ダイの大冒険 ~白銀のダークエルフ~ (菅野アスカ)
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原作前 転生しました
転生しました


色白もいいけど褐色もいいよね、というわけでダークエルフ。


別段幸福な人生というわけではなかった。

かといって、不幸な人生というわけでもなかった。

アイスのあたりが当たったとか、夏休みの宿題をさぼって怒られたとか、そういうちょっとした幸と不幸、たまに大きな幸と不幸が連なってできた、ありふれた、まあまあな人生だった。

 

そんな生活を送っていたある日、マンションの前を通りかかったら、上から布団が落ちてきて、小生の命をとてもあっさりと奪ってしまった。

 

小生は、死んだのだけど…

 

ふと気が付いたら、見知らぬ場所にいた。

真っ暗で、地面があるのかすらもあやふやで、けれどなぜか心地いい、不思議な空間。

 

「ここ、どこ?」

 

疑問を口にした瞬間、声がした。

 

【転生のための場所だよ】

 

女性の声だった。

 

「転生?」

【そう】

 

返事が返ってくると同時に、声の主の姿があらわになる。

 

黒髪に黒い目。青い眼鏡をしていた。

顔の作りは並と言ったところ。特別ブスでも美人でもない。

鉛筆を右手に、お手製らしき本を左手に持っていて、首に何かの羽入りの琥珀がペンダントトップのペンダントを下げている。

不思議なことに、年齢は、わからない。

特筆すべきは、背中に12枚の翼があるところだろうか。

 

「天使…?」

【あ、この姿のこと?いや、別にそういうわけではないんだ。ただ、中二心が爆発してしまった結果というか。ここでなら、姿、自在に変えられるからね】

「?」

 

【あー、言ってることわかんないよね。これについてて議論してるとらちが明かないから、本題に入ろうか。単刀直入に言うね。転生する気、ある?ドラクエのダイの大冒険の世界にさ】

「!?ある!!!」

【よし。あ、転生って言っても、赤んぼからやり直しじゃないよ。ある程度成長した姿で送り込むから。ところで、なんかほしいもの、ある?】

 

「特典的なもの?じゃあ…妖精の剣、雷神の槍、地獄のサーベル、安らぎのローブ、フラワーパラソル、黄金のティアラを。」

 

装備品の中でも、特にお気に入りなものである。

 

【よし、わかった】

 

目の前の女性が指パッチンをした途端、あやふやだった地面の感覚が消えた。

 

「!?あああああああああ!!!」

【行ってらっしゃーい♪…最後に、私の名前、言っとくね。私は…】

 

その声は、なぜか、とてもクリアに聞こえた。

 

【トナキチミラチトナノチ】

 

 

 

「…う…?」

 

生きてる?

 

「ここは……」

 

つぶやいて、立ち上がった、その瞬間。

違和感に気づいた。

 

まず、背丈。

前世の小生は、背が高めだった。だが、今は、少し低くなっている。前世の身長は172㎝だったが、今は165㎝くらいだろうか。

 

次に、髪と肌の色。

前世の小生は黄色人種らしい黒髪黒目で肌はうす橙だった。しかし今は、肌の色は夜の帳のような褐色で、髪はまるでそれに相反するかのような白銀だ。瞳の色は、鏡がないからわからない。どこかで泉とかみつけられたら、そこで確認しようかな。

 

次に、尻尾。

脚に何やらモフモフしたものが当たっていたからそれを手繰ってみたところ…尻尾だった。

前世の小生はもちろん、尻尾などない。待って、尻尾あるってことは人間じゃないわけ?獣人?獣人なの?

 

最後に…性別。

前世の小生は、いわゆる「性同一性障害」というやつだった。

体は男だったけど、自分が男とは思えなかった(じゃあなんで小生使ってるのかというと…親友(宝塚志望)の口調がうつってしまったのである。昔は「ボク」だったんだけど)。

で、今の性別はというと…

膨らんだ胸、高くて細い声、華奢な体。女そのものだった。

 

「…トナキチミラチトナノチさん、ありがとうございます…」

 

嬉しすぎるプレゼントだ。

 

自分の様子を確認したのち、ふと横を見ると、1つの袋が落ちていた。

 

「なんだろう、これ」

 

しっかりと縫われていて、丈夫そうな袋の中には…

小生…否、小生(ボク)(女の子になれたんだから小生のままではまずかろう)が望んだ特典と財布と地図、手紙が入っていた。

 

「何々…」

 

[うまくそっちにつけたみたいだね。混乱してるだろうから、状況を説明しておくよ。

①その世界はダイの大冒険に似通った世界なので原作クラッシュして大丈夫。ていうかもう小さくクラッシュしてる。

②君はダークエルフになってる。年齢は180歳、人間の年齢に換算すると18歳。まだまだ若いよ。そしてその世界、エルフもダークエルフも絶滅しかかってるから気を付けて。

③原作開始3年前、ダイはまだ9歳だよ。

じゃ、ガンバ]

 

「…ダークエルフ、ですと…?」

 

おまけに180歳。そして尻尾があって肌が褐色で髪が白銀でナイスバディ。待て。待て待て待て。

…この姿、小生(ボク)が前世でやってたTRPGのオリキャラじゃねえか!!!

 

「えっと、だとしたら…」

 

リディア・クリスタル・フォン・アッシュフィールド。数少ないダークエルフの魔法戦士。そういう設定だった。

それを思い出した途端、

目の前に、ドラクエのメニュー画面(で合ってるのだろうか?)が現れた。

 

「え、何これ」

 

触ろうと手を伸ばしたが、触れられない。立体映像みたいだ。

よく見れば、普通のドラクエの画面とは違う。話す、道具、設定、作戦、魔法、調べる、などがすべて消え、強さ・所持金・自分の名前くらいになっていたのである。設定がないのはゲーム世界じゃないから、他は話すのも道具の確認も魔法使うのも調べるのも作戦練るのも自分の意志でできるからだろうか。

 

とりあえず、自分の強さを確認してみる。

 

リディア

性別:女

ドルイダス

レベル:40

 

E布の服

Eヘアバンド

Eダークエルフのお守り

 

力:180

素早さ:230

身の守り:120

賢さ:150

運の良さ:71

攻撃力:180

守備力:131

最大HP:375

最大MP:597

EX:1610090

 

使用呪文

 

ドルマ

ドルクマ

ドルモーア

ドルマドン

 

ヒャド

ヒャダルコ

ヒャダイン

マヒャド

 

ザラキ

 

ラリホー

 

マヌーサ

 

ホイミ

ベホイミ

ベホマ

キアリー

キアリク

ザメハ

 

レミーラ

レミラーマ

 

リレミト

トラマナ

トヘロス

インパス

ルーラ

 

所持金:1000G

 

 

…待った、何だこのチート。

ダイの大冒険の世界にドルマ系とか持ち込んだ時点で「おいおい」ってなるのに、何ですかこの習得してる魔法の量は。

まあ、いいけども。

 

「…そういえば、このダークエルフのお守りってなんだ?」

 

布の服とヘアバンド以外で、小生(ボク)が身に着けてるものは…

 

「この腕輪?」

 

小生(ボク)の右腕に、プラチナでできた腕輪がはまっていた。

草花の彫刻が施されていてとても綺麗なのだが、中央に取り付けられた真っ黒い水晶らしきものが最も綺麗だ。…綺麗すぎて怖いというか、見ていて吸い込まれそうだけど。

 

「これの効果、何だろう」

 

呟いて、腕輪を外してみた(腕輪の内側には、「リディア・クリスタル・フォン・アッシュフィールド」、つまり小生(ボク)の名前が彫られていた)。

 

「…なにも起きない?」

 

ステータス画面もチェックしてみたが、何の変化もない。

 

「あ、そうだ。こういう時こそインパス」

 

小生(ボク)は、腕輪に向かって呟いた。

 

「インパス」

 

『ダークエルフのお守り 身に着けていると魔力を回復してくれる。売れない』

 

頭の中に、そんな言葉が響いた。

 

「なるほど、魔力回復アイテムだったのか」

 

売れたとしても売ろうとは思わなかっただろう。貴重な魔力の源なんだから。

 

…それはそれとして、武器を装備してないのは今のご時世でも危ないだろうから、どれか装備しとくか。

 

~装備中~

 

E妖精の剣

E安らぎのローブ

E黄金のティアラ

Eフラワーパラソル

Eダークエルフのお守り

 

…ゲームやってるときは考えなかったけど、安らぎのローブとフラワーパラソルって恐ろしく似合わないな。

 

「それはともかく、ここどこなんだろう?」

 

地図を広げてみる。

 

「あ、ゲームと同じ…」

 

地図はゲーム同様、通ったところが自動で記入されていき、現在地が矢印で、入ったことのある場所が赤丸で表示される地図だった。

 

「えっと、この位置は…ネイル村の近くかな?」

 

じゃあ、まずはネイル村に行ってみようかな。




エルフに尻尾ついてる設定、いいよね。


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ネイル村にて

どんな作品でも、エルフは割とスレンダーな女性が多くて魔族とダークエルフはナイスバディが多い気がする。





マァムサイド。


「あら?」

 

私は今、村の近くの森に来ている。ミーナが勝手に森に入ってしまったので、探しに来たのだ。

 

少し暗くなってきていたうえ、迷路のような森だから、探すのに少し苦労したけれど、探してから数十分後にミーナを見つけ、さあ帰ろうとしたその時…少し離れた場所に、1人、誰かが歩いているのを見つけた。

 

身長は、女性にしては高めだが、ローブのデザインや色からして、女性だろう。

腰まで伸びた白銀の髪と、深くかぶったローブのフード(?)、フラワーパラソルが原因で耳が見えない。

肌は、暗くてうまく見えないけれど、褐色のようだ。

 

「マァムお姉ちゃん、あれ誰だろう?村の人じゃないよね」

 

ミーナも、女性に気づいたようだ。

 

「うん。…旅の人かしら?」

 

そう呟いたとき、

 

「誰かいるの?」

 

女性が、こっちに気づいたらしく、そう言ってこちらを見た。

 

「!」

 

駆け寄ってきた。

 

「ああよかった!道に迷って、抜け出せないんじゃないかと思ってたの!君達、このあたりに住んでいるの?もしよかったら、道案内を頼めないかな?」

「…ええ」

 

「ありがとう!小生(ボク)、旅をしているんだけど、この辺りは来たことがなくって」

 

?ボク?女性でボクは珍しいわね。

 

「旅を?」

「うん。別に、これと言って目的があるわけでもないんだけどね」

「そうなんですか」

 

~移動中~

 

だいぶ日が傾いてきたころ、森から出られた。

 

「あ…出口。本当にありがとう、見ず知らずの小生(ボク)なんかのために道案内してくれて…」

 

「いえ、これくらい大丈夫です」

 

私がそう言ったとき、

 

「ミーナ!」

「マァム」

 

母さんとミーナのお母さんが、迎えに来ていた。

 

「おかあさん!」

 

ミーナが駆けていく。

 

「マァム、いつもありがとう」

「どういたしまして」

 

そのまま、ミーナのお母さんはミーナを連れて帰っていった。

 

「…ところで、マァム。そちらの人は?」

 

母さんが尋ねる。

 

小生(ボク)は単なる旅人です。森で道に迷ってて、助けられたんです」

「まあ、そうなんですか。大変でしたね。…ところで、これからどうするおつもりで…?」

 

「?町に向かおうと思ってますが」

「1番近い町でも、ここからでは、着くころには夜になってしまいますよ。よければ、うちに泊まりますか?」

「え!?いえ、そんな…め、迷惑でしょう?」

「大丈夫ですよ。ねえ、マァム」

「ええ。大丈夫ですよ。ここ、よく旅の人が迷うから、こんなこともしょっちゅうあるんです」

「え………でも…………………はい。お言葉に甘えて…………………」

 

旅人さんは、そう言って頷いた。

 

 

 

「その、すみません」

「いいんですよ。よくあることなので」

 

旅の人が迷うことは、本当によくある。何せ、あそこは迷路のような森なのだから。

だから、こんなこともよくある。

さっきから私も母さんもそう言っているのに、旅人さんはどこか申し訳なさそうだった。

 

「…ところで、お名前は何というのですか?」

 

とりあえず、話題を変えよう。気分が変わるかもしれないし…

 

「へ?ああ、ええと…リディアです」

「リディアさんというのですか。ええと、素敵な名前ですね」

 

…何で名前を聞いたのよ、私!話がつながらないじゃないの!

ああでも、ちょっと気が和らいだみたい。フードから覗く綺麗な口が、うっすら弧を描いていた。

 

「…そういえば、リディアさんは、室内でもフードを外さないんですね」

「へ?」

 

さすがにフラワーパラソルはしまっていたが、代わりにフードをしっかりとおろしていた。

 

「…その、諸事情あって」

 

そう言って、リディアさんは一層深くフードをかぶった。

…ああ、余計な事聞いちゃったわ…




…マァムのコレジャナイ感がすごくなってしまった。誰か私に文才を…


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素性

お久しぶりです。
お待たせしました。


「……」

 

通された部屋にあった鏡に、自分の顔を映す。

 

「やっぱり、リディアだ…」

 

ゆるふわっとした白銀の髪。

ややたれ気味の、オレンジの瞳。

褐色の肌。

生前、小生(ボク)が描いた、リディアそのものだった。

 

設定では、リディアは戦災孤児だった。

ダークエルフは、他のエルフと敵対している。そのため、ダークエルフが住む地域では、争いが後を絶たなかった。

そのうち、誰かが気付いた。…エルフも、ダークエルフも体が脆弱なのだから、人間の血を入れて、強いからだと魔力を併せ持つ兵を作れば勝てると。

リディアの父は、それに反発し…殺された。

母は、自分も殺される可能性が高いため、赤子だったリディアを連れて逃げた。…しかし、あと少しで人間の町につくというところで盗賊に襲われ、命を落とす。

リディアは、その場に放置されたが、1人の旅の剣士に拾われ、育てられ、1人前の魔法戦士になった。

そんな設定にしていた。

 

…今の小生(ボク)の素性は、どうなっているのだろう。

 

あの人は、この世界ではエルフもダークエルフも絶滅しかかっていると言っていた。

では、今の小生(ボク)も、やはり孤児なのだろうか。

…いや、それより前に…なぜ、エルフとダークエルフが絶滅しかかっているんだろう。

 

ダイの大冒険の世界では確か、

1:ハドラー率いる魔王軍が地上を征服しようともくろむ

        ↓

2:勇者アバンそれを仲間とともに阻止する(この間にバランはヴェルザー倒してた)

        ↓

3:つかの間の平和が訪れた

        ↓

4:ハドラー復活、バーン様地上を吹っ飛ばそうともくろむ

        ↓

5:ダイ一行がそれを阻止すべく頑張る

という流れだったから、ハドラーが地上を征服しようとしてた時に激減した可能性が高いかな。

 

いや、そもそもエルフとかって地上に住んでるものなのか?

まあでも、もし魔界に住んでたんだったら絶滅しかけた理由がわからないでもないけど、地上に行く手段なんかいくらでもあるだろうから地上に逃げるだろうし、天界に住んでたんだったらそもそも絶滅しかかるなんてことないだろうし…地上に住んでたと考えるのが妥当なんだけどなあ。どうも腑に落ちない。

 

…実は、人間に迫害されて、とか?

ありうる。すごくありうる。

現に、ラーハルトは迫害が原因で母親死んでるし。この世界の心ない人間たちだったらやりかねん。

 

…あの人、「エルフもダークエルフも絶滅しかかってる」って言ってたから、絶滅したわけではないんだよな。

いつかエルフかダークエルフに会えたら、その辺の事情を聴いてみようかな。




短い


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エルフとダークエルフについて

おひさです。


小生(ボク)がネイル村についた、翌日のこと。

 

「おはよう、マァム。レイラさん、おはようございます」

 

居間に行って、マァムとレイラさんに挨拶をする。

 

「おはようございます、リディアさん」

「おはようございます」

 

テーブルの上には、すでに食事が並んでいた。窓から見える外も、とても明るく見える。そんなに寝ちゃったのかな。まあ、疲れてたし…

 

~食事中~

 

「ごちそうさまでした」

 

とてもおいしかった。レイラさんって料理得意なんだな…。主婦だし、当たり前か。「一応できます」レベルだから、うらやましい。

 

「片付け、手伝いますね」

「あら、ありがとうございます」

 

~片付け中~

 

 

 

「そう言えば、リディアさんはいつ行かれるんですか?」

「ん………早ければ、今日の昼にでも。…ああ、そうだ。話は変わるんだけどさ」

「はい、何でしょう?」

「マァムは、エルフとかダークエルフとかって聞いたことある?」

「え?…えっと、絵本か何かで見たような。それがどうかしました?」

「いや、ちょっと知りたかっただけ。ありがとう」

「?はい」

 

 

 

…………絵本で見た、だと?

 

 

 

エルフやダークエルフが絵本に出てくるとなると…エルフとダークエルフ(それら)が絶滅寸前に追いやられたのって、実は結構昔の事だったりするのか?

とすると…ますます人間原因説が濃厚になってきたな。

 

小生(ボク)が前世で、リディアの設定として書いてた小説みたいに、エルフとダークエルフはもともと争っていたけれど、人間という共通の敵を持ち、一時休戦し、結託して人間と戦うが、魔力は強いけど肉体はもろいエルフとダークエルフは物理で負けてしまい…とか。

 

あ、いや。エルフもダークエルフも魔力強いんだし…いくらもろくても、そう簡単に人間相手に負けるか?

ここは、力も魔力も強くて頑丈な魔族原因説も視野に入れとくか。

 

やっぱりエルフとダークエルフはもともと争ってて、人間とか眼中になくて、人間もそれをいいことに平穏をむさぼってたけど、長引く争いでエルフとダークエルフが疲弊したところを狙って魔族が攻め込み…とか。

ありそう。すごくありそう。

 

えっと、今のところ説は

・人間原因説

・魔族原因説

の2つが有力かな。

 

後は…ドラゴンに滅ぼされたとか?

 

それから…今、エルフとダークエルフはどこに住んでるんだろう。

 

ダークエルフは、魔界に住んでそうなイメージだけど…ひょっとしたら、デルムリン島にひっそりと生き残りが住みついてたりして。

エルフは、作中で存在だけ書かれてた天界とかかな。

 

などと考えていたら。

 

ガンッ!

 

「きゃあ!?り、リディアさん!?無事ですか!?」

壁に頭を思いっきりぶつけた。

 

「うう…いたたたた。マァム、心配してくれてありがと…ちょっと考え事してて…」

「大丈夫ですか?…って、あざがくっきり…!ホイミ!」

マァムがぶつけたところに手をやって、ホイミを使った。そこまでしなくていいのに…。



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お久しぶりです。


「いらっしゃい!薬草が安いよー!」

「そこの別嬪さん、このネックレス買ってかないかい?今なら300ゴールドだ!」

「奥さん、トマトが安いよー!お1つどうだい?」

 

ここは、ロモスの城下町。

あの後道を教えてもらって、ここまで来た。

 

「賑やかだなあ…」

 

マンガで読んだ限り、ベンガーナも賑やかな感じだったけど…なんというか、あそこの賑やかさは、ここみたいな和気あいあいとした、というかほのぼのした賑やかさじゃなくて、俗物的な、殺伐とした賑やかさ(そもそも、あれは賑やかっていうのか?)って感じだったから、ロモスの方が好きだ。

 

「必要なもの、買っておこう」

 

食べ物とか、替えの服とか、色々いるだろうし。

1000ゴールドで足りるかな?

 

~買い物中~

 

「食料とか服とかいろいろ買えてよかった」

 

食料やら服やらその他の日用品やら買ったら、お金がもう10ゴールドしか残ってなかった。いや、むしろ10ゴールド残ったのがすごいのか?

 

とりあえず、宿代がゲーム準拠の値段なら、宿にも泊まれるな。

日が暮れたら、宿に行こう。

…いや、今のうちに宿探しした方がいいのか?

念のために、安い宿探しとこう。

 

~移動&情報収集中~

 

「安い宿?それなら、ここをずっと行って突き当りを右に曲がったとこにある…」

「…ふむふむ、ありがとうございます」

 

ロモスって、親切な人多いな……。すぐに情報集まった。

 

10ゴールドでも泊まれる(ただし、食事は無い)宿は結構あることが分かったから、安心安心。

 

日が暮れるまで、どこで時間を潰そうかと道を歩いていたら、奥様3名の井戸端会議が聞こえてきた。

 

「ねえねえ、聞いた?あの怪物島の話」

「怪物島?デルムリン島のこと?なになに、何かあったの?」

「いったい何があったのよ?」

 

「うちの亭主の知り合いが漁師なんだけど、『デルムリン島で人影を見た』って言ってるらしいのよ」

「人影ぇ?魔物か何かを見間違えたんじゃないの?」

「そうじゃなかったら、蜃気楼とか」

 

「そのどっちかじゃないかとは思うんだけどさあ、場所が場所じゃない。妙に不安になるのよ」

「え?何?あの船の事故の事気にしてるの?」

「ひょっとして、幽霊出てきたとか思ってるの?」

 

「違うわよ。魔族じゃないの?って思っちゃうの」

「あー…ありうるわね」

「怖いわねえ…」

「「ねー。」」

 

……人影?デルムリン島に?

多分ダイだろうとは思うけど…ちょっと、気になるな。ひょっとしたら、エルフかダークエルフかもしれないし。

デルムリン島、いつか行ってみようかな。



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デルムリン島にて

???サイド


「昨日はひどい嵐だったな…」

 

誰に聞かせるでもなく、つぶやいた。あんなにひどい嵐は、ダイが流れ着いたとき以来だ。

 

「…海岸に行くか」

 

あれだけ酷い嵐なら、船の1隻や2隻は沈んだだろう。使える積み荷が流れ着いているかもしれないし、ひょっとしたらダイの時のように誰かが流れ着いているかもしれない。

………こんなことを考えるあたり、私も丸くなったものだ。魔剣士と呼ばれたあの頃が夢のようだ。

 

万一に備え、愛用の剣を持って海岸へ行った。

 

 

~移動中~

 

思った通り、海岸には様々なものが流れ着いていた。

元は船であっただろう木片や金具はもちろん、積み荷として運ばれる予定だっただろう薬草や毒消し草、聖水の瓶などもあった。

 

「…使えそうなものはないな………うん?」

 

海鳥が、何かをつついているのに気が付いた。

 

近寄ってみると、それは…

 

「…………死体か?」

 

1人の女だった。…いや、少女というべきだろうか。

少女。女。どちらでも似合いそうな年頃に見える。

 

ローブに身を包んだ、褐色の肌の女。

長い髪は白銀で、とても美しい。

しっかりとつかんでいる袋は、荷物だろうか。

だが、最も気になるのは。

 

「…まさかこの女、この辺りを小舟で進んでいたのか?」

 

女がもう片方の手でしっかりと握っていたオール。

女の周りに妙なほど大量に流れ着いた木片。

そして、女の近くにあった擦り切れてボロボロになった地図。

この近くを小舟で進んでいて、嵐にあったとしか思えなかった。

 

「………」

 

馬鹿か、この女は。

地元の漁師は小舟でこの辺りにまで来ることがあるが、それは海を知る漁師だからすること。

ローブがきれいなのを見ると、この女はあまり旅慣れていないようだ。

旅慣れていない女が、小舟で船旅をする。無謀としか言えない。

 

「…埋葬くらいはしてやるか」

 

1人旅なのであれば、持っているのも女の物だろう。それでは使えない。

それに、今までも、流れ着いた死体は森の奥の平野に埋葬してきた。

 

女を抱き上げた、その時。

 

「ん…」

 

女の口から、声が漏れた。

 

「!?生きているのか!?」

 

私の言葉が聞こえたらしく、女はうっすらと、弱々しく目を開けた。

だが、またすぐに閉じてしまった。

私はルーラでブラス老のところへ向かった。

 

 

 

「ブラス老!」

「おお、どうしたんじゃピサロさん。…って、その女性は、もしや流されてきたのか!?」

「ああ!悪いが、少しベッドを借りるぞ!」

「わかった!ダイ、タオルを持って来い!」

「うん!」

 

 

 

タオルで軽く体をふいて、ベッドに寝かせる。

その時、手が何かに触れた。

手元に目をやると。

そこには、髪と同じ白銀の、尾があった。

 

「……!」

私は、女のローブと髪をどけて、耳を見る。

その耳は、つんと尖っていた。

 

褐色の肌。尾。尖った耳。

間違いない。

 

「この女は…ダークエルフ…」

 

絶滅したのでは、無かったのか…?



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クラッシュ要素発見

お久しぶりです。



「んぅ…」

 

…体のあっちこっちの痛みで目が覚めた。

体を起こして、はたと気づく。

 

「…ここどこ?」

 

見知らぬ場所にいた。

 

小生(ボク)は、確か…」

 

デルムリン島に行こうとして、どうやって船を調達しようか考えてたら運よくもう使わない船の処分に困ってたご老人に出会って、その小舟でデルムリン島まで行こうとして…

 

…嵐にあった、ような。

 

「あ!」

 

いろいろと考えていたら、少年の声が部屋に響いた。

 

声がした方を向くと、そちらには1人の黒髪の少年…っていうかダイが立っていた。

 

「じいちゃん!旅人さん、目、覚ましたよ!!」

「おお、そうか、今行く!ゴメ、お前はピサロさんを呼んで来い!」

「ピピィ!!」

 

ブラスさんと思しき声と、ゴメちゃんと思しき声がする。

 

…ここ、デルムリン島なの?

でも、ブラスさんが言ってた「ピサロさん」って?そんなキャラ、ダイ大には…あ。

まさか。

 

「ピィ!ピピィ!!」

「ああ、ゴメ。…あの旅人、もう目が覚めたのか」

 

あれれ~おっかしいぞ~?CV小野大輔っぽいイケボが聞こえるぞ~?

ちょ、マジですか?

 

入ってきた人物(?)は、3人(プラスゴメちゃん)。

 

1人はダイ。

まだ9歳だから、本編のダイよりちょっとちっちゃい。

 

2人目はブラスさん。

なるほど、カラーはゲーム及びアニメ準拠ではなくコミックス準拠なのか。

 

そして、3人目は。

 

「…なんだ、その目は。魔族がそんなに珍しいのか?」

 

…予想通りドラクエ4のピサロさんでした…

これか。トナキチミラチトナノチさんが言ってた「すでにちょっとクラッシュしてる」ってこれか。

 

「…いえ、そう言うわけでは…」

「?ピサロさん、この人も魔族じゃないの?」

「え?」

 

小生(ボク)は、このダイの一言で気づいてしまった。

…今、小生(ボク)、耳が丸出しになってる。

 

「…ダイ、後々説明するから今は黙っててくれ」

「よくわかんないけど分かった!」

 

ダイ…ちっちゃいころは、こんな感じだったのか…

 

「すみません、驚いたでしょう。あなたに危害を加える気はありません。ここはデルムリン島。怪物島と言われているようですが、ここの魔物たちは皆おとなしく、危害を加えてくることはありません。…わしはブラスと言います。あなたの名前をうかがってもよろしいでしょうか?」

 

ブラスさん、紳士。こっちを気遣ってくれるの嬉しい。

 

「……小生(ボク)はリディアと言います。…ええと、ここは本当にデルムリン島なのですか?デルムリン島には、人はいないと…」

 

とりあえずそれっぽく振る舞う。

 

「…こいつは9年前にお前のように嵐で流されてきたんだ」

「ダイって言います!!」

 

このころはダイ、こんな感じだったのかー。そう言えば、ダイの回想でこんな感じのところが見えたな…

そしてピサロさん、さっきからすごい仏頂面ですね。

 

「ピィ!!」

「ひゃ!?」

 

なんかゴメちゃんが突進してきた。

 

「ピィ♪ピィィー♪」

 

小生(ボク)の周りを、くるくる回っている。

 

「ゴメちゃんに懐かれたみたいだね」

「この子、ゴメちゃんっていうの?」

「うん。ほんとはゴールデン…えーと…」

「ゴールデンメタルスライムじゃ」

「そうそれ!っていう名前なんだけど、長いだろ?だからゴメちゃん」

 

「…話の腰を折るようで悪いが、リディアと言ったな、お前に聞きたいことがあるんだが」

「はい、何でしょう?」

「お前、どうしてこの辺りを小舟で進むなんて無茶をした?」

「………あ…………」

 

バレてた。

…どう言えばいいんだ、これ。

 

「…その、『デルムリン島に人が居る』といううわさを聞いて、気になって…」

 

さっき「デルムリン島に人が居るのか」みたいなこと言っちゃったけど、そこは「まさか本当にいるわけないだろうと思った」で押し切れるだろう。

 

「それだけか?」

「それだけです」

「………ボソッ(本当に何も知らない世代のダークエルフだったか…)」

「何か言いました?」

「何でもない」

 

「…ねえ、それで、リディアさんは結局魔族なの?魔族じゃないの?」

「……ダイ、この女はダークエルフと言って、人間でも魔族でもない。第一、魔族が堂々と地上を歩いてることなどそうそうないだろう」

「そっか」

 

「…話は変わるが。お前、どこか行く当てはあるのか?」

「………いいえ。旅の目的は特にありませんし、家族も帰る場所もありませんし」

 

心配してくれたのかな?

 

「そうか…ブラス老」

「ああ、リディアさんがいいというなら大丈夫じゃよ。…女性、それもダークエルフの1人旅は、安全とは言えんじゃろう」

 

?どういうこと?

 

「リディアさん、行き場がないのであれば、ここに住んではいかがでしょう?」

「…え?」

「もちろん、リディアさんが旅を続けたいというなら、引き留めませんが…」

 

いや、主人公の成長を間近で見れるなら大歓迎!!

 

「…では、その。お言葉に甘えさせていただきます。船も荷物もなくなってしまいましたし…」

「荷物は無事だったよ?」

「あ、そうだったの」

 

 

 

なんやかんやで、デルムリン島に住むことになりました。

ゴメちゃん可愛い。




ブラスさん、コミックス準拠のほうが「ちょっと特殊な鬼面道士」っぽいかなと思って…












実はクラッシュ要素、ピサロさんだけじゃなかったりする…


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不思議な木

誰かダイ大でとある一家の御茶会議やってくれないかな。
ソーサラーがアバン先生、アプリコットティーがマァム、レモンキャンディーがヒュンケル、ブルーベリージャムがダイで。


デルムリン島に流れ着いてしばらくたった。

 

「ここでの暮らしにも慣れてきたな~」

 

お散歩なう。

 

デルムリン島は自然が多くて、空気がおいしいから、よく散歩をしている。

最初のうちは魔物たちを見るたび見るたびビクついてたけど、最近はもう大丈夫だ。

 

「それにしても、ここって本当にたくさん植物生えてるなあ…」

 

薬草に始まって、毒消し草、満月草、消え去り草、ルラムーン草といった多種多様な植物が生えている。さすがにパデキアはなかったけど。

実は、最近の趣味は、散歩がてらに植物を採取することだったりする。

薬草も、毒消し草も、満月草も、消え去り草も、あって損をするものではない。消え去り草は微妙だけど。

 

「えっと、これが薬草で、こっちは消え去り草…じゃなかった、満月草だこれ」

 

植物を引っこ抜いてはバスケットに放り込む。

 

「ええと…こっちは………っひゃあ!!」

 

夢中になって採取していたら、何かに躓いてしまった。

 

「何…?」

 

どうやら、小生(ボク)が躓いたそれは、何かの若木らしい。大きさは、10㎝強。他の木々や植物に邪魔されて、うまく根が張れてない。このままでは枯れてしまうだろう。

 

「何か、綺麗な木」

 

露が光っているだけかもしれないけど、その木はずいぶん綺麗に見えた。

深緑の葉はみずみずしくて、つやつやだ。どこも虫に食われていない。

幹も、根張りが悪い割にはしっかりしている。

まるで、生命の象徴みたいだ。

 

…なぜか、この木を持って帰って、育てなくてはいけないような気がした。

 

「鉢にでも植え替えてみようかな」

 

今はまだ小さいからなんだかわからないけど、大きくなれば何の木なのかわかるでしょ。

スコップがないから、取りに戻ろう。

ちなみに、小生(ボク)は、今、ダイたちの家近くに小屋を建てて生活している。あの家に住まわせてもらうのは、なんだか申し訳なかったから。

 

小生(ボク)は、戻れるように、木々に印をつけながら戻った。

 

~移動中~

 

「何だ、もう散歩から帰ってきたのか?」

「あ、ピサロさん。いえ、そうじゃなくて。知らない木があったから植木鉢に植え替えてみようかと思って」

「そうか」

 

なお、ピサロさんと小生(ボク)は同居しているわけではなく、ピサロさんはちょっと離れたところにあるログハウス(?)に住んでいる。

 

~道具確保中~

 

「あった」

 

ちなみにスコップも鉢も漂着物。

取りに行こう。

 

~移動中~

 

着いた。

植え替えよう。

 

~植え替え中~

 

心なしか、謎の木が喜んでいるような気がする。

 

「大丈夫そう」

 

持って帰ろっと。

 

~帰宅中~

 

「あれ、ピサロさんまだいたんですか?」

「ああ。お前が言っていた木が、少し気になってな。…その木か?」

「はい」

 

そう言って、小生(ボク)は、ピサロさんに木を近づける。

 

「っ!?」

 

ピサロさんが、驚愕を顔に浮かべた。

 

え、ちょ、この木って何かヤバいやつだったりするの?

 

「お前…この木は………まあいい、お前が育てるのなら何も起きないだろう」

「えっと、この木って何なんですか?こんなに小さいと何の木だかわからないんですけど…」

「…しばらくすればお前も気づくだろう。1つ言うとするなら……その木を育てるなら、魔力を含んだ水をやった方がいいぞ。最良は聖水だな」

「?はあ…」

 

どういうことなの?

っていうか、聖水って魔力含んでたんだ…

 

…そう言えばこの木、微弱だけど魔力を感じるような?



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原作突入 デルパ!イルイル!
発見と魔法の筒


あれから3年、とうとう原作に突入した。

 

この3年間、

ブラスさんのスパルタっぷりが目について、このままじゃダイが原作通りの勉強嫌いになりかねないからと、ちょっと教育方針を変えてもらったり、

ピサロさんに剣術やら魔法やらを教えてもらったり、

ダイにちょっとしたことを教えたりして過ごしていた。

 

割と、有意義に過ごせた気がする。

 

で、この3年で、あの謎の木の正体も判明した。

成長したら、葉っぱに特徴が出てきて、分かったんだけど………

 

 

……………あの木、世界樹だ。

 

 

 

何故だ!?なぜに世界樹がこの世界にある!?

これはあれか?これ育てて原作死亡キャラ蘇生させろっていう神のお告げか?それとも、世界樹のしずく作ってヒュンケル復活させろってことか?

 

どういうことだってばよ!!!!!!!

 

 

 

 

…失礼。ちょっとヒートアップしてしまった。

 

話を戻そう。

 

ついに、原作に突入した。これはさっき言った。

それで。

さっき、でろりんたちが攻めてきたんだけど…ついうっかり、でろりんたちを殲滅しかけたんだよね。あの、ずるぼんとかいう女僧侶が、隙をついてゴメちゃん奪取したから、原作通りになりはしたけど。

 

で、ついさっきダイが、魔法の筒携えて、ロモスまで攻め込んだ。…攻め込んだんだけど。

 

めっちゃ心配。

 

いや、原作通りなら不安がることもないんだろうけど。小生(ボク)という異分子のせいで、バタフライエフェクトでダイが負ける可能性がないとも限らんし。

 

 

「大丈夫かな…」

「リディア、もう61回目だぞ。」

 

ピサロさん、数えてたんですか?

 

「心配なんですもん」

「はあ……そんなに心配なら、見てきたらどうだ?お前はルーラが使えるだろう」

「それだ!!なぜ思いつかなかった小生(ボク)!!!」

 

背後から「おい待て」とか「まさか真に受けるとは」とか聞こえてくるような気がするけど気にしない!!!

ダイの様子、見に行くぞ!!

そこの読者さん!!ダイナミック授業参観とか言わない!!!

たとえ原作通りに進んでても、ダイの治療&お迎えに来たって言えばなんとかなる!!

 

 

~しばらく後~

 

 

…結果を言おう。

原作通りでした。

 

うん。心配する要素は何1つ無かったよ。

むしろ、ピサロさんがダイに剣術教えてたおかげで、結構善戦できてたよ。

ついでに言うなら、多少のかすり傷と疲労程度で、ピンピンしてたよ。お迎えも治療もいらなかったよ。

ダイ、すごいな。本当に筋がいいな。さすが(ドラゴン)の騎士。

 

なお、小生(ボク)は、物陰から覗いてたのがばれて、

「リディア姉ちゃん、心配性すぎだよ!!」

と、怒られた。



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原作突入 ダイ爆発!
レオナとの出会い


さて、あれから3か月。

シナリオ通りなら、そろそろレオナとの初邂逅のはず。

そう思って、森の中から、こっそり海を遠眼鏡で見ているわけなんだけども。

 

「今日は違うのかな…?」

 

確か、原作でのダイのモノローグでは、「もう3か月もたった」だったから…ぴったり3か月じゃなく、3か月とちょっとくらいだったのかな?

 

などと考えていたら。

 

「リディア!!面倒なことになった、すぐに来い!!」

 

背後から、ピサロさんの声がした。

 

「ピサロさん?あの、何か…?」

「かいつまんで言うと、パプニカから儀式を受けるために来た姫が、賢者が持ち込んだ魔のサソリの毒で死にかけている!!その賢者が修復したキラーマシーンを操作しているせいで、ブラス老が姫に近づけていない!!!そして、もうすでに、姫の全身に毒が回ってしまっている!!!」

「はあ!?」

 

嘘でしょ!?小生(ボク)が監視し始めるより前から来てたの!?

というか、物音で気づけ小生(ボク)!!!海に気を取られすぎだ!!!

 

「さらに言うなら、今、キラーマシーンと戦っているのはダイだ!!!」

「…了解っ!状況は理解できました!!つまり、小生(ボク)がやらなきゃいけないのは姫の解毒ですね!?」

「そういうことだ!!急げ、お前の足ならまだ間に合う!!私もすぐ加勢に行く!!!」

 

ピサロさんに向かって無言でうなづき、場所を教えてもらって、走り出す。

 

ちなみに、非常にKYなのはわかってるし、はよ行けとバッシングされるのも覚悟で言うと、今の小生(ボク)のステータスはこんな感じだ!!!

 

リディア

性別:女

ドルイダス

レベル:50

 

E妖精の剣

E安らぎのローブ

E黄金のティアラ

Eフラワーパラソル

Eダークエルフのお守り

 

力:190

素早さ:254

身の守り:132

賢さ:170

運の良さ:74

攻撃力:275

守備力:218

最大HP:483

最大MP:638

EX:2726151

 

 

使用呪文

 

ドルマ

ドルクマ

ドルモーア

ドルマドン

 

ヒャド

ヒャダルコ

ヒャダイン

マヒャド

 

ザラキ

 

ラリホー

ラリホーマ

 

マホトーン

 

マヌーサ

 

スカラ

スクルト

 

マジックバリア

 

ホイミ

ベホイミ

ベホマ

キアリー

キアリク

ザメハ

 

レミーラ

レミラーマ

 

リレミト

トラマナ

トヘロス

インパス

ルーラ

 

所持金:0G

 

 

3年で10しかレベル上がってないのかって?

むしろこんな平和なご時世で、鍛錬オンリーでここまでレベル上げられた小生(ボク)を褒めてくれ!!!

 

あああああこんなこと言ってる場合じゃない、早くいかないと、レオナがピンチ!!!

原作より、時間が長引く可能性だってあるし!!!

 

~移動中~

 

どうやら、今はちょうど、ダイがバロンに繰り返し一点集中攻撃をしているところらしい。

レオナは…よかった、口元の草が揺れている。息はしているみたいだ。

そして、おそらくブラスさんが指示したのだろう、左側を下にして寝かされている。あれなら、少しは毒の回りが遅れるはず。

 

「おお、リディアさん!!」

「ピサロさんから事情は聞きました、すぐにキアリーをします!!離れて!!」

「何ィっ!?」

 

小生(ボク)に気づいたバロンが、こちらへ向かう。…でも。

 

「遅いよ」

 

この、アリーナ並みの素早さを舐めないでもらおう。

バロンの攻撃を避けて、レオナを抱きかかえ、少し離れた場所へジャンプする。

 

「キアリー!!!」

 

キアリーをかけると、見る間にレオナの血色がよくなっていった。…よかった。

 

お、ちょうど、ダイが装甲を貫いた。

 

「クソッ!!!」

 

…えっ?

 

声の出所は、バロンではなく…

…もうすでに、岩にたたきつけられていた、テムジン。

 

「嘘っ…!!」

 

あいつ魔法使えるの!?どう見てもバギ系呪文の準備してるんだけど!!

いけない、小生(ボク)以外誰も気づいてないッ!!

 

「マホトー…」

「その必要はない」

「えっ?」

 

見ると、いつの間にやらピサロさんが来ていて、小生(ボク)よりも先に呪文を唱えた。

 

「ラリホーマ」

 

蓄積していたダメージもあってか、テムジンはあっさりと眠り込んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回も、原作とほぼ同じように終わった。

ほぼ、というのは、小生(ボク)とレオナの自己紹介タイムを途中に挟んだため、若干の違いが生じたのである。あ、ダークエルフなのは隠した。

ピサロさん?あの人、レオナが目を覚ました時、いなくなってたんだよね。まあ、魔族だってパニック起こされるよりはましだからいいけど。

なお、最初、小生(ボク)たちがレオナのことを知らされていなかったのは、人間に心ない言葉をかけられてしまうかもしれないし、下手に出てきてデルムリン島への不信感が発生してもいけない、という双方への配慮からだったらしい。

その後、レオナは無事に儀式を終えて、パプニカへと帰っていった。



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原作突入 旅立ちまで
魔王復活と勇者の家庭教師


お久しぶりです、本当に…
pixivに浮気してました…
本日ピサロサイドとなっております


その日、デルムリン島に青天の霹靂が訪れた。

全てのモンスターが、突然凶暴化したのである。

 

「ピサロさん!無事ですか!!??」

 

私の家まで、リディアが走ってきた。あちこち切り傷や擦り傷ができているが、ほぼ無傷だ。

 

「ああ、見ての通り無事だ!だが、このままでは…」

「はい。…ダイが、危ない!!!」

 

この島にいるモンスターたちは、元々、ハドラーの力によって凶暴化させられ、ハドラーの配下となっていた。ならば、今のこの状況は、ハドラーが復活したことによって発生したと考えるのが妥当だろう。

魔王の、復活。それだけでも、人間にとっては充分絶望的だ。

だが、ダイにとっては、もう1つ。身を裂かれるほど、耐え難いであろう事実がある。

 

ハドラーの、モンスターへの邪悪な意志の強制力は、知能の高いブラス老相手であっても、例外ではない。

 

つまり…このままでは、最悪、意志に抗いきれなくなったブラス老が、ダイを殺してしまいかねない。

そうなる前に、ダイを逃がしてしまわなくては…!

 

~移動中~

 

「嘘、いない…!?」

 

ダイとブラス老の家は、もぬけの殻になっていた。

何かあった時のためにと、常備していた旅道具もない。

 

「…確か、非常事態に備えて、用意してあった小舟があったな。もしや、もうすでに逃がされたか?」

「あ、そうか…!確認のために、海岸に行ってみましょう!!」

「ああ、それがいいだろう」

 

~移動中~

 

2人は、海岸にいた。…いや、2人だけではない。見知らぬ人間が、さらに2人いる。

片方は、眼鏡をかけた若い男。もう片方は、ダイよりは年上だが、まだ少年と言える年頃で、バンダナをつけている。それなりに距離があるせいで、どちらも顔かたちがよくわからないが。

 

「ここからじゃ、会話が聞こえな…あ」

「気づかれたな」

 

眼鏡の男の方がこちらの存在に気づき、わずかに驚いた、ようだった。

少しして、男は、我々に「そこから離れろ」というジェスチャーをした。

 

「離れろ、って…どうします?」

「…もし、仕掛けてくるのなら、『離れろ』ではなく『こっちへ来い』だろう。助けておいて、あとで何かをしてくるということも考えられるが…見るからに足手まといになりそうな人物を連れていることを考えると、その可能性は低い。従っても問題はないだろう」

「そう、ですか」

 

私は即座にリディアを抱え、ルーラの応用でブラス老とダイのところまで行く。

 

「ダイ、無事か!?」

「ダイ君、無事!?」

 

私とリディアの声が重なった。

 

「う、うん!」

「え…え、魔族!?」

「こら、ポップ。事態がややこしくなるから、それについてはしばらく黙っていなさい」

 

どうやら、少年の方はポップというらしい。

まあ、魔族を見るのは初めてだろうから、無理もない。

 

「さて、ここは私にまかせてください!」

 

男はそう言うと、抜剣し、掛け声を上げて地面に剣で線を描きつつ走り出した。

 

「あ、危ない!」

「心配すんな、先生はすごいんだ」

 

 

しばらくして、男は走って戻ってきた。

そして。

 

「邪なる威力よ、退け…マホカトール!!!」

 

叫んだ瞬間に、地面に描かれた線…魔法陣が発光、島中のモンスターを正気に戻した。

 

「すげえ…」

「マホカトール…聞いたことがあるな。確か、破邪呪文の一種だったか?」

「え、じゃあ、あの人は賢者…?」

「そうとも限らん。かつて、魔王軍と戦った勇者は破邪呪文の使い手でもあったらしい。そう言ったものの可能性もある」

「じゃあ…勇者様!?」

 

ダイが、目を輝かせてそう言うと、男は首を振りつつ1つの巻物を出して、言った。

 

「申し遅れました。私、こういうものです」

 

広げられた巻物には、

『勇者の育成ならお任せ!!この道15年のベテラン「アバン・デ・ジニュアールⅢ世」』

と書かれている。心底胡散臭い、と、普段なら言うところだが。

アバンという名には聞き覚えがある。…世界を救った勇者の名だ。勇者だったのは昔の話だから勇者ではない、ということか。

 

「平たく言えば、勇者の家庭教師です」

「「はあ?」」

 

ダイとブラス老の声が重なる。リディアはというと、目を丸くしてアバンを見ていた。そういえば、こいつは昔、1人旅をしていたのだった。旅の過程でアバンの名を聞いても、おかしくはない。

 

「そう!勇者、賢者、魔法使いなど…正義を守る平和の使徒を育て上げ、超一流へと導く!それが私の仕事なのです!」

「はー…」

「こちらは弟子のポップ、現在魔法の修行中の身です」

 

アバンがポップを指さしそう言うと、ポップはどこか誇らしげな顔をして会釈をした。

 

「ええと、それで…なぜ、この島へ?」

 

リディアが訊ねる。

 

「…すでにお気づきでしょうが、魔王が復活してしまいました。魔王の配下の怪物たちが世界中に溢れ出し、人々を苦しめだしています。ロモスやパプニカなども、危機にさらされているのです」

「ロモスの王様や…レオナ姫が…!!」

「まず狙うとするなら、そのあたりだろうな。特にパプニカは、かつての魔王の根城だ」

「よくご存じで…。ええ、そうなのです。私は、パプニカ王国の王家から頼まれ、ここへ来ました。『デルムリン島に住む少年・ダイこそ、まさしく未来の勇者。どうか彼を真の勇者に育て上げてほしい』と。ダイ君、どうします?魔王を倒すために、私の修行を受けてみますか?もちろん、無茶苦茶ハードですが」

 

ダイは、ちらりとこちらを見る。片手間程度にだが、私に剣を教わっているため、気にしているのだろう。

だが、正直に言うと、私は誰かにものを教えるのがそこまで得意ではない。むしろ、下手な方に入るだろう。それなら、専門家を頼った方がいいだろう。

 

「私のことは気にするな、ダイ。お前のやりたいようにやればいい」

「!」

 

ばれていないとでも思ったのか、わずかに驚くダイ。

しかし、私の言葉を聞いて、決意したように言った。

 

「…やる!魔王を倒さなきゃ、レオナもロモスの王様もじいちゃんたちも、安心して暮らせない!俺を、鍛えてください!!」

「よろしい!…では」

 

そう言って、アバンが取り出したのは、1枚の書類。

 

「この契約書にハンコを…あ、サインでもいいですよ」

 

…素でやっているのか、それとも演じているのか。

リディアすらも、絶句していた。



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真実

☆9評価をしてくださったM Yさん、
☆7評価をしてくださった天月堂さん、
☆4評価をしてくださったザインさん、foresticsさん、
☆3評価をしてくださった橙色さん、
ありがとうございます!


クロコダインが…白血球さん…だと…?
ハドラー様が英雄王…???


「あの、アバンさん」

「おや?どうしたんですか、リディアさん」

 

現在、特訓2日目の夜。

ダイもポップも眠ったようだが、アバン先生は起きていて、日記か何かを書いていた。

 

「少し、聞きたいことがあって来ました」

「聞きたいこと…ですか?」

「ええ」

 

レオナとあいさつをするとき、小生(ボク)は尻尾も耳も隠していた。ダークエルフってことは言わなかった。

初対面の時に、ポップが説明されるまで小生(ボク)を魔族と思い込んでいたことを考えると、エルフやダークエルフの知名度は低いと考えていいだろう。

なのに、何故。

 

「アバンさんは、どうして、小生(ボク)がダークエルフだってわかったんですか?」

 

アバン先生は少し面食らったように目を見張って、それから柔らかく微笑んだ。

 

「さすがに、この目で見たのはリディアさんが初めてですよ。私はもともと学者の家系でしたので、書物で見たのです。特徴が合致するので、もしやと」

 

ああ、なるほど。マァムも絵本で読んだと言っていたし、本には結構残っているのだろう。

 

「その書物というのは、どういった?」

「?歴史書ですが…何故、そのようなことを?」

 

かなりキャラクターの多いダイ大だが、「ヒントをくれる博識キャラ」の類は意外と少ない。

ぱっと思いつくのはテラン王だが…まさか、国王にわざわざ聞きに行くわけにもいかない。

ならば、この時点で、作中随一の頭脳を持つと思われるアバン先生から、少しでも多くの情報を引き出すまで。

 

小生(ボク)には、過去の記憶がないんです。…だから、知らない。エルフとダークエルフのこと、何も。ですから、知りたいんです。彼らがどうなったのかとか、自分のルーツとか」

「…そう、でしたか。すみません、無神経なことを聞いてしまいました」

「いえ、大丈夫です」

 

さすがに3年吐き通してきた嘘なだけあって、アバン先生もどうにか騙せたようだ。

 

「私もそこまで詳しいわけではありませんが、大まかな事情であれば把握しています。よければ、お話ししましょうか?…あまり、明るい話ではないのですが…」

「!」

 

明るい話じゃないなんてのは、絶滅寸前の時点で気づいてる。裏事情が知られるのは、ありがたいことだ。

 

「構いません、お願いします」

 

 

 

××××

 

 

 

「…………………」

 

想像以上に…根が…深かった…

 

まず、アバン先生が教えてくれたのだが、エルフもダークエルフも外見以外にはほとんど違いはないらしい。しいて言うならば、ダークエルフのほうが少々闇にひかれやすい程度。

 

そして、エルフとダークエルフは、絶滅しかかった事情が別々だった。

 

かつて、エルフは天界に、ダークエルフはその特性から魔界に住んでいたそうだ。しかし、神のお告げなどを知らせるために地上に何度か降りてくるうちに、いつしか多くのエルフが地上で暮らすようになったんだそう。

ところがある時、DQ4のロザリーのように、ルビーの涙を流すことができるエルフが生まれてしまった。それを知った人間たちによって、そのエルフは誘拐され、虐待死。さらに、「ルビーの涙を流せるかもしれない」という理由で、多くのエルフが犠牲になったのだという。

これが原因で数が激減し、生き残りは天界へ避難。今はどうなっているのかわからないのだそうだ。

そんなの歴史書に書かれないんじゃないのかと思ったが、なんでも、各地から取り寄せた古文書を読んでいたら、その中にたまたまエルフの手記が紛れていたらしい。

 

それから、ダークエルフだが。

魔界在住ということもあってか、アバン先生には詳しいことはわからなかったようだ。ただ、前述した手記に「魔界の連中と連絡が取れない」といったことが書かれていたそうで、おそらく魔界で何かあったのでは、と言われた。

そこでピサロさんを問い詰めたところ、さらに頭の痛い事実が発覚してしまった。

 

魔界でも、地上と同じことが起きていたのだ。

 

どうやら、ダークエルフの中にも、ルビーの涙を持つものが生まれたらしい。さらに、その涙が「あらゆる呪いを打ち破る力」を持っているということが発覚。魔界が「力こそすべて」の世界な時点で、何が起きたかはお察しである。

それによって大きく数を減らしたダークエルフだが、雷竜ボリクスの傘下に入ることによって生き延びた。ところがその直後に真竜の戦いが発生、余波で大部分が死に絶えてしまったという。今は残りがヴェルザーの庇護を受けているそうだが、そのヴェルザーもあんな有様…。天界のエルフと比べると、未来はかなり暗い。

 

「恨むなら恨んでくれて構わない、なんて2人とも言ってくれたけど…」

 

小生(ボク)は、それを実際に体験したわけじゃないし、アバン先生やピサロさんたちがやったというわけでもない。

つまり、薄情かもしれないが…小生(ボク)にとっては、他人事なのだ。

だからどうしても、彼らを恨む気にはなれなくて。

 

「…聞かないほうがよかったかも」

 

なんとなく、2人と顔を合わせづらくなってしまった。



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魔王襲来

☆9評価をしてくださったヒロ改さん、
☆8評価をしてくださったじゃこ卸さん、
ありがとうございます!


「ふあ…」

 

あんな話を聞いてしまったせいか、昨晩はなかなか寝付けなかった。たぶん、眠れた時には、日付はとっくに変わっていただろう。

ふと窓の外を見ると、普段よりも明るい。いったいいつまで眠っていたのやら。

 

さて、今日は何をするんだっけ。今日は3日目だから…

 

「あっ!!」

 

そうだ、3日目…!どうして1番忘れちゃいけない日に限ってこういうポカをするんだ、小生(ボク)の馬鹿!!!

 

焦ってそばにあった布の服に着替え、妖精の剣をつかみ、家を飛び出した。それとほぼ同時に、地震が発生する。

 

お願いだ、間に合ってくれ…!!

 

さすがに3年もここで生活していると、原作の流れは覚えていても、絵は全く覚えていない。けれど、他の動物やモンスターたちに迷惑のかからないところにある洞窟は、そんなに多くないというのを、この3年で知った。

ならばそこを総当たりしていけば、いつかは彼らのいる洞窟に着くはず。デルムリン島はどこも似たような景色のところが多いから、ルーラで行くのは無理だ。でも、小生(ボク)の足なら間に合うはず。

 

しばらく走っていると、びりっという感覚。すさまじいエネルギーを持った存在を、最初の揺れよりも強く感じた。

そのおかげで、位置はある程度わかった。でも…

 

「どうしてよりによって、進行方向の正反対なんだ!!」

 

ピサロさんが気づかないとは思えない。きっとピサロさんも向かっているはず。どうか、小生(ボク)よりも早くついていてくれますように!!!

 

ここは「ダイの大冒険」本来の世界じゃない。だから、シナリオ通りに事が進むとは限らない。アバン先生が、ちゃんと生存するかもわからないのだ。

早く、早く…!!

 

走って走って、やっと着いた時には。

 

「あ、あ…」

 

アストロンをかけられたダイたち。

両の指をハドラーの頭に突き刺したアバン先生。

 

「ダメっ…!アバンさん、それは!!!」

「リディアさん…すみません、後は、頼みます」

 

ダメだ。いけない。

 

「メガンテ!!!」

 

爆発と、強烈な閃光。

光や砂ぼこりが止んだころには、地面には小さなクレーターができていて。

2人の姿は、なかった。

 

「先生…!」

「う、あ…」

「アバン、さん」

 

大丈夫。

原作通りなら、生きている。

…本当に?

原作の通りに進むなんて、言いきれないじゃないか。

 

「…リディア、逃げろ!」

「ピサロさん?」

 

ダイたちと一緒にアストロンをかけられていたピサロさんは、酷くボロボロで、ダイたちの弾避けになったのだと想像がついた。

 

「ハドラーは…あいつはまだ生きている!」

「「ええ!?」」

 

ダイとポップが同時に叫ぶ。

直後、地面が盛り上がり。

 

「かああああーっ!!!」

 

ハドラーが、現れた。

 

「く、くくっ…ハハハハハ!!!アバンめ、やはり衰えたわ!!!メガンテでさえ、俺にとどめを刺すには至らなかった…!」

「なんという…」

「ば、化け物っ…!」

 

…はは。強制負けイベの時のキャラクターって、こんな気持ちなのかな?

 

「それでも、相当なダメージは受けてしまったが。だが、帰還するその前に、貴様らをこの場で根絶やしにしなければな…!!」

「う…うわああああ!!!」

「ポップ、落ち着いて…君らにはアストロンが残ってる」

 

ああ、そうだ。

彼らに、手を出させてたまるものか。

 

「ハドラー。名前で察するに、元魔王のハドラーだな?」

「いかにも。そして今は大魔王バーン様に仕える、魔軍司令ハドラーだ」

 

…後半の成長したハドラーを知ってると、バーン様、って呼んでるのに違和感あるな。

ま、そんなの今はどうでもいいんだけど。

 

「彼らを殺したいというのなら」

 

妖精の剣を鞘から引き抜き、構える。

 

小生(ボク)の屍を越えていけ」

 

ぎろり、まっすぐに睨みつける。

 

「ほう?俺を前にして、ずいぶんと気丈なことだ。だが、それがいつまで持つか?」

 

ハドラーの右手の人差し指に、火炎が灯る。

 

「俺のメラは地獄の炎…相手を焼き尽くすまでは決して消えん。後ろのやつらごと焼き尽くしてくれるわ!!」

 

それはどうかな。

 

「メラゾーマ!!」

「残念…マヒャド!!!」

「何っ!?」

 

妖精の剣を杖代わりにして放たれたマヒャドは、メラゾーマを飲み込み、さらにハドラーへ。

 

「ぐっ…がああああ!!!」

「マ、マヒャドだって!?」

「ヒャド系呪文の最上位じゃ!リディアさんはあまり呪文を使わなかったが、これほどの呪文を習得していたとは…!」

 

ふらつきながらも立ち上がるハドラー。

 

「はあ、はあっ…。き、貴様っ!」

「言っただろ、小生(ボク)の屍を越えていけって」

「ならば、この拳でっ!」

 

放たれる拳をかわして、剣を振った。

 

「ぐうっ!?」

 

よし。足を狙うのは効果的みたいだ。

もう一歩踏み込んで、大上段から斬りつけようとした、その瞬間。

 

「が、あっ…!?」

 

腹に、鈍い衝撃が走った。

ゆっくりと視線を下げると、ハドラーの拳がめり込んでいた。

吹き飛ばされて、壁にたたきつけられる。

 

「リディア姉ちゃん!」

「まともに狙って当たらないのなら、攻撃してくる瞬間を狙うまでよ!手間をかけさせおって…!!」

 

まずい、立ち上がらないと。

体が言うことを聞かない。そりゃ、もろにみぞおちに入ってたしな。ついでに壁に頭打ち付けたせいか、視界もぼやけている。

足音が近づく。

 

「やめろおおおおおおおお!!!」

 

ダイの叫び声が、聞こえた。続いて、ドスッという重い音。

見ると、ダイのアストロンだけが解けていて、小生(ボク)とハドラーの間に、ダイが割り込んでいた。

 

「な…なんだ、この力はッ…!」

 

ダイに殴り飛ばされたらしいハドラーが立ち上がる。

 

「よくも…よくも、先生だけじゃなく、リディア姉ちゃんまで…!許さない!!!」

「図に乗るな、ガキっ!!!」

 

殴りかかるハドラーに、ナイフで応戦するダイ。

 

ああ、大丈夫、だ。

そう思った瞬間に、視界が暗転した。



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それぞれの旅立ち

☆9評価をしてくださった緋神 零弥さん、katsuminさん、
☆8評価をしてくださった心戯さん、
ありがとうございます!

本日、ピサロ視点です。


「ピサロさん、本当に行くんですね?」

「ああ。昨日のでいかに自分が鈍っているかを痛感させられたからな」

「当ては、あるんですか?」

「もちろんだ。少しばかり剣の心得がある知人がいるのでな、そいつに本気の出し方を思い出させてもらう」

 

これは半分本当で、半分嘘だ。

先日ハドラーが襲来した際、自身の腕が落ちていること以上に、自分がどれだけ驕っていたかをも実感した。鈍った体が、自分は魔界でも指折りの剣士であるという驕りに追いつけなかった。その結果が先日の失態というわけだ。

 

「そういうお前も、旅支度を進めていたようだが…どこへ行く気だ?」

「いろいろ考えたんですけど、オーザムに行こうかと」

「…ずいぶん思い切ったな。何故だ?」

「何故も何も、小生(ボク)なりに世界に貢献する方法を考えただけですよ」

 

世のためとは、リディアらしくもない。

 

「意外だな、お前にそんな意思があったとは」

「あの、それどういう意味です?」

「そのままの意味だが。お前は世界というより、自分や自分に近い誰かのために動くタイプだと思っていたのだが」

「あながち間違いでもないですけどね、世界のためっていうのは建前ですし」

「ほう。なら本音は何のためだ?」

「この島の皆さんと小生(ボク)自身の平穏のためでーす」

 

リディアはそう言って、けらけらと楽しげに笑う。

 

「ところで、ピサロさん。もうじきダイが出発するところでしょうし、見送りに行きません?それくらいの時間はあるでしょう」

「…そうだな」

 

 

××××

 

 

ダイはちょうど舟を出そうとしていたところのようで、見送りのために集まったモンスターたちに向かって手を振っていた。

 

「あ…リディア姉ちゃん、それにピサロさんも」

「見送りに来た。行き先はロモスか?」

「うん。パプニカの場所はわからないけど、ロモスの王様なら知ってると思うんだ」

「そうか。…気をつけていけよ」

 

私が話し終えると、次はリディアが進み出た。

 

小生(ボク)からは餞別の品を持ってきたよ~」

 

そう言いつつリディアが取り出したのは、紫色の液体が入った小瓶と、手のひらに乗る程度の大きさの布の包み。

 

「これ、何?」

「瓶の方は、小生(ボク)がこの島で見つけた薬草で作った特製の薬。魔法力を回復してくれる優れものだよ」

「えっ!?で、でも俺、魔法は…」

「上手くなる日が来るかもしれないでしょ?開けなきゃそこそこ持つから、心配しないでよ」

「包みの方は?」

「…まあ、なんていうか、シャナクの効果がある使い捨ての道具みたいなもの。うっかり呪いがかかったもの装備しちゃったときとか、その包み開いて中身を素手で触ってみて。まず間違いなく解けるはずだから」

 

…待て、その道具というのはまさか。

そう言いかかった瞬間、リディアがこちらを向いて口に人差し指を当てた。話すな、ということらしい。

 

「姉ちゃん、ありがとう」

「どういたしまして。それじゃ、小生(ボク)も行くから」

「え?」

 

ダイが疑問を口にするのとほぼ同時に、リディアは飛んで北へ…オーザムへ向かった。

 

「…トベルーラか。いつの間に使えるようになったんだ」

「ピサロさんも、どっか行くの?」

「ん、ああ…知人のところへな。向こうからしたら迷惑だろうが、少し鍛え直してもらってくる」

 

偏屈が服を着て歩いているような男だが、自分の打った剣の持ち主がここまで鈍っているとなれば、進んで協力してくる…と言うより、多少無理にでも叩き直そうとしてくるだろう。

 

「では、行ってくる。達者でな」

 

それだけ言い、私は、私が知っている中では最強格の男の現在の住処を思い浮かべ、ルーラを使った。



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北の国での出会い

☆8評価をしてくださったフィーさん、煮物さん、
☆7評価をしてくださったエイショウさん、
☆2評価をしてくださったdopadopaさん、
ありがとうございます!

複数人が同時に話しているのは『』で表記します。


「ヒャダインっ!!」

『ギャアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

襲い掛かってきたフレイム4体を、まとめてヒャダインで倒す。

 

「ああっ!フレイムABCDー!!!」

「貴様、よくもっ…!!行くぞブリザードB!!」

「おうよ!!ルカナン!!」

 

ブリザードの片方がルカナンを放つ。でも、たいして気にしないで、もう一度妖精の剣を杖代わりにして、今度は別の呪文を唱える。

 

「マヌーサ!!」

「何っ!?」

「ふん、この程度ならザラキで…」

「先手必勝、ザラキ!!」

「なんだと!?」

 

かのサマルトリアの王子の必殺技、マヌーサザラキ。

マヌーサは視覚、ひいては神経系に影響を及ぼす呪文。「死の言葉」を投げかけるものであるこの世界のザラキとは相性がいいのではないかと思ったのだが、どうやら当たっていたようだ。

 

「テメエ、何者だ!!」

 

そう叫ぶのは、フレイザード。

 

「ただの通りすがりですよお」

「嘘つけ!!!そう簡単に賢者が通りすがってたまるかよ!!!」

 

まあ、そうだよね。

 

「き、君!危ないから、早くここから…」

「逃げろ、と?それはこちらのセリフです」

「しかし、私たちはこの国の騎士だ!!見ず知らずの女性に丸投げするわけには…」

「あなた方がいなくなったら、誰がこの国を復興させるんですか。いいからさっさと一般の方の避難と救助を。騎士団壊滅とよそ者の死、どちらが重いかくらいわかるでしょう」

 

そういうと、騎士だという2人ははっと思い出したように町へ向かう。

 

「さて、これ以上被害が出る前に終わらせてしまわなくては」

「調子乗ってんじゃねえぞ、このアマ!!」

 

フレイザードは叫んで、両腕を大きく広げる構えをとる。

 

「氷炎爆花散!!!」

「マジックバリア!!」

 

フレイザードの体の炎と氷が魔法的な熱量であれば、軽減できる可能性もあるが…果たして。

 

「っ、ぐ、あっ!!」

 

無理だったこれ絶対軽減なんかされてないやっぱりこれ特技扱いか。

 

「スカラ!!!」

 

さっきルカナン食らってるから、どこまで効くかはわからないけど…!

 

「そらそらそら!!さっきまでの威勢はどうした!!」

「うるさいなあ…ドルモーア!」

 

ヒャド系は、氷の体を強化してしまうから不可。禁呪法生命体のこいつに、ザラキが効くかどうかは微妙。なら、小生(ボク)が使うべきは、ドルマ系。

 

「ギャアッ!?」

 

即座に元に戻るフレイザード。

 

「やるじゃねえか…だったらこいつはどうだ!!」

 

そう言って、フレイザードはぎゅっと手を握りこむ。…来るか!

 

「ふ、フレイザード様!!ただいま、悪魔の目玉から伝令が…!」

「何!?」

「新たなる勇者の少年が誕生し、クロコダイン様を撃破したため、全軍団長は直ちに鬼眼城へ集結せよと…!!」

「チィッ…引き上げるぞ!!」

「は、はいっ!」

 

ここで討たれる可能性を考えたか、はたまた小生(ボク)よりもダイの対処のほうが先だと考えたか。

どちらにせよ、いいタイミングで来れたものだ。

 

 

××××

 

 

「あの、先ほどはありがとうございました…!」

「いえいえ、自分にできることをやったまでですから」

 

怪我人…と言うか生存者を集めて、自分も魔法力を回復しつつ回復し続けること数時間。どうにか全員を治療することができた。

なお、場所は他の建物より崩壊具合が比較的ましな王宮の武器庫である。

 

本当にナイスタイミングでやってこれたようで、王宮勤めの女官だという女性の活躍により、まだ幼い王子が生存。小生(ボク)がフレイザード率いる本隊を引き付けている間に近衛隊の皆様が粘ってくれたおかげで、自ら前線に出た国王は残念だったが、王妃と成人済みの王女が生き延びた。

 

「お父様のことは、本当に悔やんでも悔やみきれません。けれど、貴女様がいらっしゃらなかったら、きっと私たちは…。心から感謝申し上げます。もうなんとお礼を申していいやら…」

「え、あ、あの、王女殿下、どうか頭を上げてください!」

 

でも、彼女の言っていることは本当。あの時、フレイザードが「フレイムとブリザードによる数の暴力でも押し切れない、ここに全員残していったら氷炎魔団が壊滅する」と判断してくれなかったら…。考えるだけでもぞっとする。こう言うときばかりは、彼の冷静な判断力に感謝しよう。

 

ハドラーとの戦いから、今日で1週間と少し。

あの後、小生(ボク)が魚釣りとかに使ってるボートで海に漕ぎ出して、どうにか漂っていたアバン先生を回収。どうしてここにと驚かれたけれど、1人になりたかったんだとかいろいろ言ってごまかした。あの顔は絶対信じてもらえてなかったけど、笑顔の圧で押し切った。

 

ボートは、ルーラ使う魔法力の節約ということでアバン先生に渡して、家に帰って自分には何ができるのかを考えた。

たぶん、ブラスさんの護衛とかでデルムリン島に引きこもってても、あまりいいことはない。けれどダイたちに同行していたら、ダイたちの成長を阻害してしまうかもしれない。

だったらどうすれば…とほぼ一晩中考えて、たどり着いた答えは「原作で大きく描写されていなかったところで地道に貢献する」と言う物だった。

どうにか王族が生き延びていたり、そうでなくとも指導者ポジションの人物が生存している他国と違い、オーザムは皆殺しにされてしまっている。ならば、少しだけでも被害を減らして、復興できるようにと思ったわけだ。

…ただ、来るのに6日かかってしまったけど。途中で海に落ちるとかいうポカやらかさなかったら、もう少し早く来れたはずなのに。やっぱり馬鹿正直に北へ行かずに、南から向かうべきだったか…

 

「そういえば、あなたはどうしてここに…?」

「できることをしたかっただけですよ。お気になさらず」

 

騎士団の皆様の指示がよかったようで、多くの国民が生き残っている。これなら、復興も早そうだ。

それでも多くの人が犠牲になってしまったな、と少しばかり落ち込んでいると、不意に、武器庫の隅が騒がしくなった。

 

「放せ、放してくれ!!」

「ええいうるさい!!自殺志願者をそう簡単に開放できるか!!」

「親父もおふくろも兄さんも殺されたんだ!!!死なせてくれよ!!!」

「何の騒ぎです、これは」

「お、王女殿下…!すみません、我らの隊の者が!!」

 

あれは…近衛隊長さんじゃないな。じゃあ暴れてるのは別の隊の人か。

騒ぎをほっとく気にはなれないし、言ってる内容がないようだし、ちょっと話しに行くか。

 

「あの」

「なんだよ!?」

 

鮮やかなスミレ色の目が、小生(ボク)の目をとらえた。

 

「…すみません」

 

軽く頭を下げる。彼が驚いているすきに、小生(ボク)はぎゅっとこぶしを握って。

思いっきり、彼を殴り飛ばした。

 

どこぞのドラゴンでボールな漫画みたいに、えらい勢いで吹っ飛ぶ青年。

 

「いってえ!!何すんだ!!」

「死んじゃったら、痛いとも思えないんですよ」

 

驚いたように目を見張る彼に、続けて言う。

 

「死ぬのが親孝行ですか?」

「え…」

「生きたかった人がたくさん死んだのに、死にたいんですか?」

「それ、は」

「死んだ人の思いはその人だけのものだから、こんなこと言うのは憚れますけど。あなたが死んで、それでご両親は満足するんですか?」

「あ、アンタに何がわかるんだ!!」

「分かりません。でも、自殺を推奨はしません。死ぬしか逃げ道がないほど追い詰められているならまだしも、あなたはそうじゃない。生きていればいろんなことがある。死に急ぐ必要はないと思いますがね」

 

青年は黙り込み、うつむいてしまった。短く切った、赤みがかった金髪だけが見える。

 

「あなた、いくつですか」

「…19」

「なんだ、小生(ボク)と大して変わらないじゃないですか。だったら、まだまだ先がありますよ。…ウン十年を棒に振るより、他でもないあなた自身のために、生きた方がよほど有意義じゃないでしょうか」

「…なんで」

「?」

「なんで、兄さんと同じこと言うんだよ…!!!」

 

泣き出してしまった青年の背を、同じ隊らしき人がそっとさすった。

 

 

××××

 

 

 

「うちの隊の者がとんだご迷惑を…」

「大丈夫です、小生(ボク)の方から首突っ込んだだけなので」

「本当に申し訳のうございます。あれは町の警備に当たっていた者でして、住民の誘導を最優先に行っておりましたから…」

 

…ああ、そう言うこと。だいたい察した。誘導した中に、お兄さんかご両親がいたんだな…

 

「彼、町を警備していたんですか?あれだけ出来るなら門番でも十分やっていけそうに見えましたが…」

「わかりますか」

 

さっき殴り飛ばした時、しっかり受け身が取れていたし、治療した時に体を見たが(爆弾岩相手に距離を取り損ねたとかで大やけどを負っていた)、上半身…特に、利き腕らしい右腕と、背中側の筋肉がかなり鍛えられていた。おそらく、彼は弓が得意なんだろう。装備を外していたから、推測でしかないが。

 

「実力としては、王宮を警備させても差支えないほどなのですよ。ですが…その、若輩者ですからね。少々熱くなりすぎるところがありまして、落ち着くまではと」

「ああ…」

 

確かにさっきめちゃくちゃ熱くなってたな。

 

「いやしかし、あれほどまでに魔王軍が強力だとは思いませんでした。この厳しい環境で生活している分、他国に引けを取らない実力を持っていると自負しておったのですが…鍛え直す必要がありそうですわい」

 

苦笑して言う隊長さん。

でも確かに、ここの兵は強い。ただちょっと、今回は相手が悪かった。耐久力こそ低いが炎を吐きまくるフレイムに、ルカナンとザラキ、場合によってはスクルトを連発するブリザード。攻撃力がそこそこ高いしやっぱり炎を吐く溶岩魔人、耐久お化けでたまに甘い息吐いて眠らせてくる氷河魔人、自分の命なんぞ知らんと言わんばかりにメガンテしてくる爆弾岩。そして頭は、残忍だが冷静で、しかもメラゾーマ5連発とかいうチート使いのフレイザードだ。これに勝てという方が酷だろう。

 

「おーい!こっちへ来てくれ!!」

「む…どうした?」

 

別の隊らしき人が、走ってきた。

 

「今、リンガイアからの援軍が来て…」

「何と、今か!?」

「ああ。それで、支援物資も持ってきてくれたんだ。これで少しはこの状況もマシになるぞ!」

「おお、それはありがたい!皆の傷が癒えたとはいえ、物資はいくらあっても足りないほど不足しているからな…」

 

…援軍。リンガイアから?

あ、そうか。彼か。

 

隊長さんたちについていくと、そこにいたのは案の定。

 

「ああ、いらっしゃいました。ノヴァ殿、あちらの方ですよ!」

 

青っぽい銀髪、青と白を基調とした装備。

「北の勇者」、ノヴァだった。



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