CiRCLEのアルバイト生活 〜失いながら手にしたモノ〜 (わらびもち二世)
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0. CiRCLEのアルバイト生活 プロローグ

はじめまして。わらびもちです!
初投稿なので、色々と拙いかもしれませんがよろしくお願いします。

平和な日常書きつつ、合間に各キャラとの出会いの話とかを書いていけたらなと思っていますm(_ _)m

以下主人公の設定を少しだけ紹介します。


名前 朝倉竜二
物心ついた時には既に両親を亡くしているのと、育った場所が海外で環境が特殊だった為本人も実年齢はわかっていない。きっと20歳過ぎくらい。
小さなアパートで一人暮らしをしている。
特技 アコースティックギターをこよなく愛している。
エレキギターもそれなりには弾く。

CiRCLEには訳あって手伝いをしている。
毎日ではないが気が向いた時だけまりなの手伝いをしている。
日本には3年ほどから来ていて、それまでは何をしていたのか不明。

とある事情から皆には嘘をついて18歳ということにしてある。
竜二の身辺事情を少しだけだ把握しているのはまりなだけである。


それでは是非読んでみてくださいm(_ _)m




どうも、俺の名前は朝倉竜二と言うんだが

ちょっとしたツテがあってこのCiRCLEと言うライブハウスと音楽スタジオを経営しているところでバイトさせてもらっている。

 

と言っても日雇いのバイトだからいつ辞めても良いとも言われているんだが、せめて雇ってくれた分だけは責務を果たそうとそんな感じで日々生きている。

ここには今まで色々な出会いがあったが、それは後々に話していきたい。

 

「竜二くーん、そこのマイク片付けて置いてねー」

「はいよー」

今俺を呼んだのはこのライブハウスのスタッフで俺をオーナーと共にCiRCLEに入れてくれたまりなだ。まりなとはここで働く前から知り合いだったりする。

 

「そういえば、週末のライブってどうなったっけ」

「どうなったって?」

「いや、どのバンドが出るんだっけなぁって、覚えてなくてな」

まりながため息混じりに

「まったく、今週はRoseliaさんが出るってあれほど言ったのにもう忘れてるなんてみんな怒るよー」

 

あぁ、そういえばそうだったな、すっかり忘れてた。申し訳ない。

CiRCLEのアルバイトは好きな時に来て適当にやっているだけで不定期だったりする。

いないときは1週間くらいいないし、うっかりしていた。

「この事をみんなには言うなよな?怒ると怖いし特に友希那と紗夜」

「はいはい。そのかわり週末はちゃんと来てアドバイスしてあげてね。みんな楽しみにしてたんだから」

「了解、アドバイス出来るかは分からんが来るは来るよ」

 

とまぁ今Roselia(ロゼリア)と言うバンドの話が出たが友希那はそこのボーカルで紗夜はギターをやってる。

よくこのCiRCLEに来るんだよな。他にも色々なバンドが来るがそれもまた後々話すとしよう。

 

「今更だけど色々あったよね。この一年。あの時は結構無理矢理に誘っちゃったし後悔してない?」

まりなが不安そうに訪ねて来る。

「そんな訳ないだろ、今ではまりなとオーナーには感謝してるぞ。ここに来てから色々な出会いがあったし、こんな俺でもやれる事があったからな」

「本当にありがとうな」

「そんなそんな!私は何もしてないよ!」

「そんな事ないだろ、まったく俺の周りの人達は優しすぎるぜ」

「それを竜二くんが言うのはなんだかな〜って感じ」

ん?

「どう言う事だ?」

「なんでもないよー」

 

CiRCLEには色々な出会いや始まりがあったりする。

それはいつか語る日が来るかもしれないが、ひとまずはここでなんて事ない日常を過ごしていくそんなお話だ。




なにせ初だったので、どう書いていいか分からず四苦八苦してました!笑
更新頻度どのくらいになるかわかりませんが感想などあればよろしくお願いします。


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1. Roseliaとのライブ風景 前編

ようやく始まりました!
主人公は社会人で謎が多いですが、徐々に明かしていけたら良いかと思います。
CiRCLE以外の日常何してるのかも謎という。
その辺の話を書くのはまだまだ先だと思うので日常をのんびりお楽しみください。


ガラガラー

今日はRoseliaのライブの日、昼過ぎたった今メンバーが到着したところだ

「おー、来たか来たか!」

 

「竜二!(さん、くん)」

「竜二さんがもう来てるなんて珍しい!」

1番に話しかけて来たのはRoseliaのドラム宇田川あこだ。中学3年生なのにもかかわらずパワフルなドラムを叩く。

 

「竜二さんいつもは遅れて来るのに珍しいですね。」

そんな横にいるのは白金燐子、キーボード担当で高校2年生、あことは歳も離れているが親友と呼べるほどの仲だ。

 

「たまにはいいだろー、そんなに俺にお出迎えされるのが嫌かそうかそうか」

「そんなこと言ってないわ!それなら朝にでも連絡くれればいいじゃない」

今話してるのがこの前まりなと話していたRoseliaのボーカル湊友希那だ。

高校2年生でRoseliaのボーカルをやっている。

 

「どっち道昼頃会えるからいいかなと思ってな」

「竜二〜ダメだよ〜!せっかく久しぶりに朝から一緒に遊べたかもしれないのに、みんな楽しみにしてたんだから」

少しギャルっぽい見た目だがいつも真面目にバンドを考えてるベース、今井リサ、高校2年生で友希那とは幼馴染だ。

 

「悪い悪い。次からはちゃんと連絡するから」

「まったく、竜二くんの駄目なところですよ。久しぶりに話したい事もあるんですから」

今話しかけて来たのが最後のメンバー、氷川紗夜だ。Roseliaのギター担当で高校2年生、厳しそうに見えるけど根は優しくていい子である。

 

リサとあこと燐子はまりなさんに会いに行った。

「竜二、頼りにしてるわよ」

「って言われても友希那。特に俺が何するわけでもないけどな」

紗夜の方を見ると

「そんなことないです。一緒にいてリハーサル見てくれるだけでもいいですから」

「そんなのでいいならお安い御用だ」

「それと竜二、後で楽屋でもアコギでセッションするわよ」

「お前なぁ、これからライブするのに歌うのかよ」

「仕方ないわ。私も湊さんも竜二くんのギターとセッションするの楽しみにしてたんですから」

少し照れながら紗夜が言うが友希那を見てみると

「そうなのか友希那?」

「そ、そうよ!なにかおかしいかしら!」

なんだか可愛い反応だな

「まぁべつにいいが、程々にするぞ。これでライブ歌えなかったら笑えないからな」

「まったく、私を誰だと思っているの?心配は無用よ」

ったく相変わらずの自信だな。そして相変わらずカッコ良いな。

 

実はRoselia全員と一緒にいるのは案外珍しい。

個々に来たりして会ったりはするが、全員一緒にはライブ、スタジオ練習の時だけだからな。タイミングが合わないと入れ違いとかになったりもするし、

「それじゃ後で楽屋に行くから何かあったら声かけてな」

1人椅子に座る。テーブルには飲み物だけが置いてある。いつもの特等席というやつだ。

 

「竜二!最近あんまり見てなかったけど何してたの〜?」

リサか

「あー、入れ違いだったよな!って言っても先週会っただろ」

「ええ!先週なんて結構前じゃん!連絡もないから心配してたのに〜!」

「悪かったよ。心配なら連絡くれれば良かったじゃないか」

「だってさー、なんか忙しいのかな?とか色々考えて連絡出来なかったの」

「連絡くらいしてくれたら返すから気兼ねなくしてこれば良いんだよ。」

でもまぁ色々気を使ってくれたんだな

「でも、サンキューな」

「う、ううん、アタシが勝手に心配してただけだからいいよ!いいよ!竜二が元気ならアタシはそれでオッケー」

なんか焦るようなこと言ったかな。

 

「リサ姉ーそろそろ楽屋にいくよー」

あこがリサを呼びに来た

「竜二さんも来てくださいよー!」

「じゃあ行くかリサ」

「うん!」

 

さてと楽屋に来たわけだが、リハーサルまで時間もまだある。

俺はいつも通りアコギを手にする。

「いつでもいいわよ。竜二」

そして適当にコードを鳴らすとみんな乗ってくる。もちろんドラムだけはないからカホンという箱型のリズム楽器とベース、キーボード、ギター、そして友希那の歌

このジャムセッション的なのが毎回恒例だったりする。

 

「やっぱり凄いわ。竜二くんのギターは聴いてて引き込まれる。素晴らしいわ」

実際そんなに難しい事をしているわけじゃないけどな。

「そういう紗夜もめっちゃイケてるギター弾くようになったなー」

「それもこれも全部竜二くんのおかげです。私が自分の音を見つけられたのは」

「あこもカホンやるなんて思ってもなかったです!」

「竜二さんはライブは一緒にやってはないですけど、Roseliaにとっては大切な存在ですよ」

「燐子もあこもいつのまにか凄い上手くなったよなぁ」

「りんりんはあこの自慢のキーボーディストだからね!」

「そんなあこちゃん。私なんてまだまだだよ」

「アタシはアタシは?!結構ベース上達したと思うんだけどなぁ」

「リサも最初の頃に比べたら段違いだな。あの頃は必死だったもんな?」

「こらこら!恥ずかしいから思い出させないで!」

 

いつも楽屋はこんな感じで賑やかだ。

一通り弾き倒したあと、リハーサルが始まる。

サウンドチェックも難なく終わりもうすぐ本番だ。

 




Roselia回だけで少し時間かかりそうです!笑
のんびり投稿していきます。


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2. Roseliaとのライブ風景 後編

遅くなりました!第二話ですm(_ _)m
ゆっくり読んで行ってください。


いよいよRoseliaのライブが始まる直前楽屋裏…

「それじゃ、皆頑張れよ!客席の方から見てるから」

 

各々が元気に返事をくれる。今思えばかなり皆と親しくなったもんだなぁ。

「Roselia!出るわよ!」

友希那の声と共にステージに上がって行く。

来ているファンの歓声と共に轟音が鳴り響いて、そして彼女たちのステージが始まった!

 

俺はまりなと一緒にステージを見ていた。

「お!この曲はLOUDERか!」

「かっこいいよね〜!LOUDER」

「最初に持ってくるとはかなり気合いが入ってるな今日は」

「それは珍しく誰かさんがいるからじゃないのかなぁ?」

なんかジト目で見られてる気がするな。よくわからんが…

「ん?どゆことだ?」

「なんでもないよ〜」

 

ライブも終盤になって最後の曲に差し掛かった頃…

友希那がmcでマイクを握る。

「今日は、いつも私たちを影で支えてくれている人が珍しくライブを見てくれてるわ」

「だからその人にも大きくなったRoseliaを見てもらう為にも全力で歌います。聴いて行ってください Re:birthday」

 

♪〜♪〜♪

 

そして最後の曲が始まる。

本当に、いつのまにかこんなに大きなバンドになるなんてな。

きっとまだまだ成長していくんだろう

こうしてRoseliaのワンマンライブは無事終了した。

 

さてと楽屋に行ってやるかな。

「おつかれ〜、今日のライブも最高だったぜ」

「当然よ。竜二も最後まで見ててくれて嬉しいわ」

「それより友希那!お前最後のmcにああいうこと言うなよな〜、なんか照れ臭いだろ?」

「い、いいじゃない!本当の事なんだから!今日は言いたい気分だったのよ」

お互いに若干の恥ずかしさがあったみたいだ。

 

「ねー!ねー!あこのドラムどうでしたか!?前と比べて!」

「すげー良かったと思うぞ!めっちゃパワフルになってたしな!」

「えへへ!嬉しいです!お姉ちゃんに少し近づけたかも!」

「竜二〜疲れたよ〜!」

あこと話してると突然後ろから抱きつかれる

 

「リサかよ!急にくっつくな!びびったわ!」

「ねね!アタシのベースも結構イケてるようになったっしょ!」

「ったく。そうだなリサもいつの間にか凄い上手くなったよなぁ」

「あんがと〜!今日は竜二が見てるからいつも以上に頑張ったんだ〜」

「それはいいけど少し離れろ。なんか友希那が見てるこわい」

「あはは、ごめんごめん。」

少し悪戯な顔で申し訳なさそうに友希那の方に向かって行った。

 

「お疲れさま竜二くん。今日の私のギターどうでしたか?」

椅子で休んでいる紗夜に話しかけられる。

「あぁ紗夜か、そうだな。今日はいつも以上に気持ちの乗ったギターでめっちゃ良かったぜ」

「ありがとう。今日は竜二くんが見に来ているんです、下手な演奏は見せられませんから」

少しだけ嬉しそうに紗夜は答えた。

「そう言われると俺も悪い気はしないな」

「紗夜のギタースタイルも完全に出来上がったよなぁ」

「ほ、ほんとかしら?!それもこれも竜二くんのおかげです」

「んなことないと思うけどな、紗夜の実力だよ。な?燐子!」

 

少し離れてた燐子に呼びかける。

「あ!竜二さんお疲れ様です!」

「サンキュ!な!な!今日の紗夜イカしてたよな!」

「はい!いつも以上に素晴らしい演奏でした!」

「白金さん…!ありがとう…」

「ま、そんな燐子もいつになく余裕そうに弾けてたよな」

「そ、そうでしょうか?でもやっぱりこの6人でいる時が一番安心して弾ける気がします」

「そうかそうか!俺の存在も少しながら燐子の助けになってるとはなー!」

「す、少しなんかじゃないですよ…」

燐子が何か言った気がしたが、周りの話し声であまり聞こえなかった

「ん?燐子何か言ったか?」

「な、なんでもないです!」

 

たまにCiRCLEでライブをしにくるとこんな感じに始まりも終わりも騒がしく、楽しい1日になる。

結局片付けが終わってファンが帰ってもライブハウスを閉めるまでいつもみんなで話していくんだよな。

 

「そろそろ閉めるぞ!ほらほら解散解散〜!」

そろそろ閉めようと声をかけると友希那とリサが話しかけてくる。

「竜二!この後時間はあるかしら?」

「このあとみんなで打ち上げ行こうと思うんだけど〜、竜二もどうかな?」

「へいへい!行くよ。どうせ強制なんだろうが」

こんなこと言っているが、俺も最初からこうなると思ってたんだよなぁ

「竜二くん。時には潔さも大切です」

「一緒に行きましょうよ〜!」

「わ、私も竜二さんと打ち上げ行きたいです。」

Roselia全員に言われたら流石に断れないよな、

「よしじゃあいつも通り、ファミレス行くかー」

 

こうしてまだまだRoseliaとの1日はは続いて行く。




Roseliaライブでの日常をなんとか2話で書き終えました!
次からはバンドに焦点当てるか、キャラに焦点あてるかはまだ考えてませんがマイペースに投稿していきますのでよろしくお願いしますm(_ _)m


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3. ピンクな髪の女の子がバイト先にいたら 前編

今回は彩ちゃんに焦点を当てて見ましたm(_ _)m
パスパレ ができる前の話です。ゆっくりしていってください。


俺はなぜか今隣町に来ていた。

今朝急に電話がかかって来て、昼に待ち合わせの用事ができたからだ

ちなみに普通にハンバーガーショップにご飯を食べに来ただけだが、そんなこんなで待ち人が遠くから手を振ってやって来た。

「竜二く〜ん!ごめん。少し仕事で遅くなっちゃって」

俺に申し訳なさそうに謝るピンクな髪のツインテの女の子は丸山彩と言う。

アイドルバンドPastel*Palettesのボーカルで高校二年生の女の子だ。

 

「お、来たか、別にそんなに待ってないから大丈夫だぞ。仕事おつかれ。それよりこんな場所で良かったのか?」

「ありがと!ここは竜二くんと初めて会った場所だし、私にとっては特別な場所だよ?」

そうは言うが単なるハンバーガーショップなんだけどな。

「彩がいいならいいけどよ、とりあえず座ろうぜ」

「うん!えへへ、竜二くんと久しぶりに会えて嬉しいな〜!』

「この前ライブしにCiRCLE来てたじゃねーか」

「そ、そうだけど〜!でもそうじゃなくて…」

「でも2人だけで過ごすのは久々だよな、そういう点では俺も嬉しいかもな」

 

ん?なんかおかしなこと言ったか?彩が固まってるが。

「ん?どした彩?」

「う、ううん!なんでもない!なんでもないよ!」

やけに顔が赤いのは気のせいだろうか。

にしても懐かしいなぁ、ここは確かに色々な思い出が詰まってる場所だよな。

 

 

俺がまだここで働いていたあの頃とかな…

彩とはここでアルバイトしている時に知り合ったんだよな。

あれは知り合って1カ月くらいの頃だっけか。

 

少し前に遡る…

 

「ありがとうございました〜」

2人してお辞儀をする。今ので最後のお客さんだ。

「にしても丸山もだいぶ慣れて来たよな」

「いえいえ!これも朝倉さんの教え方が上手だからですよ!」

俺はあんまり相手の事情には踏み込まないタイプだけど、今日は珍しくプライベートの話になった。

 

「朝倉さんってバイト以外は普段はなにをして過ごしてるんですか?」

「急だな。そうだなー、バイトしてない時か、特になんもしてない気がするなー」

「なるほど、意外ですね。なんか朝倉さんはとても忙しそうなイメージがあったので」

「まぁそれは間違ってないかもな、仕事ばかりしてるって感じだな。そういう丸山は普段なにしてるんだ?」

「わ、私ですか?」

「そうそう、バイト一生懸命やる理由でもあるなかと思ってな」

「…ドル目指してるんです」

「ん?なんだって?ごめん聞こえなかった」

「その、アイドル目指してて養成所のお金とかを稼いでるんです。」

少しうつむきながら続けて答えた

「やっぱり変ですよね、私なんかがアイドルなんて、その、笑っても全然大丈夫ですよ!」

「なんで笑うんだ?」

丸山が戸惑った声を出す。

「え?でも!アイドルですよ!?普通なら笑われてもおかしくないですから…」

「アイドルの事はよくわからんが、本気でやってるんなら笑う要素ないだろ。それに丸山は真剣に頑張ってるんだろ?だったらそんな俯くなよ、もっと自信持てって」

丸山は少し涙ぐんだ

「あ、朝倉さん…!ありがとうございます!私、そんな風に言ってもらった事なくて、こんな私でもアイドルになれるでしょうか…⁈」

おいおい、まさか泣くとは予想外だぞ!

「ったく泣くなよ?俺は丸山ならアイドルなれると思うぞ。それに俺に手伝えることがあったらなんでも手伝うぜ」

そうやって丸山の頭に手を置いた。

「あ、朝倉さん…!あ、ありがとうございます…」

少し顔が紅くみえたのは気のせいか。

 

「竜二でいいし、敬語使わなくていいぞ。あんまりさん付けされるのもむず痒いんだよな」

「ありがとう!」

「じゃあり、竜二くんって呼ぶね…!私のことは彩って呼んで竜二くん!」

「おう、彩な!アイドル頑張れよ!じゃあそろそろ閉めて帰るか!」

「うん!」

 

回想終了

 

そういえばこんな事もあったよなー

今思えばこの時はまだパスパレは結成してなかったんだよなぁ。

この店のお陰で花音とも知り合ったんだっけか…

 

「竜二くん!聞いてる?竜二くん!」

「あーわりぃ、ちょっと考え事してて聞いてなかった」

「もう!頼むの決まったなら呼んじゃうけどどうする?」

「オッケー、とりあえず呼んだら決めるよ」

 

あの頃に比べてめっちゃ話すようになったよな彩も。

今日はまだまだ彩に付き合わされそうだな。




後編に続きます。


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4. ピンクな髪の女の子がバイト先にいたら 後編

とてもお久しぶりです!
まだサイトのページに慣れていなくて、感想など色々気付くのに遅くなりました!ご指摘、感想などくれた方々ありがとうございます!

まだまだ文章力低いですが、少しずつ安定して行けるように頑張っていくのでよろしくお願いしますm(_ _)m

今回は前回の彩ちゃん回後編です。


ハンバーガーショップに普通にいるわけだがよくこの場所で彩は気付かれないな、芸能人オーラが足りないぞ!

「ねぇねぇ竜二くん!最近はCiRCLEでのバイト忙しい?」

「いや特には、でもそうだな…強いて言うなら・・・お前らが忙しくしてんだろっ」

「あいたっ!酷いよ竜二くん!」

軽くチョップをお見舞いしてやった。

 

「それなら!たまには私がCiRCLEのバイト手伝うのってどうかな?まりなさんに言えばきっとオッケーしてくれると思うよ!」

「そうだな〜、確かにまりななら良いって言うとは思うけどそれはダメだ」

「えーなんで〜!」

「お前なぁ、昔ならまだしも今はテレビにも出てるアイドルだろ?俺なんかの手伝いしてないで色々やることあるだろ」

俺はほとんどテレビは見ないが、彩たちPastel*Palettesはテレビにも出てるアイドルバンドらしいからな。

 

「うぐっ、すみませんでした。でも!CiRCLEくらいしか竜二くんに会える機会そんなにないし!」

彩の言うようにCiRCLEで会うバンドの面々とは外で会うことはあまりない。時折街でたまに出会うくらいだ。

 

「それは確かに。けどこの前千聖から聞いたぞ〜。彩が勉強あんまり出来てないらしいってな」

この前千聖がCiRCLE来た時そんな事言ってたっけか・・・

 

「ええ!千聖ちゃんなんで竜二くんにバラすの〜!・・・でもそれなら竜二くんが勉強教えてくれれば・・・いいんじゃないかな?」

断られると思ってるのか、彩は少し控えめにそう言った。

「今からだったら教えてやる」

「ええ!今から?!せっかくのお休みなのに!でも勉強しなきゃいけないもんね・・・うう」

「はぁ。ったく仕方ないなぁ、じゃあここじゃ騒がしいし移動するか。場所はそうだな、CiRCLE今日は休みだからカウンターでも借りてお茶でも飲みながら勉強するか」

「やった!それじゃCiRCLEにれっつごー!」

何故かCiRCLEで勉強する事になったので早速向かうことにした。

 

 

CiRCLE着

 

「よし着いた!早速勉強するか!」

「もう?!少しくらいゆっくりしようよ!」

「さっき散々ゆっくりしたろ!ったく、終わってから話でもなんでもしてやるから今は勉強な」

「ん?今なんでもって・・・ううん!なんでもない!」

なんだなんだ。そんなとてつもないお願いでもするつもりか彩よ。

 

そしてしばらく勉強の時間が2時間くらい経って外も暗くなってきた頃。

「そうそう!その答えで合ってるぞ!なんだよ〜結構出来るじゃねぇか。もっとやばいかと思ってたわ」

「いつもはなんとかなるんだけど、最近はパスパレの活動が特に忙しくて学校お休みする事もあったから授業について行けてなくて」

あー、そういえばアイドルだし学校常に通えるわけでもないのか。

「そっかそっか、それなら無理もないか。でもこのくらい教えるだけならそんなに苦じゃないし、また授業着いていけなくなったら言えよ」

俺の発言が意外だったのか、彩は何故かすごい驚いた顔で

「え!それって、また竜二くんに頼めば勉強に付き合ってくれるってと!?」

「ああ」

「やったー!それならじゃんじゃんお願いしちゃおうかな?」

「あくまでも!勉強に着いていけなくなったらだからな!!」

まったく、一応釘を刺して置いたが、本当に大丈夫だろうな・・・

「はーい!」

 

気がつくともう19時ごろになっていた。

「なんだかんだで遅くなっちまったな。送ってやるからそろそろ帰るぞ」

「いつも家まで送ってくれてありがとね」

 

CiRCLEの戸締りをしてから彩と一緒に帰り道を歩いていた。色々話してた中、彩が思いついたように聞いてきた。

「ねぇ竜二くん!ほんとに今更だけど竜二くんから見てパスパレってどうかな?バンドとしてもアイドルとしてもどういう風に見えてるのか気になって・・・」

彩の質問に対してどういう答えが正しいかわからなかったから俺は素直に気持ちを口にした。

「俺もそんなにアイドルとか詳しい訳じゃないしテレビも全然見ないからなぁ・・・ただ・・・俺は好きかな。いつも近くで演奏とか歌を聴いて色々な物を貰ってる」

「色々思い悩んだりする時とかPastel*Palettesの曲聴いて元気貰ったりもするくらいには好きだぜ」

実際色々ナイーブになったりする時にパスパレの演奏や楽曲を聴くと元気を貰える時があるからな。

 

「えへへ、なんか嬉しいな。少しでも竜二くんを元気にしてあげれてるなら尚更嬉しい。でもそんなパスパレに元気をいつもくれるのは竜二くんなんだよ?」

「俺は何にもしてねーよ。というかパスパレのみんなはいつも元気だしな。俺はたまたま縁があって知り合っただけだしな」

俺は本当に対したことはしていない。みんなが努力してやっと今アイドルバンドとして活動出来てる。それは間違いなくパスパレの皆が努力したからだ。

 

「竜二くんはそうやっていつも否定する。いつも色々な場面で、見えないところで助けてくれてる事、私達はみんな知ってるんだよ?だからみんな竜二くんを信頼してるんだよ?」

本当に正直だな彩は・・・そうか、でもパスパレの皆はそこまで俺のことを見ててくれたのか・・・

「あーもう!わかったわかった!それ以上は何も言うなよ・・・ただ・・・その・・・さんきゅーな彩。」

少し気恥ずかしい空気になった頃に彩の家の前に着いていた。

「さてと家にも着いたし!この話はまた今度な!明日からもアイドル活動頑張れよ!」

「うん!これからも頑張るからね!!ちゃんと見ててね竜二くん!!」




彩ちゃんとのんびり過ごしたかったんです!


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5. たまには珈琲でも飲みながらゆっくり過ごしたい

今回は蘭ちゃんメインの回にしてみました。
テンポを良くしたいと日々模索しております。

誤字があったりした場合訂正するので、ご容赦くださいm(_ _)m


今日は朝10時ごろに羽沢珈琲店に来たところだ。

たまには来てくれとつぐに言われたので来た訳だが。

ガラガラ〜

「いらっしゃいませ!竜二くん?!」

「おおつぐー、たまには来てくれと言われたから早速来たぞー」

「こんなに早く来てくれると思ってなかったよ!蘭ちゃん!竜二くんが来たよ!」

そう言って蘭に呼びかけるつぐ。どうやら蘭がいるらしい。

 

「え、竜二が来たの?ほんとだ・・・」

「蘭久しぶりだな。つってもこの間CiRCLEにスタジオ入りに来てたか」

「そうだね。最近はCiRCLE意外で会うのが珍しいから」

「それじゃ竜二くん!ゆっくりしていってね!」

「おう!それじゃアイスコーヒー頼むな!つぐも接客頑張れよー!」

 

力強く相槌してそのままつぐは仕事にもどっていって、入れ替わりで蘭に声をかけられる。

「せっかくだし一緒の席に座りなよ」

なんだか嬉しそうだな。とりあえず一緒の席にすわるか。

「もちろんそのつもりだが?それよりこの前モカのやつが沙綾が俺とまりなのために買ってきたパン食い逃げしやがったぞ!」

そんな話をすると蘭は苦笑いしながら

「あー、それはモカが悪いね。今度竜二が怒ってるって言っとく」

「言っても聞かないだろうがな。」

 

そんなこんなで注文が届けにつぐがやってきた。

「お待たせしました!こちらアイスコーヒーになります!竜二くん!蘭ちゃんとゆっくりして行ってね!」

「サンキュー!今日はしばらくここにいるつもりだから暇なら話し相手になってくれよな」

「私でいいなら全然大丈夫だよ!暇なとき見つけて少し話にくるね!」

そう言いながらつぐは接客に戻って行った。

 

しばらく他愛ない話をしてたが、蘭が思い出したかのように聞いてくる。

「そういえばこの前のライブ終わった後竜二にあたしと一緒に楽器とかCD買いに行くの付き合ってくれるって言ってたはずなんだけど・・・?まさか忘れてないよね?」

 

・・・・・・ナンテコッタ

「・・・・・・ワスレルワケナイダロ」

「その顔は絶対忘れてたでしょ」

すごいジト目だな!圧を感じるぜ!

・・・素直になっとこう。

「悪りぃ!忘れてたぜ・・・」

そう言うと蘭は少し微笑んで

「ふふ・・・いいよ、許してあげる。ってか全然怒ってないんだけど」

「なんだよ。それならそうと早く言えって、軽く心臓縮んだわ!」

さすがに怒られても言い訳できねぇからな。

まさかからかわれてたとは。

「だって焦ってる竜二面白すぎ。竜二が焦るところなんてかなりレアだし」

少し可笑しそうに蘭は答えた。

 

「そりゃ流石に約束を忘れるのはいくらなんでも俺が悪いからな」

「別に買い物に付き合ってくれるのはいつでもいいから・・・また今度付き合ってよ」

そう言うと蘭は少し優しげに微笑んだ。

「ああ。そん時は携帯に連絡してくれよ」

「うん」

「今度またCiRCLEに来いよな」

「どっち道週末もCiRCLEでスタジオ予約してあるからすぐ会えるけどね。週末のスタジオは竜二も練習に付き合ってよ」

蘭はいつものことでしょ?と言わんばかりに言ってきた。

 

「まぁ別にそのくらいなら時間とれるからいいけどな」

「同じ学校だったら会う時間も増えるよ・・・?やっぱり中学の時みたいにあたしたちと一緒の学校に通わない?」

蘭が少しだけ申し訳なさそうに訪ねてくる。

「またその話か・・・無理だって言っただろ?」

この話は蘭と2人でいる時たまに出る話題だ。

 

蘭は真剣な顔で聞いてくる。

「竜二はさ・・・また高校に通いたいとは思わないの?」

「学生やるよりもやることがたくさんあってな。今はお前らのバンドの面倒とか見てるだけでお腹いっぱいだよ」

実際俺自身は学校に執着しているわけじゃない。

辞めたのも理由があっての事だし、特別後悔とかはしていない。

そんな俺とは裏腹に蘭やAfterglowの皆は高校でまた一緒に通いたいらしい。

「あたしだってわかってる・・・でも出来ればまた竜二と学校に通いたい」

ごめんな。蘭、今俺は出来るか出来ないかわからないことを口にすると思う。

 

「いつか・・・いつか色々落ち着いて余裕が出て来たらな?その時はまた学校に通うさ・・・だからしばらく待っててくれないか?蘭」

すると蘭は少しだけ微笑んで答えた。

「うん。待ってる」

「お前らも物好きだよなー、別にCiRCLEで会えるんだし学校一緒に通いたいだなんてさ」

本当に物好きな奴らだ。悪い気はしないけどな。

 

蘭は何か思い出したかのように

「そっか、香澄たちも竜二と通いたいんだったっけ?その時はどっちの高校に転入するの?こころと香澄に聴いたよ。花咲川に3ヶ月くらい通ってたって・・・なんで高校辞めちゃったの?」

 

珍しいな。蘭がここまで踏み込んでくるなんて、まさか花咲川高校に通っていたことを聞いてたとはな。

「・・・その話もまたいつか絶対ちゃんと話すから待っててくれないか?どっちの高校に行くかもその時にきちんと決めるから」

にしてもまた学生かぁ。自分の年齢さえはっきりわかってないのにな。

 

「わかった。ごめん。竜二を困らせたいわけじゃないんだけど・・・」

蘭は申し訳なさそうに答えた。

「なーに言ってんだよ。蘭は俺と居たくて色々心配してくれてるんだろ?謝るなら俺の方だよ。いつもありがとうな?蘭。」

そう言って俺は微笑んでみせた。

すると蘭は少し嬉しそうに俯いて、

「うん・・・あたしは中学の時本当にたのしかったんだ・・・1年の時転入してきた3年の竜二とたまたま屋上で出会って、たった半年だったけど、Afterglowの皆と同じくらいの時間を過ごしたと思えるくらいすごい楽しかった・・・」

 

懐かしいよな。たまたま蘭たちと同じ学校に通ってたのが奇跡みたいだ。

「ああ。俺もあの時はすごいたのしかったぞ!まさかバンドやるとは思ってもなかったけど、やったらやったでみるみる成長していくから驚いたよ」

本当に初心者かと思うくらいの成長スピードだったからな。

 

「最初は竜二もバンドに入ってもらうつもりだったんだけど?嫌がるし」

少し恨めしそうな顔で聞いてきた。

 

「あのときも言ったろ?俺だけが楽器とバンド経験者だったからな。俺はバンドやってこなかったお前らだからどんな音楽を演奏していくのか外から見て見たくなったんだよ」

これは紛れもなく本心だ。自分が入ることでその妨げになっちゃうような気がしたからな。

 

「その割に誰かさんは半年経って卒業間近だったのに急にに遠くに転校したんだけど?」

まさかその時のことを言われるとは!

 

「その節はご心配をお掛けしました!!!」

すると蘭は少し可笑しそうに微笑んで、

「ふふ・・・いいって。今は皆一緒にいられるし、会おうと思えばいつでも会えるし」

確かに今はいつでも会おうと思えば会えるもんな。

 

「色々事情があってな、でもちゃんと手紙書いたろ?!」

「いやいや・・・いきなり新年に「今年中のどっかでそっちに帰る」なんて適当な手紙来ても困るし」

呆れ顔で蘭が答えた。

 

「すまん!」

すると蘭は少しだけ微笑んで優しげに答えた。

「いいって。また今度色々聞かせてよね?それじゃ、あたしはこの後モカと予定があるから行くね。つぐ!あたしはそろそろ行くから暇なときに竜二の話し相手になってあげてよ」

「う!うん!蘭ちゃん!また来てね!」

「蘭!今日はありがとな!モカにもよろしく言っといてくれ!」

すると蘭は店を出ていく間際に。

「あと竜二!竜二もAfterglowのメンバーだから!それじゃあね。」

そうして蘭は店を出で行った。

 




まだ10分の1も話を書けていないという!笑
マイペースですが、地道に投稿していくのでよろしくお願いしますm(_ _)m


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6. たまには真面目に働きたい時もある。

今回はポピパ がようやく出てきます。それと主人公の設定も少しだけ明かされます。
時系列はバラバラですが、最終的にはきちんと繋がるように書いていければいいかと思っているのでよろしくお願いしますm(_ _)m


俺だってたまにはちゃんと働いてるんだぞ?

なんてな。今日は早朝の早めにCiRCLEに来てたところだ。

「竜二くんおはよー!今日は朝早いね〜」

「まりなか、おはよう。たまには朝早く来てのんびりするのもいいもんだぜ」

 

俺はスケジュールボードを確認しながら

「えーっと今日はポピパがスタジオに来る日だったよな」

「確か午前の10時入りじゃなかったかな?」

「あー、ほんとだな。じゃあそれまでに機材の色々セッティングしておくな」

まりなに一声かけてスタジオへと歩き出していった。

「いつもありがと〜!じゃあ私は誰が来ても良いように電話の対応しながらカウンターにいるね」

 

 

1時間ほどしてから・・・

 

ガラガラ〜

「おはようございます!」

全員が挨拶をして入ってきた。

 

「お!来たね!ポピパみんな!」

「まりなさんおはようございます!」

香澄が元気よく再度まりなに挨拶する。

「あれ?今日は竜二来てないのかな?」

沙綾が不思議そうに首を傾げていた。

「それは変だな、昨日の夜に明日はCiRCLEにいるか聞いておいたのに」

有咲が沙綾に答えるが、隣からおたえが

「じゃあきっと寝坊してるんだよ。竜二いつも眠そうな顔してるから」

そうに違いない!と言わんばかりに答えた。

 

 

「あの・・・まりなさん、今日って竜二はバイトに来てるんですか?」

沙綾が少し不安そうにまりなに尋ねた。

「あ!ごめんごめん!言うの忘れてたけど、竜二くんなら奥で今日香澄ちゃんたちが使うAスタジオのセッティングしてくれてるよ!多分もう戻ってくるんじゃないかな?」

 

香澄が嬉しそうにスタジオに向かって声をかける。

「竜二くんいつもありがと〜!スタジオまでまだ少し時間あるんで座って待ってますね!」

「うん、お茶でも入れてあげるからゆっくり話でもしながら待ってるといいよ」

そんな香澄たちを見て少し微笑ましかったのか、お茶を入れに行った。

 

 

しばらくしてから・・・

 

ん?誰か来てるのか?

「おー香澄達もう来てたのかよ。まだスタジオまで30分近くあるぞ」

「竜二くんいつもスタジオのセッティングありがと〜」

香澄が俺にそう言った。

「それが仕事なんでな」

少しドヤ顔で答えてやったぜ。

 

すると沙綾がなぜか少しニヤニヤしながら聞いてくる。

「とか言いつつ、ドラムセットの位置とか色々私に合わせてくれてるんだよね〜?」

「あ!それは確かにわかるかも、キーボードの高さとかいつもなんも弄らなくてもいいし、あれは竜二がやってくれてたのか」

何!有咲と沙綾に気づかれてたのかよ。それよりそういう事をナチュラルにバラすな!

 

「そう言う、俺が陰で頑張ってるところ、赤裸々に暴露すんのやめてもらっていいですかね沙綾さん?」

「言わないとそうやっていつまでも隠したがるからね竜二は」

まさかそこまでお見通しとはな。

 

だが待て、まだりみがいる。

「なぁりみ?いちいち言わない男の格好良さみたいなものを沙綾に教えてやってくれないか?りみならわかってくれるだろ!?」

 

りみは少しあたふたしながら、

「えぇ!私もわかんないよ竜二くん・・・それに私も沙綾ちゃんと同意見かな?」

りみぃぃぃぃぁぁぁぁ!

 

「ナンテコッタ・・・なぁ有咲!有咲ならわかってくれるだろ?!」

「まぁ確かにな、でも竜二の場合は気の使い方が分かり易すぎんだよ。だから余計に弄りたくなるんじゃない?」

なん・・・だと

 

「有咲にわかりやすいって言われた!あの有咲に!これは相当ショックで夜も眠れん!」

だってあのハイパーツンデレクイーンの有咲だぞ!

 

「わ、私はわかりやすくなんかねーぞっ!」

「ほんとにそうか〜?なぁおたえどう思うよ?」

「んー、有咲はすぐ顔にでるから」

おたえは普通に答えやがった。さすが天然記念物。

「そうなの!?私全然わからないよ!!」

「香澄はそのままの君でいて!」

俺はそう答えた。

きっとこんな香澄だから有咲は心を開けたんだろうな!

 

「う、うるせー!私の事はいいだろ!竜二だって結構わかりやすいとこあるだろ!」

「そうなのか沙綾!?」

おいおい!自称ポーカーフェイスのこの俺だぞ。

「なんていうか、竜二の場合は普段が何考えてるかわかりにくいからふとした優しい一面には気付きやすいのかもね」

しみじみと沙綾が答えた。

 

「まじかよ!めっちゃバレないようにしてるはずなのになんでだ!」

「あのね?竜二くんって、たまに急に別人かと思うくらい雰囲気が大人びたりする時もあるんだよ?だから余計に伝わりやすいのかな?」

りみもどうやら同意見らしい。

まさか自分でも気づかないうちにそんなに変わってたとは。

「あ!でも確かに文化祭の時とかSPACEでのライブの時とかポピパが大変だった時色々助けてくれたし!すごく格好良かったよね!」

香澄が懐かしそうに言った。

あー、まだ学生だった時の話か。

「むしろ気づいてないのは香澄くらいな感じ?」

おたえが当然のように俺に言ってくる。

 

まじかよ。気をつけねーと俺が実年齢誤魔化してるってバレるじゃねーか!これからは気をつけないと。

「まじか!俺そんなに変わってたか?!全然無意識だったぞ!」

「なんか竜二ってさ、わざと自分を演じてるみたいなとこあるよな」

「何言ってんだ有咲!俺は常に素だぞ!そんな七面倒な事してられねーって」

すると沙綾が少し可笑しそうにして

「ふふ・・・そうそう!まさに今みたいな時とかね!三ヵ月くらいしか一緒に学校通ってないけど最近はなんとなく竜二がわかって来たかも」

沙綾がこんなに鋭いヤツだったとは、というか香澄以外な!

 

 

そうこうしてると香澄が急に思い出したかのように言った。

「そうだよ!!竜二くんいきなり「少しここを離れて遠くでやること出来たから学校辞める」とか言い出すんだもん!」

「うん。あれはさすがの私もびっくり」

おたえでもびっくりするとはこいつらにとっては相当な事件だったみたいだな。

 

有咲もどうやら俺に言いたいことがあるらしい。

「まったく、誰かさんは一度決めたら頑固だからなー!こっちは居なくなってから散々心配したのに、ある日ふらっと帰って来るし!」

あの時は本当に心配させちまったからな、本当に申し訳ない。

っと!この話の流れはやばいな、早めに切り上げないと。

「今度ちゃんと事情を聞かせてね?」

りみが気を使ってくれたのか、話を切り上げてくれた。

「おう。ちゃんと話すから安心しろ」

 

 

そんなこんなでスタジオの時間が来てることに沙綾が気がついたみたいだ。

「あ、そろそろ時間みたい。練習始めないと」

「ええ!まだちょっとしか話せてないのに!」

「練習しに来たんだろ〜?・・・ほらさっさと行くぞ」

「おたえ、香澄を連行しなさい。」

俺はおたえに最重要任務を与えた。

「任せて。ほら香澄行くよー。」

名残惜しそうにしてる香澄を有咲とおたえが連行していったみたいだ。

 

 

急に静かになったな・・・するとまりながやってきた。

「少し話し聞こえてたよ〜、学校の事言われてたね。」

まりなは少しだけだが俺の身の回りの事情についても知ってる数少ない知り合いの一人だ。

「そうだなぁ。もともとは事情があって少し通わせてもらってただけだからな。」

「隆三さんに頼めば、通わせてくれるんじゃないの?」

朝倉隆三(りゅうぞう)と言うのは俺の保護者にあたる人だ。今は遠く離れた屋敷に暮らしている。かなりの資産家である程度の事はお金で解決出来る程だ。この人のお陰で色々偽装して学校に通えてたわけだ。

歳は60過ぎてるが、背も高くかなり気さくで優しくてさらには武闘派である。出会った時には既に奥さんは亡くなっている。

実際の血縁関係はない。隆三の爺さんと出会ってからかれこれ5年ほど経つ。

 

 

「仕事で通ってただけだからな。今更理由もなしに年齢を偽ってまで通うのもなんか違う気がするしよ。それに何かあったらまたこの街を離れる時もあるだろうしな。」

「そっか、私も全部は知らないけど竜二くんにも事情があるから仕方ないよね。それなのにいつもCiRCLE手伝ってくれてありがとうね!」

俺はあまり深く事情を聞いてこないまりなの気遣いに感謝した。

「気にするな。CiRCLEの事はまた別の頼まれごとだからな。さてと!仕事に戻ろうかな、それじゃまた後でなまりな」

あまり話すとボロが出そうだったから俺は話を切り上げ、そのまま奥の機材部屋に仕事に戻って言った。




新しい新キャラも登場しました。ほのぼのとした話を書いてもいきたいので過去の回想などは合間合間に入れていきますm(_ _)m


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7. 業務外でもやることが絶えない日常。前編

今回はちらほらとキャラが出てきますm(_ _)m
ハロハピメインの回です。2話構成にしようと思っております。


今はCiRCLEでの手伝いを終えて家でゆっくりしているところだ。ちなみに今は夜9時になる。

 

 

prrrrr

「ん、なんだ?電話が鳴ってるな」

着信を見ると美咲からだった。美咲から連絡来る時はだいたいバンドの相談事なんだよな。

「よぅ!どした美咲、こんな時間に」

「竜二さんこんばんは。今は時間大丈夫ですか?」

「今は家で少しゆっくりしてたところだから大丈夫だぞ」

「助かります。あのー、実はバンドの事で助けて欲しいことがありまして・・・・・・」

「ほほう・・・まぁどうせこころ関連のことなんだろ?」

「そうなんです!竜二さんならわかってくれると思ってましたよ。」

美咲は俺にすがるように答えた。

 

「どうせ曲作りが難航してるんだろ?いつもだいたいそんな要件だからな」

「あはは・・・・・・いつもの如くこころの鼻歌を語源化するのを手伝ってくれませんか?」

美咲が乾いた笑みを浮かべながら答えた。

「その要件って結構急ぎのやつなのか?」

「実は週末にCiRCLEで練習するんですけど・・・それまでに合わせれる程度にはしないといけないので」

週末って今は水曜日だぞ!大丈夫かよ。

「おいおい!それはかなり急ぎじゃねぇか、そうだな・・・明日学校終わってからこころの家にでもいけばいいか?」

 

「はい。明日はハロハピで集まるんで来てくれるととっても!助かります。花音さんにも伝えておきますね」

「おっけ。わかった、それじゃ明日は早めに上がれるようにしておく」

あとでまりなにLANEで連絡しとかないとな。

 

「はい。それでは明日はなにとぞ!よろしくお願いします」

「ああ。それじゃあな」

美咲が最後に縋るように言ってきた。

電話を終えた訳だが、一応こころにも伝えておくか。

 

 

prrrr

「もしもし!竜二ねっ!どうしたの?珍しいじゃない!私に電話してくるなんて!」

相変わらず元気だな!声でかくて若干びっくりしたわ!

「あーこころか?美咲に頼まれてな。明日の夕方にそっちの家に向かうからその連絡をだな」

「あら、明日は竜二が遊びに来るのね!それは嬉しいわ!さっそく明日の準備をしなくちゃ」

「いやいや、遊びに行く訳じゃないからな。曲作りが進んでないって聞いたぞ?それを手伝いに行くんだよ」

「なぁんだ、その事ね!心配しなくても大丈夫よ?いつも美咲がなんとかしてくれるもの」

「お前なぁ。美咲にもっと感謝しとけよ?あいつ結構曲作り難航してるみたいだからな」

美咲も相変わらずなかなか大変そうだな。

 

「そんなの当たり前よ?美咲にはいつも感謝しているわ!はぐみにも薫にも花音にもミッシェルにも!もちろん竜二にもね!」

ま、こころはこう言うやつだから憎めないんだよな。

 

「ま、それならいいんだけどよ。」

「明日は楽しくなりそうねっ?竜二!」

遊びに行く訳じゃないんだけどな。まぁこころが楽しそうならいいか。

 

「ともかく、なんとかして週末までに形にしたいんだろ?なら明日にはある程度完成させないとな」

「竜二が来てくれるなら安心ね!皆もきっと喜ぶと思うわ!」

「まぁ喜ばれる事に関しては悪い気はしねーけどな。さてと・・・それじゃそろそろ切るぞー。」

「ええ!明日は楽しみにしてるわよっ!おやすみ竜二」

 

こころとの電話を終えた。

おやすみって言われても、まだ9時回ったとこだからな。寝るには早すぎる。

家でゆっくりするつもりだったが、気が変わったので少し外に出かける事にした。

 

 

ひとまずゲーセンの方に向かう事にするか。

しばらく夜の街を歩いていると見知った顔の人物が少しぎこちない姿勢で歩いていた。

「ん?おーい千聖か!お前こんな夜遅くに外で何やってんだー?」

「竜二くん⁈竜二くんこそこんなところで何をやっているの?」

千聖は少しだけ驚きながらも、少し安心したように俺に呼びかけた。

 

「俺のことはいいんだよ。ただの気晴らしでちょっとゲームでもやりに行こうかと思っただけだ。1人か?」

「ええ。今日はパスパレとは別の仕事があったのよ。その後少しベースのレッスンを受けていて少し遅くなってしまったの」

あぁそういえば、千聖はパスパレ以外でも色々仕事してるんだっけか。

 

「お前な、芸能人なんだからあんまり遅くに外を出歩くなよな。せめてタクシーでも拾って帰れよ」

「そうなんだけど、そこまで遠くでもなかったし、徒歩でもいいかなと思ったのよ。けど意外と人気のない道で正直少し怖かったわね・・・竜二くんが来てくれて助かったわ」

千聖は少し苦い顔をしながら答えた。

 

「ったく、ならもっと大通り沿いの人がたくさんいる道から帰れよなー」

「そうよね・・・失敗したわ。あまり人目につきたくなかったからこの道を選んだんだけど、失敗だったわ。反省しないとね」

どうやら、本当に反省してるみたいだ。

俺も別に怒ってるわけではないんだがな。

 

「まぁ俺も無事ならいいんだよ。徒歩で帰るなとは言わねーけどこれからは何かあったらすぐ連絡しろよ?迎えが欲しい時なら帰り道くらいは付き合うぞ」

「ええと・・・つまり、その、私が迎えに来て欲しいってお願いしたら来てくれる・・・ってことなのかしら?」

千聖が少し下を向いてもじもじしながら俺に聞いてくる。

 

「あぁ。夜遅くで徒歩の時はな。」

「ほんと?!ありがとう。ふふっ・・・やっぱり竜二くんは優しいわね?」

どうやら結構喜んでくれたみたいだな。

「だろ?じゃあこの隙に千聖の好感度でも上げておくとするか。」

「まったく・・・あなたはそういう事をいちいち言わなければ普通に格好いいのよ?・・・どうせ照れ隠しなんでしょうけど」

最後の方は少し聞き取れなかったが、千聖なりに褒めてくれたみたいだ。

「まぁ俺ほどのイケメンはいないだろう。」

「竜二くんは特別顔が良いってタイプではないと思うけれど?」

なんだと!お前それ一番傷つくやつだぞ!

 

そんなこんなで色々話していたが、俺はふとこの間彩とCiRCLEで勉強した事を思い出した。

 

「あ、そういやこの前彩に勉強教えてやったぞ。千聖かなり心配してたろ?」

「あら?そうだったのね。あ、だから彩ちゃん勉強の事急に不安がらなくなったのね」

「ま、一応年上だしな。俺はそんな多忙でもないからある程度はな?千聖も何かあったら言えばいい」

「ふふっ・・・そういう軽はずみな事を言うと後で後悔するわよ?意外と甘え上手なのよ?私。」

千聖は嬉しそうに、少し悪戯な笑みを浮かべで答えた。

「へいへい。丁重にもてなしますよ。」

そうこうしてるうちに千聖の家に着いていた。

 

「さてと、家に着いたみたい。送ってくれてありがとうね。竜二くん」

「おう。今日はゆっくり休めよ?」

 

千聖は名残惜しそうに

「まだまだ話したかったけれど、続きはまた今度にするわ。竜二くんも帰りに気をつけてね?」

まぁまたこういう機会もあるだろう。

「おうよ。それじゃ、またCiRCLE来いよな。おやすみ千聖」

「ええ。おやすみ竜二くん」

 

そのまま家の中に入っていくのを確認したあと、俺はこの場を後にした。




こころと美咲と千聖を登場させました。
今回はハロハピメインの話なのですが、千聖も登場させてみました!

誤字など色々ミスっていたら、訂正するのでご容赦くださいm(_ _)m
いつもみてくださってる方々ありがとうございます!


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8. 業務外でもやることが絶えない日常。後編

ハロハピ回の後編です。なるべく少ない分量にしたいのですが、ついつい書きすぎてしまいます!笑
いつも見てくれる方ありがとうございます。いつのまにかお気に入りも増えてきてとても嬉しいです。


夕方頃CiRCLEの手伝いを切り上げた俺はこころの家に来ていた。

「竜二!来たのねっいらっしゃい!」

「おや?竜二じゃないか。今日も私達の活動の手助けをしに来てくれたのかい?」

「わーい!りゅーくんだ!みーくんから今日来るって聞いてたよ!」

こころと薫とはぐみ、言わずと知れた3バカが俺に話しかけて来た。

相変わらずこいつらはテンションが高いな。

「ま、そゆことだ。美咲、花音手伝いに来てやったぞ〜」

 

「竜二さん・・・。来てくれたんですね!はぁ・・・本当に助かります」

「ふぇぇ、美咲ちゃん凄く疲れてる。大丈夫かな?・・・竜二くんもいらっしゃい。手伝ってくれていつもありがとう」

 

「気にすんな。とりあえずさっそく今出来てる段階の曲を聴かせてくれないか?」

「はい!一応メロディと伴奏は打ち込んで見たんですけど、問題は歌詞ですよね・・・」

 

♪〜♪〜♪

とりあえずひと通り聴かせてもらったわけだが、俺は驚いた。

「まじかよ・・・美咲、お前もうここまでこのソフトの使い方覚えたのか?この前少し教えたばっかなのに」

「あの後、色々ネットで調べて打ち込みの仕方とか調べたんですよ。・・・ほんともう、かなり大変でした」

美咲はもしかしたらかなりの才能を持ってるかもしれんな。

 

「いつも任せっきりにさせちゃってごめんね。美咲ちゃん。」

「あー、花音さんはいいんですよ。いつも意見してくれたりしてるんで、かなり助かってます。問題はあの3バカですね。」

「ははは・・・よし、美咲がここまでやってくれたんなら、あとは俺の方で細かい打ち込み作業はやっておくよ。」

俺は乾いた笑いを浮かべた後、美咲に言った。

「すみません。ほんと助かります」

「美咲は良く頑張ったよ。おつかれさん。今日は問題の歌詞の方に専念しようぜ」

 

 

「花音。歌詞はどのへんまで出来てるんだ?」

「それがまだ全然で。こころちゃんがこの曲にどんなイメージを持ってるかわからなくて。」

「そっか。こればっかりは3人の合わせ技だな。なんとか今からやり切るぞ」

ひとまずこころになんとかしてこの曲のイメージを教えてもらうしかなさそうだ。

 

「えー!りゅーくん今来たばっかりなのに。もっとはぐみたちと話そうよ!」

「はぐみもこう言ってるんだ。竜二も少し肩の力を抜いて私達と紅茶でもどうだい?」

はぐみと薫が話しかけてきた。

「そうしたいのは山々なんだが、作曲しなきゃだろ?・・・ったく、お前ら俺が来たからって安心しすぎだって・・・」

 

するとこころが

「だっていつも竜二がなんとかしてくれるじゃない!だから何も心配いらないわ」

まったく、信頼されてるのは別にいいんだけど、もうちょい危機感持ちなさい。

 

いやでも待てよ・・・?

「もしかして俺は甘やかし過ぎてるのか!!そうなのか花音!美咲⁈」

「ええと、私が言えたことじゃないんですが、竜二さんもかなり甘々だと思います」

美咲が苦笑いを浮かべながら俺に答えた。

 

「竜二くん・・・今頃気づいたんだね・・・でもこころちゃんに限った話じゃなくて私たちも、いつも甘えさせてもらってるけど」

花音は今更気づいたの?と言わんばかりにこたえた。

 

「マジかよ・・・俺はめっちゃ厳しくしてたはずなのに!」

「あははは・・・は」

2人の乾いた笑い声が響いた。

ともかく、曲を作らねーと。

 

「とまぁ、そういう訳だからはぐみと薫とも、もう少しゆっくり話でもしてやりたいんだが、今日は作曲優先だ。しばらくこころを借りるな」

 

「大丈夫だよ!はぐみ達も中々みーくんたちを手助けできてないから・・・ごめんねかのちゃん先輩。みーくん」

はぐみが少し不安そうに尋ねるが、

「ううん・・・はぐみちゃんもいつも曲作りで色々手伝ってくれてるから大丈夫だよ?」

「そうそう。はぐみと薫も前半は伴奏作るのに手伝ってくれてるんだろ。そんなに気にすることはない」

実際、はぐみと薫はまだ歌のメロディしかない状態の曲にコードを付けてくれたりしている。

 

「竜二。ありがとう。今日の君はいつにも増して素敵に見えるよ。・・・ああ、儚い・・・」

「と言うわけでそっちはお茶でも飲んで待っててくれ。こころはこっちに来なさい。」

ひとまず歌詞はこころに話を聞かないと始まらないからな。

 

「わかったわ。それで?私はなにをすればいいのかしら」

「ひとまずこの鼻歌を歌った時の話を聞かせてもらおうか。花音!今から聞く事をメモってくれ」

「うん!」

花音がメモを用意するのを確認してから、俺はこころに質問した。

 

「まずはこの鼻歌を口ずさんでだ時は。どんな事を思ってたんだお前は?」

「うーん。あまり覚えてないわね。でもそうね。学校の帰り道だったのを覚えているわ。」

「それだけじゃ全然わからん!もっと詳しく!」

「そんな事言われても困るわ。でもそうね、少し美咲のことをクラスメイトに聞かれたのよ」

こころにクラスメイトが話しかけるのは珍しい事じゃないが、美咲の事を聞かれるのは意外だな。

 

「私のこと?こころの友達が?」

美咲が驚いたように答えた。

「ええ。私と美咲が最近良く一緒にいるじゃない?名前も忘れちゃったけどその人、美咲と私が仲良いのが意外だったって言うのよ?」

美咲とこころはハロハピができるまでは話もろくにしなかったくらいだからな。

「あはは・・・は」

そんな話を聞いて美咲は苦笑いしていた。

 

「ほほう。なるほど、それがどう曲に繋がるんだ?」

「その日の帰り道は何故かこの辺がもやっとしたのよ。なんでかしら?」

こころが自分の左胸あたりを抑えていた。

 

「俺に聞かれてもわかんねーよ。なんでもやっとしたんだ。その子に怒ってたのか?」

「そうじゃないのよ。そうね・・・きっとその人の考え方が寂しかったからね。だって、美咲がどんな人かもわかっていないのに。

どうして美咲の事を決めつけてしまうのかしら?ハロハピの美咲はこんなに素敵なのに、それってなんだか寂しいわよね?」

たしかに、こころの言うことも一理あるな。

 

「なるほど、なんとなくこころが感じてることがわかってきたぞ」

「ほんと?!竜二くん」

「こころ・・・」

喜ぶ花音に対して美咲は内心は嬉しいだろうが、複雑な心境のようだ。

 

「花音、メモ取ってくれてありがとう。一回見せてくれないか?一回話を組み立ててみる」

「うん。参考になればいいんだけど・・・大丈夫かな」

「お!すげー書けてる!これならなんとかなりそうだ」

安心したのか、花音はそっと胸を撫で下ろしていた。

 

「なるほど。つまりこころは、中身を知ればもっと楽しいことがたくさんあるのにもかかわらず、知りもしないのに、その人やその物事を決めつけてしまうことが勿体ないと思ったんじゃないか?違うかこころ?」

 

するとこころは真っ直ぐにこっちを見て答えた。

「それよ!あの時はまさにそんな感じだったわね。その後になんだか無性に歌いたくなったのよ」

「ほほう・・・つまり、そんな人たちにも物事の中身を知ればもっと楽しくなるぞ!ってことを歌にしたいんだな?」

きっとこころなら前向きに物事を捉えるから、これで多分合っているだろう。

 

「そうね!私が今一番歌いたいのはまさにそんな曲よ」

考えが当たってたみたいで良かった。

「どうだ美咲、なんかこの曲のテーマが見えて来たんじゃないか?」

 

「はい。今の話を聞いてだいぶ曲のイメージが掴めて来ました。ありがとうございます。」

どうやら安心してくれたみたいだ。

 

「よし、なら歌詞はそっちでなんとかなりそうだな、あとは美咲が途中までやってたミッシェルがDJで流す打ち込みの続きを俺が終わらせておくよ」

「ありがとうございます・・・!」

 

「いいって、お前高校生なのにここまで打ち込み短期間で覚えるなんて普通にすげーぞ」

「いや、竜二さんも年齢的には高3ですよね?」

あぶねー!ボロが出るとこだった。

 

「あ!いや高1なのにってことだよ!・・・ともかくしばらくパソコンで作業してるけど、静かに出来る人のみ俺に話に来ることを許可する。」

そしてしばらくハロハピのメンバーと離れて机でパソコンに張り付いてたところに花音が恐る恐るやってきた。

 

「竜二くん・・・その、大丈夫?」

花音がそっと隣に座って話しかけて来た。

「おー、花音か。大丈夫だぞ、後はほとんど考えずに打ち込んでくだけだからな」

「いつもありがとね」

花音は少し嬉しそうにしていた。

 

「今後もCiRCLEに貢献してもらうためのサービスみたいなもんだ」

「それだとなんだか釣り合いがとれてないような気が」

花音が困り顔で俺に答えた。

「そっかー、じゃあ花音と1日外泊券!みたいな報酬を頂かないと釣り合いが取れないな。」

「そ、そんなの言ってくれればいつでも」

「まぁ冗談だけどな。」

「冗談・・・なんだ」

花音は何故だか残念そうにしていた。

 

「あれ?そういえば美咲はどこいった?」

「あ、美咲ちゃんなら隣の部屋で仮眠してるよ。だいぶ疲れてたみたいだったから」

「そうか・・・だいぶ働いてたからな。休ませてやらないとな」

「私も、もっと手伝えることがあればいいんだけど・・・」

「花音はいつも美咲を助けてくれてるだろ?あいつも花音にはすごく感謝してたぞ」

俺は美咲からいつも聞く花音の事を思い出していた。

 

「美咲ちゃんが・・・?でも私そんなに大したことはしてないのに」

「ならそう見えるのは自分だけってことだ。自分の知らないうちに誰かを助けてることもあるらしいからな」

「そ、そうかな?なんか実感ないな・・・」

俺も美咲や千聖が花音に特に信頼を寄せてる気持ちは理解できる。

 

「俺は美咲が花音を頼る理由はわかるぜ?だって花音ってオロオロしてる割にいざって時は誰よりも熱いやつだし」

「ふぇぇ、全然わからないよ?そんなこと初めて言われた」

どうやら、本人はまったく自覚がないようだ。

 

「花音ってさ、自分のことで怒ったりとかしないだろ?けど、大事な友達の事とかだと怒れるし、どんな事でも真剣で必死になったり出来るじゃん。かっけーと思ってな」

昔、俺のために知らない相手に怒ってくれたこともあった。あの時は誰よりも俺が驚いたが。

 

「そ、そんな事ないよ。でもありがとう。初めて言われたからびっくりしたけど嬉しいな・・・でも、それを言うなら竜二くんなんてもっと格好いいと思う」

花音は少し下を向いて顔を赤くしながら答えた。

 

「まぁ世界中探してもなかなか見つからないほどのイケメンなのは認めるが」

「その・・・顔とかじゃないんだけどね?」

俺は傷ついたぞ花音!!

 

「お前は千聖のようなことを言いやがって。」

「千聖ちゃん?あ、そういえばこの前LANEで竜二くんに帰り送ってもらったって言ってたよ」

「そうそう、そん時にな?・・・よし完成!!!これでスタジオと来週のライブも大丈夫だな」

話しているうちに打ち込みの方が完成した。

もうそろそろ帰らないとだな。

 

「竜二くん、本当にお疲れさま。」

「サンキュ花音。お前らー、作業終わったぞ。夜も遅いし俺は帰るけどお前らも遅くならないうちに帰れよ」

「りゅーくんお疲れさま!いつもありがとう」

「いつもすまないな竜二。今度是非お礼をさせておくれよ」

「竜二!無事終わったのね。本当ならもっと話したいけれど、今日はもう遅いものね。また今度にするわ!」

それぞれと話したい気持ちもあるが、家に帰ってやる事もあるからな。

 

「薫は気持ちだけ受け取っとく。それとはぐみサンキュー、こころもあんまり無茶はするなよ」

「ええ。もちろんよ!またうちにいらっしゃい?今度はもっと楽しい1日にするわ」

こころが笑顔で俺を見送りに来てくれた。

 

「美咲にお前はよくやったぞ。って言っといてくれよな!そんじゃなー。」

そして俺はこころの家の黒服の人に案内されながらこころの家を後にした。

 




ハロハピ回も無事終えて、次は少し遡った話の短編を挟んだのちにまた日常に戻りたいと思います!
誤字があったら訂正するのでご容赦ください!


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過去編1. ある日の追想。屋上での出会い編 蘭視点

過去のエピソードもきちんと間に挟んで行こうかと思っております。
ひとまず、蘭視点で竜二との出会いの話を書いてみました。
ゆっくりしていってくださいm(_ _)m


私はいつも教室から逃げるように屋上に来ていた。中学に入ったばかりの頃、幼馴染の皆と同じクラスになれなくてクラスに馴染めずにいた。

 

頑張って友達も作ろうとしたんだけどなかなかできなくて、幼馴染の皆がいないと何もできない自分が情けなかった。

屋上に来ると今日は珍しく先約が居た。屋上の入り口付近の壁に持たれて眠ってる男の人がいた。

 

「んん・・・えっと、悪りぃ屋上使ってたか?」

「いえ、その別にあたしの場所って決まりはないので」

「そうか・・・俺は3年の朝倉竜二って言うんだ。転入してきたばかりなんだけど、ここ気に入ったからたまに来て隅っこで寝させてもらうな。俺の事は空気とでも思っといてくれ。」

そのままその人はまた寝てしまった。

男の人と話す事はあまりないあたしだけど、何故だかこの人のことは特別気にならなかった。

 

そして、次の日もその次の日もあたしが屋上に来ると朝倉さんはいつも同じ場所で寝ていた。

何日も続きあたしは次第にあまり警戒もしなくなっていて、どこか朝倉さんと自分の中に通じるものさえ感じていた。

 

今日もまた屋上に来ると、朝倉さんがいた。けど珍しく起きてて屋上の柵の方から少し寂しそうにどこか遠くを見つめていた。その横顔はすごく儚くて、どこか大人びていた。

 

すると目があった。

「あ、悪い。邪魔だったよな?今隅の方行くから待っててくれ」

するとまるで別人のようにこの前初めて話した時の朝倉さんに戻っていた。

 

「あの、大丈夫ですよ。それより朝倉さんが起きてるなんて珍しいですね。あ、あたし美竹蘭って言います」

あたしは少し緊張しながら答えた。

 

「今日はなんか寝付けなくてな。美竹もこの屋上が気に入ってるみたいだな」

「はい。この屋上にいると落ち着くんですよね。あの・・・・・・朝倉さんは最近転入して来たんですよね、この学校は楽しいですか?」

あたしは朝倉さんがとてもあたしのように逃げて屋上に来ている人に思えなかった。だから聞いてみたくなったのかもしれない。

 

「そうだな・・・実は俺もよくわかんないんだよな。ただ・・・わかりたいとは思う。けど俺は不器用だからな。周りのクラスメイトみたいに環境に順応は出来ないけどな」

朝倉さんはあたしと違ってまだ学校に馴染めてないのにもかかわらず、とても真剣で前向きだった。

そんな瞳を見てあたしは少し自分が情けなくなった。だから自分の事を話したくなったのかもしれない。

 

「あたしは・・・幼馴染が居て、昔からのずっと一緒で中学入るまではクラスもずっと一緒だったんです。だけど今は皆と違うクラスで・・・」

朝倉さんは何も言わずにとても真剣な顔で話を聞いてくれた。

 

すると優しく微笑んで

「そっか、それはつれーよな。今までずっと一緒だったんだもんな。」

「でもあたし、ダメですよね。朝倉さんは転入してきて一人きりなのに学校を楽しく過ごそうと前向きな気持ちで頑張っているのにあたしは大事な友達もいるのにこんな・・・」

するとあたしの話を聞き終えた朝倉さんが言った。

 

「そんなの人それぞれだから気にすんなって。美竹には美竹の苦しさがあるし。俺は別にそれを軽いとは思わないぜ。それに俺は2年も人生の先輩だしな!大人の余裕ってやつよ!」

朝倉さんは少し誇らしげに答えた。

それが少し子供っぽくて今まで見たことない朝倉さんを見れた気がした。

 

「ふふ・・・2年って、まだあたし達中学生ですよ。そんなに変わんないじゃないですか?」

「いやでも2年って結構あるぞ!2年あれば美竹ももしかしたら校内一のヤンキーとかになってるかもしれねーぜ?」

「なりませんよ!しかもかなんでヤンキーなんですか・・・」

「だって授業サボってこんなとこにいるじゃねーか」

私は少し恨めしそうに朝倉さんを見て言った。

 

「朝倉さんだけには言われたくないんですけど?」

「ははは・・・!でもさ、なんか楽しいよな?こういうの。もしかしたら普通の学園生活とは少し違うかもしれないけどな」

あたしも気が付かないうちに楽しくなってる自分がいた。

 

「ふふ・・・そうですね。あたしも少しだけ自分の不器用さに感謝します」

「ま、何かあったらその幼馴染に相談すればいい。それがダメなら屋上にでも来て俺に話せばいい。そのかわりに!俺も美竹に話し相手になってもらうがな!」

 

朝倉さんは自分が転入してきてまだ馴染めてないのにもかかわらず、あたしの気遣いばかりしてくれた。

それがとても嬉しかったし、何よりこれからはこの屋上にも前向きな気持ちで来れるような気がした。

 

「ふふ・・・なんですかそれは。とりあえず今度あたしの幼馴染を紹介しますよ。あ、それと蘭で大丈夫ですよ」

「そうか?それなら蘭って呼ばせてもらうな。俺の事も竜二でいいぜ。あと俺、敬語とか苦手なんだよな。出来れば普通に接してくれないか?」

 

名前で呼ぶのは何故かさほど緊張しなかった。

「うん。わかった、それならあたしも竜二って呼ばせて貰うね」

 

この日からあたしの人生が変わっていくんだという気さえしていた。




ひとまずは屋上での出会い編を書いたので、次からはまた日常に戻ります。
過去のエピソードに関してはちょこちょこ小出しにしていけたらいいかと思います!
誤字かありましたら、訂正するのでご容赦くださいm(_ _)m

誤字があったため修正しました。ご指摘ありがとうございます!


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9. 仕事が暇な時には些細な楽しみも訪れる。

今回はモカと日菜が出てきますm(_ _)m
ようやくこの2人を登場させてました!
時折、キャラの言葉遣いを悩んでは、バンドリ を開いて確認。をひたすら繰り返してます!笑


今日は土曜の朝からCiRCLEに手伝いに来ている。

「はぁ、だるい。お家に帰りたい」

「竜二くん朝からずっとそんな感じだね」

だって今日めっちゃ暇だからな。こんなんで俺がいる意味があるのか?

「つっても昼くらいまでスタジオの予約入ってないんだろ?」

「でもたまーに当日に予約が入る事もあるし、弦とか色々買いに来る人もいるかもしれないから」

「まぁそうだな。一応外と中でカフェみたいなこともやってるもんな。」

CiRCLEはスタジオとライブハウス以外にもカフェとかもやっている珍しいライブハウスだ。

 

「そうそう。スタジオ予約がない時でも稀に忙しくなる時あるんだよね」

しばらく2人してのんびりしてたわけだが。

 

「暇だから、少しアコギでも弾くかー」

「お、今日はなんの曲を弾いてくれるの?これは役得かな」

たまにこういう時もある。サボってるわけじゃないぞ!

 

♪〜♪〜♪

 

「あ!それってAfterglowの曲!」

「そそ、この曲好きでさ。Scarlet Sky って言う曲なんだけどな」

蘭たちがまだ中学のころに作った曲だ。

「私も好きだよ。この前ライブでも歌ってたよね」

 

しばらく何曲かAfterglowの曲を弾き語りしていたところに誰かが入ってきた。

 

ガラガラ〜

 

「あー!竜二があたしたちの曲歌ってる〜」

「本当だ!ねー竜二くん!あたしたちパスパレの曲も歌ってよー!」

誰かと思えばこんな朝早くに、モカと日菜が来ていた。まりなは2人に気を利かせて奥の方に歩いて言った。

「なんだお前らか、こんな早くに2人してCiRCLEに来たのかよ」

2人は中のカフェスペースの椅子に座った。

 

「ふっふっふ、モカちゃんは竜二の歌声に導かれてやってきたのだ〜」

「早起きして暇だったから、なんかるんってすることないかなーって。そしたらたまたまモカちゃんと会って!」

どうやらたまたま会ったらしい。この2人が一緒にいるのはなんか危険な気がするな。

 

「ねぇねぇ!それよりもっと弾き語りしてー!パスパレの曲も歌ってよー」

「今日はもう終わりだ。とりあえず来たならなんか頼んでゆっくりしてけ」

ここだけの話、本人達に聴かせるのはさすがにおれも恥ずかしい。

 

「えー!なんでー!たまには竜二くんのギター聴かせてよー!けちー!」

「そんな〜、あたしも久しぶりに竜二のギター聴きたかったのにー」

モカと日菜はかなり残念がっているがな。

 

「なんか人に歌を聞かせるのって嫌なんだよなー。まりなは何故か気にならないんだが」

まりなの場合は慣れみたいなものかもしれない。

 

「なんで!竜二くんの歌すっごいるんってくるのに?」

「まぁまた今度にしてくれよ。その時はまた弾き語りでもするから」

「仕方ない。モカちゃんのひろーい心に免じて今日は見逃してあげようではないか〜」

なんとか納得してくれたみたいだ。

 

「お前は何故にそんな偉そうなんだ・・・」

「そういえばこの前お姉ちゃんが竜二くんにギターのアレンジ手伝ってもらったって言ってた!ずるい!あたしにも教えてよー!!」

あー、この前か。友希那と紗夜がここに来たんだよな。

 

「手伝ったってか、どっちにするか悩んでたギターアレンジのパターンをどっちがいいか意見しただけだそ」

ほんと言うと他にも色々あったんだが。

 

「いいなーお姉ちゃん。たまにはあたしにも協力してよー!」

「あたしも竜二にギターの練習付き合ってほしいでーす」

「でもお前らってなんか人に教えてもらうの苦手そうじゃね?それに俺が教える事なんて特にないと思うんだが」

実際この2人は似ている。どちらも天才ってタイプのギタリストだしな。

 

「そんなことないよ!あたし竜二くんのギター全然真似できないんだもん。いつもなら見ればだいたいできるのになぁ」

「あたしもー、それはわかるかも?うーん、竜二のギターは技術とかじゃないはずなのになー?」

「そういうもんか?俺にはまったくわからんが俺は日菜とモカの方がよっぽど上手いと思ってるけどな」

なんだろうな?経験値が違う分なにか感じるものでもあるのかもしれない。

 

「うーん、でもやっぱり竜二くんって面白いなー!彩ちゃんとはまた違って一緒にいると色んな発見があるんだよね〜」

 

モカが何かを言いたそうだった。

「最近紗夜さんのギターを聴いて思ったんだけど〜、なんか竜二っぽさがあるなーと思って〜」

「そうか?確かに紗夜はやけに俺のギタープレイに関心してたからな。なにか自分の技術に取り入れたのかもな」

 

すると日菜は嬉しそうにしていた。

「だよねだよね!最近のお姉ちゃんのギターがもっとるんってするようになったんだー!」

「蘭もさー、いつも竜二のギターの話ばっかりするしね〜。あーあー、竜二に蘭がとられたー」

モカが嘘泣きしながら俺に言ってくるわけだか、いつものことなので気にしない。

 

「蘭の場合ギターボーカルだから余計にじゃないか?同じ弾きながら歌う人間として関心があるんだろうよ」

「ふっふっふ、あたしはそれだけじゃないと思うけどな〜」

モカがなにやら、にやにやしながら俺に言ってくる。

 

すると日菜が突然俺に聞いて来た。

「ねね!竜二くんってなんでバンドやらないのー?そんなにギター弾けるのに」

「モカちゃんも気になります」

「バンドか、別にやりたくないわけでも特別やりたい訳でもないが?音楽は好きだけどな」

バンドに特別やりたいとかはないからな。

俺はギター弾いて、歌えればそれだけで十分楽しめるタイプの人間だ。

 

「竜二くんだったらすぐにファンとか付きそうな気がするんだけどな〜!」

「ないない。確かに俺の顔が良いのは認めるがな?それに、手伝ったりする方が割と性に合ってるんだよ」

「むしろー?好きになるのは演奏の方だと思うけどなー?」

なんて酷い事言うのモカちゃん!!!

冗談はさておき、

 

「俺の話はいいんだよ。それよりもAfterglowの方は活動どうなんだよ」

「あたしたちはいつも通りだよ〜」

「そうか、それは安心だな」

俺はそれを聞いて安心した。

 

「この前蘭が言ってたんだけど、竜二とつぐの家で会ったって〜」

「あぁ、あの時は朝に羽沢珈琲店に行ってたんだよな。そしたらたまたま蘭がいてさ」

「いいなぁ。お姉ちゃんといい、蘭ちゃんといい、あたしもたまには竜二くんと遊びたーい!」

日菜は羨ましそうにしていた。

「あたしもー」

モカ・・・お前もかよ。

 

「だからたまたまだっての、今日だってたまたま2人に会ったんだからそれと一緒だろ?」

「ぶー!だって2人きりじゃないじゃん!」

どうやら2人きりがいいらしい。

 

「あのな?お前アイドルだろ。そんなほいほい男と遊ぶのもどうかと思うがな。モカもなんか言ってやってくれ」

「えー、あたしは日菜さんの気持ちもわかるからな〜」

「えー!そのくらいいじゃん!それに彩ちゃんだってこの前の休日竜二くんと遊んだって言ってたよ!」

うぐ・・・そういやそうだったな。

 

「はは・・・は、あの時は勉強してただけだからな?ただ遊んでたわけじゃないぞ!」

「じゃああたしとも勉強して!」

「お前勉強に困ってないだろ」

「いいの!あたしとも勉強してよ!彩ちゃんだけずるい!」

やべぇ、日菜が折れてくれない。これは思ったよりも相当ご立腹なようだ。

 

「はぁ・・・わかったわかった。またLANEでもして予定教えてくれ。」

「ほんと!?やったー!」

なぁ?!俺は間違っているのか!!

俺は甘すぎるのか紗夜よ!

 

「日菜さんVS竜二・・・竜二のかんぱーい」

「モカ・・・お前に慈悲はないのか・・・」

「ふっふっふ、いい事を聞いちゃったな〜。あたしも今度LANE送ろーっと」

なん・・・だと。日菜とモカと言う爆弾を1日にして2つも抱えることになるとは。

 

「はぁ・・・ここに紗夜と蘭が居てくれらこいつらを止めてくれるだろうに」

 

それからしばらく2人と話して、12時前くらいになってることに気づいた。

 

「さてと、そろそろスタジオの予約も入ってるし準備しないとな。まぁやる事ないならゆっくりしてってもいいけどな」

そうして俺は立ち上がった。

 

「ほんとだ!もうこんな時間!今日はお姉ちゃんと買い物いくんだ〜!だからあたしもそろそろ帰るね」

「あー!、蘭とトモちんから怒りのメッセージが〜。あたしもそろそろ行かないと〜」

どうやら日菜は紗夜と買い物。モカは2人との約束を遅刻してるっぽいな。

 

「紗夜と買い物か、珍しいな。モカ・・・お前は怒られてこい。それはさておき俺は仕事に戻るな。また暇なら顔出せよー」

 

「はーい。竜二じゃあね〜」

「竜二くん!またねー!LANE送るからね」

 

そのままスタジオの準備をすることにした。

 




今回はさほど文章量も少ないと思うのですが、割と個人的にはこの2人がセットなのを書いてみたかったので満足です!笑

誤字があったら訂正しますのでよろしくお願いします。


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10. Pastel*Palettes 仕事後の風景。 千聖視点

こんにちわ!いつも見てくださってる方ありがとうございます!
主人公不在の回です!笑
たまには女の子だけのガールズトークもいいですね。
千聖さんの視点にしてみました!今回はパスパレメインです!


今日はお昼に小規模なライブがあってそれが無事に終わり、パスパレの皆で羽沢珈琲屋に来ていた。

 

「彩ちゃん。お疲れさま、今日も彩ちゃんらしい良いステージだったわよ」

「ありがとう千聖ちゃん。今日もMCで噛んじゃったけどね。・・・あはは」

彩ちゃんは少し苦笑いしながら答えた。

 

すると日菜ちゃんが

「彩ちゃんがMCを完璧にこなしてるとこなんて想像できないな〜!それにそんなの全然つまんない!」

「ええ?!なんで!?」

「確かに!私もアヤさんがなんでもそつなくこなせるようになったら少し寂しいです」

2人の気持ちもわかるわ。彩ちゃんの良さは一生懸命なところだものね。

 

「あー、それはジブンも分かる気がします。」

 

「麻弥ちゃんとイヴちゃんまで!?酷いよ〜!」

「ふふ・・・彩ちゃんには悪いけど、もう少しこのままでいて欲しいわね?」

きっとファンの皆も彩ちゃんにはこのままでいて欲しいと思ってるものね。

 

「え〜!私も千聖ちゃんみたいな、大人の余裕?って言うのかな。そんな風に仕事を出来たらな〜。あ、もちろん千聖ちゃんは千聖ちゃんで大変なのはわかってるけどね」

 

「彩ちゃんが私みたいに?ふふ・・・そう言ってもらえるのは素直に嬉しいけれど」

実際、私も大人の余裕?みたいなのは少しわからないけれど、きっと竜二くんみたいな人の事を言うのだと思うわ。

 

「えー!そんなの全然るんってこないな〜!彩ちゃんはそのままの方が絶対面白いよ」

「そうです!アヤさんにはアヤさんのいいところがあります!」

「ジブンも彩さんがいつも一生懸命なところがとても好きですよ。もちろん!千聖さんもカッコいいと思いますが」

 

私は少し前に竜二くんの言ってた言葉を思い出した。

「そういえば、竜二くんも言ってたわね。あえて言うなら彩の良いところはあの一生懸命さだってね。私も今ならわかる気がするわ」

 

「そうなのかな?喜んでもいいのかな!竜二くんはそういうこと直接言ってくれないからな〜」

「素直さに関しては私も彩ちゃんに少しは見習わないとね。」

私ももっと素直に甘えられるようになれればいいのだけれどね。

 

「今思うと竜二さんは人を伸ばすのが得意な人なんだと思います」

麻弥ちゃんがしみじみと言った。

すると日菜ちゃんが

「わかるかも!きっと本人は自覚ないんだろうな〜!」

 

「そう言えば、皆さんはどこでリュウジさんと出会ったんですか?私はパスパレを結成する少し前にまだモデルのお仕事だけしている時に初めて会ったんです」

イヴちゃんはそんなところで会っていたのね。それにしても竜二くん。何をしてたのよ・・・

 

「あたしはパスパレやる前にCiRCLEでかなー!」

「ジブンはスタジオミュージシャンをやってた頃にスタジオで」

「私はまだ養成所通ってる時にバイト先だよ!千聖ちゃんは?」

 

「みんなは意外なところで出会っていたのね。私は・・・たまたまバス停出会ったのよ。今のパスパレが出来る前に少し仕事で遠くに通っていた時にね」

 

「今思うと、竜二くんって色んなところに出没してるよね・・・」

彩ちゃんは不思議そうにしていた。

「そもそも、元々は何をやってた人なんでしょうか」

麻弥ちゃんの言いたいこともわかるわね。

実際、竜二くんの事はCiRCLEでバイトしてて音楽に長けている人という事以外全然しらないのよね。

 

「カスミさんから4月に転入して来て夏くらいまでは学校に通っていたって聞いたんですが、私、同じ学校なのに全然気がつきませんでした!」

そうだったのね!まさか同じ学校に通ってた時期があるなんて思いもしなかったわ。

 

「そうだったの?!イヴちゃん!私も全然気がつかなかったわ!もともと上級生とは関わりがなかったって言うのもあるけれど」

 

「ええ!?竜二くんうちの高校に通ってたの?!私全然気がつかなかったよ〜」

彩ちゃんも心底驚いていた。

「皆さんが出会ったのもその後ってことになりますよね」

麻弥ちゃんの言うように、私も初めて会ったのはその後になるわね。

 

「あたしが竜二くんと会ったのはCiRCLEが出来てすぐだったから、大体その時期であってるよ!」

 

一度話を整理してみた。

「イヴちゃんはモデルの仕事している時に会ったのよね。そして麻弥ちゃんはスタジオだったわね」

 

「でも確か、カスミさんが言うには竜二さんは7月末に退学したらしいんです。9月にこの街に帰ってきたとも聞いています」

「ええっと〜!つまりどういうことなのかな」

彩ちゃんが少し難しそうな顔をしていた。

「つまり、8月に竜二くんはなにかしていたはずなのよ」

 

「あ!なるほど、リュウジさんは8月になにか急遽やる事があって退学したんですね」

「そっか!9月にはもうCiRCLEにいたからね」

日菜ちゃんとイヴちゃんも納得した様だ。

 

「それに不思議なのは9月に帰ってくるなら夏休みがあるので辞める必要はなかったんじゃないでしょうか?」

「いったいリュウジさんは何をしてたんでしょうか?」

「なんか、謎が深まるばかりだね」

麻弥ちゃん、イヴちゃん、彩ちゃん、それぞれが難しい顔をしていた。

 

「あまり詮索するのもよくないわよね・・・今は竜二くんがそのうち話してくれると信じましょう?」

「そうですね!チサトさん」

 

すると日菜ちゃんが

「そんなことより!千聖ちゃんが竜二くんと会った時の話を聞かせてよ!」

 

「え?私が竜二くんと出会った時の話かしら?」

「あ!それ私も気になるな〜」

彩ちゃんにも気になるみたいね。

 

「ふふ・・・ごめんなさい。それは出来ないわ」

「えー!なんでー?」

日菜ちゃんが残念そうに私に聞いてきた。

 

「今はまだ自分の中だけの話にさせてくれないかしら?それに、私からみた竜二くんとの出会いは少し言葉にしずらいのよ。みんなにもそういう思い出ってないかしら?竜二くん本人に聞いてくれる分にはいいのよ?」

あの時の気持ちを言葉にするのは難しいのよね。

それに今はまだ私だけの思い出にしておきたいのかもしれないわね。

 

「なるほど、わかりました。チサトさんにも事情があるんですね」

「ジブンも少しその気持ちはわかります。なのでいつか聞かせてくださいね!千聖さん」

どうやら納得してくれたみたいね。

 

「そっかー!聞きたかったんだけどな〜」

「ごめんなさい。日菜ちゃん、少し気恥ずかしい気持ちもあるのよ」

「私も恥ずかしい気持ちはわかるな〜。竜二くんと会ったのまだアイドル研修生だった頃の話だしね」

彩ちゃんの研修生時代、それはそれで興味があるわね。

 

皆と話してる時間は本当に楽しい。時間があっという間に過ぎていく。

 

「そういうことよ。さてと・・・そろそろ時間ね。今日はそろそろお開きにしましょう」

いつのまにか

 

「そうだね!私もそろそろ家に帰らないと!」

 

そのまま会計をして店を出てから帰ることにした。




あ、主人公との絡みはないけどイヴちゃんと麻弥ちゃんやっと出せました!笑
次の話はもう出来上がってるので、後日投稿させていただきます!

誤字がありましたら訂正しますので、よろしくお願いしますm(_ _)m


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11. 羽沢珈琲店はいつも賑やかだ。 前編

いつも見てくださってる方ありがとうございますm(_ _)m
今回はAfterglow全員集合の回です。
前編、後輩で分けようかと思います!

それでは本編をどうぞ!


今日は土曜日の昼間に羽沢珈琲店になぜかバイトに来ている。昨日つぐの親父さんから電話がかかって来て、昼間の忙しい時間だけ手伝って欲しいと言われたわけだ。

 

「いらっしゃいませ〜」

「ええ!竜二!?なんでつぐのところにいるの?!」

誰かと思ったら、ひまりがたまたま店にやって来たらしい。

「今日は忙しいらしくてな。つぐの親父さんに電話で頼まれたんだよ」

「ごめんね!お父さんが、明日は予約が多いけど日雇いで誰かバイト雇うから大丈夫って言ってたけどまさか竜二くんに連絡してるなんて思わなくて」

 

「あーつぐ、それは別にそれはいいんだ。問題はそこじゃない」

問題はこの喫茶店の制服姿を誰かに見られることの方だ。

もはや手遅れだけどな!今一番知られたくない奴に出くわしてしまったわけだがな!

 

「それにしてもその格好・・・ふふ・・・あはは!。格好いいよ竜二!」

「てめぇ!何笑ってやがる。それと写真撮るんじゃねぇぇ!」

こいつ!人の格好を見て早々爆笑しやがったぞ!

頼むからこれ以上知り合いが来ないことを願う。

 

「ごめんごめん!でも似合ってるのは本当だよ!・・・LANEのグループチャットに送ろっと!」

ひまりぃぃぁぁぁぁぁぁ!!

 

「おま・・・!そんなことしたら絶対アイツら冷やかしにくるだろ?!」

なんて事しやがるんだ。まさに公開処刑じゃねーか!

「あはは・・・は、竜二くん落ち着いて・・・」

 

「つぐ・・・こいつを今すぐ放り出しても良いか?」

「だめだよ?ひまりちゃんもお客様なんだから」

くっ!つぐが正しい。お客様は神様だからな。

「すいませ〜ん」

話し過ぎたか。そろそろ接客に戻らないと。

 

「ほらほら?お客さんが呼んでるよ?言ってあげないと!」

「くっ!覚えとけひまり!」

 

そうして接客にもどって、しばらくの間は俺は淡々と職務を全うしていた。

 

「お待たせしました。こちらアイスコーヒーとAセットになります。ごゆっくりどうぞー」

 

ひまりをとっちめてやりたいが、そんな暇がないくらい忙しい昼時だな。

 

「いらっしゃいませ〜!蘭ちゃん!?とモカちゃんも来たんだ」

 

どうやら蘭とモカも来たらしい。ったくひまりのヤツまじで写真送りつけやがったな。

 

「2人とも〜!待ってたよ〜」

ひまりがモカと蘭に呼びかける。

「さっきひまりから面白い写真が来て、面白そうだったから覗きに来た」

「あ〜、本当に竜二がバイトしてる〜!」

モカ指差すな!静かにしなさい!お兄さん恥ずかしいでしょ!!

 

「あたし達はひまりと同じ席でいいよ。後で巴も来ると思う」

おいおい。ちらっと聞こえたけど、こんなタイミングでAfterglow全員集合かよ!

 

「うん!もう少ししたら暇になってくると思うから竜二くんとも話せると思うよ!」

「うん。あたし達はゆっくり待ってるから気にしなくてもいいよ。つぐみも頑張って」

つぐが蘭たちを案内してから戻ってくる。

 

「竜二くん。蘭ちゃんとモカちゃんも来たみたいだよ」

「ああ。さすがに聞こえてたぞ。ったく完全に見世物じゃねーか」

「私はその制服似合ってると思うよ!それになんだか竜二くんとお揃いみたいで嬉しい!」

「つぐ・・・!お前はなんていい子なんだ!お小遣い100万くらいあげよう!」

「ええ!?そんなことないよ!それにみんな、本当は竜二くんに会えて嬉しいんだと思うよ?」

「そうだといいんだけどな。」

 

「すいませーん」

 

「さてと、呼ばれたし行ってくるな」

 

つぐとつぐの親父さんに裏方は任せて俺はしばらく接客に専念していた。

 

「こちらアイスカフェオレになります。ごゆっくりどうぞー」

 

 

「蘭〜見て見てあれー」

「本当だ。竜二が真面目に接客してる。ふふっ・・・それにあの格好」

「2人とも〜!あんまり笑うと竜二に失礼だよ!」

「そういうひーちゃんだって笑ってるじゃんー」

「いや似合ってるんだけど・・・だけどなんだろう?様になりすぎて・・・ふふっ」

 

こらえろ!こらえるんだ竜二よ!お客様は神様!お客様は神様!!!

 

ガラガラ〜

 

「いらっしゃいませ〜!・・・お前も来たのかよ・・・はぁ」

「きたぞ竜二。本当にバイトしてたんだな。それより人の顔を見るなりいきなりため息は酷くないか?」

巴も来たらしい。本当に全員集合しやがった。こいつらは暇なのか!そうなのか?!

 

「お前もどうせ冷やかしに来たんだろ?」

「そりゃそうだ!こんな面白い事そうそうないからな〜。それに皆で集まるの久々だしな」

巴!お前は正直すぎるだろ!

 

「トモちん〜!こっちこっちー」

「なんだモカ、もう来てたのか。じゃあ竜二バイト頑張ってな。つぐも頑張れよ〜!」

巴は蘭たちのテーブルに向かって行った。

 

「うん!巴ちゃんもゆっくりしていってね」

 

ピークが過ぎたのか、客足も落ち着いて来て少しのんびりする余裕も出来て来た。

 

すると、パッと見て20代半ばくらいの仕事の制服を着てる金髪の綺麗な女の人に声をかけられた。

「お兄さんモテモテね?あんな若い女の子達5人も知り合いなんて」

「いや、そんなことはないですよ。アイツらはただ冷やかしに来てるだけなんで!」

「そうかしら?お兄さんは新しくバイトで入ったの?」

なんか視線が!主に蘭たちの方からとても視線を感じるのだが!あとつぐお前もか!

 

「今日はたまたまですよ。お店の人と知り合いで、頼まれたんで」

「あら、そうなの?それは残念・・・ねえ!お兄さんいくつ?良かったら夜にでも飲みに行かない?」

「俺、まだ未成年なんですよね。なんでちょっと厳しいかと」

「ええ!本当に?!てっきり二十歳過ぎくらいかと思ってたのに」

しまった。つい仕事モードに入り過ぎて自分の歳のこと完全に忘れてたぜ。

 

「はは・・・は・・・よく言われます。お姉さんみたいな綺麗な人は俺なんかよりもっと大人っぽい男性といた方が良いですよ。それじゃ、仕事があるんで戻りますね」

「あらあら、ますます気に入っちゃったわ。本当に未成年なの?大人のあしらい方が上手ね〜。仕方ないか〜。今回は諦めるわよ。それじゃ、仕事頑張ってね」

そうしてその女の人は帰っていった。

 

「ねぇモカさん見てください。竜二が綺麗な女の人と仲良く話してますよ?」

「あらまーほんとですね。ひまりさん。竜二も男の子ですなー」

「蘭!?目つきが怖いぞっ!」

「別に・・・あたしには関係ないし」

 

 

さっき、めっちゃ見られてたけど、なんかめっちゃ睨まれてなかったか俺?!

 

「にいちゃんもったいねぇなー!俺の若い頃だったら絶対に今みたいなことあったら連絡先くらい交換するぜ?」

すると今度は40歳くらいのおじさんに声をかけられた。

「そういうもんですかね?俺はあんまそういうのわかんないんですよね」

「そりゃそうさ!若いうちは何事も経験しといた方がいい。すぐに大人になっちまうからなぁ」

なんか身にしみる言葉だぜ。

 

「もぅおじさん!竜二くんにあまり変なこと吹き込まないでください」

どうやらこの喫茶店の常連客らしい。つぐは珍しく少し怒っていた。

 

「つぐみナイス」

なんか蘭の声が聞こえたような・・・

 

「ごめんごめん!つぐみちゃん!・・・あらら、怒られちまったな。なぁ?実際にいちゃんは誰が好みなんだ?つぐみちゃんか?それともあそこの4人の中の誰かか?」

おいおい。そんなこと聞いたらまたつぐに怒られ・・・ん?なんでつぐそんな興味ありげにこっちを見てやがる。

 

「俺ですか?別にそんなのはないですよ。アイツらとは確かに仲良いですけど」

「まぁまぁ、好きとかじゃなくてもいいんだよ。強いて言うなら誰が好みだ?」

 

おいおい。蘭たち!お前らもこっち見てんじゃねぇ!

 

「うーん。そうですね・・・あえて言うなら」

 

 

「つぐみ。竜二くん。お疲れ様!後は私1人でも大丈夫だから2人はもう上がってもいいよ。あとこれ、ささやかなお礼。今日はありがとう。竜二くんもまたよろしくね」

つぐの親父さんがなんとか話を切ってくれた。

どうやら今日はもう上がりでもいいらしい。コーヒーまで入れてくれるとは!

 

「親父さん。すんません。めっちゃ助かりました」

俺はつぐの親父さんだけに聞こえる声で話した。

 

「気にしなくていいよ。なんか修羅場の空気を感じてね。そういうのには敏感なんだ」

さすが、つぐの親父さんって感じだな。

 

「ありがとう。お父さん!」

「親父さんコーヒーあざす。また忙しいときは電話してくれたら来ますよ。休日なら空いてるんで、それじゃ、今日はこれで上がります」

 

するとさっきのおじさんが少し残念そうにしていた。

「ありゃ、聞きそびれちまったか、仕方ない。にいちゃん!また今度聞かせてくれよ。俺もそろそろ帰るぜマスター」

どうやら帰っていったみたいだ。

 

「竜二くん。今日はありがとう。すっごく助かったよ」

「気にすんな。それよりつぐがこんな大変な接客を普段してるとはな。素直にすごいと思ったよ」

俺でさえ昼から数時間しかやってないのに、結構精神的に疲れたからな。

 

「そ、そうかな?でもいつもはこんなに忙しくないんだよ!今日はたまたま予約の人とかも多かったし」

褒められるのが気恥ずかしいのか、つぐはあたふたしながらそう答えた。

 

「いや、忙しいとか関係なくさ。休日や学校終わってから手伝ったり、なかなか出来ることじゃないと俺は思うぜ。」

 

「竜二くん・・・ありがとう。なんか少し気恥ずかしいけど」

「素直に喜んどきなさい。それと、今日はたまたまだったけど、今度はつぐの方から呼んでくれていいぞ」

「本当?!そういう事ならまた忙しい時はお願いするね!」

「さてと、蘭たちのところに行ってやるか。いこうぜ」

「うん!」

俺たちは制服を着替え終えてから蘭たちの待つテーブルに向かって行った。




ほのぼのした日常を書けてればなと思います!
Afterglowはなんといっても、幼馴染感がとても良いですよね。

投稿した後によく誤字に気づきます!笑
気づき次第直していますのでご容赦ください。


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12. 羽沢珈琲店はいつも賑やかだ。 後編

後編です!結構長いです。ほのぼのしつつ少しシリアスですm(_ _)m
それではどうぞ!


羽沢珈琲店のバイトが終わって蘭たちの座るテーブルのとこに来たとこだ。

 

「来たぞー」

「2人ともおつかれさま!」

ひまりが真っ先に声をかけてきた。

 

「サンキュー。なんか早く上がらせてもらった」

俺が答えるとつぐが

「今日は竜二くんがバイトに来てくれてすっごく助かったよ!」

「俺はひまりのせいで大変な1日になったけどな!」

「えー!だって竜二がつぐのところでバイトなんて、すぐにでも皆に知らせなきゃ!って思ったんだもん」

「なんでそうなるんだ!」

 

すると巴が

「まぁまぁ落ち着けって。久しぶりにAfterglow全員でこうやって休日に集まれたんだからさ」

「トモちんいい事言うね〜」

「ん?いつもお前ら一緒にいるじゃねーか。久しぶりでもないような気がするが?」

この前もCiRCLEに来てたし、いつも一緒にいる事ね?

 

「はぁ。だから・・・竜二も!Afterglowのメンバーだって・・・」

蘭が俺の方を見てため息をつくなりそんなことを言った。

「竜二くん。Afterglowって言うのはバンド名でもあるけど、この6人でいる時の名前って言う意味もあるんだよ」

ああ、なるほど、つぐの言った事でようやく理解出来た。

 

「なるほど、そういうことか。だから久しぶりに皆で集まるって言ってたのか」

「そゆことー」

俺が納得しているところにモカが答えた。

 

「でもこうやってみんなで話すの久しぶりじゃない?中学の時はほぼ毎日一緒にいたのにね〜?」

「あ〜、蘭が授業サボりまくってた頃ですな〜」

ひまりとモカがどこか懐かしそうに言っていた。

 

「ちょっ!モカ何言ってんの」

「えー、でも本当の事だし〜?」

モカの言うように、あの頃の蘭は授業を普通にサボってたわけだが。

 

「確かにそうだけど・・・でもそれは竜二もじゃん」

蘭!俺のことには触れないで!?

「やめろ!過去の傷を抉らないでくれ!」

 

すると巴が不思議そうにして

「そもそも、竜二はなんでクラスに馴染めなかったんだ?あんまり想像出来ないんだよな」

「あ、それは私も気になるかな!」

どうやらつぐも気になるらしい。

 

「あーそれはな。そもそも俺ってテレビとか見ないじゃん?クラスのやつが何話してるか全然わかんねーし、宿題とかもちゃんとやってなかったからな」

「ヤンキーに思われちゃってたのかな?」

ひまりの言うように、少しそう思われてた節もある。

 

「どうだろ?でも多分近づきにくいヤツだとは思われてたんだろうなぁ」

「あの頃だっけー?つぐがバンドやろうって言い出したのー?」

モカが楽しそうにそんなことを言った。

 

「懐かしいな!楽器やり始めた頃なんて、学校終わったらみんなでスタジオよく行ったりしてさ」

巴の言うように、スタジオや自宅で集まったりしては練習していたこともある。

 

「屋上で竜二にギター教えてもらったりもね」

蘭が懐かしそうにそう言った。

 

「そんなこともあったな。確かに俺はひまりと蘭にはよく練習付き合ってた気がする」

「ほんっとに!すっごいスパルタで大変だったんだから!」

ひまり。俺がスパルタたったのはお前だけなんだがな。

 

「だって、厳しくしていいって蘭が言うからさ。俺なりに頑張って教えてたわけだ」

「あたしはそんなに怒られた記憶ないけど?」

だって蘭は不満一つ言わずに練習してくれるんだもの!!

「ええ!?もしかして私だけ!?」

「だって蘭は飲み込み早いからなー。ひまりなんて何かと言えば「こんなの無理だよ〜」とか訳のわからんこと言い出すからな。めっちゃ厳しくしてやったぜ」

 

「それも竜二の愛だよー?ひーちゃん」

「もうモカ!本当に大変だったんだから〜!」

「モカは教えるって言うよりは見て覚えるタイプだったから楽だったな」

モカは天才肌なのか、俺のギター見て自分なりに練習してたからな。

 

「ふっふっふ、さすが優秀なモカちゃん」

「つぐの場合は普通に上手かったからな。言うことは特になかった」

「ええ!?私全然だったよ!メンバーの中でも1番下手だったし」

「そう思ってたのはつぐだけだと思うが?なぁ巴」

「ああ!つぐは自分では気がついてなかったみたいだけど、実は一番まともに弾けてたんだよな」

つぐは実はAfterglow内でもかなりの実力者だと俺は思っている。

「巴ちゃんまで!?」

「むしろつぐみが1人だけ上手いのにめっちゃ頑張ってるから、あたし達も火がついたって言うか」

「めっちゃツグってたよねー」

蘭とモカの言うように、あの頃のつぐは自信が今以上になかったから、めっちゃ頑張ってたんだよな。

 

「私全然気が付かなかったよ!?ギターとかドラムとかベース、凄く難しそうなのにすごいなって思ってて、もっと頑張らなきゃ!って思って」

 

「ま、そこもつぐのいいところでもあると俺は思う」

「でもみんながそんな風に思ってくれてたなんて、なんか嬉しいな」

つぐが少し気恥ずかしいそうに、でもとても嬉しそうにしていた。

 

しばらくしていると俺たち意外の客が1人もいなくなっていた。外は夕方で綺麗な夕焼けが見えた。この時間帯はあまり人が来ないのかはしらないが。それにしてもとても静かだ。

 

「竜二もアコギよりもエレキをよく弾いてたのに、今はいつもアコギ弾いてるよね」

蘭が俺に聞いてくる。

 

「なんか急にアコギハマったんだよな。コード鳴らすだけで弾き語り出来るし、俺には向いてるのかもしれん」

 

「えー!でもやっぱり竜二にはエレキの方が似合うよ!モカも絶対そう思うでしょ?」

ひまりがモカに尋ねる。

「珍しくひーちゃんと意見が合うとはー」

 

「アタシ、今でも覚えてるぞ、あのギターのインストのコンテスト!確かGuitar spiritだっけ?」

今巴が言ったのは、3年前開催された、音楽イベントの事だ。ちなみにギターのインストって言うのは歌がなく、ギターがメインの楽曲の事だ。

 

「優勝したんだよね!」

つぐが嬉しそうにしていた。そんなにメジャーなイベントじゃないが、優勝出来るとは俺も意外だった。

 

「モカちゃん今でも動画サイトで見たりしてるなー」

「あの時の竜二は今まで見たギタリストの誰よりも本当に格好良かった・・・!」

蘭が珍しく少し興奮したように答えた。

 

「あの動画!すっごいアクセス数なんだって!みんなに自慢したいくらいだよ!」

「それはさすがにやめてくれよ?ひまり?」

「えー!あんなに格好良かったのに〜?」

「あんまり目立ちたくないんだよ俺は」

 

 

「そんな竜二くんに、じゃじゃん!」

「つぐみ・・・それ」

「Guitar spiritの告知ポスターじゃないか!」

蘭と巴が驚いている。

 

「この前隣街に行った時にもらったんだ!しかも4年振りらしくて規模がすごいんだよ!世界中のギタリストが集まるんだって!優勝するとそのままメジャーデビュー出来るとか!過去の大会で実績がある人は予選なしで本選に出られるし、竜二くん!どうかな?」

 

「竜二〜!これは絶対出ないとー!」

モカが珍しく興奮したように俺に言った。

 

「おいおい。俺は出ないぞ、だってこれネット中継とかもやるんだろ?」

「ええ?!絶対出た方が良いよ〜!」

「アタシもひまりに賛成する!またステージで竜二がギターを弾く姿見たいしな!」

巴とひまりもどうやら俺に出て欲しいらしい。

 

「でもなぁ。別にデビューとか興味ないんだよなー。大勢に見られるのも嫌だしなぁ」

「え〜!竜二〜、お願いーモカちゃんの一生のお願いだから〜」

まさかモカがそんなに頼んでくるなんて予想外だった。そこまでの物だったのかモカにとっては。

 

「あたしも・・・もう一度見てみたい。世界中の人が集まる舞台で、竜二のギターが色んな人を感動させるところ」

蘭も真っ直ぐな瞳で俺を見つめていた。

 

「竜二なら優勝できると思う!私あの演奏聴いて本当に感動したもん!」

ひまりも蘭と同じ瞳をしていた。

 

「あのな、世界だぞ?この大会はプロのギタリストも来る。俺が出た3年前のGuitar spiritとは訳が違う」

 

「出来るよ!竜二なら・・・あたし感動したんだ。あの光景を見た時からずっとあんなギタリストになりたいって思ってたから!」

「あたしも蘭と同じだよ?竜二のギターは世界で一番好きだし、もう一度見たい」

「優勝出来なくても、私たちは見れるだけで嬉しいんだ。デビューが嫌なら断っちゃえばいいし、ダメかな?」

蘭、モカ、つぐ、それぞれが本気の思いを伝えてくる。

 

 

「お前らはさ・・・勘違いしてるんだよ。

あの日あのステージで俺が大勢の前でスポットライトを浴びてギターを弾いて・・・なぜか優勝した。

それを間近で見たお前らはさ、俺のことをどこか凄いやつなんだ!って・・・竜二は天才なんだ!って今もどこかで思ってるだけなんだよ。

そんな期待感が幻想を見せてるだけなんだ・・・」

 

「勘違いなわけないじゃん!!あたし達はあの演奏を聴いて、本当に音楽を好きになれたんだよ!あの時会場にいた人もみんな、竜二の演奏に感動してた。あたし達は竜二のギターが世界にだって届くって思ってる!」

 

蘭の言葉に俺は驚いた。蘭がここまで思いの丈をぶつけてくるのはあまりないことだし、自分がまさかそこまで影響を与えていたなんて思ってなかったからだ。

 

「なぁ・・・ギターならさ、お前らのためならいくらでも弾いてやるよ、歌だって・・・いくらでも歌う。その他の事だったらなんでもしてやる。それじゃ、ダメなのか・・・?」

 

「もう一回・・・あと一度だけでいいから・・・見たいんだ。最高のステージで演奏する竜二をみんなに見せて欲しい・・・」

蘭が俺を真っ直ぐに見て答える。

 

「優勝出来なくてもいいか・・・?もし万が一、奇跡が起きて出来たとしてもデビューはしないけどそれでもいいのか・・・?」

「うん!」

全員が頷いた。

 

「こう言う、イベントに出るのは今回限りだ・・・それでもいいか?」

 

「それでいいよね?皆?」

「うん!」

蘭が皆に問いかけ、全員が答えた。

 

「はぁ・・・ったく!わかったよ。来年だったな?なんとか頑張ってみるよ」

 

「本当か!やったなみんな!また竜二がステージでギター弾くところを見れるぞ」

「やったね!蘭ちゃん!」

「やばーい!モカちゃん超テンション上がってきた〜」

「モ、モカ落ち着いて!私もめっちゃワクワクして来たけど!」

「竜二。本当に嬉しい。ありがとう。あたし、すっごく楽しみにしてるから!」

蘭は笑顔でとても嬉しそうに俺に言った。

 

「おう。頑張ってみるよ」

 

こうしてGuitar spiritに出ることを決意した俺だった。




後編ついついめっちゃ書いてしまいました!笑

それと、少しサクラノ詩の設定に近い要素出て来ますが、作品知らない方でも全然大丈夫ですのでご安心くださいm(_ _)m
Guitar spiritの話はだーいぶ先になると思うので気長に待っててくれるとありがたいです!笑


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13. お節介焼くのが好きなもの同士の休日。

リサ姉ぇ回です!
ほのぼのした話でも書けてれば良いですけど!
是非読んでいってください!


今日は日曜日の昼間で、家でゴロゴロしてたところだ。ちなみに今日はCiRCLEのバイトは休みだ。

 

ん?なんか電話が鳴ってるな。俺は布団に入りながら電話をとった。

 

「もしもし、リサか。どうした?こんな休日の昼間に」

「もしもし竜二?今日は休みだったよね?そ、その〜。よかったらなんだけどさ〜、今日そっちに行ってもいい?」

「そっちってまさか俺ん家のことか?」

「うん!もし時間があるならでいいんだけど、ベースの練習に付き合ってくれないかな〜と思って」

リサがベースの練習にだなんて、珍しい事もあるもんだ。少し前はよくあったけどな。

 

「ほいほい男の一人暮らしの家にに上り込むのはどうかと思うけどな」

今更だけど女子高生を家に上げる社会人の男は普通ならやべぇな。

 

「え〜!そんなの今更だと思うけどな〜」

「はぁ・・・わかったよ。じゃあとりあえず適当に来てくれ。めんどいからインターホン鳴らさず入ってこいよ」

「うん!それじゃ、今から向かうからね〜」

今から来んのかよ!はええな!

「ああ。それじゃまたあとでな」

リサとの電話を終えて、俺はそのまま寝ることにした。

 

 

 

ガチャ!

 

「竜二〜!来たよ〜!って寝てるし!」

「ん?・・・お、おう。リサか」

お前本当に来るの早いな!まだ1時間もかかってないだろ?!全然寝れなかったじゃねーか!

 

「もしかして、さっき電話した時布団の中だったんじゃないの〜?」

「休日は寝るに限る。前日に夜更かしして明方に寝る。それが醍醐味だろ?わかってねーなリサは」

仕事が有ろうが無かろうが毎日夜更かしするのが俺のスタイル。

 

「こ〜ら!そんな生活してたら健康に悪いから辞めてって言ってるじゃん」

なんかリサも少しひまりや沙綾みたいな世話焼きタイプなんだよな。

 

「無理だ。俺の唯一の楽しみを奪うなリサよ」

「まったく、大げさなんだから」

「そんなことより、ベース練習するんだろ?俺は何をすればいいんだ?」

その辺聞いてないからな。実際何をすればいいのやら。

 

「とりあえず一回聴いて欲しいんだよね〜。まだ成功率低いけど」

「ん、わかった。じゃあ適当に弾いてみてくれ。聴いてるから」

「とりあえず布団からは出ようよ?」

やっぱそうなりますよねー。

 

「別にここでだって聴けるじゃん?」

実際聴くだけなんだしいいじゃねーか!

 

「せっかくなんだしさ〜!竜二も一緒に合わせようよ〜!」

さては、それが目的で来たなリサよ!

 

「ああもう。しょうがないなぁ。じゃあ、一回合わせてみようか」

俺は布団から体を起こして部屋の小さいテーブルのリサの向かいの座椅子に座った。

「やった〜!それじゃあ、はい。ギター」

 

「さんきゅ。じゃあ四つカウントでやろうか。ワンツースリーフォー」

 

 

 

♪〜♪〜♪

 

 

 

「普通に弾けてね?!俺が教えることは特になさそうだな」

普通にミスらずに最後まで弾けてたと思ったけどな。

 

「いや!これはたまたまだって!いつもサビ終わりのベースラインよくミスするんだよね〜」

リサは少し苦笑いしながら答えた。

 

「じゃあ後は反復練習するだけじゃねーか。わざわざ何故に俺のとこに来たのやら」

「だってさ〜!1人でずっと練習してるより、誰かと一緒の方がなんかやる気があがるんだよね〜」

まぁその気持ちはわかる。誰かとだと喋りながらでも楽器触れるしな。

そのまま俺たちは楽器を少し弾きながら話し続けることにした。

 

「じゃあ友希那とか紗夜とかいるだろ?練習大好きっ子達がさ」

「そうなんだけど、たまには初心に返って竜二の家で練習するのもいいな〜って思ったんだ」

リサの言うようにRoselia結成時はよくここに練習しに来てたわけだが。

 

「もうリサは俺が教えるレベルじゃないと思うけどな」

「そんなことないって!アタシなんてまだまだ全然だよ〜。たまに紗夜とか友希那に怒られるし」

紗夜と友希那は厳しいけど、リサの成長ぶりにも一目置いているはず。ただ不器用なやつらだからな。

 

「アイツらほんと厳しいからな」

「それに、たまには自分から連絡しないと竜二とCiRCLE以外で会うことないじゃん?」

「CiRCLE以外で会っても俺とする事なんて特にないだろ?そもそも音楽以外だと趣味は全然合わないだろうし」

実際俺もRoselia以外のリサの事は女子力高いのとお節介大好きって事くらいしか知らんからな。

 

「それでもいいの!竜二は乙女心わかってなさすぎだよ〜!それに、竜二の興味ある事にはアタシも興味あるんだ〜」

「リサに乙女心って言われてもなぁ」

「ちょっ!それは酷くない?」

「ははは!冗談だよ。俺の好きな事ねぇ。ゲーム、ギター、本を読む。くらいだ。ゲームとか興味ないだろ?」

もともと知識欲が多い俺はよく本を読んでたりする。

 

「確かにゲームはあんまりやらないかな〜、けど興味がないってわけじゃないんだよね。竜二はどんなゲームをやってるの?」

「俺か?俺は面白ければなんでもやるぞ。ストーリーが良ければさらに良いな」

「へぇ。そういうものなんだ。アタシも映画とかドラマとか好きだから、ストーリーが面白いなら少しやってみたいかも」

まじかよ!リサ!お前は最高だ!

 

「おお!そうかそうか!それなら今度初心者でも気軽に遊べるゲーム貸してやるよ!それにしてもリサがゲームに興味を持ってくれるとは!布教しがいがあるな!」

また一つ布教をすることになりそうだ。

 

「ゲームもそうだけど、アタシは竜二が好きなものを知りたいんだよね、アタシだって竜二のことあんまり知らないからさ〜」

お互いにRoseliaから離れると本当に知らないことばかりなんだよな。

 

「まぁ確かに。けど別に俺のこと知ったって別に面白いことは何もないぞ?」

「いいじゃん!アタシが興味あるんだから」

「なるほど、でもなんかリサって俺のこと勝手に凄いやつだと思ってそうだよな。俺は普通にダメ人間だからあんまり中身知ると幻滅するぜ?」

俺は休日や家にいる時はかなりダラダラ過ごしてるしな。

 

 

「アタシが竜二のこと幻滅するわけないじゃん。だって竜二って自分のことあんまり話したがらないしさ〜、自分から踏み込まないと知れないことたくさんありそうだし、・・・その、・・・そう言うのが嫌なら辞めるけど」

リサが最後の方は少し不安そうに訪ねて来た。

 

「別に嫌ではないけど、話すことが特別ないだけだしな。でもさ、そこまで相手を深く知らなくたって仲良くなれねーわけじゃないだろ?」

実際リサとはこうやって仲良くなれてるわけだしな。

 

「でももっと知った方が困った時とか協力してあげれるし、何も知らないよりは絶対知ってた方がいいと思ったんだ。いつもアタシ達助けられてばっかりだしさ」

なんだ、そう言うことか。

 

「それは好きでやってることだから気にしなくていい。にしてもそこまでリサが俺にする理由がわかんねぇな」

 

 

 

「アタシは!!、ただ、アタシはその・・・竜二を支えたいって言うか、なんて言うか・・・ああもう!なんか上手く言えないけどそう言うことだから!」

 

「そ、そうか。つまりリサは俺と似たような気持ちで色々お節介したいって事か。」

「はぁ・・・竜二はほんっと〜に鈍いよね!でもいい!アタシは勝手にお節介するから覚悟してよ〜!」

リサが少し呆れながらも俺にそう言った。

 

「よくわからんけど好きにすればいいさ」

俺も好きにお節介させてもらってるからな。

 

お互いに楽器の練習を終えて、それからしばらく話していたが、リサが珍しい話題を口にした。

 

「あ!そういえばさ、竜二Guitar spiritに出るんだよね?ひまりから聞いたんだけど〜」

「アイツ・・・まさか皆に言いやがったな。」

本当にひまりに言うと話が広まるのあっという間だな!!早すぎるだろ!

 

「もしかして内緒にしてた?なんか悪いことしちゃったかな?」

「いや別にそう言うわけじゃない。ただあまりにも伝わるのが早すぎでビビっただけだ」

「それなら良かった〜。アタシもめっちゃ応援してるからね!楽しみすぎて3年前の動画何回も見てたんだ〜!」

Roseliaの皆も3年前のGuitar spiritの演奏動画にはかなり関心があるらしい。

 

「ありがとよ。けど、あんまり期待すんなよ?流石に世界だからな。下手な演奏聴かせるもんなら大ブーイングだ」

実際色々な人が見にくるし、地上波じゃないから見てる人は言いたい放題だしな。

 

「竜二の演奏なら大丈夫だって〜!ギターのこと詳しくはないけど、アタシだってあの時の演奏が凄いってことくらいはわかるよ」

 

 

・・・・・・

 

 

「あのなリサ・・・?皆には本当に悪いけどな。俺はあの時みたいに毎日何時間もエレキギター触ってるわけじゃないんだ。あの時の俺はそこまでしてやっと、あの舞台で優勝できたんだ・・・だからさ、あまり俺を過信しすぎるなよな・・・」

 

 

「ううん、アタシは竜二がステージでギター弾いてる姿が見たいだけだから。結果はあんまり気にしてないんだ。だからさ・・・・・・竜二も目一杯チャレンジして見ればいいんじゃん?あんまり気負いしすぎないでさ」

結果か、たしかにリサの言う通りだな。俺はやれる事をやるだけだからな。

 

「・・・ああ。そうだな。ありがとうリサ。少し気持ちが楽になったよ」

「う、うん!なんか竜二にお礼言われるの珍しいからびっくりしたよ!アタシも少しは竜二の役に立ってるって事かな〜?」

 

「何言ってんだよ。俺は前からリサには助けられてると思うが?」

「ええ!?アタシ竜二を助けるようなことしたっけ?」

「お前が気づいてないだけだよ。だから、あんまり助けようとか考えすぎずに俺と接してくれればいいよ。それで十分だからな」

「そ、そっか〜!なんか今日の竜二は素直だから反応に困るな〜!」

おいおい。俺はいつだって素直だぞ。

 

「俺はいつでも素直だぞ。ただあんまりこんな話しないだろ普段は」

「まぁ確かに?なら今日はこう言う話が出来て良かったよ!なんかもっと竜二の事知れた気がするし!」

リサが喜んでくれたなら俺はそれでいいと思った。

 

外を見ると少し太陽が沈みかけていた。

 

「そうだな。それよりリサ、そろそろ帰れよ?暗くなる前に帰らないとだろ」

「もう!子供じゃないんだから〜!だけどそうだね。そろそろ帰ってごはんも食べないとだし、竜二もちゃんとしたもの食べるんだよ〜!」

 

「お前は俺のお母さんか!もしくは女房か!」

「女房って!りりり竜二っ!!何言ってんの!?」

リサが顔を真っ赤にしながら俺に言った。

 

「何をそんなに焦ってやがる・・・」

「とにかく!!夜もちゃんと早く寝るんだよ!アタシはもう帰るからね!」

リサは照れ隠しなのか、話題を切り上げて帰ろうとしていた。

 

「わかったわかった!そんな心配なら寝る前にLANE送るからいいだろ!」

 

「うん!それじゃまたね!竜二!」

「おう。またなー」

 

そうして俺はリサが玄関から出て行くのを見送ってそのまま部屋に戻った。

 




しばらくRoseliaの面々は登場させてなかったのですが、久しぶりにリサねぇに登場していただきました!

誤字があったら訂正するので、ご容赦ください!


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過去編2. ある日の通学路の風景

今回は有咲メインの回になりました。
気がつくともうすぐ20話迎えそうで嬉しいです!笑

それでは本編をどうぞ!


ある日の通学路

これはまだ俺が花咲川高校に通ってた頃の話だ。

花咲川高校は今年から共学化したらしい。けど男はかなり少ないとかなんとか。

 

俺はいつもの朝の通学路を歩いていた。

 

「おーい有咲」

有咲を見かけたから声をかけた。

「なんだ竜二か」

有咲は素っ気なく答える。

「おいおい、なんだとは失敬なヤツだな!たまには一緒に登校してやろうと言うのに!」

「たまにって、いつものことじゃん。流石にもう慣れたって」

少し呆れたような声でそう言った。

「おまえな、そんな事言うと今からゾンビの振りして有咲の後ろを歩き続けてやる」

俺はゾンビのポーズをして有咲の背後に立った。

 

「おま!恥ずかしいからやめろ〜!」

「仕方ないヤツだな有咲は」

まったく、せっかく俺が最高のパフォーマンスをしてやったと言うのに。

「竜二には言われたくね〜!それより、あたし意外に一緒に登校するヤツいねーのかよ?」

「ちょおま!そう言う事はわかってても聞くもんじゃねえぞ!最近ポピパで友達に囲まれてるからって調子乗ってやがるな!?」

もうやだこの子!!前までは俺と一緒でぼっちだったくせに!

 

「ち、違うって!単に疑問に思っただけだ!それに竜二って普通に友達出来そうなのに、なんか意外だよな」

有咲が少し不思議そうにしていた。

 

「まぁ俺はスーパーイケメンかつ、最強のコミュ力を持ってるから否定はしない」

「あ、いや、顔は普通だと思うけど」

やめて!気づいてたけど言葉にしないで!

 

「うーん、なんか俺中学の時からクラスに馴染むのが苦手みたいだ。そんな負のオーラでも出てんのかね?」

「学年違うから教室の事はわかんないけど、確かに竜二は黙ってる時は少し不思議な空気がある気がする」

不思議な空気か、なんだろう。

「ふーん、そう言うもんか、自分ではわからんな」

「ま!喋るとこれなんだけどなー」

やれやれと言う感じに有咲は言った。

「こんな愛くるしいキャラクターをしているのに!」

「それはないない。そう言えば一回竜二に聞いてみたかったんだけどさ、高校生活って楽しい?」

その時俺は昔蘭に同じ事を聞かれたのを思い出していた。

まさか有咲から聞かれるとはな。

 

「ははは・・・!まさか有咲にそんな事言われるとはな!」

「べ、別にいいだろ〜!それよりどうなんだよ!」

「ああ。悪い悪い、確かに意外だったけど有咲が可笑しかったわけじゃない。少し懐かしくてな」

「懐かしい?」

「ああ。中学の頃思い出したんだよ。有咲と同じで俺に学校楽しいか聞いてきたやつがいたんだよな」

「へぇ、そんなことがあったんだ」

有咲が少しだけ驚いた顔をしていた。

 

「あの時はよくわかんなかったな。今と同じようにクラスには馴染めてなかったし、けどさ、今は楽しいよ、有咲はどうなんだ?俺が答えたんだから答えろよな」

ま、聞くまでもないだろうけどな。

「あ、あたしは・・・最近はその・・・楽しいよ。香澄には特に世話焼かされるけどな!その、竜二は中学の頃は楽しくなかったの?」

確かに俺も香澄やおたえには世話を焼かされるな。

 

「いや、楽しかったぞ!さっき言ってたやつがいるだろ?そいつに会ってからは一変して楽しくなったよ。色々な人が周りにいてさ、毎日一緒だった気がするな」

そう言えばAfterglowもあの頃に出来たんだっけな。俺ってバンドに縁でもあるのか?

 

「そっか!それならいいんだ!今は会ったりしてるのか?」

「あー、俺は転校してこの街離れてたこともあるからな、それに中学の頃は携帯とか持ってなかったし、新年に手紙だけは書いたんだけどな」

今年中に会いにいくつもりだから大丈夫だろう。

 

「同じ街にいるんなら会いに行けばいいじゃん。なんで会いに行かないの?」

「もちろん今年中には会いに行く予定ではある」

「ま、あたしがとやかく言うことじゃないよな。じゃあ今の学校が楽しい理由は聞いてもいいか?」

「ああ、そんな事か。理由は他にもあるけど、そのうちの一つは有咲達がいるからかな」

 

「あ、あたし達ってポピパの事か?」

「そそ、いつも俺に仲良くしてくれるしな」

「そんなの当たり前じゃん、むしろあたし達が仲良くしてもらってるって感じじゃない?」

「そうか?年上なのにめっちゃ気軽に接してくれるから俺としてはかなり助かってるが?」

実際、学校に来て仲良くしてくれてるのはポピパを除くと数人しかいないし。

 

「なんて言うか、竜二はちょっと変だよな〜、だってその、ポピパってなかなかの問題児の集まりだろ?あ、あたしも含めてだけど!それなのに、わざわざ色々手伝ったりしてくれてさ」

有咲は少し可笑しそうに、だけど少し恥ずかしそうに言った。

 

「確かに問題児の集まりだな!!」

「少しは否定しろ〜!」

だって本当の事じゃん。

 

「でも一番の問題児は俺だからな。学校は急に休むし、勉強はしない、授業はサボる、クラスの友達は1人もいない。そんな俺からすればお前らの方が物好きだよ」

今思うと俺ってめちゃくちゃな学校生活送ってるな。

 

「香澄達もそうだけど、その・・・あたしは、竜二の良いところをちゃんと知ってるから、むしろ皆知らないだけなんだよな」

有咲は少し照れくさそうにしていた。

 

「はは・・・なんか照れるな。にしても有咲がそこまで想ってくれてるとは!!」

なんだか恥ずかしかったから俺は少し冗談っぽく答えた。

「ば、ばか!茶化すな!ほ、ほんとのことだからな!あ、あたしはその・・・竜二のこと結構いいヤツだと思ってるんだ」

なんか有咲は2人の時はいつも素直に色々言ってくれるんだよな。香澄達にもそうしてやればいいのに。

 

「さんきゅー有咲・・・でも俺も同じ事思ってるぞ。お前らはほんといいヤツだ!俺はいい友達を持ったな〜!」

俺は泣き真似をして大袈裟に言った。

「ははは・・・!なんだそれ〜!・・・にしてもみんな竜二の良さを知らないなんて損してるな。ちょっとだけ優越感あるかも」

有咲は可笑しそうにしながら最後はしみじみと俺に言った。

 

「有咲もな?こんな素直な有咲を知っている俺!優越感があるぜ」

「こ、こら!これは素直とは違うからな!だ、誰にでも見せる顔じゃないんだからな!その・・・あたしにとって竜二は・・・」

そうして話してると遠くから声が聞こえて来た。

 

「有咲〜!あ、竜二くんも!おはよー!!」

「おお。香澄か、おはよー」

どうやら香澄が来たみたいだ。この通学路だといつもの事だけどな。

「か、香澄〜!お前またこんなタイミングで!」

「有咲?!そんなに怖い顔してどうしたの?!」

「な、なんでもねーよ!」

「そう言えば有咲、さっき何か言いかけてなかったか?」

香澄がちょうど来たから聞きそびれたわけだが。

「そ、その話はもういいから!」

「なになに!なんの話?!」

「実はな、有咲と2人で絆を確かめ合ってたところだ」

ま、実際本当のことだからな。

 

「ええ!いいないいな!私も仲間に入れてよ有咲〜!」

香澄が有咲にすごい勢いで抱きついた。

「ちょ!抱きつくな香澄!はなれろ〜!」

こいつら見てると今日も平和な1日になりそうだなぁ。

 

「こうして俺たちの物語は続いていくのである」

 

「勝手に打ち切りみたいにしてんじゃね〜!」

 

この後沙綾、おたえ、りみも無事集合したのは言うまでもない。




過去編を出すタイミングは大体4.5話に一回くらいやっていければなと思ってます!
正直、ガルパは好きなキャラ多すぎて書きたい話がありすぎるのも困ったものです!笑


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14. アイドルにも癒しは必要らしい。 前編

パスパレメインの回です。
今回も2話に分けて書くつもりです!

前編はなるべく賑やかな感じで書かれてればなと思っているので、是非読んでみてください!


なぜか俺はパスパレが所属している事務所に

夕方頃に来ていた。

昼頃に携帯に連絡が来た。

今日はいつも送ってくれるマネージャーが休みらしく、俺はそのマネージャーに頼まれて来たわけだ。

ガチャ!

「来てやったぞー」

「あ!本当に竜二くんが来てくれた」

開口一番に彩が出迎えてくれた。

「竜二くんお疲れ様」

その後すぐに千聖もこっちに歩いてきた。

 

「おう。みんなもお疲れさん。それより帰るんだろ?車で送ってくから準備しろよー」

するとイヴが

「リュウジさんって免許持っていたんですね!」

しまった!つい普通に答えちまった。

「あー!今年取ったばかりなんだよな!あは・・・は」

あぶねーあぶねー。

 

「ねえねえ!そんなことより少しここで話して行こうよ!せっかく事務所に来たんだし!」

どうやら日菜は少し俺と話しでもしたいらしい。

 

「ジブンも日菜さんに賛成です!竜二さんが事務所に来ることなんて滅多にないですからね!」

麻弥もそう言うなら俺は別に構わないが。

 

「まあ、俺は別にいいけど千聖・・・いいのか?」

「そうね。麻弥ちゃんもこう言ってるんだしいいんじゃないかしら?」

千聖も快く承諾してくれた。

 

「竜二くん!せっかくなんだし話して行こうよ〜」

「私もリュウジさんとお話したいです!」

どうやら彩とイヴも話したいらしい。

 

「そうか、皆がそう言うなら別にいいぞ。じゃあ座らせてもらうぜ」

俺たちは事務所のテーブルの椅子に腰をかけた。

するとイヴだけが立ち上がって

「お茶を入れて来ますね」

「さんきゅーイヴ」

そうしてイヴは少し奥の方に歩いて行った。

 

「それにしても事務所ってこんな感じなんだなー。お前らもちゃんとアイドルやってるようで感心感心」

「そうだよ!私もちゃんとアイドル頑張ってるからね!」

「彩ちゃんが言うとあまり説得力がないわね・・・」

「今日のイベントでも彩ちゃん噛みまくりだったよね〜!」

日菜、相変わらずお前はズバズバ言う奴だな。

「うぐっ・・・だって〜!」

「大丈夫大丈夫!そのくらいは予想の範囲内だからな」

「竜二くん酷いよ〜!」

みんな楽しそうに笑っていた。

そんな話をしているとイヴが戻ってきた。

 

「お、イヴお茶ありがとうな」

どうやらイヴがお茶を入れてくれたみたいだ。

「そう言えば竜二さんは今日はCiRCLEで仕事だったんですか?」

麻弥が俺に話しかけて来た。

「ああそうだ。今日は比較的暇だったな。スタジオの予約は入ってなかったし、カフェくらいだったから殆ど俺の仕事はなかった」

基本カフェの方は俺の仕事ではない。よっぽど忙しい時しか手伝うこともないだろう。

 

「そうだったんですね。ジブン、たまにはCiRCLEに行って竜二さんと音楽の機材について語り合いたいっスね〜」

「お前な、今はスタジオミュージシャンじゃなくてアイドルなんだから、音楽の機材よりも違うこと勉強しなさい!」

「竜二くんの言う通りよ麻弥ちゃん。少しはお洒落についても勉強しないとダメよ」

千聖も俺に賛同したみたいだ。

麻弥のことは千聖に一任してあるから大丈夫そうだな。

 

「ええ!?でもジブン、今でもたまにドラムの仕事とかしてますよ」

アイドルやりながらサポートドラムもやってるって結構すごいな。

 

「あー、そうだったのか、それは知らなかった。それならイヴはモデルの仕事もしてるのか?」

「はい!今はパスパレの活動が忙しいのでたまにですが」

「イヴちゃんはすごいよね。私なんてモデルのお仕事なんて絶対無理だよ〜」

確かに彩にはモデルって言うイメージはあまりないな。ガチガチになりそうだし。

 

すると日菜が

「あたしは少しやってみたいなー!って思ってるよ!面白そうだし!」

「日菜とイヴじゃ少しスタイルの差がな〜?」

「あー!竜二くん酷い!あたしだって出来るよ!」

 

「私もパスパレの皆さんなら出来ると思いますよ!」

そんな日菜を見てイヴが言った。

「イヴ!お前は本当によく出来た子だな!!千聖にいじめられてないか?大丈夫か?」

「リュウジさん!?大丈夫ですよ!チサトさんにはいつも優しくしてもらっています」

イヴは1人だけ一年だからな。気を遣いすぎてないか心配になるんだよな。

 

「竜二くん?ずいぶんと勝手な事言ってくれるじゃない?」

何故だか千聖がとても笑顔で威圧してくるが気にしない。

「千聖さんにそこまで言えるのは竜二さんだけなんじゃ・・・」

麻弥も少し怯えていた。

 

「だって、このバンドはイヴだけ年下だろ?少し心配なんだよなぁ」

なんかイヴって面倒見てやりたくなるんだよな。

「リュウジさんは優しいですね。でも大丈夫です!いつも楽しくさせて貰っているので」

「そうか、イヴがそう言うならいいんだ。よかったな千聖?」

「その、何故私を見て言うのかしら?」

千聖はまだ黒い微笑みを俺に向けていた。

 

「麻弥ちゃん!千聖ちゃんがいつにも増して怖いよ!」

彩と麻弥が事務所の隅へと逃げた。

「おー怖い怖い。千聖はいつも威圧してくるなー。日菜えもん助けろ」

かく言う俺も、千聖に少し恐怖してしまってるわけだ。

「絶対竜二くんが悪いと思うんだけどなー」

 

「どうかしたの竜二くん?私はただ見ているだけなのに・・・何で日菜ちゃんの後ろに隠れるのかしら?」

日菜えもおおおおおん!

 

「まあまあ千聖さん。落ち着いてください」

麻弥ナイス!お前が救世主だ!

 

「はぁ・・・まったく、しょうがないわね竜二くんは」

どうやら怒ってはいなかったみたいだ。

 

「私怖かったよ〜」

彩も相当ビビってたっぽい。

 

そんな空気とは裏腹に日菜が

「ねね!そんなことよりこの前彩ちゃんと2人っきりで遊んだんでしょ!早くあたしとも遊んでよ!」

「日菜ちゃん?!あれはその・・・勉強してただけでね!?」

「そうだそうだ!勉強してただけだぞー!断じて遊んでたわけじゃない!」

実際に勉強したのは最後の方だけだけど!

 

「えっと、実はジブン、その日に2人が一緒の店に入ってるのを見ちゃったんですよね・・・」

麻弥ぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 

「あら彩ちゃん。そう言うことはメンバーにはちゃんと報告する約束じゃなかったかしら?」

千聖、お前さっきより怖いぞ!!

 

「ひぃぃぃぃ!一応勉強もしたし、細かく伝えなくてもいいかなと思って〜!」

仕方ない。助け舟を出してやろう。

 

「あの時はたまたまだって、それにお前らアイドルと一緒にいる俺の気持ちにもなってくれよ。それに俺に会いたいならCiRCLEに来いよな」

 

「ジブンは良く1人でもCiRCLEに行っているので」

「私も良く羽沢珈琲店でリュウジさんとは会いますね」

「千聖ちゃんもよく帰りに送ってもらってるって聞いたよ!」

彩の言うようにあれから千聖の仕事帰りに送ることも増えたしな。

「あは・・・はは」

千聖は苦笑いしていた。

 

 

「えー!みんなずるい!あたしだけ全然竜二くんに遊んでもらってないじゃんっ!やっぱりこれは、2人きりでどこかに連れてってもらうしかない!」

どうやら日菜は相当ご立腹みたいだ。

ここはさすがに俺が折れないとやばそうだな。

 

「あーもう!わかったわかった!それなら今度の土曜とかどうだ?・・・確かに日菜とはあまり一緒にいる時間なかった気がするし、たまにはいいだろ」

「ほんとに!?やったー!!じゃあ約束だからね!」

日菜は心底嬉しそうにしていた。

 

「その代わり、つまんなくても文句は受け付けないからな?」

「全然いいよ!!楽しみで今からるんってしてきた!」

そんなこんなでしばらく話していた。

 

 

すると千聖が

「まだ時間もあるし、少し弾いていく?はいこれ」

俺にアコギを渡してきた。

 

「なんで事務所にアコギが置いてあるんだよ。誰か弾くのか?」

「あたしだよ!竜二くんのアコギ見てるんって来たからあたしもやってみたくて買ったんだ〜!」

へぇ。まさか日菜がアコギをやり始めてたなんて全く知らなかったな。

 

「なんだ。そうだったのか、でどうだった?」

「やっぱりあたしはエレキギターの方が好きかな!アコギ弾いてもやっぱり竜二くんみたいに弾けないんだよねー!」

「俺がやってるの簡単なコード弾きだけどな。日菜なら一瞬で出来ると思うが?」

実際ギターそこそこ弾ける人なら誰でも出来ることをやってるだけだからな。

日菜の感覚は俺にはわからん。

 

「う〜ん、でもやっぱりなんか違うんだよね〜。」

「きっとヒナさんにしかわからない感覚なんじゃないですか?」

「きっとそれだけ竜二くんの演奏は特別なんだよ」

彩がそんなことを言うもんだから俺もかなり嬉しくなってしまった。

 

「そんなに褒めるなって!仕方ないなぁ!何かパスパレの曲弾いてやるからお前ら歌えよ!」

「ふふっ、急にご機嫌になったわね」

「竜二さんは少し子供っぽいところありますからね」

千聖と麻弥が小さい声で話しているが気にしない。

 

「じゃああれやるぞあれ!ゆらゆら・・・リンボーダンスだっけ?」

「Ring-Dong-Danceだよ〜!」

彩に訂正されたけど、実はちゃんと知ってるぞ。

 

「はは!冗談だよ。それじゃ行くぞー。ワンツースリーフォー!」

 

♪〜♪〜♪

 

俺はこんな日常がずっと続いて行けばいいと思った。




次の後編が終わればようやく竜二とメンバー全員の絡みが書けたかなあと思いますので、少しだけ嬉しいですね!笑


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15. アイドルにも癒しは必要らしい。 後編

後編はシリアス回です。


しばらくみんなで俺の演奏に合わせて歌っていた。

少し疲れてきたので休憩し始めたところだった。

 

「楽しい〜!やっぱり竜二くんの演奏は本当にるんってくる!」

「そうか?割と簡単な事してるだけなのにな」

コード抑えて弾いてるだけだからな。

 

「ねね!たまにはエレキギター弾いてよ!あの3年前の演奏でやった曲とか」

「それは私も聴きたいわね。動画でしかみた事ないから目の前で聴けるなら私も嬉しいわ」

日菜と千聖がそう答えるが。

 

「それは出来ないなー。それに来年ステージで弾く曲は新曲だし、まだ作りかけだ」

まだ頭の中で構想を練ってる途中だけどな。

 

「そうだったんだ!すっごく楽しみだね日菜ちゃん!」

彩が嬉しそうに日菜に言った。

「うん!すっごい楽しみ!」

 

すると麻弥が、

「にしても日菜さんがここまで絶賛するなんてよっぽどですよね」

「それだけリュウジさんの演奏が素晴らしかったんですね」

麻弥とイヴが言うように日菜はあまり人を褒めないタイプだからな。

 

「竜二くんは天才なんだ〜!ほんっとにすごいんだよ!」

まるで神でも崇めるかのような眼差しでそう言った。

 

「おいおい。俺が天才とか日菜に言われると恥ずかしいわ」

「日菜ちゃんは何でも出来るものね。確かに竜二くんのギターは素晴らしいけれどね」

実際千聖の言うように俺は日菜こそ本当の天才なんじゃないかと思っている。

 

「あたしもいつかGuitar spirit出てみたいな〜!」

「日菜なら頑張れば出れると思うぞ」

「ジブンも日菜さんならきっと出れると思いますよ」

「あたしは全然だよー!竜二くんみたいには全然なれないからな〜」

俺と麻弥の発言とは裏腹に日菜は珍しく消極的だった。

 

 

「日菜・・・?俺はお前の方がよっぽど天才だと思う」

俺なんかよりか日菜の方が才能に溢れてると俺は思う。

 

 

「あたしが竜二くんより?それはないよー。それに、竜二くんにはきっと、あたしには見えてない、聴こえてない音や物が見えてるんだと思う。それはね!本物の天才にしか感じとれないんだ」

日菜が珍しく少し真面目な顔をして俺に言った。

 

「何言ってんだよ。俺にはそんな物聴こえちゃいないぞ。考えすぎだって、日菜は俺を過信しすぎてる」

俺にしか聴こえない音?見えない物?そんなものあるわけがない。

 

 

「ううん。あのね?ヒーローっているでしょ?ヒーローはね。いつも誰かが困ってるとその人の元へ駆けつけるでしょ?何でそれが出来るかわかる?彩ちゃん」

 

「うーん、なんだろう?今まで考えた事もなかったよ」

「ジブンもわかりません」

彩と麻弥は少し考えていたがわからないみたいだ。

 

「ヒーローにはね?心の悲鳴が聞こえるんだよ」

「悲鳴ですか?」

日菜の言葉にイヴが不思議そうにしていた。

 

「うん。その人だけには聞こえるんだ。心の悲鳴が・・・だからね?気がつくと色々な人を救ってるんだ。

普通の人は感じとれないけど、その人だけにはわかるんだよ。

どんなに相手が心を深く閉ざしててもその人にはどうすれば相手を助けられるかわかってるんだ。だからいつのまにかその人の周りにはたくさんの人が集まるんだよね」

 

・・・・・・

 

「なるほど、日菜ちゃんはそれが竜二くんだと言いたいのね・・・」

千聖が少し頷きながら日菜に問いかける。

 

「うん」

 

 

「馬鹿な事言うな。俺にはそんな物聴こえちゃいないし、ヒーローでもない、お前は少し俺を誤解している」

そんな超能力じみたものは俺にはない。

いつのまにか人を救ってる?俺がか?

 

「誤解なんてしてないよ?あたしにはわかるんだ・・・」

日菜は真剣に俺の方を見て言った。

「日菜・・・!違う!俺は・・・そんなやつじゃない」

俺はそんな大した人間じゃない。天才でもなければヒーローでもない。

 

「違うよ?竜二くんこそが本物の天才だとあたしは思うな」

違う。お前こそが本物の天才なんだよ。

 

「違う!!今回のGuitar spiritだって俺は!!蘭たちに頼まれなければ出ようとさえ思わなかった・・・もし、俺にみんなの心がわかるならとっくにステージでギターを弾いてる!」

俺は自分の感情を抑えきれず大声を出していた。

 

すると日菜が少し寂しそうな顔をして、

「それだって、きっと理由があるんだよね?だって、竜二くんはギターが誰よりも好きだもん。3年前の映像を見れば誰でもわかるよ?でも今までステージには出なかった。

竜二くんはあたし達皆が期待している事を知っていて出なかったんだよ。その理由はあたしにはわからないけど、・・・・・・でも!ようやく決心したんだよね!?だからね?あたしはすっごい楽しみなんだ!」

 

・・・・・・・・・

 

「実は私も少しだけ感じてたのよね。竜二くんがなんで頑なに拒むのか、何か理由があるんだって、Afterglowのみんなよりは付き合いが短い私たちだけど、そのくらいはわかるわよ・・・」

千聖も少しだけ寂しそうな眼差しで俺に言った。

 

「理由なんてない!俺は!俺の意思でステージに立たなかったんだ!」

 

「竜二くん?私もさっきの話だけどね?すごくわかるなって思う。竜二くんはいつも気がつかない内に私達を助けてくれてる。でも本当は10分の1くらいしか気付けてないんだよね。だから本当はもっと力になれたらなって思うんだ」

彩が俺の事を心配そうに、だけどとても優しい笑顔で俺の手を握ってくれた。

 

「彩・・・」

 

「ジブンも彩さんと同じ気持ちです。理由を話してとは言いません。けどもし出来ることがあるなら頼ってください。どんなことでもいいんです」

 

「ヒーロー、いいえ!リュウジさんは本当にサムライのような立派な方だと思っています!なので、この先もしもリュウジさんに何かあれば私も全力で助けます。それがブシドーですから!」

お前らは俺がいつも助けられてることに気づいてないんだよ。

 

「だから違うんだ・・・お前らにはいつだって助けられてるよ。俺はRoselia、Afterglow、Poppin'Party、Pastel*Palettes、ハロー、ハッピーワールド、お前らに会えて本当に良かったと思ってる。CiRCLEに来て良かったと本当に思ってるんだ。いつも支えられてる。救われてるんだよ」

 

「私たちがですか?」

イヴが俺に聞き返してきた。

「ああ。きっと誰も自覚はないだろうけどな。でもそれでいいんだ。お前らにはそのままでいてほしいんだ」

「竜二くんがそう言うなら、私達も無理に聞いたりはしないわ。けれど、いつかは話してくれるんでしょう?」

千聖もとても優しい声で俺にそう言ってくれた。

 

「ああ。」

「約束だからね!竜二くん!それまでに私ももっとアイドルとして成長するからね!」

彩が空気を変えようとしてくれてるのか、元気に俺の手を握ったままそう言った。

「彩は出来れば今のままでいてくれるとな〜」

なので俺も冗談っぽく答えた。

 

すると日菜が、

「それはあたしも思うかな!」

「ええ?!なんで〜!」

「アヤさんは今のままでも素敵なアイドルですよ!」

「なんかイヴちゃんのフォローが辛いよ〜」

 

「ははは・・・!」

気がつくと皆で笑っていた。やっぱり彩はこう言う時は本当に頼りになる。

 

 

「その・・・今日はありがとうな?なんか色々気を遣わせちまってさ」

俺は素直な言葉を口にした。実際色々気を遣わせてたみたいだったからな。

「ふふっ・・・竜二くんがデレたわね」

「可愛い〜!」

千聖と日菜が俺に言ってくる。

 

「こら!茶化すな!せっかく素直にお礼を言ってるのに!」

「でもこれでまた少しだけ私たちとの距離が縮まったよね」

彩がそんな事を言った。

「そうですね!」

イヴも賛同している。

 

「あー!皆さん!時間見てください!そろそろ帰らないとまずいんじゃないですか!?」

麻弥が時計を見て驚いていた。

 

「本当じゃねーか!おいそろそろ帰るぞ!車を用意してくるからここで待っててくれ」

気がつくと時間は9時を回っていた。さすがに話しすぎたな。俺は急いで車を取りにいった。

 

 

 

「ねえみんな?私達は私達の出来ることで竜二くんを支えてあげようね」

竜二が部屋を出ていったのを確認した彩がそんな事を言った。

「そうですね!ジブンも今日で更に竜二さんの事を知れた気がします」

「ふふっ・・・彩ちゃんがリーダーっぽいこと言うのは珍しいわね」

「うんうん!でもカッコよかったよ!今の彩ちゃん!」

「えへへ、そうかな?でも本当に私も頑張らないと!」

「さすがアヤさん!私もリュウジさんを全力でサポートします!」

 

ガチャ!

「おーい!早く行くぞ〜!」

「は〜い!」

 

俺たちは事務所を後にした。

 




今回はシリアス回でした。
ようやくどのバンドも出せたので、色々と過去編書きつつ、日常パートを書いていこうと思います!


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竜二編1. 朝倉家との出会い。

今回はバンドリキャラは出てきません。竜二くんの過去エピソードです。


俺は物心着く前には両親を亡くしていて、孤児だった。日本の孤児院から俺を引き取ったのは外国人で、そのまま幼き頃に海外に渡ってそこで働かせてもらっていた。

そして今日も一日の仕事が終わって人気のない道を帰る道中だった。

 

・・・・・・

 

 

「そこのアナタ・・・!わたくしの物になりなさい!」

いきなり金髪巻き髪の貴族のお嬢様みたいなやつに声をかけられた。背は高くてまるでモデルみたいなスタイルをしていた。見たところまだ成人はしてなさそうだ。

 

「なんなんだお前は、と言うか誰だよ」

「わたくしは朝倉家の当主!朝倉ルミナと言いますわ!父はイギリス人で母は日本人よ」

ですわ!とか使うお嬢様口調のやつって実在したんだな。ってかこいつ日本語変だ。

 

「ルミナ様。いきなりそのような事を言ってはこの方に失礼です。まずは順を追って説明しなければなりません」

傍に立っていたのは如何にもジェントルマンって感じの爺さんだ、姿勢も良く何より背も高い。

 

「あなたの数日間を見させていただきましたわ!屋根裏で生活させられながら色々と大人の良いように非合法な仕事ばかりさせられてるようね」

たしかに最近少し視線を感じてたけどまさかコイツらだったのか。

 

「ったく・・・お前らは暇人かよ・・・それで、警察に突き出すってことか?それならそれで構わないがな。寝れるところがあれば俺はそれで十分だ」

「なぜそんな事をしなければならないんですの?わたくしの物になると言うのはわたくしの偉大なる旅路にアナタにも付き合ってもらうという事ですわ」

つまりどういうことだ。コイツらは旅でもしてるのか。

 

「偉大なる旅路かなんだか知らねぇが、俺は俺で色々忙しいんだよ。いきなりそんな事言われても困る。それに俺には戸籍がない。実際の年齢も名前もわかんねーし、今ここで働けてるだけでもありがたいってもんだ」

 

「アナタ・・・随分と優しい性格をしているわね。アナタを利用している人たちはアナタがその非合法な仕事で得たお金で今も遊び呆けてるんですのよ?そしてアナタはただ少ない食事を与えられてるだけ・・・おかしいとは思わないんですの?」

 

「一般教養がない俺にもさすがに奴らが人間として間違ってるって事くらいは、本とかを読んで理解出来てるって。けど俺は俺の人生以外に興味がないからな、特に気にしちゃいない」

気にしてたらキリがないからな、俺は俺、他人は他人だ。

 

「彼等を理不尽だとは思いませんの?見たところアナタの年齢はまだわたくしと同い年くらいですわよね?憤りを感じませんの?」

正直自分の年齢なんて気にした事もないが、多分まだ未成年で通るだろう。

 

「他のヤツとの人生と比べたってしょうがないだろ?別に俺は今の自分に不満なんてないぞ」

実際、今までの人生で、知識、考え方、身体つき、色々なことが自分の中で糧になってる。

そんな自分を嫌いではないからだ。

 

「ますます気に入りましたわ・・・何が何でもわたくしと一緒に来てもらいますわ!アナタ名前は?」

「お前むちゃくちゃな奴だな!!名前か・・・・・・」

俺は雇われ先で呼ばれてる名前を思い出そうとしていた。

「もういいですわ!隆三!この者に名前を与えなさい!我が朝倉家に迎え入れます」

 

すると隣の隆三?の爺さんが困っていた。

「ルミナ様、急にそのような事を言われても困ります。迎え入れるにしても色々と手順と言うものがあるのですが」

 

「まったく・・・ならいいですわ!そうですわね・・・アナタ今日から朝倉竜二と名乗りなさい!そして今日からわたくしと一緒に来てもらいます」

 

・・・・・・

 

「まったく埒があかないな。なぁ隆三さんだっけか・・・?このお嬢さんは何を言ってるんだ。」

「説明させていただきます。現在ルミナ様は世界中を旅をしてるのです。色々な人々にルミナ様の音楽を伝えるため、各地を回っているのです」

 

「音楽?なんだそりゃ、俺とは無縁の世界じゃねーか。それに俺は他人なんかに構ってられるほど暇じゃないっての、そもそもなんで俺なんだよ」

俺じゃなくても適任なら他にいると思うんだが。

 

「アナタは普通の人が精神を擦り切れてもおかしくない状況にいるのにも関わらず、誰も憎まず疎まず、普通でいられているわ。それはきっと誰よりも綺麗な心を持っているからよ」

 

「俺が普通なわけあるか。生きるために法だって犯してきてるんだぞ。普通なら裁かれてもおかしくないっての」

自分が生きるためになんでもしていいわけじゃない。

 

「それはアナタに選択権がなかったからですわ。だから朝倉家の力で戸籍も名前も生きるためのすべてをわたくしが用意して差し上げます!なのでアナタもわたくしの旅に協力なさい!いいわね?」

・・・・・・

 

「お前はなんで俺にそこまでする?俺なんかと一緒に居ても得することなんて一つもないぜ?」

むしろ損することの方が多い。気まぐれで助けるには面倒すぎる人間だと自分でも思う。

 

「それはわたくしが決めることよ。それにアナタといればわたくしも新しい何かが見つかるきがするんですわ・・・もちろん強制ではないんですのよ?」

最後は断られるかと思ったのか、一瞬だけ不安そうな顔をしていた。

そんな瞳を見て俺は・・・

 

「はぁ・・・わかったよ。そこまでいい条件出されたらさすがに俺はついて行くしかなさそうだ」

「本当に?!じゃあ竜二!今日からは家族ですわね!」

 

「まだ竜二って呼び名には慣れないな。えっと、それじゃルミナだったか?よろしくな、あとそっちの人は隆三さんだったな。これから世話になる」

「こちらこそ、よろしくお願いします。私は朝倉隆三。私も昔にルミナ様のお爺様に引き取られて今は身の回りのお世話などをさせて頂いております。竜二様も朝倉家の一員になるという事なので私も誠意を持って接しますのでよろしくお願いします」

なるほど、隆蔵さんも名前無き人だったのか、それか事情があったのかどっちかはわからないが。

 

「ありがとう。こちらこそよろしくな。でも様はやめてくれよ?隆三さん。でも次期当主とかって普通はルミナのお父さんとかじゃねえの?」

「わたくしの父と母は数年前に亡くなってるのですわ。なのでわたくしが当主になったんですのよ?」

「そうだったのか・・・すこし無神経だったな。悪い」

しまった、少し考えればわかることだったな。

 

「気にしていませんわ。それに、これからはアナタも朝倉家の一員です。見たところまだ成人はしてなさそうな顔立ちですわね?」

「どうだろうな。自分の歳がわかんないってのも困ったもんだよな」

「ならわたくしと同じ17歳と言うことにしておきなさい」

17歳か。

 

「なんでもいいぞ。それより、具体的にこれからどうするんだよ?」

「まずはこの国を出ますわ。行き先はどこでも良いのです」

「どこでも良いって、言葉わかんねーだろ?俺は英語少しと日本語しかわかんねーぞ」

日本語は元々日本にいたし、英語は仕事の関係で少しだけだけど。

 

「何を言っているんですの竜二?音楽に言葉は必要ないでしょう」

「ルミナ様は音楽をとても愛してらっしゃるお方。なのでピアノ、バイオリン、歌、全てとても素晴らしい才能をお持ちなのです」

なるほど、確かにルミナには似合いそうな気がするな。

 

「ええ。音楽は素晴らしいわよ?言葉がわからなくても伝わるものがありますわ!なので安心なさい?」

「音楽ねぇ。なるほどな。でもそれじゃ隆三さんは何をしてるんだよ?」

隆三さんはあまり音楽をやるような人には見えないんだが?

 

「私は音楽に秀でてませんので、ルミナ様とはまた違うことをしております。主に身体を使う仕事です。潜入捜査だったり、依頼された対象の護衛だったり。警察の介入出来ないような危ない仕事もしています」

やっぱり隆三さんは武闘派だったのか。

 

「なるほど、つまり俺はそっちの方を手伝えばいいんだな?それなら出来そうだ」

「何を言ってますの!?隆三がやっているような危ない仕事を竜二にやらせるわけがないでしょう?竜二にはわたくしと同じ事をしてもらいますわ」

同じことってまさか俺にも楽器をやれと!

 

「おいおい。俺は楽器なんか出来ないぞ。どっちかというと身体を使う仕事の方が良い!」

「ダ・メ・ですわ!!アナタはこれから変わって行くんですのよ?!そんな事をしたら今までと同じじゃないの!なので、竜二にもまずは手始めに楽器を覚えて貰いますわ!」

「は!?なんでだよー!俺はピアノもバイオリンも出来ないぞ」

今までやろうと考えたことすらなかったのに少し無理があるんじゃないか?

 

「楽器なんてなんでも良いのです。これからの旅で気に入った物があれば始めてみればいいんですわ。それと、これからは竜二にはわたくしに従って貰います。わたくしが竜二を真っ当な人間にしてさしあげますので危ない事は金輪際させません!」

まぁ俺を養ってくれるのはルミナだからな。

やれと言われたらやるしかないよな。

 

「はぁ・・・まぁ、ルミナがそう言うなら俺は養ってもらう以上何も言えないな。よし!楽器でもなんでも初めてやる!」

 

これが俺の2人との出会いだった。




少しだけ過去のエピソードを書きました。

誤字がある場合は修正する場合があります。


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16. ほんの些細な言葉一つで日常は変わる。 前編

Roselia回です。


我仕事なり。CiRCLEにバイトに来ている。

今日はこの後Roseliaがスタジオ練習に来るらしい。

ガラガラ〜

 

「おー。来たか」

「竜二くん。今日はCiRCLEに来てたんですね」

一番に声をかけて来たのは紗夜だった。

「ああ。それよりリサはどうした?来てないみたいだけど」

すると友希那が、

「リサなら今日は青葉さんの代わりにバイトに入ってるから途中からしか来れないわよ?」

どうやらリサは来れないらしい。

 

「えっと、体調を崩したみたいで今井さんが出勤する事になったみたいです」

燐子が理由を教えてくれた。

「あ、そうなのか。にしてもモカが体調崩すなんて珍しい事もあるもんだな」

なんかモカって丈夫なイメージあるじゃん?

 

「竜二さんは今日はいつまでいるんですか〜?」

あこが俺に言った。

「俺か?俺なら今日はRoseliaのスタジオ練習が終わる頃には上がる予定だけど」

「それなら時間ある時にでもあこ達の練習覗きにくださいね!」

どうやら俺にスタジオに来て欲しいとのことだ。

 

「おっけおっけ。時間ある時にでも顔を出すよ。あとは何か要件でもあれば俺のところに来てくれよ」

「ええ。じゃあスタジオを借りるわね」

友希那が俺に言った。

「おう。練習頑張れよー」

そうして俺は友希那達がスタジオに入っていくのを見てから仕事に戻った。

 

・・・・・・・・・

 

それから1時間程が経過した。

するとスタジオから友希那が一人で俺のところへやってきた。

「おう。どうした?俺に何か用か?」

「竜二?今日は練習見にこないの?」

友希那は少し物言いたそうにしていた。

 

「ああ。あとで行くつもりだぞ、あと2時間もあるから時間を見つけて覗くつもりだが?」

「その・・・竜二が嫌でなければ今から練習が終わる時間まで私たちに付き合ってもらう事って出来ない?」

友希那が少し歯切れの悪い言い方で俺に言った。

 

「ん?珍しいな。時間はあるけど友希那がそんな事言うなんて、なにかよっぽどの事情でもあるのか?」

「実は・・・」

友希那は事情を説明してくれた。

どうやらリサが練習にいない事が初めてらしく、スタジオの空気がいつもよりギクシャクしてるとかなんとか。いつもはリサが皆に気を回してくれてた事に気付いたらしい。

 

「情けない話だと自分でも思うのだけど・・・」

少し申し訳なさそうにしていた。

 

「なんだそんな事か、全然いいぞ。じゃあ今からスタジオ行こうぜ」

「ありがとう竜二。それにしても、リサには今まで結構助けられていたようね・・・」

リサの事は大事にしてる友希那だが、より一層リサの大事さに気付いたんだろうな。

 

「ま、そこがリサの良いところだからな。Roseliaには必要だろ?」

「そうね。リサにはRoseliaにいてもらわないと困るわ」

「ああ」

「リサだけじゃなく竜二にもいつも助けられてるわよ?」

珍しく友希那がそんなことを口にした。

 

「友希那はほっとくと危なっかしいからな〜。みんな優しい分、俺が誰よりも厳しくしてやらないと!」

俺は少し冗談っぽく答えた。

 

「ちょっと、私も少しは成長したわよ!?」

「えー、そんなに変わったか〜?」

「相変わらず貴方は意地が悪いわ・・・」

友希那が拗ねてしまった。

 

「ごめんごめん。冗談だ。友希那は俺から見てもいい方向に変わってるから安心しろ」

「竜二・・・まったく、いつもふざけてるのかと思ったら急に真面目になって、貴方のそういうところはずるいと思うわ」

友希那が少し照れくさそうにそう言った。

 

「じゃあ早めに慣れるんだな。まだまだこれから長い付き合いになるんだから」

「ふふっ・・・そうね。これから先も頼りにさせてもらうわよ」

友希那は俺の言葉の意味を察してくれたのか、嬉しそうに答えた。

「そろそろスタジオ行こうぜ」

俺たちはスタジオに向かった。

 

ガラガラ〜

 

「湊さん、竜二くんを呼んできてくれたんですね」

紗夜がそんなことを言った。

「竜二さあああん!」

あこが俺に縋るかのように、今にも泣きそうな声をしていた。

 

「なんか色々大変みたいだったな。友希那に頼まれて来たぞ」

「その、竜二さんが来てくれて安心しました」

燐子も嬉しそうにしていた。

 

「だって友希那がさ!どうしても俺に歌を聴いてほしいって言うからさ〜!」

せっかくだから空気を変えてやろうと俺は冗談を言ってやることにした。

 

「り、竜二!別に私はそこまで言ってないわよ!」

少し顔を赤くしながら俺にそう言った。

「ははは!冗談だ。それより早く演奏聴かせてくれよ」

 

すると紗夜が、

「せっかく竜二くんが来てくれたんですから一緒に演奏しませんか?」

「紗夜。いい事を言うわね。竜二もたまにはエレキギターを弾くといいわ」

友希那が俺のギターを手渡した。

 

「さんきゅー友希那。たまにはエレキもいいかもな・・・」

やっぱりエレキギターを持つと色々な事を思い出せる。このギターには色々な思い出が詰まってるからな。

 

「やったー!リサ姉も早くこないかな〜」

「早くみんなで合わせたいよね!あこちゃん」

燐子とあこはあとでリサが来るのも楽しみにしている。

 

「じゃあ俺は適当にコードだけ鳴らしてくから」

「ええ。あこ?始めていいわよ」

「はい!それじゃいきます!」

 

♪〜♪〜♪

 

エレキギターを誰かと演奏するのは本当に久しぶりだ。

1人で弾く事はあっても、こうして誰かの演奏に合わせて弾くのはいつぶりだろうか?

俺は友希那達の曲は全然弾きこんでないが、それでもとても楽しい。身体が勝手に動くほどに。

楽器なんて物に縁がなかった俺が、初めて手にした楽器だ。こうして弾いてるだけで、色々な出来事が蘇って来るみたいに。

 

しばらく俺たちは演奏し続けた。

 

ジャーン!!

 

 

「疲れた〜!」

気がつくと俺は夢中になって楽しんでたみたいだ。

「竜二さん。すごい楽しそうですね」

燐子が嬉しそうにそんな事を言った。

「やっぱエレキって最高だと思ってな」

「ふふっ、竜二くんも疲れたみたいですし、少し休憩しましょう」

俺の発言に紗夜が少し嬉しそうにしていた。

「賛成〜!」

あこもだいぶ今の演奏で疲れたみたいだ。

 

「さんきゅー紗夜!にしてもやっぱりリサのベースがないと落ち着かないよなぁ」

「竜二くんが低音の部分をカバーしてくれてますが、やはりベースがないと落ち着かないですね」

紗夜の言うように、ギターだとどう頑張っても低音が足りなくなってしまう。

 

「その事以外にも今井さんはいつも私達の事を色々と考えてくれてるんだってわかりました」

燐子もそんなことを言った。

 

「そうだな。リサもベース上達したしRoseliaのムードメーカーみたいな役割をしてるしな?あんまりみんなが世話焼かせるといなくなっちまうかもしれねーぞ〜?」

俺は最後は少し冗談っぽく皆に言ってやった。

 

「それは困るわ!リサにはRoseliaにいてもらわないと」

「あこも絶対いやですよ〜!」

友希那とあこが少し取り乱してるが、実際はそんなことにはなることはないだろう。

「まぁそんなことはないと絶対思うけどな。けど今日の事でリサの凄さがわかったならリサをもっと大事にしてやってくれな」

 

そんなこんなで俺たちが話しているところに・・・ガラガラ〜!

 

「みんなごめ〜ん!遅くなっちゃった〜!」

リサがバイト終わりに駆けつけてくれた。

 

「リサ姉えええええ!」

「ちょ!あこどうしたの!?」

あこが急にリサに抱きつきに行った。多分さっきの話を多少気にしてるんだろうな。

 

「リサ?疲れていない?大丈夫?」

「友希那がめっちゃ心配してくれるんだけど!?いや嬉しいんだけど!一体何事?!」

 

「その、・・・みんな今井さんの凄さに気がついたんです」

「今井さん?貴方はRoseliaにはなくてはならない存在よ?だからこれからも一緒に活動してもらわなければ困ります」

燐子と紗夜もリサに詰め寄ってそんなことを言った。

 

「燐子に紗夜までどうしたの!?ちょっと竜二説明してよ〜!」

仕方ない。説明してやるか。

「リサがいなくて練習が捗らなかったんだとよ。実はな・・・・・・・・・」

俺は今日の一連の流れをリサに一から説明してやった。

 

 

「なんだ、そう言う事か〜」

「だから俺が呼ばれてリサの代わりをしていたと言うわけだ」

「そっかそっか!ありがとう竜二!にしてもアタシもそこまで大した事してないと思うんだけどな〜」

 

すると紗夜が、

「今井さんには気付かない所で随分支えられてたんだって気付かされました。それと、今まで色々苦労をかけていたみたいですみません」

 

「紗夜?!全然大丈夫だよ!アタシが好きでやってた事だし、アタシって楽器が一番下手じゃん?だから少しでもみんなの役に立てればいいなって」

 

「リサ。まだそんな風に思っていたの?リサの音はRoseliaには必要だと思ったからメンバーに入れたのよ?それに今はもうかなり上達したのだから気にしなくてもいいわ。あとその・・・私こそ、今まで色々気を遣わせてしまってごめんなさい」

リサの言葉に友希那が答えた。

実際リサはかなりベースも上達したからな。

 

「友希那・・・そんな風に思ってくれてたなんて、アタシすごく嬉しい。少し自信ついたよ」

リサは嬉しそうにしていた。

 

「だからリサにはRoseliaにいてもらわないと困るわ。その・・・いつもありがとう」

友希那が素直にリサに感謝の言葉を口にした。

 

「うん・・・ぐすっ」

「どうして泣くのよ?私が泣かせたみたいじゃない」

「だって〜!」

少ししんみりしてしまった。

 

仕方ない、俺が空気を変えてやろう。

「あー!友希那が泣ーかした!泣ーかした!」

「竜二!指差して言うのをやめなさい!」

「竜二も本当にありがとね!いつもアタシのベースの練習付き合ってくれてさ」

リサが俺にそんなことを言った。

 

「気にするな。どっかの誰かさんと同じでお節介マスターだからな」

「ちょっと!それってアタシのこと〜?」

 

そんな会話を見てあこが、

「リサ姉と竜二さんって少し似ている所あるよね!」

「私も、少しわかる気がします」

燐子も同意見らしい。

 

「まぁお節介が好き同士だからな」

 

しばらく話していた。

するとリサが急に焦ったような声を上げた。

 

「あー!!話しすぎてもうすぐスタジオ終わっちゃうじゃん!せっかく竜二もいるんだし、アタシも一回くらい一緒に弾きたいんだけど〜」

どうやら少し話しすぎたみたいだ。

 

「そうね。それじゃあ最後に一曲だけ合わせましょう。リサ?やりたい曲を選んでいいわよ」

友希那がリサに選曲を委ねた。

 

「ほんとに!?えっと・・・それじゃ〜、陽だまりロードナイトをやろうよ!」

「それじゃあその曲で来まり!あこカウント頼むぞ」

「はい!それじゃいっきまーす!」

 

♪〜♪〜♪

 

こうしてスタジオ練習を終えてCiRCLEを出るところだった。

 

 

「じゃあ帰るか!」

俺は早々に帰ってやろうとしていた。

「アタシはもうちょっとみんなでいたいんだけどな〜?」

「そうか、じゃあRoseliaのみんなでファミレスでも行ってくるといい。じゃあ俺は先に帰・・・」

「何言ってるの?竜二も来なさい」

ふぁ!?

 

「あの、竜二さんはこの後、もしかして忙しかったですか・・・?」

くっ!燐子、そんな悲しそうな瞳で俺を見るな!

「忙しくはないんだ!!ただファミレスでいつも女5人で男1人なのは色々と辛いものがあるんだよ!!」

ちゃんとわかってその辺!?俺だって辛いのよ!

 

「それこそ今更ですよ。とにかく一緒に来てください」

俺の言葉も虚しく紗夜に一蹴された。

「はいはい。理由は後で聞いてあげるから行くよ〜。はい燐子そっちの腕を掴んで〜」

「こらリサ!燐子離せえええええ!あこ助けてええええ!」

「あこは闇の力で何も聞こえません!」

そのままリサと燐子に腕を掴まれて連行された。




文章量がどのくらいだろう。自分だと多いのか少ないのかもわからないですが、多くなってる気がします!笑

一番最初の頃はめっちゃ短かったですからね!
いつのまにか見てる人も増えてきてとても嬉しいです!


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17. ほんの些細な言葉一つで日常は変わる。 後編

Roselia回後編です。


結局ファミレスに6人で来ることになった。

席順は俺の左に燐子、右に友希那、向かいがリサ、燐子の向かいがあこで、友希那の向かいが紗夜だ。

 

「客の視線が痛い・・・お家に帰りたい」

男1人だとこういう時に好奇の視線に晒されるから嫌なんだよな。

 

「ほらほら、いつまでもそんなこと言ってないでさ〜」

「リサの言う通りよ。たまに一緒するぐらいいいじゃない」

リサと友希那が俺に言った。

 

「だってお前ら目立つんだよ!俺は人に見られるのは苦手なんだ」

「意外ですね。竜二くんはあまり人の視線を気にするタイプではないと思ってたんですが」

「紗夜の言う視線とは少し違うの!」

ただ人目につくのと、好奇の視線に晒されるのは違うんだよ!紗夜さん!

 

そんな俺を見て燐子が、

「あの、竜二さん落ち着いてください」

「燐子?お前も共犯だからな」

燐子とリサが俺を強引に引っ張って連れてきたからな!ってか燐子って意外と力強くね?

 

「ご、ごめんなさい。わたし、竜二さんと色々話したくて・・・」

くっ!そんな悲しそうな声をしやがって!

「りんりんは久しぶりに竜二さんと話したかったんですよ」

はぁ・・・まぁ別にいいけどな。たまには色々と話したい事もあるし。それにしても今日はやけに眠いな。

 

「まあここまで来たからには仕方ない。諦めるとするか」

俺は諦めてこの場を楽しむことにした。

友希那と紗夜とリサは何やら話してたみたいだったから、俺は燐子とあこの方に話しかけた。

 

「そう言えば燐子、この前NFOの中でフレンド協力の申請来てたみたいだけど、気づかなくてごめんな」

NFOというのはネオファンタジーオンラインの略で燐子とあこがよくやっているネトゲの事だ。

 

「だ、大丈夫ですよ!あこちゃんと2人でやっていたんですけど、竜二さんもどうかなと思って申請しただけなので」

「りんりんと2人で今やってるイベントの素材を集めてたんですよ〜」

そう言えば今はイベント中だったな。最近はあまりログインしてなかったから忘れてた。

 

「そうだったのか、でも俺めっちゃ弱いから一緒に素材集めをやるのなかなか大変だぞ?」

「あの、竜二さんは弱くなんてないですよ?」

「だって俺たぶんそのイベボスにワンパンでやられるぞ」

燐子はこう言うが、実際あまりにも体力と防御力が低すぎて誰かと一緒にクエストをやる事はほとんどない。

 

するとあこが、

「だって竜二さん!防御力だけ意地でも上げないじゃないですか?!防具も揃えようとしないし!」

「はは・・は・俺、そこまでやり込む時間ないしさ。とりあえず攻撃力だけでもそれなりに上げれば、ボスは倒せるわけだし」

「ふ、普通はそれが出来ないからみんなステータスを満遍なく上げるんですけど・・・」

燐子がそんな事を言った。

実際に良い防具を揃えて、ステータスを満遍なく上げようと思うとかなりの時間がかかる。

だから俺は攻撃力特化にして他は一切上げていない。

 

「そうか?ともかく俺と行ってもあこ達がヒヤヒヤしながらプレイしなきゃいけなくなるぞ。ボスじゃなくても数回食らったら死ぬし」

「あんな凄い回避しながらプレイしてた竜二さんなら大丈夫ですよ!」

あこは驚いているが、意外と慣れれば誰でもできる。ただそのためには死ぬ覚悟でなんどもそのクエをやり直していかないといけない訳だが。

 

「あれは最初は死にまくって覚えるんだよな。だからもし一緒にやる時あるなら前もって言ってくれ。それまでに攻撃くらわないように仕上げとくよ」

「そ、そんな数日で簡単に対策出来るんですか?!」

「ああ。このスタイルでずっとやって来たからな。慣れって恐ろしいよな」

最初の頃はボスをノーダメで倒せるようになるまでめちゃめちゃ時間かかった!!

けどいつのまにか操作が上手くなったのか、ある程度やればくらわずにクリア出来るようになったわけだ。

 

「竜二さんさえよければあこの余っている防具上げましょうか?」

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、でも大丈夫だ。やっぱゲームは自分で時間かけてキャラを強くしてくもんだからな」

ゲームとは言えどせっかくここまで自分でやって来たからにはこのまま行けるとこまで行ってみたいしな。

 

「そうですか〜。そう言うことならわかりました!」

「気持ちだけ受け取っとくよ。サンキューな」

「はいっ。何かあればあことりんりんになんでも言ってくださいね!」

俺たち3人はしばらくゲームの話で盛り上がっていた。

 

そんな俺を見てリサが、

「ちょっと竜二〜?ゲームの話ばっかりしてないで、アタシ達の話も聞いてよ〜」

どうやら痺れを切らして俺に話しかけたみたいだ。

「えー!だってゲームの話するの楽しいじゃん。なぁ燐子?」

「はい!楽しいですよね!いつまでも話せそうです」

「ごめんね〜燐子。友希那も紗夜も話したがってるからさ〜。少し借りてもいい?」

「あ、はい!私は大丈夫ですよ」

燐子!断ってくれてもよかったのよ!

 

「おいリサ!俺は物じゃないぞ!!」

まったく!せっかく燐子とあこに癒してもらっていたのに!!

「リサ姉に竜二さんを取られたー!」

もっと言ってやれ!あこ!

 

「こらこら〜!誰も取らないって〜」

そうこうして、友希那と紗夜が待ちぼうけてたみたいだったから俺は2人の方を見ながら友希那に話しかけた。

 

「それで、どうしたんだよ?友希那」

「わ、私じゃなくて紗夜が話したい事があるそうよ!」

「み、湊さん!?さっき湊さんが竜二くんと話したい事があるって言ってましたよね!?」

なんでそんな罪のなすり付け合いみたいになってるんだ。

 

「まあまあ、なんでもいいから話そうよ」

リサが2人の間に入って答えた。

 

すると紗夜が、

「そう言えばこの前、日菜を家まで送ってくれたみたいですね。ありがとうございます」

「あー、パスパレの事務所行ったときだな」

あの時は珍しく少し大人気ないこと言っちまったからな。反省中だ。

 

「へえ。竜二パスパレの事務所に行く事なんてあるんだ〜」

リサが驚いていた。

「たまたまだよ。行く事なんてほとんどないぞ。この前はマネージャーが帰りにみんなを送れなくなったから頼まれただけだよ」

でも多分一度頼まれたって事は次からはもっと頼まれることになるんだろうな。

 

「相変わらず竜二は色々な所にいるわね」

友希那。俺もたまにはゆっくりしたいんだぞ?!

「なぜ俺の周りにはガールズバンドが多いんだ!!」

「竜二さんモテモテですね!」

あこ。ハーレムなんて現実には存在しなかったんだ。あれは幻想郷だったよ。

「あこ、男1人ってのはそんなにいいもんじゃないぞ」

「竜二さんも色々大変なんですね」

 

「まぁパスパレもアイドルだから、何かあってからじゃ遅いし、多少はな?」

「その、日菜が送ってもらって帰って来たときに竜二くんの事、ずっと話していました」

日菜が俺の事をか。どんな事を言ってるのやら。

 

「あいつ変なこと言ってなかったか?」

「いつもと同じです。天才だとか凄いんだとかそんな感じですね」

「日菜はいつもそんなこと家で言ってんのか・・・」

まさかいつもそんな事を言っていたとは。

恥ずかしいからやめて!!

 

「私も竜二くんの演奏は素晴らしいと思っています。なのでそんなに変な話ではないと思うのですが」

「紗夜の言う通りよ。竜二はもう少し自信を持ちなさい」

友希那と紗夜はこう言うが、別に自信がないわけじゃない。ただ俺は俺を過大評価してないだけなんだがな。

 

「まぁ日菜の言うことに関しては反論するのも面倒だからいちいち言わないけどな」

「ともかく来年の竜二の晴れ舞台。Roseliaも一丸となって応援するわ。楽しみにしてるわよ」

どうやら友希那達にもGuitar spiritの話は伝わってるみたいだ。この分じゃ皆に伝わってるんだろうなぁ。

 

「ありがとよ。いい演奏出来るように頑張るよ。友希那たちも頑張れよ」

「ええ。私たちも頑張るわ」

友希那が優しく微笑んで答えてくれた。

なんか・・・急に睡魔が・・・・・・

 

そんな俺たちのやりとりを見てリサが、

「友希那って竜二にはなんか優しいよね〜」

「リサ!?そんな事ないわよ!私は誰に対しても態度を変えたりしてないわ」

「でも友希那さん!明らかに竜二さんと話してる時は口調が柔らかいですよ!」

あこが友希那に言った。

 

「それを言うなら紗夜もそうじゃないかしら!?」

「わ、私は竜二くんの事を同じギタリストとして尊敬しているので当然です!白金さんもいつもより楽しそうに話しています!」

友希那に話を振られた紗夜は、今度は燐子に話を振った。

 

「あの、私は!ただゲームの話とかわかってくれるので!あこちゃんと一緒で話しやすいんです!」

「そうだねっ!りんりん!あこも3人で話してる時はすっごく楽しいんだ〜!」

 

・・・・・・・・・

 

「相変わらず竜二はモテモテだね〜!竜二?」

リサが竜二に問いかけるけど返事がなかった。

 

「り、竜二さん!あの、そんなに近くに来られるとその・・・・・・あれ?眠ってます。・・・疲れていたんですね。きっと・・・」

竜二は燐子の肩にもたれかかったまま寝てしまっていた。

 

そんな竜二を見てリサが、

「竜二毎日夜更かししてるって言ってたからな〜。ゲームばっかりやってないか心配だよ」

 

「燐子?少し重たいかもしれないけれど、竜二をそのまま寝させてあげてくれない?今日は少し無理に誘ってしまったし、休ませてあげましょう」

友希那は燐子にそのまま寝かしてあげるように提案した。

 

「あ、はい。私は全然大丈夫です、それに・・・竜二さんの寝顔・・・かわいい」

燐子は自分の肩に寄りかかってる竜二の顔を見てそう言った。

「いつもダルそうにしてるもんね〜!写真とってひまりに送ってあげようかな!」

「リサ姉後で怒られるよ!?」

「宇田川さんの言う通りです。竜二くんに怒られますよ?」

 

「え〜!じゃあさ!ひまりに送らなければいい?撮ってここにいるみんなにだけ送るから!ね!?」

あこと紗夜に反対されたけど、リサは諦めなかった。

 

「今井さんがそこまで言うなら仕方ないです。後できちんと送ってくださいね」

「紗夜さん切り替え早いです!!あ、でも!後であこにも送ってね!リサ姉」

紗夜とあこも写真をもらえるならそれでいいらしい。

 

すると友希那が、

「あこ?少し静かにしなさい。竜二が起きてしまうわ。・・・こうして見てると、本当に何も抱えてなさそうな無邪気な顔ね」

友希那は隣で眠っている竜二の少し長くて目が隠れてしまっている前髪を掻き分けてから優しい声でそう言った。

 

「そうですね。竜二さんは、あまり自分の事を話したがりませんから」

燐子も少し寂しそうな顔でそんな事を言った。

「そうね。いつも人の事ばかりで自分の事を蔑ろにし過ぎなのよ」

「湊さんの言ってることもわかります。悩みの一つも言ってくれませんから」

 

友希那と紗夜が話しているところにあこが何かを思い出したかのように言った。

「あこ、前に竜二さんにどうしてRoseliaや他のバントのみんなにそこまで手助けしてくれるのか聞いた事があるんです」

「へ〜!そんな事があったんだ。聞かせて聞かせて!」

あこの話にリサは驚きつつも興味津々だった。

 

「その時の竜二さんは珍しく真面目に答えてくれたんです。その時たしか、こんな事を言ってました。

 

『俺はな、昔とある人に大切な言葉をもらったんだ。その人はな?俺にまず自分から人を全力で愛しなさいって教えてくれた。

 

自分にとって大事かなんて後からわかるからまずは出会った人々を全力で愛しなさい。

嫌われても恐れられても愛し続ければいい。

 

そうしたらきっと最後には貴方は出会った人々に愛される存在になれる。家族のようなかけがえのない存在にさえなれるから。

 

ってな。その人けっこう無茶苦茶な事言うだろ?でも俺は何故かその言葉に惹かれたんだよな。

愛すってよくわかんないけどさ、ただそんな風に生きられたらとも思ったし、その人が何を思ってそう言う風に生きてるか俺はずっと知りたかったんだ・・・・・・つまりこれが理由と言えば理由だな』

 

って竜二さんは言ってたんです。この後はいつもの飄々とした竜二さんに戻っちゃったんですけど」

 

皆あこの話を聞いて色々考えていたところに友希那が真っ先に答えた。

「今の話を聞くとその人はきっと、竜二にとって家族のように大切な人なんでしょうね」

「そこまで大胆な事を言える人ですから、きっと大きな器を持った人なんでしょう」

友希那の言葉に紗夜が答えた。

 

すると燐子が、

「竜二さんはRoseliaを大切な家族のように思ってくれてるんでしょうか・・・?」

「アタシはきっとそうだと思う」

リサは少し頷きながら答えた。

「あこはもう竜二さんの事をお兄ちゃんみたいに思ってますよ」

 

話が一息ついたところだった。

 

 

「ふあ〜・・・あ、燐子ごめん少し寝ちまってたみたいだ。」

どうやら俺は座ったまま燐子にもたれて寝ちまってたみたいだ。

 

「だ、大丈夫です。それに、少し役得でしたから・・・」

燐子は何故か少し顔を赤くしている。

「夜更かしばっかりしてるからだよ〜?夜ゲームばっかりしてるんじゃないの?」

リサよ!決めつけは良くないと思うぞ!確かにゲームもしてるけど!

 

「いいだろー別に、それよりもしかして俺の事待ってて帰れなかったのか?」

だとしたら申し訳ない事してしまったな。

「ええ。誰かさんが燐子の隣で気持ち良さそうに寝ているから、仕方なく起きるまで待っててあげたのよ?感謝しなさい」

友希那が少し悪戯っぽく微笑んで言った。

 

「まじか!起こしてくれてよかったのに!」

「あんな寝顔見せられたら起こせませんよ・・・」

紗夜・・・?俺はどんな顔をしてたんだ!まさか変な顔だったのか!?

 

「一体俺はどんな寝顔してたんだよ!!さすがに恥ずい!!早く出よう!今すぐ帰ろう!」

まさかこんなとこで寝顔見られるなんて!完全に油断してた。

 

「アタシ写真撮っちゃった〜!」

なん・・・だと・・・?

 

「おいリサ!なんて事しやがるんだ!今すぐ消しやがれ!」

こいつ!まさかそれをRoselia内で回そうとか思ってるんじゃないだろうな?!

 

「だーめ!それに、そろそろ帰らないとだし!」

「そうね。そろそろ遅いし帰りましょう。あ、リサ?後でその写真私にも送っておいて」

友希那ぁぁぁぁぁぁぁ!

 

「はぁ・・・なんで俺がこんな目に・・・しくしく」

「竜二さん!これも愛ですよ愛!」

あこは何楽しそうにしてるんだか。

「ふふっ・・・宇田川さんそれでは意味がわかりませんよ」

「お前ら何笑ってんだよー」

なんでみんなしてニヤニヤしながらこっちを見るんだ!!

「いや〜、これも家族愛って言うか〜」

「ふふっ・・・リサ?いいこと言うじゃない」

家族愛ってなに!?なんなのなんなの!?

俺が寝てる間になにがあったの?!

「意味わかんねええええ!燐子どういうことだ!?」

燐子なら答えてくれるはず。

 

「ふふっ・・・竜二さんは皆さんに本当に愛されてますね・・・って事だと思います!」

「お前もかぁぁぁぁ!」

 

こうして俺たちはファミレスを出で帰ることにした。

 




ほのぼのした話を書かれてればなと思っています!


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過去編3. 雨の中、バス停での出会い。 千聖視点

千聖さんと竜二くんの出会いのシーンを何処で出そうか、と思って悩んでいたんですが、随分前から文章は出来ていたんですが、ここら辺がいいタイミングなのかと思い投稿しました。


あれは離れた街まで撮影の仕事でバスで通ってだ時の話。

 

 

今日も仕事が終わって夕方頃、いつもの人気のないバス停でバスを待ってるそんな時だった。

 

雨が降ってきて向こうから走ってくる人が見えた。多分男の人だろう。

しばらくするとその人がバス停に来て雨宿りをしていた。多分傘を持って来てないのだろう。

 

「・・・・・・・・・」

もしかして、私が白鷺千聖だと気付いて止まったのかと思ったが、どうやら違うみたいだ。

男の人と2人きりになるのは苦手な私だけど、この人は何故か嫌な感じが全然しなかった。

そもそも私の事を意識してさえいないような感じだった。

 

横目に少しだけ顔を伺ってみた。見た感じ私より少し年上の男性なのだろう。

不思議な雰囲気な人だなと思った。雨を見ていると言うよりも、何処か遠くを見ているようなそんな瞳に吸い込まれそうだった。

まるでこのまま、何処か遠くへ消えてしまいそうな儚さで、そんな彼と私は少し話をしてみたいと思っていた。

 

「あの、よければこれ。使いますか?」

私は勇気を出して話しかけてみた。

 

「ん?ああ、ありがとう。でも大丈夫だ。ここから走っていけばすぐだから。それに俺が借りたらそっちが濡れちまうだろ?」

さっきの表情とは一変して、すごく優しげな表情で答えてくれた。

 

「いえ!私はここからバスなので、またここに来た時にでも返してくれればいいですので」

「・・・・・・そっか。じゃあありがたく使わせてもらうな。ありがとう」

「えっと、もしよければ名前を聞いても?」

「あ、悪い!そうだよな。傘借りるんだから名前くらい言わないとな。朝倉竜二って言うんだ」

「朝倉さんですね。私は白鷺千聖っていいます」

「白鷺さんだな。よろしく。しばらくはこっちの方に厄介になるからここのバス停をこの時間通るときもあると思う。その時に傘を返すよ」

私は驚いた。白鷺千聖と名乗っても何も反応がなかったからだ。そこまで有名ではないにしろ、全く知らない人と出会う事はなかったからだ。

 

「そうだったんですね。私もしばらくはこっちに仕事で来ているので帰りはよくこの時間のバス停にいますから」

「へぇ。そうなのか、まだ若いのに仕事なんてすごいな」

「い、一応学生なんですけど!バイトみたいなもので・・・・・・」

何故が咄嗟に嘘を付いてしまった。芸能人という目で見られたくなかったのかもしれない。

 

「そうか。まぁどっちにしろ頑張れよ。俺はそろそろ行くな〜」

「はい。それではまた」

不思議な人だった。ここまで真っ直ぐ目を見て話してくれる男性は今まで出会ったことはなかったし、下心がなくとても綺麗な瞳をしていた。

あまりの瞳の美しさに私の方が少し緊張してしまっていた。

 

 

朝倉さんに傘を貸した日から3日経った。

今日も雨は土砂降りだった。でももしかしたら今日会えるかもと期待している私がいた。

 

 

「よ!白鷺さん!3日ぶりに会ったと思ったらまた土砂降りかよー」

本当に会えるとは思っていなかったから驚いた。

けどそれよりもまた雨の日に会ったことが何より可笑しかった。

 

「ふふっ!そうですね。よければその傘まだ使ってくれても大丈夫ですよ」

これでまた会うことが出来ると思うと何故だか少し嬉しくなってる自分がいた。

私は何故だかこの人は悪い人ではないと確信していた。

 

「本当に助かる。次こそは返すからな」

 

「はいっ・・・あの!もしよければその、朝倉さんはこっちに来てなにをしている方か聞いても・・・?」

朝倉さんが何をしてる方かせっかくだから聞いてみることにした。

 

「俺か?そうだな。一応仕事でこっちに来てるんだ。短期のバイトみたいなものだけどな」

どうやらまだ若そうに見えるけど社会人だったみたいだ。

最初の雰囲気が大人だったからか、余り驚かなかった。

 

「そうだったんですね。その・・・朝倉さんはテレビとかってあまり見ませんか?」

私は少しだけ自分の事も話したいと思い始めていた。

 

「テレビか?そうだな。あまり見ないかなぁ。どうしたんだ急に?」

思った通り、朝倉さんはテレビをあまり見ない人のようだ。

 

「実は私・・・芸能活動をしているんです。この前は嘘を言ってしまいすみません」

「へぇそうなのか!そりゃすごいな。まさか芸能人だったとは」

朝倉さんはすごく感心しながら驚いていた。

 

「あんまり有名ではないんですけどね」

「でも学生やりながら頑張ってるんだろ?なら普通にすげーと思うぞ」

しみじみと私にそんな事を言った。

素直にここまで言われるのはあまりないからか、

少し気恥ずかしかった。

 

「そこまで言われるとなんだか気恥ずかしいですね」

「そういうもんか・・・?よしっ!じゃあ次にあった時には今度こそ傘返すし、その辺の話も聞かせてくれよ」

朝倉さんもどうやら私に興味を持ってくれたみたいだ。

 

「その・・・もし今度会ったら少しだけ相談をしてもいいですか・・・?」

普通なら相談出来ない事だけど、ここでたまたま会った朝倉さんになら相談してみるのもいいかもしれないと思っていた。

 

「おう。なんでも話してくれればいいぞ。それじゃそろそろ俺は行くから。じゃあなー」

 

それから2週間が過ぎた。もしかしたらもう会えないかもなんて諦め始めていた頃だった。

 

「よ!今度は結構久しぶりだな。2週間ぶりくらいか?」

急に声をかけられて驚いた。でも何より朝倉さんが約束を守ってくれたのが嬉しかった。

 

「あ、朝倉さん?!もう会えないかと思っていました!」

「ははは!ちゃんと傘返しに来たぞ!それに芸能活動の話も聞かせてもらってないし。ささ!悩みでも聞かせてくれよ」

無邪気に笑う朝倉さんは少し子供っぽかった。

 

「あの、あんまり楽しい話じゃなくても良いでしょうか?」

「全然いいぞ。なんでも話してくれ」

 

「実は・・・最近私、アイドルグループの活動をしていたんですが、ステージで大きな失敗をしてしまって、活動休止してしまったんです」

「そうだったのか。じゃあ今ここに通ってるのは別の仕事か?」

「はい。私は昔から子役などをやっていて、少しだけ仕事ももらえているのですが、他のメンバーはそうじゃなくて、でも私以外のみんなは活動再開を諦めてないんです。私は努力するだけでは絶対に出来ないと思ってるんです。あの、私って間違ってるのでしょうか?」

 

「・・・難しい質問だな。俺も芸能界のことはよくわかんないけど、昔からやってる白鷺さんがそう言うなら確かに間違ってはないんだろう。でも諦めずに努力する事も間違ってない」

朝倉さんはすごく真剣に考えていた。でも答えは出ていないみたいだ。

 

「ならいったい私達はどうすればいいのでしょうか・・・?」

 

すると朝倉さんはとても真剣な顔をして、

「もし1人だったらそう言う時またリスタートするにはかなり厳しい道のりだよな」

「1人だったらですか・・・?」

「ああ。だってアイドルグループって事は1人じゃないんだろ?」

「はい。私を含めて5人います」

「そうか。なら俺は大丈夫だと思うな」

大丈夫と言い切るのが腑に落ちなかったけど、きっと何か考えがあるのだろうと思った。

 

「その、理由を聞いてもいいですか?」

「他のメンバーがどういう人かは知らないけど白鷺さんが悩むくらいなんだから、決して悪い人達ではないんだろう?あと、メンバーの中に白鷺さんがいるなら俺は大丈夫だって思う」

今の話を聞いて納得したわけではなかったけど、そこまで深く考えてくれる事に少し驚いていた。

 

「いえ、私なんて全然です。確かにメンバーはみんなとてもいい人たちばかりで、でも・・・私はみんなを見限って次に行くことばかり考えてしまうんです。薄情ですよね」

「そんな事ないって、それに、見限ろうとしてる奴はそんなに悲しそうな顔はしない。それに、俺は白鷺さんが頭のいい人だと思ってるから大丈夫だと思うんだよな」

私は冷静を装ったつもりでいたにもかからず、

まるで心を見透かされているみたいだった。

 

「私は・・・卑怯なだけですよ」

「卑怯でいいんだよ。人間なんて人それぞれ。馬鹿みたいに諦めの悪い奴もいれば嫌ってほど冷静に考える奴もいる。でもさ、だから人が集まると面白いものが生まれるんだと思う」

「面白い・・・ものですか?」

 

「諦めきれずにただがむしゃらに努力してる人がいたら、白鷺さんが細かくどうやってやればいいか教えてあげればいい。そうすれば足りないところを補えるだろ?」

朝倉さんは当然のように答えた。

 

「でも私は努力を否定するような酷いことを言ってしまったんです。今更みんなにどんな顔をして会えばいいのか」

 

「だから言っただろ?そこまでグループの事を悩めるやつをみんなが嫌ってるわけない。まずは白鷺さんの正直な気持ちをぶつければいいんだ。諦めるかどうかはそれから考えればいい」

 

朝倉さんはまるで親がが子供に言うかのような優しい声で私に答えてくれた。

この時、私はとても大切な事を教えてもらった気がした。

諦めるにしても、みんなと一から頑張るにしてもまずは上辺だけではなくてきちんと私の気持ちを伝えなければいけないんだと気付いた。

 

「朝倉さん・・・」

この人は会ったばかりの私のためにこんなにも真剣に考えて悩んでくれて、そんな気持ちに応えるためにも前に進もうと私は決意した。

 

「ならさ!もし仲直り出来るか不安なら俺が一緒に付いて行ってさ、白鷺さんはこんなにいい奴なんだぜ!ってみんなに熱弁してやるよ!」

さっきの発言とは裏腹にとても無邪気に答えた。

私にはそれが少し可笑しくて。でもそんな優しさが何より嬉しかった。

 

「ふ、ふふっ・・・!朝倉さんが一緒にですか?みんなびっくりすると思いますよ?でも、ありがとうございます。今自分がなにをすべきかわかったような気がします」

 

「そっかそっか!それなら良さそうだ!実は俺、今日でこの街離れるんだよな。最後に役に立ててよかったよ。それじゃ白鷺さん!アイドル頑張れよ!気が向いたらテレビ見るからなー!いつか会ったら竜二って呼んでくれ!そんじゃあなっ」

 

朝倉さんはすごく嬉しそうな顔をして、私の挨拶を待たずにそのまま歩き始めていった。

きっとこのまま二度とこの人には会えないんじゃないかとさえ思った。

 

「あの!待ってください!せめて・・・連絡先だけでも教えてくれませんか!?」

精一杯の勇気を出していった。

 

「・・・俺の連絡先か?ああ。別にいいぞ。やったぜ!アイドルの番号ゲット!!」

また少し冗談っぽく子供みたいな反応をしていた。

 

「ふふっ!なんですかそれは。朝倉さんは恩人ですから、いつか必ずお礼をします」

 

「別にお礼なんていいよ。けどいつか会った時は敬語もやめてくれよ!それじゃ今度こそ本当に行くから、じゃあな〜」

 

朝倉さんがそのまま歩き出した。

本当にまた会えるのだろうか。その背中はとても遠くに見えた。このまま私の手の届かない所まで行ってしまうような錯覚さえした。

 

このままだと本当に何処かに消えてしまいそうで、きっと彼との会話もいつかの遠い思い出になってしまいそうで。

でもそれだけは絶対に嫌だった。

また彼と話して、今度はもっと楽しい話をしたいと思っていた。

 

 

 

 

だから私は・・・・・・

 

 

 

「竜二くん!!!」

 

 

 

「・・・・・・なんだ。さっそく呼んでくれたのか?千聖」

少し離れた竜二くんは振り向かずにそのまま答えた。

「また、また!絶対に会いましょう!!約束よ!?」

私は今の精一杯の気持ちを込めて言った。

 

 

何かを考えているのか、少しだけ沈黙があった。

 

 

「・・・・・・ああ。約束するよ」

 

そのまま背中越しに手を振って歩いて行った。

彼は約束を守ってくれる。そんな気がした。

 

 




いつも見てくださっている方々、ありがとうございます!
久しぶりにお気に入り登録者数を見たら100超えていました!!
正直めっちゃ驚きました!笑
とても嬉しいです!
いつも楽しく色々な方の作品を読ませていただいている側で、自分で投稿していくのは今回が初作品なのでここまでの人に見てもらえてるというのが嬉しいですね!

話はまだまだ長くなると思います。ちなみに僕の推しは誰でしょうか!?
きっとバレていないはず!コメお待ちしています!笑
それでは、これからも末長くお付き合いください!


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18. みんなで花火を見に行こう。前編

Poppin'Partyの花火大会の話です。
今回も2話構成です。


今日は昨日の夜に香澄から電話がかかって来て、『竜二くん!明日いっしょに花火大会を見に行こう!』と言われて、断れる訳もなく待ち合わせ場所に来たというわけだ。

 

「竜二く〜ん!こっちこっち〜!」

「おー。香澄、もう来てたのか。早いな」

香澄の方を見ると有咲と沙綾も来ていた。

 

「だって今日すっごく楽しみだったんだもん!でも有咲も早かったよね〜」

「ほほう。有咲も楽しみで早く来ちゃった感じか!」

「ち、ちげーよ!どうせ香澄が早く来てるだろうと思って少し早めに来ただけだ!」

俺と香澄の言葉に有咲が答えた。

 

そんな有咲を見て沙綾が、

「またまた。そんなこといって〜」

「有咲は私のために早く来てくれたの!?嬉しいな〜」

さすが香澄。素晴らしくポジティブ!

「ツンデレ有咲発動!」

「ああもう!なんでもいいから黙れ〜!」

俺たち3人の言葉に有咲が鬱陶しそうにしていた。

 

仕方ない。俺が作った有咲ソングを聞かせてやろう!

「ありさん♪ありさん♪ツンデレありさんっ♪」

「竜二!?なんだ!その変な歌は!?恥ずかしいからやめろ〜」

「すまんすまん」

どうやらお気に召さなかったみたいだ!

 

「まったく・・・」

 

「ありさん♪ありさん♪ツンデレありさんっ♪」

「竜二・・・?本気で怒るぞ・・・?」

「すいません」

いい歌だと思ったのに!!!

 

 

「お待たせー」

話してるうちにおたえが来た。

 

「おたえ〜!あとはりみりんだけだね」

香澄が嬉しそうにしていた。

 

「竜二も来てたんだ」

おたえが俺に聞いてくる。

「ああ。昨日香澄から電話かかって来て誘われたんだ」

「私は嬉しい。それに外で会うの久しぶりだし」

「確かにね〜。前まではほぼ毎日会ってたのにね」

おたえと沙綾がそんな事を言った。

確かにあまり外では会ってなかったな。

 

「ま、今は今でCiRCLEではしょっちゅう会うだろ?」

そんな俺の言葉に沙綾が、

「でも私はやっぱり少し寂しいかな。たまにはうちにも遊びに来てよ」

「パンを食わせてくれるなら行く!!」

「はいはい。パンならいくらでもあげるから来てね。純と沙南も会いたがってるよ」

そう言うことならたまには行くしかなさそうだな。

 

「そっか。それなら近いうちに遊びに行くよ」

「うんっ。楽しみにしてるね」

 

・・・・・・・・・

 

 

「ごめ〜ん。遅くなっちゃった」

りみが来たみたいだ。

 

「りみりん!待ってたよ〜!」

「私もさっき来たところだから大丈夫」

香澄とおたえが言った。

 

「有咲と香澄が早く来すぎただけだから大丈夫だよ」

沙綾がりみをフォローしていた。さすがポピパのお母さん。

 

「そそ。だから気にしなくてもいい。それより全員揃ったしそろそろ行くか。というか花火を見たいんだよな?」

花火見るにしたって場所抑えられるのか?

 

「うん!どこかみんなで見れるいい場所ないかな〜」

香澄の言葉に沙綾が、

「すごい人だもんね。見晴らしのいいところはもう殆ど空いてないかもね」

「やだ!見たい〜!」

香澄はどうしても見たいらしい。

 

すると有咲が呆れた顔をして、

「ったく。しょうがねーな〜。本当は秘密にしときたいんだけど・・・あそこに行くか」

「なんだよ有咲。そんないい場所があるのか?」

「あそこなら多分人もあまりいないだろうし、花火もよく見えると思う」

とうやら有咲に良い場所が心当たりあるっぽい。

 

「有咲ほんと!?じゃあそこに行こう!」

「そうだね。有咲ちゃんの言う場所に行こう」

 

香澄とりみが言葉で俺たちはさっそくその場所に向かおうとしていた。

 

・・・筈なのに香澄が、

「まだ時間も結構あるし、屋台の方に行って来てもいい?!」

「やめとけ!絶対はぐれるぞ」

いいぞ有咲もっと言ってやれ!

 

「たしかに有咲の言う通りだな。これだけ人が多いと探すのも大変そうだ」

俺は嫌な予感しかしないんだよ!

 

「ええ!?でも携帯もあるし大丈夫だよ!りみりんも屋台でたこ焼きとか食べたいよね!?」

「そうだね香澄ちゃん。私も少しだけ屋台の方に行ってみようかな」

りみを味方につけるとは!

 

りみには強く言えないと諦めた有咲が、

「はぁ・・・ったく。絶対後で連絡しろよー。りみは香澄をちゃんと見ててやってくれ」

「私も付いて行こうか?」

おたえがそんな事を言った。

「お前はやめとけ!なんか逸れそうな気しかしねえんだよな」

俺はすぐさま止めた。おたえは一人で逸れそうな危険人物な気がする。

「それじゃあ香澄とりみりんもまた後でね」

沙綾が2人を見送って、りみと香澄は屋台の方に歩いて行った。

 

 

・・・・・・・・・

 

 

「さっそくやっちまったな・・・まさか圏外だとは」

やっぱり何か嫌な予感がしたんだよ!!

 

そんな俺の言葉に有咲が、

「はぁ・・・ったく!ともかくこの人数でもとりあえず向かうぞ」

 

沙綾が心配そうに、

「私、探してこようか?」

「やめといたほうがいいよ。沙綾まで逸れるかも」

おたえが沙綾に言った。

 

「そうだな。ひとまずはこのメンバーで向かうか、携帯も場所によっては繋がるだろ?たぶん」

最悪俺がなんとかして2人を探してくるかな。

「そうだね」

沙綾もひとまず納得したみたいだ。

 

 

有咲とおたえが並んで2人で前を歩いてたから、俺は後ろで沙綾の隣で歩くことにした。

 

 

「ねえ竜二?最近はちゃんと夜は早く寝てるの?夜更かしばっかりしてるんじゃない?」

沙綾のお母さんスキル発動!!ちなみにリサとひまりもこのスキルを持っている!

 

「な、なんだよ?別にいいだろー?」

「やっぱりそうなんだ。夜ご飯はちゃんと食べてる?」

「お前は俺のお母さんか!!まぁ食べない時とか、結構適当だなその辺は」

決して料理が出来ない訳じゃないけど、面倒くさい時とかあるし。

 

「もし夜ご飯作るのが大変ならうちに来なよ。お母さんもお父さんも喜ぶから」

何故だか沙綾の両親には好かれてる。

 

「そっか・・・それならたまには夜に世話になりに行くよ」

「うん。ちゃんと来てね」

「ああ。いつも気にかけてくれてありがとな。沙綾?」

いつも心配かけてるみたいだったから俺は素直に沙綾に感謝した。

 

「う、ううん!私が勝手に心配してるだけだから!それに、たまには竜二と会いたいって言うのもあるし」

何故だか沙綾は少し顔を赤くしていた。

 

「わかった。俺も沙綾と会いたいしな」

「う、うん・・・あ、あのさ!CiRCLEの仕事大変じゃない?」

沙綾が話題を逸らすように、急にCiRCLEのことを聞いてきた。

 

「CiRCLEか?確かに忙しい時は大変だけど、暇な時は暇だぞ」

「そうなんだ。スタジオとライブハウス以外にも色々やってるから大変そうだなと思って」

「スタジオとライブハウス以外は俺の仕事じゃないし、俺の知る限り、ライブをするバンドは6バンドくらいしかいないぞ」

スタジオは結構借りる人は増えたけどバンドは俺の知り合いばかりだからな。

 

「へえ。そうなんだ」

「まだ知名度低いからな。でも俺はCiRCLE気に入ってるぞ」

「今思えば竜二ってどうしてCiRCLEを手伝ってるの?」

沙綾が不思議そうにしていた。

 

「そうだな。きっかけは別にあるけど、今はCiRCLEに俺の夢が出来たんだ」

「竜二の夢か〜。聞いてもいい?」

「ははは!ま、いつか話すよ」

「え〜!聞かせてくれてもいいのに」

 

しばらく2人で話していた。

 

するとおたえが急に、

「有咲がいなくなっちゃった」

どうやら、少し目を離したら逸れてしまったらしい。

 

「まじかよ。まさか有咲が逸れるとは」

「やっぱり手を繋いどけばよかった」

「私、探してこようか?」

おたえの言葉に沙綾が答えた。

 

「いや、流石にはぐれるからやめといた方がいい」

流石にみんなバラバラになるのはまずい。

 

俺の言葉におたえが、

「でも有咲しか場所わからないよ」

 

「まずは俺が香澄たちを探しに行く。あと、たぶん有咲ならあそこにいる」

有咲の秘密の場所は多分あそこだろう。

今思えば確かにあそこなら花火もよく見える。

 

「わかるの!?さすが竜二!場所おしえて」

おたえが驚いている。

俺は2人に場所を教えてやることにした。

 

「そっか、ここなら花火も見やすそう」

沙綾も感心していた。

 

「ともかく俺はこの事を香澄たちに教えてやんないと。場所さえ教えれば大丈夫だ」

「お前らも時間に間に合うように、その場所へ行ってくれ。じゃあ少し香澄たちを探してくるよ」

 

 

それから俺は2人を手当たり次第探していた。

 

「おーい!香澄、りみ!ここにいたのか!」

「あ!竜二くんが来てくれた!」

香澄の声で2人が駆けつけてくる。

 

「ごめんね。竜二くん。まさか圏外になると思わなくて・・・」

りみが少し申し訳なさそうにしている。

 

「気にすんな。さすがに俺も予想外だった」

「さーやと有咲とおたえは!?」

「ひとまずその3人は大丈夫だ。花火見る場所をりみに教えておくよ」

「私・・・?大丈夫かな。ちゃんと行けるかな?」

りみが不安そうにしている。

 

「ああ。大丈夫だ。行くのはそんなに難しくない」

俺はりみに場所を教えてやった。

 

「あ、ここなら私でも行けそう。教えてくれてありがとう。竜二くん」

 

「それじゃ、俺は少し先に行くよ。お前らも後で来いよ!」

「まだ時間あるのに?一緒に回ろうよ!」

香澄が俺に言った。

 

「香澄たちと屋台とか回るの楽しそうだな!けど有咲だけ今1人なんだよな。だから少し早めに行ってやろうかと思ってさ」

「え!?有咲1人なの?さーやとおたえは?」

「実は有咲だけ逸れちまったんだ」

「そうだったんだ。有咲ちゃん大丈夫かな・・・?」

りみは心配そうにしていた。

 

「大丈夫だろ。そう言うわけだから俺は先に行ってるな。りみ、香澄を頼んだぞ」

「うん。竜二くんも気をつけてね。あとで行くから」

「竜二くん!有咲をよろしくね!」

 

2人に見送られて有咲の待つ場所に向かうことにした。




後編に続きます。
また後日に投稿します!


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19. みんなで花火を見に行こう。後編

前回の続きです。少し長めです。
後から誤字に気がつくことが多いです!
たまに今までの話を振り返ってます。

それではどうぞ!


有咲side

一人で秘密の場所の神社にたどり着いた有咲。

 

「つーかみんな、どこ行っちゃったんだよ・・・」

「・・・私、ひとりじゃんか」

「まあ別に、そんなの気にならないし、別にいいけど!」

「それに竜二達もいつのまにか付いてきてねーし・・・」

 

「せっかくこの秘密の場所を、教えてやろうとしたのにさー」

「ほら・・・この神社。こんなに見晴らしがいいのに・・・」

 

「・・・・・・」

 

 

「みんなで一緒に・・・来たかったな」

 

「私がこの場所のことを言わなければ、今頃、みんなで一緒にいられたのかな・・・」

(それか・・・この場所のこともったいぶらずに、普通に教えてれば、みんな集まってこられたのか・・・)

 

(みんなを喜ばせたかったんだけど・・・なにやってんだろ、私って・・・)

(それしにしても・・・ここって、本当に静かだな・・・)

「毎年来てたけど・・・今年は余計に静かに感じるかも・・・」

「あ〜あ・・・。みんな今頃何してるのかな

・・・」

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

竜二side

 

俺は少し早めに神社に辿り着いた。

有咲が寂しそうな顔で一人で座っていた。

脅かしてやるか!

 

「いい場所だな。さすが有咲」

俺は背後から有咲に声をかけた。

 

「っ・・・!!竜二っ!ば、場所わかったんだ・・・」

有咲は驚いて少し泣きそうな顔を拭って答えた。

 

「まあな。俺レベルになると有咲の考えてることくらいわかる」

「なんだよそれ〜!こっちは心配してたんだぞ」

少し冗談っぽく言ったからか、

どうやらいつもの有咲に戻ったみたいだ。

 

「ははは!一応場所は教えといたからそのうちみんなも来ると思うぞ」

「そっか。それならいいんだけどさ。まだ時間早いのになんで1人で来たんだよ?」

「誰かと一緒に居た方が楽しいだろ?だから来ただけだよ。他のみんなは結果的に2人で回ってるだろ?なら俺も有咲のとこに行こうかと思って」

せっかくの花火大会なのに一人なのは寂しいだろうし。

 

「へ、へえ・・・そうなのか。あ、あたしも1人だと暇だったから竜二が来てくれて丁度良かったよ」

こうは言ってるが、なんだか嬉しそうだな。

 

「そうか。ならよかった。隣・・・いいか?」

「と、隣?!べ、別にいいけど・・・」

なぜそんな焦る!?俺は有咲の横に腰を下ろした。

 

「この場所すごい静かだなー」

「花火もよく見えるし人もいないし、結構いい場所だろー?」

「だな。俺は花火をこうやって誰かと見るのは初めてかもな」

正直どんな感じなのか今から楽しみでもある。

 

「私も初めてだって」

ん?ああなるほど。

 

「あ、そっか!有咲ぼっちだったもんな!」

「うるせー!わかってても言うな〜!」

「ま、俺が言えたことじゃないけど」

「そうだぞ!竜二だって学校でぼっちだったじゃん!」

「ちょ、おま!ぼっちじゃないし!少しは話せる人いたし!!」

なんて酷いこと言うのこの子は!!

 

「ほほう。あたしたち意外に〜?ほんとか〜?」

「これ以上詮索しないでください有咲様!」

くそっ!この話では有咲には敵わなそうだ!

 

すると有咲は可笑しそうに、

「ははは・・・!やっぱ竜二と話すの楽しいな〜!」

「人をからかって爆笑とはいい趣味してやがる!」

まったく。なんてやつだ!

 

「普段からかってくる癖に、どの口が言うんだか」

「だって有咲からかうの面白いし、ツッコミの仕方が絶妙なんだよな!」

有咲のツッコミが聞きたくてついからかっちまうんだよな。

 

「こっちは大変だっての!その・・・別に嫌じゃないけど」

相変わらずのツンデレ具合だな。

 

「ならいっか!!」

「少しは気にしろ〜!・・・・・・・・・でもさ、なんか懐かしくない・・・?」

「・・・懐かしい?なにがだ?」

「ほら竜二前は結構うちに来てただろ?縁側で2人で座って良く喋ったじゃん。こんな風にさ」

有咲は懐かしそうにしていた。

俺もその事はよく覚えてる。

 

「ああ・・・・・・学校通ってた頃か」

「その時もくだらない話を永遠としてたよな〜。なのに全然飽きなくてさ・・・なのに、なんかかなり前の出来事に感じる・・・」

今もだけどあの頃もただただ毎日が楽しかった。

 

「・・・そうだな。まだ少し前の事なのにな・・・」

 

有咲は何かを言いたそうにしていた。

 

・・・・・・・・・

 

 

「・・・急に学校辞めて心配したんだからな・・・」

「わかってる」

自分勝手なことをした自覚はある。

 

「一度決めたら頑固だもんな竜二はさ」

・・・・・・

「お前らが理由も聞かずに退学を受け入れてくれて本当に感謝してる・・・」

 

「ううん。いいって。香澄を説得するのは大変だったけどな〜」

有咲は少し冗談っぽく言った。

本当に有咲と沙綾には色々と苦労をかけちまった。

 

「・・・色々と苦労かけたみたいで悪い」

 

・・・・・・

 

「竜二はさ・・・もう、いなくなったりしないよな・・・?」

有咲が心配そうに俺に言った。

「・・・ああ」

「ほんとか?」

「約束するよ。もう急にどっか行ったりはしない」

俺はもう二度とあんな事がないように心に誓った。

 

「そっか・・・それならいいんだけど」

有咲は少しだけ安堵の笑みを浮かべていた。

 

「・・・ほんと、俺の周りの人たちはみんな優しすぎるな。感謝してもしきれないくらいだ」

いつも思うけど高校生とは思えないくらいにみんな俺のことを気にかけてくれてる。

 

「私達からしたら竜二の方が色々と世話焼き過ぎだと思うけどな」

「そうか?俺には全然わかんねーな」

俺は自分がそこまで世話を焼いてる自覚はないんだけどな。

 

「ほんとさ、竜二もいつもこのぐらい素直だったら私も苦労しないんだけどな〜」

有咲は少しため息混じりに答えた。

「え!俺めっちゃ素直じゃね!?世界中探してもなかなかいないくらいに素直だろ!」

「そうやってすぐふざけるのが竜二の悪いところだ」

「すんません・・・」

 

「・・・今日だってさ。その、私が心配で先に1人て来てくれたんだろ・・・?」

有咲が少しだけ言いにくそうに訪ねてくる。

 

「1人だと暇だったから有咲をからかいに来ただけだ」

「嘘つけ。私レベルになると竜二の考えてることくらいわかる」

「なんだよ?さっきの仕返しか?」

「ははっ。お互いさまだろ?」

有咲は少し得意げにしていた。

 

「なぁ?俺ってそんなにわかりやすいのか?」

なぜか最近はよくみんなに心を見透かされることが多い。

「あー、最初は全然わかんなかったけどな?最近は竜二の考えてる事もわかるようになってきたんだ」

「なにそれ怖い!!」

いつのまにか俺のことを把握してしまったって事か?俺ってそんな単純なのか!?

 

すると有咲がとても真剣な顔をして、

「・・・たまにさ、不安になる事があるんだよ。ポピパも他のバンドも確実に成長してるだろ?でもそれって、竜二の助けが大きいじゃん。その陰で竜二が自分を犠牲にしてるんじゃないかってさ」

「・・・んなことねぇよ。俺は俺の出来る範囲で手伝ってるに過ぎない」

「それならいいんだけど・・・」

俺の言葉とは裏腹に有咲は心配そうにしていた。

 

「・・・失うどころか、手に入れてばっかりだよ。俺は幸せ者だ・・・」

「幸せ者って、竜二は大袈裟だな」

有咲は少し可笑しそうに答えた。

 

「本当だって。・・・仮にもしも俺が何かを失っていたとしても、それ以上に手に入れたものがたくさんある・・・」

「・・・そっか、竜二がそこまで言うなら私はもう何も言わない・・・」

有咲は俺の言葉に少しは安心してくれたみたいだ。

「ああ。俺なら大丈夫だ」

だから俺はそう答えた。

 

 

・・・・・・ドーン!!

 

 

「おい!花火上がったぞ!すげーな有咲っ!」

「子供か!はしゃぎすぎだって!」

「だってお前!俺こんなに見晴らしの良いとこで花火なんて見たことねえんだぞ!やべえよ!やべえよ!」

すげえな。打ち上げ花火って近くで見るとこんなにキレイなのか!

 

「ちょ、落ち着けって!あーもう!みんなはまだ来ねーのかよ?」

有咲は興奮した俺を止めようと必死だった。

 

・・・・・・・・・

 

「沙綾。有咲達いたよー」

おたえの声が聞こえた。

どうやら沙綾と無事に辿り着いたらしい。

 

「あ、ほんとだ!来たよ〜有咲。人が多くて少し遅れちゃったけど」

「やっと来たか沙綾とおたえ!誰か竜二を止めてくれ!」

 

「お前らおせーぞ!それより見ろってこの花火!ふぉおおおおお!」

「竜二子供みたい」

「はしゃぎすぎだって」

おたえと沙綾が俺に言った。

お前にはこの素晴らしさがわからんのか!!

 

「なんでお前らそんな落ちついてるんだよ!こんなでけー花火だぞ!踊りたくなるだろ!」

「・・・確かにキレイだけど踊りたくはならないかな・・・?」

沙綾が少し引き気味で答えた。

 

「なら私と踊る?」

「おお!踊ろうぜおたえ!」

俺はおたえと踊りながら叫んで、とにかく楽しんでいた。

 

「あー!みんないたよ!りみりん!」

香澄の声が聞こえる。どうやら2人も無事に来れたみたいだ。

「ほんとだ。ごめんね。人が多くて時間通りに来られなくて」

りみが申し訳なさそうにしていた。

そんな2人を見て有咲が、

「香澄おせーぞ!」

 

「竜二くんとおたえは!?」

どうやら香澄は2人を探しているみたいだ。

 

「あは・・は・・・2人ならあそこで変な踊りしてるよ」

沙綾が苦笑いしながら答えた。

「え!楽しそう!竜二くん!私も入れて〜!」

「はぁ。やっぱりこうなったか・・・」

有咲が頭を抱えていた。

 

「お!香澄来たか!この花火やべえよな!一緒に踊って騒ぎまくろうぜ!」

「うんっ!一緒に騒ご〜!」

わかってるな香澄!!お前は最高だ!!

 

「お前ら!恥ずかしいからやめろ〜!!」

有咲が何か言ってるがそんな言葉で止まる俺たちじゃないぜ!

 

そんな有咲を見て沙綾が、

「有咲。諦めた方が良いよ。あの3人はしばらくそっとしとこう?」

 

ドーン!

 

「きゃっ!!」

「りみりんどうしたの?」

「私、大きな音苦手なんだ。花火はキレイなんだけど、音にびっくりしちゃって」

 

「そうだったのか。ベースの音は大丈夫なのにな」

有咲は不思議そうにしていた。

 

「自分でも変だと思うけどね。・・・きゃっ!!」

そんなりみを見て沙綾が、

「りみりん。手、繋ぐ?少しでも安心出来るかもしれないし」

「ありがとう。沙綾ちゃん」

りみは嬉しそうにしていた。

 

「じゃあ有咲は反対の手握ってね」

「わ、私もか!?・・・ったくしょーがねーな。はい」

有咲はりみに手を差し出した。

 

「有咲ちゃんもありがとね」

「みんなで来られて良かったね。有咲?」

沙綾が有咲に尋ねる。

 

「べ、別に私はどっちでも良かったけどな」

「本当に〜?あとで竜二に聞いちゃおうかな?」

沙綾は少し悪戯っぽく言った。

 

「竜二にだけは聞くな!?」

「あははっ。冗談だって〜」

こうして3人は手を繋いだまま少し話していた。

 

 

・・・・・・・・・

 

 

「竜二〜!りみりんが花火の音怖いんだってさ!いつまでも遊んでないでこっちに来てよ」

ん?どうやら沙綾が俺を呼んでるっぽいな。

 

「なんだ。そうなのかりみ?」

「うん。大きい音が苦手なんだ。でも今は2人が手を握ってくれてるから大丈夫だよ」

まさかりみにそんな苦手なものがあったとは。

 

「じゃあ私たちもみんなで手を繋ごう!私は有咲の隣〜!」

香澄はいち早く有咲の隣に行った。

「香澄が隣かよ〜!ま、別にいいけど」

 

そんな有咲を見たおたえが、

「有咲嬉しそうだね」

「はぁ!?別に嬉しくねーしっ」

「有咲はツンデレだね。じゃあ私は香澄の隣」

「ツンデレじゃねーし!」

おたえと有咲が何か言い合ってるな。

 

「じゃあ俺は沙綾の隣だ」

「わ、私の隣?」

なぜそんな焦る?

「なんだよ?ダメなのか?」

「う、ううん!全然大丈夫!はいっ」

沙綾が手を差し出して来たから握った。

 

すると香澄が、

「ねえみんな!絶対また来年も一緒に来よう!」

「来年か。まぁ毎年やってんだからポピパがある限り来ることになるだろうな」

ポピパがなくなることなんて無いだろうけどな。

 

「いつまでもみんなで一緒にいられたらいいよね」

「そうだね。りみりん。他にも色々なところ行けたらいいよね」

りみと沙綾も同じ気持ちのようだ。

 

「わ、私はどっちでもいいけど!」

「でた。有咲の十八番」

「・・・おたえ。みなまで言うな。みんなわかってるんだ」

そっとしてやるんだ。

「う、うるせー!」

 

そんな俺たちの会話を断ち切るように香澄が、

「絶対来よう!この6人で!」

「そうだな」

やっぱ俺も含まれてたか。

 

「来年はもっとたくさんの人たちに私たちの音楽を知ってもらえたらいいよね」

沙綾がそんなことを言った。

「そうだね沙綾ちゃん。お姉ちゃん達に負けないくらい頑張ろう」

りみもやる気満々だな。

 

するとおたえが、

「じゃあ香澄は私と猛特訓だね」

「ええ!?私だけ!?」

「はははっ!」

みんなして笑っていた。

 

ドーン!!

 

「見てみて!星型の花火が6つ並んでるっ」

香澄が嬉しそうに言った。

「本当だ」

おたえも少し驚いていた。

 

そんな香澄を見た有咲が、

「香澄はやけに星にこだわるよな」

「ポピパと言ったらやっぱり星だよ!」

香澄の中では星がポピパのトレードマークになってるらしい。

 

「私は香澄ちゃんらしくていいと思うな・・・」

「ならあの花火に負けないくらいキラキラしないとね。香澄?」

りみと沙綾が言った。

 

「うん!絶対来年にはもっともっとたくさんの人の前でライブやりたい!」

Poppin'Partyならきっと大きなステージに立てると俺は思った。

来年のGuitar spiritが終わったら。もっと俺もみんなの手助けをしてやりたいと思っていた。

 

 

「じゃあ・・・・・・俺が連れてってやるよ。ポピパが1番キラキラするステージにさ」

今更だけど、結構恥ずかしいこと言っちまったな。

 

そんな俺を見て有咲が、

「まぁ竜二がいれば安心だな・・・」

「任せろって!それに、これからはずっとこの街にいるし」

「本当に!?やった〜!」

香澄は嬉しそうだった。

 

「無理はしすぎないでね?竜二くん」

「竜二の管理は私に任せてりみりん!」

沙綾に私生活を管理されるのか!?俺は!?

 

「じゃあ私は竜二にギター教えてもらう」

おたえがそんなことを言った。

「ははは!この俺に全部任せなさい!」

そんな俺の言葉に有咲が

「はははっ。後で後悔しても知らねーからな〜」

「何を頼む気だ有咲!?」

 

こうしてポピパとの楽しい花火大会は幕を閉じた。




普段は仕事の合間にちょこちょこ文章を書いてます!

RoseliaのFNS出演素晴らしかったですね!
Afterglowかハロハピの2章も楽しみです!


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過去編4. 夢の形は時間と共に変化していくようだ。

今回は出会いの話ではなく、Roseliaの一章に触れた短編になっております。


夕方頃に俺は家に帰るところだった。

ん?誰かいるな。あれはリサか。

なんか元気がなさそうだけどどうしたんだ。

 

「おい。・・・どうしたんだ。リサ・・・?」

「ぐすっ・・・竜二・・・?」

泣いてるのか?

 

「ああ。俺だ」

「・・うう・・・・竜二。どうしよう・・・?このままじゃ・・・Roseliaがなくなっちゃう・・・」

俺を見た途端リサは膝から崩れ落ちて泣き出した。

 

「どうした?何かあったのか・・・?とりあえず落ちつけって・・・な?」

俺はリサにハンカチを渡してやった。

 

しばらくするとリサが泣き止んで落ち着いてきたみたいだ。

「・・・ありがとう竜二。もう大丈夫だから」

「気にすんな。それで、何があったんだ?話してくれるんだろ?」

「実は・・・・・・」

 

リサは事情を説明してくれた。

どうやら友希那が事務所からスカウトされたらしい。

なんでもソロデビューすれば確実にFUTURE WORLD FES.に出してくれるそうだ。

このままRoseliaとしてFUTURE WORLD FES.に出るための厳しいコンテストに出るかを天秤にかけられて、しかもそのことをあこ達が知ってしまい皆でスタジオで揉めてしまったみたいだ。

友希那もあこ達に責め立てられて、それを引き金にスカウトを受けようとしているらしい。

 

「・・・竜二・・・友希那を説得出来ないかな・・・?友希那は竜二のことすごく信頼してたし。アタシ・・・もう竜二しか頼める人がいなくて・・・」

リサは俺が見たことないくらいに弱り切っていた。

 

「そんな泣きそうな顔すんな・・・?俺がなんとかしてやる」

俺はリサの頭に手を置いて言った。

「竜二っ・・・ほんとに・・・?アタシ達バンド辞めなくても済むのかな・・・?」

「俺もRoseliaは好きだ。こんなとこで解散して欲しくない。それにリサが言ったんだろ?『アタシにはフォロー出来ないところもあるし、そういう部分は竜二が友希那を支えてあげて』ってさ」

 

「まだ知り合ったばっかりの時のアタシが言ったこと覚えてくれてたんだ・・・」

リサは嬉しそうにしていた。俺が覚えてるとは思ってなかったみたいだ。

 

「当たり前だ。だからちょっと今から友希那のとこ行ってくる。スタジオから出たばかりならそんなに遠くには行ってないだろ」

「・・・竜二・・・ありがとう。アタシ、みんなを集めて待ってるから」

どうやら安心してくれたみたいだ。

 

「ああ!じゃ行ってくる!」

 

俺はスタジオの近くをひたすら探し続けた。

しばらく走り回っていたら知ってる人影が見えた。

 

「友希那!」

 

「・・・!」

友希那は俺の顔を見た途端に逃げ出した。

馬鹿やろう。絶対逃がさねーぞ。

 

「おい待てって!なんで逃げんだよ!」

しかも意外と足早えし!

 

「追ってこないで!」

俺は友希那をひたすら追いかけていつのまにか、人気のない公園に辿り着いた。

 

「どうして追ってくるのよ・・・!」

「お前が逃げるからだろ?・・・リサから話を聞いたけど、本当にRoseliaを辞めるつもりなのか・・・?」

 

「私はっ!なんとしても自分の音楽を証明しなきゃいけないのよ!だから・・・私のことはもう放っておいて!」

「お前は・・・それでいいのかよ。せっかくRoseliaって言うバンドが出来たのに、もうこれで終わりなのかよ・・・?」

 

「私だってわからないのよ・・・!何が正しいかなんて・・・Roseliaは確かに実力のあるバンドよ。けどそれだけじゃダメなのよ!」

 

「・・・俺もさ、みんなが友希那ほどの気持ちでバンドやってるかって言われたらさすがにわかんねーけど、でもあいつらならお前についていけるって俺は思う。友希那はどうなんだ・・・?」

 

「私は・・・わからない。もしかしたらいつか私という存在がRoseliaを壊してしまうかもしれない。そんなことばかり考えてしまうのよ・・・」

 

・・・・・・・・・

 

「そんなことにはならない」

 

「っ!!部外者の貴方に何がわかるのよ!それに、今更戻ったって許されるはずないわ!私は一度Roseliaを捨てようとしたのよ!!」

 

 

「・・・・・・けんな・・・」

 

「・・・竜二・・・?」

 

「ふざけんな!!」

 

「・・・っ!!」

 

「・・・俺のことはどうでもいい。だけど友希那?・・・紗夜や燐子、リサとあこ、あいつらはな?この程度でお前を見限るわけねーだろ!!それに・・・お前だってそんなのわかってんだろーが!!」

 

「ぐすっ、うう・・・そんなこと・・・私が一番わかってるわよ。でも・・・怖いのよ!いつか自分のせいで何もかも失くしてしまうのが!」

 

「だったら!・・・俺を頼れよ。俺にはなんでも話してくれるんじゃなかったのか・・・?」

「ぐすっ・・・確かにあの時はそう言ったわ。だけどっ・・・竜二一人に出来ることなんてたかが知れてるじゃない!そんなのっ・・・無理よっ」

 

「俺が!!なんとかしてやる!!」

 

「無理よ!それに竜二に迷惑なんてかけられない・・・これは、私の問題よ!!私がお父さんの音楽を証明したいからって竜二を巻き込む訳にはいないのよ!だからもう私のことは放ってお・・・」

「うるせぇぇぇぇ!!」

 

「・・・っ!!」

 

「俺の一生を賭けてでも何とかしてやるっつってんだ!!友希那!!お前は黙って俺に全部任せろ!」

 

「・・・うう・・・竜二・・・どうして」

 

「・・・お前達Roseliaは俺が絶対に最高のバンドにしてやる。困ったら頼れ、なんでも言え。もし道を間違えそうなら俺がなんとかしてやる。約束だ友希那」

 

「ぐすっ、うう・・・竜二!どうして・・・そこまで・・・?」

「・・・俺だってな友希那?お前に助けられてる。友希那がこんな俺のことを認めてくれてる。それだけでいつも救われてるんだ。だから友希那・・・俺にも手伝わせてくれよ・・・な?」

 

「・・・私はっ・・・間違っていたわっ・・・本当にっ・・・ごめんなさいっ・・・竜二っ・・・」

友希那は泣きながら答えた。

俺はそんな友希那を優しく抱きしめてやった。

 

「いいんだよ・・・誰しも間違えるときはある。もし俺が間違えた時は友希那が俺を叱ってやってくれ」

 

「ええ!・・・私はっ!竜二に何かあったら全力で助けるわっ・・・もしっ!・・・間違ったことをしていれば全力で叱るわっ・・・絶対にっ・・・約束よっ・・・」

 

「ああ。約束だ」

 

しばらくして友希那が泣き止んで落ち着いてきたみたいだったからベンチに移動した。

しばらくして俺の方から話しかけた。

 

「俺もな。前は友希那みたいな音楽の夢があったんだ。その時はただただその夢を叶える為に必死だった」

「竜二にも夢があったのね・・・・」

「ああ。俺はその夢を成し遂げる為ならなんだってしてやろうと思ってた時もあった・・・」

「その・・・竜二は・・・諦めてしまったの・・・?」

友希那が少し悲しそうにしていた。

 

「いや、少し違うな。俺は気付いたんだ。一人でずっと走り続けてくうちにさ、俺の本当にやりたかった事はこんな事だったのか?ってな。」

 

・・・・・・・・・

 

「俺に音楽を教えてくれた人は、こんな風に俺が生きる事を望んでないんじゃないかってさ、気付いたんだ」

 

「竜二に音楽を教えてくれた人・・・?」

「ああ。その人に近づきたくて、そんな風に生きてみたくて、その人と同じ景色を見てみたくて、ただただギターを弾き続けたんだ」

 

 

「私には間違っているとは思えないわ・・・だって竜二は・・・その人のようになりたかったんじゃないの・・・?」

 

「でもなれるわけなかったんだ・・・だって俺は俺だろ・・・?どんなに頑張ってもその人にはなれない・・・その人が何を想って、何のためにステージに立ち続けてたかずっと知りたかったんだ。けど・・・わかるはずなかったんだよ・・・」

 

「それはどうしてなの・・・?」

「だってさ、その人は誰も追いかけてなかったんだ。常に自分の思うままに音を鳴らして、歌を歌ってた。・・・そんな演奏や歌に見てる人は心を奪われた」

友希那は黙って俺の話を聞いていた。

 

「ただ背中を追ってる俺がその人と同じようになれるわけがなかった。だから今は俺にしか出来ない事をやろうと思ったんだ・・・」

 

「竜二にしか出来ないこと・・・?」

「ああ。それは音楽であって音楽じゃない。」

「・・・?えっと・・・つまりはどういうことなのかしら・・・」

 

「その人と同じ景色じゃなくてもいいんだよ。ただ俺は俺にしか見れない景色を見たいんだ。それは必ずしもステージの上じゃなくてもいい」

「・・・じゃあ、竜二は今もその夢を追いかけてる途中なのね」

「ああ。しかも俺は欲張りだから、他にもたくさん夢がある!」

「ふふっ・・・竜二の夢、叶うといいわね?」

友希那は微笑んでそう言った。

 

「ああ。だから友希那?始まりはお父さんかもしれないけど、まだまだ先は長いんだ。色々とこのバンドでやりたい事を見つけていけばいい・・・」

 

「ええ・・・そうね。もしまた道を間違えそうになったら・・・竜二がなんとかしてくれるんでしょう・・・?」

友希那は優しげに微笑んで俺にそう言った。

 

「任せとけって。友希那にはこれでもか!ってくらい厳しくしてやるよ」

「・・・ふふっ・・・ええ。望むところよ」

「良い返事だ」

ようやくいつもの友希那に戻ってきたな。

 

「ねえ竜二・・・?後でみんなに今の私の正直な気持ちを話しに行こうと思うのだけど、その、竜二も付いてきてくれるかしら・・・?」

 

「当たり前だ。泣いた後だしな!友希那の顔が元に戻ったら行くぞー」

「竜二?もう少しデリカシーのある発言をしないと女性に嫌われるわよ」

 

「ははは!でも友希那は俺を嫌わないだろ?」

「馬鹿ね?・・・わ、私が竜二を嫌うわけないじゃない。むしろ今日の事で竜二のこと前よりもす、好きになったわよ・・・?」

少し頬を染めながらそんなことを言った。

 

「軽々しく男に好きなんて口にするもんじゃないぜ?」

「ふふっ・・・あら?私に惚れてしまうかしら・・・?」

「惚れねーよ!」

「それは・・・残念ね。でもさっき私に一生を捧げるって言ってなかったかしら?」

友希那は少し悪戯っぽく微笑んでいた。

「ば、馬鹿やろう!それはまた違う意味でだな!」

「・・・ふふっ。冗談よ・・・」

このやろ!からかいやがって!

 

「ったく!そんだけ軽口が言えるようなら安心だな。そろそろリサ達のとこ向かうぞ」

「そうね・・・竜二・・・?」

「ん・・・?」

「・・・ありがとう」

友希那は今まで見たことのないくらい微笑んで俺にそう言った。

俺たちはリサ達が待つ場所へ向かおうとしていた。




見てくださってありがとうございますm(_ _)m
今更ですが、ガルパでキャラの一人称を調べてたら、蘭が私って言う時とあたしって言う時があるみたいで、最近はあたしって一人称が多かったからそっちにしました。

あと巴の一人称があたしだったのを、ガルパで確認してアタシに変更しました。


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〜朝倉竜二の追想〜

それはまるで暗闇を永遠と歩いているような・・・

同じところを永遠に彷徨ってるような・・・

 

いつからだろう。こんな風に思うようになったのは。

自分でもわからない。

 

何度も何度も光へと手を伸ばすのに、近付こうとするとまた遠ざかって、自分だけがその場所に取り残されてしまうような感覚。

 

暗闇の中で俺を掴もうとしてみんなは必死に手を伸ばしてくる。

けど俺はそれを掴む事が出来なくていつも取り残される。

そんな錯覚にいつも襲われる。

 

その純粋な眼差しにいつも俺は苦しくなる。

自分自身がやってきた事の代償が今この身に降りかかっているだけだ。

誰が悪いかと言われれば自分自身なのだろう。

 

 

今まで自分がしてきた事に後悔があるのかと問われれば、もしかしたらあるのかもしれないし、これで良かったと思ってる自分もいる。

 

いっそ何もかも捨ててしまえば楽になれるのに、自分の心がそれを許してはくれない。

まだ捨てるわけにはいかないと、いつもギリギリの所で俺を繋ぎ止める。

きっと、それはみんなの俺を見る眼差しが純粋過ぎるからだ。

その瞳を見ていると、まるで何もかも忘れたかのように、昔の自分のようにいられるんだ。

 

 

もし、何か一つでもやり直せるなら俺は、違う選択をしたんだろうか・・・

 

いや、きっと同じ選択をするんだろう。

 

・・・いつか日菜が言ってたな。

 

ヒーローは常に心が悲鳴が聞こえる・・・か。

確かに俺は今まで、皆の為に自分に出来る事を全てを使って助けてきた。

もしかしたらそれは・・・皆からはヒーローのように見えるのかもしれない。

 

だけど、本当はそんなに格好いい物じゃない。

俺は常に必死で、どうすればそいつの心が救われるのか考えて考えて・・・

いつも自分なりに必死に足掻いて答えを出してきた。

 

・・・なんの代償も無しに望むモノ全て手に入れられるのならどんなにいいんだろう。

 

きっとテレビや漫画のヒーローならもっと上手くやれたのかもしれない・・・

けど俺には全てを手に入れる事は出来なかったんだ。

 

もしかしたらそんな選択肢もあったのかもしれない・・・

けど俺には、少なくともあの時の俺にはその選択肢は見つけられなかった。

傍観者でいる事だけは出来なかったんだ。

 

・・・だから、この事だけは決して悟られないようにしなければいけない。

みんなの夢だけは絶対に守らなければならない・・・

 

 

だから俺はまた暗闇の中を歩き続けるんだ。

無謀だと知りながらも何度も何度も挑むんだ・・・

 

もしかしたら・・・なんて夢を見ながら・・・

 



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20. 宇田川家にカレーをご馳走になりに来た。

今回は1話構成の話です。
後半少しシリアス。


今日は巴から連絡が来て宇田川家でカレーを食わせてくれるらしい。

食いもんに釣られちまったぜ。

 

ピンポーン♪

 

ガチャ

 

「よ!巴来たぞ」

「おお。竜二来たか。上がってってくれ」

「竜二さんいらっしゃいっ」

巴とあこが玄関先まで来てくれた。

 

「あこも出迎えご苦労!」

俺の言葉に巴が呆れていた。

「なんでそんなに偉そうなんだ・・・」

 

「もしかして少し早く来すぎたか?」

まだ夕方5時頃だった。

夕食には少し早い時間だったかもしれない。

 

「いいっていいって。ゆっくりしてってくれよ。たまにはのんびり話そうぜ」

「そうか。じゃあ座らせてもらうぜ」

巴がそう言うならまあいいか。

俺はさっそくリビングにあるソファーに腰掛けた。

 

「竜二さんっ。ギター弾きますか!?」

あこがギターを持ってきて弾いて欲しそうにしていた。

ってかなんでこの家にギターあるんだ?

誰も弾かねーだろ。

 

「あー、今日はゆっくり話でもしたいからまた今度な」

「む〜。そうですか〜。ならあこ達と話しましょうっ」

そんな残念そうな顔をするな。何故か無性に罪悪感が!

 

 

「すまんな・・・それよりRoseliaの活動は順調か?」

「お・・・それはアタシも気になるな。」

どうやら巴も気になるみたいだ。

 

「もちろん順調ですよ!それに最近は友希那さんと紗夜さんも少し優しくなった気がします」

「へえ。湊さんが・・・あんまり想像出来ないけど」

確かに巴から見た友希那と紗夜は少し厳しめに見えるかもしれないな。

 

「ま、巴たちはあんまりRoseliaのメンバーと関わることないもんな」

「あこから話はよく聞くんだけど、竜二から見てRoseliaのみんなってどんな人達なんだ?」

「俺から見て、かぁ」

あんまり赤裸々に話すとバレた時怖いからな。

どこまで話せばいいもんか・・・

 

「あこも気になります!」

「ここではあまり言いたくないんだけどなー。あこ絶対後でアイツらに言うだろ!」

「そ、そんなことないですよ〜!」

ほんとか!?ほんとだな!?その言葉信じるからな!?

 

「まあいいだろう。そうだな。何から話そうか・・・」

「アタシは湊さんと紗夜さんが特に気になるな。蘭も湊さんにはすごい対抗心燃やしてるし」

蘭は何故か友希那にはものすごいライバル意識あるもんな。

 

「ははは・・・!確かにな!・・・・・・友希那か・・・。友希那は2人が思ってるよりはかなり素直でたまに冗談を言ってきたりもするぞ」

「へえ!湊さんが冗談とか言うなんて全然イメージ出来ないな」

「どんな冗談言ったりするんですかっ?」

2人は俺の言葉に興味津々だった。

 

「この前な、俺が無知なのをいいことにな・・・

 

あれは昼頃に珍しく友希那が1人でCiRCLEに来てる時だった。

 

『竜二?知ってる?紗夜は毎日ギターを抱いてないと寝られないらしいわよ』

『まじかよ!!』

『マジよ。だから紗夜はギターのメンテをよくしているでしょう?普通ならあそこまでこまめにメンテはしないわ』

『確かに!!ギターが壊れないか心配だもんな!寝れなくなっちまうし!』

『ふふっ・・・!』

『何笑ってんだよ!最悪ギターが壊れたら俺のを貸してやるしかないな!』

 

『ま・・・嘘なんだけど?』

 

『嘘かい!!』

 

・・・てな事があったんだ。危うく紗夜に尋ねるとこだったわ!」

 

「ははは・・・!」

どうやら2人にはかなりウケたみたいだ。

 

「湊さんでもそんな冗談言うんだなっ。なんか少しイメージ変わったよ」

「友希那さんリサ姉にもそんな冗談言わないのに!」

リサにそんな冗談言ってたらめっちゃ面白そうだけど。

 

「なんか知らんが友希那は俺をからかうのが好きっぽい」

「まあそれだけ仲が良いって事じゃないか?」

巴が答えた。

 

「そういうもんなのかね。まあでも、少し蘭と似てる所あるよな」

「確かに。アタシも少しそう思ってたんだよな〜」

巴も良く俺にそう言ってたもんな。

 

「蘭も俺をたまにからかってくるだろ?その感じと近い」

「2人とも竜二さんの事が大好きなんですよっ」

あこは嬉しそう俺にそう言った。

 

「それは嬉しいがアイツらの冗談はわかりにくいんだよ!」

「じゃあ紗夜さんはどうなんだ?紗夜さんってめっちゃ真面目なイメージあるんだけど、竜二から見たらどんな感じなんだ?」

どうやら巴は紗夜の事も聞きたいらしい。

 

「紗夜か・・・俺も最初はそう思ってたけど実は割と抜けてるところがあるんだよ。こんな事があったんだ・・・

 

あれは昼頃、CiRCLEで紗夜が1人でスタジオに練習をしに来た時の話だ。

 

 

『竜二くんのギターの真髄を教えてもらってもいいですか?』

『俺のか?そんなもんないけどなぁ』

『そう言わずに、何かありませんか?』

『うーん。強いて言うならギターと常に一緒にいることだな。1.2時間集中して練習するよりもいつも手元に置いておくのを俺は1番大事にしてるかもしれない』

『なるほど・・・!それは確かに理に適ってるかもしれませんね。私も今日からさっそく実践してみます』

 

そしてその日の夜・・・

prrrr

ん?日菜から電話だな。

『竜二くん!たすけてっ!お姉ちゃんがおかしくなっちゃった!』

『なんだよ?そんなに慌てて』

『ギターをお風呂場に持って行こうとしてるんだけど!竜二くんなにか知ってる!?』

『はああああああ!?』

 

後日・・・

 

『紗夜悪い!俺の伝え方が悪かったよな』

『いえ!私が少し捉え方を勘違いしてしまったみたいで!』

 

と言うことがあったんだよな・・・」

 

俺の言葉にあこが、

「・・・まさか紗夜さんがそこまで天然だったなんて」

「アタシ完全に紗夜さんのイメージ変わったぞ!」

巴もかなり驚いていた。

 

「俺が言った事を絶対言うなよ・・・あこ?」

特に紗夜の事はバレたらくっそ怒られるからな!

 

「も、もちろんですよ!さすがに言ったらあこも紗夜さんに怒られちゃいますよっ」

確かにこの事は誰も触れない方がいいだろうな。

 

・・・そしてしばらく他愛のない会話を2人としていた。

 

すると巴が立ち上がって、

「それじゃ、アタシはそろそろご飯の支度するな」

「俺も手伝うよ」

「いいって!今日はお客さんなんだからゆっくり休んでてくれ。あこは話し相手になってやってくれ」

「はーいっ」

「巴がそう言うならいいんだけとな」

仕方ない。手伝おうとしたけど断られちまったし、あこと話すとしよう。

 

「あこはAfterglowのみんながどんな風に活動してるのか気になりますっ」

「巴から聞かないのか?」

巴からよく聞いてそうなのにな。

 

「うーん。お姉ちゃんも話してくれるけど、竜二さんから見てどうなのかなーって」

多分二つのバンドをよく知ってる俺だから、色々聞いてみたいんだろう。

 

「なんだよーあこ?もしかして対抗心でも燃やしてるのか?」

俺は少し冗談っぽく言った。

 

「もちろんですっ。Roseliaも超超超カッコイイバントてすからっ」

これは相当対抗心燃やしてるな。

 

「ほほう。まあいいだろう。つっても、普通だぞ?蘭が曲の大元を作って、後はみんなでアレンジする」

みんなで考えて一から作るときもあるけど、大半は蘭が作ることが多い。

 

「たしかにそれだけ聞くとRoseliaとあんまり変わんないですね」

「んー。違うところか・・・。Roseliaと違う所と言えば、割とみんなでアレンジを言い合いながら考えてるかもな。Roseliaはだいたい個人練習が多いだろ?」

Roseliaはアレンジを家で考えたりしたやつをスタジオで披露するような感じだもんな。

もちろんその後に少しずつ完成するまでに変わるわけだが。

 

「たしかにそうかも・・・?竜二さんはAfterglowで何か手伝ってるんですかっ?」

「俺か?うーん。まあ少しだけ、その辺はRoseliaと一緒であくまでも少し意見を言う程度だけどな」

「竜二さんは他のバンドも手伝ってるし。本当に多忙ですね・・・」

あこが苦笑いしながら答えた。

 

「はは・・・は・・・。ま、まあ結論から言えば、ジャンルが違うからな。RoseliaとAfterglowじゃあさ。だから曲の作りかたも違うのかもな」

「うむむ。勉強になります」

こんな話でも為になるならよかったよかった。

 

「ま、ここまで両極端なバンドだと見る人によって評価が分かれるかもな」

「じゃあ結論はどっちも超超超カッコイイバンドって事ですねっ!」

俺はあこのこう言う純粋なところが好きだ。

別にロリコンってわけじゃないが!!!

 

「ああ。そうだな。あこ」

軽く頭に手を置いてやった。

別にロリコンってわけじゃないが!!!

 

すると巴が台所から料理を持って来てくれた。

「お待たせー!なんの話をしてたんだ」

「あこがAfterglowの活動風景が知りたいって言うからな。色々教えていたとこだ」

「へえ。面白そうだな。アタシも混ぜてくれよ」

巴も俺たちの話に興味を示していた。

 

「カレー♪カレー♪」

あこはカレーが来てテンション上がってるようだ。

 

「美味そうだな。さすが巴。さすが!実は女子力高い」

「あこの自慢のお姉ちゃんだもん!」

「やめろって。なんか照れるだろ?それより早く食べようぜ」

巴が照れていたから、これ以上茶化すのはやめておいてやるか。

 

「ああ。そうだな」

 

・・・・・・・・・

 

「いただきます!」

俺たちはみんなで手を合わせてから食べ始めた。

 

「それで、Afterglowの話だったよな。って言っても巴と改まって話すこととかないよな」

「確かに・・・あ、そういえば中学の頃の話とかはあんまりあこに話したことなかったよな」

巴が何かを思い出したかのように答えた。

 

「確かにあんまり聞いたことないかも!」

意外だな。あこになら中学の頃の話をしてるもんだと思ってた。

 

「あの時は中学の中でも特に蘭と竜二が目立ってたよなー」

「やめて恥ずかしい!」

俺の過去を掘り下げないで!!

 

「いいだろ別に?・・・それでな?蘭だけ別のクラスだったんだけど、蘭と竜二が仲良くなってからは1年のクラスによく蘭を呼びに来てただろ?そりゃもう噂が凄かったんだよ」

「ええ!そうなんですか?竜二さんっ?」

今思えば2年も下のやつのクラスに入り浸るって俺やばすぎだろ!

世間知らず過ぎたな。あの頃は

 

「確かに蘭と仲良くなってしばらくしてからは良く蘭のクラスに呼びに行ってたな」

「竜二は上級生だったしやっぱ、1年の教室に来ると目立つんだよな」

それで俺は少し不良だと思われてたのかもしれん。

 

「今思うと、俺って中学の時お前ら以外まともに話す人いなかったような・・・?」

「あは・・・は・・・」

2人してその乾いた笑みはやめて!なんか言ってくれ!!

 

「そういえば竜二さんって中学で転入してくる前はどこに住んでたんですかっ?」

「・・・・・・ここの街へ来る前か」

 

すると巴が少し難しい顔をして。

「あー、もしかして話しづらい事だったか・・・?」

「・・・いや、まあいいか。実はこの街来る前は海外に住んでたんだ・・・」

正確には海外を転々としていたんだけど。

 

「海外!?初めて聞いたな」

巴は相当驚いていた。

 

「そりゃお前、今まで話した事なかったからな・・・別に俺も聞かれればある程度は答えるさ」

「海外!なんかカッコいい!」

あこは何故だかテンション上がっていた。

 

「ま、英語はそんな達者じゃないけど」

「って事は竜二はハーフなのか?」

ああそうか。確かに普通はそう考えるよな。

 

「いや、れっきとした日本人だぞ。小さい頃に海外に引っ越したんだ」

「じゃあじゃあ!どうして日本に帰って来ることになったんですかっ?」

 

・・・理由か

 

「・・・・・・ルミ、あ、いや!まぁ家族の意向だよ!俺を日本の学校に通わせたいとかなんとか言われてな」

「・・・・・・・・・」

流石に今のはまずかったか・・・

 

「そうだったんだ!ならあこ達は竜二さんの家族に感謝しないとですねっ」

「・・・そうだな。俺も感謝してる」

こうして話もひと段落ついたとこで、丁度みんなご飯を食べ終えた。

 

「ごちそうさま〜!」

「俺もごちそうさま。巴サンキュー!めっちゃ上手かった。食器洗うの手伝うよ」

あこに続いて俺も手を合わせてから巴に言った。

 

「そうか・・・?なら手伝ってもらおうかな」

俺の真意を読み取ってくれたのか、巴は断らなかった。

「じゃああこは待機してますっ」

 

・・・・・・・・・

 

俺は巴と台所に来て食器を洗っていた。

 

「巴・・・さっきの話・・・気づいてたろ?」

「・・・まあな。あこの手前、あんまり追求はしない方がいいだろうと思ってさ」

やっぱりな。あんな誤魔化し方したら流石に気付くよな。

 

「俺もせっかくの楽しい空気を悪くするのは嫌だったからさ」

「でも話しにくい事なんだろ?無理に話さなくてもいいって」

「いや、巴なら別に構わない。一人一人に言うのも大変だから、折を見て蘭たちにも伝えといてくれると助かる」

あんまり何回も話したい話じゃないしな。

 

「・・・わかった」

巴は納得してくれた。

 

 

「・・・実は俺さ・・・・海外では学校に通ってなかったんだ」

「え・・・そうなのか?・・・でもどうしてなんだ・・・?」

「・・・俺は孤児でな。小さい頃に孤児院から引き取られて、海外で仕事の手伝いをしてたんだ。そして、・・・しばらくしてから今度はたまたま海外に来てた朝倉家の人に引き取られた」

「・・・ちょっと待ってくれ・・・色々衝撃的すぎて・・・頭がついていかない」

どうやら巴は相当ショックだったのか。

頭を抱えていた。

 

 

「だろうな・・・まあでも、結論から言うと俺を引き取った朝倉家の人が俺をきちんと日本の学校に通わせてやりたかったってことだよ」

 

「・・・・・・」

俺の軽口とは裏腹に巴は複雑な表情をしていた。

 

「巴・・・衝撃的なのはわかるが、あんまり気にすんなよ・・・?」

「馬鹿っ。そんなの気にするだろっ・・・竜二がそんな大変な生活送ってたなんて・・・」

「・・・巴?確かに俺は普通とは言えない生活をしてた。けど、それなりには楽しく生きてこれたつもりだ」

これは嘘じゃない。普通の学生生活とやらはよくわからんが、俺は俺で楽しく生きてこれた。

 

「っ!・・・でも!」

「いいんだ。こんな世間知らずの俺に普通に接してくれるお前らにはいつも助けられてた」

「・・・竜二・・・・・・」

巴は悲しそうな顔をしていたが、少しは安心してくれたみたいだ。

 

「・・・そろそろ話してもいい頃だと思ったんだ。巴ならAfterglowの中でも一番こう言う話はしやすいからな」

 

俺のそんな言葉に巴は少し苦笑いしていた。

「それはそれで複雑なんだけどな・・・でも、一番最初に話してくれてありがとな?」

「何言ってんだ。礼を言うなら俺の方だ」

 

「はあ、でも・・・こんな話蘭たちにどうやって話せばいいんだか・・・」

「・・・巴すまんな。面倒ごとを押し付けちまって」

 

「・・・いや、竜二が頼み事なんて滅多にない事だし、なんとかアタシから話しておくから安心してくれ」

巴は俺にそう言った。

 

「・・・巴・・・ありがとう」

「・・・いいって。困った時はお互いさまだろ・・・?アタシ達だって竜二にはいつも助けられてるしさ」

「巴は本当いい奴だな」

「ははは・・・!竜二がそれを言うか〜!?」

「なんだよ?なんか変なこと言ったか?」

「・・・なんでもないよ」

しばらく沈黙があった。

 

・・・・・・

 

「でも、アタシ達がこうしてみんなで居られるのも朝倉家の人たちのお陰なんだな・・・」

「・・・そうだな」

「・・・竜二?あの日あの時に転校して来てくれてほんとにありがとな」

「・・・やめろって、なんか今更蒸し返されると恥ずかしい・・・」

改まって言われるとなんか気恥ずかしい。

 

「ったく。こっちが素直に感謝してるのにさ」

「・・・そう言うのはいいさ。いつも通りで頼むよ」

「いつも通り、か・・・わかったよ」

 

・・・・・・・・・

 

「さてと、洗い物も終わったしあこのとこにでも行ってやろうぜ」

「ああ。そうだなっ」

 

俺たちはあこのいるリビングに戻る事にした。




誤字があったら修正します!


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竜二編2. 今までの自分、これからの自分。

バンドリのキャラは出てきませんのでご了承ください。


俺がルミナと隆三さんと出会ってから1ヶ月が経った。

今日になってようやく俺はルミナの歌と演奏を聴くことが出来た。

俺が知らなかっただけで、ルミナはどうやら世界的なアーティストだったみたいだ。

なのにもかかわらず、事務所には所属していないらしい。

それなのに世界的に評価されているアーティストだった。

 

「ルミナ!お前・・・すげえな。初めて聴いたけど感動したぞ」

無事コンサートも終わって、俺はルミナを楽屋に迎えに来ていた。

 

「当然ですわ!もっと褒めてもいいんですのよっ!?」

相変わらずですわ!口調で少しバカっぽいが演奏と歌は誰もが引き込まれる程素晴らしかった。

 

「まさかお前の歌と演奏にここまで感動させられるとはな」

「言い方が引っかかりますわね・・・」

ルミナは少しだけ何か言いたそうにしていた。

 

「まあ・・・?わたくしは天才ですのでっ!・・・・・・って、それより竜二?貴方もせっかくなのですから、なにか楽器に触れなさい。なんなら・・・わたくしが教えて差し上げますわよ?」

少し誇らしげにしていた。

まあ確かに天才と自分で言えるだけとモノを持っているからな。

 

「でもなぁ、あのピアノとバイオリン見せられたらなぁ。」

あんなん見せられたらいきなりピアノやバイオリンをやろうとは思えんだろ!

 

「煮え切りませんわね・・・・・・」

ルミナは少し呆れていた。

 

「んなこと言っても、今まで音楽にまったく触れて来なかったんだからしゃーないだろ」

「そうですわね・・・、ならまずは明日わたくしと一緒に楽器屋にでも行ってみるのもいいかもしれませんわね?」

 

「楽器屋か、行ったことないし少し興味あるかもな」

「じゃあ明日一緒に行きますわよっ」

ルミナは嬉しそうに答えた。

 

コンサートからホテルに帰宅した。

 

そして次の日の昼頃にとある楽器屋に来ていた。

 

どれも馬鹿みたいに高いな。

俺なんかがこんなもん買ってもらってもいいのか・・・?

 

「どう?何か気になる楽器はありまして?」

「うーむ、なんかどれも俺が弾いてるのを全然想像出来んな・・・」

俺は色々な楽器を見ていた。

ピアノ、バイオリン、サックス、フルート、他にも色々あったが、どれも自分が演奏しているところが想像出来なかった。

 

「ん?ルミナ、あれなんてどうよ?」

俺は小ケースに入っている楽器に少しだけ目を奪われていた。

 

「どれどれ・・・って、エレキギターじゃないっ!もっとこう・・・優雅な・・・朝倉家にふさわしい楽器を選んで欲しいのですけれど?!」

「だってカッコいいじゃん!それに俺に似合う楽器だとあれくらいしかなくね?」

ルミナの言いたいこともわかる。

けど俺にはこういう楽器の方が似合うと思った。

 

「はぁ・・・まあ、確かに竜二には似合いますわね・・・」

ルミナは少し呆れていた。

 

「ならこれで決まりだ!」

「仕方ありませんわね・・・。竜二!?やるからには全力でやるんですのよ!?いいですわね・・・?」

少し呆れていたけど、なんとか納得してくれてみたいだ。

 

「わかってるよ・・・ルミナの演奏を見て色々勉強させてもらうよ。」

俺は音楽には全然触れてこなかったから、ルミナの演奏以外はほとんど聞いたことがない。

 

「良いですわっ。いつかわたくしのような演奏を聴かせてくれるのを楽しみにしてますわよ?」

「ハードル高いなっ!?・・・まあなんとか頑張るよ・・・」

ったく・・・簡単に言いやがって。この天才さんは。

 

「ええ。それならあのギターを買ってきますので、待っててくれるかしら?」

「ありがとう。いつか必ず金は返すよ」

いつまでもルミナのヒモになってるわけにはいかないからな!!

 

「家族に買ってあげるのですから気にしなくていいですわ・・・気にするなら演奏で返してくれればいいんですのよ・・・?」

 

「わかった。必ず演奏で返すよ・・・」

きっと、ルミナにとっては演奏で返すというのは気を使って言ってくれたんだろう。

けど、俺は本気でルミナを感動させられる演奏をしてやろうと少しずつ思い始めていた。

 

こうして俺たちはしばらく買い物をしてからホテルに戻ってきていた。

夜寝る前にルミナが部屋に訪ねてきたから、椅子に座って少し話しをていた。

 

「なんだかんだで竜二も朝倉家の一員らしくなってきましたわね」

ふとルミナはそんな事を言った。

 

「そうか・・・?でもまあ、ルミナには感謝してるよ。でも俺って役に立ってるのか・・・?」

今のところ名目上は隆三さんが仕事で不在の時のルミナの護衛みたいな事をしているが、実際はヒモみたいなもんだし。

 

「そんなことはどうでもいいんですのよ・・・それに、一緒にいてくれるだけでも十分役に立ってますわ」

少しだけ優しく微笑んで俺にそう言った。

 

「ルミナがそう言うならいいけどな・・・」

「ええ。貴方はきっと誰よりも優しい人・・・ですのでわたくしが立派な人間にして差し上げますわ・・・」

ルミナはたまにこんな事を口にする。

俺を立派な人間にしたいんだとかなんとか。

 

「立派な人間か・・・俺にはお前の考える事がわかんねえな・・・けど、いつかわかる日が来るといいと思ってるよ・・・」

実際俺には、ルミナは眩しかった。

何故そんな生き方が出来るのかまったくわからなかった。

けどそんな生き方に惹かれ始めている自分も居た。

だからこそ音楽に触れて少しでもルミナの事を理解したいと思っていた。

 

「いつかきっとわかる日が来ますわよ・・・。竜二は手始めに何か大きな夢を持ってみるといいと思いますわよ・・・?」

「夢・・・か。夢かはわからんが、ルミナ達としばらく居て俺も音楽で誰かを感動させられるようになれたらいいなとは思うようにはなったよ」

俺は今まで自分の事しか考えてなかったが、ルミナの音楽を聴いて、感動し、少し憧れた。

 

「ならそうなりなさい。せっかくわたくしがギターを買ってあげたのですから、有名なギタリストになってわたくしのようにステージに立ちなさい」

ルミナはどうやら俺に自分と同じくらいのアーティストになって欲しいみたいだ。

 

「道は険しそうだなー」

「時間はたくさんありますわよ?」

確かに時間は腐るほどあるな。

 

「そうだな。さっそく明日から猛特訓するか」

「わたくしは天才ですので!なんでも聞いてくださって構いませんわよ?」

ほんと相変わらずだな。いつか俺の演奏で驚かせてやりたいもんだ。

 

「なら色々教えてもらうよ。あ、それと・・・いくらお嬢様でも普通はですわ!って日本語は使わないからな?」

「ですわっ!?」

相当驚いていた。

きっと間違った覚え方をしたんだろうな。

 

「誰に教わったか知らねえけど、アホっぽく聞こえるぞ」

「なんですって!?まさかこのわたくしが日本語の使い方を間違えていたなんて・・・!」

「まあ今更治らないと思うけどな」

むしろ言葉使いが変わったらルミナっぽくないからそのままの方がいい。

 

「朝倉ルミナ一生の不覚ですわ!!」

「まあこんなアホっぽい奴でもあんな歌が歌えるんだから世の中わかんねえよな」

「ちょっと竜二!?酷いですわよ!」

「はははっ!」

 

「まったく!貴方そんなんじゃ友達出来ませんわよ!」

「お前な!海外で言葉もわかんねーのにどうやって友達を作ればいいんだよ!それにお前も友達いねーだろ!」

俺は今まで年の近いやつと出会うこともほとんどなかったんだ。それにルミナも隆三さん以外とは交流がない。

 

「り、竜二!?い、言ってはいけない事を言いましたわね!?」

「ってかお前って学校とか通ってなかったのかよ?」

「もちろん通っていた時期もありましたわ!今はアーティストとして世界を回っているのだからしょうがないんですのよ!」

少し言い訳っぽく聞こえたが、学校に通ってた時は流石に友達はいただろう。

 

「なんだよ・・・お前学校通ってたのか」

「こう見えても主席でしたのよ」

「それってすごいのか・・・?俺にはよくわからん」

学校に通ってない俺からしたらどのくらいすごい事なのかも全然わからない。

 

「竜二・・・?一年後にわたくしは日本に行こうと思ってますの」

「日本か・・・懐かしいな」

ルミナはイギリス育ちだが、日本には少しいたことがあるらしい。

 

「日本で・・・貴方は学校に通いなさい」

いきなりルミナはそんな事を言った。

 

「は?学校・・・?無理だろ!一年後って事は俺は戸籍上18歳だろ?ったく何言ってんだか・・・」

ルミナが作った俺の戸籍は今は17歳という事になっている。

 

「そんなのわたくしの力でどうとでもなりますわっ。とにかく!絶対に通ってもらいますわ!」

「おいおい・・・まじかよ。学校とかいいよ別に今更」

俺は別に勉強は自主的にできるし、そこまでして通う必要はないと思っている。

 

「だ・めですわ!竜二には学校でちゃんと友達を作って普通の生活を送ってもらいますわ」

「待てって!さすがに顔つきでバレるだろ!」

 

「竜二・・・気づいていませんの?意外と貴方は可愛い顔をしているんですのよ?きっと3.4歳くらいは誤魔化せますわ!なので一年後には中学の三年生から転入させます」

 

「なんで中学生なんだよ!高校じゃだめなのかよ!」

「竜二にいきなり高校はハードルが高すぎますわ!まずは中学で友達作りから覚えなさい!」

ナンテコッタ・・・もはや何言っても無駄だな。

 

「おま!無茶苦茶だな・・・。ルミナはどうすんだよ」

「安心なさい・・・?わたくしも音楽活動が落ち着いたら竜二と同じ学校に通いますわ」

どうやらルミナも俺と同じように戸籍を誤魔化して通う気満々らしい。

 

「そうか・・・。まあルミナには逆らえねーししょうがないか・・・」

世話になってるし、なにより一度言い出すと頑固だからなぁ。

 

「まずはギターを覚えなさい!そして一年後には学校に通いながら友達も作り、日本でトップのギタリストを目指すんですのよ?」

ルミナが当たり前のように言うもんだから、俺も少しだけそんな夢を持つようになっていた。

 

「へいへい。せっかく拾ってもらったわけだし、俺もルミナみたいなアーティストになれるように頑張るよ」

 

こうして俺はギタリストとしての第一歩を踏み出した。




竜二編はまた少し違った雰囲気が出てればなと思っております。
いつも見てくださってる方々ありがとうございます!

誤字を見つけたら即修正します!


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21. ごくごく平凡な休日。

お久しぶりです。やっと久々に続きを投稿できると言う喜び!
仕事も落ちついたので投稿ペースが戻れる事を祈ってます。


今日は休日でバイトもないから花音と美咲に誘われて、俺のおすすめで羽沢珈琲店に行くところだ。

 

俺たちは目的地に向かうために商店街を歩いていた。

「二人と出かけるのって初めてじゃね?」

「確かにいつもはこころ達も一緒ですからね」

美咲が俺に言った。

 

「まあ花音と美咲だったらなんの不安もなさそうだな」

この二人なら今日はのんびり過ごせそうだ。

 

「三バカを連れてくると、色々面倒な事になりかねないですからね・・・」

美咲が苦笑いしながらそんな事を言った。

 

「二人とも苦労してるのなー」

ハロハピの活動もあるから常に一緒にいるんだもんな。

 

「わ、私は大丈夫だけど!美咲ちゃんはすごく大変そうだよね・・・」

花音が心配そうにしている。

まあ美咲の苦労を唯一メンバー内でわかってやれる存在だからな。

 

「いや、なんかもう花音さんにそう言って貰えるだけでなんとか頑張れそうですよ」

美咲も美咲で花音にはだいぶ助けられてるだろうしな。

 

「俺はまだミッシェルの事バレてないのは逆に凄いと思うけどな」

「あー、はは・・・。いい加減気付いてくれないかなぁ」

美咲は心底ぐったりしていた。

 

そんな美咲を見た花音が、

「も、もしかしたらもう何をしても気付かれないんじゃないかな・・・?」

「なんか、ハロハピ内だと隠さなきゃいけない空気みたいになってるんですよねー・・・」

美咲は少しバツが悪そうに俺と花音に向かってそう言った。

 

「花音にしか気付かれないってのは逆にすごいな」

「花音さんにはほんといつも助けられてますよ」

美咲は花音に対してはかなり柔らい印象がある。

俺も人のこと言えないが。

 

「美咲ちゃんの苦労に比べたら私なんて全然だよ!」

花音は花音で美咲には必要以上に過保護になる気がする。

 

「こころって変なところに鋭いのに、こういう所は鈍感だよなぁ」

「あ、それわかります。こころはたまに物事の確信を突くような事言いますよね」

どうやら美咲も同意見みたいだ。

 

「あいつは頭がいいんだか悪いんだか・・・」

「竜二くんも色々と大変そうだね・・・」

俺が頭を抱えていたら花音に心配されてしまった。

 

「まあ美咲の苦労に比べたらたいしたことはない。それよりこの前はライブまでに新曲、何とか間に合ったな」

俺は少し前に新曲作るの手伝ったのを思い出していた。

 

「その節はほんとーにっ!助かりました・・・」

美咲は相当感謝してるっぽいな。

 

「気にしなくてもいいって、二人とこうして休日に出かけれるだけでお釣りが出るってもんだ!」

 

「そ、そうかな?たまには竜二くんもゆっくり休んだ方がいいと思って」

なぜだかわからんが花音が少し顔を赤らめていた。

 

「気を遣ってくれてありがとな。二人とも」

「いえいえー、気にしないでくださいよ。いつものお礼ですから」

まあ美咲がそう言うならいいか。

 

「そうか・・・。そう言えば前から聞きたかったんだけどさ、美咲はお客さんに自分の事をミッシェルとしてじゃなくて美咲として見てほしいと思わないのか?」

美咲は普通に考えれば女の子がDJをやってるしかなり注目を浴びそうな気がするのに。

 

「わ、私ですかっ?うーん。みんな個性ありすぎて私なんかには着ぐるみでちょうどいいと言うかなんというか・・・」

美咲は俺にそう答えた。

 

「・・・?美咲はハロハピの中でも別に見劣りしないくらい容姿は整ってると思うが?」

俺は五人で並んでても特に違和感なく溶け込めると思ってるんだけどな。

 

「そそ、そんなことないですよっ!何言ってるんですか竜二さんっ!」

何故だか少し恥ずかしそうにしていた。

 

「え?俺なんかおかしなこと言ったか花音?」

俺は美咲の反応が良くわからなかったから花音に問いかけてみる事にした。

 

「ううん・・・私も美咲ちゃんはとっても可愛いと思ってるからきっとたくさんファンが出来ると思うな」

良かった。花音も俺の言ってる事に賛成してくれたみたいだ。

 

「か、花音さんまで!?」

美咲はかなり驚いていた。あんまり自分の用紙を褒められ慣れてないんだろう。

 

「ほらほら、花音もこう言ってるんだしさ〜」

俺は少し冗談っぽく美咲に言ってやった。

 

「わ、わかりましたよ。まあ百歩譲って、わ、私の容姿が整ってるとしてですね・・・・・・、それでもやっぱり、今のままでいいかなって思います」

美咲は最初は不服そうにしていたが、最後の方は少し考えて真面目に答えてくれた。

 

「美咲ちゃん・・・・・・」

花音は少し複雑な顔をしていた。

 

「薫さんはわかんないですけど、こころとはぐみにはこのままの方がいいかなと思って」

美咲は少し困り顔で俺と花音にそんな事を言った。

 

「二人の夢を壊したくないって事か・・・?」

「ま、まあそうですね。それに・・・竜二さんと花音さんは私の事を一番に理解してくれてるので、今はそれで十分ですよ」

美咲のこう言うところは俺は少し似ているところがあるのかも知れないと思った。

決心は固いみたいだったから俺と花音はこれ以上追求しないことにした。

 

「そうか・・・。美咲がそう言うならいいんだけどさ」

「美咲ちゃん・・・!私に出来る事は何でも手伝うからね!何でも言ってねっ」

どうやら花音は美咲を全力でサポートしていこうと決心したみたいだ。

 

「もちろんですよ。私にはほんと!お二人だけが頼りなんで・・・!」

美咲があえて冗談っぽく答えた。本人も気を使われるのは苦手なんだろう。

 

そうこうしてようやく羽沢珈琲店にたどり着いた。

 

「着いたぞ!ここが俺のおすすめのゆっくり出来る最高の場所だぜ!」

ん?なんだか反応が悪いな。

せっかくおすすめの場所を教えてやったと言うのに!

 

「・・・ここって、羽沢珈琲店ですよね・・・?」

美咲が少し気まずそうに言った。

 

「な、なんだよ・・・?二人とももしかして知ってんのか」

「・・・うん。多分竜二くんの知り合いはみんな知ってると思うな・・・」

そうなのか!つぐの店ってそんな知名度あったのかよ!

 

「まじか・・・てっきり知らないと思ってた。せっかく張り切ってつれて来たのに・・・」

「竜二さん・・・この街に住んでる人ならだいたいの人は知ってますよ・・・?」

美咲やめて!俺の無知が晒されることになるから!

 

「なんてこった・・・・・・」

俺は膝から崩れ落ちた。

 

「り、竜二くん元気出して・・・?」

花音が俺の肩を叩いて慰めてくれている。

くっ!花音の優しさが辛い!

 

「まあいいさ!気を取り直して入るとしよう!」

茶番を終えて俺たちは店に入ることにした。

 

ガラガラ〜

 

「いらっしゃいませ〜!あ、竜二くんっ!あと花音先輩と美咲ちゃんも!」

今日はつぐも家の手伝いをしてるみたいだ。

 

「つぐ今日も頑張ってんな。今日は三人でしばらくのんびりさせてもらうよ」

「うん!三人ともゆっくりしていってね!」

 

俺たちはつぐに席に案内されてから ひとまず注文を頼んでのんびり満喫していた。

ちなみに席は俺の向かいの席に花音、その横に美咲という感じだ。

 

「はー!やっぱここは落ち着くなー」

「竜二くんは良くここに来るんだ」

花音が俺に聞いてきた。

 

「まあな。最近は休日とか仕事終わりとかに良く来るぞ」

でも何故かあまり知り合いには会わないんだよな。

 

「じゃあもしかしたらたまに会うかもしれませんね」

俺は美咲と花音とのやりとりを思い出していた。

 

「そっか・・・花音と美咲も良くここに来るんだもんな」

「竜二くん珈琲好きだもんね」

そう。俺は珈琲をこよなく愛している。

 

「さすが花音!よく知ってらっしゃる」

「彩ちゃんと三人でバイトしてた時いつもバイト終わって珈琲飲んでたから」

懐かしいな。今思えばここまで仲良くなるとは思わなかった。

 

「え!花音さんと竜二さんってバイト一緒にしてたんですかっ!?」

美咲が心底驚いていた。知らなかったらしい。

 

「あれ?美咲に言ってなかったのか花音?」

「そう言えば言ってなかったような・・・?あんまり話すタイミングがなかったからかな・・・?」

花音と美咲はお互いに知らない事も結構あるみたいだ。

 

「よくよく考えたら、花音さんがここまで普通に話せる男の人って竜二さんくらいでしたね」

美咲がしみじみとそんな事を言った。

 

「え!そうなのか?俺はそれが驚きだよ!花音学校だと男子にモテモテなんじゃないの!?」

花音みたいな大人しめな子は学校だとモテそうなイメージあるんだけどな。

 

「ふえぇ!そんなことないよ!告白とか一度もされた事ないし、男の人とあんまり話さないから・・・」

花音がそう言うが、俺はにわかには信じられなかった。

 

「花音さんの場合、きっと可愛いから男子も緊張して声かけられないだけだと思いますよ」

なるほど、そう言うことなら納得だ。

 

「み、美咲ちゃんまで!?」

「ほほう!美咲いいこと言うじゃないか」

花音みたいなタイプは逆に声掛けにくいのかも知れん。

 

「そ、そんなことないと思うけどな・・・」

花音は少し恥ずかしそうにしていた。

 

「まあでも実際男子がめっちゃ少ないだろ?だから女子には関わりずらいんじゃないか?」

確か花咲川高校は共学化したばっかりだったから、俺がいた時も男は少なかったような気がする。

 

「たしかにそれはありますね。あんまり女子と話してる男子見たことないですし」

この様子だと美咲もあまり男子との交流はないみたいだ。

 

「つまり普通の学校だったらモテモテって事だな」

何故か花音って反応がいちいち可愛いからかいたくなるんだよな。

 

「り、竜二くん。あんまりからかわないで・・・」

花音は少し頬を赤らめていた。

 

「ははは!花音は可愛いなあ!」

「あれ?花音さん。顔が真っ赤ですよー?」

ここぞとばかりに美咲も乗って来たな。

 

「ふえぇ。二人とも絶対面白がってるよね・・・?」

花音は頬を赤くしたまま少しだけ恨めしそうにしていた。

 

「いやでも本心だしな」

「そんな花音さんも今はある人に夢中ですもんね・・・?」

いきなり美咲がそんな事を言った。

 

「み、美咲ちゃん!?」

花音にしては珍しくかなり動揺していた。

 

「え!なんだよ花音!好きな人がいるのか!?青春してんなー!」

まさか花音に好きな人がいたとは、流石に俺も驚いた。

 

「あー、はは・・・。竜二さんもこころの事言えないくらい鈍感ですよ」

美咲は少し呆れた顔で俺にそう言った。

 

「ん・・・俺?なんかおかしかったか・・・?」

「はあ・・・花音さん・・・道は険しそうですねー」

美咲はため息をついてから花音にそう言った。

 

「ち、違うからね!?美咲ちゃん!!」

花音は否定しているようだった。

 

「なんだよ?二人だけで盛り上がりやがって」

「いやほんと、花音さんは私の心の癒しです」

まあ花音があたふたしてるのを見て癒されるのは俺と同じだけどな。

 

「み、美咲ちゃんだって竜二くんの事・・・」

花音が少し含みのある言い方で美咲に言った。

 

「わ、私ですか!?な、何言ってるんですか花音さん!そんな訳ないじゃないですかー!」

なんのことだかよくわからんが俺の事と関係あるっぽい。

 

「ん?美咲俺になんかあるのか?」

「な、何もありませんよ何も!あーははー」

なんか誤魔化されたような気がするな。

 

「気になるなー。まあいいか」

「そ、そんなことより!竜二さんは恋人とか欲しくないんですか?!」

美咲は触れられたくない話題だったのか、露骨に話を逸らした。

 

「俺か?正直言って恋とか本当に俺わかんないんだよな」

俺は今まで特別誰かを好きになった事はないし、それがどう言う感情なのかも良くわかってない。

 

「竜二くんは今まで誰かを好きになった事がなかったのかな?」

花音が少し不思議そうにしていた。

 

「うーん。だって普通の好きとは違うんだろ?」

普通に好きなやつならたくさんいるんだけどな。

 

「そうですねー。ずっと一緒に居たいと思う人とか、そんな感じかもしれませんね」

ずっと一緒に居たい人か・・・。

あれ?でもそれって・・・。

 

「・・・?お前らとはずっと一緒に居たいと思ってるぞ」

他にも蘭たち、香澄たち、友希那たちとか。

 

「そ、そうなんだ・・・」

「そ、そう言う事じゃなくてですね・・・」

何故だか二人して赤くなっていた。

 

「なぜそんな赤くなる・・・」

「り、竜二くんはもし知り合いの女の子に告白とかされたらどう返事するの?」

花音はいきなりそんな事を聞いて来た。

 

「うーん。んなこと考えた事もねえな。それに、今は彼女が欲しいとかは全くないんだ」

告白されたらかぁ。そんなこと起こるのか?

 

「確かに竜二さん。今は忙しそうですもんね・・・」

美咲の言うようにあんまり恋愛について考えてる程余裕があるわけじゃないからな。

 

「それもあるかな・・・まあ自分の中で色々片付いたらそういう事も真面目に考えるよ」

 

そうこう話していたらつぐが来て注文した物を持って来てくれた。

 

「お、シナモントーストが来た。俺これめっちゃ好きなんだよな」

ここのシナモントーストなら週七で食えるわ。

 

「竜二さん甘いもの好きだったんですね。少し意外です」

そういえばあんまりみんなの前で食べることなかったからな。驚くのも無理はないか。

 

「おうとも!やっぱ世の中色気より食い気だと俺は思う」

「あはは。なんですかそれ」

美咲は可笑しそうにしていた。

 

「まあまあ。んなことよりせっかくおすすめしたんだから食べろよー。花音も食うか?」

二人はシナモントーストを食べたことがなかったから俺が勧めた。

 

「うんっ。じゃあ一口だけ貰おうかな」

「よし!俺が直々に食わしてやる。口を開けろ花音」

俺は一口サイズで切って花音の口にフォークを向ける。

 

「ふえぇ!?い、いいよ!自分で食べれるから!」

何故だろう。否定されると意地でも食べさせてやりたくなるんだよな。

 

「花音さん!せっかくなんですから食べさせてもらったらいいじゃないですかー」

美咲が少し面白そうにしていた。

 

「み、美咲ちゃん!?絶対面白がってるよね!?」

「せっかくのチャンスじゃないですか・・・」

俺には聞こえない声で花音に何か言っているようだった。

 

「まあまあ。とりあえず食えよ!はい。あーん」

俺は有無を言わせず花音の口に運ぼうとしていた。

 

「うー・・・あ、あーん」

「どうだ!美味しいだろ?」

「恥ずかしくて全然味がわからなかったよぉ・・・」

花音は顔を真っ赤にしていた。

どうやら味がわからんかったようだ。

 

「ならもう一口食うか?」

俺は再度花音の口にフォークを向けて言った。

 

「ふえぇ!?わ、私はもう大丈夫だから美咲ちゃんに食べさせてあげたらどうかな!?」

花音は美咲も道連れにしようとしているみたいだった。

 

「か、花音さん!?何言ってるんですか!?」

花音の言葉にかなり動揺していた。

 

「美咲ちゃんも食べさせてもらった方がいいと思うなー。あは・・は」

花音は美咲から目をそらしながらそう言った。

 

「もとからそのつもりだ。ほら美咲!あーんしろ!」

せっかくだから美咲にもシナモントーストを食べさせてやろうと思ってたからな。

 

「も、もう!わ、わかりましたよ!あ、あーん」

なんとか納得してくれたみたいだ。

 

「どうだ!美味しいだろ?」

「美咲ちゃん顔真っ赤だけど大丈夫・・・?」

花音と同じようにかなり真っ赤になっていた。

 

「こんなんで味なんてわかるかぁぁぁ!!」

やべ。美咲がキレた!さすがにやりすぎたか!

 

「わ、悪かったよ!あとは二人で普通に食ってくれ」

俺は素直に謝る事にした。

 

「まったく。こんな事ばかりしてるからみんな勘違いしちゃうんですよ」

美咲がなにやら言いたそうだった。

 

「・・・勘違いとは?」

「えっとですね。私が思うに竜二さんの事を好きな人きっとたくさんいますよー」

なん・・・だと。

 

「ええ!?まじかよ!誰だ!?教えてください!」

「いや、確証はないんで適当な事言えないんですけどね」

どうやら誰かは教えてくれないらしい。

 

「俺なんてモテたこと一度もないからそんな事は信じんけどな!」

俺はそんな言葉で惑わされんぞ!

 

「り、竜二くん凄い色々な人に好かれてると思うんだけどな・・・」

花音も美咲と同じような事を言った。

 

「えー?じゃあ俺のモテる要素ってどこだよー。そこまで言うなら教えてくれよ!花音」

そこまで言うからにはあるんだろうな?

 

「そんなのいっぱいあるよ?」

まさか即答とは!

 

「そ、そうか?たとえば?」

「いつもみんなを気にかけてくれてるところとか、誰かのためには怒れるところとか・・・」

「そ、そんなん花音と美咲も一緒じゃねーかな?」

なんかいきなり褒められると気恥ずかしくなってくるな。

 

「全然ちがいますよ。それに竜二さんとは長く一緒に居ればいるほど後から助けられた事に気付くことが多いんですよね」

「美咲ちゃんの言う通りだよ・・・?竜二くんは隠すの上手だから」

おいおい。まさか二人がこんなに鋭かったとは。

 

「べ、別に俺は普通にしてるだけどなー」

「竜二くんの行動一つ一つに優しさがあるって今はわかるんだよ・・・?」

花音は少し真面目に俺に言った。

 

「竜二さんは影で色々してる事を悟られないようにしてるつもりでも、長く一緒に居ればわかるようにもなりますよ」

しまった!こんなに恥ずかしいならこの話をするべきじゃなかった!

 

「な、なんこことだか知らねーな」

「なんで竜二さんは助けてくれてる事を隠そうとするんですか・・・?」

美咲が今度は真剣に俺に聞いて来た。

 

「・・・俺の身勝手で動いて色々してるだけだし、感謝されるのは変だろ」

俺も茶化さずに真面目に答えることにした。

 

「・・・そういうところが竜二くんが好かれる部分だと思うんだけどな・・・」

花音が少し微笑んでそう言った。

 

「そういうもんなのかね。俺には全くモテてる実感がないんだが!」

べ、別に彼女が欲しいとかじゃないけど!!

 

「それは竜二さんが鈍いだけかと」

「なんだとぅ!」

どう言うことなんだかわからんぞ。

 

「花音さんがカワイソウダナー」

「み、美咲ちゃん!?」

だからどう言うことなの!

 

「なんでそこで花音の名前がが出てくんだよ!」

「そこは花音さんに聞いてくださいっ」

くっ。美咲はどうあっても話す気はないらしい。

 

「おい花音!どういうことだ!今日は洗いざらい吐いてもらうぞ!」

俺は花音の両肩に手を置いて揺さぶりながら問いかける。

ここまで来たら本人に聞いてやる!

 

「ふえぇ!?誰か、誰か助けてぇぇぇ!」

花音とは裏腹に美咲が楽しそうにしていた。

まだまだ二人との休日は続いていく。




色々忙しくてなかなか投稿出来ていませんでしたが、基本的には仕事の合間にちょこちょこ書いているので、出来次第投稿していきます!


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過去編5 お嬢様との非日常。

こころメインの回です。
CiRCLEのアルバイト生活を書き始めの時に既に書いていた話です。
タイミング的にはここら辺かなと思って投稿しました!


 

俺は攫われたこころを助けに廃ビルに来ていた。

何故こんな事態になったかは後々説明しよう・・・

 

「はぁ・・・はぁ・・・間一髪だったな」

俺はこころを抱き抱えたまま安堵していた。

「竜二!」

こころが俺に呼びかけて来る。

 

「はぁ・・・無事かこころ?」

「私よりも竜二は大丈夫なの?!腕が血だらけじゃない!」

こころが少し慌てた声でそう言った。

俺は脆くなっていた天井が崩れて来て、咄嗟にこころを庇った時に怪我をしてしまったみたいだ。

 

「見た目より酷くないし、まー大丈夫だろ?このくらい」

実際にあまり深い傷ではなかったから大丈夫そうだ。

 

「本当に大丈夫なの!?早く病院に行かないと!」

こころは泣きそうになりながら心配そうにしていた。

 

「わかったから落ち付けって!後で黒服の人たちにでも連れてってもらうから」

「竜二がそう言うなら・・・わかったわ」

なんとか落ち着いてくれたみたいだな。

 

「こころを攫った奴は縛り付けておいたし、後は隆三さんに連絡してなんとかしてもらうから俺たちさっさとここから出よう!」

俺はさっきまでこころを狙っていた誘拐犯と一悶着あったわけだが、幸いにも怪我もなくなんとか出来たのは本当に幸運だったな。

 

 

「そうね!早く出ましょうっ」

そうして俺はこころを抱き抱えたまま廃ビルを出るために歩き出した。

 

「ごめんな?こころ。俺がもっとしっかりしてればこんな事態になる事にならなかったのにさ」

「どうして竜二が謝るの?助けてくれたのだから、お礼を言うのは私の方だわ」

何も事情を知らないこころは不思議そうにしていた。

 

「ありがとうっ!竜二」

「・・・本当に無事でよかったよ」

俺はこころが怪我一つせずに無事だったことに安堵した。

 

「でもやっぱり竜二は凄いわっ」

こころが目をキラキラさせてそんな事を言った。

 

「ん?なんだよいきなり」

「だって私、竜二なら絶対来てくれると思ってたもの!」

こころはこんな事態になったのにも関わらず、いつもの調子で俺に言った。

 

「お前は自分が危険な目に遭ったってのになんでそんな笑顔なんだよ・・・」

こころの精神は誘拐程度じゃ揺らがないんだな。

 

「そんなの当たり前よ?私、竜二が来てくれると思ってたから何も心配もしてなかったわ」

何故だかこころは俺のことをかなり信頼してるっぽい。

 

「よくそこまで俺の事を信じれるもんだな」

「・・・?当然よ?だって竜二はいつも私を助けてくれるじゃない?」

なんか俺がおかしなこと言ったみたいな感じになってる訳だが!

 

「それでも、ただの学生の俺がこんなところに助けに来て、殺されるとか思わなかったのか?相手は拳銃とか持ってたし」

隆三さんから聞いてたからよかったものの、何も知らなかったら流石に危なかったかもしれない。

 

「ううん。だって竜二は私のヒーローだもの!どんな時だって必ず助けてくれるわっ!」

こころはとても嬉しそうにそう言った。

 

「ったく、相変わらず大袈裟だなこころは」

こう言う所がこころの良いところでもあるけどな。

 

「う〜ん?竜二は私が入学してから今までいつも私を助けてくれたじゃない?・・・・・・今考えるとなんでなのかしら・・・?」

こころは不思議そうに首を傾げていた。

 

「ま、あまり深く考えるなよ」

「え〜!別に教えてくれてもいいじゃないっ!」

こころが少しだげ膨れた顔をしていた。

 

「別にいいだろ?理由なんてどうでも」

「そう?なら別の話にするわっ」

相変わらず切り替えが早くて助かる!

 

「そういえば昨日初めて知ったんだけど、竜二って香澄と仲が良かったのね。私知らなかったわ」

あ、そうか!香澄とこころって同じ年だしよく考えれば接点あるのが普通だよな。

 

「あー、そう言えば言ってなかったな。確かに香澄とは仲が良いぞ」

よくよく考えたら香澄とこころって絶対仲良くなれるだろうな。なんつーか、感性が似てると言うか・・・

 

「私はてっきり、竜二には友達が居ないと思ってたのに!」

「お前いきなり酷いな!!」

いきなりなんてこと言うのこの子は!

 

「だって、いつも大体私といたじゃない?」

こころは不思議そうにそう言った。

 

「確かに香澄たちとこころくらいしら話せる奴はいないけどな!?」

「香澄以外にも友達がいるの?」

失礼な奴だな!!

 

「なんだ?知らないのか?香澄が作ったバンドがあってそのメンバーとは仲が良いんだ」

「・・・?バンドって何かしら・・・?」

そうか、こころはバンドを知らなかったか。

とことん興味ないことには無関心だな。

 

「・・・そこから説明するのか。うーん。まぁグループで楽器演奏したり、歌ったりするみたいな・・・?」

少し適当になったが、まあこころにはこのくらいの説明の方がわかりやすいだろう。

 

「みんなで歌ったりするのね!すっごく楽しそうじゃない!」

どうやらバンドに興味を示してくれたらしい。

 

「そそ、だからその香澄がやってるバンドのメンバーとは仲が良いんだ」

「そうなのねっ。私もバンド?をやってみたいわっ」

こころがバンドをやってる姿があんまり想像出来んな。

それはそれで面白そうではあるが・・・

 

「ははは・・・じゃあ一人じゃ無理だな。学校で仲間見つけるといい」

こころには人を惹きつける魅力みたいなのがあるし、メンバーは見つかりそうな気がするな。

 

「メンバーなら竜二が居るじゃない?」

こころが俺の方を見るなりそんなことを言った。

 

「俺にはバンドやれるほどの時間がない」

本当は時間がない事もない。

けどせっかくだからこころが作るバンドってのにも興味があった。

 

「いつも私と居る時間はあるのに・・・?おかしいわ・・・」

「そ、そうだけど!とりあえず自分で探してみろよ。もし見つからなかったら手伝ってやるから!」

「そうねっ?まずは自分で探してみることにするわっ」

俺たちしばらくこころを抱えたまま出口に向かって歩いていた。

 

・・・・・・・・・

 

「ねえ竜二・・・」

こころが珍しく真剣な顔をしている。

 

「ん?どしたこころ?」

「なんでさっきの人は悪い事しようと思ったのかしら・・・?」

こころは少し悲しそうにしていた。

 

「どうして、だって世界には楽しいことがたくさんあるのに・・・」

いつも無邪気なこころも今回の件に思うところがあるらしい。

 

「・・・そうだな。こころが思うよりこの世界には悲しい事が多い、俺たちには見えないとこで誰かが苦しんだりしてるなんて事もある」

こころが真剣な眼差しで俺の答えを待っていたから、俺も真剣に答えた。

 

「でも竜二は私を助けてくれたじゃない!一緒にいる時はいつも笑顔をくれたし、私にとっては誰よりもヒーローよ?・・・なのになんで竜二がそんなに悲しそうな顔をするのよ・・・?」

そうか、俺は気がついたらそんなに辛そうな顔をしていたのか・・・

 

「こころには俺がそんな風に見えてたのか・・・けど俺はそんな大した人間でもないぞ?こころを助けれたのだって偶然知り合ったから出来た事だし」

「偶然なんて絶対に嘘よっ!私にだってそのぐらいわかるわ?」

俺は驚いた。こころがこんな風に大声で俺に意見する事が今までなかったからだ。

 

「まぁそう言うな。それに、俺も人を傷つけて来たことがたくさんある」

「竜二が?そんなの全然想像出来ないわ・・・」

こころは意外だったのか、少し難しい顔をしていた。

 

「でも事実だ・・・俺は運良く家族と呼べる大切な人達に出会ってたくさんの事を教えてもらったから今があるだけなんだ」

「・・・そうだったのね。じゃあその大切な人に出会って竜二は変わったのね・・・?」

こころは安心してくれたみたいだ。

 

「そうだ。だから、もしかしたら俺もこうなってたかも、なんて考えちまうとな・・・素直に喜べないのかもな」

多分こう言う生き方をして来た人は善悪のラインが曖昧になってしまっているんだろう。

俺も生きるために仕方ないと割り切って色々悪さをして来た。

だからこそ少しだけ自分に重ねてしまうのかもしれない。

 

「私にとって竜二は世界一格好いいヒーロー!きっと世界だって変えられるもの!誰がなんと言おうと私にとってはヒーローなのよ!」

こころは俺の辛そうな顔を見て、否定するように俺に言った。

 

「はは・・・サンキューな。でも俺は、本当に心から人を笑顔にできるのは俺のような人じゃないと思うんだよな」

「そんなことないわ!竜二はいつも私を笑顔にしてくれてるじゃないっ」

こころはこう言うが、俺に出来るのは側にいてやることくらいで他に出来る事も少ない。

 

「そうか?でも俺は俺の手の届く範囲内でしか助けれない。不器用だからな?色々な人を笑顔になんて俺には荷が重すぎる」

もっとたくさんの人を心から笑顔に出来るような人って言うのはきっと俺みたいな人間には無理だ。

 

・・・・・・・・・

 

「だからさ・・・お前なら出来るんじゃないか・・・?」

俺は唐突にこころに言う。

 

「え・・・」

こころは俺の言葉の意味が理解出来てないみたいだった。

 

「こころは本当に純粋な瞳をしてる。自分が大変な目にあったってのに俺のことやまだ知らない色々な人の事考えてる・・・」

俺にはこころほど、他人をここまで愛せる奴なんて知らない。

 

「そんなの普通よ?だって、みんなが笑顔なら私も笑顔になれるもの」

こう言う事を当たり前のように言ってのけるこころだからこそ出来るんじゃないかと俺は思う。

 

「そうだな。こころなら、俺みたいに不器用なやり方じゃなくてもっと純粋に色々な人たちを笑顔に出来るんじゃないかって思うんだ」

むしろこころにしか出来ないと思ってる。

 

「私が?竜二みたいになれるのかしら・・・?」

自信がないと言うよりは、想像出来ないのか、少し困り顔だった。

 

「俺みたいじゃなくて、こころならもっと色々な人を笑顔にできると思うぞ」

こころは否定するが俺もこころには沢山笑顔を貰ってる。

 

「こころの言うヒーローみたいなの目指してみたらいいんじゃないか?ま、無理しない程度にだけどな?」

こころは知り合った時からヒーローとか好きだったもんな。

 

「私がヒーローに・・・?私!なりたいわ!世界を笑顔にしたいもの!それに、竜二をもっと笑顔にしてあげたいもの!」

やっと理解が追いついたのか、とても嬉しそうに俺に答えてくれた。

 

「じゃあそれを夢にしてみたらいい・・・」

そして俺たちは無事廃ビルを出る事ができた。

近くに迎えに来てくれてる、黒服の人たちが駆けつけてくれた。

 

「こころ様!竜二様!大丈夫ですか!?」

「私は大丈夫よ!それよりも竜二が怪我をしているの!」

「見た目より軽症なんで大丈夫です。こころを頼みます。あと、もしよかったら俺を病院に連れて行ってくれると助かるんですが・・・」

深手じゃないとは言え、このまま血を流したまま家に帰れるはずもない。

 

「畏まりました!この度はこころ様の危機を救って頂き誠に感謝を申し上げます!本当にありがとうございます」

黒服の多分女性の人が俺にめっちゃ頭を下げてお礼を言ってきた。

 

「い、いいですよ!そんなに頭を下げないでください!とりあえず病院に連れてってくればそれで大丈夫です!」

「ありがとうございます!すぐに病院にお連れします!」

どうやらわかってくれたみたいだ。

こんなSPみたいな人に頭下げられるのもなんか心苦しい。

 

「竜二?明日はちゃんと学校を休むのよ?」

こころは車に乗るなりそんな事を言った。

 

「わかってるよ。それじゃこころ、また回復したら学校でな」

俺は窓越しにこころに答える。

 

「ええ!楽しみにしてるわ!竜二!また明日ねっ」

こころは黒服の人たちとそのまま車を乗って帰って行った。

俺も後ろに停めてあったもう一台の車に乗せてもらう事にした。

 

「竜二様、今回はこころさまの護衛のご依頼を受けて頂いて本当に感謝しています」

さっきの黒服の女性が運転しながら助手席の俺に再度お礼を言ってきた。

 

「いいですよ。隆三さんに依頼された仕事でしたし、それも今回ようやく犯人が捕まったんで無事終わりました」

つまりはこう言う事だ・・・

 

俺はもともと理由があって花咲川高校に通っていた。

その理由は俺がしている隆三さんのとこの仕事の関係で、今回は学校に潜入して弦巻こころの護衛をすると言う任務みたいなものだった。

学校にいる間でも危険が及ぶかもしれないとの事で潜入することになったわけだ。

弦巻家にも黒服を着ているSPみたいなのがいるが、今回は相手が結構危険な相手だったらしく、弦巻家から隆三さんに護衛の依頼が来たらしい。

 

そう言う訳でさっきのその仕事は無事完了したわけだ。

こころが入学してから数ヶ月、やっと張り詰めた空気から解放された。

 

「護衛以外にも色々とこころ様の面倒を見ていただいていたのでなんと感謝を申し上げたら良いか・・・」

「全然気にしなくてもいいですって!こころを世話したかったのは自分の意志ですし」

ちなみに仕事の事はこころには秘密にしている。

元々そう言う条件で仕事が来たからだ。

 

「ありがとうございます・・・!」

黒服の人が感謝しているのはそう言う理由でもある。

 

「あの、ひとつお伺いしても・・・?」

なにやら俺に聞きたい事があるみたいだ。

 

「はい。なんでも聞いてください」

「今回の一件が終わったら、竜二様は学校を辞めてしまわれるのでしょうか・・・?」

一応仕事も終わったから学校に通う理由もない。

隆三さんには通っても良いとは言われているが俺は少し迷っていた。

 

「・・・・・・・・・」

 

「もしよろしければ、年齢の事は口外しませんのでそのまま通って頂くことは出来ませんか・・・?このまま辞めてしまわれるとこころ様がきっと悲しむと思うので・・・」

この人の言う事はわかる。いきなり事情も言わずに辞めるとなると色々と悲しむ人も数人頭に浮かぶ。

 

「正直、ずっと通うかは約束は出来ません。けど、もし学校を辞めてもこころの事は助けてやりたいとは思っていますよ」

これが俺の正直な気持ちだった。

ずっと通うかは正直未だわからない。けどこころの事は助けてやりたいとは思っている。

 

「今はその言葉だけで十分です。竜二様、ありがとうございます」

なんとか納得してくれたみたいで俺も安堵した。

 

話していたら病院に着いたため、俺は一人で車を降りることにした。

 

「着きましたね。それじゃ、俺は怪我の手当てしてもらいます。車で待っていてください」

「はい。それでは駐車場でお待ちしていますので!お気をつけて」

 

そのまま俺は病院に入って行った。

香澄たちに会ったら怪我の事をどう言い訳しようかを考えながら・・・




ようやく投稿出来ました!
メインの話を1話進んでから1話過去編、たまに竜二編みたいな感じのストーリー形式で投稿していこうかと思っています!


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