『仲達さん、このいやらし過ぎるお尻に…お仕置きしてあげる』って言われても絶対に全く一切ドキドキする事はない?」

と言われたはずだったのだがいつの間にか日が暮れお二方も同僚も居なくなっており、書類の山と

「仕事しなさい 公達」

「一刀様だったら何でもいいあんたにつける薬は無いわ 子孝 子廉」

と大書された紙だけが机上に残されていた。

おかしい。



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告知です(司馬日記)

告知です。


(お知らせ)

5/4コミックシティで委託販売致します。

1.「三国日記 (司馬日記 番外編)」24P

士季ちゃん他、周囲の人たちの日記です。皆様の御期待?にお応えしまして仲達さんの挿絵有りです

2.「裏司馬日記」24P

いつか一度は書いてみたいと思っていたえっちものです。

仲達、荀攸(桐花)、士季、劉封&関平の短編集。

 

いずれもコピー本、300円です。どちらも18禁要素(特に裏司馬日記はガチ)があり、TINAMIでは書けないので…

たったの30部程度の予定ですが、もし完売するようなら原作キャラえっちもの「裏司馬日記2」を夏コミで出そうと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

という妄想をエイプリルフールに呟いてみたくなったのさ…

すいません、石投げないで下さい!お詫びといっては何ですが!

 

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仲達さんの場合

「えっと…うん、ごめんね仲達さん。…俺、ツッコミ待ちのつもりだったんだ」

「いえ…察しの悪い私が悪いのです、御嬢様が来られなければまだ気づいていなかったと思います…」

「流石にこれは一刀様は悪くないです、二年連続同じネタで引っかかるとか信じられません」

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白蓮の場合

「一刀の馬鹿…」

「ごめん。本当に悪かった。反省してる」

「…も、もう一回言ったら、死んでやるからな…うえぇえ…」

「うん、『誰?』なんて二度と言わない、だから泣かないで白蓮」

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紫苑の場合

「…あら、桃香様も驚かれないのですか」

「あはは…まあ時間の問題かなとは思ってたから」

「私も驚きませんが、ちょっと御主人様に幼女趣味について事情を聞いてきますね」

「あ、愛紗ちゃん、いきなり殴ったりしちゃだめだよ!?」

「ええ、体に訊くだけですので」

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「ちょっと紫苑っ!俺と璃々ちゃんがとんでもない事になってるって方々で聞いたんだけどどういう事ーっ!?」

 

斗詩の場合

「ああ、一刀さんなら連れていっておきましたよ?永遠に誰にも奪われないところに……なんて冗談ですよ、なんでそんな皆顔を引き攣らせてるんですかもう」

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桂花の場合

「ばーか…あんたが言ってたんでしょ『四月馬鹿』だって。さっきまでのは全部嘘だから信じるんじゃないわよ。…でも一回ぐらい言いなさいよ、嘘でいいから……ふん…馬鹿、大嫌い。…大好き」

 

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司馬日記外伝 例の酒楼にて2

くらげ様の御支援作に触発されて書かせて頂きました。

例の酒楼で、仲達さんの御友人が女子会をしたのですが…。
この酒楼、使われ勝手が良すぎていろんな方が訪れそうです

…先の嘘告知の件、夏に委託先が本当にあったら書いて出してみたいなぁ…なんて(小声)
仲達さんの容姿について、いつか描いてみたいなぁと思いますが画力は一般人以下だし皆様の心の中の仲達像を壊すのもどうかと悶々としてみたり…うーん悶々。

なんにしろ、皆様の御笑覧と拝領したコメントが私の糧です。いつも有難う御座いますね。


「子敬、子丹さんごめん遅れて」

「あ、こんばんは元直さん」

「元直、会議終わったの?」

「うん速攻終わっちゃったから急いできた。っていうか後でこの話聞いてよもう」

「了解、とりあえず乾杯しよ?」

「あ、はい。では一杯目は元直さんお土産の紹興酒で。…子敬さんも宜しいですか」

「うん。後でうちから持ってきたお米のお酒も飲んで?」

 

(美女乾杯中)

 

「さてでは、先日の会議でちょっと立ち話してた例の『一刀様があの四月馬鹿を呉蜀でやったら』という件で、呉の場合実際やったらどうなりますか子敬さん?」

「んー。確かに本当に起こったらとか考えたくないけどねー。全般的にはそんなに実害無いんじゃない?」

「あらそぉ?呂蒙さんとか涙目で超オロオロしそうじゃない?あの子可愛いよね」

「ああうん、亞莎はちょっとやばいかな。泣いたり必死で探したりとかにはなると思うけど。この海草ぱりぱりして美味しいから二人とも食べて?」

「あ、頂きますね。孫権様とかも泣かれるんじゃないでしょうか?」

「蓮華様、うん泣きながら探すね。あと小蓮様も明命も、あ、いやこの二人は意外と強いから泣きはしないかも。でも一応冗談で済むんじゃないかなぁ?それよか、何考えてるか判んない人たちの方が恐いわ」

「失礼ですが、孫策様とかでしょうか?」

「ちょ(笑)そうだけど!日頃はいいけど非常時の雪蓮様って想像出来なくて恐くって!あとは穏かなぁ、ごめんそこの塩取ってくれる?」

「はい。陸遜さんが?」

「んー。雪蓮様を例外として、普段大人しい子の方が傾向として恐いわよね」

「そう言えば子丹さんとこの時、楽進さんやばくなかった?」

「ああ…ちょっと危なかったかもしれませんね。保護して下さったのは趙雲さんでしたけど、笑ってない趙雲さんを見たのは私はその時が初めてかもしれません」

「揚げ物食べる?鳥だけど」

「うん貰う。あそうだ、子丹さんなんで仲達あの時平気だったの?真っ先にマジ壊れするでしょ」

「はい。事前にたまたま私が一刀様から聞いてたので『これはまずい』と思いまして」

「なぁんだー、やっぱりねぇ」

「なんだ、って元直知らなかったんだ。でもあの娘酷いのよ、魏の譜代の人達がああなっちゃったの見て『一刀様が会議で既に予告されていたようなものであったのに、皆様何故あそこまで混乱してしまったのだろうか』とか言って、自分が食らったら死ぬほど錯乱するくせにねー!」

「ちょ(笑)あの娘相変わらず全く自分が見えてないのね。あ、この野菜私もらってもいい?」

「どうぞ、とあとすみません今の件ちょっと内緒でお願いします、知ってたなら何故一刀様を止めなかったと怒られてしまうので…私も統一後の就職だったものですから皆様があのような事になるとは想像出来なくて」

「うん分かった。ってか次蜀行こうよ蜀。追加の注文はもういい?」

「いいんじゃない?その前に一つだけ。例のあの人は?」

「あの人って…『し』で始まる子?」

「え?『か』なんだけど…ああうん、私達は『か』で呼ぶけど真名が『し』で始まるツリ目でお団子頭のあの人」

「あ、あの子ね(笑)。…うーん…暴れまわりそう(笑)、自殺とかはないと思うんだけど。血眼で余所に探しに行ってここを通せ通さないとかで華雄さんとかと意味も無くガチで殴り合いとか始めちゃいそう。あー、やっぱこのネタ被害大きそうだからうちで起こらなくて良かったかも」

「ひどいです(笑)で、ネタばらしの後はどうなりますか?」

「…さっきも言ったけど雪蓮様が怖い。あと穏怖い、二人とも性的な意味でも(笑)一刀様干からびちゃうわ。でも基本的にうちって豪族の集まりでなんていうか、諦観が強いと思うから多少そういうのの耐性もあると思うのよね」

「有難う御座います。あ、ではそろそろ蜀行きましょうか。この店あと半刻くらいで閉まっちゃいますし」

「さて来ました、うちね」

「どうなのよ、元直のとこなら?」

「んー…多分ね、思われてる程多方面には被害無いんじゃないかな?」

「え、そう?蜀の人達みんな一刀様好き好きでしょ」

「ですよね」

「ああうん、そうなんだけど…大体の人は泣いたり探し回ったりする位で済むんじゃないかな」

「で、問題は?」

「やっぱあるの分かる?(笑)うちの偉い人二人。呂蒙さんじゃないけどうっかり長引くと自殺しちゃうんじゃないかなぁ」

「ちょ(笑)」

「二人って…劉備様と関羽さんですよね?」

「うんそう」

「でも劉備様の方はちょっとましって言うか、強くない?関羽さんの方が脆そうに私思ったけど」

「あ、うん私もそう思う。愛紗が探しても見つからないと悲観して先に自殺して、桃香様が後を追っちゃう感じ。あと二人やばいのがいる、海と空…あのね知らないかもだけど張松と法正っていうのと、あとうちの所属じゃないけど月さんも自殺しかねない」

「先のお二人はお名前だけ伺った事があります…でも月さんは冗談に聞こえませんね」

「…ばらす時期次第で間に合いませんでしたとか本気で怖いわね」

「一番怖いのは月さんが『皆殺しして私達も死んで天で御主人様に会いましょう』とか恋さん煽る場合」

「きゃー!」

「嫌過ぎる冗談です!」

「ごめんあんまり面白くなかったね!もうここ閉まっちゃうから、子敬のお酒次回にとっておこうよ」

「あーうん、そうね。まだまだここで飲む事あるわよね。瓶、三人の名前で保管しといてもらいましょ」

「あ、じゃあもう御会計お願いしちゃっていいですか?」

「うん、あでも最後に一つだけ、蜀でネタばらしのあとどうなる?」

「そうね…愛紗と翠は泣きながら一刀様殴るんじゃない?あの娘達簡単に手が出過ぎ」

「あとあの黄忠さんはどうでしょうか?」

「あ、ごめん忘れてた(笑)皆様の予想通り、笑顔で凄く怒って一刀様絞りぬく(笑)」

「ですよねー(笑)」

「こってり絞られるとはこの事ね(笑)あと璃々ちゃんは?」

「あ、その話しちゃうの?もう確実に一刀様を体で御仕置きでしょ」

「うわその噂本当なんだ!だって璃々ちゃん今幾つよ!?」

「いや女は年じゃないっての今まで嫌って程見てるじゃない、そもそも何も無くたってもう間もなくだろうし」

「凄いですね…そういえば黄忠さんといえば元直さん、あの法令がああなった経緯御存知です?」

「そうそれ!さっき共通の施行令の草案会議だったんだけど、委員の紫苑が冒頭でいきなり『では傍聴人の方々どうぞ』とか言い出して!何かと思ったら馬騰さん劉表さん、あとあんた達んとこの朱治さん、凌操さん、全琮さん、司馬朗さんとかそういう年頃の娘とか妹がいる人たちがぞろぞろ入ってきてさぁ、会議の机を尋常じゃない雰囲気で取り囲むのよ!?その中で紫苑が『この草案に反対の方はいらっしゃいますか?』とかあの笑顔で言われてももう誰も何も言えないってーの!!施行令は事務方で決定するようにとか言って紫苑以外のお偉方が珍しく全員欠席した理由がこれよ!」

「私、委員じゃなくて良かった…」

「政治って恐いですね…」

「…やっぱこのネタ終わりにしていい?うちの聖域だし」

「性域だけに聖域なのね」

「(笑)合ってるけど子敬おやじくさい!一刀様に呼ばれなくなるわよ」

「甘いわ元直、時と内容次第で女の子がそういう冗談言うの一刀様結構嫌いじゃないから」

「そうなんですか?」

「あのね、張勲さんこういうの超上手いから今度気をつけて聞いてみて?二人きりになった瞬間位に『ああこれは一刀様煽られるわ』っていうえっちな冗談言ってこそこそっと二人で消えてくから」

「そういえば張勲さんの噂は聞いたことある。星がこないだのアレで弱ってる今、最強の誘い受けだって。でも今の子敬の駄洒落は違うと思うけど」

「ちょっと私には難しいですね…。あ、ではこれお勘定ですので…」

「又飲もうね」

「うん」

「はい。今度は仲達とか張郃とか連れて来るようにしますから。それではお休みなさい」

「じゃあねー」

「お休みー」



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司馬日記28

その後の、とある文官の日記です。


9月28日

張任殿、太史慈殿、龐徳殿に誘われてと言うか半ば連行されるようにしてまた飲みに行ったが、

「一刀様に抱いて戴きたいのですがどうすればよろしいか」

と切り出されて酒を噴いてしまった、いずれ言い出すのではとは思ってはいたが。

私自身がどうこう出来る訳ではない為一刀様の御心と運次第ではないだろうかと答えたが、彼女等によると私の方で口添えする事となっていたらしい、何時そのような話になっていたのだろうか?どうしたものやら判らず、考えるので今日はお開きにして頂きたいとお願いしたところ次回の約束をさせられてしまった。

 

9月29日

太史慈殿について相談しようと思い子敬に会ったところ、

「うん、(太史慈には)『仲達の言う通りにすれば大丈夫』って教えておいたから♪」

と言い、片目を瞑って舌を出す仕草が可愛い年でもないだろうと言ってやりたかったが溜め息をつくにとどめた。

一方子孝様にお会いして龐徳殿の件をご相談させて頂いたところ、

「いいじゃないの纏めて一刀様に面倒見てもらえば」

と事も無げに仰り、それは余りにも色々すっ飛ばし過ぎではないでしょうかと申し上げるとじゃあそれなりに手順踏んでやりなさいな、一刀様の退路を断つのは手をまわしといてあげるからと面倒臭げに仰られて追い出されてしまった。

 

張任殿、太史慈殿、龐徳殿は知る限り皆誠実で見目も麗しく、一刀様に不釣合いとは思わないが幾らなんでも荒っぽすぎはしないだろうか。

 

9月30日

張任殿らの件について子丹御嬢様に御相談してみた。

「仲達も偉くなったわねぇ、ちょっと前までは右手が一刀様の代わりだったって言うのに…人の心配なんかする様になったのねえ、私は嬉しいわ」

とはあんまりではないだろうか。

彼女等が余りにそういった事に知識が少なく、世間からずれているのには困ったものですと溜息を吐くと、何故か部屋中の同僚らが無言で手に手に鏡を持って私の周りに集まってきた。御嬢様は『仲達ごめんねぇ、私の教育が悪くてごめんねぇ』と妙に真剣味の無い表情で謝ってこられるし、一体何だったのだろうか?

 

10月2日

一刀様の地方巡幸計画の移動計画書が完成した。

 

魏からは李典殿の輸送車に李典殿、于禁殿が一刀様と同乗。

予州の宿場で予め凪、文遠殿、稟様、仲徳様が待機し、夜は稟様、仲徳様が担当し翌朝凪と文遠殿が翌々日没までの到着を条件に休憩自由として騎馬同乗で寿春へ移送。

寿春では夜担当の袁術殿、張勲殿の他に甘寧殿、周泰殿、蒋欽殿が待機しており、水路を御伽と漕ぎ手を交代しつつ建業まで移送。

建業巡幸後、孫策様・周瑜殿が楼船で江夏まで送り、孫尚香殿と一泊の後公孫瓚殿が襄陽へ送り水鏡女学院の視察等をされた後、呂布殿が長駆永安へ送る。

永安では諸葛亮殿、龐統殿が迎え、翌朝厳顔殿、魏延殿が成都(何故か蜀からの文書では性都と誤植されていた)まで送る。

成都巡幸の後、漢中までを劉封・関平、その後西涼馬家らの各馬に同乗し休憩を交えつつ王都まで帰還。

上記に加わらない寵姫の方々は巡幸前後の後宮の日程で優先する。

 

閨房の回転が下がる(自分の番が来ない)ことには寵姫の方々から有形無形の反発が非常に強く、「たまには旅行先で」という希望とも合致し多数の寵姫を方々へ配置する費用をかけてでもこのような形に落ち着くこととなった。

完璧ね…あの馬鹿ち○この寝る暇どころか乾く暇も無いわ、と詠様が妙な感心をされていた。

 

10月4日

賞与が支給されたので、自室用の化粧台を購入した。

最近、妹達に共用の化粧台で髪を梳いている時間が長すぎると責められており、部屋には細い姿見しか無かった為だ。

一刀様の事を考えながら髪を梳いていると時を忘れてしまう。

 

10月5日

化粧台の前に長く座るようになり、自分の容姿に多少関心が出てきた。

明日は一刀様へ御予定の報告に上がる日なので、なるべくは一刀様のお心に適う髪型としたいと思い一刀様から拝領した髪留めでさまざまな髪型を試してみたが、どのようなものがお好みなのだろうか?

考えていたところ公孫瓚殿の事を思い出し、彼女は非凡な魅力を備えているようなので、明日は彼女のように後ろ髪を縛って出勤してみよう。

 

10月6日

一刀様に新しい髪形をお褒め頂いた!知らなかったが、『ぽにーてーる』という髪型らしい。嬉しくて涙が溢れ、書類を読み始めるのに少し時間を要してしまい一刀様が詠様に『仕事前に仲達褒めるのやめてよね』と怒られてしまった、私のせいなのに申し訳ない。

流石は公孫瓚殿だ、明日参考にさせて頂いたお礼を言いに行こう。

 

10月7日

朝のうちに公孫瓚殿の元へ伺おうとしたところ一刀様が私の職場へ来られ、少し二人で話したいとの事で廊下へ出たところ、

「あのね、大変申し訳ないんだけど普段の仲達さんみたいに髪を下ろして貰えないかなぁ、元の仲達さんの髪型もすっごい可愛いからさ。あのポニーテールも可愛かったんだけどちょっと褒めたら色々まずいことになっちゃって…本当にごめん、仲達さんはどんな髪型してても可愛いから!髪留めは使っても良いよ、というか使ってくれると嬉しいな」

と仰られた。一刀様のお言葉に否やは無い、明日からは改める事とした。

 

すると昼過ぎに今度は公孫瓚殿が私の職場へ見え、やはり二人で話をされたいとのことだったので廊下に出ると、

「あのさあ司馬懿さん、こんなことわたしがお願いするのは筋違いなんだけどさ…申し訳ないんだけどその髪形…止めて貰えないかなぁ…?それわたしのほんとに数少ない特徴なんだよ、司馬懿さんならどんな髪型したって可愛いよ、一刀がべた褒めするのも分かるくらい美人さんだし頭もいいしおっぱいも大きそうだし。わたしなんかなんの特徴も無くて一刀だけがあたしのこと名前忘れたり間違えたりしないのはこの髪のおかげで識別してるのかなって思うんだよ、すまないけど頼む、この通り!」

といきなり拝み倒された。

驚いたが、元々この髪型は貴女を模倣したものであり、先程一刀様よりこの髪型を止めるよう御指示頂いたので明日からはしない予定であると答えた。すると彼女はほっとしたようで今一度謝られて帰られようとしたが、呼び止めて「私は貴女を女性として尊敬している、もし迷惑でなければ御懇意にさせて頂き女としての魅力を磨く為今後も参考にさせて頂きたい」と申し出ると目を丸くされていたが、照れながらも承知してくれ、真名を交換させてもらった。

尊敬出来る友人が増える事は良い事だ。

 

10月8日

今日は髪を下ろして髪留めを前髪につけて出勤してみたところ、詠様が私の顔を見て暫らく難しい顔をされた後に一刀様の元へ連れて行かれた。

私を前に一刀様と詠様で

「どう思う?これだと七乃が……」

「いや髪の色も長さも全然違うし…」

「でもあの娘も意外と気にしいだから…」

と何か小声で話されていたが、話し終わると一刀様がお手づから髪留めを耳の脇につけなおして下さり、これが一番仲達さんに似合ってるよ、とっても美人だと仰って下さった。

結局今までと余り変わらないが、これからはこの髪型にする事とした。

 

一刀様御自ら髪型を整えて頂ける娘がどれだけ居るだろうか。幸せ過ぎて今夜は眠れそうにない。

 

10月10日

決裁書類を一刀様のお部屋へ持っていこうとした所一足前に馬騰殿、詠様、孫策様が一刀様のお部屋へ入って行かれたので室外で待つこととした。

なんらかのお話を一刀様とされているようで、

「うちの碧…そうよ、龐徳。あの娘の気持ちを弄んでくれたみたいだけど?」

「張任生殺しにしてほったらかしとか、仕事止まって困るなんてちょっと考えれば分かるわよね?あの子あんたの百倍仕事出来るのよ?行政の長としてどう責任取るの?」

「わたしの親友誑かしてくれてヤリもせずにポイ捨てって聞いたんだけど、どういうつもりかちょっと聞かせて欲しいのよ?」

等と話されている声が聞こえていたが、暫くすると御三方が各々一刀様の印が押された証文らしきものを手に「あれももういい年なんだから早いところ頼むわ」「優しくしなさいよ」「一人が難しければ手伝うから言ってね」等と言いながら意気揚々と部屋から出て行かれた。

 

部屋に入ると、一刀様が頭を抱えながら

「そんなつもりじゃなかったんだ…それにそういうもんじゃないと思うんだ…」

と呟かれていた。

何があったのだろうか。

 

10月12日

次回の展示会の事務担当者の一人に子敬、元直とともに指名され、事前会議の為一刀様のお部屋に伺った。お部屋には他に馬岱殿、孫策様、妙才様、仲徳様、袁紹殿、月様が集められており、一刀様より今回の総合企画は曹操様ではなく一刀様御自身が行うとお話しされた。

今回の主題は『今まで想像されなかった可愛さを引き出す』ということだそうで、「もでる」は魏延殿、馬超殿、張遼殿、文若様、元譲様、甘寧殿、華雄殿、文醜殿を予定している。しかし全員共打診さえしていない状態であり、今日集まった事務方以外の担当者に説得してほしい、一刀様自身も協力は惜しまないと語られ、今回は並々ならぬ情熱を持って意匠制作されることを語られた。

仲徳様より、もでるの面子から方向性は理解しましたけど稟ちゃん、周瑜さん、詠ちゃんあたりはいいんですかと質問されたところ、もでるに加えるか悩んだが普通に似合っちゃいそうなので今回は外したとのことだ。

また孫策様が説得にあたっての報酬を一刀様へ要求され、一刀様は説得成功後の御支払いをお約束された。すると妙才様と馬岱殿が原資なしで事を成すのは難しい為説得の最中と完了後に分割払されたいと求められ、一刀様はそれに苦笑いされながら御承諾され、馬岱殿は「やっぱり『せいこう』報酬が無いとねぇ~」とにやりと笑われていた。

 

一連のお話の中で御報酬が何であるかという事が全く話されておらず、予算見通しが分からなかった為にその御報酬は幾ら程度のものなのでしょうかと質問させて頂いた。すると何故か全員からかわいそうなものを見る目つきで見られ、一刀様が再び苦笑いと共にある意味只みたいなものであるので予算上の心配は不要であると仰った。

いまいち要を得ず、後々困るような事でなければよいのだが、仲徳様の頭の上の人形が「おう仲達ちゃん、これが『この世で只より高いものは無い』ってモンの典型なんだぜよく見ておけよー」と言っていたのが妙に引っかかった。



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司馬日記外伝 事後シリーズ1

『その後』の、思春さんと一刀さんです。超短編です。


「終わった後は冷たいのね」

「…何を女みたいな気色の悪いことを言っているんだお前は」

 

寝台に腰掛けてサラシを巻き始めた彼女に気色悪いって言われました。

 

「だって思春いつもすぐ帰っちゃうじゃん。朝まで居てくれりゃいいのにさ」

「…あんな事があったというのに、お前はもう忘れたのか」

「ああ、蓮華に見られたこ「判ってるなら言うな馬鹿」

 

手の甲で軽く頭を叩かれました。

「あの後私は蓮華様に問い詰められて大変だったんだぞ」

「へー…何て?」

俺には

『ねえ一刀、思春の時はいつもあんなに…その、荒々しい感じなの?わたし、一刀が喜んでくれるなら頑張りたいけど、縛られるのはちょっと怖いわ…。それとも、明命に聞いたんだけど…思春の方からああいう事をしてって本当に言ったの?そんなこと無いわよね?』

って聞いてきたけど。

何が悪かったって、前回は思春が来たのが深夜だったので事が済んで明け方に同じ事を言ったら『…帰らせたくないのなら、縛りつければいいだろう』とか言ってこれみよがしに思春さん御持参の御縄様の方をちらちらとご覧になったのが御宜しくなかったのではと思うが突っ込んではいけない。事後にはさりげなく外から見えないように布団の中に隠し、さりげなく忘れずに持ち帰るように促すのが皇帝の仕事。…そんな皇帝がいるかとか俺に突っ込まないでくれ御願いだから。

 

「………何だって良いだろう、ここに来るのは蓮華様の御負担を減らす為なのだから要らん御心配をかけるようではいかんということだ」

「そーっすね…」

いまだに思春はそれを言い訳に使うし、それを示すために翌日が蓮華の日の前夜にやって来る。

 

寝台から体を起こし、じゃあさあと声をかけ、なんだと答える彼女を背後から抱きすくめる。

「こんなんじゃまだまだ足んないよ、俺種馬だから明日蓮華を滅茶苦茶にしちゃうかも知れないね、そしたら思春の所為だな。それに仮にも皇帝を背後から押し倒すとか無いんじゃないかな、これ公表したらきっと怒る人居て蓮華に迷惑かかるよね。それがいやなら」

 

強引気味に振り向かせて、唇を奪う。こういう時はいつもなすがままになる彼女には不思議に思いながら舌を絡めあうと、次第に思春の切れ長の瞳がとろけ始め、ん、ふ、と鼻を鳴らしだす。唇を離し、思春の瞳を見つめる。

ここで照れずに。少し偉そうに、自信を持って、本気で。

 

「もう少し、愛しぬかれてから帰れよ」

 

押し殺し気味にそう言うと、彼女は少し俯いて。

「朝までには私は帰るからな…それまでは好きにしろ、この馬鹿」

そうか細く呟いて、しな垂れかかって来る面倒可愛い彼女を再び寝台に組み伏せた。



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司馬日記外伝 事後シリーズ2

『その後』の、春蘭さんと一刀さんです。超短編です。


「…いい、自分でやる」

「えー…」

隣で漸く荒い息を収めた彼女の目尻を拭こうとしたら拒否られました。

 

「じゃあ下の方を」

「もっとするな!そっちも私が自分でやるからいい、あっち向いてろ!」

はいはいと返事をして背中同士をぴったりくっつける。背後のごそごそと衣擦れの音がなんかやらしい。

 

「ねえ春蘭さぁ」

「…なんだ」

「その…嫌なんじゃないんだよね?」

「くどい。体質だ」

「ならいいんだけどさ」

春蘭はその最中とその後、涙を見せることがある。不安がよぎってしまって前も聞いた問いを繰り返してしまう。そういえば始めっから最後まで泣きっぱなしのお姉さんもいるけど。

「…今他の女の事を考えていなかったか?」

「とんでもございません」

俺の大切な女の子達はエスパーが多い、っていうかほぼエスパーしかいない。

 

再び沈黙が降りる。

 

「一刀」

「なに?」

「最近、華琳様とはどうなんだ」

「仲悪くはないと思うけど…夜的な意味で?」

「そのぐらい察しろ馬鹿」

 

春蘭に馬鹿っていわれた!

春蘭に馬鹿っていわれた!

「うん、普通…以上にまあ、色々と、仲良くしてるけど」

そうか、と言いながら振り向いた春蘭に背中から抱きしめられる。

 

「泣かせたら許さんぞ」

「もちろん。ところでさ、最近華琳一緒じゃないけど…いいの?」

考えるようにああ…、と言いながら首筋に唇を添えてくる。

 

「無理させてしまっていたような気がしてな…控えている」

「無理?」

「ああ。ちょっと前まではその…四人でよくしていたじゃないか」

「うん」

「その頃から漠然と感じてたんだが…華琳様は本当は可愛がられたり甘えたりする方がお好きなんじゃないかと思ったんだ」

「うーん、…なるほどね…」

すげえ、いい線突いてる。春蘭のくせに!

旗揚げからこのかた統一されるまで、彼女は誰かを信頼することはあっても頼ったり甘えたり、安寧に浸ったりすることが出来なかったはずだ。桂花、春蘭、秋蘭達との夜にあってさえ彼女は主君であり続けたんだろう。

 

「最近そうかもな…ちょっとまえまでは華琳はそんな甘えてくるって感じでもなかったな、というかむしろすごくえっちになったって方が目立ってた。なんか色んな服とか下着とか着たし、色んなその…何?プレイやって。桂花とか桐花(荀攸)の真似とかもしてた」

「それはお前の歓心を買いたかったんだ」

「マジで」

「マジだ…と思う。秋蘭が言っていた」

「おおう」

秋蘭が言ったとなるとちょっと信憑性が出てくる。

「うーん…あの自信が服着て歩いてるような、華琳がねぇ」

「今まで自分が魏を引っ張って来たけれど、大陸が平和になって流石にそろそろ疲れたところに、寄り掛かりたい男が居る。なのにふと見渡してみると一刀の回りには可愛い女ばかりだが自分は可愛げが無い。そろそろ華琳様は一人の女の子としてお前と幸せを甘受したいのに、それが失われてしまうかも知れないと恐れているんだ。華琳様は、お前が思うよりもずっと、劉備よりも孫権よりも普通の女の子なんだ」

 

「…なんかほんとっぽく聞こえた」

「これも秋蘭の受け売りだからな」

「そうなんだ。…なんにせよ、華琳は…そのうん、情緒的に落ち着いたと思うから。これからも大事にするよ」

「そうしろ」

流石に『幼児プレイに目覚めて色々吹っ切れて幸せそうで良かった』とかは色々台無しなので言えない。

春蘭の廻された手に自分の手を重ねて、背中に感じる彼女の鼓動に暫く聞き入った。

 

「これはこれで悪くないからな…」

「何が?」

彼女の小さな呟きがふと耳に入る。

「いや大したことじゃない、こういう時もってことだ」

「こういう二人きりってこと?」

「いいから聞くな馬鹿!」

「あ、気になる!生意気言うのはこの口か!?この口か!?」

「あ馬鹿っんんっ…んぅん、んむ…んふ…」

正直春蘭はチョロい。ちょっとぎゅーっと抱きしめて口の中を舌でイイ子イイ子してやればほら。

 

「ね、教えて春蘭。いい子の春蘭は教えてくれるよね?」

「…だ、だって…四人の時は、皆と私の事をいじめるじゃないか、…でもふたりの時は、優しく、ちゅっちゅって、ぎゅって、いっぱいしてくれるから…ぁ?」

「すまん俺の中の危険な何かが目覚めた」

「ふぁぇっ!?」

 

 

----------------

 

 

「うう…………ケダモノめ…」

「…ごめん」

「も、もう駄目だって、壊れるって…もう駄目って、私言ってたのに…うぇぇ」

「ほんとごめん俺も本気で謝りたいんだ、だからそんな可愛い顔しないでくれまた危険な何かが」

「馬鹿っ………………で、でも優しく…」

「?」

「優しく、ちゅっちゅって、ぎゅってするなら…、許してやる…」

「させてくれ、朝が来るまで春蘭と抱き合ってキスしたい」

「うん、わ、私もしたい…………っんぅ…ん……………………また、こんなにぃ………ゆっくり、ゆっくりならいいから………んっ……はぁぁん…」

 

ああもう春蘭はかわいいなぁ!



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司馬日記29

その後の、とある文官の日記です。


10月13日

後宮移転計画に伴い、一部の寵姫の方々の御意向で一刀様の御料衣が追加発注される事となった。

合同塾の男性用運動着、武道着、それと「背広」という御料衣だ。天の国では行政職員や塾の男性教師はこの背広という服を着るらしい。意匠図を見たが、多少地味ではあるが一刀様が着られたらさぞお似合いなことだろう。

 

10月15日

張任殿、太史慈殿、龐徳殿らが定時後に職場に来られたので会議室に通したところ、『一刀様に御寵愛を賜る事をお約束頂きました、御口添え有難う御座います』と言われた。おそらくはあの後、子孝様が御口利きして下さったのだろう。

それは喜ばしい事で、貴女達の日頃の心掛けと一刀様のお心の賜物であるので今後とも公私共に一刀様の御為に励んで頂きたいと答えたところ、『御伽をさせて頂くにあたって、何か出来る事や心掛けておくべきことは無いでしょうか』と問われた。

残念ながら私自身がこういった方面に明るくない事を自覚していた為、身近な方の御意見を伺ってみてはどうかと答えると、龐徳殿は

「翠に聞いてみたところ答え渋っておりましたが、事前の水分の過剰摂取を控え厠を済ませておくようにとの事でした。常識的過ぎて参考にならなかった為蒲公英にも初めての御伽の状況について聞いてみたところ、現在では斬首ものの行為であった為答えかねるとのことでやはり参考になりませんでした」と答え、太史慈殿は

「雪蓮にこういった事を聞く事を蓮華様に禁じられている為、経験豊富と思われた祭様に伺ったところ『いつも一刀の方から寄って来るので考えたことが無い』と仰り、その後一刀様が如何に祭様の乳や尻等が好みであるか、また幾度も幾度も祭様を抱かれるかを長々と語られましたが余り心がけとは関係の無いものでした」と語り、張任殿は

「御嬢様(劉璋殿)に伺う訳にはいかず、詠様に伺ったところ無言で口の端を吊り上げて生暖かく微笑まれた後、『…ま、考える必要はないわよ。それよか後遺症で色ボケする女の方が多いから、例えば誰とは言わないけど。ヤったらむしろ仕事は励んでよね』と言われました」

と語った。

 

よき友人というものは本当に必要だと思い知った。

常識程度には身を清めあとは一刀様にお任せすれば問題無いだろう、しかし次回以降は如何に一刀様に御満足頂くかを考えて頂きたいと伝え引き取ってもらった。

 

ところで馬岱殿は一刀様に一体何をしたのだろうか。

 

10月16日

張任殿が御嬢様の…と口にしていたのを聞いていた中で、『旦那様』という呼び方が妙に心に残った。そういえばいつだったか研修で一刀様が『旦那様と呼べ』と仰っていたのを思い出した。冷静になって反芻してみると非常に好ましい、胸にこう、こみあげるものがある単語だ。『御主人様』という言葉よりも愛が感じられる。

一刀様が、旦那様。

私の、旦那様。

…素晴らしい。

 

10月17日

数え役満☆姉妹から一刀様の地方巡幸日程について問い合わせがあった。

地方公演を巡幸の経路と日程にぶつけてその合間に一刀様との時間を持ちたいとの事だったが、既に三国で決裁済みとなっている一刀様の超過密日程を説明したところ、残念そうに引き上げてゆかれた。

 

10月19日

『青少年保護育成法』が制定され、三国会議で一刀様に署名頂く事となった。

一刀様は御署名された後に丁寧に条文を御確認され、最終条を読まれた後にこの施行令はどのようになっているかと国王の方々に質問されたが御三方とも目を逸らすばかりでお答えにならない。一刀様の重ねての御質問に曹操様が目を合わせないまま『施行令は一刀どころか私達の決裁事項ですらなくて事務方で決めるのよ。…大丈夫よ、いざって時も私達は許してあげる事にしたから、愛紗と春蘭と思春が何て言うかは知らないけどね。ま…うん、これも仕事だと思って割り切りなさいな』と仰り、皆様退席されていった。

 

10月20日

李典殿にて新後宮向けに開発されていた、片面からは鏡に見える硝子の試作品が完成した。建物は既に施工中であるし衣料品、備品類の調達の目処も既についている、これで建設に向けての未決事項はとりあえず無くなった。喜ばしいことだ。

 

10月22日

公達様が会議から戻られると「全員集まって、今すぐ!」と仰り、会議室に集合した。

何があったのかと伺うと交換留学の件だと言う、そういえば元直の提案で拡大されることとなっていたのを思い出した。

「重要なのは此処からよ。今回蜀からは例の近親☆上等姉妹を出したいらしいんだけど引き受け手がないんですって。でもあっちも相当参ってて向こう二ヶ月の御伽枠をある程度譲ってもいいから受けてくれないかって話が魏と呉に来てて、更に一刀様が蜀を見かねたらしくて受け手の部署と担当には『俺の出来る事はなんでもしてあげる』って仰ったのよ!受け手の御伽受け取り枠は部長が一日、指導担当が二日、部署のその他全員が半日っていうけどどうする?」

とのお言葉に、まず御嬢様が風紀及び士載の教育上宜しくないとし反対され、張郃と郭淮は公私共に刺激が欲しかったと言って賛成し、公達様は「あの娘達『こっち』の才能もあるから嫌いじゃないんだけど、何でもありみたいなところもあるからそこがちょっとね。でも一刀様と新後宮の特別プレイ満漢全席も魅力だし」と言われ、決めかねているとの事だ。

私は御嬢様と同じく風紀上宜しくないのではと申し上げようとしたところ、張郃と郭淮が

「仲達、あんたが受ければ二日間一刀様が好き放題、好きっ放題何でもしてくれるのよ?朝起こして一刀様がご飯食べてるとこずっと眺めてられて食器を洗ってると『仲達お姉ちゃん…俺…!』って後ろからウェヒヒな事になって、午後に遠駆けに出かけりゃ馬上でずっと後ろっから抱きしめられっぱなしでおっぱいモミモミしてもらってあの新築の山荘でくっふっふーよ?」

「ううん一刀様より気持ちだけは年下の仲達が、一刀先生に合同塾の準備室であんたに一番足りない性教育を実技で御指導頂いて、放課後は弓道部になって仲達の潤んだ図星に一刀様の連弩を乱れ射ちしてもらっていやんいやんあっはーんでしょ?」

と言われてから、御嬢様が張郃と郭淮にそれは無しです卑怯ですと叫ばれていたような気がするが記憶が定かでない。

結局受け入れに応募する事となったらしいが、他の部局でも応募はあるらしいのでどうなるかは判らないとのことだ。業務に差し障るような事にならなければ良いが。

 

それと何故か翌日、御嬢様が私を恨みがましげな目つきで見られ『……チョロ達。チョロチョロ過ぎですよこのチョロ子!』となじられた。

…以前は判らなかったがチョロ達とかチョロ子とはどうやら私の事であったようだ。罵倒されているという事は判るのだが、どういう方向なのかが判らないし教えて貰えないので日々の言動で気をつけるしかないだろう。

 

10月24日

退庁時間になって職場へ姜維と見知らぬ美人が士載を訪ねてきた、王都へ出張に来た蜀の鄧芝殿だという。士載曰く、この後鄧芝殿は『仕事』の予定であるがそれまでの間に後進に実技指導を行って頂き、また李典殿が開発された最新鋭設備がある部屋で鄧芝殿の『仕事』を見学するのだと言う。

また姜維は頬を染めながら「士季は私達よりもなにもかもずっと上手ですが、負けておれませんので」と言い、三人で何故か胡瓜を手にどこかへと出て行った。

 

料理の指導にしては食材が胡瓜しか持っておらず、公達様に一体何の御指導でしょうかと伺うと、「…あたしの場合は自分で首を振るんじゃなくて押さえつけてもらう方だから、あんまり関係ないのよね。あんたは…多分ぎこちなさが売りなんだろうからやっぱり関係ないんじゃない?」

と要を得ない事を言われて私が首をひねっていると、御嬢様が「…ある意味、前菜の調理方法?かしらね」と付け加えられた。

胡瓜だけの前菜とは珍しい。



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司馬日記外伝 事後シリーズ3

『その後』の、猪々子さんと一刀さんです。超短編です。
次は誰にしましょうか…

所で、碌にお礼も出来ておりませんがいつもコメント有難う御座います。これが励みで未だに駄文を続けており、本当はとっくの昔に辞めているところでした。
今後ともお気に召す限りは御笑覧頂けますようお願い致します。


「水…飲む?」

「飲む」

水差しを渡すと彼女は湯呑みに注がずにそのまま呷り、ぷはーと一息ついて俺の腕を枕に寝転がる。

直後の息は荒い。俺も、彼女も。

 

しばしの無言の後彼女が体の向きを変え、そのくりくりした瞳を向けて

「あのさぁ。アニキ、足りた?」

と言った。足りたって、何が。

「いやほら、あたい一人だけでって初めてじゃん?種馬のアニキ的には三倍はしないと足りないんじゃないかって」

「いや、そんな事ないよ」

「そうなのか?もう一、二回なら今すぐでも平気だけど。うりうり」

「危ないから膝はやめなさい膝は」

腰を引きながら答えるとそっか、と言って大人しくなった。

 

暫く枕になっている腕を曲げて彼女の少し癖のある髪の感触を楽しんでいると、再びあのさぁ、と彼女は言った。

「あたいとこういうことして楽しいか?」

「しれっと傷つく言葉を…今日誘ってくれたの猪々子じゃんかよ」

泣くぞ、と付け加えるとまあそうなんだけどさ、そうじゃなくてと彼女は続けた。

「だってさぁ、斗詩と麗羽様は分かるよ?おっぱい大きいしアニキにメロメロだしそれになんつーか…エロいし」

そこは分かるので頷く。

「でもあたいはさあ?おっぱいは…まあアニキはそこは余り気にしないってのは分かるけど、エロくないって言うか…キャー一刀様好き好きーって感じでもないじゃん?なんつーか、可愛げ的な意味で」

 

どっかで聞いたような話だ。

「猪々子は可愛いよ」

「それも誰にでも言ってんじゃんかー」

そうでもないんだけどな、と言っても聞く耳を持ってくれない。

「だからさぁ、あたいは別にいいんだよしなくったって?アニキに嫌われちゃいないのは分かってるし遊んでるだけだって楽しいからさ。それよか斗詩と麗羽様としてやってくれよ、あああとあの影の薄い奴…誰だっけ…白蓮そうだ白蓮、最近白蓮ともよく遊んでるんだけどさ、あいつもアニキの事結構好きみたいだから呼んでやったら喜ぶぜ、それt」

 

ああうるさい。

あんまりうるさいので抱きしめて唇を塞いでやった、反省はしていない。ゆっくりと唇を離して半眼で睨む。

「うるさい黙れ貧乳美少女」

「あー!言ってはならない事を言ったなー!」

後半はスルーか。

「男と寝ていてしてはいけない事そのいーち!他の女の話をする事」

実際には結構されてるけど。俺からはしないようにしてるしあと人によって話を振られても絶対に出してはいけない名前も大体覚えてきた。

 

「二、三人はべらしてヤるのはいいのかよ…」

「げふんげふん、それは俺から見たら猪々子が俺と斗詩をはべらしてるとも言えるじゃないか」

「いや最近あたいはそうじゃないし」

「んー、まあそうなんだけど…要はさ、俺は猪々子としたくてしてるんだけど。それを猪々子が嫌でやめたいってのならしょうがないから止めるよ」

「いや、あたいは…別にこういう事するのが嫌って訳じゃないんだよ」

 

めんどい。

意外と猪々子もそんなめんどい事を考えてたんだな。これはあれか、よっぽど端的に言わないと通じない奴か。恥ずかしい事を端的に言えと。つまり胸元に彼女の頭を抱き寄せて耳元でこう言えと。

「あのさぁ。俺、どうしようもなく猪々子が好きで好きで可愛くてエロくて、こういう事もやりたくてたまんねーからこうしてるんだよ。普段も猪々子のミニスカすげぇ捲って見たくてしょうがないもん。その尻も揉みたいしおっぱいも揉みたい。もう暇さえあればどっか空き部屋に連れ込んで二人でこそこそエロく触り合いたい。キス顔が普段とのギャップで可愛すぎて猪々子が窒息するまでチューチューしてたい。髪とかいじりたい、超いじりたい。ヘアバンドも可愛いけどリボンとかつけて超萌え死にたい。ただ猪々子が嫌がることしたくないし社会的なアレもあるからやんないけど、そんぐらい猪々子にめろめろ。だから今猪々子とこうしてるんだけど?」

 

「すげえ、アニキ変態だよ!アニキは変態だよ!」

「言われるとは思ってたけど二回言うなよ傷つくから!」

「変態だよアニキ!」

「逆さにしても同じだから!あと連呼しないでくれそろそろ本気で泣くぞ!」

「欲情してたのかよ、あたいに。しかも可愛いとか言うし」

「一応念を押しておくと欲情だけじゃないけど、そういうこと。ていうかしてなきゃ出来ないだろ」

「いや、大陸の種馬のアニキならそこらへん自由自在で老若男女もお構いなしなのかと」

「…そこまでは化物じゃないよ俺。あと男はない」

「老と若は認めるのかよ」

「えっと…いや訂正する、老じゃ無いし若も無い。無いから難しいところ突っ込まないでくれ、そのへんデリケートな問題なんだ」

「でもどうしよう」

何が、と答えると彼女は俺の右手を取って熱い潤いに触れさせ、ん、と色っぽく体を震わせた後、その大きな瞳で顔を覗き込まれた。

 

「あたいもアニキがそんな変態で、ちょっと嬉しい変態かもしれない」

「そっか、そうだと俺も嬉しいかもしれない」

そう答えて抱きしめると、彼女は笑って唇を合わせて来た。



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司馬日記30

その後の、とある文官の日記です。

…最近、内容から言ってTINAMI以外のR18okの場でさらす様にした方が良いのではと少し思ってたりします…。


10月25日

朝早めに出勤したところ、見覚えの無い美少女が後宮からふらふらと出て来るのに廊下ですれ違った、誰かと思えば士季であった。

歩いてきた方向とその姿からピンときて、御伽番であったのかと聞くと「そうです今から夕べの反芻しながら一眠りしますので。ああ休暇表は出してますから」と答え、ゆっくり休めと言うと気だるげに頷き帰ろうとしたが、ふと呼び止められて

「ああ、仲達様。…今ちょっと垂れてきちゃったんですけど、舐めますか?」

士載は喜んで舐めてましたが、と自身の服の裾を摘みながら訊かれた。

絶句してしまっていると、「やですね冗談ですよ、それではお休みなさい」と言って帰っていった。

 

…下品な冗談を言うのではないと嗜めるべき所だったのだろうが、私も欲求不満なのだろうか。

いまいち仕事に集中出来ず士載の顔をまともに見れなかったが、夜に士載を飲みに付き合わせてそれとなく御伽の時の士季の様子を訊いたところ、普段の蓮っ葉な姿は微塵も無く、従順にして可憐であり、御奉仕の心に満ち、清純にして淫らで、その小柄な身の全てを持って一刀様と愛し愛されつつもお尽くししようとする様は手本以外の何物でもないと口を極めて褒め、姜維も同意見だという。

どうしても家での姿と結びつかず、その違いをどう思うと訊くと士載も同様の事を本人に聞いてみたことがあるが「どちらも私で偽るところは無い」と答えたといい、加えて「好きな男の、一刀様の前で自分と自分の気持ちをしっかり表現出来ない女は駄目女でしょ」と言ったそうだ。

 

……なんだこの言いようの無い敗北感は。

 

10月27日

展示会が行われたらしい。らしいというのは業務都合により私は見学できなかった為だ。

御嬢様曰く今回の展示会は不評であったという、理由を伺ったところ今回は『もでるの人達の性格を踏まえた衣装』であったため真似してみたいと思う人が殆どおらず、もでる自身とその関係者の内輪受けになってしまったからだという。

衣装自体はいずれも非常に可愛らしいものであったといい、また何故か一着余ってしまったので衣装のみの展示用とするという。

一刀様の御意匠なので機会があれば一度拝見したいものだ。

 

10月28日

白蓮殿の執務室へ書類をお持ちしたところ病気として欠勤されているという。

仮にも真名を交換した間柄であるので私室の方へ見舞いに伺うと脱力した様子で寝台に臥せっており、加減を聞いたところ

「いいんだ私なんて…今まで毎回私にもでるをやってくれって来てたのに、今回は連絡もなかったんだ…。もう一刀は私の事なんかどうでもいいんだなぁ…まあしょうがないよな…仲達さんも私なんかほっといて一刀と幸せになってくれよ。仲達さんなら美人だからきっと一刀も大事にしてくれるよ、ははは…」

と力無く呟かれた為、急ぎ一刀様の下へ伺って斯く斯く然々と御説明した。

聞かれるやいなや一刀様はしまったという表情をされ、白蓮の所へ行くと仰って御部屋を飛び出されていった。後に御付きしようとしたところ趙雲殿に呼び止められ、この服を一刀様にお渡ししてあとは一刀様を信頼してお任せされたいと言われ白い襞の多い可愛らしい衣装を渡された。

どうすべきか迷ったが趙雲殿は白蓮殿と長い付き合いだと聞いていたので信用し、彼女の言うとおりに一刀様に衣装をお預けして自分は執務に戻ることとした。

 

一刀様の広く深い御愛情で、白蓮殿の心が立ち直ると良いのだが。

 

10月29日

午前中に白蓮殿が執務室へ訪ねて来られた。

「あ、仲達さん?昨日はわざわざ悪かったね。いやぁあの後一刀が来てさ、まあうん…今回の説明されたからさ。なんか心配かけてごめんな、それだけなんだけど」

と言われた。

ただ帰ろうとする足取りは覚束ない様子だったのでまだ加減が悪いのではないかと聞いたところ、「いやぁ一刀がちょっとその…あいつなりのそのアレなんだろうけど無茶するからさ、私は底なしの連中と違って本当に普通の人だってのに…。まあ、付き合っちゃった私も私なんだけどさぁ、たはは」と語られる表情は明るかったので安心した。

そう言えば趙雲殿から渡されたあの妙に可愛らしい服はどうしたのかと聞くと、紅い顔をして洗濯中だと答えられた。

一刀様に洗濯を依頼されて白蓮殿は元気を取り戻したのだろうか。

 

10月30日

一刀様の御巡幸に向けて、遠方の方や軍師の方など旅程に時間のかかる寵姫の方々が配置に就くため出発されていった。今回の旅程はある意味流れ作業である為計画には万全を期している。順調に進むと良いが。

 

10月31日

一刀様、愛しています。愛しています。愛しています。そのお声は天の響きです。御言葉は神の声です。このいと小さき私にも親しく御注ぎ下さる御愛情。私は生きながらに天の国に居ります。私の天の国は一刀様、貴方の下なのです。

貴方の温もりに触れる度に強く思います。一刀様、貴方に臣として、女としての全てを御捧げ致します。

 

11月1日

昨日、無断欠勤となってしまうところをまたしても御嬢様が代わりに休暇表を提出して下さっていた。一刀様の御世の為、御伽の翌日もしっかり出勤しようと思ってはいるのだがしばしば余韻に浸ってしまって無断欠勤になりかかってしまっている、日記など書いている場合ではないと言うのに。御嬢様にお礼とお詫びをすると「いい加減に無駄な心掛けは止めるようにしてね」と生暖かく微笑まれてしまった。

…臣としても女としても、御奉仕の道は遠い。

 

11月2日

定時になると張任殿らがやって来られ、最早拒否する気力も無く酒楼へ連行されて聞くところには、遂に一刀様に御寵愛を賜ったのだという。

それは目出度い事なので祝いの言葉を返したがどうやら嬉しいだけではなく動揺が激しいらしく、聞いて下さいとまくしたてることには

「あ、あのような凄い事だとはどなたも、仲達様からも聞いておりませんでした!一刀様の手は、御遣い様の掌は仙人様の掌なのでしょうか!?触れられた所が燃えるように熱いのに火傷一つしておりません、それにその、御指が私の胸をその、摘まれた時には天から雷が!間違いなく雷に打たれた筈なのに生きているのです!」

「いいえ違います地震です、一刀様が私の、あ…あのようなところに!御口をつけられたると天地が跳ね回るような大地震が起こり!私は失神して桃源郷の夢を見ていたのですが、目を覚ますと何も壊れておらず一刀様が抱きしめて下さっていたのです!きっとあれは大地震を一刀様が天の御力で御鎮め下さったとしか!」

「それよりも何よりも!一刀様の…が、中に、あのような巨きなものがわ、私の…に入ったのも不思議ですが、一刀様が私を、その、何度もそうなった末に、爆発が!桃色の火山が体の中で大爆発して私は吹き飛ばされたのです!ですが不思議にもこうして生きており、二人の話では同じ爆発がもう二回も起きている筈なのです。これらは、全て一刀様の天の御力による幻術なのでしょうか!?」

と言う。

 

…自分が初めての時もここまで酷くはなかったと思う。

 

兎も角個室席とは言え声を抑えてもらうように言い、頭痛を堪えながらそれはこれこれ斯様ということであってと言っている方が恥ずかしくなる解説をさせられた。それでも

「自分のものとは思えない声が出た」

「体が勝手に跳ねたり痙攣したりした」

「一刀様の唾液には酒か麻薬の成分が含まれていた」

「自分自身は判らないが他の二人は最中と事後は多幸感に溢れているように見えた」

等と言い募り、答える度に「仲達様はどうだったのか」と聞かれるのは何の罰か。

 

しかし最後にそろって沈鬱な表情を浮かべ、事前に厠へ行っていたにも拘らず最中に粗相をしてしまったと言う。

それに対しては御寵愛の最中の生理現象である為止むを得ない事ではあったろうが改めて一刀様にお詫び申し上げるべきだろう、多少以上には愛されている身であり真摯にお詫び申し上げれば御優しい一刀様の事であるのでお許し下さるだろうと助言した。

 

11月3日

張任殿、太史慈殿、龐徳殿に付き添いを希望され、一刀様の元へと共に伺った。龐徳殿は馬超殿に相談されたらしく、私の他に馬超殿も付き添われていた。

悄然とした三人に一刀様は目を丸くされていたが、馬超殿が

「なあご主人さま…あのー、そのなんだ、碧(龐徳殿の真名のようだ)達もあたしと同じ体質なんだって?あたしはほらその、最近はご主人さまが無理矢理その…アレしなければ大丈夫なようになってきただろ、こいつら昨日のを気にしてるみたいでさ、ここは一つあたしに免じてって言うか、勘弁してやってくれるよな?」

と取り成すように言われた所、一刀様は鳩が豆鉄砲を食らったような御顔をされていたが、暫くして困惑の表情を浮かべると馬超殿を近くへ呼び何事かひそひそと話されていた。すると馬超殿が疲れたような落胆のような表情になり、ご主人さま邪魔したなと言って私達も下がらせ、空いている会議室へ連れて行かれた。

部屋の扉を閉めると、「あのな碧、そういう時にそういう風になるのは普通だから!別にその…粗相じゃねえの、言わすな恥ずかしい!」と馬超殿が龐徳殿と叱責された。

「ですが私は今まであのようになった事など有りません!翠も一刀様と共にいる時はあのように溢れて止まらなくなるものなのですか!?」

「そ………それは生理現象なんだよ!そういうもんなの!」

などとやり取りされていたが、

「一刀様は快楽が高まるとそのようになると仰いました、馬超殿も一刀様にして頂くとそのように止まらなくなるのですか?」

「私はその時だけでなく昨日の事を思い出すだけでも下着の替えが必要な程なのですが、馬超殿はそういった時の事を思い出しても平気なのですか?」

「こっ、こっこっこいつらぁっ…!し、司馬懿さんもなんとか言ってやってよ!?」

「私がですか!?」

と話が変な方向へと進んでいき、いつ席を外そうかと思っていたがとんだとばっちりを受けてしまった。何が悲しくて素面で馬超殿と代わる代わる自身の生理現象について語らなくてはならないのだ。

彼女達が首を傾げながらも納得して退室した後、馬超殿と二人で暫くぐったりとしてしまった。

11月5日

一刀様の御巡幸の日程が一部延長されることとなった。合同塾開校に伴い、『私学としての役割を終えた』として学院長から打診されていた水鏡女学院の国有化についての打ち合わせが現地で持たれる事となった為だ。また併せて一刀様及び卒業生による記念講演、及び強引に日程を合わせたという数え役満☆姉妹の公演も行われることとなった。

 

「って事だから、私行ってくるわね!ああ忙しい忙しい、学閥にも困ったものね」

と言いながら精力剤やらいかがわしげな下着やらを鞄に詰めて出て行った。それに対して笑顔で「いってらっしゃい元直、あとそのおっぱいもげろ」と毒づいた子敬は正直なのだろうがちょっと引いてしまうものではあったが、「貴女だって同じ位じゃない、あっ私のは旅先で一刀様にちゅーちゅーモミモミしてもらう幸せのおっぱいだから貴女の淋しいおっぱいとは違ったわね、ごめんなさいね!」と言う元直の笑顔が今思えば腹立たしくはある。



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司馬日記外伝 事後シリーズ4

『その後』の、七乃さんと一刀さんです。超短編です。

美羽は…拙作では成長してしまっており誰得と思いましたのでお休みです。
桂花、風は近々書くと思います。冥琳も書けそうですが薬を使ったのでちょっとお休みかな?ねねは…難しいかも…
ところで、複数の読者様方より仲達たちの容姿について御意見を頂いておりましたが、自身の理解の整理も兼ねまして先の人物録の2頁目以降に容姿の特徴等について適宜追記致します。各読者様の御想像に添えていないかもしれませんが、お差し支えない方がもしいらっしゃれば御覧頂ければと思います。


数度に亘った痙攣が収まって、椅子に座る俺の上に脱力するように座りこむ。

未だ蕩けた半眼の彼女と目を合わせ、舌を絡めとると緩く吸い返してくる。

 

しばらく二人で荒い息を整えると、お風呂行きませんかと言う彼女に頷く。

そのまま抱き上げると色っぽい溜息を吐き、そのまま陶然と目を閉じて首にしがみ付いてくる。こうしているときの彼女は、日頃の毒を吐く姿など想像さえさせない可愛さがある。

 

この部屋の隣には露天風呂が設えてある。

「七乃さん、服脱がないと」と声をかけると、このまま入っちゃいませんかという気だるげな返事が返ってきた。

確かに今日これに入るのは自分たちだけと思い、そのまま湯船へ入る。

ぬるい湯の中でゆっくりと自分の服を脱いで彼女の服を脱がせても、まだ彼女の瞳は蕩けたままで普段のくりくりしたそれには戻らない。髪留めを外してやり、湯船の脇に置くと前髪が垂れて少し幼くなる表情が可愛らしい。

 

一通りを終えて隣に座ると、乗っけて下さぁーい、と目を閉じたまま彼女が言う。

「このままじゃ沈んじゃいますよ…もう動けないんですからぁ」

はいはいと答えて彼女を自分の膝の上に乗せ、浴槽の縁が斜面になっているところを探して凭れ掛かる。

薄目を明けてこちらに少し首を捻る彼女に、それと察して体を少しずらして口付けをしてひとしきり舌を絡めると、疲れきったような表情を僅かに緩めて再び目を閉じる。

 

しばしの無言。

厚い竹垣の外側で風に枝が鳴る他は静寂そのものだが、胸の上に感じる彼女の呼吸が心地良い。

「…今日もいっぱいでしたねぇ」

俺の胸に頬を当てて目を閉じたまま、満足そうに言う。

「…七乃さん、エロ可愛いから」

「ホント何人に言ってんでしょうねぇ、この口は」

姿勢を変えずにちょんちょんと唇に指を当てられると少しくすぐったい。

「…何と言われようと、七乃さんがエロ可愛いという事実は変わらないので」

「全く一刀さんといいお嬢様といい、可愛げがなくなっちゃって」

「俺はともかく、美羽は可愛くなったんじゃない?」

「容姿のことじゃないですよ、『可愛げ』って言ったじゃないですか。それもこれも全部一刀さんと曹真さんのせいですよ、お嬢様があんなにしっかりしちゃうなんて」

「相変わらず歪みない愛情だね…」

「今日だって一緒に来ましょうって誘ったのに断られてしまいましたし」

「あれは七乃さんがいけないでしょ…俺もだけど」

泣きながら自分で開いておねだりするまで焦らし責めとか鬼の所業だろ…つい乗っちゃった俺も俺だけど。

あれくらい昔のお嬢様なら当たり前でしたのに、と僅かに頬を膨らませる彼女のおでこに掛かる髪をかき上げてやる。

「まぁ…こういうひとときもいいですけど」

そうだね、と頷きながら俺も答える。

「俺も七乃さんと二人きりでこうしていられて、嬉しい」

 

 

そう言うと、また暫くの沈黙が訪れた。

 

「…そういう台詞が、人のおっぱい揉みながらここをこーんなにしてでなければ格好良いんですけど、ねぇ」

その彼女の声が上ずっていたのに気がつくと、俺の心拍数も上がってしまう。

「そんな立派なのが浮かんでたらついつい手が行っちゃうって、あとそっちがそうなっちゃってるのは七乃さんがさっきからそこに挟んですりすりするからでしょ!」

「ふふっ、じゃあそういうことにしてあげますよ」

そう言いながらおもむろに向き直って、飄々とした彼女に似げない俺との時だけに見せてくれる熱烈な口付け。それに全力で応えて、彼女を抱きしめると耳元で囁かれた。

 

「一刀さんがそんな事言うから、なんかまた来ちゃったじゃないですか…。私もう動けませんから、一刀さんが好きにしちゃって下さい」

 

その囁きに彼女の体を向き直らせてその丸いお尻を抱え寄せ、ここ一応外だからずっとキスしていようと囁き返すと、七乃さんは目を閉じたまま切なげに眉根を寄せて無言で頷く。

その唇を塞げば、あとはお湯が波打つ音とくぐもった彼女の嬌声だけ。

 

俺と七乃さんの、二人だけ。



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司馬日記31

その後の、とある文官の日記です。


11月6日

一刀様が地方巡幸に御出立なさった。

御見送りは孫権様と劉備様のみで、曹操様は御欠席との事だが要は昨晩が激しかったということらしい。重臣の方々の多くが不在となり決裁が進まない為、休暇を取っている者も多い。

庁内全体が火が消えたように感じる。

 

11月8日

久しぶりに亞莎と飲みにいった。凪は御巡幸の御供区間対応の為不在だ。

亞莎に呉での太史慈殿の様子について聞いてみたところ、先日以来亞莎と一刀様の御伽についてちょっと言葉にするのも憚られるような事を質問されるようになり多少困っているという。

「普段は本当に真面目なんですけど、休憩時間とか雑談中に表情を変えずにそういう事を訊かれるので吃驚しちゃいます。そう、まるで…」

と言いさして私の方を見ながらぽかんと口をあけて固まっていたが、

「あ、いえ、ちょっと思っちゃいましたけどやっぱり違いますよね」と慌てた様に手をぱたぱたと振っていた。

 

その後、つい酔いに任せて太史慈殿から何を訊かれたのかと頬を染めて答え渋る亞莎を問い詰めてしまったが、訊かなければ良かったと後悔するような凄い話だった。

年も下で清純と言う言葉を人の形にしたような亞莎でさえ、そのように大胆に御奉仕を出来ているというのに私ときたら…

 

…もう寝よう。

 

11月10日

業務に余裕がある為休暇を取った。こんな時こそ女としての自分を磨く時間と思ったが何から始めたものかさっぱり思いつかず、とりあえず以前連れて行かれた女性用衣料店へ行ってみた。

色々見てみたものの、これぞというものが見つからず、『今売れてます 大人の貴女にお勧めの一組、天の国の「ジャンパースカート・ブラウスセット」』と表示されていたものを購入することとした。

勘定場へ向かうと姜維と士載が居り、何を買っているのかと聞くと合同塾の学生用水着と運動着だという。それらは支給されていたはずだがと言うと頬を染めて答えた事には御伽用の模倣品とのことで、価格を聞くと正規の支給品よりも高い事に驚かされた。店員に理由を聞いたところ正規品よりもかなり薄手に縫製するのが難しく、また胸元に大きく名を入れる場合は受注生産品となる為だという。必要は技術の進歩を促す典型とはこういうものかと妙な感心をしていると、この店員は先の白水着を譲ってくれた時の店員で私に気がつき先の水着の感想を求められた。すっかり忘れていたがこの水着を提供してもらう条件になっていた事を思い出した(※)。姜維達の前で出来る話ではない為、後日書面で提出させて頂きたいと伝えたところ今晩李典殿の部下の女性が来られる予定であり、一席設けるので詳しく語って頂きたいと言われ、再来店する事とした。

※司馬日記20の事

 

11月11日

昨晩の記憶があやふやな為例の衣料店に行ってみると先の白水着が展示されており、紹介文には

『つまり三行にまとめれば

「えっち!

一刀様ステキ!

あんあんあん!」

オクテな貴女もこれで変身!十分な伸縮性を持たせていますが、切れ目入り仕様も御座います』

と書かれていた。…そんな事を喋っていただろうか?

 

11月13日

公達様より、いまだ一刀様は御巡幸中であるにも拘らず再巡幸の予算化が決まったので計画するようにとの指示を受けた。

各国王様をはじめ今回巡幸に参加されなかった方々より『やっぱり自分達も一刀と旅(先で)したい』との要望が強く、近場でいいからという事で国王権限で予算化してしまったとのことだ。

「華琳様は陳留がいいみたいね。桂花も一度潁川に帰りたいって言ってたから、魏の経路は許昌通って陳留行って帰って位でいいわよ。私はどっちかっていうと密室で色々揃ってる方が好きなんだけど、たまには拉致された村娘とか買われた奴隷とかも良いわね。ま、あんたは概略行程と人員、予算の検討をしなさい」

と言われた。

 

11月15日

人も少ない為気分を変えて庁舎内の庭園で弁当を食べようところ、劉備様が竹刀の素振りをされているのをお見かけした。特に親しいわけではないが、目が合ったので会釈し鍛錬お疲れ様で御座いますと申し上げると、気さくに挨拶を返して頂いた。

疲れたし弁当にするとの事で隣に座られ、司馬懿さんですよね、知ってますよと言われた。雑談にお付き合い頂いた所によると、運動はしているのだがここのところ太腿が弛んでいるような気がし、また胸が垂れるのを防ぐ為にも少し竹刀を振っていたとのことだ。

また関羽殿が関中へ急遽出張に出られており、本人は理由をなんのかんのと言っていたが寂しくなって関平殿らと一刀様に可愛がって頂きたかったということらしい。

更に、司馬懿さんはご主人様の事がすごく好きって評判ですよと言われ、蜀でそこまで言われているほど露骨な態度を人前で取った記憶が無かったが「微賎の身ではありますが陰ながらお慕い申し上げております、しかし劉備様方と一刀様の御心の触れ合いの邪魔にならぬよう心がけております」と答えた。

私もご主人様は大好き、と仰って微笑まれた劉備様の御顔は曹操様、孫権様と並んで一刀様の妻たるに相応しいものだと感じられた。

 

加えて、昼食を終えてお部屋に戻られる劉備様の後姿と言うか、お尻から太腿にかけての流線は弛んでいると言うよりも女性的な、いま少し思うところを端的に言ってしまえば男性である一刀様から見れば性的な魅力を備えたものなのではないかと思った。

 

11月17日

元直が荊州から帰ってきた。機嫌良くお土産を配っていたが、肌つやがよくなっているようだ。水鏡女学院について聞いたところ、「そうねえ、色々な意味で予備軍がごっそりいるわよ?あとあの妖怪ババア、『国有化に伴う費用負担は私の身体で払いますのでどうか』とかホントいい根性してるわよ、ひどい押し売りを目撃させられたわ!絶対年勘違いしてる一刀様に教えてやろうかと思ったわ」という。

 

将来的にも一刀様を公私共に御支えする人材が多いに越したことは無い。

ただ、私が物心ついた頃には既に女学院はあったと聞いているのだが…。

 

11月19日

公達様に一刀様再巡幸(魏編)計画案を提出した。

公達様はしばらく読まれていたが、ふと顔をあげると「あんたの名前が無いけど行かないの?」と言われ、はっと気が付いた。

御供させて頂いても宜しいのでしょうかと伺うといいんじゃないの、役得だと思って甘えればとの事で、自分も計画に含める事とした。

 

一部とはいえ一刀様と旅行…夢のようだ。

 

11月21日

一刀様が御帰還なさった。

寵姫の方々は三々五々御帰還されていたが、一刀様が戻られるのはやはり活気の出方が違う。御意向により何も式典めいたものは無いが各国王様らが出迎えられ、璃々嬢が可愛らしい笑顔と共にお帰りなさいご主人さま、と言いながら抱きつこうとした。

 

が、その寸前に気まずげな一刀様の後ろから気弱げな少女がひょこっと顔を見せると場の空気が凍りついた。

無表情になった璃々嬢がねえご主人さまその娘だあれ、と聞くとこの娘は諸葛均といい諸葛亮殿の妹御で、水鏡女学院に住み込みで暮らしていたが事情により都で諸葛亮殿と暮らす事となったと言う。そうなんだ均お姉ちゃんよろしくね、此処の事まだ良く知らないだろうから璃々が色々教えてあげると言うと孫尚香様もシャオも一緒に教えてあげると言って二人で手を引いて屋敷の方へと消えていった。

姿が見えなくなると国王様らが犯罪者を見るような目つきで一刀様を眺めており、それに対して

「無い!無いからそういうことは、そんな目で見るのは止めて!なあ翠、翠は現場見てたんだからわかるよな!?」

「わかるけど…『今後も無い』って言い切っちゃうとあの娘納得しないと思うぜ?また自殺未遂とかさせないために連れて来たんだろ?」

「そ…そうかもしれないけど!少なくとも後数年は無いし、今のあれも麻疹みたいなもんで暫くしたら普通に兄離れって言うか、その…普通になってくんじゃないかって思ってるんだけど?」

等と仰っていたがその場のほぼ全員から「それは甘い」と言われ、気落ちした様子で諸葛亮殿に諸葛均殿の面倒をしっかり見るよう依頼されていた。

 

…なんと言うか、先ほどの璃々嬢と孫尚香様には言いようの無い迫力があったような気がする。



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司馬日記外伝 事後シリーズ5

『その後』の、桂花さんと一刀さんです。


…重いわよ。

その呟きに荒い息を収め、背後から圧し掛かるように抱きしめていた腕を解き、体を離して隣に寝転んで上掛けをかける。

密着していた部分にじっとりと浮かんでいた汗が空気にさらされ、少しひんやりとする。

彼女はまだうつ伏せたまま、呼吸に合わせて肩口の髪が上下する。

 

暫くの無言。

回数の浅いころはこの時間がどうにも気まずく感じていたが、今では心地いい。それは桂花の気持ちが少しは判ってきたからじゃないか、と勝手に思っている。

やがて仰向けに向き直ると一つ大きく息をつき、ねえ、と彼女が呼んだ。

「何?」

「あんたの地方営業いつからよ」

「巡幸な。明後日から行ってくる」

「…暫く空けるのに、最近あんた華琳様ほったらかしてない?」

「明日の夜は一緒に居る予定だから」

「あそ。あと先にしなきゃいけない決裁はちゃんとしておきなさいよ。租税法の施行の決裁はしたの?」

「え、成立の決裁はしたけどまだあるの?」

「馬鹿ね、法成立の決裁と法施行の決裁は別に決まってるじゃないの、あんた詠と私の話ちゃんと聞いてた?」

「ごめんわかってなかった、明日ちゃんとやっとく」

桂花はこういう時に、仕事の話を振ってくる事が多い。他の娘の話をするのも嫌みたいで華琳の名前でさえ偶にしかでない。…まあ、素では絶対デレない彼女なりの話題のチョイスなんだろう。

 

「あと何があったかな…あそうだ、青少年何だっけ…法」

「青少年保護育成法(笑)ね」

「ああそれ、それも決裁しとかなきゃ。ところで(笑)ってなんだよ」

「鼻で笑っちゃうような法律だからよ。まあ穴だったらなんでもいい種馬のあんたの隠れ蓑的な無駄な法律よね」

「いや、俺が隠れ蓑にする気は無いんだけど…やっぱみんなあれ守る気ないのかなぁ」

「無いとしか思えないからあんたが自覚もって自制するのよ。…つまり、…あ、…」

 

「あ?」

言いかけて止まった彼女の方を見ると、口をあけたまま固まっていたかと思うと背を向けて続けた。

 

「あ、…あんたが、ちっちゃい子に変態的で犯罪的な性欲でむらむらしたら、成年してるその…割と小さくってあんたの身近に居てそういう事も吝かでない女の子を玩具にして無理矢理するプレイで発散させるのよ!?でも桐花は違うからね、変態色欲種馬男のあんたはあんななんでも言いなり淫乱女となんてやっても楽しくもなんとも無いでしょ、第一あの娘ちっちゃくないし!あんたにはこう…もっと長年連れ添って、空から落っこってきて何にもわかんないあんたを一からここまでようやくなんとか華琳様に釣り合うように育てて、あんたの事を分かってくれる女?そういう人くらいしかあんたには似合わないしあんたの変態性欲を受け止めてくれないわよ。だからその…そういう思い当たる娘が居たら、あんたの方からお願いして、大事にそのして…お願いするのよ分かった!?」

 

「うん、判った」

主に桂花が可愛い事が。いや、元から可愛いことは知ってたけど更に。

 

「で、考えてみたんだけどさ、桂花」

言いながら、彼女の方へ体を起こし、背を向けた彼女を振り向かせる。

「俺にとってそんな女の子は桂花しか居ないんだ。俺が犯罪者にならないように、協力してくれないかな」

そう言うと彼女の頬と口元が緩んだような気がしたが、すぐに背を向けてしまう。

「…嫌よ何で私が」

ついさっきまで俺たち何してたっけと少し笑いそうになってしまうが、再び半身を向けさせて抱きしめながら耳元で囁く。

 

「頼むよ桂花。俺の、俺だけの、愛しい玩具になってくれ。桂花が嬉し泣きするまで虐めて、一生大事に、優しく虐めて苛め抜く。もしそれが嫌だったら嫌って言ってくれ。羽交い絞めにして動けないようにして、ずーっとキスしながら桂花を滅茶苦茶にするから」

 

そう言うと彼女は目を見開いて、照れたように頬と口元が吊り上りそうになる直前に勢いよく背を向けながら枕に顔を埋め。

月明かりでも判る赤い耳とうなじの向こうで、一言

 

「嫌」

 

と呟いた。



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司馬日記外伝 仲達さんとポッキーゲーム?

para様リクエストの、仲達さんがポッキーゲームをやると…
です。たまにこう、すらすらっと書けてしまう事があるんですよね…(短いですが)
皆様のコメントやリクは電波を運んで来て下さいます、いつも有難う御座いますね。


心臓が爆発しそうだ。

 

私は今飲酒をしており酔っている時には平常時よりも心拍数は高い、しかし今は違う理由だ。

二つ隣でカシュカシュと脆い物が欠ける音、この音が私を緊張の極限に押しやるのだ。

 

「はい交代ねっ、次私私!」

「ちょっと葵、もう少し余韻に浸らせてよね」

「順番じゅんばーん。はい一刀様、んー♪」

子孝様を押しのけるように子廉様が一刀様の隣に座り、揚げ棒―――小麦粉に砂糖を混ぜて揚げた棒を咥えて心持ち顎を突き出すようにする。

すると一刀様が棒の反対側を咥え、二人で齧っていく。

ポリポリという音と共に見る見る棒は短くなり、二人の顔が近づき――――んむ、という音が聞こえたような気がする程度には、二人の唇が触れ合う。

その様子は正に、恋人達だった。

 

--------------

 

切欠は子丹御嬢様だった。子孝様に子廉様、公達様と飲むのだが来ないかと誘われ御相伴に預かる事にした。『蜀飲みに行ってる一刀様が後で顔を出すかもしれない』という言葉に惹かれたのも否定出来ない。

飲み始めてしばらく四方山話をしていると一刀様がお見えになった、蜀、呉と来て既にここで三軒目とのことで、『どっちもうわばみが居たので早々に退散した』という。

女ばかりでも詰まらなくはないが、ここの全員の公私ともに主人たる一刀様がいらっしゃればいやが上にも盛り上がる。

そこへ来て件の揚げ棒だ。子丹御嬢様が空の一皿を見て、あらもう無くなってしまいましたか、というとそれを咥えた一刀様がごめんこっちの皿の最後の一本俺食べちゃった、あっちの皿にはまだ少し残ってるから、と言われた。

しかし子丹御嬢様はにやりと笑うと『いえ…こちらを頂きますね!』と言うや否や一刀様に抱きついて反対の端からかりかりと噛んで行き、先程子廉様がやって見せたように接吻をした。

たっぷり一秒はかけてから唇を離し、御馳走様でしたと言いながらぺろりと唇を舐めると、残りのお三方が一斉に抜け駆けよ等と非難されたが、御嬢様はこちらの皿にはさっきの一刀様ので最後でしたので仕方がありませんでしたと言って涼しい顔だ。

私は唖然として見ているだけであったが、公達様がちょうどあと四本あるから一人一回づつね、いいですよね一刀様と言うと一刀様は苦笑いされながら御承諾なさったのが数分前。

以降、お三方が順番に先程の―――一刀様によると「ぽっきーげーむ」という天の国では恋仲の者同士がやる遊びだという―――を、実演されていった。

 

 

緊張のあまり、自分の呼吸がやけに大きく聞こえる。

今目の前で公達様が一刀様と唇を合わせ、更に舌で一刀様の唇をひと舐めして終えられた。

ついに私の番だ。

失礼します、と断って隣席に座らせて頂き、揚げ棒を取り出した。その瞬間。

 

震える私の指先から、揚げ棒がぽろりと滑り落ちる。

最後の一本だ。『これで今日はお開きね』と公達様が言っていた。追加は無い。

組み手練習でも出したことの無い迅さで左手を出し。

無事、揚げ棒を掴み。

 

 

 

ぱきぱきぱきぱきぱきっという音と共に、握り砕いてしまった。

 

 

 

 

静まり返ってしまった席で、『…私如きが烏滸がましかったです。申し訳ありません』と御挨拶して逃げるように帰った。涙も見られてしまっただろう。

不注意な自分が、取り乱して逃げ出した自分が情けない。御嬢様方も一刀様も御不快だっただろう。

 

 

コンコン、と自室の扉が叩かれる音で目を覚ました。

酔いと泣き疲れで少しうとうとしてしまっていたらしい。応える気が起こらずにいると扉が開かれ、

「伯達ですよ。大事な御客様がお見えなのですからもう少ししっかりなさい」

と言われた。夜も遅くとても接客する気分でもないので断って下さいと言おうと振り向くと、姉様の姿は既に無く、なんと一刀様が立たれていた。

慌てて席を立って涙の痕を袖で拭い、見苦しいところを御見せして申し訳ありません、このような夜分にどのような御用向きでしょうかと申し上げると、

「いや、仲達さんとだけ出来なかったから残念でさ。あの後ポッキー…あの揚げ棒が無いかお店に聞いたんだけどもう品切れで」

と仰った。有難う御座います、ですが私如きなどにお気遣い無くと申し上げるといや、と制され、

「それで、代わりにこれでどうかなぁ」

と掌を開かれると、そこには小さな飴玉が乗せられていた。

 

 

 

 

 

-----------------

 

すっかり飴の味など無くなってしまってようやく唇を離した時に、自分がとっくに止まれなくなっていることに気がついた。

馬鹿か。

はしたない。

理性ではそう思っているのに、不埒な考えに体と口が止まらない。

 

「や…やはり私は…一刀様の揚げ棒が、欲しいのです…」

とても御顔が見れず一刀様の胸に顔を埋めてそう呟いてしまうと、分かったよ、と優しく笑われて抱きかかえられた。

 

恥ずかしいやら嬉しいやらで、気が狂ってしまいそうだ。

一刀様。今夜はどうか、仲達の顔を見ないで下さい。

 

その御首を掻き抱いて口付けしたい衝動をこらえて、心の中でそう願う。



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司馬日記32

その後の、とある文官の日記です。


11月23日

三国会議で事件が起こった。

(個人の私室以外での御伽を前提とした)占用許可及び鍵の管理、警備や通行制限等の取り決めについて、一刀様が『必要に応じて各々で公序良俗に反しないよう適宜行って頂きたい』という趣旨の御発言をされたところ、黄蓋殿が

「そのくらい『俺の好きな時に好きなところでやらせろ』と言えば良いんじゃ、いつまで経ってもだらしないのう」

と発言され、一刀様は苦笑いされた。

今までも黄蓋殿は一刀様に対して荒っぽい言動が見られていたが、今の物言いには一言注意させて頂こうとしたところ隣席の妙才様が机の下で私を制されながら、

「『我々の』一刀の教育が悪く申し訳ない、より気の利く好い男に責任持って育て上げる為御容赦頂きたい」

と黄蓋殿に陳謝された。それを聞いた黄蓋殿は片眉を跳ね上げ何か言おうとしたがそれよりも早く周瑜殿が

「いや一刀の不出来は長年連れ添った『我々呉の』育成不足でありこちらこそ陳謝する」

と剣呑な表情で言われ、さらに趙雲殿が

「いやいや魏も呉も無い、付き合いの長さで言えば最も長いこの趙子龍が主殿を育てたも同然、『我が身を以って女の扱いを一通り教えた私の』不行き届きであり改善を約束する。また強いて加えるならば稟と風を含めた三人こそが責められるべき」と発言すると、会議は異様な雰囲気となった。一刀様が御取り成しの為か何か言われようとしたが、それよりも先に妙才様が

「…なんにせよ、一刀をこれからも教育していくのは任せて頂きたい。ああ、垂れた乳の褒め方だけはお任せしよう、こちらでは判らないのでね」

と言われると黄蓋殿がなんじゃ死にたいのか小娘、と怒気を孕んだ声と共に立ち上がった。応じるように妙才様もやるなら受けて立ちますがと立ち上がると、一刀様が立ち上がって「いや二人とも待ってくれ、俺はみんなに育てて貰ってる、二人も含めて本当に感謝している」と言われた後、一言二言妙才様に耳打ちされるや黄蓋殿の方へ行き、祭ちょっと話をしようと言われ、明らかに不満気な黄蓋殿を連れて会議室を出て行かれた。

 

曹操様が暫時休憩を提案されその間に各国王が硬い表情で打ち合わされたところ、今日の会議は流会とし各国内で意見調整の上明日再会議となった。

 

11月24日

朝に公達様が総務部の管理職を集め、昨日のその後の経過を御報告頂いた。

「まああれよね…みんな本当に『一刀様は私が育てた』って本気で思い過ぎなのよねえ。部長級以上が集められてさ、華琳様が『魏としては一刀の意向を尊重して、三国及び関係者全員で一刀の人格養成を助けておりこれからも継続する』って見解にするわ、って言われたんだけどもぉすんごい雰囲気悪いの!秋蘭は『実質一刀を御育てになった華琳様がそれで宜しければ』って言うけど凄い仏頂面で『一刀は私と華琳様が育てた大事な男だ』って顔に書いてあるしさぁ、桂花はふて腐れきって『あいつに仕事教えたのは私なのに』って態度ありありだし、あと風!あの娘、何も言わないから別に気にしてないのかと思ってたのよ私は。でも稟は華琳様のいる会議中では飴舐めないのに今日は銜えたままでおかしいって気づいてたみたいで会議後に飴取り上げてみたら噛み割ってたのよ!?

…なんて言うか、うち(総務部)の娘達は凡そ関係ないと思うけど、あんまり一刀様に関してヘタな自尊心持つと面倒な事になるからそういうの勘弁してよね」

とのことであった。

 

何にせよ、公私とも一刀様に御指導頂いてばかりの私には余り関係の無い話だ。

…ただ不謹慎な話ではあるが、一刀様についてそれだけの自負を持てると言う事に多少の羨ましさは禁じ得ない。

 

11月25日

過労らしくふらふらしていた子敬に誘われ、元直と共に飲みに行った。

子敬の話では本日、黄蓋殿、周瑜殿、妙才様、趙雲殿らが一刀様、各国王立会いの下で今回の件の手打ち式を行ったという、今回の件で相当業務に支障をきたしたらしく酷く愚痴っていた。

しかし一刀様はここ二日間はほぼ不眠不休で先の四人を順繰りに何度も御説得されていたらしい。子敬の言葉を借りると『赤玉出るまで振り続けた』というが意味が良くわからず聞いてみると体を張った御説得の事だという。

 妙才様は文武に優れしかも冷静であり協調性も高く、言葉は多くは無いが一刀様をさりげなく立てるようにもされており、私は尊敬している。しかし、それでも一刀様の好まざるところを敢えて行ってしまったのは宜しくなかったのではないか思うが、自分が妙才様の立場であったらどうだろうか?

…そもそもが天の御遣い様と下女の間柄でしかないので、想像が出来ない。

しかし世の一般では、糟糠の妻が他所の女が夫について判ったような事を言っている現場を見たらきっと気分が良くないという話なのだろう。

 

11月27日

新後宮が竣工した。

これから開庁までに個々人の分も含めた備品搬入と内覧会が行われるほか、消耗品や備品管理、案内・警備、清掃等について実際の配置で予行を行う。

各部会担当者の他、国王様方も開庁前に一度検査されるらしい、段取りを組まなくてはならない。

 

11月29日

元直が定時頃に近親上等☆姉妹こと劉封殿と関平殿を連れて職場へやって来た。

曰く、交換留学で二人をこの職場へ連れて来たという、どうやら公達様は御存知だったようだが子丹御嬢様は御存じなかったようで顔を顰め、士載に小声で近寄ってはいけませんよと注意していた。

元直が近年見たことのない清清しい笑顔で宜しく御願い致しますと挨拶して引き揚げていくと、公達様が

「じゃ仲達あんたが二人の指導員ね、財務の仕事は少し減らしてあげるから。あとこれ報酬ね」

と言い、私に二枚の紙を渡された。紙には『一日なんでもしてあげる券 一刀』と書かれ、一刀様の印が押されていた。二人がやって来た事にも指導員にされた事にも驚いたが、何よりも先般の打ち合わせでのお話を思い出し頭が真っ白になってしまった。

 

11月30日

…夕べはまた妄想で一刀様を穢してしまった。自分の品位の下劣さ、淫乱さに嫌になる。

これではあの姉妹の事など笑えないと思いながら眠い眼を擦り出勤すると、例の姉妹に元気良く挨拶され、思わずたじろいだ。

御加減は宜しいのですかと聞かれ、別に病気ではないがと答えると不思議そうな顔をされ「周囲の方から御持病が発症されたのでお帰りになったと聞いたのですが」と言われた。そういえば昨日のあの後から家に帰るまでの記憶が無い。

 

12月1日

公達様と共に元直を訪ねて指導方針についての要望を聞いてみたが、

「殺さなければなんでもありです、好きにしちゃって下さい!」

と劉備様や関羽殿に確認もとらずに笑顔で即答した。

その言い草もどうかと顔を顰めていると公達様が

「あの娘達、才能有りそうなんだけど。型に嵌めちゃってもいいって事ね?」

と訊かれ、

「ありです、それで大人しくなったらめっけものです!でもあの娘たち、それ専門にはならなさそうな気がしますけど」

と答えていた。

型に嵌めるとはどういう意味だろうか。

 

12月2日

さしあたり、劉封殿と関平殿に備品の納品受付と整理を手伝ってもらった。

これまで見てきた姿に比して真面目に取り組んでおり、また受け答えもはきはきとしていて気持ちが良い。

今まで彼女らを過小評価していたかもしれない。

 

それにしても、件の券はどうしたものか…

一刻程お茶を御一緒して頂くだけでも十分過ぎる程幸せではないかと思う一方、それだけでは余りに惜しいと思う気持ちも否定出来ず、さりとて一刀様の御優しさに縋って甘い夜を望むのも身の程を弁えぬ、一刀様のお気持ちも御負担も考えぬ下品な淫乱女の行いのようにも思う。

…この二枚の札は私の身の丈を超えたものなのかもしれない。

 

12月3日

二人に忘れていましたと言われ何かと思っていたら、だしぬけに真名を預けられ驚いた。

仲達様の真名を伺えるでしょうかと言われたが、今しばらく親しくなってから考えさせて頂きたいとひとまずお茶を濁した。

物怖じしない娘達と思ってはいたが筋金入りのようだ、関羽殿は厳格だが劉備様は彼女らと同じく人の懐に飛び込む事に躊躇い無い方だとは聞いてはいるが。

 

12月4日

一刀様の御健康増進の為、今まで合間をみて行われていた不定期の御鍛錬について定期的な鍛錬の御時間を設けてはどうかという提案があり、各国の将軍、武官の方々からの提出された提案書の整理を詠様より指示された。

 

馬超殿、文遠殿、白蓮殿からは馬術という意見であった。

提案書は個別に出して頂いているが、何故か全員馬術場での御指導ではなく遠掛けとして一泊二日となっていた。

 

妙才様、黄忠殿、黄蓋殿は弓術の提案がなされた。これも何故か全員、射の姿勢の指導となっていた。騎射も遠射もあると思うのだが…

 

周泰殿、蒋欽殿及び華雄殿からは格闘技という提案だった。

危険度の高い打突技は行わず拘束技及び関節技に限るとし、また呉特産の海藻から取れる粘液を使用することで一刀様の擦過傷を防ぐと書かれている。

…一刀様の御安全まで検討されており良い提案なのではと思うが、海藻という単語に何か聞き覚えがあるような気がする。

 

趙雲殿の提案書には、

「鍛錬内容:槍術 場所:主殿の寝台」

とのみ書かれていた。槍術であれば剣道場ではないのかと思い詠様に伺ったところ、いつもと何が違うのよと言いながら笑顔で提案書を破り捨てられてしまった。

…捨ててしまって問題なかったのだろうか?

 

また士季からも提案書が提出されていた。

実用性を重視して暗殺対策とし、夜間の屋内模擬戦で具体的には襲撃役からの避難演習及び襲撃者の確保演習と書かれていた。また確保演習では身体能力上文官の方々にも協力頂くと記載され、演習には振り返りが重要とし夜明けまで反省会を行うとしている。

 

詠様に整理結果をお見せしたところ士季の提案書で手を止められ、暫く無言で眺められていた為お声掛けした。するとはっとしたような表情と浮かべ、じゅるっという音と共に口の端を抑えられながらこれいいわね、残りのも適当に見繕って計画書にしてと指示された。

士季の提案書のどこが詠様の琴線に触れたのだろうか。



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司馬日記外伝 事後シリーズ6(R-17.9)

その後の、とある桂花の年上の姪です。
何故か上げ忘れてました…


彼女の細い腰周りを抱きしめる腕にふっと重みを感じることで、桐花の体が弛緩した事に気づいた。

荒い息のまま、彼女の右腕―――黒革の拘束具をに手を伸ばし、カチリという音と共に外す。同様に左腕、両足の拘束具をはずしてベッドの下に落とすと、晴れて彼女は自由の身だ。

「はぁ…ぁん…一刀様、素敵…」

仰向けだった体を横半身にして、目を閉じたまま抱きついてくる彼女を抱き返して髪を撫でる。

 

「んぅん……愛してます…」

「ありがと、俺もだよ」

「知ってます…でも嬉しいです」

「喜んでくれると俺も嬉しいよ。ところで痛いところ無い?」

「ありません、これ全然痛くないです。やっぱり大きいと違いますね」

そう言いながらプラプラと拘束具を振る桐花。

初めに彼女が持ってきたものよりもずっと拘束面積が大きく、以前は縄のように食い込んでいたのが面で受けるようになったので痛くないらしい。

『痛いのがまたいい』という桐花をどうにかこうにか説得して改善させ、色々研究に付き合わされてたが結果が出てよかった。よかった…のか?

 

「でも痕がつかないのって、雌奴隷としましてはなんかちょっと淋しいような気も…」

「いや、止めましょうよ桐花サン」

「桂花とか、あっちの(派閥の)連中に見せ付けられないんですよね…」

「うんだからそれはちょっとねぇ」

やめて欲しいんだけどなぁ、と言ってもこの子も聞かないけど。

「ねえ一刀様ぁ、桂花よりずっといいですよね?」

「桐花がすごくいいっていうのは十分認めるけど、比較はしない方向でお願い」

「ええー…だって私達の方が愛に溢れてるじゃないですか…あっちはただの強姦プレイですよね?しかも犯る側がやらされているという」

「…そんなことは無いよ、分かりにくいけどあれはあれで愛し愛されてるから」

「むー…かぷ」

「気持ちいいけど噛まない噛まない」

肩を甘噛みしながら舌で舐めてくる桐花の頭を撫でる。

 

「はぁい…でもいいです、わたし愛されてますから。…あ、そうです華琳様ともこういうプレイされましたよね。どうでした!?どうでした!?」

「女の子のそういう個人情報をんなホイホイ喋れないよ!」

桐花は桂花達に対抗意識も強いけど、自分と同じ系統の娘やプレイについてはこういう時でも平気で話すというか話させるところがあるし、気に入ったものがあれば取り入れようとするのは…なんというか、公私共に研究熱心というか感心するけど。

 

「華琳様は『一刀も喜んでくれたみたいだし、結構良かったわ』って言ってましたよ」

「自分で喋ってた!?」

「それに『一刀も私に面と向かっては言いづらい事もあるでしょうから、一刀の感想も聞けたら聞いておいて』って言われてますから。ねえ、どうでした?」

 

…華琳さーん。

多分幼児プレイをやったのはその後の筈で、『コレしばらく嵌りそう』と言ってたのはきっと華琳の為にも桐花の為にも言わないほうが良いんだろう。

「…んー…良かったよ。普段見れない華琳って感じで」

「元上司でツンデレで魏王で奴隷って与条件としては最高ですよね、ちょっと羨ましいです。のーぱん首輪で足舐めから入って下さいって助言差し上げたんですけれど、そうされてました?」

「あんまり具体的な話はよそうよ!」

あれは桐花の入れ知恵だったのか!

桂花と稟の入れ知恵をアレンジしたらしい『魏王を捕縛陵辱して愛奴化』の続きだった事も言わないほうが良いんだろう。妙に一連の流れが良く出来ててさすが何でも出来る華琳だなと思ったらこういう事だったのか。

 

「そんな事より、今は二人で仲良くしよう?」

「んふ…あ、すみません後一つだけ。田豊と沮授の事ですけれど」

「純と静?」

彼女を抱き寄せると、肩にしがみつかれながら冀州の二人の名を出された。

「あの娘たち羞恥責め大好き。先日相談を受けたんですけれど、縛りとかお尻ぺんぺんとかは反応薄かったのに、鏡の前でじわじわ脱がしてもらった話をしたら羨ましそうに眼潤ませてぼうっとしちゃって。気に入ったみたいで『お願いしたら』って言ったんですけれど、『恥ずかしくできない、お尻にも欲しいのにお願い出来てない』って言ってますから、一刀様からしてあげてもらえませんか?」

「…彼女達が本当に希望してるか、俺なりに掴ませてもらった上で考えるよ」

「もう、一刀様ったらほんと慎重!私が直に聞いてますから『いいから尻でもやらせろ』で宜しいのに。あの娘たち、一刀様から聞かれたら遠慮して『どっちでもいい』って答えますからね?私一刀様のそういうヌルいところも大好きですけれど、もっと好き放題された方が喜ぶ女多いですよ?」

 

「うーん…」

真顔で言う桐花の言葉には思い当たる節は無くはない。エッチな意味を抜きにしても、『どうして欲しい?』って聞くと『好きなようにしてもらえればいい』って答えて、自己主張も少ない娘たちは結構いる。

「うちで言えば仲達とか士載とか、あと凪とか流琉、呉や蜀にも同じようなのいるんじゃないですか?大丈夫ですよ一刀様なら、やりたい放題やったってあの娘達の嫌がる事なんて出来ませんから」

「…参考にはさせてもらうよ」

これだけの娘達に愛されて、せめて彼女達の心に適わない事はしないようにしようと思ってはいる。けれど彼女達が口に出さない希望まで察して、出来る限りそれに沿えるようにするのも俺には必要な事だろう。

 

「女は愛されたい、大事にされたいとも思いますけど、求められたいとか、安らがせてあげたいとも思ってますから。…んふ、ねぇ一刀様」

「うん」

体を起こして笑みを浮かべた桐花の瞳には、妖しい光が宿っていた。

 

「私は一刀様の男の、雄の本能を満たして差し上げたいなぁって、思ってるんですよ?一刀様はいつも周りの女に気を遣って、相手の望むように接してあげて抱いてくれますよね?その一刀様が、御自分の欲望のままに私を隷従させて、性玩具にして、犯して、雌に堕としてイき狂わせて…御自身の欲求をわがままに私の身体で発散してくれると思うと、私の自尊心…『ぷらいど』、でしたっけ…は凄く、すっごく満たされるんですよ?私が、…私も、女として一刀様のお役に立ててるって、求められてるって…。うふ…もう、こうして話してるだけで溢れちゃって止まらないくらい…ねえ、一刀様…寝床で他の女の話をする女って、駄目ですよね?」

「…そうだね、あんまりね」

情欲に潤んだ彼女の瞳に、もう、魅入られている。

 

「そんな女には、ねぇ、『お仕置き』…きっつーいの、必要じゃありませっ、あんっ」

顔の上から熱い吐息で囁いた彼女をひっくり返してベッドに伏せさせ、背中から片手で抱きしめながらもう一方の手で彼女に目隠しをする。

 

「いいか桐花。お前はごちゃごちゃ言ってないで俺に虐められてよがり泣きしてればいいんだよ。…お仕置きして欲しい雌犬にお仕置きなんてただの御褒美だろ?イキ狂って、自分の立場を理解するまで…『躾け』の時間だ」

「あっは、素敵……駄目な雌犬に、いっぱい躾け、下さい」

 

その最中は、なりきる。言ってて恥ずかしいとかは今は忘れて、喜色に緩んだ表情を浮かべる彼女を大鏡の方へ抱きかかえて行った。

君を虐めさせてくれ桐花。俺なりの、我侭で。



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司馬日記外伝 事後シリーズ6 …の事後(R-18)

その後の、とある桂花の年上の姪のその後です。



「全く…御主人様との寝床で他の女の話をするなんて、まるで躾のなっていない雌犬だな桐花」

「…はいっ…」

薄い紗を羽織った桐花を大きな姿見の前で抱きしめながら、耳元で囁くとその言葉を切欠に、照れの中にも隠し切れない悦びと欲情の色を瞳に浮かべて、彼女にスイッチが入る。

「…そんな雌犬には、何が必要かな?」

「躾が…必要です」

「躾けて、欲しい?」

「は…はいっ…」

「じゃあ、躾けてあげるよ」

そう言いながら彼女を後ろ手にして革の太い手錠を掛け、大きな姿見の前に立っている柱を背に抱かせるように金具に手錠を引っ掛けた。一つ拘束する度に、桐花は眉根を寄せながら陶然とした溜息を漏らす。

そして姿見に自身の抵抗を奪われた姿をちらりと一瞥すると、被虐の未来に無意識なのか腰を小さく揺らめかせた。

 

「縛られて、嬉しそうだね」

そう聞くと潤んだ瞳で小さくいやいやをするが、緩む口元は隠しきれない。これが彼女のサインだと言う事を知っている。桐花の細い顎を指に乗せ、強引に瞳をあわせて再び訊いて欲しいという事だと。

「縛られて、嬉しいんだよね?」

「ああ…は、はい…っ」

「ん?何て言ったの、聞こえないよ?」

「し、縛られて、嬉しいです、はあっ…」

羞恥と、情欲と、媚び。それらがないまぜになったような切なげな表情を浮かべ、自らの性癖を吐露すると共に自分の言葉にも更に酔い、太股を擦り合わせる彼女。

 

「まったく、いやらしいね桐花は。でも、まさか縛られただけで…濡らすような事は、ないよね?」

「ああ…そ、そんなのぉっ…」

なよなよと首を振る彼女の瞳には困惑が、頬には羞恥の紅がさす。彼女はもうとっくに理解している、自分の陰部がどのような状態になっているのかを。そして、どのような辱めを受けるのかも。

「いくら桐花が淫乱な雌犬でも。いくらなんでも濡らしてたりしないから、見られてもいいよね」

「あああ…、駄目ぇ…駄目です…」

「ふうん?御主人様に、口答えしていいのかな」

「…ああ、申し訳ありません…、御覧になって、下さいませ…」

「どこを?」

「そ、そこです…さっき、一刀様が仰った…」

「そこってどこ?」

「ああっ…!…あ、…アソコですっ…」

「あそこってどこ?そこをどうして欲しいの?」

「あううっ…!一刀様の、い、意地悪っ…」

自らの口から『自身の淫らな部位が、浅ましく発情している事を証明しているのを見て欲しい』とねだれという意図をはっきり理解し、桐花は被虐の悦びに不自由な全身を震わせ、むずかるように細い腰をうねらせる。

 

「わ、私のお○んこを、ご…御覧になって下さいませ、んんっ…!」

俺の目を見ながら卑猥なおねだりをすると同時に湧き上がる羞恥と、それをも糧とする情欲の高揚に瞳を潤ませ、首を垂れる。

「そこまでお願いをされちゃ見ないわけにはいかないかな。でももし」

耳元で低く囁く。

「濡らしていたら…もう縛られてるだけで感じまくっちゃってヌルヌルで、入れて欲しくてヒクヒクしてたら。桐花は…どんな目に遭っちゃうのかな?」

「はぁっ…濡れてたら…濡れていたらぁっ、ああ…いっぱい、いっぱいお仕置きされます、いやらしいお仕置きを、されちゃいます…」

それはもう、願望。彼女の淫らな妄想が、容赦無く桐花自身を苛む。

 

「じゃあ、見せてもらうよ」

彼女の背後に立ち、ローブの裾を上げながら弄うような流し眼で見つめつつ、彼女の左膝の裏に片手を差し入れて抱え上げる。

「ああっ…!い、いやぁ」

高く上げさせられた左足と、片足立ちとなった右足の間に露わにされた桐花の陰部は濡れそぼって物欲しげに口を開き、太股には溢れた愛液が伝って光る。

鏡越しに羞恥と淫らな自身を見られる悦びにを惑乱する彼女の瞳を見つめて、

「桐花…どうなってた?」

と問う。

「ああ、ぬ、濡れてます、…こんなに、グチョグチョなのぉ…見られちゃってますっ」

「桐花は…本当に、いやらしい雌犬、だね?」

「ああ、は、はいっ…」

「お仕置きもいいけど…少し、躾けてあげよう?」

「はあっ!ああっ…!」

耳を甘く噛みながら囁くと、彼女は蕩けきった表情で強く頷いた。

 

抱え上げた足を降ろしてローブを取り去ると、彼女の下半身を守るものは何もない。

「ほら…足、開いて」

桐花の前に立ち、彼女の足の付け根に右手を沿わせて命じる。

「は…はい…………はぁんっ!ああああぅん…!」

ゆるゆると開かれた股間に手を差し入れ、ぬめる陰唇をかき分けてその中に中指をじゅぷじゅぷと突き入れると彼女は嬌声を上げてくの字に腰を折る。

「あっ、ああっ、あっ」

内股でかくかくと震える膝が自身の膣に振動を伝え、俺が指を動かさなくても桐花自身が快楽を高めてしまう。

「桐花」

「はっ、はいっ、んっ」

「桐花がいやらしい涎を垂らすところを、こうやって俺の指で栓をしてあげるよ。これでもう濡れないよね」

「そ、そんなの無理ああっ、あぁん!」

彼女の返事に合わせて中指を少しだけ動かすと、膣内から送られる快楽にびくびくと身体を震えさせる。

「御主人様の命令だよ?出来るよね」

「で、でも、ああっ、ああっ!ああああっ!」

「出来るよね?」

「あぁんっ!くふぅっ、…は、はいっ…」

手の平で彼女の肉芽を軽く揉みこんでやるようにして再度問うと、屈服の悦びと怨嗟とが入り混じった瞳をあげて服従の答えをした。

 

「あれ、でもおかしいよね」

「あっ!?あっ、あっ、ああっ、駄目、駄目です、ああっ!」

「桐花はもう濡らさないって言ったのに、まだぴちゃぴちゃ聞こえるよ?」

「あっ、ああっ、だ、だって一刀様の指がっ、指がっ!」

「指がなあに?」

「あんあんあんあんっ、い、意地悪っ、意地悪するからっ、あっあっあっあっ!」

「意地悪って?」

「あああっ、わ、私の中、くちゅくちゅって、くちゅくちゅって、あんあんあんっ、か、掻き回すの!」

「掻き回すから濡れちゃうんだね?」

「は、はいっ、あぁっ、あっあっあっ!」

「じゃあ止めてあげる」

「ああっ………、はぁあ…ん…んぅ…んん」

指を止めると、がくがくと震えていた彼女の腰がゆるく一度のの字を書いて止まる。

 

「止めたら、濡らさないんだね?」

「は、はい、…、んぅん…んむ…」

再び聞きながら彼女の唇を奪うと少しだけ驚いた様子を見せたが不自由な姿勢のまま従順に受け入れ、舌を絡め合う。性感が昂ぶったところでの濃厚なキスに、瞳を閉じて陶然とした桐花の表情を見て、彼女の膣内に挿れたままの中指を少しだけくねらせる。

「んむぅん!?んぅん、んんっ、んぅ…!」

突然の陰部からの快感に目を見開いてびくりと震え、キスをしたままで困惑した瞳を向けてくるのを見てゆっくりと唇を離す。

「一刀様ぁ…い、今…」

「ん?何もしていないよ?…御主人様が何もしていないって言ったら何もしていないんだろ、桐花?」

「は、はい…あ、あぅんっ…!…んんっ………んぁっ…」

今度は彼女の肉芽を親指でほんの少しなぞってやる。それを数度繰り返してやるだけで、あとは何もしなくていい。

 

「んぅ…んん………あっ………あっ、あっ、」

弱い刺激に物足りなくなった彼女の方が、より強い快感を求めてひとりで動きだす事を知っているから。

 

「どうしたの桐花?」

「ああっ、あっ、一刀様っ、い、意地悪ですっ」

「何が?」

「だ、だって私の方からっ、欲しくなるようにしておいて、止めちゃうっ、あっ、あっ!」

気がついたのか、もう彼女の腰は肉芽を手の平に擦りつけるように、突き立てられている指が膣内を深く掻くように強くくねっている。

「知らないなぁ。それより桐花、すごいいやらしい格好だよ?」

 

少し身体をずらして桐花に鏡を見るように促すと、淫らに腰を突きだして上下左右に振りたてている鏡の中の彼女自身と目が合う。

「あっ、あああっ!こ、こんないやらしい格好っ、駄目っ、駄目なのにっ!腰が勝手に、ああっ、動いちゃうっ、く、くねくねしちゃうのっ、あっあっああっ!」

俺の指に快楽の急所を貫かれて、卑猥な踊りに酔い痴れる自身の姿に更に欲情の炎が燃え上がる。

 

「…本当に、盛りのついた雌だね、桐花?」

「あああっ!だ、だって、一刀様の指がっ、気持ち良くて、ああっ!き、気持ちいいっ、んっんんっ、め、雌に、雌になっちゃいますっ」

「じゃあ、雌にならないように抜いてあげようか」

「うぅんっ、嫌っ、嫌です抜かないで!」

膣奥で食い絞められている指を抜こうとする動きをすると、この快楽を逃すまいと必死に腰を突き出して咥え込もうとする彼女の瞳には涙が浮かんでいる。

 

「しょうがないね桐花は…じゃあ雌犬の桐花が。今何しててどんな気持ちなのかいやらしく言えたら、このまま気持ちよくしてあげるよ?」

「はっ、はい…!桐花は、桐花はっ、あ、あそ…お、おま〇こにっ!か、一刀様の指を…んんっ、挿れて戴いて、あっあっああっ!は、はしたなくっ…自分で腰を振ってっ、な、中をっ、ほじってあああぁんっ…!か、鏡で全部っ、全部丸見えで、み、見られて!一刀様に見られて気持ちいいっ、気持ちいいのっ、もうぐちょぐちょなのっ、ああっ、あっあっあっ…イく、一刀様の指でイきたいっ、ああっ、あああっ!イく、イくっ、イくイくイくああああああああーっ!」

 

鏡越しに見つめあいながら淫らな言葉を吐き散らした末に、一際大きく腰を突き出し、ピンと背を反らしながら絶頂の淫声と共に幾度も大きく痙攣する。

ややあって脱力し、崩折れるところを未だ指が入ったままの右手で尻を支えると、再び膣奥深くに刺さる感触に桐花は艶やかな吐息と共に緩く尻を蠢かせた。

そんな彼女を柱に拘束する手錠の金具を外してお姫様抱っこで抱え、やや乱暴気味に寝台へと転がすと、絶頂の余韻に瞳を閉じていた桐花がこの後起こる事の期待に淫蕩な微笑を浮かべるのが見えた。

その姿勢は、彼女が最も好む体勢。

うつ伏せの状態からのろのろと膝を立てて肢を開き、最早ぬかるみと化した女の部分を見せつける様に高く掲げる。そして上半身を捻って一刀様、と誘う彼女に最後の命令をする。

「言いつけを守れなかった桐花にはお仕置きが必要だよね。どんなお仕置きが欲しいか、お強請りしてごらん」

すると熱に浮かされたような、あどけない様な、卑猥な笑みを見せる彼女はもう、蕩けきっていた。

「はい、一刀様ぁ…御主人様の言いつけが守れない、淫乱で、駄目な雌犬のいやらしい穴を、御主人様の熱くて硬いので…いっぱい、いっぱい犯して…虐めて、辱めて、お仕置きして、滅茶苦茶にしてぇ…」

 

「いい子だね。…咥えこんで、反省するんだ」

「ああっ、来、来たのぉ……あああぁぁん…!」

限界まで張り詰めたモノを胎内に突き入れると、喉の奥で絞るような力のない溜め息と共に淫らで満足げな表情を寝台の鏡に見せる桐花。

「く、こんなに、熱く、ぬるぬるにして、反省しているのかっ」

「あんっ!あんっ!あんっ!あんっ!も、申し訳ああっ、ありません!あっあっ、か、一刀様のがっ、あああっ、気持ち良過ぎて、ぬ、濡れちゃうのがぁ、止まらないのぉ!あんあんあんあんっ、す、凄いっ、凄くいいの!」

「自分から尻を振って、とろとろなくせに、ぎゅうぎゅう締め付けてっ、犯されて、お仕置きされてるのに、感じる淫乱めっ…!」

「ぁあぁあぁあぁあんっ!す、済みませっ、ああっ!き、気持ち良くって、お尻が勝手に、ああっああっああっ!一刀様にぃっ、犯されると感じちゃうんですっ、虐めてっ、もっと虐めてっ、あんあんあんっ!駄目な雌犬っ、許さないでっ、お仕置きしてっ、あっあっあっあっああっ!」

猛然と彼女の雌の部分を責め立てると、今までとは比較にならない嬌声を上げて快感を叫び、加虐を強請り、愛液を溢れさせ、仕置きを乞う。

、「ああいいっ、いいっ、いいのあああっ、も、もう駄目っ、駄目なのっ、か、一刀様にっ、あ、アソコを虐められてイっちゃいますっ、いくっ、いくっ、いくいくいくいくっ、あっ、あっ、あっ、ああああ――っ!!」

先程の余韻の所為か直ぐに彼女は絶頂を極めて脱力するが、こちらはまだ終わっていない。

「…桐花?」

それに気付いてか、桐花は絶え絶えな息でなおも腰を揺らして責めを乞い、合わせるように俺も突き入れを激しくしていく。

「はぁっ、…はぁ…あぁん…お、お仕置き戴いてる雌犬だけ、浅ましくイき狂って、も、申し訳ありません、んぅうんっ、もっとお仕置き下さい、ぅんっ、雌犬の中にっ、んっ、んぅっ、一刀様のあっついの、あぁっ、あんっ、あんっ、ぶちまけてっ、虐めてっ、駄目にしてっ、あっあっあっ、あ、またイっちゃうっ、イっちゃうっイっちゃうイっちゃうっ!!と、止まらないのっ、ああ凄いっ凄いっ、ずっとイってるぅっ、か、一刀様のでっ!ずっとイかされちゃってるのぉっ!凄いの、凄いの、一刀様のがっ、あ、あ、ああああっ、だ、出して、出してっ!中にいっぱいっ、雌犬の中にっ、一刀様の熱いのいっぱい出してっ、あっあっ…!あああああああああ――――っ!!!」

希望通りの仕打ちを与えると、最長最大の絶頂に大きく体を震わせ、やがて糸の切れた操り人形のようにへたりこむ桐花。

余韻に浸りながら彼女の隣に添い寝すると、未だ整わぬ息で耳元に唇を寄せてくる。

「一刀様ぁ……もう、素敵…。ねぇ…もっと、淫乱で変態な雌犬を、泣き叫ぶくらい…犯して、いやらしい調教してぇ…?」

 

 

それからの桐花は。

「あああっ、いくっ、いっちゃいますっ!み、見られながらっ、お尻の穴を弄られて桐花はいっちゃいますっ、あっ、あっ、ああ―――っ!」

見ている前で自慰をさせながら後ろの穴もいじってやり、浅ましい姿を揶揄すると羞恥と快楽に悶えながら何度も淫らな痙攣を晒した。

 

「あぁんっ、あんっ、あんっ!も、申し訳ありませっ、あんっ、あんっ、一刀様のっ、一刀様のでっ、ずんずんってされるとっ!あっ、ああっ、あへぇって、雌の声、声出ちゃう、出ちゃうっ、抑えられないのっ、あっあっあっ、い、いくっ、イキ声出ちゃうっ!あああああっ!」

両手を天井に拘束されて、淫声を禁じて姿見の前で立ったまま後ろから犯されると、抑えられるはずもない嬌声を詫びながら絶頂した。

 

「あああああっ!凄い、凄いのぉっ!一刀様の、一刀様のおち○ぽがずぶずぶって!あんあんあんっ、私のぉっ、雌の穴虐めてるのぉっ!あああっ、ぐちょぐちょのお○んこ犯されて、き、気持ちいいのっ、こ、こんなおっきいのでぐりぐりってぇ、あぅっ、あぅっ!あぅん、中えぐってるっ、あっ、あふっ!凄ぉい、おつゆでじゅぷじゅぷって、いやらしい音して、も、もうイく、イきますっ、こ、こんな格好でっ、見せられて、イ、イくっ、イきますっ、ああああ―――っ!」

まんぐり返しの体勢で頭を押さえこんで結合部を凝視させ、事細かに説明させると大量の愛液を溢れさせながらイキ狂った。

 

「あぁんっ、あぁんっ、あぁぁあぁっ…きっ、気持ちいいのぉ、一刀様のにぃ、私のアソコ擦り付けてぇ、いいっ、いいんですぅっ、こ、こんな、へこへこ雌犬みたいに腰振ってぇ、あはぁっ、一刀様に丸見え、発情しちゃってるの見られちゃってるぅっ、ぐちょぐちょのお股丸見えにして、発情雌犬がおち○ぽにアソコ擦り付けてイくっ、イくところ見てっ、イくイくイくっ、あっああぁぁぁぁ…!」

「ねぇ、も、もうお願いしますっ、わ、私のはしたなくて、いやらしい涎を垂らしてるっ、欲しくて欲しくてヒクヒクしちゃってる奴隷ま○こにっ、一刀様の、一刀様のぉ、大っきくて硬いおちん○でお仕置きしてっ、虐めてめちゃくちゃにしてぇ……あ、あはぁっ、き、来たのぉっ!い、いっぱいぃっ、中いっぱいぃっ、あっ、あっ、凄いの、中ぐりゅぐりゅって、いいっ、いいのっ、犯してっ、もっと犯してっあんあんあんっ!雌犬のお尻っ、お尻叩いてっ、大丈夫気持ちいいのっ、一刀様に虐められたいのっ、あっあっ、ああああっ!う、嬉しいっ、いいっ、いいのぉっ、も、もうイっちゃいますっ、ああイくっ、奥っ、奥犯してっ、逃げられないようにお尻捕まえてっ、奥にびゅーって!びゅーってお仕置きしてっ!あああああっ!も、もうイくっ、イくイくイくっ、イきますっ!あああああああああ―――っ!!」

上に跨らせて挿入を禁じると腰を振って肉芽を擦りつけ、羞恥を叫びながら恍惚を味わった。そして淫らな言葉で挿入を強請らされ、恥辱を与えられた後に奥に突き入れられてまた絶頂した。

 

それでも脱力しきった彼女の頭を掴んで強引に起こし、互いの体液に塗れたものを口内に突き入れて強引に頭を揺すりたてると可憐な唇と舌がそれに絡みつき、再び瞳に淫らな光が宿る。

 

彼女との夜が終わるのは、今少し先。



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司馬日記外伝 11月23日について聞いてみた

怖いと評判の11/23について他の人にも聞いてみました。
もう一人、聞いた人が居るんですが…


皆様こんばんは、曹真子丹と申します。

先日会議で一触即発と申しますか、揉め事が起こってしまい、当事者の方々については一刀様が対応下さっています。

が、他の方々についてはひとまず不穏な事になっていないか状況を確認しようということになりまして、稟様、陸遜さん、諸葛亮さんの指示で私と徐庶さん、魯粛さんで手分けして色々な方の様子を伺ってみたのですが…

 

----------------------

 

「えっ?…うーん、わたしにとっては元々ご主人さまだったから、あんまりそういうのはないかな…むしろ育ててもらったようなところもあるし。えっ?こ、ここも…育ててもらったかもしれないけど(赤面)。話は戻るけど、蜀のみんなは大体そうだと思うよ?星ちゃんだけは出会い方が違ったから、ああいうふうに思えるんだろうね…みんな仲良くして欲しいけど、少しうらやましいところもあるかな」

 

「そりゃ私だって言いたい事はあるわよ、でもあの席で私がそれを始めちゃったら本当に収拾つかなくなるでしょう?私の代わりに秋蘭が殆ど言っちゃったようなものだし、今回は私は収める側に回るしかないじゃないの」

 

「ボクと月は保護してもらったクチだからね、経緯上はあんまり偉そうな事は言えない立場だとは思ってるわよ。…まあでも、問題は今から先じゃない?みんな仕事の片手間で一刀世話してるつもりだろうけど、まあ専業で世話してる立場から言わせてもらえば現在とこれからの一刀についての理解度ってやっぱ違ってくると思うのよね。そういう話ならボクも一言言わせて欲しいけど。単純に今まで誰が一刀にどうしたってだけならボクは首は突っ込まないわ」

 

「私と詠ちゃんは拾ってもらった立場ですから、育てたなんて恐れ多くて言えませんよ。大事なのは気持ちで、この会議でこういう事を言ったら御主人様がどう思うかとか、そういう事を考える事が必要だと思うんですよね。この件については私がどうこういうのはおこがましいかなって思いますから特に言う事は何もありません。ただそんなことあの場で言うなんて、御主人様の事本当に愛してるのかなって思うだけで」

 

「祭ねぇ…あれよね、一刀の事が可愛くてしょうがないんでしょうけど。んー…一刀がちょっと強気な態度で祭のこと抱いたら収まるんじゃない?母様もそうだったけど祭って昔気質の女で大雑把って言うか、『男だったら好きに抱いて言う事聞かすもんだ』って思ってるところがあるのよねぇ、そこが一刀はやりそうもないし理解もしづらいんでしょうけど。むしろ冥琳よね、あの娘本当に結構一刀に手ェかけて教えてたからイラッと来たんじゃない?秋蘭もそういう性格っぽいから大変かもね。…私?私は割りとどうでもいいんだけど。だって一刀に愛されてるもんね♪」

 

「………まあ、祭様の気持ちも分からないではないが。しかし実際にあやつに下働きから剣も船漕ぎも、その……なんだ、下世話なその他諸々を実際に仕込んでやったのは誰なのかはあやつも分かっているはずだ。第一あやつは筋金入りの変態だぞ?その変態振りは蓮華様の前では抑えさせて、どうにも収まらん分を他所に迷惑を掛けぬよう私が面倒見てやっていたのだ、あの場では蓮華様の御立場を考えて言わなかったがな」

 

「…はあ。私は別にどうでもいいんですけど。言っちゃえば子供のケンカですよね?私が一番一刀さんを大事にしてきたんだーっていう。でも、一緒に居た時間が長かったからって一番愛されてるわけでも分かってあげられてるってわけでも無いんですけどね。それよりも一刀さんと近い感覚を持ってあげられるって方が全然一刀さんの安らぎになれると思いません?皆忘れてるみたいですけど天の国じゃ一刀さんド平民だったんですよ?なんか勘違いして神格化しちゃってる娘達もいるみたいですけど、普通に悪い事考えたり人としてちっちゃい事してたりするっていうのを理解して感覚を共有するっていうんですか?そういう人がお偉いさん達の中に見当たらないですよね。まあその方が私はいいですけど」

 

「そんなことがあったんですか。…ですがそういった場で私が出来る事なんてあまりありませんけど…。でもそれでみんなで争って一刀さんに嫌気がさしちゃえば、みんな●して麗羽さまと私と文ちゃんで三人占め出来ちゃうかも知れませんね。…うふ、冗談ですよ」

 

「ああもう、あいつも偉くなったもんね!?ひとが折角ぱっぱらぷーのあいつに手取り足取り教えてやったっていうのにあの場で一言もなし!?秋蘭が面倒見てたってのはどっちかっていうと心構えとか考え方とか、折り合いのつけ方とかでしょ?現実あいつがあの立場になってちゃんと政治が回るのは誰のおかげだか判ってないんじゃない!?大体ケリがついたんで今夜行くからとか言ってそんなので丸め込めるのは春蘭ぐらいよ、ほんっとバッカじゃないの!ね、もういい?あたしこれから下着買いに行ってお風呂入って髪梳かさなきゃいけないから。じゃあね、ふんっ!」



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司馬日記外伝 事後シリーズ7

11月23日翌々日の、『その後』の風さんと一刀さんです。


「……魏の誇る種馬は…こんなものでは、ないはずなのですよー…」

「いや…こんなもんだ…」

 

隣で天井を見つめたまま荒い息を吐く風の声に、俺もはーはーと息を切らせながらもなんとか答える。

「…所詮風の貧相な身体では、この程度でお寝んねなのか、おらおらーですー…」

「それもう三回目だから…それに貧相だなんて思ってないって」

「つまりお兄さんは風のような幼児体型に欲情して、ここまでまみれにする変態ロリペド野郎ということですかー?」

「…前半は肯定して、後半は後世の…いや、風の評価に委ねる。あと、言うほど風は幼児体型なんかじゃない」

「……では評価を下すと、お兄さんは天下御免の変態野郎なのですよー…」

「さいですか…」

のろのろと身体を起こして、手水鉢に備え付けられた濡れ手拭いで風の顔から身体を丁寧に拭っていく。その間も彼女は天井を見つめたままだ。

 

拭きながら、我ながら凄えな、よく頑張ったなと少し思う。

風とは普段こういう時間を持っても大体1、2回、多くても3回だ。彼女自身そんなに何度も求めてくると言う事が余り無いし、大体一度終わると疲労具合が見てとれてしまうしその華奢な身体を抱きしめていると壊してしまいそうに思えるというのもある。

しかし今日だけは違った。

漸く四人を宥めすかして何とかなったと思った昼食時に、風を何とかして下さいと稟が半泣きで部屋に飛び込んできた。その語るを聞くには、一昨日の件で風も激怒しているという。

正直、やっぱりなーとは思った。一昨日の会議のあの場面でみんな何かしら、怒るなりおろおろするなりの『見てわかる』反応を見せていた中で、一人だけ無反応に見えた彼女に『ヤバい』とは一瞬思った。しかし今目の前で殺し合いをしかねない祭さん達をほっとけなかったので後回しにしつつ、本当は怒ってなかったらいいなぁとか甘過ぎる希望的観測に縋っていたら先に稟の方が音を上げた…っていうか上げさせてしまった。

怒っている風。

見たことない。

て言うか見たくない。

とは言ってもほったらかすのはもっと嫌なので彼女の部屋を訪ねた。正直、この二日余裕が無さ過ぎて何にも考えてない。風の事だからきっと抑揚無く、容赦無い言葉で罵ってくれるだろう、この豚野郎とか腐れ○○○とか。もうそれ御褒美でもいいからどうか機嫌直して。

そう思いながら、一刀だけどと言いながら部屋をノックすると風が姿を見せた。

「ああ、お兄さんじゃないですか。まあまあどうぞ入って下さい」

「ああうん、お邪魔するよ」

実はそんなに怒ってる訳じゃないんじゃないか?

余りにも変わらない風の姿に一抹の期待を抱きながら扉を閉めて、振り向いたらもう唇を奪われていた。

 

力一杯に首筋にぶら下がるようにしてその可憐な桃唇を押し付け、迷い無く舌を絡めてくる彼女を抱きとめる。身長差で上向きになる風に合わせて軽く腰を折り、やや抱き上げるように抱きしめると、彼女の両腕も背中に回された。かと思うと風にしては乱暴に俺の服の中にその細い手を潜り込ませて背中を撫で回し、舌は更に深くへと押し込もうとしながら色っぽく鼻を鳴らす。

一声長く、んむぅんと悩ましげに鼻を鳴らすと唇を離し、見たことの無いような扇情的な瞳で俺を見つめて、

「お兄さん。今日は風を、滅茶苦茶にしてみませんか」

と喘ぐ様に言った。

 

 

その結果が、まあ今なわけで。

直後から彼女は虚空を見つめたままではあるけれど、最中の反応は決して悪いものではなかったと思う。というかむしろ普段よりも積極的で大胆で、互いの震えを感じ合えるほどにきつく抱きしめあい、日頃の冷静な姿をかなぐり捨てて本能から来る感情を見せてくれた。…少なくとも、身体的には。

 

 

「…お兄さん」

「…何?」

体を拭き終え、上掛けを二人にかけて横になると風が口を開いた。

「あっちを向いて欲しいのです」

「…うん」

肩を押され、風に背を向けるように横向きに寝る。体で騙される様なタイプじゃないよな、とは思ってもまだ怒っているのかと思うと少し寂しい。

 

そう思っていると、ベッドから離れた背中にぬくもりを感じた。

「お兄さん」

「うん」

「風を嫌いになりましたか」

「そんな訳無いよ」

「風はずるい女です。お兄さんがそう答えるのを知ってて聞いてます」

「知ってても聞かれるのは嬉しいよ」

「風は面倒臭い女です」

「そうかもね。でもそんな風が好きなんだよ」

「お兄さんのジゴロっぷりには流石の風も心底呆れます」

「俺も少し呆れてるよ。でも好きなんだよ」

我ながらひでえ開き直りだとは思う。

 

「…風は」

肩に添えられていたほっそりとした腕が胸元に廻されて、背中には押し付けられた彼女の鼓動と、耳元に響く熱い吐息。

 

「貴方の事が好きなの、どうしようもなく好きなの。私は貴方の一番ではないと思うけれど、私は貴方の事を一番知っているつもりなの。貴方が他の人を抱くのはいいの、でも他の人が貴方について判ったような事を言うのを見ると叫びそうになるの、『それは違う』、貴方の事をどれだけ見ているというの?って。私はずっと見ている、だって貴方は私の日輪だもの。昼は明るく強く私を照らし、夜は月を介して優しく照らす。私の心がその日輪を、貴方を見ていない時は無いのよ。

…私、今でも後悔してる。初めて会ったあの時、『貴方のお嫁さんにして下さい』ってどうしていわなかったんだろうって。初対面でそんな事言えるはずが無いのにね。明日死ぬかもしれないって思っていたあの頃から見れば、今こうしてるだけだって十分過ぎるくらい幸せなのに、それでも貴方の一番の理解者でいたい、出来れば少しでも貴方に愛されたいって。…想う気持ちが、止まらないの」

 

「…風」

「見な、いで」

 

そんな事を言われても。

振り向いてその瞳に口付けて、きつく抱きしめながら彼女の名前を何度も呼ぶ以外に何が出来る?

 

 

 

 

「…こんな事を言う風は風ではないのです。…混乱した政治による疲弊が齎した一時の気の迷いなのですよー」

「うん」

その瞳から溢れるものを止めて、腕の中に収まっている彼女がひどく愛しい。

「むしろ演技かもしれませんねー」

「それでもいい。風、愛してる」

「………チョロい種馬のお兄さん相手には、たまには拗ねてみるものですー」

「ああ、もっと拗ねてくれ。我侭も言ってくれ。もっと、風を愛したい」

そう返すと、彼女は口元を緩めて俺を押し倒して馬乗りになると、優しく口付けてきた。

「……お兄さんが優しすぎて、気持ち悪さのあまりなんだか体がむずむずします。一体どういう事なのか、御子息さんにこってりと伺うので覚悟するといいですよー?」

「はは、お手柔らかに頼むよ…」

「聞けない相談なのです、よぉぅ…ん………っん、ぅ…」

瞳を閉じて眉根に皺を寄せながら緩やかに蠢き出す彼女の小さなお尻を、出来るだけ優しく抱え込んだ。



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司馬日記外伝 朱里と姜維で五丈原

くらげ様に煽って頂いた、姜維のおっぱいネタです。
※朱里ファンの方はお読み戴かない事をお勧め致します。…でも私朱里も好きなんですよ?
尚今回、師弟の会話の関係上、姜維と徐庶の真名を設定させて頂きました。


<入庁前>

「…藍(姜維)ちゃん、今年就職だよね?藍ちゃんは強いし頭も良いけど、試験官に軽く見られない為に男の娘…げふんげふん、男の子のふりをしていった方がいいと思うよ!」

「はい、御師匠様」

「(はわわ…藍ちゃん、背が高くて凛々しいからつい言っちゃった…でもそのうちばらせば大丈夫だよね…)」

 

<入庁後>

「御師匠様…最近胸が大きくなってしまったようで、少し苦しいのですが…(たぷん)」

「た、たわわっ!?…サラシを少し緩めてゆったりめの服を着るようにしたらどうかな?」

 

<武技主席で褒賞後>

「御師匠様、緩めの服にしていますけれどやっぱり胸が苦しいのですが…」

「そうなんだ…ちょっと見せてね、服とサラシは…これなら苦しくないと思うけどなぁ。…何時頃からなの?」

「一刀様に親しくお褒めの言葉を頂いて手を握って頂いてからだと思います…華陀様に診て頂くべきでしょうか?」

「!?…とりあえず、病気じゃないと思うから大丈夫じゃないかな…」

 

<剣技大会前>

「藍(姜維)ちゃん、大会頑張ってね」

「はい。ですが、御師匠様…一刀様は、大きな女…、大きな胸はお嫌いでしょうか…」

「…ご、ご主人しゃまは少なくとも小さな娘のちっぱいは大好きだよ!あんまり大きいのは好きじゃない…かも…………………………………しれないといいなぁ(ボソッ)」

「そうですか…」

 

「ちょっと藍、藍」

「はい?汐里(元直)様」

「今のたまたま聞いちゃったけど、一刀様おっきいおっぱいも大好きだから。紫苑とか桔梗とか、あんなでっかくって後宮で大活躍なのよ?」

「そうですか…ですが私のは紫苑さま達ほどではなく中途半端ではないでしょうか…?」

「あーもー安心しなさいよ、私のだってこれくらいだけど一刀様は褒めてくれてモミモミちゅーちゅーなのよ?あんたのだって平気、女だったらどーんとぶつかって来なさいよ」

「…はい!」

 

<剣技大会優勝後>

「士季、市街戦部門の優勝おめでとう」

「ありがと、あんたもね」

「ええ、有難う。ところでちょっと相談があるんですけれど…その、今回の御褒美に、あの…」

「一刀様と一発って話?」

「し、士季は端的過ぎです!」

「言いたい事あったらさっさと言いなってば」

「もう…あのですね、汐里(元直)様から斯く斯く云々で『どーんとぶつかってこい』と言われたのですけれど、具体的にはどうすれば良いのでしょう?…後宮の先輩として教えてもらえませんか?」

「はぁ?そんなのあんたの下着収集庫の中からとびきりエロそうなの選んで適当に……………そういえばさぁ、あんたが男装で入庁したのって諸葛亮様の御指示だったんだっけ?」

「?そうですけれど」

「へえ…(こんな目立ってチョロい奴速攻一刀様のお手つきになるのなんか分かり切ってるでしょうに…それをわざわざこんな格好で放り出すってのはアレね、諸葛亮も確信犯とはやってくれんじゃない)……あ、話戻るけど伯約、元直様が言ってたのは…で…って意味だって仲達様が言ってたと思うなぁ」

「……そうなんですか。有難う士季、私頑張って来ますね!」

 

<その後>

「汐里(元直)様、汐里様!」

「一刀様が抱いて下さりました…!それに、可愛いと仰って下さって…」

「あらそう、良かったわね」

「ですが…」

「?」

「汐里様に言われました通りにしてみたのですが、一刀様には『高度過ぎる事を無理にやらなくていい』と言われてしまいまして…何か違ったのでしょうか」

「?何それ」

「は?いえあの、これこれ斯様でこうしてみたのですが…」

「…あんたも!?あんたもアホの子なの!?それ私が仕込んだとか言わなかったでしょうね?」

「…か、一刀様に聞かれましたので…宜しくなかったでしょうか?」

「私今から一刀様の所行ってくるわ!もう藍(姜維)の馬鹿!駄目っ娘!仲達っ!じゃあねっ!」

「何故仲達様!?…行ってしまわれました…具体的な方法が仲達様の御意見だったので訂正に行かれたのでしょうか…?…仕方がありません、御師匠様に伺ってみましょう」

 

<さらにその後>

「御師匠様御師匠様、私…一刀様に御寵愛頂けました」

「そうなんだ、よかったね。………………………出世、早いね…」

「?私はまだ一般職ですしこういった事で出世が早まる事は無いと聞いておりますが…」

「ううんごめんこっちの話。ところで相談って何かな?」

「はい、汐里(元直)様の…いえ、魏の仲達様の御意見に従って一刀様に『どーんとぶつかって』みたのですが、どうやら上手く出来ていなかったようなので正しいやり方を教えて頂けないかと思いまして」

「どーんと…?まさか藍(姜維)ちゃん、御主人さまを体当たりでぶっ飛ばしちゃった訳じゃないよね!?」

「と、とんでもない!不安だったので事前に士載に実験台になってもらって練習してみましたら、『柔らかくてちょっと気持ちいいかも』と言うのでやってみたのですが」

「そうなんだ、何したのか教えてくれる?」

「はい。では失礼します(たゆゆん)」

「!?藍ちゃん何してるの!…それにまた前より大きくなってる!?」

「あ、はい。まだ成長期が終わっていないようですが、一刀様はお褒め下さいましたので良かったです」

「ちょ、ちょっと待って!なんで近づいてくるの!?」

「?流石に傍でなくては届きませんので…では、えいっ」

「ひ」

 

 

やった側の心の擬音は「ぺちん」。

食らった側の心の擬音は、御察し下さい。

 

 

 

「御師匠様!?御師匠様っ!?」

「…………」

「だ、大丈夫ですか!?倒れこんで涙を流される程強く当てては無いと思ったのですが!?」

 

ガラッ

「ねえ朱里お姉ちゃんの鳴き声が聞こえたけど、大丈夫?」

「あっ、璃々様…実は斯く斯く云々でして」

「…そうなんだ。あのね、朱里お姉ちゃんはおっぱいが小さいのを気にしているの」

「」

「璃々は今成長期でこれくらい(ぽいーん)で、これからもお母さんみたいに大きくなるけど●才で大人の朱里お姉ちゃんはもうこれ以上大きくならないから、藍(姜維)お姉ちゃんが羨ましいんだよ」

「そ、そうだったのですか!」

「」

「だから、あんまりおっきいおっぱいを見せつけるような事はしちゃだめだよ?そっとしておいてあげてね」

「はい…御師匠様、申し訳ありませんでした。…璃々様はまだお若いのに、色々な事にお気遣い出来て御立派ですね」

「えへへ、そんな事無いよ。それより、藍お姉ちゃん下着詳しいんでしょう?またちょっとお胸が大きくなっちゃって下着が合わなくなっちゃったから、新しいの買いたいんだけど一緒に見てくれるかな?」

「はい、構いませんよ。ですが、お金はお持ちですか?無ければ私がお出ししますが」

「ううん、玲紗お姉ちゃんと藤香お姉ちゃんがお小遣いくれたから大丈夫。じゃあ行こっ」

「はい。では御師匠様…申し訳ありませんでした、失礼致します」

 

 

---------------

 

 

 

「はあい居ますよーどうぞー。どうしたの雛里、そんなに泣いちゃって。…朱里が?………へ?ひたっすら舐めて吸って褒めてやれって、どうしちゃったの突然。…いや、いつも言ってるけどそのー…朱里とか、雛里のおっぱいも大好きだって。……うん、俺としてはそれは全然構わないんだけど。…え、きょ?きょう、なんだって?……驚異の脅威が?…脅威で。凶器…って???…うーん、良く分からないけど分かった、今から朱里のところ行くから。有難うね、雛里。…ん、何?…うん俺は良いよ、じゃ一緒に行こうな。ほら雛里も泣かない泣かない、いい子いい子。ね、じゃぁ行こう?」



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司馬日記33

その後の、とある文官の日記です。


12月5日

昼休みに会議室へ士載と士季を呼び、券を一枚づつ渡してこの札は将来のあるお前達で有意義に使うようにと諭した。

士載は私が使うようにと固辞していたが、士季は見覚えの無い笑顔を見せると直ぐに戻ると言って出て行くと、子丹御嬢様を連れてきた。

御嬢様はいつか見たような笑顔で「馬鹿ね、仲達は…」と言いながら私を抱きしめられた。…と思ったら背負い投げで投げ飛ばされた。受身は取ったが、見上げた御嬢様は引き攣った笑顔で顔を青ざめさせており、怒っておられるのが一目で判った。

そのまま御嬢様に一刀様のお部屋に引きずって行かれると、

「もう駄目駄目ですこの馬鹿娘!一刀様、こ、このっ…敗北主義の塊みたいな仲達にちょっと根性というものをずぶっとどばっと注入して下さいっ!いえ、もういっそ調教!凌遅で調教して下さい、私桐花様に反対でしたけど気が変わりました!この娘の馬鹿はそれくらいしなきゃ治りません!」

ととんでもない事をまくし立てた。

私が何を言っても御嬢様は聞く耳を持ってくれず、一刀様が御嬢様から経緯を聞き出して「とりあえず券は俺に預けてくれ、二人共に悪いようにはしないから」と宥められてその場は収まった。

 

二人で御部屋を出ると御嬢様ははあぁぁぁと大きく息を吐いて肩を落とし、

「…少し言い過ぎたわ、ごめんね仲達。でもね、貴女美人だし良い娘だし一刀様だって貴女の事満更じゃないんだから、もう少し自信持って甘える事も考えてみてね」

と言われた。

無関係の御嬢様にも、一刀様にも御迷惑をかけてしまった。

 

…やはりあの券は私の身には過ぎたものだったのだろう。

 

12月6日

後宮の移転に伴い、庁内協同組合の店舗が拡大したので定時後に行ってみた。

以前は多少の食料品程度であったのが残業・宿泊用なのか生活用品が多数取り揃えられ、出張用品や図書も充実した。しかし協同組合の代表達で検討する事となっていた部分は外部から見えないように壁で囲われており、入り口は別になっており更に『女性専用』の張り紙がされていた。

入ってみると驚いた事に、先に子丹御嬢様らに連れて行かれた衣料店でみたようないかがわしい下着等が所狭しと展示されていた。また書籍も置かれており、どのようなものかと『今売れてます』と札の立っている平積みの本を手にとってみた。

 

『「阿蘇阿蘇特別号」 一刀様御意匠 展示会では発表出来ないっ!官能下着特集』編:展示会実行委員会

『「まあまあ眼鏡どうぞ」 外して良し、かけて良し!理知の光と背徳感で魅了する』監修:三国眼鏡党

『「はじめての被虐プレイ」被虐プレイは痛くも怖くもありません。これは一刀様との愛のかたちなのです』著:荀攸 公達

 

…頭痛を起こしていたところ、後方から遠慮ない様子で扉が開かれて入ってきた人物が居たので誰かと思ったら孫尚香様だった。すたすたと勘定所へ行かれ、『出来上がったって聞いたから取りに来たんだけど』と勘定担当の女性に申し出られると、慣れた様子で試着室と書かれた小部屋へと入って行かれた。

孫尚香様は少なくとも叔達よりは年下だと聞いていたがこのような所へ日常的に出入りされているのだろうかと唖然としていたが、

「ねえこれ外し方分からないんだけど!」と言いながら出てきた姿は明らかに透けてしまっている下着のみで、しかも胸の方は下半分しかなく先端が完全に見えてしまっているもので呆然と見つめてしまった。

暫く店員と外し方について話されていたが、私がじろじろと見てしまっていたのに気づかれたようで、なに見てんのよあんたと言われてしまい、慌てて失礼しましたと謝って他のものを物色した。

みてみると先の陳琳殿の小説が全巻置かれていたり、どうやらこの店はそういった事に特化した店舗であるようだ。孫尚香様は店員に包みますかと聞かれていたが、今夜これから使うからこのままで良いと言って服を着られて出て行かれた後に間をおいて出て行こうとしたところ、顔良殿が入ってこられた。

大人しく慎みもある方だと思っていた為意外ではあったが、私に気づかれてあ、どうもと会釈されるとこれまた慣れた様子で勘定所へ行き、取りに来ましたと言われて勘定台にごろごろといくつも置かれたものは黒革に金具がじゃらじゃらとついたもので、明らかにそういう用途としか思えないものであった。店員に試着されますならお手伝い致しますがと聞かれ、平然とじゃあお願いしますと言って試着室へ入っていったのを見はからって、逃げるように店から出た。

 

…この国は優秀な方々で支えられていると思っているが、たまにひどく不安になる事がある。

 

12月8日

後宮の運営予行が一刀様、各国王様の内覧と合わせて三日間実施されたが、概ね順調であった。

曹操様は最終日に内覧され、また何故か当日警備部でない妙才様が警備に当たられた。凪が受けた報告によると「警備上も防音上も問題無いが、使用した小道具・衣料の管理について鍵が掛かるよう変更されたい」との事だ。

 

今後は一刀様はこちらに住居を移され、重臣の方々の内覧及び個人備品の搬入後に正式開庁となるが、今後の運営は所管課に任せられそうだ。

 

12月9日

定時になると公達様宛てに荷物が届けられた。公達様は届けられた妙に大きな布袋を一瞥するとにやりと笑われ、玲紗殿と藤香殿に会議室へ運ぶよう指示された。

二人は何か察するところがあったようで瞳を爛々と輝かせながら袋を背負い、がちゃがちゃと金属が当たるような音を立てながら三人で会議室へと消えていった。

子丹御嬢様にあれはなんでしょうかと伺うと、『あの二人が公達様の御伽に興味津々なもんだから公達様御機嫌になっちゃって、「道具を見せて説明してやる」ですって…困ったものね』と士載の耳を塞ぎながら眉を顰められていた。

勤務時間外ではあるのだが、庁内であまりに明け透けな話は避けて戴きたいものだが。

 

12月10日

廊下で諸葛亮殿と行き会った為、会釈しお歳暮のお礼を申し上げようとたところ

「ひ…!ご、ごめんなしゃ…!」

と顔を引き攣らせて逃げるように行かれてしまった。

特に諸葛亮殿に無礼を働いた記憶もされた覚えも無いが、お送りしたお歳暮のお返しがお気に召さなかったのだろうか?

今度元直にそれとなく聞いてみよう。

 

12月11日

公達様が休暇をとられた。

御伽の翌日にたまに休まれる他は殆ど休暇を取られないので、そういうことでしょうかと御嬢様に伺ったところ士載の耳を塞ぎながら「昨日例の券を行使して、新後宮に設置した設備全部試すって言ってたからそういうことじゃないかしら?」と生温かい笑顔で答えられた。

 

12月12日

新後宮の清掃費は三国出資の共益費から支払われる筈だが、明後日に一刀様と内覧予定の馬超殿宛てに個人負担での清掃を求める文書が新後宮の管理部署から送られてきた。

理由が記載されていなかった為元直に聞いてみたが、「ああ…最近は治ったらしいって聞いてるんだけどね。蒲公英に確認しておくけど、必要に応じて立ち合わせて払わせるわ」と理由は答えずに処置のみを答えた。

…まあ、それで馬超殿と管理側が納得すれば構わないのだが。

 

12月13日

昨朝、いつも通り出勤したところ一刀様が職場に来られて「そろそろ出発するよ」と仰った。

何の事か分からず伺ってみると、今日が第二回一刀様御巡幸の初日で今から私と河内まで御旅行だと言う。

そもそも御巡幸の初日は明日で、私は頴川からの帰りの警備補助でまだ先であったはずなのでそのような御予定は存じあげず何かの御間違いではないでしょうかと申し上げた。すると御嬢様と公達様が連絡は受けており部の掲示板に貼ってあると言われたので見てみると、既定の行程表の一日前に「仲達さんと河内へ(一泊) 翌朝琉流と陳留へ」と書き足されており、一刀様の印も捺されていた。

毎朝掲示板は確認するようにしており見落とす筈がない、それにそのような幸せな事があって良いのかと思いながらも失念していた事を御詫びし、また何も用意出来ていない為御時間を戴ける様申し上げると、士載から「士季より預かっていた」と言ってと旅行用具一式を差し出された為、そのまま一刀様に肩を抱かれて出発出来てしまった。

 

今思えば色々出来過ぎていた、恐らくは一刀様の御配慮に公達様、御嬢様らが御協力下さったのだろう。

今朝は遅めの時間に凪が馬車でやって来て、「あの…私の経験上、今日は足腰立たないでしょうし、その…意識しちゃって当分馬にも乗れないと思いましたので、迎えに来ました」と言われた。その通り以外の何物でもなく、凪にお礼を言って馬車内で寝こけるのがやっとだった。

 

逆に昼間眠ってしまった所為で、一刀様と御話した事、して頂いた事やさせて頂いた事を思い出し、幸福に胸が極まってしまって眠れそうにない。

 

12月14日

眠い目を擦りながら出勤すると、朝礼で今夜は仲達の出張報告会を行うと言われた。

寝耳に水だった為そのような御予定は聞いておりませんでしたがと申し上げると「じゃああんた休暇届出した記憶ある?」と聞かれた。しかしあの時は、慌てており何か書類に署名はしたがそれが休暇届だったか覚えていなかった為そう答えると、「出張届は出てるんだけど。業務なら報告が必要よね」と言ってにやりと笑われた。見せられた出張届の出張内容には、御嬢様の字で一刀様との御旅行の御供と、本日その報告会を例の酒楼で行う旨が私の署名付きで書かれていた。

 

…酒席で女同士で、服の上からとは言え「この幸せおっぱいめー!」と言って胸を掴むのは、いつか一刀様が言われていた「せくはら」と言うものなのではないかと思う。



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司馬日記外伝 事後シリーズ8

『その後』の、一刀さんと…さんです。


「…斗詩、もういいよ?」

「ふぁい?」

彼女の黒髪を撫でながら声を掛けると、きらきらとした瞳と唇を上げて不思議そうに答えた。

「こっち来て、一緒に寝よう」

「あ、いいんですよ一刀さんはこのまま眠くなったら寝ちゃって下さい。全部その、困らないようにしておきますから」

「…いや、一緒に寝ようよ」

「?はい」

三度目のお願いに漸く顔を離し、水を一口含むと口元を拭って隣に添い寝する彼女。

 

「腕、いいですか?」

「ああうん、でも寝にくくない?」

「そんなことないですよ。あでも、痺れそうだったら言って下さいね」

「うん」

そう言うと腕を枕に、こちらを向いて一度細めた瞳がまた開く。

 

「…あんまりよくありませんでした?」

「えぇー!とんでもない、冗談やめてよ」

「そうならいいんですけど…」

真顔で突然何を言い出すのか。というか、なんでまた。

「いえその…一刀さんならもっとかなーって」

「いや十分堪能させてもらったし、それにその…あんまりこう、至れり尽くせりしてもらっちゃ悪くて。あ、もし斗詩がもうちょっとってことなら、喜んでお相手する」

「あ、私はどっちでもいいんですけど、こうしてるのも好きですし」

「そう?」

斗詩はあんまり自己主張しないから、して欲しい事がありそうなら俺が気をつけてあげなきゃいけない。…それで却って負担になってもいけないんだけど。

 

「それに、私に悪いとか気にしなくていいですよ?好きでやってますから」

「そうは言われてもねぇ…」

「ほら、蜀の鄧芝さんだって聞いた話では」

「いや、彼女は特別過ぎるし」

 

最近、気になっている事を聞いてみる。

「斗詩はその…元々そうって程じゃなかったと思うんだけど、最近すごくその…いっぱいいろいろしてくれちゃってるじゃない?嬉しいし凄くいいんだけど、無理してくれちゃってないかなーって少し心配になって」

四人でしてた頃はまあ受け体質っていうか、経験量が違うってのもあるけどされる側だったのが、麗羽があっち方面に目覚めた頃位から物凄い御奉仕体質というか色々してくれてしまうようになったと思う。

こっちが止めないと口に始まり口に終わるし、風呂行きゃ全身洗われるし水は口移しで飲まされるし、麗羽と一緒の時は「ついでに私も縛っちゃいます?」とか真顔で言って幾らかかってるのか分からない道具一式用意するから頷くしかなかったり、年度が替わって書類整理手伝ってくれるって言うのでお願いしたら「スカート短めにしてみたんですけど、その…ちゃんと見えてます?」って聞かれるとか、もうどこのエロ専用メイドかと。

 

「ああ…えーと、そんな無理してるつもりは無いんですけど、まあ私自身変わっちゃったかなぁとはちょっと思ってます。一刀さんから見てもそう思います?」

「凄くそう思う。兎に角斗詩が辛くさえなければいいんだけど」

「私自身は別に辛くも何とも無いですよ。うーん…何ていうんでしょうね、ちょっと好みが変わってしまったと言いますか。…あの頃は、こういう時はわけも分からず『わーっ!?』ってなっちゃってたのがちょっと余裕が出てきたって言うか、うーん…麗羽様の影響かなぁ、好きな人が嬉しそうだったり気持ち良さそうだったりすると嬉しいなぁって強く思うようになりまして。気がついたらこう…もごもごとその、させてもらってたり。一刀さん疲れてるかなぁーと思ったらつい上になってみたり。一刀さんが鬱陶しいなあと思うようだったらやめようとは思ってるんですけど…お気に召しません?」

 

「とんでもない」

「きゃっ?」

いとおし過ぎて抱きしめた。勢い余って口付けた。舌を差し入れると瞳を閉じて柔らかくぬめるそれで応えてくれた。

 

「申し訳ない。有難う。愛されてて凄く嬉しい。あと愛してる」

「いえとんでもないです、私こそ。…って、さらっと凄い事言われましたよ?」

「さっきはあんなこと言ったけど、斗詩まだ大丈夫?」

「あ、はい、いいですよ?じゃあちょっと準備しますから」

「いやそんなの止めてくれ!…一応聞くけど斗詩、するのはいいけどされるのが嫌いって訳じゃないんだよね?」

「え、あ、はい」

 

「では今日は尽くさせて下さい斗詩御嬢様!」

「ええー?御嬢様って何です…あっ、あはっ、んっ…」

其処彼処に優しく指を這わせながら再び口内を舐め回すと、彼女の瞳と声がとろけていく。一度唇を離し、大好きだと囁くと私もです、と応えて背中に腕を回されるのが温かい。

 

この後はいっぱいされてもらうから。そう囁くと彼女はえぇ~?と照れ笑った。

それがあんまり可愛かったので、俺も笑って「されろ」と言うと、斗詩は恥ずかしそうにその髪を縦に揺らした。

 

 

 

 

(さらに事後)

「…そうだ、斗詩」

「んふ…なんですか?」

「俺は斗詩の事、優しいし可愛いし大好きなんだけど…斗詩の事を『優しいし真面目でいい娘なんだけど怖い』って聞くことがあってさ。なんか、誤解されるような事した覚えある?」

「はあ…?…ああ、麗羽様に『斗詩さんも真面目なのは結構ですけれど、特徴を持ちませんと埋没してしまいましてよ』って言われまして。たまーに悪戯を、そのちょっと、少しだけ」

「?悪戯って何してんの」

「ええー…えへへ、一刀さんには言えませんよぉ。…でも人づてに伝わるのもやだなぁ、どうしよっかなぁ」

「なら体に訊いてやるー」

「きゃー助けてーうふふっ、んむ…」

 

 

 

 

 

(この後こんなやりとりがあったかどうかはあなたの妄想力次第です)

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ………………いい子にしてましたか、審配さん?いま全部外してあげますから。私たちのを覗き見してて、興奮しました?…ふふっ、ここをこんなにしちゃってて聞くまでも無かったですか、でも審配さんにはお預けはむしろ御褒美ですもんね?前も聞きましたけどもう一回聞きましょうか、貴女は一刀さんの何ですか?…うふ、そうですよね、いいお返事ですよ。…はい、これで全部外れましたから。一刀さん寝てますけど、審配さんのお誘いの仕方次第ではまだお願い出来ると思いますよ。ああ、一刀さんが目を覚ますまで添い寝だけで更にお預けの方がお好みですか?まあ、お好きにされるといいんじゃないですか。では、お休みなさい。よい夜を」



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司馬日記34

その後の、とある文官の日記です。

P.S.美術で3以上取った事無いhujisaiが挿絵に挑もうとしています
お絵かき入門のいいHPがあればどなたか教えろ下さいおながいします…


12月15日

休日に、妙に意を決したような表情で幼達が璃々嬢に会って申し上げたいことがあると言うので黄忠殿に御都合を伺い、会いに連れて行った。

すると自己紹介が済むや佇まいを正し、弟子にして下さいと幼達が頭を下げたので吃驚した、曲がりなりにも幼達は璃々嬢よりも年長であるしそれほどの親交があるとも聞いていない。

璃々嬢は目を丸くされていたが師弟などではなく友人となって欲しいと朗らかに言い、幼達もそれに応じたが璃々嬢を年下ではなく目上のように接していた。

 

翌日公達様にそのやりとりを語ったところ目を丸くされ、感心したように一声唸られて

「…なかなか見所あるわねぇ。幼達ちゃんは将来有望ね」

と語られた。

 

12月16日

大分日が経ってしまったが、藤香・玲紗姉妹の歓迎会を例の酒楼で行った。

…何というか、折角の可愛らしい容姿もあの言動では台無しだ、それに日頃は嗜める側の御嬢様まで話題が制服ぷれいに及ぶや張り合うように加わられてしまったので士載の教育に悪いことこの上ない。

 

12月17日

直轄の総務室の方で仕事をしていたところ、甘寧殿と周泰殿が太史慈殿の様子を見に来られた。

太史慈殿がお茶を出されようとしたがちょっと立ち寄っただけらしくお二人は直ぐに帰られようとした。すると太史慈殿がそうだ思い出しました、と言って

「明命、思春!二人は今度一刀様の鍛錬の指導をされると聞きました、ついては私も一刀様の為に何か少しでもお手伝い出来る事は無いでしょうか」

と聞かれた。すると周泰殿は太史慈殿の胸元をしげしげと眺められたかと思うと満面の笑みで

「何一つ手伝って頂く事はありません!巨乳に分けてやる汁は一滴たりとて無いと知りやがれです!」

と言い放って去って行かれた。余りの言い様に太史慈殿は落胆されたようで、甘寧殿へ視線を向けると甘寧殿も私はそんな鍛錬など知らんと言って去ろうとされたが、太史慈殿が不思議そうな顔で

「いえそんな事は無い筈です、先日呉から提出されました『ろーしょん(一刀様鍛錬専用)』の発注票に思春の名前が七個もありました、それに先日一刀様に物陰で『あんなものを使って一体どこを鍛錬する気だ』と言われていたではありませんか」

と言われると甘寧殿は満面を朱に染め上げ、何を言うそんな事は無いと怒鳴られてこれまた去っていかれた。

 

呉は土地柄気性の荒い者も多いと聞いているが、自国内同士位は仲良くしてもらいたいものだ。

12月18日

元直に会ったので諸葛亮殿の御機嫌を損ねるような事が無かったか聞いてみたが、

「ああうん、なんかひどく仲達の事怖がってるみたいなんだけど一体何したの?」

と逆に聞き返されてしまった。

 

12月19日

魏の総務部で業務をしていたところ、夕方になって詠様が元直と張任殿、太史慈殿、龐徳殿らを連れて来られ、

「仲達あんたも付合いなさいよ…逃がさないわよ」とげんなりされた顔で仰られた。

何事かと思い伺ったところ定時後にまた酒楼に連れて行かれたが、要は張任殿らの夜の悩み、それも端的に言ってしまえば『一刀様ともっとしたい』というある意味聞いたところでどうしようもない愚痴のようなものに付き合わされるというものだった。

元直と詠様は『あー。んー。そーねー』と如何にもどうでもよさげに生返事をされるばかりであったが、三人が余りに生々しい欲求を大真面目に吐露され、それについて私に意見を求められても困る他無い。それに『では仲達様は(一刀様と)されたくはないのですか?』と言う殺し文句は非常に困る。

 

一応言いたい事は言ったらしい三人と別れると、死んだ魚のような目をされた詠様と元直が

「…いーわよもう。一回一刀にヤリ倒してもらうように言っとくわ…」

「そですね…」

とぼそりと言い、とぼとぼと帰られていった。

 

それは羨まし…いや、適切な処置なのかもしれないが、益々そういった事にうつつを抜かすようになってしまわないか多少心配になった。

 

12月20日

城門屋上部の補修箇所の確認に行ったところ、広場で閲兵をされていた一刀様が見えた。

暫くお姿を眺めていたところ、かなり距離はあるのだが不思議とお気づきなられ御手を振って頂いたので会釈した。

…幸せだ。

 

12月21日

例の姉妹の勤務状況は良好だ、元直から聞いていたのが嘘のようだ。元直にも話したが、環境が変わったからかしらねぇと不思議がっていた。

ただ休憩時間であっても

「ねえ仲達様、お尻って気持ち良かったですか?」

などと公衆の面前で聞くのはやめて欲しい、思わず二人まとめて絞め落としてしまった。

 

…そういった話をたまに聞くが、本当に気持ち良いのだろうか。

一刀様がお求めになる事であれば、何一つ拒むつもりはないし不快な事など無いと思ってはいるが…。

凪に聞いて…いやそれではあの姉妹と同じだ、自重しなくては…。

 

12月22日

実務者級で行う三国軍事連絡会議に事務局側として出席し、緊急時の連絡方法について協議を行った。

終了後懇親会を行ったが、武官が殆どの酒席は初めてで雰囲気の違いに多少戸惑った。宴も半ばのころ、張遼殿が『何かおもろい話はないんか』と言い出され、

李典殿が「凪が首輪を買ったが、公達様と同じ趣味と誤解されたくなくて隊長に名前を彫って下さいと頼めなくて悩んでいる」

孫尚香様が「蓮華お姉ちゃんが自分には買うなと言っていた三国塾の非公式水着に一生懸命名前を刺繍していた」

文醜殿が「白蓮が最近妙にアニキにデレデレしてるからどうしたんだって聞いてみたら、『一刀だけがあたしの名前間違わないからな』って言ってたけどその目つきがヤバかった」

馬岱殿が「お姉様が碧(龐徳殿の真名だ)に『媚薬とは何でしょうか』って聞かれて、はじめは嫌がりながら答えてたけど、段々思い出して疼いてきたらしくてふらふらとご主人様のお部屋の方に内股で歩いていった」

等と聞いてしまっていいのかというような話をしていたが、何故か姜維が赤い顔をして何か言いたげにこちらをちらちらと見ていたのが多少気になった。

そして魏延殿が周囲の者から「何か語れ」と責められていたが、

「わ、ワタシはそんな面白い話などさっぱりないのだが…。じゃ、じゃあうーん、その…これは内緒なんだがな、桔梗様、あの厳顔様の事なんだが」

と言って一呼吸置き、

 

「あんなだから知られてないと思うんだが、実はお館様に抱かれるまで処女だったらしい」

 

と言った。

すると馬岱殿が真顔で間髪入れずに

「ごめん蒲公英用事思い出したから帰るね」

と言って座を飛び出し、元直も「あたしも帰る」と続くや、普段は落ち着いたと言うかゆったりした雰囲気のある陸遜殿が

「撤退!呉は全員撤退です!」

と真剣な表情で叫び、それに続いて子孝様も

「魏も全員避難、軍事命令よ!」

と言いながら走り出された為、一人おろおろと周りを見廻す魏延殿を横目に慌てて皆について走り出した。その数秒後、後方で大砲が直撃したような轟音と悲鳴らしきものが聞こえたが、併走する子廉様に振り向かないでと叱咤され全力で駆けて事務所まで戻った。

 

12月23日

蜀の軍事実務者代表が魏延殿から当面馬岱殿に変更になったと元直から連絡があった。

砲撃演習の事故で流れ弾が直撃し、再起まで当分かかるという。

昨日まで元気な様子だったがと言うと、あんた私まで轟天砲の餌食にしたいわけ?と白い目で睨まれた。

…私は疑問を口にしただけなのだが?



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司馬日記35

その後の、とある文官の日記です。
また陳琳、張松、法正を人物録に追加致しました。


12月24日

※司馬日記2X (仲達さんたちのクリスマス)御参照

 

12月26日

内々にという断りつきで蜀の張松、法正殿から面会を求められ一席設けたところ、魏で王都での中途採用の求人は無いかとの問い合わせだった。

以前人づてではあるが彼女らは蜀での立場も悪くなく、また劉備様を慕っていると聞いていた為意外に思い理由を伺ってみた。すると現在は中央へ出向中の身だが期限が来れば蜀に帰されてしまうため、一刀様の御側近くにお仕え出来る仕事を国を問わず探しているという。

成程そういったことでは蜀の者には聞きにくいことではあろうと思ったが、何故私を訪ねられたのかと更に聞いたところ、張松殿は私と面識程度でしかなく法正殿に至っては初対面であったが元直から私の事を一方ならず一刀様をお慕いする者として聞いており、元直からもおそらく仲良くなれるだろうとと聞いていた為だという。

そこは多少なりとも気になったため、では貴女達は一刀様をどのようにお思いかと聞くと話が盛り上がってしまいつい深酒を過ごしてしまった。しかし彼女等の心根は中々に立派であり逆に『仲達殿は多少盲目的なきらいがあり、より高所大所から一刀様の御為を考えられた方が良い』と意見を頂いてしまった。

 

12月27日

詠様に王都直轄総務室での求人予定について伺ったところ、「張松と法正に探られたんでしょ」とあっさり看破された。是非も無い為首肯すると、

「あの娘達、(仕事)出来るって噂は聞いてるけどうちにはもう張任が居るじゃない?そこと凄く相性悪いって聞いてるのと、引き抜くような形になっちゃうから桃香の手前ボクの方から積極的に動いてってのはちょっと難しいのよね」

と難色を示されてしまった。

張任殿も張松殿等も一刀様への忠心、能力、また女性としても御側に仕えるのに十分な資質を備えていると思われるのだが中々難しいものだ。

 

12月28日

一般事務は本日が仕事納めだ。一刀様が各部を廻られており、慰労の御挨拶を総務部にも下さった。年末の一刀様のお世話は最低限を詠様と月様で行い、年明けは日替わりで各国王にて御対応頂くことになっている。

月様はいつも笑顔を絶やさないが、本日は一段と輝いていらっしゃると思いますと詠様に申し上げると「ふふん…仲達もちょっとは判ってきたじゃないの」とこれまた日頃とは違った笑顔でお答えになった。

 

1月1日

一刀様と各国王様の御年賀の為直轄総務室の者は出勤であったが、廊下で一刀様とお会いし新年の御挨拶をさせて頂いた。

本年も良い年になりそうだ。いや、微力を尽くして一刀様に良い年を過ごして頂くのだ。

 

1月4日

一刀様の夜間襲撃演習が実施される事となり、具体的な計画を練る事となった。

防災計画書に、夜間に構内を走り回る為、警備員なしでの灯火の安全管理方法として桝に水を張り、その上に燭台を浮かべる事で火災防止を図ると記載があった。しかし頻繁に行う予定のない演習のためにそういった設備費を投入するよりも灯火管理の人員を配置した方が経済的ではないでしょうかと詠様に申し上げたところ、笑顔で『他人が松明掲げてる目の前でやれっての?この仲達は』と御叱責を受けてしまった。確かに関係の無い人員が視界に入っては訓練の真剣味が薄れてしまうかもしれない、経済性ばかり考えて効果の薄いものになってしまっては本末転倒だ。

そんなやりとりがあり反省したと御嬢様に魏の事務室に戻った際に申し上げたところ、これまた笑顔で

「仲達も何が『本』で何が『末』か百年後くらいには分かるようになるといいわね」

と語られた。

…笑顔ではあったが、おそらく御嬢様なりの御叱責だったのだろうと思う。

 

1月5日

公達様に魏での中途採用について、具体的に名を出して相談したが

「そうねぇ…普通じゃちょっと難しいわよねぇ、張松って確か前に華琳様に会って、只でさえブスじゃ気に入られないところ持ってきて華琳様の胸が慎ましいとか言っちゃって怒らしてるでしょ?張松の方でも華琳様の事嫌いらしいって聞いてるし。ああでも、出世させない前提でもいいならあたしの権限で一人二人なら人員増やせるけどどうする?あんたの部下にでもする?」

と言われた。

そういえば先日彼女等の相談を受けた際、「かつて曹操様に面会した事があったが一刀様への口の利き方は如何なものか」と言うような事を言っていた。近年そのような所は見かけていないため、おそらくかなり前のことなのだろう。本人達の意向もある事なのでまた御相談させて頂く事とした。

 

1月6日

一刀様御鍛錬向けに李典殿が開発されていた『格闘用まっと』が完成したとのことだ。この製品は『ろーしょん』との相性が良好であり、呉特産のろーしょんとの相互供与特約の文案作成の為李典殿と曹操様が総務部へお見えになった。

性能は如何程なのかと李典殿に伺ったところ、

「開発者として、たいちょと試してみたけどな…あの取り合わせホンマすっごいで、ようけぬるぬる滑りまくって、ウチもう死ぬか思たわ。一つに融ける、言うん?蛸に絡まれて抜けない銛で串刺しにされた海鼠にされたような感じやで、前で何回後ろで何回とかもう判れへん、気ィついたら『あ、今まで失神しとったんや』ってぼやぁーって思った位や」

と言われた。一刀様の安全対策のための『ろーしょん』と『まっと』であるので死ぬほど(滑る)というのでは困るのですがと申し上げると

「仲達はんは『死ぬっほど』やと逆に怖いクチなん?凪みたいやなぁ」

と笑われ、他の方々は全く何も意に介さず打ち合わせを進められたが良かったのだろうか?

 

1月7日

詠様に呼ばれて会議室に伺ったところ、劉備様に張松、法正殿らを正式に蜀の王都勤務に出来ないか依頼したと教えて頂いた。ただ詠様は、

「一応張任とのアレがあるから難しいなら無理にはお願いしないってボクは言ったんだけど、桃香は『でも、張任さんも張松さんも法正さんもご主人さまの事は好きなんだよね?だったら大丈夫じゃないかなぁ』って簡単に言うのよねぇ。多分、あの種…一刀に寝技に持ち込まさせる気みたいなんだけど、それでいいのかなって」と懸念を示されていた。

 

1月8日

夕方になって突如雷雨があった。庁舎の窓閉めに廻っていたところ何かを抱えた一刀様と行き会い、見てみれば抱えられていたのは璃々嬢だった。一刀様によると雷が怖いとのことでしがみつかれており、しばらく離せなさそうだとのことだ。

しっかりしていると思ってはいたが、雷が怖いとは流石の璃々嬢もまだ少女らしくほほえましい事だ。

そう思いながら会釈して通り過ぎると孫尚香様が笑顔で駆けて来られ、

「一刀一刀っ、シャオ雷こ…」

と言いかけたが、一刀様の後ろ姿を見られると舌打ちされ柱を一蹴りしてどすどすと去ってしまった。

 

1月9日

庁内の会議から執務室に帰ろうとすると、張遼殿が引きとめようとしているらしい凪を引きずりながら向こうから駆けてきた。私を認めた凪が「霞さまを止めてください」と叫ぶので一先ず張遼殿を制止すると、凪の為なので通せと言われた為事情の御説明をお願いした。するとしばらく私の顔を見られていたが、にやりと笑みを見せると凪の口を抑えながら、

「一般論として自分の持ち物には名前を書いとかなあかんやろ」

と言われたので、そうでしょうと答えた。

「ところで凪は一刀のことめっちゃ好きやろ」

と言われたので、頷いた。

「仲達はんは筆を一刀から貰ったって聞いとるけど名前彫ってもらって嬉しなかったか」

と言われたので、嬉しかったですと答えた。

「そんで凪は誰のもんや」

と言われたので、以前凪は一刀様に全てを捧げていると言っておりましたので一刀様のものかとと答えた。すると張遼殿は凪の口を抑えるのをやめて

「な?凪、今仲達はんとした話でなんか間違いあるかいな?」

と凪に聞くと、だからと言ってそれはちょっと短絡的過ぎですと言い返していたが、ともあれ私は凪の不本意な事であれば止めようと思い

「つまり凪は嫌な事をされようとしているのですか、それと張遼殿と引っ張りあっているその袋の中身は何ですか」

と聞くと、何故か顔を紅くして

「そ、その…これは…ぼ、防具、首を守る防具です!首は急所ですから!それとあのその、嫌という訳では決して無くむしろ望むところではあるのですが!…その心の準備がと言いますか、桐花さまみたいな本物の人たちとは違って恋さまと同じ鎖無しにはしましたけど隊長から頂くのならともかく自分で買って、で名前をというのはちょっとその…それはちょっとまずいかと!人として!」

と言うがいまいち要を得ずにいると、張遼殿が「な?凪嫌やない言うたやろ、これは上官の指導の一環やさかい、ほな通してな」と言われ、理はあるように思われたので通すこととした。

 

1月10日

午後に士季が士載と近親上等☆姉妹を迎えに来た。

聞いたところ、士季が士載は典韋殿に焼き菓子の作り方を指導してもらっており、これから半日休暇をとって調理し一刀様に食べて頂くのだと言う。

勤務時間外であれば問題は無くまた感心な事と思い見送ろうとしたが、嬉しげに小走りでついていこうとした姉妹に不意に嫌な予感を感じて呼び止めた。きょとんとしている姉妹に所持品を見せるようにと指示すると顔色を変え脱兎の如く逃走を図った為、逃走先に居た詠様に

「詠様その二人を捕らえて下さい!」と叫ぶと察して頂けたらしく眦を吊り上げ、一声「恋!」と叫ばれた。すると呂布殿がどこからともなく飛来され、姉妹それぞれの喉元に腕を打ちつけて倒すと二人の懐から少量の香水を入れるような小瓶が転がり落ちた。

詠様がその小瓶を踏み割ると

「あ―っ!?せっかくの若い乙女の媚薬、もとい仙薬が―!」

「あれだけでも採って入れるの大変でしたのに!」

等と叫んでいたが「大変なのはあんた達の頭の中よちょっとは懲りろこの変態バカ姉妹っ!あんた達、当分一刀に何か食わせるの一切禁止!」と詠様に叱責され、呂布殿によってどこかへと運ばれていった。

 

…正直、あの小瓶の中身がなんなのかは知りたくもない。



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司馬日記外伝 桂花さんの誘い芸6連発

無性にひどい桂花を書きたくなったのでやった、今では満足している。愛紗と思春はくらげ様御支援作仕様です。


「…入るわよ。今暇?暇よね?ねえ昼間あんたを蹴ったら腿の裏の筋ちょっと伸ばしちゃったじゃない、あんた責任持ってマッサージしなさいよ。…そんなの関係ないでしょ、ほらわたしが寝そべってあげるから。いい?腿のここんとこ。やさしくそーっとすんのよ。人が足痛めてて動けないからって絶対変な事するんじゃないわよ、いい?絶対だからね、今私抵抗出来ないんだからねっ!?」

 

「何であんたが風呂に入ってんのよ!入口に札が掛かってたの見えなかったのこの馬鹿っ!はぁ?ごちゃごちゃうるさいわね私があったって言ってんだからあったのよ!あーもーしょうがないわね、あんたと一緒なんて嫌だけどしまい湯の時間だから入ってやるわよ。ほんとに、よりによって一人用の風呂でかち合うなんてほんっと最悪、嫌だけど!しょーがなく!一緒に入ってあげるわ。このお風呂浅いからあんたが下、あたしがその上ね。言っとくけどこの色情種馬、やらしいことしたら許さないわよ」

 

「入るわよ。何ノンキに寝ようとかしてるの、決裁全っ然終わってないから持ってきてやったわよ。…何言ってんの駄目に決まってるじゃない明日じゃ、あんたのせいで皆の仕事が止まるのよ、せめてそれくらいは決裁しなさいよ!ふあ…わたしちょっと疲れたからあんたの寝台で少し寝かさせてもらうから、決裁終わったら起こしなさいよ。寝にくいから服脱ぐけど卑猥な目で見るんじゃないわよこの万年発情男。あと私寝起き悪いから、ちょっと揺すった位じゃ起きないけど変な気起こすんじゃないわよ、分かったわね」

 

「別にこれはやりたくてやってるわけじゃないのよさっきも言ったけど!あんたの明日の三国塾初等部参観が体育だって言うから仕方なく!初等部の子があんたの毒牙に掛からないように、あんたに変態幼女趣味が無いか同じ運動服まで着て試験してやってんの!いい、絶対私に何されても欲情したりするんじゃないわよ!?ちなみに私今日は初等部の子とかと同じようにブラしてないけど、触ったり舐めたり吸ったりするんじゃないわよこの変態!いい、もし、もしあんたがここで無節操に種馬の本性を現すようだったら、初等部の子達の安全のために、本っ当に嫌だけど!絶対に御免だけど!屈辱で死にたいくらいだけど!あんたを一晩中絞りつくして、明日は何にも感じないようにしなきゃいけないから!だから絶対反応するんじゃないわよ、分かったらさっさとキスさせなさいよ!」

 

「避難訓練にかこつけてこんっな企画企てるとか、本っ当に救えない全身性欲男ねあんたは!ほんっと、文書で命令が来たんじゃなければ絶っ対にこんな事したくないのに!…ふんまあいいわよ、この中であんたと鬼ごっこして捕まりさえしなければ何もされない訳でしょ、余裕じゃない。出来るもんならやってみなさいよ、もし万が一、億が一にでも捕まったら何っでも!どんなことでもすればいいじゃない、後ろからでも無理矢理口にでも、縛ったり変な薬使ったり、一晩中でも何っでもすればいいじゃない遠慮せずに、絶対捕まらないけど!絶対捕まらないから関係ないけど服も破れやすいやつにしてあるから破かれたっていいわよ!じゃあ時間だから始めましょ。あっ、一つ教えてあげるわ私拷問部屋なんかには逃げ込まないからね?いい、絶対よ!絶対だからね!じゃあさっさと百数えなさいよ」

 

「私よ。もう仕事終わったわよね。…なにぼさっとしてんのよ、さっさとするわよ。…はぁ?華琳さまに私が命じられた罰よ、覚えてないの?このバカ男。…そうよそれ。はぁ?何あんた勝手に判断してんの?何月何日何時何分華琳さまが『罰は終わりよ』って言った?言ってないでしょ、じゃあ続けるしかないじゃないの!本っ当に最悪で!屈辱で!どうしようもなく嫌で嫌でたまらないんだけど、華琳さまの御命令だから!仕方なく!あんたにさせてやろうってのよ、分かったらこっちに来なさいよ。…ばっ馬鹿っ、そんな事したら殺してやるから!華琳さまが私にした命令をお忘れになるわけが無いじゃない、絶対絶対そんな事するんじゃ無いわよ不敬よ魏王に対して!…ふん、わかりゃいいのよ。…あと華琳さまなるべく私が嫌がるように、恋人みたいにしなさいって言ってたから。ぎゅってしてキスしなさいよ。…言ってた。言ってたわよ。あんたのスカスカ頭と私の記憶力どっちが正しいか考えるまでもないでしょ私がそうって言うんだからそうなのよ。分かったらとっととしなさいよ」

 

 

 

 

 

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「…っていう駄目な桂で花な方がいるそうですよ…ってもう聞いてませんか、華琳さんも関羽さんも甘寧さんも。足速いですねぇみなさん」



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司馬日記外伝 店員日記

その後の、とある店員の日記です。


6月2日

酒楼「三国一」の店員として採用された。そんなに仕事がきつくなさそうな割に給料が良かったので応募してみたら合格だった、とりあえず都に出てきて就職出来なかったらどうしようって思ってたけど出来て良かった。

 

6月3日

「三国一」に採用の手続きに行った。募集には『女性だけの職場です』って書いてあったけど本当に女性だけだった。

面接で厳しい守秘義務があるって言われてたけど誓約書に『お客様の個人情報を漏らした場合最高で死罪とされても構いません』って本当に書いてあったのにはびびった、給料が良かったのはこういうわけだったのか。このお店は政府の補助金が入っていて、申請に少し時間がかかるので勤務は少し後になると言われた。

 

6月7日

店から出勤指示があったので出勤した、今日から頑張ろう!

給仕長さんを紹介されたがすごい美人で若かった、私とタメくらいに見える。

ほかの店員さんもみんな若い。名前は追々覚えてねって言われ、色々なものの配置を教えてもらった。

 

6月8日

お客様に接する一般的な礼儀作法を教えて貰ったけど、一応自分の常識範囲だったので良かった。偉いお客さんも来るって聞いてたから『では土下座から入ります』とか言われたらどうしようと思ってた。

 

6月10日

基本裏方だったけど、店員が少ない時間帯だったのと優しいお客さんだからということで初めて接客した。お客さんは二人で、一人は背が高くってすごい美人で、もう一人は小さくてかわいい感じの子だった。二人とも青い髪で似てる服を着てたけど姉妹だったのかな。

個室に通して注文と配膳、取りあえず失敗しなかったので一安心。

って言うかお客さんも本当に女の子しか来ない。まあむさい酔っ払いのおっさん相手にするのは嫌だからこの店応募したんだけど。

 

6月13日

「マル危さんが来る」と言って、店長が慌てた様子で酒屋に買出しに行って来る様に指示された。「マル危さん」と言うのは店の隠語でヤバイ客の中でも飛び切りヤバイある二人の事らしい。

給仕長が「私が対応するから」と言っていたけど興味本位でそのお客さんを暖簾の影からチラ見したら、おだんご頭で鋭い目つきの美人さんと長い黒髪のおっぱい美人さんだった。入店時はヤバさ具合が想像つかなかったけど、酒瓶の異常な無くなり方とたまに聞こえる叫び声でと、抜き身刀片手に笑顔で退店していく姿だけで十分怖かった。あとで部屋を見てみたら壁に殴り後があったのと、卓の脚が欠けて酒瓶も幾つか割れていた。

後片付けしんどかった。

 

6月14日

王都の蜀と呉の総務課に、請求書の提出のお使いに行かされた。

ちなみに請求書の額は主に酒代の部分がすごかった。

 

6月16日

工事の為休業することになったので五日間有給をもらった。

政府のお金で防音工事と耐震補強をするらしい。さすが半官半民。

 

7月1日

優しそうな男の人が、銀髪に三つ編みで大人しい感じのイヌミミとか似合いそうな女の子を連れて来店した。この店は男性禁止のはずなんだけど、店の関係者らしくてこの人だけはいいらしい。イヌミミちゃん(仮名)と兄妹なのかもしれない。給仕長が一番奥の改修された防音室にお通ししてて、私もちょっと見てみたかったので給仕してもいいですかって聞いたけどダメって言われた。残念。

ところが店を出るときには女の子の方が酔っ払っちゃったらしくて赤い顔して男の人の肩を借りて歩いてた。給仕長がお送りしましょうかって言ったけど遠慮してそのまま出て行ったら、給仕長は一旦見送った後にその後を離れて警護してきますと言って出て行った。

後で同僚の子に聞いたけど給仕長って凄い強いらしい。

 

7月5日

三人とも桃色の髪の女の子達が来店した、大中小って感じでどうも姉妹みたい。

中子ちゃんはうちの店が珍しいのかきょろきょろしてて、どうも相当の御嬢様みたいで飲み屋に来た事が無いっぽかった。注文を取りに行ってもきょとんとしてたし、大瓶持ってって帰ろうとしたら「注ぐ者が居ないのだが」って困った顔をしてて、どうも大子さんと小子ちゃんがからかう為に連れて来たらしい。結局会計も中子ちゃんがさせられてて、まごついてて困ったなーと思ってたら「ふ、二人とも私の事馬鹿にして!」って泣き出しちゃったんで私も途方に暮れそうになってたら、いつの間に居なくなってたのか給仕長がこないだの男の人を連れてきた。

男の人は中子ちゃん達の事をよく知ってるみたいで、大子さんと小子ちゃんを嗜めると中子ちゃんを慰めながら帰っていった。

ところで女の子の飲みの会計に呼ばれるあの人ってホント何者?

 

7月16日

銀髪ツリ目でおっぱいな美人さんが色んな人と最近よく来る。役所の人らしいけどたまにメイド服を着てる。

こんな真面目そうな人でもお酒飲むんだと思ってたけど、たまに凄い酔っ払って帰っていくのを見ると政治家の人って大変なんだなぁ。

 

7月20日

巨大なおっぱいが六個やって来た。…って要は巨乳なおねーさんが三人来店したってことなんだけど、給仕長が驚いた様子でその人たちに『御予約でなかったので今日はこれだけしか酒の在庫がないのですが』って言いに行った。その後すぐに本日貸切の札を入り口にかけちゃったからいいのかなと思ってたら、おねーさん達は追加で買ってきた分も含めて本当に一瓶残らず空にして帰っていった。

…おねーさん達の事は『おばさんたち』とはたとえ厨房内でも言っちゃ駄目らしいけど、『奥様方』ならいいらしい。むずかしいよ!

 

7月23日

小さな二人の女の子が店に入ろうとしたので『お母さんと来てね』って優しく追い返そうとした。自分たちは成年してるって言うけどどう見てもそうは見えないし、語尾は噛みまくりだったけれど給仕長が私に気がつくと問題無いのでお通ししてと言われた。

あんなちっこいのに蜀の偉い人らしいけど、ょぅじょにお酒出してる気しかしない…。

 

7月25日

こないだの銀髪メイドさんがお連れ様と来店されたけど、お連れ様の胸元の開き方がやばくて人ごとながら気になる。

凄い長い時間店に居たと思ったら先に胸元さんがお勘定を済ませて退店して、銀髪メイドさんは潰れかかってて閉店時間にお家の子が迎えに来た。迎えに来た子もなんか可愛い子だった。

 

7月30日

店が混んで来たころ、金髪くるくるのにこにこした女の人が例のお兄さんと来店した。…と思ったら麗羽様だった!でも私に全く気づかれなかった、さすが麗羽様だ!生きてるらしいとは風の噂で聞いてたけどこんなところにいたんだと思っていたら、すぐに不機嫌そうな顔をしながら予約の部屋からお兄さんに連れ出されてくると「ここはそういうことも宜しいお店じゃないんですの!?」と苦情をつけてきた。何の事か分からなかったけど給仕長は分かったらしくて、店の隅の方へ連れて行って「そういった事には部屋と時間を限らせて頂いておりまして」「ですけど華琳さんの話では」「予め御予約の時点で」とかなんかぼそぼそやっていたけど、お兄さんが取り成して何度も謝ってくれて、別の店のあてもあったらしくて大人しく退店してくれた。

麗羽様がいたという事は猪々子や斗詩も都にいるのかな。会いたいな。



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愛紗たちを更生させようとしてみた

※これは司馬日記ではなくくらげ様の司馬日記御支援作の支援作ですが私の本編にも影響を与える可能性は否定出来ず……もうわけがわからないよ。


「…いやもう…反省した。考えが足りなかった」

「…やっちゃったものはしょうがないけど。…ね、いい加減言いなさいよ。これ考えたの誰よ」

「………いや、俺が考えました」

「あそ…。これ絶対あんたじゃ思いつけないの分かるし、やり口から見てボクも大体仕込んだ奴分かってるけど。まあ、あんたの所期の目的は果たしたんだろうから。後始末はあんたが責任もってやんなさいよね」

「全力尽くさせて頂きます」

詠がため息をついて部屋を出て行った。

 

 

-------------

 

 

藤香と玲紗に手を焼き、仲達さんに投げただけでどうにも出来ずに日が経ち。

愛紗と思春が終わってると方々から言われ、どうにかしなくてはと思い。

ある人にポロッと相談したところ、一策を授けられた。

但し、絶対に自分の名を出さないようにと念を押されて。

 

 

-------------

 

「それじゃー、本日はお忙しいところお集まり頂きまして有難う御座いまーす」

やる気が出ない。

「本日はですね、こちらの藤香と玲紗。この二人がですね、勤務j時間中の庁舎の風紀を乱したとー」

出るはずがない。頼むから愛紗、そんなに睨み付けないでくれ。

「総務の方から連絡受けまして、ま、事実関係本人達に確認しましたところ、人の寝台でふざけており、次第に盛り上がってしまいシーツを使って不適切な行為に及ぼうとしていた事を認めましてー」

思春も睨まないで。ギリッとか奥歯鳴らさないでお願い。

「俺も指導監督の立場から彼女達に罰を与えて反省を促す事と致しましてー、皆様にお立会いをお願い致しました次第ですー」

ああもうかなりの数の馬鹿にしきった目線と、幾つかの今更意味無いんじゃありませんかって視線と、おいそこ代われにしか見えない眼光。うん、真正面の君ら二人。

あと藤香と玲紗、縛られてるのに『羨ましいだろお前ら』みたいなドヤ顔は止めてくれ、愛紗と思春の血管が切れる、マジ切れるから。

 

――――絶対これ見たら大人しくなりますから!一発ですよ!もし効かなかったら私馬超さんみたいなプレイだろうが露出プレイだろうが凌遅だろうが、何されてもいいですよ。いいですか、『実際に出来る程有るか無いか』は全く問題じゃないんですよ。『一刀さんがやろうとする』事であの人たちや他の大多数の娘たちは恐怖のどん…言う事を聞くようになるんですから。

 

そう自信満々に語った彼女の笑顔が脳裏に浮かぶが、未だに信じられない。俺にしてみれば『はぁ?』って感じだ。あとは…言われたとおり、祭達はいない、美羽も居ない、ok。

「皆様におかれましては罰の実施を御確認を頂きますと共にー、余りに風紀を乱される、俺が止めてねってお願いする程の事をしちゃうとこういう目にあうかもよという事を御認識頂きたくー、えーお願い致します。では罰を行いまーす」

しかしここまで来てしまったらもう引き下がれない、ままよとばかりにやってみる。

 

両手を上げさせられた形で縛られた藤香と玲紗の、上着をたくし上げる。

「あぁん、一刀様許してぇ♪」

「皆の前なんてぇ…三人だけで罰して下さぁい♪」

二人がくねくねと体を揺すって甘ったるい声を出すのを無視して、俺は本当にバカな事をやってるんじゃないかと思いながらも、むにむにっと揉みしだいた。

 

 

 

 

 

…脇腹の肉を。

と言っても二人とも元々あまり無いから何とかつまむ程度だけれど。

 

「いやぁ♪…ん…?…え……………ひ、」

すると、いかがわしい目つきをしていた二人が突如として目を見開く。

 

 

 

「いやああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

「ぎゃああああああああああああ!!!!!!!やめてやめてやめてやめてぇっ!!!!」

絶望を思わせる絶叫。

集まった皆の顔色が失せる。愛紗と思春でさえも。

 

 

………………なんで?………………脇腹だよ?つねるんじゃなくて軽くつまむ程度だよ?

 

皆の反応に俺一人だけついていけてない。ひょっとして脇腹って、真名みたいに俺が知らないだけで特別な意味があったのか?

「…つ、次はこっち…」

むにむむに。

 

 

「ひっ、ひいっ!!!や、やめて許してぇっ!!!」

「嫌々嫌々嫌ぁっ!!も、もうしませんからしないで!しないでお願いしないで!!!」

二の腕の裏側。こっちの方がさっきよりはつまみやすいのでむにむに感が気持ちいい、けど…。

…この国ではここも特別なのか?というか、ひょっとして俺は相当酷い事をしているんじゃないかって気がしてきた、心の警報が早く終わらせろと告げている。

 

「えとじゃ、最後ここで…」

もにもにもにもに。

 

「うぇぇええええぇ…!!も、もお許してぇぇぇっごめんなさい!ごめんなさい!謝りますから…!!!」

「うわあぁぁああぁぁぁん…!やぁっ、やあめぇて、やめてよぉ、うぇぇぇ…」

太腿の裏側をぷにぷにし始めたところで、桂花に手を掴まれた。

 

「も…もう止めてやりなさいよ!二人とも泣いてるじゃないのよ…!」

「う、うん、じゃあもうおしまい」

桂花の顔色は紙のように真っ白で、その手は震えていた。

「え、えっと、愛紗と思春も。こういうのは嫌だろうから…?色々無茶は控えてね…?」

そういうと二人は青い顔をしてこくこくと首を縦に振った。

 

代償は大きかった。

すぐに焔耶、凪、明命達の声が飛ぶ。

「お、御館様っ、桃香様が恐怖で泡吹いて気絶してる!」

「隊長!真桜もです!」

「一刀様、穏様もです!これはほっときましょう!」

最後のは突っ込みたかったが、その他にも倒れこんで起き上がれない人が多数出た上、藤香と玲紗は縄は解いたが未だに泣き止まず、涙でぐしょぐしょになりながら縋り付いて謝って来る。

 

 

 

「ここまでとは…聞いてなかったんだけどなぁ…」

俺に小悪魔の如く囁いた、彼女の笑顔が脳裏をよぎった。

 

-----------------

 

その後。

藤香と玲紗は、まあ上辺だけかもしれないが品行がある程度良くなり。

「ご、ご主人さま…か、可愛がって、可愛がって下さい、ね?」

「北郷…な、なあ今夜一緒に飯を食わないか?も、もし眠くなったら寝ていってもいいからな、ど、どうだ?」

某二人もいつまで持つのか分からないけど、縛れだの首輪だの無茶はとりあえず言わなくなった。多少おどおどしているのが気になるけど。

 

が、あの後は大変だった。

倒れた人達の介抱に奔走してもらい、その後半分くらいの人達に囲まれて一人一人からもうしてはいけないと真顔で諭されるのは、叱り飛ばされるのより効く。

『二度としません』という誓書も入れる約束もした。

あと「ちょっと摘んだ位大した事では無いですよ!そんなところに駄肉がつく方が悪いのです!」と笑顔で言い放って色んな人達にどこかへ連れて行かれた明命が気になると言えば気にはなる。

泣き疲れて眠ってしまった藤香と玲紗の頭を添い寝をしながら撫でて、窓の外を見る。

 

 

「ほーら美羽さまぷにぷにー☆」

「や、やめてったら七乃!…私そんな摘まれるほど無いでしょう!?」

「さぁどうでしょうね実際摘むのは一刀さんですからねぇ、明日は美羽さまかも知れませんよ?もっと揉み応えのあるおっぱいとお尻になってお腹がきゅってならないと、『あ、ごめんおっぱいだと思って揉んじゃったぁ』とか言われちゃうかも知れませんけど耐えられます?」

「ぴぃぃぃぃっ!?」

「あ、いやこれだけ頭数居ますから単純に無言でお払い箱かもしれませんねぇ?『美羽はもうこなくていいよ?今日でばいばいね♪』とか」

「ええっ!?嘘嘘、そんなこと無いわよね?無いよねっ!?ねえ無いって言ってよ七乃ぉ!」

「さーどーでしょー?」

「うぇぇぇぇぇぇぇん!!」

 

 

 

「…まさか、あれがやりたかっただけじゃないよなぁ…」

幾ら美羽が成長したって言ってもどう見ても貴女の方がむちぷにだよね?腰周りがキュッて言うのは認めるけど。

そう思いながら思わず出た俺の呟きは、珍しく誰にも聞かれなかった。



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司馬日記36

その後の、とある文官の日記です。


1月11日

王粲殿が何か申し訳なさげに総務部に来られ、藤香・玲紗姉妹について相談があるので担当は誰かと聞かれたので私が対応した。曰く、

「あの姉妹さんが来られて、自分達の事を(小説に)書いて下さいって言われたのですが…その、彼女達の事ならいずれ私の方でも書こうと思ってはいたのですが、聞きますと彼女達はその…夜の事をすごく具体的にあの、説明されて、それを書いてって言われたんですけど、あの御存知かも知れませんけど私のは全年齢向けでそういうのは書けないので、出来たら陳琳さんの方に御願いして頂けないでしょうか」

との事だ。

すぐさま彼女らを呼び、拳骨の上説教をくれてやった、体罰については関羽殿から「あれ以上馬鹿になる事はありませんから」と了解済みだ。

此方に来て以来、勤務状況が良好なので多少油断していた。

 

1月12日

帰宅し士季らと食事を摂っていたところ、士載が子丹御嬢様から交換留学の打診を受けたという。期間としては近親上等☆姉妹の出向終了までで、蜀側としては総務・法制・財政の担当を要望されているとのことだ。

士季に意見を求めると、

「いーんじゃないですか?軍関係じゃ藍(姜維)居るけど他がクセのある人ばっかだし、向こうも実務出来る奴が欲しいんでしょ?都から離れるわけじゃないから司馬家から通えるし。ただそのトーフみたいな心でも勤まるような環境があるかですけど」

という。また士載の口振りからは御嬢様が例の姉妹と士載を引き離しておきたいという御意向のようだった。

そう長くない期間であれば勉強にも今後の知己の拡大にもなる為、私としては反対しないと伝えた。

 

1月14日

一刀様の御講義で部長・管理職及び総務担当者向けの「はらすめんと研修」という研修を受けた。

一刀様によると、暴力によるもの、言葉によるもの、性的なものなどがあり基本的に受けた者が不快・不利益を蒙るもの指すとのことだ。

質疑の時間となると、公達様が

「房事での相手に対する罵倒も含まれるか」

と質問され一刀様は戸惑われていたが、

「本講義では職場におけるものを想定しているが、広義ではそういったものも含まれる」

という趣旨のお答えをされると、公達様は文若様の方に薄笑いと流し目をくれながら

「魏ではそういったものは排除されるべきですね」

と言って着席された。すると今度は文若様が立ち上がり

「じゃああんたやりたくもない奴隷プレイを強要してる桐花はさっき言ってた『もらるはらすめんと』ってやつじゃないって言うの!?」と叫ばれると

「ざーんねーんでーしたぁ一刀様は好きでやってくださってるの!あんたが無理やりやらせてる強姦プレイとは違ってねー!」

と怒鳴り返し、以後聞くに堪えない口喧嘩が始まってしまい一刀様が講義を終了させ仲裁に右往左往されていた。

 

会議室から退室された一刀様に、一つだけ質問させて下さいと言って士載が近づき、

「あの…自分の夜の事を人前で大声で話されたりするのは、それは『せくはら』なんですよね…?」

と聞くと一刀様は微笑と共に無言で士載を抱きしめられ、士載は茹蛸のようになっていた。

 

1月15日

士載が蜀の総務へと出向した。御嬢様がよく御説得して下さったのか前向きにとらえていたようなので良かった。自分の仕事もあるが、自宅に居る間はなるべく気にかけるようにしよう。

 

1月16日

陳琳殿がうんざりした表情で近親上等☆姉妹を引き連れ、総務部を訪ねて来た。曰く、

「陳琳です、失礼ですがこの娘達の指導員はいますか?ああ司馬懿さんだったのですか、いきなりで悪いのですがこの娘達には一体どういう指導をされているんです?定時になるや文書局に来るなり『陳琳様、私達と一刀様の愛の物語を書いて下さいませ』って飛び込んできましてね。私にも業務があるし他の執筆予定もあるから安請け合いは出来ないって言っても聞かないし、じゃあ今後の参考までにって事で書いて欲しい内容を聞いたんですが、まるで信じられないのですよ。『一刀様が親子丼をやりたいが為に養女になるよう命じた』とか、『一刀様は本当は自分達とだけしたいけれど政治的な理由で仕方なく他の女も抱いている』、『三国塾を建てたのは一刀様が自分達と制服プレイと水着プレイをする為だ

った』、『カズトサマノツギノネライハ璃々チャンダ』とか言うんですが、余りにも一刀様が言いそうも無いことばかりでしてね。

私は純愛ものも書くし濃厚な房事や愛情表現の範囲で特殊趣味ものも書くが、露骨な嘘は書かないようにしてるのですよ。まあなんですか、実際の所がもし興味深いものであればいずれ書くのは吝かではないんですが、とりあえずはこの娘達の妄想癖を矯正しておいてくれませんかね」

とのことで、最早呆れて声も出ない。一先ず鉄拳制裁の上『私達はふしだらな娘で反省中です』と札を掛けて正門の柱に縛り付けておいたが、彼女等は私の手に余るのではないかと思い始めてしまった。

 

1月17日

近親上等☆姉妹について、元直に相談しに行った。

「勤務時間中に行かなくなっただけ成長してるわよ?まっ、ちょっと疲れてるなら『お薬』処方してあげるから」と生温かい笑顔であしらわれてしまった。

こんな言い方は宜しくないが、彼女等を今まで相手してきていた元直はなかなか大した者だとも思う。

 

1月18日

一刀様に、例の姉妹の指導について今少し頑張ってみるよう御依頼された。

…それも身体に御依頼されてしまった!昨日の元直の妙な笑顔はこういう事だったのか。

『仲達さんにしか頼めない』と言って下さった。抱きしめて御口付け下さりながら先の『一日何でも云々』の券が一枚残っていると仰られ、忘我のままにしてしまったお願いを全て聞き入れて下さった。嬉しいやら、…嬉しいやら、……嬉しゅう御座います一刀様、お慕いしております。

一刀様にても彼女らに御対策下さると仰って下さったが、私も明日から、一刀様の命に全力を尽くそう。愛しております、一刀様。愛しています。

 

1月21日

休憩時間中の与太話で、子孝様、子廉様らが最近曹操様が可愛くなったと言われた。私にもどう思うかと聞かれ、どちらかと言うと纏われている『気』が丸くなったと言うか、細かな仕草の一つ一つが少女然としながらも艶があるように思いますと申し上げると、目を丸くされ「…何かいいとこ突いてるじゃないの、仲達のくせに」と言われた。

男女の機微や女性らしさ、流行りの装飾等には疎いとは思ってはいるがその言いようも余りなとは思う。その後もお二人は

「なんて言うの…前の華琳なら絶対しなかった仕草増えてるよね」

「うん、拳握って口元に当ててるの見た。脇締まってたし」

「私も見たこないだ華琳ぺたんこ座りしてた!一刀様見てニヤニヤしてたからあれきっと見せてたと思う!」

「全般、最近の華琳ってエロ幼女っぽい雰囲気あるよね」

「ねぇかじゅとぉ~、とか言って……ねえ…?」

と言うと顔を見合わせて真顔になってしばし無言になられた。ややあってやぁねえそんな訳無いよね、そうよねあの華琳がね、そんな人格崩壊したら魏が崩壊するわよ、などと言いながら持ち場へ帰ろうとされたところ、妙才様に呼び止められてどこかへ行かれたようだった。

 

1月22日

朝出勤するなり、藤香・玲紗姉妹が席へやって来て

「私達は今までの行いを反省致しました!今後は公序良俗に悖らぬ行動を心掛けます!」

と言って一礼され、思わず眼を丸くしてしまった。

それ自体はとても良い事であるし是非そのようにするようにと答えたが、彼女等の瞳には真剣さが見て取れ本気のようだと思われた。私の方では今までと同じ指導を根気良く続けようと考えており特別の劇薬的な指導は行っていなかったが、今日突然の彼女らの変貌ぶりからおそらくは一刀様が何らか有効な御指導を行ってくださったのだろう。

ただ昼休みになると二人揃って妙な体操を行って腰周りを気にするような素振りを見せるようになったのが多少気にはなる。

 

1月23日

一刀様が藤香・玲紗姉妹にどのような御指導をされたのか御存知か御嬢様に聞いてみたところ考え込まれ、桐花様と

「…言っても大丈夫でしょうかね、桐花様?」

「んーそうねえ…一刀様の御意向に反する事が無いだろうからまるで気にしないか、死ぬほど気にして餓死するかじゃない?」

「まあ一刀様から『そんな事は無いから大丈夫』とか『今の体型を維持して』とか一言言って頂ければ大事にはならないかと思いますが、多少手間ですね」

「じゃあ止めといて」

等と話され、

「あ、ごめんね仲達、貴女に説明すると面倒臭…ちょっと厳しめの御指導だったから一刀様から余り広めないようにって聞いてるから話せないの、兎に角あの姉妹を更生させられたんですから流石一刀様よね、それが一番大事なことでしょう?ねえ私達の一刀様は素敵よね」

と仰ったので私としても一刀様の御指導力には感動しましたと答えたが、チョロ子のチョロっぷりだけは流石の一刀様でもちょっと難しいわねと微笑まれた。

 

1月24日

かねてより通商を行っていた匈奴の使者が一刀様に拝謁し、ある子女の輿入れについて提案されたという。各国王と共に立ち会われた詠様によると

「ま…一刀自身も間に合ってますって断ったし、華琳達も死ぬほど威嚇してたけど。なんか生意気に使者の娘も粘るから、ちょっと一刀と華琳達と『相談』してね。一刀の口から『3P4P当たり前、朝まで寝ずにぶっ通しもちょくちょくで前と後ろを行ったり来たり、縛りや屋外、奴隷や幼児、怪しい薬使って放置や禁馬超ほか特殊プレイも大好きで、しながら会議とか普通にあってコスプレ100着に泡踊りは出来て当然、それでようやく穴扱いなんだけど匈奴さんとしてそれでも良ければ』って答えさせたら、流石に顔色変わって一旦持ち帰らせて頂きますって尻尾巻いてったわ、まあ一刀も涙目だったけど」

とのことで取りやめになったらしい。

…縛りぷれいや奴隷ぷれいは、一刀様御自身もお好みだったのだろうか…

こすぷれ云々他今一つ良く分からなかった言葉があった、近々誰かに聞いてみよう。



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司馬日記外伝 店員日記 2

その後の、とある店員の日記です。


8月5日

大人しそうな娘たちに連れられて銀髪メイドさんが来た。たまたま給仕係に私があたった。銀髪メイドさんはいつもは静かに飲まれるけど、今日は個室からたまに「きゃーっ!!」とお連れさんのものらしい大きな叫び声が上がって、まずいかなと思っていたところに何度目かで「はかないんですかー!?」と一際大きな声が上がったところで給仕長がちょっと注意してきてと言われたので声を抑えて下さいませと言いに行ったら全員からこっちが恐縮するくらい謝られた。

今日は皆酔われた様で赤い顔して帰ってったけど、なんか皆大人しかった。

 

8月7日

ミニスカ、メイド、褐色おっぱいの三人とも眼鏡のお客さんがやってきたけど、給仕長が私に対応するように指示された。この三人は基本が愚痴り酒で、たまにハイテンションになるのが鬱陶しいから自分が給仕するのは嫌だって言ってた。給仕長は例の『マル危さん』でも相手するのに嫌がるって珍しい。

 

8月11日

こないだの眼鏡メイドさんがメイド友達?らしき子を連れて来た。

その子も髪形は違うけど銀髪で(いつもじゃないけど)メイドだから、これからはこないだの人をおっぱい銀メイドさん、こっちの子をちっぱい銀メイドちゃんって呼ぼう。

ちっぱい銀メイドちゃんは成人してるのかなぁ、すごくしっかりしてそうで腰も低いけど。

 

8月13日

可愛い娘が来店したと思ったら純(田豊)と静(沮授)だった!

思わず声をかけると(さすがに麗羽様とは違って)すぐに気がついてくれて互いに再会を喜んだ。今日は店がすいてたので、給仕長が気を使ってくれて休憩にしてくれたのでそのまま二人と店内の個室で話し込ませてもらった。

なんか私が放浪してた間にすごく色々変わっちゃったけど、みんな無事に都にいるらしい。それと二人とも彼氏が出来たってどういうことなの…。

どんな人って聞いたら見たことあるはずっていうけど、こちとら都はまだ不案内で男の人の顔なんて分かるはずないんだけど。

二人とも割と大人しいオクテ女なので煽るつもりで『ヤった?』って聞いたら、『いっぱい。(はぁと)』とか答えやがった。

腹が立ったので生意気だーって純のおっぱい握ってやったら、いやんとかエロい声を出すので余計腹が立った。末永く爆発しちゃえ。

 

8月16日

純と静に聞いたって言って私の上がりの時間に合わせて猪々子と斗詩、彩(張郃)に恵(高覧)が来店してくれた!みんな元気そうでよかった。聞いたらみんな政府の方に勤めてて、こっちに住んでた。私が一番仲好かった椿(審配)は?って聞いたら今日は彼氏と一緒なので来れないんだって…

あの偏屈女が彼氏できたのって思わず聞いたら、猪々子と彩(張郃)があー、とかんー、とか言ってたけど恵(高覧)がまあそんなとこかしらねぇって答えてくれた。男なんか興味無い、麗羽様盛り立てて出世するんだみたいなヤツだったのに。

ふと思って「…ひょっとして椿(審配)、彼氏さんにいじめられてるの?」って聞いたら全員が押し黙っちゃって、そのあと「ある意味鋭い」「やめなよ猪々子誤解招くから」とか猪々子と彩(張郃)が言ってたけど、斗詩が「椿は幸せそうにしてるから安心して」って言うと皆微妙な顔しながらも頷いてた。

 

昔から信頼出来る娘だった斗詩が言うんだから大丈夫なんだろう。

 

8月24日

おっぱい銀メイドさんがまた来た。前見たミニスカメガネさんとか、ほかの人と一緒だったけどどうもみんなおっぱい銀メイドさんよりも偉い人みたいだった。猫耳フードちゃんはちっこいけど恐い人だって同僚の子が言ってたけど別に恐くなかったしちょっと可愛いかも。

 

8月26日

役所の宴会の予約が入ってたので忙しかった。おっぱい銀メイドさんとか、今まで何度か見た人達もいた。

凄い盛り上がってたみたいだけど、家族を迎えに来たっていう女の子が部屋からガタガタ震えてる二人を連れて出て行った頃にお開きになった。

肉まん落ちてたモッタイナイ。

 

8月29日

お兄さんと猫耳フードちゃんが来た。こないだと全く違って猫耳ちゃんが凄く不機嫌そうでお兄さんに対して死ぬほど口が悪くてびっくりした。

でも帰る時には酔ってたみたいで、お兄さんに赤い顔をムチャクチャ近づけて「ねぇこれからどこに連れてくつもりなのよ、ばーか!ばーか!もう私酔ってて歩けないんだからね!」って何度も言っていた。

 

8月31日

椿(審配)に会った!斗詩たちに私の事を聞いたらしくて同じようにあがり後に来てくれた、良かったよー!他の皆から椿(審配)は大分変わったって言ってたからどんなかと思ってたけど、なんかすごく丸くなってた。オトコが出来るってこういう事かと思って彼氏とらぶらぶらしいじゃんよーって聞いたら目を丸くして「付き合ってなんていない」だって…どういうことなの…。

猪々子たちの話と椿の話がどうも食い違ってるので聞いてみて整理すると、今椿はどこかのお屋敷に勤めてて、そこのご主人様と麗羽様の命令で役所でも働いてるらしい。そんで、椿はそこのご主人様が大好きで猪々子たちから見たらどう見ても付き合ってるけど椿は畏れ多いとか言って認めないと。

でもあの頃の生意気女を地で行く椿が「たまにいじめて貰えるだけで幸せ」なんて笑顔でそこまでいじらしい事言うようになるとは、時の流れって言うか、ほんとオトコで女って変わるんだなぁ。

て言うかそこまで来てるんなら告白しなよ椿!今度会ったら焚きつけてやろう。

 

9月2日

開店前におっぱい銀メイドさんが、給仕長と何か打ち合わせて帰って行った。店長に何の用だったのか聞いたら個室席年間予約権の販売価格の交渉だった。

店長はもう給仕長に任せっきりみたい。

 

9月9日

おっぱい銀メイドさんが疲れた感じで数人の女の子を連れて店に来た。

…と思ってたらいつの間にか元気になってたらしくて、聞いてる側もマジ、してるおっぱい銀メイドさんもマジの説教大会になってた。

今日もおっぱい銀メイドさんは閉店まで居た…お金と肝臓大丈夫かな。

 

9月11日

赤い髪のポニーテールの子が来店したけど、満席ですってお断りした。そしたら予約のはずなんだけどって言われたので帳簿を調べてみると、確かに予約番号が入っててうちの手違いで別の予約を入れちゃってたのが分かった。

給仕長も出てきて二人で謝ったけど、久しぶりのデートだったんだけどなーって言ってがっかりしながら帰っていった。ごめんね赤ポニーちゃん…

 

9月16日

おっぱい銀メイドさんがまた来た。上品そうで良く似た女の子たち、黒髪リボンちゃんと蜂蜜色リボンちゃんと呼ぼう。それと、にこにこしたヘアピンちゃんの四人でやって来た。

蜂蜜リボンちゃんはいじられっ娘みたいで、黒髪リボンちゃんとヘアピンちゃんから

「かわ☆いい!かわ☆いい!」

とか言われて涙目で紅くなってた。確かに可愛かったけど。

 

9月19日

こないだ家族を迎えに来てた女の子が同じような年頃の女の子を二人連れて、ご飯を食べさせて下さいって言って来た。どうすればいいのか分からなかったので給仕長に伝えたら、自ら出て行って璃々様こちらへどうぞと言って席を確保した上、子供向けの飲み物と料理を厨房に指示していた。御会計はどうしますかって聞いたら、前払いで頂いてるから心配しないで出してと言われた。

給仕長の態度からしてもどうもいいとこのお嬢ちゃんみたいだけど、三人とも礼儀正しかった。幼ちゃんって呼ばれてた子はキリッとしてて、均ちゃんて子は少し気が弱そうなかんじ。でもあの璃々ちゃんって子、あの年不相応な将来性のあるおっぱい、どっかでみた、誰かに似てる気がするんだけどなぁ…思い出せないや。

 

9月21日

こないだ来た黒髪リボンちゃんとその友達?らしい二人が来店した。二人はどうも給仕長の事を知ってるみたいでニヤニヤして話しかけてたけれど給仕長はなんか嫌そうだった。(でも黒髪リボンちゃんとは普通に話してた)

あとでお知り合いですかって聞いてみたら「族姉です、皆従姉妹のようなものです」だって。

 

9月22日

この酒楼の親会社は庁舎内の生協の運営もやっているらしくて、日中にそこの増設部分の販売員をやらないかと給仕長から打診された。新しく人を雇わないのかと思ったけれど、ここ以上に守秘義務の高い仕事だからあまり関係者の人数を増やしたくないってことなんだって。

ここよりも更に仕事は楽そうで追加の給料も結構良かった。頑張っちゃおっかな?



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司馬日記外伝 『白蓮さんがなんで名前を覚えてもらえないか本気で考えてあげましたよ』

考えてくれた人がいました。


「はあ…やっぱ桃香みたいにおっぱいが大きくないと駄目なのかなあ…一刀に呼ばれるのも二週にいっぺんくらいしかないし」

「えっと…白蓮ちゃん、他の人の前であんまりそれは言わない方がいいと思うよ?華琳さん蓮華さん、私でもそれくらいだし…」

 

----------

 

「なあ華雄、一刀から下着貰ったけどこれ市販されたやつなんだよなぁ…こう、私だけの、ぐっとくる下着ってないかなあ」

「…その前に聞きたいんだが、以前も貰っていなかったか」

「そうだなぁ、展示会も大分やったからそろそろ二十着くらい貰ったかな。一応全部一度は脱がされてはいるけどさぁ」

「そうかそうか。たまには時間が押してて始めから脱いでいく者の気持ちも味わってみるといいかも知れんぞ?」

 

----------

 

「流琉は料理上手でいいよなぁ、これなら一刀も喜んで食べてくれるだろうな…私なんか普通の料理かおにぎり位しか出来ないし、それだって三秒位で食われちまったしなぁ」

「…そうですか。私は兄様に三秒で食べて頂いた事はありませんけど」

 

----------

 

「なにしろ特徴が欲しいんだよ、華琳みたいになんでも出来るようになりたいってわけじゃないんだけどさ、こんな影が薄いままじゃそのうち一刀にも忘れられちまうよ…挙句の果てには昨日なんかその一刀にまで夜通し慰められる始末でさ」

「ふうん。…それで夕べ急に一刀が来れなくなったって言ってきたのね」

 

----------

 

「沙和はお化粧上手だよな。元がいいから映えるんだろうけどなぁ」

「えへへ、日頃の研究の賜物なの!白蓮さんもやってみる?」

「うーん、一度口紅を塗ってみたんだけどさぁ、一刀に『白蓮に化粧は似合わない』って言われて全部きれいさっぱり取られちまったんだよ」

「…それって未使用の口紅を没収されたって事なのね?それとも雑巾で拭き取られたってことなのね!?」

 

----------

 

「明命の髪っていいよなあ…こんなに長くて綺麗なら一刀も褒める訳だよ、それに色んな髪型にも出来るしなぁ」

「いえいえそんな…白蓮さん位の長さでも色々髪型を変えられますよ?」

「いや、一刀が『髪を降ろした白蓮を見ていいのは俺だけだから』って言うから変えられないんだよ。あー平凡だ…」

「そうなんですか、ところで髪もその気になれば武器になるって御存知ですか?」

 

----------

 

「いったいどうやったらそんなに速く走らせられるんだよ、霞?この前の巡幸だって霞と恋の為の旅みたいなもんだったしな」

「ナニ言うとるんや白馬長史、あんたかてひとかど以上なんやからもうちっと鍛錬すりゃウチについて来れるくらいにはなれるやろ」

「いやぁ、そうしたいんだけど一刀が『馬はいいから俺の上に乗れ』って言うからさぁ。あんな跳ね馬、夕べだってしがみついてるだけでいっぱいいっぱいだったよ」

「ほーか、せやったら次は木で出来た馬にでも乗ってみたらどや?」

 

----------

 

「なあ仲達さん、私ってそこまで影が薄いのかなぁ…蜀以外の連中、全然私の名前覚えてくれないんだよ」

「何故なのでしょう、全く理由がわかりません」

 

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「…ってな事を方々で話してるからですよきっと」

「私はそんな話してないぞ、しれっと見てきたかのような嘘を吐くなよ!あと最後の仲達さんはなんなんだよ!?」



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司馬日記37

その後の、とある文官の日記です。
帽子屋様に魏武捉刀の故事を読みきられていたのには驚愕しました。


1月25日

蜀から人事通達が届いた、警備部副部長の趙雲殿が休職し副部長代理に馬超殿が就任したとの事だ。詠様が訝しがられ元直に問い合わせられたところ、

「あー、星ねえ…。あたしはもう平気なのかなぁって思ってたんだけどねー。…前に一刀様怒らせちゃってマジ泣きしてた事があったでしょ?その時は一刀様が御機嫌とってくれて、まあ元通りかなって思って皆ほっといたんだけど。で、こないだほら一刀様の鍛錬の云々って募集があってさ、そこでいつも通り星が一刀様の方天画戟をみたいなバカな事書いてたじゃない?当然採用されなくて、その後は一刀様に聞いた話なんだけど『あの案は如何ですかな主殿』とか一刀様に聞いて『ふざけちゃダメでしょ』みたいな事言われたらしい訳。そしたら突然泣き出して!『あ、主殿は私の事は、もう御不要なのですか!?そんな事はござらぬよな?そんな事はございませぬよな!?』ってなっちゃって大変だったのよ。

…今は見た目落ち着いてるんだけど、ちょっと情緒不安定みたいだから肩書きも一応外して少し休ませようかって。星って強かそうに見えるし結構やっちゃいけない級の悪戯する割には「絶対無条件で愛されてる」って自信持ててないと駄目な子みたいなのよね」

と説明された。更に詠様が今後の療養見通しについて聞いたが、

「さあ…とりあえず一刀様のぶっとい注射と、耳元で甘ったるい事囁いてもらうのが一番効くんじゃないかって話になってるけどね…いーなぁ私も病んじゃおうかなぁ」

という。

 

自業自得なのではという気もしなくは無いが、白蓮殿らによれば一刀様が御降臨された折に彼女が居なければ既にその御命を落としており、その後も陰日向に一刀様を支えられてきたという。戦乱の頃は、蜀では武勇で鳴らす関羽殿が比較的直情的であったのに比べ趙雲殿は冷静さを保ち精神的支柱であったと聞いていたが、愛する方の傍らの席と安息の日々を得てからは気が緩まれたのかも知れない。

 

1月26日 

張任殿が出勤されない為自室を訪ねてみた所返事が無く、鍵は開いていた為失礼ながら入らせて貰ったところ、全裸に上掛けが掛けられて昏々と眠っていた。

勤務時間であるので揺すって起こしたが、胡乱げな様子で「旦那様に『本気で』可愛がって頂いた、追って詳しく説明するので今日は体調不良の為休暇とさせて欲しい」と言ってまた眠りについてしまった。

桐花様に御報告したところ本気の一刀様じゃしょうがない、休暇表を代わりに出しておいてと指示された。私事の為に公事をおろそかにしてしまうのはいかがなものかと眉根を寄せてしまったが、

「毎回毎回毎回毎回毎っ回、足腰立たずに余韻に浸って出勤しなくて私に休暇表を出してもらってる仲達が他人の事とやかく言ったりしないわよね?」

と子丹御嬢様に微笑まれ、赤面する羽目となった。

 

1月27日

詠様と曹操様が慌てた様子で総務室へ来られ、会議室で暫く会談されていた。詠様が部屋から一旦出てこられると「匈奴の使者と接見させるから麗羽を呼んで」と言われたのでお呼びすると袁紹殿は怪訝な様子で会議室へ入っていったが、打ち合わせを済まされ出てこられた時には御機嫌な様子であった。一方、曹操様は苦虫を噛み潰したような御表情で出てこられ、詠様に「しょうがないじゃない…桃香や蓮華のじゃ普通過ぎて迫力無いし、自分の話をするのはどうしても嫌だって言ったの華琳でしょ?」

と宥められていた。

何か問題が生じたのだろうか。

 

1月29日

張松殿と法正殿が面会に来られた。曰く、就職活動の甲斐あって呉で採用の内定を貰ったが、劉備様が王都での業務を手当てして下さった為このまま蜀に留まる事としたという。呉では周瑜殿に職を斡旋して頂いたのでお詫びにこれから伺うのことだった。

元直にも事情を聞いたところ、

「んーまあ…いーんだけどねぇ、どうせこっち(王都)での仕事なんていくらでもあるしとりあえず今回は上手く行ったから。桃香様もそういうとこ上手いっちゃ上手いわよね…あの二人、『桃香様に御伽の御供にお誘い頂いて、御一緒させて頂くなどこれが最初で最後かと思ったので良い思い出にしようと意気込んで行ったまでは良かった。ところが正に一刀様の先端がという所で止められて、張任と(王都で)仲良くする事を条件に職の手当てをご提案された、あれでは退職を選べる女など居るはずがない』っつって複雑そうだったわよ」

と言う。

彼女達の幸福には良い事であったと思うが、中央勤務への希望の集中という事象はいずれ大きな行政課題となるかもしれない。

 

1月30日

仕事帰りに庁内協同組合の書店に寄ってみたところ叔達から強く勧められていた「天の国語録1-10総集編 予約受付中」との札が張ってあるのが目に付いた。こういったものも買って学ばなくてはいけないかと思い勘定場へ行くと、店員から特典版にしますか通常版にしますかと聞かれた。何が違うのかと聞くと特典版には一刀様自筆の御署名と一刀様人形、後宮関係者限定一日でーと抽選券が付いてくるという。

特典版をあるだけ予約したいと言うと一人一点に限っていると言われた為、残念ながら一点のみ予約して帰った。

 

1月31日

家での夕食時に妹達に、金は渡すので「天の国語録1-10総集編」の予約をして欲しいと依頼したところ、文書局所属で出版側である叔達を除いて既に全員予約済みであると言われた。

隣の士季を見ると、「下っ端で予約開始日に並んでなかったのって仲達様位じゃないですか?抽選だってあとから分かったから結局関係なかったですけど、ヤリまくってる偉い人達だって何人かチラホラ並んでましたよ」

と呆れられた。

 

…なんと言うことだ。今回は抽選だったから良いものの、私は情報戦で既に敗れていたのだ。これからはもっと耳目を広くしなくては。

 

2月1日

詠様に呼ばれ、「匈奴の使者が来賓室に居るので訪問し、魏王をどう思ったかを聞いてくるように」と指示された。またその際使者が語る曹操様について違和感を感じても決して余計な話をせず帰ってくるようにと付け加えられた。

 

来賓室に使者を訪ねたところその使者は年頃の娘、叔達か季達くらいと思われたが瞳に強い意志の感じられる美少女であった。詠様の指示通り魏王について尋ねたところ、

「魏王は非常に美しく胸も豊かで、また想像した事も無い一刀様の特殊趣味に心底喜ばれて御対応されておいでと知りました。しかしあの時一刀様の寝台の周りにはべって居られた方々のうち、魏王様と同じ金髪くるくるで一刀様の服の裾を摘まれていた女性、あの方は私の帰りしなに一刀様に耳打ちされ、私は音楽を嗜む関係で人より多少耳が良いのですが『ねぇかじゅとぉ、あとでおふろでかじゅとのあっちゅいのであらってねぇ』と言われていたと思います。あの方こそ一刀様の最も特殊な御性癖のお相手をされている方でしょう」

と答えた。

詠様に復命に行くと何故か風呂の用意をされた曹操様も居られた。使者の答えを一言一句正確に報告すると、曹操様が据わった目で「…もう(匈奴に)帰せないわね。殺すか監禁するしかないわ」と呟いて大鎌を片手に会議室を出て行かれようとするのを詠様が

「月、月の話したでしょ殺しちゃ駄目!それに今から風呂なんでしょ、ほら早く行かないと上がっちゃうから!とりあえず風呂行ってゆっくり頭と体ほぐしてもらってからもう一回考えて、ね!?」と必死に押しとどめ、曹操様は不承不承風呂へ行かれた。

 

2月2日

三国首脳および総務室で、匈奴からの輿入れの受け入れの可否について再度会議が持たれた。

まず月様から御説明され、輿入れたいという子女は蔡文姫という娘で先日の使者そのものであるという。この娘はかつて月様が非常に世話になった方の息女で、性質良好、頭脳明晰だが父の死後不遇な少女時代を過ごしており、個人的に彼女の幸福の為尽力したいと言われた。ついては保護の意味合いで一旦輿入れとし、実際に閨房に入るかは本人の自由意志に任せたいとの御提案だった。

皆暫く沈黙していたが劉備様が本人の意思はどうなのかと聞かれ、申し訳なさげに月様が後宮に入る意思は固いようだと答えられた。

続いて孫権様が、先日のあの…一刀の言葉を踏まえたうえでなのかと確認されると、詠様が「そうよ…あの後も麗羽使ってひと脅ししたんだけど、もう覚悟決めちゃったみたいで怯まなくなってたし…ごめん、あの娘が文姫だって気付いてたら一刀にあんな事言わせなかったんだけど、大きくなっちゃってて分からなかったの…。あとあの娘馬鹿じゃないわ、自分が送られた政治的意味を理解してる。名目が輿入れじゃなくて保護だと彼女納得しないと思うし、匈奴から見たら軟禁だから外交問題になるわ」

と答えられた。

その後、輿入れをお断りして帰すことも提案されたが月様と曹操様が強く反対された為、妥協案として匈奴には多くの寵姫の内の一人となるだけで良ければという事を伝えた上で名目上輿入れとして受け入れる事とした。また実際の閨房への受け入れは各国王と一刀様が御反対され、当番割り当てのように積極的に呼ぶ事はせず当面月様の保護下に置く事となった。合わせて一刀様と月様から彼女に対して後宮入りの義務が無く、輿入れを事実上破棄し自由恋愛の権利がある事を説明する事となった。

 

会議からの帰り道、詠様が

「月大勝利ね…あの子、これっぽっちも文姫説得する気無いわ…それに華琳も、そういう話は使者がちゃんと帰ってからやってくれれば違ったかもしれないのに…」

とぼやかれていた。

 

2月4日

各国王様と月様・詠様、それに一刀様が集まられて会議室で会議をされていた。

会議を終えて出てこられた詠様によると、直轄総務室の改革について各国から意見が出されており検討協議しているとの事で、

「早い話が解体しないかみたいな話よ、特に一刀の女たちから見ればここ(総務室)はある意味利権の巣みたいにも見えるからね。まぁボクの仕事は絶対他人じゃ代われないかったらそこまでじゃないけど、月の仕事は誰がとって代わったとしても皆を納得させるのはまず難しいでしょうね」

と言われた。

魏においても総務室においても一刀様の為に無私に職務に奉じてきたと思ってはいるが、他の者から見ればそのように見えるのも無理はないだろう。私に出来ることは今後も公正に、一刀様の御為に尽くすばかりだ。

 

2月5日

尽くすばかりである…と士季と士載に訓示を垂れたところ、

「それは官吏としては結構ですが、仲達様は女としては如何ほど一刀様にお尽くしで?」

と士季に反問されて絶句してしまった。

「まさかちょっとエロ水着着てみた位でやるべき事はやったみたいな事は考えてませんよね、新しくなった生協でどれだけ新作下着や水着売り上げてるかとかちょっと調べればわかる事ですし。それに行ったら行ったで毎度毎度判で押したように『仲達で御座います』って言ってテレた顔して隣に座ったらあとは気がついたら全部一刀様がどうにかしてくれてるとかじゃないですよね?そんな女居たら司馬家の恥ですよ恥、鮪女が許されるのは一回目までですよね?あっ私は私なりに頑張ってますよ、こないだも夜間演習の予行担当で一刀様と後ろからねっちりたっぷり。ちゃんと本番の方達とは事前に打ち合わせて『転んで捕まる』『袋小路で見つかって捕まる』『迎え撃って組み伏せられる』とかネタ出ししあってカブリが無いように調整しましたし、服も事前に灯火で半透けがわかる薄物調べて選びましたし。あと私ムネはそれなりにありますけど背はこんなですから、一刀様が押し倒した拍子に我に返っちゃって優しくされたりしたら今回の趣旨台無しじゃないですか?なんで開始前に抱きついて、媚薬で火照って早く欲しいのみたいな事囁いたら頷いて下さって、まあ自分とやる為に走ってくる一刀様の足音とか媚薬そのものなんで結局嘘にならなかったですし。なにしろ気を使われずにされる二連発、碌にモノも言わない一刀様とか最高でしたよ、もうこっちは勝手に声は出るしきゅんきゅん痙攣するし自分は何回だったのかも分かんないですけど。いやぁ今回私あの人達の趣味理解しましたね、Mプレイもイイですよ。御優しいのも好きですけどあれはあれ、これはこれで。で私、今まで清純路線で押してましたけどこれを機会に淫乱清楚でいってみようかなって。って言っても陸遜さんみたいな真性と違って昼間は完全清楚、やれる時だけ淫乱で。張勲さんとは身長年齢差とこっちは従順でおふざけ無しってところで住み分けられると思うんですよね。あ、なんか自慢話みたいになっちゃいましたけど、仲達様のオンナとしての御努力振りについて私と士載に御教授頂けますか?」

 

…ぐうの音も出ないとはこの事だ。

私には、根本的な反省が必要なのかも知れない…



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司馬日記外伝 店員日記 3

その後の、とある店員の日記です。


9月28日

おっぱい銀メイドさんが女の子三人連れて来店した。はじめ一般席でいいって言われたので一般席に御案内したら、飲み始めるとすぐにお酒を零したので雑巾を借りたいのと個室席に変更したいって言われたので対応した。まぁいいんだけどー…。

 

10月2日

今日は昼から夕方までの貸切予約が入ってた日だ。

凄い量の料理を朝から用意してたのでどれだけの人が来るのかと思ってたら、例のお兄さんと赤い髪の無口な女の子の二人だけだったのでびっくりした。…まあ、完食された時はもっと驚いたけど。食べ終わったら赤髪ちゃんは寝ちゃったみたいで、お兄さんがおんぶして帰って行った。

…普通におんぶしてたけど、赤髪ちゃんが食べたものっていったいどこに行っちゃったんだろう…?

 

10月4日

今日はすごく混んでた。役所が給料日だったみたい。

 

10月7日

お客さんの事を詮索するのは厳禁なんだけど、たまに来るお兄さんって何者なのか同僚の子に聞いてみた。役所の人と一緒の事が多くて、何か問題が起こると来るから職員寮の管理の人じゃないかっていうけど、私を含めて何故かこの店の子はみんな地方出身で都に疎いからあんまりよく分からない。

 

10月16日

おっぱい銀メイドさんが例のお兄さんと来た、お兄さんはしょっちゅうじゃないけど色んな女の人と来る。

 

冗談通じそうな人だったので「お兄さん、とっかえひっかえですねぇこのコマシー」って脇腹つついたらお兄さんは笑ってくれたけど、隣の銀ぱいさんに物凄い力で腕掴まれて

「父兄です。控えなさい」

って睨まれた。

怖かった!怖かったよ!マジギレした斗詩くらい怖かったよ!!

速攻謝って厨房に逃げ帰って涙目で給仕長に話したら、溜息を吐きながら

「本人が良いと言っても、あの人に失礼を働くのはやめておきなさい。特に仲た…あの女性の前ではね」

って言われた。ごめんなさいもうしません。

 

てか、あのお兄さんは銀ぱいさんの?お兄さんだったのか…

 

10月22日

生協の販売員の仕事を受ける事にした。だってお給料いいし!

再来月くらいの開店予定で、もう暫くしたら研修受けなきゃいけない。

 

10月24日

開店準備をしてたら、女の子二人が給仕長と何か話してるのが目に付いた。

給仕長から何か包みを貰うと女の子達は嬉しそうに店を駆け出していったあと、何があったのか聞いてみたら

「胡瓜を3本売る約束をしてて、取りに来たのですよ。八百屋で買えば良いではないですかって言ったんですけど恥ずかしいとかいう事でしたので…まあ、店頭で紅い顔でまじまじと胡瓜見つめてあれでもないこれでもないとかやってたら、多少気持ちは分からないでもないですけれど」

ってため息ついてた。

胡瓜買いに行くのが恥ずかしいって、また随分箱入り娘な子も居るんだなー。

 

10月25日

椿と休みが合ったので、街でお茶した。

「って言うかもう相思相愛なら告白してくっつけ」って説教してやった…はずだった。

けどなんだか話が噛み合わないから今度こそじっくり聞いてみたら、凄い事を聞かされてしまった。

 

彼氏は元々麗羽様の彼氏だったんだけど椿がそれを気に入らなくて殺そうとした。

でも未遂に終わって逆に殺されるはずだったけれどその彼氏が反対して、雌奴隷にしてもらって今では麗羽様共々可愛がって貰ってる。「それでこれご主人さまに名前を彫ってもらった首輪なの」って嬉しそうに見せられて私はどんな反応すればいいってのよ。

 

今幸せなのね?って聞いたら「とっても幸せよ」って笑顔で言う椿の言葉を救いに、ぼーっとしながら帰った。

 

10月26日

斗詩たちにまた夜来てもらって椿の事を聞いてみたら、みんな知ってた。先に言おうよ…

椿が殺されずにああいう風にされたのって、椿が可愛かったからなのかなあって聞いたら違うって言われたけど、「その彼氏も椿をあんなにすることないのに酷いよね」って言ったら、斗詩に物凄く突っ込まれた。

「彼氏さんのした事はひどいかなぁ?殺されそうになったんだよ?それに彼氏さんは『麗羽様が大切だったんだろう』って言って椿の事無罪放免にしようとしてくれたんだよ?それでね、今度は周りの人の気持ちになって欲しいの。ねえ、もし杏(私の事だ)が自分の一番大切な人が殺されかかってその人の事許せるかなぁ?一歩間違えたら殺されてたんだよ、恋さんが居るから絶対にそれは無かったけど。私は許せないなぁ、絶対に許せなくて殺しちゃうと思うなぁ。百歩譲って、心の底から反省してその人の事を私と同じくらい大切に思うようになったらようやくちょっとは許せるかな。それにね、その彼氏さんは椿にお仕置きした時も『ごめんなさいもうしません』って言わせただけなんだよ?椿は麗羽様の意見を聞いたもあったけど自発的にああいう風になったの、彼氏さんがなれって言ったんじゃないの。それでも杏はその彼氏さんの事ひどいって思うかなぁ?殺したいほどひどいって思うなら、彼氏さんの周りの人たちが今度は先手を打ってきたりしちゃうかもしれないと思うけど杏はどう思う?」

 

…ブチ切れられたけどなんでそこまで他人の彼氏を擁護するの!?

瞳に光彩が無くなった斗詩を猪々子たちが止めてくれたけど、経緯はやっぱり大体(斗詩の言う通りで)合ってるって言うのと、彼氏さんは椿の今の性癖に合わせてるけど椿の事を大事にしてるって証言してくれた。

 

ならまあ、しょうがない…か…?

って言うか下手すると私よかよっぽど幸せ掴んでたりする?

 

10月27日

給仕長と遅番の日だった。いつも給仕長忙しそうだから今日私が店閉めやりますって何度も言ったんだけどいいです私がやりますって聞かない。前から思ってたけど結構頑固だ。

あと帳簿だけになったんで先に帰らしてもらったら、道すがら例のお兄さんとすれ違ったので挨拶した。お兄さん家はこっちの方なのかな?

 

10月28日

このお店のお客さんはみんな役所の人で知り合い同士が多いみたいだったから、給仕長に「卓に落書き帳を置いてみませんか」って言ってみた。給仕長が何故かって聞いてきたんで、だって面白そうじゃないですかって言ったらしばらく考えて、じゃあやってみましょうって事になった。

 

10月29日

生協の研修を受けた。

在庫の管理、帳簿のつけ方、鍵の管理、勤務時間…難しくなさそうでよかった。

でもまだ肝心の商品が決まってないって大丈夫なのかなぁ。

直前になったら現地で予行をやるって言われた。

 

10月30日

落書き帳が、誰でもかけるのと暗証番号で鍵が掛かるやつの二冊用意された。

なんで鍵付きなんて用意するんですかって給仕長に聞いたら、「一部の方々用です。多分必要だと思われるからです」だって。なんで?



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司馬日記外伝 頑張れ太史慈ちゃん

くらげ様へ。メールで、「太史慈はもう少しおとなしい娘にすると思います」と言ったな…あれは嘘だ!なんか書きたくなって止まりませんでした!(すみませんが容姿だけ変えちゃいました)

司馬日記は三次創作して下さる方、コメを下さる方、ポチっと御支援して下さる方、見て下さる方の御情けとちょっぴりの私の妄想で出来ています。いつも皆様有難う御座います…


今日は一刀様御同行の警邏を楽進さんの私室から引き継いで、そのまま夜は御会食させて頂ける予定だ。

こないだ、張任さんが可愛がってもらったって言ってた話は凄かった。…下着も一番えっちだって言われてるのにしたし、会食の後はじょうずにお誘い出来ればひょっとしたら私も…くふふっ。

そんな甘い事を考えていたら、いや考えていたからなのか、悪魔と目が合ってしまった。

『過去』と言う名の、悪魔と。

 

「あーっ!」

「………(げっ…)」

「子義姐さん!?子義姐さんッスよね!あたしの事覚えてます?『東呉の毒殴』連合で舎弟やってました張英ッスよ、今日都に来たんス!」

「………あの失礼ですがちょっと存じ上げませんのでこれで」

「姐さん自分于糜っスよ、忘れちゃったんスか!?劉繇んトコにいたころ一緒に暴れまわったじゃないですか、『ブッ殺したらァ孫策っ!』つってガチで殴り合いやって引き分けたの自分忘れられないっスよ!あと髪立てて七色に染めんのやめて黒に戻しちゃったんスね、あれマジかっこよかったのに!」

「…申し訳有りませんが公務中ですので」

「あっスンマセン久しぶりに会ったのに酒切らしてて、姐さん晩飯前は濁酒一升って決めてましたもんね!今干し肉もそこらへんでカツアげぶっ」

「ちょっと向こうで伺いますねこの野郎様。…あ、すみません一刀様、ちょっとあちらで御事情聞いてきますね」

一刀様から見えない角度で二人の腹に一発ぶち込んだのはもうしょうがない。しょうがなかったんです。

 

「いいかおめーら、オレはもう昔のオレじゃねえんだ!それに于糜もな、都でカツアゲとか絶対やるな速攻で牢屋行きだぞ!」

「そんな治安厳しいんスかここ!?」

「たりめーだ!それにな、一刀様のいる前でオレにそういう話し方すんのやめろ、あと昔の話も。オレぁ今こっちでその…おしとやかに暮らしてるんだから、頼むから大人しくしててくれよ」

「一刀様って…さっきいたあの男っスか?」

「そうだよ。ってかあの男呼ばわりすんな、今なんとか振り向いてくれかかってるとこなんだからよ」

「えー、らしくねーっスよ姐さん!『欲しいもんは力づくでオレのもんにするのさ』っていつも言ってたじゃないっスかぁ」

「だーかーら!もうそういうのはやんねぇの、雪蓮にこっち(王都)に連れて来られてからすげえ頑張って亞莎とか皆の真似して、ようやく一刀様にその…可愛がって貰えるようになったとこなんだから邪魔すんなよ!?じゃ、オレもう行くからな」

 

---------------

 

「お待たせ致しました、一刀様」

「あ、もういいの?…さっきの人達、陽(太史慈)の昔のお知り合い?」

「いえ人違いだそうで。都は人が多いですから」

「………そうなんだ」

笑顔笑顔。オレはもう昔のオレじゃない。

 

「あっ一刀様、あれ仲達様じゃないですか?夕食御一緒にお誘いしても宜しいですか」

「あ、うんいいよ。仲達さんが忙しくなかったらね」

「はいっ、ちょっと伺ってきます」

 

---------------

 

「おうお前、ちょっとツラ貸せや」

「あ、さっきの陽(太史慈)の…」

「聞くけどよオメーあれか?子義姐さんのツレか」

「えっと、うん、彼女がそう思っててくれると嬉しいんだけど」

「こんなののどこが良いんだろうな姐さんも」

「姐さん、なりも乳もでけえけど純な方だからよ?失礼の無い様にクチの利き方気をつけろよな」

「うん、気をつけてる。ところで君ら後ろ危ない」

「知ってんだよあたしらがアブねーのなんて。あたしら東呉じゃ毒殴連合っつってへぶっ」

全力疾走してきた仲達さんと陽がそれぞれ延髄斬りとバックドロップを食らわすのを、もう俺はただ見ているしかなくて。

 

「…」

「!仲達さん駄目、殺さないで!二人とも陽に預けて、これは命令!命令だからお願い!」

いや大事な仕事があった、無言で短戟を振り上げた仲達さんを止めるっていう仕事が。

「……ですがこの者…この賊共は、一刀様に暴言を吐き胸倉を掴みました」

「大丈夫危害は加えられてないから!陽、この子達預かってあっちで事情聴取して、で陽なりに口頭注意したら警備部に渡さないで釈放して。俺の権限で!俺の権限で!!」

「は、はい!」

「…はい」

怒り過ぎで顔を青ざめさせた仲達さんに気絶してる二人を離させて抱き寄せる。

「あっ…」

「うん大丈夫、大丈夫だからねー。有難うね仲達さん俺のこと心配してくれて、はあいよしよしいい子いい子、んー大丈夫だよー」

「はい…」

背中をさすると仲達さんの体から力が抜けていくのがわかる。

 

「(ムツゴロウ王国…)」

「…はい……?」

「ううんなんでもない。仲達さんは可愛いね」

「いえ…そんな…」

今日も夕焼け綺麗だな。…って感慨に浸ってないで陽の方も見に行かないと。

 

----------------

 

「おい起きろよ、二人とも」

「う…うーん?あ、姐さん」

「やぁめろってばよぉ!一刀様に手ェ上げるとか死にたいのかよお前ら!」

「そんなんじゃないっスよ、ちゃんと姐さん大事にするようにあいつ軽くシメて」

「するなって!ほんとこっちじゃ…やっと、やっと普通の女になりきって折角慣れてきたとこなんだからよ、ほんとマジで乱暴酒飲み女でしたなんてとこ見せられねぇの、いい加減分かれよ、な?」

「陽大丈夫?」

「るっせーな!今忙し…………」

 

 

 

「…………う、」

「ごめん!えっと、見てない!見てないから!」

「う……う…うぇぇぇぇぇぇ……!!」

「よ、陽…大丈夫、大丈夫だから…落ち着」

「だ、だからぁ、お前ら余計な事すんなって、すんなってわたし何度も言ったのにぃっ!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!見られちゃったじゃんかよ馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!うぇぇっ、うぇっ、うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!も、もう嫌わ………じゃっだじゃんがよぉぉぉぉぉっ、ばがぁぁぁぁぁぁぁ!うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!か、かじゅどさまぁぁぁぁぁぁっ、やだぁっ、やだよぅ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

「あ、姐さん?…あだっ、あだだだだだっ!?」

「…太史慈殿は一刀様が看て下さいます。貴女達は八つ裂きにしたいところですが一刀様の御命令なので命だけは見逃してあげますから、……とっとと失せろ…!」

「ひ!?す、すんませんしたぁっ!」

 

-----------------

 

「…はい。いってらっしゃいませ、一刀様。………ふふっ♪……………うわ!?何時から居たんだよ思春!あと明命も!?おいちょっと、オレ服着るから外で待ってろよ…へ?卑怯って何がだよ…はぁ!?あ、あざといって、だってオレ、雪蓮が一刀様はがさつで乱暴な女は嫌いって言うからオレだって頑張って…違っ、んな好きで見られたわけじゃねえよマジで!わざとじゃねぇって!…しょうがねえだろっ、だって本当に嫌われたって思ったから、…いやそんな何度も聞いてねえよ、たぶん……ばっ、数えてたんなら聞くなよ!ってか蓮華様までいつ来たんですか!?…いえ筋書きとか言われましてもほんとに何も無くて…はあ…ええ…あの…、愚痴なら一刀様に聞いて頂いた方が…は?教えろって言われましても何も…夕べの事全部って、全部って…冗談ですよね!?あと明命と思春はぱんつとブラ返せよ!え、エロって…お前らだってそういうのいっぱい持ってんだろ、「こうやって緩めてずらすんです」って言ってた明命に言われたくねえよ!……ちょっと雪蓮お前っ、居たんならそこで涙流して笑ってないで助けろってばよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」



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司馬日記38

その後の、とある文官の日記です。


2月6日

憮然とした表情の張任殿に飲みに誘われた。

どうした事かと思ったが、飲み屋に着いてみると同じく仏頂面した張松殿、法正殿が既に席に居り、困り顔の劉備様と劉璋殿を見てでピンと来た、張松殿、法正殿が先に劉備様に指示されたように張任殿も劉璋殿からこの二人と親交を持つようにと指示されたのだと言うが、まるで針の筵で飲んでいるような心地で、よっぽど一人で飲んでいる方がましというものだった。

酒が進むに連れ其々自身達の閨房自慢と相手の罵倒が激しくなり、「この使い道のない腐れ穴が」「なんだとこのド貧乳にブスチビ」と言って立ち上がったところで劉備様が「だ、だめだよ三人とも!貴女達が争ってたらきっとご主人さまが悲しむよ?ね、言いたい事があるならみんなご主人様に一緒に聞いてもらお?お布団で添い寝しながらお話すればきっと落ち着くよ!」と言って劉璋殿と共に三人を取り成し、まだ不満げな彼女達をつれて一刀様の御部屋の方へと去って行かれた。

 

2月7日

昨晩の事を詠様に御報告したところ、

「桃香…なんでもかんでも一刀の腰にモノ言わせればいいと思ってるみたいだけど、そういうとこ凄く安直よねぇ…まあ実際解決するからいいのかもしれないけど、ちょっとそういうのってどうなのかしらねぇ」

と額に手を当てながら溜息を吐かれた。

…あれだけの人数であったしお話をされに行ったのだと思っていたが、よく考えてみれば今日張任殿は休暇を取っている。つまりはその、そういうことであったのか…。

 

2月8日

珍しい事に孫策様にお呼び出しを受けたので私室に伺ったところ、

「さっき蔡文姫とだべってたんだけどさ、あの娘の話聞いてたらちょっと繋がらない所があるのよ。聞くとどうも司馬懿さんに聞けばわかるみたいだったんだけど何か知らない?」と言われた。しかし一体どういった事を聞かれているのか掴みかねていると、私自身が蔡文姫に関わったことを全て話せと言われたので先日のあらましを逐一説明したところ、何故か肩を震わせ涙を浮かべながら

「わ、判ったわ…ぷっ…ぷふふっ…帰っていいわよ、私今から華琳の所にようじが出来たから」

と言って部屋を出て行かれたので、私も執務に戻ることとした。

 

2月9日

曹操様が真っ赤な顔で総務室に駆けてこられ、

「詠っ!!どうして雪蓮があの時の事知ってんのよっ!!」

と怒鳴られた。詠様は一体何なのよと言いながら二人で会議室へ入って行かれ、その後直ぐに蔡文姫殿が呼ばれて入って行った。そのしばらく後に詠様が出てこられ、つかつかと私の元へ来られると、「あんたやってくれたわね…ちょっと来なさいよ」と言われたので付いて行こうとしたところ、一刀様が総務室へ飛び込んでこられ御一緒に会議室へ入られた。

会議室へ入るや昨日孫策様に質問された内容を聞かれた為ありのまま答えたところ、曹操様、詠様とも肩を落として頭を抱えられてしまった。蔡文姫殿が御二方の御気持ちをお察しし、

「袁紹様におかれましても曹操様におかれましても、一刀様の御性癖に対応されているだけですので何ら恥じる必要は無いではないですか。また英雄色を好むと言います、一刀様は大変な御性豪で幅広い御伽を愉しんでいらっしゃる事でもありますから、多少の加虐趣味や幼児ぷれいの趣味程度は一刀様の御恥になるとは思われません。私も年齢体格といったところは容易には変えられませんが、あらゆる一刀様の御求めに応える所存です」

と申し上げた。しかし詠様が「あんた日が浅くてうち(後宮)の事良く知らないから言うんだろうけど、そんな単純で常識的な話じゃないのよ…にしても、この馬鹿はぁ…」と私を見て言われると、一刀様が

「いや、仲達さんがその…仲達さんだってのは詠も華琳も判ってたことだろ?で口止めし忘れちゃったんだからこれはしょうがないよ、仲達さんのせいじゃないって。雪蓮は…華琳や詠が黙っててって言って聞く相手じゃないだろうから、俺が全力で『御願い』して口外しない約束させるから。雪蓮ヒマだから二日くらいかかっちゃうかもしれないけど、その間執務の方は詠達で御願い」

と言われた。

曹操様と詠様は深く溜息を吐かれ、そうね仲達が仲達だって事を忘れてた私達が仲達だったってことね、と言って部屋を出て行かれた。

何故なのかは分からないが、私が孫策様と御話した事は拙かったとは察したので「御迷惑をかけて申し訳ありませんでした」と一刀様にお詫び申し上げると、一刀様は「いや、仲達さんは仲達さんのままでいいよ」と言って頭を撫でて頂いたが、詠様はこちらを振り返って「いやもう少しでいいからマシになれ」と真顔で言われた。

 

2月10日

昼食に庁内食堂へ行ったところ、周囲がざわついたので何事かと見てみると一刀様がにこにこされた孫策様を抱っこして食堂へやって来られていた。そしてそのまま注文を済ませ貴賓専用席へ向かわれると一刀様の膝の上に横座りで孫策様が座り、暫く食べさせ合いをしていたが食事が無くなるや孫策様が持参されていた酒を口移しで飲ませあわれていた。

孫策様は御機嫌で何度か「めーりーん!あんたもこっちに来なさいよ!」と呼ばれていたが周瑜殿は完全に無視を決め込んでさっさと席を立たれてしまった一方、食堂の隅では柱の陰から孫権様が涙目で御二人をずっと見ていた。

 

一刀様の御振舞いに何らの不満は無いが、羨望は禁じ得ず目の毒ではあった。

 

2月11日

李典殿により後宮の新設備の説明会が行われた。

「炬燵」なるもので天の国で一刀様も大変お好みであった暖房器具であるというが、完全再現は困難な為床暖房に炬燵を載せたものであるという。

李典殿により使用方法が説明された後に質疑となると詠様が

「で、どうやって使うの?」と聞かれると

「ちっこい奴は上に乗って、足長い奴は向かいに座るんや。うちはどっちも試してみたけど寒い時期は一回入って入れたが最後出られへんし抜かれへん、だーらだーら贅沢な時間が過ごせるちゅうわけや。床は水拭き出来るし布団も洗濯出来るから安心やで。但し馬超はんあんさんはダメや、さすがに床材痛んでまうからな」

と答えると馬超殿は満面朱にして

「しねーよ!しねーから!!」

と怒る一方で馬岱殿が

「ううん無理お姉さま入ったら絶対するし事前にお手洗いいける保証なんてどこにもないから」

と真顔で手を振られていたが、暖房器具の説明とどういった関係があるのか分からない。

また背の高い方用に小さい炬燵を、小柄な方向けに大きな炬燵が出席者方から要望され誰一人異論を挟まれなかったのだが、普通は逆ではないのだろうか…?

 

2月12日

陳琳殿が憮然とした顔で総務室に元直を訪ねて来たと思ったら、両脇に諸葛亮殿と龐統殿を抱えていた。真っ直ぐ元直の元へと行くと、

「残念ながら私はそちら方面を書く趣味は持ち合わせておりませんでね。申し訳ないが、彼女達を御引き取り下さい」

と言って臥龍鳳雛を元直に投げ渡すと去っていった。

何が起こったのかと見ていたが、元直が呆れた様子で

「朱里も雛里も…うちの恥だからよしてよね!」

「……で、出来心だったんでしゅ…」

「正直私には『伽は伽、これは別腹』っていうの自体理解出来ないけどねぇ、あんた達だってそれなりの名文家なんだから自給自足すればいいじゃないの…でも『かずかだ』だか『かだかず』だか知らないけどそのへんは殺される前にやめときなさいよ?」

「もうそれは大分前に辞めました!でも自分のじゃ萌えないんです、そんなのは同人界では常識でしゅ!」

「じゃ街中行って買ってらっしゃいな、…一応念を押しとくけど間違っても王粲さんにお願いとかしないでよね?」

「じ、実はもう断られちゃって…本当は、成人向けの陳琳さんより耽美系になると思って先にお願いしたんだけど…」

「はあ…もういいからあんた達自分の仕事場に戻ってよ、さっさと行かないと藍(姜維)に食らったやつ私が食らわすわよ!?」

「ひ!?ご、ごめんなしゃいっ!?」

等と叱りつけて追い出していた。

一体なんだったのか元直に聞いてみたところ暫く私の顔を眺められたが、

「あんたが聞いたら殺しかねないからねぇ…ま、あの子たちに仕事させる殺し文句に当分使わせてもらうわ、『懿来来』ってね」

と答えてくれなかった。

 

2月14日

新後宮の備品台帳の整理をしていた所、後宮書斎の図書は全て庁舎図書室にもあることが判明した。詠様に重複している図書は売却等で処分して良いでしょうかと伺うと、

「ああそれわざとだったと思うけど。書斎の図書は全額穏の私費で出てるはずだし、あの小部屋の建設費自体殆ど穏持ちだったはずよ?」

と答えられた。再度工事費内訳と備品の台帳を確認したところ、確かにその通りであった。陸遜殿が勉強家である事は夙に有名だが、後宮に所蔵された図書は貴重なもの多く見受けられこれらは世の為により利用された方が良いのではないか。

 

2月15日

陸遜殿を訪ね、後宮書斎の図書を有償で貸し出しして貰えないか交渉してみたところ、

「えっとぉ~、私の書斎にあったって知ったらぁ~、借りたいって仰る方もいないでしょうし~、私としてもぉ~、一刀さん以外があの部屋に入られるのはぁ~、ちょっと困りますのでぇ~」

と難色を示されたので諦める事とした。



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司馬日記外伝 店員日記4

その後の、とある店員の日記です。


10月31日

最近、早上がりの日に合わせて結構頻繁に昔の仲間が来てくれる、今夜は純(田豊)と静(沮授)だった。来季入庁試験受けなよって言ってくれたけど、民間の方が気楽そうだしなぁ。

それはそれとして二人ともそれぞれ彼氏と結婚しないのって聞いたら

「『してるようなもんだと思ってる』って言ってくれてるし…」

「順番があるからいきなり私達がってわけには…」

とか言う。ところで二人とも自分の彼氏の話と人の彼氏の話をごっちゃに話すので聞いててややこしい。閉店時間になっちゃったから、次回は彼氏とどんなエロい事してるか話す約束をさせた。ウェヒヒ。

 

11月2日

前に来店した青髪の背の低い方の子が来た…と思ったら厨房に行っちゃったのでなんだろうと思ったら、その子は料理の先生で今日は指導の日だったらしい。

今日作ったやつは「肉じゃが」っていう料理で、賄いでみんなで食べたけど美味しかった!

この仕事、賄い出るからいいよね。

 

11月3日

純(田豊)と静(沮授)がまた来た。って言うか来させたんだけど。

「それがもう、すっごいの…」とか真顔でエロ自慢するのはいい、けどお尻でもしてるとか実は二人の彼氏って実は同じ人で円満三角関係で3Pしてるとかお前らどうしちゃったんだー!

あたしの知ってる純と静はもういなかった。可愛さはあの頃のままのくせに…

 

11月5日

昨日は休みで街出てみたけど、皆は仕事だったんで一人寂しく赤提灯でも行ってみたら例のお兄さんが一人で居たので一緒に飲んだ。

…はずなんだけど、目が覚めたら朝で役所の仮眠室だったんだけどどうしたんだ私!?

近くの職員の人に聞いたら酔い潰れちゃったんでお兄さんが運んで寝かしてくれたらしい。お兄さんと何話したかさっぱ覚えてないけど、着衣の乱れは無いもよう。深酒は気をつけよう…

 

11月6日

すごくお店が空いてた。

何でだろうと思って給仕長に聞いたら、皇帝様が地方巡幸に行くのでお供の人たちも出張して、役所に出勤してる人たちが少ないからだって。あとしばらくの間はこうだから休みも取っていいって言われた。

楽なのはいいけど売り上げ下がってクビの心配するのは嫌だなぁ。就職試験受けたらって言われたの思い出した。どうしようかなあ。

 

11月8日

銀ぱいさんが栗色の髪の大人しそうな女の子を連れて来た。これからは片眼鏡ちゃんって呼ぼう。

給仕長は前から銀ぱいさんの事は知ってそうだったから、あの人しょっちゅう来ますけどお酒好きなんですかって聞いたら「飲めますけどそれほどでもない筈です、本当に好きなら一人で来るでしょうから付き合いじゃないですか」だって。

でも領収書切らない事が殆どだから、接待じゃなくて個人的な付き合いで来てるのかな。

 

11月12日

こないだ提案した落書き帳のうち、鍵つきの方がもういっぱいになったから役所の文書局に納品してきてってお使いに出された。早いよ…。

文書局に行って司馬孚さんっていうおっぱいさんに提出したら、新しい落書き帳を渡されたあと書斎みたいな部屋に連れてかれて「これからはここに納品するように」って指示された。

にしてもこの中身、何書いてあるんだろう…

 

11月22日

試作メニューだった揚げ棒が超人気だったらしくて正式メニューになった。

けど給仕長は「(注文)量が出るってわけじゃないんですけど、うっかり切らしてると苦情がすごいんですよ…」って溜息ついてた。

注文があったらすぐ出さなきゃいけないからこれは作りおきするんだって。

確かに美味かったけどそこまでって程じゃないよねって私も思う。

 

11月25日

銀ぱいさんが女の子二人連れてまた飲みに来た。

そのうちの一人(むちましい体してたからむち子ちゃんって呼ぼう)がぐったりしながらひたすら愚痴ってた。

制服っぽいの着てたから多分この二人も役所の人なんだろうな。

 

11月26日

私のもうひとつの職場になる、生協の店舗のほうへ予行と商品展示の手伝いに行ってきた。のですがね。

…えろ道具の店ならそうだって先に言ってくれー!!!

何このやたら高そうなすけすけぱんつ!?

ぱんつ売り場になんでただの紐が売ってるの!?

これもフリル超可愛いのにおっぱい隠してないよ!?

あとこの金具のついた黒革の色々は何!?

そんでこの分厚い『商品資料(店員用)』…ハァ!?

 

店長(給仕長がここでは店長って呼べって)、私ここちょっと…って言おうとしたら

「開店前日になってやめたいなんて認められるはずがありませんよ?」

って話にもならなかった。

 

まだ乙女の身空でこんなもん売ることになるなんてー!うわーん!

 

11月28日

酒楼の奥の部屋が幾つか改造されてた。鍵付きの裏口が付いて、畳敷きになって押入れが出来て布団が収納されてたり、寝台がついてたりしてた。

あの改造何ですかって給仕長に聞いたら裏口は貴賓のお忍び用で、布団は深酒になって帰るのが億劫になってしまった方用ですだって。もう旅館のノリだ…。

 

11月30日

生協の売り場では事務的に、但し説明は丁寧に。お客様を好奇の目で見たりしない事。

って言われてたけど明らかに未成年にしか見えないこないだの桃色小子ちゃんが来たら動揺するってば!

すごいやらしい下着の予約だけしていったけど、酒楼で給仕長に「こないだの桃色小子ちゃんだったんですけど、本当に売って良かったんでしょうか」って聞いたらその娘なら問題無いんだって…。

王都乱れすぎィ!

 

12月1日

斗詩が来た。生協のほうに。

あ、こんにちはぁ、とか全く動揺無いってどういうことなの…

そんで黒革金具をごろごろっと持って来て「これ購入受付お願いするね、寸法はまた詳しい店員さんに聞くから大丈夫だから」って言う斗詩に、何でそんなに慣れてるのって聞きそうになるのを堪えてこれどうやって使うの?って聞いたら、普段はこういうの使わないんだけど今度ちょっとお付き合いでーって微笑むけど斗詩さぁ、それ答えになってないから。

 

12月3日

酒楼の方に、注文を待ってる人用に小さな本棚と「天の国語録」の6-8巻が入った。

給仕長に聞いたら休憩中にお客さんから見えない場所でなら読んでいいって言ってた。私も暇なとき読んでみようかな。

 

12月6日

生協の方で勤務してた子から、銀ぱいさんが来たけど何も買わないで出てったって聞いた。あんな真面目そうな銀ぱいさんも…彼氏とかいてああいうえっちなの着てそういうことしてるのかなぁ。



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司馬日記外伝 店員ちゃんと一刀さん

11月5日の夜のことでした。


「すいませーん燗2本とつくね下さーい。あ、隣すみません…あっれー!?いつものお兄さんじゃないですか、こんなところで一人飲みですか?…そうなんですか、その来れなくなっちゃったお連れさんって女の人ですかぁ?ウェヒヒヒヒ。…いえなんか、うちのお店来られる時って女の人の雑用ばっかみたいな気がしましたんで。…あ、宜しいんですか?すいませんじゃ遠慮なく。私の燗が来たらお分けしますね。

…えー?忙しいですよ、朝遅いってとこは楽ですけど。お兄さんは暇そうですよね。え、だっていっつも女の人に呼び出されて来てるじゃないですかぁ、まともな勤め人だったらそんな暇無いですよ?えへへ冗談です、管理人さんとかされてるんですよね?役所の方で見たことありますし。あ、お名前は伺いませんから。うちの規定で絶対だめってなってますんで。

 

はあいこっちです…燗来ましたんで良かったらお兄さんもどうです?じゃまあ一杯どうぞ。あ、私?私今ちょっとぐいっとやりたい気分なんですみませんけどこのまま。

…ってか聞いて下さいよ仕事の愚痴をー!いや厳密には仕事の愚痴じゃないんですけどね、いや私、最近都に来てあのお店に勤めるようになったんですよ、たら昔の友達が都にいっぱい勤めててお店来てくれてそれは嬉しくて良かったんですけど、なんか皆揃いも揃って彼氏持ちになってて、もう何なのって!斗詩と純と静…あ、私の友達なんですけど、その子達はちょっとそういうとこぽやーっとしてるけど確かに普通に可愛いからわからないわけじゃないんですけど、猪々子とか椿までって一体どういうことなのって…あの猪々子って子は顔は可愛いんだけどどっちかっていうと男前な子で、男なんか興味無いはずだったのにアニキとはゆうべ4回とか言うし、椿って子の方は頭は良いんだけどもうはっきり偏屈女だったのになんか可愛くなっちゃってる上に彼氏に調教されきっちゃってるとかね、もー!一体!どうなっているのかと!どうなっているのかと、都の風紀は!ちょっとお兄さん役所の人なら皇帝様にでも言ってくれません!?それに調教って言えば麗…あのお兄さん、一応聞いときますけど冀州出身じゃないですよね?田舎の人?全然土地勘ない人?…あー良かった。麗羽さまって言って私の上司だった人まで「私は雌奴隷ですわ」って高笑いするような人になっちゃってますし、都怖すぎ!治安いいけど!

 

あすいませーん、冷やを角舛でふたつー。あれ、お兄さん顔色悪いみたいですけど大丈夫ですか?…ならいいんですけど。

えー私?そうですよ。麗羽さまの下で働いてましたけど。今じゃ店員やってますけど、こう見えましても逢紀って言やぁ冀州じゃちょっと知られた知恵者だったんですよ。…あ、自分が名乗っちゃうのはいいんです。お客様の名前を聞かなければ。それに私、かなり長い間麗羽さまの残党狩りされてるって勘違いしててー、最近人材登用があったらしくて友達はそれであっさり就職しちゃってたのに私だけ無駄に逃げ回ってたんですよねー。そうそう友達の彼氏の話って言えばさっき言いました純と静っていう子達、よく聞いたら彼氏同じ人で!逆にあの二人囲えるってどんだけ偉い人なんだろう、その二人すごい可愛いし頭も良いんですよ。知りません?田豊と沮授って言うの。おっぱいおっぱい。…えー知らないかなぁ、目立つと思うんだけどなぁ…お兄さんが下っ端過ぎるからいけないんですよ、もう少し偉くなればわかりますよ!でもあの二人権力になびく性格でもないんだけどなぁ、初心っぽいからコロッと騙されちゃったのかなぁ…え、ちょっ、お兄さんが申し訳なさそうな顔しなくていいんですよ!悪いのはそのコマシた奴で!なんか体でいう事聞かされちゃってるって感じなんですよねー。あはははは、だからお兄さんが謝らなくっていーですってば!

あ、燗3本追加で、あと枝豆もお願いしまーす!

 

それよかお兄さんの事教えてくださいよぉ、折角だし。…ええ、名前は聞いちゃ駄目だけど。…なんでそんな事知ってんですか!…確かに私が詮索したら駄目です、ですけどお兄さんが自発的に喋っちゃう分には仕方ありません。店外だし。店外デートだし、きゃはははははは!んじゃ…ちゃっちゃと喋ってもらいましょうかね、自発的に。んー…じゃあとりあえず、あの銀ぱい…じゃない、凄い怖い妹さんについて。…え?ウソ、だって父兄だって言ってましたよ妹さんが。ってまさかお父さんじゃないですよね!?…?いえ違います、髪青くないです、背も高いです。ってかそれうちの店の料理の先生じゃないですか?もっとこー…ツリ目気味で長い銀髪でおっぱいがどいーんで、あんまり喋らなくてメイド服よく着てる。身辺警護っぽい感じの。…いえ三つ編みじゃないです。…そうそうそれそれその人!…妹さんじゃないんですか?あの人すっごい怖いんですけど!あ、って事は、あのうちの給仕長がですね、あの人の前でお兄さんにちょっかいかけるなって言うんですけど銀ぱいさんお兄さんの事ひょっとして好きなんじゃないですか!?…あ、もうつまんなーい、そういう優等生な答え聞きたくないですよぉ。…え?そのまんまですよ、銀色でおっぱいさんだから。わかりやすいでしょ?銀色って言えばちっぱいメイドちゃんも居ますよね、あと三つ編みちゃんも。みんな可愛いですよね。あとそういえば猫耳ちゃん…猫耳さん!あの人なんなんですか、すごい喧嘩してるの?店であれだけボロクソ言うからそのうちお兄さんがキレちゃうんじゃないかって私ハラハラして見てましたけど…。そうなんだー、あれで仲いいんだー…お兄さんってひょっとしてどM?きゃはははは、ごめんなさい嘘ですよ!

 

あ、紹興酒くださーい。お兄さんも飲みます?じゃ3つー。え、駄目ですか?私2杯飲もうと思って。

えー私の話?あそうだ、私友達から役所来ないかって誘われてるんですよねー。どうですお兄さん、役所って?…んまー、そうでしょうねぇ、きっと忙しいですよねー。って言うか出会いありますか出会い。友達がねえ、なんか皆揃って「就職したらいい男紹介する」っていうんですよねぇ。え、ちょ、なんで真顔になってるんですかお兄さん?あ、ひょっとしてあれですか?私役所行っちゃったら「三国一」の看板娘居なくなっちゃって寂しい?ねえ寂しいです?あははははは…ね、そこ笑ってくださいよ!ただ斗詩も純も静も椿(審配)も恵(高覧)も、皆「ちょっとモテる人だけど」って言うんですよねぇ。…え?いえ?まあいい男はモテるのはしょうがないからそこは私気にしないんですけど、あんまイケメンって好みじゃないんですよねぇ、どっちかっていうと顔はお兄さんくらいで人畜無害そうな方が私は。ってかお兄さん、女の子に対する年相応なガツガツ感が無いですよね。もうちょっと頑張る感じ見せないと幾ら女子寮の管理人で出会いがあってもいい人止まりになっちゃいますよ?あーでもね、今度私役所にもお邪魔しますよ。生協の店員もやる事になったんで、お兄さんも来たら何か買ってって下さいよ。…え?今ある方じゃなくて新しく出来る方だって聞いてますけど。…いえ、何売るのかまだ聞かされてないんですよ、研修は受けたんですけどねー。でも生協なんだから雑貨とかじゃないですか?ま私にかかりゃお茶の子さいさいですよ。で仕事のついでに男でも探そっかなって。ただねぇ、なかなか難しいかなーとは思ってるんですよ。ってのはですねー、ま、さっきもちょっと言っちゃいましたけど私ってそこそこ出来る女なのですよってはいそこ笑わない!笑ってない?いいんですよ細かい事は!多分普通の管理職とか安定した土地の太守くらいなら勤まるんじゃないかなぁって思うんですけど、いまある程度偉い人ってみんな女の人らしいじゃないですか。ったら私が段々上に上がると自然と彼氏と格差ついちゃうわけで、それに相手が耐え切れるかなぁってのがちょっと二の足踏んじゃうんですよねぇ。でも今の職場じゃ出会いなんてないし、周りがどんどんカタがついてっちゃうのを見てるとうら若き乙女といえどちょっとは焦りが来るってもんなんですよ!お兄さんどうです?私のほうが収入多くても気にしない?…あーもうっ、勿論そういう前提、仮定ですよ仮定!その仮定のもと!…おっ、いい返事ですねぇー。そうですよ男はそんな細かい事気にしちゃいけない!

 

すいませーん、あぁこっちです。もう自分でやりますんでビンで下さーい。

んく…よしわかりました、お兄さんは私が養ってあげます!…いーえ!十分自分を大事にしてます、いえ今まで大事にしすぎました。今日も街歩いて色々見てたんですけどいまいちこれはって男見当たらないんですよ、稼ぎしょぼくてもいいから大人しめで一歩引いてくれる感じの、顔はそこそこで、んー、ぶっちゃけちゃえばお兄さんぽい人?だったらなーって。あでもあの銀ぱいが妹かぁ…あ、妹じゃないんでしたっけ、あー言ってましたねそういえば。…はぁ?そんなくらい私どうにかして見せますよ、あの銀ぱいさんと斗詩より怖い女なんてそんないるもんじゃないですよ世の中!一応私、かつては一国の軍師やっててそれなりの修羅場くぐってきてるんですよ?…あはははは、そんなお兄さんが越えてきた修羅場なんか修羅場の数に入りませんよ!…で、どうです!?今ならお安くなってもれなく処女までついてきます!あ、処女は嫌いか!?…そうでしょう、お兄さんならそう言ってくれると思いましたよ。優しくね!……もー!四の五の言う男は可愛くないですよ!…じゃあおっぱいか?おっぱいが気になるのかこのむっつり大臣め!すごく大きくはないけどちっちゃくもないですよ!店内だからお触りは駄目ですけど顔で感じて下さい、ほらぎゅ~っ!分かりました?嫁にする?嫁にする?むしろお兄さんがなっちゃう?うりゃうりゃー!」

 

---------------------

 

「一刀一刀」

「あ、白蓮…来れたんだ、今日はもう来れないって聞いてたけど…何時からどこに居たの?」

「暫く前から後ろの卓に」

「…助けてくれればよかったのに」

「私が来た時はもう入れる雰囲気じゃなかったぞ…」

「まあ…うん…」

「ところでその娘、『三国一』の子だろ?お前が呼吸をするように女を引っ掛けてくるのは今更止めないが、さっさと正体ばらした方がいいんじゃないか?今日のだって聞く人が聞いたら殺されてるだろ」

「既に俺の口からはかなり言いにくい状況にされちゃってると思うんだけど…善処する」

 

「…それでさ、その子役所の仮眠室に運ぶんだろ」

「うん、そこが一番近いし」

「運び終わったらさ、もし時間…」

「があるから、白蓮の部屋に行ってもいい?本当は白蓮と飲む約束だったし」

「…うん。待ってる」



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司馬日記39

その後の、とある文官の日記です。


2月16日

先日の士季とのやりとりを思い出し、多少なりとも女性らしい何かを掴めるかと書店へ行き阿蘇阿蘇を買ってみた。

「女子力を上げる下着特集」

「『髀肉之嘆』事件を越えて…今日から出来る美容体操」

「陸遜先生の星占い」

「大好評連載『三国志』最新話」

「于禁ちゃんに聞け!着こなし術」

「許子将姐様の今月の『いい女』」他

…確かに参考にはなったのだが、私が学ぶべきはこういった事で良いのだろうか…?

ただ、王粲殿の三国志は面白かった。また次号も買いたいものだ。

 

2月17日

どこかで見た美少女が後宮の庭園で佇んでいると思ったら蔡文姫殿であった。

ふと目が合ったので会釈しようとしたが、ふいとどこかへ行かれてしまった。

目元が赤かったように見え、泣かれていたのかと思う。彼女にとっては久しぶりの漢土と聞く、淋しい思いをしているのかも知れない。詠様か月様にそれとなく伺ってみよう。

 

2月18日

対外国向けの一刀様の宣伝資料が桐花様の回覧決裁箱に入っているのがたまたま目にとまった。

大変な性豪であることと幅広い房事が誇大気味に表現され、文末に「貴国の子女の御安全の為不必要な接見等の接触はお避け頂き、文書又は次官級による連絡をお願い致します」とまで記するのは一刀様に無礼な表現ではないでしょうかと公達様に申し上げると、

「ああ…これ目的が一刀様の女除けだからね。こないだ蔡文姫の件があったでしょ?あんなのがしょっちゅうじゃ堪らないってことで始まったの、国内向けには同じ事やってもどうせ見透かされて却って地方や後宮入りしてない娘の反発招くだけって分かってるからやらないけどね。皆が皆、あんたみたいに性質さえ良ければ一刀様の女は幾ら居てもいいみたいに考える女って少数派なのよ。それにあんただって、女増えすぎて一刀様が耳元で『仲達さーん』って囁いてぺろぺろちゅっちゅずっこんばっこんしてくれなくなったら嫌でしょ?」

と言われた。

釈然とはしないものの、感情としては理解は出来る。

入庁した頃はお慕いしているだけで十分幸せだったというのに、その御腕に抱いて頂けるようになってからは身も心も一刀様無しでは生きていけないとさえ思えてしまう私は、自分勝手な女なのだろうか。

 

2月19日

総務室と各国重臣を集め緊急会議が開かれた。青い顔をして書類を握り締めて会議室へ向かわれる詠様に並んで歩きながら議題は何でしょうかと伺うと、怪文書よ、と答えられた。

会議室へ集まると、重臣の方達に加えて王粲殿と陳琳殿も出席されていた。

曹操様が重々しくでは会議を始めるわ、ではまず王粲と陳琳、その文章を読んでどう思う、と聞かれた。二人の席にはその怪文書と思しき薄い本が置かれており、陳琳殿は青い顔で

「…文章としては、名文と言わざるを得ません。緊張感のある初夜の様子や、青い性に溺れていく一刀様と身体を馴染ませ淫らに花開いていく少女…『瑠璃』との爛れた愛欲に耽る日々の様子は読む者をして情欲に駆り立たせ、羨望の思いを沸き起こさせるものに他ならないものと思います。それに彼女の母…『美苑』を交えた情交のくだりに到っては、その描写の濃厚さ、美麗さは我を忘れて読ませる力を持っております」

と答え、王粲殿は顔を赤くして同意見ですと付け加えた。

一刀様が、詠…これの出所って…と聞かれると、

「うちで手数を結構出して、それに七乃にも風にも手伝ってもらって調べてるけど掴めてないの。…薄々気づいてるだろうけど、これだけ調べてるのに出てこないって事は…、言わなくても分かるわよね?」

と答えられながら劉備様の方を見られた。劉備様が困ったように苦笑いされるのを見て、一刀様が劉備様に「…紫苑に、調査の協力は…?」と聞かれ、

「う、うん、あのね…『別件の業務繁多の為御容赦下さいませ。ただ、誓って【私では】ありませんわ』だって…」

と答えられると全員が顔色を失い、詠様がこれで確定ね…と呟き、陳琳殿が

「彼女が…あの年で、このような名文を、このような淫らなものを書かれるなんて…有り得るのでしょうか…」

と述べても誰も答えなかった。

 

暫く重苦しい沈黙が続いたが、劉備様が

「もう…この通りになっちゃっても、いいんじゃないかな…?」

と言われると、吹っ切れたように据わった目をされた詠様、曹操様、稟様らが

「そうね…あんたは食われる。いや、食われたって考えるわ」

「しょうがないわよね。私は許してあげるから。ただ周りの娘がどんな目で貴方を見るか分からないけど」

「青少年保護育成法にも例外規定がありましたから…」

「後世の史家は荒淫暴虐の王などと書くかもしれませんけど、彼らはこちらの事情など斟酌出来るものではありませんから諦めましょう」

等と発言され、皆三々五々席を立っていき、会議は自然散会となった。

 

残された一刀様も席を立たれ、ふと私を認めると微笑まれて

「出来る限りの抵抗はするから。恵達ちゃん、雅達ちゃん、幼達ちゃん達の将来のためにも」

と言って私の肩を叩いて引き上げていかれた。

会議内容全般も最後の一刀様の御言葉の意味も今一つ分からなかったが、一刀様の背中になぜか胸が切なく締め付けられるように感じた。

 

2月20日

出てこられた詠様と入れ違いで会議室に入り昼食をとろうとしたところ、蔡文姫殿が一人で座っており弁当を片手に俯かれていた。入らせて頂いてよいか声をかけたところ、どうぞ構いませんと答えられた。

弁当を摂りながら、こちらの暮らしに慣れられましたかと伺ったところその最中ですと言い、何か不明な点や悩み事がありましたら出来得る限りでお力になりますので御相談下さいと申し上げた。

するとぽつぽつと話される事には、自分は匈奴の供物として一刀様へ嫁いだが、一向に夜伽に呼ばれない。それどころか口調こそ柔らかいもののまるで自分は愛妾として不要であるかのような説得をされてしまったが、一刀様が如何様な特殊性癖の御持ち主であったとしてもこの方を愛し仕えていく事こそが自分の使命でありそれ以外の生き方は考えていない。しかし一刀様は房事に及ぶことを良しとせず二人きりで会う事を避けられているようで、愛妾として果たすべき仕事を何一つ出来ておらず現状月様の居候となってしまっている。それでは余りに立場が無い為、月様に付いて調理や一刀様の身の回りのお世話の勉強をさせてもらっているがある程度以上の作業は月様からやんわり断られてしまう。そこで他の寵姫と同じくいずれかの国にて仕事を求めてみたところ、能力は方々で認めて頂いたものの中々採用してもらえず、今も詠様に総務室の仕事を求めたが近親上等☆姉妹が戦力になって来ている事を理由に断られてしまったという。

 

多少元気を損ねてしまってはいるが、ですがこれくらいの事では挫けませんと語る彼女の瞳に宿る強い意志に好感を抱いた。

一刀様は寵姫の方々に体のみを求めるという事を良しとされない為、徐々に御親密になり(伽に)呼ばれるのを待たれるのが宜しいでしょう。又仕事を御求めでしたら私の方でも当たってみますと答え、昼食を片付けた。

 

2月21日

早速公達様に蔡文姫殿の就職口の当てについて伺ってみたが、

「無理よ無理、匈奴から『皇帝用のオンナを送ったのに一般人みたいに働かせてるとか馬鹿にしてんのか』って言われたらあんた責任取れんの?『そういうプレイだ』で通じる相手と通じない相手が居るのよ世の中には。それに早くお手つきになりたいって言っても一刀様って一回目まではなっかなか抱いてくれないからねぇ、あたしだって処女貰って頂くまで勝負下着何着無駄にしたか…時間がかかるのは割り切るしかないわよ。話戻るけど、どうしても仕事したいってんならいっそ公務じゃなくて民間に求めた方が本人の自由意志って事になるから角が立たなくていいんじゃない」

と言われた。

民間と言われてもここの仕事しか知らない私には当ても無い。それに怪しげな所に勤めてその身に何かあったりすれば外交問題なので迂闊なところには勧められないだろう。

彼女の為に何か出来ることがあれば良いのだが。

 

2月22日

会議後に張任殿と廊下で立ち話をしていたところ、張松殿と法正殿が通りがかった。

張任殿との間に以前の様な刺々しい雰囲気は無かったが互いに気まずげに、どうも、と会釈して通り過ぎられて行った。

…まあ、いがみ合われるよりは余程良いのだが…。

 

2月23日

子孝様、子廉様がたまたま総務室へお見えになったので蔡文姫殿の就職先について御相談させて頂いた所、

「じゃあ菫のとこでも紹介したら?」

と御提案され、菫とはどなたのことでしょうかと伺うと

「あれ?仲達、菫の事知らないの?文烈よ曹休文烈、あんたしょっちゅうあの飲み屋行ってるじゃない。菫はあんたのこと知ってたわよ?」

と言われた。曹休様のお名前は知ってはいたが、よく聞いてみると休職して酒楼「三国一」の給仕長をされているとの事だ。あいつ真面目だからあそこだったら間違いないんじゃない、との御意見ではあるが曹休様に直接の面識が(何度も顔は見ていたのだろうが)無いので子丹御嬢様に伺って頂くこととした。

 

2月24日

曹休様から応諾の御返事をもらったと御嬢様から御連絡を頂いた為、文姫殿に打診してみたところ喜んで勤めたいとの事だ。一度文烈様にご挨拶に伺おう。

 

2月25日

朝に庁内で一刀様とすれ違った際に御髪が乱れているのに気がついたが、周囲に人も多く御指摘するべきか迷い事務室に戻って公達様に御相談した所、

「ほっといても大丈夫よ。ま、どうしても気になるなら濡らした手拭と櫛持ってお部屋に上がったら?」

とどうでも良さげに答えられた。

一刀様の身嗜みがそのようにどうでもよい事は無いのではと思いながらも慌ててお部屋へ伺ったところ櫛と手拭を持ってお部屋から出てこられた月様とすれ違い、一刀様の御様子を伺うと御髪は既に整えられていた為何もせずに帰ったが、おそらくは月様が整えて下さったのだろう。その旨を公達様に御報告すると

「でしょ?月さんそういう事に命賭けてる人だからね」

と言われた。

 

2月26日

たまには昼食を外で摂ろうと思い町に出てみると人だかりがあり何事かと見に行ってみた。すると酒楼の屋根の上に面妖な眼鏡(?)をかけた趙雲殿が高笑いをしており、道の脇では凪が破落戸らしき者を取り押さえ、于禁殿と李典殿が野次馬を遠ざけていた。凪に事情を聞くと、

「いえ、大した事ではないのですが…星さんがお元気になられたようでなによりです」と微笑み、また周りを見てみると関羽殿と一刀様も趙雲殿を見上げて微笑まれていた。しかし屋根の上の趙雲殿が

「はーっはっはっは!都の風紀を乱す者は、主の白く濁った愛を下腹いっぱいに注がれたこの華蝶仮面が許さぬぞ!」

と叫ぶと

「まさに今お前が乱してるよ!」

と一刀様が窘められ、「よしあいつ逮捕しましょう」と言って笑顔で偃月刀を取り出した関羽殿を凪が必死に止めていた。

 

2月27日

蔡文姫殿を連れて酒楼に曹休様を訪問した。改めて見たが目つきは鋭いが落ち着いた話し方をされる方で、「文烈でよいです。貴女の事は知っていますよ」と言われた。

既に話は通されているので直ぐに勤務等の話に移りそれを聞いていたが、打ち合わせ後になぜ御休職されているのですかと伺うと、

「軍務に多少疲れましてね。…まあ、女でもありますし」

と言われた。子孝様らのお話では一騎当千の強者だったらしいが、文烈様なりの御事情があるのだろう。



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司馬日記外伝 店員日記5

その後の、とある店員の日記です。

【告知です】
くらげ様より、TINAMIでは(見せられないよ!)な御支援作をお預かりしましたので、弊ブログ「裏紙の落書き。」にて掲載させて頂きました!紳士の皆様は是非御覧下さい!


12月8日

酒楼のほうに青髪の料理の小先生が来た。今日はお客さんとして新メニューの「おむらいす」を二つ注文されたので、一つじゃないんですかって聞いたらお連れ様が後から来るっていわれた。

配膳して、タレお掛けしますねって言って搾り出す形の赤いタレをおむらいすに掛けたら小先生が「あ――っ!?」って叫んだのでびっくりしてたら給仕長が来て、申し訳ありませんお取替え致しますって言って下げちゃった。

後で給仕長に何がいけなかったのか聞いたら、あのおむらいすは後から来る予定の例のお兄さん用で、小先生が味付けをするのでタレは掛けないで出さなきゃいけなかったらしい。しかも取替えを用意する前にお兄さんが来店して待たせちゃったので小先生のご機嫌が斜めらしい。

知らないってばー。

 

12月9日

生協の新商品を配達させられた…

常連さんで、新作で寸法合うものは全部買うお客さんなんだって。

総務部長さんっていますかーって魏の総務部に行ったら、あたしだけどって出てきた女の子は可愛かった…

なんかもー世の中信じられない…。

 

12月13日

生協で勤務してたら、背が高くて赤い長髪の子が「新作の下着が今日発売だと思うんですけど…」って買いに来た。良く知ってるな!?

つかその娘新作全種類買ってった…若そうなのにお金あるんだなぁと思ってたら、入れ違う寸前に前に酒楼にきた蜀のょぅじょ?ちゃんが来た。長髪ちゃんはょぅじょちゃんを知ってたみたいで挨拶して出て行ったと思ったら、今度はょぅじょちゃんが「う、薄い本は有りませんか…」って聞いてきた。

薄いとはどんな本でしょうかって聞いたら、やっぱいいですって言って慌てて出て行っちゃった。良かったのかなー。

 

12月16日

お店の子が私のほかにも何人か生協の方に勤めてるけど、当番表に「遅番(18:00まで性協)」って書いてる子がいた。

誰がうまいこと言えって言ったよ!

 

12月22日

生協のほうは従業員割引が利くって教えてもらった。…嬉しくない…。

 

12月23日

と思ったら、となりの普通の生協の方でも割引が利くらしい。ちょっと行ってみようかな。

 

1月5日

非番だったから生協(えっちじゃない方だぞ!)に行ってみたら例のお兄さんがいた。先日私が潰れて役所の仮眠室に放り込んでもらったお礼とお詫びを言ったら、こないだの話はもっとお知り合いになってからよく考えてって言われた。さっぱ覚えてないからなんだかよくわからなかったけど、

 

「つまりそれってお誘いですよね、また飲みがいいです?私、知的なほうなんで図書館とかでもいいですし馬だって乗れますから遠駆けでもいいですよ?て言うか私今日なら暇なんですけど、どうせお兄さんだって碌に仕事なんかしてなくて暇なんでしょ?今更お兄さんの一人や二人居なくなっても誰も困りゃしないんだから今からお出かけしちゃいましょうよ!」

って冗談めかして言ったとたん青い顔して抱き寄せられて口を塞がれた。…手でだったけどね!

と思ったらどこからともなく銀ぱいさんと銀ちっぱいちゃんが来て、

「今こちらの方から何か聞こえたような気が」

って揃って不思議そうな顔して聞いてきて、お兄さんが物凄い慌てて何でもないから、何にも無いからって何度も言って帰らせてた。

あの二人はたぶん風紀関係者で、サボる関係の話をしちゃいけないという事を察した賢い私ちゃんは二人が見えなくなるまで黙って見送った後に

「で、どうです?」

ってお兄さんに言ったらいつの間に来てたのか青(大)さんに後ろから肩を叩かれて、

「悪いがこの男はこう見えてなかなか忙しくてな、今から仕事で疲れた姉者とその妹を慰労するという大事な仕事があるんだ。見ない顔だが、関係者ならちゃんと当番表は確認するようにな」

って言って、「じゃまた今度」って言うお兄さんを軽々とお姫様抱っこして連れて行った。

 

お兄さんは当番制のお仕事をしてたのか。

 

1月8日

蜂蜜ちゃんが生協の方に来た。未成年ぽい子が来てももう驚かないぞ!

黒い眼鏡と覆面してたけどどうみても蜂蜜ちゃんだった。おどおどきょろきょろして、一番大人しそうなぱんつ(それでも普通のより色々細い)こそこそっと掴んで勘定に着たけど、こちら11号ですが本当に宜しいでしょうか…ってかわいそうに思いながら聞いてあげた。涙目の蜂蜜ちゃんに合いそうなのを選びなおしてすぐ会計してあげたら、出口にヘアピンちゃんがいて「あっれーお嬢様何買ったんですかぁー!?きゃーすっごいえっちじゃないですかぁ、これちょっと動いたら脇からはみ出ちゃいますよ!こんなの買って一体どこ行くときに着けて誰に見せるんですか?ねえねえはみでちゃってるのを誰に見せたいんですかぁ?」って声掛けられて悲鳴を上げてた。

 

それが普通の反応だよねー…。

 

1月16日

落書き帳がすごい勢いで巻数が増えていく…特に鍵付きの方が。なんか種類も増えてるし。

給仕長の話じゃ役所の中の庁内食堂にも備え付けられたらしいけどあっちは誰が管理してるんだろ。

 

1月20日

めいど服が生協に入荷した。かわいいね!どこも穴あいてないし!透けてないし!

「月型」「華雄型」「司馬懿型」「呂蒙型」って四種類あって、店に掲示しろって書かれてる注意書きには

『1.呂蒙型以外はあくまで勤務時間外の私的な用途として販売を認可されており、公務中の着用は禁止されています。発見された場合は当局に処罰される場合があります

2.「甘寧型・周泰型」は意匠権者の許可が取れておりませんので、当面販売予定はございません』

って書いてあった。

でも確か銀ぱいさんと銀ちっぱいちゃんが昼間庁内でこのめいど服着てるの見たことあるけどなぁ…それに甘寧型だとかも意匠権がとかけち臭い事言わないで売っちゃえばいいのに。

 

1月22日

着ちゃダメとか言われると着たくなるのが人の常。

生協に昼間勤務で展示用が一着あったから着てみたけど可愛いよー!

御機嫌さんでお弁当庁内買いに食堂に行こうとしたら、お兄さん見つけたんでこんにちはーって手ェ振ったら血相変えて走ってきた。なんだろうと思ってたらあっという間に生協の中に押し込まれて

「逢紀さん!ダメだ今すぐ脱いで!!」

って脱がされながら押し倒されたよ!

お兄さんのことは吝かじゃないけど「こんな昼間からダメですよ!」って言ったら「昼間だからだよ!」って訳の判らない事言うし、「でもこんなところじゃダメですってば!」って言っても「その通りだよこんなところじゃダメだって!」ってなんか会話が成り立たなくて揉み合ってたら、お客さんが入って来る気配があって咄嗟にお兄さんが入り口に『休憩中すぐ戻ります』の札をかけて倉庫に私を連れ込んだ。

店の中にどうも聞いたことある多分銀ちっぱいちゃん?らしき誰かいませんかーみたいな声が暫くしてたけど、店から出てったらしい気配がするとガタガタ震えながら私を抱きしめてたお兄さんの力が抜けてへたり込んでた。

 

お兄さんは「昼間このめいど服を着てると本当に処罰されるみたいだから慌てて止めた」って言うけど、銀ちっぱいちゃんが平気で着てたの見た事あるんだから、そんなの言い訳でお兄さんが私ちゃんの可愛さにやられちゃってたのは確定的に明らか。お兄さんの事は嫌いじゃないし、今日のことは黙っててあげるから今度一緒にお出かけしようねって言ったら微妙な顔しながら頷いてた。

いい雰囲気でせまってくれたら流されてあげよっかな?うふ♪

 

…ところでお兄さんなんで私の名前知ってたんだろう?

 

1月28日

最近マル危さんたちが来店しても大人しい。

たまに大きな声を出す事はあるけど暴れないし。

良かったですねって給仕長に言ったらはあまあそうではありますがって微妙な顔してた。良い事じゃないのー?

 

2月6日

すごい殺伐とした雰囲気のお客さんが来て奥の個室に通したら、後から困ったような顔した銀ぱいさんが来た。

しばらくしたらその個室から怒鳴り声が聞こえて怖かったので給仕長に見に行ってもらうと、三人くらいが喧嘩してたらしくて銀ぱいさんとか残りの人が宥めながら退店していった。

「この使い道のない腐れ穴が」ってどういう意味かなー。

…そーゆー意味だよねー。女の喧嘩こわい。

 

2月11日

お昼になったので奥の旅館風?に改造された部屋の清掃に行ったら、桃色大子さんがまっぱで寝てた。一旦外に出て鍵掛けて「お客さまー退店時刻でございますー」ってコンコン扉叩いて起きてもらったら、出口二つあるけどどっちから出ればいいの?って聞かれた。表から来店したのを見た記憶がなかったから貴賓用の裏口から入ったんだろうけど、どっちでもいいですよって答えたら「あー腰いたい」とか言いながら表から帰っていった。

うーんすごいわがままぼでぃ、荒ぶるおっぱいだった。

 

2月15日

彩(張郃)が公務員試験の申込書と募集要項を持ってきてくれた、私受けるなんて一言も言ってないんだけど。

常時人足んなくて試験も頻繁にあるらしい。「ぶっちゃけあんたが総務に来れば私が助かるから」って彩も正直だ。

給料はまあまあいいしオトコも紹介するよ?って言われたけど、今「ちょっといいな」って思ってる人とうまくいかなかったら受けるかも、ってとりあえず答えておいた。

 

2月20日

例のお兄さんとデートした。…って言っても店内だけどね!

開店担当の日だったから一人で早く店に入って、開店前に来てもらってお昼ご飯作ってあげたら「おいしいよ」だってさ!

ほんで「逢紀さんはいいお嫁さんになれるね」とか言って!やばい私のこと落としにきたどうしようと思って「じゃあこれから三食食べさせてあげよっか?」って言ったんだけどなんか「いや家のメシはムチャクチャ旨くてそれは無理」みたいなことをごちょごちょ言われたところで給仕長と小先生が入店したのでデート終了。

 

と思ったら小先生がお兄さんの食べかけを一口食べて、にこっとしてからお兄さん連れて帰ってった。

…鼻で笑ってたー!絶対あの小先生「所詮素人料理ね」って鼻で笑いやがったぞちくしょーめ!ふーんだ素人には素人の良さがあるんだい!

 

店でぷんすか怒ってたら給仕長が「あの子はそういった意地悪をする子ではないので無意識だったのではないかと思いますけどね。もし本当に笑ったのだとしたら、前のおむらいすの件の意趣返しをされたんではないですか」だって。くっそーしつこい奴め。

 

2月28日

新人ちゃんが入店した、これで私も先輩だー!

少し年下みたいだけど真面目そうでやる気満々って感じ。

 

3月1日

新人ちゃんは琰ちゃんっていう名前だった。琰ちゃん可愛いよ琰ちゃん!

私も物覚えはいい方だと思ってたけど琰ちゃんは凄い、メニューを初見で暗記するか普通!?

 

3月2日

聞いてみたら琰ちゃんったら幼な妻だった!結婚したのはつい最近なんだけど、旦那さんとは政略結婚だったんだって…

「ですがこれから旦那様の事を知っていき、また私の事も知って頂こうと思います」

って琰ちゃんけなげ!

 

3月3日

琰ちゃんなんと生協の方も勤めることにしたらしい…すごい真面目そうだったからあのお店の意味分かってる?って聞いたら

「はい!房事で殿方により喜んで頂くための道具を販売しているところと聞いています!今私が一番必要としている事ですので勉強も兼ねまして勤めさせて頂きます!」

声 が で か い のでそういう事は小さな声でねって注意した。

琰ちゃん可愛いし頭もいいんだけどちょっとずれてるとこある…。



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司馬日記外伝 バカなチョロ子の昇進試験

上司の桐花(荀攸)さんが、仲達さんの昇進試験の答案と結果を事務局から受け取りました。


判定結果:不合格

 

【**年度 魏 昇進試験(論述)<部長級>】

受験者所属 氏名:総務部 司馬懿

以下の設問に解答しなさい。

 

---------

 

『政策系問題』

 

問一.<行政方針>

本年度予算編成を踏まえて行政方針について簡潔に述べなさい。

 

答:

全般として軍事費から公共事業費への移行が進んでおり、三ヵ年計画に沿った形で社会基盤の充実を図る方針となっている。また軍事費内訳も人件費から設備費に重きが置かれるようになり、装備の近代化及び精鋭化により総兵数を削減する事で総経費の削減を図ると共に生産人口の増加を狙っている。

 

---

 

問二.<教育政策>

三国塾が開校されて約半年が経過しました。人材育成についての経過と課題、対策について簡潔に述べなさい。

 

答:

後漢末期においては諸侯が独自に人材を集め限られた内容の教育しか行えない非効率的な方法であったが、統一後は塾に多くの教育種目、資料及び設備が充実した中で多くの塾生が年齢・知能・身体能力に応じた教育を受ける事が出来るようになった。しかし塾は王都にしかなく地方の子女が教育を受けにくい状況にある為、水鏡女学院のような私立校に費用の助成及び指導要領の伝達を行い、王都に準じた教育機関を設立する必要がある。また容姿心身に優れた一定年齢以上の女子学生には王粲殿著「三国志」の講読を薦め、女性としても一刀様にお尽くしする事を是とする教育を推進すべきである。

 

---

 

問三.<政治の中立性>

王都下級職及び地方自治体においては公私の分離が進んでいますが、高位職は全員が後宮関係者となっています。政治の中立性・公平性の確保方法について簡潔に述べなさい。

 

答:

後宮関係者は皆一刀様の御為に公私に奉仕するものであり、それをお受けになる一刀様御自身に絶対の中立性・公平性と臣下への愛が御有りなので問題は無い。

 

---

 

問四.<危機管理>

現在は国内外共に政情が安定し、また大規模な災害も減少していますが、それは今後危機的状況が現れないという事を意味するものではないと考えられます。事前の備えが必要と思われる危機について挙げ、その対応方法について述べなさい。

 

答:

この世で最も重要な存在でいらっしゃる一刀様の暗殺が最も厳格に管理されるべき危機である。厳罰化は当然のことながら計画を未然に防止することが重要である為、証拠が無くとも企てる恐れがあると当局が判断した場合は逮捕及び拷問を行えるよう法改正が必要である。また一刀様に接触機会のある重臣は、男性職員は一刀様を妬む恐れがある為採用するべきでない。また才あって見目麗しくとも妬心を持つ女性職員は遠ざけ、心身ともに一刀様に御仕えする意思を持つ女性で固める事で安全を高める事が重要と考える。

 

---

 

問五.<経済政策>

近年は政情の安定化に伴い経済は順調に発展してきている。現状及び今後推進すべき方針について簡潔に述べなさい。

 

答:

道路・河川及び都市部給排水の整備等の社会基盤の整備に伴い農業の収率・商業税収の向上は目覚しいが、一刀様の意匠の御才能による後宮向け衣料縫製技術の爆発的発展は近隣諸国に類を見ないものである。これらの製品を積極的に輸出し、かつ技術の漏洩防止・向上及び保護に努めるべきであり、また一刀様が御意匠にお時間を取れるよう瑣末な決裁事務は省略し、後宮には御創作意欲を高められる女性を揃えるべきである。

 

-------------

 

『適性系問題』

 

問六.<組織での役割>

あなたの職種・階級において、今後求められる人物像について述べなさい。

あなたの職種・階級:(総務・管理職)

 

答:

少なくとも、行政組織は拡大の一途にあって多様化している行政課題に柔軟に対応出来る思考力を持ち、総務の意義である組織や個人の利害を敏感に理解し調整に努める丁寧さを備えた者であって、かつ公私とも一刀様の為に全てを捧げ御意思には従順に従う忠誠心を持ち、一刀様を心から御慕いし昼は公務に尽くし夜はその身を以ってお慰めする意思をもつ女性。

 

---

 

問七.<自己理解>

職務においての自身の強み、弱みについて二点簡潔に述べなさい。

 

答:

(あなたの強み)

入庁以来財政及び事業計画全般に関わっており、事業の策定・進捗管理に慣れている。

私自身について、一刀様に心身ともに好ましいと仰って頂いた事がある。

(あなたの弱み)

一刀様に関わる会話についていけてない事がしばしばあり、その為一刀様の為の関係各所の利害に対する理解が不足し調整が不十分な事がある。

技量不足により一刀様への御奉仕が十分に行えていない。

 

---

 

問八.<職員倫理>

括弧内に適切な語句を入れなさい。

 

セクシュアル・ハラスメントに該当するかしないかは、一般に( 一刀様 )の主観によって判断される。

 

---

 

問九.<業務の進め方>

あなたはある制定検討中の法令の事務担当者であったとします。

これからその法律の関係各所轄部署を集めた調整会議に一次上司と共に出席するところでしたが、直前になって二次上司より「あなたが以前担当した事務について、今すぐ会議で説明してくれないか」と依頼されました。その事務については貴方が一番詳しいものとして、貴方のとるべき行動について述べなさい。

 

答:

一次上司に二次上司からの依頼について説明し、いずれの会議に出席すべきか自分の意見を添えて一次上司の判断を仰ぐ。

 

---

 

問十.<業務の進め方>

あなたはある制定検討中の法令の事務担当者であったとします。

これからその法律の関係各所轄部署を集めた調整会議が始まるところでしたが、会議の直前になって一刀様が「四人で昼食の予定であったが、急遽一人分空きが出来てしまった為これから昼食に行かないか」と誘われました。不運にもあなたの部署の人は全員離席又は出張中で、あなた自身は既に昼食を摂っており、かつ当該法令の事務局は貴方しかいなかったものとして、貴方のとるべき行動について述べなさい。

 

答:

一刀様の御指示は全てに優先すべきなので、一刀様と昼食を共にする。会議については事務局からの連絡がなくとも出席者達で実施、又は困難であれば延期を判断すべきである。

 

------------------

 

問十一.<自由論述>

あなたの業務において特に関心がある事について論題を定め、簡潔に述べなさい。

 

論題:(  一刀様   )について

一刀様は御聡明にして見目麗しく、身も健やかにして寛仁のお心に満ち溢れ、御声は天上の琴の如く朗々と胸に響き渡り我々臣民の日輪として君臨していらっしゃる。昨日も廊下ですれ違った際には親しく名前をお呼び頂き御挨拶を賜り、また三日前には決裁にお持ちした書類の一部を落とされてしまった際にも私が拾うべき所を制されて御自身で御拾い頂き、六日前には庁舎の窓閉めを行っていたところ「寒いね、お疲れ様」と御労いの言葉を頂く等細々とした所までお気にかけて頂いている。しかも九日前の御伽の際には(以下裏面につづく)

 

 

---------------------------

 

「…ねえ仲達あたし怒ってるわけじゃないんだけどさ、あんたもうちょっとだけでも本音と建前って使い分けられない?」

「はあ…私としましても、極力思うところは抑えて採点者の立場になって模範回答を目指したつもりなのですが…」



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司馬日記外伝 酒楼「三国一」の落書帳 hujisai版

緊急告知です!
飯坂様が仲達の立ち絵を描いて下さいましたよ!是非皆様見て下さい!!!

ついでに…
酒楼「三国一」にあるの落書帳の、ある章です。

上の告知がしたいという理由だけで一気に書き上げました。
テンション上がって色々書いちゃいましたがTINAMI用に若干削除しています。


お前らの一番好きなプレイ、やりたいプレイについて語る章

 

 

1:後宮の名無しさん

語れ

 

2:後宮の名無しさん

まずお前が語れ

 

3:1

新後宮の高台の露天風呂。風呂からは見晴らしいいが下からは見えないし声も届かないから。

 

4:後宮の名無しさん

あれ「周囲に気兼ねなく外で」って要望多くて出来たらしい

 

5:戯志才

「壁ドン」

 

6:後宮の名無しさん

いいねえ

 

7:天水娘

「壁ドン」って何でしょうか

 

8:阿蘇阿蘇読モ

阿蘇阿蘇も読んでないのか素人が

壁際に追い詰められて壁どんって叩かれて「お前は俺のだ」みたいな事を言われるプレイ

 

9:7

一刀様はやりそうもないと思いますが…

 

10:後宮の名無しさん

だからいいんじゃないか

 

11:後宮の名無しさん

女は求められてなんぼ

お情けで抱いて貰ってる女はクズ

田舎へ帰れ

 

12:渤海の田舎娘

やめてください

しんでしまいます

 

13:

一刀様の不審者撃退の夜間訓練。

撃退される役で後ろから押し倒されて以下略

マジで死ぬかと思った

Mにも目覚めてしまったどうしてくれる一刀様

 

14:蜀の一刀様の犬

おいそこかわれ!

 

15:呉の一刀の犬

あれはなんで明命と魏の新人が指導員だったんだ

次回は明命外して私がやる

 

16:まっとぷれいの権威

だが断る

ローションマットプレイもう少し上達してからどうぞ

 

17:後宮の名無のさん

倉庫で片足立ち

声漏れないようにずっとキスしっぱなし

 

18:後宮の名無しさん

たまらん

 

19:桐

むしろ片足吊り縛り

 

20:後宮の名無しさん

来た業界の人たち

 

21:桂

縛られるのは邪道

力づくで押さえ込まれるのが至高

 

22:後宮の名無しさん

腕力差というものがあってだな…

 

23:後宮の名無しさん

なるほど某愛紗と某思春乙

 

24:蜀の一刀様の犬

愛紗ではないがちょっとでもされれば力が抜けるのでご主人様でも十分押さえ込める

なお私は愛紗ではない

 

25:桐

文官だが縛ってもらうと一刀様の両手が空くという長所がある

 

26:後宮の名無しさん

なるほど

 

27:後宮の名無しさん

…指を舐めさせて頂くのが好きです…

 

28:後宮の名無しさん

変態も来た

ただし気持ちはわかる

 

29:後宮の名無しさん

このヘタレぶり、仲達か?

 

30:27

仲達さんのことは知っていますが違います

 

31:後宮の名無しさん

じゃああの辺の連中の誰かか

まあ深くは突っ込まないでおいてやる

 

32:鳳は一匹

一刀様の玉露を飲ませて頂くのが好きです

人生変わりました

 

33:後宮の名無しさん

激しく同意

あの苦味がいい

 

34:後宮の名無しさん

そのお茶は結構好きだ

 

39:華蝶仮面

山小屋で酒飲みながらしっぽり

 

40:後宮の名無しさん

なんだその贅沢時間

 

41:後宮の名無しさん

メイドプレイ

 

42:後宮の名無しさん

それやっていいのか?殺されるんじゃね

 

43:後宮の名無しさん

伽とか私的な場なら問題なし

なお公務中に着た近親上等☆姉妹は漏れなく給湯室へ呼び出された模様

 

44:後宮の名無しさん

誰に呼び出されるの?

 

45:後宮の名無しさん

お前ここ初めてか

後宮で一番偉い人に決まってるだろ

いいか、【後宮で】だ

 

46:後宮の名無しさん

>>45

理解

不器用なんであれを自作はきついんだが売ってないだろうか

 

47:後宮の名無しさん

生協で売ってるぞ

型式も寸法も色々ある

月型、司馬懿型、華雄型

ただし華雄型はちょっと表を歩けない裾の短さだが

 

48:次女

前見た甘寧型(周泰型?)は無いのかしら?

 

49:後宮の名無しさん

無い

生協に問い合わせたけど意匠権者の許可が取れないので売れないって言われた

どうもあの二人が生協に圧力かけたらしい

ただ呂蒙型はある

このへん人間の出来が違う

 

50:後宮の名無しさん

プレイの話しろよ

 

51:後宮の名無しさん

幼児プレイとかどうよ

 

52:後宮の名無しさん

ないわー

 

53:当局

おいやめろ

 

54:蔡文姫

大変素晴らしいと思います

私も一刀様のそういったお求めに応じたいです

 

55:後宮の名無しさん

実名やめとけ…

 

56:後宮の名無しさん

54がまぶしい

 

57:後宮の名無しさん

あんたはこんなところに来ちゃだめだ

一回詠と話してこい

 

58:蔡文姫

詠様とお話しました

もうこの落書帳を見てはいけないと言われましたので見ない事にします

皆様今後も御指導御鞭撻宜しくお願い致します

 

59:後宮の名無しさん

54がきれい過ぎる…

私にもあんな頃あったなぁ…

 

60:後宮の名無しさん

ちなみに蔡文姫が幼児プレイは一刀様が要望していると思っている件

 

61:当事者

いや一刀も満更じゃない

 

62:後宮の名無しさん

>>61

やったのか!?

 

63:61

かぶらないようにあえて言っといてやる

凄い良かった

 

64:後宮の名無しさん

勇者だな…

どんなプレイでも対応する一刀様マジ一刀様

 

65:61

元々一刀がやろうって言った

私は応じただけ

66:後宮の名無しさん

マジか!?コツとか教えろください

 

67:61

・ある程度童顔

・中肉中背以下

・今までの自分を捨てる

・誘い受け

意外と奥が深い

 

二番煎じは痛いからお勧めしない

一刀がかわいそう

 

68:当局

>>65

自分の領域防衛したいのは分かるけど特定されるわよ

そのへんにしときなさい

 

69:後宮の名無しさん

他はないのか

 

70:後宮の名無しさん

部屋でいっぱいいちゃいちゃしたあと下着両方取られて廊下歩かされた

なんであいつは私には鬼畜なんだ

でもそのあとは優しかった

 

71:蜀の一刀様の犬

春蘭そこかわれ

 

72:桐

服は着てたんでしょ

下半身裸か同行されて言葉責めまでされないとM心が疼かない

但し観客は一刀様に限る

 

72:しょう蘭

私は春蘭ではない

えっと…秋蘭だ

 

73:妹

姉者ェ…

 

74:後宮の名無しさん

縁側で上掛け被って膝の上でまったり

次に向かい合い抱っこ

服とかちょっと大変な事になるのでそのまま風呂へ行って以下略

 

75:桂

74あんた風でしょ

 

76:74

75ちゃんの誘い芸は既にネタの域

 

77:75

私はあいつを誘ったことは一度もない

あいつが無理矢理してくるだけ

 

78:後宮の名無しさん

>>77

魚拓

 

>>21

75の真似は色んな意味で無理

75は口の利き方がアレだから歴史と地位が無かったら月さんとかに普通に刺されてる

 

79:後宮の名無しさん

月さん無双www

 

80:権威その2

呉が三国に誇るローションマットプレイ

 

81:後宮の名無しさん

あれは確かにいいものだ

ローション高いが

 

82:後宮の名無しさん

>>81

給料全部突っ込んで箱買いした思春という女がおってだな

というかマットは?

 

83:後宮の名無しさん

>>82

生協で賃貸やってたから借りた

従姉妹と一緒だったから2枚必要だったが賃貸でも高い

簡単に洗えるのは良かった

早く量産されるといいんだけど

 

84:後宮の名無しさん

マットプレイって最近よく聞くけど使い方教えろください

 

85:開発者

隊長と自分にローション塗りたくって抱き合う

はさんで擦って以下略

前で以下略

後ろで以下略←ここ重要

な、簡単やろ?

 

86:後宮の名無しさん

ぬとぬとのどろどろだな一刀様www

ローションのおかげでそっちもって女が増えたらしい

って言うかかなり良かった

 

87:後宮の名無しさん

一刀様から見たら女が増えたのと一緒だよな…

 

89:後宮の名無しさん

姉妹丼

 

90:後宮の名無しさん

やってない姉妹っているのか?

 

91:後宮の名無しさん

結構いるだろ

例えば司馬家の下の子たちとか

っていうかあいつらあれだけ姉妹居るけど誰も丼はやったことないんじゃないか?

 

92:後宮の名無しさん

四女と五女でやった模様

情報源は本人たち

 

93:後宮の名無しさん

西涼馬家の下の子たち

荊州馬家のうちエロ眉毛と生意気女以外

劉琦劉琮姉妹

結構いるぞ

 

94:後宮の名無しさん

劉琦劉琮はまだ子供だろ

 

95:叙

女は年齢じゃない

 

96:94

つっても一刀様は幼女には手を出さない

 

97:叙

幼女ならね

でも心も体も一定以上なら十分ご主人さまの守備範囲

既に三国でお墨付きになっているのも居る

 

98:後宮の名無しさん

本物来た

94はもうやめとけ

叙氏は…頑張れ

 

99:叙

ありがと

こないだじゃれて馬乗りになって擦りつけたらご主人さましっかり反応してたし

例の鏡の部屋でお母さんのとか見て勉強してるから大丈夫

 

100:後宮の名無しさん

…話題変えよう

プレイの話だ

 

101:後宮の名無しさん

炬燵プレイ

李典マジ天才

 

102:後宮の名無しさん

李典も真っ先に自分が出来るから開発にも熱が入るだろ

 

103:西涼娘

耐水材料で作って欲しい

 

104:後宮の名無しさん

馬超乙

 

105:後宮の名無しさん

馬超乙

 

106:103

あたしは馬超じゃねえよ!

それに最近はお漏らししてねえよ!

 

107:野に咲く可憐な一輪の花

お姉さま帰りますよ

108:後宮の名無しさん

首輪をするとご主人さまがよろこぶ

 

109:後宮の名無しさん

業界の方々乙

 

110:後宮の名無しさん

いや…たぶん108は業界の方じゃなくて楽進将軍の業界の方だろ

 

111:後宮の名無しさん

>>108

一応言っとくと一刀様は首輪無くても108のこと可愛がってくれるからな?

 

112:108

そうなの?

 

113:後宮の名無しさん

まちがいない

あんたは持ってるものが違う

 

114:108

わかった

 

115:後宮の名無しさん

いやまてちょっと気になることがある

108が誰だかさっぱり分からないが普段一刀様とどんなふうにしてる

 

116:108

いっしょにお昼寝してぎゅってしてごろごろしてるときがついたら

だいたいそのまままた寝ちゃう

詠がおこってて目が覚める

 

117:後宮の名無しさん

おお…

 

118:後宮の名無しさん

あんなぼーっとしてそうな顔して…えろい…

 

119:神速

馬上で膝に抱っこでそのまま旅

死ぬか思ったで

 

120:西涼娘

死ぬだろ!

 

121:白馬仮面

馬かわいそうだろ!

 

122:野に咲く可憐な一輪の花

119よりも身長差があるので向かい合わせで座ってみた

気絶した

ひどい顔してなかったか後で聞いてみたらいや可愛かったよって言いながら目を逸らされた

死ぬほど良かったけどちょっと泣きたい

なおお姉さまは本気で馬がかわいそうだからやっちゃだめ



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司馬日記40

その後の、とある文官の日記です。
ところで例の落書き帳はなんだか幾らでも書けそうな気がしますので(←大きく出た)、見たいスレがありましたらリクエストお受け致します。(ただスレタイ次第ではTINAMIでは部分削除かも?)


2月28日

後宮関係者への通知で、文烈(曹休)様らがいらっしゃる酒楼に自由記入の冊子がおかれ、それを閲覧・記入する為の暗証番号が配布された。子丹御嬢様に伺ったところ、既に殆どの者に内々に配布されていたらしい。

民営の施設ではあるが文烈様が管理を行うとの事でありそれならば一応差し支えないのだろう。匿名であれば上下関係を気にせず述べられる意見もあると思われるし、私も今度一度見てみよう。

 

3月1日

詠様が公達様のもとを訪れ、二人で暫く会議をされていた。

詠様が魏の総務部を辞されたあと子丹御嬢様と私が公達様に呼ばれ、「これからちょっとした抗争が始まるかもしれないわ」とにやりと笑われたので驚いた。

公達様のお話によると、仲徳様と呉の周瑜様が詠様の地位を狙われており、それを察知した詠様が公達様を総務室に引き込もうとされているらしい。

「要は一番ずっと長く一刀様と居られるあの立ち位置が欲しいって話よ。でもこれお互いに結構難しくてね、風たちとしてはこないだ蔡文姫の話が孫策に漏れたっていう不祥事を楯に詠に譲歩させたいんだけど、詠は詠で渡りに船なところもあって仕事は嫌いじゃないけど一刀様にしがみついてたいって思ってるから、風たちとしては月さんに「では詠ちゃんはメイドに専念で」とか介入されたりすると総務室の分の仕事が増えるだけで旨みが無いのよ。風は稟と桂花も引き込んで、周瑜は陸遜と蜀の二枚看板に声を掛けてるみたいね。とは言ってもね、実際に押さえればいいのは風だけよ、周瑜は自動的にうちの弓が迎撃するしね。ただどう動くかよく分かんないのがあのニヤニヤ女ね、楓(曹真)は袁術の伝手があるでしょ?ちょっと探りをいれといて」

と言われて散会となった。

 

…一刀様のお心を乱すようなことにならなければよいのだが。

 

3月2日

子丹御嬢様に一席お付き合いをお願いした。昨日公達様から伺った話について詳しい御事情と今後について伺ったところ、

「まず稟様と桂花様を余り問題視されてないのは、稟様は一歩引いたところがあるといいますか、自分の立ち位置に納得されていて他人をおしのけてまでその立場に行きたいとは思われていないからだと思うわ。逆に桂花様は一刀様の特別であることをかなり強く自負されていると思いますけど桂花様はほら、ああいう喋り方しか出来ない方だから月様と相性が悪いし、加えて部下になる貴女とも相性良くないから多分自分が詠様の位置には来れないだろうと思ってらっしゃるんじゃないかしら。周瑜さんは余り御事情が分からないけど仮に正面切って挑んでくるとして、その時は同じくらいかそれ以上に一刀様の姉としての自負がある秋蘭様に情報を流しておけば是が非でも阻止しに来られるでしょ?それと陸遜さんはって言うか呉の大体の人は、孫権様に遠慮してうっかりすると孫権様以上の立ち位置になりかねないこの場には突っ込んでこないって公達様は読んでるのよ。で、詠様が公達様に話を持ってきたのは、今後ずっと立場を狙われるよりも多少公達様に言い方は悪いけれど利権と言うか、一刀様との時間を譲る代わりに総務室の仕事もやらないかっていう取引のためよ。公達様は性癖はアレですけどそのおかげもあって月様と相性悪くはないし、なにしろ仕事は出来るけど扱いづらい貴女をうまく使えてるってことで白羽の矢をたてたんだと思うわ。それに貴女を総務室に置いておけば臥龍鳳雛避けにもなるしね」

と解説してくださった。確かに文若様は多少苦手ではあるが何故私が居ると諸葛亮殿、龐統殿を締め出すことになるのか気にはなったが、さらに張勲殿とはどのようなお話をされるのでしょうかと伺うと

「んー…、どう隠しても多分なにかしら察知されるだろうからもう端的に聞いてみようかしらって。七乃さんは七乃さんで一刀様について独特な自負を持ってると思うんだけど、今回みたいな政治のど真ん中には首を突っ込んでこないような気がするのよね」

とのことだ。

 

…閨房の乱れは亡国の兆しとはならないだろうか。どうか、一刀様の御世は安泰なものであってほしい。

 

3月3日

どうにも落ち着かず、元直、子敬と一席設けて相談してみたが、元直は

「考えすぎじゃない?政治が閨房を利用してるんじゃなくて閨房が政治を利用してるんだから大事にはならないと思うけど。それにいざとなったら一刀様がどうにかしてくれるでしょ」と言うが、子敬は

「でも詠の話じゃないけど仕事減らしてイチャコラしてたいですみたいなのが罷り通るようになっちゃったら皆じゃあ私もってなってこの国一気に終わるわよ?雪蓮様みたいな楽隠居が認められてるのは跡継ぎに蓮華様が居るのもあるけど、隠居してから一刀様との時間が急に増えたりしてないから周りも許してるんだと思うわよ。あんまり女のわがままを一刀様が甘やかすみたいな前例作っちゃうわけにはいかないと思うけど」

と言う。

いずれにも理はあるとは思うが…。

 

3月4日

ところで昨晩例の冊子集をぱらぱらと見てみた。

鍵の無い方では

・〇〇と××、なぜ差がついたか…慢心、環境の違いについて語る章

・昇進試験全般について語る章

・最悪の暗黒部署はどこか決定する章

 

などとあり、また鍵付きの方はとりわけ多くの章が立てられており多事多様な事柄について語られていたが、相当生々しい内容もかなり含まれていて驚いた。

 

・後宮の人々について語る章

・一刀さんのお気に入りですけど何か質問あります?の章

・【統一後の女限定】新参者集まれの章

・お前らの一番好きなプレイ、やりたいプレイについて語る章

・貴女の妄想を短編小説風にしてあげる章

・白なんとかさんと共に苦難を乗り越える章

・【関係者限定】あいつが私にしたことを自ま…糾弾する章

・【広き門?狭き門?】後宮を目指す女が集う章

 

しかし何か足りないと思い思案したところ、一刀様御自身の事が語られている章がなかった事に気づいた。

早速「今日の一刀様について語る章」という章を立て、一刀様について気づいた事を酒楼に行った日に記すことにした。些細なことでも皆の一刀様についての理解が深まれば喜ばしいことだろう。

通り名を記す欄があった為、「仲子」という名を使うこととした。

 

3月5日

子丹御嬢様に休憩時間中に庭に連れ出された、例の詠様の件だった。七乃さんに探りを入れるって言うか、もうどっちかって言うと相談したんだけどと御嬢様が仰るには、

「難しい事になる前に一刀さんの腰にモノ言わして収めちゃったほうがいいんじゃないですかぁ?まず詠さんの方には『メイド業だけになったら実質一緒に居られる時間減りますよ、それに一刀さんの仕事の入れられ方次第でどうとでも減らされちゃいますよ?それに月さんと仕事半分こにして月さん納得します?』、風さんには『本気で詠さんの位置に立って月さんとやっていけます?精神的負担で一刀さんとヤっていくどころじゃなくなりますよ?』ってちょっと脅かしとくんですよ。で一刀さんが風さんを風風俺の風くらい言いながらどぷっとまみれにして宥めておいて、詠さんの方も詠とは長く一緒に居たいんだとかほざいて軽く一発かましておけばまあ大体収まりますよ。周瑜さんは別に総務室に入りたいんじゃなくて姉的立ち位置確保出来れば文句ないんですから、あのデカいおっぱいモミモミしながら『冥琳が後ろで見ててくれるから俺はやってけるんだ』くらい囁いてやればコロリでしょうし、荀攸さんは女同士で話させると面倒ですけど一刀さんが苦い飴でもしゃぶらせながらこうしてくれとか言えば絶対逆らわないでしょう?で最後に風さんとかになんか適当な役職つけてちょこちょこ顔出せるようにしてやりゃそれで納得して御終いですよ」

と言ったという。

現実的な案だと思うから、桐花様にも伏せて一刀様にこの線で御報告と御提案するわと言われたので、総務室にも籍がある私の方からお話致しましょうかと申し上げたが言下に「ううん仲達じゃどう伝わるか分からないから駄目」とぴしゃりと言われてしまった。

ただ、その足で一刀様の御部屋に向かおうとして「やだ私ったら、下着換えてかなきゃ」と言って更衣室の方へ踵を返されたのを見たときは多少釈然としないものがあった。

 

3月7日

総務室で勤務していたところ、困惑された御様子の劉備様が泣かれていたのか目を赤く腫らした蔡文姫殿を伴って月様を訪ねて来られ、会議室へと入って行かれた。

珍しい取り合わせと思ったがすると直ぐに詠様が呼ばれて入っていかれ、暫くすると曹操様と袁紹殿も呼ばれたらしく首をかしげながら入って行かれた。

その後、詠様と曹操様が「元はと言えば華琳が」「だからってこれは脅迫よ脅迫!」等と言い争う声が漏れていたが、退勤時刻間際になって皆会議室から出てこられた。

袁紹殿、月様と劉備様は御機嫌の御様子で、特に劉備様は蔡文姫殿を「ご主人さまだから絶対大丈夫だよ!」と励まされていた。

一方曹操様と詠様は悄然とされており、「なんで私がこんなことを」「自分が蒔いた種でしょ諦めて」等とぶつぶつつぶやきながら退室されていった。

 

3月9日

新人事が発表された。総務室付き非常勤担当参与に仲徳様他各国から数名が任命された。先の御嬢様のお話の通りなのだろう。

 

3月10日

公達様に、総務室の参与になられたそうですがと伺うと、

「んふん、だってしょうがないじゃない…普段お願いしないと苛めてくれない一刀様が、自発的にあたしのことひん剥いて頭掴んでがくがくしながら『俺の言う事を聞け』ってドス利かした声で言ってくれたのよ?言いなりになる以外無いじゃないの雌犬的に」

と言って妖しい目つきで何かを反芻するように唇を舐められた。それを見ていた御嬢様が「仕事中に変な自慢されても面倒だから放っておきなさいよ」と耳打ちされ自席に私を引っ張られたので、私も仕事に戻る事とした。

3月11日

本日はちょっとした事件があった。

月例の御前会議の開始間際、皆が着席すると大会議室に蔡文姫殿が飛び込んで来られて一刀様の前に平伏し、

「一刀様!今宵、私をお召しになって下さいませ!」

と叫んだ。呆気にとられた一刀様が何か言おうとされる前に袁紹殿が進み出て、

「下がりなさいこの田舎娘!一刀さんは貴女のようなどこの馬の骨とも知れぬ女などお召しになりはしませんわ!」

と妙に得意顔で大見得を切ると、いやちょっと麗羽と言いかける一刀様に被せる様に曹操様が

「そうよ蔡文姫。ここは皆の会議の場、貴女がしゃしゃり出て一刀にお願いをする場ではないわ。出て行きなさい」

と言った。するとお間髪入れずに劉備様が

「ううんちょっと待って!文姫ちゃんは本当にご主人さまのことを知りたくて、仲良くなりたくて本気でお願いしてるんだよ?ご主人さま、文姫ちゃん気持ちを分かってあげて!」と叫ぶと、月様が文姫殿の手を取りながら

「ご主人様、彼女は私の恩人の忘れ形見なのです。どうか、お情けを…」

と静かに一刀様に頭を下げた。

一刀様は口をぱくぱくとされていたが、何か言いたげに周囲の詠様、稟様、仲徳様、文若様を順に見られたがどなたも目を細めるばかりで口を開かれない。困った御様子で振り返られて私と目が合うと直ぐに目を逸らされたが、助け舟をお求めなのだろうと思い

「文姫殿は才媛にして容姿も優れ、一刀様をお慕いする事も一方ならずまた一刀様の御為に努力する事を厭わぬ方と思います。是非お召し頂けますよう」

と申し上げたところ、ごめん今は仲達さんには意見求めてなかったんだと言われてしまった。そうこうしていると文姫殿らが

「一刀様!今宵、私をお召しになって下さいませ!」

「下がりなさいこの田舎娘!一刀さんは貴女のようなどこの馬の骨とも知れぬ女などお召しになりはしませんわ!」

「ソウヨサイブンキ。ココハ」

と始め、一刀様が「その学芸会もういいから!華琳も無理すんな!」と制止された。そののち一刀様が一つ息を吐かれ、「じゃとりあえず今晩飯でも食いながら、ゆっくりお話し合いから…」と呟かれると蔡文姫殿と劉備様、月様らはぱっと笑顔を見せて有難う御座います、良かったねと喜び合って退室していった。

なお劉備様だけは曹操様に「いやいい話だったみたいな雰囲気で出て行こうとしてるけど、貴女は会議に残らなきゃ駄目でしょ」と言われ、頭を掻きながら戻って来られた。

 

しかしその後の会議は妙に刺々しい雰囲気で、既に増額を認められていた害獣駆除事業の予算の報告であったのだが

「(予算が)また増えたのですか」

「(予算を)どれだけ増やせば気が済むのですかねー」

「(事業を)やることしか頭に無いからじゃないですかぁ?」

「(地元と)お話し合いしてからとか言って、どうせやること(事業)やっちゃうんならさっさとやればいいじゃない」

「(相手が)ケダモノだから仕方ないんじゃない?ケダモノだから」

等と稟様、仲徳様、張勲殿、文若様、詠様らから厳しい御意見が出されていた。



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司馬日記外伝 『都の杏(逢紀)と浴槽汚すか』

「あのお兄さん、あんたたちの何なのよ!?」


「あっアニキだ、おーいアニキー!…ああ、じゃあなー!…え、アニキ?あれがアニキだけど。うんそのアニキ。…え、だって知ってただろ?…なんだそーだったのか。まあいいじゃん、頼めばやってくれるんじゃねえか?…は?いいのって何がだよ。…って言われてもなぁ、今更種馬のアニキに他の女抱くなつっても無理だろ。…え?知ってんだろ?…例えば麗羽さま。…うん。…そう、雌奴隷ってやつ。…いや、そんなひどい事はしてないって聞いたけど。…まあいいけど。どうせ麗羽さま暇だろうし行ってみたらどうだ?」

 

「え?何って…そりゃまあ、恋人ってヤツだけど。言わせんなよこっぱずかしいなー!」

 

----------------------

 

「あら、御機嫌よう杏(逢紀)さん。そんなに慌ててどうしましたの?…はあ…?…と言われましても、『あのお兄さん』では分からないのですけれど。…ああ一刀さんの事ですわね、それならその通りですわ。…猪々子さんの?…まあおほほ、何を今更おっしゃっていますの。…当然ですわ、一刀さんはわたくし達の主人ですもの。…そうですわ、可愛がって頂いていますわ。…いえ鞭でびしびしとということはなさいませんわね、ただ最近痛くも無く痕もつかず音は良く鳴る鞭が出来たと荀攸さんがおっしゃっていましたけど。…そうですわねぇ…ふふ、具体的に言うのはなかなか難しいですけれど、何しろ奴隷女の悦ぶこと、悦ぶところをよく心得ていらして一刀さんは本当に雌奴隷の理想のご主人様ですわ。先日も特別室で新作の拘束具であのような格好に縛って頂いて…あらもう宜しいんですの?…ええ、『わたくし達』と言いましたけれど?…そのままの意味ですわ。…?わたくし、杏さんが何をおっしゃってるのか分かりませんけれど、貴女のお知り合いで最近の方と言えば純(田豊)さんと静(沮授)さんですわね。…あら、貴女達は仲が御宜しいから当然ご存知と思っていましたけれど。…この時間なら執務室の方に居るのではなくて?」

 

「はあ…何なのですかって、今も申し上げましたように主人ですわよ?」

 

----------------------

 

「杏さんどうしたんですか、こんな時間に。…え?ええー?…一刀様、ですけれど。ちょ、ちょっと大丈夫ですか、今机とおでこでゴンってすごい音しましたよ!?…ならいいですけど…はい…ええ、私たち二人とも。呼び方はなんなのって…普通じゃないですか一刀様って。…え、だって…譜代の人たちは色んな呼びかたされますけど、私たち皇帝になられてからの就職ですからやっぱりそう呼ばないと…え?…皇帝になられてから。…一刀様が。…ですから、一刀様が。…皇帝。…こ・う・て・い。この国の一番えらい人。…きゃっ!?ちょ、ちょっと声抑えて下さい、ここの会議室壁厚くないんで外聞こえちゃいますから!…あの、もしもし大丈夫ですか?…はあ…あの、杏さん言い方がすごく下品だと思いますけどその…そうですよ。…ず、ずっこん…って、あのもうちょっと表現を……ええ、そっちでも確かにしてますけど…そんなに馬鹿にしたもんでもないですよ?前も勿論いいですけど、後ろもなんて言うか、『あぁこんなところまで一刀様のものにされてる』っていうなんて言いますか実感がありますから。それにそれを言ったら椿(審配)さんの方が先輩なんですよ、椿さんがすっごくいい、されて幸せって何度も言うから、そうなのかなじゃあ私たちもってなっただけですから。…エロむすっ…まあ全否定はしませんけど、そういう事も含めてあの…一刀様と幸せにその、させて頂いてますから。…いや処女は駄目なんて言ってないじゃないですか、私たちだって初めての時はありましたし。…いえ、上から目線なんてつもりは…でしたら一刀様に抱いて頂けばいいじゃないですか、杏さんだってお嫌いではないのでしょう?…そりゃ確かに皇帝様ですけどあまりそういう事気にはされませんし、椿さんだってかつては殺そうとした上で今の身分ですから、あながち…え?…確か夕べが御伽番で今日は休暇とるって言ってましたから、自室の方にいらっしゃるんじゃないですか?」

 

「えっと…まあ、御主人様って言いますか、旦那様ですよ?お仕事の方では一番上の上司さんですし」

 

----------------------

 

「…んーっ…ふぁ…おはよ、杏。…あら、もうそんな時間なのね。…うふ、ちょっと夕べが激しくて…あのお兄さん?…ええそうよ、一刀様。それよりよく私の部屋知ってたわね。…あ、そうなんだ、純が。…で、どうしたの、わざわざこんなところまで。…あは、そうだったんだ、やっぱり知らなかったのね。ひょっとしたらそうなのかなとは思ってたけど。…ふふ、ごめんね、斗詩が黙ってようって言うから。…ううん?猪々子と麗羽さまは本当に言ってないことに気がついてなかったんだと思うわ、純と静は頼んだわけじゃないけど空気読んで言わないでくれたのよ。…うん?…あはは、お妃さまなんかじゃないわよ、雌奴隷。夕べだって一刀様すっごいのよ、昨日はそういう専用の道具が無かったんだけどお皿に乗せた湯飲みを持たされて、もう限界ってとこまで優しく意地悪された後に何度も…あら聞いて欲しいのに、残念だわぁ。…あらそう?昔から知ってる杏に可愛くなったとか言われると照れるわね。…うん、ちょっと大きくなったわよ、ほら。たぷーんてほどじゃないけど。お尻も少し大きくなったし、もう少ししたら杏に追いつくかも。…あら随分話が飛ぶわね。…そうね、斗詩って真面目だから、面白いだけで貴女をだますような事はしないと思うけど…そうだ、斗詩から貴女が来たら会いにこさせてって言われてたのよ。今?今はえっと…うふふ、お風呂に入ってるかちょうど上がるころだと思うから、脱衣所で待ってれば捕まえられるんじゃないかしら」

 

「え?…やだ、分かるでしょ?雌奴隷の素敵な御主人様よ」

 

----------------------

 

「ふう…あ、杏。ちょっとお風呂に入ってたからこんな格好でごめんね。…ああ、お話ね…ここに来られたって事は、もう大体の事は知ってるんだよね?…うん。ごめんね、悪意があって騙そうと思った訳じゃなかったんだけど…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと色々やりすぎちゃったよね?皇帝様相手に。一般人が皇帝様のわき腹つついたら普通死罪かな。殷や紂でなくてもちょっと無理だよね。あとね、銀ちっぱいちゃんって呼んだ人は董卓さん。知ってるよね、残酷無比って言われて、丞相だった董卓さん。で、今はね、一刀さんの身の回りの世話をしてる人なの。身分上一刀さんの次に偉いのは魏呉蜀の王さまだけど、この建物内じゃこの人が一番偉いって言われてる人なのね。その人の身体的特徴を馬鹿にしたらどうなるかな?あとね、あのお店で一刀さんと凪さん…銀髪三つ編みの女の子。が来店したことがあったでしょう?その時に一刀さんの事知らずに追い出そうとしたよね?その時も凪さん凄く怒ってて、殺してやりたいって言ってたんだ。殺してやりたいって。将軍職で警備職の人が一般人一人殺すのなんて簡単だよね?あと怖いっていってた銀ぱいさん?あの人は司馬懿仲達って言う人なの。みてたよね、街で一刀さんの胸倉掴んだ人を力いっぱい蹴り倒した人。それに不敬ですって怒られたのもあの人だよね?あの人一刀さんの安全の為なら他人の命はどうでもいいって心底思ってる人なんだ。それとお店に小柄な女の子二人が来たときも追い返しそうになったよね?あの子達は龐統と諸葛亮って言って蜀の丞相してる子達なの。見かけは大人しそうな子達だけど丞相っていう立場で何人何十人何百人何千人処刑してきたか分かるかな?あと私たちと飲んだとき、私言わせてもらっちゃったけど自分を殺そうとした椿を許した一刀さんはひどいかなぁ?あの時も言ったよね私、そろそろ先手を打たれるかもって。その日は今日かもしれないよね?あ、逃げようとしても無駄じゃないかな。普通に軍が居るし万が一逃げ出せても恋さん…呂布が追ってくるんだよ?人中の呂布。私でも文ちゃんでも一時間持たずに首が飛んでると思うな。杏が逃げ切れるかな?

 

でもね、一つだけ生き残る方法があると思うんだ。って言うのはね、椿が今生きて居られてるのは今までの全部一刀さんが許してあげてって言ってくれたからなの。椿(審配)が今ああいう立場なのは知ってるよね?本来なら極刑だよね?女としても人としても辱めて苦しめて苦しめて、苦みぬく拷問にかけた挙句惨たらしく殺されるはずだったのに、今はあんなにも幸せそう。それは一刀さんが助けてあげてって言ってくれたからなの。でも周りからしたら許せないよね。感情としても秩序維持としても、それで椿は少しお仕置きされちゃったんだけど。でもね、大事なところはそこじゃなくて、たとえ一刀さんが助けてあげてって言ってくれてその場では助かったとしてもね、一刀さんから見えなくなったところでやっぱり事故に見せかけて消されちゃうんじゃないかな。それもとびきり残酷にね。女の人の怒りや憎しみって男の人の比じゃないから。杏、私より歴史詳しいから杏の方が知ってるよね。そうされない為にはどうすればいいかな?私はね、椿が生きていられたのは後宮に入ったからだと思うんだ。一刀さん、自分の恋人達の事は凄く大事にしてくれるんだよ。今でも色んな人同士で色んないざこざが起こるけど、殺し合いにならないのは一刀さんがそれをさせないし、した時にはその人の事を嫌いになるって分かってるから。だから身の安全が保障されるの。ところで杏は一刀さんの事好きかな?って言うかちょっと見てたけど好きだよね?一刀さんは杏の事少なくとも嫌いじゃないと思うよ?今すぐ抱きたいって程じゃないかも知れないけど、体から始まる愛情ってあると思うし一刀さんは一度抱いた娘絶対に捨てないから。それで一つ教えてあげるけど、今この脱衣所の先…お風呂には一刀さんが居るのね。どうするかは杏に任せるけど人質にとってもどう考えても地獄しか待ってないと思うな、ひょっとしたら死なせてさえくれないかもね。死ねば楽になっちゃうもの。私は夕べ椿の前にいっぱいしてもらってて、今日は一回しかしてないから一刀さんはまだ出来るはずだよ。ちょっと助言すると、初めてでもゆっくり時間をかけてもらえばそんなに痛くないからね。一刀さん優しいし上手だし。あと、口を使うときは歯を当てないようにやさしくね。それじゃ、私は上がってるから。また会えるといいね」

 

「…え?何って…ふふふっ、もう分かってるよね。私の大事な人」

 

----------------------

 

「あれ斗詩なんか忘れ物?…え、うわ!?君あのお店の…逢、わぷっ!?ちょ、ちょっと何、何でこんなところに居るの!?はあ…あのここお風呂…はい、杏さん。ごめん前から言わなきゃと思ってたんだけど俺は北郷…ってあれいいのそんなに真名をあっさり?あとちょっと近いって言うか何で脱いで…へ、今すぐ?今すぐって何、ちょ!ちょっと待って!涙目で握らないであだだだだだだ!助けてってむしろ俺が助けて!待ってくれ話そう一回話そう!落ち着いて、話せば分かるから!らめぇぇぇぇー!」



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司馬日記外伝 店員日記6

その後の、とある店員の日記です。


3月6日

お店用のお酒を買出しに行ってたら、遠くにお兄さんが見えたので声かけようとしたらなんかチンピラみたいな女二人に絡まれてた。

ほーらお兄さんには私ちゃんが居なくちゃだめなんだ、私だって現役ちょっと離れてたけどそんじょそこらの女じゃないしお礼は一泊温泉旅行でいいからね!って助けに行こうとしたら何か矢みたいなのが二個飛んできたと思ったら銀ぱいさんと知らない女だった。銀ぱいさんは超容赦無く一人蹴り倒して、知らない女の方はもう一人を脳天から投げ落としてた。

あの銀ぱい、風紀関係者だと思ってたら警備部だったのか…怖ぁー…

 

3月7日

開店担当で部屋の掃除をしようとしたら、いつかの桃色大子さんみたいに裸で給仕長が寝てた。風邪引きますよーって起こしたら珍しく…ってか初めて慌てた給仕長が見れた。

なんか最近裸で寝るのが流行ってるのかな?つーか泊まるほどって仕事しすぎでしょ…。

あとうなじに赤く痕がついてたので教えてあげたら虫に刺されたんですって言ってたけど今3月なんだけど。

 

ところで給仕長細身だと思ってたけど、おっぱいは思ってたよりはあったなぁ…

 

3月8日

一刀さん…

うわぁぁぁぁぁん!なんで皆教えてくれないのさぁ!?

一刀さんとそういうことになってもいいかなとは思ってたからそれはいいんだけどさぁ、初めてがあんな命がけ(結局違ったけど!しかも最後まで出来なかったけど!)だなんてあんまりだー!

半泣きでちょっとちびってて一刀さん押し倒した女なんてきっと私が最初で最後だろうな…ううう。

皇帝の彼女様の一人として、断固やり直しを要求するー!うえーん!

 

3月9日

酒楼の方に出勤したら、銀ぱいさんが司馬懿と申しますがって私を訪ねてきた。

警備部が来たもうだめだ死んだと思いながら話を聞いたら、住居を後宮内に移すか、あと役所で勤務する意思があるかって聞かれた。

普通のお金しか持ってなくて豪華なところなんか住めないから家賃は幾らでしょうかって聞いたら、一刀様の為の経費なので公金から全額出るから無料だって不思議そうな顔されて言われた。

それは物凄い魅力だったけど、今あの人たちの間に入ってやってける自信まるで無い。後宮に住みながらもうしばらくは民間勤務でもいいでしょうかってお願いしたら、前例が無いので調べますだって。

そうだ銀ぱいさんのこともこれからは司馬懿さんって呼ばないと…って言うかあの蹴りで事務員だとか、役所どんだけ怖いところなの…。

 

3月10日

琰ちゃんが昨日の司馬懿さんとのやり取りを見ていたらしくてにこにこしておめでとう御座いますって言われたけど声がでかかったのでとりあえず口を塞いだ。こーのー娘ーはー。

どのようになさったのでしょうか、是非後学の為詳しく教えて下さいって真剣な顔で言われたんだけど、うん実は未遂なんだけどねとも言えずに「んー、まあ、私も大人の女だし?それなりに一通り、普通にはしたけど」

…とか言わなきゃよかった。矢継ぎ早に

「出血はされたのでしょうか?気持ち良かったのでしょうか!?御奉仕もされたのですか、どんなお味なのでしょう!?それに舌で触れられる所は全て痺れるようだと聞きましたが本当なのでしょうか!?」

とか聞かれても知らないっつーの!むしろ私が知りたいわ!

 

3月12日

斗詩が店の前に来てて、思わず凍りついた。

でも斗詩は全然気にしてないみたいで「杏良かったね、一刀さんと!」ってにこにこしながら私の手を取ってぶんぶん振られた。

まあ問題はその後よ。

「杏ったら折角脈ありそうだったのに中々そうならないんだもん。一刀さん、まだの人達の競争率凄く高いからこのまま立ち消えちゃったらって心配になって、ちょっとおどかしちゃったけどうまくいったみたいで良かった♪」

だって。

ちょっとか?あれがちょっとなのか!?ここで犯れなきゃ死ぬんだくらいの覚悟決めたんだぞこっちはー!

 

斗詩が店の前でしばらく待ってると一刀さんがやって来て、御機嫌な斗詩に腕を組まれて店の個室に消えてった。

ぼーっとしながら仕事してたら、一刀さんが部屋からちょっと抜けて今度の休みに前回のやり直しをどうかなって言って来た!もちろん受けたけど!

 

うわぁ皇帝様とデートだ!どうするよ私!?

…そういえば斗詩と一刀さんって何時帰ったんだろう?

 

3月13日

生協の方の勤務日だったけど、お客が少なかったからずーっと店のえっちな下着の見本とにらめっこしてた。だって私ろくなぱんつ持ってないし!ブラだってださいし!

でも可愛いのは高い。たーかーいーよー!

…生協に入る日増やそうかなぁ。それにしてもここの従業員割引に感謝する日がこようとは…。

 

3月14日

純(田豊)と静(沮授)、それと彩(張郃)が店に来たので

「本日のお勧めは肉味噌豆腐となっております、但し調理のためあんたたちの一番いいぱんつ二日間(洗って返すからね)貸し出しが必要です」って言ってみた。

そしたら「それ一刀様にお出しするあんたの生あわびの和え物にする気でしょうが」って彩に言われて不覚にも吹いた。

 

とれたて生あわびだもん!ぴちぴちで美味しいもん!…たぶん。

 

みんな一番いいのは出せないけどほどほどいいのを貸してくれるって約束してくれた。持つべきものは友達だね!

 

3月15日

銀ぱ…司馬懿さんが酒楼に来た。曹休様の例があったので民間勤務が認められたって言われた。それと居住規則とか引越し代・備品代の申請書とかいっぱい書類渡されながら説明された。ちょっと聞いた限りだと、色々面倒そうだけど経済的には結構楽になりそうな感じじゃない!?

 

ところで曹休様、曹休様…どっかで聞いた名前のような気がするんだけどなあ。

 

3月16日

司馬懿さんが又来た。例の落書き帳の鍵の暗証番号を貰ったけど、一般人の前では読まないようにと注意された。

おお遂にあの中身が読めるのか…今度時間があるとき見てみよう。

 

3月17日

例の落書き帳ちょっと見てみた。

一言で言って、エグい。

私この人たちの中に混じってやってくのかぁ…

 

ところで『【広き門?狭き門?】後宮を目指す女が集う章』ってのも見てみたら、斗詩の言ってた事もあながち間違いじゃないくらいの競争率っぽい。つい私この店から後宮入りしましたって書き込んだら無茶苦茶驚かれた。

 

斗詩は良かれと思って私を脅迫…じゃない、背中を押してくれたんだよね?

信じさせて斗詩!?

 

3月18日

いかん気になりだすと止まらない。

私の髪って濃ゆかったりしないだろうか。…主に下の方の。

だって他の人のとか見ないし!それに色々どうすればいいの!?やばい、私ちゃん頭いいから何も準備出来てない事に気がついちゃったよ!

 

3月19日

「そんな訳だから料理出してほしかったらちょっとあんたたちぱんつ降ろしなさい」

って店に来たから言ってみたら恵(高覧)にメニューの角で殴られた。女の子の頭ぶったな!?彼氏にだってぶたれたこと無いのに!(いやぶたれたくないけど)

斗詩は

「普通程度にお手入れしてればいいんじゃないかな?以前はみんな全部処理してたけど、最近はそうじゃない人も増えたみたいだし。つるつるだと選べる下着とか特に水着が多いからそうしてる人が多いんだと思うよ?」

って言うけど、うん私が期待してたのはそういう答なんだけどどうやって斗詩は『みんな』のを知ったの?純(田豊)と静(沮授)は「先に『しないで下さい』って言わない限り絶対一刀様にもされるから、その時口に入っちゃわない程度にはしといたほうがいいよ」

だって。友人の忠告が有難いけど、生々し過ぎて微妙…。あとどんだけきわどい水着着てんのよここの人達。

とりあえず「だったら後宮の大浴場で見てくりゃいいじゃんかよ」って言う猪々子の意見採用。

ところで結局自分たちの事は椿(審配)と麗羽様がつるつるだって事以外は誰一人教えてくれなかった、友達甲斐のないやつらめ。

 

3月20日

まだ後宮内に引っ越してないけど、身分証は貰ったから非番の日にお風呂に行ってみた。

の ぼ せ た。

昼間っから風呂入る奴なんてそんな居るわけ無いんだから、夕方から行けば良かったのに私ったらホント馬鹿。

店の他にもどっかで見たことある気がする人が『大丈夫か』って介抱してくれたけど、聞いてみたら公孫瓚だった。あんた逢紀さんって人だよなって言われてなんか私の事知ってたみたいで「ここ(後宮)意外と上下関係厳しい人居るから、一刀と二人の時はいいけど他の人の前じゃ口の利き方気をつけたほうがいいぞ」って言われた。

もうちょっと早くそれを知りたかったです…って言ったら、気の毒そうにそうかまあでも今ここに居るって事は取り返しがつくってことだからこれから気をつけていけばいいさ、何か困ったら相談してくれって慰められた。

是非させて下さいってお願いした。公孫瓚さんいい人だ。

つるつるだったし。ってそれは関係ないか。



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司馬日記外伝 白なんとかさんと共に苦難を乗り越える章(小ネタ)

またしても!飯坂様が今度は店員ちゃんを描いてくれましたよ!
告知のために、ついでに白なんとかさんのスレを書こうとしましたが店員ちゃんの絵にほっこりしてしまって書けませんでした。


白なんとかさんと共に苦難を乗り越える章

 

1:後宮の名無しさん

白なんとかさんと共に苦難を乗り越える章です。

辛い事があったら分かち合いましょう。

小さな喜びもたまには分かち合いましょう。

 

2:後宮の名無しさん

書類でヘマこいて上司に怒られた

 

でも公孫なんとかさんが「よう一刀」って挨拶したら

孫尚香がでかい声で「一刀ーっ!」って叫んで抱きついて来たんで気づかれなかった

 

明日はしっかり書類見よう

 

3:後宮の名無しさん

よし明日は自分の番だってわくわくしてたらあの日になった

 

でも白なんとかさんが数え役満☆姉妹の舞台の券2枚握り締めて

一刀様の部屋に入ろうとしてたら部屋に数え役満☆姉妹がもう来てて

合間合間でしながら舞台見て欲しいから舞台袖で見ててねって約束してる最中だった

 

口でなら出来るから良いやって考える事にしよう

 

4:後宮の名無しさん

武技の鍛錬で甘ね…上官にボコられた

 

でも白なんとかさんが楽しそうに八百屋で買い物してたら

華琳様と一刀様がもっと楽しそうに買い物しててどう見ても晩飯のおかず持ってるのを見て溜め息吐いて全部棚に戻して手ぶらで三国一に向かってった

 

明日は一撃くらいは返してやるんだ

 

5:後宮の名無しさん

阿蘇阿蘇に載ってた可愛い髪留めが売り切れてた

 

でも白なんとかさんが自分と同じように髪を上げてた司馬懿さんに被るからその髪型止めてくれって本気でお願いしてた

 

手持ちの髪飾りでも付け方次第で可愛くなるか色々試してみよう

 

6:後宮の名無しさん

道路工事の設計書書き間違えてて現場で業者と超揉めた

 

でも会議の準備で席に名札を並べてたらなぜか名札が一個足りなくて

誰だろうって皆で首傾げてたら白なんとかさんが名札を持参して会議に来た

なんで名札持ち歩いてるんですかって聞いたら自分で持ってれば忘れられてても大丈夫だろって言ってた

 

明日いい変更設計図作ってこの工事成功させるんだ

 

7:後宮の名無しさん

午後から御伽番だったのに処理してなくて焦ってたら白なんとかさんが剃刀貸してくれた

 

なんでそんなもの持ってるのか聞いたら「処理がいい加減な時を見計らったように一刀が誘ってくるから持ち歩いてる」だって

 

明日からはいつお誘いされてもいいようにちゃんと準備する

あと白なんとかさん有難う

 

8:華蝶仮面

主殿に叱られた

 

でも白蓮殿は主殿に晩飯を作ったのに蓮華殿に先を越された為私にその飯をくれた

「主殿が優しく諭してくれたことであるし今後は時と場を弁える事としよう

白蓮殿も頑張れ

 

9:後宮の名無しさん

一刀様がお姫様抱っこされて嬉しそうにしてる女抱えて自室に向かおうとしてるのを詠様が遠目で見てて

「またあいつは新しい女連れ込んで」って毒づいてたけど

あれは髪を下ろした白なんとかさんで間違いないと思う

あの普通のおっぱいもげろ

末永くもげちゃえ

 

私、明日は笑顔で一刀様に御挨拶するんだ

白なんとかさんも幸せになれ

 

10:白馬仮面

この章はあたしの胸がいっぱいになったのでこれ以上書き込めません



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司馬日記41

その後の、とある文官の日記です。
司馬日記は皆様のコメントや三次創作のお蔭様で続いております。
宜しければ今後も御笑覧下さいませ。


3月13日

亞莎、凪と飲んだ。

凪は最近遠慮しなくなってくれてきたせいかたまに飲みながら愚痴る事がある。

「亞莎は立派です…こんなに可愛らしいのに、あんなに、あんなにえっちで可愛くって…それに引き換え私はいまだにこう…なす術ないと言いますか、隊長に手の上で転がして貰うばっかりで…。いい加減ですね、たまには『今日は私に任せて下さい』とか『如何でしたか隊長』みたいな事を言えるようになりたいんですよね…」

などと言って深酒をしてしまったので家まで送ってやった。

 

3月15日

以前例の酒楼で一刀様に対する態度について注意を与えた逢紀と言う店員が新しく後宮に入る事となったため、彼女に後宮での住居等についての事務説明を行った。

また彼女は当面民間勤務を望んだ為、文烈様の事例に沿って認められた旨の連絡も行った。

後宮入りにあたっては相応の自覚を持って行動下さいと念を押すと、以前とはうって変わって神妙な態度であったので今後は問題無いだろう。

 

3月16日

妹の季達、顕達が入庁試験に合格し内定を得たと報告してきた。

目出度い事であり、祝いの言葉に加えて今後は職務を通じて一刀様の為に尽くすようにと訓示を与えると、今後は公私にわたって忠勤に励みますという。

どういうことかと聞いてみたところ、二人は既に一刀様のお手つきとなっており今回の就職でようやく大手を振って後宮を歩けるようになったと言い、一発合格でもあり私事にかまけて公の勤めを疎かにした訳でもないのだが唖然とせざるを得ない。

一体何時の間に…

 

3月17日

まさかとは思ったが六女、七女の恵達、雅達に個人的に一刀様へ御奉仕を差し上げてはいないかと多少婉曲に聞いてみたところ、いずれもまだであると言い多少安堵した。しかし

「孫子も『兵は拙速を尊ぶ』と言っています。女には慎みも必要とは思いますが、ここぞという時さえあれば迷わず飛び込んでいく心構えは常に持っております」

とも述べた。一刀様は特段に年若き者をお召しになることをその者の健全な育成上好ましく思われていない為、一刀様の御指導に従っておのが身の取り扱いを行うようにと意見したが、二人は次は自分達の番だと言わんばかりの態度であった。

一刀様のお心を悩ませるようなことにならなければ良いが…。

 

3月18日

三国塾の指導要領の見直しを行う教育委員会において、太史慈殿らの例もあったので将来の一刀様の寵姫の為に最低限の知識を持たせる性教育を授業に含めるよう提案した。すると全員がなんとも言えない様な目で私を見ていたが、曹操様が

「正直貴女にだけは言われたくないって思ってる人が殆どだろうけどそれ自体はいい提案ね。専門部会で詳細を検討することにしましょう」

と言われた。

最近はそこまで言われるほど初心でもないと思っているのだが…。

 

3月19日

劉備様の執務室へ決裁書類をお持ちしたところ、今日は特ににこやかであったのでどうされたのかと思っていると、ばあ!と言いながらかつらを外し、現れたのは劉備様の服を着た張角殿であった。

わからなかったでしょー、と張角殿は楽しげではあったがなぜこの様なことをと伺うと劉備様の御提案だったとのことだ。決裁書類に「これに桃香って書けばいいのー?」と聞かれたが流石に代理決裁はまずいと思ったため止めて頂いた。

そこへ関羽殿が来られ、張角殿と共に事情を話すと「(仕事をさぼって)逃げましたね」と凄愴な笑顔で出て行かれた。

劉備様は他の国王に比べ民とのふれあいを重視し書類仕事は苦手としていると聞いてはいたが、逃げ出してしまうというようなことがあるのだろうか。

 

3月20日

三国塾専門部会に出席している子敬によると、性教育の内容について意見がまとまらず施行が先送りとなりそうだという。

曰く、各委員が夫々の性癖を色濃く反映させようとするために対立しており、裁定に入られた一刀様が性教育の前に倫理教育について実施出来る様策定を進めるようにと指示されたとのことだ。

でも一刀様、それ具体的に方針を示しとかないとえらい事になるって気づいてないんじゃないかしらねぇ、と子敬が言うので「基本的には業務でも後宮でも一刀様の為に御奉仕するよう指導する方針とすれば大きな問題はないだろう、一刀様がわざわざお考えになる程の事でもないのではないか」と答えると、二人は「ほらぁ」「ねー」等と生暖かくにやついていた。

 

3月21日

執務中の快適性を向上する為、今夏導入予定であった新制服の制定が中止となり昨年までと同様とすることとなった。

基本意匠は一刀様が行ったが、女性のみの部署から快適性を向上するためとして当該部署のみ布地をかなり減らしたものにしたいと提案があった一方、男性も居る職場からは別の意図は明らかであり不公平であると強い反対があり折合いがつかなかった為だ。

個人的には現状のままでも特段の不快を感じないが。

 

3月22日

総務室で執務を行っていたところ、詠様が首をかしげられながら「これ今年度も入ってるんだけどなんの経費か分かる?」と支出明細を私に見せられた。一刀様の事務雑費としてと記載されており、一刀様の御決裁がされていたので問題ないと思い特段疑問を持っていなかったが確かに内容は把握していなかったので一刀様に伺ってみた。

一刀様は中々思い出せないようで暫く首を捻っておられたが、張勲殿からその書類を受け取って決裁したと仰ったのでそのように詠様に御報告すると、再び首をかしげられて考え込まれた。するとはっと思い出されたように七乃の所属を確認してと指示された。

張勲殿はいつだったか法令の精査をして頂いた事があるので恐らくは魏の所属なのではと思ったが…

 

3月23日

今回の新人研修事務局を担当している元直から礼儀作法の講師の依頼があり、一応社会人として一通りの事は知っているつもりではあるので受けることとした。

講義は二班に分かれて行いもう一班の講師は月様との事で、元直によると「固くしかやれない子も柔らかくしか出来ない子もいるだろうから、一応硬軟両方用意した方がいいかと思って」との事だ。

主に上司や窓口、他国の事務担当者との応対の指導をして欲しいと言われたのでそれは承知したが、一刀様への接し方の指導も行った方が良いだろうかと提案してみたところ言下にあんたにそれは期待してないからと却下された。

 

まあ新人にはまだ早い事ではあろうが、それが最も大事な礼儀作法と思ったのだが…。

 

3月24日

張勲殿の所属は魏に無く、呉・蜀と総務室にも照会したがどこにも所属の記録が無かった。不思議に思い本人に問い合わせたところ、

「あ、私ですかぁ?私確かにどこにも所属してませんよ、だってどこも雇ってくれませんでしたしー。しょうがないから一刀さんと直に派遣契約して、都度魏や呉や蜀とかに派遣されて仕事してるんですよ。で魏で働いたらその分魏から総務室に支払われて、総務室から私あてに一刀さんの経費として支払われてるんですよ」

との事であった。それを詠様に御報告すると、眉を跳ね上げて一刀様の執務室へ行かれ派遣契約書を探し出して読まれるや顔を引き攣らせ、

「なんて契約してんのよこの馬鹿ち〇こ!あんた一番目の『報酬は派遣先の給与基準、成績評価に準じて支払うものとする』ってとこだけ読んで署名したでしょ!?こっちの小っさい字の附則の方を見なさいよ、同意無く長期出張させない、契約は無期限、双方の同意なく解除出来ない、契約の代理人交渉は認めないとかあのアマ、いざとなったらあんた以外の言う事一切聞かない気満々じゃないのよ!おまけにこれは何?『月に1日以上乙は甲に業務報告を二人きりで行う。但し日時及び場所は乙が指定するものとする』とか、あんた七乃に当番の他にこんな枠確保させてたのっ!?」

と一刀様に詰め寄られていた。ただ各派遣先での張勲殿の仕事の出来は好評と聞いており、また業務の報告は他の方々もされていると思うのだが。

 

3月25日

家で夕食を皆と摂っていると、士載が4月で出向から帰ってくると報告してきた。

蜀でよく御指導を受けたかと聞いたところ、殊に鄧芝殿に御懇意にして頂き懇切丁寧に御指導頂いたという。聞いていた士季と

「だよねー、あんた鄧芝さんとは相性ホント良さそうだし私も教えてもらおっかなー…でも私口もいいけど中の方がやっぱ好きなんだよねー」

「う…ん、わ、私も中好きだけど、最近は一度飲ませて頂いてから『さあ始めるぞ』って感じがして」

等と酒の話なのかいまいち分からない話をしていた。

 

3月26日

三国一に行ってみたが、例の落書き帳の「今日の一刀様について語る章」の進みが速い。特に通り名「年」氏の書き込みが多く、非常に詳細に一刀様を見られているのが伝わるが攻撃的な書き込みも多少見られ、匿名と言うのも良し悪しと思われた。

とりあえず本日の会議で一刀様が眠そうにされながらも懸命にこらえておられ、その様が不敬な表現かもしれないが可愛らしかった事を書き込んだ。

 

3月28日

先に依頼された新人研修で礼儀作法の講師を務めた。

依頼された内容は一通り終えたところで多少時間が余った為、一刀様に接遇する際の心構え、礼の仕方や挙措について指導を始めたところ元直が会議室へ飛び込んで来て「それはやるなって言ったでしょぉぉぉぉぉぉ!?何時までやってる気なのよ会議室が予約してるのに使えないって苦情がこっちに来てんのよ、はいはいおしまいすぐおしまい!」と言って全員追い出された。講義は午後の前半までの予定であったがいつの間にか夜になっており、つい指導に熱を入れすぎてしまっていたようだ。



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司馬日記外伝 酒楼「三国一」の落書帳3

酒楼「三国一」にあるの落書帳の、ある章です。
(白なんとかさんのを一応2としました)


【広き門?狭き門?】後宮を目指す女が集う章

 

1:後宮の名無しさん

後宮入りを目標にしている女性の為の章です。

具体的な方法や問題点について語り合いましょう。

 

2:叙

年齢の下限はありますか?

 

3:後宮の名無しさん

無しでいいでしょ

 

4:学院長

年齢の上限はありますか?

 

5:後宮の名無しさん

な、無しでいいでしょ…?

 

6:後宮の名無しさん

ところでここの暗証番号どうやって手に入れた?

 

7:六女

姉から

 

8:後宮の名無しさん

友人から

 

9:後宮の名無しさん

従姉妹から

 

10:叙

お母さんから

 

11:後宮の名無しさん

同上

 

12:

同上

母様から『黄忠の娘に遅れを取るな』ってハッパかけられてるけど正直無理

むしろさっさと既成事実を作ってもらって事実上の年齢制限を解除してもらいたい

 

13:後宮の名無しさん

総務部に申請した

 

14:後宮の名無しさん

!?

それでくれるの?

 

15:後宮の名無しさん

くれた

後宮入りたくて勉強したいんですけどって総務部に行ったら窓口の人が司馬懿さんて人に代わって応対してくれた

頼んだら是非公私共に一刀様の為に尽くして下さいって言われて申請書渡された

必要事項書き込んで渡したら上司の人もあっさり決裁したらしくて数分で発行された

 

16:後宮の名無しさん

正攻法でも貰えたのか

後宮入りしてないから貰えないんだと思ってた

 

17:15

申請書の記入欄に

「後宮に入る意思があります」「一刀様に求められたら拒みません」

とかの誓約事項があって署名するようになってたからそこで縛っているものと思われ

しかし担当してくれた司馬懿さんて人の目がマジ過ぎてちょっと引いた

 

18:後宮の名無しさん

あの人の目つきはそれが素らしいぞ

 

19:七女

…司馬懿さんの話題はそこまでだ

問題はどうやって我々が一刀様のお手つきになるかだ

 

20:後宮の名無しさん

やっぱり仕官するしかないか

 

21:後宮の名無しさん

>>20

まずそこからだったのか

王道なんだろうが先が長いぞ

ちなみに呉の軍部

 

22:後宮の名無しさん

呉の軍部だったら、例の残念美人に首輪とか付届けしたら一回くらい混ぜてもらえない?

 

23:21

無理

あの人たちの業界は排他的で複数とかめったにやらないらしい

第一あの人給料全部それ系に突っ込んでて既に持ってない物無いって噂だし

 

24:後宮の名無しさん

出張で王都に来ててもうすぐ帰らなければならないんだが

前にあった地方巡幸でお持ち帰りされるのって難しいの?

 

25:後宮の名無しさん

あれは競争率が異常過ぎる

送り迎えが既に後宮組で固められてて滞在中しか機会が無いから超狭き門

あたしの並みだな

 

26:後宮の名無しさん

>>25

ちょっと吹いた

あんまりちっちゃいと裂けて痛いらしいぞ

 

27:21

地方巡幸はマジで熾烈だ

建業の港を張英と于糜が御案内する予定だったんだが当日誰かがそいつらをふんじばって倉庫に放り込んでた

代わりに御案内役を買って出て空き船の中でギシアンしてお手つきになれた陳武の犯行説がうちじゃ濃厚

 

その陳武は来月からこっち勤務

 

28:後宮の名無しさん

呉怖すぎるぞwww

しかし張英と于糜って…あいつらに一刀様御案内とか無理だろ

 

29:21

まあ元々あいつらじゃまずいんじゃねーのってのはみんな分かってたんだが、

無礼を働く直前で上官の徐盛がそいつら蹴散らして部下の無礼を体でお詫びする気満々だったのは呉の女なら誰でも知ってたから黙認してた

 

つまり陳武にとっくに出し抜かれた後集合場所に来た徐盛涙目

 

30:後宮の名無しさん

うちには無い文化だわー

桃香さまがああだからなぁ

 

31:21

うちはもともと豪族たちの寄り合いだから「取られるほうが悪い」って風潮がまだ残ってるのはしゃーない

それでも孫権様の代になって大分穏やかになってきたけど

 

32:後宮の名無しさん

話を戻そう

地方巡幸では難しいことが分かった、中央に勤めろってことだな

ほかに方法は無いか

 

33:六女

姉の後に乱入する予定

上の姉二人掛りでも二人ともあっさり寝かしつけられて時間が余るだろうから

その後なら入ってきてもいいって言われた

 

34:後宮の名無しさん

一刀様の方で一見さんはお断りするらしいぞ?

 

35:六女

普通はされるって聞いてる

でも下の姉と容姿も声も似てるし夜なら暗がりだし

姉たちからは

「こっそり近づいてずぶっと行けばこっちのもの、後は真剣にお願いして押しまくれば絶対落とせる」

って聞いたからそれでいく

問題はうちに来て姉たちとやってもらわなきゃいけないところ

 

36:後宮の名無しさん

なるほど

姉妹がいる奴はいいよな

 

37:西涼三女

居ても役に立つ姉と立たない姉がいてですね…

 

38:後宮の名無しさん

あっ…(察し)

 

39:後宮の名無しさん

役に立つ姉の方とすればいいじゃないか

 

40:37

その予定ではあるんだけどあの人一刀様とするの大好きで六女氏の姉たちと違ってなかなか寝ない

って言うかヤり疲れて中出し固めのまま寝ないで欲しい

どうやって気づかれないようにあんたをどかして食らいつけって言うんだ

中々無い機会だったのに

 

41:後宮の名無しさん

37の下の姉と孫尚香の肉食っぷりは有名だから仕方ない

しかも可愛いとか卑怯

そんなに絞り抜かないで少しこっちに分けろ

 

42:後宮の名無しさん

37下姉は肉食っていうよりは単純に底なしって感じだと思うけど

こうしてる間にも一滴また一滴と搾り取られ…

 

43:後宮の名無しさん

おいやめろ

一刀様は無限だと信じたい

 

44:後宮の名無しさん

つまりあれだな

姉妹が居ると機会有り

 

45:後宮の名無しさん

お、親が居れば…

 

46:後宮の名無しさん

黄忠の娘のことかー!

 

47:叙

私は関係無かったかな

勉強はさせてもらったけど

 

一回目はご主人さまと二人きりでするつもり

その後はお母さんと一緒もいいね

 

48:後宮の名無しさん

47は規格外過ぎるから参考にならない

私勤め人だけど正直もうおっぱいあの子に抜かれてる

 

49:後宮の名無しさん

叙氏はもう時間の問題だろうから事が済んだら報告してくれ

 

50:後宮の名無しさん

例の近親上等☆姉妹は?

 

51:後宮の名無しさん

ああはなりたくない

 

52:後宮の名無しさん

あれ親ほとんど関係ないだろ

 

53:後宮の名無しさん

押して押して押しまくれば落とせないことも無いという例か

 

54:後宮の名無しさん

そういう意味では王と重臣の娘って立場を最大限活用してたな

 

55:後宮の名無しさん

鍾繇の娘は?

 

56:後宮の名無しさん

あれも親は親、娘は娘って感じだったと思う

 

57:後宮の名無しさん

たまに気になるんだけど鍾繇さん実際何歳よ?

鍾会と姉妹にしか見えないんだが…

 

58:後宮の名無しさん

確かにあれはおかしい

鍾会が妖怪呼ばわりするだけのことはある

まあ黄忠も大概だが

 

 

59:後宮の名無しさん

ええい、血縁以外に策は無いのか!

 

60:後宮の名無しさん

20が既に結論を述べていてだな

 

61:後宮の名無しさん

じゃあどこ勤務になるのが一番いい?

 

62:後宮の名無しさん

やっぱり総務室じゃないか?

メイド服着れる仕事もあるらしいし、そこでパンチラくらいしたら

すけべしようやくらい言ってくれるんじゃないか

 

63:後宮の名無しさん

私文書局のヒラでたまに総務室にお使いに行くけど、

メイド服なんて何人もいないぞ

 

64:後宮の名無しさん

無理

やる前に総務室は激務で死ぬ

悩みこむような事業企画とかを定型業務のような速度でこなさないとそもそも家に帰れん

 

65:後宮の名無しさん

財務局は?

 

66:後宮の名無しさん

>>65

ここで一刀様に会えるのは偉いさんだけだ

下っ端は予算書と領収書漬け

 

67:後宮の名無しさん

じゃあ軍はどうだ

前に新人の武技大会で優勝すると一刀様と一発やれるって御褒美あっただろ

 

68:後宮の名無しさん

>>67

呂布と数合打ち合って持ちこたえる程度か

屋内で周泰から逃げ切れる程度の

技量が要るんだが

 

69:後宮の名無しさん

無茶言うなwww

 

70:後宮の名無しさん

まともじゃ難しい事が分かった

発想を変えよう

 

庁内で一刀様の前でわざと転んでパンモロしてみる

大興奮した一刀様がそのまま私を自室にお持ち帰り

 

71:後宮の名無しさん

…するわけがないだろ

警備部が「あっこんなところにゴミが」って70の事を放り投げて終わり

 

72:70

分かった

ぱんつ穿かずに庁内で一刀様の前でわざと転んで〇ンモロしてみる

大興奮した一刀様が以下略

 

73:後宮の名無しさん

>>70

落ち着けwww

 

74:後宮の名無しさん

一刀様後宮の風呂使う事もあるでしょ

入っていくのを見計らって

「きゃあっ一刀様入られていたのですか、御背中御流し致します」

 

75:後宮の名無しさん

背中じゃなくて股の間から別のもん流さなくてどうする

「まあ、こんなになさって…ここは特に念入りに洗わせて頂きますね」

 

76:後宮の名無しさん

>>74

>>75

妄想乙

一刀様が女と一緒じゃなくて風呂に入る事が一体どれだけあると…

 

77:後宮の名無しさん

それでも夏の間は結構あったらしい

 

78:後宮の名無しさん

なにしろ一回目までの敷居が高すぎる

二回目以降は黙ってても一刀様に誘われるらしいのに

 

聞いたところじゃ天の国だと州牧だろうが皇帝だろうが

やってない女→やってはいけない

やった女→責任持ってやり続けなくてはいけない(ほったらかしてはいけない)

っていう考え方らしい

 

79:後宮の名無しさん

今そこを愚痴ってみても仕方が無い

突破口を探そう

 

80:後宮の名無しさん

いっそ偶然の出会いに期待してみる

 

ここの店員に転職したところに一刀様が来店して

「お待たせしましたもつ煮込みです」

「君可愛いね今夜俺んところ来ない?」

 

81:後宮の名無しさん

>>80

今までの中で一番ありそうも無さ過ぎてちょっと泣けた

 

82:後宮の名無しさん

えーっと…

 

83:後宮の名無しさん

>>80

それで後宮行けるんなら世話無いわ

 

84:82 三国一の一店員

実は私ここから後宮入りしました

 

85:後宮の名無しさん

!?

 

86:後宮の名無しさん

はぁ!?

 

87:後宮の名無しさん

何やて!!

 

88:後宮の名無しさん

>>82

なりすましは無駄に希望を持つからやめて欲しい

 

89:82

一応本当です

後宮の人達にはもう身元割れてるし

いずれ他の人にも割れると思うんですけどとりあえず匿名で

 

90:後宮の名無しさん

マジか

思わず店員さんを見回してしまう

今日出勤してる?

 

91:82

勘弁してください

 

92:後宮の名無しさん

身元はとりあえずいいだろ

それよりどうやって後宮入りしたのか詳しく

80の言うような感じだったのか

 

93:82

いえかなり違います

この店男子禁制なのに男の人居るから変だなとは思ったんですが

一刀さんが偉い人だって知らなくて

寮の管理とかしてるヒラ職員のお兄さんだと思ってたまにちょっかいはかけてました

 

94:後宮の名無しさん

知らないとかwww

それで?

 

95:82

休みの日に他所に一人で飲みに行ったらたまたま一刀さんと一緒になって

酔った勢いで

 

96:後宮の名無しさん

やったのか

 

97:82

…勢い余って酔い潰れて役所の宿直室に放り込んでもらいました

着衣に乱れは無かったし体に違和感も無かったので間違いなくしてないと思います

覚えてないけど

 

98:後宮の名無しさん

ちょwww

 

99:82

そしたら後日

既に後宮入りしている友達から一刀さんがそういう立場の人だって聞かされて

別の友達から今までの無礼の数々でどう考えても死刑不可避って脅かされて

半泣きで風呂場の一刀さん襲いました

実際私もそれ以外で生き残れないと思ったし

 

文字通り泣けた

 

100:後宮の名無しさん

>>82

…なんか、ごめん…

 

101:82

いえ

実際私、運だけでした

幸せな初体験をしたのかと言うとアレですけど

一刀さん優しかったです

なんか無茶やらかす女のあしらいに慣れてる感じでした

実は休憩時間だったんですが仕事に戻ります

みなさんも頑張って下さい

 

102:後宮の名無しさん

82も頑張れ

 

103:後宮の名無しさん

…さてどうするよ

 

104:後宮の名無しさん

ところで82が不幸そうに見えて実際にはきっちり後宮入りを果たしている件

 

105:後宮の名無しさん

ちょwww

厳しいwww



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司馬日記42

その後の、とある文官の日記です。
間が空いてしまい申し訳ありません。
ところで皆様既に御存知とは思いますが!またしても飯坂様が仲達を描いて下さいましたので是非見て下さい!

それにつけましても、飯坂様はじめ御覧になって下さる皆様方いつも有難うございます。


3月29日

一刀様と各国王様、月様、詠様で遅くまで会議を持たれていた。

会議を終えて出てこられた詠様に内容を伺うと、

「今年の四月馬鹿についてよ。皆は去年の事があるから絶対やめろって言ってるんだけど、一刀が迷惑は掛けないからどうしてもやりたいって聞かないのよ…何やるか先に言えって言ってもそれじゃつまらないから言いたくないって言うし、しょうがないからこういう事はやっちゃ駄目って列挙例示してよーく言い聞かせてたのよ」

との事だ。年に一度の事ではあるし、普段は真摯にして誠実でいらっしゃる一刀様もたまには羽目を外されたいとお思いであろうから、多少の冗談は宜しいのではないか。

 

3月30日

今日は文若様、元譲様、稟様、甘寧殿、関羽殿、詠様、馬超殿、華雄殿らで遅くまで会議をされていた。御出席者方に関連性が感じられず、会議を終えた詠様にこれまた聞いてみたところ何とも言えない表情をされ

「その…明後日の午後と夜の予定について協議してたのよ。ま、予想通り桂花と思春が持ってったけどね。他の連中はまあその…ボクも含めて、いざとなれば普段でも一刀がそういう状況を作ってくれればどうにかなるけど、あの恋愛障害者二人にとっちゃ年に一度しかない大嘘を吐く機会だから必死さが違うのよね」

との事だ。

 

4月1日

昼前に一刀様のお召しを受けてお部屋へ伺うと、お茶に付き合って欲しいと言われ御相伴に預かった。一刀様と月様、詠様と共に暫く談笑していると、一刀様が「仲達さんこれ苦くないの?」と怪訝な顔をされた。

一刀様曰く、先ほど勧めた典韋殿に焼いて頂いた『甘い』焼き菓子だというのが嘘で、非常に苦い薬草を混ぜて焼いていたということであった。しかし頂いた物はほのかな苦味はあるが美味なものと思われたのでそのように答えるとおかしいわねと言われて月様とともに詠様も味見されると顔を顰められ、「いいわ分かった、あんた一刀が白って言えば黒でも白どころじゃなくて苦いもんでも甘くなるのね!あ”ーぺっぺっぺっ、月ボクもお茶頂戴!」と言って追い出されてしまった。

 

4月2日

詠様に、子丹御嬢様らと共に飲みに誘われた。

昨日の苦い焼き菓子の話題となり話されることには、仕込みでご協力された典韋殿や詠様たち以外のかなり多くの方が仕掛けられ、殆どの方が引っかかったらしい。子丹御嬢様に

「今回は洒落にならないことは絶対やらないようにと一刀様が釘を刺されていたお陰もあって、華琳様でさえも『こんな地味なネタで来るとは思わなかったわ』って引っ掛かったくらいなのよ。ですけれど仲達、平然とポリポリ食べたところまでは同じでも一刀様に『苦くないの?』と聞かれて、普通に甘いですよ?って答えながらちゅうううーってぶちかまして『ね?甘いですよねー』と切り返した風様くらいを目指さなくてはいけませんよ」

と説教されたが、では御嬢様もそのようになされたのでしょうかと伺ったところ大変怒られた。

詠様は「今日の桂花のあの隠しきれないニヤケ顔がイラつくわ、ツンツンするなら貫き通しなさいよね…まあ年に一度の事なんだけど」と愚痴られていた。

 

4月3日

新入職員向けに一刀様の訓示が行われた。

「良識と節度を持って」という言い回しを何度もお使いになっていたのが印象的であった。

 

4月4日

軍事演習場を通りがかったところ、凪が張遼殿を引っ張りながら助けを求められた。

凪曰くは新規将校の訓示を張遼殿が行われていたが、途中から雲行きが怪しくなり卑猥な比喩に自分を引き合いに出されたため止めさせようと引っ張ってきたという。一方張遼殿に事情を伺うと「そんな大したことは言ってへんで?将校なれたら一刀とパツイチやれる思っとったら大間違いや、凪くらい腕も立ってかわゆくってそーゆー事も上手ないと入れへんでって言っただけやし」

「『そーゆー事』の中身をあんなに具体的に言う事ないじゃないですか!?」

等とまた口論を始めたので、凪も困っているようなので今少し表現を抑えられてはと申し上げると不承不承頷かれて演習場に戻っていかれた。

 

4月6日

本日は一刀様の御側に御仕えし始めた記念日だ。

強請る心算は毛頭無いが、御優しい一刀様であるのでひょっとしたら何がしかの御褒美を賜るかもしれないと思うと寝ようにも寝付けずうっかり徹夜してしまった。

 

多少集中力を欠いてしまっていた所為か、落ち着きが無かったようで公達様に

「いちいちいちいちいちいちいちいち、ちょっと足音聞こえる度に廊下のほう振り向くのうざいのよ!詠の方(総務室)行って仕事してなさいよ!」と追い出されてしまった。

止む無く総務室の方へ魏の書類を持ち込んで仕事をしてみたが、一時間もしないうちに無言で米神に血管を浮かせた詠様に手を引かれて一刀様のお部屋に連れて行かれ、

「…っとに無表情で廊下のほうをチラチラチラチラ、うざすぎんのよ!あんたもこういう手合い焦らすのほんと無駄だからやめてお願いだから!仲達寝てないらしいからとっととあんたの睡眠薬を飲ますなりブチ込むなりして寝かしつけてよね!」

と言われて部屋の中に押し込められて出て行かれてしまった。

 

…ここで添い寝を申し出て下さった一刀様の御腕で眠った、というだけであれば部下思いな一刀様の御美談であったのだが、蠱惑的な一刀様との密着のあまり持て余してしまった女の性と言うか、淫らがましい劣情までも御面倒を見て頂いてしまったというのは羞恥の………羞恥と、幸福の極みだ。

 

御腕の中で目を覚ました後に拝領した勤務二周年の御慰労の品は、瀟洒にして煽情的な黒の下着であった。御指示により試着してみたところ過分にお褒め頂いた上に、この姿の私に欲情される、二人きりのときはもっと思いのままにはしたなく振舞ってもよいなどと囁かれては、ああ…仲達は、仲達は、貴方様に狂ってしまいます…

 

4月7日

執務をしていると一刀様にちょっといいかなと廊下に呼ばれたのでお近くに伺い、羞恥の余りまともに御顔を見れないまま昨日は有難う御座いましたと申し上げた。

するとそれはこちらこそと仰られたあと、真顔になられるや声を潜められ「ところで昨日のアレ(下着)、洗ってね…?」と言われた。

一刀様のものもさることながら自身のものでも多分に汚してしまっていたので、洗わせて頂きましたがと申し上げると「ならいいんだ、ちょっと御家族から心配されてたから。よかったらまた着てね」と仰ってそそくさと去っていかれた。

 

あらぬ事を吹き込んだ犯人は士季とすぐに判明し、久しぶりに吊るした。しかし下手人の喚く事には

「仲達さま、知ってんですよ夕べそのブツをくんかくんかすーはーすーはーして一人上手に使ってから名残惜しそうに洗濯してたの。一刀様の匂いで大☆興☆奮☆しちゃうのは分かりますけど、うちの部屋の壁後宮ほど厚くは無いんですから、ねえ?まあ一刀様には黙っておいてあげますから、反省したんでもうこの縄ほどいてくれません?あと一刀様に会ったら士季ちゃんにも可愛くてエロくて着せちゃ脱がししてがっつんがっつんしたくなるようなえっちい下着あげる様にお願いして下さいよ。あ、私穴あきとかよりもずらせるような緩めのやつの方が好きだなぁ」

という。

…まあ今日はこの辺で勘弁してやることとした。決して脅されているわけではない。

 

4月8日

軍部の諸葛誕殿が総務部に見えられ、軍部への異動の打診をされた。

軍や警備部からのお誘いは最近は減っており今までと同じく御遠慮させて頂く旨の回答をしたのだが、

「軍って出張多いからその分夜の配分って優遇されてるのよ?私だったら貴女と上手くやってけるわ、是非来てよ」

と重ねてお誘い頂いたところで公達様が見えられ、

「他人の部下引き抜くならあたしに話通してよね公休。あとあんた仲達の事ちょっと勘違いしてるみたいだけど、この娘犬は犬だけどあたし達とはちょっと違うのよ?」

と言われた。

諸葛誕殿がそうなの?と目を丸くされて聞かれたがどういった意味であるのか掴めずにいると、貴女一刀様に縛って頂いて奴隷プレイとかしてないのと聞かれたので私は端下女には違いありませんがあえてそういった事を一刀様としたことはありませんがと答えた。するとなーんだそうだったのと言われ去って行かれた。

後で公達様が語られる事には、

「あいつ、夜の趣味はさすが『魏はその犬を得た』って言われるだけあってあたしとタメ張る位結構深いとこ攻めてるんだけど、軍の腕の方はまあぼちぼち程度、楓(曹真)の一枚格下ってとこよ。まあ本人も自覚あってあんたが欲しいって言ってきたんでしょうけどね」

との事だ。

それを見ていた張郃と郭淮が、「腐っちゃった竜よりは犬の方がましなのかしらねー」「やっぱ虎が一番よあの人真面目で普通人らしいし」と呟いていたがどういう意味だったのだろうか。

 

4月9日

張梁殿が過労で体調を崩し、公演を中止されたと聞かれて一刀様が張梁殿の部屋へ一日詰められていた。

あわせて本日の御公務は全て中止された。

 

4月10日

快癒された張梁殿と入れ替わるように一刀様、張角、張宝殿が風邪をひかれた。

月様と共に看病を手伝っていた張梁殿に事情を伺うと、「まあその…姉さんたちは自業自得ですけど、一刀さんは私の所為というのもありますから…」と言いながら頬を赤く染めて三方の寝室へ引っ込んでいかれた。



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司馬日記 現代後宮用語・成語集

の後の、とある性きょ…生協で平積みされていた本です。


後宮限定 文書局監修 「現代後宮用語・成語集」発売しました!

生協(新店舗側)での数量限定販売となっておりますので関係者の方は是非お早めにお買い求め下さい。

※一般女性への販売には後宮入りの意思と身分の確認が必要になります

 

-----------------

 

・駆虎呑狼の計

近親上等☆姉妹の行いが余りに目に余った場合に、関羽(近年では司馬懿)に言いつけること。狼の行いを虎を以って制する事から。

(追記)なお実際には虎は一刀様であった模様。

関連語:髀肉之嘆

 

・二虎競食の計

程昱がかつて許褚・張飛を争わせ、その間に一刀様の膝を自分が占めたとされている策略のこと。また程昱はこの策を得意としており荀彧・荀攸を同様に争わせた隙に一刀様の枕席を占めたともされるが、その後さすがに悪かったと思われたのかこの計が用いられたという報告はされていない。

一般人が真似をすると反感を買って後宮を追い出されかねないので注意の事。

 

・埋伏の計

一般的には先に寝台に入って一刀様を待つ事。十人がかりで埋伏したという報告は今のところない。

転じて寝台に限らず意外な場所に隠れ(或いは待ち受け)事に及ぶ事を指す。特にこの計を好むのは張勲と曹操様とされているが、ある時曹操様がこの計を企て一刀様の執務机の下に隠れようとしたところ、既に張勲が埋伏しており一刀様の挙動不審からそれを察知したものの、どうすることも出来ずむしろ引き立て役にされたという噂がある。

なお埋伏待機中に他の者に発見されると結構痛い為、この計を実行するには相応の知略と慎重さが必要である。

 

・髀肉之嘆

元々は御伽番が回ってくる頻度が少ない事を嘆く言葉であったが、現在では書く事も憚られる一刀様による大粛清を指す。多くの者が精神的外傷を負い、後宮に属する者は常に自身を磨かなくてはならないと戒めた事件。

 

・白蓮の嘆

贅沢な悩みであること。

対義語:蓮華の嘆

 

・蓮華の嘆

結構切実な悩みであること。呉の者は軽々しく口にしてはならないとされる。

対義語:白蓮の嘆

 

・白媚

馬良の事。

馬家の五姉妹のうち眉の白い馬良が最もそういったことに優れ、一刀様の寵愛を受けている事から。

転じて姉妹や多くの者のうちそういったことに長けている者を指すこともある。

なおそういったこととはそういったことである。

 

・凌遅

一刀様が女を生殺しにする刑。現在では刑罰としては一刀様の御意向で封印されているが、稀に自身の意思でこれに近い事を行ってしまうことがあると一刀様が証言し、その対象者は明らかにされていないが孫権様、夏候惇、馬超、魏延などと見られている。

 

・仲達

魏の司馬懿仲達の事。

転じて恵まれた容姿と肢体、一刀様への全幅の愛からゴミの様な思考と行動を繰り出す人。

 

・ちゅーたつ

当然に魏の司馬懿仲達の事。

転じてちょろいという次元を通り越してしまった人。

仲達は比較的罵倒や侮辱的な意味合いを持つのに対し、ちゅーたつの方はそのチョロさに対して湧きあがる生温かい感情を表す事が多い為用法に注意の事。

 

・禁馬超

潮吹きとは異なるプレイ(?)のこと。

本人気にしてるので余り虐めると本気で泣く為からかいすぎないこと。

 

・苦肉の計

荀攸が良く用いる計略。要は被虐プレイ。本来荀攸は赤壁に倣い鞭打ちも意図していたが一刀様の希望により痛みを伴わないプレイに変更された。それで多少敷居が低くなったせいか意外にこの計を好む者は多いのでネタかぶりに注意の事。

 

・曲に誤りあり、周郎振り返る

数え役満☆姉妹の公演中、(よくあることだが)曲の合間の地和・人和の対談中に天和が舞台袖で一刀様と事に及んだ。その後天和は舞台へ戻り歌ったのだが、耳がよく、また公演後夜伽の予定であった周瑜は天和の歌声が余韻で多少甘く、曲調も僅かに崩して歌っているのを聞き分けて何があったかを察知し、舞台袖から後席に戻った一刀様を振り返って睨んだという。

それを察した孫策様が、怜悧な美貌と裏腹に自分の番についてはこだわりの強い周瑜をからかった言葉。

 

・引き絞った矢は射られぬわけにはいきませぬ

小説家の陳琳が、当局の許可前に発行された官能小説『魏志』を読んだ曹操様に「私の事を(官能小説に)書くのはいいけれど、春蘭秋蘭、楓(曹真)達の事まで書くことはないじゃないの」

と叱責された時にこう答え、小説自体も名文であった為に許されたとされている。

しかしこれとは別に、初めての日に痛みに顔を顰めた陳琳を気遣い一刀様が「今日はここまでにしよう」と言われた時の答えとする説があり、陳琳本人はこれを否定も肯定もしていない。

 

・犬

一刀様に従順な人物の事。

具体的には呂布、魏では楽進、司馬懿、又は荀攸のいずれか、呉では呂蒙、蜀では魏延を指す事が多い。犬の定義は対象者によって微妙に異なる。

この他にも犬を自称する者は居るが共通認識には至っていない。

関連語:例の狂犬

 

・例の狂犬

例の狂犬2匹の事。いじるな危険。

なお呉の狂犬は天然ものであったが、蜀の狂犬の方はかつて某集会に欠席した華雄の代わりに同じ通り名を使ってその集会に出席したためにそういった事に目覚めてしまったという噂がある。

 

・例の親娘

かつては劉備様・関羽と劉封・関平の事を指したが最近では鍾繇・鐘会親娘、黄忠・璃々親娘の事を指す事もある為文脈での解釈が必要。

 

・生ける仲達の弟子、死せる孔明を鞭打つ

司馬懿の弟子である鍾会が姜維を使って諸葛亮に乳ビンタを食らわせたという噂があり、転じて巨乳による貧乳いじめを指す。

表記揺れ:生ける仲達の弟子、死せる孔明を乳打つ

 

・一刀(様)の股間が方天画戟

つまりそういう事。こうなることが後宮での第一目標。本人の所属によって言い方が多少異なる。

一刀(様)の股間が倚天の剣(魏)

一刀(様)の股間が南海覇王(呉)

一刀(様)の股間が雌雄一対の剣(蜀)

 

大体においては一刀様がこちらに合わせてくれるので上記の通りとなるが、余り無茶なプレイに走るとこうなる。

対義語:一刀(様)の股間が太湖

 

・胸が泰山

巨乳であること。

類義語:胸が常山 胸が田豊

対義語:秋風胸が五丈原 胸が平原太守 

 

・私の股間が揚子江

非常に何かが高まった状態を表す。類似表現は多かったが特に語呂が良かったものを示した。

類義語:私の乳首が双鉄戟

 

・鶏肋

現在では荊州に飛ばされている禰衡が発した、魏の胸が慎ましやかなやんごとなき方を罵倒した言葉。当然ながらその御方はブチ切れし、また失礼なので使ってはならないと一刀様のお達しが出ているので使わない事。

 

・呉下の阿蒙にあらず

当初は呉の武官であった呂蒙が軍師として成長した事を指したが、現在では大人しく気弱と思われている呂蒙が夜は大胆に一刀様を満足させている事を指す事が多い。本人に向かって言うと照れるが否定しない為、言いだしっぺは一刀様と見られる。

類義語:蜀下の阿璃にあらず 

但しこちらは未遂とされており若干意味が変わる為用法に注意のこと。



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司馬日記43 仲達と同期

とある文官が、同期の武官とただ飲んでくっちゃべるだけの話です。


「久しいな仲達」

「管理職研修振りか。初の都勤務はどうだ」

「明日からだからまだ詳しいことは分からんが、こちらは書類仕事が多いようだな。あちらでは土木工事が多く軍の扱いよりもそちらが上達してしまっていたが」

「今では土木工事も軍の重要な仕事の一つであるからな。加えて伯道の武芸は優れていた。いずれ高位の将軍職にも就くことだろう」

「さあ、それを望んで中央に来たのではないのだがな。仲達はもう事務一筋なのか」

「ああ。初めの頃は事務の種類の多さに驚いたものだが今では慣れた」

「短戟と身のこなしはかなりのものであったのに惜しいな。操軍理論だってお前以上は中々居ないだろう」

「所詮素人のお遊び程度だ、本業の方々には及ぶべくも無い。しかし多少知っていれば仕事にも役立つ」

「そうか、まあ飲め。ところで本題だが、一体何があった?」

「何がだ」

「その丸さだ」

「何を言っているのかが分からん。相変わらずこのような目つきだし、部下からは厳しいと評判らしいが」

「入庁の頃はそんなものではなかっただろう?」

「そうか?」

そこでようやく思い当たった。

 

「それは一刀様の所為だろう」

「皇帝陛下のことか」

「そうだ。素晴らしい方だ」

その名を口に出す度に、知らぬ者に語る度に誇らしい気持ちになる。

「色んな方々がその陛下に入れあげていると聞いているが、お前もその口か」

「他の方は他の方だが、私は確かにその通りだ」

「あの司馬懿仲達が、男に惚れたのか」

「男にではない、一刀様にだ。それにあの司馬懿仲達がとは何だ」

「ちょっとまて、一刀様とは男なのだろう」

「勿論男性だが」

伯道が首をひねる。

「何が言いたいんだ、仲達は元々女性が好みであったのか?」

「そんなことは無い、ただ一刀様を愛してしまった。そしてたまたま一刀様が男性であっただけだ」

「その言い草が考えられん」

伯道が手持ちの杯を呷るところに注いでやる。

 

「私は、仲達は胸と尻が大きく美人の仮面を貼り付けた、夏候惇将軍の人形か李典工場長のカラクリか何かだろうと思っていた。表情も殆ど変わらんしな」

「以前は似たようなことをよく聞いたが最近は言われなくなったな。美人と言えば伯道こそ同期随一と評判だっただろう」

「私のことはいい、その仲達が男を愛しているという。まるで陳琳や王粲の小説に出てくる方々のようではないか」

「そうだ。お慕いしている事を誇りに思っている」

「聞いたところではその一刀様は年下らしいが構わないのか」

「私としてはなんら問題無い、一刀様は御年齢以上にしっかりしていらっしゃる。むしろ一刀様が年上の女にお飽きで無いかの方が気になるところだ」

「ますますもって分からん。まあ飲め」

再び杯を空にし、手酌に引き続いて自分にも注ごうとするので杯を空けて注ぐに任せた。

「顔が紅いぞ。酒は飲めた方だろう」

「以前はいくら飲んでも酔わなかった、だが一刀様の事を考えながら飲むと一、二杯でも酔えてしまう。最近は酒の失敗をやってしまっているので自制している」

「信じられんことばかりだ」

伯道が両手を広げて首を振る。

それに合わせて揺れる髪の美しさにふと違和感を抱いた。この女はこのように綺麗に髪を梳く女だっただろうか。

 

「ところで伯道はなぜ(都に)来た。都は息が詰まると言って地方を希望したと聞いていたが」

「…お前がまるで変わってしまったように、私も多少は変わったのさ」

「男か」

そう聞くとこの美しい女は目を丸くした。

「…色気づくと他人の事までわかるようになるものなのか」

「いや、何となしに思ったので言ってみただけだ」

「まあお前には隠すつもりもなかったが。それより仲達の方はどうなんだ、陛下の事はものにしたのか」

「言葉を慎め。私が一刀様のものにして頂いたのだ」

「は…」

意外が極まるとこういう表情になるのか。伯道のような美人には似合わないものだ。

「陛下と懇ろでであるということか」

「その通りだ」

「そうか。という事は、つまり…その」

言いよどみながら視線を逸らし、手酌をする伯道の目元がうっすらと赤いような気がする。

「夜のお供もさせて頂いている」

「端的だな!」

「お望みどおりの回答だと思うが?」

「む…まあ、否定はしないが…」

視線を逸らしつまみの揚げ物をつつく伯道を、何故か可愛らしいものだと思う。

「以前の仲達であれば、そういったことは『子孫を残すための繁殖行為』などと言っていただろうよ」

「私は虫や獣の学者か、一刀様の崇高な御愛情の賜物をそんなものと一緒にするものではない。…まあ私がけだものには違いなかったがな」

「なにか今凄い事をさらりと聞いた気がするぞ!?」

「む…けだものというのは言いすぎか。女であったと言う位か」

「どういう意味だ」

「どういう意味もそのままだが。男である一刀様を愛し、肉欲のある身だという事だ。…酒が切れてしまったな。もう一燗、いや二燗頼もう」

「…」

伯道の美貌が紅く染まる。私を酔っていると言うが自分の方が酔っているのではないか。

 

「それは、その…仲達であれば、陛下とそういった事をしたい、という事か」

「無論。お慕いする方であるとともに、性的な欲望の対象でもある」

伯道は何を言っているのか。そんな事は当然だろう。

「伯道は思わないのか?その懸想している殿方に」

「…名さえ知らぬのに、そんな事まで思い及ばん。私の事はいい、陛下とのその…それは、仲達でさえしたいと思うくらい凄い快楽なのか」

「筆舌に尽くし難い」

杯に口をつけていた伯道のなめらかな喉がぐびりと動いた。

「価値観というか、世界の見え方が変わる。もう少し正しく言えばその日から世界が輝いて見えるようになった」

「そこまで言うか!」

「これは私の主観だ、余人から見れば言い過ぎなのかもしれない。一刀様は私が女である事を教えて下さり、その幸せを授けて下さった。しかし最近では女としての、なんというかこう…むらむらするものを多少持て余してしまう事もある」

隣の女の箸が中空で静止したままであるのを見て、伯道が言うように私も多少変わったのかもしれないと思う。

「お前は本当に変わったな…それに、お前でさえそんなことをしれっと言うようになるくらい都の女というのはあけすけなのか」

「誰の前でもこういった話をするわけではない、伯道のように気の置けない友人の前でだけだ。ただ、ある時自身の抑え難い劣情について一刀様に告白し懺悔したのだが、私がそのような思いを抱いているという事が一刀様にとって誇らしく嬉しい事であると仰って下さった。そのお陰で今ではこの思いとも多少折り合いがつけられるようになってきたから伯道が言うようにややあけすけに言うようになったのだろう。もちろん一刀様に御迷惑を掛けないようにとも思ってはいるが」

銚子から杯に注いで口をつけ、彼女の杯にも注いでやる。

「折角なので後学の為にもう少し教えてもらってもいいか」

「授業料は高いぞ?」

「都の物価は高いと聞くが、旧友の誼で割引で頼む」

御嬢様が見たらなにを仲達が偉そうに、ときっと笑われるやりとりだろう。

「劣情とはその…抱き着きたい、とか思うのか」

「そんなものではない。私は一刀様を見ているだけで濡れてしまう」

「ぶふっー!?」

「む、汚いぞ伯道」

むせて咳き込む彼女に手拭いを渡し、卓に飛び散った酒を拭く。

「げほっげほっ…いきなりなんて事を言うんだ!?仕事中の事だってあるだろう、色情狂か!」

「真実であるから仕方が無い。御伽を務める日や務めた翌日などはそのときの事を容易に想起してしまって禄にお顔を見ることが出来ん。夏場は軽装になられることも多くそういった時も胸にもやもやとしたものが湧き上がってしまう。書類の御説明等の為にお近くに侍って感じる息遣いや御髪の香りは麻薬のようであるし、ふと手が触れたりすると全身が痺れる程の愛撫にさえ感じられてしまう。とは言え極力表情には出さないようには務めてはいるし、常に下着の換えは更衣室に用意して都度穿き替えるようにはしている」

「も、もういい仲達お前目が据わってるぞ、酔ってるだろう!?」

私は酔ってなどいない。その証拠にこの燗は薄いのがわかる。

「酔っ払いは皆そう言うんだ!なにしろもういい、私の頭の処理が追いつかなくて湯気が出そうだ」

「折角問われたので答えたのだがな。では授業料を払ってもらおうか、伯道が都に追いかけて来るほど惚れ込んだ殿方とは、どのような方なのだ」

「随分高くつける気だな」

「これくらいで私の話した内容と釣りあうのではないか?」

「む…笑うなよ」

「誠実な伯道の恋路を嗤うほど私も無礼でないつもりだ」

「…本当に名さえ知らぬのだ。私が陳倉に居た時にある貴人の警護命令を受けたのだが、かなり高位の方々で身分を秘しておきたいらしく命令書には対象の人数と身体的特徴しか記載されていなかった。ただ貴人のうち一人は相当の手垂れだった、見たことは無かったが噂に聞いていた髪型からおそらく蜀の馬超、またもう一人はそれをお姉様と呼んでいたからその族妹の馬岱だったのだろう。それと別に姉妹らしいなんだか賑やかな若い娘達が来たが、貴人方を陳倉まで送る役だったらしく帰っていったがまあそれはいい」

「…ほう」

「命令書では私自身が主となって警戒に当たれとあったのでその通りに夜間の歩哨に立っていたのだが、その方が寝室から縁側に出てきた時に少しお話しただけと言えばそれだけなのだが」

「…それはひょっとして昨年の11月19日の事ではないか?」

「…そうだ!確かに11月19日だ!何故知っている!?」

「その方の御旅程表を作成したのが私だからな。伯道自身で警護してもらえば間違いないだろうと思ったのだ、御協力感謝する。まあそれはおいておこう、そこでどのようなお話をしたのだ」

「大した話ではない、のだが…その方は若い方だ、多分私より年下だったのだろうが二つ不思議な事があったのだ。私が名を名乗って暫く話していたのだが、郝昭、郝昭と呟かれて少し考え込まれたあと、『前に、ここ(陳倉)を蜀からどう守ろうか考えてた事があるか』と聞かれたのだ。確かにその通りで、私は中央での就職はお前と同期だが統一以前には陳倉で少し働いていた。その頃には地形を研究してそういった事を考えていた、しかしそんな事は誰にも話した事が無いし当時私は下っ端も下っ端、貴人が私の事を知っているはずも無いのだ」

「かず…その御方は慧眼な方であるからな。多少の会話からそのくらいの事を見抜くのは造作も無い事なのだろう」

「さっきも思ったが、仲達はその方の事を知っているのか?どちらの所属の方なのだ」

「…存じているといえば存じているが、知っているというのはおこがましいな。所属はというと…何とも言い難いがまあ直ぐに分かる事だ、自分の惚れた方の事は自分で調べた方が楽しかろう。それよりもう一つの話とは何なのだ」

これは伯道には悪いが、旨い酒になってしまった。

「もう一つは…これは非常に感謝しなくてはならない事なのだが、どこか具合の悪いところは無いかと聞かれたのだ。酒を飲むと多少胃の腑のあたりがと言うと顔色を変えて、直ぐに医者に診てもらえと言われた。ご自身に医学の心得がお有りなのかと聞くと、無いが私が心配なのだと言う。初対面の女に対して抱かせろと言うなら兎も角、医者でもないのに体が心配だ等と普通の貴人は言わないだろう。そこでは御忠告感謝致します、医者にかかってみますと答えて翌朝お送りしたのだが、その後私はすっかり忘れてしまっていた」

「それはいかんな。その方の御意見には従うべきだ」

「…いつになく厳しいな仲達。まあいい、結果的にはその通りだったのだ。そして驚いたことに数日経つと名医と名高い華陀殿が『郝昭っていう病人がいるから診てくれと頼まれてきた』とやって来られたのだ」

「ふむ」

「初期の悪性の腫瘍だった、華陀殿の…その方のお陰で今では快癒したがな。なにしろ不思議な方だった。貴人なのだろうが年下の風のせいか威風堂々という雰囲気ではなく、才気煥発という風でもなくむしろ温和で、どちらかといえば端整な顔立ちでやや大人びたところがあったと思う。華陀殿に御依頼元の方を訊ねたのだが、『言わんでいいと言われてるし、確かにあんまり名が売れると困る奴だからなぁ』と断られてしまった。そういう奥ゆかしい方が見知らぬ女の過去を言い当て、病を見抜くだけでなく名医まで手配してくれた。その…多少なりとも運命的な、ただの善意以上に好意的な何かを感じてしまうだろう、私の言っていることはおかしいだろうか!?」

「その気持ちはとてもよく分かるぞ。まあ飲め」

ああ、私のお慕いする方の御慈愛は陳倉のような辺境の堅物女にまで遍くゆきわたっている。とても喜ばしいことだ。

「お前によればいずれその方の身元を知れるのだろうが、その際には御面会の仲介をしてくれないか。せめて華陀殿の件の礼は申し上げたい」

「よいとも」

それと…と言いよどむ伯道の頬が赤い。それ見よ、私よりも伯道の方が余程酔っているではないか。

「その方にはその…恋人はいらっしゃるのだろうか」

「女がそのような瑣末な事を気にしてはいけない」

「年上の女は嫌いだろうか」

「そのようなことはない」

「端的にどんな女が好みだろうか」

「無茶しない女だと心が落ち着くと言われていたぞ」

「料理とか出来る女の方がきっと好まれるのだろう?」

「典韋殿の肉じゃががお好みとの事だ」

「詳しいな!?」

「気のせいだ」

まったく、伯道はつまらぬ事を気にする。

 

「まあいいが…何しろ、私は都ではお前と子丹御嬢様の他は碌に知己もない。これからよろしく頼む」

「私に出来ることがならばなんなりと助力しよう。まあいずれ竿…義理の姉妹が山のように出来るだろうが」

「?」

「いや、こっちの話だ。以前伯達姉様にこっぴどく叱られたのを思い出しただけだ」

「司馬朗様は温和な方と見受けたが」

「皆そう言うし普段はそうだと私も思う。さて、長居してしまったがそろそろ出て」

「ああ」

 

さて、世間も男も知らんこの堅物女の為に私が一肌脱いでやらねば。一刀様の為にも。

「下着屋へ行こう」

「なぜ下着!?」

「さっきから胸元がちらちら見えて気になっていたんだが、なんだその婆くさい下着は。そんな格好では一刀様に無礼だぞ」

「皇帝陛下は関係ないだろう!?それに今何時だと思っているんだ!」

「大丈夫だ、庁内の店なら深夜まで営業している」

「ま、待て引っ張るな、この馬鹿力め!そうだ会計、会計は!?そこの店員ちょっと助けっ、おい無視するな、仲達様につけときますからじゃない!」

「郷に入らば郷の先輩に従うものだ。まったく、こちらもこんななんの捻りも無いものを着けて、明日から庁内勤務だと言うのに自覚が足りんのではないか?」

「ぎゃーっ!?め、めくるな仲達!!ちょっと誰か!誰かこの酔っ払いなんとかしてくれーっ!?」



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司馬日記外伝 店員日記7

その後の、とある店員の日記です。
既に皆様ご存知かとは思いますが、飯坂様が…うぇっへっへっへ…!
まだ御覧になっていらっしゃらない方は是非見て下さいね!ついでに拙作も見て頂けると有り難いです。
三次創作やコメントを下さる皆様への感謝を込めましてup致します。


3月23日

引越しにあわせて、一刀さんに役所の中の今まで行けなかった所案内してもらった。

友達の職場もチラ見させてもらったけど、私を見るなり

「あー忙しい忙しい、昼間っから逢引きでこれから一発やりますみたいな民間人と違って忙しいわぁ」って彩(張郃)が言うのはともかく純(田豊)と静(沮授)まで

「うふふ、そうねえ民間は暇そうでいいわねぇ。いいなー」

「内風呂の見学はもうお済みですかぁお客様」

とか生暖かく微笑まれるとやっぱちょっと恥ずかしい。

 

その後は、まあうん。えへへ。えへへへへ。

朝ご飯も作ってあげられたし、「お仕事頑張ってね。行ってらっしゃい」とか新妻っぽくない?っぽくない!

 

 

 

あー…まだなんかあるような感じするし、もっとちゅっちゅってしーたーいー!眠いのに眠れないよ!

 

 

 

3月25日

仕事に行ったら、恵(高覧)を先頭に「事後報告会の時間だオラァ!」とか言って来店してきたんで扉は蹴らないで入って下さいって給仕長が注意してた。私もした。

私も友達選ばないとなぁとかちょっと思う。

 

出勤したのに給仕長があっさり休みをくれてしまった…空気の読める給仕長、今だけはそれ迷惑です。

 

でまあ、そのあれよ。女の子だけの飲みって露骨でいけないね。つい飲み過ぎるし。

「今度するときは、だっこでぎゅーって感じでずぶっといっていーっぱいちゅっちゅってしてたい」とか私正直酔ってました。

いやまあ…夕べは椿(審配)だけじゃなくて純(田豊)たちも結構すごい話してたし。

 

あー…頭の中が桃色だー。

 

3月28日

琰ちゃんが一刀さんとやれたらしい。先越せて良かった…。

報告してくるのはまあいいんだけどすっかり琰ちゃん色ボケ。ひどい色ボケ。これはひどい色ボケ。大事なので三回書いた。

皿出してる合間にも

「唾液って、甘かったなんて私知りませんでした…杏さんご存知でした?」

「入ってない時間って、なんか凄く喪失感があって落ち着かなくなっちゃって…そういうのありませんか?」

「自分でお尻撫でても何にも気持ち良くないんですよね…一刀様の指じゃないと、もう私ダメなんだなあって」

「ねえ…またしたくありませんか?一緒にしましょうって言いに行きません?」

って、仕事せんかい!

 

ああそうさしたいさやりたいさ!でもお仕事なんだよこんちくしょー。それに他の人たちの番がいっぱいあるみたいだし。

ただ今までハキハキしてたのがすっかり女っぽくなっちゃったのは、ああなんか可愛いなぁってちょっと思う。

 

3月29日

公孫瓚さん見かけたので飲みに誘ってみたらいいよだって!

で行ったら「私の名前分かるか」って聞かれて、意味分かんないけど公孫瓚さんですよねって答えたらお前良い奴だなって言われて真名交換してくれちゃったよ。

そこそこ程度はえらい人みたいなんだけど、どゆこと?

 

3月30日

彩(張郃)に借りた、洗濯が済んだぱんつとブラ返そうとしたら

「要らないわよ、何が悲しくて他の女がやるのに使った下着なんか着なきゃいけないのよ?」

ってあんたのでやったあたしに喧嘩売ってんのこの女は…。

って思ったけど流石にそれは冗談よ、記念だろうからあげるって言われた。

高いんじゃないの?って聞いたら、

「まあそれなりだけど…こっち(役所)に就職すればこういうの結構買えるくらいの給料貰えるのになー杏(私のことだ)がどうしても嫌だっていうならしょうがないよねー。次穿いてくぱんつはもう貸せないし、可哀想だけどだっっっさい下着で一刀様の前に出てって流石の一刀様でも股間が太湖になる位ドン引きされて気まずい時間を過ごすのねー、かっ…わいそうだわあ、私だったら『ゴメン…何か今日ダメで』とか言われたら死ねるわあ、女の誇りずったんずったんで死ねるわぁ。で翌日は普通に他の女と出来てたりしてね。あっ、関係ないけどこんなところに入庁試験申込書があるわね杏捨てといてくれる?」

 

…鬼だ、このアマ。

つーか、前も誘われたしよっぽど人材に困ってんのね…

前から迷ってはいたけど、どーしよー。

 

3月31日

今日は生協の方に入っててお昼に食堂で並んでたら、ちょっとあんたって後ろから声掛けられたんで振り向いてみたら猫耳ちゃんだった。

あんたあそこ(生協)の店員よね、あんた大分前に見たことある気がするんだけど麗羽んとこに居た事ないって言われたので元部下でしたって答えたら、「あっそ。麗羽んとこの連中って一癖あるのが多いから友達は選びなさいよね」って言われた。

 

白蓮さんが「桂花はクセ強いし、あいつの前で一刀の話始めると誉めてもけなしてもめんどくさいから気をつけろ」って言われてるアナタに言われるのもどうなのかと…。勿論素直にハイって答えたけど。

…一部否定しきれないし。

 

4月2日 

「現代後宮用語・成語集」って本の予約受付が始まったけど、余りにも予約希望が多過ぎて整理券を配る事になった。

商売柄先に読めちゃったけど、…うーん…あたしもこういう事に詳しくなんないといけないのかなぁってちょっと不安になった。

 

4月4日

給仕長が一刀さんとちゅーしてた!お客さん少なかったから定時より早めに休憩室に上がろうとしてたら給仕長が一刀さんとむっちゅっちゅーしてたから入れなかったよ!

あわてて廊下に隠れたけど

「菫さん、帰ってこないの?」

「いえ…まだこちらの仕事もありますし」

とか言ってるのが聞こえた。

 

給仕長って役所の人だったのか…そのうち役所に帰っちゃうのかな。

あとやっぱ一刀さんの彼女の一人だったのか…まー今更驚かないけど。

 

4月5日

マル危さん(おっぱいじゃない方)が生協のろーしょんの予約に来た。

入荷するだけ予約したいって言われたけど、お一人様一点限りだったから説明したら舌打ちされた。凄いこわかったよ!

マル危さんたちの事もそろそろ名前で覚えなきゃなあ。えーっと、甘寧さんだっけ…?

 

4月6日

生協の(性協ってゆーな)特注服の『数え役満☆姉妹』用衣装っていうのが入荷したから注文元の人和さんに入荷連絡票を送った。

あの数え役満☆姉妹ってちょっと興味あったんで見てみたんだけど。

…この天和さんの胸元が開いた上着、どう見てもあのおっきいおっぱい半分も入らないよね?

…地和さんのスカートどう見ても透けてるよね?

…人和さんのスカートも脇空き過ぎだよね?

この人たち本気でこんなの着て舞台立ってるんだろーかとドキドキしながら三人に商品の受け渡しをしたら、天和さんが「あ、一刀用の方が入荷したんだ」って言ってた。お支払いの手続きをしてもらった人和さんに「あれ舞台で着られるんですか」って小声で聞いたら

「舞台じゃあんなの着れませんよ…まあその、そうゆう事用です」

ってこそっと答えてくれた。

 

ま、そーだよねー…。

 

4月8日

ちっぱ…月様が賈駆様と来店された。

給仕長が偉い方なので御挨拶しておきなさい、決して無礼な口を利いてはいけませんよって耳打ちしてくれたので御挨拶した。

前に遠くから見た印象と特に違わず、優しくて腰の低い人だった。

恵(高覧)とかはすごい怖がってたけどなんでかなぁ。

 

4月11日

司馬懿さんが知らない女の人を連れてきた。

司馬懿さんが酔って絡んでたみたいで連れの女の人に助けを求められたけど気がつかない振りをした。だって司馬懿さんこわいし。今日給仕長いないし。

しょうがないよね!?

 

4月12日

白蓮さんと飲みに行った。

…安らぐ。

安らぐわー…。

純(田豊)とか静(沮授)とか昔の仲間以外とでこんなゆったり飲めた覚えが無い。

だってみんな濃いんだもん!それにひきかえ白蓮さんはつるつる、もとい個性薄いし!化け物じゃないし!気持ち分かってくれるし!

なんか酔った勢いで『凡人同盟』とか二人で創ったけど一体何だこれ…。まあ言うほど白蓮さんも私も凡人て訳じゃないと思うけど周りがアレ過ぎるんだよね。

そう言えば『次の会員候補は蓮華だな。よし、私が誘っとく!』って白蓮さん言ってたけど、どこの人だろ。私と同じくらい庶民な子だといーなー。



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司馬日記44

その後の、とある文官の日記です。間が空いてしまい申し訳ありません。


4月12日

入庁が同期であった伯道(郝昭)が異動で上京して来た為一杯付き合ったはずだが記憶が無い。叔達の視線がいよいよ冷たいので酒は控えねば。

 

4月14日

庁内を歩いていると突如伯道に腕をつかまれ近くの倉庫へ連れ込まれた。

何事かと思っていると彼女は何故か顔を赤くして

「これで文句無いか!」

といいながら自身の裾を捲り、鮮やかな刺繍が施されいるがほぼ透けてしまっている自身の下着を見せてきた。

あまりの事に「お前は一体何を言っているのか、こんな昼間から痴女ではあるまいし腹を冷やす前に着替えて来い」と窘めると、怒気に満面朱にして「お…お前がこれにしろ、これじゃなきゃだめだって言ったのだろうが!」などと言って殴りかかってきた。

なんとかあしらっていたところ凪らが来て止めてもらい事なきを得たが、冷静な伯道があのように取り乱すとは一体何があったのだろうか。

 

4月15日

書店に行ってみたところ阿蘇阿蘇の表紙に「特集第二回 一刀様独占対談」とあったので購入してみた。読んでみたところ一刀様と于禁の対談で、于禁殿の意向なのか女性の服飾の好みについて多く語られていた。

頁末にこの特集は三回に分かれている旨と、次号については「最終回は編集自らが文書局一の巨乳を武器に体当たり取材!皆が知りたい、一刀様の夜のお・こ・の・み・は?※別冊袋綴じ」と記載されていた。

 

…次号も買わねば。

 

4月16日

先日の出来事は私が酔って伯道に強くあの下着を勧めた為らしい。

子丹御嬢様に伴われて謝罪に行ったところ、複雑そうな表情で

「過ぎた事だ、もう怒ってはいない。楽進将軍らからお前について多少聞いたぞ、お前は酔うとその…中々性質の悪い酒乱のようじゃないか。今後は程々にしておくといい」

と言われた。

先日の、陳倉の過客(であった一刀様)にお目通りしたいと伯道が言っていたのを思い出し、詫びもかねて御紹介したいと申し出たところ一も二も無くそう願いたいと言う。

このような格好でも無礼でないだろうかと軍服の両手を広げて見せてきたが、万一即日御伽を申し付けられる可能性があると思ったので

「先日の下着を着けたほうが良いだろう」と言ったところ

「おまえはとことん私を馬鹿にしているのか」と眉を吊り上げたところで子丹御嬢様がとりなされた。

…本心から伯道の為と思い意見したのだが。

 

4月17日

文書局から自宅へ叔達宛てに大きな箱が届けられた。

叔達が居なかった為私が受け取ったところ品名は衣料とあったが中身は看護服、警備隊制服、めいど服に三国塾の塾生服などの他下着も山のように詰められていた。

帰宅した叔達に無軌道な散財は感心しない、またなぜ文書局から送られたのかと聞いた所、経費で購入したものだと言う。叔達の部署でこのようなものが経費として認められるはずが無いので不正購入したのではないだろうなと問うたが間違いなく経費として認められたといい、役所へ連れて行かれ決裁書類まで見せられた。

 

いかがわしげなものも多くあったが、新しい服を得た為か叔達は上機嫌であった。不思議なこともあるものだ。

 

4月19日

三国会議終了後、一刀様と劉備様、黄忠殿がなんとなしに固い雰囲気で別室に入られていこうとすると、会議室中が妙に緊張した雰囲気となった。

三方が退室するや、諸葛亮殿が青白い顔で「――党派の方は第三会議室に集合して下さい」と言って数名の方と別の会議室の方へと消えていった。

 

詠様にこの妙な空気は何でしょうかと伺うと、

「…今夜だからよ。桃香と紫苑は一刀に念押しするんじゃない、もうここまで来たら迷うな喜んで受け入れないと可哀想だって。で貧乳党の方は対策会議でしょ?敵対して対抗するのか引き入れるのか。って言っても、現在は競合する属性のはずって思い込みたいんでしょうけどもう璃々ちゃんはボク並みか下手すりゃ越されてるし、将来性に至っちゃ違い過ぎるから引き入れるなんて出来やしないでしょうけどね」

と呟かれて執務室の方へ戻っていかれた。

 

4月20日

朝礼後、執務にかかろうとしたところ一刀様と璃々嬢が廊下を歩かれているのに気づいて会釈したところ、穏やかな笑顔をお返し頂いた。

一刀様らが通り過ぎられた後、子丹御嬢様と公達様が

「一刀様、夕べ遂にあの子と寝たんですよね」

「あー?そうらしいわね、時間の問題って聞いてたからいまさら驚かないけど。ま、あたしは競合しないから割とどうでもいいわ」

等と話されていた。

昨日のぎくしゃくした雰囲気はこれの為だったのでしょうかと伺うと、

「天の国じゃ璃々ちゃんくらいの年相手の少女性愛は禁忌らしいわよ、こっちの古今東西の偉い人たちじゃぞろぞろいたでしょうけどね。とは言ってもあの娘発育尋常じゃないし、たまに幾つなのって聞きたくなるくらいしっかりしてるとこ見せるから特段問題ないんじゃないかしらと思うけれど、一刀様には年齢ってやっぱ重要みたいなのよね」

と御嬢様が教えてくださった。元直や妹達などから璃々嬢は特段に優秀な子女と聞いている。ある程度の心身の条件さえ揃えば一刀様に公私にお仕えしてお近くで御指導を賜る事はむしろ望ましいことであるので、

「むしろ英才教育として推奨すべきではないでしょうか」

と申し上げたところ、公達様が

「それ一刀様に言ったらやな顔されるから言わないほうがいいわよ、あんたはそう思うんでしょうけどね」

と生暖かく微笑まれた。

 

4月21日

家族全員で夕食を摂っていると恵達、雅達が明日の夕食は外出する為不要だと申し出てきた。どこへ出かけるのかと聞いたところ、孫尚香様主催で「決起大会」なるものを三国一で行うのに出席するためだという。

なんの決起集会なのか聞くと、「私達の将来への決起集会です」と今一つ要を得ないが二人の表情は真剣そのものであった。士季が

「あの女、最近胸もでかくなってきたし立ち位置も含めて思いっきり競合するだろうから危機感ビンビンなんでしょうねぇ。まあ私も他人の事言えないですけど。幼達ちゃんは行かないの?」

と聞くと、泰然として様子で私は璃々さんについて行きますからと言って食事を片付け始めていた。

 

4月22日

元直と昼食を摂った際に、先に公達様らに申し上げたように若年層の後宮入りを推進すべきではないだろうかと言ってみたところ、箸を止めて

「…あんたが何考えてるか手に取るようにわかるけど、一刀様かわいそうだからやめてあげなさいよ?ただでさえ今劉表さんとか馬騰さんとか凌操さんとか、『どうして紫苑のとこだけ』って圧力かけられて困ってるんだから…美羽ちゃんなんか、当時幾つだっただのどれくらいぺったんこだったか詳しく説明しろだのうちの娘とどれくらい違うと言うのかとか定例会で答弁させられて公開処刑状態よ?ちょっと大人しくしてなさいな」

と真顔で言われた。

 

4月23日

昼休みに伯道(郝昭)が訪ねてきた。

庁内食堂へ誘われるままに出ると、複雑そうな表情で「謀ったな仲達」と言われた。

多忙の為立ち会えなかったが私の方で一刀様に伯道の面会御予約を入れておいたところ、陳倉の過客が一刀様だと知ったようだ。

お前の想い人は凛々しく御立派な方だろうと言うと赤くなって暫く黙ってしまった。一言

「…御優しい方だ。私の持病の件は覚えていて下さった」と言うので、伯道が身も心も御捧げしたいと言っていたと伝えようかと提案したが、

「な、なぜいきなりそうなる!?いやその、感謝していない訳でもお慕いしていないと言う事でもないんだが、…ちょっとまだ気持ちの整理がつかん」

と言う。

傍から見て多少じれったい事ではあるが伯道の恋心は伯道のものだ、彼女の思うままに任せることとしよう。

 

4月24日

元直が書類を見ながら憂鬱げにしていた為、何かあったのかと聞いてみたところ、

「いやね…(水鏡)女学院の子達が就職活動で上京してきてて、定期的に卒業生が就職説明会やってるんだけど今回私が当番なのよ。それはいいんだけどさ、貴様やることしか頭に無いのかみたいな娘が最近増えちゃってさぁ…また幼常(馬謖)が自分が貧乳なもんだから、朱里に気に入られてるのをいいことに一刀様は微乳が好きで出世の条件だとかまず後宮に入らないと入職出来ないとか有る事無い事吹いてるから正すのだけでも一苦労なのよね。あの眉女も自分の妹止めちゃくれないしさぁ…」

とぼやいていた。

一刀様のお好みの問題もあるが後宮入りはいっそ入職条件でも良いのではないかと言ってみたところ、はいはい仲達脳仲達脳等と言って蜀の執務室へ帰って行ってしまった。

 

4月25日

定例の三国会議で、一刀様より今年度より入職試験の最終面接では部長級のみでなく、各国王又は一刀様もお立会いをされるとの御連絡があった。お話の最後に、

「ま、あの…あんまり圧迫面接みたいなのやっちゃうと入ってくる子も入ってこなくなっちゃうかもしれないから、厳しいのもほどほどにね」

と仰って顔を上げられると、月様、仲徳様、文若様、甘寧殿、関羽殿、黄蓋殿、顔良殿らが一斉に目を逸らされた。

 

4月26日

夢に一刀様が出てきた。今までも度々夢に見たことはあったが、往々にして現実の一刀様よりも御積極的で時に多少強引気味であるのは私の欲望を表しているのだろうか。

 

…口づける寸前で目が覚めなくても良いだろうに、後数秒が何故待てないのか。

 

4月27日

李典殿が関羽殿を連れて歩いているのに擦れ違い、珍しい取り合わせですねと声を掛けると、「新しい兵器の開発に協力してもらうんや」と言って工廠の方へと向かわれた。

すると一刀様と典韋殿が息せき切って駆けて来られ、お声を掛ける間もなく擦れ違うと李典殿らに追いつかれ、

「真桜!非人道的兵器の開発は駄目だって言っただろ!?」

「ええやないの、戦争に綺麗も汚いも無いやろ?科学の限界を超えた技術は活用せな」

「駄目です食材に対する冒涜です!お百姓さんに申し訳ないです!」

「?私は流琉の料理教室と聞いて来たのですが、違うのですか?」

等と言い争われていた。

その後執務室に戻ろうとすると白蓮殿と行き会い、「真桜がメシ食わしてくれるって言ってたんだけど、工廠ってどこ?」

と言われたので場所を教えて差し上げた。



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司馬日記外伝 酒楼「三国一」の落書帳4

酒楼「三国一」にあるの落書帳の、ある章です。


【統一後の女限定】新参者集まれの章

 

1:後宮の名無しさん

やっと潜り抜けた狭き門。

昼や夜の今後目指す方向や得られた情報について語りましょう。

2:後宮の名無しさん

ここまで長かった…

 

3:後宮の名無しさん

ここからは打倒譜代

 

4:後宮の名無しさん

いやそれは無理

むしろどうやってかわしてくか

 

5:後宮の名無しさん

っつってもあの人達居る限り碌に番が回ってこないぞ

 

6:後宮の名無しさん

まあ番だけの問題でもないんだが

とりあえず偉くなるしか?

 

7:後宮の名無しさん

重臣どころは既に固められてると思うんだが

私らで一番偉くなった人って誰?

 

8:後宮の名無しさん

荀攸様

 

9:後宮の名無しさん

うちじゃ元直かな

 

10:後宮の名無しさん

むち子

 

11:後宮の名無しさん

誰だむち子って

 

12:10

むち子=魯粛

ふともものむちむち具合が(主にえろい意味で)やばい

張姉妹の上京を阻んであの位置に居座る手腕は凄いと思う

 

13:後宮の名無しさん

司馬懿さん…って荀攸さんの部下なんだっけか

よその人だから余り知らないけど会議に出るといつもいるから偉い人なのかと思った

 

14:後宮の名無しさん

ある意味偉い女

 

15:後宮の名無しさん

ある意味どえらい女

 

16:後宮の名無しさん

>>15

だれうま

 

17:後宮の名無しさん

仲達さんはかなりおいしい立場に居るが特に高位なわけじゃない

 

18:後宮の名無しさん

>>17

そもそも総務室に抜擢されたのは真面目で仕事出来て私情持ち込まなさそうだったからって詠様が言ってた

ちゅーたつさんだったというのは後から分かった事らしい

 

19:後宮の名無しさん

偉くなったら回数増える?ってか流石に一刀様と接点増えるよね?

 

20:後宮の名無しさん

>>19

最近の女は基本的に役職比例で割り振りだから理論上増えるし接点も普通は増える

あと姉妹制を活用すればとりあえず回数は増える

但し他の女と一緒で良ければだが

 

21:後宮の名無しさん

他の女とかぁ

半端に知り合いとか全く知らん女と一緒はちょっとなぁ

 

22:後宮の名無しさん

でも要はあれでしょ

一刀様の特別お気に入りになっちゃえば番だの何だの関係ないでしょ?

 

23:後宮の名無しさん

>>22

それがどれだけ難しい事かと…

あと譜代の人達にそれ聞かれたら殴られるぞ

 

24:後宮の名無しさん

まあ22が言うのは極端にしても気に入られん事には始まらん

結局一刀様ってどんな女が好みなのかね

寝床じゃ『君そのものだけど』とか言われたけど

うへへへへへ

 

25:後宮の名無しさん

>>24

どんな女にも本気の一刀様マジ一刀様

しかし荀攸様がお手本とは思いたくない

 

26:後宮の名無しさん

その人はアレにしても従順な女が好みなんじゃないか?

知ってるだけでも張松、法正、張任、姜維、鄧芝とか

 

27:後宮の名無しさん

顔ぶれから見て26は蜀の女だろうけど

それは一概に言い切れない

 

例えばツンデレは

「一刀の事なんか好きじゃないんだからねっ」

「そうですかじゃあ引っ込んでて下さい代わりに私が」

ってあっさり周りから締め出されるから後宮が供給過多になってからは殆ど不可能になった

つまり一刀様の好みに関わらず従順っていうか少なくとも派手に逆らわない女しか供給出来ないから実際は謎

 

28:後宮の名無しさん

あと一刀様教信者の方々がツン大嫌いらしい

某後宮で一番偉い方とか

 

曹操様と夏侯惇様の一刀様への当たりが柔らかくなったのはその辺の圧力だったって聞いた

 

29:後宮の名無しさん

つまり思春と荀彧さんが実質最後のツンデレ枠か

思春も極端だと思うけど

 

30:天水娘

>>29

あと詠様と華雄さんもそうなのではないでしょうか

 

体の方の好みは如何でしょうか

大きい女は嫌いでしょうか

 

31:後宮の名無しさん

背はともかく最近おっぱい大きい女が多い気がする

 

32:後宮の名無しさん

>>31

おっと法正さんの悪口はそこまでだ

 

33:後宮の名無しさん

>>31

曹洪様の悪口もそこまでだ

 

34:後宮の名無しさん

>>31

蒋欽ちゃんの(以下略)

 

35:31

>>32

>>33

>>34

お前らwww

 

36:後宮の名無しさん

体の特徴は中々変えられないから考えても無駄だろ

プレイとか性格とかそういう方向で

 

37:後宮の名無しさん

とりあえずコスプレ好きは確定じゃないか

御自分で意匠して展示会やっちゃうくらいなんだから

 

38:後宮の名無しさん

>>37

「こすぷれ」って何?

 

39:後宮の名無しさん

>>38

色んな衣装着てヤること

「天の国語録」は大体読んでおかないと一刀様との会話に詰まるぞ

 

40:後宮の名無しさん

話し逸れるけど文謙様かわいい

こそこそ隠れて警備部の制服を洗ってて一刀様とのプレイで汚しちゃったのがまるわかりあれーこれ何ですか黙っててあげますから正直に言っちゃって下さいとか煽ると

「た、隊長が…何度もするから、朝洗う暇が無くって…」

とか赤くなって答えてくれるのかわいい

 

41:後宮の名無しさん

凪さんかわいいよね

 

42:後宮の名無しさん

でもあれ真似しようと思って出来るもんじゃないんだよねぇ

真似しても怒らないでくれそうなところはいいんだけど

 

43:後宮の名無しさん

うげ

真似すると怒る人って居るの?

 

44:後宮の名無しさん

たぶん程昱様

 

45:後宮の名無しさん

風さん一択

 

46:後宮の名無しさん

ダントツで程昱様

あの人自分とカブる女が居ないかわざわざ調査かけたような人だぞ

 

47:後宮の名無しさん

私呉の女だけど程昱さんて恐い人なの?

のんびりしてそうに見えたけど

 

48:後宮の名無しさん

>>47

一刀様が絡むと魏じゃ文若様と双璧を成す気難しい方

 

勤務時間中でも抱っこの最中に書類持ってくと一刀様に言うふりして

「おー、種馬のお兄さんの唯一のお仕事のお相手が来たみたいですからお邪魔虫の風はどきましょうかー?」とかこっちから目を離さずに嫌味言われる

曹操様が「今は風の時間みたいだから後にするわ」って遠慮するほど

 

49:後宮の名無しさん

>>47

むしろ婉曲的な分文若様より扱い面倒

 

50:後宮の名無しさん

意外だ

郭嘉さんの方が恐そうな人に見えたけど

ちな蜀女

 

51:後宮の名無しさん

魏女だけど

奉孝様は厳しいのは仕事だけ

こと一刀様に関しちゃ寧ろ気が弱い部類に入るんじゃないか

 

前に眼鏡ってどうですか、私掛けてみてもいいですかねって聞いたら別に構いませんよっていってた顔が不安そうだったし

 

52:後宮の名無しさん

呉では譜代の人で要注意な人って居る?

 

53:後宮の名無しさん

知ってて聞いてるだろ

孫尚香様

 

54:後宮の名無しさん

まあ孫尚香様

 

55:後宮の名無しさん

公瑾様

 

うっかり番の時間を邪魔して凄い怒らした

無言で怒るから恐い

 

56:後宮の名無しさん

小蓮様だろ常考

堂々姉の立場を食っちゃおうとしている方に注意しなくて誰に注意すると

 

57:後宮の名無しさん

つまり呉は内乱起こるの?

 

58:後宮の名無しさん

さあ

雪蓮様と思春が蓮華様についてるし、張姉妹もにらみを利かしてるから政治上は大丈夫だと思うけどなぁ

一刀様の腰の上を奪い倒すかどうかはわからん

 

59:後宮の名無しさん

蜀女だけどいずれ孫尚香様の時代が来る気しかしない

あの気の強さと一刀様への執着はぱないし

体つきも大分女っぽくなってきたし

 

60:後宮の名無しさん

呉女だが

袁術が持っていたらしい最年少記録を派手に更新した蜀にだけは言われん

かなり近い将来あの娘が実権握るだろ

 

61:後宮の名無しさん

あそこは親も親だしな…

 

62:後宮の名無しさん

…話を戻そう

一刀様の好みだ

 

63:後宮の名無しさん

二、三人まとめて面倒見るってのもしてるよね

尻を並べてってのが好きだとか?

どうせ自分ひとりじゃ二時間も持たないしそれなら仲良いのと連れ立ってでもいいかな

 

64:後宮の名無しさん

敢えて一刀様の御希望でってのは聞かないなぁ

嫌がったって話も聞かないけど

 

65:後宮の名無しさん

蒋欽周泰の十八番

ローションマットプレイ

 

66:後宮の名無しさん

あれ流行ってるよね

生協で注文したら品切れっぱなしなんだけど

 

67:後宮の名無しさん

確かにあれは良いって一刀様が言ったらしい

ただ手垢がつきすぎだから今から取り組んでもちょっとどうなのか

 

68:後宮の名無しさん

とりあえずプレイとかで考えるのはやめよう

将を射んとすればまず馬を射よ

誰と仲良くなるべき?

 

69:後宮の名無しさん

>>68

後宮で一番偉い人と

 

70:後宮の名無しさん

無理

色んな意味で

持たない

 

71:後宮の名無しさん

あの人と仲良くなっても別に回数は増えないぞ

後宮に居辛くなることが無いだけで

 

72:後宮の名無しさん

邪心を持たずにお付き合いするならとてもいい人かも

なお怒らせた場合は

 

73:後宮の名無しさん

俺は亞莎がお手本で仲良くしてもらってる

あいついい奴だ

雪蓮はすぐ私を騙そうとするから油断ならない

 

74:後宮の名無しさん

しかしその亞莎はぱんつ履かずに胡麻団子食べませんかとか言って一刀様を誘った剛の者だったり

あとあた…魯粛さんのことむち子って言った奴総務室来い

 

75:後宮の名無しさん

>>74

のーぱんってまじで!?

 

76:後宮の名無しさん

呉下の亞莎にあらずだな…

下着チラッと見えたくらいで悲鳴上げそうな子だったはずなのに

 

77:後宮の名無しさん

いや実際こないだも下着見えただけで悲鳴上げてたが

自分の清純さと羞恥心を逆手に取って武器にしている

 

78:後宮の名無しさん

明命と亞莎、どうして差がついた…おっぱい、恥じらいの違い

 

79:マットプレイの権威その1

>>78

野外演習で地獄が見たいんですねわかりました

真桜さん特製の墨で顔面に『ユル穴』『淫売』の他に書いて欲しい言葉を決めて下さいね

 

80:73

明命…この章は新参限定な

あと俺から見たら明命と亞莎の差とか正直わからん位一刀様と仲良くて羨ましい

 

81:79

ちちでかヤンキーは黙ってろなのです

翌朝他の女との残り香でも嗅いでるといいのです

 

82:後宮の名無しさん

まあまあ

あと私思うんだが袁紹さんと仲良くなるのがいいと思う

官位は結構高いし『一刀様にはどんどん抱かれろ』みたいな事言ってて鷹揚な人だったから意外な近道になるんじゃないか

 

83:後宮の名無しさん

>>82

お前がM女ならな

それとあとおかっぱおっぱいさんにも気に入られる必要があるのがちょっと

 

84:後宮の名無しさん

ああ…あの人ねぇ…

 

85:後宮の名無しさん

顔良さんのこと?

あの人優しそうだし大人しそうだけど

 

86:後宮の名無しさん

うんそうだねー(棒)

 

87:渤海の田舎娘

根はいい子なんですけど…

一刀さんの事になるとちょっとムキになっちゃうところがありまして

 

88:後宮の名無しさん

じゃ、じゃあよく一刀様とお喋りしてるのを見かける張勲さんは?

 

89:後宮の名無しさん

あの人一刀様と袁術さんの事以外かなりどうでもよさそうなんだが

なんかバカにされてるようで苦手

 

90:後宮の名無しさん

呉だが

大御所祭さまは?

 

91:後宮の名無しさん

>>90

説教地獄へようこそ

あと一刀様がどれだけ自分に御執心かって自慢話も長い

 

92:後宮の名無しさん

蜀女だけど

黄忠さまは?

 

93:後宮の名無しさん

>>92

優しい方だがさすがに娘よりも優先してくれるとは思えん

 

94:後宮の名無しさん

私理系だから李典様の下につけば助手とかで一刀様と会う機会が…

 

95:後宮の名無しさん

>>94

「さうな」にしても「こたつ」にしても、真桜様が一刀様と一緒の実験を他の女にやらせたのを一回でも見たことがあるか?

 

96:後宮の名無しさん

と、桃香様は誰とでも仲良くしてくれるから

たまにはお供を…

 

97:私を押し倒す奴は一刀様だけ

>>96

悪意無く素で96の存在を忘れて一人で寝台に行っちゃう人でもある

二人で超いい雰囲気作っといて『あっ、ごめんいたんだ』位言われても心折れないか?

 

優しい方なんだが…

悪意無いのもわかるんだが…

 

98:後宮の名無しさん

…あれ、私ら詰んでない?

 

99:仲子

他人を押しのけて一刀様に取り入ろうというのは後宮の女の目差すべきところではないと思います

常に己を磨きいつお求めがあってもよいようにしているべきでしょう

 

100:後宮の名無しさん

はいはい仲達仲達

 

101:後宮の名無しさん

こういう時仲達さんの発想羨ましいよねー

 

102:後宮の名無しさん

恵まれたエロい体にアレな頭脳

仲達マジ仲達

そこに痺れるが憧れない

 

103:後宮の名無しさん

司馬懿さんは顔と体と能力だけ羨ましい

なお性格は

 

104:後宮の名無しさん

仲達さんってあの環境で欲求不満にならないの?

 

105:後宮の名無しさん

司馬懿さんが乱れてる姿とか想像つかないんだけど

 

凪と一緒に寝たってほんと?

 

106:後宮の名無しさん

いやいや

『のーぱんの尻をメイド服越しに一刀様にモミモミさせた』って噂のほうが気になるけどどうなの?

 

----------------------

 

「子廉様…偽名を使っているのに何故皆この書き込みが私だと分かるのでしょうか」

「何故かしらねー。あとあんた今何か書き込もうとしてるけど、聞かれてても律儀に答えなくてもいいのよ?」



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司馬日記でもしかしてだけど

某動画サイトで初めて見てクスッと来たのです。


休みの日に庭園で飲んでいたら主殿が『仕事もよろしくな』と言ってきたのだ

もしかしてなのだが

もしかしてなのだが

遠まわしに『今から伽の仕事をしに来い』って誘ってるのではなかろうか?

 

夕方になると凪が露骨にウチを避けとる気がするんや

もしかしてなんやけど

もしかしてなんやけど

ホンマは無理矢理一刀んとこに一緒に引っ張ってって欲しいんやないの!?

 

一刀が秋蘭と二人だけの時に秋姉ぇって呼んでいるのを見たんだ

もしかしてなんだが

もしかしてなんだが

本当は私の事を春姉ぇって呼びたいんだが秋蘭で練習してるんじゃないのか!?

 

泥道で転んで泥まみれになった眼鏡を拭いてたら一刀殿が「汚しちゃったらまた用意するから」って新しい眼鏡をくれたんです

もしかしてなんですが

もしかしてなんですが

か、かけて汚したいってことなんでしょうか!?

 

部下の鍛錬をしていたらあやつが「頑張ってくれるのは有難いけど、ほどほどにな」と言って来たんだ

もしかしてなのだが

もしかしてなのだが

「夜まで体力を取っておけ」って事に違いないと思うんだがなんて卑猥な奴なんだ!

 

普通に登庁しようとしたら警備部の新人らしい女に職質受けたんだ

もしかしてだけど

もしかしてだけど

ホントは私の事を知ってたけれどやっかみで聞いてきたんじゃないの!?

 

あの全身精液男の部屋で打ち合わせしてたら月達が居なくてあいつがお茶を淹れてきたのよ

もしかしてだけど

もしかしてだけど

媚薬とか入れられててこの後滅茶苦茶にしてやろうとか思ってるのよねあんたの考えることくらい判ってるのよ!?

 

風呂上りに牛乳を飲んでたらでかちちヤンキーがマットプレイのやり方を聞きにきたのです

もしかしてなのですが

もしかしてなのですが

胸に邪魔なものがついていてうまく出来ないからに違いないのです絶対そーなのです!

 

当番の夜になると愛紗とか思春とか荀攸さんとかなんか色んな人が厠行ってないかってしょっちゅう聞いてくるんだ

まさかとは思うんだけどさ

まさかとは思うんだけどさ

一応念の為に聞いとくけど、羨ましいんじゃない…よな?

…な、なんだよ蒲公英その目は!

 

桃香さまに「最近別々が多かったし、今日は一緒に普通に…どうかなぁ」と言われたのです

もしかしてですが

もしかしてですが

実は私が桃香さまに寝取られるプレイをしたかったのをご存知だったのではないでしょうか!?

こないだ桃香と華琳に後ろから呼ばれた時にある人と人違いされたの

もしかしてだけど

もしかしてだけど

私が白蓮さんみたいな癒し系なのが本当は羨ましいんでしょ!?

そんなすまなさそうな顔したって私判ってるんだからねっ、泣いてないわよ泣いてないって言ってるじゃないうわぁぁん!



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司馬日記45

その後の、とある文官の日記です。間が空いてしまい申し訳ありません。

ところで司馬日記44の閲覧数はどうしてそうなったのやら・・・


4月28日

蜀から王累という方が公達様を訪ねてこられた。その旨を公達様にお伝えすると笑顔を浮かべて迎えられ、久しぶりね新作はどうなどと談笑されながら会議室へと入って行かれた。

子丹御嬢様に、公達様に蜀の方で親しい方とは珍しいですねと申し上げると、士載の耳をふさぎながら「王累さん、蜀じゃ少ないそっち系の人だから…『吊りの王累、縛りの荀攸』ってその筋の人たちじゃ有名な方らしいわよ」と死んだ魚のような瞳で説明して下さった。

 

4月29日

緊急会議が召集された。議題は一刀様の御蔵書についてで、切欠は枕の下に隠されていたという官能小説の処置についてであった。

内容としては義理の妹二人との近親愛もので、第一発見者であった玲紗(関平)、藤香(劉封)は『一刀様の御性癖であるので許容すべき、寧ろ続編も揃えて御自室内の本棚に常備すべき』と妙なドヤ顔で主張した。

一方一刀様は「俺自身がそんなもん買ったりすれば足がつくだろ!?それにこんな分かり易いところに隠すとか無いって!」と無実を御主張され、またその小説の処分を希望された事もあり関羽殿が「あんまりふざけた事をするのではない」と窘めながら件の小説を窓から投げ捨てた。

すると姉妹はあー!と声を上げ、

「では義母様、一刀様の袖机の引き出しの裏に隠された黒髪巨乳陵辱ものなら良いとでも言うのですか、私たちのと何が違うんですか!」

「それは…ご主人様の趣味だから仕方ないだろう、なあ思春!?」

「わ、私は関係ないぞ」

「私と公奕(蒋欽)はそろそろ重みで天井が落ちるからこれ以上積み上げない方がいいと思春殿に言ったのです」

「明命貴様黙れ!!」

等と怒鳴りあいを始められてしまった為、詠様がはいはい静かにして、いい機会だからしょうもないもんは全部撤去することにするわねと言われ散会の流れとなった。しかしぼそりと

「って言いながら茶道具の引き出しに隠したメガネメイド物だけは残そうするズルっ子がいないといいですねー」

と張勲殿が呟かれると全員が一斉に詠様の方を振り向き、ややあって詠様が

「…本棚作るから、それぞれで推薦図書を各自一冊だけそこにしまって。厚みとか配置とかはあとで打ち合わせることにしましょ」

と言われ、今度こそ散会となった。

 

4月30日

縁側で文醜殿が一刀様に髪を梳かされていた。

一刀様曰く寝癖があったのでということであったが、文醜殿は居心地悪げでのようでもあり嬉しげでもあった。

 

5月1日

始業頃から許褚殿、文遠殿、李典殿らがものすごい頭をして

『ボクもボクも!』

『ウチからや!』

等と一刀様のお部屋で騒がれていた。

いやここまでのはちょっと無理だからお風呂行って来て、と一刀様が何事か断られると

せやったら一緒に風呂入ってもらわな、と言って一刀様を浴場の方へ連れて行かれた。

 

本日の午前中の会議は一刀様は御欠席なさった。

 

5月2日

会議にて文若様が

「…時間勿体無いから、髪整える時間削る分会議の開始時間早めて会議中にこいつに髪の事やらせない?」

と御発言された。すると会議の司会であった陸遜殿が

「只今の『私も一刀さんに髪を梳かして欲しくてたまらない梳かしてもらえないと死んじゃう』という御提案ですが皆様如何でしょうか」

と言われると文若様は満面朱にして否定されていたが、時間制で一刀様の隣席の者が髪を梳かして貰う事でどうかとなった。

一刀様が会議中にそれはちょっとどうかと疑義を呈されたほか曹操様と袁紹殿が最後まで反対されていたが、趙雲殿が

「主殿、カーラーを巻いた華琳殿と麗羽殿はみっともないでしょうかな?」

と一刀様に質問され、一刀様が御否定されてからは条件付で賛成なさった。

 

5月3日

会議の開始時刻になったが一向に出席予定者が集まらず、何があったのかと聞いてみると皆会議直前に風呂に行き大混雑している為だという。

 

会議中に一刀様に髪を梳かして貰うという件は弊害が大きいと言う理由で一日で沙汰止みとなった。

 

5月5日

部署毎に給与の支給日をずらすこととなった。

生協の一部の商品に購入希望が殺到する為らしい。

 

5月6日

月様と詠様、一刀様が会議室から出てこられたが珍しく月様が悄然とされていた。

後で詠様に御事情を伺ってみたところ、

「いやそのね…後宮も広くなったり別棟出来たり、ボクらが管理しなきゃいけない事も増えてて手が回りきらないから求人かけてたんだけど、最終面接でかなり月が落としちゃっててね…多少気に入らなくても目ェ瞑って採用してやらせないとねってボクと一刀で説得してたの」

との事だ。

一刀様に直接関わる重要な業務であるので厳選されたい月様のお気持ちも御尤もだが、確かに仕事が回らないことには始まらない。

 

5月8日

会議中で予算執行状況を稟様が報告されていたのを一刀様が突如遮って

「恋、具合悪くない?」

と言われた。私から見て呂布殿は平常と変わらず、本人も「…別に、平気」と言われたが、いや顔色悪いし辛そうだよちょっと詠診てあげてと一刀様が続けられ、詠様が怪訝な顔しながら呂布殿の額に手を当てられると「熱いわ!?ちょっと熱あるじゃないの恋、寝てなさいよ!」と言って呂布殿を連れて行かれた。

文醜殿が

「あたいには全然分かんなかったけどなあ…さすが仕事として女見てるアニキは違うよなぁ」

と妙な感心をされていた。

 

5月9日

改装された遊戯室に行ってみると、文若様、諸葛亮殿、詠様、周瑜殿が小さめの角卓を囲まれていた。これはなんでしょうかと伺ったところ、一刀様がこういったものがあるとお話されていた麻雀という遊戯を再現したもので明日がその大会だとのことであった。

囲棋(囲碁)は多少嗜むが遊びには疎く、こういったものがあるとはついぞ知らなかったが詠様が「あんた頭は切れるんだから出てみれば?それぞれの班で優勝すれば賞品もあることだし」と仰るので競技規則を読み、出てみる事とした。

 

5月10日

結論として麻雀大会では一回戦で敗退してしまった。

敗因は明確で、同卓左隣となった一刀様のお捨てになった牌を鳴く事に熱中し過ぎ悉く上がり目を失ってしまったためだ。対局後、元直に笑顔で

「仲達、あんたって本っっっっっっ当にバカなのねぇ…優勝すれば一刀様があんたの嶺上開花を一気通貫して清一色に染めてもらえるっていうのに」

と溜め息を吐かれてしまった。なお各班の優勝者はそれぞれ孫策様、呂布殿、袁紹殿、張勲殿であったが、袁紹殿は「毎回毎回、初めっから全て揃ってしまっていてはつまりませんわ!」

と不満げであった。詠様は

「麗羽と雪蓮、恋は次回から出場禁止よ、あいつら居ると違う遊びになっちゃうじゃない!」とぷりぷり怒られていらっしゃったが、では張勲殿は宜しいのでしょうかと伺うと、しばし黙考されたのち

「…七乃は倒す。人の心を操る遊びであの女だけには負けられないわ」

と据わった目で答えられた。張勲殿だけは他の三方と違って特別らしい。



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司馬日記外伝 酒楼「三国一」の落書帳5

酒楼「三国一」にあるの落書帳の、ある章です。
ちょっと忙しく今は小ネタ程度しか書けておりませんが、今しばらくしたら多少時間が取れそうです…


・一刀さんのお気に入りらしいですけど何か質問あります?の章

 

1:後宮の名無のさん

御嬢様が「私がしょっちゅう聞かれるから、いっそこの章を立てて」

とおっしゃるので。

 

2:後宮の名無しさん

ホントにお気に入りなの?

 

3:1

さあ

本当のところは一刀さんしか分からないと思いますけど

よく妬まれてるなーとは感じますよ

 

4:後宮の名無しさん

敵多い?

 

5:1

敵と言いますか

まあ私の事嫌いな人は多いんじゃないですかね

 

6:後宮の名無しさん

たまに気になるんだけど月様と仲悪い?

 

7:1

別段悪くないつもりですよ

月さんの目の前で一刀さん罵倒したら嫌われると思いますけど

人見てもの言ってりゃ大丈夫じゃないですか

 

8:後宮の名無しさん

当番表見ると回数は多くないけどいつもどこでしてるの?

 

9:1

そりゃ偉くないから多くないですよ

どこでと言えば人目のない所です

貴女だって人前ではしないでしょ?

 

10:後宮の名無しさん

袁術さんと一刀様どっちが好きなの?

 

11:1

前は美羽さまでしたけど今は比較出来るってものじゃないって感じですね

美羽さまはもうすっかり一刀さんの方が好きみたいでちょっと淋しい気もしますが

でも三人で一緒にお寝んねすることもありますよ

12:後宮の名無しさん

一刀様の考えてる事が分かるって本当?

 

13:1

なんでもって訳じゃないですけど多少分かってる方だと思いますよ

 

14:後宮の名無しさん

好きな体位は?

 

15:1

特にこれでないとって言うほどのはないですね

色々してますよ

なんとなくお尻で誘っちゃう事が多いので後ろからが多いでしょうかね

 

16:後宮の名無しさん

一刀様は後ろからが好きなの?

 

17:1

私相手って事に限って言えば好きなんじゃないかと思いますよ

逆に私が上にって言われたことないですね

私も言った事ないですけど

まあ私生意気な女なんで後ろからの方が征服感あって燃えるのかと

でも普通に一刀さんが上とか駅弁もどきみたいなのですることも多いです

 

18:後宮の名無しさん

してる時も普段そのままなの?

 

19:1

そんなわけないですよ

前戯まではあまり変わらないかもしれませんけど始まっちゃえばまあ一刀さんのもんなのは多分他の人と同じなんだと思います

こんなひねた女あれだけ鳴かせればそりゃ一刀さんでも満足なんじゃないかと

まあそれが私としても良くもありちょっと悔しくもありだったり

 

20:後宮の名無しさん

嫌いな女は?

 

21:1

ここで個人名挙げてもなんなので一般論で

自分の価値観でしか他人の事を考えられない人は嫌いですね

絡まれない限りはこちらもわざわざ相手しませんけど

 

22:後宮の名無しさん

逆に好きな女は?袁術さん以外で

 

23:1

好きって言うと言い過ぎな感じがしますけど

秋蘭さん、雪蓮さん、華琳さん、あとは詠さんですかね

周り見えてる人は嫌いじゃないですよ

 

24:後宮の名無しさん

今までやったなかで一番過激なプレイは?

 

25:1

ちょっと言えませんね

大体いつもやばめなプレイは計算ずくでやるんですけどその時は本気でやばいと思いました

一刀さんに本気で謝られましたし

 

26:後宮の名無しさん

いったい何をやったんだ…

 

27:後宮の名無しさん

ほんとはどSなの?

美羽ちゃんよくいじめてるけど

 

28:1

なんともですねえ

美羽さまへのはあれは愛情表現です

一刀さんいじめたいとは思わないのは他人から見た自分そのまんまなのが癪だからなのかもしれませんね

逆に一刀さんに滅茶苦茶にされたいって思うときはありますよ

 

29:後宮の名無しさん

曹真さんのことは嫌い?

 

30:1

美羽さまをまっとうな道に引き戻そうとするんで困りましたけど

あの人いい人ではありますよ

 

美羽さまは昔はずっと私が面倒見てくんだって思ってましたけど

一刀さんと付き合い始めてからはいずれ自立しちゃうだろうなとは思ってましたからいまさらまあいいかって感じです

 

31:後宮の名無しさん

一刀様とする日はたまに穿いてないってほんと?

 

32:1

さあ

 

33:後宮の名無しさん

公共の場で一刀様としたことある?

 

34:1

他人の迷惑になるようなことはしたことありませんよ

 

35:後宮の名無しさん

無いのか

意外だ

 

36:後宮の名無しさん

>>35

よく読め

 

37:後宮の名無しさん

夜の超凄技とか持ってるの?

 

38:1

凄技って程のものは何もないですよ

大事なのは雰囲気とか流れとかじゃないですか

 

39:後宮の名無しさん

袁術さんよくいじってるけど袁術さんはMなの?

 

40:1

うーん

いじられ体質の素養はあると思いますけどね

荀攸さんみたいなのとはちょっと違うんじゃないですか

 

41:後宮の名無しさん

どこが一番感じる?

 

42:1

体のどこっていうより言葉とか表情ですかね

43:後宮の名無しさん

一刀様のどこが好き?

 

44:1

これもどこって言うのは難しいですね

まあ真面目でしょぼくてかわいい人ですよ

 

たまにその仮面を剥ぎ取って雄の本性むき出しにさせてやりたくなります

このへん荀攸さんとちょっと近いかもしれませんね

 

45:後宮の名無しさん

一刀様に好かれるにはどうしたらいい?

 

46:1

よっぽどな事をしない限り嫌われないと思いますけど

基本、押しには弱いですよね

そういう抱かれ方でいいかどうかは貴女次第ですが

 

47:後宮の名無しさん

ちょっと別の方向から

一刀様に信頼されるにはどうしたらいい?

 

48:1

偉い人だ、凄い人だとか思わないことだと思いますよ

そんじょそこらの男なんだけど優しい人くらいに考えて、優しくしてやればいいんじゃないですか

 

49:後宮の名無しさん

後半は無理…

 

50:後宮の名無しさん

趙雲様みたいに接しろってこと?

 

51:1

ちょっと違うと思うんですよねえ

一度本気で怒られてたみたいですし

まああの人だからそれでも許されてたんでしょうけど

 

52:後宮の名無しさん

美羽ちゃん酔わした時に聞いたんだけど、いつもつけてる髪留めは一刀様に貰ったもんで内側に真名彫ってあるって本当?

 

53:1

さあ

いくつも持ってますし

 

54:後宮の名無しさん

>>52

前風呂一緒だった時に脱衣籠にあったのチラッと見たけどそれには無かった

 

55:1

>>54

次やったらブチ殺しますよ?

 

56:54

ごめんなさい

しませんからゆるして

 

57:1

それじゃきょうはこの辺で

 

58:後宮の名無しさん

乙でした

 

59:後宮の名無しさん

乙です

はーいいなぁ

勝者の余裕って感じ

 

60:後宮の名無しさん

一見特別何が凄そうって無さそうなのにね

1様乙でした



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司馬日記46

その後の、とある文官の日記です。

ところで拙作も次回で投稿数が100回となります、これも皆様の御閲覧、コメント、三次創作の賜物とでございます。
つきましては厚かましい事とは存じますがコメントやメッセージ等でネタをお受け付けし、その中で私の書けそうなものを今後数回で実施させて頂ければと思っております。
これからの御笑覧共々、何卒宜しくお願い致します。


5月12日

子敬が渋い顔をして執務室へ入ってきたのでどうしたのかと聞いたところ、張昭殿と張紘殿が上京して来ているからだと言う。

江東の二張と言えば魏にもその名が知られた賢人であるので御指導を頂く折角の機会ではないのかと思ったが、子敬によると

「そう思っていた時期があたしにもありました…まあ仕事出来る人たちだし子綱(張紘)さんは別にいいんだけど、子布(張昭)さんってちょっと性格がアレでね…あのベタデレ小言は魏とか蜀とか、初めて見る人イラッと来るわよきっと」

と言う。

 

5月13日

士季と士載、詠様で昼食を摂り終えて職場へ戻ろうとしたところ、一刀様が士季ちゃん士季ちゃん!と呼ばれ、士季の両手を握りながら

「有難う助かったよ…教えてもらったとおりにしてみたらばっちり、愛紗なんかもう元通りだし!」

「そうですか!それは良かったです、一刀様のお力になれて私も嬉しいです」

「いやあホント感謝してる、思春は元々ああだからまだちょっとアレだけどさ。良かったらお礼に今夜一杯(酒を)どう?」

「ええっ、宜しいのですか?でしたらいっぱい(上と下と後ろに)お願いします、三国一(のお泊り部屋を)予約しておきますね」

等と楽しげに話されて執務に戻られて行った。

 

詠様が怪訝な顔をして

「士季ちゃん、貴女一刀に何教えてあげたの?」

と聞かれると、

「例の狂犬二匹を元に戻す方法ですよ。一刀様に『俺にらぶらぶな演技をしろ、しなければ劉備様(孫権様)がどんな目に遭ってもいいんだな』って脅せば良いですよって助言差し上げたんです。元々あの人達、死ぬほど一刀様に甘えたいのが歪んじゃってるだけで渡りに船もいいところですから」

と答えた。詠様は目を丸くして士季ちゃんあんたやるわねぇ、と感心されていた。

 

ところで例の狂犬二匹とは誰の事だろうか。

 

5月14日

士季が満面の笑みで帰宅した。小脇に荷物を抱えていたのでこれは何かと聞くと警備部の制服ですよと見せられたが、明らかに一刀様との情交の跡がべっとりとつけられていた。

匂いだけで酔いそうになってしまったので鼻を押さえながら職務に使用するものを私用に使うものではないと叱責したが、凪さんの許可は頂いてますからと涼しい顔で通り過ぎられてしまった。

 

5月15日

凪に会ったので昨日の士季とのやりとりを説明し、官給品の取り扱いについて今少し厳しく指導して頂いて構わないのでと伝えたところ、顔を紅くして

「わ、私も人の事を言えないので…彼女も自費で余分に買ったものですし、その…すみません」

と縮こまってしまった。そういう経緯では何も言うに言えず、自費であればまあ良いのでしょうと申し上げると、妙な気の廻し方をされてしまったのか

「あの、もし良かったら寸法が合わずに処分する予定のが部に一着あるんですが、仲達さんならこの服ほんとに似合うと思いますのでその、宜しかったら…多分隊長も仲達さんがこれを着られたら喜ばれると思いますし…」

と勧められてしまい、固辞するのに一苦労だった。

 

5月16日

珍しく不貞腐れたような表情を浮べた周泰殿がげんなりした風の蒋欽殿を伴って一刀様の執務室から出てこられ、見てられないのですと言いながらお茶を呷って子敬の隣にだらしなく腰掛けた。張郃と郭淮が興味深げに何があったのか聞くと、周泰殿は子敬に

「お話しても良いですか?良いですよね?と言いますか誰かに喋らないとイライラでおかしくなりそうです!」

「いーんじゃない?ってか公奕(蒋欽)一刀様役にして二人でモノマネしてよモノマネ、子布さんの」

と許可を取るとやおら三白眼気味の流し目をし、蒋欽殿と指を絡めて手を握り

「…お久しぶりですねわが君、三国巡幸以来ですか。あの時もいい加減に立場を弁え王者の風格を身につけて頂くようにと何度も申し上げたのに、相変わらず女の尻に敷かれたままで一向に改まっていないようで私はがっかりです」

と普段より低く平坦な声で語りつつ、握った手を自身の腰に廻させて蒋欽殿に抱き寄せさせる。

「何ですか先程のつんけんしたメイドとのやりとりは、あれではまるでメイドが主で貴方が臣下ではありませんか。いえ聞く耳持ちません、いかな年季があろうが所詮メイドはメイド、頭を下げるなど以ての外です。そもそも折角私と子綱が身を以って女の扱いを指導して差し上げたと言うのにまるで生かされた様子がありません、まあ雪蓮様はああいう方ですから止むを得ないでしょう、ですが胸が取り柄の筵売りや面白い頭のちんちくりんなどに対しては貴方は指導するべき立場なのですよ?全く、こちら(王都)の者達が自分達に任せろと言うので中々来れずにいましたが、まるで御指導が足りて居なかったようですね。まあこのようなところで長話もなんですから、私の部屋でじっくりとお話致しましょう」

「待って待って待って明命顔近い!顔近すぎ!」

「子布さまがやっていた事を忠実に再現したのです!しかもこの後ぶちゅっとぶちかました上に自分のお尻を一刀様に揉ませながら!触らせてではなくてわざわざ手を掴んでにぎにぎさせて!自室に連れ込まれたのです、やりたい放題とはこのことなのです!」

と憤懣やるかたない様子でまくしたてていた。

 

5月17日

残業後に文若様、公達様、元譲様らと飲んだ。

文若様と公達様は寄ると触ると口論をしているが時折こうして飲まれたりしているというのは喧嘩するほど仲がよいという事なのだろうか。

酔われるとそれぞれの(特に文若様は屈折された)伽自慢をされるのには多少辟易とするところも無くもなかったが、文若様が春蘭あんたはどうなのよ、華琳様と一緒の時は二人掛かりで虐められてるんでしょと元譲様に話を振ったところ、酔眼の元譲様が

「うーん…?初めの頃はそうかと思っていたんだが、あいつがこれは愛情表現なんだと言うからな。それより華琳様と言えば不思議な事があったんだが、だいたい私が寝(かされ)てしまった後に一刀とまあ…そういうことをしているみたいなんだ。それは今更不思議だなんだというつもりもないんだが、ある晩夜中に目が覚めると華琳様のやめなさい、とか魏王の私にこんなこと、許さないわとか聞こえて寝台がギシギシしていたんだ。前は華琳様がいじめられているのかと思って秋蘭に相談したら、あれはごっこ遊びで仲の良い証拠だから邪魔をせずにそのまま寝たふりをしていろと言っていたのでそのまま寝てしまおうと思っていた。その後も暫く許してとか肉奴隷にされちゃうとか一刀さまぁとか聞こえてたんだがでその、なんだ…華琳様たちが終わって、私もまたうとうとし始めた頃に華琳様が寝台から出て行くと、何故か三国塾の初等部の制服を着ていて、何故か舌っ足らずな声で『ねえかじゅ』ごっ!?」

と話されている最中に曹操様が矢のような速さで飛び込んで来られ、元譲様の後頭部に飛び膝蹴りを食らわして昏倒させてしまった。

全力で駆けて来られたのか頬を高潮させてはーはーと息を切らせておられたが、

「やあねえ春蘭ったら夢でみた話を現実とごっちゃにしちゃってうふふふふふ、貴女達は現実と夢の区別はつくわよね?」

と妙に凄味のある声で仰るのに御二人ともが即座に首肯し、私も合わせて頷くのを確認すると、気を失ったままの元譲様を引き摺って行かれてしまった。

 

御二方はあっけにとられていたようだったが、

「いいの桐花?華琳様あんたのお株を奪ってるみたいだけど」

「桂花こそ。それにしても陵辱プレイからの奴隷堕ちとか流石華琳様ね、自分の立場も性格も最大限利用してるわね」

「ところで最後の話は仲達には説明して口止めしたほうがいいの?」

「いや絶対分かってないし説明するとかえって藪蛇になるからよしたほうがいいわ」

等と話されて散会となったが、何を私に説明する必要が無かったのだろうか。

 

5月18日

凪がこれをどうぞと何か包みを持って私を訪れてきた。中を見せてもらったところ件の警備部制服でありどうしたのかと聞いたところ、一刀様に私にこの制服を着せてみてはどうかと勧めたところいたくお気に召したそうで

「明晩これを着て(伽に)来て下さいとの事です」

という。嬉しいやら恥ずかしいやら、そんなつもりは無かったのですがと遠慮してみたもののもう隊長が楽しみにされていますからとにこにこされながら断られてしまった。

 

「『仲達さんの取調べって迫力あるんだろうなぁ』と仰っていた」と言われても、役割遊びだとしても私が一刀様を取り調べるなど出来よう筈も無い、どうしたものか…

 

5月19日

薄々気づいてはいたが凡そ私はこすぷれなるものに向いていない、折角の一刀様のご要望であったのだが結局後輩という事でお願いしますと申し上げるのが精一杯だった。

一刀様は私が大きく御期待を裏切ってしまったにも拘らず、温かくも熱く、心と身体の奥深くまで情熱的に御指導を下さった。

 

しかしもし私が、本当に警備部の一刀様の後輩であったなら。

きっとそれでも一刀様をお慕いしたことだろう。

愛しています、一刀様。

 

5月20日

子孝様と子廉様が休憩時間に総務部へ来られてお喋りをしていたのだが、元譲様の元気が無いのだという。子廉様によると

「で私春蘭に何があったのか聞いたのよ、たらねぇ何か華琳様怒らせたらしくて酒しこたま飲ませられて猿轡された状態で一刀様と風呂に連れてかれたみたいなの。で三人でしてたらしいんだけど一刀様は事情知らないじゃない?で春蘭は喋れないから厠行きたいとか言う事も出来ずに馬超させられたあげく、その後華琳様に『呼んだかしら尿夏候』『反省って言葉知ってるの?尿夏候』とか楽しくない意味で結構虐められたらしいのよ。でもどうしてそんな目に遭ったのかはガクガク震えてばかりで絶対言わないのよねぇ、一刀様も苦笑いして『ちょっとやり過ぎだと思うけど仕方ないかも知れない』って教えてくれないし」

とのことだ。先日の曹操様の飛び蹴りとなんらかの関係があるのだろうか。

 

それにしても人の職場へ来て『良かったわねまた一人お友達が出来たじゃないの』『私のは違うって言ってんでしょうがこのアヘ声でか女』等と下品な喧嘩は止めて頂きたいものだが。

 

5月21日

伯道が折り入って話があるというので酒席に付き合ったところ、明後日一刀様に陳倉周辺の状況を説明するのだといい、

「子丹御嬢様が特に二人きりでと席を設けて下さり、『これは事務の名を借りた逢瀬ですから、この機会に一刀様の心を鷲掴みにするのですよ』と言われたのだが、一体何をどうしたものだろうか」

と頭を抱えていた。伯道は美人であり性格も実直で、肢体も十分に女性的であるので如何な策によらずとも畢竟一刀様のお召しを受けることにはなるだろうとは思ったが、

何時お召し頂いても良いように下着は瀟洒なものを身につけ、お招きするかもしれない自室は小奇麗にしておくようにと助言した。彼女はなおも

「それだけなのか?もっとこう…女として、練習しておくべき事とか作法のようなものはないのか?子丹御嬢様は『ちょっと事故にかこつけておっぱいぐらい揉ませて良いのですよ』とか仰ったがそれは服の上からなのか、それともな…生でなのだろうか!?それにだな、も、もし私をお求めになられたらどうすればいいんだ!?」

と不安げな様であったが、無理せず普段通りの伯道であればよいだろうし、一刀様は女の扱いに長けてらっしゃるので全てお任せすれば良い様にして下さるだろうと答えた。

 

智勇に優れた伯道にあっても、恋する乙女は不安なものなのだろう。

 

5月22日

張昭殿と張紘殿が帰国する事になり、それを詠様らと共に見送った。

別れ際になって張昭殿が一刀様の手を握ってまた小言を始め、長くなり始めたところで笑顔で米神に血管を浮かせた詠様がそろそろお時間でしょうからとやんわりと割って入られると不満げながらも車駕に乗って出発されていった。

車駕が見えなくなるや文若様と詠様が鬼の形相となり、二度と来るなクソババア、とっとと帰れ若作り小姑が、等と呪詛の言葉を呟きながら懐に隠していたらしい塩を全力で撒いていた。

 

その一方で、子敬はあの…ホントすいません、なるべく来させないようにしてたんですけど、などと方々に謝って回っていた。



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司馬日記外伝 ある日の文書局

皆様コメントにリクエスト有難う御座います。
まず一件目ですが、悠なるかな様リクエストで
とある文官達が天の国語録と現代後宮用語・成語集の編集作業をしています。


「長文部長ー」

「徳祖、この仕事してる時はあたし編集長だから」

「こだわりますね長文編集長。なんかこう言うと編集長の文章長いみたい」

「うっさいわね人の字にケチつけないでよ。だべってないでとっとと進めるわよ、とりあえず改訂の方から行きましょ」

 

「一巻で載せた『埋伏の計』ですけどー、ほんとに十面埋伏した連中が出たらしいですけど改訂します?」

「マジで?」

「姜維から貰った報告書だと鍾会、司馬馗(四女の季達)、司馬恂(五女の顕達)、鄧艾、姜維、王双、田豊、沮授、張任、龐徳、太史慈。あれっ一人多いや」

「この際十面だろうが十一面だろうがそこはどうでもいいんだけどそれどういう繋がり?」

「面子から見て仲達さん繋がりじゃないですか?でも仲達さん自身は居ないんですね」

「やるわけないでしょ、あの人めっちゃ恥ずかしがりよ?多分鍾会ちゃんが企画したんじゃないかしら。にしても一刀様十一人同時とか本物の化物ね」

「実際は寝台に乗り切らないから大体二三人づつで順繰りだったって」

「…全員一斉じゃないなら参考記録として追記しといて。あと十人乗れる寝台の開発が待たれるって」

「はぁい」

 

「次ですが、ついにやっちゃったという実績を踏まえて『蜀下の阿璃にあらず』を単独の項目立てした方が良いんじゃないかという意見が」

「二巻で項目立てしましょ。ただ意味が『呉下の阿蒙』から大分変わっちゃってるんじゃない?」

「おっぱいが爆発的に成長する様子とかついにやった元幼女とか?」

「そーそー、そこらへん踏まえて編集して」

 

「あと凌遅について多数の問い合わせが主にM女から」

「全部一刀様に振っといて。じゃ二巻の分いきましょ」

 

「まずこの七縦七擒って何?」

「あ、それ最近Mっ気ある文官に流行ってるプレイなんですよ。要は夜な夜な一刀様と鬼ごっこして捕まるとそのままむふふっていう。なんか切欠は夜間演習だったらしいですけど」

「何で七な訳?」

「大体七回で夜が明けて打ち止めになるから一晩七人までってことらしいですよ」

「…張勲さん絡んでる訳じゃないわよね?」

「やりかねない感じしますけどこれは絡み無いです」

「じゃこれ二巻に収録して」

 

「次は…寵を得て蜀を望む、これは?」

「ぶっちゃけ、あのーうちの一番偉い方、ま当然ですけど一刀様とらぶらぶじゃないですか?それって誰もが羨むようなことだと思いますけど、あの私じゃないですよ?蜀の張松さんが華琳様が劉備様のおっぱい羨ましそうに見てるのを見て『寵を得て蜀を望むか、女の望みは尽きないものよ』って皮肉ったらしいって話で」

「…ちょっと載せるの危険ね」

「張松さん凄い頭良い人なんですけどなにしろ華琳様の事嫌いですからねぇ」

「華琳様のところを『とある高貴な方』にしといて」

 

「『湯吞みの軽重を問う』…これって『鼎(かなえ)の軽重を問う』のパクリ?」

まあ意味は転じて身の程知らずって事ですけど。前に蜀の馬謖が研修で都に来てたじゃないですか」

「そういえばうち(文書局)にも来るって話だけ聞いてたけど見かけないわね」

「だってちょっとしか居ませんでしたもん。総務局の研修に配属された日に、一刀様にお茶出そうとしてた月さんから『湯吞み重くないですか?私が一刀様にお茶出しますから!』って奪い取って一刀様にお茶出したらしいんですよ。で当然月さんブチ切れて翌日には本国に強制送還させられたっていう」

「…それむしろ命があった事を喜ぶべきね」

「劉備様、荊州に出張中だったのに大至急呂布さんに迎えに来てもらってその晩のうちに月さんに謝りにいったらしいですよ」

「最近無茶する女増えてるからちょっと戒め的なやつもいれときましょ。採用」

 

「…これやめとかない?」

「『絶壁の戦い』ですか。意味はですね」

「いや分かるから、多分とても絶望的な戦いって言うか努力の事を言ってるんだと思うけど、なんて言うかちょっと可哀想だし」

「『秋風胸が五丈原』だって出しちゃってるんだから今更じゃないですか?」

「うーん…保留」

 

「『胡笳十八発』…これ私聴いた」

「例の数え役満☆姉妹の超卑猥な曲に蔡文姫が感動して伴奏つけたってやつですね」

「でもこれ発禁だったんじゃない?」

「の割には知られてますよね。ノリいい曲だし」

「そうそう、でも女だけでべろんべろんに酔っ払ってないとちょっと歌える歌詞じゃないと思うけど」

「役満姉妹は伽のとき歌詞耳元で囁いたりするらしいですよ」

「うそ恥っずかしー!そんなプレイ天和さんならやりそうだけど人和さんまでそんなのほんとにやるのかしら」

「その落差がいいんじゃないですか?しかも蔡文姫は大真面目に暗誦したって」

「それはそれでエロいというか一刀様困ってそうだけど。んー、なんだかんだでこの歌人気あるから載せる、決定」

 

「『姜維の格差社会』」

「諸葛亮さんいじめ本当に有難う、だから類義語に出藍の誉れとか入れるのやめてあげなさいよ…魏は諸葛亮さん嫌いなんじゃないかって思われるわよ」

「はーい」

 

「『連環の計』…この提案者が桐花って時点で方向性が見えてるけど」

「これが新開発の拘束具らしいんですけど、こうやって右手と左足、左手と右足で固定するとこんな感じでモロ見えにされていたずらされ放題という。ちなみにぱんつは履いてたらずらすか切るのが王道とか書いてます」

「そうなの、って何すんのよ早く外しなさいよ!?あたし女とこういう事する趣味ないから!」

「じゃ一刀様とは」

「たまにちょびっとだけってナニ言わすの次よ次」

「さりげに採用される編集長素敵です」

 

「あとは『三顧の礼』…かぁ」

「これ載せたら反発もあるかもしれませんよね」

「表向きは呉の『すとらいき』解除の為に一刀様が張昭さん三度説得したってことになってるけどねぇ」

「地方勤務の女一人一発で手打ちになったところを張昭さんだけ駄々捏ねて三晩ヤり倒したって呉じゃ有名な話ですからね…」

「政治問題回避、見送りで。載せたら載せたで張昭さんからなんかブチブチ苦情来そうだし」

 

「今日はこんなもんかしらね…それよか天の国用語辞典の方が大変よ」

「あっち、まだまだ意味よく分からない言葉いっぱいなんですけど…」

「なにせ風が手伝ってくれないからねー。あの人自分だけ分かってればいいみたいなとこあるし」

「風さんそうなんですか?」

「ほんとは多分相当天の国の言葉知ってると思う、よく一刀様と二人の世界作ってるし。そうだおっぱいちゃんそろそろ帰ってきた?」

「叔達ちゃんならまだですよ。今頃真っ最中じゃないですか?」

「あの娘、ちょっと真面目過ぎるからなー…天の国の言葉は向いてなさそうだから担当外れてもらおっかって、前にも言ったっけ」

「だから編集長叔達ちゃんに『エロい言葉に特化して体で教えて貰って来い』って言ってたじゃないですか」

「うん、あの気の強そうなおっぱいが照れながらエロい事囁いてくれるなら一刀様もやる気出してどんどん教えてくれるんじゃないかなって。…ところで叔達ちゃんちょっと遅いんじゃない?遅いよね?心配だから私様子見てくるわ、じゃ」

「って編集長なんで胸のボタンばんばん外してるんですか、部屋辿り着く前にポロリしますよそれじゃ!て言うかちょっと待って下さいよ私もぱんついいやつに履き替えて行きますから!」



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七乃さんのスーパー誘い芸10連発

happy envrem様リクエストの、七乃さんの誘い芸です。
なんだか桂花とは違ってガチな感じに・・・


「あっと…書類落としちゃいました、一刀さん拾って貰えます?…さあ?どんなに短くても目を瞑れば見えませんし。一刀さんの意思次第ですよ?」

 

----------------------

 

「…ふふっ、そうですね。誰か来ちゃうかも知れませんから、そっちは一刀さんが見張ってて下さい。え?だって私背中向けてるから見えませんし。でも…一刀さん、こっちを見るのが忙しいんじゃないですか?」

 

----------------------

 

「この倉庫の鍵は私持ってますから奪い取りませんと出られませんよ。抵抗しませんから、好きなだけ探していいんですよ?」

 

----------------------

 

「どうでしょう?この媚薬とやらが本物なのか、誰かに飲ませて見れば分かるかもしれませんね。私一刀さんの口移しだったら飲んであげますよ?乱れまくってケダモノみたいに盛っちゃう薬なのか、一刀さんがどうしても知りたいんでしたらね」

 

----------------------

 

「今華琳さん来てましたよね、気づきましたかね?私の事。それはそうですよ、こぉんなにいっぱい出してれば分かるに決まってるじゃないですか、まだ喉にねばついてますよ。私が言ってるのはそれじゃないんですけど、一刀さん分からないんですか?・・・じゃあ、私のスカートめくってみれば…分かるかも知れませんよ?」

 

----------------------

 

「それじゃ、私も隣失礼しますね。え?いいんですよこの服は着たまま湯船に入っても、そういう服ですから。…どこ見てるんですか?…さあ?摘まんでみればわかるんじゃないですか、本当に尖ってるのか」

 

----------------------

 

「あらすいません、躓いて最後の蜂蜜水うっかり胸に掛けちゃいました。すいませんねぇ、さっき一刀さんがどうしても是が非でも何をしてでも飲みたいって言われてましたけどもう他にはないんですよ。ここの谷間に少し残ってる以外は」

 

「ふう…私もなんだか暑くなって喉が渇いちゃいました。もう蜂蜜水は有りませんし、お茶も切らしてるんですよね。ねえ?一刀さん何を飲ませてくれるんですか?なぁんでもいいんですよ?一刀さんが飲めって言うなら、熱くて濃くて、粘っこいものでも、なぁんでも飲んであげるんですけど?」

 

----------------------

 

「それで、この顔をどうしたいんですか?生意気女のヘラヘラした顔を、どうしてくれるんですか?………いいんですよ、して。一刀さんなら、思い通りに泣き叫ばせることが出来るんですから、ほら…」

 

----------------------

 

「大丈夫ですよ一刀さん、お嬢さまいつも一度寝ちゃえば朝まで起きないじゃないですか。…ゆっくり、静かにすれば…んっ…ふ…ねぇ?絶対起きませんから、眠ってる人は顔が赤くなったりしませんし、息が荒くなったり布団がもぞもぞ揺れたりしませんからっ、はっ…後で、寝てる間に入れられてても、んふっ、きっとっ、気づかないんじゃないですか、あはっ」

 

----------------------

 

「ねえ、ここから外見えますよ外。大丈夫ですよ、向こうからはこっちの首から下は見えませんから、一刀さんが大人しくさえしてれば。一刀さんが、私にいやらしい喘ぎ声上げさせるような事さえしなければ。…いえ?違いますよ…あはっ…動いてるの私じゃなっ、一刀さん、がっ」



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司馬日記外伝 頑張れ太史慈ちゃん2

kazo様リクエストの、バニーガールネタです。


足取り軽く、自室へ飛び込む。

「―――へへへっこれが俺の衣装か、どんなんだろなぁ」

子供が玩具を渡されたみたいに浮き浮きとして頒布された包みを開けていく。

 

いつかはこの日が来るとは思っちゃいたけど、いざ実際に任されるとどきどきっつーか、ワクワクしちまう。前回上京した時に展示会で見た亞莎のピンクのひらひらとリボンがついたのはスゲェ可愛かったよなぁ。

そんな事を思いながら、包みを開けて出てきたものは。

 

「なんだこりゃ…?」

黒一色。

喪服か?いやんなこたーねーそれにしちゃ小さ過ぎる、つーか水着かって位小さいぞこれ。

とりあえずくっついてる一刀様の御手紙を読んでみるか。

『陽(太史慈)へ これはバニースーツと言って、天の国の富豪達の賭場で給仕をする女の人が着る制服なんだ。背が高くて凹凸のくっきりした女性向けの服だから、きっとよく似合うと思うので是非陽に着て欲しい。寸法が合わなかったら作り直すから教えて。 一刀』

 

「…俺に良く似合うだって!うっひひひひひ!」

くるくる回って寝台に飛び込もうとしたところで慌てて両手を上げて頭から突っ込んだ、危なく一刀様の御手紙を皺くちゃにしちまうところだったぜ。

「くぅ…直筆だぜ直筆、もう美人とか貴人並みに愛されてるって感じじゃね?」

『陽へ』と俺の真名が書かれたところを何度も見返すと墨の匂いがする。一刀様の御部屋はたまにしか行けねぇけど、この墨の匂いはかすかに覚えてる。

 

(あー…なんかムラムラしちまうな…)

寝そべってすーはーと御手紙の匂いを嗅ぎながら、無意識のうちに右手が慣れた動きで下腹の方に伸びてしまう。

「ダメだダメだダメだ、んなことよりちゃんと着れるかどうか確認しとかねえと」

跳ね起きて服を脱いで、衣装に片足を突っ込もうとしてはたと止まる。

 

「…これ…下着見えちゃうんじゃね?」

よく見りゃ切れ込みっぷりが半端じゃない、間違いなく下着が下側にはみ出る。

いや?いやいやこれでいいのか?祭様だって見えてるし、雪蓮だって…雪蓮はどうだったかな…いやあいつも見えてた、脇のところが。ってことはこのまま履いても

「いいわけねぇよ!絶対この見え方は変だって!」

 

この見え方は絶対なさけない。それによく考えろ、見えるってことなら多分見せる用の下着も付いてるんじゃねえか?そう思って慌てて包みを漁ると、下履き?らしきものがあった。

「これもすげぇスケスケだな…こういうのが一刀様お好きなんかな…」

透けまくりだ。超薄手の長ぇ靴下みたいなのと臍まであるのと二つ入ってて、『好きな方選んで』って付箋がついてた。他には装身具の袋以外もう何も無ぇし…これを履けってことか。

どっちにすっかな…いやよく考えろ、もしだぞ、もしだけど展示会の後一刀様に御呼ばれしたとするだろ?そのときに、もしヘソまでの方だと…こーなって、こう着るから…全部脱がねぇと駄目だけど、こっちの長靴下の方だったら、この上のがちょっとずらせれば…だよな!ぜってーこっちだ、靴下の方だ!やっぱお求めがあったら直ぐに対応出来ねーとなぁ皇帝様の女としてはよぉ

あ、そういやぱんつの方は解決してねぇや…雪蓮に聞くか?いや絶対あいつ俺の事騙しにくる。知ってそうな穏は今日居ねぇし、明命と思春はなんか聞いたら怒りそうな気ィするし…もう履かないんでいいんじゃねえか、どうせ見えねぇし。

 

「うお…なんかすげえエロい感じ」

何も履いてねえ時よりもこのスケスケのせいで、俺の脚がなんか三割増しエロくなったような気がする。

「上もこれ、ブラ外すしかねえよな…」

背中が丸出しだから外さねえとモロ見えだし。つかこれ、胸が半分も隠れねぇぞ!?

雪蓮のあの破廉恥な服みてェだ。

「本当に見えねぇだろうなぁ…」

鏡の前で右向いたり左向いたり前かがみになったりしてみたけど、一応乳首は見えねえことは確認出来た、ひとまずこれでよし。あとは明日を待つばかりだな。

 

 

…つーか、ほんとにここんところってちょっとぐらいずらせんのかな…うお意外と伸びる…ヤベェ一刀様、これぜってー展示会の後俺の事、そうじゃなきゃこんな造りにする必要ねーし、うふへへへへ、くっふひひひひひ…あそうだ、あと装身具が入ってたよな。なんだこりゃ兎の耳か?そういや魏に猫の耳つけたちっこい奴がいたな、それと似たようなもんか。…お、意外と俺も似合うじゃねーかよ。可愛くね?マジで可愛くね?

「一刀様、陽(太史慈)ウサギだぴょん!可愛がって下さいぴょんっ♪…ハハハ、なーんてn」

 

 

 

 

 

―――死ねばいいと思った。

部屋の入口で悪魔のような笑顔を浮かべている雪蓮が、結構本気で死ねばいいと思った。

その隣でやっぱりにやにやしている張遼も、明命も正命(蒋欽)も死ねばいいと思った。

雪蓮に腕つかまれて、口を押えながら涙目で肩震わせてる蓮華様も正直どっかいっちゃえって思った。

 

「おめーら……いつから居た?」

「着衣プレイが出来るか確認してたあたりからなのですぴょん」

「合肥の勇者がどっか行ってもーてエロい靴下選んだあたりやでぴょん」

「一刀の手紙の匂いで一人上手始めようとしたあたりよぴょん」

「ち、違うの!私は悪趣味だからやめようって、姉様をつれてこうとしたのよ!?でも姉様が」

「でも蓮華も笑ってたぴょん」

「ぷ、ぷふっ…!や、やめて姉様ったら!陽だって可哀想でしょ、ちょっとぐらい…その」

「浮かれてハミ毛ウサギの舞を舞ったとしても許してあげるべきなのですぴょん?」

「みょ、明命もっ…ぷふふふっ…ふふふっ!」

「自分ら笑ったら可哀想やで?ウチとしてもかつての合肥の好敵手がいい年こいてウサギの真似しよるんは悲しいで?せやけどこれが現実や、もう雪蓮と一騎打ちしたあの太史慈はおらへんのや。毛が二三本はみ出とったって一刀はなんも言わん…な、そっとしたり」

 

「…う、

 

 

 

-----------------------

 

「一刀さま居ますかー?」

「ん、どうしたの夕(魯粛)さん?」

「雪蓮様がまた陽いじめて泣かしましたー」

「…雪蓮、陽が可愛いんだろうけど程々にしてもらわないとねぇ…言っといて?」

「どうせ私が言っても聞かないじゃないですか…で陽、部屋に閉じこもって出て来ないんで一刀様お願いします。陽には扉越しに『今から一刀様があんたの黒い服が白くなるまでぐっちょんぐっちょんのべっとべとに慰めに来てくれるから、来たら鍵と股を開けるのよ』って言ってありますから」

「…なぜそういう…」

「手っ取り早いし確実ですから。さっきから扉の内側にぴったりくっついて『一刀様はまだか、一刀様じゃなきゃ開けないからな』とか無駄に五月蠅いんですよ」



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司馬日記外伝 ストライキ中の張昭さんを説得してみた

いつも御笑覧有難う御座います。

重慶の明様より「三国巡幸の時の事を詳しく」
GANGAN様より「事後シリーズ」
よしお様より「張昭とえっち」

と頂いたリクエストを全部こなそうとしたら、なぜか全部ズレました。


「やっとのお見えですか」

「ごめん、遅くなりました」

ううっ。初手から怒られた。

「ちょっとシャオ…小蓮と話長くなっちゃって」

「貴方の仕事は閨で女のご機嫌を取ることでは無い筈ですよ。それに貴方は皇帝なのですから言い訳などしなくて良いのです、格が下がりますからやめて下さい」

「うん、ごめ…わかった」

厳しい。三白眼気味なせいか多少上目遣いで睨まれてる様な気さえする。

 

『いいのよ子布なんてほっといて。一刀の事死ぬほどお気に入りだもん、ぶすーっとしたまま何時間でも待ってるわよ。だからもう一回…ね?そしたらシャオもちゃんとお仕事戻るからさぁ』

とか言われて約束の時間を過ぎちまったけど、思春よりも仏頂面に見えるんだが…。まあなににしろ、仕事に戻ってもらわなきゃいけないんだけど。

 

「あの、子布さん仕事の方だけど…」

「薫です」

「えっ?」

「私の真名です。御案内の署名に書いておいた筈ですが読まれてもいないのですか」

「い、いやそんなことはないけど…」

貴女は俺の事知ってるかもしれないけど、俺からしたらちょっと会って説教された以外はそれほど話した記憶も無いのに真名預けられてたとかちょっと厳しくないか!?

「ご、ごめん」

「また謝られて」

「ご…以後無い様に気をつけるよ」

「そのように願います」

…取り付く島が見つからない。聞いた呉の殆どの人が薫(張昭)さん苦手だって言うのが漸く理解出来てきたけど、また皆揃って子布さんが俺の事お気に入りだって言うのは全く理解できないんだが…。とは言えこんなところでへこたれてるわけにはいかない。

「あの、薫さん、それで…仕事についてなんだけど」

「まずお茶でも飲まれたら如何ですか。私を主君を迎えて茶も出さない臣にさせないで下さい」

「あ、うん頂きます」

 

黙ってお茶を淹れる薫さんはどう見ても不機嫌そうなんだが…詠は本当に不機嫌な時と照れ隠しの時とわかり易いのにこの人は本当に分からない。

「…どうぞ」

「ありがとう」

差し出されたお茶を、お礼を言って受け取った。いや、受け取ろうとしたのだけど。

「我が君には些か申し上げたいことがあります」

「うん」

それは聞くから。

「この度の小蓮様らの怠業についてはどのようにお考えなのかと」

「えっとあの…不徳の致す所なのかなと」

「そのような政治家の弁解じみた事を伺いたいのではありません。私が申し上げたいのは」

どうして両手をにぎられたままお小言なのかから先に聞きたいんだけど。

いや別にお茶は熱くないし、薫さんの手はすべすべで気持ちいいけど。

「私の話を聞いていますか?」

「うん、すべすべで」

「…」

あ、やっちった。

 

流石ににぎにぎが止まって睨まれた。表情が乏しいけど睨まれてるんだよな…これ?

「…天下国家の話をしているのですからちゃんと聞いて下さい。茶など置いて、もっとこちらへ」

「ご…はい」

手が離されたのでお茶を置いて、座布団を少し薫さんの方へ寄せる。

「呉には幼平・公奕という優秀な間諜が居ます、ですが他国に居ないとどうして言い切れるのですか?そのような距離では聞かれましょう、今少し慎重さを持って下さい」

「わかった」

もう自棄じゃ。座布団同士をくっつけてみた、これでいいですか薫さん。

「…それが耳打ち出来る距離ですか」

そう言いながら自分の隣の床をぽんぽんと叩く薫さんはあくまでポーカーフェイスだった。

正直、座敷で人と話すのに横に並んで座った事はない、っつーか殆どの人がそうだと思うんだが。顔色をうかがいながら座布団を動かして横に並んでみると、漸く軽く頷いた。

 

「およそ天下人たるは威を以って君臨する事が最も重要な仕事なのです。だと言うのに我が君は女の顔色を窺う事に汲々として」

「ええ」

まぁそれは分からないではないんだけど。

「小蓮様は兎も角、ちょっと陪臣の娘が拗ねた程度でわざわざ親征して一人ひとり御機嫌をとって回るなど、帝の品位を損ねるばかりではなくごねた者勝ちの風潮をつくり秩序を乱すものでこそあれ決して誉められたものではないではないですか」

「いやあの、御尤もなところも…あるんだけど」

「なんですか」

「あの…話し難くない?」

しなだれかかって肩に頭を乗せて、指絡めて手を握りながら話すってのは俺の知ってる天下国家の語り方と違う気が。

「耳元で話すにしましても男性の我が君に寄りかかられては女の私が支えられるわけが無いでしょう。この姿勢がもっとも盗み聞きされる恐れが小さく話しやすいのです」

「…いや、薫さんが苦痛で無ければと思っただけだから」

「必要な事ですから私は構いません」

事此処に至ってようやく俺はこの人が恐ろしく不器用な人なんじゃないかと思えてきた。仲達さんとはまた違った方向に。

「今何か他所の女の事など考えていませんでしたか?」

「とんでもない」

「そうですか。話は戻りますがこの大陸の長であるならば、一地方の多少の問題などわざわざ出向かずそこの政務の長である者を呼びつけて事情を聞けば良いのです。呼びつける小蓮様も小蓮様ですが私が陳情に上京すると言っても貴方の日程が合わないだのこちらの政務に差し障るなど言って越させない公瑾も公瑾です。おまけに私の代わりに子敬などを都へ出向させると言うではありませんか、子敬は仕事はそこそこ出来た方ですが先の三国事務方懇親会で蜀の徐庶と胸元の開き具合と裾の短さ具合を競って口論した挙句に貴方の枕席を荒らしていたと言うではありませんか。長幼の序を蔑ろにするどころか呉の品位を疑われるというものです、はしたない」

「…まぁ小蓮には小蓮なりの気持ちも考えもあったんじゃないかなとは思うんだ、夕(魯粛)さんもまあその、仕事は頑張ってくれてるし。それにほら、今日はこうして薫さんの意見を伺う機会も得られた事だし、まあ今回は勘弁してよ」

「我が君がそう仰るのであれば今回は大目に見ましょう。…ですが、次からは」

きゅ、と握った手にわずかに力が篭もる。

「私を呼んで、事情を聞くようにして下さい。宜しいですか」

「分かりました」

言いながら、何故か顔を伏せた彼女に即座に答える。

 

「…」

「…」

 

ふと訪れた、謎の沈黙。俺なにかやらかしただろうか。つか何か気の利いたことが言えないのがやらかしなのか。

薫さん、と声をかけようとした寸前に彼女の後方、部屋の扉が音も無く開き、不機嫌そうな明命が顔を見せた。俺が反応するや直ぐに『喋るな』というように口元に指を当てて、四枚の紙を順に見せた。

 

「雪蓮様より」

「『うるさいから」

「ヤッといて』」

「とのことです」

見せ終わるとやっぱり不機嫌そうなまま音も無く扉を閉められた。

 

…えっ?

おかしいよね?

なんでいきなりそうなるの?

 

「…薫さん?」

「何でしょうか。…我が君の方から仰りたい事があれば、なんなりと」

そんなことはないよね、と思いながら覗き込んだ彼女の白く端整な顔には赤みが差していた。

「…仰りたい事は、御座いませんか。私は積年の積もり積もったものを吐き出させて頂きました。今度は貴方の番です」

喋り方は変わらないけど、雰囲気が。えっとその、そういうことなの?

 

「…私に仰りたい事は、何も無いのですか」

「いや、薫さんたちがこっちで頑張ってくれてるから俺とかが都で安心して暮らせてる、本当にありがとう」

そんな泣きそうな顔されて抱き寄せないほど俺は心が強くない。

薫さんのうなじがみるみる朱に染まっていく。

「…それだけなのですか?」

「いやそれだけじゃない。女性として大事にさせてほしい。…もし薫さんさえ、嫌じゃなかったら…いいかな」

ぎゅっと抱き返しながら長く色っぽい溜息を吐く彼女に、腹を決める。

「…貴方の都での風評も聞いてはいますが、英雄は色を好むものと心得ています。私としては我が君がお求めになるのであれば…覚悟は出来ています。ですが」

「ですが?」

「私は…初めてなのです。下手くそでも、どうか笑わないで…」

震える声で呟く彼女の心音が、その豊かな胸越しにどくんどくんと脈打っているのに漸く気がついた。笑うわけない、優しくすると囁きながらゆっくりと彼女を押し倒すと、陶然とした表情で嬉しい、と溜息をつきながら唇を合わせて来た。



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司馬日記外伝 仲達が仲達になった訳

Gigina様リクエストの、仲達 さんが一刀を慕う切っ掛け…のようなものです。


「…書類を落としたときに拾って頂いた事がありまして」

 

 

「マジでそれだけなの!?」

「仲達貴女チョロいチョロいとは思っていたけどモノには限度ってものがあるのよ!?」

「それ拾ったのたまたま一刀様じゃなかったらあんた今頃女郎屋に売られてたんじゃないの!?」

「…?初めてお会いした時はいつなのかというお話ではないのですか」

「違うわよ!どうして一刀様に惚れたのかって話!」

子廉様と子孝様が卓に噴かれた酒を台拭きで拭いながら、お二人の御言葉に対する自分の解釈は本当におかしかっただろうかと考えたがあまり納得出来る考えは浮かばなかった。また幼少のみぎりはやや引っ込み思案であった子丹御嬢様も御明朗になられた事は喜ばしいが、下世話な事に耳年増なところが見られるようになったのが多少心配ではある。

 

「そうでしたか。多少長くなりますが」

「全然構わないわよ、酒の席だし」

「…そういうことでしたら」

一刀様の事を語らせて頂くのは、面映くも誇らしい気持ちになる。

 

「私は一刀様が統一されてからの中央勤務で、その前年まで河内に地方勤務だったのですがその頃に多少問題が起こりまして」

「おおお?どんなよー」

「その頃一刀様河内に出張とかして無かったはずなんだけど」

…なぜそんなに旨そうに酒を飲まれるのか。上官の方々ではあるのだが、何故か胸にいらっと来るものがある。

「直接の詳しいところは私自身は実は存じ上げないのですが、姉様が」

「ふんふん伯達さんが?」

 

「さる高貴な方が私を出仕させるようお求めであると」

「「「…」」」

何故かお三方の酒盃の手がぴたりと止まった。

「姉の話によりますと、その方はどこからか私の事を聞きつけたらしく私を中央勤務とするよう命じられたそうです。ただその方は大変好色な方で、中央勤務のあかつきには私を見定めて気に入れば業務と称して愛妾としてお求めであるのは明らかであると言い、姉は一刀様に御相談されたのだそうですが何故皆様目を逸らされているのですか」

「…へえ」

「…そぉ」

「…あの、ごめんね仲達…」

「?なぜ御嬢様が謝られるのでしょうか?…続きですが、姉の話を聞かれた一刀様は大層御心痛下さりその方を御説得下さったとの事です」

 

「…なんとなく想像つくけど、どんな風に説得されたか聞いてる?」

「はい。姉の話によりますと『一刀様はその方を毎晩のようにねちねちずっぷずっぷと骨の髄から執拗に精力的に説得されて、メロッメロの骨抜きにして仲達への関心を失わせた』とのことでした」

「「だよねー」」

「ですよね…」

「また私は知らされていなかったのですが姉はお礼にと一刀様へ私を後宮の末席に入れて頂くようお願いされたのですが、一刀様はそれでは本末転倒なので自由恋愛で良人を見つけるようにとお断りになられたそうです。姉は私にその話もし、御恩もある上大変御立派な方なので早々に中央に転勤して私の意思で公私共に一刀様お尽くしすることを目指すようにと命じられました。その頃は私は一刀様の御尊顔も存じ上げませんでしたが姉の命も尤もと思い中央へ転勤致しました。そしてこちらでの勤務となり新入職員訓示の日に初めて拝謁したのですが大変柔らかな物腰で、威で圧するという風でなくあくまで穏やかで御優しく、私の心は包み込まれるようでした。直接に言葉を交わさせて頂いたのははじめに申しました通り書類を拾って頂いた際で、その朗らかな声に聞き惚れてしまい礼を述べるのがやっとで名乗る事さえ出来ず、後で大層悔いたことです。その次にお見かけしましたのは庁内食堂で四人程前に許褚殿と並ばれているところで、許褚殿と談笑されている姿を見て私は初めて自分の身長を意識しました。今では一刀様は瑣末なことであると笑われますが、その時一刀様よりも若干なりとも背が低いことに安心したのを今も覚えております。異動希望調査では一刀様に御仕えしたい為と書くと総務室に採用されないと姉に教えられ、何度も姉に書き直させられ最後は喧嘩のあげく姉に代筆されてしまったのも今となっては感謝すべきことで良い思い出です。そして総務室勤務となり着任の拝謁に伺った時の感動は」

「うんもういい仲達そこまで」

「手酌もちょっと止めなさい、その抱えてる酒瓶も離してこっち寄越して」

折角興の乗った所ではあったが、御嬢様らの御指示では止めざるを得ない。ただ当時思ったやや下世話な疑問を思い出し、ふと口にしてみた。

 

「私ばかり話をしてしまい申し訳ありません。ただ後になって思った事がありもしご存知でしたら教えて頂きたいのですが、官位もそれなりの姉が高貴な方と言う程の身分の男性が現在の宮中には見当たりませんが、その方は失脚されたか地方転勤となったのでしょうか」

「そうねー(むしろ君臨してるみたいな)」

「どっかいっちゃったのかしらー(今夜も一刀様のところとか)」

 

「それともその、一刀様の御魅力は性別を超えてあの…姜維のように、男をも女に成さしめる程のものですから、実は今いらっしゃる方々の何れかの方が女性へと成られたのでしょうか」

「そうかもしれないわねー(珍しく当たらずとも遠からずね)」

「一刀様ですもんねー(元々性別自体は女だけどね)」

「御使い様ですものねー(まだ勘違いしたままなのね…)」

 

「あと一点不思議に思いましたのは、その高貴な方という方は見たこともない筈の私を召しだすよりも、ひとかど以上の美人と思います姉を何故召し出そうとしなかったのでしょうか」

「そりゃそーよ、ほら、あんまりおっぱい大きいとあの娘自身はアレだからちょっと劣等感あるし」

「それに伯達さん年齢的にもあの娘の好みからはちょっともうアレだかr」

 

と話されている最中にガゴン、と入り口の扉が蹴り割られた。そちらを振り向くと

「あらぁ、お喋りな身内が飲んでる店はここかしら?」

「違いますよ華琳様、ここは目上を敬わない娘が飲んでる店ですよ?」

と妙な威圧感のある笑顔を浮かべた曹操様と伯達姉様が立っていた。

 

お二人はガタガタと震え出して杯を取り落とした子孝様と子廉様の腕をそれぞれ掴まれると

「生殺し潮吹き失神地獄が見たいのはどこの葵(曹洪)かしらね、ちょっと本気の一刀のところに行ってみない?いつも譲れ譲れってうるさいぐらいですものねぇ」

「やだやだやだやだごめん、ごめんてば華琳!?私マジの一刀様のお相手とか無理、無理無理死んじゃう!死んじゃうってば!!」

「いえいえ華琳様、普段二時間持たない子孝さんが涙も涎も垂れ流しの絶叫地獄が見たいらしいですからぜひ譲ってあげて下さいな。凌遅に大変御興味があると言われてましたし、ねえ子孝さん」

「ないないないない!私凌遅とか全っ然興味ありませんから!!興味あるのは葵です葵前審配さん羨ましいとか言ってました!」

「あっ茜(曹仁)、姉妹売る普通!?それに私羨ま恐ろしいって言ったのよ!?」

「では華琳様、私華陀さんに一刀様が『元気になる』お薬頂いてきますのでお二人をお願い致しますね」

「ええ、私は二人に猿轡噛ませたら連れてくわ」

等と言いながらお二人を引きずって行かれてしまった。

子丹御嬢様と二人残されてしまったが、御嬢様はすっかり酒が抜けてしまったようで口は災いの元ね、仲達貴女には余り関係ないかもしれないけどと言われてお開きとなった。

 

----------------------

 

「…おはよう御座います、葵(曹洪)様、茜(曹仁)様…」

「…おはよ、楓(曹真)…」

「…あの後、どうなりました…?」

「…華琳が凌遅かけろって言うのを一刀様が取り成してくれて…」

「拷問は勘弁して貰えたけど…ビンッビンになっちゃって収まりつかない一刀様と華琳がヤり倒すとこ芋虫みたいに転がされて延々と見させられたわ…あと最後泣き入れて、一発づつお情けで」

「その位で済んで良かったですね…」

「…まだなのよ…」

「えっ?」

「このあと伯達さんが一刀様と例の鏡の部屋でするから見学しろって…いかに一刀様が年上きょぬーが好きか知るようにって。あたし達だって一応年上だっつーの…」

「きょぬーじゃないけどね…揉ませて吸わせて挟んでしごくとこ勉強しろってさ…」

「それは御愁傷様です、ところであの」

「何よ」

「なぜお二人は私の腕を掴まれてるんです?あとあの、私これから出勤なんd」

「あんたも来るのよ、一人だけ逃げようったって曹家の掟が許さないわよ」

「大丈夫よ、一刀様も飲んだちょっと性的に元気になっちゃう薬飲まされて鏡の部屋で伯達さんたちがずっこんばっこんするところを芋虫みたいに転がされながら小一時間眺めるだけだから」

「それ拷問ですよね!?わ、私何にもしてないじゃないですか!」

「うるさい黙れこのいい子ちゃんめ。一刀様の前じゃかわい子ぶってあんあん言ってんでしょうけど、切羽詰ってぐっちょんぐっちょんのを自分でくぱぁするような淫乱女の本性見てもらいなさいよ、お情けで一発くらいは伯達さんの後にしてもらえるでしょうから」

「や、やめて下さい―っ!!私、ここの人達じゃ普通な方なんですからぁぁぁ―――っ!」



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司馬日記47

遅くなってしまいましたがその後の、とある文官の日記です。
いつも皆様の御笑覧、コメント有難う御座います。


5月25日

伯道が悄然として総務室を訪れたのでどうしたのかと聞くと陳倉へ帰るのだと言う。

「残念ながら一刀様にとって私は女ではなかったようだ…。昨日、一刀様に陳倉の地理や治安、農産状況等を報告したのだが、正にそれだけで終わってしまったのだ。正確にはお前の事など多少雑談もし、終始一刀様はにこやかであったのだが…それだけだった。『郝昭さんも忙しいだろうから、他に無ければ戻っていいよ』と惜しい素振りも無く帰されてしまった、真名さえ聞かれなかった。…まあ腕っ節と仕事ばかりの気も利かん田舎女だ、よく考えてみれば女を看る眼の肥えられた一刀様の御眼鏡に適う筈も無い。…これから都の水に洗われて、多少は女らしくなって再度お目見えをとも考えたがとても今はそんな気力も湧かん。田舎女は田舎女らしく、陳倉で暫く静かに暮らそうと思う。遠くから想う位は一刀様もお許し下さるだろう」

と言うが伯道は知る限り指折りの佳人で心根も良く、必ずや一刀様の心身を御支えするに相応しい女性だ。

伯道にお召し戴く意思は示したのかと聞くと、『先に私(仲達)が一刀様が良いようにして下さると言っていたので特に申し上げなかった』と言う。一刀様は御慎み深く部下思いで御遠慮深いところがあるので伯道の意思が分からなかった為に御遠慮されたと思われる、私の説明が悪かった事でもあるのでこれから一刀様に伯道をお召し戴く様お願いに上がってくると言ったところで子丹御嬢様から声が掛かった。

「あの、どこで止めようか迷ってたけれど…あのね伯道、会ってその日に抱かれた女なんて居ないのよ?仲達も貴女伯道に一体どんな説明したの、第一貴女一刀様にお目見えしてから後宮入りするまでにどれくらい掛かったか忘れたの?」

と言われはたと己が身を振り返ってみると、流石に自分の考えに無理があった事に気がついた。彼女の資質の高さゆえに私の気が逸ってしまったが、今後じっくり一刀様と御近づきになっていけば必ずやと伯道に説明するとぽかんとした後に

「…そうであるなら、今少し都で頑張ってみるが…何分私は田舎育ちでそういった機微や常識に乏しい、今後は女児に男女の道を説くと思って指導してもらえると有難い」

と言って、今一つ釈然としない様子であったが退職は思い止まり帰って行った。

…私も何時の間にか今の幸福に溺れ、初心を忘れてしまっていたようだ。自戒せねば。

 

5月27日

後宮の消耗品費が昨年よりも増加していたので調べてみたところ、一刀様用の食材費が増加していた。調理と共に発注管理を担当されている典韋殿に事情を伺ってみたところ、一刀様が元気になる料理を曹操様と共同で研究しており、材料費が高騰している為だという。しかし、予め一刀様の為の出費であれば問題は無いのでなんら責める意図は無いのですがと申し上げたのだが、妙に歯切れが悪く挙動不審なところが見られたので執務室に戻ってから詠様に食材表を見せながら何故だったのでしょうかと伺うと

「食材が鼈、山芋、大蒜、鰻、牡蠣に枸杞でしょ、このへん見たあたりで察しなさいよこのちゅーたt…そうねどんな研究してるのかしらね、流琉だけじゃちょっと心もとないしボクもちゃんと効果があったのか心配だから一刀の様子見てくるわ」

と言ってそそくさと退勤されていった。

典韋殿は曹操様と並ぶ調理の第一人者であるので特に心配ということは無いと思うのだが。

 

5月28日

庁内の東屋で呂布殿が一刀様と談笑されているところへ陳宮殿が割って入られ、何事か気に入らなかったのか一刀様を蹴ろうとして呂布殿に抑えられていた。

陳宮殿は日頃から一刀様への態度に問題があると思い私からも一言御注意しようと東屋へ向かおうとしたところ、どこから見ていたのか先に顔良殿が

「ねねちゃん?私、一刀さん蹴ったりしちゃだめだよって前に言ったよね?またあのお薬が…要るのかな?」

と言いながら人差し指をくいくいと曲げる仕草をすると、陳宮殿はひっと小さく悲鳴を上げて目を見開き、「あ…あのおかしくなってしまうお薬は恐いのですっ、ね、ねねはお尻はもう嫌なのですぞっ」と言いお尻を押さえながら後退りした。

なおも顔良殿が「今度は…強くしちゃうよ?」と語調は穏やかながらも鬼気迫る雰囲気で陳宮殿の目の前で人差し指を回すと、「し、しない!しないのです、だからあれはやめて欲しいのですぞーっ!」と涙目でお尻を押さえたまま逃げるように走って行かれた。

 

顔良殿が先に陳宮殿に何をされていたのか伺おうとしたが、顔を引き攣らせた一刀様が笑顔の顔良殿を連れて去って行かれてしまったので伺えなかった。

 

5月29日

公達様に昨日のあらましを説明して陳宮殿は一体何をされたのか伺ったところ、

「あたし女にそういう事される趣味は無いのよねぇ…一刀様には流れで口前後ろって立て続けにしてもらったことはあるけどさぁ、一刀様そこですると必ず一旦お風呂休憩にされちゃうから口前胸顔をひたすら入ったり来たりする方があたし的には…」

とこれまた要を得ない答えであった。

 

5月31日

困惑された表情の一刀様が人事の件でと仰って書類を持って月様をお訪ねに総務室へ来られたが、月様も詠様も不在であったので実務を担当した士載が対応させて頂いた。

「この総務室の新人配属条件が処女って言うのはね、ちょっと踏み込み過ぎって言うか」

「非処女の方が面倒が無くて良かったのでしょうか?月様が『基本的に貞操の固い方を』と御指示されたのでそのように記載してしまったのですが…思えば私も初めての時は一刀様にお手間を取らせてしまいまして申し訳ありませんでした」

「いやそうじゃなくて」

「!分かりました、黄忠さんみたいに経産されてから一刀様の御魅力に気づくこともあるということを仰ってるのですね」

「えっと、仕事とプライベートは別に考えていいって話で…」

「ですが不貞な方の後宮入りは風紀、倫理上も…それに月様からも一刀様は寝取りプレイにはご興味が無いとのことでしたので」

「あのね、後宮入りが前提っていうのがね」

等とやりとりをされていたが、今一つ互いに要を得ず何分責任者の月様が御不在の為後日月様を再度お訪ねになると仰って帰って行かれた。

 

士載は自身で対応し切れなかった事に落胆し、『私の対応に何か誤りがあったのでしょうか』と聞かれたが私も確たる答えを与える事が出来ず、『処女が条件ではいけないという事は、総務室は重要部署である為御寵愛を賜ってから勤務させよということではないか』

と自分の意見を述べるにとどめた。

 

6月1日

珍しく曹休様が庁内に見えられていたようで、退庁されるところを庁門ですれ違った為会釈した。

執務室に戻った子丹御嬢様に曹休様がお見えだったようですと申し上げたところ、一刀様に呼ばれたようねとのことだった。総務室に来られていた子廉様と子孝様が、

「菫のやつ、まだ戻ってくる気無いのかしらねぇ」

「本人的にはまだ気にしてんじゃない?」

などと言われていた。私も不思議には思っていたので何をお気になさっているのでしょうかと伺うと、

「そっか、アレあんたが入庁する前くらいだったっけ。あの娘、一度一刀様本気で激怒させちゃってるのよ『じゃあクビだ!』って言われてね。あたしに言わせりゃあんなの愛されてる証拠だけどねぇ、あの娘そういう無駄にクソ真面目なとこちょっとあんたに似てるわよね。そうだ思い出したあの時凪もマジギレしたのよ、詳しい話聞きたかったら凪に聞けば?」

と言われた。

一刀様が我を忘れてお怒りになられたところは私が勤務して以来見たことも聞いた事も無く想像さえ出来ない。

 

6月3日

げんなりした表情で于禁殿が会議室から出てこられ、詠様がどうしたのよと聞かれたところ

「呉の方から『不倫プレイはアリか』っていう照会が月ちゃんの方に来たんだけど、月ちゃんが誘い方と程度次第じゃないですかって言ったみたいなの。じゃあその基準って何って話をしてたら何故か私の取調べプレイが基準ってことになったらしくて、根掘り葉掘り聞かれたの…特に月ちゃんが、私隊長に軍の教練でしてるような喋り方してないのに『この豚とか言ってませんよね』ってしつっこいくらいに聞かれて、私ちょっと疲れたから帰るの…」

と言いながらふらふらと帰って行かれた。

 

6月4日

定時後に凪を誘い、曹休様が三国一に勤められている訳を知っているか聞いてみた。

凪曰く、

「私も大人気なかったのですが…菫(曹休)様、隊長と初めて結ばれた後に胸に悪性の腫瘍がある事が分かって華陀さんに診てもらったんです。そうしたら治るけれど胸にその…跡は残るって言われて、それで菫様顔にはあまり出さないんですが物凄く落胆して治療をしないで仕事を続けようとしたんです。それを華陀さんから聞いた隊長は青くなって、いや真っ赤になって菫様の所へやって来て治療を受けるように強く説得されたんですが、『傷物の身体では二度と一刀様の御相手は務められません、治療はせず愛される身のまま公に私に尽くして死にたい』って言われたんです。それに隊長は切れてしまって、『じゃあ仕事はクビだ、治療以外一切させるか』って軍幹部皆の前で怒られたんです。そのときその…私もこんな身体ですけど、あの、隊長に凄く愛してもらってますから、そんな事でってついそのカッとなって上官なんですが手が出てしまって…その後もぼろぼろ泣きながら隊長がそんなことで嫌いになるはずがないとか色々わめき散らして…その後菫様は治療を受けられて今では健康なんですが、隊長から慰留されても『一度退職を命じられた身ですから簡単に戻っては一刀様の権威を損ねます』ってあの飲み屋で給仕長をされているんです」

ということだった。改めて一刀様の広く深い御愛情に感じ入っていたが、いつの間にか凪の背後に于禁殿と李典殿が来られており

「凪の話は肝心なところが抜けてるのー!」

「沙和!真桜も!?」

「その後『傷の一つや二つがなんだ、俺がどれくらい凪の事を愛してるか見せてやる』言うて菫様正座させて、全身の傷跡隈なく嘗め回された挙句むぐ」

 

「隊長が自分から人に見せたのはそれが最初で最後もご」

「そ、それは言わなくてもいい話だろう!?」

などとからかわれていたが一刀様の濃やかな御愛情を窺える、更に良い話だ。

 

6月5日

子敬と昼食を摂りながら、呉から出されたと言う不倫プレイなるものの質疑について思い出したので知っているか聞いてみたところ

「ううん別に全然無礼働こうなんてつもりは無いのよ?何かと影の薄…慎ましい蓮華様から寝取る系じゃなくて二号でもいいから関係しちゃいましょみたいな方だから特に問題は無いかなって思っ…意見を拾ったんで月さんに一応照会かけただけなのよ。これあたしがやりたいって言ったわけじゃないからね?これあたしじゃないからね?月さんに余計な事チクらなくていいのよ?」

等と聞いていない事まで捲くし立てられた。

 

6月6日

一刀様の御部屋で公務予定を御説明し終わり御茶の準備をしていたところ、馬岱殿がいつかの展示会で見た黒の襞の多い服を着て部屋に飛び込んで来られた。

「ねえねえご主人さま!今から蒲公英がそのお茶請け美味しくしてあげるから、可愛かったら可愛いって言ってね!」と言い一刀様が怪訝な表情ながらも頷かれるや、

「お・い・し・く・な・あ・れ♪萌え萌え~きゅん!」と言いながら多少珍妙な、しかし彼女の容姿と相俟って可愛らしいとも言える仕草をして見せた。多少面食らわれていたが一刀様が有難う、可愛いし美味しくなったと言われるや、にいっと笑みを浮べて部屋の外に隠れていたらしい魏延殿の腕を取って駆け出して行かれた。

一刀様はあっけにとられていたが、突然どうしたんだろうねぇと笑いながら言われ公務に戻られた。

 

しかし夕方、普段は静かな蜀の休憩室の前を元直と通りがかったところ人の話し声が聞こえた為共にのぞいてみた所、

「もっ…も、萌え萌えきゅん!萌え萌えきゅん!…あの、もうよろしいですか桔梗様」

「そうじゃの。どうじゃ蒲公英」

「んー…まだ笑顔が固いかなぁ、あと媚びた感じが足りないよねー。可愛いって言われたいって言うから蒲公英手伝ってるのに、これじゃ引けばいいのか笑えばいいのかご主人さま困っちゃうよ」

「じゃと。もうちぃと練習してから御館様に披露して来い」

「で、ですからワタシにはこれは無理ですと申し上げてるではないですかぁ!」

などと白い襞の服を着て途方に暮れる魏延殿、寝そべって煎餅を齧る馬岱殿、酒瓶片手に酔眼の厳顔殿が話されていた。

魏延殿がお困りのようだが止めなくていいのかと元直に聞くと、蜀ではよくあることだから、と生温かい笑顔で戸を閉め私の腕を引いて立ち去ってしまった。



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司馬日記外伝 事後シリーズ9

『その後』の、一刀さんとねねさんです。
飯坂様への感謝と、本編でのねねの扱いがアレな事について観珪さんへ罪滅ぼしをしようとしたら却って罪を深めたという…ごめんなさい。
そして皆様、いつも見てくださって有難う御座います。


「…ろすのです」

ぺちぺちと彼女の手のひらが、軽く俺の肩を叩く。

 

「降ろすのです…」

「重くないけど」

「…ねねも以前ほど小さくはないのですよ」

荒い息を収めながら呟く彼女の声は色っぽい溜め息のようにも聞こえる。

軽いと言っていい身体を抱えて出来る限り優しく隣に降ろして、腕枕に頭を乗せさせると大きく一つ息を吐いて身体を丸める。

 

「水は…」

「…いいです。こんな時だけ優しくするなです」

棘のある言葉のわりに枕にした腕を握り締める彼女に軽い苦笑を漏らしてしまっていると、眉根に皺を寄せてはぁぁぁ…と力の抜けた溜息を吐く彼女の横顔。

 

「どしたの」

「…自分の心の弱さにほとほと呆れているです。おまけにお前はこう…人の弱ってるところにつけ入って女の体を貪る事にかけては天才的にも程があるのです」

「ひでえなぁいつもながら…の割には今日は特に」

「五月蝿い黙れ黙るのです!速やかに忘れろ忘れなければ力づくで忘れさせてやるですよ!?」

「いてて、叩くな叩くな」

それなりの力を込めて胸を叩かれる感触に、さっきまでのねねの乱れ方の本気度が感じられて思わず口元が緩んでしまう。なお俺はMではない。

 

「何があったの」

番のときには彼女は照れながら部屋にやってくる。しかし今日みたいに因縁つけてきて事に及んでくる時は必ず何かあった時だ。背は伸びてもまだ俺よりは十分小さい彼女を胸元に抱き寄せて、耳元で出来るだけ優しく囁く。

「あの姉妹…伯母姪ですか、あいつらは煮ても焼いても食えないのです」

「…桂花達か」

そう聞くと頭を胸に押し付けて押し黙ってしまったので、髪を撫でてやる。

「…桂花の方はまだいいのです。今思えば奴の言う事は正論でした」

「何の話だったの」

「商業政策です。正直言ってねねが勉強不足でした。ですがあの女は脇から余計な事をベラベラベラベラっ、仕事の途中だったのに腹が立ち過ぎてほっぽりだして来てしまったではないですか」

「…桐花(荀攸)は標的を見つけたら煽っていくスタイルだからなぁ」

元々桐花がねねの事を良く思ってないのは知ってたけど、敢えて関わる様子も無かったから油断してた。彼女も縄張り意識と言うか、魏の娘と他所の娘が議論してると魏の娘の肩を持って相手を言い負かしちゃう所があったけどそれが桂花でも…いや、桂花だからこそ肩入れしたのか。

「…まああんまり気にするなよ。仕事の方はこれからも頑張って欲しいけど」

「言われるまでもないのです。それにねねには荀諶ちゃんをあの性格のねじくれた姉達から隔離するという大事な仕事もあるのです」

「ああ…ねねの部下に新人で入ったんだってね。宜しく面倒見てやってよ」

「それこそ言われるまでも無いのです。配属当日におまえについての正しい認識を懇々と説いたので差し当たり問題は無いのですよ、くくくくくく」

「何言ったんだ!?」

「自分の胸に聞いてみろなのですこのちん皇帝め!彼女にまで手を出したら極上のちんきゅーきっく改をおまえの股間にぶら下がった脳ミソに叩き込んでやるのですぞ!」

「俺の脳ミソはそんなところにねえよ!あと大声で危険な事を叫ぶな人が来る」

「ひ!?」

顔色を変えてしがみついて来る彼女を抱き返しながら無意識に息を潜める。

 

何も聞こえない。

 

「…あれ以来何もされてはいないですが…あ、ああいう危険な女は首輪をつけて人を襲わないようにしておくのですぞ」

「首輪がどうというのは置いといて、仲良くしてもらえるように努力はしている」

ねねも俺に対する物言いはわりと荒っぽい上に官位も桂花よりも低く、春蘭や思春のように腕も立つ訳じゃないから一部の強烈な好意を向けてくれる娘たちからは睨まれがちだ。というかガチで睨まれてた事があった。

「ねねは努力ではなく結果を期待するのです」

「前向きに取り組んで参ります」

「ところで」

「何?」

「人の恐怖にかこつけて尻を揉むなです」

「揉み心地が良くてつい」

「それはねねの胸の揉み心地が気に入らないという喧嘩の売り文句ですか」

「いや背も伸びたのにあわせて慎ましくも御成長されたそこも魅力的だけどこの体勢じゃ無理だし、それよりもねね

「何ですか」

「太ももに挟んですりすりされるのもどうかと」

「おまえが尻を掴んで引き寄せるから偶然にも挟まってしまったのです。コレは言わばおまえの頭脳です、つまりねねはおまえの頭を撫で撫でしてやってるのですぞ?ほーれ撫で撫で♪」

いたずらっぽい笑みを浮かべ、腰をくねらせながら手を伸ばして器用に頭も撫でてくるねね。

でしたらねねさん、折角なのでもっと温かい所で撫でて欲しいんだけどと言うと、くくっと幼げな笑顔を見せて仕方の無い種馬ですな…と呟きながら、目を閉じると一度浮き上がるようにしてから、ゆっくりと布団の中へ沈み込んでいく。

 

全てが彼女の柔らかく熱くぬめった、頭を撫でる掌にあたる部分に飲み込まれると、んぅ、と初めて会った頃は想像出来なかった色っぽい声を漏らし、ゆっくりと薄目を明けた。(始めても)いい?と問うとこくりと頷きながら、浮かされたような表情で耳元に口を寄せて来た。

「これも、んぅっ…良いのですが、…後で別のところでも…いい子いい子してやるのですよ…?」

一瞬何の話か分からず「え?」と聞き返すと彼女は怒ったように満面を朱に染めて、

「だ、だから!以前あの危ない女がねねを…ねねの…っ、そ、そこに危害を加えられそうに…、いえ精神的には危害を加えられたのですから責任持って飼い主のおまえが!おまえが一生治療と賠償と愛情と謝罪を尽くすべきだということなのですから分かればかっ!」

と押し殺した声で叫びながらしがみついてきた。

 

それがあんまり可愛くて、「そこって…ここ?」とか言ってつい張り切っちゃった俺も悪かった。反省している。

 

 

 

 

 

けど翌朝の会議の欠席を恋に言付けるのはやめような、ねね?

恋、理由聞かれたら正直に喋っちゃうからさ?



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星と華琳さまの遠まわし過ぎて伝わらない誘い芸1+5連発

貴方はもう飯坂様が描いたうちの陽(太史慈)を見たか!見ましたよね?是非見て下さい!そんな飯坂様へのお礼の小ネタで御座います。

ところで飯坂様から『公式から仲達の立ち絵の依頼が来たよ!』という連絡がまだ来ないんですよねぇおっかしーなー(真顔)


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星編

 

(たまたま持ち合わせがあって)

おお良いところへ主、いきなりで申し訳ありませんが金を貸して頂けませぬか。いや実はですな、酒を飲もうと思ったのですが酒手が無い。となれば何人かに労働を提供して報酬を得て酒を買おうと思ったのですが生憎誰も求めておりませんでな。そこに折り良く主が通りがかられたので金を無心した次第なのです、誰か私に労働を求める方が居ればよいのですが。なるべくは身一つで直ぐ出来る仕事が良いですな。殊にこの趙子龍、槍の扱いは得意とするところですので槍の整備などでもあればと思うのですが…

 

…………左様ですか。この金をお貸し下さるのは有難いですがちょっと今私が飲みたい気分の酒を買うには多少足りないですな。ですから…………いえ、そちらの金を足して頂いても足りませんので……ああもう、別に主の証文でツケにして頂いてまで飲みたい酒ではないのです!

 

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華琳編

 

(例のプレイ)

三国塾初等部の子達は無邪気でいいわね、私にもあんな頃があったわ…見せられないのが残念だけれど。

…あらそう。…そ、そうそう麗羽なんかあれ位の年の頃から(中略)で(中略)だったのよ。…今も幸せだけど、あの頃貴方と出会ってたらどうなってたかしらね?ところで見学で立ち詰めだけどちょっと疲れてない?保健室でも講師控室でもお茶くらい飲めるけど。

…ふうん。…さ、この後はまた書類仕事ね。戦乱の頃よりは絶対にいい筈なんだけど、当時は気にする余裕も無かったせいかしらなんか最近は精神的に疲れる事が多くなってるのよね。貴方が言う『すとれす』ってやつなのかしら、たまにぱぁっと気晴らししたくなるのよね。普段の自分の殻を脱ぎ捨ててって言うか。

…ううん別に華陀に診てもらう程悪い訳じゃなくって、…だから、あ、あのね…

 

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(先に察してしまった真桜)

私最近眠りが浅いんだけど、寝台のせいもあるかも知れないって思うのよね。

ところで貴方の寝台って物凄く柔らかいじゃない?私の寝台を改造する参考にちょっと見せてくれないかしら?

 

…そうね、このばねが寝心地を良くしてるのね。…でも別に分解して真桜まで連れてきて説明してくれなくても良かったんだけど。真桜もそんな申し訳なさそうな顔しなくていいのよ…

 

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(鼈とか鰻とか)

おはよう一刀、地方から珍味の食材が集まったんだけど今夜夕食一緒に食べない?久々に腕を振るうわよ。…材料?そうね、色々よ。色々。

…え?お昼だとその後会議だし…落ち着かないでしょ?夜の方がいいと思うの。私の部屋ならお腹いっぱいになったらそのまま寝れるし。

…七乃と約束?延期して。延期。食材生もので今日しか駄目なのよ。

…一緒にとかふざけてるの?さすがに怒るわよ私?

 

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(犬笛)

痛っ…うん…ちょっと足をひねってしまったみたい。腫れてはいないけど二人でこのまま山を降りるのは少し危険ね。あそこに先月建てた山荘があるから、そこで休んでいきましょ?夕方から大事な会議があるのに困ったわ、でも仕方ないわね。

 

…その音のしない笛は何?え?恋が迎えに?もう吹いちゃったの?…ここ都から結構距離あるから、せめて二時間位掛からないかしら?あらそう。助かるわね…はあ…

 

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(着せてなんぼ)

三国塾の遊泳池(プール)もやっと完成ね。

それにしても今日も暑いわね、検査も兼ねて泳ぎたいくらいだわ。でも水着持って来てないし…塀も高いし入り口に鍵も掛かるんだけど…残念ね。

 

…有難う、でも何で貴方が備品の水着の在り処を知ってるのかしら?『かりん』って名前まで入ってるし。それに自分はちゃっかり始めから履いてきて…はあ…まあいいわ、折角だから泳ぎましょ。

 

 

 

…きゃあっ!?…ぷは、何するのよ危ないじゃない!

んむ………や、やあねこんなところでもう、見境ないんだから。…鍵は掛けたの?そう…ならその…駄目じゃないけれど。でも着たままなんて出来ないじゃない…

ウソ、そんなところに切れ込み入ってたの!?う、うそ…ああっ…ホントに入ってっ、…し、信じられない変態ねっ貴方、あっ、はっ…



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司馬日記外伝 夜も頑張れ太史慈ちゃん(R-18)

「司馬日記外伝 頑張れ太史慈ちゃん2」の後の、陽(太史慈)ちゃんです。


「陽(太史慈)…俺だけど。開けてくれないかな」

 

言いながら扉をノックすると、どうぞ…と小さな声とともに泣いた痕の残る瞳で、悄然とした――――中にも、ふと照れが混じってはにかんで見える陽が部屋に入れてくれた。

その表情に、直感的に『ああ大丈夫か』と少しほっとする。

私のお陰ですよ?と胸を張る頭の中の夕(魯粛)さんに軽く(あくまで軽く)感謝をしつつ、その代わりにやるべき事を思って苦笑いが漏れそうになってしまう。

 

「あの…済みません。あいつら…雪蓮にちょっとからかわれた位でいじけて…わざわざ来て頂いてしまって…」

「いや…雪蓮たちには、陽に対してもうちょっと歪んでない愛情表現をしてくれって少し叱っておいたから」

「…済みません」

「いや陽が恐縮する事無いよ」

言えないけど『ごめんなさいだぴょーん』とか言って正直余り効いてなさそうだったし。と言うか。

 

「…………」

上目遣いではにかみながら、しますよね?してくれるんですよね?ねえしましょう?っていう陽のものすごい桃色オーラに正直少し中てられてる。

「雪蓮達、陽が可愛過ぎて羨ましかったんだよ」

「あっ…」

肩を抱き寄せると自然に腕の中に収まり、喉元に彼女の頭が倒れこむとふわりと香る彼女の匂い。それを切欠に抱き寄せた手で腋の下から陽の豊かな下乳を揉み立てると、切なげに眉を下げて俯き、はぁっ、と悩ましい溜め息を漏らす。

「俺も陽にこの服を着せて、こういう事したいと思ってた」

「う・・・嬉しいですっ、はっ・・・ああっ」

ゆっくりと胸を愛撫する指の隙間を次第に狭めていくと、より強い刺激の予感にしがみつく手の力が強まるのを感じる。その頂の僅か手前で指を止めると、彼女がどうして、という表情でこちらを見上げる。それを見て、バニースーツから乳首をはみ出させて軽く摘む。

「はあぁんっ…!」

間を外されて与えられた強い刺激に喘ぎ、強めに摘まんでくりくりと擦りたてると陽は抑え切れない悦びの声を上げて絶頂に打ち震えた。

数度の痙攣のあとに脱力しそうになる彼女を抱き支え、そのまま欲望に任せてお尻を握るようにこね回すと陽は眼を閉じたまま手に臀部を押し付けてゆらゆらと蠢き、手の動きに合わせて時折甘く呻く。

「お尻…は、恥ずかしいですっ…」

「こうされて、気持ちいいのが?」

胸に顔を押し付けたまま消え入るように呟いた彼女が小さく頷くのが可愛らしくて、強引に頤を持ち上げて唇を奪うと、蕩けた瞳で夢中で舌を絡めてくる。

「陽が感じてくれて、俺は嬉しい」

「あ………は、はい…」

唇を離して耳元で囁く。安心したように少し嬉しそうに応える彼女を抱きかかえ、ベッドにうつ伏せに降ろして背後から抱きしめる。

「セクシーな陽の身体に、すごくよく似合ってる」

「あ、有難う御座いますっ、…っはあっ…」

耳たぶを軽く噛みながら、豊かな胸を両手で揉みしだくと悩ましげに四つん這いの身体をくねらせ、無意識なのかセクシーなお尻を俺の下腹に押し付けてくる。正直俺ももう余裕が無い。服を脱ぎ捨て、彼女の愛液でぐしょぐしょになってしまっているクロッチの部分に押し付けると陽は小さく喘ぎ声を上げ、ますますバニースーツ越しに彼女自身を擦りつけて息を荒げていく。

「陽…欲しい?」

両方の乳首を愛撫しながら、耳元で問うと強く二回頷いた。

「じゃあ、自分で挿れてごらん」

言いながら俺自身に彼女の手を添えさせて、バニースーツの股の部分をずらして彼女自身での挿入を促す。

「ああ、一刀様の…熱いですっ…」

陽の柔らかな指が俺自身を優しく撫で、思わずびくんと跳ねてしまう。彼女の空いている方の手で彼女自身を割り広げさせるように添えると、くちゅっと音がして愛液が溢れ出た。

「ああっ、私こ、こんなにっ…は、恥ずかしっ…」

びしょびしょに濡れた陰部を恥じるように顔を伏せながらも、結合を求めて突き出される陽のお尻を掴み、一気に彼女の熱い泥濘に突き立てた。

「ああああっ…!あ…あぁっ…、一刀様のがっ、いっぱいぃ…」

入れただけでぶるぶると震えて上体を倒してしまう彼女に覆いかぶさる。

「…イッた?」

俺自身を銜え込んだまま今も痙攣する陽の内襞が何よりも雄弁に証明していたけれど、布団に顔を埋めたままの彼女の頷きがどうしても見たかった。

「もっと…していい?」

「は、はいっ…いっぱい、いっぱいして下さいっ」

「…陽が可愛過ぎて、壊しちゃうかも」

「壊してっ、壊していいですからっ一刀様のっ、いっぱい出して下さい!あっ、あっ、あああっ!!」

絶頂の余韻も抜けないままの彼女の胎内を激しく責め立て、ひたすら快楽を与え続ける。指の痕がつくほどに柔らかな乳房を握り締め、指先で硬くしこった乳首を揉みつぶすと淫らな悲鳴を上げ、膣奥からさらにとぷとぷと欲情の証を溢れさせる陽が堪らなく愛しい。

「陽、もういくよっ」

「来てっ、奥にっ、いっぱい来て下さいっ」

俺も荒い息で告げると、快感でろくに動かない腰を懸命に振り立てて射精をこいねがう陽のいじらしさに感極まり、急速に高まってしまう。

「っ、陽っ…!」

「あっ!あっ!あああああああぁぁっ……!!…凄いぃ…一刀様のっ、…あぁ…いっぱい…」

 

彼女の腰を限界まで引き寄せ、奥深くにどくん、どくんと何度も放出する。一滴さえも余すことを許さないかのように、彼女の蜜壷もひくひくとうねりを繰り返す。

一瞬のような永遠のような甘美な吐出と息を収め、力を失いつつある俺自身を彼女の中から引き抜こうとすると、絶頂に酔いしれていた彼女が小さな声を上げた。

「いやあ…出て行かないで、一刀様ぁ…ずっと、中にいて…?」

抜かないまま器用に身体をこちらに向けると長い両手両足でしがみつき、正常位のような格好になる。

「ね、抜かないで一刀様ぁ…直ぐ元気にしますから、私の中から出て行かないで…私の中で、いっぱい出して?お願い…」

女性が下の不自由な体勢のまま、力の入らない腰を懸命に揺すって涙目で懇願してくる陽がどうしようもなく可愛らしくて。

彼女の動きに合わせて柔らかくなってしまったはずのものでゆっくりと熱い潤いの中を行き来していると、嬉しそうに涙を一筋零して瞳を閉じながら、早くも小さな喘ぎ声を上げ始めた彼女の姿に急速に力を取り戻していくのを感じた。



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司馬日記外伝 頑張れ太史慈ちゃんと郝昭さん

ある日、太史慈ちゃんが仲達さんに誘われて一刀さんと会食することになったときのことです。

P.S.えちぃのを書くのは暫くいいや…と思っていましたが、飯坂様のイラストにあまりにムラムラして某サイトにて書いてしまいました。もしよければそちらも御覧下さいませ。


髪型よし。

服装よし。

下着よし。

「よっしゃ行くぜ!」

 

鼻歌交じりに庁門へと向かったオレは少し浮かれすぎていたかもしれない。一刀様との御会食だからって仲達様も御一緒なんだから下着までは、なあ?

でもよ、万が一ってこともあるだろ?それに雪蓮に教えてもらった今夜のメニューは一味違う、精進料理は精進料理だけど精が進む精進料理だぜ。

それで、どうだったんだよ?って聞いたら『もぉ、いっ…ぱぁい♪一刀ったら、朝になっても離してくれなくてぇ』って下腹撫でながら答えた雪蓮の満たされきったエロい表情を思い出す。

いやでもまず先輩の仲達様に譲らねえとな、仲達様も一緒に如何ですかって言ってもいつも御遠慮されちまうし。で仲達様が終わったらオレが部屋に入って…いや仲達様嫌がるらしいからな、一刀様にお声掛けして別の部屋で…ってヤッベェ一部屋しか予約してねえよ!急いで行ってもう一部屋とっとかねえと。

 

小走りに城門脇の欅の大木を目指すと、正に待ち合わせ場所のところに女が立っているのが目に入った。わりいがそこは一刀様達との待ち合わせ場所なんだよな。見てみれば結構な美人じゃねえか、なんかいい服着てるしよ。

「おうアンタ、ちっとわりいけどそこ譲ってくれよ。これから偉いさんとここで待ち合わせなんだ」

「断る」

 

「…あァ?」

こっちを一瞥もしない木で鼻をくくった女の態度にさすがにカチンと来た。テメェ誰にそんな口利いてんのかわかってんのか?って言葉が喉元まで上がってきたのを、一刀様の笑顔を思い出してグッと堪える。

(――――俺の名前で無理矢理ねじ込むような事はしちゃ駄目だから)

こないだも張英達が先日のお詫びに一刀様を屋台に連れてって、他の客をどかそうとして怒られてた。俺は一刀様の御意向を汲める女だ、此処は穏便に済ましてやるぜ。

 

「…優しくお願いしてるうちに譲ってくれねえかな?あんま偉いさんの前で物騒な所見せたくねえんだ」

「貴様の待ち合わせ相手がどれほど偉い者かは知らんが、私もここで貴人を待っているし私の方が先に此処に居たのだ。私には此処に居る権利がある。疾く去ね」

…堪えろ。ここで殴っちゃダメだ。

「悪りいけどなぁ?マジで凄えお偉いさんなんだわ、俺ら真っ直ぐ見ちゃいけねぇくれえの。しかも天下無双のイケメンで神様みてぇに優しい人でよ、うっかり違う女に声掛けさせて恥じかかせちゃいけねえ方なのよ。分かってくれねえかなぁ?」

「なりは美しくとも心はチンピラのような女には市井の破落戸も貴人に見えるようだな、憐れな事だ。悪いが私がお迎えする方の格を下げぬためにもここは譲れんな」

ダメだそこは許せねェ。

 

「貴人だか何だか知らねぇが、偉ぶるしか能の無ぇてめェのクソみてえな連れと一緒にすんな。誰が破落戸だかもっぺん言ってみやがれ」

殴りつけた城壁がガツッ、っと鈍い音を立てて拳の形にめり込んだ。決めたこの女ぜってーボコる。

「…貴様今誰のことを糞と言ったか分かっているのか。見目麗しく御優しく偉ぶる所など一つも無く女の命を救って何ら恩にも着せぬ尊いお方だ、品性下劣な貴様の連れ等塵芥にも等しい。何処の女か知らんが貴様には教育が必要だな、躾けを施した後に警備部へ突き出してやるから感謝しろ」

クソ女が上掛けを脱いで俺の方を向き直った、表情の変わらねえ奴だと思ってたがどうやら熱くなってきたらしい。

 

…こいつ何か武術やってやがる。それがどうした関係ねェ、一刀様を馬鹿にしやがった奴は区別無くブチのめす。

「警備に突き出されんのはてめェだこの野郎!!」

「やめなさい!」

クソ女に正拳を叩き込む為に引いた右腕が掴まれた。知ってる感触だけど、何時きやがったんだこいつは。

「…止めんなよ、雪蓮」

「止めるわよ、いきなり殴りあい始めようとしたら。何があったのよ」

「伯道貴女も!こんなところで何してるの!?」

「…御嬢様」

クソ女にも援軍?か分からねぇが止めに入る女が来た。

「いや、実はよ…」

雪蓮にあらましを説明する、ただし止まる気は無ぇが。あっちじゃあっちでクソ女が来た女に説明をしているみたいだ。

 

「…そう。…曹真さんちょっといいかしら?陽は待ってて」

「?はい、何でしょう…」

雪蓮が止めに来た女を呼んで、何か二人でぼそぼそ話し始めた。

あの女どっかでみたような…そうだ、仲達様とたまに一緒に居る人だ。て事はクソ女は間接的に仲達様の知り合いかも知れねェが、一刀様をボロクソこいた奴なら関係ねぇ。仲達様だってよくやったって褒めてくれる筈だ。

 

「待たせたわね」

…なんか雪蓮が無表情だ、隣の女もだけど。雪蓮はいつもは笑うにしろ怒るにしろ表情豊かなんだがな。…いつだったか、前にもこいつのこんな表情を見たことあるような気がする。

「…さっきも言ったけどよ、止めろったってやめねえからな」

「まあ待ちなさいよ。あっちの娘ボコるのは止めないけど、決着つけてからでもいいんじゃない?」

「…?決着って、何だよ」

「要は、お互いの待ち人がどっちが素敵な人かって話でしょ?なら、一…その人達が来たところでお互いに比べてみて、陽の待ち人の方が素敵だってとこを証明したらってこと」

「…まあ、そんなのするまでも無ぇけどな」

「それはこちらの台詞だ」

クソ女が自信満々に言いやがるが、一刀様以上の男なんかいるわけねえだろばーか。

「そうよねえ、陽にしてみれば絶対の自信があるわよね」

「ったりめーだ」

「もし向こうの人の連れがあんたの待ち人と同じくらい素敵な人だったら、この場でぱんつとブラ脱いでそのまま飲みに行けるくらい自信があるわよね」

「ちょっと待て!?」

何言ってんだこいつは!?

「あら全然問題無いでしょ?貴女まさか、(一刀が)負けるかもなんて…」

「そんな事あるわけないだろ!?」

「なら問題無いでしょ?」

「け、けどよ、あのクソ女が何て言うかは別じゃねーかよ?」

「ううん陽だけの判断でいいの。あっちの待ってる人が来た時に、貴女がその人の目の前で『こんな男には抱かれたくねえや』って言い切るだけでいいのよ?」

「…それならまあ、いいけどよ…」

このクソ女のツレのクズ男(仮)には悪りいがそれは言い切れる。

 

「貴様…多少躾けるだけで許してやろうと思っていたがそんな事をしてみろ、骨の一本二本では済まさんぞ」

「あァ?やれるもんならやってみろよ」

「やめなさい伯道!…貴女だって(一刀様の方が素敵だって)自信があるのでしょう?」

「無論です」

「万が一だったら、ぱんつとブラ位即脱ぎくらい貴女だって訳無いわよね?」

「…私の主観で宜しいならば。あの野人には路傍の石と瑠璃の輝きの違いも判らないかも知れませんが」

「そちらの連れの方の目の前で『貴方に抱かれたいとは思いません』くらい言えるわよね?」

「その方には失礼ですが、当然でしょう」

「言えなかったらその連れの方におっぱい揉ませてもいいわよね?」

「…御嬢様の御質問の意図が判りかねますが、そのようなことは有り得ませんので構いません」

 

「ぶふっ」

思わず笑っちまったぜ、馬鹿だコイツ。一刀様に俺並みにでかい乳揉んでもらってアヘ顔晒して性根入れ替えろ。

「陽、貴女も言えなかったら向こうのお連れさんに」

「いーぜ、どうせ有り得ねえ話だから何だろうが全っ然問題ねえな。ホント、知らねえって事は恐ろしいよなぁ!あっはははははは!」

「全くだ、はーっはっはっは!」

 

その自信満々の高笑いが泣きベソになってぱんつ脱ぐまで後五分足らずだ、ざまぁみろ。

 

 

 

 

 

----------------------

 

「あ、仲達さんもう仕事上がれる?」

「はい、お待ち申し上げておりました」

「じゃ行こうか。今日の店も『三国一』?」

「はい。新作の料理があるそうで、太史慈殿の方で席を押さえております」

「じゃあ今日は三人かな?」

「いえ、折角でしたので急ですが伯道も誘わせて頂きました。彼女は将として秀でているのみならず心根良く容姿も優れ、御側にお仕えさせて頂ければ必ずや一刀様の御為になる娘と思います。是非この機会に親しくお言葉をかけて頂ければと」

「そうなんだ、郝昭さんも。あの人、仕事出来ますって感じの人だったよねぇ…ところで二人って面識あるんだっけ」

 

「…無かったかも知れませんが、両名とも真面目で性質良い者ですから特に問題は無いと思います。きっと互いに親しくなれる事でしょう」

「(陽のアレはまだ知らないのか…いい娘なんだけど)そっか、仲良くなれるといいね」



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司馬日記48

その後の、とある文官の日記です。

P.S.
飯坂様、レスポンス有難う御座います!


6月7日

陳羣殿より『別冊阿蘇阿蘇』の対談取材依頼を受けた。

『別冊~』はたまに見てはおり、毎回相手を変えて公私について取材する連載物だ。私など記事にしても面白くないのではと辞退しようとしたが

「マジ面白いから、貴女の思考回路!なんとなく知ってる人たちもやっぱ詳しく知りたいと思うはずよ!それにほら、貴女だって一刀様の素晴らしさをもっと世に知らしめたいんでしょ?子丹さんの御紹介でもあるし是非受けてよ」

と言われ、前半は若干釈然としないところもあるが後半についてはその通りであるので受ける事とした。

 

6月8日

対談の参考にと『別冊阿蘇阿蘇』の先月号を購入してみた。

対談は稟様であったが、政務の話もそこそこに『オンナの郭嘉~魏の神算は如何にして鼻血を克服し牙を抜かれたか』

と副題が付けられ一刀様と添い遂げる頃からの性格や服飾の変化について語っていた、というか語らされているといった風であった。

また対談最後に『では御本人の登場です』と言われて一刀様が御登場し、慌てる稟様を抱っこして連れ帰ったとされている。

 

…これは脚色なのだろうか。

 

6月10日

劉備様と孫権様が大きな座布団らしきものを各々抱えて談笑されながら廊下を歩かれていた。

会釈して通り過ぎようとしたが通りがかられた曹操様がお二人に気づかれ、それは何かしらと声を掛けられるとひどく慌てた御様子で枕なの、凄く寝やすくてと答えるとそそくさと去って行かれた。

 

6月11日

『別冊阿蘇阿蘇』の対談取材を受けた。

本来今回の取材側は妹の叔達だったらしいのだがやりにくかろうということで楊修殿であった。

話題は仕事や私事等多岐に渡り、私の知る一刀様の素晴らしさについても語らせて頂いたが多少なりとも伝わっただろうか。

 

6月12日

生協へ行ってみたところ、先日見た枕が「授乳プレイ用枕」と言う名前で売られていた。

恐らくは先日劉備様と孫権様がお持ちであった枕をそういったことに応用しようと考えた者がいたのだろうが、そういった飽くなき根性に呆れもするが感心もする。

 

6月13日

昼休みに姜維と小脇に敷物らしい何かを抱えた士季が士載を訪ねて来て、会議室へ入っていった。何をしているのかと覗いてみたところ士季が広げた敷き布は赤青黄緑の格子状に塗り分けられており、更に所持していたらしい賽を示したり敷き布を触ったりなどしながら何事か二人に説明していた。

私が昼食を摂り終えた頃に三人は会議室から出てくると、これから一刀様に御時間を頂いていると言って士季は妙に意気揚々と、姜維と士載は赤い顔をして出て行った。

 

6月14日

最近決裁業務の多い一刀様が伸びをされながら『ちょっと運動したいなぁ』と仰った。馬を引きましょうかと申し上げたが遠出されると面倒だから庭で弓にしてよと詠様が言われ、じゃあと仰って御自身の弓を執られて部屋を出られようとしたところ、すぱーんと勢い良く部屋の扉が開かれ「一刀様がえっちな運動をしたいと聞いて!」と叫びながら劉封・関平姉妹が半裸になりながら部屋に飛び込もうとして来た。しかしすんでのところで先端を丸めた二筋の矢が彼女らの肩に直撃して弾き飛ばすと黄忠殿と黄蓋殿が弓を持って現れ、では行くか、行きましょうかと笑顔で一刀様の両脇を抱えて連れて行かれた。

 

詠様と呆然と見送ったあと、暫くすると疾駆してきたらしい軍装のまま弓を抱えた妙才様が息を荒げて一刀は居るかと言われたので黄忠殿らと斯斯然々と申し上げた。

すると普段の御冷静な妙才様に似つかわぬ表情をされながら、暇人共めと舌打ちされて出て行かれた。

詠様もしばらく目を丸くしておられたが、我に返られると私に「ほんとに皆、どうやって察知してるの本気で不思議だわ。…そうだ、蓮華に『今夜一刀行けなくなった』って伝えて」と命じられた。

 

6月15日

昼休み中に席で元直が仮眠をしていた。それ自体は文句はないのだが、

「あん…そんなとこ駄目ですってばぁ…えへへへへ…」

と気色の悪い笑いを浮かべて涎を垂らしていた。すると眉根に小皺を寄せた詠様が『あんたの一刀様が元直の脳内でド変態なことさせられてるわよ、そろそろ昼休み終わるから起こしてやんなさい』と言われたので起こしたところ、

しばらく寝ぼけてぽかんとしていたがはっと我に返ると

「なんてとこで起こしてくれんのよぉ!もう今先っちょがちょんちょんってしてたのにー!!」

と意味不明な事を怒鳴りだし、詠様が真昼間から妄想する暇があるなら仕事しなさいよと怒鳴り返されていた。

その後もああもうあたしが欲求不満で死んだら仲達のせいよ…等とぶつぶつと文句を言っていたが八つ当たりもいいところだ、夢の事を惜しがる等みっともないことだ。

※司馬日記44/4月26日の日記参照

 

6月17日

書類をお持ちしたところ一刀様が御執務室で考え込まれるような御様子であったので何かおありでしょうかと伺ったところ、

「いや、今朝白蓮と蓮華と杏に朝飯作ってもらって一緒に食べたんだけど。…こう言っちゃ悪いんだけど、『同盟定食』とか凄くなさそうな名前だけあって特段無茶苦茶って程じゃなかったんだけどまあ普通程度に旨くて。ただ妙に落ち着く時間だったなぁって、なんかちょっと不思議な感じがして」

と仰った。

孫権様とは長く連れ添っておられる上に白蓮殿は落ち着いた方で、また逢紀も民間で給仕をしており多少気安いところがあるのでそう感じられたのではないでしょうかと申し上げると、まあそうかなぁと仰って執務に戻られた。

 

6月18日

公達様に昨日の一刀様の御話をしたところ、

「華琳様と流琉涙目ね。…まあ極上の料理が駄目って訳じゃないとは思うけど」

と仰られた。すると張郃と郭淮が

「それってさぁ、つまりどんな女にも一定の需要があるってことにちょっと通じるよね?乳がでかいだの小さいだのウブだの変態だの、幼女だの年m…熟女だの。他の人と被り過ぎなければさ」

「ちょっと飛躍気味だけど、そういう傾向あると思うわよ。天の国の言葉で言えば『なんばーわん』でなければ『おんりーわん』であるように個性を持ってそれを磨けってことかもね」

と言っていたので、『私も個性を持たなくてはいかんな』と言うと部屋中の人間から目の前で横に手を振られ、子丹御嬢様には『あまりインフレ進めないで?私なんかただの箱入り娘なんだから』と溜息を吐かれた。

 

6月19日

本年度の三国巡幸の計画書が各国から提出された。前回よりも格段に移動時間が短縮されており元直と子敬に事情をきいたところ、

「本国側の交通整備の力の入れようが半端ないわ。道路水路整備も凄いけど、水路は必ず下りで行って後は馬で行けるとか順路も物凄い研究されてるし移動用車両と船の開発の為に李典さんとこにもかなりの金が流れてるみたい」

「それに20日で返してやるから恋さんと張遼さん以外の中央側の人間は移動に付いて来るなって。紛糾必至ね」

とのことだ。

詠様とも相談し、一刀様の御意向を伺うこととなった。

 

6月20日

魏の執務部で事務をこなしていると詠様に呼ばれたのでついて行くと、困った御様子の月様が居られ

「月が総務の事務員…どっちかって言うとメイド業の方ね、の新規採用の面接してるんだけどさ、悉く『これで合格はちょっと』って言うのよ。で合格の基準について月と色々話してるんだけどちょっとお互いなんか掴めなくて、ためしにあんた模擬で面接とちょっと実技受けてみて」

と言われた。

 

そこで詠様立会いの下月様の面接を受け、御茶出し・寝台整備を指示通り行っててみたところ

「ほら居るじゃない、詠ちゃん!司馬懿さんなら合格だよ、ちょっとだけ偏ってるところがあるけど」

「やっと月の言ってる基準が分かったけど正気になって!?こんなのそんじょそこらにゴロゴロいるわけないでしょ、それに偏ってるのはちょっとだけじゃないから!」

と言われてお二人共頭を抱えられてしまい、私は用は済んだという事で帰された。

 

月様のお考えになるメイドのあるべき基準に私が達していた事は喜ばしいが、以前一刀様の御生活指導をさせて頂いていた時に多少やってはいたとは言えそんなに厳しい基準であったとは感じられず、各部署でも言われているように人材不足が深刻なのだろう。

 

6月21日

一刀様が荊州から劉表殿に付いて来ていた劉琦・劉琮姉妹の遊び相手をしているらしく二人を子供とは言え重たげに腕と脚にぶら下げて廊下を歩かれていた。

会釈してすれ違い、総務室に書類を置くと廊下から一刀様が

「無理!無理無理、無理だから!!マジ降りて!マジ倒れる!!!」

と叫ばれる声が聞こえたので廊下に戻ると張飛殿、許緒殿、仲徳様が更にぶら下がっており、関羽殿、典韋殿、稟様が慌てて三人を引き剥がしに掛かっていた。



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別冊阿蘇阿蘇 対談シリーズ第十七回

その後の、とある文官の雑誌対談記事です。
ここの所忙しく、遅くなってしまい申し訳ありません。


記者:楊修(以下―)「さて第十七回は司馬懿仲達さんです!」

司馬懿「宜しくお願い致します」

―「さて仲達さんと言えば魏の中堅主力、まあ私も同じ魏なので多少は知ってますけど今はどのようなお仕事をされてるんですか?」

司馬懿「総務室では一刀様の事務御予定調整、及び兼任で魏総務部にて予算管理・各部の事務調整等をしています」

―「総務は激務と評判で優秀な方たちが集められていると思いますが、どうですか忙しさとかは」

司馬懿「決して暇ではありませんが一刀様の御為に働けるのですから、やっていけないと言うほどではありません」

―「流石ですね。曹真さんが言われてましたが有給も偶に取っておられるとか」

司馬懿「(顔を赤らめて)…ええ。まあ」

※編集部注 第十四回の曹真さんから『予定して有給を取った事は一二度有るか無いかだが伽の翌日は常に急遽休みにしてしまっている』という証言を得ています

―「どうですか上司の方とか」

司馬懿「詠様はとても優秀な方で、適切に御指導頂いております」

―「じゃ魏の方は?」

司馬懿「…公達様も業務に関してはとても聡明な方と思います」

―「変態なのが不満?」

司馬懿「…いえ、個人の御性癖に意見を差し挟むつもりはありませんが…公務時間中にそういった事を大きな声で話されるのはお控え頂けないかとたまに申し上げているのですが」

―「まああの方は治らないでしょうねぇ、二言めには『じゃあその女を抱く一刀様も変態ってこと?』とか言いますからねぇ。で、そんな上司お二人から仲達さんについて全く同じ感想を頂いてますが読んでもいいです?」

司馬懿「構いませんが」

―「『凄い出来る娘なんだけどねぇ』」

司馬懿「…喜んで良いのでしょうか」

―「さあどうでしょうね(笑)さてそんな仲達さんですが御家族はいっぱいいらっしゃる」

司馬懿「姉の伯達をはじめ妹が六人おり八人姉妹です。今年四女、五女の季達、顕達が入職しています」

―「皆さん美人さんですよね」

司馬懿「私は兎も角、姉妹達については密かに誇る所です」

―「しかもおっぱいも大きいという」

司馬懿「(少しはにかんで)…姉の伯達と三女の叔達は確かにそうかもしれません。私や季達らはまあ…人並みかと」

―「季達さんたちはちょっと知りませんけど仲達さんそれで人並みって言ったら刺されますよ!?」

司馬懿「はあ…」

―「まあそれはさておきまして皆さん一刀様にぞっこんだと」

司馬懿「私はお慕い申し上げておりますし、姉妹達も同様と思います。一刀様の御魅力であれば当然の事ではあります、先日も」

―「ちょっと一刀様のお話後にさせて頂いて、皆さんもう全員お手つきで?」

司馬懿「いえ、季…六女の恵達以下は未だ年若く、一刀様は子女の健全な育成をお考えですので御迷惑となるような不埒な行動は慎むようにと指導してはおりますが。決して現在の御自身の欲望に溺れられず将来の国家を見据えておられる一刀様は、」

―「はいそうですね素晴らしいですね、ところで一刀様がその子達を求められた場合は」

司馬懿「当然積極的にお応えするべきです、年など理由になりません」

―「流石ブレない仲達さん、迷いの無い二重基準!そこに痺れるけど憧れない!ところで御姉妹だけでなく弟子も取って一緒に暮らされているとか」

司馬懿「士季と士載が下宿しております。士季は多少軽はずみで士載は引っ込み思案なところがありますが、いずれも才気美貌共に備えた娘達です」

―「特に士季ちゃんの後宮での評判は凄いですね、色んなプレイを編み出して一刀様を飽きさせないだけじゃなくお歴々の為にも色々提案をしておりそれがまた好評だそうで」

司馬懿「…そうなのですか、たまに怪しげな事をこそこそとしているかと思っていましたが。…それが一刀様の御身心をお慰めする事に繋がるのであれば、まあ感心な事ではあります」

 

*******************

 

<尊敬する人物は…まさかの!?>

 

―「では交友関係行ってみましょうか、特に親しい方とかは」

司馬懿「そうですね…兎も角まず子丹御嬢様とは旧来のお付き合いをさせて頂いており、温かくも時には厳しく御指導頂いています」

―「子丹さん子供の頃は可愛いけどポーッとしてたのに、強くなりましたよねぇ」

司馬懿「年を追う毎にしっかりしてこられていると思います。…多少、世俗に染められ過ぎていないか心配なところもありますが」

―「他に同僚の方とかでは」

司馬懿「総務室では元直、子敬と飲みに行く事が多いです。またこの頃は互いに忙しく余り会えていませんが凪、亞莎も気の置けない友人です。加えて最近同期の伯道が上京しており、何かにつけ連絡を取っております」

―「どんな事を話したりされるんです?」

司馬懿「多くは一刀様に関わる事です」

―「はい安定の仲達さん頂きましたー」

司馬懿「安定の…?」

―「いえ特に気にしないで下さい。ところで尊敬する人とかは?」

司馬懿「それは当然」

―「一刀様以外で」

司馬懿「…(とても不満そう)……そうですね、白蓮殿です」

―「えっ?」

司馬懿「ああ失礼、公孫瓚殿、公孫瓚伯珪殿です」

―「マジですか!?」

司馬懿「…それほど驚かれる事とは思いませんが。私の知る彼女は一刀様の御心を安んじる事に秀でており大変優れた女性です」

―「そーですかー…魏じゃ知ってる人にしか知られてない人だと思うんですけどねー。さて実は一刀様からもお言付けを預かってます!読ませて頂いていいでしょうかね」

司馬懿「はい」

―「あれ?意外と動揺されないんですね?」

司馬懿「いえ。大変緊張しております」

―「そうなんですか。一度仲達さんの(無表情過ぎて伝わらなさそうな)モノマネ芸とか見てみたいですね、では読ませて頂きます。

 

『えー仲達さん、いつも遅くまでお仕事有難う。出会ってもう二年経つかな?え…二年ちょっと?うん。初め見た時は恐そうなお姉さんなのかなぁって思ったけど、実際にはそんなこと全然無くて、何て言うかこう、可愛いお姉さんでね。仕事もバリバリ出来るんだけどちょっとあの、ふっと抜けてたりする所がホッとするって言うか、可愛いなって思います。あとほんとに俺の事過大気味ってって言うか、あのすごく持ち上げてくれるから俺も、もうちょっとしっかりしなきゃいけないかなってあのー、身を引き締めさせてもらってます。ま、あと色んな人がえっとその…仲達さん叱ったりからかったりするけど、そこらへん含めて仲達さん大好きだから。これからもよろしくね。…これくらい?文字数これくらい?…うん、それでは、一刀からでした』

 

以上です」

司馬懿「…」

―「…仲達さん?」

司馬懿「…」

―「あの、仲達さん大丈夫ですか?」

司馬懿「(目頭を押さえて)…すみません。感激の余り…少し宜しいですか」

 

*******************

 

<総務課長落涙中…暫時休憩>

―「えー…そろそろ宜しいでしょうか」

司馬懿「はい。取り乱して申し訳ありません」

―「こういうもん貰ったら嬉しいのは分かりますけど、年がら年中顔突き合わせててもそこまで感動するあたりほんとブレませんね」

司馬懿「ぶれ…?」

―「いえ何でもないです。さてここからは超☆仲達時間!居酒屋へ場所を移して仲達さんに一刀様の魅力について余すところ無く語って頂きます!」

司馬懿「はい。本題と言っても良いところです」

 

*******************

 

<総務課長泥酔中!?>

※仲達さんは機嫌良く一刀様についてあれやこれや欠伸まで上品だとかどうでもいいところまで褒めちぎりながら二時間ほど語っていましたが、その後多少(?)酔われた後に普段は語ってくれない事を語ってくれました!

 

―「で、結局一番好きな体位ってなんです?」

司馬懿「一刀様が上で私が下です。当然ではないですか。それが主従のあるべき姿です」

―「じゃあ後ろとかもアリ?」

司馬懿「…主従の立場と言う意味では。ただ…」

―「恥ずかしい?」

司馬懿「…ですが、恥ずかしがる姿も好ましいと仰って下さいます。自分が一刀様のものであると感じられるので決して嫌うものではありません」

―「ごちそーさまです、ところで一刀様がもし縛りたいとか言い出したら?」

司馬懿「勿論喜んで縛って頂きます」

―「被虐プレイもアリ?お尻叩かれたりとかもいける口?」

司馬懿「一刀様のお望みでしたらいかなる事でも喜んでお受け致します。…ただ、打擲戴く程の不始末をして御心を荒げさせてしまったとするとそれはとても悲しい事です」

―「涙目止めて下さい、一刀様絶対仲達さんにそういう事しようって言わないですから。それよかどうです、御奉仕体質の仲達さんなら口でとか好きなんじゃないですか?」

司馬懿「夜伽を務める者としては大変好ましい御奉仕と思います。また以前は一刀様はよく御遠慮されていたのですが最近はさせて頂けるようになってきました」

―「(そりゃ断られた時によっぽど仲達さんが残念そうな顔してたんじゃないですか)それは良かったですね。仲達さんぐらい大きかったら挟みながらとか?」

司馬懿「それは…気がつきませんでした。そういえば先日妹の叔達を自室に夕飯に呼びに行ったところ、自室で胡瓜を用いてそのような練習を熱心にしていたので声を掛けずに戻ったことがありました」

―「叔達ちゃんは爆乳ですもんねー。ところで仲達さんから一刀様にこういうプレイしましょうって言わないですよね」

司馬懿「はい。おこがましい事ですから」

―「実は密かにやりたいプレイってありません?」

司馬懿「(少し考えて)……これは一刀様には申し上げられないのですが」

―「大丈夫です、一刀様に口頭で伝えたりはしませんから。あ、お酒切れてますねもう一杯どうぞ」

司馬懿「これはどうも。…血縁があっても義理でもどちらでも良いのですが、一刀様の姉となって一刀様に女の扱いの手ほどきをして差し上げられたらと妄想することはありました」

―「ほほー…可愛いもんじゃないですか、お願いしたらやってくれんじゃないですか?」

司馬懿「いえ、そのようなはしたない事は…ただ一度偶然にもそれに近い事はして頂いたのですが、弟から一方的に女の性を教え込まれる姉となってしまいました」

―「(それは誰でも予想がつくのでは)そーですかー。それは残念でしたね」

司馬懿「いえ。それはそれで大変素晴らしかったです(キリッ)」

―「流石一刀様なら何でもいい仲達さんですね。そろそろお腹一杯なのでお開きとさせて頂きますね」

司馬懿「?余り食べていらっしゃらないようですが。それにまだ一刀様のお優しさについて話途中だったかと」

―「いえもう閉店ですから。本日は長い時間有難う御座いました」

司馬懿「いえ。まだ話し足りない部分も多く、必要でしたら時間を取りますので」

―「ああはいはい必要でしたらまたお声がけさせて頂きますね」

 

 

-------------------------

 

「仲達姉様」

「叔達か。どうした」

「楊修さんから姉様の対談記事の第一稿を見せて頂いたのですが」

「そうか。私の知る一刀様の素晴らしい点について多少語らせてもらったぞ」

「そうですか。私は姉様の一向に治らない酒癖について語り合いたいと思うのですが。あとは姉による妹の『ぷらいばしー』の侵害につきましても」



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別冊阿蘇阿蘇 対談シリーズ第十二回

その後の、とある武官の雑誌対談記事です。
ここの所忙しく、遅くなってしまい申し訳ありません。


記者:楊修(以下―)「さて第十二回は華雄さんです!」

華雄「よ、宜しく頼む」

―「緊張されてるようですね?」

華雄「こういう事は慣れていない」

―「大丈夫ですよ、雑誌になったときに一刀様が見て可愛いなとか思うくらいですから」

華雄「…(表情が固まっている)」

―「では肩の力抜いて行ってみましょう!さっきちょっと言っちゃいましたけど最近めっきり可愛くなられたと」

華雄「…そんな話は聞いたことが無い」

―「一刀様からも?」

華雄「…(無言で赤くなる)」

―「前回の月様、また呂布様からも同様の御意見が。面と向かっては中々言わないものと言えばまあそうかもしれませんが、さて一応紋きり通りの質問から。今のお仕事は」

華雄「恋と共に直轄の警備、親衛をしている」

―「その割には余り見かけない?」

華雄「そんなに目立つところに立っていても邪魔なだけだからな」

―「月様から御言葉を預かってます。『昼間、あんなにご主人様と素っ気無さそうにしなくてもいいんじゃないですか?本当は仲良しさんなのは知ってますから』」

華雄「月!」

―「確かに華雄さんが一刀様とイチャコラしていたという目撃情報は少ないですが、いいんですかそんなんで?」

華雄「…真昼間からそんなべたべたしていたら鬱陶しくないか?」

―「成程場所と時間を弁えてむふふな事をしていると」

華雄「そ、そんな事はいいだろう!(赤面)」

―「そんな華雄さんですが交友関係は」

華雄「まあ、恋…霞、月に詠、昔なじみだな。余り社交的な方でない」

―「その呂布様からもお言付けを頂いてます。『…華雄の気持ちが分かった。でも恋は抱っこのほうがすき』これ、なんです?」

華雄「…いや…大した話ではないんだが(赤面)」

―「教えて下さいよー」

華雄「その…一刀がだな、褒めるんだ。私の………………腹を」

―「腹ですか!流石一刀様、女褒めさせたら大陸一ですね!」

華雄「腹がとかおかしいだろう!?撫でさせろとか、頬ずりしてもいいかとか馬鹿な事を言うからその…は、」

―「は?」

華雄「腹枕で…寝たければ寝てもいいぞと言ったら、本当にあいつはやったんだ!そ、それを恋が見ていてだな、何を考えているのか真似したくなったらしい、と言うだけの話だ!」

―「腹枕!気づかない所に来ましたねー…これきっと流行りますよ、乳枕に自信が無くて腰周りに自信のある武官の間で」

華雄「そんな訳あるか…」

―「さあどうでしょうね?ところで好敵手などは」

華雄「さっきも出たが恋、霞…か」

―「元譲様は?」

華雄「ああそうだな、よく鍛錬に付き合ってはいるな」

―「で、その元譲様をめぐって妙才様から苦情というか要望を受けたと」

華雄「…どこからそういうネタを仕入れてくるんだ?」

―「蛇の道は蛇って言いましてねー。『貴女ならもっと知性的に振舞えるはずだ、余り天真爛漫であってはいけない』『慎ましやかな胸と引き締まった腰も一刀にとって魅力だ、むっちりし過ぎてはいけない』『一刀に対してつんけんしてはいけない、夜との落差が有り過ぎてもいけない』などという話があったとか」

華雄「…大体合っている。何故そんなことを言われるのか、後から詠に理由を聞いて倒れそうになったぞ…」

―「―――元譲様と個性が被らない様にと?」

華雄「…私はあんなやつ並みに馬鹿そうに見られていたのかと衝撃だった」

―「さて!それじゃあお待ちかね、夜の話に参りましょうか!?」

華雄「なっ…そんな話聞いていないぞ!?」

―「じゃまず好きな体位は?」

華雄「言えるか!」

―「お尻でもしてます?」

華雄「そんな変態じみた事はしない!」

―「年上の方たちにありがちなお姉ちゃんプレイとかは」

華雄「するわけないだろう、そんな柄じゃない」

―「前に、普段はニーソなのにパンスト穿いてて皆さんに超不審がられた日は伽の日だったって本当です?」

華雄「し、知らん!」

―「(この人分かりやすい)一刀様の要望で、腰の垂れだけ着けてのーぱんで一日警備されたあとにお持ち帰りされたと言うのは」

華雄「知らん知らん、知らんと言っているだろう!?」

―「執務机の下に潜って口でしてたら頭をぶつけてバレたというのは」

華雄「霞が喋ったのか!?」

―「部屋の出入りの際にさりげなくお尻を一揉みしたら今夜来いの暗号だと」

華雄「霞か!?霞なんだな!?」

―「最近おっぱいが少し大きくなったのは一刀様が揉みまくったせいとの評判が」

華雄「も、揉まれた訳じゃ無い!私がやめろと言ってるのにあいつが何時までもちゅーちゅーと…!」

―「て言うか一刀様には強引にされたい方ですよね?」

華雄「いや、そのっ…されたいされたくないではなく、あいつにはそんなに女に気を使うなと言っただけで」

―「最後に例の集会の方から御意見です。『鍛錬にかこつけて押し倒されたい』『不意に抱き寄せられてちゅってされて(今夜…来いよ)と耳元で囁かれたい』とかではまだまだぬるい、こっち側に来ればもっと素晴らしい世界が待っているぞ。 真・汜水関より」

 

華雄「あ、愛紗っ!あいつはぁっ!!」

―「それではチョロ系金剛爆斧の使い手、華雄さんでした。有難う御座いました!」

華雄「まとめるな!それにチョロ系ってなんだーっ!?」



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司馬日記外伝 頑張れ太史慈ちゃんと郝昭さん2

多忙の為なかなか更新出来ず申し訳ありません。
いつかの太史慈ちゃんと郝昭さんです。


「こちらが太史慈殿、呉で将軍職に就かれている。こちらは郝昭、私の同期で都督補です」

「初めまして(コノヤロー…騙しやがって)」

「初めまして(貴様こそ一刀様と待ち合わせなら先に言え)」

「や、美人さんが並ぶと壮観だね」

「いえ、とんでもないです」

一刀様、必ず誉めて下さるからついついその気になっちまうよな。

「過分のお言葉に御座います」

てめーに言ったんじゃねーよクソ女。

 

「あ、勿論仲達さんも含めてね」

「…勿体無いお言葉です」

「(おい、あれは仲達は照れているのか)」

俺だけに聞こえるように言うとはこの女器用だな。

「(そうだと思うぜ。仲達様、一刀様と話されてる時はいつもあんな感じだけどな)」

「ところで二人とも凄く姿勢がいいね、最近の軍人さんってみんなそうなの?」

「いえ…(屈むと胸が見えちまうからな…てめーの所為だてめーの!)」

「お目見えの光栄に緊張している為です(この破落戸女め…膝を揃えていないと…)」

がすがすと足を蹴ってやると生意気にもやり返してくる。

「本日は太史慈殿が一刀様にこの店の新作精進料理を御賞味頂きたいと」

「はい、折角予約も取れましたので…仲達様、一刀様に菜譜(メニュー)を御案内頂けますか?」

「はい。一刀様本日の料理は、前菜は…」

「(おい)」

「(なんだ)」

「(この料理はよ、そのなんだ…一刀様に元気になって頂いて仲達様がその後可愛がってもらう為の料理だからよ。適当な所で気ィ利かして帰れよな)」

 

「(…ふん。最低限の用が済んだらな)」

「(おいオメー、あれ本気でやってもらう気なのかよ)」

「(仕方が無いだろう…私の行いで御嬢様の御出世を妨げる訳にはいかん)」

 

『困ったわぁ、私の部下筋の伯道が呉の前王である孫策様の前でした約束を破る事なんて事があったら私きっと失脚してしまうわぁ』

『そうねぇ曹真さんにも面子というものがありますものねぇ、うちの陽(太史慈)ももし約束を違える様な事があった日には国中に、いえ魏にも蜀にもこの失態は触れ回らなくてはならないわぁ…ぴょん?』

ぜってーあの二人ふざけてやがる。

「(無理する事ねーんじゃねーの?)」

「(そうはいかん、御嬢様の面子に関わる。貴様こそ孫策様とは懇意ではないのか)」

「(るせーな…あの女マジでやるっつったらやる女でよ、ちっと弱み握られてっから逆らえねーんだよ。それに俺はアテがねーわけじゃねーからな)」

「(どういう意味だ)」

「(俺はもう一刀様のもんだからな。席立たれた時とかに物陰でこそこそっとお願いすれば一揉み位はしてくれる…んじゃねーかな。(ほんとは後で奥の座敷で仲達様の後にしこたま揉んで貰うつもりだけどな))」

「(…一刀様は博愛の方だと聞いていたが、度が過ぎておられるようだな)」

「(んだとコノヤロー?てめーこそどうするつもりなんだよ)」

「(…策は無いではないのだが…おい、仲達をなんとか席を外させられないか)」

「(それが人にモノを頼む態度か?まあ黙ってても仲達様はそのうち一度は席を立たれるけどな)」

「(なぜわかる?)」

「(まあ見てろ、ちょっと手伝ってやる)一刀様、仲達様はいつも一刀様の為に働かれています。折角の機会ですので御返杯頂けないでしょうか」

「あ、ごめん気が利かなかったね。仲達さんどう?」

「いえ、私如きに勿体無い事です」

「仲達様、一刀様がそう仰って下さるのですからお受けしなくては却って失礼では…」

「良かったら受けてよ、飲む方だったでしょ?」

「…では、御言葉に甘えさせて頂きます」

「じゃ…いつもありがとね。お疲れさま」

「有難く拝領致します。……ああ。一刀様の、御優しい味が致します」

「…いつもながら仲達さんの言い回しはなんて言うか、凄いよね…」

 

 

「(おい、仲達はあれが一杯目の筈だろう?先日うわばみのように飲んだ時と同じ顔をしているんだが)」

「(いいから黙ってみてろ)一刀様、重ねてのお願いで申し訳有りませんが仲達様は最近肩凝りがするとの事です。折角隣に座られた事でも御座いますしどうか、一刀様にお尽くしの身を哀れに思って多少で構いませんので仲達様の肩を揉んで頂けないでしょうか?」

「あぁそうだったの?俺でよかったらいくらでも。上手くないかも知んないけど」

「いえ、そこまでして頂く訳には」

「まーまー、後ろ向いて?これ命令で、仲達さんすぐ遠慮するから」

「ご、御命とあれば…申し訳ありません」

 

一刀様が仲達様の肩に手を掛けると、仲達様がびくりと震えて手拭いを口に当てる。

「おーお客さん凝ってますねー、って俺実はよく分からないけど」

「は、はい…」

「いやほんといつもありがとねー?仕事の大きいところを決めてくれる人も大事だけどさ、決めるための資料用意して更に細かいところまで段取りしてくれるのって魏じゃいつも仲達さんじゃん?いやうん、陽(太史慈)や郝昭さんみたいに地方で頑張ってくれてた人達にも感謝しててさ、ホントは俺皆の肩揉んで回んなきゃいけないくらいだとは思ってんだけどさ。首の方とかどう?気持ち良い?」

 

 

仲達様が手拭いを口に強く押し当てたまま強く頷いた。けど、あれってやっぱ。

「(おい・・・あれは)」

 

「(・・・言うな)」

顔が紅潮して涙目だ。まあその…そうなんだろう。

「いっぱいお仕事頑張ってくれんのも有り難いけど、睡眠不足とかってお肌の大敵なんでしょ?せっかくこんな綺麗な肌だから大事にしてよ、他の子で出来る事は任せてさ。ほんと辛い事あったら言ってね?」

一刀様、正に今仲達様は(気持ち良過ぎて)辛いと思います。

 

ややあって、仲達様が小さく呻きながら二度びくんびくんと身を震わせた。

「あれ?ごめん痛かった?そんな力入れなかったつもりなんだけど」

 

「いえ、仲達様痛いという事ではないと思いますがその…ちょっとお化粧直されたいのではないかと思いますので、如何ですか仲達様」

「……はい。申し訳ありませんが、少し…失礼させて頂きます」

ふーっふーっと手拭いの下から荒い息をつきながら、ふらふらと化粧室の方へと歩いて行かれた。

「(…凄いものを見てしまった…)」

「(いいからおら、仲達様外して頂いたぞ)」

「(…それと、仲達は席を立つときさりげなく座面を拭っていかなかったか)」

「(だから聞くなってーの!やることあんならさっさとやれよ)」

「(う、うむ…そうだな、覚悟を決めよう)」

 

郝昭ことクソ女は、少し緊張した面持ちをすると角桝をくいっと空けた。こいつ結構いける口なのか。

「一刀様っ」

「うん?」

「先には華陀殿を御派遣頂き本当に有難う御座いました」

「それ前にも聞いたしもういいよ。でもほんと良くなって良かったね」

「で…ですが、そのっ、華陀殿の見立てでは治ったと、また私自身も体調不良は一切感じないのですが」

「うん」

「念のため、かっ、一刀様に触診をお願い致したく!」

「へっ…へぇっ!?」

ナニ言いやがるんだこの女!?

「いやでも俺医者じゃないし!?」

「いえ!私の病をお見抜きになった一刀様は医師以上の腕をお持ちと思います!是非御確認頂けます様っ、何卒」

「えーっ!?」

チラッとこっちを見て涙目でドヤ顔してるクソ女はどう見ても強がりだ。

「…えーと、確か胃の方だって言ってたよね?なら、まあ…」

「い、いえ!実はその、む、胸の方を病んでおりまして!」

「ええー!?それはちょっと…ねえ陽(太史慈)?」

と言いながら俺の方を見てくる一刀様、助け舟が欲しいんですよね。

 

「…あの、郝昭さんもその、やはり初診頂いた一刀様に御確認頂かないと、えっとちょっと御不安なのかなと思いますので…その、宜しかったらちょこっとで宜しいんでもみもみっとして差し上げるとその、郝昭さんも御安心なのではと…」

「そーなのー!?」

…すいません一刀様。このクソ女のアホくさい度胸に免じて一揉みお願い致します。

 

「…何卒っ」

「…分かったよ。じゃそっち行くけど、俺ほんと医者じゃないからよく分かんないから、ほんとちょっとだけね?」

机を挟んで座られていた一刀様がクソ女の隣に座られると、クソ女が一刀様の右手を取った。

「そ、それでは、参ります」

「あの無理しないで…ちょっとだけね?」

「いえ、しっかりと診て下さい、では……………んっ」

「「えっ?」」

この女服の中に手を入れさせて生乳揉ませやがった!!

俺と同時に声を上げた一刀様が反射的に手を引こうとしたけどクソ女が剛力でそれを許さない。

 

「い、如何でしょうかっ」

「なんともない!なんともないんじゃないかなもういいよね!?」

「いえ、しこりが無いか、んっ、しっかり診て下さいっ、あはっ」

クソ女が一刀様の手を押さえて乳に指が食い込むくらいぎゅうぎゅう揉ませる。

「(お、おいもういいだろ)」

「んっ…あ、あはぁっ…もっとしっかりぃ…し、しこりがっ、あんっ、こんなにしこってっ、あはっ」

「違うから!それしこりじゃないから!」

「(おい聞いてんのか!)」

「あぁ・・・こ、こっちも…」

「え、ちょ…」

「!…はい!もう大丈夫ですよね!もう大丈夫ですね!郝昭さん郝昭さんしっかりして下さいね!」

クソ女が蕩けきった表情で、膝頭を緩めながら一刀様の左手を掴んでそこに持ってこうとしたところで慌てて引き剥がした。

駄目だコイツ、処女のクセに完全にその気になっちまってる。

 

「いやもう大丈夫!大丈夫だからねなんともないとおもうようん!じゃ飯も食べようよ、ねぇ陽も!」

「そうですね!(おいしっかりしろ)」

「あ…?」

「郝昭さんも頂きましょう?(こんなとこでどこ触らす気だったんだよ)」

「…頂きます(覚えていない。私はどうしていたんだ)」

「この鶏肉美味しいですね、一刀様(生乳握らせて乳首摘ませた上に俺が止めなきゃ一刀様の手ェ掴んで股ぐら触らす寸前だったぞ)」

「そうだね、さっぱりしてるけど辛味が利いてて」

「はい(そうだったのか…不本意だが感謝する)」

 

「一刀様、こちらの大蒜韮の炒め物も(じゃ用が済んだなら帰れよ)」

「一刀様、お酒の方は如何でしょうか(それは出来ん)」

「あうん、戴くよ」

「お注ぎ致します(なんでだよ!?)」

「(…椅子が物凄い事になってしまっている。しかも腰も抜けている)」

「なぁっ…!」

「な?」

「あ、いえ何でもありません一刀様。漬物お取り致します(なんてことしやがるんだよ!?)」

「(仕方が無いだろう、生理現象だ!)」

「ありがとね。陽も食べなよ」

「はい、私も頂きます(馬鹿!仲達様店入る前に『後でお前を一刀様の隣に座らす』って言ってたんだぞ!?仲達様帰ってきたら席替えになって痴女認定で一巻の終わりじゃねーか!)」

「えっと…郝昭さんあまり箸進んでないけど、こういうの苦手だった?」

「いえ…都の珍味に驚嘆しております(…それは、不味い)」

折角可愛がって戴く機会だってーのにこんなくだらねー事で騒ぎになって一刀様のヤル気が無くなっちまったら困んだよ…。

「うーん…」

「どしたの陽?難しい顔して」

「え?あ、いえ何でもありません。郝昭さんも水割り一杯如何ですか?(おいクソ女、良い案考えたから乗れよ)」

「頂こう(嫌な予感がするのだが…)」

「済みません一刀様、水差し取って頂けますか?(こう見えても俺も昔は地元で軍師兼任だったんだぜ?まあ任せとけって)」

「うん。はい」

「有難う御座います…おっと、手が滑りました!」

出来るだけ自然に、水が弾ける音と共になみなみと注がれた水差しをクソ女めがけて引っくり返してやった。教えてやらァ、木を隠すには山ってな?

 

あとはコイツを立たせて連れ出すだけだ。

「申し訳ありません郝昭さん!あちらの部屋にお連れしますのでお着…替え…を」

とか適当な事を言って…と思ったんだよ、俺は。

 

そこで漸く気づいた。

ぎょっとしたような一刀様の視線に。

濡れて肌にぴっちり張り付いて、乳首も丸見えのこいつの胸と。まあそこは今更なんだけどよ。

 

――――一本も陰りの無い、割れ目が透けて丸見えになっている事に。

 

「…」

「…見…見てない、見てないから何にも!?な、何か服!あと台拭きか何か!」

「わ…悪りぃ、あいえ済みませんその…郝昭さん、俺、あ私、ホントそんなつもりじゃなくて…」

クソ女…郝昭は暫く自失して座り込んでたけど、涙目でキッと俺を睨みつけたと思ったら、天地がひっくり返った。

「き、貴様だって穿いてないだろうが!粗末なものを見てもらえ一刀様に!!」

 

クソ女――――心の底からクソ女と呼ばしてもらおう、脚を払われて倒された上にクソ女の手で大きく広げられ、妙に涼しい自分の股の間から一刀様のお顔を、ぎょっとした目で見つめられていた一刀様のお顔を見てから先は記憶が無い。

 

-----------------

 

化粧室から戻ると、一刀様が部屋の扉から首だけを出され慌てた御様子で左右を見回されていた。

「あ、来た来た仲達さん!」

「遅くなり申し訳ありません一刀様。どうされましたか」

「あのごめん、今すぐ手拭い数枚と毛布二枚お店に貰って来てくれない?」

「うわぁぁぁあぁぁあああぁぁ!わ、私はち、痴女なんかじゃないのにぃぃぃぃぃぃぃ!」

「うええぇぇぇぇぇぇっ…!!お、俺だって痴女ねぇようぇぇぇぇぇん!!しぇれんが、しぇれんがあんなっ、が、がじゅどざまぁぁぁぁぁぁ!!俺ぢがいまずがらぁぁあ!!」

平素の姿からは想像のつかない声であった為一瞬誰の声だか判らなかったが、元々何人で入店したかを思い出せば自明であった。

「…一刀様、中に入らせて頂いて宜しいでしょうか」

「いやいやいやいやいや!ごめんそれはちょっと勘弁してあげて!」

「さして長く飲んでいた訳ではないと思いますが、二人が酒乱で御迷惑をお掛けしているようでしたら私の方で注意致しますが」

 

「いや二人は悪くない!多分!楓(曹真)と雪蓮がなんかやらかしただけで!悪いけど手拭いと毛布だけお願い!」

「…承知致しました、今すぐお持ち致します」

「がじゅどさまぁっ、い、いっちゃやだぁぁぁ!」

「あ、わだじはぁっ、お礼が申し上げたかっだだげなのにぃぃぃぃっ!」

「うんうんどこにも行かないよ!そうだねすごく感謝されてるの伝わってるから!ね、落ち着いて!ね!」

 

------------------

 

「あ、杏(逢紀)さんお早よ、今出勤?…ううん今帰るとこ、でさ、ちょっとお願いがあるんだけど。今この部屋の中に太史慈さんって人と郝昭さんって人が寝てるんだけどさ、起きた頃にお茶漬けか何か、二日酔いに優しそうな軽いもの出してあげてくれない?お代は全部俺の小遣いにつけてくれればいいから。…いや、そういうのじゃないから、そういう事して無いから。何て言うかその、飲んでてテンション上がり過ぎちゃったって感じで、うん、で昼になっても起きて来なかったら起こしてあげて?俺もう会議出なきゃいけないから。…うん、そうだね行こうよ。あ、でも杏さん酒はもう見飽きたでしょ?それよか三国塾の増築の方のプール完成したからそっち行かない?…いいよ、似合うやつ用意するから。じゃ、宜しくね」

 

 

 

 

 

「…おい。起きてんだろ」

「…ああ」

「てめーの所為で可愛がって貰い損ねたじゃねーかよ。仲達様も帰らしちまうしよ」

「あれだけ頭を撫でられたり抱きしめられたりして頂いて貴様はなお不満なのか」

「違っげーよ、あれもいいけど俺が言ってんのは一刀様の七星宝刀で可愛がってもらうはずだったつってんだよ。しかも撫で撫でだっててめーと半々だったじゃねーかよ。いつまでもべそべそべそべそ泣きゃがって」

「ぎゃあぎゃあ泣いてたのは貴様の方だ。ところでその枕を離せ」

「やだね、一刀様の匂いに包まれてもう一眠りでもしねーとやってらんねーや。おめーはもういいだろ、一刀様が寝てる間に胸元の匂い嗅ぎながらナニしてたか知らねえとでも思ってんのか?そういう寂しい事は家でやれよな、あーやだやだこれだから処女は」

「か、一刀様には御迷惑はかけていないだろう!?そもそも貴様が猿知恵で私に恥をかかすからだ!」

「なんだとてめーの淫乱びしょ濡れ×××晒すの助けてやったのにそういう口の利き方かぁ?俺だって明るいところで見られた事無かったのに!」

「結果は殆ど変わってないだろうが!とにかくその布団と枕を寄越せ!」

「おぅ取れるもんなら取ってみな?潤いしっとり愛され女と二十ウン年蜘蛛の巣張った女の違いを見せてやらぁ!」

「立て貴様!!」

「おう来いや!!」

 

「あのーお客様ぁ、喧嘩は店外でお願いしたいんで起きてたらとっとと服着てご飯食べて出てってもらえます?」



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司馬日記49

その後の、とある文官の日記です。
更新も遅い駄文ですが、見て下さる方々有難う御座います。


6月22日

太史慈殿から一刀様と会食の御約束を取り付けており是非同席して欲しいと依頼を受け、御相席させて頂く事とした。

当日早上がりの太史慈殿に先行してもらい、一刀様と御待ち合わせして店に向かうこととなった。

折角の機会であるので伯道も誘う事とした。

 

6月24日

一刀様と御会食させて頂いた。

太史慈殿の進言で、勿体無くも一刀様に肩を揉んで戴いてしまった。

…一刀様は慈愛の御心で労いのお言葉と共に私に触れて下さったというのに、私の身体はなんと淫らで欲望に塗れたものであることか。

 

しかしその後、何があったのか太史慈殿と伯道が身も世もなく部屋で泣き喚いていたようだが、一刀様によると子丹御嬢様と孫策様にからかわれた為らしい。御優しい一刀様は二人を慮って下さり詳しく語られなかったが、後で伯道に事情を聞こう。

 

6月26日

伯道に先日の首席について聞いたところ、頬を染めて『一刀様に、あ、あのような姿を晒してしまっては…、もう私は一刀様の側女にして頂く他無い、是非協力して欲しい』と言う。

酒で乱れた姿をお見せしたからというのは多少如何なものかとも思ったが、伯道は一刀様に御仕えするに相応しい佳人であり協力を約束した。

 

6月27日

三国塾で社会人向けの講座が開講される事となった。

『礼儀作法・給仕基礎(一)』という科目が設定され、講師は月様、かつ同(三)までの修了者は総務室付き仮採用(異動)と記載されていた。

総務室は異動・就職希望者が多いが採用基準に達する者が少ない為設けられたとの事だ。

思い当たる者がいるのか、張郃がチラシを眺めながら『受けさせてみようかしらねぇ…』と腕組みをしていた。

 

6月28日

危機管理検討委員会より致命的危機についての仮想模擬実験結果がまとめられ、報告書素案が各部に回覧された。

最大級の危機は一刀様が暗殺されかつ犯人と動機が明確にならなかった場合であり、その結果三国間の戦争は元より各国内でも互いへの疑心暗鬼から暗殺・反乱が常態化し完全に無政府状態となるとの報告であった。

当面の対応としては呂布殿を軸とした一刀様の警護の厳重化、長期的な対策としては統治機構の法制化の完成と共に一刀様及び後宮関係者の政治・軍からの引退が必要とまとめられていた。

 

聡明なる一刀様の御在位はこの大陸に欠くべからざるものではと公達様に申し上げると、

「んー。まあ一理はあると思うけどね?一刀様には仕事から手を引いてもらってひたすら自分達を可愛がる事に専念しろって思う人たちってきっと多いわよ、特に偉い女程ね。ま、どうせ当分無理でしょうけど」

と言われた。何故無理と言えるのでしょうかと伺うとまあ見てりゃわかるわよと笑われてお答えにならなかった。

 

6月30日

先の危機管理検討委員会からの報告書の完成は関係各署から異論が多く、一旦棚上げとなった。

特に各国人事担当及び本国側からの反発が非常に強く、『一刀様を政治から外す事は後宮入りたて又は後宮入り希望の中堅官僚の業務意欲を極端に損なうのみでなく、拡大する一方の業務量に対し人材募集にも致命的な悪影響を与える』として撤回を求めた為だという。公達様に御報告したところ、

「ほーらね?そりゃあたしだって仕事なんかしてるよか一刀様にねっちりずぷずぷ虐められてたいわよ。けど向こうン十年、まああたし達が女引退する位までは一刀様無しじゃもうとっくに成り立たなくなってんのよ、この国の政治はね」

と鼻で笑われていた。

 

7月1日

詠様が求人公告資料を作成されていた、月様の基準が厳しすぎ全く人材が集まらないためとの事だ。

 

募集要項

・募集職種:事務員

・業務:雑務一般

・給与:一般事務職初任給相当

・勤務時間:一般事務職と同等(夜勤・振替休暇有)

・その他:お茶汲み、洗濯掃除等の簡単なお仕事です。普通の人募集してます。

 

とさらさらと書き出し、わざわざ講座なんかやらないでこんなんでいいのよこんなんで、と言いながら掲示に行かれた。

 

7月2日

関平・劉封姉妹が展示会で人気のあったというスカートを履いて全体会議に出席していたが、展示されていたものよりだいぶ丈を詰めた改造服で下着が見えてしまうほどのものであった為、一刀様が『はしたないので女性のみとは言え公の場では下着が見えてしまわないようにするように』と口頭指導なさった。

すると馬岱殿、妙才様、張勲殿が馬超殿、元譲様、袁術殿を連れて更衣室の方へ行かれ、扉が閉められた後暫く言い争うような声が聞こえた。そののちに先の御三方が御機嫌な様子で後の御三方が赤い顔をして戻って来られ、とりわけ元譲様と馬超殿は服の裾を抑えるようにして戻ってこられた。

妙才様が「一刀、姉者の下着を見えないようにしたぞ」と妙に意気揚々と言われると、馬岱殿、張勲殿も

「最近お姉さまも刺激が足りなさそうな顔してたからね!」

「外は重装備中は無防備なお嬢さまが好みだなんて流石一刀さん変態ですねー」

と言われた。

一部始終を見られていた一刀様が据わった目をされて『…俺が言いたかったのはそういうことじゃなくてね?』と返されると

「姉者、一刀は姉者の中身の方は興味ないらしいぞ?」

「ぱんつさえあればいいんだ、御主人様へんたーい」

「折角お嬢さまがくまぱんから進歩したのに、一刀さんにとっては退化だったんですってどうしますお嬢さま?」

と口々に反論(?)され、困惑された一刀様がこういう話みんなの前でするもんじゃないからちょっとあっち行こうかと廊下へ連れ立って出て行かれた。

詠様にお止めしなくて良いのでしょうかと伺ったところ、『秋蘭以外はいなくても会議困んない人達だからいいわよ。…まあちょっと履いた履いてないくらい程度なら目くじら立てるほどでもないし、うん』

と言われたが、その傍で月様がくすっと笑われると何笑ってんのよ月!と詠様が顔を赤くして怒られていた。

 

7月3日

子敬が昼休みから戻った時に

「今日璃々ちゃん食堂で見かけたけどさ、あんな子供っぽい感じなのにやることやってるって思うとすごい犯罪臭感じるよねー」

と言うと、元直が

「あれ多分わざとよ。ほんとはあの娘大人っぽくも出来るけど、巨乳少女の方が希少だから服とか髪型とかもああいうふうにして背が伸びたのも意識しづらくしてるんだと思うわよ。ほんと天才には勝てないわよね」

と溜息をついていた。

…一刀様の御心身をお慰めする事に長けているという事ならばきっと良い事なのだろう…?

 

7月5日

見覚えのある女性が廊下できょろきょろしており声を掛けたところ、逢紀ですけど事務員の面接受けに来たんですが会場ってどこですかと聞かれたので案内した。

本日は月様は一刀様と御出張の為、詠様が面接されるのだろう。

 

7月6日

元直がしかめっ面をして『もう一刀様ったら!』と言いながら蜀の執務室から戻って来たので何かあったのかと聞くと、

「聞いてくれる?あのね、一刀様が打ち上げ花火見たいって言うからじゃあ楽進さんの気弾と桔梗の轟天砲で打ち上げてもらったらどうですかって言ったのよ。たら桔梗に一刀様頼みに行ったんだけど桔梗『轟天砲はおもちゃじゃない』とかごねるわけ、そんなの後一押ししてくれって言ってんのと同じなのにそこで一刀様そっかごめんじゃあ凪に頼むよとか言って引き下がろうとしちゃったの!桔梗もやっぱやるとか言えずに表情固まっちゃってて、それ見てた紫苑が面白がってじゃあ代わりに私が弓で連射して打ち上げますからとか煽ってたら今度夏候淵さんが一人では大変だろう私もやろうとか言って割り込んできて、そしたら黄蓋さんがなんか始めっから喧嘩腰で儂と紫苑で打ち上げるから孺子は膝小僧抱えて小童共と一緒に見ておれとか夏候淵さんに突っかかるのよ!?でもうぐちゃぐちゃになっちゃって桔梗は拗ねて部屋に帰っちゃって魏と呉の二人を紫苑と一刀様と仲裁したりしてたんだけどさ。…要はねぇ一刀様もう少し強引でいいのよ、ぎゅっとやってぶちゅっといって『俺の為に轟天砲撃ってくれよ』とか言っててくれりゃ絶対面倒ないのに!結局一刀様自身が桔梗の御機嫌取りに轟天砲何発もぶちこまなきゃいけなくなってるんだから!」

と言いながら退勤してしまった。

 

一刀様の御慎み深さは美徳でありそれを推し量れない我々が問題なのだろうと一緒に聞いていた子敬に話したが、子敬は

「違うのよ仲達、つまり元直は今夜の自分の分が薄くなったらどうしてくれるんだって怒ってるのよ」

とにやにやしながら言っていた。

 

7月7日

李典殿が総務部へ来られ、工廠職員の増員の相談をされていった。今年度の予算枠上は難しい旨を御説明したが、予算は不要であるという。

「とにかく人と場所と設備が欲しいんや。金なら方々からうなるほど寄付集まっとるからなんぼでも出すさかい、出来る奴寄越してんか」

と言われたがどこも人材不足の為庁内からの異動は困難な為、工廠での自主募集や各国との直接交渉でお願いしたいと説明すると落胆し帰られようとした。

すると部長席で聞かれていた公達様がにやにやと笑われながら

「真桜、一刀様の巡幸用の新車にすっごい柔らかい寝台搭載したらしいじゃないの?それの一刀様同伴の試運転代わってくれたら仲達暫く貸すわよ?」

と言われたが、言下に李典殿がそれはアカンわと手を振って帰られていった。

驚く暇もなかった御提案に眼を丸くしていると、察されたのか公達様は『真桜がそれ他人に譲るわけないじゃないの、知ってて聞いてんのよ』とけらけらと笑われた。

 

7月8日

白蓮殿が総務室を訪ねて来られた。仕事で来られる事は余りなかったのでどうされたのか伺ったところ、事務員の面接を受けたいんだけどと言われ驚いたが、詠様と

「何受けに来てんのよ!?あんたはちゃんと蜀の仕事してなさいよ!」

「いや桃香んとこでも色々仕事はあるんだけどさぁ、なーんか皆とあたしじゃ格が違うって言うか、こんな普通なあたしがこんなとこ居ていいのかなぁって悩んじゃうんだよな…一刀が夕べからずっとそんな事無いって言ってくれるんだけど、あいつと一緒に居るとつい甘えちまうじゃん?ちょっと分相応な仕事に変えよっかなてさ」

「ノロケ!?ノロケに来たの!?こっちは忙しいんだからとっとと帰れ!」

等とやりとりされて追い出されていた。

 

7月9日

今日はなんと孫権様が

「め、面接を受けに来たんだけど…」

と総務室に来られた。

詠様は据わった目で数秒孫権様を見られていたが、無言で指をパチンと鳴らすと周泰殿と甘寧殿が天井裏から飛び降りて来て

「は、離してーっ!?どうせ私普通なんだからもう普通の女の子になるのーっ!それで小さな家で一刀と普通に暮らすのーっ!」

等と叫ぶ孫権様をこれも無言で連れて行かれた。

詠様が、書類に目を落としたまま「かわいそうに、疲れてるのね蓮華」とぼそりと言われた。



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別冊阿蘇阿蘇 対談シリーズ第一回

その後の、とある王の雑誌対談記事です。


記者:楊修(以下―)「今月から始まりました今を時めく方々との対談連載、記念すべき第一回は魏の覇王、曹操様です!」

曹操様「宜しくお願いするわ」

―「宜しくお願い致します!さて曹操様と言えば積もるお話も多々御有りなんですが、まず如何ですか最近の御政務は?」

曹操様「そうね。仕事は増えるばかりで忙しくはあるけれど、着実に色々な事が整備されていくのが実感できるから戦乱の頃を思えば幸せな事ね」

―「人も大分増えましたが」

曹操様「まだまだ十分ではないけれど、人材も各所へあてがう事が出来るようになって来てるから桂花達の負担も大分軽減されてるわ。それになにより、三国塾で自前で人材を育成できるようになったのが大きいわね」

―「重臣には旗揚げの頃からの方々が多いですが、近年の入職者で有望な者などは」

曹操様「そうねぇ…陳羣、荀攸は特に伸びたわね。派手さはないけれど曹真、司馬懿、張郃にも嘱望するところは大きいわ」

―「外部の人材の御活用も進まれているのでは」

曹操様「例えば麗羽の元部下の登用も増えていて、特にその中でも田豊・沮授は特に優秀ね。多少大人し過ぎて自己主張が足りないのが玉に瑕だけれど」 

―「そこらへん一刀様の御尽力も切っても切り離せないところとは思いますがそれは一旦おいときまして二国との関係の方は如何でしょうか?」

曹操様「基本的に呉、蜀とも良好であると認識しているわ。桃香や蓮華との連絡も密に保てているしね」

―「国を越えた会合的なものも持たれているようですね?」

曹操様「そうね。統一的に取り扱う事務については作業部会も組織されているし、個人的な趣味上のものもあるようね」

―「ただ個人単位では多少軋轢もなくもないとか」

曹操様「経緯上ね。まあ国対国の話じゃなくて私的な理由によるところが大きいし、そこは皆大人なんだから公私は切り離してくれると信じてるわ」

―「対外状況的には如何でしょうか?」

曹操様「匈奴とは概ね良好な関係を築けているわ、それに軍事的にも人材の充実や装備の最新鋭化によって優位に交渉できる立場になっているしね」

―「内政上の課題などは」

曹操様「元々公共工事には予算を割く方針だったけれど、各国の本国側の意向が強くて交通網の整備がちょっと突出し過ぎているところかしらね。あとは今も桂花を頭に推進しているけど法整備が喫緊の課題よ」

―「程昱様命名の『桂花ちゃんの!仕事減らしてお兄さんといちゃつこう計画』ですね」

曹操様「その呼び名は桂花は嫌がってるけど、それが動機でも事業が捗るなら良い事だわ」

―「以上内外総じて、良好な状況だと?」

曹操様「そう言って差し支えないんじゃないかしら」

―「―――有難う御座います。さてでは私生活のほうですが、お忙しい中でも余暇の過ごし方等は」

曹操様「いろいろよ。詩吟や本を読んだり、遠掛けや弓に剣戟で体を動かしたりもしているわ」

―「御料理もなさっているようで」

曹操様「いい材料が入ったときにはね。流琉と一緒に作る事もあるわ」

―「それを一刀様にも御振舞われているとか」

曹操様「互いに忙しいけど、時間が合えばね」

―「流石曹操様、賢妻にして良妻でいらっしゃいますね!」

曹操様「特に私がという事も無いわ、桃香や蓮華も大分上達してきてるし、それぞれの料理にはそれぞれの良さがあるんじゃないかしら」

―「さてその話に出ました一刀様ですけれども。如何ですか、最近は?仲睦まじくされている姿もお見かけ致しますが」

曹操様「まあ相変わらずよ、ふふっ」

―「騒乱時代に比べ曹操様は大分丸くなられたと譜代の方々から聞くこともありますが、そこらへん一刀様の影響が?」

曹操様「まあそれも無くは無いけれど、何しろ平和だからね。余りギスギスする必要もなくなったという事だわ」

―「一刀様と話されている曹操様は『たまににゃんこのようだ』と言われる方もいらっしゃいますが」

曹操様「…誰が?」

―「元譲様が」

曹操様「…そう。まあ、たまには少し気が抜けてしまっている事もあるかもしれないわね。執務中以外は大目に見てもらえないかしら」

―「元譲様以外でも、今までは美しく凛々しかったが年相応の女の子らしく可愛らしくなったと仰る方々は多いですよ」

曹操様「あらそんなに今までは可愛げなかったかしら、うふふ」

―「袁紹さんとか、御身内の方々とかが言われてまして」

曹操様「麗羽に言われるのもね…」

―「――――納得行きません?」

曹操様「まあ、いいのだけれど」

―「さて、事前にこんな事聞いていいのかと伺って御承諾頂きましたが!如何ですか、一刀様と夜の方は」

曹操様「ふふっ…そうね、充実しているわよ?」

―「きゃー流石曹操様!以前言われてましたように夜も覇王なんでしょうか?」

曹操様「あらそういう訳には行かないわよ。一刀も今じゃ立場もあるんだし、男を立ててあげないとね」

―「そして男を勃てて差し上げるんですね!?」

曹操様「あ、貴女うまいこと言ったつもりかしら…まあでも、それくらい出来ないと女としては…ね?」

―「男を立ててあげると言いますと、色々甲斐甲斐しく奉仕して差し上げてると」

曹操様「うふ、まあ色々とね。彼もあれで、舌使いひとつ取っても好みがあるから」

―「(正妻専用用語『彼』入りましたー)下着とかも一刀様のお好みに合わせて?」

曹操様「あれ着ろこれ着ろって言うから、展示会の前後とかは特に増えちゃうわね。それなのに着たら着たですぐ汚しちゃったり破いちゃったりするんだから、もう・・・」

―「夜も人も羨む程の愛されっぷりですね!具体的にどんなプレイされてたりとかって、伺っても宜しいでしょうか?」

曹操様「ふふふ、本当に色々過ぎて覚えてないくらいなんだけど。例えば私が仕事の疲れを癒そうとお風呂に行こうとしてたら付いて来て洗わせろだとか、三国塾の女教師の真似をしろだのメイドの真似をしろだの、ちょっと暇があって二人きりだと抱き寄せて物陰に連れ込もうとしたり、乱暴にしてみたいから縛らせろとか、ほんとあれだけの数の娘達を相手にしてて尚よくそれだけ求めてくるわねって逆に感心しちゃうくらいよ」

―「いやぁ、夜も天才曹操様!そんな曹操様に一刀様もメロメロなんじゃないですか?」

曹操様「そうね、中々寝かせてくれなくて…一度終わってもまたすぐ華琳華琳、って困っちゃう事もあるわね。忙しいんだけど今夜もこの後どうしてもって言われてるのよ、そろそろ失礼してもいいかしら?」

―「はい、有難う御座いました!昼は賢妻、夜は良妻を地で行く曹操様でした!」

曹操様「御機嫌よう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…とか取材では言ったけど!もう少しべたべたしなさいよ貴方は、人前でちゅーくらいしてもいいのよ!?桃香と蓮華の前じゃしなくてもいいけど!んく…もう一杯、もう一杯注ぎなさいよ!大丈夫、これっぽっちで酔うような私じゃないわよ。…やだ。一刀が飲ませてくれなきゃやだ。

…何それ、そうじゃないでしょう!?恋人同士の飲ませ方は違うわよね、やり直し。まず抱っこからよ。……………んっ…そうよ、やれば出来るじゃない。日頃からしなさいってのよ。

…って言うかね、私もう少し恵まれてもいいと思わない?貴方が居なけりゃ今が無いのはそうかも知れないけど、あの頭の中花畑おっぱい娘と桃尻箱入り娘二人相手にいつも調整してきたの私なのよ!?最初桃香なんか会話成り立たせるところからよ?蓮華だってこの法令素案で国内調整しといてねって言ったら『わかった国内の各地で掲示しておく』とか言ってんのよ!?そうじゃなくてこれで良いか部下とか地方とかを納得させるように打ち合わせておけって意味なのに、もうしょうがないから穏にこまごま私から説明するしかないじゃない、冥琳はもう面倒くさそうに全部穏に振ろうとするし。

それと春蘭も桂花も稟も、貴方とするようになってから手のひら返すように私の事はもういいやみたいになって!まあ私も貴方と一緒ならたまに春蘭いじめてもいいかなくらいでもういいと言えばいいんだけど、…いやわかってるのよ、別に嫌われてるわけじゃないし慕われてはいるっていうのは。…あ、そうよ秋蘭、秋蘭だけはね、今思えば悪かったわねって。直に聞いてはいないけど秋蘭だけは無理してって言うか、当時のうちのノリを崩しちゃいけない的なところで夜もついて来てくれてたと思うのよね、風みたいに一歩引いてても良かったのに。貴方一杯世話になったんだからちゃんとお姉ちゃんプレイしてやんなさいよ?

…まあそれは良いとしてもね、何て言うの、私凄く頑張った割には恵まれてないわよね!?今までだって今だってこんなに頑張って!泡踊りだって雌奴隷プレイだってお尻でだってしてくれてしゃぶり上手な国王なんていないわよ!?

……そんなわけで一刀。もっと華琳ちゃんを可愛がりなさい。もっと執着心をあらわにして。…足りない。まだ足りないもん。変態一刀は○才の華琳ちゃんにお酒を飲ませてお尻に当たってるこのおっきーのでいけないことしちゃうんだもん。あと今日の華琳ちゃん早熟小悪魔じゃないから。何も知らない華琳ちゃんだから。せっかく初等部の制服に着替えたんだからもう奥の部屋行こ、このまま抱っこで。あと華琳ちゃん失神しても絶対起こして。…ん。

 

…あ?誰よ貴女。会計ぃ?華琳ちゃんと一刀お泊まりだからかいけー明日だもん。ねーかじゅとっ、こんなのほっといて早くいこっ♪」



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小ネタ 司馬日記で良い子悪い子普通の子

小ネタでございます。


『貯蓄はしていますか?』

星「殆ど酒手に消えてしまいますな」

思春「…何かと物入りだからな。余り手元に残らん(アダルトグッズに全額突っ込んだ)」

麗羽「公営競馬場へ行けばお金が貰えるのになぜ貯蓄が必要なんですの?」

 

『欲しいものは何ですか?』

白蓮「…個性」

桂花「…素直さ…な、なんでもないわよ忘れなさいっ」

朱里・雛里「…なんて言わせたいんですか?(死んだ魚の目)」

 

『一刀に暗殺者が!貴女はどうしますか?』

白蓮「そりゃ逮捕しないとまずいよなぁ」

仲達「殺すべきです」

斗詩「殺しませんよ?(ニッコリ)」

 

『貴女なりに誘ってみて下さい』

天和「かーずとっ!しよっ♪」

星「主の七星宝刀、今宵は私がお鎮めして進ぜよう」

稟「…………つ、…月が綺麗ですね」

 

『趣味は何ですか?』

流琉「料理です」

白蓮「まあ乗馬だよな」

桐花(荀攸)「(SMプレイ用の)道具の手入れだけど?」

 

『趣味は何ですか?(その2)』

秋蘭「姉者観察だな」

七乃「御嬢様観察ですね」

斗詩「一刀さんを見ていることかな、えへへ」

 

『同好会に所属していますか?』

桂花「…ケンカ売ってんの?(貧乳党)」

愛紗「…いえ、特にはありませんが(受け専友の会)」

幼達「どうこう会ではありませんが、りり先生のこうしゅう会がしゅうに一回あります」

 

『失敗談を教えて下さい』

亞莎「胡麻団子を焦がしてしまいまして…」

翠「さ、最近はしてないからな!?」

稟「…………その話は止めて下さい……ホントに」

 

『仕事と私生活、どちらを優先しますか?』

詠「…あんまり私生活だとか、贅沢言ってらんないからね」

桃香「心や体が弱っちゃうといいお仕事もできないんじゃないかな。だからね、私これは必要な事だと…あ、愛紗ちゃん、顔は笑ってるのになんだか怖い…よ?」

仲達「…(どちらも一刀様にお尽くしするという事なので)その二つの違いがわからないのですが…」

 

『御姉妹は?』

仲達「姉が一人、妹が六人居り皆優秀です」

秋蘭「純真で可愛らしい姉者が居るぞ」

荀諶「…居ませんが。伯母?誰ですかそれ」

 

『座右の銘は?』

華雄「勇往邁進だな」

仲達「不惜身命です」

七乃「以心伝心、ですかね」

 

『特技は?』

真桜「そら発明やなぁ」

紫苑「一応、弓ですわ」

蒲公英「…全く出なくなるまで一人で絞りきったのって蒲公英ぐらいじゃないかなぁ?」

 

『最近一番嬉しかった事は?』

桃香「腰帯の穴が一つ細くなったの!」

明命「一つ上の寸法のぶらがちょうど良くなったのです!!」

正命(蒋欽)「寸法表示が間違ってて生協からタダで貰ったぶらを明命にあげたらすごく喜んでくれたの!」



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司馬日記外伝 酒楼「三国一」の落書帳6

いつも御笑覧、コメント有難う御座います。小ネタでございます。

ようやく時間も取れるようになって来たのですが、元々遅筆で駄文のクセにスランプに陥ってしまっております。
もし出来ましたらリクなど頂けると有難いです。
何卒宜しくお願い致します。


・【人には言えない】一刀様としたい変態行為【新参限定】

 

1:後宮の名無しさん

一番変態だった奴が優勝

ただしMプレイ以外で

とりあえず一刀様の歯ブラシしゃぶりたい

 

2:後宮の名無しさん

会議中にみんなの前でしゃぶらされたい

 

3:後宮の名無しさん

一刀様の髪の毛に顔突っ込んですーはーすーはーしたい

 

4:後宮の名無しさん

>3

それは夜寝てる隙みてやってる奴いるでしょ

 

5:後宮の名無しさん

幼児一刀様と筆おろしプレイ

無知な一刀様にお姉さんが気持ちいいこと教えてあげたい

 

6:後宮の名無しさん

雌犬プレイが既にあるあたり基準が高すぎる

 

7:後宮の名無しさん

三国塾の初等部プレイ

一刀先生に身体検査して欲しい

 

8:後宮の名無しさん

直後の一刀様の汗全部舐め取りたい

一刀様が汗かいたころには大体失神してるから言えないけど

 

9:後宮の名無しさん

>8

失神してなかったら舐めるつもりなのwww

 

10:後宮の名無しさん

授乳プレイでよちよちしたい

 

11:後宮の名無しさん

>10

既に袁紹さんがしてるんじゃない?

一刀様が幼児化はしてくれないだろうけど

 

12:後宮の名無しさん

>11

今度聞いてみよう

あの人ならたぶんあっさり答えてくれる

 

13:後宮の名無しさん

厠で抱えられてさせられたい

 

14:後宮の名無しさん

馬超乙

いつもやってるじゃない

 

15:涼州の錦

厠でこんなことしてねえよ!マジで!

 

16:後宮の名無しさん

>14

何故馬超専用風呂が出来たか考えよう

 

17:後宮の名無しさん

あっ…(察し)

 

18:後宮の名無しさん

一日中しゃぶっていたい

 

19:後宮の名無しさん

>18

鄧芝さん乙

 

20:後宮の名無しさん

逃避行プレイ

地位も何もかも捨てて一夜の宿で情欲に溺れたい

 

21:後宮の名無しさん

兄妹プレイ

 

22:後宮の名無しさん

それなら姉弟プレイ

 

23:後宮の名無しさん

>21

>22

その辺は普通であってだな…

 

24:後宮の名無しさん

!?

お願いすれば普通に「○○お姉ちゃん」とか呼んでくれるの!?

 

25:後宮の名無しさん

>24

痛い事以外は大体応じてくれるはず

 

26:後宮の名無しさん

>24

ただ姉弟プレイは二強によってかなりやりこまれてる可能性が高いんじゃ?

 

27:後宮の名無しさん

>26

二強って?

 

28:姉者の妹

>27

二強などいない

魏の夏候淵こそ一刀の姉だろう

 

29:大都督

>27

二強などいないという点は同意しよう

一刀が誰の乳を吸って育ったかと考えれば周瑜以外には考えられん

呉中の女が認めるところだ

 

30:後宮の名無しさん

はいはいそうですね

妹の話題も禁止ね

いっぱい湧いて出る

 

31:後宮の名無しさん

貧乳を両方の意味でいじられたい

 

32:後宮の名無しさん

>31

斬新な発想

 

33:後宮の名無しさん

一刀様と使った寝台の敷布持ち帰ってくるまってくんかくんかしたいです

 

34:後宮の名無しさん

>33

言えば実費負担だけでもらえるよ?

 

35:後宮の名無しさん

うそ…?

月様管理だから絶対有り得ない…んじゃないの?

 

36:後宮の名無しさん

>35

そこらへんは寛容

『敷く仕事を奪おうとすると』殺される

 

37:後宮の名無しさん

あの人の逆鱗のありかは難しいのでよく把握しておいたほうがいい

 

38:後宮の名無しさん

姉妹八時間耐久

一番最後まで沈没しなかった女が次回独占

 

39:後宮の名無しさん

>38

一刀様壊すなwww

 

40:後宮の名無しさん

>39

三人がかりだったけど結局三人とも記憶飛ばされたので引き分け

一刀様マジ一刀様

次は十一人がかりの予定

 

41:後宮の名無しさん

三国塾同級生プレイ

 

42:後宮の名無しさん

割と普通ね

 

43:後宮の名無しさん

官能小説朗読プレイ

書かれてる事をそのままなぞるとか燃える

 

44:後宮の名無しさん

>43

呉に孫子朗読しながらするのが堪らないという変態軍師様がおってだな…

 

45:後宮の名無しさん

医者プレイ

 

46:後宮の名無しさん

ちょっとわかる

触診とかされたい

 

47:45

いや一刀様の股間に溜まった白い膿を治療したい

 

48:後宮の名無しさん

そっちかwww

 

49:後宮の名無しさん

天の国の女になりきるプレイ

正直やり方はわからない

 

50:後宮の名無しさん

ちょっとわかる

しかし一刀様に郷愁起こさせた奴はガチでシメられるから止めたほうが

 

51:後宮の名無しさん

寝取りプレイ

よその国王様からの寝取りなら上司には怒られないよね?

 

52:後宮の名無しさん

元々ガチな寝取りプレイは一刀様が罪悪感抱いちゃうから難しくて

直接お願いできるのは浮気プレイが一刀様の許容限度だった

がんばればその程度ならまあなんとか

やってもらえた

って同僚が言ってた

ただしそれでいいかどうかは貴女次第

 

53:単福

…ちょっと魯粛は給湯室来ようか?

 

54:後宮の名無しさん

こうして魯粛字は死刑となった

 

55:後宮の名無しさん

>54

だれうま

 

上司の一刀様にセクハラされたい

いきなり押し倒されるんじゃなく

ねちねち胸とか尻とか触られたい

 

56:後宮の名無しさん

嫌がらない女に性的嫌がらせとはこれ如何に

 

57:後宮の名無しさん

…幼児プレイくらいじゃまだまだ変じゃないわよね?

 

58:後宮の名無しさん

>57

優勝

 

59:後宮の名無しさん

ないわー

 

60:後宮の名無しさん

これは勝てない

 

61:後宮の名無しさん

ガチで引くわー

 

62:後宮の名無しさん

>57

さすがに自重したほうが

 

63:後宮の名無しさん

世の中には変態の上を行く変態って居るんだな

あたし自分の事変態だと思ってたけど57見てちょっと安心した

 

64:57

!?!?!?!?!?!?!?!?

 

65:姉者の妹

>57様

安心下さい

そんなに変ではありませんよ

一刀も喜んでいるではありませんか

 

66:しょう蘭

そうですよかり(以下破られた跡と血痕)

 

67:当局

…ここから先は春蘭の冥福を祈る章になったわ



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司馬日記外伝 月の新採戦線異状なし

皆様コメントやリク有難う御座います、有り難く何度も読み返しております。
さて今回は月のメイド新規採用のお話です。
今後も御笑覧頂けますと幸いです。


「次の方お入り下さい」

また詠ちゃんに怒られちゃった…もっと基準を下げないとだめなのかなぁ。

心の中でだけため息をついて、なるべく明るく部屋の外へ声をかけた。

 

「失礼するわ」

うわぁ。なんだか偉そうな雰囲気の人。

 

「えっと、ではそちらに掛けて下さいね」

「こちらで良いのね」

「まずお名前をどうぞ」

「許攸、字は子遠よ」

「はい。ここのお仕事を希望された理由は何ですか?」

「そうね、まあここが天下に一番近いから、かしら?」

 

…この人は何を言ってるのかな?

 

「…前職について教えて下さい」

「やぁね、履歴書に書いてあるじゃない。麗羽の所にいたけど余りにも能天気だったから華琳の所へ移ったわ。今の華琳があるのはあたしのお蔭と言っても過言じゃないわね」

「どういった御実績で?」

「官渡の戦で麗羽の糧食基地だった鳥巣を華琳に襲わせたわ、魏がまともな勢力になれたのはそこからよ。それだっていうのに華琳はなんだかんだ言ってあたしを高位の職に就けないのよ、もうやってらんないからこっちに来たってわけ」

 

「先に天下に一番近いからと仰いましたが、いま少し具体的に教えて頂けますか?」

「そんなのわかりきってるじゃない。ここには皇帝がいるんでしょ?そばにあたしがついてあげて、色々指導をしてあげるのよ」

「して『あげる』?」

「?何か言った?」

「いえ、何でもありません」

右手の方から何か鈍い音がしたと思ったら、記録用の筆をへし折っちゃってた。

古くなってたのかな?詠ちゃんと文房具なんかの経費も大事に使わなきゃねって話してたのに、いけないいけない。

 

「こちらは雑務一般で募集をかけさせて頂いてるんですけれど、そこは御承知置き頂けるでしょうか?」

「まあはじめのうちはちょっと位やってあげてもいいわ。でも早晩あたしの経世の腕が認められちゃうから、そしたらそんな雑用は女中にでもやらせてよね」

「…女中『にでも』?」

なんだろう、後ろ髪がふわふわ浮き上がっちゃう感覚。

カタカタカタッと天井裏から音がしたと思うと、まるで逃げるみたいに明命ちゃんが全力で走っていくのが見えた。どこに行っちゃうんだろ。

それと入れ替わるみたいに斗詩ちゃんが庭に姿を見せたので会釈したら、にこっと微笑んでくれた。

うん、なんだか通じ合えそうな笑顔。

 

「ま、なんにせよあたしは飯炊き女で終わるような女じゃないのよ。なのにどいつもこいつもあたしの価値を正しく見極められないもんだから、とりあえずここ(総務室)から一気にのし上っていくの。これはそのための第一歩よ」

校尉になっても位人臣を極めてもなおその飯炊きをする人も、他にもしたいって人はいっぱいいるんですけれど。

「給与は募集要項に記載のとおりですが、福利厚生等について御質問はありますか?」

「給料は将来的には丞相並み位は欲しいわね」

 

…今私福利厚生について質問がありますかって聞きましたよね?

なんだか左手に持ってる履歴書が見にくいな。…あ、私が震えてたんだ。

なんでだろ、ぶるぶる震えるのが止まらないや。

 

「…こちらは夜勤もありますけど、それは大丈夫ですか?」

「やぁよ夜勤なんてお肌荒れちゃうじゃない。…うふ、そう言えば聞いたんだけど皇帝ってすっごい好きモノなんですって?どうしてもって言うんなら考えてあげてもいいけど、今まで買い込んだ他の女たち全部売っ払ってくれなきゃ嫌よ?」

 

「……………」

誰が何を買い込んだのかな?

ご主人さまと皆さんは望み望まれてここにいるんですけれど?

売っ払うって何をかな?誰をかな?誰がかな?

どくどくと心臓が脈打つのに、何だか血の気が引いてく感じ。

深呼吸、しないと。

……あ、あれ?頭、が。

 

 

 

 

 

 

 

「…有難う御座いました。面接はこれで終了です」

「あら、もういいの?」

「はい。結果は、合格です」

「ふふっ、まあ当然よね。で、いつから来ればいいの?」

「今すぐです」

「えっ?」

許攸さん、驚いてる。

でも、今すぐでも遅すぎるくらい。

 

「斗詩さん居ますか?」

「居るよ、月ちゃん」

庭からいつの間にか部屋の入り口に来ていたけれど、なんでだろう斗詩さんが初めからそこに居たような気がした。

「今から許攸さんの研修の指導をお願いします」

「うん、任せて」

「斗詩!?貴女こんなところにいたの?」

「私だけじゃないよ。椿(審配)もいるんだよ」

「久しぶりねぇ、(許攸)子遠さん」

「正南(審配)まで!?」

「まぁ私たちだけじゃないんだけれどねぇ。それで月さん、どこに連れていけばいいのかしら?」

「特別室の(七)…いえ、(六)へ。道具は何をどれだけ使っても構いません、自分の姿を鏡で見せてまず立場を分からせるというところからお願いします。また真桜さんの開発品の振動機能耐久試験の実験も併せて実施してしまって下さい。それとご主人さまが翠さんに使われた例の薬も必要なだけどうぞ。あとは心身の回復も適度に行って、決して発狂させないように。目的はあくまで調きょ…研修ですから」

「うん。それで、どのくらいまで『研修』すればいいかな?」

「そうですね、心から笑顔でご主人さまの為に働きたいって言える様になったら様子を見せて下さい。あと、忠誠を誓わせる相手はあくまでご主人さまですから、そこを勘違いさせないように注意して下さいね」

「了解したわ。でも、御主人さま直々には『雌導』して貰わなくていいの?」

「それは難しいと思います。むしろ一度心をへし折っておいて、自分から望むようにしておけば後は時間の問題ですから」

「私も月ちゃんの言うとおりだと思うな。それじゃ子遠さん、行きましょう?」

「痛っ、ちょ、ちょっと斗詩引っ張らないで!どこに連れて行くのよ!?」

「うふ、天国かしらねぇ?初めはちょっぴり辛いかもしれないけど、大丈夫よ直ぐすっごく気持ちよくなっちゃうから…あはっ」

「は、離しなさいよぉーっ!?」

 

斗詩さんに引きずられていく許攸さんの姿が小さくなっていくのを見ながら、得体の知れない達成感と眩暈を感じる。

これで彼女もここで働くのに相応しい娘になるかな。

なるよね。

ご主人さまが女の子を買ってきたなんて言わない娘に。

なるよね。

私は疲労感のようなものに襲われて、座椅子に凭れて目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(…間に合ったの?)」

「(何とか。明命が知らせてくれて)」

「(月の許可があるって言って、審配がありったけ媚薬持ってったって聞いたけど)」

「(…縛られてたけどまだ服着てたし、薬は全部未使用だったから身体的には。ただ斗詩に聞いたら『一刀さんが女の子をお金で買うような人じゃないって事を説明していただけですよ』って言うんだけど、物凄く怯えてたし金光鉄槌は床にめり込んでたし…あと許攸さんてどんな娘なの?)」

「(冀州じゃ結構有名な札付きのクソ生意気女よ、麗羽のとこにいた娘なら誰でも知ってるわ。華琳のとこの下っ端で燻ぶってるとは聞いてたけど、よりによって月に喧嘩売りに来るとはね…身柄、どうしたもんかしら)」

「(?単に解放してあげればいいだけじゃないの?)」

「(あんたの事『金で女を買う男だ』って言って月と斗詩怒らしたらしいからね…『あんた教』の信者の子達に伝わるだけでも私刑不可避じゃない?まあボクはあの女嫌いだしどうなろうといいっちゃいいんだけどね)」

「(…皆俺の事買ってくれてるのは有難いんだけど、どうすっかなぁ…あ、そうだ…)」

「(?何か考えが…あ、月起きる)」

 

 

詠ちゃんとご主人さまの声がぼんやり聞こえる。

気がついたら布団に寝かされていた。

「気がついた?月」

「はい。あれ、私…」

「面接中に貧血?起こしちゃったみたいね」

「そうだったんだ。迷惑かけてごめんね、詠ちゃん。あ、そうだ夕飯の用意しないと…」

「今日は流琉が作ってくれるから大丈夫だよ、月はもう少し寝てなよ」

「ご主人さまも、すみません」

ご迷惑をかけちゃったのに、優しく労わってくれる。

 

「いやいつも月にはお世話になりっぱなしだからいいんだよ。ところでさ、月」

「はい?」

「総務室のメイドの募集してたでしょ?今日面接受けに来た許攸さんて人はちょっと問題あったと思うんだけど」

「…はい」

ちょっとだったかな。途中から記憶があやふやだけど。

 

「許攸さんの知り合いで、居酒屋の店員やってた人がいるんだけどその人雇ってくれないかな?その人なら(多分)普通のことなら普通程度以上にはここのお仕事できると思うんだ?で、ついでっちゃなんだけど許攸さんもその人の部下にして雇ってもらったらって思うんだけど、どうかな?」

「…ご主人さまが決められることでしたら反対しませんが、許攸さんを採用したら却ってご主人さまに迷惑を掛けちゃうんじゃないかと思いますけど…」

「大丈夫、俺が責任持つから!」

「(ちょっとあんた、本当に大丈夫なの?)」

「(保護しなくちゃヤバい上に他に引き取り手も無いんだろ?命には代えられないって説得する)」

「…では、ご主人さまさえよければ…」

 

ご主人さまの意向なら、私が口出すことじゃない。

そうだ、大事なことを聞くのを忘れてた。

「ところでその居酒屋の店員さん?ですか、御仕事の方は普通って言われましたけど」

「うんうん」

「だいたい司馬懿さんくらいですか?」

 

そう聞いたら、詠ちゃんとご主人さまが揃って真顔で右手を振った。

 

 

 

 

 

---------------------------------

 

 

 

できる!一級メイド技能士試験 ~司馬懿編~

 

 

問一

「この寝台整備の不十分なところを指摘して下さい」

 

「はい。まず敷き布団を干す時に向きを変えておらず、日陰になっていた部分の柔らかさが足りません。次に敷き布を敷く際に寝台に乗ってしまっており、裏側から叩いて凹みを戻した跡がありますが不十分です。また敷き布が一分(3mm)程左に偏っております。更に右隅に一刀様の睫が一本ついてしまっております。加えて枕元の水差しに付属した杯に二箇所曇りがあります。それに、その…」

顔を赤らめる仲達さん。

「言って貰って構いませんよ?」

「…洗濯自体が不十分です。染みこそ有りませんが、一刀様のその…御熱情の跡の香りが僅かに香ってしまっております」

 

問二

「今日のご主人さまの予定表を参考に、夕食の献立を下表の中から選んで下さい」

 

「まず午前中に凪らと王都巡視の予定となっており、昼食は凪と辛味の強いものを外食なさると考えられますので夕食は出汁中心の穏やかな味付けを選ぶべきと考えます。加えて午後は執務室にて御執務である為、休憩時間に点心を楽しまれると予想されます。加えて宵の頃より軍関係者と会議がある為、夕食は早い時間となると思われ結果的に軽いものでなくてはお召しになれないでしょう。ですがその…会議後には軍関係者らに御寵愛を賜ると思われますので、滋養強壮にも良い物を選ばなくてはなりません。

以上の条件から、山かけ玄米ご飯、松茸と霊芝の澄まし汁、薄めの生姜茶が適当と思われます」

 

問三

「お茶を淹れる時に気をつけることについて述べて下さい」

 

「一刀様はお食事にあわせてお出しするお茶については熱く比較的濃い茶を好まれます。御執務中においては熱さ濃さとも中程度を好まれ、また椀は小さいものとする必要がある為残量、温度にこまめに注意を払うべきです。外回りのお仕事から帰られた時にお出しするのはぬるめかつ薄めを好まれる為、ある程度御帰庁時間が近づいたら予めご用意しておき、冷めてしまったら取り替えてお待ちするべきです。また午後の休憩時間に点心と合わせて飲まれるお茶用には濃い目を用意しますが御相伴に預かる方々が居る場合もある為、多めに用意しておくべきと考えます」

 

問四

「一時間置きにご主人さまの様子を見て、とるべき対応について提案して下さい」

 

「睫が微妙に痙攣されており、眠いご様子でいらっしゃいます。次の会議は実務者のみで行い仮眠を御取り頂いてはどうでしょうか」

「先程から首を廻される仕草が多く、御執務に倦んでおられると思います。御気分転換にこの後の予定を明日の巡視と入れ替えては如何でしょうか」

「お出ししたお茶を見られる際に一瞬視線が千菓子を探すように泳いでおり、空腹のご様子です。昼食が少なかったと思われ、夕食を早めては如何でしょうか」

「先ほどの公達様と文若様の口論にお心を痛めていらっしゃいます。個別に御呼びして親しくお話頂いた方が良いのではないでしょうか」

「…文若様、公達様にその…御寵愛賜ったようで多少お疲れの御様子です。風呂に入って頂いてはどうかと」

「あ、あの…一刀様が、私にも入るようにと御命じなのですが、どうすれば宜しいでしょう!?」

「…御報告遅くなり申し訳ありません。…それでその、この後も…と命じられたのですが…はい…私は…ご、御命に従うべきかと…はい、行って参ります」

「お早う御座います、今更の御報告となり申し訳ありません。その…よくお休みの御様子ですが、そろそろ起きて御朝食を摂って頂くべきかと…はい、御起こしして参ります」



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司馬日記外伝 酒楼「三国一」の落書帳7

いつも皆様の御笑覧、コメント有難う御座います。
コメントでリク頂きました原作メンバーの落書き帳です。


【元祖】苦難を共にしてきた女達が最近の女について語る章【本家】

 

1:阿蘇阿蘇読モ

私たちに断り無く「一刀様親衛隊」を名乗ってる女達がいるって聞いたんだけど本当なの?

 

2:長坂橋

聞いたことあるのだ

ガラ悪そうだったって定食屋のおっちゃんが言ってたのだ

 

3:辛党

北郷警備隊を名乗っている訳ではないのだから許してあげてもよいのでは

 

4:発明王

じゃあ警備隊名乗ったらどないするん?

 

5:3

是が非でも御遠慮願う

 

6:宝慧

最近の辛党ちゃんは吹っ切れすぎなんだぜ

 

7:後宮の名無しさん

あの…新参っすけどすんません

そいつら俺の後輩でよく言い聞かせときますんで勘弁してやって下さい

 

8:片眼鏡

私からもお願いします

ごめんなさい

 

9:弓腰姫

片眼鏡とかがだらしないから最近の女がつけあがるんじゃない

子布とか

もっとしっかりしてよ

 

10:8

すみません

すみません

 

11:華蝶仮面

まあそういじめるものではありませんぞ

それにしても最近の増えっぷりは目を見張るものがありますな

 

12:戯志才

割と必然だったのではと思いますが…

 

13:桂

どこがよ!?

あんな女を力づくで何度も何度も犯してぎゅってして窒息で死ぬかってくらいキスした挙句に愛してるよとかバッカじゃないの!?

あんなのに惚れる女の気が知れないわ!

 

14:錦帆賊

全くだ

脅迫でメイド服を着せて鏡の前で見せつけながらするのが大好きな変態だぞ

私が可愛いからだとか言えば何でもさせると勘違いしている奴だというのに

 

15:西涼娘

噂には聞いてたけどツンデレって本当に病気だったんだな…

 

16:都督@禁書中

真面目に返してしまうとですねぇ

女所帯で皇帝という立場のわりに優しいとこ持ってきてなし崩しに弱い上に最近の娘も大事にしてるのが見えちゃってますから

誘蛾灯状態になってしまうのはしょうがないですよねぇ

 

17:次女

出会った時に囲い込んでおけば…

はぁ…

 

18:宝慧

おいやめてくれよ桃尻嬢ちゃん…

 

19:戯志才

その後悔は勘弁して下さい

 

20:偃月刀

やめてください…

 

21:桃☆

う、う~ん?みんな仲良くなっちゃえたんだからいいんじゃないかな?

偃月刀ちゃん筆名変えたんだね

この方がかっこいいよ

 

22:治世の能臣

>21

貴女の思考法は勝ち組よね…

それより義理の娘達はあれから大人しくなったの?

 

23:桃☆

外ではもうすっかりなんじゃないかな

あとお腹なんかうっすら割れてたよ

 

24:白馬長史

外はって事は…

 

25:桃☆

夜は親子水入らずで、みたいな…あはは

 

26:偃月刀

…あれはやめましょうと…

 

27:桃☆

えー?でも5人だと偃月刀ちゃんがいつも一番じゃない

いーなーって思ってたんだけど

 

28:黄金の右足

それよりも璃々ちゃんが気になるのです

彼女には乱倫に溺れず全うな道を歩んで欲しいのですが

 

29:紫

うふふ

 

30:叙

えへへ

 

31:戯志才

彼女は最近の女扱いじゃなくていいんじゃないかと思いますけれど

 

32:発明王

夜も母娘仲良くしとるんかいな?

 

33:紫

うふふ

 

34:叙

えへへ

 

35:野に咲く一輪の花

最近焔耶が桔梗さんと一緒のことが多いって言ってた

 

36:鳳雛

つまりこういうことですね

桔梗さんが焔耶さんと一緒

桔梗さんは紫苑さんと一緒じゃない

紫苑さんは誰と一緒かお察し下さい

 

37:紫

うふふ

鳳雛ちゃんは後で弓道場へいらっしゃい?

うふふ

 

38:大都督

雛も鳴かずば撃たれまい…

しかしまあ最近の女は大人しいのが多いな

 

39:桂

ウソでしょ?呉がそれ言う?

 

40:当局

ボクも異議あり

 

41:姉者の妹

私も一言言わせて貰おう

如何な賢人か知らんがあの姉さん女房ぶった態度は何だ?

 

42:片眼鏡

ごめんなさい

ごめんなさい

 

43:都督@禁書中

でもどうにも出来ないんです

 

44:後宮の名無しさん

すいませんホント

なるべく来させないようにしますんで

 

皆が皆仲達みたいだと楽なんですけど

 

45:当局

それはそれで面倒よ…

 

46:女中

司馬懿さんいい人じゃないですか

メイドの仕事もまあまあ出来ますし

 

47:白馬長史

まあまあ位なのか

物凄い出来そうな雰囲気だけどな

 

48:兄様の妹

御料理は結構上手になられましたよ?

 

49:兄ちゃんの妹

うん

こないだ流琉と一緒に作ってたのは美味しかったよ

 

50:当局

……………そうね

仕事は出来るわね

仕事は

51:治世の能臣

出来るのにね

 

52:戯志才

出来るんですが…

 

53:辛党

しかも美人で体つきも女性的で…

羨ましい所しかありません

 

54:発明王

あっちも上手いん?

一緒に寝た事あるやろ

 

55:53

他人の個人的な事なのでこの場ではちょっと

 

56:神速

語りぃや上司命令やで

語らんのやったら

今度一刀と一緒に露天風呂連れてって一刀の前で〇〇を××して△△のあげくに□□やで

 

57:53

一途で情熱的でした

この辺で勘弁して下さい

 

58:宝慧

上手くはねぇってことか

まあ上手いばかりが萌えじゃないからな

きっとあの姉ちゃんは素のぎこちなさが売りなんだぜ

 

59:片眼鏡

仲達さん大好きですが

仲達さんを見てるといくら努力しても天才には勝てないような気がして落ち込む時もあります

 

60:治世の能臣

私は七乃を見て同じように思う時があるわ

 

61:桂

姪も春蘭について同じような事を言っていました

 

62:酔の一字

奇遇じゃな

楊儀も焔耶について同じような事を言っていたぞ

 

63:汜水関

皆気にするな

私も恋に対して似たような気持ちを抱いていた事もあったが

今では恋は恋、私は私と割り切れている

 

64:阿蘇阿蘇読モ

63が明らかに一人だけ話題がずれてるのに答えは正しそうなの

 

65:お猫様もっふもふ

揉まれて大きくなった人は言う事が違いますね(死んだ魚の目)

 

66:63

そ、そんな事は私に言われても困る

誰とは言わんが某総務室長だって似たようなものじゃないか

先日更衣室で一緒になった時

昔と比べてふた周りも変わって買い直しが面倒だとか言っていたぞ

 

67:当局

余計な事言ってんじゃないわよ!?

 

68:五丈原(自棄)

成長期の子たちは仕方ないです

ですが詠さん音々ちゃん猪々子ちゃん華雄さんには聞きたいことがあります

 

69:ぶんぶん

まあアニキが何かにつけ揉むからなぁ

初め腫れちゃったのかと思ったら違ってた

それでも斗詩には敵わないけどな

 

70:西涼娘

正直に答えるなよ

かわいそうだろ…

 

71野に咲く一輪の花

なお蜀の誇る両軍師様は藍(姜維)ちゃんに乳ビンタを食らった後に

ご主人様に死ぬほど吸ってもらった事があったけどその後大きくなったかと言うと

 

72:華蝶仮面

まあまあ

大きい胸だけが女ではありませんぞ

 

73:偃月刀

そうですよ

 

74:桃☆

そうだよ!肩凝るし邪魔な事だってあるよ

 

75:後宮の名無のさん

でも一刀さんは桃☆さんのおっぱい揉むの好きなんですよね?

 

76:74

うん

おとといの夜顔うずめながらすごいしみじみ言われた

そういう風に言われると私大きくって良かったなぁって…あ、あれ?

 

77:蜂蜜

>75

そういう煽り方やめてあげなさいよ!?

 

78:次女

>76

貴女ももう少し考えてから口に出すようにした方が良いんじゃないかしら…

それに貴女達が言うのもその…ねえ?

 

79:桂

…最近の女はって話から逸れてるわよ

桐花(荀攸)なんかいい例よ

ちょっと役職上がったからってつけ上がってる上にあの万年発情男なんかに媚びまくって堂々真昼間から虐めてだの犯してだのいい加減にしなさいって言っても聞きゃしない

総務部会じゃ議長だからって椅子をぴったりくっつけるだけじゃ飽き足らずわざと自分の分のお茶淹れ忘れてあいつのお茶を半分こしたり!

高級官僚、高級軍人だって自覚が足りないんじゃないかしら!?

 

80:宝慧

おっと嬢ちゃん自分が議長だった時の事は覚えているかい

 

81:戯志才

>80

当然のようにはじめっから一刀殿の膝に座って会議を始める貴女もどうかと思いますが…

戻りますが最近の娘は比較的一刀殿には従順で

公務でも上司や同僚への接し方も悪くないのでは

 

82:都督@禁書中

鍾会ちゃん鄧艾ちゃんなんか優秀で可愛くていいですよねぇ

 

83:当局

特に鍾会は知恵が利くわね

武官にしとくのが勿体無いわ

 

84:後宮の名無のさん

愛され方に自信が持てない方達が好きそうなプレイを考えるのが上手ですよね

まあ悪いことではないですけど

 

85:大都督

それは需要は多いだろう

雪蓮みたいな方が少数派だ

 

86:阿蘇阿蘇読モ

自信満々な人って誰なの?

 

87:後宮の名無のさん

見ればわかるじゃないですか

雪蓮さん以外で言えば桃☆さん、姉者の妹さん、女中さん恋さん麗羽さんに天和さんとかですよ

88:蜂蜜

>87

自分の事は棚に上げるのね…

 

89:西涼娘

それはさておいてさ

最近の女はガツガツ感がすごいよな

碧(龐徳)だって出世する為に都に来たって言ってたし

 

90:当局

役職がそのまま夜の割り当てにも比例するからね

 

『統一前の女でも普通程度しか仕事して無いなら、既得権を剥奪して新しい仕事の出来る女に廻すべきだ』

って突き上げも結構来てて

実はもう話しまとまりかかってるのよね

 

91:黄金の右足

ああ…あの件ですか

 

92:宝慧

ま、しゃーねーよなぁ

 

93:華蝶仮面

気を落とす事はありませんぞ

固定枠など無くとも主は何かにつけ可愛がってくれる事でしょう

 

 

 

 

 

 

 

なぁ白馬長史殿

 

94:白馬長史

あ、あたしの話だったのか!?

 

95:白馬長史

誰か何か言ってくれよ

 

96:白馬長史

おーい

 

97:白馬長史

なあ誰かー

 

98:白馬長史

と、桃香ぁ!

 

98:桃☆

あ、あのね、わたし忘れてたんじゃないよ?

そういうお話があって私は反対してたんだけど、ちょっと色々他のお仕事してたら言い出す機会が無くって

それで今夜ね、ご主人さまがお話したいって言ってたからご主人さまと直接お話してくれるかな?

 

99:白馬長史

うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!



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司馬日記外伝 杏(逢紀)ちゃんの細腕奮闘記

飯坂裕一様のイラストに触発されて小ネタを書かせて頂きました。
その後許攸さんがどうなったのか、月とはどう折り合ってるのかとかも追々書かせて頂こうと思っております。

いつもコメント下さる皆様、また飯坂様重ね重ね有難う御座います。
もし未だ飯坂様のイラストを御覧でない方がいらっしゃいましたら、是非御覧頂ければと存じます。


「きーてないー」

「話したんだけどなぁ…」

「ずーるーいー」

「いや、ずるいって言われても…ほらこれ制服、前に着たいって言ってたやつ」

「あ、可愛い。ってこんなんじゃ釣られないんだかんねー!」

 

生協も三国一も休みだったから、朝寝坊してお昼庁内食堂で食べて部屋に帰ってきたら一刀さんが来て『いつ頃から勤務してくれるの?』って言われた。

何のことだかさっぱ分かんなかったから聞いてみたら、今後私が総務室のメイドやってく約束になってるとか言うし!?

しかも(許攸)子遠さんも部下で面倒見ろだって!?私あの人めっちゃ苦手にしてたのに!

いつそんな約束したのって聞いたら、例のプールでデートした日らしい。よーく思い出してみるとそんな話をしたような…した…よう…な?

 

「…一刀さん、いてこまして意識朦朧としてる初心い女の子にそんな約束させるなんてひどーい…よよよよよ」

「でもあの時杏さん意識もはっきりしてたと思うけど…送って帰ったんだって覚えてるでしょ?」

「そうそう貰った水着嬉しかったけど2度とも水着着たままだったから素肌のあたし抱きたいってこの部屋来てもう一度とか、もー一刀さんてばほんとえっちだよねー」

「めっちゃ記憶あるじゃん!?あと最後の一回は杏さんが誘ってきたよね!?」

「女の子は甘い記憶は鮮明に残るんですー。あと男の子は女の子が誘ったなんて言っちゃいけないんですー」

「甘いって言って貰えるのは嬉しいけどさ、折角このメイド服も特注で作ったんだしなんとか頼むよ。許攸さんも大分大人しくなったみたいだし、杏さんの言うこと聞いてねって言ってあるし」

手を合わせてくる一刀さんはまあ可愛いっちゃ可愛いんだけどぉー。どーしよっかなぁ。あと欲しかったこのメイド服可愛い。

 

「…つまりナニかな、一刀さんはあたしのメイド服姿が見たいと」

「いやそこはどtt」

「ん?」

「うんすごく見たいんだよ」

「そこまで言うならどうしよっかなぁ~?」

「見たいなぁー、すっげぇ可愛いだろうなぁー」

「ごっくん生ツバもん?」

「うんうん悩殺もん」

「しょーがないなぁ、今着てみてあげるからちょっと待っててね♪」

「イェー!!」

 

まっ、ここまで皇帝に頼まれちゃったら着てあげなきゃ女が廃るってもんだよね?寝室と仕切る天幕を引いて服を脱ぎ始める。

「覗いちゃダメだかんね?」

「覗きたいけど大人しく待ってるよ」

天幕の脇から片方生足出したあたしに向ける一刀さんの笑顔がなんか三国一で接客してるときのあたしの笑顔に似てる気がしたけど、それはさておき着替えてみよう。ひゃっほー!

ストッキングがこれで。おー。髪飾りこんな感じか。やん可愛ぃー!

 

「お待たせしました!」

「よっ待ってました!」

「じゃーん!総務室の万能メイド、杏ちゃんでーすっ!」

「イェー…あっ素で可愛い。よく似合ってる」

「なにそれ!?」

「あいやいやいや」

「まいいや、いらっしゃいませご主人さまぁ、お茶にしますぅ?」

「いや今まで通り一刀でいいんだけど。あといらっしゃいませはちょっと」

「だってあたしの部屋に来てるんだからいらっしゃいませでいいんじゃない?でも凄いねコレ、腰周りとかあたしに超ぴったり」

「特注だからね」

「乳袋までぴったり」

「げふんげふん!!」

どいーんって言うほどある訳じゃないけどそこそこあるなりのぽよぽよ感を出してくれる胸元。

 

「一刀さん、この乳袋寸法合わなくなってきたらも一度造ってくれるのかにゃ~?うりうり」

ま、結論から言ってこの時ちょっとあたし浮かれ過ぎてたってのは否定出来ないかな。

ちょっと一刀さんの横っ面をぽよぽよ胸で小突いてみたのも少し調子に乗ってたって言うか。

 

「何着でも作り直すよ」

「ひゃ」

お尻に廻された手と柔らかく胸を握られた感触に、意外と生地薄かったんだとか思う暇も無くて。

 

まあ、その、ねえ?

そーゆーこと覚え始めた恋人たちにありがちな展開とか、割りとイヤじゃなかったりして。

あたしだってケンゼンな若い女だし?

 

 

 

--------------------

 

 

「…紀、逢紀?居ないの逢紀!?今日から世話になるわよ!」

 

…そんなに扉叩くなっつーの。

眠りに落ちる時はあったはずの隣の温もりはとっくに無くなってて、代わりに置かれた小さな紙を開く。

 

『今日から宜しく しっかり朝ごはんも食べてね 一刀』

今日から宜しく。

今日から宜しく…?

 

昨日の一部始終を思い出してみる。

…あかん、全部覚えてる。

 

上司が銀ちっぱいさんなのはいい。メガネメイドさんは厳しそうだけど。

けど(許攸)子遠さんと当分同居?

しかも同僚があの恐ろしい銀ぱいさんだと?仕事の内容違うから大丈夫だって?

なのに『うんっあたし頑張っちゃうね!』とか言って、一刀さんとちゅっちゅくちゅっちゅくしてりゃ幸せなのかあたしは。

…ああそうさ幸せだけどさっ!チョロくて悪いか!

 

「居るんでしょ!?部屋の間仕切りの工事の話で司馬懿さんも来てるのよ、早く開けなさい!」

「し、司馬っ!?はい開けますーっ!あだっ!?」

まっぱに敷布体に巻きつけて扉に向かおうとしたらすっ転んだ。

 

あたしのメイド生活、前途多難かなぁ…



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司馬日記50・杏(逢紀)ちゃんの細腕奮闘記1.5

その後の、とある文官の日記です。
総務室入りした杏(逢紀)ちゃんが、まさかの…!?

いつも皆様の御笑覧有難う御座います。


7月7日

先の求人により、逢紀が総務室に入職していた。曹休様と詠様の御協議で三国一と生協も不定期に勤務するとのことだ。

メイド事務を担当するとのことであったので絡みは少ないだろうが一刀様の為尽力して頂きたいと激励した。

そういえば久しぶりのメイド事務の採用であった気がする。

 

7月9日

総務室で大掃除を兼ねた書類整理を終えた後、職員らに再び珈琲を振舞って下さった。

書類や家具の移動を太史慈殿にも手伝って頂いていたが整理が終わると直ぐに自分の執務室へ戻ってしまわれており、一刀様より時間があれば一刀様のお部屋へ来て一服するよう彼女に伝えるよう御指示を受けた。

 

彼女の執務室へ行ったところ孫策様のみがおられ、一刀様の御伝言をお伝えしたところに太史慈殿が帰ってこられたので再度私の方から説明しようとしたが孫策様に制され、

「いい陽(太史慈)?一刀がね、片付け手伝ったご褒美に一刀の熱くって苦くってどろっとしたのを飲ませたいから今から来なさいですって。…やだ、何かなんて聞かなくてもわかるでしょ?でね陽、仮にも貴女呉の将軍なんだし折角一刀が御指名で口から溢れる程飲ませたいって言ってるんだから、女としてそれなりの格好で行かなきゃ駄目よ?それにね、周りに他人が居ても恥ずかしがったりしちゃ駄目、一刀が貴女に飲ませたいって言ってるんだから。ね、司馬懿さん貴女だって一刀が飲めって言うなら周りに人が居ようが喜んで飲ませてもらうわよね?ほら司馬懿さんだってこう言ってるでしょ?あとね、飲ませてもらう時は跪いて目を閉じて心持ち舌を突き出してそこに一刀にブチ込んで貰うのが作法だから。…ああ、これ呉だけのしきたりだから。だから総務室の人はしなかったの。…夕(魯粛)?うん夕はちょっとまだ日が浅かったから知らなかったのねきっと、ほらほら細かい事は気にしないで一刀の気が変わらないうちにさっさと着替えて行ってらっしゃい!」

と 太史慈殿を急き立てられた。

 

太史慈殿は何故か赤い顔をして慌てて寝室に引っ込まれると薄手で胸元が大きく開いた服に着替えており、一言私に礼を言うや部屋を飛び出して行かれた。

総務室に戻ろうとし部屋に近づいたところ、

「咽るよ!?絶対咽るよ!?」

「構いません、一息にお願い致します!」

という一刀様と太史慈殿の声が聞こえた後、間をおいて太史慈殿が派手に咽こむ声が聞こえた。

何事かと思い部屋を覗いてみた所、一刀様の前で跪き顔中珈琲まみれにした太史慈殿が居た。

 

太史慈殿は自身の噴出したらしき(?)珈琲まみれの一刀様のお姿を見るや涙目で謝りながら部屋を駆け出していってしまい、彼女の事も気にはなったが兎も角一刀様のお召し替えを急ぎ御用意した。

するとすぐに渋面を浮べた魯粛が現れ、

「あー遅かったか…一刀様。明日から大規模軍事演習なんですから陽の御機嫌。宜しくお願いしますね」とため息をついて左手の親指と人差し指で輪を作り、右手の人差し指をすこすことその輪に出し入れしてみせた。

その後、『もー雪蓮様、むしろこれが狙いなんじゃないかしらぁ!』と愚痴るように言いながら部屋を出て行ってしまった。

 

7月10日

魏の総務部の仕事後、御嬢様、郭淮、張郃らと飲みに行った。

とりとめのない話をしていたが『化ければ可愛い女は誰だ』という話になり、どこの誰それだ等と言いあって居たが私にも意見を求められた為蜀の璃々殿はいずれ美人になるのではないかと言ってみた。しかし、皆から『そんな分かりきった事は聞いてない』と鼻白まれ、曰く璃々殿や袁紹殿、袁術殿は『既に化けてしまった』口で、又張勲殿は『化けの皮が剥がれた美人』なのだそうだ。

曹洪様が張梁殿を挙げ、張郃と高覧が文醜殿を挙げたあたりでは非常に盛り上がっていた。

 

7月14日

月様が体調を崩され、暫く静養する為劉璋殿がメイド長代行をされる事となった。

劉璋殿は職務の重さに非常に不安げな様子であったが一刀様がわざわざ総務室に来られ、月様の品質は求めないので適当でよいと何度も仰られた。

相変わらず一刀様は御優しい。

 

7月16日

農業に心得があった士載に検討させていた、街道沿いを中心とした屯田制の整備案について軍部及び農政局と会議を行った。

いずれの部局も総論として反対は無かったのだが誰を担当にするかで調整がつかず、軍側代表の諸葛誕殿が

「これ簡単な事業じゃないのよ、軍の事も農業も土木もわかんないといけないし。でもどうせ秋蘭は(この事業の為に都から)出る気無いんでしょ?じゃあ士載ちゃんか、司馬懿さん。さもなきゃ楓(曹真)つけてくれなきゃわたしだって(長期出張は)やぁよ」

と発言された。公達様が総務側は士載を担当につけると回答され、農政局側の韓浩殿も了承され事業詳細は今後詰める事となった。

 

会議後、御嬢様が士載に「ごめんね士載ちゃん、軍関係なら本当は私が行かなきゃいけなかったんだけど…軍の長期出張は一刀様の『夜のお手当』が厚めにつくから許してね」と謝られた一方で、公達様にはあんた(私の事だ)本当に諸葛誕に気に入られてんのねと言われた。

『諸葛の狗を得た』とも称される諸葛誕殿の特異な性癖は夙に知られるところであったので公達様の方が気が合われるのではないでしょうかと申し上げたところ、

「あいつみたいな軍部特有の上司部下の体罰プレイ的なノリってあたしちょっと合わないのよねぇ?どっちかって言うとはじめっから最後まで雌奴隷的な扱われ方のがビンビンにクるものがあるのよ、わかるかしら?もうちょっと具体的に言うとさぁ」

と語られ始め、その先は聞き流していたので余り覚えていない。

兎も角、士載には一刀様に御迷惑を掛けるような性癖を覚えないよう注意しておこう。

 

7月17日

逢紀の推挙で蔡文姫殿が三国一と兼任でメイド業に呼び戻された。また詠様の指示により劉璋殿が代行から降格し、張任もメイド事務を担当し四名協業して事務に当たる事となった。

詠様に御事情を伺ったところ、『劉璋、元々気ぃ弱くて「お茶汲みと抱かれる位しか出来ない」って言ってたのを無理矢理やらしてたんだけどやっぱ無理があったみたいなのよね。とりあえず、心臓強そうで大雑把そうな娘たちに適当にやらしといた方がうまくいくかなって』

との事だ。一刀様の御身の廻りの事であるので余りいい加減では困るのではと申し上げたが、いーのいーの、あんたも余計な口出さないでよねと逆に釘を刺されてしまった。

 

7月18日

執務中に廊下の遠くの方で鈍い大きな音がしたので音のした場所を探しに行ったところ、大穴の空いた壁の前でうなだれる元譲様とそれに怒りを露わにした文若様、さらにそれを宥める一刀様がいらっしゃった。

子丹御嬢様が何があったのか行き会った稟様に尋ねられると稟様は溜息を吐きながらぼそぼそと何事かを話され、それを聞くや御嬢様も深い溜息を吐いて帰るわよ仲達と部屋へ帰られようとした。

稟様はなんと言われたのか御嬢様に伺ったところ、

「いつも一刀様に主導権取られて悔しかったから、逆に『壁ドン』してみたかったんだって。馬っ鹿らしい…」

と今一度深い溜息を吐かれながら教えて下さった。背後では文若様が「何壁壊してんのよこの脳筋!」等とまだお怒りであったが補修については管理課で対応する為私も執務室に戻ることとした。

 

7月20日

財政の会議の準備を逢紀らに手伝わせたが、逢紀がうっかり全員の椅子を用意してしまっていた。私が気づくのが遅れてしまい正に一刀様や仲徳様らが入室されようとされ椅子を片付ける暇が無かった為、已む無く仲徳様用の椅子の脚を蹴り折っておき、入室された仲徳様に椅子が壊れていた為一刀様の膝に座られますようお願いした。

 

仲徳様の頭の上に載っている人形に『ねーちゃん後輩の指導はしっかりしておくもんだぜ』と言われたが、仲徳様はじゃあしょーがないですねーと言いながら一刀様の膝に座られ特に御不機嫌な御様子は無く会議を進められた。

後で逢紀に仲徳様が議長の場合は仲徳様の分の椅子は用意しないようにと注意しておいたが、まだ慣れない者に会議の段取りをやらせる為には、席次表のみならず配置の詳細についても資料を作っておかねばなるまい。

 

7月21日

別冊阿蘇阿蘇の対談連載に一刀様が御登場なさった。臣下や各寵姫、果ては民草にまで広く深き思いやりの心をお示しになっており、改めて感激した。

 

一冊は観賞用、一冊は保存用、一冊は後輩等への教導用に購入した。

 

7月23日

逢紀の部下として許攸という者が総務室のメイドに入職した。

旧知の間柄であるらしい逢紀があいさつ回りで連れて来たので、一刀様の御為に働ける事を喜びに思い一刀様に尽くされたいと訓示した。

しかし許攸が一瞬鼻で笑うような仕草を見せ、それに不忠不敬の心根を本能的に感じ思わず許攸の顔の脇に短戟を突き立て『一刀様の為に働くと誓えないか』と叱咤してしまった。

許攸は涙目で「ち、誓うわよっ!誓うから殺さないでよ!?」と弁解し、逢紀もよく言って聞かせますんでと言い詠様も『ベタベタ媚びろとは言わないけど、普通に君主と陪臣程度の態度は取れるようにしとかないとこいつ(仲達)じゃないけど殺しに来る奴居るわよ。あと仲達もいきなりキレないの』と御注意された。

許攸はまだ不満気な様子であったのでもう一脅し必要かと思ったが、逢紀が『ほらほら、ちゃんとしないと斗詩が来るよ』と言うと途端に分かったわよ、と従う様子を見せた。

 

一刀様の御推挙なのだそうだが、あの許攸という女は一刀様のお世話をさせるには相当の教育が必要なのではと思われる。

 

 

 

 

 

 

 

--------------------------------

 

【杏(逢紀)ちゃんの細腕奮闘記1.5】

 

「いい月、今度は新人にムチャな事要求しちゃダメよ?適当でいいのよ適当で、アイツだってそれでいいって言ってんだから!」

「で、でもね詠ちゃん、ご主人さまには気持ちよく仕事してもらった方がみんなの仕事もうまくいくと思うの…」

「程度問題!いっくら採用してもすぐ辞めちゃうからしまいにゃ応募まで居なくなっていくら給料積んでも来ないからって雑務のヒラの初任給がよその係長級なんて職場ここしか無いわよ!?」

「けどこないだ司馬懿さんが普通に…」

「アレは変態!真面目そうな顔して頭の中九割、いえ十割アイツの事しか考えて無くて能力の無駄遣いしてる合間に仕事してるような女だから、アレが普通だとは思わないで!何度も言うけどフツーでいいのよフツーで、ちょっと位気に入らないことがあっても我慢するのよ、いい?」

「う、うん…頑張ってみるね…」

 

「こんにちはー、今日から配属になりました逢紀です」

「こんにちは、よろしくお願いしますね(良かった、普通な感じの人で…)。私は月と申します」

「あーはい、月様存じてますよ。何回かお見かけしまして」

「あ、月でいいですよ。そう言えば逢紀さんに見覚えがあるような…まあそれはさておきまして、お仕事を教えますね」

「はいお願いします」

 

「(えっと細かい事は言わずに、簡単に言わなきゃ…)お洗濯はこれこれこうして」

「はいはい」

「寝台整備はこういうふうにして」

「ふむふむ」

「お料理はこんな感じで」

「なるほどなるほど」

「お茶出しや掃除とかもかくかくしかじかに」

「はい、よく分かりました!では明日から頑張りますね!」

「よろしくお願いしますね(ほっ…)」

 

「月さん、ベッドメイク出来ました」

「あ、はい…ではお洗濯を…(敷き布がちょっと曲がってる…でもこれくらいは…)」

 

「月さんお洗濯干し終わりましたー!」

「ああ…お疲れ様です(うっ…この柄ものは陰干しの方がいいんだけど…)」

 

「一刀さん、今夜はから揚げだよー!レモンが付いてなかったから探して掛けておいたからね!」

「あー…うん、ありがとね」

「お、御料理ご苦労様です…(ああ…ご主人さまはレモンが無い方が好きなのに…)」

 

「(へっへー、ちょっといたずらしちゃおっかな)一刀さーん、お茶ですよぉ」

「おっと…ありがとね杏さ…ん」

「ん?んんー?どしたのかな一刀さん?ねぇねぇどうしたのかな?」

「いや…杏さんその服胸元のボタン一個飛んでない?」

「えー?いやぁん一刀さんのえっちー♪(見えない程度にわざと外してるだけだけどねー!)」

「(雛里ちゃんが死んだ魚みたいな目で打ち合わせの番待ってる…それに図面持っててこれから机に広げるだろうから袖机にお茶置いた方がよかったのに…量もちょっと多いし…ああ、言いたい…)」

 

「いやぁ月さん優しい人でよかったです!これからもよろしくお願いしますね!」

「え、ええ、こちらこそ…(うう…が、我慢しなきゃ…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだかんだでもう一週間かぁ。あたしもこの仕事少しは慣れてきたかな」

「(コンコン)あ、あのぅ…」

「あ、はーい?」

「わ、私劉璋と言いますけど…あの、月様が神経性の胃潰瘍になられてしまったらしくて、しばらく私がメイド業の指揮を執らせて頂くことになりました…あの私、今まで月様に御指示されたお茶運びとか、本当に簡単な事しかしてこなかったのでうまく出来るかどうかわからないんですけれど、なんとかよろしくお願いします…」

「あらら、それは大変ですねぇ。あ、ちょうど余りもんで一刀さんに作ったおかゆがちょっと残ってるからそれ持ってきますよ。お腹に優しいからいいんじゃないかな」

「そ、そうですか、それはきっと月様も喜んでくれるんじゃないでしょうか…あ、でも旦那様に余りモノで作ったやつの残りだとは言われないほうが…」

 

「えー?月さん気ぃ使っちゃう人だから余りもんでって言った方が気兼ねなく召し上がれちゃうんじゃないですか?じゃ、行ってきまーす」

「あ、あの、そこではなくて『旦那様に余りモノで作った』って事の方がですね、あの…ああ、行っちゃいました…」



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司馬日記外伝 頑張れ郝昭さん

とある武官と文官の話です。
いつも皆様の御笑覧、コメント有難う御座います。


「あ、いたいた郝昭さーん」

「これは孫策様、私に何か?」

「今日の三国競技会の新人戦決勝だけど、悪いけどうちの公績(凌統)不戦敗でお願い」

「む、何かお有りだったのでしょうか?」

「風邪よ風邪。高熱出しちゃって、本人黙って出ようとしたんだけど一刀にバレて強制退場。一刀、そういうとこだけ厳しいからね」

「そうですか…延期でも私は構わないのですが」

「私も事務局、あの司馬懿さん?曹真さん?ちょっと忘れちゃったんだけど聞いてみたんだけどね、日程が滅茶苦茶押してて無理なんですって。それと一刀から賞品貰うなら、今夜空いてるはずだから貰っておいてって」

「…一刀様から賞品?」

「まーたまた、真面目な顔してとぼけちゃって!優勝者は一刀と一晩(すこすこすこすこ)するんでしょ?知ってんだから」

「なっ…!?」

「だからもぉ公績もフラフラな癖に泣いて暴れちゃって。ま、折角だから…」

「ああ居た、雪蓮!一刀を呼んでくる筈じゃなかったのか、早くあの母娘喧嘩を止めさせろ」

「あ、ゴメン冥琳呼んでるから、じゃあねーおめでとー!今度私と戦ろうねー!」

「あ、孫策様…!」

 

 

 

 

「居るか仲達!」

「どうした、そんなに慌てて」

「居たか良かった、すまんがちょっと会議室に来てくれ!」

「多少であれば構わんが…」

「大変な事になってしまった」

「何があった」

「既に知っている事だろうが、これを見てくれ」

 

---------------------------

 

【三国競技会案内】表面

(新人個人武芸の部)

決勝:郝昭(魏)対凌統(呉) 7月*日開催

(団体模擬演習の部)

優勝者には金一封、又は同等の武具・図書、又は一刀様との懇親の時間を授与します(※1)

 

---------------------------

 

「無欲に戦っているうちに、遂に…遂に私も、女の晴れ舞台に立つ事になってしまった」

「そうか。私も事務局の一員なので(決勝に出ると)聞いてはいた、目出度い事だ。全力を尽くすといい」

「そこで相談なのだが」

「なんだ」

「その全力の尽くし方が分からん」

「?伯道ならば今まで通りで良いだろう」

「いやいやいやそんな訳があるか、私は初めてなんだぞ!」

「(決勝のような舞台は)そういえばそうか」

「そこでこの道では先輩たる仲達に要領を教授願いたい」

「今更私が伯道に教える事など無いだろう?」

「謙遜するな、些細な事でもいい、お前が初めての頃を思い出してくれないか!?」

「む…(さしもの伯道でも、衆人の前での決勝を前に緊張しているのか…)そうだな、頭を整理するにはまずは理論からだ」

「理論などあるのか!?」

「無論だ。皆が今まで何百何千と繰り返してきたことだ、必然そこには理論が生まれる。伯道が今更驚く事ではないだろう」

「何千だと!?そんなにも繰り返しているのか!?」

「?詳しい方だと思っていたが、意外と(戦の)歴史には疎いのだな」

「…仕方がないだろう、何しろ実戦経験が無いしそういった事を教えてくれる者も無いのだからな。それでその…理論とはどういったことなのだ」

「まあ常識的なことだ。一人に対し複数で当たれ、奇襲は不意を衝けなどだ」

「(一刀様)一人に複数が基本なのか!?それに奇襲などして無礼ではないのか!?」

「…?複数で当たるなど今更どの書物にも載っていることだ。それに(戦に)無礼も何もないだろう、その一度を逃せば次(の攻撃機会)等無いと思うべきだ」

「書物にも載っているのか!?」

「生協(の軍略書棚)にいくらでも置いてあるぞ、見たことは無いか?」

「…(生協のアダルトコーナーで)その…ちらっとくらいは、見たことはあるが…ほんのちらっとだ、しっかり読むなどしたことが無い」

「ではまず基本的なところを数冊購入し、予め予習しておくといい」

「よ、予習か…あまり時間は無い、お勧めの著者など教えてもらえないか」

「そうだな…初心者ならば公達様の(軍略)書がお勧めだな。ああ見えてこっちの道にも秀でていらっしゃる」

「公達様の(SM指南)書か!?あれが初心者向けなのか!?」

「あれぐらいは常識だ。私も基本に帰る時はあの書を参考にしている」

「あれが常識、基本…私は田舎暮らしが長かった所為か、かなりお前に差をつけられてしまっていたようだな…精進しよう」

「なに、伯道であれば直ぐに私など超えていくだろう」

「それはそれで不安なのだが…」

「その後実戦なのだが、相手の出方次第で対応を変えるべきだな、今一度案内を見せてみろ」

「うむ、これだ」

「(相手は凌統殿か…未だ若く、母御に似て血の気が多いと聞く)そうだな。まず相対したら、挑発するのもひとつの手だ」

「挑発!?まてまて仲達私は何しろ初めてなのだ、そんな…挑発だなどどうしたらいいかわからん」

「そうか。まあやり方は人それぞれで色々あるのだが…入庁の頃からここ(度胸)には自信があったろう、ここ(度胸)があるところを見せてやればいい。余り下品にはならんようにな」

「こ、ここ(胸)か…これ(胸)ならまあ…お前とそれ程変わらん、恥じない程度はあるとは思うが…しかも上品にとは…」

「熱くなって固さが見えればしめたものだ」

「硬さ!?やっぱり熱くて硬くなるのか!?」

「それは伯道の挑発の腕前次第だ。それよりもその様子では伯道の方が固くなってしまわないか心配だ」

「う…仲達、私はお前を秘密を守れる親友と信じて言うんだが…最近私は、そのときの事を想像するだけでその…か、硬くなってしまうのだ、私の体はおかしいのだろうか」

「それは不味いな」

「やはりそうなのか…」

「精神面からの由来ではあるだろうが、事前に体操をしたり十分に揉みほぐしておくなどすると良いのではないか?」

「揉っ!?」

「?」

「今更かも知れんが、お前の口からそういった事を聞くことがあるとは思わなかった…都の女はやはり違うな」

「まあこちらにいると(事務も武技も)色々出来ないといけないからな。伯道もじきに慣れる」

「そうか。それで…その…か、硬くなってしまったら、仲達お前も…その…揉む、とかそういう事をするのか?」

「そうだな。今の(事務)仕事柄、凝って固くなってしまうこともあるからな。寝る前によくしている」

「そ、そうか…私だけではなかったのだな、少しほっとするが…こう、親友のそういう生々しい話を聞くと少し照れてしまうな」

「?偶に叔達に(肩とか)揉んでもらうこともあるな」

「妹御にだと!?」

「私がしてやることも有る。叔達は文書局という仕事柄もあるがかなり固くなってる事があるな」

「文書局とは一体何をする部署なんだ!?それにお前達はそういう間柄だったのか!?」

「?まあ姉妹だからな。うちに限らず特に姉妹仲が険悪でなければよくある話だと思うが」

「都の姉妹は大概がそうだというのは本当だったのだな…まあいい参考になった、お前の言うとおりにやってみる」

「伯道の役に立てればなによりだ。武運を祈る」

「ああ、女を見せてくる」

 

 

 

 

 

 

裏面

(※1)但し後宮関係者に限ります

 

---------------------------

 

 

庁内食堂で昼食を摂って執務室へ帰る途中、白い布のようなものを抱えた女が目に付いた。

女は視線に気づいたのか、こちらを見るとよたよたと私の方へ歩いて来た。

昼過ぎなのに寝起きなのか髪は少し乱れ、元は端正と思われる顔に怒りを見せようとしているようだがしまり無く口元が緩んでいる。

「仲達!」

「…どうした」

声を聞いてようやく、それが伯道だと認識出来た。

「…一刀様からお前を恨むなと言われている!だから、貴様には感謝だけをしよう!」

そう言いながらばっと広げた白い布には、中央付近の一部が朱色の斑点で染められている。

その斑点が何かと理解するよりも早く、嗅ぎ覚えのある、私を狂わせる、愛しい方の御熱情の薫りを感じ取ってばっと一歩飛び退きながら鼻に手拭いを当てる。

伯道の赤い顔とこの敷き布。そういうことか。

「そうか、おめでとう伯道。その敷き布はよく干して大事にするといい」

「む。…貴様には言いたい事は色々あるが…今は何も考えられん!いずれ一杯奢って貰うからな、覚悟しておけ!」

「よく分からんが、いずれ祝い酒を御馳走しよう。今日はよく眠るといい」

「無茶を言うな、眠れるわけが無いだろう」

緩みを隠し切れない口元で訳の分からない怒り方をしながら、またひょこひょことした足取りで彼女は去っていった。

 

そういえば競技会の決勝の結果はどうだったのだろうか、聞き忘れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――媚薬も同然の一刀様の御芳香の余韻を深呼吸で鎮めながら執務室へ帰ると、妙に賑やかだった。

 

「初めてなのに一緒に来てくれないかなんて言いに来て、びっくりしたけど折角だから一人で行きなさいって断ったの。でもちょっと心配になって部屋に行ったら、部屋で一刀様、一刀様って言いながら自分で胸一生懸命揉んでて、頭飛んじゃってるような目つきになって少しぼーっとしてたかと思うと『これくらいでいいか…』って謎な事呟いてから一刀様の部屋に行ったのよ、もう私心配で心配で」

「うん、で楓(曹真)が会議行っちゃうけどあたしに時間ある?って言うから交代で今度私が見に行って。処女のクセにいっちょ前に発情した感じの伯道が一刀様のお部屋来たと思ったら、『う…うっふーん』とか言いながら胸突き出してくねくねすんのよ!一刀様とか目が点で!もぉあたし隠れてんのに声出して笑っちゃいそうなの必死にこらえて!たらね、あの子もう一度『うっ…うっふーん』って言いながら乳首チラ見せするのよ!もうあたし窒息して笑い死ぬかって!一刀様も一体どうしたらいいのか分かんない感じであれね、あれ多分伯道がガチで誘ってきてるのかその気は無いけど何か騙されて来たのか判断つかなくて固まってたんだと思うな私。まそれは置いといて、一刀様何も言えずにいたら伯道『か、硬くなったでしょうか…?』って聞くの!残念だけどそれ硬くなったんじゃなくって固まっちゃっただけだからって突っ込みたいのマジであたしこらえて!そしたらなんかちょっと間があって、で一刀様もう傷つけてもしょうがないやって腹括ったみたいで『ごめん、どうしてこうなったのかマジで分からないからなにがあったのか教えて』って一刀様伯道に聞いたの。そしたら流石に自分の誘い方がおかしかったっつーか、兎に角全然誘えてないの理解したみたいでもぉ伯道号泣!号泣!超マジ泣き!まぁ一刀様も泣く女あやし慣れてるから大丈夫だろうなーって思ったけど暫くは泣いてるだろうからそこで私帰ってきた」

「伯済(郭淮)帰ってきた後、あ、なんか泣き声聞こえなくなったなーって思ったから今度あたしが前室に隠れて見に行ったら、いきなり四つん這いで後ろ手に廻して『縛って下さい、出来ましたら優しくして頂けると』とか言い出すし!処女なのにどこの公達様なのとか思ったけどもう一刀様ホント女の扱い慣れてるわね。引きもせずそれは誤解だからねってそっと伯道持参の縄を棚にやり!あとはいつもの一刀様劇場よ」

「あれ?彩(張郃)、一回だけ見て帰ってきたの?私結構遅くまで残業してたと思うけど貴女帰ってこなかったじゃない」

「ん?いや伯道二回したら寝ちゃってたから。こそっと一刀様にお疲れ様ですーって言って『御掃除』して差し上げてたら元気になっちゃったんで、ま、ちょっと隣の部屋行って御掃除料払ってもらっちゃったりみたいな?」

「なにそれ彩ずるい!」

「え、でも一刀様『起きて居なかったらかわいそうだから』って言われて一回だけよ!?」

「私一応、先輩筋だけど伯道に遠慮して邪魔しなかったわよ?」

「邪魔してないしてない!ちゃんと伯道の分残してるわよ友達だし!」

「あっそれ一応本当だったわよね。詠さんが朝『ったく覚えたての体力系は、三度も四度も元気な事ね』って舌打ちしてたから!きゃははははは」

「あんまり笑っちゃ可哀想よ…」

 

 

 

―――――伯道が一刀様の御寵愛を賜ったのは喜ばしい事だ。しかしいつだったか、稟様に友人は選ぶようにと言われたのをかみ締めざるを得ない、ある平日の午後であった。



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司馬日記外伝 事後シリーズ10

その頃(司馬日記10後)の、麗羽さんと一刀さんです。短くてすみません…

うちの麗羽さんはこんな方です。


「…眠れないんですの?」

眠たげに薄目を開けた彼女にううんと答えて、豊かな金髪を二度撫でる。

その間は気持ち良さげに瞳を閉じるが、再び薄目を開ける。さっきよりも意識がはっきりしてしまっているようだ。

「起こしちゃったね、ごめん」

「構いませんわよ…。一刀さんこそどこか具合が悪いんですの?」

「いやそういうんじゃなく、なんとなく目が覚めて」

それは嘘じゃない。と思う。

 

「…気になさってるんですのね。椿(審配)さんのこと」

「…まぁ気にならないって言ったらウソになるかな」

無茶は言わなくなったものの、特段頭が切れると言うほどではないはずの麗羽はたまに鋭い。

 

「仕方の無い事ですわ」

半身で寄り添い、目を閉じてぽんぽんと胸を軽く撫でられる。

「古今東西、あのような事をして命を永らえた者がどれくらい居りまして?」

「それはそうなんだろうけど、ね」

流石に非人道的だったと思う。しかしなんだかんだ甘い詠も、月も桃香でさえも仕方無い、という態度だった。

「改めて、自分の立場の重さを感じてさ」

皇帝を殺そうとすれば、この時代であれば当然。現代のように殺したか殺せなかったかで量刑が違うとかいう考えが論外なのは理屈では分かる。

 

「椿さんは幸せですわよ」

「もうそう信じるしかないよね」

「いえ、本当に」

そう見上げてきた麗羽の瞳は穏やかだ。

「もともと私の下に居た頃からよく憎まれ口を叩く構ってちゃんでしたから。椿さんと仲が良かった何さんって言いましたかしら、もう一人の方は普通に世間擦れした感じでしたけど、彼女はこうして一刀さんに構われて良かったと思いますわ」

「…そう思うことにする」

そう答えると、彼女は優しくふふんと鼻で笑い、胸元に抱き寄せられた。

 

「ごちゃごちゃ難しい話は一刀さんには似合いませんわ。悩み事や辛い事があった時は、女のおっぱいをしゃぶるのが一番ですのよ」

「ほえばばべばお(それじゃだめだろ)…ぷふ、くーるーしーいー」

「あらあら、ちゃんとしゃぶりませんから」

柔らかな谷間に顔を押し付けられて、頭を優しく撫でられる。なんだこの母性。

 

 

桐花(荀攸)の教育と言う名の調教提案を受けて、麗羽を大人しくさせた副産物としてその道に目覚めさせてしまった後

『麗羽は根が悪人じゃないから、言われてみりゃこうなってもおかしく無い気はしたのよね。バカだけど』

『そうね、むしろバカなだけに素直さで化ける可能性はあったわね。バカなだけに』

という詠と華琳の評を思い出す。

更にその後秋蘭が息子を人質にとって『袁紹にかまけて華琳様を蔑ろにしたら許さんぞ』と何度も念を押してきた。その時はなんで秋蘭はそんなに麗羽に拘るんだろうと思ったけれど、後で楓(曹真)達にそれとなく聞いてみたら『あれは華琳様、(自分が麗羽と)競合して負けてるか負けそうかもって気にしてますよ多分。秋蘭様そこらへんすごく敏感だから』

と言う事だった。

俺は華琳と麗羽が被ってるとか思わないし、誰に似てるとか全然気にしなくていいって結構しつこいくらい皆に言ってるつもりなんだが気にする娘にとってはそういうもんじゃないらしい。

 

「こんな情け無いことでいいんだろうか…」

「いいんですのよ。ちゃんとおっぱいを吸って落ち着いて、でーんと構えてれば後は皆がどうにでもしますわ」

「なんだそれ…」

明らかにムチャクチャな理屈なのに、目の前の柔らかな感触と自信満々な麗羽の声になんかそれでもいいんじゃないかと思えてくる。て言うか、今他に出来る事も無いといえば無い。

顔に押し付けられた突起を口に含むと、赤ん坊の頃の記憶なんて無いのに妙な安心感を覚える。いかん、麗羽の言うとおりのような気がしてきた。

 

無意識に、半ば習慣で唇と舌で咥えたものを転がすと、んっ、と麗羽がかすかに身をよじる。

折角麗羽が良い事(?)を言ったのに、雰囲気を壊すような事をしてしまったかと彼女の顔を見上げると、構いませんわ、好きなようになさってと言いながら空いた方にも手を添えさせる。

その豊かな膨らみを流れで揉みこむと、はあっ、と色っぽい溜め息を漏らす。彼女の性癖を思い出し、硬さを帯びてきた突起を強めに摘みながら咥えたものを歯で甘噛みすると、今度こそはっきりと艶かしい喘ぎ声を上げた。

 

一刀さん、と呟きながら絡めてきた下肢の間は既に潤っていて、とっくに目を覚ましてしまっている俺のそれに触れた。

「…少し元気が出たら、女を抱いてもっと元気になられることですわ」

「…激しく?」

「うふふ、そうですわね。犯すほどに。『虐めてやる』位で一刀さんは丁度良いんですわよ…あんっ」

二人の距離が一気にマイナスになると、蕩けきった、満足感に溢れた微笑を浮かべて嬌声を上げる麗羽。その表情に言いようの無い欲望と嗜虐欲がそそられる。

 

 

気遣ってくれてありがとな。感謝は後でする。

今は欲望のままに桃色の唇を奪い、彼女の柔らかく熱くうねる舌に自分のそれを絡ませた。



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司馬日記外伝 あなたはこの人をどう思いますか?

明けましておめでとう御座います、今年も御笑覧頂ければ幸いに存じます。

ところで公式で英雄譚蜀編の予告が来ておりますね。今年もちびちび書いて参ろうと思っておりますが、もし魏編で仲達が来たら流石に終わろうかと思っております。オファーが来たら別ですけどね!(乾笑)


~庁舎内でアンケートを行いました~

 

 

【天敵】

凪「凄い人です。尊敬しています」

詠「才能の無駄遣いの天才ね」

叔達「酒癖の直らない困った姉です」

朱里「ご、ごめんなしゃっ…!(逃げ去る)」

 

【マンハントのせい】

桃香「まじめで明るくていい子だよね!」

雛里「巨乳を敵視する割にはあの人有りますよね?貧乳党にも入りませんし?」

凪「やっぱりあの…ふ、褌が隊長はお好みなんでしょうか…もしそうなら私も…」

正命(蒋欽)「亞莎の白さは天然の白さ、あの子の白さは養殖の白さ」

 

【稟様のひとこと】

亞莎「あまりお話したことありませんけど、飄々とした方ですよね」

翠「あの頭の人形はどうやってしゃべらせてんだ?」

桂花「ことあいつに関しては相当意地が悪いわよ」

稟「最高に乙女だと思います」

 

【ドヤッ☆】

詠「…あれ見るとボクなんかかわいい方だなぁって思うけど、あんまり下見てちゃいけないわよね」

桐花(荀攸)「ホント救えない変態よね。あれが伯母だと思うと恥ずかしいわ」

思春「他所の女ではあるがあの照れ隠しは極端で見ている方が恥ずかしいな。…なんだ鏡など持ってきて」

春蘭「ふっふっふ、極秘情報を教えてやろう。実はな…あいつは本当は一刀の事が大好きなんだ!知らなかっただろう!?」

 

【貫禄の】

天和「…誰ー?」

季衣「えっとねえ…見たことあるんだけどなぁ」

華琳「そうね、中庸といった印象ね。連合軍の時もまあそれなりだったんじゃないかしら。太守の経験だってあるし、あの白馬軍もそこそこって聞いてたわ。…五月蝿いわね、今名前がここまで出掛かってるんだから…んん…」

 

【様式美】

春蘭「あの槍はなかなか鋭いものだな」

秋蘭「全然姉者の方が可愛いだろう。脳筋というだけで一括りにしてはいかんよ」

白蓮「良い奴だよな。馬好きだし話が合うんだ」

蒲公英「他所でお漏らし枠って言われるの恥ずかしいんだよねー」

 

【頑張れお嫁さま】

華琳「いつまでも初々しさを失わないわよね、良くも悪くも。…あの子性格的にあんまり今の仕事向いてないんじゃないかと思うけど、頑張って貰わないとね」

真桜「尻尻言われてる割には後ろでしたことあらへんちゃう?」

詠「なんか…チョロいのよね全般的に。ちょっと料理褒められたら舞い上がってあいつに何でも許してそう」

七乃「姉と妹に挟まれて影の薄い損権ちゃんでしたっけ?」

 

【落鳳坡】

地和「あわわの方ね」

天和「違うよ、はわわちゃんの方だよ」

杏「あの魔女っ子服?ですか、生協でもそれなりに売れてますよ。小さい子向けも大きいお姉さん向けも」

張任「旦那様(一刀)を侮辱しきったこの同人誌とやらを購入されたというのは…………本当ですか?」

 

【実は公式で親衛隊でした】

華琳「一時期は料理人に専念したいと言っていたけれど、今は両方頑張っているようでよかったわ」

陽(太史慈)「こないだ張英と于糜が本物の親衛隊の存在知らずに名乗ってたらシメられててさ…しょーがねーから俺も一緒に謝ってやったけど、あんな可愛い顔して結構容赦ねぇお嬢ちゃんだよな」

月「…ご主人様と御一緒でしたら(厨房の)使い方は問いませんけれども、後のお掃除さえちゃんとして頂ければ。あ、これ華琳さんと祭さんにもお伝え頂けますか?」

季衣「前の服、もう小さくて着れないって言ってたのにたまに嬉しそうに洗濯してるんだよねー。なんでだろ」

 

【仲達の理解の及ばない存在】

桐花(荀攸)「うわべの性格じゃないの。自分自身気づいてなくても、同じ性癖を隠してる女ってニオイで分かるのよ(ドヤ顔)」

華琳「可愛くなったわよね…(溜息)」

杏(逢紀)「…あんなにこにこ穏やかな人でしたっけ?あと滲み出るエロさが昔に比べて五割増し」

仲達「公共競馬組合の方から出入り禁止依頼が来ていましたので調査しましたが、特に不正等は無かったので却下しておきました」

 

【無慈悲な夜の女王?】

白蓮「総務室の癒し枠だよな。詠も可愛いけどさ」

稟「彼女は公平無私なので今の位置にいるのだと思います」

小蓮「なんであんな女が後宮の元締めやってんのかしら。そのうち取って代わってやるんだから」

許攸「ひ…!や、やめてよ言うこと聞くから!」

 

【一触即発】

詠「魏の理性ね」

流琉「憧れです」

春蘭「可愛い妹だぞ!」

冥琳「一刀の二番目の姉らしいな。所詮は二番目のだがな」

 

【生脚ヘソ出しマーメイド】

仲達「一刀様の最強の鎧と言えるでしょう」

星「庭先で主と一緒に昼寝をしている姿には、何か邪魔出来ない雰囲気がありますな」

音々「大陸一の飛将軍なのですぞ!」

魯粛「…どうしてあれだけ食べてあのお腹なの?あたしなんてちょっと点心食べただけなのに…ううう…」

 

【1:ラスボスの名無〇さん】

華琳「どこがどうというわけじゃないんだけど、…ずるいくらいに上手いわよね」

詠「天下御免の卑怯者。いつか倒すわ」

桐花(荀攸)「最悪の襲わせ上手ね。本物のMでもないくせに」

美羽「色々と恩人だから悪く言えないけど、もう少し皆と仲良くして欲しいです」

鍾会「誘い受けの天才ですね、勉強になりますよ。何よりあの人凄いのは、一刀様の価値観や性格まで相当正確に『読んで』気持ちよく抱かせてるとこじゃないですか」



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司馬日記51

その後の、とある文官の日記です。

遅筆の駄文でいつ御見限られても不思議ではありませんが、皆様の御笑覧、コメントを本当に励みにしております。
いつも有難う御座います。


7月11日

三国定例会議にて、馬超殿より西羌から使者が来て一刀様に面会を依頼されているとの事案があった。

思案顔で言われる事には、西羌は先に蔡文姫殿が匈奴から輿入れした事を聞きつけ外交上の思惑から同様に美姫を輿入れしたい意向とのことだ。

一刀様は自由恋愛の観点から御反対され、各国首脳も切りが無いという御見解であり劉備様も当初は中立であったが曹操様孫権様のご説得により結局皆様反対された。しかし一方匈奴は受け入れて西羌は受け入れないという事では後々外交上のしこりとなるという意見もあり、なんとか先方より辞退されるような策は無いかとなったところ、仲徳様が

「ちょっと本読むだけで脳内麻薬生成出来る方がいらしたと思うのでー、書庫で阿片漬けガン決まり性奴隷を陵辱しているところを(輿入れされた娘に)見せつけられたら流石に辞退されるんじゃないでしょーかねー」

と言われると陸遜殿が顔を青くされ、

「ひ!?そ、そんなことでしたらぁ、うちと蜀に喜んでそういう事する人が居るじゃないですかぁ!」

と叫ばれた。すると詠様が据わった目をされながらああ…、と言い、会議室に関羽殿と甘寧殿を呼ばれ妙に面倒臭そうに事情を説明されると、御二方とも『本意では無いが御主君の為に喜んで犠牲となろう、いかな辱めとも国家天下の為ならば厭うものでない』と何故か鼻血を出されながら快諾された。

台本は陳琳殿が協力されることとなり散会となったが、遠い目をされた一刀様が詠様と帰りしなに

「俺、歴史の教科書にどんだけ鬼畜な奴って書かれるのかな…」

「死んだ未来の評価なんて気にしてもしょうがないでしょ、連中の欲求不満解消も兼ねてんだから頑張んなさいよ」

と話されていた。

 

しかしそもそも、一刀様の愛妾は健康で性質よく見目麗しい者であれば洋の東西問わず何人居ても良いと思うのだが。

 

7月13日

月様が復帰された。心なしか痩せられたように思われたが、言葉や歩き方などはしっかりしており笑顔も見せ

「これを用意しておりました」と書類を劉璋殿らに配られた。

標準メイド事務仕様書と記載されており、掃除洗濯料理等の標準要領が述べられているものであり詠様の御相談を受けられた一刀様が作成を御提案なさったらしい、流石は御慧眼の一刀様だ。

またほぼいずれの事務も凡そまでは各人で行い、ツメの作業は月様に引き継ぐという内容になっていた。

 

この標準要領という考え方は興味深い、能力の高低や得手不得手に依らず比較的安定した業務品質を得られる可能性がある。

 

7月14日

先日の祝いに伯道(郝昭)と飲んだ。

一刀様について熱く語っており、惚気の要素も多分にあったが一刀様の素晴らしさをより理解してくれたようで良かった。

 

また仕事の話として月様の標準仕様書について語ったところ、夜伽についてもそういった標準要領があれば良かったのだがと言われた。

言われてみればそうかもしれない、経験豊富な方に伺ってみよう。

 

7月15日

久しぶりに三国一に飲みに行ったところ、

「【ガチ】西羌の女がちびって逃げ出すくらい鬼畜なプレイを考えた奴が優勝」という章が立てられていた。

章立てしたのは錦帆賊という筆名の方だった。

 

7月17日

御伽の標準要領の作成について公達様に伺ってみたところ

「いい、ちゅーたつ?ここ(後宮)じゃ他の女と被んないようにって日夜女共があーでもないこーでもないって自分と一刀様だけのえっちを模索してんの。それに一刀様の身にもなって見なさいよ、判で押したようにちゅっちゅして揉んで吸って突っ込んで出して終わりで楽しい?あんたもうちょっとねぇ、そっち方面の常識身につけた方がいいわよ」

と鼻で笑われてしまった。

公達様のお言葉も尤もではある、つまり初心の者にのみ必要なものなのだろう。一方これを作成出来るのは熟練(?)の方であろうからある意味矛盾を抱えてしまっている。

私の自身で書いてみようかともしてみたがなかなか難しく、初学の者への指導も吝かでない方に依頼してみよう。

 

7月19日

夜伽標準要領について執筆のお願いをしてみたが、詠様稟様と立て続けに断られてしまった。その際に依頼をされただけで気分を害するので依頼しない方が良いと御意見を頂いたが、譜代の方で面識のある方のうちかなりの方となってしまった。

一方太史慈殿、張任殿、伯道らによると絶対あったほうが良いという。どうしたものか。

 

7月21日

久しぶりに白蓮殿と飲んだ。

いわく、期限付きながらも総務室の担当事業部長に抜擢され来週からそちらの事務も行う事となったという。

まだ具体的な内容は聞かされていないが三国全体に関わる仕事は初めてであり、非常に楽しみにされているとの事だ。

白蓮殿ならばきっと良い仕事をされるであろうし、友人の昇進活躍は喜ばしいことだ。

 

7月22日

詠様に呼ばれ総務室に伺ったところ、

「先日の標準仕様書の件だけどね、アレ仕事用のやつはいいものだと思うの。でもう穏と朱里と稟とは下話してあるんだけどね、白蓮を基準に、『白蓮だったら出来る事』『白蓮だったら出来るやり方』で事務基準、軍事基準を作ることにしたから。来週から作業部会始めるから手伝ってね」

と言われた。

先日白蓮殿が言われていた事業はこの事であったのか。

 

7月24日

先の夜伽標準要領について、袁紹殿や劉備様他この人なら断られないのではと紹介頂いた方々のうち数名に執筆して貰えたが、受領したものは抽象的でわかり難いものであったり、性的嗜好の偏りが感じられたり一刀様は本当にこのような事をなさるだろうかと疑問なものが多いように思われた。

なかなか難しいものだ。

 

7月25日

夕食後、士季と士載にも御伽要領が必要であったか聞いてみたところ士載はあれば良かったと言うが士季は別段不要であったと言い、また士載は

「性協の方にある『七子』って本の方が為になりますよ、あんまり具体的な方法とかは書かれてませんけどね」

と言う。

房事に熟達された方のようだが、七子とは誰なのだろうか。

 

7月26日

一刀様の呼ばれ方についてふと考えてみた。

統一後の入庁者、後宮入りした者は多くが『一刀様』とお呼びしているが、草莽の頃からの方々は思い思いの呼ばれ方で興味深い。

詠様の呼ばれ方は初めて見た時は如何なものかと思ったが、月様が言われるように総務室外では一刀様を立てるようよく気を使っておられるので多少は慣れてはきた。しかし文若様と公台殿の言葉遣いはどうしても受け入れ難い。

また一方劉璋殿、張任殿の『旦那様』という呼び方は聞いていて非常に好ましく思われる、臣としての敬意のみでなく私においても斜め下から御支えする意思が感じられる。

…メイドは一刀様を旦那様とお呼びしても良いのではないか。いや、女房気取りな響きもあるだろうか?しかし分を弁え、糟糠の妻たる奥方様らをしっかりと立て下働きに徹する心根を持ち続ければ必ずしも不敬とは――――

 

7月28日

一刀様によると、天の国の一刀様の住んでおられた地域では民間労働者も一定程度労働者としての権利を保護されている他、一般庶民の児童や被扶養者の生存権や人格に関わる権利も保護されているという。

また重婚も認められていないとの事だ。

一刀様のような魅力溢れる方はどうすればよいのだろうか、天の国は想像を絶する文化科学の進歩があるようだがこの点ばかりは一刀様にはこの世界が適していらっしゃるのではないだろうか。

 

天の国については、一刀様の御心を乱さない為御身辺に関わる事項については深く伺わないという三国の申し合わせがあるので多くは伺えない。

どうか一刀様にとってこの世界が望郷も起こらぬほど住みよい世界でありますよう。

 

7月29日

うっかり机に向かったままうたた寝してしまった、健康には留意せねば。

昼休みに食堂で凪と亞莎にあった為、一緒に昼食を摂りながら凪に何故未だ帝たる一刀様を隊長と呼ばれているのか、凪ならば『貴方』と呼ばせて頂いても良いのではないかと聞いてみた。

しかし凪はそんな呼び方は偉そう過ぎて恥ずかしい上、隊長という呼び方は自分と李典工場長、于禁殿にとって特別であるからこのままとしたい

と照れ笑いながら答えた。また『北郷警備隊』という一刀様を隊長とした隊員三名の組織は現在も形式上残されており、不定期に活動を行っているという。

しかし偶然か凪の席の後ろを通りがかった李典工場長が

「そら呼び方隊長や無くなったら凪の大好きな根性注入プレイも御褒美プレイも出来ななるから止めれんわなぁ」

と呟いて通り過ぎると凪は真っ赤な顔で工場長を追いかけて行ってしまった。

 

7月31日

逆に一刀様がお呼びになる場合を考えてみたが、私の他には偶に黄蓋殿を呼ばれる他は「さん」付けで呼ばれている者が見当たらないように思う。子敬に聞いてみたところ他には張昭殿位しかいないらしいが、二人とも中々に気難しい人物だと聞く。

…二方には失礼だが、私も一刀様に気難しい、扱い難い女だと思われているのだろうか…

 

8月1日

再び凪と昼食を同じくした際、同様にさん付けで呼ばれている人はいるだろうかと聞いてみたが思案顔で直ぐに思いつかない様子であった。

しかし私が余程落胆しているように見えたのか、一刀様の元へ連れられ何故私はさん付けなのかを聞いてくれてしまったところ、

「いや、菫(曹休)さんもさん付けだし…うーんなんて言うのかなぁ、俺なりの敬意と愛情表現なんだけど」

とのお言葉を賜った。身に余るお言葉にお礼申し上げようとしたが凪が『仲達さんは名前だけで呼んで欲しいと思うので是非呼んで下さい』と言うと一刀様はそんなことでいいんならと仰りながら私の横に立たれ、何をなさるのだろうかと思っているとぎゅっと肩を抱かれ低い声で

 

『…仲達』

 

と耳元で囁かれた、と思われる。

思われる、と言うのはその直後失神してしまったらしく救護室で眼を覚まし、その間の記憶が無い為だ。

わざわざお迎えにいらして頂いた詠様に呆れ顔で

「起きた?…あんた仕事にならないから、暫くあいつと接触するの禁止。…ウソよ、そんな世界の終わりみたいな顔しないでよ。さ、仕事戻るわよ」

と言われてしまった。

 

あの声色は日頃の御優しくお心遣い下さる一刀様とはうって変わり、君臨する者の、聞く者をして喜んで従わしめる、なんと言えばよいだろうか…言うならば服従心を刺激してやまぬものであった。

勤務に復帰してからも多少ぼうっとしてしまっていたのか、詠様に

「あんた本っ当にメイド根性って言うか使用人根性が骨の髄まで染みついてんのね、上から目線で接されるのが嬉しくって死にそうって言うか、命令され体質とでも言うのかしら?ここまで来ると逆に感心するわ」

と再び呆れられてしまったが、一刀様の新たな魅力に気づかせて頂いた感動に今夜は眠れそうに無い。



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事後シリーズ11

その後の祭さんと一刀さんです。熟女大好きです。

いつも御笑覧有難う御座います。


振り向かせながら、限界まで合わせていた唇を離す。

ぷはっと音を立てた後、ぜいぜい息を吐きながら彼女のお尻に押し付けていた腰を離し、握り締めた乳房を手放してのろのろと彼女の脇に体を横たえた。

 

二人の喉から発せられる、激しく愛し合った余韻の騒音に暫く聞き入る。ていうか息が上がって動けない。

 

「…昼も、そうしておれば良いんじゃ」

多少なじる響きを持って、呟かれた。

「昼も、って」

ニュアンスに思い当たる節はあったけれど聞き返す。

 

「もっと堂々としておれと言うことじゃ、判っとるじゃろうが」

「んー…それなりには、してるつもりなんだけど」

「お前の態度は浮気のばれた駄目亭主じゃな。薫(張昭)も言って居ったぞ」

「ひでえ…」

祭さんにはこの手の説教はよくされる。

 

「この間も冥琳と夏侯淵がぎゃあぎゃあやってたではないか、『黙って俺の言う事を聞け』くらい言えんのか」

「いや、二人のどっちの言うこともわかるし世話になってるしさ」

「亞莎が胡麻団子を持ってきた時だってそうじゃ。アレもはっきりモノが言えんのも悪いが、団子の褒美に今夜呼んでくれと顔に書いとるのは判りきっとるんじゃから尻を一発引っぱたいて『今から来い』と言ってやれば良いのに、何を二人して『もし良かったら』だの『やっぱり嫌なら』だの『御都合が悪かったら』だのやっとるんじゃまどろっこしい」

「んな『ぺーん』なんてやったら亞莎泣いちゃうよ」

と言いながらも実は意外とびっくりして照れながらも喜んでついて来るかもしれない、と思ったけどそれは言わない。

 

「うちの姫様方だってそうじゃ。…特に権殿は、お前が引っ張ってやらねばいかんぞ」

「んー…」

それはちょっと分かる。 亞莎程下から目線じゃないけど、自分の恋愛下手を自覚し過ぎてる所為かいまだにおっかなびっくり接されてるようなところがある。その一方で構い足りないと悲しそうにするしよく構えばにこにこと嬉しそうにしてくれてそこがまた健気で可愛いんだけど。

「まあ分かるところはあるんだけど、あんまり強引にすると蓮華は怯えちゃうタイプ…性格だと思うよ」

「そんなことは無い、がっと引き寄せてしっかり抱いてやれば権殿も自信を持つ。それでしっかりお前についてくるようになるんじゃ」

「そーかなぁ…」

祭は呉の娘たちの事はよく見てるなと思うことも多いけど、対応がちょっと大雑把過ぎるだろと思うところも無くも無い。

「策殿は出来た嫁じゃ、大事にするとよいぞ。うむ、あれは三国に誇る出来た嫁じゃな」

「そうだねぇ」

ちゃらんぽらんなようでいて人情の機微にも敏い。いい加減そうな口調で誤解されがちだけれどさりげない気遣いは要所要所では出来る方だ、めんどくさいとやらないけど。

「都合のいい女扱いするなよ?」

「勿論。ただねえ」

ふと、たまに感じる事がつい口に出た。

「いや、これは冗談みたいなもんなんだけど」

「なんじゃ」

「雪蓮はねえ…なんか大事にし過ぎると刺されそうって言うか、攫われてどっか遠くに拉致られそうな気がすることがある」

「ぶっ…はっはっはっはっは!」

「祭さん、夜中だから!」

「ふははっ、すまんの」

爆笑された。

「珍しく背負っているではないか、小僧の癖に」

「いや、うーん…これは俺の勘違いかもしれないけど、俺雪蓮にはほんとは物凄い愛されてるのに、蓮華とかに気を使って顔に出さずに遠慮されてるような気がたまにするんだよね」

「鋭いではないか」

祭さんの口調が真剣味を帯び、彼女の方を振り向くと目が笑っていない。

「やっぱそうなのかな」

「…本当に遠慮されているか、無意識に御自身を抑えておられるかは分からん。ただ、策殿はお前の事を本当に愛しておいでだ」

「…有難い事だね」

「そうじゃ、もっと有り難がれ」

言葉の端々に、祭さんの雪蓮への慈しみを感じる。三姉妹の中でも、若くして盟主となった雪蓮には特別な思いがあるのかも知れない。

「それはそれとして、小蓮様。アレは大変じゃぞ」

「…祭から見てもそうなんだ」

ですよねー。薄々気づいてはいるんですけどねー。

「俺と会う前の、もう少し少女だった頃の雪蓮てあんな感じだったのかな」

「ふむ…ちと方向性が違うから何とも言えん、当時は雪蓮様は色々なものを背負われていたしの。しかし小蓮様は世が世なら雪蓮様よりも英雄たりえた資質があるぞ」

「…既にある意味、英雄らしい片鱗は見せてるしね…」

気に入らなかったら華琳だろうが月だろうが、全方向に喧嘩売りに行きかねないのは見ていて危なっかしい。以前だったら体格も立場も文字通り格が違ってたから微笑ましいで済んでたけど、最近は腕っ節も体つきも大分成長してきてそのうち力づくで通してしまいかねない雰囲気がある。…夜も全く遠慮無く、若さに任せて激しいし。

「あれこそお前が乗りこなさねばならぬじゃじゃ馬じゃぞ?わかっとるのか」

片肘を立てて、祭が半身を起こす。

「いやもう…事によっては俺の言うことだって聞いてくれない事もあるし、無理じゃない?」

「ああもう、そんなことでどうする」

じれったそうな声がすると共に、視界が祭の顔と髪でいっぱいになる。

「よいか一刀、女は口でああだのこうだの言っても駄目じゃ、身体に教え込め。抱いてお前のものにして、そして初めて女は言う事を聞くようになるもんじゃ」

それは偏見、とは言わずに自然に彼女と唇を合わせて舌を絡める。ややあって祭が僅かに離し、出来るか?お前に、と妖艶に笑う。

 

「出来るさ」

答えながら身体を入れ替えて、仰向けになった祭の長い脚を両肩に抱える。

「手始めに、いつまでも小僧扱いする祭を。心も体も、征服する」

「ほう面白い。やってみよ……っ、はぁっ…あぁっ」

身体を彼女の方に倒しこみ、腰を限界まで押し進めると眉根を寄せて半眼になった彼女に、耳元で囁く。

「俺のものになれ、祭」

「っふうン…なるかどうか、身体に訊け」

「言われるまでもないさ」

微笑に微笑で返し、猛然と滾りをぶつけていくと、瞬時に祭の表情が女のそれになる。

「そうじゃっ、もっと、もっとじゃっ、わ、儂を、お前のものにしてみせよっ、くあっ」

その最中は、結構そう褒めてくれるのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう………………ふふふ。…まあ、少しはやるようになったがの。……まだまだ、じゃな」

どんなに息が上がってても腰が抜けてても、その後は必ず嬉しそうに駄目出しして寄り添ってくる祭さんがどうにも可愛いんだよな。

俺の、祭。



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司馬日記外伝 あなたはこの人をどう思いますか?2

とある文書局が、聞き取り調査をまた行いました。

いつも御笑覧有難う御座います。


【素だから恐い】

猪々子「いつもほんわかしてるよな。可愛いし」

明命「脳に行く栄養が胸に行ってしまった方一号さんですね!二号?天和さんですよ」

汐里「(水鏡)女学院で講演やってもらったのはいいんですけどね、友達家に呼ぶ感覚で(後宮に)『おいでおいでー!』って学生煽るのはちょっと勘弁して欲しいんですよね」

焔耶「閨で御一緒すると、その…私を御気遣って下さってるんだと思うが笑顔で凄い事をされてしまうのはちょっと…お、御館様の目の前であんな格好をさせられて、あ、あんなに指で拡げられるなんてっ」

 

【最強親娘?】

真桜「最近はもう年の離れた姉妹にしか見えへんで」

華琳「色んな意味でどっちも化け物よね」

小蓮「シャオがあんながきんちょに負けるわけないじゃない!」

音々「何の疑問も持たずに親子丼で絞り抜いてそうなのです…」

 

【珍しくフォローに廻る宝慧さん】

冥琳「もう少ししっかりしてくれば任せきりに出来るのだがな」

蒲公英「…痴女?南の方の人の服装ってわっかんないんだよね」

七乃「変態痴女軍師さんですね」

宝慧「いやねーちゃん達、ちち女軍師くらいにしてやれよ」

 

【なんだかんだ言って夜は言いなり】

華雄「苦労人だったが、報われたようだな。最近は以前のような力みが取れたように見えるぞ」

沙和「可愛いって言える範囲のツンデレってあの辺までなの」

月「今の仕事になって益々大人びたって言われますけど、私は益々可愛くなったって思います」

汐里(徐庶)「こないだ風呂上がるとき、脱衣所の隅っこでこっそりパンスト直履きして一刀様の部屋行ったの見た」

 

【煽らずにはいられない体質】

恋「…メンマもらった」

汐里(徐庶)「出来るんだから仕事して」

白蓮「飄々とした奴なんだが、意外と打たれ弱くて一刀が構ってやらないと駄目みたいなんだよなぁ」

愛紗「既に我が国の重鎮なのだから、自覚を持って働いてもらわなくては困るぞ。…それはそれとして先日言っていた『華蝶仮面捕縛陵辱プレイ』とは何なのか詳しく教えてくれ、ご主人様に聞いてみても目を丸くしてそんなものは聞いた事が無いととぼけられるばかりなんだ」

 

【カリスマ営業一刀さん】

紫苑「桔梗もそうですけど、良い飲み友達ですわ」

蓮華「…そうね、私達姉妹は皆お世話になっていて頭が上がらないわね」

陽(太史慈)「飲みながらだとお説教長ぇんだよなぁ…」

魯粛「単に構うだけじゃなくてうちの若い娘たちの前でおっぱい揉みながら誘うって言う、この人が喜ぶ事を照れずにやってのける一刀様ほんと尊敬します。…一刀様が他の娘に人前でそういう事絶対しないの疑問に思わないのかとかちょっと思いますけどねぇ」

 

【だれうま】

霞「鼻っ柱の強さは半端ないわ。こないだ鍛錬で叩きのめしといたけどな、へこたれん所は見上げたもんや。ありゃ強うなるで」

詠「…一番の問題児じゃない?藤香(劉封)や玲紗(関平)よりも」

祭「ある意味、呉を象徴する方じゃな。まあ蓮華様がしっかりしていれば良いことじゃ」

蒲公英「あの娘次の日、何回やったっていつも自慢してくるんだよねー。まあ蒲公英も負けないけどさ」

魯粛「腰に弓じゃなくて腰が弓」

 

【桃香様自重】

桔梗「まあまだ色々と、発展途上じゃな」

春蘭「猪武者だな!…なんだその鏡は」

蒲公英「こないだなんか溜息ついてたから『ご主人様に誘ってもらえないの?そりゃそんなズボン履いてたらめんどくさいから声掛けないよねー』って煽ったら次の日から暫くスカートになっててちょっと笑っちゃった」

桃香「こないだ一緒にご主人さまに可愛がって貰って嬉しそうだったから、今日も誘ったんだけど遠慮されちゃった。もっとがーっと積極的に行かなきゃだめだよ、蒲公英ちゃんに負けちゃうよ!?うふふっ」

 

【いともたやすくトラウマをえぐる七乃さん】

焔耶「あまり知らないが、物凄く頭が良いらしいし仕事は厳しそうだな」

地和「えっと、鼻血よく噴いてた人?」

沙和「身体むっちり心はムッツリなの」

七乃「深酒防止啓発運動の壁紙とか似合いそうですよね?」

 

【いまさらながらもどうしてこうなった】

星「普通にしてさえ居れば一人で何もかも持っていった筈の女ですな、私から見れば」

汐里(徐庶)「あれ?もう矯正されたんでしょ、まだ歪んでんの?うちの武神様」

霞「凪と違ごて『一緒に(一刀んとこに)行こ』言うてもなかなか首縦に振らんねん、あと一押しっぽいんやけどな」

桃香「えっとねえ?こないだ酔っ払って『縛って転がして、見せ付けるように二人で愛し合って下さい』って言われたんだけどね、私は三人で仲良くの方が好きだなあって…」

 

【ロック☆オン】

恋「ご主人さまが好きなのに好きって言わない。…ふしぎ」

沙和「ちょっと踏み越え気味のツンデレちゃん?」

桐花(荀攸)「最近ちょっとマシになってきたけど、あたしあの女嫌いなのよねー」

斗詩「次蹴ったら…うふふ?」

 

【負けるなお嫁さま!】

詠「何にも考えてなさそうな割りに結構人の気持ち分かるのよね。あのまま王やってた方が良かったんじゃないかしら」

冥琳「あいつは引退出来て私は出来んとはどういうことだ」

七乃「あの人意外と常識人ですよ」

蓮華「強くて人望もあって、…すぐ人と仲良くなれて、本当に自慢の姉で…そ、それなのに私は…ぐすっ」

 

【すけべという説得力】

小蓮「びっち女」

凪「訓練のあの叱咤と言うか罵声と言うか、あれはなんとかならないかと思うんですが、入隊希望者は増える一方らしいんです…」

地和「え、魏の人だったの?いつもいいの持ってて話も合うし、もうメイク兼スタイリストで雇おうと思ってたのに」

真桜「みんな誤解しとる思うけどな、(家事)一通り出来るし一途ですけべやし、あらぁいい嫁なるで?仕事はぼちぼちやけどな」

 

【鋭い!?】

蓮華「何でも出来て羨ましいわ」

楓(曹真)「最近は本当に丸くなって、いよいよ女の子らしくなられてますよね。お幸せなようで嬉しいです」

雪蓮「乱世の奸雄も最近は器用貧乏なとこが目立つ気がするのよねぇ。あたしみたいに引退しちゃえばいいのに」

小蓮「ふん…ああいう澄ました女に限って変態プレイに現を抜かしてるに違いないわよ」



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司馬日記 【後宮限定!阿蘇阿蘇特別編】一刀様と、夜のタ・イ・ダ・ン

大分間が空いてしまいまして申し訳ありません
その後の、とある文書局の取材風景です。


記者:陳羣(以下陳)「それでは本日の御客様!一刀様の御登場です、いえーい!」

記者:楊修(以下楊)「イエー!」

記者:司馬孚(以下司)「い、いえーい…」

一刀様(以下一)「…えーっと、どうも…」

陳「前回の御登場から二ヶ月程で再度の御登場有難う御座います!まぁとりあえず一杯どうぞ」

一「ありがと、ってこれお酒だよね?」

陳「定時過ぎてるんで問題無しです、固い事言わないでこっちの方カタくしちゃって下さいよぉ」

一「ってか取材じゃなかったの?あとあんまりオヤジギャグ言ってると本当にオヤジになっちゃうからほどほどで」

楊「はい、御案内の通り夜の取材です!賈詡さんがどう受け止めて御説明されたかは知りませんが!」

一「予定表に阿蘇阿蘇取材(夜)って書いてあったんだけどそういう意味だったの!?」

陳「まっ、細かい事は言いっこ無しで。んじゃ早速取材させて下さいねー」

一「どこ触ろうとしてんの!?ダレに取材しようとしてんのさ!?」

陳「おっとうっかりしちゃいました、御子息に取材するのはまた後で。ではまず御本人に、最近どうですかコッチの方は?」

一「結局取材されてる!?真面目な話、幸い無事というかまあ、健康にと言うか…元気に仲良く暮らさせて貰ってるけど」

楊「色んな女にブチ込みまくってヒイヒイ言わしてる…っと」

一「身も蓋もないね!?」

陳「うちは『事実を客観的に端的に』が売りですから。漠然と聞かれても難しいでしょうから具体的なところで、最近お気に入りの女とかは」

一「いや…みんなそれぞれ魅力的で、誰より誰がと言う事は無いんだけど」

楊「昔の女共の女房づらが最近うざい…っと」

一「言って無いよ!?言って無いからねそんな事!」

陳「実際どうなんです?呉の(検閲)さんとかうちの(検閲)とか、どこに所属してんのか知らないけど(検閲)とか」

一「名前のとこ修正入るんだよね!?いや(検閲)も(検閲)たちも、ホント皆それぞれ俺の事愛してくれて有難いとしか思ってないから」

陳「では次で、最近お気に入りのプレイとか」

一「スゲー具体的過ぎるんだけど…まぁこれもどうでなきゃって言うのは無くて、相手の娘とその時の気分に合わせてで」

楊「騎上位は嫌いだという噂は?」

一「そんな噂立ってんの!?」

陳「違うわよ、アレ信者の娘たちが上になるのは不敬だって言ってやらないのと、上になっても碌に動けなくてちゃんと出来ないからやる人が少ないだけなんじゃない?」

楊「そうだったんですかぁ」

一「俺も初耳だよ!」

 

陳「最近は巨乳娘の後宮入りが増えているとか言われていますが、実際貧乳と巨乳はどちらがお好みで?」

楊「あの編集長私と叔達見比べなら聞くのやめてもらえます?セクハラですよセクハラ」

一「月並みだけどなんつーか…それぞれの良さがあるし、その娘のおっぱいだから好きだってのが一番で…あのなんか恥ずいから少し手加減して?」

楊「ちょっと小さめ位が一番好みだ…っと」

司「そうは仰っていません」

陳「あんた今日初めて喋ったわね。ホント一刀様の前だと大人しいんだから」

一「いや、さっきから黙々とお酌してくれて、ちょっと飲み過ぎてやばい感じなんだけど」

司「申し訳ありません…」

一「あ、ううん大丈夫だから」

陳「叔達の話題が出たところで、姉妹丼とかは」

一「…まあ、相手の娘たちが嫌じゃなければ俺としても別に吝かではないけど、あんまり何人もだと落ち着いて出来ないからちょっと申し訳ないよね」

陳「八姉妹丼もアリ?」

一「幼達ちゃんの年が幾つか知ってるよね!?」

楊「穴に入れば八人でもオッケー…と。そして叔達がやる気を漲らせてぐっと拳を握り締めましたっと」

一「叔達ちゃん!?」

陳「まああの仲達が首を縦に振るかどうかは置いといて、次行かしてもらいますと年上か年下かって言ったら当然年上ですよね」

楊「具体的には二歳上位が一番好みってことでいいですね?」

司「同い年は如何でしょうか」

一「そのへんもデリケートなアレだから勘弁して、君らの事は当然好きだから!ところでこれ発禁もんじゃないの?」

楊「後宮限定販売ですから問題ありません」

一「…尚更うっかりな事言えないなぁ」

陳「いやいや皆一刀様の本音が聞きたいんですよ、次は『ツンデレな女は生意気で嫌い?』」

一「…誰のことだか分かんないけどね、まあ言葉きつい娘達もいるけど愛されてるの分かってるから」

陳「までも、桂花みたいに話す時あれだけべったりくっついてたり、とりあえず一言文句言うけど結局なんでも言いなりの詠みたいなら分かると思いますけど、陳宮みたいなのはどうなんです?この女シメてやろうかとか私たまに思いますけど」

一「シメないでね!?桐花(荀攸)みたいなこと言わないで!」

陳「ああいうのを夜にアンアンいてこますのがお好みなんですか?昼は威勢がいいくせにここは嬉しそうじゃねえか的な」

楊「M女ども大歓喜、まさかの一刀様どS説」

一「そんな事してないから!フツーに仲良くしてるって!」

陳「でも一刀様、あんまり女にでかい態度取らせてると風紀上良くないですよ?詠とか皆言ってますよ、一刀様がうっかりどMじゃなくてよかったって」

一「確かに皇帝がどMじゃ格好つかないだろうね」

陳「話のついでに、M女はどうですか。桐花とか」

一「…まぁ皆性癖は人それぞれだけど、一緒に楽しく仲良く…元気よく?ただ痛そうなのだけはNGで。あとそういうの好きじゃない子にしたいとかは全然無いから…まほんと、人それぞれで」

陳「なのに春蘭に対してだけはどうしてあんなに寝床ヤクザなのかと、方々のM女から不満続出な件については」

一「………いや、なんか…………つい?」

楊「先月の『壁ドンからの連れ込み事件』はM女だけでなくかなりの女が羨ましがったのは御存知で?」

一「稟とか詠とか蓮華とか、最近二人きりだと妙に皆壁を背にして喋るようになったのはそれのせいだったの!?」

陳「多少強引気味に誘われた方が求められてる感があって喜ぶ女って多いですよ?あたしもそうですけど…ってこっちが語る場じゃないんで次、ツンデレの対極の『従順子犬系女は気を使うのが面倒臭い?』」

一「くさくないから!みんないい子だから!なんかさっきから聞き方に悪意あるよね!?」

陳「首輪貰ってニッコニコですもんね凪とか」

楊「呉の呂蒙さんとかすっごい羨ましそうにしてて。あんなに可愛いのに」

司「…………」

一「叔達ちゃんそんなに見つめないで!?君そういう娘じゃなかったよね!?」

陳「仲達とかにあげないんですか?気絶するほど喜びますよ」

楊「ガチで気絶するでしょ、それかマジ泣き」

一「いや、あれは恋とそのあとに凪がどうしてもって言うから…つかそういう贈り物って無礼だし基本もうしないから」

陳「これを読んだ桐花が血涙流す姿が目に浮かびます」

楊「いえ、桐花さん自前で持っててプレイ中には自分でつけて一刀様に引っ張って貰ってるんですって。ねえ一刀様」

一「ノーコメントで。つーかこのインタビュー色々踏み込みすぎじゃない!?」

陳「そうだ、贈り物って言えば一刀様のマメさには全後宮がびびってますがそこらへんは」

一「いや、別に高価なものって殆どあげた覚えないけどなぁ」

楊「そこじゃなくてですね、どうしてあんなに手作りとか直筆とか特注とかされてるかって方で!」

一「…?えーと、だって大事な彼女さんだし?」

陳「っつったって程度問題ですよね!?うち(文書局)の方で調査かけましたら驚愕の事実が浮かび上がりましたよ!例えば先月の二十八日は誰に何あげてました?」

陳「人和自身が初プロデュースしたライブの3周年祝いでメガネあげたね」

楊「つるに『人和へ一刀より』って彫ってあるそうで?」

一「あーうん、そうかな」

陳「じゃ十五日には」

一「朱里の丞相再任祝いでフリーサイズのブックカバーか」

陳「そのブックカバー、大事にしてるそうですが見かけないと聞きますが?」

一「…あー、うん、何の本にかかってるんだろうね。まあ個人の趣味はそれぞれだから…」

陳「七日には霞に雁門…霞の故郷の方の衣装だったそうですが何の記念で?」

一「うん、いつか羅馬に行こうって約束した日だね。2年経っちゃったけど忘れてないって印で」

陳「先々月の二十一日には」

一「陽(太史慈)に展示会用のバニースーツ」

陳「その前の日は」

一「秋蘭に手紙」

楊「初めて『秋姉ぇ』って呼んだ二周年のお祝いだったというのは本当ですか?」

一「…ちょっと呉と政治的な問題があるからノーコメントで」

陳「更にその前の日は」

一「流琉の誕生日祝いで包丁プレゼントしたね」

楊「その後流琉を料理して食べましたよね」

一「そう、美味しく…いや料理が美味しくて、料理がね」

陳「…更に更にその前の日は」

一「風と出会って3周年記念日で宝慧の服。宝慧嫌がってたけど」

陳「……飛んで飛んで今年の四月六日は」

一「仲達さんの総務室勤務記念日で、……服とか。って何その目」

陳「本当はエロ下着だったのをすっとぼけられたのは置いときまして、どんだけ記念日あってしかもそれ全部覚えてて何かしてるんですか!?」

一「うーん、まあ平均すれば二、三日にいっぺん位なにかしらの日かな?」

陳「しかもなんでもない日でも普通にラブレターとかあげてますよね!?桂花がなんかにへらにへらしながら引き出しになんかしまってたからいない時に見てみたら御丁寧に金木犀(桂花)の押し花までついてた手紙でしたけどあんな事皆にしてるんですか!?」

一「皆に同じようになんてしてないよ!?ちゃんとその人の事考えてモノや内容変えてるって!」

陳「…………一刀様、薄々気づいてはいましたけどガチで史上最強の性治家ですね…」

楊「そこにドン引く憧れる…」

司「…………(私も欲しい)」

一「今政治家って字が違ってなかった?」

陳「いや自信持って言いますが合ってます。さて、いよいよ本日の主題に」

一「こんだけエグイ事聞いて前座なの!?」

陳「(検閲)様ですけど」

一「うん?(検閲)?」

陳「最近(検閲)プレイにどハマリしてると」

一「………………どっからそういうネタを?」

陳「御一族の方が酔っ払われてぽろっと。なお楓(曹真)じゃないです」

一「死ぬぞあいつら…」

楊「で、どうなんです?」

一「君らも命が惜しいだろ?」

陳「ああん一刀様素敵な笑顔!ホントはガチロリの方が好みなんです?璃々ちゃんがいいんです?もしそうなら多分国傾きますけど!」

一「璃々ちゃんはもうロリじゃないからうん、そういう扱いでお願い!あと俺そろそろ帰んなきゃいけないと思うんだけど何で両脇取られて服脱がされかかってんのかな!?」

陳「本日の主題ですよ?御子息にねっとりぬっぷり取材しますって始めに言ったじゃないですかぁ、では一番手陳羣長文、参りまーす!」

 

 

 

 

※この後三人とも気絶するまで滅茶苦茶逆取材されました(記者司馬孚 注)



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司馬日記外伝 杏(逢紀)ちゃんの細腕奮闘記2

その後の、とある新米メイドの奮闘記です。

既に皆様御覧頂いたかも知れませんが、またまた飯坂様がイラストを描いて下さっておりそれに触発されて(短いですが)一気に書き上げました。
hujisaiも紹介文で微力を添えさせて頂きまして、もし宜しければ飯坂様のイラストも御覧になって頂けると嬉しく存じます。

皆様の御笑覧、いつも有難う御座います。


「――――以上です。後日でよいですがなるべく早くその書類を提出して下さい。それでは」

「はーい有難う御座いまーす失礼しまーす」

扉を閉める司馬懿さんを見送って、何か不貞腐れてる系の許攸さんに向き直る。

 

「で、一体何したんです?」

とりあえず、ここから聞かなきゃ始まらない。

「五月蝿いわね、貴女に関係ないでしょ」

「関係ありますよ何ですか身元引受人って、一刀さんのお願いじゃなきゃ断っちゃってますよ!?」

「…ちょっと、色々あったのよ」

うわ可愛くない。顔は可愛いのに。

「…まあ、しばらくの間『居候』されるってことですけど。それなり程度は行儀良くしてて下さいね」

「ふん…」

結構広かったはずのあたしの私室に、急ごしらえの折りたたみの間仕切り二つ。それぞれの奥に寝台があってそこだけが専用空間でこっちは共用の居間。今は間仕切り畳んでるけどこれ出したら居間が狭い。大分狭い。

 

…つーかこれじゃ一刀さん部屋に呼べないじゃん!?確かもうすぐ番だったはずなんだけど!?

「どーすんのよ!」

慌てて配布されてる当番表を見る。…四日後だ。

「おおぅ…」

一刀さんとこでも嫌じゃないけど、月さんとか仕事関係の人も出入りしてるからいまいち落ちつかないんだよね。遠出は今更一刀さんの予定つかないだろうし、高級なとこはまだあたしの給料じゃ厳しいし自分の店(三国一)とか絶対やだし。

「どーしよっかなー…」

「…何がよ」

寝台を椅子代わりに腰掛けた許攸さんが足をプラプラさせながら聞いてきた。くっそー貴女さえ居なければ。

「んー?まあ許攸さんには関係ないことですけどぉ、皇帝陛下と『で・ぇ・と』の予定をどぉしよぉっかなぁー、って考えてんですよ」

「…あんたも北郷様の女だったの?」

「ふっふーん、まあねん」

「噂には聞いてたけど、北郷様も結構物好きなのね」

「よけーなお世話ですよ!」

相変わらず口悪いわこの人、あー苦手…。とか言っても明日からあたしの部下なんだ、なんとかしていかなきゃ。

 

「ところで司馬懿さん、許攸さんメイドになること知らないっぽくなかった?」

「そうね、なんか知らなさそうだったわね。北郷様、あたしをあんたに引き渡せとだけ言ってたし」

「そっか。じゃあ明日改めて挨拶行かないとね。一応中ボスさんだし」

「要らないわよ。あんな無表情でどんくさそうなの、直ぐ私の方が偉くなるわ」

「へぇ……」

とりあえずおもむろに扉を開けて廊下に顔をだしてみた。

「斗――――詩―――――!許攸さんがね―!一刀さんの事なんかもがが!」

「や、やめなさいよ!?」

慌てて飛んできたんでこのへんで勘弁してあげる。

「ぷは、…やめて欲しけりゃも少しまともな口利いて下さいよ!そーゆー発言命取りですよここじゃ、それに司馬懿さんてバカ強い人ですからね!もっかい凌遅行きになっても助けませんよ今度は?」

「ふん…わ、わかったわよ…」

 

この人マジ困ったちゃんだ…はぁ。

「…とりあえず、風呂とご飯行って寝ましょうよ今日は」

「そうね。どこかアテあるのかしら」

「風呂はここの共用の風呂使えますから。ご飯は…庁内食堂が近いですけど」

「あと、斗詩と椿(審配)がどうしてああなったのか知りたいんだけど」

「あたしだって知りたいさー!」

「逆ギレしないでよ!?」

 

-------------------------

 

この人ほんとめんどくさい…今日は今日で、挨拶回りでいきなり先輩キレさせるかね普通。

総務室を後にして、涙目で唇を尖らせながら隣を歩くめんどくさいさんに話しかけた。

 

「…だぁーから礼儀正しくしてっていったじゃないですか」

「…五月蠅いわよっ、それより私の頬切られてないわよねっ?」

「切れてませんよ、司馬懿さん短戟得意らしいですからちくちくされただけじゃないですか?もみ上げはちょっと切れてるみたいですけど」

「うそ、どうしてくれんのよあの女!?」

「ちょこっとですよ、切られた跡はわかんないくらい。あの『ドンッ』ってやった瞬間にはらはらっと何本か落ちるの見えただけですから」

「…は、はんっ、総務室もあんな腕力馬鹿置いてるなんてやっぱり大した事ないわねっ…すぐにあたしが」

「司馬懿さん脳筋呼ばわりホント止めて!?あの人筋肉にまで脳ミソ入ってんじゃないかって人だから!」

「?だから脳筋でしょ?」

「逆だっつーの!」

 

ああもうどぉして分かんないかなぁ!?あたしが言うのもアレだけどこの人、人を見る眼とかも半端だしなぁ…。いいやもうとにかく済ませよう。

「まぁいいや次行こ次、次財務だから」

「……ちょっと待って。やっぱり私ちょっとお風呂行ってくるわ」

「へっ?さっき切れてないって言ったじゃん大丈夫だって、次先方だって待ってるし」

「いっ、いいのよちょっと汗かいたから!」

「えっマジで困るってー、もう話通してるしさぁ」

「い、いいから!行かせなさいよ!」

腕掴んで引っ張ってこうとしたら、結構マジな力で抵抗された。腕力は私の方があるからその気になったら引き摺ってけるけど…

 

あっ。

そうか。

そういうことねぇ。それならしょうがないよねぇ。

絶対に近い確信に、思わず口の端がつり上がってしまう。ウェヒヒヒヒ。

 

「あらぁ…それじゃぁ、しょうがないですよねぇ」

「な…何がよ」

「そりゃあ…ねえ?お汚しになった下着を換えたいのに引き摺ってくほど、あたしも鬼じゃありませんしぃーしぃーしぃー?」

ってカマ掛けたら、面白いくらい顔を真っ赤に変えてくれちゃった。掛詞まで使ってうーんあたしって文人。

 

「ううううううるさいわねっ、ほんのちょびっとだけよっ!す、直ぐに戻るからそこで待ってなさいっ!」

「先方には『そーゆー事情で』って謝っときますからごゆっくりぃ~♪」

「喋るんじゃないわよ、ばーかっ!」

 

とか少しからかって、ちょいとばかしは溜飲下がったんだけど。

 

---------------------------

 

「って感じでー、最近ホント大変なんですよ白蓮さぁーん…ね、聞いてます?」

「う、うん、そぉだな…大変だな」

「でも笑っちゃいますよねぇー!いい年してお漏らしとか無いわー、そりゃ司馬懿さんみたいな人にいきなり短戟突きつけられたらびびりますけどぉー!」

「いや、そういうことだって…まあ、なんだ、あることも無いとも言えないんじゃないか?」

「えー!?じゃあ白蓮さんも漏らしちゃう?しょーって」

「いや私はしないけどな!?あ、いや、うん…たまたまその、無いだけかもしれないけどな、なあ杏さんちょっと飲み過ぎじゃないか、そろそろ…」

「いやでも最近の私の心労もちょっと思いやって下さいよぉ、もぉ白蓮さんと一刀さんが心の支えで…ところでさっきからえーと、馬超…さんでしたっけ、顔紅くて大人しいですけどお酒弱いんです?」

「あ、ああうん、翠はちょっとお酒弱くて、な?」

「そんな事言わないで飲みましょーよ!ね、馬超さんだって漏らしたりとかおかしいって思うでしょ!?つか、馬超さんくらい美人ならそもそも厠行かないよ!うん、こんな美人が行くもんか!一刀さんだって絶対そう思ってるよ、いやむしろ見てみたいぐらい思われてるかも!ねえ白蓮さん!?」 

「杏さんマジでやめてやって!?帰ろう、もう帰ろう、な!?」



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司馬日記外伝 ※同一人物です

その後の、とある皇帝です。
悪化する前:http://www.tinami.com/view/568429

遅くなってしまいましたが、御笑覧頂けたらと存じます。


「ぷは…御馳走さん。…ううん軽い軽い、そりゃ前よりは少し大きくなった分位は変わってるんだろうけど。二人きりだからいいんじゃない、膝抱っこで食べたって。…デザートの流琉の唇も味わわせてもらったし、ってそれが一番美味しかったかな。…へ?流琉も一緒に食べてたじゃない。……ぷははっ!照れちゃうならそんなおやじギャグ言わないの!…実は俺も食べたくて仕方なかったんだ。ほら、足上げて…」

 

「ああ、つい亞莎に見とれて。…いやいやそんなことないよ。なんか前は抱きしめたら折れそうだったのがなんて言うか…女性らしい丸みが出てきたなぁって思って。そんなこと無いって、まだ細すぎる位じゃない?俺が言いたかったのはさ、最近は色々部下の子に教えたりする仕事も増えてきてしっかりして来たなぁってのも含めて、亞莎が成長してるんだなぁってのをしみじみ感じて。…いいの、あるの!折角二人でお風呂入ってるんだから、隣に来てよく見せてよ?」

 

「あー…悪いね仲達さん、重くない?そう?ずっと書類チェックしてると首と頭痛くなっちゃってさぁ…すごい安らぐよ仲達さんの膝枕。…いや、なんかこっち向きの方が座りがよくて。あったかいし柔らかいし、いい匂いするし。…落ち着かない?いや、そんな恥ずかしいなんて事は……ならさ、ベッド行って添い寝してくれるかな。あ、でもそのままだとメイド服皺になっちゃうし…素肌の仲達さん、抱き枕になってくれるかな?」

 

「んー?そっかー?やっぱ春蘭が最強だよねー?うん、最強の春蘭が逃げる必要ないよねぇちょっとここでお話ししよっか?んー別に近くない近くない。それに近くったっていいでしょ?俺春蘭の事大好きだし。春蘭近いの嫌?嫌なの?それともお耳噛み噛みされないと答えらんない?何言ってんのまだ噛んでないでしょ?ほらまだ、ま・だ・噛んでないよ?最っ強の春蘭にそんなしがみ付かれたら歯が耳にくっついちゃうなー、ほーらくっついちゃうくっついちゃう………………んー…美味しいねぇ春蘭の耳は。春蘭があんま引っ張るからつい噛んじゃったじゃん。っていうか嘗め回して舌も入れちったけど。でも最強の春蘭は耳舐められたくらいでにゃーんってなったりしないもんねぇ、覚えてる?春にゃんにゃん。俺また会いたくなっちゃったなぁ春にゃんに。え、そう?俺大好きだけどなぁすげー可愛くて。うーん春蘭もう少し素直ないい子になろうかぁ、んむ…………………ん…………ほーらよしよし頭撫で撫でー。え?駄目かなぁ揉んでちゃ、俺春蘭のお尻も大好きだけど。春蘭は嫌?俺にお尻触られるの。………じゃないけど?けど何?まだ春蘭お薬足りない?べろちゅー足りない?あそう、………………………ぷは……ほら『にゃーん』。にゃーんって言ってみて。…よーし春蘭はいい子だねぇ、御褒美にぱんつ貰ってあげるよ。…どうしてってそりゃ春蘭が可愛いから。俺があげた紐パン穿いてんでしょ?さっきお尻触って知ってんだから、っつーかもうほどいちゃったけど。……うるさいなーもうちょっとちゅーしよっか、………………………おー、このぱんつもなかなか凄いことに…いーじゃん嗅いだって。春蘭の匂い好きだよ?…大丈夫、俺は恥ずかしくない。味だって春蘭の…いーじゃん減るもんじゃなし。それとも何、直接舐めて欲しいの?ん?どうなの?…んー?よく聞こえないもっかい言って?部屋なら?部屋なら何?………あっそう、そこまでお願いされちゃしょうがないから俺の部屋行こうか。ほら肩貸すから。…いやなんかちょうどいいとこにふにふにっと柔らかいカタマリの先にコリコリっとしたものがあったからつい。大丈夫大丈夫、俺の部屋着くまでのちょっとの我慢だから。春蘭がちょっと気持ち良くなっちゃってもヤラシー声出さなけりゃいいだけだから。………ダメ?無理?…じゃ春にゃんが『お部屋に着いてからいっぱいして欲しいにゃぁん』って言えたら。……残念、ちゃんと言えなかったからもう一回。ずるくないずるくない、ちょっと指に力入っちゃっただけだからはいもう一回。ほら頑張れ♪頑張れ♪」

 

---------------------

 

「杏、こんばんは」

「あっれー、蓮華さん!?」

「ごめんなさいね、うちの思春達が迷惑かけたみたいで…」

「今までも大トラになっちゃう事あったけど、今日はもー凄いの何のって…何十回も『なぜあいつは黙っててもああなのに私達には』って二人して飲んじゃ机叩いてもう机ボロッボロ。てかあの二人の保護者蓮華さんだったんだ」

「うん、思春の方はね。愛紗の方はこっちの桃香が引き取るから」

「あ、初めまして桃香って言います。迷惑かけてごめんね、愛紗ちゃん今連れてくから」

「宜しくお願いします。…あー、これで全員帰ってもらえる…」

「?他にも酔客が居たの?」

「猫耳ちゃんとそれに顔がそっくりだけど髪が長い人がべろんべろんに酔っ払ってずーっと口喧嘩してたんだけど、さっき金髪くるくるの偉そうな雰囲気の女の人が引きずってってた。確かねぇあの猫耳ちゃんとかも役所の食堂で見たことあるよ、多分結構偉い人のはずなんだけどさぁそーゆー人が居酒屋で管巻いて暴れてるとかこの国は一体どうなってんのかねぇ?政治が悪いよ政治が、王様仕事しろってカンジ」

「ご、ごめんなさい…もう少しその…頑張るわ」

「私もすみません…」

「?何で二人が謝るの?」



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司馬日記52

遅くなってしまいましたが、その後の、とある文官の日記です。
皆様の御笑覧、コメントを本当に励みにしております。
いつも有難う御座います。


8月3日

西羌への輿入れ辞退工作が不調に終わったことが三国会議で報告された。

公達様によれば「そりゃそうよだって一刀様ってそもそもガチ虐めって出来ないじゃない、基本弄る程度で終わった後なんか超甘いし。けど一刀様のあの陵辱『プレイ』の中にほんのり混じる本気って言うか、『こいつを悦ばす為にやるけど悟らせないぞ』的な台詞の中にちょっとだけ混じってる雄の本能みたいなの?あれがびっちょんびっちょんに感じるのよねぇ」

との事だ 。個人的な嗜好につい ては別に伺ってはいなかったが、要は一刀様は御優しい為西羌を翻意させるに至らなかったということらしい。

すると士季が良策が御座いますと発言し、どのような策かと皆に問われた所個人の御名誉に関わりますので公表は避けさせて頂き上司に献策致しますと言い、上司である趙雲殿に耳打ちをした。すると趙雲殿は何とも言えないにやりとした笑みを浮かべ、士季の策は上策と思われるので任せて頂きたいと述べられ散会となった。

 

8月5日

趙雲殿から改修工事施行伺い書の稟議が回送されてきた、馬超殿の専用浴場に例の李典工場長が開発された「まじっくみらー」の取り付けと、それに隣接した小部屋を作る工事という内容であった。三国総務費からの支出になっていることにも疑問はあったが既に詠様が決裁されていたのでそれはよいとして、警備部に出向いて趙雲殿にこの浴場は馬超殿名義の個人資産であるのだが馬超殿は御承知なのだろうかと伺ってみた。すると決裁欄に蜀の丞相印と王印が押された書類を見せられ、これは蜀としての判断であり責任は持つので心配御無用であると回答された。

 

総務室に戻って件の改修設計図を確認したが意味不明な小部屋であったので詠様にこれが何か知っているかと聞くと、

「ああ、例の件ね…翠もかわいそうね。親には潼関で敗れ、子には風呂場で例のプレイ公開のお膳立て食らうとはね」

と遠い目をされ、隣席で聞いていた元直は

「あそこの下の子じゃ喜んでやっちゃいますからここは翠しかいないんですよ。いいじゃないですか結局寝床で勝てば、翠なんか勝ち組な方ですよ」

とこれも生暖かい目をし、結局よく分からなかった。

 

8月7日

三国巡幸の最終工程案が魏の総務部にも回覧された。一刀様の御移送警護事務が王都側から本国側に移る事については予算移管については事前協議があったので特段の問題は無いが、事前協議では呂布殿と文遠殿だけは御移送を担当することになっていたはずだが全て本国側が所掌すると変更されていたので総務部の窓口をされていた公達様に御事情をうかがった所

「本国側が死ぬ気で土木(工事)やりきって、経路全部例の真桜の車両で行けるようになっちゃったからね。呉は車両がそのまま入れる船開発しちゃうし、蜀も剣閣通らない経路開発したらしいしね。霞だけは自分が(一刀様)運んだ方が経費が安くて早いやろって最後まで抵抗したらしいけど、各国側の意向を受けた一刀様が霞跨らせて軽くぐりぐりっと『説得』して結局こうなったって聞いてるわ」

とのことだった。単純な旅程経費と期間であれば文遠殿の言う通りではと重ねて聞くと

「何言ってんのよ、馬上じゃ女抱けないけど車中ならいっくらでもとっかえひっかえ出来るから女の回転効率はいいでしょ?あんたいまだに御巡幸の意味分かってなかったのね、これって要は地方の女の不満解消行事なの、一刀様は女の裸を視察するのが仕事なの!産業だの治安だのはそこの女共がどうとでもするわよ」

と呆れられてしまった。

 

8月8日

一時期御健康を損なわれていた月様がお元気そうでありまた御機嫌も麗しい。

詠様によると「納得いく仕事が出来てるからね」とのことだ。

 

8月9日

互いに残業が多くあまり一緒に夕食を摂れていなかった士載と夕食を共にした。

先の御巡幸の話を思い出し、街道整備の業務について聞いたところ大変な業務であるがやりがいがあり、また最近は需要過多のため軍内に土木専門の部隊を創設する動きがあるという。

また今回の御巡幸には王都側の協力者として行程の一部で御伽も担当する事になったと恥ずかしげに付け加えた。

 

…決して羨ましくは無い。

 

8月11日

元気の無い白蓮殿に飲みに誘われ、三国一で一席を設けた。

曰く、事務標準化担当部長を解任されたとの事だ。自分では任に堪えなかったのかと意気消沈しており、大分酒を過ごしてしまわれたが帰りがけに迎えに来られた一刀様が連れて行かれた。

私は一刀様に特に御連絡は差し上げていなかったので、おそらくは気を落としているであろう白蓮殿を察されていらして下さったのだろう。

一刀様のお心のなんと深いことであろうか、またそれ程に愛されている白蓮殿も仕事に多少の不調があろうともお幸せだろう。

 

8月12日

詠様に白蓮殿が担当部長を解任された経緯を伺ったところ、

 

「それがねえ…意外と白蓮何やらせても結構出来るのよ、ちょっと『だれでも』の基準にするには厳しいくらい。それで業務要求水準を各国で見直すことになっちゃったから一旦この件は沙汰止みになっちゃったのよ」

との事であった。

 

…白蓮殿には解任経緯は伝えられていなかったのだろうか。

8月14日

許攸が一刀様の昼食の給仕を行い壁際で待機中していたが、お心遣いの濃やかな一刀様が一緒に食べないかとお誘いになり私共々御相伴に預かる事となった。(私も人の事を言えた義理ではないが)許攸は暫く無愛想な態度であったが、やおら口を開くと

「ねえ一刀様。一刀様って皇帝の割りに結構しょぼいもん食べてんのね」と暴言を吐いた為、即座に短戟で許攸のメイド服の袖ごと卓にに縫いつけ『口を慎め』と叱咤した。併せて臣民の為華美を避け、寵姫の方々の為健康に配慮された御食事をなさっている一刀様の御心根を説こうとしたところで御寛仁なる一刀様が御取り成しになったので短戟を引き抜いたが、特に御呼びはしていなかった顔良殿が笑顔で入室してこられ『私言いましたよね許攸さん?じゃ、行きましょうか』と彼女を引っ張っていこうとされた。

彼女らは旧知の間柄と聞いており、私以外からも指導はあった方がよいと思い引きずられて行くのを黙って見ていたが一刀様が顔色を変えて彼女らの後を追って出て行かれてしまった。

 

止むを得ず一刀様のお食事は残し、自分達の分だけを下げようとしたところで様子を見に来たらしい逢紀が来室したので許攸の無礼について話し、指導を十分に行うように指示をしておいた。すると承知しましたがその許攸はどこかと聞かれたので斯く斯く云々で顔良殿が連れて行ったと話すと「ああ…そうですか、椿(審配)がもう一人出来上がっちゃったのね…まあいっかぁ…」等 と何か諦めたような様子で帰って行った。

許攸については余りに不遜な態度が改まらない場合は月様もしくは詠様へ雇い止めを御提案しなくてはなるまい。

 

8月15日

一刀様の御執務に一息入れて頂いていた間にお話し相手を務めさせて頂いた。

曰く、天の国では人を笑わせることを生業とする芸人がいたと言われ、そういった者は大層人気であったそうだ。

一刀様も天の国に居られた時分に彼らの出演を御覧になっており、その『お笑い』というものにはある程度定型的な『お約束』と呼ばれる展開や『ボケ』と『ツッコミ』と呼ばれる役割分担があるとのことだ。

残念ながら私はそういった方法で一刀様の心をお慰めする才能にはとことん欠けており、せいぜい忠勤に励む他には色気も足りぬこの体でお慰めする位のことしか出来ない。

…先日口戯の鍛錬に励んでいた叔達は感心な娘であるのかも知れぬ、私もいま少し女として一刀様に御奉仕する術を磨かなくては。

 

8月17日

上機嫌な白蓮殿に再び飲みに誘われ、今日は白蓮殿の私室で飲んだ。

曰く、先日の後一刀様より白蓮殿の能力が求められていたものよりも高過ぎた為であると聞かされたという。

直接は語られなかったが親しく御寵愛も賜ったようで喜ばしい事だ。

 

8月18日

先日の無礼の後に改善が見られるか、許攸の一刀様への接し方をそれとなく監視したところ未だに言葉遣い等は突慳貪な所があるが、前回よりは幾分ましなものになっていた。多少具合が悪いのか頬が赤く、お茶をお出しする為の一刀様の御様子の伺い方もちらちら見ては視線を逸らすなど若干挙動不審気味ではあるが多少の進歩は見られたので今日は特に指導は行わなかった。

それもこれも一刀様の御人徳と御指導の賜物であり一刀様へ御礼を申し上げたところ、「間一髪だった…」と呟かれながら溜息を吐かれた。

 

8月20日

西羌の使いと名乗る美女が突然総務室を訪問して来た。

用件を察した詠様と元直が応対したが、沈鬱な表情で使いが言うことには

『自分は今回の輿入れ予定の者であるが辞退させて欲しい、また西羌は西涼馬家とは元々親交があり世話になっているが馬家の長女が蜀王も公認であのような辱めを受けているのは不憫に耐えず、金なら幾らでも積むので西羌で彼女を身受けさせて欲しい』というものであった。蜀で馬超殿が特に孤立しているとも侮られているとも聞いたことが無かったが、詠様と元直はそろって口元を震わせ『も…ボク駄目』『あたしも限界』等と言いながら馬超殿を呼ばせた。

しばらく使者と馬超殿のみで会議室で話されていたが、突如顔を真っ赤にされた馬超殿が『星はどこ行ったぁー!?』と叫びながら出て行かれてしまい、その直後に何故か詠様と元直が噴出ししばらく笑い転げていた。

 

8月22日

事務通達で、呉が軍事行動にて山越の頭目であった費桟を放逐し呉の息のかかった何某という頭目を立てたという報告があった。

費桟はかつて親交の為の上京時に一刀様を指して『女とやるだけの能無しだ』と陰口を叩いたとされ、呉のみならず魏蜀からも友軍を派遣していた。

最後まで出兵に御反対された一刀様の命により軍による示威行動と交渉のみの結果ではあったが、やはり孫尚香様、凌統殿、顔良殿らが主張されたように放逐のみでなく殺害した方が一刀様の威を保つ意味では良かったのではないだろうか。

 

8月23日

司馬徽殿が荊州の女学院の院長を退き、上京され三国塾の塾長になったという。

門下であったはずの元直に聞くと「ついに来やがったわねあの妖怪色ボケババァ」と言いながら笑顔で通達文を握り潰してしまった。

いつか諸葛亮殿は尊敬しているような口振りで話されていたが、師弟仲が余り宜しくないのだろうか。

 

8月24日

三国塾の教科に教養及び精神衛生向上の為として音楽の授業が始まり、役満☆姉妹の楽曲が教科書に載る事となった。大衆娯楽と見做されてきたこのような分野も自由選択とは言え学習すべきこととなってきた事に時代の移り変わり、ひいては一刀様の御善政の表れを感じる。

会議において私は一刀様を讃える歌がよいと意見を述べさせて頂いたが、一刀様が『極力政治色は薄く、なるべく個人名も無く未来に向かって希望の持てるような歌を』と御意見され今回の曲となった。一刀様の御謙譲、奥ゆかしさには感じ入るばかりだ。

 

8月25日

一刀様に御寵愛を賜った。

ふしだらな癖に意気地が無く正直にお情けを乞えない私を思いやって下さり、予め三国一の宿泊室予約を指示されていた。

事前には陳琳殿の小説等を見て、御食事の後はこのように御召し物を脱いで頂いて、などと考えていたが一刀様の暖かくも力強い腕に抱き寄せられた後は全てが吹っ飛んでしまい、気づけば素裸にされていて抱かれる悦びに泣き喚いた後だった。

一刀様に満たして頂ける自身の欲望に溺れるばかりで一向に御奉仕が成らない自分が情けなく、先程とは違う涙が流れてお詫びを申し上げたが御優しく抱き寄せられそのような私が愛おしいと仰られる一刀様にまた涙した。

一刀様のお近くに侍らせて頂いてからというもの、一刀様に、一刀様のお心に触れる度に童女のように涙が溢れる自分には呆れなくもない。

今回の唯一の成果と言えば伏して口戯での御奉仕をお願いし、熱い玉露を賜ったことだ。忘れ難い、離れ難いこの味は蜀の鄧芝殿が言うように、思い出すだけでも遣る瀬無い溜息が出てしまう。

 

…私は、淫乱だ。

 

8月27日

休憩時間中に詠様に一刀様の仰っておられたお笑いと言うものを御存知でしょうかと伺ったところ、知ってるけどと言われた。

そこへ元直があんた才能あると思うからやってみたらと言われたが、私は生来機知も朗らかさも乏しい面白味の無い人間だ。誤りを指摘するだけで良ければそう難しくは無いのだろうと思い、

「ボケは出来ませんがツッコミであれば」と答えたところ二人から「あんた本物の天才ね」と真顔で言われ、脇で見られていた子丹御嬢様がくすくすと笑われていた。

 

8月29日

三国塾に通学している恵達(六女)と雅達(七女)が珍しく私の出勤前に登校しようとしておりどうしたのかと聞いたところ本日は一刀様の視察がある為だと言い、下着が見えかねない程に裾の丈を詰めた上にいつの間に購入したのか胸あてを外した変形学生服を着用していた。

一刀様の前で司馬家の品を疑われるような服装は慎むように注意したが、二人が野暮なものを見る目つきで指差した方向を見ると

「あら仲達、早いのね。今日は三国塾に講師に出てくるから遅くなるわね」と笑顔で言いながら、明らかに胸元が開きすぎた上着にぴっちりと貼り付いていながら何故か下着の線が一切見当たらないスカートでいそいそと出勤される伯達姉様が居た。

 

先達は後進が見て学ぶ手本であると思うのだが…。



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司馬日記外伝 杏(逢紀)ちゃんの細腕奮闘記3

大分空いてしまいましたが、その後のとある新米メイドの奮闘記です。
私の脳内の許攸さんはとてもおいしいです。
いつも皆様の御笑覧、コメントに心から感謝しております。


「…ねーもー、ほんと懲りて下さいよー」

「…よ、余計なお世話よっ…」

涙目じゃんよー、と喉まで出掛かってこらえた。だってまた強がり言ってめんどくさいし。

 

「一刀様怒んないけど周りが大変なんですから…今日だって寸前だったらしいじゃないですか」

「寸前じゃないわよ!指入れられっ…」

そこまで吼えて、顔を真っ赤にして口をぱくぱくさせるこの人結構頭悪いな。まああたしも言わなきゃいいのに思わず呟いちゃったのも余計だけど。

「…そっかー、初体験は斗詩の指だったかー…かわいそ」

「う、奪われてないわよ!」

「へ?でも今指入れられたって」

「…あ…あっ、あっちだからノーカンよっ」

「うげ」

色白なのにここまで顔は赤くなるんだって実例がちょっと面白いけど、そっちから責めようとした斗詩に戦慄する。

「縛りつけられて顔を覗き込まれながらあんな事されてみなさいよ、一生もんの恐怖よ…」

「ひィ」

あたしのちっちゃくって(多分)可愛らしい某所がキュッと縮こまる。同時に『逆らっちゃいけない人順位表』一位の司馬懿さんが全会一致で斗詩に書き換えられた。

 

処女相手に凄い事するねーと思わず言うと許攸さんは押し黙って部屋に入り、あたしも続くと後ろ手で閉めた。

夕飯何にしよっか。外食多かったから今日は作ろうか、もちろん手伝ってもらうけど。働かざる者食うべからずってね。

そう思って振り向くと赤みの引かない顔で睨みつけられていた。

 

「…どったの?ご飯、」

「…教えなさいよ」

「…何を?」

「仕方よ」

「何のさ?」

この人の感情わかり易いなぁ。最近慣れてきて他人事のようにそう思っていると、再び吼えた。

「だっ、だからっ…か、一刀様とする方法よっ!!」

 

--------------------------------

 

「はぁぁぁぁぁぁ!?なんでいきなりそんな話になってんの!?」

「しょしょしょっしょうがないでしょ!?あそこでハイ分かりましたって言わなかったらもうどうなってたかわかんないのよ!?」

あ、それはありそう。

「…一刀さん助けに来てくれたんでしょ?」

「来てくれてなかったら今頃あたしまだあの拷問室よ…一刀様が何言っても『二度目ですよね?』の一点張り!言いながらひ、人の、っ…を、ぐにぐにぐにぐにっ」

「お尻押さえながら言うくらいならその話やめて、聞いてるこっちまでなんかお尻に違和感しますから!つーかやることになった経緯教えて下さいよ」

「斗詩が言ったのよ。一刀様にその…身体も心も御奉仕するなら今度だけ見逃してやるって」

「おー…」

言いそうだ。

「一刀様がそういうことはちょっと、俺と詠でよく指導するからって取り成してくれたんだけど」

「うんうん」

それも言いそうだ。でもなんで月さんじゃないんだろ。

「『凌遅ですよね?凌遅ならいいですよ』って言うのよ、それ結局死罪じゃない!」

「あー…うん、そこはちょっと違うんだけどね…」

「何が違うのよ?」

「ここで言う凌遅ってね、うーんとあの、要は昔の椿(審配)が今の椿みたいになっちゃう教育…みたいなもの?」

教育対象は主に体にだけど。

「なぁんだ…じゃあ別に必死に抵抗する必要もなかったのね、一刀様がそれだけはどうしてもって一生懸命斗詩にお願いしてたけど」

「いやそこは一刀さんに死ぬほど感謝するところ」

あの偏屈な椿が妙な大人しさと色気を醸し出すようになったような教育を変だとは思わないのかこの人は。

「その後もなんやかんや言ってたんだけど、一刀様業を煮やしたみたいでその…斗詩抱き寄せて、その、い、イチャイチャし始めたのよ!斗詩と!」

「ほほう」

色仕掛けか、正しいな一刀さん。

「たら斗詩、なんか赤くなってなよなよっとして。一刀さんがそこまで言うなら仕方ありませんね、体で御奉仕するって誓うならって言って、あ、あたしの…っ…をぐにぐに」

「それもういいから!それでハイわかりましたつって解放されたんですね!?」

「そ、そうよ!手枷足枷外してもらって逃げ帰ってきたわよ!一刀様と斗詩は知らない、二人でなんか別の部屋に入ってったわ」

「…許攸さんに使った首輪とか持ったまま?」

「そう言えばそうね?」

そんな状況でも縮み上がらない一刀さんマジ一刀さん。そして他人に使った道具でそのままお仕置きプレイが出来る斗詩もマジ斗詩。どうしてああなった。

 

「まぁでも良かったじゃないですか、恵まれてますよ超恵まれてますよ」

「なにがよ!?単純に殺されるよりよっぽど恐ろしい目にあったのよ、あんたもやられてみる!?」

「あーうんそれはそうですしあたしは御免ですけど。こんなあっさり抱かれる事になるなんて珍しいですよ今時」

「そ、そうなの?」

「許攸さんだって満更でもないんでしょ?一刀さんのこと」

「う…そ、そうね…あんなに一生懸命あたしの事を庇ってくれて…ま、まあ抱かれてあげてもなくもないわ、これものし上がる為には必要なことだしねっ」

ッち。

赤くなって指ちょんちょんするなっつーの、可愛くてムカつくしごちそーさん。つーか一刀さん絡みになると誰も彼も可愛くなるのって一体何なの?私的残念美人女王の猪々子といい、いつか見た幼児化してた酔っ払いの金髪くるくるといい…

 

「…採用の時に月様に向かって『一刀様にやらしてあげなくもないわ』みたいな事吹いたって聞いてますけどそんな人ならヨユーなんじゃないですかぁ?」

「あ、あれは言葉の綾よ!ま、まああたしも知識はそれなりに豊富なんだけど折角だからここの決まりみたいなものも参考にしてあげるって言ってんのよ!」

「何その上から目線?そういう言い方するなら教えてあげなーい、ここの『あの決まり』知らずにしようとする女とか流石の一刀さんでもマジ吹いちゃうかもなぁー?あーいや『あの技』出来ずに寝床行っても一刀さん萎えちゃう方が問題かもねぇ」

「あ、あるのね?やっぱり何か普通はこうするみたいなのがあるのね!?」

「…」

ウェヒヒ、これ面白い。

 

「かた焼そば」

「かた焼きそば?それは何かの隠語なの?」

「んな訳無いでしょ、かた焼きそば食べたいなーって。許攸さんの作ったかた焼きそばが。そしたらあたしもちょっとは口が滑らかになるかなぁ?」

「な…強請る気!?」

「いーえーぶぇっつにぃー?あたしは許攸さんがここの常識知らずに一刀さんから『何この女wwwマジ勃たないwww』とか言われるのが可愛そおだなぁーって思うのとかた焼きそばが食べたいなぁって言っただけでぇー?」

 

やばいあたしって悪女の才能あるかも。顎に手当てて足とか組んじゃう。

「く…分かったわよ!作ればいいんでしょ作れば!」

「餡は壷の中だからねぇー♪」

 

ぷんすかして台所に向かう面倒くさんの後ろ姿にチョロ子臭を感じる。まあ人の事言えた義理でもないけど。

来た当初はもぉどうなることかと思ったけど、ま、日々の生活は楽しまないとね?

 

-----------------------

 

「ねえ」

「何ですかぁ?」

庁内食堂で向かいに座る許攸さんに答える。私は甲定食、向かいは乙定食。

「あんたさぁ、生協にも勤めてるって言ってたわよね」

「ええ」

「あたしたまに買い物行くんだけどあんたのこと全然見かけないのは何で?今日も行ったんだけど居ないし」

「たまたまですよ。それより来週の夜勤どうします?」

いらんことを気にするな。話題変え変え。

 

「――――嘘はいけないわねぇ、杏さぁん?」

「ここは先輩としていろいろ教えてあげるとこじゃないのかしら?直属メイドとしては」

ポン、とお盆を片手に後ろから肩を叩いてきた女が彩(張郃)と恵(高覧)だってことは振り向かずに分かった。

いつかここの食堂で、猫耳ちゃんが友達選びなさいよって言ってたのを突然思い出した。

すいません猫耳さん。私貴女の言ってた事なにも守れちゃいませんでした。

 

「隣空いてるわよね?杏、許攸さんにあの店案内してないの?」

「冷たいわねぇ、後宮御用達なのに!」

「知る必要ないでしょあんなとこ!」

「な、何なに?御用達のお店って!?」

あーもー食いつかれた…。

「…あんたら何かあたしに恨みでもあんの?」

「ううん♪あたしがいくら総務室の一般事務の試験受けろって言っても聞かずにいつのまにかのほほんとメイド事務に収まったことなんて全然恨んでないわ♪」

「めっちゃ恨んでるじゃん!?」

「いま彩、予算編成ですっごい修羅場だからね…」

「それよりあんたたち、御用達のお店ってなんなのよ教えなさいよ!」

まあ、その日の甲定食は今までで一番味がしなかったとだけ言っておこう。

 

「こっこっこれって下着なの!?なんでこんなとこに穴が開いてるのよ!?」

「そりゃあ入れるためよ当たり前じゃない」

「破る用のもあるわよ」

「ずらす用のもあるけどね」

三国一は我慢出来る。ってか有難いってとこもあるし。

「あ、これすっごい可愛い刺繍…って全部透けてるじゃない!?」

「透けてなきゃ駄目でしょ!?」

「最近は逆に透けない方がってのも流行ってるらしいわよ、あたしが杏にあげて使ったやつだってそうだし、ねえ杏」

しかしこっちに知り合いが来るのはガチで困る。あとあたしに振るな。

「あら陳琳の本だわ。『三国志』…あの娘の本私結構知ってるけど、これは街の本屋では見た事無い本ね」

「らぶらぶものが多いしこの辺お勧めかなぁ」

「張勲さんのとか桐花(荀攸)のとかは上級者向けだしねぇ」

「あ、でも『チョロ子の弟子』ちゃんが書いてる『はじめてのう・ふ・ふ』がいいんじゃない、あれ初心者向けだし。この二冊買っときなよ」

「そ、そうなの?お金足りたかしら…ところで三国塾の体操服まで売ってるのね」

「これは誰しもが一度は通る道かな」

「ここで売ってるほうはすごい伸びるからずらしても痛くないよ。あと上は極薄だから」

「こ、これも買わなきゃいけないってこと?」

「あのお客様方お静かにお願いしますね、って言うか出てけ」

「やだ、ガラの悪い店員さんね。生協の仲達さんに投書しようかしら」

ああもぉ…友達は選ぼう。誰にしよう。そうだええっとあの人、名前なんだっけ。そうだ白蓮さん白蓮さん。

 

「そうだ思い出した、逢紀貴女こないだ教えてくれるって言ってた決まり教えてくれてないじゃない!」

「うえっ!?」

ここで余計なことを!

「あらなぁに決まりって?」

「斯く斯く云々で技だか決まりだかを教えてくれるって言ってたのに」

「あらそぉ、それは私も知りたいわぁ」

「私も私も、例の部屋で見学させて?」

「真っ平御免でお願いします」

でも許攸さんには夜仕事終わったらって言っといたらスカッと忘れてくれてた。(チョロい)

 

------------------

 

「帰ったわよ」

「おっかえりー」

許攸さんの素っ気無い挨拶に、寝台の上で煎餅齧りつつ週刊誌めくりながら返す。

初めはわざと無愛想なのかと思ったけど、最近はこれがこの人の素なんだと分かって慣れてきた。

「来週の当番表。月さんから貰ってきたから」

「あーどーも」

おっあたし夜勤一日だけだ、やったね。休みも二日だし。たら今週一刀さんと昼間ちょこっとでもでーととか出来るかな?明日出勤したら一刀さんの予定見てみよっと。

「今日夕飯外でしょ?」

「ええ朝言った通りで」

「ならもうお風呂行きましょうよ」

「ああそうですね、じゃああたしこの本読み終わったらで」

そう、と言うと許攸さんは私服に着替え始めた。…お、陸遜さんの星占いあたし絶好調じゃん、『超豪運で困難が避けていきます』だって。諸葛亮さんの占いも載ってるけど、あっちはネタがイマイチつまんないんだよねー。

「…あんたはもう行ける用意出来てるの?」

「あーあたし直ぐ用意できるんで大丈夫ですよ」

許子将さんの『今月のいい女』来月号は『特選!冀州の女たち』かぁ、知り合い結構載るかもしれないから来月も買おうかなぁ。

「はやく行かないと混むんじゃないかしら」

「大丈夫ですよ(大浴場は)洗い場広いし」

なになに『役所の求人が両極端に』?…仕事の増大で下っ端の求人倍率は1以下で完全な売り手市場であるのに反して管理職級以上は十倍以上?事実上の後宮入り窓口であることが原因か…かぁ。まああたしなんか下っ端だけど一刀さんのお嫁さんの一人になれちゃったけどねぇ。

「ねえ!早く行きましょうったら!」

「ちょっと位待ってくださいよなんなんですかそのお風呂推し!?」

流石に週刊誌から顔を上げると、焦れたような表情を妙に赤らめていた。

「じゃ、じゃあ…直ぐ行かなくてもいいから!ちょっとその…見せなさいよ」

「?何を」

わけがわかんない思いを素直に言葉にしたら、もっと顔を紅くして口をぱくぱくさせている。

「…い…いいから!黙ってパンツ下ろしなさいって言ってんの!」

あたしの口から齧りかけの特売で買った煎餅が零れ落ちる瞬間だった。

 

「なっなっなっなっ何言ってんの!?あたしそういう趣味ありませんから、そういうの斗詩とかでお願いします(偏見)!っていうか今日から相部屋勘弁して下さい本気で!」

 

「ああああたしだってないわよ!そうじゃなくて、その…手入れしてんのかってことよ!」

「はあ…」

また答えにくい事を…。

「まそりゃ、彼氏とそーゆー関係なんでそれなりには…」

「だ、だって!恵(高覧)が『抜けて一刀様の口に入ったら超顰蹙だからね』って!彩(張郃)も『つるつるにしといた方がいいんじゃない』って言うし…それに口に入るって事はなっ、舐められるの?舐められちゃうの!?あたし恥ずかしくて死ぬんだけど!」

「知りませんよそんなこと!」

嘘です。めっちゃ気持ちいいです。もっと気持ちいい事も知ってます。

「つか、あたしじゃなくてもお風呂行って他の人のをチラチラッと見てくればいいじゃないですか」

「あたし眼が悪いのよ。それにそんなとこじろじろ眺めてたら不審者じゃない、だから早く行こうって言ってたのよ」

この人風呂であたしのを至近距離でまじまじ眺める気だったのか。

 

「…燕よ」

「は?」

「あ、あたしの真名よ!教えたんだから見せなさいよ!」

「無茶言わないで下さいよ、何が悲しくて女相手にくぱぁしなきゃいけないの!?」

「一刀様にはするのね!?」

「黙秘しますよ!」

正直あんときのあたしはどうかしていた今思い出しても頭抱えて逃げ出したい。一度すると脳ミソの理性が焼き切れるのはどうにかならんの?

「つるつるなの?ねえつるつるにしなきゃいけないの?あたし肌弱いから剃刀駄目なのよ!」

「しーりーまーせーんーってばー!って言うか寄るな触るな近づくなぁー!?」

 

 

 

 

 

 

(この後滅茶苦茶見せ合いっこさせられた 恐ろしく微妙な空気だった 自分のが変じゃないってお互い確認できたことだけが救いだった)



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司馬日記外伝 稟ちゃんの華麗なる一日

お久しぶりになってしまい申し訳ありません。
その後の、ある日の稟ちゃんです。


瞳を開け、体を起こすとしばらくぼーっとする。

 

私の朝は遅い。

事務方は定時に出勤しているが、部内では私だけが半刻遅れの出勤が許されている。

もちろん華琳様や部長級同士の会議が設定されている時は間に合うように出勤するし、遅れて出勤する分夜は長く…と言うかまともな時間に退勤する方がまれだ。

枕元の眼鏡を手で探し、視界がはっきりすると多少目が覚めてくる。

 

いつから私はこんなに朝が苦手になってしまったのだろう?戦乱の頃はいつでも寝ていつでも起きられていた筈だ。明日をも知れぬ身から、仕事の配分を考えられる立場になったからだろうか。深くは考え込まず、着替え始める。

今日の予定は何だっただろうか。予算要望の各部の集計に目を通してから事務方会議、その後華琳様に報告して問題無ければ三国共益費の割り振りの協議を詠と。その後――――

その後の予定を思い出して、ふと身に着けようとした下着に目を落とすと無地の白の上下が目に入った。…これはない。

慌てて下着を脱ぎ、箪笥をかき回す。そうそうこれこれ、黒の脇が透けた花柄。肩に通して背中の金具を留めようとして今一度思い直し、大浴場へと向かった。私の定時にはまだ間がある。それに念には念を、黒の方はあとで着替えよう。

 

「ああ、やっと来たのです」

私の机の隣の椅子を揺らしていた音々音が今日の一番の客だった。

「この洛陽司隷の商業地域に設ける税の設定なのですが、」

「ちょっと待って下さい、前回資料を出しますから」

彼女は非常に優秀だが、挨拶も碌に無く話を始めるところは面倒が無くていい反面時に唐突過ぎて話についていけない事がある。

「稟なら覚えているだろうと思ったのですが、必要でしたらお茶でも飲んで待ってますぞ?」

「…いいでしょう。話を続けて下さい」

にやにやする彼女に小さくため息をつく。大丈夫、大体は頭に入ってる。

 

「…なのでこのように率と徴収方法を変えたほうが一手間かけても納得性も高く繁盛すると思うのです」

「そうですね。その案で実施の方向に動いて下さい」

「決裁を取ってからでなくてよいのですか?」

「はい。私の方でやっておきますから、進めてしまって構いません」

広げた資料をトントンと整理し、決裁用のものだけ抜き出す。下の子に決裁手続きをさせて私は予算集計に早く目を通さないといけない、それとなく退室を促すように音々音を見たがその気配が無い。

 

「ところでですな」

「はい?」

「あのボンクラについてなのですが」

貴女も暇ではないと思うが私も暇ではない、痴話喧嘩なら家でやってほしい。と言うか直にやれ。

「あれは本当にどうしようもない種馬ですな」

「はあ…」

何を今更。彼女はたまに私に何の関係も無い愚痴をぶつけてくることがある。

「ねねが大事に!大っ事に育ててきた柳花(荀諶)にまで粉をかけてきてるようなのです!」

「…一刀殿の女性関係は今更言っても仕方ないではないですか」

「柳花は将来を嘱望された娘ですぞ」

「それはそうだとは思いますが」

なら隣の部屋にいるその姉に言ってはどうですか、と言いそうになるのを堪えて眼鏡を拭く。風に『稟ちゃんは話に興味がない時にすぐ眼鏡に手を伸ばすのはやめたほうがいいですよ』といわれたのを思い出したが、正直今は悟ってほしい。

「先日だってあの種馬が経産部に決裁書類を持ってきたのを見るや、真名を交換しているねねにも見せたことのない笑顔で近づいて!触れそうなくらい近づいて!乙女の微笑で有難う御座いますなどと言って、あともう少しで妊娠させられるところだったのですぞ!あんなにねねに懐いていたのに!」

書類の受け渡しくらいで妊娠してたら庁内は妊婦で溢れ返っている。というか面倒臭い、多少ふざけた対応でお引取り願おう。

「おや、嫉妬ですか」

「そんなことはないのです!一昨晩はあの全身精液男に『蕩けきるまで可愛がる』などと難癖をつけられえらい目に遭わされて、あいつの寝床は暫く見るのも怖い位なのです!」

「そっちですか!?しかも惚気だったら帰って下さい!」

噂には聞いていたが彼女の桂花化傾向は真実だったのか。

「ねねの話はいいのです、それよりも重大な問題があるのです」

「なんですか」

早く帰って欲しい。

「柳花はあの姉や叔母の性癖を毛嫌いしているようなのでねねは安心していたのです。しかしあるとき柳花が外出している時に彼女の机の袖引き出しがちゃんと閉まっておらず、ねねは閉めておいてやろうとしたのです」

「部下といえど他人の机に触れるのは感心しませんよ」

「エロ下着見本帳の間に隠すように明らかに読み込まれた被虐官能小説がぎっしり仕舞われていたのです!」

「矯正しましょう、手伝います」

…血は怖い。それと派遣研修でうちに来ている蒯姉妹がそろってさりげなく袖机の引き出しの鍵をかけたのが物凄く気になった。

幸か不幸か荀諶は出張で不在であったので指導は後日ということでねねとは別れ、予算会議に出席した。

会議を終え予算要求書をまとめて、華琳様の居室へ向かう。

おおよそは予定通りの各部要求だったけれど諸葛誕が土木枠の要求でごねていたのが記憶に残る。土木事業は彼女の手腕にかかるところが大きいのは自他共に認めるところだ、要求枠について増額するか…それとも彼女自身の『ガス抜き』を一刀殿に依頼してごまかすか。

以前同様の依頼をしてお尻ペンペンされたって自慢話を聞かされた凪が微妙な表情で俺を見てくるのがちょっと辛いんだけど、という一刀殿の渋面を思い出す。そういった小手先の誤魔化しよりも投資自体は良い事なのだからいっそ大幅な増額を―――

 

「あああんっ!かじゅとぉ、すっごいのぉ!かじゅとのおっきいのでっ、かりんちゃんこわれちゃうっ、こわれちゃうよぅ!!!」

(!?)

踏み込みかかった足を慌てて翻し、廊下の壁にへばりつく。

心臓がばくばく音を立てる。

後一歩で見てはいけないものを見てしまうところだった。

 

「も、もうだめぇっ、なかにびゅーして!びゅーってしてぇ!!」

 

…最近の華琳様は脇が甘い。昔のピリピリされていた頃を思えば臣下として主君の幸せを喜ぶべきところだろうが、少し箍がはずれ過ぎている気がしないでもない。

庁内の奥まったほうへ執務室を移されたので多少油断されているのか、既に知らない話ではない私だったから良かったようなものの他の者だったら洒落にならない。付き合う一刀殿も一刀殿だ、華琳様のお好みとは言えあまりああいったプレイに溺れるのは―――

 

「(羨ましいのか?)」

「(っ!…突然声を掛けないで下さい、心臓が飛び出します)」

いつの間にか音も無く隣に立っていた秋蘭に驚かされた。これが他人だったらと思うとぞっとする。

「(…警戒していたのなら私が通り過ぎる前に止めて下さい)」

「(稟なら知らぬ仲でもない、華琳様達の『気配』を察した時点で引き返してくれると思ったのだがな)」

「(考え事をしていたのです。今少しで抹殺されるところでしたよ)」

華琳様は私が知っている事は知らないはずだ。この隣に控える優秀な部下が喋ってさえいなければ。

 

「(出直したほうが良いのではないか?事後の睦言を邪魔されると華琳様は御機嫌を損ねるぞ)」

「(そうします、華琳様の身支度が整われたら私の執務室の方へ声を掛けて下さい。ここに長居していると中てられそうです)」

「(意外だな。稟もああいうプレイに興味があるのか)」

「(…いえ、私は柄ではありませんよ)」

今更私にははっちゃけた夜の個性とかは無理がありすぎる。一刀殿が『しろ』とか『着ろ』と言うのに従う分には彼に責任を転嫁できるので何とか出来るが、自分からはまるでできそうもないつまらない女だ。

「(秋蘭はああいうプレイはしないのですか)」

照れ隠しに無駄な事を聞いてみた。彼女のゆるぎない姉属性は魏中、いや三国中に知れ渡っており冥琳とは角突き合わす仲だと言うのは有名すぎる話だ。

 

「(してみようとしたが、結局『積極的な妹』どまりだったな)」

したのか。と言うか、普段の落ち着き振りをもかなぐり捨てて彼の為に(或いは自分の為なのかも知れないが)照れも衒いもなく素直にそういった行動に出られる彼女に多少の羨望を覚える。

「(それに追い詰められた姉者の方がずっと真に迫っていて一刀にはそそるものがあるようだ、私は諦める事にしたよ)」

…それ(性的に)追い詰めたのは貴女と一刀殿ですよね?

 

---------------------------

 

次は詠と打ち合わせだ。

――――実は私は個人的に詠は好きだ。おそらく自分と似ているところを感じるからだろう。

真面目で悲観的、苦労性。そして彼に正面切って甘えられない性格。

しかしいつだったか飲みに行った時ひどく酔った彼女に稟は可愛くていいわよね、と何度も言われた事がある。貴女こそと思ったし言ったけれど力強く首を振っていやあんたが一番可愛い、三国で一番可愛いと言われた。月はいいのですか、と聞くと

『あの娘はなんか達観しちゃってるって言うか、突き抜けちゃってる感じがあんまり女の子っぽくないのよね。稟はその、迷いがあって一歩引いた感じっていうの?そこが可愛くて羨ましいのよ』

と言う。羨ましいで言えば私は詠の方が遥かに羨ましい。彼に会える日数だけでなく、信頼の中で軽口も言い合える間柄というのが嫉妬するほどにあるのだがそれは無いもの強請りなのだろう。

 

「失礼します、詠はいますか」

「はいー?あっ稟さんだ!」

「ほんとだ稟さんだー!詠様今会議中でーす」

――――地雷を踏んでしまった。

この二人は苦手だ。というかこの近親上等☆姉妹を得意にしている女なんて居るのだろうか。

「…そうですか」

ちょっとなら待つか、引き返すか。

「まぁまぁお茶入れますから待ってて下さいよ!藤香、お菓子出してー」

「はいはーい」

「…では少し待たせて頂きます」

少し待てば来るだろうという結果的に甘すぎた希望的観測のもとお茶に手を出してしまった。前に研修に来た時にゴネにゴネて真名交換させられた後、蜀に帰ったと聞いていたがまだいたのか。再び派遣研修か、親のコネか。

 

「ねーねー稟様ぁ」

「…なんですか」

間が持たないのでお茶に手を伸ばす。自席に戻らず、私が座っている打ち合わせ机の向かいに背もたれを前にして跨ぐ様にして座る二人は仕事はいいのだろうか。

「荀彧様と程昱様ってガチで仲悪いですよね?」

「間入るの辛くない?」

今口の中に収めたばかりのお茶を強制的に空中に返却させられた。

 

「ごほっごほっっ!…い、いぎなり何を聞くんですか!?」

「やだ稟様お行儀悪い、そんなんじゃ一刀様も幻滅ですよ?」

「あ、口から出る緑色の鼻血。稟様新技」

「貴女達の所為でしょう!?あとこれお茶ですから!」

しかもかろうじて下着は隠れているとは言え大股開きで座っている貴女達が言うな。

「ね、実際仲悪いですよね?」

「特に荀彧様露骨っぽいよね」

「そんなことはありませんよ、言いがかりは止めなさい」

「えー?でも一枚板って感じじゃないですよねー」

「二人とも胸は一枚板だけどねっ!ねえ藤香今あたしうまいこと言った!」

「すごい玲紗、軍師なれるよ軍師!」

「…貴女達刺されますよ?」

この娘達は蜀でも日常的にこんな口の利き方をしているのだろうか。そういえば以前仲達が指導員をしていた筈だが一体何を教えていたのだ。

「戻りますけどぉ、だってあの二人一緒のときのお互いの牽制感凄いじゃないですかぁ」

「そうそう!そんで別々で一刀様と一緒の時はもんの凄く正妻ぶるの!」

「『もうっ、しっかりしなさいよね!ほんと私が見てやらなきゃ駄目駄目なんだからっ!』」

「『おお、寝てしまってました。おにーさんのお膝は昼寝がはかどってしまって困ったもんですー』って、じゃあ自分の布団で寝なよって!」

「…失礼ですよ」

いけない、似てる。にやっと笑ってしまいそうなのを堪えて嗜める。

「あでも、全身から噴き出す正妻感って言ったら詠様も負けないよね?」

「うん特に機嫌いい時なんかノリノリ!『その書類ならここよ?碌に読んじゃいなかったんでしょ、ボクが要約版作っといたからこっち見ときなさい?(ドヤァ)』」

「違う違う、月様居なくて身の回りも御手伝いしてる時の方が凄いから!『ほら、襟曲がってるじゃないの。…これでいいわ、も少し身だしなみ気をつけなさいよね。ボク達が恥ずかしいんだから』」

「似ってっるー!あはははははははは!」

 

「その辺にしておきなさい」

会議室から出てきて彼女等の背後に立った人物を見ながら、思わず口元が緩んでしまう。

「まあまあ稟様、で詠様ね、一刀様が他の女と寝てて朝起きてこないと凄い機嫌悪いの!」

「うんそれ一刀様と午前中打ち合わせしなきゃいけないときとか眉間の皺超やばい!一緒に寝てた女が出て行くと即お玉と鍋抱えて一刀様の部屋行ってカーンカーンカーンッて!『別に怒ってない』とか言ってその顔どう見たって、」

 

「どう見たって何かしら?」

 

どう見たって、こめかみに青筋を立てた詠の笑顔でした。

 

----------------

 

「ほんっと、懲りるという事を覚えないのよねぇあの二人」

「詠も大変ですね」

タンコブを頭にこさえ、仲達に両脇に抱えられて春蘭との強制稽古に連行される近親上等☆姉妹を見送りながらため息をつく詠に苦笑いする。

共益費の打ち合わせは特段問題はない。華琳様が今度建てられる別荘『銅雀台』は魏持ちというか華琳様の私財で建設することを確認された程度だ。次の予算会議の予定と一次要求の算定方法の統一について少し話してお茶を飲み干すと、そうだ今夜一杯どう、と聞かれた。

 

「あ…いえ、今日はちょっと…」

「…ああ」

軽く笑われ、そういうことね、と言われた様にさえ見えた。

…そんなに私は分かり易いだろうか。

「稟は可愛いわよねェ」

「またそんなことを…」

また言われた。

「そのウジウジ感が」

褒めるのか罵倒するのかどっちかにしてもらえませんか?

 

「冗談よ、でも可愛いってのは本当。元々美人だし角も取れて、でも自分が一番じゃないって事を分かってて二三歩引きながらも諦め切れずにうじうじっとして言い寄られたらなんでも言いなりみたいな、」

 

「「駄目女」」

先日飲んだ時にボク達ってまさにこれだよねと言っていた言葉が重なり、二人で一頻り笑う。

「でも違うわよね!?ボク達がまともなのよ、あいつらがおかしいの!」

「そうですよね」

「世の中、吹っ切れてる女ばっかじゃないの!尻尾振ってりゃ幸せな犬ばっかでもないのよ、ねえ!?」

「ええ」

ケラケラと笑った彼女と別れ、執務室に戻る。

午後の執務は比較的穏やかだった。部下の決裁書類の精査を終えて予定していた時間休暇を取り、引き出しに忍ばせていた取って置きの下着をそっと鞄にしまって浴場へと行こうとした所で来客があった。

 

「ちわー、総務室の逢紀って言いますけど戯志才さんっていらっしゃいますかぁ?」

「………戯志才はこちらの者ではありませんが、用件なら私の方で承りますが」

思わず表情が固まってしまう。後ろでぷふっと伯寧(満寵)が噴き出したが気にしてはいけない。

戯志才。

それは私がちょっとアレな会合に出るときや、生協の通信販売でちょっとアレな買い物をする時の偽名であるところは仲間内ではアレなことだったりする。

「あのですねー、戯志才さんの名前で今日夕方五時から明日のお昼まで三国塾の教室(二)と隣の保健室が予約されてるんですけど分かりますー?」

「…はあ」

私が予約したので勿論知っている。

「出来れば清掃入りたいんでー、会議室とかに移ってもらいたいんですけども」

「いえそれは困ります」

梁道(賈逵)も机から顔を上げずに笑った気配を感じる。いいから大人しくしてて欲しい。

「えー、困ったなぁ…研修かなんかです?」

「…まあ、そのようなものです」

「何人くらいで使われるんですかぁ?」

「……二人くらい、かもしれません」

「えぇー!?それじゃあ別の小部屋でって訳には行かないんですかねぇ…?」

「ええ、そのちょっと…どうしても教室と保健室でないと」

折角生協の通販で買った新作の『女教師制服(中)』を無駄にするわけにはいかない。あと後ろ、笑うな。頼むから笑わないで下さいお願いします。

「じゃ分かりました、清掃やめて塗装だけ五時までに業者にやらせちゃいますから、窓は開けっ放しにして使ってもらえます?」

「それでは外に声が丸聞こえじゃないですか!?」

「えええー!?」

後ろで部下達の爆笑が聞こえるが気にしたら負けだ。この業界照れたら負け、引いたら負けだ。

「と、とにかく!戯志才の予約なので勝手には変えられませんから清掃はまた別の日にお願いします、いいですね!?」

「わ、分かりましたよう…じゃ、あと郭嘉さんて方いらっしゃいます?」

「それは私ですが」

「あの、程昱さんて方からお届け物で…」

「風から…?なんでしょうか?」

「えーっとこの包み全部で品名が…うわぁ」

「何ですか?」

「あの、宜しいです?」

「?構いませんが」

「えっと…こちら書籍で『一刃と女教師(七)~爛れた関係、止まらない情欲~』と、鼈飲料二人前。あとこのスケスケの紫の下着、上下と…お手紙です、あのここに認め印お願いします」

「」

 

風の手紙を見た。

『久々の教室借りきり、ねーちゃんの本気(マジ)を期待してるぜ 宝慧』

すぐにたたんで自分の机に投げつけた。

 

後ろの部下達の『りーんちゃーんがんばれっ♪りーんちゃーんがんばれっ♪』の合唱が心底うざい。貴女達いつか地方に飛ばしてやると心に誓いながら、判子を逢紀に投げ渡して小包をひったくり浴場へ走った。

 

----------------------

 

とまあ、夜を迎えるまでは私は羞恥で激怒かなにかしていた筈だった。

「…のにまあ、どうでもよくなっちゃうんですよね…」

「?何が」

 

貴方の腕に抱かれているとです、と凪なら照れながらも言うのだろう。言わないから私はチョロくはない。いや、チョロいか。

「いえ、独り言です。それより、もう朝ですしそろそろいい加減に起きなくてはいけませんよ」

「えー…稟非番だって言ってたじゃない、もう少しこうしてたいんだけど」

「もう…」

抱き寄せる彼の胸元に顔を押し付けながら、口元がにへらっと緩んでしまう。

「…あ」

「何ですか」

「稟の下着が」

「…いいです、もう一着ありますから。私もう起きますよ」

確かにちゃんと脱がされずに事に及ばれたので着用していった黒の方はとんでもないことになってしまっているので、身体を起こし小包を開けて風から貰った方のを彼に背を向けるように寝台に座って着けはじめる。

 

見えないけれど背中に彼の視線を感じる。無言がその証拠だ。背筋がちりちりとする。

背中の留め金をとめ、そのまま洗面台へ向かう。いや、向かおうと思ったが、体が反対を向いた。

「ほら、貴方も起きませんと…」

我ながらその声と、両手を寝台について顔を寄せた仕草には媚びを覚えた。

「きゃっ…」

彼の視線が全身を巡ったと思うや、再び抱き寄せられた。――――私の、内心の期待通りに。

「いいねぇコレも、稟は上品な黒とか紫似合うよね。これ絹?」

「あん…そうだと思いますが…駄目ですよ、これ汚しちゃうとっ、代えはもう無いんですから」

胸の上半分が大きく開いた下着の内側に侵入しようとする彼の指に抗って見せても、理由がいい加減になっている。

「大丈夫、堪能したら脱がすから」

「もう…しょうがないですね」

まるで桂花のような論破待ちだと思いながら身体を重ねると、唇を合わせたまま髪を撫で、背をなぞってお尻から下着の間に彼の指が忍び込んでこようとした所で違和感に気づく。

「ちょっと待って下さい、下は脱ぎますから」

「え、折角だから脱がせたい」

「いいんです」

彼の手を待たず、慌てて自分のそれを剥ぎ取って布団の外に放り出す。

「お待たせしました」

再び彼の上に身体を預けると、彼に密着する。どうせ分かる事だ。

「ん。そーゆーことか」

「…そういうことです」

「稟も期待して、あいたっ」

「言わないものです」

「…じゃ、いい?」

「…時間も余りありませんし…んっ……んふぅ…」

 

腰を上げてゆっくりと降ろすと、言いようの無い充足感に蕩けそうになる。声を抑える為再び彼と唇を合わせようとしたときに、ふとお玉と鍋を抱えて渋面を浮かべる詠が心に浮かんだが速やかに退場頂いた。

 

 

 

 

弱く小さい女の少ない逢瀬。今だけは、私にも――――ね?



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(小ネタ)司馬日記 カメラに向かってごめんなさい

小ネタで御座います。
その後の皆様に謝って頂きました。


【いつもの恋】

「…お夕飯つまみ食いしてたら全部食べちゃってごめんなさい」

 

【まだ気にしてる】

「えーその、本当に…ごめんなさい…。あれ以来本当にお酒は控えてまして…

 

【様式美】

「あ、あたしは謝らないからな!あたしはダメだって、ダメだって言ってるのに御主人さまがっ」

 

【このあと滅茶苦茶一刀さんが慰めた】

「あー?そぉねえ…そうだこないだ蓮華が先に約束してたって知らなくって、一刀と飲みに行っちゃってごめんねぇ?」

「あーシャオもシャオも!今日お姉ちゃんが先に約束してたの知ってたけど、お姉ちゃん中々来ないしシャオもこの後用事があったから先に一刀と川に遊びに行っちゃってごめんね!『色々』遊んで一刀疲れてるから、お姉ちゃんが癒してあげてね!」

「…………………………………仕事が遅い、ダメな王でごめんなさい…うぇぇ…」

 

【わんこだけに】

「た、隊長…………先日は歯が当たってしまってごめんなさいっ」

 

【煽っていくスタイル】

「私が一刀の姉で申し訳無い。いや秋姉ぇなどと呼ばれて全くもって申し訳ない、呉の自称姉にはいくら詫びても詫び足りん」

 

【天下御免の】

「別に謝る筋合いないんですけど、一刀さんのお気に入りとか呼ばれててすいませんとか言えばいいんですかねぇお嬢様?」

「お願いだからもう黙ってて…七乃が色々、すみません…」

 

【PTAの会話】

「…あら、あらあらあらあら。劉表さん凌操さん達には、うちの娘ばかり先行してしまって申し訳ありませんわ」

 

【背後で明命が笑顔】

「わ、私これ謝ることじゃないと思うんですけどぉ~、どうしても謝らなきゃダメですかぁ…?うう…肩が凝るとか言ってごめんなさい…」

 

【華雄さんが照れながら】

「…………………寝過ごしてすまん…」

 

【激しかったから】

「こないだ湯呑み割っちゃってごめんなさい…で、でもあれは兄様がいけないんですよっ」

 

【学ばない春蘭】

「謝ることだと?うーむ、思い当たる節が無いな………そうだ!先日、うっかり華琳様が一刀と幼jぶべらっ!!」

 

【歪みない】

「えっと、こないだの『放置ぷれい』だっけ?うまくしてあげられなくてごめんね?私も一刀さんも見られながらって落ち着かなくって、やっぱり三人で仲良くの方がいいなぁって…」

 

【捨てるとは言ってない】

「もうしません。二度と買いませんから張任さんに見せるのはやめてください!」

「司馬懿さんにチクるのはやめてくだしゃい!」

 

【真顔】

「こないだ華琳さんに『一刀さんを癒すならお胸に顔をうずめさせてやれば宜しいですわ』などと言って申し訳ありませんでしたわね」

 

【何回寝ようと変わらない仲達】

「一刀様にご満足頂かねばなりませんのに……いつも、私ばかりその…い、頂いてしまって…申し訳ありません」

 

【月外出中という豪運】

「あっこれ一刀さんも見るの?生協の新作で月さんの新しいメイド服だよ似合うかな!?メイド長の杏でーっす、可愛い過ぎちゃってごっめんねーっ!」

 

【血は争えない】

「一刀様、姉も伯母も変態で御迷惑を掛けて本当に申し訳ありません。私が如何様なお詫びでも致しますので、…罰を、お辱めを頂いても構いませんので何卒お申し付け…あ、いえお許し下さい」

 

【役満☆姉妹のライブではよくあること】

「…………姉さんたち、MC延ばしてもらっちゃってごめんなさい」

 

【指をクイクイさせながら】

「音々音ちゃん、こないだはきつい事を言ってごめんね?(ニッコリ)」

 

【なお好評だった模様】

「えー、これ蒲公英感謝されるところだよねー?…しょーがないなぁ、昨日焔耶が御主人様のとこに行く前にお風呂入ってる隙にパンツの股のとこに切れ込み入れてごめんなさい」

 

【この後やっぱり滅茶苦茶一刀さんが飛んできた】

「………………………………………………………………………………………………………普通で、ごめんな…」



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司馬日記外伝 仲達さんとバカンス

その後の、飯坂様が御描き下さった水着回で御座います。

御笑覧頂いている皆様におかれましては、レスポンス元の仲達を御覧になって頂ければ嬉しく存じます。


「あれ?仲達さん一人?」

「はい…」

多少困惑したような仲達さんが両肩に荷物を抱えてコテージから出てきた。

 

「姜維、張任、龐徳、子義(太史慈)に伯道(郝昭)まで、皆歩哨に出てしまいました」

「ああそう…湖に出てこなくてもいいからゆっくりしてよって言っといたんだけどなぁ」

「一刀様の御安全の確保に注力することは良いことだとは思いますが、この近辺は治安もよく又皆十分な手垂れでもあるので今一人くらいだけでも一刀様のお世話を手伝うようにお願いしたのですが…それはさておきまして姜維から文を預かっております」

「ありがと、でもさっきまで一緒だったんだから言えばいいのに何だろ」

 

ぴらぴらと書を披く。

…あー。

成程。

思わず仲達さんの怪訝そうな顔を見る。

「?」

「あ、いや、何でもない。仲達さんは良い友達持ってるなぁって」

「はい。かけがえの無いものとして大事に致します」

言われてみれば今日の面子はみんな仲達さんの後輩筋だった、さてそういう事なら。

「とりあえずテント建てようか。手伝ってくれる?」

「いえ、私が致しますが」

「まーまー、折角だから二人で共同作業しようよ。ね?」

「は、はい…一刀様がそう仰られるならば…」

荷物を受け取る為に手に触れるとほんのり頬を染める仲達さんマジ仲達さん。

 

「そちらの支柱を持っていて頂けますか。私が屋根布用の杭を打ちますので」

「うん」

木杭を打つ為にしゃがみこむ仲達さんの谷間が重たげに揺れる。その奥にはなめらかにくびれた腰を経て、やや不十分な布地に収まらないお尻。

 

「ごめん、仲達さん」

「?なにも御謝りになるようなことは御座いませんが」

「いや、水着姿ホント素敵なのに誉めてなかった、ごめん。すごい魅力的」

「…過分のお褒めを賜りますと、浮かれてしまって手元が狂ってしまいそうです」

赤くなって顔を伏せる仲達さんならマジで怪我しかねないと思ったのでとりあえず黙る事にした。

 

「御泳ぎになられますか」

「うーん…そうだね」

テントで飲み物を貰い少し考える。

「て言うかガチのグラビアモデルの仲達さんちょっと見てみたい」

「ぐらび…?」

「えーと要はあれ、展示会の水着モデル」

「…私などがあのような場に出させて頂くのは御恥ずかしい限りです」

「いやいや超似合ってる、けど俺以外には見せたくないから今ちょっと砂浜でポーズとってくれない?」

「一刀様、ぽーずとは…」

「ああうん…たとえばこう、砂浜で仰向けに寝転んでこっちを見上げる感じ」

「…こんな感じでしょうか」

おお大分それっぽい。けど表情が固いな。

「仲達さん笑ってー」

「………こうでしょうか…」

仲達さんそれ笑顔やない、照れ顔や。勿論萌えるけど!ここは小細工が必要だな。

「仲達さん、今御家族は何人?」

「?八姉妹に下宿二名で、おいで頂いた頃から変わっておりませんが」

「最近お友達と飲みに行ってる?」

「職務にも励むようにしておりますが、最近では伯道と」

「仕事どう?楽しい?」

「はい、一刀様に御仕え出来る事は無上の喜びです」

よしよし、大分表情柔らかくなってきたな。

「…ところで一刀様、その指で□を作ってそこから覗き込まれるのは何故でしょう?」

「こうすると(カメラマン)気分が出るんだよ」

「そうなのですか」

 

ま、こんなもんかな。

「暑い中ごめんね仲達さん、堪能したよ。じゃ、泳ごっか」

「あ、私は荷物番を」

「一人で泳いでも楽しくないって、それに俺の安全管理上近くにいてもらったほうが無難でしょ?どうせ周りは凄腕の歩哨だらけなんだから荷物なんて大丈夫だしさ」

「…はい、ではお供致します」

最近この人の口説き方判ってきた、常識とか感情じゃなくて理屈で押す。

 

そんで俺たちはひとしきりキャッキャウフフ(主に俺が)したり、水難時に身を守る程度には心得ておりますって言うから競泳のガチ勝負を挑もうとして『絶対手を抜いちゃ駄目だよ?勝つのは全然不敬じゃないからね?全力出すんだよ?』と念を押すたびに仲達さんの顔色が悪くなって蚊の鳴くような声ではい、はいって言うからあきらめてじゃあ引っ張ってって言ったら凄く嬉しそうに手を引いて泳ぐからこれはこれでありかなとか思ったりしてたら流石に喉が渇いたので一旦岸に戻ることにした。

 

「ぷは、それじゃもう一泳ぎ行ってこようかな。仲達さんどうする?」

「あ、お供………したいと、思いますが…」

「が?」

妙に歯切れ悪いな。お腹減ったのか?いやでも仲達さんなら腹減っても言い出さないよな。

「…一刀様は大事な御体ですので……」

うつむきながら籠の中を漁る仲達さんに雲行きの怪しさを感じる。

 

 

「日、日焼け止めを御塗り致しますので、それからでは如何でしょうか?」

そう言いながら上目遣いで見上げてくる彼女が取り出した小瓶は、どう見てもちょっと前に流行ったアレな事に使うローションだった。

 

 

つまりどういう事かというと。

1.仲達さんは誰かに騙されている。

2.ガチボケである。

3.仲達さんなりのド下手な(そこがまたかわいい)お誘いである。

 

OK、俺こういうの慣れてる。

「仲達さん、それ使い方分かる?」

「…はい。その…私の身を以って、一刀様に御塗りするべきものと…」

真っ白な水着と肌の上に顔だけを赤くして顔を伏せる仲達さん、珍しくだいたいあってるよ。

さてこれで1か3に絞られたわけなんだがって仲達さんビン開けるのちょっと待て何時に無く行動早い!

「お、御塗り致します…」

「ちょっっっと待とうか!ちょっとだけ待とうか仲達さん!?」

熱に浮かされたような表情で胸の谷間にローション垂らし始める彼女の肩と手を掴んで制止した、って考える間も無い位距離詰められてるし仲達さん力強ぇよ知ってたけど!

「いえ、一刀様の大切な、御肌が…大切ですので、し、失礼致します」

荒い息に震える声。豊かな胸越しにも伝わる位ばっくんばっくん言ってるのが聞こえるくらいに抱きつかれて、あかんやばい流されそう。だって可愛いし仲達さん好きだし。

理性というひ弱な我が軍が全滅するその寸前、仲達さんの肩越しに陽(太史慈)と泉さん(郝昭)が遠くの茂みからひょこっと顔を出したのが見えた。

 

「(そこだと)」

「(焼けますから)」

「(コテージへ)」

「(行って下さい)」

二人の妙に息の合ったジェスチャーと口パクに、なけなしの皇帝力が僅かに復活する。

つーか君ら仲良くなったんだね。

 

「仲達さん、塗って貰うからちょっと待って」

「あふ…あ…はい…?」

「その日焼け止めはここで塗るのは正式なやり方じゃないんだ、あっちのコテージで塗ってくれるかな。多分あっちにはその為の設備(ローションマット)があるし」

「そ、そうだったのですか……で、ですが…私は…」

「歩けなくても俺が抱っこするから大丈夫!よっ!」

「…ああ、一刀様…申し訳ありません」

焼けるような太陽よりも、お姫様抱っこしている仲達さんのもっと熱い視線を至近距離で浴びながらコテージに向かう。

 

 

まあうん、そのあとはつまりそういうことで、その後仲達さんは流石に岸辺に出てくることは無かったんだけど。

俺だけその後夜にもう一泳ぎしようかなとか思ってたんだけど、歩哨の方々が一人一瓶片手に控えめに警備料を請求されるのはちょっと読んでなかったんだよね。

 

…仲達さん、良い(体力の)友達持ってるねぇ…



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(超小ネタ) 司馬日記外伝 東の海で、晩夏の夕暮れ&雪蓮と水着回

ハーメルンの文字数制限の都合により、tinamiでは2話のところを1話にまとめています。
---------------

今年飯坂様がお描きになった雪蓮に触発されて次頁にて小ネタを書かせて頂きましたが、昨年お描きになった白蓮には結局書けずじまいだった為、少しだけ情景を入れさせて頂きました。

飯坂様へ
白蓮お借り致しました。有難う御座います。

---------------
今年飯坂様がお描きになった雪蓮の、hujisai版水着回で御座います。

文章だったらポロリはありなのか、書いてから五秒ほど悩みました。
なお、蓮(ry



「…そろそろ戻ろうよ?」

 

砂浜で背中をまるめ、体育座りしている彼女の隣にしゃがみこむ。

 

「…ごめんなぁ」

「何も謝られることなんて無いって」

「いやぁ、今回は本当にへこんだ。折角一刀と海だったのに、街道が工事中で迂回路探して迷うとはなぁ」

「まあでも、結局海には来れたし」

「こんな夕方になっちゃったけどな」

「…波打ち際では遊べたじゃん」

「もうこの季節じゃクラゲが出始めて泳げなかったけどな。お前は浮き輪まで用意して文字通りウキウキだったのにな」

「いーんだよ、こうして白蓮と海辺の夕焼けを見れたんだから俺は満足!白蓮の水着も拝めたし」

まあ白蓮としてはとても不満なのはわからないではないけど、言い出すと切りが無いし。

最近吹っ切れ気味ではあったけど、彼女はネガティブが一度入ると結構深い。

 

「…そっか。じゃあ、宿に帰ろう」

「ああ」

立ち上がって差し出してくる白蓮の手を取って俺も立ち上がるが、まだ彼女の横顔には負のオーラが見え隠れする。

「久々の白蓮の料理俺楽しみなんだけど。片付け俺やるから宜しく頼むよ」

「…普通の煮物と焼き魚と山菜だぞ?ふつーの」

「それがいいんですよ白蓮先生、舌が感動し過ぎないなつかしの味わい」

「それ褒めてないだろ」

並んで歩きながら苦笑いを浮かべる彼女に少し安心して、ちょっと調子に乗って肩を抱きながら耳元で囁いてみる。

 

「でもさ、とりあえず先に風呂入ろうよ。その水着のまま」

「ぶれないなお前…で、お前が脱がすんだろ?」

「それはそのときの流れ次第で」

「ったく…私はほかの連中と違って普通なんだからあんまり無茶しないでくれよ、飯作れなくなるからな?」

「了解了解(しないとは言ってない)」

少し照れながらもされるがままに抱き寄せられてくれる白蓮と、浜辺を歩く。

 

慌しかった夏の終わりの、そんな休日。

 

-----------------------------------------------

 

「ねぇ?もう泳がないの?」

「…ちょっと休ませてくれ…」

砂浜に立てたパラソルの下。長い髪から水滴を滴らせながら覗き込んでくる彼女に、デッキチェアに寝転んだまま答える。ゼェゼェと吐く息がまるで収まらない。

 

「まだ一時間も泳いでないじゃない?」

「その通りだけど密度濃過ぎ…水泳部かってレベルだぞこれ…」

そもそもが雪蓮の体力についていける筈が無いのはわかるけど、流石元々水の国育ちの人々は格が違い過ぎる。

「夜はあんなに元気なのにねぇ」

「…………そこも異議申し立てたい」

正直、いつも雪蓮は夜も余力を残してるような気がする。なんて言うか、主導権を譲られているような気を使われているような。

 

「あら、どういう意味?」

「元気って意味じゃ夜だって雪蓮の方が上な気がする」

「無茶言わないでよ、毎晩あんな感じだったら私壊れちゃうわよ」

「本当かね…なんにしろちょっと休憩。今入ったらマジで溺れる」

「ふふっ、じゃあしょうがないわね、私も休憩にするわ。水飲む?」

「飲む」

水筒を受け取り、口いっぱいに含んでから飲み干して再び仰向けに寝転ぶ。

 

「…静かねェ」

「…そうだな」

波の無い湖面。蝉の居ない森林に囲まれたこの浜に、珍しく二人きりだからか。

並べたデッキチェアに座って湖を見つめる雪蓮は、モデルにしか見えない。というか。

 

「黙ってりゃ女神だよな…」

「ん?何?」

疲れすぎてたのか、思った事がポロッと口からこぼれてしまった。

「…あ、いや、…黙ってりゃ美人なのになって」

「嘘、違う!今絶対女神って言った!女神って言ったわよね!?」

「聞いてたんなら聞き返すなよ!?」

「そこを敢えて照れながらもう一回言うべきよ!」

「新手の羞恥プレイ!?」

雪蓮はこういうとこ決して逃してくれない。聞き逃すとか、聞き逃した振りして内心照れてくれるとかすりゃ可愛いのに。

 

「ほらぁお姉さんにもう一回言いなさいよー、ちゃんと目を見て」

「いはいひはい!ほっへはふねるな!」

「ヤダ、言わないとずっとこのまま。顔の形変わるまで。一刀の顔が下膨れになったら蓮華悲しむでしょうねー。亞莎泣いちゃうかもねー?」

「ははっは!ははっは!ひうはら!ひうはら!」

「わかればよろしい」

亞莎が泣く前に俺が泣きを入れました。

頬っぺたを一揉みして顔の輪郭を戻して(?)から、既に至近距離にあった雪蓮の顔を引き寄せて肩に乗せ、耳元で囁く。

 

「…雪蓮は俺の女神だ。綺麗なだけじゃなくて、表立ってはふざける事多くてそう見せないけど俺にも蓮華にも他の人にもスゲェ気ぃ使ってくれて、マジ女神。出会い方違ってたら、本当に二人で小さな酒屋とかやって幸せに暮らしてたかも。いや、今も幸せだけどさ。まあその、うん、女神に愛されて、俺幸せなんだよ」

こっぱずかしいのを堪えて、雪蓮の頭を撫でる。そういえば彼女には胸元に顔を埋めさせられて俺が撫でられる事は多かったけど逆にこうするのはあまり覚えが無い。

 

「………」

「………雪蓮?」

体を離し、上から見つめる雪蓮の表情の真摯さに息を呑む。て言うか今の体勢床ドンってやつだこれ。

「……あは、危な。一刀がおかしな事言うから私までおかしくなっちゃいそうだったじゃない」

「たまには…いいんじゃないか」

声がかすれたような気がする。口元だけで笑っている彼女に、凄艶という言葉が脳裏に浮かぶ。

 

「…………一刀」

「ん…?」

それは一瞬。

いや、永遠のような、一瞬。

雪蓮が切なそうな、もどかしそうな表情を浮かべて俺の右腕を強く握った姿。

それを見た時に、『拉致られる』、と妙な確信を感じた。

これだけ愛されてるなら、それも悪くない。

何故かそこまで思い至ると、見上げた彼女の表情がにいっと緩んだ。

 

「やあねぇもう、流石口から生まれた三国一の種馬よねー。あら、腰から生まれたんだっけ」

「…そこは今更勘弁してくれよ。折角今好い事言ったのに」

「ダメダメ。今私本気で一刀攫って呉の山の果てまで逃げようかって思っちゃったじゃない」

言いながら長い人差し指で俺の唇を封じる雪蓮からは、さっきまでの危うい雰囲気が緩んでいる。

というかビンゴだったのか。…ビンゴだったのか?

 

「さ、泳ぎましょ」

「まだ早くないか?」

「早くなーい」

言いながら彼女が唐突に両手を後ろに回してカチャリと金具が外れる音がすると、豊か過ぎる双丘がぶるんという擬音と共に目の前に露わになる。

 

「ちょっと待て何だ!?」

「私が一刀捕まえて攫っちゃう代わりに、一刀が私を捕まえるのよ?」

いたずらっぽい笑みを浮かべると外した水着の上を投げ捨てて、湖へ一目散に駆けて行く雪蓮。

慌てて飛び起きて後を追いながら、どうしてそうなると心で叫ぶ。

「いやいやいや誰か見たらどうすんだよ!つかここの周りって封鎖してたっけ!?」

「さあねぇ?どうだって一刀が手で隠してくれればいいじゃなーい♪ほーら下も脱いじゃうわよー!」

「ま、待て!俺、手は二本!」

「待ったないもーん♪」

 

裸の女神がしなやかに水中に消え、数秒後に水面から笑顔を見せる。

どうやら俺のわがままな女神は今一泳ぎを御所望らしい。

その笑顔に向かって、疲れた体の全力で俺も飛び込んで行った。

 

 

 

 

 

「やぁん♪捕まっちゃったぁ♪」

「ゼェゼェ……女神の手加減に感謝する…」

「疲れたでしょ?この小島に上がって休みましょ」

「いやだから、雪蓮の体隠せないぞ…」

「大丈夫よ、ここの岩陰ならほとんどどこからも見えないし。それに、ほら…背中から一刀が覆いかぶさって隠してくれれば、見えないでしょ?」

「女神の御褒美があると思わなけりゃここまで頑張って泳げなかった。…悪い雪蓮、正直余裕無い」

「……っ……あはっ、一刀…まだまだぁ…、元気じゃないっ、んんっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ陽(太史慈)。…ごめんなさいね、そんなに驚かせるつもりは無かったの。ううん、気にしないで。ところでちょっと教えて欲しい事があるんだけどいいかしら?貴女、雪蓮姉様の護衛を冥琳から頼まれていたと思うんだけど姉様どこに居るか知らない?…そう。しょうがないわね、雪蓮姉様は護衛がつくのいつも嫌がるから離れてたんでしょうし撒かれちゃったのね。ところでもう一つ教えて欲しい事があるんだけど、ええ大した事じゃないの。…その双眼鏡で今何を見てたの?それと『俺の分残しておいてくれるかなぁ』って何が残ってるのかしら?…ううん私怒ってなんてないの、貴女姉様と親友だし懐柔されて直接都に帰らないでここの別荘で一泊寄り道見逃す事に なってたりとか疑ってないのよ、仕事が終わらなくて一刀に付いて来れなかった私が悪いんだものっ、水着だって折角持ってきたのにお尻が入らなくて着れなかったしっ、思春だってどうしちゃったのかしらって思ってたのにあれはあれで幸せそうだし陽だってバニーの服であざと可愛く一刀と仲良くなっちゃってるし地元に帰ったら帰ったで菫(張昭)が一刀離してくれないからお嫁さんらしいところ見せられないし最近白蓮が優しい眼差しで仲良くしようぜって言うから飲みに行ったりしてたらなんか居心地いいなとか思ってたら彼女は彼女でちゃっかり二人で海とか出かけちゃってるし一刀は構ってくれないし!うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!」

 



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司馬日記53

その後の、とある文官の日記です。
本作を覚えていらっしゃる方は既に僅かかもしれませんが、ほそぼそと書いて参ります。


8月31日

管理職・係長職の研修計画に圧迫面接というものが加えられることとなった。

精神的な強さ、臨機応変能力、忍耐性等を育成もしくは試験する為ということで各国にて試験官を選出することとなっているが、呉・蜀、特に蜀にて人材が乏しい為に魏からの派遣を依頼する旨の文書が回ってきた。

詠様は

「まぁ分からないではないのよ。そもそも桃香はこの研修にいい顔してなかったし、蜀は桃香の性格についてく流れがあるからこういう底意地の悪い役が向いてる娘ってあんまりいないのよね。そこいくと魏は国王を筆頭に桂花に桐花、風に秋蘭と性格にクセの強いのが揃ってるから頼りたいってことでしょ?」

と言われたが、皆様高位の方々なのでお時間を頂くのは難しいのではないでしょうかと意見させて頂いた。

元直と子敬はその人達はきつすぎるのでもう少し柔らかい人を選んで欲しいと口を揃え、例えばと言って稟様の名前を挙げたが先の方々と同様に御多忙と思われ一旦詠様と私の方で預かることとした。

ところで二人には稟様も中々に厳しい方と思うがそれでも良いのかと聞いたところ、

「何言ってんの!?あの中じゃ全然優しいじゃん!」

「そーそー、魏で唯一性格いい人だよ!?」

とこれまた口を揃えた。

 

…先の方々は一体、他所からどう思われているのだろうか。

 

9月2日

多少なりとも女性らしさの勉強をしたいのでと伯道に頼まれ、折りよく開催されていた水着の展示会を凪らと共に見に行った。

知り合いでは太史慈殿がもでるをやっており、ばにーがーるという衣装を来ていたが何故か内腿に墨で『正丁』と書かれていた。

観衆(といっても女性ばかりだが)が太史慈殿を見る度何事かひそひそと話をしており、伯道がその文字はどういう意味なのかと太史慈殿に聞いたが太史慈殿も

『詳しい事は分からないが一刀様に愛されてる女であるという印だからと言って雪蓮に書かれた』

と言っていたが、愛されている証であるらしいので本人は満足そうであった。

私も件の文字の意味は分からず凪に聞いたところ、顔を赤らめて『自分も知らないが公達様の私小説を読めば分かるかも』と妙に挙動不審な体で答えた。

 

自分は一刀様の御愛情表現についての流行に疎い、今度調べてみよう。

 

9月4日

三国合同残暑払いが行われた。

酒席の中での天下取りの話から一刀様が天の国の故事で鳴かぬホトトギスについて歌った三首を御紹介され、さしずめ雪蓮、華琳は『鳴かせてみせよう』の口だろうねと仰った。

すると一刀様の隣席に侍られていた孫策様が面白がり、誰か気の利いた歌を詠める人は居ないかしらと以後互推の形で幾人もが詠んでいった。

 

鳴かぬなら 御飯を食べよう 不如帰(許褚殿)

鳴かぬなら 私が歌うよ 不如帰(張角殿)

鳴かぬなら おひるねしよう 不如帰(呂布殿)

鳴かぬのも 普通のことだろ 不如帰(白蓮殿)

鳴かぬなら 一先ず飲もう 不如帰(厳顔殿)

鳴かぬなら 鳴きたくさせます 不如帰(張勲殿)

 

鳴かぬなら 寝所で待つわ 不如帰(曹操様)

と曹操様が一刀様に流し目をされながら詠まれると、孫策様はあらそっち方向に来たのねと言われ、次いで公達様が

鳴くよりも 鳴かせて下さい 不如帰

 

と詠まれ更に詠様が平たい目をしながら、

 

鳴かぬなら せめて増やすな 不如帰

 

と詠まれると皆の生暖かい笑いと共に何故か一刀様が申し訳なさげに頭を掻かれた。

孫策様がそろそろおしまいかしら、と言われると凪が是非亞莎の歌を聴いて下さいと隣席で遠慮し縮こまる彼女を立たせた。

亞莎は衆目の前で恥ずかしげに『あの、不如帰も他に素敵なつがいいるのに私なんかに捕まっていたら可哀想ですから』と言って

 

 

鳴かぬとも 放してあげます 不如帰

 

 

と詠んだ。すると座中から『うわぁ』『そうくるか』『無欲は卑怯』等歓声ともため息ともつかぬ声が方々から上がり、

何故か孫策様がにこにこしながら『勝者亞莎、もってけドロボー!』と言われながら一刀様と亞莎を酒席から追い出して御寝所の方へと追いやられ、酒席は散会となった。

 

9月7日

外回りの後、残業前に庁舎の大風呂へ行ったところ、御伽番だと言って意気揚々と出勤していった叔達と珍しく一緒になった。

後から洗い場に来た叔達をふと見ると乳房に『一』、臀部に『下』のような文字(?)が書かれており、先日の太史慈殿の件を思い出しそれは何かと聞いてみた。

すると誇らしげに一刀様の御印を頂いた回数であり胸で一度、後ろから三度という意味だと言い、閨房から直接風呂場へ行ってすぐに洗い落とす事を条件に一刀様にお願いして書いて頂いたと言う。

 

あまりはしたないお願いをするものではないと嗜めたが、姉様こそ一度や二度で感極まってあっさり失神するようでは女の務めを果たしておりません、私ほどではありませんがその大きな脂肪の塊は飾りか何かですかと反論されてしまった。

…一番最近の御伽では一刀様の灼熱の爆発は二度目までは覚えているが、その後の溶岩の奔流と言うか、桃色な幸福の大嵐に心身を吹き飛ばされてその先の記憶が定かでない。私は実は妹の言う通りなのではないだろうか?

 

それはそうとして、太史慈殿にはこの件を教えるべきだろうか…

 

9月9日

先の面接官の人選について詠様に伺ったところ、暫く思案顔をされたのち『猫の手も借りたいところでこの研修、ボクもちょっとどうかと思うしねぇ…七乃に依頼して』と言われた。

 

9月10日

張勲殿に先の研修の面接官を依頼したところ、怪訝な顔をされて考えるような素振りを見せた。

ややあって、誰からの推挙かと聞かれたので詠様であると答えると納得されたような表情をされ、では顔良さんと二人でならお受けしますと答えられた。

張勲殿にこの話をしたのは今日が初めての筈なのだが、顔良殿には了解を取らなくて宜しいのかと聞いたところ問題ないとの回答であった。

 

9月11日

元直と子敬に、圧迫面接の試験官として張勲殿と顔良殿を派遣することとなったと報告したところ、

二人とも即座に研修を中止すると言いだした。何故かと聞くと

「あんた本当に仲達ね…張勲とか、あんな蛇みたいな女の圧迫面接なんて受けたら心病むに決まってるでしょ!?」

「斗詩もさぁ、普通にしてりゃ普通かもしれないけど逆鱗触ったら調教室経由で心も体も病院送りよ?なんであたしらが楽する為に部下育てなきゃいけないところで自分の首絞めなきゃいけないの!?」

と呆れられた。

 

お二方とも優秀だが温和な方なので不向きであるからかと思ったが、元直らの見立てでは全く違うらしい。

一方詠様は既にこの結論を予想されていたようで、ニヤニヤと笑われながらこの研修は三国とも取りやめる方向で調整しようと仰られた。

 

9月13日

公達様がふてくされた表情で通達の回覧をされた。

一刀様からの通達であり、内容としては臀部や内腿等に墨書き・貼り刺青等を行う事を自粛するようにとの内容であった。

不機嫌至極の公達様が言われる事には、

「あんの近親上等姉妹、あいつらのせいよ!あいつらが三国塾の高等部の臨時授業にいらした一刀様に先生見て見てーとか言ってスカートめくって『一刀様専用→』とか『←開発済』とか初等部が居る前で見せたりするからっ、まったくこっちはいい迷惑よ!」

との事であった。

ちょっと御意図が分からず、子丹御嬢様の方を伺うと目を合わされずに『まぁ、個人の性癖は個人的に楽しめってことよ』と言われた。

 

9月15日

逢紀が昼休みに昼寝をしていたが、午後の始業になっても起きなかった為揺り起こして注意した。

彼女は新人にしては働きや態度は特段悪いという事は無いが、どうにも大雑把であったり緊張感に欠けるところがある。

詠様にふとそう漏らすと、

「いいのよあんなもんで。あんたとか月とかみたいに一瞬も気を抜かずにあいつの事見てるなんてそっちの方がおかしいのよ」

とにべもない。

 

9月16日

昼食後に逢紀に仕事中に眠くなったりすることは無いのかと聞かれ、

夜に確り睡眠を取り、一刀様の御為と思い仕事に集中していれば眠気を催すことなど無い筈と答えた。

すると傍で聞いていた子敬がウソよ逢紀、明日仲達絶対居眠りするから見ててと言うや、

『ねぇ仲達、最近一刀様に抱かれたのって八日前だっけ?忘れちゃった?忘れる筈無いわよね、一刀様とのだぁいじな思い出。って言うかぐっちょんぐっちょんの超えろえろ時間?前掛けの隙間からおっぱいゆるゆる揉まれてべろちゅーしながらびちょびちょな所を奥までぬぷぬぷされつつぎゅーって抱きしめられてボロボロ泣くほど良かったんでしょ?そんなに良かったのに夜思い出さないで寝たらむしろそれって不敬じゃない?不敬よね?やっぱ寝る前一度は反芻しないと。まあそこでちょっと何ていうの?多少火照る体を処理したりするのってむしろ敬意よね、思い出してぬるりともしないとかやっぱ失礼だし。うんまあむしろすればするほど一刀様の男の魅力の証明みたいな?それじゃちょっと仲達悪いんだけど、こないだあんたと寝たときの事絶対全部覚えてる一刀様にお茶出してきてくんない?』

と言われた後の事は良く覚えていない。

 

どのように業務をこなしたか、予備の下着を二着とも使いきった経緯も判然としないが、気がつけば半裸で朝を迎えており自分の寝台は丸ごと洗濯した方が良いような有様だった。

 

9月17日

不本意だが、執務机に何度も頭を打ちつけるほどに居眠りをしてしまった。

逢紀や子敬はニヤニヤしていたが、彼女らの手前寝てしまう訳にも早退する訳にも行かない。

 

9月18日

昨日と全く変わらない。

額と瞼を腫らした私を流石に異常に思われたらしく詠様にどうしたのかと聞かれたが理由は明確だ、夜な夜な一刀様との情愛に溺れる妄想に耽ってしまっているからだがそのような事を言い訳になどできる筈が無い。

自覚が足りない為ですと謝罪したが、その後子敬と逢紀が何事か詠様に耳打ちすると詠様はこのクソ忙しい時期にそういう事面倒臭いからやめてよねと怒られ、二人は平謝りしていた。

 

9月19日

目が覚めたら夕方であった。

昨日夕方、詠様が一刀様を連れてこられ『寝かして!こいつ寝かして、仕事になんない!』と私を指差されると一刀様は私を寝室へお召しになり、添い寝をされながら良く休むようにと仰って頂いた。態々の親しい御指導に感動に打ち震えながら休む様に致しますと申し上げたが、心身とも昂ぶってしまい一向に眠れずに困っているとじゃあ少し運動をしようかと言われ、御寵愛を体の奥に賜って漸く幸福の絶頂のうちに眠りにつく事が出来た。

御多忙な一刀様は私が目を覚ました時には既にいらっしゃらなかったが、眠りに落ちる前に一刀様の腕に抱かれていた事は鮮明に覚えている。

 

夜にはやはり一刀様の御優しくも男らしい御愛情を想い出し体の疼きを処理することもあったが休むようにとの御言葉も思い返され、睡眠も取れるようになった。

 

いと容易く女一人の健康を復される一刀様は薬師の如き、いや神仙の如きお方だ。

 

9月21日

亞莎と庁内食堂で夕食を摂っていたところ、太史慈殿が来られ相席した。

ふと思い出し、先の展示会で書かれていた内腿の文字ですがと言いさすと満面朱にして『雪蓮に騙されました』とまくし立てた。

実際に一刀様は太史慈殿とされる時は七度ほど、と聞いてみたかったが止めておいた。

亞莎もちらちらと私と太史慈殿を見比べながらもの言いたげにしていたが、同じことを聞きたかったのかもしれない。

 

食事が終わると太史慈殿は『これから張昭殿と圧迫面接の訓練なのだが圧迫面接とは何なのでしょうね』と言いながら去っていった。

圧迫面接研修は取りやめとなったはずであったが???

 

9月23日

休暇であったが特にする事も無く、久しぶりに射の練習をする為弓道場にいってみた所、黄忠殿が先に鍛錬されていた。

会釈したのち離れて数度射ていると黄忠殿が傍に来られ、文官でいらっしゃるのに射も御上手ですねと言われた。

名手として知られる彼女であるので社交辞令には違いないが、そこから業務の事等を雑談しているうち彼女の娘御の話に及ぶと不躾なお願いですがと前置きして私に璃々嬢の短戟の手ほどきをして欲しいと言われ驚いた。

そもそもが私は文官で手遊び程度の腕前でしかなく、彼女自身は言わずと知れた射手、蜀には他にも五虎大将を始め武芸に秀でた方々が多く居られるので私如きが教える事など何もないのではと申し上げたが、璃々嬢は未だ膂力が足りず弓や大剣は手に余るのだという。加えて広い戦場よりも市外や屋内戦等を鍛えたい意向があり、私か私が忙しければ同系の戦闘技術を持つ士季に教えを請いたいとの事であった。

 

個人的には吝かでないのだが妹や弟子達を差し置き他国の子女にかまけているようではどうかと思い、検討させて頂く事とした。

 

9月24日

姉妹弟子そろって夕食をとりながら、黄忠殿からの話をどうだろうかと諮ってみた。

伯達姉様はいいんじゃないかしらとだけ仰り、叔達はあの娘(璃々嬢)は魏の大いなる脅威となる可能性があります、利敵行為となりかねないので反対ですと述べた。

もう一人の師として指名されている士季に意見を求めると

『正直、黄忠の意図が余り読めないんですけどねぇ…ま、次世代はあの娘と孫尚香が軸でしょうから渡りをつけておく意味はあると思いますよ?特にまだ入職してない恵達(司馬進、六女)様達はね』

と言い、それに幼達(司馬敏、八女)は迷わず共に参加し璃々様に学びたいと答えたが恵達と雅達(司馬通、七女)は難しい顔をして重大な岐路かもしれませんので少し考えさせて下さいと述べた。

少しなら良いが余り長く回答を待たせては先方の都合もあるので早急に考えるようにと妹らに指示すると、士季が『それよか仲達様こそ璃々ちゃんに教えてもらったらどうです?あの娘噂じゃ相当なやり手できゅうきゅう搾り取ってるらしいですよ』

 

と言いながら親指を人差し指と中指の間に挟んで振って見せた。おそらく房事の事を言っているのだろうと察したが、腹立たしいので気付かない振りをしておいた。

 

恵達らは迷っていたようであったが翌日には共に武芸に励みたい、また毎鍛錬日毎に璃々嬢との茶席を設けたいとの事であった。

多少幼いものの璃々嬢の挙措振る舞いは常々立派なものであり、他国の優秀な子女との交流は有用なものと思われたので先方さえ良ければそれでという事となった。

妹達も皆文官志望であるにも拘らず感心なことではある。

 

9月25日

最近許攸の勤務態度が改善されたように思われる。

勤務当初は一刀様に対してぞんざいで軽んじる風が明確であったが、今日は

「ね、ねえ!何かあたしにして欲しいことない?遠慮されるとこっちが困るんだからね!」

等と言って一刀様に纏わりついていたが口調は柔らかく、どことなく一刀様を慕う風が感じられた。

陰で逢紀を呼び、改善が見られるが言葉遣いを改めさせるようにと指導すると

「あ、そこは照れ隠しなんでちょっと難しいかもしれませんが良くなりましたよね?一刀さんがずぷっと一発決めてくれましたら覿面ですよ、私の首もあったまるってもんです」

という返事であった。

 

9月26日

黄忠殿に先の件について承諾の旨御連絡した。

才媛揃いで鳴らす司馬家の方々と親しくして頂けて光栄ですわと言われたがお門違いの武芸を指導するには臍を誉められたようなものだと元直と子敬に語ると、

「関係ないけど一刀様ガチでヘソとか誉めるよね」

「そうそう膝の形とかさ、もう無理でしょってとこまで寝床じゃ褒めちぎるから勘違いする女多いよね」

等と話していた。加えて何故黄忠殿は私等に指南させようと思われたのだろうかと聞くと、

「んー…紫苑が言うように得物が重いのは無理って言うのはあると思うわよ、うちの連中の得物皆重いし私が教えられるのも剣しかないしね。それとさぁ、現実問題一刀様もう戦場の最前線には出ないでしょ?そうすると武官で日常的に傍に居る為には身辺警護、暗殺対応能力の方が求められてるからじゃない?」

「それ系でいくと思春と明命も候補なんだけど、思春は性癖がアレ過ぎるし明命は璃々ちゃんのおっぱい見た瞬間に速攻で断ると思ったのかもよ」

とのことであった。

 

…ところで一刀様には肢体について御伽の度に過分にお褒め戴くばかりで苦言を拝した事が無いのは、そういうことだったのか…

自戒せねば。



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司馬日記外伝 穏の転職?

お久しぶりで御座います。穏の話であるような無いような…


八の字に下がった細い眉に、憂いを帯びながらも彼女の比較的大人しい性質を表したように下がった目尻へと流れる瞳。

口元は不満げにへの字に結ばれ、押し問答からはや数分経つ。

 

「ですから、さっきから申し上げてますけど求人はしている筈ですっ。早く面接のほうお願いしますっ」

「…上司と相談して参ります、暫しお待ち下さい」

不機嫌ながらも行儀良く拳を膝の上に揃えたまま主張を述べる彼女にそれだけ答え、会釈して会議室を出る。

 

「わかった?」

「今ひとつ要を得ませんが…」

会議室の扉を閉め、執務室で待ち構えられていた詠様に軽く首を捻りながら報告する。

「子敬、まだ帰ってこないのよ。とりあえず聞いた話を教えて」

「こちら(総務室)の事務職の求人に応募したいと。呉の要職にあられる点を指摘しましたが呉は退職すると言われています」

「本気なのかしらねェ…呉で何かあったのか聞いた?」

「入職する上でそれは関係あることなのかと反問されました。就業規則には兼業時の給与については規定されていますが兼業の可否自体については記載はありません、規則の整備も必要かと」

「まあ就業規則はどうでもいいんだけど、つまり何かあったって考える方が自然ね。…あ、やっと帰ってきたわ」

 

詠様の視線に釣られて部屋の入り口を見ると、息せき切った子敬が扉を掴み戻って来ていた。

「どういうことなの?」

「ちょ、ちょっと水一杯飲まさして下さい」

湯飲みに水を注いでやると一息に飲み干し、はーっと息を大きくつくとおもむろに口を開いた。

 

「えっとつまりですね、一言で言っちゃって穏、ヘソ曲げてます」

 

------------------

 

子敬の説明によるとこういうことらしい。

長年呉の屋台骨を支えて来た周瑜殿が最近世代交代を進める意向が強く、業務を次第に陸遜殿や呂蒙殿らに委譲し始めているが呉国内の協力体制に彼女は不満があるらしい。

「まホラ、うちってアク強い人多いじゃないですかぁ?祭さんとか思春とか、薫(張昭)さんとか小蓮様とか。そういう人たちの調整しながら進めなきゃいけないとこ持ってきて最近冥琳が夏侯淵さんとどっちが一刀様の正妻ならぬ正姉かって争いに入れこんじゃってて補佐足んないじゃない、おまけに下からの突き上げも激しくなってきてて。それでもぉやってらんないってなっちゃったみたい」

「あぁ~もぉ忙しいのに…蓮華ぁー!」

「あーでもそこ蓮華様に持ってくのはちょっと可哀想だと思うんですよ…蓮華様だって国王様達同士の中で立ち位置確保するだけだっていっぱいいっぱいだし、あの姉と妹に挟まれながら地元でも存在感出してくってのも大変だと思いますよ?」

苛立たしげに頭を掻き毟る詠様を宥める子敬に、疑問をぶつけてみた。

「亞莎が居るだろう。才気煥発、いずれ大都督、丞相にも相応しい資質の持ち主ではないか」

「あーダメダメ、確かに亞莎すごい優秀だけど若過ぎで貫禄足りなさ過ぎ」

「仲達、あんた亞莎が祭や張昭さんとかに意見してるところ想像出来る?それよか、子瑜(諸葛瑾)さんとか子綱(張紘)さんとかはどうしてるのよ」

「子瑜さん基本大人しいのと、厳しい事言おうとしても『あの(801的な意味で)妹の姉のくせに』とか反撃されるの気にしてるからあんまりねー。それと子綱さんじゃ子布さん止められないし、事と次第じゃ子布さん側についちゃうから。それにホラ、」

尚も言い募る子敬にお前自身が補佐してやればよいだろうと言おうとした所で陸遜殿が痺れを切らして会議室から出てこられた。

 

「それでぇー、採用試験のほうはまだですかぁー?」

陸遜殿は子敬の姿を認めるとふんとそっぽを向いてしまい、子敬は苦笑いを浮かべる。

最近は御機嫌麗しく余り寄せられていなかった詠様の眉根がかなり引き絞られ、捨て鉢な風にこう言われた。

 

「…試験は省略、穏を仮採用するわ。試用期間を二週間としてその後本採用不採用を決定するから、とりあえず仲達の下について」

「有難う御座いますー」

満面の笑みを浮かべて頭を下げる彼女の首の下で、豊か過ぎる乳房がぶるんと揺れた。

 

-------------------

 

陸遜殿が入室され、併せて子敬が都督代理として急遽呉に派遣されて三日が過ぎた。

『この分の給与は絶対一刀様の腰で払って頂くからね』と呪詛の言葉を残して呉に旅立った子敬の事はさておき、噂には聞いていたし実際に見る機会もあったのだが、改めて陸遜殿は優秀であり国家の柱石として相応しい人材であると感じた。

事務について説明すると、何一つ手をつけないうちに問題点となると思われる事項について的確に質問され、私の回答によって『ではこのように進めればよいですね』と事務の方向性を確認されるほか、よりよい事業となるように提案も速やかに成される。

また月様は初対面時はぎょっとされたような表情でしげしげと彼女の胸元を見られていたが、勤務中も朗らかな笑顔を絶やさぬ彼女の態度に月様や他のメイド職らとの間柄も当座良好だ。逢紀が

「すっごいですねぇあのおっぱい!いや今まで仲達さんのも凄いと思ってましたけど、どっいいいーんでどたぷーんですよ、あとで触らして貰ってもいいですかねぇアレ」

等と耳打ちされ、失礼なことはせぬよう窘めておいたが親しみ易さの表れとも言えるだろう。

 

「すごいですねぇー、仲達さんはぁ。こっちの仕事しながら魏でも総務のお仕事されてるんですかぁ」

「関連の強い事務が多いですから、単純に別々の二つの仕事を持つ事に比べれば楽だと思います」

陸遜殿こそ都督の重責は大変なのでは、と言いかけたが経緯を慮り言うのをやめた。代わりにふと新後宮を建設する際の事を思い出した。

 

「そういえば陸遜殿は後宮にも個人的な書斎をお持ちで、大変勉強熱心なのですね」

「ふえっ!?え、えーっとぉー、それほどでもぉー、あははぁー」

と照れながら謙遜されたが、私も勉学は嫌いな方ではないので近々、そちらで蔵書の御案内等頂けないでしょうかと伺ったが

「ふぇぇぇぇーっ?そ、それは困りますぅー!わ、私はそっちの方の趣味はちょっとぉー…」

と尚も赤くなられ、固辞されてしまった。それはいいのだが、詠様が生温かい眼差しで

「穏、これが仲達だから」

と言われたのには何とはなしに釈然としないものがあった。

 

-------------------

 

四日目の朝、陸遜殿は午前休を取られると詠様が言われた。通常通り執務を行っていたところ、背後に物凄い形相をした子敬をぶらさげながら一刀様が総務室に来られた。子敬に御執務中に不敬であるので降りろと言ったが、五月蝿いわねと一蹴された上に一刀様が構わないからと言われたので一応黙ることとした。

一刀様が詠様の元へ行かれると、詠様も席を立たれお茶を用意して会議室へ来るように言われた。

 

「で、どうなのよ」

「いやぁ、うーん…まあ、慰めはしたけど」

机から半身を乗り出す詠様に一刀様が首を振りながらお答えになる。

「穏、まだ拗ねてる感じです?」

「子敬、いい加減に一刀様の首から離れろ」

「やぁよこの後一刀様としっぽりだもん。つーかそれくらい役得なきゃやってられないわよこんな板挟み地獄!あたしだって後三日(呉に)居たらキレて手ェ出してたわ、武闘派事務職舐めんじゃないわよ!?」

「まあ子敬の事はおいといて、いっそ凌遅かけたら?何冊でも軍略書使っていいわ、あの娘そっち系の素質もあるでしょ」

「いや仕事的に切羽詰ってるのは分かるけどさ、それは止めようよ」

詠様の御提案を即座に否定される一刀様。

「…蓮華も説得したんでしょ?」

「うん、それは効いてるみたい。ただ立場的に、蓮華の出来る事は…」

「下(臣下)同士の協力の話だから限られてるしね。それにあんまり蓮華に負荷がかかると今度は蓮華が潰れちゃうわ」

筆の端部で米神をぐりぐりと押しながら溜息を吐く詠様に、一刀様の肩に顎を乗せた子敬が続く。

 

「これ、根本的にウチの体制の問題なんですよねー…豪族の権力がまだ強くて魏ほど官僚制が確立してないし、蜀ほど劉備様の個人的な魅力で意思統一してるわけじゃないし。蓮華様も頑張ってるのは分かるんですけど。そこでやっぱり一刀様のココが出番だと思うんですよ」

「うひゃ!?ちょっ、夕(魯粛)さんどこ触ってんの!」

「子敬!」

言いながら机の下で一刀様の下腹付近でごそごそと蠢かせる子敬の手を掴んで捩じ上げる。

「いたたたたっ!?わかった触らないから今はっ、ちょっとその手離して!」

離してやんなさいよという詠様の言葉に渋々手を離す。

「その手はアリかもね、現実問題」

机の上で組んだ手の上に顎を乗せながら言われた詠様の言葉が、先程の子敬の提案の答えだと理解するのに少しかかった。

「ですよねー!要は結局、欲求不満なんですよ皆、お前らばっかりイチャコラしやがってっていう」

「具体的に誰から行けばいいの?全部で何人位?」

「ごめんちょっと待ってなんかおかしな話になってない?内政のサポート態勢の話じゃなかったの!?」

「とにかくまず子布(張昭)さん、とそっちだけだと子綱(張紘)さんが地味にやる気失くしちゃうから子綱さんも。あと今まで何回も寸止めお預け食らってる文嚮(徐盛)は必須、あの娘やる気出して貰わないとちょっと(仕事)回らない。黄忠さんのとこと差がついてかなりキリキリきてる凌操さんの娘の公績(凌統)もいい加減処女破っとかないと三国母親会が険悪になりそうだし、そうなると朱治さんの娘の義封(朱然)の方が年上だからここも外すとまずいかな。それに丁姉妹も押さえておきたいけどとりあえず姉の承淵(丁奉)の方が腕が上だからそっちだけでも。あと貧乳枠で元歎(顧雍)も愛されてますってとこ見せとかないと貧乳組がグレるんで、とりあえずここらへんを」

「張昭さんは張紘さんと二人一組でお願い出来ないかしら。あと若い娘達もまとめてやっちゃえば母親達も含めて抑えられるなら割がいいわね」

「そうですね、子綱さん達は名実共に姉妹だし問題ないと思います。それに若い娘達の方は何人もで尻並べて待つのが当たり前って躾をしていかないと今後の当番が回らないってとこもありますし」

「ちょっと待とうか!今凄く非人道的な話が進められてる気がするんだけど!?」

「あ゛?今名前出た女達、あんた別に知らない顔じゃないでしょ?」

「それはそうだけど!」

「男冥利に尽きるじゃないですか、こんだけ美女に愛されまくって。大丈夫ですよ、昔の王とか千人くらい普通に囲ってたって言うじゃないですか(適当)。仲達だって思うでしょ、一刀様の愛が遍く若く美しい娘達にズコバコ注ぎ込まれるのは素晴らしい事だって」

お三方の会話に割り込む間が無かったので黙っていたが、その通りであるので首肯した。『ずこばこ』とはどういう意味か今一つ分からなかったが音の雰囲気から非常に強く多くという事だろう。

 

「ほら仲達だってそう言ってる、一刀様この仲達の無垢な瞳を裏切るの!?裏切っちゃうの?度量の小さいとこ見せちゃうの?」

「そういう話じゃないだろ!?」

「ま、いいから黙んなさいよ?」

尚も反駁され立ち上がられた一刀様に、詠様も立ち上がるとおでこをぶつけて睨む様に見上げながら

「『鳴かぬなら せめてケツ拭け 不如帰』。…コレ、そもそもあんたの所為なんだからね?あんたが不満持たせてるからこういう事になるんだからね?」

と、妙に迫力のある低い声で言われ、席に着かれた。

 

一刀様は暫く絶句され呆然と立たれていたが、やおら脱力されたように席に着かれると詠様に

「…あくまで、本人達の自由意志次第、ということでなら…」

と掠れた声で言われ、それに詠様は顎をしゃくった。

 

暫く部屋を沈黙が支配していたが、まとめるかのように子敬が

「いや一刀様(の腰)には御負担かけちゃいますけど、これで呉が平和に廻していけるんで宜しくお願いしますね。ところでこの話呉以外にはここだけって事で、魏や蜀に伝わると」

と言いかけたが、いつの間にか開かれていた会議室の扉と、その前に立っていた妙に爽やかな笑顔の元直(徐庶)を見て絶句していた。

 

「…伝わると何かしらね子敬?ウチ、もともと桃香様が(後宮の女)増やす事に消極的じゃないから結構増えるわよ?本国の方のやる気が上がればこっちの仕事も捗るから助かるわぁ。あ、魏に喋られたくなかったら私の一人枠は確保してね?」

と笑顔のままそう言って元直は去っていった。

その後一刀様らは何故か頭を抱えておられたが、先程も問われたように一刀様を慕う性情の良い女達に広く深き御愛情をお注ぎ頂ける事は極めて好ましい事に違いない。

 

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一週間後、陸遜殿は呉に復職することとなった。

統一後に後宮入りした呉の娘達の御伽番編成権が彼女に授与されたのに伴い若く優秀な娘達が高位職に抜擢され亞莎らと共に補佐する事となった他、年長者らも積極的に守り立ててくれているという。

総務室としては残念至極ではあるが大陸の平和、一刀様の御世の為には良いことなのだろう。

短い期間ではあったが良く働いてくれたこともあり、ささやかながら送別会を開いた。

開会の御挨拶で月様が無礼講でとは仰ったが、宴が進むや逢紀が陸遜殿の前に出て何故か平伏をした。

何事かと陸遜殿が困惑していると、

「すみません、メイドの土産にそのおっぱい!一揉みでいいから触らせて下さい!」

と拝み倒し始めた。失礼なので止めないかと再び窘めたが、陸遜殿はここは女性だけなのでちょっとだけでしたらと承諾されるとぱああと満面の笑みを浮かべ、失礼しますと言ってそのたわわな胸を掴んだ。すると

『ふおおおおお…すごい!大っきい!柔らかい!』

と叫び、これは御利益あるよと言い柏手を打って拝みだすと劉璋殿や許攸、果ては月様までがにこにことされながら我も我もと触って拝むという訳の分からない事をされていたが陸遜殿は困惑されながらもにこやかに飲まれていた。

尚酔いが回っているらしい逢紀が『こっちも拝ませて下さい』等と言いながら私の胸にも手を伸ばして来た為手刀で撃退した。

その後執務を終えられた一刀様もお見えになり、御慰労の餞別を渡されていた。薄い箱様のもので中身は勉学熱心な彼女に相応しい書籍と思われ、彼女に折角の御賞与であるのでここで開封するように勧めたが御本人や詠様、一刀様ら皆から後でと止められた。すると月様がもう散会時間なのでこれから二次会で一刀様と二人きりでその書籍で勉学に励まれてはと言われると陸遜殿は照れながらも承諾され、一刀様に肩を抱かれて後宮へと帰っていった。

 

二人が見えなくなった後、月様の御配慮は彼女も有難いものと思われたでしょうが酒席の後に勉学というのは如何なものでしょうかと申し上げたところ、何故か詠様・元直・子敬から声を揃えて『仲達』と生温かい眼差しと共に言われ、月様は笑顔のまま『穏さんはお酒の後に書を読まれるのも御主人様となら苦にされない方ですから大丈夫ですよ』と言われた。

元々交流深い方同士ではなかった筈だが、流石の御心遣いだ。

 

--------------------

 

まだ眠かったのに、酷い頭痛が眼を覚まさせてくれた。

ガンガンとする後頭部。と、それとは別の鈍い痛みがする眉間をさわってみる。

「痛ったー…なんでタンコブ出来てんだろ…?」

確か昨日は陸遜さんの送別会だったはずだ。後頭部の痛みは所謂二日酔い。眉間の痛みは思い出せないけどまあどっかでコケるとかして打ったんだろう。

「とりあえず、水飲も…」

呟いて起こした上半身に違和感を覚えた。

「…あれっ?」

裸だ。首から下を見下ろすと、あたしちゃんの形のいいおっぱいが直接見える。

おかしい。

私は寝るときは普通に服着る方だ、って言うか相部屋なのにまっぱで寝てたら結構顰蹙だし。酔っ払って裸で寝ちゃったのか。まあいいや水飲みに行こう、と思って寝台に手を突いて起き上がろうとしたら髪を掴んだ感触がした。

「えっ?」

あたしは上体を起こしてる、だから髪は背中にあるはずで寝台の上には無い筈だ。なのに掴んだこの髪はなんだろうと思ってその先を見たら、

燕(許攸)さんが隣ですーすーと寝息を立てていた。

 

 

 

 

裸の自分。(見たらぱんつも穿いてなかった)

無い記憶。

一刀さんに開発されつつあって正直最近欲求不満だった自分の体。

隣で寝てる燕さん。

 

 

 

 

そこから導かれる結論に、あとから心配して見に来てくれた警備の周泰さんに『とても女の子のものとは思われない豚の断末魔のような悲鳴が聞こえたのですがどうしましたか』と言われたような叫び声をあげてしまった。

 

「…っるっさいわねー…起きんの勝手だけど静かにしなさいよね…」

「つつつつつつつ燕さんっ、夕べ何がありました!?私何してました!?」

「あー?………そーね、とんでもない事してたわよこの変態」

「」

あ、これあかんやつだ。

進みたくも無い方向に進んじゃったんだ。

ごめんなさい一刀さん。でも一刀さんも悪いんですこんなめちゃシコ美少(?)女を中途半端な開発してほったらかすから。

あーでも複数とかアリらしいし。複数だったらそういうのもきっとあるんだよね?ちょっとでびゅーが早まっちゃったと思えば?

 

「何白目剥いて間抜けな顔してんのよ、さっさと服着て出てきなさいよ」

「えっ?………………燕さん、服着てたの?」

「そりゃそーよ!何が悲しくて女同士でまっぱで一つの布団に収まんなきゃならないのよ!」

「…………ひょっとして、私燕さんになんにもしてない?」

「おぞましい事言わないでよ!?あんたそのケがあったの!?」

「無いです無いですよかったぁぁぁあああ!」

ううっ、思わず目尻に涙が。あれ?でも解決してない問題があるんじゃない?

 

「…ところで戻りますけど、私何で裸で燕さんの寝台なのかとか教えてもらってもいいです?」

「やっぱり全然覚えてないのね。あんたべろんべろんに酔っ払って、あたしが担いで帰ってきてやったのよ。そしたら暑いとか言い出して素っ裸になるし、私だって陸遜さんほどじゃないけど負けたもんじゃないんですからとか言って頼んでもいないのに胸の谷間に酒注いで私だって出来るんですからとかわめいて自分の寝台の上に酒零して寝れなくして!しょうがないからあたしの寝台に寝かさしてやったのよ、感謝しなさい」

「…大変申し訳有難う御座います…ところでこのタンコブは?」

 

おでこの青痣を指差すと、燕さんがニヤリとした。

 

「覚えてないの?まずあんた、陸遜のおっぱい揉んだのよ」

「…………そういえば、そんな気が…」

「それもたぷたぷたぷたぷ、執拗にたぷたぷたぷたぷ」

「たぷたぷ!?そんなに!?」

いやあの乳は一度触ってみたいって思ってはいたけどそこまでするかあたし!?

「まあでも陸遜は大人しいからそんなに怒んなかったんだけど。その後仲達にも手を伸ばして」

「マジで!?」

「マジよ。それで殴られたのがそのおでこ」

「ゲェ…」

おでこを触る。痛い。でも仲達さんに殴られてこんなもんで済んだならかなりマシな方だろう。ところで折角仲達さんのも揉んだのならその感触を覚えて居たかった。

 

「しかもとどめが董卓よ」

「は?」

「董卓」

「……月様?」

一気に背筋が冷える。仲達さんならまだいい、殴られても殺されはしない。(多分)

 

「背後から『揉めな~い(スカッスカッ)』とかやってて。あんた一人だけゲラゲラ笑ってたけど全員ドン引きよ、で顔は笑って目は笑ってない董卓が『明日謝って貰うからいいです』って言ってたけどあんた、ここでこんなことしてていいの?」

「それ早く言って下さいよぉぉぉぉ!?」

 

 

-----------------

 

 

下着もつけずに服だけ着て全力で総務室へ駆け出す杏を見送った。

実際夕べの杏はうざかった。人の胸が慎ましいからって見せびらかしたりもっと揉まれないから駄目なんだだの。

「ま、いい薬よね」

 

騙したな、と杏が涙目で駆け戻ってくるまで多分約一時間。

あたしは寝台に再び横になって、休日の朝寝坊を楽しむことにした。



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司馬日記外伝 必殺!?八門禁鎖!!

その後の、とある華雄さんの受難(?)です。
いや、この世界の方々だったら八門禁鎖(仮)くらい平気で編み出しそうですけどね・・・
御笑覧頂けましたら幸いです


思い出せば、きっかけは華雄とのやりとりだった。それも至極まじめな。

 

「珍しいね、華雄が読書なんて」

「何を言う、私だって軍略書くらい読むぞ」

壁に凭れ掛かって書を披いている彼女を見かけて声をかけたら、顔を上げてさも心外だと言う表情を見せた。

「そっかごめん、華雄ってどっちかっていうと自身で斧を振って鍛錬してる凛々しいイメージがあったからさ」

「統一的に『組織と装備で戦え』と指示したのはお前だろう」

「まあそうなんだけどさ、俺の為にありがとう」

「…月の為でもある…おい、こんなところで馴れ馴れしいぞ」

「まあまあ、俺と華雄の仲じゃない」

失礼な事を言ってしまったのでちょっとリップサービスもしながら横に並んで肩を抱くと、口とは裏腹に照れながらもされるがままなお姉さんマジでチョロ可愛いです。

 

「ところでどんなの読んでるの?」

「用兵だ、戦略というよりは個別の戦術だな。この陣についてだが、お前は経験あるんじゃないか?」

「…あーこれかぁ、うん知ってる、っていうかちょっとだけ覚えてる」

「お前ならどう攻める?」

えーっと、これ演習で汐里(徐庶)さんが説明してたよな。その時の記憶をなんとか呼び起こす。

 

「まず、こっちの二つの門(生門、景門)を同時に攻める」

「軽く当てる程度か?」

「いや、奥深くまで突き刺す感じで。ここが一番の弱点だから」

「こちら(生門)は分かるが、こっち(景門)はそれほどの弱点には思えないが…」

「そうでもない、実際突いてみるとあっという間に乱れる。急所って言ってもいい」

「そうなのか」

「で、体勢が崩れたところを今度はこっち(開門)から突き入る」

「成る程。これは(軍勢の)喉を突かれた形だな」

「あとは全門から攻め立てて、一方的な蹂躙だね」

「既に雁字搦めで成す術無いということか」

「うん」

「そうか…知ると試したくなるな。午後は時間があるだろう、(演習)相手をしてくれないか?」

「えー!?いや、華雄相手じゃ…」

「お前が攻め手なら良いだろう、受ける側で体感してみたい。全力で頼む」

「うーん…それならまぁ、俺なりの全力で」

 

そんなやりとりをしたことさえ忘れた頃、事件は起こった。

 

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「あーいたいた!一刀様おっはよーございまーっす!」

「おっはー一刀様ー!」

「…あーうん、おはよう」

詠が『元気があるのとへこたれないとこだけは評価するわ』と呆れ半分で評する玲紗(関平)と藤香(劉封)。

ちょっと色々カッ飛んでるのと常識が色々アレで欲求に正直過ぎるのを除けばいい子達なんだけど、今日は生憎忙しい。

 

「ねえねえ一刀様!」

「うん、悪いんだけど今日は結構忙しいからあんまり遊んでられないよ」

「またそんなこと言ってー!どうせ女の子といちゃいちゃするんでしょ?」

「マジメな会議だよ!来年度予算の」

「いーじゃんそんなのお義母様とかに任せちゃえば。それよりさぁ、私達と!」

「だぁーめだって」

「「『八門禁鎖』しましょーっ!!」」

 

「…は?」

この娘達は二人してポーズつけて一体何を言ってるんだ?

 

「またまたぁ、とぼけちゃって♪華雄さんと話してたの聞いちゃってんですよ?」

「もうとっくに華雄さんが月さんにゲロっちゃって、ウラも取れてんですよ?うーりうり」

「スカートめくるの止めなさいはしたない、兎に角俺もう会議行かなきゃいけないから。詠」

「そうね。ほら、あんた達も巣に帰った帰った」

「あーもー!今度絶対しようね!?」

「はいはい」

なんだか分からないままぷんすことむくれる二人を残して、詠と会議室へ向かう。

道すがら、『八門金鎖』ってナニ?と詠に聞こうとしたら、機先を制され

「あんたそんなことしたの?」

と聞かれた。

 

「そうらしい」

「覚えてないの?流石種馬ね。さ、会議始まるわよ」

そこ種馬関係あるの?と聞き返そうと思ったが既に会議室についてしまった為とりあえず着席し、会議の進行と共に他愛ないやりとりは忘れてしまった。

 

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明らかな異変を感じたのは午後からだった。

「一刀様」

見るからに不機嫌な桐花(荀攸)が執務室にやってきたからだ。

 

ヤバイ。

何がヤバイって既に右手に首輪と縄持参な所がヤバイ。

仕事中は口では色々言ってても意外と常識人で、実力行使には及ぼうとしない桐花がこういう行動に出ている時点でヤバイ。

 

「どうしたの、桐花」

努めて動揺を隠して答えた声は上ずった気がする。

「近親☆上等姉妹から聞きましたよ…」

「?なにを…?」

「なにをですって!?」

髪形こそ違え、伯母とそっくりな顔でくわっと激高する桐花に思わずたじろぐ。

「華雄と『八門禁鎖』したって言うじゃありませんか、私という雌奴隷がありながら!私の編み出した『連環の計』だってあんなに強請って強請って拘束具だってこんなに安全ですからって説明して漸く一回してもらったとこだって言うのに、あんなムッツリスケベ大女にいきなりそんなプレイを許すなんて!これは由々しき不公平、不平等ですっ、明後日の私の番は必ず!必ず!!私の鶴翼の陣を一刀様の鋒矢の陣で滅茶苦茶に突き崩して、『八門禁鎖』で責め抜いたあげくに『鴻門の会』で止めを刺して下さいましねっ!」

 

約束ですよっ、と涙目で突きつけられた首輪と鎖を何故か流れで受け取らされると、ふーっと息をついて彼女は出て行った。

 

知らない言葉が増えたんだけど、と傍らの詠に呟くと、そんな会ボクだって知らないわよと顔も上げずに返された。

とりあえずこの首輪と鎖はどうしよう。

 

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その後もどうにも庁内の雰囲気がおかしい。

 

何か慌しく、俺に隠し事をしているかのようなひそひそ話を方々で見かけた。一言で言うなら、『不穏』だ。

今日は結構会議続きで余り気にしている余裕が無く、廊下を歩いていたら桃香に部屋の外からちょいちょいと手招きされた。何かと思って廊下に出ると、

「あのね?私、ご主人さまとすることならなんでも楽しいなぁって思うんだけどね、でも『八門禁鎖』とか、そういうのはちょっと怖いかなぁって思うんだ?うん、愛紗ちゃんは喜ぶかもしれないよ?でも焔耶ちゃんとか翠ちゃんとか朱里ちゃんとか、そういうのちょっと苦手な娘もいると思うのね。だから人を選んでそういうことはしてね?ご主人さまならそこらへんよく分かってて大丈夫とは思ってるんだけど、一応念のためね?」

と謎の諭され方をした。しかしおかげでここでようやく、俺は誰かに聞くことが出来た。

 

「ごめん桃香、『八門禁鎖』って説明してくれる?」

「え、えーっ…もぉご主人さまぁ、こんなところで恥ずかしいよそんなことっ、それじゃあね!」

「あ、桃香…!」

顔を赤らめて背中を叩かれ、行ってしまった。

 

しかし話の方向性だけは大分掴めてきた、すごく嬉しくないが。って言うかこの流れは。

「愛紗と思春が来る気がする」

「…学校(三国塾)行けば?あそこなら来ないでしょ、仕事は夜こなしてよね」

ちらりと見ながら呟くと、例によって顔も上げずに答えをくれた詠の言うとおりにすることにした。

 

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どうしてこんなことになってしまっているのか。

ぼんやり考えながら校舎内を歩いていると、知っている女の子が歩いてきた。

「一刀さま!」

「やあ、幼達ちゃん。どうしたの?」

守りたい、この笑顔。

「一刀さま!ようたつにも、『八もんきんさ』していただけませんか?」

 

……守りたい、この笑顔。マジで。てかどうなってんだ一体。

 

「…幼達ちゃん、『八門禁鎖』の意味分かる?」

恐る恐る聞くと、笑顔のままふるふると首を横に振った。良かった、まだ汚されてない。

 

流石にここで無垢な幼達ちゃんにありのままの説明をするわけにはいかない、って言うか正しい意味知らないし。

ここは大人の知恵ってやつだ。

「いいよ幼達ちゃん、『八門禁鎖』してあげる」

「ほんとうですか!?」

「それっ、『いちもんきんさー』!」

「きゃー!」

抱っこしてぐるぐると回ってそっと降ろし、再び抱っこ。

「そーれ『にもんきんさー』!」

「きゃー!!」

いかん、降ろして抱っこのスクワット意外にきつい。

 

「ああ~ぐるぐるします~。でもたのしくてきもちよかったです、ありがとうございました!」

「うん、じゃーねー!」

流石に八回もぐるぐるすると俺も少し目が回ったけれど、ぶんぶんと手を振る幼達ちゃんに手を振り返して校舎を後にする。

 

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まだ執務室に戻るには早過ぎる。庁内を(こそこそっと)ぶらぶらしていたけれど生協が近くにあることを思い出し、暇つぶしに行ってみることにした。

そういえば杏(逢紀)さんが今日は生協勤務日なんですよー、と言ってたなと思って生協のレジの辺りを見回したけれど姿が見えない。

と、いう事はあっち(アダルトショップ)の方か。そちらも勤めてると聞いた日に『もー恥ずかしいから一刀さん来ないで下さいねー』と言われていたけれど、会わずに帰るのも何かさみしいからこっそり見てみようと近づいたところで物凄く聞き覚えのある声を聞いて店の外に慌てて隠れた。

「売れないとはどういうことだ!」

「ですからぁ、そこに張り紙してますけど売り切れなんですって…」

「まだ発売して三日だろう!?」

「そ、そうなんですけどぉ、なんだかわかんないんですが昨日から物凄い勢いで売れて売れて、予約ももう十件待ちなんですよぅ」

「判った、では予約者目録を見せろ。呉の女ならこちらで交渉(物理)してくる」

「私も見せてもらおう、蜀の女が居れば私も相談(偃月刀)してみたい」

「えぇー…これ個人情報で見せられない決まりなんですけど…」

「そうかまず貴様と話し合いが必要か、貴様は鈴の音を聞きたいか?」

「まあ待て思春、刃物はいかん。ほら逢紀とやら私は『素手』だ、素手同士でちょっと給湯室で話し合おう」

「ひ!?わわわ判りましたっ、これ『八門禁鎖プレイセット』予約者目録ですから!私巻き込まないでください!」

 

マジで一体何が起こっているんだ…とりあえず杏さんは後で慰めておこう。

 

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室内に怪しい人影がないのを確認してから、忍び込むように執務室に滑り込んで扉を閉める。

部屋には相変わらず顔も上げずに書類に何事かを書き込んでいる詠だけだ。

 

「はー…やっと帰ってこれた…」

「…」

溜息を吐きながら自分の机に座ると、詠が無言でこちらをみていた。

「…?」

「…ちょっと来なさいよ」

「…どしたの」

真顔で抑揚もない声に、理由のない悪い予感を感じて胃の辺りが重くなるが詠の前に座る。

「あんたさ」

「うん」

 

 

 

「幼達ちゃんとまで『八門禁鎖』したって本当?」

「」

 

 

 

 

……………これアカンやつや。

今思えば当たり前すぎる、やっちゃいけない誤魔化し方を幼達ちゃんにしてしまった事に今やっと気づいた。

言葉が出ず、視線を落とす。

「幼達ちゃんがしてもらったって言ってたって聞いたんだけど。気持ちよかったって言ってたのが救えない救いだけど。…………したのね?」

「…いや、したっちゃしたけど、それは」

「もういいわよ」

拒絶の言葉に顔を上げると、詠の目尻に小さく涙が浮かんでいた。

「あ、あんな小さな子にまでそんな事するの?」

「ちょっと待て、」

光の粒は見る見る盛り上がっていく。

「そこまで見境無しなの?女だったら本当に何でもよかったの?」

「違う、それは誤解で!」

真珠の粒は拭われもせず、詠の頬を筋になって伝い落ちる。

「ボ、ボクじゃだめなの?ううん、ボクだけじゃないのは判ってるつもり、で、でも小さい娘がいいんなら月だって桂花だって、お願いすれば風も朱里も雛里もあんたがしたいったらしてくれるわよ?ボクもここんとこ仕事の為にってあんたに酷い事言ったかもしれない、でもここまであんたが女だったら何でもよくていくらでも変態になっていって、な、なんかボク淋しくなっちゃったっ…」

「聞け!頼む聞いてくれ!」

 

 

 

すんません、神様。俺今日何悪い事しました?謝るんで教えて下さいマジで。

 

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執務室の長椅子で、抱きかかえた詠がずー、と鼻をすする。

「…日頃の行いが悪いのよ」

「御尤もで」

涙目で漸く話を聞いてくれた詠の悪態に、ひたすら下手に出る。

「ところで聞きたいんだけど」

「何よ」

「皆の理解してる『八門禁鎖』って」

「だいたいあんたの想像してる通りよ」

「つまり鎖で縛って後ろと前、あたっ」

「言うな変態!」

腕の中の詠から顎にヘッドバッドを食らった。

 

『八門禁鎖』、そんなもんは無くって皆さんの想像の産物です(御丁寧にアダルトグッズまで)。そう皆に理解してもらうのにどれくらいかかるだろうと想像して少し憂鬱な溜息を吐くと、詠が再び胸元に頭をぶつけてきた。

「ん?」

「…で、したいの?」

「は?」

「だから、したいのかって聞いてんの!」

こちらを見ずにうなじを赤く染めた詠にようやく察した。

「いや、詠とはこうしたい」

「…ん。…ばーか」

健気さにちょっとじーんとしながら、胸元に収めた彼女を抱き上げるようにして頭を撫でながら唇を重ねると、目の前の大きな瞳が蕩けていく。

いつもイライラさせてごめんな、詠。

 

-------------------------

 

「(月様ー…一刀さんと賈詡さんの夕飯お持ちしましたー)」

「(あ、はーい。杏さん有難う御座います…そーっと、ここに置いてって下さい)」

「(はーい…月様の分はまだいいいんですか?)」

「(私は後で食べますので…)」

 

今回は私が詠ちゃんを泣かしちゃったようなものだ。もう少し、この前室で門番をしてないと。

…それにしても今回は余計な事を言ってしまった。

長いお付き合いなので少し寝過ごして出勤された華雄さんを辺りも確かめずにちょっとからかってしまったのが良くなかった。

 

『…おはよう、遅れて申し訳ない』

『お早う御座います、華雄さん。…うふふ、夕べ御主人様と鍛錬をちょっと頑張り過ぎちゃいました?』

『えっ…あ、あ、いやっ、その、じ、陣形の研究を!ああ、新しく覚えた八門禁鎖を二人で研究していてな!』

『ふふっ、お二人とも体を壊さない程度にして下さいね』

『わ、分かっている!』

 

最近めっきり女性らしくなられた華雄さんが照れる様が可愛らしくて、近くを通り過ぎた近親☆上等姉妹が闇夜の猫のように目を見開いて何事かひそひそと呟いて駆け去っていったのを見逃した私が悪いんです。

 

…まあ、尤もそこから余計な妄想を広げてあちこちに吹聴して廻った彼女達が一番悪いんじゃないかと思うんですけれど。うふふ。

「(ひ!?ゆ、月様髪が!髪が逆立ってます!?)」

「(はっ?…いえ、見間違いですよ。杏さんも夕飯戻って下さい)」

「(あ、あれ…確かにさっき…?)」

「(あとすみません、汐里(徐庶)さんに、玲紗(関平)さんと藤香(劉封)さんをメイド控え室に呼んでおいてもらえるようにお伝えしてもらえませんか?)」

「(了解でーす、じゃあそれではー…)」

扉越しに時折漏れ聞こえる詠ちゃんの声を背に、静かに小走りで去っていく杏さんを見送りながらこの後の事に頭を巡らす。

やっぱりちょっと、やんちゃ過ぎる娘達にはちゃんと指導してあげないとね。

 

 

 

うふ。うふふふふふふふふ。

 

 

 

 

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(おまけ)

 

「おー・・・華雄、やっと見つけたで」

「なんだ霞。・・・おい、お前酔ってるな」

「ええやんか、うち非番やし夜やし・・・ところでうちな、あんたに忠告したい事があんねん」

「構わんが、手短にな。余り部下の前で酔った姿は教育上宜しくないぞ」

「わーっとるわーっとる・・・それよか言いたい事言うんはな」

「ああ」

「あんま、人の性癖に口出しする気も無かってんけどな」

「?」

「目隠しに猿轡まではまあええとして、鎖で縛られてその先端を〇〇〇に引っ掛けて後ろから責めさせるゆうんはちょっと行き過ぎや思うねん」

「ななななななな何を言ってるんだお前は!?」

「いや隠したいのも分かるけどな、もう皆知っとる事やろ?それよかうちが言いたいんはな、あんま変態じみた事やるんはあんたの為にも一刀の為にもならんて話や」

「し、してないぞそんな変態じみた事は!?」

「わーっとる!わーっとるって!ホンマは八門のはずやったのに鼻フックは一刀がするの嫌がって結局前と後ろと口の三門しか突っ込まれへんかったんが不満やったんやろ?けど眼と鼻はよした方がええで、ヘタしたら失明もんやで」

「だからしてないって言っているだろうが!?お、お前らもそんな眼で見るなっ、聞いてるか李傕!?郭汜、樊稠っ!?」

「そや、こんなんでも御前等の上官や。自分らも女ならわかるやろ、普段むすーっと斧振るっとっても夜になれば一人の女や、ちょっとぐらいハメ外してたりハメたりして変態だったかて大目にみたり?けどな、あんま業の深いのは一刀も大変やからほどほどにな?」

「いいからお前は人の話を聞け!そして御前等もこんな話に真面目な顔で敬礼するなぁーっ!?」



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司馬日記外伝 三国新聞

お久しぶりで御座います。
その後の、とある後宮の配布物です。


三国新聞 官報四十三

 

・来年度骨格予算決まる

実務者らの調整を踏まえて三国代表者会議が行われ、来年度の予算方針及び骨格予算が承認された。

互いに急伸している公共事業費と税歳入による現金の一時的な枯渇を避ける為国債を発行する方針。償還は一年の見込み。

 

・『矛盾』企画、李典工場長ついに一勝

人気企画『矛盾』の一企画である<王都―許昌間の伝達速度勝負>において、李典工場長の開発した新型狼煙台が張遼将軍の早馬に僅差で勝利した。李典工場長は

「良好な天候にも助けられたが、今まで全敗であったので素直に嬉しい。しかし条件が単純な一発一色であり、現実的な運用としては情報量の多い書面を携えた霞の馬に勝てていない。多発多色で情報量を増やした条件で、短距離でも恋(呂布)に勝つのが最終的な目標」と語った。

 

・三国塾分校 開校へ

王都で開校している三国塾の、許昌・建業・成都に設置する各分校の設計が完了し工事着手の運びとなった。

文系・理系学科については王都本校とほぼ同様の授業体系とし、軍事に関してはそれぞれの地理特性に合わせた授業を行うとされている。

生徒数は知能・身体能力に応じて分類するが総じて十から数十名程度を入学させ、成績優秀者については王都本校への編入を認める方針とする見込み。

 

・天の国の童話集 教材に

北郷様が各国子女へ語られた各種童話が三国塾初等部向け教材に採用される運びとなった。

編纂は過去最も童話を聞いたとされる黄叙氏を中心に行う。

一刀様は「天の国の知識が教育に生かされる事は喜ばしい。『赤ずきん』や『北風と太陽』等思春や愛紗によって誤解されて広められているお話も正しく伝えて欲しい」と語られた。

 

・太史慈と郝昭、また私闘か

太史慈と郝昭が後宮園庭で殴り合っているのが発見され、警備部が急行する騒ぎがあった。

警備部の調べに対し両者は鍛錬の一環であり私闘ではないと主張しているが、両者は不仲で知られており関係者からは一刀様に関して何らかの諍いがあったと見られている。

太史慈の『盟友』とされる孫策氏は

「呉の高官たる立場を踏まえ、周囲に誤解を与えぬ品位ある行動を心がけて欲しい。今回の件については一刀に何らかの罰ゲー・・・指導を依頼するつもりぴょん」と目頭を押さえ肩を震わせながら述べ、郝昭の上司筋にあたる曹真氏も沈痛な面持ちで孫策氏に同意し、両名の教育にあたって「一層の手厚い連携」を行っていく事を合意していた。

なお第一発見者であったちゅーたつ氏は「二人は互いの一刀様へのお勤めの出来不出来について語り合ううちについ熱くなってしまい拳が出てしまったと言うので、これは止むを得ないのではないか」と語った。

 

・囲碁名人戦 龐統名人が中押し勝ちで一矢報いる 

第五期囲碁名人戦の七番勝負第三戦が王都「鳳凰の間」で行われ、百六十二手で陸遜挑戦者が投了し成績を龐統名人の一勝二敗とし一矢報いた。

一戦目、二戦目は名人が精彩を欠き、「(挑戦者が盤上に)前屈みになった時に揺れる胸の谷間に動揺してしまった」(龐統名人)と語るが、本局は堅実に打ち進め陸遜挑戦者の中盤の悪手を咎め一気に勝勢へとたたみかけた。

前名人の諸葛亮氏は「本局は名人の横綱相撲。視覚に惑わされず冷静に次局も打ちまわして欲しい」と述べ、挑戦者は「そういうこと(胸を強調した威嚇)はこれまでもこれからもないです。(名人の)気迫に呑まれ、中盤で打ち損じてしまった。次は立て直していきます」と反省を口にした。

次局は四日後、後宮山荘にて行われる。

 

・公営競馬不正疑惑、全額払い戻しへ

先月十二日に行われた公営競馬第八戦が審査会の協議の結果、全額払い戻しとなった。

当該試合は公式戦には含まれない募金試合であり、主催側は呂布・張遼・馬超の三強の入着を想定していたが大番狂わせが生じ三連単の一千万馬券となり、唯一馬券を当てていたのは文醜氏であった。しかし同氏が袁紹氏に馬券予想をさせ馬券を購入していた疑惑が持たれ、これを不正とみなすか審査会にて協議が続けられていた。

文醜氏は「科学的な根拠が無い」などとして異議申し立てをしていたが、公営競馬会の招請により馬券の予想および購入停止を条件に名誉顧問に袁紹氏が就任していた事を審査会は重く見、今回の判定となった。

なお当該試合は一着白馬長史(鞍上 公孫瓚)、二着夜之種馬(鞍上 北郷様)、三着的蘆(鞍上 劉備様)であり、優勝候補と目された赤兎馬(鞍上 呂布)は食事による遅刻の為、同二番人気で一着で入線した遼来来(鞍上 張遼)は薬物反応(酒気帯びによる)の為失格、三番人気西涼錦(鞍上 馬超)は小用で遅刻により失格となっていた。

 

・『逃走中』研修 今年も全滅

新人研修の一環として例年庁内外を借り切って行われている『逃走中』だが、「狩人役」を務める周泰・蒋欽の前に今年度も生還者は現れなかった。本研修は三年前から行われているが、一昨年に鍾会が唯一人逃げ切った他には全く生還者が現れていない。

余りの難易度の高さに「所謂無理ゲーでは」との批判もあったが、本研修を担当する甘寧将軍は「天才を発掘する為の研修であるので何年全滅しようが関係ない」と意に介さない様子。

 

・典韋氏の料理教室開催される

毎年開催されている典韋氏の料理教室が本年も開催された。

一刀様のお好みとされている肉じゃがが今回のメニューで、庁内食堂を借り切って行われ庁内は食欲をそそる匂いに満たされた。

また『恋の食べる姿を見て癒される会』も庁内食堂に面した園庭で同時開催され、呂布が終日食べ続けられる量の料理と観客席が用意されていた。

おやつの時間を鑑賞されていた総務室の月氏は「恋さんの食べる姿は平和の象徴。このような日々が長く続けばと思います」と笑顔を見せる。

尚一部屋分用意された食材は演習帰りから飛び入りした張飛・許褚の助力もあり夕刻には全てなくなり、立ち寄った魯粛氏は「食材は一体どこへ行ったのかって言う物理的なものと、あの引き締まってくびれたお腹の両方に不条理を感じる」と自身の腹回りをしげしげと見ながら述べた。

 

・不適切文書の単純所持 処罰の対象へ

王都倫理有識者会議にて、風紀を乱す文書図画等の単純所持について処罰の対象とするべきとする答申が三国会議に提出された。

答申を受けて当局は審議の後に法施行へと向かう見込みだ。

本件の事務局長を務める司馬懿氏は「原則として一刀様の尊厳を害する物についてを厳罰対象とし、後宮所属若しくはそれを目指す子女の参考となるものであれば多少偏向性のある性的なものであっても対象外としてよいのでは」と述べた。

この答申について諸葛亮氏は「言論、思想の自由を損ねかねないものであり本会議においても断固反対する」とし、賈詡総務室長

は「…ま、わかんない程度にやれってことよ」とそれぞれの温度を見せた。

 

・三国塾、現役武将の体験談講義が好評

三国塾で現役武将による科目外講義が行われた。今までも非常勤講師として各国の文官・武官らが政治経済、武技軍略等の科目を教えることはあったが、今回初めて特定の科目でなく現役武将の体験談を語る時間が設けられ、第一回として公孫瓚氏が講義を行った。受講生からは「生の体験談が聞けて大変参考になる」「今後の色々な注意点や落とし穴に気づくことが出来る」など好評を博し、第二回以降も今後行われる予定。

尚、本講義の副題は「しくじり先生」であった。

 

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後宮新聞 第九十八号

 

・大人向けの天の国の童話発行される

一刀様が児童向けに語られる童話に隠喩されたプレイについて各作家が想像力を働かせた物語を纏めた冊子が出来上がった。

陳琳、戯志才、奸雄ら著名作家の他、今まで官能小説は書かなかった王粲がついに筆を執った事でも話題の一冊で「男は狼」と副題された当書は後宮勤務者必見。

 

・外交法改正 方針決まる

羌・匈奴、山越ら他諸外国との外交時の贈答について規則詳細が後宮で取りまとめられ月様に提出された。

端的には外国からの供物としての美姫の受け入れを規則として拒否することが主眼であり、各国王らが「(匈奴からの貢物として後宮入りした)蔡琰の二の轍は踏まない」との意思を示したものであるが、既に蔡琰は後宮入りしており彼女と親しい月様としても異存は無い様子。今後事務方に送致され議決を経る見込み。

 

・下着展示会開催へ

最近一刀様は一般服の御創作が多く下着の意匠が少なかったが、ここへ来てある程度の量がまとまった為展示会が開催される見込みとなった。

具体的な日にちはまだ決まっていないが一刀様の御伽空白日を予定しており、各もでるは一刀様に触れてはならないことを条件に一刀様に鑑賞頂く時間をそれぞれ持ち、最優秀者を一刀様に選んでもらいその者がその日の御伽を務める方針。

 

・鄧芝氏の”講義”魏・呉にも

口戯の名手で知られる鄧芝氏の”講義”が行われた。

胡瓜等を用いて要領について説明した後、自身の御伽番の時間を利用して”まじっくみらー”の特別室にて一刀様を御相手に延々四時間程も実演した。

今まで蜀の者からのみ依頼があり指導していたが、「一刀様に口で御奉仕するのに国境は無い」として魏・呉からの指導依頼を受けることとしたという。

見学者の元不良(仮名)氏は「スゲェけど…あの『舌を巻きつける』ってのは俺の舌じゃ無理だな…」と感嘆していた。

 

・銅雀台、竣工する

曹操様の私費で建設されていた銅雀台が竣工した。

華美さこそ控えめだが高防音断熱性・暖房や風呂等の水周り設備等、李典工場長の最新技術をふんだんに取り入れている他、複数の衣装倉庫と寝室を備え「事実上の魏王専用逢引宿(魏高官筋)」とも言われる。

最高の設備を武器に一刀様が入り浸る事を目論んでいた曹操様であったが、竣工直前に一部間取り変更と内装改修を行い工期延期しており、最終的に王侯級の来客用寝室等が整備されていることから「(呉・蜀王の)羨望の視線に耐え切れなかった」と見られている。銅雀台の竣工により曹操様が一段上の閨房性活を一刀様と持たれることには疑いないが、「夜の三国志」はまだまだ終わりそうに無いようだ。

 

・一晩あたりの回数制限規則化か 実効性に疑問も

以前より一部の者の御伽での搾り取り方が激しすぎ、翌日の御伽番担当者より「薄い」「一刀様の疲労度が酷い」等と批判が出ていたが、各国王及び月様らで話し合いが持たれ来月より一晩あたりの回数を最大でも六回以下程度とする方向で調整される見込み。後宮規則に明文化されるかまでは決定されておらず、実質的な規制の対象者と見られる者達からは「十分な回数と言うには少なすぎる。寝る前三回、夜中に眼が覚めて三回、出勤前に三回で九回程度は必要(馬岱)」「余計なお世話(孫尚香)」等と反発の声もあり実際に超過の有無を管理するのも困難との指摘もある。

「なるべく家庭内で解決してもらいたい(月様)」との意向で孫尚香の次に割り当てられている事が多い孫権様が「その場で監視してでも程々で抑えさせたい」と涙目で語り、公平化に向けて当局が本腰を入れる見込み。

 

・捕まらない張勲の尻尾

かねてから度々、御伽番予定に無くとも密かに一刀様を『つまみ食い』しているとされる張勲だが一向にその証拠が出てこない。

事の真偽に言葉を濁す一刀様と、ひたすら謝罪する袁術の態度から張勲の『犯行』は状況証拠的にほぼ明らかとされているが、肝心の証拠が出てこない限り張昭はじめ張勲を嫌う派閥の領袖らも抗議のしようがない。

本紙取材に本人は「しっぽですかぁ?いつも一刀さんに掴まれて引き寄せられて犯されるんで、もう千切れちゃいましたよ」と挑発し相変わらずの『蜥蜴女』振りを見せた。

 

その他の記事

・文欽親娘、諸葛誕らに後宮入り阻止される 呉に出奔も示唆

・三国塾初等部、将来見据え早くも派閥争いか 保護者会ピリピリ

・生協に入荷の新商品

 

 

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「…ねェ、杏(逢紀)」

「なんですか燕(許攸)さん」

「コレ、ホントに毎回各部屋に配ってんの?」

「配ってんですよ。私月さんに『検閲済み』のハンコ返してきますから後宮西棟・東棟で部数仕分けしといて下さいね」

「三国新聞の方は兎も角、こっちの方かなりエグいわよ?皆こんなの読んでて昼間はしれっと普通に仕事してんの!?」

「考えたら負けですよ!しょーがないじゃないですか、これも仕事なんですから!」

 

 

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司馬日記外伝 白蓮のしくじり先生

お久しぶりで御座います、皆様のポチり振りに安心して白蓮いじめをさせて頂きました。
その後の、とある武将の講義を聞く司馬馗(季達、四女)ちゃんと司馬恂(顕達、五女)ちゃんのお話です。

ところで相変わらずネタには飢えております…御採用させて頂いて面白いものが書けるかどうかは分かりませんが、ネタは常時お受付致しております…


人混みの中、見慣れた髪留めで両脇にぴょこぴょこと跳ねる髪を見つけて手を振った。

「季達お姉ちゃん、こっちこっち!」

「あ、いた顕達!ごめんごめん」

小走りに向かってくる姉を見て、隣席に置いた荷物を自分の膝の上に置いて一人分の席を空ける。

「午後休取るって言ってたじゃん」

 

「ごめんごめん、第三小講義室って分かんなくってさ。私らが在学してた頃まだここ建ってなかったでしょ?」

「ちゃんと案内図見ればいいのに」

「まあ間に合ったんだし勘弁してよ」

「まあね」

 

間もなく講義開始だ、周囲の人もだいぶ着席して立ってる人もまばらになってざわめきも小さくなって来た。周囲を見回すと、卒業からそれ程経った訳でもないけど懐かしい制服。賢そうな娘や、如何にも腕利きですって感じの娘達がそれなりにピシッとした姿で前を向いている。

「(ねえ顕達)」

「(何?)」

「(ちょっと恥ずかしくない?この学生服の中で役所の制服とか)」

「(卒業生招待私達だけじゃないじゃん、気にしなくてもいいんじゃない?それよかなんか皆凄く出来る娘っぽく見える方が私気になるけど)」

「(あ、それは私も気になった。てか璃々ちゃんいないの璃々ちゃん)」

「(この講義高等部だけらしいしあの子確か飛び級…あ、先生来た)」

 

教室の前の扉が開く音と共に室内が静まり返り、笑顔の水鏡先生とその後ろについて赤髪の女性が入室して来た。水鏡先生は相変わらず老けない、あれは絶対何かおかしい。仲達姉様に水鏡先生って幾つなのか聞いてみたけど、「私が幼達位の時には既に荊州の女学院の院長をされていたと思うので、それなりではある筈だが」って首を捻る位だ。きっと妖怪の一味なんだろう。

「それでは本日は特別講義で公孫瓚先生に来て頂きました、貴重なお話が頂けるので拝聴して下さいね。では公孫瓚先生」

「どうも、公孫瓚伯珪です」

 

「(普通に可愛いね)」

「(うんまあ、普通の可愛さだね)」

会釈とともにぴょこんと揺れる後ろ髪。まあ鬼神の様じゃないし、鋭利な刃の様でもない。なんつーか、オーラが無い。仲達姉様が『白蓮殿は立派な方なので是非拝聴するといい』って勧めるのでじゃあと思って季達お姉ちゃんと休暇取って聞きに来たけど、こりゃハズレだったかな。仕事忙しいのになぁ、と思ってちょっと肩の力が抜けてしまう。

 

「じゃまず、簡単に自己紹介から。名前は公孫瓚伯珪、今は蜀で別駕やってます。けどま、実態は何でも屋だな。他の事務方や軍の事業を補佐したり、桃香…蜀王や丞相から直接降りてきた仕事を本国向けに詳細を決めたりとかだ」

事業体系がかなりはっきりしてるうち(魏)には多分無い仕事だ、ものすごい高位の人たちは分かんないけど。そういえば蜀の同期の新人の娘がうち(蜀)は人材まだまだ足りないからなんでもありで大変とか言ってたっけ。

「今日話すのはどっちかって言うと今の事よりも、いや今の事もあるんだが、まあ今まで歩んできた方の話だな。じゃ今日の資料の一頁開いて。私の元々の役職って言うか立場、後漢末期の頃は右北平とか薊郡だか啄郡だかの太守とか、まはっきりしませんがそんなもんでした。そこで一つ転機が訪れます、そう【董卓打倒】。皆知ってると思うけど今の総務室副室長、月―――董卓だな。の討伐戦が始まった、その檄文を見て私は愕然とした。その理由は何か?」

 

見回されるけど、蜀の歴史までは知らんがな。

「蜀の娘なら聞いて知ってる娘いるかな。蜀の娘居る?…うん、じゃそこの子。…そうか、知らないか。まあ知らないよな。答えは次の頁、【私の名前が無かった】。十七鎮まで皆役職と名前が書かれてるのに、私のところだけ【第十四鎮 北平太守】」

 

あるのそんなの。よその部局に文書送るのにだって姓名と役職(兼務があったりすると厄介だ)はうるさく言われるのに。

「その当時はまあこれ書いたの麗羽だから、当時の麗羽だからしょうがないよなって思ってたけど、今思えばこれが見過ごしちゃいけない危険信号だったんだな。ただその頃から私に警鐘を鳴らしてくれていた奴はいた、そいつの名は星、趙雲な。その頃星は事ある毎に私が英雄の器じゃない事をからかい半分に何度も教えてくれていた、しかし私はそれが周囲から完全に埋没するほどだと言う事に気づけなかった。それはしょうがなかったと言えばしょうがなかったかもしれない、腕は無茶苦茶立つけど食客だった星の言う事をどれほど真に受けて行動出来るか?ただここが最初にして最大の【しくじり】だったかな、と思う」

「(それこの人悪くないよね?)」

「(うん)」

季達お姉ちゃんが小声で囁くのに答える。こんなのがしくじりでたまるかとか思うけど。

 

「で、次の頁。【麗羽に敗れ桃香の元へ】まあ汜水関でも虎牢関でも大した活躍も無くその後、私の勢力は麗羽…袁紹に滅ぼされる。問題はその後だ」

滅ぼされるって、そこ重要なとこじゃないの?

「星に助けてもらい身を寄せた桃香の配下になったのは全く問題なかった、むしろ有難い位だった。桃香はおつむはちょっとアレだが、君主としての器は私よりはあると思ったしな。問題はそこでの役割だ、そこで与えられた私の仕事は何だったか」

 

今別駕なんだからそれなりじゃないの?

「ん?」

あ、目が合った。やば。

「じゃ、そこの君」

指された。やばいこの格好社会人ってばれてるし魏の人間だけどあんまり大外れ出来ないし水鏡先生ニコニコしてるし。

でもこれ程よく外す事が期待されてるんだよね?えーとえーと、その頃劉備が確か徐州牧?だっけ?ってことは…

「…広陵太守、とかでしょうか」

「うん、まあ前職まがりなりにも州牧だからその辺でもおかしくないが正解は次頁」

良かった、期待通りっぽい?水鏡先生の方をチラ見すると、笑顔のまま声を出さずに口元が動いていた。

 

「(ち)」

「(ん)」

「(と)」

「(う)」

 

「」

あかんやらかした、思いっきりうちの先輩が王都来る前にずっといた職場だった…東側で知ってる郡の名前をつい適当に言っちゃった私ってほんとバカ。まあ陳登さん余りそういうの気にしない人だけど。

「(それ陳登さんだよ)」

「(わかってる!言った瞬間気づいた!)」

 

暫く水鏡先生の方見れない。お姉ちゃんに小声で答えながら資料をめくると、【雑用】と大きく書かれていた。

「待っていた仕事は雑用だった。帳簿の整理、装備品の発注、戸籍の調査、軍兵の班決め、もう何でもありだった」

蜀は人が足りない足りないってよく聞くけど昔からだったの?か、ひょっとしてこの人すごく仕事出来ない人なのか。

でもあの仲達姉様が褒めるんだからなぁ…まあ仲達姉様もよくズレてるけど。

「今でもある程度そうだけど、その頃まぁ確かに桃香の陣営は領有面積に比べても人材が不足してたし、当時から天才の呼び声の高かった朱里雛里…諸葛亮と龐統から是非って言われたらまあ嫌な気はしないし、立場も立場だししょうがないかなと思ってそれなりに真面目に取り組んでた。しかしもう、この頃既に私の位置は決まり始めてたんだな。更に後に霞…張遼から聞いた衝撃の一言。これが次の頁」

 

「【当時、(蜀で)まだ一刀に心の股開いてなさそうなんはあんただけやったで】」

うわぁ。えぐ。

「ちょっと具体的過ぎる話だけど、…えと、水鏡さん、いいんだよな?この娘達」

教室の隅に立つ水鏡先生に伺いを立てるように振ると、笑顔を崩さず先生が会釈した。

「(あれってこういう話していいかって事?)」

「(じゃない?今日講義聞きに来てる娘達って全員後宮入り希望者らしいよ)」

うへぇ…

改めて周りを見回してその人数に軽く眩暈を起こす。さっきよりも周りが美人でいい体してるような気がしてきたし。

もう何年かすれば今の人達が女引退して、そうすれば競争率少し下がるからそこからがあたし達の時代だとか思ってた自分の甘さが木っ端微塵に打ち砕かれる。せめてもう早く引退してくれないかな水鏡先生とか。

 

と思った瞬間、眉間を殴られたような、バチンという衝撃を受けてのけぞった。

「(っ!?)」

目から火花が出て、反射的に涙腺が緩む。カラン、コロコロという何かが転がるような音がする方を見ると白墨が転がっていた。

「先生はお忙しい時間を割いて講義においで下さっています。静かに講義に集中して下さいね」

笑顔のままの水鏡先生が、指の間に予備の白墨を挟んでこっちを見ていた。くわんくわんするおでこを抑えながら涙目で黙礼する。

考えただけで察知するとはなんてババ…お姉様だ。剣の腕も相当だって言う蜀の徐庶さんが、新人合同研修の指導員で来てくれた時の打ち上げで『女学院卒と三国塾の最近の卒業生はあの妖怪ババァにだけは逆らうな』と真顔で言っていたのを思い出す。

「(余計な事考えなければいいのに)」

「(つい…)」

 

「桃香はもう会った瞬間そうだったってのはよく言われてたし、これはと思ったら物凄く思い切りがいいのは桃香の短所でもあるけど長所でもある。ただ他の連中も、一刀とはそれなり以上に接触はあったとは思うけど既にそこまでってのは私は思いもしなかった。あんまり露骨に好きそうにしない星でさえ霞に言わせれば『あないなちょっかいのかけ方、パンツ降ろして尻振っとるようにしか見えへん』て言われたし、蜀以外の連中に聞いても余り大差ない答えだった。まぁ、魏も呉も大概だったらしいけどな。なにしろ、仕事でも頭角は現れず、一刀との仲も多分に遅れを取っていたんだな。それがそのまま現在まで尾を引くことになる。その後の私の埋没路線が以下の通りだ」

 

「【後宮入りほぼ最後尾】統一前からの付き合いがある奴らの中で少なくとも蜀では私が一刀と結ばれるのが遅かった、旧蜀の連中は分からないけどな。【会議出席者名札が席に無い】これももう当たり前になって、自分で持参するようになった。【総務室担当部長就任→即解任】一刀との接点が多くて超人気職場の総務室の担当部長に就任したが、事業が取りやめになって数日で解任。【夜枠削減】一刀も女の数が増えてきたんで、一人当たりの頻度を下げる話になったら真っ先に私の枠が減らされた。【料理大会優勝も効果なし】料理大会で優勝したんだが結局華琳、月、流琉で殆ど回して残りを祭さんとか他の女が偶に作ってる。【幻の一着】馬にはそこそこ自信あったんだけど、競馬大会で珍しく一着になったかと思ったら麗羽の力が絡んでたらしくて無効試合になったりな。まあそれでも一刀と縁が全く無くなった訳でもないし、仕事も成果はそれなりに自分では納得いく程度には残っているから自分では今の暮らしにもう納得し始めてる」

 

「(ひょっとしてこの人いじめられっ子なんじゃない?)」

「(私もそう思う)」

季達お姉ちゃんの小さな相槌。ところでこういう打たれ強さが必要だって授業だったのこれ?あと蜀って割とギスギスしてないって聞いてたんだけど、聞くと見るではってやつなのかな。

 

で、私の出した答えが最後の頁。【割り切る】。まあ人生諦めが肝心だ。昼食会で自分の分が無ければ持って来る、点呼で呼ばれなければ自分で居るって言う、会議の案内来なければ事務局に問い合わせる、名前忘れられてそうだったら自分から名乗る。いちいち怒ったり凹んだりしたって疲れるだけだからな」

「(この人聖人?)」

「(か、すごい小さい人かどっちか)」

偉い人たちって大体ギラギラしてるかキラキラしてるかどっちかなんだけど、こんな人もいるんだなー。尤も私はこんな扱い御免だけど。

 

「・・・御講義中横からすみません、ですが一刀さんは公孫瓚先生の事を忘れたりする事は無いと聞いておりますが」

流石に余りに痛い話に水鏡先生が笑顔を僅かに困り顔にさせてフォローした、あの水鏡先生の表情を変えさせるとは(悪い意味で)やるな、この先生。

「…ん、まあそうだな、あ、そうですね。誕生日とか、出会った日とか、おにぎり記念日とかは、ん、まああいつ色々気ぃ使ってくれるんで、そこはまあ私も不満無いって言うか」

お、デレた。てかおにぎり記念日って何?

「(一刀様、記念日関係全部覚えてるって本当なんだね)」

「(みたいね)」

てことはきっと私もなんだよね。うちで初めてお会いした日とか、初めてした日とかか…うわぁちょっと恥ずい。嬉しいけど。

 

「副題で『しくじり先生~私みたいになるな』ってあってしくじった女って言えばまあ私か蓮華かってよく言われるけど、よーく考えれば少なくとも私のしくじりってのは『自分が英雄の一角じゃない』『周りの女達が化物揃いだった』って事に気付くのが少し遅かったって事だけで、ある意味収まるべき位置に収まっただけだと思うんだよな。君らも先輩達見てりゃ分かるだろうけど、化物みたいな連中ばっかだから。どっかで諦めって言うか、割りきりが必要って話。じゃ、私の話は以上」

まぁ伯達姉様や仲達姉様見てもそうだろうなとは思うけど、一国の別駕がさっき聞いたような扱いって流石に軽すぎませんかと心の中だけで突っ込んでおく。

「…公孫瓚先生有難う御座いました。それでは貴重なお話を頂きました公孫瓚先生に拍手を」

水鏡先生の言葉からの皆の拍手に公孫瓚先生が一礼すると資料を纏めて帰ろうとして、ふと顔を上げた。

「あ、君らヤンデレにはなんないでくれよ。恐いから」

そう一言言い残して教室を出て行き、今日の講義はこれで終わりだ。荷物を纏めて季達お姉ちゃんと席を立つ。

 

「ちょっと時間あるけど役所戻る?」

「ううん、休暇取ってるし」

「じゃ、美羽ちゃんの知り合いの人?にやってもらうって言う裏講義ってやつ聞く?第七教室で五分位で終わるらしいよ」

「…んー、いいや。美羽先輩、なんか困ってて出来れば来ないで欲しいって言ってたし。ところで先輩ちゃん付け怒られるよ」

「いいじゃん美羽ちゃん先輩だけど年下だし可愛いし。まいいや、私も帰ろ」

 

 

 

-------------

 

 

 

 

「白蓮さん?…そぉですねぇ、なかなか上手く立ち回ってる人だと思いますよ?ある意味『構わせ上手』って言うんでしょうか、一刀さんの性質を最大限利用してるあたり無自覚な狡猾さは大したもんじゃないですかね?…どうやってって、ほら、一刀さん自分絡みで泣いてたりしょげてたりする女に対する嗅覚とフォロー速度は化物級じゃないですか?逆に言えば、構って欲しけりゃ泣けばいいみたいなとこありますから。自尊心も一刀さんに掛かる迷惑もクソも無くってとにかく構われたい方は積極的にそういう事に走りゃ良いわけですよ。で、あの人はどうも先天的にそういうネタ…一刀さんが寄って慰めに来るネタを引き付ける体質を理解してるのかしてないのかは知りませんけど、結果的にかなり恵まれてる方だと思いますよ。普通に考えれば自尊心ズタボロな講義やらされてるんですから今夜だってどうせ一刀さんが自主的に慰労されるでしょうし、具体的に言っちゃえば国で五番目位には一刀さんに抱かれてるんじゃないですか?…まあそりゃ、それぞれの国王さん達は上位に入ってるんでしょうけど。…4番目?さぁ…色んな方がいますから、そこまでは私も知りませんけど。ま、一刀さんの事が良く理解出来て、上から目線で鬱陶しく無く下から目線で疲れさせたりもせずガツガツしすぎで好意の押し売りがましくもなく、疲れてそうな時は授乳だけしてあげたり平凡な夜の作業に飽きてそうな時は公衆の場で周りに判らない様にスカートめくって見せたりムラムラしてるなって時はM女になって激しく犯させてあげたり、えっちと愛情がある悪友っぽい恋人じゃないですかぁ?

あっ御嬢様!そろそろ明日一刀さんとこに行く時に着ていくブルマとニーソを生協に取りに行く時間ですよ!…いいじゃないですか今更本当の事ですしー。それじゃ皆さん、これで失礼しますねー」



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司馬日記外伝 恋姫たちのバレンタイン

para様より拝領のリクとはずれてしまったかもしれませんが、その後のとある恋姫たちのバレンタイン群像です。
バレンタインっていつでしたっけ…


調理場の前を通り掛かると、質実な我が家では滅多に嗅ぐ事の無い甘い匂いが漂ってくる。

「姉様」

「ん…叔達か。なんだ」

こちらに振り向きもせずに答え、湯煎の鍋をかき混ぜている。

「一刀様へのばれんたいんでーのちょこれーとでしょうか」

 

「ああ。折角材料が買えたのでな」

分かりきった事を聞く。先日買い物袋を片手に微笑を浮かべて帰宅したのを、流石にぎょっとして何があったのか聞いたのも私だ。

「良い物が出来そうですか」

「私なりでしかないが」

その後姿を見ながら、心底幸せそうだと思う。余人が見れば無表情で鍋を凝視しているように見えるだろうが、私や家族には姉様の周りに桃色の気まで漂っているのが見えるようだ。

容姿に優れ頭脳も明晰な一方恐ろしく気の利かない一面があるこの愛すべき姉は、強力な競争相手でもあるが幸せに成って欲しい存在でもある。

「当日は御出勤になったら、一番でお渡しされるのですね」

折角の一刀様に近しい姉の職場だ。貧相な体つきの後宮の元締めや、目つきと一刀様への態度の悪いメガネ似非メイドたちの顔を思い浮かべながら司馬家の誇りとしてせめて一番で渡して欲しいと思う。

「いや?前日の昼にはばれんたいんでー用の一刀様向け贈り物箱が第三会議室に設置される。課長職以下は記名してその箱に入れておく事になっているだろう、通達を見なかったのか」

 

「姉様はそれで良いのですか、日々顔を合わせて居られるでしょうに」

「私の私的な進物如きの為に貴重な一刀様の御時間を割くわけにはいかん」

「…規則に厳しいのですね」

心の中で舌打ちする。あんな通達は既に後宮入りしている者達には有名無実な紙切れではないか。

我が姉ながらこの堅物め、と思わずにはいられない。小さくため息を吐くと、背後から肩を叩かれた。

「まあよいではないですか、仲達がそれで良いと言うのですから」

「伯達姉様…」

何時の間に背後に居たのか。武芸の心得がある仲達姉様は足音を忍ばせて近づくことは『ある程度出来る』と言っていたが、伯達姉様はそれほどでもない筈なのにどうしてこうも容易背後を取られるのだろう。

 

「仲達も熱心になるのは構いませんけれど、明日に響かぬように作るのですよ」

「はい」

こちらをちらりと振り向きまた鍋に向かう仲達姉様をよそに、邪魔をせぬようと思われてか伯達姉様が私の肩に手を添えられたので大人しく自室に戻るべく廊下に戻る。

 

「…仲達姉様は謙虚に過ぎるのではないでしょうか」

「あれが持ち味なのですよ」

幾度となく繰り返した伯達姉様とのやりとり。もし私が仲達姉様だったなら、朝一番に一刀様を待ち構えてお渡しし、言外に褒美を求めただろう。あわよくば御伽を、しかし各王を差し置いてその日にと言うのは現実には考えがたい。御口付けと後日の御伽を御申し付けられないだろうかと願わぬということはないだろう、叶うかどうかはさておき。

きっとあの姉は真心をこめた自身の渾身の贈り物が郵便の如く一刀様の手元へ送られるちょこれーとの山の末端に添えられるだけで十分満足し、一刀様が皆の分は食べきれないからと呂布や許褚に渡されたとしても一刀様の御健康が第一であるのでとさして不満にも思わないのだろう。正直、凡人の自分にはその心情は理解し難い。

「他人の事は心配しなくても良いのですよ」

「わかっています」

私は私なりに策はある。当日は一刀様は各部局を巡回なさる、そこで文書局にいらした際に私の時間も僅かながらいただける事になっている。材料は既に購入済みだ。温めれば柔らかくなると聞いているが後は当日、どうやって温めておくかだけが問題で――――

 

「聞くところによりますと」

「はい?」

当日の段取りに思考を巡らせていると、唐突に独り言のように姉様が前を見たまま切り出された。

「無理矢理実験台にされた陸遜さんが、胸の谷間を軽く火傷されたとか。何故かは知りませんけれど」

「………」

「その甲斐あってか、人肌よりも低い温度でもとろけるものが開発されたとか。おかげで流琉ちゃんは今日からの講習含めて二日不眠不休だそうですよ」

 

「…所用を思い出しました。ちょっと庁内食堂へ行って参ります」

 

 

 

-----------------

 

「鍋は中火!中火です!煮立たない程度にして下さい!」

ざわつく食堂内に若先生の声が響き渡る。その姿を横目に、あたしは材料用のちょこれーとを載せた台車を運ぶ。

「こっちこっち、こっちの隅に置いて。で、下さいって人が来たらこの袋に特大匙で二杯分入れて渡して」

「あーはいはい。じゃあ燕(許攸)さん次の分倉庫から取ってきて。ところでこの講習会今何周目?」

「まだ二周目よ、今日中にあと四周だって。じゃ、杏(逢紀)、今度私搬入してくるから」

「はーい」

前掛けをパタパタと翻して特設の食料庫へ駆けていく燕さんを見送って若先生の顔を見ると、眼の下のクマが凄い。

 

受け付け用の机に座ると、ちょこれーと作り講習会の申込帳簿をつけていた劉璋さんに声をかけた。

「若先生大丈夫ですかねぇ、眼とかギンギンですよ?」

「うーん…でも今日明日乗り切れば御褒美ですから、何とか頑張りきっちゃうんじゃないでしょうか」

「御褒美?」

「あ、流琉ちゃんはばれんたいんでー当日は何もしない代わりに翌々日にまる一日一刀様と御一緒なんですって。流琉ちゃんのを食べちゃうと他の皆さんのが霞んじゃうからというのもあるみたいですけれど」

手元を止めて顔を上げて微笑む。初対面の頃はおっとりさんの劉璋さんと調子が合わなくて暫く苦手だなぁと思っていたけど今はもう気にならない。

「ところで張任さんは?」

「今日は生徒です。ほら、あそこに」

指さす方を見ると一番奥の調理台に向かい、いかにも慣れない手つきで鍋をかき混ぜる張任さんの姿があった。

 

「…大丈夫ですかねぇ?」

「良い勉強ですよ、これからは料理くらい出来ませんと」

垂れ気味の眼を細めて眺める姿にああこの二人仲良いんだなあと思っていると、背後から声が掛かる。

「すみませんが」

「あっはい、講習用の材料ですか?そしたら申込書をこちらの」

「いえ、購入のみなのですが」

「あ、そうですか」

見上げるとどこかで見たツリ目の爆乳美人が立っていた。このおっぱい誰だろう…と記憶をたどると、三国一の落書き帳の納め先になっている文書局にいる司馬孚さん…仲達さんの妹さんに行き着いた。

「あれ?司馬孚さん…ですよね、もう御購入済みってなってますけど」

「はい、そうなのですが…改良版が売られていると」

「?そんなのありましたっけー…劉璋さん知ってる?」

「あ、私分かります、改良前の品の受領証有りますか?お受け渡しは第二倉庫になりますのでそちらの係員に受領証を御提示下さい」

「有難う御座います、失礼します」

 

司馬孚さんが頭を下げると一瞬遅れておっぱいも礼をして去っていった。おっきいのに全く垂れてない、あれが若さか。

有難う御座います劉璋さん、と言うといえいえと会釈した彼女に少しだけ不思議に思う。

「よく知ってましたね?講習会担当には(改良品の受け渡しについて)特に説明無かったと思うんですけど」

「あ、私も買ってたので…たまたまです」

「そうだったんだ。あれって何が改良されてるんです?」

「え、えっとですね…ちょっとお耳いいですか?」

「?いいですけど」

何気なく聞いたら、なんだか照れ笑いをされたのが気になって彼女の口元に耳を寄せる。

 

「あれは作る用じゃなくってそのまま…」

「ふんふん」

「…は自分の身体に…」

「は?」

「…そ、それを旦那様に…」

「おおー!?」

「…でそのまま…体中…とか、きゃっ」

「」

世の中には恐ろしい事を考える人達がいるもんだ…。ってか、

「すけべー!すけべだよ劉璋さんさすが総務室のエロ担当!一刀さんと夜な夜なそんな事してたんだー!?」

「い、いつもなんてしてませんよ!それとなんですかエロ担当って!?」

「いえ私の(主に冀州方面の)知り合いたちが『弱ぶる女は夜凄い』とか『(自分の役割は)これ(夜伽)しかないと思い決めた女は吹っ切れてる』とか『守ってオーラ(性的)が半端無い』とか言ってたけど本当だったのかと」

「私そんな目で見られてたんですか!?」

「おい貴様、御嬢様をすけべ呼ばわりとはどういうつもりだ!」

「わぁっ!?ち、違うんです張任さん、劉璋さんがすっごい魅力的だから一刀さんもきっと満足だろうなぁって!」

「当たり前だ!先日旦那様に御奉仕されていた時だってむぐぐ!?」

「貴女も黙りなさい!と言うか講習中なんですから席に戻りなさい!」

「ちょっとなにやってんのよあんた達!?倉庫の方、もう次回分のちょこれーとが納入されてるから早く取りに来なさいよ!」

 

この後、目が血走ってる若先生から静かにしなさいって滅茶苦茶怒られた。

 

 

----------------------

 

小さな猪口型に練った餅の端部を飴の包み紙のように捻り、そっと横に傾けると餅の中から透明な雫が染み出す。

「ふむ。これも失敗だ」

「失敗では仕方ない、それは儂が貰おう」

向かいに座る祭の手が伸び、中の酒が零れぬようそっと摘んで口へと運んでいく。静かに咀嚼しながら、眉根が僅かに寄っていく。

「つまみにしては、餅がちと甘すぎるな」

「まあそういうものらしいからな」

確かに甘すぎる。祭の失敗作を三個ほど処理した(食べた)ところで先に自分は降参し、持参したスルメの足を小さくちぎって口へと運ぶ。

 

「二人とも、さっきから一個も出来ていないわよ」

「仕方ないじゃろ。流琉も多分無理じゃと言うておったしな」

優雅に微笑みながら杯に口をつける紫苑に、手酌をしながら祭が答える。小娘共が『ばれんたいんでー』だなんだと騒いでいたので何なのかとお館様に聞くと意中の男にちょこれーとなる菓子を送る日らしい。『天の国の若い娘向けの行事だ』と言うお館様にでは老いぼれは関係有りませんなと一睨みすると、あわてて弁解するように大人向けには中に酒が入った菓子を贈るのもあると言われた。その話を祭にしたところ興味を持ち、連れ立ってそれは作れるのかと流琉に聞くと酒を密閉するのが難しいと言う。しかし餅なら出来るかもと言い、一通り要領と餅の在り処を説明するとこれから料理教室だと言って慌てて去っていった。

 

「紫苑、お前は作らんのか」

「もう殆どお餅も残ってないでしょう?それに、璃々が作ってますから」

にっこりと笑う紫苑の笑顔には娘への全幅の信頼を感じる。最近の璃々の姿を思い浮かべ、本当に紫苑に似てきたと言いかけて『おばさんみたい』と紫苑に二度ほど笑われたのを思い出して喉の奥に仕舞い込む。

「娘に菓子を作らせて、自分は礼に一刀を食うつもりじゃろ」

「さあ?璃々次第ですわ」

 

祭と紫苑の軽口に、紫苑と璃々の間の変化を実感する。旧蜀に居た頃は、今と変わらぬ優雅な挙措の中にも必死に娘を守ろうとした姿があった。それがお館様と出会い安住の地を得て幸せに暮らす姿には他人事ながら喜ばしいと思っていたが、近年では成長著しい娘をお館様にぐいぐいと売り込んでいる姿が目に付いていた。母親であるのだから娘の事が心配なのだろうと思っていたが、悲願叶って璃々が側室の一人に収まると彼女らの間に多少の距離感―――勿論相変わらず非常に仲睦まじいのだが、娘を一人の人間として認めているように見える。また璃々も、容姿と気の置けない者とのやりとりにはあどけない部分を残しながらも非常に大人びた面も見せるようになった。賢い娘でもあり既に声望も高く今後の

蜀を背負って立ってもらう事に何の不安も無い。

 

(これからは、一人の女としての幸せを追うといい)

「?私の顔に何か付いてる?」

気付くと見つめていたらしい。眼を閉じ、杯を軽く掲げて答える。

「いや。甘過ぎるつまみも、たまには悪くないと思っただけだ」

紫苑と璃々の幸福に。

 

 

ついでに、二人には内緒で焔耶に買わせたお館様用のちょこれーとに。

 

 

 

-------------------------

 

積み上がっていた書類の最後の一枚の決裁欄に署名をし、『決裁済』の箱に移す。

んっ、と一つ伸びをして席を立ち、お茶を求めて厨房へ向かう。その途中のメイド控え室をちらりと覗くと、月の姿が無い。

まあそうか、と思いながら廊下の角を曲がると案の定の小さな後姿が台所に向かっていた。

「…出来そう?」

「あ、詠ちゃん。うん、もう少しだよ」

近づいて厨房の壁にもたれながら、型を団扇で扇いでいる月の穏やかな横顔を眺める。

「今年は作ったのね」

「うん…去年はちょっと良くなかったからね」

少し困り顔で振り向く月に、去年のバレンタインデーを思い出す。

事前調査から、馬鹿ちんこに送られる見込みであった圧倒的な物量をどういう順番でどこに行って受け取るか、どこで一時保管するか等で総務室一同はてんてこ舞いしていた。それで忙しいのもあったとは思うが、昨年は月は作らなかった。と言うか、一刀に贈りさえしなかった。

ただ、むしろ月は少し気を利かせ過ぎた。各所でチョコレートを味見し続けた一刀に、きっと多少食傷気味だろうと考えて口直しにとお茶と漬物を間食に出したところそれがおおいに一刀に喜ばれ、馬鹿ちんこは馬鹿ちんこで不用意に『今日食べたもので一番旨かった』とぽろっと言ってしまったのが方々に知れてしまった。一刀の歓心を買うには妙手と言えば妙手ではあったが、新参の娘達を中心に『一人だけ目立とうとして』と暫く風当たりが強くなってしまった。月の揺ぎ無い、時には母親のようでさえある一刀への愛情を知る者達は月が今更そんな点数稼ぎじみた事をする事は無いと知っているがそうではない者達から見れば地位を利用した悪辣な逆張りと見えなくも無い。

 

「そんなに、気にする事ないわよ?」

「ううん、でも折角のバレンタインデーだし」

そう言う月の手元を見ると、チョコレートの型も特に凝っていないただの立方体だ。それに材料に使ったと思しきチョコレートも市販の品。対外的なものを考えて無難なものにしたのだろう。ただ、流石に味気なさ過ぎると思ったのか香料の小瓶が脇に置かれていた。

自分の立場を十分意識した、むしろ後宮運営での自身の功績に比して気を使い過ぎなのではとさえ思える作り方に密かに嘆息する。

 

「詠ちゃんは作らないの?」

「ガラじゃないし、月のと一緒に並べられるのも御免だしね。市販のやつ買ってあるわ」

「もう…そんな事言って、御主人様だって詠ちゃんから手作りの貰ったら喜んでくれるよ」

「まあ、作りゃ喜びはするでしょうけどね」

軽く両手を広げて肩を竦める。まああいつはこれ作ったの、良かったら食べなさいよと言われたらそれまでに何百個食ってようが必ず有難う、旨いねと言うだろう。しかし、自分と一刀の間柄――――はそこには無い、と思う。それは月だって知っている。私に近い奴は大方感づいているだろうし、遠い人なら『あのぶつくさ五月蝿い女は出来合いのチョコをそっけなく渡すだけの女だ』と思うだろうから特段問題は無い。

そこまで思いを巡らせて、自分も大概に政治の中で生きる女に慣れてしまっているなと密かに苦笑する。とは言え、そもそも西涼で月に付いて上京した頃はと言えば女ですらない、女であることすら忘れていた。それを思えば平和で幸せな事だと多少思い返し、月に声をかける。

 

「美味しそうに出来たじゃない。先に私に一つ頂戴よ」

「いいよ。あ、でもまだ固まってないかも」

「この寒さならちょっと外置いとけば固まるわよ。ボクお茶入れとくから、その間にあいつの分包んじゃいなよ」

「うん、お願いね」

 

特別な日にも他愛のない、日々の幸せ。

 

 

--------------------------

 

 

濡れた髪を拭きながら部屋の扉を開くと、いまだに寝台の上でお姉様は腕組みをしていた。

「ねえお姉様ぁ、まーだやってんのー?」

「んー…」

生協のチョコレート販売目録を睨みつけている姿は私が風呂に行く前と何も変わっていない。

「早く決めないと締め切り来ちゃうよ?後何日も無いじゃない」

「そりゃ、そうだけどさぁ」

 

漸く顔を上げた姉様の表情は優柔不断を絵に描いたようなものだった。

「そんなに悩む時間があったら作れちゃうよ、流琉の手作り教室今からでも申し込めば?」

「あたしがそんな器用なこと出来ないの知ってるだろ」

再び目録に目を落としてうんうん唸るお姉様に少し嘆息しながら、やれば出来るでしょうにと心の中で突っ込む。

だいたいお姉様は虫がいい、市販品のちょっといいのを渡せばご主人様が自分になびくと本気で思っているのか。

碧(龐徳)だってやったこともない編み物を紫苑に習って必死にお守りを編んでいる、あんな目つきで作られたお守りは執念というか、情念がこれでもかと言うくらい詰め込まれてさぞ御利益があることだろう。尚私は不意打ちの口移しで渡す予定だ。多分同じ事を考えているシャオをどう出し抜くかだけが問題で…

 

―――流しの方へ向かい、棚の二本の小瓶を取る。

 

話が逸れた。姉の虫がいいというのは今に始まったことじゃない。そんな禄に攻めない、煮え切らない受け身でよくここ(後宮)を追い出されないなとさえ思う。一体昼間の、騎馬隊を率いていたお姉様はどこへ行ってしまったのか。

 

「碧だって頑張ってるよ?」

「んー。夜遅くまで毎日よくやってるよな」

 

―――小瓶に半分ほど酒を注ぐ。

 

そりゃ確かにお姉様は美人だ、つい手が出るところはアレだけどご主人様にとってはまあ可愛げの内だろう。問題は、自身が可愛げが足りないと思い過ぎているところだ。

 

「お姉様だってここは貫禄みせなきゃいけないところなんじゃないのー?」

「あたしはいいよ、似合わないし」

 

―――棚の奥から、箱に隠した更に小さい薬瓶を取り出す。

 

どうせ自分は可愛く振舞えない。がさつ。フリフリの服などもっての外。ご主人様がすきんしっぷ?だっけ、肩を抱いてきたりしてもエロエロ魔神とか言って場合によっちゃ逃げようとさえする。一度始まっちゃえば自分だってエロエロ魔神(魔女?)のくせに。

 

「こないだの遠駆けだって、ほんとに遠駆けだけで帰ってきちゃうしさぁ」

「…ご主人様だって楽しかったって言ってたじゃないか」

 

―――瓶に書かれた用法注意を読む。『一刀に服用させる場合は一度に約3滴まで。それ以上服用すると翌日以降に差し支える。女性側が服用する場合も基本的には同じ。薬草から作った精力剤を原材料にしているが、体調不良時は服用しない事。 華陀』

 

それでもご主人様が機嫌が良い…と言うか、気が向いている時にはお姉様が(口では)やめろよとか嫌がって見せてもかさにかかって構ってと言うか弄ってくれて上手くいけばそのまま寝台へという事もあるけど、その頻度は明らかに春蘭の方が多い。春蘭のあのいじめてオーラは異常だ、お姉様は競合する脳筋同士であれに勝たなくてはいけないのに。

 

「そんなんだから脳筋って言われるんだよ」

「うるさい」

 

―――片方の小瓶には3滴だけ薬瓶から垂らし、振り混ぜて蓋をして『ご主人様用』と書く。少しだけ思案して、もう片方にはとぷとぷと半分ほど注いで『お姉様用』と書き、お姉様の居る寝台の方へ向かう。

 

 

 

「そこまで悩んでるんだったらさぁ、ご主人様さっき部屋に帰るって言ってたからお酒でも飲みながらどっちがいいか聞いてみたら?」

 

 

 

ああ、私ってなんて姉思い。

 

 

 

-----------------

 

ゆっくりと、細くチョコレートを搾り出していく。この寒さなのに手に汗をかいている。

「あっ、蓮華さん上手上手!綺麗にハートマーク出来てるよ、これで完成だね!」

焼き菓子の上にチョコレートの線を引ききると、お揃いの前掛けと三角巾姿で隣で見ていた桃香がぱちぱちと手を叩いた。

 

「有難う桃香。随分手伝ってもらってしまったから、包装は自分でやるわ」

「そう?じゃあ、私自分の包んじゃうから判らないことあったら聞いてね。あ、チョコが冷えて固まるまでは触ると乱れちゃうから気をつけてね」

はじめに飾りつけた分の焼き菓子から順に紙の箱におそるおそる収めていきながら、自作分を綺麗な手際で包んでいく彼女の手元を横目で見る。その姿は実に楽しそうで、鼻歌さえ聞こえてきそうだ。

 

「桃香はいいわね。料理上手で」

「えーっ?そんなことないよ、華琳さんとか流琉ちゃんとかに比べたら話にならないよ。一緒に御料理習ってたじゃない」

「比べる相手が悪すぎるし、私に比べたら大分上だわ」

正直、桃香とは少し差があると認めざるを得ない。一緒に料理を習っていた頃は似たようなものであったし自分も真剣にやっていたつもりだったが、その後桃香は練習も重ねたのだろう。更に元々料理もしていた桃香との生まれの違い、またこういったことに対する器用さと言うか、素の能力の高さは決して評価されていないが素直な吸収力を持っている彼女との差を痛感する。

 

私は一事が万事こうだ。

王として姉に及ばない。

妻としても一番でない。

女としても周囲に劣る。

一刀は変わらず愛情を注いでくれているけれど、そんな不安に陥る事もある。

「…でもこれ、一刀は喜んでくれるのかしら」

「えっ?」

「他の子があげるやつの方がずっと美味しいんじゃないかって」

正直な思いが口を突く。考えてはいけない、と思いながらもつい溢れてしまった。

 

「あはは…正直に言っちゃえば、私達のより流琉ちゃんの教室で作るやつとか市販の高級品とかの方が美味しいかもねぇ」

「そうよね…」

「でもいいんじゃない?」

溜め息から顔を上げると、桃香が笑顔で真っ直ぐこちらを見ていた。

「これが私達の精一杯だもん。一生懸命作ったんだから、これでいいんだよ。もしご主人様に不味いって言われちゃったら、来年又頑張ろう?」

澄んだ瞳というのはこういう瞳なのだろう。呉内からは、知識の少なさや覇気を感じさせない姿から蜀王としての資質を危ぶむというか疑う声もたまには聞くが、蜀からは聞いた事が無いのはこの揺ぎ無い姿があるからなんだろう。

 

「…桃香が眩しいわ」

「えーっ、何それ!?」

苦笑すると、馬鹿にされたと思ったのか変な顔をする。

 

「でもその通りね、私なりに頑張って作ったわ。これを一刀にあげたい」

「うん」

「でも不味いとか言ったら、思春に殴ってもらうわ」

「ひどーい!あははっ」

「ふふふ」

公私共に、私の目指すものはまだ遠いけれど。

 

自分なりの全力で。

 

 

 

------------------

 

チョコレート良し。

鍋良し。

火の準備良し。

前掛け良し。

型良し。

 

「さあ、やるぞ!今年こそ!」

そう自分に気合を入れた瞬間に、背後から抱きすくめられた。

 

「ひゃ!?ご、ご主人様!?」

「何してるの?愛紗」

「あ、い、今からバレンタインデーのチョコレートをっ」

「そうなんだ、でもそれより俺は今すぐ愛紗を食べたいな」

「でも今はチョコっ、あふっ…ん、んむ」

いつもと違っていきなり強めに胸を揉まれ、力が抜けそうになるところに顎に手を添えて振り向かされ、唇を塞がれる。

 

「…っ、ぷあっ…だ、んっ、ダメですっ、そういって去、去年も一昨年もっ」

「第一、愛紗自身よりも美味しいチョコなんてあるのか?」

「そ、そんな言い方ずるいですっ、んっ、あはぁっ」

ご主人様の指が服の中へ差し入れられて乳首を捕らえられ、下着もずり下ろされる。

「料理中に襲われちゃう陵辱えっち、いっぱいしようか?」

そう耳元で囁かれると、私の頭の中はどう言って拒絶すれば押し切ってもらえるだろうか、という事しか考えられなくなった。

 

 

 

 

「…寝たかな?」

「うん、寝かした。明日夕方までは寝てるんじゃないかな」

「いいなぁ愛紗ちゃん、毎年毎年…」

「うん桃香、必死なこっちの気持ちも察してね?」

「ごめんなさい…」

 

 

 

------------------

 

「ねえ、本当にあげないの?」

「はあ」

台所から顔だけ出した御嬢様に、何回目かの同じ返事をする。これだけ気の無い返事をしても尚聞いてくる御嬢様は中々に根気がいい。

背も伸びて、そんな根気も身につけた御嬢様に私はちょっとだけ嬉しくてそこそこ寂しいです。

 

「七乃があげないと私が怒られるのよ?」

「怒られちゃって下さい、それも人生勉強ですから」

寝台に寝転びながら手にした雑誌から目を上げず、脇の机に置いた煎餅を取ってぱきりと齧る。

「ただでさえ七乃の事『態度悪い』って言う人だっているんだから…」

「言わせておけばいーんじゃないですかぁ?今更ですよ」

 

『あの女はこんな大事な行事にチョコレートもあげないで、愛情も無いくせに巧言を弄して一刀様を操ろうとしている』とか言われてるのくらいは想像に難くない。誰が言ってるかさえ大体目星がつくくらいだ。

「もう…」

諦めたように厨房内に御嬢様が戻った。まあ、さぞ御嬢様の作ったチョコレートは普通に美味しくて、普通に一刀さんも有難うとか喜んで、御嬢様もそれを見て満足することだろう。それはそれで何の不満も無く、寧ろ喜ばしい。

 

「あっ」

しかし御嬢様はまだ私が気になるらしく、また顔を出した。

「分かってると思うけど!」

「?」

「明日、突然一刀さんとふっとどこかに消えたりしないでね?」

「しませんよ、そんなこと」

何かと思えば、大方誰ぞから言われたのだろう。

 

「あー、でも」

「御嬢様が明日、昔みたいに『主様!妾がチョコレートを作ったのじゃ!妾もろとも食べてたも、食べてたも♪』って言ってくれるんでしたら私も作りますし、御嬢様を食べてもらえるようにしますけど?」

「………も、もういいわ!出来上がったから、私楓(曹真)先生のところに包み方習いに行ってくるから!じゃあね!」

一瞬悩んでから、型に入れたチョコレートを手にぱたぱたと出て行かれた御嬢様チョロ可愛いです。いつまでもそのチョロさは失わないで下さいね。

室内に、私の煎餅を齧る音だけが静かに響く。

 

まあしかし、どうして丸一日かけて山ほどチョコレートを貰って、どれ一つにさえ嫌な顔一つせず嬉しそうに食べてみせる相手の事には皆さん気が回らないんでしょうかねぇ?

去年の月さんのは中々いい考えだとは思いますけど、まあ色々角も立つでしょうし。

 

 

 

 

 

「日常の中にこそ愛情ってあるって思いませんかぁ?御嬢様」

雑誌の頁をめくりながら、なんとなく呟いた。

 

 

 

---------------------

 

「部屋の中には華琳様のチョコレートが二体ある。好きな方から食べろ」

「二体?いや、私が作ったのは一体だけだがむぐぐ!?」

「うん私も一体作ったのだ、ゆっくり食うといい。さ、姉者は私と行こう」

「むぐもが!?」

秋蘭が春蘭の口を塞いで引き摺っていくのを見送りながら、本日最後のチョコレートの受け取り会場―――別名華琳の部屋の扉を開ける。

 

 

 

「…これは凄い」

部屋に入って、思わず出た一言。

 

まず部屋に入って向かって右―――春蘭謹製と思われる、華琳像。

勝気な―――あるいは不敵な、表情。堂々と立った姿で右手を高く掲げ、突撃の号令をかける場面だろうか。

服や瞳の細部まで精緻にかたち取りや色づけがされており、精巧なフィギュアにも見えるがたちこめる匂いからして巨大なチョコ像なのだろう。

そして左。

その右のフィギュアと寸分変わらない姿で、微動だにせず立つ『華琳像』。

流石の春蘭でもフィギュアにしてはリアル過ぎる、胸だけが緩やかに上下する秋蘭曰くの『チョコレート』。

 

「凄えなぁ…」

これだけのチョコレートフィギュアを作る春蘭も春蘭だが、微動だにせず全く同じ姿を保持する華琳も凄い。

「今日一番ビックリした」

室内からは答えはない。何故ならここにあるのは彫像二体だから。

ここまでで凡その意図は察したところで、秋蘭の言葉を思い出す。

これで冗談でもチョコ像の方から食べ始めたら流石に華琳も怒るだろうな、と思いつつも好奇心には勝てず、チョコ華琳の方に歩み寄ってその像の前で膝を折る。

 

「おー…パンツは白か」

「殴るわよ」

左側から声が聞こえたが、振り向くと表情も何一つ変わりない華琳像がそこにあった。殴られる前に止めておこう。

春蘭には悪いが食べるべきものから手をつけようとして改めてその姿を見ると、右脇の下が目に付いた。

 

「…脇の下から食べ始めようかな」

「…」

 

一瞬眉根が寄った様な気がしたので流石にやめてその身体を柔らかく抱きしめ、桜桃のような唇に自分のものを重ねて口腔内を味わう。

表情はそのままで、チョコにしては熱く甘い彼女の舌がそれに答えるように絡められ。

 

キスしたままで、器用にも

『馬鹿』

と言われた。



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司馬日記外伝 恋姫days

随分間が空いてしまいまして申し訳ありません。
一度こういうガチのドロドロを書いてみたかったり。
御笑覧頂ければ幸いです。


「それで、彼は優しくしてくれました?」

「貴女に答える義務はないけれど」

夕日を背に生徒会室の扉に凭れて腕を組み、のんびりとした調子で聞いてくる七野の言葉を半ば無視しながら自分の荷物を鞄に詰め込む。

 

「まぁそうですねぇ。私に言う義理はないでしょうけど、春欄さんには教えてあげた方がいいんじゃないですかぁ?」

「…っ」

春欄の名を出され、思わず片眉が上がろうとするのを抑えながら彼女が立つ扉に近づく。

「私も忙しいの。そこをどいてくれるかしら?」

「まあまあ、二三言でいいですから付き合って下さいよ。そしたらすぐにどきますから」

「余り踏み込んだ事を聞くものではないわよ」

「校内唯一の男子生徒と名家中の名家、曹家の跡取り娘にして美人生徒会長の恋愛譚に興味持たない人なんていませんよ」

一般論ではそうだろがこの女だけは違う、単純な下世話な関心だけでこんな話を振ってくるような女じゃない。そんな嘘をいけしゃあしゃあと並べるこの蛇のような女にはいつも得体の知れない苦手感を感じる。

 

「それは私には関係のない事だわ」

「寝ましたよね。彼と」

「…」

初めて彼女と目線を合わせる。いつもと何も変わりない穏やか気な、人を食った表情に抑えようの無いイラつきが湧き上がる。

「そうだとして、何?」

 

証拠は無い。私の私室か、銀雀台、そして体育倉庫。全て予め確実に人の耳目の及ばない事を確保してから事に及んでいる。私の返事を自白証拠として騒ぎ立てようとしても無駄であるのは自明の筈だ。

 

「いえ?花琳さんも結構いい趣味してしてるんじゃないかなぁって思っただけで」

「何の話?」

「花琳さん、被虐プレイとか似合いそうじゃないですか」

「…」

斜め下からねめあげるような七野の視線に、背筋が冷える。

…知らないはず。知る方法など無いはず。

「そう、かしら」

極力表情を変えず、動揺を見せないよう答える。それに、鼻で笑うかのような溜息を被せて廊下を見る。

「中々いい趣味…って言うか、いい考えだと思いますよ?一刃さんくらいの年なら、やっぱり女に求めるもののうち体って結構な部分を占めてるだろうと考えるのは妥当だと思いますし、体のメリハリじゃ元カノの春欄さんを超えられないから別の点で一刃さんを惹き付けようって思うのも自然じゃないですか?」

廊下に視線を投げていた七野が、再び私を見据える。

「そこで、貴女は自己分析をした。『自分は春欄さんよりも可愛い女になれるだろうか』結論は否。桃佳さんや亜莎さん達みたいには今更なれない。厳密な意味でなれないわけではないけれど、なろうとしても却って彼にとっても周囲にとっても違和感が酷くて『自分の所為で花琳が歪んだ』と思われて距離を置かれかねない。それよりも自分の性格を逆手にとって、自分に被虐趣味の性癖をつけてみようと考えた。一般的な男性なら征服欲は多少なりともあるものですから、才気煥発で美貌に加え気高さと強い自尊心を持つ生徒会長が、自分には身も心も隷従して悦ぶ雌奴隷だったら――――?これなら彼の歓心を、春欄さんを忘れさせる程買えるかもしれない。それに彼の比較的温和な性格を考えれば、このプレイをきっかけに彼が極端な加虐趣味に走る可能性も低い。そこまで考えて、一刃さんを誘ったんじゃないですか?――――体育倉庫に」

 

「…素敵な妄想ね。夢なら家で見るといいわ」

あるはずがない。予め私自身で体育館全館に誰もいない事と施錠されている事を確認して、それから秋欄に門番を任せて一刃を連れて来る為に体育館を離れた。私が再び体育館に入った後も秋欄がずっと門番をしていた、彼女が秋欄の目を盗んで侵入するなど不可能だ。ましてや秋欄が私を裏切るなんてもっと有り得ない。

なのに、何故。

 

「なかなか刺激的な夢だったもので妙によく覚えてるんですよ。下半身だけ脱げって彼に命令させたり、跳び箱に自分を縛らせて背後から犯させたり。最中もマゾ奴隷としか思えないような事を叫び散らしたりとか。あの花琳さんがそんなことする筈ないですから、きっと私の夢だったんでしょうけどね」

「………っ」

絶句し、背筋を嫌な汗が流れる。あくまで淡々と天気の話でもするように語るこの女は、間違いなく現場を見ていた。何故?私は自分で全てを確認して――――

 

「―――――狭いところで寝てたもんですから、きっと変な夢を見たんですよ。私」

「………!」

 

していない所が一箇所だけあった。それは、

『体育倉庫の用具入れの中』。

 

どんなにそんな馬鹿げた事があるか、私と一刃が来なかったらまさしく何の意味も無い事をする奴が居るというのか。私や他の人が不審に思って気づく事だって有り得るし、私の気が変わって寮の自室に場所を変えれば完全に無駄だ。

しかしそれ以外は説明がつかない。それ以外は、『完全に有り得ない』。

 

ということは、これが―――『正解』。

 

「………覗きとはなかなかいい趣味ね。恐れ入るわ」

あの時の事を至近距離から観察されていたという意識が、憎悪になって頭に血液が集中していく。

 

「いえいえ偶然ですよ。それよりも私花琳さんて『目的のある屈服』ならあまり苦にしない性格だろうなって思ってはいましたけど、結構満更でもなさそうで」

「余計なお世話だわ」

「まあわざと演じてる感が出ちゃったら彼の方で気を使われてるの察知して醒めちゃうでしょうから、花琳さん自身その『性癖』を積極的に楽しもうとされたんでしょうけど。そこらへんに花琳さんの一刃さんに対する執着を垣間見たって言いますか」

「…帰っていいかしら?私も貴女の感想に付き合ってられるほど暇じゃないの」

 

この女―――七野は、無駄にこんな事を話す人間じゃない。何かこの後に言いたい事がある筈だ。

 

「あ、どうぞ?別に、私以外に見た人が居るわけじゃないですから、誰かに言ったところで品行方正な生徒会長様がそんな事をするなんて信じる人も居ないでしょうし」

「そう」

拍子抜けと言うか、釈然としないものを抱えたまま扉の前の彼女の目の前を通り過ぎて廊下に出たところで、あ、でも、と声を掛けられた。

 

「春欄さんには喋っちゃいましたけどね」

「…春欄に………!?」

「だって聞かれちゃったんですもん」

やれやれというように両手を広げる七野を睨みつける。聞かれたなんて方便だ、この女なら春欄に聞くように仕向けるなんて造作も無い。

 

「一刃さんて春欄さんと付き合ってた頃からそういうプレイ好きだったんですかって聞いたら、春欄さんそういうことに疎くてした事無かったんですって」

「黙りなさい」

静まりかけていた血液が沸騰し始めるのを自覚する。

「春欄さんが一刃さん振っちゃったのはそういう性癖が嫌だったからかと思ったんですけどねぇ」

「黙れと言ってるのが聞こえないのかしら」

この学校に転入してきた私が春欄の恋人と知らずに一刃に恋をしたと知って、曹家の跡取り娘であった私の為に泣きながら身を引いた春欄。

いずれ、春欄がどんなに遠慮しても、嫌だと言っても、手錠に繋いで一刃に犯させてでも彼女を引き戻す。

春欄の幸せは絶対に一刃と私の隣にあるのだから。

だというのに、この、五月蝿く囀る蛇女は。

「馬鹿ですよねぇ、主家筋の娘が来た程度で別れるなんてきっと大して好きでも無かったんでしょうね春欄さんは」

 

私の右手が、勝手に振り抜かれていた。

 

 

 

 

 

 

-------------

 

左頬に人生で受けたことの無い衝撃を受けて、私は吹っ飛んだ。

一瞬、あるいはもっと長い時間か。視界が明滅して頭に衝撃を受け、暗転する。

 

「春欄は誰よりも一刃を愛していたわよ…侮辱する女は許さないわ…!」

頭上からの声にようやく意識が戻り、反射的に声が出た。

「許されないのは、どちらでしょうね?」

「何ですって?」

薄目をあけて彼女の背後に目をやると、二教室ほど離れた廊下に連華さんが『予定通り』立っていた。

 

「花琳…」

「……そういう事ね。……………見ての通りよ」

連華さん、そんな弱気丸出しじゃ駄目ですよ。あっさり腹を括っちゃった花琳さんとどっちが弱い立場か分からないじゃないですか。

それともあれなんですかね、罪悪感に苛まれる自分って可愛いとか思ってるんですかね。

 

「言うべきことを言いなさい。それが貴女、生徒会副会長の仕事よ」

「…え、ええ…分かって、いるわ。…校則第十八条、校内で暴力を振るった者は三ヶ月から一年の停学とする。また生徒会役員の資格を失う。…塾長先生には私の方から報告しておくわ。事情聴取の連絡をするまで、寮で待機して………しなさい…」

「…それでいいのよ。後の事は任せるわ」

連華さんに背を向けて悠然と歩き出し、私の脇を通り過ぎていく。

 

「…御免なさい、花琳…!」

ああ、どうしてそこで謝って逃げてっちゃうんですかねぇ?花琳さんなんか振り向きもしないのに。

まあ兎も角、私の仕事はここまでだ。ああ、疲れた。

 

半身だった体を仰向けてごろりと廊下に寝転がると、口の中に血の味がするのにようやく気がついた。倒れた時に強かに打った右肩もズキズキと痛む。覇王とか言われてる花琳さんの本気のビンタを受けて平気な程、私体丈夫じゃないんですよ。

そう思いながら廊下の開けっ放しの窓を見上げていると、パシッという音と共にそこに長い指が掛けられた。

一瞬間をおいて、長い桃色の髪が空中転回をしたかと思うと長身の女性が飛び込んでくる。

 

「雪連!そういう荒っぽいことはやめてって言ってるでしょう!」

「だってこっちの方が早いじゃなーい!?」

階段のある廊下から近づいてくる声に答える雪連さん。ここ、二階なんですけどね。まあきっと花琳さんや連華さんのどっちとも顔を合わせたくなかったんでしょう。

 

「やっほ♪お疲れ様」

「…ええ、疲れましたんで起こしてもらえます?」

別に本気で起きられない訳じゃないけれど、その程度の追加報酬はあってもいいでしょう。

 

「どうぞ」

「どうも」

長い指を伸ばした雪連さんの手を握り、のろのろと起き上がろうとする。一瞬、クラッとするのをなんとか堪えて廊下の窓に凭れた。

 

「まあ、これでお約束通りって事で」

「流石ねぇ」

「…七野、分かっているとは思うが」

 

遅れてきた冥林さんが厳しい表情で念を押してくる。

 

「他言無用、勿論分かってますよ。その代わり、御嬢様の件」

視線を雪連さんに投げる。

「分かってるわよ、実はもう手配済みよ。今夜にも寮に帰って来るわ」

「それはありがとう御座います」

賢い冥林さんに答えると言を左右されて約束が守られない可能性を感じて雪連さんに問うたが、予想外なほどあっさり『報酬』の支払いを約束された。

冥林さんではいまいち疑わしいが、雪連さんは嘘はつくことはない。間違いなく、御嬢様は帰ってくる。

 

あと数日―――――。下手をすれば明日にでも、御嬢様を軟禁しているあの変態中年―――許貢の慰み者になりかねないところだった。

 

『七野。主様とは又会えるかや?』

『ええ会えますよ。御嬢様が少しの間いい子にしていればすぐですよ』

『そうか。では妾は良い子にして居るぞ』

 

そういって浮かべた御嬢様の無垢な笑顔を思い出して胸の奥が苦しくなる時間もあと少しだ。あと少しで虎口を逃れる。

両肩に掛かっていた重圧が外れる感覚に、思わず足が震えるのを身体の痛みを思い出すことでなんとか抑える。

「まだ事を成してないうちに手配して頂いちゃうなんて、随分信用してくれてたんですね」

「貴女が言い出した事でしくじるってあまり想像できなかったのよね」

飲み仲間にでも言うように、にいっと笑う雪連さんに多少の苦手感を感じる。敵にしても味方にしてもおそらく裏切らない、理でなく感覚で行動する極めて操りにくい人だからだろう。

「ま、では私の仕事はここまでですから。失礼しますね」

「じゃあね」

雪連さんのあっさりした言葉を背に、階段を降り昇降口へ向かう。

口の中に滲んだ血の味がする。事を成した証だ。

花琳さんに張り倒された時に頭を打った所為でまだ多少フラフラするが、帰れないほどじゃない。

 

帰れば、御嬢様に会える。

折を見て御嬢様を一刃さんに引き合わせよう。

御嬢様が望むなら、それ以上の間柄に。

彼の情に甘過ぎる性格なら、体を押し売ってそれを盾に御嬢様とも結ばせるくらい簡単だ。私も彼の甘っちょろ過ぎるあの性格は不思議と嫌いでない。

この森を抜けて、あの寮に帰れば。

 

 

 

 

 

 

「――――命令ですので。すみません」

背後にそんな声と、延髄に鈍い衝撃を受けて私は意識を失った。

 

 

-------------

 

「しかし珍しいな。ここまでお前が連華様の世話をするなどな」

「そぉねえ」

それは自分でも思わないでもない。

 

「でも、孫家には一刃の血が必要なのよ。必ずね」

「まあ私としても一刃が帰ってくるなら否やはない。そこまでお前が断言するのなら、私はついて行くだけだ。ひいては一刃の為にもなる」

「信頼が厚くて嬉しいわぁ、たとえ私情込みだったとしても♪」

何故かは分からない。でも何故かは重要じゃない。『そう』なのであるから、それに向かって行動するだけ。

 

「しかしついて行くと言っておいてなんだが、連華様は気持ちがまだ熟していないんじゃないのか?」

「そんなの待ってらんないじゃない?」

目の前を光る矢が飛んでいく。それが欲しければ、見た瞬間に手が切れようが腕を伸ばさなくては二度と手に入らない。

連華は良い意味で女らしく育ったと同時に、刹那の直感に身を委ねられない大人しさ――――悪く言えば鈍さもある。

自分がその男に惚れているかも分からない。ましてやここで体を投げ出せば手に入るとしても逡巡する。

しかし今後の孫家の事を考えれば、確実に自分よりも家督を継いで天の御遣いの血を引き込む人材としては優れている。

その為の今回の小細工だ。花琳と一刃の間が固まる前に、なんとしてでも大きな楔を打っておく。そして花琳の停学中に強引にでも連華ともう後に戻れない関係にまでは進めておきたい。

 

「もし連華様が嫌だと言ったら?」

「シャオだって居るわ」

「お前じゃないのか?」

「あら、冥林的には私でもいいの?それよりお客さんみたいよ?」

「そのようだな」

階段を上ってくる、凍えるような張り詰めた気。ああ、日ごろは隠しててもあの娘ってこんな気を放つのね、と妙に納得する。

 

 

「―――お前達だな?」

「何がかしら」

階段を上りきった廊下に、怒髪天を衝く秋欄が青白い闘気を纏って立っていた。

 

「――――花琳様が世話になったようだな」

「大したお世話はしたつもりはないけれど?花琳が校内暴力を振るった現場にうちの連花が立ち会ったって程度よ」

「貴様等が手駒に下品な挑発をさせたおかげでな?」

「安い挑発に乗るほうが悪いんじゃない?花琳が聞いたらそう言うわ」

「正直今だけは花琳様が何と言われるかには興味が無くてね。…私が関心があるのは花琳様と私の弟の一刃…そして、そして姉者のっ!!!気持ちを虚仮にして遊ぶ奴等を殴り飛ばすことだけだッ!!

ぶわっ、と膨れる『気』に窓硝子がピシリと音を立てる。

 

――――こうでなくては。

卒業以降感じる事の無かった感覚が蘇り、血が沸き立って掌が歓喜に震える。

「そう?じゃ、やってみる?」

「いや、こいつは私の方でも用がある」

口の端を歪めて笑う冥林が私の前に出る。入学以降、久しく見なかった獰猛な笑み。

「今回の件は私の計画だ。面白い趣向だっただろう?」

「下種が…!」

「下種だと!?」

 

ぎり、と奥歯を鳴らす秋欄に、冥林が怒気を飛ばす。

「下種は貴様らだろうが!!戦乱ではぐれた一刃を天の御遣いと知って軟禁し!情が移った雌犬がたらしこんだかと思えば今度はその主人が上前か!?貴様も姉面するのもいい加減にしろ…一刃は!血など繋がっていなくても一刃は私のたった一人の弟だっ、二度と御前達の好きにはさせんぞ!」

 

「ひゅーー♪冥林私情ダダ漏れーー」

「茶化すな!」

「まあいいんじゃない、ここらでどっちが姉かはっきりさせたら?でも私一人置いてきぼりでも寂しいからさぁ、…そろそろ出て来てくれない?」

階段を見やって登場を促すと、カラ、コロ、と下駄を鳴らしてもう一つの巨きな紫色の気が廊下に膨れ上がった。

 

「おぅ待たせたなぁ。…安心せぇや、退屈はさせへんで」

「あら、今日は一人なのね?あのいつも一緒のわん子ちゃんはどうしたの?」

「凪はまだ在校生やからなぁ?派手な事させられへんからネズミ捕り任したわ。なぁ秋欄、雪連の方はうちでええやろ?」

「任せる」

「楽しみやわぁ、私闘は禁止やったから在校中は一回もやれんかったからしんどかったわ。それにウチとしても理由の無い仕合でもないしな」

霧の吊り上げた口の端から、犬歯が覗く。

「そうなの、貴女は私と闘りたいだけだと思ってたけど」

「…まだ一刃は、月達から引き剥がされたら困るんや。折角皆、漸く落ち着いてきたところやさかい」

 

「精神安定に一刃が必要なのは貴女もなんじゃない?」

「…さぁなあ?まあごちゃごちゃ言わんととっととやろかい?」

だらりと腕を下げたまま、前に出る霧。

 

「得意の弓は要らないのか?私が将軍を辞して軍師になるのはうちの人材事情でな。素手同士は結構嫌いじゃない方だ」

「弓など無くとも素人の貴様一人程度造作も無い。何しろ私には愛する姉と『弟』が、力を分けてくれるのでな」

「…貴様、絶対に許さん」

拳を構える二人。

外はいつの間にか、夕立になっていた。

 

霧の咆哮と共に繰り出される拳を蹴りで弾いたのを合図に、四つの拳が交わる。

 

 

 

 

----------------

 

ぼんやりと視界が戻る。

ああ、そうだ。背後から斃されたんだ。

暗い。視覚がおかしくなっているのか、夜か夕方なのか。

頬に何か当たるこれは、雨か。

感覚がいまいち戻らない右頬は自重で出来た水溜りに漬かっているけれど、まだ起きられそうも無い。

 

これは結構まずいかもしれない。

体の感覚が弱まっている所為か良く分からないけれど夕方から夜は結構冷えたはず。

場合によってはこのまま死ぬかも。

しかし体は動かない事にはどうにもならないし、とにかく眠い。

とりあえず、一眠りして目が覚めたら考えよう。何しろ、御嬢様は救い出せたのだから。

ああ、眠い。

生理的欲求に従って、瞳を閉じようとした。

 

「ん?お?…おいあんた、大丈夫か!?」

 

そんな、特徴の無い声が聞こえた。

 

 

 

 

(五巻に続く)

 

 

***************************

 

「うぉおおおおお!!怖っえー!怖っえーよ!!なあ続き、五巻どこだよ五巻!」

「貴様少し静かにしろ、今私が読んでるところだ」

「遅っせーよ早く読め!ってか一緒に読むから初めの頁に戻れよ!」

「陽(太史慈)、貴女ちょっと位待ちなさいよ…まだ時間あるんだから」

「っせーなぁ、今いいとこなんだよ雪蓮」

「伯道(郝昭)も譲ってあげて、少し飲みなさいよ」

「は…ですが御嬢様、獅子は兎を狩るにも全力を尽くすと言います。この猿との決闘前ですので控えておこうかと」

「いいのよ、少し飲んでからやるのがこの決闘法の正式なやり方なのよ、ねえ孫策さん?」

「そうそう。一刀も『陽たちの決闘をどうしても目の前で見たい』って言ってるし(嘘)、貴女も少し飲んでおきなさい」

「そうかよ、まぁいいけどよ…んく…」

「ところで孫策さん、この店の非後宮関係者用の席に行きましょうって言われるからどうしたのかと思ったら、こんな小説置いてるんですね…」

「面白いでしょ、曹真さん!ちょーっと冥琳とかには見せられないけどねぇ」

 

「ところでよォ雪蓮」

「ん?何?」

「この『雪連』ってのと『冥林』って奴、何か俺の知ってる奴の誰かに似てる気がしねえ?」

「御嬢様、私もこの『花琳』という人物はどこかで見た方のような気がするのですが」

「「気のせいよ」」

 

「ふーん…まぁいいや、あと半刻くらいか?一刀様のお時間が空くまで。一刀様の目の前でこのクソ女を殴り飛ばすのが楽しみだぜ、」

「私の方こそ楽しみだ。その下卑た性格をこの鉄拳で矯正してやる、」

 

 

 

 

 

 

 

「「その『野球拳』ってやつでな!!」」



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司馬日記54と、ある日の生協

その後の、とある文官の日記と生協(アダルト)での一幕です。


9月28日

本日は一刀様が各国の総務及び財務担当に金融についての講義を行われた。

先般導入された国債を応用させたものであるらしい『株式』というものも通貨の代わりに流通しているといい、

一刀様御自身は天の国では学生であった為に詳細についてはご存じないとの事であったが、文若様、諸葛亮殿、陸遜殿らが天の国での運用状況について適宜補足され、本国での運用の可能性について論じられた。

現金・現物を用いなくて良い事、借入により事業を行えることは経済を発展させる上で大変な効果がある一方、信用の確保については尚多くの課題があると思われる。

 

9月30日

街道整備に伴い、一刀様はじめ高官の方用の宿泊施設の整備事業費が計上された。

質実なる一刀様より特段華美にする必要はないとの御意見があったが、事業を主管する建設局ではなく詠様より安全確保上必要な規模について説明があり一刀様も御了承された。

 

10月1日

件の街道整備に伴う宿泊施設費が大幅に増額された。

財源は全額が寄付によるもので公費を使用しないものであったので一刀様の決裁は無く、各国王の専決決裁された書類が回ってきた。

寄付者らの公のために私財を惜しまぬ姿勢は見習うべきものかもしれない、私も寄付すべきだろうか。

 

10月4日

黄忠殿から依頼されていた璃々嬢(と恵達(司馬進、六女))の鍛錬と言うか武技の手ほどきを行った。

容姿こそあどけなさを多分に残すものの態度挙措振る舞い等はかなり厳しくしつけているつもりの妹達らと遜色なく、一刀様の御傍に侍る一員として全く恥ずかしくないものであらためて感心した。肝心の武技の方は黄忠殿の言うとおり純粋な膂力不足は否めないものの、理解の早さや形を身体で覚える早さ等には他国の娘ながら末頼もしいものを思わせる。

休憩の折に璃々嬢は武官志望なのですかと聞いたところまだ分からないが何でも一通りは出来るようになりたいと言う。

御母堂は本業は武官ながらも農産、糧食管理等には心得があると聞く。いつだったか詠様はこれからは事務屋の時代と仰ったが、多方面に通暁することも一刀様の御世を安んじる為には重要な事だろう。

 

10月6日

呉の張昭殿より日頃の一刀様のお世話の人数を増やしより手厚く行うようにしてはどうかという提案があった。

詠様が経済性及び既に人員増強済みである事から反対され、張昭殿と折り合いが悪いとされる文若様他数名の方も反対された他月様も難色を示されていたが、一刀様が月様が日頃碌に有給を使われない点を心配され、また部下が有給を取りやすくする意味も込めて短期の休暇を取られる間のみ実施するようにと促された。

 結局総務室は私や詠様等の事務方以外は六日間の休暇を取る事となり、当該期間の一刀様のお世話は各国代表指揮の下比較的勤務年数の浅い者を中心に行うこととなった。

 会議室を出るやいなや詠様は米神に青筋を立てながら「あのクソババァの勝ち誇った顔、恋に殴らしていい?いいわよね?」と子敬(魯粛)に詰め寄っていた。

 

10月9日

一刀様が監修された童話集の草稿が各国事務局に配布された。

どの話も教育的示唆に富み流石は一刀様と思いながら拝見していたが、突然元譲様が草稿を片手に涙と鼻水を流しながら一刀様のお部屋に乗り込んで来られ、目を丸くされた一刀様に

「こんな可哀想な話があるか!」

と泣きながら詰め寄られていた。何の話かと一刀様が聞かれると『マッチ売りの少女』というお話の事であるという。

困惑された一刀様がこの話は削除しようかと言われると無かった事にするなんてもっと可哀想だと更に泣かれ、ではと一刀様がこの少女が救助されて幸せに暮らす物語をお話になると笑顔を見せ、それならいいと洟をすすりながら喜んで帰っていかれた。

 

元譲様が帰られた後、まあ悲しいお話をあえて載せる必要は無かったねぇと一刀様が言われると、元直が

「一刀様。アレの愛紗版、知ってます?」と聞き、一刀様は苦々しげな表情で知ってるとお答えになった。

元直にそれは何かと聞くと、『ついに売るものが無くなった哀れな少女は男に買われて変態の限りを尽くされながらも次第に互いに愛情が芽生えて幸せになりましたっていう歪みない話』だという。

 

…初等部に見せるものでなく個人的な趣味であるならば、まあ必ずしも否定するものではないのだが…。

 

10月11日

月様らの御休暇と各国代表による一刀様のお世話の日に続けて、一日のみ完全に誰のお世話もなく休暇を過ごしたいとの御要望が一刀様より出された。御休暇は兎も角御世話の者無しでは何かと御不便ではと申し上げたが、人として駄目にならないように偶にはと仰られ食料・着替え等は予め御用意させて頂く事を条件に完全休暇をお取り頂く事となった。

御立場に甘えず自立心も強く、流石は一刀様だ。

 

10月13日

昼休み中に一刀様が逢紀と腕相撲をされていた。

いい勝負かと見せて最後はあっさり逢紀が一刀様をねじ伏せ、大人気なく喜んでいたので無礼を窘めたが一刀様が笑って構わないと仰られたので口を噤む事とした。

 

10月15日

久しぶりに子敬、元直と三国一に飲みに行ったところ、例の落書帳が知らぬ間に非常に増えており内容も多岐に渡っていた。その中で「後宮あるある」という章があり、少し読んでみたところ後宮について誤解をしていた者が多く居たと思われる内容であった。

子敬らに後宮の入門書を作ったほうが良いだろうと話してみたが、

「それ自体は良いんだけど仲子ちゃんの常識が皆の常識じゃないわよ?」

「てか、仲子ちゃんあるある作ろうよ」

等と余りまともに取り合ってもらえなかった。

 

折角であったので

『一刀様の事を考えながらでも質と速度を落とさずに仕事が出来る様になった』

と記入すると、二人から化け物を見るような目つきで『この化け物め』と言われた。

 

10月18日

今日が月様ら総務室の一刀様御世話担当の休暇最終日であったが午後の半ばを過ぎた頃、月様の御部屋から出て来られた詠様が血相を変えて一刀様の御自室に駆けて行かれるやすぐさま一刀様を連れて戻って来られ

「月がやばいの、何でもいいから命令して!肩揉めでもお茶入れろでも良いから今直ぐ!」

と言われて一刀様を月様の自室に押し込まれた。

一息つかれた詠様に何があったのかと伺うと遠くを見るような表情をされながら

「まあうん…あんたもたいがいだけど、月も負けず劣らずの病人だからねぇ…。昨日まではまだ誰かしら世話焼いてるからって抑えられてたみたいだけど、今日はあいつ完全一人の予定で御世話出来るのに出来ないって状況で禁断症状が出たみたいなのよ」

と言いながら執務室へ戻られていった。

 

私は特に病気はしておらず健康体なのだが、月様は何か御持病がお有りなのだろうか。

 

10月19日

月様や劉璋殿、逢紀らが休暇明けで出勤してきた。一刀様の御尊顔を拝し皆そこはかとなく嬉しげであったが、とりわけ月様は穏やかな御様子に見えながらも夏の向日葵のような『気』が溢れているように感じた。

これがいつか子敬が言っていた『てんしょん高い』という状態なのだろう。

 

10月21日

昼休憩時に月様と雑談をしていたところ、日記をつけているかというお話になった。

月様は如何かと伺うと業務日誌に一、二文程度を添えていると仰り拝見させて戴いた所、日々の時候の事や一刀様のちょっとした御変化、皆の様子等が簡潔かつ品を感じさせる視点で記述されていた。どことなく心洗われる、品位と温かみを感じますと申し上げると照れられながら『なるべく気持ちが上向くような事柄をちょこっと書いています』との事であった。

私の日記は如何かと聞かれ、日々のよしなし事を止め処なく日も定めず書いておりとてもお見せできる物ではありませんと答えたが、月様はそういったものこそ気分転換に良いと思いますと微笑まれた。

 

しかしパラパラと見返してみれば下らない事であったり己の欲にまみれた下りもあったりとよくよく人には見せられぬものだ。

いま少し品位を持ったものを書くよう心がけたほうが良いだろうか。

 

10月24日

一刀様の執務御休憩中のお茶相手を務めさせて頂いたときに、一刀様は日記は御付けでしょうかと伺ってみた。

中々忙しくて出来ておらず詠様らが業務日誌をつけてくれているのでその日何をしていたかは分かるけれど、不定期であってもつけてみようかと仰られた。

一刀様の御日記ならばきっと三国塾の教科書にも相応しいものになるだろう、いつか皆に手本としてお示し頂ければと思う。

 

10月25日

一刀様が天の国には『はろうぃん』という南瓜や包帯の化け物、骸骨や魔女等妖怪の類の仮装をする若者たちの娯楽があるというお話をされ、めいめいが当該日には仮装をすることとなった。

私はそういった遊び心のある装いは似合わない自覚があったので運営裏方を担当することとしていたが、一刀様より折角なのでなんらかの仮装をするよう御指示を頂いた。どのような衣装としたものか困っていると、先に太史慈殿が展示会で着ていた『ばにーがーる』から更に胸元や尻廻りの布地を減らした蝙蝠女の衣装を御勧め頂いたが余りに不似合いで恥ずかしかった為、黒色のメイド服に詠様らと同様の蝙蝠型の髪飾りとさせて頂くことで御容赦頂いた。

また一刀様が蝙蝠女の衣装が勿体無いと仰ったので、才気美貌共に優れる伯道(郝昭)に着せる事を御勧めし御承諾頂けた。

 

最近一刀様は以前よりも天の国の話をなさるようになったように思う。

…御郷愁を感じさせてはならないと余りこちらからは触れないようにと申し合わせがあったが、もう吹っ切ってらっしゃるのだろうか。

 

 

 

 

 

----------

 

蜀王の桃佳、術の解けた点和らを擁し遂に許昌で魏を破った一刃は魏王花琳と面会する。

 

「そんな事じゃこの国からいくらでも反乱が起きるわ、自慢になるけれど私の部下からの信頼は絶大なものよ。貴方達のやり方に馴染む前に拒否反応が出るのは容易に想像できる、それは貴方の軍師達もきっと同意見なのではないかしら?それを防ぐには即効性のある、心を服従させる方策が必要だと思うのだけれど…その方法を教えてあげましょうか?」

ぬめり気のある、妖しさを帯びた瞳で花琳は一刃を見つめた。

 

話題の最新刊、『恋姫days 六巻 ~魏王の閨略~』遂に発売!

 

【既刊も好評発売中!】

『恋姫days 一巻 ~呉に舞い降りた少年~』

『恋姫days 二巻 ~失われた記憶、流浪の御使い~』

『恋姫days 三巻 ~狂愛の太平要術と桃佳の純心~』

『恋姫days 四巻 ~略奪と謀略~』

『恋姫days 五巻 ~許昌の決戦~』

 

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「お客様ぁー!」

「ひゃあっ!?…なんだ杏(逢紀)じゃない、驚かさないでよ」

「燕(許攸)さん時間外だから読むなとは言わないけど、平積み作業終わってたんなら買って帰って部屋で読んで下さいよ?」

「分かったわよ…ねェ、ところでさ」

「何ですか」

「華琳達って本当にこっ、こんなエロい事してんのかしら!?」

「知りませんよ…大体脚色だけど特徴は捉えてるって聞いた事ありますけどね」

「だ、だってこれ…しゃっ、しゃぶって飲んだりしてるのよ!?」

「気になるならやってみりゃいいじゃないですか!(最中の顔が可愛くて私だって嫌いじゃないです)」

「桂花や稟とかに見せ付けた上に、桂花なんか殆ど強姦よ!?」

「御本人中出し固めキメてらっしゃるし噂どおりの和姦で平常運転じゃないですか?」

「春蘭なんかし、尻尾と耳着けられてわんわんって言わされてるし!」

「あっそこはさすがに私もちょっと」

「やっぱり貴女も!?ドキドキするって言うか、興奮するわよねっ」

「えっ?」

「えっ?」



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司馬日記外伝 酒楼「三国一」の落書帳8

いつも皆様の御笑覧、コメント有難う御座います。
本編に出てきました落書き帳です。


・後宮あるあるを語る章

 

1:後宮の名無しさん

名簿見て

このうち夜のお相手してるのはせいぜい4、5人なんだろうなと思っていた

 

2:後宮の名無しさん

朝目が覚めたら既に一刀様は出勤済み

 

3:後宮の名無しさん

初対面から二回目で

容姿で判断して月様を月ちゃんって呼んだ

 

にこにこして挨拶してくれたけど今思えば恐ろしい事したなと思う

 

4:後宮の名無しさん

一刀様の記憶力にびびる

自分どれだけ愛されてるのかと正直勘違いした

 

…いや、愛されてないわけじゃないけど

自分だけじゃなかったのかぁと

 

5:後宮の名無しさん

寝不足のにやけ顔で出勤してきた同僚にイラつく

 

6:後宮の名無しさん

女体の神秘を知る

 

7:後宮の名無しさん

人事部が堂々と勤務評定を夜の当番に反映するようになる

つまり仕事しろってことか

 

8:後宮の名無しさん

役職の上下関係が後宮での上下関係と一致していない事を知る

 

9:後宮の名無しさん

優しそうな人ほど怖くて怖そうな人ほどちょろい人だという事に気づく

 

10:後宮の名無しさん

閨房が政治に持ち込まれる

 

11:後宮の名無しさん

色んな意味で一刀様が化け物だと気づく

でも愛してる

 

12:後宮の名無しさん

開発されるという言葉の意味を知る

 

13:後宮の名無しさん

自分が変態だと知る

 

14:後宮の名無しさん

>13

比較対象に凄過ぎる人達がいたので自分はそれほどでもなかったと安心する

 

15:後宮の名無しさん

人気の無い場所が無性にエロく見えるようになる

 

16:後宮の名無しさん

致してる現場に出くわしそうになって焦る

 

17:後宮の名無しさん

16>

あるあるw

 

18:後宮の名無しさん

会議中の静かな修羅場が見えて辛くなる

 

19:後宮の名無しさん

可愛くて優秀な新人を見ると

『どうせすぐ一刀様にブチ込まれてアンアン言うんでしょ』

と思ってしまう

 

20:後宮の名無しさん

19>

わかる

 

小柄な後輩とか

こんな可愛い娘なのにヤりまくってるんだ…とか思っちゃって顔見れなくなる

 

21:後宮の名無しさん

色々分かってくるに連れて一刀様の胃が心配になる

 

22:後宮の名無しさん

妹と一緒に御伽して

家に帰って冷静になると妹と微妙な空気になる

 

23:後宮の名無しさん

『今夜は寝かせませんよ?』って言った自分が寝かしつけられる

 

24:後宮の名無しさん

三人がかりで『今夜は寝かせませんよ?』って言った自分達が寝かしつけられる

 

25:後宮の名無しさん

24>

一刀様さすが過ぎるw

 

26:後宮の名無しさん

変態的にエロい夢を見るようになる

 

27:後宮の名無しさん

26>

あるある!

 

28:後宮の名無しさん

処女と非処女の見分けがつくようになる

 

29:後宮の名無しさん

自室外でするときの準備がよくなる

手拭い櫛手鏡下着水筒御握り敷物完璧

 

30:後宮の名無しさん

新手のプレイを考えついたと思ったら既に誰かに実践されていた

人のこと言えないけど変態多すぎ

 

31:後宮の名無しさん

風呂の広さに感動する

 

32:後宮の名無しさん

31>

と同時に掃除当番のキツさに衝撃を受ける

 

33:後宮の名無しさん

大体出尽くしたかな

 

34:華蝶仮面

最近の魏や呉の娘に愛紗の実態を説明しても信じてもらえない

 

35:西涼娘

そりゃあ…なぁ…

 

36:野に咲く一輪の花

なんでお姉様だけ専用のお風呂があるのか聞かれる

 

37:後宮の名無しさん

これって蜀の馬超さんのことだよね?

そう言えばなんでなの

 

38:35

知らなくていい

 

39:鳳雛

お風呂で言えば

最近の若い娘たちのおっぱい見て絶望する

 

絶望する

 

40:臥竜

鈴々ちゃんや流琉ちゃん達の成長を見ても絶望する

 

41:女中

そんなに気になりませんけど…

39>ちゃんも40>ちゃんも愛されていると思いますよ

 

42:当局

まあ、うん…そうね…でもその辺にしておいてあげて

 

43:黄金の右足

誰とは言わないのですが部屋の前を通ると酒臭いのです

 

44:可愛くなりたい

御館様が来られる日だけは綺麗に掃除されているんだがな…

 

45:酔の一字

轟天砲の試射をするから焔耶は後で儂の部屋まで来い

 

46:44

えええええ!?

的はもう嫌です!

 

47:地公将軍

話し戻るけど

公演遠征から帰ってくるたびに改修されてる

まあ文句は無いんだけど

 

48:発明将軍

最近の改修で言えば

あんさんらの為の防音室の技術が全後宮の各個室に適用されたで

 

49:桂

そう言えば最近は脳筋のやかましいアヘ声が聞こえなくなったわね

いい事だわ

 

50:しょう蘭

わ、私の声は大きかったのか!?

 

51:姉者の妹

いや、大きいくらいの方が一刀も喜ぶだろう

びくんびくん震えて涙流しながら『しゅきぃーっ!一刀っ、しゅきぃーっ!!』って叫びながらしがみ付いている姉者はとても可愛い

 

52:弓腰姫

…さすがこの姉にしてこの妹ありね

 

53:宝慧

52>おっと姉ちゃん自分の事はそこまでだ

ついでに49>もあんな甘ったるい『やめなさいよぉ』だの『絶対駄目なんだからぁ』とか隣に響かせといて他人の事を言うもんじゃないぜ

 

54:49

そんな甘ったるい声なんて出してないわよ!

 

55:桐

すみません変態な伯母で

 

56:49

あんたが言うんじゃないわよ!

 

57:当局

お互いたいがいなんだからそれは家でやって

それよか璃々ちゃんが後宮入りするまでは美羽が後宮入りしてるか聞かれる事が多かったわね

 

…主に初等部の母親達から

 

58:後宮の名無のさん

してるに決まってるじゃないですか

清純そうな顔して夜にはきっちりヤることやってて

最近のお気に入りの体位は種付けプレスと鏡の前での背面座位で

具がはみだしてるぱんつ買ったり

密かに買ってみたエロ小説見て後ろでするのも一刀さん好きなのか気になったから風呂場で自分の指入れてみたけど怖くなって止めたり

その小説に影響されて自分で一刀さんと自分が主人公のひたすらやるだけ小説を書きかけて寝台の下に隠してたり

三人で始めてちょっと焦らされただけで自分でくぱぁして卑猥なおねだりしたり

三週間位ご無沙汰だと若い体持て余して自室から窓越しに野外演習を観覧してる一刀さん見ながら一人でパンツの上から始めちゃったり

すっかり身も心も調教されきってる御嬢様を捕まえて、

まだ後宮入りしてないんじゃないかなんて何考えてるんでしょうねぇ

 

59:蜂蜜

やーーーーーーーーーめーーーーーーーーーーてぇーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!

 

60:白馬将軍

相変わらず歪ない…

にしても凄いな

 

61:ぶんぶん

ちょっと前までうははーとか言ってたのが信じらんないよな

 

62:59

嘘!全部嘘だから!!!!

 

63:後宮の名無のさん

『○羽の奥深くまで突き入れると、一刀は低く呻いた。媚薬に侵されながらも○羽を気遣って理性を保とうとする一刀に「大丈夫だから…薬が抜けるまで、私の体を使って」と囁き、きゅっと中を締め付ける。「いいのか…壊しちゃうかもしれない」「いいの。壊して!」苦しげな表情で問う一刀に慈母の様な表情で答えて腰に足を絡めると、一刀は猛然と腰を』

 

64:蜂蜜

う、うわぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!!!!!

 

65:偃月刀

このようなところで御主人様の性癖をばらされては困る

困ったものだ、全く困ったものだ

 

66:華蝶仮面

何を言い出したのか一瞬分からなかったぞ(笑)

関○ではない、座ってろ

 

67:片眼鏡

…身近な友人が普通の人で良かったな、って…

なんでもないですごめんなさいごめんなさい

 

68:ぶんぶん

さすがアニキが天使って言うだけあるよな

 

69:桃☆

私知ってるよ、呉下の阿蒙に非ずの子だよね!

可愛いよね!

 

70:次女

…目つきが出会った頃の呉下の阿蒙に非ず、よね

可愛くなって羨ましいわ…はぁ…

 

71:呉の総務担当

元々は私が言い出したんですけど

 

今となっては

舌使いが呉下の阿蒙に非ず

 

72:弓腰姫

腰の振り方が呉下の阿蒙に非ず

 

73:お猫様もっふもふ(一刀様専属泡姫筆頭)

恥じらいながらのたくし上げ方が呉下の阿蒙に非ず

 

74:67

あ、あうううう~…

 

75:白馬長史

呉、恐いな…

 

76:元ヤン

67>

気にすんなよ

褒められてるって事だと思うけどな

俺も早く67>みたいに上手になりたいぜ

 

77:元小覇王

貴女はそっちじゃなくて春蘭に対抗出来る呉の最終兵器として頑張って貰わないと

 

78:元覇王様の姪

いえいえその役はうちの泉(郝昭)が承りますわ

仲達は残念ながらアレですが泉の方は才能あると思いますので

 

79:元小覇王

そうね

こないだの野球拳は中々楽し…接戦だったものね

脱いだもの一刀に渡す決まりにしたらいきなりブラから渡すあたり中々だわ

 

80:元覇王様の姪

太史慈さんこそぱんつから渡すとは流石ですよね

見えないからって理由だけで悩まずそこからくるとは敬服しました

 

81:元ヤン

雪ーーーーー蓮!!あん時の話をこんなとこでするんじゃねえ!!!!

 

82:元小覇王

いーえー

全部ひん剥かれて『…もう脱ぐもの隠してないか、一刀に確認して貰うべきじゃないの?』って言ったら

自発的に『か…一刀様…っ、もう脱ぐものが御座いません…ご、御検分下さい…』って涙目で指くぱぁ出来る様になった所は褒めてやりたいとは思いますけれどねぇ

おほほほほほほ

 

83:元覇王様の姪

こちらも

『一刀様に確認頂くのは前だけじゃないでしょう?』と煽ったら

ちゃんとお尻も出して両くぱぁするところまでは躾けておけて良かったですわぁ

おほほほほほほ

 

84:元陳倉の田舎女

御嬢様ぁあぁあぁぁぁぁぁぁ!?

 

85:野に咲く一輪の花

…仲良いね

四人とも『元』で揃えて

 

御姉様も負けてられないよ

 

86:発明王

うちらも負けてられへんで

 

87:阿蘇阿蘇読モ

そうなの!

 

88:辛党

ちょ、ちょっと待て!?

 

89:86

首輪だけでは飽き足りなくなった88>氏は、警備隊副隊長の身でありながらなんと…

 

90:88

わーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?

 

91:87

などと供述しておりー♪

 

92:当局

あんたたちホント身内いじるの好きね…

そろそろこの章締めるんで話戻すけど

 

後生(色んな意味で)畏るべしって思わされる

 

93:仲子

ところで

私がアレとは一体…



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司馬日記外伝 『嘘発見器』

お久しぶりで御座います。実は生きていました…

ここ数か月書けない環境だったのですがまた戻って参りまして、遅筆にも程がありますがちまちま書いて行きたいなと思っております。


「たーいちょっ」

「あー、らっしゃい」

ノック無しでガチャリと執務室のドアが開けられると、脇に鞄大の袋を抱えた真桜が飛び込んできた。

 

俺の執務室を訪れる人は半分位がノック無し、半分位がノックをして入ってくる。

そして大概前者は帰る時に扉を閉めないし、後者は閉めて帰る。俺自身は『開かれた執務室』ってやつ?の方がいいかなと思っているので特別な会議でない限りは開けっ放していいと言っているけれど後者の人たちにとってはそういうものではないらしい。

尚鍵は一応ついている、っていうか最近つけられた。理由は所謂諸般の事情ってやつだが、直接的には穏との真っ最中にうっかり踏み込んでしまった蓮華がその時の警備担当の明命に八つ当たり気味にしっかり警備するよう注意したところ

「申し訳ありません蓮華さま!『ヤるなら自分で気をつけろ』等と考えず、今後は扉を開けられないようしっかり中から警備致します!」

と軽く米神に血管を浮かべながら答えた為かもしれないしそうではないかも知れない。

 

「例のやつでけたで!」

「…えーっと、こないだの飲みの時言ってたやつ?」

「そや。じゃーん」

そう言いながら真桜が抱えた袋から出したのはグラフレコーダーらしきものとコードがついた布製っぽい腕輪だった。

「すごいな」

「そうかいな、他のもんよっか大分簡単やったで?『嘘発見器』」

「流石真桜えもん…ところであん時俺、嘘発見器って言ったけどさ」

「わーっとるって、単純に血圧と脈拍の変化を記録出来るだけや。ガチで嘘が分かるような装置はウチかてほいほい思いつかんわ」

 

だからと言ってそれでさえ早々作れるもんじゃないと思うが。

「早速試してみていい?」

「んー、せやけど…」

真桜と目が合うと、その微妙に口元を釣り上げた微笑はおおよそ俺と同じ事を考えてるっぽかった。

「まあ折角やから、おもろ…試験に適した人材を呼んであるんや」

そう言いながら部屋の入り口を振り返ると、酒瓶とげっそりとした表情の凪を両脇に抱えながら『御注文の凪、持って来たでー!』と満面の笑みでのたまう霞が居た。

 

 

 

 

------------

 

「…そんなわけでまぁ、これは冷静さを保てているかを測定する機械なわけ。で、これからいくつか質問するから動揺せずに答えられればOKってこと」

「真桜が作ったというのが些か気がかりですが、隊長がそうおっしゃるのでしたら…」

「うん、頼む。俺の凪ならきっと冷静なところを見せてくれると信じてる」

「は、はい!頑張ります!」

手を握るとほんのり頬を染め、顔を上げて答えてくれる凪。

真桜から説明すると怪しむだろうと考えて俺から説明したけど、真桜から質問リストを受け取った霞のあの口の端の釣りあがり具合を見ると一抹の不安がよぎる…って言うかもう凪に謝りたくなってきた。

 

「そんじゃあウチから質問するな。精神力を試すもんやから答えは真実の如何に関わらず『いいえ』で答えるんやで」

「はい」

椅子に腰掛け、手首に嘘発見器の腕輪を巻いた凪を三人が囲む。レコーダーの針はカチ、コチと安定して直線を刻んでいる。

 

「庁内での現在の待遇に不満がある」

「いいえ」

「信頼できる友人が居ない」

「いいえ」

「職務に飽きている」

「いいえ」

「実は呉・蜀の間諜である」

「いいえ」

「自分の体に不満がある」

「…いいえ!」

 

答えながらキラキラした瞳で見つめてくる凪に軽く頷く。いつか体の傷がコンプレックスだと言っていた凪に、肉体(と)言語で否定した事を思い出す。真桜も霞もそれを承知で設定した質問なんだろう。

「新参が優遇されていて不満に思うことがある」

「いいえ」

「一刀に嘘をついたことがある」

「いいえ」

「上司に不満がある」

「…いいえ」

 

答えに一瞬の間があった直後、レコーダーの針がぴくりと反応したのを見て霞がわずかに顔をしかめた。

「ここまで見事やで凪、しかし試練はこれからや。あんじょう答えや」

「はい」

エホン、とひとつ咳払いをすると霞の表情が無駄に引き締まった。あの表情見たことある、主に雪蓮とかで。

 

 

 

「最近、生協で通販したものがある」

「…?…えっ?」

凪は一瞬怪訝な表情を浮かべた後、見ててかわいそうな位赤くなって表情を引きつらせた。

「い…、いいえ…」

カチッ。コチッ。

レコーダーの針が大きく右へ振れる。

 

「それは犬ミミである」

「いっ、いいえ!」

無情な針は反対側へ大きく振れる。…うん、こないだつけてたアレね。

「首輪と一緒に装備してお腹を撫でて貰うのが最近のお気に入りだ」

「いいえっ!?」

答えながら隊長喋っちゃったんですか!?と凪が目で聞いてくるのに俺じゃない、と首を振るジェスチャーで答える。

多分凪の友達か、天井裏の猫好きな警備員のどっちかで間違いないだろう。

「正直、恋に差をつけたかった」

「いいえ!」

「一刀にわんわん言わされながら後ろからされて気持ち良かった」

「いい…………はいっ!とても良かったですっ!またして頂きたいですっ!」

「正直だな!?」

「隊長の事で嘘はつけませんっ!」

茹蛸のように赤くなりながら、自棄のように俺の突っ込みに答える凪が馬鹿正直カワイイ。

 

「これで質問は全部や。動揺するとはまだまだやな、凪。もっともっとわんこ道を極めんと恋は超えられへんで?」

「はいっ!精進しますっ!」

凪は自棄のようにきびきびと返事をすると逃げるように部屋を出て行ってしまい、霞もおもろかったわまたなんかあったら呼んでやと言って帰っていった。

 

 

 

-----------------

 

「わんこ道ってなんやねん」

「俺も知らないがなんとなく分かる。ってかホント凪には容赦ないな」

「親愛の証やから。まあええわ、次の組がそろそろ来るで」

「まだ来るのか」

真桜と雑談をしていると、ノックと共に一刀さぁん、いらっしゃいますぅ?と間延びした声が聞こえた。

 

「これはありそうで意外と珍しい取り合わせだねぇ」

「はわわ、こんにちわ。これが件の嘘発見器ですか?」

「あわわ、凄いよ朱里ちゃん!」

来たのは隠、朱里、雛里。

「軍師級を呼んだんやけどなぁ、うち(魏)の連中がまだ誰も来ぃへんのや」

「そっか、まあ後から来るならいいだろ。さしあたり誰からやってみるか…」

考えるが、朱里雛里は仕事中はともかくプライベートは凄くメンタル弱い。

 

「だからって私ですかぁ~?」

私も朱里さん達に聞いてみたい事もあるんですけどぉ、と腕にセンサを巻かれて被告席(?)に座らされた穏は多少不満気だ。

穏は少なくとも以前は朱里達を少し上に見ている節があったので、実際勉強の為に色々聞いてみたかったのかも知れないがまあ順番って事でと言って納得してもらった。

 

「じゃあ御二方、穏さんを動揺させるような質問してみてや。穏さんもやっぱ政治家なんやから動揺しない訓練やと思ったって」

「そうですねぇ…うーん…では、先日設定した呉の海産物と蜀の鉱物の取引単価の設定は有利に設定できたと思っている」

「いいえ~」

「三国塾の地方推薦枠の割り振りに不満がある」

「い~えぇ」

「魏・蜀への水軍指導協力費が少なすぎると思う」

「いいえぇ」

「蜀から張松さん、法正さんを引き抜きたかった」

「いいえー」

「はわわ…難しいですね」

「うん…私達、これが日常だからね」

特に動揺する様子のない穏に二人で顎に手をやり思案顔を浮かべていたが、ふとレコーダーの挙動がおかしいことに気づいた。

 

「あれ…なんか、針の動きおかしくない?」

「あ?ほんまや」

針が不規則に脈動しながら左右に揺れているが、穏の様子は至って平静だ。

「あ…それや、穏さん腕、腕」

「はい~?…あ」

真桜が指差す方向を見ると、センサの腕輪に穏の巨大な胸が乗せられていた。これのせいで胸と手首を両方感知して誤作動していたようだ。

「すみません~、ついクセでぇ…あ」

 

 

「「ついクセで?」」

 

 

 

祭もそうだけど、胸が大きい人はよく胸の下で腕を組んでいる。机があると腕を机に乗せてその上に胸を乗せている。

うん、まあわかるんだけど朱里達の瞳から光が消えてるんだよね。穏、ちょっと気づくの遅かったかなぁ。

「………私質問思いついたよ、雛里ちゃん」

「偶然だね、私もだよ」

「あ、あのぉ~、お手柔らかにお願いしますねぇ~?」

 

 

「貧乳は女じゃないと思っている」

「へぇっ?い、いいえ~」

「後輩も同僚も助けてくれないので正直辞めたい」

「いいえー!?」

「とりあえず挟んでしゃぶればいいと思っている」

「いぃえぇ!」

「張昭さんが嫌いだ。相手するの疲れたので辞めたい」

「いいえ!」

「小蓮ちゃんがわがまま過ぎる。ちょっと胸が大きくなってきたからって生意気だ」

「いーえっ!」

「蓮華さんも御主人様の事ばっかりで助けてくれない。もう辞めたい」

「貧乳ツンデレ変態ドMが武の頭だと思うと正直恥ずかしい」

「ババァは黙ってろと思う」

「誰が姉だとかどうでもいいから仕事して欲しい」

「あのぅっ、なんか急に質問がキツ過ぎるんですけどぉ!?」

「その位にしようか!な、朱里、雛里!」

やばい単語が出始めたので慌てて止める。むしろ朱里達がどこからともなく飛んでくる矢に射抜かれないように。

 

「じゃ次交代、交代!次穏が質問する番な!」

「い、いぃえぇ~、ちょっと仕事立て込んでるのでこれで失礼しますぅ~!」

逃げるように走り去ろうとする穏の、一歩ごとにゆっさゆっさと揺れるお胸に注がれる殺意の篭った雛里達の視線は見なかったことする俺は大人。

 

「(このへんウチとしてもあんま居心地ようないんやけどな)」

「(あえて煽らなけりゃ大丈夫じゃないか?)」

真桜と目線で会話をし、話題を逸らそうという無言のサインに従って行動する。

「ところで魏の娘来ないね?」

「そやなぁ、どしたんやろ…あ、仲達はん」

部屋の入口を見ると、仲達さんが浮かない顔をして立っていた。

 

「今しがた、慌てた様子で陸遜殿が出てこられたのですが何かおありだったのでしょうか」

「いや何でもない。仲達さん、真桜に呼ばれて来たの?」

「いえ、李典殿の依頼で仲謀様、文若様、稟様らをお呼びに行ったのですが、李典殿の御依頼でと言うと皆一様にお断りになられたのでその報告に参りました」

「あちゃー」

隣で額に手を当てる真桜を横目に、流石魏の皆は経験に良く学んでるなと喉まで出かかったのをぐっと飲み込む。

さてどうしたもんか。じゃあ仲達さんさぁと言いかけ、はたとこの取り合わせはまずかったんじゃないかと気づいて言葉を止めたが時すでに遅し。

朱里と雛里の表情は完全に凍り付いている。

 

「はい。何でしょうか、一刀様」

「あ、いや…」

「?えっとなぁ仲達はん、この機械な、これこれ斯様でこうやねん。ほんなわけで、折角やから蜀の二枚看板の動揺するような質問してみ?」

「はあ…」

答えながら、仲達さんはきっとちらりと雛里達の方を見たつもりなんだろう。しかし見られた側は『ギンッ!!』とした眼光で睨みつけられたと感じているのが手に取るようにわかる。具体的には二人が掴んでる俺の服の震え具合から。

 

「(なあ真桜、これやばい)」

「(?なんでや)」

「(いいから。相性みたいなもん、切り上げよう)」

少し困った様子で俺を見る仲達さんは二人との官位差から僭越だと思っているらしい。俺の判断を待っているようだったので俺の方から止めてあげた方がいいだろう。

 

「ああごめん、やっぱ仲達さん無理しなくていいよ。それより、お茶でも淹れてくれる?」

「はい、承知致しました」

仲達さんが給湯室へ向かう為背を向けると、両脇で俺の服を掴む力が抜けるのがはっきりと感じられる。仲達さんが出て行ったら、この二人はすぐに帰そう。そんな俺の優しさはわりと意味が無かった。

 

「失礼致します、書類を取りに参りました…や、これは仲達様」

「ん、張任か」

「「」」

 

アカン。この取り合わせだけはマジあかん。

「どうされたのですか、仲達様」

「一刀様がお茶を御所望だ。給湯室へ行ってくる」

「ああ、そのような些事は私がやりますので、仲達様は一刀様の御側へ…む、この絡繰りは何でしょうか?」

「それは李典殿の発明された斯く斯く云々だ」

「あ、そや張任はん、仲達はんの代わりにこの二人に質問してんか?」

「「」」

 

やっちまった。この二人にですか、と言いながらちらりと見たようで実は睨んでいた。はっきりぎっちり殺意を持って睨んでいた。

「そうですか、この二人には是非問い質したい事がありました。…申し訳ありませんが、御無礼も考えられますので旦那様は席をお外し頂けますでしょうか」

「ちょっと待とうか晶(張任)!」

質問するのに何故晶(張任)が刀の鯉口を切る必要があるのかは敢えて突っ込まない。

「いえ、旦那様の御名誉の為でも御座いますので」

「いやいやいやいや」

二人との間に体を割り込ませ、晶の腰を抱きよせて密着する。

 

「これまだ試作品の精密機械なんだ、真桜はああ言ったけど爆発するかもしれないからまたにしてくれるかな?それよか俺お茶が欲しいな、仲達さんが点てて晶が淹れたお茶が。仲達さんを手伝って来てくれる?」

「…は。旦那様の御命ならば」

顔を寄せておでコツンしながらお願いすると、頬を染めて給湯室へと向かってくれた。

 

その後ろ姿を見送ってさあ今のうちに、と背後の雛里と朱里を振り向くと、二人は俺の服の裾を掴んだまま泡を吹きながら白目を剥いていた。

 

 

 

------------------

 

「…とりあえず二人を蜀の救護室に寝かせて来た」

「あの二人なんか張任さんに弱みでも握られとるん?」

「うん、割と公然の秘密的な弱みを」

「ほーか、やおい好きやったら今更過ぎるからなんやろな?それよか爆発するって何やねん隊長、そないなことなってへんやろ最近は」

「言葉のあやって事で勘弁してくれ。さてどうしようか?」

晶(張任)は書類を持って出て行ってしまったので、部屋には部屋の隅で佇立している仲達さんと俺と真桜だけだ。

 

「(そや、折角やから感度調整するで)」

「(感度調整?)」

「なぁ仲達はん、隊長が仲達さんにも試験して貰いたいゆうてんねん、ちょっと付き合ってんか?」

「…一刀様の御指示でしたら致しますが」

「んー…うん、ちょっとだけやってみてくれる?」

真桜の目配せに乗って、仲達さんにお願いしてセンサをつけてもらう。

けどこれ、結果は大体見えてると思うんだが?この完璧ポンコツ両極端お姉さんは普通の質問には定規で引いた線のように無反応で、俺のことが絡むと途端にびよびよびよっと動揺してくれる人だってのは真桜も知ってる筈だ。

 

「それじゃ腕輪もつけたし、準備良しやな。仲達はんは目ェ瞑ってや?」

「はい」

「(たいちょ、手)」

「(?まあいいけど)」

仲達さんが目を閉じると、真桜が仲達さんの手を握れとジェスチャーで示すのに従って右手を握る。

「あ…」

瞬間、仲達さんの体がピクンと震えて頬に赤みがさす。

それとほぼ同時に、机の方からぺきょっ、と言う金属音が聞こえた。…ぺきょ?

 

「こ…この姉ちゃんっ、針振り切ってへし折りよった!」

悲鳴をあげた真桜の視線の先で、レコーダの針が壁にぶち当たって綺麗に折れていた。

 

「予備の針用意しといて良かったわぁ…。仲達はんの振れ幅を最大値に設定して感度調整しよ思ただけやのに」

「安全装置とかついてなかったの?」

「勿論ついとって壊れんようにしとるがな!どうなっとんのやあの姉ちゃんの神経、隊長愛され過ぎにも程があるわ」

困惑し謝罪する仲達さんに、真桜が科学者としてのウチの読みの甘さやと潔く負け(?)を認めて業務に戻ってもらった。

しかし、集めたメンツはこれで大体打ち止めか?(魏の軍師連中は置いといて)

そろそろお開きかな、と思ったところで真桜のよっしゃ直ったという声に扉が開かれる音が重なった。

 

「ご主人様いるー?法律の決裁をねぇ…あ、真桜ちゃんこんにちは!それなあに?」

「あー、桃香さま…に、華琳さま、蓮華さままで。こりゃおもろ…ええところへ」

「取り込み中だったかしら?」

「いえ構いまへんで、例の嘘発見器の試作機が完成しましてん」

桃香は興味津々ですぐ傍までやって来たが、蓮華は部屋の入口で後ずさった。

 

「ねえ、それ…爆発したりしない?」

「しませんわ!」

「蓮華、今回は大丈夫そうよ」

「どうして分かるの?」

「何て言うか…雰囲気で分かるのよ、慣れてくると。あ、これ駄目だわとか」

「華琳さま、ひどっ!」

真桜がむくれるが正直分かる。真桜が自信満々な時、可動部が多い時、モノが大きい時はだいたい危険だ。

 

「ねえねえこの腕輪をつければ分かるの?誰かやってみようよ!」

桃香が明らかにやってみたそうにしているが、んーと少し考えて真桜とアイコンタクトをする。

(桃香だとものすごくあっさり針が振れると思う)

(ものすごく当たり前な結果が出そうやな。蓮華さまならどや)

(なんとなくどう転んでも蓮華が凹みそうな未来が見える)

「(了解)…せやったら、まず華琳さま着けてみてもらえまへんか?冷静沈着な華琳さまやったら試験には最適ですわ」

「私?…まあ、いいけれど」

「うん!じゃあ私たちが華琳さんが動揺するような質問するんだね、頑張っちゃうよ!?ね、蓮華さん」

「え、ええ、そうね…」

「貴女達に出来るかしらね、ふふっ」

華琳は余裕綽々だ、この二人相手に華琳ならまあ結果は推して知るべしだろう。

 

 

 

「それじゃ準備完了だね。じゃあ、第一問っ」

「やっほー♪一刀いるぅ?…あら蓮華達も。何してるの?」

 

 

 

「急用を思い出したわ、悪いけどこれで失礼するわね」

雪蓮の顔を見た瞬間に無表情になり速攻でセンサを外す華琳。うん、この後の展開超読めるから仕方ないね。

「あ、雪蓮姉様…実は斯く斯く云々で」

「あら面白そうねぇ折角だからやっていきましょうよ華琳ちゃん、華琳ちゃーん?しぇれん、かりんちゃんと遊びたーいぃー」

「五月蠅いわね忙しいのよ私は忙しい忙しいああ忙しい」

すたすたと部屋を出ていく華琳をニヤニヤしながら追うように雪蓮も出て行ってしまった。

 

ぽかーんと見送る桃香とは対照的に、最近あの二人仲良いのよね、と羨まし気に蓮華は呟いた。

俺には雪蓮が華琳を煽ってるようにしか見えなかったが、事実を教えて蓮華を汚す気はさらさらない。

と言うか最近ネガり方が異常な事があるのは気にはなってはいたのでもう少し蓮華に構おうと心に決める。

 

「えーっと…じゃあ折角だから私つけるねっ?」

「え、ええ、そうね」

「私だってなんだかんだで王様長いんだからね、どんな質問だってどんとこいだよ!」

ムフーンとドヤ顔キメてセンサを巻いた桃香を取り囲むのは蓮華、真桜と俺の三人。

 

 

 

…と、部屋の入り口から背を向けて座っていた桃香は思っていたんだと思う、実際ついさっきまではその通りだったんだが。今はヤバい笑顔の軍神が無言で足音を消して部屋に入ってきたのを見て三人ともが全てを愛紗に任せよう、とアイコンタクトで意思統一し蓮華は余り油を売っていては穏に怒られるわと言ってそそくさと逃げ、もとい帰っていった。

 

 

 

「それでは質問します」

「ひゃ!?この声、あ、愛紗ちゃん?」

「いいえ桃香様の一介の部下ですがそんな事はどうでもいいです」

そういいながら背後からがしっと桃香の両肩を掴む蜀の軍神様(仕事モード)。まあ軽く掴んだだけでも桃香の力で振り切れる事も無いんだが。

「第一問です、『今日の昼迄に決裁してくださいね』とお願いしていた書類は全て決裁して頂けましたね?」

「い…いいえ…」

「庁内書式統合部会にもつまんないから等という理由で部会長の桃香様が欠席したりしませんでしたね?」

「い、いいぇ~…」

「三時から蜀の予算編成会議もサボろうとか考えてませんでしたか?」

「あれそれ今日だっけ!?あ、ううん勿論覚えてたよいいえ!」

「では四時からの会議もすっかり忘れて流琉や月とお菓子作りの約束等していませんね!?」

「あ、あうぅ…」

「おまけに折角明日は二人の番ですから、お揃いの首輪と手枷足枷を持って行きましょうねって約束したのに封も開けずに箪笥の奥にしまいっぱなしだったりしてませんよねっ!?」

「そんな約束はしてないよ!?」

「問答無用、さあきりきり仕事に戻りますよ!月と流琉とのお菓子作りは幸い時間が空いているので代わりに私が行っておきますね」

「それはちょっと待とうか愛紗」

 

 

桃香の首根っこを掴んで引きずっていく愛紗を説得(軽く二揉み)してBC兵器製造祭りはなんとか回避したが、『では明日は…(激しいのを)期待していますよ』と頬を染めながらハードルを上げられた。とりあえず桃香を縛ったりするのはかわいそうだから『洗脳プレイ』ってことにして愛紗を緊縛放置して桃香といちゃつけばいいかと算段を巡らす。

 

 

愛紗がぱたん、と扉を閉めるのを見送って残った真桜と顔を見合わして会議机の席に腰を下ろす。

「まあ今日はこんなもんか?基本、ちゃんと動作はしてるみたいだし。ほんと凄いよな、真桜は」

「そやろ?もっと褒めたってええんやで」

「よっ真桜様仏様、21世紀を作れる唯一のいい女」

「へっへー」

にいっと笑うと、はぁーっと大きく息をついた表情が妙に色っぽい。

 

「でも折角やから、他のセンサも試しとかんとな」

言いながら、膝の上に向き合う形で座って抱き着いてきた。んーっ、とひとしきり抱きしめられた後、俺の手を掴んでその水着様のブラの下に導く。

「んっ…な、隊長の右手センサ。うちドキドキしとるの、分かる?」

「分かるよ。ほら俺のだって」

抱きしめる右手を解き、同じように俺の左胸に添わさせる。

「…分かるけど、うちのよかゆっくりやで。うち隊長に発明褒めてもらうんホンマ嬉しいんや、ビンビン来とんねん」

「知ってる」

真桜に自覚があるかは分からないが、発明の報告を受ける時は必ず二人きりだ。そして成功を確認出来た時は工場だろうが屋外だろうが大体してる。もっと強うしたってええんやで、という吐息交じりの囁きに蠢かせた右手に少し力を込めながら唇を合わせた。

 

息が苦しくなるほどに絡めた舌を漸く離すと、微笑を浮かべながらガチャガチャと器用にベルトを外していく。

「なあ、うちのこと好き?」

「好きだよ」

「ほんま?」

「ほんまほんま」

「なら、『うちの』噓発見器で検査したるから…覚悟して、やぁっ…んぅ…」

一度腰を浮かせてから、ゆっくりと沈めながらとろけていく彼女の表情が愛おしい。

 

よしこの可愛過ぎる発見器壊そう。

そう思いながら、真桜のお尻を引き寄せた。



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司馬日記外伝 三国塾からの報告書

とある三国塾から届いた報告書です。


【御報告】三国塾 初等部向け出張授業の御礼等につきまして

 

総務部総務室 賈文和 室長様

三国塾初等部 部長代理 崔州平

 

 平素は当塾の事業に格別の御高配を賜りまして誠に有難う御座います。

 また表記の件につきまして各国より著名な方々の御来校、御指導を賜り職員塾生一同深く感謝致しております。つきましては簡単にでは御座いますが御授業の様子の御報告と、併せて多少の御願い事をさせて頂きたく存じます。

 

 呉より派遣頂きました蒋欽様、周泰様には『あるぷす一万尺』を手ほどき頂きました。大変塾生らに好評で、今も休み時間等に遊んでおります。ただ、上手くなるとこうなりますと御披露頂きました御二人の模範演技は多くの塾生らが「早過ぎて手が見えない」との感想を述べておりましたので次回は見える程度に抑えて頂けますようお願い致します。

 

 典韋様にはお手玉、ヨーヨー等で塾生と交流を深めて頂きました。事後に塾生らに確認しましたところ、塾生側が何度も「見たい」とせがんだ為とのことでしたが、ガチものの武器の伝磁葉々で校庭の築山一つ吹っ飛ばすのは当塾の安全管理上おやめ下さい。

 

 夏候惇様、璃々様こと黄叙様、孫策様には童話を朗読頂きました。塾生らは明朗かつ情感篭ったお話し振りに目を輝かせて引き込まれておりました。ですが夏候惇様は「新版 マッチ売りの少女」のみの朗読を御希望され、塾生らが飽きてしまう場面もあり当方で塾生の入れ替えで対応させて頂きましたが次回以降は複数のお話をお読み頂ければと存じます。

 

 一方黄叙様は多様なお話を頂きましたが、「赤ずきんちゃん」のお話にておばあさんがお母さんになっており、また狼は仲良くなった上に人間になり母娘と結婚の末多数の子供を授かり幸せに暮らしたと改変されたお話は色々な意味でギリギリの為自粛をお願い致したいところで御座います。

 

 さらに、孫策様には「北風と太陽」を身近な人物に置き換 えたお話をお読み聞かせ頂いたと聞いておりますが、呉の一部子女が「太陽の一刀様がぴかーって照らしたら、旅人の太史慈さんはうさぎさんの服脱いですっぽんぽんになって気持ちよくなっちゃったんだって!でねえ、このお話お姉ちゃんにしたらお姉ちゃんも知ってるって大笑いしてた!」と話しておりました。高等部、社会人に姉妹がいる塾生もおりますので比喩は健全な範囲にてお願い致します。

 

 双六遊びについてもお付き合い頂きましたが、初等部高学年から中等部にて学習致します確率論について塾生の理解に支障をきたす為御担当からは袁紹様は外して頂けますよう顔良様にお願いさせて頂きました。袁紹様御自身も懸命に負けようとして頂いたがどうにもならなかったと担当教員から聞いておりますが、別途高等部文化祭で行われます麻雀大会等にて塾生に厳しく御指導を賜りたく存じます。

 

 荀攸様にはあや取りを御指導頂きました。塾生らも楽しく手先とにらめっこをしておりましたが、最後に御披露されました「奥義 亀甲逆海老縛り」という技は確かに複雑な妙技ではありますが、指先の遊びと言えど教育上如何なものかと思いますので御容赦をお願い致します。加えて呉の甘寧様、蜀の関羽様より頂きました「一刀様は私達の体であや取りをする」というお話も少女らの混乱や事実誤認に繋がる為お止め頂きたいです。

 

 太史慈様、郝昭様には塾生らと缶蹴りにてお付き合いを賜りました。塾生らも御授業時間が過ぎてもまだやりたい、お姉ちゃんたちと遊びたいと喜んでおりました。尚、郝昭様がガチでお蹴りになりました缶が直撃して割れました校舎の硝子代につきましては請求書を添付させて戴きましたので月末締め日までに御入金をお願い致します。加えて塾生の品位向上の為、太史慈様におかれましては郝昭様との会話の中であっても年少者の前では言葉遣いに御注意をお願い致したい次第で御座います。

 

 曹操様もお見えになられました。塾生らの遊ぶ様子を大変熱心に御観察頂き、「楽しく遊ぶ様子が見られ、大変参考になった」とのお言葉を賜りました。行政の参考に本当になるかと多少の疑問は御座いましたが、また次回御来校の折には塾生らと直接触れ合って頂ければ幸甚に御座います。

 

 また御来塾の方の多くが御自身を裏の正妻であると自称なさっていたと多数の塾生が証言しており、この件については保護者会から文書にて苦情を受けております。年少者への軽率な御発言は厳に慎んで頂きたく存じます。更に内々にて御来場は御遠慮願っており、御来場者名簿に御座いませんでした劉封様・関平様がいつの間にか御来場されており、塾生らとままごと等をして頂いて居ましたが、「御飯にします?お風呂にします?それとも私をお風呂で御飯にします?」等と発言したり、一刀様と仲良くなるにはこういう下着にしなきゃだめなんだよ等と言って御自身らの下着を見せたりといった御行動についても保護者会から苦情が当塾へ寄せられております。本件につきましては劉備様にも苦情として送らせて頂きました。

 

 こういった御指導の不具合については当塾にても対応に尽力して参りたいと考えてはおりますが、根本的な問題としては貴課の当塾御担当職員の不行き届きに端を発していると考えます。具体的には当塾前身の水鏡女学院卒業生である徐元直氏の職務怠慢によるものであり、当塾と致しましては徐氏の更迭もしくは当塾への出向、併せて不肖崔州平の貴課への異動を強く希望致します。

 貴総務室発足時においては現蜀丞相の諸葛亮氏、龐統氏と懇意な蜀属であった徐氏の総務室異動についてはやむを得なかったものと思われますが、以降著しく不適切な事務執行こそありませんがこれといった功績が無いのも又事実です。一方で彼女の人品の低下は著しく、例えば先般の一刀様の荊州女学院御講演の際に随行しておりましたが出張先であるのをいいことに正妻顔で振る舞い、二日目の御講演時には来賓席で腹回りをさすり乍らにやけ面で生欠伸を繰り返す姿は学生達の模範とはとても言い難いものでした。加えて同門で懇意である石広元氏、孟公威氏らと飲む際にも

「あたた腰痛ったー、もぉ一刀様離してくれなくて」

「総務室、『朝抜き』『昼抜き』『夕抜き』って仕事あってさぁ、あんまり時間かけられないから顎疲れて大変なのよねー」

「総務(室)の第二会議室?ああ『ヤリ部屋』ね、あたし席座ってるよりも一刀様にあの部屋連れ込まれてる時間の方が長いかも」

「あっごっめーん、ちょっと垂れてきちゃったから拭いてくるね」

等絶対嘘だとは知ってはいますが彼女の下品な煽りは貴課、ひいては一刀様の御名誉を傷つけるものに他なりません。

 彼女に代わり私が一刀様の御側勤務となりました暁には一刀様から連日連夜のお求めがあったとしても一切他言せず、寧ろ奥ゆかしい一刀様の御自身でもお気づきでない御欲求を積極的に満たしすっきりとした気分で御政務に勤しんで頂けるよう尽力する所存であります。先述の石広元氏、孟公威氏も貴課への異動を希望している事は既にお聞き及びかと存じますが、生憎彼女らは魏属であり(以下略)」

 

 

 

 

------------------

 

 

 

「…仲達」

「?はい、詠様」

「こないだ初等部に出張授業行った連中呼んで来て、あと元直も。今すぐ」



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司馬日記外伝(小ネタ) 大浴場の勝者は

今更ですが、飯坂様が第二期予告(嘘)のイラストを描いて下さりました!
イラストのシーンそのものずばりとまでは出来ませんでしたが、インスパイアされた小ネタです。

それにしても私の書くあの人は鬼のように強くて困ったもんです…


着替えと手拭いを入れた風呂桶を小脇に小走りで廊下を進み、大浴場の入り口の扉に手をかけると静かに暖簾をくぐる。

脱衣所への鍵はかかっていない、中に誰か――――一刀様が居る事の証に一段と胸が高鳴る。

周囲の廊下に人影が無い事をすばやく確認すると静かに扉を閉め、鍵をかけると広い脱衣所を右に進み、『管理職用(魏)』と表示された棚の脱衣籠に着替えを放り込む。

大浴場は主に定時後に大人数での利用がある為広大に作られており、脱衣所もそれに応じた広さである。入り口から向かって右から魏、三国以外の所属の者、蜀、左端に呉の順で脱衣棚――――部長・将軍級の者には専用の鍵付きの棚が与えられているが、これらは各国で最近管理職になった者らが希望し設置された者だという。曰く、魏の者らは申し訳なさ気に、蜀の者は妬ましげに『国王の隣に並んでは着替えづらい』と言った為らしい。

 

素早く服を脱ぎ、下着をはずして鏡の前で自身のモノを軽く持ち上げる。

以前、御伽前に楓御嬢様と風呂に御一緒した時に乳房の下部に下着跡が付いていた事を見咎められ、意匠は良いが寸法があっていないと厳しく御叱責の上下着屋に御嬢様同伴で直行させられている。その場で店員に寸法を測られ何着も試着し、普段用、御伽用、軍務・運動用、見せる用等と上京前の五年分程度も買わされたのにも驚いたが、御嬢様の御指示通りにその領収書を半信半疑で仲達に提出すると事も無げに半額は経費で落ちると言われた時は唖然とした。曰く、後宮の者の下着は一刀様の為であるからだと言う。

 

肌に何の跡も無い事にほっとしながら手を離すと、上を向いていたものがぷるんと正面を向いた。御嬢様にお叱りを受けた時に着用していたものは以前仲達が大トラになった際に無理矢理買わされたものだ。その仲達には及ばないが、一刀様のものになって以降他の者がそうなると言うように少し大きくなって来たのではないか。

『畢竟、一刀様にお尽くしする”おんなの身体”になる。案ずるな』

最近も飲みに連れ出して自分の身体に自信が持てないと相談した際、入職時では考えられない酔眼のしたり顔で頷く親友の顔を思い出す。

 

一刀様の為の、おんなの身体。

熱く甘い夜の記憶と今から起こるであろう事に思いを馳せ、昂ぶりと緊張を抑える溜息を一つ吐いて下着を降ろす。

ふと感じた違和感に、脱いだ下着をそのまま脱衣籠に入れずに手に取り二重の部分を確認する。

 

……………既に、私の娘の方は”一刀様のおんな”の自覚があるようだ。いや、あり過ぎだ。正直過ぎて母は恥ずかしいぞ。

顔が赤くなるのを自覚しながら、下着を手早く脱いだ服にくるんで入浴着を身体に巻き、浴場へと駆け出す。なに、すぐに湯を浴びてしまえば一刀様にばれることはない。しかし今後は私も下着の替えを更衣室に用意しておこう。

さあ、一刀様に御挨拶だ。一言目は『遅くなりました、泉です』で行こう。いや真名を差し上げたとは言え馴れ馴れしいか、伯道ですにしよう。

待ってたよ、泉さんとか言ってくれるだろうか。御優しい一刀様の事だ、きっと仰ってくれるだろう。いかん、顔の緩みが抑えられない。

 

 

そして洗い場の扉を開けると同時に。

呉側の入り口から似合いもしない雌臭さ満点の照れ顔で入ってきた野猿が、私のそんなにやけ顔を一瞬で般若の面にしてくれた。

 

 

 

 

---------------------

 

「陽(太史慈)、陽!」

「あ?んだよ、ノック位しろよ」

今日は休みだ。亞莎が『女子力を上げるコツ』って特集がありますよって言ってたから生協でその雑誌買って来てごろ寝しながら読んでるけど、いまいち良くわかんねーなぁとか思ってたら雪蓮が俺の部屋にやってきた。

「一刀がね、今お風呂に行ったんだけど貴女に洗って欲しいんですって。行ってきてくれない?」

「はぁ?マジで!?」

慌てて跳ね起きたが、はっと思い返す。

 

「………ウソじゃねーだろうな?」

「あら心外ね。あたしが親友の陽に一度でもウソをついたことがあった?」

「山ほどあったじゃねーか!」

今までこいつのウソのせいで何回ひでー目に…えっと、ひでー目にあって、その後一刀様が可愛がってくれた事もあったかもしれねーな。

 

「信じてくれないなんて私悲しいわ…しょうがないわね、陽が嫌ならそれじゃ明命に頼」

「ま、待て!わかった信じた!信じたから!」

「ううん無理しなくていいのよ、第一マットプレイなら明命と正命(蒋欽)が第一人者だし。この機会逃したらもう一刀がお風呂に貴女呼ぶ機会なんて二度と無いかもとか全然考えなくていいのよ?文嚮(徐盛)とか、他にも一刀の身体洗いたいなんて娘呉だけだって掃いて捨てるほどいるんだから」

「や、やるってば、やるってばよ!だから待てよ!」

「ホントに?やる気あるの?」

「あるある、今着替え出したら行くからよ」

「どれくらいやる気あるか、ちょっと言葉で示してもらわないとねぇ?」

「はぁ?どうしろってんだよ、おめーが持って来た話だろうが」

「これ、小説で呉の娘がマットプレイする時の台詞なんだけど。これ笑顔で読めるなら貴女に任せてもいいわ」

箪笥から一番いい下着を出しながら答えると、『三国志 呉編 ○巻』って表に書かれた小説らしきもののある頁を見せられた。

なになに。

 

 

 

『一刃様ぁ♪これからぁ、女の子の一番えっちな○×△でぇ、一刃様の※■↑を洗わ◎%&*!?』

 

 

 

「バカかぁっ!?、こっ、こっ、こんなの言える訳ねえだろっ!」

本を床に叩きつける。

 

「あら、言えないの?明命と正命なら楽勝よ」

「そりゃあいつらは可愛いしそういうの言えるキャラだし!」

「亞莎だって」

「亞莎も可愛いじゃんかよ…すげえ恥ずかしがって嫌がりそうだけど」

「子敬だってきっと言えるわよ」

「あ、何かその絵面は痛そうだな」

「ほら出来ないのは貴女だけ。これ位言えないなら、残念だけどこの話は」

「待て」

「陽と私の仲だから、初めに貴女にと思ってきたけど悪かったわね。穏も最近仕事詰まってて色々溜まってそうだったし、そう言えば子烈(陳武)も今日暇だって言ってたかしらぁ?」

「………ぐ、…ぎ……」

 

 

 

俺に選択権は無かった。

 

 

 

言い終わってヒクつく人の笑顔覗き込んで『その顔が見たかったのよ』とか煽ってくる雪蓮の顔面に、衝動的に拳を叩き込みたくて堪らなかったが超いい話を持って来た事に免じてここは勘弁してやった。

 

 

 

「いってらっしゃーい、一刀と頑張ってねぇー♪………………………いっつも誤解されてるけど、私ウソはついてないのよねぇ。ウソは」

 

 

 

 

--------------------

 

「あのっ、かず………………おい、ンだよてめーは」

「何だは私の台詞だとっとと帰れ」

自分の言葉に余裕の無さを感じる、一瞬で沸点を超えかかっている自覚があるせいだろう。

目の前の野猿も弛みきった表情が消え失せ、奥歯をぎりっと鳴らして獰猛な表情を浮かべる。元野盗の品性丸出しだ。

 

「…騒ぎたくねえんだ、今すぐ帰れ」

「騒ぎたくないのは同感だが帰るのは貴様だ。私は一刀様のお召しで来ている」

「はぁ?一刀様がお呼びになったのはおめーじゃねえ、この俺だ」

「何だと?」

割り込みに来られては堪らないので止む無く一刀様の名を出したが、この猿は夢でも見ているらしい。

「寝言は寝てから言え。鎮西将軍東郷候曹子丹様の名にかけて、私が一刀様の御指名を受けて御伽に来ている」

「おぉ?こっちも元呉王の名にかけて、一刀様から御身体を洗えって御命令を受けてんだよ」

名を出された孫策様の姿を思い浮かべる。英雄の風はあるが今では若き楽隠居の身、酔っていたりふざける事も多いと聞く。

「はっ、大方酒席の言でも真に受けたのだろう。貴様のような野人に一刀様の御身体等任せられるものか」

「あぁ?ついこないだ初めて股ぐら血まみれにして痛い痛いってベソかいてた奴に御伽が務まるつもりで居るのか?」

「貴様一刀様を愚弄する気か?お上手な一刀様に『大変御優しく』して頂いたからな、血や痛みなど無かったも同然だ。阿婆擦れの破落戸相手では一刀様もやる気も何もなく形ばかり入れて出すだけだったろうがな」

「ざーん念だったなぁ、その一刀様はその阿婆擦れにべろちゅーしながら中出しまくりのぶっかけまくりで黒いバニースーツが真っ白になるまで御執心だったぜ?今からキュウキュウ絞り洗いして差し上げるんだから、血がこびりついたカッサカサ穴はお呼びじゃねえんだよ」

「ふん、泣き喚いてお情けで構って頂いてた事を知らない女が後宮に居るとでも思っているのかこのゴワゴワ束子が。貴様の期待に沿えなくて悪いが一刀様の手厚い御開発のお陰でな、いつでもお迎えする準備は万端で下着が乾く暇もない程だ。貴様さえ居なければな」

 

「…きれーに手入れされてんのが見えねえのかこのお子様×××の変態女が。てめー、今日こそ許さねぇ」

「貴様こそ引導を渡してやる。野猿が一刀様の回りをうろついて一刀様に獣姦趣味がお有りだ等と噂されないためにもな!」

言いながら、顎を狙って全力で右拳を突き上げた。

 

 

 

---------------------

 

「…………なんか洗い場の方で聞こえない?」

「…さあ?ここ露天ですから、邪な欲望で周りが見えなくなってるお猿さんでも騒いてるんじゃないですか?それより、浴槽ももう大体洗い終わっちゃいましたよ」

「ああ、ありがとう。雪蓮に暇で手伝える人誰か居たら呼んで来てってお願いしたんだけどねぇ?楓(曹真)にも声かけるみたいな事も言ってたけど」

「総務の人達に休暇出した上に今日は一人で過ごさせろって皆に自分が言ったの忘れちゃってんですか?お偉いさん達には月さんから今日はこっち(後宮)に近づくなって通達出てますから、そりゃ来ませんよ」

 

もう立場も何もない雪蓮さんは通達なんか知ったこっちゃないって曹真さんと示し合わせて仕掛けてきたんでしょうけどね。

折角の休暇に結局暇だからって風呂掃除なんて馬鹿なことさせといちゃいけないってとこには賛成しますよ。

「あっ……そうだった、七乃さんよく居たね?」

「まー暇でしたし、私ぺーぺーの派遣職員だからそういう連絡来ないんですよ。…疲れたんで、一刀さんとこの小浴場入れてもらえません?こっち(大浴場)お湯張りも時間かかりますし」

 

 

事後シリーズ4に続くとか続かないとか。



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司馬日記外伝 遺失物件第一号

その後の、とある遺失物の話です。


鞄の中。

引き出しの中。

洗濯籠。

物干し台。

まさかとは思うが秋蘭の鞄の中。

そして、この部屋のどこにも。

 

―――――無い。

机についた両手を握り締めると、急いで教室から飛び出して玄関へと向かう。

 

「あ、もう宜しいんですか?曹操様」

「ええ悪かったわね、突然鍵を開けてもらって。ちょっと急ぎの用があるのでこれで失礼するわ」

無理を言って開けてもらった当直の管理人への挨拶もそこそこに、庁舎へ走る。

通用門から後宮へ。玄関口で出勤の札を見る。一刀は――――出勤だ。執務室へ向かう途中、幸いにも一人で歩く一刀を見つけて足音を忍ばせつつ小走りに近づいた。

私達は夫婦、妻の危機は夫の危機。何も知らぬ平和そうな表情に僅かに苛立つ。

 

「(一刀!)」

「うわ!?」

「(声が大きい!)」

背後から軽く袖を引きながら囁いたのは逆効果だった。

「(どうしたの、華琳)」

「(不味い事になったわ)」

「(何が?)」

「見つからないのよ、アレが」

「(…アレ?)」

昨日の今日でアレで通じないのか。わざとか。わざとなのか。いやわかってる、この人が腹芸の才能が絶望的に乏しい事は。

羞恥プレイはまあ嫌いな方じゃない。しかしそれは二人きりでやるもので、執務の合間に廊下でやるものじゃない。

 

「っ…だ、だからぁ――――」

 

 

 

 

 

-----------------------

 

ようやくまとめきった糧食台帳を片手に、庁舎の廊下をコツ、コツと乾いた音を鳴らして歩く。

―――――穏やかな日常。

 

ある意味、いやある意味ではなく、まさしく私がかつて望んでいたものだ。

それは私の手によるものではなかったけれど、私の手に――――皆の手に確かにあるもの。

その中でも、私にもまだやるべき事がある。

決して人並み外れて優秀というわけでもない私でさえ求められ、行い、そしてその成果がこの大陸の暮らしに反映されていく。

 

そして、出会った良人。

私と同じように普通っぽそうでいて決してそうではなかった奴で、毎日一緒にこそいられないものの確かに感じられる彼の優しさや、週に一度は必ず強請りに来るお握りを二人で食べる時間は代え難い幸福な時間であることは疑いない。

 

――――加えて、得られた友人。

星との出会い。

桃香たちとの出会い。

雛里たち。

紫苑たち。

さらには、仲達さん。蓮華。

そして今まさに白蓮さーん、と手を振りながら駆け寄ってくる杏も。

 

偶に起こる、小さな騒動も。

全てが私の幸せの象徴。

 

「どうしたんだ、杏さん?」

「あ、ちょっともし知ってたら聞きたいことがあって…って、白蓮さんなんか遠い目してません?」

「はは、ちょっとガラにもなく感傷に浸っちゃっててさ。それより私に何か用か?」

「あ、もし知ってたらで良いんですけどぉ、三国塾の掃除してたら忘れ物見つけちゃって。このブルマ、名前の欄に『かりん』ってだけ書いてあって返してあげたいんですけどどこの子だか知ってます?」

「おぉぉぉぉぉい!!!!?」

 

 

 

神は言うのか。

お前に休息の時は未だ早過ぎると。

 

 

 

 

 

-------------------------

 

「………マジで?」

「マジだから聞いてるんじゃないの…。一応確認するけど、貴方持って帰ってたりしてないわよね?」

「持って帰れないの知ってるだろ?」

「それは分かってるけど」

私室と言えど俺のプライベートはほぼない。書棚から箪笥、ベッドの隙間に至るまで必ず誰かの目と手が入る。

そんな所に隠してはおけないし、しれっと洗濯物に出しておけば月が何も言わず何事も無かったかのように洗ってくれるだろうが、それは流石に気がひけるし華琳の方でも落ち着かないだろう。

 

「秋蘭が拾ってたりは?」

「してたら言うか何か、分かるように伝えてくるわよ」

私室外で致す時はよく秋蘭が場所の予約や周囲の警戒などの段取りをしているのを見たことがあるが、確かに秋蘭が拾えば華琳が探している事にすぐ思い至るだろう。

「マズいな…誰かがもし拾ってたりしたら」

 

「――――平和な時代が来て、この手で直接人を殺める事はもう無いと思っていたけど」

「オーケー冷静になろう華琳」

いつの間に手にしていたのか、戦時は愛用していた大鎌をじっと見つめる華琳の目がマジ過ぎて心臓が冷える。

 

「もし誰かが見つけていたらちょっとした騒ぎになっているだろ、多分まだ誰も見つけてないんじゃないか?それと探す手が二人だけじゃ心許ない、秋蘭と…詠に話して探すの手伝って貰おう」

「秋蘭はいいけど、詠の手も借りなきゃいけないの?」

「背に腹は代えられないだろ?詠は割とそういう…事とか華琳の立場に理解あるし、他に気心知れててこういう事で気が利いた対応が出来て口が堅そうなのって誰かいるか?」

「…仕方ないわね、あまり借りは作りたくないんだけれど」

嫌そうな表情を浮かべる華琳を説き伏せながら、もし探す折に紫苑に会ったら彼女にもそれとなく探してくれるようお願いしようと考える。

 

「ところで」

「?」

「詠がそういうのに理解あるって貴方言ってたけれど…詠のあの性癖って本当ってこと?」

「いや、パンスト直穿きプレイにハマってたりとかはしない」

「貴方語るに落ち過ぎよ!?私の事も他所で喋ってたりしないでしょうね!」

 

怒られました。

『してない』って言ってるのに何故皆してるって断定出来るんだ?

 

 

 

 

 

--------------------------

 

「なあ杏さん、何でそう死にたがるんだ?何か辛い事でもあったのか?」

「ごめん白蓮さんが何を言ってるのかあたしちょっとわからない」

彼女の両肩に手をかけて真剣に聞いた私に、かわいそうなものを見る目で答える杏さんはそこそこ失礼だと思う。

いや知らないからだろうけど。分かってないからなんだろうけど!

 

さぁどうやったらうまく伝えられる?てか、どうすれば回避出来るんだ?えーっと、彼女は『かりん』って人がブルマを持ってる事を知っちゃったわけで。で、華琳が『かりん』であることはいずれ分かっちゃうって言うか、華琳の手に渡った時点で華琳は誰かがこのブツを見たってことを知っちゃうわけで。

…………あれっもう詰んでないか?

 

「いや知らなきゃ別にいいんですよ、塾の忘れ物置き場に置いて『かりん』さんの忘れ物ですって掲示板に書いてくるだけですから」

「待て!それはちょっと待て、物凄い人数が死ぬ!」

「なんで忘れ物届けたら大量殺人が起こるのさ!?」

 

それ見た子全員華琳に抹殺されるだろ、とも言えず。

「あ、ひょっとして…そういう事?」

「そうだよ!分かってくれたか!?」

やっと察してくれたっぽい杏さんに一縷の望みを抱く。学生でも、普通名前書くときもう少し大人っぽい字で書くだろ?学年と組くらい書くだろ?それが無いってことは分かるよな?あっちの性協でバイトしてるんだからそれくらい分かるよな?

 

「忘れ物とかバレるとまずいんだ?寮の同室の子達全員連帯責任で罰とか厳しいんだね三国塾って」

「違ぁぁぁぁぁぁう!!」

このもどかしい思いをエビ反りで表すが一向に彼女に伝わらない。いや、伝えちゃいけないんだ。知ったら、知ったことが華琳に知れたら彼女を待つのは確実過ぎる死だ。

 

どうすればいい?

どうすればいい?

いやまず落ち着け私。ブツがここにあると言う事は華琳はまだ気づいていないか、気づいていて血眼で探しているかだ。

前者だったら?そうだ、そっと元の場所においておけばいい。

「なあ杏さん、ソレ見つけた後誰かに会ったか?」

「えー?掃除終わって管理員さんに挨拶した後、特に誰とも会ってはいないですよ」

「よっしゃぁあ!じゃあ」

「あ、でもなんか目が血走った金髪くるくるの女の子とは擦れ違いましたけど」

「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!なんだそのカスり方!?」

 

良いのか悪いのか、一体どういう運してるんだこの人は!?つか、杏さんてひょっとしてほっといても平気なんじゃないかって考えが一瞬頭を掠めるがこの状態で見つかったら杏さん共々私も消される。いや、杏さんは生き残るかもしれないが経験上私は確実に理不尽に死ぬ。

既に華琳は本気モードの筈だ、早晩ここも見つかるだろう。

どうすればいい!?

どうすればいい!?

とりあえずこの場で見つかる訳にはいかない。ならば!

「杏さん…」

「な、何なんですか、急に真剣な顔して」

私のありったけの知。それを総動員して閃いた策、おそらくこれが唯一無二。

 

 

 

 

 

 

「今すぐ履くんだ。それを」

「白蓮さん頭大丈夫!?」

 

 

 

 

 

 

 

真剣に言っているのに変態を見るような目つきで返す杏さんに微妙にイラっとする。

「至ってまともだ、履かなきゃ死ぬぞ!」

「むしろ履いたら社会的に死にますよ!」

「大丈夫だ、あいつ(華琳)も流石に一人一人女の子のスカートめくって歩いたりはしないはずだ多分!」

「めくられなきゃ良いってもんじゃないでしょー!?」

「つべこべ五月蠅い!もういい、杏さんが履かなきゃ私が履こう!」

「白蓮さんが壊れたー!?」

事態は一刻を争うというのに!こうしてブルマを二人で引っ張り合っている間にも華琳が、その廊下の角を。

 

 

 

 

 

「居た!」

 

 

 

 

 

「あ…ああぁ…」

詠を引き連れて廊下の角から現れたその姿に、不覚にも涙した。

 

「一刀ぉぉぉおおお!」

「見つけちゃったんだな!?アレを」

「恐かったっ、恐かったよぉぉぉぉー!」

「よしよし良く頑張ったな白蓮、もう大丈夫だ」

「えっとすみません、何が起こってるの?」

きょとん顔の杏さんは放っておき、華琳のブルマを握りしめたまま私の王子様に駆け寄って縋りつく。

 

「ブツはこっちで預かる、詠が拾ってくれたことにして返しておくから」

「あ…うん」

「待って。残念だけど、ちょっと遅かったみたい」

手の中の薄い布で出来た爆弾を一刀に渡そうとした瞬間、詠がため息混じりに背後に視線をやる―――――

 

 

「か、華琳…」

「あら白蓮、御機嫌よう。…どうしたのよ、二人ともそんな絶望したみたいな顔して。何かあったのかしら?」

「据わった目して抜き身の大鎌後ろ手に近寄って来たらそりゃ絶望するだろ!?」

 

終わった。

あー、私の人生こんなところで終わるのか。

とっくの昔に易京で死んでたはずが今まで生きてこれたんだ、恵まれてたと言えば恵まれていたのかも知れないけどさ。

でも折角これから幸せに暮らすはずだったんだけどなぁ。

ダンナ見つけて。

料理大会で優勝とかしちゃったりして。

友達増えて。

ごめんな杏さん助けてやれなくて。初めっから私が履けばよかったな。

 

「待ってくれ」

諦めかかったその気持ちを、隣に立つ私の王子様が遮った。

 

 

 

 

---------------------

 

「今話す事なんてあるかしら?」

流石にここから一刀が割って入ってこられてももうどうにもならない。

あの杏とか呼ばれてた…逢紀と言ったかしら、のアホそうな様子を見て殺すかはともかくただでは置けない肚はもう決めた。

なんとか殴り倒すとかで記憶だけ吹っ飛ばすとか出来ないかしら。

監禁するか。

華陀に記憶喪失薬とか作らせて飲ませるか。

凌遅ならどうかしら、記憶を消すのは無理か。でも従順になるのなら…

「いや華琳とじゃない、杏さんちょっと聞いてくれ」

「はえ?私?」

思いを巡らせていた私ではなく彼女に向かって、妙に爽やかな笑顔の一刀が語りかける。

 

 

「ごめんそのブルマ、俺のなんだ」

「「「「は?」」」」

その場にいた私を含めて全員が一斉に突っ込んだ。何を言い出すのかしらこの男は。

「…えっと?これまさか一刀さんが履くって事?

「いや流石にそういう恐ろしい想像はやめてくれ。そのブルマは…俺が華琳に履かせようと思って買ったんだ」

「はぁぁ!?」

 

「「「……………………」」」

素っ頓狂な声を上げた逢紀以外の三人が息を飲む。一刀のあの笑顔に、三人が同時に意図を察していた。

「あれ初等部の子用の運動着だよ!?」

「うん、杏さんは大人っぽくて魅力的だけど、華琳は華琳で小柄で可愛らしいから似合うかと思ったんだ」

「いい年して『可愛らしい』…」

「駄目だ詠。今そこ突っ込んじゃ駄目だ今大事な所なんだ」

真顔で呟いた詠の肩を押さえた白蓮はギリ許す。パンスト眼鏡はいつか覚えてなさい。

 

「えっ…で、着せてその…ゴニョゴニョ………するの?」

「うん、したいなぁと思って」

「そんなのおかしいよ…、一刀さん変態!変態!!変態だよ!!!」

「ぐっ…」

「だ、大丈夫か華琳?」

知らない女に言葉で脇腹に三発入れられて倒れ込みそうになる処を白蓮に支えられた。

 

「一刀…あんたなかなか見上げた変態ね、見直したわ。白蓮、近くに月と斗詩と仲達が居ないか監視して。貴女はあっち、ボクはこっちを見張るわ」

確かにその中の誰かが居たらいよいよこの娘は始末するしかなくなる、私とは違う理由で。

「わかった…ってうわっ!?」

しかし廊下の曲がり角まで近寄った白蓮の足が、出会い頭にぶつかりそうになった長身の女の前でぴたりと止まる。全員の視線が白蓮を向くが、悪い予感は当たるように出来ている。そんな事は戦乱の頃に嫌と言うほど学ばされた。

 

「ん、これは白蓮殿。どうされましたか…――――んっ!?…んむっ!」

その無表情で白く端正な、仲達の顔がみるみるうちに朱に染まる。腹に強烈な打突を受けたかのように片膝がカクリと折れかかると慌てたように鼻と口に手拭いを当てながら、ザッ、と私達から離れるように飛びずさった。

 

「え、えっと…いや、ボクたちの方は別に大したことしてた訳じゃないんだけど、それよりあんた大丈夫?」

「そ、そうですか…いえ、気のせいか誰かが一刀様を罵倒しているような声が聞こえたような気がしたもので」

ふーっ、ふーっと肩で息をしながら手ぬぐいの下からくぐもった声で答える仲達は何故か既に涙目だ。この娘も相変わらず対一刀専用の異常な五感の持ち主だ、成績は抜群なのに人事会議で毎回処遇で揉めるのも分からないでもない。

「あっ!そうなんですよ、司馬懿さん聞いて下さいよ、一刀さんったらねえんぐむぐもご!?」

「「「なんでもない」」」

「そ、そうですか…」

 

白蓮と詠と私の三人掛かりで逢紀の口を押さえつけながら、仲達に有無を言わせぬ強さで否定する。ところでこの逢紀と言う女、よくよく自殺が趣味なのかしら?

「ところで仲達さん、具合悪そうだけど大丈夫なのか?」

さっきから気になっており、詠も訊いた事を白蓮が再び問うた。――――それが、一番踏んではいけない地雷だとも知らずに。

 

「こ、これは…体質、で…私は一刀様の、その、御精…………(ゴニョゴニョ)…………の御芳香を嗅ぐと、その…………………酔ってしまいますので…」

「へっ?」

逢紀が意図が分からないと言うように首を傾げたが、私と一刀は真顔で目を見合わせた。

 

うん。

まぁ、あれよ。

つまり何て言うのかしら。

所謂一つの使用済みという奴で?かなり時間が経ってるから正直私達には分からないんだけど、凪と並ぶこの一刀臭専用猟犬にはまぁ噎せるほどの媚薬を嗅がせてるようなものと言う事な訳ね?

でも仕方がないじゃない、体操着プレイだってのに全部脱がす一刀なんて居るわけないでしょ?ってなったらブルマ越しに挟んで擦らない女だって居るわけないでしょう!?

 

「えっすいません、今良く聞こえなかったんでもう一回言ってもらえます?」

「だ、だからっ…!」

バカか、バカなのか。この女はどうしても夕べ一刀がぶちまけて体操着をべっとべとにしたモノの固有名詞を言わせる羞恥プレイを仲達にさせたいらしい。

 

「杏さんて地雷踏みに行く天才だよな」

「そうね。今度軍で探知機代わりに使ってもらいましょう」

ここまで自分から死にに来たならしょうがない、まずボコって記憶を失うか試してみよう。それでダメなら凌遅で洗脳、うん、これで行くわ。

 

「へぇっ!?せ、精え…って…、そ、そんなのが何からそんなに匂ってるんです?」

「そ、そのそれですっ、一刀様がお持ちになっている…」

言いながら、羞恥責めにますます顔を赤くした仲達が一刀の持っているブルマを指さす。万事休した。

「…やっちゃっていいわ、華琳。性格は悪くなかったんだけど、ちょっと軽はずみなとこもある子だったから」

「悪いわね、次の求人には魏から出すわ」

諦めた詠の言葉に答えながら、絶を片手に逢紀に近づいていく。肚を括ってしまえば割と気も楽になった、あと二歩の間合いで後頭部をガツンと一発するだけの簡単なお仕事。戦乱の頃や普段の政治上の決断の数々を思えば何ということも無い。

そして何の警戒もしていない逢紀にあと一歩、という所で、絶を握る右と反対の左の手がそっと握られた。

 

「ごめん杏さん、俺一つ嘘ついてた」

「えっ?な、何?」

私の手を握りながら、逢紀を見つめる一刀の表情はどこまでも澄んでいて。

 

 

 

 

「華琳に着せるの待ちきれずに自分でしちゃったんだ」

「は?」

かなり最低な事を言った。

 

 

―――――但し『逢紀から見て』。

 

 

 

「…くぅっ……!あ…あんた、偉いわ…!…………後世の歴史家はあんたを古今東西最低最悪の変態と書くでしょうね。でも、あんたは三国に誇る変態…!ボク達の誇る変態よ…!」

「一刀、偉いな…変態だけど、偉いよ。私も感動した」

「有難う、でも今余り変態変態連呼しないでくれるかな」

詠がもらい泣きし、白蓮が半分引きなら一刀の自己犠牲に呆然としている。そしてもちろん私も。

確かに仲達は一刀の匂いには異常に鼻が利くけど、あくまで一刀専用で私の事は分からない。そこを突いた捨て身の嘘。

有難う、貴方にはいくら感謝してもし足りない。この埋め合わせはなんでもするわ。

またメイドプレイと奴隷プレイしましょうね。尽くして尽くして尽くし抜くわ。

こないだ『似合うかも』って言われたのに余り馬鹿っぽいのはちょっとと言って断っちゃった『仙術少女☆まじかる華琳』も喜んでやらせてもらうわね。

 

「へっ…?自分でって」

「ごめんちょっとこっち来てくれる?あと詠、一着」

「…!分かったわ、標準寸法でいいわね」

一刀が私達から離れ逢紀の肩を抱いて廊下の隅のほうへと連れて行きながら、詠の方を見ずに人差し指を立てると、詠は何かを察したらしく生協の倉庫へと飛び込んで行った。

 

「(…を、…して、…って感じで)」

「えっ?えっ?えぇー?…ほ、ホントに?」

「杏さんちょっと声大きい」

二人の背中しか見えないが、一刀のこそこそ話に逢紀が顔を赤らめて大仰に驚く。この空気の読めなさ、うちの幹部には要らない種類の人間ね。

「ウソ…一刀さん、そこまで好きなの?ソレ」

「かなり吝かでない」

「えっと華琳さん…でしたっけ?華琳さんだってこんなの着せられて…なんてちょっと引きますよねぇ?」

このアマ。あんただって他人に言えない性癖の一つや二つあるでしょうが。

 

「え、ええ…そうね、でも一刀がしたいって言うのならわた」

「ホラ、華琳さんだってそんなの変態だって言ってますよ」

言ってない。そこまで言ってない。悪いか。変態で悪いか。こっちは普段どれだけ脳と精神に負担かかる仕事してるか知っているのか。惚れた男と息抜きにちょっと特殊なプレイをしたぐらいでガタガタ言われる筋合いがあるとでも。

 

「…いや、でもまあ華琳も寛容だか」

「ましてや初等部になりきらせて『かじゅとぉ、かりんのぱんつ見たいぃ?』とか言わせてたら病気もんですよ?華琳さんまで変態だって思われちゃって可哀想じゃないですか?華琳さん、呉蜀に誇る変態王扱いされもごもが!?」

「杏さんマジでその辺にしてやって!!マジでやめてくれ!」

 

ぱんつ見せて何が悪い?

私は一刀の第一の妻なのよ?

多少羽目を外したプレイぐらい良いでしょう?

特注のくまぱんとねこぱんとスケぱん見せて立ったまんまぱんつが見えるスカート履いたプレイで貴女に何か迷惑かけたかしら?

 

「一刀っ!」

私の右手が無意識に絶を構えたのを見た白蓮が半泣きで逢紀の口を塞ぎにかかった瞬間、生協から戻った詠が何かを一刀に投げつけた。

それ―――――『何かの布らしき物が入っているらしい』その袋を、一刀は器用に逢紀の瞳を見たまま掴む。

 

 

「そうかも知れない。だから、代わりに杏さんが付き合ってくれる?」

「…えっ?」

 

「えっえっえっ!?ほ、本気でー!?」

一刀が逢紀の肩を抱き寄せて、ゆっくりと手近な会議室へと向かって行く。

「本気本気、でも着てもらって愛でるだけだから安心して」

「え、で、でも私初等部の寸法とか絶対無理だよ!?」

顔を赤くしながら抵抗しない。理由も論破待ち。あざとい鼠め。

「大丈夫、杏さん用の寸法のやつ持ってきてもらったから」

「えーっ!?えっ?えー!?まじ!?ちょ、ちょっと待ってぇ!?」

言いながら一刀の肩に顔を載せるな。受け上手なつもりか。一刀が会議室の扉を後ろ手に閉めた瞬間、詠と白蓮と三人で一斉に扉に耳を当てる。

 

「えー…ちょっとホント、私恥ずかしいってばー」

「…」

「無理無理、お尻とか入んないって…んな、高等部とか言ったって」

「…」

「どーしても?どーしてもなの?」

「…」

「もー…ちょっとだけだからね?」

「…」

「見ちゃダメ!良いって言うまで絶対こっち見ちゃダメだかんね」

「…」

「い、いーよー…」

「…」

「うー…、これすっごいぴちぴち…ちょ、これやっぱ超恥ずかし、やっぱダメ、見ちゃダメ!」

「…」

「褒めたってダメ、あ、ちょ、ダメ、ダメだってばっ、一刀さん触り方やらしっ、んっ…」

 

 

「「「…」」」

三人が一斉に無言で扉から耳を離した。

「ガチの『そういう』プレイを体操服プレイにすり替えて誤魔化すつもりみたいね。…じゃ、ま、三十分後に集合って事で」

そう呟いて会議室の扉に鍵と『使用中』の札を掛けると、詠はすたすたと自室へと戻って行った。

 

「…白蓮。貴女は黙ってられるわよね」

「あ、ああ、勿論だ」

えっとごめんなとよく分からない謝られ方をして別れた三十分後、妙に肌艶と機嫌の良い逢紀が一刀の腕にしがみ付きながらもぉ一刀さんったら変態なんだからぁまたそーゆーの着せたくなったら私に言うんだよ高等部の娘とかに手ェ出しちゃだめだからねんーっちゅっとか言いながら出てきた挙句、あっ華琳さぁんまだ居たんだぁもー一刀さんのえっちっぷりには困るよねェやだったらヤダって言わなきゃダメだよじゃーねーとか別の理由でこの娘殴っていいわよねと思わされた事も、遅れて会議室から出てきた一刀からよく堪えてくれたって言いながら私のブツを渡された瞬間にギリ許そうと思えた。

だって私は魏王。感情に任せて暴走していい時代はとっくに過ぎている。失敗を次に生かす、それこそが最も重要な事。

 

「…今回は反省したわ」

「…そうだな」

「今度からは服じゃなくて中か口に出すようにしましょ」

「そこかな」

 

 

 

 

 

---------------------

 

「いやぁ一刀さんってもーホンットえっちだなあ…おねーさん体持たないってばー、ウェヒヒッ♪さーて掃除掃除!…あれ?また落とし物だ、なんだろ…あ、制服だけどなにこれ、すっごい胸のところだぶだぶだけど。えーっと名前名前…『はくたつ』かぁ、どこの娘のだろ?」



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司馬日記外伝 ある日の経産局

その後の、とある妹の話です。


中級と言うよりは下級の方が近い、一官吏である私の朝は早い。

 

未だ人もまばらな庁内寮の食堂で、いつもと同じ簡素な朝定食を注文する。給茶場で茶を一杯汲み、これもいつもの指定席に座ってもそもそと食べ始める。

入庁時に純(田豊)さんと静(沮授)さんから庁内食堂もこの時間からやっているからそっちを使ってもいいんだと聞いてはいるが、あちらは私のような下っ端から王まで誰でも来てしまうのでこちら(寮)の方が気楽でいい。

新聞を読みながらゆっくり食事をする者も居るが、私は元が小食で直ぐに食べ終わってしまうのでながら食べはしない。荷物を肩に掛け、下膳をすると直ぐに職場へ向かう。『経産部』と看板のかかった門を抜け、更衣室に荷物を置き出勤札を裏返して執務室に入る。

 

――――この時間は割と嫌いではない。

新人だった頃に同期が朝の雑用を新人が行うなど時代錯誤な不合理だと愚痴って居たが私は必ずしもそうは思わない。

 

そもそもが現代の都では高位の者程その職として高能力だというのが徹底している、故に下っ端が雑用を行うのは効率上当然至極である。しかも雑用と言えど機密性のある事務が多いのでこれ以上の外部委託はそぐわない。それに各課の配布物や郵便物、決裁書類等の運搬に伴い日常事務では知り得ない多様な情報を目にする機会もあり、また配送時に他の幹部級の方々に顔を覚えてもらえる機会も得られる。出世する気の無い奴は執務室に籠って定時に来て定時に帰るといい。

 

「おはようなのです」

「おはよう御座います」

部長、課長の順から先輩たちの机を拭き、軽く床掃除とゴミ捨てをした頃に経産部長―――――ねね様が出勤された。

ねね様も朝は早い。私が配属されたての頃は今日こそ一番で出勤だろう、と思っていたら既にねね様が出勤されていたというのを何度も繰り返し漸く今の時間なら一番になれるというのを確立したものだ。

 

「相変わらず柳花は早いのです」

「ねね様こそ」

ねね様――――陳宮様は殊の外私に目をかけてくれ、何かにつけ親身に指導をしてくれる。配属時の初対面で名乗った時は案の定と言うか『そうですか、【あの】桂花の妹ですか…』と顔を顰められてしまったが、その後の暫くのやりとりのうちに「中々見どころのある子なのです、ねねが直々に育ててやりますぞ!」と真名まで交換して頂けた。ねね様の御指導ではたまに二足程経過が抜けて結論を言われてしまう事があるが、それは斯く斯く云々であるからそうだと言う事ですかと推論して補えば非常に有用であることばかりだ。私が出世を目指すのはねね様の御恩に応えたいという一面もある。

 

「そうそう柳花、昨日の衣料組合との出店区画…ふぁ…打ち合わせを反映した計画図の修正は今週中にやっておいて下さい」

「はい」

口を押え目尻に僅かに涙を浮かべたねね様の欠伸を見て、ふと思い出す。

 

「寝不足ですか、ねね様」

「………そ、そんな事は無いのです!ちょっと太陽が目に染みただけなのです!」

途端に赤くなって目尻を拭くねね様は明らかに嘘をついている。昨夜はねね様が一刀様の御伽番だった事は当番表を見れば直ぐわかる事だ。

当番表は基本的に実名を書く事になっているが、個人情報である為予め総務部と取り決めた偽名も認められている。尤も多くの者が自身の寵愛を示す為に実名を書いているが、中には姉やねね様のように偽名を用いる者も居る。とは言え黄金の右足と書かれて居て誰だか分からない等と思っているのはねね様御本人だけに違いない。

 

「そうですか。私が帰らせて頂いた後に一刀様とお打合せの御予定との事でしたから、さぞ遅くなられたのかと」

「……あ、ああ、そうなのです!あの馬鹿が、いつまで経ってもその……わからんちんなので、全く遅くなってしまったのです!」

「そうでしたか。大変でしたね」

先程は寝不足ではないと言われていたのがあっという間に一刀様の所為となっている。御伽番の日はねね様は夕方になるとそれはそれはそわそわされており、その日は皆定時退庁することが経産部の不文律だ。恐らくは仕事の話など言い訳で、一分もせずに一刀様に可愛がって頂いていたのだろう。叔母が『ツンデレは病気』と言っていたが、姉のそれはともかく頬を染めたまま怒っているようでいて口元が緩みかかっているねね様のそれはとても愛らしいものだ。

 

「ま、全く…良いですか、柳花」

「はい」

ああ、いつものお説教だ。

 

「柳花はいつまでも清い体でいるのですよ」

ねね様が一刀様の事を考えていて、目の前に私がいると必ずされるお説教だ。これを聞くといつも胸に生温かいものが沸き上がり、笑みを抑えるのに心地よい苦しさを感じる。

 

「はい、ねね様」

嘘です。

私は既に身も心もとっくに一刀様の物になっています。…くふ。

 

「柳花はまだ色事等に構わず、しっかり勉強することが必要な時期なのです」

「はい」

一刀様に性の勉強を体の奥深くに教え込んで頂いています。それはもう、ずっぷりと。

 

「と・く・に!あの種馬には、必要以上に近づいてはなりませんぞ!」

「はい、仰せのままに」

必要な時は必要なだけ、熱く濡れた身体の奥まで、敏感な粘膜や喉の奥までも近づかさせて頂きますが。くふふふふ。

 

「最近は些細なきっかけであいつの毒牙にかかってしまった者も居ると聞くので十分気をつけるのです」

「はい、注意致します」

きっかけは、確かに些細かもしれない。

 

私が潁川の実家に居た頃はたまに帰郷すると曹操様の事しか喋らかなかった姉がいつの頃からかその人の悪口しか言わなくなり、姉と並んで優秀で勝気だった叔母までが特殊性癖で有名になって入れ込んでいる一刀様という方とは何者だろうと思ったのが入庁前。

就職したのを機に会ってみたいと言っても姉は碌に取り合ってくれず、冀州の仲間に頼んで『桂花の妹です』とお目通りしたら困ったように『桂花はきっと荀諶さんがとっても大事だから会わせなかったんだよ』と言われ、あんな偏屈な姉を庇えるとは優しい人なのだなと思ったのが一年ほど前だっただろうか。

そして御遣い等でちょこちょこお会いしていたある日、こっちに勤めてからすっかり変わっていた椿(審配)さんから

「柳花ちゃんもそろそろお年頃だからぁ、ちょっと社会勉強しておいた方がいいんじゃなぁい?」

と、昔と違って底知れぬ深さを湛えるようになった黒い瞳に誘われた。

その社会勉強の行先は後宮の寝室の脇にある、硝子張りのように見える――――後で名を知ったが『まじっくみらー』の小部屋だった。

 

その後見たものの衝撃は忘れない。

知識が全く無かった訳ではないが、ぼんやりと想定していたものとはかけ離れていた。

支配する雄と、隷従する雌。情欲に溺れる二匹のケダモノ。

それは、私の心の奥底に眠っていた倒錯的な欲望が暴き立てられた夜だった。

事が済み、一刀様が休まれた後に小部屋の扉を開けて腰が抜けて立てない私に

「ちょっと刺激が強すぎたかしらぁ?…でもぉ、柳花ちゃんも、い じ め て 欲 し い で し ょ う ? 一刀様、に」

と、太腿を伝うものもそのままにそう問いかける椿さんに、私は頷く以外には思いつかなかった。

 

しかしそこからの壁は中々に厚かった。

私は姉に似て顔立ちはそれほど悪くない自覚があった。体つきも姉に比すればまあましなモノを持っており、素性も割れていたので世の皇帝と呼ばれる人物ならとりあえず味見位ならされるものだろうと思っていたが、それはかなり甘い考えだと言う事を思い知らされた。

姉は当てにならない事は分かっていたので叔母伝手でと考えたが、その叔母にも『あんたが考えてるよりだいぶ一刀様身持ち固いし、最近周囲の警戒もキツイからまともじゃまあ無理よ』と執務から顔も上げずに突き放された。

しかし日に日に思いは募り、ある日思い余って御遣いを口実に直接一刀様にお召し頂けるよう伏してお願い申し上げたが、叔母の予想通り自身を大切にするようにと諭されつつ人生初の告白はやんわりと斬り捨てられてしまった。

しかしそれで諦めるような荀家の血ではあるものか。一策を講じ、冀州の先輩扮する売春の仲介人から金を受け取る現場を一刀様に目撃させ、目論見通り割り入って来られどうしてこんな事をと問われる一刀様に人生最高の本気で、一刀様の物になれぬ人生なら慰み者として捨ててしまっても構いませんと泣いて訴えた。これで駄目ならもう本当にこのまま娼婦に身を落してもいい。その覚悟を決めた願いに何かを感じて頂けたのだろうか、ややあってここじゃ人目がある、俺の部屋に来てちょっと話そうと肩を抱いて下さった。

 

その後はまあ、お察しの通りだ。

私の性癖等知らぬ一刀様はお優しく、あくまで処女の恋人を抱くように御自身のものにして頂いた。

二度目の御伽には思い余って生協で買った拘束具を持参したが、『うんひょっとしてそうかなって気はしてた』と驚かれなかった事にこちらが驚いた。血は争えぬとはこの事なのだろう。

 

「柳花には身近に悪い見本が有り過ぎなのです。殊に荀攸は雌奴隷などと自称して、あんなものは絶対に見習ってはいかんのですぞ」

ねね様が、私が既に一刀様の性奴隷だと知ったらどんな顔をされるだろう。絶望して顔色を失ってくれるだろうか?それとも嫉妬で怒ってくれるだろうか?ああ、どうせだったらその現場をねね様に見て頂きたい。清くあれとあんなに何度も念押しされた私が、熱く逞しい一刀様に蹂躙されて歓喜の声を上げているところを縛りつけたねね様の目の前に晒したい。そして私の中から溢れ出した一刀様の物がねね様の御顔を汚して…くふ。くふふ。

いやそこまで来たらそれだけでは勿体無い。更に衝撃の現場を目撃して自失しているねね様を一刀様が背後から抱え上げて、ズブズブに突き刺さったそこを私が舐めながら逐一事細かに実況し、羞恥と快楽の涙と涎に塗れた忘我の恍惚にねね様を堕とすのだ。さらに二人で一刀様の前にお尻を並べて…

くふっ。

くふふっ。

くっふふふふふふふふふふふふ。

 

「柳花?聞いているのですか柳花」

「あ…申し訳ありません、ねね様」

「全く、柳花はとても優秀ですが最近たまに上の空の事があるのです、気をつけるのですぞ」

「はい、心致します。ところでねね様、最近ちょっといい酒が入りましたので来週末にでも一杯如何でしょうか?」

入っているのはお酒だけじゃなく、椿(審配)さんからの伝手で入手したとあるお薬もですけれどね。

来月には寮から後宮に移るのだから、もうねね様に隠す必要もない。来週末の当番表の名前もその他(六)から実名に変えよう。

くふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ。



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司馬日記外伝 究極のメニュー?

その後の、とある流琉と季衣です。
白蓮の話ではありません。


「ね、ねえ!本当に兄さまはこっちなの!?」

「うん!今度こそ間違いないから急いで!」

困った表情を浮かべている流琉の手を引きながら走り続ける。

ここに来るまでにわざと何度も行先を間違え、あちこち連れまわされた彼女の額にうっすらと汗が浮かぶのを見てボクは確信した。

時は来たと。

 

――――ここに辿り着くまでに溜め込んできた静かな怒り。

そう、ボクは怒っていた。

理不尽な暴言に心底怒っていた。

これほどの怒りはいつ以来だろう?兄ちゃんの膝を奪われた時以来だろうか。いや、その時でさえここまでは怒ってはいなかった。

 

 

---------------------

 

「あ、ちんまい子達の食べる方の子だ!」

「ほんとだー。はろはろ~!」

「…こんにちは」

廊下の向かいからやってきた茶髪と金髪の、自分よりも少しだけ年上らしい女の子達にもうそんなに小さくはないんだけど、とは思いながら会釈を返す。

元気な人は嫌いじゃない。でもこの人達は兄ちゃんがあまり近付いちゃいけないって言ってた人達だ。いや、兄ちゃんだけじゃない。魏中の人たちが『あいつらと関わるな』と釘を刺してくるのでもう耳にタコだ。

悪い人には見えない、と言うか悪い人では無いらしいけれどとても迷惑な人達らしいので、すっと脇を通り抜けようとしたところに声をかけられた。

 

「あっ!ねえこれからあの子のご飯食べるの?」

「…そうですけど」

「そうなんだー、いーなー!」

「あの子のご飯すっごい美味しいよねー!」

「あ、はい」

いつだったか流琉が兄ちゃん(とボク)の為にご飯を作った処にこの二人がやって来て、味見させてと言ってぱくぱく食べ始めたことがあった。

元々多目には作っていたけど兄ちゃんの分が無くなっちゃわないか流琉がハラハラしていたのがありありで、美味しい美味しいと言って食べ続けた二人にもうやめて、とボクが声をかけようとしたところで劉備さまと関羽さんがやってきて二人を連れて行ったので事なきを得た。帰り際に関羽さんが『よそ様のご飯にたかっていないでこの義母の料理を食べなさい』と叱ると、途端にそれだけは許してと泣きながらも引きずられて行ったのが印象に残っている。

流琉の料理が褒められたのでつい甘くなってしまいそうだったけれど、ついて行ってもいーい?と聞かれたら今日は二人分しかありませんから、と断る心の準備をしていたら予想していない、しかも聞き捨てならない方向へと話が流れた。

 

「でもさでもさぁ、おにぎりだけは白蓮さんの方が美味しいらしいよ?」

「あー!そうだねぇ!」

自分の表情が硬くなるのを感じる。

流琉の料理は大陸一だ。華琳さまのも美味しいけど、誰が何と言おうと流琉が一番だ。兄ちゃんだっていつも美味しい美味しいって食べている。何より、ボクは流琉が兄ちゃんの為に一生懸命作ってるのを知っている。作っている最中だけじゃない。暇があれば料理の本を見ているし、試作も重ねて味見役のボクが『これでも充分美味しいよ』って言ってももっと美味しく出来そうだから、と言って研究の手を緩める事はない。

そして、兄ちゃんが食べているのを見つめているその表情。あの優しい瞳に流琉の深い愛情、彼女の料理の絶対的な尊さをボクは確信している。

 

「…そんなことないです」

「え~?でも、ねェ?あの作り方チョー特別だからさぁ」

「んふふー、そぉだよねぇ?ちょっとあの娘には作るの無理って言うかぁ」

いやらしい目つきで笑い合う二人に、流琉の誇りを傷つけられたように感じる。

「絶対流琉の方が美味しいです。流琉に作れない料理なんてありませんから!」

そうだ。どんな難しい料理だって、華琳さまと同じ料理だって、見た事も無い筈の天の国の料理だって流琉は作ってみせて兄ちゃんを感心させてきた。

 

「えぇー、本当にぃー?」

「無理無理、無理だって♪」

「無理じゃないです!」

「あの娘もきっと出来ない、やらないって言うよぉ?」

「言いません!兄ちゃんの為の料理なら!」

 

ニヤニヤしながら絶対?と念を押してくるのに絶対です、と即答した。じゃあ作り方教えてあげるよ、と言った二人の瞳は邪悪だったと思うけれど、その時のボクはそんな事には思いが及ばなかった。

 

 

---------------------

 

やっと着いた。

白蓮さんに出来て流琉が出来ないなんてはずがない。

 

「えぇっ?ここなの!?」

「うん」

目的地の調理場に辿り着くと、お腹が空いたと言って作り方を教えてもらい、窓の脇に置いておいた御飯釜がほどよく蒸れているのをちらりと確認する。

 

―――でもあの子、絶対やろうとしないんじゃなぁい?

 

やろうとしないのなら手伝ってやればいい。ボクだってお手伝い位なら出来る。

「ほら、ここの窓から見て」

この時間は兄ちゃんは演習の閲覧で、この炊事場の窓から見える閲覧台にいる筈だと言う事は予め調べてある。

「あ、ほんとだ…でも呼んでたんなら向こうまで行かないと」

「おーい、兄ちゃーん!!ほら、流琉も手振って」

「え、うん」

 

流琉が疑問を挟む余裕を与えず、兄ちゃんを大声で呼ぶ。

白蓮さんの作ったそれが美味しいと言うのなら。

流琉が作ったならもっと美味しいはず。

兄ちゃんにとって、誰のものよりも美味しいはず。

流琉が兄ちゃんに手を振るために挙げた右腕の付け根にうっすら汗が浮かんでいるのを一瞬確認すると、湯気を立てる御飯釜から素早く一盛り掬い取り。

 

こぼさないよう、ぺたりと優しくそこへ押し付けた。

 

 

「みぎゃあああああぁぁぁぁぁっ!!??」

 

 

 

---------------------

 

「ほ、本当にいいですから!食べなくていいですからそんなの!私別にちゃんと作りますから!」

「…ボクは兄ちゃんに食べて欲しい」

「季衣は黙ってて!」

 

執務室の机を挟み、目の前に立つのは冷水で冷やした手拭いを右脇に挟み、真っ赤な顔して訴える流琉。チラチラと上目遣いでこっちを見るあたりに無意識の葛藤が感じられる。

隣にはその流琉からタンコブをもらった季衣がふてくされて並んでいる。

「ま、流琉。季衣は良かれと思ってやったんだし。さっきから何度も謝ってたんだから許してあげなよ」

「…そ、そこはそんなに怒ってはいないんですけど…。とにかくその…」

うん、今目の前に出された具なし海苔なしの御飯の塊ね。

 

(詠)

(何よ)

傍らに立つ詠とアイコンタクトする。

 

(二人からめっちゃ食べて欲しいオーラを感じる)

(食べるんでしょ)

(流琉は食べるのはおかしいけどでも捨てられたらショックって顔に書いてある)

(だから食べるんでしょ)

(いやうんそうなんだけど)

(最近ボク本当にあんた尊敬するわ、主に悪い意味で。お笑い芸人と太鼓持ちを足して二で割らないような皇帝よね)

(悔いはない。ただ後で水持ってきて)

(分かったわ)

 

ため息は見せない。

「ま、これはね。勿体ないし、季衣の気持ちが入ってるから――――」

 

 

---------------------

 

「子義姐さん子義姐さん!さっき天井裏警備から帰って来た周泰が教えてくれたんスけど、一刀兄貴をイチコロに出来るおにぎりの作り方があるらしいッスよ!」

「一刀兄貴これ大好物で、公孫瓚って奴と典韋って奴がこれ食わして朝までメッチャ可愛がられたらしいッス!で今、一刀兄貴腹減ってるから作ったらどうかって!」

「へ?おいマジかよ、すぐ作るから教えろよ!」



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司馬日記外伝 最近、相棒の様子がちょっとおかしいのはどう考えても一刀兄貴が悪い

いつも皆様の御笑覧有難う御座います。
その後の、とある舎弟のお話です。


「なあなあ、知ってるか」

「あ?何をだよ」

 

うだつの上がらない田舎暮らしに飽き飽きし、相棒と連れ立って都に来てから早や数か月。

運良く子義姐さんと再会し『おめーら他所行かすと(過去の)何喋るかわからねーからあたしの軍に入れ』って言って貰い、秀(張英)共々再び姐さんの舎弟…もとい、小隊長にしてもらってからは花の都暮らし。

都は色んなものが東呉の田舎と違い、いまだに日々驚くことばかりだ。

物がいっぱいある。河が少ない。やたら治安が厳しい。他所の国の連中が普通に歩いてる。役所に行くとやたら女ばっか居る。昔見た時は鬼か夜叉か羅刹じゃねえかって思った孫策が何この軽い姉ちゃん?て感じになってる。

そして何より、姐さんがすっかり変わっていた。いや、あたしらと話す時はそれ程でもないけれど。

一刀兄貴とイイ仲になって、昔カッコ良かったのがすっかり可愛い女の子になっていたのは想像もつかない。

上目遣いで『あのっ、一刀様っ』とか東呉時代じゃ聞いた事無いキレーな声で敬語とか使ってて、あたしらも初め見た時は姐さん誑かした優男と思って〆てやろうかとしたけれど、その後の姐さんの御説教を聞けば皇帝様じゃねえか。

なんだか他所の偉そうな連中も一刀兄貴には頭が上がらないらしいし話してみりゃ悪い奴…悪い方じゃなさそうだし、一刀兄貴なら姐さんを任せられる。ゆくゆくは姐さんも皇后様だ、孫家の姫なんざ目じゃないぜ。

これからはこの御両人を見守っていくんだ、ちっと給料安いけど。

そんな休日、相棒がにやにやしながら二段寝台の上段から顔を出した。

 

「姐さんとかがいる後宮によ、秘密の小部屋があるんだってよ」

「秘密の小部屋ぁ?それがどうしたよ」

「っち、絢(于糜)おめー気が利かねえなあ!」

「余計なお世話だ」

あたしが馬鹿な事は否定しないが馬鹿に馬鹿と言われると腹は立つ。

いよいよ秀(張英)が面白そうに口の端を吊り上げる。まあこの顔をしている時は大体碌でもない事を考えている顔だ。

「あそこにゃ一刀兄貴の女達がいっぱい居るだろ?」

「ああ」

「姐さんも居るだろ?」

「ああ」

「姐さんだって一刀兄貴と夜な夜な『にゃんにゃんっ』ってしてるだろ?」

「『にゃんにゃんっ』って、お前…」

指を猫招きのようにくいくいっと曲げる秀(張英)に、馬鹿じゃねえかって目で答えるが全く意に介する様子がない。

 

「つまりよ、そういう『にゃんにゃんっ』ってする部屋の隣に、『まじっくみらー』っつってこっちからは見えるけど反対からは鏡にしか見えない窓で仕切られた部屋があるんだってさ!」

「…おい、お前…」

漸く秀(張英)の言いたい事が掴めて来た。

「しかもだ!今夜、姐さんその部屋で兄貴に可愛がって貰うんだってよ!…な、絢(于糜)、つまり今夜は姐さんの晴れ舞台って訳よ、これを御見届けするのはやっぱ舎弟の務めじゃねえの!?」

「ばーか」

っとに、この馬鹿な相棒は自分は処女の癖に碌なことを考えない。姐さん、こいつほんと馬鹿でほっとけないんで、すいませんが。

 

「…鍵とか身分証とか、もう手に入れてんだろうな?」

「当然よ」

秀(張英)が右手につまんで振って見せた鍵と通行許可証を見て、あたしの口の端も少し吊り上がっていたかもしれない。

 

 

 

 

-------------------------------

 

震える手で音を立てないように鍵をそっと回し、静かに扉を押して左右を見回す。

(誰も居ねぇ、行くぞ)

後ろの秀(張英)に小さく声を掛け、がくがくと笑い出しそうな膝を懸命に踏み出して廊下を小走りに駆けだす。

後宮の門を抜け、夜の街を走り、宿舎まで一気に駆け抜けて自分達の自室に飛び込んで、追われてる訳でも無いのに素早く扉を閉めて鍵をかける。

扉のすぐ下に二人でへたりこみ、部屋には全力疾走してきた自分と相棒の荒い息だけが響く。

 

「…凄ェもん、見ちまったな…」

気まずい沈黙に耐え切れず、思わず呟いた。

「やばいって…マジやばいって、姐さんも兄貴も…あ、あんなの…」

明かりを灯していない部屋に差し込む月明かりが、首を振る秀(張英)の赤い頬を照らしたような気がした。

 

「…寝ようぜ」

「ああ…」

正直眠れそうにないが、このままここに居ると自分がとんでもない事を喋り出しそうな気がして怖い。

「あ、…あたしやっぱ、風呂入るわ…」

「ああ…あたしもお前の後、入る」

腰を上げようとした秀(張英)が何かに気付いたように呟くのを聞いて、あたしも自分の内腿に伝う汗らしい何かに漸く気が付いた。

 

 

-------------------------------

 

「今日はあんまり食べないんですね(どうかしたのかおめーら)?」

「あ、いえ…」

「大丈夫っす…」

「何だか今日は二人とも大人しいね」

折角姐さんと一刀兄貴が飲みに誘ってくれたけれど、半分拷問に感じる。なら何故断らなかった?尊敬する姐さんだし、姐さんのイイ人の兄貴だから。

揃って俯き加減でちびちび飲みながら姐さんと兄貴をチラチラ見ていた秀(張英)とあたしは確かに不審だっただろう。

姐さんがつくねが美味いって言ってたけど、正直味なんてさっぱ分からない。つか、それどころじゃない。

 

「それでですね、明命ったら――――って、―――――で」

鍵掛けた瞬間、姐さんが兄貴に抱き着いてちゅーしてた。絶対舌入ってた。舐め回してた。べろちゅーってやつだ。べろちゅー。

 

「それは明命もまた無茶したね」

――――一刀兄貴の指が、姐さんのお尻から背中を撫でまわしながら、器用に半脱ぎにさせてた。やらしい指使いってああいう事だったのか。

 

「そしたら雪蓮が面白がって――――なんて言うんです!」

姐さんがすっげえ愛おしそうにしゃぶって。あれ飲んでた。絶対飲んでた。めっちゃ幸せそうなトロ顔で飲んでた。

 

「あはははは、思春は怒ったんじゃない?」

御猪口に一刀兄貴が口をつける。

そんで、一刀兄貴が姐さんの…に、口つけて。

やばい。あんな脚開かれたらあたし死ぬ。無理。されたら死ぬ。

 

「そうなんです、もうカンカンで!」

――――子義姐さんのそこに、一刀兄貴のアレがずっぷり。それはもう弁解のしようもなくずっぷり。

今目の前で仲良さげに清い交際っぽく話してる陰で、二人きりの時はいやらしく絡みあう雄と雌。やばい。

 

「そっか、今度思春宥めておかないとなぁ」

「いえ、一刀様関係無いじゃないですか」

「無いっちゃ無いけど、ほっとく訳にもいかないよ」

「一刀様、御優しいんですね!」

――――優しいなら鏡の前で『ほら…見てごらん』なんて言うか。マジックミラー挟んで至近距離で見せられたあたしらは目玉と心臓飛び出るかと思ったってのに。

でも姐さんもやあっすごいっとか言いながら嬉し恥ずかしそうにちょっともうなんて言ったら良いのか分からない腰の振り方をしてたんなら優しいのか。もうわからない。あたしは自分がアホなのは知ってるけど理解を超え過ぎててマジでわからない。

 

「――――それじゃ、そろそろ上がろうか」

どれ位時間が経ったんだろう?飯のついでにちょっとだけ、の筈だったんだがあの夜の一部始終が頭の中に流れ続けて全く時間の感覚がない。

「はい!じゃ、貴方達も…(そろそろ帰れ)」

「あ…いえ、自分ら明日非番なんで…も少し飲んできます。な」

「あ、はい」

姐さんと一刀兄貴と同方向に一緒に帰っちゃ無粋だろう。幾らあたしらが頭悪くてもその程度の気は回る。

 

「そうですか?じゃ、これ御代ですから。余り羽目を外し過ぎないようにして下さいね(面倒起こすんじゃねーぞ?)」

「あ、この店俺のツケ効くよ?」

「いえ、あの…この二人の分は…」

「あ、そうか」

一刀兄貴が姐さんの言葉に何か気づいたような表情を浮かべる。

「私の分は一刀様に御馳走になりますから、この二人の分は私出しますね」

「ごめん、ちょっと油断してて現金あんまり持ってなかった。陽ありがと」

 

御馳走様でした、と頭を下げながら一刀兄貴の腕を取って御機嫌な姐さんを見送って、二人で再び席に着くと無意識に安堵のような溜息が出た。

「…なぁ、さっきの姐さんのツケの話知ってるか?」

その吐いた息の分を吸うように、猪口に口をつけながら秀(張英)がぼそりと呟いた。

 

「どういう事だよ」

「兄貴と、兄貴のオンナは兄貴と一緒だったらここ(の店)タダで…つか、一刀兄貴の経費で飲めんの。あたしらの分は出ないから姐さんが出してくれたって訳よ」

「へぇ…姐さん酒好きだから飲み放題で良かったじゃねえか」

「はっ、一刀兄貴の前で姐さんがそんな大酒飲むかよ」

「そりゃそうか」

 

二人して酒に口を付け、周囲の喧騒の中にあたしらの間にだけ沈黙が訪れる。

「なぁ」

「ん」

「もしもだけどよ」

「ああ」

チラ見してくる相棒の顔が赤い。こいつ、こんな酒弱かったっけ。前はアホかってくらい飲んでたし、うるせえから黙れって言われるくらいの騒ぎ酒じゃなかったか。

 

「もしもだけどよ…一刀兄貴がよ」

「兄貴が?」

秀(張英)が猪口の酒を妙に品よくすっと空ける仕草に、変な新鮮さを感じる。

 

「ここの酒、タダで飲ましてくれるっつったら、お前…断れる?」

「へっ?」

なんでタダ酒の話が急に。

つかタダ酒なら幾らでも飲むけどよ、ってかちょっと待て。えっここの酒がタダって事はおい。いや、待てって。

酒が勢いよく頭に回ってくらくらする。

「おい、おま…」

「兄貴が絢(于糜)の肩抱いて、『ここの酒タダで飲んでいかないか』ってったらさ、お前…断れる?」

「い…、いやいやいやいやいや!無えって!無えって!姐さんみてえな別嬪さんでお偉いさんなら兎も角よ、あたしなんか可愛くねえし一刀兄貴の方でお断りだろ!?」

タダ酒の代わりに『じゃちょっと行こうか』とか言ってあの部屋連れてかれて、素っ裸にひん剝かれて体中舐めまわされて一刀兄貴のアレがあたしの・・・?

いやいやいやいやいや。ないないないない。考えるだけ無駄なはずなのに心臓がばっくんばっくん言うのは、こないだ見たアレが強烈過ぎたから。

 

「そか…」

秀(張英)は空けた猪口から酔眼を離さずに、手酌でまた満たしていく。

気づけばあたしの猪口も空だった。秀(張英)の後に注ごうとして、いつまでも猪口に口もつけず一本しかない徳利を持ったまま無言の相棒に、言い様の無い違和感を感じる。

 

「おい、酒…」

「ああ…」

徳利を渡すように促すと、片手で押し出しながら頭を抱えるように突っ伏した。

おかしい。

おかしいけれど、これ言っちゃヤバい気がする。

「もしかしておめーよ、」

そんな訳は無い、何年つるんだ相棒だ?こんな軽口くらい言えない筈が無い。だのに、あたしの喉はかすれかかっている。

「おめー…ひょっとして断れねぇかもとか?」

 

顔を伏せたまま、あたしヤバいわ、と呟いた秀(張英)が耳まで赤かったのは酔い過ぎたから。飲み過ぎたからあらぬことを口走ってるんだ。相棒思いのあたしはおめーちょっと飲み過ぎだよ、帰ろうぜと窘めた声が擦れていたのは飲みすぎのせいだ。

こないだとんでもないもん見せつけられたからちょっとおかしくなってんだ。あたしらそういうの免疫無かったし。よく寝てまた仕事はじまりゃすぐに忘れるさ。

 

その時は、そう思っていた。

 

 

 

-------------------------------

 

その数日後、あたしらは休みがかぶって自室でごろごろしていた。

「おめー、こんなの読んでんの?」

「あー…子義姐さんだってよ、ちょっとは学つけて一刀兄貴の前に出ても恥ずかしくないようにしろって言ってたじゃねぇか」

「…ま、そうだけどよ」

 

今まで本らしい本なんてろくすっぽ読みやしなかったあたしらの部屋に、珍しく雑誌が放り出されていた。

まあ姐さんが言ってたのは事実だが、いっすよどうせあたしら馬鹿っすからとか言って二人して聞き流してたのが気が変わったのか。

それにちょっと本読んだ位で変わるような頭じゃないだろうが、姐さんが読めって言ってたのはこういう女もんの服飾系の雑誌だっただろうか。

 

 

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普段はあたしらは基本的に軍務だ。姐さんくらい偉くなると事務もあるらしいがそんなのあたしらには到底無理で想像さえ出来ない。

ガチの殺し合いがない分、実戦訓練は結構厳しい。ついさっきも模擬戦で徐盛に秀(張英)共々に湖に叩き落され、味方が全滅したところで休憩指示が出て舳先で寝ころんだところだ。

 

「…ったくアイツ(徐盛)、本気過ぎねえ?」

「ああ。徐盛さ、前に陳武と兄貴のお世話で遺恨(司馬日記外伝 酒楼「三国一」の落書帳3 参照)あったじゃん。だからじゃねえ?」

「それとよ、こっち姐さん居ねえからって陳武の指揮も悪りいよ、新型装備だか知らねえけど真っ向突っ込んだって勝てる訳ねえじゃんよなぁ」

「………………」

「けどよおめー見た?あたしの剣捌き!徐盛相手に三合持ったぜ、アイツ先頭で飛び移って来てこっち見もしねえで一発で殴り倒した気になってたの、でもあたし超まぐれで受けきってたから『あれ?まだ居る』みてえな顔してこっち見てさぁ、流石に四発目は貰っちまったけどさ…なあ?おい、秀(張英)?」

返事の無い隣の秀(張英)を見ると、いつの間にか体を起こして桟橋を見つめていた。

 

その視線の先には、一刀兄貴。案の定過ぎる。

いつの間にか船を寄せたのか、徐盛がその傍に寄り添って何か嬉しそうに話している。さっきまで鬼のような表情で殴りかかって来ていたのが嘘みたいな女の表情だ。

「(……………!)」

びしょ濡れで近くの船の舳先に座り込んでいる陳武がクッソ睨みつけてるあたり、大方今の模擬戦の活躍自慢だろう。

「(………………)」

「(……………!)」

一刀兄貴が何か褒めたらしく、徐盛はぱっと花が咲いたような笑顔を見せてぴょんぴょん飛び跳ねる。学卒の最年少将軍だか何だか知らねえけど、軍人がぴょんこら跳ねるな。ガキか。

「(……………!)」

「(………………)」

徐盛が兄貴の方へ頭を寄せ、その頭を兄貴が撫でると猫のように目を細める。そして一度兄貴の胸に顔を埋めた後に頭を下げて徐盛軍の船に飛び乗り、一刀兄貴からは顔が見えない角度に立つと口の端を釣り上げて陳武に向けて勝ち誇った笑みを浮かべながら中指を突き立てた。

 

アイツいい根性してるよな、と傍らの秀(張英)に言おうと振り向くと、その秀(張英)の瞳は桟橋を湖岸に戻る兄貴の姿をずっと追っていた。

やべえ。コイツ重症だ。

 

「あ…!」

僅かに重い気持ちになりかかった処に、妙にかわいい秀(張英)の小さな叫び声がした。その視線の先を見ると、兄貴が歩きながらこっちを見ていた。間違いなくこっちを、あたしらを見ている。

軽く手を振られて、二人して会釈を返す。すると、兄貴は立ち止まって何か口をゆっくり動かした。

 

「(…………)」

二人して大きく頷き返すと、軽く手を挙げて今度こそ兄貴は岸に帰った。

 

「なあ絢(于糜)!今兄貴さ、兄貴絶対『頑張れ』って言ったよねぇ!?」

「言った!言ったと思う!」

「ああ~やばい、あたし頑張っちゃうよ!やっば、どうしよう!?あたし今日の模擬戦優秀賞目指しちゃうよ!」

「いや頑張ればいいだろ!?あと優秀賞流石に無理だから!」

ついさっきから急にきつくなった湖面の照り返しのせいだけじゃなく、真っ赤な頬を両手で抑えながら緩み切った表情でぴょんぴょん飛び跳ねながら身悶える相棒(本人気づいて無いだろうけど)。こいつにこんなかわいい声出させて女っぽい喋り方させる一刀兄貴が空恐ろしい。

 

それに言えない。兄貴とガッチリ目が合って、頑張れって言われたのは実はあたしだったとか。

ああ、それにしても今日の湖上は暑い。こんなに照り返しはキツかっただろうか、薄曇りだったはずのに。

 

 

 

-------------------------------

 

そのまた数日後には、たまには街行こうぜって言いだした秀(張英)について行った。

「お…あった。ここだ、入ろうぜ」

「へ?おい、マジでここ入んの?」

「…ああ」

「ここ何屋だか知ってんのか!?」

「知ってるさ、下着屋だろ」

「いやおめー、サラシなら寸法関係ねぇしこーゆーの金かかるから要らねえよっていってたの秀(張英)じゃんよ」

「そりゃ、そうなんだけどよ。でもよ、あたしらだって子義姐さんの舎弟なんだからよ、そんな…その…兄貴の前とかでだらしねぇカッコしてちゃヤベェって」

そう解るよう解らないような事を言いながら頬を染めて少し俯いた秀(張英)の表情は、いつか見たような気がする。

 

こういう店の店員マジうぜえ。こんな喋りっぱなしの奴らの言う事聞かなきゃ下着一つ選べねえ自分が心底情けねえ。

つか、胸がいい形に保てますよとかこれなら彼氏さん喜びますよとかあたしにゃマジ関係ねえし。…関係ねえし。

 

だから秀(張英)、店員の言葉にそんないちいち照れんなよ。

 

 

-------------------------------

 

ところであたしらも下っ端とは言え軍人なんで、姐さんが居なくても庁舎内で一刀兄貴と擦れ違う事位は無くは無い。

「あ、一刀兄貴ちーっす」

「…ちわっす」

「あー、お疲れー」

妙にでかい鞄を抱えた兄貴に会釈する。反射的にあの夜の事を思い出しそうになるけれど、日が経ってくれたおかげで記憶が滲んできている事にほっとする。このまま記憶から消えてしまえばいい。

 

「あ、そうだ」

「ひゃいっ!?」

そのまま通り過ぎかかったところで、背後から一刀兄貴に声をかけ返されると隣の秀(張英)が素っ頓狂な声を上げた。

「今長安から出張帰って来て思い出したんだけどさ、前に建業案内してもらうはずだったじゃない?」

「えっと、あ、は、はい!」

「そん時は何か色々あったらしくてちょっと別の人になっちゃったけど、又今度薫さん…張昭さんに呼ばれてて建業に出張あるからさぁ、そん時は案内してよ」

「えっ………」

 

何固まってんだこいつ。秀(張英)が絶句して口を開けたまま答えず、兄貴が『あれ俺何か悪いこと言った?』って顔になりかかってるんで代わりに割って入ってやる。

「あ、ハイ、そん時ゃお供しますんで。あでも姐さんこそ兄貴について行きたいと思うんで、近くなったら姐さんも誘ってやって下さい」

「ああそうだね、陽(太史慈)にも声かけるよ。じゃあね」

「ハイ。失礼しゃーっす」

会釈して別れ、荷物の金具をカチャカチャ鳴らしながら去っていく兄貴が見えなくなるのを待って、秀(張英)に肩を寄せた。

 

「おめー、何固まってたの?兄貴の御供なら(経費だから)タダで里帰り出来るじゃねえかよ、付いてこうぜ」

「ば、馬鹿っ、何簡単に受けちゃってんだよ!?」

「お”っ」

真っ赤な顔して脇腹に一発くれやがった。

「何すんだよオメー!」

「お前こそ分かってねえのかよ!?」

「何をだよ!?」

「兄貴の地方巡幸に付いてった女で…夜の御供もしてねえ女なんて居ねぇんだぞ、一人として!必ず夜も御供してんだよ!」

「………へっ?」

 

茹りきった顔の秀(張英)の口から絞り出された言葉が漸く頭に届くと共に、血も頭に上っていく。

「……嘘だろ?」

「嘘じゃねえよ……あああもう馬鹿っ、あたしまだ碌な下着も持ってねえのにどうすりゃいいんだよ!?」

「は、話飛びすぎだろ!?」

「やり方だってわかんねえし!噛まないように飲み込むとかお前出来んのかよ!?」

「でっ、でででで出来る訳無いだろ!?つかひん剥かれた時点であたし生きてられねえよ!」

「…もうこうなったら姐さんに」

「あ、ああ、お断りして」

「もう一回見せてもらわねえとマジでやり方わかんね、どうしょうもねえよ」

「そっちかよ!?…ところで前回もよ、元々はあたしら案内するはずだったじゃん?兄貴の方はさ…その…そういうつもり、だったんかな…?」

「…だったんじゃねえの?その頃はさ、あたしら全然そんな事考えて無かったけどさ。ある意味良かったぜ、下手すりゃ兄貴に大恥かかすっつうか、御不興買うとこだったかもしれねえし」

「マジか…ま、まあ兎も角よ、近いうち姐さんに相談しようぜ?あたしら建業に付いてってもさ、夜は姐さんだけかもしれないじゃん」

「ああ…」

 

自分で言いながらさっき一刀兄貴に誘われたのは子義姐さんじゃなくて自分等だった事を思い出し、背中にむず痒いものを感じつつ秀と連れ立って自室に戻った。

 

 

--------------------

 

あたしらは基本つるんでるんで休みはなるべく互いに合わすが、そうもいかずにあたしだけ休みの日もあったりする。

「よっ…と」

ここんとこ休みの日には雨降ってて、久しぶりに布団を干せた。最近寝酒は止めたから酒臭い事は無いけれど、あったかくてふわふわの布団の方が気持ちがいい。秀(張英)の布団も干しといてやろう。

そう思い、敷き布団を抱えようとして変な感触に手を止めた。

 

なんか有る。

秀(張英)の敷き布団の背中の部分に妙な板状の盛り上がりがある。何だこれ、と思ってめくってみると、『三国志 呉伝』と表紙に書かれた本だった。

なんだあいつ、服とか化粧品とかの雑誌だけじゃなくてこんな文章っぽい本とか読んで勉強してたんか。

偉いな秀(張英)、でも字ばっかりでどうせあたしには難し過ぎるだろうなと思いながらパラパラッと頁をめくってみる。すぐ閉じるつもりで。いつか褒めてやって、よせやいとか照れるのを楽しみにしようと思って。

 

『―――――穏の濡れそぼった秘部にあてがうと、豊かな乳房を握り締めながら一刀は猛然と突』

「!!」

息が止まる。これ”そういう”奴だ。てか、一刀兄貴の話だ。

…最後の頁まで開いた跡がある。

ヤベェ。あいつヤベェ。本気だ。

とりあえず部屋の鍵掛けよう。

 

秀(張英)が帰って来るまでに、そおっと元通りにしておかないと。絶対に布団めくった事が解らない様に、マジで。読み耽ってる場合じゃねえって。マジで。

 

 

-------------------------------

 

「絢(于糜)。いいから黙って金払え」

「…何言ってんだ?」

ここんとこ一層『病状』が進行した秀(張英)が、赤い顔して紙袋を二つ抱えて部屋に帰ってくるなり訳分からねえ事を言い出した。

 

「…現品限りの在庫処分特価だってぇから二着買って来た」

「いやだから何言ってんだお前?新手の詐欺にでも引っ掛かったのか、都の詐欺師はやたら頭いいから気を付けろって姐さんにも言われてたろ」

「詐欺じゃねえよ!ほらお前…例の建業の時に!あたしもお前も着てくもん無えって言ってたろ、それ用だよ!」

「いやそれまだ全然分かんねえ話じゃねえか、ちょっと見せてみろよ」

こいつの頭の中じゃ建業行って夜の御供は既定路線なのか。しかしあたしの分の服?らしいものがあるなら気にはなる。

「ん、こん中に入ってる奴全部で一組だから。現品しか無えから背丈寸法だけ見て買ってるからよ、合ってるかちょっと着て来いよ。あたしあっちで着てくる」

「お、おう。…なんだこりゃ、全部真っ青なのな」

「ああ、あたしのは全部真っ赤だ」

紙袋の中は妙に量が少なくやたら青くてテカテカしている。全部出してみて、服脱いで、これを着て、それを履いて、これを頭につけて…つけて?

 

「な、なんじゃこりゃぁぁぁあああ!?」

「声でけえ!つか着てから叫ぶんじゃねえよ!」

いつか姐さんの部屋に飾ってあったのを見た、バニーなんとかってやつだ。『これ一刀様の御下賜品でよ、俺にめっちゃ似合うつってスゲェ可愛がってくれたんだぜ』って嬉しそうに言ってたのを思い出す。

「…おう、あたしの方どうよ…」

「お、何かすげぇ…可愛い。女みてぇ」

「女だ、バカ」

秀(張英)の方は真っ赤だ。よく見るとあたしの造作とちょっと違う。てか、ちょっとおかしく…ねえか?

 

「秀(張英)、お前それ…胸見えてね?」

「マジ!?」

「マジ。屈んで鏡見てみ」

「げ、マジだ…」

服の作りに比べると秀(張英)の胸が小さすぎて頂点が見えてしまっている。つかこいつの胸は人並み位あるのは風呂で知っているから、この服がでかすぎるって事だ。

 

「…返品すっか?」

「…いや、特価品だから返品出来ねえし。…あ、兄貴、こういうチラッと見えるの好きかもしれねえから、これでいい」

「お前もう吹っ切ってんな…」

確かに阿蘇阿蘇の何月号かに『チラ見せで悩殺!特集』とかあった気がする。

 

「それよかよ、おめーやつ尻のとこ超やらしい。ほぼ丸見えなのな」

「う、うるせえ!こーゆーのだからしょうがねえだろ!?」

あたしのは秀(張英)のに比べて股下から尻にかけての部分がやたら細い。…上に、伸縮性もあるから何歩か歩くと紐状になりそうだし完全にズレちまいかねない。

「やばい…あたしもし兄貴だったら、絶対この尻撫でまわすよ。つか、捏ね回す」

「そんな、兄貴が気に入るかなんて…分かんねえだろ。つかこれ…お前もそうだけど、ちょっとはみ出てる」

「…そうだな」

 

「…どうするよ?」

と言っても、どうにかするしかないけど。

「舐められた時に『ジャリジャリするのは有り得ない』って阿蘇阿蘇に書いてたし、あたし全部剃るわ。専用の剃刀持って無いから今から買いに行ってくる」

「ま、待てよ!だったらあたしも全部剃るしか無くなるだろ!?あとあたしだって持って無いからついてかせろよ、どこで買えばいいか知らねえんだよ!」

 

だめだこいつ吹っ切れ過ぎだ、早く姐さんに相談しねえと。

慌てて着替えて躊躇いも迷いも無い秀(張英)の後を追った。

 

 

-------------------------------

 

「姐さん相談があるんス」

「お?なんだよ、俺忙しいんだから短くな」

「えっと…」

 

昼飯に食堂に来た子義姐さんの前に自分の配膳を置いたはいいけど、どっから喋ればいいんだ。

「あの、秀(張英)がおかしいんすよ」

「元からじゃねえか」

焼き魚を昔と違って上品に口に運びながら、何でも無い事の様に姐さんに一言で斬って捨てられた。まあ分かるけど。

「いやマジでおかしいんスあいつ、もうヤバイって言うか」

「確かに御前等おかしいよ、人に腋の下で握り飯作らそうってあたりマジヤベェ。ちっと一刀様に教育してもらいてぇよ」

 

ギロリと睨まれた姐さんの目は昔のようで昔とは違う。兄貴に飼われて牙の出し入れ自在になった虎の目だ。

「あんときはすんませんした、でもあれ周泰が言ってたんスよ!?てかそう、その一刀兄貴で」

「一刀様?おめー、一刀様までくだらねー事に巻き込むんじゃねえぞ?事と次第じゃ田舎帰らすからな」

「うぁ……はい…」

姐さんの目尻が増々吊り上がり、一刀兄貴と一緒の時は絶対に見せない犬歯が見える。

言えねェ。言えなくなった。秀(張英)が兄貴にホの字だとか。もう抱かれる気満々だとか。

「お食事中スンマセンした…」

「おう。ん…ところでよ」

「なんスか?」

野菜炒め定食を食べたところで諦めて席を立った時、ふと声を掛けてきた子義姐さんは少し目をまるくしていたような気がした。

 

 

「まあ大した事じゃねえんだけどよ、おめー最近良くなったよな?張英もだけどよ、かわいい下着ちゃんとつけるようになったしよ、いっつも水兵用のだっせぇステテコだったのが小奇麗なミニスカにパンスト穿くようになったんだな。川風でベッタベタの髪も船で使ってた余り紐でばさっと結ぶだけだったのがよ、毎日風呂入って綺麗に梳いてなんか洒落た髪飾りに変えてよぉ、今月号阿蘇阿蘇の『一刀様一推し装具特集』に載ってた奴だろそれ?手だって水軍仕事でガッサガサだったのがそれ丁寧に軟膏塗って爪まで手入れしてんの分かるぜ、俺も今は船乗るの減ったけど呉に居た頃ガサガサだったからな。食うもんだって昔は必ず飯ったら干し肉か魚に酒だけだったのが酒なしで野菜炒めとか食ってるから肌艶も良くなったんじゃね?声もなんか可愛くなってきたしよ、あとは言葉遣いだ言葉遣い」

 

 

…いや、あたしの話なんか今は聞いてないんス。

「さてはお前、」

 

 

いや関係ないっす。マジであたし違いますから。

「惚れた男でも出来たかぁ?」

 

 

 

 

「や、……」

いやいやいやいやあたしは違いますからあたしは違うんであたしは落ちてないから兄貴マジ関係ないしダメなのは秀(張英)であいつが完全落ちちゃってて煽り食ってあたしまで抱かれそうになってるのが困ってて実際やり方とか全然分かんなくてどうすればいいのか姐さんにマジ習わないとダメでどうすれば兄貴が抱いてくれるかとかマジ分かんないしホントやばいのはあいつであたしは関係なくて演習であたしにだけ周りにわかんないように声かけられたとかそんなのどうでもよくてマジどうしたらいいのか分かんなくて。

「なんてな、ハハハ…」

 

 

 

 

 

「し、失礼しゃっす!」

「お、おう!?」

下膳場所に盆を置き、逃げるように駆け出す。

あたしは関係ない。あたしは落ちてない。あたしはまだ落ちてない。まだそこまでは考えてない。あたしは…あたしは?

 

 

昼休みの廊下の喧騒を駆け抜けて、自室へと飛び込む。

「あ?どうしたよ、慌てて。午後半休取っただろ?」

 

「…悪ぃ、真面目な話あんだよ」

「…何だよ」

あたしなりに真剣な顔して静かに語り掛けると、秀(張英)も真顔になる。

「茶化さねえで聞いてくれ。…あたしさ、おめーとダチになってから長ぇつもりでさ。おめーの気持ち…兄貴のな?知ってるつもりなんだ」

秀(張英)がこくりと頷く。

とぼけられなかった事と、彼女自身に自覚があった事に軽く安堵する。…この後、何て聞けばいい?

 

「でさ。関係ないっちゃ関係ないんだけどよ、おめーから見てあたしって…敵に見えるか?ほら、天の国の言葉でらいばる?って奴」

ちょっとずれたような気がするが、あたしの語彙力がこの辺が限界だ。あとは長年の呼吸の、秀(張英)の洞察力に頼るしかない。

 

「…まああたしの気持ちを端的に言っちまえば、絢(于糜)はあたしの敵…『らいばる』なんかじゃねえよ」

「そっか……よかった」

あたしらの間には珍しく、真面目な表情で腕を組んだままの秀(張英)の答えに安堵する。良かった、あたしは一刀兄貴に惚れてない。秀(張英)の心配だけしてやればいいんだ。姐さんが言ってたようなここんとこ色々変わったのは、全部秀(張英)の影響。

 

 

 

 

…だと思ったのは一瞬だった。

 

 

 

 

「お前の兄貴大好きっぷりってちょっと病気だぜ?」

 

 

 

 

「…えっ?」

 

 

 

 

 

「いや、いつか子義姐さんに相談しなきゃとは思ってたんだけどよ。裁縫の本買って来て休みの日ちくちく何やってんだろと思ったら、兄貴のチビ人形作って抱いて寝てるって後宮でもきっとなかなか居ないぜ?あと一刀兄貴の事見過ぎな。船の演習の後、兄貴見かけると全く返事しなくなるってやべーよ。こないだの陸戦演習で『突然横から矢が飛んできてやられた』って言ってたじゃん、あれどう見ても真正面から飛んできた矢がよそ見してたお前に当たっただけだから。それに笑い方変わり過ぎだろ。こないだ田舎から遊びに来た樊能、一刀兄貴に会わせた時にお前が口に手当てて『うふふっ』って笑ってるの見て『キモッ!!マジキモッ!!誰こいつ!?』ってドン引きしてたぞ。それと、こういう事あたしも心苦しいんだけどよ、お前寝言…凄過ぎ。眠ってる間に建業の予行演習し過ぎだから。何言ってたか具体的には言わないでおいてやる、多分お前死にたくなるから。それとちょっと関係あるって言うか、これはあたしもまあ…しない事じゃねえからあんま厳しい事は言いたくねえんだけどさ、その…一人でする時はさ、寝台の上の段にあたしが居ねえの確認してからしてくれな?いやうん…一刀兄貴をそういうののネタにするなって訳じゃないし顔見られるの恥ずかしいから後ろからされたいってのも分からないじゃないけどさ、親しき仲にもなんとやらって言うしさ。まぁそれもこれも一刀兄貴が罪作りって言い方も…ん?お、おい?おい大丈夫か!?お前っ、照れるのか白目剥くのかどっちかにしろよ!?」



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司馬日記外伝 飲み会でやってはいけないNG行動

お久しぶりで御座います。
その後の、とある飲み会での桂花さんです。

ところで突然星のガチエロを書きたくなって書いていたのですが、tinami仕様に出来ず困っておりました。
今後場合によっては発表の場をtinamiから移すかも知れません。pixivかなろうがいいんでしょうかねぇ…


「お疲れ、遅かったわね。まあ座って飲みなさいよ、もう皆大分飲んでるわよ。ところであんた例のあれ、あいつの決裁取って来た?…そう。じゃ明日華琳様から決裁頂くから書式作っといて。…は?いいわよ明日の朝で、飲み屋に来た部下帰らして書類作れとか言うほど私も鬼じゃないわよ。で、何飲むの?紹興酒とかあるけど…はぁ?あんたもそれ?…ホンットそれ只の噂だから!あの変態が清酒が好きだなんてひとっ言も言ってないから!あいつはね、『天の国には米から作った清酒がある』って言っただけだから!…はぁ?あるわよあの種馬と清酒飲みに行った事ぐらい。つか私が呉から二十種類くらい取り寄せてやった宅飲みだけど。あいつ言ってたわよ間違いなく、『この酒は美味いけど清酒だから美味いって訳じゃない』ってそりゃもうハッキリと。…じゃなんで美味いかって?…知らないわよ。つかあいつ本当種馬だから。ホント女酔わして手籠めにすることしか考えてないから、もぉ翌朝とか体中酒臭くって本当最悪。駄目よあいつの十尺以内に近寄っちゃ、孕ませられるから。決裁取る時は書類長い板の先に乗っけて渡す事、いいわね。…は?私?私はしょうがないのよ。そもそもあいつ馬鹿だから人の話碌すっぽ頭に入んないし、しょうがないから隣で噛んで含めるように説明してやってんのよ死ぬほど嫌だけど。

 

 んく…、ていうかさぁ、最近華琳様に九錫をって話があるらしいじゃないあんた知ってる?私あれ反対なんだけど。いや華琳様の官位が上がるのは何も文句は無いのよ?それがあの全身精液男の正式な皇妃の前段階としてってのが有り得ないのよ!華琳様があの変態の正式な妻…あああ考えるだけでもおぞましい!…はぁ?立派?あいつが?ふっ…あんたはあいつと付き合い浅くてあの屑の本性を知らないからそういう風に思うのよ。もう長年、長年あのケダモノと付き合って!ガチクズから多少見れたクズにまで育て上げた私に言わせればまだまだ話にならないわね、あと何年何十年隣で面倒見てやんなきゃいけないかと思うと気絶しそうになるわ。

 

 んくっんくっ…けふ。…酔ってない。酔ってないわよこの程度じゃ。あいつに飲まされた酒に比べりゃ飲んだうちに入らないわよこんなの、あの変態本当鬼畜だから。あの害虫が蜀出張から帰った時、私の為に桂花陳酒とか言う酒を土産を買ってきたとか言うから部屋に持ってこさせたらあの気の利かない馬鹿、杯も持って来ないのよ!しかも私の大嫌いな冷やのままで持って来といて、しゃあしゃあと知らなかったとか言うからどうする気なのよってなじってやったのよ。そしたらあのケダモノ、『ぬるくて杯が要らなかったらいいんだろ』とか言って嫌がる私に無理矢理!無理矢理口移しよ、それも何度も何度も!銚子一本空けた所で桂花の為に作ってきたとか言って木犀(桂花)の髪飾り髪に挿した位で誤魔化せるとか思ってるあたりが心底ウジ虫よね、今更紳士ぶったってあんたの正体なんて知れてるんだからねこの後どうする気なのか白状しなさいよって問い詰めてやったら案の定よ、朝までケダモノ。折角お風呂入って綺麗に髪梳いて、今日買ったばっかりの金木犀の香水とお気に入りの寝間着で心安らかに一人で寝ようと思ってたのに全部台無しにされたわ、もう本当許せないああ許せない!

 

 …ん…、ぷは…。いい?そもそもあいつを育てたのは私なの。本来なら華琳様と口を利くのはおろか見ることさえ許されない程の悪性変態生物をここまでまともにしたのは秋蘭でも呉の姉貴面眼鏡とか白髪おばはんでもなくて私なの。その恩人が日頃の疲れを癒そうと部下達と飲んでるってのに慰労にも来ないとか本当あの変態は恩知らずね。…は?…断った?私が?…会議の時の事?バッカねぇ、そんなもんは社交辞令に決まってるでしょ常識よ常識!それでも『いえいえいつもお世話になってる桂花様是非お酌させて下さい』って来るのが筋ってもんでしょ、それ位出来りゃ私もちょっと位見直してやるのにほんっと何時まで経ってもどんくさうすのろまなんだから!…ん?何よ玄関でキャーキャー騒いで、誰か来たn」

 

 

 

 

「…何しに来てんのよあんた、今日出張だったでしょ?…会いにっ…ば、バッカじゃないのっ?そんな暇あったら仕事しなさいよ仕事、あんた人の半分も出来ないんだから朝起きたら夜寝るまで馬車馬に謝りながら働きなさいよっ、ああもうしょうがないわね私手伝ってやるから仕事戻るわよ!…ああ、あんたたちは飲んでなさい全部私につけといていいからそれじゃあね。ほら行くわよこのグズっ、役所もう閉まってるから私の部屋よ。…開いてない。開いてない、私が鍵閉めた。…はぁ?出来るわけないじゃないの退庁時刻とっくに過ぎてるのにまた鍵開けるなんてどこの暗黒省庁!?今は『こんぷらいあんす』厳しくしてんのにあんた自ら破ろうとか何考えてんの華琳様の面子潰す気!?…嫌よ、だってあんたの部屋チョロチョロ色んなの出入りして落ち着かないじゃない。しょうがないから私の部屋行くけど、私もう飲んでて酔ってるからって変な気起こすんじゃないわよ、絶対やらしい事するんじゃないわよ分かったわね!!」

 

 

-------------------------

 

「あら董昭、どうしたのかしら改まって上奏したい事があるなんて。は?…辞めたい?法制局を?…桂花の下じゃなければどこでもって…はぁ…貴女もなのね、良く頑張ってくれていたから残念だわ。…九錫の件ね、貴女の提案は忘れてはいないけど蓮華や桃香との兼ね合いがあるから今すぐにはちょっとね…桂花が?…まあ貴女がそう言うのも分かるけれど、桂花も叛意でそう反対しているわけじゃなくてね、なんて言うのかしら、ちょっと歪んだ女の情念って奴だから聞き流してあげて。ええ、貴女の異動はなるべく速やかに検討するから、今日は下がりなさい。…はぁ…」



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司馬日記外伝 凪さん酔っ払う

お久しぶりでございます。
その後の、とある年末の凪です。

ガチえっちの方も頑張ってますが難しいですね…


「たいちょ。ちょっと来てんか」

溜め込んでしまった決裁書類を残業でチェックしていると、執務室の扉から眉根に皺を寄せた顔だけを出している真桜にちょいちょいと手招きされた。

「ん、どしたの」

「めんどくさいねん、ええからちょっと来てんか」

「めんどくさいって…」

それだけで仕事をほっぽり出させられても困る。決裁終わってないと詠や桂花は堂々急かしてくれるからいいが、最近の大人しい娘達は急ぎの決裁でもそっと決裁箱を見に来て決裁が終わってないと遠慮して黙って帰ってしまうのが申し訳ないから余り溜め込みたくはないんだが。

「自分の女が荒れてるんや、面倒見るんがたいちょの仕事やろ」

「まあそれはそうだけど。誰が荒れてるの?」

答えながら席を立つ。沙和が荒れるって事は考えにくいから凪か、まあほっとく訳にはいかない。帰ってきてから続きはやればいい。

 

「こっちや」

連れて行かれた先は、いつもの酒楼『三国一』だった事に少しほっとする。ここでは余りに官庁関係者が酔って放言する為、遂に一般人は入店不可となった店だ。

「今沙和と文聘がなんとかあしらっとるさかい、あとは隊長任したで。…沙和、隊長来たで!」

「やーっと来てくれたの、もう遅すぎるの隊長!ほら凪ちゃん隊長来たから、隊長に話聞いてもらってね」

「あ”?」

「…やあ、凪」

見上げてくる凪の目つきがやばい。これ完全に酔っ払いだ。でも大丈夫、俺この手の慣れてるから。…慣れてるから。

そそくさと席を立って真桜と店を出て行く沙和の代わりに凪の隣に腰掛ける。

 

「…これはようこそおいで下さいました」

「あーいやいや。顔上げてよ」

深々と頭を下げて妙な挨拶をする凪の頭を上げさせる。ところで四人掛けのテーブル席で、向かいに座ってる見慣れない娘が何故かいる。と言うか残っている。彼女は…確か。

「…文聘ちゃんも凪達と一緒に飲んでたの?あと(凪の事は)大丈夫だから帰ってもいいよ」

「あ、いえ…凪先輩、自分の直属の上司…その、指導員様ですから、もう少し御一緒します」

恐縮しながら会釈をされて、服との隙間から自然と見えそうになる突起からさりげなく視線を外す。この娘ちょっと服装気をつけたほうがいい。

「でも明日も早いんでしょ?体調崩すと凪に怒られるだろうし、今日は」

 

「いえ、自分明日休暇頂いてますんで…大丈夫です」

「あー…でも、寮の門限閉まっちゃうんじゃない?」

「…お邪魔でしたね。申し訳ありません…帰らさせて頂きます」

「いやいや邪魔なんてことはないよ!大丈夫か心配になっただけで!大丈夫だったら居てよ、折角だから!」

涙目で席を立とうとするのをなんとか押しとどめる。折角助け舟を出したつもりが思いの外粘られて、俺の言い方に帰れオーラが出てしまってたらしい。それよりは、問題はこっちだ。

 

「…折角ですから祥(文聘)にも居てもらいましょう、隊長と飲めるなんてそうあるもんじゃありません。祥(文聘)、隊長の分の箸と酒を」

「は、はい」

うんうんと頷きながら文聘ちゃんに指示を出している凪を見て、後輩とも上手くやっていそうだなと内心思うが今日はそれはおいておこう。

「ところでさ。真桜が凪が荒れてるって言ってたけど、どうかしたの?」

「……」

凪の表情が渋柿を食べたように歪む。

執務室に残してきた決裁書類が一瞬頭を掠めたせいか、少し雑な直球だったかもしれない。

 

「聞いて下さい!隊長!」

「うんうん」

凪は止める間も無く手元の角桝を呷り、ぷはーと一つ大きなため息を吐いた。

 

「本当に!最近、私は本当にダメダメで!本当に嫌になってしまって!」

「そうなの?廻りの娘とか、秋蘭とかからも良く頑張ってるとしか聞いた事がないけど」

信用がありそうな秋蘭の名前を出してみる。実際には最近秋蘭に凪の事を聞いてはいないけど間違いなくそう言うだろうとの確信を元に少し吹かしてみた。

「いえ!そんなの、ホント通り一遍の仕事をこなしてるだけでっ!もう、平和に馴れきってしまってるって言いますか!隊長の…そう、隊長の優しさに甘えきってしまってて!亞莎とか、仲達さんとかあんなにっ、美人で!可愛くて!えっちで!前向きなのに!私ときたら、何も成長していない!…こんなんじゃクビですっ、クビですよ!」

 

「いや、凪に将軍辞められたらもうなれる人なんて居ないって」

「そっちはどうでもいいんですっ、北郷警備隊副隊長がクビなんですっ」

「あーうんそっちも大事だね、将軍職も大事な仕事だけどね、うん」

ここ数年で学んだ事。酔っ払いの言う事を正面から否定してはいけない。そんな事も思いながら、中々難しい悩み方だなと頭を巡らす。

 

「…祥(文聘)」

「は、はいっ?」

俺の箸と酒を用意してくれた後は黙って聞いていた文聘ちゃんが突然凪に振られて背筋を伸ばす。

「私が副隊長をクビになったら。代わりにお前が務めてくれるか。…いや、務めるんだ」

「は、はい!?」

「いや凪、そんな事は無いって…」

「お前は腕は立つ、性根もいい。頭も決して悪くない。全身全霊で隊長を御助けするんだ」

「…はい!」

「うん有難うね文聘ちゃん、その気持ちは有難い。でも凪、そんな事無いってばさ」

「隊長の手となり足となり。知恵袋となれ」

「はい!」

「そして時には。…うん。時には犬となり」

「はい!」

「はい!?」

「夜には体でむぐもごご」

「職務の範囲内でね!ボディーガード的な意味でね!腕が立つ娘には体を張ってもらったりする事もあるけどね!!」

「…はい」

やばい事を口走りかけた凪の口を慌てて塞ぐが、私分かってます風に顔を赤らめた文聘ちゃんの返事を見て地方から来る娘って絶対何か間違った事吹き込まれて上京してきてる気がする。

 

「…なんにせよさぁ、凪は本当良くやってくれてるよ?」

「いえ全然です。ですが!ですが隊長が!隊長が今一度、昔みたいに厳しく!指導してくれたら…けふっ…頂けたら!」

 

「うんうん」

昔の俺、そんな厳しくしたことあったっけ。凪の手酌の酒が桝から溢れてるのも気になるが、涙目で唐辛子をそのまま齧っているのがマジヤバイ。

「私も立ち直れる…もう一度初心に帰って、進歩していける気がするんです!」

「うんうん、お酒こぼれるし凪の可愛い手に傷がつくから机叩くのはやめようね」

「わかりました。そんなわけで!…そんなわけでっ、隊長には!特訓!…特訓を!私につけて頂きたいっ…のです!うん!」

ひっく、と可愛くしゃっくりをして頭をふらふらと揺らしている。うん、純度百パーセントの酔っ払いだ。

「分かったよ、じゃ今度休みのときにやろうな。だから今日はもう帰」

「分かってますか!?特訓!隊長が…私につけてくれる特訓…特訓とは!」

「うん、まず演習場十周だろ?」

「違いますっ!隊長をおぶって二十周ですっ!」

「あ、ああ。でその後腕立て百回?」

「隊長に背中に乗ってもらって二百回です!そこで隊長には!『どうした背中が下がってるぞ』とか『お前の根性はそんなものか』とか激励して頂いて!」

「…そんな事言った事あった?」

「細かい事はいいんです!最近の隊長は優し過ぎるんです、特訓なんですから厳しくていいんです!それで、至らぬ私にっ…うん、活を。…活を入れて頂くんです」

「いや、俺が今更活なんて入れるまでも無く凪は自分に厳しいじゃない。ね、文聘ちゃんも見ててそう思うでしょ?」

「は、はい!凪先輩は本当に厳しく、御自身を律していらっしゃいます!」

文聘ちゃんに無難に振ってみる。

「…いえ!そうじゃないんです!」

どー違うんだ。

だん、と顔を伏せて再び両拳で机を叩いた後、むっくりと頭を上げた凪の瞳は今更ながら他人の話を聞く気がない人の目だった。

 

 

 

「隊長のっ…ひっく。…隊長のっ、熱くて硬い!根性注入棒でっ!」

 

 

 

 

何言い出しちゃってんのこの子?

 

 

 

 

「私のっ、下っ腹に活もぼもば!」

「ああ!俺の部屋においてある『根性注入』って書いた警策ね!!こないだ凪が座禅やるって言った時はあっためて使ったっけねそうだったね俺忘れてたよ!!」

「あの活を入れて頂かないと!私の腹に一本ビシッと芯が入らないって言いますか、いっつもくよくよくよくよしてしまって!」

「そうかそうだなまたやろうな座禅、うん座禅ねあっはっは!そうだ文聘ちゃんもやろうか今度!?」

「…あ、あの…凪先輩、最近酔われるといつもその一刀様のエッ…その、『根性注入』は凄くって、無いと自分は駄目だとかわんこぷれいに溺れてる自分は情けないとか…その…」

「あっうんごめん下手な言い訳してホントごめん」

我ながら誤魔化し方がヤケクソ過ぎて、思わず文聘ちゃんにジャッジを求めてみたけど初めっからアウトでした。

 

「聞いてますか隊長!」

「ああ聞いてる。聞いてるが残りは凪の部屋で聞くよ、なっ?」

いや後輩に愚痴る凪が悪いんじゃない、ここまでストレスを貯めさせてしまった俺が悪いんだ。凪だって一人の女の子だ、首輪つけられてワンワン言ってお腹撫でられるだけで満足な筈が無い。反省したし明日からちゃんと凪の事フォローするから文聘ちゃんの前でこれ以上の羞恥プレイは勘弁して。

「いえいいんです、祥(文聘)にも是非聞いて貰いたい!隊長のっ…隊長のっ、根っ性注入棒は!熱くて!硬くて!」

「またそっからなんだ!?」

「隊長が、こう…『凪!根性が足りないお前に活を入れてやる!壁に手をつけ!』と私に命令して!」

「凪、部屋行こう!?真桜も沙和も心配してたしもうお店もカンバンだし!」

「あっ、一刀さん?私明日の仕込みがあって泊まりだから時間気にしなくていいよ?」

「杏(逢紀)さんお願いだから空気読んで!?」

 

 

----------------------

 

「やっと寝てくれた…」

酔い潰れて背中ですーすーと寝息を立てる凪を背負って、三国一の暖簾をくぐる。

「では私、寮なので…ここで失礼します。凪先輩の事お願い致します」

「ああ悪かったね文聘ちゃん、迷惑かけて」

「いえ…一刀様が来られて、凪先輩凄く嬉しかったと思います。嬉し過ぎてちょっとその…アレでしたけど」

さっきまでの凪の大放言を思い出す。と言うか、凪は酔った時後輩の子とどんな話をしてるのか少し恐ろしくなった。

 

「あの…誤解無い様に一応言っとくけど」

「はい?」

「俺達別にいつもそういう事ばっかしてる訳じゃないからね?」

「は、はひっ、大丈夫ですっ!」

慌てた様子で少し照れながらも素直に返事をしてくれた。うん、この娘は大丈夫かな。素直そうだし。

 

 

「わ、私も首輪と犬ミミ買ってありますし!元直さんからも『都に来るってそういう事だ』って聞いてますし、劉表様からも劉琦様達より先になっても気にしなくていいって言われてますからっ、い、いつでも大丈夫ですっ、はい!」

 

 

----------------------

 

「ねえ元直、珍しく馬鹿ちんこが真面目な顔して荊州組の朝礼に出て訓示したいって言ってたんだけど何か知ってる?ボクか月が文書出しとくからいいんじゃないのって言ってた年末年始の綱紀粛正の訓示にも何故か警備部にだけは行ってたみたいだし…あっ、ちょっとあんた何か知ってるわね逃げるんじゃないわよ!」



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司馬日記外伝 パンチラ・オブ・ジョイ星(R-18)

その後の、とある華蝶仮面さんです。


「星のパンチラが見たい」

「……………は?」

 

大丈夫。真顔で返されるくらい何てことない。ここで心折れてごめんほんとごめん何でもないからとか言っちゃうほど俺弱くない。

だって俺鍛えられてるし。

 

話は数日前に遡る。

 

--------------

 

「うー………ん。ダメって程ではないけどなぁ」

巨大でも小ぶりでもないお胸の下で腕を組み、首を傾げたのに合わせて後頭部のポニーテールも考え込むそぶりを見せる。

「うん、俺もダメって訳じゃないとは思うんだけどねぇ」

「ま、言いたい事は分かるよ。何て言うか、絶好調じゃあないと思うよ、私も」

「でしょ?」

白蓮が頷くのに合わせて後ろ髪もぴょこぴょこと頷くのがちょっとした人形劇っぽくて宝慧を思い出す。

 

―――――暫く前、ノリノリで悪戯を仕掛けてくる星にちょっと厳しめに叱って大泣きさせてしまったことがある。

その後謝ったりなだめたり何だりして何とかはなったけれど、それ以降どうも大人しいと言うか…

「覇気がない感じはあるよな」

「そうそう。調子良い時の星って、なんかニヤニヤしてるじゃん?それがあんまり見えないんだよね」

「ひどい言い方だな!まあでもそうだよな」

「そこが心配で」

「うーん…………」

 

再び白蓮が反対側へ首を傾げ、ワンテンポ遅れてポニーテールも首(?)を傾げる。

「まあでも、一刀以上に私がどうこうも出来ないだろうからなぁ。ところでその…」

「?」

白蓮がちょっと頬を染めて変な顔をする。

「その…する事はしてるんだろ?」

テレながら声を潜める白蓮に不覚にも萌えた。

「一応、それなりには」

「…そ、それなり程度だからまずいんじゃないのか?」

「いや…たっぷり三十分はさわさわぺろぺろちゅーちゅーした後ずっぷりがっつり抜かずの三連発からそのまま露天でもした後飲みたいって言うから口にも」

「も、もういい!そこまで聞いてないだろ!?」

「それなりじゃまずいかどうか聞いてもらおうとしたんだけど」

赤くなる白蓮さん可愛いです。

「まあいい、その…気まずかったり出来ないほどじゃないってのが分かったからいい。…真面目な話、私もちょっと飲みに連れて行ったりはしてみたんだけど、まあ笑ったりもするんだが…やっぱり、一刀が構ってやるのが一番なんじゃないか?上手い例えが見つからないんだが、一刀が追っかけまわすくらいだとあいつも元気になるんじゃないかな」

「まぁ、そうかなぁ…ん、有難う。俺の問題なのに相談乗ってくれて助かった」

「いや、私にとっても大事な奴だし構わないさ。そんじゃ」

「うん、仕事の邪魔してごめん」

「いやいや」

そう言いながら部屋から出て行こうとして扉を閉める寸前に、目から上だけを隙間からぴょこりと出して上目遣いで聞いてきた。

「な、なあ………その…あたしも、…………飲んだ方がいいか?」

「いや白蓮は一方的に俺に飲まれてればいい。舐め尽くされてる時の白蓮超絶可愛い」

「馬鹿!アレ超恥ずかしいからもうすんな!いいか絶対するなよ!?」

「ははは、分かったよ(しないとは言ってない)」

自覚無くお笑い芸人的なフラグを立てる白蓮は、今度涙と涎と鼻水垂れ流しになるまで可愛がろうと密かに心に決める。

 

-------------------

 

そんな白蓮さんとのやりとりを勘案した結果、冒頭の俺の言葉となったわけだ。

分からない?大丈夫、俺の頭の中では繋がってるから。………たぶん。ごめん今振り向かせないで自信無くなるから。

「遂に仕事のし過ぎで頭が…華陀を呼びましょう。いやしかし、おかしくなるまで仕事などされてはいませんでしたな」

「大丈夫おかしくはなってない、星のパンチラ見たら治るから。ところで仕事は意外としてる」

言いながら、もし自分がこんな事真顔で言う上司見かけたら確実にセクハラ対策室に突き出すと確信する。皇帝万歳。

「…私等のより」

「星のが見たいんだ。とりあえず半日くらい星のパンチラ見ながら過ごしたい」

一瞬星の瞳が翳りを見せかかったところにたたみかける。

「………そうですか、ちょっと想像を超えた主の変態ぶりに絶句しましたが主命では致し方ありませんな。残念ですが今日は色気の無いものなので明日午後にまた伺いましょう」

「是非頼む」

にやっと笑った星に多少安心しながら、天井裏の明命が妙な話を広めないでくれるといいんだけどと軽く祈った。

 

 

 

------------------

 

「お待たせ致しました、主」

「お待ちしてました。詠達はちょっと出てるから」

詠や月に星が元気がないからケアしたい、ついては暫く二人にしてくれないかとか深刻じみた表情でお願いした事はスカッと忘れてテンションはアゲアゲで。だって嘘はついてないし?

「今更だけどこの裾で普段はよくパンチラしないね」

「そこは腕ですな、歩き方には気をつけておりますので」

「腕って言うか脚?…いや、見えたこともあったか。あったぞ?」

「それは見せているのです、主だけに。…さて、ここで御披露しても良いですがそれでは主の本旨に沿いますまい。ここはひとつ、運動場をとっておりますのでそちらで組手などいかがですかな?私の蹴りを受けて頂くだけですが」

「仰せのままに」

ぺろりと舌を出す彼女に、俺は堂々と鼻の下を伸ばした。

 

「では主はここで少々お待ち頂いて」

「あれ?武道場じゃないの?」

休日の三国塾の体育館の入り口で、二階へ登ろうとする星に付いて行こうとすると止められた。三国塾の屋内運動場、所謂体育館は一階が天井が低くても出来る武道場、二階が球技も出来る天井が高い運動場になっている。

「む、武道場でも宜しかったですかな。これが基本かと思いましたが?」

言いながら、星はゆっくりとお尻を振りながら階段を七段ほど登ると、脚を伸ばしたまま上体だけを倒して振り向いてにやりと笑った。

「失礼しましたごもっともです」

心の底から反省しながら、星の真後ろから遅れて登る。彼女のいたずらな表情が見えるかのように一段毎にぷるん、ぷるんと左右に振れながら見え隠れするお尻と、それを包んで捩れと伸びを繰り返す青い布。うん、俺変態です。

 

「如何でしたかな?」

「王道を往く斜め下からの眺め、星の髪に良く似合う麗しの青が見せる豊かな表情と微妙なはみケツに感動した」

 

「恐ろしく下らない事を豊かな語彙で語られる主には心底呆れますがこれが我が主、全く以て度し難い事は諦めて次に参りましょう。鍛練用の防具をお持ち下さい、私も用意して参りますぞ」

キツい言葉とは裏腹に笑顔を見せ、更衣室へと星が消えていった。

俺も用具室へ行ってスパー用の分厚い板状の防具を取ってくると、既に軽くアップしながら星が待っていた。

 

「それでは私が蹴りを繰り出しますので主がお受け下さい。色々動きますが、高い左右と上と正面からしか蹴りませんので『よく見て』受けられますよう。それでは」

言いながら星は軽くホップすると、鋭く回転して回し蹴りを左肩へと繰り出してくるのを防具で受ける。パン、と小気味いい音を立てると録画の早戻しを見ているかのように即座に逆方向へ回転して右肩へとしなやかな脚が襲ってくる。

「うぉっ」

なんとか右腕を上げて蹴りを防ぐと、星は口の端をわずかに引き上げながらバク転で距離を取る。

「ついてこれない速さではありますまい?」

「ん…ギリ、これがギリ」

もう少し早くてもなんとか受けられるくらいの速さではあるけれど、翻る裾からチラチラしているわざわざ履き替えてくれたらしいピンク色の布地に注目しながらだと反応が遅れて打たれる寸前になる。その後も宙返りからの飛び蹴りなど、実戦用と言うより文字通り魅せる用の動きを混ぜながら『一瞬目には入るけどじっくり見てる余裕はない程度』に調整されている。ううむやりおる、星め。

この微妙に焦らされ加減な眼福と蹴りのガードをしながら、白蓮の言葉を思い出す。

 

(―――――あいつ、一刀にヤラシー目で見られたり追っかけまわされたりするのが好きそうだからなぁ)

それで思いついたのがこの遊びだったけれど、本当に星はこんな事で楽しめてるんだろうか。つか、普通に引かない?

 

ふと、ちらっと星の顔を見るとニヤニヤしながら俺の顔だけを見ていた。

その楽しそうな表情に一瞬気が緩んでいた。あっ、とガードが間に合わない事に気づいた瞬間には既に星の踵が脳天に叩き込まれていて、

視界が暗転して声も出ない俺の代わりに星が小さくあっ、と声を上げていた。

 

「気づかれましたか。当てるつもりは無かったのですが申し訳ありませぬ」

「…ごめんごめん。絶景だった。あと今も絶景」

意識を取り戻すと、自分の顔が星の膝の上だった。ついでに横向きに寝かされていて、薄暗がりの奥にさっきまではゆっくり拝めなかった何かが見えていたりいなかったり。

「最後ぼーっとされていませんでしたか、主が受けれる程度に抑えていたつもりでしたが」

「あー…星が」

元気そうでちょっとほっとしてと言いそうになり、言葉を変える。

「星の、絶妙なチラリズムに見とれちゃって。最後ネリチャギ最高でした」

 

「…………………主の変態ぶりには呆れを通り越していっそ感心致しますな。よもやこれだけで御満足ではございますまい、次に行きますぞ」

一瞬の間のあと、裾で視界を塞がれると頭上から星の陽気さを帯びた声が降ってきた。

 

----------------

 

「酒席を用意しておりますがまだ多少時間があります、こちらの店に寄りましょう」

街の大通りに連れられて行った先は、中くらいの規模の本屋だった。

「なんか買うの?」

「まあ気に入ったものがあれば買っても宜しいですが、知り合いが居りますもので。…ああ、彼女らです」

「あ…って、おいおいおい!?」

レジカウンターで恥ずかし気にひょこっと頭を下げたのは、藍(姜維)ちゃんと士載ちゃんだった。

 

「どうしたのこんなとこで!?」

「あ、あの、研修で…」

見れば店員の制服の名札の部分に『研修中』と書かれたバッジがつけられている。

「うち(警備部)の民間勤務研修です。二人とも主が来店すると知るやどうしてもここで研修したいと言いまして」

「そうなんだ…うん、まあ頑張って」

「はい、有難う御座います」

高い背を縮めて礼をする藍(姜維)ちゃんの前を過ぎ、星の後に続いて奥へと向かう。

「商業系の部署がやってるって話は聞いたことあったけど、警備部でも民間研修なんてあったんだ?」

「いえ、今回は特別で。それより、こちらの方へ」

「あれ、ここいいの?」

「ええ、話は通してありますので問題ありませぬ。伯約」

「は、はい。こちらへ」

星が藍(姜維)ちゃんに声をかけると、藍(姜維)ちゃんは少し赤い顔をして奥へ俺達を先導する。経済の専門書、軍事の専門書コーナーを過ぎて一番奥の角を曲がった先には『関係者以外立入禁止』と書かれた小さな看板に行き着いた。

「星様、こちらで…」

「うむ、すまないな。さ、主はこちらへ」

星が平然と看板の脇を通り過ぎるのについて行くが、藍(姜維)ちゃんはその看板の前で俺達に小さく一礼すると門番をするように入り口側を向いてその看板の前に残った。いいのか仕事は。

 

さらに二度ほど棚の間を曲がった奥へ進むと、やや雑然とした書棚が並ぶ行き止まりだった。そこの書物には一貫性が無く、一部の本には入荷直後なのか識別用に札がついている。

「こちらです主。こちらの書物が、きっと主の御気に召すかと」

「うん?」

ドヤ顔で案内する星の意図が今一つ分からない。

「まだ分かりませぬか。では例えばこちらの書ですが」

星はニヤリと笑うと、膝を折って最下段の本を指し示すのに合わせて自分も膝を折る。そして星が棚の一冊を抜き取り―――――ながら、すっ、と膝頭を小さく開くと、艶めかしい内腿の奥に薄暗く光る赤い布が視界に飛び込んだ。

 

「こちらの孫臏兵法と言う書は春秋戦国の斉の孫臏の軍略書で、かの孫子とは別の者ではありますが優れた兵家でありました。孫臏の有名な軍略に囲魏救趙という故事成語ともなっておりますが聞いておられますか、主」

「聞いてるかもしれないがもっと気になるものに注目している」

 

「ふふっ、これでは御説明の甲斐が御座いませぬな。主にはもっと別の書が宜しいか…ふむ…」

星は軍略書を元の棚にしまうと、こちらに背を向けてお尻を突き出すようにして別の本を探し始めた。

「あの書がこの辺に有った筈ですが…はて♪」

書架の腰高のあたりをわざと膝を折らずにパンモロにして探しつつ、ニヤニヤとした視線をこちらに投げてくる。

「…もうちょっと下じゃない?」

「…そうでしたかな?」

豪奢な半透け真紅のレースに包まれてフリフリと揺れる丸いお尻を堪能しつつ、ちょっと悪ノリして注文をつけると星はほぼ前屈の姿勢になり、意識的なのか揃えられていた脚が心持ち開かれた。

「んっ…主、何の本を御覧になりたいですかぁ…?」

突如艶めかしさを帯びた溜息のような声と受け入れ体勢同然のその姿に当てられ、俺も一気に余裕が無くなる。

 

「星…」

「んっ、ああ、ありました、この本です」

フラフラと星のお尻に引き寄せられてそれに触れる直前、星が一冊の本を取り上げてこちらに向き直った。危なかった、あと一歩だった。

 

「…それ何?」

「『快傑!華蝶仮面』の最新巻です」

「小説化されてたの?つか六巻までもうあるんだ、すごいね」

「そうでしょうそうでしょう。今回は『仙術少女☆まじかる花琳』との華麗なる対決回なので必見ですぞ」

「それよく発刊許可が出たな…」

「おっとそろそろ酒席の予約の時間です、酒楼へ参りましょう」

「あ、うん」

星に促され入口の方へ戻って行くと、通路で門番風に立っていた藍(姜維)ちゃんがこちらに気づいて道を開けてくれた。

「あ…子龍様、あの…もうよろしいのでしょうか?『お部屋』は…」

「予定があるのでな、使わなかった。ご苦労だった、業務に戻れ」

「あ、は、はい」

ちらちらとこちらを見ながら立ち入り禁止の札とロープをいそいそと片付ける藍(姜維)ちゃんと士載ちゃんの頬が赤い。奥で何してたかバレてるな…って言うか星が予め言っていたんだろう。まー、うん…今更だからいいか。

 

店を出るともう夕暮れになっていた。この時間は日が落ちる前に家へと急ぐ人々で道は混雑している筈なのに、妙に今日は人通りが少ない…と言うか、河原方面へ向かっている人が多いせいで少なく見えているのか。

「星、今日河原で何かあるんだっけ?」

「ああ、民間の行事なので主までは知らされていなかったのですな。李典の火薬技術を応用した花火が今夜、河原であるのですよ」

「へぇ…星は知ってたんだ?」

「市街の消防に関わる事ですからな、警備部には一応連絡が来るのですよ。まあこれが今日のミソではあるのですが…ああ、もう来て居りましたな」

「『ミソ』って?…あ」

星が手を振る先には、赤いポニーテールの彼女の親友が酒楼『三国一』の前で手を振り返していた。

 

「お待たせしてしまいましたかな、白蓮殿」

「いや、私も今来たとこだ。って言うか本当にお邪魔じゃないのか私?」

「何を水臭いことを、私から誘った事なのですから当然居て戴きたいに決まっているではありませんか。主もそうお思いでしょう?」

「もちろん」

今日半日星と出かけている(流石にパンチラ云々は言ってない)経緯を知っている白蓮はアイコンタクトで本当に居ていいのか、と問いかけてくるのに大丈夫、と同じく目線で答える。

「まあ御前等がそうならいいけどさ。ま、私この後用事入るかもしれないから、そん時は失礼させてもらうぞ?」

雰囲気次第でいつでも私帰るからな?という意思表示らしい。星から白蓮を誘ったっていう経緯みたいだから、積極的に帰らせる必要は無いだろうけれど一応頭に入れておくか。

 

「そうですか、分かりました。では早速入りましょう…士季」

「お待ちしておりました、星様」

「士季ちゃん!?」

店に一歩入ると、研修中と名札をつけた『三国一』の制服に身を包んだ士季ちゃんが深く頭を下げて待っていた。本屋の事と言い、士載ちゃん以外は星の部下とは言え今日はどんだけ手を廻してるんだ。

「士季ちゃんも研修なの?」

「はい。御予約席へ案内致します」

にこやかながらも言葉少なな返事だ。彼女は人前と二人きりの時とで明確に態度を使い分け、前者の時は真面目さを前面に出して他人を優先し全くと言って良い程我を抑えられる事に感心する。尚二人の時は凄い。マジ凄い。

「本日御予約のお席は高楼になっております、階段が急になっておりますのでお気を付け下さいませ。…では公孫瓚様、続いてお二方もどうぞ」

「あ?ああ」

 

士季ちゃんに促された白蓮の後ろに俺と星が続き、二人がギリギリ並べる程度の折り返し階段を登っていく。

「あれ?結構長いんだな」

「高楼はおよそ四階相当となっております、公孫瓚様今しばらく御辛抱下さいませ」

「あ、いやいいんだけど。私今まで二階までしか来たことなかったなぁ」

「(…主)」

「(ん?)」

士季ちゃんと白蓮のやりとりをなんとなく聞きながら階段を登っていると、並んで登っている星に耳打ちされた。

「(本日は御満足頂けましたかな)」

「(かなり満足した)」

正直な感想を答える。星が満足してくれたのかは正直判然としないけれど不機嫌そうな様子は無いし、呆れながらも笑ってくれていたからまあokだろう。

 

「(そうですか。好色な主の事ですから、見るだけでお触りになれずさぞおかんむりかと思いましたが)」

耳元に囁かれた声の妙な熱っぽさに、いや、と言いそうになった答えを変える。

 

「(…今触ってもいい?)」

「(気取られませぬように)」

星の許可の声に視線は前に向けたまま、静かに彼女のスカートの下に手を潜らせ柔らかな尻たぶを撫でると、んっ、と押し殺した喘ぎ声が星の喉の奥で鳴る。

三段前には士季ちゃんと白蓮。早鐘を打つ心臓。振り向かれた瞬間に手を引いて言い訳がきくだろうかと思いつつ、柔らかな尻肉を撫でまわす手は止まらない。

「(……っ、……!)」

 

星は美しい眉根に皺を寄せて壁に手をつき、膝がかくりと曲がる。必然お尻を突き出すような姿勢になり、より強い愛撫を求めるかのようにお尻を左右に振りつつゆっくりと一歩一歩階段を登っていく。

 

「公孫瓚様、こちらをご覧下さいませ」

「ん?ああ」

今まで静かに階段を先導していた士季ちゃんの声に一瞬びくりと震える。星のお尻を嬲る手を硬直させ、恐る恐る見上げると、前の二人は階段の踊り場にある出窓に乗り出していた。

「こちらからは正面に庁舎、右手に三国塾、左手に演習場が御覧頂けます。こちらの建物は庁舎、狼煙台を除いては都で最も高い建物であり、本日は夏で日も暮れてしまっており見えませんが冬の天気の良い日には遥か洛陽まで見通せるとの事で御座います。この高楼は昨年増築されたもので特に高位の方の…」

 

…命拾いだ。

士季ちゃんが白蓮に景色の解説をしている隙に、静かに星のスカートの下から手を戻す。

「へー…ちょっと研修で来てるだけなのに凄いな。おい、お前らも見るか?」

 

「あ、いや…日が暮れちゃってるし、飲む時間も勿体無いから今はいいよ」

「…そうですな」

口元を抑えて荒い息を隠し、星も同調する。

「そうか。まあ、お前らはここ予約出来るからまた来るだろうしな」

良かった、怪しまれなかった。

 

「お疲れ様で御座います、こちらのお部屋です」

「お、中々いい部屋じゃないか」

長い階段を登ると、正面に腰高の出窓が開かれている六畳程度の小奇麗な和室に辿り着いた。

重厚感のある大き目の座卓には既に三人分の料理と燗が並べられている。

「…そうでしょう。ああ、白蓮殿はこちらへ。主はそちらへどうぞ」

一応立場上上座へ案内され、二人が席に着いたところで士季ちゃんは本来私が皆様の御饗応を致します所ですが星様の御意向とのことでこれで失礼致しますと言って引き戸を閉め下がっていった。

 

「さて、ちょっと余裕がありませんのでともあれ乾杯致しましょう」

「へ?なんかあるのか?私の用事ならあるかどうかもわからんから余り気にしなくてもいいんだぞ?」

星の声に白蓮が目を丸くしながらも杯を星の方へ伸ばし、俺も続いて注いでもらう。

「では今日という日と、お二方に感謝を」

そう言いながら杯に口をつけると、ドォン!という轟音と、一瞬遅れて光の筋が窓の外から飛び込んで来た。

「ああ、もう始まってしまいましたか」

「何だ何だ!?」

「うお、星がさっき言ってた花火か」

「然り。中々あるものではありません、立ち飲みになってしまいますが特等席から眺めながら飲ろうではありませぬか」

 

爆音に慌てた白蓮と俺に、彼女はにっ、と笑いながら銚子を片手に窓辺へと誘う。

「じゃあそうしようか、白蓮」

「あ、ああ。私、知らなかったから突然どーんとか言ってびっくりしたぞ」

「出窓に置ける程度の燗とつまみとだけ持って来て頂けますかな。あと、折角ですから部屋の灯火は落として花火と月明りのみで楽しみましょうぞ。…ああ、主は真中へ」

酒と風情を好む彼女らしいチョイスだと思いつつ言われた通りだけの酒を持って窓際へ行き、左に白蓮、俺、星の順で並ぶ。

「下、結構人出てるな」

「ええ、賑やかですな」

「うん」

白蓮の声に下を見下ろすと暗がりの中に出店の明かりと大勢の人が見え、音は上に抜けるせいか人々の声で自分たちの声も聞こえない位だ。

再びドォン!という音がし、数秒の後に夜空に大輪の花が咲くと、おおっと大きな歓声が上がる。

「おおー!結構凄いな!これ真桜の技術なんだって?」

「そうらしいね」

連続でドォン、ドォン、と断続的に打ちあがり、夜空が鮮やかに明滅する。楽し気に夜空を見上げる白蓮を左に見て、右の星に今日は有難うと告げようとするとその姿が無い。

 

「(主)」

「(…ん)」

消えたのではなくちょうど右後ろの死角に星の顔がある事に気づくと同時に、余りにも熱く、苦し気にも聞こえる星の押し殺した囁きに静かに頷く。

 

「(本当はこの席で白蓮殿に隠れつつ主に最後のパンチラをお愉しみ頂く筈だったのですが、それは中止です)」

「(そっか、それは残念だけど)」

「(何故だと思われます?)」

言いながら耳をぺろりと舐められ、ぞくりとする。何故かって、ヤバいだろ。白蓮はそういうの聡い方じゃ無いだろうがリスキー過ぎる。そう答える前に、焦れたように星の左手が俺の右手を掴んだ。

「(理由はこれです…んっ、はぁっ)」

言いざま俺の右手を自身のスカートの下、パンツの中に差し入れさせ、自身の秘部へ導いた。柔らかなそこは熱く、くちゃっと音がするほどの泥濘になっていた。

「(こ、これではっ…んっ、お見せ、出来ませぬっ、ああっ)」

「(星やばい、(白蓮に)聞こえる)」

その時、一際大きくドォンと花火の打ち上げ音が響き、数秒後に夜空に光の柳が浮き上がる。

「おおー」

「でかいね」

俺を挟んで反対に立つ星を極力白蓮の視界に入れない様、白蓮に肩を寄せて相槌を打つ。心音が大き過ぎて、呼吸音に伝わってしまうような感覚。

断続的に続く花火。地上の喧騒。

それに紛れて星の左手が、俺の中指を彼女の熱くとろけた蜜壷の奥へと捻りこませる。

「(ああっ…!んんっ…!)」

ぬめる内壁をゆっくり一搔きすると、星はかくりと腰をくの字に折って喘ぎ声が漏れぬよう自身の口を俺の右肩に押し付け、小さく呻いた。

暗がりとは言え、こんな至近距離に他人が居るところで愛しい女の子のアソコを責めている背徳感。肩口にははぁはぁと艶かしい息をつく星の声。花火の打上げ音と自分の心音のどちらが大きい音なのかもうわからない。

 

「なぁすごいな、星?」

花火を見始めてから(白蓮には)喋らない星に、白蓮が突然振り向いて話しかけた。やばい。俺の右手は暗さと死角で見えないだろうが、今の星は見せられない。

「……ぷは。……そうですな。……ほら、また上がりましたぞ」

 

「お、ほんとだ」

いつの間に持っていたのか星は話しかけられた瞬間に杯を口につけ、ゆっくりと口を離し呼吸を整え、ゆったりと答えた。―――あたかも、自身の膣内に俺の指など突き刺さっていないかのように。

 

「……はらわたに、響き渡りますな」

「そうだな、音も凄いよな」

言いながら、自身の胎内をかき回させるようにゆるく腰をうねらせる星。白蓮が空を見上げたまま答えるのをチラ見で確認しつつ、俺を見上げてくる彼女の表情の妖艶さに興奮と緊張が抑えられない。はらわたに響くっていうのは、絶対そういう意味だ。

「…今はゆっくりとしていますが、まもなく終わりです。終わる前は、それはさぞ…激しくなるでしょう」

 

「あーうん。終わりには大体乱れ打ちみたいになるよな」

「ねえ、主?…んふっ、…ふふ…」

「…あ、ああ…」

俺を挟んで花火を見上げる白蓮には気づかれない程度の緩やかさでゆったり腰を振り、指が膣壁を掻き、肉芽を掌に押し付ける感触を陶然とした表情で味わう星。

 

「(主)」

「(ん)」

「(んっ…どきどき、しますな)」

「(心臓口から出そうだ)」

「(主も、興奮、あふっ…しておりましょう?…ほら)」

「(やばい。今は勘弁)」

 

暗がりに乗じて張り詰めた肉棒をズボンの外から撫でる、彼女の手を押さえる。

「(主)」

「(ん)」

「(間も無く…んうっ…最後の乱れ打ちになります。そこで、激しくっ、して下され…あぁっ、は、始まりましたっ)」

「おっ?なんかいっぱい始まったぞ、これ最後か?」

白蓮の声に呼応するように散発的だった打上げ音が断続的になり、夜空に途切れず光の花が咲き乱れる。それに合わせて、彼女の胎内に埋め込んだ中指を蠢かす速度を徐々に上げていく。

「(んぅぅぅっ…!んんっ!んんっ!…んっんっんっ!!)」

花火の爆音と人々の喧騒で全ての音がかき消される中、俺の右耳にだけ口を抑えても漏れ出る星の快楽の呻きと、彼女の股間から溢れる愛液をくちゃくちゃと掻き混ぜる水音が響く。

 

ドォン!ドォン!ドドォン!ドンドンドン!

打上げ音と、花火が上る時のひゅるる、という甲高い音。

 

五虎大将が一人、武知に長けた美貌の槍の名手たる女の子の内部で、全体重を支えるように指を突き立て、震わせ、掻き回し、揺すり、淫らな動きの限りを尽くす。

「(んぅっ!んぅっ!んぅんぅんぅっ…!んんんんんんんっ!!)」

美しい眉根を快楽に歪ませ、指に蹂躙されている秘所からは悦びの涎を垂れ流しながら、両手で必死に口を抑えて喘ぎ声を堪える彼女に、言いようの無い加虐心を刺激される。

――――バレてもいい。星をイかせたい。

 

顔は白蓮に合わせて夜空を見上げたまま、視線だけを星に向けると目が合った。

切羽詰った表情のまま、コクコク、と頷く星。

イきそうなのか。

ラストスパートのつもりで、指を激しく振り続ける。

「(んぅぅぅぅぅぅぅぅぅんんんんんんっ!!)」

ひくん、と大きく星の内部がうねり、一瞬遅れてぶるぶるぶるっ、ぶるぶるっ、と腰と太腿が痙攣し、星の全身が脱力する。

 

ドドドドドドドドドォォン!

…パラパラパラパラ………

星の絶頂に合わせるように、花火も一瞬遅れてクライマックスを迎えた。

全ての花火が消えて、一瞬間を置いてから人々の拍手が響く。その音に紛れるように、星の胎内からびしょ濡れの指を抜いて手を隠す。

 

「おおー…結構、凄…

「失礼致します、公孫瓚様」

「あ、は、はい?」

まだ余韻から覚めやらない星に白蓮が話しかけようとした瞬間、部屋の入り口の扉からノックと女の子―――士季ちゃんだ―――の声がし、少し驚いて白蓮が答えた。

「失礼致します。公孫瓚様、姜維より決裁の件で急ぎ連絡を御取りさせて頂きたいとの伝言を受けており、出来ましたら御足労をお願い致したいのですが」

「えー?こんな夜にか、あの娘も働きもんだなぁ…うーん…まいっか、分かった今行くよ。一刀と星も、すまんが今日はこれで」

「あ、ああ」

白蓮がそそくさと部屋を出、士季ちゃんが部屋の鍵をかちゃりと閉める。

 

 

 

「主っ」

「んむっ」

その瞬間星に座布団の上に押し倒され、歯がぶつかる勢いで唇を押し付けられた。すぐさまこじ入れられる熱い舌に自分のそれを絡め合う。

「んぁっ…んむぅ…」

頭を抱え込まれ、奪い取るかのように唇を貪る星に息が続かなくなりタップしようとしたところでちゅぱぁ、と音を立てて彼女が唇を離した。

「続きを、致しましょう」

「勿論」

切迫した声と共に至近距離で吹きかけられる星の淫らな荒い息に中てられ、一瞬冷めかかった欲望の火が直ぐに燃え上がる。

「あっ…」

上に覆いかぶさっている星を抱きしめたまま半回転すると、彼女は小さく声を上げてなすがままに組み敷かれる。

「来て、来て下されっ、早くっ…ああっ…!」

モノを取り出すのももどかしく、愛液でぐちゃぐちゃの下着をずらして一気に奥までズプズプと突き入れると、星は悦びに溢れた喘ぎ声をあげた。淫らに緩んだ表情で足を絡めて押し付けるように腰を揺すり、内部はひくひくと小さくうねる。

「あああっ…!ああああっ!…い、入れられただけでっ、いっ、いっておりますっ…!」

トプトプと二人の結合部から愛液は溢れ、下から抱きしめられた彼女の腕は全く力が緩まない。

「…しばらく待とうか?」

星は苦しみにも似た快楽に眉根に皺を寄せたまま目を合わせると、ぶんぶんと強くかぶりを振った。

「いえ…!突いて、突いて下されっ、ああっ、あああっ、うううっ!んぁっあああっ、またいくっ、またおくっ!ああああああっ!ああいくっ、あああああああっ!いってますっ、いってますっ、主のぉっ、一突きごとにっ!いくっ、いくっ!いってますぅっ!!」

熱い泉に突き入れる度に星の中はびくびくびくっと震え、絡められた足は解かれて絶頂毎にブリッジをするように腰を突き出しては脱力し、突き出してはぐりぐりと奥を押し付けてくる。

「と、止めるか、大丈夫か」

こっちもここまでさんざん焦らされていたようなものであっと言う間に射精感がこみ上げており、すんでのところで止まって聞く。

「大丈夫ですっ、このままっ、このまま来て下されっ…あああっ!あああああっ!凄い、凄いですっ!」

「やば…もう直ぐ出るっ」

「来てっ、来て下されっ!ああっ、中にっ!中にいっぱいっ、主のをいっぱい出してっ、あああああああっ!」

「くうっ…!」

ちゃぷちゃぷと音を立てる程の愛液の潤滑がありながらも、もう一つの口のようにきつく柔らかく食い絞める膣にたまらずどぷっ、と精を吐く。

「ああああああああああああああああっ!!ああああああああ…!来てる、来てますっ…主のっ…精が、…いっぱい、ああっ…」

精液を注ぎ込まれた瞬間にも与えられた絶頂に彼女は目を見開き、その体は精液の感触に満足するようにゆるゆると脱力していく。

 

 

外では響く花火の後の家路に向かう人々の喧騒が、部屋の中にははぁはぁと二人の荒い息だけが響く。

「主…………ん…むぁ…」

切なげな瞳と頬に添えられた手に、それと察し桜桃のような唇に口付けて再び見つめあう。

 

「…有難う御座います」

「…何が」

「御気を使って頂いたのでしょう?ぱんつがみたいなどと」

「…いや、自分の欲望も半分。俺の中でパンチラなら星だし」

「他にも気の使いようはあるでしょうに、ふふふ」

「すんません」

気が回るという点ではそもそも俺が星に敵う筈が無いと言えば無い。ただその気が回る人に気を回してあげる必要が無いかと言ったら決してそんな事は無いだろう。

 

「重いだろうから、降りるよ」

「いえ……………むしろ、圧し掛かって下され」

「マジで?」

組み敷いたとは言え彼女を抱きしめる腕と膝で自重を支えていたので大して重くは無かった筈だが、流石に男の体重で圧し掛かったら重いだろう。

「ええ、主…私は、貴方に捕まっていたいのです」

星の瞳に、再び浮かされたような熱気が帯び始める。

「主に追われ、組み敷かれ、貴方のものだと…はあぁっ…」

悩ましい溜息と共に肉棒を咥え込んだ膣肉がひくりと痙攣し、その刺激で萎えたモノも力を取り戻し始める。

「…星は、俺のものだ…!」

「ああ、嬉しいです…、んちゅ…んむっ…あん、また…」

再び口付けて彼女の口腔内を嘗め回すと、その美味さを糧に肉棒がびくりと星の中で跳ね、星もまた喘ぐ。

「もっと…、もっとしるしを…私を捕まえて、主のものだと、しるしをつけて下され…!」

 

「わかったよ…っ」

切なさと情欲をないまぜにしたような、彼女の熱い吐息と吐露に欲望が突き動かされる。

「…ちょっと起こすよ」

「あん…主、どうすれば…?あ…入れたまま…こうですか…んぅっ…」

星の上体を起こして一旦対面座位にし、挿入したまま彼女の肢を入れ替えさせて背面座位にする。竿を捻じる動きにわずかに彼女が吐息を漏らす。

「星に教えてあげる」

「…?…何を、ですか…あん」

彼女の上体を倒させ、そのまま並べた座布団の上に倒れこませる。モノが抜けないように気をつけながら、自分も姿勢を起こして背後から覆いかぶさっていく。

「捕まえた」

「ああ…はい、捕まっております…んぅ…」

背後から圧し掛かられ、貫かれている格好に陶然としながらゆっくりと尻を振り立てる。

「んぅん…こんなにも深く、突き刺されてぇ…逃げられませぬぅ…」

いつからだったのだろうか。普段の飄々としている姿は出会った頃と変わりないのに、いつの間にかその本質は寂しがり屋で依存心が強くなっていた。犬の伏せのような姿勢を強いられ、ゆるゆると尻を蠢かせながらこちらを振り向く星の表情は、淫らさと安らぎが混ざっているかのようだ。

「…そうだ。星は…俺のだ。捕まって、後ろから突き入れられてっ」

「はぅん!」

「中にぶちまけられてっ」

「あぅぅ!」

一言毎に彼女の美しい尻を突くと、悩ましげな表情と喘ぎ声を上げるが俺を見る瞳をそらさない。

「離さない。逃さない。ずっと俺のものになるんだ。俺の、俺が星の傍にいるんだ…一生だ!」

 

「ああっ…主っ…!ああっ!ああっ、あっ、あっあっあっああああっ!」

猛然と秘奥を突き立てると星は再び悦びの声を上げながら頤を反らし、美しい青髪を振り立てる。

「ああっああっああっああっ!凄いっ、凄いです主ぃっ!奥っ、奥まで来てますぅっ!奥までぇっ、主のものにっ、ああっ!」

「こっ、のっ、格好、星、好きでしょっ」

「ああっ、好きっ!好きですっ、あるっ主にぃっ、抱きしめられてっ!奥っああっ、奥っまでっ、あああっ!主に染められて!」

振り向いた横顔に涙と涎を垂らしながら、抑え込まれてほとんど動かせない尻を必死に振ってくる星の姿に急速に高まっていく。

「あっ、主っ、んぁっ、む、胸もっ」

「可愛がってあげるよ」

ちょうど背後から胸の下辺りを抱きしめていた俺の腕に星の左手が添えられ、腕をずらして彼女のふくよかな乳房を柔らかく握りこむと、あ…、と星が小さく微妙な声を上げ、僅かにこちらを顧みた。

「…ちょっと乱暴にさせてもらうよ」

「ふぁぁっ、ああっ、あああっ…!」

気配を察して鷲掴みに握り替え、固くしこった乳首を揉みたてると望み通りだったらしくびくびくと背筋を震わせて、咥え込んだ亀頭にも新たな愛液が浴びせかけられる。

「っ、星っ…、しるしを、つけるぞっ」

「ああっはいっ!下されっ、下されっ、奥にいっぱいっ、あああっ!あああっ!は、早くっ、も、もう私はっ、なっ何度もっ、来てっ来て下されっ」

俺の律動に合わせて星のお尻を振りたてる速度が速まっていく。さっき注ぎ込んだ精液を洗い流す程の愛液でちゃぷ、ちゃぷと音を立てる結合部が更にきゅうっと締め付けられる。

「星っ…!」

「ああっ!あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…ああああぁぁぁぁぁぁぁ…っ!」

情欲にとろけきった彼女の雌の声を聞きながら、一度目に負けないほどの精を星の膣内に注ぎ込む。どぷっ、どぷっ…と胎内を汚していく感触と共に、彼女の尻と膣内がぶるるっ、ぶるっ…と痙攣する刺激に暫く恍惚としながら。

 

星の耳元で一言囁くと。

彼女は小さく、確かに頷いた。

 

-----------------------

 

「…今回」

「ん?」

主の腕枕で荒い息を収め、天井を見たままぽつり呟いた。

「協力頂いた者達には、礼をしなくてはいけませんな」

「ああ…士季ちゃんとかね。…そういえば士季ちゃん、色々タイミングが良過ぎた気がするんだけど。ひょっとして分かっててやってたのかな」

「おそらくそうでしょう。彼女は飛びぬけて聡い娘です」

「あと白蓮にも礼と言うか埋め合わせしないとな。色々」

「ええ、色々」

まあ、彼女らが埋め合わせをして欲しいのはおそらく主でしょうが。白蓮殿は…そうだ、彼女は今回のような隠れ露出プレイの手伝いをして進ぜよう。羞恥にオロオロする彼女はさぞ面白…もとい、主の歓心を買われる事だろう。

 

「…ふふふ。それにしてもですな」

「うん?」

腕枕のまま主の方を向き、含み笑いを漏らす。

「やっぱりパンチラ見せろと言うのは流石に想像の斜め上を行き過ぎですぞ、主」

「あ、そこもっかい謝らないといけないの?」

「いえ、主が私の為に気遣って御自身の変態性癖を告白されたのですから全く文句等はございませぬよ、ふふっ」

「…一応念を押しておくけど他所で言ったりしないでね?」

「御安心下され、今更主のその程度の性癖で動じる者などこの後宮には居りませぬ」

「言う前提!?」

「私が言わずとも天井裏警備の明命が」

「ずっと居たの!?」

「居たら今頃街の下着屋は売切れ御礼になっていたかと」

「心臓に悪いからやめて!?」

突っ込みながら、久しぶりに主が安心して私と話しているのが感じられる。ああ、私は自身の不安でこの人をもこんなにも不安にさせてしまっていたのか。

 

「そうですな…またたまには、このように激しく…主の愛を、注ぎ込んで頂ければ?」

―――私はもう、愛されている自信を失うことは無いのですよ、主。

そう心の中で呟いて、主の胸に頭を埋めた。



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司馬日記外伝 人に歴史あり?

お久しぶりで御座います。
司馬日記4~6の頃の斗詩さんです。


下着のまま鏡台の前に座って自分の顔を確認する。

うん、血色は悪くない。

前髪は少し切ってきた。

専用の大きな化粧箱を開けて、道具を取り出す。普段は殆どお化粧はしないけど、『こういう日』の為に、随分上手くなってきた。

 

白粉は多少色の強いものを濃い目に。

口紅はやや薄く。

目じりの線は強く、切れ上がるように。これで大分印象が変わる。

おでこに金鍍金の宝飾具。

お化粧はこれで大体終わり。鏡に向かって少しキリッとした表情を作ってみる。うん、大丈夫。

密かに購入した淡い臙脂の上着を頭からかぶって、鏡の中の胸元を確認する。

…少し余ってる。

私だって小さいほうじゃないのにやっぱりすごいおっぱいだなぁ、と小さくため息をつきながら『胸ぱっど』を下着の中に詰めるとちょっときつい。下着も『こういう日』専用に大きいやつを買おうかと思ったけれど、結構高かったのを思い出して我慢する。

下を履いて、青い帯紐を蝶々型に結ぶ。

花柄の淡い茶色の『すとっきんぐ』を履き、さらに白い軍靴を履く。

鏡の中の太腿は記憶の中のものより少しむっちりしているような気がする。

…太ったかな。

 

そんな筈は無い、太る暇なんて碌に無い筈だし。嫌な考えを振り払う。

外套と鎧は今日は無し。

そして仕上げに前髪をすこしひっ詰めて、長い――――重たいくらいの、特注のかつらを被る。

 

 

 

--------------

 

 

昼下がりの皇帝の執務室。仕事場のここには、今はあたしと一刀様の二人だけ。

お茶は月さんが持ってきたのがある。

おやつの時間にはまだ早い。

昼食の用意の補助はあたしがやったので、食器の片付けは杏(逢紀)がやっている。

洗濯は月さんが干している最中だ。洗うのは他の人がやっても干すのだけはどうしても自分でやりたいらしい。

あの偉そうで小うるさいメガネチビは張任と会議に出てる。劉璋は非番だ。

一刀様は何か難しい顔して荀彧の書類を決裁中。

荀彧も「忙しいんだから詠とか風とかに聞かないで自分で考えんのよっ!でもどうしても分かんなかったら私に聞きに来るのよ、絶対他の女に聞くんじゃないわよいいわねっ!!」とか言って、一体考えろなのか聞けなのかどっちなのか。

こうしてあたしはやることが無く、ぼさっと部屋の隅に突っ立ってたりするとふと思い出した事を口にしたくなるのも仕方のないことだ。

 

「ねェ一刀様」

「ん?何、燕(許攸)さん」

「何で斗詩みたいな恐ろしい女まで囲ってんの?」

「…燕(許攸)さん死ぬぞ?」

「だ、大丈夫よ、今二人だけじゃない?」

「残念二人だけじゃない」

天井を指差しながら一刀様の少し呆れたような視線。でも前から気になってた事ではある。

「これだけ女いっぱい囲ってるんだから、別に斗詩みたいな鬼女まで手ェ出すこと無いじゃない。…そ、それにさ、一刀様がさ、したいって言うんなら…その、あ、あたしだって別に…」

言いながら、メイド服の裾を少しだけ持ち上げる。

 

――――君の事を大切にさせてくれないか。

斗詩に拉致られそうになった数日後、皇帝陛下―――一刀様からそう熱烈に口説かれて、私はこの人と結ばれた。

『死なせたくないんだ』

『君ならやっていける』

『ずっと大事にするよ』

どう聞いたって事実上の愛の告白。

そして、あんなに口付けをして。あんなに体中を嘗め回して。あんなに硬いものが、あたしの胎内で。

ここ(総務室)に入る時は天下取ろうとか思ってたけど、そんなものよりずっと大切な旦那様が出来て、ついでに付いてきた天下は旦那様に任せてあたしは側に寄り添ってあげる事にした。

一応筋は通そうと思って、冀州の仲間に『あたし、皇后になっちゃった』って伝えたら、『お手つきになって舞い上がった女が必ず一度は通る道よねぇ。まあ二、三ヶ月位すると現実を知るだろうけどさ』とか彩(張郃)とか恵(高覧)が生温かい目つきで見てくるのは所詮都合のいい女か側室止まりであんな言われ方をした事が無いからに違いない、かわいそうに。

…旦那様がしたくなったらさせてあげるのが妻の務めだから。

皇帝様がそこらへんの変な女つまみ食いして食あたりでもしたら目も当てられないし。

もう少しで下着が見えちゃうんだから早く何か言いなさいよ。

 

裾を掴んだ指がぷるぷると震えながらゆっくりと太腿の上まで上がろうとしたところで、部屋の入り口からカーンカーンとお玉で鍋を叩く音が聞こえた。

「燕さぁーん!?もうすぐ午後の『当番』の方来るからそういう事止めてもらえますぅー?前から言ってますけど死にますよぉー!?」

「あ、杏さん!」

見ると、思いの外早く洗い物を終えた杏が扉に凭れて立っていた。夫婦の睦み合いに水を差す空気の読めない女め、側女の一人や二人待たせておいたっていいでしょうに。

 

「こんにちは…あ、燕もこんにちは」

「う…お、おはよ」

ひょこっと扉の端から顔を覗かせたのは噂をすればの斗詩だった。…まあ昔の誼で今日は譲ってやる事にする、別にこないだの事でビビってるわけじゃないわよ。無いんだったら。

「ああ、待ってたよ斗詩。じゃ、出かけようか」

「あ、はい。じゃ、外で待ってますね」

残っていた書類の決裁欄に署名すると、外套を掴んで羽織り始める一刀様と目が合った。

「斗詩にはさんざん苦労かけたからねぇ。労わってあげる時間も必要なんだよ」

「旦…一刀様がそう言うんならそれでもいいけど。知らない女じゃないし」

膨れっ面をしていたらしい私を宥めるような言葉に、意識して頬の力を緩める。

それじゃあね、と執務室の扉を閉める旦那様を見送ると後には杏と私の二人が残された。

 

「…ねェ。斗詩、そんな苦労してたの?」

「さぁ?私こっち来てからは日が浅いからあんまりよく知りませんけどねぇ、昔冀州で麗羽様の部下だった頃は苦労してんなーと思いましたよ、つかその頃だったら燕(許攸)さんだって知ってますよね。それよか一刀さん居ないうちに掃除やりますよ掃除、ほら台拭きありますから」

「きゃ、ちょっと投げないでよ!」

「取れるでしょそれくらい。私床の方やりますから」

下投げで飛んできた台拭きを受け取ると、私は斗詩の事などすっかり忘れてまだ旦那様の温もりが残る執務椅子に腰かけながら黒檀の机を拭き始めた。

 

---------------

 

ある郡吏曰く、『私、忙しくて余り覚えていられませんの』が口癖らしく、事業の御礼を言いに行っても『そんなこと言いましたかしら』と実際よく忘れられているという。

ある太守曰く、口調に似合わず指示が的確らしい。

ある豪商曰く、『おーっほっほっほ』の声の元気がいまいちな時は財布が渋いらしい。

ある県令曰く、『お一人で来られる時は詳細な打ち合わせをされ、二人のお供がいる時は韜晦しているのではないか』

ある村長曰く、驕慢苛烈と聞いていたが温和で話しやすく、噂は当てにならないと語った。

 

魏領内の巡幸で冀州周辺を回っていると、麗羽についての不思議な噂を聴いた。

俺の記憶が確かなら麗羽は都に居座ったっきりで冀州には碌に帰っていない筈であるし、妙にいい噂が多いのも正直聞いていたのと違う。本人に聞いても

『おーっほっほっほっほ!私の善政が海内遍く行き渡っていると言う事ですわ!』

と割と予想通りの答えだ。麗羽の事はそれなりに知っているはずの華琳に聞いても、眉を顰めながら

『もしそれが事実なら、とっくの昔に私は官渡で敗れてここには麗羽が座っている筈だけど』

と言う。寧ろ最近の都でのやりたい放題にはいよいよ頭が痛いところに、有る晩桐花(荀攸)から寝物語に麗羽を調教しろと焚き付けられた。

「あの女、ウザいから調教しちゃって下さいよ一刀様ぁー?絶対、絶対ですって本性間違い無くどMですから!ああいう高慢ちきなアホ女、一回ビシッと躾けてやれば結構いい雌奴隷になりますよぉ?」

「そうは言われてもなぁ…」

心底鼻っ柱へし折られた麗羽がどうなってしまうか心配だし、正直女の子にそーゆー事をすること自体かなり気が進まない。

乗り気でない俺の返事に桐花(荀攸)はむー、と不満げな表情を浮かべたが直ぐに悪戯っぽい顔をすると、

「じゃ、一刀様をその気にさせてあげますよ。…柳花(荀諶)からもあの先輩可哀想だから助けてあげてって言われてますしね」

「?何の事?」

「こっちの話です。じゃあですね一刀様、…」

 

――――――三日後の昼過ぎ直ぐに、こっそりと顔良の部屋を訪ねるといいですよ。

何故かと聞いても行けば分かります、んで袁紹を調教しようって気になると思いますよ、と言うだけで唇を塞がれてもう一戦にもつれ込んだだけだった。(尚返り討ちにした)

 

------------------

 

三日後、怪訝に思いながらも言うとおりに斗詩の部屋を静かに覗くと、部屋の前室に使い古されたノートらしき物を見つけた。

こっそり覗け、と言われた趣旨から考えて見ざるを得ないと判断して、斗詩の気配に注意しながら静かにページをめくる。

「………」

一見して仕事のメモのように見えるそれは、何か強い違和感を発している。

これが、仕事のメモだと、おかしい。

部屋の中で人が動く気配にそっとノートを閉じて中の様子を探ると、かつら――――豊かな金髪くるくるのそれを被った『麗羽っぽいなにか』が、姿見の前で一度目を瞑り、目を見開いて顎の下に手の甲を添えて息を吸った。

「おーっほっほっほっほ!……ん、んん」

小さく喉を鳴らし、ちょっと低いかなと呟き再びすうっと息を吸った。

「おーっほっほっほっほ!!……こんなかんじかな。さっ、今日も頑張んなきゃ」

半音上げた高笑いの後にそう呟いて顔を上げると、部屋の入り口に立っていた俺と目が合った。

 

 

 

止まる時。

ぽかんと開けられた口。

目を見開いた『麗羽っぽいなにか』の姿が、俺自身の涙で滲みはじめる。

 

 

 

 

「…お、おっ、おーっほっほっほっほ!斗っ、斗詩さんならいらっしゃいませんわよ!?わわわたくしこれから平原令と打ち合わせですので失礼しますわ!」

「…もういい」

額からだらだらと汗を流している『麗羽』の腕を掴む。

「かっ、一刀さんは何を仰っているのかしらっ!?わ、わたくしは麗羽でしてよ!?」

「…もういいんだっ…!」

「な、なんで泣かれているんですのっ!?」

「これも見させてもらった…」

「あ、そ、それはっ」

俺の手元にあるノートを見て慌てる『麗羽』。

 

*************

 

≪打合せ備忘録≫

 

【平原令○○と】

○月×日

税制について打合せ。再調査後の戸籍簿の提出と引き換えに減税を提案。

 

△月□日

連絡無しで上京され麗羽様に面会されていることが判明。麗羽様が好きにしなさいと指示されてしまっていた為上記のとおりと再指示。

 

※月?日

減税幅について吏員より説明資料を受領、一ヶ月以内に回答予定。上京の際は私に事前連絡をするよう指示。

 

!月%日

郡の年賀式典に出席。想定戸籍数について回答あり、提案通りの減税幅として来年施行を指示。

 

&月#日

麗羽様が新鎧の調達を指示されていた事と引き換えに減税幅を倍にする事を承諾していた事が判明、急遽平原へ赴き鎧の仕様の変更、減税幅の削減を打合せ。

やや不信感を抱かれている様子を感じる。誤魔化しきれない可能性があるので新人の荀諶さんに引継ぎを検討。

 

【鄴太守○○と】

 

……

 

【渤海太守○○と】

 

……

 

*************

 

 

「あ、あのっ…私、騙したり悪い事するつもりじゃなくてっ」

「分かってる…分かってるっ…!」

俺を見上げる斗詩の瞳にみるみる涙の粒が盛り上がる。

「こっち(都)のお仕事もありますけどっ、国(冀州)の方の事が全然回らなくて、でもこっちで麗羽様とか文ちゃんとかが問題起こしたらそっちにも行かなきゃいけないし、太守さんたちからもいっぱい問い合わせ来てたりさぼっちゃう人とか謀反起こしそうな人とかいたりするからそういうのもなんとかしなきゃいけないけど、でも私の名前じゃどうにもならなくて麗羽様じゃないと出来ない事がいっぱいあって、…わ、私っ…うううっ…」

「休めっ…!もういいっ…休めっ…!」

「か、一刀さぁぁぁぁん!うわぁぁぁぁぁーん!!」

自身の不甲斐無さ。

甘さを優しさと履き違えていた自分の愚かさを、泣きじゃくる斗詩を抱きしめながら痛感する。同時に日頃は甘く、下手から接してくれる桐花(荀攸)が時には今日のような体験をさせて反省させてくれる事に感謝も胸に湧き上がる。

 

一頻り泣かせた後、かつらと涙で乱れた厚化粧で違和感バリバリの斗詩の顔をそっと上げさせた。

「大丈夫だ。後は任せてくれ、麗羽は俺がなんとかする。あと冀州の方を見てくれる人材の手配もするから、仲達さん…総務の司馬懿さんに言ってくれ」

「え…、大丈夫なんですか、本当に…」

「ああ、大丈夫」

精一杯のハッタリの笑顔。

正直それほど成算がある訳じゃない。しかし、必ずやり遂げる。

戦乱の頃はたまには俺の所に来て愚痴る程度の事はしていたのに、最近はそれにすら来ない程多忙を極めていた斗詩を労わる為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それからだったかなぁ、一刀さんと距離がぐっと縮まったのは。うん、体の関係はそれより前からもあったし好きだなっていうのも優しくして貰ってるなっていうのもあったんだけど、やっぱりこの頃から凄く気持ちが通じ合うようになったって言うかぁ。麗羽様もすごく落ち着かれたし、お仕事も純(田豊)と静(沮授)とかのお陰でぐっと楽になったよね。あ、そうそうその純たちに就職して貰う為に冀州に一刀さんと旅行…うん、まあ出張だったんだけどね、その時の話まだしてなかったよね?その時も一刀さんすっごく優しくしてくれて…って、燕(許攸)聞いてる?やだもー、燕まで寝たふりしちゃってー。『つきあってあげるわよ』って言ってたんだからもうちょっと飲も?ほら上向いて、あーん♪…

やだ駄目じゃない零しちゃー、燕なら一升瓶くらいいけるでしょ?…厠?さっき杏(逢紀)が青い顔して駆け込んでたから空いてないんじゃない?それより聞いてよ、冀州でね…え?何も謝られるような事はされてないと思うけど。…でーと中に燕が一刀さん緊急会議に呼びに来たのはそれがお仕事なんだし、別に燕のせいじゃないじゃない。折角新調した下着が無駄になっただとか次は一ヵ月後迄二人の時間は取れないとか新参のくせにしょっちゅう一緒に居られるのがずるいとかは燕には関係ない話だからそんなガタガタ震えて涙目になることないよ?むしろ優しい友達に囲まれて私幸せだよ、有難うね、なんか彩(張郃)も恵(高覧)も純(田豊)も静(沮授)も杏(逢紀)も、みんな倒れて寝ちゃったけど。

…あ、『もう限界』ってどこ行くの!?…もーしょーがないなぁ。…あ、杏(逢紀)お帰り。それじゃお店変えて飲み直そ?彩(張郃)も恵(高覧)は私が背負ってくから、純(田豊)と静(沮授)は杏がお願いね?」

 



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司馬日記55

お久しぶりで御座います。
その後の、とある文官の日記です。


10月27日

魏財務局にて財政事務取扱基準(案)が作成され、総務局にも供覧が回ってきた。

課長以下の事務手続きの内容が主であり委細は分かりかねるが、非常に合理的かつ属人的な紛れがなく執行出来る基準書であると考えられた。

公達様へ近年の事務基準の整備は目を瞠るものがありますと報告すると、

「そりゃそうよ、中間(管理職)の連中は決め事はっきりさせて下(部下)に仕事投げて、浮いた時間を出世にかけて一刀様の腰にまとわりつこうとしてるんだからそりゃ必死よ。一般事務の『まにゅある化』自体は効率化になるって一刀様も奨励してたし、法令整備に血道をあげてる桂花なんかいい例じゃない」

と言う。

日々一刀様の御尊顔をお近くで拝している私は余り意識していなかったが、確かに御傍勤務でない者にとっては一刀様との時間をとる為には重要なことであろうし爆発的に事業が増加し人手不足が慢性化している昨今においては合理的な事でもある。

一刀様は御自身の賢政のみならず、間接的にも臣下の職務にも良い影響を与えておられる事に感動した。

 

10月30日

一刀様直轄総務部の勤務にて先日の基準書の件を思い出し、月様へこちらの事務(一刀様の身の回りのお世話)について御作りになった要領書は先見の明であったと思いますと述べた。

すると月様は少し困ったような表情をされこういったものを作成しないと身が持ちませんのでと言い、それを見ていた詠様は身がって言うより胃がねと呟かれると月様は益々困ったような苦笑いを浮かべられた。

 

11月1日

職員の定期配置転換制度について各本国合同で総務室へ提案された。主な理由としては本国勤務の勤労意欲向上及び昇進機会の均等化であるという。

詠様曰くは『御前等ばかり種馬と盛ってないで私らにもイチャコラさせろ』と言う事らしい。

内政問題であり総務室では回答しないとし、人材育成については各国にて適切に対応されたいと添えて各国総務局へ回送された。

 

11月3日

魏でも総務に携わる身としては先の配置転換制度は他人に投げて終われない問題だ。

公達様は件の収受文書を見られるや半眼で舌打ちされ『雌奴隷予備軍共が…ぐだぐだ言うのは部長級になってからにしろってのよ』と呟かれた。

しかしおそらくはその部長級になるが為の陳情であり、又地方の者が全て被虐願望者であるとは限らないのではないだろうか?

 

11月4日

管理職研修で『円滑意思疎通能力』という講義を受講した。天の国の言葉ではこみゅにけーしょん能力と言うらしい。

その研修の一環で隣席の人と一対一で互いに褒めあうというものがあったが、亞莎や凪のようによく知る者を褒めるのは簡単だがほぼ初対面のような相手を褒めるのは中々難しいと感じた。

一方相手方の女性はは蜀の地方の方であったがむず痒くなるほど褒めちぎられ、何故か私の事を知っていたらしく有名であるとも言われた。

何時何処で人の口に上るかは分からぬものであるので、一刀様の格を傷つけぬためにも臣下として日頃の行動には気をつけねばなるまい。

 

11月7日

元直らと休憩中に先の研修を思い出し、元直や子敬相手であれば比較的褒めるのも容易なのだがと語った。では褒めて見せろと言うので容姿に優れている、剣戟の腕も素晴らしい、政治経済に通暁している等と褒めて見せたが揃って半眼で『気持ちが欠片ほども感じられない』『社交辞令にしても酷過ぎる』等と言う。

その後では誰が褒めるのが上手かと言う話となり、月様、曹操様、白蓮殿らの名が挙がったが、それを隣で聞かれていた詠様が

『女褒める事に関しちゃアイツが一番よ。仕事でやってるからね』

と呟かれ、全員が納得していた。

 

一方、褒め下手な人についても話が挙がったが余りにも多く、半ば愚痴のようにもなりここに書くにも憚られるものであった。

 

11月10日

休暇をとり、再び璃々嬢、恵達と雅達に短戟の手解きを士季と共に行った。

自身未だ老け込む年ではないとは思ってはいるが、指導を通してとは言え後進の者とのふれあいはどことなく心温まるものがある。

璃々嬢は授業中は幼少の頃の様に結んでいた髪を終業後に下ろすと、未だ小柄ながらも女性らしく抑揚のついた身体の成長とも相俟ってその美少女振りははっとさせられるものであった。

終業後は士季とお茶をしたいと言い、二人で街へと出かけていった。

 

夕食の際に士季に璃々嬢とどこへ行っていたのかと聞くと、

「まあその辺でお茶しただけですけどね。ま、利害が一致したんで対呉のヤバい奴同盟結んできましたよ」

と言う。思い当たらないが、呉にそんな危険人物が居るのだろうか。

 

11月11日

李典工場長は時折一刀様に『真桜えもん』と称される事がある。

『えもん』の意味をお尋ねしたところ、天の国に未来の青狸が万能の技術力を駆使して子童を助ける著名な書物があり、その青狸の名に由来しているとの事だ。

嘗て曹操様が文若様を張子房になぞらえた事と合わせ、このように一刀様に特別に御呼び頂ける様忠勤に励むよう家で妹達に説諭すると、恵達は三国塾に通う馬鈞なる娘が発明の才が高く、中等部に属する身ながら李典工場長の工房に出入りしており級友からは『鈞えもん』と称されているという。

次の世代においても確りと一刀様を支えて貰わねばならないところであり、末頼もしい事だ。

 

11月15日

文若様が一刀様の執務室を訪れ法令の御説明をされていた時に

「ジロジロ人の顔見てんじゃないわよ!」

と言われた。かねてから一刀様より、一刀様への文若様の物言いについては口出し無用と念を押されていたので敢えて指摘しなかったが、前回ご説明の際には

「人の話を聞く時は相手の目を見て聞きなさいよ!」

と怒鳴られていた筈だ。

 

魏の総務部へ戻った際、公達様へその事を話したところ、

「しょうがないのよ、あれ(桂花)はそういう病気だから」

と事も無げに言われ、全く気にされるご様子も無かった。

 

11月17日

終業時間後、詠様が珍しく麻雀をしないかと私と元直、子敬を誘われた。曰く、近々麻雀大会があるのだそうだ。

偶には気晴らしにいいと元直らも乗り気であったので私も付き合わせて頂く事とした。

二半荘行ったところで私は二位、三位であったが、詠様がじっと私の方を見られながら

「あんたの駆け引きゼロの機械じみた打ち方、ある意味究極のあの女狐対策になるかもしれないわね…」

と呟かれ、元直と子敬もはっとした表情でそれマジで行けるかもしれませんよと答えていた。

女狐とは誰の事だろうか。

 

11月19日

業務の合間に、一刀様より詠様らと麻雀をしたんだってと問われその通りで御座いますと答えたところ、俺もちょっとやりたいなぁと呟かれた。御給仕されていた月様がそれを聞かれ、ではお仕事の後でしたらお相手しますよ、詠ちゃんも仲達さんも如何ですかとお答えになられたが、一刀様は私と月様の顔を見比べられると決まり悪げな御顔をされて「有難う、でももうちょっとレベルの低いところでやらさせて」と固辞されてしまった。

月様はがっかりされていたようだが、詠様は「月も心読める相手と麻雀しろとか無茶言わないの」と月様を窘められていた。

…残念だ。

 

11月20日

各国王と三国塾の視察に行かれた一刀様が、疲れた御表情で執務室に戻られてきた。

視察先は初等部であり、一刀様は日頃子供らの相手は苦にされないと思っていたが何かおありだったでしょうかと伺うと年少の子らの喧嘩の仲裁をしていたとの事だ。そのような些事は教諭らにお任せ頂いて宜しいのではと申し上げたが、いやその場に居たからと言われ、休憩室へ行かれてしまった。

 

同行されていた詠様に何があったのか伺ったところ、視察の為廊下を各国王らと歩かれていたところ、教室内で口喧嘩をしていた呉属と思しき娘が

「ばーか!ばーか!お前の王様ぺったんこー!!」

と罵ると魏の娘が負けじと

「ふーんだアホー!あんたの王様そんざいかんぜろー!」

と罵り返した現場に出くわしてしまった為一刀様が慌てて教室に乗り込み止めに入ったとの事だ。

「おまけに止めに入った蜀の娘も『王様ぱっぱらぱーの国のやつは黙ってなさいよ!』とか言われてたしね。三人とも、お通夜みたいな顔して帰ってったわ…まあ、何ての?大人は子供の前で迂闊な話はするなって事よね」

と溜息をつかれて席に着かれた。

 

11月21日

昼食から執務室に戻ったところ、三国塾初等部部長代理の崔州平殿が平身低頭しきりに一刀様の執務室から辞されるところに行き違った。

 

曰く、先日の初等部の子らの発言のお詫びとの事であったが、私と同行していた元直が

「あぁらがきんちょ達の面倒一つ見れない州平さぁん、一刀様の御部屋に何か用ですかぁ?そんな方が大陸の頭脳を司る総務室に異動したいとかひゃっっっく年早いんじゃありません事ぉ~?」

等と煽ると憎々しげな目つきで元直を睨みつけ、今に見てなさいよこの色ボケ女と吐き捨てて出て行かれた。

(水鏡)女学院出身者は仲が悪いのかと元直に尋ねると、別に本気で仲悪い訳じゃないけどあいつとはちょっと遺恨(※)があってね、と答えた。

※『司馬日記外伝 三国塾からの報告書』参照

 

11月24日

于禁殿の給与に関する稟議が総務室へ回ってきた。かねてより服飾等の開発・構成等について活動されていたが需要が高過ぎ、正式に業務として三国に成果品を供給することとなり各国からの負託金を原資に于禁殿の給与・活動費を支給することとなった為だ。

一刀様が決裁される際、御自身も寵姫らの下着や特殊衣料を意匠されている事から

「俺も開発やってんだけどなぁ」

と呟かれた。すると詠様が

「あら、あんたは前々からその報酬貰ってるでしょ?金じゃない形で」

と答えられ、一刀様は苦笑いを浮かべられながらそういやそうだった、と頭を掻かれた。

 



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司馬日記外伝 絶対に突っ込んではいけない愛紗との夜22時(R-18)

その後の、とある蜀の武神様です。
一刀さん、突っ込まずに突っ込むとはこれいかに。
えっちなのはたまにすごく書きたくなるんですが難しいですね…

ところで飯坂様がtinamiでお描きになられている星はとってもえっちです。
とってもえっちです。(大事な事なので二回言いました)


部屋の扉の前で一つ大きく息を吐く。

 

大丈夫大丈夫。

全然いける。

昼間の桃香とのやりとりを思い出しても全然問題無い。

 

---------------

「ごめんなさい」

「…どうしたの?」

昼休みに、桃香からちょいちょいと手招きされて廊下に出るなり神妙に謝られた。こういうのすごく怖い。経験的にすごく怖い思いした事が多すぎる。

 

「あのね?愛紗ちゃんの事なんだけどね?」

「うん」

「最近ほらその…夜、普通な事が多かったじゃない?」

「うん?」

暫く前、愛紗は某呉の残念性癖美人大将軍様に影響されて多分に残念な性癖を身に付けてしまっていたが、とある事件(髀肉之嘆事件)と士季ちゃんの入れ知恵もあって大分普通の夜の生活に戻って来ていた。

「…なんだけどね?」

「…うん」

語尾でもうそっち方面でアレな話って事を察してちょっとだけ辛くなるが顔には出さない。

 

「最近ね?陳琳さんって人が書いた小説に凄くはまっちゃってて、どうしてもその…それでしたいんだって。でも私はね!?ご主人様はきっとそういうのはっ」

 

「OKわかった、後は任せてくれ」

「うー…ごめいわくおかけします…」

皆まで言わせず手で制すと、ガクーという感じで肩を落とす桃香。

「桃香の所為じゃないし大丈夫、そんな愛紗も好きだから。それより来週、桃香も仲良くしような」

「うん…ありがと。じゃあ、お願いね」

 

--------------

多少不安げな桃香を見送って午後の政務やら何やらを済ませた後、こうして待ち合わせ場所の特別室(八)の前に立っている。

 

 

 

 

「愛紗、入るよ」

「くっ…殺しなさい!」

 

 

 

 

ええいままよと部屋に入るなり、手錠足枷姿でベッドに腰掛ける蜀の武神様に睨まれました。

そーゆーので来たか。

 

 

 

「…ふっ…」

その一瞬で方向性を察し、悪者風に口元をゆがめた笑いと共に愛紗の方へゆっくりと歩み寄る。

流石にくっ殺だけで今後の展開を愛紗の希望通りに行ける自信はない。なにかヒントは無いか…と見ると、愛紗の座る寝台の脇の棚に小説らしい本が見える。

 

 

『囚われた女剣士 ~淫辱の宴~ 陳琳 著』

 

 

…これですか。

これ系って事ですか。

読んだ事無いけど多分大体いけるだろ、と悪党っぽい表情を崩さず瞬時に頭を巡らせながら愛紗の隣に腰掛ける。

「くっくっくっ…こうなっては蜀の武神も形無しだな?」

「くっ…殺しなさい!」

二度言った。きっと気に入ったんだなこのフレーズ。

「そうはいかないな…お前は大事な人質だ、せいぜい楽しませて貰うぞ」

「くうっ…!」

軽く頤を掴んでこちらを向かせると、悔し嬉しそうな表情を浮かべて目は逸らして顔は逸らさない愛紗。どうやらシチュ設定はこれでokらしい。

「私は、私の心も体も御主人様の物だ!貴様等にどんな事をされようとも、貴様の物になどなるものか!」

「ククク…その強がりが、いつまで続くかな?」

お約束の係り結び。勉強しておいて良かった古典は教養。つか、俺から俺が寝取る設定なんだ?さてここからどうしたものかと一瞬思案しようとすると、愛紗の視線がチラチラッと棚を向き、その先にある角瓶が目に入る。

 

『超強力媚薬』

 

どう見ても今貼られました的なラベルに愛紗の達筆な字。そう言う事ね。つか反対側に明らかに梅酒ってラベルが貼りっぱなしってのは突っ込めって事なのか本気で剥がし忘れたのか。

「今日はお前の雌の本性を暴いてくれよう…」

「なっ、何を私に飲ませる気だっ!?」

暴くって言っただけで飲ませるとか一言も言ってない。やばい、ここまで愛紗の突っ込ませスキルが高すぎる。

ベッドに腰掛けたまま一切抵抗しないのはいいけどそんなに嬉しそうにしないで、一応これSMプレイなんでしょ?

角瓶の栓を外し、一口口に含む。うん、梅酒だこれ。

「何をするっやめろっ、んむ…んちゅっ…んくっ…」

そのまま彼女に顔を近づけると、嫌がる言葉とは裏腹に自分から口移されに来る。目を閉じ夢中に舌を絡めて貪る愛紗を可愛いなぁ可愛いのになぁと思いながらも、うっかりダチョウ倶楽部という単語が頭に浮かんで一瞬咽そうになるのを堪える。

 

「んっ…むちゅ、れろ…むぅん…んぱぁ、ふぁ…くっ、体が熱いっ…貴様、何を飲ませたぁ…?」

どっからどう見ても凌辱的なそれではなく恋人達のディープキスで梅酒の味がなくなるまで舌を絡めあった後、蕩けかかった瞳で見つめてくる。

「ふはははは…これはどんなお堅い剣士だろうと盛りのついた雌犬のように発情してしまう、超強力媚薬だ」

「なっ、何だと!」

何だとも何も、貴女が用意したアレだと言うのにそこまで驚いたリアクション出来る愛紗はある意味凄い。

「どうだ段々体が熱くなってきただろう?」

「ううっ、体が…っ!?ち、近寄るなっ」

「おっと」

意識的にやっているのか、少し息を荒げながら肩同士で軽く俺を突き飛ばすとベッドの上を逃げるように膝立ちで離れていく。

追えってことなんだろうなと思い後を追うと、愛紗が手錠をかけられた手首をひねるような動きをするとカチッと小さな音を立てて外れ、そしてすぐさまベッドの端から突き出していた短い金具に両手首をこすりつけるとカチリと何かが嵌まったような音がした。

 

「くうっ、に、逃げられないっ!?く、来るなぁっ」

「…………………」

一瞬で後ろ手錠から前手錠にしてベッドの端にセルフ拘束、ってお前は引田天功か。ていうかどうなってるんだその手錠?

 

「く、来るなと言ってるだろう!」

「…来るなと言われてはいそうですかと言うとでも思ったか?」

余りの早業にぽかーんとしてしまっていたところから我に返ると、焦れた愛紗がお尻突き出してパンチラさせながら来るな(意訳:来い)と繰り返した。

「もう体が熱くて堪らないんじゃないのか?」

「くぅんっ、さ、触るなぁっ」

背後から圧し掛かるようにして豊満な胸を服の上から揉みしだく。SMプレイの時は愛撫は雑にして欲しいという以前愛紗からもらったリクエストを忘れることはない。

「んん?乳首がもう尖ってるぞ」

握りこんだ指が沈み込む、マシュマロのように柔らかい乳房の頂点に固さを帯びた感触。以前外出帰りにする流れになった時、胸の妙に硬い感触にん?と思わず声を出してしまったら『し、下着ですから!鍛錬中は固い下着で抑えていないと痛い時がありますので!』と真っ赤な顔で懸命に弁解された時以来、する時は大体愛紗はブラはしてこない。

「はあぁぁっ、そ、そこはっ」

「ここが弱いのか?武神様は」

乳首を摘み、くにくにと指で転がしながら揶揄する。

「んあぁっ…、はぁんっ、だ、誰が正直に乳首が弱いなどと自分の弱点を喋るものか!」

言っちゃったよ自分で。笑いが喉の奥にまでこみあげかかったのを無理やり腹に押し戻す。

「そうか武神様は乳首を責められるのがお好みか。では、直に虐めてやろうじゃないか」

「ひぃんっ、やぁっ、胸ばかりっ、ああっ、嬲られているぅっ」

愛紗が横を向いた先をつられて見ると、鏡の中で脇の下から服の中に手を入れられ思うさまに乳首を捏ね回されて恍惚の表情を浮かべている愛紗がいた。

「くくく、すっかり雌の顔じゃないか、関羽」

「くうっ、い、言うなぁっ、そのような辱めをっ」

もっと言えって事か。

「しかし繋がれて、背後から胸を好き放題揉みたてられてよがり声をあげているじゃないか。これがお前の本性なんだろう?」

「ふあっ、ああっ、そ、そんな事はぁっ!」

「乳首もこんなにカチカチだぞ?」

「あああああああっ!摘まむなあっ」

耳元で囁くと、喘ぎ声と共に四つん這いのままこちらを振り向いた。そのまま目を閉じてピンク色の唇をこころもち突き出すようにするのを見て、体を乗り出し唇を合わせ舌を絡めあった。…これ本当にSMプレイなんだろうか。

 

「…んむ…ぷぁっ、………ふ…ふん…このような事をいくらしても無駄だっ…」

「なんだと?」

快楽に蕩けながらも、弱弱しく睨みつけてくる愛紗。

「何故なら、こんな事で私は堕とされはしないからだ」

「ほう…だったらどうされれば堕ちるんだ?」

にやりと笑った愛紗の表情は、いやらしくも可愛らしいと言うか。

 

「私は決して堕とされはしない…私の一番の弱点を、奥深くまで嬲られぬかない限りはな!」

「ふ…」

やばい。一瞬口の端が上がりそうになってしまった。

「…ふふふ、分からぬないだろう、私の弱点は」

確かにわからない。覆いかぶさる俺の下からお尻をフリフリ蠢かせて、ズボン越しに俺のを挟みこもうとされたら分からない。

「何しろ、それをっ、んっ…、知っているのはっ、愛するご主人様だけだからなっ…んふぅ…」

陶然とした表情で自分のそこを慰めるようにお尻を押し付け、クネクネとこすりつけてくる。時折くちゃりと水気を帯びた音がそこから響き、既に愛紗の下着は濡れそぼっているのが見えた。

正直俺も、笑いに意識を向ける事で抑えてきたけれどそろそろ限界だ。

 

「確かにわからないな…では、こちらの好きに探させてもらおうか」

「あっ…な、何をする気だっ…」

ぐりぐりと押し付けてくる愛紗の丸いお尻を一旦離させ、ベルトを外してモノを取り出すとその様子に気付いたのか欲情に弛んだ声を上げるのにも構わず、愛紗の純白の下着を勢いよくずり下ろす。

「や、止めろぉ、下着を取るなぁっ…」

下着を抜く為、片膝づつ上げさせようとすると愛紗の右手が俺の右手に添えられ、そっと下着の腰紐の部分に持っていかれた。

…こっちをほどいて下着を取れって事ね。

愛紗の言ってる事とやってる事の差と、さっき(彼女自身で)かけた筈の手錠の着け外しが自由自在過ぎる事に思わず笑い出しそうになるのを嗜虐者の笑み的なものに何とか摩り替える。

「ああっ…ま、まさかっ」

俺のモノが入りやすいよう心持ち足を開きながら上体を倒し、むっちりとしたお尻をクイ、と突き出してくる姿の淫らさに言動不一致の笑いなどは既に吹き飛ばされた。

 

「まさかじゃない…そら!」

「ああっ、ああぁぁあああ~っ…!」

一気に愛紗の蜜壷の中に突き入れると、その美しい眉根を寄せて細く長い悦びの悲鳴が彼女の喉から搾り出される。これだけ誘っといてまさかもクソも無いだろうとかはもうどうでもいい。

「…ここか?武神様の弱点は」

「あああっ…こ、こんなぁっ、奥までぇっ…!ご、御主人様にしか許していないのにぃっ」

ぬめる柔襞で一頻り挿入感を味わうと、無意識なのかうねるようにお尻を蠢かせて奥へと誘う愛紗。

「奥まで、どうされているんだ?ほら、鏡を見て言ってみろ」

「ああっ…!抵抗出来なくされてえっ、あんっ、奥深くまでっ、犬みたいな格好でっ、ああんっ!お、犯されてるぅ!」

白い顎を軽く掴み横を向けさせると鏡の中の自らの痴態に陶然とし、膣内がひくりと食い締めた。

「くくく、敗軍の将とはみじめなものだな」

「くうっ、ああっ、ああんっ、だ、黙れぇっ、ああっ」

「しかし体の方は悦んでいるようだぞ?蜀の武神は牝犬のように犯されるのがお好みだったとはなぁ?」

「そ、それはぁっ、き、貴様が卑怯な薬をっ、あぁんっ」

「ふん、あの関羽が牝穴をこんなにはしたなく濡らして言い訳か?劉備に聞かせてやりたいものだな」

「くぅっ…!ああっ、あっ、あっ、あっ」

ストロークを弱めにしながら言葉責めで陵辱プレイを盛り上げようとするが、愛紗の名器と美貌、プレイとは言え被虐にとろけた言葉にかかっては正直こっちも余裕が無い。

「…奥深くまで、汚してやる…!」

「あっ、ああっ、や、止めろぉっ、そんなにされたら堕ちるぅっ、堕とされてしまうぅっ、ああんっ!?」

ぱあん、と白いお尻にひときわ強く腰を打ち付け、尻肉を掻き分けるようにして奥まで突き入れると悲鳴を上げて白いお尻を震わせるのを皮切りに、激しく膣内をしごき上げる。やばい、もう長く持たない。

「堕としてやるっ、関羽っ…!」

 

「あっ、ああんっ、や、止めろっ、堕ちるっ、堕ちちゃうっ!い、イかされてぇっ、奥に出されたらぁっ、新しい御主人様のぉっ、ああんっ、雌ぅっ!雌奴隷に堕ちちゃうぅ!何でも言いなりされちゃいますぅっ!」

「それは好都合だっ、イけっ、中に出されてイけっ」

「あああああっ!だ、駄目っ、ああんっ駄目ぇぇっ!」

言葉ばかりの拒絶と裏腹に俺のピストンに合わせて突き出されるお尻と、愛液塗れなのが丸見えの結合部からぬちゅっ、ぬちゅっと聞こえる淫らがましい音に射精感が高まる。今初めて知る雌堕ち設定にも突っ込む余裕は無い。

「お、堕ちろ関羽っ、出すぞっ…!」

背後から彼女の腰を掴んでいた手を離し、背後から覆いかぶさってはちきれそうな乳房を痛がる程に握り締めながら乳首を摘み潰す。

「ああっ、おっぱいもぉっ、あああああああっ、だ、駄目ぇっ!出されたらイッちゃうっ、いかされちゃうっ!」

「今日からお前は俺の雌だっ、もう逃がさないぞっ…く、受け取れ関羽っ!」

「ああっ、あっあっあっあっ、い、いくっ、いくぅーーーっ!!あああっ!出てるぅっ、出されてるぅっ!ひ、ひぃぃいんっ、ま、またいくぅっ!ああっ、いいくの止まんないっ、と、止まんないぃぃぃっ!!あううぅぅぅぅっ!!」

射精を待たずひくんひくんと絶頂に震えていた愛紗の膣は、堪えに堪えたゼロ距離射撃を受けて強くきゅぅっと俺のモノを締めあげる。どっくん、どっくんと絞り出される精液に合わせて彼女の豊かな臀部ががくがくがくっ、がくがくがくっと数度痙攣し、長く美しい髪を振り乱していた首ががくりとシーツに落とされた。

 

それに合わせて圧し掛かっていた体を起こそうとすると、後ろ手にしなやかな指先に制された。

「御主人様ぁ」

「…どうした」

まだ多少荒い息ながらも甘さを帯びた声。これはもう素なのかまだプレイ中なのか。

「愛紗はぁ、今日からぁ…御主人様の雌奴隷です、から…」

言いながらまたいつの間に手錠を外したのか仰向けに向き直り、長い両足を振り上げて自身の肩の方へと抱えあげた。

「新米奴隷に…早速、躾を…して下さいね?」

甘くとろけた瞳でこちらを見つめながら、愛紗自身のと俺のとでぐちゃぐちゃの秘部を指でくつろげられて、ごめんちょっと休ませてとか言い出すほど俺も無粋じゃない。

「よぉし。骨の髄まで教育してやる」

「あぁん…嬉しいです…」

しなやかな両足首を肩に担ぐようにしながら愛紗の頭の後ろで両手を組み、首を起こさせる。必然お尻が浮き上がり、局部を覗き込ませるような格好にして吐精からまだ間が無く硬さが残るモノが再びズプズプと彼女の中に埋没していくさまを見せ付ける。

「ああっ…また、入ってきます…はあっ」

淫らな微笑を浮かべ、絶頂覚めやらぬ身体を悦びに震わせた。

「よく見えるだろ?」

「はいっ…丸見えです…躾けて戴いてる所が、またいっぱぁい…ああんっ」

身体を二つに折りたたまれた不自由な体勢のまま淫らに陰部を突き出し、ペニスを味わうように腰をうねらせる。内襞は再びトプトプと愛液を溢れ出させながら、早く硬くなれと言うかのようにヒクついて興奮を誘っている。

「じっくり味わえ」

「はい…あんっ…あんっ…んぅっ…んむぅっ…むぅっ」

ゆっくりとしたストロークに甘い喘ぎ声を上げる愛紗に上体を抱きしめられ、自然と唇と舌を合わせる。自然とペニスが充血し、硬さを取り戻していく。

「あん…御主人様の、もう硬い…はぁっ、あんっ…」

気がつけば肩にかけていた筈の愛紗の足は外され、背中に回されている。一突き毎にもっと深く、と訴えるように背中に押し付ける力が込められ、上から突き入れた泥濘の襞の感触が強くなっていく。

「はぁっ、ああっ、ごっ、御主人様ぁっ、私っ、私もうっ」

「もう降参か、愛紗っ」

「もっ、申し訳っ、あっ!あああっ…!あああああっ!」

さっきの絶頂から醒めやらぬまま突かれたせいか思いの外早く愛紗が音を上げ、目を閉じ中空に抱えあげられた下肢を断続的にぶるぶると震わせながら内襞をひくり、と強く収縮させた。その後もひく、ひくっとしゃぶるように蠕動を重ね、ようやくそれが収まる頃に美しい瞳を開くと、唇を重ねて互いの舌を絡めあった。

「足りたか。躾は」

唾液を垂らした唇をゆっくりと離し、にっと笑って見せると、愛紗もそれに合わせて可愛らしく微笑んだ。

「…いいえ」

「マジで」

「違いますっ」

うっかり素でまだ足りないのかと言われたと解した愛紗は少し膨れたような笑みを浮かべながら、再びその長い脚を背中に絡めて奥への侵入を優しく促す。

「まだ御主人様の硬いままじゃないですか…このかったいのからぁ、あっついのをぉ、奥に吐き出してぇ…?漸く、女剣士は御主人様に牝堕ちするんですぅ…ねぇ?」

「…よぉしいいだろう」

「あんっ…あんっ…、ああっ…いいですっ…」

さっき既に堕ちてたよなと内心苦笑しながら、二回目で自分だけが達して俺が出していない事への彼女の気遣いに乗り、ゆったりと彼女の蜜穴への突き入れを繰り返すと笑みを浮かべながら喘ぐ愛紗に言いようのない愛おしさがこみ上げる。

「出して、出してっ…いつでもいいんですっ、出したくなったら、いつでもっ、んうっ、いいんですよっ」

律動が緩やかなせいか、慈母のようで淫らさをも帯びた優しい微笑で俺を見つめながら、射精を誘うように下から腰をくねらせる姿がいじらしい。

「んっ、ねっ、出して、奥に出してっ?んぅっ、御主人様に牝堕ちさせてっ?あふっ、ねっ、ねっ?」

「…ああ、すぐ、出してやる」

また自分だけイってしまいそうな気配に焦って、射精を強請る愛紗に興奮が加速する。それに合わせて律動を早めると、あ、あ、と短い嬌声を上げながらしがみつき、出して、お願いですっ、堕として、堕として、と切羽詰まった声で耳元に熱い息で囁いてくる。気づけば全力で突き入れ、絶頂へと上り詰めていた。

「く…染めてやる…っ」

「あああっ…!出てるっ…あああああっ…!出されてるっ…あああああああああっ…!」

二回目だというのに強烈な射精感で愛紗の中にぶちまけると、細く長い歓びの悲鳴をあげながら、愛紗も絶頂に酔い痴れた。

 

 

 

 

------------------

「はぁ………凄かったです御主人様…♪」

「良かったよ、愛紗も」

「ふふっ、有難う御座います」

腕の中で満足そうに微笑む愛紗が愛おしい。

「やっぱくっころ物は愛紗が似合うよね」

「そんな、御主人様が上手なだけで…思春にも勧めてるんですが」

勧めなくていいんだが。

「気に入らないって?」

「ちょっと方向性が合わないと言うんです」

「…まあ無理に勧めなくてもいいんじゃない?これは俺と愛紗だけの内緒のプレイって事で」

思春がこの手のを気に入らないって言うのはちょっと意外だけれど、高難易度のプレイヤーは増えなくていいのでなるべくさりげなく愛紗だけにとどめる様に言葉を選ぶ。

そうですね、と答えて胸にしがみつく愛紗は珠玉もかくやとばかりの可愛さだ。外で特殊性癖を晒す事さえなければ絶世の美女と言って差し支えないだろう。差し支えないのに。こうして爛爛とした瞳で見上げてくるのも可愛いのに。

 

 

「それでですね、今度」

「うん、桃香は術で操られて俺と一緒に愛紗を堕とすプレイは嫌で三人で仲良くしたいって」

「まだ何も言ってませんのにーっ!?」



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司馬日記外伝 姉さんからの手紙

もうご覧の方もいらっしゃらないかもしれませんが、そっと更新です。


「呼廚泉へ

 

年に一度の魏王への朝貢の為、南匈奴の国境を超えてもう七日が経ちました。

今私は幽州を越えて、冀州にある魏の都である鄴という街にいます。とても大きな街です。

魏王は普段は王都にいるらしいのですが、明後日は別のお仕事の都合もあってここに来て謁見してくれるそうです。

謁見したらまたお手紙を書きます。」

 

 

「呼廚泉へ

 

魏王に謁見しました。

…正直上手くいったのかどうかよくわかりません。

会って挨拶するなり『貴方、女だったのね…危なかったわ』と舌打ちされました。魏王は男の人より女の子の方が好きだと聞いていたので今年初めて私自身で朝貢に来たのですが、失敗だったのかもしれません。

恐る恐る何か失礼をしてしまったでしょうかと聞くと、『ああ気にしないで。別に貴方が悪い訳じゃないから、ちょっとこっちの話』

と言われてそのあとは普通の態度だったので大丈夫だったのかもしれません。

進物をお渡ししてお土産を頂いた後外交について話しあったのですが、『大人しくしといてくれればこっちも何もしないから』と何度も言われたあと、仕事が忙しいのでなるべく早く王都に戻られたいとのことで割とすぐ引き上げようとされました。

それと、皇帝陛下に一度拝謁したいのでお口利きをお願いしたのですがと申し出たら『やめて絶対にやめてこれ以上増やさないで』と物凄く嫌がられました。あと、前に通知が来ていた皇帝陛下への女の子の輿入れも絶対しないようにと念を押されました。

 

もし魏が心変わりして攻めてこられた時の後ろ盾として皇帝の支持が欲しかったのですが、その為に魏の機嫌を損ねても本末転倒なので諦めます。

 

街でお土産を少し仕入れたら南匈奴に帰ります。楽しみにしていてね。」

 

 

「呼廚泉へ

 

蔡文姫さんからお手紙が来ました。

都にいるので是非会いに来てほしいとの事です。匈奴に居た時は辛そうだったけれど、今はとっても幸せに暮らしてるそうです。

ちょっと帰りが遅くなってしまうけれど、気になるので会いに行ってきます。」

 

 

「呼廚泉へ

 

お願いがあります。

都に向かう途中で鍾繇という人に捕まり軟禁されています。

要求に従わないと、南匈奴に攻め込み貴女を捕えて酷い事をすると脅されています。

要求は、潼関に数百人程度で攻め込むふりをしろというよくわからないものです。

南匈奴の旗は立ててはならず、野盗を装ってなるべく騒いで一旦押し寄せさえすれば、すぐに逃げていいそうです。

殺しもケガもさせず、指定場所まで逃げれば糧食や謝礼も用意しておいてくれると言っています。

 

要求に従わなければ私にも酷い事をすると書けと言われたので書きますが、私の事は構いません。

逆らっても、今の魏には勝ち目はありません。どうか軍を出して下さい。貴女の事だけが心配です。」

 

 

「呼廚泉へ

 

軍を手配してくれてありがとう。

貴女のお手紙にある通り、特に怪我人も出ず約束通りだったようでほっとしました。

鍾繇さんからは謝られて、今回の脅迫は最近平和になりすぎて出来なくなった実戦準備の演習の為だったと説明されました。

 

でも一緒にいた張既さんという人は『鍾繇と馬騰が共謀して娘達に点数稼ぎをさせて娘に皇帝の寵愛を受けさせる為だった』と言って、女の人なのに鍾繇さんと馬騰さんの両方から『やぁねぇそんな訳ないじゃない』と笑顔で言われながら殴られていました。

 

鍾繇さんは司隷まで送ってくれて、別れ際にも『何か困った事があればなんでも言って下さいね』と言ってくれました。

 

今回は驚かせてごめんね。」

 

 

「呼廚泉へ

 

王都に着きました。

物凄い大きな都で、人がいっぱいです。物もいっぱいです。迷子になったらもう見つからなさそうです。

それはさておき、蔡文姫さんにお会いしました!

匈奴に居た時は少し翳のある感じだったのが、とても明るくなられて凄い美人さんになられていました(元々奇麗な方でしたけど)。

今は皇帝陛下の側室の一人でありながら、メイドのお仕事と酒場の給仕をされているそうですが日々楽しく暮らしているとの事です。

 

あと何故か私も皇帝陛下の側室にならないかと誘われました…貴女を国に残しているし、お会いした事も無く会うなと魏王にも言われている所でもあるのでやんわりとお断りしたら、文姫さんは上司らしい月さんと呼ばれていた方に『いいですよね!?』と聞かれ、『文姫さんの御友達でしたら構いませんよ』と答えられてました。

 

冗談ですよね…?」

 

 

「呼廚泉へ

 

皇帝陛下にお会いしました。

月さんがちょっといいですかと私の宿舎を訪ねて来られ、にこにこされてどこに連れていかれるのかと思ったら魏王のお部屋でした。

月さんが私を文姫さんの友人なので皇帝陛下に御目通りさせたいのですけれど、と言われると魏王は『あの通知があるんだから特別扱いは出来ない』と露骨に顔を顰められて拒否されました。すると月さんは少し困った顔をして『例のランドセルの御掃除をしました私に免じてそこを何とかならないでしょうか』と言われると『い、いーわよいーわよっ!?月と私の仲じゃない、目通り位幾らでもしなさいな何なら行き着くとこまで行っちゃってもいいのよあっはっはっはっは!?』と真っ赤な顔をされ許可下さいました。

 

一刀さん…皇帝陛下は優しそうな方でした。

でも、何故か満面の笑みを浮かべて立ち会われた文姫さんの顔を見ると平たい目をされて『しないよ?そうはならないからね?絶対に文姫さんの思惑通りになんかなったりしない!』と言われ、文姫さんは文姫さんで『ふらぐですね…』と初めて見る邪悪そうな笑みを浮かべていたのがちょっと怖かったです。」

 

 

「呼廚泉へ

 

今日は大変なことがありました。

一刀さんと文姫さんに街にお出かけに連れて行って貰ったんですが、文姫さんの御願いで一刀さんが買い物に行かれた隙に文姫さんと二人揃って誘拐されてしまいました。人気のない所へ運ばれて二人とも縛られてしまい、文姫さんがこの後は慰み者にされ凌辱の限りを尽くされてしまうのだと涙を流されていると、一刀さんが空から賊の一人に飛び蹴りをして助けに来てくれました!

賊たちは一刀さんの姿を見ると、大きな声で逃げろこいつには敵わねえと叫びながら逃げていきました。賊の首魁らしき薄紫髪長身の覆面の人が去り際に『全く、月の命じゃなければこんな下らん事…』と呟かれていたのと、賊たちが妙に統率が取れていたのが気になりましたが、幸い助かりました。

一刀さんは助けに来たわけではなく恋という女の子に(賊に向かって)投げつけられただけとなぜか必死に言っていました。でも、聞けば半里(約200m)程離れた所から投げ飛ばされたと仰って、そんなに遠くから男の人を掴んで投げ飛ばし、賊に命中させられる女の人なんているわけありません。きっと謙遜されていたのでしょうね。

 

その夜文姫さんと飲みに行ったのですが、改めて一刀さんの側室に入らないかと誘われました。

大恩のある方ですし優しい方ですが、後宮は文姫さんみたいな美人さん揃いみたいですから私ではちょっと身に余ってしまいます。でも、もし私が王じゃなくて一人の女の子だったら…

 

何を言ってるんでしょうね私は。ちょっと酔ってしまったみたいです。」

 

 

「呼廚泉へ

 

突然だけれど、これが私からの最後の手紙になります。そして貴女に謝らねばならない事があります。本当にごめんなさい。

先に一刀さんに助けて頂いた事は書いたかと思いますが、その後ちゃんとお礼がしたいと文姫さんに相談しました。文姫さんは一席を設けてくれた上、慣れぬ異国の地での疲労回復にと薬用酒とお香を下さり一刀さんとの会食の席で使うようにと助言下さいました。

しかし当日香を焚き薬用酒を嗜みしばらくすると、何故か突然猛烈に体が熱くなり…落ち着くようにと制止される一刀さんを押し倒し、破廉恥極まりない、ふしだらな事に及んでしまいました。一刀さんに好意を抱いていなかったと言えば嘘になりますが、何故そのような事をしてしまったのか、自分で自分が信じられません。…いえ、そんなのは言い訳ですね。私は自分の立場も忘れ、大陸の王に向かって劣情をぶつけてしまいました。事此処に及んでは、もはや私は死ぬか一刀様の下女になる事で無礼を詫びる他無いと思います。そして代わりに貴女が南匈奴の王に立って下さい。去卑叔父様も助けてくれる筈です。

 

情けない姉でごめんなさい。

お元気で。」

 

 

「呼廚泉様へ

 

お久しぶりでございます、蔡文姫です。

於夫羅様がお手紙を書ける状況でない為、私の方からお手紙を差し上げさせて頂きました。

 

於夫羅様が一刀さんに接見されるや、一刀さんは一目で於夫羅様を気に入り是非妻にと連日の猛攻勢。三国の王妃やその他有象無象の自称妾達(私と月さんと詠さんを除く)の事などうっちゃって、仕事も何も手につかない程の御執心ですが単于の職務や国に残した呼廚泉様の事を思い於夫羅様は首を横に振るばかり。於夫羅様は一刀さんは御優しい的な事を手紙に書かれていたかと思いますがそれは呼廚泉様に御心労をかけぬが為の御優しい嘘。業を煮やした一刀さんは於夫羅様に媚薬を盛って手籠めにし、『妻にならねば南匈奴は攻め滅ぼし、其の妹の呼廚泉をこそ慰み者にしてくれようぞ』と脅されるや、進退窮まった於夫羅様は幸せいっぱ…もとい泣く泣くその身を一刀さんへと差し出し、心優しく美貌で名高い妹の呼廚泉だけは、いいですか妹だけは、絶対に妹だけは分かってますねと懇願されました。

 

かくて哀れ於夫羅様は昼に夜に一刀さんと愛し合…げふんげふんその身を凌辱蹂躙され、それはもう〇〇を××に△△しっぱなしでぐっちょんぐっちょんのずっこんばっこんでその悲鳴は庁内に響き渡り涙は色々な所から溢れさせ羨望…ではなく不憫に堪えぬ事ひと方なりません。

さて姉様思いで知られる呼廚泉様に置かれましてはさぞ心痛に堪えぬ事と思います。一刀さんによれば於夫羅様と同じく美貌で鳴らす呼廚泉様が身代わりになるのなら、於夫羅様を手放しても良いとの事で御座います。

 

これを読まれた呼廚泉様がどのようにお考えになるかは私めの思慮の外で御座いますが、もし於夫羅様を御救いになりたいとお考えになられましたら急ぎ御上京をお願い致します。

そして私の方にて手引き致しますので、於夫羅様が御寵あ…身を捧げられ二人とも寝入られた後に服を脱いで忍び入って下さい。一刀さんは眠っている間に女が忍んできてことに及ぶのを好まれますので、パクっとしゃぶってずぷっと咥えこんでしまえば一刀さんも満足され於夫羅様が今よりもお幸せになれる事間違い御座いません。

 

こうしている間にも於夫羅様の悲鳴が耳を打って止みません。羨ましくなんてありません。

呼廚泉様の御気持ちと御行動をお待ち申し上げております。 

蔡文姫」

 

 

---------------

 

 

 

「…………くっ、姉様っ…去卑叔父様、私は漢の都に参ります!後の事は宜しく御願い致しますっ!!」

 

 

 

---------------

 

 

 

「ううっ!?…なんだろう、凄い寒気がする」

「あら、一刀さん御風邪でしょうか?私の国程ではありませんが、こちらも最近は夜は冷えますからもっとこちらに…」

「ん、ありがと於夫羅さん。ところでホント、無理しなくていいからね?全部文姫さんの所為だった訳だし」

「いえ…ちょっと乱暴ではありましたけれど私の淡い恋心を察して下さって、文姫さんには感謝しております。今こうしているのは私の意志ですから」

「そう言ってもらえると少し気が楽にはなるけど…」

「(それに後日もう一人お相手して頂くわけですし)」

「?何か言った?」

「いえ。うふ、そんな事よりもう一度お願いします…ね?」

 



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司馬日記外伝 凪と特訓!(R-18)

お久しぶりで御座います。
こっそり更新です。
えっちは難しいですね…



会議室のドアノブに手を掛け、ん、ん、と低め太めの声を出す心の準備をして一つ息を吐く。

大丈夫大丈夫。シミュレーション通りにやれば大丈夫。

ドアを開ける直前の某格付けチェック芸人のような気分を味わいつつ、音を立てて一気にドアを開けた。

 

「副隊長ッ!楽進文謙ッー!!」

「は、はいっ!?」

 

自分でもここまで出した覚えが無い俺の突然の大声に、会議中の警備隊員の娘たちの視線が一斉に俺に集まる。流石の凪も鳩が豆鉄砲を食らったような表情で俺を振り返った。

「これより副隊長の緊急訓練を行う!楽文謙は速やかに隊長室に出頭するように!」

「は、はい…ですが、隊長…」

「第四班班長文仲業!」

「…!?は、はいっ!」

慌てすぎて座っていた椅子を後ろに倒しながら起立し、素っ頓狂な声で敬礼のポーズを取る文聘ちゃんに急に無茶振りごめんと心の中で手を合わせる。

「二班班長于禁文則、三班班長李典曼成不在の為、本日に限り北郷警備隊副隊長代行に任命する。適宜議事を進め、明朝楽進副隊長に報告するように」

「はいっ!」

「よし!では各自職務に戻れ!」

扉も閉めずに踵を返し、噛まなかった事にほっとして思わず眉が緩む。

十メートル位進んだところで、凪が慌てて扉を閉めて駆け寄ってついて来た。

「隊長っ」

「なんだ」

「緊急訓練とはあの、どういった…」

「緊急訓練は緊急訓練だ」

振り返ってもキープ、澄まし顔キープ。ここまでは真面目モードで。ここからは馬鹿モードで。さあ行くぜ。

 

「入れ」

「失礼します」

仲達さんに頼んで防音工事を行ってもらって重くなったドアを開け、一回り狭くなった教官室に凪をついて来させる。俺のお願いなら二つ返事の仲達さんは分かってないだろうが、決裁欄に署名があった詠は多分(て言うか絶対)理由に気づいているんだろうが今は気にしない事にする。

 

「気を付けっ」

「はっ!」

振り返って号令すると、直立の姿勢を取る凪。明らかに普段と違う俺の話し方に戸惑っているのを押し殺しているような真面目な表情に少し俺も緊張する。

「凪」

「はっ」

「今日お前を呼んだのは他でもない」

間を持たすのに、なんとなく落ち着きの無い偉い人っぽく手を後ろに組んで凪の前をゆっくりうろうろ歩く。よく考えたら俺自身『っぽい』のではなく正しく『落ち着きの無い偉い人』だった事に気づき内心愕然とした。

 

「最近のお前は」

凪をお前呼ばわりするのが違和感あってちょっとツライ。

「けしからん所が見られる」

「…はっ」

凪の表情が硬くなる。少し申し訳無い気持ちが頭を擡げるが、この先の為のスパイスだと思って勘弁してくれ。

「どこだか分かるか。自分で」

「はっ…その…王都犯罪検挙件数が目標に達してない事であったり、…消防計画の進捗が余り…進んでない事等かと」

「はあぁぁぁ!?そんなとこじゃなーい!」

「はいっ!?」

「だって検挙件数自体が目標割っちゃってるのって犯罪件数が既に検挙目標割っちゃってるからじゃん!?消防計画だって都の拡大が早すぎて都市整備計画がどんどん変わっちゃってるからおっつかないだけでしょ!?そんな事じゃないんだよ、俺が言いたいのは!」

「で、ではどういった…」

困惑する凪の頭上に垂れ下がった犬耳が見える。

「まずは凪!その顔だ」

「は?か、顔ですか?」

「なんだその可愛い顔は」

「ひゃ、ひゃい!?」

顎から頬に掛けて軽く握ってやや上を向かせると、目を白黒させて変な声で返事をする凪も可愛い。

「全く以ってけしからん、年々ますますどんどん可愛くなりやがって!この顔で皇帝とか、警備隊長とかメロメロにしているんだろう、知ってるんだぞ」

そりゃどっちも俺だからな、知ってるに決まってるんだが。

「…ひゃ、ひゃい、ひゅいまひぇん…」

訳の分からん叱責にテレながらも謝る凪の可愛さは一体何に喩えたらいいんだろうね。

「性格も真面目で!言う事は良く聞く!誠実で一途で!そんな事で俺がコロッといくとでも思ったか!?その通りだよ!」

「も、申し訳ありません!?」

「それにこの体!」

「にゃっ!?」

俺の渾身のボケに真面目に謝られた腹いせにお尻を一モミすると、尻にドライヤーを当てられた猫のような声を上げてにびくりとする。

「引き締まっているくせにぷりんとして!腰周りはきゅっとしてるわ唇は美味しそうだわ誘ってるのかお前は!」

「い、いえ…はい!誘っております!」

「あ、う、うん…有難う」

凪のカウンターを食らった!こうかはばつぐんだ!仲達さんの影響なのか、最近たまに照れながらも堂々と好意を表現してくれる事がある。

「そ、その気持ちは俺としても嬉しい…だがしかし!今の凪にはあと一歩踏み込む根性が足りん!」

「はっ!」

「そこで本日は根性をつける特訓を行う、厳しく指導していくので心するように!まずはランニングだ!」

「はいっ!」

一瞬発生した甘酸っぱい雰囲気から直ぐに切り替えられる凪凄い。つか心なしか嬉しそうなのは特訓って響きが好きなんだな多分。

 

さて互いに何の疑問も持たずに流れるように凪におんぶの状態になり、調練場へ出る。凪は俺が居る時はよく俺自身がウェイト代わりになってくれるように頼まれるが、お姫様抱っこでのランニングは絵面が余りにもアレだったので今ではおんぶがデフォルトだ。

「とりあえず(調練場)100周位からで宜しいでしょうか、隊長?」

「ん…いや、今日は山岳地帯のクロカンにしよう。あんま揺れると俺が辛いからペースほどほどで。あと背中の金具が痛いから胸当ては外して」

「…はっ。では行きます、はぁっ!」

「をう”っ」

凪が走り出した瞬間、加速のGで後ろに首が持っていかれる。五輪マラソンくらいの速度で山を駆け上がり始めると、耳元で風を切る音が聞こえる。これくらいのペースなら揺れは凪が調整してくれるのでほとんど無く、二本足で走る超高級車だ。

「隊長っ」

「なんだ」

「風が気持ちいいですねっ」

「そうだね…そうだな」

あっという間に山腹の山道に入り、林の下のほうに遠く庁舎が見える距離まで来てしまった。前を見据える凪の瞳はキラキラしていて、まさしく散歩に出た犬そのものだった。

「凪」

「はいっ」

「胸揺れて痛くない?」

「は、はいっ!?」

声が裏返っても速度は落ちない凪スゴイ。

「あっ、あの少し…でも、運動用のをしてますので、そのっ…大丈夫です…」

前を向いたまま首から耳まで赤くして、ぼそぼそっと答える凪にもっといたずらしたいと思う俺が居たとしてそれは責められる事だろうかいや否。

「いやいや遠慮するな。俺が支えといてあげるから」

「ひゃっ!?」

「うおっと!」

凪の肩を掴んでいた手を最近御立派になって来たのに無理にスポーツブラに押し込められて苦しそうなおっぱいに添えると、反射的に凪が身を縮め、その一瞬俺も浮遊感を感じてついそこにあったおっぱいを握りこむ。

「あーびっくりした。凪大丈夫?」

「は、はいっ…あの隊長、その…胸を」

「これ?」

「ふぁっ、そ、それダメですっ」

それまでより少し前屈みになり、困り顔をしながらも健気に走り続けるせいで上下にぷるんぷるんし続けるそれをモミモミすると流石に悲鳴を上げた。

「こんな事で動じてどうする、まだまだ根性が足りん!胸を張れっ」

「は、はいっ!」

「はいいっちにっ」

「ふあっ、はっ、…くっ」

「さーんしっ」

「んっ、あっ」

「よぉし凪、その調子だ」

「はいっ、んっ」

スポーツブラ如きが私を抑えられると思うか?ハッ笑止、と言わんばかりのぷるんぷるんを掛け声毎にモミモミっとすると、感じるのを我慢してなんとか走るのに集中しようとしてるのがありありだ。やばい、セクハラスポ根プレイ(俺命名)これ意外と癖になる。

というか、なんだかんだで凪のハイペースでもう下り坂で調練場も近い。ブラの中で凪の可愛い乳首もぷっくりコンニチハしてる感触もあるところだしラストスパートだ。

「よし凪最後ダッシュだ、いけっ」

「ひゃっ、ふあぁっ!」

ぷっくりちゃんを強めに摘んでくりくりっとムチ(?)を入れた瞬間、嬌声と共にびくびくっと凪の背筋が伸び上がりつんのめった。

「うわっ!?」

「あっ…!っとっ、…とっ…」

凪の足が空を踏み、倒れこむその寸前で何とか足を出して踏ん張り、体勢を立て直した。

「ご、ごめん」

「い、いえ…こっ、根性が足りず申し訳ありませんっ」

「いや、うん…じゃあこのまま教官室に戻って」

「はい…」

 

こちらを振り向きもせず首から上を真っ赤にさせて謝罪する凪におぶさったまま、教官室まで行き降ろしてもらう。

「ふー…お疲れさん凪、水でも飲」

「頂きます。んっ…隊長、次の特訓は」

部屋に戻った瞬間がちゃりと鍵を掛け、食い気味に水を受け取り飲み干すとにじり寄ってきた。うん、凪スイッチ入ってる。尚スイッチは乳首にあった模様。

「つ、次はだな、腕立て伏せだ」

「はい!」

元気よく答えるや直ぐに腕立ての体勢になり、俺を見上げてくる。

「ではお願いします」

「いや、今日はやり方を変える」

「は…?」

普段はここで俺が凪の背中に乗って100回がルーチンだが、今日は凪の真下に仰向けに寝そべって向き合う。可愛くもぽかんとした凪のお顔が真正面だ。

「このまま、一回ごとに俺にちゅー」

「へっ…えええっ!?」

「俺にちゅーなんて出来ない?」

「い、いえいえいえっ!出来ます!します!させて下さい!」

「お、おう…じゃ、とりあえず100回?」

「ひゃっ、ひゃっかいもしていいんですかっ!?」

「あ、ああ…いや、足んないんだったら200でもいいけど」

「はい!では200で!有難う御座いますっ」

見えない尻尾が千切れそうな勢いで振られ、ぱあぁと花のような笑顔になる。

 

「で、では1っ」

ゆっくりと凪の顔が近づき、瞳が閉じられ、唇にちょん、と触れる感覚。

「2っ」

ちょん。

「3」

ちょん。

「4」

むちゅ、とそれまでよりも少し長めの接触。名残惜しげに腕を伸ばして体を上げた凪の瞳は既にとろんとしていた。

「隊長…」

「ん」

「これ、何百回でも出来そうです…」

「そ、そうか…んむ」

5と言わずに降りてきた凪の唇は強く俺のそれに押し付けられた。んっ、と鼻を鳴らし、切なげな顔で引き上げられると直ぐにろく、と熱い吐息と共に唇が塞がれ、ぬめる舌が進入口を探すように歯の間に差し入れられる。

ゆっくりと顔を上げると、普段何百回やっても息一つ切らさない凪が荒い息と潤んだ瞳で見下ろしていた。

「はち」

もどかしげに合わせられた唇からはすぐに舌が差し入れられ、俺からも舌を伸ばして絡めあう。んむ、んっ、ん、と密やかな音を立てて口腔内を貪る凪が愛しくて、下から凪の頭を抱え込む。

「んっ…隊長っ…」

一瞬だけ唇を離し俺を呼ぶと、再びキスに没頭する。その背にそっと手を添えて、自分の上に倒れこませて抱きしめる。

「んぅっ…ぷぁ、…隊長」

「…どうした」

「十回も出来ませんでした…」

「ははっ」

唇を離し、至近距離で照れながらはにかむ凪に一つ軽く口付けをして二人の体を起こす。

 

「凪、下脱いで」

「は、はい…」

自分も脱ぎながら凪の短パンとパンツごと抜き取ろうとすると、凪は自分で脱げますから、と言ってそっとそのパンツと短パンの塊を俺から遠くへ置いた。

「あ、あの」

「ん」

「お、お仕置きでしょうか。その…特訓、失敗しましたから」

女の子座りで寄り添いながら、嬉し恥ずかしそうな表情を見せた凪をおもわずまじまじと見つめた。

 

「…凪そういうの好きだったっけ?」

「い!いえ!決してそういう訳ではないんですが!私はそのっ、乱暴にいじめられたりするのは好きじゃないんですけどっ、…た、隊長が…愛情こめて御指導とか…お、お仕置きとかされるんでしたらっ、わ、私は嫌じゃ…その…結構…」

照れ凪の破壊力やばい、既にビンビンな俺のアレが暴発してしまう。

「よしそれはまた後で聞こう。取りあえず、俺の上に座って」

「は…はい」

床の上に足を伸ばして座り、屹立したモノの上に凪を誘導する。

「隊長、もうすごいです…んっ」

凪の可憐な指が俺のものに手を添え、自身の花弁にあてがう。

「はあぁっ…」

向かい合わせでゆっくりと腰を下ろし、にゅるにゅるとぬめる凪の膣が俺の全てを銜え込みながら腰を降ろすと、その陶然とした表情とため息に思わず猛りそうになる。

「ぬるぬるだね」

「…もう、隊長が欲しくて、焦れてましたから」

「」

またしてもこうかはばつぐんだ!最近の凪はたまに強烈なカウンターをかましてくる。負けてたまるか。

「じゃあ次の特訓。このまま腹筋」

「えぇ!?こ、このままですか?」

「うん」

言いながら、結合を深めるように凪の両腿を抱え込む。

「はい上体倒してー」

「え、ええー?」

戸惑いながらも、繋がったまま素直に俺の伸ばした足の上に仰向けに寝そべってくれる。

「はい腹筋」

「は、はい…んっ」

「う」

「あんっ、んっ…」

凪が体を起こそうと腹筋に力を入れた瞬間、俺のモノがきゅっと締め付けられ思わず反応してしまう。それが凪の胎内を刺激してしまい、凪も切なそうな表情を浮かべるがなんとか体を起こしきった。

「こ、これ…変な感じです」

「まあもうちょっとやってみようか。特訓だから特訓」

「と、特訓ですね…はいっ…んっ、…んんっ」

凪の魔法のワード『特訓』。この呪文を唱える事によってちょっとおかしいな位の事は納得させてしまえるのだ!

「んっ…ふっ」

寝そべるとやや抜けそうになり、起きようとする瞬間に締め付ける。

「…んぁ…」

そして体を起こすと結合が深くなる。その繰り返し。十回位繰り返して起き上がってきた所で、凪が腰を揺すりながらなんとも言えない切なげな表情で見つめてきた。

「…隊長」

「どうした」

「も…もどかしいです…」

それは俺も感じてた、どうしても粘膜と擦れ合う速度は遅い。ポリネシアンなんとかにしては無駄に動きがハード過ぎる。

「よしじゃあスクワットの特訓に変更、手は頭の後ろな。好きなだけ動いていいぞ」

抱えていた凪の足を地につけさせて自分は完全に寝転ぶ。

「え…ど、どうすれば」

「このまま、凪が振るの」

「え…」

戸惑う凪に、今まで凪は受身派で上になった事が無かった事に思い至る。

「手は頭の後ろで組んで」

「はっ?はい」

「足を開いてしゃがんで」

「えっ?ええっ!?」

「で、こう上下に」

「ああっ…んんっ!」

軽く一度上下に揺さぶってやると艶かしい声を上げ、腰の上にぺたんと座り込んでしまった。

「わかった?」

「わ、わかりました…けど…」

「けど?」

「は、恥ずかしいですっ…」

大きく足を開き結合部を丸見えにする、エロ蹲踞の姿勢が凪の羞恥心を責め苛んでいた。

「ここには二人だけだ、特訓だから頑張れ」

「は、はいっ…」

羞恥から逃れる為固く目を閉じ、ぷるぷると内腿を震わせてゆっくりと膣から陰茎を引き抜いていく。亀頭だけが埋没した状態になると、それを再びゆるゆると飲み込んでいく姿は、すぐに暴発しかねない程エロティックだ。

根元まで飲み込み奥深くまで突き刺さると、ばたりと俺の胸に倒れこみ、隊長、と炎のように熱い息を吐いた。

「どうした凪、んむ」

凪は一瞬顔を上げ、口をへの字にして切なげに眉根を寄せると物も言わずに唇を重ね、がっしり頭を抱え込まれながら舌をこじ入れられた。

口腔内を舐め回し痛いほどに舌を吸われ、んー、んぅ、と苦しげに喉を鳴らし、最後にぷは、と息を吐くと耳たぶに口付けながら囁かれた。

「き、気持ち良くなってしまって、出来ません…お願いです、隊長が突いて下さいっ、お願いですっ」

「…分かった、お手本を見せてやる」

「あ、う、嬉しいですっ、あっ、ああっ!」

切羽詰って上ずった凪の声に一際欲情が高まり、下から突き上げながら凪の体を揺さぶる。

「あああっ!あっ、ああっ、凄い、凄いです隊長っ!奥っ、奥までっ!ああっ、刺さってますっ、凄い、ごりごりって!ああっ!ああっ!ああっ!」

「く、な、凪も、凄くいいぞっ、キュウキュウしてる」

「は、はいっ、ああっ、し、絞めたいっ、締めたいのにっ、力が入りませんっ、隊長のがっ、私のっ!私のばっかりごりごりって、ああっごりごりって!あっあっあっ、もうっダメですっ、私もうダメですっあああああああっ!」

「く…っ」

ここまで中途半端な刺激で焦れていた凪の膣は、本格的な律動の刺激にがくがくがくっとした痙攣にお尻を震わせ、あっさり絶頂した。

「あ…っ…あっ…」

「可愛いぞ、凪」

痙攣の余韻にひくつきながら、耳元で小さく喘ぎ声を漏らす凪の頭を下から優しく撫でる。ついでに反対の手で抱えていた張りのあるお尻も。

「はあっ、…あの、隊長…」

「どうした」

「あのっ…その、立って…して頂いても良いですか…?」

「いいけど…大丈夫?立てるの?」

 

思わず耳元に寄せられた凪の方を振り向くと、頬を上気させた凪の大きな瞳が至近距離にあった。

「大丈夫です。…隊長、まだその…出されてませんし」

言いながら顔をますます赤く染め、顔を隠すように視線を落として蚊の鳴くような声でつぶやいた。

「あの…隊長に、厳しく根性…っ、を、その、後ろからっ、注入して頂きたいんです」

「よし注入してやる」

「きゃっ!?」

なんとかやり過ごした凪の食い絞めを堪えたものがいよいよ暴発しそうな気配を感じながら、体を起こして凪を壁に向かって立たせる。

「凪副隊長、これからお前に根性を注入する。壁に手をつけ」

「はっ…はいっ」

照れながらも嬉しそうに、言われたとおりの姿勢を取る凪。

「もっと尻を突き出して、足を開け」

「はい…っ…あん」

凪が頭を低く下げて足を開くと、その狭間が情欲にぬらぬらと濡れて光っている。その尻たぶを割り開き、可憐で淫らな花を指でくつろげると、挿入の予感に凪が小さく悶えた。…今からここに、溢れるほど。

「では注入するぞ…そらっ!」

「ああああっ…!んんんぅっ…!」

熱い涎を滴らせた凪の胎内はにゅるりときつく締め付けながら、異物の侵入を受けた感触に悦びの呻き声を漏らす。

がくがくと震わせた膝を支えるように腰を強く掴み、上体を凪の耳元に寄せる。

「凪と俺だけの、秘密の特訓だ」

「はいっ…有難う御座いますっ」

従順な返事に、言いようの無い支配欲に駆られる。凪は被虐趣味は無いが被支配欲は強烈で、最近は本人も自覚している。それに俺も当てられているように感じる。

「厳しく、たっぷり根性を注入してやる…体の奥深くまで感じるようにな」

「は、はいっ、感じますっ!いっぱい、感じますっ」

「いくぞっ」

「ふぁっ、あんっ、あんっ、あんっ、あああっ!凄いですっ、ああっ、ああっああっ、奥っ、奥までっああああああっ!隊長っ、隊長の愛情がっ、凄いっ、あんあんあんあんあんっ!奥っ!奥までっ、わたっ、私の中全部っ、あんあんあんあんあんあんっ!深いぃっ、深いですぅっ!」

凪の引き締まっていながらも女性らしいまろやかさを備えたお尻に突き立てると、愛液の潤滑に助けられてきつい感触の中をにゅるるっと割り広げていく。そのぬめる内襞を擦り立てる度に、その快感を堪えきれずに凪の可愛い唇から淫猥な叫びが撒き散らされる。

「あっあっあっ、だ、ダメですっ、わ、私ダメなのにっ、あっ、あっ、あっ、あううううぅぅぅぅぅっ!」

俺の放出よりも前に、凪が再び絶頂に体を震わせた。がくりと壁についた手がずり落ちそうになり、律動を止めて凪の腰を抱える。

「イッたのか、凪っ」

「は、はい…も、申し訳ありませんっ、とっ、特訓なのにっ」

「いいんだ、感じろ。これは凪が、」

「は、はいっ…んっ」

「俺のを銜え込んで、」

「はいっ…あんっ」

「いっぱい気持ち良くなる特訓だっ、分かったかっ」

「はいっ、んぅっ!は、はいっ、隊長のっ、隊長のでっ、いっぱい気持ち良くなりますっ、あんっ!」

一言毎に奥へ突き入れ、凪に教え込むと、再び猛然と串刺しにかかる。

「分かったら気持ち良くなれっ、ほらまた行くぞっ」

「ひうっ、ああっ、あっあっあっああっ、き、気持ち良いですっ!た、隊長のがっ、いっぱい私の中っ、ずぷずぷって!ああああんっ、き、気持ち良いっ気持ち良いですっ!ま、また私っ、ダメっ、ダメになっちゃいますっ!くっ下さいっ、いっぱい下さいっ、びゅううって奥にぃっ!も、もうダメです私っ、ああっお願いです出してっ、出して下さいっ!中にっ中にいっぱいっ!」

「くぅっ、い、行くぞっ、受け取れ凪っ…!」

「ふぁああああああああああぁぁぁぁっっ!…あ…熱いぃぃっ…!」

その瞬間一際強く凪の尻を引き寄せて、悦びにうねる膣奥の深くに欲望をぶちまけると、その快楽に凪がひくひくんっ、と収縮する。

どぷっ、どぷっと音がするほどの吐精の後にも、その余韻にあっ、あっと可愛い嬌声を上げながら、無意識なのかより深く銜え込もうとするようにぐりぐりとお尻を擦り付けて来る姿に再び欲情する。

「特訓はここまでだ。良く頑張ったな、凪」

「あ…は……はい…」

背後から頭を撫でてやると、快楽に未だ蕩けたままの瞳をちらりとこちらに向けて答える。

「ここからはその御褒美だ」

「え…?た、隊長!?そ、それはっ…」

深く繋がったまま顔だけこちらに向けた凪に、困惑と羞恥と嬉しさとを混ぜ合わせた表情をさせたもの。

予め近くにおいて置いた紙袋から取り出した『それ』を、一つは凪の頭に。もう一つを凪の首に取り付ける。

うん、どう見ても犬耳カチューシャと首輪だね。いやぁ良く似合う。

「た、隊長…これ、その…そういう…?」

「今から凪は凪わんこだ。わんこの返事は?」

「わ……『わん』」

テレながら、わざわざ声色まで作って小さな声で鳴いてくれた。やばい萌え死ぬ。

特訓頑張った御褒美あげるよ?わんこの御褒美交尾のポーズは?と囁くと、顔を真っ赤にさせながらゆっくりと腰を降ろし、犬の伏せのポーズを取る。

「…わんっ」

繋がったままのお尻を一揺すりしながら、凪にしては少し高めの声で小さく鳴いた。余りのカワイやらしさに呆然としていると、一瞬こちらを振り向いた凪と目が合った。と、直ぐに両手で顔を覆って伏せ、

「い…いっぱい御褒美下さいわんっ」

は、恥ずかしい、と蚊の鳴く様な声で呟きながらお尻をくねらせた。

 

理性がぶち切れた。

「な、なんだこの可愛いわんこはっ!?御褒美まみれにするぞこのっ!」

「ぅわ、わぅん!?」

愛犬の丸いお尻に勢い良く腰を打ちつけると、口を押さえた指の隙間から弱弱しい『鳴き声』を漏らす。それに気づいたのか、喘ぎ声が洩れないように再び口を自身の両手で塞ぐ愛犬の姿に無性に腹が立った。

この愛犬は自分の声のエロさと可愛さを何だと思っているのか。こんな可愛い声を御主人様に聞かせないつもりとはこれは全く以って許し難い。

「俺の可愛いわんこ」

「わ、わんっ」

背後からのしかかり、耳元で強めに囁く。

「声を抑えるの禁止。気持ちよかったら『わん』だ」

「あ、手っ、駄目ですっ、ああんっ!」

両手を口から外させて、腕ごと抱きしめて声を隠せないようにして奥を突く。

「わんこは気持ちよかったら『わん』だって言っただろ?飼い主の命令だぞ」

「ああっ、わ、わんっ!わんっ、わんっ、わんっ、ああああっ!」

「ようし良い仔だ。もっと鳴くんだっ、そらそらっ」

「あああっまた凄いっ、硬いのがぁっ、わっ、わぁんっ、わぁんっ、わぁんっ!ま、また直ぐ私イキっ、わっ、わぁんっ、わんわんわんわんわんっ、ああっわんわんわんわんわんわんっ!」

「イけっ、何度でもイっていいぞっ、可愛いところを俺に見せるんだっ」

「ああっ、あっ、わ、わんっわんっ、か、可愛いですかっ?私のイくところ可愛いですかっ!?」

「可愛いともっ、全部見せてくれっ、凪わんこのイってる姿が見たいんだっ」

「はっはいっ!あああああっ、わ、私イきますっ、わんっわんっわんっわんっ!わんわんわっわぅっわっあっあっあっ!ああああああああああっ!!」

ドッグスタイルのまま、愛液でどろどろの内襞がきゅぅっと締め付け、うつ伏せで隠された表情の代わりにひくん、ひくひくん、と痙攣する膣が凪の快楽の深さを伝えてくる。

「た…隊長」

背後から抱きしめられて不自由な身をよじり、動きたい意志を伝えてきたので体を起こす。するとそのまま凪も背を起こし、愛液でぐちゃぐちゃな陰部で俺のものを銜え込んだまま器用に対面座位に向き直った。

「隊長っ」

「うおっと」

今度は凪に抱きしめられながら引き込むように背後に倒れこまれ、自然とのしかかり正常位の体勢になる。というかハーフガード?

「えへへ」

凪が普段見せない、妙に幼い笑み。自然と頭の後ろを抱きかかえて口付けて再び離すと、幼子のような、慈母のような微笑を浮かべていた。

「御褒美下さい?根性はいっぱい注いで頂きましたけど、わんこは気持ち良くして頂いただけで御褒美まだです。奥深くまで、わんこのお腹の中に、ごほうび、ください?」

ね?と普段の凪に似げない可愛らしい仕草で小首をかしげながら、両足を俺の背中で組んで肉棒をより深く受け入れるようにしがみついてきた。

「じゃあ遠慮なく」

「はいっ…あぁん」

絶頂からまだ醒めやらぬ蜜壷を突くと、凪は淫らな表情を浮かべ、奥深くで味わおうとするようにゆっくり大きく腰をうねらせた。

「隊長の、…凄く気持ち良いです」

そうか、良かった、と答えてふと見た凪の瞳は妖艶――――少し『トんで』いた。

「ねぇ、隊長、下さい?奥までずぶずぶして、わんこの中に熱っつい御褒美、いっぱい下さい?わんこ、中きゅきゅって隊長の事気持ち良くしますから、ね?下さい?いっぱい下さい?」

困ったように眉を下げ、淫猥な表情でくいくいと陰部を押し付けてくるこの従順なわんこに、そろそろ俺も限界だった。

「よしいっぱいやるからなっ」

「はぁんっ…!はぁっ、ああっいいっ、凄い良いですっ、く、下さいっ、わんこに御褒美っ、奥に下さいっ?はぁっ、ああっあっ、んっんむっ」

下からしがみついてくる凪に、腰を打ちつけながら唇を貪り合う。深い結合を求めるように凪の腰がせり上がって来るに連れ、俺の背中で絡められた凪の肢も次第にずり上がっていき、気づけば肩に抱え込んでまんぐり返しの体勢になる。

「凪、可愛がってる所、見えるかっ」

「ああっ凄いっ、隊長のっ、隊長のおっきいのがっ、じゅぽじゅぽってっ、私の中に突き刺されてますっ!ああっ突き刺してっ、あっあっあっ、奥に突き刺してっ、御褒美っ、ああんっごほうびおくにぃっ、奥にびゅるって下さいぃっ」

仕事中の凛々しい姿も普段の素朴で可愛らしい姿もなく、淫らに射精をねだる一匹の牝わんこ。その姿と、ぬるぬると陰茎をしゃぶりたてる淫唇から齎される快感に限界を感じる。

「だ、出すぞ凪っ、くっ…!」

「ああああっ、はいっ、ああっ、下さいっ、中にいっぱい出してっ、奥までっ、あっあっあっあっあっあああっ!あああああああああーっ!!」

熱い泥濘に全力で精液をぶつけると不自由な姿勢のまま両手両足で首にしがみつき、がくがくがくっ、とその可憐な身を震わせる。びゅるる、びゅるるっと何度も彼女の雌しべの中に注ぎ込み、それでも尚飽き足らず蜜奥にぐりぐりと擦り付けて最後の一滴まで吐き付けると、凪はあぁ、と艶やかで満足げな溜息を吐き瞳を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

「…そろそろ起きないと」

「…すみません、もう少し…このままで」

事後の甘い時間も十分取っていて既にモノは萎れて抜け落ち、そろそろ警備部の娘達が心配して突撃して来ないかと凪にそれとなく身支度を促してみたものの、俺の胸に顔を埋めたまま一向に起きようとしてくれない。

「でもそろそろ来ちゃうかもよ、警備部の娘が呼びに」

「…分かりました」

物凄く渋ってる感のある返事をしながら、凪は顔を上げる前に何故か俺の目をその手で隠した。

「見えない」

「すみません。お体お拭きしますから、少し目を閉じていて下さい」

「いや、自分の体くらい自分で拭くよ?凪の体だって拭いたげるって」

「勘弁して下さい…と言うか、私を見ないで下さい…」

「何でさ。こんなに可愛いのに」

「た、隊長はそう仰って下さいますけど…」

「俺が思って言うだけじゃ不満?」

「い、いえ、そんなことはないんですが」

じゃぁ教えてよ、凪に隠し事されて俺少し寂しいよと言うと、ちらっと俺を見上げて直ぐに視線を逸らし、頬を赤らめるとすぅと息を吸った。

 

「は、恥ずかしいんですっ!こんな変態プレイして頂いてっ、死ぬほど気持ち良くってまたして欲しいと思ってる自分が!根性注入とか最高ですよっ、すっごく気持ち良いし元気一杯になるし幸せだし一生隊長について行こうって思えるし!私が三国塾の塾生で隊長が先生でこんな指導してもらえたらとか妄想しますしっ!それに犬耳と首輪貰ってつけて頂いてどれだけ私が幸せだか隊長に分かりますか?二人っきりで『わんっ』とか言って可愛がって貰えて、わんこの格好で後ろからそのっ…御褒美貰ってっ、お腹を見せてまたしてもらってっ!あの変たっ、ちょっとその変な趣味してる人達と自分は違うと思ってたのにっ、全然大差無いって言うか、むしろ私の方がよっぽど変な性癖」

「をしてるのは俺だから」

真っ赤な顔でまくし立てる凪の言葉を遮ると、へっ、と小さく声を上げてきょとんとされた。

 

「凪にそういうプレイを強いているのは俺だから。特訓って言えばどんなセクハラでもさせてくれて、真面目な顔で気持ちいいの堪えてる可愛い凪の顔を見て興奮してあれだけ凪だけに出しちゃうのは俺だから。凪が買ってきた市販の犬耳と首輪じゃ不満で、自作して凪につけさせて、『わん』とか言わせて欲情して御褒美とか称して凪にいやらしい事いっぱいして凪の中に注ぎこむのが好きなのは俺だから。むしろ俺の歪んだ性癖に付き合ってくれて凪には感謝しかない」

「はー…分かりました。…隊長と、その…歪んだ性癖が一致して、私は嬉しいです。あと恥ずかしくて死にそうです」

「そんな凪も可愛くて死にそうです」

何とも言えない、照れを帯びた表情で再び俺の胸に押し付けられた頭を撫でる。

 

「さ、それじゃ服着て戻ろう」

「はい。とは言っても、もうとっくに会議の時間は終わってますけどね」

困ったように微笑む凪の頭をもう一度撫でて、俺たちは身支度を始めた。

 

 

 

 

-----------------------

 

「…副隊長代行を拝命しましたので凪せんぱ…楽進副隊長に代わり議事進行させて頂きます。先程の緊急時配備計画ですが、」

「文聘仲業代行、発言宜しいでしょうか」

「何でしょうか」

「副隊長は何故突然訓練を命じられたのでしょうか」

 

 

それは多分アレだ。こないだ凪先輩が大トラになって一刀様に絡まれた時のアレ。根性注入的な、頑張ってる凪先輩への実質御褒美だろう。

「…私の方ではちょっと存じません。…議題に戻りまして、配置人員について資料の」

「代行、顔が赤いようですが」

「何かご存知なのですか?」

「文謙副隊長は御多忙な隊長に代わり、いつも真面目に取り組まれているではありませんか。余りに不当な御命令であれば、我々から隊長…北郷様へ御説明をするべきでは」

「…いえその…多分それは大丈夫かと」

「いいえ、後を追いましょう!北郷隊長も普段は至極おだやかであらせられますのに、明らかに普段と異なり剣呑な御様子でした。余りに理不尽な御叱責をされていれば、我等が副隊長に代わり申し開きをするべきです!」

「いえそれはちょっと!やっちゃいけない事って言いますか、ちょっと皆さん、皆さん!静かにして下さい!」

「ん?何やっとるんや大騒ぎして」

 

「あっ、これは良いところへ曼成班長。これこれ斯様で文謙副隊長の御様子を見に行くべきかと」

「ほう…」

「…私は心配無用かと考えております」

分かりますよね?分かってますよね真桜先輩、という思いをこめて真桜先輩を見つめると、にやりと笑った。

 

「せやな…これはやっぱうちも凪が心配や。自分ら、気づかれへんように教官室こっそり探って来ぃや」

「「「「はい!」」」」

「え、えええーっ!?あ、ちょっ、皆さん待って下さーい!!あああ…真桜先輩っ、凪先輩と一刀様ってその、多分っ」

「まあええやん、邪魔さえせえへんかったらええんやから。それよか自分、近い将来に向けて『予習』しとかんでええんか?ほらこれ教官準備室の鍵や。教官室は防音仕様やけど、準備室との間はうっすい壁一枚やから全部聞こえるで?他の連中にもばれへんよう静かにするよう言うとき」

「…そ、そんな覗きみたいな真似、私はっ」

 

 

 

------------------------

 

昨日は隊長に可愛がって頂いた後、会議室に戻ったが案の定誰もいなかった。

隊長に元気を山ほど注入して頂いたのだから、今日からまた頑張っていかないと。

 

「お早う、昨日は会議途中で抜けてしまって済まなかった。今日はその続きを…どうした、皆顔が赤いぞ?」

「ちわー、生協の逢紀ですけどもー。昨日欠品で納品出来ませんでした犬耳首輪セット十五組、お届け先こちらで宜しかったですかー?」

 



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司馬日記外伝 いともたやすく行われるえげつない医療行為

お久しぶりです、生きておりました。
美羽はいじめがいがあって可愛いです。(歪み)

コメント、誤字御指摘有難う御座います…


「…嘘でしょ?」

私と七乃の私室の、机の向かいに座る二人が何かを言っている。言葉は分かるけれど何を言っているのかが分からない。

 

「冗談なら中々面白いと思うんですけどねー」

「残念ながら本当なのよ」

頬に手を当て、妙に明るい困り笑顔を浮かべる雪蓮さん。…と、その隣で腕組みをする七乃。

「…ウソウソ、二人して私を担ごうとしてるんでしょ?」

「まあ、その気持ちは分かるわよね」

「信じられないのもしょうがないっちゃしょうがないですけど」

椅子に深く腰掛け、足を組みゆったりと落ち着いた声。それと対照的に、妙に軽い声―――――あたかも、『七乃と入れ替わっているかのように』顎に指を当て、妙に可愛らしい雪蓮さんの仕草に背筋が寒くなる。

 

「………入れ替わっちゃったとか、嘘、よね?」

 

 

------------------

 

一刀さんが大陸を統一して、私も楓(曹真)先生に家庭教師をして貰いながら三国塾と少しだけお仕事に通って。いつまでも七乃に甘えてちゃだめだなって、少しずつ大人になってきて。

七乃もなんだか色んな所に派遣でお仕事してて、新しい暮らしになってきた中で、自分の成長が感じられる穏やかな日々。

たまにその平安は破られる事があるのはしょうがないけどちょっと破られ方が派手過ぎない?

 

 

「だから本当なんだってば。証拠見せようか?」

「う、うん」

私の三度目の問いに妙に子供っぽく口を尖らせる七乃は、信じたくないけれど雪蓮さんの仕草に似過ぎている。と言うかこれが本当に七乃なら気持ち悪すぎる。

「じゃあ今から七乃しか知らなさそうな事を七乃…こっちの本物の七乃に聞くから。それで信じられるでしょ?」

「あ、それいいですねー」

「うん…うん?」

敬語で可愛らしくぽんと手を打つ雪蓮さん(七乃?)の違和感が酷い。仮にも元国王が私をだます為だけにここまでやるだろうか、という疑問を抱きながらもとりあえず聞くだけ聞いても損はないだろうと思い頷いた。

「じゃ、いくよ?三国塾の子達からの呼ばれ方」

「みうちゃんかみゅーちゃん」

「バイト先の苦手な事務」

「税務全般」

「好きな香水」

「薄荷の三番」

「最近買ったもののお気に入り」

「生協で買った一刀さんのちび人形。どうです?」

 

「…………う、うん、全部合ってるけど…」

「やったー、て言うかいつも見たり話したりしてる事ですから私分かって当たり前ですけどね」

「ちょ、ちょっと待って!」

落ち着け、落ち着け私。今の位の事なら聞いたり調べたりすれば分かるかも知れない事なんじゃない?うん、呼び方なんて塾の子に聞けば分かるし。何が苦手かだってバイト先に聞けばわかる。香水だってつけてれば匂いで判断つくし買ったものだって生協の購入記録を見れば残ってる。うん、ちょっと信じるには早過ぎる気がする。

「で、でもね、今聞いた事位なら調べたら分かると思うの!…えっと、私雪蓮さんの事は聞いても本当に本人かどうか分からないから、七乃しか分からない事をもうちょっと聞いてもいい?」

「だって。じゃ七乃、もうちょっと深めな所いいかしら?」

「どうぞー」

頬杖をつきながら雪蓮さんに向かって指を振る七乃と、にこやかに答える雪蓮さんという絵面。演技だとして、七乃がかつて私共々殺されかかった元国王に向かってここまで横柄な態度を取れるかというと流石に信じがたいような気がする。

 

「ブラのサイズ」

「77の甲」

「えっ?」

いきなり物凄く秘密な事が飛んで来たんだけど!?

「無駄毛の処理」

「週二回でサボると一回」

「はっ?ちょ、ちょっと何?何なの!?」

なんだかとんでもない事が暴露され始めたんだけど!?

「最近の悩み」

「若さに任せて有り余る性欲」

「自作のエロ小説の隠し場所」

「箪笥の上から二番目の参考書の下」

「ちょっとやめて!?やめてよ!」

「好きな体位」

「必ず最後はだいしゅき固めべろちゅー種付けプレ」

「ぎゃーっ!!!!????わ、分かったっ、信じた信じた信じたからもうやめて!!!!」

「あら、もうおしまい?」

「折角ですから美羽さまのエロ小説一言一句暗誦して差し上げようと思いましたのに」

ばんばんばん、と机をたたいて強制終了させると、雪蓮さん…の中の七乃が例の困り笑顔でさらりと私が死ねる事を呟いた。間違いない、この中身は七乃だ。

 

 

「もういいわよ…と言うか、なんでそんな事になっちゃったの?」

「言おうとしたのに美羽さまが嘘とか仰るから言えずにいたんですよ…ねえ雪蓮さん」

「まあまあ。ま、簡単に言うとね、数え役満☆姉妹の公演の演出練習に巻き込まれちゃったのよ。天和の妖術で、地和と人和の声を入れ替えるって演出の練習を私達でしようとしたら、中身が丸ごと入れ替わっちゃって」

「えええ…地和さんと人和さん達本人で練習すれば良かったじゃない、何で七乃達なのよ?それにすぐ戻してもらっちゃえば良かったのに」

「二人は会場設営指示に行っちゃってたんですよ。で、戻してもらおうと思ったら結構難しいらしくて、公演が始まる時間になっちゃったからこのまんまなんです」

「…まさかずっとそのまんまなの?」

「ううん?長くても丸一日以上は効果は続かないはずだって。彼女達も今夜の公演終わったら疲れて寝ちゃうだろうから、大人しく明日を待つことにしたの」

 

話を聞いて、はぁ、と小さくため息をつく。

「でも、こんな非科学的な事…」

「明命だって猫耳生えた事あるんだから、これくらいの事もあるんじゃない?私も自分に起こるとは思わなかったけど」

頭の後ろで手を組み、脳天気な笑顔で椅子を揺らす七乃(中身は雪蓮さん)の姿の違和感に軽く頭痛がする。しかも物理的な頭痛もさることながら、頭の痛い事が目前に迫っており早急に解決しなくてはならない。

 

「ね、ねえ七乃」

「はい?」

「貴女分かってる?その…この後ちょっと問題…って言うか」

「何々?何かあるの貴女達?」

七乃の顔で食いついてくる雪蓮さんをなるべく無視するようにして、七乃に目配せをする。流石に忘れてはいないと思うけれど。

「ああ!そうでした、今夜は美羽さまが一刀さんとヤリ倒すところを見学する日でしたね!」

「二人で御伽する日でしょっ!?私だけするみたいに言わないで!」

「とか言って、いっつも美羽さま先にしたいしたいって言って即堕ち失神コースじゃないですか」

「それはいっつも二人して私の事その…い、いじめて言わせるからでしょっ!?」

「全く他人の所為にして、とんだロリビッチですねどう思います雪蓮さん?」

「美羽さまらしくって素敵ですぅー♪」

「雪蓮さんもその顔で七乃の真似しないで混乱するから!あとすごいウザい!」

駄目だこの二人、ツッコミが追いつかない。

「ま、美羽さまで遊ぶのはさておき実際どうしましょうねぇ」

すらりと整った顎に指を当て、考える仕草を見せる七乃。と言うか私で遊んでたのは堂々認めるのね。

「いきなり私の姿の七乃と美羽で来たら一刀驚くだろうから、私代わったげてもいいわよ?七乃になりきって」

「そ!それはちょっと…!」

思わず突っ込む。流石に顔と体が七乃でも、知らない(ほどでもないけれど)人と一刀さんとその、そういう事はさすがに抵抗ある。

「じゃあ、この姿ですけど私でいいですか?」

「そ、それも…」

顔の横で両手を合わせて雪蓮さんの顔でにっこり微笑む七乃にはどうしても軽い恐怖がある。ていうか、この人たち他人の体でえっちな事をしたり自分の体を使われたりするの嫌じゃ無いのかしら?私だったらまっぴら御免だ、他人が自分の体でくぱぁとかされたりいやらしい事言ったりされたら悶死する(自分はしないとは言ってない)。私が他人の体で一刀さんとするとしても、一刀さんだって褒めどころに困っちゃうだろうし、えへ。

「…今日は私だけ、とかいう選択肢は?」

「「えー」」

二人そろって不満そう。

「ただでさえ私は一刀さんといちゃつける機会少ないですしねぇ(表向きには)」

「これ私の番が一回飛ばしにされても困るんだけどー」

「えぇ…で、でもその、嫌じゃない?他人の体でするとかされるとか」

「でもしょうがないですしねぇ?」

「そーよ、もらい事故だしなっちゃったもんは仕方ないし。一刀なら事情を話せば分かってくれるわよ、ここはやっぱ美羽にどっちか選んでもらわないとねぇ。ほらほら、どっちにするの?早く選んで!」

「そうですよお嬢様、私だって雪蓮さんだって用意ってもんがあるんですから」

「え、えぇー…!?」

この二人割り切り早過ぎてついていけない。でもどっちにするのって、どっちって、言われたら。

 

「うう……………………じゃ………………じゃぁ、…七乃…お願い」

「はーい♪」

「あら残念ね」

いくら七乃の顔と体でも雪蓮さんとじゃ無理。結果的に一択だったけど、七乃は雪蓮さんの顔でその営業スマイルやめて。

「あ、でもね、説明は七乃がしてね!?あと力づくでなんか酷い事とかしないでよ!」

「しませんよそんなこと。ただ、雪蓮さんちょっと伺ってもいいですか?」

「何?」

「ひょっとしてお尻結構使われてません?」

 

 

 

「…は?」

「あ、分かる?」

「いやなんかちょっと違和感あってそおかなーって」

「…は?」

「そーなのよー」

「ちょちょちょちょちょちょちょちょちょっと待って!?無視しないでよ!?」

平然と何言ってるのこの人たち!?

「何ですか、急に大声出してお嬢様ったら」

「そーよ、曹真さんにはしたないって言われるわよ?」

いやはしたないの私じゃないから!あなた達だから!

「ちょっと待って、ちょっといい?おし…あの、今の話って何の話!?」

「お尻でえっちって話ですけど?」

「そうよ一刀のをお尻にずっぷずっぷって」

「いいいいいい言わなくていいからそういう事平然と!!」

「言えって言ったのお嬢様じゃないですか」

「そうよ幾つになっても我侭なんだから」

二人とも平然過ぎる!そりゃ私だって三国塾の子とかとえっちな話だってした事あるけど、こんな事真昼間から平然と話すのが普通なの?それとも私!?私がおかしいの!?いや、それも大事なんだけどそれはちょっと置いておこう。

「…っその、雪蓮さんて……その、一刀さんとその…そっちでしてるって事?」

「そうだって言ってるじゃない」

「結局その話がしたい癖に、お嬢様ったらむっつりどスケベなんですからー」

「こんな話するのは仕方なくよ!あと「ど」をつけるのはやめて」

「スケベは認めるんですね」

「ちょっとそれは置いといて!で、でも雪蓮さん、七乃がその…そっちでしなきゃいけないって訳じゃないですよねっ?」

「そりゃ勿論そうよ、私の身体だけど七乃として抱かれる訳だし。七乃さえ望まなければね」

「はあ…」

ほっとした。自分がするわけじゃないとは言え、そっち側の世界を目の当たりにしなくて済んだ。正直私は『そっち』にはちょっと恐怖心がある。その手の情報は後宮内に溢れかえっているから、ちょっと興味を持って自室で指で少し入り口を触ってみた事があったけど、その感触の違和感に恐怖した。私は確信した、ここはやはり入り口ではなく出口なのだと。しかも部屋の鍵は確実に掛けておいたのに七乃に見られていて『遂にお嬢様もお尻でひとりえっちですかーずいぶん遠くまで来てしまいましたねぇ』と声をかけられたのも今となってはいい思い出なはずも無く普通に嫌な思い出だ。

直ぐその前に一刀さんと二人で物凄く気持ちよくなれる所があるというのに、そんな処で無理にする事は無い。『三国志』の登場人物がやたら気持ち良さそうなのは陳琳先生の文章が上手なだけ。はぁやれやれ、漸く机のお茶に手を伸ばす気になれた。

 

 

「いえ?しますよそりゃ」

「ぶぇっへぶぇへぶふぇっ!?」

私のお茶が宙を舞った。

 

「ちょっとー、美羽汚いじゃない曹真さん見たら泣くわよ?ほら台拭き」

「ぶへごふっ、ごほごほっ…ご、ごめんなさい…て、て言うか七乃っ、ほっ本気なの!?」

「本気ですよ、だって疼くんですもんお尻が。この入れ替わってる状態だと性癖はどうも体の方に引っ張られるみたいですね」

「ごめんねー開発済みで」

「いえいえどうせいずれは二人ともとは思ってましたし」

雑に謝る七乃の顔した雪蓮さんと事も無げに会釈する雪蓮さんの顔した七乃。と言うか七乃の開発計画に軽く恐怖した。この二人はどうしてこんなとんでもない話を平然としてられるのだろう?だから言われるのか『あの二人はちょっと間違えば天下獲ってた』とかって。正直凡人の自分にはついていけない。そうだ私も入れてもらおう凡人同盟に。前お願いした時は白蓮さんに遠い目されながら『美羽みたいな未来ある娘がこっちに来ちゃいけない』とか言われたけど、こっち(七乃&雪蓮さん)かそっちかって言ったらそっちのハズだ。

「ね、ねえ七乃…貴女、本当に大丈夫なの?初めてなんでしょ?」

「まあ初めてですけどね。いけそうですよ、この体なら」

「うん、イけるイける」

他人の豊かなお尻をさする七乃に頬杖をついてる雪蓮さん、そのいけるっていったいどういう意味なのかしら。いや知りたくないけど。

 

それはさておき。

雪蓮さんの体とは言え、七乃のそっちに一刀さんのアレが、今夜ずっぷり。

…怖いから見るのやめよう、少しだけ見てみたい気もするけどやっぱり怖い。

そうだ失神しちゃえばいいんだ、一刀さんにお願いして気絶するまでしてもらおう。久しぶりに対面座位で、ゆっさゆっさ抱っこ好き。あれでお願いしよう。

「でも美羽大変ね」

「あ、そうですね」

七乃痛がってたらどうしよう。血とか出てたら。いやそれなら一刀さんすぐ止めてくれるよね。それより七乃がドはまりしたら。七乃の声で目が覚めたりして。いやだ見たくない、小説みたいにんほぉとか言う七乃見たくない。

「準備も意外とかかるから今ぐらいから始めないと」

「そうなんですか、生協とかに大体あるんです?」

「うん、あっちの方の生協にね。早く連れてかないと」

「じゃ行きましょうお嬢様、早く行かないと間に合わなくなりますよ」

「…へっ?」

恐怖の思考の海に沈みかかっていると、既に席を立った七乃に優しく手首を引き上げられた。

「へっじゃないですよ、生協行きますよ」

「…なんで?」

下着はこないだ買って一刀さんに可愛いよって褒められたのがある。特に生協に用事はないんだけれど。

「決まってるじゃないですか。お嬢様のお尻の準備ですよ」

 

 

 

 

 

「はっ、はあああああぁぁぁぁあああああっ!?」

「やだもー美羽ったら、さっきから大声ばっかり行儀悪いわよ」

「済みません雪蓮さん、私の教育も及ばずお嬢様はえっちな事にばかり熱心になってしまって…よよよよよ」

「お、お仕事だって学校だって真面目にやってるじゃない!って言うかなんで私がそのっ…準備しなきゃいけないの!?」

「そりゃ衛生管理上よ」

「当然ですよ」

腕を組みながら仰け反り気味に椅子に深く腰掛け真顔で返す雪蓮さんin七乃に、相槌を打つ七乃in雪蓮さんを見ても理解が追いつかない。

「…だって私関係ないじゃない?七乃がその…そっちでするだけで」

「あるわよ、だって一度でもお尻でしたらもう前じゃしないのよ?」

「厳密にはお風呂で石鹸等でよく洗う迄は、ですけどね」

「…そうなの?」

「そうですよ。後宮向けの保健の手引きにも書かれてますよ」

「…………………………」

そう言えば後宮の保健の授業でそんな事を言ってたような気がする。裂傷、感染症、諸々、諸々。

陳琳先生恨みます。後ろと前を乱れ突きされて涙と涎を垂れ流しにするほど気持ちいいように書かれてるのが作り話だったなんて。確かに裏表紙に「この物語は全て虚構であり実在の人物とは一切関係ありません」とは書かれてますけど。

 

「仮に御嬢様が先にしたとして、失神から目覚めたらまた一刀さんとしたがりますよねぇ?」

「…………………………絶対する」

 

毎回最低五回は必ずしているのでぐうの音も出ない。気絶しようが何度でも復活するこの若鮎のような体が恨めしい。一刀さんは「美羽はぴちぴちしてて、きつく締まって気持ちいいよ」って褒めてくれるけど。えへぺろ。

「つまりこういう事ですよ、御嬢様」

雪蓮さんの長い人差し指を立てて、切れ長の瞳に射すくめられる。

 

 

「夜中目が覚めて、本っ当に体が疼きませんか?やりたりない一刀さんに『美羽、後ろでしよう』って言われて、本っ当に拒むんですか?」

 

 

 

逃げ道なんて、はじめから無かった。

 

 

---------------------

 

「有難う御座いましたー」

購入に対する店員の形式的な御礼を背に受け、『後宮関係者以外進入禁止』と書かれた桃色の暖簾をくぐると私は脱兎の如く全力で駆け出した。

右手に中程度の紙袋を握りしめ、後宮の通路の角を風を切って曲がる。焼けるように頬が熱く、涙で前がにじむ。更に二度角を曲がって私室の扉の中に飛び込み、勢いよく扉を閉めてはーはーと荒い息をつく。

 

「おっ、早い早ーい」

「ちゃんと買えました?」

「かっ、買ってきたわよっ!!」

煎餅片手ににやにや笑う二人の前に、私の尊厳の全てを投げうって奪取した戦利品の紙袋を突き出す。

「おー立派立派」

「お渡ししときました華陀さんの処方箋出せば店員さんすぐ分かってくれたでしょう?」

「分かってくれたけど見られた、すっごい見られた!『あっこの子変態なんだ』って目ですっごいじろじろ見られた!あの店員『三国一』でも働いてる人だった、私もう生協も『三国一』も行けないわよ!」

「まーまー細かい事は気にしない」

「そんな御嬢様のちっぽけな自尊心なんてどうでも良いですから、早く飲まないと間に合わなくなりますよ」

「酷い!?」

この二人には私の誇りなど酒の肴の干しスルメか枝豆程度の価値なのだろうがそんな事はもう知ってたのでどうでもいい。それより服用説明書を読む。この粉薬を…で、錠剤を…えっ…?

「ねえ雪漣さん」

「ん?なぁに」

「これ、この粉薬を水一升(1.8L)に溶いて全部飲めって書いてあるんだけど本当?」

「本当よ?」

事も無げに返された。普段少食な私は水もそれ程飲まないって言うか一升とか全然無理なんだけど?

「あ、御嬢様が無理なら代わりに雪漣さんと私で御伽してきますけど?」

この殺し文句はずるい。

 

 

----------------------

 

「…ううう~…」

「そろそろ終わりました?御嬢様」

「た、多分…」

(七乃の姿の)雪蓮さんは余り出歩いてると騒ぎになるからと自室に帰っていった。長い脚を僅かに寝台からはみ出させ、桃色の長髪を絹の糸のように広げて寝そべりながら雑誌を読む七乃に小さな声で答えたけれど、水を飲み過ぎて気持ち悪い。お腹に力が入らず、知らずよたよたと前屈み気味になってしまう。

薬を飲み始めた直後から、ここしばらく疎遠だったお花摘み場と急速に仲良しになった。それはもういちゃいちゃと言っても過言でない位に。薬って凄い。ていうか怖い。七乃が薬を飲まないのは何故かと思ったら、入れ替わる前にもう雪蓮さんが全部済ませてたらしい。…この話はやめよう、余り考えたくない。

 

「それじゃお風呂行ってきちゃって下さい、ちょうど帰ってくる頃一刀さんも来る時間ですから。私はもうお風呂も済んでますから、部屋で待ってますね」

「も、もうそんな時間だったの…」

慌てて着替えと手拭いを取り、大浴場へと廊下を駆け出した。この時間はまだみんなの帰庁時間前だから空いている筈だ。

厚く着込んだ着物を脱いで脱衣籠に放り込み、改修されて軽くなった扉をがららと音を立てて開けると淡い湯気を顔に感じる。

今日は湯船に浸かっている時間はない。そそくさと洗い場に腰掛け体を洗い始める。首から肩、腋からお腹と泡立てて行き、手ぬぐいを持つ手が会陰部に降りてきた所でふと動きを止めた。

 

――――――本当に今日、しちゃうのかな。

 

普段は前は丁寧に、後ろは見られてもいい程度に洗うけれど、今日は違うかもしれない。

 

――――――指を入れて洗ったほうがいいのかしら。

処方箋に書かれてた通りにしたけれど、本当にこれで十分なのかいまいち疑問がある。いざ事に及んで『七乃のは臭わないけど美羽のは臭い』とか言われたら自殺する、ええもう確実に死ぬ。

 

――――――だ、誰も来ないわよね…

入口の方に目をやり誰も入ってこない事を確認しながら、洗い場の椅子から降りて膝立ちになり、そおっと自分の後ろの窄まりに指を添える。

 

ぴと。

「(ひ…っ!)」

そこから感じる強烈な違和感に、慌ててそこから指を離す。

やっぱり違う、ここじゃない!一刀さんお迎えするのはここじゃないって!間違いなく前、前だってば!

…いやでも。前の方だって、初めての時はこんなとこ入る筈が無いって思ったのに今じゃみっちみちに押し拡げられるのが凄く気持ちいいし。今のだって今のだって違和感であって痛かった訳じゃないから実際わからないかも?と言うか一刀さんだから何だって気持ちよくしてくれるんじゃないかしら?いやでもそれはそれで怖い、〇才にしておしりえっちにドはまりとか塾の友達とかにバレたら死ねる。ただでさえ一刀さんとのえっちについて洗いざらい吐かされて『みゅーちゃんは淫乱ロリだからねぇ』とかからかわれているのに。…いや考えてる時間はない、とっとと上がらないと一刀さん来ちゃう。

 

急いで体を拭いて脱衣所に戻り、新しい服に袖を通し髪を整えて廊下を駆け出す。

こういう時七乃は絶対待っててくれない、必ず先に始めてしまって『あん…お嬢様が遅いから先にお相手してましたよっ、もうすぐ一刀さんの濃ゆぅい一発目を私の中に頂きますから、そしたら代わりますからいい子で待ってて下さいねぇ』と言いながら見せつけるのだ。そして私が涙目で物凄く恥ずかしい事を言わないと代わってくれない(そうすれば必ず代わってくれるとも言うが)。あれは恥ずかしいし悔しいからもう嫌だ。

 

自室の部屋に近づくと早足の速度を落として立ち止まり、中の様子を伺う。

 

―――――――かすかに何か聞こえる。

扉に耳をつけて息を殺す。

 

 

 

『あんっ!一刀さんっ、凄いぃっ、こんな所でぇっ、凄い感じますぅっ!』

 

 

雪蓮さんの嬌声―――――はつまり、七乃の声。

 

 

『ああっ、わ、私初めてなのにぃっ!いいっ、いいのぉっ!もっと、もっと深くぅっ!』

 

 

心臓が跳ねる。

 

 

『あぁんっ、こんなに凄いのぉっ、きっとお嬢様もドはまりしちゃいますぅっ、ね、一刀さぁんっ、お嬢様が来たらぁっ、二人でお尻を並べてずぷずぷしてぇっ!』

 

 

「…!」

やばい。

七乃はもうドはまりしてた。

この扉を開けると、私も一刀さんに、お尻を。

こわい。

裂けちゃったら。いや、一刀さんならそんな事はしない。

本当に怖いのははまりそうな自分。

大丈夫、七乃も一緒。体は雪蓮さんなのが残念だけど。

塾の皆、美羽は大人の扉をもう一つ開けちゃうけど変態だなんて言わないでね。これは九割…いや七割は七乃のせいなんだから。七乃だけに。

一つ小さく深呼吸をし、努めて平静を装いながら震える手で扉を引いた。

「な、七乃、一刀さんもう来て…」

 

 

 

 

 

 

「はぁーいお嬢様!!どっきりでーす!」

「いぇーいどんどんぱふぱふー!今回凄かったでしょ、本当に入れ替わったように見えたでしょ!?」

「かなり練習しましたもんねぇ、『ねえ七乃?』」

「『そうですよぉお嬢様ぁ、声だけじゃなくて細かい仕草も真似しましてぇ』ほら上手いでしょ!」

「いやぁでもお嬢様あっさり信じましたねぇ?私もうちょっと疑われるかと思ってたんですが」

「やっぱ自作のエロ小説の隠し場所まで知られてたら信じるんじゃない?と言うか美羽ってああいうひたすらヤリ倒されるみたいなのが好きなのねぇ、やっぱ若さなのかしら?」

「いえいえお嬢様は天性のどすけべ姫で一刀さんのが穴に突っ込まれるならお尻だろうが鼻だろうが何だっていい方なんで」

「いやでもお尻は無いわー。私今回お尻常習者の演技したけど美羽の年であっさり覚悟決められるってやっぱり凄いわよ、私想像しただけでちょっと怖いもん」

「そこはやっぱちょっと前までの最年少処女喪失記録の持ち主様ですから、ねぇお嬢様。…お嬢様?…お嬢様ー?もしもしー?聞こえてますー?」

 

 

 

 

----------------

「…寝ました?」

「うん、寝た」

「じゃ、これほどいて貰っていいですか」

「ん」

寝台で静かな寝息を立てる美羽の様子を確認して、両手両足を縛られて床に転がされている七乃さんの方へと静かに歩み寄る。

 

「…そろそろ何があったか聞いていい?」

両手両足を縛る紐は簡単なちょうちょ結びで直ぐに解けた。その気になれば七乃さん自身でもほどけそうなものだったが、敢えて縛られたままでいたのは怒り泣きしながら縛って転がしておけと言ってきかない美羽の顔を立てた七乃さんの気持ちだろう。

 

「いえ大したことじゃないんですけどね。最近お嬢様が便秘で悩んでまして、医者に行けって言ったんですけどどうしても嫌だって言うんですよ。でいよいよ昨日ぽっこりお腹抱えて明日の夜伽どうしようってしょんぼりしてたんで、ちょっと騙して華陀さんに処方してもらった下剤飲ませたんですよ」

「…それだけにしちゃ美羽の怒り方が尋常じゃなかったんだけど?」

「ちょっと薬が強かったみたいで」

「…まあなんだかんだ七乃さんが美羽の信頼を裏切らないのは知ってるけど、愛情表現は分かりやすくしてあげた方が美羽も喜ぶんじゃない?」

「ええ、これがお嬢様が一番喜ぶ愛情表現ですから」

「そうかなぁ…」

 

にっこりと笑う七乃さんにその時はそう思ったが、夜中に目を覚ました美羽が恥ずかしがりながら『本当にしなくていいの?』『今日を逃すともう私勇気出ないから』『一刀さんが望むなら私、塾で変態な娘って言われても』と小さなお尻をぐいぐい押し付けて来るのを必死に宥めてる最中に、

「ほら言ったじゃないですか」

と背中で含み笑いを漏らす七乃さんってマジ恐ろしくて可愛い女。



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司馬日記外伝 軍師賈詡、『離間の計』!

その後の、とある詠さんの策です。
珍しくなんだかスラスラ書けてしまい、お久しぶり…でない御挨拶が出来ました。


「も…もう…許してくれ…」

腹の底から声を絞り出す。

 

「この程度で何を言っておられるのやら」

「そんな事でお前の立場が務まると思っているのか?」

「身から出た錆でしょ?とっとと立ち上がって」

完膚なきまでに折られた心のままに頽れた俺に、容赦の無い叱責の言葉が浴びせられる。

 

確かに、この状況の一因は俺が至らなかったせいかもしれない。

でも。でも、ここまでの事にならなければいけなかったのだろうか。

項垂れたまま奥歯をぎり、と噛み締めると、柔らかく温かな掌が俺の手の甲に添えられた。

 

見上げれば、璃々ちゃんだった。

「もうちょっとだから頑張って?ね、御主人さま」

「璃々ちゃん…」

俺と視線を合わせるようにしゃがみこみ、

いまだ幼さを残しながらも慈母の様に優しく微笑む彼女に、

大人としての責任感が俺を再び奮い立たせる。

「…ごめんね、一番辛いのは璃々ちゃんなのにね」

「ううん、璃々は大丈夫だから。気にしないで御主人さま頑張ってね」

「…ああ」

今この場の誰よりも幼い少女が、その華奢な身を苦しめてまで俺の為に

尽くしてくれている。

 

――――――――俺が、やらなければ。

璃々ちゃんに取られた手を意思を込めて握り返し、再び立ち上がる。

 

「―――――詠」

「――――準備いい?じゃ、配置ついたらいつでもいいから」

再び戦う意思を視線で詠に伝えると、謁見室の玉座に深く腰掛けた。

一つ深く深呼吸し、腹の底に力を籠める。

今度こそ。

今度こそこの戦いに、終止符を打つ。

その思いを込めて、低く、声を発した。

 

 

「『…ふん。貴様が韓遂か』」

「声が小さいやり直し!」

「すんませんリテイクお願いします!!」

一言目からの詠のダメ出しに、ヤケクソ気味に周囲に頭を下げる。

 

…ごめん、やっぱり心折れそうです。

 

 

 

----------------------

 

「はぁーい、それじゃ第四回『うちの種馬女増やし過ぎ対策会議』

始めるわよー」

「…えっ?」

詠の開会の挨拶に目が点になる。

外交会議だ、と聞かされて会議室に連れてこられていたのに突然吊し上げられました。

「…外交の会議じゃないの?」

「うんとりあえず説明するから黙ってて?」

「あっはい」

詠がこういう時にべもないのはいつも通りなので大人しく引き下がる。

出席している華琳や蓮華、桃香達には全く動揺の様子が無いので他の皆は既に趣旨が聞かされていたのだろう。って言うか第四回とか言ってるし。

この件に関してはまあ俺自身が積極的に女の子に粉かけて増やしてるわけではないけれど、昔から俺の事を大事にしてくれている娘達からはそう見えても仕方がない。

ひたすら謝り倒して今後は一層行動を自制するようにしよう、と思ったところで会議机の末席に璃々ちゃんが居る事に気が付いた。

この件、璃々ちゃんにまで聞かせなきゃいけない事なんだろうか。

 

「それじゃ、前回までの結論からおさらいするわね。

まず、馬鹿ち〇この脇が甘すぎて女の数は増加の一途を辿ってるわ」

「…すんません」

「うんあんたの謝罪は今要らないから黙ってて」

「ハイ」

今日の詠さん殊更に厳しい。

「対策としてまず後宮拡大派の不用意な行動を抑える事が必要という結論となって、月は私が、仲達は伯達さん他家族と上司の荀攸、麗羽は条件付きで斗詩、田豊、沮授が対応、水鏡さんは雛里朱里、汐里(徐庶)、その他各地元は

年長者を中心に抑制に対応する事で合意した所までいいかしら」

「それ無理って言ったじゃないですか~!あのババア抑えるなんて神様だって出来ませんよ、ってかそんな事したらブッ殺されますよ!」

詠が議事録を読み上げると汐里(徐庶)さんが机に突っ伏して頭を抱えながら悲鳴を上げ、その隣で雛里朱里も青い顔してこくこくと頷いている。

水鏡先生、そんな恐ろしい人には見えなかったけどな。優しくて包容力ある感じで。

「崔州平と代えられる位だったらやりますっつったのあんたよ?」

「それはそうですけどぉ!」

「やんの?それとも(三国)塾に左遷させられたいの?」

「分かりましたよやりますよ、やればいいんでしょ!」

不貞腐れて背凭れに体を預ける汐里(徐庶)さん。会議中の詠はたまにガチのヤクザに見える。

「話し中ごめん、斗詩達の条件付きって何?」

「自分が仲いい女数人に関しては積極的な妨害は勘弁してくれって。

だからってあんたも積極的に手ェ出すんじゃないわよ」

「勿論分かってる」

「で次、今度韓遂が女引き連れて上京してくる。この情報変化ないわね?」

「あ、ああ」

突然振られた翠が少し慌てて頷く。

「目的は手下八部(旗本八旗)、あわよくば自身の後宮入り。

これも見込み通りでいいかしら」

「そうなんだよな?蒲公英」

「まず間違いないよ。月さんがにこにこして下着目録を発送しようとしてて、隙を見て宛名を確認したら韓遂さんだったし、付いてた手紙に『御依頼のものを送ります。御主人さまが特に好みそうなものには付箋をつけておきました。皆さん頑張って下さいね』って書かれてたからね」

「…確定ね。あと月を抑えられてなくて申し訳ないわね」

翠から振られた蒲公英の報告を受けて詠が小さく舌打ちした。

汐里(徐庶)さんが自分だって出来てないくせにと言う目で一瞬詠を見たが詠にギロリと睨み返されて、慌てて目をそらしていた。うーん厳しい上下関係。

と言うか、本来俺がやらなきゃならない嫌われ役を詠に押し付けている状態なので文句は言えない。

 

「ま、正直これ以上女が増えるのは御免なのよ、そこで皆で協議しした結果一芝居打つことになったってわけ。

脚本の方針については前々回から打ち合わせてて、出来たのがそこにある台本。最終確認が終わったら、今日からそれに沿って練習するから読んで」

詠に机の上を指さされ、ようやく伏せられた冊子を手に取りひっくり返すと『韓遂謁見場面(仮)』と表書されていたページをめくる。

 

【配役】

一刀:一刀

寵姫一:趙雲

寵姫二:夏候淵

瑠璃(寵姫二の妹):黄叙(璃々)

兵一:黄忠

兵二:華雄

兵三:張遼

 

 

--------------------

(謁見の間にて)

 

(椅子にふんぞり返り寵姫一、二を左右に侍らせながら)

一刀「…ふん。貴様が韓遂か」

韓遂「(何らかの応答を想定)」

 

(なるべく韓遂の応答を遮って)

一刀「つまらん挨拶はいい、この俺が貴重な時間を割いて会ってやってるんだ。それなりの土産は用意しているんだろうな?」

韓遂「(私自身です又はこの娘達ですを想定)」

 

(韓遂や供の女性を眺めまわした後興味を失ったような視線で、小声でかつ聞こえるように)

一刀「ちっ…全部ハズレだな」

 

一刀「生憎女には不自由してなくてな」

(言いながら寵姫一、二の腋の下から手を廻して胸を揉む。なるべく見えやすく。寵姫一、二は無言で心底嫌そうな表情をして顔をそむける)

 

一刀「涼州に上玉が居ないなら次は財宝を持って来い。行くぞ御前等、今日もヒィヒィ言うまで可愛がってやるからきっちり締めるんだぞ?はーっはっはっはっ!」

(下品になるよう意識しながら高笑いし寵姫一、二と席を立ち、二人の尻を音がするように叩きつつ上手控室に向かおうとする) 

 

(廊下側扉から部屋に飛び込み、走って一刀に抱き着く)

瑠璃「王様っ、お姉ちゃんに酷いことしないで!」

寵姫二「瑠璃!?来てはいけないと言っただろう!?」

一刀「な、なんだこのガキはっ、離れろっ!」

(瑠璃を突き飛ばす。瑠璃は悲鳴を上げて派手に転がり、兵一が素早く近づいて後ろ手に拘束する)

寵姫二「瑠璃っ!」

(瑠璃に駆け寄ろうとし、それを兵二が喉元に刃を添えて阻止する)

 

一刀「無礼なクソガキめ、始末しておけっ!」

兵一「はっ」

(無理やり引きずり起こす)

瑠璃「い、痛いようっ!お姉ちゃぁんっ!」

寵姫二「瑠璃っ!た、頼むっ、瑠璃だけは助けてくれ、たった一人の血を分けた妹なんだ!私なら何でもする、だから瑠璃の命だけは!」

一刀「ちっ…何でもって言ったな?」

(やや怯えたように)

寵姫二「…あ、ああ…」

一刀「では『例の薬』…使わせてもらうぞ?」

 

(驚愕しながら)

寵姫一「れ、『例の薬』を!?お、おやめ下さいませっ、あの薬のせいで姫は性欲だけの廃人にっ!」

一刀「うるさい!」

(腕にすがる寵姫一を振り払い、寵姫一はへたりこむ)

 

(動揺した様子を見せ、その後がっくりとしながら)

寵姫二「うっ…わ、分かった、言う通りにする…だから妹だけは…」

一刀「くっくっくっ…いいだろう。おい、そのガキは適当な部屋に放り込んでおけ」

兵一「はっ」

(瑠璃を引きずって下手控室へ)

瑠璃「嫌ぁっ!お姉ちゃぁんっ!お姉ちゃぁんっ!」

(泣きながら抵抗するが引きずられていく)

 

 

兵三「謁見は終わりだ、速やかに下がれ。また今見た事は他言無用だ。口外すれば命の保証はしない」

(退室を促す。またここまでの間に韓遂らが止めに入ろうとした場合兵三が阻止する)

 

(韓遂ら退室)

 

【終演】

 

 

---------------------

「」

 

ひでえ。

読み終えて思わず真顔になる。

「待ってこれ俺の胃がストレスでマッハ」

「あっそう?ボクたちの胃はとっくにストレスでマッハよ分かりなさいよこのアホンダラ」

「すいませんほんとすいません」

めっちゃいい笑顔の詠に叩き落されました。いやでも、流石に言わなくてはならない事がある。

「だがちょっと待って欲しい、このお芝居の趣旨は分かるけどここで璃々ちゃん突き飛ばされなきゃいけないって事はないだろ、誰だよこの配役考えたの!?」

 

そう俺が叫ぶと全員がある一人を無言で指差し、その指の先では璃々ちゃんがにこにこ笑顔で手を挙げていた。

なんも言えねえ。いや言う。

「…いや、璃々ちゃん、無理する事ないんだよ?そもそも一番悪い俺が言うのは何だけど、こういう事は大人に任せて」

「ううんご主人様、璃々が適任だと思うよ?詠お姉ちゃんが言ってたけどこの役はなるべく小柄で子供に近い見かけの人の方がご主人様がすごく悪い人に見えていいんだって。でも子供っぽく見える人で、突き飛ばされても上手に転がれてケガしないのって璃々くらいだと思うんだ?」

「いや、でも…」

「私からも推薦させて頂きましたわ。璃々は最近魏の司馬懿さんに稽古をつけて頂いてまして、体捌きも大分上達しておりますからこれくらいの事で怪我をする事は御座いませんわ。璃々も皆さんのお世話になるばかりでなく、何か御恩返しがしたいと申しておりましたので良い機会かと」

璃々ちゃん本人からの申し出に加えて、紫苑も笑顔で太鼓判を押して来た。けど、本当にいいのか?と言う思いを込めて桃香の方を見ると、微妙な表情を浮かべていた。

「えーっと、私も始めは反対したんだけどね?紫苑さんがいいって言うし、あとなんて言うか、他の候補がね…」

「意外と居ないのよ、これが」

言い淀む桃香と顔を見合わせ、華琳が後を引き取った。

「始め、鈴々ちゃんはどうかなって私言ったんだけどね」

「ちょっと大根(役者)過ぎるわ。同じ理由で季衣も駄目。そこで小柄で腕に覚えがあって、一番演技力がマシなのは流琉だと思ったんだけど、貴方に突き飛ばされる時点で心が折れてしまうから辞退したいって言うのよ」

「うちには極端に容姿が若い武官が居ないから余りお役に立てなかったわ。実質一番若手のシャオだとそもそも『一刀に近づくんじゃないわよ』って暴れ出しそうだし」

「で、ボクはどうしても困ったら鐘会にやってもらおうと思ってたんだけどね、あの娘小柄だし化粧上手いし演技力あるし。でも璃々ちゃんが出来るならその方が見た目の衝撃感が大きいからお願いしたってわけ」

「…ご主人様、もし璃々に悪いと思って下さるのでしたら、是非此処は今後このような芝居が不要となるよう、璃々と名演して頂ければと」

「…」

最後に紫苑に痛い所を突かれて言葉が出ない。

 

「…その後璃々を女として労わって頂ければ何も申し上げる事は御座いません」

最後の最後にしれっと何か放り込んでこられたのにはあえて反応しない。

 

分かった?それじゃ特になければ会議は散会、練習に入るわよという詠の言葉を締めに、冒頭に還るわけなんだが。

 

 

---------------------

「…二人はホント(演技)上手いよねぇ」

「まあ、『おーでぃしょん』を潜り抜けておりますからな」

「大事な弟の為ならこれ位の演技など訳も無い事だ」

 

十八回目のNGに総監督の詠が出した休憩宣言を受けて、星と秋蘭と共に椅子に腰かけてコップの水を一息に飲む。

「オーディションなんかあったんだ?」

この二人なら通過するのは良くわかるが、その時の様子が少し気になった。

「他に誰が受験したの?」

「そうですな。焔耶と、愛紗と思春、祭殿と…」

「姉者だな」

「焔耶と春蘭は無理だろ…」

「「だって面白いではない(です)か」」

笑顔の二人の声がハモった。きっと二人ともこの二人に騙されたかおだてられて受けてしまったんだろう、焔耶と春蘭の超大根棒読み演技が目に浮かぶ。

「あと祭さん無理だよな。シチュ的に」

「ふふ、赤壁で華琳様を騙した演技力には自信があるぞと言ってはいたがな」

「蓮華殿が何と言って不合格と伝えようか、困っておられたな」

暴君に嫌々従わさせられる演技は祭に似合わなさ過ぎる、むしろ説教始めてしまいかねない。

「愛紗と思春は?あの二人こういうの好きそうじゃない?」

「ああ…ノリノリではありましたが」

「熱は入っていたのは認めるが」

「が?」

「詠が『一刀と本番では確実に嬉しそうにし過ぎて、嫌がって見えなくなる』から不合格なのだそうですよ」

「あー…」

二人とのそれぞれの夜を思い浮かべると、凄く納得がいく。

「我らとて演技力には自信は御座いますが、主殿の内心を思い浮かべながら乱暴に胸を揉まれると心穏やかではありませんからな」

「そうだな。お前が嫌々、躊躇いながら握りしめてくるのに嫌そうな顔をしなくてはいけないんだが、ついにやついてしまいそうで堪えるのに一苦労だ」

「ドSだこの二人!…ところで、他の役はすぐに決まったの?」

「紫苑の役は、紫苑以外誰一人希望しませんでしたから即決でした」

「そりゃそうだろうな…」

「兵士の役だって押し付け合いだ。結局、霞は恋に交代してしまったしな」

嫌々やらされた霞は10回目位でもう堪忍したってや、と音を上げてしまった。

「璃々、迫真にもほどがあるで!こんなん見てるだけで心折れて頭おかしなってまうわ!」

俺が漸くある程度まともに璃々ちゃんを突き飛ばせるようになって、初の通し稽古をやることとなった。そこで璃々ちゃんを突き飛ばすと彼女の華奢な体は軽く吹っ飛び、音を立てて痛そうに転がった。それを手荒く紫苑が取り押さえ、涙を浮かべた璃々ちゃんが哀切極まりない声で『い、痛いようっ!お姉ちゃぁんっ!』と叫ぶと、流石の星や秋蘭どころか監督の詠迄が言葉を失った。

ややあって、璃々ちゃんがきょとんとして「ご主人さま、次の台詞は?」と促すまで誰も動けず、記念すべき一回目のNGとなったが詠が『予想以上に強烈ね…ちょっとこのホン(台本)書き直そうかしら』と呟く程のインパクトだった。

かくて二桁に上る璃々ちゃんの熱演にSAN値を削られ過ぎた霞は『もうアカン、アカンて。このまま見せられたらウチ一刀の事ホンマにドクズに見えて嫌いになってしまいそうや』と泣きを入れ、恋を代わりに立てて逃げて行ってしまった。

「華雄もあの表情見て下され、かなり参ってますな。ここは早く成功させて終わらせてやりませんと、華雄まで逃げ出してしまいますぞ」

「…そうだね」

少し離れた休憩机に肘を突き、額を支える華雄の表情は冴えない。元々常にニコニコしている方では無いにしてもかなり精神的なダメージを負っているのが見て取れる。

そもそもが俺が色々不甲斐無いのが原因なんだから、俺が頑張って終わらせないとと大きく一つ息をつく。

 

「ご主人さま!もう練習再開するってー!」

「有難う、今行くよ」

「…あの親娘は元気いっぱいだな」

「ふふ、全くですな」

地味な兵士服に無理矢理胸を詰め込んだ紫苑の隣で、姉妹感を出す為に秋蘭とお揃いのチャイナドレスに身を包み、ニコニコ笑顔でこちらに手を振る璃々ちゃんに応えて立ち上がる。

「…よし、次で決める」

「その意気ですぞ」

ポンと肩を叩く星に微笑み返し、不退転の覚悟で舞台となる謁見室に向かった。

 

 

尚、詠のOKが出たのはその19テイク後だった。

 

 

----------------------

 

「お待たせしました、追加の麦酒九杯と枝豆唐揚げ盛り合わせ三皿こちらですねぇ。あ、すいません奥の方廻して頂けますかー。

…あとこの煮物、うちの方から無料提供ですんで良かったらどうぞ。いえあの、お客さん達失礼ですけどなんか随分沈んでらっしゃるようだったんで、うちの美味しい料理で少しでも笑顔になって頂けたらってうちの給仕長の方から。

…えっ?あ、はあ、この時間空いてるんでちょっとくらい油売ってても。…はあ、縁談が無しに。明日帰郷で。…そーですかー、それは大変でしたね…え、私ですか?いや、いるっちゃーいるんですけど、えへへ。

どんなのって……えー…あのすいません、お客さんたち地方の方?…涼州?また随分遠くから。一昨日初めて来られたんですか、…じゃー喋っちゃってもいいかなぁ、実は私ですねぇ、皇帝のオンナなんですよぉ。

…え、何ですか皆さんそんな真顔になって、いや驚かれるのは分かりますけど。名前って、一刀さんて言うんですけど。ええまあ、実際には私以外にもいっぱいいますけどね、でも愛されてるからいーんです私納得してますから。

…えー?愛されてますよ?ま、忙しい方だし私も職場掛け持ちなんで毎日会えるわけじゃないんですけど、節目節目は必ず時間取ってくれるし、手紙とか手作りの贈り物とか貰ってますし、この髪留めだってそうなんですよ…いやそんな馬鹿なとか話が違うとか言われても。

…いえ?私だけじゃなく皆に優しいと思いますけど残念ながら。あ、そうそう、ですけどねぇ、確か一昨日だか、なんか人に嫌われる為のお芝居しなきゃいけないとかで愚痴ってましたねぇ…あの?皆さん急に黙っちゃってどうしたんです?

…はあ、その時の事ですか?いや昨日、白蓮さんて言う私とも仲いい女の人と飲みに来てまして、本当は一刀さん事前にそのお客さん達の事調べてておもてなししようとしてたらしいんですけど、急遽物凄い嫌われ方しなきゃいけなくなって凄い悪い人の振りするお芝居したらしいんですよ。おかげで胃悪くしちゃって、昨日飲みに来たって言いましたけどお酒飲まずに胃薬飲んでお粥食べて、しょうがなかったけどその人たちに悪いことしたなーって言って帰って行きましたよ。普段はいつもご飯作ってくれる人が居るんですけど、その人にも言えないらしくてうちに食べに来てて。

…って、なんか皆さん目据わってません?あ、あれ?もうお帰りなんですか?…はあ、確かにこの時間なら庁舎の宿泊棟の滞在延長手続き利きますけど。詠に一杯食わされたわ…って、うちの詠さんご存じなんです?てかあの、お客さーん!お釣り!お釣り!流石にお勘定多すぎますからー!」

 



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司馬日記外伝 『三国志』二次創作の深い闇(R-18)

その後の、とある同人誌と司馬家の夕食です。


暗く落ち込んでいく心を引きずり起こし、手の甲で部屋の扉を二度軽く叩く。

 

「誰だ」

「――――私だ」

「…入れ」

 

部屋の主―――――憎んでも憎み足りない男。その返事を受けて、廊下の左右に人がいない事を軽く確認して素早く部屋に滑り込み静かに扉を閉じる。

 

「…鍵はいいのか」

「…」

揶揄するような男の声に、軽く唇を噛みながらかちりと鍵を捻る。

鍵をすると言う事は、この後にされる事について認めたも同然と言う事。

それでも他者に知られるよりは、――――万が一にも蓮花様に見られる事に比べれば、まだましだ。

「遅かったな」

「…全体調練の指揮だ」

 

臣民の為にと自ら降り、この男に臣従の礼を執った蓮花様。その玉身が実質的な軟禁だけで済むよう、この身と引き換えに取引をしたのは他ならぬ私自身だ。

今でも奴の蓮花様を見る眼つき――――この男の前に傅く時に露わとなる豊かな胸元。歩く後ろ姿で女性的に揺れる、男から見れば扇情的とさえ言えるであろう臀部回りを嘗め回すように見つめるあの視線には、心底肝が冷える。

奴の部屋を密かに訪れ、私は何をされてもいい、蓮花様だけには危害を加えるなと交渉しに行った夜。

あの男は薄ら笑いを浮かべながら『良いだろう、蓮花の方から抱いてくれと言われない限りはな』と言った。

そして『但し今日から、お前は俺の奴隷だ』とも。

この後ろの言葉の意味を、私は舐めていた。いや、この男の変態性、鬼畜性を理解していなかった。

 

そもそも私は自身が女である事など意識していなかった。

奴隷にする、という事は私を性欲のはけ口にするということでもあるのだろうが、それは正直どうでも良いと考えていた。

戦の世界に身を置いていた私には好いた男がいるわけでなし、この男が私の体を弄びたいなら好きにするがいい。刃で蓮花様を御守りできなかったこの私の身体が、蓮花様の操を御守りする為に役に立つならむしろ望むところだ。

初めての交接は痛むと聞くが、痛みには慣れているし蓮花様の御為と思えば何ら苦痛ではない。そう思っていた。

 

―――――それは、あっさり覆された。

「裾をめくれ」

「………何?」

 

―――――今夜から躾けてやる。月が出たら寝室へ来い。

昼にそう呼ばれ、ついに来たかと思った。しかし何の恐れも無い、この身を孫呉の為に、蓮花様の為に捧ぐのだから。

いつかは蓮花様はこの鳥籠から逃れ、虎より生まれし鷹となって大空を羽搏くその日まで、如何なる事にも耐えてみせよう。

そう思い決め、奴の寝室を訪れて寝台に腰掛ける奴の前に立たされると開口一番訳の分からない事を言い放たれた。

「聞こえなかったか。裾をめくれと言ったんだ」

「…………何の意味がある?」

「奴隷に主人が答える義理があるのか?」

「…馬鹿か貴様は。ふざけてないでさっさとする事をしろ、私は暇ではない」

「ふざけているのはお前だ。まぁ別にしなくても構わんがな、その時はお前に代わって蓮花にやらせるだけだ」

「………っ!」

蓮花様の名に今の立場を思い知らされ、奥歯をぎり、と噛み締める。

「蓮花なら喜んでやってくれるだろうぜ?かわいい部下がそれで助かるならな」

「…約を違える事は無い。蓮花様の名は出すな」

にぃ、と口の端を吊り上げた男を睨みつけ、覚悟を決める。

「………」

前垂の裾を指でつまむ。別に特に隠している訳でも無い、戦闘時には見えているものではないか。ゆっくりとそれを上へとたくし上げるだけ。

 

 

 

それが何故、こうも羞恥と屈辱を感じるのか。

 

 

 

 

股間への男の不躾な視線に太腿が知らず戦慄き、無意識に膝頭を閉じようとする。

 

 

 

沈黙。それは余りにも長く、数秒であったのかもしれないが、耐えきれずに声を発したのは私だった。

「こ…これで満足かっ」

「ふん…そんな訳ないだろう。次はそのまま裾を咥えて、褌を脱げ」

「な、なあっ……!」

あまりな男の指示に顔に血が上り、言葉が出ない。

「お前は褌したまま男女の営みが出来るとでも思っていたのか?ガキか」

「ふ、ふざけっ…!」

「何度も言わすな?」

私の反駁を待たずに男の目が細くなり、右手を上げ指を鳴らす形に構える。

「いいか?俺がこの指を鳴らせば五分後には俺の忠実な狗共が蓮花を引きずって来て、俺の目の前で下着を脱ぐ見世物をやることになる。まあ本人が抵抗するなら力づくで下着をずりおろして市に晒すだけだがな。分かったなら早くしろ」

「ぐ……」

 

事ここに至り漸く私は自分の置かれた立場を、この男の悪辣さを理解し始めた。

―――――蓮花様が、この男の前で、羞恥と悲しみにくれながら、御自身の下着を。

許されない。その様な事は許されない。ならば私の執るべき行動は。

「…下種め」

小さく呟き、自身の前垂の裾を咥える。

腰脇の端部を解き、尻の方から解いていく。腰回りが十分に緩み、後はこの指を離せば勝手に落ちる。

「…っ」

意を決して震える指を無理やり開くとぱさりと褌が落ち、陰部が外気に、――――男の視線に晒される。

「足をもっと開け」

「…」

紅潮する顔を伏せ、足を肩幅程度に広げると内腿がひやりとした空気に触れる。改めてこの身を、恥部を隠すことは出来ない事を思い知らされる。

この身は呉に、蓮花様に捧げたもの。自分を木石と思え。この程度の屈辱など、他日の蓮花様の雄飛を思えば何という事でもない。

 

「ほう…これが呉の大将軍様の雌穴か。ん?」

「だ、黙れっ」

「そうがなるな。これからお前はじっくり時間をかけて、自分が所詮盛りのついた雌だって事を思い知るのだからな」

「なんだと?…ひっ!?」

何の前触れもなく、男の指が自らに――――草叢に隠れた小さな肉の突起に触れた刺激に悲鳴を上げ、腰を引いてしまう。

 

「な、何をするっ」

「…人の言った事を聞いていないようだな。まあそれはいい、これを言うのは最後だ。蓮花に同じ目に遭って欲しいんだな?そうでないなら手を頭の後ろで組んで腰を突き出せ」

「ぐ…わ、分かった…」

蓮花様をこのような浅ましい、自らの恥部を見せつけるような恰好をさせるわけにはいかない。苦渋の思いを飲み込み、腰の後ろで両手首を握りしめ、男の眼前に女の部分を突き出した。

 

「よぉしいい子だ。逃げるなよ」

「…呉の将は逃げぬ」

男の指が自身の股に再び伸ばされる。精一杯気を張り、歯を食いしばって先程の刺激に備える。

―――――が。

 

サリ…。

「ふあぁぁっ!?」

そっと肉芽を撫でられただけで、固く閉じられた筈の口から自分のものとは思えない甘い叫びが漏れ出した。

「どうした?呉の大将軍様よ」

「はぁっ、はあぁあっ、や、やめっ、やめろっ」

惑乱。

悩乱。

自身の秘唇に与えられる正体不明の刺激に完全に混乱していた。

自分の意志と関係なく、甘く――――媚びた、女の声が喉を押し通って行き、触れられた部分から下腹の奥に何かがこみ上げる。

 

「ふぁっ、はぁっ、やめろっ、嫌だっ」

次第におぼろげに、その姿を現し始めた『感覚』。それがなんであるかに気付き始め、背筋を恐怖が抜けていく。

しかし逃げれば、この辱めを蓮花様に受けさせる事になる。その思いが私をその場に留まらせ男に弄ばれるがままにさせていた。

「ククク…なかなかいい反応をしてくれるじゃないか」

「や、やめろっ、やめてくれっ」

次第に撫でる動きから揉み、擦るような動きへの変化に思わず懇願する。

なぜなら、既に私は気づいていたからだ。どんなに目を背けても、『その感覚』が何なのか、私自身の身体が理解してしまっている。

 

「正直じゃないな呉の大将軍様は。やめろじゃないだろ?んん?」

「あっ、あふっ、はぁんっ、ああっ、ああああっ!やめっ、駄目だっ、ううううううっ!あああっ!」

腰の奥に渦巻いていく、余りにも甘美な疼き。

膝ががくがくと震え、喉の奥の方から何か――――超えてはいけない、しかし超えずにはいられない何かがこみ上げてくる。

 

「堕ちろ、思秋っ」

「ああっ、ああっ、あああああああああっ!」

きゅーん、きゅーんと腰の奥を突き抜けていく痺れに合わせて、内腿がぶるぶるぶるっ、と震えながら力いっぱい男の手を挟み込む。

固く閉じた瞼の裏が明滅し、びくん、と全身が大きく一度跳ね、激烈な何かが峠を越える。

息を止めてしまっていたのか、荒くなってしまっていた息が少しづつ整っていき、目を開けると。

「『気持ち良かった』だろ?憎い相手に、身体を可愛がられてなぁ?」

悪魔のような笑みで囁く男の顔を前に、羞恥と怒りと情けなさに苛まれ首から上を朱に染めつつ、何も言い返す事は出来なかった――――。

 

今日はここまでだ帰れと言う一刃の言葉に、蹌踉としながら自室へ戻り寝台に身を投げ出す。

…こんな筈ではなかった。

のしかかられ、股座に男のものを突っ込まれてしばらく痛みに耐えて好きにさせていれば終わる事ではなかったのか。

それがどうだ。男に、一刃に肉芽を少し撫でさすられただけで娼婦のように甘い声で喘がされ、果てには恥辱の絶頂まで味わわされた。

…あの男は、ただ私を犯したいだけなのではない。私を快楽で支配し、辱め、屈服させたいのだ。その目的に気づいた時、背筋を冷たいものが伝った。

しかしそれに耐えなくてはならない、私が耐えねば蓮花様にその辱めが及ぶ。蓮花様をあのような淫獣から御守り出来る事を思えば、どのような責め――――どのように弄ばれようとも必ず耐えて見せよう。

この身に与えられる多少の快楽など、鋼の意思で必ず押さえこんで見せる。

 

 

――――――そんな私の決意など、奴の卑劣極まりない責めの前では何の役にも立たなかった。

翌日から三日連続で、今日と全く同様に肉芽をいじられると簡単に悦びの声をあげさせられ、絶頂を揶揄され、お前は淫乱な雌なのだと嗤われた。

 

「今日は褌を外したら、尻をこちらに向けて四つん這いになれ」

四日目にはそう命令された。前日に逆らおうとし、正に蓮花様を呼ばれた恐怖が私を大人しく従わせた。

「くくく…こうして敵の前に自分から尻の穴まで見せつけて、〇ンコをちょっと擽られただけでだらしないイキ顔晒してるのは本当に呉の大将軍様なのか?いやはや浅ましいことだ」

無様に尻を突き出した格好で女の身体に悦楽を嫌と言うほど味わわされ、歯噛みして悔しがれば悔しがるほどあの男はいやらしい笑みを深めた。

 

五日目には寝台に仰向けになり、自身の両脚を抱えて大きく股を開かされた。

今日こそは。今日こそはこの男の卑劣な陰核責めになど屈しない。自ら秘部を見せつける姿勢を取らされながら決意を固くしていると、奴は予想していない言葉を呟いた。

「慣らしのお遊びはここまでだ」

「…何?」

「今日からは、憎たらしい相手に犯されて悦ぶ雌奴隷になる為の調教が始まるんだ。嬉しいだろ?」

「…知らぬ」

今までのも私を辱め、屈伏させる為の責めではなかったのか。顔を背け吐き捨てたが、例によって奴の狡猾で淫猥な指使いに前日と同じく悶え狂わされた。が、今日は違った。今までは一直線に絶頂に追いやられていたのが、今日は妙に刺激が緩やかだった。耐えられそうでもあり、しかしいつまでも打ちのめされず、直火で煮られるような責めに違和感を感じ、ふと奴の顔を見ると目が合ってニヤリと嗤われた。

 

―――――焦らされている。

私が楽にならぬよう、私がより激しい責めを求めるように、弄ばれている。

内心を見透かされた羞恥に顔を朱に染めると、口の端を釣り上げたまま

「そう焦るな。今日からはこっちだ」

と囁かれると、肉芽の下の方に違和感を感じた。

「ひっ…!?」

にゅるにゅるにゅるっ、と何かが自身の中に侵入してくる感覚に、思わず小さく悲鳴を上げてしまう。

その直前まで男の指が自身の肉芽を摘んでいた事を思えばそれは男の指だろうという事は直ぐに理解出来た。

「簡単に飲み込んだな。中はどうだ」

「あぅっ!?」

胎内に埋め込まれたその指がちゅぷ、と水っぽい音を立てて肉の内襞を擦ると、肉芽を嬲られるのとはまた違った雷撃が体奥から背筋を走り抜け、甘い叫びが口をついて出てしまう。

「ぐしょ濡れじゃないか、この淫乱め」

「う、五月蠅いっ、ああっ、中っ、擦るなぁっ、ううっ、うぁっ、ああっ」

どんなに堪えようとしても、男の指が膣内で曲げ伸ばされてくちゅ、ちゃぷ、と水音がする度に官能の呻きが容易く喉を押し通っていってしまう。

「甘寧将軍は外も中も弱点だらけか。掻き回されるのもお好みか?」

「し、知らぬっ、ああっ、あぁんっ、あはぁっ、やぁめぇっ、やぁめろぉっ、やぁんっ、ああっ、やめっ、やめてくれっ」

肉芽を弄ばれるのも耐え難い屈辱だが、胎内に侵入を許しその内部を蹂躙されて快楽を与えられる恐怖感に知らず哀願していた。

「イけっ、大股広げてぐちょぐちょ〇ンコの中を掻き回されて、情けない恰好でアヘ顔晒してイキ狂えっ」

「い、嫌だっ、ああっ、やめっ、やめろっ、ああっあああああああぁぁっ!!」

耐えようがない。堪えようがない。容赦なく絶頂へ追いやろうとする指の凌辱に広げた両脚を寝台につっぱらせ、より深くまで男の指を咥えこもうとするように股間を中空に突き出してびくんびくん、びくんびくん、と大きく腰を震わせ、自身が女として悦ぶ様を男に見せつけてしまった。

ややあってがくりと腰を落とし、無慈悲な凌辱者の視線から逃げるように視線を背けると、見ろ、と言われて顔を正面に向けられると、ぬらぬらと粘液に光る男の指があった。

「これがお前が淫乱な証拠だ。戦しかしてこなかったネンネのお前に教えてやるよ、女はな、スケベな事を考えたり気持ちいいと股から涎を垂らすのさ。男の〇ンポが欲しい、欲しいとな」

 

 

 

絶望の凌辱は、まだ幕を開けたばかりだった―――――。

 

 

----------------------

 

 

 

「…見事だ、鐘会」

「お褒めにあずかり光栄に存じます。ですが甘将軍、御鼻より出血なさっておられます。御手当てなさった方が宜しいかと」

「やはり凌辱物は身体は堕ちても心は堕ちぬに限る、何度でも同じ設定で楽しめるからな。愛紗の奴は快楽堕ちからの愛奴化が最高だ等と言っていたがその次からはどうするつもりなのか、多少分かってきたとは言え所詮愛紗は素人よ、この道のなんたるかはまだ理解が浅いのだ」

「仰せの通りに御座います。ところで血が将軍の上着に垂れてしまっております、早々に御手当てを」

「この続編は何時頃出せる」

「なにぶん同人誌に御座いますれば、陳琳様の本編の御執筆進捗具合を見ながら夏の後宮同人誌即売会までにはと。血痕付きでは入稿出来ませぬゆえ、その草稿には御血を付けられませぬようお気をつけ下さいませ」

「そうか。一刃×思秋物は少ないのでな、期待している」

「承知致しました。つきましては本作と御引替えでお願いさせて頂きました若手の後宮枠割り振り検討委員会の件ですが」

「うむ。呉からの固定枠要求は取り下げさせ実績に基づき割り振るよう意見しよう、私としても実力主義であるべきと考える所だ」

「有難う御座います。将軍のお言葉に私も筆が進みます、是非御期待下さいませ」

「ところで、あー、この後の展開だが?」

「日々ねちっこく恥辱責めにて開発されてゆき、屈辱の後背位中出し絶頂処女喪失迄は構想が御座います」

「うむ、責め抜かれ蓮華様…いや蓮花を人質に取られては屈服せざるを得ぬな、思慮純忠の思秋ならばやむを得ぬ成り行きだ。裏腹に身体はどんどん過敏な雌にされてしまうのだろう?」

「お言葉の通りで」

「それに恥辱責めか。『貴様にはこれで十分だ』等と言われ爪先で弄ばれて絶頂させられるのも良いな」

「…流石甘将軍、是非取り入れさせて頂ければと」

「媚薬も使われてしまうのだな?いや、花開かされた身体には焦らし責めだな」

「…ははっ」

「しかも尻穴も開発され揶揄されるも尚心は堕ちず」

「(ほんと歪みねーなこのおばはん)」

「ん?何か言ったか?」

「いえ。将軍の御構想に感じ入って御座いました」

「うむ、想像するだに堪らぬな。重ねて励めよ」

「奮励致します。話は変わりますが将軍の御顔が女性がしてはならない表情をなさっておられます、洗面で鼻血を止め御顔をお洗いなられてから御執務にお戻りになられますよう」

「うむ。ではな」

 

 

 

----------------------

 

 

 

「…どうした士季。食事中に遠い目をして」

「いえ、何でもありません仲達様。ちょっと他人事ながら呉の将来が心配になりまして」

「そうか。他国とはいえ呉も一刀様の治める国の一部ではある、何か出来る事があるなら助けてやり、特に無ければ他山の石とすると良い」

「はぁい」

「ところで聞きたいことがあるのだが。今日お前宛に郵便物があったのだが、『夏こみ当選のお知らせ』とは何だ?宛名も『さーくる晋帝国』主宰 鐘会様となっていたが、お前は何かの団体を主宰しているのか?…どうした真顔になって、箸を落として行儀悪いぞ。…なんだ急に、腹が一杯?いつもは倍は食べているだろう、…士載?叔達(司馬孚)、季達(司馬馗)、顕達(司馬恂)、恵達(司馬進)、雅達(司馬通)まで!?待て逃げるなお前達、何か隠しているだろう!な、は、伯達姉様お放し下さいっ、良いのですと言われましてもっ、痛っ痛たたたたたっ!?姉様折れますっ、折れてしまいますからっ!」



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司馬日記外伝「姉が帰省する度に言う事がおかしくなっている件」

その後の、潁川に帰省した桂花さんです。
コメント下さった方有難う御座います、嬉しく拝見しております。


「ただいま。はぁ…孝廉に推挙されたからしょうがなく都に行ったけど、劉協も董卓もボンクラね。早晩動乱が起こるだろうから下らない事に巻き込まれる前に潁川に帰ってくるわ」

 

「ただいま。韓馥が冀州に来ないかって言うから行ってみたら、とっくに袁紹に奪われてるじゃないの。袁紹からもそのまま仕えないかって来たんで暫く留まってみたけど、都の連中に輪をかけた馬鹿女だったから帰ってきたわ。え?これから?…そうね、東郡に来てる曹操っていうのが有望らしいからちょっと会ってみるわ」

 

「ただいま。今日は帰省じゃなくて荷物を取りに来たわ、私これから華琳様…曹操様に仕えることにしたから。華琳様は素晴らしい英雄だわ、天下を治める志をお持ちで経世の才に優れ、武技にも長け凛とされていて、しかもお美しい!仕えることにしたっていうのは語弊があるわね、華琳様に天下を取らせる…いえ、取って戴くお手伝いをしてくるわ。じゃ暫く私帰れないから、じゃあね」

 

「ただいま、桐花(荀攸)はどこ?え?荊州!?なにやってんのよあのバカ、早馬を出して呼び戻して!なんでって、華琳様に仕えさせるのよ!あんな根性曲がりでも頭はまあまあなんだから華琳様のお役に立たせないと、ああもうこのクソ忙しいのにっ!じゃあ私もう行くから宜しくね。ああ、あんたも将来は華琳様に仕えなさいよ、華琳様の覇道の為には人手はいくらあっても足んないんだから。お酒?悪いけど又今度ね」

 

「…ただいま。…あ?たまには休暇を取んなさいって帰されたのよ、華琳様に。…違うわよちゃんと稟とか風とか交代でよ、次そんな冗談言ったら殴るわよ?…ああそう?そんな見て分かるほどかしら、ちょっと嫌な事があってね。…最近華琳様の周りに自称天の御遣いとかいう汚らしい男がうろつくようになったのよ。まあ華琳様の覇道の為の捨て駒みたいなもんで、近々袁紹と開戦の口実の為の殺され役にしてやる予定だけどね。…そうしたいのは山々だけど、華琳様自ら拾ってこられたから勝手に殺せないのが腹立たしいわ。まあ華琳様にしてみれば戯れに野良犬を拾ってきたようなものでしょうけど…はっ!?華琳様の犬は私だけの筈なのにっ、とっとと殺さないとあの男はっ」

 

「ただいま。何?来ちゃいけないの自分の実家に、近々こっちで作戦あるから仕込みのついでに寄ったのよ。それにしても桐花(荀攸)はまだ帰ってこないの?…まああの発情した害虫から華琳様をお守りするだけで手一杯だから華琳様に色目使いかねない奴が増えないって意味じゃいいんだけど。…言わなかったっけあの満身精液男よ、北郷一刀。…あいつの所為で私の貞操はっ、…うがぁーーー!許せない許せないっ絶対殺してやるっ!!はーはー…何でもないわ、ちょっと疲れてるだけ。…悪いわね、そういってくれるのは有難いんだけどちょっと飲んでる余裕ないのよ、じゃまたね」

 

「ただいま!やーっと麗羽の奴片付けてきたわ、つっかれたー!ったく、あのバカが劉備とごちゃごちゃしてなければ向こうに関羽も居なくてもっと簡単だったのに!…あーありがと、まぁでも華琳様の実力を考えればまあ当然の結果だけれど。…は?こっちじゃそんな風に伝わってんの?鳥巣を狙うとか別にあいつとか許攸とか居なくても分かってた事だし、全部華琳様の功績であって何一つあの種馬のお陰とかないからそこんとこ勘違いしないで?」

 

「ただいま、はぁー…ええ、ちょっと疲れてるのよ、華琳様からも休暇もらって。っとにバカな種馬の飼育係任されちゃってね、お陰でクタクタよ。人間の姿してるくせに言葉通じないからね、あのち〇こ太守は。漸く『待て』と『よし』は覚えたけど『やめろ』は何時まで経っても覚えないのよ全く、犬の方が賢いわ。…風?風はあいつと遊んでやってるだけ、別に私みたいに飼育係やらされてるわけじゃないし。秋蘭?秋蘭はまぁ…ご飯係ってとこかしら、秋姉ぇって呼んだら残飯くれてやるのを躾けるみたいな。しかもねぇ、最近あんな屑を慕ってますとか尊敬してますとかそういう勘違いしてる女が出始めてるからあの股間が頭脳男が勘違いして増長するのよね。他所の女噛もうとするのを蹴り飛ばしてなんとか体に教え込んでやってるんだけど飼い主の手にも噛みつくからこっちも生傷が絶えなくって、もぉホント他の本業の方が片手間にさせられてるわよ。しかもねぇ、え?…あぁ華琳様?お元気だけどどうかした?それより聞きなさいよ、あのバカ一刀ったら」

 

「ただいま。今度うちのカスの領内巡幸経路が偶然うちのそば通る事になって、経費削減の為にうちに泊める事になったから。経費削減の為に。…ああ大丈夫よ、あんたその頃都で入庁試験で居ない頃だから迷惑は掛けないわ。…ああもう来たのね、私出るからいいわ。別に怪しい連中じゃないわ、魏の工事部隊で実務やってる鄧艾って奴。あたしの寝室と風呂場の改修工事の打ち合わせに来たのよ、軍に(工事契約)出すと品質よくて結構安くやってくれるしでかい寝台とかの特注も受けてくれるから。じゃ、ちょっと打ち合わせてくるから」

 

「あらお帰り、どうしたのそんなぜーはーいいながら帰って来て。…あの種馬?他人の寝台荒らし散らかして次の宿場に向かって出発しちゃった後よ。で、まぁ聞くまでもないだろうけど試験どうだったの?…あそう、おめでと。で配属先は?…あー、音々音んとこね…まぁいいんじゃない?ただねぇ、あの女なんて言うか…あいつの事分かってない癖に偉そうな事言い過ぎ?あの変態が屑なのはその通りなんだけど、あんたうちのバカ犬蹴るのに飼い主のあたしの許可何時取ったのかしらってとこあるから。あのドスケベ猿をしばきたい時はあいつの許可取るんじゃなくてあたしに言いなさい、代わりに躾けておいてやるから。てか私寝ていい?眠くてしょうがないのよ、あの変態の所為で」

 

「ただいま、って何よ顔を見るなり『うげ』って久々に姉が帰ってきたってのに失礼ね。あぁ、あんた風呂行くの?じゃ私も一緒に入ろうかしら。…いいじゃない昔はよく一緒に入ってたでしょ。あ、ちょっと外した髪留め仕舞っておくところ無いかしら、鍵掛かるような箱。この金木犀の髪飾り仕舞っておきたいんだけど、手作りの。いや私はどうでもいいんだけど、あの全身精液男が下心満載でどうしてもお納め下さいってこれ差し出すからまぁあんまり邪険にするのも控えなさいって華琳様も言うからしょうがなく受け取っただけなんだけどね。それに判で押したように金木犀って芸が無いにも程があるって思わない?あたしには金木犀が良く似合うからとか言って、真名に掛けただけの猿知恵で髪留めだの押し花だの着物だの贈ればゴマが擦れるとか思ってる所が単細胞股間脳生物よね本当に迷惑なのよこっちは、手紙も送りゃいいとか考えてて受け取る側がしまっとく桂の箱の置き場にそろそろ困ってるとかこれっぽっちも考えられないのよね。今日はあたし帰省するって何度も言ってんのに夜が明けても離さないし本物の猿かっての、挙句の果てにはあたしがあいつを離さなかったとか事実を歪曲して人の所為にして心底救えない動く廃棄物だわ。そうそう、桐花(荀攸)がこっちに勤めるようになったんだけどなんなのあいつ?コソコソうちの種馬に近づいたかと思えば『あたしが一刀様の雌奴隷だから、桂花はもう近づかなくていいから』とか寝言ほざいて!あいつは桐花(荀攸)なんかの手に負える奴じゃないの、この世の奇跡級にぱっぱらぱーで本能だけで生きてるウジ虫なの!それを私が苦労して苦労してようやく脳の無い人の形をした何か位まで調教して、華琳様の足元に這いつくばる事を許してやれる程度にしたとこなわけ、全然桐花(荀攸)がどうこう出来るとか無いわけ!それにあいつの性癖として自分から雌奴隷とか言う女好みじゃないから、あいつは嫌がる女を無理矢理犯して事後に可愛かったよとか脳沸いてる事囁くのが趣味の真正の変態だから。痕つけるなって言っても聞かないし、見なさいよ首筋とか痕だらけ!顔だってお前はタコかってくらい吸い付かれて、ねぇあたしの顔腫れてない?そう?やっと腫れが引いてきたのね。…ところであんた、元々そんなに騒がしい方じゃなかったけど最近特に反応薄いわね。仕事場行ったらもう少し愛想よくすんのよ。それとあと、あんたもあのどスケベに不必要に近づくんじゃないわよ、十尺以内に近寄ったら妊娠させられるからね?上がったら少し飲みましょ、桂花陳酒ってあいつがあたしの為に取り寄せて無理矢理持たされた酒があるから。…そう?前はあんなに飲みましょうとか言ってたじゃない、まあいいけど。ところでこの酒にはあたし嫌な思い出があるのよ、これ初めてあの馬鹿がこの酒持ってあたしの部屋に来た時なんだけどさぁ」

 

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「柳花(荀諶)は若いのに聞き上手なのです、三国若手合同研修の講師で来られた祭殿の半分自慢の訓示をあのようににこやかに相槌まで打って聞いていられるとは。徐盛殿とか、ねねが講師を担当した班の娘達なぞ皆揃って死んだ魚のような眼をしてましたぞ」

「慣れてますから」



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司馬日記56+おまけ

お久しぶりで御座います。来年が皆様にとって良い年となりますよう。


11月27日

突然詠様に会議室に呼ばれ、昇進を言い渡された。肩書としては総務室長補佐となり、部長級扱いとなるが業務としては何も変更は無いとの事だ。

光栄であり拝命致しますが異動時期でもなくなぜこの様な時期にと伺ったところ、

「昇任の業績基準と合致してなさすぎて人事部で問題になったからさせたのよ、あんたが毎度毎度筆記試験で落ちてるからって言い訳してたんだけどいよいよそうもいかなくなってね。普通ここまで成果出せる奴はあんたみたいに性格が極端じゃないから、普通は昇任試験も受かるからそんな不一致は発生しないんだけどね」

と言われた。業績を褒められたと言うべきか筆記試験が不甲斐ない事を叱られたと言うべきか、なんとも微妙な所に思われたが、同席された月様が

「仲達さんの(メイドとしての)お仕事はとっても良いですから、いつかメイド学校を作ってそこの先生をやって欲しいです」

と微笑まれたが、詠様は

「やめてやめて冗談やめて、そんな事したら月とこいつしか残らなくなるからこのクソ忙しいのに」

と即座に否定され月様は残念そうにされていた。

 

…一刀様にお仕えするメイドの教育。とても重要な業務であり大変興味をそそられ、もし任命されたならば一刀様の為厳しく教育に打ち込んだであろうが。

 

11月29日

呉の甘寧殿から士季づてに、蒋欽殿・周泰殿が新人武官に対して行う『逃走中』研修に覆面にて参加して欲しいとの依頼があった。

曰く、教官側である蒋欽殿・周泰殿に最近油断が見られ、屋内戦に覚えのある私が参加する事で軍紀の引き締めを行いたいとの事だ。

 

呉の大将軍たる甘寧殿から直々の御指名とは光栄であるが、研修が業務時間中である為上司である詠様と公達様に伺った所既に依頼文が来ており承諾されていた。

たまさかに璃々嬢らの指導で体は動かしてはいるが、その道に長けた蒋欽殿・周泰殿の追跡を振り切るには多少なりとも鍛錬や事前の検討をしておかねばならないだろう。

 

 

12月1日

総務室での執務中に、子敬が『逃走中』研修に紛れ込む為の新人武官用の制服を甘寧殿から預かってきたと言うので引き取った。そのやりとりを御覧になっていた一刀様がどうしてまたと御下問されたので経緯を御説明すると、子敬が何か思いついたようでちょっと待っててと言い更衣室へ消えていった。程なくして同様の制服を着こんで戻り、

「じゃーん!どう一刀様、あたしの新人時代の制服えっちくないですか!?今度これで『おふぃすらぶ』とかどうです?」

と言いながらしなをつくると、ピーンと小さな音を立てて腰の金具が飛んだ。

直後から子敬が微動だにしないので訝しんでいたら目を開けて立ったまま気絶していた。

 

その日から三日間子敬は寝込んだ。

 

 

12月7日

髪をまとめて新人武官の制服を着こみ覆面をし、甘寧殿の指示を受けた徐盛殿の手引きで『逃走中』研修に紛れ込んで参加した。

規則で直接的な打撃は禁じられているが罠の設置は認められているので数か所仕掛けた所蒋欽殿が引っ掛かって拘束出来、終盤私が新人武官でない事に気づき本気を出された周泰殿に肉薄されたが罠や障害を盾にどうにか時間内を逃げ切る事に成功した。

研修後甘寧殿が厳しく二方を叱責され、罰として御伽日を呉の調練に協力した私に譲るよう指示されたがそれは辞退させて戴いた。

呉の誇る隠密たる蒋欽殿・周泰殿は呂布殿と並び一刀様の身辺警護という至上の重責を担われており、此度の反省を今後の業務に生かして頂ければと思う。

 

12月9日

帰宅すると姉妹達が妙に豪華な夕食を用意して待っており、何事かと聞くと私の昇進祝いだと言われた。特に業務の変更が殆ど無かった為家族に報告する事をすっかり忘れており、夕食の席で改めて報告すると共に一層一刀様の御為に業務に邁進する事を抱負として述べた。

すると何故か姉妹全員から呆れたような冷めた目つきで見つめられ、何かおかしな事を言っただろうかと問うと伯達姉様が普段と変わらぬ笑顔で

「仲達、『業務に』ですか?」

と逆に問われ、はいと答えると何故か私の海老チリの皿をすっと引かれ、

「今一度問います、『業務に』と言いましたか?」

と再度問われた。何がいけなかったのか分からず、私も再びその通りですと答えると次は汁椀が引かれここに至り漸く私が伯達姉様の求める答えを大きく外しているようだと言う事に気づき背筋に嫌な汗が流れた。

しかし正答が分からず青くなりながら、笑顔のまま次第に怒気を強める伯達姉様と同じやり取りを三度繰り返して遂に私の前に残るものが漬物のみになったところで叔達が『伯達姉様は閨房での抱負を述べなさいと仰っているのですよ』と耳打ちしてくれ、漸く姉様の御意図と部長職になって御伽番の頻度が上がる事の両方に気づかされた。

その後も具体性が足りないなどと伯達姉様に何度も駄目出しを受けながらも、最後になんとか

『来年は鮪女を返上し、はしたない位に性技に長けた女になって一刀様に御満足頂く』

と誓う事で夕食を食べさせてもらえることとなった。

 

…これが逢紀や元直等の言う『公開処刑』というやつなのだろう。

 

12月10日

第四次王都開発計画の変更が策定され決裁が回ってきた。

開発中の商業区画予定地への出店募集に応募が殺到し、まるで足りない見込みとなってしまったためだ。

今次だけでも既に二度目の計画変更であり、以前詠様が仰っていた都市単位での機能分散が必要なのかもしれない。

 

12月11日

昇進祝いにと『衣料九割引券(後宮用)』を伯達姉様から頂いた…と言うか有無を言わさず渡され、必ず今日中に何らかの品を購入してくるようにと命じられ生協のその…閨房用品店舗へ赴いた。

あからさまにそういった事の為の店舗へ入るのは多分に恥ずかしかったが、後宮に属する者が一刀様の心身をお慰めする為に房事の研鑽に努める事は当然の事ですよと正論で諭され、終業後にこそこそと店舗に入ったところ何と店員の服を着た逢紀(杏)と鉢合わせた。

たっぷり一秒は顔を見合わせた後、おずおずと 

「いっ…いらっしゃいませー…?」

と言われ我に返ると羞恥がこみ上げ、こんな処で何をしている、(メイド)業務はどうしたと問うと、文烈(曹休)様の御指示で三国一の店員と合わせて勤務しており兼業許可も取っているという。彼女の後宮入り時に手続きを行ったのは私だったが、民間勤務先がこちらでもあったとは知らなかった。

広くない店内には私と彼女の二人きりで、扇情的な下着を買わねばならぬ身としては物凄く気まずい。店員の習性か私が挙動不審の為か、えっちな下着とかお探しですかと図星を突かれ、自棄でそのようなものだと答えると

「仲達さん肌白いんで黒…はお持ちだったら、この青のとか、こっちの赤いのとか大きいおっぱいが映えるんで、上下組でどうですか」

等と勧められたが、青い方は明らかに下半分しかなく乳首も露出する作りで、赤い方は上も下も完全に透けている。どちらも選べたものではないが自身で瀟洒かつ一刀様の御心を高められるものを選べる自信もまるでなく、困り果てていたところふと運動服の展示が目に付いた。

服の付箋には三国塾風運動着とあり、三国塾制服と並んで学校用品が何故このような店舗に置かれているのかは不思議ではあったがそういえば伯達姉様は必ず『下着と』交換券を交換してこいとの御命ではなかった事を思い出した。一刀様への御奉仕用下着はまたいずれゆっくり自身で選ぶ事とし、多分に屁理屈の感は否めないが当座姉様の御命をやりすごす術としてこの運動着を選ぶ事にした。

勘定場の逢紀(杏)にあの運動着を頂きたいと指さして申し出ると、

「えっ…マジですか?」

「?何か問題があるか」

「いえ…いえ、何も無いですけど」

と言い、

「あの…そういう(コスプレえっち)用なんで、破れやすいのと超伸縮のとありますけどどっちにしますか?」

「?こういう(運動)用途なのだから伸縮する方だ」

「はい、あと(チラ見せ用に)ダボダボ系と(おっぱいお尻を強調する)パツパツ系とありまして、仲達さんの体型ですとパツパツ系がお勧めですけどそちらで宜しいですか?」

「(『だぼだぼ』『ぱつぱつ』の意味が分からぬ…)ではお勧めの『ぱつぱつ系』で頼む」

と何とか注文する事が出来た。

物凄く珍しいものを見たような顔をしていたが、きっとこちら(後宮用品)の店舗でこういった一般商品を購入する者が珍しかったからだろう。

私としても知人の目の前で自身の性癖を晒すような買い物をせずに済んでほっとした。

とは言え学生でない私にはこの運動着は無用の長物であり、いずれ雅達か幼達が体形が合うようになったら譲ってやろう。

 

12月14日

夕食中、早速伯達姉様から「仲達はちゃんと(扇情的な下着を)買えましたか」と聞かれたので、姉様の御意図には添えず申し訳ないと思いながらも

「はい。ぱつぱつ系の体操着を買わせて頂きました」

と答えると、叔達以下の妹達と士季(鍾会)、士載(鄧艾)が一斉に食べていた物を噴き出した。

 

それぞれが慌てて噴き出したものを片付けると、叔達ら上の妹達が口々に

「正気ですか!?いい年こいて!」

「無茶です、うわキツにも程がありますよ!?」

「ずらしハメとかそんな高度な技が自分に出来ると思ってるんですか!?」

「まさか次は制服だとか言い出しませんよね!?」

等と訳の分からぬ事を言い詰め寄って来たが、伯達姉様が無言の早業で叔達、季達、顕達、恵達の眉間に空いた食器を命中させ、

「いいえ、何もおかしくありませんよ。ある程度円熟してからこその味もあるというものです。仲達は今後も励みなさい」

と今一つよくわからない指導を頂いたが、この笑顔の姉様には逆らってはいけないと言う事を長年の経験で知っていたので曖昧に頷いておいた。

 

また士季は一人で何も言わずに気色悪い表情でひっくり返り気絶していた。隣で様子を見ていた士載曰く、声を殺したまま笑い過ぎで気を失ったようだと言っていたが、何がおかしかったのだろうか。

 

 

※「司馬日記外伝 遺失物件第一号」御参照

 

 

12月16日

公達様より三国一の割引券を渡され、

「あんた、「逃走中」研修で蒋欽と周泰とっちめちゃったんだって?向こうの二人に明後日の夜時間取ってもらったから、これで今夜飲みに行ってきなさいよ」

との御指示を受けた。午後は総務室の業務であった為、詠様にその旨御報告したところ目を丸くされ

「あら、公達さん随分気使ってくれるのね。良い事だから、あんたが明後日やるって言ってた調査物のまとめはボクやっといてあげるから、飲んで来なさいよ」

と感心した様子で言われた。またやりとりを見ていた子敬が私をじっと見つめており、何か顔についているだろうかと問うと

「いやあんた分かってないだろうから言っとくとね、普通ああいう(逃走中)事があったら思春の依頼だったとはいえ面子潰しちゃった訳だから正命(蒋欽)、明命とは多少なりとも気まずくなるもんなのよ、全員が仲達みたいに業務だったからって割り切れるわけじゃなくてね。公達さんが飲んで来いってのは、良い機会だから向こうに気まずい思いさせたまんまじゃなくて御機嫌取って仲良くなって来いって意味なのよ。あたしからもちょっと出すから二人に猫の縫いぐるみでも買ってって『先日は業務とはいえ失礼しました』ぐらいの挨拶はするのよ?」

と寸志だと言って金を無理やり渡された。

 

12月17日

子敬らに言われた通りに進物を買い、三国一の席で蒋欽殿らと落ち合い先日はと御挨拶した。

するとお二方とも業務の事ですから、むしろ御迷惑掛けましたと恐縮されたが折角の機会ですので親しくお話させて頂ければと酒を勧めると、高名な仲達さんとは一度お話ししてみたかったと言って頂けた。

互いに比較的しがらみの少ない中位職であったからか、酒が進むと共に非常に話が弾んだ。屋内戦の索敵や罠の敷設方法等の比較的固い話題から始まり、互いの上司の話や服飾、一刀様のお話に及ぶと

「わかりました!分かりましたからちょっと仲達さんそこらへんで止めましょう!」

「これが噂の『ちゅーたつ』って奴だったんですね、すっごい可愛いけどマジで切りが無いんでちょっと止めて下さい!」

と笑いながら途中で遮られてしまった。

周泰殿は亞莎と似て可愛らしく真面目で、蒋欽殿は周泰殿と容姿は似ているが朗らかな方だと思って居たが、周泰殿は上司等に話が及ぶと可憐な容姿に似合わぬ毒を吐かれ少し驚いた。また御自身は十分女性的な造形をされているにも関わらず妙に大きな乳房に敵意を持たれているようで、私の胸を指差し『次は絶対捕まえて見せます、そのおっぱいに誓って!』と店内に響く声で誓われるのには少し困惑してしまった。

二人は私を『今日飲むまでは怖い人だと思っていたけれど、真面目で凄い面白い人だった』と口を揃え、自分では真面目は分からないでも無いが詰まらない人間だと思って居るがどこが面白いのかと問うと、何もかもだ、と再び笑われてしまった。

 

お開きとするところで、先日御伽番の譲渡を辞退した事の礼を改めて言われ、代わりにと言っては何ですがと言って透明な粘液状のものが詰まった中程度の瓶を渡された。何かと聞くと、呉の一刀様専属泡姫秘蔵の『特殊ろーしょん』だと言う。

そういえば彼女らは『ろーしょんぷれい』の高手として後宮では名高い事を思い出し、これは何が特殊なのかと伺うと皮膚から吸収される精力剤入りだという。

これで一刀様とぬるぬるずっぷりヤッて下さいと言われ、房技至らぬ私が頂いても宝の持ち腐れだと固辞したが、それなら尚の事これを用いて奉仕研鑽に励まねば不敬でしょうとやりこめられ受け取らされてしまった。

 

店を出て、大分酒を過ごされ真っ赤な顔で酔歩蹌踉とした周泰殿が

「仲達さんがいい人で今日はとっても楽しかったです、仲達さんだけ特別にそのおっぱいは許します!穏様のは有罪ですけど、見せすぎですからあれ!」

と言われ、蒋欽殿が『じゃ祭様のは?』と聞くと、はっ、と鼻で笑うような表情を浮かべ

「あれは別にいいです。ほぼ終わったおっぱ」

と言い終える直前にどこからともなく飛んできた石弓が彼女の側頭部に直撃し昏倒した。慌てて駆け寄ると笑顔のままの蒋欽殿に制され、

「あ、よくある事なんで大丈夫ですー、この娘ほんと懲りないバカなんでー」

と妙に慣れた様子で肩に担いで連れていかれたが、大丈夫だろうか…

 

12月19日

久々に総務室の夜勤となった。太史慈殿が御伽番で、何かあった際に助けて欲しいので夜勤に入ってくれないかと頼まれた為だ。

 

一刀様のご寝室外の警備は警備部が行っており、二室離れた控室で雑用品を備え待機しているだけで何をする事も無いのだが、書類仕事をしているうちに特に何事も無く朝を迎えた。太史慈殿はおそらく無事に勤めを果たし、一刀様も御慈愛を彼女に賜ったのだろう。

 

 

12月21日

午後の休憩時間に、総務室で月様の下一刀様の身の回りの世話をされている劉璋殿がにこにこされながら私の元へ来られた。

どうされたのかと問うと、声を潜めて「お伺いしましたよ、例の(どすけべむちむち)体育着を買われたんですって!?」と問われた。

一瞬何の事か思い出せなかったが先に購入し箪笥の肥やしにしていたものを思い出してはあ、と答えると更に笑みを深めて

「まあ御立派です!うちの晶(張任)がそういったの(コスプレえっち)に及び腰で、尊敬する仲達さんがお買いになったと聞けばきっと見習わせる事が出来ますわ!」

と嬉しそうに言われたが、意味が分からず一体何を見習われるのでしょうかと聞き返すとぽかんとされた。

劉璋殿は少考されるとひょっとしてですがと前置きされて、当該体操着が夜伽の為の物である事を知らないのかと聞かれ、今度は私がぽかんとさせられたのちに赤面する羽目になった。

慌てて更衣室にしまっていた件の体操着をよくよく見てみると劉璋殿の言われる通りもの凄く生地が薄く、胸元の開きと股の切れ込みが異常に激しい上に布が柔らかすぎ、こんな服で運動をしたら簡単に色々な部分が露出してしまいまるで学校体育で着用出来るようなものではない。

事務室に戻り、劉璋殿にしどろもどろにそのようなつもりでなかったと言い訳をするとそれは良くない、一刀様に夜もお仕えする身として一刀様をお飽きさせない努力は必要であり是非にもそれを着用して可愛がって頂くべき、一刀様にもそのようにお勧めしておきますと言って止めるのも聞かず部屋を出て行ってしまった。

 

12月26日

定例会議後に一刀様に「ちょっといい?」と手招きされ何事かと御側へ伺うと、今宵例の体操着を着て周泰殿らより拝領したろーしょんを持参し伽に来てくれないかと御指示頂き、頭が真っ白になってしまった。

羞恥に頭が爆発しそうになりながらも先の劉璋殿とのやり取りを思い出し、そのような破廉恥な御伽を強請る意図は無く一刀様にお気遣い頂くような事ではありませんと固辞したが、周泰殿らからも一刀様へろーしょんぷれいで御寵愛賜るようお勧めされており、かつ一刀様御自身の意志であると仰られては御言葉に異を唱えられる筈も無い。

 

凡そ御寵愛を賜る際は常に身悶えする程の羞恥に耐えていたが、此度ばかりは穴があったら入りたい、この身を消せるものなら消してしまいたい程のそれであった。しかし同時に、後宮の末席を汚す私の様な浅ましい女にもお授け下さる一刀様の海よりも深い御愛情と、女としての悦びはもはや言葉を以って表すべからざるものである。努々、一刀様の御為にある自分である事を忘れず、日々お尽くしする事を胸に生きねばならぬとあらためて心に誓う。

 

12月27日

一刀様によると、古の孫武の兵法書は遥か永い時を超えて天の国でも国王や重臣、豪商等に優れた戦略書として読まれていると言う。一刀様は詠様にこういう昔の有名な書は読んでるの、と聞かれると

「まあ一通りはね、ボクは涼州に居た頃は特に呉子を読んでたかな。でも最近は世の中の移り変わりが早過ぎて、参考にしてる暇もないって感じかしらね」

と言われた。それを聞いてはたと思いつき、一刀様の御言葉や臣下との御問答を書に編纂すればきっと後世に末永く語り継がれましょうと申し上げたが、詠様からは

「あんたそんなエロ小説もどき誰が読むの?」

と鼻白まれ、一刀様からは

「始終叱られっぱなしの本になって恥ずかしいから遠慮する」

と言われてしまった。

 

…素晴らしい書になると思ったのだが。

 

 

 

 

------------------

「折り入ってお話との事だが、今日はどうされたのか。伯道(郝昭)まで」

平素はどちらかと言うと快活な太史慈殿が平素からも謹厳怜悧な伯道と連れ立って、神妙な顔をして相談があると言われ三国一の個室で向かいに並ばれると多少なりとも彼女らに何か深刻な問題が起きたのかと心配になる。

 

「…おい」

「…お前が言え」

「…まあ、まずは一口飲まれてはどうか。その方が話しやすい事もある」

互いに顔を見合わせ肘で突き合う二人を見て、人情の機微に疎い事には自信のある私も恐らくは話し難い事なのだろうと察して麦酒を注いでみる。

「あ、すみません頂きます」

「すまんな、頂こう。仲達もまぁ飲んでくれ」

伯道(郝昭)から差し返され、角桝に黄金色の酒が注がれる。厳密に同一ではないが『天の国の酒』としてこの酒は最近人気であるらしい。

 

「それで、あー。まぁその、なんだ」

日頃歯切れの良い伯道(郝昭)が言い淀むのを見ながら、角桝に口をつける。

 

 

 

「『ぶるまろーしょんぷれい』の高手たるお前に、やり方を教授願いたい」

「っ!?!?!?」

噎せた。

 

 

 

 

「だ、大丈夫ですか仲達様!?」

「仲達!?」

「ごほっごほっごほっ!」

慌てて口をお絞りで抑える。麦酒は酒精の度は弱いと聞くが、一気に頭にまで廻ったかのように顔が火照っていく。

と言うかなんなのだ、突っ込みどころしかない。

「な、なぜ突然そんな話になる!?」

「え、えっと、お話しすると長いんですが…」

聞けば、ある時二人は一刀様から大浴場の清掃?(と御伽?二人の話が部分的に食い違っており判然としない)を命じられたが浴場で乱闘を起こし、施設を一部損壊してしまったらしい。結果、伯道(郝昭)は楓(曹真)御嬢様から、太史慈殿は孫策様から罰としてそれぞれの次回の御伽番を二人まとめて一回にされ、ろーしょんぷれいで御奉仕するよう命じられたという。

「と言われましてもどうすればいいか分からず、雪蓮は教えてくれませんし」

「楓(曹真)御嬢様も『家庭教師ぷれい』以外は教えられないと仰る」

「だからと言って何故私に聞きに来る!」

後宮の数多の寵姫達に比べ、私は児戯に等しい程に房技に劣る事を自覚しておりそれは周囲にも認識されていた筈だ。

 

「だって、明命たちが言うんですよ」

「周泰殿が?」

「仲達様はろーしょんぷれいの免許皆伝だって」

「そ、そんな筈は無い!」

多少朧げな記憶を辿ってみるが、御厚意で精力剤入りのろーしょんを拝領しただけだ。

「いや、私も一緒に聞いたから間違いないぞ。聞けば周泰殿らのろーしょんぷれいは門外不出の絶妙技、上司の甘寧将軍にさえ洩らさぬ程の秘中の秘だそうじゃないか」

「そうなんです、明命たちが(ろーしょんぷれいのやり方を)誰かに教えたって話は聞いた事無いですし。勿論私にも教えてくれないのですが、仲達様が(私に)教える分には構わないって言うんです」

「そんな馬鹿な…!」

 

いったい如何なっているのか、真顔で語る二人に頭を抱えてしまう。実はあの晩私が酔って覚えていないだけで御教示頂いていたのだろうか?いやそんな事は無い筈…。どちらにしろ、現在の私が彼女らに教授出来るほどの技量を持っていない事実は変わらない。

「どのような誤解があったのかは分からないが、現実として私のその…腕前は話にならぬ。他をあたって頂きたい」

「そこを枉げて頼む!」

「お願いします、仲達様!折角なんとか体操着だって手に入れましたのに!」

「…体操着?」

先日意図せず買ってしまい、一刀様が御気を使って下さって着用したがそれはろーしょんぷれいとは関係ないのではないのか?

 

「ああ。これを着てやるのが『司馬懿流』だと有名じゃないか」

「性協で注文殺到しちゃって私達が買ったのが最後でもう品切れですよ、『【あの】司馬懿が着た!失神するまで終わってくれない、ドスケベ衣装の決定版!』ってでかでかと幟が立ってたじゃないですか」

「何だそれは止めさせろ!」

知らぬところでとんでもない事になっている、最近庁内を歩いていると妙に視線を感じていたのはこれが原因だったのか。

「何しろ、私がそのっ…ような事に優れていると言うのは誤解だ!周泰殿らと話させて貰えれば判る!」

「はあ…仲達様がそう仰るだろうと、実は来てまして」

「…来てまして?」

 

「来てましてー!」

「いぇーい飲んでるぅー!?」

 

必死に説明する私に太史慈殿が困り顔を浮かべながら私の背後をちょんちょんと指をさす。そちらに振り向くと、個室の襖をすぱーんと音を立てて開けながら笑顔で肩を組でいる周泰殿と蒋欽殿がいた。

「お二人は…?」

「まあまあ細かい事はいいじゃないですか、仲達さんもぐぐっといっちゃって下さい!」

「は、はあ…」

二人は両隣に座ると手にした銚子を私に勧めて来たが、二人の吐く息からは強烈に酒精の香りが漂う。恐らくは私達が来店する前から別室でかなり飲まれていたのだろう、陽気な様子で顔も赤い。礼儀として盃に口をつけ、二人の御酌に杯を伸ばした。

「えぇ~?魏の重鎮の、仲達さんに注ぎ足しなんて私できなぁーい、明命どうしよぉーう?」

「困りました、このままでは正命(蒋欽)の手首が御銚子の重みで折れちゃいます!仲達さん、どうかどうか、盃を空けて頂けませんか!?」

「…これは失礼」

妙に劇がかった周泰殿の言葉に盃を一気に空けると、さっすが仲達さん、と言いながら蒋欽殿になみなみと注がれた。…正しくお二人は既にかなり出来上がっているようだ。蒋欽殿らとは今後とも懇意に願いたい事ではあるし別に飲めない方ではないのでこの程度頂く分には何も問題はないが、折角お二人が居るので明らかにしておきたい。

「…いきなりで失礼ですが、この様な所で奇遇にもお会い出来たので一点お願いさせて頂きたいのですが」

「はい、なんでしょう!」

「なんでも仰って下さい!」

笑顔で左右から身を乗り出し、比較的しっかりした二人の受け答えを聞いて少し安心する。未だ前後不覚な程酔われてはいないようだ。

「この二人に」

 

正面で神妙に座っている太史慈殿と伯道(郝昭)をちらりと見る。

「私がその…『ろーしょんぷれい』の免許皆伝等では無いと、御証言願いたいのですが」

自らの至らな過ぎる一刀様への奉仕を半ば自供する事に若干の羞恥を感じながらも、言わねばならぬ事となんとか堪える。

隠密警護の達人にして呉の泡姫とも名高いお二方の名を汚しかねない誤解は今解かねばならぬ。お二人はああ、うん、と互いに目配

せすると、にこやかに言い放った。

 

 

 

 

 

 

「いいえ?仲達さんは免許皆伝です。ねえ?」

「うん」

「な、なぁっ!?」

 

 

想定外の回答に、思わず叫び声を挙げてしまう。頭がくらくらとし、平衡を失い椅子からずりおちそうになるのをなんとか支えた。

 

 

 

 

「やっぱり…」

「やはりか」

「い、いや納得するな!そ、そんなはずは無いでしょう!?」

向かいで深く頷く二人を制し、左右の二人を首振り人形のようにみやると、それぞれ手酌で角桝を呷り、ぷは、と息をつくところだった。

右の蒋欽殿が瞳を閉じ、左の周泰殿が深く息を吸う。その可憐な唇から、何を語るのか。呆然と見ていることしか出来ない。

 

 

「思慮純忠なる魏の司馬懿」

「我等両名、その心根に心打たれ」

「一刀様への奉仕至らぬと」

「悩む乙女に助力せんと」

「『逃走中』でボコられた事も暫し忘れ」

「変態上司にも明かさぬこの奥義」

「「あ、全てをあの夜に授けしやぁー!」」

 

「おおー…」

「…すみませんが、ちょっと待って頂いて宜しいですか。…伯道らもちょっと拍手は止めて頂きたい。あの、」

「かくて、ろーしょんぷれいの神髄を会得した仲達さんは」

…聞いてもらえぬ。

「一刀様への御奉仕に見事成功し」

「性交し」

駄洒落か。

 

「一刀様の特濃ろーしょんを、びゅるんっびゅるんにその身に。違いますか仲達さん?」

「はっ…?」

突然聞かれた。いや違うかと言われると。

 

「いや、その…違わなくは…」

「見て下さい、これが免許皆伝の力です」

「おお…やはり、流石は仲達」

「すげぇ…あ、いえ凄いです…」

「いや待て、ち、違わないがそうじゃない!」

どや顔をしながら私の背をぽんぽんと叩く蒋欽殿に、伯道(郝昭)らが感心したように頷くのを止めさせる。私が言いたいのはそうじゃない、

「いいえ。そのばいんばいん様で!ろーしょんで挟んでしゃぶって飲まなかったとでも!?」

「い、いや…」

「一刀様の御精を頂いた事を!一刀様への真心の御奉仕を偽るのですか!?」

「あ、う…」

「しましたね!?しましたよね!?一刀様の御名にかけて!」

 

一刀様の御名に。その言葉に、茹る頭でも首肯せざるを得なかった。

「聞きましたか。これが免許皆伝一の技、『ぱいずりごっくん』です」

「ほう…」

「成程なぁ…でも、明命の胸じゃこれ出来な痛ってぇ!!!」

「帰りますか駄肉?無駄口叩く暇があれば仲達さんに御酌して下さい駄肉」

「か、角桝投げんなよ…あ、仲達様すみません、どうぞ」

「あ、ああ」

周泰殿が目にもとまらぬ早業で投げつけた角桝は、太史慈殿の眉間でかーんと高い音を立てて割れたが大丈夫だろうか。それと、胸と口とろーしょんを併用した御奉仕は、一刀様に御指示頂いた事であった気がするが。

 

 

「余計な茶々が入りましたが、その後には手で御満足頂きましたね!?さあ一杯!」

「勿体なくて全部飲みましたよね!?さらに一杯!」

「あの」

「全身を使って一刀様の右腕を洗い!もう面倒ですから御銚子から直接どうぞ!」

「更に全身を使って左腕を洗い!純米酒もどうぞ!」

「それは」

「上からしがみついていつの間にか入ってて!麦酒もいきましょう!」

「抜かずの三発!死ぬほど良かったですよね、その時の一刀様とのあっむぁぁぁぁいやりとり思い出しましょう!なんて言われましたか!?なんて褒められましたか!?なでなで何回!?もう全部まぜちゃえ!」

「…ひっく」

「じゃ、免許皆伝様に一刀様との熱い一夜を語って戴きましょう!さあどうぞ!」

一升瓶を己の口に突き立ててひっくり返し、中の液体が出てこなくなるのを確認してから瓶を置いて一つ息を吐く。

 

 

 

 

 

 

「…ろーしょんぷれいを語る前に。まず、『御伽』とは何か」

それが自身の発した一言目だった事は、覚えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――姉様は、いい加減に禁酒をなさるべきです。

 

今朝起こしてくれた叔達から出勤前浴びせられた冷たい視線と言葉に、流石に反省の念は禁じ得ない。

だが酒席は業務の潤滑油たる側面を持つ為禁酒は流石に現実味がない。又、酒と共に一刀様の素晴らしさに思いを巡らし、語る事は業務の精神的疲労としてこれまた譲り難いものがある。必要なのは酒席における自制心であろう。今後は一刀様にお仕えする者として尚自覚を高く持ち、今回のように酒に飲まれて記憶を失う事等の無いように努めねばならぬ。

そう思いつつ始業時刻ぎりぎりに総務室の扉を開けた所、既に着席していた詠様、元直、子敬らの視線が一斉に私に向いた。

何故か近親上等☆姉妹(劉封・関平)までが居た。

その雰囲気に多少違和感を感じながらお早う御座います、と挨拶をすると、詠様らが皆妙にいい笑顔を見せながら挨拶を返された。

 

「おはよ、司馬懿"ろーしょん"仲達良い朝ね」

「おはよう、パイズリだけで一時間語れる仲達」

「『夜の大司馬』目指す宣言した駄メイドさんおはよう」

「あー!性協のドスケベ幟の人だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…どうしたの仲達さん、廊下でバケツ持って。首から看板まで掛けて…『私は執務室で短戟を乱射して暴れました』…?なんでまた!?…ほんとに?一体何があったの…はぁ…ま、なんか事情があったんだね。うん、無理に言えとは言わないから。…そう、お昼まで。…いやそんな恥ずかしがらなくてもいいよ、次は気を付けてね」



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司馬日記外伝 淮南純愛組!

お久しぶりで御座います。
その後の、元ヤンの舎弟(舎妹?)たちです。


 定時で業務をあがり、更衣室で私服に着替えて庁舎を出る。日が伸びてまだ夕焼けの道を三国一へと向かいながら、今日の合同演習反省会で発表した考察文を思い出す。

『「初撃で相手を殴り倒せなかったのが苦戦の原因でした」』

そう書いて出したら隣に座ってた徐盛から死ぬほど駄目出しを食らった。

「馬ぁっっっ鹿じゃないの!?あんたが馬鹿みたいに先頭切って突っ込んでって軍勢が縦に延び過ぎると横っ腹から後続がやられて囲まれるから自重しろって最初に亞莎が言ってたの、これっぽっちも覚えてなかったでしょ!?馬岱さんが全く打ち込まずに完全に受けに徹してて、周り見ながらゆっくり退いて誘い込まれたのにも気づかずに一人で囲まれて!こっちが先に馬超さん上手く誘い込んで、将軍級五人がかりで運よく当たり判定取ってなかったらズタボロの全滅だったのよ!?もう少し脳ミソ使ってよ!」

 あのアマがキーキー喚くのは慣れっこだが、穏も亞莎も苦笑いするだけで何も言ってくれない方が堪えた。

反対の隣に座ってた馬超って奴は強えぇみたいだけど、あたしがボロクソ言われてるのを聞いて慌てて自分の考察文を書き直していた。

しかし突っ込んでって殴り倒すのは基本じゃねえのか?東呉で毒殴連合やってた時はそれが当たり前だったし雪蓮とタイマンやった時だってそれで誰も何も言わなかったんだけどな。

 そこでふと、これから会う相手がそういった事に長けていそうな事に気が付いた。仲達様が『美貌のみならず、文武に長け見習うところが多いです』と仰るからにはきっとそうなんだろう、性格はクソみてぇな奴だが。話のついでに聞いてみるか。

 そう思いながら三国一の暖簾をくぐり、予約の太史慈ですけどと店員に告げると奥の個室の座敷に通された。履物を脱ぎ障子を開けると、見るからに性格がねじくれていそうな軍服金髪の女が既に手酌で始めていた。

 

「早ぇな。もしかして魏の連中って暇なのか?」

「相変わらず無礼な奴だな。呉では十分前行動という言葉を教えていないのか、それとも習っても右から左の阿呆猿なのか」

「んだと?」

「貴様の喧嘩を買ってやりたいのはやまやまだが、今日は先に用を済ますぞ。酌ぐらいしてやるからとっとと状況を言え」

「ああそうだったな」

御猪口を突き出すと、頬杖を突きながらぞんざいに注ぎやがる。一刀様の前じゃ正座して笑顔で両手でお酌をするくせに。

清酒を今日の演習の鬱憤ごと飲み干すと、一息ついた。

 

 

「仲達様の―――――だけどよ。手配は万事順調だぜ」

 

 

***********************

 

 

酒はいい気分の時に飲むに限る。いい気分の時に飲む一杯は格別だ。それはあたしらが東呉に居た頃から知っていた事で、目の前の相棒も同意見だ。

今日は子義姐さんの下について久々の対外陸戦演習だった。結果は呉の勝利、しかもあたしら自身が勝利に貢献したとなれば酒が旨くない筈が無い。

「五合だぜ!向こうの将軍級と打ち合って五合持ったぜおい!」

「あいつら都尉だってよ都尉!秀(張英)お前、あっちのおっぱいでかい桃色の方だったろ!?あたし貧乳の青い方から逃げ切り寸前まで行ったぜ!」

「そのあたしらの時間稼ぎのおかげで子義姐さんがあの馬岱?だっけ?って奴倒して、ほかの連中と蹴散らしてくれたからなぁ!姐さんも『お前らよく粘った』って褒めてくれたしなぁ!」

「もうあたしら来年牙門将なっちゃうんじゃね!?」

そう馬鹿みたいにはしゃぎながら飲んでいたのがいったい何分前だったのかも思い出せない程、沈鬱な空気があたしらの寮室内に充満していた。

「…どうするよ…?」

「どうするって…」

言われても。叩き込まれた情報がとんでもなさ過ぎて、思考が追い付かない。

 

 

***********************

 

 

隣室から姐さんの声が聞こえてきた時は、秀(張英)が祝勝会で乗り込んじまおうかと軽口を言っていたが、姐さんの声を聞いて固まってしまった。

『仲達様の―――――だけどよ。手配は万事順調だぜ』

 

は?

何だって?

 

「そうか、それは何よりだ。金の方は?」

「俺が用意した。お前も一口乗りたいんだろ?それなら半分払えよ」

「まあな、奴には私も世話になっている。今は持ち合わせが少ない、明日昼休みに払いに行く」

「あー…いいけどよ、こんだけしたぜ?こんな事でばれるとは思わねえけどさ、現金だとちょっと目立たねえか?」

「む、結構だな…それなら後日振り込もう」

「それがいいぜ。それよか、一刀様はこの件御承知なんだよな?」

「ああ、お話は通してある。たかが―――――如きではあるが、誰かの妬みを買わぬとも限らん。一刀様の周りには常に誰か控えているからな、周囲にばれぬようお話しするのは中々骨が折れた」

「一刀様、何か言われてたか?」

「仲達は今回昇進であるからな、これくらいの事はあってもいいだろうとの御言葉だ。『本当は俺自身が動かなきゃならないところを、内密に二人に動いてもらって申し訳ない』と仰っていた」

「お優しいな」

「全くだ。本来、このような事は我々のような下々の者で手を回すべき事だ」

 

 

…これは聞いちゃいけない話じゃねえのか?

(逃げよう)

(あ、ああ)

秀(張英)と目配せをし、足音を忍ばせて個室を出て、会計も釣りはいらねえと大枚を置いて寮へと一目散に逃げ帰った。

 

 

***********************

 

 

「…姐さん、なんか厄介事に巻き込まれちまってんのかな…」

「…分かんねぇよ」

東呉で毒殴連合やってた時から曲がった事はしねえ方だった。殴るのは決闘を申し込んで来た奴か、明らかに悪りぃ奴だけ。孫策との決闘は今でも語り草だ。

それが、なぜ。

「…明らかにあの司馬懿…って奴?の悪事の片棒、担いでる感じだったよな」

「…あたしの聞き違えじゃないよな。――――って言ってたよな」

「ああ…」

あの司馬懿って無表情女。

初対面は蹴り倒された挙句にとっとと失せろ、と一喝された最悪の記憶だ。

完全にあの女はあたしらを殺す気だった。

憎悪。

憤怒。

狂気。

東呉時代にも浴びせられた事の無い、圧倒的な殺意。

後で知ったが一刀兄貴が殺すなと言ってくれてなければ本当に八つ裂きにされてたと思う。正直あの時少しちびってた。

その後、姐さんの取りなしで謝らせてもらった時も

「…一刀様の御指示なので特に許します。今後は性根を入れ替えて一刀様に尽くすように。…次は無い」

平坦な声と冷徹な視線に刺し穿たれたように、当時『姐さん以外の言う事は聞かねえ』とイキってた自分らがへぇ、とあっさり頭を下げた。

しかし姐さんの話によるとあの女、腕も結構立つ癖にやたら賢くて一刀兄貴への忠義は凄ぇらしい。頭良くて美人で無表情で影薄いとか、いかにも悪の黒幕にしか思えないが。

そんな奴が、犯罪に手を染めている。この治安のいい都の、べらぼうに法律だらけの宮中で。いや、決まりが複雑過ぎるからああいう奴が抜け穴を見つけて甘い汁を吸えるのか?

 

「それによ、これ一刀兄貴も知ってるっぽいじゃん」

「…ああ。しかも、なんか容認してる…ってえか、兄貴自身で揉み消さなきゃいけないのを姐さんとあの郝昭ってのが空気読んで始末してるみたいじゃね?」

そしてなにより、あたしの心を暗くさせている事が思わず口をついた。

「…………子義姐さん。そういう事、しそうもねぇ方だと思ったんだけどな…」

「…………いや、そりゃ…お前…」

あたしがため息をつくと、何故か秀(張英)が顔を赤くして口籠った。

「なんかお前、姐さんが変わっちまった理由とか知ってんの?」

「だ、だってお前…」

「?なんか知ってんなら言えよ」

増々頬を紅潮させる相棒に、思わず首をかしげる。

「だ…だって、お前っ…い、一緒に見ただろ!?」

「何を?」

「あ、あのっ!『まじっくみらー』の部屋で!」

「………はっ…?はぁっ!?い、今それ関係あんのか!?」

あの、一刀兄貴と子義姐さんの強烈に濃密な一夜が瞬時に脳裏に浮かび上がると共に頭に血が上っていく。

「ああああるに決まってるだろ!だって考えてみろよ!一刀兄貴のだよ!?ち、ちっ…ちんち…っ、をあんなに嬉しそうにしゃぶって!いやしゃぶってってか飲んで!」

「わ、分かった!分かったから言うな!」

「素っ裸にひん剥かれて!ま、股っ…体じゅう舐められて!」

「やめろ思い出すから!今夜寝られなくなる!」

「裸で抱きしめられてっ!ちんっ…入れられてっ、あ、溢れるくらい出されてあんな幸せそうにべろちゅーして、もぉ言いなりにならないとか有り得ねぇだろ!」

「も、もういい分かったからでかい声出すな、他所に聞こえる!」

暴走する秀(張英)を何とか黙らせるが、脳内で交わり続ける二人があたしの下腹を地味に疼かせる。

…まぁ、分かった。もし自分だったら絶対一刀兄貴の言いなりだ。言うこと聞くなら抱いてやるって言われたら、人を傷つけるわけじゃないその手の悪事の片棒くらいなら多分平気で担ぐ。…気がする。

「…あの郝昭ってのも、きっと同じなんだろうな」

「…あー」

ふと口から出た推論に、秀(張英)が同意する。司馬懿程じゃないが生真面目そうなあの女も、寝床でメス堕ちしてるんだろう。

「そう思うと、一刀兄貴って恐ろしい奴だよな」

「そうだとして、今更お前、一刀兄貴と姐さんから離れて地元帰れんの?」

聞き返されて、絶句してしまう。

もう無理だ。今後抱かれる…抱いて貰える事があろうと無かろうと、もう二人から離れて地元に帰るとか有り得ない。その事実から、一つ答えが見つかった。

「…って事はさぁ。もうあたしら、姐さん達がやってる事は黙って見てるしかねえんじゃねえの?」

「…んー…」

曖昧に頷く秀(張英)。

「だって他にねーべ?」

そう念を押すと、それでも姐さんに一度確認したい、という秀(張英)の顔は珍しく真面目だった。

 

 

***********************

 

 

「…………そっかぁ、聞かれちまったか」

真面目な話があるんす、と言って忙しい姐さんに寮室に来て頂いて。

秘密にされてました、司馬懿…様の、―――――の件。偶然聞いちまったんです。

 

小さな卓を囲んでやや乗り出すように腰掛け、そう切り出すと姐さんはきょとんとした後、自然に、ごく自然に頭を掻いて笑われた。

「うん、まぁ分かってると思うけど誰にも喋んなよ?」

「…はい」

当然だ。ここは秀(張英)と話し合って決めた答え。

「仲達様には凄ぇお世話になってるからな。俺もこれくらいの事はして差し上げないとな」

「そ、そうっすか…」

司馬懿の悪事の尻拭いを子義姐さんがするという点はどうしても納得しきれないが、姐さんがされたい、と言うならもう止めはしない。

「そう言やぁ、お前らの事仲達様褒めてたぜ?『一刀様への態度に改善が見られます。今後も励むように伝えて下さい』って。お前ら、最近仲達様となんかお話したのか?」

「いえ…全く覚え無いすけど」

秀(張英)と顔を見合わせて互いに首を振る。一度は殺されかかった身だ、恐ろしくて姐さんの居ない所でこっちから近づくとか出来る気がしない。と言う事はどこかで見られていたのだろうか?それはそれでぞっとする。

「ふーん…仲達様、一刀様に態度悪い女は気配だけでわかるって噂される位だからな、ひょっとしたらお前らの事も感知したのかもな」

「はぁ…」

なんて女だ。

「ま、何にせよこの件絶対誰にも喋るなよ?酔っぱらってポロリとかも無しだからな!」

「「はい!」」

「ん。じゃ、俺一刀様に御用事があっからもう行くからな。じゃな!」

「はい、お呼びだてして申し訳ありゃっせんした!」

 

パタン、と子義姐さんが部屋の扉を閉めると肩の力が抜け、背凭れに体を預け大きく息をついた。

「はぁぁ……」

「はぁぁじゃねえよ!行くぞ」

一息ついた筈なのに、こいつは何を焦って立ち上がってあたしの袖を引っ張るのか。

「は?どこにだよ?」

「馬鹿、姐さんの後を追うんだよ!」

「何でだよ!?」

「おまっ、ホント気が回らねえなぁ!?姐さん、多分あたしらが気付いたって事を一刀兄貴に注進に行くんだよ!そこで何話してるか聞ければ、何か見えてくるかもしれねえだろ!?」

「!そっか、待てよあたしも行く!」

馬鹿に馬鹿と言われたのは癪だが、事が事だけにあたしも慌てて立ち上がって秀(張英)の後を追う。

一旦は姐さんの後姿を見失ってしまっていたが、行き先がわかっているだけに直ぐに追いついた。

庁内は曲がり角が多く、姐さんにあたしらに気づいた様子はない。警戒されてたらあたしらの尾行なんて直ぐにバレるが、完全に無警戒のようだ。

 

「あ、陽(太史慈)ちょうどいいところに」

「あっ一刀様!」

「(ヤベェ!)」

「(むぐ!?)」

あと三つ曲がれば一刀兄貴の執務室って所で、急に角を曲がらずに後ずさった秀(張英)の後頭部に鼻を強打した。

「(なっ、何急に止まるんだよ!?)」

「(兄貴だよ!)」

「(げ)」

 

鼻がつーんとして涙目になるのを堪えて、秀(張英)に倣って壁にへばりついて耳を澄ます。

「忙しいとこごめん、今ちょっと時間いい?」

「はい、今お部屋に伺う所でした!」

「あ、長話じゃないからここでいいよ」

「はい、では…ちょっとこちらで」

一刀兄貴はそのまま立ち話するつもりだったみたいだけど、姐さんがちらっと周りを見回して園庭に兄貴をいざなった。

二人の姿が壁でちょうど死角になるのを確認して、一刀兄貴達が居るであろうあたりから壁一枚を挟んだ廊下に忍び寄って秀(張英)と目で互いに合図する。

「いやそんな改まった話じゃないんだけどさ」

「はい」

「陽(太史慈)の舎弟…舎妹?の二人、えっと、秀(張英)ちゃんと絢(于糜)ちゃんだけどさ」

「はい。あっ、名前覚えてて下さったんですね、二人とも喜びますよ」

「いやいやそりゃ忘れないよ、ま、それは置いといて」

「(…っしゃ)」

「(…ひひ)」

二人で密かに顔を見合わせてにやけ合う。初めは姐さんに無理矢理差し出させられた真名だったけど、覚えてて当然だって一刀兄貴が言ってくれた。覚えてて当然だって。へへへ。

「蓮華から今度の人事(昇進リスト)見せてもらったら二人の名前があってさ」

「はい」

 

 

 

 

「なら、二人に『――――』どうかなって」

 

 

 

 

 

…………………………………はい?

思考が停止する。

何だって?

えっ?もっかいお願いします、何ですって?

あたしが聞き間違えたのか?聞き間違えたんだよな?

自信が持てなくなって隣を見ると、口を開けたまま完全に停止している秀(張英)の間抜け面があった。多分あたしの顔もこんなんだろうなと妙に冷静に我が身を振り返る。

 

「ええ…まだちょっと早いんじゃないでしょうか、あの二人には…?」

えっ?

『まだ早い』?

えっ?時間の問題って事ですか?姐さん?

「あ、でもねぇ、蓮華に聞いてみたら今人材足んないしそれでもいいって。がっつり将軍並みにって訳にはいかないけどってさ」

「そうですか、蓮華様が宜しいなら良いですけど…」

えっ?

いいの?

呉の姫さん公認なの?

マジで?

てか姐さんも公認?

いやそれ困…困るんですけど?

「魏の人達はもう基本役職だけど、呉の地元とか下位の人の御褒美って基本これだって聞いてたし」

「まあそうですね…」

呉の地元の下位の連中の御褒美が基本『これ』。いやいやいや?おかしいだろ?

 

「あ、そうだあの二人なんですけど、仲達様の―――――の件、二人に気づかれちゃいまして…」

「そうなんだ。まあ接点無さそうだし問題ないかもしれないけど、口止めしといてくれた?」

「はい勿論。でもあの二人そそっかしいので出来れば、一刀様の方からも御指導頂けますと…そうだ、さっきの『――――』の話と合わせて、一刀様から直接二人に命じて戴けませんか?」

「口止めはいいけど、『――――』の方は俺からでもいいのかな?」

「正式には蓮華様経由でしょうけど、一刀様から予告頂く分には大丈夫です。それに、二人も一刀様から直々に命じられたらきっと『はいっ!何でもします!』って喜んで励んじゃいますから。ふふっ」

「あはは、そうだといいけどね」

「では早速ですけど、仲達様の事があるので今夜にでも少し御時間頂いて二人にお命じ頂いても宜しいですか?二人には今私から言っておきますので、『三国一』の一刀様専用のお部屋に六時とかで如何でしょうか?」

「うん、お願い」

「はい。二人に伝えてきますね」

「「!」」

(やばい、戻るぞ)

(お、おう)!

秀(張英)に目で合図をし、足音を忍ばせてその場を離れると一目散に寮の自室へと逃げ帰る。

先に部屋へ飛び込んだ相棒に続いて部屋に転がりこみ、急いで扉を閉めてへたりこむ。

 

「ど、どうしよう、秀(張英)」

「どうしようも何も、姐さん直ぐ来ちまうだろ!と、とりあえず姐さん待つしかねえじゃんよ!?」

どうしよう。

どうしよう。

一刀兄貴が。

一刀兄貴と。

姐さん公認だし。呉の姫さんまで公認で。

頭の中を『どうしよう』がぐるぐる巡る内に部屋の扉がコンコンコン、と叩かれてた音にびくっとする。

 

「おうお前ら、…って何床に座り込んでんだよ?」

「あ、…ちょ、ちょっと床の掃除してまして」

「まあいいけどよ。ところでよ、今日はお前らに大事な話があるからよーく聞けよ!」

「「は、はいっ!」」

「いや、床で並んで土下座しろとまでは言ってねえんだけど…」

「い、いえ、このままでいいっす…」

「…このままの方が聞き易いんで、お願いします」

正直、顔を見て話を聞けない。

突然平伏したあたしらに姐さんは引き気味だけど、今は勘弁して欲しい。

 

「そ、そうかよ。で、話ってのはな、今夜、一刀様が!至らねぇお前らの為に!お時間取って下さって、有難い御命令を下さるって事だ!」

「…はい」

「はい…」

「あれ?意外と驚かねぇのな、あたし抜きでお前らだけなんだぜ?」

「と、とんでもないっす!驚き過ぎて口から心臓出そうっす!」

「あたしもっす!ぶっちゃけ、腰抜けてます!」

訝しがる姐さんにもう知ってますとも言えないが、あらためて聞かされるとその事実にがくがくと震えが止まらない。

 

「いやまあ驚けよって命令してるわけじゃねえんだけどな…んで場所と時間だけどよ、三国一の一刀様専用個室に六時にお伺いすることになってるからな、遅れるんじゃねえぞ?」

「は、はい…」

「はい…姐さん、一つ聞いてもいいすか」

「おう、なんだよ」

秀(張英)が顔を上げる。

 

「姐さんは…一刀兄貴が、あたしらに何命令するかって、ご存じなんすか?」

その問いに、姐さんは少し考える風を見せたのち、にかっと笑って答えた。

「まあ知ってんだけどよ…まっ心配すんなよ、お前らにとっていい話だからよ!」

「い…いい話、なんすね。姐さんから見て」

「そりゃそうさ」

当然と言わんばかりの姐さんの肯定に、思わず顔を上げて口をはさんだ。

「姐さんは、それがあたしらの為になるって、思われてんすよね?」

「ったり前だ!お前らもいい機会だからよ?一刀様の言う事よく聞いて、御心に感謝して!いっぱしの女になれってこった」

「…はいっ」

「は、はい…」

隣で意を決したような秀(張英)の返事に引きずられるように、思わず承諾の返事をする。もう後戻りは出来ない。

「じゃあよ、俺もう行くから。分かってるとは思うけど失礼の無い様にしろよ?…ってお前等顔真っ赤じゃねえか、昼間っから飲んでたのか!?」

「と、とんでもないっす!」

「お、驚き過ぎただけっす!」

「そういや酒臭くねえな?けど念の為に風呂入っとけよ、におったりしたら失礼だからな。あと一刀様の前に出んだから、それなりのカッコでな。んじゃな」

 

パタン、と扉が閉められると力が抜け、土下座の姿勢から二人揃って床に転がった。

「確定だ…」

「そうだな…」

朧げな知識でしか知らない『――――』。秀(張英)の方がそっち系の事は自分より知っている筈だ。

「なあ…例のアレってさぁ…お前、そういう小説持ってたよな?」

「…見るか?」

「ああ…あたし、よく覚えてないし」

「じゃこっち来い」

秀(張英)の手招きに応じて二段寝台の上の段に登り、並んでうつ伏せに寝そべると流石に狭いが仕方が無い。秀(張英)が布団の下をごそごそと探ると一冊の本が出てきた。

「これのよ…遠紹って奴の章んとこ。…こっから先」

「お、おう」

妙に慣れた様子で頁を開く秀(張英)に一抹の不安を感じながら、指差された箇所から読み始める。

 

 

 

 

『な、何をするんですの!?一刃さんっ』

 

 

―――――する玲羽の抗議の声を無視し、一刃は―――――

 

 

『河北の雄たるわたくしにっ、このような事…!』

 

 

―――――は羞恥と怒りに顔を朱に染める。しかし―――――

 

 

『んひぃっ、お、おやめなさいっ』

 

 

―――――背筋を突き抜ける、未知の感覚に戸惑いを―――――

 

 

『い、今ならまだ許して差し上げますわっ、ねえっ、一刃さんっ』

 

 

―――――して自身を襲うであろう快楽に、恐怖し―――――

 

 

『も、もう…っ、止めを…止めを刺して下さいまし…』

 

 

―――――屈服を口にする玲羽。しかし、これは未だ―――――

 

 

『なんでもっ、なんでも言う事を聞きますわっ!ですから、一刃さんのっ…!』

 

 

―――――淫らな蜜口に添えられながらも、決してそれ以上の―――――

 

 

『こ、これ以上はっ狂ってしまいますわっ!許してっ、お許しになってぇ!』

 

 

―――――身をじくじくと焼き続ける欲情に、必死に腰を振ってこすり付け―――――

 

 

『ああああっ!な、なりますわっ!今日からわたくしはっ、ああっ、一刃さんのぉっ!雌奴れ』

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

「―――――――――――――――――――――――――」

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

「―――――――――――――――――――――――――」

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

「―――――――――――――――――――――――――」

 

 

***********************

 

 

「………も、もういい…」

ヤッベェ。

「もういいのかよ、この先まだあるぜ?最後、完全にキマッてて笑顔で兄貴のその…ソレをしゃぶってお掃除する所がすげえやらしいんだぜ」

「いいっつってんだろ!」

これからあたしらがこういう目に…?つか、あたしが一刀兄貴に何をした?いや初対面で胸倉掴んで脅してたね、はい詰んだ。

「つ、つかこれどっかの君主で一刀兄貴に楯突いてた奴なんだろ、あたしらと全然違くね?」

「そうだけどよ、行きつくところは同じだぜ?あ、兄貴がしゃぶれって言えばしゃぶって、脱げって言われたら脱いで、尻出せって言われたらよ、四つん這いになって自分で指で拡げて、お、おねだりする雌」

「落ち着け落ち着け!」

秀(張英)の目つきがとろんとしだしたので慌てて止めさせる。

 

「…あらためてこれ、姐さんも、呉の姫さんも公認なんだよな」

「おう。姐さん、言う事よく聞けって言ってたしな」

「でも兄貴、『将軍並みにがっつり』じゃねえって言ってたよな?」

「あー…甘寧って奴がこういうのが大好きらしいから、そういうの並みにはしねえよ?って事じゃねえ?」

薄々思っていて聞きにくいが勢いでついでに聞く。

「あとどうでもいいけどよ…お前さ、結構願ったり叶ったりだったりしねえ?」

「ん…」

急に秀(張英)の目つきが遠くを見るような、熱に浮かされたような表情になる。

「あ…あたし、一刀兄貴にだったら…こういう焦らし責めされ抜いて、雌奴隷にされるのもイイな…多分可愛がってくれるし…お前は違うの?」

不思議そうな顔をするな。あたしだって一刀兄貴のものになれたら、それは嬉しいけど。

諦めた筈の夢想をふと思い出して、妙に喉の奥に突っかかりを感じる。

「あ、あたしはなぁ、そういうのよりかはさ」

あれ?

「一度だけでいいからさぁ…」

何故か、目の前が滲んでいく。

「あ、兄貴にさぁ…、『可愛いよ』って言われて優しく抱かれたかったなぁ…」

ぽたぽたと、目から雫が落ちて秀(張英)の寝台の敷き布に染みを作ってしまう。

「絢(于糜)…」

「ち、ちゅってして、ぎゅってしてもらって…う、嘘でもいいから、可愛いって、言って欲しかったよぅ…うえぇぇ…!」

「な、泣くなよ…」

一刀兄貴は本当は三人の王様達のものなんだろう。良くて姐さんの旦那だし、そんな事は分かってる。

でもしょうがないだろ?

尊敬する姐さんが惚れるような男でさぁ。

姐さんだって妾なのにその子分の真名普通に覚えててさぁ。

船上演習じゃ他の連中に分からないようにうちら応援してくれてさぁ。

んで初対面で脅迫した奴許してくれる皇帝いねえよ。そりゃ落ちるさぁ!?

「な、泣くなよぉ…お前可愛いって!う、うぇぇ…、一刀兄貴、絶対言ってくれるって!あ、あたしからもお願いしてやるよ、兄貴優しいから、調教するとしたって絶対言ってくれるって、なぁ?…う、うぁ、…うわぁぁぁぁん!」

「ひぐっ、お、お前の方が可愛いだろっ、お前が泣くなよぉっ…うふぇっ、うへぇぇぇぇぇん」

隣でもらい泣きし始めた秀(張英)が妙におかしくて、笑ってんのか泣いてんのか分からない変な声をあげながら二人で暫く抱き合っていた。

 

 

***********************

 

 

今日ちょっとこの後夕飯食いながら約束あるんだ、と言うと仲達さんはではお早めにお上がり下さいと会議を中座させてくれた。これが詠ならこうは行かない。どっちもそれぞれなりの優しさだとは思うんだけど。

まあ今日の話は仲達さんの件を口外しないようにお願いして、昇進の連絡とついでに呉の下位の軍務職の様子を少し聞いて燗二本位飲んでもらったら切り上げよう。明日は出張だし。

三国一でも一番奥にある俺専用の静かな座敷でそんな事を考えながら一人手酌でちびちびやっていたら、個室の引き戸がコンコンとノックされた。

 

「はぁい」

「あ、絢(于糜)っす」

「秀(張英)っす」

「はぁいどうぞ、…………………」

声が上ずっていた二人を緊張させないためになるべく明るくフランクな声で返事をしたつもりだったが、その姿に思わず真顔になった。

 

何故ならば二人はバニースーツだった。

うん、何故?

「…えっと、」

「こっ!この度はっ…そ、その…宜しくお願いしやす!」

「よろっ、宜しくお願いしますっ」

今日なんかあったの?と聞く前に、二人して真っ赤な顔して平伏された。あと服装に目が行って気づかなかったけれどなんだか妙にでかいバッグを抱えているけど何か仕事道具が入ってるのか?

「あー、うん…?こちらこそ、ってかまあ、そんな緊張しないで座ってよ」

「は、はい」

おかしい。頭の中の信号機が黄色を灯した。

出会った当初から比べると、言葉遣いとか身だしなみとか大分都の人っぽくなってきたけど別に彼女らは普段こんなのは着ない、つか見た事無い。陽(太史慈)から何か罰を受けているのか?

スルーするべきか?いやさすがにそれは無理だ、不自然過ぎる。

 

「今日はまた、随分そのー、セクシーだね?」

「その…姐さんから、一刀兄貴の御召しなんで『それなりのカッコしろ』って」

「自分ら、これぐらいしか持って無いんで」

それなりのカッコというものは普通はこうじゃないのでは?確か軍の平服とかあった筈だし。

縮こまって答えた秀(張英)ちゃんの輪チラを思わず凝視してしまっていたら、何か言いたそうな顔で俺の方が凝視されていた事に気づいて慌てて視線を逸らす。スケベでごめんなさい。

「…………」

何か空気がおかしい。二人して上目遣いでちらちら俺の方を見ながらも何も言わない。いや、確かに俺が呼んだんだから俺が話をするのは当たり前っちゃ当たり前なんだけど。

「えっ、えっとさぁ、急にお呼びだてしてして申し訳なかったね。大体どういう件だか、陽(太史慈)からは聞いてるのかな?」

「はい…全部、聞いてます」

良かった。話が通ってる事を聞いてホッとした。昇進の話だし、お礼に?陽(太史慈)が余計な気を廻してセクシーな恰好しろって言ったんだろう。

「あっそう、それなら良かった話は早いね。じゃあ早速だけど…」

「は、はい…!…おい」

「あ、ああ…」

 

…んんん?

なんで二人は立ち上がって卓の向こうからこっちに移動して来てるの?お酌は差し向かいでも出来るでしょ?つかお銚子も持って無いしなんでそのバッグ持ってくるの?つか君らまだ飲んでない筈なのに顔真っ赤で既に出来上がってない?

「一刀兄貴…」

「あ、兄貴っ」

「はい!?」

両サイドに座られてそれぞれに腕を取られた時点で、脳内信号機がオールレッドになった上にサイレンまで鳴り始めた。

 

「生協の貸し出し品っすけど、あたしらで思いつく限り御用意したんで、そ、そのっ…め、滅茶苦茶にして下さい…!」

「あたしはっ…で、出来れば優しく…!」

「な、何で!?」

絢(于糜)ちゃんがバッグの紐を解くと、中からゴロゴロと出てきたのはいわゆる桐花(荀攸)とかがそういう事用に使う革製の拘束具やら縄やら大人の玩具やら。

「ちょっと待とうか!?うんちょっと待って!?」

両方からしな垂れかかられながら耳元に熱い息を受けて、動転しながらも慌ててストップをかける。

前にもあったよこういうの!?うん、これ絶対なんか誤解あるやつだ!ここは冷静にね!冷静に誤解を解くよ!俺皇帝だからね!

 

「い、いきなりお預けプレイっすか…」

「ち、違げえよ、焦らしプレイってんだよ…」

「多分どっちも違うなぁ!?てかさぁまず今日の用件の確認をしようか!?」

「へ、へぇ」

うん、落ち着いて、冷静に。行き違った原因を整理しよう、絶対この二つのどっちかなんだから。

「えっとまず一つ目は、仲達さんの(俺と会食する為の)『お食事券』を陽(太史慈)が手配してるのを黙っててねって話でいいかなぁ!?」

「はい、『汚職事件』の事は誰にも言いません!」

「姐さんの顔潰すような事はしません!」

「もう一つはさぁ君達の腕が評価されて、御褒美に大して広くないとこで悪いんだけど『領地』をプレゼントって事なんだけど誤解無いよねぇ!?」

「は、はいっ!(部屋の)広さなんて関係無いっす!兄貴自ら、あたしらに『凌遅』い、頂けるんならっ…喜んでお受けします!」

「あっるぅぇぇぇぇぇぇ!?おっかしいなぁ合ってるねぇ!?全部合ってるねぇ!?」

「自分ら、もう覚悟決めてきましたんで…」

「覚悟!?あと領地受けるのに手錠着ける必要ないよね!?」

「え…?ま、まず自分の立場の分からせが一手目だって…」

「あっ…おい、最近の(凌遅)はこういう道具使わないのもあるって書いてあっただろ」

「あ、そ、そっか…じゃ、ま、まず、『御挨拶』から…」

「ちょっと待って何脱がそうとしてるの!?何に挨拶しようとしてるのかなぁちょっと待って待って待って!!」

 

 

***********************

 

 

「…申し訳ないっす」

「マジすんません…」

「ぜーっ…、はーっ…、分かりあえて何よりだよ…」

目の前で再び平伏する二人を前に、凌遅する側だったはずらしい俺の方が半脱ぎにされながらも辛くも互いの理解が通じた事に安堵する。

「陽(太史慈)にそんな悪事のもみ消しとかさせたりしないから。で、君らには税制とか法令とか変わっちゃって領内なら何してもいいって訳じゃないけど、ま、自覚を持ってもらうって意味で長になってもらって、今後も頑張って下さいって事だから」

「「…はい」」

「うん、じゃ今日は紛らわしい事して悪かったね。ゆっくり休んでよ」

流石にここから飲み直す気にはならないだろう。しかし俺が脱がされかかった服のボタンを留め始めても、なぜか二人は顔を見合わせるばかりで動く気配が無い。

と言うか、飲んでない筈なのに未だに顔赤くて息荒くない?

 

「いやもう…無理っす」

「自分ら初めてだったんで…ここ来る前に処方箋貰って、生協で買った合法なやつキメちまってて」

「…は?」

合法って何が?

「身体熱くて…もうここまで来たら、一刀兄貴に貰ってもらうしか」

「合法なやつなんていつから売られるようになったの俺聞いてないんだけど!?つか先走り過ぎじゃない!?」

「…一刀兄貴、さっきあたしの事か、可愛いって、言ってくれましたよね…?」

「言ったよ言った!確かに君ら凄い可愛くなったうんそれは認めるでもね!?」

「よ…良かった…ぁ…ううっ…ぐすっ…」

「良かったな…!やっぱり言ってくれたじゃねえかよっ、お前は可愛いんだって…ふぇっ…じ、自信持てよ…うぇぇ…!」

「ぐすっ、へ、へへっ、お前だって可愛いって言われてるじゃねえか」

「そ、そんな事ねぇよ…一刀兄貴、あたしなんか、可愛くないっすよね?」

「いや可愛いよ!でもね、何か感動的なやりとりっぽいのしながら馬乗りになって人の服脱がすのはちょっとどうかな!」

「か、可愛っ…え、えへへっ、あざっす!…もう自分、兄貴の言う事なら何でも聞きます!」

「自分もなんでもします!も、もう熱くって…あたしらも脱いでいいっすよね?」

「何でも聞くって現在進行形で俺の言うこと聞いてないよねぇぇぇぇぇ!?」

 

 

***********************

 

 

昼食に庁内食堂で丙定食を受け取って、空席を探すと見知った奴らの顔があった。

「よう」

「あ、姐さん…ちわ」

「…ちわっす」

並んで食っている二人の前にお膳を下ろし、薬缶からぬるい茶を注ぎながらふと昨日のやり取りを思い出す。あの後、こいつらは一刀様から領地の辞令を貰った筈だった。県長だったかな、もっとその下だったかな、忘れちまったけど。

「おっ、そうだったお前ら。まぁ何はともあれ、おめでとさん」

「あっ、あざっす」

「あああ有難う御座います、その、マジで」

「お、おう?俺は何にもしてないけどな」

アホなこいつらの事だからさぞ調子に乗ってるんだろうが今日ぐらいはいいか、と思っていたら二人して真っ赤な顔してぺこぺこと頭を下げ続けている。一刀様の事だからちょっとおだて気味に伝えて下さってたかと思ったけど、意外と気を引き締めろみたいな事を訓示して下さったのかも知れない。まぁ、調子くれてんじゃなければ今日はちょっと位褒めてやるか。

 

「(官職が付いて)これで漸くお前らも一人前の女だな、どうよ気分は?」

「そ、その…最高っした」

「マジ幸せっす…」

「一刀様にはちゃんと御礼言ったか?」

「も、もちろんっす!」

「飲み過ぎなかっただろうな?」

「あ、はい、その…全然。兄貴が、無理して飲まなくていいって」

「自分ら、の、飲ませて下さいってお願いしたんすけどっ」

「…あァ?じゃ舐める位だったのか?」

「…………!」

馬鹿二人は真っ赤な顔してこくこくこくこく、と壊れた玩具のように縦に首を振る。こいつらが酔っぱらうと面倒臭いのは一刀様も御存じだから、余り飲むなと注意されたんだろうか。と言っても、こいつらの酒好きは優しい一刀様がちょっと注意された位で飲むのを止めるような程度じゃなかった筈だけどな。

「とか言って、お前らの舐める程度って一体どれくらいだよ?」

「いっ、いえマジでっ!ちょこっと、ぺろぺろってさせて貰った位で!」

「そ、そうっす、姐さんみたいに『ごっくん』とか全然してないっす!」

「ホントかぁ~?」

「本当っすよ…つか…すげえがっつり飲まして頂いてる姐さんが羨ましいっすよ、なあ?」

「ええ…やっぱ、姐さんはちょっと貫録が違うって言うか」

「そ、そうか?」

こないだは確かに一刀様との御席にこいつらも連れてったけど、あん時俺そんなに飲んだっけ?まぁ、一刀様との席でも俺が見張ってられる時ならこいつらにも少し飲ましてやるか。

「おう、じゃあよ、今度俺が一刀様とそういう(酒を飲む)事になったらよ、御前等にも飲ましてやるからついて来いよ」

「えええーっ!?」

「い、いいんすかっ!?」

「お、おう?」

なんだこの食いつき?こないだ飲んだ時は妙に大人しかったから来たくねえのかと思ってたけどな、遠慮してたのか。

 

「水臭ぇな、俺と御前等の仲じゃねえか。まぁまず俺が(酒の)飲み方のお作法を見せてやるから、それ見てしっかり真似するんだぞ?ハハハハハハハ!」

「「はい!」」

 

 

 

 

(この約一ヵ月後の某夜にとんでもない羞恥プレイをさせられる羽目になる事に俺は全く気付いていなかった)

 



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司馬日記外伝 とある『恋姫days』の同人小説(R-18)

その後の、とある文官の弟子が書いた『恋姫days』二次創作小説です。
※『恋姫days』については過去話御参照

はじめのワンフレーズが書きたかったのです。
あと、器用貧乏な華琳さまの願望ってきっとこうに違いない(違)




『恋姫daysの同人誌、魏志ものです!一刃×花琳好きな方は是非読んで下さい! さーくる晋帝国』

 

 

 

俺はこの娘に逆らうことができない。

弱みを握られている―――――。

 

 

 

 

「―――――何をしているのかしら」

その涼やかな声を背に受けた瞬間、氷水を浴びせられたように凍りついた。

「……いや、…」

「何をしているのかと聞いているの」

薄く笑みさえ浮かべ、怒る様子も無く淡々と問う彼女の声にどっと冷や汗が噴き出る。

 

「ご、誤解なんだ」

「誤解?その手に持っているのは何かしら?」

「…………」

分かっている、だがそれは誤解だ。

中等部から帰宅した花林から学生鞄を受け取り、いつものように教材を取り出し本棚へ仕舞おうとした。そこにはいつものように三国塾中等部の参考書が入っているはずだった、しかし何故か今日はいつもと違った。明らかに四角い感触がなく、妙に柔らかい感触しかない。不審に思いながら袋に手を差し入れ、掴んで取り出したものは布状の物だった。

 

白く小さな布。瀟洒な花柄の襞が付き、柔らかな肌触り。それが何かと認識した瞬間、部屋の入口から声をかけられた。

 

そんなつもりはない。

これが何か今知った。

何故こんなものが教材袋に入っていたのかわからない。

心臓が早鐘を打ち脳内を言葉が渦巻くが、彼女を見つめたまま喉は蝋で固められたかのように動かない。

 

「それは私の下着よね」

「…………花琳の、だったのか…」

「ここは私の部屋で、この部屋にあるのだからそれ以外には無いと思わないかしら」

当然だ。客観的には当然だ。白々しい、と言われても止むを得ないほどに。

 

「とんでもない事をしてくれたわね」

「い、いや」

「貴方は言い訳をしたいようだけれど、それはもう意味が無い物ではないの?」

諭すような彼女の言葉に言葉を失う。

その通りだ。俺はどこからとも知れない処から来た、彼女らによって『天の御遣い』に仕立て上げられただけの行倒れの男で生殺与奪は全て彼女の掌の中。

そして傍から見れば完全に現行犯だ。もはや俺が何を言おうとも、彼女が俺を天の御遣いを騙る下着泥だと一言忠実な部下達に告げれば事実がどうかなど関係なく俺の命は容易に消え去る。

その事実に気づいた時、足の裏から腰にかけてすうっと力が抜け平衡感覚がおかしくなる。こんなこんな訳のわからない偶然で、拾った命を失ってしまうのか。しかも利得づくとは言え拾ってくれた花琳の厚意を裏切った形で。

 

「少し落ち着きなさい」

その言葉に中空を彷徨っていた視線を彼女に戻す。

「改めて聞くわ。貴方は、中等部の私の下着に欲情してつい盗もうとしてしまったのかしら」

「い、いや、違う」

「本当かしら?」

口の端を僅かに歪め、斜め下からねめあげられる。

「ほ、本当なんだ。何故か鞄に初めから入っていて」

「信じられないわ。私が塾から帰る時にはそんなものは入っていなかったもの」

「いや、じゃあ帰ってくるまでのどこかで…」

誰かが入れるなんて事があるだろうか?物理的に一番可能なのは秋欄か?だがそんな事をする理由がない。誰かが俺を陥れるために?なら桂華か?でも何時どうやって?

「そんな理屈をこねるよりも、貴方自身で証明すれば良いじゃない?」

「証明…って、どうやってうわっ!?」

花琳の声がと同時に膝の裏に軽い衝撃を受け、がくりと膝が折れ尻餅をついた。後ろに倒れこみそうになるのを後ろ手をついて支え、彼女を見上げた時に自分が花琳に足を払われたのだと知った。

「文字通りよ。貴方が、中等部の私なんかに。欲情しない事を示せば良いのよ」

そう言いながら俺の膝の上に座り込んだ彼女の笑みは、捕食者のそれだった。いきなり倒され乗られた事に動転し、言葉が出ない俺を見て面白そうに口の端を軽く吊り上げながら、ゆっくりと片膝を立てる。

さらりと音を立てながら丈の短いスカートが捲れ、その中の下着―――――ぷっくりと膨れた会陰部を隠す水色と白の横縞の布が露わになり息を飲む。

「あらあらあら?こんなものに興味は無いんじゃなかったのかしら?そんなに見つめられたら穴が開いてしまいそうよ」

俺の視線が花琳の下着に集中している事を揶揄うような口調にも、目を離す事が出来ない。だって無理だ。年は大分下とは言え、花琳は絶世のと言っていい程の美少女だ。ふとした時に感じる色気にも、拾われた恩と魏の主として凛とした姿を思い出す事でなんとか意識の外へ追いやっていたのだ。その彼女に、自ら下着を見せる挑発を受けて心穏やかで居られるはずが無い。

「こっちにだって興味は無いわよね?ほら」

その声に視線を上げると花琳は制服の白いシャツの裾をゆっくりとたくし上げ、パンツと揃いの柄のブラに押し込められた胸元が俺の視界に飛び込んできた。ブラは乳首をやっと隠す程度に上半分が無く、中等部の割には豊かな盛り上がりに女の性を強く意識させられ、否が応でも雄の本能が刺激される。

「貴方のいやらしい視線は私の下着に穴をあけたいと言われてるかのようだけど。でも、貴方は私なんかに欲情しないのだから、ここを大きくしたりはしないのでしょう?」

「うっ!?」

服をたくし上げていない方の花琳の繊手がズボンの上から俺の陰茎を擦りあげ、思わず腰がビクリと震えてしまう。

「か、花琳、そこはっ」

「抵抗は許さないわ。逆らえば下着泥として警備に突き出すわよ」

「そ、そんな…や、やめろ」

「嫌よ。貴方は自身の体で変態で無い事を示せばいいのよ」

「く、くうっ」

止めようとした俺の動きを権力で封じ、花琳の掌の動きが激しさを増していく。無理だ。視覚にも触覚にもこんな苛烈な刺激を受けて、反応させないなんて不可能すぎる。急速に充血していくモノを抑えようがない。

「大きくしているのかしら?ねえ、大きくしてるのよね?確認させてもらうわよ」

花琳も掌で硬さと大きさを増していく感触に興奮しているのか、やや上ずった声で告げながら俺のズボンのベルトを外しにかかる。抵抗は封じられ、されるがままにトランクスの間からモノをまさぐり取り出されると怒張がぶるん、と上を向いた。

「…思っていたより大きいわ。こんな風になるものなのね」

しげしげと物珍しそうに見つめられると羞恥心が沸き上がるが、今は何も出来ない。そっと彼女の白魚のような指がモノに添えられ、ゆっくりと幹をなぞられるとその快感にびくん、と幹を震わせてしまう。

 

「動いたわ」

俺の反応に嬉しそうに頬を緩ませ、同じように幹をなぞり続ける。強張りはこれ以上無理な程張りつめているが、その刺激に少しだけ慣れてきた。

――――彼女の掌の中で果ててはいけない。それこそ花琳は俺を少女性愛性癖者と決めつけるだろう。男の誇りにもかけて、それは避けたい。

「…さっきみたいに反応しないのね。詰らないわ」

指を一本添えるだけで一定の弱い摩擦だけを陰茎に加えてきた花琳が、俺の僅かな余裕を察知し言葉通りの表情を浮かべた。

軽く鼻を鳴らし、こうかしらと呟くと徐に幹を指で挟み、それまでよりもやや強い力で扱き立てる。

「うっ…」

「!」

その快感に思わず小さく呻き声を上げると、その声を彼女は聞き逃さなかった。まずい。そう思ったが、もう遅い。

「こうなのね?」

さっきよりもやや強く下から上までを扱き上げる刺激に、身体を震わせそうになる意識を反らすため顔を横に背ける。それは花琳にその愛撫の有効性を確信させるだけだった。

「こうかしら?…こうね?段々分かって来たわ、これがいいのね!?」

「く、くうっ…!」

遠慮を失った彼女の繊手が幹を程好い強さで握りしめ、強く的確に上下に加えられる摩擦に急速に射精感を高められてしまう。

「ぐ、くうっ、…や、やめるんだ、花琳っ」

「いいのね?これがいいのね?いいのよイって、女子中等部生の私にイかされるのよ」

いつの間にか圧し掛かられ、キス出来る程ににじり寄ってきていた花琳の唇から、耳元に熱く囁かれる。

「くっ、うあっ、だ、ダメだ花琳っ」

「出そうなの、ねぇ出そうなのね?出る時は言いなさいっ、命令よ」

早口で命じながら速度を増していく彼女の愛撫に、逃げようも無く絶頂へ追いやられるその寸前。せめて彼女の手を汚さぬよう、声にした。

「で、出るっ、花琳っ」

「出るのねっ」

せめて告げれば。彼女が離れてくれれば、密着している彼女の制服や手を汚さずに済む。その瞬間、信じられない光景を目にした。

 

 

 

素早く、花琳が俺のモノをぱく、と口に含んだのだ。

熱く滑る口腔と柔らかく絡みつく舌のにゅるにゅるとした感触。その快感に、堪えていた堰が一斉に決壊した。主人で、中等部生で、魏王で、可憐で、名ばかりの教え子の口の中に。

びゅる、びゅるるっ、と容赦なく少女の喉奥に熱い猛りを吐き出してしまった。

「か、花琳…っ!」

我に返り慌てて彼女の頭を陰部から引きはがそうとするが、しっかりと銜え込んだまま拒否するように花琳は無言で頭を振った。

その間も射精は続き、その美しい唇の中へと精が撒き散らされる。ようやく数度の痙攣と吐精が収まると、彼女の喉が小さくこくり、と鳴った。その嚥下の動きが亀頭に触れ、精液が更に絞り出される。それをも喉を動かし、花琳は飲み干していく。その後ゆっくりと絞り出すように陰茎をしゃぶると、漸く彼女は顔を上げた。

「…苦いものなのね。それに、飲みにくいわ」

眉を顰め、唾と共にねばつく残滓を飲み込む様は例えようも無く妖艶だった。

「す、すまない…」

「良いわ、これは私の…いえ、そうね」

しかめっ面を妖しい笑みに変え、再び圧し掛かるように顔を寄せてくる花琳。

「私の下着なんかに欲情しないなどと言っておいて。いやらしい目つきで視姦した上に、少し触られたくらいで雄の汁を噴き出したわよね。あまつさえわたしにそれを飲ませるなんて、死罪にされても飽き足らない程の罪ではなくて?」

「それは…」

飲んだのは花琳の意志としか思えないのでそこだけは反駁したかったが、それ以前が言い訳のしようも無く彼女への欲情の開陳であったのでそこは敢えて飲み込む。

「ああ、天の御遣い等と称してなんてけだものの様な男なのかしら、貴方は」

揶揄う様に笑みを深め、一物にその指が添えられ歌う様に続ける。

「でも仕方が無いわね、この『天の御遣い計画』は私が企図したものであるし、この計画は我が魏の旗印として既に欠くべからざるもの。私が御遣いと見込んだ男が女子中等部生に欲情して、ここをこんなにいきり立たせて口の中に嫌らしい汁をぶちまけるような変態であったのなら、それを矯正するのも私の役目。少女性愛に耐性がつくように厳しく指導してあげるから、明日から今日と同じ時間にここに来なさい。分かったわね」

「か、花琳…」

「お風呂に行ってくるわ。貴方も人が来ないうちに早く出ていきなさい、そんな姿を桂華に見つかって殺されないうちにね」

体を起こし、部屋を出ていく花琳にかける言葉もなく暫く呆然としていたが、はっと自分の姿と花琳の言葉に気づき慌てて身支度をする。床に体液の残滓が無い事を確認し、何となく部屋の外に誰も居ない事を確認してからそれこそ下着泥のようにこそこそと自室へ逃げ帰った。

 

 

寝台に仰向けに寝そべり、今日のあまりな出来事を思い返す。

なぜか鞄に入れられていた花琳の下着。

花琳に自ら捲って見せられたスカートの下のそれに、妖艶な花琳の表情。

そして指戯と、衝撃の精飲。

 

荒野で助けられて以来、元々彼女には弄ばれているような所はあった。だが、戯れにしてもこれは明らかにやりすぎだ。

――――中等部生にしてはむっちりとした太腿と、ふっくらとした会陰部を一枚で隔てた魅惑的な下着。

――――中の樹液を全て絞り出すようにしゃぶり吸ったその可憐な唇。

全て出し切ったというのに、その記憶を反芻するだけで再びむくむくと股間が目覚めそうになり慌てて考えを消す。

唯とにかく言えるのは。

あの凛々しく、美しい少女にどうしようもなく惹かれ、しかも欲情してしまっているという事だ。

 

---------------

 

翌日からの花琳の『指導』は、苛烈を極めた。

塾が終業すると、花琳はすぐさま俺が待つ部屋――――彼女の部屋へと帰宅してくるようになった。

 

「この部屋だと貴方の視線は、全く不躾でいやらしいわよね。正に目で犯されていると言っていい位だわ」

言いながら、豪奢な深紅の下着が制服の下に透けるのを見せつけるように上着を脱ぐ。

中等部生にしては発育の良い、膨らみかけの胸を包むそれを二日目にはちらりと見せるだけであったのが、三日目には上着のボタンを外してあらわにし、五日目には背中の留め金を外してまろびでそうな白磁の膨らみに目が離せなくなった。

下着の見せ方もスカートの奥の暗がりに佇むだけから至近距離で捲って見せるようになり、下着も如何にも女学生風なものから繊毛が透ける扇情的なものに変わった上、大胆に股を開き性交を想起させる卑猥な挑発に、俺の耐性などつく筈も無かった。

 

「全く、堪え性の無い雄ね。今日もこんなに出して、飲み込むのにも骨が折れるわ」

 

花琳の魅力極まる誘惑に抗えるはずもなく屹立するそれを、初めのうちは初日と同様に指で愛撫していたが数日も経つと直ぐにその愛らしい唇で頬張ってぬめる舌で嘗め回し、一心不乱に口腔内で扱き立てて搾精されるようになった。

「出る時は必ず言いなさい」

毎回必ずそう念押しし、切羽詰まってその直前にそれを彼女に告げると更に顔を振り立てる速度を速めて射精を促し、こちらを見上げてくる。理由を問うと、出る直前の貴方の苦しそうな表情と出した後の緩んだ顔がとても可愛いからよと言った。

 

「一向に矯正の兆しが見えないわね。またこんなにして、一体いつになったら貴方のこれは大人しくなるのかしら」

 

口の中に吐き出された物を飲み込んだ後も、しばらく陰茎を嘗め回したり指で扱いたりされて強張りを取り戻すと機嫌良さげになじられ、再び彼女のにゅるにゅるとした口の中に飲み込まれては放出を強いられた。

 

「こんな至近距離で見られてそんなに欲情しているの?凄いガチガチよ」

性癖矯正という名の爛れた性戯を続けたある日は、顔の上に股がられながら彼女の口腔奉仕を受けた。

目の前で扇情的にうねる下着に包まれた秘丘はうっすらと湿り、陰部を覆う布の色を変えている様に怒張も暴発しそうになる。その円やかなお尻に思わず手が伸び、触れると艶めかしくあぁん、と花琳は喘ぎ声を上げて腰をくねらせた。

「…舐めたいのね」

股の間からこちらに目をやる彼女の声はやや上ずり、視線もどこか彷徨っていた。

「いいのよ、舐めても」

熱く淫らなため息を吐くように俺に告げると花琳はお尻を少し下げ、俺の口元に彼女の陰唇を覆う部分が当たるように押し付けて揺すり、にちゃ、と濡れた音を立てた。

 

濡れた花琳の秘部。

彼女もまた、性的に興奮している。俺のものをしゃぶって。

「花琳っ…!」

その事実に脳が焼き切れた。花琳の下着を結ぶ紐を引いて剥ぎ取り、熱く蜜を湛えた秘唇にむしゃぶりつく。

「んぅっ、はぁああぁんっ」

ひくり、と陰部が痙攣するのにも構わず肉芽ごと陰唇に吸い付き、割れ目に舌をこじ入れて激しく舐め立てる。

「ふぁっ、直にぃっ、なんて許していないわぁっ、ああっ、あぁぁぁんっ」

突然の激しく続く刺激に完全に陰茎から口を離して喘ぎ続ける花琳に、嗜虐心と今までの口腔奉仕への感謝がない交ぜとなり更に舌と唇での愛撫を激しくする。

「ああぁんっ、駄目っ、駄目よ、お尻押さえないでぇ、逃げられないぃっ」

局部への強烈な刺激から逃れようと花琳が浮かせかけたお尻を掴んで自分の顔に押し付けると、いやいやをするようにお尻と顔を振る様が酷く嗜虐心をそそる。

「あぁ駄目っ、駄目よっ、出来なくなっちゃうじゃないっ、んぁぁっ」

俺の舌の動きを止めようと陰茎をさすろうとするが股間から与えられる刺激にそれもままならず、俺のものを握りしめたまま何も出来ずに嬌声を上げ続ける。

―――――必ず、イかせる。

強い意志を持って、懸命に舌で掻き出し、唇で吸い、顔を振る。その度に彼女の淫らな喘ぎが高くなっていき、遂にその瞬間が訪れた。

「駄目っ、駄目駄目駄目駄目っ、あっっっ…!!あああっ…!!ああああああああー…っ」

追い詰められたような彼女の拒否の叫びが極限まで高まると、ぶるぶるぶるっ、と小ぶりなお尻が震え、ひくん、ひくんと陰唇が痙攣するととぷ、と溢れてきた愛液を飲み込む。ほんの数秒なのか数分なのか、淫らな天女のような彼女の絶頂といやらしさ、美しさ、至らしめた感動に陶然とする。

 

「はっ…はあぁっ……はぁぁぁっ…」

「花琳…」

「あ…」

俺の股間に顔を埋めたまま余韻で動けずにいる花琳を自分の方に向きなおらせて寝かせ、上から抱きしめる。

「駄目だって言ったじゃない、馬鹿…」

両頬を押さえられ、うっとりとした表情の花琳に一瞬口づけをされると背と頭を下から抱き寄せられ、耳元で囁かれた。

「生意気だわ…私に拾われた犬の癖に」

「ごめん。花琳が魅力的過ぎた」

「…貴方が味わったものってこんな感じなのね」

「…多分、そうだと思う」

正確には性差があるだろうからよくは分からない。

「それと、貴方がもう矯正のしようがない淫獣だって事も分かったわ」

「一言もない…」

「…責任は取るわ」

「責任?」

聞き返すと花琳は下から俺を抱きしめたまま、両脚を開いて腰を挟み込むような姿勢を取った。

「このどうしようも無いケダモノが、欲望に任せて他所の女に噛みつかないようにように常に欲求を満たしてやる責任よ」

「その言われようは余りにも…」

「あら?女子中等部生にあれだけいやらしい事をしておいてどの口が言うのかしら」

「それは、そうだけど」

「中に、来なさい。特別に許すわ」

言いながら花琳の腰と脚がもぞもぞと動き、口戯の途中で怒張を保ったままの俺のものの先端と、いまだ熱い蜜を滴らせる彼女の秘唇が触れ合った。

背中に回れた彼女の脚の力に従い、僅かに腰を進ませるだけで花琳の中へ侵入してしまう。

「いいんだな、花琳」

「嫌じゃないわ。ふあ、ふぁぁ…ぁぁぁ…ぐっ…」

陶然としたまま笑みを浮かべた彼女の中へゆっくりと押し入っていくと、痛みに耐えるような彼女の声が耳を打つ。何度も奉仕を受けた彼女の口腔内よりももっと柔らかくぬめる膣内の気持ちよさに思わず暴発しそうになるのを、初めて男を受ける彼女への気遣いで何とか抑えながら最奥まで侵入する。

「…これで、全部…かしら?」

「ああ…大丈夫?」

「思っていたより痛くないけれど、…いっぱいに拡げられている感じがするわ。きっと大きいのね、貴方のが」

「…そうか」

なんとも答えようがないが、なにより花琳がそれほど痛みに苦しまなくて良かったとほっとしていると、組み敷いた下から逆に問われた。

「それより、貴方はどうなのかしら?」

「…」

滅茶苦茶気持ちいい。ぬるぬるして温かくてひくひくして。正直に答えるのが気恥ずかしくてなんと胡麻化そうかと考えた一瞬で、にやりと笑みを浮かべた彼女にバレた。

「…気持ちいいのね?」

「…」

「気持ちいいのね?私の中が」

「ちょ、ま、待ってくれ、言うから!」

不自由な姿勢ながら下から腰を揺すられ、刺激に言葉を失いそうになり何とか制止する。

「…正直無茶苦茶いい。直ぐに終わっちまいそうだから今止まってる」

そう答えると花琳の笑みはこれ以上無いというくらい、口の端が耳まで裂けるほどに深くなった。

「…あらあらあら。主人に隠し事をしようだなんて生意気な犬ね?」

「くぁ、ちょ、ま、まて待ってくれ花琳っ、くぅっ」

「嫌よ。どこの世界に飼い犬の言う事を聞かなきゃならない飼い主がいるのかしら、んっ、ねぇ?」

器用に腰を押し引きしながら俺の背中に回した脚で調節し、強引に注挿させる花琳の動きに翻弄されそうになるがどうしても一つ聞いておかなきゃならない。

「か、花琳は大丈夫なのかっ?」

「…痛みは無いわ、圧迫感はあるけれど。それに」

「それに?」

「貴方の精を私の中で受けたら、きっと想像も出来ない程気持ち良いわ」

そう言いながら抱きしめて来た彼女が愛おしく、幸か不幸か射精感をどうにかやり過ごした。

「わかった、じゃ、行くよ…」

「ええ…ん、あんっ」

再び花琳の奥深くまでゆっくりと突くと、彼女の唇から艶やかな声が漏れた。

「ひょっとして気持ちいい?」

「そうなのかしら…くすぐったいような、拡げられて気持ち良いような感じね。…遠慮せず来なさい、私の中でいっぱい擦って、いっぱい出すのよ、…ん、んんっ、んぁっ」

ゆっくりと注送の速度を上げていくと今度は明らかに快楽を帯びた声で呻き、二人が結合している部分からは花琳の愛液が溢れ、ちゃぷ、ちゃぷ、とぬかるんだ音が響く。

「花琳っ」

「来てっ、一刃っ、あんっあんっあんっあんっ、ああっああっ、ああんっ!」

未だ幼さを残す少女の膣内は、きつく陰茎を食い締めながらも昂った性感の潤滑油で舐めしゃぶるように蠢き、あっという間に射精感を高められていく。

 

「あんっあんっあんっあんっあんっあんっ、ああっ、ああっああっああっああっ、まだっ?ねえまだなの、あ、貴方を気持ち良くしたいのにっ、わ、私もうっ、もうっ、あぅあぅあぅあぅ!」

「か、花琳っ、もう出るっ」

 

「来てっ!中にいっぱい出してっ!」

「くぅっ!」

「ああっ!ああああああああああっ…!」

絶世の名器に絞り抜かれ、口戯から焦らされ続けていた怒張から勢いよく精液が花琳の中へ迸る。と同時に、少女も敏感な内襞と宙へ投げ出された両脚を震わせ、男のそれに反応するように絶頂した。

「あっ……ああっ…!…ああっ…!出てるっ…出てるわ…!」

どくっ、どくっ、と続く吐精に膣もひく、ひくっと痙攣し、尚も男から精を搾り取る動きを見せる。十数度に及ぶ互いの脈動が収まると、どちらからとも無く見つめあい、優しく唇を合わせた。

 

 

 

 

「誰が離れて良いと言ったのかしら」

唇を離した後、重いだろうと思い彼女の上から降りようとしたら、両脚を背に絡めて固定されながら睨まれた。

「いや、重いかと思って」

「重かったら言うわ。…それにしても、いっぱい出したわね」

「…気持ち良過ぎて」

正直に答えると、それじゃあ仕方ないわねと満足そうに彼女は微笑んだ。

「それにしても、天の御遣いがこんな少女性愛性癖者だなんて幻滅ね、私も早まったものだわ」

「そこはぐうの音も出ないけど、一つだけ訂正したい」

「何かしら?」

これだけは絶対に伝えなくてはいけない。

 

「花琳だから抱きたいんだ。花琳じゃなきゃ嫌なんだ。俺が異常性癖なのはもう否定しないが、それだけは知っておいてくれ」

 

俺が真顔で告げると、花琳は一瞬目を丸くするとぷっ、と噴出した。真面目に言ったのに笑わなくても、と抗議しようと思った瞬間、彼女に体を振られて転がされると、器用にも繋がったまま花琳と上下が逆転した。危ないな、と言おうとして見上げた彼女の眼は爛々と輝きながら俺を見下ろしていた。

「ああ、ああ!こんな男を御遣いに立ててしまった私は何と愚かなのかしら!でも過ぎたことを言っても仕方ないわ、この私を好きで好きで好きで好きでたまらないと言う少女性愛ケダモノ男が他所で悪さしないように。これからは私が、貴方を、一生満足させてあげるわ!」

「ああ、こんな俺に付き合ってくれるのは花琳しかいない。これからもついていかせてくれ」

互いに微笑むと花琳を抱き寄せ、二度目の口づけを交わした。

 

「早速だけれど、次はどんな風にしたいのかしら?」

 

彼女のくりくりとした瞳に見つめられると、途端に嘘がつけなくなる。気恥ずかしくて顔を見ながらはとても言えず抱き寄せた耳元で囁くと、揶揄う様な笑みを浮かべながら

「本当に嫌らしい雄ね、いずれそれでやらせてあげるわ」

と囁き返しながら腰を大きくうねらせて、器用にも俺のモノをきゅっと締め付けた。

 

 

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「…如何でしょうか」

「…素晴らしいわ、文武に秀でているとは聞いていたけれど。花琳が主導権を握っていながらも男の希望を叶えてあげる、出来た女な所がとても良いわ」

「この小説は華琳様宛てではなく私宛てに、『このような小説が書けましたので読んで頂けませんか、続編もご希望でしたら書きますし内容指定もお受けします』と提出され、華琳様という言葉を彼女は一切出しませんでした。中々気も使える娘かと」

「…必ず秋蘭が私に見せると踏んだのね」

「御意」

「それで、交換条件にあの娘は何を希望したのかしら?」

「魏の若手職員分の夜伽編成権をと。華琳様や、戦乱の頃からの将の割り当て分には絶対に手を出さないと言っています」

「聡いわね。…では将来的には編成権を与えると指示しなさい。私ではなく秋蘭、貴女の権限としてね」

「御意。ところで、続編の指示ですが」

「らぶらぶソフトSM、『いやぁん犯されちゃうぅ』みたいなのが一つ。もう一つは初等部退行プレイ、無知シチュからその後の小悪魔プレイ。どっちも一刀がわた…花琳を拝み倒して花琳がしょうがないわねやってあげるわみたいな感じで」



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司馬日記57(本編最終回)

その後の、とある文官の日記の最終回です。
外伝やスピンオフはまだ色々(えっちぃのとか)書きたいものがあるのですが、本編としましてはひとまず最終回となります。
感想等戴けましたら、後日あと書き等で御返事御礼申し上げたく御座います。
三次創作戴いたくらげ様、イラストを戴いた飯坂裕一様、そして今まで長きに渡り御笑覧頂いた皆様、有難う御座いました!


12月28日

仕事納めとして一刀様が各部署へ慰労の御挨拶に赴かれた。

しかも夜は各国の忘年会に顔を出される他、明日も年末年始に勤務する軍の治安維持担当や緊急時対応・施設保守担当らの慰労に廻られるとの事だ。

例年のことながら一刀様の臣下への御慈愛に深く感動し、この御恩に報いるべく皆にはまた一年一刀様の御為に尽くして頂きたいものですと詠様に申し上げると、

「顔出しくらいはきっちりやってお茶濁しておかないとね。華琳と桃香と蓮華で年末年始の当番もう決めてんのに『私と年越しだ、姫始めだ』とかほざいて乱入してくる馬鹿共の相手させられるのはもう懲り懲りだからね」

と半眼でため息を吐かれた。

 

12月31日

今年は本日から一刀様は各国王様と過ごされる事とされたので、朝の内から月様、曹操様らと年末年始に御使用になる備品類、食材や燃料等の管理についての引継ぎを行った。

引継ぎが終わる頃に一刀様もお見えになり、『今年も最後の最後まで御世話有難う』と労いの御言葉を賜った。

臣下として当然の事をしたまでであるにもかかわらず御優しい言葉をかけて下さる御心に思わず涙しそうになったがなんとか堪え、月様と共に御挨拶して退出しようとした所、月様が一刀様に呼び止められ

「月、月は本当に正月ぐらいゆっくり休んでね!桃香達もいてくれるんで大丈夫だから、何も気にしなくていいからね!?」

とお声掛けされるのに対し

「はい。御主人様も華琳さん達も、何か足りないものがあったら事務室にいますからすぐに言って下さいね」

と月様が御返事をされると一刀様は苦笑いと共に絶句され、曹操様らは一斉にぷっと噴き出された。

月は本当にそういう病気なのねと微笑まれ、各国王様らで相談され三が日の洗い物、お洗濯の一部を月様に依頼されていた。

 

1月1日

今年度は新年の年賀も仕事始めと合わせる事となり、珍しく家族そろって正月を過ごした。

士季と士載は帰省している。士季はかなり渋っていたが、鐘繇殿が都にお住まいであるにも関わらず碌に帰っていなかったので強引に帰らせた。

今年も一刀様にとって良い年であるよう粉骨砕身努めていきたい。

 

1月7日

帰宅すると辞典のような書物が宅配にて届いているのを見かけ、宛名を見ると叔達の注文品のようだった。

夕食時に何であるのかと叔達に聞いたところ天の国語録の再編版であると言う。天の国語録が十数巻を数えているのは知っていたが、遂に二十巻を数え膨大になったのを機に用途毎に再編されたものらしく、政治・経済・人文・芸術等に巻が分けられていた。

 

感心な事であると褒めると、姉様はやや疎すぎるのではないでしょうかと逆に咎められた。一刀様のお近くに仕える身としてそんな事は無い筈だと反駁すると、

叔達、季達、士季らから

「そうでしょうか?では、私は先日長文様より文書管理のアジェンダについてコンセンサスを取るスケジュールのマイルストーンを提示するよう指示を頂いたのですがレジュメを作成したのでチェックをお願いしても宜しいでしょうか?」

「あ、私はこないだの御伽で一刀様にイレギュラーストライプのキャミとデニムのマイクロミニにTバックがセクシーだねって褒めて頂いたんですが仲達姉様はどう思います?」

「私も一刀様にバキュームで御奉仕した御褒美にボンデージでスパンキングされながらバックで激しくピストンして頂いたんですけど仲達様もそういうのお好きですよね?」

等と言われ、全く意味が分からず言葉に窮してしまった。

しかし士季のドヤ顔が余りにも腹立たしく、士季の言うそういった御奉仕は当然私も望むところだと苦し紛れに答えると

「「…そうですよねぇ~!」」

と季達、士季は耳まで裂けるかと言うほど口を歪めて不気味な笑みを浮かべ、叔達は失笑を浮かべながら姉様は少なくともこの巻だけでも読んで下さい、と天の国語録から閨房編を渡された。

 

…「すかーと」「ぶら」位なら私だって知っているのだが足りないのだろうか…

 

1月12日

詠様らに休憩時間に天の国の言葉についてどの程度御理解されているか伺ったところ、詠様は政務に関わる単語なら大体は分かるが敢えて自分から使う事は無いと言われた。月様は生活関係の用語は大体分かり、一刀様がよく使われる言葉については一刀様の利便性の為ある程度使うようにし、周囲にもなるべく広める様にされているとの事だ。

一方逢紀は生協での商品宣伝の都合上よく使っていると思うと言う。

我が身を振り返ってみるに、月様の用法は一刀様の御利便性を鑑みるに適切なものだろう。尚一層月様を御手本とし、一刀様の御言葉一語一句を大切にして一刀様の御常識を世間の常識とするべく、己の用いる言葉にも気を配らねばなるまい。

 

1月15日

一刀様の御出張からの帰庁に随行していたところ、昼の休憩時間に姜維、士載に士季が武術の鍛練をしている所に通りがかった。

一刀様が足を御止めになり熱心だねと感心されながらしばらくご覧になっていたが、姜維が高く跳躍し渾身の一閃を士季に放ったのを見られるや珍しく少年のような笑みを浮かべられ藍(姜維)ちゃんちょっといい?と御声をかけられた。

姜維が手を止め御用か御指導でしょうかと伺うと、今の斬撃をもう一度見せて欲しいとの御指示であった。姜維は目を丸くしつつも御指示通りに高く跳躍すると、一刀様が

「必殺ぅー!」

と御声を掛けられ、斬撃と共に

「開明王烈斬ーっ!」

と叫ばれた。姜維がぽかんとして今の御言葉はどういった意味でしょうかと伺うと、

「いや、男の子ってそういうの…うおぉーとか言って技の名前叫んでどかーんみたいなのが好きで、技名は適と…今何となくで言ってみただけ。邪魔してごめんね」

と笑いながら仰った。

姜維がはい、と今一つ要を得ない返事をすると、隣にいた士季が

「藍(姜維)、一刀様は藍の斬撃に名前を付けて下さったのです。お礼を申し上げるべきです」

と口添えをした。すると姜維はぱっと花のような笑顔になり、

「『開明王烈斬』…『開明王烈斬』ですね!御命名、有難う御座います!」

と深く頭を下げると、うんまぁ余り気にしないで他の技も大事にしてねと言われた。

後進の者へも懇切御丁寧に御指導下さる一刀様には真に以って畏敬の念を禁じ得ない。

 

1月19日

一刀様の御執務室で給仕を行っていると、笑顔の元譲様がどたどたと御入室されて来た。曰く、

「おい一刀一刀!私も新しい技を考えたから今から見て名前を付けろ!」

との事で、一刀様は各種書類を御決裁中である旨をお話ししたが一刀様が構わないので見てくると御一緒に演習場に出ていかれたので随行させて戴いた。

元譲様はいいかよく見ておけ、と言いながら大刀を振りかぶると裂帛の気合と共に袈裟十字に二度剛剣を振り下ろし、その十字の衝撃波は数十米も演習場の土を抉りとり、遥か遠方の樹木の枝を折った。得意満面の元譲様が、

「どうだ!見たか!?なあ凄いだろう!?凄いだろう!?この必殺技に名前をつけさせてやるから感謝しろ!」

と一刀様に詰め寄られると、一刀様も笑顔を浮かべられながら、

「命名。『にゃんにゃかぽーん』」

と御答えになられると元譲様はずっこけられた。

「な、なんだその可愛い感じの名前はっ!?もっとこうかっこいいやつ、暗黒無尽槍とか、轟波狂乱矢とかあるだろう!?」

「お前の得物は刀じゃねーか!つか先週も演習場に大穴開けて怒られてるのにまたやるか普通!?流石にちょっと来い!」

等と侃々諤々話されていたが、一刀様が決裁事務は後で行う、今は元譲様の御部屋で説教をされると仰りお二人で魏の居室方面へ向かわれていった。

 

1月26日

本日は珍しく全体朝礼を行った。一刀様の御意向との事だ。

訓示で仰ることには最近派手な技に走り、競って一刀様へ命名を強請る武官が増えているとの事だ。

「蜀の姜維さんには俺が不用意に余計な事を口走ってしまったけれど、実戦ではそんな技の名前とか叫んでる暇とか無いと思うんで余り気にせず軍務に取り組んで下さい。過去に『我が剛斧の錆になりたい者は居るか!?受けてみよ、金剛っ、大・爆・斧ーっ!』って言おうとして半分も言えずにやられてる人もいましたんで」

と訓示されると、華雄殿が

「そ、それは大分昔の事だろう!?今はそんな事は言ってないだろうが!」

と満面を主にして弁解されていた。

ともあれ、己が栄誉を満たさしめんが為に一刀様に御迷惑をかけてはならぬ事は言うまでも無い。

 

1月27日

公達様の御機嫌がすこぶる悪い。

子丹御嬢様曰く先日の一刀様の元譲様への御叱責御指導が性的なものに及び、その内容が被虐性癖で夙に有名な公達様にとって途方もなく羨ましいものであった為らしい。

張郃も語るには、なんで毎度毎度あの馬鹿ばっかり虐めて戴いてとイラついた声で呟いていたのでまず間違いないという。

正直その性癖には微塵も共感出来ませんけれど、その為にわざわざ一刀様を怒らせるような事はしないところだけは評価出来ますけれどねという御嬢様の御言葉には同意出来る。

 

2月1日

一刀様が出張中で御不在の執務室で、休憩中に元直からあんたたち一刀様が本気で笑ってるとこ見た事ある?と聞かれた。

膨らみかけの蕾さえも花開かせる春の太陽の如き笑顔は幾度となく拝見しているがと答えると、元直が言うのはげらげら笑っている姿を見た事があるかと言う事らしい。

子敬がそういえば無いかもしれないわねと相槌を打つと、あの年で馬鹿笑いをめったにしないなんてちょっとおかしいわよね、女の扱いで営業スマイルをさせられ過ぎたからかしらと元直は腕を組んだ。

一刀様は殿方の中の殿方であられるから不必要に下品な笑いは見せぬようになさっているのだろう、奥ゆかしい事であると意見すると、子敬がにやりと笑いながら

「笑おうがクシャミしようが欠伸しようが褒めるネタにしかならないあんたの意見はもういいんだけどさ、じゃ逆にさ、一刀様がガチ切れしたの見た事ある?」

と問うてきた。私も元直も見た事がない、あの近親☆上等姉妹に叱責される際でさえも我を失われるような御様子は無かった筈と言うと

「私はあるわよ?怒られた娘の名誉の為にいつだったとは言えないけど。結構迫力あったな、普段優しい人だから」

とどや顔をし、教えなさいよと食い下がる元直に対しじゃあヒントだけ、一刀様が怒る理由ってほぼ一つだけじゃない?と思わせぶりな事を示唆して休憩時間が終わってしまった。

 

御優しく激される事の無い一刀様がそのように御心を乱される事を出来る限り少なくするのが我々臣下の務めであり、私は日々それにまい進するのみだ。

 

2月3日

黄忠殿から依頼されていた璃々嬢(と恵達(司馬進、六女))の鍛錬を行った。私の休暇に合わせてである為不定期であるが、璃々嬢も恵達も良く取り組んでいる。

璃々嬢は短戟の習熟もさることながら会う度に心身の著しい成長が目に付く。学業も優秀で三国塾では高等部に飛び級したとも聞いているが、飛び級抜きでも高等部生だと聞いても信じてしまうだろう。

 

2月6日

魏庁内報によると曹操様の私財で建設された銅雀台に「水道」というものが装備されたという。

かねてから最新式の井戸により水の調達には事欠かなかったと言うが、曼成殿の下で開発に従事する馬均の発明した足踏式揚水機なるもので水を高くまでくみ上げ、それを竹管を組み合わせたもので炊事場等まで導水し、水栓なるものの操作で容易に水を出し止め出来る物らしい。

『天の国の技術を現代の技術力で再現した素晴らしいものであり一般臣民への普及の第一歩とされたい』という一刀様の御褒めの言葉と共に、今後更に銅板上に流した水が乾く際に銅板を冷やす仕組みを応用して「冷房室」なるものの開発に取り組むと掲載されていた。

馬鈞らの技術力もさることながら、一刀様の民草への深き思いやりには改めて感じ入るばかりである。

 

 

 

 

 

某月某日

曹操様が御懐妊なさった。

終業時間前に緊急で部長級が全員大会議室に集められ、曹操様御自身から御報告された。

安定期に入ったら一旦戻るが今後暫くは政務から離れるため、軍事関連は妙才様と子丹御嬢様、各行政事務は文若様、仲徳様、稟様、公達様らを中心に支えていくようにとのお言葉であった。

遂に一刀様にお子がお生まれになる。この御世を益々安寧たらしめるものであり、何より一刀様、曹操様の御幸せを思えば感無量である。

 

総務室に戻り、詠様にこの度は御目出度い事ですと申し上げると

「…ま、ひとまず計画通りで良かったわ」

と頷かれ、予め予見されていたかのようなお言葉であった。既に御存じだったのでしょうかと伺うと、

「ようやく世の中が落ち着いてきたからね。順番決めて、政治に穴が開かないようにしながらそろそろ子供作りましょって事よ」

との事だ。しかし子は授かり物であるのでそう上手くいくのでしょうかと問うと、

「まあタネ明かししてもいいんだけどね…ま、あんたの大好きな一刀様は『いし』の力で子供を授けたりまだ仕事させる為に止めたりしてたんだって考えときなさいよ」

と微笑まれた。

 

翌日以降、憶測や噂の流布を防止する為御伽当番表は非公開となった。

 

某月某日

曹操様御懐妊以降、約三か月の間を明けて蜀王の劉備様、呉王孫権様が御懐妊なさった。その後はたて続けに元譲様、文若様、呉は黄蓋殿、張昭殿、蜀は厳顔殿等、各国の重職らが懐妊された。一刀様の御子を授かる喜びがこの大陸に広く与えられ、とても喜ばしい事だ。

黄忠殿は璃々嬢に続き第二子の御懐妊となり、やや年の離れた姉妹となる。またその間璃々嬢は御母堂の政務をそのまま引き継がれるとの事だ。

 

某月某日

後宮に建設中であった保育所が竣工した。妊娠中から幼年期までの保育を想定し、段差の解消や手すりの充実、出隅の処理や柔らかい床等母子の安全性、夜泣き対応のための防音性、授乳やおむつ替え等の利便性等が十分考慮された浴室等水回り設備等を備え、装飾等こそ質素なものの『後宮よりも住み心地が良い』等と言われる程の施設となった。

一刀様の御子息、御息女がお育ちになる施設であれば当然ではあるが、いずれは自分以外の父母にも広く使用してもらいたい、また民間向けの保育所建設の参考にしてもらいたいとの一刀様の御言葉には感動した。

 

某月某日

一刀様の起居が保育所に移られた。妊娠中で何かと不安定となられやすい各寵姫の慰撫に努められたいとの御希望によるもので、業務の便宜上総務室も保育所内に引っ越すこととなった。

 

某月某日

相次ぐ魏の重臣の方々の御懐妊による休職の為、総務室付きのままで魏総務部付きを外れ録尚書事に任命された。

子丹御嬢様や張郃・郭淮らも昇進しており、この一時的な人材不足の状況を力を合わせて乗り切らねばならない。

 

某月某日

曹操様が御出産なさった。

元気な御息女で、名を丕と御付けになった。

一刀様にとっての長子でもあるが、曹操様の御負担を考慮し一刀様の他は呉王・蜀王と魏の譜代の方々十数名以外は当面面会謝絶となり、曹操様の御体調次第で徐々に面会範囲を広げていくとの事であった。

一刀様の御子様の御尊顔は是非拝したい所ではあるが、他日を楽しみにしよう。

 

某月某日

詠様も御懐妊なさった。

詠様御自身は素っ気ない御様子であったが月様の御喜びは一方ならず、涙と共に言葉に詰まられ、詠様と抱き合っておられた。

詠様の御休職に伴い、総務室長代行の大任を拝命する事となった。

一刀様の御為に働ける事はこの上ない栄誉ではあるが、魏の業務に三国総務室にと余りにも荷が重い為魏では姉妹、総務室では士載の助力を恃む事となった。

 

某月某日

各寵姫の御懐妊による休職、御出産と復帰が目まぐるしい。

特に軍務は御出産後もすぐには復帰はできない為人材のやりくりが苦しい中、士季がよく頑張ってくれている。

 

某月某日

二週間ほど前に連絡が入り、久しぶりの御伽番となった。

 

通常の夜番と異なって比較的早い時間から入室するよう指示があり、一刀様の元へ伺うと今日は仲達さんに大事な話があるという。

曰く、今までは政情が安定するまで各国王らの妊娠を控えてもらう為、また重臣らは国王よりも先に妊娠させてしまうと角が立つ為に華陀殿の薬により一刀様御自身が避妊をしていたが、漸く状況も落ち着いた為各国王から順次希望する寵姫とは避妊をやめ子を為されているとの事だ。ついては仲達さんがもしよければ俺との子を産んで一緒に育ててくれないだろうかとの御言葉であった。

曹操様の御懐妊後より、一刀様が今まで御避妊なさっていたようだと言う事は薄々耳に入っていたが、私に一刀様の御子を為して欲しいというお言葉に感極まり、滂沱の涙が流れ止まらなくなってしまった。

幼児のように泣きじゃくる私を泣き止むまで一刀様は御優しく抱きしめてお待ち下さり、どうにか是非一刀様の御子を私にお授け下さいませ、と申し上げると、有難う、いつも一緒には居られないけれど俺の子でもあるから協力して育てていこうね、と仰り口づけて下さった。

 

その夜の一刀様の深き御愛情は生涯忘れ得ぬ。

今までも、この夜も、一刀様は愛しているよと仰って下さった。

今までも、この夜も、お慕いしておりますと申し上げた。

すると愛されてる自信があるから、愛していると言ってくれるかと御言葉を賜った。

愛しております、一刀様。

愛させて下さいませ。

 

某月某日

華陀殿より妊娠三か月と診断された。

自身、もっと取り乱すかと思っていたが落ち着いて聞く事が出来、その後温かな気持ちがじわじわとこみ上げてきた。

急ぎ詠様や月様に御報告すると、御祝福の御言葉と共に直ぐに一刀様へ御報告するよう指示を受けた。

一刀様は各国王他と御会議中であった為室外で待っていると、廊下を通りかかられた稟様に用務を聞かれたのでこれこれ斯様で御報告の為にお待ちしておりますと申し上げた。すると稟様は祝いの言葉と共に笑顔を浮かべられ、会議室へ入って行き仲達より緊急報告があるので暫時中断願いたいと具申された。

一刀様にのみ耳打ち程度で御報告するつもりであったが稟様に促され会議室に入ると、各国王様や重臣の方々はどうやら察知されていたようで既に好奇とも思いやりともつかぬ笑みを浮かべて待ち構えられており、羞恥にしどろもどろになりながらも妊娠を御報告するとその場の皆様より拍手と共に、各国王様から

「きっと司馬懿さんに似て美人になるんじゃないかしら」

「娘には泣き虫がうつらないといいわね」

「物凄いパパっ子に育ちそうだね」

等と御言葉を戴いた。一刀様はいつもの御優しい笑顔と共に有難う、と仰って下さりながら席を立って優しく抱きしめて下さった。

思わず涙がこぼれそうになり、詳細はまた後程御報告申し上げます、と申し上げて会議室を辞させて戴いた。

 

某月某日

他の寵姫達もそうであったので当然ではあるのだろうが、後宮新聞の一面を自分が飾ってしまうのは面映ゆいものがある。

 

某月某日

華陀殿の診断によると双子の娘であるらしい。

一刀様に御報告すると、やっぱりそうだったんだねと微笑まれた。

他の寵姫に女児率が高いので娘であった事は驚かれないと思ったが、双子である事までどうやら御予想なされていたようだった。

母体に負担がかかると思うので一層体を大事にして欲しいと温かい言葉を賜った。

 

某月某日

娘達が動くのが日々感じられる。

天の国では胎教と言い胎児のうちから子に良い影響を与える行動があるらしい。

元々余り怒りや憎悪で感情を激する事がない方だと思うが、休職中の暇に任せて腹越しに娘達を撫でながら偉大かつ聡明で慈愛海の如き一刀様の素晴らしさを語って聞かせるようにしよう。

 

某月某日

遂に娘達が無事生まれてくれた。

華陀殿指揮下の産科医、助産師らの助力もさることながら、産気づいた報を受けられ急遽出張先から御戻り下さった一刀様が手を握っていて下さった為、何ら苦しむ事無く生まれてきてくれた。

大きな泣き声をあげる娘達を抱き、元気に生まれてきてくれて有難う、元気に生んでくれて、仲達さん自身が無事でいてくれて有難う、と微笑まれる一刀様と嬰児たる我が娘達の顔を見て、一刀様に傅く愛妾の一人としてに加えこの子らの母としてしっかり育てねばならぬと決意を新たにした。

 

某月某日

娘らの名について一刀様に御命名賜るようお願いしたが、名を一刀様がつけるので字は私がつけるよう御提案下さり、真名は司馬家の慣わしに従い字と同一で良いのではとの御言葉であった。

長女を師、次女を昭と御命名下さり、字を子元、子尚とした。

是非御父上に似た賢く優しい娘になって欲しいものだ。いや、なるよう私が育てるのだ。

 

某月某日

嬰児を二人も抱える身となってしまったが、保育所は保育士に加え先輩・新米母仲間が多く勝手を教えて貰えるので有難い。

 

某月某日

一刀様がお見えになった。

娘達は今だ喋れぬものの、一刀様がお見えになるととみに機嫌が良いように見える。

一刀様は現在は御政務は殆どなさらず未産の者を含む寵姫とその子らの世話にほぼ専念されているとの事で、おむつ替えやげっぷのさせ方等に非常に慣れていらっしゃった。

 

某月某日

娘達が三国幼稚園に入園した。

姉妹共に頗る活発な為、園友らと諍いを起こさないか多少心配ではある。

 

某月某日

娘らによると園では曹丕様と懇意にして頂いているらしい。

流石に弁えているとは思うが、王女様であらせられるので言葉態度等失礼の無い様接させて頂きなさいと指導した。

 

某月某日

月日の経つのは早いもので娘らが初等部に入学した。

一刀様に似て中々に聡明な娘に育ちつつあるが、最近母に対する態度と一刀様に対する態度の差に多少腹立たしく感じることもある。まあそれも成長の一面だろう。

 

某月某日

娘らは既に高学年になっているというのに、一刀様がお見えの日に一緒に風呂に入るのを一向に止めない。

いい加減にしなさいと叱っても、『我等は所詮庶子、日頃逢えぬ父様とのわずかな触れ合いさえも私達には許されないのでしょうか』と一刀様を泣き落としてしまうのは一体誰に似てしまったのか。

 

某月某日

子元らも中等部になり、所謂反抗期という物なのか母を母とも思わぬ口の利き方をする事があり尻叩きに代わって鉄拳指導が増えてきた。最近の娘達はと言う台詞が出るのは年を取った証拠と言うが、自分がこの年の頃にはこのような態度だっただろうか。

 

某月某日

中等部になって初めての保護者面談に行ったところ、水鏡先生から娘姉妹が学業では優秀であると共に塾で頭目的存在になっていると伺った。多少やんちゃなところもあるようですがという先生の言葉になんとはなしに嫌な予感がする。

一般にはこの後高等部に進学するが優秀さを買われており、一部官庁部署から二年次を修了したところで就職しないかとの勧誘も来ているとの事だ。

一刻も早く就職し一刀様を御支え出来る事は望ましいが、一刀様よりなるべく学生生活を楽しんで欲しいとの御意向も頂いている上、人格形成やより深い知識を習得してからの方が良いようにも思われ悩ましいところだ。

 

某月某日

遂にこの日を迎えた。

長くもあり短くもある御在位を経て、善政を遍く地の上に齎された一刀様が本日御退位なさった。

御就位されて間もなくから、全知全能とも云うべき一刀様個人の御統率力による政権構造を将来的に危険と考えた各国首脳や詠様らが、法整備を中心として安定維持出来る「政治しすてむ」及び「行政しすてむ」を確立させてきた。

御退位に伴い各国首脳の退任・交代予定も発表され、譜代の方々のうち年長の方を中心に半数程度が近年中に退任する事となる。

今後一刀様は原則として政治に介入せず、現役を退かない亞莎や凪らを私生活から支援する他は御引退される寵姫やその娘との生活に御時間に充てられるとの事だ。

 

御退位にあたり各国の各部署を御挨拶に回られ、総務室では親しく謝意のお言葉を賜った。

既に子を授かっている者の中で私のように在職を希望した者は少数派らしく、『これからも頑張ってくれるのは凄く心強いけれど、今までも沢山頑張ってくれたんだからいつでも休んでも辞めてもいいんだからね』

との御言葉を賜った。

 

天の国よりこの地に降り立たれてから一刀様がこれまで潜り抜けてこられた戦乱や治政の艱難御辛苦を思い、にも関わらず私のような塵芥の如き女をも遍く照らす一刀様の御慈愛の深さに感極まり、御礼の言葉を述べられず滂沱の涙と嗚咽に咽んでしまっていると、正しく天の御遣いの如き微笑みと共に抱きしめて下さった。

 

こんなに想って貰えて俺は幸せだよ、有難う、と耳元で囁いて頂いた御言葉。

私は一生忘れないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

子元も子尚も倉庫の片付けに一体何時間かける心算ですか、そんな事で総務室の業務が……何を見ているんですか?…それは鍵が掛かっていた箱に仕舞っていた筈ですが。…親娘であっても他人の私的な隠匿物を見てはいけないと母は教えたと思っておりましたが私の躾が至っていなかったようですね、二人ともこちらへ来なさい。…ほう?多少は構えもましになって来たようですがこの母に敵うとでも?良いでしょうかかって来なさい、二人まとめてまた水鏡先生の指導室へ突き出してやりましょう!

 



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司馬日記外伝 三国塾の生徒会役員共

その後のその後の、とある文官の娘さんたちです。


コンコンコン。

静かな生徒会室の扉が短く三度叩かれ、一瞬の間をおいて一年生の制服を纏った少女が跳ねた銀髪を振りながら室内に滑り込んできました。

 

「遅れました、申し訳ありません」

「遅いですよ、漣(楽綝)。何をしていたのですか」

「父上を御護りする為の鍛練を母上につけて戴いておりました」

「それでは仕方ありませんが、今後は皆を待たせる事の無いように」

「はい。注意致します」

凛とした態度で注意を告げる姉さんをちらりと横目で見る。

御父様の名前を出せばどのような行為も止むを得ないものとしてしまう姉さんは、母様の血を私よりも更に色濃く引いていると言わざるを得ないがあえて口に出すことはありません。及びこそしないものの、どうせ私だって似たり寄ったりです。

 

「それでは皆揃いましたので、本年度第二十七回家庭環境改革会議を開催致します」

姉さんの開会宣言に、集まった皆が黙礼する。

「それではまず定例議題から。今週の御父様との触れ合いについて、担当者は報告を」

「はい」

挙手したのは律(郭奕)だ。

「二学期の中間考査で一科目主席となった御褒美に、でーとをして頂きました!と言っても午後半日の都の散策ではありましたけれども、沙和さんのお店で外出着を買って下さいました!」

「それは素晴らしい事です。律(郭奕)は優秀ですから、今後も勉学にも励むと良いでしょう」

残りの四科目中三科目の主席である私達姉妹が言いづらいところではありますが、こういうところを気にせず言えるところは頼もしい姉だと心から思えます。

「異議あり~」

「何でしょうか、嵐(程武)」

眠たげな瞳で挙手の代わりに『異議』と書かれた小旗を上げる嵐(程武)。

「律っちゃんの報告は一部隠蔽されています~」

「ら、嵐(程武)!」

「本当は生協の下着屋に連れ込んでガーターベルトとドスケベ下着を選んでもらうはずでしたが~、寸前でヘタレて服屋に変更したのでした」

「いえ、嵐(程武)あれはその場の空気を読んでっ」

「稟さんのレースのスケパンを箪笥から探し当てて~、これに負けないものを選んで頂きますと一週間前には言っていた筈ですが~」

「それは本当ですか、律(郭奕)」

「いえあの、その位の意気込みであったと言いますか…」

「御父様には娘の女としての成長を是非御覧頂くべきところ、我等これから長く御父様の側近くにお仕えするというのにそのような弱気ではいけません。今後は今少し積極的に自分をお見せするように」

「く…は、はい」

姉さんの注意を受け、律(郭奕)が着席しました。とは言え実の父親にこれどうかなぁと言いながら穴開き下着を強請る娘は中々の剛の者だとは思いますが。

 

「次は私ね」

入れ替わって、蓮佳(孫亮)様の手が上がりました。

「はい。では蓮佳(孫亮)様お願い致します」

「来年度から私も高等部だから、高等部用の制服が届いたので御父様にお披露目したの!そうしたらとっても可愛いよって言って下さったのよ!」

「それは重畳に御座います」

両頬に手を添えて嬉しそうに語られる蓮佳(孫亮)様の御報告に皆も頬を緩ませ、姉さんの言葉も心なしか柔らかになる。

「…発言宜しいでしょうか」

「想夏(甘述)さん、発言を認めます」

控えめに挙手をした想夏(甘述)さんはやや眉根を寄せられています。

 

「…この度も、蓮華様も御購入なさったので?」

「ええそうよ?御母様も可愛くってよく似合っていたわ。中等部に進級した時もそうだったけれど、『私が蓮佳(孫亮)くらいの頃は学生生活なんて無かったから羨ましいわ』って口癖のように言っているし」

母親が自分と同じ学生服を着るのは孫家的にはアリなんですね。誰も声には出さないものの、雰囲気がそこはかとなくざわつきます。

「…僭越ですが、蓮華様は既に御洗濯をなさっておられたりは…」

「あら、良くわかったわね想夏(甘述)?納品時に御母様の分だけちょっと汚れてたんですって、中等部の制服もたまに洗われてるし…ってなんで皆目を逸らすのかしら?」

「あー私それ分かったぁ、それねぇ蓮華さんがパパとエッt」

「やめなさい桜香(劉禅)」

その場の蓮佳(孫亮)様以外の誰もが察しながらも口に出さなかったことを桜香(劉禅)様が平然とブッこむのを、寸前で華麟(曹丕)様が口を塞いで防がれました。確かに無駄に他人の親子関係にヒビを入れることはありません。

 

「母親の真名が書かれたブルマを見つけた娘の気持ちを味わうのは私一人で十分よ…」

遠い目をしてぼそりと呟かれた華麟(曹丕)様の御家庭には残念ながら既にヒビが入っていたようです。

確かにコスプレとコスチュームプレイの違いを母親の洗濯物で知るのは中々キツいかもしれません。

 

「え、えー、それでは続いて、先週の『はろうぃん闘争』の反省会を。今年も惜しくも御父様にいたずら(性的)を行うに至らず、御菓子を戴くに留まってしまいました。昨年、一昨年の反省を踏まえて万全の態勢で臨んだ心算ではありましたが、我等の勝利とはいかない結果について華麟(曹丕)様、御総括を」

「そ、そうね…まあ何よりも、今年はお母様達に守りを固められ過ぎていたわよね。一日中御父様の回りに山のようなお菓子を用意されて、恋さんや甘寧さんとか腕利きの方達がかわるがわる傍に付かれていては難しいわ」

「成程、敵の備えが我々の備えを上回ったと言う事ですね。ではなぜそこまで対策を打たれてしまったのでしょうか」

「それはほら、去年の桜香(劉禅)が…ねえ…?」

「えぇー?あれくらいでー?」

桜香(劉禅)さんは心外そうに目を丸くされていますが、昨年折よく手ぶらの御父様を見つけた桜香(劉禅)さんが木乃伊女のいで立ちでとりっくおあとりーと、と叫びながら満面の笑みで御父様に抱き着かれ、その勢いで包帯がほどけ母親譲りの豊かな生乳を御父様の顔面に押し付けたのは親娘としてはかなりギリギリな行為ではありましょう。後日聞いた話では桃香様はそれほど気にされてはいないとの事でしたが、桜香(劉禅)さんの巨乳ぶりに危機感を強めた比較的胸がつつましい母親方を中心に『近く高等部ともなる王侯の子女としての自覚に欠ける行為は慎ませるべき』との認識が強まってしまったのは致し方ないところと言えるのではないでしょうか。

「そこでいたずら(性的)一択にするべく、我々の中でも手練れの者達で御父様を取り囲む御菓子の山を蹴散らすべく襲撃したのですが、全て恋さんらに返り討ちに遭ってしまった訳です。あの時挑んだ者は挙手を」

姉さんの言葉にぱらぱらと手が上がる。姉さん自身に私、冬蘭(夏侯覇)様、蜀は関興・関索姉妹に張苞・趙統・趙広さん、呉は陸抗さん。

一応三国塾では名うての方々ではあるのです、が。

 

「恋さんおかしいよ…死に物狂いで御菓子の山から一つだけなんとか弾き飛ばしたと思ったら、余裕でそれを口で受けて『…美味しい。麗々(張苞)も食べよう』だって」

「麗々はまだましですよ…私達なんてそのあと御母様の手作りお菓子地獄ですよ…」

「いたずらとかお菓子とかそういう次元じゃなく、久々に死ぬかと思いました…」

長い栗色の髪の後ろで手を組み不貞腐れる張苞さんの隣で、麗しい黒髪を萎れさせてげっそりした表情で項垂れる関姉妹。

かく言う私達姉妹は周泰さんと蒋欽さんに苦も無くボコられ、口の中にお菓子を詰め込まれて母様に引き渡された訳ですが。あの方達は母様とは『まぶだち』だそうですが、その娘にここまで容赦無いのは一般的に見ても国際政治的に見てもどうなのでしょうか。

「…今少し我々の武術の鍛練が至らなかったと言う事でしょう。来年こそは目に物を見せてくれます」

まあ一年程度では来年もおそらく今年の再現でしょうが、この前向きなところも姉さんのとても頼もしいところです。往年の孫尚香様を真面目にした感じねと孫権様が仰っていましたっけ。

 

「さて、次の議題に移ります。予てから華陀さんに依頼しておりました例の薬ですが、遂に臨床試験に移れるとの事です」

「ほう…!」

「…あの件、貴女達本気だったのね…」

姉さんの報告に冬蘭(夏侯覇)様が軽く驚きの声を上げると、蓮佳(孫亮)様も続けて呟かれました。

「当然で御座います。女としての性教育(実地)を御父様自ら御指導頂き、御父様に傅く若妻と成る為には欠くべからざるもの。副作用の治験人数の確認を再度行いたいと思いますので、希望者は挙手を」

姉さんの問いかけに、私、嵐(程武)、桜香(劉禅)様が手を上げました。予備調査時から変更有りません。

「あの、前に聞いたかもしれないけど、桜香(劉禅)は桃香さんに了解取ったって本当?」

「うん?ママ、華陀さんのせんしょく…なんだっけ?あ、染色体異常防止、だっけ?のお薬があってぇ、パパが良いって言ったらいっしょにエッチしてくれるってぇ」

「…あ、改めて凄い家庭ね」

「確かに桃香さんなら言いそうだけど…子元(司馬師)と子尚(司馬昭)のところは?」

「うちは母親が御父様至上主義者でちょろいので、全く問題ありません」

華麟(曹丕)様の問いに対する私の言葉に、姉さんも軽く頷きます。直接了解こそ取ってはいませんが、御父様絡みで母様がまともな判断が出来た試しは無いので姉さんの言う通りでしょう。素晴らしい御父様に女としてお仕えする事は良い事ですよねと聞くだけで十分です。

「じゃ、嵐(程武)さんのところは大丈夫なのかしら?風さん、のんびりしてそうで実は色々厳しいって呉でも聞くけど…」

「お互い絶対譲らないのが分かってますから~。単純に一対一の女の戦いをするだけなのですよ~」

「凄い事をさらっと言うのね…」

「嵐(程武)の所はそうかも。私、御母様の世代で一番怖いの風さんだと思うし」

 

「…し、質問宜しいでしょうか」

華麟(曹丕)様、蓮佳(孫亮)様が呟かれるのに、漣(楽綝)がおずおずと手を上げました。

「子元さん、子尚さん達は…その、あの…本当に、父上とその…そういう事を、その…されたい、と言う事なのでしょうか?」

「漣(楽綝)、『そういう事』とは何ですか?」

「うえっ!?…そ、それは…」

「姉さん、………」

姉さんに反問され、顔を赤らめる漣(楽綝)を眺めているのも楽しいですが、話が進まないので姉さんに耳打ちしてあげます。

「ああ、漣(楽綝)の言う『そういう事』とは御父様とのせっ〇すの事ですか?」

「※△×〇!?」

「姉さん、少し言い方を」

満面朱に染めて口をぱくぱくさせる漣(楽綝)は少しだけ可哀想かも知れません。面白いですが。

「いいえ、御父様が天の国から伝えられた御言葉こそが最も正しく言い表すものなのですから、せっ〇すの事をまぐわいだの同衾だの性交だのと言い換えるのは不敬と考えます。漣(楽綝)の問いに答えるならば、まさしく我々は御父様に濃厚なるせっ〇すをして頂きたいと願っていると言う事になります!」

「…あの、子元?ここにいる全員が全員それを望んでいるって訳じゃないのよ?」

「いいえ華麟(曹丕)様、この会議の主旨たる『御父様について語り合い、もっと触れ合えるにはどうすれば良いかを考える』事の延長線上には御父様とのセッ〇スがあり、その先には妻として御父様にお尽くしし子を得て守り育てるという目標があるのです!その為には」

「あの~、子元ちゃん~?余りせっ〇すせっ〇す言い過ぎないで~?むっつ律っちゃん(郭奕)が鼻血噴きすぎて気絶しちゃう~」

「ふがっ、だ、誰がむっつりですかっ!?そ、それよりもやっぱり父娘でその、せっ、せっ〇すと言うのはちょっと問題では」

「ありません。古今東西、娘を手籠めにした王侯の類などいくらでも居るではないですか。それに比べれば娘側も合意の上、しかも生まれる子の健康のまで考慮しているのですから何の問題もありません」

確かに漢代でも親子ではないにしても近親婚はあった事です、ただ逆に娘達が父親を手籠めにしたという話は聞いた事が有りませんが。

「お姉ちゃん、流石『真☆近親上等姉妹』と呼ばれるだけの事はありますよね」

「うん…私達の母様も義姉様達も色々とんでもない人達だと思ってたけど」

「関興さん、関索さんだって時間の問題ですよ。それよりも漣(楽綝)、貴女は御父様と最後にお風呂に一緒に入ったのは何時ですか?」

「え、えっと…初等部を卒業する頃だったかと思います」

「成程、だから貴女はまだなのかもしれません。私達姉妹は粘りに粘って泣き落としも駆使して中等部二年生の末まで一緒に入って頂きました」

「はあ…」

「そこでズプッと一発父娘の絆をキメるべく、陳琳様の小説よろしく御父様の背中を御流しするのに子尚の胸を用い、空いた前を私の掌で御洗い差し上げ、御逸物が御雄渾となられたのを見ました時」

「ちょ、ちょっと貴女達もうそんなとこまで!?」

「…ぶはっ!」

「はいはい律っちゃん頭がすがすー」

華麟(曹丕)様ががたっと席を立たれ、律(郭奕)がいつも通り鼻血を噴きました。最近嵐(程武)の律(郭奕)に対する扱いが雑になってきたような気がします。めんどくさくなって来たのでしょうか。

「脳髄に稲妻が走り、下腹がキュンと切なくなり。私の胎内はこれをこそ収める為にある、ずっぷりぶち込んで頂くべきものだ、と言う事をその瞬間に雌の本能として悟ったのです」

「そ、それで…まさかそのまま!?」

「いえ、我等の体が未熟である事を慮って下さった御父様の御抵抗に遭い、母様を呼ばれ残念ながら阻止されてしまいました」

厳密には私がおっぱいを御父様の背中に押し付けた時点で既に御父様がかなり抵抗されたのをなんとか抑え込み、姉さんが御父様の御子様(私達ではない方)を握りしめたあたりで遂に母様を呼ばれてしまったというのが正しいところではありますが。

「はぁ…そう。というか、貴女達既にその頃からそんなに大胆だったのね…」

 

「つまり漣(楽綝)、私が言いたかったのは御父様との裸の御付き合いをすれば、自然裸の御突き合い、つまりせっ〇すで御奉仕すべきという結論に至ると言う事なのです」

「は…はぁ…」

華麟(曹丕)様がほっとされたように席に着かれる傍ら、漣(楽綝)は頬を染めながらよく分からないような返事をしました。いや、姉様上手い事言った様なドヤ顔されても。

「華陀さんによりますと薬の副作用を確認する臨床試験は二か月ほどと聞いております。つまり、我々が御父様に堂々女として御奉仕出来る最も近い機会は正月です」

ばん、と右手で机を叩き、姉さんが立ち上がります。

「そこが我々の真の開幕戦!御父様の姫始めは我々のようなぴちぴちぷるぷるおっぱいを愛で、青い蕾を花開かせることで行って頂くのが本来当然なのです!三十路もとうに過ぎただらしない体に御世辞を言うのが御父様の御仕事ではなく、ましてや五十路だか六十路だかの垂れt」

「!…子、子元っ!」

「…あー」

「子元さんっ!」

「姉さん」

姉さんの口から滑り出す危険な単語に、華麟(曹丕)様、蓮佳(孫亮)様、桜香(劉禅)様が反応して声を上げました。

ですが、今まで一度もそれが間に合ったのを見た事はありません。

廊下に人の気配はなかったのに、あたかもはじめからそこに立たれていたかのように、生徒会室の扉ががらりと開かれます。

 

扉を開けた人物の、穏やかな笑みと目尻の僅かな小じわ。

胸やお尻の、年にそぐわぬ異常な抑揚。

全てを諦めた、皆の表情。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「子元ちゃん?先生、目上に対する口の利き方は前にも指導しましたよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------------

 

 

「おかえ…どうした子元、そのでかいたんこぶは。…何も間違った事は言ってない?…説明になっていないぞ、こら子元!勝手に二階へ行くな、もう夕飯は出来ているんだぞ!…、全くしょうがないな子元は。子尚は手を洗って食卓に着きなさい、今日は急遽一刀様がいらっしゃっ…痛っ!?お前達、母にぶつかったら詫びる位…、待て子元その席は私の席だ、お前達は一刀様の向かいだ向かい!子尚は一刀様に乗るんじゃない、お前達はもう子供じゃないんだぞ!?いいから二人共制服を着替えて来なさい!違う、そこで脱ぐな尻を振るな!お風呂は後だ、一刀様を引っ張るなと言っている!それに一刀様と一緒に入るのは妻の私だぁーーーっ!!」

 



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