転生龍はハンターになってみるそうです (太刀使い)
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第1章 始まりの異変 第1話.そうだ、ハンターになろう!

どうも皆さんこんにちは。太刀使いです!
オウガさんの物語は終わりません!という宣言通りに戻って来ましたよ〜!
さて、この作品は主に人間視点がメインとなります。転生特典を使って大暴れ!というのを期待していた方には、申し訳ありません……

何はともあれ、どうぞ!


 この世界には、誰でも知っていることが二つある。

 一つは人類史上最強と言われている世界の英雄、ティナ・ルフールのこと。

 強大なモンスターから2度にわたって世界を救い、今や全ハンターの憧れの的となった存在だ。

 

 そしてもう一つは世界最強といわれ、ティナでさえも勝てるかわからないとまでいわれる龍のこと。

 龍王の名をほしいままにするかの龍の名は【銀滅龍ジェノ・オラージュ】。

 銀滅龍は普段は世界樹と呼ばれる巨大な木の頂上を住処にしているため滅多にお目にかかることができない。なので、発見されてからはやくも伝説上の生き物とまでされているところもあるほどだ。

 そんな銀滅龍は今……

 

 

 

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「暇だーー!!!」

 

 暇を持て余していた。

 

 あれからさらに数ヶ月経ったんだが、ハンターなんて来やしねぇ!なんでもあまりにも強すぎるという噂が立って、誰も挑戦するものが現れないらしい。

 あー、暇だ暇だ暇だわ〜。

 流石に何も起こらないと体がなまって仕方ない……何か、面白いことは……

 

 ひらめきというものは、いつも突如訪れる。頭をフル回転させて考えている俺に、それは降りてきた。

 

「そうだ、ハンターになろう!」

 

 庭園の守りはドスジャギィ(今は将狗龍だっけ?)に任せればいいし、モンハンファンならハンターを経験したくなるのも当然のことだ。

 

 しかし俺はここでふと考えた。今や俺は人ならざるモンスター。そんなモンスターがハンターなんかやってもいいのだろうか?

 俺はちょっとだけ考え、こう結論づける。

 別にモンスターがハンターになってはいけないなんて決まり、ないよな?だったら問題ないだろ!

 

 よーし、そうと決まればすぐ出発だ!さあ行こうすぐ行こう!!

 俺は庭園の守りをドスジャギィに任せて、光の速さでドンドルマに向かった。突然庭園を任されたドスジャギィが唖然としていたのは、いうまでもない。

 

 

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 文字通り光の速さでドンドルマに着いた俺は、早速ギルド本部を目指す。こっちの世界に来て、ドンドルマにも来慣れたもんだなぁ。

 現実のドンドルマはゲームで見ていたのよりもよっぽど広く、まさに大都市といった言葉が似合う街だ。

 

 

 さて、まっすぐギルド本部に向かって来た訳だが、ハンター登録ってどうやってやるんだ?うーむ……わからん。とりあえず受付嬢に聞いてみるか。

 

「すいません、新しくハンターになりたいものなのですが」

「あ、はい!ハンター育成学校の卒業証書はありますか?」

 

 俺はその言葉を聞いて内心激しく動揺した。

 ハンター育成学校!?そんなものがあるのか……

 当然俺はそこの卒業証書など持っていない。ここは素直に持ってないと言うのが吉かな……?

 

「すみません。なにぶん遠くの村からやって来たものでして、そのようなものは持っていません」

「そうなんですか。遠路はるばるお疲れ様です。卒業証書を持っていない場合は、こちらの方で適正テストを行うことになっています。それでもよろしいですか?」

「はい、それで構いません」

 

 なんとかなったようだな。それにしても適正テストか……一体どういったものなのだろう?ゲームと、この世界でモンスターとして培った知識しかないけど、大丈夫だろうか。

 

「では、準備があるので1時間ほどたったらまたお越しください」

「分かりました」

 

 あと1時間か。何して時間を潰そうかな……まあ適当に飯でも食ってるか。

 

 

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 俺は前に来た店で軽く昼食をとっている。

 あとこの店の人たちに聞いたんだが、ハンターはギルドから二人一部屋の寮を与えられるらしい。これで密かに心配していたのは寝床の問題も解決だな。毎日庭園に戻るという手もあったが、それだとなんだか興ざめだと思ってたしな。

 

 さて、そろそろ1時間経つ頃だし、ギルドに戻るとしよう。

 

 

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 ギルドに戻って来た俺は、再び受付嬢に話しかける。

 

「すいません。先程の件なんですが」

「はい、準備はできています。ここにお名前を書いていただけますか?」

 

 名前か……人間態での名前は確か『ルー』だったか。流石に名前だけじゃ変だよな……そうだな、『ルー・アルジャン』っと。

 

「ではアルジャン様。こちらへ」

 

 俺は受付嬢に連れられて、ギルド内にある小部屋に連れてこられた。なんでもここで筆記の試験をするらしい。正直言って、自信はない……

 

「では、はじめ!」

 

 えーい!ままよ!

 

 

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 結論から言おう。筆記試験、めちゃ簡単だったぜ。内容は基本的な調合の仕方と、これまた基本的な武器各種の使い方だ。これはゲームの知識でなんとかなった。

 

 で、次は身体テストらしいんだが……なんで王国騎士団の人がいるんだ?

 

「身体テストでは、こちらの騎士の方と戦ってもらいます。もちろん武器は木の剣で行うので、怪我等の心配はいりません」

 

 対人戦だと!?ハンターが戦うのはモンスターであって、人ではないぞ!?と思ったのだが、どうやら剣さばきなどを間近で確認するためのものらしい。

 

「では、はじめ!」

 

 さてどうするか。俺が少し力をふるえば、勝つことは簡単だろう。しかしそれでは面白くない。やはりモンハンといえば下位ハンターから始めるのが王道だろ!

 俺は新人を装って、わざと負けた。おそらくこうすることで、下位ハンターから始められるだろう。

 

「これで試験は終わりです。結果を出すので再び受付までお越しください」

 

 さて、俺のハンター人生(一応龍生か)がスタートするぜ!!

 

 

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「試験の結果、あなたはハンターランク6からのスタートとなりました」

 

 あれ、おかしいぞ?HR6ってどう考えても上位だよな?

 

「その理由を聞いてもいいですか?」

「はい。まず筆記試験がとても素晴らしかったのが評価ポイントです。特に戦闘における非常時の対処についての文は、目を見張るものでした」

 

 そりゃ実際何回も体験してるからな。

 

「あと身体テストですが、あなたわざと負けましたね?何か理由があるのかは分かりませんが、テストを見る限りではあなたはあの騎士に勝てたはずです」

 

 まじか!?俺の偽装工作がバレバレだった、と?

 

「以上の理由から、あなたのHRは6となりました」

「わ、分かりました……」

 

 そういう理由なら仕方ないな……弁明の余地が残されていない。

 

「これであなたもハンターの仲間入りです。こちらがハンター証明証と部屋の鍵となります。では良いハンターライフを」

 

 俺はその二つを受け取り、受付を後にする。

 よし、多少の計算違いはあったものの、これで俺もハンターか……モンスターがハンターってのは矛盾が凄まじいことになっているが、俺はもともと人間だしセーフだろ!

 さて、今日はいろいろあって疲れたから、部屋に戻って休むとしよう。

 俺は鍵に書かれた部屋を目指すべく、ギルドの寮に向かって歩き始めた。

 

 

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「なんだこりゃ……」

 

 到着したギルドの寮は、想像の右斜め上を行くものだった。とにかく立派なのだ。俺はもっとオンボロの寮をイメージしてたんだがな……

 

 寮の中に入って道なりに進む。俺の部屋は最上階、すなわち六階の角部屋だ。部屋の位置は最高と言えるだろう。

 それにしても、俺と相部屋になるやつってどんな人だろうな?いいやつだといいんだが……

 

 そう考えているうちに俺は部屋の前に着いた。よし行くか!

 

「こんちはー。今日からこの部屋に住むことになったルー・アルジャンというものだ。よろしく、頼……む!?」

 

 視界の先にいたのは、俺のよく知る人物。ティナ・ルフールだった。それもバスタオル一枚の格好で。

 

「ティ、ティナ!?お前が同居人……ってそうじゃなくて!見てない!見てないから!!」

 

 我ながら苦しい弁明だと思った。

 

「きゃあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!」

 

 雲ひとつない青空に、ティナの悲鳴がどこまでもこだました……

 




オチがなんともベタな展開……
分かってます。ええ分かってますとも。でもやりたかったんだからしょうがない!

あと「銀雷轟く銀滅龍」を見てない方で、ここどういうこと?という場面があると思います。そんな方々のために活動報告の方で質問を受け付けるので、わからないところがあったら聞いてくださいね!


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第2話.英雄との同居

「そ・れ・で、一体どういうことか説明してもらえますね?」

 

 現在俺は正座してティナに問い詰められている。新手のプレイかと思われるかもしれないが、実際はそんな生易しいもんじゃない。それは俺の左頬にくっきりと浮かんでいる手形からも想像できるだろう。

 

 そう、バスタオル姿のティナを目撃してしまった俺は、ご想像通り平手打ちを食らったのだ。しかもマジの。おそらく受けたのが俺じゃなかったら、頭と体がさようならしてたんじゃないか?

 

「だからさっきも言っただろ!俺はこの鍵に書かれた部屋に来た、そしたら運良く……いやいや、運悪くお前が風呂から出たところだった。それだけだ!」

 

 このままでは犯罪者の烙印を押されてしまうかもしれない。それだけはなんとか回避する必要がある。

 

「それは分かりました……あれは不幸な事故だったのだと。私が聞いているのは、なぜあなたがハンターになっているのか、ということです!」

 

 やっぱそうくるよな……

 

「それはまあ、なんだ……暇つぶし?」

 

 俺は包み隠さず真実を述べる。

 

「暇つぶしでハンターになってみようとするモンスターなど、聞いたことがありません!!」

「んなこと言われてもな……」

 

 どうやら納得してくれないようだ。まあ俺も暇つぶしでハンターになるモンスターがいたら、きっと同じ反応をする自信があるくらいには理解しているさ。

 

「別にいいだろ?モンスターがハンターになってはいけない、なんてルールはないんだから」

「はぁ〜〜もういいです。そういうことにしておきましょう……」

 どうやら諦めてくれたようだ。俺の首の皮もなんとか繋がったな。

 

「それより、男女が同じ部屋で生活するってことには抵抗ないのか?」

 

 俺が気になったのはその点だ。これまでティナはその点に追求してこなかったからな。

 

「なんでですか?男女が同じ部屋に割り振られることなんて、そんなに珍しいことではありませんよ?」

 

 ティナはさも当然といった風に言う。

 

「そうなのか……でも、危なくないか?その……アレな意味で」

「そんな事態に陥るようなら、ハンターはやっていけませんよ」

 

 ハンター逞しいなぁ、おい!

 

 自分のことは自分でって限度があるだろ。だが聞きたいことは聞けた。

 

「まあいろいろあったが、これからよろしく頼む」

 

 俺はそう言って右手を差し出す。

 

「もう……はぐらかそうとしてますね、まあいいです。こちらこそよろしくお願いします」

 

 ティナも右手を差し出し、俺たちは握手を交わす。それにしても、同居人がこいつでよかった。知らないやつだったら、こうスムーズにはいかなかっただろうな。

 

「そういえば腹減って来たな……」

 

 時計を見ると、すでに6時をまわっていた。

 そういえば時計を見るのって随分久しぶりだな。この世界の時間感覚は、俺が元いた世界と同じだからわかりやすくていい。

 

「夕飯というか、ここでの飯はどうすればいいんだ?」

「2通りありますね。一つは一階の食堂で皆さんと食べるもの。もう一つは自室で食べるというものです」

 

 まあそうなるよな。

 

「お前はどうするんだ?」

「私は自室で食べます。下に降りると、人に囲まれて大変なことになりますから……」

 

 あ、ティナのが遠くを見るような目をしてる……随分と苦労しているようだな。

 

「じゃあ俺も自室で食べるよ。まだ知り合いもいないことだし」

 皆んながわいわいしてる中で一人とか、どんな公開処刑だって感じだし。

「わかりました。ではそうするように伝えておきますね。あ、貴方のベッドはこっちで、タンスはこっちです。私物があればこちらにおいてください」

 

 そう説明すると、ティナは部屋から出て行った。俺の飯のことを伝えに行くのだろう。

 

 俺は少しばかりの私物をベットの横にある棚の中にしまい、これまた少しばかりの衣類をタンスにしまった。

 そしてベットに座ってふと考える。

 ティナが同居人かぁ……いきなりあんなアクシデントがあったが、うまくやってけるだろうか?まああいつなら大丈夫か……

 そう考えてるうちに疲れていたのか、俺の意識はまどろんでいった。

 

 

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「ルーさん、起きてください。晩御飯が届きましたよ」

 

 ティナの声で俺は目を覚ます。

 

「ん……ああ、寝ちまってたのか」

「疲れてたんですか?珍しいですね。はい、これが貴方の分です」

 

 そう言ってティナはお盆を渡してきた。

 

「そうだなぁ。初めての人間生活で疲れたのかもな。おお、なかなか美味しそうだな!」

 

 今日の献立のメインは、サシミウオのムニエルのようだ。香ばしい香りが俺の鼻腔をくすぐる。

 

「さっそく食うか。いただきます」

「なんですか?そのいただきますというのは?」

 

 ティナが不思議そうにこちらを見てくる。

 そうか、この世界にはそういう文化がないんだな。まあ日本発祥のものだから知らなくて当然か。

 

「いただきますってのは、これからいただく命に感謝を込める言葉なんだ」

「へぇ〜いただきます、か……いいですね、それ!貴方が考えたんですか?」

「あー、まあな」

 

 ここはそういうことにしておこう。誰が考えたかなんて俺も知らないしな。

 あ、夕飯はどれも美味しかった。料理を食べるのも久しぶりだなぁ。いつもは捕らえた肉を火で焼くぐらいしかしてないからな……

 

 俺たちが食べ終わって少しすると給仕の人が来て、食べ終わった皿などを持っていった。なるほど、こういう感じなんだな。

 

「さて、そろそろ寝るとしますか」

「え!?少し早くないか?」

 

 時計の針はまだ10時を指したばっかりだ。高校生だった身としては、まだまだ起きていたい時間。

 

「ハンターには規則正しい生活が大切なのです。しっかり睡眠をとっていないと、狩場で本領を発揮できませんからね」

 

 ティナはベットに入りながらこう言う。

 なるほど……一理ある。勉強になるな。

 

「じゃあ俺も寝るとするか」

「それがいいです。ではお休みなさい」

「ああ、お休み」

 

 こうして俺は、ハンター生活の記念すべき第1日を終えた。

 ちなみに言っとくが、夜中にティナを襲うなんてことはしてないからな?したら体が千切りになるからな?

 

 

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 窓から差し込む太陽の光で俺は目が覚めた。

 すると同じタイミングでティナも起きたようだ。眠そうに目をこすっている。

 

「ううーん……おはよう、ティナ」

「おはようございます、ルーさん」

 

 そういえばティナは今パジャマ姿か……昨日は気にしなかったが、改めて思うとパジャマ姿ってのはなんだかドキドキする気がする。まあそのドキドキもティナの鋭い目で見据えられた瞬間なくなったが。

 

「貴方、今変なこと考えてませんでした?」

「そんなわけないだろ。なんだよ変なことって」

「ならいいんですが、ね」

 

 こいつ、超能力でも使えるのか?

 

 朝食を食べ終わった後、ティナが俺にこう聞いてきた。

 

「今日は何か予定があるのですか?」

「いや、特にないが……そっちこそ忙しいんじゃ?」

 

 史上最強の英雄様は、なにかと仕事も多いだろうに。

 

「いえ、つい先日新大陸の調査から戻ってきたばかりなので、しばらく休みですね」

 

 新大陸!?新しい大陸が発見されてたのか……ぜひ行ってみたいな。見たこともないモンスターがさぞいっぱいいるだろう。

 

「それで、なんで今日の予定を聞いたんだ?」

「それは、ですね……もしよかったら、この街を案内してあげましょうか〜、なんて……」

 

 おいなんでそんなにもじもじしながら言うんだ。可愛さが引き立って俺の心にダイレクトアタックしてくるから。

 

「そ、そうか……ならお願いしようかな」

「ほんとですか!!」

 

 パアァァという効果音が聞こえてきそうなほど、満面の笑みを浮かべるティナ。

 うお……眩しすぎて直視できない……!

 何はともあれ、案内してくれるのは有難い。この街のことはまだ少ししか知らないからな。

 

「じゃあよろしく頼む」

「任せてください!」

 

 こうして、俺はティナにこの街を案内してもらうことになった。

 

 




リア充爆発しろ。

はいふざけてみました。
感想やアンケートでオウガさんとティナの恋愛を描いて欲しいという意見がちらほらありましたが、恋愛ものにするかどうかは正直まだ迷ってます……したとしても、ガチラブコメにはならないかも。


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第3話.英雄の町案内

「少し待っててください。今着替えてきますから」

 

 そう言ってティナは脱衣所に入っていった。俺?俺の外行きの格好なんて、今のところ1着しかないからいいんだよ。

 

 そうして待つこと数分。

 

「お待たせしました〜」

 

 着替えたティナの格好は、ピンクのコートに白いニットセーターと黒いフレアスカート。それに白いスニーカーという、俺の元いた世界の今どきファッションだった。

 そういえば、この世界って俺の元いた世界と服のセンスがめちゃくちゃ似てるんだよな……なんでだろ?

 

「どうしました?そんなにじっと見られては恥ずかしいです……」

「ご、ごめん。あまりに似合っていたから、つい見とれてしまったんだ」

 

 そう言うと、ティナの顔が急に赤くなった。

 

「似合って、ますか?えへへ……ありがとうございます……!」

 

 なんだこの可愛い生物は。

 

「そうだ、お前って外に出ても大丈夫なのか?周りの人が騒いで外を歩けないとか言ってたような気がするが」

 

 この世界でティナの偉業を知らない人はいないだろう。そんな人が街を歩いていたら、騒ぎになるはず。

 

「その件は大丈夫です。ギルドがそういうことをしないように箝口令を出してくれましたから。まあ、好機の目で見られることは避けられませんが……」

 

 そういうことか。注目されるのは仕方ないだろうな。

 

「では行きましょうか!」

 

 

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「最初はドンドルマ一栄えている、この大通りから案内します」

 

 この大通りは俺も何回かきたことがある。だが、詳しいことまでは知らないから、この際案内してもらうのも悪くない。

 

「ご覧の通りこの大通りには沢山の店が立ち並んでいます。日用品店から武器防具の鍛治屋まで、ここで手に入らないものはほとんどないでしょう」

 

 成る程確かに。大通りはすごい人だかりだな。人が多いところがあまり好きではない俺からしたら、少し遠慮したいところだが、まぁたまにはいいだろ。

 

 それに店どうしの争いもこの世界ならではの激しさだ。その証拠に……

 

「安いよ安いよ!!薬草がなんとたったの10G!あっちの店なんかよりずっと安い!さあ買った買った!!」

「何を!?ならこっちは8Gだ!あっちで買うよりずっとお得だ!」

「ならばこっちは7Gだ!!」

「6G!!」

「5G!!」

「「ぐぬぬぬ!!!」」

 

 道を挟んで言い争う店があるだろうか?まぁ周りの人たちは囃し立ててるからいいのか?

 

 そのままブラブラと大通りを歩いていた時、ふとティナがこちらを振り返った。

 

「そうだ。ルーさん、今から私のお気に入りの鍛治屋を紹介しますね。あの人腕がいいから、貴方も武具を作りたかったらどうですか?」

 

 鍛治屋か……確かに鍛治屋の腕は重要な点だろう。優秀な鍛治屋ほど狩猟中に武器や防具が壊れる確率が減ると思うし。

 それにティナのオススメの鍛冶屋なら、安心できるだろう。

 

「分かった。案内してくれ」

「りょーかいです。こっちです」

 

 俺はティナの後に続くように小道に入った。

 

 

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「着きました!ここです」

「ほう……これはなかなか……」

 

 ティナに案内されて来たのは、いかにも老舗といった感じの店だ。一見ボロい店のように見えるが、こういう隠れた店はいいところが多いしな。

 

「ガントさーん!私です。入りますよー」

「おう!よく来たなティナ!おめえに頼まれてた防具の修理、たった今終わったとこだぞ」

 

 店の奥から出て来たのは、40ぐらいと思われる気さくそうなおじさんだった。

 

「ありがとうございます!ガントさんはいつも仕事が早くて助かります」

「いいってことよ!ティナはお得意様だしな。ん?そこの兄ちゃんは……?」

 

 ガントと呼ばれたおじさんが、俺の方を訝しげに見てくる。

 

「ああ、彼はルーさん。先日から私の同居人となった人です」

「ルーです。よろしくお願いします」

「ガントだ!よろしくな、ルー!」

 

 そう言って俺たちは握手をする。てか握力高いな!ちょっと痛いんだが……

 

「そうか……ティナにもついに彼氏が出来たか。おっちゃんは嬉しいぞ!」

 

 ガントさんがそう言うと、ティナの顔が真っ赤に染まった。

 

「か、か、彼氏だなんてそんな……!ルーさんはただの同居人ですよ!」

 

 なんだこの可愛い生物(本日2度目)

 

「そうなのか?お似合いだと思ったんだが。まぁいい!おい、ルー!もし武器や防具を作りたくなったら言えよ?俺が完璧に仕上げてやるからな!」

「いいんですか?ありがとうございます!」

 

 うん。この人なら最高の防具を作ってくれるだろう。

 

「で、では次のところに行きましょう!ガントさんまた来ます!」

「お、おい!引っ張るなって!」

 

 ティナは早口でそうまくしあげ、俺の腕を引っ張りながらガントの鍛治屋から早々に立ち去った。

 

「若いっていいな……さて、俺も仕事に戻るかね」

 

 そう呟いて、ガントは鍛冶屋の奥に戻っていった。

 

 

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 一通り街を案内し尽くしてもらい、最後に俺たちはギルドの集会場に来た。

 

「うーん、あんまりいいクエストがないなぁ……」

 

 クエストボードを確認したんだが、あるのは採取や納品クエばっかりなのだ。大型討伐系はドスギアノスしかなかった。

 

「今はモンスター達も大変なのでしょう。終龍の影響で生態系が変わってしまった地域もあるそうですし」

「そういうもんか。そうだ、だいたい街も回れたし、あそこで少し休まないか?ここは奢るぜ」

 

 俺は集会場のカウンター席を指差して言う。

 

「いいんですか?ありがとうございます」

 

 俺たちは軽い食事を注文し、少しばかり休憩することにした。

 

「あら?ティナじゃない。こんなところで何してるの?」

 

 後ろから声をかけられた。振り返ってみると、ツインテールの小柄な少女が立っている。

 

「エスメダちゃん!」

 

 そうだエスメダ。終龍戦の時少し見かけたっけか。

 

「ん?横にいるのって……まさか銀……」

 

 エスメダがそう言いかけた瞬間、ティナが慌ててエスメダの口を塞ぐ。

 

「ストップです!ここでそれを言ってはいけません!」

 

 危ねぇ……ここで正体がばれたら、大騒ぎになるとこだった。ナイスだティナ!

 

「…………というわけで、今ここにいるのはルーさんというハンターで、私はルーさんにこの街を案内してたとこなんです」

「ふーん、成る程……ってなると思った!?訳わかんないわよ!!」

 

 どうやら納得してくれないらしい。

 

「暇つぶしでハンターになったとか……ハンターをバカにしてるの?」

 

 そう取られると痛い。確かに暇つぶしというのは適切な表現ではないな。

 

「それはない。俺は強大なモンスターに小さな身で立ち向かっていくハンターを尊敬している。それと同時に興味が湧いたんだ。ハンターとはどういうものなのか、とな」

 

 これは紛れも無い本心。この世界に来て初めて分かった。人間がモンスターに立ち向かうのが、どれほど危険で勇気がいることなのかを。だから俺はハンター達を尊敬している。

 

「あなたの目、マジみたいね。それならいいわ。私はエスメダ、これからよろしくね」

「こちらこそ、よろしく頼む」

「エスメダちゃんはこれからクエストですか?」

「そうよ。昨日受けた獰猛化ディノバルドの討伐に行ってくるわ」

 獰猛化ディノバルドか……俺ではまだそのクエストは受けられないな。このエスメダという少女、かなり強いのか?

「そうですか。頑張ってくださいね!」

「任せなさい!必ずいい知らせを持って帰ってくるわ!」

 

 そう言ってエスメダは飛行船乗り場の方へ歩いていった。

 

「なあティナ、エスメダって強いのか?」

「それはもう、相当強いですよ。なんせ私の次にHRが高いのですから!」

 

 ティナの次ってことは……世界で二番目に強いってことか!?それは強いはずだ。

 

「あいつそんなに凄かったのか……」

「ええ。エスメダちゃんは私の親友ですから!」

 

 ティナはエスメダに相当信頼を寄せてるようだ。それを見て、俺は素直に羨ましいと思った。この世界で俺に対等に接してくれるモンスターはいないからな……いや、一体だけいるか。

 

「さて、今日はもう遅くなって来ましたし、そろそろ寮に帰りますか」

「そうだな」

 

 俺たちはギルドを後にし、寮に向かって歩き始めた。

 

 

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「「ただいまー」」

 

 部屋には誰もいないのに、ついただいまと言ってしまう。これは何故なのだろうか?気持ちの問題かもな。

 

「どうでしたか?ドンドルマの街は」

 

 ベッドに腰掛けながら、そうティナが聞いてきた。

 

「うん。思ったより広いという印象が強いな。あと人類の技術力の高さにも驚かされた」

 

 そうなのだ。中世ヨーロッパぐらいの技術力だと思っていたのだが、案外技術が進んでいたのだ。

 

「いろいろ知ってもらえたようで、嬉しいです」

「あ、そうだ。ティナ、手を出してくれ」

「何ですか?」

 

 そう言いながら差し出された手に、俺は花の飾りがついた髪飾りを渡した。

 

「ルーさん、これは……?」

「それは今日のお礼だ。遠慮なく受け取ってくれ」

「嬉しいです……ありがとうございます!」

 

 ティナは俺があげた髪飾りをギュッと抱きしめながら、満面の笑みを浮かべた。

 なんだこの可愛い生物(本日3度目)

 

「そうだ、明日はクエストに行ってみようと思うんだ」

「ついに初クエストですか!頑張ってくださいね」

「ああ、だから今日は早めに寝ることにする。おやすみ」

「はい、おやすみなさい」

 

 さて明日ははじめてのクエストだ。最初のクエスト、失敗するわけにはいかないぜ!

 




日常系ってなかなか書くのが難しいです。
まだ戦闘描写の方が書きやすいかな……


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第4話.初クエスト

 俺は朝早くにドンドルマギルドの集会所にやってきた。理由は当然、クエストを受けるためだ。

 今日が俺にとって、本当の意味でハンターになる日だ。張り切っていこう!

 

 とは言え、だ。油断は禁物。この姿では俺は本来の4割ほどしか力を出せない。そして、俺はハンターとして活動している限り、本来の姿に戻るつもりはない。なぜなら、懸命に自然界で生きているモンスターに失礼だからだ。

 もしハンター活動中に死んでしまったら、それは俺の実力が足りなかっただけ。本来の姿に戻って無双だヒャッハーとかはやらないつもりだ。

 

 さてさて、俺の記念すべき初クエストは何にしますかな、っと。

 うーむ、やっぱり始めてのクエストは採取クエかな。討伐クエが少ないってものあるけど、最初は採取クエに行って、狩場の下調べをしといたほうが後々戦いやすいだろうし。

 よし、これでいこう!

 俺はクエストボードにあった「遺跡平原の採取ツアー」を手に、受付嬢の元へ向かった。

 

 

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「すいません。このクエストを受けたいんですけど」

 

 俺は手にした依頼書を受付嬢に渡す。

 

「はい、承りました。契約金は12Gとなります」

 

 俺は受付嬢にお金を渡した。しかし、受付嬢はなんだか不安そうな顔をしている。何かあったのだろうか?

 

「何か問題でもあるのですか?」

「はい……実はこのあいだの大災害の影響で、今あるクエストは全て狩猟環境不安定になってるんですよ。それは採取クエストでも例外ではありません。もしかしたら、G級のモンスターが現れるなんてことも……十分に気をつけてください」

 

 なんと……終龍の影響はこんなところにまで及んでいたのか。まあモドリ玉も持ってくし、大丈夫だろう。多分。

 

「分かりました。細心の注意を払って望みます」

 

 こうして俺はクエストを受注し、アイテムポーチに回復薬やらピッケルやら虫あみやらを入れて、出発口へ向かった。

 てかこのアイテムポーチってなんなんだ?いくら物を入れても平気とかどうなってんだ。中が四次元にでもなっているのだろうか……

 

 

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 俺は遺跡平原行きの竜車に乗り込み、出発の時間を待つ。周りには他の地域に行くハンター達で賑わっているようだ。

 それにしても、やっぱチームを組んでクエストに行く人が多いなぁ。俺もいつかは誰かとクエストに行きたいが、ティナじゃ強すぎるしな。そのうちいい感じの人が見つかるといいんだが。

 

 そう考えていると、竜車を引くアイルーが話しかけてきた。

 

「では出発しますニャ。お忘れ物はないですかニャ?」

「大丈夫だ。出してくれ」

「了解ですニャ!」

 

 ここから遺跡平原までは約2日ほどかかるらしい。そりゃそうだ。この世界はとんでもなく広いのだから。ゲームのように一瞬で目的地に着く、なんてことにはならない。

 たしかに俺が本気を出せば、遺跡平原までの距離程度は、この姿でも半日かからないくらいだろう。だがそうはしない。まあ格式美ってやつ?

 

 ふぁーあ……それにしても、竜車の中ってなんだか眠くなるな……そういえば、前世で電車の揺れが人を眠くするのに最適な揺れ方だ、というのを聞いたことがあったが、この竜車の揺れはそれに似てるのかもなぁ。まあ到着までかなりあるし、一眠りするか……

 

 俺を乗せた竜車は、ゆっくりと遺跡平原へと向かって行った。

 

 

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 出発してから2日目の昼ごろ、竜車はようやく遺跡平原に到着した。

「到着ですニャ。それではクエスト頑張ってくださいニャ!」

 

「ああ、ありがとう。お疲れ様!」

 

 俺は帰って行く竜車を見送り、振り返る。するとそこには、見渡す限りの草原が広がっていた。まあ遺跡平原のベースキャンプは横穴の中だから、見えてるのは一部分だが。

 

 早速アイテムボックスを確認する。中には地図と、ご存知ネコタクチケットが入っている。このネコタクチケットをベースキャンプにあらかじめ配置されているアイルーに渡すと、クエストクリアになって帰れるのだそうだ。俺はそれらをしっかりとアイテムポーチに入れる。

 

 そうそう、俺が使う武器は「双星滅剣ゼロ」という名の双剣だ。何のモンスターの素材を使ってるかというと、なんとこの俺自身!この世でただ一本の俺だけの武器だ。まあ防具はふつうにハンターS一式だけどな。

 

 さて、行くとしますか!

 第二の人生初のクエスト。俺は力強く一歩を踏み出した。

 

 

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 初めに訪れたのは、当然のごとくエリア1。見たとおり草原が広がっていて、アプトノスの親子が草を食べている。

 エリア1は段差もほとんどなく、もしモンスターと戦いになったら、身を隠す場所がなくて大変そうだな。

 

 俺はエリアの端にあった蜂の巣からハチミツを採取し、次のエリアに向かう。

 

 

 さて、お次はエリア2だ。

 そうそう、この世界では勿論のことだが、エリア移動は一瞬ではない。モンスターが通れないほどの小さな道があるので、そこを通って行くのだ。まあ場所によっては、あまりに広すぎるから2エリアに分けられてるところとかもあるが。

 

 エリア2は二重床になっている珍しいステージとして有名だ。ここはこの二重床をうまく使って、三次元な動きでモンスターを翻弄しながら戦うのがベストだろう。

 

 それと、俺がエリア2に来たのには理由がある。それは遺跡平原で稀に手に入る、銀色コオロギを捕まえるためだ。銀色コオロギは非常に希少で、高値で取り引きされていると聞いたことがある。この機会に捕まえてみようと思ったわけだ。

 よっしゃ、虫取りタイムだ!

 

 

 …Now loading…

 

 

 ぜ、全然見つかんねぇ……かれこれ1時間は探しているが、一向に見つかる気配がない……まじでここにいるのか?

 

 そう思って座り込んだ俺の目の前の草むらで、何やら光る物体が横切った。もしやと思い虫あみを振ると……

 きたーー!!銀色コオロギだ!ここ採取ポイントから遠いから、見逃してたぜ……

 

 よし、目的も達成したし、あとはエリアの下見をして回るか。

 

 

 …Now loading…

 

 

 俺は遺跡平原のエリアを一通り調べ上げ、エリア3に戻って来ていた。

 

 ふー、遺跡平原ってなかなか広いんだなぁ。全部回るのにだいぶ苦労したぜ。だが、お陰で色々知ることができた。

 まず注意すべきはエリア1とエリア9だな。エリア1は前述の通り、モンスターとガチタイマンになってしまう。もし痛手を一回でもくらったら、それでゲームオーバーだろう。

 そんでエリア9は、谷の間にあるようなステージ。死角も多く、上からの奇襲が最も脅威となるだろうな。

 

 戦いやすそうなのは、壁をうまく使って立ち回れるエリア7とか、段差が多く、高低差を生かして動けるエリア8だろうか。

 

 俺はそれらのまとめを持参していたメモ帳に簡潔に書き込み、手頃なところにあった岩に腰を下ろした。

 それにしても、ハンターってやっぱりすげえな……自分より圧倒的に格上のモンスターに挑むだけでもすごいのに、アイテムを使い分ける判断力や、その場その場での状況把握能力が、もはやカンストしている。さらに地の利を利用してのうまい立ち回りも大切になってくるだろう。

 

 そんな風に俺が関心していると、突然その場で聞こえるはずのない音が聞こえた。

 

「ガアァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」

 

 ーー!!モンスターの咆哮だと!?まさか受付嬢が言ってたように、本当にモンスターが乱入してきたのか!?

 

 声の主はエリア3のちょうど真ん中あたりに降り立ち、俺の存在に気づくや否や威嚇の姿勢を取り始めた。

 発達した四肢に、速く走るための低い姿勢。全身を青色の鱗で覆い、大きなアギトからは蒸気が漏れ出ている。

 ティガレックスの二つ名個体「荒鉤爪」だ。

 

 荒鉤爪だと!?遺跡平原にこんな奴は……あれ、でたっけ?四年前のことだから忘れちまったな。銀色コオロギのことは覚えてたんだが……

 っと!今はそれどころじゃねえ。相手はやる気満々のようだ。予想外の事態だがいい機会。俺の初狩猟、ここでいっときますか!

 

 俺は背中の双剣を抜き、普通とは反対側に構える。

 さあ、行くぞ!




次回はルーの初戦闘となります。


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第5話.乱入!荒鉤爪

 俺は「双星滅剣ゼロ」を構え、力を込める。すると右の刀身からは雷属性、左の刀身からは氷属性のエフェクトが現れ始めた。そう、この武器は二つの属性の力を宿しているのだ。

 

 ハンターとしての初戦闘……落ち着け……よし、いざ参る!

 

 俺が戦闘態勢に入ったと認めたのか、荒鉤爪は自慢の突進攻撃を仕掛けてきた。普通にくらえば骨が粉砕されるだろうその一撃に、俺は真っ向から対処にかかる。もちろん普通に受ける気などさらさらない。

 双剣をクロスさせるようにして、攻撃を受ける面積を点にする。そして体の全関節をうまく使い、後ろに受け流すようにして攻撃をいなす。

 これぞ擬似ブレイブスタイル!もちろんブレイブゲージなどは存在しないが。あれはゲームの中だけの設定だ。

 

 攻撃をかわされた荒鉤爪は、焦ることなくこちらに振り返り、今度はジャガイモを飛ばしてきた。

 しかし、ジャガイモ飛ばしは一見強力に思えるが、実はかなり隙が大きい技なのだ。爪を地面に減り込ませて放つため、爪を地面から抜く間に隙が生まれる。

 俺はその間に全力ダッシュで荒鉤爪の腹下まで移動。がら空きの腹部に鬼神化での乱舞をお見舞いする。

 

 チッ!やっぱり硬ぇな!!鬼神化からの乱舞だというのに、皮に傷が入った程度か……

 

 しかし、俺の攻撃を受けて荒鉤爪が一瞬ひるんだようだ。俺は好機と見て、ひるんだ荒鉤爪の前脚を踏み台に高くジャンプ。双剣を逆手に持ち替え、体をひねって独楽のように荒鉤爪の背中を連続で切り裂く。ついに荒鉤爪の背中から鮮血が吹き出し、奴が苦悶の唸り声を上げる。

 これぞ擬似エリアルスタイル!

 

 しかし攻撃がうまくコンボして少し調子に乗っていたのだろう。着地した瞬間に放たれた荒鉤爪のなぎ払いに注意が向いてなかった。慌てて双剣をクロスさせてガードするが、いかんせん筋力が違いすぎるため、踏ん張りがきかずに吹き飛ばされてしまう。

 なんとか空中で態勢を立て直し、地面を滑りながらなんとか勢いを殺すことに成功した。

 

 な、なんつー威力だ……!まだ腕が少し痺れてやがる。やっぱり人とモンスターの力の差は歴然としてるな……

 

 荒鉤爪は俺から受けたダメージなど気にしていないのか、変わらずの速さで突進攻撃をしてくる。

 そこで俺はアイテムポーチを漁り、あるものを手に取る。そして突進してきている荒鉤爪に向かってそれを投げつけた。直後に、投げた球から凄まじい閃光が放たれ、荒鉤爪の視界を奪う。

 そう、投げたのはおなじみ閃光玉。効果はてきめんなようで、荒鉤爪は見当違いな方向に威嚇をしている。

 

 よし、今こそ見せてやる!習得したばかりでまだレベルは低いが、ある程度のダメージにはなるだろ。

 くらえ!ラセンザンⅠ!!

 

 俺はラセンザン Iを荒鉤爪の中で最も肉質の柔らかい、頭部に命中させる。回転しながら切り開くように双剣を振るい、荒鉤爪の頭部の部位破壊に成功した。

 

「グオォォォ!?!?」

 

 荒鉤爪は驚いたように唸り声を上げ、一旦逃げるために飛翔しようとしている。俺は即座にアイテムポーチからペイントボールを取り出し、荒鉤爪に投げつけた。ギリギリのタイミングでペイントボールが当たり、俺は一息つく。

 

 この世界ではマップにマークがつくわけではない。ではどうやってペイントボールの痕跡を追うのか?正解は匂いだ。

 ペイントボールは破裂すると独特の匂いを放出し、その匂いを追っていくという寸法で、さらにすごいことは、エリア内ならばどこにいてもその匂いが漂ってくるという。

 

 ん〜、この方向はエリア7かな。

 俺は回復薬を飲み、念のため強走薬も飲んでからエリア7に向かった。

 

 

 …Now loading…

 

 

 エリア7に続く小道を渡りきり、エリア7に着くと、荒鉤爪は崖の中腹あたりに陣取り、こちらを睨んでいた。おそらく気配で俺がくることを察していたのだろう。さらに奴の顔や前脚が赤く染まっている。怒り状態だ。

 

「ガアァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」

 

 荒鉤爪が全力の咆哮を轟かせ、再び戦いの火蓋は落とされた。

 荒鉤爪は咆哮の勢いそのまま、片方の前脚を構えながら飛びかかって来た。俺はバックジャンプでそれをかわし、即座に前方に駆け出した。

 砂煙で俺を見失った荒鉤爪は、背後に回った俺の存在に気づかずに、キョロキョロしている。

 

「俺は……ここだ!!」

 

 俺は荒鉤爪の後ろ足に鬼神乱舞を繰り出し、そのまま後ろ足を利用して高くジャンプ。荒鉤爪の回転攻撃をかわして、再び上から連続で斬りかかった。

 しかし流石に同じ攻撃は通じず、攻撃が当たる瞬間に荒鉤爪は俺の存在に気付き、鋭い爪でガードして来た。

 双剣と爪が当たった瞬間火花が散り、俺はバック転を繰り返して距離を取る。

 荒鉤爪は取られた距離を詰めようと突進して来た。

 

「ガアァァァァ!!!!」

「やっぱそうくるよなぁ!」

 

 だがそれは予想済み。俺は突進をくらう寸前でジャンプし、岩肌に片方の双剣を突き刺して、それを軸に回転。上に上がるように何回も双剣を突き刺して回転し、荒鉤爪の攻撃範囲から逃れた。

 攻撃を外した荒鉤爪は、壁にぶつかってクラクラしている。俺は双剣を逆手に持ち替え、回転攻撃で荒鉤爪の後ろ足を今度は深く抉る。地面に着地し、無造作に放たれた薙ぎ払いをかがんで回避して、荒鉤爪の顎に剣の柄の部分でアッパーを繰り出す。脳を揺さぶられれば、どんな生物だろうと意識が揺らぐ。それはモンスターでも同じことだ。

 軽い脳震盪を起こした荒鉤爪に、俺は容赦ない乱舞をお見舞いする。鮮血が飛び散り、鱗が剥がれ落ちても荒鉤爪は戦意を失わない。それどころか、その凶悪な爪で俺を貫こうとして来た。俺は迫る爪に片方の剣を添えるようにあて、それを軸に縦に体ごと回転し、荒鉤爪の腕の上を滑るように移動する。回転している間は、剣で斬りつけるというおまけ付きだ。

 

「ガ……アァァァ……」

 

 右の前脚と左の後ろ足からおびただしいほどの血を流して、ついに荒鉤爪が地に伏した。俺はトドメに荒鉤爪の首元を斬りつける。血が噴水のように吹き出し、ついに荒鉤爪の動きが止まった。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……勝ったか」

 

 俺はその場にヘナヘナと座り込む。少し無茶をしすぎたようだ。体のあちこちが悲鳴を上げている。だがなんとか勝つことは出来た。まだ双剣の扱いにはそれほど慣れていないが、まずまずといったところだろうか。

 

「流石に疲れたな……早いとこ剥ぎ取りを済ませて、ベースキャンプに戻ろう」

 俺は荒鉤爪の剥ぎ取りを済ませ、ベースキャンプへの道を歩き出した。

 

 

 …Now loading…

 

 

 ベースキャンプに戻って来た俺は、すぐにアイルーにネコタクチケットを見せ、クエストをクリアした。今は帰りの竜車の中で揺られている。

 

 はじめてのクエストでこんなことになるとは……俺も運がないなぁ。とりあえず、ギルドに帰ったらこのことを報告しといたほうがいいよな。

 それにしても、竜車の中って、マジで、眠い……

 

 

 …Now loading…

 

 

「…………ということなんです」

 

 俺はギルドについた後、すぐさま受付嬢にクエストクリアの報告をして、荒鉤爪が乱入してきたことを伝えた。

 

「荒鉤爪が乱入してきたことは驚きですが、あなたが荒鉤爪を倒したことがもっと驚きです……あの荒鉤爪は、G4相当の個体だったのですよ?」

 

 なるほど、たしかに強かったな。

 

「あの荒鉤爪を倒したとなると……あなたのHRを見直さなければならないでしょう。後日報告に伺います」

 

 HRが上がるのか!これは嬉しいな。HRが上がれば受けられるクエストの幅も広がるしな。

 報告を済ませた俺は報酬を受け取り(追加報酬なるものを後日貰えるらしいが)、ギルドを後にしようとする。

 その時だった。

 

「大変です!!森丘にてG級ハンターのパーティが壊滅しました!観測員の報告によると、森丘は今炎の嵐が起こっているようです!!」

 

 ギルドの職員と思しき人が、息を切らせながら駆け込んできた。

 どうやら、異変はまだ終わっていないようだ。




ちょい微妙ですね……もしかすると、いつか書き直すかもしれません。
あと日常多めと言いましたが、やっぱり日常半分、戦闘半分になると思います。


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第6話.ココット村へ

 ギルドの職員と思しき人が駆け込んで来たあと、少ししてからギルドはこの事態を緊急事態と認め、街にいるG級ハンター全員に招集をかけたようだ。俺はG級ハンターではないから帰ろうかと思ったのだが、荒鉤爪を倒したことによりギルドの信用を得たのかここに留まるように言われた。

 

 発令が出されてからわずか15分足らずで集会場の広場には、何人ものG級ハンターが集まっている。しかし、やはりその数は少ない。この世界でG級ハンターになるのは相当大変なのだ。

 招集の意味がわからずにガヤガヤして来たみんなの元に、ギルドマスターが現れた。

 

「ゴホン、皆よく集まってくれた。この度皆を集めたのは他でもない、緊急事態が起こったからだ。その事態とはこれだ」

 

 そう言ってギルドマスターはみんなの前に一枚の紙を出した。それは、大きな文字で『G級ハンターのパーティが壊滅!』と書いてあり、その下に詳細が書かれているものだった。

 

「G級ハンターのパーティが壊滅しただと!?」

「どうせ油断してたんだろ。ハンターにあるまじき行為さ」

「いや待て。ここに炎の嵐と書いてある。そんな攻撃をしてくるやつなんて、いたか?」

 

 その言葉を聞いて、ハンター達も理解したのだろう。また新たな強大な敵が現れたのだと。

 再びギルドマスターが続ける。

 

「この大事にあたって、諸君らには各地方の調査、および謎の生物の討伐を依頼したい。このモンスターは非常に強い力を持っていると思われる。十分注意して事に当たって欲しい。では振り分けだが、もっとも被害が深刻とされているココット村周辺には、ティナ・ルフール、エスメダ・クラスタリア、この2名に行ってもらう。次に…………」

 

 こうして全てのハンター達の割り振りが決められ、ハンター達は明日から始まる調査の準備のために、足早に集会場を去って行った。

 さて、俺は特に割り振られなかったし、今度こそ帰るか。

 そう思った時だ。

 

「ルー・アルジャン様、ギルドマスターがお呼びです。お手数ですが、至急ギルドマスターの部屋まで来てください」

 

 ギルドの職員にそう言われた。

 俺に直接?あの場で言えなかったってことは、『ルー・アルジャン』としてではなく、『銀滅龍ジェノ・オラージュ』として用があると見ていいだろう。なんにせよ行ってみないとわからないか。

 俺はギルド職員の案内で、ギルドマスターの元へ向かった。

 

 

 …Now loading…

 

 

 俺はギルドマスターの部屋の前にたどり着き、ノックをしてからその扉を開ける。

 

「何の用だ?ギルドマスター」

「おお、ルー殿!お待ちしていたぞ」

 

 俺は軽い挨拶を交わし、いきなり核心をついた。

 

「ルーではなく銀滅龍を、だろ?」

「やはり気づいていたか……そうだ、そなたの力を見込んで頼みがある」

 

 やはりな。

 

「ルー殿にも新たに現れた脅威の対象にあたってもらいたい」

「成る程な。大方そんなところだろうとは思っていたが」

「それで引き受けてはくれるだろうか?」

「いいだろう。俺もその新しいモンスターとやらには興味があるしな」

 

 特に断る理由もないので即断した。新しいモンスターなら見ておきたいってのは本心だし。

 

「それで行き先なんだが、ルー殿にもココット村へ向かってもらいたい」

 

 俺はその言葉に疑問を感じた。

 

「ココット村といえば、ティナとエスメダが向かってるんじゃないか?高い戦力をそんなに一点に集めて大丈夫なのか?」

「実を言うとギルド側の調査により、新たなモンスターはほぼ間違いなくココット村周辺にいることが分かっているのだ」

「成る程……だから最大戦力を当てて一気にかたをつけるってことか」

「そういうことだ」

「わかった。俺もココット村に向かうぜ」

 

 俺がそういうと、ギルドマスターが頭を下げて来た。

 

「協力感謝する」

「頭なんて下げなくなくてもいいさ。今の俺は一介のハンター。立場上はあんたの方が上なんだから」

 

 俺はそう言ってギルドマスターの部屋を後にした。

 

 

 …Now loading…

 

 

 ギルドマスターとの話を終えて寮の部屋に帰ってくると、そこにはティナのほかにエスメダもいた。

 

「あ、おかえりなさい。ルーさん」

「やっほー!お邪魔してるわよ」

 

 二人が囲んでいる机には、ココット村周辺の地形が書かれた地図が置いてある。大方作戦会議でもしていたのだろう。

 

「ああ、ただいま。それといらっしゃい」

 

 俺はいい機会だからさっきギルドマスターに言われたことを、言っておく事にした。

 

「そうだ、ココット村には俺も行く事になったから」

「あなたもですか……と言うことはつまり」

 

 ティナはゆっくりとエスメダの方を向く。

 

「ええ。やっぱり例のモンスターはまだ森丘の近くにいるようね」

 

 そこまで予測できていたのか……よく気づいたな。

 

「その通りだ。新たなモンスターはココット村周辺にいると、ギルドマスターが言っていた」

「ビンゴ!森丘なら入り組んだ地形を利用して、さまざまな立ち回りができるから、戦いやすいわ」

「そうだな。あそこは使いやすい崖も多いから、相手が飛べるとしても何とかなる」

 

 と、俺も参加してさらなる考察をしている時だった。

 

 グウゥゥゥ

 

「「「………………」」」

 

 訪れる沈黙。

 

(あ、なんかデシャヴ……)

「と、とりあえず晩御飯にしましょうか!腹が減っては狩りはできぬって言うしね!」

「なんか、すいません……」

 

 俺たちはしっかりと晩飯を食べた後、再び作戦会議を再開した。そしてそれは朝まで続いた。

 

 

 …Now loading…

 

 

 俺たちは朝早くから旅をするための用意と、対モンスター用のアイテムを買いに出かけていた。そして買ってきたものを竜車に乗せ、出発の準備が整った。いよいよ出発するという時に、ティナがこう切り出す。

 

「さて準備は万端です。いざココット村に向けて出発しましょう!」

「「おー!」」

 

 俺たちを乗せた竜車が進み出した。今回は荷物が多いので、竜車は二台ある。ティナとエスメダが前の竜車に乗り、俺が後ろの竜車に乗るといった形だ。

 前の竜車ではティナとエスメダが楽しそうに話しているのが見える。あの二人、本当に仲がいいんだなぁ。

 俺は自分の武器の手入れをしながら、そんなことを思っていた。するとティナがこちらの目線に気づいて手を振ってくれた。俺も手を振り返し、揺れる竜車の荷台に寝転ぶ。朝から買い物に行っていて疲れていたので、俺の意識はすぐに微睡んで行った。

 

 

 それからは竜車を引くアプトノスを休ませるために適度に休憩を入れたり、夜になったら竜車を止めてキャンプをしたりしていた。中でも夕食の時にエスメダが話してくれた、ティナとの思い出話は面白かったな。初めて会ったティナは敬語も使わず、無愛想な感じだというから、なかなかに驚かされた。まあ本人はそこらへんの話をされるのは嫌みたいだったが。

 

 そんなこんなでドンドルマを出発してから4日。俺たちはようやくココット村に着いたのだった。しかし……

 

「これは、ひどいな」

「ええ……」

 

 ココット村はその半分ほどが壊滅していた。焼けた木材が未だに黒煙を放っていることから、やられたのはつい最近だろうと思ったのだが、なんでもモンスターが襲撃してきたのは二週間ほど前らしい。なのに立ち上る黒煙が消えないのだそうだ。

 村長の話では村人に被害はないようだが、家を失ったものたちが多いようだ。

 

 俺たちは被害を被らなかったギルド支部のハンター用の部屋を二部屋借り、顔を見合わせていた。

 

「どうやら思ったより事態は深刻なようです」

 

 重苦しい空気の中、ティナがそう切り出した。

 

「そうね……まさか村まで被害が出ていたなんて……」

「村長の話では、森丘の大半も焦土に変わってしまったらしいしな」

 俺とエスメダがそう続ける。

 

 事態は一刻を争う。しかしここでジタバタしても仕方がないのを俺たちは知っている。まずは冷静になってこれからのことを考えるべきだ。

 

「本当は旅の疲れを癒したいところですが、明日から調査に向かうべきだと思います」

「「賛成」」

 

 ティナが出した結論に反対する者はいなかった。

 俺たちはそれでこの場はお開きにし、明日に備えて今日は早めに休むことにした。

 

 一体何が起こっているのか……

 




そろそろテスト期間に入るので、更新できない日が続くかもしれません。


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第7話.異変との遭遇

随分とお待たせしました。
長い期間更新できずすいません……


 翌日、朝早くに準備を整えた俺たちは、日の出を合図に出発した。本来暗い時間に狩り場に行くのは危険なのだが、このメンバーなら大丈夫だろう。

 

 竜車に乗る俺たちの顔は暗く沈んでいる。つい半年とちょっと前に終龍大戦(人々の間ではこう呼ばれている)があったのに、これだ。あの大戦の傷跡を残しながらも、人々がこれから前に進んで行くという時にこんなことがあれば、どうしても気分が沈むというものだ。

 

「一体何が起こってるのよ……」

 

 重い空気に耐えられなくなったのか、エスメダがそう切り出した。その顔には疑問の表情が浮かんでいる。

 

「終龍はあの時確実に討ったはずでしょ?なのに何でこうも異変が続くのよ」

「それは……俺に聞かれても分からん、としか言えないな。少なくとも異変の前兆みたいなのは感知できなかった」

 

 俺は異変を察知できなかった自分に不甲斐なさを覚えた。

 この世界を守る。たとえどのような敵が相手だとしても。そう決めたのにな……

 

「一番不可思議なのはあの被害跡です。あの瓦礫の焼かれ具合、まるで太陽竜を思い出させます……」

 

 ティナの言葉を聞いてエスメダがハッとしたように顔を上げる。

 

「それってつまり……」

「ああ、そういうことだろう」

 

 すなわち、終龍の生存。もしくはそれに匹敵する何かの存在。考えたくも無いが、二週間たっても黒煙が立ち上るなど、普通の炎ではあり得ないことだ。必然的にこのような思考になってしまう。

 

「まぁそれは行ってみないと分からないさ。そのためにこんな朝早くから調査に赴いてるんだろ?」

「そうね……」

「……」

 

 俺は励ますように2人に声をかけるが、2人とも考え事をしているようで心ここに在らずといった感じだ。かくいう俺も何も考えていないわけではなく、結局その後は終始無言のまま目的地に到着した。

 

 

 …Now loading…

 

 

 森丘に着いた俺たちはそこから見える景色に唖然としていた。話に聞いていた森丘という場所は、大小さまざまな木々が群生し、とても緑豊かなところだという。しかし今俺たちの眼前に広がっている景色は、一言で言えば黒。木々は全て焼き尽くされ、圧倒的熱量で焼き尽くされたのだろう、炭化した大地が広がっている。『死の大地』ふとこんな言葉が頭をよぎった。

 

「想像以上にひどい状況ですね……」

 

 ティナは苦虫を潰したような顔をしている。おおよそもっと早く異変に気付いていれば、なんてことを考えてるのだろう。

 俺はティナの肩をポンポンと叩いて言う。

 

「過ぎちまったことを考えていても仕方ないさ。それよりこれを起こした原因を突き止めるのが俺たちの仕事だろ」

「っ!そうですね……行きましょうか」

 

 ベースキャンプにまで火の手は迫ってきていたらしく、ギルドが設置しているアイテムボックスなんかも熱で溶けてしまっている。それを尻目に俺たちは森丘の調査を開始した。

 

 エリア1.2.3はもはや何も残っていなかった。そう行ってしまえるほど、何も無い。以前は生えていただろう木々は跡形もなく消え去っており、かろうじて焼け残った木に手で触れると、まるで崩れ落ちるように炭となり、風に吹き飛ばされていく。吹きすさぶ風が妙に冷たい気がするのは、気のせいではないだろう。

 

 次にエリア8.9にやってきた。ついこの前まで木々が生い茂り鬱蒼とした森になっていたエリア8.9は今や見る影もない。炎に焼き尽くされたのか、何かの骨がいくつか転がっている。

 

 

 その後俺たちはエリア4の中心近くに集まり、今まで見た光景を整理することにした。

 

「ひどいわね。もはや何も残ってないじゃない……」

 

 エスメダが自らの膝に顔を埋めてそう言う。

 

「たしかにひど過ぎます。これをたった一体のモンスターがやったとは到底思えません……しかも、これを引き起こした炎は普通の炎では無いような気がします」

「同感だ。こんなことをできるのは、それこそ太陽竜くらいのものだろう。しかしあいつは倒されている。どう言うことだ……?」

 

 俺とティナは必死に考えるが、出てくるのは最悪の考えばかり。考えれば考えるほど悪い方向に向かって行きそうなので、俺はブンブンと頭を振ってその悪い考えを追い出した。

 

「これからどうする?残りのエリアも見てみる?まぁ結果は同じだろうけど……」

「そうですね。きっと他のエリアもここと同じように焼き尽くされているでしょう。どうしましょうか……」

 

 そう考えている時だった。

 

「「「!!!」」」

 

 エリア5の方向から巨大な気配が突如として現れたのだ。俺たちは気配を察知して一斉にエリア5の方に顔を向ける。

 

「おい、今の……」

「はい。普通のモンスターとははるかに違う気配を感じます……」

「今回の事件の原因がいるかもしれないわ。行ってみましょう!」

 

 エスメダの言葉に俺とティナはコクリと頷いて了解し、武器を構えながらエリア5へと向かっていった。

 

 

 …Now loading…

 

 

「おいおい、この迫力は……」

「まさしく四魔神と同等のもの……!」

 

 エリア5で俺たちを鋭い目で睨みつけているのは、ライゼクスだった。ただし普通のライゼクスとは違う部分がある。それは体の緑の部分が眩いほどの緋色になっていることだ。さらにまとう雰囲気はかの四魔神もかくやといった感じだ。

 

「気を引き締めろ、普通のライゼクスと同じとは決して思うな!!」

 

 俺は双剣をしっかりと持ち直し、2人に呼びかける。

 

「そんなことは……!」

「分かってるわよ!!」

 

 ティナとエスメダも自らの獲物を強く握る。

 

「ガァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」

「戦闘開始だ!」

 

 

 赤ライゼクスの咆哮で先頭の火蓋は切って落とされた。最初は俺が突っ込む。未だこちらを睨んでいる赤ライゼクスに双剣を前にクロスさせるように構え、回転しながら飛び出す。もちろんこの攻撃は避けられるだろうと予想し、次の一手に思考を巡らせる。のだが……

 

 ズバァァン!!!

「ガァァァ!?!?」

「え……?」

 

 当たった……だと!?まさか今の程度のスピードに反応できなかったのか!?

 

「ちょっと!攻撃の手を休めないでよ!」

 

 そう言いながらエスメダとティナが走ってくる。先にティナが一歩先に飛び出し、赤ライゼクスの周りを不規則に動きながら斬りつけていく。そうして赤ライゼクスがティナに気を取られてる間に、エスメダが赤ライゼクスの股下まで移動。渾身の溜め斬りを繰り出す。赤ライゼクスは避ける気がないのか、もろに大剣の一撃をくらい、大きくバランスを崩した。

 

「あれ?」

「まさかこいつ……」

 

 ティナとエスメダはこちらの動きに翻弄されっぱなしの赤ライゼクスを怪訝に思いつつも、ティナは切り上げ、エスメダはジャンプからの斬り落としでそれぞれ赤ライゼクスの羽を斬りつける。両方の羽が深く傷つき、赤ライゼクスは苦悶の表情を浮かべた。

 その隙に2人はバックジャンプをし、俺のいる位置まで戻ってきた。

 

「ねえあのライゼクス……」

「はい、少し弱すぎる気がします」

 

 どうやら2人も俺と同じことを感じたようだ。

 

「たしかにあいつは弱すぎる。てことは、あいつはこの事件の原因ではないということか?」

「でも、この森丘にいる生物って、こいつぐらいよ?」

「そうだよな。なら一体……って、避けろ!!!」

 

 何とか体制を立て直した赤ライゼクスが、まとまって立っていた俺たちに向けて火球を放ってきた。しかし、その威力は火球と呼ぶにはあまりにも巨大で、豪炎球と呼ぶのが相応しいほどだ。

 

 俺とエスメダは地面を転がることで回避し、ティナはジャンプして攻撃をかわした。標的を失った豪炎球は後ろの壁にぶつかり、爆音とともに岩壁をぶち抜いた。豪炎球は洞窟の壁を貫通し、空の彼方へと消えていった。

 

「おいおい……何だこの火力は……」

 

 俺の頬を冷や汗が伝う。

 

「間違い無いわね。こいつが今回の事件の犯人よ」

 

 エスメダがそういうが、俺は目の前の赤ライゼクスから違和感しか感じない。火力はたしかに四魔神レベルだ。しかしそれ以外は下位のライゼクスと何ら変わらない。まるで普通のライゼクスに豪炎球の力を後付けしたみたいな……

 

 そう考えているうちにティナが神速の太刀を一閃。空間がずれるのでは、というぐらいの斬撃を放ち赤ライゼクスが真っ二つになる。どうやら耐久面でも下位のライゼクスレベルのようだ。

 

「お疲れ様」

 

 考えるべきことも多いが、俺はとりあえずティナとエスメダに労いの声をかける。

 

「あんたもね。それにしても不可解なモンスターだったわね……」

「そうですね……あの火球の威力はまさに太陽竜を彷彿とさせるものでした。しかしそれ以外は……」

 

 そうなのだ。さっきも思ったように、あいつの身体スペックは下位のライゼクス程度。ティナの一太刀で真っ二つになったのがいい証拠だ。

 

「まるで、炎の力を後付けされたようだった。少なくとも俺はそう思う」

「後付けって……でもあれを見た後だと反論できないわね……」

「とりあえずギルドに戻りましょう。依頼は達成したわけですし、このことを報告しなけれだいけないので」

「「了解」」

 

 俺たちはモヤモヤした気分のままギルドへ戻る道を進んでいく。

 何かがおかしい。そう思いつつもその答えは出なかった。

 



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第8話.テンプレとの遭遇×2

 俺たちはそのままの足でベースキャンプまで戻り、竜車に乗って帰路に着いた。

 

「とりあえずあの赤ライゼクスの素材を剥ぎ取ってきたが……」

 

 そういって俺は赤ライゼクスの素材を取り出す。見た目は普通のライゼクスの素材が赤みを帯びたようなものだ。

 

「うーん、これには特に違和感はないわね。強いて言えば、素材が持つ耐久が少し原種とは違うってとこかしら」

 

 俺はその言葉を聞いて若干驚いた。見ただけで素材を詳しく分析するのはなかなか難しいのだ。それこそ職人ならではの技のはずなのだが。

 

「エスメダ、見ただけで素材の性能が分かるのか?」

「ああ、私の家は鍛冶屋なのよ。小さい頃からお父さんが素材の説明をしてくるもんだから、覚えちゃったってわけ」

 

 なるほど、納得。

 

「とにかく、今わからないことを考えてみても仕方ありません。ギルドに報告すれば調査してくれるでしょうから、それを待つしかないです」

 

 ティナの言葉で締めとなった。

 結局その結論になるのかぁ。確かに今回の事件は謎が多すぎる。ライゼクスが変異したこともそうだが、森丘を焼き尽くしたのはなんでだ?ただ力を振るったらああなったか、なんらかの目的があったのか。いや待てよ?もしあの能力を後付けされたのであれば、苦しんで暴れていたのか……?

 

「ルーさん、どうしたんですか?」

 

 気がつくとティナが下から俺の顔を覗き込んでいだ。どうやら考えるのに夢中になっていたらしい。

 

「いや、なんでもない」

 

 そういって俺は顔を晒した。ティナの顔が思ったより近くて驚いた訳ではない。断じてないのだ。おいエスメダ!ニヤニヤしてんじゃねぇ!

 

 俺は気を紛らわすために竜車の荷台に移動する。中にいたので気づかなかったが、どうやら夕方になっていたようだ。地平線に書かれかけている太陽が、世界をオレンジ色に染め上げている。

 何もなければいいんだけどなぁ、とそう思う俺を夕日が照らす。

 俺たちを乗せた竜車は、真っ直ぐにドンドルマに向かっていった。

 

 

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 ココット村のギルド支部にあらかじめ連絡を入れておき、俺たちはドンドルマに戻ってきた。事が事だ。ギルド本部に先に報告すべきだと思ったので、そうしたのだ。

 

 俺たちはギルドの受付嬢に取り合ってもらい、ギルドマスターに会うために少し待つ。数分後、受付嬢の案内でもはや行き慣れてきたギルドマスターの部屋のにたどり着き、中に入る。

 

 俺たちが森丘であったことを詳しく説明すると、ギルドマスターは眉間に深いシワを作ってこう言った。

 

「すると、君たちの見解では例のライゼクスの力は、その個体に見合った力ではない、ということでいいのか?」

「はい、火力は非常に危険なものでしたが、その他の面においてかなりの違和感を感じました。おそらくあの火の力さえなければ、下位のハンターでも討伐できるのではないかと」

 

 その言葉を聞いて、ギルドマスターは深いため息をついた。心中お察しするとだけ言っておこう。

 

「下位のライゼクスに伝説レベルの能力、か。なんとも難儀な話だ。普通ならあり得ないと言って突っぱねるところだが、君たちがそういうんだ、間違い無いのだろう。この件についてはギルドの方で詳しく調べてみることにする。君たちは暫く休んでいなさい」

「「「分かりました」」」

 

 話の早いギルドマスターでよかったぜ。

 俺たちはその場でお辞儀をし、ギルドマスターの部屋を後にした。

 

 

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 ギルドを後にした後、エスメダは一旦家に帰ると言い、ティナもそれについていくと言うので、今日はここでお開きになった。

 

 俺はひとまずガントの鍛冶屋に寄ることにした。前に頼んでおいた例の防具が完成していると思ったからだ。

 

「ちわー。ガントさん、例の防具は出来たか?」

「ルーか!ちょうどよかった。今さっきできたところだぜ!」

 

 そう言ってガントさんは銀色のブーツを持ってきた。所々に赤い線が入っているのがなかなかかっこいい。

 

「ほらよ。性能は確かめてみなきゃ分からないが、完璧にできているはずだ」

「さすがガントさん。俺の思った通りの構造だぜ」

 

 俺は受け取ったブーツを念入りに見てそう言う。

 

「しかしよぉ〜。バルファルクの素材であんなことを思いつくとは、お前さんの頭の中はどうなってんだ」

「なに、発想の転換ってやつさ。それじゃまた来るぜ」

「おうよ!」

 

 俺は新しいブーツを装備してガントの鍛冶屋を後にした。

 

 

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 そのあとは特にやることもなかったので、街をブラブラしてみることにした。買いたいものもないので色んな店を見て回る。

 それにしてもこの世界の人たちは商売魂が逞しいな。店に入った瞬間店員に色んなものを押し付けられそうになることなんてザラにある。中には狂気の宿った目で強引に勧誘をしてくる宗教団体のような店もあったが、スルーした。

 

 暫くブラブラしているうちに、裏路地的なところに入った。決して迷い込んだ訳ではない。ちゃんと用があってきたのだ。

 俺は後ろを振り返り、少し威圧しながら言う。

 

「おい、さっきからコソコソ跡をつけてきている奴ら。出てこいよ」

 

 そう言うと路地の角から10人ほどの男が出てきた。どいつもこちらを馬鹿にしたりヘラヘラしているような奴らばっかりだ。

 

「お前がルー・アルジャンで間違いねぇよなぁ?」

 

 真ん中の男がそう聞いてきた。こいつらの中では一番強そうな、いかにもヤンキーのリーダーのようなやつだ。

 

「そうだが」

「てめえこの頃俺らの(・・・)ティナちゃんと一緒にいるだろ?生意気なルーキーに現実ってもんを教えてやろうと思ってなぁ」

 

 要するに新人いびりか。しかも「俺らのティナちゃん」だってよ。こういう奴らがティナの一番嫌いな人種なんだがなぁ。

 

「へー、じゃあ俺は用事があるので」

 

 俺は構う必要もないと判断し、奴らの横を通り過ぎようとした。しかし、

 

「おいおいどこいくんだ?シカトかよ調子乗んなよオラァ!!」

 

 男の1人がいきなり切りかかってきた。人に剣を向けるのはハンターの御法度だったはずだが………まあいいや。それにしても温い殺気だこと。

 

 俺は少し体を傾けてその幼稚な攻撃をかわし、相手の腕をとる。そしてそのままそいつの腕を捩じ切った。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!俺の、俺の腕がぁ!!」

 

 腕をねじ切られた男はそのまま倒れ込んでしまった。まあ興味はないが。出血多量で死ぬんじゃね?

 

「こいつ!!野郎ども!やっちまえ!!」

 

 リーダーの男の掛け声で一斉に男たちがなだれ込んできた。俺に男と戯れる趣味はないので、丁寧に全員の両腕を粉砕してから顎を蹴り上げる。そして意識を失った男たちを道端に積み上げていく。残ったのはリーダーの男のみ。

 

「な、なんなんだよ……お前……」

「なにって、ただの新人ハンターだよ」

 

 そう言いながら俺は男に近づく。男は腰が抜けたのか、尻餅をついたままその場を動かない。

 

「わ、分かった!俺たちが悪かった!!だから命までは……」

「こういう不穏分子は頭を潰しとかないといけないからな。それにクズへの容赦なんて持ち合わせてないし。てな訳でサヨナラ」

 

 俺は手に収束させた雷を男の頭に向けて放つ。雷が脳の主要箇所を焼き切り、男は口や耳から黒煙を上げながら倒れた。

 

 俺は手をパンパンとやって何事もなかったかのように裏路地から出ていく。全く、気分が害されたぜ。まあティナを付き纏うストーカーの処理ができたからよしとするか。

 

 

 …Now loading…

 

 

 胸糞悪い出来事があったので俺は気分を紛らわすべく温泉へ向かった。男湯の暖簾をくぐり、脱衣所で服を脱いでから風呂場に入る。

 時間も早かったのでどうやら貸切のようだ。俺は軽く体を洗ってから湯船に浸かることにした。白乳色のお湯には疲労回復、美肌効果などの効能があるようだ。

 

「はぁ〜。絶景だなぁ」

 

 俺は湯船の奥の方にある岩に腰を下ろし、景色を楽しむ。時間は夕方。広大な自然を夕日のオレンジが照らしていて、いい眺めだ。俺はその景色を見ながら、しばしの間温泉を楽しんだ。

 

 

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 その頃、脱衣所の入り口付近では……

 

「あ!ったく暖簾が逆じゃないか。あの新人かい?全く……」

 

 そう言って番台のおばちゃんが暖簾を逆にしていった。中に人が入ってないか確認せずに……

 

 

 …Now loading…

 

 

 さて、十分に堪能したしそろそろ上がりますかね。

 そう思った時だった。

 

「見てくださいエスメダちゃん!いい眺めですよ!」

「ちょっとティナ!危ないから走らないで!」

 

 ティナとエスメダが入ってきた。俺の表情が一瞬で固まり、冷や汗が滝のように流れ始める。

 

 何故だ!?俺は確かに男湯に入ったはず!!でも2人して間違うなんてことはあり得ないし……いやそれよりも!今はこの状況をどう打破するのかが重要だ!!

 

 幸い岩に隠れてて2人に俺の存在はまだバレてない。

 どうするか…………そうだ、筋肉を電気の力で刺激して速度を上げ、2人に認識される前に離脱するか!?危険は伴う、だが他に方法はない!!何よりまごついててこのまま発見されるのが一番まずい。

 

 俺は雷を体内で発電し、全身に行き渡らせる。決して体外に出すわけにはいかないから細心の注意が必要だ。

 

 よし、いまだぁぁーーー!!!

 

 俺は一気に岩陰から飛び出し、出口に一直線に向かう。

 しかし、

 

 ビタン!!

 

 ええ、捕まりましたよ。足を掴まれた俺は顔面から地面にダイブする。そして背後から感じる般若の気配。

 

「ル・ー・さ・ん?こんなところで奇遇ですねぇ?」

 

 やばい!ティナの背中に般若が見える!!ていうかもう抜刀して俺を切り刻もうとしてる……

 

「や、やあティナ。俺はもう上がるところだったんだ。あとはごゆっくり……」

 

 俺は平静を装いなおも逃亡を試みるが、

 

「行かせるわけないでしょう!!さあ、今日こそはもう許しませんよ……覚悟しなさい!!」

「ちょ、やめ、誤解だって!!!」

 

 俺は刀をブン回す般若もといティナから逃げながら必死に誤解を解こうとするが、ティナは聞く耳を持ってくれない。エスメダはやれやれと言った風に肩を竦めるばかり。

 この後ティナを説得するのに2時間の時を有したことは言うまでもあるまい。




最後がテンプレ展開みたいになってしまいましたが、後悔も反省もしてないので大丈夫でしょう。(←理由になってない)


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第9話.銀滅龍の尋問

この章が終わったら登場人物の説明を入れようと思います。



 俺たちがギルドにモンスターに異変が起こっていることを報告してから5日ほどたった。いつものように部屋で朝食を食べていた俺たちのもとに、ギルドの職員から通達があったのだ。なんでもすぐに来て欲しいとのこと。

 

「で、やって来たわけだが、エスメダもいるってことは……そういうことか?」

 

 俺は目の前に座っているギルドマスターにそう問いかける。

 

「そうだ。ルー・アルジャン、ティナ・ルフール、エスメダ・クラスタリア。この三名はこれより臨時のチームを組んでもらい、この度の異変について調査を行ってもらうことになった」

「そりゃあ随分と急な話だな。しかもその言い方だと、拒否権は無いんだろ?」

 

 俺が少し目を細めてそういうと、ギルドマスターは参ったという風にホールドアップした。

 

「全く察しがいいな。その通りだ、今回の件に関しては拒否権はない。これは上からの勅命でもある」

 

 なるほど勅命なのか。しかし流石に人類最強の2人と、今や最強の龍(自分で言うと超恥ずいが)とまで言われている銀滅龍をセットにするなんて、少しやりすぎではないか?というわけで聞いてみた。

 

「俺たち3人が一緒なんて、少し豪華すぎる気もするがなぁ」

「まあ妥当でしょう。私は今本調子ではありませんから」

 

 するとティナから初耳の情報が飛び出して来た。

 

「え、そうなのか?」

「ええ、終龍大戦の時オーバードライブというのを使ったでしょう?あれの反動で龍脈を操作する器官がオーバーヒートしてしまったんですよ。全くというわけではありませんが、当分は龍血覚醒すら使えません」

 

 あの技にそんなデメリットがあったとは……デメリットありきの技はあんまりオススメしないけどなぁ。

 まあ俺もカタストロフィーを使って1ヶ月は動けなかったから、強くは言えないが。

 

「そういうわけだ。頼めるな?3人とも」

「「「了解(です)」」」

 

 ギルドマスターの話も終わり2人が出て行こうというところで俺は声をかける。

 

「あ、俺はまだギルドマスターと話があるから、先に帰っててくれ」

「そうですか?分かりました」

「あ、あとで渡したいものがあるから、集会場に来てよね」

 

 そう言って2人はギルドマスターの部屋から出て行った。そして俺は改めてギルドマスターに向き合う。

 

「で、話とはなんだ?ルー殿」

「今回の一件は、例のライゼクスが能力を後付けされたようだと言ったよな?」

「うむ、火の火力と身体能力が一致してないから、という理由でだろう?」

「そうだ。そして俺は……奴が森丘を焼き尽くしたのは、その後付けされた火属性のせいで苦しんで暴れていたんじゃないかと考えている」

 

 俺がそう言った瞬間、ギルドマスターの目が一瞬だけ細められた。俺はそれを見逃さずに続ける。

 

「でだ。俺は能力が後付けされた件に関して……何か人為的なものを感じた」

「ほう、面白い推測だ……」

 

 ギルドマスターの顔が、だんだん険しいものに変わっていく。

 

「モンスターに能力を付与するなんて聞いたことがない。もしできるとするならば、莫大な資金と巨大な研究施設が必要だろう」

「…………何が言いたい?」

 

 ここまでくれば流石にギルドマスターも察したのだろう。俺が言おうとしていることに。

 

「今回の一件……まさかとは思うがギルドが関わってないか?もしくはこの事態に何か心当たりがあるのに、それを俺たちに隠してないか?」

「もし……もしそうだと言ったら?」

 

 探るようなギルドマスターの声に対し、俺は殺気を放って告げる。

 

「その場合は……俺の全能力を持ってギルドを滅ぼすことになるだろう。俺の願いはこの世界の秩序の維持だ。それを壊そうとする者を、俺は容赦しない」

 

 押し寄せる雪崩のごとき殺気を浴びて、流石のギルドマスターの額にも玉のような汗が浮かんでいる。

 しばしの沈黙の後、ギルドマスターは降参したように頭を振った。

 

「安心してくれ。この件にギルドが関わってないことは保障しよう。だが、ギルドが何か隠してるというところは……見逃してくれないだろうか?」

「自分たちが破滅の淵に立っているとしても?」

「それでもだ。我々にも貫かねばならないものがある」

 

 少し脅すように放つ殺気を増やしてみるが、ギルドマスターの顔は決意に満ちている。これ以上は無意味だろう。

 

「そうか……納得はしないが、理解はした。すまなかったな。試すようなことをして」

 

 俺が殺気を解くと、ギルドマスターは肩の力が抜けたようにズルズルと椅子に背中を滑らせた。

 

「分かってもらえてよかったよ……ここまで恐ろしいと感じたのは、初めてかもしれんな…………」

「俺はギルドが関わってないと知れただけでもありがたいよ。ギルドが外道に落ちたなんて考えたくなかったからな。まあなんにせよ、俺は秩序の維持の為ならどんなことも辞さないと言うことを、覚えておいてくれ」

「ああ、心得よう……」

 

 俺はそれだけ言うと手をひらひら振ってギルドマスターの部屋を出て行った。

 

 

 …Now loading…

 

 

 俺はそのままの足で集会場に向かった。

 さて、エスメダが何か渡したいものがあるとのことだったが……お、いたいた。

 

「おーい」

「あ、来たわね。とりあえずこっちに来て」

 

 俺はエスメダの向かいに腰を下ろす。

 

 ところで、エスメダが『五十勇士』と言われて英雄視されているのを知っているだろうか?終龍大戦で戦ったハンター達のことを指す言葉なのだが、どうやらハンター達の憧れの的になっているらしい。しかもエスメダはその中でトップの実力者だ。

 

 要するに何が言いたいのかと言うと、周りの視線が痛い!!悪意ある視線こそないが、目線だけで人を殺せるんじゃないかと思えるほどの視線を送ってくる奴がいるぞ……

 

 居心地悪そうにしている俺に気づいたのか、エスメダが苦笑いを浮かべた。

 

「あー……貴方が考えてることは分かるわ。でも慣れるしかないわね」

「お前も大変なんだなぁ……」

 

 エスメダが「まあね」と言ったところで、俺は本題を切り出す。

 

「それで?何か渡したいものがあるって話だが?」

 

 そう言った瞬間、周りの人間が「なにぃ!?」といった風な顔をした。俺はそれを華麗にスルーし、エスメダの言葉を待つ。別に嫉妬の嵐をもらっても、何とも思わないのだ。うん。

 

「なんか、ごめん……それで渡したいものってのはこれ」

 

 エスメダが取り出したのは、緋色に輝く素材がはめ込まれたブレスレットだった。

 

「この緋色の素材は……あの赤ライゼクスか?」

「そうよ。お父さんに頼んで作ってもらったの。もちろん私とティナの分もあるわよ。ティナにはもう渡したわ」

 

 俺はそれを手にとって腕にはめてみる。すると身体に何か力が流れ込んでくるのを感じた。

 

「おお、これには加護がかかっているのか」

「ええ、詳しくは分からないけど……まあお守り感覚ってことでいいんじゃない?」

「なるほど、ありがとな。それにティナにもあげたのか。ってことはチームの証ってことか?」

 

 俺が少しニヤついて尋ねると、エスメダは顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。

 

「か、勘違いしないで!素材が余ったから作ろうと思っただけだし!べ、別にチームの証とか、そういうのじゃ……」

「ん?もしかしてお前が作ったのか?」

「う、うるさい!要らないなら返してくれて構わないわよ!」

「はいはい。ありがたく頂きます」

 

 何というツンデレなのだろうか……少し可笑しくてついからかってしまった。周りからの視線が嫉妬から殺意に変わりつつあるが……

 

「まあこれからしばらくはチームなんだ。よろしく頼む」

「ま、まあ、そういうことなら」

 

 俺とエスメダは握手を交わし、エスメダはこれから家に用事があるとのことなので、ここで別れた。

 

 

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 次の日、俺たち3人はギルドのある一室に集合していた。集会場では周りが気になって話ができないので、ギルドに部屋を借りたのだ。

 

「さて、私たち最初の活動ですが、とりあえず他の街を回ってみることにしませんか?」

「いいんじゃないか?まだ何も情報が無いからな」

「問題はどこに行くかね」

 

 エスメダがそう言うと、ティナはおもむろに地図を取り出して、ある一点を指差した。

 

「目的地はユクモ村でどうでしょう?」

「ユクモ村か……確かに別大陸に行ってみるのも手だな。久しぶりにあいつらの様子も見たいし」

「ああ、あのデタラメなドスジャギィね」

 

 どうやらユクモ村に行くのに反対するものは居ないようだ。

 

「では決まりですね。ユクモ村に行きましょう!」

 



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第10話.敵勢力

今回はいつもより少し長くなっています。


 内陸にあるドンドルマからユクモ村行きの船が出る港までは、かなりかかるらしい。一番早い竜車でも一週間はかかるそうだ。まあ俺たちの場合護衛がいらないから、護衛を待っている時間がないのはありがたい。

 一週間の長旅の用意をするために、俺達は街に繰り出した。とはいっても買うのは水や食料だけだけどな。

 

 エスメダは水を確保しに行くとのことなので、俺とティナは食料の買い出しに向かった。

 

「ユクモ村ですか……私はあんまり行ったことがないんですよね。依頼もこちらの大陸のばかりやってましたから」

「そうなのか。俺はしょっちゅう行ってたぞ。暇つぶしに。あ、もちろん人化してだけどな?」

 

 俺が念のためにとそう言うと、ティナは何をバカなことをといった顔をした。

 

「当たり前です。貴方が本来の姿で人里に訪れたら、それこそ天災級の緊急指令が飛んでくるでしょう」

「天災級て……俺はそんなに危なくないぞ?」

「へー、モンスターを倒すためだからって未知の樹海を丸々消しとばした人が危険じゃない、と?」

 

 ジト目でティナが睨んでくる。やめろ!視線が痛い!!

 

「あ、あれは星砕竜がやったことだろ!俺のせいにするな!!」

「その星砕竜に勝ったのはどこのどなたでしたかね?」

「ぐむむ……!」

 

 何故だろう。こいつには口論で勝てる気がしない。

 

「っと、少し目立っちまったようだな」

 

 ふと気づけば、大きな声で喋っていた俺たちのことをジロジロ見てくる輩が増えていた。大半は好奇心という名の嫉妬だな。そんなにティナのことが気になるのか?あ、中指たててる奴もいる!

 

「くそっ。行くぞ、ティナ」

「あ、ちょっと!」

 

 俺はティナの手を掴んで人混みの中をかけて行った。

 

 

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 大通りからだいぶ離れた裏路地に入ったところで、ティナが急に立ち止まった。

 

「うお!?急に立ち止まるなよ!」

「い、いきなり手を掴んで走らないでください!びっくりしました……」

 

 ティナが俺が握っていた手を自分の手で掴みながらそう言った。俯いているので表者は分からないが、もしかして嫌だったのだろうか?

 

「あ、悪い、周りの視線がどうにも嫌だったんでな……」

「………………」

「………………」

 

 気まずい!!

 

「すまん、嫌だったか?」

「いえ……大丈夫です。それよりありがとうございました」

「おう、まあ気にするな」

 

 それだけ言うと、ティナが顔を上げた。

 

「はい。では私は買い物に行ってきますね」

「ん?俺も行くよ」

「あのですね……あんなことがあったのに、また2人でいたらさらにめんどくさいことになりますよ?」

「んー、それもそうだな。じゃあ俺は先に帰ってるわ」

 

 俺は手をひらひらと振りながらその場を後にする。

 

「男の人に手を握られたのなんて……初めてです……」

 

 そんなティナのつぶやきは、風になって消えて行った。

 

 

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 そのあと水の調達を終えたエスメダと合流し、しばらくしてから台車を転がしてきたティナと合流した。これ以上特に用意することもないので、早速出発することにする。

 竜車の後ろに荷物を詰め込み、いざ出発だ!

 

 

 

 とは言ったものの竜車での移動中は暇だった。最初こそくだらない話なんかをして盛り上がっていたが、3日目あたりからは話題が尽きてぼーっとしている時間が増えた。

 

 この頃は天気も良く、昼寝にはもってこいの日差しだ。ティナとエスメダはもう寝てしまっている。一応見張りもしなくてはいけないので、俺は寝れないなぁ。いつモンスターが襲ってくるか分かんないし。

 と、その時。

 

「一旦アプトノス達を休ませるニャ!」

 

 アプトノス達を引いていたアイルーから休憩の知らせが入った。俺は熟睡している2人を起こし、竜車から降ろさせる。

 

「ん〜、ずっと座ってるのも疲れるなぁ」

「今までは大体1日かかるか、かからないかぐらいだったものね。確かに長いわ」

 

 俺が背伸びしながらそう言うと、エスメダがまだ眠いのか目をこすりながらこちらに来た。

 

「おいおい大丈夫か?随分眠そうだな」

「まだ眠気が取れないだけよ……ふぁ……」

 

 俺たち3人が竜車から降りて外の空気を堪能しているまさにその時、

 

「ギャァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」

 

 突然モンスターの咆哮のようなものが轟いた。

 

「ッ!これは、モンスターの鳴き声……でしょうか?」

「どこかで縄張り争いでもしてるんじゃない?」

 

 ティナとエスメダはそう言うが、モンスターである俺にはよく分かる。これはただの咆哮じゃない!

 

「違うぞ2人とも!これは悲鳴だ!」

「悲鳴?でもここって狩り場じゃないですよね?」

 

 そうなのだ。ここは狩り場じゃない。ではなぜ悲鳴が聞こえる?モンスター同士の戦いで負けたなら、普通勝利の咆哮が聞こえてくるはずなんだが……ッ!まさか!?

 

 俺はある仮説を思いつき、悲鳴が上がった方へ駆け出す。

 その後を少し遅れて2人が付いてきた。

 

「ちょっと!いきなりどうしたのよ!?」

「確かめたいことがある!もしかしたら、今回の異変のことが少し分かるかもしれない!」

 

 今回の異変はどこか人為的なものを感じた。そして苦しくて暴れていた赤ライゼクス。そして今の悲鳴。もしかして……!

 

 

 …Now loading…

 

 

 走る。薄暗い密林の中をひたすら走る。場所は分かっているんだ。急がなければ……でないと異変の片鱗をつかみ損ねるかもしれない!

 

 そして俺は森の少しひらけた場所にいる、注射器のようなものを持った白衣の男と、なにやら様子のおかしいイャンクックを見つけた。

 ビンゴだ!!

 

「な!なぜハンターがこんなところに!?」

 

 白衣の男は俺たちを見ると酷く驚いたようだ。当然だろう、普通はこんな場所にハンターが訪れることはないのだから。

 

「ルー!どうしたのよ、いきなり止まって……なによ、あれ……」

 

 エスメダがそういうのも無理はない。なにせさっきまで様子がおかしかったイャンクックが、真っ赤な目でこちらをにらんでいるのだ。口から電気を流しながら。

 

「おいお前。そいつに何かしたのか?その注射器はなんだ?」

 

 俺がそうたずねると、

 

「お前に教えることはないもない!やれ!!」

 

  白衣の男がそういうと、雷を纏ったイャンクックが俺たちの方へ駆け出してきた。なかなかに速いが、俺たちからしたらないも同然だ。

 

「ティナとエスメダはあのイャンクックを倒してくれ。俺はあの白衣の男を取り押さえる」

「「了解(です)」」

 

 そういった瞬間、俺たち3人がいきなり掻き消えた。正確には前方に飛び出したのだが、白衣の男やイャンクックからしたらそう見えただろう。

 

 ティナとエスメダは一気にイャンクックの懐まで切り込み、ティナが下から上に切り上げ、エスメダは大剣での振り下ろしを繰り出す。鋭い太刀の一撃がイャンクックの方翼を切断し、重い大剣の一撃がイャンクックの頭を潰した。

 このイャンクックも元は下位の個体だったようで、たったそれだけで決着はついた。

 

 その間に俺は白衣の男に接近。俺の動きに全くついていけてない白衣の男は、動かないでいる。俺は双剣の片方の剣を白衣の男の首筋に突き立てる。白衣の男は「ひいっ!!」と言って手をホールドアップした。たった数秒での出来事だった。

 

「おつかれ2人とも。さて、さっきの質問なんだが……答えてくれるよな?」

 

 俺が脅すようにさらに剣を首に突き立てると、白衣の男は訳が分からないといった顔をしていた。

 

「あ、あり得ない!G級ジンオウガの力を付与したイャンクックだぞ!?それが、一瞬で……」

「あいつになにしたかは知らないけど、あの程度じゃ相手にもならないわね」

 

 エスメダがそういうが、白衣の男はまだ理解できていないようだ。そこで俺はあることを思いつく。

 

「当たり前だろ?この2人は『五十勇士』筆頭のエスメダ・クラスタリアと、英雄である『龍狩り』ティナ・ルフーフだぞ?」

 

 2人はこの呼び名が嫌なのか渋い顔をするが、白衣の男には効果抜群だったようだ。途端に冷や汗を流し始めている。

 

「くそっ!!何故そんな大物がこんなところに!それと男!よくも我ら『EDEN』の崇高なる実験を邪魔してくれたな!!」

「うるさいな……騒ぐな。情報を喋ってくれるのは構わないが、大きな声を出すな。耳障りだ」

 

 いきなり騒ぎ出した白衣の男に、俺は半分くらいの殺気を放って告げる。津波のごとく押し寄せる殺気に、白衣の男は息の詰まったような表情を浮かべた。

 

「それにしても、『EDEN』?聞いたことないな……エスメダ、知ってるか?」

「いや、私も知らないわね。ティナはどう?」

 

 そう言ってティナの方を見ると、

 

「そ、そんな……どうして、どうして『EDEN』がまだ……!?だ、だってあれは、あの人が……嘘です……嘘に決まってます……!」

 

 明らかに様子がおかしかった。顔は真っ青に青ざめ、呼吸もかなり乱れている。足元もおぼつかないようだ。

 

「お、おいティナ?どうしたんだ?」

 

 俺が心配してそう声をかけると、

 

 ドサッ

 

 ティナは気を失って倒れてしまった。

 

「ティナ!?一体どうしたのよ!?」

「落ち着け!とりあえずエスメダはティナを連れて竜車まで戻れ。俺はこいつからもう少し情報を引き出す」

「わ、分かったわ……」

 

 エスメダはティナを背負って竜車の方へ引き返していった。

 俺は白衣の男の方へと振り返り、こう言う。

 

「さて、お前にはもう少し聞きたいことがある。ちゃんと答えないと……分かるよな?」

 

 

 …Now loading…

 

 

 数十分後、俺は竜車の元へと帰ってきた。竜車外でエスメダが重い顔をしてもたれかかっている。

 

「帰ってきたぞ。どうだ、ティナの様子は?」

「今のところは大丈夫そうよ。呼吸も落ち着いたし、今は竜車の中で眠ってるわ」

 

 俺はそれを聞いて胸をなでおろす。ひとまずは安心だ。

 

「それで?何か聞き出せたことは?」

「いや、そんなに情報は聞き出せなかった。『EDEN』という組織があることと、モンスターに別の属性を付与する実験を行なっていることぐらいだな。おそらく組織の中でも下っ端なんだろう」

「そう……あの白衣の男はどうしたの?」

 

 エスメダがそう聞いてきたので、俺は少し下を向いて答える。

 

「……処分してきた。あいつは、いやあいつらはこの世界に仇なす存在だ。要するに、俺の敵。俺は敵には一切容赦しない」

「……そう。私は正しい判断だと思うわ。どちらにせよ、あいつがやってたことは死刑になるほどのことだし、ここから連行するのも大変だしね……」

 

 エスメダがそう言うが、それは俺への気遣いにも見えた。人間とモンスター。その感性が違うのは仕方のないことだろう。俺もすっかりモンスターになったもんだ。

 

「で、ティナがああなった理由だが……もしかして、彼女の過去に何か関係あるんじゃないか?」

 

 俺がそう言うと、エスメダはハッとした顔をする。

 

「もしかして、ティナが生まれた研究所のこと?」

「ああ、それなら辻褄があうところもある。そうだ、確かエスメダは昔のティナを知ってるんだよな?」

「ええ、ハンター育成学校時代からなら」

「よかったら聞かせてくれないか?そこに何かヒントがあるかもしれない」

 

 エスメダは少し考えたそぶりを見せた後、決心したように顔を上げた。

 

「分かったわ。本人はあまりその話はされたくないみたいだけど……そうもいってられないものね。ええと、どこから話そうかしら……」

 

 そういって、エスメダはティナとの出会いを話し始めた。

 

 




次回から二話ほど過去話になります。


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第11話.英雄の一歩 ①

今回からティナとエスメダの過去話となっております。
主に三人称視点で書いていきますので、ご了承ください。


 ハンター育成学校といってもかなりの数がある。その中でも特に優秀なハンターを生み出していたのが、ある街にある世界で最も規模の大きいところだ。

 

 そこは入学するのにとても大変な試験を受ける必要がある。その試験は相当過酷で、ほかの育成学校を卒業した新人ハンターでさえ合格できないこともある、と噂される程だ。

 

 そんな世界で屈指の難しさを誇る学校に、ある時信じられないことが起こった。なんと齢7歳の子供が合格したというのだ。しかもその子供は女。当然学校側は平等かつ厳密に試験を行った。なのでその女の子が受かったことは事実。大人のハンターですら受からない可能性がある試験に、だ。

 

 その女の子の名前こそ、幼き頃のエスメダ・クラスタリア。今から約10年前の話だ。

 

 驚くことに首席で入学し、壇上で新入生代表として挨拶したときの、座っている新入生達の顔ときたら、それを思い出すだけで笑みが浮かぶ。幼いエスメダは、自分が特別な存在だと思っていた。

 

 エスメダは最初からクラス中、いや学校中の注目の的だった。クラスにいればクラスメイト達がひっきりなしに喋りかけてきて、容姿もかなり良いエスメダは、上級生から告白されることも多々あった。もちろん全て振ったが。

 

 座学を受ければ上級生も答えられない問題でも解き、体育になれば誰よりもいい記録を打ち出す。まさに文武両道、天才と言われるのにふさわしい人物だった。

 

 そうしてエスメダが幼くして我が世の春を謳歌しているうちに、3ヶ月ほどが過ぎた。

 

 ある日、いつも通り先生の話を聞いていると、突然このクラスに編入生が入ってくると言った。エスメダがいるクラスは、学年の中でもかなり優秀な者達が集まるクラス。そんなクラスに編入してくるとなれば、相当な実力者だろう。

 

 しかしエスメダは全く動じない。自分より優れた人間などいるわけがないと信じて疑わなかった。

 

「エスメダちゃん。編入生が来るんだってね」

「楽しみよね〜。あ、もしかしたらエスメダちゃんより強かったり!?」

「はっ。ありえないわ。私より優れた人なんて、いるもんですか」

「そうよね〜エスメダちゃん、すごいもんね〜」

 

 年上の人たちが自分のことを囲んで、自分に話しかけて来る。もうそれだけでエスメダは有頂天だった。

 

 しかし、そんなエスメダの自信は、粉々に砕け散ることになる。

 そう、やってきた編入生こそ、幼き頃のティナ・ルフールだったのだ。ティナは当時6歳。エスメダより年下だった。

 

 この時点でエスメダは、最年少合格者というアイデンティティを失った。そればかりか、座学のテストは何回やっても一番はティナ。運動もティナはエスメダの記録をどんどん抜いていく。エスメダのプライドはズタズタに傷つけられた。

 

 だがエスメダが最も腹が立ったのは、ティナが他人を避けているところだ。周りの人が「すごい」と言って近づいて言っても、ティナはまるで拒否するかのように離れて行ってしまう。当然そんな態度で友達などできるはずもなく、ティナはいつも1人だった。

 

 エスメダはそれが許せなかった。自分よりすごいくせになぜあんなに周りを拒否する?謙遜か?生意気な奴め。それが当時のエスメダがティナに抱いていた感情だ。

 

 そんなある日、さまざまな鬱憤が溜まったエスメダは、ティナに話しかけることにしてみた。あんなに疎ましく思っていたのに、今まで話したことが無かったのだ。ティナが避けてきたというのもあるが、実はエスメダは、相手から話しかけてこないとなかなか喋り出さない、人見知りなところもあった。

 

「ねえ、ちょっとあんた」

「ッ!な、なに……?」

 

 ティナは話しかけただけで肩をびくっ!と震わせ、恐る恐る返答した。

 

「あんた、なんであんなに勉強とか運動が出来るの?」

 

 それはエスメダの純粋な疑問。相手の情報を得るなどといった、大人が考えるような邪な理由ではない、純粋な疑問だった。

 

「え、えっと……お勉強は、お母さんに教えてもらって……運動は、その、前から得意、だったから……」

 

 ティナはしどろもどろにそう答えた。エスメダは得意なだけで自分に運動で勝てるだろうか?と思ったが、ティナが赤ちゃんの頃から密林でサバイバルしていた、ということを知らないので仕方がない。

 

「ふ〜ん。随分と優秀なお母様なのね。でもね、私は負けないわ。あんたなんかに絶対負けないんだから!」

 

 エスメダはいかにも子供らしい言い方で、一方的に宣戦布告をした。対するティナは終始ビクビクしていて、エスメダの話を聞いているか定かでは無かったが。

 

 そうしてエスメダの、ティナに対する一方的なライバル心というのが、より強くなっていった。

 

 

 …Now loading…

 

 

 そしてティナが編入してからさらに数ヶ月後。ある程度の狩りの知識と、狩場で行動できるだけの体力を身につけた生徒達は、はじめての実地研修を行うことになった。

 

 エスメダはそれを聞いたとき、チャンスと思った。この研修で大きな手柄を立てれば、また自分は注目の的になれると思ったからだ。

 

 そして研修の日。場所は古代林。内容はクラス内で4人1組を作り、全員でマッカォ一頭を倒してくるというもの。今は先生が今回の実地研修においての、注意点を話している。

 

「えー。分かってるとは思うが、決して森の奥には入るんじゃないぞ。安全は十分確保してあるが、この世界で絶対ということはない。常に危険と隣り合わせだということを覚えておけ!」

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

 生徒達が元気よく返事をし、一斉に森の中に駆け出していく。エスメダもほかの仲間の3人と一緒に、森の中に入っていった。

 

「それでエスメダちゃん。どうするの?」

 

 エスメダのパーティの1人がそう聞いてきた。

 

「まずは周辺の地理の確認ね。それが終わったらマッカォが来そうなところを探して、待ち伏せするわ。私たちの実力なら奇襲じゃなくても勝てると思うけど、体力温存のためにも待ち伏せがいいと思うわ」

 

 エスメダは周囲をキョロキョロと確認しつつこういう。エスメダの能力はすでに特出しており、マッカォ一頭など相手にもならないが、それでも油断しないところが流石というべきか。

 エスメダ・クラスタリア。幼少期からハンターとしての才能も、周りから頭一つ飛び出ていた。

 

 その後周辺の地理を一通り確認したエスメダ達は、マッカォが使っていると思われる洞窟を発見。その入り口で待ち構えることにした。

 そして数分後、マッカォが姿をあらわす。そこからのエスメダ達の行動は速かった。

 

「エマちゃんとユリーカちゃんは先行して撹乱をお願い!マリアちゃんは隙を見てマッカォの体制を崩して!トドメは私がやる!」

「「「了解!!!」」」

 

 指示が出た途端に2人の少女が岩陰から飛び出した。。いきなり出てきた影にマッカォは驚くが、見たことない風貌から敵であると判断し、攻撃に移ろうとする。しかし自分の周りを不規則に動く2人に、狙いをつけられずにいるようだ。

 

 マッカォがキョロキョロしている隙をついて、マリアと呼ばれた少女が一直線にマッカォに向かう。完全にマッカォの意識の外をつき、片手剣の盾でシールドバッシュを繰り出した。

 

 強烈な盾での一撃に、マッカォの体制が崩れる。そしてそれを逃すエスメダではない。岩の上から飛び上がり、マッカォの後ろをとる。そして、一閃。狙いすまされた一撃は、マッカォに吸い込まれるように当たり、その首を落とすことに成功した。

 

「ふぅ……まぁ、こんなものね」

 

 エスメダがパンパンと手を叩きながら残心を解く。

 

「流石エスメダちゃん……不意をついたとはいえ、マッカォを一撃で仕留めるなんて」

「すごいよエスメダちゃん!」

 

 残りの少女達がエスメダを囲んでそう捲し上げる。エスメダはそれに優越感を感じ、こう提案する。

 

「ねえ、もうちょっと奥まで行ってみない?私たちなら行けると思うんだけど」

 

 なんとも思い切った発言。もちろんエスメダも森の奥に進むのは危険だとわかっている。しかしマッカォを一撃で倒したことを褒められて、調子に乗っていたのだ。

 

「え!?でも森の奥には入るなって、先生言ってたよね?」

「大丈夫よ。この狩場はあらかじめ先生達が大型モンスターを倒してくれてるし。大型モンスターがいないなら、私たちの敵はいないも同然よ」

「で、でも……」

 

 3人の少女達は森の奥にいくエスメダの案に賛成できないらしい。もし大型モンスターに出会ったらどうしよう、道に迷ったらどうしよう、そんな考えが頭をよぎる。

 

「全く臆病ね……いざって時は私がなんとかするから。ね?行ってみない?」

「エスメダちゃんがそこまで言うなら……」

「うん……」

 

 3人の少女達を半ば無理やり説得して、エスメダは森の奥に向かって行った。そこでエスメダは思い知らされる。自然界の恐怖というものを……

 

 

 …Now loading…

 

 

 一行がやってきたのは、主にエリア11と呼ばれる場所。古代林の一番奥深くにあり、謎の大きな骨が神秘的なエリアだ。

 

「ほら言ったじゃない。何もいないでしょ?」

「いやいや、コンガに遭遇した時は、本当に終わったかと思ったよ……」

「あんなの雑魚よ。私1人でも倒せたじゃない」

 

 実際エスメダはコンガに遭遇した瞬間、その首を切り落としたのだ。ちなみに訓練用の片手剣は、そこまで切れ味は良くない。

 

「古代林って言っても大したことないわね。あ〜あ、つまんない……」

 

 エスメダはティナに勝てるだけの手柄を上げられなくて、面白くなさそうだ。本当はコンガを倒しただけでも規格外なのだが、本人は気づいていない。

 と、その時。

 

「ガアァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」

 

 突然モンスターの咆哮が轟いた。これまであった小型のモンスターのものではない。確実に大型モンスターのものであることを、震える大気が証明している。

 

「な、何!?」

「今の鳴き声って、まさか……」

 

 3人の少女達は突然の出来事に体を寄せ合って震えている。

 

「だ、大丈夫よ!私がついてるわ!」

 

 エスメダはそう言って3人を励ますが、その足は震えている。無理もない。いかに優秀なエスメダでも、大型モンスターにあったことはないのだから。

 

 そしてメキメキと木を薙ぎ倒しながら樹海から現れたのは、燃える尻尾を携えた二足歩行の竜。斬竜ディノバルドだった。




少し読みにくかったかもしれません……すいません、実力不足で。
過去編は次の話で終わりです。


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第12話.英雄の一歩 ②

遅れてしまい申し訳ありません……
原作の方を執筆していたら、気づけば二週間以上空いてしまいました……
平にご容赦を!


 ディノバルド。大きな尻尾が特徴の二足歩行の大型モンスター。自ら尻尾を研いで繰り出す一撃は切れ味バツグンで、並みの防具なら真っ二つになるともいわれている。

 

 そのディノバルドがエスメダたちの前に現れた。ディノバルドはエスメダたちを視界に捉えると、縄張りに侵入されたと思って怒りの咆哮をあげる。

 

「ガァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

 今まで聞いたことのない、大地を揺るがすほどの鳴き声。それはジャギィやその長であるドス系のあげる鳴き声とはまるで格が違う。

 初めて感じる本物の死の気配が、エスメダたちを包んだ。

 

「あ……あ……」

「ヒィッ!」

「た、助け……」

 

 エスメダ以外の3人は、ディノバルドから発せられる殺気に当てられて、気を失ってしまったようだ。無理もない。いくらハンターの卵とはいっても、実際はまだ10代の少女なのだ。死の恐怖を体験するには、少しはやすぎた。

 

「ざ、斬竜!?なんでこんなところに……」

 

 だがエスメダは気を失ってはいなかった。その足は震え、目には大粒の涙が溜まっているが、それでも立っている。エスメダは震える手で片手剣を構え、ディノバルドに向き合った。

 

 ディノバルドは自らの縄張りに侵入したエスメダたちが許せないのか、砥石のような歯で自身の尻尾を削り、戦闘態勢に入る。そして一歩を踏み出した。そのまま駆け出し、スピードに乗ってきたところで急ブレーキをかける。その反動で弾き出された尻尾が、寸分狂わずエスメダに向かって振るわれた。

 

 エスメダは防御は無理だと判断し、飛び込むように体を投げ出してかわすが、それでは状況は何も変わらない。すぐに態勢を立て直したディノバルドの次の攻撃が、確実にエスメダを襲うだろう。地面に飛び込んだままのエスメダに、それを回避することは不可能。

 

(ああ……私、ここで死ぬんだ……)

 

 極限まで恐怖に駆られたエスメダは、一周回って冷静になり、自分の死期を悟っていた。ここで自分は終わりなんだ、と。あの理不尽の権化には何をやっても意味はない、と。

 

 ディノバルドがエスメダを踏みつぶそうとその足を振り上げた、まさにその時。

 

 ガキィィィィン!!!

 

 何か硬いもの同士がぶつかり合う音が響く。いつまでたっても衝撃が来ないことに疑問を抱いたエスメダが、ゆっくりと目を開くとそこには、ディノバルドの足を太刀で受け止めているティナがいた。

 

 

 …Now loading…

 

 

「テ、ティナ!?」

 

 自分より遥かにに巨大なディノバルドの足を、その小さな体ひとつで支えているということが、エスメダには信じられない。目の前にいるのは絶対強者。自分のようなちっぽけな存在には、どうしようもない相手のはずなのに。

 

「…………ッ!」

 

 ティナは太刀を少し傾けて巨大な足での踏みつけを受け流す。そして突然のことで驚いているディノバルドに向かって、駆け出していった。

 

 それを見てエスメダはさらに驚く。ディノバルドの一撃をかわして、そのまま撤退するものだと思っていたからだ。

 

(なんで!?なんであの子は斬竜に立ち向かっていくの!?無理よ……勝てるわけない。あんな恐ろしいものに、勝てるわけない!)

 

 エスメダの心はすっかり折られてしまったようだ。目の前で死を実感させられたのだから、しょうがないだろう。それゆえに、ティナの行動が理解不能だった。しかしエスメダのそんな疑問はすぐになくなることになる。

 

 ティナは太刀を下段に構え、その小さな体を生かしてディノバルドの股下に潜り込んだ。そして一閃。右足の付け根、人間ならば大動脈が通っているところを斬りつけた。どうやら血管の位置は人間と似ているらしく、切られたところから血を大量に流して蹌踉めくディノバルド。

 その隙を逃さず、股下から抜けたティナは近場にあった岩を利用して後ろ向きにジャンプ。ディノバルドの上を取り、比較的柔らかい顔を狙って太刀を振るう。その剣速は大人のハンターをも凌駕するもので、一太刀振るったと思えば、二重の斬撃が襲ってくる。

 

「ガァァァァァァァァァ!?!?!?」

 

 ディノバルドは自分より小さな人間に不意を突かれたどころか、無視できないダメージを負わせてきたことに驚く。しかし野生の本能がすぐに驚きの感情を抑え込み、冷静さを取り戻させる。そして自分の敵たる少女に目を向けようとするが、すでにそこには少女の姿はなかった。

 

 ティナはディノバルドの顔下に着地した瞬間、再び飛び出したのだ。地面スレスレに低空移動したティナは、ディノバルドの視界から外れたという訳。そのままディノバルドの背後まで移動し、独特の構えを取る。

 

「狩技【剣舞(ブレイドダンス)】」

 

 それは片手剣の狩技「ブレイドダンス」を太刀で放つというもの。しかし彼女はそれにアレンジを加え、その斬撃数は21になっている。

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」

 

 舞うように太刀を振るうティナの姿は、まるで踊り子の踊りのように見える。少なくとも、エスメダにはそう見えた。そしてその剣捌きに見惚れていた。

 

「ガァァァ……ァァァ……」

 

 ズズゥゥン……という音を立てながらとうとうディノバルドが倒れた。全身から血を流しているその姿を見れば、とても生きているとは思わないだろう。倒したのだ。たった6歳の子供、それも少女が、中級ハンターをも返り討ちにするディノバルドを。

 

「すごい……」

 

 エスメダは残心するティナの姿をただただ見ていた。そして同時に思う。自分もあんな風なハンターになりたい。そしてもっと強くなりたい、と。それは幼い子供が誰しも抱く、憧れだった。

 

 

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 それからは大変だ。いつまでも帰ってこないエスメダたちとティナを探しにきた教師たちが、エリア11で倒れるように眠っている3人と、戦いの疲れを癒していたティナとエスメダ、そして倒れ臥すディノバルドを発見。

 すぐにほかの教師たちが集められ、気絶した3人を速やかに運び、エスメダとティナに状況説明を求めた。そこで明かされた、ティナがディノバルドを倒したという事実に、誰しもが目を見開いて硬直したというのは、言うまでもないだろう。

 

 そのあとエスメダは教師たちに、森の奥まで入ったことをたっぷりと叱られ、そして心配したと頭をくしゃくしゃに撫でられた。教師としていけないところは怒る、でも生徒を心配している気持ちだってある、ということをみんなが再確認できる出来事だった。

 

 ギルドによる厳正な調査の結果、本当にティナがディノバルドを倒したのが認められたということで、ドンドルマ中がてんやわんやの大騒ぎになった。齢6歳の少女が大陸1入ることが難しい学校に入学(正確には編入だが)しただけでなく、斬竜ディノバルドを倒したのだ。当たり前だろう。

 ティナにはその偉業を祝され、今年度での育成学校の卒業、卒業の次の月から正式にハンターになれることが約束された。最年少ハンターの誕生に、ドンドルマ、いや世界中の人々はお祭り騒ぎだ。

 曰く、最強のハンター、英雄の誕生、次世代の希望などともてはやされ、その騒ぎは収まることを知らない。本人からしたら迷惑でしかないのだが。

 

 そして実地訓練の1ヶ月後。ようやく普通の授業に戻れた頃に、エスメダはティナを教室に呼び出した。

 

「あ、あの……何?」

 

 ティナはおどおどした様子だが、構わずにエスメダは言う。

 

「……正直、初めはあんたのことがあまり好きじゃなかった。私より優れているのに、そのビクビクした態度が嫌だった。自分はこんな奴に負けたのかと何度もそう思った」

 

 突然自分のことが嫌いだと言われて、ティナはその体を強張らせる。そして何か言おうとする前に、エスメダが続ける。

 

「でも、 あの戦いを見て、その考えは間違っていると思った。あんなにすごい戦いができるのに、普段は内気なのは、何か理由があるからじゃないかなって。私、自分のことしか考えてなかった。あなたのことを何も知らないくせに、勝手に決めつけて……」

 

 言いながら俯いていくエスメダ。ティナからしたら自分のせいで目の前の子が苦しんでいるのではないかと知り、気が気でなかったが。

 

「だからごめんなさい!今まで冷たく当たってごめんなさい。勝手に思い込んでごめんなさい。本当にごめんなさい!!」

 

 それは、7歳の子供が必死に考えて絞り出した答えだった。ハンターとしての才能に恵まれていても、エスメダとてまだ少女。今はこれで精一杯なのだ。しかしそれは、拙いながらもティナの心にしかと届いた。

 

「あの、その……いいよ。私こそ、遊びに誘ってもらったりしたときに、いつも断ってごめんね……本当は遊びたかったけど、大切なものが居なくなると辛いから……大切なものを作らないようにしてたの……」

 

 エスメダはその言葉で、ティナの過去に何かあったと言うことを察した。そしていいよという言葉を聞いて、満面の笑みを浮かべる。

 

「ティナ……ありがとう。あなたに何か事情があることは分かったわ。でも大丈夫よ。私は強いから!だから、私と友達になってくれる?」

 

 そう言ってエスメダは手を差し出す。

 

「友達……?」

「そう、友達」

 

 初めはポカンとした顔を浮かべて居たティナだったが、恐る恐るといった風にその手を握る。

 

「友達……なる、なるよ……!」

「よーし!そうと決まれば早速行きましょ!今日は私の家でパーティよ!あ、あと、私の方が年上なんだから敬語を使いなさいよね!」

 

 エスメダ・クラスタリア。変なところで子供っぽく、変なところでお姉さん面をしたがるのだった。

 

「う、うん……じゃなかった。分かりました!」

 

 エスメダはティナの手を引きながら教室を出て廊下をかけていく。そんなティナの顔には、もう何ヶ月かぶりに笑顔が浮かんでいた。

 

 

 …Now loading…

 

 

「……とまあ、そんな感じかしらね。ティナは約束通りに次の年に卒業。私もその次の年に卒業して、本格的にハンターとして活動し始めたわ」

「じゃあ何か?ティナが誰に対しても敬語なのは、幼い時からのくせみたいなものなのか?しかもお前が原因の」

 

 今まで黙っていたが、ふと浮かんだ疑問を口にすると、エスメダは白々しく顔を背けた。

 こいつ!確信犯だろ!

 

「それにしても、「EDEN」については、結局分からなかったな」

「そうね……強いて言えば、私に会う前にあった、大切なものがなくなった出来事のことかしら」

「やっぱそれって……」

「母親のこと、でしょうね……」

 

 ティナの壮絶な過去話を思い出し、どんよりとした空気になりそうになった時、

 

「……うぅ……」

「ティナ?」

「ティナ、起きたの?」

 

 ティナが目を覚ましたのだった。




過去話は今回で終わりです。
ティナの過去について詳しく知りたい場合は、「銀雷轟く銀滅龍 第46話.過去の悲しみを超えて」をご覧になってみてください。

ティナもエスメダの会話が少し拙く見えるかもしれませんが、二人ともこの時はまだ子供なので、子供同士の会話と考えてもらえれば、しっくり来るかもしれません。


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第13話.衝撃の真実

今回はほとんど説明回です。読まないと今後の展開に支障が出ると思うので、面倒だとは思いますが、読んでおいてください!


「……ん、ここは……」

 

 ゆっくりと目を開けながらティナが目覚めた。俺たちはティナの声を聞いた後、竜車の中に入ってその様子をうかがっている。

 

「ティナ、大丈夫か?」

「私は……確かルーさんが白衣の男を見つけて、それで……!?」

 

 次第に状況を思い出したのか、ティナの顔が再び青くなって行く。

 それをまずいと思ったエスメダが、ティナに抱きついて背中をさすり始めた。

 

「大丈夫よ、ティナ。大丈夫だから……もうあの男はいないわ。だから安心して……?」

「はぁ……はぁ……はぁ〜。すいません、ご心配をかけました。もう大丈夫です……」

 

 まだ少し顔が青いが、さっきに比べると幾分か顔色が良くなったようだ。俺は安心してため息を漏らす。

 

「大丈夫なようで何よりだ。どうする?このままユクモ村に行くか?きつかったら一旦帰ってもいいぞ?」

 

 俺はそう問いかけるが、ティナは静かに首を横に振った。

 

「いいえ、私一人のために、そんなことをしていただくわけには行きません。それより、気になっているのでしょう?あの白衣の男が言っていた、『EDEN』というものを……」

 

 ティナに負担をかけないよう、あえて避けていた話題だったのに、自らその話を振ってくるとは驚いた。俺とエスメダは驚いて目を見開く。

 

「確かに気になってはいる。しかしいいのか?お前にとって何か因縁があるものなのだろう?」

「そうよ……無理はしないで」

 

 そう言ってみるが、どうやら大丈夫なようだ。ティナの目がそれを物語っている。

 

「大丈夫です。これは皆さんにも知っておいてほしいことですから」

 

 そして一泊息を整え、ティナが語り出した。

 

「『EDEN』というのは、とある研究グループのグループ名のことです。世界中から優秀な研究者達が集められ、厳しい試験に受かったものだけが、『EDEN』に入る資格を得る、そう聞いています」

 

 俺はそれを聞いて疑問に思う。世界中から優秀な研究者を集めるなんて、そう簡単にできることじゃない。それこそ各国の力が必要なはずだ。でもあの白衣の男が行なっていたのは、どう見ても非合法な実験だった。各国がそんなことを容認するだろうか?

 

 俺の疑問に答えるように、ティナが口を開いた。

 

「最初は『EDEN』も普通の研究機関でした。しかし、途中から国家の監視をくぐりぬけ、非合法な実験を繰り返すようになってしまったのです。全ての歯車が狂ったのは、私の母さま、『ステラ・ルフール』が研究所の知るところとなった時からでした……」

 

 そこまでいうと、ティナが一瞬だけ悲痛な顔を浮かべた。俺たちは心配するようにティナに視線を送るが、手でそれを制したティナは、さらに続ける。

 

「私の母さま『ステラ・ルフール』は、一種の特殊体質でした。その体質とは、『龍言語理解』『身体への属性宿し』の二つ。前者は言うまでもなく、龍の言葉を理解できると言うもの。そしてもう一つは、自身の体に、モンスターの扱う属性を宿らせることができるというものです」

 

 俺はそれを聞いて驚愕する。なぜなら、モンスターが使う属性というのは、人間が扱うには強大極まるもの。自然の力を行使する属性エネルギーを人間が使えば、その力に耐えきれず、たちまちその体は爆発四散するだろう。だから人間達は武器に属性を宿して使っているのだ。

 

「私の母さまはある種の先祖帰りでした。母さまの祖先には竜人、獣人、人間などのさまざまな種族がいたらしく、それが一気に先祖帰りした結果、母さまのような特殊体質の人間が誕生したのです。属性を宿せるのは、さまざまな種族の力をほぼ完全に扱えることによる、身体の強化が関係しているのだろう、と研究者達は言っていました」

 

 俺とエスメダは、今日何度目になるかわからない驚愕に顔を歪める。一体いくつもの偶然が重なれば、『ステラ・ルフール』なる人物が生まれるのか。数字では表せられないような奇跡の確率によって誕生したと言っても過言ではないだろう。

 そしてそんな素材(・・)を研究者達が見逃すはずがない。

 

「『EDEN』の研究者たちは、母さまを発見する少し前から、生物実験に興味を持っていたそうです。彼らの目標は、モンスターに怯えなくてもいい世界を作ること。それが暴走した結果、生物配合、生物合成、果ては人体実験のような、非合法な実験を繰り返すことになってしまったのでしょう。そしてお二人には言っているから知ってると思いますが、『覇炎帝』と呼ばれた最強のテオ・テスカトルである父さまと、奇跡の体現である母さまとの間に生まれたのが私、『ティナ・ルフール』というわけです。『身体への属性宿し』という特殊体質だった母さまがいたからこそ、龍と人の交配などという禁忌を犯すことが出来たのです。身体へ属性を宿せるということは、それだけ体が頑丈だということ。それが、龍の遺伝子を耐える力となったのです……」

 

 ティナはそこまで一気に捲し上げると、呼吸を整えるように少し息を吐いた。そして俺とエスメダの目を交互に見て、しっかりとした口調で再び続ける。

 

「どうやって父さまを捕まえたのかは、わたしには分かりません。『覇炎帝』と呼ばれた父さまの力は、おそらく全力の私に一歩も引かないぐらいはあるでしょう。なので普通の方法では捕獲は無理だと思います。研究者達が言っていた、古代の遺産とやらが関係しているのでしょうが……すいません、そこは分からないとしか言えません。ともかく、『EDEN』は私と母さまが脱走するために力を振り絞って暴れた父さまによって、跡形もなく破壊されたはずです。なのになぜ、今になって『EDEN』の名が残っているのか……」

 

 ティナは嫌なことでも思い出したのか、ふらりとふらつく。それをエスメダがしっかりと受け止め、涙を浮かべながらティナの頭を撫でた。

 

「ありがとう……辛いのにちゃんと話してくれて……」

「エスメダちゃん……」

 

 目覚めたばかりのティナには負担が大きかったのだろう。それを察したエスメダは、ティナを再び毛布の上に寝かせる。

 俺たちはティナに感謝の言葉の述べ、安静にしているように言ってから、竜車を一旦降りる。そして近くの岩に腰掛けて話を整理した。

 

「それにしても、『EDEN』……話を聞く限りでは研究所は無くなったのだろう。だがもしかしたら、その日出かけてた研究員がいたのかもしれない。そいつらが『EDEN』を復活させていたとしたら……」

「筋が通るってわけね」

「ああ、そして今はモンスターに別のモンスターの力を与える実験をしている。これをそうだな……仮に『強制遺伝』と名付けようか。あの強制遺伝をされたイャンクックは、どこか白衣の男に従ってる風だった。そしてかつての『EDEN』の目標、それを合わせて考えると……」

 

 そこまで言うと、流石にエスメダも気づいたのか、ハッとした顔をした。

 

「まさか、強化したモンスター達を使って、強制遺伝をしてないモンスター達を掃討しようってこと!?」

「そうなるだろう。そして、全てのモンスターを殺した後は、強制遺伝をしたモンスター達も殺されるだろうな……」

「「…………」」

 

 最悪のシナリオがいとも簡単に想像できてしまい、俺たちは思わず言葉を詰まらせる。俺たちは暫く無言で考えた後、結論を出した。

 

「とにかく、俺たちの当面の目的は、『EDEN』の計画の阻止って事でいいんじゃないか?」

「そうね……ギルドマスターへの報告はどうする?やっぱり一旦戻る?」

「いや、俺たちは非公式とはいえ任務の途中だ。少なくとも、ユクモ村に行ってからでも遅くはないだろう。それに、もしかしたらユクモ村でも『EDEN』の影響が出ているかもしれないしな」

「分かったわ。今は何の情報もないから、調査を優先させるのも手ね」

 

 そこまでいうと、エスメダは座っていた岩から立ち上がり、竜車の方へ歩いて行く。

 

「じゃあ私は出発の準備をしてくるわね。それと、ティナの様子も見てあげないと」

「ああ、頼む」

 

 エスメダが去った後、俺はその場でさらに考えごとを続ける。

 

(『EDEN』という存在のことは分かった。だが、そうなると気になるのはギルドマスターの言葉だ。ギルドマスターは、どこか『EDEN』を知っているようだった。なのに俺たちにそれを伝えようとしない。何故だ?『EDEN』が昔、国家公認の研究グループだったのなら、その名前ぐらいは知ってるはず。そしてそれが犯罪に手を染めていたことも。それを隠す理由がどこにある?もしかして上とやらに関係しているのか?いや、それよりも……)

 

 そんな風に思考を巡らせていると、エスメダから声がかかった。

 

「ルー!準備が整ったわよー。ティナも大丈夫みたいだから、出発しましょう!」

「分かった!今そっちに行く」

 

 俺は腰掛けていた岩から立ち上がり、パンパンと砂を払う。そして竜車に向かって歩き出した。

『EDEN』の目的がなんであれ、世界に害なす存在というのには間違いないだろう。ならば俺の敵だ。待ってろよ『EDEN』のメンバーども。俺を敵に回したらどうなるか、思い知らせてやるぜ……!

 

 俺が乗り込むと竜車がゆっくりと進みだす。目的地のユクモ村までは、あと少しだ。



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第14話.ユクモ村を観光

「「「あ〜、染みる〜〜〜」」」

 

 足湯って最高だと思う。温泉に入って体全体をあっためるのもいいけど、足湯には、それとは別の気持ち良さがあるんだよなぁ。

 

 そんなわけでユクモ村に到着した俺たちは、村長に挨拶しに行ったのだが、今はいないとのことなので、こうして名物である足湯に浸かっているというわけだ。うん、それにしても気持ちいい。

 

「そういえばティナ。この村、なんかハンター多くないか?」

 

 これはユクモ村に入った時から思っていた疑問。一つの村にしてはハンターの数が異常に多いのだ。ドンドルマほどではないが、ココット村の軽く5倍はいるのではないだろうか?

 

「全く、これだから……」

 

 ティナがやれやれといった風に首を振る。

 

「いいですか?このユクモ村の近くには何がありますか?」

「何って、なんかあったか?…………あ、まさか」

「そう、『庭園』がありますね。あなたの縄張りの」

 

 そういえばそうだった。俺の庭園があるのは、もともと『渓流』と呼ばれていた場所にあるのだ。だが、それがハンターの数と何か関係あるのだろうか?庭園内の変異種たちはドスジャギィ、いや、今は将狗龍ドゥクトル・オーディアルか。ともかくあいつがちゃんと統率しているはずだ。外に出ることは無いと思うのだが……

 

「はぁ〜、まだ分かんないの?庭園ができたことで、ユクモ村周辺の生態系が変わったのは知ってるわよね?」

「ああ、それについては申し訳ないと思ってるが」

「そこじゃ無い!生態系が変わったことで、この近辺には強いモンスターが集まるようになってしまったのよ」

「え?」

 

 俺の背中をツーと冷や汗が流れる。

 

「中にはごく稀にですが超越種も現れるそうで、このままではまずいと思ったギルドが、ユクモ村にお触れを出したのです。ユクモ村周辺の強モンスターを倒せば、報酬を割り増しにする、と」

「だからハンターが集まってくるってわけね。今では軽く砦みたいになって……昔はのどかな村だったのに、誰かさんのせいで、ねぇ?」

「そうですね。すっかり第2のハンターの街なんて呼ばれて、随分騒がしくなったものです」

 

 ティナとエスメダのジト目が俺に突き刺さる。俺は顔を引きつらせながら、スッと目線を逸らした。

 

ジー。スッ。ジーー。スッ。ジーーー!タラタラ。

 

「だぁぁ!!悪かったよ!でもしょうがないだろ?俺だって悪気があったわけじゃ無いんだから!」

「うーん。まあそうなのよねぇ。だからなんともいえないというか」

 

 結局そのままこの話は終わった。あとで聞いたことだが、強いモンスターが集まるのはユクモ村から南にある大森林とその周辺らしい。なんでも魔境とか言われてるんだとか。今度行ってみよう。多分調査で行くことになるんだろうが。

 

 俺はおもむろに腰を上げてこう言う。

 

「よし、今日は特にすることもないし、各々ユクモ村を観光するってことにしないか?」

「賛成〜。私行きたいところがあるのよね」

「私も特に異論はありません」

「じゃあ一時解散!集合は夕方の6時、集会場で!」

「「了解!!」」

 

 こうして俺たちはそれぞれこの村(もはや街)を観光することにした。

 

 

 …Now loading…

 

 

 観光するとは言ったものの、ユクモ村に何があるのかさっぱりわからんな……とりあえず街をぶらぶらしてみるか。

 

 ユクモ村はモンハン3に出てくる村だったな。ゲームの中では狭いイメージだったのだが、とんでもない。村というには大きすぎるその総面積は、ドンドルマの軽く半分はあるだろう。さらに村の南側には大きな砦と城壁が築かれており、ハンターが常駐しているようだ。なんでも魔境からくるモンスターへの対策なんだとか。

 

 表通りを何気なしに歩いていると、俺はあるものを見つけた。

 これこれ!ユクモ村といったらやっぱこれだろ!

「すいませーん。これ一つください」

「あいよ。15Zね」

 受け取ったそれは温泉卵。ここでしか買えない特産品にもなっているものだ。

 では早速……これは!味の濃い黄身が美味さを引き出し、とろけるような食感が舌を楽しませる……うまい!!これは相当美味いぞ!

 

 俺は追加でもう二つ温泉卵を買い、余ったお金でタンジアチップスを買って店を後にした。

 

 さて、次はどこに行くか……ん?あの人だかりはなんだ?なになに、『英雄が立ち寄った店!』って、ティナのやつ顔を隠さずに買い物したのか……本人はいないようだが、騒ぎになること間違いなしだな。現にもう騒がしくなって来てるし。あの人だかりに飛び込むのは遠慮したい。別の場所に行こう。

 

 タンジアチップスを食べながらさらに歩いて行くと、物々しい建物が見えて来た。

 あれがユクモ村の砦、通称『ユクモ砦』か。名前そのまんまだな……魔境からくるモンスターたちのために作られたそうだが、魔境には興味があるし、ちょっと行ってみるか。

 

 

 …Now loading…

 

 

 ほう、これはなかなか……

 砦の中ではハンターたちがかなりの人数待機していた。砦の壁からは大砲が打てるようになっており、屋上には各種バリスタも設置されている。ドンドルマの迎撃拠点を彷彿とさせるな。

 

「おいおい!ここはガキが来ていい場所じゃねーぞ!帰った帰った!」

 

 砦内を見物していると、いきなりハンター風の男に声をかけられた。俺はため息をつきながら自身のギルドカードを見せる。

 

「失礼な。俺はれっきとしたハンターだぞ」

「アァン?ハンターになったばかりのひよっこが粋がるな……は?ハンターランク……102だと!?」

 

 砦内が一斉にざわめいた。言い忘れてたが、俺のハンターランクは102になっている。理由はほぼ超特殊の荒鉤爪を倒したことと、今回の任務の件でギルドマスターが顔を効かせてくれたことだ。ちなみにハンターランクが100を超えている人間は、俺やティナ、エスメダをのぞいたら15人しかいないらしい。

 

「ハンターランク100越えなんて、伝説クラスじゃないか!」

「それ本物なんだろうな?偽物の可能性も……」

「でもここにギルドの証があるぜ。本物だろ……」

「100超えにこんな子供いたか?」

 

 砦中のハンターたちがひそひそと話しながら俺の方を見てくる。

 なんだかめんどくさいことになってきたな……早いとこ、ここから出るのが吉か。

 そう思ってこっそり脱出しようとしたら、

 

「ルーさん探しましたよ!村長達が帰ってきたそうです。話を聞きに行きましょう!」

 

 ティナが駆け込んできた。しかも顔を隠さずに。それはもうフルオープンで。

 ああ……終わった。

 

「ま、ま、ま、まさか……英雄ティナ・ルフール!?!?」

「なに!?あの英雄がなんでこんなところに!」

「ああ、ティナ様ー!!こっち向いてー!」

「ありがたや、ありがたや……」

 

 ほら言わんこっちゃない。人が雪崩のように迫ってくるわ。俺はスーッと壁際まで移動する。

 

「ちょ、ちょっと皆さん落ち着いて下さい!そこ拝まないで!ストップ、ストップです!!ル、ルーさん!助けて!助けて下さいーー!!」

 

 慌てるティナってのも可愛いなー(棒)。俺はティナの助けを求める声を完全にスルーし、知らぬ存ぜぬの一点を貫いた。

 

 

 …Now loading…

 

 

「ルーさん、ひどいです……」

「仕方ねーだろ。俺にどうしろってんだ?これに懲りて今度からは顔を隠すようにするんだな」

「うう、ドンドルマではギルドマスターのおかげであのような事がなくなったので、すっかり忘れてました……」

 

 15分ほどハンター達に囲まれたティナはなんとか包囲網から脱出し、幾分か疲れた様子で大通りを歩いている。もちろん大きめのパーカーをかぶってだ。

 

 しばらく歩くと、ギルドユクモ支部が見えてきた。俺はギルドの入り口にいるエスメダに声をかける。

 

「おーい、エスメダー。待ったか?」

「いや、私も今来たところよ。それよりどうしたの?ティナがえらく疲れてるようだけど?」

「あはは、なんでもありません……」

 

 乾いた笑みでごまかそうとするティナだが、長年の付き合いであるエスメダはどんなことがあったのかすぐ理解したようだ。納得したように苦笑いを浮かべている。

 

「それで、村長はどこにいるんだ?」

「あー、それがね……」

 

 エスメダが何か言おうとすると、ギルがから女性が出てきた。ギルドの制服を着ているから、おそらくギルド関係者なんだろう。

 

「申し訳ありません。村長は別件ですぐに出かけてしまいました。代わりに村長補佐の私、エリーナ・エルチェリアが話を聞きます」

「そうなのか。村長って意外と大変なんだな」

「ええ、魔境のせいでこの頃さらに忙しいご様子。私は心配です……」

 

 エリーナの言葉に若干顔を引きつらせながら、俺は今回の依頼内容を話す。ティナとエスメダがジト目だったのは、言うまでもないだろう。

 

「そうですか、そのような危険なモンスターが……分かりました。貴方達3人には、魔境の探索権利を渡しておきます」

 

 そう言ってエリーナはポケットからカードを取り出した。

 

「魔境は普通の狩場とは違う特殊な環境です。なので立ち入りに規制をかけています。このカードがあれば大丈夫ですので、どうかお持ちください」

 

 俺達はカードを受け取って感謝の言葉を述べる。エリーナは今の話をギルドで話し合うとのことなので、ここで別れることになった。

 

「さて、報告も終わったしこれからどうする?観光したいならそうするが」

「私は行きたいところに行けたからもう大丈夫よ」

「私ももういいです……」

 

 案外ティナのダメージは深刻なようだ。ひさびさに囲まれて対処の仕方を忘れてしまったのだろう。

 

「なら探索に行くか。早いとこ魔境とやらの確認をしといたほうがいいと思うしな」

「でも魔境だけで平気かしら?ほかの狩場も見ておいたほうがいいんじゃない?」

「確かにそうですが、魔境はかなり広いそうです。なので今日は3人で魔境の探索をして、明日からは別々の場所に行くってのでどうでしょう?」

 

 ティナの案に反対するものはいなかった。どうやら決まったようだ。

 

「よし、なら今から出発しよう。俺たちの足なら少し遠いらしい魔境もすぐだろ」

「そうね」

「行きましょう!」

 

 こうして俺たちは魔境に赴くことにした。何も起こらなければいいんだが……




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第15話.異常な現象

うーん、なかなか感想やお気に入り登録が伸びませんね……努力はしているんですが、まだまだ実力不足ということでしょう。皆さんの納得のいく作品にしていきたいですね。


 魔境までは竜車で3日かかるらしい。だが俺たちが全力で走った結果、たった1時間でついてしまった。まあ戦闘機並みの速さで走っていたら当然っちゃ当然か。

 え?それならなんでユクモ村までは竜車で来たのかって?そりゃあ常識を守るためですよ。俺にだって多少の常識はある。あるはずだ。あると思う……

 

「ルーさん、何一人でへこたれてるんですか?早く調査を開始しましょう」

 

 こんな時でもティナは厳しい。いや、こいつが常識とか何言ってんの?とか思っているのかもしれない。いやいや、今はこんなことを考えている場合じゃないな。

 

 魔境は大部分が森林となっており、その森の中に岩山や湖があるという、庭園の樹海に似たような構造をしている。そして何より広い。大陸の南はほとんど魔境といってもいいほどだ。

 

「それでどうする?とりあえず別れて捜索するのは当然として、集合場所は?」

「そうねぇ。下手に変なところに決めるより、いっそここが集合場所でいいんじゃない?」

「それでいいと思います。それと、何か緊急事態があったらこれを使ってください」

 

 ティナが示したのは彼女の首にかけてあるネックレス。そこには俺がエスメダからもらったブレスレットと同じ素材が使われている。

 

「これは一種の連絡手段になるそうです。これに力を込めれば、これを持っているほかの人に自分の居場所を伝えることができます」

 

 おお!なかなか便利な代物だな。この世界は携帯とかがないから、こういうのはありがたい。ちなみにエスメダのは指輪型だ。

 

「了解だ。それでは捜索開始!」

 

 

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 役割分担としては、俺がそのまま南へ、ティナが東側、エスメダが西側だ。何かあったらすぐに知らせが来るし、このメンバーならどんなに離れていても、魔境内なら数秒で駆けつけられるだろう。

 

 それにしても、マジで庭園の樹海とそっくりだな……木の高さは軽く30メートルはあるだろうし、庭園でも見たことないような植物が群生している。ここも外界とは環境が全く違うからこういうことになったのだろう。それに……

 

「ガァァァァァァァァ!!!!」

「さっきからしつけえな!」

 

 木の陰から強襲してきたケチャワチャの攻撃を、ジャンプする事でかわす。

 さて、どう仕留めるか……そうだ!このブーツの機能テストをしてみるか。

 俺は銀色のブーツに龍脈を流し始める。するとブーツの底が変形し、ロケットの噴出口のようになった。さらに龍脈を流すと噴出口から赫い龍気が吹き出され、空中で俺の体が落ちずに浮かぶ。そのままうまく角度を調整して旋回飛行のようにケチャワチャの周りを飛び、奴が気を抜いたところで頭に双剣で乱舞をお見舞いした。

 

「ガァァ……」

 

 頭に致命傷を負ったことでケチャワチャは地面に倒れ伏した。

 よし、成功だ!このブーツはバルファルクの特性を使えるように、改良をした装備なのだ。うまく使いこなせれば、ワイヤーなし立体起動装置のような動きができるだろう。

 

 魔境に入ってからというもの、モンスターに襲われる回数が尋常じゃない。まだ30分ほどなのに、もう4体のモンスターに襲われている。確かに立ち入りを規制してるってのにも頷けるぜ……

 

「ガァァァ……!」

「ゴアァァ……!」

「グルル……!」

 

 うーわ。まだまだ聞こえるぜ、モンスターの雄叫びが。このまま襲われ続けるのもめんどくさいしな……仕方ない。あまりやりたくはなかったが、やるしかないな。

 

 俺は擬人化を解き、本来の姿『銀滅龍ジェノ・オラージュ』に戻る。そして、

 

「ッッッッッグゥオォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーー!!!!!」

 

 特大の咆哮を響かせる。すると俺からモンスター達が遠ざかっていくのが、気配で分かった。今のは咆哮を聞かせることで、こっちには格上の存在がいると周りに知らしめたのだ。

 

 俺は再び擬人化し、人間の姿になる。

 さて、探索を再開しますかね。

 

 

 …Now loading…

 

 

 あれからさらに1時間。だいぶ奥まで来たと思うが、特に異常は感じられないな。確かに一体一体の強さは外より大きいが、言ってしまえばそれだけだ。変なところはない。魔境はかなり怪しいと思ってたんだがな……思い違いか?

 

「うわぁぁぁ!!!!!」

 

 ッ!?今のは悲鳴か!くそっ、こんな奥に人間がいるとは!!

 悲鳴が上がった方へ行ってみると、腰を抜かしたのかへたり込んでいる少年と、今まさに少年に飛びかかろうとしているナルガクルガがいた。

 

 しかもこのナルガクルガがいろいろおかしい。原種とも亜種とも希少種とも違う、青白い体毛で覆われている。鋭利な刃翼には氷が纏わりつき、さらに鋭さを増している。口からは冷気が漏れ出ており、周囲の草花が凍りつく。そして真っ赤に染まった目。

 

 こいつ、強制遺伝されてやがる!!しかもこれはなんだ……尋常じゃない気配が伝わって来るぞ!?

 もし、もしもだ。あのナルガクルガの元が『極み駆けるナルガクルガ』で、遺伝したのが至天ディスフィロアの氷属性とかだったら、こんなのが出来るかもしれない……ッ!今はそれよりも!

 

「おいお前!ここは俺がなんとかするから、早く逃げろ!!」

 

 俺は腰が抜けている少年にそう叫ぶ。少年はその声でようやく意識を取り戻したのか、慌てて岩の後ろに回り込んだ。

 

 よし、ひとまずは安心だな。さてあいつをどうす……なっ!?

 

 俺の目の前にはすでにナルガクルガの尻尾が迫っていた。あまりのスピードに対応できず、モロに食らってしまう。そのまま吹き飛ばされ、大木に叩きつけられた。

 

 ぐぁぁぁ!!!な、なんつースピード……雷速程度はあるんじゃないか……?って、うおお!

 

 さらに尾棘の追撃が迫っていたので、大車輪の要領で横に避ける。

 あっぶねぇ!!くそっ、こいつは俺一人じゃ手に負えん!ティナ、エスメダ、早く来てくれ!

 俺はそう思いながらブレスレットに力を込める。ブレスレットが淡く点滅し、俺の居場所を二人に伝えたことが分かった。

 

 あの少年ハンターがいる限り、俺は擬人化を解くことができない。要するにこの制限された力であの化け物を倒さなければならないってことだ。……はっ!上等だよ。やったやろーじゃねーか!!

 

 双剣を抜き、逆手に構える。ナルガクルガは一瞬こちらの様子を伺った後、突然消えた。実際には消えたように見えるだけで、高速で動いてるだけなのだが、俺からしても消えたと言っても過言ではないスピードだ。

 

 横から突如現れたナルガクルガに対して、刃翼での一撃をジャンプで回避。垂直に飛び上がった俺は、ブーツを起動させて90度横に移動してから、龍気を大きく噴射して加速。コの字を描くように、空中からナルガクルガに斬りかかった。しかし俺の一撃は、奴の刃翼に止められる。しかもよく見れば、刀身が徐々に凍りついているようだ。それを見て慌ててバックジャンプで距離を取り、体制を立て直した。

 

 こいつ、あの三次元攻撃にしっかり対応して来やがった……動体視力、反応速度、共にかなり高いな。やはり強い。あの終龍を除いたら、一番強いかもしれない。やはり本来の姿で戦うしか……!

 

「はぁぁ!!」

 

 その瞬間炎の斬撃が3発飛来し、ナルガクルガに殺到した。死角からの攻撃に反応が遅れ、ナルガクルガを怯ませることに成功する。

 

「ティナ!エスメダ!」

「大丈夫ですか、ルーさん!」

「なにやらやばげなやつね……ここは連携していきましょう!」

 

 ようやく2人が駆けつけてくれた。エスメダの言葉に目で答え、ナルガクルガを囲むように武器を構える。

 最初に動いたのはやはりティナ。パーティ1の素早さを生かし、ナルガクルガを翻弄する。そして炎が渦巻く太刀で一度切られれば、ナルガクルガの氷が見る見る溶けていく。

 

 しかしこのナルガクルガはそんなに甘くない。すぐさま刃翼の氷を貼り直し、ティナの攻撃を捌き始めた。その動体視力はティナの動きすら捉えられるようだ。

 

 だが俺たちはチーム。一人で戦っているわけではない。俺はティナに視線で合図を送る。すぐにその意図を察したティナは、ナルガクルガの刃翼の一撃を避けるのではなく、受け止めた。受け止めたことによりナルガクルガの動きが止まる。

 その隙を逃す俺ではない。即座にナルガクルガに接近し、鬼神化して乱舞を繰り出す。雷と氷を纏った双剣が目にも止まらぬ速さで撃ち出され、黄と青のラインをいくつも描く。

 

 狙いは後ろ足ただ一点。5秒の間に500もの斬撃を繰り出し、ナルガクルガの後ろ足は千切れかけている。流石のナルガクルガもバランスを取れなくなったのか、よろけて転んだ。

 

「今だ、エスメダ!!」

「了解よ!」

 

 木の上で待機していたエスメダが飛び降り、落下のスピードと溜め斬りのパワーが合わさった重い一撃が、ナルガクルガの脳天に突き刺さる。あまりの衝撃にその頭がひしゃげ、放射状に地面に亀裂が入り、ベコン!と地面が沈んだ。

 

「グガ……グガァァァ!!!」

 

 最後の抵抗とばかりに尻尾の青い棘を飛ばしてくるが、ティナが展開する炎にさほどが焼き尽くされ、力なく地面に落ちていく。残りは俺が捌いておいた。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……なんとか、倒せたな」

 

 その場に座り込んでそう言った。秒間100発の斬撃は、この体ではなかなかにきついのだ。改めてティナのデタラメさがよく分かったぜ……

 

「はい、なかなか手強い相手でした」

「私たちが3人がかりじゃないと倒せないなんて、よっぽどの相手よ?」

 

 そう言う2人はあんまり息が上がってないけどな。まあ最初から戦っていた俺が一番疲れているのは、当たり前か。

 そんな感じで少し休憩している時だった。

 

「あ、あの!」

 

 さっきの少年が声をかけてきたのだ。




作者のやる気に直結するので、感想、お気に入り登録お願いします!!
ちなみに、次回から新キャラが加わります。


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第16話.銀滅龍、○○ができる

いやー、GWは投稿頻度が上がっていいですね!時間があるのは素晴らしい。(←それでいいのか受験生)


「なんだ?俺たちになんか用か?」

 

 その少年は、よく見てみるととてもいい容姿をしている。煌めくような金髪に澄んだ青い瞳。身長は165cmほどと若干小柄だが、おそらく15歳ぐらいだと思うので妥当な身長だ。リオレウス亜種の防具で身を包み、あれは……なんだろう?見たことがない片手剣を装備している。刀身の淵が金色で、なんとも美しい。

 

「は、はいっス!さっきの貴方方の戦いを見て感動したっス!特にそこの方!」

 

 そう言って少年が指差したのは俺だった。

 

「あの双剣捌きには惚れ惚れしたっス。そこでお願いがあるっス。自分を、弟子にしてほしいっス!」

 

 え?弟子?いやいやいや、少し落ち着こうか。

 

「待て待て、俺はお前のことを何も知らない。それなのにいきなり弟子って……流石に無理があるだろ?」

「あっ、すいませんっス。自分はアーサー・ペンドラゴン。ユクモ村でハンターをやってる者っス!」

「私はティナです」

「エスメダよ、よろしく。で、あんたが言ってるこいつは……」

「アーサー・ペンドラゴンだと!?」

 

 2人が自己紹介しているようだが、俺はそれどころではなかった。

 だってアーサー・ペンドラゴンっていえば、あの有名なアーサー伝説の王と同じ名前なんだぞ!?偶然の一致にしては出来すぎじゃないか……全く、モンハン世界すげえ。

 

「どうしたんですか?ルーさん?」

「あ、ああ、悪い。俺の勘違いだ、気にしないでくれ。それで、俺はルー・アルジャン。この頃ハンターになったばかりの、新人ハンターだ」

 

 俺のことを聞いたアーサーの顔が驚愕に染まった。

 

「いやいや、新人ハンターって嘘っスよね?新人であんな動きができるわけが……」

「あー、ハンターになったのは最近だけど、それ以前から体を鍛えてたんだ。だからだろう」

「そう言うわけっスか」

 

 自己紹介を済ませたあと、俺はアーサーに少し待ってほしいと行って、ティナとエスメダをアーサーから離れた場所に呼んだ。

 

「で、どうする?」

「どうもこうもないでしょ!断りなさい。ただのハンターならともかく、モンスターであるあんたが無責任なことをしてはいけないわ」

「そうですね。それにもし何かの拍子で正体がバレてしまうと、いろいろ面倒でしょうし」

「だよなぁ……」

 

 俺はアーサーの元まで戻っていき、結論を述べる。

 

「悪いなアーサー。弟子にするのは無理だ」

「そこをなんとか!自分、強い人に稽古をつけて貰いたいんっスよ!」

「ならほかの人でもいいだろう?ユクモ村にはそこそこ強いハンターがいるだろ」

「駄目っス。なんせユクモ村で一番強いのは自分なんで……だからお願いします!」

 

 ありゃまー……そう来たか。だが俺がモンスターである以上、譲れないものがある。

 

「そう言われてもなぁ……こっちにもいろいろあると言うか」

「邪魔になるようなことはしないっス!なんなら普段は荷物持ちでもいいっス!」

「いや、そう言うわけじゃ……」

「お願いします!師匠!」

「師匠!?」

 

 どうやらこいつの思いはかなり本気のようだ。俺は助けを求めるようにティナとエスメダに視線を送る。

 

「仕方ないですね……いいですか、アーサー君。今から貴方にこの人の秘密を見せます。これは他言無用でお願いしますね?そして、その秘密を知った後でもなお弟子になりたいと言うのなら、その時は認めましょう」

「分かったっス。自分、誰にも言わないと約束するっス!」

 

 おい、ティナ?それってつまり……

 

「ルーさん、擬人化解除です」

 

 そうティナが耳元で言ってきた

 やっぱかぁ!確かに本来の姿を見せるのが一番手っ取り早いが……いいのか?これがきっかけで俺が銀滅龍だとみんなにバレるのでは……でもそうでもしないと、こいつ諦めそうにないし。えぇい!ままよ!

 

 俺は擬人化を解いた。俺の体が光に包まれ、落雷の如き音を響かせながら光が弾ける。現れたのは、全長20mもの巨体。『銀滅龍ジェノ・オラージュ』だ。

 

「…………え?」

「どうですかアーサー君。これがルー・アルジャンの真の姿です。名前は、聞いたことがあるでしょう?『銀滅龍ジェノ・オラージュ』。彼はモンスターなのですよ」

(そう言うこった。これで分かっただろ?お前を弟子に取ることはできない。あ、絶対他言無用だからな?)

 

 アーサーは暫く固まった後、ゆっくりと顔を伏せた。そして小刻みに肩が震え始める。

 恐怖を感じたのだろう。無理もない。俺の姿を見て平然としてる人間なんて、ティナとエスメダぐらいだろうに。さて、そろそろ擬人化して……

 

「す、凄い!!」

「え?」「ん?」(は?)

 

 アーサーは突然顔を上げたかと思うと、目を輝かせてこちらを見て来た。

 

「モンスターが人に化けるなんて、聞いたことがありません!おっと、ないっス!それにあの銀滅龍!伝説とまで謳われる銀滅龍を、こんな間近で見られるなんて、滅多にないっスよ!凄い、凄すぎるっス!」

(は、はぁ……?)

「これは大発見っス!やっぱり、家を出てきて正解でした……!」

 

 ん?最後の方は声が小さくて聞き取れなかったな。しかし困ったぞ……俺がモンスターだと知ったら、流石に諦めるだろうと思ってたのに、逆に珍しがられるとは。

 

「あの、アーサー?こいつはモンスターなのよ?なのにまだ弟子になりたいと思ってる?」

 

 エスメダが恐る恐るそう聞いてみると、

 

「当たり前っスよ!擬人化するモンスターなんて聞いたことがないし、モンスターなのにあの素晴らしい双剣捌き!これは相当な幸運に恵まれたっス。このチャンスを逃すわけにはいかないっス!なのでお願いっス!弟子にしてください!」

 

 だそうです。

 どうやらこのアーサーという少年。珍しいものが大好きらしい。あの後ティナの龍化も見せてみたのだが、大方同じような反応だった。

 

「しかしなぁ。俺らとお前とじゃ、実力の差がありすぎるしなぁ」

「自分も少しは戦えるっスよ!師匠はともかく、そこの女性方には負けないと自負しているっス」

「へぇ、そこの女性方ねぇ……」

 

 どうやらアーサーはティナとエスメダ顔を知らないようだ。さっきの戦いでも2人は目だったことはしてないしな。ユクモ村にいて彼女らのことを知らないってのは珍しいが、なんにせよちょうどいい。この際実力の差を分かってもらおうか。

 

「よし。じゃあエスメダと戦って、一撃でも彼女に入れられたら弟子にしてやってもいいぞ」

「たった一撃っスか?流石に簡単すぎじゃあ……それにエスメダさんは大剣っスよ?余計に不利では?」

「まあまあ。とりあえずやってみろ」

 

 アーサーは渋々といった風に片手剣を引き抜く。エスメダも大剣を抜いて、準備は整ったようだ。

 

「では、始め!」

 

 開始の合図と共にアーサーが駆け出した。そのスピードはなかなかのもので、確かにそこらのハンターより相当速いだろう。アーサーはまず盾を突き出してシールドバッシュを繰り出す。エスメダは大剣の腹で受け止めるが、やはり大剣というのは機動力が落ちるもの。アーサーが繰り出していた剣での二撃目が、エスメダの脇腹に吸い込ませる。

 しかし、そこはエスメダ、抜かりはない。盾を防いだまま大剣を地面に突き刺し、柄を使って体を回転させた。

 

「な!?」

 

 アーサーが繰り出した一撃は空を切って終わり、逆にエスメダの蹴りがアーサーの背中に入る。よろめくアーサーが再び前を振り向くとそこには、

 

「勝負ありね」

 

 アーサーの首に大剣を突き出しているエスメダがいた。

 

「つ、強い……」

 

 アーサーは愕然とした表情を浮かべている。さっきのエスメダの行動は、一見簡単そうに思えるが、剣を突き刺すタイミング、体を回転させる力加減など、様々なことが精密に重なって始めて成功するのだ。アーサーはそれを見抜いたのだろう。

 

「まあ、こういうわけだ。あ、落ち込むことはないぞ?なんせエスメダは『五十勇士』筆頭だし、ティナなんか英雄だからな。聞いたことはあるだろ?」

「ま、まさか、本当にあのティナ・ルフールとエスメダ・クラスタリアなんスか!?」

「ええ、まあ」

「不本意ながらね」

「そりゃ勝てないっスよ……どちらも伝説の方じゃないっスか」

 

 アーサーには悪いが、やはり実力差は大きいだろう。戦闘において実力の離れている人間同士が一緒に戦っても、うまく連携できないなどの障害が発生するからな。やはりここは諦めて……

 

「待って。確かに彼の実力は足りないわ。今はね」

 

 エスメダが含みのある言い方で言ったので、思わずそちらに顔を向ける。

 

「でも彼には才能があるように感じたわ。あの一撃。シールドバッシュから剣へのコンボの動きに無駄が少なかった。磨けばまだまだ伸びるはずよ」

 

 それを聞いてアーサーの顔が見る見る歓喜の表情に染まっていく。

 なるほど、確かにあの動きは綺麗だった。これからの鍛え次第では化けるかもな……うーん。どうする?まあ本人もこう言ってるんだ。エスメダからのお許しも出たし、あんまり邪険に扱うのはかわいそうだしなぁ。それに仲間は多いに越したことはないし……

 

「ティナはそれでもいいか?」

「ええ。仲間が増えることに、異論はありません。パーティは大方4人が定番ですから」

 

 ティナの了承も取れた。はぁ、しょうがないな。

 

「よし、さっきはああ言ったが、お前の実力を認めて同行を許可しよう。ただし!俺たちの行く道はお前にとって険しいものとなるだろう。それでも来るか?」

「はいっス!自分、お三方についていけるよう、頑張るっス!!」

「了解した。ようこそ、俺たちのチームに!」

「ありがとうございますっス!!これからよろしくお願いしまっス!」

 

 こうして4人目のパーティメンバー、アーサー・ペンドラゴンが仲間に加わった。




この章はあと1話で終わりです。それが終わったら人物紹介を挟んで、新章突入です。これからもよろしくお願いします!


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第17話.新たなる地へ

今回でこの章は終わりです。
次章は少しモンハン成分が減るかもしれません。まあ全くないなんてことはありませんが。

ちなみに独自解釈をぶっ込んでいます。ご了承ください。


 アーサーを仲間に加えた俺たちは、そのまま魔境の調査を続けた。流石にさっきのナルガクルガみたいな奴がわんさかいるとは思えないが、可能性はゼロではないので、2組に分けて捜索することにした。

 

 その結果分かったのが、この魔境のかなり深い、言うなれば最深部には、強制遺伝されたモンスター達のための檻が存在していた。近くに小さな研究所のようなものがあったので、ここで『EDEN』の連中が実験を行なっていたのだと考えられる。残念ながら研究所の中はもぬけの殻で、研究資料さえ残っていなかったが。

 

 幸い檻の中には何もいなかったが、もしかしたら強制遺伝モンスターが魔境に流れているかもしれない。まあ魔境には時たま古龍種さえも来るそうだから、あまり心配することはないかもしれない。

 

 そのまま5時間ほど調査を続け、特に新しい発見もなかったので、一旦ユクモ村に帰ることにした。あ、アーサーは俺たちの走行速度についていけなかったので、俺が背中に背負って運んであげたよ。せっかく運んであげたのに「し、死ぬかと思ったッス……」とか言ったけど……まあいいよね!普通のハンターが戦闘機並みの速さで移動したところで、死ぬわけないしね!

 

 そして日が沈んでから少したった夜に、俺たちはユクモ村の村長代理、エリーナ・エルチュリアに魔境探索の結果を伝え、今後体色等に変化のあるモンスターには気をつけるよう言っておいた。

 

 俺たちは今、ギルドから借りた宿(俺の部屋)で集まって、今日の振り返りをしている。

 

「今までは弱いモンスターにしか強制遺伝できないのかと思ってたが、ついに現れたな」

「あのナルガクルガ……明らかにG級の強さを超えています。希少種でしょうか?」

「いや、違うな。あれは『極み駆けるナルガクルガ』だろう」

「それって、近年発見された新しい分類のやつ?確かG級なんかとは比べものにならない強さって聞いたけど」

 

 話のネタはもっぱらあのナルガクルガだ。あれは元の個体の強さもかなり高い。要するに、『EDEN』はあのナルガクルガを拘束するだけの戦力があるとみていいだろう。

 あ、ちなみにアーサーには強制遺伝諸々のことは伝えてあるよ。流石にティナの過去は教えてないが、話に加わるのに不自由はないはずだ。

 

「そうだな。極みを冠するモンスターは、それぞれが原種とは比べものにならないほど強い。まあお前ら2人なら油断しない限りは問題ないだろうが、今のアーサーじゃあ即死だろうな」

 

 俺の言葉でアーサーが少し落ち込んだ顔をするが、すぐに立ち直ったようだ。アーサーにはなかなか強い精神力があるらしい。

 

「とりあえず明日にはユクモ村を出発して、ドンドルマに一旦帰るって事でいいかしら?」

「そうですね。今回の件もギルドマスターに報告した方がいいと思いますし。いいですよね、ルーさん?」

 

 ギルドマスターか。果たして今のギルドを簡単に信用していいものか……敵対してるって訳ではないんだろうが、なにかを隠しているのは確定だし、どうしたもんか……

 

「ルーさん!聞いてますか!?」

「っと、悪りぃ。考え事をしてた。ギルドマスターに報告するんだろ?いいんじゃないか?」

「なら決まりね。それじゃあ解散!明日は早めに出るから、もう寝る事!」

 

 そうしてプチ会議は終了した。

 

 

 …Now loading…

 

 

 深夜。俺はふと目が覚めてしまい、このまま再び寝るのも難しそうなので、外に出ることにした。心地よい夜風が俺の顔を撫で、次第に目が覚めていく。

 

 少し歩いたところで展望台を見つけた。なんでもユクモ村を見渡せるようになっているらしい。

 展望台に上ってみると、知ってる顔があった。

 

「どうしたんだアーサー。眠れないのか?」

「あ、師匠。そうッスね……ちょっと考え事をしてたッス」

 

 俺はアーサーの隣に腰を下ろし、話を聞くことにする。

 

「なんか悩み事でもあんのか?」

「いや、悩みというか……ただ、皆さんすごいなぁ、と思ってたッス。師匠達から話は聞きましたッスけど、強制遺伝とか、世界の危機とか、スケールが大きすぎッス。だけど、皆さんはそんなスケールものともしないといった感じで……自分はこの人たちの中でやっていけるのか、不安になったッス」

 

「へへ……」と頬をかきながらそう言うアーサーの顔は、少し悲しみの色が混ざっている。

 

「自分から弟子にならないなんて言っときながらこの始末。お恥ずかしいッス……」

 

 全く、こいつは……

 俺はアーサーの頭にポン、と手を置いた。

 

「師匠?」

「細かいことは考えるな。俺たちは仲間、それでいいだろ?それに龍王と英雄の会話だぜ?スケールが大きくて当然だろ?」

 

 おどけたようにそう言うと、アーサーはポカンとした顔をした後、すぐに苦笑を浮かべた。

 

「ハハッ、そうッスね。確かにスケールが大きくなって当然ッス!…………ありがとうッス、師匠。自分の愚痴を聞いてもらって」

「いいってことよ。仲間なんだから、そんなことは気にするな」

「はいッス!」

 

 そのまま明け方までお互いのこれまでについて話し合った。

 あ、アーサーの片手剣の名前は、『聖剣エクスカリバー』だそうです。これ偶然だよな?偶然……なのか?

 

 

 …Now loading…

 

 

 次の日の朝はやく、俺たちはユクモ村を出発した。アーサーの家族はこの村にはいないそうなので、特に思い残すものもない。帰り道は特にこれといったこともなく、二週間後にはドンドルマに帰ってこれた。

 

 俺たちは帰って早々ギルドに行き、ギルドマスターに報告することにした。今はギルドの受付でギルドマスターに取り次いでもらっている。

 

「ギルドマスターに面会の許可をいただきました。どうぞこちらへ」

 

 ギルド職員の案内で、すでに見知った道を進む。今回は一応任務報告なので、アーサーは待っててもらっている。

 

「お久しぶりですギルドマスター」

「うむ。よく帰ってきたな、3人とも」

 

 相変わらず紙の山で埋め尽くされている執務机から、ギルドマスターが顔を出す。俺たちはユクモ村、ひいては魔境で起こったことを報告した。

 

「…………ふぅ」

 

 一通り報告を聞いたギルドマスターは、ため息をつく。俺にはそのため息に、何か諦めの感情がこもっているように感じた。

 

「ギルドマスター。いい加減教えてくれないか?『EDEN』とかいう機関について」

 

 俺が前回ギルドマスターと話した内容は、2人にも伝えてある。なので2人からも期待のこもった目線を向けられている。

 

「……だめだ。それでも私の口からその機関について話すことは出来ない」

 

 あんな規格外が現れたにもかかわらず沈黙を貫こうとするギルドマスターの態度に、俺達はついにプッツンした。

 

「フザケンナよ?あの極みに達したモンスターさえ奴らは手駒にできてるんだぞ?あんなものが量産されてみろ。一瞬で全ハンター、いや、全生物が蹂躙されるぞ。お前それでもギルドマスターか?」

「そうよ!ダンマリもいい加減にして頂戴!!」

「こちらは真剣なんです!」

 

 3人の剣幕に押されて後ずさるギルドマスターだが、その意思の硬さを表すかのようにその場で踏みとどまった。

 

「それを話せば、ギルドが存続できなくなるとしても、同じことが言えるか?」

「……何?」

「この世界には、権力というものが渦巻いている。ハンターには殆ど無縁のものだろうが、権力というものは恐ろしいのだ。一度逆らえば、そこで人生は終了。あとは地獄のようなどん底の余生が待っているだけ。それでも君達は、私にその機関について話せというのか?」

 

 ギルドマスターのその雰囲気に、俺たちは口を噤んでしまう。

 訪れる沈黙。それを破ったのはギルドマスターだった。

 

「私とて世界の危機に何もしないなんて、そんなことはしたくない。だが分かっくれ……」

「いいだろ。そっちにも大変な事情があるみたいだしな。でもヒントぐらいはもらえないか?」

「そうだな……その機関について知りたいなら、王都に行ってみるといい」

 

 王都。聞きなれない言葉に、一瞬俺の思考が止まるが、すぐに先日のティナとの会話を思い出した。

 この大陸には3つの国家があるらしい。1つはこのドンドルマも属しているアリエルディア王国。1つは王国の西に位置するデクトネス帝国。1つは王国と帝国の南に位置するカーネリア共和国。

 基本的にハンターは国境を越えるのに手続きはいらないから、特に気にしてなかったぜ。

 

「王都か……分かった。行ってみることにする」

「くれぐれも気をつけろ。王都はハンターをあまり良く思わない風習がある」

 

 その言葉に頷いて、俺たちはギルドマスター室を出て行った。

 

 

 …Now loading…

 

 

「王都か。2人は行ったことあるか?」

「ないわね。あそこはハンターが行くようなところじゃないし」

「私もです」

 

 俺たちはギルド本部から出て、少ししたところにある食堂にいる。今はアーサーも一緒だ。

 

「まあここで言っていても仕方ない。手がかりがない以上、王都に行くしかないだろ」

「そうなるわよねぇ。気は進まないけどそうしましょうか」

「では、準備をして明後日出発しましょう」

「「「了解(ッス)」」」

 

 こうして俺たちは王都に行くことになった。しかし、この時の俺たちは気づいてなかったのだ。王都に行くと言ってから、アーサーの様子がおかしかったことに……




というわけで、【第1章 始まりの異変】これにて終了です!
次回からの【第2章 王都騒乱】をお楽しみに!!


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登場人物紹介

今回は登場人物の紹介です。
次回から第2章が始まるので、お楽しみに!


○ルー・アルジャン(男)

 

身長:178cm 体重:62kg

 

容姿:銀髪の銀と金のオッドアイ。黒と白のコートを羽織っている。

 

性格:自分の目的や、ひどく興味を惹かれたもの以外には、殆ど無関心。普段はふざけたりなど気さくな性格をしているが、悪意、または害意あるものと相対するときには、途端に冷静になり、残酷な手段も厭わない。ただし身内には少々甘い。背中に双剣を背負っているくせに、常に腰に一振りの太刀をさしている。

 

装備

・ 防具 荒鉤爪一式(足のみバルファルクのジェットブーツ)

・武器 双星滅剣ゼロ(星滅刀【銀閃】)

 

 

○銀滅龍ジェノ・オラージュ(♂)

 

古龍種 古龍目 滅龍亜目 ジンオウガ科

 

全長:約20m 体長:約7m

 

容姿:銀色に輝く鱗に覆われ、前脚と尻尾が異常発達している。角は合計3本生えており、真ん中に生える刀角は金色。異常発達している尻尾は西洋の剣のような形状をしており、体の両側面から真っ白な体毛が、帯のように一対生えている。普通の体毛は黒。

 

説明: ルー・アルジャンの本来の姿。普段は庭園と呼ばれる縄張りに生息しており、中心部に生える世界樹の頂上を寝床にしている。近年発見された新しい古龍種で、ジンオウガから進化したと言われている。その強さは圧倒的であり、勝てるものは存在しないとまで言われる。

 

 

○ティナ・ルフール(女)

 

年齢:16歳

 

身長:154cm 体重(言ったら殺しますよ?)

 

スリーサイズ:78-58-80

 

容姿:銀髪のセミロング。目の色は真紅。

 

性格:誰にでも優しく接することができる、心の優しい人間。少しドジなところもあり、本人はそこを治していきたいそうだ。ハンターたちのアイドル的存在。本人は割り切ってるようだが、過去の出来事のことが忘れられないでいる。敬語キャラ。

 

装備

・防具 超越トトス一式

・武器 破魔刀【陽光】

 

 

○エスメダ・クラスタリア(女)

 

年齢:17歳

 

身長:148cm 体重(は?死にたいの?)

 

スリーサイズ:68-54-69

 

容姿:赤髪のツインテール。目の色は翡翠色。

 

性格:少々気の強い女の子。ティナとはハンター育成学校の頃から知り合いで、その性格から当時暗かったティナを色々振り回していた。実はツンデレな一面もあり。過去に謎の事件で村を失っている。今の父は義父。

 

装備

・防具 燼滅刃一式

・武器 ザンシュトウ【金鶏】

 

 

○アーサー・ペンドラゴン(男)

 

年齢:15歳

 

身長:152cm 体重:52kg

 

容姿:髪は金髪。目の色は澄んだ青。

 

性格:いつも明るく振る舞い、チームのムードメイカー。その一方で、自分がこんな人達と一緒にいていいのかなどと、深刻に考え込む一面もある。ルーに命を助けられてから、彼を「師匠」と呼んで慕っている。今は弱いが、秘められた潜在能力はなかなかのもの。実はある秘密がある。

 

装備

・防具 リオソウル一式

・武器 聖剣【エクスカリバー】

 

 

○EDEN(エデン)

 

・この物語の重要なキーを握る謎の機関。ティナを生み出したのもこの機関で、非人道的実験を繰り返していた。10年ほど前にティナの父親である、【覇炎帝】テオ・テスカトルに壊滅させられたはずだが、今になって活動を再開しているらしい。EDENには『極み駆けるナルガクルガ』等の強力なモンスターを捕獲する技術が備わっており、油断ならない敵。




短いですが今回は以上です。それでは次回からをお楽し……

ティ「太刀使いさん?なに私たちのスリーサイズ公開してるんですか?」
え!?いや、その、その方が皆さん喜ぶかなー、なんて。
エ「……気持ち悪」
ぐはっ!?
ティ「とりあえず、あっちで『お話』しましょ?」

た、助けてぇぇぇ!!!


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第2章 王都騒乱 第19話.王都へ

更新が遅れたことを謝罪します。テスト期間も終わったので、通常通りの更新ペースに戻して行きます。

【第2章 王都騒乱】始まりです。この章は物理の戦闘は少なめ、それ以外の面での戦いが多めとなると思います。

ではどうぞ!


 アリエルディア王国。この大陸に君臨する最大の国家だ。はるか昔におこった竜と人との戦争。通称『竜大戦』の頃から存在しており、当時は大陸の覇権をシュレイド王国と争っていたそうだ。竜大戦によってシュレイド王国は滅び、アリエルディア王国が大陸の覇者となるはずだったのだが、こちらも竜大戦によって大きく弱体化。その勢力を大きく減らすことになる。

 

 そこで出て来たのが、デクトネス帝国。弱体化した王国から離反した人々が作った国で、実力で全てが決まる実力至上主義の国。店の場所どりから王位まで、全てが実力で決まるらしい。なので、王家というものは存在していない。その時に一番強い奴が皇帝陛下なんだとか。よく国が回るものだ。

 

 最後はカーネリア共和国。アリエルディア王国には国王、デクトネス帝国には皇帝、と2つの国には君主がいるが、カーネリア共和国は共和国という名だけに王様はいない。国民が選挙で選んだ数人によって議会を作り、そこで国の経営をしているそうだ。まあよくある共和国と同じだな。

 

 で、このカーネリア共和国は成り立ちがなんとも曖昧なのだ。竜大戦の前からあるとは言われているのだが、ここまでの大国ではなく、どちらからといえば周辺諸国に分類される程度の規模だったらしい。それが何故王国と帝国、この2つに肩を並べるほどの大国になったのか。今では知る人もいないようだ。真実は闇の中ってことだな。

 

 

 

「……これが今俺たちがいる王国と、他の2国について俺が知ってることだ。なんか間違いはあったか?」

 

 現在俺たちは、王都行きの竜車の中にいる。今から行く王都について何も知っていないのもあれなので、お互いに知識を出し合っているところだ。ちなみに俺が語ったのは、図書館の本に載っていたことなので、特に驚かれるような内容でもない。

 

「いえ、間違ってません。私が知ってるのもそんな感じのことですし」

 

 ティナがそう言うと、エスメダも何度か首を縦に振った。同じ意見なのだろう。あとはアーサーだが……

 

「……………」

 

 アーサーはさっきから窓の外を眺めるばかりで、こちらの会話に参加してこない。ドンドルマを出る時から様子がおかしいとは少し思っていたが、これは重症か?

 

「おいアーサー。どうしたんだ?ぼーっとして」

「ッ!?あ、すいませんっス!少し考え事をしてて……」

 

 アーサーは照れ隠しのようにポリポリと頰をかくのだが、その目は俺を見ていない。どこか遠くを見ているような目だ。

 

「ねえねえ、アーサーどうしちゃったの?なんか元気ないみたいだけど」

 

 エスメダが俺に耳打ちをして来た。

 

「分からん……特になにかをしたり言ったりした記憶はない。ただ、この竜車に乗る前ぐらいから様子がおかしかったな」

「もしかして王都に行くのが嫌だったり?」

「いえ、それはありません」

 

 俺たちの話を聞いていたティナが会話に入って来た。ティナによると、アーサーの様子がおかしいと思った彼女は、王都に行くのが嫌なのか聞いて見たらしい。ところがアーサーは「別に嫌ではないっス」と言ったそうだ。

 

 分からんな……アーサーは過去に王都に行ったことがあるのだろうか?もしかしたら、その時に何か嫌な出来事があったりとか?

 

「まぁ、分からないことを延々と話していても仕方ないわ。それより目先の問題をどうにかしないと」

「王都はハンターを嫌う風習がある、か」

 

 アリエルディア王国の王都『アキュード』では、ハンターはあまりと言うか、全く歓迎されない。その理由は、王都が騎士の街だからだ。歴史の長いアリエルディア王国ではその昔、ハンターではなく騎士団がモンスターの相手をしていたらしい。ハンターズギルドが出来てモンスター討伐という仕事はめっぽう減ったが、王都ではまだ騎士がモンスターと戦っている。伝統を重んじる王都では、騎士がモンスターを倒すのが当たり前なのだ。後から出て来たハンターなどお呼びじゃない。それが王都で暗黙の了解となっている。ハンターのことを野蛮人とか言うやつもいるそうだ。

 

「ハンターを最初から嫌っているのなら、肩身の狭い思いをするかもですね……」

 

 ティナがこれからのことを思って憂いの満ちた目でそう言う。

 

「どうかしら?いくらハンターが嫌いだと言っても、露骨に態度に表してくる奴が多いとは思えないけど。いたとしたら相当にバカよ、そいつ」

「どうだかな。王都のハンター嫌いは凄まじいとも聞くぞ。前に王都に行ったハンターと話したんだが、とても長期滞在できる場所じゃないって言ってたし」

「行く気が失せる情報です……」

 

 一体何がそんなにハンターを嫌う要因になるんだろうな?ハンターといえばドンドルマなんかでは、憧れる人が沢山いるレベルだというのに。

 

「こればかりはどうしようもないな。王都では出来るだけハンターと分からないように行動するか……武器を外して外に出るとか?」

「それは出来ません!!」

 

 突然のティナの大声に少しビクッとしてしまった。

 

「武器とはハンターの命も同然!それを外して歩き回るなんて……恥晒しもいいところです!」

「そ、そうなのか?」

「はぁ、当たり前でしょ?武器を装備しないで外に出るなんて、命と体を分離しているようなものよ?あんたもそう思うでしょ、アーサー?」

 

 ずっと外の景色をぼーっと見ていたアーサーは、いきなり声をかけられてビックリしたようだ。あたふたしながらこう答える。

 

「そ、そうっスね。武器は大切だと思うっスよ。はい」

 

 なんとも歯切れの悪い受け答えだ。そんなに王都が気になるのだろうか?心ここに在らずといった顔をしている。

 

 と、その時。

 

「ニャニャ!?モンスター接近中ニャ!皆さん気をつけてニャ!」

 

 御者のアイルーが突然そう言った。俺たちは雑談をやめて戦闘態勢に移る。

 しかしおかしいな……俺はさっきからモンスターとしての威圧を放っている。この威圧を受ければ、殆どのモンスターが危険を察知して逃げてくはずなんだが……よほどの鈍感なやつか、まさか古龍か?

 

 目を凝らして見てみると、北東方向から土煙が上がっているのが見える。たしかに、それ相応のスピードを持った物体が移動している証拠だ。しかも、なんか見覚えがあるような……

 

「ああ、あれは大丈夫だ。少し車を止めてくれないか?」

 

 俺の言葉に少し怪訝な顔をするアイルーだったが、客の言うことを無下にするわけにもいかないので、竜車を止めてくれた。

 

「大丈夫とはどう言うことですか?貴方があのモンスターを狩ってくるとか?」

「いや違う。あいつは顔見知りだ。お前らも知ってるはずだぞ」

 

 土煙を上げながら進んできたモンスターの正体。それは世界樹の番人にして、庭園最後の試練。将狗龍ドゥクトル・オーディアルと、配下のジャギィ達だ。

 

 俺の目の前で止まった彼らは、将狗龍を先頭にピシッと隊列を組んだ。その姿はさながら軍隊のよう。

 

「成る程、彼らでしたか」

「なんで庭園の番人がこんなところにいるの?」

「まあ待て。今から要件を聞くから」

 

 そう言って俺は将狗龍の前に進む。

 

『よう、久しぶりだな。お前には庭園の留守を任せてたはずだが、緊急事態でも起こったか?』

「ギャウギャウ!!」

 

 俺たちは龍語で話しているので、ティナはともかくエスメダには何を言っているのか分からないだろう。ちなみに龍語とは、知能の高い一部の古龍だけが使える言語のことだ。

 

 話の内容が分からないエスメダが、深刻な顔をしている俺に話しかけてきた。

 

「なんて言ってるのよ?」

「ああ……それが、庭園に白衣の男が数人侵入したらしい。しかもその男達はここにいるジャギィになんらかの薬品を投与しようとしたそうなんだ」

 

 白衣の男。薬品を投与。ここまで言われたら嫌でも分かる。EDENが庭園にまで手を出してきたのだ。

 

「まあ庭園のジャギィの力を侮った男達は返り討ちにされて、雪山に逃げ込んだらしい。あそこは変異種の宝庫だから、今生きている可能性は低いが」

 

 しかしこれは予想外の展開だ。今や人類から恐れられまくってる俺の縄張りにちょっかいを出すとは、なかなか度胸のあるやつらだ。

 

「あんまり怒ってないんっスね。師匠ならもっと怒るかと思ったんスけど?」

 

 ようやく我に返って竜車から降りてきていたアーサーがそう言う。

 

「実害がないからな。もし俺の部下を洗脳しようものなら、塵も残さず滅ぼしたところだが。それに相手の装備もちゃんとしてなかったらしいし」

 

 連中は「極み駆けるナルガクルガ」を捉える技術を持っている。それがなかったということは、今回は偵察のようなものだろうか?

 

『よし、報告ご苦労だった。お前達は帰って侵入者への警戒に当たってくれ。もし怪しい奴がいて、庭園を汚すようなことをしていたら、遠慮はいらない……殺せ』

「ギャギャギャウ!!」

 

 将狗龍は右手でビシッと敬礼をして、配下を引き連れて帰っていった。そのあまりのスピードにアーサーは唖然としていたが。

 

「よし、庭園はあいつに任せておけば大丈夫だろ。王都へ向かおうとしようぜ」

「いいんですか?庭園に帰らなくても」

 

 ティナが心配そうに言ってくるが、俺は首を振ってこう答える。

 

「ああ。将狗龍達は強い。それこそ並みの古龍なら相手にならないほどにな。それに俺はあいつらを信頼している」

「そうですか。ならいいですけど……」

 

 ティナは渋々竜車に乗り込み、エスメダ、突然の出来事に理解が追いついてないアーサーが続く。最後に俺が乗り込み、竜車は再び王都に向かって進み始めた。



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第20話.向けられる視線

活動報告に今後について書いてありますので、時間があったら見に行って下さい。


「ふ〜、いっちょあがりっと」

 

 残心を解いて双剣を背中に戻す。そんな俺の足元にはドスゲネポスの死体が。王都まで後少しと言うところでいきなり襲いかかってきたので、討伐したというわけだ。

 王都に近くなったから威圧を解いた瞬間これか。やっぱ王都近郊とはいえ、モンスターがいるのには変わりないな。

 

「お疲れ様です。私たちが出る幕はなかったですね」

「当然よ。この程度の相手に苦戦するわけないでしょ、こいつが」

「いやいや、勉強になるッスよ。師匠の剣筋は何回見ても素晴らしいッス」

 

 竜車の中に戻ると、ティナ達が声をかけてきた。双剣を引き抜いて血糊を拭き取りながら、それに答える。

 

「そんなに綺麗か?まあいいけど。それよりなんかこっちに来てる人間がいるんだが」

 

 俺が指差した方に一斉に振り向く3人。そこには槍や旗を掲げながらこちらに歩いてくる集団がいる。銀色の鎧に身を包み、頭は甲冑で覆われていてその表情はうかがえない。騎士団、そんな言葉が俺の脳裏をよぎった。

 

「ねぇ、あれって……」

「王都の騎士達でしょうか?」

「おそらくな。ん?この竜車を目指してないか?」

 

 騎士の集団は、俺たちが乗っている竜車をぐるりと囲むように立った。まるで逃げられないようにしているかのように。

 

「我々は国王直属の騎士団『竜殺の騎士団』である!この近くにモンスターが現れたと聞いた。何か知っていることがあったら話せ!」

 

 うっわ、高圧的かつ上から目線だ。嫌だなぁ、こういう奴の相手するの。絶対面倒ごとになるよ。

 そう思ってほかの3人の方を振り返るが、3人とも頭を横にブンブン振り、お前がモンスターを倒したんだからお前が答えろ、と目で語っている。

 恨みの目線を仲間達に送ってから、竜車を降りる。周りの騎士達は俺が背中に背負っている双剣や太刀を見るや否や、凄く嫌そうな顔をした。俺は少しイラッときながらも平静を装って答える。

 

「モンスターなら俺が倒したぞ。ほら、これがさっき倒したドスゲネポスの爪だ」

「チッ、ハンターか……ならばその爪をこちらに渡せ」

 

 は?今なんて言ったこいつ?ハンターの獲物を、しかも討伐後に横取りしようってのか?

 

「これは俺が倒したモンスターの素材だ。だから俺のものだろう」

「黙れ。モンスターの素材の所有権は全て騎士団にあるのだ。よそ者のハンター風情が、口を慎め!」

 

 男の声に合わせて、周りの騎士達が俺に槍の先を向けてきた。どうやら力ずくにでも奪う気らしい。

 ふ、ふふふ……なるほどなるほど。それが貴様らのやり方か。流石の俺でもプッチンきたぜ……!

 そう思って指と指の間でスパークを発生させようとしたら、後ろから静止の声がかかった。

 

「殺すのはダメですよ!ここで王都の人を殺したら、マズイ事になります!」

 

 た、たしかにな……でもどうしようこいつら。今にも突撃してきそうな雰囲気なんですけど。

 

「もういいだろ?さっさとその素材を渡せ。そうすれば痛い思いをせずに済むぞ」

 

 殺せないならせめてこのイライラを晴らさせてもらうぜ!

 

「はっ、寝言は寝ていえ。この三下」

 

 盛大に煽ってやりました。目の前の男から、プチッと音が聞こえた気がした。堪忍する袋の尻尾が切れたような音だ。

 

「いいだろう……我ら騎士団を愚弄したその罪、死をもって償え!!総員、かかれ!」

 

 今度こそ騎士達が突撃してきた。俺はめんどくさいと思いながら、人差し指と中指を合わせて、将棋の駒を打つように空中を叩く。2つの指先からバチッッとスパークが迸り、次の瞬間、周りにいた騎士全員が跪いた。

 

 脳波操作型特殊電波『王の一手』。指先から走る特殊な電波により、対象の脳をジャック。強制的に俺の命令に従わせる技だ。今回は【全員その場に膝まづけ】という単純命令を送った。命令が単純なほど、一度にジャックできる数も増える。

 

「な!?体が動かん……!」

「しばらくそのままの状態で頭を冷やせ。迷惑なんだよ、全く」

 

 さっきの男を一瞥し、竜車に戻る。すると、ティナやエスメダがドン引きしていた。

 

「話は聞いてましたけど、えげつない技ですね……」

「そうね……これだけあれば、誰にでも勝てるんじゃない?」

 

 その発言に首を横に振ってから言う。

 

「いや、この技は相手の精神力が高ければ発動しない。今の技では上位ハンターですら操れないだろうな」

「てことはあの人達は……」

「下位ハンターと同じ、もしくはそれ以下の精神力ってことだ」

 

 あんなに堂々としていたから強そうと思ったのか、アーサーが驚愕の表情を浮かべる。ティナとエスメダはある程度相手の力量を測れるようなので、特に驚いてなかったが。

 

「まあ、面倒ごとは去った。あと少しで王都なんだ。さっさと行こうぜ」

 

 呆然としていたアイルーに声をかけ、竜車が再び進み出した。あと2時間もすれば王都が見えてくるだろう。今のところ印象かなり悪いけど。

 

 

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「おい、見ろよ……」

「うわっ、ハンターだ!」

「チッ、なんで野蛮人がこの街にいんだよ」

「ママー、あの人達なにー?」

「見ちゃいけません!」

 

 予想以上だなこりゃ。王都についたのはいいが、たった5分でこの有様よ。行き交う人がみんな腫れ物を見るような目でこっちを見てきやがる。その上話しかけたら逃げられる始末。嫌になってくるぜ。

 

「うう、居心地悪いです……」

「気にすることないわ、ティナ」

「そうは言いましても〜」

 

 ティナは随分と気まずそうにしてるな。エスメダはさすがと言うべきか、なんとも思ってないようだ。アーサーは……リオソウルヘルムを被ってるな。顔を見せるのが嫌なんだろうか。俺?俺は平気だよ。人間達のこの程度の視線、なんとも思わない。なんせ殺す気満々の目や、憎悪をありったけ込めた目を向けられたこともあるしな。銀滅龍としての時は。

 

 とは言っても精神的に良くないことは確かだ。早いとこ宿を取りたいんだが……この様子じゃ誰も教えてくれなさそうだな。

 

「師匠。宿ならオススメの場所を知ってるッス。ついてきてくださいッス」

 

 アーサーが宿の場所を知ってるようだ。やはり以前王都に来たことがあるのだろう。

 

「そうか、分かった」

 

 俺たちはアーサーについて行くことにした。

 

 

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「ここッス。この宿のオーナーは、客ならハンターだろうとなんだろうと、対等に扱ってくれるッス。自分も以前お世話になったッス」

 

 アーサーが案内してくれたのは、大通りから少し裏道に入ったところにある、年季の入った木造の宿だった。年季が入っているとはいえ、その見た目は、なかなか清潔感が漂っている。

 

「いらっしゃい。お、ハンターさんか。この街ではさぞ肩身が狭いだろう。ここではそんなことはしないから、安心して泊まっていってくれよな」

 

 受付の男がにこやかに話しかけて来た。成る程、アーサーが言っていたことは確かなようだ。

 

「ありがとう。2人一部屋を2つ、とりあえず一週間分頼む」

「はいよ。飯は朝と夜の二回だ。水桶とタオルは別料金だな。じゃ、これ鍵な」

 

 指定された金額を払い、ひとまず部屋に行くことにした。俺たちの部屋は二階の一番奥で、通路の反対側がもう片方の部屋になっている。

 女性陣が部屋に荷物を置き、俺たちの部屋にやってくる。そして4人の口から同時に出たのは、ため息だった。

 

「「「「はぁ〜」」」」

 

 流石にずっと嫌悪の目線を送られていると、疲れるものだ。俺はベットの上に仰向けになり、天井を見上げた。

 

「王都に来たはいいものの、あれじゃあ外に出る気も失せるな……」

「そうね……全く予想以上の嫌われ者っぷりだわ」

 

 エスメダやティナも少しばかりぐったりしている。アーサーなんて疲労が溜まりすぎたのか、部屋に着いた途端に寝始めたからな。今も俺の隣のベッドで爆睡してるよ。

 

「今日のところはもう休もう。長旅での疲れもあるし、心身ともに休めたい気分だ……」

「では、EDENについての調査は明日からってことでいいですか?」

「ああ、それでは解散!」

 

 そのままベットに倒れ込み、ティナ達が退室するのを視界の端に捉えながら、俺の意識は沈んでいった。

 

「ああ、まじで疲れたなぁ……」

 

 

 …Now loading…

 

 

 男性陣の部屋を後にしたエスメダは、自分の部屋に戻ろうとしたところ、ティナが男性陣の部屋の扉をジッと見ているのに気がついた。

 

「どうしたのティナ?忘れ物でもした?」

「あ、いえ。ただ、ルーさんだいぶ疲れてたなぁ、と思っただけです。ただでさえ人混みが嫌いと言っていたルーさんが、今日のような視線を向けられ続けてたら……そう思うと少し心配で」

 

 ティナが本当に心配そうに部屋の扉を見つめる。その顔を見たエスメダは、ニィと笑いながらティナに耳打ちをした。

 

「じゃあさ、ティナ。ルーにこんなことをして見たら?具体的には…………」

 

 エスメダの提案を聞いたティナは、みるみる顔が赤くなっていく。

 

「そ、そんなことをしていいのですか!?」

「いいのいいの!男子の疲れを吹き飛ばすのは、この方法が一番よ!」

「そ、そうですか……分かりました。私、やってみます!」

 

 両手をグッと握り、息巻いてるティナの後ろで、エスメダは面白そうな笑みを浮かべるのだった。

 

「これは、相当面白いことになりそうね……!」



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第21話.アーサーの秘密

書く時間確保できねぇ……受験生忙しすぎません?
なんとか更新は続けていきますので、その点はご心配なく!

あ、オレンジバーありがとうございます!!


「うぅ〜ん」

 

 夜も更けた頃、唐突に目が覚めてしまった。そういうことってたまにあるよね?

 しかしまだ眠いなぁ。俺は目を閉じたままもぞもぞと動いてみる。

 

 ぷに

 

 なんだ今の感覚?何か柔らかいものに触れたような……気のせいか?

 そう思ってもう一度動く。

 

 ぷに

 

 気のせいじゃないな……一体なんだろう?でもぷにぷにしてて気持ちがいい……この宿って抱き枕でも置いてあったのかな……

 俺は寝ぼけた頭のまま、抱き枕のようなものを引き寄せて抱きしめた。そしたら、

 

「あ、あの……」

 

 !?な、なんか声がしたぞ!?しかも女の声!この部屋には俺とアーサーしかいないはず。ま、まさか幽霊ってやつか!?

 突然の声に警戒した俺の頭が冴えて行く。身を守るために抱きしめていた抱き枕をさらに強く抱きしめる。

 

「は、恥ずかしいので、あんまり抱きしめるのはやめて下さい!」

 

 声は俺の胸元から聞こえた。しかも聞き覚えのある声が。この時点で少し察した。恐る恐る顔を下げてみてみると、顔を耳まで真っ赤にしたティナがいらっしゃる。抱き枕だと思っていたのは、ティナだったのだ。

 

「な、な、な、なんでティナがこの部屋、それに俺のベットに入ってるんだ!?」

「あう……その前に、この手を離して欲しいです……」

 

 言われて気づいた。俺はティナを抱きしめたままだったのだ。慌てて手を離すと、ティナの体が少し離れる。その時にようやく分かったのだが、ティナはネグリジェのようなものを着ていて、とても煽情的な見た目をしている。

 

「それで、なんでティナがここに?」

 

 若干その見た目に動揺しつつも、ティナに問いかける。

 

「そ、それは、ルーさんが疲れていると思ったからです……人混みが嫌いなルーさんが、今日1日で受けた精神的疲労は大きいと思って……それでエスメダちゃんに相談したら、こうするのがいいって言ってくれたんです……」

 

 言いながらティナの顔が再び赤くなっていく。さっきの出来事を思い出しているのだろう。

 というかエスメダのやつ!絶対面白がってティナにこんなこと教えただろ!

 

「エスメダめ……あとで覚えとけよ」

「あの、ルーさん……」

 

 どうエスメダに仕返ししてやろうかと考えていた時、不意にティナが話しかけてきた。

 

「ご迷惑、でしたか?」

「ッ!?」

 

 火照って赤くなった顔で、あまりの羞恥に目にうっすら涙を浮かべながら、上目遣いにこちらを見てくるティナ。こうかはばつぐんだ!

 じゃなくて!そんな顔をされたら、いくらオリハルコンの精神を持つ俺でも、理性が吹き飛びそうになる。一瞬龍の思考になった頭をブンブンと振り、ギリギリのところで踏みとどまった。

 

「そんなことないぞ。俺のことを心配してくれて。むしろ感謝している」

「そ、そうですか?なら良かったです……!」

 

 満面の笑みで答えるティナ。その顔をみて僅かに顔を赤らめた俺は、反対側を向いてこう言った。

 

「さ、さて。そろそろ寝ないと明日に響くぞ。ティナも帰って早く寝ろよ?」

 

 そうして目を瞑って寝ようとしたのだが、一向にティナが俺のベッドから出て行く気配がない。

 

「お、おい。どうした?帰らないのか?」

「今日は……今日はここで一緒に寝ても、いい、ですか……?」

 

 雷が落ちた。いや、そう錯覚しただけだが、それに等しい衝撃が俺を襲った。

 

「え!?い、いやまぁ、俺は構わないが……お前はそれでいいのか?」

「はい。ここにいるとなんだか落ち着くのです」

「ならいいんだがな……」

 

 しばらくしてティナが寝息をたて始めたので、俺も努めて後ろを意識しないように寝ることに……なんて出来るわけもなく、自分の中の葛藤と戦い、ついに寝たのは朝日が昇る数十分前だった。

 

 次の朝、遅くまで起きていた反動で早く起きることができず、一緒のベッドで寝ているのをアーサーに発見されて、大騒ぎになったのは言うまでもない。

 それをみてお腹を抱えて大爆笑していたエスメダがいたのも、言うまでもないだろう。

 

 

 …Now loading…

 

 

「さて、今日からEDENについて調べる訳だが……俺たちには全く情報がない。何かいい案があるやつはいるか?」

 

 朝食のあと、部屋に集まってこれからのことを話し合うことにした俺たち。3人の顔を交互に見て回るが、みんなの顔は渋い。エスメダだけは別の理由で渋い顔をしているのだが。

 

 あの後アーサーに「こ、これは俗に言う『夜這い』ってやつっスか!?」と言われたティナは、エスメダに『夜這い』について説明を求めた。盛大に目を逸らしながら説明したエスメダだが、自分がやっていたことが、いかに恥ずかしいことかを理解したティナが暴走。エスメダに怒りのババチョップをくらわせたのだ。そんな訳で、エスメダのデコは現在真っ赤に腫れ上がっている。

 まぁ、常識に疎いティナをからかった罰だな。

 

「とりあえず、ギルドを目指してみるのはどうでしょうか?情報ならギルドに行くのが一番ですし」

 

 すっかり立ち直ったティナがそう言った。顔を合わせると若干慌てるようだが、とりあえずは大丈夫だろう。

 

「あ、この街にギルドはないッスよ」

「え?無いのか?」

「はいッス。この街ではハンターは嫌われてますよね?だからギルドはないんッス。それにモンスターが出ても、騎士団がどうにかしてくれてるので……」

 

 成る程、そんな街もあるのか。とは言っても、ギルドがない街や村なんてここぐらいだろうなぁ。それほどこの世界において、ハンターというものは大切なのだ。

 

「その代わり、情報屋ってのがあるッス。お金を払う代わりに、情報を集めてきてもらうという、変わった店ッス」

 

 情報屋!ゲームの中ではたまに聞いたが、まさか現実にあるとは!行ったみたいな。

 

「いいんじゃないでしょうか。こちらに出来ることはあまりありませんし、とりあえず行ってみましょう」

「決まりだな。それでは各自準備をして再集合だ。それでは解散!」

「「「了解(ッス)」」」

 

 

 …Now loading…

 

 

 相変わらず酷い視線を感じながら、またもやリオソウルヘルムをすっぽりと被ったアーサーの案内で情報屋へと向かって行く。

 途中人相の悪い男5人が絡んできた。男たちの目線は完全に女性陣、主にティナに向いており、何を妄想しているのかは明らかだった。最初はおざなりに対応していたのだが、次第にしつこくなってきたのでほんの少し殺気を当てたんだが、それだけで冷や汗を流して走り去って行った。貧弱な奴らめ。

 

 そんなこんなで歩くこと1時間。ようやく情報屋についたようだ。そこは入り組んだ裏路地を進んだ先にあり、いかにも裏の店という感じがする。

 

「ここッス。多分破格の金額を要求されると思うので、出来るだけ粘ってくださいッス」

「そりゃまた面倒な……まぁここでグダッてても仕方ない。とりあえず行ってみるか」

 

 粗悪な木の扉を開くと、両側面の壁にびっしりと紙が張り出されており、扉から正面がカウンターになっているという、簡単な作りの店が目に入った。壁に張り出されている紙は、何かしらの依頼や新聞の切り出し、果てはメモ書きまでとさまざまなものがある。

 そして今現在、カウンターの前には2人の人物が店員と思しき男と話し合っていた。見た目から察するに、騎士だな。

 

「じゃあ店主、例の件任せたぜ」

「おうよ。任された!」

 

 どうやらあいつらも仕事の依頼に来ていたようだな。おっと、ここは道を開けておくか……

 

「ん?んん〜誰かと思えばハンターさんじゃないか。おい見ろよ。昨日この街に来たとか言うハンターさんだぜ」

「おーおー。こりゃ遠路はるばる王都までようこそぉ。さぞかし居心地悪いだろうなぁ」

 

 うーわー。こいつらもめんどくさい系の奴らなのか?なに?この街の騎士はめんどくさい奴しかいないの?

 

「しかも見ろよこの女の防具。こりゃ相当いい代物だぜ?」

「ほんとだなぁ!良い値で売れそうだ……てな訳で、その防具寄越せや」

 

 こいつら正気か?お前らの目の前にいるのは、人類最強の人間だぞ。まぁいいや。どうやら俺の()みたいだし、敵には容赦なく行かせてもらうぜ。

 そう思って殺気を飛ばす。しかし男たちはどこ吹く風だ。おかしい……こいつらはせいぜい上位ハンターレベルの強さだ。なのに俺の殺気に怯えるどころか反応もしないだと?

 

「俺たちとやりあうのはいいけどよぉ〜、立場ってもんをわきまえろよ?つってもよそ者にはわかんないか」

「……どう言うことだ?」

「いいか、よく聞けよ?俺たちはこの街で最大勢力と言われる、『ロルムト公爵』の騎士団に所属している。ぁつまりぃ?俺たちを敵に回すってことはぁ、ロルムト公爵家を敵に回すってことなんだよ。そうなったらお前ら、この街から生きて帰れると思うなよ?」

 

 ふん、権力を盾にする愚か者か。銀滅龍の時、俺に言葉が通じるとわかるや否や、権力をバックに屈服させようとして来た奴がいたっけ。まぁ問答無用で追い返したが。要するに、俺にそんな小細工は通用しないってわけだ。

 問題なしと判断して攻撃に移ろうとしたところ、後ろからの手でその動きは止められてしまった。

 

「おい、なにすんだよ?」

「すいません……ですが、『ロルムト公爵家』といえば、ハンターである私でさえ知ってるビックネームです。その権力はハンターズギルドにまで及ぶとか」

「ええ、ここでロルムト公爵家と対立したら、私たちのハンター生活が脅かされる危険性があるわ……!」

 

 まじかよ!?そんなことありか?確かに俺には関係ない話だが、俺のせいでティナたちがハンターを続けられなくなったとしたら……そう考えると迂闊なことはできないッ!くそ!俺たちはこいつらの言いなりになるしかないのか!?

 騎士の手がティナに触れそうになったその瞬間、

 

「やめろ!これ以上の狼藉は許さんぞ!!」

 

 どっしりとした、重量感ある声が響いた。声の発生源をゆっくりと見ると、そこにはアーサーが立っている。普段の明るいアーサーからは考えられない、厳格な声だ。

 

「何だぁお前は!まさかロルムト公爵家に刃向かうつもりかぁ!?」

「打ち首にされてぇのか!!」

 

 アーサーの反抗に騎士の男達は怒ったようだ。腰にかけてある剣に手を伸ばし、今にも抜刀しそうな雰囲気を出している。

 

「貴様らのこれまでの発言……我が国(・・・)の品位を下げるものと知れ!そして、王都の客人への無礼な態度。万死に値するのは貴様らの方だ!!」

 

 そう言ってアーサーがリオソウルヘルムを脱ぎ捨てた。最初は軽蔑の目を向けていた男達の顔が、次第に驚愕に染まっていく。

 

「あ、貴方様は……!」

「う、嘘だろおい……!」

 

 な、何だ?一体アーサーが何だと言うんだ?

 

「「アリエルディア王国第一王子、アーサー・フォン・ペンドラゴン様!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………え?




アーサーの名前が「アリエルディア」じゃないのは理由があります。


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第22話.王子の在り方

ふむ、どうやら私は受験生というものを舐めていたようだ……
こりゃ2週間に1回すら更新できないかもですね。現に今出来てないし。
皆さんには申し訳ありませんが、気長に待っていてくださるとありがたいです……


「アーサーが……王族?」

 

 衝撃の事実が明かされた。あのアーサーが、いつもおどけた口調をしているアーサーが王族だったのだ。見ると、堂々とした立ち振る舞いをしているアーサーが目に入る。成る程、最初からこの態度だったら王族と言われても納得したかもな。しかし何故王族なんて高い地位にいるアーサーが、ハンターなんてやったんだ?

 

「すまない。師匠、ティナさん、エスメダさん。私は嘘を付いていた。私の本当の名はアーサー・フォン・ペンドラゴン。このアリエルディア王国の第一王子だ。今まで騙していてすまない」

 

 おぉ……誰だこいつ?いやまぁ、民の前でいつもの口調をするわけにはいかないってのは分かるが、違和感半端ねぇな。

 とそこで、呆気にとられていた騎士の男がいきなり跪いた。横の男もそれを見て、すぐさま跪く。

 

「アーサー様。無礼な態度をお許しください……まさかアーサー様が帰ってきているとは知らず……」

「よい。顔を隠していた私にも積はある。そう畏まらなくてもいい」

「ははっ、ありがたきお言葉。それでは王宮へ。王が貴方様のお帰りを、待っておられます」

「ふむ……」

 

 すげえ、本当に王族なんだなぁ……

 俺たちが騎士の男とアーサーの会話に呆気をとられていると、アーサーがこちらに振り返った。

 

「すいませんっス師匠。自分はこれまでのようです。今までありがとございましたっス」

 

 そう小声で言った。そして浮かべた笑顔には、はっきりと浮かんでいる。本意ではない、と。

 

「アーサー。お前が本当にそれでいいなら、俺らは構わない。だがな、よく考えろ。自分が何をしたいのか」

「貴様!!第一王子に対してなんたる物言い!」

「よい。下がれ」

 

 俺に食ってかかろうとしてきた騎士の男を手で押さえ、アーサーは真っ直ぐこちらを見てくる。

 

「これでいいんっスよ。自分は腐っても第一王子。いつかこうなる日が来るって分かってたっス。だから……さよならっス」

 

 俺は見逃さなかった。アーサーの澄んだ青い瞳に、悲しみと悔しさが一瞬だけ浮かんだのを。

 アーサーは最後にこちらに一礼すると、騎士の男達を連れて店を出て行った。そこでティナが話しかけて来る。

 

「いいんですか?彼を行かせてしまって。彼が帰りたがってないことぐらい、貴方なら分かるでしょう?」

「いいんだ。今は、な。今はあいつが選択した道を行かせてやろう」

「ふ〜ん。今は、ねぇ」

 

 エスメダがニヤついた顔でこちらを見て来る。な、なんだよ。なんか文句あるのか?

 

「自分の弟子が横から掻っ攫われるのは、我慢できないんじゃないの?」

「あぁ、成る程。そういうことでしたか」

 

 2人してニヤニヤしながらこちらを見て来る。全く失礼な奴らだ。俺はアーサーが選んだ道を尊重したいだけ。他に他意なんてないな。ここはガツンと一つ行ってやらねば。

 

「当たり前だ。アーサーは明らかに嫌がっていただろう。俺はな、強制させるのが一番嫌いなのだ!!」

 あ、本心をさらけ出しちまった。

 

「昨日騎士団の人たちに強制命令していたのは誰よ……」

「でも、これからの方針は決まりましたね!」

「あぁ……アーサーを取り戻し、あいつを束縛する奴らに目にもの見せてくれるわ!」

 

 天に手を掲げ、握りしめるようなポーズをとった。ふっ、決まったな。

 

「ほどほどにしなさいよ……」

 

 エスメダが寒い目でこちらを見ていた。

 なんだよ、せっかく決まったと思ったのに……

 まぁ冗談はこれぐらいにして、俺たちはアーサーを取り戻すべく、動き始めるのだった。

 

 

 …Now loading…

 

 

 とは言ったものの、現状打つ手が何もない。俺たちはただのモンスターとハンター。王族とのコネクションがあるはずもなく、そんな俺たちが王宮に入れるわけもなし。王宮に入れないからアーサーを取り戻すこともできない。さて、どうするか……

 

 取り敢えず人目が気になって仕方ないので、宿屋に帰ることにした。各々自分の部屋に帰って、少ししたらもう一度集合することにする。俺はそのままベットに倒れこんだ。

 大口叩いたのはいいけど、ぶっちゃけいい案がこれっぽっちも浮かんでこねぇ。そもそも人間の事情に疎い俺が、打開策を考えられるとは思えないが……

 

 と、その時だった。やけに外が騒がしくなって来たのだ。何事かと思って部屋を出てみると、同じことを考えたのであろうティナとエスメダに遭遇。そのまま下に降りて行くことにした。

 外に出てみると、なんだか慌てた様子の人々が目に入る。みんな一目散に街の中心、王宮がある方に走って行ってるようだ。走りながら騒いでいる連中の会話を聞いてみると、興味深いことがわかった。

 

「逃げろ逃げろ!王都のすぐ近くに雷竜が現れたそうだ!」

「何、雷竜!?ついこの間近衛騎士団が火竜を撃退したばかりだぞ!」

「その近衛騎士団だって、火竜と戦えるのは騎士団長以下数名だけだろ!しかも全員怪我で倒れているって話だ!」

「じゃあもう終わりじゃねーか!」

「とにかく王宮まで逃げるんだよ!」

 

 ふむ、成る程。どうやらライゼクスが現れたようだな。それにしても、リオレウスと戦えるのが街に数人って……よく今まで持ちこたえられたな。まぁいい。逃げ惑う人々をわざわざ見捨てる必要もない。ちょっくら仕留めて来ますか。

 

「俺は今から例のライゼクスを仕留めに行こうと思うんだが、お前らはどうする?」

 

 俺の問いかけに、ティナが頷く。

 

「私も行きましょう」

「私はほかに接近しているモンスターがいないか、周囲の確認に行ってくるわ」

「分かった。じゃあ行くぞ!」

 

 エスメダを残し、俺たちは城門に向かって走って行った。

 

 

 …Now loading…

 

 

 城門の外に出ると、成る程たしかにライゼクスがいた。だが上位ほどの実力のようで、あんまり強いとは感じないな。それより驚いたのは、そのライゼクスの周りに倒れている、無数の騎士達だ。明らかに数の暴力で攻めようとしたんだろうが、薙ぎ払いでもくらったのか、鎧の一部を砕かれて倒れ伏している。

 おいおい、上位のライゼクスに30人ほどで挑んで壊滅かよ……本当に大丈夫か?この街。

 

「そ、そこのお前たち……早く逃げろ……!こ、こいつは、我々の手に負えるものじゃ……!」

 

 辛うじて意識を保っていた騎士の1人が、そう警告してきた。どうやら朦朧とする意識のせいで、俺たちがハンターだとは思ってないようだ。騎士のとる態度からもそれは明らかだろう。

 苦笑しながらも、横にいるティナに確認を取る。

 

「だってよティナ。どうする?」

「冗談はよして下さい。あのライゼクスならすぐに終わらせられるでしょう。私が姿勢を崩します。貴方はトドメを」

「了解!」

 

 俺が声を上げるよりコンマ数秒早く、ティナが飛び出した。最早光の線にしか見えない速度でライゼクスとの距離を詰め、横薙ぎに太刀を一閃。刀身から焔が迸り、太刀で付けた切り傷を一瞬で焼き尽くしていく。想像を絶する痛みに、ライゼクスの体制が大きく崩れた。

 そこをジャンプして空中にいた俺が、独楽のように回転しながら襲いかかる。ライゼクスの首を連続で切り裂き、着地。直後にライゼクスの首筋から血が噴水のように噴きあがり、そのままドスンという音を立てながら地に伏した。

 

 それを確認したティナは残心を解き、太刀を鞘に納める。俺も双剣を背中に背負い、ハイタッチを交わした。

 その間、僅か5秒足らず。一般人からしたら、瞬きをしたら目の前のモンスターが絶命していたようなものだろう。

 

「お見事です」

「はっ、そちらこそな」

 

 取り敢えず討伐は完了した。また素材を寄越せとか言われるんだろうし、このライゼクスは剥ぎ取らないでおくか。

 そう思って街の中に戻ろうとしたところ、その背中に声をかけられた。

 

「ま、待って欲しい!」

 

 また言いがかりか?と思いつつ後ろを振り返ると、意識を取り戻した騎士たちが全員、頭を下げていた。正直ドン引きした。ティナにはまた脳をジャックしたのかと疑われた。俺何もしてないのに……

 

「わ、我々は国王の近衛騎士団だ。私は副団長のケルバッシュ。命の恩人である貴方方に、話があるのだが、聞いてもらえないだろうか!」

 

 ……どうすんだ、これ?




み、短けぇ……
すいません、今はこれが精一杯です!それと、前書きの続きになりますが、もしかしたら月1更新の時がくるかもしれません。本っっっっ当に申し訳ありません!!


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第23話.王宮への招待

……遅れて、申し訳ありません!!

それでご報告があります。この小説は来年の3月になるまで超不定期更新になります。具体的には、一ヶ月や二ヶ月更新できない月があるということです。受験生忙しいすぎっす。

前に活動報告に書いたにもかかわらず、こんなことになって申し訳ないです。


「おい、なんだが呼び止められたけど、どうするよ?」

 

 俺は振り返らずにティナに小声で尋ねる。戻ってきたエスメダも怪訝な顔をしている。仮にも俺たちは王都で嫌われているハンターだ。そんな存在を騎士団、それも国王直属の近衛騎士団が呼び止めるとはどういうことだ?

 

「罠かもしれないわ。油断させて邪魔者の私達を始末したいとか?」

「ですが、話を聞いてみるだけ聞いてみてもいいのではないでしょうか?」

 

 ふむ、二人とももっともなことを言うな。確かに罠かもしれないが、俺たちの実力ならこいつらに囲まれてもなんとかなるだろうし、ここは一旦話を聞いてみるのもいいかもな。

 

「とりあえず応じてみよう。それでもし向こうが武力行使してきたら、戦闘はせずに逃げる方針で」

 

 二人が頷いたのを確認してから、振り返って副団長とやらに話しかける。

 

「なんでしょうか副団長様?近衛騎士団ともあろう方達が私達のようなハンターにどのような御用で?」

 

 最初は低姿勢から始める。無駄な争い事は避けたいからな。

 

「応じてもらえて助かる。先ほども申したが、私は近衛騎士団副団長のケルバッシュ。この度は我々を、この街を救ってくれて誠に感謝する」

 

 ケルバッシュと名乗る男は丁寧にそう切り出した。

 ほう、俺たちがハンターだと分かっていても嫌な顔一つしないのか。感心したな。

 

「ご丁寧にどうも。こちらとしても街であんな輩に暴れられても困りますからね。早急に対処したまでです。

「そこでだ。この街を救ってくれた貴方方に是非お礼がしたい。どうか王宮まで来てはくれないだろうか?」

 

 王宮だと?異常にハンターを嫌うこの街の王宮に?悪い予感しかしない。てか確実に悪いことが起きる。

 

「失礼ながら、この街ではあまりハンターを好いてはいない様子。そんな私達が王宮に行っては騒ぎになるのでは?」

「その点は重々承知している。だから一旦武装を解除して町人に変装してから……ッ!?」

 

 副団長の言葉は続かなかった。それもそのはずだ。なんせ俺の左右に立っているティナとエスメダから恐ろしいほどの殺気が溢れ出したんだから。

 圧倒的な威圧の前に、騎士団員はおろか副団長まで一歩後ずさった。酷いものは白目をむいて気絶している奴もいる。

 

「武装を解除……?あんた、舐めてるの?」

「ハンターにとって命に等しい武器を外せとは……よくそんなことが言えますね?」

 

 ティナ達の明らかな態度の変化に、副団長ケルバッシュは慌てて手で待ったをかけながら弁解した。

 

「き、気に障ったならすまない!謝罪する!!なんせこの街にハンターはほとんどいないもので、ハンターの常識というものを知らなかったのだ!!」

 

 その言葉を聞いて多少は納得したのか、二人とも威圧を解いた。ただ警戒心丸出しの目線を送ってはいるが。

 

「失礼しました。そちらが知らなかったのなら仕方のないこと。今の一件は忘れてください。

「あ、ああ、感謝する。しかし、それだとどうするか……」

「それなら提案があります。そちらの方々の鎧を貸しては貰えないでしょうか?騎士なら武装してても問題ないでしょうし、ハンターともバレないと思いますが?」

「お、おお!その案で行こう!おい、この方達に鎧を貸して差し上げろ!」

 

 騎士達が鎧を脱いでる間、ティナが小声で話しかけてきた。

 

「いいんですか?王宮に行っても。本当に罠かもしれませんよ?さっきだって武装を解かせて襲う算段だったのかもしれませんし……」

 

 疑り深いやつだな……それだけハンターにとって武器が大切な存在だということだろう。

 

「大丈夫だって。あいつらの強さなら例え拘束されてても勝てるし、何より『EDEN』について知るなら、王宮の方が情報を得やすいだろ?」

「それもそうですが……」

 

 ティナが警戒心を解くことは無かった。そんなに気にする事でもないと思うがなぁ。

 と、そうしてるうちに鎧の用意ができたようで、副団長がそれを渡してきた。

 

「ではこちらを」

 

 それを受け取り、鎧を装着していく。多少は動きにくいが、最大限機動力を確保してあることが分かった。

 鎧の感触を確かめた後、俺は副団長に言った。

 

「では王宮に向かうとしましょう」

「ああ、ご同行感謝する」

 

 こうして俺たちを入れた騎士団は、王宮に向かって歩き出した。

 

 

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 騎士団に対しての街の人達の対応は、まぁすごかった。超有名人が現れたかのような歓声と人だかりが出来て、一時は前に進めなくなったほどだ。それでもなんとか人の壁を突破し、ついに王宮へとたどり着いた。

 王宮は白亜の壁で一面覆われていて、そこに刻まれたさまざまな彫刻がなんとも美しい。

 

「ではここで少しの間お待ちいただきたい。すぐに案内の者を連れてくる」

 

 そう言って副団長とほかの騎士団のメンバーは、王宮の奥へと進んでいった。

 

「ほぅ……外見もなかなかよかったが、内装もこれまた美しいな」

「私はあの絵画がいいと思いますよ。なんていうか、迫力があります」

「まあ私たちハンターに美的センスなんてないんだけどねぇ」

 

 キョロキョロと王宮の内装を眺めていると、執事の格好をした1人の男がやってきた。

 

「お待たせしました。どうぞこちらへ」

 

 そう言って執事は一礼してから歩き出したので、俺たちもそのあとに続く。執事の男はある扉の前で立ち止まり、こちらに振り返った。

 

「皆様には、こちらにて少しの間お待ちしていただきます。ケルバッシュ様のお話が纏まりましたら、またお声をお掛け致します」

 

 執事の男が扉を開くと、そこは目を疑うほどの豪華な部屋だった。この世界の価値基準というがよく分からない俺でも、豪華だと分かるほど豪華だった。……うん。何言ってるのか分からなくなってきたな。

 

「では、ご用があればお申し付け下さい」

 

 執事の男はこれまた完璧なお辞儀をしてから扉を閉めた。

 

「ねぇねぇ!このソファすごくふかふかよ!あんた達も早く触ってみなさいよ!」

 

 俺とティナが部屋の豪華さに圧倒されてるっていうのに、こいつは無邪気なもんだ……ま、多少気が楽になったが。

 

「はいはい。今座りますよ……おお、本当にフカフカですね」

「確かに座り心地は抜群だな。で、これからどうするよ?」

「副団長って人が話をつけるまで待ってるんじゃないの?」

「……成る程!そういうことですね!」

 

 お、ティナは俺が王宮に来た真の目的に気づいてるようだな。俺はニヤッと笑いながら頷いた。

 

「おいおいエスメダ。なんでわざわざ王宮に来たと思ってるんだ?目的がなければ、報酬なんて別にいらないし、こんなところに来ないだろ」

「あ、確かに……」

「要するに貴方の目的は「EDEN」についての情報、ですね?」

「そういうこと。ここなら国の重要機密でも探れるだろからな。それにアーサーについても、なんとかなるかもしれない」

 

 王宮なら情報が全くない「EDEN」についても、何か分かるに違いない。流石に何も得られないってことはないだろう。アーサーの件は……とりあえずあいつの現状を知れたらベストだな。

 

「てな訳で、だ。これから情報を集めてこようと思うんだが……誰が行く?」

「え?あんたが行くんじゃないの?」

 

 エスメダが不思議そうに首を傾げて聞いてきた。

 

「最初は俺がいこうと思ったんだが、体の小さなお前らの方が適任じゃないかと思ったんだ。で、どうだ?」

 

 2人の顔を見ながら尋ねてみる。すると、即座にエスメダが首を振りながら言った。

 

「私はパス。そんなスパイみたいな真似ができる性格じゃないって、あんた達にもわかるでしょ?」

 

 それは……確かに。否定できない。ならティナはどうだろう?

 

「私でよければ行きますよ。あいにく気配を消すことは慣れてますし、見つかることもないでしょう」

「よし、決まりだな。じゃあティナには「EDEN」とアーサーについての情報を集めてきてもらおう」

「でもどうやってここから出るのよ?怪しまれるんじゃない?」

 

 ふっ、甘いなエスメダよ……こういう時の常套手段といえば、決まっているだろう?

 

「トイレに行きたいといえばいい。なんせ王宮は広い。うっかり迷子になって、うっかり変なところに行ってしまうかもなぁ」

 

 俺の言葉を聞いて、2人ともハッとした顔をしてから、なんつーことを考えるんだこいつは……って感じにドン引きした。やめて?心が痛いから。

 ともかく作戦は立てた。あとは実行するだけだ。

 

「それでは、行ってきます」

「おう、いい結果を期待してるよ」

「ティナ、しくじんじゃないわよ!」

 

 そう言ってティナは扉の外にいた執事の男に話しかけ、部屋から出て行った。さてさて、どんなことがわかるのやら。結果が楽しみだ。

 



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第24話.動き出す者たち

天地鳴動の星焔竜、復・活!!
待ってたぜ……この時を!
というわけで、テンションが上がった私は勉強を放り投げて続きを書き始めるのだった……

皆さんお久しぶりです。超久々の更新でどんな話か忘れたぜって方は申し訳ない。短くあらすじをいうと、EDENの調査のために王都にきたルー一行は、アーサーが王族だということを知り、その後近衛兵を助けたことで王宮に招待されるのだった。




 薄暗い闇の中で、少女は目覚めた。異様にぼんやりする頭を無理やり動かしつつ周囲を見渡してみると、そこはどこかの部屋のようだ。

 歩いて確かめてみようにも手足に鎖付きの枷が付いており、動くことができない。少女はいつかのようにこの程度の拘束なら壊せるだろう、と思って力を込めてみるも、思うように力が出なかった。

 恐怖心は湧いてこない。もっと凄まじい恐怖を知っている彼女からしたら、当然なのだが。

 そこでふと気づいた。自分は一体何をやっていたのだろう、どうしてこんな場所に拘束されているのだろう、と。直近の記憶が、まるで削り取られたようになっており、思い出すことが出来ないのだ。

 

 多少は冴えてきた頭で少女ーーティナーーはとりあえず覚えている範囲のことを、思い出すことにした。

 

 

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 待合室を体良く抜け出した後、ティナは瞬時に駆け出した。今の彼女ならば、姿を認知されないほどの速度で走り、なおかつそれを周りに少しでも悟らせないようにすることなど朝飯前だ。

 

 どこに行こうか少し悩むものの、そういえば自分はこの城の内部がどうなっているのか、ということを一切知らないことを思い出して考えるのをやめた。下手に考えて行動するより、手当たり次第に探した方が効率がいいと判断したからだ。

 とはいえ、とりあえず上に行くことにする。なぜなら、重要な部屋というものは、得てして上に作られるものだからだ。

 それらの考察を即座に整理したティナは、上への階段に向かうことにした。

 

 

 上に行く階段自体はすぐに見つかった。なんせ王宮の正門から入って正面に、大きな階段があったのを覚えていたからだ。

 しかし、そこで行き詰まってしまう。なぜなら、階段の先には玉座の間しかないからだ。流石に玉座の間に忍び込むのはリスクが高すぎる。

 

(困りましたね。ここ以外に階段なんて、ありましたっけ?さて、どうしましょうか……ん?)

 

 人の気配を察して、即座に廊下の角に隠れる。歩いてきているのは2人。どうやら貴族のようで、2人して大声で話しているのでティナにもその内容を聞き取ることが出来る。

 

「聞いたか?第1王子がお帰りになったそうだ」

「ああ、しかしどこをほっつき歩いてたのかユーサー様がお聞きになったところ、ハンターをやってたらしいぞ?」

 

 片方の貴族がそういった途端、もう片方の貴族が王宮内だというのに、手を叩いて笑い始めた。

 

「はははははははは!!ハンターだと!?あのような下賤な者どもの真似事をするなど、アーサー様は頭がおかしくなられたのではないか?」

「ふんっ。第1王子の頭がどうなったかなど知ったことか。だが、これで第1王子の『再教育』は確定だな」

「違いない。まあおかげで、我らが主人が王になられる日も近いたということだ」

 

 貴族たちが去って行った後、ティナはさっきの会話を頭の中で整理する。どうやら、アーサーはハンターをやっていたことが王にバレたらしい。それでお咎めを受けるのだろうが……何故だろう。貴族達の言っていた、『再教育』という言葉に、どこか不穏な感じがするのは。もしかしたら、アーサーはかなりまずい状況に置かれているのではないか?そんな考えが一瞬頭をよぎった。

 

 ともかく、アーサーについての情報は得られた。残るは今回の本命である「EDEN」についてだ。そう考え、再び駆け出していくのだった。

 

 

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(そうです……私はアーサーの情報を手に入れた後、「EDEN」のことを調べるために行動していたはず……ならどうしてこんなところに?背後から奇襲でもかけられて意識を奪われた?いえ、あり得ません……この王宮内で、私を出し抜けるほどの強者は存在していなかったはず……)

 

 そう、あらかじめルーに頼んで、王宮内の危険因子を調べてもらっていたのだ。気配察知能力で銀滅龍の右に出るものはいない。その銀滅龍が警戒すべき強者はいないと判断したのだ。間違いなかったはず。

 

 それに、何故自分は力を発揮できない?見た感じ、自分を捕らえているものは、鉄の鎖と鉄の枷のようだ。これぐらいの拘束なら、普段のティナなら問題なく突破できるはずなのだ。なのにどうだろう。今の自分には、10代の少女程度の力しかないように思える。これは一体……?

 

 この謎の答えは、未だに思い出せないあの後の記憶の中にあると確信したティナは、より深く集中して記憶を引き出しにかかった。

 

 

 …Now loading…

 

 

 この王宮には何か秘密があるのではないか?それはここについてからふと思った疑問だ。理由は、先程から探しているのに降りる階段が見つからないのと、にも関わらずこの下には同じぐらいの空間が存在しているからだ。広さは大体この王宮の一階と同じぐらいだろう。

 隠されている地下空間。これほど怪しい場所はない。「EDEN」のことではないにしても、それに関する何かが分かるのではないかと思ったティナは、地下への隠し階段を探すことに目的をシフトさせた。

 

 そして見つけたのがこの厳重そうな扉だ。他の扉が木製でできているのに対し、この扉だけ鉄でできている。しかも、外見ではそれが分からないようになっていて、普通にしていたら分からないだろう。

 ならば何故この扉が鉄だと分かったかというと、すでに扉の内部にいるからだ。つまり、実際に扉に触れて確かめたのである。

 

 当然扉には鍵がかかっていたが、ティナには関係なかった。扉の僅かな隙間に剣撃を放ち、内部の錠だけを切り裂いたのだ。流石に強行突破はまずいかと思ったが、ここが怪しいという確信を持っていたのと、どうせ躊躇していても何も得ることはできないと考えたからだ。

 

「これで何も無かったらヤバかったですが、どうやらビンゴのようですね」

 

 部屋の内部には、案の定地下への降りる階段が存在していた。しかも床には、重なった三本の剣の両側から羽が生えている絵が描かれたカーペットが敷いてある。これは以前ユクモ村に行く道中で出会った、「EDEN」の研究員が胸にしていた紋章と同じ柄だ。

 

 さらに確信が深まったティナは、迷わず階段を降りることにした。

 

 

 階段を降りた先はさっきまでいた荘厳な内装と打って変わり、蛍光灯のようなものが廊下を薄く照らすだけの、質素というより不気味な空間だった。何かの研究でもしているのか、薄っすらと薬のような匂いが漂っている。

 

 さらに奥に進むと、信じられない光景が目に入った。なんとモンスターが巨大な檻の中に何頭も入れられているのだ。檻の数も一つや二つではなく、廊下の遥か向こうまで檻が続いている。檻の中にいるモンスターは明らかに状態が悪く、衰弱しきっているのが一目でわかる。

 そして、ティナにはこのような光景に見覚えがあった。

 

(私が幼少の頃にいた研究所……あそこの雰囲気にここは瓜二つです。ここが「EDEN」の研究所ということで、間違いはないでしょう。しかし、何故王宮にこんな場所が……?)

 

 疑問に思いつつも先に進もうと一歩を踏み出した、まさにその瞬間。ティナの意識は途絶えたのであった。

 

 

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(う、あ……頭が……!!これ以上を思い出そうとすると、何故か頭が痛くなります……!)

 

 その時、コツン、と靴の音が響いた。その音はどんどん大きくなってきており、こちらに何者かが近づいてきているのが嫌でも分かる。

 頭痛を意志の力で押さえ込んだティナは、音がする方向に油断なき目を向ける。が、その目はすぐに驚愕に見開かれることになる。

 

「お久しぶりですねぇ〜。我らが最高傑作よぉ〜」

「あ、貴方は……!!」

 

 

 …Now loading…

 

 

 おかしい。いくら待ってもティナが帰ってこない。そろそろあいつがこの部屋を出て行ってから1時間は立つはずだ。流石に帰ってきてもおかしくないはずなんだが……?

 

「ねぇルー?ティナ、ちょっと遅すぎない?」

 

 エスメダも同じことを思ったのだろう。こちらに不安そうな目を向けてくる。それに対して俺ができることは、ただ頷くことだけ。

 すまない……こればっかりはどうしようもない。

 

 ティナが何者かにやられたなどということは考えにくい。この王宮内については、さっき俺自身が確認したしな。あいつをどうにかできる強者は確認できなかった。

 何かに巻き込まれて帰還できない状況にあるとか?いや、ないな。ここは仮にも王宮だ。そんな場所で問題が起こる可能性はないに等しいだろう。

 しかし、それだとティナの気配が突然消えたことに説明がつかない。気配さえ察知できれば、どこにいるか分かるんだが……先程あいつの気配が煙のように消えてしまったのだ。やはり、危機的状況下にいるのだろうか……?くそっ!!どうする!?

 

 居ても立っても居られず、俺自ら探しに行こうかと思ったところで、扉がノックされた。

 

「失礼します。王の準備が整いました。玉座の間までお越しください」

 

 そう言って頭を下げた執事の顔に、気味の悪いほどの笑みが張り付いていたことなど、この時の俺は知る由もなかった。



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第25話.罠

「おや?お一人足りないようですが?」

 

 顔を上げた執事の男が怪訝な表情を浮かべた。

 

「あー、あいつのことなら気にしないでください。その内戻ってくると思いますので」

「さようですか……こちらも城内で見かけたら、お声をかけておきますね」

「よろしくお願いします」

 

 流石に女の子がトイレに行っているとは言えず、誤魔化してみたのだがなんとかなったようだな。

 ティナが帰ってこないのは心配だが、あいつのことだ。大丈夫だと信じたい。それにここで躊躇ったらさらに怪しまれるかもしれないしな。

 

「では玉座の間に案内致します。どうぞこちらに」

 

 とりあえず今は王との謁見だ。そういや礼儀作法とか全く知らないんだけど、大丈夫かな?

 

 

 …Now loading…

 

 

 玉座の間に入ると、レッドカーペットに沿ってズラッと並ぶ騎士たちの姿が目に入った。一瞬置物かとも思ったが、本物の騎士だろう。生物の気配がそこら中からしてるし。

 そして一番奥の少し高い位置に置かれた立派な玉座に座る1人の男。こいつがこの国の王で間違いない。大層な装飾が施された服を身に纏い、堂々とした態度はまさに王のそれだ。

 

 玉座の間の中心らへんまで進み、とりあえず跪いて挨拶を述べた。

 

「お初にお目にかかります、王よ。私はルー・アルジャン。そしてこちらはエスメダ・クラスタリアと申します。この度は謁見の機会を設けてくれまして、恐悦至極にございます」

 

 挨拶は人間だった頃に読んでいた小説のセリフを真似してみたんだが……これでいいのだろうか?

 

「うむ、面を上げい」

 

 どうやら無礼には至らなかったようだ。王の言葉に従って、跪いたままゆっくりと顔だけを上に上がる。

 

「我がこの国の国王、ユーサー・フォン・ペンドラゴンである」

 

 父親の名前はユーサーなのかよ!?偶然にしちゃあ出来過ぎじゃないか?

 心の中でそうツッコミを入れたのだが、次のユーサーの発言でそんな思考をする余裕は無くなった。

 

「ふん、犯罪人が随分と愁傷な態度を取るものだな。おい、本当にこやつらがやったのか?」

 

 ん?どういうことだ?今犯罪人とかなんとか聞こえた気がするんだが?

 ユーサーに話しかけられた男は、恭しくお辞儀をした後にこう言った。

 

「はい、左様にございます。この者共が我らが近衛騎士団副団長であらせられる、ケルバッシュ様に重傷を負わせたのでございます」

 

 はぁ?俺たちが副団長に重傷を負わせた?何を言ってるんだこいつは。副団長ならピンピンしたまま王宮まで戻ってきてたじゃないか。

 

「お礼がしたいというケルバッシュの気持ちを弄び、あまつさえ本人に怪我を負わせるその所業、誠に言語道断である!!兵達よ、こやつらを捕らえよ!!!」

「ちょっと待てよ!副団長なら王宮に戻ってきてるはずだろ!?」

「嘘を抜かすな!ケルバッシュ様なら現在病院にて治療中だ。本人に確認を取ったのだから間違いはない!王よ、下賎な犯罪者どもの言う事に耳を貸す必要はありませんぞ!」

 

 くそ!!弁解を聞く余地もなしかよ!しかし何故だ?俺たちを無実の罪で捕まえて、こいつらになんの得があると言うんだ?分からん……

 そう考えているうちにも、待機していた騎士達がジリジリと間合いを詰めてくる。

 

「ちょっと、ルー!どうするのよ!?」

 

 エスメダの焦った声が聞こえてくるが、今の俺はそれどころではなかった。

 せっかくこの街を雷竜から守ってやったというのに、この仕打ちはなんだ?ふざけるな。龍を愚弄した大罪、その身でもって償え!!

 完全に怒りのスイッチが入り、擬人化を解こうとする。しかし……

 

「何故だ……?元の姿に戻れない!?」

 

 擬人化を解くことが出来ないのだ。擬人化を解くというのは、押し込めていた力を一気に解放することと同義。つまり呼吸と同様に出来るはずなのである。なのに、それが出来ない。まるで縮めていたバネがそのまま固まってしまったかのように。

 

 俺の一瞬の気の迷いでできた隙に、騎士達が一斉に飛びかかってきた。擬人化を解けない動揺で動けなかった俺はあっさりと、人間を傷つける事を躊躇したエスメダも、すぐに捕まってしまった。

 

「そのもの達を地下牢に閉じ込めておくのだ!!」

 

 鋼鉄の鎖でグルグル巻きにされてしまった俺たちに為すすべはない。この姿では、鉄を無理な体勢から引きちぎれるほどの力を出すことができない。万事休すだ。

 そのまま兵士達に引っ張られ、どこかに連れられていく。おそらく地下牢とやらに向かっているのだろう。

 扉が閉まる瞬間、ユーサーの側にいた男が、薄気味悪い笑みを浮かべているのが脳裏から離れなかった。

 

 

 …Now loading…

 

 

「一体どうなってやがる……」

 

 城の一角にある牢屋に連れてこられた俺たちは、そこに放り込まれた後から放置されている。もちろん見張りはいるのだが、こちらに何かをしてくる気配は全くない。

 まあ、何かしてきても身動き取れないんだけどな。話が逸れた。問題は何故いきなり犯罪者の濡れ衣を着せられたのかって事だ。

 初めは極度のハンター嫌いな街の風習が関係してるのかと思ったが、それは違うだろう。そこまで嫌いだったらわざわざ王宮に呼んだりしない。

 というか、ケルバッシュが怪我を負ったってのもよく分からない。あいつは間違いなく王宮まで帰ってきていた。要するに、ケルバッシュの件は俺たちを嵌めるための嘘ってことになる。

 ていうか、あの側近っぽい男の説明もなんか曖昧だよなぁ。分かったのはケルバッシュが重傷を負ったというだけで、どこで、どういう風に、といった重要な点が出てない。仮にも主人への説明にそんな手抜きをするだろうか?

 くそ……ティナのこともあるし、何より未だに擬人化を解除できない……どうすれば?

 

「ねぇルー。私、1つ気になったんだけど」

 

 最初は混乱していたものの、時間が経って冷静になってきたエスメダが話しかけてきた。

 

「今回の件は完全に罠だったって事でいいのよね?」

「だろうな。あんな理不尽、王が相手じゃなかったら誰でも反論するレベルだし」

「そうよね。そこで思ったんだけど、私たちを捕らえたのって何か私たちに見せたくないものがある、もしくはそういう事をするって事なんじゃない?」

 

 見せたくない事をする、か……でもここは王宮だぞ?そんな場所で何をしようっていうんだ。ん?いや待てよ。王の側にいたあの男、胸に何かのエンブレムがあったような……確か、重なった3本の剣に翼が生えたような……ッ!?まさか!

 

「あのエンブレム……EDENのエンブレムか!」

「え、ちょ、どういうことよ?」

「王の側に立っていた男の胸に、前にユクモ村に行く途中で捕らえたEDENの研究員と同じエンブレムがあったんだよ!!」

「嘘!?じゃあ、王宮内部にまでEDENの勢力は伸びてるってこと?」

 

 だとしたらまずい。EDENはティナを生み出した機関だ。だったらあいつの力を無力化する方法があってもおかしくない……!

 今すぐ助けに……いや待て、冷静になるんだ俺。今俺たちが捕らえられた理由、もしかして何か大掛かりな実験でもするのではないか?それの邪魔をされないよう、巷で有名なエスメダと、ついでに俺も捕まえたと考えれば筋が通る。

 

「おいエスメダ。お前この鎖を壊せるか?」

「ちょっと無理すればいけるわ」

「OK。今から作戦を伝えるぞ……」

 

 急がなければ……手遅れになる前に!!

 

 

 …Now loading…

 

 

「いやぁ〜。まさかそちらから来てくださるとはぁ〜。探す手間が省けましたよぉ〜?」

「ミスター……!」

 

 ティナの前に現れた男。それは、以前のEDENの研究所で最高権力者を務めていた『ミスター』と呼ばれる男だった。

 

「こんな事をして、ただで済むと思っているのですか……?今すぐ拘束を解きなさい!」

 

 人類最強の威圧を受けても、ミスターは怯みもしない。

 

「おお、怖いですねぇ〜。落ち着いてくださいぃ〜。貴女に何かするつもりは、今はありませんよぉ〜?今は、ねぇ〜」

 

 ティナの顔を覗き込むようにしてミスターが言う。何もできずに悔しい彼女は、せめてもの抵抗にと頭突きをする。が、

 

「おおっとぉ〜。危なじゃないですかぁ〜?」

「貴方、その動きは!?」

 

 姿が霞むほどの速度で至近距離からの頭突きを避けるミスター。その速度は、G級ハンター並みといっても過言ではなかった。

 どう見てもミスターは戦闘向きの体格をしたいない。それなのに何故?と訝しむティナを見たミスターは続けて言う。

 

「はは、はは。では私はこれで失礼しますぅ〜。こう見えても忙しいのでねぇ〜。では御機嫌よう、我らが最高傑作ぅ〜」

 

 再び靴音を響かせながら遠ざかっていくミスターの後ろ姿を、ティナはただ見ていることしか出来ない。

 

「待ちなさい!」

 

 そう呼び止める声は、深い闇の中に吸い込まれていった。

 

 

 



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第26話.形成逆転の一手

「さて、と。急がなきゃな」

 

 現在、俺たちは牢屋の外に出ていた。

 何が起こったかというと、エスメダに鎖を破壊してもらい、看守を手刀の一撃で沈めて鍵を奪ったのだ。

 体術は前世で体得したものだが、数年経った今でも問題なく使えたので安心したな。

 

「ていうか、本当なの?EDENがこれから大掛かりな何かをしようとしてるってのは」

「確証はない。だがその可能性は大いにある。そして、それにティナが関わっている可能性もな」

 

 そうなのだ。EDENはティナを造った存在。ティナという存在を手中に収め直した彼らが、これを機にもっと大きな実験を行うかもしれない。そう考えると、俺たちに対する不可解な行為にも納得がいくってもんだ。

 未だに人化が解けないのは少し気がかりだが、この姿だと何もできないわけじゃない。それに急がないとティナの身が危険に晒されるかもしれないしな。

 よし、見張りはこいつ1人のようだな。今のうちに抜け出して、城内を調べにいくか。

 

 そう思った時だった。

 

 ピンポンパンポーン

 

 元いた世界のデパートでなるようなアナウンスの音が突如響き渡った。

 そして機械じみた声が聞こえ始める。

 

「牢屋から脱出したハンター2名。そのまま真っ直ぐ玉座の間まで来い。逃げたり抵抗してもらっても構わないが、お仲間の身を危険に晒したくなければ、賢い判断をすることだな」

 

 一方的にそう告げてきた機械じみた声は、もう一度アナウンスの音を響かせてプツリと途絶えた。

 放送の内容から察するに、俺が考えていた最悪の展開になってしまったようだ。

 

「くそっ!やはりティナは敵に捕らえられていたか!!もっと早く気づいてれば……」

 

 悔しさのあまり壁を思っ切り殴りつける。

 

「とりあえず、玉座の間にいきましょ。そこで奴らをぶちのめして、ティナを取り返せばいいんだから!」

「そうだな……待ってろよ、ティナ!」

 

 

 …Now loading…

 

 

 玉座の間には、先程と同じように甲冑に身を包んだ騎士が並んでいた。

 1つ違う点は、王が眠っているかのように俯いていることだ。

 

「来てやったぞ……用件はなんだ」

「しばし待て。今我らが主人がご到着なさる」

 

 王の側近ーー男Aとするーーだった男は、嘲るような目でこちらを見てきた。

 しかし、今我らが主人と言ったな……普通に考えれば主人というのは目の前にいる王の事になるのだろうが、流石にここまでくれば分かる。この王は仮初めの存在だと。恐らくEDENに操られでもしているのだろう。

 そして今からやってくる人物こそが、EDENの統率者、或いはそれに近い存在ってことか。

 

 しばらくして、玉座の真後ろにある扉が開き、白衣を纏った男が現れた。その男が現れた瞬間、男Aがひざまづいた。

 間違いない。こいつが……

 

「お初にお目にかかりますぅ〜。銀滅龍、そして五十勇士のエスメダさん。私はミスター。EDENのみんなをまとめている者ですぅ〜」

 

 ミスターと名乗った男は、一見すればただの科学者だ。しかしなんだろう。このなんとも言えない不可解な雰囲気は?

 というか、俺が銀滅龍ってことは普通にバレてるみたいだな。

 

「ティナは!ティナはどこなの!?」

 

 ずっと心配していたのだろう。エスメダがミスターに食ってかかる。

 

「おやおやぁ〜。これは失礼いたしましたぁ〜。君ぃ〜、連れてきて差し上げなさぃ〜」

「はっ!」

 

 ミスターに命じられた男Aが奥の扉の中に消えていった。少しして、ジャラジャラという音を響かせながら、鎖に繋がれたティナが現れた。

 

「うう……すいません。少しドジってしまいました……」

「ティナ……!よかった、元気そうね」

 

 確かにティナが無事だったのは喜ばしいことだが、問題はあのティナが鎖に繋がれているということだ。

 見た感じ普通の鎖っぽいし、だとしたらティナが拘束されているわけがない。あの程度すぐに引き千切って、反撃できるだろうから。

 

「お前、ティナに何をした?」

「はは、はは。何を、とは不思議なことを仰いますねぇ〜?こちらは私たちが造ったものなのですよぉ〜?制御方法ぐらい知ってて当然、ですよねぇ〜」

「俺の人化が解けないのも、お前たちの仕業だな?」

「大正解ですぅ〜。古龍の力なんてものはねぇ〜、龍脈の指向性を少し変えて仕舞えば、たちまち機能しなくなるのですよぉ〜」

 

 こいつ……今なんて言った?龍脈の指向性を変える?そんなことできるわけない。

 ただの人間には、そもそも龍脈を感じ取ることすら出来やしない。

 それに、もし龍脈を感じ取れたとしても、この星を構成するエネルギーである龍脈を弄れば、この星は瓦解してしまう。それなのにこいつは……!?

 

「今、そんなことできるわけない。龍脈を弄れば大変な事になる。そう思っていましたねぇ〜?」

「ぐっ……!」

「大丈夫なんですよぉ〜。指向性を変えると言っても、それは誤差。世界には何ら影響を与えるほどではありません〜。しかし、その程度でも、貴方達古龍種は力を発揮できなくなるぅ〜。脆いものですねぇ〜。生きる天災とも言われる方々がぁ〜?」

 

 なんて事だ……龍脈を操らなければ星雫も扱えない。こいつの支配下にあるこの場所では、どうあがいても古龍としての力を使えないってことか……

 

「さて、種明かしも終わりましたしぃ〜、お二人には再び牢屋に戻っていただきますぅ〜。我々はこれからとっても忙しくなるので、邪魔されると困るのですよぉ〜」

 

 そう言ってミスターが指示すると、注射器を持った男が近づいてきた。

 

「それはティガレックス希少種でも、一晩は眠らせる睡眠薬ですぅ〜。それを打ってもらいますぅ〜。寝て目がさめる頃には、全てが終わっておりますのでねぇ〜」

「冗談じゃないわよ!今すぐティナを解放しなさい!!」

 

 そう言ってエスメダが飛びかかろうとするが、ミスターがティナの首筋に別の注射器を当てているのを見て踏みとどまった。

 

「エスメダちゃん!私のことはいいですから、この男を止めてください!」

「いいんですかぁ〜?大切なお友達がどうなってもぉ〜?」

「くっ、卑怯者……!」

「賢い判断ですぅ〜。お前たち、やりなさい」

 

 どうやら騎士の格好をした者達もミスターの仲間だったようで、俺たちが逃げないようにぐるりと取り囲んできた。

 そして注射器を腕に刺され、中の薬品を注入される。

 エスメダは最初は抵抗していたようだが、すぐに睡魔が雪崩のように襲ってきて、眠ってしまった。そして俺も……

 

「連れて行きなさぃ〜」

 

 ミスターの命令に従い、騎士達が俺たちの体を担ぎ上げようとする。このままでは振り出しだ。一体どうすればいいんだー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なーんてな。

 

 腕を伸ばしてきた騎士の腹に素早く拳を入れて気絶させる。騎士達に動揺が走った隙にエスメダを回収。被害の及ばなそうな場所に横たわらせる。

 

「な、何故ですかぁ〜!?この薬品の前では、睡眠耐性など役に立ちはしないのにぃ〜!」

「残念だったなぁ!俺がもっているのは睡眠耐性じゃない。状態異常無効だ!!いくら強力な睡眠薬を盛られても、俺には効かないんだよ!」

 

 動揺の表情を浮かべていたミスターだったが、次第に落ち着きを取り戻して行き、余裕の表情を浮かべ始めた。

 

「はは、はは……」

「何がおかしい?」

「確かに少し驚きはしましたがぁ〜、所詮はそこまでですぅ〜。今の貴方に龍王と呼ばれる力はなぃ〜。それに対してこちらは……」

 

 ミスターがパチンと指を鳴らすと、残っている騎士達が苦しみ始めた。

 ひとしきり苦しんでから、突然静かになったかと思うと、ゴキン、ベキンというおおよそ人体からなるはずのない音を立てながら、騎士達の姿が変貌し始めた。

 

 全員身体が膨張して鎧が弾け飛び、あるものは鋭い鉤爪を、あるものは長くしなやかな尻尾を、あるものは鋭い牙をと言った具合に、身体の一部分が竜化したのだ。

 

「これは、一体!?」

「私たちの研究成果の1つ。部分竜化ですよぉ〜。人間の体に竜の力を移植させる……素晴らしい光景ですねぇ〜」

 

 竜化した騎士達は爛々と輝く赤い目をこちらに向けてくる。恐らく理性が吹き飛んでしまったのだろう。うめき声をあげながら戦闘態勢を取っている。

 

「今の貴方は所詮、多少身体能力が高いだけの人間ですぅ〜。その点、竜化兵は1人がG級ハンター相当の力を持っていますぅ〜。ここで最大の障害となる貴方を始末しておくのもいいかと思いましてねぇ〜。それに……」

 

 ミスターはティナの方を振り向き、続ける。

 

「ここで銀滅龍が死ぬのを見せれば、貴方も心変わりするかもしれませんしねぇ〜」

「このクズ……!」

 

 俺の頬を冷や汗が伝う

 確かに不利な状況だ。相手はざっと20人。しかも全員がG級ハンターと同じぐらいだという。かなりマズイ……

 

「せっかくの竜化兵初披露ですしぃ〜、少しは貴方にも頑張ってもらわなければなりませんねぇ〜。これでも使って、せいぜい足掻いてくださぃ〜」

 

 そう言ってミスターが投げてよこしたのは、ティナの太刀だった。

 この太刀の重さ、形状……これなら!

 

「やりなさいお前たちぃ〜。我らが悲願を果たすためにぃ〜」

 

 ミスターの命令の元、竜化兵達が殺到してくる。その姿に技術なんてものはないが、確かにスピードとパワーは相当なものだろう。だが……!

 

 次の瞬間、数人の竜化兵が吹き飛んだ。吹き飛んだ竜化兵は深く身体を切り裂かれており、再び立ち上がることはできないだろう。

 俺は体内から取り出した(・・・・・・・・・)星滅刀【銀閃】とティナの太刀、破魔刀【陽光】の二刀を構えて型を取った。

 

 この剣技を使うことになるとはな……見せてやるぜ、鳴雷流双剣術を。



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第27話.鳴雷流双剣術

久しぶりの連続投稿です。
定期的に投稿したいんですけどね……


『士狼!もっと脇を締めろ!』

『はい!父さん!』

 

 あぁ、懐かしいな……

 小さい頃は、よく親父に道場でしごかれてたっけ。

 俺が中学生になる頃には、剣道協会の仕事が忙しいらしくてあんまり会えなかったけど、剣術の修練だけは欠かさず行っていた。

 

 鳴雷流双剣術。

 俺の曾祖父さんの曾祖父さん……いや、爺さんだっけ?まぁそれぐらい前に編み出された剣術の流派。

 剣道は魅せる剣技だが、うちの剣術は違う。その本質は相手を効率よく殺すこと。それに重きを置いたのが鳴雷流双剣術だ。

 なんでそんなもんを子供の頃から修練していたのかというと、まぁ色々あるだろ?家の事情なんて。

 

 まさかモンハン世界で、しかもモンスターに転生したのに、これを使うことになるとは思わなかった。が、そんなことはいい。

 親父から受け継いだこの剣技、大切なものを守るために使わせてもらうぜ。

 

 

 …Now loading…

 

 

「何をやってるのですかお前たちぃ〜!?相手はたかが1人ですよぉ〜!」

 

 ミスターの怒鳴り声と同時に、竜化兵の動きが激しくなった。恐らくある程度はコントロール出来るのだろう。

 だが、がむしゃらに突っ込んできてくれるなら好都合だ。

 

 肥大化した爪を竜化兵が突き出してくる。その速度は確かに速いが、所詮そこまで。なんの技術もないただの突きなら、嫌という程対処してきた。

 二刀で爪の一撃を防ぎ、流れるように後方にいなす。そして相手の攻撃の勢いを利用して上半身を捻り、側面から二刀で切り裂く。その動作に隙はなく、相手の技後硬直を突いた完璧なカウンターだ。

 

 ーー鳴雷流双剣術四の刃 反射の牙ーー

 

 今度は多方向からの同時攻撃か。少しは頭が回るのか?しかし!

 片足を軸に回転し、飛びかかってくる竜化兵を全方位に向けて切り裂く。二刀が竜化兵達を二度三度と切り裂き、真っ二つにされた竜化兵が地面に落下した。

 

 ーー鳴雷流双剣術三の刃 無情の剣界ーー

 

 今の一撃で随分数が減ったみたいだな。倒れてる竜化兵が9人ってことは、あと10人前後か。

 操作をしているミスターが驚いているからか、竜化兵の動きが止まっている。この隙に決める!!

 二刀を使う利点はこのような多対一の時に真価を発揮する。流れるように太刀を振るうことで、相手に付け入る隙を与えず、かつ手数を増やすことができる。その分難易度は跳ね上がるけどな。

 8人ほどの竜化兵を一瞬のうちに切り捨て、残るはあと1人。ここでようやく気を取り直しかのか、最後の竜化兵が動き始めた。

 

「はは、はは。貴方が人間形態でもこんなに強いとは、驚きましたぁ〜。しかし、最後の1人はそうはいきませんよぉ〜?ソレは様々なモンスターの特性を持つ……」

 

 ミスターが何やらペラペラと話し始めたので、俺は待ったをかけた。

 

「もう終わってるぞ」

「は?」

「だから、もう終わってると言ってるんだ」

 

 次の瞬間、最後の竜化兵の身体に割れ目が入り、そのまま真っ二つに裂けた。

 

 ーー鳴雷流双剣術一の刃 轟雷ーー

 

 血がついた二刀を素早く振るって血糊を飛ばし、鞘に収める。

 ふぅ。かなり久しぶりに使ったけど、問題なかったな。やはり小さい頃から修練を続けていたから、身体が覚えていたんだな。さて、邪魔な障害は取り払った。後は……

 

「おい、エスメダ起きろ」

「すぅ……すぅ……」

 

 隅に寝かせておいたエスメダに声をかけるが、一向に起きる気配がない。さしものエスメダも、大轟竜を昏睡させる薬品には勝てなかったようだ。

 

「仕方ない。少し痛いが、我慢してくれよ……」

 

 俺はエスメダをうつ伏せにし、背中にあるツボを数カ所ついた。

 

「痛っったぁぁい!!!」

「お、起きたか。おはようエスメダ」

「おはようじゃないわよ!あんた何したの!?」

 

 背中のあるツボを数カ所押すと、目覚めの効果がある。これも前世の頃親父に教わった知識だ。なんか今日は親父に助けられてばっかだな……

 

「まあまあ、それに今はそれどころじゃないだろ?」

「そうよ!あの後どうなったの?確か睡眠薬を打たれたとこまでは覚えてるんだけど……」

 

 エスメダに寝ていた間のことを教えてやったら、何故か呆れられた。やっぱりあんたは規格外だわ。とか言いながら。助けてやったというのに、解せん。

 

「さて、これで形成逆転だな。ミスター」

 

 俺は唖然としているミスターに向き直る。

 

「馬鹿な……馬鹿な……!あれは竜化兵の中でも特に優秀なモノだったのですよぉ〜?それを、一撃でぇ〜?」

「知ったことじゃないな。お前の手駒はもういないぞ。さっさとティナを返してもらおうか」

「よくも卑怯な手を使ってくれたわね……タダじゃおかないわよ?」

 

 俺は二刀を、エスメダは竜化兵が持っていた大きめの剣を構えてミスターに迫る。

 が、何やらミスターの様子がおかしい。俯いたまま何かをブツブツと言っているようだ。自慢の竜化兵があっさり倒されて、気でもおかしくなったのだろうか?

 

「はは、はは、はははははははははは!!!」

「な、なんだ……?」

 

 こいつ、いきなり両手を広げながら大声で笑いだしたぞ。本当に狂っちまったのか?

 

「もういいです。ええ、もういいですともぉ〜!!私の思い通りにならないモノ達なんてぇ〜!」

 

 そう言いながらミスターはポケットから何かのボタンを取り出して、ポチッと押した。

 

「お前、そのボタンはなんだ!?」

「これはですねぇ〜、街中(・・)の人を竜化させるボタンなんですよぉ〜!!はは、はは。すぐにでも王都は混乱の渦に巻き込まれるでしょうねぇ〜!」

「なんだと……!?」

 

 こいつ、自分が不利になるや否や、なりふり構わずとんでもないことしやがった!

 街にもこいつの影響を受けてる人がいるってことか……そんなことが街中で起これば、王都は地獄と化す……!

 

「くっ……手前ぇ!!」

 

 ”轟雷”でミスターの身体を真っ二つにするも、彼の声は尚も聞こえてきた。どうやら体内にスピーカーのようなものを仕込んでいたようだ。

 

『その身体はクローン技術で作った分身体ですぅ〜。なので殺してもらっても構いません。早く暴れる町人達をなんとかしないと、大変なことになっちゃいますよぉ〜?では、私はこれで失礼させてもらいますぅ〜。御機嫌よう!』

 

 ブツンという音が聞こえ、ミスターの声は聞こえなくなった。

 

「ティナ!」

 

 街の方もかなりやばい状況だろうが、今はティナの安全を確保するのが先だ。彼女を縛っている鎖を二刀で切り裂き、解放する。

 

「す、すいません……心配をかけてしまいました……」

「気にすんな。なぁエスメダ?」

「ええ。なんの問題もないわ。だって私たち、仲間でしょう?」

「ありがとう、ございます……!」

 

 ミスターの制御はすでに解けているらしく、元どおりの力を出せるとティナは言うが、まだ心配だから俺たち2人のどちらかとは必ず一緒にいるよう言っておいた。

 

「くそ、外から人の叫び声が聞こえ始めたな……」

「早く止めないと、街が血の海に沈んでしまいます!」

「そうね、なら早く行きましょ!」

 

 そう言って部屋を出て行こうとするエスメダの肩を掴んで引きとどめた。

 

「待て待て。俺たちにはもう1人仲間がいるだろう?」

「あ」

「エスメダちゃん……焦ると視野が狭くなる癖、相変わらずですね……」

 

 エスメダにそんな癖があるのか。てかアーサーのことを忘れてたのは癖のせいなのか。少し安心したような、呆れたような……

 

「よし。エスメダはティナと一緒にアーサーの確保を頼む。おそらく城内のどこかにいるはずだ」

「分かったわ。でも街の人たちはどうするのよ?まさか、全員殺すんじゃ……」

 

 やめてくれ。俺は大量殺人者になるつもりはない。

 確かにこの頃容赦ないことが多かったが、それぐらいの容赦ならするぞ。

 

「安心しろ。人間を無力化する方法なら知ってる。とりあえず全員無力化して、一箇所にまとめておくことにする」

「分かりました。こちらもアーサー君を見つけたら、そちらに合流しますね」

「ああ、無理すんなよ?」

「大丈夫よ。私がしっかりと見張ってるから」

 

 これからの行動も決まったことだし、早速街に行くとしよう。遅くなればなるほど、被害が拡大する一方だからな。

 そう思って走り出そうとしたその時、玉座の間の正面の扉が勢いよく開いて、1人の男が駆け込んできた。

 

「王よ、ご無事ですか!?」

 

 それは俺たちも勝った人物。近衛騎士団副団長、ケルバッシュだった。

 

 

 

 

 

 




と言うわけで、オウガさんの生前の本名は【鳴雷 士狼】(なるかみ しろう)でした。

鳴雷家は代々剣道の名門として知られてきたのですが、何故対人用の剣術を教えられていたのか。それについては、少しずつ明らかになっていきますので、乞うご期待を!


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