浅上史奈の歪曲 (ヴィヴィオ)
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浅上史奈の歪曲

 

 世界は本当に理不尽なことに満ち溢れています。そのことを私は8歳の時に知りました。私は特殊な"個性"を持つ両親から生まれた。父の"個性"は透視能力と呼ばれるもので、遠くを見られるものでした。この力でヒーローのサイドキックというのをしていました。

 母は視界内の任意の場所に回転軸を作り、対象の強度に関係なく曲げる"個性"歪曲を持ってヒーローをしていました。

 そんな二人から生まれた私、浅上史奈は両親の"個性"をうけついで、幸せな家庭で過ごしていました。でも、なぜか両親は"個性"のことを隠すようにいってきています。悪用できるからとのことで、軽い透視能力としてトランプの絵柄をあてるくらいはいいとのことでした。

 

 幸せは8歳の時に脆くも崩れ去りました。私の両親は前に両親が捕まえた(ヴィラン)達によって殺されたのです。彼等は釈放されて、互いに協力しあって両親の居場所を突き止めて襲い掛かってきたのです。私と母は父の前で犯され、最後には両親を目の前で殺されました。

 その後、私は殺される前に駆け付けたヒーローによって助けられました。その時、何度もヒーローに彼等を殺してくれと頼みましたが、叶えてもらえませんでした。法律で裁かれると教えられて、その時は納得しましたが、逮捕された犯人達は数十年の刑をうけただけでした。また彼等は帰ってくるのです。私から両親と幸せを奪っていったのにです。

 私の不幸はこれだけでは終わりませんでした。両親がためた財産を私を引き取った親戚が全部もっていったのです。その間にも親戚から性的な虐待もうけていました。そして、何歳になったかも忘れたころに孕んだ私をゴミ捨て場に捨てられました。この時に理解しました。(ヴィラン)を殺せないヒーローは救いじゃなく、法律は弱者の味方でもないと。

 そのまま数日をそのまま過ごすと雨が体温を奪ってお腹の子が死にました。このまま死のうとも思いましたが、ふとみると何かの雑誌がありました。そこには黄金の髪の毛をもつ人のことが書かれていました。それは素晴らしいことでした。

 公明正大・滅私奉公を信条とし、正しさを踏み躙る悪の誅罰するというものでした。そして、過去を振り返らずにひたすら前へ進むこと。

 しかし、私にできるかはわかりませんし、いらないことかもしれません。そこで父から受け継いだ透視能力で世界を見ました。そして、吐き気を催す邪悪を見つけてしまいました。そいつは人の"個性"を奪い悪逆非道を行ってきたのです。平和の象徴とよばれるオールマイトすら彼を倒せていない。殺さないようにしていたからでしょう。

 

「……だれも、やらないなら……私がやる……そう、私が決めた……」

 

 黄金の人のように悪を邪悪を駆逐する。そのために私も悪になって私なりの正義を執行する。心が定まればやることは一つです。私はこんなところでは死ねない。そう思うと疲労と栄養不足で力の入らないはずの身体は動きました。

 立ち上がり、ゆっくりと移動すると死んだ赤ん坊がでてきましたが、無視して歩きます。歩いていると前方に誰かが立ちふさがりました。見上げるとそれは大きな男の人です。

 

「嬢ちゃん、俺達といいことしようぜ」

「返答はきいて……」

「ええ、聞いていません」

 

 "個性"を発動して二人の頭部に回転軸を作ってねじ切ります。血飛沫を浴びながら、彼等から必要な物を接収します。コートを貰ってみすぼらしい身体と姿を隠して私は親戚を透視します。彼等は何処かに旅行にいっているようです。おそらく私にかけた死亡保険のことでも考えているんでしょう。だから、私はタイミングを見計らって彼等が乗る車の部品を破壊し、爆発して崖から転落させました。他の親戚連中も含めて寄ってたかって両親の財産を奪った連中は皆、粛清しました。

 

 自宅に戻った私は扉の鍵を壊して中に入ります。この家は本来、私の物でしたが親戚に乗っ取られたので奪い返しても問題ありません。なのでここは私の物です。

 シャワーを浴びて血を洗い流してから、本来の自分の部屋でベッドの布団とかを替えて眠りにつきます。

 外が騒がしくなり、起きると何度も電話がかかってきているようでした。電話にでると警察からで親戚が交通事故で死んだことを教えられました。ここで色々と思ったのは演技は必要だということです。まだ本格的に動く時ではありません。まずは体力などを回復しないといけないからです。

 警察にある程度話してから、久しぶりにまともな食事を取ると胃が受け付けなくて何度も吐きました。仕方ないので非常食として常備されているカロリーの高い物を無理矢理食べておきます。

 その後、警察の人に迎えにきてもらいました。お金や足がないと告げたら親切にも運んでくれたのです。

 その後、塵共の死体をみて持ってきた目薬を使って軽く泣いた振りをしてから、弁護士を雇って遺産整理などをしてもらいます。事情聴取もされましたが、本当のことを話してあげます。

 

「では、親戚同士で互いに保険金をかけあっていたのだね」

「はい。何時か殺してやるっていっていました。実際に殴り合いもしていましたから……」

「なるほど。しかし、互いが同じ日に死ぬとは……」

「相手が自分を殺そうと知ったから、先に殺そうと思ったんじゃないですか?」

「確かに車に細工をしておけばいつ死ぬかはわからないな。それにこっちは火事か……」

 

 ガス管の栓を破壊して火花が散るようにすれば余裕でした。その後も色々と話しを聞かれて家宅捜索をされましたが、全て任せて私はお金を降ろさせてもらってホテルで泊まらせてもらいました。次の日は服など買って今までのは処分しました。

 

 

 

 塚内直正(つかうち なおまさ)

 

 

 

 浅上家のことで正直にいえば引っ掛かることがある。だからこそ家宅捜索をしたのだが、そこでとんでもないものが見つかった。

 

「先輩、これは……」

「ああ、ひどいな」

 

 彼女、浅上史奈の性的な虐待の録画が残されていた。すぐにそれを婦警に渡して確認してもらった。我々に見られるのは彼女がつらいだろうという判断だ。そして、あがってきた報告書をよんだわけだ。その婦警達は今、休暇をとっている。

 

「玉川、もう一つ報告があるんだな?」

「こっちです」

「浅上史奈の両親を殺した(ヴィラン)を手引きしたのは彼等だったようです」

「そうか」

 

 色々と調べていくが、被疑者死亡による書類送検だけとなった。浅上史奈にはカウンセラーに通ってもらうこととなった。

 

 

 

 

 

 弁護士による遺産整理や書類の提出なども終わり、家以外はほぼ全て売り払った。家もリフォームして綺麗に作り直してもらいました。その間はホテルで暮らし、自分に厳しい訓練をかしました。それと私が憧れた人のことを調べると、ある古いゲームのキャラクターだと判明したのです。しかし、それが想像のものであろうと構いません。より彼を知るためにゲームを手に入れてやって役々目指すようになった。

 そして、結論は私には無理です。あんな近接戦闘の能力なんてありません。せいぜいが体内に回転軸を作り出すことぐらい……あれ、できそうです。ならば目指しましょう。

 徹底的に肉体改造と戦闘訓練を行います。"個性"の訓練も行います。ヒーローと(ヴィラン)の戦いに透視能力、千里眼で観測して(ヴィラン)の体内に回転軸を作って腕や手足を捻じ曲げて手伝ってあげたり、色々と頑張りました。コントロールのみすで(ヴィラン)が死んでも問題ありません。どうせ殺すのですから。

 刑務所などにいる(ヴィラン)を実験体にして脳の血管を破壊することを覚える次いでです。勉強したのですが、くも膜下出血という手段を講じます。ああ、それとあの吐き気を催す邪悪さんはさっさと死んでもらいました。心臓を含めたありとあらゆる臓器を歪曲させたので確実に死んでいます。後はドクターと呼ばれる人達もやっておきました。彼等は私が作る未来に必要ありませんから。

 

 

 数年の訓練と勉強を終えて十五歳になりました。私の身体はあまり成長せず、小さいままです。ですが、問題ありません。短く肩ぐらいの髪の毛にウィッグをつけてロングにして服装を整えて鍔の広い白い帽子をかぶります。そして、手には仕込み刀が入っている大きな錫杖を持ちます。

 ウェブカメラを用意して、椅子に黒い大きな兎のぬいぐるみをのせます。

 

「宣誓。私は(ヴィラン)の粛清を開始します。(ヴィラン)を滅ぼせないヒーローの現行制度に価値などありません。更に平和の象徴であるオールマイトは腹部に大けがを負っていてその活動時間もかなり少なくなっています。なにより諸悪の根源ともいえるべき存在を見逃しています。ですが、安心してください。彼やその手下は私がすでに粛清しました。嘘だと思うのなら○○市Nの8番地にいってみてください。

 以上の事から、私は私の正義の下に公平で安全な世界を作るために行動します。また、これを邪魔する者も等しく排除します。ヒーローの皆様におかれましては、止めたければ命を賭けて挑んできてください。以上をもって宣誓を終わります」

 

 変声器を使って録画したものを複数の海外サーバーを経由してから、インターネットに流します。同時に判明している(ヴィラン)の首を飛ばしてインターネットに罪状を乗せていきます。

 至る所で(ヴィラン)が死んでいきます。刑務所だろうと関係ありません。私の千里眼でみえるところは全て排除します。窃盗や虐めなど軽い犯罪は腕を折る程度で止めてあげますが、それ以外は等しく死刑です。

 次の日からニュースは私のことでもちきりです。

 

『緊急の報道です。犯行声明がでてから、死者が165人を超えました。またネット上に犯罪者とおぼしき者の名が実名で公表されるなど問題行動もおきているようです』

『まったく、驚きものですね。世紀の大犯罪者だ』

『しかし、庇護する声もおおいですね。不正をおこなった政治家なども複数死亡しています』

『いや、しかしですねえ……』

 

 ニュースを兎を抱きしめながらお菓子を食べてみています。ぼーとみていると、特別犯罪対策課という人がでてきた。

 

『私は彼女を必ず捕まえます。捕らえた(ヴィラン)を保護して……』

『ひぃっ!?』

 

 (ヴィラン)を保護するなんて許さない。お望み通り殺してあげました。そうしたら、なんだか変なことになりました。

 

『貴様が殺したのは犯罪者だ。そして、この映像が放送されているのは……』

「えい」

 

 とりあえず、透視したその対策室みたいな人達を殺す。

 

「大丈夫です。あなた達の思いは私が引き継いで必ず平和な世界を気付いてみせますから」

 

 目指すのは犯罪のない公平な世界です。そう、閣下が望んだ世界こそ素晴らしいのです。

 

 

 

 

 

 

 オールマイト

 

 

 

 

 

 動画にあった住所に直行すると、そこはおびただしい数の死体で溢れていた。ビルにいた全ての人が丸ごと殺されていたのだ。そして、その中にはオール・フォー・ワンが確かに存在した。

 

「オールマイト、どうだ?」

「確かにオール・フォー・ワンだ。間違いない」

「これからどうする?」

「きまってる。これをやった犯人を捕まえる」

「しかし、犯罪の件数は激減するだろう。なにせやったが最後、確実に殺される」

「確かにこの方法では相互監視による抑圧された世界へと変貌する。ましてやたった一人の正義によって執行されるのなんて間違っている」

「だが、君のことも暴露された。そのことから相手はおそらく、透視能力と切断系の"個性"をもっている。まあ、切断面が捻じれていることから色々とわかるが……」

「犯人はおそらく、彼女だろう」

「ああ、このような"個性"を持つ者のはかぎられている。日本人の"個性"を調べ、親族全てを遡ったら彼女が最有力候補だ。頼むよ、オールマイト。彼女もまた被害者だ。助けてやってくれ」

「任せてくれ。何、平和の象徴がいまだ健在だってことと、私が君を助けにきたってことをしっかりと教えてくるよ」

「ああ、頼む」

 

 さあ、少女を救いにいこう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ビルの屋上で生中継の準備をして、場所を送る準備もした。後は役者がくるのを待つ限り。日本中の犯罪者の首はほぼ全てかりとった。2562人。これが私がこの一週間で殺した人の数だ。反社会的な勢力も含めてその親族まで一掃した。こちらの準備が整い、監視していた彼がきたので私はライブ中継を開始する。

 

「みんな、こんばんはです。うさぎちゃんです。今日は肉声でのお知らせですよ。さて、日本から粗方(ヴィラン)を始末したので、最後の障害と決着をつけます。しっかりとみていってね。あと、戦う場所はここだから、避難をお願い致します」

「私がぁぁぁきたぁあぁぁぁぁぁっ!」

 

 ビルの屋上に空から大男が降ってきた。やってきたのはオールマイト。

 

「いらっしゃい、オールマイト。待っていましたよ」

「ふむ。これは……」

「平和の象徴を時代に繋いでもらうためにライブ中継しています」

「私がくることがわかっていたのか」

「そのために情報は残していました。そもそもばれないようにするのなら、"個性"を管理しているネットワークとかを破壊しますし、私の"個性"をしっている人は始末しています。そもそも私は、やっていることが間違っているとは思っていませんから堂々とします」

「浅上少女、君は間違っている」

「あなたの正義ではそうでしょう。しかし、私の正義では違います。そもそも正義は……」

「善悪ではない。人を殺すことが間違いなのだ!」

「しかし、ヒーローの現行制度では犯罪は減りません。また例え死刑にされるまで刑務所で過ごさせる税金がいくら無駄に消費されていると思うのですか」

「それは……」

「ましてや再犯の確率も高い。私の両親は出所した(ヴィラン)に殺され、私も酷い目にあいました。その後もです。しかし、ヒーローは何もしてくれませんでした。調べた限りでは、私のようなことが昔から何件もありました。ですが、いまだに改善されず政治家は自らの利権を貪っています。ならば一度リセットしてしまった方がいいでしょう」

「君は神にでもなるつもりなのか!」

「いいえ、私はシステムになるつもりです」

「なに?」

(ヴィラン)をただひたすらに殺し、大多数の人々の平和と幸せのための礎となります。これがもっとも効率的で犯罪の抑止力としては素晴らしいほど効果があります。誰も死にたくはないでしょうし、幸せになるために頑張ってくれるでしょう。それにオールマイト。人を数人殺せば殺人者ですが、数百数千人を殺せば英雄ですよ」

「それは戦時だ!」

「まあ、そんなことはどうでもいいのです。互いに思う事があるのならば、相手を撃ち滅ぼし我を通すまでです。私は私が望むよりよい未来平和のためにここであなたに消えてもらいます」

「ならば私は君をその絶望から助けよう」

「必要ありません。なぜなら、私がそう決めたのですから」

 

 錫杖で床を突き、自分の周りの空間に複数の回転軸を作成する。オールマイトの桁違いの速度に対抗するのには卓越した読みと罠で対抗するしかありません。ですが、勝ちはきまっています。なぜなら戦う前から勝敗は決しているからです。

 

「デトロイトスマッシュっ!」

「無駄ですよ、オールマイト。あなたの力は全てあなたに返ります」

「っぅ~~! 空間の歪曲だと……」

「私に曲げられないものなど存在しないのです。さようなら、オールマイト。いままでご苦労様でした。貴方が勝つには私を奇襲し、一切の躊躇なく殺すしかなかったのです。故にいったでしょう。現行のヒーローの制度では駄目です、と」

「ま、だ、だっ! 私はもっと先へ、更にその先へっ!」

 

空間の歪曲に乱れが生じました。オールマイトもやはり、私と同じです。だからこそ、私はあなたに勝ちます。

 

「よろしい。ならば私も付き合いましょう。私の限界もまだまだ先、いいえ限界などないのです! 私がそう決めました!」

 

 空間歪曲を力技で破ってきたオールマイトに私もさらに限界を超えて、オールマイトの速度で対応します。

 

「Plus Ultraaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」

「まだです!“勝つ”のは私です!」

 

 何度も気合と根性、執念と意志力で閣下のように限界を超えて覚醒し、互いの信念を通すために戦います。

 光のため、未来のため、自分以外の誰かのため、私がこれと定めた道をどこまでも雄々しく他者を轢殺しながら突き進むのですっ!

 

 

 

 

 

 

 



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歴史は進む

 

 

 

 

 

 

「なぜわからないのですかっ! この方法こそが唯一絶対の道だというのに!」

「間違っているからだ! 確かに君の方法で助かる人も増えよう。だが、同時に監視社会となりそこに自由はなくなる!」

「自由など人の迷惑にならない程度でいいのです。なによりも優先されるのは安全な安寧の社会です!」

 

 オールマイトの速さは凄まじく、歪曲が間に合わないです。錫杖でガードするも吹き飛ばされて屋上にある給水塔に激突して埋め込まれます。間に合わないのなら、その前に配置すればいいだけのこと。

 

「これで大人しく……」

「まだですよ!」

「くっ!」

 

 接近するオールマイトもとろも周りを歪曲させて下の階に落ちる。同時に諦めずに活路を見出す。意思の力で"個性"を強化する。透視能力の"個性"が限定的なな未来がみれる千里眼に相応しい力となりました。

 数秒先の未来をもとに複数の回転軸を設置します。しかし、これだけではたりないので、小さな回転軸を大きな回転軸とし、さらに立体的に設置することでオールマイトの速度に対応して自動発動させます。

 

「これで終わりです」

 

 オールマイトが立体式回転軸に入った瞬間、小さな回転軸が自動で発動して大きな回転軸も含めてすべて起動します。おかげで空間が軋み、威力はすさまじい破壊力になるでしょう。放置すれば空間に穴があきそうですが、同じ物を重ねて360°回転させれば問題ありません。

 

「これ、はっ! 400%のままでは無理だ。ならばっ、600%っ!」

 

 更にオールマイトの筋肉が盛り上がり、速度がさらに早くなりました。こちらも数秒先から数十秒先へと瞳を酷使して限界を乗り越えていく。

 

「はぁああああああああああぁぁぁぁぁっ!」

 

 回転軸を空間に設置する方法では間に合わなくなってきました。それにオールマイトの身体はどんどん巨大化していきます。こりもどんどん限界を超えていきます。そもそも私の力も最初は視界の中の物を大きくする小さなものでした。歪曲は鉛筆を捻じ曲げる程度でした。

 ですが、こうあると決めれて常に発動し続ければ全てがかわりました。今も力が増しています。オールマイトが速度をあげれば私も色々な速度が跳ね上がっていきます。

 

「君の"個性"は目に関するものでなぜ私についてこれるのか、不思議だね」

「精神力で全ては乗り越えられます。貴方もそうでしょう、オールマイト」

「まったくだね! ならば私も更にその先へと行こうか!」

「負けませんっ! 勝つのは私ですから」

「だが、この距離は私の領域だ!」

 

 接近され連続に殴られます。近距離戦では回転軸を作っても、オールマイトの一撃を防ぐには力が足りません。まるで拳が数百に分裂しているかのような攻撃を錫杖で必死に防ぎます。

 

「このまま押し切らせてもらおう!」

「まだですっ!」

 

 錫杖から高速で抜刀し、仕込み刀で斬りかかる。しかし、オールマイトは無視してきます。普通ならオールマイトの筋肉の鎧を通過できません。ですが、私ならできます。できるはずです。いえ、必ず成功させます。

 

「な、にっ!?」

 

 不正でいたオールマイトの拳が私の中に入ってすり抜けていきます。そして、身体が横に出た瞬間、オールマイトの腕の中にある仕込み刀を実態化して腕を斬り落としました。

 

「油断しましたね」

 

 斬り落とした腕から大量の血が噴き出し、私の白い衣装が真っ赤になります。振り返りながら反対側にある仕込み刀も抜き二刀を構えます。オールマイトは筋肉で止血してしまいました。

 

「透視能力を透過能力に強化したのか」

「そうです」

 

 これこそが閣下を目指すとき、あの放射能の能力の代わりに考えた能力です。閣下の力は防御を無視して内部から破壊します。それにかわるのは私の透視能力です。これなら相手の中までみれるのです。それを身体や身体の一部と認識している武器にも適応させてしまえば問題はありません。

 互いに相手の攻撃を避けながらも、相手を殺すために動く私と相手を生かしたままで捕らえようとするオールマイトでは力の性でています。この状況では私が有利ですが、こんなところで止まるつもりはありません。流される涙を笑顔にかえるのが私の役目であるがゆえに。

 

「君の考え方は早急すぎる」

「私の方法で人々の慟哭は終わり、民は笑えるでしょう。何時かではなく、今です。だいたい、ここ数年待ちましたが、なにも変わっていませんでした。だからこそ、私がやるのです」

「そんなやり方では敵をますだけだ。いずれ民衆は離れて死ぬことに……」

「いいえ、人々は悲しい過去を持つ者には同情します。さらにその者が必死に世界をよくする方に自らを犠牲にして働いていたら人はついてきます」

「何を……」

「オールマイト、反響がすごいですよ」

 

 空には多数のテレビ局のヘリが飛んでいて私達を映している。そして、その中には私の過去の情報を流しているものもあります。

 

「ああ、少しみてもいいですよ。休憩にしましょうか」

「じゃあ、お言葉に甘えようか」

「信じるのですか」

「ああ、君は信じられるからね。だが、これは……まさか……」

「そうです。私がされたこと、その映像をネットに流しました。大反響ですね」

 

 閣下と同じように行動だけで人をつけることはできない。あれは戦時であることも理由の一つでしょうが、この時代では(ヴィラン)を倒すことくらいでしかありません。ですが、それだけでは弱いのです。私には閣下のような信徒達がいませんから。

 

「浅上少女は自分のことをなんだと……」

「目指す頂きに到達するためなら、何を犠牲にしても進みます。自らの恥辱くらい曝すのにどうということはありません。その程度で民衆が味方になるのなら、容易いでしょう。みてください。世論も貴方ではなく私を押しています。そもそも大男が少女を襲っている映像にしかみえませんからね」

「ああ、これじゃあ私が悪役じゃないか」

「そうですね」

 

 私を庇護し、応援してくれる人と反対に批判してくる人は多いです。ですが、オールマイトを倒せばそれだけで問題ありません。民衆にとってどちらも正義の味方なのですから。

 さて、休憩はこれで終わりとしましょう。戦いを再開するとやはり片腕がなくなり、血を失ったせいで動きが鈍く……いえ、更に強くなっています。まるで命の灯を燃え尽きさせるように身体から大量の煙をだしながら戦っていきます。

 

「オールマイトっ!」

「くるんじゃないっ!」

 

 飛び出してきた人を庇おうとしてオールマイトが無謀に私に身体を曝すので、容赦なく回転軸を作ってねじ切ります。しかし、発動の瞬間に嫌な予感がして飛び退ります。

 次の瞬間には私の目の前が真っ赤な炎で染まり付くしました。床も溶けています。いつの間にか軍用のヘリがあり、そこから沢山のヒーローがオールマイトの盾になっていました。

 

「何の用ですか。邪魔をするなら排除しますよ」

「当然、邪魔をさせてもらう」

 

 どうやら、ヒーローの皆さんのようですね。どちらでもかまいません。邪魔をするなら排除するまでです。

 

「逃げるんだ!」

「遅いです」

 

 錫杖を鳴らすと同時に回転軸を作って発動する。オールマイトとの戦いで限界を超えた私はコンマ数秒で終わりました。全員の手足を叩きおり、地獄絵図です。しかし、誰も避けられないとは最初から心臓を狙ってもよかったかもしれません。いえ、さすがに一人だけは無事ですか。

 

「全身を炎に変えることで塞ぎましたか」

「厄介な能力だ」

 

 不定形の炎を歪曲しても意味がないですね。心臓すら炎にしてしまうとは驚きました。ですが、炎すら残らないように広範囲で消し飛ばせばいいだけです。

 

「エンデヴァー、皆を頼む」

「お前……」

「オールマイトっ!」

「緑谷少年。君は私の後継者、ヒーローになれる。いや、なるんだ。頑張ってくれよ、少年。ふんっ!」

 

 崩壊しかけていたビルを完全に破壊して他の人と私達とでわかれました。オールマイトの表情は死を覚悟したもののそれです。私達の足場は崩れて空中にいます。瓦礫を飛んで別のビルへと移ろうとするとオールマイトが襲い掛かってきます。

 二人で戦いながらビルや空気の壁を蹴って垂直に駆けあがったりして、激しい戦いを繰り広げますが、死ぬつもりで全てを出し切ってくるオールマイトは流石に強いですね。

 

「はぁああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 ビルの屋上で放たれたオールマイトの全身全霊を受けた一撃は音を、光を置き去りして迫ってくる。これは確実に死ぬでしょう。ですが――

 

「まだっ、ですっ!?」

 

 ――私の視界は光に飲まれて吹き飛ばされました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 緑谷出久

 

 

 

 

 浅上史奈が巻き起こした事件から一年。崩壊したビルの屋上には立ったままで拳を振りぬいたオールマイトの死体が見付かった。しかし、浅上史奈の姿はなく、あったのは彼女の片腕と刀だった。オールマイトの死は悲しいが、それよりも日本が内戦状態になったことだ。

 浅上史奈が(ヴィラン)を虐殺したことにより、抑圧された(ヴィラン)がいっきに爆発したのだ。一等、犯罪件数が一桁だったのが浅上史奈が現れるまでの数倍になってしまった。その時から浅上史奈の意思を継いだ者達がでてきた。

 

『なぜわからない! 彼女のとった道こそが唯一絶対の道だということを!』

 

 すぐにデモがおき、それを(ヴィラン)が襲撃した時……世界は殺戮の嵐が巻き起こった。その事件をきっかけにして東西に分かれて争いがはじまった。その争いは激化の一途をたどった。当然、政府やヒーローは鎮圧に乗り出したが、軍やヒーローの中でも別れていてさらには一部の人達が離脱して結成した組織が桁違いに強かった。そもそも相手は容赦なくこちらを殺しにくるのにヒーローはその縛りをとることができない。軍には関係ないが、ヒーローだけはその思想にそまるわけにはいかないのだ。

 

「オールマイト、これからボク達はどうすればいいんでしょうか……」

 

 オールマイトのために作られたお墓の前で手を合わせる。僕は掃除をするために綺麗にするために水を汲みに行ってもどってくると少女がオールマイトの墓の前で立っていた。その少女はオールマイトの墓に献花をささげた。

 

「おまえは、いきて……」

「ああ、あなたはオールマイトの弟子でしたか。私が生きていたのは不思議ですか?」

「当然だ! オールマイトが死んだのになんでお前だけっ!」

「決まっています。それが民の意思だからです。それと私は死んでいました。ですが、民の願いによって蘇っただけです」

「そんな馬鹿な……」

「どちらにしろ、私の勝ちです。オールマイトと私の一時の死によってできた空白期間は世界の不条理を知るには十分だったでしょう」

「まさか……全て計画した行動だったのか!」

「当然です。オールマイトはあの場で死ぬのはわかりきっていました。ならば次に繋がる手を打つのは当然です」

「なんでなんだよ! どれだけの人が犠牲になっていると思っているんだ!」

「必要な犠牲です。故に彼等の思いは全て私が背負っていきます。より良き未来のために」

 

 何も変わっていない。まるでオールマイトの戦いが無駄であったように。

 

「史奈様。お時間です」

「これから世界を平和な停滞の時にしちゃおう」

 

 いつの間にか彼女の背後には軍服姿の指名手配犯が集まっていた。彼女達こそ、(ヴィラン)殺戮派の者達だ。

 

「前は一人でしたが、次は頼もしい仲間がいます。ですので、ここで改めて宣言しましょう。我々は平和で安寧な世界をオールマイトのかわりに作り上げてみせます。ですから、ゆっくりとおやすみください。あなたの意思も引き継いで先ヘ進みます」

「ふざけるな! オールマイトを殺しておいてっ!」

「文句があるのなら、何時でも殺しにきてください。私は逃げも隠れもしません」

「もう時間だから、私が相手をしているよ」

「では、後は頼む。お嬢様、こちらへ」

「わかりました」

 

 浅上史奈が去ろうとして、ぼくはフルカフルを使って全力で攻撃する。だけど、赤い髪の少女が立ち塞がってその子が僕に触れると急に身体が重くなった。足元をみると無数の影が僕にへばりついていた。

 

「ひどいな~お姉さんを無視して別の女の子にちょっかいを出すなんて、傷付くよ?」

「っ!? はなせ!」

「どうやら、史奈ちゃんに御熱みたいだね。でも、それ私がもらっちゃおうかな」

「んんんんんっ!?」

 

 その女の子にキスをされて口内を舐めまわされた。

 

「ふふふ、ごちそうさま。じゃあね、少年。次は食べちゃうからね。それとも停滞した世界でゆっくりととろとろ溶かしちゃおうか」

 

 その少女は影に包まれて消えていった。後は誰もいなかった。しばらくして効果が溶けたのか、僕は倒れた。浅上史奈どころか、その手下にも手も足もでなくてくやしくて涙が溢れてくる。

 

『まあ、手ごたえが変だったから生きているとはおもっていたけれどね。これはやられてしまったね』

「え?」

『相変わらず泣き虫だな、緑谷少年』

「オールマイト?」

『そうだ。君の中に入っているワン・フォー・オールの残滓さ。そして、オール・フォー・ワンの力の一部かな。彼の執念ともいうべきかな。君にこの力を残すそうだ』

「オール・フォー・ワンの……」

『まあ、そんなものはどうでもいい。それで緑谷少年はこのままここでなげいているのかな?』

「いえ、僕はオールマイトの後継者です。だから、浅上史奈を止める!」

『では、私達もいこうか』

「はい!」

 

 絶対に負けられない。このまま彼女のすきにはさせない! 絶対に勝つ!

 

 

 

 

 

 

「遅かったですね。何をしていたのですか」

「もうはじまりますよ」

「ふふふ、ちゃんと計画通りにしてきたよ。でもえげつないね」

「私が悪の天敵になるためには必要なことです」

「そもそも史奈様に逆らう者など死刑でかまわぬだろう」

「三日以内に日本を完全制圧し、治安を回復します。はじめますよ」

「「「「はっ!」」」」

 

 

 

 

 三日後、政府は崩壊し、新しい政府がたった。日本は表向きは平和になり、反乱分子は他国に潜った。こうして日本は新時代の時を告げる。

 

 

 数年後、舞い戻ってきた緑谷出久は浅上史奈にせまり、オールマイトの仇をとろうとする。復讐劇の幕が上がる……かもしれない。

 

 

 

 

 



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3話

 

 

 さて、私は閣下にはなれませんでした。流石はオールマイトです。平和の象徴と言われるだけはあります。

 

「それで、あなたの弟子はどうですか、オールマイト?」

「全然駄目だね。なぜ偽物だとわからないのだ、少年。私がそのようなことを言うはずないというのに……」

「幻影に完全に囚われてしまいましたね」

 

 ここは死後の世界といったところでしょうか。いえ、空間と空間の狭間かもしれません。オールマイトは死んだはずなのにこちらにいます。

 

「というか、君の方はどうなんだい?」

「誰ですか、アレ。認められるはずないでしょう。だいたい、私のクローンどころか、娘のDNAを使って整形して調整したのが彼女ですよ」

「娘か」

「ええ、放置した死体を回収でもされたのでしょう。ああ、口惜しい。ここから攻撃できれば即座に殺しているのですが……」

「君が空間を捻じ曲げたせいだろう」

「いえ、あなたが空間を破壊したせいでしょう。というか、なぜあなたがここにいるのですか? 死人のくせに」

「はっはっはっ、私の個性はどうやら死んだ後に発動するようでね。端的に言えば君に憑りついた」

「ちっ」

「舌打ちかね!」

「正直言って、女の子に憑りつく中年男性って気持ち悪いです」

「OH」

 

 泣き崩れるオールマイト。でも、その通りでしょう。ましてやトゥルーホームとかいうのですから。

 

「むしろ、あなたが彼に憑りついたらいいじゃないですか」

「それができなかったのだよ。私が死んだときには君しかいなかったしね」

「はぁ……払えませんか」

 

 試しに歪曲させてみるけれど、駄目でした。

 

「さて、このまま世界を観測していてもいいですが……」

「私は元の世界に戻りたいのだが……」

「試してみますか。どうせどうしようもないのですから」

 

 この空間を……時間を……世界を歪曲させて捻じ曲げる。しかし、力が足りません。

 

「オールマイト、力を貸してください。ゴーストならできるでしょう」

「うむ。頑張ってみようか」

 

 かなりの時間、頑張ってみると世界がねじ曲がって道ができました。お蔭で道ができた。そのまま進んでいくと私達は元の世界に戻れました。ただし、時間軸は違うようでした。

 その世界に到着すると同時に私達は別れました。どこにどうなったのかはわかりませんが、私は気が付けば両親の葬式にでていて、あの親戚に引き取られて犯される寸前になっていました。

 

「……」

「史奈、たっぷりと可愛がって……」

 

 圧し掛かってくる男の両手両足に瞬時に回転軸を作って、捻じ曲げようとするとその前に壁が吹き飛んで親戚が殴りとばされました。

 

「はっはっはっ、私が来たぞ!」

「……」

 

 白けた表情をしていると、オールマイトはさっさと男を拘束していく。私はまとめて回転軸を作ろうとすると、オールマイトは裏拳で回転軸を叩き壊してきました。

 

「どうやら、私達は時間が戻り、この時間軸の私達に憑依して融合したようだ。そんなわけで、史奈少女よ。君は私が責任をもって矯正すること我々ワン・フォー・オールの会議で決定した」

「待ってください。なんですかそれは……」

「私の個性で先輩方を呼び出せることが判明したのだよ。こんな風に」

 

 複数の幽霊が現れて、私を囲ってくる。この人達には回転軸がききません。私の天敵です。今はまだ。

 

「いいでしょう。どうせ私とあなたは平行線です。矯正できるものなら、矯正してみてください」

「任せたまえ……って、何をしているのだね!」

「いえ、いらない瞳を取っただけです」

 

 自分の両目を抉りだし、失明させます。これで私は少なくとも千里眼の個性を使うことに文句はいえません。それにこれで強化できるでしょう。

 

「私の"個性"を封じられると思わないことです」

「君という奴は!」

 

 私を抱えたオールマイトが走り出していく。そして、病院に運び込まれました。その後、私はオールマイトの養子みたいなものにされました。保護者といったところですね。しかし、オールマイトみたいな忙しい人に子育てなんてできません。では、どすするかというと、この人……あっさりと解決しました。

 

「師匠、お願いします」

「任せなさい」

「……」

 

 それは前のワン・フォー・オールの人達におもりや、自分の代わりに派遣することで解決しました。私は頑張ってゴーストを出し抜こうと思いましたが、単純に考えてオールマイト数人であり、鎮圧されてしまいます。

 ここから幼い私の苦渋に満ちた生活が始まりました。ヒーローなんて嫌いです。大っ嫌いです。仕方ないので資金を稼いで、戦う準備をします。今度は失敗しないように。稼いだお金であのゲームを買ってやってみたら、閣下が負けて、その次の作品で閣下を作る計画とかがありました。まるで、あの話のように進んでいるようでした。私は閣下ではなく、どちらかというと眼鏡さんの方でした。

 そこで改めて考えました。寄り道をしてみようと。その会社の作品を調べていくととあるゲームがありました。それは人の領域を超えた魔法使いの騎士団です。なら、今度はこちらを目指しましょう。一人では無理でした。なら、仲間を集めるのも必要です。今は雌伏の時としておきましょう。

 まずはインターネットで情報屋をすることにしました。私の千里眼なら、情報なんて仕入れ放題ですからね。それを使って色々とやりました。ええ、色々と。数年すれば政治家からも頼られる情報屋です。

 しかし、それも数年でやめさせられました。というのも、オールマイトにあのゲームがばれてパソコンごと没収されたのです。なにせ、年齢制限があるのですから。

 

 

 

 



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4話

 

 

 

 私は浅上史奈から、八木史奈に変わって数年。パソコン取り上げられ、カウンセリングを受けさせられた私は普通の小学生としての楽しい生活など……ありません。

 私はやはり世界を平和にするために行動します。私は私でしかありませんから。

 

「ただいま!」

「お帰りなさい、オールマイト」

「この姿なんだから、パパとかお父さんとかいってくれないかな?」

「拒否します。そんなことよりも、パソコンを返してください」

「駄目だよ。また年齢制限のゲームをやられたらたまらないからね」

「わかりました。それはしませんのでインターネットに繋がったパソコンと口座を作ってくれればいいです」

「だが、それは……」

「これが拒否されるのなら、前と同じように戦いますか?」

「それは困る。いいだろう」

「それと欲しい物があるんですが、いいですかパパ」

「いいだろう!」

 

 どうにか許可をもらえたので、オールマイトのカードを貰って買い物にいく。買うのは高性能なパソコンと私の口座を開設。家に戻ったら一室を私専用の部屋とします。

 高性能パソコンを使って、情報屋として集めた電子マネーを全て株に変えて自分の口座を登録する。ここからは全力の戦いです。日本をふくめて他の国の内部情報を引き抜いて、貨幣トレードや空売りなどをして資金を増やしていく。

 一週間で五百万、二週間で一千万、三週間で八千万。と、どんどん増やしていきます。

 額がどんどん増えていくのは日々扱う金額が増えていくからです。世界中の情報を集めるために千里眼の訓練にもなりますし、世界平和のためにも使えます。匿名で(ヴィラン)の通報をしたり、他国に干渉したりします。歪曲の方も空間と空間を歪曲させて繋げる方法を試したりもしています。

 こんな感じで私は10歳の時にパスポートを取り、オールマイトを説得してドイツに渡りました。ドイツで飛び級をして会社を作り、アメリカに渡り、こちらでも飛び級をして会社を作り、お金を盛大に稼ぎます。それとアメリカではヒーロー免許や教員免許など色々と取りました。お金の力で色々と手続きをして、家庭教師をつけて勉強をすれば楽勝です。千里眼を広範囲で使っているせいか、情報処理能力や記憶能力はかなり高いのです。カンニングが必要ないほどです。

 ドイツとアメリカで優秀な人材やホームレスの人達などを優先的に雇用して、その能力を活かせるように教育させていきます。邪魔をする人達は徹底的に調べて排除します。

 こんなことをしていれば、さすがに二年でばれて日本に呼び戻されました。一応、監視はされていますので。

 

「史奈少女、君が人を殺すなど犯罪をしないことは喜ばしい。だが、これはなにかな?」

「なんですか?」

 

 聞いてみると、テレビでやっていた資産家ランキングの上位に私がいました。毎日欠かさずお金を動かして増やしているので、既に個人資産が日本円で兆を超えました。本当に千里眼は便利です。例えば違う場所で不足している物資があることがわかれば、それを別の溢れているところで購入して空間と空間を歪曲させて運び込み、それなりに高値で販売します。

 それをするだけでも儲けは大きいです。ちゃんと国外にでてから、相手の国内に入るので税金も支払っていますよ。

 それと犯罪行為をしている会社は叩き潰して、こちらが買収しています。もちろん、利益がでそうな会社も買収しています。

 

「稼ぎました」

「稼いだってレベルじゃないだろう!」

「個性の強化をするついでですよ」

 

 引き抜いた瞳は会社で開発させた高性能量子コンピュータを用意して、義眼タイプとして両目に埋めこんでその上からカバーをつけています。

 

「それにお金は私の目的には必要なのですから、集めるのは当然です」

「目的?」

「はい。あなたはいいました。犯罪行為は駄目だと。でしたら、ヒーローが(ヴィラン)を殺す許可を法律で与えればいい。そうですよね?」

「それは!?」

「そのためのお金です。まずは政治家を私の支配下に置きます。すでにドイツはほぼ完了し、アメリカは約三割が私に従うようにしました。政治家というのは弱点が多いですからね」

「史奈君っ!」

「私は間違ったことはしていません。オールマイトが言ったとおり、犯罪でなくしてから世界そのものを改変します」

「師匠……」

 

 先代はやれやれといった感じです。ヒーローの方々はパソコンとかあんまり得意ではないので、いくらでもやりようがあります。

 

「よ~し、史奈君。やっぱり学校にいこうか!」

「え、嫌です。ドイツとアメリカでちゃんと卒業してきました」

「日本で頼むよ! だいたい、日本では義務教育があるんだ!」

「国籍、日本から移しておきます」

「駄目!」

 

 その後、数日間話し合っても平行線でした。仕方ないので他の人も入れて話すことになり、オールマイトがこれから働くことになる雄英高校の校長と話して、私は雄英高校に入ることになりました。生徒兼パパの補助として。

 

 

 

 雄英高校に入る前にアメリカでとったヒーロー免許。これを日本でも適応させます。これなら私が個性を使って(ヴィラン)を倒しても問題ないからです。申請して、政治家の人や他の人に献金をしてさっさと通させます。

 それとドイツから人を寄越してもらいます。名前はルサルカ。シュヴェーゲリンではないけれど、あの世界でみた幻術使い。彼女はカウンセラーとして幻術を駆使して働いていたので、私専属として引き抜きました。

 さて、私は一年A組らしいのですが、試験は受けました。でも、街一つを歪曲させて中にある物全てをねじ切ってあげました。

 開始数秒で終わり、やることがなくなったので残り時間は会社の仕事をしますが、パパに怒られました。げせません。

 ちゃんと言われたとおりに手加減しましたよ。空間を歪曲させてブラックホールみたいな物を発生させたわけではないのですから。

 

 

 

「パパ、入学式が楽しみだなあ」

「え、でませんよ」

「何言ってるんだい!」

「いえ、普通に仕事です。今からドイツにいって商談をしてきます」

「まてい!」

「やめてください。数億円規模の取引なのですから」

「会社は部下に任せなさい! それに電話でいけるということを秘書の人から確認しているさ! というわけで、強制連行! あ、敷地内からでたらわかるからね」

「ちっ」

 

 

 

 連れていかれた雄英高校。私は屋上にでてノートパソコンを開いて仕事をします。恰好は制服ではなく前に使っていた衣装です。免許を持っているので問題ありません。

 

「では、これより会議をはじめます」

 

 テレビ電話で会議を行い、日本の会社の買収を進めていきます。それととある企業を暴落させたりもします。あの眼鏡さんをみつけてスカウトしておきました。とっても便利です。私のクローンとか作られ、無辜の民が犠牲になる戦争をされては困りますが、コントロールすればいいだけです。

 

 

 

 

「八木史奈はどうした?」

「その席ですか?」

「きていませんね」

「……校内にいるのは確定か。お前達は着替えてグラウンドにでておけ。俺はサボってる餓鬼を連れてくる。本当は退学にしたいんだが……」

 

 

 

 学校内を探索して家に帰ってから料理を作ります。帰ってきたオールマイトは怒っているようです。

 

「どうしましたか?」

「君、授業を一切でていないだろう!」

「でる必要はありませんので」

「意味ないじゃないか!」

「いきたくないですし」

「よ~し、明日は無理やり連れていく」

 

 

 

 というわけで、私は次の日から片腕に抱えられて登校と学校で過ごすことにされました。まあ、逃げるんですけどね。しかし、残念ながら午後の授業は逃げる前に捕まりました。イレイザーヘッドとオールマイトの二人がかりは卑怯です。

 

「私が普通にやってきた!」

「シルバーエイジの……ていうか、抱えているぐるぐるまきの幼女は?」

「えっと」

 

 ふむ。ここはおちゃめに遊びましょう。

 

「たっ、助けてください! 誘拐されました!」

「なにをいって」

「この人はオールマイトじゃありません! 偽物です!」

「いや、本物じゃ」

「本物だよ!」

「よく考えてください。本物がいやがる幼い少女を縛って運びますか?」

 

 悩んでいますね。しかし、これがヒーローの卵ですか。駄目ですね。

 

「それは……」

「風評被害をうけるからやめたまえ」

「離してくださいっ! いやぁっ、犯されますっ! 売られますぅ!」

「しないから! あ、本当だよ」

「と、とりあえずはなしてあげればよいのでは?」

「ああ、彼女は離した瞬間に逃げるからね」

「どうでもいいですが、帰っていいですかね?」

 

 イレイザーヘッドが隣にやってきます。

 

「臭いです。近付かないでください」

「あっ? 除籍にするぞ」

「やれるものならどうぞやってください。変質者」

「ちっ」

「駄目だよ。除籍にしたら大喜びするだけなんだから。そして、世界征服に乗り出しちゃう」

「失礼ですね。すでに乗り出しています」

「不条理な。どうにかできないんですか?」

「常に"個性"を消し続けないと無理だね。私が彼女を気絶させる間に被害は甚大なことになるだろう」

「あの、その子は……?」

「ああ、そうだね。ほら、自己紹介しなさい」

「浅上史奈です。この人に誘拐されて、無理矢理養子にされました。よろしくはしなくていいです。あなた方に興味なんてありませんし、障害にもなりえないでしょうから」

「あんだと!」

 

 イレイザーヘッドの瞳が閉じた瞬間に空間を歪曲して転移します。オールマイトの腕から抜け出して隣に立ちます。

 

「史奈少女、まじめに頼むよ。食堂で奢るから」

「お金はいっぱいあります」

「なら、どこかに出かけよう。仕事なしで」

「仕方ないですね。遊園地で手を打ちましょう。いったことありませんし」

「うむ」

「遊園地とか可愛いっ!」

「話が終わったようなので、私は戻りますよ」

「ああ、ありがとう。さて、改めて彼女は私の義理の娘で、私のサポートをしてもらう。アメリカなどで飛び級してヒーロー免許も習得している。君達の先輩だ。仲良くしてあげてほしい」

「「「はい」」」

「別にいりませんよ。それよりも、一応、私は教師扱いですよね?」

「そうだね」

「そうですか。なら、このクラス全員除籍です」

「「「「ちょっ!」」」」

「な、なぜだい?」

「いや、幼い少女が助けを求めてるのに挑みも動きもせずに混乱してばかりでした。ヒーローが過ちを犯さないとでもおもっているんですか? ヒーローは助けるのが仕事でしょう。以上のことから、資格なしと判断しました」

「いや、ね?」

「ヒーローなら、とりあえず助けてから話しを聞くべきです」

「ふざけんなっ!」

「ふざけていません。本気です」

「はっはっはっ、残念ながら史奈少女にはその権限はないね。あくまでも、サポートだから。生徒でもあるし」

「そうですか。非常に残念です」

 

 席に座ってノートパソコンを開いてお仕事を開始します。外野は無視するので、ヘッドフォンをつけます。ですが、ノートパソコンとヘッドフォンをとりあげられました。

 

「さて、今日は戦闘訓練をしてもらう。ちなみに史奈は参加禁止だ。君がやったら、全員でも瞬殺だろうしな」

「そんなわけねえだろ!」

「いくらなんでも全員でなんて……」

「ここにいる全員を無力化するのに何秒いる?」

「秒じゃ無理ですね。オールマイトの無力化は前の再来になります。やりますか?」

「ああ、前提条件が違う。私を除いてだ」

「それなら三秒以内に全員の手足をねじ切ってみせます」

「おや、落ちてないかい?」

「全力じゃありませんからね」

「嘘だ!」

「それが嘘じゃない。彼女は本当に私クラスの実力者で、戦えば今なら私が勝つがね!」

「オールマイト数人とか反則です。それよりも授業時間がおしていますよ」

「そうだった。みんな、着替えて移動するよ」

 

 私も錫杖をもって移動します。戦闘訓練らしいので、一人でオールマイトの幽霊と戦って訓練します。空間ごと歪曲しても駄目なので、もっと霊的な存在にダメージを与えなければいけない。そのためには時間も歪曲できるようにならなくてはいけない。相手の時間を巻き戻して肉体が戻るまでしたら殺せそうですし。もしくはワン・フォー・オールそのものを歪曲するかですね。

 幽霊さんとの殺し合いはとても楽しいです。何度も限界を突破しないと駄目ですから。オールマイト級を数人相手なのだから、とてもためになります。

 

 

 



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