もしも楽の兄貴がニセコイ生活を送っていたならば (孤独なバカ)
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プロローグ

10年前夢が敗れた女の子が泣いていた。

目の前には僕の弟と友達の女の子が結婚の約束をしていた。

……ゴメン。○○ちゃん楽が

……大丈夫。もう会うことないから。

でも俺はこのいじけている女の子がずっと好きだった。明るくて、泣き虫で、そして優しい女の子が

「○○行くよ」

「うん。じゃあねゆうくん」

と女の子の名前が呼ばれていた。

「待って!!」

と僕は女の子の手を握る。でもその手は届かない。だから大声で叫ぶ。最近アニメで見たセリフだけど再開を願う時に言う言葉

「またね。○○ちゃん」

するとその人が少し笑っていたように感じた。

 

「おい兄貴起きろ!!」

「……後一日」

「学校休んで寝る気かよ!!」

と弟の声がする。仕方なく起きる。

「おはよう楽」

「はぁ…飯できているからさっさと食べろよ。」

と制服を着て学校にいく楽。そして俺も起き制服に着替える。

俺の名前は一条夕貴。この春から高校に通うどこでもいる高校生だ。ただ一点をのぞいては

「おはよう皆」

「「「おはようこぜぇます!!坊っちゃん」」」

と厳つい男たちがたくさんいる。

そう俺の家はヤクザだ。

「とりあえず飯」

と楽の飯はおいしい。まぁだからいくらでも食べられる訳なんだけど。和食ばっかりなんだよなぁ……

俺は母親譲りなだけあって洋食が好みだから、楽とは、全く違うけど

「ご馳走さまでした。」

「あいかわらずのんびりしているな。」

「あっ、父さんおはよう。」

と俺はとりあえず挨拶する。

「おはよう夕貴。そうだ、近いうちてめーに大事な話があっから覚えときな。」

「……?」

「それにお前時間は大丈夫なのか?」

「大丈夫。俺は自転車登校だから。」

と俺はのんびり立ち上がりあくびする。

「んじゃいってきます!!」

と自転車をこぎ始める。

そして今日見た夢を思い出した。

あれから10年か。あの女の子は元気かな?

と何度も見続けた夢を思い出す。

あれから俺はずっと楽と暮らしてた訳だか楽も結婚した約束の女の子が気になっているらしい。

「ザクシャ イン ラブか」

とずっと気になっていることばを言う。

もしも、あの時の少女に言えなかったこと

好きです。

って言えたら俺は何か変われたのかな?

「げ」

と言う声が俺の塀の上から聞こえた。

……塀の上?

そう思った時には遅く回避も間に合わない。顔にかなりの衝撃を受ける。

金髪の女の子が俺の顔に飛びヒザ蹴りをくらい勢いのまま自転車から突き落とされ倒れ込んでしまう。女の子の体重が重なり衝撃を緩和することしかできそうにない

俺は体を捻り柔道の受け身をとる。少し痛いがもう慣れたものだ

でもとんできた方を見ると2メートルはある壁があるのだけど。

「あっ、ゴメン急いでたから」

と金髪の女の子は立ち上がる。

「……別にいいよ。なんなら後ろ乗るか。」

と自転車を立ち上げるとパンクもなし、そして故障もしてなかった。

「えっ?」

「急いでたんだろ。乗れよ。うちの制服だから目的地は多分同じだからな。焦ってまたこんなことになったら大変だろ。」

と自転車にまたがる。焦っても仕方ないし。こいつもう一個の塀をまた飛び越えてそうだったし見張っておいた方がいいだろう。するとその女の子は少し考えてから頷き

「じゃあうん。お言葉に甘えて。」

「んじゃいくぞ」

後ろに女の子を乗ったのを確認して自転車をこぎ始める。皆からの視線が痛いけど気にしない。そして本当に1分くらいでつく。

「んじゃ着いたぞ。んじゃ俺は自転車置き場でこれ置いてくるから。」

「うん、ありがとー!!」

と走って校舎の中に入っていく。

何か面白い女の子だったな。

「……名前聞いておけばよかった」

と俺は苦笑してしまった。

 

俺は教室に入るといつものメンバーがそろっていた。

「オースゆう珍しいな。遅刻ギリギリじゃないなんて」

と俺の友達であり幼馴染みの集が言う。

「まぁちょっと面白いことがあって」

「面白いこと?」

と俺と楽に話かけてくる少ない女子代表の小野寺が話かけてきた。

「何か失礼なこと考えてないか?」

「楽うるさい」

「ひどいな」

「まぁ金髪の女の子が2メートル以上ある壁から跳び蹴りしてきてそして一緒に登校した」

「「「はい?」」」

と皆が首をかしげた。

「だから金髪の女の子が2メートル以上ある壁から跳び蹴りしてきて、一緒に登校したんだよ。」

「……突っ込みどころが多すぎなんだがそれ嘘だろ」

「嘘じゃねぇよ。」

とため息をつく。

「ってか冗談が嫌いって知ってるだろ。」

「そうだけどさぁ。」

「さすがに信じたくないよね。」

「ってか兄貴何でその後一緒に登校してきたんだよ。」

「急いでいたから。チャリで後ろに乗っけてあげただけだよ。」

「……お人好しすぎるだろ!」

そうか?楽だって同じことしそうだけど。

「ほら席につけ、HR始めるぞ。」

と担任の先生がくる。でも眠いなとうつぶせになると

「おい一条兄寝るな」

するとクラス中から笑い声が聞こえる。

「だって眠いし?」

「まったくお前は……でも今日は転校生がくるから起きておけ。」

「ふぁ~い」

「あくびと返事を混ぜるな。」

するとまたクラス中から笑い声が起こる。

「じゃあ入って桐崎さん」

「はい」

とするとざわっとクラスの雰囲気がかわる。

「初めまして!桐崎千棘です。母が日本人で父がアメリカ人のハーフですが日本語はこの通りバッチリなのでみなさん気さくに接してくださいね。」

とどこかで聞いたことがある声だけど。気にせずに眠ろうとすると

「おい一条兄寝るな!」

「……眠いんだよ。」

と前を見ると、今日一緒に登校してきた女の子が立っていた。

「「あーーーーーー!!」」

と俺は立ち上がってしまう。

「あなたさっきの」

「あぁ、間に合ったか?」

「うん、お陰さまで。」

「兄貴知ってるのか?」

「あぁ、今日遅刻すれすれだったらしく送っていった女の子だよ。えっと、桐崎だっけ。」

「うん。でも自転車は?」

「いや、壊れてないから平気。」

「もしかしてさっき言ってた暴力女か?」

楽が失礼なことを言った。するとクラスが固まる。

「おいバカそれ俺が暴力女って言ったみたいになってるじゃあねぇか!!」

「だって金髪の女の子が2メートル以上ある壁から跳び蹴りしてきたって言っただろ!」

「俺一言も暴力女って言ってないだろうが!!」

「あの、そういえば誰?」

あっ悪い

「ゴメンあのバカな弟で、俺は一条夕貴そこにいるバカの双子の兄だ。だから夕貴か一条兄っていえば基本は俺だ。これから1年よろしくな」

「うん、よろしく」

「後俺に余り関わらない方がいいぞ。」

と小さい声で忠告する。するとえっと言っていたが寝るモードに入る。

「そうか?転校生とお前って知り合いだったのか!」

……何か落ちが読めた。

 

あの後席が隣になり桐崎が話してきたが。寝ている振りをして誤魔化しながら放課後に入る。楽は飼育係なので遅れるらしい。

そして自転車置き場に行くと

「……」

桐崎が座っていた。俺はその前を通ろうとすると

「……ねぇ、どういうこと?」

と服を掴まれる。

「……何のこと?」

「関わらないない方がいいって」

「あぁ、……お前って集英組って知ってるか?」

「……まだ引っ越したばっかりだから知らないけど」

「……ここを守っているヤクザなんだよ。アメリカ風にいえばギャング。」

すると桐崎の笑顔が固まる。

「そこの長男なんだよ。俺はだから皆からは怯えられるんだ。友達作るのも俺と一緒だと大変だろうしな。お前も学校生活は楽しみたいだろうし、」

「……それって本当なの?」

「残念だけど本当だよ。俺は昔からそのせいでほとんど友達が作れなかったからな。んじゃ俺に近づかない方がいいぞ。お前可愛いんだからすぐに友達もできるだろ。」

「ちょっとあんた何言ってるのよ。」

「んじゃな。」

と俺は桐崎の前を通り自転車をこぎだす。それいこう桐崎は俺に話かけてこなかった。数日後のある事件が起こるまでは。



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シツモン

「ただいま」

と俺はいつも通り一人で帰ってくる。楽や集と帰ることが多いが今日は俺が日直だったので先に二人とも帰ってきているはず。

「お、帰ったか。夕貴、ちょいとオレの部屋にきな。」

と俺は不思議に思いながら父さんの部屋にいく。すると楽がすでに立っていた。

「あれ、楽お前も?」

「兄貴もか?」

と俺も楽も来るなんて珍しいな。

「なんだよ親父いきなり呼びつけて」

「今度大事な話するっつったろ?思いの外早く事が動いてな…てめぇらも最近のギャングとの抗争は知ってると思うが、それがいよいよ全面戦争になりそうなのよ」

……はぁ?

「ちょっと父さんギャングって聞いてねぇぞ!」

「……お前は知らなかったのか?」

「知らね」

「……まぁいい」

とため息をつきながら父さんが言う。

「もし戦争何か起ころうとするとお互いにただじゃすまない。だがお前らどちらかしかできない方法で回避することができる。」

「俺らしか?」

「嫌な予感しかしないけど聞くか?」

「実ァ向こうのボスとは古い仲でな、奴にもてめぇと同じ年の娘がいるらしいんだが…」

……なるほど

「恋人になれってことか」

「さすが夕貴は勘がいいな?」

「……はぁーーー!!?」

と楽は驚いていたが。

「そりゃ戦争になるよりかはいいだろ。ただ恋人のフリしてたら戦争回避できると思えば安いもんだろ。」

「じゃあ兄貴がやれよ。」

「別にそのつもりだったから別にいいけど」

「おっ、やってくれるか夕貴!!」

と父さんは嬉しそうにしてる。

「ちょっと、兄貴いいのかよ?」

「お前は好きな人いるだろうが」

と楽がずっと小野寺のことを好きなことは知っていた。

「それに俺は好きな人いねぇし、それにこういう時に兄貴面させてくれよ。一応応援しているだぜ。」

「……サンキュー兄貴」

「マックドバーガーのポテトMで許す。」

「あぁ。明日買ってくるよ。」

と俺は父さんの方を向く。どうせ一ヶ月かその程度だろうしな。

「んで相手誰だよ?父さん」

「もう来てるはずだ」

「もう来てるのかよ!!」

とため息をはく。まぁブスじゃないことを祈るか。せめて桐崎みたいに可愛い奴ならいいけど

「本当にやってくれるのかい」

「うん。パパ任せておいて」

……あれこの声って

「…兄貴この声?」

「さぁ、この子が夕貴の恋人になる」

とカーテンの開かれると俺は目を見張った。

「…宜しく一条君」

「桐崎千棘お嬢ちゃんだ。お前ら二人は明日から三年間恋人同士になってもらう。」

……今なんて言った?

「ちょっと父さん桐崎がギャングの娘って本当なのかよ!!」

「あぁ本当さ」

「ってか三年間ってどういうことなのよ!!少しの期間だけって言ったでしょう!!」

「おや、三年間って僕達からしたら短いけどね」

確かに人生観は全然違うからそうだけど。

「ちょっと兄貴いいのかよ!三年間も」

「……とりあえず桐崎はお前覚悟はできてるか?」

「えっ、どういうこと?」

「もしかしたら三年間は恋人ができないってことだよ。そうだろ。」

「話は聞いていたけど理解が早いね。夕貴君は」

「……ってことだけど、」

「でもそんなこと言ってる場合じゃないんだけどね。」

「「「……えっ」」」

「お嬢!!」

とドガァァァン!!

と俺の後ろの壁が破壊される。

「……」

「なんだ?」

「見つけましたよお嬢…」

と金髪の男が入って来たんだけど

「……誰?」

「何で兄貴は驚いてないんだよ。」

「集英組のクソ共がお嬢がさらったと言うのは本当だったようですね。」

「クロード!!」

「ふーん。クロードって言うのか。」

と俺は歩きだす。

「こんにちはクロードさん」

「お前は確か」

「集英組二代目の一条夕貴です。お初にお目にかかります。」

「はぁ、どうも」

と礼をする。

「お茶を出しますのでお座りください。楽案内しろ。」

「えっ」

「ついでに紅茶でよろしいですか?」

「……あぁ」

「桐崎も手伝ってくれないか?さすがにこの人数は持ちきれないから」

「えっ、分かったけど」

と俺は桐崎と一緒に厨房に向かう。

「……んでどうする?」

と桐崎にお茶をいれながら聞いてみる。

「えっ、どういうこと?」

「さすがにこの状況は不味いだろ。あいつ爆弾使ってきたんだぞ。でも偽の恋人になるのは嫌だろ。」

「……でも一条君はそんな」

あぁもう

「……せめて一条兄か夕貴で呼んでくれ、楽とわかりづらいから」

「……じゃあ夕貴は私と偽の恋人になることに対して抵抗はないの。」

「さすがにあるな。俺は彼女いたことがないし、それに友達も少ししかいないから……」

元々ずっと集と楽の3人でいたからな。んで時々小野寺と宮本か。

「……私もそうなんだ。」

「はぁ?」

「クロードっているでしょ?」

「あの金髪メガネか」

「うん。小さい頃から良くしてくれてるんだけど、知っての通り過保護でね。学校行くにもやれ護衛だの、出かけ先でも銃持ってうろうろしたり。しまいには私の交友関係までチェックし始めて…」

こいつもしかして

「……もしかして友達少なかったのか?」

すると顔を赤くさせていたが頷いた。

「そうか……本当にお前もこっち側だったんだな。」

と俺は桐崎を見る。

「んじゃ俺と友達にならねーか?」

「……あんた何言ってるのよ!」

「いや、何かお前といたら面白そうだし。それにどうせこの流れじゃあニセコイするしかないだろ?」

「なんなのよニセコイって」

「偽の恋人略してニセコイ、まぁ女友達として遊びに行ったりすればいいだけだろ。」

「……そうだけど、いいの?」

「俺はな。ちょっと俺も興味わいたし。」

ちょっとこの女の子が日本がいる時くらいは楽しい思い出をつくれるようにしてほしい。

「どうする?お前に好きな人が出来たらなんとかするし、」

「……分かった。じゃあ宜しく。」

と桐崎が笑う。やっぱり笑顔が可愛いなこいつ。まぁその笑顔が見られるのが報酬ってことでいいか。

「あぁ。宜しく桐崎」

 

「お茶はいりました。」

と俺の隣を銃弾が当たる。

「おい、坊っちゃんに何してくれとんじゃあ!」

と日本刀で桐崎の横を切る。

「てめぇらいい加減にしろ」

と俺は少しキレる。

「暴れるのだったらどっかおもてに出てやれや。後、竜俺の彼女に手を出したら殺すぞ!!」

「「「「なっ…なぁぁにぃいいーー!!」」」」

と楽が俺の方を見ると頷く。

「そうだよ。兄貴と桐崎は付き合い始めたんだよ。」

「そ、そうよ。だから皆落ち着いて」

……こいつらが演技が下手なことは分かった。

「まぁそう言うことだ。」

と父さんがヤクザとギャングに向かって言う。

「とりあえず竜お客さんだ。どいてろ。」

「へぃ分かりました。」

と俺は竜を下げさせる。

「すみません。クロードさんとりあえず紅茶どうぞ。」

「……あぁ」

と言ってお茶をテーブルの上に置く。

「ついでに毒なんて入ってませんので。」

「……」

とどうやら疑われているのか俺の方をじっと見る。

「そう言えばどっちからどうやって告られたですかい?」

「えっ」

「俺からだよ」

と全部俺が答えた方がいいと思った。どう考えても桐崎は演技がうまくわないからな。

「あぁ、そうだ。私も坊っちゃんに聞きたいことがあるのですがいいですか?」

「……は?」

「お嬢の好きな食べ物と音楽は何でしたっけ?」

「知るわけねぇだろうが?まだ付き合って一日も経ってないんだぞ。まぁ弁当からみたら甘いケーキと肉じゃあないのか?後音楽はクラシックかな?」

「……そうです。」

クロードは頷く。へぇ桐崎って肉とクラシック、そしてケーキが好きなのか。こっちを桐崎は見る。

「じゃあ次は。」

「ちょちょっと待ってよ質問攻めなんて失礼じゃない。」

「おおっとこりゃすみません!!」

と俺はため息をつく。

「んじゃ最後お嬢二人はもうキスは済ませたんですか?」

……

「おい、いい加減にしろ。そこまでだ。」

と俺はとめる。

よく考えたら何で質問攻めにされてるんだ。俺らは

「ちょっとお坊ちゃんは黙って」

「お前が黙れよ。このくずが。」

と皆の雰囲気が凍る。殺意を込めて発した言葉に全員がたじろぐ

「ちょっと夕貴」

「困っているのに質問攻め、ふざけんな。よう考えたら俺達はあんた達に何で教える義務があるんだよ。変に介入するから別れる原因になるんだよ。お前らには失礼って言うのが分からないのか?」

と俺は少しためてから

「いいから楽と、まぁクロードさん。そして桐崎の父さんと父さん、そして桐崎以外は出ていけ。」

「……坊主の言う通りだ。」

と父さんが言う。

「ここは元々夕貴と桐崎のお嬢さんが俺らに報告するように言ったから集まったんだ。お前ら下がれ。」

「そうだね。クロード達も帰りなさい。」

「ですがボス」

「早く帰りなさい。」

すると桐崎のお父さんもかなり殺気を放つ。顔には出さないがかなり怒っているらしい

さすがギャングのボスってところか。

「本当にごめんね。夕貴君」

「いや、いいです。」

と俺は軽く嫌悪感を持っていた。

「……分かりました。」

とクロード達は帰っていった。

「……あいつらに謹慎一週間言っておく。」

「僕の方でも何か罰を与えておくよ。」

「あぁ、そうしてくれ。全く、怖い思いさせてごめんな、桐崎。」

「ううん。助けてくれてありがとう。」

「でも兄貴よくあんなこと言えたな。普段とは大違いじゃねぇか」

「一応偽物とは言え恋人は恋人だ。守るのが当たり前だろ」

「……神経太いよな」

「楽がやわいんだろ。実際俺は何度もあのバカどもを相手にしてきてるんだ。……さすがにこの生活にも慣れるさ。……どうしようのないことだし。」

と言ったものも内心じゃ全く違っていた

楽の強さは追い込まれた時の勝負強さと誰にも優しい心、

多分俺と同じ立場だったら楽も同じことしたと思うぞ

「それより飯、せっかくだし食ってけば。」

「いや、料理人に作らせてあるから今日は帰るよ。」

「んじゃ玄関まで送ります。」

「いいよ。でも娘のこと宜しく頼むよ。夕貴君。」

と笑顔で言う桐崎の父さんはとても優しそうだった。

「それは本当に桐崎に彼氏ができた時に言ってあげてください。んじゃまたな。」

「うん、またね。夕貴と一条さん」

「じゃあな桐崎。」

と俺達と桐崎はわかれる。

そうして俺達のニセコイ生活は始まった。



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ハジメテ

「おい兄貴起きろ」

と楽の声がする。

「……休日くらい寝させてくれよ」

「いやお客さんが来てるんだよ。お前に」

「~客?」

としぶしぶ立ち上がる。どうせ集か宮本だろうしこのままでいいか?

「はい、どなたですか?」

「ご、ごきげんようダーリン!」

と桐崎が扉を開けたとたんにいた。

「と、突然で悪いんだけど、今からデートに行かない?」

「……ちょっと待ってろ」

と俺は部屋に戻る。隣には金髪メガネもいることだし断れないだろうな。

そして20分後

「な、何で私がこんな目に遭わないといけないのよ。」 

「ゴメン。俺があんなこと言ったからな。」

「ううん。私のせいでもあるから。」

「んじゃ、適当に町内案内するよ。」

と俺は歩きだす。

「えっちょっと」

「桐崎後ろ見ろ」

と桐崎は後ろを見ると気づいたのだろう。

「もしかして全員」

「ついてきてる。全くうぜぇ奴等だな。」

とゆっくり歩きだすけど。

「桐崎って肉とか甘いものが好きだったけど嫌いなものってあるか?」

「納豆とかわさびとかかな?」

「んじゃラーメンはどうだ?うまい店知ってるからおごってやるよ。引っ越し祝いってことで」

「ラーメン?まぁいいけど。」

そして俺達はラーメン屋に入る。

「おっちゃんいつものと桐崎は?」

「えっとチャーシュー麺大盛に肉ダブルでトッピングにコーンともやしほうれん草と白菜煮卵メンマネギ」

「おっちゃんもう全部乗っけちゃって。桐崎替え玉は?」

「いる!!」

と桐崎は嬉しそうに言う。

「おかわり自由だから好きに食ってもいいぞ。」

「でもここっておいしいの?」

「俺はボリュームがあるから好きだな。ここのラーメンは。俺は肉ダブルをふたつつけてるし。」

と俺のはお得意様なので好きに注文できる。

「それにチャーハンと唐揚げもおいしいからな。まぁ安くておいしいもの食べたくなったらここにくる。」

「あんたのところってお坊ちゃんじゃないの。」

「いや小遣い制でアルバイトもしてるし。」

「へぇ大変なのね。」

「まぁ俺の食費は凄いことなってるらしいからな。でも大丈夫かその服しみとか。」

「多分大丈夫!!」

「まぁ気にしなくてもいいんだったら別にいいけど。」

と店員が来て大量の料理がくる。

「じゃあ食うか。」

と俺達は箸をとり食べ始めた。

 

「おいしかった!」

「だろ!」

と俺は笑いながら言う。正直桐崎も俺と同じくらいに食べていたので正直料金はくそ高くなった。

「んじゃ一応映画館でもいくか?一応デートってことになってるし。」

「いかにもデートって感じね?」

「まぁな。」

と映画館につくと色々あるんだけど

「まぁ何見る?基本俺はアクション系が好きだけど」

「そうね、あっこれ観たいCMで爆発とか超派手で面白そーだった。」

「んじゃいいか。俺もこう言うの好きだし」

と俺はチケットを二枚買う。

結局俺もけっこう楽しくみてた。途中桐崎が寝ていたので冷えないようにタオルをかけていたけど、爆発音で起きたので楽しそうにしてた。途中ヤクザとギャングが邪魔してきたからつい殴っちゃたけど。

「あー面白かった。」

「まぁな。途中お前らのところにキスしろとか言われてたから少し殴っちゃたから帰ったら言い訳しといて。」

「えー」

「その分ジュース奢るから、紅茶でいいか?」

「いいけど。」

「んじゃ少し待っとけ。」

と俺は自動販売機に向かう。まぁ桐崎が楽しく遊んでいた気がするから成功かな?そして戻ってくると桐崎が4人の男に捕まっていた。

……あいつやっぱりもてるよな。

と苦笑してしまう。元々モデル顔だから本当はモテるはずなのにギャングの娘ってだけで色々制限があるんだよな。

近づいていくと

「つかこいつハーフじゃん。友達にハブにでもされちゃった?」

「あー分かる分かる。大丈夫、お兄さん達んな事しねーからさ。」

……あいつら

そして桐崎の手を見ると握り拳を握っていた。

……あのバカ

と俺は走り出す。

「すみません。こいつ日本語まだできないので」

と俺は桐崎の手を引く。

「悪い桐崎待たせた。ほら、行くぞ。」

「えっちょっちょっと待ってよ」

「いいから」

としばらく行ったところに公園があった。

「桐崎少し落ち着けよ。」

「何で止めたのよ」

「止めるに決まってるだろ。お前あんな奴殴っちゃいけないぞ」

「何でよ」

と本気で苛ついているのか桐崎は俺を睨む。

「お前はあんなクソみたいな奴を殴るほど安い女なのか?」

と俺はなるべく優しく言う。

「どうせあんなクソみたいな奴殴ったってなんにもならないだろ。そんなクソみたいな奴を殴ると同じ土俵の人間ってことを認めることになるんだよ。……お前はそんな安い人間じゃねぇだろう。」

「……なっ何を偉そうに言われなくたって私があんな奴ら相手にするわけないでしょう!?」

「まぁそう言う風にしといてやるよ。ほら」

と紅茶が入っているペットボトルを投げる。

「でも今日は楽しかったわ、ありがと」

「ならよかった。俺が好きなところばっかりまわってたからな。」

「でも彼女とかいたことないの?」

「うーん、何か女々しいから言いたくないんだけど、昔失恋してからトラウマになってるんだよ。だから好きって気持ちが分からないって感じかな。」

と10年前のトラウマが今でも残っていた。だから俺は恋愛ってものができなくなったのかもしれない。

「ふーん意外ね。あんたは過去のこと引きずらないタイプだと思っていたのだけど。」

「……でもその女の子も振られちゃったんだよ!楽に」

「……嘘!!あいつモテるの?」

「今はモテないけど……今でも一人だけあいつのことが好きな人は知ってる。」

「……うわーあんなもやしを好きになる女の子が分からないわ」

「ひでぇな。一応俺の弟だぞ。」

「それにしてもあんたともやしって似てないわね。」

「よく言われるよ。似てるところはお人好しってところだけって。」

「……そうね。」

「とりあえず次はどうする?」

「今日はこれくらいでいいんじゃない?」

時間を見ると3時をまわっていた。

「そうだな。ついでに送っていくよ。」

「……あんたね。……それじゃーね」

「いってらー」

と俺は携帯を開く。とりあえず楽に晩飯作ってくれって連絡しとこ。

「……楽も小野寺誘ってみたらいいのに、あのヘタレが」

「……え?今呼んだ?」

「え?」

と目の前には小野寺がいた。

「あっいたんだ。ゴメン全く気付かなかった。」

「ひどいよ夕貴君。何してるの?」

「桐崎に街を案内してただけだよ。んで今から送って行くところ」

「……あれ?仲よかったの?」

「失礼すぎるだろ俺だって一応友達いるんだぞ!!全く楽と上手くいってないからって俺に八つ当たりするんじゃねえよ」

「……ひどいよ!!」

「はぁ、全くせめてデートぐらい誘えって。宮本も言ってるだろ。」

「うぅ夕貴君もるりちゃんと同じこと言って!!」

小野寺を弄ってると

「ダーリンお待たせ!!ゴメンね~思ったよりずっと時間掛かっちゃって~」

こいつ凄いタイミングでくるよな。

「……小野寺、紹介するけどこいつは桐崎千棘。桐崎、そっちは小野寺小咲」

ととりあえず紹介する

「え?桐崎さんと夕貴君付き合ってるの?」

「……さあ?楽から聞いたらどうだ?」

「……最近私の扱いひどくない?」

「気のせいだよ。まぁ楽から聞いておいて。」

「私一条君の電話番号知らないのだけど。」

「……えっと、夕貴あのこの人って」

「俺の数少ない友達の一人。」

「認めるんだ……」

俺って友達少ないからな。

「んじゃ俺桐崎送っていくから。じゃあな。ついでにこいつと仲良くやってくれると嬉しい。」

「あっうん。じゃあ今度話そうよ!桐崎さん」

「うん小野寺さん」

ととりあえず一人友達できるかな?

「……ほら桐崎いくぞ」

「あっ待ってダーリン。」

と俺はため息をつく。あいつの恋も進展しないよな

「後ダーリン言うの辞めろ。嘘っぽい。普通に名前でいい」

「分かったけど小野寺さんに今日のこと話さないの?」

「そんなタイプじゃあねぇよ。だから俺も信頼してるわけだし。それにどっちにしろ、二人で出かけるってクラスメイトに見られたら、付き合ってるの?って言われるぞ。」

「……面倒臭いわね。これじゃあ休む暇がないじゃないの。」

とその言葉は分かる。

「それが現実だよ。日本は女も男も恋話が好きだからな。絶対聞かれるぞ。まぁ俺は寝たふりするだけだから全部桐崎の方にいくと思うけど。」

「ちょっと少しは助けなさいよ。」

「まぁ気が向いたらな。」

余り関わりたくないけど。そして桐崎を家に送っていったのはいいんだけど。

「……でけぇ」

俺の家もでかいけど、桐崎の家はもっとでかかった。本当に城みたいな家でそう考えるとこいつは本当お嬢様なんだと思う。

「じゃあまた学校で」

「あぁじゃあな。」

と笑顔で言ってくれたあたり今日は成功だったと思いたい。あいつとは長い付き合いになりそうだ。



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トモダチ

デートから2日後の月曜日いつも通り楽に起こされてから学校に行く途中の道。

「ちょっと夕貴。」

と通学路に桐崎がいてとてもやつれていた。

「……おはよう桐崎。お前も質問攻めにあったのか?」

「ってことはあんたも?」

「俺もだよ。うざかったからそのまま寝ようって思ったんだけど、無理だった。」

とあくびをしてしまう。そういえば

「乗ってくか?後ろ。まだ時間あるから歩いてもいいけど。」

「うーん、じゃあ歩いていきましょ。」

と俺は自転車から降りると隣を歩く。

「でもあんたが相手でよかったわ、あのもやしとやったらかなりきつかったと思うわ。」

「最初の一言が暴力女だもんな。あいつ空気読めないから大変なんだぜ。」

「そんな気がするわ」

と笑っている桐崎。でも電話でも楽のことをもやしって言っているから慣れてきた。

「そういえばあのクロードは?いつもお前にべったりくっついている。」

「さぁ今日は見てないけど?」

「ってことは見張ってるのか。俺らにプライバシーと自由な時間がほとんどないな。」

「……ってことは付き合ってるってことを否定は」

「不可能だな。……今日一日寝てよう。」

「だから助けてよ!!」

「ついでにダーリンだけは禁止。まぁフォローはするし、友達作るの手伝えることなら手伝うから普通に起こしてくれ。」

「子どもみたいに扱ってない?」

「気のせいだろ。」

……はいそのとおりです。

あんな演技でごまかせる人は少ないだろうし忠告しておかないと危ないからな。

「んじゃ自転車置いてくるから、先行っといて。」

「はーい」

と俺は自転車を置いてから教室に行く。すると教室に向けて大きな歓声が教室から聞こえてくる。

……あっこればれてるな。

凄く教室に入りたくなくなった。桐崎は質問攻めにあってるけどさっきフォローするって言ったしな。と嫌々俺は教室に入ると集が飛びついて

「ゆうーオレは悔しいぞ!!まさかお前が先に彼女が出来るなんて」

あっこいつ気づいて言ってるな。

「……何のことだよ。集」

「とぼけんなってゆう、もーネタはあがってるんだ!」

もしかして小野寺が話したのか?

「一昨日の土曜日…!!街で二人がデートしているのを板野と城ヶ崎が目撃してしまったのだよ。」

「……はぁそうだよ。」

と外にクロードがいるので肯定するしかない。

「嘘でしょう!!一条君付き合い始めたの?」

「戻ってきてよ!」

「……え?」

女子から悲鳴声が聞こえる。ってか泣いている人までいる。

「……集どういう訳?」

「お前って寝てばっかりだけど、けっこう人気高かったんだぜ。運動できるし」

「でも部活も何もしてないからな。意外だったわ。」

「鈍感って言うより寝すぎだったってことだろ。」

と楽が言う。でも

「もしかして俺って鈍感なのか?」

「多分そうじゃね。」

それはきついな。けっこうくるもんがある。

その後質問攻めされてマジで疲れた。

 

「……疲れた!!」

「あんた授業中ほとんど寝てたじゃない。」

と桐崎が呆れたようにしている。

「んでどうする?今日は学校案内しようか?」

「ううん。今日は用事あるから。」

「了解、じゃあな。桐崎」

「うんじゃあね。」

と俺はずっと気になっていた。こいつ女子と楽しそうに話しているけど、ずっと仲良くしているとこをまだ見ていないのだ。

「……ちょっとふらふらしてみようか。」

と俺はそういえば楽が飼育委員だったので少し手伝いにいくか、ついでに情報収集してみようか。そして飼育小屋の方にいくと楽と小野寺が一緒に飼育委員の仕事をしていた。

……邪魔したら駄目か。

と俺は帰ろうとすると

「って訳で偽の恋人を演じることになったんだよ。」

「へぇそうなんだ。」

と楽と小野寺は俺と桐崎の話をしているとこだった。

「一昨日一条君に聞けって言ってた理由って」

「見張られているらしいぞ。兄貴と桐崎。でもよくできるよな恋人のふりなんて」

と陰に隠れて盗み聞きしてしまう。

「でも、偽の恋人だけど仲が悪いってことではないんでしょ。」

「あぁ、はたから見るとちゃんと恋人に見えるらしいぞ。初日に色々あって仲が元からよさようだし。」 

「でも皆、桐崎さんと距離があるって思っているんだって。」

と小野寺が気になる発言をしている。

「……小野寺どういうことだ?」

「って兄貴聞いてたのかよ」

「夕貴君、これは」

「いいから、小野寺教えてくれ。」

「……私も聞いただけなんだけど、桐崎さんって金髪美人の帰国子女でしょ。だから話しかけづらいんだって。でも桐崎さんって夕貴君と楽しそうに話しているのを見て私達のこと見下しているのかなって。」

……あいつ

「ゴメン、小野寺サンキュー、後このことは誰にも言うなよ。偽の恋人のこともな、楽も。ちょっと行ってくる」

「あぁ、でもどこに行くんだ?」

んなもん決まってるだろ

「彼女のところだよ。」

 

と教室に入ると一人だけ座っていた。

「がんか?いわ…岩下もー音読み訓読みって本当になぞだわ、岩下さんはポニテの子、テニス部で活発で明るくてよく話しかけてきてくれる。」

「桐崎」

と俺は話しかける。こいつ

「なっ、なななななんであんたがここに」

「お前の評判を聞いたんだよ。んでちょっと俺は甘く考えてしまったんだと思ってな。んでさっき来たんだけど」

と俺は桐崎に近づく。そこにはこのクラスの女子の特徴、好みなどが詳しく書いてあった。

「ちょっと何見てるのよ。」

「……俺とは大違いだよ。」

「…はっ?」

「桐崎は凄いな。友達作るために人のいいところも全部調べていたのか。まったく俺の知ってる人とそっくりだよ。」

「……笑いなさいよ」

「笑うかよ。むしろ凄いと思う。俺は家がヤクザってだけで友達を作らなかったからな。」

と桐崎は驚いていた。

「俺ってヤクザの長男ってことで昔けんかしたんだけど、あの竜が学校に乗り込んできてな。その子を病院送りにしたんだよ。それ以来俺は友達をほとんど作らなかったんだよ。楽はそれなりに努力しているけど、俺はまったく作ろうと努力もしてこなかったんだ。」

俺は笑う。でもとても乾いていた。

「普通に友達と遊んだり、普通に恋愛とかしてみたかったんだ。でも家がヤクザってだけで友達に迷惑かけるわけにはいかないし、それより楽に迷惑かけたら駄目だろ。あいつは普通の高校生って感じで学校に行ってるからな。」

「…もしかして私に関わるなって言ったのは?」

「迷惑かけるわけにはいかないからだよ。」

もしも前みたいに病院送りになるかもしれないって思っただけで嫌だからな。

「結局関わちゃったけどな。一昨日だって俺がいきたいところばっかり回ってるし」

といらないことを話したな。楽にも話したことないのにな。

「だから手伝うよ。俺だってお前の気持ちは痛いほど分かるからな。」

「うん、じゃあお願いしてもいいかな?」

「もちろん、岩下はお前とスポーツの話をしたかったはずだ。鈴木は勉強ができるから聞けばいいし、森谷はお前と相性はいいと思う。話したがっていたぞ。」

とメモを取っていく桐崎。とりあえず一通り教える。

「んじゃ送る。帰ろうぜ桐崎。今度他のクラスの女子のことはもっと詳しいやつのノート見せてやるから。」

「うん、じゃあ頑張ってみるね。ありがとう夕貴」

桐崎が笑う。その笑顔は本当に普通の女子高校生だった。



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テヅクリ

背中から鼻歌が聞こえる。

「桐崎今日楽しみにしていたもんな」

と自転車で二人乗りしながら学校に行く。最近では慣れてきた。

「うんだって今日こそ友達を作るって決めてるんだから…!今日は調理実習の日よ!!」

今日の5、6時間目に調理実習だった。

 

「そういえば桐崎って料理作れるのか?」

「うんバレンタインデーにチョコ作るけど皆に好評なのよ」

「でもチョコってまだ料理の方だったら簡単な方だぞ。湯煎して形整えて冷やすだけだし。」

「夕貴も料理作れるの?」

「洋食だけ。俺と母さんだけ和食より洋食の方が好きだからな。だからケーキは大丈夫だと思う。」

和食は楽が作ってくれるからな。俺はほとんど作れない。作れるとしても卵焼きとかすき焼きとかの簡単なものだけだ。

「そっか、今日の課題ってケーキだったね」

「でもそれにしても、案外そのエプロン似合ってるなお前。最初見たときは少し恥ずかしいと思ってたけど」

「え?そう?ありがとう。」

と見るとフリフリのエプロンってどういうわけなんだろう。ビーハイブは桐崎になにを求めているんだ。

「まぁ頑張ってこい。」

「うん。」

と自分の班に向かって行く桐崎、でも桐崎って料理本当に作れるのか?

バサァ!!

と薄力粉をひっくり返す桐崎、あっこいつ料理できないわ。…後からフォローにいくか。

んじゃ俺も作り始めるか。とりあえず薄力粉を90クラムっと

と一応何回かつくったことがあるので、余裕で焼く工程まですませた。後はオーブンの中に入れる。

「よしこれで完了後は待つだけ。」

「さすが手際いいよなゆうは」

「まぁつくったことあるしな。」

と桐崎の方を見ると

玉子を混ぜるところだった。そして近づくと

ガシュ

と近くにあったボールを取り落ちてくる玉子をキャッチする。

「……桐崎手伝おうか?」

「…え?」

「ちょっとさすがに危なっかしいし、俺はもう終わったから、手伝うよ。おいしいやつ作るんだろ。メインはお前が作って俺は計量や道具の準備とかしてやる。」

「じゃあお願い。」

と料理を自分で作るってことは変わりないけど基本的なことは計量と道具の状態できまる。

「んでそこはこれ入れて。」

「んじゃこれは」

「後からだな。んでここは」

と俺が教えながら言う。後は焼く工程だけだし多分桐崎のも大丈夫だと思っていたのだけど、

「……」

俺が仕上げに戻った数分でケーキは真っ黒になっていた。多分焼きすぎたのが原因だろうけど……

桐崎は涙目になっているし、クラスはざわめいてる。

「……桐崎それよこせ」

「…え?」

と俺は桐崎の手から黒焦げのケーキを奪いとる。多分俺にも責任があるし少しくらいは食べようか。

今度までに教えてあげればいいし少しくらいは不味くても食える。

恐る恐る一口を食べる。

すると口の中にクリームの甘さとスポンジの柔らかさが伝わる。

「……」

と俺はもう一口食べるけどやっぱり

「うめぇ」

「え!?ちょ…うそだろ」

「ホント?」

と桐崎も食べると俺の方を見て

「……おいしい!!」

「えっマジ!?オレも食いてー」

クラスメイトが桐崎のケーキを食べていく。

「ホントだウメー!!」

「なんでこんなに焦げてるのに…」

「すげーうまいよ桐崎さん」

と皆が桐崎のケーキに殺到するクラスメイト

「よかったな。」

「……ありか…と…」

「…どういたしまして」

と笑う。楽だったら似合わねとか言って殴られそうだな。さて俺の出番も終わりかな。この後はほっといても自然に友達できそうだしいいか。

と俺は片づけに入る。俺のケーキは頑張った桐崎にあげるか。味見したけどいいできだったし。

そして片づけが終わり寝ようかなって思っていると

ボフンと廊下から聞こえてきた。

「おい一条兄ちょっと廊下見てこい」

と先生に言われて廊下を見ると、楽が泡を吹いて倒れていた。

「おい楽!!」

「一条君…!!」

と近くに小野寺がいた。

「どうして楽が倒れているか知ってるか?」

「えっえっと……私の作ったケーキを食べたらケーキが爆発しました。」

「……はっ?」

今あり得ない言葉が聞こえてきた気がするのだけど。

いやそれよりも

「ちょっと保健室行ってくるから抜けますって先生に報告しといて。」

「うん、分かった。」

と楽を背負い保健室に連れていく。正直もう調理実習は二度とやりたくないな。



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ホウモン

「おっはよー桐崎さん!」

ときょとんとしている桐崎に小声で

「ほら、行ってこい。」

と言ってやる。

「お…お…おはよー」

「ねーねー昨日のサッカー見た~?」

桐崎はあの黒ケーキ以来無事にクラスに馴染んでいった。元々友達に困るような人じゃないしきっかけがあればこれが自然なんだろう。

「ってことでめでたしめでたしっていけばいいんだけど。」

「何か言った?」

「別に」

その日の放課後、桐崎を家に送る途中でため息をつく。結局帰りと行きは俺が桐崎を送っている。雨の日は仕方ないけど楽だからいいらしい。すると携帯電話から好きな音楽が流れる。

「桐崎悪い少し止まる。」

「分かった。」

とメールを見ると楽からで勉強会の案内だった。

「そういや今日楽と集と宮本と小野寺から勉強会誘われてるんだけどお前も行くか?」

「えっ?」

と言うことで

「おかえりなさい坊っちゃん!!おやお嬢ちゃんもご一緒で」

「あぁ桐崎の分のお茶も頼む。桐崎汚いところだけど上がってくれ。」

「あぁうん」

と明らかに桐崎は落ち着いてなかった。

「……どうした?緊張しているのか?」

「な!!してないわよわくわくなんて。」

「わくわくしてたんだな。」

と普通に本心を言ってくれたな。

「仕方ないでしょ。私…勉強会なんて始めてだし…悪い…!?わくわくしてちゃ…!」

「別に、ってここだ。おーい楽入るぞ。」

「了解」

と開くともう全員揃っていた。

「悪い。桐崎送っていく途中だったから少し遅れた。ついでに連れてきたけどいいか。」

「えぇいいわよ。」

「桐崎、とりあえずメガネをかけた女が宮本るり、水泳部のエースだ。」

「ちょっとその紹介やめなさい。よろしく桐崎さん。」

「よっよろしく。」

「んでそこに座ってるどこからどう見てもエロいメガネをかけた男が舞子集だ。俺と楽の幼馴染みでもある。」

「ちょっと俺の紹介ひどくない。」

「ついでに兄貴が言ってることは全部本当だから」

「楽も俺の扱いひどい」

すると桐崎が笑う。

「ついでにこの四人は本当の俺らの関係を知ってる四人だからな。」

「えっそうなの?」

「うん知ってるよ」

と結局こいつらには楽から全部送ってもらった。

「ってことだ。」 

と紹介したので参考書を開く。

「あれ兄貴宿題は?」

「もう終わってある。学校で終わらせてあるからな。」

「あら、夕貴君って勉強できたんだ?」

「失礼だな、一応学年トップだぞ俺。」

「「「えっ?」」」

と女子が驚く。

「あー兄貴って基本オール百点なんだよ。だから寝てても怒られないだろ。」

「高三までなら解けるぞ。そのために中学の時楽と一緒に猛勉強したからな。」

「俺は受験勉強だけどな。」

楽が受験勉強している時に高校のテキストはほぼ終わらせてある。

「とりあえず小野寺と楽以外は教えるから頑張れ。」

「ちょっとなんで。」

「おい兄貴なんでだよ。」

「自分で考えろ。」

そうしないと進展しないだろ。おまえら

「ってか桐崎は勉強できるのか?」

「あっち側だったらだいたいAだよ。」

「ってわりにスペルミスしているけどな。ここ」

「あっ本当だ」

とさすがアメリカに住んでいただけあって英語はそれ以外はケアレスミスもなかった。数学も英語も本当にケアレスミスも何もなく。本当に勉強はできるみたいだった。

「ゆう坊っちゃん、桐崎のお嬢ちゃんちょっといいですか?」

と竜が俺達を呼ぶ。

「なんだ?」

「裏の蔵にお高いお茶があるらしくて取りに来てほしいんです。」

「てめぇがいけばいいだろ。」

「あっし達はちょっと組長から頼まれ事がありまして。入ればすぐにわかりますので」

「はぁしゃあねぇ。桐崎すまんがついて来てくれねーか。」

「まったくしょうがないわね。」

「ゴメンなこいつらが使えなくて。」

と俺は苦笑する。

「ひどいですぜゆう坊っちゃん。」

「はいはい、んじゃさっさといこうぜ」

と俺はすぐに部屋を出る。

さっさと俺は片付けてしまいたかった。

庭に出て俺は歩き始める。

「あ~あまったく楽しんでいたのに。」

「本当にごめん。今度ラーメン奢ってやるから。」

「大盛りでもいい?」

「トッピング全盛りもいいぞ。でも替え玉は一回までな。」

「えー」

と俺はほっとする。正直竜達と話していると気分が悪くなる。あまりださないようにしているけど俺はヤクザってやつが嫌いだ。

「あ蔵ってこれのこと?」

「おうそうだ入ればすぐ分かるっていってたけど」

と桐崎が蔵の方を見ている。

「どうした?」

「……あんたさっさと取ってきなさいよ。」

「……まぁいいけど。」

まぁ蔵の中はほとんど真っ黒だし女子には危険か。

「んじゃ待って」

と言うところで背中を誰かに押された。

やばいもしかしてと思った時には遅かった。

バタンと扉が閉まる音がして閉じ込められる。

扉を叩くと鍵がかかってそうだし。完全に引っ掛かった。

「……やられた。あのクソ野郎何考えていやがる。」

と舌打ちする。ポケットの中から携帯電話を取りだし明かりかわりにする。

「桐崎大丈夫か?悪いなあのクソ野郎のせいでこんな…」

と俺は真っ正面から抱きつけられた。

「……はっ?桐崎、ちょっちょっどうした?」

「う、うっさいちょっと黙っててよ!こっち見たらぶん殴るわよ。」

「桐崎じゃ一回離してくれ。俺後ろ向くから。」

と俺はこの時気づいた。桐崎は暗いのが怖かったんだと。

「ほら、5秒だけ離して、。んじゃねぇと後ろ向けないから。」

「う、分かった。」

と少し手が離れるうちに背中を向ける。

「もういいぞ」

「……ありがと。」

と涙目で言う。ちょっとドキッとしてしまうけどさすがに失礼だろ。

「お前携帯電話のライト使うか?」

「うん借りる。でも電話したら」

「ここ電話もメールも繋がらないんだよ。圏外になってるだろ。」

とここは監禁部屋にも使われるらしく、通信機能が全く使えなくなっているのだ。

「……ゴメンな本当に。」

「……あんたっていつもやさしいよね。」

「それ照れるからあまり言わないでくれないかな。けっこう色々と限界なんだよ。」

こんなにかわいい子と暗いところで密室ってけっこうきついんだよ。

「…あ、ねぇあれ見て!」

と俺はその方向を見るとはしごがあるけど

「駄目だ。俺は出られるけど桐崎は絶対登れないだろ」

「う、…私はちょっと…無理かもだけど…」

「ゴメンだけどそんな奴、俺は置いていけないんだよ。一応偽のだけど俺はお前の彼氏だ。泣きそうなお前を置いていけるはずがねぇだろ。」

「……カッコつけちゃて…」

とでも後ろがくっつけてくる。

「そういえばお前あいつらと仲良くなれそうか?」

「何よいきなり」

「いや話している方が怖くないだろ。だから話して誤魔化そうぜ。それにそっちの方が楽しいしな」

と適当に言っているけど色々俺の方が限界が近い。呼吸の音やシャンプーのにおいなどけっこう普通にかわいいのだ。

「そうね。小野寺さんはとてもいい人だと思うわよ。かわいいし優しいしさ……私あの人なら良い友達になれる気がするのよね!」

「確かに小野寺は誰にも優しいし、かわいいけど、宮本もいい奴だぞ。親友の恋愛を応援したり、正直あまり目立たないけど、本当はかなり頼りになる奴なんだよ。」

「舞子君は?」

「あいつはあぁ見えても一番大人だな。女の子にちょっかいかけてばっかだけど、誰よりも友達思いのいい奴だよ。」

あの性格じゃなければ普通にモテると思うんだけどな。

「じゃあ、あんたの弟は?」

「……ただのバカだよ。いい意味で。自分のことを考えず他人がよければそのことをその人と同じだけ喜ぶ、まぁかなりのお人好しだよ。」

まぁオレもかなりのお人好しってよく言われるけど、多分楽よりはましだと思ってる。

「皆のことよく見てるわね。」

「俺の唯一の友達だからな。もちろんお前もあるけど、聞くか?」

「ううんいいや。」

「ならいいや。」

と時間を見るともう15分たっていた。

「……多分もうそろそろ楽が来てくれると思うんだけど。」

「あれ?でも何かいつの間にか平気になってる。」

「あー目が慣れてきたのか、でも立つなよ。腰抜かしてたから急に立つと危ないぞ。」

と俺は立ち上がり手を桐崎の方に出す。

「ほら、掴まれ。」

「うん。」

と手を掴まれると思いっきり引き上げる。

「おーい兄貴どこだ!」

と外から楽の声がする。

「楽ここだ。」

と壁を叩く。すると

ばたーんと思いっきり扉があく。

「お嬢ーー!!!」

と金髪メガネが入ってくる。助かった。

「すみません。うちのクソ野郎どもがあなた方のお嬢さんを閉じ込めてしまい。」

「……いやそれはお前は関係ないのでいい。ところでなんでお前ごときがお嬢の手を握っているのだ。」

「……えっ。」

と見るともう明るくなっているのに手を握ったままの桐崎がいた。

「……桐崎、とりあえず手を」

「もう少しくらいいいでしょ。お礼よお礼。それとも嫌なの?」

「別に嫌じゃあねぇけど」

「ならもう少しだけこのままでいて。」

「……分かったよ。」

とよく見ると少し涙が浮かんでいる。相当怖かったのだろう。

「クロードさんこいつは責任かけて家まで送り届けるので安心してください。」

「いやそれは私が」

「あっラーメン奢ってくれるんだよね!」

「あぁ、今日は悪かったから思う存分食べてくれ。」

「ってことでパパに晩飯いらないってクロード言っといて。」

「ちょっとお嬢?」

「楽あいつらは?」

「あっ夕貴君こんなところにいたんだ。よかった。心配したんだよ。」

と小野寺がやってくる。

「悪い、ちょっと色々あって、とりあえず楽あのクズどもを監禁部屋に三日閉じ込めといてって言っておいてくれないか?」

「……分かったよ。」

と楽は意外に簡単に折れた。

「そういえば、勉強会はどうした?」

「まだやってるよ」

「んじゃ続きしますか。桐崎行くぞ。」

「はーい」

といつの間にか手も離していていつもの桐崎に戻っていた。でもなんだか距離がちょっと近づいたような気がしたそんな勉強会だった。



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オモイデ

「……疲れた。」

「あんた大丈夫なの?朝からずっとその調子だけど」

「おう。大丈夫、大丈夫。」

「全然そうとは見えないんだけど…」

というのも昨日は日直の後バイトでトラブルがあり、対応に取られているとまた他の仕事を押し付けられるという最悪の出来事にあったのだ。

「体だけは丈夫だから。」

「……へばっているようにしか見えないんだけど。」

「……正直眠いんだよ。昨日ほぼ放課後からずっとバイトだったから。」

「そういえばあんた昨日どこにいたのよ。クロードが見失ったって言ってたわよ。」

「まぁ、バイトだよ。ちょっと久しぶりに依頼が入ったからな。」

昨日久しぶりに依頼が入ったのだ。

「依頼?」

「まぁ、注文みたいなもんだよ。」

「……危ないことじゃないんでしょうね。」

「家の抗争とかじゃないから大丈夫だ。」

「そう。ならいいんだけど…危険なことはやめてよね。」

「……お前どうした?」

あの蔵に隠された時から桐崎の態度がおかしい。

なんかしおらしくなったというか、遠慮しがちというか

なんか急に女の子らしくなった

だからと言って明るい性格なのは変わってない

他の人には明るく元気な性格の桐崎だ

でも何でか昨日今日とかなり距離を感じる。

「……別になんにも。」

「……」

聞かない方がいいってことか

「はぁ。まぁいいけど。」

「桐崎さん。ちょっといいかしら?」

すると宮本がここに来る

「あれ?宮本さんどうしたの?」

「実は今週末、他校の女子水泳部と練習試合するんだけど……うちの水泳部弱小でね人数が少し足りないの。だから桐崎さん運動得意だから代わりに出て欲しいの。」

「……えっ?」

「あ〜。こっちではよくあるんだよ。特にうちみたいに実績のない学校ではな。俺もよく陸上部と男子水泳部から練習試合出てくれって頼まれる。」

正規の部員ではないが俺はこういった運動部に誘われることが多々ある。まぁ、実際のところ桐崎とデートに行かない週末はバイトか運動部の練習試合に呼ばれ参加していることが多い。

「そういや、あなたも一条くんとは違って運動神経もよかったわね。」

「まぁ、そうだけど……なんか褒められる気がしねぇ。」

俺はため息をつく

「そんでどうするんだ?やるのか?」

「えっ?でも今週末ってデートが……」

「別に他の日にずらしてもいいだろ。今週は昨日働いたおかげで休みだから。」

「……そういえば、あなたバイトしてるってなんのバイトしてるの?中学校の時も三年からよくバイトしてるって言ってたけど。」

あぁ、そういえば内緒にしてたんだったか

「父さんの知り合いに俺とタメの女子がいるんだよ。そいつがちょっと頭が悪すぎて家庭教師を少しばかり……」

「…そういえば、あなた学年主席だったわね。……それで時給いくらなの?」

「……1万3千円」

「「えっ?」」

二人は驚くが

「……九州新幹線で福岡まで行かないといけないんだよ。しかも俺がいなかったら家庭科以外何もできないし、……ちょっと真面目に将来が心配になるくらいマズイ。」

「もしかして昨日って。」

「教えに言ってたんだよ。なんか土日が両方用事があるって言ってたから、勉強を教えに行って、なんやかんやいろいろあって帰る頃にはもう10時回ってたから自家用ジェットに乗せられて東京まで。」

「もういいわ。聞いてる私がおかしくなりそうだから。」

「そうしてくれるとありがたい。」

本当なんであんな真似したのか分からないがその後はパトカーに乗って家まで返されたんだよな。

「だから行ってこい。どうせデートなんていつでもできるだろ。それに運動好きって言ってただろ。好きなことならやってこい。」

「……そうね。じゃあやろうかな?」

「夕貴くんも一応大会には来てくれると嬉しいんだけど。本当は今聞こうと思ったのだけども…」

「……悪い。眠い。」

「えぇ。だから大会の時聞くわ。」

「……ごめん。今日はもう帰って寝る。大会っていつ?」

「明日よ。多分一条くんも来ることになるから。」

なんで楽がと聞きたくなったが眠気がすごいので今日はやめとこう

「……分かった。じゃあな。二人とも。」

「うん。また明日。」

「えぇ。」

と二人と別れる。とりあえず帰って寝るか。

 

「…本当最低ね。あのもやし。」

楽が水着に着替えてるのを待っていると桐崎が俺の方を見て言う。

「……第一声がそれって昨日何があったんだよ。」

昨日俺が晩飯を食うために起きたら疲れてぐったりしていた。

どうやら桐崎と宮本に殴られたらしいが理由を頑に話そうとはしなかった。

「てか、楽は小野寺に水泳を教えてたのになんで殴られる羽目になったんだよ。」

「……覗きよ。もやしが言うには女子更衣室の鍵をどうやらペンダントが開くか確かめようとしたんだって。」

「……ペンダント?」

確か10年前の約束のペンダントだよな。なんでそんなもんが

「ねぇ。あのペンダント何なの?あのもやしはかなり大切にしてるみたいだけど。」

「10年前に旅行に行ったんだよ。その時にあった女の子と再開のためにらしいが詳しくは知らない。」

「……そう。あんたにもやしが隠し事するなんて珍しいわね。」

「そんだけ、その約束が大事なんだろ。……それに俺にとってはあまり思い出したい思い出じゃねーからな。気を使ってくれてるんだろ。」

「……そういえば、あんたの初恋ってその時だったわね。」

「ってこと。でもあいつはあのペンダントのことになると見境無くなるんだよ。とてもいい思い出なんだろ。」

生憎俺にとっては嫌な思い出だけども

「だから、女子更衣室の件については俺からも謝る。ただ許してやってくれ……。それに」

「それに?」

「あのヘタレがなんかするはずがない。」

そんな行動力があるならば小野寺とくっついているはずだしな、

「なんか、それを言われると確かにそう言う気がするわね。」

すると宮本が更衣室から出て来る

「おっ!宮本おはよう。」

「宮本さんおはよ〜。」

「おはよう。夕貴くんと桐崎さん。……確かに一条くんにそんな行動力あるはずないわ。」

「だろ。」

宮本も同感らしく笑う。

「桐崎さんもうそろそろ始まるから。」

「うん分かった。」

「って準備運動だけはやっておけよ。お前全力出したらトップも狙えるし、それに足つって溺れたらシャレになんねえから。」

「分かった。」

「頑張れよ。」

「うん。」

と言って去っていく桐崎。あいつ本当に怖いくらいに素直だな

「そういや、俺に話あるんだろ?」

「えぇ。あなた春のこと知ってるかしら?」

「…確か小野寺の妹だったよな?去年のうちの文化祭で迷子になってた。」

「えぇ。……去年のお礼がしたいって言ってたんだけど……」

「……」

俺は少しため息をつく。

「……悪い。やっぱり無理そう。最近ちょっと桐崎関係でメガネが動き始めたらしい。」

「……それって。」

「ヒットマンがアメリカで一人消息が消えたらしい。俺のバイト先の親父に協力を頼んで世界中のヒットマンから守って貰ってるんだけど、最重視されていたヒットマンの一人がどうやら日本に渡ってきたと連絡があった。」

「……そう。あなたも大変ね。」

「まぁな。てか、ようヤクザの息子って聞いてもあの家庭は驚かないよな。小野寺とはいい、小野寺の妹とはいい。宮本でさえ最初は警戒心出してたのに。」

それが普通なのにあの二人はなんか妙に調子が狂うっていうか

「……まぁ。でも考えておくよ。それか帰省してから小野寺に連絡先渡して貰えって伝えておけ。さすがにあいつの妹だし悪さはしないだろうしな。」

「わかったわ。」

「そういや、桐崎には伝えるなよ。ヒットマンの件。あいつかなり演技下手だから家で不審な動きされると対処が面倒臭いことになるから。」

「でも、これって私に話してもよかったの?」

「……あのメンバーの中でお前以外に話して大丈夫なやついると思うか?」

「いないわね。」

「そう言うわけ。」

するとバーンと開始の合図の音が聞こえる

桐崎はかなり早めのスピードで泳ぐ。

「……桐崎相変わらず早いな。」

「おう。楽。まぁ、結構冗談で言ったんだけど…本当に一位取れると思うな。あのベースのまま持てば。」

「えぇ。そうね。相変わらず早いわ。」

金髪でかなり早いのでかなり目立っているな。あいつ。でも

「……早い桐崎も目立つけど……ビート板の小野寺もすごく目立つな。」

「えぇ、本当に。」

なぜかビート板で参加している小野寺もかなり目立っていた。

「わりー宮本。小野寺一日で泳げるようにならなかった。」

「……アホ。楽一日程度で泳げるようになるようになるようになる訳ないだろ。宮本がいった泳げるようになるっていうのは試合に出れるようになるくらいってわけだろ?てかカナヅチなのかあいつ。」

「兄貴も知らなかったのか?」

「知るかよ。体育は男女別で別れてたし。」

中学校からずっと同じクラスだった小野寺と宮本は楽より付き合いが長い

「でも、あいつ死ぬほど不器用だから溺れる可能性はまだないとは言い切れないけど…」

「そうね。」

「えっ?」

「てか桐崎もう一着確定だな。結局ペースダウンしなかったし俺と宮本以外あいつに勝てないんじゃねーか?」

タイムも水泳部員とあまり変わらないし、俺と宮本のタイムより10秒も変わらない。俺と宮本は同じくらいのタイムなので結果的に化物並みのタイムだ。

「あなたも十分化物よ。」

「心読むなよ。」

苦笑してしまう。そして見守る。

そして誰も怪我なく水泳部の練習試合は終わった。



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ツワモノ

深夜が深まり組のもんも全員が寝ているころ俺はこっそり抜け出し屋根上で電話で話していた

「……んで、学校内で銃を出せばこっちも武力行使にしてもいいと。」

電話から聞く声は俺は反復する

『はい。あくまで銃を出したらですが…』

「はぁ。あまり関わりたくはないしこのことを楽と桐崎には伝えたくなかったんだが…」

『そういっていられないと思いますが。』

「だろうな。……校内で兵器とか溜まったもんじゃないし。……んで報酬は?」

『1000万だそうです。』

1000万と口に出しそうになるが堪える。そういや情報収集とか前の依頼とかそういう代金まだ払ってもらってないって思い出す

「……たけぇな。ということはもう万里花くるのか?」

『六月にはそちらの高校に行けるらしいです。』

「……試験に受かればだけどな。」

『その為にあなたがいるんじゃないんですか?』

「今はやる気満々だけどあいつは元々病弱だろ。習い事も多いし潰れることを心配してるんだよ。一応幼なじみだし。」

『その点は私が監視してるので大丈夫です。』

「あ、そう。」

それなら大丈夫か。

「……んで、依頼はブラックタイガーの捕縛と周囲の安全の確保でいいんだな?」

『えぇ。では通帳に1500万振り込んでおきますので』

「おい。ちょっと待て1500万。なんでだよ?」

『前回の依頼の分の料金をお支払いしてなかった分です。あなたのおかげで麻薬組織が二つ潰れましたので。』

「いや、麻薬組織一つで250万。どれだけ大きな組織だったんだよ。てか今回の件どんだけ危険なんだよ。鶫誠士郎ってやつは」

一回の依頼で1000万は二番目に高い依頼だった

『……私と互角以上の力を持っていると思います。』

「……いや。あんたみたいなバケモンと戦うのかよ。さすがにきついぞ。」

『それはどっち側ですか?』

「学校でで戦えって俺が一番苦手なことって分かるだろ護衛や被害なしで戦うことが一番苦手なんだが。」

『……多少くらいなら橘家が責任を負いますが、火薬の使用は。』

「違うって。あんた仕込みのあれを使わせてもらう。捕縛くらいなら普通だしアサルトくらいなら十分だ。スナイパーレベルになると半々だが。」

あいにくそういう訓練はかなりこなしたからな

『……わかりました。あなたの力は私たちも認めているので何も言いませんが私たちの任務はあくまで監視です。そのことをお忘れ無く。』

「分かってる。まぁ依頼だし本気でやらないと不味そうだからな。まぁ念のためにあれも用意しとくか。」

『失敗はなさそうですね。』

「…いやあんたどんだけ期待してるんだよ。俺だってやらかすことはあるぞ。」

『事実ですから』

と無感情な声が響く

『あなたが無理なら私たちでも無理ですよ。あなたは、隱衛筆頭一の強者なんでんですから。』

 

「ふぁ〜眠い。」

学校でいつものメンバーと話しているとつい夜更かしをしてしまったのであくびがでてしまった

「……あんたまたバイト?」

「いや、中間考査に向けて勉強してた。」

「「「「えっ?」」」」

みんな驚いているが

「おい。いかにも俺が勉強しないみたいじゃねーか。バイトは一定の成績とらないと許可下りないしせっかくの小遣い稼ぎのチャンスを逃してたまるかよ。」

実際のところ俺は30位以内から落ちたらバイト取り消しだしな。せっかくのバイトを取り消しになったら元も子もないし

「兄貴こういうところは真面目だからな。兄貴が満点以外取ったところ見たことないし。」

「まぁ。昨日一日で復習は終わったから今日からはまたゲーム三昧の日に戻るけどな。」

「……こういうところも兄貴らしいって思うけど。」

呆れたように

「うん。ゆうらしいな。」

「なんかわからんけどバカにされたことだけは分かった。ってそういえばなんの話だった?」

「……はぁ。今日転校生が来るんだってよ。」

とあの人から聞いたとおりの情報が入る。やっぱりあの人に情報収集頼んどいて正解だったな

「……まぁどうでもいいか。」

「……夕貴くん本当桐崎さんの時もそうだったけど本当転校生とか興味ないんだね?」

「だって関わる必要がないじゃん。」

「兄貴……」

かわいそうな目でこっち見るが関係ない

こっちは一応任務でこうしているんだ

一応武装もしてあるし油断しなければなんとかなる

すると宮本が心配そうにこっちを見てくる

……本当にいい奴らだよ

「……まぁ。俺はいつも通りに過ごすだけだからな。」

「「……」」

すると楽と集も何か気づいたらしい

「……そんなに危険なのか?」

楽がそんなことを言う。でも

「……言うと思うか?」

「……」

「……ねぇ。どう言う。」

「お〜い。お前ら突然だが今日は転校生を紹介するぞ。」

すると担任のキョーコ先生が入ってくる。

俺はため息を吐く。

とりあえずうつ伏せになって寝ようとすると隣の席からトントンと叩かれる

「なんだ?」

「……一体どういうことなのよ?」

「見とけば分かるさ。どうせお前はあったことがある顔がくるんだから。」

「……どういう?」

「入って鶫さん。」

「はい」

と凛とした声が届く

すると背の高く男子だったらとても整った顔をしている女子が男子高校生の格好をしている。

やばい。色々突っ込みたいことが何個かあるんだが

てかあの人よくこの人が女だと分かったな。初見じゃ分からないぞ

まぁ。ある場所を見たら納得するけど

「初めまして、鶫誠士郎と申します。どうぞよろしく。」

と挨拶していく中うつ伏せになって戦力を計るが

……化け物だな

クロードと同じくらいのパワーと機動力、手には拳銃を握った時にできるまめ。

女子とは思えないくらいの戦闘力

こいつも同じ側か

……はぁ、少し面倒臭いことになりそうだな

俺は眠気に身を任せたまま眠りについた

 

「……うるさいな。」

「……よく寝てたな兄貴。」

目が覚めると楽と集が来ていた。

「ん?」

「いや。俺の席転校生と桐崎に取られたからこっち来たんだよ。」

「あぁ。あの男気取ってる鶫って奴か?」

「「……へ?」」

「いや。あいつ女だろ?」

するとクラス全員がこっち側を見る

「ありゃ。ゆうバラしちゃったか。」

集は気づいていたらしく

「いや、気付くだろ。あいつ男子と違ってある部分が……」

「……確かに。」

「なっ!!」

「……」

なんか桐崎が凄い形相で見てるが無視しとこう。結構命が危ないし。

「……てかそんなことより今何時?」

「四時間目終わった後だけど。」

「……うん。予定どうりっと。」

「……俺が言える立場じゃないけど、なんでゆうが主席なのか分からないな。」

「…まぁな。」

とは言うものも俺が主席であり続けているのには秘密がある。

あの人に教わってこの学校程度の主席を取れないようじゃ真面目に死ぬからな

「……でも普通に感じのいい奴じゃんか?どうしてそんなに兄貴が警戒してるのか分からねえよ。」

「……まぁ。楽には分からないか。」

「えっ?」

「悪意を含んでるんだよ。それに格下に見られているのがすぐに分かる。…いわゆる仮面をずっとつけているけど凡小説の強化外骨格ほどじゃないけどな……まぁ総括すると、あいつかなりやばいな。多分怒り、嫉妬、後は殺意。その感情が洩れすぎている。」

小声で伝えると集も楽も驚いている

「正直ヒットマンだろうな。銃と近接戦闘メインの。まぁ、今更だろ俺が狙われるってことは。」

ヤクザの長男として狙われることなんて珍しいことではない

「それにあんな奴に負ける気なんてさらさらないし。ごちそうさん。」

「……って兄貴いつの間に弁当を食べ終わったんだよ。」

「話ながらでもこのくらいの量なら一分もあれば食い終わるって。それじゃあ少し行ってくるわ。」

俺は立ち上がると体を伸ばす

そして桐崎と鶫のところに向かい

「桐崎。ちょっとこいつ借りるぞ。」

開始の狼煙を上げた



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コウショウ

「それでなんの用だ?」

鶫がそう言う。笑ってしまう。本当演技が下手だよな

「それはこっちが聞きたいんだけど、ブラックタイガーさん。」

すると急に目の色が変わり明らかに動揺している。

「……気づいていたのか?」

「生憎。俺の情報収集能力舐めんな。まぁ、部下のだけどな。」

「……部下?お前部下がいるのか?」

「……まぁな。ってか俺の目的は交渉だし。」

「……交渉だと?」

「あぁ。交渉。生憎争いとかは嫌いなんだよ。ヤクザみたいな真似は俺も桐崎もしないからな。」

俺はため息を吐く。本当血生臭い毎日が嫌になる程な。

「……一つだけ聞くけど俺と桐崎が付き合う前の、集英組とビーハイブの関係性は知っているか?」

「いや、知らないがそれと交渉がどう関係しているんだ?」

「まぁ、聞けって。続けるけど関係性は最悪に近く……戦争直前だったんだよ。」

「なっ?」

鶫は驚いている。調べておけよ。

「…本当に知らなかったのか?あのメガネ。」

「……それは本当か?」

「本当だよ。どうやら若い奴らがファミレスかなんかで騒ぎを起こしたらしく、そっから小さい争いが多発してな、その時には桐崎がこっちに来てたらしいんだが、最初は小さな争いだったのがだんだん規模が大きくなってな、いつ戦争になってもおかしくなかったんだよ。桐崎もそれを理解してくれている。……もう分かるだろ。」

ここまでヒントを与えておいて分からないとは言えないだろう

「……お嬢と一条夕貴は付き合っていないと。」

「一応付き合っていることになっているけど、実際は友達だ。まぁ実際は桐崎の父さんと俺の父さんの依頼で恋人同士を偽っているけどな。若いもんが言い争っているだけで父さんたちと桐崎と俺、楽は戦争なんて求めていない。」

「……」

ここまで言うと鶫は納得したようにしている

「簡単にいうと独断行動に巻き込まれた被害者側だぞ。俺も桐崎も。どうせ、あのメガネから恋人じゃないことを見極めてこいっと言われたんだろうが……」

「いや、すまない。そんな事情があったのか。それはお嬢も」

「知っている。……てかこんなこと本人が知らずにやるわけないだろ。」

「……それもそうだな。」

「というわけ。……で、ここからが取引だ。」

俺は気を引き締める

「ここからは俺は一条夕貴じゃなく、本田夕貴として話す。」

「……どういうことだ?」

「俺は集英組から破門されているんだよ。父さんと母さんの合意の元ある人の養子なんだよ。つまり一条夕貴というのは昔の名前で、今は本田夕貴なんだ。まぁ、母さんと父さんの希望で一条夕貴のまま、いるんだけど戸籍も今は本田夕貴として通っているんだ。」

そう。今正式には俺は

「……」

「まぁ、ぶっちゃけると俺は警察、正式には自衛隊かな?そこで特殊任務第一部隊隊長をやらせてもらっている。」

「なっ?」

「ついでにこれが証明書。警察手帳だけど階級は警視。まぁ、これ以上はもう上がらないんだけどな。」

と焦茶色の警察手帳を見せる。本田夕貴と書かれており偽物ではなくちゃんとしたものだ。

「……これをお嬢は?」

「知らない。楽も友達にも知らせていない。ってか裏の世界に足突っ込んでいるんだ。話せる訳ないだろ?」

それだけで危険になるし、なによりも二次災害につながりかけない

「……それもそうだな。」

「んで、話戻すぞ。まぁ、簡単な話だ。他の組員の奴らあんたは桐崎の他に俺の知り合いの安全を守ってほしいんだよ。俺と一緒にな。」

「どういう訳だ?」

「腐ってもヤクザの息子ってこと。俺も結構トラブルメーカーで彼奴らが知らないところで結構被害にあっているんだよ。俺だってトラブルに遭うしこれのことで街から離れる時がある。その時に彼奴らの身柄を抑えられたら最悪の自体になる。楽は裏の世界に足突っ込んでないしな。生憎俺らと見てる世界が違うんだよ。俺だって生きるために人を殺したこともあるし、裏切ったことだってある。」

裏の世界は血生臭く汚く騙し合いの多い世界だ。楽や桐崎のような優しい友達を失くす真似だけは絶対にしたくない

「その世界を見させる訳にはいかないんだよ。彼奴らには。俺のことを友達と思ってくれるんだ。せめて彼奴らの前ではダメダメでだらしない一条夕貴でいたいんだよ。」

せめて俺は学校では完全ダメ人間として通っている。でもそれができるのは高校までだ。

「もちろん。見返りも用意してる。まずは日本にいる間はビーハイブの警察は戦争行為及び一般市民、警官に手を出さなければ絶対に手出しはしない。」

「なっ!」

鶫が驚いているが

「当たり前だろ。まぁ、簡単にいうと一般市民を守るという善良な行為をする訳だ。多少裏で何しようとも見逃す。それにヤクザやギャングは減ってくれた方がありがたいしな。麻薬組織の取引が最近増えてきてるせいでさらに緩和されてきているのが現状だしな。」

最近じゃ海外からの違法ドラッグなどの組織を潰すのにも時間がかかる。

「……さらに鶫誠士郎経由で警察の情報を少し流してやる。取り締まり場所ぐらいだけどな。まぁ、これだけじゃ見返りの方が多いから条件を付け足すけど。」

これまでが俺が出せる最大級の条件だ。

「……聞こう。」

「一つ目、この学生及び一般市民にビーハイブは手を出さない。まぁ俺や楽のことだな。二つ目この条約はビーハイブ側はボス、アーデルト・桐崎・ウォグナーと鶫誠士郎、そして桐崎千棘、警察側は本田夕貴、本田忍、警察総監、橘厳だけの秘密であること。」

「クロード様に伝えても?」

「ダメだ。なんで戦争を吹っかけた奴らに伝えないといけないんだよ。ニセコイ関係を知っている奴だけだ。まぁ警察から流す情報は俺の名前を伏せること。……俺がこっち側の人間とバレたらわかるだろ?」

必ず戦争がおこるしな。

「後は俺と桐崎の関係を助けること。戦争が起こったら元も子もないし。」

「それは元より協力するつもりだ。」

「ならいいけど。それともう一つこれは俺からのお願いかな?」

「なんだ?」

「鶫誠士郎は桐崎千棘の一生を共に過ごすこと。つまり任務や桐崎の護衛であろうが死ぬな。」

「……は?」

鶫が呆気にとられているがこれが一番大事なことだ。

「桐崎のことを多分お前が一番分かってやっているんだと思う。俺よりも何倍もな。桐崎のことを大事なのも分かっている。でもなお前が桐崎を大事に想っているように桐崎だってお前のことを心配しているんだよ。」

「……そんな訳」

「……あるに決まっているでしょう。」

するとやはり盗み聞きをしていたのか桐崎が屋上のドアを開ける。

「遅えよ桐崎。」

「うるさいわよ。ってかあんたメールで10分後に設定したのって。」

「いいタイミングだったろ?」

俺は笑ってしまう。

「まぁ後は二人で話をしろ。返事は後から聞く。以上だ。」

俺は屋上から立ち去った



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ジツリョク

「それで条約を結ぼうと思うのだが。」

「……」

放課後帰ろうとしたら鶫が俺のところにくる。話の内容から条約の件だと分かったので屋上に出ているのだが開口一番にそう言われた

「……別にいいけど。早いなもう少し渋ると思ったが。」

「ボスから確認済みだ。……それと一条夕貴について教えてもらったのだが…」

「なんだ?」

「いや。さすがに信じられないのだが、麻薬組織をこの二週間で五つ潰しているというのは本当なのか?特に焼売会は中国でも名の知れた大物だぞ?」

と言っているけど実際のところ事実なんだよなぁ

「……本当だよ。まぁそのうち三つは焼売会の配下。大元を吐かせる為にちょっと眠らせただけだけどな。睡眠薬入りの煙玉を使っただけで捕縛できたし。」

「…煙玉?」

俺はもしもの為使う筈だった丸い玉をポケットの中から取り出す

「これの事だよ。無効化にするにはいい方法だぞ。俺はなるべく殺さずに捕縛して罪をちゃんと背負わせるのが俺の仕事。俺は未だに人を殺すと体調を崩すし……人を傷つける行為はしたくないからな。」

未だに人を傷つける行為にはかなり抵抗がある。

「……そうか、でもこれどう使うんだ。」

「地面に思いっきり叩きつけるか紐に火をつけるだけだ。元々花火の応用だからな。」

と嘘を言っておく。昔からあった技術だが使われるとなるとやっかいだからな。

「それで条約の件なのだが、どうすればいいんだ?」

「ん?そんなん口約束に決まってるだろ。証拠残ったら両方破滅するからな。」

「……」

鶫はビーハイブから俺は警察から除名される可能性がある。それなら口約束にしておいた方がいいのだ。

「……それにお互い書類で契約したって裏切られる時には裏切られるんだそれだったらお互いに見張っておく方が安心だろ?」

「それもそうだな。だが一条夕貴はなぜこんな危ない役をやらされているんだ?」

「ん?危ないか?」

「いや、危ないだろうこの案件とかかなり危険だぞ。最悪期限が過ぎれば殺される可能性だって。」

まぁ鶫が言いたいことは分かるのだがでも俺にはそれよりも大切な依頼がある

「大丈夫だよ。俺が今無性でやっているビーハイブと集英組の戦争を止めることに関連してるからな。」

「そういえばそうだったな。……なるほどそういう条件を突き付けているんだな。」

「……まぁ依頼のうちにお前ブラックタイガーの無効化が今まで受けた依頼の中で二番目に高かったな。一番はヤクザ通しの戦争を一部隊で止めろって言う馬鹿げたもんだったけど。」

その依頼が確か40億とかいう破格の値段だったな

「ほう。報酬もあるのか?その前にだが戦争を一人で止めるってその依頼無茶すぎるのでは?」

「自衛隊専用ヘリで催涙弾を数発放ってから睡眠薬を撒き散らしたんだよ。あの時住民の避難とか情報操作とか大変だったんだからな。」

あの時夏休みで合宿とかなんかで誤魔化したけどあれはかなり大変だった記憶がある。

「……無茶苦茶だな。」

「これが唯一の無効化方法だったからな。殺したらまた面倒なことになるし。」

「考えているんだな。」

「これでも学年主席なもんで。」

「……関係ないと思うが。」

まぁ冗談だけども

「まぁ。一応これでも自衛官の中でもかなり危険な仕事をしてるし慣れっこなんだよ。俺の隊は優秀な奴らしか入ってこない最強部隊って自衛隊では有名だからな。給料もいいし待遇もいい。……まぁ俺は訳ありでお金を集めているからな。少々危険でも引き受けてるんだ。」

「……」

「まぁ、基本は裏の世界に関わっている暴力団組織や麻薬販売組織の壊滅や資金源を根絶やしにすることや、または情報収集及び情報工作が俺の裏の仕事だ。」

「それを私に話してどうするんだ?」

「いや、さすがにあんたのことは知っておいてこっちの情報を漏らさないのはフェアじゃないだろ。短くて3年は結ぶ条約の相手だぞ。得意な武器、できることやできないことの情報交換はしといた方がいい。てか桐崎と楽を守るにはそうするしかないんだからな。それに裏切ろうにもそっちは桐崎と鶫、こっちは俺と楽と友達が人質になっているんだ。……一つ破ったら戦争が始まるし裏切る可能性は低いと判断した。それだけだ。」

「……なっ?」

「気づいてなかったのかよ。ニセコイ関係を知っているということはその時点で一つ過ちを犯しただけで戦争に繋がるんだよ。……俺だって逃げれるもんなら逃げたいぞ。今回お前を引き入れるのだって一つの賭けだったし。桐崎も他のみんなも気づいてないが、それぐらいこの関係は賭けなんだ。または戦争を止める場合殲滅させるぐらいしかな。」

「貴様ならそれができそうだな。」

と多分冗談で言っているのだろうが

「できるな。少しコストが嵩むけどそれでもできるかできないかと言われたらできる。」

「……冗談で言ったつもりなのだが。」

「知ってる。でも、見つからずに忍び込み薬品を撒き散らせば簡単に殲滅できるぞ。今じゃスナイパーライフルという勝手的な武器もあるし薬品を周囲に撒き散らすことなんて安易だぞ。届けば最後、情報を漏らすようなバカはしないし何より漏れたとしても臨機応変に対処できるしな。それに、伊達に最強部隊の隊長を名乗ってねぇよ。」

するとビクッと鶫が反応し銃をこっち側に構える。それもそのはず。今まで弱そうに見えたのに急に強いと認識したからだろう。しばらく経ち急に驚いたようにこっちを見てそして銃をしまう

「……すまない。」

「別に今のは反射的だろうから仕方ないさ。こういう風に弱そうに見せるのも才能だよ。」

「……」

「……忠告だけしとくぞ。俺はお前より強い。自惚れでも虚言でもねえ。事実だ。それを忘れんな。」

努力もかなりしてきた形跡があるけど、それでも俺よりはまだ弱い。

「……そのようだな。私もまだ死にたくはないしやめておく。それにお嬢が貴様に話があるらしいからな。」

すると冷や汗が出てくる。自分の勘はよく当たる方であるので……説教だな。

「……なんか嫌な予感するけど俺が悪いか。黙って叱られよう。」

「叱られることは確定なのだな。」

呆れたように鶫は俺を見る。

「俺は怒られるのがデフォルトなんだよ。今も昔も変わらずにな。」

「…それはどうかと思うが。」

「いいんだよ。少しくらいなら。……叱られるっていうのは見てくれているということ。悪いことではないからな。どちらかというと泣かれる方が結構くるもんがあるけど…」

泣かれるとどうすればいいのか分からないって感じだしな。

「泣かれるのは苦手だよ。今も昔も変わらずに…」

「……」

「んじゃ。桐崎のところ行ってくるわ。後過保護だけはやめてやれ。あいつの長所は元気で活発な性格だ。多少危険だけど、下手に関わるとあいつの長所全部消えるぞ。」

「余計な御世話だ。」

「んじゃな。」



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オミマイ

あの後鶫たちの交渉や警察での対応、桐崎に黙っていたことを怒られたなど色々なことがあった週末

ピピッと温度計を抜くと

「……マジかよ。」

38、8度

「兄貴寝てた方がいいぞ。てか兄貴が風邪引くの珍しいな。」

「まぁ、色々あったし疲労だろうな。悪い。布団の中で寝とくわ。」

「あぁ。おかゆ作っておくから。」

「悪いな。」

そして楽が出ていった後に俺は一旦メールを送る

今日は桐崎との定期デートの予定だったのでデートの中止を言っておいた。

そして送り終わった後に俺は布団に入り本をとる

本当は今日行くはずだった遊園地などのレジャー施設や食事どころが書かれている本だ。

……はぁ、桐崎には悪いことしてしまったな

俺は少しだけため息を吐く

もう最近はあまりにもやることが多すぎて俺は少しだけ参っていた

仕事に恋人のフリなど様々なことでトラブルにあってたしな

だから普段の生活をおろそかとするのはな

まぁ、俺の事情に付き合っているわけだし

少し読むと桐崎が好きそうなアクション系の奴やジェットコースターなどの楽しそうなものが書いてある。

「……はぁ。バカらし。」

案外楽しみにしてたのは俺だったらしい

てか友達とどこかに出かけるって本当楽と集以外本当にないんだよな

それに最近は桐崎も鶫に付きっきりだし

てか友達とどこかに出かけることが最近は普通になってたんだよな。

そういえば。

と思い俺は通帳を見る

俺は通帳を見るとそこには14190892000の文字

もうそろそろ潮時かな

俺はいつも通りの場所にしまうと少しだけ苦笑する

最初は自律するために始めたバイトもこれでもう九年になる

小学四年からは本業に入り麻薬取引の調査や暴力団の殲滅、諜報や隊長として精鋭部隊を育ててきた

この仕事が最後だな

桐崎とのニセコイ関係を最後に自分の道に進もう

これで裏世界と関わりは立てないと思うけど

少しは普通の学園生活を送りたいし

てか最初は100億を目標に稼ぎ始めたんだよな。

100万以上する依頼をこなし大規模な暴力団やギャングを取り締まっていた。

……それも結構簡単だったけどな

毎日一日に数億稼げたこともあったし案外細かなバイトや10人の精鋭を育てるのに結構報酬が高いんだよなぁ

……あそこまだ残っているかな。

十年前の思い出の場所。あの家だけはどうしても買っておきたかった

……俺が未だに十年前のことを一番囚われているんだ

「……みんな忘れてしまったのにな。」

するとインターフォンの音が聞こえる

「……楽出て。」

言葉を発すると疲れが溜まってるのがわかる

しかしおかゆを作っているのかわからないが楽は玄関に出る気はない

仕方ないけど出るか

俺はフラフラした足取りで玄関へと向かう

俺はあまり風邪や疲労にならないがなった時の症状が重い

だからあまり出たくないんだけど

そんなことしながら俺は玄関へと向かう

「はい。どな」

「ちょ、あんた大丈夫?」

すると、桐崎が慌てたようにこっちを見る

「……大丈夫に見えるか?悪い。ちょっと無理してきてるから。」

「……あぁ。もう掴まって。」

「悪い。」

「って熱っ!何度あるのよ。」

「38、8℃。」

と桐崎の肩を掴まる

「……あんたねぇ。楽か誰か家の人に頼りなさいよ。」

「楽は多分おかゆか家のもんの料理作っている。んで父さんは外出中。」

「それじゃあヤクザの人たちは?」

「……俺は仲悪いんだよあいつらとは。」

「……そうだったわね。そういえばあんたの部屋ってどこよ。」

「そこだよ。玄関から一番近い部屋。」

そうしながら俺は指を差す

客間の向かい側であまり人目のつかない位置を指す

そしてフラフラしながら俺は部屋に着くと布団へ座り込む

「……きつ。」

「……あんた本当に大丈夫なの?」

「まぁ、年に一回あるかないかぐらいだし、それにただの風邪だ。別に死にはしないしどうってことない。」

「……そう。」

と部屋の隅に座る。

「……はぁ。全くあんたもついてないわね。せっかくの休日なのに。」

「まぁな。ってか日頃の行いが悪いからこうなるんだよ。」

「日頃の行いがひどいって認めるんだ。」

「認めるからこうなっているんだよ。」

俺は少しだけため息をつく

「……ってか楽何してるんだよ。あいつおかゆ作っておくってあっ。」

「何よ。」

「……そうだ。楽出かけること忘れてた。」

「……はぁ?」

「いや。今日生物係の餌買いに行くとかで出かけるって昨日言ってたわ。そういえば作っておくって言ってたな。」

それで宮本と一緒に強制的に小野寺と行かせるように仕掛けたんだったよな。熱ですっかり忘れてた

「……あんたね。はぁ仕方ない。私がつく。」

「……お前料理できないだろ?」

前の調理実習で料理ができないのはあからさまだった。

「……はぁ。どうせ氷嚢変えようと思ってたし台所行くか。」

「……あんたさっきのこと忘れたの。仕方ないから私がおかゆ温めてくる代わりに氷枕持ってきてあげるわ。」

「ん。なら頼む。」

と俺は布団にくるまり暖をとる

てか俺かなり重症なんだろうなこれ

しばらく待つと

「できたわよ。」

と容器を持った桐崎がいた

「ん。サンキュ。」

そうして手に取る一口食べる

うん。やっぱりおかゆだ

そして全部食べ終わった後、薬を飲む。

「そういや。見舞いありがとな。いうの忘れてたけど。」

「あっ。うん。いいわよ別に。」

俺はただ熱を顔に帯びながら寝転ぶ

「そういえば鶫は?あいつのことだから休日はお前につきっきりもありえると思ったんだが。」

「なんか用があるらしいわよ。ここでの拠点を買いに行くらしいわ。」

「あ、お前んちで住むわけじゃないんだ。」

「そうよ。あの子だけ特別扱いするわけにはいかないのよ。」

「そっか。でもお前にとっては特別なんだろ。鶫は。」

すると桐崎がこっちを見る

「お前がこんなに構うのって結構珍しいだろ?最近つきっきりだし。お前って案外わかりやすいからな。だからお前にとって鶫のことを信頼しているのはよくわかるよ。」

実際に色々連れ回して日本に慣れさせようとしているわけだし鶫にも日本での学生生活を楽しんでほしいんだろう

と話していた最中だったがあくびが出てしまう

「……悪い。眠いから寝させてもらっていいか?」

「……別にいいわよ。」

「ん。今日はありがとな。」

と俺は一言お礼を言うと目蓋をとじゆっくりと眠りについた

 

高原の中に一人ぼっちで歩いていた。

どこを探していても、らくがいない。

「らくー、どこいったんだよ。」

と旅行先で勝手にどこか遊びにいくのはぼくの役目だった。

夕陽が沈む時間ずっと歩いて疲れている。

「……はぁ」

とさっきから同じ風景ばっかしだった。

ねぇどうしたの?

と女の子の声が聞こえる。見るとぼくより小さいけど明るそうな子だった。

「弟を探しているんだよ。えっと元気な男の子知らない?」

「えっとらくのことかな。知ってる私の家に遊びに来てるよ!」

「うんそうだよ。ぼくは一条夕貴。らくのお兄ちゃんなんだ。パパから楽を呼んできてって言われているんだ。」

「私は○○だよ!じゃあこの言葉の意味を教えてくれたららくのもとにつれていってあげる!」

と笑って言う少女。そして笑って少女が言う。

「ザクシャ イン ラブって知ってる?」

 

「……」

目覚めは最悪だった。時計を見ると深夜0時もう夜中だ。

自分の汚い部屋はもちろんのことだが、俺は今みていた夢を思い出す。

「なんでこの夢を今見るんだよ。」

と叫んでしまう。あの女の子と初めてあった思い出。俺にとったら悪夢でしかなかった。

俺にとったら、初恋は地獄だった。だから俺はあのときずっと弟のことが好きな女の子にコイして失恋して告白もせずに別れた。

しかも最後の言葉はまたね。楽みたいにちゃんと物で残っていたらいいけど、もし覚えていたら奇跡としかいいようがない。

「ゆう坊っちゃん大丈夫ですか!!」

と竜たちが急いでくる。すると少しだけ落ち着いた。

「すまん、起こした。大丈夫だ。」

と頭にのっていたタオルで冷や汗をふく。んタオル?

「竜、お前ずっと看病してくれたのか?」

「看病していたのは桐崎のお嬢ちゃんですぜ。」

「……えっ?」

「夜遅くまで濡れタオルをずっと変えていましたよ。さすがに九時回ったら帰りましたけど、」

……あいつ。

「本当にいい彼女をお持ちになりましたね。」

「あぁ、俺にはもったいないくらいの彼女だよ。」

と俺は寝転ぶ。

「……あのバカ。」

熱よりも熱くなった顔を見られたくなくてそれでも覚めた目えおどうにかするためにデート用の雑誌をとる

……案外俺は誰よりも単純だと思いながら

 



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トラウマ

「はぁ。」

「……何人の顔見てため息を吐いているのよ。」

と桐崎と下校しているとき俺はため息をつく。とはいうものの

「明日から林間学校だろ?」

「……そうなの?」

「そういやお前俺でさえ起きてた林間学校の班決めにお前寝てたな。あまり山好きじゃないんだよ。」

「それって面倒くさいとかの理由でしょ?」

「違う。……ちょっと昔野犬に噛まれてな一週間くらい寝たきりだったんだよ。それが山だったからな。それに洞穴に落ちたやつ助けようとしたら助けられたのはいいんだけど二次災害くらって俺が洞穴に閉じ込められたり山に関したら嫌な思い出しか残ってないんだよ。」

「……あんたどんなことがあったらそんなことになるのよ。」

「知るかよ。ってことで余り気が乗らないんだよ。……あんたのとこの、メガネも警戒しないとまずいし。」

「なんか色々考えているわね。」

「元々考えて動くタイプの人間なんだから仕方ないだろ?」

俺はため息をはく。最近ため息増えてるな

「そのまえにあんたは大丈夫なの?警察の方は。」

「あぁ、もう仕事は全部打ち切ったし、最低限しか関わってないさ。まぁ薬品系は数個自衛用に持ってきたけど。」

「本当に大丈夫なのね?」

「大丈夫って。ってか近い。」

顔が近くまで近づいてきたのでドキッとしてしまう

「…ってか、元々家から出たかったから、少し自暴自棄の時期があったからな。もうそんな無茶はしないっつーの。」

「……そう。」

「俺ってそんな信用ないのかよ。」

と俺は頰をかく

「……はぁ。でも明日大雨かなんかで中止になってくれないかなぁ。」

「物騒なこと言わないでよ。」

と呆れたように言っているけど

どこか俺を心配しているような気がした

 

「……マジか。」

「大丈夫か?兄貴。」

「これが大丈夫だと思うんなら医者に行けって言った方がいいぞ。……ってかなんで山なんだよ。」

がっくりと肩を落としてしまう

「まぁ、なってしまったのは仕方ない。絶対に用心深くいかないと。」

「……トラウマって相当しぶといんだな。」

「お前も気をつけろよ。もしこれが女性関係だったとしてみろ。一瞬で昼ドラの世界へ待ったなしだ。」

「想像したくねぇよ。」

と適当に雑談していると学校につく

するともう多くの人が集まっていた

「おう。一条兄弟。」

「あれ?ゴリ沢早くね。」

と楽は軽く男子集団の中に入っていく

あぁ、いうところは俺にはないからなぁ。

「羨ましいのか?」

「……まぁな。」

集だと分かっているからこその弱音を吐く。

「ゆうももうそろそろ自分を許してもいいんじゃない?もう7年も前のことだぞ。」

「……そうしてぇけど。それはできないって言っているだろ。もう体が拒んでしまっているしな。」

元々不幸体質を持った俺だ

人には近寄らない

俺に関わってきた人は災難にあう。

いつしかその考えは俺をとりまいてしまい

……いつしか俺のトラウマになっていた

「……そっか。」

「あぁ。」

「まぁ、俺がどうこう言うのは筋違いだとは思うけど、小野寺や桐崎とはうまくやっているじゃん。楽以上に真面目なゆうなことだから余計なことは考えているんだと思うけど……」

「お前に真面目っていわれるのはそれこそ筋違いだろ。俺以上に真面目なお前にとっては。」

「……なんのことかな?」

「バレバレだ。アホ。いい加減幼馴染なんだからすぐにわかる。それに言いたいこともな。」

「まぁ、俺とゆうってどこか似ているところあるしね。」

「不本意ながら認める。」

俺はため息を吐く

本当に人に悩み事を相談してなかったり、本来の自分を見せていないところは似ている

「そういや、桐崎たちは?」

「桐崎さんならさっき頭を抱えていたけど…」

悩み事か?あいつも溜め込む癖あるし少しの間は注意しとくか

「……なるほどな。幼馴染ってこえぇわ。」

すると集がそんなことを言い出す。

まぁ、お互いに何を考えているのか深読みする癖を俺も集も持ち合わせている

そんなこと話しているとバスに乗る時間になる

「そういや、あの席順どうりにしてくれたか?」

「もちろんですとも、旦那。しかし、旦那の考えることは面白いですなぁ。」

「まぁな。少しばかり面白いことになりそうだろ?」

ニヤリと笑うと俺は先に乗り込む

俺が選んだ席順は

桐鶫楽小宮

女女 集俺

となっていた。

すると席に乗り込むとどんどん乗り込んでくる

そして席になって気づいたらしい宮本が親指を立ててこっちを見てくる

それもそのはず。宮本が面白いといじっている小野寺と鶫をおもちゃにできるのだ。

精一杯楽しんでもらおう。

 

学校を出てから約一時間半

「着いた!!」

と元気そうにしている桐崎と

「……」

疲れ切った楽と小野寺と鶫、そして

「……気持ち悪。」

乗り物で酔った俺がいた

「ゆう。大丈夫か?」

「大丈夫。このために昨日の昼食以来何も食ってないから。」

「それ大丈夫じゃないでしょ。」

宮本のツッコミに俺はぐったりしながら真実を告げる

「……俺これ帰りの方が地獄なんだけどなぁ。食事とかしっかりととらないと行けないし。」

「……」

「まぁ、普通の道なら大丈夫なんだけど……カーブが多いとなぁ。」

車酔い普通はしないんだけどなぁ

ジェットコースターに乗っても大丈夫なのに、なぜか山道のバスだけは酔うんだよなぁ

「なんか、前から思ってたけどあんた山に来ると極端に運悪くならない?確か、中学校の林間学校でも体調崩してたわよね?」

「それに野良犬がオリエーテーション中の弁当を取られてよな。」

「あぁ、それでその時同じ班だった小野寺の弁当を分けてもらって食べたんだけど、気がついたら医務室で寝てたんだよ。……今になってから分かるけど、あれ完全小野寺の料理が原因だろ。」

あの楽が意識をなくすほどの料理だしな

「そういや、桐崎さんも料理できないんだよね?」

「あぁ、……あの黒焦げケーキは記憶に残っているだろ?」

「そういえば、この後に野外炊飯があるんだけど……」

すると三人で顔を見合わせる

……これはまずいな。

「……俺嫌な予感しかしないんだけど。」

「俺桐崎さん見てくる。」

「小咲が料理しないか見てくるわ。」

「俺も行く。……さすがに死にたくないし。」

小野寺の料理は真面目に危ないし桐崎からも同じ匂いがする

この時初めてこの三人が一致団結したのだった。

 

「…おぉ〜〜!!ここが今日俺たちが泊まる部屋か〜〜!」

集が部屋に入ると感嘆の声を上げる

まぁ、その気持ちも痛いほど分かる

「これ林間学校で使うような施設じゃねーだろ。」

俺の言葉に楽も頷く

そこには旅館意一部屋という豪華な施設だったのだ

とりあえず荷物を下ろす先を決めて荷物を下ろす

「あぁ、疲れた。」

「本当に疲れたわ。」

と俺と宮本はすでに疲れていた。と言うものの俺と楽中心でカレーを作り、宮本はその間その代わり薪などの重作業及び桐崎と小野寺の監視をしていたからだ。

「しかも、俺今日風呂一人ぼっち確定だしなぁ。」

「あれ?そうなの?」

「くじに外れて明日の肝試しの予定コースの見回りに行くことになっているんだよ。俺実行委員だし。危険がないようにキョーコ先生と一緒に。だから俺だけ男子と女子の入浴時間から20分離れているんだよ。」

「……あなたどれだけツキから見放されてるのよ。」

と呆れた様子の宮本。まぁ、くじも外れたのはそうだが、元々俺はみんなとは一緒の風呂にははいれない。

「ってか、本当に山に来た時の兄貴の不幸は見慣れたよな。」

「本当に嫌になるさ。今日も誰かさんのおかげで制服に水かけられて、この姿だし。」

「うぅ。」

と小野寺が少し俯く。とは言うものの水汲みを小野寺に頼んでたら持って来た時に石に躓きバランスをくずす拍子に容器を俺の方に投げ制服が水浸しになった。だから今制服は乾燥室で乾かしているので俺はジャージ姿だった

「ちょっと。夕貴。」

「いいんだよ。こいつ前にも楽に同じようなことしてたし。」

「あの時は確か。」

「わ〜わ〜言わないでるりちゃん。」

と楽は寒気で震えていて、小野寺は必死に止めようとしていた。

「確か宮本と、ゆうって結構付き合い長いんだよな。」

「中一から同じクラスで学級委員やらされてたしな。」

「本当見た目だけで決められるのはやめてほしいわ。」

げんなりする宮本

「やっぱりそう言う経験があるんだね。夕貴くんは?」

「うん?内申上げるためだけど?知り合いからやっといた方が役に立つって言われてたしな。」

「……何で内申気にしているのに授業は寝ているのよ。」

「別に。あそこって成績重視だしなぁ。それに凡矢理入ったのも俺簡単に推薦取れるとこ選んだから。」

「……あなたって本当イライラするわね。」

まぁ、宮本と俺って真反対の人種だからなぁ

「でも、るりちゃんと夕貴くんってよく話しているけど。」

「まぁ、人生色々あるんだよ。」

「……年寄りみたいだな。」

「ニセコイ関係やらされている時点で俺たち普通おかしいからな?」

「まぁ、そうだね。」

鶫もニセコイ関係をしっているのでこの班は全員知っていることになる

「……でも鶫が話が分かるやつでよかったわ。あんたがいなければ私家で休まる隙がないんだもん。」

「当たり前だろ。前にあった時も桐崎のことしか考えたことのない桐崎脳の鶫だぞ。」

「……なんかすごく馬鹿にされたきがするんですが…」

「……気のせいじゃ無いと思うわよ。」

「誠士郎ちゃんにとったら褒め言葉だと思うから皮肉じゃない?」

「集当たり。」

と雑談していた時、

少しだけ自分の発言の凡ミスに気づいたが誰も気づいていないらしい。

……本当危ないな

俺は少しだけ冷や汗をかく

「ごめん。集合時間なったら起こして。ちょっとまだ気分悪いし。」

「わかったけど……あんた大丈夫なの?」

「兄貴大丈夫か?」

「いつものことだから平気だって。んじゃ。お休み。」

俺は寝転ぶ

…そういつものことだから

そう言い聞かせながら俺は眠りについた



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クラヤミ

「ふぅ。」

と一人真っ暗な風呂の中で俺はただ一人で息を吐く

……やっぱり集団行動は苦手だ

疲れがたまり、少しばかりため息をつく。

まぁ俺は元々人付き合いがうまいわけでは無い

だからこそ困っているわけであって

無自覚に人を傷つけることなんてしょっちゅうだ

友人たち

そして幼馴染

どれも大切な人たち

裏の俺を知らない人の方が多いだろう

闇の中で一人か

なんかものすごくおれらしいな。

そんなことを思いながら風呂に入っている

するとズキッと古傷が痛む

……一度楽が攫われた時に銃を撃たれ俺が被弾したところだ。

楽はショックで記憶をなくしているが、その時俺は手術後警察病院の除菌室に入るほどの大怪我を負った。

……そのことを未だ思い出せないんだよなぁ。あいつ

俺が闇であいつが光

知らないことなんてたくさん互いにあるだろう

でも、それが俺たちにとっての普通だからな

「……普通か。」

俺はただ一言だけ言ってからため息を吐く

普通ってなんだろうな

 

「……腰いてぇ。」

「悪い。さすがにゆうがいるとこだったら自重するべきだった。」

と集が謝ってくる

と言うのもミノムシ状態で昨日は意味不明に寝ることになったからだ

「えっと、とりあえず兄貴、昨日から不幸ばっかじゃないか?」

「……いつものことだろ。」

「しかも、ほとんどは俺らが原因なんだよなぁ。」

昨日から本当に散々なことになっている。

「てか俺今日桐崎寝坊しているから起こしに言ってほしいと鶫と一緒に起こしたらなんか殴られるし本当なんなんだろ。」

「……それはゆうが悪い。」

俺は集の言葉に苦笑してしまう

「まぁ、女子の部屋に普通男子はいないからな。まぁ仕方ないんだけどさぁ。」

「いや、そうじゃないと思うけど。」

「じゃあどういうことだよ。」

「……流石の俺でも分かるぞ。」

楽の言葉に少しだけキョトンとしてしまう

「……まぁ、いいか。」

「いいのかよ。」

「それよりも楽は今日の肝試しのペアお前ら誰となりたい?」

「そういえば夕貴は運営だったよな。」

「あぁ、一応見回り。」

「うわぁーこんな女の子と仲良くなるチャンスなのについてないな〜ゆうは。」

と集はそんなことを言っているけど

「そんなことより集は誰と組みたいんだよ。楽は分かりきっているけど。」

楽は小野寺一択だろう

「そういえば兄貴。」

「ん?」

「ちょっと後から聞きたいことあるんだけどいいか?」

「……別にいいけど集いないといえないことなのかよ。」

「ちょっと桐崎関係で聞きたいことがあるんだけど……」

「悪いけどしばらくは無理だぞ。俺実行委員プラス今日は桐崎の機嫌取りで忙しいと思うし。」

「……桐崎さんはあまり怒ってないとは思うけど。」

「それでも悪いことをしたのは間違いないだろ?。ちゃんと謝らないと流石にダメだろ。」

「……変なところでくそまじめだな。」

「うっせ。ほっとけ。」

そして少しだけため息を吐き少しだけ吐き出し、俺は少しだけ窓を見る

少し曇り空の曇った空に不安を隠せなかった

 

謝る機会をずっと探っていたというのだが

「……なんでこんな時だけ忙しいんだよ。」

俺は真夜中の森の中でため息を吐く

夜の肝試しの準備に追われ桐崎の近くにいけないし、昼間は食堂の人が一人がギックリ腰で動けなくなり、ずっと料理とその人の仕事を引き受けることになったのだ

いやガチであの適当教師なんとかしてくれ。

困っている人を助けた後に俺が残って仕事を押し付けられた

てか反省文の代わりに労働とかひどくねぇか?

体調くずして寝込んでいたところを叱られてなんか理不尽すぎるんだが。

そして俺は今は夜間の肝試しの見回りをしているのだが結局今日は謝る時間がないだろう

「…はぁ。」

ため息を吐きながら見回っているとすると話し声が聞こえる

今頃第一陣がスタートしたとことだろう。女子と話しながら話している男子の声が聞こえてくる

……恋愛か

楽の姿を見たらよくわかる

楽しいんだろうか?

両想いの二人を見るとすれ違いが多いけど、どこか厳しそうに見える

10年前のあの旅行のことは俺は今でも覚えている

別れる男に、花の名を一つ教えておきなさい。花は必ず毎年咲きます

そんな言葉がある

たしか川端康成がそうしるしたはずだ。

とはいえ俺はそのフレーズは読んだことはないのだが

……本当に女々しいよな。俺。

一度あの子に俺は花の代わりに星を教えたっけ。

夏休みだったこともあり街灯もあまりなく星空が綺麗だった

……今でも時々見に行くぐらいにだ

星空だって一年のうち一度やってくる

それはとても切なく明るく光る星

デネブ アルタイル ベガ

夏の夜空を見上げるたびに思い出す

もう全員忘れてしまったらしいが、俺にとって思い出深いものだ

はぁ、行くか。

俺は空を見上げると星空が凡矢理よりも綺麗に見える満点の星空が目に映る

それを見上げながら森を一周すると

「あれ?ゆう?」

すると集が不思議そうに俺の方を向く

「おう。集。久しぶり。」

「久しぶりっていうほどじゃねーだろ。てかゆうって本当に。」

「いや、本当にやめて。自分が一番分かっているから。」

どんだけ不幸体質が積み重なってるんだろう俺は

「そういえば、桐崎さん知らない?」

すると集がそんなことをいいだす

「桐崎?いや知らんけど。てかお化け役が代わりの人出すって言ってたけどそこの場所にライトが光ってなかったから戻ってきたんだけどさ。」

「夕貴くん。それ本当?」

すると安達が焦ったような顔をしている

「あのな。一応見回り中だぞ。やすやす仕事をサボってまでこっちに来るわけないし。」

「……なんで中学校の時から変なところで真面目なの?」

「まぁ、優だし。」

「集、喧嘩売ってるなら言い値で買うけど?」

「……ってそれどころじゃない。実は桐崎さんがお化けの代役を桐崎さんに頼んだんだけど懐中電灯の電池が切れたんだけど。」

「……は?」

と俺は安達の方を見る

「うん。去年の電池が混ざっていたらしくて……。」

「悪い懐中電灯借りる。」

と俺は安達から懐中電灯を奪い取り走り出す。

あのアホ

暗闇が怖いくせに変わるんじゃねーよ

俺は一度マップ上を思い浮かべスマホで方角を見る

全速力で走りながら桐崎を探す

……そういえば昔こんなことがあったけ

あの時は楽が桐崎のことを助けたよな

俺はその当時少し前にあった桐崎が野犬に襲われて助けに行った俺と楽だが野犬は俺の方に三匹、楽に一匹集まり俺はなんとか倒せたものも全治2週間でほとんど動けなかった

……動けない。助けられないというのは本当に無力で、本当に虚しいものだ

……それも好きな人だったならば当然だ

「……ちっ。」

俺は最短ルートをひたすらに進み目的地につく

「ひゃう。」

と少し小さな声があがる

そこには俺が探していた座り込んで涙目の少女の姿があった

「アホ。泣くぐらいだったら引き受けるんじゃねーよ。」

「夕貴!!なんで?」

驚いたようにしている桐崎だが周辺をみると何もない。

「……いいから戻るぞ。お前立てるか?」

「えっ、うん。」

「…ほれ。」

と俺は桐崎の手を引くと桐崎は立ち上がる。

「……はぁ。戻るぞ。」

「…えっ?」

「いいから、これ以上やったってどうせお化け役を完遂することはできないだろ。それなら一度戻って報告した方がいい。」

実際もうこいつはできないだろうしここにいたところで無駄だろう

帰り道

「全く事故があったとはいえお前昔から暗闇が苦手なんだから迂闊に暗闇に一人になんなよ。」

と呆れながら俺は歩く。

こいつは昔から気を使わないように見えてかなり気にしている。

自己中心的に見えて実際のところは自己犠牲の塊

仲間想いで優しい性格だったけど、その分損することも多かった

「……ごめん。」

「別にいい。てかお前が悪いわけじゃないから謝るな。」

「……怒ってないの?」

「別に、怒ることじゃないだろ。別に。」

俺はため息を吐く

ただ軽く心配しただけだし

「……ふ〜ん。」

「なんだよ。」

「別になんでもないわよ。」

と言いながらも嬉しそうな桐崎

「そういえば桐崎。」

「千棘。」

「……は?」

「千棘でいいわよ。」

すると桐崎がそんなことを言い出す。

別にいいんだけどさ

「急だな。」

「別にいいでしょ。昨日お風呂でクラスの友達から言われたのよ。」

「まぁ、んじゃ千棘呼びでいいんだな。」

「……」

すると照れ臭そうにしている桐崎に少しだけため息を吐く

そうしながら話しているとすると広間に着く

「あっ!!千棘ちゃん。」

「小咲ちゃん。」

すると桐崎が俺の手を引っ張りながらってそういや手を繋ぎぱなしだったの忘れてた。

「お、おい桐。」

「……」

「……千棘手離せ。見られてる。」

「……別にいいんじゃない。」

「いや、多分俺今から反省文書かないといけないから。」

さっきからキョウコ先生が手をこまねいているし。

「んじゃ。また後でね。」

「あぁ。また後で。」

といい千棘は小野寺の元に走っていく

俺は今からキョウコ先生の説教と男子陣からからかわれる未来を思い息を吐いた。



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ラブレター

……はぁ、なんで俺が

俺はそんなことを呟く

6月になり蒸し暑さが増すと俺は倉庫の掃除を任されていた

はぁなんでこんなことに

と言っても父さんから言われたことだし無下にはできないしな

そして前お茶を取りに行った倉庫を掃除していると

「ん?」

古びたノートとそして手紙を見つける

俺はふと手を取りその手紙を見ると名前には

おのでらはる いちじょうゆうき

とかすかに消えかかっている文字で書かれている。

「……あっ。」

そういえばこれだけは俺は10年前のものは残していたんだよな

これは10年前に小野寺の妹とふとしたことから交換日記をすることになったんだよなぁ

俺はその1ページ目を見ると

「うわぁ〜読めねぇ。」

苦笑し文字はぐちゃぐちゃして読めない

しかし絵は綺麗に書かれており日記帳みたいなものが書かれている

次のページを見ると文字はそこそこ分かるが日記帳に書かれている文字は見える

どうやら日記は文字が綺麗な方は数ページ見る限りは俺、文字が汚い方が小野寺の妹らしい

でもどんどん思い出すことがある

どうやら桐崎の日記帳をみて春は日記を書き出したこと

鶫と初めてあってお嬢(桐崎)とお姉ちゃん(小野寺)の言い争いをした絵とそれを宥める俺の文

そして仲直りしたと思えば俺が怪我して鶫と一緒に看病をした絵

文字が読めなくても、絵が汚くてもそれでも思い出すことはたくさんあった。

……なんか久しぶりだな

懐かしさを思い出しながら見ていると

とあるページでふと目が止まる

それは今までの日記帳とは違い絵は描かれていない

「……」

それはおれにもはっきり分かる

文字も漢字で書かれておりそして綺麗な字で書かれていた

それはお互いの両親の名前と電話番号らしき番号が書かれていた

……まさかな

俺は少しだけ驚くがその電話番号をみると俺の家電の電話番号と一致する

……。

俺は少し考えそして手紙を開く

すると汚いがその手紙には一言だけ書かれていた

 

 

ゆうにいだいすき  おのでらはる

 

「……」

俺は手紙に書いてあった文字を見て何時間も固まってしまう

そういや、俺と春って一番近くにいたんだよな

基本は俺と春、そして時々鶫

それがいつものメンバーだったのに

「……バカか。俺。」

そんなことを呟いてしまう

そしてその手紙を閉じ日記帳をめくる

するとまた綺麗な字だった

多分英語?いやこれはポルトガル語か。

ポルトガル語や英語、フランス語は母さんがよく俺に教えてくれたので結構読める方だ。

簡単に見ていると母さんの筆跡であると分かる

それなら次は

するとお世辞にも綺麗な字とは呼べないけど多分小野寺の母さんだろう

というよりも英語で書かれていると勘違いしているのか読めないわよ。と怒りの文字が書かれている

いや、母さん昔から天然なのか

すると多分途中から書き始めたのであろう。中盤に書かれた事の詳細が書かれている

特に怪我についてはなぜか桐崎の母さんや父さんの謝罪についても書かれているし

「……」

無言で少し見ていると俺は少しだけ懐かしく覚える

そうしながらずっと見ている。

てかこの時代の俺らってかなりのごちゃごちゃしているな。

「なんか自分が関係していると複雑だけど。」

「何が複雑なんだ。」

「あぁ、父さん。」

と歩いてきた父さんがこっちにくる

「いや、久々にこれ見つけてな。」

手紙と日記帳を見せるとおぉっという

「それって小野寺さんの妹さんとやっていたものだろ。いや〜懐かしいな。」

「てかこれ古い方に入っていると思ってたんだが違ったのか?」

「いや、夕貴のものはなるべく新しい方に写すようにしているんだよ。楽以上に写真少ないからな。」

「うっせ。」

といいため息を吐くと

「そういや。俺って10年前周辺から見てどう思ってた?」

「ん?」

「いや、大体のことは覚えているんだが、ちょっと周りから見て俺ってどんな奴だったのかって思ってな。」

ふと気になった。

俺は昔は地味で泣き虫だったはずだから今の俺とは結構違うはずだが

「……いや、お前あんまり変わってないぞ。」

「……は?」

「いや、いつも楽のことを第一に考えて自分から不幸になっているところなんか母さんも俺もかなり心配しているんだぞ。桐崎の嬢ちゃんのときなんか楽は全治3日だったのに対してお前一週間は寝込んでいただろ?」

「……まぁ、そうだけど。」

「いや。あのとき本当大変だったんだったぞ。小野寺さんとこの妹さんは泣き出すわ。鶫ちゃんは何度もアーデルトの元に走って行ったんだぞ。普段地味そうに大人しくしているが楽よりも危なっかしく正義感が強いからお前は。」

「……」

少し頰をかいてしまう。褒められてもないのになんかくすぐったいような気がする

「……だからお前はいろんな所に目をつけられた。」

と父さんはそういう

「野犬9匹相手に小学生いかない小学生が倒せる方がおかしいんだよ。高スペックすぎるんだよお前は。」

「……」

「まぁ、そんなことよりその手紙がどうしたんだ?なんか嫌なことでも思い出したか?」

「別に。……ただ。」

俺はため息をつき

「10年前のことに向き合おうってことさ。」



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イッポ

「……ふぁぁ〜」

あくびをしながら俺は学校へと向かう

六月に入ると俺はまた仕事関係で色々忙しくなっていた

とはいうのも正式に万里花がこっちに来ることが決まったからだ

そうは言うものの警備関連は元からの約束であり、俺が元から頼んでいることだった

監視するのは忍さん

警備するのは俺の隊になっている

「……はぁ。万里花来るのか。」

俺がそんなことをいうと

「よう。ゆう!!万里花って誰?」

後ろから声をかけられるとそこには集がいた

「おはようさん。集。てか徹夜明けで頭が痛いから大声はきつい。」

「また、ゆう徹夜?最近多くないか?」

まぁもう3徹だしな。バイトの問題上仕方ない話だけど

「まぁ一番付き合いが長い親友だよ。父さん同士が仲よくて付き合いあるからな。」

「へぇ〜そういえばゆうが昔から遠くにいる友達ってその子か。」

「あぁ。んでちょっと許嫁に会いにくるらしくてこっちに来るんだよ。体弱いから結構心配だし。」

「そういやバイトの先の同級生ってもしかしてその万里花ちゃんって子?」

「そうそう。かなり可愛いけど怒るとかなりやばいぞ。それに……少しは楽に痛い目にあってもらわないと。」

「なんか。面白そうですな。旦那。」

理由は察したのかいい笑顔を浮かべる集に苦笑する

「そういや楽は?」

「寝坊。全く俺よりも遅いってどういうことだよ。」

「まぁ、そうだけど。楽が寝坊って珍しいな。」

「千棘の誕生日会でなんかあったんだろ。俺どうしても行かない用事があったからいけなかったけど。」

昨日、誕生日会があったのだが連絡を入れたところ万里花が試験前なので、どうしてもあっちに戻らないといけないのだった

まぁ元々の最重要依頼は万里花の護衛と世話だから仕方ないといえばそうなんだけど

「あいつ怒ってた?」

「まぁ、少し落ち込んでいたかな。」

「……まぁ、さすがに謝るか。一応バイトがあったとはいえ一度も顔を合わせないのは少しまずいとは思っているし。」

「まぁ、仕方ないって。急に知らせてくる誠士郎ちゃんが悪いだろ。」

なんか珍しく集が俺の擁護に回ってくるよな

「珍しいな。お前が女子のことより俺を優先するなんて。」

驚いていると呆れたようにしている集

「……そりゃ、お前今の顔鏡で見てみろよ。お前普段のお前より数倍にひどい顔をしているぞ。」

 

「おはよ〜。って夕貴あんたなんて顔しているのよ。」

「おはようさん。結構アルバイトがきつくて。」

「……あんたまた徹夜したの?」

呆れたようにしているが、仕事だから仕方ないだろ。

「バイトだよ。最近テストが近いから忙しいんだよ。……進級できるかの問題で。」

「あんたが教えて進級できないって。」

「一条兄って教えるのは凄く上手なんですよね。」

「うん。夕貴くんによく受験の時教わってたけど、物凄い分かりやすいんだよ。」

「私に日本語を教えてくれたのも夕貴だしね。」

そうか?俺あまり教えるのは上手くないと思うんだけど

そういや

「お前早速つけているんだなそれ。」

「……えっ?」

「いや、そのペンダント。あんまり俺らしくはないと思ってたんだけど。」

と俺が指差すとそこには白いスイートピーの花のペンダントがカバンについていた

「……悪い?」

「別にそうはいってないだろ。まぁ、後悪かったな誕生日会に行けなくて。」

「別にいいわよ。バイトがあったんでしょ?」

「……まぁそういってくれると助かる。」

とため息を吐くとチャイムが鳴り響く

そして授業がいつも通り始まった

なお楽は珍しく遅刻をしたのでキョーコ先生に怒られることになった

 

「……お前何しているんだよ。」

俺はバイトからの帰り道倉庫を整理している楽を見かける

「いや、兄貴の方こそ。どこから入ってきているんだよ。」

「いや。壁登った方が早いだろ?」

「それ兄貴だけだぞ。うちの壁3mはあるだろ?」

まぁコンビニに行って雑誌を買いに行っていただけなんだが。

俺はその中からお茶を取り出し楽に投げる

バイト代や小遣いも多少はもらっているので俺は楽よりも豪勢な暮らしができる。まぁ基本は夜食と本で消えていくのだが。

受け取ると少しだけ考えていたが楽は決意したように話す

「……そういや、兄貴。10年前のことって兄貴は覚えているか?」

やっぱりその話か。俺は少しため息を吐き苦笑する

予想はしていたが俺はその話を覚えている

というよりも忘れるはずがないんだ

俺はその日以来時が止まっているのだから

多分数日前なら知らないと言っていただろう

「10年前のペンダントだろ?んで桐崎と小野寺が持っていて混乱しているんだろ?」

「プッ。」

するとお茶を吹き出す楽に呆れてしまう

「……兄貴最初から分かっていたのかよ。」

「…分かるに決まっているだろ。ついでに小野寺も。一目で分かったし鶫なんかは最初から女子と分かってたし、小野寺には聞いてもいないのに妹いること知ってただろ。俺があいつらを知っている要素はいくつでも出てたんだよ。」

「……」

「お前ら揃いも揃って鈍感だからな。」

爆笑していると一通り笑った後真剣な顔になる

「それと、今は話すことじゃねーよ。」

「なっ。」

「というより詳しくは知らないんだよ。というより約束の相手は知っているけど俺がよくいたのは小野寺の妹と鶫だ。約束の中身も少しは聞いていたけど……」

「細部は知らないってことか?」

「細部っていうより……う〜ん今度転校生が来るからそいつに教えてもらえば。そいつも鍵を持っているはずだから。」

「へ?」

「鍵は4つある。そのうちのひとつしか開かないようになっているってことだけと言っていくぞ。」

俺は歩いて自室へと向かいスマホに帰ってきたメールを見る

 

来月の花火大会一緒にいきませんか?

 

もう何度も断りをいれていたメールに俺は苦笑する

普通なら諦めることで唯一俺の知っている人で俺が自衛隊に勤めている唯一の知り合いに返信のボタンを押す

俺はスマホを打ち

いいぞ。場所と時間だけ聞かせて連絡くれ。

とだけ送る。ぶっちゃけあまり女子とメールをしたこともないので簡潔に打ち込む

……まぁ少しこっちはこっちで動き出すか

俺はそんなこと考えながら、少しだけ資料を見る

そこには米国のギャングの大型殲滅作戦の依頼受理署名があった



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