【裏技】仮面ライダーポッピー (ぽかんむ)
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【裏技】仮面ライダーポッピー

 気がつくと私は、真っ暗闇の中にいた。どうして私はこんな場所にいるのだろうか。えっ? お前は誰だって? 私はドレミファビートのバグスター ポッピーピポパポ! でも今は明日那って呼んでね。

 話を元に戻そう。取り合えず私は、これまでの記憶を辿っていくことにした。

 

 一つづつ、記憶が蘇る。そういえば三人組のバンドが、ゲーム病で運ばれてたっけ。彼らは幻夢コーポレーションの、新作ゲームの主題歌のコンペに参加していた。だけど結果は落選に終わる。通達には、黎斗の後を継いだ新社長が直々にやって来た。たしか名前は天ヶ崎恋だったかな。

 

 そうだ! 私が彼に見つめられてから、記憶が途切れているんだった。

 ということは、私は彼に誘拐されたの? 

 

 思考を巡らせても、これといった答えは浮かばない。なので私は、ひとまず歩いてみることにした。そうすれば、なにかがわかるかもしれない。

 

 

「ここに出口なんてないよ!」

 

 

 どこかから声が聞こえる。それはなんと私自身の声だった。人間は自分と他人で、自分の声が違って聞こえる。だけどバグスターである私に、そんなことは起こらない。

 

 

「誰なの?」

 

「私はポッピーピポパポ! ドレミファビートのバグスターなの!」

 

 

 間違いない。この空間には、もう一人の私が潜んでるみたい。

 

 

「ここはどこなの?」

 

「ここはポッピーピポパポの体の中だよ。耳を澄ましてごらん、外からなにかが聴こえてくるかもよ」

 

 

 耳に全神経を集める。すると確かに、何かの音が三つも聞こえてきた。声の主は永夢と大我、それといつもより低い声の私だ。

 

 

「永夢と大我は誰と戦ってるの?」

 

「私だよ! こんな風にね」

 

 

 その瞬間、空間が眩しく輝いた。急な変化に対応できず、私は目を痛めてしまう。

 

 

トキメキクライシス!

 

 

「変身」

 

 

ガシャット! バグルアップ! ドリーミングガール コイノシミュレーション オトメハイツモ トキメキクライシス!

 

 

 ガシャットの起動音や、変身音声のようなものが流れる。目が使えないため、これだけが外界の様子を伝える要素だった。

 しばらくしてようやく、私は光に慣れてくる。私の目の前にいたのは、未知の仮面ライダーだった。腰には色違いのバグヴァイザーが巻かれており、初見のガシャットが差し込まれている。真っ赤な瞳が、悪性バグスターであることを示す。

 

 これらの装備は、例の新社長から渡されたのだろうか。いや、今は出所を考えてる場合じゃない。この状況を何とかしなきゃ!

 

 仮面ライダーから、生身で逃げきらなければならない。そのとき、私はそう思っていた。だけどその考えは無駄に終わる。

 ポッピーが私に、新型バグヴァイザーとピンクのガシャットとバグスターバックルを投げ渡したのだ。

 

 

「使いな! ワンサイドゲームじゃつまらないよ!」

 

 

 罠かもしれない。そう考えずにはいられなかった。だけどこれなしで、事態を打開できるとも思えない。私は一式を拾い上げた。それから、腰にバグスターバックルを取り付ける。

 

 

トキメキクライシス!

 

 

 ガシャットとバグヴァイザーを起動させた。バグヴァイザーから待機音が鳴り始める。私はその場で一回転したあと、お馴染みの掛け声を上げた。

 

 

「変身!」

 

 

 ガシャットをベルトに差し込み、スイッチを押す。

 

 

ガシャット! バグルアップ! ドリーミングガール コイノシミュレーション オトメハイツモ トキメキクライシス!

 

 

「私を切除する」

 

 

 私は走って近づいた。そして腰を大きく後ろに捻り、反動と共に腕を伸ばす。私はポッピー目掛けてパンチした。

 しかし、私の細腕は容易く受け止められる。ポッピーは私の拳を、左手で掴む。彼女が手を時計回りに捻ったのちに離す。すると私は、一回転して地面に落とされてしまった。

 

 私はドライバーを外し、右腕に取り付ける。そしてチェンソーモードでの攻撃を試みる。それを大振りに、縦や右斜め下に、何度も振り下ろした。けれどそれらは、ことごとく避けられる。左足を軸に素早く回られたり、高く飛び上がられたりして。

 

 そのままポッピーは、空中でバグヴァイザーを右手に取り付ける。さらに彼女が、高さをいかして打ち込んでくる。咄嗟のことに、私の頭は混乱した。避けようとするがそれも叶わず、私は左肩を切られる。

 

 地上に戻ってきた彼女が、私に何度も切りかかった。縦、右斜め、横……。私は何度も、それを武器で受け止めようとする。だけど激しい連打で、回避が追い付かない。

 彼女によって、天に突き上がるように、凪ぎ払らわれた。私は火花を散らしながら、後方に吹き飛ばされ、地を転がる。そのダメージ量は、私の変身を解除させるほどだった。

 

 パンチ力、キック力、走力、ジャンプ力、体格、頭脳、すべてにおいて同じはず。なのにどうして、こんなにも違いが現れるの?

 声に出さずとも、私の疑問に彼女は気づいたみたい。彼女が答える。

 

 

「当たり前でしょ。失敗作の良性バグスターなんかが、私に敵うわけないんだから!」

 

 

 つまり私に足りないものは、バグスターを切除するための覚悟ということか。私はこれまで一度も戦ってこなかった。いつも永夢や飛彩、大我や貴利矢に任せてきた。でも現在、彼らはいない。ならば私がやらなきゃ! 医者だとか看護師だとかそんなもの、今は関係ない。

 私は再び、バックルにバグヴァイザーをはめ込む。

 

 

「もう一度挑戦するの? いいよ! 何度でも相手になるよ!」

 

「これが最後よ……どういう結果に転んでもね。変身!」

 

 

オトメハイツモ トキメキクライシス!

 

 

 私はもう一度、仮面ライダーポッピーに変身した。バグヴァイザーを右腕にくっ付け、果敢に攻めこむ。私がチェンソーを、左斜め上から振り下ろす。

 彼女は自らの武器で、それを受け止めた。私が強引に力をいれると、守りが崩れる。私は切り裂いた後、がら空きの腹部を蹴り飛ばした。

 

 彼女は武器を、ビームモードに変形させる。そして光線を放った。攻撃が当たり、転ばされる。

 光線はやまない。私は彼女の周りを駆け巡り、それを避けていった。

 

 相手の背後を取る。彼女はまだ気づいていない。私は右手に力を籠め、精一杯殴った。彼女が吹っ飛ばされる。しかし彼女も流石だった。姿勢が安定しない中で、光線を私に当てたのだ。私がよろけているうちに、彼女は着地していた。

 

 私たちは同時に、バグヴァイザーをバックルに戻す。それから、Bボタンを二回押し、必殺技の準備を行った。力が、全身にみなぎっていく。

 

 

キメワザ! クリティカルクルセイド!

 

 

「「ピプペポパワー!」」

 

 

 回りながら浮遊し、音符や星形のエネルギーを飛ばすポッピー。一方で私は、自身の周りに戦慄を張り巡らす。そしてそれを、パンチとともに叩き込む。

 敵の攻撃が、私に何発も当たった。それでも私は、臆することなく、必殺技を放ち続ける。やがて私たちが限界を迎えると、変身が解除。私たちはその場に膝まずいた。

 

 

「やるね……」

 

 

 私はギリギリの戦いを制した。あとで知ったことだけど、仮面ライダーポッピーは敵の好感度によって、スペックが上下するという。このとき、私は自分を酷く嫌悪していた。それが今回の勝因に繋がったのだろう。

 

 

「でも安心したかな……あなたのその目は、悪性バグスターの証だから……」

 

「えっ?」

 

 

 彼女はそれを言い終わると、完全に意識を失った。どうやら目の変色は、私が二度目に変身したとき、起こったらしい。

 

 でもこの空間は消えない。私はまだ脱出できなかった。どうすれば抜け出せるのだろうか。私がそう考えてると、外側からかすかな声が聞こえてきた。

 

 

『ポッピー! お前はそんなやつじゃないだろ!』

 

 

 それは永夢の声だった。

 

 

ズズズキューン!

 

 

マキシマムガシャット! キメワザ! マキシマムマイティクリティカルフィニッシュ!

 

 

 光線の発射音らしきものが、私の耳に届く。その音は、段々と大きくなる。そして周りの広々とした白い空間が粉々に破壊された。

 

 

 

 

 

 気がつくと目の前に永夢がいた。彼は何度か、優しく私に尋ねる。それに私が反応した。

 

 

「思い出したのか? やった! やった! やったよポッピー!」

 

 

 やっぱり私はあのとき、洗脳されていたんだ。だけど永夢のお陰でそれが解かれ、私は元の私を取り戻した。

 

 そこへパラドがやってくる。彼は、私がCRに戻ることをよしとしなかった。永夢とパラドが言い争いを始める。だけど話は、一向に進展しない。

 

 これ以上話しても無駄だと思ったのだろう。パラドが強引に、私の腕を掴む。そして私はパラドに連れていかれた。ワープを使われたため、永夢たちが追いかけることは出来ない。

 

 

────────────

 

 

 ベッドに寝ている患者が苦しんでいる。ゲーム病によって消滅する。突然、私の頭にそんな記憶が映し出された。グラファイトによると、それは宿主のセーブデータなのだという。

私だってバグスターだ。誰かを乗っ取って、完全な存在へなったことに変わりはない。私はその場を飛び出してしまった。

 

 屋上で物思いにふける私。するとパラドがやって来る。彼は私に、もっとゲームを楽しむように告げる。即ち、人間を攻略しろと。でも私はそんなことしたくない。こうなったら、私に出来ることはもう……

 

 

 

 翌日、私はストリートダンスを眺めていた。見ていたところでどうなるということもなかったけど。だけどそんな時間も長くは続かない。後ろから、二人のライドプレイヤーが不意打ちを仕掛ける。私は変身して、彼らの相手になった。

 

 そこにニコちゃんと大我が駆けつける。ニコちゃんが、容赦なく攻め立てる。大我の砲撃も、私に襲いかかる。

 さらに飛彩と永夢も姿を見せた。そこにパラドが現れる。永夢は彼と交戦するが、飛彩はビートクエストゲーマーになって、私に向かってきた。私は三人の猛攻に、なす術なくやられる。ニコちゃんに投げられ、大我に撃たれたことで、私は階段を転がされる。そして変身も解かれた。

 

 それでも彼らの闘志は変わらない。私は終わりを確信した。でもそこに永夢が飛び出す。どうやらパラドはマキシマムゲーマが押さえつけているよう。

 永夢は一生懸命、私を庇ってくれた。しかし同時に、私のウイルスに感染し、苦しんでいる患者がいると聞かされる。

 

 

「他に方法があるのか?」

 

 

 飛彩が永夢に問いただす。これには流石の永夢も、口を開くことが出来ない。

私はもう、永夢にこう伝えることしかできなかった。

 

 

「もう……いいから」

 

「えっ?」

 

 

 私の言葉に反応して、彼が振り向く。彼はそれから、私の前に立て膝で座る。私はさらに、言葉を続けた。

 

 

「私は人の命を犠牲にして生まれたから」

 

「でも……人の命を救うためにずっと協力してくれた」

 

「バグスターは人間に憎まれる存在なの」

 

「お前は違う!」

 

「バグスターは人類の敵だから!」

 

 

 私はこう叫ぶと、彼を押し倒した。

 

 

「はぁ そうかよ わかったよ」

 

 

 永夢はそう言うとガシャットを抜き、ゲーマドライバーのレバーを閉じた。エグゼイドから永夢に、姿が変わる。

 

 

「だったら俺と戦え」

 

「人間を攻略したいんだろ? この世界を支配したいんだろ?」

 

 

 彼が私の腰から、バグヴァイザーを外す。それを自分の胸に近づけ、私の手を握らせた。そして激昂しながら、こう言い放つ。

 

 

「攻撃しろ!」

 

「やれよ!」

 

「嫌だ……戦いたくない……」

 

 

 私は手でバグヴァイザーを払いのける。それから、立ち上がった。視界が、涙でぼやける。

 

 

「誰も悲しませたくない……誰も傷つけたくない……みんなで仲良くドレミファビートがしたいよ……」

 

「やろうぜ みんなで一緒に」

 

 

 私の隣に、彼も立つ。彼はこう言い終わると、私に笑顔を見せた。

 

 

「うん……!」

 

 

ゲームクリア!

 

 

 こうして私は、CRに戻ってくることが出来た。これ以上仮面ライダークロニクルの被害者を出さないために、これからも頑張らなきゃ!




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