仮面ライダーリュウガ ー無限の鏡界線ー (人類種の天敵)
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仮面ライダーリュウガ

どうも、人類種の天敵です。
今回は以前から書いていた小説を設定とかちょこちょこ変えて新しく書き始めました。
前のよりももっともっと面白い言っていただけるように頑張ろうと思います まる


 

 

白騎士事件、それは長い間平和を享受していた日本を襲った事件だ。

空を埋め尽くすミサイル群、空を見上げた人々の目に浮かんだは光景は底なしの絶望か。

 

しかしその刹那、空を裂くように飛来し、ミサイルを切り落とした存在がいた。

 

ーーー白騎士。

 

両手に構えた剣で持ってミサイルを斬り伏せる、白い鎧に身を包んだ純白の戦乙女。

 

その後、最後のミサイルを墜とし、直後に襲来した各国の戦闘機を撃退した白騎士は終始言葉を放つことなく空の彼方へと姿を消した。

 

 

 

 

ーーーー以上が因不明の天災のシナリオであり、「白騎士」と名乗る人間の、戦いの結果である。

 

この出来事に……正義は……無い。

 

其処にあるのは純粋な願いだけである。

 

その是非を問える者は―――――。

 

 

 

「下らねえ」

 

グシャリ、一息に握り潰した新聞紙を、黒髪の少年は両手を使ってくしゃくしゃに丸め込んだ。

ふん、と詰まらなそうに鼻を鳴らして近くのゴミ箱に乱暴に突っ込み、両手をポケットに差し込むと、どこを見るでもなく人混みを歩き出す。

 

「………腹減った」

 

気怠げに少年は言った。

烏の濡れ羽色を思わせるボサボサの黒い髪と、開くにしても辛そうな二重瞼はとても眠そうに、そして随分憂鬱そうに爛々する瞳を覗かせている。

少年の上下の格好はダボついた黒ズボンに草臥れた黒いパーカーで、グギュルルと鳴るお腹に手を当てて眉間に皺を寄せる姿は、傍目にはホームレスそのものだ。

 

「飯、飯、飯」

 

クンクン鼻を動かして餌を探す様は残飯を漁る鴉にも、縄張りを練り歩く野良犬にも見えるて仕方ない。

しかし少年の眼に飲食店の店頭に置かれたショーケース内に置かれたリアルすぎる食品サンプルは写っていないのか、あちこちと眼を動かしては混雑した雑踏の中を歩いていく。

 

「くんくん、くんくん」

 

キィィィィン

 

「くんくん………くん」

 

耳障りな不協和音、それが響くと同時に少年の鼻が止まる。

少年はふと足を止め、次いで眠たげな瞳を大きく見開くと、その端正な表情はニヒルな笑みで歪められた。

 

見つけた(・・・・)

 

とても嬉しそうに笑顔を向けたのはとあるゲームセンターの窓ガラス。

鏡面に反射する人混みの中、少年はあくまで〝異質〟であり、〝異物〟で、〝異常〟であった。

鏡に映る彼の眼は煌々と赤く輝き、その瞳はしっかりと獲物を見定めていた。

 

「餌の時間だ」

 

ーーーグゴガァァァァァァ!!ーーー

 

散歩にでもいくような調子で少年は告げる。

途端、咆哮とでも言うのか、思わず耳を防ぐほどの激しい音が鳴り響き、通行人達は一瞬顔を顰めた。

 

キィィィィン

 

いつの間にか少年の姿は見えなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁはぁ」

 

夕暮れに差し掛かった路地裏を一人の少女が走っていた。

ビリビリに切り裂かれた白い学生服、それは世界的なIS操縦者の教育機関、IS学園の在学生だと示すものだった。

 

『キキキキキキ』

 

「はぁっ、はぁっ、ひ…!」

 

IS学園の一年生、夜竹さゆかは路地の壁を跳ねつつこちらへ近づいてくる影に怯えの表情を見せる。

 

『キャーキャッキャッキャ!』

 

少女の怯えた仕草が琴線に触れたのか、影は楽しそうに奇声を上げる。

その鳴き声に夜竹さゆかは更に顔を歪ませると、路地裏の奥へ奥へ逃げ出そうとしてアスファルトの歪みに足を取られてしまった。

 

「あ……」

 

膝から地面に倒れる。

とっさに庇った右腕のおかげで負傷も軽く、素早く立ち上がることができたが、転んだ際にアスファルトにぶつけた膝頭と右腕がズキズキと痛み出し、少女の行動を抑制していた。

それに加えて未だに少女の頭上を占拠している影は拍手喝采を繰り返しながら少女の逃避行を見物している。

痛む傷口に喘ぐ少女、彼女はもしかすると自分は今日死ぬのかもしれないな、と漠然とした死を意識した。

 

(ああ、私、死んじゃうのかな)

 

夜竹さゆかは平凡である。

学力ではどんなレベルのテストでもそのレベルに合わせた平均点を取り、極々普通の趣味嗜好、良くもなく悪くもない運動神経、早くもなく遅くもない判断力と、良いこともあれば悪いこともあった人生と、何処にでもいる平凡な少女だった。

 

(それが、超難関って言われるIS学園の受験に受かって……すごく嬉しかったのにすぐこれだよ)

 

良いことがあれば悪いこともある。

夜竹さゆかにとってのそれは、IS学園に合格して入学式の当日に得体の知れぬ存在に襲われたことだった。

 

夜竹さゆかの脳裏をふと、人生の走馬灯がよぎって行く。

両親と自分、楽しかったこともあれば辛く、泣いたこともある。

 

(こんな……こんなの、あんまりだよ)

 

これまでも、そしてこれからも平凡に、普通に生きて行くのだと思っていた。

普通に好きな人が出来て、結婚し、子供を産んで、育んでいく。

しかし、自分にはもう、その平凡な未来は、恐らく無い。

必死の逃避行の果てに疲れ果てて崩れ落ちた夜竹さゆかの目の前に、その影は降り立った。

顔を上げると、この世のものとは思えない形相と風体の生き物が夜竹さゆかをニヤニヤと見下ろしていた。

 

ああ、本当に死んでしまう。

 

観念したと共に夜竹さゆかの体が粒子となって少しずつ消滅していく。

 

 

(やだなぁ。あぁ、いやだ)

 

そして最後に死がやって来るのなら、

 

例えば、そう。

 

まるで絵本に出て来るようなーーー、

 

 

(白馬の王子様が現れてくれたなら)

 

 

きっと、彼女は恋に落ちるだろう。

 

無論、彼女はそんなことが現実に起こるはずなど無いと知っている。

 

日本の都会の路地裏に、白馬に乗った何処ぞの王子がいるはずなど無いと。

 

 

『キャキャーーー!!』

 

 

理想と現実は違う。

 

 

白馬も、王子様も、此処にはいない(・・・・・・・)

 

 

『ーーーはっ!』

 

『キャギャーーー!!?』

 

 

此処は(・・・)決して現実では無い(・・・・・・・・・)

 

 

「………………………え?」

 

 

此処は現実世界には見えない表裏が混在する世界。

 

此処は鏡合わせの世界、全くの別物、恐ろしい怪物たちの住処。

 

此処に、絵本に出る白馬の王子様など存在しない。

 

『……ふん。痩せこけた猿が1匹だけか』

 

『グォォォ』

 

『……分かってる、ドラグブラッガー。こいつの魂じゃ、腹は膨れない』

 

艶消しされた漆黒の甲冑、それは極限まで無駄を削ぎ落とした黒い騎士の様相を見せていた。

兜には黒龍のエンブレムが刻印され、複数のスリットからは血のように赤い吊り目がちの瞳が2つ、底冷えする感情を痩せ干せた二足歩行の猿に向けている。

 

(絵本みたいな……白馬の王子様じゃないけど……なかったけど)

 

夜竹さゆかは何処にでもいる普通の女の子であるが、裏表が反転し、異常が跋扈するこの世界において、普通とは異端(イレギュラー)でしかない。

それも、世界最難関のIS学園に合格し、異形の怪物によって不思議な世界に誘拐され、生と死の瀬戸際で黒龍の騎士に、黒騎士に遭遇してしまうような普通は。

 

だからこそ、夜竹さゆかは目の前の黒騎士に心を奪われたのだ。

 

美しく綺麗な白馬では無い。

其れは雄々しく力強い黒龍。

 

お姫様の危機に颯爽と駆けつけるような王子では無い。

其れは己の飢餓と欲望を満たすために戦い続ける騎士。

 

『ただ、腹が満たないまでもオヤツにはなるだろう?』

 

『グガァァァァァァァァァァァァァ!!!』

 

『キャーキャッキャッキャィィィィィィ!!!』

突然の乱入者に痩せこけた猿が激怒する。

口から大量の涎を振り落とし、ギョロギョロと血走った目で黒騎士と少女を見、聞くに耐えない絶叫と共に地団駄を踏む。

さながらチンケな悪役が主人公に対し名を名乗れと喚くようにも見て取れるそれに対し、黒騎士は静かに俯かせている面を上げた。

 

『………仮面ライダーリュウガ』

 

黒龍を従えた黒い騎士

 

その騎士の名は、仮面ライダーリュウガといった

 

 

『キキャーーー!!』

 

仕掛けたのは、猿型の怪物〝クレバーモンキー〟いつの間にか手に持っていた小石をリュウガに向けて複数投擲した。

 

『Sword vent』

 

『その程度か?』

 

しかしリュウガは虚空から出現した剣〝ブラックドラグセイバー〟の柄を握ると飛来する投擲物を瞬く間に切り落とした。

たった数度剣をふるっただけで分かるリュウガの実力にクレバーモンキーは動揺して後ずさる。

リュウガはブラックドラグセイバーで空を斬ると、たじろいぐクレバーモンキーへ勢いそのままに突っ込むーーー、

 

『………ほう』

 

ーーーーしかし、リュウガは右足で地面を踏んだ直後にピタリと動きを止めた。

訝しむクレバーモンキーを尻目にゆっくりと顔を上げて赤い吊り目を細める。

 

リュウガの視線の先には、細長くぺちゃんと潰れた黄色い皮が幾つも配置されていた。

 

ーーーーーバナナだ

 

『石飛礫を飛ばすと同時に罠を配置する。……案外器用だな』

 

そんなバナナ。

否、クレバーモンキーは己が投擲した礫をリュウガが弾き落とすのを予測して礫を投げると同時にバナナトラップを仕掛け、礫を弾き落としたリュウガの突撃をそのままバナナトラップの餌食にしようと画策していたのだ。

 

恐らくこのままリュウガが突っ込んでいれば彼はすってんころりんと地面に転び、無様な醜態をクレバーモンキーに見せつけていた事は想像に難く無い。

そして小ダメージも喰らっていただろう、ほんのちょっとだけ。

 

『ウッキャッキィーー!!』

 

目論見がご破算に終わり、短気なクレバーモンキーは逆上して自らリュウガに襲いかかった。

その両手は自家製の糞を握り万歳している。

 

『クソ猿』

 

『Advent』

 

『グゴォォガァァオオオオオオオ』

 

『ウキャァァァ!!?ーーーギャッ!!』

 

上空から黒龍が尻尾を振るう。

リュウガに飛びかかろうとしていたクレバーモンキーは回避することが出来ずドラグブラッガーの尻尾ごとコンクリートにめりこんだ。

 

ピクピク痙攣するクレバーモンキーはそのまま光の粒子と消え、粒子の中心にはサッカーボール大の球体が現れる。

 

『グゴォゥ……』

 

光の粒子、ミラーモンスターが持つ生命エネルギーを捕食したドラグブラッガーは2度3度粗食すると不満げに唸った。

痩せっぽちのクレバーモンキーでは腹も満たされず、かといって味も悪い。

量も質も悪いクレバーモンキーの魂では上品なお嬢様の舌を満足させる事はできないらしい。

 

『くく。また餌を探さないとな』

 

相棒の仕草に笑い声を漏らしたリュウガは半ば粒子と化した夜竹さゆかをお姫様抱っこすると、近くに落ちていた硝子の破片に歩むと硝子の中に吸い込まれていく。

 

 

 

 

(あれ………私)

 

さゆかはわずかに揺れる逞しい腕の中で僅かに目を覚ました。

ぼやけた視界、彼女の体はゆっくりとIS学園の保健室ベットの上にやさしく寝かせられた。

もう用はないとばかりに踵を返す黒い騎士、いや自分を助けてくれた彼にお礼を言いたいが、さゆかは緊張から解放された安堵からか、急激な睡魔が襲う。

 

「……ありがとう」

 

「………」

 

最後に夜竹さゆかが見た彼の姿は、こちらを一瞥して静かに歩み去る青年の後ろ姿であった。

 

 

 

 

 

 

 

「腹が減った」

 

彼の名前は龍賀アギト。

 

死の直前にリュウガのデッキとドラグブラッガーの契約を譲り受け、仮面ライダーとなった青年。

 

その願いは、失った××を取り戻し、2度と無くさぬ己の居場所を見つけること。

 

『グガォォゥ』

 

「あぁ、猿とは別の所に腹も膨れて味も良い餌もいたな」

 

彼の体はミラーモンスターの魂を糧に生き永らえている。

 

「……誰かに感謝されたなら、不味い飯でも偶には良いだろう?」

 

 

 

青年は、欲望を叶える為に今も戦い続けていた。

 




どうでしたか?
初っ端から要領得ないと思ったらごめんなさい。作者の文章力不足です。もっと頑張ります。
戦闘描写は今回のように接戦を熱く書く事もありますしギャグ回になるときもあるかもしれないのでゴチューイ下さい!ではまた次の更新で!♪( ´θ`)ノ


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盗鳥と契約

2回目投稿!連日投稿出来るようにがんばりまふ。
今回はモンハンで好きな部類に入るあの鳥を。


 

 

カランカラン

 

明朝。

静寂な店内と珈琲の香りが染み付いた店内。

喫茶店〝花鶏〟の扉を一人の青年が潜った。

 

「……ふわぁ……眠」

 

ボサボサの黒髪に草臥れたパーカーにズボン、いずれも色は黒く、その格好はホームレスと形容することがなんとも似合っていた。

 

「だぁーー!!遅刻遅刻!!?」

 

「ふわぁぁ………うん?」

 

欠伸しながら慣れた手つきでカフェオレを作っていると、ドタドタと煩い音が響いてくる。

口の端に笑みを浮かべて青年が顔を上げると、青年の予想通り店の中から若い男が大層慌てた顔で現れた。

 

「や、やばい。これは編集長に絞められるコース……!!」

 

「くく、また寝坊かよ。バカ真司」

 

青ざめた顔色の男であり青年の同居人ーーー城戸真司へカフェオレを啜りながら青年は揶揄い文句を放つ。

そして真司は青年の声に反応すると首をぐるりと向け、くわっと目を見開いて口を開けた。

 

「お前!昨日帰ってこなかっただろ!アギト」

 

青年ーーー龍賀アギトは真司の怒鳴り声を朝の風物詩として楽しんでいる節がある。

今もこうして真司の説教を右から左に聞き流し、カップに残った中身を一息に呷っていた。

 

「バカ真司のおかげで脳が冴える。それより良いのか?じ・か・ん」

 

トントンと腕に装着したG-SHOCKを見せてやれば、ガミガミ怒鳴っていた真司の顔は先ほどと同じかそれ以上に真っ青になっていた。

 

「あ゛………!?い、行って来ます!」

 

「くく、あははは。行ってらっしゃ〜い」

 

カランカラーン!とアギトが開けた時とは比べ物にならないほど扉のベルが鳴った。

その数秒後にバイクのエンジン音を噴かすブゥーンという音が聞こえて、微かにアギトの目線がそれの行方を追った。

 

「………」

 

口元は微笑を湛え、先ほど使ったコップを洗い終えると、アギトもそろりそろりと喫茶店花鶏を出ることにした。

朝早く帰って来たのはカフェオレを一口飲みたかったからであるため、用が済めばとっとと花鶏から逃げ出す腹積もりだったのだ。

 

「おや、アギトちゃんや」

 

「っ、お、おばば」

 

ーーーが、しかし、そうは問屋が卸さない。

店の奥からやって来た老婆がアギトの名を呼ぶと、アギトは肩をビクつかせて振り返る。

その目はとにかく泳いでおり、アギトがいかにこの老婆に見つかりたくなかったかを示していた。

 

「学校はどうしたんだい?」

 

「………」

 

アギトの年齢は高校一年生相当だが、彼は学校というものに通っていない。

色々と事情があり、かれこれ小学生時代からの不登校だ。

当然中学校も通っていないし、高校入試を受けたことすらない、つまりニート。

同居人のバカ真司に聞かせると「お前も分かってくれるか」とうざったいのだが、アギトには一応〝自分が住む街〟を、正確には〝喫茶店花鶏とその周辺〟を〝外敵〟から守らねばならない理由がある、義務がある、力がある、果たさなければならない約束があった。

 

(……………………ただ………!)

 

果たしてそんな理由で目の前の老婆が納得してくれるか。

それがアギトにとって1番の問題だった。

 

『下手に選択を間違えたら女装して接客ですよ。……それも良いですね。寧ろあり(鼻息荒く)』

 

(………)

 

何処かそんな未来を期待している声に、分かってる、とアギトは胸の奥で答えつつ、老婆にはとりあえず朝の仕込みでも手伝うと言っておくことにした。

 

「俺にはこの街の平和を守る使命がーー」

 

「何バカなこと言ってんだい。ガキはとっとと学校に行きな」

 

まあ、何を行ったところで結局はコレに至るだろう。

しかしアギトが通う学校など在る筈もなく、「へーい」と曖昧な返事を残して喫茶店花鶏を後にするのだった

 

 

 

 

 

龍賀アギトは所謂ニートである。

 

まあ、家に篭りつつ我が家の警備を一手に担う系の〝自宅警備職〟では無く、基本外出しているものの、これといった職業も目的も無く基本的に外をブラブラ徘徊している系のニートであり、言うなればホームレスの性質に近い。

 

朝、あちこちを練り歩いたりネットカフェで当てもなくネットサーフィンをしたり都市伝説を探してみたり。

昼、寝ぐらでもある喫茶店に顔を出して飯を少しつまみ、日当たりの良い高層ビルの屋上でスヤスヤと眠る。

 

「さあ、餌の時間だ」

 

そしてーーー夜。

 

アギトは近くの工場に不法侵入していた。

この工場は加工食品をパックに詰めて出荷する場所で、ここ最近謎の怪奇現象に頭を悩ませている場所でもあった。

 

「『社員が2名行方不明でアルバイトの一人が鏡に映る謎の影を複数見た』………ね」

 

キィィィィン、キィィィィン。

頭に響く不協和音を、目を細めて聴き入る。

いつの間にかアギトの周囲には生き物とは別種の気配が混在していた。

 

「……おお、大量だ」

 

しかしそれに怯む事なく、アギトはパーカーのポケットから長方形のカードデッキを取り出す。

黒い色合いで、中央に黒龍のエンブレムが刻まれたデッキだ。

それをトイレの鏡に向けると、鏡面に映るアギトの腰にはいつの間にかVバックルと呼ばれるベルトが装着されている。

 

「変身」

 

そして無造作にデッキをVバックルへと填め込み、一言言葉を呟くと、鏡から黒い騎士の鏡像がアギトの身体を幾つも重なり合い、音を鳴らし、いつしか青年を仮面ライダーリュウガへと至らせた。

 

『腹が空いて待ちきれないな』

 

そう笑って鏡に歩を進めたリュウガはまるでダイ○ンの掃除機が如く鏡面に吸い込まれていった。

 

 

 

鏡面の世界、〝神崎士郎〟が名付けた名称はミラクルワールドというが、この世界は正に現在世界の裏側と形容するに相応しい。

そんな裏表が反転した世界を黒い騎士は1人彷徨い歩いていた。

いや、1人では無い。

リュウガの周囲をとぐろを巻きながら空を飛ぶ黒龍、ドラグブラッガーが周囲を忙しなく見渡している。

どうやらミラーモンスターの生命エネルギーを捕食したくて堪らないようで、リュウガはそんな愛龍の様子に苦笑しながら漆黒の背を撫でた。

 

『行って良し』

 

『ゴォアアアアアアアアアア!!』

 

まるで障害物など豆腐だというのか、工場の壁を容易く破壊しながら黒龍は飛び出して行った。

その後に聞こえる獣の断末魔と嬉しそうな淑女の咆哮に猫とネズミが仲良く喧嘩する某アニメを思い出したリュウガは『くっくっく』っと笑いながら反対方向へ進む。

 

『………』

 

コツコツコツ、廊下に響く足音。

リュウガは辺りを見回しながら鼻を嗅ぐ仕草を見せた。

どうやら、この工場には噂のミラーモンスター以外にも面白そうな野良モンスターがいるらしい。

それを示すのは目の前に映る電球や蛍光灯だけを器用に盗み取られた部屋。

しかししどんな間抜けなのやら、工場のベルトコンベアにはそいつの〝忘れ物〟が放置されている。

 

『触感はゴムだ。珍しい』

 

グニグニ、ブヨブヨと適度に反発する灰色のナニカ。

リュウガは蛍光灯の消えた天井を見つめ、モンスターの行動と体質を思案する。

 

(………蛍光灯や電球をパクるんなら、それを利用してくる知恵者と考えるか。もしくは体内に電気を貯蓄、放出できるタイプか?)

 

だとすれば不意打ちの閃光技や通過するだけで感電してしまうトラップを警戒しなければならない。

そして次にブヨブヨが挟まっていたベルトコンベアに目を向ける。

 

(これが挟まっていたとすれば、まあベルトコンベアに乗って蛍光灯をパクる作業をしてたんだろうな。コンベア自体も他と比べてここの区域だけ沈み込んでいる)

 

支えきれない自重の物が載っていた証拠だ。

だとすれば盗人はコンベアに乗ることで天井まで手、もしくは頭が届き、更には中々の重量を持ち、頭が回る知恵者であること。

電球や蛍光灯をパクる理由は分からないが、大体掴めてきた。

 

(さてと、後はどう誘き出すかだ……が……)

 

広間自体を見渡しながら歩いていたリュウガは、ベルトコンベアラインの右端に辿り着くと、其処にあり得ないものを見つけてしまった。

 

『げ、ゲェェ………』

 

『…………』

 

なんと、コンベアの終着点に凡そ3mに及ぶサイズの鳥にも竜にも似たモンスターが、身体中を蛍光灯や電球から繋がれたコードに縛られ、気の抜けた悲鳴を上げながら身動ぎしていたのだ。

 

『ぐ、グゲェェェェ〜〜〜〜〜』

 

ーーー阿保過ぎる。

 

蛍光灯の窃盗犯は恐らくこいつだろう。

しかしこのアホ鳥、バカなのか頭が回るのかどっちかにして欲しいと思う。

稼働しているベルトコンベアの状況を見るに、電球をパクる作業をしている際に『アレ?このボタン押せば床(ベルトコンベア)が回って蛍光灯の所まで歩かずに済んで楽チン♪』と思い付いたのだろう。

そして作業に夢中でベルトコンベアの終着点が頭からすっぽり抜けて、そのまま床に転落、その時にコードが絡まってーーー今に至る……だろうか。

 

ああ、本当に、

 

『……阿保過ぎる』

 

『げ、ゲェッ!?』

 

思わず漏らした言葉に阿保鳥が反応する。

素早い首の動きで顔をリュウガに向けると、心外な!とでも言いたげに鳴いて首と嘴を動かしてコードを解き始めた。

その手つき(嘴つき?)の動きが良いのは過去にこう言ったことが何回もあったからだろう。

それを思うだけでリュウガを感傷が襲う。

 

そして作業が終わって解いたコードをクルクルとマフラーのように首に巻くと、鼻息荒くドヤ顔をしてリュウガに『どう?どうだった?』と顔を近づけ、

 

『………』

 

『………』

 

暫くの間石化の炎を喰らったが如く固まってしまい、

 

『……………ギョエエエエエエエエエ!!?グェェ!?グェッ!?』

 

直後、喉を詰まらせた顔で驚き喚く。

どうやらリュウガの存在に今初めて気付いたというか、なんというか………。

『おまえ誰だよおおおおおお』などと首を振り回しながら叫ぶ阿保鳥を、リュウガは呆れた様子で右ストレートパンチを繰り出し、それが腹部に上手いこと突き刺さって阿保は倒れる。

 

『グゲッ……』

 

『………』

 

軽くセーブしたパンチに悶絶したらしい阿保鳥は横目でリュウガをチラ見すると、その目を鋭く、そしてキラリと光らせ、聞くに耐えない悲鳴を上げた。

 

『ゲゲェェ〜〜〜〜〜バタン』

 

まさかの〝死んだふり〟である。

間抜けな鳴き声だが、一応最後の断末魔らしい………因みに最後の倒れる効果音も自分で発音していた。

お粗末な演技、しかも死んだふりの後もうっすら薄眼を開けてチラ見して来るため、なんとも大根役者なものだと評価せざるを得ない。

 

(間抜け……いや、ここまで来ると最早大物か?…うん。大物だな、こいつは)

 

そもそもの話、ミラーモンスターは命を落とすと体は消滅して魂だけになるため、この死んだふり自体が胡散臭いのだ。

しかしそれを知ってか知らずかこうも堂々と死んだふりをされると、リュウガとしては呆れて物も言えなくなってしまう。

 

『………』

 

『………げぷっ…(ゲップ音)』

 

この阿保をどうしようか悩んでいると、食事の終わったドラグブラッガーが帰ってきた。

体感としてはこの阿保と出会ってからまだ2分も経っていない。

 

『グガァ?』

 

『………(!?)』

 

リュウガの視線を辿ってアホ鳥の存在に気付くドラグブラッガー。

するとドラグブラッガーはアホ鳥の体を鋭く睨みつけ、スンスンと鼻を鳴らし始めた。

 

『グゴォォォォ』

 

『………(汗)』

 

黒龍のプレッシャーに神経の図太いアホ鳥も焦り始めた。

ピクピクと痙攣し始める身体を消して動かすまいとする気迫に、それまで沈黙していたリュウガは思わず笑ってしまった。

 

『ぷっ……クク。あはははははは』

 

『……グガァ?』

 

『……ゲッゲゲ?』

 

 

 

ドラグブラッガーと、死んだふりをしていたアホ鳥がお互い首を傾げてリュウガを見た。

一方2匹の視線に晒されながらも、リュウガは心の中で「これだからこの世界は面白い」と呟き腹を抱える。

視界の隅ではドラグブラッガーがアホ鳥の尻尾を自分の尻尾で潰して動けないようにしていて、アホ鳥はゴムみたいな尻尾が千切れそうな勢いで逃げようとしている。

 

『ゲエッゲェッゲゲ〜〜!』

 

彼が見る限り、ドラグブラッガーの機嫌もそこまで悪くない。

 

だからリュウガは腰部のデッキから一枚のカードを取り出す。

 

それは、契約と誓いを交わす宣誓書だ。

 

『食べる分には困らせはしない。ドラグブラッガーもお前が嫌いってわけじゃないから、弄られることはあっても石にされることはないだろう』

 

『ゲッ……?』

 

アホ鳥はリュウガの手に挟まれた契約のカードを首の角度を変えながらじっくり眺め、次いで続きを促すようにリュウガと目を合わせた。

 

『だから、約束だ』

 

カードを近付ける。

光がチカチカと輝き、アホ鳥の体がゆっくりとカードの中へ吸い込まれて行く。

 

『絶対に、俺の側から離れるな』

 

光が収まった時、既にアホ鳥の姿はどこにも見えず、契約のカードには不細工な嘴と特徴的なトサカを持つ〝ゲリョス〟の姿があった。

 

『ゲゲゲ〜♪』

 

 

 

青年の側に、新たな家族が加わった。

 




というわけで、今回はゲリョス回でした。ゲリョス可愛いよね。
モンハンの中では一位ベルナ村の集会場の受付嬢(龍歴院の人)同率一位ラギアクルス、三位ゲリョス、同率三位アイルー&メラルーですかね。皆さんはモンハンのキャラorモンスターは何がお好きですか?

それにしてもモンハンワールドがすごく楽しみです。


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かんざきしろうは こんらんしている!

どうも、連チャン投稿を示唆しておきながら2日?3日休んだ天敵です。
まさかの熱風邪でした。決め手は親の空気感染とV.I. ヴァリアブル.インフィニティ.シリーズのアンサングを衝動買いしたことではしゃぎすぎてしまった相乗効果だと思われます。アホでごめんなさい。
書くことは一応書けたんですが、瞼が重?すぎて開かない(勝手に閉じてしまう)目が痛い、涙出るもろもろ……あれ、これ単にゲームのしすぎってだけ?………とまぁ、私自身ボケていたので『突然の芳乃VSアギト!』『織斑千冬ごとミラーモンスターを引くアギト!』『君はオンドゥル語が好きなフレンズ達なんだね!すごーい!自分は一体どんなオンドゥル語で喋るのか調べてみよー!』みたいな内容を書いては消してを繰り返していた私は恐らくコジマ汚染患者。

みんなも体調には気をつけようね!


 

「あれ。アギトってそんなカード持ってたっけ?」

 

朝の7時を少し過ぎた喫茶店花鶏の店内、カウンター席に座っているアギトが数枚のカードを吟味していると、背後から若い男、城戸真司が覗き込むようにして話しかけて来た。

真司の服装はありふれたシャツにパンツと、トレードマークの水色のジャンパーだ。

 

「新しく契約したんだよ」

 

「へぇ……って、契約したぁ!?」

 

未だ脳の巡りが悪いのか、アギトの返答に数秒かけて驚く真司を尻目に、アギトは新しく契約したゲリョスのventカードをざっと見て満足気に顔を綻ばせた。

 

(ventカードはどれもこれも癖の強い特殊カードばかり。トラップや盗み技や目眩し。相手を挑発するなんてカードもあるな)

 

下手をすれば同居人〝秋山蓮〟が運用するトリックベントよりもトリッキーなカードばかりである。

 

(最初の契約モンスターだったらリセマラ必死だけど、俺はドラグブラッガーがメインだから問題無し)

 

単体戦闘力は低い〝怪鳥ゲリョス〟であるが、ゲリョスの真骨頂は単純な戦闘力に反映されない能力にあるとアギトは確信している。

 

(嘴を巧みに操るスリ技に伸縮自在なゴム尻尾。嘴とトサカをぶつければ閃光を発することが出来て毒も吐ける。更には特殊なゴム質の皮は打撃に強く絶縁性で電撃を通さない。あと体力知らずのスタミナだな)

 

もっとあげるならば顔がブサイク(アギト曰くだがそこがいい)とか、笑い声がうざったい(だがそこがry)などなどあるが、それを言うとゲリョスが落ち込んでしまうので言わない。

 

「なぁ、どんなミラーモンスターなんだ?」

 

真司の問いかけに、アギトは一呼吸置いて「色々便利だ」と評した。

ゲリョスと契約したその日の内に何回か狩りをしたが、ゲリョスは空気が読める性格というか、ずる賢いというか……。

周りを見て戦えるタイプなので連携に関しては問題なく機能した。

 

ゲリョスは、強い奴に寄生して弱い奴を袋叩きするのが得意な奴(真性の屑)なのだ。

 

「それより。仕事は?」

 

「この時間なら遅刻しない(キリッ)」

 

ドヤ顔の真司、しかしポケットから自己主張の激しい着信音が鳴って、状況は一変した。

 

『馬鹿野郎っ!真司お前今日はミーティングすっから早く会社に来とけっつったろうが!』

 

「だぁーーー!!今行きまぁぁぁす!?」

 

「行ってらw」

 

暴れ馬の如き速度で会社に直行する真司。

アギトはそれをケラケラ笑いながら見送り、軽い調子で出かけることにした。

準備と服装はいつも通りに、全身黒で統一されたTシャツとパーカー、そしてズボン。

ポケットの中には仮面ライダーリュウガに変身する為のデッキと財布の中に小遣いが幾つか。

それらを確認して部屋を出る。

 

「散歩か。アギト」

 

「ああ。行ってくる、蓮」

 

背後から振られた言葉にアギトは後ろを振り帰って答えた。

そこにいるのは長身の男で、年齢は城戸真司とそう大差無いだろう。

名前は〝秋山蓮〟真司、アギトと並ぶ同居人であり、2人と〝ある秘密〟を共有する人間でもあった。

 

「……あまり心配させるなよ」

 

寡黙で無愛想、言葉に表現すればそれまでだが、彼もまた真司と同じで義理人情に厚く、とても頼り甲斐のある男だ。

そして蓮の言った言葉は、喫茶店花鶏のオーナーである老婆と、ある意味で彼らを繋ぐ女性〝神崎優衣〟の2人を心配させるな……という意味であることはアギトにも容易く理解出来た。

 

「分かってる……分かってるよ。蓮」

 

「なら良い」

 

フッ、と蓮は微かに笑った。

この笑顔を見た女性を全てメロメロにしてしまえそうな笑みだが、彼には既に恋仲の人物が存在しており、その大切な人を守るために蓮は戦っている。

 

「じゃあ……行ってきます」

 

年相応の顔つきをしたアギトを蓮は無言で見送った。

そしてアギトの姿が見えなくなると、彼もまた放り出していた仕事に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

実質、アギトは外に出ても大して何かをするようなことはない。

近くの公園に行ってブランコなりベンチなり腰掛けてぼーっとしてるか、ネカフェでミラーモンスターの情報を漁るか、自慢の鼻を鳴らしてブラブラ路地裏を彷徨くか、だ。

そして今回の行き先は公園。

 

ブランコで遊ぶ者、滑り台へ駆ける者、アスレチックフィールドを制覇する者、それぞれがこの公園にいて、アギトはただ1人、外れのベンチに座って空を見上げていた。

 

「………」

 

何か考え事をしたり、不意に空へ手を伸ばしたり、そんな仕草に子供達は彼のことを遠巻きに見ているものの、またすぐに駆け出していく。

そよ風に流れて「ボッチだ!」「違うよニートだよ!」「むしょく!」という声が聞こえたりするが、アギトには全然届かなかった。

彼のベンチ付近の雑草や花がパキパキと石化している(〝彼女〟はキレている)がそれだけだ。

 

「………」

 

「や、リュウくん。探し物は見つかった?」

 

男の声はアギトの右横から聞こえた。

真昼の太陽に照らされて眩しく輝きを放つスキンヘッドの丸い頭部、鈍い黒さを持ったサイバーサングラス、身長は170を超え、その容姿を遊具の近くから盗み見していた子供達は純真無垢な心そのままに「ハゲだ!」「ハゲハゲ!」「違うよーノッポだよー!」「魔王ハゲノッポ!」「マト○ックスのスミ○がハゲたばーじょん!」と連呼していたりするが、もちろんスキンヘッドの男には聞こえていない。

 

「……くっ…ぅぅ」

 

若干震えていたりサングラスの隙間から雫が一つ頰を溢れたりしたが、ただそれだけだ。

 

「なんだよ、芳乃」

 

男の名は高倉芳乃という。

現役のライトノベル小説家、幾つかアニメ化もされていて知名度は高い。

……今の世の中、ブリュンヒルデこと織斑千冬に比べると少し霞んでしまうものの、「外見と描写のギャップが酷い(褒め言葉)」「これマジであの893が書いたんか?」「衝撃のラストよりお前の顔が衝撃的」「サイン会で死ぬかと思った脳が震える」とネットで評されるくらいには不特定多数の読者に好かれている。

 

…………好かれているんだぞ。

 

「ああ、いや。こう呼んだほうがいいか?」

 

しかし、ライトノベル小説家、高倉芳乃には小説家とは別の顔がある。

 

「なあ、仮面ライダーベガ(・・・・・・・・)

 

「最近じゃ餌やり以外であまり返信しないけどね。……本業が、忙し……過ぎて」

 

城戸真司、秋山蓮、龍賀アギトを含む仮面ライダーの1人、高倉芳乃。

それが人気ライトノベル作家のもう一つの姿であった。

毎日が暇で街中をブラブラし、ミラーモンスターを片っ端から殺すマン龍賀アギトとは対照的に、契約しているミラーモンスターに消滅の危機が及ばぬよう慎重に相手を見定める高倉芳乃。

戦い方は慎重な性格を反映させたのか、遠距離から、又は契約しているミラーモンスターの翼を用いた上空からの狙撃。

 

飛び道具を用いた遠距離型の仮面ライダーはベガの他にも1人いるが、此方は武器本体の威力の代わりに動きが鈍く、接近できればまだ戦いようがあるものの、仮面ライダーベガは軽快な動き、上空への退路に加えて全距離オールラウンダーな武装と、全仮面ライダーの中でも厄介な部類に入っていた。

 

「それで、探し物は見つかったかい」

 

「何のことやら」

 

芳乃の問いかけを敢えてアギトははぐらかす。

芳乃はアギトが何の為に戦うのかをライダーバトル初期の頃から知っている。

一体何の気まぐれだったのか、アギト自身が芳乃に自分の願いを教えたのだ。

しかし、芳乃は知っている。

 

(ただ、それは誰かが君に託した仮初めの願いであって、君の真実ではない。そうだろ?リュウくん)

 

1人の小説家として、登場人物の心情や恋模様と移り変わりなど丁寧な描写を心掛けている芳乃は、アギトがライダーバトルに賭けた願望が彼自身のものでないと感じ取っていた。

彼のソレは、どこか余所余所しく、バカ真司でお馴染みの城戸真司のように、誰かを助けることに満足するのではなく、自分の縄張りに迫る敵を追い払っているだけ……そんな顔をいつもしている。

 

だからこうして会うたびに「自分の願いは見つかったのか」質問しているのだが、アギトはいつものようにニヒルな笑みを浮かべて「これ以上聞くな」とその目で確かに芳乃を威圧していた。

 

(ま、これじゃあ聞いても仕方ないかな)

 

芳乃は大人である。

引き際も心得ているので、これ以上追求したとて目の前の青年が教えてくれるかどうか……それよりも今は単純にこの青年と話をしたい。

何か話題があったかと考え込んで見た。

 

「そういえば」

 

「?」

 

「神崎士郎、何処に行ったか知ってる?」

 

芳乃が出した人物名にアギトは首を振って答える。

別に彼が知っていようが知らまいが良かったのだが、今は神崎士郎の名前に少し感謝すらしている。

 

「彼の妹の、ええと」

 

「優衣?」

 

「そうそう。彼女は何も知らなされてない?」

 

神崎優衣は神崎士郎の実の妹で、士郎の愛情を一身に受ける、ある意味苦労人だ。

元々ライダーバトルというのも少し事情があるものの、優衣の為に始めたと行っても過言ではなく。

神崎士郎は数え切れないほどの過去(・・・・・・・・・・・)、城戸真司を始めとした契約者達の命を優衣に差し出している。

ただ、今回は何故かライダーバトルの途中で神崎士郎が突如失踪し、その後を追うように契約者達の携帯電話(一部の者には手紙)に『ライダーバトル中止。以降続報を待て!(お楽しみに♡)』の文が送られた。

 

ーーーあのシスコンまた何か企んでやがる、とは契約者全員の言であるが、現時点で察しようはない。

 

「さあな。あいつが神出鬼没なのは今に始まったことじゃない。そもそも、シスコンの考えがアレ以外に解るか」

 

「うーん。彼、キャラクターとしては結構魅力的だけどなあ」

 

ただいかんせんシスコンの気が強い。

それが神崎士郎という人間だった。

 

「あー。そういや数日前に『お前のお陰だ。感謝する』的な電話がきたな」

 

「彼にしては珍しいね」

 

「平常運転」

 

アギトからしても芳乃からしても、神崎士郎は変人だった。

そして彼が選定する仮面ライダーも、それぞれが一癖も二癖もある人物揃いだ。

 

類は友を呼ぶ。

その言葉を脳内辞書で引いてみて、思わずアギトを目で追ってしまった芳乃。

 

(リュウくんは。選ばれたのか?それとも?)

 

神崎士郎は願いを持った者しか選ばない。

願いのスケールは大小違いはあるものの、そのどれもが選ばれたことに何処か納得できるものばかりだった、

 

ーーー困った顔で、「この街を守る」願いを持ったこの青年だけは。

 

「ああー。最近執筆で行けなかったけど、真司くん達、元気?」

 

「お陰様で、毎日騒がしい」

 

「ふふ、それは良かった」

 

「けど、悪くない」

 

当たり障りない会話から芳乃はアギトの触れて欲しくない線を探るーーー何時ものことだ。

これを繰り返すことでアギトとはどんな人間なのかを当てはめていくのだが、いかんせん彼は気紛れが過ぎる。

真司達の関係について聞くのはこれで5回程だが、ウザい、見てて笑える、あの能天気さが羨ましい、聞いてるだけで疲れた、気分最悪ーーとその感想はコロコロ変わっている。

 

アギト自体多感なお年頃なのでそれも当然のことだろうと思うのだが、アギトが喫茶店花鶏の日常を話すとき、いつも決まって遠い過去を回想しているように思えて仕方ない。

 

「今日はひと段落ついたところだし、午後に顔出すよ」

 

「あ、そう」

 

断ち切られた会話を皮切りに、ベンチを立つ。

公園を出ていくアギトに「ケーキを二つ。相棒にな」と声をかけると、「作るか知らん」なんて素っ気ない声。

 

(なんだかんだ言って作ってくれるところが何というか……素直じゃないなぁ)

 

彼の背中に独りごちる芳乃。

腕時計を見てみると、時刻は12時に入ったところ、流石におやつはまだ早いか、木陰に入ったベンチに座り、芳乃もまた原稿の執筆作業に入った。

 

 

 

 

 

 

『IS特集』

『これが日本の代表候補生達だ!』

『月間ヌー 黄金の蟹現る!?』

『敏腕弁護士が語る勝ち組の道のり』

『IS学園今年の一年生』

『月間ザヨ゛ゴオ゛オ゛オ゛! ! 彼にプロポーズされたいオンドゥル語ランキング!』

 

公園を出て少し距離のある本屋、大して興味もないが、3時まで少し時間を潰すことにしたアギト。

彼は店頭の雑誌を眺めては直ぐに視線を切る。

ただ、一つの雑誌が彼の目を釘刺しにした。

 

『かのブリュンヒルデの弟、奇跡の男性操縦者!織斑一夏に迫る』

 

隠し撮りされた荒い画質の青年。

年はちょうど、アギトと同じ高校一年生相当で、プロフィールが間違っていなければ、歳も体重もアギトと瓜二つと言っていい。

 

強いて違いを挙げるとするならば、

 

織斑一夏が未来に希望を持った好青年であるとして、

 

龍賀アギトは死んだ瞳に何れ来る終わりを映している事だろうか。

 

「………」

 

彼の双眸は、果てしない虚無を抱えていた。

 

キィィン キィィン

 

「?」

 

耳に残る不快音、一瞬眉を顰めたアギトが店のガラスウィンドウに目を向けると、いつの間にかロングコートを着た長身の男が映り込んでいた。

 

「神崎士郎……?」

 

「……『おっす、オラ士郎( ´θ`)ノ』」

 

ふざけたプラカードを掲げる世界最凶のシスコン。

彼はロングコートの下から更なるプラカードを引き抜いて見せると、アギトの表情が訝しみのものから驚愕のものへと変わるのだった。

 

「『優衣の命の代替えが見つかった』……??」

 

『それはお前達が狩ったミラーモンスターの魂と、ミラーモンスターとの愛だ!!これを発見したお兄ちゃんやっぱ天才だな(☝︎ ՞ਊ ՞)☝︎』

 

普段の彼からは思い付かぬふざけた文章と随分舐めた顔文字。

アギトの目がバカ真司に対する視線に変わったところで神崎士郎はやっと口を開く。

 

「お前達……ライダーバトルなんてくだらねえ!中止だぁ!野郎どもの魂よりもKENZENで生命力のある………つまり!」

 

「………」

 

「お前らセェッ○ス(毒電波風)しろぉおおおーーー!!!」

※神崎士郎の顔は至って真面目である。

 

周りの客の奇異の視線に晒されながら、アギトは頭に指を当て、こう返した。

 

お前、頭大丈夫か(一回死ねよマジで)?」

 

※神崎士郎の顔は至って真面目である。

※神崎士郎の顔は至って真面目である。

※神崎士郎の顔は至って真面目である。

※神崎士郎の顔は至って真面目である。

※神崎士郎の顔は至って真面目である。

※神崎士郎の顔は至って真面目である。

※神崎士郎の顔は至って真面目である。

※神崎士郎の顔は至って真面目である。

※神崎士郎の顔は至って真面目である。

※神崎士郎の顔は至って真面目である。

………………………。

 

 

 

 

 

 

…………………………………真面目である(頭が大丈夫とは言ってない)




神崎さんは真面目です。頭が大丈夫とは言ってない。
熱の影響は引いたはずですが、オンドゥル語が所々見え隠れしてますねぇ。
芳乃の言葉使い、これで良ければこんな感じで行こうと思います


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見よ花鶏は赤く燃えている(物理)

セェ○クス強要の説明回と思いましたがノリがギャグですし結局説明してねえし( ^ω^ )。
前半書き終えた後でもう今回は都合のつくオリライダー突っ込んどくか!と開き直ることにしました。


「何故だ、優衣。どうして理解してくれない」

 

「理解って……あのね、お兄ちゃん」

 

喫茶店花鶏のカウンター席、そこに2人の兄妹がいた。

1人は16歳の青年にセェ○クス!(毒電波風)を強要した挙句、買春と勘違いしたお巡りさんにしょっ引かれそうになった男、〝神崎士郎〟(顔面が腫れている)

 

「はぁ。お兄ちゃんっていっつもそうだよね。他の人を巻き込んで自分ばかり……」

 

「ゆ、優衣……?」

 

そして神崎士郎の妹、〝神崎優衣〟

彼女は不機嫌面のアギトが引っ張ってきた半石化士郎から今まで何をしていたのか、それに加えてアギトの「性行為を強要された」という証言に、遂に堪忍袋の尾が切れてしまい、笑顔(しかし目は笑ってない)で実の兄の顔面を超速往復ビンタしてやったのだ。

 

「あのね、お兄ちゃん。誰かを傷付けてまで私は生きたくないよ…」

 

優衣が見せた悲しい表情、それを受けてなお士郎はカウンター席を強く叩く。

 

「優衣……優衣…!」

 

首を振って聞かん坊やを演じる士郎に優衣は根気強く説得をすると、士郎はカウンター席に顔を埋めて震えだした。

 

小さく体を震わせる士郎は今までのことを振り返り、そしてそれを優衣が望んでいないのだと、やっと受け入れることができたのだろう。

今日、この日まで何度も何度も繰り返して、やっと。

 

…………ただ、それに至るまでの兄妹の再会の理由が、〝16歳の青年にセ○ックスを強要しボコボコにシバかれて引き合わされた〟事実が無ければ、とても感動するイイハナシダナーとなったことだろう。

現に場に居合わせている城戸真司は泣いている。

 

それを考えると実に残念である。

 

「優衣……う、くぅ…ぅ」

 

士郎の嗚咽を聞き、優衣は優しく微笑んだ。

二十歳を超えて生きられぬ少女が、大好きな兄に自分の気持ちを伝えた瞬間だった。

 

「そ・れ・で?」

 

バンッ、カウンター席を叩くのは、今度は妹の番だ。

士郎の退路を封じる形になるよう両手で強く叩き、その音がかなり大きくてびっくりしたのか、士郎は全身をビクつかせた。

 

「え……あの……あ、優衣?」

 

兄の威厳は何処へ行ったのか、困惑した表情で優衣と顔を合わせた士郎は、そこに今まで見たことのない妹の素顔を見て戦慄してしまった。

 

「ねえ、お兄ちゃん。私、いままでずっーとお兄ちゃんに言い聞かせてたよね」

 

「('ω' ? )( ?'ω')」

 

優衣の問い詰めに対し、マジで覚えていないのか、周囲に視線を泳がせる兄、ただ、今この時点で、その判断はすごーく間違っていた。

 

「お兄ちゃん?私、言 っ た よ ね ?

 

女の細腕からは想像もつかない膂力で長身の士郎を持ち上げ、底冷えのする声で再度聞き返す優衣。

既に士郎の身体は本能のままにガタガタ震えだし、近くにあるガラスのコップが一斉に割れた。

 

(ポルターガイストかよ……)

 

当事者の1人、アギトは突如起こった超常現象に顔を青くした。

それものそのはず、突然店中の窓ガラスがひび割れ、砕け散ってしまったのだ。

城戸真司に至っては割れたガラス片が頭に突き刺さって「刺さったァ!?」と叫んでいる。

凄く煩い。

 

「ま、待て優衣」

 

「お兄ちゃん。私今すごい怒ってるから」

 

ただならぬ雰囲気、ただの兄妹喧嘩の筈が某地上最強の親子喧嘩並みのとんでもファイトに発展しかけている状況に、3時のケーキを食べにきた芳乃は目にも留まらぬ速さで取材用カメラや録音装置、果てには手書き用のメモを用意して待機していた。

その他真司は何処から用意したのかプロレスで見かけるゴングの前で猪木フェイスを披露し、蓮は付き合ってられんとばかりに外に出て行った。

 

1人は修羅場期待の1人は審判1人はとっとと逃げ出し、最後のアギトは考え抜いた末に、

 

「あー……もうどうにでもなーぁれ」

 

考える事をやめた。

 

カァーーーン!!

 

真司の生きの良い合図と共に始まった兄妹喧嘩ーーー先手は優衣、

 

「お兄ちゃんのばかぁぁぁぁ!!」

 

ドゴォッ!!!!

 

思いっきり振りかぶる右ストレートパンチが士郎の頰に激突する。

その際彼女の右拳が炎を纏っていたのは錯覚だろうか?

見事なStrike vent、優衣クローファイヤーAP5000。

 

「お兄ちゃんだっていっぱい考えたんだぁぁぁ!!」

 

スカッ!!

 

負けじと士郎のへなちょこパンチは避けられた。

 

「私のため私のためっていっつもそればっかり!!」

 

バギィ!ベキィ!!

 

避けた動作から流れるように士郎の顎へとニレンダァ!を繰り出す。

AP5000×2+critical(2倍)。

 

「じゃあ他になんて言えばいい!」

 

スカッスカッ!!!

 

よろめくものの兄の意地があるのやら、どすこい張り手を連発するも避けられる。

 

「もっとみんなで考えれば良いじゃない!」

 

ボゴォン!!!

 

反対に伸ばしきった腕を掴まれて見事な一本背負いを喰らう。

AP8000。

 

「お兄ちゃんが世界で一番頭良いんだからしょうがないだろう!お兄ちゃんから見れば優衣以外の人間は城戸真司並みの知能なんだ!」

 

スカッスカッスカッ!!?

 

諦めない気持ち。

床に手を置いて指の力だけで飛び上がり、空中で腕立て伏せの状態の士郎(実はゴルトフェニックスが士郎の体を脚で掴んでる)は両腕を高速でシュバババさせたがそれも避けられた。

 

「そうやっていつも決めつける!お兄ちゃんが一体何を知ってるっていうの!?」

 

「いい加減大人になれ!優衣!」

 

優衣のパンチを危うげなく受け止める士郎だったが、優衣の底力はここからだった。

徐々に押されていく士郎、優衣の何処にそんなパワーがあるのか疑問だが、そんなもん知らねえよが如く優衣の拳が黄金に輝いた。

輝いてしまったのだ。

 

「お兄ちゃんの分からず屋ぁぁぁ!!」

 

RYUHA TOHO vent

 

「ちょ、それはシャレにならないからやめryアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア゛ーーーーーー!!?」

 

哀れ、神崎士郎は優衣の拳を受けてミラーワールドの何処かへと吹き飛ばされて行った。

 

「分かってくれた?お兄ちゃん。争いは……何も生まないって」

 

静かに涙を流す優衣、彼女の横顔は割れた窓から差し込む夕焼けに照らされていた。

Final ventゴットユイフィ○ガー+超級覇王電影弾 AP計測不能。

見よ!花鶏は赤く燃えている!(物理)

 

 

 

……………燃えている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一体こりゃどういうことだい」

 

花鶏のオーナーである老婆は、白く燃え尽きた店の跡地を見て放心したように呟いた。

それもそのはず、町内会の集まりから帰ったと思えば自分の城と言うべき喫茶店があった場所が真っ白に燃え尽きた灰に変わっていたのだ。

あんぐりと口を開けて買い物袋を取り落とした老婆の背後から張本人の優衣が現れる。

 

「実はお兄ちゃんがはしゃいで」

 

嘘である。

士郎もへったくれもなく、彼女自身が原理不明なゴッ○フィンガーで喫茶店花鶏を破壊し尽くしたのだ。

その背後では救急活動に混じり、担架で運ばれていく城戸真司、高倉芳乃(なお、蓮とアギトはゴットフィ○ガーを繰り出す前に逃亡していた)。

野次馬のツケが回ったのだ。

 

真司は病院で頭に突き刺さったガラス片の治療と芳乃は岸○露伴並の実体験主義が災いして優衣の超級覇王電影弾の流れ弾に当たって複雑骨折ーーーをしたわけではないが、流れ弾で吹っ飛ばされた後に花鶏の外に弾き飛ばされ、道路に転がって走っていた車に撥ねられて全身骨折ーーーしたわけでもなかったが、撥ねられた後に平然と立ち上がり、炎上中の花鶏の中にいる(いない)アギトを救助しようと中に突入したものの、既にアギトは逃亡しているため見つからず仕方なく外に出るも衣服が燃え尽き、契約しているミラーモンスターから丸型のトレーを渡され、ヨシノ100%していたら顔を真っ赤にした優衣からビンタされて失神したのだ。

 

芳乃をBreak downさせたゴットビンタ AP18000。

 

 

 

結局のところ、神崎兄妹(特に妹の方)を敵に回してはいけないという結末だった。

なお、花鶏の弁償代とかその他諸々は士郎の懐から補填されている。

本人的に金は気にならないようだが、その後の老婆の説教が今回最もダメージ高かったらしい。

 

…………優衣のFinal vent?彼らの業界ではご褒美みたいです。

 

 

 

 

翌日

 

「住む場所がねえ」

 

燃え尽きた花鶏の前でアギトは苛立ち気に溢した。

アギト達のうち、真司は会社の方に寝泊まりするらしく、蓮は士郎が手配したホテルに寝泊まり、アギトも誘われたのだが、居心地が悪いとそれを拒否、結局花鶏に戻ってみたが新しく建て直しを検討中の花鶏跡地に寝泊まり出来るスペースはなく、所在無さげに立ち尽くす。

 

「………」

 

これからどうするかぼんやりと考える。

幸いにも士郎からお金はたんまり貰っているので寝泊まり自体はネカフェで生活すれば良いのだが、あそこはあそこで濃い人物(ネカフェ在住元ブラック企業の社畜※現無職など)が多い。

 

具体的にいうと前述の出不精ニートを除きSでサドで毒舌な教師、アメリカンのロックでヴォルハートな警備員、シスコンが本業のICPO、銀髪ドイツ人のニート(2人目)etcがネットカフェで会う顔見知りである。

決して出不精ニートのようにネットカフェに住んでるわけではないが、かなりの頻度でエンカウントしているそうだ。

 

しかも毒舌ドSの女に関しては彼女の個室を通る度に「すぐに殺したらつまらないじゃない、じわじわと甚振るのが楽しいのよ。こんな感じね」(※ゾンビゲームでラスボスを攻撃力クソナイフで滅多刺しにしながら)なんて声が聞こえる度、「浅倉よりも浅倉してる奴がいる」と戦慄しているらしい。

 

「まあ、とりあえずネカフェ行くか」

 

他に選択肢があるわけでもなく、独り寂しいホテルの寝泊まりよりも、見知った顔がいるネカフェの方が良い……。

実は寂しがりやな気質のアギトは自分にだけ聞こえる『楽しそうでなにより』との声にハッ、とバツの悪い顔で舌打ちをした。

 

「そんなんじゃない」

 

照れ隠し半分、気まずさ半分。

その動揺を隠すための一歩は、馴染み深いネカフェへ続く道のりを強く踏みしめた。

 

 

 

 

「株でボロ儲KEEEEEEEE!!働かなくて良い日本万歳!ブラック企業を辞めた俺勝ち組!世の中の社畜共ざまぁぁぁw」

 

「(フロムの赤い⑨と鉄板をレザブレで潰した後で)ふぅ、偶にはこういう遊びも必要ね」

 

「Oh!わたふぁ○く!?なんだこの契約書、『餌は1日1回、1日5食なら更に好感度アップ』!?『ゴリラモード時は驚異のIカップを実現』そら凄え爆乳……ってアピールポイントちげーーーあ゛あ゛あ゛ア゛ア゛ア゛ゴリラ顔で思っくそ想像しちまったァァァァァマッザフ○ーーック!!」

 

「もしもし本部長。妹達に会いたくなったので帰って良いですか?(キリッ)……え?『浅倉捕まえるまで帰ってくんな』?え、ぇぇぇ……」

 

「おい〝セル〟……。昨日買い置きしてた高級和菓子食ったろ。……お前、そういえば最近。菓子ばっか食い過ぎて太ったんじゃね?(バキッ!)痛っ、デリカシーが無さすぎ?あっはい」

 

不死生物(アンデット)と王子と辛味噌と滑舌 あとモズク』がテーマのネットカフェ〝ムッコロスタジオ〟

いつもは爽やかな店員がマナーの悪い客に対して『オレァクサムヲムッコロス!!』とブチ切れる通称ムッコロフェイスやこの店限定の☆辛味噌☆、あと専用のモズク風呂が大変有名である。

因みにオーナーは謝らない事で有名だぞ。

 

中を見ると床や天井、壁などにトランプの意匠が見受けられ、滑舌のあまりよろしくない店員達が所狭しと駆け回っている。

アギトは受付でムッコロというあだ名の店員と会話という名の死闘を繰り広げ、目的のブースに歩いて行く。

その過程で上記のネカフェフレンズ達の独り言(?)を聞く羽目なったのだがそれはそれとして、先ずの暇つぶしにネットを開くと『日本政府が全国的な適性検査を開始』という見出しが目に入る。

 

「ふん。1人いたから、他にもいると考えたんだろうが……アレの関係者が何人もいるかよ」

 

何かを知っているアギトの口ぶり。

画面に映る〝ブリュンヒルデ〟〝男性操縦者〟とアギトの因縁がもうじき交わって行く定め、そしてそれがアギトの願いを、探し物を巡る戦いになることは、この時点でまだアギトには分からなかった。




寝床なくなり、適性検査開始、つまり……ここから先は分かりますね?
オリ契約者達のノリが芳乃=サンも含めて凄えギャグりましたねー反省してます(だが私は謝らない)特にスキンヘッドの芳乃サンがヨシノ100%って所が個人的に好きです。現実で自分が遭遇したら即通報しますね。
赤い⑨と鉄板の答えがわかる人はもうフロム信者ですね。強化人間度もかなり高いとみました。赤いあいつはすぐわかると思うけど鉄板は難しいかな?







ヒントは胸。彼女、貧乳なんだ。


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爆発オチなんてサイテー!

読者の皆さん待たせたな!モンハンワールドにハマりすぎて全然執筆出来なかったぜ!あと色々絵描いてました。
とりあえず今回の敗因はモンハンワールドが圧倒的……!楽しさ……!!だったのとマブラヴストライクフロンティアのリセマラが手こずったくらいですかね。不知火壱型丙(ソード型パワー属性)のSSR出すのに手こずりました。後は柏木晴子のSSRと篁唯衣の訓練兵時代SSRが当たるように祈るか……。あとサンダーボルトに海神欲しいしグリペングリペングリペングリペングリペン。最近始めたけどこのゲーム、グリペンってもう出てんのかな?

ツイッターで戦術機擬人化とか感染少女の落書きを上げてるので暇だったら人類種の天敵で検索して見てね♡

マブラヴコラボで進撃の巨人は流石に草


今、世間を騒がせているニュースがある。

1つは喫茶店に起こった謎の放火事件、並びに燃え盛る店から現れた全裸の男。

この事件は当初全裸の男(芳乃)による犯行かと思われたが、調査が始まって数分後に「原因は店内の引火物が発火した」と発表され、異例のスピード解決と相成った。

 

そして2つめ、〝仮面ライダー〟と呼ばれる存在と、鏡の中に潜む怪物達。

ネット上では都市伝説として実しやかに語らていた話だが、最近になってその目撃情報が増えだし、かのIS学園の生徒も攫われた後に保護されたと言われている。

その女生徒を保護したのが〝仮面ライダー〟という話だ。

 

その外見は全身を覆う黒い甲冑に禍々しい龍の紋章、ヘルムのスリットから覗くツリ目がちの紅い眼、傍に引き連れた黒龍などなど。

その証言はあまりにも現実のものとは思えず、政府関係者も女生徒を保護した〝黒い騎士〟を第一世代のISに現在の最新技術を注ぎ込んだ改修機ではないかと考えた。

 

第一世代由来の全身装甲に、イギリスの第3世代機 ブルーティアーズに投入されている自立機動技術を使った黒龍型の自立兵器。

 

纏められたこの証言に我先と食いついたのは英国で、黒龍型の自立機動兵器の情報を入手するべく自国の情報機関又は諜報機関を日本へと派遣するも、日本政府は暗部の〝更識〟に監視と調査を命令する事で英国へ牽制しつつも泳がせることにした。

 

英国の諜報員を泳がす目的は日本もまた〝仮面ライダー〟なるISとその操縦者を狙っているからだろう。

少女の証言を整理して各国の政府に伝えられた情報だが、その中に日本のみが知り得る事実が存在する。

 

〝仮面ライダーリュウガ、その操縦者は男〟

 

織斑一夏に次ぐ男性のIS操縦者。

もしもイギリスが〝仮面ライダー〟を確保すれば2人目の操縦者が日本から離れてしまうことになる。

更にもう1つ、政府は〝仮面ライダー〟を、「篠ノ之束が開発したISでは?」と捉えていた。

そう考えれば旧世代機に現行機のビット兵器を上回る黒龍型ビットにも頷けるし、全身を覆う装甲も操縦者が男ということを隠す意味合いにも取れる。

 

かくして日本政府は〝更識〟に英国諜報員の監視と〝仮面ライダー〟の調査を命じた。

 

 

 

そして〝仮面ライダー〟の存在は、最悪と共に世間に知られることとなる。

 

 

 

某日、〝奴ら〟は突然現れた。

店のショーウィンドウから、車のガラスやミラーから、水たまりの水面、ガラス瓶、端末の液晶画面から、恐ろしい金切り声を上げて現れた怪物達が大勢の一般市民を襲い始めた。

 

『グゴァァァァ!!』

 

二足歩行の虎、腕の生えた鳥、虫や動物に類似したその怪物達は現れるなり近くにいた市民を攻撃し鏡の中へ誘拐した。

その光景を英国の諜報員と監視していた〝更識〟は現場の判断として市民の救助を最優先に開始。

しかし怪物に対して銃は効かず、訓練された格闘技術もまるで歯が立たなかった。

 

「あ、ぁぁ」

 

恐怖に歪む表情、次々と鏡から現れていく怪物達。

 

だが〝彼ら〟もまた、怪物と同じように鏡の中から現れた。

 

『Sword vent』

 

『邪魔だ』

 

黒い刀剣を片手に鏡から現れる黒い騎士は少女を連れ去るハイエナ型の怪物へ無造作に刀剣を突き刺した。

 

『グギャァァァァァァ!?』

 

痛みに身を攀じる怪物を一瞥し、無造作に剣を引き抜くと怪物の体がたちまちに石像と化し黒い騎士は空いた手を軽く振って石像を破壊した。

 

「か、仮面ライダー」

 

『……名乗ったつもりは無かったが』

 

未だ幼さの抜けない、しかし底冷えする低い男声に英国の諜報員は驚愕し更識の構成員は仮面ライダーの正体についての話が事実だったことに複雑な視線を黒い騎士に注いだ。

 

「男…だと、バカな!?」

 

正気に戻った諜報員のリーダーは黒い騎士を前にして英国政府から下された目的を達成することは出来ない……と直感した。

 

『……まあいい。ただでさえ数が多いんだ。これ以上邪魔するなよ。行くぞドラグブラッガー』

 

「なっ……!?」

 

「あ、ぁ……」

 

諜報員と更識にとって黒い騎士以上の驚愕だった。

黒い騎士が出てきたショーウィンドウから威圧感を迸らせた黒龍が現れたのだ。

彼らは黒龍に睨まれた瞬間に呆気ない〝死〟を連想した、それほどまでに黒龍と人間には無限とも言える差があったのだ。

そしてこの龍が自立機動兵器などでは無いとも本能的に理解した。

 

『グゴゥ………ゴガァァァァァァァァ!!!』

 

鬱陶しい蚊を追い払うかの気安さで黒龍の口から黒い炎が飛び上がった。

それらは幾重にも枝分かれして街中を混乱に貶めた怪物の背に吸い込まれていき、1つの例外なく石像へと変えた。

 

『おい。バカ……龍騎。〝中〟の人間はお前がどうにかしろ。俺はこっちを片付ける』

 

黒い騎士の呟きに応えるようにガラスから弾き飛ばされた蜥蜴の怪物、それを横目に黒い騎士はフン、と鼻を鳴らして狩りを開始した。

 

『ハァ……ッ』

 

一足飛びで石像の群れを駆け抜け、刹那の間に石像を破壊する。

粉々に砕かれた石片から光り輝く球体が黒い騎士に吸い込まれていき、それを気にするでもなく黒い騎士は未だ活動中の怪物達へ襲いかかって行く。

 

『ギャィィィ!!?』

 

胴体を両断し、羽を切り裂き、鋭い爪を剣の刃で弾き、鞭のように振るわれる尻尾を蹴り飛ばし、駒のように舞いながら怪物達と切り結んで行く。

まるでヒーローショーの如くバッタバッタと切り倒されて行く怪物達をある種呆然と見送るしか出来ない諜報員と暗部の構成員達。

彼らは手に持った撮影器具を使って今この瞬間を映像に収まるしか行動を許されなかった。

 

『はっ、浮くことしか出来ない脳のない奴が、撃ち落とせ!ドラグブラッガー』

 

『ゴァァァァァァァ!!』

 

黒い騎士が剣を伸ばして示した先、上空には青い体の空飛ぶ怪物が旋回していた。

その中心へ放たれる黒い炎、それらは寸分の狂いもなく怪物、レイドラグーンを撃ち落とし、その過程でレイドラグーンは石像になり地面へ着地と同時に砕け散った。

 

「あの怪物達が虫けらのように……」

 

「これが、仮面ライダー」

 

男達にとってこの光景は夢のようなものだ。

ISの登場により主力の座を追われた戦車や小銃などの現代兵器、適性の違いからパワーバランスを崩され今や女性の奴隷となった男。

それがどうだ。

素顔は見えないもの、紛れも無い男声の掛け声を発する黒い騎士はISの〝瞬時加速〟を凌駕する速度で地上を駆け、諜報員達の刃物も通らなかった怪物の体表を豆腐のように簡単に裂いた。

 

『んん?外が騒がしくて出てきて見たけど、まさか同類がいるか……よっ、と』

 

別の鏡面、喫茶店のショーウィンドウから現れた黄色の騎士が手に持ったサーベルで近くにいた鳥の怪物の首を刎ねる。

蜂の意匠を象った甲冑の騎士、黒騎士とは別の仮面ライダーだ。

 

「別の……仮面、ライダー……」

 

「仮面ライダーは1人じゃなかったのか!?」

 

もう1人のライダーの出現に諜報員達は恐怖とも歓喜ともつかない感情に震え上がる。

何故ならもう1人の仮面ライダーも男声を発していたからだ。

そして彼らを他所に黒い騎士と黄色の騎士は見知った仲の気軽さで距離を詰めて行く。

 

『見たことないな。お前』

 

『それはお互いサマ。ま、楽出来るんなら別に何でもいいか』

 

『……1人よりはマシか』

 

『なんだその言い方。お前友達いないだろ?』

 

『ふっ、リュウガだ。仮面ライダーリュウガ。お前は?』

 

『俺は仮面ライダーニスティン。そじゃあ8割はリュウガに任せる。……いいか、俺はサボるからな(キリッ)』

 

『へぇ、蜂だけに8わ……そこは普通お前だろ!』

 

互いに互いの全身を値踏みした両者はお互いを強者と認め、一先ずライダー同士が殺し合う儀式ーーーライダーバトルを始めるかは別として街中に溢れる怪物達を狩り尽くす事に同意したようだ。

そして2人のライダーが戦闘を開始と武器を構えると、200メートル先の一般市民に襲い掛かった怪物の上半身が弾け飛んだ。

 

『おっ、生命エネルギーのバーゲンセール!どうやら間に合ったようだな。うん。最近株に夢中で放ったらかしにしてたし。そろそろ餌やっとかねぇと糞鳥が毎晩うるせえ』

 

若干くぐもっているが明らかに男の声、そして易々と怪物を屠る威力の砲弾。

三人目の仮面ライダー!とリュウガ、ニスティン、諜報員、暗部は声の主を振り向いた。

 

『なんだ……あいつは』

 

『うわぁ……』

 

「へ、変態だ」

 

「アレは……無いな」

 

そこに居たのは原始民族のナリに手持ちのボウガンを持った正体不明の男だったのだ。

……確かに、仮面ライダーと呼称するならば目の前の男は仮面ライダーに見えなくも………ない?のだろうが、全身を覆う装甲のリュウガやニスティンに比べ、非常に露出の多い鎧から彼が実体のある人間と示す肌が晒されている。

流石に頭部を覆い隠すヘルムの為に素顔は見えないが、惜しげも無く素肌を晒すその格好は仮面ライダーというよりは仮面ライダーの仮装をしている風にも見て取れた。

 

『あん?……にゃろう。俺が仮面ライダーって信じてねぇなぁ???』

 

リュウガ達が訝し気な視線を送っていることに気づいたか、男は腰に巻いたポーチから弾丸を幾つかボウガンの薬室に送り込むと、ワザとらしく「おっほん!」と咳払いをして簡素な名乗りを上げた。

 

『仮面ライダーガルダだぁ。見ての通り射撃主体の装備でなぁー。間違っても射線に入ってくんなよ?』

 

コンコンと指先で叩くベルトには鳥を象った紋章入りのエンブレムが収まっている。

されが仮面ライダーの証拠だということをリュウガとニスティンは知っていた。

そして先ほど披露した彼の射撃精度も、だからこそ2人は軽口で彼を歓迎する。

 

『ふっ、1匹たりとも撃ち漏らさなきゃ上出来だ』

 

『援護するからしっかり当ててくれよ?っと』

 

『……はぁ、可愛くねぇ奴ら。おら、行け行け。さっさと終わらせて俺は昼寝すんだよ』

 

仮面ライダー3人による掃射掃討が始まる。

 

『出番だ!』

 

『Advent』

 

先手はニスティン、契約モンスター召喚のカードをサーベル型のバイザーに差し込み、セット。

独特の機械音に続き何処からともなく三体の影がニスティンの周囲を取り囲んだ。

 

『ワスプ、ホーネット、ビー。狩りやすいように上手く集めろ』

 

ニスティンが呼んだミラーモンスターはいずれも二足歩行蜂型のバズスティンガー族。

青いワスプ、赤いホーネット、黄色いビーと見たまんまの信号機組だが、隊長格のホーネットの指揮を元に弓兵のビーが周囲のモンスターの気を引き、剣兵のワスプはモンスター達の攻撃を二刀の剣捌きで華麗に往なす見事な連携を用いて街中のモンスターを一纏めにしていく。

リュウガもそれを横目にバズスティンガー3人組の挑発に引っかからないミラーモンスターを倒していく。

 

『よしよしよし。いっちょ派手に…『Final vent』逝っくぞおおおおおおお!!』

 

必殺のカードを挿入すると彼の背後から鮮やかな体毛の鳥が現れ、聞いてると苛々してしまう声で鳴き始めた。

 

『 |キョエエエエエwwwwカァアアッカwwwwwwピェエエエエエエwwwww|《お前ら!戦いなんか下らねえ!俺の歌を聴けえぇぇぇ!》』

 

その独創的な演奏にモンスターや市民、勿論ライダー達の視線を集めた上でその鳥は不可思議なダンスを踊ると共にモンスターの集団へ徐にブレスを吐いた。

 

 

丁度ガルダの頭上を通過した鳩が白い煙を過ぎった直後に落下して動かなくなったのでこのブレスは睡眠性か痺れ、もしくは凄く息が臭いのだろう。

そのブレスを喰らったモンスター達は忽ちに昏睡していく。

その好機を逃さず、ガルダのボウガンから爆竹並みの速度で弾丸が飛び出し、一つ一つが密着したモンスターの身体をいくつも貫通していく。

 

『うっし、これで最後だ!』

 

『Bomb vent』

 

唐突にヒュー、と落ちてきたタルをガルダの契約ミラーモンスターが蹴り飛ばした。

タルは綺麗な放物線を描いて眠っているミラーモンスター達の頭上に落ちていき狙い澄まされたガルダの弾丸がタルにめり込んでーーーーーーーーー、

 

 

ボッッッガァァァァァァァァン!!!!

 

 

ーーー爆ぜた。

街中とか、そんな事情もお構い無しに視界は爆風に呑まれ衝撃に空間が震え、タル爆弾の壮絶な威力に大地が震えた。

 

「「『『………』』」」

 

『お、お、おおおぉぅ?……(汗)』

 

余りの威力にやらかした本人もドン引きである。

誰もがぽかんと口を開いたままで、仮面ライダーガルダは爆心地と〝犯行後〟に出来たクレーターを一瞥すると、

 

『…………あーやっべそういや今日この後用事あったわ。あ゛ーやべえやべえ急がないとやっべっべー!あぁー!!』

 

『 |キョエエエエエwwwwカァアアッカwwwwwwピェエエエエエエwwwww(ちょwwwこれはwwwやりすぎwww圧倒的www)

 

『うっせえぞアホ鳥!じゃあな!お前ら!』

 

目にも留まらぬ速さで現場から逃走するのだったーーーー…………。

 

 

なお、この時に出来たクレーターは幅6メートル、深さ4メートルに達し、一時期街の観光名所として観光客が溢れた。

その後匿名希望の人物から修繕費、補償費が送られてきたが、ミラーモンスターの召されたクレーターはその後も街の名所として人々に愛されている。

 

 

 

何はともあれ仮面ライダーガルダのファイナルベントでミラーモンスターは全て倒された。

生命エネルギーも全て回収済みであり、リュウガとニスティンはライダーバトルを始めるかと思いきや、

 

『は、アホらし』

 

『だな』

 

『そもそも。ライダーバトルに興味は無い』

 

『あー、それな。殺し合いとか(笑)そんな無駄な労力使うならテレビ見てるって』

 

お互いライダーバトル不参加組だった為、マスコミが駆けつける前にいそいそと逃走を図るのだった。

 

こうしてミラーモンスターの襲撃は終了し、攫われた市民は全員が赤い奴やら紫の奴やらゴリラとゴリラやらに救助されたと証言している。

その何れもが〝仮面ライダー〟を名乗っていたこと。

 

この事件をきっかけに世界は仮面ライダーを認知していき、ネット上では仮面ライダーに関する推論や議論が日夜白熱していく。

 

今回の事件で名の知れたリュウガ、ニスティン、ガルダ……更に鏡面世界で市民を救った龍騎、ナイト、ライア、ベガ、バード、刹那、サリス、レオン、ゴリラと言った仮面ライダーが確認された。

この事から仮面ライダーは複数存在し、その大半が男であること、他にも存在していることが知られるとともにISを凌駕する仮面ライダーと契約者達は望まぬ騒乱に巻き込まれていくのだった………。

 

 

 

そして、一部の男性市民並びに男声の仮面ライダーが何故か〝不死身のオカマ〟に襲われた映像がY◯uTubeに流され、半年間ランキングトップを独走し続けた。

 

 

蛇柄の服装に大胆不敵かつワイルドな表情、でもオカマ。

 

彼の名は浅倉タケ子。

 

仮面ライダー(男)達の天敵にしてオカマ(ある意味)最強のオカマ(ある意味)最悪のオカマとしてリュウガ達の前に立ちはばかる事をライダー(男)達は知らない…………。




オリジナルライダーを2人ほど……!口調や戦い方にご意見・アドバイスあったら提供者様よろしくお願いします(*'ω'*)
後今回出せなかったオリライダーに関してはまた後々……そういえば仮面ライダーガルダのアホ鳥って誰なんでしょうね(すっとぼけ)。あとゴリラってダリナンダアンタイッタイ

最後にこの作品のラスボスだけど大半の読者が篠ノ之束と勘違いしているな?クックック掛かったなアホが!この二次小説のラスボスは……おや?誰か来たみた(ry

☆前話の小ネタ答え合わせ☆
前話で浅倉より浅倉してる女性がやっていた某ここたまゲームで倒していた敵は赤いアイツがナインボールで鉄板がジナ姐でした。


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アレだアレ、ライダーバトル中止ィィィィーーー!!

タイトル通りでキャラ崩壊注意。
最近ウォーブレやり始めて楽しい。
ただオンラインで勝てないのでストーリーかプラクティスばっかやってます。
イムちゃん可愛いよぉハァハァ


 

仮面ライダーとミラーモンスターの存在が知られた騒動から数日後。

俺たち契約者は神崎に呼ばれていつもの教会に訪れていた。

 

「……こんなにいたか?契約者」

 

初めて神崎に会った時、「13人の契約者で潰し合うデスマァ〜ッチ」と腹立つテンポで言われた気がするが……13人?

 

「明らかに定員オーバーしてるぞ」

 

いつものメンバーに先日会った仮面ライダーニスティンの変身者、更にはムッコロスタジオで見かける常連に知らない連中まで。

流石に浅倉はいないか。

にしても俺や真司をライダーバトル一期組とするならこいつらは二期組ってことか?にしても増やしすぎだろライダー。

 

「搾れ。搾りつくせ…!ライダー」

 

よく分からんフレーズで登場する神崎兄。

いつもの口癖でないので、俺も含めて契約者全員が首を傾げている。

その微妙な空気を読み取ったか、奴は一度咳払いして本題に入るようだ。

 

「こほん、今日呼んだのはライダーバトルに関しての話だ」

 

一度全員を見渡し、凛々しい顔つきで奴は言った。

 

「諸事情にてライダーバトルは中止!」

 

「「「「は?」」」」

 

「代わりに契約者はミラーモンスターとの×××をやって貰う」

 

「「「「は?」」」」

 

俺にだけ聞こえる声で「シャーーー!オラァァァァ!!シスコンナイスアシストォォォォ!!今日から孕む気でズッコンバッコンズッコンバry」と騒がしいのをひとまず無視し、神崎をゴミを見る目で見つめてやる。

 

「優衣に言ってやる」

 

「ッ!?」

 

一言告げるだけで神崎は顔を青ざめ脂汗を流し始めた、ざまあ。

 

「先日の今日で反省してないとは恐れ入った。まあ、これでもう優衣の堪忍袋もブチ切れだろう。ボコボコにされて最悪縁切りもあり得る」

 

横から蓮の合いの手が入る。

既に神崎兄は最悪の未来を予測して虫の息だった。

 

「ゴフッ!?……かひゅー、かひゅー」

 

吐血し膝をつく神崎をケラケラ嘲笑う。

本人もこれは優衣に縁切りもあり得る事態と認識しているのだろう。

必死に顔を横に振って「やめてやめてそれだけはやめてマジで」と言っている。

その熱意に俺も蓮も肩を竦めた。

 

「正直お前の気が触れた気がするが、優衣に内緒にするのはやぶさかじゃないぞ」

 

「!」

 

「ただし。こちらの言うことを一つ叶えて貰おうか?」

 

ニヤリ笑う。

体を抱いて何故か頬を染める神崎を無性にぶち殺したくなったが、我慢を強いる。

さて、一体何をしてもらおうかな?

 

「酷いことをするつもりだな!エロ同人みたいに!」

 

「死ね」

 

やっぱりこいつは殺そう。

そう思った瞬間だった

 

 

 

 

 

 

その後、ミラーモンスターのバージョンアップと称して契約者全員のデッキを受け取った神崎は姿を消し、俺たちも流れで解散になった。

真司は会社に、蓮はホテルに、そして俺はネットカフェに。

 

「しかし何とまあ……馬鹿げた話だった」

 

「あー。それな。分かる分かる。俺も働いてた時に異世界のオークかよって糞ブスにセクハラで訴えられた時くらい馬鹿らしかったわ」

 

「神崎も篠ノ之束のように頭の中身が腐り落ちちゃったのかしら?……ちょっと私これから刺しに行った方がいいかも知れないわね」

 

「ファーーック!まただ!俺のテンプラがまた喰われた!?あのゴリラ今度という今度は許さねえぞ!?」

 

((((お前も十分ゴリラだろ))))

 

今俺は実は契約者だったネカフェの常連たちと一緒に神崎の話した優衣の延命策について話し合っていた。

 

『ミラーモンスターの生命エネルギーと男の精◯と混ぜ合わせて命の代わり1日ぶんにするから契約してるミラーモンスターと×××をしろ』

 

『神崎さん頭イカレスギィ!!!』

 

どこをどうすればそんな都合のいいものが出来るか分からないが、仮にも命の代わりになるとして実の妹に他人の精◯が混じったものを与えようと思うのか、俺はそれが知りたい。

 

「うーん。神崎士郎、彼の名前はICPOの上層部にも伝わってるんだけど。あんなキャラだったかな」

 

「男なんてみんなバカばっかりだから仕方ないんじゃない?」

 

イケメン外国人のアルスが首を傾げ、毒舌女講師の支倉紫穂が聞き捨てならないことを吐き捨てる。

口を出す気はなかったが、神崎と同じに見られるのは我慢ならなかった。

 

「いや、あいつだけだろ。男カテゴリーをアレのイメージで一括りにするなよ」

 

「あら、ごめんなさいね?周りの男なんて盛ることしか頭にない猿ばかりだから」

 

舌をペロリと出して悪びれぬ態度。

このアマ……いい根性してやがる。

 

「神崎って、残念な人だったんだな」

 

ドイツ人の銀髪少年 天野銀が沈痛な顔立ちでポツリと零した。

曰く、天野はミラーモンスターやミラーワールド、仮面ライダーの研究をしていて、その過程で神崎のこともある程度尊敬していたらしい。

ライダーバトルには参加しないものの、神崎と優衣を救う術を模索する気だったようだが、なんかその気分も若干無くなったらしい。

 

「だがまぁ、ミラーモンスターがべっぴんさんなら俺は構わんけどなぁ」

 

ブラック企業の元社畜こと黒山白が顎に手を当て考え込む。

 

「しかしだ。本当にミラーモンスターが人間態になれるもなのか?」

 

神崎が打ち立てた衝撃の対策『×××して優衣を救おう作戦』の重要な策の一つ、『ミラーモンスターの人間化』。

デッキをバージョンアップさせてミラーモンスターを人間化させる常時展開可能なventカードを追加させると言っていた。

 

「まあ出来るだろ。俺が契約してるのもいつのまにか人間態になってたし」

 

ミラーモンスターの事なら神崎が知ってるわけで、俺がどうこう口出すよりもあいつに任せた方が良いに違いない。

そう思ってると周りの契約者全員が口をぽかんと開けていた。

 

「「「「え?」」」」

 

「?なんで全員変な顔してる?」

 

俺は当たり前のことを言ったつもりだけど。

 

「いや、え?お前のミラーモンスター、既に人間になれるの?」

 

「ああ。まあ、な。来い。ドラグブラッガー」

 

黒山の複雑な表情と言葉に「え?お前らのミラーモンスター出来ないの?」と少しばかりの優越感を感じ、自慢の玩具を見せびらかす気分でドラグブラッガーを呼ぶ。

するとアギトの隣に、メイド服を着た黒髪の女が忽然と姿を現した。

 

「「「「………」」」」

 

「こいつ、ドラグブラッガー。元は黒龍型のミラーモンスターだ」

 

契約者一同はドラグブラッガーと紹介された少女にただただ驚くことしかできなかった。

整った顔立ちにスッとした鼻、きめ細やかな色白の肌に烏の濡れ羽色をした黒い髪色、ちらりと覗く艶めかしい鎖骨、何故メイド服を着ているかは分からないが、ドラグブラッガーと呼ばれた少女は正に美少女であった。

 

「餌やってたらいつのまにかこれでさ。お前らもだろ?」

 

補足とアギトがそう言うが、周りの契約者は「なるわけねえだろ」と意見が一致しており、アギトもしくはドラグブラッガーがおかしいだけだと納得することにした。

 

「それで、なんでメイド服?貴方の趣味?……ふっ。いい趣味してるわねー」

 

「はん、喫茶店に住んでたもんで。たまにこいつに手伝わせてただけだ」

 

光る毒舌、紫穂の追求を鼻を鳴らして躱すアギト。

 

「俺のゴリラも……美女に」

 

淡い期待を抱くゴリラ、ロック・ヴォルハート。

彼は現在警備員のお仕事をしている。

ただ外見がゴリラなので名前で呼ばれることもなく、ゴリさんであだ名が定着している。

そんな彼の契約モンスターもまた、ムッキムキのゴリラなので、ゴリラが美女になるとの彼の願いが叶うことはあるのだろうか。

 

「ミラーモンスターの可能性は無限大……か。俺、ちょっと出かけてくる」

 

天野銀はドラグブラッガーの人間態に一時面食らっていたが、気持ちを取り直し、やはり神崎士郎は尊敬すべき研究者なのだと再確認。

神崎のデッキ改造の手伝いをするべく席を立った。

 

「ほぉー、この嬢ちゃん凄え別嬪だな」

 

「完成された存在。ミラーモンスター……か。興味深いね」

 

スン、と澄ました表情のドラグブラッガーをまじまじと見つめる黒山とアルス。

 

彼らは一様にデッキのバージョンアップに夢を見続け、ムッコロスタジオの夜はだんだんと更けていくのだった。






オリライダー提供の方々!口調おかしいぞコラァァってなったら手直しをよろしくお願いしマァァース


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男なのは仕様だ。諦めろ(理不尽)

すんません。遅れました。
今回はちと難産でして、シリアス(?)を引っ張るかギャグにするかでずっと迷ってました。
でももう迷わない。この二次小説はこれで良いんだ。
というわけでどうぞ(о´∀`о)


 

深夜零時。

龍賀アギトは馴染み深い教会の中でゴンゴンと鳴る鐘の音をぼんやりと聴き入っていた。

 

ここに来た理由は1つ。

以前から神崎に依頼していた探し物が見つかった、と優衣伝手に聞いたからだ。

 

「アギト」

 

「ああ、やっとか」

 

椅子に座り、背凭れに身体を預けていたアギトの前に神崎士郎は現れた。

彼はコートから一枚の紙を取り出してアギトに渡すと、さっと踵を返した。

その後ろ姿へアギトは探し物に対する礼を述べた。

 

「戦え。戦え、アギト」

 

「……?」

 

歩みを止め、されど背は向けたまま。

神崎士郎はアギトに告げる、戦えーーーと。

 

「かつての鏡像の城戸真司や今のお前は、戦い続けることでしか自らを証明出来ない、いわば空っぽの存在。今のままではお前は、いずれ消滅するだろう。……あの時から、もう10年が過ぎた」

 

案外、時間が過ぎるのは速い、と苦笑を零し、この十数年間共にいた相棒と神崎、そしてカードデッキを託してくれた鏡像の彼を思い浮かべる。

 

「お前は。……お前はこれまでの並行世界に置いて1つたりとも存在し得なかった特異点。お前のおかげで優衣が生きる可能性も見つかった」

 

神崎にしてはえらく人を褒めるじゃないか。

何か変なものを食ったのかもしれない。

もしくは優衣に殴られ過ぎて神崎士郎という男を構成するネジがぶっ飛んでしまったのかも。

半ば冗談であったが、アギトにとって神崎士郎は昔から「戦え、戦え」と口煩い男であった。

だから今更その性分が変わるとは思っていなかったので、人が変わったような士郎を興味深く観察していた。

 

「今更、世界から消えようとするな。この世界に、お前が必要だ」

 

彼の言葉はどうも解りにくい。

ただ、生きろと。

遠回しに激励されていることは分かった。

無論アギトも死ぬ気など微塵も無い。

しかしそれでも神崎士郎は告げる。

 

「戦い続けろ。そして、その欲望の果てに。お前が求めた願いはある。必ず」

 

神崎士郎は嘘を吐かない。

 

無論多少なりと真実を隠すことはあるが、それは彼自身のコミュ障と口下手からくるものとアギトは長年の経験から解釈していた。

だからこそ、彼の言っている言葉に一筋の希望を見た。

 

「そ、か。もう少しで見つかるか。ありがとう、士郎。やっと……安心出来た」

 

年相応の無邪気な笑顔をアギトは浮かべて見せた。

それも直ぐにいつもの表情に変わると、ゆるりと立ち上がって教会を出る。

 

「戦え」

 

彼の声に右手を上げて応える。

 

「戦え、ライダー。……戦わなければ、世界に未来はない」

 

扉の閉まる音に遮られ、士郎の言葉はアギトの耳に届くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シリアスブレイクゥゥゥ!!Fooooooooーーーーーーーーー!!!!」

 

「………」

 

数日後、契約者一同は教会に集められ、ハイテンションの神崎からバージョンアップしたというカードデッキと例のventカードを受け取った。

 

「ふおおおおぉぉぉぉ フオオオ(((卍(^ω^)卍)))フオオオ」

 

狭い教会の中を所狭しとブレイクダンスしている士郎。

開発を手伝った天野銀によると、徹夜続きで理性が溶けたーーとか。

もっとも、幼少期の神崎士郎はこんな風にハッチャケちゃう性格だったのかもしれないし、彼らにとってはもうこれが〝いつもの〟士郎だと契約者一同はシカトすることに決めた。

 

「常時展開可能と言っても、これを使ってたら他のventカードが使えないんじゃ、って消えたァ!?」

 

試しに真司がventカードをバイザーに突っ込んでみるとventカードはたちまちに消失した。

機械の故障だろうかと慌ててドラグバイザーを殴るものの、召喚機は昔のテレビではないのでその対処法で治るとは思えない。

ここにも〝いつもの〟安定の天然を発揮するバカ真司を放っておき、蓮もまたバイザーにventカードをセットした。

独特な機械音が流れ、ventカードは消失。

試しにパートナーのミラーモンスターを呼んでみるとその効果が知れた。

 

「……恵理?」

 

ダークウィングの姿は彼の恋人、小川恵理に瓜二つだった。

優しげと包容力を持った柔らかな笑顔、昏睡前の彼女と同じ身長、体型、どれをとっても小川恵理を彷彿させるもので、髪型と髪色こそ多少の違いはあるものの、蓮の目には小川恵理が写っていた。

 

「ぁ痛だっ!?」

 

「!」

 

突然聞こえた悲鳴にハッと我に帰り、慌てて真司の方を見る。

あのまま見つめていたらダークウィングを恵理と勘違いしていた、そんな確信めいた予感が蓮の中にはあった。

 

そして逃避先の真司の方ではアギトがまるで女版真司とでも言える女性に殴られていた。

凶暴性が馬鹿の服を着た〝アレ〟が真司のパートナーモンスターのドラグレッダーだろう。

目つきは鋭く目と眉をセットで釣り上げたソレは周りの契約者やパートナーモンスターに向けてメンチを切っている。

まるでもクソもなくチンピラのような女だが、ドラグレッダーもまた顔の造形は非常に整っていて、睨みさえしなければ美女と呼んでも差し支えないだろう、威嚇さえしなければ。

 

「全員ventカードはセットしたな」

 

頃合いを見て神崎が仕切った。

契約者は全員ミラーモンスターの美女化、又は美少女化に満足していて神崎もたまには優秀とーーー

 

「ちょ、ちょっと待てよ。俺のだけおかしいんじゃね?」

 

発言したのは育ちの良さそうな雰囲気を持つ男、芝浦淳とガタイの良い謎のガチムチ男。

今回物見遊山のつもりで集まった彼は周囲の契約者のミラーモンスターがもれなく美少女・美女に変身する中で彼のモンスターメタルゲラスのみ巨体でガチムチの〝男〟に変身したのだ。

そしてそれを素知らぬ顔で士郎が仕切るものだから思わず声を上げたのだ。

バグが起こっているぞ、と。

 

しかしそれに対する士郎の答えは素っ気ない。

 

「メタルゲラスが女形態よりも男を好んだためだ。諦めろ」

 

「は」

 

絶句と同時に堪えきれなかったメタルゲラスが芝浦に抱き着き、彼の全身の骨は折れた。

芝浦はあまりの痛みに周囲に助けを呼ぶが、彼の吐き気を催す邪悪さを知っている契約者は皆無視を決め込み、芝浦は気絶してメタルげラスに連れていかれた。

 

こほんと咳払いを1つ、神崎士郎は気を取り直して本日の目的を話し出す。

 

「そういうわけだ。お前たちにはこれからライダーバトルではなく契約してるミラーモンスターと×××をして精◯の採集に励んでマラう」

 

「突然の下ネタ……!お前ほんとに……神崎士郎!?」

 

「YES I AM!」

 

ビシィィィィ!!っと某奇妙な冒険のようにポーズを決める士郎、本日何度目かの呆れを見せる契約者。

とりあえず神崎の説明会では美少女化した契約モンスターとちょめちょめしてドッピュンピュンしたものを集めて神崎に送り、それを元に妹の命を作るという頭のネジがぶっ飛んだ方法。

優衣に知られれば士郎は今度こそ殺されれだろう。

 

「それ以外に何かあるか?」

 

「ライダーデッキを大事にすることだ。何も美少女に喰い殺されたくはないだろう?」

 

「「「「………」」」」

 

デッキを紛失し美少女化した蟹に貪り喰われる須藤……、何故か彼らの中では一番先に喰われそうなのが須藤雅史という男だった。

 

 

 

 

 

 

 

ムッコロスタジオ

 

滑舌のよろしくない店員達が働くネットカフェでいつもの常連たちが会していた。

彼らは今後の身の振り方を話し合い、支倉紫穂の百合百合展開やキマシタワ-と叫んで仮面ライダーに変身した紫穂の毒にやられた。

 

「そういえばあれ、知ってっか」

 

痺れるだけの神経毒にやられていた黒山が一つの話題とパソコンをカタカタと操作した。

 

「明日、ここは一体の男を集めて適性検査をやるんだと」

 

行かなかったら罰金だってよー。

 

面倒くせえとため息混じりに吐いた愚痴、アルスやゴリラ、銀もISと女尊男卑の世の中に対してあーだこーだ呟いている。

その中ではアギトは、そろそろ迎えに行こうか……とだけ言った。

 

「迎えにいくって、何を?」

 

未だ男性陣は話し合いをしている。

その中では唯一興味が無かったか、退屈そうにしていた紫穂はアギトが漏らした言葉を聞き逃さなかった。

だから、達観した顔のアギトへ舌なめずりしそうな気持ちを押し込んで聞いた。

 

そして彼は言った。

 

「いつか奪われた。とても大事なものを取り返しに」

 




次から、次から……!!


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2人目のIS起動者

前回の胸像の真司の修正感謝してます。
たった5文字の中に真司くんのワイルドでセクシーで胸キュンな姿を想像した方は鏡の中の淫夢語録に出演している芝浦ニキとメタルゲラス♂ニキのストライクベント♂でもどうぞ。



「ハイ次ー、名前と年齢を言って下さい」

 

「龍賀アギト。16」

 

「はいはい。龍賀アギトくんね(結構いい顔してるわね)……じゃあ説明するからよく聞いてーーー」

 

「IS起動。これでいいか?」

 

「…………え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

16歳無職の男、龍賀アギトが2人目のIS起動者というニュースは瞬く間に世界中に発信された。

日本政府が緊急に彼に付いての情報を隠し込めたにも関わらず、世界は彼をISを起動した男〝セカンド〟と認めた。

 

『世界2人目の男性起動者!』

『日本、早くも2人目の男性適性者確保』

『2人目はどの管理下に置かれれのか!?』

『アメリカ、日本との会談数激増』

 

連日連夜アギトの顔写真や特番が組まれ、千差万別の司会者とタレントがアギトの処遇について好き勝手議論する。

 

やれ日本所属、やれ世界で共有すべきなど。

中◯は龍賀アギトは本国籍の人間であるために我が国で管理すべきだろうと主張し、日本と親交のあるアメリカもここぞとばかりに口を挟む。

他の国も、アギトの人権を為と言いつつ自分たちで管理しよう言葉巧みにアギトへラブコールを送っていた。

 

まるで本人の意思を決めようせず自国の思惑ばかりを吐露する大人たちを尻目に、アギトは適正値の測定を行い、適正値Dの評価を与えられた。

このD評価はいわばISを動かすだけでかなりの集中力を用い、それでもA適性の者と比べるとISの稼働率に2倍、3倍以上の差があるに等しい。

 

降された評価値に広告塔として期待していた各国はアギトの確保を幾らか諦める。

彼らの理想は2人しかいない適性者でも強い男であり、B評価を受けている織斑一夏よりも適性の低いアギトは戦わせるまでもなく弱いだろう……とのことだった。

 

こうして不適合者のレッテルを貼られたアギトは本人の希望もあって織斑一夏と同じくIS学園に編入することに決定。

そしてその日は奇しくもクラス対抗戦で織斑一夏擁する一組と中国の代表候補生擁する2組の試合日であった。

 

 

 

「……ここか」

 

ホテルから学園まで用意された黒塗りの高級車から降り立ち、IS学園へアギトは到着した。

運転手にここで少し待つように言われ数分後、アギトへ手を振りながら走ってくる少女が。

 

「はぁはぁ、アギトくんで間違いないですか!?」

 

「……ああ」

 

体力がないのか、ぜぇはぁと肩で息をするその少女に、アギトくんも何も俺しか男がいないのだから確認する必要ないだろ……と喉まで出かかった言葉を彼は押し込んだ。

どうせ目的のモノを奪い返すためにここに来ただけなので必要以上に話すこともないだろうというだけだ。

 

少女はーーーアギトもこれを聞いてギョッとしたが、山田真耶、教師、これでも成人、さらに言えば小柄な体躯に反比例した巨乳が持ち味。

彼女は簡単な自己説明をしてアギトを連れ立って歩き出した。

どうやら今日はクラス対抗戦なる催しがあり、アギトが在籍する一組と二組の試合がもう少しで始まるらしいのでこれから観戦しに行くらしい。

 

「そういえば、アギト君はISを動かしてみてどうでしたか?」

 

途中彼との無言の間が堪えたのだろう。

山田は共通の話題とばかりに彼へISを起動した時の感想を聞いた。

しかしアギトはそれに対してニヒルな笑みを口の端に浮かべて、

 

「D適正の俺には空を飛ぶ楽しさが分からないんで」

 

その顔は山田摩耶に更なる気まずさと衝撃を与えた。

 

(そ、そっか……アギト君は男の子でISを起動できた2人目だけど、必ずしも適性が高いわけじゃないですよね)

 

自身の愚かしさを呪った彼女だったがすでに後の祭り。

それから観客席にたどり着くまでアギトとの空気は更に悪くなり、目的地に着いて再度アギトと顔を合わせた時の表情はまるで捨てられた仔犬のようだった。

 

「……気にする必要なんてねえ……ですよ…?」

 

彼女の気の遣い方が城戸真司に似ている気がして思わずタメ口を使おうとして慌てて修正。

しかしそれに気付かぬほど山田真耶の気持ちは沈んでいて、後でまた合流しますの言葉を最後にのろのろと何処かへ行った。

 

「………さて」

 

アレは何処だろうか。

 

アギトの視線は観客席を見渡すように睥睨される。

そして、見ると同時に見られる気配を覚えた。

周りにいる女生徒から関心を寄せられているのだ。

 

「ねえ、あれって」

「あ!2人目!?」

「か、カッコいい」

「織斑君が爽やか系イケメンとしたらクール系イケメン!?」

 

「……チッ、面倒だ」

 

彼の周りには人垣が築かれつつあった、勿論IS学院の女生徒が学年を問わず集まりつつあるのだ。

彼女達は口々に好きな食べ物を聞いたり、はたまた女性のタイプ、はたまた自らの自己紹介に自己アピールなどを繰り出していく。

それを受けてアギトのストレスは次第に溜まっていき、酷く苛ついた顔で一言。

 

「邪魔だ。退け」

 

「「「「「はうっ……」」」」」

 

その一言で時を止めたように動かなくなった女生徒達、アギトはソレをドラグブラッガーの対象を石化される炎を喰らったミラーモンスターのようだと形容した。

いずれにせよもう興味もないとばかりに席を移動する。

どうせなら1人がいい、1人だけの場所がいい。

 

「あ!待って!」

 

「逃すかよイケメン!」

 

「連絡番号交換してええええ」

 

佐野滿が契約しているゼール軍団並みの勢いで獲物を狙う女達。

しかし角を曲がったアギトを追った先に彼は何処に存在していなかった。

 

「あれ?」

「え?どこ?」

 

丹念に磨かれた階段の手すりの表面から、キィィン、キィィン、と音が鳴っていた。

 

 

 

 

「戻りました、織斑先生」

 

一方山田摩耶はアギトの案内を終えて部屋の一室に戻っていた。

そこには一組担任の織斑千冬が椅子に座っていて、彼女は摩耶の方を向いて軽く頷いた。

 

「ご苦労だった。山田先生。彼はどうでしたか」

 

「そうですね。適性が低いことを気にしてるのか、あまり口数が少なくてあまり社交的ではないように思います」

 

ですが、と山田真耶は一度言葉を切った。

織斑千冬が怪訝そうに彼女を見るが、その時彼女の脳裏によぎったのはIS学園を淡々と見つめるアギトの冷たい両目。

その目に魅入られた時、山田摩耶の背筋は酷凍りついた。

まるでISで持ってしても対抗し得ない強大な存在と対峙した気分だった。

 

「ふむ、そうですか。試合の方もそろそろ始まりますね」

 

「あ、そうですね。織斑君も頑張って欲しいですね」

 

2人の教師が見つめる先、一組と二組のクラス対抗戦が始まろうとしていた。

 

「行くぞ、鈴!」

 

「かかって来なさい!一夏!」

 

織斑千冬、山田摩耶が担当を務める一組の代表選手は織斑一夏。

織斑千冬の実の弟であり、1人目の男性IS起動者。

現在は研究の一環である男がISを使った場合のデータを取るため、白式という名の専用機を与えられている。

 

対する二組の代表選手は凰鈴音。

中国の現代表候補生で織斑一夏と幼馴染の経歴を持ち、専用機甲龍を持つなど、確かな実力を持っている。

得意な料理は酢豚。

 

この2人はどちらも近接主体のISを使用していて、今回も互いの懐で斬り合う試合となっていた。

それを見た観客(学園の女生徒のみだが)は大いに湧き立ち、教師陣も一夏の動きに感嘆の息を漏らす。

 

(………バカ真司の方がまだ動けるぞ)

 

もっとも、人のいない部屋でモニターを眺める彼は内心毒ばかり吐いていたが。

 

「さて、そろそろ仕掛けてくるとは思うが。早く来いよ、いつまで待たせる気だ」

 

虚空ーーいや、部屋に備え付けられた監視カメラにその目を向けてアギトはニヤリと挑発した。

まるでその向こうにいる誰かへ話しかけるように、まるで自身の存在を見せ付けるかのように。

 

「今すぐ取り返したっていいんだ。俺は」

 

制服のポケットから取り出したのは長方形の黒いカードデッキ。

これこそがアギトを仮面ライダーリュウガたらしめる変身アイテムである。

それもまた見せ付けるように手のひらで弄ぶ。

……余談だが、近くに放置された手鏡の向こうでメイド服を着た黒髪の女が弄ばれるカードデッキを見て酷く身悶え喘ぎ声を上げていたとか。(IS学園七不思議 エッチなメイドさん より)

 

「でも、それじゃあ俺の気が済まない。あの日踏みにじられた俺の想いは。あの日復讐を誓った俺の怒りは。あの日託されたこの願いは……。あのIS(白式)を潰したくらいじゃ晴らされないんだよ」

 

彼の血のように赤い瞳がギラギラと輝く。

そしてその時、モニターの中で異変が起きた。

 

「はっ、やっとかよ。精々俺を本気にさせてみせろ。篠ノ之束」

 

鏡に翳されたカードデッキ。

それを腰のベルトに装着した彼は。

ニヒルな笑みにポツリと言葉を紡いだ。

 

「ーーーー変身」

 




対抗戦が終わったら例のサイドストーリーをぼちぼち進めていこうと思ってますあ。
それと活動報告のオリライダーはそろそろ締め切らせてもらおうかと、これ以上増えたら俺のキャパが……今でも怪しいくらいなのに…!!
ええと、現在メッセや活動報告で送って頂いた方は全て採用させて頂きますのでどうかお待ち下さい。(主人公の容姿とか、ライダー形態とか、ミラーモンスターの容姿とか、擬人化形態とか送ってくれてもいいのよ?チラチラ)


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リュウガ(やべ、やりすぎたか……汗)

この話でクラス対抗戦は終わり!
とりあえずオリライダーを全員整理して出番を考えなければ……。
ううむ、IS vs.ライダーズか、虎の子のオルタ軍団を出すか……。

あ、前回で誤字修正してくれた方、ご苦労だった!(何様)本当ありがとうございます。今回は何もないといいんですが……。
それと、オリライダーの生みの親が自身の欲望を曝け出してくれるとぼくがとてもよろこびます(悪魔スマイル)。
ほうほう、貴様らそんな性癖だったのか。良いではないか良いではないか。もっとその欲望を見せてみい(外道)


ドゴオォォォォン!!

 

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「え?なに!?なんなの!?」

 

「やめ、痛い…痛いって!」

 

アリーナの防護フィールドを破り忽然と姿を表せた全身装甲の所属不明機に会場の女生徒たちは困惑し、パニックに陥り、それは病気のように周囲に感染し、未曾有の大混乱を引き起こした。

 

誰も彼もが我先に避難しようとした為に出口はぎゅうぎゅう詰めの缶詰状態だ。

これではスムーズに避難することは難しく、またこのような経験も、IS学園の防備は万全と避難訓練もさせてこなかった事が仇となり、彼女たちは身動き取れぬまま所属不明のISに背を向ける形となった。

 

『………』

 

その女生徒たちを見たISは片腕を無造作に無人の観客席に向けた。

手のひらから光が収束し太い閃光が無人の観客席に吸い込まれた。

これもまたアリーナの防御フィールドを容易く撃ち貫いて観客席を破壊、融解させた。

 

「ひ、イヤァァァォァァ」

 

「どいて!どいてぇ!?」

 

その光景を見た女生徒たちは恐怖に顔を引攣らせ脱出しようともがく。

しかしそれを尻目に観客席の出口は厚い壁を稼働させて女生徒の逃走を阻む。

鋼鉄の壁に行く手を阻まれた少女たちにできることは何一つなかった。

 

「……なによ。これ」

 

「出して……ここからだしてよぉ……」

 

この緊急事態に教師陣も少なからず混乱した。

IS学園のシステムは何者かのハック攻撃によってコントロール権限を乗っ取られており、現状では出口を固めてしまった隔壁を取り除く方法は皆無だった。

教師の数名が慌ててシステムを取り返そうとするも、強靭なファイアーウォールに手も足も出ないため、救出班の教師IS部隊も手出しすることが出来ず怒りと悔しさに臍を噛む。

 

その中でアリーナの中央。

2人のIS操縦者は目の前の不明機に対して思いの外冷静だった。

言わずもがな先ほどまで戦っていた一夏と鈴だ。

2人は冷静に不明機を観察して互いの意見を出し合う。

 

「あのビームは危険だ。ISのSEも1発で全損させるかも知れない」

 

「そもそも、今の時代に全身装甲型?」

 

操縦者を完全に守るシステムを持ったISを装備しているからの冷静さだろう。

それと、一夏と鈴が話し合っているのを興味深そうに観察する不明機の態度もまた冷静さに一役買っていた。

 

「……なあ鈴。アレ、本当に人間が乗ってるのかな」

 

それを最初に言い始めたのは一夏だった。

疑問に思ったのは鈴の言っていた全身装甲型という時代遅れの技術。

そしてなにより、一夏自身の直感がアレは人間なのか?と告げていた。

 

「一夏?何言ってんのよ。アレが無人ISだって言うの!?それこそ無理よ。無人型は未だ何処の国も開発に成功してない!試作型の情報すら無いのよ!?」

 

たとえ超極秘プロジェクトとしても、何処の国もまだ無人ISの開発に成功していないことが鈴の主張だ。

だが、それでも一夏の違和感は拭いきれない。

今もなおこちらを観察しているあの無人機が人間の真似をしているブリキのロボットの如く印象がどうしても醒めないのだ。

そして鈴も彼の性格を知っているだけに動揺から一転して冷静に確認した。

 

「本気?」

 

「ああ。何でかわかんないけど。アレに人は乗ってないって思うんだ」

 

確かめるように1つ頷いた。

そして自身唯一の実体剣を構える。

 

「俺に1つ作戦がある。鈴はーーー」

 

その時だった。

生徒たちの脱出を阻む隔壁の1つが、その向こうからミシミシと音を立てて開かれ始めた。

この事態に生徒は困惑、続いて教師が助けに来てくれたと一株の希望を持つ。

 

そして隔壁は開かれた。

 

目の前にいたのは果たして、

 

『………邪魔だ』

 

「あ?え?仮面……ライダー?」

 

黒い騎士の様相をなし、仮面のスリットから覗く血の色をしたツリ目。

黒龍の刻印を持つ騎士、仮面ライダーだ。

 

黒い仮面ライダーは片手で隔壁を強引に開き、その威圧に道を開けた女生徒達を尻目にアリーナへと進む。

そしてアリーナ中央の不明機を見下ろしてこう言った。

 

『よう。出来損ないのポンコツ。クソ女の使いっ走りか?ははは』

 

ドゴォオオオ!!

 

不明機に旧友と再会した感覚で手を挙げた黒騎士に不明機のビーム砲が突き刺さった。

 

観客席も共に破壊したその威力にさしもの黒騎士も倒されてしまったかと女生徒達は目を背けた。

 

ーーしかし、

 

『なんだ。クソアマの技術力も神崎に比べれば大したことないな』

 

無傷の黒騎士だ。

彼の周りを長い躰を持つ黒龍がとぐろを巻き不明機を忌々しげに睨みつけている。

盾にしたであろうその美しい黒い躰には傷ひとつ付いていない。

黒龍の装甲に対して不明機の威力不足が露呈したも同然である。

 

黒騎士は一つ黒龍の背を撫でてやると黒龍は嬉しそうに甘えた声を鳴いて身を捩る。

続いて黒騎士はベルト部のデッキからカードを一枚引き抜き、それを片腕に取り付けられた籠手の中へ差し込んだ。

するとその籠手から低い男の声が流れ、何処からか黒い刀身を持つ刀剣が黒騎士の手の平に納められた。

その黒い刀身を軽く振り、黒騎士の目は細められた。

 

『お前は見せしめだ』

 

グッ、と腰を下ろし不明機に向けロケット染みた爆発的加速で黒騎士は飛び蹴りをお見舞いした。

ドゴン、と派手な爆発音が鳴り響いて一瞬のうちに黒騎士の蹴りが不明機を捉えた。

不明機はその衝撃を受けてアリーナの壁へ深々と突き刺さる。

 

「なっ……」

 

『なんだ。もう終わりか?』

 

ゆらりと体を起こし不明機を見るも、既にその装甲はボロボロの状態で、剥き出しの配線や内部パーツが彼の蹴りの威力と受けた者のダメージを主張する。

もはや不明機は動くことも叶わぬガラクタだった。

 

『はっ、ざまあみろ』

 

ピクリとも動かぬ不明機に黒騎士の追撃が襲い掛かる。

手にした刀剣による複数の剣戟、一撃一撃が必殺の攻撃に不明機の腕や脚などのパーツが簡単に打ち切られていく。

そして一息に刀剣を突き刺して引き抜くと、その切っ先にはISコアと呼ばれるISの格があった。

 

「お、お前……何者なんだ」

 

『………』

 

黒い騎士の赤い双眸が自身へ言葉を投げかけた織斑一夏に向いた。

 

黒を主体とした黒騎士、白を主体とした白式。

相反する2人の視線が交差した時、一夏の脳裏に何か懐かしい感覚と、自分が誰かを呼ぶ声が蘇りかけた。

 

ーーーき、ーーーい、きーー。

 

「!?……なんだ、これ」

 

頭が痛い、ズキズキと唸る突然の頭痛を両腕で押さえつけながら一夏は目の前が真っ暗に染まり行くのを実感した。

 

「おまえは……おまえは……?」

 

『………』

 

黒い騎士は何も答えない。

手のひらに納めたISコアを弄び、一夏をジッと見つめている。

まるで一夏の答えを、一夏が何かを思い出すことを待っているように。

 

期待しているように。

 

「俺は……」

 

何を、思い出そうと?何を、忘れている…?

俺は、俺は。

 

『リュウガ。……仮面ライダーリュウガ』

 

黒い騎士は自らの名を名乗った。

感情を抑えた無機質なその声に、やはり一夏は堪らなくなる懐かしさを覚えていた。

 

「りゅう……が……」

 

不可思議な頭痛に脳が負荷に耐えれなったため、一夏の意識はそこで途絶えた。

パタリと倒れる。

リュウガはそれをずっと見つめていた。

 

『………ふん』

 

しかしそれも束の間、彼は最後にブラックドラグクローを用いて黒い炎弾を吐き出すと石化した不明機を今度こそ粉々に破壊した。

そして踵を返して立ち去ろうとする。

 

「ちょ、ちょっとアンダーソン!そのコアをどうするつもりよ!?」

 

中国代表候補生 凰鈴音だ。

彼女は一夏を庇えるように彼とリュウガの中間に立ち位置を変え、手に持った青龍刀を目の前の黒い騎士へ向ける。

ハッキリ言って勝算があって構えたわけではない、むしろ戦いに入れば鈴音は目の前の騎士に一太刀も入れることなく倒れるだろう確信があった。

 

何故ならリュウガは彼女たちの目の前で圧倒的なビーム砲を持つ不明機を赤子を捻るように完封してみせたのだから。

 

「ふ、ふん!かかってきなさい!アンタは私が倒すんだから!」

 

リュウガと自分の力量は差がある事は理解している、しかし鈴音は引けない。

彼女の背後には一夏が、想い人が気を失っているのだから。

目の前のリュウガが何者か分からぬ以上一夏の身の危険も、今や自分がどれだけ粘れるかに掛かっていると鈴音は冷や汗を垂らしてリュウガを睨み付けた。

 

(大丈夫。先生たちだって黙って見てるわけじゃない。コイツを相手に粘り続ければ数で有利なのは学園側よ!さあて、何処まで粘れるかしら?)

 

『………』

 

覚悟を決めた鈴音に対し、龍の顎を構えたまま動かぬリュウガ。

ただ突っ立ているだけなのにその風貌からは恐ろしいオーラが立ち昇っていることを対峙する鈴音は視認していた。

 

『………』

 

「え?」

 

リュウガがぶっきらぼうに何かを投げつけた。

飛び道具の類を警戒した鈴音はISのハイパーセンサーが捉えた飛来物に思わず目を丸くした。

 

「これって」

 

ISコアだ、リュウガが先ほど倒した不明機の。

何故今自分に渡したのか鈴音には想像も、ましてや突然過ぎて判断すら付かない。

 

『お前、今死んだぞ』

 

そんな、軽いパニックを起こしている鈴音の真横をリュウガは平然と通った。

彼女の耳に、ゾッとする警告を残して。

 

「ッ!?」

 

ハッと気づいた時には遅かった。

ダラダラと冷や汗は流れ、全身の筋肉が一瞬にして縮こまる。

まるで獅子に睨まれた子ウサギのようだと、とはいえ今の彼女にそんな思考をする余裕すらないのだが。

 

リュウガはその姿にフンと鼻を鳴らし、人外染みた脚力でアリーナから観客席へ飛び移った。

そしてもう一度倒れた一夏を振り返ると、二度と立ち止まることなくその姿を消した。

 

「はっ、はっ、はっ」

 

見逃されたこと事に脳が遅まきながら気付いた。

極度の緊張と死の実感に感覚は麻痺してその手から青龍刀が音を立てて地面に倒れた。

がくりと膝をつき、カタカタと震えて見つけた想い人の寝顔。

 

「い、い、一夏ぁぁ……」

 

自分が生きていた事に、想い人が無事だった事に、彼女の頬か涙が一筋流れた。

 

「あなた、大丈夫!?」

 

「男性操縦者を運ぶわ!担架!」

 

「こ、怖かった……怖かった……わた、私……生きてた」

 

リュウガの消失に遅れて教師陣が辿り着く。

複数の熟練者が乗り込むISに囲まれてもなお少女の涙が泣き止むことはなかった。




フンと鼻を鳴らして鈴音ちゃんから離れるまでは『コイツ肝座ってんなぁ』と感心していましたがミラーワールドで泣いてる鈴音ちゃんを見て『やっべ……』と思わず顔を背けたアギトニキ。
尚ドラグブラッガーは倒れた一夏さんに興味津々でした(伏線?)


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原作より明らかにライダーの数が増えた理由

お久しぶりです。今回遅れた理由としてはオリキャラのヒロインを整理していた所、何故か山田てんてーをヒロインにしたオリキャラだけが見つからず困惑、そのまま月日は流れ………。
そのに、ドルオダというゲームにハマり、アイサガというゲームにハマり……。
そのさん、絵ばっか描いてました。
そのよん、リアルが忙しくて(白目)

『超重要』
今回の話はギャグに振り切った話ですし文字数も短いです。
リハビリみたいなものだと頭を空っぽにして、読みましょう。
どんなに神崎さんがダリナンダアンタイッタイ状態だとしても怒らないで寛大な心で見守りましょう。
そして流石にオリキャラの台詞でこれはねーわって提供者いましたらご報告下さい( ̄^ ̄)ゞ


どこかの、薄暗い研究室の中。

奇抜な服装をしたその女性は、スクリーンの向こうに映る少年を、龍を従える黒い騎士を見つめていた。

 

「ああ、やっと出て来たんだね。束さんがどれだけ探したと思う?ま、そのお陰で色々と知れたし良いけどね」

 

女性ーー束という名の彼女はその豊満な胸の間に挟み込んでいた長方形のカードデッキを手に取り、クルクルと弄ぶ。

それは画面上の少年を追う中で〝ミラーワールド〟の存在を知り、ミラーワールドに生息するミラーモンスターなどの生態や技術を使って産み出された兵器だった。

 

「ゴーレムを簡単に壊されちゃったのは驚いたけど、それじゃあ束さんには届かないよ?」

 

くすりと笑う女性の妖艶な表情。

まるでそれが気に入らないと睨みつける画面上の黒い騎士を最後に、映像はノイズを残して消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「回収速度が足りない」

 

男、神崎士郎は頭を抱え、不健康そうな顔を更にくしゃくしゃに歪めた。

彼の研究室でもあり、彼の寝床でもある建物では、現在妹を延命させるための研究として、男の○子とミラーモンスターの生命エネルギーを融合させる実験がされていた。

 

事の発端は彼の妹、神崎優衣の命の代わりとなるライダー達の殺し合い(13人とは言ってない)の最中の話だ。

 

士郎の預かり知らぬ所でいつのまにかミラーモンスターの好感度(そんなものがある事自体その時に知った)をMAXにした契約者がいたのだ。

 

するとそのミラーモンスターは士郎でも分からぬ経緯で人間態に変身したのだ。

勿論ミラーワールドを隈なく探せば人間に擬態するモンスターもいるだろう。

しかし純粋なモンスター態から人間態に変態することが出来たのは彼のミラーモンスターが初だろう。

おまけに人間態に変態した瞬間に契約者(当時ショタ)をレイプ紛いの事をしているのでそういう意味でも変態である。

 

契約者とミラーモンスターの逆レイプの現場を影で盗み見した後、彼らの行為の痕跡を回収して何の気なしに研究すると、それが人の命一日分の代わりになることが判明した。

 

ーー判明してしまったのである。

 

禁断の果実とでもいうべきその淡く輝く生命エネルギーを前にして神崎士郎は繰り返しループして分岐した未来に涙を流す。

 

これならば優衣も拒むことはなく延命させることができるだろうと。

 

そこから神崎は徹底的に契約者と契約しているミラーモンスターの関係から研究を始め、デッキのアップデートによるミラーモンスターの人間態への変態機能を追加、一日分の命となるエネルギーに副作用がないかを確認して満を持して優衣に擬似エネルギーを投与した。

 

この擬似エネルギーによって優衣の寿命が延びたかは外観的には分からないが、ミラーワールドとミラーモンスターの技術をあらかた極めた士郎のシスコン・アイは確かに優衣の魂の輝きが増して研究は成功したと知る。

 

そして更なる擬似エネルギーの向上を目的に契約者同士のバトルロワイヤルを中止させて契約者とミラーモンスターのセッ○スを推奨するのだが、ここで問題が起きた。

 

それは、度重なる激戦(意味深)によって需要と供給が足りず、次々と撃沈する契約者が増えて来たのである。

原因はミラーモンスターの異常な性欲だ。

士郎も研究の一環でガルドサンダーやゴルトフェニックスとヤッたから分かる。

奴らは大概ドスケベのサキュバスなのだ。

 

そしてこの事態にはさしもの士郎も予想外だった。

そしてミラーモンスターは性欲が強いことも知っていたが、まさかここまでとは思っていなかった。

日々枯れて行く契約者、ショタの頃からドラクブラッガーに襲われて来た一名は絶倫としてもこれでは満足なエネルギーを作ることができない。

 

「………」

 

士郎はプラカードに書かれた文字へ目を落とす。

 

〝とっても儲かる簡単なお仕事〟

 

……苦心の末の作戦として士郎はアルバイトと称して契約者を量産することにしたのだったーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1人目 K崎R介君

 

「!?………『戦わなければ稼げない!!勝って稼ごう仮面ライダーキャンペーン実施中』………?今ならなんと初心者応援チュートリアルもやってます?………なんだぁこれ……?うおっ!現役高校一年生が一ヶ月で100万稼いだ……ですって!?あら素敵!」

 

『コケ、コケケ、コケコッコーー!!!!』

 

「来いよ……この野郎……。てめえが噂のバケモンなら………俺が退治してやるよ!」

 

(・ω・)つ《デッキ》

 

「………」

『初心者☆応援チュートリアル中!!』

『まずはデッキを鏡に向けてみよう!』

『そして腰部のバックルにセットだ!』

 

「………」

『さあバックルにセットして唱えてみよう♪』

『戦わなければ生き残れない!いざ、変身だっ』

 

『ッ!?ッ!……ッ…う、ウソダドンドコドーーン!!!』

 

『弱すぎワロタwwww』

 

『てめえ殺すぞっ!!?』

 

 

 

2人目 ゴリラ

 

「死ねぇ! ニワトリ野郎!!」

 

『コケーッ!?』

 

「チキンバーガーの具にしてやる」

 

「容赦ない……」

 

『ボクと契約して仮面ライダーになってよ!!』

 

『来いよデカグモ……こっちはガキの頃から生きる為に戦ってきたんだ……刺し違えてでもテメェを殺して生き抜いてやる!!』

 

『ドラマみたいだなーガンバレー』

 

『ウルセェ! のんきにせんべい食うな!!』

 

『あらやだ、おこ? おこなの?』

 

『(^ω^≡^ω^)オッオッオッオッ』

 

『ウゼェェェェェェッ!!』

 

 

 

3人目 ICPOのシスコン

 

「(ピキーン!)この感じ……!こいつも僕と同じ!?」

 

「似ている……私に……」

 

「こいつがミラーモンスター?出来れば捕獲して研究所に引き渡した方がいいかな?」

 

「今この瞬間は!妹こそが全てだ!私と萌えてみろ!」

 

「これでも、1人の英国紳士としていっぱしの愛国心を持っているつもりでね。可愛い〝妹達〟に手を出すつもりなら、僕は神様さえも倒してみせる……変身!」

 

『「Wシスコンファイヤー!!!!」』

 

 

 

4人目 H倉S穂さん

 

「今話題のバケモノ?ホント、面倒ね」

 

『僕と契約して仮面少女になってよ!』

 

「あら?駄犬。衣服を脱いでバカ犬のようにおねだりするなら考えてみても良いわ」

 

『はぁはぁ女王様パネっす(*´Д`*)』

 

『死になさい』

 

ン゛ン゛ファ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ン゛ッッッッ♡゛_:(´ཀ`」 ∠):

 

 

 

5人目 退職したてのニート

 

「あ゛ー働きたくねぇぇ」

 

「働け……。働け!ニート!」

 

「なんだぁ?こりゃ、ガスか……?」

 

zzz……_(:3」z)_

 

「俺は誰かに眠らされて得る惰眠なんて御免だね!真昼間からブラック企業で働く社畜どもを嘲笑いながら眠りこけたいんだ!(クズ理論)変身!」

 

『カァァァ、ぺッ!カァァァ、ぺッ!』

 

クズvsクズのバトル

 

 

 

6人目 O野寺Yヒコ

 

「休憩入りまー……ん?誰かの忘れ物?」

 

(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾『やれやれ。どうやら俺は、今噂の仮面ライダーってのになってしまったらしい。……面倒臭いけど、うちの常連や同僚に手を出すつもりなら容赦しないよ?ーー変身!

こうして仮面ライダーニステンィンこと小野寺ヨシヒロはミラーモンスターとの終わりなき戦いにその身を投じるのであった』

 

「三流以下がいいとこのシナリオ書くくらいならやめた方がいいよ?」

 

しゅん……(´・ω・`)

 

「はぁ。ありふれた展開だけど、さっさと倒して休憩に入りますか。ーー変身ッ!」

 

 

 

7人目 被験者番号xxxx

 

「はぁ、はぁ、はぁ……なんだ?何が起こってる?……鏡?怪物?ここが、この施設が襲われてるのか?」

 

『グオオオオオオ!!』

 

「怪物、か。……どの道、この研究所で使い潰されて死ぬくらいなら戦ってやる。行くぞ!」

 

『グオオオオオ!!』

 

「うぅうおおおおおおおおおおお!!」

 

なんであいつミラーモンスター相手に生身で戦ってんの?((((;゚Д゚)))))))

 

「はぁ、はぁ!こんな、ところで……死ねる、か…ぁぁぁああ!!」

 

『グルァァァア!!グルルル』

 

覚醒した!えー!?なんか覚醒したんですけどー!!?((((;゚Д゚)))))))

 

「ISの武装を小型改良した超振動ナイフと超電磁導ブーツのハッキング完了。……これで五分五分。遊んでやるよ」

 

超振動でもミラーモンスターには効かないけどガンバレー٩( 'ω' )و

 

「目が、良すぎるのがっ!仇になったな!」

 

『アンギャァァァァア!!?』

 

!?……!!??(´⊙ω⊙`)

 

 

 

 

8人目 海洋学者の亀さん

 

「ぬ……。海が騒々しい」

 

『戦え、戦え。ライダー(デッキを放り投げる)』

 

「海にゴミを捨てるんじゃない!」

 

バギィ!!(神崎を殴る音)

 

ぐはっ!?貴様……なぜ…(´;ω;`)

 

「なんのカードゲームか知らんが……お前がこうして海に捨てたゴミが海に生きる生物を苦しめるということをうんたらかんたら……」

 

うわーん覚えてろー!糸目の説教星人め!。・゜・(ノД`)・゜・。

 

タッタッタ(神崎が海面のミラーワールドへ逃げる音)

 

「ぬぅ……。面妖な、変態技術者め……」

 

『グギャァァー』

 

「ぬ……!」

 

ゴボボーグボボー(海に入った海洋学者がウミヘビ型のミラーモンスターに襲われる音)

 

『カメーカメー(ウミガメ型ミラーモンスターの鳴き声)』

 

『かめーかめー(リクガメ型ミラーモンスターの鳴き声)』

 

「お前達は、今朝子供達に虐められていた・…あの亀達か?」

 

『カメー(口に咥えているデッキをいつのまにか学者の腰に巻かれたベルトに差す)』

 

『かめー(いつのまにか引き抜かれていた契約のカードを学者の手に強引に握らせる)』

 

『カメー(カードの中に吸い込まれる)』

 

当然の結果だ。撃ち負けはせんよ、当たるのであれば(無事に?変身してウミヘビ型モンスターを倒す)

 

『カメー(計画通り……ニヤリ)』

 

『かめー(計画通り……ニヤリ)』

 

(一部始終を見ていた人)………(´⊙ω⊙`)

 

 




今回でなかったキャラは次号で


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原作より明らかに仮面ライダーの数が増えた理由 2

お久しぶりです。本当にお久しぶりです。
最近余裕ができてきたので投稿を再開しようと思います。

因みにドラグブラッガーやその他オリミラーモンスターの挿絵をこちらの活動報告でイラスト(仮)みたいな感じで乗せてますのでどうか覗いてやって下さい
一年も経てばちっとは画力が上がったのかなぁと思う今日この頃です。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=206919&uid=96708


 

日本行きの飛行機。

その飛行機の最上クラスの席に座った女性が窓に映る自分に頭をコツンと当て、「程々にしてね」と言ったきり目を瞑った。

 

彼女の名前は茅生美雪。

世界的な動物学者で現在は世界各地を回って調査をしている女性だ。

 

「日本は久しぶりですね」

 

彼女の足元に置かれた旅行鞄の中には長方形のカードデッキが収められている。

本来神崎が適当に配布して回っている、ミラーモンスターと契約して仮面ライダーになるデッキを美雪は持っていた。

 

「各地の生態系や気象現象の揺らぎも、兄さんが行方不明になった理由も日本にある」

 

動物学者の美雪は研究の際に各地の動物達がなんらかの原因で個体数を年々減らしていることに気付き、その原因がミラーモンスターとミラーワールドにある事を突き止めた。

 

そして数年前に美雪の元へ突如現れたミラーモンスター〝リンドヴルム〟から兄が彼女の故郷日本にて兄が行方不明になったことを知り、ようやく学者の仕事を終えて日本へ帰ることにしたのだ。

 

「兄さんからの言葉、神崎士郎に気を付けろ……それにしても一体誰なんでしょう?」

 

 

 

 

 

 

 

都内の病院にて、白衣を着た若い男が忙しく走り回っていた。

 

「先生!〜室の患者さんが突然発作を起こしました」

 

「黒沢くんが?分かった。後10秒下さい」

 

「す、凄い。日本外科医の大権威でも匙を投げ出す治療をこうもやすやすとこなすなんて…」

 

「よしOK。後は任せます。それで容体は?」

 

「あ、はい。朝の散歩の際に突然発作を起こしたらしくて今病室で安静にしてます」

 

「うんわかった。それを見たら丁度次の手術になるか」

 

秒刻みのスケジュールをこなしているのはこの病院の院長でもある青海遥。

 

整った容姿に神の手、奇跡、絶対手術成功させるマン、などの異名を持つ医者だ。

 

「うん、良く分かりました。多分だけど朝の散歩の時に少しはしゃぎすぎたのかも知れないね。次の手術で最後だと思うから、それまでは安静にするように」

 

病室のベットに横たわる少年に苦笑まじりのお小言を乗せ、青海は少年の両親を連れて廊下に出る。

 

「きっと手術の不安が出てしまった所為でしょう。精神的な不安の最中でつい体を動かし過ぎたのが直接的な原因だと思います。手術の日までは出来る限り側で支えてあげて下さい」

 

伊達眼鏡を外して胸ポケットに突っ込みつつ、青海は人を安心させる笑顔を浮かべて力強く言った。

 

「手術は成功させますよ。必ずね」

 

後日、その言葉は少年とその親の歓声によって事実となる。

 

「あ、青海先生。お疲れ様です」

 

休憩室に入ると、先に座っていた看護師が朗らかな笑顔を浮かべ青海を歓迎した。

青海もまた軽く頭を下げて近くのソファーにゆっくり腰を下ろす。

 

「うん、お疲れ様です。明日の予定はどうですか?」

 

「午前までで10件、午後から診療と、いつも通り忙しそうです」

 

熱く入れたブラックコーヒーお盆に乗せた看護師が翌日のスケジュールをスラスラと口にする。

しかし青海の顔には忙しさへの苦痛はなく、寧ろ楽しそうでもあった。

 

「それは何よりで、ところで何か変わったことはありますか?」

 

「そうですねぇ……ああ、こんな話知ってますか?先生」

 

トレーを抱きしめ、数秒考えこんだ看護師が青海に向けて意地の悪そうな、悪戯顔を浮かべた。

 

「最近、この病院を徘徊する亡者の噂」

 

「亡者?……ちょっとちょっと、勘弁して下さいよ。私の病院に、そんな患者は出させませんから」

 

青海が自身の病院を開業してから手術で死人を出したり治療の甲斐なく死んでしまった、という事例はない。

誰もが放り出す末期ガンや難病も、果てには死にかけ寸前のご老体もこの男が治してしまうからである。

 

「それが違うんです。深夜に度々と夜勤の子や患者さん、それに警備員さんが見るんですって!」

 

「……そういう話は別の意味で苦手なんですが」

 

「それに、ほら。以前雇っていた警備員さんも1人居なくなっちゃったじゃないですか」

 

「あの人は前から勤務態度が悪いと話が挙がっていたので会社の方に話していたんですが、それで引き上げたんじゃないんですか?」

 

「それがですね。なんの報告や連絡もなく、家や携帯に電話しても繋がらないんだとか」

 

正に恐怖体験。

このまま七不思議にならないといいのだが、と青海は青い顔で考える。

 

「ーーそれに、失踪する前日。異様に周囲の鏡を気にし出して、持ってるスマホを地面に叩きつけたらしいですよ」

 

「………へえ、そうですか」

 

それまでの反応と異なり、素っ気ないその言葉遣いに看護師は驚かし過ぎたか?と顔を伺うも、青海は仕事があるので、と早々に席を立った。

 

「ーーーあの時と同じ。今度こそは」

 

席を立った青海はトイレに駆け込んだ。

そして用を足していると、その隣にコートを着た胡散臭そうな男が並んだ。

 

「戦え、戦え!戦わなければ、生き残れない!」

 

「え?なんですかいきなり」

 

誰と言ったら神崎士郎、ファーストコンタクトでいきなりこれである。

その彼はギョッとした青海に顔を向けてポケットから取り出した資料数枚と手を洗っていない手で取り出したカードケースを青海の白衣のポケットへ忍ばせようとする。

 

「ちょ、ちょっとなんですかいきなり!私はこれでも医者なのでその、清潔というか、用を足したのに手を洗ってないのに触られると困るんですよ。あ!ちょっと!あのー!!」

 

「戦え、戦えーーー(バタン)」

 

用を足したかと思えば、次は大きい方が男を襲ったようだ。

邪魔しちゃ悪いと青海は考えて仕方なく次の手術までの時間を自室で潰すことにした。

 

「ーー!これって」

 

コーヒーを片手に読みはじめた先ほどの男が渡してきた資料には、連日の怪奇現象の正体と彼が学生時代にあった行方不明事件の真実、そしてそれを解決するための方法が載せられていた。

 

「仮面ライダー…‥…」

 

この力があの時あったなら、未来はまた、変わっていたのかもしれない。

 

友達だった、青海が直すはずだった、不治の病を持ちながらも気丈に振る舞う可憐な少女を暫し思い浮かべ、やがて青海は決断した。

 

「もう、奪わせませんよ。私の手は、その為にある」

 

その日、一つの怪奇現象は姿を消し、やがて忘れられることとなる。

 

その日、また1人の仮面ライダーが誕生した。

 

 

 

 

 

 

「おい、才羽!見たかよこの特集!」

 

「やれやれ。朝からなに?」

 

「『仮面ライダーの登場により女尊団の権力低下か』だってよ!仮面ライダー様様だぜ!」

 

なんのことはない登下校時、朝から元気な友人に絡まれた少年はやれやれと肩を竦めた。

 

才羽光輝、年齢16、都内の高校に通う一年生だ。

彼は幼い頃に女尊団のテロによって両親を亡くし、現在は母方の親戚の家でお世話になっている。

 

「こんなことくらいじゃ、あいつらは大人しくならないさ」

 

「そんなことは分かってるよ。でもよ、分かるだろ?」

 

才羽に同意を求める男子高生もまた、女尊団の活動によって働いていた会社に圧力を掛けられ、辞めさせられた経緯を持つ。

 

「そんなことより今日は先に帰るぞ。居候先で手伝いしなきゃならないんだ」

 

「なんだぁ?あの可愛い彼女とイチャコラする気だろ!ゴラァ!」

 

「うわバカやめろ」

 

現在の才羽は居候先で出会った少女との交流で両親を亡くした悲しみと怒りを癒すことが出来ている。

そして今はその少女を守れる力となれるようこの国の暗部として活動しているのだ。

 

(仮面ライダー。あの都内にモンスターの出現した日、俺は非番だったから見てないけど、暗部の実力者たちが仮面ライダーに恐れをなしていた。映像も見たけど、ミラーモンスターと仮面ライダーか、忙しくなるな)

 

つい、内心で溜息を吐きたくなった才羽の隣を男がスゥーッと通り過ぎる。

 

ーーその時だった。

 

「(仮面ライダーを)や ら な い か 」

 

「っ!!?」

 

ゾクっと背筋が凍りつく感覚ののち、振り返ればそこには誰もいなかった。

 

得体の知れない恐ろしさに額に垂れた冷や汗を拭おうとすると、その手にいつのまにか謎のカードデッキが握られていたことに気付く。

 

(これって、例のーー??)

 

嫌な予感がひしひしと募る中、不信感を持った友人が「どうしたんだ?」と才羽に声をかける。

 

「いや、なんでもない」

 

こうして才羽光輝もまた、神崎士郎の手によって仮面ライダーの世界へとその身を投じることとなるのだった。

 

 

 

 

 

その男は何処にでもいるようなモブだった。

 

「………」

 

何処にでもいて、けれど誰からの関心も寄せられないような、そんな男だった。

 

その男は人ごみの中においてもモブ的な存在であり、しかし人は男に関心を持たないまでも自然と男を避けるようにその脇を通り過ぎる。

 

「鏡 大我。今この星は迫りくる危機に対して戦う力を失っている」

 

その男の顎から下にかけて、狂気的な紋章が描かれている。

それでも、やはり男はモブであり続けていた。

 

「神崎士郎か。例の件ならお断りだと言った」

 

「鏡界が開かれようとしている。千年前、お前が取り零した落とし前をつけろ」

 

男の目の前に、明らかに胡散臭い格好をしている男がいた。

 

その男、神崎士郎は、鏡 大我という非常識な人間を知る数少ない人間だった。

 

「もう、そんな時期だったか。あの頃は俺の他にもいたんだがな。もうこの地球上に狩人はいない……か」

 

「そうだ。だからこそ仮面ライダーシステムを作った。アレに対抗するために」

 

「仮面の騎士。それならアレに勝てるとでも?」

 

「戦わなければーーこの世界は生き残れない」

 

男は笑った。

 

千年以上を生きる彼にとっても、鏡界という単語は特別なものを含んでいた。

 

「全ては心の赴くままに……だ」

 

「………」

 

男はそのまま人ごみの中に消えていく。

 

その手に、仮面の騎士の証を掲げてーーー。

 

 

 

 

 

 

相手に右の頬を打たれたら相手の左の頬にコークスクリューブローを返せ。

 

「ぐああっ!?」

 

それが彼の昔からの流儀だった。

 

「ったく、二度とうちの孤児院に近づくんじゃねぇ!分かったか!」

 

水無月朧、とある孤児院出身の探偵で、その日は孤児院に圧力をかける政治家が雇ったチンピラを返り討ちにして仕事に戻ろうとした時だった。

 

「な、なんだこれは!?」

 

ついでだからと孤児院に顔を出そうとした朧の目に映ったのは家中所狭しと張り巡らされた巨大な蜘蛛の巣。

 

そしてそこに捕らえられた弟妹たちが苦しそうに悲鳴をあげる場面だった。

 

「おい、一体何があった?晴哉!おい!」

 

近くで気を失っていた弟に声をかけると、気絶していた晴哉は青い顔を浮かべて朧に敵の存在を伝えようと力を振り絞る。

 

「お、朧にぃ……鏡、鏡の向こ、う……に……化けもんが」

 

「鏡…?っ、なんだ!?」

 

異質な何かに見られている気配、弟を抱いて前方へ飛んだ直後、孤児院の床を巨大な質量が落ちたような耳をつんざく轟音が響く。

 

「ーーーーは?」

 

そこにいたのは正しく蜘蛛の怪物だった。

 

「なんなんだこいつは!くそっ」

 

舌打ちを一つ、外に弟を連れ出そうとした朧の背中を蜘蛛の怪物が唸り声と共に弾き飛ばす。

 

「ぐあっ!?」

 

リビングから続く廊下を飛び、玄関のドアを弾き飛ばして外へ。

 

受け身も取れないままに地面に倒れこんだ朧へ蜘蛛の怪物の追撃が迫る。

 

「っ、こんなとこで死ねるか!」

 

間髪で蜘蛛の怪物の攻撃を避け、十分に距離を取る。

 

周りを見渡すと孤児院から響いた轟音に近所の住民が様子を伺いに来たようで、人の気配が集まってきた。

 

蜘蛛の怪物はそれを煩わしいとみたのか孤児院の中へ逃げ込んで行く。

 

「朧兄……中に、まだ、雨音が……」

 

「!」

 

晴哉の言葉に妹分の危機を知った朧は意を決して蜘蛛の怪物が待っている孤児院の中へ侵入する。

 

「雨音!聞こえるか!」

 

リビングに入り蜘蛛の巣を見渡す。

かつて団欒があったリビングは怪物の脅威を表すような惨劇を遺しているばかり、その危険地帯の中に朧は彼の妹分の姿を発見した。

 

「雨音ーー!!」

 

『キャキャキャ』

 

「うっ!」

 

何処からか朧の体に巻きつく蜘蛛の糸が彼をリビングに飾り付けてあった姿見の中へ誘い込んでしまう。

 

こうして強引にミラーワールドの中へ連れ去られた朧は自身の目の前で舌舐めずりをする怪物の姿に恐怖と怒りで動けなくなってしまう。

 

「お前が、俺たちの孤児院を……!!」

 

今すぐにでもこの怪物の顔面にコークスクリューブローを喰らわしてやりたいが、彼の身体は蜘蛛の糸でぐるぐるに縛られていた。

 

「くっ、一体どうすれば…!?」

 

焦る朧、彼を嘲笑う怪物、そして怪物の背後に神崎士郎、この時点で既にこの物語は悲劇ではなく喜劇へと変わりつつあった。

 

「戦え、戦え!」

 

「『!?』」

 

長身の、コートを着た不審な男だ。

そいつは背後から怪物を抱きしめ、思いっきり持ち上げてしまった。

これには朧も怪物もびっくりだ。

 

「戦えばなんでも出来る!ふぬぁぁぁ!!」

 

ドガン!と放り投げられる蜘蛛の怪物。

 

口が開いたまま何も言うことができない朧に対して神崎士郎は爽やかな笑顔でカードデッキを放り投げた。

 

「グッドファイト!さらばだ!」

 

「え、ちょ、あの」

 

なんの説明もなくライダーデッキを渡しミラーワールドを後にした神崎士郎……あの、色々と説明は?

 

「何がなんなのかわからないが……いやマジで何がなんなのか分からん!?」

 

混乱した頭とは裏腹にその手は淀みなくライダーデッキをVバックルに装着し、

 

「マジで分からんぞ!?ーーー変身!」

 

マジで何も分からないまま朧は変身するに至ったーー神崎さん、チュートリアル始めるなら今ですよ?

 

『キシャァァァァァァ!!』

 

『何がなんなのか分からないけど、分からないけどおおおおお!!』

 

 

相手に右の頬を打たれたら相手の左の頬にコークスクリューブローを返せ。

 

 

その流儀に則った朧のパンチが怪物の顔面を抉る。

 

『お前は家族を傷つけた。それで殺す理由は十分だ』

 

こうして朧は仮面ライダーになると同時にブランク体でミラーモンスターを倒す快挙を成し遂げるのであった。






色々と神崎さんが迷走中。
久しぶりの投稿は作者の文章力までブランク体に変えてしまうんだね


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山田摩耶彗星


ミラーワールド出身のゴリラ♀

【挿絵表示】



 

「………」

 

血のように赤い夕暮れの街。

 

そのビル群の影に蹲る一人の泣き噦る少年の背後に立っていた男ーー龍賀アギトはまたこの夢か……と複雑な心境で目の前の光景を眺めていた。

 

「何度この夢を見れば気が済むんだろうな。俺は……」

 

地面に蹲り、何処かへ手を伸ばして声なき悲鳴を上げる子供と、その視線の先を走り去っていく男の子。

 

彼ら二人は瓜二つといって過言では無い程に容姿が似ていて、アギトは悲しげに双子の兄弟を見つめている少年の背後に立つと、昔の彼は泣きながらアギトへ問い掛けた。

 

「どうして?僕は怖くて、怖くて。××に行かないでって言ったのに。××は僕を無視して、何で行っちゃうの?」

 

少年の姿は夕暮れの逆光と影で真っ黒に染められていて、その姿はまるであの頃の彼が抱えていた闇のようで、それは確かに子供の小さな体躯を飲み込もうとしていた。

 

「それは、アイツが優しい奴だからだ。俺は…お前は、それを知っているだろう。誰かの為に居ても立っても居られない……本当にバカなお人好しだってことを」

 

忘れようとも忘れることは出来ない記憶を振り返りながら言えば、小さな闇はアギトをそっと仰ぎ見た。

互いに視線を合わせ、唇の端を震わせて小さく吹き出して、これから少年が出会うであろうーーーとびっきりのお人好しなバカを想像してあの頃の彼へ含みをもたせた忠告をしておこう。

 

「ふっ、お前はいつか、いつか二人の男に出会う。一人はお前に戦う力と願いを託す男。もう一人は何を悩んでいたのかってバカバカしく思えるほどに底抜けのお人好しだ

 

俺もさんざんアイツに振り回されたんだ、楽しみにしとけよ」

 

我ながら意地の悪い忠告だと思いながら、夕暮れと少年に背を向け、夢ならもう覚める頃だろうとポケットの中の黒いデッキを弄ぶ。

そのデッキの、金で彩られた龍の紋章を撫でた時、彼の意識は鮮明に浮上していく。

 

最後にアギトを振り返った少年は、昔の彼は。

 

輪郭も朧げな表情で確かに微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

「またね。零季」

 

 

 

 

 

 

「今日からみんなのクラスメイトになる龍賀アギト君です!」

 

「……」

 

仮面ライダーと謎のIS機が乱入した所為で中止になったクラス対抗トーナメントの翌日、 シレッとした顔で転入生面したアギトは1番前の席に居座る織斑一夏の両耳塞いで口開けろの姿勢に、訳もわからず眉を顰めた直後だった。

 

『キィィィァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!???』

 

「ッ!!?」

 

AP5000の音響破壊兵器もとい女性達の黄色い悲鳴によってアギトの鼓膜は一時使用不能になり、肉体的にも精神的にも少なからずダメージを負ってしまった。

どこか遠くで神崎が周囲のガラスが割れてビビってるような雰囲気を覚えるから不思議だ。

 

「超☆絶☆イケメン!!」

「しかも目つき悪い系!!」

「織斑君とはまた違った良さ!!」

「フゥーーーフゥーーー!!」

 

「何だこいつら……」

 

野獣の集まり、餌を前にしたギガゼール軍団。

仮面ライダーインペラーこと佐野満が契約しているギガゼールはミラーモンスターには珍しく群れで契約者をサポートする為、彼は今日も何処かで餌を探し、夜間はハーレムさながらに絞られているのだろう。

 

ーーーリア充くたばれ(※佐野満は現在某企業の社長にして美人の嫁持ち)

 

とまあ、かのライダーが契約する野獣集団さながらの眼光を持つ女生徒共の気迫に修羅場を潜り抜けたアギトの額に冷や汗が垂れる。

 

「静かにしろ!」

 

まるで鶴の一声だ。

担任の織斑千冬が喝を入れればそれだけで生徒は黙る。

お前の席はあそこだ、とアギトに席を示す際、千冬は言い表す事のできない懐かしい感覚を、匂いを、面影をアギトに重ね合わせた。

 

「お前……は?」

 

つい、彼にしか聞こえない声で問い掛けてしまった。

横目で千冬と目を合わせた彼は少し目を細めて彼女を射抜いたきり視線を離す。

 

「………ぅ」

 

たったそれだけなのに、千冬の胸はとても苦しく、とても辛く、とても切ない衝動に駆られるのだ。

 

「?なにやってんだ、千冬姉」

 

そして彼女の表情に気付けたのは、長年接し続けた織斑一夏と、声もなく溜息を吐いたアギトの二人だけだったのはそれが3人の関係性を示していることに他ならないのだろう。

 

席に座ったアギトも教壇に立つ千冬も首を傾げる一夏も何かが始まる予感だけは確かに感じていた。

 

 

 

 

「俺、織斑一夏。よろしくな、アギト」

 

「……ああ」

 

野獣達に追いかけ回されやだとのことで更衣室に逃げ込んだ二人がISスーツに着替えていると、改めて自己紹介をすることにした一夏がにぱっと笑う。

 

対してアギトはクールに、素っ気なく返事を返した。

自分の自己紹介は先ほどやっていたので何もすることはないだろうと思ってのことだ。

 

「「ああ」ってなんだよ。俺だけ名前をいうのは味気なくないか?」

 

ムッとした顔の一夏は、アギトにつれない返事をされただけで腹を立てた自分に疑問を感じたものの、その違和感がなんなのか分からないまま着替えを終え、バタバタと実習場へ走るのだった。

 

「では本日の実技を説明する前に、まずは代表候補生の凰、オルコット、前に出ろ。お前達には山田先生と実演をして貰う」

 

「一対一ですか?」

 

「馬鹿を言うな。二対一に決まっている。山田先生の胸を借りるつもりで挑め」

 

織斑千冬の言い草にプライドを傷つけられた二人はぶつくさと呟きながらもその後耳打ちされた言葉にやる気のボルテージを絶好調に引き上げた。

 

「って、千冬ね……織斑先生。山田先生は一体どこにいるんだよ」

 

「もうすぐ来る」

 

「もうすぐ来るって……ん?」

 

「ーー何か来る。上か?」

 

誰よりも真っ先にアギトが上空から訪れる気配に身構えた。

それは、地の底から響くようなうめき声だった。

 

「ぃぃぃぃぃぃぃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー」

 

上空から超高速で地面に落下および加速する飛行物体、山田摩耶彗星である。

山田摩耶彗星は綺麗な放物線と大粒の涙を流し織斑一夏を抹殺せんと更に加速した。(嘘)イケメン死すべし。

 

「だれかとめてくださぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいいいいい!!?」

 

「えっ!俺!?」

 

推定落下地点を予想した優秀な生徒達は直ぐに落下地点の中心である一夏の周囲から退避し、一夏はパニクって自分の顔を指で指しながら周りを見渡す。

 

しかし誰も助けようとしない。

 

意を決した一夏が上を見上げた時、そこには緑色したジャガーノートがその代名詞と言うべき巨大なスイカメロンを突き出していたーーーー。

 

「とめてくださぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい」

 

「う、う、うおおおおおおお!!俺が止めry」

 

ちゅどーーんどっかーーーん

 

「止まるんじゃねえぞ……」

 

仮面ライダーのファイナルベント並みの破壊力でグラウンドにクレーターを残し山田摩耶彗星は無事不時着した。

 

その後一夏は山田摩耶のスイカメロンを揉みしだいたおかげでオルコット、凰、篠ノ之にボコボコにリンチされ、山田摩耶は妄想の世界に浸ってしまうという問題もあったが、順調(?)に今回の目的である山田摩耶vs.オルコット、凰の対戦が始まる。

 

「ちょ、あんた私ごと撃とうとしたわね!?」

 

「山田先生が上手いのですわ!的確に一対一の状況を作り上げていて即席の連携では無理ですわ……くっ」

 

普段のおっとり顔とは違いキリッとした鋭い目つきで代表候補生二人を翻弄する山田先生の姿に驚く生徒達。

 

アギトは逆に、近距離戦ではオプション装備の盾とショットガンで凰を決して近付けさせず、遠距離のオルコットに対しては向けられた銃口から射線を読んで紙一重で避けつつ的確な狙撃を繰り出してみせる姿に持病持ちの弁護士が変身する仮面ライダーゾルダを重ねた。

 

「読みと精度、そのどちらも北岡に引けを取らないんじゃないか?」

 

仮面ライダーゾルダである北岡は相手の思考を読んだ射撃を得意とし、近距離の戦いもそつなくこなす万能型であるが、持病と情事中のマグナギガが擬人化しても重量級だったためかギックリ腰持ちにもなってしまったらしい。

 

いっそのこと契約を又貸ししようかとぼやいていたのはご愛嬌。

 

その北岡を思わせる立ち回りと射撃の腕並びにゾルダと同じ緑色のカラーリングなのはなんの因果やら。

 

そんなことを考えながら眺めている視線の先では至近距離からのショットガンを食らった凰がバックステップからのグレネードバズーカを喰らって撃墜し、オルコットも負けじと食らいつくもシールドを使った強引な突破に負けを認めるのであった。

 

 

 

 





もしかして→山田摩耶強化フラグ?


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